Fate/crimson faker (Gヘッド)
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0話:プロローグ
—————正義の味方になりたい。
あの頃のオレは光を求める蛾のようにただそれだけを求めていた。
純粋に、ひたむきに。
そして、蛾は眩い光を見つけた。ひらりと揺らめくその光に蛾は何の迷いもなく飛び入った。
今思い返せば、あれは炎だったのだろう。身を焦がす理想に浸かっていたのだ。
オレの理想は—————オレの信じた正義は、何一つ正しくなかった—————
「—————んなッ⁉︎」
いきなり叩き落とされた。召還されたかと思えば、乱雑に積まれた家具の山の上にいて、当然僅か15センチほどの差では咄嗟の回避行動もできず、体を叩きつける羽目となってしまった。
「まったく、こんな召還をするのは何処の誰だ?」
オレは辺りを見回した。シックな雰囲気を基調としたいかにも高価そうな家具ばかりがあるリビングのような場所であった。真紅の絨毯の上にあるそれらの家具がサーヴァントの召還によって散乱してしまったのだろう。ヒドい召還をするものだ。
ああ、それでもオレはこの景色に見覚えがあった。それはオレの中にある過去。失い、失い、失い続けた地獄の日々とそれでもオレに与えてくれた愛を噛み締めることのできる一時の安寧。
「もっともこの
オレは心の奥底から湧いてくる喜びに堪えきれず、少しだけ口元を上げた。
目の前の扉が開いた。扉から入ってきた少女。赤いタートルネック、黒いミニスカートをひらりと揺らす。初対面であるはずのオレに鋭い眼光で睨みつけ、もとより隠せぬ苛立ちを顔に表していた。
その姿を見て、オレは心の底から湧き上がる喜びを押さえつけた。その姿はオレの記憶と全く同じ、思い出が現実世界に現れたかのようである。忘れられない過去、オレの人生を狂わせた現実との交錯点。そこでまた彼女の姿を見ることができた。
今度はオレが聖杯戦争に呼ばれてしまったというわけか。
まったく運命というものに絶望したはずのオレだが、こんな日が来ようとは。
ああ、こんな姿を知ったら、お前はオレをどう思うだろうか。
遠坂凛—————今目の前にいる彼女はオレの初恋の人であり、初めてオレにできた守らねばならない人であり—————
—————オレが守ることできず、この聖杯戦争で死んだ人であった。
前世、そのように言えばいいだろうか?いや、過去とでも言っておこう。オレがまだ絶望という二文字を知らず、魔術もロクに使えず、ましてや正義の味方などと馬鹿げた理想に憧れていた頃の話だ。
そう、これは
一応、話の大体のアウトラインはできてますけど、更新予定はほぼありません。気が向いた時に書いてみたいと思います。
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