愛しき龍神と過ごす日々 (shin-Ex-)
しおりを挟む

結婚の約束

ハイスクールD×Dに手を出してしまった。後悔はしていません

此度は私にしてはおそらく珍しいであろうほのぼの系となっております

あいも変わらぬ拙い作品となっているかもしれませんがどうかお付き合いくださいませ

それでは本編どうぞ


『お、大人になったら結婚してください!』

 

それは無知故に、幼稚故にでた言葉であった。出会って間もない女の子にこんなことを言うなんて、我ながらどうかしていたと思う。だけど・・・・・あれは幼いながら本気の願いだった。本気のプロポーズだった。嘘偽りなどない、純粋な想いだった。

 

『ん・・・・よくわからないけど、わかった』

 

彼女は俺のプロポーズにそう返した。今思えば、俺の言っている言葉の意味など一切分からずに、とりあえず返事を返してしまっただけなのだろう。でも・・・・それでも嬉しかった。年相応にはしゃいで、そんな俺を、彼女は不思議そうに見つめていて。

 

あの時のことは、あの喜びは・・・・・今でもはっきりと覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・懐かしい夢」

 

俺は、見慣れた天井を眺めながら、先程まで見ていた夢に思いを馳せていた。

 

「もう10年か」

 

あれは10年前のことだった。あまりにも突然の出会い・・・・にも関わらず、プロポーズした俺。

 

・・・・・・・我ながら頭が痛くなるほどに幼稚だ。あの時の自分に小一時間ほど説教してやりたい。

 

「・・・・今何時だ?」

 

布団の近くに置いてあった携帯で時間を確認する。時刻は5時・・・・・起きるにはまだ早すぎる時間だ。だが、どうにも目が冴えてしまったので、二度寝をきめこむこともできそうにない。

 

「・・・・・・仕方ないか」

 

どうせ6時には朝ご飯作るんだ。1時間ぐらい適当に時間を潰してるのも悪くない。

 

俺は布団を片付けて、ひとまず部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・咲良、おはよう」

 

居間でコーヒーを飲みながら本を読む俺に、声をかけてくる者が一人。

 

「ああ、おはようオーフィス」

 

彼女はオーフィス。この家で、俺と共に暮らす女の子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年前のことだった。

 

『咲良、こいつはオーフィス。今日からこいつと一緒に暮らすことになった』

 

ある日突然、女の子、オーフィスを連れてきた爺さんがそんなことを言ってきた。当時7歳だった俺は『何言ってんだこの爺?とうとうボケて頭いかれたか?』とか思ったが、それは一瞬のこと。俺は・・・・俺の視線は、思考はオーフィスに集中してしまった。

 

自分とそう大して歳の変わらなそうな幼い見た目のオーフィス。無表情で儚げな雰囲気を身にまとっていたオーフィス。まるで、俺の全てを飲み込んでしまいそうなほどの大きな何かを秘めたオーフィス。

 

俺はそんなオーフィスに・・・・・一目ぼれしてしまった。

 

『・・・・誰?』

 

『お、俺は・・・・咲良。湊内咲良』

 

オーフィスに問われ、俺は答える。緊張で心臓がバクバク鳴っていた。

 

そして俺は・・・・出会って間もないオーフィスにとんでもないことをやらかしてしまった。

 

『お、大人になったら結婚してください!』

 

『ん・・・・よくわからないけど、わかった』

 

まさかのプロポーズだ。俺の人生で間違いなくぶっちぎりのトチ狂った行動である。しかもこの後、返事をもらえたことに嬉しくなって舞い上がってしまっていた・・・・まったくもって無知で幼稚だ。

 

オーフィスがこの世界で最強の『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』と呼ばれる存在であることを知らず、この時のオーフィスが故郷に帰ることを何よりも望んでいたことも、知らず・・・・・本当に無知で、幼稚なガキだった。

 

まあ、ともあれこれが俺とオーフィスの出会いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分早いな。まだ5時過ぎだぞ?」

 

いつもなら7時ぐらいまでは寝ているオーフィス。この時間に起きているのは本当に珍しい。

 

「廊下から足音が聞こえた」

 

「っと、俺が起こしちゃったのか。ごめんな」

 

「別にいい。気にしてない」

 

そう言って、オーフィスは俺の膝の上に座る。なんでも、ここはオーフィスお気に入りの特等席らしい。

 

「起きちゃったなら朝ご飯作ろうか?」

 

「我、もう少しこうしていたい」

 

俺の胸に背を預けながら言うオーフィス。ご飯はまだいいらしい。

 

「そか。じゃあどうするかなぁ・・・・・」

 

「・・・・これ、飲んでいい?」

 

オーフィスはコーヒーの入ったカップを指差す。

 

「いいけど・・・・これブラックだぞ?飲めるか?」

 

「いい。飲む」

 

オーフィスは普段コーヒーを飲む時、カフェオレになるぐらいミルクと砂糖をたっぷり入れる。ブラックなど飲んだことない。

 

カップを手に取り、コーヒーを口に含むオーフィス。てか、これって間接キス・・・・・ま、まあいいか。うん・・・・本人気にしてないみたいだし。いや、そもそも間接キス自体知ってるかわからんけども。

 

「・・・・・」

 

「ん?どうした?」

 

一口コーヒーを飲んだオーフィスは無言で固まる。表情は変わらないが、雰囲気が若干げんなりしているので尋ねてみると・・・・

 

「・・・・・苦い」

 

案の定であった。ブラックのコーヒーはオーフィスの口には合わなかったらしい。

 

「だから言っただろ・・・・ちょっと待ってろ。砂糖とミルク持ってくるから」

 

「このままでいい。飲む」

 

砂糖とミルクを持って来ようとするが、オーフィスはそれを拒否してちびちびと苦いコーヒーを飲む。

 

「いや、無理するなよ」

 

「無理じゃない。飲む」

 

一体何故こんなにも頑ななのだろうか?確かに普段から無表情ゆえに何を考えているかわからないことはあるが、今は殊更わからん。

 

「・・・・・飲めた」

 

しばらくして、コーヒーを飲みきったオーフィス。相変わらずげんなりしているが、同時にどこか誇らしげにも見える。

 

「まったく・・・・どうして無理してまで飲んだんだ?」

 

「無理してない」

 

「それはいいから。それで?どうしてなんだ?」

 

「ブラックコーヒーは大人の飲み物。電話で伊槻が言ってたから」

 

「・・・・は?」

 

オーフィスの言ってることの意味がまったくもって分からなかった。

 

伊槻というのは俺の爺さんのことだ。湊内伊槻・・・・世界を股にかけるミステリー・ハンターを自称し、現在は世界中を飛び回っていて年に数回しか帰ってこない。

 

いや、まあ爺さんがどういう人物なのかはさておいて、爺さんの言うことを間に受けてコーヒーをブラックで飲んだということは、オーフィスは大人になりたがっているということか?確かに純粋さ故にオーフィスは子供っぽく見える。だが、現実としてオーフィスは途方もなく長い時を生きた龍神だ。正直大人もなにもあったものはないと思う。

 

そもそも、オーフィスがそんなことを気にするとは思えない。だというのに・・・・・一体どうしたというのだ?

 

「えっと・・・・オーフィスは大人になりたいのか?」

 

「うん」

 

「なんでまたそんな風に思ったんだ?」

 

「大人になれば結婚できる」

 

・・・・・え?結婚?

 

「夢を見た。咲良と初めて会ったときの夢。あの時咲良言ってた。大人になったら結婚してって。だから我、ブラックコーヒー飲んで大人になった。咲良も我もブラックコーヒー飲める大人。だから結婚できる」

 

「いやいやいや・・・・・ちょっと待ってくれオーフィス。整理するから」

 

確かに、初めて会ったとき俺はオーフィスにそう言った。無知で稚拙な・・・それでも本気のプロポーズ。オーフィスはそんな昔のこと覚えてないと思っていたんだが、どうやら覚えていてくれたらしい・・・・嬉しくもあるが、正直恥ずかしい。

 

いや、俺が恥ずかしさは一旦置いておいて・・・・オーフィスは昔の俺のプロポーズを覚えていて、だから大人になりたがって・・・・・それってもしかして?

 

「オーフィス。お前は俺と・・・・結婚したいのか?」

 

「うん。我、咲良と結婚したい」

 

「ッ!?」

 

その言葉で俺の心は歓喜で満たされた。10年前に初めてであったあの時からずっとずっと好きだったオーフィス。時が経つにつれ、オーフィスのことを知るにつれその気持ちは大きくなっていって・・・・幼い時に抱いた『オーフィスと結婚したい』という願いは今も抱き続けていて・・・・

 

そして今、俺はオーフィスに結婚したいと言われた。こんなに嬉しいことがほかにあるだろうか。

 

いや待て、落ち着け俺・・・・・オーフィスのことだ。結婚の意味がわかってるかどうか確かめなければ・・・・

 

「オーフィス、一応聞くが・・・・結婚ってどういうことかわかってるか?」

 

「わかってる。家族になること。それが結婚」

 

・・・・間違ってはいない。間違ってはいないけれど・・・・

 

「あのなオーフィス?結婚っていうのは確かに家族になることでもあるんだが・・・・ちょっと認識が違うんだ。結婚っていうのは好きな人同士でするもので・・・・」

 

「我、咲良のこと好き。咲良は我のこと好きじゃない?」

 

「好きです」

 

俺は迷うことなく即答した。そりゃ好きじゃないだなんてありえないからな。

 

「なら我と咲良好き同士。結婚できる」

 

「いやごめん、そういうわけじゃないんだ。例えば・・・・そうだ、爺さんだ。オーフィス爺さんのこと好きだろ?」

 

「うん。我、伊槻のこと好き」

 

・・・・・自分で聞いといてなんだけど爺さんに殺意が湧いた。いや、オーフィスの言う好きは恋愛感情でなく、親愛の方だってわかってるんだけどな。それを言うなら俺に対する感情も親愛なんだろうけども。

 

「咲良どうかした?」

 

どうやら爺さんに対する殺意を感じ取ったらしく尋ねてくるオーフィス。

 

「いや何でもない気にするな。それはともかく、爺さんもまあ、オーフィスのこと好きだと思ってだろう。オーフィスと爺さんも好き同士ならオーフィスは爺さんとも結婚するってことになるだろ?だけど結婚は・・・・」

 

「それはない」

 

「え?」

 

オーフィスは俺が言い終える前に、はっきりと否定した。

 

「伊槻のことは好き。でも、結婚はしたくない。結婚したいの咲良とだけ。咲良以外とは結婚したくない」

 

「・・・・・・マジかー」

 

爺さんのことは好きでも結婚したくはない。俺のことは好きで結婚したい。

 

結婚の意味自体、オーフィスは正しく理解しているわけではないだろう。けど・・・・それでも、俺のことは他の誰とも違う、特別な存在として見てくれている。それは間違いない。

 

やばいな・・・・・普通に嬉しすぎる。

 

「なあオーフィス。俺もオーフィスと結婚したいよ。その願いは、10年前に初めて出会った時から変わらない。だけど・・・・・俺はまだオーフィスと結婚できるような大人じゃないんだ」

 

「ブラックコーヒー飲めるのに?」

 

「うん。コーヒーをブラックで飲めたところで大人になれるわけではないからね。そもそも、大人でもコーヒーをブラックで飲めない人はいくらでもいるし」

 

「・・・・伊槻、我に嘘をついた?」

 

「それについては今度一緒に爺さんを説教しようか」

 

純粋なオーフィスに適当教えやがって・・・・・次帰ってきたとき覚悟しやがれよあのクソ爺。

 

「まあ、オーフィスはともかくとして俺はまだ大人じゃない。だから結婚はできないんだ」

 

「・・・・・咲良は我と結婚したくない?」

 

無表情ながらも不安げに聞いてくるオーフィス。

 

「そんなことないよ。さっきも言ったようにオーフィスと結婚したいという願いは今も変わらない。俺だって出来ることなら今すぐにでも結婚したいさ。けど、俺はまだ大人じゃないんだ。だから・・・・・俺が大人になるまで待っててくれないか?」

 

「・・・・どれぐらい待ってればいい?」

 

「そうだな、少なくとも高校は卒業しないとだから・・・・あと2年ぐらいかな」

 

まあ高校卒業したからって大人になるってわけでもないけど・・・・・そこはなんとかなるだろう。というかなんとかしよう。

 

「2年・・・・・わかった。我、2年待つ。待ったら結婚」

 

「ああ、約束だ。指きりしよう」

 

「ん」

 

小指を絡め、オーフィスと結婚の約束を交わす。

 

あの頃とは違う・・・・・今の俺は無知ではなく、稚拙でもない。だけど・・・・・オーフィスとの結婚。その願いは・・・・あの頃とはなにも違ってはいない。

 

「大人になったら結婚してください」

 

「うん。我、咲良と結婚する」

 

相変わらず無表情なオーフィス。だけど、俺にはわかる。

 

彼女はとても嬉しそうだった。

 

 

 




しょっぱなから結婚の話という

どうしてこうなったかといえばオーフィスちゃんがが可愛いからとしか言えません

ご拝聴ありがとうございました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼はペドで彼女はショタコン?

・・・・・はい、サブタイ酷いですね

どうしてこうなったのかは本編にてお確かめください

それではどうぞ


こんにちは、湊内咲良です。今日はオーフィスと一緒に食料品の買い出しに近所のスーパーに来ているのだが・・・・・

 

「・・・・はあ」

 

ぶっちゃけテンション低いです。その理由というのは買い出しがどうとかではなく・・・・・明日から学校が始まるからだ。

 

明日から高校2年。学生としては新学年としての学校生活に胸弾ませるだろうが俺はそうじゃない。いや、正確にはその気持ちがないわけではない。勉強も運動も嫌いじゃないし、友達だってちゃんといる。それなりに充実はしているのだが・・・やはりオーフィスと一緒にいられる時間が減るというのは正直嫌だ。

 

長期休暇が開けるたびにそんな気持ちに陥ってるが、今回は殊更だ。理由は先日のオーフィスとの結婚の約束にある。あの約束を交わしてからというもの、オーフィスへの愛おしさが跳ね上がってしまった。ずっとずっと一緒にいたいと、片時も離れたくないと思うほどにだ。

 

もちろん、だからといって学校に行かない、学校をやめるという選択肢はない。なぜなら、オーフィスとの結婚の約束は高校を卒業することを前提としている。故に卒業する為にも学校には通わなければならない。オーフィスもそのことは理解しているようで、明日から学校があると話したら悲しげな雰囲気を纏いながら『わかった。我、咲良が学校行ってるとき我慢して留守番する』と言ってくれている。

 

ちなみに、『咲良と一緒に居たい。我も学校に通う』と言ってた時期もあるが・・・・容姿的な問題で同じ学年、クラスは無理だと教えたら『ならいい』と即諦めたこともあったりする・・・・結構前のことだがまさかその時から俺を特別扱いしてくれていたのだろうか。

 

それと、俺が学校をやめない理由は他にもあったりする。実は昔、オーフィスと少しでも長く一緒にいたいという理由で学校を辞めたいと爺さんに言ったことがあるのだが・・・・・こっぴどく怒られてしまった。

 

『学校が嫌いだというなら辞めても構わん。だが、オーフィスを理由に、言い訳に捨てるのは許さん』

 

爺さんに言われたこの言葉はかなり効いた。なにせその通りだったんだからな。俺はオーフィスを言い訳にして、嫌いでもないことを切り捨てようとしてた。それは恥ずべきことであり、愚かなことだ。自分の見識を狭め、自分の可能性を潰して・・・・・・爺さんに怒られても仕方がない。

 

ちなみに・・・・・

 

『それと、仲がいいのは結構なことだがあまりオーフィスに依存しすぎるのも良くないぞ。世の中にはヤンデレという言葉があってそれは・・・・』

 

こんなことも言ってやがった。いいこと言って評価あげたかと思った矢先に大暴落である。なんであの爺さんは余計なことを教えようとするかね。まあ、その内容を一々律儀に覚えてる俺も俺なんだが・・・・

 

「咲良」

 

自己嫌悪に陥りそうになった俺に、オーフィスが声をかける。

 

「味噌切れかけてた。これ、いつもの」

 

そう言いながら、オーフィスは買い物かごの中に味噌を入れる。うちの冷蔵庫事情をしっかり把握していることに成長してるんだなぁと感嘆すると同時に、俺はオーフィスが味噌と一緒にかごに入れたチョコ菓子に気がついた。まったく、いつの間にこんな小ワザを身につけたのやら・・・・まあ爺さんが吹き込んだんだろうが。

 

「・・・・オーフィス?」

 

俺がチョコ菓子の箱を手にとって声をかけると、オーフィスはふいっとそっぽを向いた。その仕草が一々可愛くて、怒る気を失せさせる。まあ、はじめから怒る気なんてないんだけどさ。

 

「まったく・・・・あと一個」

 

「咲良?」

 

「あと一個好きなお菓子持ってきていいよ。それと、別に怒ったりしないから欲しいお菓子があるならちゃんとそう言いな」

 

「・・・・うん」

 

表情は変わらないが、雰囲気がパッと明るくなるオーフィス。そして、とてとてと小走りでお菓子売り場へと向かって行った。

 

「・・・・やっぱり可愛いよなぁ」

 

オーフィスの後ろ姿を眺めて出てきた感想がこれなのは、致し方ないことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「買い忘れはなし、と。よし、帰ろうかオーフィス」

 

「うん」

 

買い物を終え、買い忘れがないことを確認した俺は、オーフィスと一緒にスーパーから出た。

 

その直後・・・・

 

「あれ?咲良?」

 

俺に声をかける者が一人。振り返ると、そこにはメガネをかけた少女が居た。

 

「なんだ、桐生か」

 

彼女は桐生藍華。一年の頃のクラスメイトで、友人である。

 

「友達に向かってなんだとはなによ」

 

「あ~・・・・すまん。ところで、こんなところで何してるんだ?」

 

「親にお使い頼まれてね。そういうあんたは?」

 

「食料品の買い出しだよ。今終わったところだけどな」

 

俺は買ったものが入ったエコバッグを桐生に見せながら言う。

 

「ふ~ん・・・・・で、その子はなに?」

 

桐生は俺のすぐ隣にいるオーフィスを指差しながら言う。まあ、オーフィスのことは友人にも言ってないから疑問に思われても仕方がないだろう。

 

「ああ、こいつは・・・・」

 

「咲良、これ誰?」

 

オーフィスのことを紹介しようとしたが、それを遮ってオーフィスが俺に尋ねてきた。心なしか、どこか機嫌が悪そうに見える・・・・とりあえず、桐生を紹介する方が先か。

 

「桐生藍華。俺の学校の友達だよ」

 

「咲良の友達・・・・・わかった。ならいい」

 

・・・・何がいいのか気になったが、敢えて今は聞かないでおこう。

 

「えっと・・・咲良?結局この子はあんたのなんなの?」

 

今のやりとりに面食らってしまった・・・というより、一層オーフィスのことが気になったようで、桐生は再度聞いてくる。なので、オーフィスのことを話そうとしたのだが・・・・その前に、オーフィスが一歩前に出た。

 

「我、オーフィス。咲良の婚約者」

 

「ぶふぉっ!?」

 

オーフィスの自己紹介に、俺は思わず吹き出してしまった。

 

「待て待て待て待てオーフィス!?なんだその自己紹介は!?なんで婚約者!?」

 

「我、知ってる。結婚を約束した相手のことを婚約者っていう」

 

「それは間違ってないけど間違って・・・・・・ないなうん!」

 

確かにオーフィスとは結婚の約束をしている。なので、俺はオーフィスの婚約者ということになり、オーフィスの自己紹介はなにも間違ってないということになる。けどまさか、こんなところで堂々と言い放つとは思わなかった・・・・・まあ嬉しいけどな!

 

「・・・・ねえ、咲良」

 

俺が若干興奮していると、桐生が嫌に重い声色で声をかけてきた。なぜだかとっても嫌な予感がする。

 

「あんたって・・・・・ペドなの?」

 

「ロリコン通り越してペド!?」

 

嫌な予感は的中した。まさか友人からロリコンどころかペド呼ばわりされるとは思ってもみなかった。

 

「いや、だって・・・・オーフィスって言ったっけ?見た感じこの子小学生低学年ぐらいでしょ?年齢差10歳ぐらいはあるでしょ?だったらロリでは済まないわよ。ペド呼ばわりはしょうがなくない?」

 

「・・・・否定できない」

 

オーフィスは俺よりも年上である。それも年齢差10歳どころではすまない・・・・それに0をいくつもつけなければならないほどの年上だ。だが、それでもオーフィスの容姿はどう見ても幼い子供・・・・幼女だ。桐生の言っている事を否定するのは難しいと言わざるをえない。

 

だが・・・・それでもやはりペドは勘弁して欲しい。俺はオーフィスが幼女だから好きになったのではない・・・・一目惚れしてる時点で容姿も好きの要因に含まれてるため、説得力はないかもしれないが断じて違う。安っぽく聞こえるかもしれないが、俺がオーフィスを好きなのはオーフィスだからだ。

 

なので、ペドなどという不名誉な称号はなんとか払拭したいのだが・・・・・どうしたものか。

 

「・・・・違う。咲良はペドじゃない」

 

俺が頭を悩ませていると、オーフィスが口を開いた。そして、俺の名誉を守るために弁明を・・・・

 

「咲良はペドじゃない・・・・・我がショタコンなだけ」

 

その弁明に俺は度肝を抜かれた。

 

「オーフィスさん!?何を仰っているのですか!?」

 

重度の驚きにより、ついつい敬語になってしまったがそれを気に留める余裕は俺にはない。

 

「年下の男を好きなことをショタコンっていう。伊槻から勧められた本に書いてあった」

 

クソ爺ィィィィィィィィィィ!!純粋なオーフィスにどんな本勧めやがったぁぁぁぁぁぁ!!ていうか俺がペドじゃないって否定したってことはペドが何かって知ってるってことか!?マジにどんな本勧めたんだよふざけんな!!

 

「さ、咲良・・・・あんた私より年下なの?」

 

桐生は桐生はトチ狂ってありえないこと言い出すし!混乱しすぎて目がぐるぐるになってるし!

 

「・・・・・誰か助けてください」

 

無所にも、俺の助けを求める声に答えるものは誰ひとりとしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「咲良、どうした?」

 

「なんでもないよー。気にしないでオーフィス」

 

桐生とのやりとりから十数分後、俺はオーフィスと家への帰路についていた。結局あのあと、オーフィスは最近見た漫画、アニメに影響されている(ある意味では間違ってない)と桐生に説明して強引に納得させることに成功した。まあ・・・・説得できてよかったと同時に、それで説得できていいのか日本と思ってしまったが。

 

ちなみに、オーフィスが婚約者であることに関しては何も言ってない。だって、間違ってないし・・・・もうそれはそれでいっかと思った。桐生は結構奇想天外な性格してるけど、やたらと言いふらすような奴ではないとは思うので大丈夫だろう。

 

問題は爺さんだ。爺さんが原因でオーフィスが覚えなくてもいい余計な知識を身につけてしまっている。純粋だからこそ染まりやすいオーフィスは影響を受けやすいというのに・・・・うん、やはり帰ってきたら説教をすべきだろう。それもトラウマになるレベルのハードな説教を。マジ覚悟しろよクソ爺。

 

「咲良」

 

俺が爺さんへ説教という名の制裁を下すと心に誓っていると、オーフィスが俺の服の裾を引っ張ってきた。

 

「どうしたオーフィス?」

 

「あれ」

 

オーフィスが指差す方へ視線を向ける俺。そこは我が家の門前であった。どうやらいつの間にか家のすぐ近くにまできていたらしい。

 

だが問題はそんなことではない。問題は・・・・その門前に、黒い猫耳に黒い尻尾を生やした女性がボロボロの状態で倒れていることだった。

 

「・・・・・マジかー」

 

どうやら、今日はまだまだ波乱が残っているようだ。




うちのオーフィスはとんでもお爺さん、湊内伊槻のせいで原作と比べていらん知識を身につけてしまっています

ただまあ、それでもオーフィスはやっぱり可愛い

それでは次回もまたお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

食事とは偉大なものである

今回は前回の最後で登場した彼女のことが中心となります

もっとも、それは後半からになりますが

それでは本編どうぞ


「よかった・・・・大した怪我じゃなさそうだ」

 

ひとまず門前で倒れていた女性を家の客間に連れてきて、怪我の具合を見る。怪我は全身に見られたが、幸いどれも傷は浅く、大事にはならなさそうだ。なんですぐに手当をしたいところなのだが・・・・・いかんせん全身に怪我が見られるため服を脱がせなければならない。

 

「・・・・・手当のため手当のため手当のため」

 

「咲良、どうした?」

 

暗示をかけるように何度も自分に言い聞かせる俺に、オーフィスは不思議そうに声をかけてくる。

 

「オーフィス・・・・とりあえずこれは治療のためっていうことをわかってほしい。決してやましい気持ちはないから」

 

「わかった」

 

へんに言い訳してると余計にやましいこと考えてるように思われそうだけど、オーフィスはわかってくれた・・・・いや、そもそもやましいってことを理解してるかわからないけれど。爺さん、そのあたりのことはさすがに吹き込んでいないのかもしれない。

 

「それじゃあ・・・・失礼します」

 

俺は女性の服に手をかける。着物なので前の合わせを開くだけ女性の裸体が俺の眼前にさらされる。オーフィスと比べてかなりグラマラスで・・・・・俺も男なので、どうしても豊満な胸に視線が釘づけになってしまう。

 

「・・・・・」

 

「いって!?」

 

突然、俺の太ももに激痛が走る。見ると、オーフィスが俺の太ももを抓っていた。

 

「咲良・・・・やましい気持ちはないって言ってた」

 

「あ、ああ。ごめん」

 

なんかドス黒いオーラをまとったオーフィスが促してきた。無表情な分、怖さが余計に引き立っている。そっち方面の知識あったんだな・・・・というか無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)に抓られるってヤバくないか?下手すりゃ肉が抉れてたんじゃ・・・・オーフィスが爺さんに細かい力加減を教わってたおかげで助かった。帰ってきた時の説教のレベルを少し落としてやろう。

 

「・・・・・おっぱいが見たいなら我のを見ればいい。だから今は手当に集中」

 

「ごめんオーフィス。集中したいんだけど今聞き捨てならないこと言ったよね?」

 

なんかすんごい爆弾発言してるんですけど。

 

「・・・・確かに我のおっぱい小さい。けど、大きいのがいいなら咲良が揉めばいい。そうすれば大きくなるって伊槻に教わった」

 

よし、やっぱり説教のレベルを落とすのはやめよう。むしろ上げちまおう。まったく変なこと吹き込みやがって・・・・・・少しだけ感謝しなくもないけど。

 

って、そんなことよりも今は手当だ。

 

「オーフィス、手伝ってもらうけどいいか?」

 

「うん」

 

かなり余所事で逸れてしまったが、ようやく女性の手当を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ひとまず終了」

 

しばらくして、女性の手当が終わった。今は客間に敷いた布団で眠らせている。ちなみに、着ていた着物も傷んでいたので今は俺の学校のジャージを着せている(オーフィスが着せてくれた)。

 

「にしてもこのひと・・・・一体何者なんだろう?」

 

猫耳と猫尻尾を生やしていることから、おそらく猫又に分類される種族なのだろう。問題は、彼女がどうしてうちの前で傷ついて倒れていたのかだ。

 

怪我をしてるということはそれなりに厄介な目に合っているというのは想像できるが・・・・詳しい事情までは本人に聞かなければわかりようがない。となると、目が覚めるまで待っていなければ考えても仕方がないし・・・・・よし、ここは・・・・

 

「オーフィス、俺は夕食を作るからこのひとのこと見ててもらっていいか?」

 

「うん。我、見てる」

 

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」

 

俺は女性のことをオーフィスに任せて、夕食の準備をしに台所に向かう。彼女の分も含めてだから3人分か・・・・・和服着てたし、とりあえず和食でいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、できた」

 

調理を開始して1時間ほどして、料理は完成した。肉じゃがとほうれん草のお浸し、卵焼き、焼きサンマ、味噌汁がオカズでいつもよりも多めに炊いた白米。とりあえずこれで十分かな?

 

「さて、彼女は目を覚ましたかな・・・・・・」

 

料理と皿を机に並べ、彼女が目を覚ましたかどうか確認しに行く。できれば暖かいままで食べて欲しいから目を覚ましてくれてるといいんだが・・・・・

 

「オーフィス、彼女の様子はどう?」

 

「まだ目を覚まさない」

 

客間に入って彼女の様子をオーフィスに聞くが、どうやらまだ目を覚まさないらしい。困ったな・・・・でも仕方がない。彼女を見ていてくれたオーフィスに冷めたご飯を食べさせたくはない。

 

「彼女のことは俺が見てるから、オーフィスは先にご飯食べてきな」

 

「・・・・いい」

 

「え?」

 

女性の眠る布団のすぐ傍に腰掛けながらオーフィスに促すが、オーフィスは拒否した。

 

「咲良が見てるなら我も見てる。ご飯、一緒に食べたほうが美味しい」

 

「そっか・・・・うん。そうだよな」

 

確かに一人で食べるご飯は覚めたご飯よりも味気ない。彼女が目を覚ました時に、一緒にご飯を食べよう・・・・・食べてくれるかはひとまず置いておくとしよう。

 

「ん・・・・にゃ」

 

「お、どうやらそこまで待ってる必要はなさそうだな」

 

布団で眠る女性の口から声が漏れ、同時にゆっくりと目を開き始めた。どうやら意識が戻ったようだ。

 

「おはよう。体はどう?痛いところあるか?」

 

「ッ!?」

 

目を覚ました女性に容態を尋ねると、ビクリと大きく体を震わる。急に話しかけられて驚いてしまったのかと思っていると・・・・

 

「おろ?」

 

彼女に引き寄せられ、布団に組み敷かれてしまった。

 

「何者だにゃ!私をどうするつもりにゃん!」

 

彼女はすごい剣幕で激しく詰め寄ってくる。予想はしていたが、この様子からして相当に厄介な目にあっているらしい・・・・これはマズイな。

 

「落ち着いて。危害を加えるつもりはないからとりあえず放してくれ」

 

「そんなこと信じられないにゃ!」

 

「急に知らない人間が目の前にいれば警戒するのはわかるよ。けど、俺の身はともかくとしてこのままじゃ君が危険だ。見てみ?」

 

女性は俺が指差す方向に視線を向ける。そこには、怒気をまとったオーフィスが、こちらに向かって手をかざしていた。

 

「脅してるみたいだからこんなこと言いたくないんだが・・・・・もしも俺に怪我でも負わせようものなら消されるぞ?あの子にはそれだけの力がある」

 

「そ、そんなことしたらあんたまで巻き込まれて・・・・」

 

「・・・力の加減はできる。咲良を傷つけずに消せる」

 

オーフィスがすっごい物騒なこと言ってる。まあ、言い始めたのは俺だけどさ。ただまあ、オーフィスのおかげで身の安全は保証されているとは言え・・・・さすがに目の前で誰かが消されるのを見たくはない。放してもらえるといいんだが・・・・

 

「・・・・・」

 

俺とオーフィスに言ってることを信じたのか、女性は俺から離れてくれた。これで一安心だ。

 

「オーフィス、もう手を下ろしていいよ」

 

「・・・・いいの?」

 

「ああ。脅してたんじゃちゃんと話できないだろ?」

 

「わかった」

 

俺の言うことを素直に聞いて、手を下ろしたオーフィス。これで落ち着いて話ができるな。さて、何から話したものか・・・・

 

「・・・・聞いてもいいかにゃん?」

 

俺がどう話を切り出そうかと悩んでいると、向こうから声をかけてくれた。

 

「ん?なんだ?」

 

「怪我・・・・手当されてるけどあんたがやったのかにゃん?」

 

「そうだけど・・・・・もしかしてうまくいってなかった?どこか痛むか?」

 

「そんなことはないにゃ。ただ・・・・どうして手当をしてくれたにゃん?」

 

どうやら、どうして手当をしてくれたのか気になってるようだ。まあ、向こうからしたら俺は他人。手当される理由などありはしないからもっともな疑問だ

 

「んー・・・・別に大した理由はない。だって、自分の家の前で傷だらけの女性が倒れてたんだぞ?手当してあげなきゃって思うのは特別おかしなことじゃないだろ」

 

「・・・・お人好しにゃ」

 

「お人好し結構。あそこで放置して罪悪感に苛まれるよりずっとマシだね。何があってもオーフィスがいるから大丈夫だって確信してたし」

 

「我、咲良守る」

 

世界最強の無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)が傍にいてくれるのだ。大抵のことでは物怖じしないし大事にもいたらないだろうと思っている。まあ、男としてはこの考えは非常に、泣きたくなるほど情けないのだが・・・・

 

「なんで泣いてるにゃん?」

 

「あ、ごめん。女の子に頼っちゃう自分の情けなさについ・・・・・それはそうと、君お腹空いてない?」

 

「そ、それは・・・・・その・・・」

 

俺が尋ねると、女性は小声でそう言った後にふいっとそっぽを向く。まだ警戒心を解いていないから素直に答えたくないといった様子だ。

 

でも、お腹は空いてるっぽいし・・・・・よし、話を聞く前に先にご飯だな。

 

「詳しい話をする前にご飯にしよう。君の分も作ってあるし。ほら、いこう」

 

「え?ちょ・・・・・」

 

戸惑う彼女に構わず、手を引っ張って食事の準備をしてある居間に向かう。ちなみに、彼女を引っ張る手とは逆の手をオーフィスが掴んでるのだが・・・・まあ、愛嬌ってことで気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

料理の置いてある机の前に彼女を座らせる。だが、彼女は料理に手をつけようとはしなかった。

 

「遠慮せずに食べていいんだよ。その為に作ったんだから」

 

「咲良の料理美味しい。食べなきゃ損する」

 

俺とオーフィスの二人で食べるように勧めているが、それでも手をつけてくれない。どうしても警戒してしまっているようだ。

 

こうなったら・・・・人情に訴えてみるか。

 

「食べてくれないのかー。困ったなー。お客さんに食べてもらわないと俺としてもご飯食べづらいもんなー。このままじゃ今日夕食抜きかー。マジかー。辛いわー」

 

「辛いわー」

 

多少どころか、わざとらしく煽ってみる、オーフィスも察してくれたのか、乗っかってくれている。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「うっ・・・・」

 

そして畳み掛けるように無言で見つめる作戦。少しバツが悪そうな表情をしていることから、効いてはいるようだ。

 

「わ、わかったにゃ・・・・食べるにゃん」

 

とうとう根負けしたのか、女性ははしを手にしてくれた。やったぜと言わんばかりに、俺とオーフィスはサムズアップし合った。

 

女性は恐る恐るとサンマにはしを入れ、一口口に含む。

 

「・・・・美味しい」

 

一言そう呟いた後、彼女はほかのおかずにも手をつけはじめる。恐る恐るだったはしの動きは、少しづつ早くなっていった。

 

「こんなにおいしい料理・・・・初めて食べたにゃん」

 

「当然。咲良の料理は世界一」

 

「世界一の料理・・・!」

 

彼女が食べ始めたので、自身もご飯を食べながら、俺の料理のことを誇らしげに褒めてくれるオーフィス。ただ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさすがに世界一は言いすぎだ。なんか彼女も納得したような表情してるけど違うからね?

 

けどまあ、ともかくちゃんと食べてくれてよかった。なにせご飯の力は偉大だからな。その証拠に・・・・彼女の笑顔をようやく見ることができた。

 

さて、俺も食べるとしよう。このままじゃ俺の分まで二人に食べられかねないからな。




彼女が誰なのかは原作愛読者なら当然わかるでしょう。私も原作の中で結構好きなキャラです

そして今回もオーフィス可愛い

では、次回もまたお楽しみに!







よろしければ感想をお聞かせください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

同居人が増えました

サブタイ通り同居人が増えます

誰なのかは予想出来ると思いますが

それでは本編どうぞ!


「なるほど・・・・・・想像以上に大変な目に遭ってたんだな」

 

食事を終え、食後のお茶を飲んでいる時に、女性・・・・黒歌から事情を聞いた俺は、思わず彼女に同情してしまった。

 

猫又の中でに得に強い種族であった黒歌は、かつて妹と共に懸命に生きていた。そんな時にとある悪魔に拾われ、黒歌はその悪魔の眷属となったようだがその悪魔というのが酷かったらしい。黒歌に結構な無理をさせていて・・・・黒歌はこのままでは妹まで無理をさせられると思ったようでその悪魔を殺害。そうして悪魔から追われる身になってしまった黒歌はやむを得ず妹を残して逃亡することとなってしまったのだ。

 

そして、追撃部隊の悪魔達との戦闘で負傷してしまい、偶然うちの門前で倒れて意識を失ってしまったところを俺とオーフィスに発見されたというわけらしい。

 

酷い話だと思った。黒歌の話では、悪いのは彼女達を拾った悪魔で、黒歌は妹を守ろうとしただけだというのに・・・・・悪魔達からは罪人の烙印を押され、妹と離れざるを得なくなった。悪魔を殺害してしまったので、黒歌にまったく罪がないとは言わないが、情状酌量の余地は十分にあると思う。だというのにこれは・・・・・

 

「別に同情してくれなくていいわ。私は後悔なんてしてないにゃん」

 

「残念ながら無理だね。俺はいい人間なんかじゃないから黒歌がどう思おうがそれを無視して同情する」

 

「随分と身勝手なお人好しだにゃん」

 

「お人好しなんて身勝手なもんだろうが。大抵が自己満足のためにやってるんだから。俺もその例に漏れないし」

 

だからといって今更それをどうこうしようとも思わないしな、他人にどう思われようと生き方を変えるつもりはない・・・・・オーフィスに何か言われたら変えるかもしれないけども。

 

「まあ、咲良がそれでいいって言うなら私もそれでいいと思うにゃん。そういうの嫌いじゃないし」

 

とりあえず、嫌われてはいないようでなによりだ。

 

ちなみに、黒歌には話を聞く前に俺達のことを先に話しておいた。そのほうが黒歌も事情を説明しやすいと思ったからな。まあ、案の定というかなんというか無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスがこんなところにいることと、そのオーフィスを力でねじ伏せることができる爺さんがいることについては相当驚いてはいたが。

 

「さて・・・・それじゃあ私はそろそろ行くにゃん。私の着物返してくれない?」

 

お茶を飲み終えた黒歌は、着ていた着物を返すように行ってきた。

 

「・・・・黒歌、もう行っちゃう?」

 

「いつまでも長居するわけにはいかないのにゃ。今頃この近辺で悪魔達が私の事探してるだろうし・・・・薄情で気まぐれな自覚はあるけど、咲良とオーフィスにはご飯と手当の恩があるから流石に迷惑をかけたくないの」

 

「・・・・・」

 

にゃははと笑みを浮かべながら言う黒歌であったが、オーフィスは納得いってないという様子だ。そしてそれは俺も同じ・・・・事情を聞いてしまったからには、このまま黒歌を行かせるわけにはいかない。

 

「・・・・オーフィス。ちょっと」

 

俺はオーフィスに顔を近づけ、俺の考えを耳打ちして教える。

 

「・・・・わかった。我もそれでいい。それなら明日から寂しくない」

 

「よし、決まりだな」

 

「二人して何を話してるにゃん?早く着物を返して欲しいんだけど・・・・・」

 

早く着物を返すように促してくる黒歌だが、そういうわけにはいかない。

 

「悪いけど、着物を返すわけにはいかなくなった」

 

「どういうことかにゃ?」

 

「黒歌、ここに住んでほしい」

 

「・・・・は?」

 

オーフィスの一言に、黒歌は疑問の声をあげる。

 

「な、何言ってるにゃん!そんなことしたら悪魔達に・・・・」

 

「どうにかされると思うか?オーフィスがいるのに?」

 

「我、強い。悪魔達に負けない」

 

「・・・・むしろ悪魔達が哀れになるにゃ」

 

「だろう?」

 

悪魔だろうが魔王だろうがオーフィスには勝てないだろうからな。黒歌と同じで俺もそうなったら悪魔達を哀れんでしまうだろう。

 

「まあ、オーフィスの事抜きにしてもここは安全だけどな。この家には俺かオーフィスか爺さんの許可がないと門さえくぐれない超ご都合主義結界が貼られてるからな」

 

「ご都合主義にも程がある気がするにゃん」

 

「それはほら、その結界張ったの爺さんだし?」

 

「・・・・さっきの話を聞いた時から思ってたけど、そのお爺さんは本当に人間かにゃ?」

 

それについては全面的に同意です。一体どんなバグが発生してあんなトチ狂ったバケモノが生まれてきたのやら・・・・

 

「ともかく、ここにいれば安全なんだ。追っ手の悪魔達の事は気にしなくてもいい。隠れ家として考えるならここ以上のところはそうないとは思うが?」

 

「確かにそうかもしれないけど・・・・でも、私を匿って咲良達に一体どんな得があるっていうにゃん?」

 

「得ならあるさ。さっきオーフィスが言ってただろ?明日から寂しくないって」

 

「・・・・明日から咲良学校に行かなきゃいけない。咲良が学校に行ったら我、留守番で寂しい。けど、黒歌がいれば寂しくない」

 

「つまりそういうことだ。黒歌をここに住まわせる対価として、俺が学校に行ってる間に黒歌にはオーフィスの相手をしてもらいたい」

 

仕方ないとは言え、オーフィスに寂しい思いをさせるのは嫌だからな。けど、黒歌がこの家に住んでくれればオーフィスが寂しい思いをせずに済む。対価としては、十分すぎるほどだ。

 

「もちろん無理にとは言わない。黒歌が嫌だって言うなら・・・・着物持ってくるよ」

 

「我も。無理強いしない」

 

「咲良・・・・・オーフィス・・・」

 

俺達の名前を呟いた後、黒歌は目を閉じて考え込む。俺とオーフィスは、何も言わずに黒歌の答えを待った。

 

そして数十秒経って・・・・黒歌は目を開き、返事を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はははっ!猫又女を匿うとはお前も男を上げたなぁ!』

 

「大きなお世話だよ爺さん」

 

オーフィスと黒歌が風呂に行ってる間に、俺は爺さんに電話をかけた。

 

『せっかくだし、お世話になるにゃん。まあ、私気まぐれな野良だからいつの間にかふらふらっといなくなっちゃうかもしれないけどねん♪』

 

それが黒歌の答えだった。これから黒歌はここで暮らすこととなる。この家は元々爺さんのものだから、爺さんに報告するのは義務だと思って電話したわけだ。

 

『にしても黒歌ねぇ・・・・そいつの事は俺も知ってる。表向きの事情も把握してた』

 

表向き、というのは黒歌が主である悪魔を殺して逃亡したというところまでだろう。細かい事情までは知らないとしても、普通は悪魔じゃない爺さんがそんな情報得られないだろうに・・・・

 

「毎度思うが、爺さんの情報網どうなってんだよ?悪魔のことにも精通してるって・・・・」

 

『そこはまあ俺の人望がだな・・・・』

 

「ダウト」

 

『ひでぇな』

 

酷くなんてない。こんなハチャメチャな爺さんに人望なんてあるわけないんだからな。

 

『まあそれはそうとしてだ、その家の結界は弄っとくぞ。黒歌のことも組み込んどく』

 

「家から離れてるのに結界弄るなんてできるのか?」

 

『ああ、問題ない』

 

「ならいいが・・・・・」

 

ほんと、規格外だなこの爺さん・・・・色々と助かってはいるから感謝してなくもないけど。

 

『まあともかく、黒歌をそこに住まわせるのは構わん。ただ、ちゃんと責任は持てよ?』

 

「わかってる。住んでもらうからには衣食住は保証するよ」

 

『それでいい。それが男の甲斐性ってもんだからな。そうだ、いっそオーフィスもろとも嫁にしてみるか?』

 

なんでこの爺さんは余計なことをいうかね。

 

「なんでそうなんだよ・・・・嫁にするのはオーフィスだけだ。約束もあるしな」

 

『ああ、10年前のあれか。あの時は笑わせてもらった』

 

「・・・・あの時のことは思い出させるなよ。それに約束っていうのはそっちのことじゃない。ちょっと前に改めてオーフィスと結婚の約束をしたんだよ。高校卒業したら結婚するってな」

 

『・・・・そっか。改めて約束したんだな』

 

なんだ?やけに真剣な声色だな・・・・・

 

「どうした爺さん?」

 

『いや・・・・結婚式で何言ってやろうかなと思ってな』

 

「気が早い。それにあんたにスピーチ頼む予定はないから」

 

『おいおい、たった一人の家族に対してそれはないだろ』

 

「スピーチしたいならもうちょい大人しくなってくれ」

 

本当に・・・・この爺さんのおかげで頭が痛くてたまらないからな。最近は特に・・・・なんか思い出したらイライラしてきたな。

 

「・・・・爺さん、そろそろ電話切るけど最後に言っとくことがある」

 

『なんだ?』

 

「・・・・カエッテキタラカクゴシロヨ?」

 

『え?ちょっと覚悟って・・・・』

 

爺さんの言葉を最後まで聞かずに、途中で切ってやった。せいぜい不安に駆られるがいいさクソ爺。

 

「咲良、お風呂上がった」

 

「はやく入ってくるにゃん」

 

後ろからオーフィスと黒歌の声が聞こえてくる。どうやらちょうどいいタイミングでお風呂から上がったらしい。

 

「ああ。すぐに入って・・・・」

 

返事を返そうと、後ろを振り返ったのだが・・・・俺はそれを目にして思わず固まってしまった。

 

俺の目に映るのは・・・・・パジャマを上半分だけ着ているオーフィスの姿だった。下は履いておらずパジャマの裾から太ももと下着を覗かせている。さらに上のパジャマもボタンが上から二個ほど外れているという素敵仕様だ。

 

ちなみに黒歌は引き続き俺のジャージを来ているがそれはどうでもいいだろう。

 

「咲良。我せくしー?」

 

こてんと小首を傾げながら聞いてくるオーフィス。セクシーというかなんというか・・・・まあ眼福であることは確かである。すっごく良い。脳内メモリーに永久保存しました。

 

「ふふん♪ここに住ませてくれるお礼にオーフィスをセクシーにしてみたにゃん。褒めてくれてももいいのよ?」

 

そうか、このオーフィスの格好は黒歌の入れ知恵なのか。ものすっごく眼福だから感謝してるよ。

 

だけどね・・・・

 

「黒歌、ちょっと俺とO☆HA☆NA☆SHIしようか?」

 

感謝はしてても・・・・オーフィスに変なこと吹き込んだからには説教させてもらうぞ?

 

「・・・・にゃ、にゃははは」

 

冷や汗を流しながら苦笑いをしている黒歌。覚悟しろよ・・・・お前の想像を超える説教をしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか咲良の説教があそこまで悍ましいものだとは思わなかったにゃん」

 

「我、よくわからない」

 

「まあオーフィスには説教したことないからな。さっきのは黒歌が悪いし」

 

「咲良に恩返ししようと良かれと思ってやったのにあんまりにゃん。嬉しかったくせに~」

 

「まあ、いいものを見れたとは思っている。というか・・・この状況は一体なんなんだ?」

 

黒歌に説教をし、お風呂から上がった俺は、なぜか2人と同じ布団の中で横になっていた。現在、なぜかうちにある二人用の幅の広い布団を客間に引っ張り出して、俺を真ん中にして3人で寝転がっている。

 

「せっかくだから一緒に寝ようと思ったにゃん」

 

左から悪戯っぽい笑みを浮かべている黒歌が言う。さっきの説教で懲りてないのかコイツは。

 

「咲良と一緒に寝るの久しぶり」

 

右から嬉しそうに言うオーフィス。確かにオーフィスと同じ布団で寝るのは久しぶりだ。

 

「両手に花。世の男共が羨ましがる光景だにゃん」

 

「確かにそうだけど・・・・はあ、もういいや」

 

「あら?一緒に寝てもいいの?」

 

まさか受け入れられるとは思っていなかったのか、意外そうにする黒歌。おおかた、また説教されると思ってたんだろうが・・・・両親がいないから俺にだって人肌恋しがる気持ちはわかる。それを求めてると察していながら拒否するほど鬼じゃない。

 

「今日だけな。明日からは別々の布団だ」

 

「我も?」

 

「・・・・オーフィスは検討しておく」

 

「贔屓だにゃん」

 

そりゃ贔屓するに決まってるだろ。オーフィスは結婚の約束した婚約者・・・・俺の最愛なんだからさ。

 

「いいから、今日はもう寝ろ」

 

「うん。おやすみ咲良」

 

「おやすみにゃん・・・・咲良、ありがとう」

 

おやすみの挨拶をして、眠りにつくオーフィスと黒歌。最後の感謝の言葉・・・・聞こえないようにしろっての。

 

「二人共、おやすみ」

 

俺もまた挨拶をして目を閉じて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・って、寝れるわけないだろ」

 

まあ、結局寝れなかったけどな。好きな子とスタイル抜群な女に両側から擦り寄られて寝れるわけなかった。

 

 




というわけで、黒歌さんが同居人となりました

一応言っておきますがこの小説はハーレムものではないので黒歌さんはヒロインではありません

ポジションとしては居候兼悪友といった感じになります

この小説のヒロインはやっぱり可愛いオーフィスちゃんなので

それでは次回もまたお楽しみに







今回もまた、よろしければ感想をお聞かせ願います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虫除け

今回は原作キャラが二人登場します

・・・・まあ一人は・・・・うん

それでは本編どうぞ


「・・・・・・ねみぃ」

 

オーフィス、黒歌を朝食を食べている最中、俺はあまりの眠気でつい呟いてしまった。

 

「あら?咲良は随分とオネムっぽいにゃん」

 

「ああ。誰かさんのおかげでな」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべる黒歌に対して俺は言い放つ。俺が寝不足になったのは昨夜3人同じ布団で寝たためだ・・・・好きな子とスタイル抜群な女に挟まれて寝れるほど俺は神経図太くないからな。そうなった原因は黒歌にあるのでこれぐらいの恨み言をいうのは構わないだろう。

 

「ん~?誰かさんって誰にゃ?」

 

「・・・・・咲良寝不足?我のせい?」

 

黒歌がシラを切ると、ならば自分のせいなのかとオーフィスの雰囲気が暗くなってしまった。

 

「違うよオーフィス。オーフィスは悪くない。悪いのはそこの黒猫だ」

 

「黒歌悪い?黒歌に怒ればいい?」

 

「ごめん私が悪かったにゃ。だから怒らないでオーフィス」

 

世界最強の龍神に怒られるなどたまったものではないと思ったのだろう。黒歌は素直に謝った。まあ、実際オーフィスが怒ると恐いというか・・・・・なんか可愛というかほっこりするんだよな。小さい子がプンプンするみたいに。まあ、罪悪感が湧き出すからガチで反省するだろうけど。

 

「とにかく、これからは別の布団で寝るからな。一日ならまだしも、あんまり続くと生活に影響が出そうだからな」

 

実際今日の朝食作りはいつもより手こずったからな。いつもより一人分多いってのもあって少し時間がかかった。

 

「まあ、そういうことならしょうがないにゃん。やっぱりご飯は美味しい方がいいにゃ」

 

「・・・・・我も?」

 

黒歌は素直に納得してくれたが、オーフィスは不満気である。そんなに俺と一緒に寝たいのか・・・・・うん、悪い気はしない。

 

「・・・・・週一でなら」

 

「やっぱり贔屓だにゃん」

 

数秒考えた結果、俺は週一なら構わないとオーフィスに告げる。黒歌が何か言ってるが無視する。

 

「週五」

 

だが、オーフィスは納得してくれなかった。こういう不満は嬉しいといえば嬉しいが、それでは俺の睡眠時間と理性がやばいことになりそうだから受け入れるわけにはいかない。

 

「・・・・週二」

 

「週四」

 

妥協したが、それでもまだ足りないらしい。だが、オーフィスも妥協してくれたのか一日減らしてくれている。だが・・・・正直週四でも・・・・・

 

「なら間をとって週三だ」

 

これが最終妥協ラインだ。これ以上は妥協できない・・・・・さあ、どうするオーフィス?

 

「わかった。咲良、我と週三で一緒に寝る」

 

よかった。どうにか妥協案に乗ってくれたか。

 

「黒歌が教えてくれた作戦通り上手くいった」

 

「オ、オーフィスそれは言ったら・・・・・」

 

「・・・・作戦?」

 

すっごく聞き捨てならない事を言うオーフィスと、何やら焦った様子の黒歌。これはまさか・・・・

 

「黒歌?作戦ってどういうことかな?」

 

俺は自分でもわかるぐらいニッコリといい笑顔を黒歌に向けて尋ねてみた。

 

「そ、その・・・・・初めに過剰に要求しておけばある程度のところまで妥協してくれるって教えたにゃん♪」

 

「てめぇこの駄猫」

 

つまりさっきのオーフィストのやりとりは黒歌が吹き込んだ作戦の結果ってことかよ。爺さんほどじゃないけどタチ悪いぞこいつ。

 

「べ、別にいいじゃないかにゃ!結果的に咲良だって得してるんだから!」

 

「そのことに関して否定はしないがそれはそれ、これはこれだ。さてどうしてくれようか・・・・」

 

「さ、咲良!そんなことより時間!学校に遅れちゃうにゃ!」

 

黒歌に言われ時計を見ると、確かに家を出る時間が迫ってた。黒歌を説教する時間はなさそうだ。

 

「食器は私が洗っておくから、咲良は早く準備を済ませて学校に行くにゃん」

 

「くっ、仕方ない・・・・説教は帰ってからだな」

 

「結局説教からは逃れられないのかにゃ・・・・」

 

当然だろ。マジ帰ったら覚えてろよ黒歌。

 

「今日は始業式あるから午前だけで昼には帰ってくる。それまで二人で留守番お願いな。黒歌はオーフィスの相手頼むぞ?」

 

「大丈夫、任せるにゃ!」

 

意気揚々と返事を返す黒歌。さっきみたいに余計なこと吹き込みそうだが、それでも黒歌がいればオーフィスが寂しい思いをすることはないだろうからそこに関しては感謝だな。

 

「それじゃあ行ってくるよ」

 

「待って咲良」

 

鞄をもって家を出ようとする俺だったが、オーフィスに止められた。

 

「どうしたオーフィス?」

 

「屈んで」

 

「?わかった・・・・」

 

オーフィスに言われ、屈んでみると・・・・・オーフィスは俺の首筋に口付けを落とし、強く吸い付いてきた。

 

「なっ!?」

 

あまりのことに、俺は大慌てでオーフィスから離れた。自分でもわかるほどに動機が激しく、顔が熱い。

 

「オ、オーフィス!?一体何を・・・・・」

 

「虫除け。こうやって痕を残せば変な虫が寄ってこないって伊槻が勧めてきた本に・・・・」

 

「ありがとうお爺様!(あのクソ爺がぁぁぁぁぁ!)」

 

「咲良落ち着くにゃ。本音と建前が逆になってるにゃん」

 

おっと俺としたことが・・・・喜びのあまりつい。

 

「ところでオーフィス、変な虫の意味はわかってるにゃん?」

 

「咲良に色目を使う女」

 

「・・・・・どうしよう。軽い気持ちで聞いてみたらガチ過ぎて恐いにゃ」

 

そりゃ龍神様がそんなこと言ってれば恐いわな。無表情で淡々と言ってるからマジで恐い。仮に、俺に色目使うような女がいたとしたらそいつがオーフィスに消されないか軽く心配になってくる。

 

というか・・・・

 

「なあ・・・・痕ついてる?」

 

「ばっちり」

 

俺はオーフィスに口付けされたところに触れながら聞くと、オーフィスはなんか誇らしげに親指を立てながら言う。

 

そっか・・・・バッチリ付いちゃったのか・・・・・新学年早々なにか噂が立ちかねないなぁ

 

「・・・・うん、しょうがないか」

 

「それでいいのかにゃ?」

 

「いいもなにも今更どうにもならないからな」

 

「本音は?」

 

「オーフィスからの所有印みたいで嬉しいっす」

 

だって好きな子から独占宣言されてるようなものだよ?嬉しいに決まってるでしょ?

 

「咲良嬉しい?なら我も嬉しい」

 

「それは良かった。だけど、これからは急にやったらダメだからな?驚いちゃうから」

 

「わかった。これからは言ってからやる」

 

「・・・・・何かがずれてる気がするけど気のせいにゃん?」

 

安心しろ黒歌。現状一番冷静でまともなのはお前だ。俺は自覚してるから。

 

「それじゃあ今度こそ行ってくるな」

 

「行ってらっしゃい咲良」

 

「行ってらっしゃいにゃん」

 

オーフィスと黒歌に見送られて、俺は家を出て学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王学園。それが俺の通う学校の名前だ。元々が女子高だったために、男女比が少し偏ってる事を除けば一見普通の学校と大差ない・・・・まあ、実際には色々と世間に発表できないような秘密(主に悪魔関連)があることは爺さんに聞かされて知っているがな。まあ、そんなことは大して気にしてないけど。

 

ともかく、俺は今日からこの学園の2年生として学生生活を送ることとなる。玄関口付近で張り出された新しい自分のクラスを確認して赴くと・・・・

 

「おはよう咲良!」

 

「ん?ああ、君か」

 

既に学校に来ていた俺の友人である兵藤一誠とヴァーリ・アルファーが挨拶してきた。

 

兵藤一誠・・・・イッセーは中学の頃からの俺の友人だ。自分も女なのに女の胸(自分の胸を除く)に並々ならぬ執着見せる少々・・・・どころかかなりの変わり者で悪い子ではないのだが・・・・そんな趣向をしているため、変な目で見られることもある。まあ、本人はめげないが。

 

男の方はヴァーリ・アルファー。細かい事情はよく知らないが、イッセーの家にホームステイしている留学生だ。かなりのイケメンで女の子達からはキャーキャー言われているが、そのおかげで男共からはよく目の敵にされている。

 

二人共俺にとってそこそこ仲のいい友人だ。ここに居るということは、二人とは同じクラスであるらしい。

 

「二人共おはよう。にしても・・・・イッセーはともかくとしてヴァーリは相変わらずそっけないな」

 

「そうか?俺としては特に意識はしていないんだが・・・・」

 

「まあ、確かにヴァーリはちょっとそっけないかな?愛想もないし」

 

「・・・・そんな俺は嫌か?」

 

苦笑いを浮かべながら俺のいうことに同調するイッセーに、ヴァーリは恐る恐る尋ねる。

 

「ううん。そういうヴァーリもかっこよくて私好きだよ?」

 

「そうか・・・・俺も君のことが好きだ」

 

「よそでいちゃつけやこのバカ夫婦」

 

目の前で繰り広げられるやりとりに頭が痛くなるのを感じる俺。そう、この二人はお互いを好き合っており付き合っている。人目をはばからず仲睦まじいところが頻繁に見られていることから、周囲にはもはや夫婦と思われているほどだ。というか多分卒業したら結婚するぞこいつら。

 

「言うにことかいてバカとは・・・・君もなかなか口が悪いな」

 

「いや、夫婦のところには突っ込まないのかよ」

 

「まあ、言われてもしょうがないかなって思ってるから否定はしないよ」

 

「イッセーが気にしないなら俺も気にしないさ」

 

「あ・・・・さいですか」

 

どうやら言っても無駄なようだ。まあ、本人がそれでいいなら構わないが。

 

「でも、やっぱり人前でいちゃつくのは控えたほうがいいと思うぞ?変に茶化してくる奴も出てくるだろうし」

 

「それって私みたいな?」

 

「わっ!?」

 

俺は耳元で囁かれる声に驚いてしまう。振り返ると、そこには桐生の姿があった。

 

「おはよう咲良。昨日ぶりね」

 

「あ、ああ・・・・おはよう。というか音もなく背後から近寄るなよ。驚くだろ」

 

「いいじゃん別に。昨日は私の方が驚かされたわけだし」

 

あ、こいつ余計なことを・・・・そんなこと言ったら・・・・

 

「昨日?昨日何かあったの?」

 

ほらみろ。イッセーが興味持っちゃったじゃないか。

 

「昨日たまたま咲良と会ったんだけど・・・・その時咲良の婚約者に会ったんだよねぇ」

 

「ええっ!?咲良にこん・・・・」

 

「「「湊内くんに婚約者!?」」」

 

桐生がバラした事実に、イッセーがリアクションを取ろうとするが・・・・・なぜかクラスにいた他の女子数名がが過剰にリアクションしてそれを阻んでしまった。

 

「そんな・・・・私狙ってたのに」

 

「湊内くんなら可能性あると思ってたのに・・・・」

 

「この世は無情だ・・・・」

 

さらに何やら絶望した様子を見せる彼女達・・・・なんでこんなに絶望してるんだ?

 

「ふふっ・・・なんであの子達があんなに過剰に反応してるかわからないって顔してるわね咲良」

 

「当然だろ?ヴァーリや学園一のイケメンの木場に比べて冴えない俺をあの子達が狙ってただなんて信じられないだろ。狙う意味がない」

 

「わかってないわね咲良・・・・いい?あんたはお買い得なのよ」

 

「・・・・・は?」

 

俺は桐生の言ってることの意味が分からず首をかしげてしまった。

 

「確かにアルファーや木場はイケメンで女の子受けはいいわ。だけど、だからこそ高嶺の花過ぎて黄色い声援を送るのが精一杯で付き合う云々にまで行き着きにくいのよ」

 

そ、そういうものなのか?正直俺にはよくわからないんだが・・・・・

 

「それに引き換えあんたはイケメンではないけど容姿は中の上と平均よりは上。程々に優しくて料理の腕は抜群。狙うには程よい加減のお買い得物件なのよ!ぶっちゃけそれなりにモテるわ」

 

・・・・・何だろう。男としてはモテると言われて嬉しいはずなのにこの釈然としない感じは。なんかちょっと泣きそう。

 

「そんなあんたに婚約者がいるという事実はあの子達にとって衝撃的なのよ。絶望するのも無理はないわ」

 

絶望させたのはお前の一言だけどな。まあ、オーフィスの容姿とかは言ってないからまだいいけど・・・・流石にクラスメイトにロリコンやらペド扱いは勘弁だからな。

 

「咲良に婚約者か・・・・・なるほど、だからか」

 

「どうしたのヴァーリ?」

 

一人だけ何やら納得したような表情をしているヴァーリに、イッセーが尋ねる。

 

「いや、咲良の首筋についてる赤い痣は何かと思ったんだが・・・・・婚約者がいるというなら納得だ」

 

首筋の赤い痣って・・・・間違いなくオーフィスに付けられたあれだな。

 

「なんでも虫除けなんだと。付けられたときは何を言ってるんだと思ったが・・・・案外的確だったかもな」

 

俺は絶望を通り越して通夜見たいな雰囲気になってる女の子達を見ながら言う。さっきのヴァーリの発言がトドメになってしまったようだ。

 

「・・・咲良、それあの子に付けられたの?」

 

そんな中、桐生は表情をヒクつかせていた。

 

「なんでそんなに驚いてるの?咲良に婚約者がいるって言ったのは桐生なんだからキスマークぐらい驚く程じゃなくない?」

 

イッセー、言ってることはもっともだけど・・・・・桐生からしたらそうはいかないんだろうさ。だってこのキスマークをつけたオーフィスが外見幼女にしか見えないってこと知ってるんだから。

 

「ま、まあそうなんだけど・・・・・ごめん咲良。昨日の件も含めて今後あんたを見る目が変わらざるを得ないわ」

 

解せぬ・・・・・だが、否定できないのも事実なのが悲しいところである。

 

まあそれはそれとして・・・・・

 

「・・・・これから始業式だってのに、これ大丈夫なのか?」

 

俺はなんとも言えないカオスな状況に陥ってしまった教室内を見渡しながら思わず心配になってしまった・・・・まあ、原因の一端を作ったのは俺なんだけどさ。




イッセーがTSしてる理由は趣味です。二天龍夫婦尊いからです。洗脳されたからです

ヴァーリがイッセーの家にホームステイしててなおかつ駒王に通ってるのは・・・・・まあ一応理由はありますがご都合主義な面も強いのでご容赦を

ちなみにヴァーリのファミリーネームのアリファーについてはアルビオンとルシファーを組み合わせたものです。正直私の頭脳ではこれが限界でございます

そして咲良の首筋にキスマーク残すオーフィスは真面目に可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒猫の受難

タイトルからわかるとおり・・・・黒歌さんがちょっと可愛そうというかなんというか・・・・

どういうことかはその目でお確かめを

それでは本編どうぞ!


「つ、疲れた・・・・」

 

始業式を終え、帰宅する途中・・・・・俺は思わずそう呟いてしまった。

 

俺に婚約者がいると露呈してしまった後・・・・・本当に大変だった。その婚約者というのがどういう子なのかとひたすらに質問責めにあったからな。その時は始業式が始まる時間が迫っていたので皆すぐに切り上げてくれたが問題は始業式が終わったあとだ。皆がまた一斉に聞き出そうと俺のところに迫ってきて・・・・流石に付き合ってられなかったので大急ぎで帰り支度をして逃げ出したのだ。

 

「どうにか撒けたが・・・・・マジ疲れた。なんなんだ皆のあの異様な執着は?」

 

どんだけ他人の色恋沙汰に興味があるんだよ。思春期かっての・・・・あ、高2なんだから思春期か。

 

「本当に大変だったね咲良」

 

「まあ、俺達も通った道だ。君も存分と味うがいい」

 

「お前らな・・・・」

 

一緒にいたイッセーとヴァーリの発言に、思わずイラっとしてしまった。ちなみにこの二人がいるのは帰り道が途中まで同じだったからだ。

 

「だけど、あそこまで頑なに話そうとしなければ誰だって無理にでも聞き出そうとするに決まってるよ?どうしてそこまで話したがらなかったの?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

・・・・・言えるわけ無いだろ。その婚約者っていうのが見た目幼女なんだから。オーフィスと結婚の約束をしたことを後悔したりはしていないが、流石に俺の社会的信用が地の底に落ちてしまうのは避けておきたいところだ。

 

「まあ、君が話したくないというなら無理に聞き出すつもりはないさ。さっきも言ったが俺達も通った道だ。質問責めのしんどさは理解している」

 

ヴァーリが俺に気を遣ってくれるとは珍しいな・・・・まあ、こいつもイッセーと恋人同士になった時は質問責め凄かったからそれが原因だろうな。

 

「でも、無理に聞き出すつもりはないとしてもやっぱり気になっちゃうんだよねぇ・・・・咲良、面倒なことは言わないから写真とかあったら見せてくれない?」

 

イッセーがニンマリと笑みを浮かべながら尋ねてきた。

 

写真か・・・・・

 

「残念だけど俺の婚約者は写真に映るのあまり好きじゃない子でな。写真は一枚もないんだ」

 

「そっか・・・・残念」

 

・・・・まあ、嘘なんだけどな。一枚もないどころか携帯の中には写メ軽く百枚以上入ってるし・・・・もちろん一枚一枚バックアップもとってある。家にあるアルバムはもうすぐ30冊目がいっぱいになりそうだし。

 

「そう落ち込むなイッセー。桐生が会ったと言っていたんだ。俺達もいつか会えるかもしれないだろ?」

 

「んー・・・・わかった。ありがとうヴァーリ」

 

「何に対しての感謝かはわからないが、どういたしましてと答えておこう」

 

ヴァーリに頭を撫でられながら諭され、納得するイッセー・・・・というか、俺の目の前であまりリア充しないで欲しいんですけど。俺もリア充と言えなくはないけどなんかイラっとするんだよこの二人のイチャつき様は。

 

「・・・んじゃ、俺はこっちだから。またな」

 

そうこうしているうちに、二人と別れる場所にまで来たので二人に挨拶をしたのだが・・・・

 

「もう、ヴァーリったら・・・・」

 

「ふふっ・・・・」

 

あ、駄目だこいつら聞いちゃいねぇ。

 

「・・・・・お幸せにー」

 

完全に自分達の世界に浸っているイッセーとヴァーリに、どうせ聞こえていないんだろうなと思いつつも、俺は一言そう告げてその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

学校を出て20分程して、俺は家に帰ってきた。帰宅の挨拶をしながら玄関の引き戸を開けると・・・突然、俺の胸にそれが飛び込んできた。

 

「おっと」

 

俺は少しよろめきそうになったのはこらえて、飛び込んできたものを抱きとめる。飛び込んできたのはもちろん、俺の最愛・・・・オーフィスだった。

 

「咲良、おかえり」

 

顔をあげ、俺におかえりの挨拶をしてくるオーフィス。無表情ながらも、とても嬉しそうなその雰囲気を身にまとっている。

 

「ああ、ただいまオーフィス」

 

オーフィスの嬉しそうな雰囲気にあてられたのか、俺も思わず笑顔になってしまう。オーフィスの頭を軽くなでてやると、オーフィスは気持ちよさそうに目を細めた。そんなオーフィスもまた愛らしく感じる。

 

「よく俺が帰ってきたってわかったな」

 

「咲良の気配感じた。だから来たら咲良帰ってきた」

 

「そっか」

 

俺の気配をか・・・・なんの特別な力も持ってない俺の気配なんてそうそう察知できるものでもないだろうに。それだけオーフィスに想われてるということか・・・・・嬉しいなおい。

 

「そうだ、黒歌と一緒でどうだった?」

 

「良かった。我、満足」

 

どうやら黒歌と一緒にいて楽しかったようだ。本当に黒歌が居てくれてよかった。もしもいてくれなかったら・・・・・やっぱり寂しい思いをさせてしまっていただろうからな。

 

「ところでその黒歌は・・・・」

 

「・・・・呼んだにゃん?」

 

黒歌はどうしてるかとオーフィスに聞こうとしたら、廊下の奥から黒歌がやってきた・・・・のだが、なぜか少々ぐったりした様子だった。

 

「え?黒歌?お前どうしたんだ?」

 

「どうもこうもないにゃん・・・・・咲良が学校に行ったあと、オーフィスに咲良の話を聞かされて」

 

「俺の話?どんな?」

 

「ほとんど惚気にゃ」

 

の、惚気?あのオーフィスが惚気って・・・・ヤバい、超嬉しい。オーフィスのやつ、惚気けるほど俺のこと・・・・

 

「それを・・・・咲良が学校に行ってから帰ってくるまでずっと聞かされてたにゃん」

 

そっか、それを俺が帰ってくるまでずっと・・・・・は?

 

「ずっとって・・・・・ずっと?」

 

「ずっとにゃ」

 

「休憩は?」

 

「お手洗いに行く時だけにゃ」

 

「・・・・マジかー」

 

俺が学校が学校に行って帰ってくるまでって・・・・4時間ぐらい経ってるはず。その間黒歌はずっと俺の惚気を聞かされてたのか?

 

「初めのうちは私も楽しく聞かせてもらったけど・・・・・・流石にずっとはキツかったにゃん。あはははははは・・・・」

 

ヤバい。なんか黒歌が虚ろな目をして笑い始めた。これ相当キテるぞ。

 

「その、なんというか・・・・ドンマイ」

 

「・・・・そう思ってくれてるならそれをどうにかして欲しいにゃん」

 

そう言いながら、黒歌はオーフィスを指差す。それに釣られてオーフィスの方を見てみると・・・・何やら俺の背に手を回し、ギュッと抱きしめながら胸に顔を埋めていた。

 

「オーフィス?何してるんだ?」

 

「咲良のにおいと体温堪能してる」

 

おう、そうきましたか。いや、気持ちはわかるよ?俺だってオーフィスのにおいと体温好きだし・・・・・露呈したら社会的に俺の居場所がなくなりそうだから誰にも言わないけども。

 

というか・・・・

 

「・・・・黒歌。もしかしてオーフィスって俺にぞっこんか?」

 

「何を今更言ってるにゃん。それでぞっこんじゃなかったらそれこそおかしいにゃ」

 

ですよねー・・・・・いや、結婚の約束したから好意的に見られてると思ってはいたけど。最近の行動を鑑みるにこれは相当だと思ったほうがいいのか?オーフィスにそこまで想われてるなんて男冥利に尽きるな。

 

「・・・・今まで気がついてなかったとしたらとんだ鈍感にゃ」

 

・・・・・否定できないな。

 

「ところで咲良・・・・私いい加減見てるだけで胸焼けを起こしそうなんだけど・・・・」

 

明らかに気分が悪そうにしている黒歌。惚気やイチャラブと言ってものは大好物なんだろうなぁと思っていたが・・・・流石に許容量を超過してしまっているらしい。これ以上は流石にいたたまれないからオーフィスを止めるとしよう。

 

「オーフィス、ストップだ。これ以上はやめような?」

 

「いや。一緒にいられなかった分もっと咲良堪能する」

 

一緒にいられなかった分か・・・・・午前だけでこれなら一日学校の日はどうなるだろうか。いや、それはまたあとで考えるとして。

 

「俺ももっとオーフィスを堪能したいよ?けど、このままじゃお昼ご飯作れないだろ?オーフィスはお腹すいてないのかな?」

 

「・・・・我、お腹すいてる」

 

「だろ?だったら・・・・離してくれるな?」

 

「・・・・・わかった」

 

ようやく説得を聞き入れ、話してくれたオーフィス。やや不満気であるが、ご飯には変えられないということだろう。

 

「よし、いい子だ。それじゃあ俺はご飯作ってくるから・・・・」

 

「我は黒歌と話してればいい?」

 

オーフィス、それは勘弁してやれ。見てみろよ・・・・黒歌のやつ小刻みに震えてるぞ?

 

「せっかくだからゲームでもしたらどうだ?流石に話ばかりじゃ飽きちゃうだろ?話すことも無くなるだろうし・・・・」

 

「我、飽きない。咲良のことで話したいことまだいっぱいある」

 

4時間話してまだいっぱいあるとは・・・・・恐れ入ります。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいよ。けど、黒歌とゲームするのも楽しいと思うぞ?話をするのもいいけどさ・・・・もっといろんなことして遊ぼう?黒歌にも色々と楽しいこと知ってほしいだろ?」

 

「黒歌にも楽しいこと・・・・わかった。我、黒歌とゲームする」

 

どうやら黒歌とゲームをしてくれるらしい。黒歌のためってところに反応していたあたり、なんだかんだオーフィスも黒歌のこと気に入っているのだろう。

 

「よし、決まりだな。黒歌もそれで・・・・」

 

「それでいいにゃん」

 

俺が聞き終える前に、黒歌は返事を返した。それほどオーフィスの惚気話はもうお腹いっぱいということなのだろう。

 

「それじゃあお昼すぐ作っちゃうからゲームしておいで。黒歌にゲームのやり方しっかりと教えてあげるんだぞ?」

 

「うん。黒歌、我と来る」

 

「わかったにゃ」

 

オーフィスは黒歌と一緒に、ゲームのある部屋に向かった。ひとまずこれで黒歌の負担は多少減ったかな。

 

問題があるとしたら、オーフィスのゲームの腕が尋常じゃないくらい高いから黒歌がついていけるかどうかだけど・・・・・まあ大丈夫だろ。黒歌そういう娯楽は飲み込み早いだろうし。

 

「・・・・よし、とりあえずご飯作ろう」

 

黒歌に対して一抹の心配を抱えながらも、俺はひとまず昼食を作ることにした。

 

 




オーフィスちゃんは咲良さんにかなりゾッコンです。まあ、咲良さんもオーフィスにぞっこんなのでまごうことなき相思相愛なのですが

ちなみに、

ヴァーリ×イッセー→咲良の心労マッハ

咲良×オーフィス→黒歌の心労マッハ

となっておりますので、現状黒歌さんが若干可愛そうです

でも大丈夫・・・・・きっといつか慣れるから(笑)

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オーフィス>超えられない壁>咲良>黒歌

意味不明なサブタイトルでしょうが、本編を読めばわかる・・・・かもしれません

それと、今回は最後の方でですが原作キャラが登場します

誰なのかお楽しみに

それでは本編どうぞ!


「にゃはは・・・・・フルボッコにされたにゃん」

 

「我、圧勝」

 

どこか遠くを見つめながら乾いた笑みを浮かべる黒歌と誇らしげにしているオーフィスは俺の作った昼食を食べながら言う。ちなみにメニューはナポリタンとコンソメスープだ。

 

「あー・・・・・やっぱりボコボコにされたか」

 

「やっぱりってことは・・・・・咲良、予想してたにゃん?」

 

「まあな。オーフィスのゲームの腕前マジ半端ないから」

 

なにせスプ○はうでまえカンスト、マ○カーのレートもカンスト近いからな。俺もゲームは割と得意な方だが滅多に勝てないし。

 

「ちなみに何のゲームやったんだ?」

 

「スマ○ラってゲームにゃ」

 

「・・・・オーフィス、キャラ何使った?」

 

「ピ○チュウ」

 

うん、見てないけど無双してたってのが容易に想像できるわ。オーフィスのピ○チュウは異常だから・・・・

 

「ほとんど手も足も出なかったにゃん」

 

しょうがないよ。ピ○チュウ使ったオーフィスに勝てるのなんて爺さんぐらいだ。

 

「でも、黒歌も強い。我、合計三回落とされた」

 

「マジか」

 

ゲーム初心者なのにオーフィスのピ○チュウを三回も落とすとは・・・・・ゲームの才能があるな。

 

「それでも散々落とされたからリベンジしたいにゃん」

 

「なら、食べ終わったらまたやるか。俺も混ざっていいか?」

 

「もちろんにゃ」

 

「我、咲良とも黒歌ともゲームやりたい。三人でゲームやるの久しぶり」

 

まあ、三人でゲームやるなんて爺さんが帰ってきた時ぐらいだからな。たまに客は来るけど、大体の奴は飯目的でゲームはあまりやっていかないし。

 

「でもまあ、今はご飯を満喫するにゃん。咲良の料理は本当に美味しいし」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。まあ逆に5歳の時から料理はしてたのに美味しくないなんて言われたら凹むけどな」

 

「5歳の時から?そんなに小さかった頃から作ってたにゃん?」

 

「ああ。爺さん料理の腕は壊滅的だから俺が作るしかなかったんだよ。拾ってもらった恩もあるし」

 

人間レベル超越してるくせに料理は本当に酷いからな。

 

「拾ってもらった?」

 

おっと、そこ反応しちゃったか。いや、口に出しちまったから反応されても仕方ないけど・・・・まあ、別に隠すようなことでもないしいいか。

 

「俺にはどうやら家族というものがいないらしくてな。物心つく前から天涯孤独だった俺を爺さんが拾って育ててくれたんだ」

 

「・・・・ごめんにゃ。話しにくいこと話させちゃって・・・・・」

 

「いや別に?そんなに話しにくいってことでもないけど?」

 

というか話したくなかったら話さないで誤魔化すし。

 

「まあこうしてこの世界にいるってことは俺にも親はいるってことだと思うけど、顔も名前も知らないような人のことなんて正直どうでもいい。どうでもいいことを話すのをためらう理由なんて無いだろ?」

 

「どうでもいいって・・・・ドライね」

 

「否定はしないよ。俺にとって家族はいまのところ拾ってくれた爺さんだけだからな」

 

余計なこともするけど、あれはあれで優しくて思いやりはあるからな。爺さんは間違いなく俺にとって恩人で家族だ。

 

「だけって・・・・オーフィスは?」

 

「我が咲良と家族になるのは、咲良と結婚するとき」

 

「というわけだ」

 

今はまだ、オーフィスは家族ではない。ちょっと前までは同居人。そして今の関係は・・・・婚約者。俺もオーフィスもそれで納得してるんだから構わないだろう。

 

「まあ、二人がそれでいいなら私は何も言わないにゃん。そういう関係も悪くないと思うし」

 

「それは何より。まあ、家族になるまでの間は婚約者ってのを満喫しないとな」

 

「我も満喫する」

 

「悪くないとは思うけど一言言わせてもらうにゃん・・・・・このリア充バカップルが」

 

まあ否定はしないよ。てかもうそれでいいし。イッセーとヴァーリのおかげでリア充見ていらつく気持ちはわかるから黒歌には悪いけど。

 

「あ、オーフィス。ケチャップついてる。拭くからじっとしてな」

 

「ん」

 

「それわざとやってるならタチが悪いとしか思えないにゃ」

 

ごめん黒歌。でもわざとじゃないんだ。やりたいからやってるだけであって断じて見せつけてるわけではないから許しておくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・・・また負けたにゃん」

 

「やっぱりピ○チュウ使ったオーフィスには勝てんわ」

 

「我のピ○チュウ、負けない」

 

昼食を食べ終わり、俺達は三人でス○ブラに興じた。現在十戦目が終わったところだ。

 

現在戦績はオーフィス9勝、俺1勝、黒歌0勝である。ちなみに俺の1勝はオーフィスがピ○チュウ使ってない時で、俺が一番使いこなせてるリ○ク使ってるときである。

 

「二人共強すぎて勝てる気がしないにゃ」

 

「いや、俺はオーフィスほどではないんだが・・・・それに後半は結構黒歌に落とされてたし」

 

正直、初心者の黒歌に負けずとも何度も落とされると結構悔しかったりする。

 

「まあ、俺が学校行ってる間に練習しておけばすぐに俺に勝てるぐらいには上達すると思うぞ?」

 

「だったら練習しておくにゃん。ほかのゲームと一緒に」

 

俺に勝てると聞いて、何やらスイッチが入ったように見える黒歌。なんか目が殺る気に満ちてるように見えるのはきっと気のせいだ。

 

「練習、我も付き合う」

 

「ありがとうにゃんオーフィス。でも、そうなったらオーフィスにはずっと勝てないような・・・・」

 

うん、まあそうだろうね。ちなみに俺はオーフィスに勝ち越すのはもう不可能だと割り切ってる。

 

「さて、それじゃあもう一戦いっとくか?」

 

「・・・・・我、少し眠い」

 

もう一戦やろうかと提案したが、どうやらオーフィスはおネムなようだ。

 

「なら昼寝するか?」

 

「うん」

 

返事を返したオーフィスは、ゲームのコントローラを机の上においてあぐらをかいていた俺の膝の上に頭を乗せてきた。

 

「おやすみ咲良」

 

一言そう言った後、オーフィスは目を閉じた。程なくして規則正しい小さな寝息が聞こえてくる。俺はそんなオーフィスのサラサラとした触り心地のいい髪を梳かすように触れた。

 

「朝あんなに一緒に寝るのしぶってたのにそれはいいにゃ?」

 

「まあ、昨日みたいに体が密着してるわけでもないしこれぐらいならいいさ。密着されてたら理性が飛びそうになるから困るけど」

 

昨日のアレはマジ危なかったからな。寝不足程度で済んでるのもひとえに俺の理性の強靭さのおかげである。

 

「むしろ思春期男子なのに理性が飛ばないのもどうかと思うにゃん。私昨日は襲われること覚悟してたのよん?」

 

「いや、襲わないから。襲うわけないから」

 

確かに黒歌は美人でスタイル抜群だけど、オーフィスって最愛がいるのに襲うなんてありえない。

 

「襲うならセクシーでグラマラスな私よりツルペタ幼女のオーフィスってことにゃん?咲良はとんだペドね」

 

「黒歌、今日のお前の夕食具なしの茶漬けでいいか?」

 

「ごめんなさい」

 

さすがに夕食が茶漬けになるのはいやらしく、黒歌は即刻謝罪してきた。この手は今後も使えそうだ。

 

「まったく・・・・・それはそうとして、まだ一日目だがここでの生活はどうだ?」

 

「んー・・・・・まあ、初日としてはいい感じね。あんたらのイチャつき様を必要以上に見させられたのを除けばだけど」

 

「それはなによりだ。これからもやっていけそうだな」

 

「私の言ってることの後ろ半分綺麗に無視してくれたにゃん」

 

いや、だってそれは諦めてもらわないといけないところだししょうがないじゃん。

 

「・・・・まあいいにゃ。これからもやっていけそうだっていうのは事実だし。必要以上にイチャつくの見るのは嫌って言ってもそれは許せる・・・・というより癒されるし」

 

そう言いながら、黒歌は俺の膝の上ですやすやと眠るオーフィスを指差す。

 

「ふふっ・・・・・やっぱり可愛いよな。癒されるってことは黒歌もそう思うのか?」

 

「それについては否定しないにゃん。ただ、こんなに可愛くても実態は『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』だって言うのが信じられないにゃ」

 

「はははっ。その気持ちはわからなくはないけどな。俺も知ったときは戸惑ったし。けどまあ今となっては・・・・・」

 

「関係ないんでしょ?オーフィスが何者だろうと愛してるから」

 

「ああ。そうだよ」

 

オーフィスがドラゴンだろうとも、幼い時に抱いた結婚したいという願いは変わらないからな。そして今、その願いは手が届くところにあるんだ。

 

「オーフィス・・・・愛してるよ」

 

「はいはいご馳走様」

 

黒歌は呆れたような声でいうが、俺とオーフィスを見つめるその目は優しく、暖かなものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん」

 

あれから1時間ほどして、オーフィスは目を覚ました。

 

「おはようオーフィス」

 

「おはようにゃ」

 

「ん・・・・・おはよう」

 

寝ぼけ眼をこすりながらオーフィスは返事を返してきた。だが、頭はまだ俺の膝に乗せたままである。目は覚ましたが、起き上がる気はまだないらしい。

 

膝は多少痺れるが、俺としては嫌どころか嬉しいのでそのままにしておこうとしたのだが・・・・

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

家の呼び鈴が鳴った。それも3回鳴ったということは・・・・

 

「おっと、客か・・・・・ごめんオーフィス。俺行かないといけないから・・・・」

 

「・・・・・わかった」

 

オーフィスは渋々といった様子で起き上がった。

 

「わざわざ呼び鈴を3回も鳴らすなんて変わったお客だにゃ」

 

「あれは合図なんだよ」

 

「合図?」

 

「そ。呼び鈴が3回鳴るのは知り合いが来た合図なんだ」

 

基本知り合い以外は家には上げないことにしてるからな。知り合いが来たらそれを教える合図が必要だったから、呼び鈴を3回鳴らすことになってるんだ。

 

「それじゃあ、俺はお客さんを迎えに行ってくるよ。あんまり待たせるのもアレだし」

 

「あ、そっか。結界のせいで咲良かオーフィスの許可がないと上がれないんだっけ?」

 

「そういうこと。それじゃあ行ってくるよ」

 

俺は二人に手をひらひらと振りながら、客を迎えに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、お前だったか」

 

家の門戸に来た俺は、客の姿を捉えた。その客はどこかの学生服らしい服の上から漢服を羽織っている男性であった。

 

「やあ、久しぶりだな咲良」

 

ふっ笑みを浮かべながら、俺に挨拶をするその男性の名は曹操。三国志の英雄の子孫であり、英雄派という組織のリーダーであり・・・・俺の数年来の友人だ。




というわけで、サブタイトルの意味はゲームの腕前でした

当小説のオーフィスちゃんはゲームがガチで強いです。勝てるのは爺さんぐらいなので

そしてラストで英雄派筆頭の曹操登場。はてさて次回はどうなりますことやら・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

龍神様は英雄がお気に召さないようだ

今回は曹操さんがメイン

まあ、サブタイから察せられるようにオーフィスちゃんとは・・・・

ともかく本編どうぞ


曹操と会ったのは今から5年前のことだ。オーフィスの時と同じように、爺さんが突然連れてきたのだ。とりあえず飯を食わせてやってくれと言われた。どういう事情で曹操を連れてきたのかはわからないが、特に断る理由もなかったのでご飯を作って食べさせた。これが曹操と初めて出会ったときのことだ。

 

それ以来、曹操はたまにうちにご飯を食べに来るようになって・・・おそらく今日ここに来た目的もそれだろう。

 

「久しぶりだな曹操。元気だったか?」

 

「それなりにはな。戦闘も多かったから多少の怪我は負うこともあったが病気を患うことはなかった」

 

多少の怪我か・・・・・やはり、英雄を志すとなると戦いは避けては通れないということか。

 

「そういう君の方はどうだ?」

 

「俺はまあ、健康面に関しては上々だよ。それにしても本当に久しぶりだな・・・・前に来たのは大体1年ぐらい前だっけか?」

 

「正確には326日だ」

 

「いや、一々数えてたのかよ・・・・・でも、一年も間を開けるなんて、戦いも多かったって言ってたけど英雄派の活動はそんなに大変なのか?」

 

「それなりにはな。おかげで俺達は英雄にまた一歩近づけただろう」

 

ふっと笑みを浮かべながら言う曹操。この様子じゃあ英雄への執着は相変わらずのようだ。まあ、それこそが曹操のらしさなんだが。

 

「まあ、それならなによりだが・・・・・それにしてもまた一人か?ほかの英雄派の連中も連れてきてもいいって言っただろ?」

 

「君のその厚意は嬉しい。だが、英雄派の皆には悪いがここには俺一人で来たいんだ。ここでは英雄派筆頭という肩書きなしで・・・・・・君の一人の友人でありたいと思うからな」

 

「・・・・そっか」

 

俺は曹操の言い分に納得した。英雄を志すといっても、四六時中それでは曹操も疲れてしまうのだろう。だからこそ、英雄を志す者でも、英雄派の筆頭としてでもない『曹操』としてここに来て羽を伸ばしたいとと思ってくれてるのだろう・・・・・そう思ってくれているのは、友達としては嬉しいな。

 

「まあ積もり話はあとにして、とりあえず上がれよ。立ち話もなんだし・・・・・今日もご飯食べに来たんだろ?」

 

「ああ。とりあえず食材は用意しておいた」

 

そう言いながら曹操は手にしていた袋を俺に差し出してくる。受け取って中を見てみると肉やら野菜やら魚介類やらがそれなりの量入っていた。それもパッと見だがどれもものはよさそうだ。

 

「・・・・・これ、お前が買ってきたのか?」

 

「そうだが?」

 

・・・・・英雄を志す者が食料品の買い物か。なんかイメージするとシュールだな。

 

「どうかしたか?」

 

「いや、なんでも。とにかく上がれ。これ使ってすぐに食事の準備するから」

 

「わかった」

 

俺と曹操は門戸をくぐり、家の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず趣のある家だな。こういうのをわびさびというのだったかな?」

 

うちの内装を見渡しながら廊下を歩く曹操が言う。日本古来の平屋の木造建築である我が家を、曹操はやたらと気に入っていた。

 

「人によったら古臭いとしか思わんだろうがな・・・・・」

 

「古い=悪いということでもだろう?少なくとも俺はこういう古風な家は嫌いではない」

 

「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

 

もとは爺さんの家とは言え、俺にだってこの家に対して多少なりとも愛着はある。物心つく前から住んでればそれなりの数の思い出もあるしな。

 

「まあ、とりあえずこの部屋で待ってろ」

 

走行し得ているとオーフィスと黒歌がいる部屋の前についたので、部屋の麩を開けた。中にいた二人の視線が俺と曹操に向かうが・・・・オーフィスの視線はやけに鋭い。

 

「・・・曹操」

 

「久しぶりだねオーフィス。元気にしていたか?」

 

「・・・・・」

 

自身を睨みつけてくるオーフィスに、曹操はなんでもないように尋ねるが、オーフィスは答えない。そして沈黙したままこちらに近づいてきたかと思うと、俺の腕を引っ張って俺と曹操を引き剥がしてきた。

 

「・・・・曹操嫌い。咲良渡さない」

 

「はははっ。どうやら俺は未だに嫌われているようだな」

 

ギュッと俺の腕を抱きつくように握るオーフィス。そしてそんなオーフィスを見て苦笑いを浮かべる曹操。この光景でお分かりだろうが。オーフィスと曹操はあまり仲が良くない。いや、正確にはオーフィスが一方的に曹操を毛嫌いしているのだ。

 

ちなみに、オーフィスが曹操を毛嫌いしている原因は俺にあったりする。いつか曹操が英雄派へと勧誘してきたことがあった。それも結構ガチで。そのときオーフィスは曹操が俺を自分から引き剥がそうと思ってしまったらしく、怒ってしまったのだ。それこそ曹操どころかあたり一面を消してしまいかねないほどの勢いで。そのことがあって、オーフィスは曹操を嫌っている。

 

・・・・・今思えば、その時から俺はオーフィスに想われてたんだなぁ。

 

「警戒しなくても咲良を連れて行こうだなんて思わないさ。まあ、咲良が自分から俺たちの元来たいというなら話は別だがな。俺としては大歓迎だ」

 

「咲良、どこにもいかない。咲良、我とずっと一緒にいる。曹操なんかに渡さない」

 

無限の龍神と英雄派筆頭がただの平凡な人間である俺を取り合っている・・・・・こんな珍景、前代未聞だろうな。特にオーフィスに関しては、その存在を知る者にとっては驚愕だろう。

 

「えっと咲良・・・・・そいつは一体誰にゃ?」

 

オーフィスと曹操がバチバチと無駄な火花を飛ばし合う中、完全に蚊帳の外にいた黒歌が俺に尋ねてきた。

 

「ああ、こいつは曹操。俺のちょっとした知り合い・・・・いや、友達だな」

 

「曹操?それって三国志の・・・・・」

 

「その曹操の子孫らしい。5年ほど前に爺さん経由で知り合ってな。たまにうちにご飯食べに来るんだよ」

 

なお、曹操以外にもうちにご飯食べに来る奴はそれなりの数いる。そのほとんどが爺さん経由なため、普通に生きてれば到底関わることのないような大物ばかりなんだが・・・・・今はどうでもいいか。

 

「というわけで俺はご飯作りに行ってくる。オーフィス、離してくれないか?」

 

「・・・・・わかった」

 

俺は腕を掴んでいるオーフィスに放すように言うと、オーフィスはシュンとした雰囲気を纏って離した。ごめんオーフィス・・・・・でも、さすがにあのままだとご飯作りに行けないから。

 

「相変わらず咲良の言うことはよく聞くんだな君は」

 

「・・・・・悪い?」

 

「別にそうは言っていないが・・・・」

 

何やらまたオーフィスと曹操の口論に熱が入りそうだ。このまま放置するわけにはいかないが、いかんせん俺は夕食の準備をしなければならない。となるとここは・・・・

 

「黒歌、二人のこと任せた」

 

「にゃん!?」

 

ここは、黒歌に犠牲になってもらおう。黒歌はなんで私がと言い出しそうな勢いでリアクションしていたが・・・・まあ、この場に居合わせた不運だと思って諦めてくれ。

 

俺は黒歌からの責めるような視線を背に受けながら部屋から出て夕食を作りに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、できた」

 

調理開始から1時間半ほどかけて、夕食は完成した。

 

今日のメニューはエビチリ、八宝菜、青椒肉絲、回鍋肉、カニ玉、春巻き、ワカメスープといった中華メインだ。中華にしたのはもちろん曹操を気遣ったからというのもあるが・・・・・曹操が買ってきた食材を余すことなく使って出来るメニューがこれだったのだ。あいつ、絶対俺に中華作らせるつもりで食材買ってきてたんだろうな。まあ、特に問題はなかったからいいんだけどさ。

 

ともかく、料理はできたので、冷める前に食べようと三人が待つ部屋に向かうと・・・・

 

「くっ・・・・まだ敵わないか」

 

「我に勝つの無理、諦めたほうが身のため」

 

オーフィスと曹操がゲームで対戦していた。どうやらオーフィスがかったらしく、曹操は苦々しげに悔しさをあらわにしており、オーフィスはドヤ顔で勝ち誇っている。

 

「・・・・黒歌、説明プリーズ」

 

俺はとりあえずこの状況を二人のゲーム対決をげんなりした様子で見ていた黒歌に事情説明を求めた。

 

「口論が収まらりそうになったからゲームで決着をつけるように勧めたにゃん」

 

「そうか・・・・・まあグッジョブ」

 

口論が激化するとオーフィスが曹操を消しかねないからな。爺さん曰く曹操の実力は相当高いらしいが、それでもオーフィスの足元にも及ばないだろうからゲームで決着つけさせようというのは黒歌のファインプレーだ。

 

ちなみに、二人が対決していたゲームはスプラ○ゥーン。なぜこのゲームをチョイスしたのかはあえて聞かないでおこう。

 

「聞くまでもないだろうが結果は?」

 

「オーフィスの全勝にゃん」

 

ですよねー。うん、知ってた。

 

「でも、曹操もかなりいいところまでいっててオーフィスが追い詰められたこともあったわよ。あれ絶対私よりゲームうまいにゃ」

 

「あ~・・・・曹操は爺さん曰く技巧の極みらしいからな。ゲームでもそれが発揮されたってことか?」

 

けど、英雄を志す曹操がゲームで技巧を発揮って・・・・・どことなく間抜けな気がする。本人が気にしていないというならそれでいいが。

 

「くっ・・・・もう一戦だ」

 

「構わない。何度やっても我も勝つ」

 

そうこうしているうちにもう一戦始めようとする二人。だが、夕食が出来上がってる以上、これを見過ごすことはできないな。

 

「はーいストップ。夕食できたからゲームはここまでだ」

 

「ん?もうそんなに経っていたのか・・・・・早いな」

 

「ご飯ご飯」

 

俺が言うと、ふたりはそそくさとゲームを片付け始めた。やはり食事の力は偉大である。

 

「今回は負けたが・・・・・いずれリベンジさせてもらうぞ?」

 

「その時はまた返り討ちにする。我、負けない」

 

ニヤリと好戦的な笑みを浮かべる二人(オーフィスはほぼ無表情だが)。この様子なら少しは関係も良好になったということかな。ゲームのおかげっていうのがどうも現代っぽさを感じてしまうが・・・まあいいか。

 

さて、いい加減四人で食事を楽しむとしようか。

 

 

 

 




龍神と英雄派筆頭が取り合う存在は一般人じゃない気がしてきた今日この頃

いや、違うんよ。ただオーフィスちゃんは咲良さんのこと愛していて曹操は咲良のこと親友だと思ってるだけなんや

というわけで(?)次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

英雄とは色を好んでこそである

今回は咲良さんと曹操さんの会話がメインです

正直曹操さんの口調これでいいか不安だけどね・・・・

それでは本編どうぞ




「やっぱりここだったか」

 

四人での賑やかな食事を終え、食器を洗い終わった俺は縁側に座っていた曹操に声をかけた。ちなみに、オーフィスと黒歌は二人で風呂に入っている。

 

「お前、うちに来るたびに庭眺めてるよな」

 

「ああ。この庭は趣があって見ごたえがあるからな。酒の肴にはぴったりだ。君もどうだ?」

 

そう言いながら曹操は傍らに置いてあった瓢箪を手に取り、逆の手に持っていた杯に酒を注いで俺につき出してきた。

 

「未成年者に酒勧めるなよ。というかお前成人してたか?」

 

「ふっ」

 

「笑って誤魔化すなよ・・・・ったく」

 

俺は杯を受け取り、曹操の隣に腰を下ろしながら酒を飲んだ。

 

「文句を言う割には飲むんだな」

 

「その手の悪い遊びは爺さんに教わって慣れてるんでな。にしてもこの酒強くないか?」

 

「伊槻にもらったものだからな。多少は強いだろうな」

 

「爺さんからもらった酒かよ・・・・どうりで」

 

あの爺さんとんでもねぇ酒豪だからな。とにかくキツイ酒ばっか飲みやがる・・・・・そのうち肝臓ぶっ壊れんじゃないかって思う。

 

「にしても、そんなにうちの庭が気に入ってるのか?」

 

「さっきも言ったが酒の肴にぴったりなほど趣があるからな。君が手入れしているのか?」

 

「俺とオーフィスの二人でだよ。オーフィス、結構そっちのセンスあるからな」

 

正直、庭の手入れに関しては俺より上だと思う。

 

「ゲームに庭の手入れが得意な龍神、か。世の神々が聞いたら目を丸くして驚きそうだな」

 

「ははっ。確かにな。でもいいじゃないか。誰かが困るわけでもないしな」

 

「まあ、そうだな。それはそうとして、君も中々隅におけないじゃないか」

 

「は?どういう意味だ?」

 

突然の話題転換。曹操の言ってることの意味が分からず、俺は首を傾げた。

 

「黒歌のことだ。オーフィスという最愛がいながらタイプの違う女も侍らせるとはやるじゃないか」

 

「黒歌は事情があってうちに住んでもらってるだけで別にそういう関係じゃないよ。あんまりからかうなよ」

 

「はははっ、からかってなんていないさ。ただ、英雄色を好むという言葉もあるし、君にはやはり英雄派に来てもらいたいと思っただけだ」

 

「こじつけにも程があるだろ・・・・・」

 

曹操のあまりの言い分に俺は呆れ返ってしまう。何度も断ってるのに、コイツはまだ俺を英雄派に引き入れようとしてるのか。

 

「というか英雄色を好むっ言ったけどあれは・・・・・」

 

「色とは風情、情緒、趣をさし、それらを好むということは世界を好み、己の見聞を広めること・・・・・だろ?」

 

俺が言おうとしていたことを、曹操は自慢げに先に言った。

 

「俺も伊槻に聞いた。今の俺にとっては格言に近いものだ。伊槻のその言葉のおかげで、俺は世界に目を向け、以前の自己満足だけの英雄観から脱することができたのだからな」

 

「そっか。それはなによりだ」

 

この言葉に関して言えば、俺は素直に爺さんに感心した。色とは色欲だけではない。世界を華やかにする風情や情緒、趣もまた色であり、そういったものを好んでこそ英雄・・・・・それには俺も感銘を受けた。曹操も同じように感じるものがあったからこそ、そういったものを求め、真の英雄らしい心構えを身につけたのだろう。

 

もっとも、爺さんは色欲に関しても相当だけど・・・・

 

「でもまあ、それを知ってた上でさっきの言ってたとするとタチが悪いぞ?」

 

「英雄たるもの、小粋な冗談の一つも言えなければな。頭の固い英雄など誰も憧れを抱かないだろう?」

 

「冗談とかよく言う・・・・俺の返答しだいじゃガチで英雄派に入れようとしてただろうが」

 

「さて?どうだろうな?」

 

わざとらしくとぼける曹操。まあ、こういう気質もまた、英雄には必要なのかもしれないな。

 

「にしても、曹操って本当に爺さんの影響受けまくってるよな」

 

「当然さ。なにせ伊槻ほど英雄らしい英雄は他にはいないからな。強く聡明で、冷静でありながら柔軟な発想力も兼ね備えた人格者・・・・・俺は彼のような英雄になりたいと思うよ」

 

随分とまあ爺さんのこと高く買ってやがるな曹操・・・・・・言ってることは間違ってはいないだろうが、俺の場合は爺さんの余計な遊び心(主にオーフィスに吹き込んだいらんこと)には結構ガチ目にうんざりしてるところもあるから勘弁して欲しいんだがな。

 

・・・・・なんか思い出したらムカムカしてきたな。今度説教してやろう。

 

「というか、爺さんから酒もらったってことは最近会ったってことか?」

 

「ん?ああ・・・・・一週間ほど前にな」

 

返事を返す曹操。そして、何かを考え込むかのような表情を浮かべた。

 

「どうした?」

 

「・・・・・俺が今日ここに来たのは、君の料理を食べたいからというのもあるが・・・・一番の理由は伊槻の予言にあるんだ」

 

「爺さんの予言・・・・だと?」

 

それを聞いて、俺は多少なりとも驚いた。というのも、爺さんはたまに予言めいたことを口にするのだが、その的中率が異様に高いのだ。

 

たまに予言と違うことが起きることもあるが、それでも大筋から外れることはなく、予想や状況からの推理では片付けられないほどに正確だ。そしてその予言は、大事であることが多い。

 

「爺さんはなんて言ってた?」

 

「『もうすぐ駒王町を中心にして今後の世界の有り様を変えるほどの事が連続して引き起こされる。英雄を志すのなら、それを間近で見るといい』・・・・・伊槻は俺にそう告げた」

 

「この町を中心に?確かにこの町は少し特殊だけど・・・・・世界の有り様を変えるほどの事って一体・・・・・?」

 

「それについての詳細に関しては伊槻は話してくれなかった。けれど、伊槻の言うことだから何かが起きるというのは間違いないだろう」

 

早々の言うとおりだろうなだろうな・・・・・爺さんの予言が完璧に外れるだなんてことまずないだろうし、世界を変える程の何かは必ず起きるだろう。それがなんなのかはまったく見当もつかないが。

 

「俺は伊槻の言葉を信じて、それを見届けようと思っている。この家に来たのは、しばらくの間この街に滞在する時間が長くなりそうだったから君に挨拶しておきたくてね」

 

「なるほど。今後この家にくる頻度も多くなるかもしれないからよろしくってことか」

 

「まあそんなところだ。それと、君も何らかの形で巻き込まれる可能性もあると思ってね。なにせ君にはオーフィスを筆頭に異端な知り合いが多いからな。昨日からこの家で暮らし始めたという黒歌のことも含めて」

 

それについては否定しない。というよりできない。神様やらドラゴンにも知り合いいるからなぁ・・・・・世界を変えることが起きるって言うなら、そいつらも何らかの関わりを持つかもしれないし、俺も巻き込まれてしまうかもしれない。

 

「あんまり大事に巻き込まれるのは勘弁なんだけど・・・・・」

 

「それは諦めたほうがいいと思うぞ?血の繋がりはないとはいえ、あの伊槻を祖父に持ってしまっているのだからな。そもそも君は自分が自覚していないだけで、すでに様々な大事に関わっているだろう」

 

もっともすぎて反論の余地がない・・・・・あんな世界トップクラスのバケモノで、いろんなことに首つっこみまくってる爺さんの身内なんだから、巻き込まれる可能性は高い。というか曹操の言うとおり俺が知らないだけど多分すでに色んなことに巻き込まれてる。

 

「まあ、あまり心配することはないだろうがな。君には世界最強の龍神や世界一の英雄である伊槻がついている。俺ももしもの時は君に力を貸すし、俺の他にもそういった考えをもつ者達は多いはずだ。巻き込まれたとしても、命を脅かすような危機に直面する機会は滅多にないだろう」

 

「確かに、頼もしさは半端ないな・・・・・もっとも、オーフィスにはあまり荒事に関わって欲しくはないんだが」

 

「オーフィスが一番傷つく可能性が低いと思うんだが?」

 

「だとしても、好きな子には平穏無事でいてもらいたいんだよ」

 

いざという時は仕方ないにしても、普段はなるべく荒事から離れて、平穏な日常を過ごしてもらいたいからな。その隣に俺がいれば、もう言うことなしだ。

 

「ふっ・・・・かつて君ほどオーフィスを案じ、心を寄せた人間はいなかっただろうな。逆に君ほどオーフィスに想いを寄せられた人間もまた・・・・・・」

 

「それが俺にはわからないんだよなぁ。オーフィスは確かに特別な存在かもしれないけど、そこまでとっつきにくいわけでもないと思うが?」

 

「そう思っているのなら、やはり君は英雄気質なのかもしれないな」

 

「は?」

 

いやいやいや、どういうことだよ?なんでそこで俺が英雄気質だって話が出てくるんだ?

 

「さて、俺はそろそろ失礼させてもらおう」

 

曹操は瓢箪と杯を片付け、立ち上がりながら言う。

 

「泊まってかないのか?」

 

「やめておく。宿泊先は既に確保しているし・・・・・何よりオーフィスに睨まれそうだからね」

 

「はははっ。それは否定しないけどな」

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)に睨まれる、か。人によっては恐ろしい限りだろうな。

 

「近いうちにまた来る。またな咲良」

 

「ああ。またな」

 

俺に背を向け、手を振りながら曹操は玄関口に向かっていった。

 

「あらん?曹操は帰ったのかにゃ?」

 

声のする方に振り返ると、そこにはお風呂上がりのオーフィスと黒歌がいた。なお、オーフィスは昨日と違ってちゃんとパジャマを着ている。昨日の(黒歌への)説教と曹操が来ていたというのもあってさすがに昨日みたいな着こなしはやめておいたようだ。

 

「ああ。ただ、しばらくこの町にいる時間が長くなりそうだから、ちょくちょく来るってさ」

 

「別に来なくてもいい」

 

うわぁ・・・・いっそ清々しいほどに辛辣だなオーフィス。

 

「ところで咲良、曹操と男同士で何を話していたにゃん?」

 

「ん?まあちょっとな・・・・・」

 

「男同士で内緒の話?これは怪しい香りがするにゃ」

 

「黒歌、明日から昼食は弁当作るんだけど、黒歌の分は赤白反転の日の丸弁当でいいか?」

 

「ごめんなさい勘弁してください」

 

さすがに梅干で埋め尽くされた弁当は嫌なようで、黒歌は速攻で謝ってきた。

 

「・・・・我にも内緒?」

 

「まあ、今回はな」

 

話の内容が内容だからなぁ・・・・・難しいかもしれないけどオーフィスにはあまり関わって欲しくないし、やっぱり内緒かな。

 

「むー・・・・・」

 

内緒にされたのが気に障ってしまったのか、オーフィスは頬を膨らませて怒っていた。その仕草はただただ可愛いとしか思えない。

 

「わかった・・・・・内緒なら仕方ない。だけどただでは許さない」

 

「ただでは・・・・・っていうと条件ありってことか」

 

「うん。今日、我と一緒に寝てもらう」

 

おっと、そうきたか。今日は一緒に寝ないってことになってたんだがな・・・・

 

「一応聞くが、それって週三の中には・・・・」

 

「含まない」

 

ですよねー。でも、こうなったらオーフィス引かないからなぁ・・・・

 

「わかったよ。今日一緒に寝るよ」

 

「うん、それでいい」

 

俺が観念してオーフィスの要求を飲むと、オーフィスは満足げに微笑んだ。

 

「それじゃあ我、先に咲良の布団の中で待ってる。咲良は早くお風呂に入る」

 

そう言ってオーフィスはその場を去っていった。

 

「咲良、からかうとかそういうの一切抜きで聞くけど、好きな子が自分の布団で待っててくれるってどんな気分にゃ?」

 

「最高」

 

「うん、だよね」

 

だって好きな子が、自分の布団の中で待っててくれてるんだぞ?まだかまだかって待ち構えてるんだよ?最高以外なにものでもないじゃん。

 

「それじゃあ俺お風呂入ってくるか」

 

「はーい。行ってらっしゃい」

 

黒歌に見送られ、俺はお風呂に入りに行くのだった。

 

 

 




曹操さんは伊槻さんのことを理想の英雄だと思っています

ある意味では、本作中で伊槻さんの影響を最も受けているのが曹操さんですので

それはそうとして、難癖つけて咲良さんと一緒に寝ようとするオーフィスちゃんめっさ可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

信じられるか?こいつ原作だとチートな戦闘狂なんだぜ?

今回はヴァーリさんがメインになります。まあ、後半はオーフィスちゃんがメインになりますが

そしてサブタイから分かるようにヴァーリさんのキャラが軽く崩壊しますのでご注意を

それでは本編どうぞ


「最近イッセーが構ってくれないんだ。どうすればいいと思う?」

 

「知るか」

 

いやに神妙な面持ちのヴァーリが持ちかけてきた相談を、俺は一蹴した。

 

新学期が始まって一ヶ月少々したある日の学校帰り。ヴァーリに相談があると言われたのでオーフィスに帰りが遅くなると電話して(その際オーフィスは不満げだったが)、近くの喫茶店でコーヒー飲みながら話を聞いたわけだが・・・・・・

 

「はっきり言うぞヴァーリ・・・・・なんで俺に相談した?俺関係ないよね?」

 

正直、それを俺に相談してどうするつもりなのって思った。俺にできることないじゃん。俺にどうしろっていうのさ。

 

「関係ないだと?そんなことはないだろう。君だって婚約者がいるんだ。俺の気持ちは誰よりもわかるはずだ」

 

「一方的な理解を求められても困るわ。そしてお前の気持ちもわからん」

 

なにせオーフィスが俺に構わなくなることなんて全くないからな。もちろん逆もだ。俺もオーフィスも互いに黒歌が呆れるほど、あるいは胸焼け起こすほどに構い合ってるからな。

 

「くっ、君に理解が得られないというなら俺は誰に相談すればいいんだ?」

 

「自分と同じで婚約者がいるからって理由でお前はどんだけ俺を頼りにしてたんだよ」

 

「これ以上適任はいないと思う程度には頼っていた」

 

友人として頼られていたこと自体は嬉しく思うが、なんか釈然としないなぁ・・・・・・

 

「というか構ってくれなくなったと言っていたが、その理由やら原因に心当たりはないのか?」

 

「・・・・・ある。最近イッセーはアーシアに構ってばかりでな。今日だって授業が終わってすぐに二人で買い物に出かけてしまって」

 

「ああ、なるほど」

 

アーシアとは最近うちのクラスに転入してきた、イッセーの家にホームステイしている少女のことだ。ヴァーリがいるのになんでさらにホームステイする人が増えるんだと疑問に思ったが、それはまあ事情があるんだなと納得するとしよう。

 

そのアーシアというのが随分とイッセーを慕っていて、イッセーもまたアーシアのことを相当に可愛がっているのだ。それこそ、傍目から見ると姉妹に見えるほどに。

 

「まあ、イッセーは以前から妹が欲しかったと言っていたからな。アーシアは妹にしたい系の性格してるから、イッセーの中で妹萌えが爆発してヴァーリのことおざなりになっちゃったんじゃないか?」

 

「そういうものなのだろうか?」

 

「多分な」

 

俺もそういった感情は漫画やら小説やら読んで知ったものだから、実際どうなのかは正直わからないけどそういうものなのだろう。たぶん。

 

「だが、だからといって俺の誘いを断って毎日のようにアーシアと一緒に寝たりお風呂に入ったりするのは・・・・」

 

「お前なに普通に爆弾発言してんの?」

 

「爆弾発言?」

 

一緒に寝るやら風呂に入るやら・・・・・若者の性の乱れが深刻なんですけど。しかも当人に自覚なし。

 

俺?俺はまあ一緒に寝てはいるけどそういうことは致してないし。お風呂は今は一緒に入ってないし。

 

「一緒に寝たり風呂入ったりだよ」

 

「恋人同士なのだからそれぐらいは普通だろう?君もしているのではないか?」

 

「・・・・・・恋人同士ならしてるだろうけど、少なくともお前みたいにあけっぴろげには言わないと思うぞ」

 

俺は話の後半を無視して、(おそらく)一般的であると思われる回答を述べた。

 

「そういうものなのか・・・・・まあいい。とにかく、最近誘ってもイッセーは乗ってくれないんだ」

 

「女の子同士で一緒にお風呂に入ったり寝たりは恋人とのそれとはまた違った良さがあるってことさ。イッセーにとっては新鮮なんだろう」

 

「そうか・・・・イッセーが喜んでいるのならまあ俺としても嬉しい。だが、断られる度にアーシアが勝ち誇ったような笑顔で俺を見てくるのがどうにもな」

 

「ちょっと待ってその情報聞きたくなかった」

 

あの純粋なアーシアが勝ち誇ったような笑顔って・・・・・なに?あの子ちょっと腹黒入ってるの?それともイッセーの恋人だからってヴァーリのこと嫌いなの?

 

「と、ともかくだ。今は妹のような存在ができたからちょっと浮かれちゃってるだけど、ヴァーリのことないがしろにしてるってわけではきっとないと思うからそう心配するな」

 

「む・・・・まあ、君が言うのならそうなのだろうな」

 

いや、自分で言っといてなんだけどなにその俺への信頼感?若干プレッシャーなんですけど。

 

「でもまあ、ある意味ではいい機会なんじゃないか?」

 

「いい機会?どういうことだ?」

 

「お前ら今まで一緒にいる時間が長かっただろ?だからこうして少し距離を置くことで色々と見えてくるものもあるんじゃないかと思ってな。実際こうして俺に悩み相談してくるぐらいだし」

 

恋人付き合いする上では、そういう時間も、きっと大切なのだと俺は思う。まあ、俺はオーフィスに距離置かれると悲しみのあまり首を括りかねないから勘弁だけどな。

 

「なるほど・・・・・わかった。君の意見を参考に色々と考えてみよう」

 

「おう、そうしな。それじゃ俺はそろそろ帰るから・・・・・あ、コーヒー代お前が持てよ?相談に乗ってやったんだから」

 

「容赦ないな・・・・だがまあ、それぐらいだったら構わない・・・・結局、なんだかんだ言いながら君は俺の相談にきちんと乗ってくれていたな」

 

「・・・・・まあなんだかんだヴァーリは友達だしな。これぐらいの相談なら乗ってやるのもやぶさかじゃない」

 

オーフィスと一緒にいる時間の方が大事ではあるが、学校生活というのも俺にとってはそれなりに楽しいもの。そしてその楽しさを与えてくれる、分かち合える友達は大切だと思ってる。だから、相談ぐらいには乗るさ。

 

「また何かあったら君に相談させてもらおう」

 

「その時はまた何か奢れよ?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

よし、言質はとった。今度相談に乗るときはファミレスでパフェでも奢らせてもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲良、今日は我と一緒にお風呂に入る」

 

「・・・・・マジかー」

 

ヴァーリの相談に乗った日の夜、唐突にオーフィスが切り出してきた。なんというタイムリーな・・・・・まさかオーフィス、どこかで話聞いてたんじゃ・・・・いや、それはないか。

 

「オーフィス?なんで唐突にそんなことを?」

 

「唐突じゃない。週三だけど咲良と一緒に寝るようになって一ヶ月経った。だから、そろそろ次の段階に進むべきだと我は思った」

 

「・・・・・・なるほどな」

 

「いや、そこ反論するところじゃないかにゃ?」

 

そうは言うけどな黒歌よ・・・・・なんとかして反論しようと思ったけど、言ってることもっともだなと思って納得してしまっんだよ。納得してしまったからには反論できないだろ。

 

「というわけで咲良、我と一緒にお風呂に入る」

 

「いや、ちょっと待ってくれオーフィス」

 

納得はしたものの、このまま一緒にお風呂に入るのはまずい。確かに、数年前まではたまに一緒にお風呂に入ることはあったが、思春期に突入すると男としての本能が疼きだして・・・・・理性を凌駕しかねなくなってしまたのだ。端的に言えば、理性を保てなくなってオーフィスに良からぬことをしでかしてしまいかねないのだ。

 

いくら婚約者とはいえそれはまだ避けたい・・・・・だが、一緒にお風呂に入るとなるとオーフィスの裸を見てしまうからそうなったら俺は・・・・・はっ!そうか!

 

「わかった。一緒にお風呂に入ろう。ただし、一つ条件がある」

 

「条件?何?」

 

「バスタオルを体に巻くこと。それが条件だ」

 

バスタオルを体に巻きさえすれば、裸を見ることはない。まあ、バスタオル一枚を身に纏うオーフィスも大変魅力的ではあるだろうが、それでも裸に比べればまだ理性は持つ・・・・はずだ。

 

「バスタオルを?だけどお風呂に入るとき体にタオルを巻くのはマナー違反だって伊槻が言ってた」

 

くそ、爺さんめ余計なことを。しかも今回ばかりはそれなりに正論だから説教できねぇ。

 

ここは・・・・

 

「確かに一般的にはマナー違反だが、何事にも例外というものはある。今回はその例外に当てはまる事案なんだ」

 

主に俺の理性的な意味合いでな。

 

「物凄く強引な物言いな気がするにゃ」

 

「黒歌、明日の朝ごはんは黒歌の大好きな煮干一匹で・・・・」

 

「ごめんなさい」

 

よし、余計なことを言う黒歌は黙らせた。あとはオーフィスがどう出るか・・・・

 

「ん・・・・わかった。それじゃあ我、タオル巻く。だから一緒にお風呂」

 

良かった受け入れてくれた。というかオーフィス・・・・・そんなに俺と一緒にお風呂を入りたいのか?まあ理性云々の事抜きにして言えばそのこと自体は嬉しいけども。

 

「ああ。一緒に入ろうな」

 

「わーい」

 

表情はほとんど変わっていないが、それでも嬉しそうに万歳と両手をあげるオーフィス。本当にもう俺の婚約者可愛すぎるだろ。

 

「よし、それじゃあ行こうかオーフィス」

 

「うん」

 

「咲良、ちょっと待つにゃん」

 

オーフィスの手をとってお風呂場に行こうとする俺に、黒歌が待ったをかけた。

 

「ん?なんだ黒歌?」

 

「タオル巻くっていっても、オーフィスが体を洗うときはどうするにゃん?」

 

「・・・・・・黒歌さん。どうしてそれをもっと早く言ってもらえなかったのでしょうか?」

 

こうして、俺の本能と理性が大戦争を起こすことが決定したのであった。




ヴァーリさんがイッセーさん(TS)のこと好きすぎて作者が思わず頭抱えるレベル

まあ、二天龍夫婦尊いからしょうがないよね

そして咲良さんと一緒にお風呂入りたがるオーフィスちゃんギザカワユス

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

唐突のキャラ設定という名のネタバレの宝庫・・・・・・つまりは閲覧注意なのだ

サブタイ通り今回はキャラ設定となります

現時点で設定に起こす必要がありそうなキャラの設定を載せているので、登場キャラ全員ではないのであしからず

まだ本編を読んでない、ネタバレNGの方は回れ右推奨です

それではどうぞ


湊内咲良

 本作の主人公。種族的にはドノーマルな人間であり、神器さえも持ってない一般人。しいて取り柄を上げるならば家事全般・・・・・特に料理の腕が立つことぐらいで、それ以外の事柄はせいぜい平均より上程度。戦闘主体の物語であったら絶対に主人公になれないレベルの凡庸な人間である。

 しかし、その一方で交友関係が異常。世界でもトップクラスの力、権力を備えた者達(ドラゴンやある組織のトップ、神等)と親交が深すぎるほどに深い。そのため、本人は無自覚だがこの世界において決して敵に回してはならない最重要人物。敵に回したら最後、彼と親交の深い者達がこの世の果てだろうが、冥府の果だろうが、天界の果てだろうが追いかけ、追い詰め抹消される。

 10年前にオーフィスに出会い一目惚れ。当時7歳であったにもかかわらず、オーフィスの正体も知らずに勢いでプロポーズするというある意味勇者的行動を起こす。彼にとっては思い出すのも恥ずかしい奇行なのだが、オーフィスと結婚したいという願いはずっと持ち続いた。そしてその想いは実り、オーフィスと結婚の約束を交わしてオーフィスの婚約者となる・・・・・一般人と言ったのは訂正しなければならないかもしれない 

最近の悩みは祖父が余計な知識をオーフィスに吹き込んだ結果、オーフィスがやたらと積極的にスキンシップを図ろうと企てていること。本人としては嬉しいといえば嬉しいのだが、積極的すぎて若干戸惑っている。つまりヘタレ。

 オーフィスに対する愛情は相当に深い。その正体が無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)だと分かっていてもなお結婚したいという願望を抱き続けていたことからもそのことは伺い知れるであろう。

 色々と面倒くさいことになりそうだからと、学校の友人には自分の交友関係や、いろんな事情をそれなりに知っていることを明かしていない。ちなみにイッセーとヴァーリが二天龍であることも知らない。

 『マジかー』が口癖。そのうちオーフィスに伝染りそう。

 実は転生者。そのため血の繋がった家族がいない。転生者といっても、チートな身体能力は一切有しておらず、精神面も普通、原作知識も前世の記憶も皆無である。つまりは、ちょっと事情が特殊な輪廻転生を果たしただけとも言える。

 

 

オーフィス

 本作のヒロイン。原作において最強とされる無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であり、本作では『咲良の嫁』の称号も持っている。可愛い。

 10年前から咲良と共に暮らしており、その10年という月日をもって、咲良の事をどうしようもないほどに好きになってしまった。そして、咲良への好意が極限まで高まった結果、咲良と結婚したいと思うようになり、結婚の約束を取り付けて咲良の婚約者となった。可愛い。

 咲良と共に暮らす10年の生活で、およそ龍神に必要ないはずのゲームや一部の家事の腕が異様に上がってしまった。他にも漫画やアニメ、音楽といったサブカルチャーを好むようになっており、完全に俗世に染まってしまっている。可愛い

 恋愛に関しては独占欲、嫉妬心がそれなりに強い。咲良は自分のものであり、自分も咲良のものであると認識しており、咲良に色目を使う女への牽制としてキスマークを付けることも厭わなくない。可愛い。

 伊槻に色々と吹き込まれたせいで、咲良に対するスキンシップがやたらと積極的。どうやら彼女の中では『一緒に寝る→一緒にお風呂→子作り』という段階が出来上がっているらしく、このままでは子作りが秒読みである。可愛い。

 次元の狭間に帰りたいという願いは等に消失しており、今はただ咲良と一緒に居られればそれでいいと思っている。まあ、サブカルチャーにどっぷり嵌ってしまったからというのもあるのだが。可愛い。

 

 

 

黒歌

 本作の苦労人。追っ手の悪魔達との戦闘で負傷し、湊内家の門前で気を失っているところを咲良とオーフィスに拾われ、そのまま居候として湊内家に厄介になることとなった。

 湊内家での生活に対して概ね満足しており、特に不満はない・・・・・のだが、目の前で咲良とオーフィスがイチャイチャする様を見せられるのはさすがの彼女でも堪えるようであり、よく胸焼けを起こしている。それでも、ある程度までは見ていて癒されるレベルのようで強く止めようとはしない。

 実は咲良に惚れている。しかし、咲良とオーフィスの仲は何があっても揺るがないと理解しているので身を引いている。

 

 

 

兵藤一誠

 本作のTS枠。二天龍夫婦を成立させたいがために女になったが、あいかわらずのおっぱい大好きおっぱいドラゴン。しかし、おっぱいよりヴァーリのことが好きだったりする。

 中学生の時にヴァーリと出会って一目惚れ。その際自分の神器のことに気がついたが『宿敵とか知ったことか』とヴァーリにアプローチしまくって見事にゴールイン

 神器のことを知ったのが原作よりも早いためか、高校入学の時点ではリアスの眷属となっており、既にヴァーリと互角の実力を有している。現在の階級は中級悪魔。

 最近は堕天使に利用されそうになっていたところを助けたアーシアを妹のように構っていて、若干ヴァーリのことをないがしろにしがちになっている。

 夫婦喧嘩(禁手状態)ではイッセーの全勝。女は強し。

 咲良のことは普通に大切な友人だと思っているが、咲良の事情については何も知らない。

 当然オカ研所属。

 

 

 

ヴァーリ・ルシファー(ヴァーリ・アルファー)

 イッセーの婿。あいも変わらず戦闘狂であるが、戦うことよりもイッセーのことのほうが好きなためちょっとおとなしくなっている。まあ、極覇龍は習得済みであるが。

 アザゼルの計らいにより駒王学園に在籍。兵藤家にホームステイしている。当初、街を預かるリアスは反対していたが、悪魔と堕天使の和平の足がかりと説明されて承諾。なお、このことはまだ極秘のため悪魔は駒王学園に在籍しているものと魔王クラス、堕天使はアザゼルとシェムハザ、バラキエルしか知らない。

 咲良については学内では一番信頼を寄せる友人だと思っており、主にイッセー関連でよく相談に乗ってもらっている。咲良の事情については何も知らない

 偽りの姓を名乗っているのは、ルシファーと名乗ると色々と問題が生じるためである。アルファーにした理由はアルビオンとルシファーを組み合わせたため。

 オカ研所属。アーシアを利用しようとした堕天使は主にヴァーリが懲らしめた(死者0)。

 

 

 

曹操

 咲良の一番の親友。英雄派のリーダーであることは変わらないが、原作に比べ英雄観が若干マイルドになっており、テロに走っていない。ある意味原作と比べて一番変化が大きい人。

 数年前までは原作と同じように暴走気味であったが、伊槻と出会い矯正された(ほぼ力づくで)。それをきっかけに英雄観が一新され、伊槻を自らが目指す理想の英雄像として目標にして日々活動に励んでいる。

 咲良のことを大層気に入っており、英雄派に誘うこともしばしば。その度にオーフィスの反感を買っているので、オーフィスからは一方的に嫌悪されている。しかし、そこまで険悪というわけでもないので放置しても大丈夫なレベル。

 湊内家にはたまにご飯を食べに行く。その際は英雄派リーダーという肩書きなしで、曹操というひとりの人間としてありたい思っているため、基本一人で赴く。

 

 

 

湊内伊槻

 咲良の祖父で本作一のチート枠。オーフィスやグレードレッドを超えるほどの戦闘力をほこり、思慮深く、強靭な精神力を有した人格者(ただし破天荒でもある)であるが、種族上は普通の人間。

 咲良にいろんなひとを紹介した張本人。当初は少しでも咲良の見識が深まればいい程度にしか思っていなかったが、予想以上に咲良が親交を深めているのを見て咲良の方が自分よりチートじゃないかと考えている。

 オーフィスに静寂よりも楽しいものがあることを知って欲しくて湊内家に連れてきたが、よもや咲良と婚約者同士になるとは思っても見なかったようで驚いている。しかし、二人の幸せを切に願っている。

 赤ん坊であった咲良を拾い、孫として育てる。お互い血のつながりはないものの、大切な家族だと思っている。しかし、破天荒な性格のせいでよく咲良から説教されている。

 実は原作知識を持った転生者。異様に能力が高いのもそのためである。原作知識をもとに、可能な限り平和な世界になるために奔走している。しかし、原作のことを細かく全て覚えているわけではない上、この世界が原作との相違点がいくつも見られるため、どうにもできなかったことも多い。それでも、この世界が原作と比べ比較的平和なのは伊槻のおかげといってもいい。

 あらゆる武器を使いこなし、身体能力は異常。難しい魔法もいとも容易く使いこなす上にそれを私利私欲のためだけには(あまり)使わない・・・・・・作品が違えばコイツが主人公でも良かったと思われる。

 

 

 

禍の団

 伊槻、英雄派の活躍によりすでに崩壊

 

 

 

旧魔王派

 英雄派によって壊滅。旧魔王は全員曹操によって倒され死亡

 

 

 

リゼヴィム

 すでに伊槻の手にかかって死亡

 

 

 

トライヘキサ

 伊槻の手でより強力な封印が施される。おそらく解呪不可

 

 




こうして設定に起こしてみるとわかる・・・・咲良さんはやっぱりチートでないようでチートだ

そしてやっぱりオーフィスちゃん可愛い。異論は認めない

それではこれにて失礼します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

咲良さんのパーフェクトお料理教室(クッキー編)

サブタイはこんなですが本筋は別なところにあるという

メインは黒歌さんかな?

それでは本編どうぞ


「・・・・・どうしてこうなった」

 

こんにちは、湊内咲良です。これから調理実習でクッキーを作るのだが・・・・・俺は思わず頭を抱えたくなる状況に陥っています。その状況というのは・・・・

 

「「「「よろしくお願いします湊内先生!!」」」」

 

「・・・・・はい、こちらこそよろしくー」

 

なぜか教壇に立たされ・・・・・皆にクッキーの作り方を教えさせられているのだ。

 

きっかけは朝のHR。家庭科の先生が現れて『私より湊内くんに教わった方がいいと思わない?』とトチ狂ったことを宣って・・・・それを大多数の生徒が賛同。そして今日の調理実習は俺の指導のもと行われることになったのだ。

 

流石に勘弁して欲しかったのでHR後に学園長に事の顛末を説明したのだが、学園長は『まあいいんじゃないかな』とまさかの発言。むしろ『面白そうだからやっちゃいなよ』と言って勧めてきたのだ。この学園どうかしてやがる。なお、教室に帰るときに偶然出会った生徒会長に事情を説明したら・・・・ものすっごい同情された。ようやく俺の苦心を理解できる人に出会えて嬉しかっと同時にものすっごい泣きたくなった。

 

「湊内くん、早く皆に指導してあげて」

 

家庭科の先生が俺に指示する・・・・・というか、なんであんた生徒に混じってんの?なんで教わる側の立ち位置にいるの?俺とあんたの立ち位置逆だよね?

 

くそっ・・・・・まあ、仕方がない。こうなった以上は与えられた役割を全うしよう。やりきれば今学期の家庭科の単位は保証されるらしいし。てか、単位を餌に授業を生徒にやらせるって教育委員会に報告したら相当やばいんじゃ・・・・・いや、悪魔がいる時点でそんな常識通じんだろうけども。

 

ともかく、作り方教えないと・・・・もっとも、クッキー程度なら大して教えることもないけど。

 

「基本的な材料、作り方は黒板に書いてある通りだ。料理っていうのは基本的にはレシピ通りに作れば問題なくできる。どうしてもアレンジしたいって言う人がいれば俺に声を掛けてくれ。可能な限りは教える。わかったか?」

 

「「「「はい湊内先生!」」」」

 

・・・・・皆、順応しすぎじゃね?

 

「それじゃあ作業開始」

 

俺の一声のもと、皆作業に取り掛かった・・・・・よし、俺もやるか。

 

俺も材料を出してクッキーを作り始める。教える側の立場なのになんで俺も作るかって?んなもんオーフィスや黒歌にあげるために決まってるだろ。学校で二人へのお土産のお菓子を作れる機会を俺が無下にするはずもない。クッキー程度なら教えながらの片手間でも十分に作れるから問題はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・と、思っていた自分が憎い」

 

調理実習を終え、教室に帰ってきた俺は机に突っ伏しながら言う。

 

「皆・・・・皆やる気に満ち溢れすぎでしょ。なんで過半数以上の生徒がアレンジ加えようとするの?数人ぐらいはいいけどなんで女子の過半数?プレーンなクッキーでは納得できませんか?」

 

「さ、咲良さん・・・・大丈夫ですか?」

 

「アーシア・・・・・大丈夫に見える?」

 

心配そうに声をかけてきたアーシアに、俺はそう返した。

 

「いえ、その・・・・・あんまり・・・・」

 

だろうね。実際ものすっごい疲れたもん。もう今日は何もしたくないもん。

 

本当に早く帰りたい。早く帰ってオーフィスに会いたい。オーフィスに会って癒されたい。

 

「まあ、確かに随分と大変そうだったからな。疲労困憊するのも無理もない」

 

「そうだな。特に銀髪の誰かさんにはものすっごい気を遣ったからね?」

 

そう、一番面倒を見たのはヴァーリだ。ヴァーリの奴、バターを溶かすのにレンジを使おうとするし、卵は力任せに叩き割ろうとするし、生地を焼くときはフライパンの上にクッキー乗せてコンロの火にかけようとするし・・・・訂正することが多すぎるんだよちくしょう。

 

「あはははは・・・・ヴァーリ、料理だめだめだから」

 

「これでも頑張ってはいるのだがな」

 

「頑張るのはいいことだ。だけど!お願いだから!最低限の知識は持っておいて!」

 

教える身としては溜まったものじゃないからなマジで。

 

「ホントにもう・・・・忙しくてクッキーこれだけしかできなかったし」

 

俺は机に置いておいてあるクッキーの包みを見やる。本当はこの倍はつくろうと思っていたのだが、皆して質問しまくってくるもんだからあまり自分の作業に時間を避けなかったのだ。

 

「むしろあの忙しさせ自分の分作れただけでも私としては驚きだけどね」

 

それは俺も同じだよ。というか、桐生よ。他人事みたいに言ってるけどお前もアレンジ加えるとか言って色々と聞いてきて忙しさに一役買ってるんだからな?ついでに言っちゃうとイッセーとアーシアも。

 

「まあそれはそれとして咲良、これもらってもいい?」

 

「桐生、今は冗談に突っ込む気力はない」

 

なんか桐生が戯言を言ってるが、気力不足で突っ込めない。

 

「いや、冗談じゃなくてマジで言ってるんだけど?」

 

「そうか。勘違いして悪かったな。そういうことならクッキーはやらんぞ」

 

「ケチ」

 

「ケチで結構だ。というか自分で作ったのあるだろうが」

 

「いや、だって咲良が作ったやつの方が絶対に美味しいじゃん?」

 

「「わかる」」

 

桐生の発言に、イッセーとヴァーリが同意した。そう言ってくれるのは嬉しいが、クッキーをやる気は一切ない。これはオーフィスと黒歌のなんだからな。

 

「えっと・・・・咲良さんってそんなにお料理上手なんですか?」

 

ただ一人、アーシアだけが首を傾げていた。そういえば、最近転入してきたばっかだから俺の料理食べたことないんだよな。ほかの連中は調理実習だったり俺の弁当のおかずわけてあげたりして知ってるけど。

 

「上手なんてものじゃないよアーシア。あれはもうプロ級だね」

 

「いや、下手なプロよりも上なんじゃない?」

 

「少なくとも、俺は咲良の料理以上のものを食べたことがない」

 

イッセー、桐生、ヴァーリが3人して俺の料理を絶賛してくれる。

 

嬉しいのだが・・・・・そこまでなのだろうか?俺としては適切な材料、適切な調理法、適切な味付けで作ってるだけだから特に意識はしてないんだよなぁ。

 

「そ、そんなになんですか・・・・・ちょっと気になります」

 

「んー・・・・・なら昼の時俺のおかずちょっと食べてみるか?」

 

「いいんですか?」

 

「まあ少しくらいならな」

 

「ありがとうございます」

 

笑顔で感謝の言葉を述べてくるアーシア。こういうのを天使の微笑みって言うんだろうな。オーフィスと一緒に居る時ほどじゃないけど、結構癒される。

 

「いや~、ありがとね咲良」

 

「これはお昼が楽しみだねヴァーリ」

 

「そうだなイッセー」

 

「ちょっと待って。お前たちにもやるなんて一言も言ってないよ?」

 

この悪魔共め・・・・俺の弁当のおかず食べ尽くすつもりか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく・・・・帰れる」

 

調理実習で精神疲弊したせいか、いつもより長く感じる授業がようやく終わった。俺はさっさと帰り支度をして、教室から出て行く。

 

ちなみにイッセーとヴァーリは今日は部活にでるそうなので一緒には帰らない。

 

「もう二度と・・・・もう二度と調理実習で教える側になってたまるか。何があっても断ってやる。もう単位は保証されてるから受ける理由なんてないから断って・・・おっと」

 

恨み言を言いながら歩いていたせいか、注意散漫になってしまった俺は誰かとぶつかってしまった。

 

「すまない、大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「・・・・あれ?」

 

ぶつかったのは高校生とは思えないぐらいに背の低い、白い髪の可愛らしい女の子だったのだが・・・・なぜかその子を見て、黒歌のことを思い出してしまった。

 

「どうしました?」

 

「え?あ、いや・・・・・ごめん。何でもないよ」

 

なんで黒歌のこと思い出したんだろ?雰囲気とか全是違うのに・・・・どうしてだ?

 

「はあ、そうですか。では・・・」

 

「あ、ちょっと待って」

 

その場をさろうとするその子を、俺は引き止めた。

 

「なんですか?」

 

「その・・・・これ。ぶつかったお詫び」

 

俺は包みからクッキーを一枚取り出し、差し出した。オーフィスと黒歌に上げるためのものなのだが・・・・なぜかこの子にもあげたくなってしまったのだ。

 

「・・・・ありがとうございます」

 

一瞬驚いたような表情をしたが、それでもクッキーは受け取ってくれた。そして女の子は受け取ったクッキーをそのまま口に含む。

 

「・・・・美味しい」

 

「そうか。それは何より」

 

どうやらクッキーの味はお気に召してくれたようだ。女の子は微笑みを浮かべている。そしてその微笑みは・・・・どこか黒歌に似ているように思えた。

 

「クッキーありがとうございました。失礼します」

 

女の子はぺこりとお辞儀をした後に去っていった。彼女の歩く先にあったのは旧校舎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲良のクッキー、おいしい」

 

「そうか。そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

俺の膝の上に座り、クッキーを美味しそうに食べるオーフィス。俺はそんなオーフィスの頭を撫でていた。それだけで今日の疲労は一気に癒される。

 

「本当に美味しいにゃん。咲良が作った料理やお菓子を食べられるだけでもここで暮らす価値があるわねん♪」

 

黒歌もまた、クッキーを食べてご満悦な様子だ。その黒歌の表情が、下校時に出会った少女となぜか重なる。

 

「んー・・・・似てなくもない・・・・か?」

 

「何の話にゃ?」

 

「いや、今日どことなく黒歌に似たような子と会ってさ。まあお前と違って小柄で髪の色は白かったけど」

 

「・・・・・え?」

 

俺の話を聞き、黒歌は驚いたような表情をして手にしていたクッキーを落としてしまった。

 

「黒歌、どうかした?」

 

急に様子の変わった黒歌に、オーフィスが心配そうに声をかける。

 

「その子・・・・咲良が会った子は多分、私の妹にゃ」

 

「黒歌の・・・・妹?あの子が?」

 

「特徴は一致してるから・・・・名前は聞かなかった?」

 

「いや、聞いてない。けど・・・・」

 

確かに名前は聞いていないが・・・・それでも、その子は間違いなく黒歌の妹なんだろうと思えた。黒歌の話を聞いて、なぜか確信が持てた。

 

「白音・・・・・咲良、白音は元気そうだった?」

 

「ああ。少なくとも、俺が見た限りでは元気そうだったよ」

 

「そっか・・・・・・それなら良かったにゃん」

 

安心したような笑みを浮かべる黒歌。だが、その表情はどこか寂しそうでもあった。

 

本当なら、妹に会いたいのだろう。だが、そういうわけにはいかない。黒歌は犯罪者として悪魔に追われているし・・・・・その妹だって、置き去りにされたと黒歌のことを恨んでるかもしれない。そのことは黒歌もわかっているだろうから・・・・・現状では会いにいくことはできないだろう。そう、現状では・・・・・

 

「・・・・・黒歌。今日、我と一緒に寝る」

 

「え?」

 

「咲良も。今日は我と黒歌と一緒に寝る。決定事項」

 

俺が考えにふけっていると、オーフィスが突然手を伸ばして黒歌の頭を撫でながら提案した。一瞬なんでそんなことを言ってるのかわからなかったが・・・・・すぐにオーフィスの意図は理解できた。寂しそうにしている黒歌を見て・・・・その寂しさを埋めようと提案したのだろう。

 

「・・・・・ああ、そうだな。今日は皆一緒に寝ようか。黒歌、それでいいか?」

 

「オーフィス、咲良・・・・うん。それでいいにゃ♪」

 

ニコリと、先程とは違う心から嬉しそうな笑顔で黒歌は返事を返した。

 

その日、俺達は3人寄り添って眠った。寂しさを埋めるように・・・・身を寄せ合って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、なぜ俺が真ん中だったのだろうか?こういう時普通は黒歌が真ん中じゃないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品は見ていて心温まる物語を目指しているようなそうでないような物語です

そして寂しがってる黒歌さんとその寂しさを埋めようとするオーフィスちゃん可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

実際問題、恋愛において容姿は重要な要素である

今回はなんというか・・・・少しでもハイスクールD×Dらしい話にしたいなと思った結果生まれた話です

そういう内容なのかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


「咲良、大事な話がある」

 

ある日、一通りの家事を終えて読書をしていた俺にオーフィスが声をかけてきた。その表情はいやに神妙だ。

 

「えっと・・・・・私席外したほうがいいにゃ?」

 

「ううん。黒歌も居てかまわない」

 

大事な話ならばと空気を読んで席を外そうとする黒歌だが、オーフィスは構わないと引き止めた。

 

「それで、大事な話ってなんなんだ?」

 

「咲良・・・・・」

 

まっすぐに俺を見つめるオーフィス。今までにない雰囲気だ。これは俺も心して話を・・・・

 

「咲良は大きいおっぱいと小さいおっぱいどっちが好き?」

 

「・・・・・・・・・・・・・は?」

 

オーフィスの口にする言葉の意味が一瞬分からず、俺は間抜けな声を出してしまった。黒歌も俺と同じように意外なのか、キョトンとした表情を浮かべている。

 

「・・・・オーフィス、もう一回言ってくれないか?」

 

「咲良は大きいおっぱいと小さいおっぱいどっちが好き?」

 

もしかしたら聞き間違いかオーフィスの滑舌が異様に悪かったからそう聞こえたのだと思って聞きなおすが、どうやらそうではなかったもよう。俺の耳は正常だしオーフィスの滑舌もなにも問題ないようだちくしょう。いっそ、そのどちらかだったらどんなに良かったことか・・・・・

 

「ぷっ・・・・くくくっ・・・」

 

黒歌の方を見てみると、さっきまでのキョトンとした表情とは一変して今は笑いを堪えている。はじめはあまりの意外さに意表を突かれたが、よくよく考えてみたら面白そうという結論に至ったのだろう。

 

まあ黒歌のことは置いておくとして、問題はどうしてオーフィスがこんなことを突然言いだしたかだ。

 

「えっと・・・・オーフィス?なんでそんなことを聞くんだ?」

 

「我と咲良が結婚の約束してから2ヶ月経った。それから一緒に寝るようになって一緒にお風呂に入るようになった」

 

「あー・・・・うん。まあ、そうだな」

 

当初は週三で一緒に寝ることになってたが今じゃ毎日だもんな。お風呂もほぼ毎日一緒に入るようになってるし。

 

そんなんで俺の理性が大丈夫かって?好きな子と毎日そんな風に触れ合ってるんだから大丈夫なわけない。もだが、慣れというのは怖いもので理性は危うくともどうにか本能に屈する一歩手前で留めておけるような耐性を手に入れたのだ。

 

「だから人間なりの段階に乗っ取るなら次は子作り・・・・・性交をすることになる」

 

「ごふっ!?」

 

「咲良!?」

 

オーフィスの口から語られた内容があまりにもあまりなため、俺はついつい吐血してしまう。そんな俺に、流石に洒落にならないと黒歌が駆け寄ってきた。

 

「傷は浅いにゃ!しっかりして咲良!」

 

「だ、大丈夫だ黒歌・・・・二次元、二次創作では希によくあることだからな」

 

「咲良、メタい上に希になのによくあるって矛盾してる」

 

「「オーフィスがツッコミだと!?」」

 

まさかの自体は重なる。あのオーフィスが、ちょっと天然入ってて純粋なオーフィスがつっこんだのだ。そんなもの俺も黒歌も驚きを隠せないに決まってる。

 

「く、黒歌・・・・正直キャパを超えそうだ。もうゴールして寝てもいいかな?夢の中に旅立ってもいいかな?」

 

「気持ちはわかるけどダメ!そうなったらこの自体収集できないしこの話がいつまでたっても終わらないから!そうなったら私や作者が泣くにゃ!」

 

「黒歌・・・・・お前までメタいこと言うのか」

 

どうやら今回はそういうのが許される回らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、話を続けようか」

 

あれから30分ほどして、ようやく落ち着けたので話を再開することにした。

 

「とりあえずオーフィス、実際子作りするかどうかは置いておいて・・・・」

 

「咲良は我と子作りしたくない?」

 

「そういうわけじゃないから。むしろ俺だってしたい」

 

「本音を隠さなくなったにゃ。エッチな咲良」

 

うるさい。好きな子としたいと思って何が悪い。

 

「ともかく、オーフィスが言ってた人間なりの段階の乗っ取る云々は心当たり(十中八九爺さん)があるから敢えて突っ込まないとして、そのことと俺が大きい胸と小さい胸のどっちが好きなのかはいったいどういう関係があるんだ?」

 

「違うにゃ咲良。大きいおっぱいと小さいおっぱいのどっちが好きなのかよ」

 

「呼び方変えただけで同じだろ」

 

「咲良、呼び方は大事。この場合はおっぱいのほうがいい」

 

・・・・・ダメだ。ここは俺のほうが分が悪すぎる。スルーして話を戻そう。

 

「とにかく、どういう関係があるのか教えてくれオーフィス」

 

「わかった。人間にとっての子作りは繁殖以外にも性的欲求を満たす愛情行為であり、享楽のための行為でもあるって前に読んだ本に書いてあった」

 

よし、その本を勧めたであろう爺さんは帰ってきたら食事は白湯のみの刑だな。

 

「だから、子作りするときは咲良に楽しんでもらいたいって我考えてその為にいろいろ勉強した」

 

そう言いながらオーフィスはどこからか数冊の本を取り出した。本には『男が好むフェチズム100選』『貧乳と巨乳~尽きることなき永久の論争~』『男は女のここが好き(身体部位編)』などなど、見ているだけで頭が痛くなりそうなタイトルが書かれている。

 

「胸、お尻、髪、くびれ、うなじ、鎖骨・・・・男にはそれぞれ好みの大きさ、形があるって我知った。我は姿を変えられるから、咲良の好みに合わせられる」

 

「つまりさっき俺が大きい胸か小さい胸のどっちが好きなのか聞いたのって・・・」

 

「咲良の好きな大きさに変えようと思ったから」

 

俺のために胸の大きさまで変えようっというのか・・・・いや、胸だけじゃない。オーフィスは体のあらゆる部位を俺好みに変えようとしている。そこまで俺のことを・・・・

 

「男の大多数は大きいおっぱいが好きだって情報を我は得てる。やっぱり咲良も大きいおっぱいが好き?黒歌のも夢中で見てた」

 

「・・・・咲良~?それはどういうことにゃ?」

 

オーフィスの発言に食いついた黒歌。ニヤニヤと笑みを浮かべて俺に詰め寄ってくる。

 

「いや、その・・・・あれは不可抗力で・・・・・」

 

「黒歌がうちに来たとき、治療で服をぬがせてたけど咲良、黒歌の胸を凝視してた。やましい気持ちはないって言ってたのに」

 

「いやんエッチ♪」

 

「オーフィスさんマジ勘弁してください」

 

どうにか誤魔化そうとした俺だが、オーフィスが包み隠さず暴露してしまった。やましい気持ちはないって言ったのに凝視してしまったことまだ根に持っているのか・・・・・いや、確かに俺が悪かったけども。

 

「へ~・・・・咲良が私の胸をね~。咲良も男の子なのねん♪」

 

「うぐっ・・・・」

 

言い返してやりたいが、反論する余地が全くない。ここは甘んじて受け入れるしかない。

 

「前は大きいおっぱいが好きなら揉めばいいって言ったけど、考えてみればそんなことしなくても我は簡単に姿を変えられる。咲良が大きいおっぱいがいいって言うならすぐに大きくする。どうする?」

 

「オーフィス・・・・」

 

こてんと首を傾けながら尋ねてくるオーフィス。オーフィスが俺のために自分の姿さえ変えようとしてくれているのは嬉しい。俺も男だから好みというものは確かにある。

 

だけど・・・・・

 

「いいや・・・・オーフィスはこのままでいいよ」

 

俺はオーフィスの頭を撫でながら言う。

 

「・・・・いいの?」

 

「ああ。確かに俺にも好みはあるよ?だけどな・・・・俺は今のオーフィスが一番好きだ」

 

「今の・・・我が?」

 

「そう。初めて会ったときから変わらない・・・・変わらないでいてくれたオーフィスの今の姿が俺は好きだ。だから変わらなくてもいい」

 

確かに、見た目が幼女だから前の桐生の時みたいにペド扱いされたりもするけど、それでも俺はやっぱり今のオーフィスが好きだ。だから変わる必要なんてない。

 

「でも・・・・・咲良は変わる」

 

「え?」

 

「変わらない我が好きって言ってくれるのは嬉しい。けど、咲良は変わる。初めて会ったときは我と同じぐらいだったのに、今じゃ我が見上げてる」

 

まあ俺は人間だからな・・・・成長して体つきが変わってしまうのは仕方がないことだ。

 

「オーフィスはそれがいやなのかにゃ?」

 

「・・・・我は嫌じゃない。大きくなっても咲良は咲良。だけど、我だけ変わってないから・・・・咲良はそれが嫌じゃないか気になる時がある」

 

そっか・・・・俺の好みに合わせるためだけじゃなくて、オーフィスは変わらない自分が俺に嫌がられるんじゃないかって不安だったのか。正直、俺ではオーフィスの気持ちを理解してあげることはできないけれど・・・・

 

「まったく・・・・可愛いやつめ」

 

「咲良?」

 

俺はオーフィスを愛おしく感じるあまり、抱きしめてしまった。

 

「いいんだよそんなこと気にしなくたって。さっきも言ったけど、俺は今のオーフィスが大好きだ。嫌だなんて思ったことはないから。それでもどうしても不安に感じてしまう時は・・・・こうして何度でも抱きしめて嫌じゃないって証明してみせるよ」

 

これが俺に出来る精一杯。これぐらいのことしかできないけれど・・・・それでも俺は・・・

 

「咲良・・・・・わかった」

 

俺の背に手を回し、俺の胸に顔を摺り寄せてきながらオーフィスは言う。どうやら不安は和らいだらしい。

 

「俺の方からも聞くけど・・・・これから先、俺は歳をとるたびに姿が変わってしまうけれど、オーフィスはそれでも構わないか?」

 

「大丈夫。どんな姿になっても咲良は咲良。我の大好きな咲良であるということは変わらない」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

 

「それはお互い様」

 

「だな」

 

ギュッと抱きしめる力を互いに強める俺とオーフィス。話の始まりは中々に酷かったが・・・・こういう帰結になるのなら、悪くはないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、二人共・・・・・私もいるってこと途中から忘れてない?いい加減胸焼け起こしちゃいそうなんだけど・・・・」

 

「ごめん黒歌。忘れてないけどもうちょいこのままでいさせて」

 

「我、もっともっと咲良を堪能する」

 

「・・・・・またこのパターンかにゃ」

 

本当にすまない黒歌。今日の夕食はお前の好きなもの作るから許してくれ。

 

 




今のままのオーフィスちゃんが一番だと思っている咲良さんと、咲良さんのためなら姿を変えることも厭わないオーフィスちゃん

それぞれ考え方は違いますが、お互いのことを想い合ってるがゆえの考えなので結局はバカップル・・・・もとい似たもの夫婦です

咲良のためなら何でもしそうな勢いのオーフィスちゃんは本当に可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

普通に考えたら『うちにご飯食べにこない?』ってナンパじゃね?

はい、今回はある人物二人を咲良さんが拾います

誰なのかは本編にてご確認を

それではどうぞ


爺さんいわく、俺は人一倍お人好しな人間らしい。困ってる人がいたら手を差し伸べずにはいられない、自分の出来ることで助けずにはいられないそんなある種どうしようもないレベルのお人好しだそうだ。

 

正直自分ではそんなことはないと思っている。別に誰彼構わず助けたいと思っているわけではないし、平凡な自分なんかで助けられるひとなんてそんなにいないと思っている。強いて言うなら・・・・・そう、ただ自分の納得のいくようにしたいだけの自分勝手なエゴイスト・・・・・であると思う。

 

故に俺は決してお人好しではない。つまり・・・・・

 

「迷える子羊にお恵みを・・・・」

 

「どうか天の父に変わって哀れな私達に慈悲をぉぉぉ・・・・」

 

・・・・つまり、目の前にいる白ローブを着込んだなんとも哀れな二人組の女性を助けたいと思ってしまったのは俺のエゴであり、お人好しではない。断じて違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に・・・・・本当にありがとうございます!」

 

「助かった・・・・君はまさに天が私達に送ってくれた御使いだ」

 

「うん、感謝の言葉は受け取るけどちょっと大げさだよ?」

 

俺は現在、白ローブの二人の女性・・・・・ゼノヴィアとイリナを連れながら家に向かっている。

 

学校帰りに涙目になって募金活動をしていた二人を見つけた俺は、初めはとりあえず少しだけでも募金しようと思っていたのだが・・・・・なんかそのうち二人が言い争いを始めて、話の流れから金を募っていた理由が空腹だとわかったので『だったらほんの少しのお金を募金するよりもうちでご飯食べさせたほうがよくね?』と自分の中で結論づけて二人に声をかけたら・・・・・是非お願いしますと即答され、現在に至るというわけだ。

 

「というか二人共、そんなに困ってたの?」

 

「ああ。なにせ完全に路銀が尽きてしまってな。全く・・・・イリナが詐欺まがいな変な絵画を購入するからだ」

 

「変な絵画じゃないもん!これはペドロ様の肖像画だもん!」

 

「断じてペドロ様はこんなのではない」

 

「そんなことない!ペドロ様はきっとこんなのよ!」

 

イリナ、仮にも様付けしてる相手をこんなの言うなよ。

 

「二人共、言い争いなんてすると余計にお腹空くからやめたほうがいいと思うんだけど」

 

「「・・・・・はい」」

 

俺の言葉を受け、二人はすぐさまおとなしくなる。かわいそうなほど空腹なのだということがよくわかる。

 

「すまない。本当になんとお礼を言えばいいか・・・・」

 

「主よ。心優しい少年にご慈悲を」

 

イリナが俺に向かって十字を切ってくる。

 

主のご慈悲、ね・・・・・

 

「イリナの言う主っていうのは聖書に記されている神様かな?」

 

「そうよ!全知全能にして慈悲深い神様よ!」

 

「私たちにとっては絶対の信仰対象だ。主のために、私達は生きているといっても過言ではない」

 

「へぇ・・・・うん、そっか」

 

二人共、信仰深い信徒のようだな・・・・・だからこそ余計に哀れに感じてしまう。だって彼女達の信仰する神はもう・・・・まあ、それを俺の口から告げるのは酷すぎるか。

 

「俺の家すぐそこだからもうちょっとだけ我慢してくれ。着いたらお腹いっぱいご馳走するよ」

 

「「本当にありがとうございます」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着。ここが俺の家だよ」

 

彼女達を連れて10分ほどして、我が家の門前についた。

 

「随分と古いおうちなのね」

 

「イリナ、失礼だぞ」

 

「別に構わないよ。周りの家に比べて古いってのは確かだからさ」

 

爺さん築何年だったっけか・・・・・確か5、60年だったかな?まあ、爺さんが魔法やらなんやらで強度上げてるみたいだけど。

 

「さて、これからうちに上がってもらうわけだけど・・・・一つ、守ってもらいたいルールがある」

 

「守ってもらいたいルール?」

 

「ああ。揉め事、荒事は原則禁止・・・・それがうちでのルールだ。これは必ず守ってもらう」

 

「え?言われなくてもそんなつもりはないけど・・・・」

 

「恩人の家で荒事なんて起こさないさ」

 

と、イリナとゼノヴィアは言うけど・・・・そうなる可能性が拭いきれない理由があるんだよなぁ。大丈夫であって欲しいが、二人が熱心な信者だとしたらそうもいかないかもしれない。なんか言い争いしてた時『エクスカリバー』とかいう不穏な単語が聞こえてきたし・・・・教会の戦士である可能性がある。

 

「ともかく、ルールは守ってもらうよ。守れなかったらそれなりのペナルティがあると思ってくれ」

 

「ペナルティ?それってどんな?」

 

「まあ、相応のとだけ言っておくよ。さあ、上がってくれ」

 

俺は二人の入居を許可する。家を守る結界は俺の許可を経て、二人の来訪が可能となった。

 

「おかえり咲良」

 

門をくぐり、玄関を開けるとすぐさまオーフィスが俺に抱きついてくる。結婚の約束をして以来、この出迎えはすっかりと定番となっていた。

 

「うん、ただいま」

 

「・・・・その二人は?」

 

オーフィスはゼノヴィアとイリナの方を見ながら言う。

 

「あの二人は・・・・まあお客さんだよ。お腹すいてるみたいだからご飯作ってあげようと思ってね」

 

「・・・・そう。ならいい」

 

ならいいって・・・・前の桐生のことといいもしかして、浮気の心配をされているのだろうか?まあ、婚約者としてそういう心配されてるってある意味では嬉しいから構わないけど。

 

「とりあえず、二人に自己紹介しな」

 

「わかった。我は・・・・」

 

「咲良おかえりー。お腹すいちゃったからご飯早めにお願いするにゃん」

 

オーフィスが自己紹介しようとした時、黒歌が現れご飯を早く作って欲しいとせがんできた。

 

「ッ!?イリナ!」

 

「ええ!」

 

黒歌の姿を捉えた瞬間・・・・ゼノヴィアとイリナは各々剣を取り出し、戦闘態勢に入る。

 

うん・・・・まあ正直こうなるかなぁとは予想はしていた。だって黒歌は悪魔でゼノヴィアとイリナは教会の戦士なんだもん。確証はなかったけど、剣出したってことはもう間違いないだろう。

 

「まさかこんなところに悪魔がいるとはな・・・・覚悟しろ!」

 

「私達のエクスカリバーで裁きを与えてあげるわ!」

 

ああ、もう・・・・二人共黒歌に敵意向けてるし。問答無用とか勘弁してくれよ。連れてきたの俺だけど。

 

「えっと・・・・咲良?これどういうことかにゃ?」

 

「ごめん黒歌、事情は後で説明する。とりあえず二人共剣を納めてくれ」

 

俺は剣を構える二人の前に立ち、剣を納めるように言う。

 

「悪魔を目の前にして剣を納めるなど無理な話だ。ただの自殺行為でしかない」

 

「待ってて湊内咲良くん。私達があなたを騙していた悪魔を倒してあげるから」

 

うわぁ・・・・・剣収める気全然ないよこの子達。イリナに至ってはなんか俺が黒歌に騙されてるとか思ってるし。一体黒歌のことどう思ってるんだろう?いや、そんなことはどうでもいい。早く二人を止めないと大変なことに・・・・

 

「・・・・倒す?黒歌を?そんなの我、許さない」

 

「「ッ!?」」

 

ほらね・・・・オーフィスが二人に殺気ぶつけちゃってるよ。ゼノヴィアもイリナもなんかすっごい萎縮しちゃってるよ。そりゃ当然だ。だって相手は最強の龍神様であるオーフィスなんだからビビらないはずない。

 

とにかく取り返しがつかなくなる前に止めないと・・・・

 

「はいはい、ストップだオーフィス。殺気を鎮めな」

 

「でも、この二人黒歌を・・・・・」

 

「わかってる。だからそうならないように二人のことは俺が説得するから。だから一旦殺気鎮めよう?」

 

「・・・・・わかった」

 

オーフィスは俺に任せてくれた、殺気を鎮めた。あとはゼノヴィアとイリナだな。

 

「ゼノヴィアとイリナも剣を収めてくれ。家に上がる前に言ったよな?うちでは荒事は禁止だって」

 

「だ、だが・・・・」

 

「目の前に悪魔が・・・・」

 

「ルール破るって言うならご飯食べさせないぞ?」

 

「イリナ、剣を納めろ。私達には悪魔と戦うこと以上に大事なことがある」

 

「そうね。今は空腹を満たすことが先決だわ」

 

ご飯を食べさせないというと、二人は即刻剣を鞘に納めた。うん、まあどうにかなるかなぁとは確かに思ったけど・・・・・チョロすぎじゃない?

 

「ゼノヴィア、イリナ。もうこの家にいる間は剣を抜いたりはしないでくれよ?教会が悪魔のことをどう思っているかは多少は理解しているけど、黒歌は人様に迷惑をかけてるわけでも悪事を働いてるわけでもないんだ。だから、一方的に敵意を向けるのはやめてくれ。頼む」

 

俺はゼノヴィアとイリナに頭を下げて頼み込む。

 

はっきり言ってしまえば、この二人がその気になったとしても黒歌が倒されるということはないだろう。オーフィスがいるからっていうのはもちろんだが、おそらくオーフィスが手を出すまでもなく二人では黒歌には敵わない。黒歌は結構な実力者みたいだからな。

 

だが、だからといって黒歌に敵意が向けられるというのは俺としては気分のいいものではないからな・・・頭ぐらいいくらでも下げる。

 

「・・・・恩人にそう言われてしまってはな」

 

「恩人の言葉を無視するのは流石に失礼よね」

 

「ありがとう」

 

どうやら二人共わかってくれたようだ。とりあえずはこれで大丈夫そうだな。

 

さて・・・・次は黒歌に謝らないと。

 

「ごめんな黒歌。この二人が悪魔と敵対してる教会の人間だっていうのはわかってたんだけど・・・・だいぶお腹空かせてて困ってるみたいだったからさ。放っておけなくて連れてきちまった」

 

「別に謝る必要はないにゃ。咲良がそういう人間だからこそ厄介な事情を抱えてる私もこの家においてくれてるってことはわかってるし。だから私は気にしないにゃ」

 

「黒歌・・・・・ありがとう」

 

「お礼を言う必要もないにゃん♪」

 

ほんっと、普段は飄々としてるけど黒歌っていい奴だよな。

 

「あ、それはそれとして今日は鰈の煮付けが食べたいんだけど」

 

「ははっ。了解」

 

まあ、ちゃっかりしてもいるけど・・・・それはそれで黒歌のいいところか。

 

あとは・・・・

 

「オーフィスもゴメンな」

 

「なんで咲良謝る?」

 

「いや、事前に何の説明もせずに二人のこと連れてきちゃってこんなことになっちゃったからさ」

 

「・・・・別にいい。咲良の決めたことなら我文句言わない」

 

「そか・・・・サンキュ」

 

「ん」

 

オーフィスの頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。

 

「えっと・・・・ちょっといい?」

 

恐る恐ると、イリナが声をかけてきた。ゼノヴィアもなんか神妙な面持ちだ。

 

「ん?なんだイリナ?」

 

「その・・・・湊内くん、その子のことオーフィスって呼んでるけどもしかして・・・・」

 

・・・・ああ、なるほど。そういうことか。

 

「イリナが思ってるとおりだよ。コイツはオーフィス・・・・あの無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスだ」

 

「・・・・・うそ」

 

「まさか・・・・そんな」

 

よもやこんなところに世界最強の龍神たるオーフィスがいるとは思っていなかったのか、二人は呆然としていた。

 

「咲良。もっと撫でて」

 

「はいはい」

 

そんな二人などお構いなしといったように、いつも通りなオーフィス。うん、やっぱり俺の婚約者可愛いわ。

 

 




というわけで咲良が拾ってきたのはゼノヴィアさんとイリナさんでした

咲良さんの交友関係を考えるともはやそれぐらいことは普通のことのように感じてしまう

だって、ほかと比べると・・・・教会の戦士ぐらい・・・ね?

そして黒歌さんを守ろうとするオーフィスちゃん可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

男1人に女4人・・・・・・どう考えても羨ましいです

当小説はサブタイトルへのツッコミを受け付けておりません

サブタイトルから内容を察知できなくても責任を負いかねませんのでご容赦を

それでは本編どうぞ




「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

「すごい食べっぷりにゃ」

 

物凄い勢いで俺の作った料理を食べるゼノヴィアとイリナを見て、黒歌は呆れていた。気持ちはわかる。だってこの食べっぷりは正直女性のそれじゃないように見えるし・・・・正直これは俺も呆れる。まあ、それだけ空腹だったということなのだろうが。

 

「・・・・・二人共間違ってる」

 

「「え?」」

 

次々とおかずを食べ進める二人に、オーフィスはどこかむっとした表情浮かべながら言う。

 

「日本の食事が美味しいんじゃない。故郷の味だから美味しいんじゃない。咲良の料理だから美味しい。咲良の料理は世界一」

 

「湊内くんの料理だから美味しい・・・・なるほど」

 

「確かにこれほどうまい食事はこれまでの人生で初めてだ・・・・世界一と言われても納得できる」

 

オーフィスがどこか誇らしげに言うと、イリナもゼノヴィアもなぜか感銘を受けている。いやいや、オーフィスにそう言ってもらえると嬉しいけど・・・・・世界一は言いすぎじゃないか?

 

「オーフィスがそう言うのもよく分かるにゃ。私もそこそこ裕福な悪魔の眷属だったけど、あそこでもこんなに美味しい料理は食べられなかったし。咲良の料理は間違いなく世界一ね」

 

お前もか黒歌。というか冥界基準で考えても俺の料理レベル高いの?

 

「ああ、主よ。世界一美味しいの料理を食べさせてくれた少年に慈悲を」

 

「アイタッ!?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

イリナが俺に向かって十字を切った瞬間、黒歌が頭抑えた。どうやら目の前で十字を切られたせいでダメージを受けてしまったらしい。自分に対してではないというのに・・・・・悪魔というのはこういう時不便だな。

 

「ともかく、今はこの料理を存分に堪能しなければな。というわけで咲良、おかわりを頼む」

 

「あ、私も!」

 

「我もおかわり」

 

「咲良ー、さっきの十字でダメージを受けた私にもお願いにゃ」

 

「はいはい」

 

俺に茶碗を突き出してくる4人を見て、俺は思わず苦笑いを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても・・・・・まさに驚くべきことだ」

 

「本当よね」

 

食後に出したお茶を飲んいるゼノヴィアとイリナは、こちらを見ながら言う。

 

「うん、まあ・・・・普通はそうなんだろうな」

 

俺は膝の上にちょこんと座るオーフィスを見やる。

 

「世界最強と称されるドラゴン・・・・無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス。それがこんな可愛らしい女の子だって言うんだから、ゼノヴィアとイリナが驚くのも無理もないか」

 

「いや、それもなんだけど・・・・」

 

「それ以上に、そのオーフィスを咲良が婚約者にしてるっていうのがな。驚きを通り越してもはやどうリアクションをとればいいのかわからなくなる」

 

ああ、そっちか。

 

「やっぱり珍しいことなのか?」

 

「咲良・・・・はっきり言ってそれ珍しいってレベルじゃないにゃん。どう考えても前代未聞だから」

 

「我、咲良以外に結婚したいと思う相手にあったことない。これからも咲良以外にそう思うことないから咲良が最初で最後」

 

「そか・・・・俺のこと好きになってくれてありがとうなオーフィス」

 

「ん」

 

オーフィスの頭を撫でてやると、怪訝良さそうに俺に擦り寄ってきた。俺の婚約者マジ可愛い。

 

「・・・・ねえゼノヴィア。なんだかさっきデザートのプリンを食べたときよりも口の中が甘いんだけど・・・・」

 

「奇遇だなイリナ。私もだ」

 

「気持ちはよく分かるにゃ。ほんとに」

 

何やら俺とオーフィスを見てゲンナリとしているゼノヴィアとイリナ。そんな二人に、黒歌は同情の視線を送る。そんなに今のやりとりって甘たっるいか?いつものことなんだが・・・・

 

「いつものことだからそんなに甘ったるくないだなんて思ってるならそれは大間違いよ咲良。私は毎日砂糖を吐きそうな思いをしてるんだから。私は・・・・毎日・・・・」

 

「「心中察する(わ)」」

 

遠い目をしながら言う黒歌に、ゼノヴィアとイリナは肩に手を置きながら慰める。黒歌は悪魔なのに教会の戦士である二人が慰めるとかとんでもないレアな光景だ。

 

「えっと・・・・まあすまないな黒歌。悪いとは思う」

 

「じゃあ頻度減らしたりは・・・・」

 

「我、咲良ともっとイチャイチャしたい」

 

「というわけで頻度は減るどころか増えそうだ」

 

「うん、知ってた」

 

ほんとごめん黒歌。でも、オーフィスにここまで言われちゃあイチャイチャするしかないじゃないか。

 

「世界最強の無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)がこんなところで人間相手にイチャイチャ・・・・教会が知ったら大騒ぎになりそうね」

 

「ふむ・・・・イチャイチャはともかくとして、その言い方からしてあの人はオーフィスのことちゃんと秘密にしてくれてるんだな」

 

「ん?まるで教会内にオーフィスがここにいることを知っている者が存在しているみたいな言い方だな・・・・」

 

「いや、まるでもなにもいるぞ?教会内でオーフィスがここに居ること知ってる人。一人だけだけど」

 

「「・・・・え?」」

 

俺の発言に、ゼノヴィアとイリナの表情は共学に染まる。今日これで何度目だろうか。

 

「嘘・・・・居るの?教会内に知ってる人?」

 

「ああ。厄介事になるかもしれないから秘密にしておくと言っていたが本当に誰にも言っていないようで安心した」

 

「その人も言っても信じてもらえないと思ったんじゃない?普通なら誰だって信じないと思うにゃ」

 

まあ、世界最強の龍神様がこんなところにいるだなんて普通は考えられないから黒歌の言い分はもっともだ。だけどあの人って教会内でも結構な地位らしいから言えば信じた人も多いんじゃ・・・・それがわかってたから言わないでくれたんだろうし。

 

「ちなみにその人物の名は・・・?」

 

「ヴァスコ・ストラーダって人だ」

 

「「ストラーダ猊下!?」」

 

俺が名前を出すと、ゼノヴィアもイリナも声を張り上げた。

 

「二人共ストラーダのこと知ってる?」

 

「知ってるに決まってるでしょ!教会の重鎮も重鎮!教会の戦士達の指導者よ!」

 

「御年八七歳になられるが、現在でも教会においてトップの戦士だと断言できる!まさかここでその名が出てくるとは・・・・・」

 

オーフィスが聞くと、二人は少々興奮気味に答える。というかストラーダさんってそんなにすごい人だったのか・・・・・外見は老人とは思えないほどごつかったけど、気さくなお爺さんって印象だったんだが・・・・

 

「そもそも、どうして猊下がオーフィスのこと知ってるの?」

 

「4年ぐらい前だっけか・・・・俺の爺さんがストラーダさんをここに連れてきたんだよ。古い友人だからもてなしてやってくれってな。それがきっかけであの人はオーフィスのこと知ったんだ」

 

「猊下を古い友人?咲良、お前のお爺さんの名は?」

 

「湊内伊槻」

 

「ああ、うん・・・・・」

 

「なんか・・・・納得したわ」

 

およ?この反応もしかして・・・・・

 

「二人共爺さんのこと知ってるのか?」

 

「何度か会ったことがあるわ。『俺がお前達を鍛え直してやるー』とか言って修行をつけてもらったんだけど・・・・」

 

「やめろイリナ。思い出させないでくれ」

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

クソ爺何しやがった?ゼノヴィアとイリナの萎縮の仕方が半端ないぞ。

 

「あのクソ爺・・・・・二人にどんな修行をつけたのかは知らないが、帰ってきたら説教してやらないとな。何かやりすぎっぽいし」

 

「あのバケモノに・・・・・説教?」

 

「湊内くん・・・・・それ本気で言ってるの?相手はあのバケモノなんだよ?」

 

どうやら爺さんはバケモノ呼ばわりされているらしい。まあ、オーフィスを力で押さえつけられるんだからそう言われても仕方がないかもしれないな。

 

「安心しろ。爺さんに説教するのが家族としての俺の責任だ。きっちりと悔い改めさせるさ」

 

二人の件以外にもオーフィスに色々と吹き込んでくれたからな・・・・・マジで覚悟しろよクソ爺。

 

「・・・・私は会ったことないけど、咲良のお爺さんには同情するにゃ。咲良の説教だなんて・・・・」

 

「黒歌震えてる。寒い?」

 

違うよオーフィス。黒歌が震えてるのは寒いからじゃない。恐いからだ。自分で言うのもなんだけど。

 

「あのバケモノにしてこの孫あり・・・・ということだろうか?」

 

「なんだか湊内くんのこと恐くなってきたわ・・・・恩人なのに」

 

いや、なんで俺が恐がられなきゃならないんだよ・・・・爺さんの説教上乗せしてやる。

 

「まあ爺さんのことは置いておくとして、一応言っておくけどオーフィスのことは・・・・」

 

「安心して。私達も秘密にするわ」

 

「咲良には恩があるからな。それぐらいのことは構わない。言えば騒ぎになるだろうしな」

 

よかった、二人共オーフィスのことは秘密にしてくれるようだ。教会ぐらい大きな組織に知られると面倒事になりかねないからな。それをわかってストラーダさんも秘密にしてくれてるんだろうし。

 

「まあ、そもそも生きて帰れるかわからないがな・・・・」

 

「・・・・・そうね」

 

「・・・・それ、どう言う意味だ?」

 

嫌に神妙な雰囲気で言う二人。それが何を意味してるのか気になった俺は聞いてみた。

 

「任務・・・・とだけ言っておこう。恩人とはいえ、これ以上のことは無関係な一般人に話すわけにはいかないからな」

 

「ごめんね湊内くん」

 

だが、二人は詳しくは教えてくれなかった。まあ、教会の事情を無関係な俺に教えるわけにはいかないに決まってるか。

 

「いや、俺の方こそ詮索して悪かった。任務頑張ってくれ」

 

「ああ。死力を尽くすよ」

 

「何があっても絶対に成し遂げてみせるわ」

 

「・・・・二人共、死ぬ気?」

 

黒歌は、真剣な面持ちで二人に尋ねる。

 

「死ぬつもりはない。だが、生きて帰られるかはわからない」

 

「それでも私達は覚悟の上で任務を受けた。だから恐れたりはしないわ」

 

二人の目からは確かな覚悟が感じられた。教会に・・・・神に対する信仰が二人にこれほどまでの覚悟を強いているのだろうか?だとしたら・・・・やはり現実は残酷だと言わざるを得ない。

 

だって二人が信じる神は・・・・・・もういないのだから。

 

「・・・・死ぬのは良くない」

 

「「え?」」

 

「我、死がどういうものかわからない。でも、良くないものだっていうのはわかる。だから、二人共死んじゃダメ」

 

じっとゼノヴィアとイリナのことを見つめながら言うオーフィス。今日あったばかりだが、二人とは同じ食卓を囲んだ・・・・ゆえに、オーフィスは二人に縁を感じ心配しているのだろう。

 

「オーフィスの言うとおりだな。死ぬのはよくないことだ。俺も二人には生きていて欲しい。どんな任務なのかは知らないが生きて・・・・またうちにご飯食べに来いよ。次はもっとうまいの食わせてやる」

 

「賑やかな食事は好きだし・・・・私もあなた達が生きて任務を終えられるように祈っておいてあげるわ。悪魔からの祈りなんていらないかもしれないけど」

 

オーフィスに続いて、俺と黒歌も言う。俺も黒歌も、オーフィスと同じように二人が心配でたまらないのだ。

 

「もっと美味しいものをか・・・・ふっ、そんなことを言われては死ぬわけにはいかないな」

 

「そうね。何が何でも生きて任務を全うして・・・・またここにご飯を食べにきましょゼノヴィア」

 

「ああ」

 

ニコリと微笑みを浮かべ、またここにご飯を食べに来ると誓うゼノヴィアとイリナ。

 

「では、そろそろ私達は失礼しよう」

 

「そろそろ任務に戻らないといけないもんね」

 

どうやら二人はもう行ってしまうらしい。今日ぐらいうちでゆっくりしていけばいいと言おうと思ったが・・・・やめておいた。ここで止めてしまえば、逆に迷惑かもしれないからな。

 

だから・・・・引き止める代わりに、俺は二人に言う。

 

「ゼノヴィア、イリナ・・・・またな」

 

「我、二人が来るの待ってる」

 

「ああ・・・・また」

 

「3人とも、次に会う時まで元気でね」

 

「それはこっちのセリフにゃん」

 

再会の約束を交わして、俺達は任務に赴くゼノヴィアとイリナを見送った。

 

 




伊槻爺さんとストラーダ猊下はお友達。というより戦友?

おそらくこの世界において人間同士の友達の中では最強でしょう。そもそも伊槻爺さん最強だけど

それにしてもあったばかりのゼノヴィアさんとイリナさんのこと心配するオーフィスちゃん優しい可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転校してきた女の子ってそれだけでヒロイン力が上がる気がする

またまた酷いサブタイだけどまあお気になさらず。本編とそこまで関係ないから・・・・たぶん

そしてラストでとうとうあの方が・・・・

それでは本編どうぞ


縁というのは不思議なものだ。どこで生まれ、どう紡がれていくのかはきっとどんな賢人にだって予測することはできないだろ。そしてそれは俺にも言える。周りの連中いわく、俺は縁を築く能力が異様なまでに高いようだが、別に意識しているわけではないし、どう紡がれていくのかなんて予測できるはずもない。

 

というか・・・・・こんなの予測できるわけがない。

 

「このクラスに転入したゼノヴィアだ。よろしく」

 

「・・・・マジかー」

 

数日前うちでご飯を食べた教会の戦士ゼノヴィアが・・・・うちのクラスに転入してくるなんてマジどうなってるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか転入してきたクラスに君がいるとは思わなかった。驚いたよ咲良」

 

「まあそりゃ驚くだろう。でもな・・・・確信持って言えるけど、俺の方がゼノヴィアの数倍驚いてるよ?」

 

朝のHRを終えて、俺は速攻でゼノヴィアを学校の屋上に連れてきた。理由はもちろん事情を説明してもらうためだ。連れ出すときほとんどクラスメイトに不思議そうな視線を送られたが、正直気にしている余裕はなかった。

 

「とりあえず、どういう経緯でうちのクラス、というよりこの学園に転入することになったのか簡潔にでいいから教えてくれないか?」

 

「色々あって悪魔に転生してね。それでこの学園に転入することになったんだ」

 

「簡潔にって言ったけど普通はもう少し具体的に説明しない!?」

 

あまりにも簡潔すぎる説明に、俺は思わずツッコミを入れてしまった。ただまあ、おそらく最も重要でありそうな『悪魔に転生』のところだけでも知れたからまだマシだが。

 

「どういういきさつで悪魔になったのか教えてくれるか?」

 

「・・・・・色々あってね」

 

「・・・・イリナはどうしてる?あいつもこの学園に転入しているのか?」

 

「イリナは・・・・任務を終えて教会に帰った。悪魔に転生し、この学園に転入したのは私だけだよ」

 

「・・・・どうしてそうなった?」

 

「・・・・・色々あってね」

 

どうやらゼノヴィアに話す意思はないらしい。正直、どういったいきさつがあったのかは非常に気になるのだが・・・・これ以上それで詮索するのはやめようと思った。ゼノヴィアの表情がどこか悲しそうで・・・・辛そうだったから。

 

本来悪魔と敵対関係にある教会の戦士が悪魔に転生したのだ。それも、共に任務に就いていたイリヤと一緒にではなく、ゼノヴィア一人で・・・・よほどの事情があるのだということはわかる。それを言いたくないのなら聞かないでおくべきだろう。

 

「言いたくないなら無理に言わなくてもいいさ。聞き出そうとして悪かった」

 

「いや、咲良が謝ることはない。私の方こそすまない・・・・本来恩人である君にはきちんと事情を説明するのが筋なのだが・・・・」

 

「気にしなくてもいいさ。恩云々のこともな。別に俺としては恩を売ったつもりはないんだからさ」

 

「そういうわけにはいかない。君は私にとって恩人・・・・その思いを忘れてしまえば私は自分が許せなくなる」

 

どうにも頑ななゼノヴィア。義理堅いというかなんというか・・・・・まあそういうところは素直に好感が持てるけど。ただ、やっぱり恩人扱いはくすぐったいな。

 

「まあどういういきさつがあったにせよ、これからクラスメイトとしてよろしくなゼノヴィア」

 

「ふむ・・・・クラスメイトとして、か」

 

とりあえず握手でもしておこうかと手を差し出して言うが、ゼノヴィアはなぜか考え込む仕草を取った。

 

「ゼノヴィア?どうした?」

 

「いや、まあ・・・・私個人としてはクラスメイトではなく、咲良の愛人になりたいと思ってね」

 

「・・・・・は?」

 

一瞬、ゼノヴィアが何を言っているのかわからずに俺は間の抜けた声を上げてしまった。

 

「ゼ、ゼノヴィア?お前は一体何を・・・・」

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

俺がゼノヴィアに先ほどの発言の意味を尋ねようとしたら、予鈴がなってしまった。

 

「む?これは予鈴というやつか?さすがに転入初日から授業に遅れるのはマズイな・・・・咲良、教室に戻ろう」

 

「いや、ちょと待て。その前にさっき言ってたことの意味を・・・・」

 

「そんなことより早く戻るぞ」

 

「ちょ、ゼノヴィア!」

 

俺は待ったをかけるが、構わずにゼノヴィアは俺の手を引いて教室へと向かい始める。結局、先程のゼノヴィアの発言の意味を聞くことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼノヴィアが悪魔になって咲良のクラスに転入って・・・・・一体どういう経緯でそんなことになったの?」

 

「色々あったらしい」

 

学校を終え、家に帰ってきた俺はオーフィスと黒歌にゼノヴィアのことを話した。黒歌の方は予想通りのリアクションを返し、オーフィスも表情はあまり変わらないがどこか驚いている様子だ。

 

「色々ね・・・・・教会の戦士が悪魔に転生するような事情って一体・・・?」

 

「それについては俺も気になるけど、ゼノヴィア自身が事情を説明したがらないからな。その事情がなんなのかはわからない」

 

「・・・・・ゼノヴィア、何か悪いことがあった?」

 

事情を説明したがらないのは悪いことがあったからなのかと思ったようで、オーフィスは心配そうにしている。

 

「あるいはそうなのかもな・・・・悪魔に転生したのがゼノヴィア一人だけで、イリナは教会に帰ったっていうのも気になる」

 

「任務中に何かあったのかもしれないわね」

 

「まあ、それも憶測の域をでないけどな。知ってるとすればゼノヴィアとゼノヴィアを転生させた悪魔とその眷属ぐらいかな?」

 

「ゼノヴィアを転生させた悪魔って誰にゃ?」

 

「おそらくリアス・グレモリーだ。ゼノヴィア、彼女が部長を務めるオカルト研究部に入るみたいだから」

 

「リアス・グレモリー・・・・ということは白音と・・・・」

 

黒歌の表情が少々陰る。リアス先輩の眷属の中には黒歌の妹もいるので、思うところがあるのだろう。

 

「・・・・咲良、そのリアスって悪魔からゼノヴィアのこと聞いてみる?」

 

オーフィスが俺に尋ねてくる。

 

「んー・・・・どうしようか迷い中だな。ゼノヴィア本人が言おうとしないことを他のひとから聞くのは気が引ける」

 

それになにより、リアス先輩たちは俺が悪魔やらなんやらのことを理解してるってことをおそらく知らない。もしも俺がリアス先輩たちにゼノヴィアのことを聞くとなると、俺がどうして悪魔とかのことを知っているのかを説明しなければならない。別にそのこと自体は面倒ではあれど構わないのだが・・・・下手をするとオーフィスや黒歌のことがバレかねないんだよなぁ。二人の立場を考えるとそれはあまりよろしくないだろう。だからリアス先輩たちに聞くことはできない。

 

・・・・今更だけど、ゼノヴィアはそのことをリアス先輩たちに秘密にしてくれるだろうか?教会には言わないって約束してくれたから大丈夫だとは思うが・・・・まあ、そこはゼノヴィアを信じよう。

 

「まあ、ゼノヴィアが話してくれるまで待とう。気持ちが落ち着いたら話してくれるかもしれないしな」

 

「それがいいわ。そういえば咲良の学校に転入してきたってことはゼノヴィアはこの町に住んでるのよね?ということは近いうちにまたご飯を食べに来るのかにゃ?」

 

「ゼノヴィアとご飯、楽しみ」

 

二人はゼノヴィアが来るのが楽しみらしく、微笑みを浮かべている。

 

だが・・・・

 

「いや・・・・・きっと当分は来ない」

 

「え?どうしてにゃ?」

 

「確かにまたご飯を食べに来るって約束したけど・・・・それは多分イリナ含めての話だ。二人は相当仲がいいみたいだから・・・・・一緒じゃないとここには来ないと思う」

 

屋上で話してたとき、イリナの名前を出したら明らかに顔色が変わったもんな・・・・やはり気にしているんだろう。そんなイリナをよそにゼノヴィアがこの家に来ることはまずないと思う。

 

「・・・・ゼノヴィアとイリナ喧嘩した?だから二人一緒にいない?」

 

「ああ・・・・もしかしたらそうなのかもな」

 

ただ、喧嘩という次元に収まっていないかもしれないが・・・・

 

「だったら・・・・仲直りして欲しい。我、また二人とご飯食べたい」

 

「そうね・・・・私もにゃ」

 

二人共、ゼノヴィアとイリナの仲を心配している。かく言う俺もだ。何があったのかわからないが・・・・また二人が一緒にいられるようになれたらいと思う。そして二人でまたうちにご飯を食べに来て欲しいと願う。

 

「ゼノヴィアの・・・・二人のことで俺たちができる事は今はほとんどないだろうな。当人か、あるいは周りの環境、時間が解決してくれるのを待つしかないだろう」

 

「・・・・それしかできない?」

 

「それ以外となると・・・・・相談に乗るぐらいか?もっともそれはゼノヴィア次第だが」

 

「クラスメイトな咲良はともかくとして、実質私達は何もできないのと同じにゃ」

 

黒歌の言うとおりだな。俺はクラスメイトだから話す機会はあるけど・・・・オーフィスや黒歌は家に来てくれないと会うことさえ難しい。

 

にしても・・・・

 

「クラスメイト、か」

 

クラスメイト・・・・俺はその言葉からあることを思い出していた。

 

『私個人としてはクラスメイトではなく、咲良の愛人になりたいと思ってね』

 

ゼノヴィアに言われたあの言葉・・・・一体どういう意味なのだろうか。言葉通り受け取るとなるとゼノヴィアは・・・・

 

「・・・・咲良、今何考えてた?」

 

ゼノヴィアの言った言葉の意味を考えていると、オーフィスが声をかけてきた。それもどこか不機嫌そうにだ・・・・まさか、なにか察してる?

 

「そりゃまあゼノヴィアのことをな。話の流れ的にもおかしくないだろ?」

 

間違ってはいない。ただ、肝心な事を言っていないが・・・・愛人のこと言ったらやっぱりオーフィス怒るかな・・・・

 

「・・・・・うん、わかった。咲良のこと信じてるからそれでいい」

 

あ、これ絶対になにか察してますわ。内容まではさすがにわかってないだろうけど・・・・俺の婚約者鋭すぎっす。これ龍神だからとか絶対に関係ないよな・・・・まあ、それだけ愛されてるんだと思えば嬉しいが。

 

「さて、それじゃあそろそろ夕食作らないとな」

 

「今日のご飯は何かにゃ?」

 

「クリームシチューと鮭のムニエル、あとサラダだな」

 

「我、咲良のクリームシチュー好き。ムニエルもサラダも」

 

「オーフィスは咲良の料理ならなんでも好きなんじゃ・・・・まあ私もだけど。咲良、今日も美味しいご飯期待してるにゃ」

 

「ああ。その期待に応えさせてもらうよ」

 

夕食をつくろうと、俺は台所に向かおうと立ち上がる。

 

その時・・・・

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

家の呼び鈴が5回鳴った。

 

「あら、お客さん?でも5回って・・・・知り合いなら3回じゃなかったっけ?」

 

「・・・・やれやれ、ようやく帰ってきやがったな」

 

「帰ってきた?それってもしかして・・・・」

 

「5回は伊槻が帰ってきた合図」

 

「半年ぶりか・・・・あのクソ爺が」

 

さて、オーフィスにいらんことを吹き込みまくってくれた礼をしなければな・・・・・覚悟しろよ爺さん?

 

 




咲良さんに惚れてしまっているゼノヴィアさん。まさに胃袋を掴まれてる状態です

まあ、オーフィスちゃんって婚約者がいる知ってるので愛人の枠に収まろうとしてますが・・・・もっとも咲良さんはオーフィスさん一筋なので受け入れないですが

そして何かあったのだと察して嫉妬を顕にするオーフィスちゃんやっぱ可愛い

次回はとうとう超絶チートお爺ちゃんこと湊内伊槻登場。乞うご期待

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チートな存在なんて弄られてなんぼだ

今回、とうとう超絶チート爺さん登場!

あと原作キャラも一人出ます!

どうなるか見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


「おお咲良!久しぶりだなぁ!」

 

門前に赴くと、そこにはとても80歳とは思えないほどフランクな男がいた。年齢の割には体型はがっちりしており、皺も少なく、髪も黒々としている・・・・・うん、まあ俺の爺さんなんだけどさ。相変わらず年齢詐欺な外見してやがる。

 

爺さんの近くには、赤い髪に髭をはやしている男がいる・・・・・また誰か連れてきたのか。まあ、それはともかくとして・・・・

 

「久しぶりだな爺さん。元気してたか?」

 

「おう。怪我病気一切なしだ。まあ体の頑丈さには自信があるからな」

 

「そうか、それはなによりだ・・・・・・というわけで爺さん正座」

 

「・・・・え?」

 

俺が自分でもわかるほどににこやかな笑顔で言ってやると、爺さんはキョトンとした表情を浮かべて間の抜けた声をあげる。

 

「えっと・・・・・咲良?今正座って言ったか?」

 

「うん言った。だからすぐに正座してくれ」

 

「な、なにゆえ?」

 

「なにゆえって・・・・・電話で言ったじゃないか。帰ってきたら覚悟しろよって。オーフィスにいらんこといろいろと教えてくれたお礼に説教してあげようと思ってね」

 

この爺さんがいらんことオーフィスに教えたおかげでマジで大変だったからな・・・・・主に俺の理性が。役得でもあったけどしんどさの方が上回ってるから説教しなければならない。

 

「いやいやいや・・・・・説教ってここ外ですぜ?こんなところで正座して説教なんて人目につくから恥ずかしいんだけど・・・・」

 

「安心しろ。俺は恥ずかしくない」

 

「いや、俺が恥ずかしいから!ご近所さんに変な目で見られちゃうから!」

 

「ちっ、仕方ないな・・・・だったら姿隠す結界かなんか張れよ。それぐらいできるだろ?」

 

「できるけどなんで自分が説教受けるために結界張らなきゃならないの!?」

 

まったく、ああ言えばこう言う爺さんだな・・・・・これじゃあいつまでたっても説教できないじゃないか。

 

「そ、そうだ客!客がいるんだ!客を待たせて説教なんて失礼だと思わないか?」

 

「俺のことなら気にしなくていいぞ?存分にやってくれ」

 

「おいぃぃぃぃぃ!?そりゃないだろぉぉぉぉ!?」

 

客を口実に説教から逃れようとする爺さんだったが、客は空気を読める人物だった模様。この人いいノリしてる。

 

「さて、それじゃあ覚悟を決めようか爺さん」

 

「・・・・ふっ、そうか。咲良があくまでも俺に説教しようと言うなら俺の超絶奥義を見せてやる!」

 

爺さんはふっと笑みを浮かべながら言う。そして・・・・行動を起こした。

 

「許してくださいお願いします」

 

流れるような美しい動きから繰り出されたのは日本に古くから伝わる謝罪術の超絶奥義・・・・土下座だった。

 

「・・・・まさか伊槻の土下座を見る日が来ることになるとはな」

 

「シャラップ!俺は咲良の説教を回避するためなら何でもやるぞ!誇りさえドブに捨ててやる!というわけで許してください咲良さんお願いします!」

 

爺さんの奇行を意外そうに見ている客の男に、爺さんは逆ギレ気味に言い放つ。こんなんが世界最強の龍神を力で掌握できるチートな存在だとは誰も思わないだろう。

 

・・・・・というか、ここまでされて説教するのも大人気ないか。

 

「わかったよ・・・・・今回は許してやる」

 

「本当か!?」

 

「ああ。よくよく考えたら今説教なんてしたら夕食作る時間が遅れちまうしな・・・・・説教はまた今度な」

 

「あ、結局説教は回避できないのね・・・・」

 

当然だ。近いうちに絶対説教してやる。

 

さて、遅くなってしまったが・・・・・お客さんをもてなさないとな。

 

「すみません、お客さんであるあなたを放ってこんな・・・・」

 

「いや、気にしなくてもいい。おかげで面白いものが見れたからな」

 

客の男に謝罪すると、笑みを浮かべてあっさりと許してくれた。気のいい人だ。

 

「お前のことは伊槻から聞いている。とりあえずまずは自己紹介だな。俺は・・・・」

 

「待った。自己紹介は家の中に入ってからでいいだろ。中の奴らにもしないといけないから二度手間だろう?いいか咲良?」

 

「ああ。俺は構わないよ」

 

ここで自己紹介されても、中でまたオーフィスと黒歌にすることになるだろうし・・・・二度手間になるならここで聞かなくとも構わない。

 

「そうか、まあそれでいいなら構わない」

 

「ありがとうございます。それでは中へどうぞ」

 

俺は客の男を招き入れる。俺の許可により、結界は彼の来訪を可能にする。

 

「ほう・・・・随分と面白い結界を張ってるな伊槻」

 

「ははっ!さすがにお前にはわかるか!コイツは俺の開発した結界の中でも特に面白くてな!」

 

「そいつは興味深いな。是非ともゆっくりと話を・・・・」

 

何やら結界に関する話が始まってしまいそうな雰囲気だ。これ止めないと絶対に長引くな。さっき爺さんに説教しようとした俺が言うのもなんだけど。

 

「あの・・・・中入らないんですか?」

 

「おっと、すまんな。つい研究者の血が騒いじまってな」

 

特に悪びれた様子もなく笑みを浮かべる客。気のいい男だと思ってたが、やはり爺さんの連れてきた客ということか・・・・・まあ慣れてるけど。

 

「それではどうぞ」

 

「おう、邪魔するぜ」

 

「邪魔するなら帰・・・・」

 

「爺さん、くだらんこと言ったら晩飯白湯にするぞ」

 

「うん、まあゆっくりくつろげや」

 

はあ・・・・・なんで爺さんと客を家に上げるだけどこんなに疲れるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、お前が黒歌か。咲良から話は聞いていた。なるほど、これは予想以上にいい女だ・・・・お嬢さん、俺と楽しい一夜を過ごしてみないか?」

 

「「とう」」

 

「ごぱぁっ!?」

 

居間に着いて早々、黒歌のことを口説き始めた爺さんに俺とオーフィスはドロップキックを食らわせてやった。

 

「このクソ爺・・・・なに早々に黒歌にちょっかい出してくれてるんだ」

 

「我、黒歌を守る」

 

先程のドロップキックで倒れた爺さんにゲシゲシと蹴りを入れながら俺とオーフィスは言う。

 

「ちょ、悪かった!俺が悪かったから蹴らないで!お願いだからやめて!結構痛いからマジで!」

 

「嘘つけ。この程度爺さんにはノーダメージだろ。というわけでオーフィス、もっとやるぞ」

 

「わかった」

 

「やめてぇぇぇぇぇ!!確かに身体的ダメージはないけど心が痛いから!なんか涙が出ちゃいそうだから!」

 

「ははははははっ!人外やらバケモノやらと称されるお前のそんな姿が見られるとはな!コイツは愉快だ!」

 

俺とオーフィスに蹴りつけられる爺さんを見て、愉快そうに笑う客。いいノリのよさだ。

 

「えっと・・・・咲良、オーフィス。さすがに勘弁してあげたら?見てて痛々しいにゃ」

 

「黒歌は爺さんに言い寄られたとき不快に思わなかったのか?」

 

「いや、そりゃちょっと思ったけど・・・・」

 

「黒歌を不快にさせた。伊槻許さない」

 

「同感だ。俺も許さない」

 

もはや俺とオーフィスの中で優先順位は爺さんよりも黒歌の方が上になっている。

 

「そこまで言ってくれるのは嬉しいんだけど・・・・・・話が全然進まないからいい加減やめてあげて」

 

ふむ・・・・まあ確かにこのままでは話が一向に前に進まないな。仕方がない。

 

「黒歌に感謝しろよ爺さん」

 

「次黒歌に何かしたらもっと蹴る」

 

「お前たちの俺に対する敬意はどこまで落ちてるんだ」

 

いや、別に爺さんのことは尊敬してるし感謝だってしてる。ただ、それとこれとは別問題というやつだ。

 

「あ~・・・・えらい目にあったぜ」

 

「会って早々に口説こうとしたお前が悪い。俺でももっと時間かけるぞ」

 

「自分の欲望に忠実だからな」

 

「威張るなクソ爺」

 

反省の色が見えない爺さん・・・・・頭が痛くなってきた。

 

「すまんな黒歌・・・・これが俺の爺さん、湊内伊槻だ」

 

「随分とまあ個性的というかなんというか・・・・・咲良も苦労してるのね」

 

「・・・・本当にな」

 

「咲良、元気出して」

 

爺さんの破天荒さに頭を抱えそうになる俺に、オーフィスが背伸びをして頭を撫でてくる。それだけで大分癒された気分だ。

 

「うん、ありがとうオーフィス」

 

「これくらい当然。我は咲良の婚約者だから」

 

「婚約者ねぇ・・・伊槻に聞いていたが、まさか本当にあの無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)が人間と婚約してるとはな。世の神々が聞いたら卒倒するぞ」

 

客の男がオーフィスの方を見ながら面白そうに笑みを浮かべながら言う。爺さんが連れてきたんだから当然だが、やっぱりこのひとオーフィスのこと知ってるのか。

 

そういえばこのひと、一体何者なんだろうか・・・・・

 

「・・・・アザゼル、久しい」

 

「おう。そうだなオーフィス」

 

アザゼル?それって確か・・・・・

 

「おっと、そういえばまだ自己紹介してなかったな。俺はアザゼル。一応堕天使達の頭を張ってるものだ」

 

「だ、堕天使の・・・総統!?」

 

客・・・・アザゼルさんが自己紹介すると、黒歌は驚きをあらわにした。まあ、黒歌は堕天使と敵対関係にある悪魔だから、そのトップが目の前にいるというなら無理はないだろう。

 

にしても今度は堕天使のトップか・・・・

 

「まったく・・・・爺さん、また凄いひとを連れてきたな。どういう関係なんだ?」

 

「んー・・・・まあ腐れ縁の悪友って感じだな。割と気が合うし」

 

「本当にとんでもない交友関係してるよな爺さん・・・・」

 

「それブーメランだぞ?」

 

いや、そんなこと言われても・・・・・俺の交友関係に関しては爺さんがきっかけだから結局は爺さんの交友関係のすごさの証明にしかならないだろ。

 

「というか、自分で言うのもなんだが俺ってそれなりの大物なんだが・・・・随分と平然としているんだな」

 

特に驚いていない俺に対して、アザゼルさんが言う。

 

「いや、もう慣れたといいますか・・・・・爺さんに神クラスのひと紹介されたりしてたので今更驚くこともないかなと思いまして」

 

「というか咲良、そんなにヤバイ知り合いたくさんいるの?」

 

「まあ北欧の主神やらオリンポスの神々やら色々知り合いはいるけど・・・・」

 

「咲良は本当に人間なのかにゃ?」

 

なんか黒歌に失礼なこと言われてる・・・・非常に解せない。

 

「なあオーフィス・・・・俺ってそんなに人間離れしてる?」

 

「大丈夫、咲良は正真正銘の人間。だから落ち込むことはない」

 

「そっか。それならいいけど・・・・」

 

「いや、龍神に慰められてる時点で人間離れしてると思うにゃ」

 

「「同感だな」」

 

せっかくオーフィスに慰められて早々にこれは酷いだろ・・・・まあいいけどさ。

 

「それはともかくとして、アザゼルを交えて色々と話しておきたいことはあるが先に腹ごしらえがしたいな・・・・咲良、準備頼めるか?」

 

「わかった。ちょうと夕食の準備始めようと思ってたところだからな。作ってくるから待っててくれ」

 

「美味いの頼むぞー」

 

「はいはい」

 

オーフィス達を居間に残して、俺は台所に夕食を作りに向かう。

 

・・・・・せっかく爺さんが帰ってきたわけだし、おかずにチーズオムレツも追加しておくかな。




こんなでも伊槻さんは世界最強です。オーフィスちゃんでさえ力でねじ伏せることができますから・・・・

にしてもせっかく登場したアザゼルさん・・・・全然目立たないなぁ

そして、咲良さんと一緒になって伊槻さんをゲシゲシと蹴りつけるオーフィスちゃん可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ほのぼの目指してるけど、たまにはシリアスもいいよね?

サブタイどおり若干シリアスです

まあ大事なことなので・・・・・

それでは本編どうぞ


「食った食った~。あんなにうまい飯食うの数百年ぶりだ」

 

食事を終え、お茶を飲みながらアザゼルさんが満足げに言う。

 

「数百年って・・・・言い過ぎですよアザゼルさん。あれぐらいの料理なんていくらでもあるでしょう?」

 

「いや、そんなことはない。長年生きてるだけあっていろんなもん食ってきたがさっき食べた料理のレベルに並ぶものはそうなかった。だからそんな謙虚にならずもっと自信を持ってもいいと思うぞ?」

 

「同感にゃ。咲良の料理はどれもこれも絶品だって断言できるわ」

 

「咲良の料理は世界一」

 

「あの料理食べられるだけでもお前が孫でよかったと切実に思うぞ俺は」

 

アザゼルさんの言葉に同調するように、皆が俺の料理を絶賛してくる。嬉しいといえば嬉しいのだが・・・・少しむず痒いし恐縮してしまう。

 

「というか、伊槻の孫だって言う割には随分と謙虚だな」

 

「おいアザゼル、そいつはどういうことだ?俺だってそれなりに謙虚だと自覚して・・・・」

 

「謙虚な奴は会って早々に口説いたりしねぇよ」

 

「伊槻が謙虚とかありえない」

 

「被害者である私も同意せざるを得ないわね」

 

「俺のことはともかくとして、爺さんが謙虚だって言うなら全人種(悪魔や天使、堕天使等を含む)の8割以上が謙虚ってことになるな」

 

「俺に味方はいないのか・・・・?」

 

いや、そんなこと言われても普段の行いからしてさぁ・・・・こういう時味方になってくれる人がいないのは仕方がないだろ。

 

「ま、まあこの際今はそんなこと置いておくとして・・・・本題に入るか」

 

急に爺さんの顔が神妙なものとなる。爺さんの隣にいるアザゼルさんの表情もだ。

 

「本題って・・・・・一体どういうことだ爺さん?」

 

「ああ。これから話すことは咲良、お前の今後に大きく関わることだ。心して聞いて欲しい」

 

「俺の・・・・今後?」

 

よくわからないが、俺に関わる大事な話らしい・・・・・それなりの心構えをしておく必要がありそうだ。

 

「えっと・・・・私席を外したほうがいいかしら?」

 

「いや、黒歌も居てくれ。咲良と親交が深いのなら聞いておくべきだ。もちろんオーフィスもな」

 

席を外そうとする黒歌であったが、爺さんはそれを引き止める。オーフィスにもいうが・・・・まあ、オーフィスはもともとどこにも行く気はないみたいだけどな。俺の膝の上にちょこんと座って離れる気配ないし。

 

「・・・・わかったにゃ」

 

「我も話、聞く」

 

「よし。さて、どこから話したものか・・・・」

 

「まずは三種族のことからでいいだろ。咲良、お前は三種族の現状のことは理解しているか?」

 

アザゼルさんが俺に尋ねてくる。

 

「三種族って悪魔、天使、堕天使のことですよね?今は直接的且つ大規模な争いはないけれどお互い睨み合ってて一触即発状態にあるんじゃありませんでしたっけ?」

 

「まあ、その認識で間違ってはいない。ただ、その関係性に今変化が訪れようとしてるがな」

 

「変化って・・・・もしかして戦争?」

 

もしやと黒歌が言葉を漏らす。もしも三種族の戦争となると・・・・具体的にどうなるかは俺では想像もつかないが、大変なことになるだろうな。三種族だけじゃなくて人間も巻き込まれる可能性も十分にあるだろう。

 

「いや、戦争にはおそらくならない。断言はできないがな。変化っていうのはむしろ戦争とは逆だ」

 

「戦争の逆というと・・・・和平?」

 

「少なくとも俺はそのつもりだ。今度の三種族会談で切り出してみようと思う」

 

「三種族会談?そんなのがあるんですか?」

 

「ああ。数日前にこいつの部下、堕天使の幹部のコカビエルってやつがこの町でちょっと面倒やらかしてな・・・それがきっかけで駒王学園で三種族のトップと関係者の間で話し合いが設けられることになった。ちなみに人間代表として俺も参加する」

 

三種族の会談に参加するって・・・・爺さんの立場ってどうなってるんだよ。まあそれはともかくとして、コカビエルって確か聖書にも載ってる堕天使の大物だったっけか。面倒やらかしたって一体何を・・・・って、ん?数日前ってもしかして・・・・

 

「なあ、その関係者の中にゼノヴィアとイリナって女の子いるか?」

 

「ん?確かいたと思うが・・・・知り合いか?」

 

「ああ。ちょっと前うちで一緒にご飯食べたけど」

 

「・・・・うん、やっぱお前俺以上の交友チートだわ」

 

「は?」

 

この爺さんは一体何を言ってるんだ?まあいいけど。それよりどうやらゼノヴィアとイリナの件はその出来事が関わっているようだな。できれば詳しく聞きたいが・・・・話の根幹はそこではないだろうし、聞くとしたら後でになるかな。

 

「話を戻すが、駒王学園で行われる三種族会談で俺は和平を申し出ようと思っている。天使長ミカエルも今の魔王達も戦争を好むような危険な連中じゃないからおそらく問題なく和平は結ばれるだろう」

 

「それはなによりです。戦争なんかよりも平和の方がいいに決まってますし。ですが・・・・・そのことと俺の今後にどう関係が?」

 

いろんな神郡の神と知り合いではあるけど、三種族に関しては俺そこまで親交深いってわけじゃないからな。関わりがあるって言うなら俺の今後に影響があるっていうのは納得できるけど・・・・・

 

「まあ、正直三種族の和平には咲良は全くといっていいほど関係ない。だが、問題はその先だ」

 

「その先?」

 

「会談で結ぶ和平は三種族だけだが、アザゼルは・・・・俺達はそれだけに留まらせておくつもりはない。その先・・・・・他の種族、他の神群との和平も見据えている」

 

他の神群との和平って・・・・・三種族の和平だけでも規模がでかいのに、これはそれ以上だな。詳しくはわからないけど、これまでそんなことはなかったんじゃないか?

 

「さて、ここからが特に重要なんだが・・・・・咲良、俺達に協力してくれないか?」

 

アザゼルさんは俺を真っ直ぐに見据えながら言う。

 

「協力って・・・・・なんの取り柄もない、特別な力もない俺に何ができるって言うんですか?」

 

「いいや、お前には力がある・・・・それも縁の力っていうとんでもない力がな。咲良、最低でも年一回以上ここに飯を食いに来る奴の名前を言ってみろ。護衛とかはとりあえず除いてな」

 

「あ、ああ・・・・えっと、曹操にクロウさんにぬらりひょんさん、八坂さん、神でいうとオーディンさん、ゼウスさん、帝釈天さん、シヴァさん、それと・・・・」

 

「あ、咲良。俺から聞いといてなんだけどやっぱもういいわ」

 

思いつく限り名前を上げていくが、途中で爺さんに止められてしまった。どうしてだろ・・・・なんか黒歌とアザゼルさんは顔引きつかせてるし。

 

「咲良・・・・その交友は正直ありえないにゃ」

 

「色々気になる名前もいくつか出てきたがそれは置いておくとして・・・・・このうえさらにオーフィスの婚約者とかとんでもないってレベルじゃないな」

 

「え?どういうこと?」

 

「「そしてさらに自覚なしか・・・・」」

 

呆れたような様子で言う黒歌とアザゼルさん。自覚ないって何の話だ・・・・

 

「我、今咲良が言った誰よりも強い」

 

そしてオーフィスさん、それは自慢ですか?大変可愛らしいですね。

 

「咲良・・・・それだけの奴らと親交深めておいて何もできないなんてあるわけないだろ?はっきり言ってお前が仲介に入れば各種族、神群との和平がスムーズに結べる可能性が高い」

 

「いやいやいや・・・・それ別に俺じゃなくても良くないですか?さっき言ったひとたちって大半は爺さんに紹介されたので仲介に入るなら爺さんでいいんじゃ・・・?」

 

「いいや、俺じゃあ駄目なんだ。確かにあいつらとはそれなりに仲はいいが、それでも俺ではな・・・・自分で言うのもなんだが俺は強すぎる。俺が間に入ってしまえば、それは仲介ではなく脅しになりかねない」

 

んー・・・・まあ言ってることはわからなくはないか。誰よりも強い爺さんが和平を結ぼうと言っても、向こうからしたら力ずくと取られてしまう可能性がある。そんな強制的な和平は見せかけだ。

 

「だからこそ咲良じゃなければならないんだ。特別な力、強大な力を持っていない咲良が間に入ってこそ仲介となる。お前は力で脅すなんてことできやしないからな」

 

「まあ確かにそうかもしれないけど・・・・・」

 

「それに、だ。確かに大半は俺が紹介したが、そのあとの親交に関してはお前が築いたものだ。俺がしたのはただのきっかけ作り・・・・奴らがここに来るのは、お前の作る料理以上に、お前自身を気に入ってるからにほかならない。お前が和平を願うのならば、奴らはそれを真摯に受け止めるだろう」

 

そういうのもなのだろうか?和平ってのはその種、神群全体に関わるものだから俺のことを気に入っているからってどうにかなるものでもないと思うんだが・・・・・

 

だけど・・・・・・そういうこと抜きにして俺が仲介に入ることで和平を結べやすくなるっていうなら俺は・・・・

 

「さて、改めて言わせてもらおう・・・・・咲良、俺達に協力してくれ。頼む」

 

「俺からも頼む。咲良、協力してやってくれ」

 

アザゼルさんと爺さんは頭を下げて俺に頼み込んでくる。その姿からは二人の真剣さ伺い知れる。

 

頭を下げられてまで頼まれてしまっては断りづらいが・・・・どうしたものかな。

 

「・・・・ふざけないで」

 

どう返事を返そうかと悩んでいると、黒歌が口を開く。その声色はいやに重い。

 

「さっきから黙って聞いてれば・・・・・自分たちが何を言ってるのかわかってるの?確かに和平が結ばれるのはいいことかもしれないけど・・・・・そんなの咲良を危険にさらすのも同然にゃ!」

 

「俺が危険に?黒歌、それってどういう意味だ?」

 

「誰しもが和平を望むわけじゃない。例えトップが和平を推すとしても、それに従えない、気に入らないって思う連中だって出てくるはずよ。そういった連中にとって和平の仲介となる咲良は邪魔者。咲良を始末しようとするものが出てくる可能性は十分にあるにゃ」

 

俺を・・・・始末?そんなことが・・・・?

 

「それは・・・・わかっている。だから咲良が危険な目に遭わないようにしっかりと守るつもりだ。幸い咲良のそばにはオーフィスもいるしな」

 

「オーフィスだって四六時中咲良と一緒にいるわけじゃないにゃ。少なくとも学校に行ってる間はオーフィスは咲良と一緒にいられない。その間はどうするって言うの?まさかずっと護衛を張り付かせるつもり?そんなの咲良の自由を奪うようなものじゃない」

 

「・・・・・・」

 

黒歌の言い分に、爺さんはなにも言い返してこなかった。まあ、俺にだって黒歌の言ってることが正論だってわかるからな。さすがに学校に行く時はもちろん、外にいる間護衛やらなんやらに張り付かれると落ち着けない。

 

「そもそも、咲良に仲介役になって欲しいって言うけどそれは絶対に必要なこと?例え咲良がいなくたって和平を結べる可能性はあるんじゃない?それなのにわざわざ咲良を危険な状況に置いてまで咲良を仲介役にするだなんて・・・・・勝手すぎるにゃん」

 

「・・・・・我も嫌」

 

「オーフィス?」

 

これまでずっと沈黙していたオーフィスが口を開く。

 

「我、難しいことはよくわからない。咲良は何があっても我が守るけど・・・・・咲良が危ない目に会うのは嫌。伊槻もアザゼルも間違ってる」

 

キッと爺さんとアザゼルを睨みつけるオーフィス。

 

オーフィスも黒歌も俺のことを心配してくれて・・・・・それで爺さんとアザゼルさんに怒っているのか。

 

「・・・・まあ、二人が怒るのもわかる。どうしたってそいつには多少なりとも危険な目に遭わせてしまう」

 

「その件に関しては俺達も心苦しく感じてはいる。確かに咲良がいなくとも和平を推し進めることはできるだろうがが、咲良がいれば確率はぐっと上がる。だから咲良に協力して欲しいと俺は思っている・・・・咲良、お前はどうしたい?」

 

「俺?」

 

「ああ。俺たちが何を言おうとも、最終的にはお前の意思を尊重する。それがどんな答えであってもだ。どうするのかはお前が決めろ」

 

俺がどうしたいのか・・・・・・どうするべきなのか・・・・・

 

爺さんには育ててもらった恩がある。その恩に少しでも報いたいとは思う。だけど、俺のことを心配してくれているオーフィスと黒歌の気持ちを無下にすることはできない。

 

俺は・・・・俺は・・・・

 

「・・・・一晩考える時間をくれ。明日にはちゃんと答えを出すから」

 

時間が欲しかった。今すぐには決められないから・・・・我ながら自分の優柔不断さが恨めしい。

 

「わかった。お前の今後に関わることなんだ。ゆっくりと考えるといい」

 

「確かにすぐに答えを出せってのも酷だしな。俺も明日まで待たせてもらうさ」

 

「・・・・ありがとう」

 

爺さんとアザゼルさんの了承は得られた。これで考える時間はできた。

 

俺の今後の人生を左右するんだしっかりと考えないとな。

 

 




いろんなところのお偉いさんと親交が深い咲良さんだけど、実はそのおかげで結構危うい立場にいたりする

今は咲良さんのこと知ってるひとがそこまで多くないからいいけど、和平の仲介役になったらそうもいかないのでぶっちゃけ命を狙われたり利用しようとする輩が出てくる可能性は十分にあります

さて、咲良さんははたしてどうするのか・・・・・

それはともかくとして、咲良さんの身を案じるオーフィスちゃんと黒歌さんマジいい子

それでは次回もまたお楽しみに!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんだかんだやはり家族というのは大事である

咲良さんが出す答えとは如何に?

そしてさらに・・・・・

それでは本編どうぞ!


 

「・・・・・どうするかなぁ」

 

爺さん達との話を一旦終え、俺は自分の部屋の布団に寝転がり、見慣れた天井を見つめながら自分がどうすべきなのかを考えていた。

 

爺さんとアザゼルさんの頼みを聞き入れ、様々な種族、神群との和平の仲介役となるか

 

俺のことを心配してくれているオーフィスや黒歌の気持ちを無下にしないためにも爺さんとアザゼルさんの頼みを断るか

 

きっとどちらが間違っているということはない。どちらも・・・・俺にとっては大事なことなのだから。

 

「咲良、まだ悩んでる?」

 

「ん・・・・まあな」

 

オーフィスが俺の顔を覗きこんで尋ねてくる。

 

・・・・うん、まあこういう時って普通は一人で考えるものだっていうのはわかってる。だけどまあ、正直オーフィスが居ても考えに支障はないし・・・むしろ、最近はお風呂も寝るときも一緒だからオーフィスがそばにいてくれた方が落ち着くし。

 

というわけでオーフィスがここに居ることに関しては何ら問題ない。まあ黒歌は空気を読んで自室にいるが。

 

「・・・・我、咲良が危ない目に遭うのは嫌」

 

「わかってるよ。俺のこと心配してくれてるんだよな。俺戦う力なんてないし・・・・・こんなことになるんだったらもっと鍛えておけば良かったかもなぁ」

 

「鍛えても意味ない。咲良、戦いの才能ないから」

 

・・・・・戦いの才能が一切ないのは自覚はしているが、いざバッサリ言われるとそれなりにダメージでかいな。まあオーフィスに悪気はないんだろうけど。

 

「咲良は強くなんてなくていい。力なんてなくてもいい。何かあったら我が絶対に守る。だけど・・・・・それでも危ない目に遭うのは良くない。伊槻とアザゼルの頼みなんて聞くことない」

 

俺に縋り付くように寄り添ってくるオーフィス。小さな小さなオーフィスの体・・・・そんな小さな体の中に、世界最強とも言われる程に強大な力が秘められている。

 

そんなオーフィスが、俺のことを心配してくれている。俺のことを何よりも大事にしてくれる。それは俺にとってたまらなく嬉しいことだ。そんなオーフィスの気持ちを無視することは出来るはずない。

 

けど・・・・だけれど・・・・・

 

ごめんなオーフィス。俺はやっぱり・・・・・

 

「オーフィス・・・・・オーフィスはさ、俺と爺さんどっちが好きだ?」

 

「咲良」

 

迷うことなく、即断言したオーフィス。

 

「そっか・・・・ありがとな。俺も爺さんよりもオーフィスのことが好きだよ。だけど・・・・」

 

「だけど?」

 

「俺は・・・・爺さんの頼みを聞こうと思う」

 

俺はオーフィスの頭を撫でながらそう告げる。

 

「どうして?咲良、我の方が伊槻よりも好きなのに・・・・・伊槻の頼みの方が大事?」

 

「いや・・・・これはオーフィスと爺さんのどっちが大事とかそういう話じゃないんだ。ただ・・・・俺はどうしても爺さんに恩返ししたいんだ」

 

「恩返し?」

 

「そう。俺には・・・・血の繋がった家族がいない。いや、あるいはこの世界のどこかにはいるかもしれないけれど・・・・そんな顔も名前も知らないような奴ら家族とは思えない。俺の家族は、俺のことを拾ってくれた爺さんだけなんだ」

 

俺にとって家族とは血の繋がりのことではない。俺にとって家族とは共に過ごした日々、思い出によって築かれる絆だ。

 

今現在の俺にとっての家族は爺さんだけ。オーフィスともかれこれ10年一緒にいるが、それでも今の関係は婚約者であるから、まだ家族とは言えない。

 

「爺さんがいなかったら俺は今頃天涯孤独の身だったかもしれない。家族も友人もいない・・・・それどころか、オーフィスと出会う事さえなかったかもしれない。だから、俺を家族にしてくれて、オーフィス達と巡り会わせてくれた爺さんに俺は感謝してる」

 

爺さんがいるからこそ、今の俺がいる。爺さんがいるからこそ、こうしてオーフィスの存在を、愛おしさを感じることができている。それは間違いなく大恩だ。

 

「まあつまり、たった一人の家族の願いを叶えてあげたい・・・・・他の誰でもない俺がそう願っている。だから爺さんの頼みを聞く」

 

「咲良・・・・咲良がそこまでしないとだめ?ほかのことで伊槻に恩を返せばいいと我思う」

 

あくまでも、俺が危険な目に遭うのは嫌なようで、オーフィスは食い下がってくる。

 

「まあ、オーフィスの言うこともわかるよ。でも・・・・・そういうわけにはいかないんだ。多分もうそこまで時間はないから」

 

「時間がない?」

 

「ああ・・・・・オーフィスも知ってるとおり爺さんは強い。誰よりも強大な力を持っていて、それことオーフィスやグレート・レッドさえ打ち負かしていまうほどだ。だけどな・・・・それでも爺さんは『人間』なんだよ」

 

たとえバケモノ扱いされていようと、人外と呼ばれようと、爺さんは正真正銘の『人間』。それ以外の何者でもない。

 

「若々しく見えるけどもう80歳・・・・こんなこと言いたくないけど、もういつ寿命で死んでもおかしくない年だ。そしてそのことは爺さん本人が誰よりも理解してるだろう」

 

爺さんの頼みを聞いたとき・・・・爺さんらしくないと思った。爺さんは俺に無理なこと、無茶なことを一度も言ったことがなかった。俺が考えて決めたことに関しては特に文句入ってこなかったが、俺が危ない目に遭うようなことを勧めてくることは絶対にしなかった。

 

だからこそ今回の爺さんの頼みはらしくないのだが・・・・その理由を俺は察した。

 

「たぶん爺さんは焦ってるんだろうな。自分が生きているうちに平和な世界にしたい・・・平和な世界にしなければって。平和な世界は爺さんの夢だから」

 

何度も何度も聞かされた。この世界を平和にしたい。平和であって欲しい爺さんは何度も俺に話していた。なぜそこまで拘るのかはわからないけれど・・・・・話している時の爺さんはどこか子供っぽくて・・・・俺はそんな爺さんの夢が叶えばいいなって思っていた。

 

そして今・・・爺さんはその夢に俺を巻き込んでくれている。爺さんからすれば焦りからの不本意な頼みなのかもしれないけれど・・・・実は俺にとっては嬉しいことだった。

 

爺さんの夢の手助けになれる・・・・・家族としては喜び以外何ものでもない。

 

「オーフィス・・・・・俺はお前がなんと言おうと爺さんに協力するよ。お前の心配はわかるけど・・・・本当にすまない」

 

俺はオーフィスに謝罪する。オーフィスの願いをこんなにもはっきりと無下にしてしまったのはもしかしたら初めてかもしれない。

 

・・・・許してもらえないかな?

 

「咲良・・・・我、咲良が危ない目に遭うのはやぱり嫌。だけど・・・・咲良がしたいことができないのも嫌」

 

「え?」

 

「咲良が伊槻の頼みを聞きたいっていうなら・・・・伊槻の夢の手助けがしたいっていうなら、我はもう止めない。何があっても絶対に咲良は我が守る。だから・・・・・咲良の好きなようにすればいいと思う」

 

「オーフィス・・・・」

 

あくまでも、俺が危険な目に遭うのは嫌だというけれど・・・・それでもオーフィスは俺の気持ちを尊重してくれた。俺のわがままを受け入れ、その上で俺を守ると言ってくれている。

 

ああ、もう・・・・本当に俺は果報者だな。こんなに強くて可愛い婚約者をもてたんだから。

 

「ありがとう・・・・ありがとうオーフィス」

 

「・・・ん」

 

俺はオーフィスの体を抱きしめた。抱きしめる腕に少々力が入りすぎてしまったが・・・・オーフィスは気にする素振りもなく、心地よさそうに俺に擦り寄ってくる。まあ、俺の腕力程度オーフィスにとっては大したものではないのだろうが。

 

・・・・・やっぱり、戦いの才能がないにしても少しは鍛えないとな。せめてある程度は自衛できるようにはなりたい。そうすればオーフィスの心配を多少は和らげさせることができるかもしれないし

 

「でも・・・・いいの咲良?」

 

「いいって・・・・何がだ?」

 

「我は咲良の気持ちを大事にしたいから何も言わない。けど黒歌は・・・・多分怒る」

 

「あ~・・・・うん、まあだろうな」

 

黒歌もまた、俺を心配してくれている。なにせ爺さんとアザゼルさんに食って掛かるほどだからな。そんな黒歌に爺さん達に協力するだなんて言ったら怒られそうだ。

 

「しかもその上・・・・だもんなぁ」

 

「その上?」

 

オーフィスは俺の呟いた一言の意味が気になったのか尋ねてくる。

 

「実はな・・・・爺さんやアザゼルさんたちに協力するつもりではあるんだが、せっかくだから一つ条件を付けようと思ってな。その条件っていうのが・・・・・黒歌を怒らせちゃうかもしれないんだよなぁ」

 

「・・・・どんな条件?」

 

「ああ、それは・・・・・」

 

俺はオーフィスに爺さんとアザゼルさんにだそうと思っている条件のことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲良・・・・・答えを聞かせてくれ」

 

一夜明け、居間に集まった俺、オーフィス、黒歌、爺さん、アザゼルさんの5人。爺さんは俺はどうするのかと聞いてくる。

 

「爺さんとアザゼルさんの頼み聞くよ。協力させてくれ」

 

「こっちから頼んでおいてなんだが・・・・いいのか?」

 

「俺達としてはありがたいが、別に無理に聞くことはないんだぞ?」

 

アザゼルさんと爺さんは本当にそれでいいのかと念を押してくる。この二人も、俺の身を案じてくれているんだろう。

 

「うん。一晩考えて決めたことだから・・・・これが俺の答えだよ」

 

「そうか・・・・咲良、ありがとう」

 

爺さんが俺に礼を言ってくる。その表情は本当に嬉しそうだ。

 

「はあ・・・・・やっぱりそうなったにゃ」

 

俺の答えを聞き、怒ると思っていた黒歌だったが、怒りをあらわにすることはなく、どこか諦めたように嘆息する。

 

「黒歌、怒らない?」

 

「まあ、なんとなくこの結果は予想できてたし・・・・・咲良が考えて決めたことに文句言ったって野暮にゃ」

 

オーフィスに問われ、黒歌はそう答えた。どうやら黒歌もまた俺の意思を尊重してくれているようだ。

 

本当に黒歌っていい子だよな。だからこそ・・・・・理不尽であるかもしれないけど許せなくなる。

 

「・・・・爺さん、アザゼルさん。あとになって悪いけど、二人の頼みを聞く代わりに一つ聞いて欲しいお願いがあるんだ」

 

「なんだ?お前の身の安全なら言われるまでもなく保証するが・・・・」

 

「そうじゃありませんよアザゼルさん。いえ、それも大事なことなんですけど・・・・・・俺が聞いて欲しいのは別件です」

 

ぶっちゃけ和平とはほとんど何も関係ない。これは俺の個人的な事情だ。交換条件にするのは筋違いかもしれないが・・・・・それでも聞いてもらわないと困る。

 

「お前の身の安全のことでないとするなら・・・・なんだ?」

 

俺の頼みがなんなのか検討もつかないといった様子で爺さんが聞いてくる。

 

「・・・・・・魔王と話がしたい。会わせてくれ」

 

「「「・・・・・は?」」」

 

俺の頼みを聞き、昨日話して知っていたオーフィス以外の3人が間の抜けた声をあげた。




伊槻爺さんは超絶チートキャラですが、寿命は並の人間と変わりません

外見年齢が若くても実年齢は80歳なので・・・・・・寿命がいつ尽きてもおかしくはありません

咲良さんがなぜあんなことを頼んだのかは次回にわかると思います。おそらく。

もちろんちゃんと意味があることなので・・・・・お楽しみに

それにしても咲良さんの意思を尊重したうえで守ろうとしてくれてるオーフィスちゃんマジかわいい良妻

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

たとえ理不尽だろうとも身内は大事

今回はこの小説始まって以来おそらく初めてオーフィスちゃんが登場しない話となります

あと、私の思慮の浅さが目立っていると思いますのでご容赦を

それでは本編どうぞ


「粗茶ですがどうぞ」

 

「ありがとう」

 

「どうも」

 

俺は目の前の客人・・・・・魔王サーゼクス・ルシファーと彼の眷属のグレイフィア・ルキフグスに茶を振舞う。

 

爺さんとアザゼルさんに魔王と会わせて欲しいと頼んだのが今朝のことで現在は夕方・・・・・まさか頼んだその日に会えるとは思わなかった。たまたま三種族会談が始まる前に別件で用事があったようでこの町に来ていたそうだけど・・・・・それにしたって早すぎるだろう。おかげで心の準備するために今日学校休んでしまった。まあ感謝はしているけど。

 

ちなみに、この部屋には今俺とサーゼクスさんとグレイフィアさんしかいない。本当は魔王であるサーゼクスさんとだけ話がしたかったのだが・・・・まあ、グレイフィアさんはサーゼクスさんの女王(クイーン)みたいだから仕方がないか。あと、オーフィスたちは別室で待機している。内容が内容なので俺ひとりで話したかったのだ。オーフィスはだいぶ渋っていたが・・・・オーフィスがいると、これから話すことが脅しになりかねないから我慢してもらった。爺さんはオーフィスのことサーゼクスさんたちには話してなかったみたいだし。

 

「それにしても、伊槻から孫がいるとは聞いていたが・・・・」

 

サーゼクスさんは俺のことをじっと見つめてくる。その隣のグレイフィアさんもだ。

 

「えっと・・・・なんですか?」

 

「いや、こう言っては失礼かもしれないが・・・・あまり似てないと思ってね」

 

「そうですね。彼ほど破天荒でないようで安心しました」

 

「破天荒って・・・・・爺さん何をしたんですか?」

 

非常に・・・・・非常に嫌な予感がする。

 

「初めて会ったときのことなんですが・・・・・伊槻さんはどうやったか魔王の居城に侵入してきまして」

 

「警備の悪魔を全員無傷で制圧して私の前にものすごくいい笑顔で現れたんだ。そして『お前が現ルシファーか?ちょっと話でもしようぜ!』って言ってきたんだ」

 

「本当にもうご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 

俺は思わず二人に頭を下げて謝罪した。あの爺さんなんてことしてくれてんだよ・・・・・というかそんなことしてよく捕まらなかったな。まあ、捕まえられなかったのかのかもしれないが・・・・なんにせよ、今日の晩飯、爺さんの分は生椎茸にしてやる。

 

『それは勘弁しろよおい!?』

 

「「「・・・・・・・」」」

 

突然どこからか聞こえてくる爺さんの叫び声。爺さん・・・・人外なのはわかってたけど、モノローグまで読めるの?しかも距離離れてるのに・・・・

 

「・・・・咲良くん、今伊槻の声が聞こえたような気がするんだが・・・・」

 

「気のせいです」

 

「いえ、ですが・・・・・」

 

「気のせいです。お気になさらず。その件にはもう触れないでください・・・・・わかりましたか?」

 

「「あ、はい。わかりました」

 

どうやら二人はわかってくれたようだ。良かった良かった。

 

「なら本題に入ろう。伊槻に聞いたが君は私と・・・・魔王と話がしたいそうだね。それは一体どういう内容なのかな?」

 

きたっ・・・・ここからが正念場だ。

 

「サーゼクスさん。あなたは黒歌という名の悪魔をご存知ですか?」

 

「・・・・・ああ。知っているよ」

 

俺が尋ねると、サーゼクスさんの表情が険しくなる。先ほどまでは笑顔で、優しそうな印象を受けたが・・・・今の彼からはプレッシャーを感じる。これが彼の魔王としての顔なのだろう。そして隣のグレイフィアさんの表情も同じように険しくなっている・・・・というより、俺に向ける視線が鋭くなった。

 

俺が魔王に話したかったこと・・・・・それは黒歌のことだった。今朝、そのことを話したら黒歌にこっぴどく叱られてしまった。魔王と話なんてしなくてもいい。そんなこと自分は望んでいないと。

 

だけど・・・・黒歌が望んでるとか望んでないとかそんなことは関係ない。これは俺が自分で決めた、自分のためのことなのだから。そう告げたら・・・・黒歌は涙を流しながら俺にしがみつき、何度も何度も繰り返し俺を馬鹿と罵ってきた。

 

・・・・もうあとには引けないな。

 

「なぜ咲良くんはその悪魔の名を知っているんだい?」

 

「・・・・・二ヶ月ほど前、俺はうちの門前で負傷し倒れていた黒歌を保護しました。現在、黒歌はこの家で暮らしています」

 

「・・・・・それは本当かい?」

 

「はい」

 

「彼女は危険な悪魔です。あなたはそれをわかっているのですか?」

 

グレイフィアさんが、俺に尋ねてくる。彼女は知っているのだろう。黒歌が犯した罪を。

 

だが、彼女は知らないのだろう。黒歌が罪を犯した理由を。

 

「黒歌は危険な悪魔ではありません。あいつは確かに自分の主である悪魔を殺しました。ですが・・・・それは家族を守るためのことです」

 

「どういうことだい?」

 

「・・・・は?」

 

サーゼクスさんが俺の言葉の意味を尋ねてくる。それに俺は・・・・軽い怒りを覚えてしまった。

 

「本当に・・・・・本当に何も知らないんですね。何も知らずに黒歌にだけ罪を・・・・・あんた何様のつもりだよ?」

 

とうとう言ってしまった・・・・・自分の言葉がサーゼクスさんを蔑むものだということだというのはわかっている。わかっているけど・・・・・止められない。

 

「サーゼクスさまを侮辱するような発言はやめてください。それ以上は私も黙っていられませんよ?」

 

「よすんだグレイフィア」

 

主への侮辱を許さないグレイフィアさんは俺に向かって軽く殺気を向けてきた。俺はその殺気に飲まれそうになるが、その前にサーゼクスさんがグレイフィアさんを制する。

 

「さっきの言葉の意味を教えてくれないかい?」

 

「・・・・・黒歌が主の悪魔は黒歌の猫魈の力を利用して眷属やその身内の能力強化を強制していました」

 

「「なっ!?」」

 

やはりこれは知られざる事実だったようで、サーゼクスさんもグレイフィアさんも驚いていた。

 

「その悪魔は黒歌だけでなく、黒歌の妹まで利用しようとした。黒歌は力に飲まれ、暴走することはなかったですが・・・・・黒歌の妹は暴走してしまったかもしれない。だから黒歌は・・・・」

 

「妹を守るために・・・・殺した?」

 

「そうです」

 

表向きでは、黒歌は力に飲まれて暴走した挙句、主である悪魔を殺したということになっているらしいが、それは誤りだ。実際は・・・・黒歌は妹を守るために・・・・黒歌が優しかったから殺してしまったんだ。

 

「・・・・・咲良くん、今の話は黒歌から聞いたのかな?」

 

「はい」

 

「なら、それが真実であるという証拠はどこにも無い。彼女は君に嘘をついている可能性もある」

 

「俺は黒歌を信じています。あいつが嘘をついているとは思いません。もちろんそんなものが証拠になるとは思っていませんが・・・・・聞きますが、黒歌が暴走した挙句に主である悪魔を殺したという証拠はありますか?」

 

「・・・・・」

 

俺が逆に聞き返すと、サーゼクスさんは黙り込んでしまう。

 

「明確な証拠もないまま黒歌に一方的に罪を押し付けた・・・・・それは殺された悪魔が生粋の悪魔で、黒歌が転生悪魔だからですか?黒歌は眷属で、殺された悪魔の方が(キング)だから黒歌に罪があると決めつけたんですか?何もかも全て・・・・黒歌だけが悪いってことにしたほうが都合が良かったから黒歌にだけ罪を押し付けたんですか?」

 

「・・・・・」

 

「だとしたら・・・・・ふざけんな!ろくに調査もせずに黒歌を罪人にしてんじゃねえよ!そのせいで黒歌は妹と・・・・・家族と会えなくなってるんだぞ!黒歌の辛さ、あんたにわかるのかよ!」

 

俺は激情のままに机に手を叩きつけながらサーゼクスさんを責め立てた。理不尽なのはわかってる。相手が悪魔のトップである魔王だとしても、黒歌の罪を彼一人が決めたわけではない。それをわかっていても俺は・・・・自分を抑えることができなかった。

 

だけど・・・・・正直取り乱しすぎた。要反省だな。

 

「・・・・すみません、言いすぎました」

 

「いや、今の君の怒りは君の優しさ故のものだ。謝ることはないよ」

 

謝罪する俺を、サーゼクスさんは咎めることなく許してくれた。

 

「話を戻しますが・・・・確かにあなたの言う通りならば主を殺したことの罪に関しては確かに我々の調査不足であるといえます。ですが、彼女は追撃部隊の多くの悪魔を返り討ちにしています。その罪はまぎれもなく彼女の罪です」

 

「それは俺もわかっています。ですが追撃部隊の悪魔だってその調査がちゃんとなされていたなら・・・・黒歌に返り討ちに遭わずに済んでいたかもしれません。違いますか?」

 

「・・・・否定はしません」

 

グレイフィアさんの言うとおり、黒歌は追撃してきた悪魔たちを返り討ちにしてしまった。だけど、そもそもそんなことする必要もなかったのかもしれないんだ。

 

・・・・ダメだな。身内だから贔屓目に見てるって思われても俺は黒歌が罪を重ねてしまった原因が悪魔たちにあるようにしか思えない。

 

「・・・・咲良くん。君の話したことが全て事実であるとして、なぜそれを私に話した?君は一体何を望んでいるんだ?」

 

俺が望むこと・・・・それは・・・・

 

「俺は・・・・・黒歌と一緒にいたい。あいつは自分は野良だからすぐにどこかに行ってしまうかもしれないと言っていたけどそれでも二ヶ月もここに残ってくれた。俺にとって黒歌は大事な同居人なんです。だから一緒に居たいん」

 

「だったら、彼女のことを私に話す必要はなかったのではないかな?私は彼女がここに居ることを知らなかった。君が話さえしなければこの先も知らずにいたかもしれない。君が彼女と一緒にいることを望むのなら、君の行動は矛盾しているように私は思うよ」

 

確かに俺の行動は矛盾している。自分からみすみす黒歌がここに居ると教えているのだから。

 

けど・・・

 

「ええ、そうでしょうね。俺もそれはわかっていますよ。でも・・・俺は自分勝手だから。怒りが抑えられなかった。黒歌に一方的に罪を押し付けた悪魔のトップ・・・・魔王に一言言ってやりたかった。だから俺は爺さんにあなたに会わせて欲しいと頼んだんです。そしてなにより・・・・」

 

「なにより・・・・?」

 

「俺は・・・・・黒歌の罪を軽くして黒歌がまた妹と会えるようにしたいんです。黒歌にとってその子はたった一人の家族なんだ。俺に爺さんしかいないように・・・黒歌にだってその子しかいないんだ。だから・・・・」

 

俺が黒歌の妹と会ったことを話したとき・・・・・黒歌は寂しそうな顔をしていた。きっと、あいつは妹に会いたいと願っているのだろう。だけど、今のままでは会えない・・・・そんなの辛すぎる。

 

どうにかして会わせたい・・・・それが俺の一番の願いであり、こうしてサーゼクスさんに話をし一番の理由だ。

 

「そうだね・・・・・君の言っていることが事実であるなら、情状酌量の余地はある」

 

「サーゼクスさん?」

 

「彼女の主である悪魔の暴挙を知らず、さらに調査をしっかりと行わなかった私達にも非はある。それを考えると・・・・・本人から事情聴取はしなければならないだろうけど、条件付きでこの家にそのまま滞在させることもできなくはないかな?もちろん、何らかの償いはしてもらうけれど。事情を説明すれば妹にも会わせてあげることは可能だ」

 

サーゼクスさんの口から語られるのは、どれも黒歌にとって有利なものであった。

 

「もっとも、他の魔王や悪魔たちと協議する必要があるから・・・・確約はできないけれどね。それについては申し訳ない」

 

「・・・・・いいんですか?あなたは魔王・・・・・責任のある立場だ。こんな一介の人間の言うことを信じて・・・・その願いを叶えるようなことをしようとして」

 

「君の言っていることが本当かどうかは調査すれば分かることだ。私は君の話を聞いて自分なりに判断しただけだよ。私の判断には君の願いは介在していない」

 

「・・・・サーゼクス様、この家に滞在させることができると言ってる時点でそれは通じないかと」

 

「おっと、私としたことが」

 

グレイフィアさんに指摘され、サーゼクスさんは誤魔化すように笑みを浮かべた。

 

正直・・・・ここまですんなりいくとは思わなかった。もっと話がこじれて面倒なことになると思っていたのに・・・・・悪く言ってしまうと、サーゼクスさんは魔王としては優しすぎる気がする。

 

だけど・・・・・そんな優しい魔王に、俺は深く感謝の念を抱いた。

 

「サーゼクスさん・・・・・ありがとうございます」

 

俺はサーゼクスさんに頭を下げ、感謝の言葉を口にした。

 

 

 




咲良さん自身、自分が滅茶苦茶言ってるのは自覚しています

だけど、咲良さんにとって身内である黒歌さんは大事な存在なので・・・・・我慢できなかったのです。たとえ理不尽かつ支離滅裂であったとしても

ちなみにオーフィスちゃんは隣の部屋でそわそわしながら待機しています。そわそわしているオーフィスちゃんは間違いなく可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めての・・・・・・

サブタイの初めてとはいったいなんの初めてなのか・・・・それはその目でお確かめください

それでは本編どうぞ


サーゼクスさんとの話を終え、その日の晩・・・・

 

「おお!コイツはいい酒だな!」

 

「だろう?俺の取って置きだ!おら、サーゼクスももっと飲め!」

 

「もちろんいただこう」

 

我が家の居間では酒宴が行われている。爺さん、アザゼルさん、サーゼクスさんは高笑いを上げながら酒を飲んでいる・・・・もはや何杯目かわからないがな。普通なら肝臓がぶっ壊れないか心配するところなのだろうが、飲んでるメンツが世界一の人外爺さん、悪魔のトップ、堕天使の総督であることを考えると・・・・まあ平気なんだろうな。

 

「・・・・・はあ」

 

「えっと・・・・・すみません」

 

思わずため息を吐いてしまった俺に、グレイフィアさんが謝罪してきた。

 

「いえ、グレイフィアさんが謝ることではありませんのでお気になさらず。元はといえば、酒盛り提案した爺さんが悪いんですからね」

 

「後で説教?」

 

「そうだな。説教してやらないとな」

 

俺は膝の上でジュースを飲んでいるオーフィスの頭を撫でながら言う。オーフィスも酒は飲めるのだが、一切酔わない上に味が舌にあわないようであまり飲もうとはしない。

 

ちなみにサーゼクスさんとグレイフィアさんには話が終わったあとにオーフィスのことを紹介した。当然というかなんというか、それはもう驚いていたが。まあ、そんなリアクションにもすっかり慣れきってしまったが。

 

「それにしても・・・・・アザゼルさんはともかくとして、サーゼクスさんも随分とノリがいいんですね」

 

「サーゼクスは元々ああいう性格です。本当に困ったものだわ」

 

随分とため息が深いグレイフィアさん。その様子から色々と察することができた。

 

というか三勢力のうち二勢力のトップがこんな破天荒だなんて・・・・・これで天使長ミカエルまではっちゃけた性格していたら俺は本格的に三勢力に同情するぞ。

 

「大変なんですね・・・・って、あれ?今サーゼクスさんのこと名前で・・・・」

 

「先程までは公務に近い形で同行していましたが、今はプライベートですので。というより、ザーゼクスにそう言われてしまったので」

 

ああ、なるほど。グレイフィアさんは公私のけじめはしっかりと付けるタイプだということか。いかにも出来る女って感じだな。

 

「そういえばお二人は夫婦なんですよね?」

 

「知っているのですか?」

 

「はい。お二人の馴れ初めを綴った本を読んだことがありましたので」

 

「・・・・・聞かせてもらいますがどのような本でしょうか?」

 

「えっと・・・・二人のラブパワーが魔王派と反魔王派の争いを終わらせたとかなんとか」

 

「・・・・それはできれば忘れてください」

 

本の内容の一部を教えると、グレイフィアさんは頭を抑える。まあ気持ちは分からないでもないけど・・・・ごめんなさいグレイフィアさん。あの本面白くて好きなので結構な頻度で読んでます。

 

「その本・・・あまりにも内容が荒唐無稽だったからとっくに絶版になっているはずなのに」

 

「まあ持ってきたの爺さんなんで・・・・・絶版とかそういうの多分関係ないです」

 

「伊槻ははちゃめちゃ」

 

世界最強の龍神にここまで言わせるのだから、爺さんは本当にとんでもないよなぁ・・・・今まできちんと聞いたことはなかったけど、本格的に何者なのか気になってきた。

 

「・・・・・咲良」

 

「ん?どうした黒歌?」

 

さっきまで部屋の隅で一人で酒を飲んでいた黒歌が俺に声をかけてくる。

 

「その・・・・えっと・・・・」

 

どこか恥ずかしそうにもじもじとしている黒歌。こういう黒歌を見るのは初めてで新鮮だ。だが、このままじゃ話が進みそうにない。

 

んー・・・・言いにくいことなら無理に言わなくてもいいんだけどなぁ。

 

「・・・・黒歌、言いにくいんだったら無理に言わなくてもいいぞ?俺は気にしないし」

 

「ッ!?」

 

頭を撫でながら言うと、黒歌は顔を真っ赤にする。

 

「ん?顔が赤いぞ?酔いが回ったなら無理せず横になったほうが・・・・」

 

「・・・らの・・・か」

 

「え?」

 

「咲良の馬鹿ァァァ!!」

 

「いぎっ!?」

 

頬に感じる鈍い衝撃。何故か俺は黒歌に罵倒されながらビンタされていた。

 

「人の気も知らないで・・・・こうなったらやけ酒にゃ!私も向こうに混ざってくる!」

 

なぜか知らないが怒っている黒歌は、爺さんたちに混じって酒を飲み始めた。

 

「いてててて・・・・なんだったんだ一体?」

 

黒歌にビンタされた頬に手を当てると、じんわりと熱を持っていた。きっと赤くなっているだろう。

 

「咲良さん・・・・・あなたよく鈍感だって言われませんか?」

 

「へ?どういうことですか?」

 

グレイフィアの言葉の意味が・・・・というより、なぜそんなことを聞かれたのか分からずに俺は首を傾げる。別に俺鈍感ではないと思うし・・・・そんなこと言われる心当たりもない。

 

「自覚はないのですか・・・・・いえ、だからこそ鈍感なのでしょうが」

 

「咲良、どんまい」

 

どこか呆れた様子でため息を吐くグレイフィアさんと、俺に向かってなぜかサムズアップしてくるオーフィス。

 

本当にどういうことなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・・もう付き合ってられん」

 

爺さん達の酒盛りが収まる気配が一向にないので、俺はその場をグレイフィアさんに任せて、オーフィスと一緒に自分部屋に戻ってきていた。

 

ちなみに俺達が出るとき、爺さん達はもうすぐうちの学校で行われる父兄参観の話で盛り上がっていた。サーゼクスさんはリアス先輩のお兄さんだってことは知っていたが・・・・まさかアザゼルさんがヴァーリの保護者だとは思わなかった。

 

というか・・・・・ヴァーリも随分と複雑な事情を抱えてるんだなぁ。俺もそれなりだと思っていたが、あいつの事情は俺以上に複雑なようだ。

 

というかあの3人父兄参観に来るのか・・・・・魔王に堕天使の総督、人外が来る父兄参観ってスゲェなおい。

 

ちなみにオーフィスと黒歌は三種族会談が終わるまではまだ存在は隠しておいたほうがいいらしいので来られない。二人共だいぶ落ち込んでいたが。

 

まあそれはともかくとして・・・・・

 

「・・・・これからどうなるんだろうなぁ」

 

俺は昨日、今日のことを振り返ってみた。間違いなく、この二日間で起きたことによって俺の人生は大きく変わっただろう。

 

黒歌のことは悪魔側での対応待ち。サーゼクスさんは気のいい人なので、おそらく悪いようにはならないだろう・・・・まあ、俺の希望的観測が大いに含まれているが。

 

そして俺は・・・・三種族の和平がなされたあと、それ以外の種族、神郡との和平の仲介役となる。俺にどれだけのことが出来るわからないけれど・・・・尽力しよう。爺さんの世界の平和っていう夢を叶えるためにも。

 

「・・・・咲良」

 

「ん?」

 

突然、オーフィスが俺の胸に顔を埋めながら抱きついてきた。

 

「我、頑張るのはいいことだと思う。だけど、無理はしたらダメ」

 

「え?」

 

「咲良・・・無理しそうな気がしたから」

 

・・・・なんだか最近オーフィスがエスパーなんじゃないかって思うことが増えたな。俺の考えやら何やら色々と察してくるし・・・・・婚約者としては冥利に尽きるってやつなんだろうが。

 

けどまあ・・・・・心配させるのはダメだよな。

 

「無理はしないよ。無理したらお前や黒歌を心配させちゃうもんな」

 

「本当に無理しない?」

 

「うん、本当」

 

「なら・・・・・ちゅーして」

 

「ああ・・・・・ん?」

 

今なんかオーフィスの口からおかしな言葉が聞こえてきた気がする。

 

「オーフィス・・・・・今何してって言った?」

 

「ちゅー」

 

「・・・・・マウストゥマウス?」

 

「うん」

 

どうやら俺の聞き間違いじゃないらしい。

 

「えっと・・・・ごめんオーフィス、なんでちゅー?」

 

「さっき黒歌が言ってた。咲良は放っておいたら無理するから無理しないように約束しろって」

 

「それでなんでちゅー?」

 

「約束のちゅーは基本・・・・って黒歌が言ってた」

 

「黒歌・・・・」

 

なんでそんなことをオーフィスに・・・・さっきのビンタが何か関係してるのか?

 

いや、まあともかく・・・・・これはキスしなくちゃならない流れなんだろうなぁ。

 

今まで一緒に寝たりお風呂入ったりはしたことあるけど、実はキスはまだだったりする。いや、ほっぺや額には何度かしたこともされたこともあるんだが・・・・・唇にっていうのは今までない。

 

「・・・・咲良、してくれないの?」

 

俺が考えを巡らせていると、オーフィスが小首を傾げながら尋ねてくる。まあ、無理しないって約束の証明のためにはしたほうがいいんだろうし・・・・・するべきだろうし・・・・

 

いや、違うな。約束とかそういうの関係なしに・・・・俺は・・・・

 

「・・・・オーフィス、目を閉じて」

 

「ん」

 

俺が言うと、オーフィスは素直に従って目を閉じる。キスの時は目を閉じるのがマナーだと爺さんあたりに吹き込まれたのか、あるいは俺がお願いしたから聞いてくれたのか・・・・・まあどっちでもいいが。

 

「オーフィス・・・・」

 

俺はオーフィスの肩に手を置く。オーフィスを正面から見据え、オーフィスト同じように目を閉じた後、顔を少しづつ近づけ・・・・・俺とオーフィスの唇は重なった。

 

「・・・・・これでいいか?」

 

時間にしてほんの数秒の触れるだけの口付け。俺の初めてのキス。先程まで触れ合っていた唇を少し舐めると、わずかに甘い味がするようなきがする。そしてなにより・・・・自分の心が幸福感に包まれているように感じた。

 

「・・・・あったかい」

 

「え?」

 

「咲良とチューしたとき・・・・ここが暖かく感じた。よくわからないけど・・・・すごく気持ちいい。我・・・・すごく幸せ」

 

希薄ながらも、嬉しそうな表情で胸に手を当てながら言うオーフィス。

 

そっか・・・・・オーフィスも同じ気持ちなのか。オーフィスも幸せを感じてくれているのか。

 

「咲良、もう一回・・・・・ううん我、もっともっとちゅーしたい」

 

「ああ、いいよ。もっとしよう・・・・もっともっと」

 

オーフィスにせがまれるまま・・・・俺が求めるままに、何度も何度もキスを繰り返す。

 

「咲良・・・・好き。大好き。もっと」

 

「俺も好きだよ。だからもっと・・・・」

 

その日、俺はオーフィスと10回唇を重ねた。




前回の一件で黒歌さんの咲良さんに対する好感度は最高潮に達してしまいました

オーフィスちゃんがいるので結ばれるのは諦めていますが、せめてお礼を言おうとして・・・・・ああなっちゃいました。あれは咲良さんが悪い

そして咲良さんとオーフィスちゃんの初キッス・・・・・・うん、咲良さんが羨ましくてたまりませんね

何より、咲良さんとのキスで幸せを感じてるオーフィスちゃんマジ祝福したい

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人とは時に思わぬ力を発揮する

今回は授業参観のお話となります

それでは本編どうぞ


 

こんにちは、湊内咲良です。

 

今日は駒王学園にて父兄参観が実地される。正直、高校生にもなって授業参観ってどうなんだよと思う今日このごろ。正直ちょっとした恥辱案件だと思う。

 

まあ俺の場合は・・・・・

 

「咲良、視線!視線こっちにプリーズ!」

 

バズーカのようなレンズを付けたカメラを構えて、やたらとはしゃいでいる保護者を持った俺にとってはちょっとどころじゃなく、人生で思い出したくないランキングワースト3に確実に食い込む恥辱案件なのだが。

 

マジで何やってるんだよあのクソ爺・・・・・カメラ自体は百歩譲って許すとして、そんな馬鹿でかいレンズ、こんな狭い教室じゃ無用だろうが。邪魔なだけだろうが。周りの迷惑考えろよ。さっきからシャッター切りまくってるし。

 

「ねえ咲良、あんたのお爺さんって・・・・・」

 

「頼む桐生。何も言わないでくれ」

 

隣りの席の桐生がやたらと同情のこもった視線を俺に向けながら声をかけてくる。さすがの桐生も気の毒に思ったようだ・・・・なんというかもう泣きたい。

 

ちなみにだが・・・・

 

「おーいヴァーリ。もっと笑えって」

 

「・・・・はあ」

 

「ヴァーリ・・・・どんまい」

 

爺さんと同じぐらい馬鹿でかいカメラを構えてる人がもう一人・・・・・アザゼルさんだ。爺さんに負けず劣らずシャッターを切りまくってて目立っている。そんなアザゼルさんを保護者とするヴァーリは、珍しくげんなりした・・・・というより、恥ずかしそうな様子だ。イッセーはそんなヴァーリを慰めている。

 

「ふむ・・・・・授業参観というのは賑やかなものなのだな」

 

「ゼノヴィア、残念ながらこれは世間一般で言う授業参観の風景では断じてない。認識を改めてくれ」

 

桐生とは逆隣の席にいるゼノヴィアに間違った認識が植えつけられようとしてたので、やんわりと改めるように言う。はあ・・・・授業参観って普通こんなに疲れるものじゃないだろ。

 

ちなみに、授業内容は英語となっているのだが・・・・・なぜか俺たちは配られた紙粘土で創作活動に勤しんでいた。これでなんでもいいから作らなければならないのだ。

 

英語教師曰く『そういう英会話もある』らしいが・・・・・・なんでさ。声を大にして『ねえよっ!』って叫びたかったよ。流石に叫ぶのは自重したけど。というか、この前クッキー作り押し付けた家庭科教師といい、うちの学校の教師たちはどうなってるんだよ・・・・・教育委員会に報告したほうがいいような気がしてきた。

 

まあいい・・・・・ここで愚痴を並べても何一つ解決するわけではないのだから今は真面目に英語授業に取り組もう。紙粘土で創作ってもはや小学生の図工の授業としか思えんがな

 

「なにを作るかな・・・・」

 

思いついたものをなんでも自由に作れと言っていたが・・・・・正直それが一番困る。ある程度成約とか制限とかつけてくれた方がやりやすいのだが。

 

ともかく何か作らないと・・・・・真っ先に思い浮かぶのはやっぱりオーフィスなんだよなぁ。

 

出会った時から一切外見を変えないオーフィス。人間で言うところの10歳前後というところだろうか?小さいけれど色々なところは柔らかくて抱き心地いいんだよなぁ。髪もサラサラしてて撫でてるこっちが心地よくなるぐらいだし。

 

それになんといってもあの目だ。純真無垢でいてまるで深い闇のように輝く瞳・・・・あの眼で見つめられたらもう何もかもオーフィスに捧げてもいいと思えてしまう。

 

脳内で鮮明にオーフィスのことが思い浮かばれる。そしてそれは・・・・無意識に俺の手の動きに反映されていた。

 

「咲良・・・・・あんた本当に器用ね」

 

「え?何言って・・・・・あ」

 

呆れた様子の桐生に言われ気がつく・・・・・いつの間にか俺の紙粘土がオーフィスの像になっていたことに。

 

「いつの間に・・・・・」

 

「いつの間にじゃないわよ・・・・咲良、さっきからすごい勢いで紙粘土弄ってたのよ?」

 

「マジかー」

 

よもや無意識にオーフィスの像を作ってしまうとは・・・・・オーフィスのこと好きすぎだろ俺。というかこの像・・・・我ながら完成度高いな。俺の脳内のオーフィスを余すところなく再現されてる・・・・桐生の言うとおり器用な方だって自覚はあるけど、まさかこれほどのものが作れるとは。

 

「ふむ・・・・・これは見事なものだな。咲良は家事だけでなく芸術の才能もあるのだな」

 

ゼノヴィアは感心したように褒めてくる。ただまあ、このクオリティはオーフィスだからこそ出せたものであると断言できる。それ以外だったら無理だと自信を持って言えるな。

 

「確かに見事な出来だと思うわ。だけど・・・・・咲良、正直またあんたを見る目が変わりそうだわ」

 

解せぬ・・・・・と、言いたいところだが否定できない。だって俺傍から見たら『学校の授業で幼女の像を作る生徒』だもん。なんていうか・・・・・一部の人からすごく大きなお友達に思われるような気がする。

 

「・・・・・湊内」

 

「ん?」

 

俺がちょっとブルーな気持ちになっていると、クラスの男子が俺に声をかけてきた。そいつは話もそんなにしたことない、特に親しいわけでもないやつなのだが・・・・・

 

「湊内・・・・・頼む!それを五千円で売ってくれ!」

 

「・・・・・は?」

 

なんの用だろうと思っていたら、そいつは突然深々と頭を下げて俺にオーフィスの像を売ってくれと宣った。なんかもう、必死さがすっごい伝わってくる。まあ、あの超絶可愛いオーフィスの像なのだからほしがる気持ちはわからなくもないが。

 

「ずるいぞ!俺も狙ってたのに・・・・・俺は六千出すぞ!」

 

「俺は七千だ!こんな可愛い子の像欲しいに決まってる!」

 

「なんの!俺は八千だす!湊内さん、どうか俺に譲ってください!」

 

いつの間にか教室がオークション会場と化してしまった。若干目が血走っている数名の男子生徒が1000円単位で金額を釣り上げていきながら俺の創ったオーフィス像を狙う・・・・・お前ら、クラスの大半の女子生徒から白い目で見られてるんだがいいのか?

 

なお、教室の後ろの方で爺さんとアザゼルさんが腹を抱えて笑っている。そりゃそうだ。こんな光景、俺だって当事者でなければ笑っている。

 

というか・・・・・

 

「ふざけるな。これは何があっても絶対に売らないぞ」

 

勝手に値段を釣り上げてくれているが、俺はこの像を売るつもりは一切ない。当然だ。オーフィスの像・・・・ほかの誰にも渡してなるものか。

 

「そ、そんな・・・・そこをなんとか!」

 

「そうだ!こうなったら一万だそう!」

 

「値段じゃない。この像は俺にとって大切なものなんだ。だから売らん」

 

「お願いします湊内さん!私にその像をお恵みください!今日の夜のお供にしたいんです!」

 

「有効活用いたしますからどうか!」

 

おい、てめぇらオーフィスの像でなにやらかそうってんだ。

 

「なお手放す気が失せたわ!誰がなんと言おうとこのオーフィスの像は・・・・・あっ」

 

もう迂闊としか言い様がなかった。つい興奮してしまい、オーフィスの名前を口に出してしまったのだ。

 

恐る恐るとイッセーやヴァーリ、アーシアといったこのクラスでオーフィスのことを知らない悪魔連中の方へと視線を向けてみる。イッセーとアーシアは特に気にしていない、あるいは気がついていないという様子だったが・・・・・ヴァーリの表情は訝しげで、俺の方を見ている。おそらくオーフィスという名前に反応しているのだろう。

 

次に爺さんとアザゼルさんの方へと視線を向けてみると・・・・・あちゃー、といった感じで頭を抑えている。

 

「・・・・咲良、こういう時はどんまいと声をかければいいのか?」

 

俺の肩に手を置きながら、ゼノヴィアが慰めの言葉を投げかけてくる。

 

ああ・・・・・・やっちまったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちまったな咲良」

 

「やっちゃったにゃん咲良」

 

「咲良、やっちゃった?」

 

「はい、やっちまいました」

 

帰宅後、オーフィスの名前を口にしてしまったこととオーフィスと黒歌に話した俺。爺さんと黒歌は苦笑いを浮かべながら、オーフィスはことの重大さがよくわかっていないようで小首を傾げながら俺に言ってきた。

 

「やっぱこれってまずかったかな?」

 

「んー・・・・まだ話すのは時期尚早ではあるからな。三種族会談が和平締結されるまでは隠しておこうと思ったんだが・・・・・まあ大丈夫だろ。大きな問題にはならないと思うし、今頃アザゼルあたりが言いくるめてるだろう」

 

爺さんが言うには、一応は大事にはならないそうだ。ただまあ、やはり迂闊ではあったわけだし・・・・本当なら爺さんにあの馬鹿デカイカメラについて説教しようと思ったが、多少なりとも面倒起こしてしまったのでそれはやめておこう。

 

「まあ、過ぎたことをとやかく言ったってしょうがないから切り替えるにゃ。私としてはいい加減それに関してツッコミを入れたいところだし」

 

そう言いながら、黒歌の視線は机の上に置かれた像に向けられる。俺が授業で作った・・・・オーフィスの名前を出すきっかけとなった像だ。

 

「これ紙粘土を手でこねて作ったのよね?いくらなんでも完成度高すぎるにゃ」

 

関心半分、呆れ半分で黒歌は言う。

 

「うん、まあ我ながらこの出来には驚いてるよ?まさかオーフィスへの愛がこのレベルに至らせるとは・・・・」

 

「咲良の愛・・・・我、嬉しい」

 

「それは良かった」

 

「急なイチャつきやめて。心の準備できてないから」

 

俺の胸に擦り寄ってくるオーフィス。そして当然のように俺はそんなオーフィスの頭を撫でる。そんな光景を目の当たりにした黒歌は、何やら胸焼けを起こしたような感じになっていた・・・・まあ悪いとは思ってるよ。やめないけど。

 

「と、そうだ。咲良、この像なんだが俺が魔術でコーティングしておいたからそう簡単に壊れることはないぞ。流石に二天龍クラスの攻撃には耐えられないが、龍王クラスの攻撃じゃビクともしないぐらいの強度にはしてある」

 

「マジかー。ありがとな爺さん」

 

珍しくいい仕事したな爺さん・・・・・でも、龍王クラスの攻撃でビクともしない像とはすげーな。

 

「それと、着色までしたいなら道具一式あるから貸すがどうする?」

 

「あ、なら貸してくれ。すぐに塗るわ」

 

「なんでそんな道具があるにゃ・・・・・」

 

黒歌は呆れているが、着色できるのは助かる。これでさらに完成度が上がるな。

 

その後、爺さんから道具を借りてオーフィスの像に着色を施した。1時間ほどかかったが、完璧に仕上がり、オーフィスの像は俺の大切な宝物となった。

 

 




うっかりオーフィスちゃんの名前を出しちゃった咲良さん。それだけあの像を守るのに必死だったということで

でもまあ・・・・・やっぱりほしいよね、オーフィスちゃんの像

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会のお約束と言えば・・・・・・

今回、とうとう黒歌さんと小猫ちゃんが再会します

はたしてどうなるか・・・・・

それでは本編どうぞ


父兄参観が終わり数日後、今駒王学園で三種族会談が行われている。三種族の今後の行く末を決めるといっても過言でない大事な会談・・・・・爺さんの『平和な世界』という夢の足がかり。人間である俺でも会談がどうなっているか気になって仕方がない。

 

そして・・・・・会談の結末を気にしているものがここにもう一人・・・・

 

「会談・・・・・どうなったかにゃ」

 

それは黒歌だった。先程から落ち着きくそわそわしている。

 

「黒歌、少し落ち着いたほうがいい」

 

「うっ・・・・それはわかってるんだけど・・・・」

 

ついにはオーフィスに突っ込まれるほどだ。ちなみにオーフィスは大人しく俺の膝の上に座っている。まあいつもの定位置ってことだ。

 

「会談で和平が結ばれれば会談の出席者・・・・・白音がここに来るっていうから落ち着かなくて」

 

これが黒歌がそわそわしている理由であった。会談で無事に和平が結ばれた際、会談出席者はうちに来ることになっている。主な理由は俺やオーフィスの紹介と今後の他種族、他神郡との和平に関する説明をすること・・・・・あと、和平締結を祝っての宴会を行うためだ。これは爺さんとアザゼルさんが提案したことなのだが・・・・・提案したのがあの二人だから、後者の意味合いがすっごい強いように勘ぐってしまうのは仕方のないことだろう。

 

まあ、それはどうでもいいとして・・・・つまり、黒歌が落ち着かないのは、もうすぐ妹と会うことになるかもしれないからだ。会えるのは楽しみだが、離れ離れになった経緯が経緯だから気まずさもあったりと今の黒歌の心境は複雑なのだろう。普段飄々としているが、黒歌は精神的にちょっと脆いところがあるからなぁ。

 

「まあ気持ちは分からないでもないが、もうちょっと堂々としてたらどうだ?主である悪魔を殺した件に関しては既に調査を終えて減罪はほぼ確定してるわけだし」

 

そう、黒歌が主の悪魔を殺した件については既に悪魔側の調査は既に終えていた。やたら早いと思ったが、調査してみたらあっさり真実が露呈したそうだ。早めに調査が終わって良かったと思う反面、だったらはじめからちゃんと調査やっとけよと呆れもした。

 

ともかく、その件はあとは黒歌への事情聴取を残すのみとなっている。罪状に関しては悪魔側の非の大きさもあり、ほぼ確実に減罪される。だからこそ、会談が無事終われば黒歌が今回の会談出席者達・・・・というより、妹と会うことが許されたのだ。事件のことは会談が終わり次第サーゼクスさんの口から語られると爺さんが言っていたしな。

 

「わかってはいるけど、やっぱり私・・・・真実を知っても白音、私のこと嫌ったままかもしれないし」

 

黒歌としては嫌われてないか不安でしょうがないってことか。黒歌の妹のことは一度会っただけでどんな子なのか詳しく知ってるわけじゃないから『嫌ってるはずがない』だなんて軽々しく言うことはできないし・・・・・だったら俺ができることは・・・・

 

「黒歌、手出して」

 

「え?」

 

「まあ・・・・あれだ。気休めかもしれないけど手握っててやるから。人肌感じるとリラックスできるるって聞いたことあるし」

 

「なら我も。我も黒歌の手握る」

 

俺は黒歌に手を差し出しながら言うと、オーフィスも便乗して黒歌に向かって手を伸ばす。

 

「・・・・・わかったにゃん」

 

黒歌は俺とオーフィスの手を握った。手のひらから黒歌の体温を感じる。

 

「・・・・・咲良の言う通りにゃ。こうしてると・・・・・少し落ち着く」

 

「そうか。それはなによりだ」

 

「黒歌が落ち着けたなら、我嬉しい」

 

リラックスできたのか、微笑みを浮かべる黒歌。そんな黒歌を見て、オーフィスも同じように微笑みを浮かべ、俺も自分の口角が喜びで上がるのがわかった。

 

「二人共ありがとにゃ・・・・・白音と手を繋いでも、こんなふうに安らぎを感じるかしら?」

 

「きっと感じることができるさ。その子はお前のたった一人の家族なんだからさ」

 

「・・・・・そうね。そうだといいにゃ」

 

駒王学園にいる妹へと思いを馳せる黒歌。

 

爺さん・・・・・黒歌のためにも、会談はきっちりと成功させてくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリリりりりり♪

 

会談が終わるのを今か今かと待っていると、俺の携帯が着信を知らせる。ディスプレイに表示されているのは爺さんの名前だった。俺は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。

 

「爺さん?会談は終わったのか?」

 

『ああ、ついさっきな』

 

「結果は?」

 

『多少話がこじれかけたりはしたが、無事和平締結だ。これで三種族の間で戦争が起こることはほぼないだろう』

 

電話越しに聞こえてくる爺さんの声は、どこか嬉しそうだった。まあ今回の三種族の和平締結で爺さんの夢である平和な世界に一歩近づけたのだ・・・・・嬉しく思う気持ちはわかる。

 

『予定通りこれから俺達はそっちに行く。ただ・・・・・』

 

「ただなんだ?」

 

『一人・・・・・頑なに行きたくないっていう子がいてな。その子は連れてこれそうにない』

 

ここに来たくない子・・・・・多分それは・・・・

 

「ゼノヴィアか?」

 

『ああ、その子だ。お前から事情は聞いていたが・・・・・いいのか?』

 

「無理に連れてきたって仕方ないだろう。ゼノヴィアの意思を尊重するさ」

 

三種族間の和平は結ばれたんだ。いずれイリナもこの街に来ることもあるだろう。その時・・・・二人できてくれればそれでいい。

 

『そうか・・・・お前がそう言うならいい。それはそれとして、宴会の準備は出来てるか?』

 

「問題なく出来てるよ。料理も酒も準備万端だ。俺達心の準備も・・・・な」

 

『そなによりだ。それじゃあこれから転移するから庭で待ってろ』

 

「わかった」

 

そこで通話は終了した。

 

「今からこっちに転移してくるそうだ。庭で待ってよう」

 

「わかったにゃ」

 

「・・・・・ゼノヴィアはやっぱり来ない?」

 

話を聞いてたのか、オーフィスが尋ねてくる。

 

「ああ、イリナがいないからな。でも大丈夫だ。和平が結ばれたんだからきっといつか二人で来てくれるさ」

 

「うん・・・・我、信じてる」

 

いつか二人でうちに来てくれる未来を信じるオーフィス。俺も同じように信じている。

 

「さて、それじゃあ庭の方に行こうか」

 

黒歌とオーフィスト一緒に、庭の方に向かう。

 

どうでもいいことだが、庭に転移してくると聞いていたので庭は昼間のうちに手入れしておいた・・・・・少しでも見栄えをよくしておきたかったからな。

 

庭で10分ほど待っていると・・・・・庭の地面に魔法陣のようなものが出現し輝きだした。そして程なくして十数名の団体が転移してくる・・・・・こんなにいるのに、顔も知らないひとの数の方が少ないとはな。俺も随分とまあ人間以外の知り合いが増えたものだ。

 

というか・・・・・

 

「黒歌・・・・何してんの?」

 

俺は俺の背中に隠れるように後ろに立っている黒歌に言う。

 

「だ、だって・・・・・白音が・・・・」

 

黒歌の視線の先には、小柄で白髪の女の子がいる。前にクッキーをあげた子・・・・・つまり黒歌の妹だ。

 

「せっかく会えたのに縮こまってたらダメだろ・・・・」

 

「うぅ・・・・」

 

俺は黒歌の手を掴み、前に出てこさせた。

 

「え、えっと・・・・・久しぶりにゃ白音。元気だった?」

 

「・・・・・・」

 

ぎこちなくではあるが笑顔を浮かべながら声を黒歌。だが、白音からの返事はない。

 

・・・・・・気まずい。これはかなり気まずい。気まずすぎて周りの人全員気を使って一言も発せずにいるほどだ。あのちょっと天然なオーフィスでさえ大人しくしているのだ。

 

「その・・・・あ、そうだ。せっかく久しぶりに会ったんだからお姉ちゃんが抱きしめてあげるにゃん♪」

 

「・・・・・・」

 

おおう・・・・・ここで無反応はきつい。気まずさが跳ね上がった。お願い白音・・・・・なんとか言ってあげて。出ないと気まずさで俺達息できないから。それ以前に黒歌が不憫で仕方がないから。

 

「ねえ・・・の・・・・か」

 

「え?」

 

ようやく白音は言葉を発した。だが、声が小さくて聞き取りづらい。

 

けどまあ・・・・・・何となく俺は察した。だってなんか・・・・・拳握ってわなわな震えてるもん。

 

「えっと・・・・・白音?」

 

恐る恐ると白音に近づいて声を掛ける黒歌。

 

そして・・・・・

 

「姉様の・・・・・・馬鹿っ!!」

 

「んにゃっ!?」

 

白音の右ストレートが、見事に黒歌の頬に炸裂した。相当な威力だったのか・・・・・黒歌の体は数m吹っ飛んだ。人間の俺だったら顔面陥没して死んでたな。

 

「ちょ、白音!?久しぶりに再会したお姉ちゃんの顔面にグーパンはいくらなんでもひどくない!?」

 

殴られた頬を手で抑えながら涙目で訴え掛ける黒歌。相当痛かったんだろうなぁ・・・・・まあ、こうなるって予期はしてたけどさ。

 

「黙ってください姉様。今のは正当な制裁です」

 

「だからってグーパンはあんまりにゃ!?せめてビンタでしょ!?」

 

「顔の傷は勲章です」

 

「それ男の子の理論にゃ!」

 

いや、黒歌よ・・・・・俺男だけどそんな勲章いらんぞ。

 

「・・・・・全部姉様が悪いんです。私に何も言わずに勝手なことして・・・・いなくなって。私がどんな目に遭ったと思ってるんですか?私が・・・・・・どんな思いをしていたと思ってるんですか?」

 

「・・・・・」

 

ポツリポツリと言葉を紡いでいく白音。そんな白音を、黒歌は悲しそうに見つめている。

 

「どうして何も言ってくれなかったんですか?どうして私を置いていってしまったんですか?どうして・・・・・私も一緒に連れて行ってくれなかったんですか?」

 

「・・・・・・私と一緒に来ても危ない目に遭うなんてわかりきってたにゃ。あの時は白音を置いていくのが一番だと思って・・・・・」

 

「私のことを姉様が勝手に決めないでください!ずっと・・・・・ずっと一緒に居たのに置いていかれて・・・・私・・・・・寂しくて・・・・」

 

「・・・・・」

 

「お姉様の・・・・馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿」

 

「・・・・白音」

 

ポロポロと涙を流しながら、黒歌に何度も馬鹿と言う白音。そんな白音を、黒歌は優しく抱きしめる。

 

「・・・・寂しい思いをさせちゃってごめんなさい白音。でも大丈夫にゃ。今は・・・・私は白音と一緒にいる。これからも・・・・・何度も会えるから。だから・・・・・大丈夫にゃ」

 

「お姉・・・・様ぁ」

 

ギュッと互いを抱きしめ合う黒歌と白音。その光景を、その場にいた全員が微笑みを浮かべながら見守っている。

 

ようやく仲直りすることができた黒と白の姉妹猫・・・・二人の仲が二度と脅かされないことを切に願う。




再会の挨拶はグーパンが基本

何はともあれ再会できてよかったよかった

原作と比べてちょっと弱々しいけどこんな黒歌さんも可愛いよね?もちろん可愛さならオーフィスちゃんがナンバー1ですが

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

競い合う想い

今回のメインは咲良さんとオーフィスちゃん、それと二天龍夫婦です

思いのほか難産だった・・・・・

それでは本編どうぞ


黒歌と白音の再会がなされた後、俺とオーフィス、そして今後の他種族、他神郡との和睦のことが爺さんとアザゼルさんによって説明された。その際のリアクションはまあお察しの通りというやつだろう・・・・・・驚かれるのにも慣れたものだ。

 

そしてその後は三種族の和平が成されたことを祝っての宴会が行われたのだが・・・・

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

「・・・・・すみません」

 

リアス先輩と生徒会長がものすごく申し訳なさそうに謝罪してきた。二人の視線の先にはお酒飲んで馬鹿騒ぎしてるサーゼクスさんと、生徒会長のお姉さんで現レヴィアタンであるセラフォルーさんがいる。二人の謝罪は、身内の所業に対するものであろう。

 

「いえ、お二人が謝る必要はありませんよ。馬鹿騒ぎの中心にいるのうちの爺さんだし」

 

「あとアザゼルもだな・・・・・・まあよくある事だが」

 

俺とヴァーリが呆れながら言う。宴会やるって言った時点でこうなることは正直予想できたんだよなぁ・・・・・まあ、別に止めやしないけどさ。止めやしないが・・・・・

 

「・・・・・とりあえず、爺さんの明日の朝食は飲み物なしでビスケット100枚だな」

 

「酒やけした喉に飲みのもなしでビスケット100枚って・・・・悪魔の所業だね」

 

イッセーが何やら突っ込んできた。というか悪魔はお前だろうが。

 

「・・・・・あの、騒がしいの苦手なら部屋変えます?広い部屋ならまだありますし、食べ物と飲み物も念のためわけてとってありますし」

 

「そうね。ここでは落ち着けないし・・・・・案内お願いするわ」

 

「わかりました。こっちです」

 

リアス先輩に言われ、俺は未成年組+黒歌を連れて別室に向かった・・・・・そういえば、黒歌って未成年なのかな?普通に酒は飲んでたけど・・・・一体いくつなんだ?

 

「咲良、今失礼なこと考えなかったかにゃ?」

 

「いえ、滅相もございません」

 

黒歌が黒い笑みを浮かべながら尋ねてきたのでとりあえず誤魔化した。やはり女性に年齢のことはタブーだということか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても・・・・・まさかこんなところにオーフィスがいたとはな」

 

別室に移動し、飲み食いしたりゲームしたり各自思い思いにいている中、ヴァーリが俺の膝の上に座るオーフィスに視線を向けながら言う。ちなみに近くには当然のようにイッセーもいる。

 

「その上咲良の婚約者とは・・・・・予想外にも程がある」

 

「まあ気持ちはわからんでもないが・・・・俺としてはヴァーリとイッセーが二天龍だっていうことの方が驚きだがな」

 

「ドライグもアルビオンも久しい」

 

オーフィスはヴァーリとイッセーに対して言う。二人に対してというよりは、二人の神器に宿るドラゴンに対してだろうが。

 

「というか、二天龍って宿敵どうしなんだろ?それなのに恋人同士・・・・・二天龍夫婦ってマジか」

 

「二天龍夫婦って・・・・・なにその呼び方。まあ妙にしっくりくるけど」

 

「呼び方といえば、爺さんやアザゼルさんからお前達が『乳龍帝』やら『ケツ龍皇』やらって呼ばれてるって聞いたんだが・・・・」

 

『『うおぉぉぉぉぉん!!』』

 

何やら嘆き声が聞こえてきた。

 

「今の声・・・・なんだ?」

 

「ドライグとアルビオンの声だった」

 

「あ~・・・・こいつら私達が『乳龍帝』やら『ケツ龍皇』って呼ばれるの嫌がってな。呼ばれるたびにむせび泣くんだよ」

 

・・・・・まあ、数多の種族に恐れられていた二天龍がそんな呼ばれ方されればむせび泣きもするか。ドライグもアルビオンも普通にかわいそうである。

 

「乳龍帝とケツ龍皇・・・・・なら我はショタ龍神?」

 

「オーフィス、それは普通なら蔑称扱いされるもので自分で名乗るものじゃない」

 

「そっか、見た目幼女だけどオーフィスって咲良よりもだいぶ年上なんだっけか・・・・・つまり合法ロリ?」

 

「イッセー、それは触れちゃあかん」

 

まあロリババアって言わなかっただけマシか・・・・・言ってたら説教だったけど。

 

「・・・・ん?」

 

「どうしたイッセー?」

 

「いや・・・・・なんか今とびきりの危機を回避したような気がして」

 

勘がいいなイッセー。

 

「まあそれはともかくとして話を戻すけど、パッと見だとオーフィスってただの女の子にしか見えないから・・・・そんなオーフィスの婚約者だっていうなら咲良って何も知らない人からはペド扱いされそうだよね」

 

「そういえば以前桐生が咲良を見る目が変わらざるを得ないと言っていたが・・・・桐生はオーフィスと会ったことがあるようだし、何となく理由はわかったな」

 

「おっとその話題はNGだ」

 

前に桐生にペド呼ばわりされたこと思い出しちゃったじゃないかちくしょう。

 

「咲良、大丈夫?」

 

俺が精神的ダメージを受けていると、オーフィスが振り返って俺の頭を撫でてきた。可愛らしい婚約者の行為に俺は心が癒されるのを感じる。

 

「ありがとうオーフィス。大丈夫だよ」

 

「ん・・・・・ならいい」

 

「まさか咲良がこんなにも堂々とイチャイチャするだなんて・・・・」

 

「いや、イチャイチャしてるつもりはないんだが・・・・」

 

「いやいや・・・・・周り見てみ?」

 

イッセーに言われて周囲を見てみると、何やら胸焼けを起こしたように気分悪そうにしている。なんか黒歌だけ達観した表情ですぐそばにいた白音の肩に手を置いていたが。

 

「・・・・・ふむ、皆耐性低いんだな。これぐらいなら最近は黒歌も慣れたって言ってたのに」

 

「いや、そのリアクションはおかしいと思うのだが」

 

「そのツッコミをヴァーリがするのもおかしいと思うがな」

 

お前だってさんざんイッセーとイチャついてるだろうが・・・・・誰に言われても仕方ないと思うがお前には言われたくない。

 

「我、もっと咲良とイチャイチャしたい」

 

「そうだな。だけど、今はちょっと空気を読んで欲しいかなとも思うかな?」

 

「わかった」

 

俺が言うと素直に返事を返してくるオーフィス・・・・・というか、これまで空気読んでないって自覚してたのか?

 

「そういえば、オーフィスはどうしてここで暮らしてるの?普通龍神がこんな町中で暮らしてるだなんてありえないと思うんだけど・・・・・」

 

「まあその疑問はもっともだな。オーフィスは10年前に爺さんが連れてきたんだよ。今日から一緒に暮らすことになったってな」

 

この時俺はオーフィスに一目惚れしてしまったのだが、それは言わない方向で・・・・

 

「その時咲良に結婚して欲しいって言われた」

 

・・・・・言わないでおこうと思った矢先にこれですかオーフィスさん。空気読めてないじゃないですか。

 

「10年前ということは咲良は7歳・・・・7歳でプロポーズとは咲良はとんだ大物だな」

 

「うぐっ・・・・し、仕方がないだろう。一目惚れだったんだから・・・・」

 

「その時は咲良の言ってることよくわからなかった。けど・・・・・今は嬉しい。初めて会った時から我のこと好きになってくれてすごく嬉しい」

 

そう言いながらオーフィスは俺に擦り寄ってくる。うん、もう空気読む気は一切ないということがわかった。

 

まあ、俺としては嬉しいから止める気もないが。

 

「えっと・・・・・話は逸れちゃったけど、結局オーフィスがこの家で暮らしてる理由がわからないんだけど?」

 

まあ、まだきっかけは俺の爺さんということしか話してないからな。理由まではまだわからないだろう。

 

「10年前の我は次元の狭間に帰って静寂を手にしたいと思ってた。その時に伊槻に会って・・・・・伊槻言ってた。静寂なんかよりもずっと大切なことはいくらでもあるって。我はそれが知りたくてここで暮らすことを決めた」

 

「それが君がここで暮らす理由か・・・・・それで、その大切なことというのは何かわかったのか?」

 

「うん。我、静寂よりも・・・・咲良の方が大切だって知った。咲良といるとポカポカして暖かくなる。咲良といると楽しくて嬉しくて・・・・・これからも咲良と一緒に居たいって思う。何があっても・・・・咲良と離れたくない」

 

「「「おおう・・・」」」

 

オーフィスのこの発言に、俺もイッセーもヴァーリもこのリアクションだ。おそらくこれは純粋にオーフィスが思っていることなのだろう。

 

なんというか・・・・・愛されすぎてて涙も出てきそうだ。嬉しすぎて。

 

「オーフィス・・・・・・俺も同じ気持ちだよ。俺もこれからもオーフィスと一緒に居たいって思う」

 

「咲良も我と同じ気持ち?」

 

「ああ・・・・いや、ちょと違うな」

 

「え?」

 

「オーフィスが俺のことを想ってくれてる以上に・・・・俺の方がオーフィスのこと想っているよ」

 

オーフィスを想うこの気持ち・・・・・誰にも負けない自信がある。俺のオーフィスを想う気持ちは間違いなく何にも勝るはずだ。

 

「む・・・・・そんなことない。我の方が咲良のこと想ってる。これだけは咲良でも譲れない」

 

「いやいや俺の方が・・・・」

 

「我の方が・・・・」

 

互いに一歩も退かない俺とオーフィス。

 

仕方がない・・・・・ここは俺も本気を出して・・・・

 

「ストップストップ!これ以上はもうやめて!周り見て!」

 

イッセーに言われて周囲を見る俺とオーフィス・・・・・先程は胸焼けを起こしていたが、現在は何やらピクピクと痙攣している。さっきは平気そうにしていた黒歌もだ。

 

「・・・・・・我やりすぎた?」

 

「・・・・・・俺やりすぎた?」

 

「うん、それはもう盛大に・・・・・ていうか私もだいぶギリギリだし」

 

「俺も・・・・・これはさすがにくるな」

 

わお・・・・俺とオーフィスの想いは二天龍を怯ませるのか。ここまで来るといっそ誇らしいな。

 

「・・・・・オーフィス、皆がいるときはほどほどにしておくか」

 

「うん。仕方ない」

 

さすがにこれは皆に悪いので、大人数の前ではあまりイチャイチャしすぎないようにきをつけようと心に誓った俺とオーフィスであった。




あんなものリアルタイムで直で見せられれば痙攣したってしょうがない

なお、イッセーとヴァーリは自分たちもよくイチャつくため耐性がある模様

それにしても咲良さんと想いの強さを張り合うオーフィスちゃん可愛すぎマジで

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

同居人が増えました その2

今回から湊内家の住人が一人増えます

誰なのかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


 

三種族の和平が結ばれて数日たち、俺の日常は少しずつ変わり始めようとしていた。三種族に直接関わりがあるわけではないとは言え、他種族との和平の仲介役となっている俺を構わないわけにはいかないらしく、三種族の一部の者たちの間では今後どうするか話し合いが行われているらしい。その話し合いでは俺の唯一の家族である爺さんが中心となっているようで、そのおかけで爺さんは二日ほど前から家を出ている。まあ、爺さんは元々家にいることのほうが少なかったから大して気にすることでもないのかもしれないがな。

 

そして今日、一つの変化が俺に・・・・・この家に訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪~」

 

機嫌よさげに鼻歌を歌う黒歌。まあ、それはある意味当然のことだろう。なにせ今日は・・・・

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

「来たにゃ!」

 

呼び鈴が3回鳴ったのが聞こえてくると、黒歌は一目散に駆け出した。

 

「黒歌、家の中走り回ったらダメ」

 

「オーフィス、それ黒歌に聞こえてない」

 

黒歌に注意するオーフィスだったが、その場に黒歌はもう居ないから残念ながら聞こえてないだろう。

 

「咲良、後で黒歌に説教したほうがいい?」

 

「いや、流石に家の中走っただけで説教は勘弁してやれ。理由が理由だから思わず走り出しちゃったのは仕方ないことだし。それに、オーフィスだって俺が学校から帰ってくるたびに走って俺の事で迎えに来てるって黒歌から聞いてるんだけどな・・・・・オーフィスが黒歌に説教するなら、俺もオーフィスに説教しなきゃいけないのかな?」

 

「我、黒歌に説教しない」

 

俺が言うと、オーフィスはすぐに黒歌への説教を撤回した。そんなに俺の説教嫌なのか・・・・まあ、何があってもオーフィスには説教するつもりないけど。

 

「それはそうと、俺達も出迎えに行こうか」

 

「うん」

 

俺とオーフィスも出迎えのために門前へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白音~。今日から一緒に暮らせるなんて嬉しいにゃん」

 

「・・・・・姉様、暑苦しいです」

 

俺とオーフィスが門前に赴くと、そこには白音に抱きついて頬擦りまでしている黒歌の姿があった。まあ、白音の方は若干鬱陶しそうにしているが。

 

「はあ・・・・おい、黒歌。そろそろ放してやれ。そんなんじゃおちおち話もできないぞ」

 

「いやにゃ!もっと白音を堪能したいにゃ!」

 

あ、だめだこれシスコンが爆発してる。あの事件がある前まではいつも一緒に居たって言ってたし、会えずにいた期間があるからその反動だろうか?俺もオーフィスと頻繁にイチャついてるからあまり強く言えないんだよなぁ・・・・・これどうしよう?

 

「姉様・・・・いいかげんにしてください!」

 

「んにゃっ!?」

 

どうしようかと考えていると、白音のグーパンが黒歌の顔面に炸裂し、その衝撃で黒歌は引き剥がされた。流石に加減はしてるだろうけど・・・・・・見てる分には痛そうだ。

 

「し、白音!?いくらなんでもグーはひどくないかにゃ!?」

 

「いつまでたっても放れない姉様が悪いです。自業自得です」

 

「そんな!?」

 

『ガーン』という効果音が鳴りそうな勢いでショックを受けている黒歌。うん、まあ相手が望まないなら過度なスキンシップは良くないから仕方ないよね。俺とオーフィスは互いに嫌がるなんてことないから問題ないけど。

 

「咲良先輩、今日からよろしくお願いします」

 

ショックを受けている黒歌をよそに、白音は俺に挨拶してきた。

 

今日から白音はここで暮らすことになっている。理由は俺の護衛の為。他種族、他神郡との和平の仲介役を務める俺には護衛が必要だとリアス先輩が判断し、サーゼクスさんに話を通した上で派遣したらしい。

 

白音を選出した理由に関しては、ここには白音の姉である黒歌がいるからだろう。やはり家族は一緒にいるべきだ。まあ、それ以外にも理由はあるみたいだけどな。

 

「こちらこそよろしく頼むよ白音」

 

「我も、よろしく」

 

「は、はい・・・・」

 

オーフィスの方を見て、白音は少し萎縮している様子だ。まあ、相手は龍神なのだから仕方ないか。こればっかりは一緒に生活して慣れてもらうしかないだろう。

 

「さて、それじゃあそろそろうちに上がろうか・・・・・黒歌、項垂れるのはそこまでにしておけ。白音に家の中案内するんじゃなかったのか?」

 

「そうだったにゃ!白音、ついてくるにゃ!」

 

「ちょ、姉様そんなに引っ張らないでください」

 

先程まで落ち込んでたのが嘘のように、黒歌は意気揚々と白音を連れて家の中へと入っていった。

 

「黒歌、楽しそう」

 

「ああ・・・・そうだな」

 

少々元気すぎる気もするが、黒歌が楽しそうでなによりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

数十分後、白音は居間の机に突っ伏していた。原因は言わずもがな・・・・・ハイテンションな黒歌に振り回された結果である。

 

「黒歌・・・・・嬉しいのはわかるが振り回しすぎだ。うちに来て初日にこれじゃ白音からしたらたまったものじゃないだろ」

 

「にゃはは・・・・・ごめん白音」

 

「白音、大丈夫?」

 

「な、なんとか・・・・」

 

流石にやりすぎたという自覚はあるようで、白音に謝る黒歌。その一方で、突っ伏している白音をオーフィスが慰めていた。

 

「まあともかく、うちの中は大体どんなもんかはわかったか?」

 

「はい。一通りは把握しました」

 

「当然にゃ。ちょっとテンション上がっちゃったけど、案内自体はちゃんとやったから」

 

むしろあれでちゃんと案内できてなかったら流石に説教ものだったけどな。

 

「何か必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。準備できそうなものは準備するから。あと、変に遠慮とか気遣いとかする必要はないからな。黒歌なんて結構早い段階で我が物顔でくつろいでたし」

 

「姉様・・・・・」

 

呆れたような目で黒歌のことを見る白音。対する黒歌の方は一切悪びれている様子はない。まあ、別に悪びれる必要もないからいいんだけど。

 

「とりあえず、荷解きしてきてもいいですか?」

 

「もちろん構わないよ。その間に夕飯の準備しておくから」

 

「私も荷解き手伝うにゃ」

 

「我も」

 

白音の荷解きを、自分も手伝うと名乗りをあげる黒歌とオーフィス。

 

「いえ、荷解きぐらい自分でできますので・・・・」

 

「手伝わせてくれないの?」

 

「我が手伝うの迷惑?」

 

「うっ・・・・・」

 

白音に手伝いは不要だと言われ、二人共しょんぼりモードだ。そんな二人に白音は良心が痛んでる模様。

 

「わ、わかりました。せっかくですので手伝って・・・・」

 

「それじゃあ白音の部屋にレッツゴーにゃ!」

 

「ごー」

 

白音からの許可をもらってからの二人の行動は早かった。白音をその場に置き去りにして、白音の部屋へと向かっていった。

 

「・・・・・咲良先輩、正直疲れます?」

 

「うん、なんていうかごめん・・・」

 

思わず謝ってしまった俺。今日一日だけで体力根こそぎ奪われかねない勢いだな。

 

「えっと・・・・・荷解き終わるまでには夕食の準備終わらせておくから白音も行っておいで」

 

「はい、それでは失礼します」

 

二人のあとを追うように、部屋に向かう白音。そんな白音を見送った後、俺は夕食の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぐもぐ・・・・・美味しいです」

 

「それは良かった」

 

白音の荷解きを終え、今は4人で夕食を摂っている。今日の夕食は手巻き寿司。今日から白音がうちで暮らすことになった歓迎の意味合いで普段より少し豪華にしている。

 

豪華にしている・・・・・のだが・・・・

 

「な、なあ黒歌・・・・・白音の食べっぷりが凄いんだが」

 

「白音、昔からよく食べる子だったから・・・・・成長に繋がってるかは微妙と言わざるを得ないけど」

 

「姉様、何か言いました?」

 

「な、何も言ってないにゃ!」

 

名前に反して清々しいほどの黒い笑みを浮かべる白音。どうやら発育がイマイチであることを気にしているようだ。まあ、だいぶ小柄だもんなぁ・・・・まあおかげで学内ではマスコット的な意味で人気を得ているようだけど。

 

「そ、そうだ白音。この家で暮らす先輩として最重要事項を一つ教えてあげるにゃ」

 

誤魔化すように話を逸した黒歌。けど、最重要事項って一体なんなんだ?

 

「最重要事項?何ですかそれは?」

 

「・・・・・早めに慣れなさい。でなければ辛いわよ」

 

「は、はあ・・・・」

 

先程とはうって変わって神妙な面持ちで言う黒歌に対し、あまりの真剣さに少々気圧され気味の白音。

 

というか慣れってもしかして・・・・

 

「咲良、これ我が作った」

 

「ん?」

 

俺に声をかけてくるオーフィス。その手には具が多く少々不格好な手巻き寿司があった。

 

「咲良、あーん」

 

オーフィスは手にした手巻き寿司を俺の口元に持ってくる。どうやら食べさせてくれるようだ。正直ちょっと具が多すぎて食べづらそうなのだが・・・・・ここで食べねば婚約者失格だ。

 

「あーん」

 

ひと思いに手巻き寿司にかぶりつく俺。具がはみ出てこないように一口で一気にだ。口の中一杯で少し苦しいが。それでも味わいながら噛みほぐし、ある程度して飲み込んだ。

 

「美味しい?」

 

「うん。オーフィスが作ってくれたから美味しさ倍増だよ」

 

「よかった。次は咲良が我に食べさせて」

 

「ああ。作るからちょっと待っててくれ」

 

俺は海苔に酢飯と具材を乗せて巻き、手巻き寿司を作ってオーフィスの口元に持っていく。

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

パクリと、オーフィスは俺が差し出した手巻き寿司を食べるオーフィス。

 

「・・・・・咲良が作ってくれたの美味しい」

 

「そうか。それは何より」

 

どうやらご満悦のようだ。

 

「・・・・・あの、姉様。以前も思ったんですがあの二人は・・・・」

 

「これが通常運転にゃ。白音、今どんな気分?」

 

「口の中がすごく・・・・・甘いです」

 

「でしょうね。私も慣れるまでは辛かったにゃ。白音も早めに慣れなさい・・・・正直慣れても辛いままだけど」

 

「姉様・・・・・苦労していたんですね」

 

「うん、それはもう・・・・・」

 

俺とオーフィスの食べさせ合いを見て、黒歌も白音もげんなりした様子だ。

 

なんというか・・・・・ゴメンな白音こればっかりはやめられないんだ。黒歌の言うように早めに慣れてくれ・・・・なれても辛いらしいけど。

 

「咲良、また食べさせて」

 

「ああ、もちろん」

 

「「もう勘弁してください・・・・」」




というわけで湊内家に新メンバー、白音ちゃん(小猫ちゃん)が加わりました。早めに慣れてほしいものです・・・・・・あのイチャつきに

なお、原作よりもシスコン成分が強いせいで黒歌さんのテンション高めで

にしても、私もオーフィスちゃんと食べさせ合いっこしたい(切実)

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

好きな子からの応援で振り切れなければ男じゃない

今回、一部のオーフィスちゃんファンにとって歓喜な内容になるかと思います

どういう意味かはその目でお確かめを

それでは本編どうぞ


もうすぐ夏休み。俺はそれを4月の学校が始まった時からずっと待ち望んでいた。

 

別に学校は嫌いというわけではないが、学校にいるあいだはオーフィスといられないというのがやはり俺にとっては辛い。だが、夏休みという長期休暇に入ってしまえば、一日中オーフィスと一緒にいられる時間が増えるのだ・・・・・それが俺にとって嬉しくてたまらない。まあ、夏休みに入れば俺も他種族、他神郡との和平の仲介役としてやることも出てくるが。

 

しかし・・・・・夏休みに入る前に、学生ならば避けては通れない試練がある。その名も期末テスト・・・・・学生が嫌いな学校行事の最たるものといっても過言ではないものだ。

 

そして現在、俺はイッセー、ヴァーリ、アーシア、そして白音と共にうちで勉強会を開いて勉強しているのだが・・・・これが中々辛い。辛いといっても勉強がではない。辛いのは・・・・

 

「ヴァーリ、この問題教えてー」

 

「ああ。この問題はこの公式を当てはめて・・・・」

 

「なるほど・・・・ありがとうヴァーリ。さすがは私のお婿さんだね」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

勉強しながらイチャイチャしているバカップルのイッセーとヴァーリを横目にして勉強することだ。本当にもうマジで辛い。

 

「お前らな・・・・・イチャつくなら自分の家で勉強しろよ」

 

「え?別にイチャついてないけど?」

 

「イッセーの言うとおりだ。俺達は普通に勉強しているだけだが?」

 

「それを本気で言ってるならタチが悪いぞ・・・・・」

 

100人が見たら100人・・・・とはいかなくても、90人以上はイチャついてるって答えるぞ。こいつらは本当に人目をはばからないからな・・・・・というか・・・・

 

「・・・・・・・」

 

二人共・・・・というかヴァーリ、アーシアの視線気づいてるか?なんかすっごい笑顔だけで目が全然笑ってないんだけど?なんか冷たい目でヴァーリのこと見てるんだけど?前にヴァーリからちょっと聞いたけどやっぱりアーシアってちょっと腹黒入ってるの?普段の印象が印象なだけに怖いんだけど・・・・俺が今まで見た中である意味では一番悪魔らしいんだけど。

 

ま、まああまり触れないでおこう・・・・・・・下手に突っ込むと俺が損しそうだし。とにかく、今は勉強に集中して・・・・・

 

「あの・・・・咲良先輩。イチャつく云々については咲良先輩は人のこと言えないと思うんですが」

 

集中して勉強しようと思った矢先、白音にそう言われてしまった。

 

「人のこと言えないって・・・・どういうことだ?」

 

「どうって・・・・・見たままなんですが、敢えて言うならそれです」

 

そいって白音が指を指すのは・・・・・・・・俺の膝の上にちょこんと座り、本を読んでいるオーフィスであった。ちなみに読んでいる本のタイトルは『良妻になるために~覚えよう100の条件~』というものだ。うん・・・・・まあ、素直に嬉しいからその本の出処を突っ込むのはやめておこう。

 

「いや、これは別にイチャついてるわけじゃないぞ?膝の上(ここ)はオーフィスの定位置だし。俺としてもオーフィスが傍にいると落ち着けて勉強がはかどるし」

 

「傍目からみるとイチャついてるようにしか見えません。それでイチャついてないというなら先輩の頭は残念ながらおかしいと言わざるを得ません」

 

「否めないね」

 

「否めないな」

 

「・・・・あはは」

 

白音の言葉に、イッセー、ヴァーリが同調し、アーシアは苦笑いを浮かべる・・・・まあこれも同調と見ていいだろう。これは少々解せない。というか、白音ちょっと毒舌すぎやしないだろうか?

 

「・・・・・・オーフィス、皆が虐める」

 

「よしよし」

 

読んでいた本を閉じ、こちらに振り返ってきたオーフィスは俺の頭を優しく撫でてくれた。もはやオーフェイスは本を読むまでもなく良妻と言ってもいいと思う。まあまだ結婚してないけど。

 

「咲良、そんなもの見せられたら余計にイチャついてるように思われるにゃ」

 

近くに居た黒歌に突っ込まれる。まあ、確かに頭まで撫でられたら否定はできない。否定はできないが・・・・

 

「皆で勉強をしている横で、ゲームしてる黒歌には突っ込まれたくない」

 

「まあそこはお構いなく」

 

「全く姉様は・・・・」

 

黒歌は俺の言うことなどお構いなしといった様子で、ゲームをし続けている。一応俺たちに配慮して携帯ゲーム機で音量を小さくして遊んでくれているが・・・・やはり視界の隅でゲームをされてしまうと集中が削がれてしまう。妹の白音もこれには呆れ返っている。

 

はあ・・・・・なんか集中削がれてきたし、ここらで一旦休憩にするか。

 

「そろそろ休憩にしよう。お茶持ってくるからちょっと待っててくれ」

 

「我も手伝う」

 

「そうか?それじゃ頼むな」

 

「うん」

 

俺はオーフィスと共に、台所にお茶を入れに行った・・・・まあ、ついでに俺手製の水ようかんも出してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりさ。俺って勉強向いてないのかなぁ」

 

「急にどうしたの咲良?」

 

お茶と水ようかんで一息付いている時に俺が呟くと、黒歌がどうしたのかと尋ねてくる。

 

「いや、なんていうかさ・・・・勉強って別に嫌いなわけじゃないんだけど、どうにもやる気にならないんだよ」

 

今は勉強会って事で一応真面目に勉強はしているが、正直そうでなければ勉強しようだなんて思わない。テストがあるからといって、個人的には特にやる気が出るわけではないのだ。逆に、テストだからと気が滅入ることもないのだが。

 

「そういえば、この家でかれこれ3ヶ月以上暮らしてるけど咲良が勉強してるところは一度も見たことないにゃ」

 

「まあ特に理由がない限りは、勉強してる暇があったらオーフィスや黒歌とゲームとかしてたほうがずっと有意義だからな」

 

「我も咲良と一緒にいるとゆーいぎ」

 

「うん、それは良かった」

 

有意義という言葉の意味がわかっているかどうかはともかく、やはりオーフィスにそう言ってもらえるのは嬉しいな。

 

「なら、咲良先輩は勉強は苦手なんですか?」

 

俺とオーフィスのやり取りをスルーして、白音が尋ねてきた。白音のスルースキルも上がってきたな・・・・これも黒歌の教えの賜物というやつか?

 

「別に苦手ってわけではない・・・・かな?一応歴史系科目と英語は得意だし」

 

「確かに・・・・その科目は咲良テストでも毎回90点以上出してるもんね」

 

「私も日本の歴史についてはよく咲良さんに教えてもらっています」

 

イッセーとアーシアが感心したように言ってくる。まあ、その辺りについてはそのうち必要になるかもしれないからって幼い時から爺さんに叩き込まれたからな。語学に関しては英語以外にも10カ国後は教えられたし。

 

「それ以外の科目も70点以下を取ることはないようだし・・・・おそらく根本的に勉強が嫌いでできないというわけではなく、興味自体は多少はあるがそれ以外に優先したいものがあるがゆえに集中できないのだろう」

 

おそらくヴァーリの言っている通りだろう。妙に実感の篭って聞こえるのは、ヴァーリもそうだったからだろうか?なんか勉強よりもイッセーを優先しそうだし、アザゼルさんから聞いたけど結構な戦い好きなようだし。まあ、そうだったとしてもヴァーリは学年でもトップクラスの成績保持者だからすごいとは思うが。

 

「まあ別に勉強に集中できなくてもいいんだけどな。勉強嫌いじゃないといっても、とりあえずは卒業するのに問題ない成績さえ取れればそれでいいし」

 

最悪赤点さえ回避できれば卒業には問題ないだろうからな。いい成績を取りたい理由がないのだから無理して頑張る必要もない。

 

「咲良がそれでいいなら私は全然構わないんだけど・・・・・にゃは♪」

 

何やら黒歌がイタズラを思いついた悪ガキのような表情を浮かべる。一体何をする気なのかと尋ねようとしたら、オーフィスの手を掴んで立ち上がり・・・・

 

「ちょっとオーフィス借りていくにゃ。すぐに戻るから待ってて♪」

 

と言って、そそくさと部屋から出ていってしまった。

 

「・・・・白音、お前の姉は一体何を企んでいるんだ?」

 

「わかりません。ですが・・・・・先に謝っておきます。申し訳ありません」

 

黒歌がロクでもないことをしでかそうとしていると思ったようで、白音は先に俺に謝ってきた。別に白音が何かするわけでもないし、悪いこととは限らないから謝る必要はないと思うのだが・・・・まあ、黒歌だから仕方ないということにしておこう。というか、オーフィスまで巻き込んでマジで一体何をする気だよ。

 

何が起こるのかと期待2割、不安8割で待っていると・・・・・10分ほどして、ようやく黒歌は戻ってきた。戻ってきたのだが・・・・・・俺は黒歌の傍にいるオーフィスの姿を見て、思わず目を見開いてしまった。

 

「咲良、似合う?」

 

小首を傾げながら尋ねてくるオーフィス。オーフィスは今・・・・紫を基調としたチアリーダーの服を着ていた。両手にはオレンジ色のポンポンを持っている。

 

「そうだなぁ・・・・似合っているか似合っていないかで言われれば超絶可愛い」

 

「咲良さん、似合ってるかどうか答えてないんですけど・・・・」

 

「アーシア、多分今の咲良に何を言っても無駄だから」

 

アーシアとイッセーが何か言っているが、何を言ってるのかは聞き取れない。そんなことよりも、俺の意識はオーフィスにのみ注がれているのだから。

 

「ふふふっ・・・・どうやら超絶可愛いオーフィスのチア姿に度肝を抜かれたようね。オーフィス、ここで教えたとおりにしてみるにゃ」

 

「わかった・・・・ふれーふれーさ・く・ら。勉強がんばれさ・く・ら。ふぁいとー」

 

オーフィスは手に持ったポンポンを振りながら、可愛らしいステップでチアダンスを踊りながら俺の応援を始める。

 

それを見た瞬間・・・・・・俺の中で何かのスイッチが入る音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全教科満点とは・・・・・すごいな咲良」

 

オーフィスの応援から数日経った学校にて。俺の机の上に置かれたテストの答案を見ながらゼノヴィアが感嘆の声をあげる。机の上の全ての答案には100の数字が刻まれている・・・・・つまり、ゼノヴィアの言うとおり全教科満点ということだ。

 

「私も自信はあったのだが・・・・・これは完敗だな」

 

ゼノヴィアはゼノヴィアで全教科90点以上という、武闘派(?)とは思えない高得点をたたき出しているが、俺の点数に及ばないということで残念がっている。

 

「ちょっと、どうしちゃったのよ咲良?いつもは歴史系や英語以外はパッとしない点数だったのに・・・・」

 

普段の俺の点数を知っている桐生が驚いた様子で尋ねてくる。まあ、普段とはかけ離れた点数をたたき出してしまったのだからその反応は仕方がないだろう。

 

「なんというかな・・・・・超絶可愛い女神からの応援のおかげでちょっとやる気が出てな」

 

「「「・・・・ちょっと?」」」

 

俺が桐生に説明してやると、イッセーとヴァーリとアーシアは同時に疑問の声をあげる。

 

「いやいやいや・・・・・あれはちょっとだなんて次元じゃないと思う」

 

「鬼気迫るとはまさにああいうことを言うのだろうな・・・・・」

 

「咲良さんには申し訳ないですが・・・・少し怖かったです」

 

あの時あの場に居合わせた3人は思い思いに言葉に出す。

 

オーフィスの可愛いチアダンスによる応援を受けた俺は・・・・正直自分ではよく覚えていないのだが、とてつもない勢いで勉強していたらしい。そのおかげでテスト範囲の内容は全て暗記。テストでは一切ペンを止めることなく全問埋めて、3回も見直しをした結果全教科満点という自分でも驚く結果を叩き出してしまったのである。

 

まあともかく・・・・・一つだけ言える絶対的な真実は・・・・・

 

俺の婚約者のチア姿・・・・・・マジ最強でした




咲良さんは身体能力、頭脳的には普通よりちょっといい程度の人間です。それ以上でも以下でもありません

ただし、オーフィスちゃんが関わるとたまにいろいろ振り切れることもあります。惚れちゃってるんだから仕方ないね

にしてもチア姿のオーフィスちゃんとか・・・・・・・マジ最強でしょ

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

歳の差カップルって傍目からしたら兄妹に見えるのだろうか?

今回から咲良さんとオーフィスちゃんのデートのお話となります

それでは本編どうぞ


 

とうとう夏休みが始まった。この時をどれほど待ったことか。前にも言ったかもしれないが、別に学校は嫌いではない。むしろ好きな部類だ。最近になってその気持ちは若干強くはなったが・・・・・それでもやはりオーフィスと一緒にいる時間の方が俺は好きだ。だからこそ、長期休暇である夏休みを俺はこの上なく楽しみにしていた。和平の仲介役としてやらなければならないこともあるが、それでも四六時中オーフィスと一緒にいられる機会が増えるのだから。

 

そして夏休み初日の今日・・・・・手始めに俺はオーフィスと二人きりで遊園地へとデートへ向かうことになっていた。

 

「咲良とデート、我嬉しい」

 

遊園地へと向かう電車の中、オーフィスは嬉しそうに言いながら俺に擦り寄ってくる。

 

「うん、俺も嬉しいよオーフィス」

 

擦り寄ってくるオーフィスの頭を俺は撫でる。手触りのいい髪の感触を手に感じる。

 

二人で出かけること自体は買い物などがあったためそこまで珍しいことではないけれど、こういう本格的なデートというのは久しぶり・・・・というより、結婚の約束をしてからは初めてだ。

 

そう言う意味では初デート・・・・・・黒歌や白音も自分たちのことは気にせずに存分に楽しんで来いと言ってくれたのだから(黒歌はちゃっかりお土産を要求していたが)満喫しないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「あははははは・・・・・」

 

電車の中で満喫しようと心に決めたというのに・・・・・デートは遊園地に入って早々躓いてしまった。いや、躓いてしまったというかなんというか・・・・オーフィスが結構な勢いで不機嫌なのだ。

 

理由は遊園地のゲートで入場チケットを買ったときに、愛想のいい売り子の女の人に・・・・・

 

『ご兄妹ですか?楽しんでくださいね』

 

と、言われてしまったからだ。

 

まあ・・・・うん、売り子の人に悪気は全くなかったと思う。なにせ俺とオーフィスでは外見上の年齢差を考えれば兄妹と思われても仕方がないのだから。というか俺とオーフィスが恋人同士だと気がついてた上であんな言い方してたとしたらあの売り子の人、相当人格ねじ曲がってるってことになるし。

 

オーフィスも悪気はないってことはわかってると思うんだけど・・・・・それでもやっぱり兄妹扱いは気分が悪いらしい。先程から私怒っていますと言わんばかりに頬を膨らませている。不謹慎だけど正直そんなオーフィスも可愛いと思ってしまった。しょうがないじゃないか・・・・・だって俺はオーフィスの恋人兼婚約者だもの。

 

だがまあ、このままではせっかくのデートでオーフィスに嫌な思い出を植え付けてしまう・・・・・よし、俺も男だ。ここは一つ、体を張ってオーフィスの機嫌を直そうじゃないか。

 

「・・・・オーフィス」

 

「なに?」

 

俺はかがんでオーフィスと目線を合わせる。そして・・・・オーフィスの唇に自分の唇を重ねた。

 

「・・・・咲良?」

 

「あー・・・その、あれだ。兄妹じゃこういうことしないだろ?」

 

正直、キスはもっと場所や状況を考えてやりたかったが・・・・・オーフィスの機嫌を治すにはこれが一番最適だと思った。そして結果は・・・・

 

「咲良・・・・うん。我と咲良は恋仲。兄妹なんかじゃない」

 

効果てきめんのようだ。先程の不機嫌さが嘘のようにオーフィスは微笑んでいる。まあ、表情自体はあまり変わりはないのだが。

 

「オーフィス。兄妹に間違えられても気にするな・・・・ってわけにも多分いかないだろうな。やっぱりオーフィスからしたら嫌なんだろうし、俺だってあまり気分のいいものではない」

 

オーフィスほどじゃないけど、俺も多少不機嫌になったからな。あのキスは俺の機嫌直しの意味合いもあったし。

 

「だけどな、俺はオーフィスのことを一度だって妹扱いしたことないしそう思ったこともない。10年前に初めて会った時から俺はオーフィスのことが大好きだったんだ」

 

これは嘘偽りのない俺の本心だ。初めて会った時からオーフィスのことが好きで好きで堪らなかった。そんな子相手に妹扱いするだなんてできるはずがない。そんなことしてしまえば・・・・自分の気持ちに嘘をつくのと同じだから。

 

「もしもまた俺たちのことを兄妹扱いする奴が出てきたら・・・・その時は今みたいにまたキスしてそうじゃないって証明してやる。だから今はデートを満喫しよう。それも恋人だからこそ・・・・だろ?」

 

「・・・・うん。我、咲良とデート楽しむ」

 

ギュッと俺を抱きしめてくるオーフィス。どうやら、オーフィスの機嫌は完全に直ったようだ。

 

さて、そうと決まれば・・・・・・早急にこの場から立去らなければな。さっきからこっちを見てくる視線がヤバい。いや、確かにこんなひと目のつくような場所で外見上はどう見ても幼女なオーフィスにキスしてしまったんだか注目が集まるのは当然だけど・・・・これは下手をすればお巡りさんを呼ばれてもおかしくない事案だ。なんかヒソヒソ話してる人もいるし。

 

「よし、それじゃあ・・・・まずはコーヒーカップから行こうか。すぐ行こう。早く行こう。時間は限られてるんだからな」

 

「我、急ぐ」

 

俺はオーフィスの手を掴んでコーヒーカップのあるところを目指して小走りでこの場をあとにする。俺達に向けられる視線から逃げるようにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう・・・・ふ」

 

周囲の視線から逃げるようにオーフィスと共にコーヒーカップに駆け込んだ俺だが・・・・・気分は大変優れない。それは先程のオーフィスのように機嫌が悪い的な意味ではなく・・・・・三半規管的な意味でだ。

 

理由はオーフィスにあった。どうにも、先程のキスでオーフィスのテンションは俺の予想以上に上がってしまっていたようで・・・・コーヒカップではしゃぎまくって回しに回してくれたのだ。オーフィスが楽しそうだったのはこの上なくいいことなのだが、おかげで俺の三半規管は深刻なダメージを受けてしまった。

 

「咲良、大丈夫?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「我知ってる。それ大丈夫じゃない時に言うセリフ」

 

強がってみたがオーフィスにはものの見事に看破されてしまった。まあ実際問題あまり大丈夫ではないのだが。こんなことになったらもっと三半規管を鍛えておけばよかった・・・・そうすればオーフィスにこんな醜態を晒すことにならなかったのに。いや、これまでも結構晒していたような気もしないでもないが。

 

「咲良、これ飲んで」

 

「ああ、ありがとう」

 

オーフィスは持ってきていた水筒のお茶を俺に差し出してくる。水分を摂取したことで、多少は気分が良くなったが、それでも依然グロッキー状態から脱っすることはできなかった。

 

「まだ気分良くない?」

 

「んー・・・・ちょっとな。けど大丈夫だよ。もう少しすれば回復するから」

 

「咲良・・・・・・わかった。ならここに頭乗せて」

 

そう言いながら、オーフィスは自身の膝を指差す。つまり・・・・・膝枕だ。

 

「え?オーフィス?なんで?なんで膝枕?」

 

「我、咲良に膝枕されると気分が落ち着く。だから咲良も我の膝枕で気分を落ち着かせて欲しいと思った」

 

な、なるほど・・・・・これは理に適ってるぞ。確かにオーフィスは俺が膝枕すると安心したように直ぐに眠ってしまう。ならば俺も同じようにオーフィスに膝枕してもらえば・・・・・流石に眠る訳にはいかないが、気分は間違いなくよくなるだろう(断言)。

 

問題があるとすれば・・・・・ここが人の目につきすぎるということだ。ここでオーフィスの膝に頭を載せてしまえば、間違いなく目立つ。

 

だがしかし、オーフィスは善意で自らの膝を差し出してきている。それを断ることができるだろうか?いや、できない。そんなことをしようものなら俺は一生俺を許せなくなる・・・・どころか首を括るぞ。

 

つまりだ・・・・・俺の取るべき行動は唯一つ。

 

「・・・・・失礼します」

 

「ん」

 

俺はオーフィスの膝に頭を乗せる。もちろん可能な限り体重がかかり過ぎないように慎重にだ。まあ、オーフィスなら気にしないかもしれないが。

 

「咲良、気分どう?」

 

「ああ・・・・・落ち着くよ」

 

ごめんなさいオーフィスさん。俺は嘘をつきました。いや、俺の三半規管はものすごい勢いで回復しているのだが・・・・いろんな意味ですっごいドキドキしています。

 

正直、俺は膝枕を舐めていた。いつも膝を差し出す側だったが、まさか恋人の膝がここまで心地いい感触だとは思わなかった。確かに気分は良くなるが、これは正直興奮して落ち着かない。

 

それと同時に・・・・・こっちを見てくる視線がヤバい。いや、そりゃ見た目幼女の膝に頭載せてるんだから注目されるのは当然だけど・・・・・・これは下手をすればお巡りさんを呼ばれてしまう。まさか一日のうちに二度も遊園地でこんな思いをするとは思わなかった。

 

ただ、先程と違うことが一つ・・・・早急にこの場から立ち去ることができないということだ。

 

「咲良・・・・我のせいでごめん。時間気にしなくていいから我の膝でゆっくり休んで」

 

「うん。ありがとう」

 

申し訳なさそうに謝罪しながら俺の頭を撫でてくるオーフィス。オーフィスの気遣いは嬉しい。すっごい嬉しい。だけど・・・・そんなこと言われたらゆっくりせざるを得ないじゃないか。

 

実際、俺の三半規管はまだ回復しきっていない。この状態でもう大丈夫だと言ってもおそらくオーフィスには通じない。俺のことに対するオーフィスの鋭さはマジ半端ないからな。

 

というわけで・・・・・三半規管が完全に回復するまで、俺はこの状況から脱することはできない模様。

 

「咲良・・・・いい子いい子」

 

ああ、なんかオーフィスさんこの状況で母性に目覚めつつあるよ。傍から見るとこの光景ってどう見えるんだろう・・・・・ダメだ、想像できない。というか想像したくない。

 

こうなりゃヤケだ・・・・・オーフィスの膝を堪能しまくってやる。周りの奴らににシスコン、変態、ペドと思われようと知ったことか。社会的信用なんてここで放り投げてやる。

 

「咲良・・・・泣いてる?」

 

「エ?ソンナコトナイヨおーふぃす。ナイテナンカナイ・・・・・オレハナイテナイヨ」

 

目から流れるのは俺の熱いパトスだ。涙なんかでは断じてない。

 

 




のっけからイチャつきまくりな咲良さんとオーフィスちゃん。マジラブラブすぎ。

というかオーフィスちゃんの膝枕とか・・・・・・寿命半分支払ってでもしてもらいたい(真顔)

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迷路の攻略法は意外と単純なものである

今回もデートのお話です。今回含めて後2話はデートのお話になるかな?

それでは本編どうぞ


 

時刻は12時半。俺とオーフィスは遊園地ないの噴水広場にて昼食の弁当を食べていた。ただ、今日の弁当はいつもの弁当とは違う。なにせ、最初から最後までオーフィスの手作りなのだから。

 

「咲良、美味しい?」

 

「うん。美味しいよ」

 

感想を聞かれたので、俺は素直に思ったことを答える。一通りの家事をこなすことができるオーフィスは、実は料理も得意だったりする。普段は特別なことがない限り俺が作っているが、今日はせっかくのデートということで、オーフィスが自分がつくると言ってきたのだ。

 

どのおかずも味付けはしっかりしており栄養バランスもしっかり考えられている。最近、良妻になるためにとか言っていろいろ勉強しているようだが、すでに良妻の資質を開花しつつあると俺は思う。

 

「オーフィスの作ったものならいくらでも食べられそうだ」

 

「そう言ってもらえると嬉しい。けど、それでも咲良には敵わない。咲良の料理の方がずっと美味しい」

 

「それは嬉しいことを言ってくれる。けどまあ、うん・・・・そうだな。俺はオーフィスに会う前から料理してたから、料理の腕だけはオーフィスにはまだ負けるわけにはいかないな」

 

俺には才能というものがない。俺は何をやらせても平凡な普通の人間。だが、料理にだけはそれなりに誇りを持っていた。はじめは料理ができない爺さんに少しでも美味しいものを食べてもらいたいと思って始めたことだけど、今は爺さんだけじゃなくてもっとたくさんの人を喜ばせるために俺は料理を作っている。その一人、というか最たる存在がオーフィスだ。オーフィスに喜んで貰い続けるためにも、俺はもっと料理の腕を上げなければならない。だからこそ、まだまだオーフィスには負けられないんだ。

 

だがまあ、それはそれとして・・・・・今はオーフィスの作った料理を存分と堪能しなければな。

 

「咲良、あーん」

 

「ん、あーん」

 

オーフィスに差し出された料理を口にし、俺は料理の味だけでなく幸福も味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ご飯も食べた。またアトラクションを楽しもうか」

 

「うん」

 

昼食を食べ終え、次はどのアトラクションで遊ぼうかと右に左にと視線を動かす俺とオーフィス。すると、オーフィスがあるアトラクションを指差した。

 

「我、あれがいい」

 

オーフィスが指差したのはラビリンス・・・・・すなわち迷路であった。アトラクション前の看板の説明文によると、この迷路というのはどうやら二人で楽しむもののようだった。別々の入口から迷路に入り、中で合流してゴールを目指す。そして、合流した時間が早ければ景品がもらえるそうだ。

 

「うん、面白そうだな。よし、あれにするか」

 

俺とオーフィスはアトラクションの受付へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受付を済ませ、俺とオーフィスは迷路へと入った。もっとも、別々の入口から入ったため傍にはオーフィスはいないのだが。

 

「10分か・・・・」

 

俺は受付でもらったタイマーを見やる。タイマーの表示は10分からだんだんカウントダウンしていっている。受付の人が言うには、これと同じタイマーをもつオーフィスとの距離が1mを切るとカウントダウンが止まるらしい。つまり、10分以内にオーフィスを見つけられれば景品がもらえるということだ。

 

「オーフィスは向こうかな?」

 

俺はオーフィスがいるであろうと思われる方へと目を向ける。気配というかなんというか・・・・・とにかく、よほど距離が離れていない限りはオーフィスの位置は大まかにだがわかるのだ。ちなみにこれを前黒歌や白音に言ったら人外扱いされた。解せぬ。

 

まあ、そんなことはさて置いてだ。オーフィスのいる位置はだいたいわかるといっても、そこに向かって歩いていけばオーフィスに会えるというわけではない。迷路の構造によっては遠回りしなければならないかもしれない。だからこそ迷路は厄介だと言えるかもしれない。

 

オーフィスを見つけるためには動いたほうがいいかもしれない。だけど、下手に動けばオーフィストの距離が離れる可能性もある。なので、動かずにその場にとどまるという選択肢もある。

 

「さて、どうするかなぁ」

 

「咲良、見つけた」

 

「うおっ!?」

 

どうしたものかと考えを巡らせている俺の前に突然オーフィスが現れる。あまりにも突然だったから驚いて変な声が出てしまった。

 

「咲良、どうした?」

 

「いや、ちょっと急だったからびっくりしてな」

 

確かに迷路をどう攻略しようか考えを巡らせていたせいでオーフィスの位置に気を配ってはいなかったが、それはほんの1分程の間だ。まさかその1分の間で俺を発見するとは・・・・

 

「というかオーフィス、お前どうやってここに?」

 

「咲良のいる位置はだいたいわかる」

 

「いや、それにしたって迷路なんだから迷ったりはしただろ?」

 

「頑張った」

 

いや、頑張ってどうにかなるものでは・・・・・いや、オーフィスならなるか。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)なだけあってスペックは洒落にならないくらい高いし。頑張ったというのはおそらくしらみつぶし的な意味合いだろう。

 

「すぐに見つかってよかった。見つからなかったら壁を壊して咲良のところに来てた」

 

「マジかー・・・・」

 

なんでも無いように言うオーフィスであるが、流石にそれはいささかヴァイオレンスすぎだ。しかもオーフィスなら実際にやりかねない。俺のためにそこまでしてくれるのは嬉しいが、そうなったら言い訳のしようがなかったから本当に直ぐに見つかってよかった。頑張ったのオーフィスだけど。

 

「あ、そうだ。タイマー」

 

タイマーを確認すると、8分47秒で止まっていた。だいぶ余裕をもってクリアしてしまったが、これはこれで問題があるような気がする。なにせいかんせん早すぎるのだ。こんなにも早くクリアしまっては、受付の人に怪しまれてしまう。いや、というよりタイマー壊したとか思われかねん。

 

「咲良、顔色悪い。大丈夫」

 

「あー・・・・うん、大丈夫大丈夫」

 

心配そうに声をかけてくるオーフィスに、とりあえず虚勢を張って大丈夫だと俺は答える。実際問題受付の人次第だから大丈夫かどうかは知らんが。

 

「まあともかく、こうしてオーフィスに会えたんだからあとはゴールを目指すだけだな」

 

「ゴールならさっき見かけた。こっち」

 

どうやらオーフィスはすでにゴールの場所が分かっているようだ。そこまで連れて行こうと、俺の手を引いて歩き出す。

 

結局、この迷路で俺がしたことはほとんど何もないのだが。まああまり気にしないでおこう。ちょっと情けないような気がするけど・・・・・シカタナイシカタナイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、可愛い」

 

「うん、そうだな」

 

迷路での景品を見ながらご満悦な様子なオーフィス。そんなオーフィスが愛らしくて、俺は思わず頭を撫でていた。ちなみに迷路での景品はこの遊園地のマスコットキャラのストラップ4つだ。モチーフは犬と白猫、黒猫、そして龍。なんか絶妙に狙った感があるような気がするが気のせいだろう。

 

ちなみに、タイマーを返却したら受付の人は目を丸くしていた。どうやらあのタイムは前代未聞だったらしい。一応、互いに適当に走ってたら会えたと説明したら納得はしてくれたが・・・・・やはり危なかったようだ。

 

「咲良、これ」

 

オーフィスは4つのストラップのうち、龍のものを俺に渡してきた。

 

「咲良は龍、我は犬、黒歌は白猫で白音が黒猫。これで完璧」

 

ぐっとサムズアップしながら言うオーフィス。うん、可愛い。

 

けど・・・・

 

「普通は俺が犬でオーフィスが龍、黒歌が黒猫で白音が白猫なんじゃないのか?」

 

「それじゃあダメ。自分と同じのを持ってても意味ない。相手のを持ってるからこそ意味がある」

 

なるほど、まあ言ってることはわからなくもないかな。というか、オーフィスの中ではすでにこのストラップは犬が俺で龍がオーフィス、黒猫が黒歌で白猫は白音ということになってるのか。まあ俺もそうかなと思ってたけど。

 

ただ、問題があるとしたら・・・・

 

「・・・・なあオーフィス、俺って犬っぽいか?」

 

龍でも猫でもないというのはわかるが、果たして自分は犬っぽいのかどうか、俺は気になったので聞いてみた。

 

「どっちかというと犬っぽい」

 

何と比較してどっちかというとなのかはわからないが、どうやら俺は犬っぽい模様。

 

「でも大丈夫、この犬よりも咲良の方が可愛いから」

 

オーフィスは自分の手にしている犬のマスコットをさしながら言う。

 

「オーフィス、俺も男だから可愛いって言われるのはちょっと・・・・・」

 

「我、咲良に可愛いって言われると嬉しい。咲良は違う?」

 

「いや、嬉しくないわけじゃないけど・・・・」

 

俺だって男だし、どうせ言われるなら格好良いの方がいいんだけど・・・・わかってる、わかってるんだ。俺の容姿は格好良いに分類されるものじゃないってことは自分でもわかってるんだ。まあ別にいいけどさ。

 

「とにかく、これは咲良の。大切にして」

 

「ああ、オーフィスだと思って大切にするよ」

 

「・・・・・それは嫌。それよりも我を大切にして欲しい」

 

「わかってるよ。ちょっと意地悪したくなってな」

 

「むー・・・・」

 

頬を膨らませてむっとするオーフィス。この顔が見たくて意地悪してしまったのだから俺も大概だな。

 

「だったら我だってこれを咲良だと思って大切にする」

 

そう言いながら、オーフィスは犬のストラップを手で包み込む。

 

「それは困るな。それよりも俺のことを大切にして欲しい」

 

「わかってる。我も意地悪したくなっただけ」

 

「ははは、そっか」

 

あまりにもオーフィスがいじらしく、愛らしく感じてしまったので思わずその頭を撫でてしまう俺。

 

「オーフィスほどじゃないけど、このストラップ大切にするよ」

 

「我も。咲良ほどじゃないけどこのストラップ大切にする」

 

微笑みを浮かべながら、俺とオーフィスは互いにストラップを大切にすると誓い合った。




実際問題しらみつぶしは迷路攻略法としてはまっとうだと思っております。まあ時間はかかるけど・・・・・オーフィスちゃんぐらいのスペックあれば速攻だね!

というか咲良さんのために弁当作るオーフィスちゃんとか想像するとマジ可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ここに居るということ

・・・・久しぶりにスランプに襲われてしまった

そういうこともあって今回はだいぶ短いのであしからず

何はともあれ今回でデートのお話はここまでです・・・・・まあ、あんまりデートっぽくはないのですが

それでは本編どうぞ


 

「高い。遠くまでよく見える」

 

「ああ。そうだな」

 

日が暮れて、帰る時間が迫ってきた。なので、俺とオーフィスは最後に観覧車に乗ることにした。理由はまあ定番だからだ。

 

「遠くまでよく見えるけど、うちは見えない」

 

「まあ遠くまで見ると言っても流石にそこまではな」

 

ここの遊園地の観覧車は数ある遊園地の中でも有数の高さを誇ているらしいが、流石に電車まで使ってきたわけだからうちまで見えるということはないだろう。それでも、龍神であるオーフィスの視力ならかなり遠くまで細く見えるかもしれないが。

 

「うちが見えないの残念。やっぱり世界は広い・・・・・我はそれを知らなかった」

 

「オーフィス?」

 

どこか物憂げな表情を浮かべるオーフィス。どうしたのだろうか?

 

「我は知らなかった。世界の広さも、世界がこんなに綺麗だってことも。我はそれを知らなくて、だから次元の狭間で静寂を手にすることを望んでいた」

 

「今も静寂を求めてるか?」

 

「ううん。静寂な世界は今でも好きだけど、今の我にはそれ以上に好きなものがたくさんある。静寂な世界にはそれは一つもないから今の我は求めてない」

 

俺を見ながら微笑みを浮かべながら言うオーフィス。そんなオーフィスを見て悟る。今のオーフィスは本当にこの世界が好きなんだということを。

 

「伊槻には本当に感謝してる。伊槻が我をあの家に連れてきてくれなかったら我は静寂以上に大切なものに気がつくことができなかった」

 

オーフィスは10年前に爺さんがうちに連れてきた。それはオーフィスに静寂よりもずっと大切なものを教えるためだったらしいが、それは見事に成功したようだ。

 

今のオーフィスは世界の広さも世界の美しさも知っている。他者との触れ合いの心地よさも知っているし、食事の楽しさも知っている、

 

それらはかつてのオーフィスが知らなかったもの。そう考えると、こう言っては悪いがうちに来る前のオーフィスはいろいろと損していたのだなと思う。

 

「・・・・咲良」

 

「ん?」

 

突然、オーフィスは正面から俺に抱きついてきた。

 

「それじゃあ外の景色見れないぞ?いいのか?」

 

「うん、いい。もう十分に見た。今は咲良の温もりを感じたい」

 

「そっか」

 

オーフィスのこの言葉に愛おしさを感じ、俺はオーフィスの頭を撫でてやる。すると、オーフィスは気をよくしたのか頬をすり寄せてきた。

 

「伊槻には感謝してるけど、それ以上に咲良に感謝してる」

 

「え?」

 

「咲良の温もり、咲良の匂い、咲良の感触、咲良の料理の味・・・・・我にとって本当に大切で愛おしいと思うものは全部咲良に関わること。だから我は咲良に一番感謝してる」

 

本当に大切で愛おしいと思うものは全部俺に関わることか・・・・こういうのを恋人冥利に尽きるというのかな。言い方はおかしいがあまりにも嬉しすぎて気が変になりそうだ。

 

「もしも咲良がいなかったら、静寂以外の大切なものを知ったとしても、我は静寂を求めてたと思う。他の誰でもない、咲良がいるから今の我がいる。咲良がいなかったら、我は今頃次元の狭間にいるグレート・レッドを殺す手段を探してた」

 

グレート・レッド・・・・・オーフィスと対を成すもう一体の龍神。現在は次元の狭間に居て、グレート・レッドが居るせいでオーフィスは次元の狭間に帰ることができなかった。

 

実は俺は、そのグレート・レッドに感謝していたりする。彼(?)がいるおかげで俺はオーフィスに会えたわけだし。まあ、オーフィスには流石に言えないが。

 

「だから咲良には感謝してる。咲良・・・・・居てくれてありがとう」

 

「ッ!?」

 

オーフィスのその言葉を聞いた瞬間、俺は妙な感覚に陥った。それは喜びにも似た感情ではあるけれど、それとは少し違う。

 

これは安堵?安心感?だとしたらどうしてこんな感覚に・・・・?

 

「咲良、泣いてる?」

 

「え?」

 

顔をあげたオーフィスが、心配そうに言う。頬に手を当てると、少し湿っていた。オーフィスの言うとおり泣いているようだ。

 

「あれ?俺・・・・なんで?」

 

なんで自分が涙を流してるのかわからなかった。自分のことなのに自分でわからなくて、俺は戸惑ってしまう。

 

「咲良、どこか痛い?なにか辛い?」

 

「ううん、違う。違うんだ。そういうのじゃなくて、自分でもよくわからないんだけど・・・・・ここに居てもいいんだなって思って安心してさ」

 

どうしてそんな風に思ってしまったのかはわからない。わからないが、多分俺は居てもいいって思って安心して、それで泣いているんだと思う。実際そうなのかはよくわからないけれど。

 

「咲良の言ってること、我よくわからない。わからないけど、悪い涙じゃないならそれでいい。咲良の泣き顔、可愛くて好きだから」

 

「可愛いか・・・・ははっ。俺なんかよりもオーフィスの方がずっと可愛いよ」

 

オーフィスを強く抱きしめる俺。そうすることで、オーフィスの存在を確かに感じて、それと通じて自分の存在も確かに感じることができる。そんな俺に、オーフィスもまた強く抱きしめてきて、結局俺達は下に降りるまで外の景色も見ずにずっと互いに抱きしめ合っていた。

 

遊園地デートの最後の最後で妙な気持ちを抱いてしまったけれど・・・・それでも、今日のデートは俺にとって思い出深いものとなった。




咲良さんは自覚しているわけではありませんが、転生者であることから自分がここに居てもいいのか無意識に不安に思っていました

なので、オーフィスちゃんの『居てくれてありがとう』という言葉で安心感を感じて泣いてしまったというわけです

オーフィスちゃんももちろん可愛いですけど、咲良さんも可愛いと思ってしまった今日この頃

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

たまには気分を変えるために別の視点も悪くないよね

スランプのため今回は短いです・・・・・

そしてサブタイにもあるように今回は咲良さん以外の視点でお送りします

誰なのかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


咲良と白音が夏休みに入ったある日、私は中庭で白音に仙術の修行をつけていた。この修行は今日が初めてじゃなくて、以前から行っていた。なんでも、主であるリアスちゃんのためにもっと強くなりたいかららしい。我が妹ながら健気だにゃ。

 

「よし、今日はここまでにするにゃ」

 

とりあえず今日はここで切り上げることにする。仙術は扱いを間違えると危険だから、あまりこん詰め過ぎるのも良くないにゃ。

 

「はい。いつもありがとうございます」

 

「お礼なんていらないにゃ。私は白音のお姉ちゃんなんだからこれぐらい当然にゃ」

 

悪魔に追われるようになってからはずっと会えなくてお姉ちゃんらしいことは何もできなかったから・・・・・せめてこれぐらいのことはしてあげないとね。

 

「確か明後日から冥界に行くんでしょ?冥界にいる間の修行内容はノートか何かに書いておくにゃ。一応言っておくけど、度を超えた修行はダメよ?」

 

「わかってます」

 

扱いを間違えれば人格さえ歪ませてしまいかねないのが仙術。だけど、それ故にその力は強力にゃ。姉としては白音が仙術の飲まれることなく、使いこなして強くなることを祈る限りね。

 

「さて、それじゃあ家に上がって咲良にお茶でも淹れてもらいましょ」

 

修行をつけている側の私はあまり疲れているというわけではないけれど、それでもひと仕事終えたあとの咲良のお茶は格別にゃ。

 

「あの、姉様。姉様はこの家の居候なのですからいちいち咲良先輩にお茶を入れてもらうのは図々しいような・・・・・」

 

「え~・・・・でも咲良の淹れるお茶美味しいし。白音だって好きでしょ?」

 

「それは否定しませんが・・・・」

 

「なら淹れてもらうにゃ。咲良~、修行で疲れた私と白音にお茶を淹れてにゃ」

 

白音は図々しいと言うが、私は構わずに麩を開けながら居間にいるであろう咲良にお茶を淹れるようにお願いした。だけど・・・・・

 

「にゃ?」

 

どうやら私のお願いが聞き入れられることはなさそうだ。咲良は確かに居間にいたけれど昼寝をしていた。もちろん、オーフィスも咲良に寄り添うように寝ている。

 

「あらら・・・・・これじゃあお茶は期待できないわね。仕方ないにゃん」

 

私は二人の傍に腰を下ろして、二人の頭を撫でる。オーフィスはともかくとして、咲良まで髪がサラサラにゃ。女としてなんか悔しい気持ちになるわね。

 

「姉様は本当に咲良先輩とオーフィスを大切に思ってるんですね」

 

「え?」

 

「今の姉様、ものすごく優しい顔をしています」

 

私が優しい顔・・・・か。私も随分と丸くなったものね。

 

「二人のことが好きだっていうことは否定しないわ。私をこの家に住ませてくれたわけだし。頻繁に訪れる甘々タイムはちょっと勘弁だけど」

 

「それに関しては全面的に同意します」

 

どうやら白音も咲良とオーフィスのイチャイチャっぷりに相当参っているようにゃ。まあ、あんな甘々なの耐えられるひとなんてそうそういないだろうけど。

 

「でもまあ、それでも二人のこういうほのぼのとしてるところを見たら癒されるからそれはそれでいいんだけどね」

 

「それも同意します。だけど咲良先輩にお茶を淹れてもらわなくてもいいんですか?」

 

「寝てるところを起こすほど私も鬼畜じゃないにゃ。咲良とオーフィスも普段家事で結構疲れたりしてるだろうし休ませてあげるにゃ」

 

「そう思うなら姉様も家事を手伝ったらどうですか?ほとんど何もやってないじゃないですか」

 

「いや、家事に関して私は戦力にならないし」

 

正直家事に関しては全く自信がないのよね。私が何かしようとすればかえって二人の仕事増やすことになるだろうし。

 

「だから私は家事以外のことで役に立つにゃ」

 

「例えば?」

 

「咲良の留守中にオーフィスの相手をしたり、咲良のこと守ったりにゃ」

 

「・・・・・思ったよりもまともですね」

 

思ったよりって・・・・・白音は私のことなんだと思ってるにゃ?

 

「そういえば、以前から思ってたんですが・・・・」

 

「なに?」

 

「姉様は咲良先輩のこと好きなんですか?」

 

「んにゃっ!?」

 

白音からの問いかけの内容に、私は思わず変な声が出てしまった。

 

「し、しししし白音!?何を言ってるのにゃ!?」

 

「今の反応で察しました。まさかこんな慌てふためく姉様を目にする日が来るなんて・・・・」

 

しまった・・・・・あんなに慌てふためいてしまったらバレるに決まってるにゃ。失態だわ。

 

「それにしてもお姉様が咲良先輩のことを・・・・」

 

「そ、そうよ。私は咲良のことが好きにゃ。咲良にはオーフィスが居るってわかってるけど・・・・・それでも好きになっちゃったにゃん」

 

容姿は平均以上とはいえ、特別いいというわけではないけれど、悪魔から追われてるところを優しくされてこの家に匿ってもらって、その上悪魔のトップである魔王に私の減罪を訴えてくれたのだ。女心としては好きになっても仕方がないにゃ。

 

「まあ好きになってしまったのは仕方がないと思いますが・・・・・その気持ちを咲良先輩に伝えようとは思わないんですか?」

 

「それはないにゃ」

 

白音の質問に、私は迷うことなく即答した。

 

「咲良にこの気持ちを伝えるつもりはないにゃ。咲良がオーフィス以外を選ぶことはないってことはわかってるから私が気持ちを伝えたところで咲良を困らせるだけだから」

 

「姉様はそれでいいんですか?後悔はしないんですか?」

 

「後悔・・・・・そうね。いつか後悔する日が来るかもしれないにゃ。でも、それでもこの想いを伝えることはしないにゃ。私はそれで満足してるから」

 

この想いを伝えないことが最善かどうかは私ではわからない。だけど、それでもやっぱり私は咲良に想いを伝えたりはしない。近くで咲良とオーフィスのことを見守ることができれば・・・・私はそれでいいにゃ。

 

「姉様は強いですね。私だったらきっと黙っていることはできません。好きな人が別の誰かと添い遂げるところを近くで見守ることなんて・・・・きっと耐えられません」

 

「うん、白音はそれでいいと思うにゃ。白音に好きなひとができたときは、ちゃんと思いを伝えなさい。そして添い遂げられるように頑張りなさい。白音は私のような不憫な思いをしたらダメよ?」

 

たとえ傍から見て強いとか素晴らしい生き方だと思われようとも、好きなひとと添い遂げられないのは悲しく、辛いこと。白音にはそんな思いはして欲しくないにゃ。

 

願わくば、白音とは愛するひとと添い遂げて欲しい・・・・これは姉として、家族としての私の純粋な願いだから。

 

まあ、それはそれとして・・・・

 

「あんた達もあんた達よ咲良、オーフィス。私が潔く身を引いてあげてるんだから、絶対に幸せになりなさい」

 

私は安らかに眠る咲良とオーフィスの頬に手を当てながら言う。その瞬間、言われるまでもないといったように二人の表情が綻ぶ。それを見て、私は思わず微笑みを浮かべるのであった。




うちの黒歌さんはマジ健気です

こんな黒歌さんもいいと思うマジで

健気な黒歌さんマジ可愛い!

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風邪は身体的にも精神的にも辛い

調子が乗らず、また短く・・・・・

今回は風邪のおはなしです

それでは本編どうぞ


 

小猫がリアス先輩やイッセー達と冥界へと出立して数日経ったある日。

 

「オーフィス、お粥作ってきたぞ」

 

「ん・・・・・ありがとう咲良」

 

部屋で布団に包まれて横になっているオーフィス。そのオーフィスにお粥を作って持ってきた俺。そう、オーフィスは夏風邪をこじらせてしまったのだ。爺さんに連絡をとってみたところ、どうやらドラゴン特有の風邪だそうだ。

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスはドラゴンの中でも極めて特殊な存在だ。そんなオーフィスがドラゴン特有とは言え風邪を患うことがあるのかどうか疑問だったが、どうやらそれは今の生活環境が原因となっているらしい。10年もの間、人間的な生活を送ってきたが故に、オーフィスの体はにいくらかの変化が生じ、風邪を患うようになってしまったようだ。

 

「気分はどうだ?」

 

「体が少し重くて頭もクラクラする。それに熱い」

 

赤く染まった顔で言うオーフィス。典型的な風邪の症状だ。

 

「食欲はあるか?」

 

「・・・・あまり食べたくない」

 

食事を好むオーフィスだが、風邪ともなればやはり食欲は落ちるようだ。

 

「けど、咲良が作ってくれたのは食べる。食べたい」

 

どうやら食欲がなくても俺が作ったものなら食べる意欲が湧いてくるようだ。少しでも食べておいて欲しいから良かった。

 

「咲良、ふーふーして食べさせて」

 

「ん。おっけ」

 

土鍋に入ったお粥をさじでひと掬いし、息を吹きかけて冷ました後にオーフィスの口元に持っていく。別にオーフィスは猫舌ではない、というかマグマのようにグツグツしたおのでも平気で口に含もことができるのだが、風邪ということもありそういう雰囲気を味わいたいということだろう。

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

お粥を口に含むオーフィス。数回かんだ後に喉を鳴らして飲み込む。

 

「美味しいか?」

 

「咲良の料理はなんでも美味しい」

 

風邪をひくと味覚が鈍るとかたまに聞くが、どうやらオーフィスは違ったようだ。満足げに微笑みを浮かべている。

 

「咲良、もっと」

 

「ああ。あーん」

 

オーフィスに求められるまま、俺はお粥をオーフィスの口元に運び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・苦い」

 

「まあ薬ってのは大概そういうものだよ」

 

お粥を食べ終えたオーフィスに、爺さんから送られてきた薬を飲ませる。その薬というのが随分と苦かったようで、オーフィスの表情はゲンナリとしている。

 

「口直ししたい」

 

「て言ってもな・・・・・薬飲んだあとはあまり食べない方がいいぞ?」

 

「それは我も知ってる。だから食べなくてもできる口直しする」

 

食べなくてもできる口直し?それって一体・・・・・

 

「咲良、ちゅーして?」

 

・・・・おう、そうきましたか。これはまた変な本に影響されたか爺さんか黒歌あたりが余計なこと吹き込んだんだろうなぁ。まあいいけど。断る理由はないし。

 

「ああ、わかったよ」

 

オーフィスの要望に応じて、唇を重ねる。口直しという名目のもと行われているためか、オーフィスの舌が俺の口内に入り込み、舌を絡ませてきた。さっきオーフィスが飲んだ薬の苦味を感じる。

 

「ん・・・・ちゅ・・・・」

 

結構激しめに舌を動かしてくるオーフィス。結構長いことしているためか、風邪をひいていない俺の方が頭がクラクラしてきた。

 

「・・・・ん、美味しかった」

 

「そうか。それはなによりだ」

 

正直美味しくはないと思うが・・・・まあ敢えて突っ込まないでおこう。口直しには成功したようだし。

 

「それじゃあ、俺これ片付けてくるな」

 

「待って」

 

お粥の入った土鍋を片付けようとするが、そんな俺の手を掴んでオーフィスが引き止めてくる。

 

「どうしたオーフィス?」

 

「・・・・行かないで」

 

「え?」

 

「咲良・・・・行かないで」

 

上目遣い気味で俺を見つめながら言うオーフィス。これまで見たことないほどに弱々しく見える。

 

「一人・・・・・嫌。寂しい。一人で寝てると嫌な夢見る」

 

「嫌な夢?」

 

「咲良が・・・・いない夢」

 

俺がいない夢?

 

「夢の中の我・・・・咲良がいなくても平気そうな顔してた。それが当然みたいな感じで、不思議に思ってもいなかった。咲良がいないの怖いことなのに・・・・それなのに・・・・」

 

俺の腕を掴む力だ少しづつ強くなっていく。それにつれ、オーフィスの表情もどんどん暗くなっていった。

 

風邪をひくと、体だけでなく心も弱ってしまうことがあるがオーフィスもそうだったのだろう。明確の原因はないのに、寂しさや孤独感を感じてしまう・・・・俺も風邪を引いたときはそうだった。

 

「オーフィス・・・・・俺はいるよ。ここにいる・・・・オーフィスのそばにいる」

 

包み込むようにオーフィスを抱きしめる。俺の存在をしっかりと感じさせるように、そしてオーフィスの存在をしっかりと感じられるように。

 

オーフィスの怖さは俺にもよくわかる。時々であるが、自分がいなかったらと考えてしまい、もしかしたらそれが自然のことなのではないかと思ってしまう。

 

だからこれはオーフィスのためでもあり、自分のためでもあった。

 

「一緒に寝るか?怖い夢見ないように」

 

「うん。我、咲良と一緒に寝る」

 

オーフィスを抱きしめたまま、布団の中に潜り込む。

 

「暖かい・・・・咲良の温度感じる。咲良の匂いも、咲良の音も」

 

俺の胸に耳を当てるオーフィス。俺の音、というのは心音を指しているのだろう。

 

「咲良・・・ずっと我と一緒にいてくれる?」

 

「うん。オーフィスと一緒にいるよ」

 

「どこにもいかない?」

 

「傍にいる」

 

オーフィスが今言ったことは、俺の願いでもあるから。だから一緒にいるのは、傍にいるのは当然のことだ。

 

ただ・・・・

 

「ずっと一緒。我と咲良はずっと一緒」

 

「ああ・・・・そうだな」

 

ごめんなオーフィス。『ずっと』は一緒にいられない。俺が生きられるのはあとせいぜい80年がいいところ。長い時を生きてきたオーフィスからすれば、おそらくそれはほんの一瞬にも感じられるほど短い時だろう。

 

俺が人間である限り、この死別は避けられない。だけど、それでも俺は人間をやめられない。俺は人間としてオーフィスを愛し続けていたいから。

 

だから・・・・

 

「咲良・・・ずっと・・・・一緒・・・」

 

どうやら眠ったらしく、俺を抱きしめたまま寝言を呟くオーフィス。その表情は安らかで微笑みを浮かべている。

 

「オーフィス・・・・嘘ついてごめんな」

 

オーフィスへの謝罪の言葉を口にしながら俺も目を閉じ、眠りについた。

 

 




さすがの龍神も風邪には参ってしまう模様。まあ、龍神が風邪ひくなんてうちぐらいでしょうが

でも風邪で弱々しくなってるオーフィスちゃんやっぱり可愛い

それでは次回もまたお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

相談されるほどの信頼関係って結構築きにくかったりする

今回は曹操さんが登場します

相変わらず難産ですが・・・・

それでは本編どうぞ


 

「ふむ・・・・やはり咲良の淹れたお茶は美味しいな」

 

「それは何よりだ」

 

俺の淹れた緑茶を口に含み、穏やかな笑みを浮かべる曹操。こういう表情を見ると、淹れ甲斐があるというものだ。

 

ただ・・・・

 

「・・・・・」

 

俺の膝の上のオーフィスは若干不機嫌気味だけどな。相変わらず曹操のことがあまり好きではないようだ。そんなオーフィスを見て、俺の隣に座ってる黒歌も苦笑いを浮かべているし。

 

「ふふふっ、相変わらずオーフィスは咲良にべったりだな。いや、以前よりも親密度は上がっているようにも感じるな・・・・・」

 

「まあいろいろあったんだよ。ところで、相談があるといっていたがその内容は?」

 

俺は不機嫌なオーフィスの頭を撫でながら、本題を切り出した。今日曹操がうちに来たのはどうやら俺に相談したいことがあるかららしい。

 

「・・・・・三種族の和平を機に、英雄派が二分化されてしまってね」

 

「二分化?」

 

「ああ。俺たち英雄派も三種族と和平を結ぼうと言う者たちと、三種族は人間にとって敵だから戦おうという者たち・・・・・そんな二つの派閥が出来てしまい、論争となっている」

 

「和平か戦争か・・・・随分とまあ両極端な意見にゃ」

 

黒歌の言うとおりだ。だが、そんな意見が出てくるということは、英雄派にとって三種族の和平というのは重大な意味を持っているということだろう。

 

「俺は英雄派のリーダーとして、どちらの意見を尊重し、今後の英雄派の指針とするのかの選択を求められている。だが・・・・」

 

「決められない・・・・か?」

 

「・・・・・ああ」

 

表情を暗くさせながら、曹操は答える。

 

「曹操おかしい。そんなの和平の方がいいに決まってる。争うの良くない」

 

「オーフィス、確かに争いは良くない。それは曹操だってわかっているさ。だけど、曹操はわかった上で決められないんだと思う」

 

「・・・・どういうこと?」

 

「俺だって、争うよりは平和のほうがいいと思っている。だが、俺たち英雄派は異形を倒すことを目的としている。もちろん見境なしにというわけではないが・・・・・それでも、三種族との和平は目的に反すると言う者は多い」

 

「だから揉めているということか?」

 

「ああ。英雄派の中には三種族に家族や友人を傷つけられた者や殺されたものも少なからず存在するからな。そんな者たちの思いを無下にすることは俺にはできない。だが、だからといって積極的に戦いを仕掛けることもできない。争えば犠牲者が出て・・・・憎しみの連鎖が生まれてしまうのは目に見えているからな」

 

曹操の苦悩は相当なものだろう。平和を望む声も、争いを望む声も曹操は無下にすることはできない。曹操は英雄派のリーダー・・・・・英雄派に属する者たちは、曹操を拠り所にしているのだから。

 

「咲良・・・・俺は一体どうすればいい?英雄派のリーダとして、どんな答えを示せばいい?」

 

「俺を頼って相談してくれたっていうのは嬉しいんだが、そういうのは俺よりも爺さんの方があてになると思うぞ?」

 

爺さんは俺よりもずっと長く生きてるからいろいろなこと知ってるし、ふざけはするが頭もキレる。曹操の相談の相手としてはうってつけだとは思うんだが・・・・

 

「伊槻には・・・・既に連絡を取って話した。だが、それは自分で考えることだと突っぱねられてしまったよ」

 

「伊槻は厳しい。我も経験ある」

 

そういえば、忘れがちだが爺さんは基本温厚だけど厳しくて容赦ないところもあるっけか。今回の案件はそこに触れるものだったということか。

 

「それで咲良に相談を持ちかけたということかにゃ?」

 

「ああ。伊槻には自分で考えろと言われたが答えは結局でなくてな・・・・・だから咲良に相談を持ちかけた。咲良は三種族が他神郡と和平を結ぶ際の仲介役となっていると聞いていたから相談するには適任だと思ったんだ」

 

すげぇプレッシャーだなおい。確かにその役目は請け負ったが、まさか曹操にこんな相談を受けることになるとは・・・・・正直俺には荷が重いと思うが、曹操は俺にとって親友だ。親友が頼ってきてくれたと言うなら、それに可能な限り応えたい。

 

とりあえず・・・・俺の考えを言ってみるか。

 

「まあ、頼られたからには俺の意見は言わせてもらうよ。まず、爺さんは自分で考えて決めろって言ってるみたいだがとりあえずはそれは無視しろ。人生自分で考えったって決められないことなんていくらでもある。自分で決められないなら誰かに決断を委ねるってのは必ずしも悪いことではないからな。もちろん、他人に提示された選択にちゃんと折り合いをつけて納得できればの話だがな」

 

自分で決められずに延々と悩むよりは、いっそ他人に決めてもらったほうがいいと俺は思っている。まあ、当然その場合は決めた誰かが責任を負う必要はあるし、決めてもらった者もそれを言い訳にしてはならないが。

 

「その上で俺の考えを話すが・・・・俺としてはやはり争うよりも平和の方がいいと思う。ただ、それを決める前にやることはあるがな」

 

「やること?」

 

「話し合いだよ。ただ、話し合いといっても英雄派の中だけでってことじゃない。三種族を交えての話し合いだ。思うに、争いを求める連中は三種族に対して悪印象ばかりが先行してしまって、詳しい理解ってのが足りてないと思う。理解できていない相手に和平だなんて言われても納得できるものじゃない。だから和平云々の前にまずは話し合いの場を設ける必要があると思う」

 

知りもしない相手と和平を結んで仲良くしましょうだなんてよほど特異なものでない限りそう簡単にできることじゃないからな。なら必要なことはまず対話だ。どうするかの結論は相手のことを理解した上で決めるべきだ。

 

「なにより、相手に対する理解が足りていないのは曹操も同じだと思うしな。だからこそ曹操は決めることができないんだと思う。仮に曹操の中でしっかりとした答えがあったとしたら、周りの意見があったとしても相談せずに決められたことだと俺は思っているしな」

 

「・・・・そうか。決められない理由は俺自身が三種族のことを理解できていないからで、俺はその言い訳に英雄派の皆を利用してしまっていたのか。その挙句に咲良に相談してしまうとはな・・・・」

 

いや、そこまでは言っていないんだが・・・・だけどまあ、実質そういうことになるんだろうか?けどそれも仕方がないことだろう。今まで多くの異形と戦ってきた曹操だが、対話っていうことはあまりしてこなかっただろうし、どんな強力な力を持っていたとしてもそれでも曹操はやはり人間だ。他種族のことを簡単には理解できないだろう。

 

「とにかく、俺個人としては和平を勧めるが、どうするのかは話し合ったあとだ。三種族との話し合いは爺さんに話を通せば出来ると思うから・・・・そこからは曹操、それと英雄派次第になるな」

 

「ああ・・・そうだろうな」

 

「まあ、俺に言えるのはこんなありふれた事ぐらいだ。役に立ったかどうかは正直わからないが・・・・」

 

「十分に役に立ったさ。ありがとう咲良」

 

俺への感謝の言葉を口にする曹操。正直礼を言われるようなことでもないが・・・・まあ役にたててなによりだ。

 

と、そうだ・・・・

 

「最後に一つ、一応言っておくことがある」

 

「なんだ?」

 

「英雄派が今後どうなろうとも・・・・あれだ。曹操が俺にとって親友であることは変わらないからな」

 

「え?」

 

「どんな結果になろうともお前は俺の親友だ。だからいつでもうちに飯でも食いに来い。誰にも文句なんて言わせないからさ」

 

「咲良・・・・・ありがとう」

 

「別に礼を言うことじゃないっての。当然のことなんだからさ」

 

曹操は俺にとって一番の親友だ。それはなにがあっても決して・・・・絶対に変わることはない。

 

俺は・・・・そう信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操、咲良は渡さない」

 

「いや、オーフィス。そういうのじゃないと思うにゃ」

 




次回もまた曹操さんのお話になります

理由?アニメのPVででた曹操さんが格好良かったからですが何か?

にしても相変わらず曹操さんに咲良さんを私たがらないオーフィスちゃん可愛い

それでは次回もまたお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

兄弟のように思ってくれる親友がいるって正直うらやましい

今回も曹操さんがメインです

それでは本編どうぞ


 

「ふう・・・・・夜風が気持ちいいな」

 

「そうだな。最近は蒸し暑い日が続いてたから特にそう感じる」

 

以前のように、縁側に腰を下ろして酒を飲む俺と曹操。オーフィスがここにいないのは、曹操がどうしても二人で話がしたいというので席を外してもらっている・・・・・あとで埋め合わせが大変そうだ。

 

「それで?さっきの相談以外に一体何の話があるって言うんだ?」

 

「咲良・・・・・英雄派に来て欲しい」

 

「断る」

 

神妙な面持ちで切り出してきた曹操に対し、俺は即答した。

 

「わかってはいたが取り付く島もなしか」

 

「すまないな。誘ってくれること自体は嬉しいよ。だけど、俺はオーフィスと一緒に居たいからさ」

 

「そのオーフィスも一緒にと言ったらどうする?」

 

「それは無理じゃないか?英雄派って人間だけの組織なんだろ?反対するやつが多そうなんだが」

 

「だろうな・・・・となるとやはり諦めるしかないか」

 

曹操は残念そうに肩を撫で下ろす。

 

「前から思っていたが、なんでそう俺を英雄派に入れたがるんだよ?交友関係はおかしいかもしれないが、俺は大した力を持たない平凡な人間だぞ?」

 

まあ、なぜか最近は平凡扱いされなくなってきてるけどな。黒歌とかにはよくオーフィスのことが絡むとおかしくなるって言われるが・・・・・そんなことないと思うんだがなぁ。

 

「確かに咲良には戦う力はない。だが、相手が神だろうがなんだろうが物怖じしない胆力がある。戦えなくてもその素質は十分に英雄にふさわしいものだと俺は思ってる」

 

「買いかぶりすぎだと思うんだが・・・・単純に神だろうがなんだろうが爺さんに比べたらマシって思ってるだけなんだが。爺さん並に破天荒なのなんてそういないし」

 

「それは否めないな」

 

いろんなのに会ってきたけど、爺さん以上のはいなかったから・・・・・多分そのせいで変な耐性ができて物怖じしなくなったんだろうなぁ。

 

「けどまあ、やはり君が来てくれないのは残念でならないな」

 

「まだ言うか・・・・・しつこい男はモテないぞ?」

 

「そうか?これでも英雄派の女性からはそこそこモテているんだが?」

 

「あ、さいですか・・・・・」

 

まあ曹操はイケメンだし強いからモテてもおかしくはないけど・・・・・うん、俺にもオーフィスがいるけどこういうふうに言われるとちょっとムカッと来るな。

 

「・・・・なあ咲良。君は俺のことを親友だと思ってくれているんだよな?」

 

「ん?まあそうだけど・・・いきなりどうした?」

 

「俺も咲良のこと親友だと思っている。だが・・・・同時に、君と一緒にいるとき、兄弟がいたらこんな感じなんだろうなとも思っていたんだ」

 

兄弟?俺と曹操が?

 

「俺は家族というものに縁がなくてね。俺を生んだ両親は大金を得るために俺を売った・・・・・まあ、引き渡される前に逃げたがな。原因はこの槍さ」

 

曹操は聖槍を出しながら言う。

 

「この槍を求める者は数知れない。俺は幼少の頃から色々な者達に狙われたよ。そして両親に売られたことを機に、俺の日常は孤独と戦いに染められた。今でこそ英雄派の仲間がいるが・・・・・正直に言うと、心細く感じることが多々あった」

 

「お前が心細く?」

 

「力を持っているといっても俺だって人間だからな。そう思うときもあるということさ」

 

力を持っていても人間・・・か。まあ、人間誰だって孤独の中にあれば心細く感じることだってあるに決まってる。曹操もそうだったということだろう。

 

「だが、最近はその心細さは一切感じなくなった」

 

「英雄派の仲間がいるからか?」

 

「それもあるが・・・・何より咲良がいたからだ。君と過ごす時間は、そう長くはないけれど俺にとっては充実したものだった。君の作る料理を食べるのは何よりも楽しみだったし、君との語らいは俺の心を和ませてくれた。この感覚は・・・・俺を売る前に両親と過ごした日々に近かった。俺にとって君は家族、兄弟のような存在になっていた」

 

俺が曹操の家族・・・・・兄弟か。俺にとっての家族は爺さんだけってのは変わらないけどそれはそれで嬉しいかもしれない。(多分)一人っ子だからちょっと憧れてたこともあるし。

 

けど・・・・・

 

「俺とお前が兄弟だって言うならどっちが兄でどっちが弟なんだろうな?」

 

「む・・・・それなら俺の方が年上なんだ。兄は俺だろう」

 

「年齢の上では確かにそうだが、頼りになる兄っていうのはああいう相談を弟にしないと思うんだけどな?」

 

「それを言われると反論できないが・・・・だがしかし俺が弟というのは・・・・・」

 

自分が弟というのが納得いかない様子の曹操。こんな曹操が見られるのも兄弟の特権というやつかな・・・・

 

「まあ、この際どっちでもいいだろ」

 

「え?」

 

「どっちが兄でどっちが弟でもいい・・・・対等な兄弟ってのも悪くはないんじゃないか?俺とお前は親友であると同時に兄弟・・・・・それでいいんじゃないか?」

 

「・・・・ああ、そうだな」

 

納得してくれたようで、曹操はふっと笑みを浮かべる。

 

「さて、そろそろ戻るかな。オーフィスが部屋で待ちくたびれてるかもしれないし」

 

「そうだな。これ以上は俺がオーフィスに文句を言われそうだ。俺もこれで失礼させてもらおう」

 

「帰るのか?別に泊まってってもいいんだぞ?前の時も泊まらずに帰っちまったし」

 

「申し出は嬉しいが、英雄派の皆には外出するとはいったが外泊するとは言っていなくてね。俺が無断外泊するとうるさい連中も多いんだ」

 

・・・・英雄派の連中って思った以上に口うるさいのか?それだけ曹操を大事に思ってるてことだろうが・・・・

 

「それじゃあまたな咲良」

 

「ああ。またな曹操」

 

手をヒラヒラと振りながら去る曹操。俺はそんな曹操の後ろ姿を見送った後、自分の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「あ~・・・・オーフィス?」

 

「・・・・・」

 

部屋に戻るなり、俺はオーフィスに抱きしめられてしまった。声をかけて返事はない・・・・・これはちょっと不機嫌かな?

 

「・・・・咲良、曹操と何話した?」

 

数分ほど経って、ようやくオーフィスは口を開く。

 

「まあ男同士のちょっとしたお話・・・・かな?」

 

「また秘密?」

 

前にも曹操と話したことの内容を秘密にしていたが・・・・これはその時のこと根に持ってるぽいな。

 

仕方ない・・・・ちょっとだけ話すか。

 

「また曹操に英雄派に入らないかって誘われたんだ。もちろんちゃんと断ったけどな」

 

「他には?」

 

・・・・・ちょっとだけのつもりだったが、どうやら洗いざらい話さなければならないようだ。

 

「曹操、俺の事兄弟みたいに思ってくれてるんだと」

 

「咲良はどう思ってる?」

 

「俺もまあ・・・・それもいいかなって思ったよ」

 

「・・・・・」

 

俺を抱きしめる力を強めてくるオーフィス。

 

「オーフィスは俺が曹操のことそういうふうに思うのは嫌か?」

 

「曹操は好きじゃないけど、咲良がいいって思ってるなら我は否定しない。けど・・・・我より曹操を大切にしたいって思ってるなら嫌」

 

これは・・・・嫉妬かな?龍神に嫉妬されるとか、それはそれで英雄を志す者としては凄まじいかもしれないぞ曹操。

 

「安心しろオーフィス。確かに曹操の事を大切に思ってることは否定しない。だけど、俺が何よりも大切に思うのは、愛してるのはお前だよオーフィス」

 

「・・・・本当?」

 

「ああ、本当だよ。まさか疑ってるのか?」

 

「だって咲良、全然我と子作りしてくれない・・・・」

 

「それはせめて結婚するまで待ってくれ」

 

俺だってそういうことはしたいけども、結婚する前にしてしまうと歯止めが効かなくなりそうだからな・・・・・爺さん、今のオーフィスなら俺との間に子供が出来てもおかしくないって言ってたし。

 

「とにかく、曹操に嫉妬なんてする必要はないさ。俺全てはお前に釘付けなんだからな」

 

「・・・・ん」

 

頭を撫でてやると、心地よさそうにしながら俺の方に体を預けてくるオーフィス。ああ、もう・・・・ほんっと可愛いな。

 

「さて、そろそろ寝ようか。いつも通り、一緒に」

 

「うん。我、咲良と一緒に寝る」

 

オーフィスは抱きしめていた腕を解き、布団入る。そして俺が布団に入ると、また俺を抱きしめてきた。

 

「おやすみ咲良」

 

「おやすみオーフィス」

 

その日は、オーフィスに抱きしめられたまま一夜を明かした。

 

 




片や龍神の婿、片や英雄派のリーダー・・・・とんでもない兄弟である

そして嫉妬するオーフィスちゃん・・・・・ちくしょう、可愛いじゃねえか

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別イケメンじゃないのにラノベ主人公並みにフラグを建てるが、ラノベ主人公並みに鈍い男、咲良

サブタイなげぇ・・・・・

今回は原作キャラが二人登場します

それでは本編どうぞ


ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

ある日の昼下がり、呼び鈴の音が3回聞こえてきた。

 

「ん?客か・・・・誰だろ?」

 

「3回ってことはお爺さんじゃないし・・・・・曹操とかじゃない?」

 

「曹操・・・・」

 

曹操の名前を聞いて、俺の膝の上に座っていたオーフィスが若干不機嫌そうになった。

 

「黒歌・・・・・オーフィスの機嫌が悪くなったんだけど?」

 

「わ、私のせい?」

 

「まあいいや・・・・出迎え行ってくるよ」

 

俺はオーフィスを下ろして、客を迎えに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、咲良。久しぶりじゃの」

 

「お久しぶりです咲良さん」

 

門前に来た俺に、お客である二人が挨拶してきた。一人は片目を隠した年老いた老人。もう一人は銀髪の女性・・・・・北欧の主神であるオーディンさんと、そのお付のヴァルキリー、ロスヴァイセさんだった。

 

「お久しぶりですオーディンさん、ロスヴァイセさん。お二人共、変わらず元気そうでなによりです」

 

「変わらず・・・・・はい、そうですね。相変わらず年齢=彼氏いない歴は変わっていませんよ・・・・うふふふふ・・・・」

 

おっと、どうやら地雷を踏んでしまったようだ。自嘲気味に笑いながら涙を流すロスヴァイセさん・・・・普通に挨拶しただけだけど、なんか俺が悪いみたいに感じてしまう。

 

「これロスヴァイセ、咲良はそういうつもりで言ったわけではないぞ。そんなんだから男ができんのじゃ」

 

「こんなんで悪かったですね!」

 

「まあまあ落ち着いてくださいロスヴァイセさん。大丈夫ですよ。ロスヴァイセさんほど器量のいい美人さんならいつか必ず素敵な男性とお付き合いできます」

 

正直俺からしたらどうして彼氏ができないのか不思議でならない。

 

「ならいっそのことお主がもらってやったらどうじゃ咲良?」

 

「なっ!?オ、オオオオオーディン様!そんなこと言ったら咲良さんが困ってしまうじゃないですか!」

 

「じゃがお主、付き合うなら咲良みたいな男がいいと言っておったであろう?」

 

「オーディン様ァァァァァァ!!咲良さんの前ではそれは言わないでって言ったじゃないですかぁぁぁぁぁ!!」

 

すっごい取り乱してるロスヴァイセさん。というか俺みたいなのと付き合いたいだなんてロスヴァイセさんも変わってらっしゃる・・・・・俺なんて大した男じゃないというのに。

 

「さ、咲良さん!今オーディン様が言ってたのはその・・・・さ、咲良さんと付き合いたいとかそういうことではなく、あくまでも咲良さんのような素敵な男性とお付き合いしたいという意味でして・・・まあ咲良さんとお付き合いできたらそれはもう嬉しいといいますか天にも昇る至福といいますか・・・・というか本当は咲良さんのような方ではなく咲良さんとお付き合いできたらいいなぁと思ったりそうじゃなかったり・・・・いえ、そうじゃないということは全然なくてやっぱり私は咲良さんと・・・・」

 

何やら早口且つ小声でゴニョゴニョ言っているロスヴァイセさん。言ってることのほとんどが聞き取れなかったけれど、なんか年上とは思えない程に可愛らしく見えた。

 

「まあ、長々と言っておるが要は『私を娶ってください』だそうじゃ」

 

「オーディン様ァァァァァァ!!」

 

いや、オーディンさん。よくわからないけれどきっとその要約は間違っていると思いますよ。というかロスヴァイセさんもそんなに取り乱したらまるでその通りだと言ってるように聞こえるじゃないですか。

 

けどまあ、冗談だとしても一応断りを入れるのが筋ってものなのかな?

 

「えっと・・・・申し出は嬉しいんですが、俺はもうオーフィスと婚約しているのでそれは受けられません。すみません」

 

「「・・・・・え?」」

 

オーディンさんもロスヴァイセさんもポカンとした表情を浮かべる。

 

「お二人共どうしました?」

 

「いや・・・・咲良、お主オーフィスと婚約したのか?」

 

「ええ。今年の春先に。高校を卒業したら結婚しようと約束しましたので」

 

「相手はあの無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)なんですが・・・・」

 

「まあ常識はずれというのはわかっていますが、俺もオーフィスも両想いなので(おそらく)問題はないかと・・・」

 

「「・・・・・」」

 

口を閉ざし、唖然とするオーディンさんとロスヴァイセさん。いや、まあオーフィスの事を知ってるひとからすればこの反応は自然なのだが。実際何度も見てきているし。

 

「そ、そうか。オーフィスと婚約か・・・・・とりあえずおめでとうと言っておくかの」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「・・・・そうですかー。オーフィスさんと婚約ですかー。確かにお二人はとても仲が良かったですもんねー。咲良さんはいつもオーフィスさんを気遣っていましたし、オーフィスさんは咲良さんにべったりでしたからねー。種族の違いはあっても婚約しておかしくないですよねー・・・・・あはははははは」

 

ぎこちないながらも俺とオーフィスの婚約を祝福してくれたオーディンさん。それに対してロスヴァイセさんはなぜか虚ろな目で笑っていた・・・・・どうしたんだろう?

 

「あの、オーディンさん。ロスヴァイセさんの様子がおかしいんですがどうかしたんでしょうか?」

 

「それを本気で言っておるならお主はやはり大物じゃな」

 

「え?どういうことですか?」

 

「いや、気にするな。ロスヴィセのことはあまり触れぬ方が賢明じゃ。おそらく今はお主が何を言ってもダメージを受けるだけじゃろうからな」

 

俺が何を言ってもダメージを受けるって・・・・・本当にどういうことだ?けどまあ、オーディンさんがそこまで言うなら増えないでおいてあげるのがベストなんだろう。

 

「とりあえず上がりますか?ここで立ち話というのもなんですし」

 

「おお、そうじゃな。行くぞロスヴァイセ」

 

「咲良さんが婚約・・・・・オーフィスさんと婚約・・・・・あはははははは・・・・」

 

まだ何やらブツブツ言っているが、オーディンさんの言っていることは聞こえるらしく、家に上がるロスヴァイセさん。よくわからないがこれは俺のせいなのだろうか・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話には聞いていたけど、まさか本当に北欧の主神であるオーディンと知り合いだったなんて・・・・やっぱり咲良は異常ね。人外だわ」

 

「解せぬ」

 

オーディンさんに視線を向けながら言う黒歌。なぜオーディンさんと知り合いというだけで異常だ人外だと言われなければならないのだろうか・・・・・

 

「というか、知り合いといっても俺は爺さんに紹介されて知り合ったんだから。異常なのは爺さんの方だろ。いや、まあ今更の話だけど」

 

「知り合ったきっかけはお爺さんでも、親交を深めたのは咲良でしょ?だったらやっぱり異常にゃ」

 

「そこの黒猫の言うとおりじゃな。自分で言うのもなんじゃが、北欧の主神である儂が気に入るなど滅多にないことじゃ。人外扱いされても仕方がないじゃろう」

 

「・・・・・オーフィス、俺の人間性が否定されてしまいました。泣きたいです」

 

「よしよし」

 

膝の上に座るオーフィスは、俺の方に振り返って頭を撫でてくる。最近事あるごとに撫でられてるけど、これは結構いいかもしれない。まあ、同じくらいかそれ以上俺の方がオーフィスの頭を撫でたりしているのだが。

 

「よしよしですって・・・・ラブラブじゃないですかー。物凄く幸せそうじゃないですかー。あはははははは・・・・・」

 

「・・・・咲良、あのひとは一体どうしちゃったにゃ?」

 

部屋の隅で体育座りしながらいじいじと畳を指でなぞるロスヴァイセさんに視線を移しながら、黒歌が引き気味に言う。

 

「いや、俺にもよくわからなくて・・・・オーフィスと婚約してるって言ってからどうにも様子がおかしくてさ」

 

「・・・・ああ、なるほど。わかったにゃ。それなら仕方ないわね」

 

え?今ので納得できちゃうの?というか仕方ないって・・・・本当に意味がわからない。

 

俺が首を傾げている間に、黒歌はロスヴァイセに近づいて声をかけた。

 

「大丈夫?」

 

「え?あなたは・・・・」

 

「私は黒歌。この家に居候しているにゃ。そして・・・・・あなたの気持ちを誰よりも理解してあげられる女でもあるわ」

 

え?黒歌、ロスヴァイセさんの気持ち理解できるの?どうして・・・・?

 

「ッ!?ではあなたも・・・・?」

 

「ええ。といっても、私ははじめから諦めているんだけどね・・・・この家に来たの、二人が婚約したあとだし」

 

「そうですか・・・・辛くはないんですか?」

 

「正直に言うと、全く辛くないわけじゃないにゃ。けど・・・・私は見守るって決めたの。だから・・・・それでいいのよ」

 

一体何がいいのだろうか・・・・・すっごい気になるんだ。

 

「強いですね・・・・・私はしばらく立ち直れそうにありません」

 

「それは普通のことよ。気にする必要はないな。さっきも言ったけど私はあなたの気持ちを理解できるから・・・・話ぐらいはいくらでも聞いてあげられるにゃ」

 

「ありがとうございます・・・・早速ですがいいですか?」

 

「わかったにゃ・・・・咲良、私ちょっとこのひとと話をしてくるにゃ」

 

「わかった。よくわからんがロスヴァイセさんのことよろしくな」

 

「うん」

 

ロスヴァイセさんを連れて、別室に移動する黒歌。一体なんの話をするんだろうか・・・・?

 

「オーディンさん、あの二人一体どうしたんでしょうかね?」

 

「・・・・・触れてやるな咲良。それがお前にできるせめてもの情けじゃからな」

 

・・・・触れてやらないことが情けって、どういう情けなんだろうか?

 

「なあオーフィス、どういう意味だと思う?」

 

「咲良が鈍感でも我気にしない。咲良のそういうところも可愛い」

 

どういう意味なのか訪ねたらなぜか鈍感と言われてしまった。そのうえ可愛いって・・・・オーフィスに思われる分にはまだいいけど。

 

まあ、結局意味は分からずじまいだが・・・・・

 

 

 




咲良さんに好意を持っていたロスヴァイセさん・・・・咲良さんとオーフィスさんが婚約したとしり撃沈

というか、これで気がつかないとか咲良さん鈍すぎる・・・・・

ちなみにロスヴァイセさんの方言に関しては使いこなせる自信がないので・・・・・ご容赦を

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時として、カッコつけるのは命がけ

今回は真剣な話・・・・・と見せかけて可哀想なお話です

どういう意味かは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


 

「やはり咲良の料理は絶品じゃの。腹一杯になるまで食べたのは久しぶりじゃ」

 

「それはなによりです」

 

夕食を食べ終え、俺はオーディンさんと二人で食後のお茶を飲んでいた。部屋には俺とオーディンさんしかいない。なんでもオーディンさんが俺と二人で話があるそうだ。そのためオーフィス、黒歌、ロスヴァイセさんにはお風呂に入ってもらっている。

 

「それよりもオーディンさん、俺に話ってなんですか?」

 

「ふむ・・・・・咲良、伊槻から聞いたがお前さんは三種族と他神郡との和平の仲介役を任されているそうじゃがそれは本当かの?」

 

いやに神妙な面持ちで俺に尋ねてくるオーディンさん。その表情から、よほど真剣な話なのだということが伺い知れる。

 

「ええ。そうですよ」

 

「それは自分の意志かの?それとも伊槻に強制されたのか・・・・」

 

「自分の意思です。俺は俺の意思で仲介役を引き受けました。少しでも爺さんの願いを叶える手助けがしたい・・・・・それが俺の願いだから」

 

「咲良なりに考えて自分の意志で協力しているというわけじゃな。ならばいいが・・・・・咲良」

 

オーディンさんはどこからか槍をを取り出し、俺につきつけてきた。

 

「咲良・・・・お前が選んだその選択は、お前を危険な目に合わせる可能性がある。今みたいにな」

 

少しでもオーディンさんが手を動かせば、俺はこの槍に貫かれることになるだろう。

 

「価値観の違う他種族同士が手を結び、平和を願う・・・・それが和平。確かにそれはいいことなのだろう。じゃが、世界にはそれを望まんものは数多存在する。そういった連中にとって咲良は忌々しく見えるじゃろうな。それこそ殺したいほどに。お前が和平の仲介役であれば、こういった命の危機に何度も遭遇することにもなりかねん。お前はそれをわかっておるのかの?」

 

真っ直ぐに俺を見据えながら聞いてくるオーディンさん。これは脅しじゃなく忠告だ。オーディンさんは俺を思ってくれているがゆえに、俺に槍を突き立ててくれているんだ。

 

ならば、俺は俺の想いを伝えなければならない。

 

「オーディンさん、俺だってそれぐらいのことは理解していますよ。理解していながら俺は選んだんです」

 

「死ぬ覚悟は出来ているということかの?」

 

「いいえ、そんな覚悟持ち合わせていませんよ」

 

命を賭けるつもりなんて毛頭ない。そんな覚悟、持つわけにはいかない。

 

「死ぬ覚悟もなしに、選んだというのかの?それはまた随分と安い覚悟じゃの」

 

「死なない覚悟が死ぬ覚悟よりも安いとは俺は思いません。俺は俺が死んだとき、悲しむひとがいることを知っています。それを知っていながら死ぬ覚悟を持つ事を正しいことだとは思いません。オーフィスも爺さんも・・・・そんな覚悟を持つことを望んでいるとは思わない。だから俺は死なずに仲介役を果たす覚悟で臨んでいるんです。それでもオーディンさんからしたら・・・・これは安い覚悟ですか?」

 

「・・・・・・ふっ。なるほどの。確かにその覚悟を安いとは言えんの」

 

小さく微笑みを浮かべるオーディンさん。そして槍を下ろそうとしたその瞬間・・・・

 

「咲良、無事?」

 

勢いよく開くふすま。ふすまを開いたのは・・・・・・びしょ濡れで全裸のオーフィスだった。

 

「・・・・オーディン。咲良に何してる?」

 

突然現れたオーフィスに声をかけようとした俺であったが、それよりも先にオーフィスはオーディンを睨む。ものすっごくドス黒いオーラを纏ってるように見えるのはおそらく気のせいではない。

 

「オ、オーフィス、これはその色々あっての。決して咲良に危害を加えようとしていたわけでは・・・・」

 

「槍を咲良に向けてる。説得力皆無。我、オーディン殺す」

 

手をオーディンさんに向かってかざすオーフィス。オーディンさんはシャレにならないとばかりに冷や汗を流している。

 

「ちょ、待てオーフィス!俺は大丈夫だから!事情説明するから落ち着け!」

 

「わかった。じゃあオーディンを消したあとに話聞く」

 

「それじゃあ意味ないんですけど!?」

 

「後生じゃオーフィス!頼むから話を聞いてくれ!」

 

今にもオーディンさんを消そうとするオーフィスを、俺とオーディンさんは必死に説得するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きているって素晴らしい・・・・・・」

 

「まったく・・・・・何をしているんですかオーディン様」

 

疲れた表情で生の素晴らしさを実感するオーディンさんに、ロスヴァイセさんは呆れた様子を見せる。

 

あのあと、どうにかオーフィスを説得することができ、事なきを得た。まあ、それでもオーフィスは若干不機嫌になってしまったため、現在俺が頭を撫でてご機嫌とりをはかっているのだが。ちなみにちゃんと服は着せている。

 

「突然お風呂から飛び出して走り出したからどうしたのかと思ったら・・・・本当にオーフィスは咲良のことに関しては敏感にゃ」

 

苦笑いを浮かべながら言う黒歌。どうやらオーフィスは俺がオーディンさんに槍を突きつけられたのを感知して急いでお風呂を飛び出してやってきたらしい。まあ婚約者的にはものすごく嬉しいが・・・・危うくオーディンさんが召されるところだった。

 

「咲良の覚悟を試そうと思ったのにまさかこんなことになるとはの・・・・・というより、オーフィスの咲良に対する執着を甘く見ておった」

 

まあ、オーディンさんからしたら予想外だったんだろうな。ああなあ内容にわざわざ二人で話をしようとしてたわけだし。

 

オーディンさんが俺に槍を突き立てたのは、俺の覚悟を試すためのものだった。危険な和平の仲介役という任を果たすのに、俺が十分な覚悟を備えているのかをオーディンさんは知りたかったのだそうだ。まあ、そのおかげでオーディンさんは死にかけたわけだが・・・・もしここでオーディンさんが死んでたら絶対に和平に影響が出てただろうなぁ。

 

「というよりオーディン様、ああいうことをなさるなら事前に私に言っておいてください。そうすれば入浴中にオーフィスさんに話してこのような事態にもならなかったというのに」

 

「いや、話したらお前は止めるじゃろ?なにせお前は咲良を・・・・」

 

「オーディン様?」

 

「ごめんなさいなんでもないです」

 

ニコリとものすっごい黒い笑顔を浮かべるロスヴァイセさんを見て、オーディンさんは敬語で謝った。この光景だけ見たらロスヴァイセさんが本当にオーディンさんの付き人なのかどうか疑わしくなる。

 

「はあ・・・・これでは格好つけてあわよくば咲良の第二の祖父になるという計画が水の泡じゃの」

 

「このお爺さん、そんなこと考えてたのかにゃ・・・・」

 

「いや、だって咲良は儂からしたら孫のような存在だからの」

 

オーディンさん、そんな風に思ってくれてたのか・・・・嬉しいけど俺、神様にそんな風に思われるほど上等な存在じゃないんだけどなぁ。

 

それに・・・・

 

「オーディンさん、そういうふうに思ってくれるのは嬉しいですけど、俺にとって爺さんは『湊内伊槻』ただ一人です。ですから・・・・・ごめんなさい」

 

「そうか。まったく、こんないい孫を持てて伊槻は果報者だの。儂以上に破天荒なくせに」

 

確かに爺さんはありえないほどに破天荒だ。だけど、それでも爺さんは誰よりも優しく、思いやるがあるのも事実。だからこそ俺を拾って育ててくれて、多くのひとに会わせてくれたわけだしな。

 

「それはそうと咲良、お前さんの覚悟はしかと見せてもらった。和平の仲介役・・・・多くの神と縁を持つ咲良でも簡単にはいかぬかもしれぬ。じゃが、お前さんなら大丈夫じゃろう。儂等との和平の時にも色々と働いてもらうぞ」

 

「それって・・・・北欧の神々は三種族と和平を結ぶことに賛成ということですか?」

 

「確定ではないがの。前向きに検討はしておる。まあ、問題もあるがの・・・・ともかく、その時が来たら頼むぞ?」

 

「はい。わかりました」

 

三種族と北欧の神郡との和平か・・・・俺の最初の仕事になるかもしれない。出来るだけのことはしないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで咲良・・・・いつまでオーフィスを撫でておるのだ?」

 

「えっと・・・・オーフィスが満足するまで?」

 

「我、咲良にもっと撫でてもらいたい」

 

「長くなりそうじゃの・・・・」

 

 




哀れオーディンさん・・・・・フリとはいえ咲良さんに槍を突き付けたらそらオーフィスちゃん怒ります

まあ、咲良さんのために怒るオーフィスちゃんはやはりジャスティスですが

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冥界編突入とか言ってみるけど、別にそこまで大掛かりなことはないです

今回から咲良さん達は冥界に赴きます。

またたくさんキャラ出すことになるんだろうなぁ(遠い目)

それでは本編どうぞ


 

「まさか列車で冥界に行くことになるとはなぁ」

 

夏休みも終盤に入り・・・・俺は冥界に赴くために、グレモリー家が所有しているという列車に乗っていた。冥界に赴く理由は、和平の仲介役となる俺を悪魔達が招待したからだ。もちろんオーフィスと黒歌もついてきている。

 

そして、この列車にはオーディンさんとロスヴァイセさんも乗っている。どうやらオーディンさんはリアス先輩とソーナ先輩のレーティングゲームの観戦招待されたらしい。リアス先輩もソーナ先輩も現魔王の身内なのでオーディンさんとしても気になっているようだ。なお、うちに来たのは俺も冥界に行くことを爺さんから聞いて一緒に行こうと思ったからだそうだ。

 

ちなみに、そのゲームは俺も見ることになってるのだが・・・・戦闘に関して完全に素人な俺からすれば正直あんまり興味わかないんだよなぁ。

 

「オーディンさんは冥界には何度も行っているんですか?」

 

「そうじゃの。まあ長生きしておるから冥界に赴く機会は何度かあったぞ。ロスヴァイセは若さもあって初めてじゃがな」

 

「はい。なのでどういったところなのか興味があります」

 

そっか、ロスヴァイセさんは初めてなのか。

 

「黒歌は・・・・元々悪魔の眷属だったんだから冥界にいたことはあるんだよな?」

 

「うん。だけどあんまり外を自由に出歩いたりはしなかったにゃ。あいつは私を飼い殺しにする気満々だったから」

 

黒歌はどこか不機嫌そうに言う。やはり当時のことは思い出したくないのか・・・・変なこと聞いちゃって悪かったな。

 

「私よりもオーフィスはどうにゃ?オーフィスも結構長いこと生きてるんだし冥界に行ったことくらいあるんじゃない?」

 

黒歌は俺の膝の上に座るオーフィスに尋ねる・・・・・列車内でも頑なに俺の膝以外に座ろうとしないんだよなオーフィス。まあ、俺としても嬉しいから全然構わないんだけど。

 

「よく覚えてない。行ったことあるような気もするし無いような気もする」

 

「随分曖昧だな・・・・」

 

「我、咲良と会う前のことはあまり思い出せなくなってるから」

 

「え?」

 

あまり思い出せないって・・・・オーフィスは記憶力悪いとかそういうことはなかったと思うがどうして?

 

「咲良と一緒にいると楽しい。咲良と会うまでにあったことが色あせて思える程に。我は咲良と一緒にいる今が幸せでたまらない」

 

「オーフィス・・・・・」

 

「だから昔のことは思い出せなくてもいい。咲良と一緒にいる今を楽しめればそれでいい。今のことを覚えていられればそれでいい」

 

俺に背をあずけ、擦り寄ってくるオーフィス。そんな風に思っていてくれたのか・・・・マジかー。これは嬉しすぎる。

 

「オーフィス・・・・だったらたくさん思い出作らないとな」

 

「うん」

 

オーフィスの頭を撫でながら俺は言う。

 

俺はオーフィスと違って長くは生きられない・・・・・オーフィスからすれば短い時間だけれど。それでも・・・・たくさん思い出を。

 

あと・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーディン様・・・・なんだか口の中が甘いです」

 

「奇遇じゃなロスヴァイセ。儂もじゃ」

 

「これ、話を振った私が悪いのかにゃ?」

 

三人とも・・・・・うん、ごめん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・でっか」

 

冥界に到着し、俺とオーフィスと黒歌が今居るのはグレモリーの城の前だ。そう・・・・城なのだ。貴族であるグレモリー家だから相当大きいお屋敷なんだろうなと思っていたけれど、予想の斜め上を行っていた。グレモリー家マジぱねぇっす。

 

ちなみに、オーディンさんとロスヴァイセさんは何やら魔王とアザゼルさんと話がるらしく魔王領の方に向かったのでここにはいない。

 

「これは・・・・昔私がいたところもそこそこ大きかったけど、その比じゃないにゃ」

 

「うちの屋敷よりずっと大きい」

 

さすがにこの大きさは黒歌もオーフィスも予想外だったらしく、驚いている様子だ。

 

「お待ちしておりました咲良さん」

 

俺たちが唖然としていると、メイド服を着た女性・・・・グレイフィアさんが声を掛けてきた。

 

「どうも、グレイフィアさん。お元気そうでなによりです。しばらくお世話になります」

 

「お任せ下さい・・・・と、言いたいところですが・・・・」

 

「グレイフィアさん?」

 

「その・・・・・失礼を承知で言いますが、滞在中に料理についていくつかご指導してもらえないでしょうか」

 

え?グレイフィアさんに俺が料理の指導?

 

「えっと・・・・俺、指導できるほどじゃないと思うんですけど?」

 

「そんなことありません。以前頂いた料理はどれも絶品でした・・・・・サーゼクスも絶賛するほどに」

 

え?そこまでなの?というか皆してなんで俺の料理の腕過大評価するの?俺家庭料理レベルから逸脱してないと思うんだけど?てか、今は公務の時間帯だろうにサーゼクスさんを名前で呼び捨てにしてるよ・・・・・それだけ必死なの?

 

「ですのでどうかご指導ご鞭撻を・・・・・」

 

「教えてあげたらどう咲良?私達しばらくお世話になるわけだし」

 

「我もそれでいいと思う」

 

うっ・・・・・黒歌はともかくとしてオーフィスにまで推されたんじゃな・・・・仕方ないか。

 

「わかりました。いくらかお教えします。ですけどそこまで期待はしないでくださいね?」

 

「ありがとうございます」

 

了承したら笑顔で礼を言われてしまった・・・・・責任重大すぎる。

 

「では遅くなってしまいましたが城の中を案内いたします。お嬢様達も咲良さんたちのことを待っておられますので」

 

話が終わり、グレイフィアさんの案内のもと俺達は城の中へを招き入れられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ咲良、久しぶりだね」

 

「あ、ああ・・・・そうだなゼノヴィア」

 

俺達はリアス先輩たちのいる大広間に通された。そこですぐにゼノヴィアに声を掛けられたのだが・・・・・思わず動揺してしまった。なにせゼノヴィア、体中包帯だらけだったからな。

 

なお、黒歌は速攻で白音の方に突撃していって・・・・・抱きつこうとして顔面を殴られていたりする。

 

「ゼノヴィア?その包帯どうした?」

 

「修行して怪我して包帯を巻いて、修行して怪我して包帯を巻いて・・・・・それを繰り返してたらこうなった。すぐに治るが一応だな」

 

レーティング・ゲームが近いから修行してたってことだろうけど・・・・・ゼノヴィア、お前一体どんだけハードな修行してたんだよ。

 

「ゼノヴィア、怪我した?痛い?」

 

「いいや、痛みはないよ。心配してくれてありがとうオーフィス」

 

「痛くないなら良かった」

 

ゼノヴィアのことを気遣うオーフィス。オーフィスのやつ、ゼノヴィアはイリナのことがあってうちに来れなくて会う機会少ないから結構ゼノヴィアのこと気にかけてるんだよな。

 

「それにまあ、私の方はまだマシさ。イッセーはもっと大変だったらしいからな」

 

「イッセーが?」

 

気になってイッセーの方に視線を向けると、そこには・・・・

 

「ふふふ・・・・・あはははははははは・・・・・」

 

やたらと不気味な笑みを浮かべるイッセーがいた。

 

「イ、イッセー?お前どうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたもないよ。私の修行超ハードだったんだから。本当にもう死ぬかと思ったんだから」

 

「どんな修行したんだよ・・・・・?」

 

「一ヶ月山でドラゴンと戦いまくった。しかも野宿」

 

「マジかー・・・・・」

 

そりゃハードだよ。女の子にそんなことさせるとか・・・・・

 

「修行を発案したアザゼル先生には殺意が湧いたよ。まあヴァーリが一発殴ってくれたから多少はすっきりしたけど」

 

発案はアザゼルさんだったか・・・・・あのひとも無茶させるなぁ。

 

「そういえば、ヴァーリはどうした?てっきり一緒かと思ったんだが?」

 

「ヴァーリならアザゼル先生と一緒にいるよ。一応ヴァーリはグリゴリ所属だから」

 

あ、そっか。ヴァーリは悪魔の血が流れてるけどグリゴリの人間だったっけな。普通にイッセーと一緒にいると思った。

 

「ああ、ヴァーリ・・・・・会いたいよ。傷ついた私の心と体を癒してよヴァーリィ・・・・・」

 

「よしよし」

 

ああ、ダメだ。イッセーの奴、重度のヴァーリシックを患っちゃってるよ。さすがにいたたまれないのかオーフィス、慰めちゃってるし。

 

でもまあ、ここまでハードな修行してたってことはそれだけレーティングゲームが大事だってことかな?あんまり興味はなかったけど・・・・

 

(レーティングゲーム・・・・・真剣に見てみるかな)

 

 




咲良さんが大事すぎて今を謳歌しまくってるオーフィスちゃん可愛い

ちなみに昔のことをあまり思い出せなくなっていると言っていますが全部が全部ってわけじゃないです。細かいことは思い出せないけど強い方に会ったこととかは覚えてます。強いといってもオーフィスからすればだいぶ劣りますが。

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今更ながら人間とドラゴンが恋仲とか実は凄いことなのではと思ったり

今回は皆大好きあのドラゴンが登場!

それでは本編どうぞ!


 

冥界入りした翌日、俺は魔王主催のパーティーの会場に来ていた。他種族との和平の仲介役を担っているので来賓として参加を促されたのだ。もちろん、オーフィスと黒歌も一緒に参加しており、白音も俺の護衛ということで行動を共にしている。もっとも、その二人は今食べ物と飲み物を取りに行ってくれているのだが。

 

にしても・・・・・爺さんからの勧めということもあり、一応参加してみたものの正直こういった場は初めてなのでどうにも落ち着かないな。場違い感が半端ない。

 

「咲良、どうかした?」

 

どうやら落ち着かなかったのがオーフィスにもわかったようで、尋ねてくる。

 

「あー・・・・・こういうのに慣れてなくてちょっとそわそわしちゃってな」

 

オーフィスの頭を撫でながら俺はそう返した。

 

なお、今のオーフィスはグレモリー家が用意してくれた黒を基調としたドレスを着ているのだが・・・・・ぶっちゃけ似合いすぎてて眼福にもほどがあった。パーティーには馴染めていないけれど、オーフィスのこの姿が見られただけでも来た価値があるというものだ。

 

ちなみに俺も一応礼服を着ているのだが・・・・・正直大して容姿がいい訳でもないと自負しているので似合っている気がしない。オーフィスや黒歌は似合っていると言ってくれたが、それは身内の色目が入ってるように思えてならない。

 

「咲良、オーフィス。食べ物と飲み物を持ってきたにゃ」

 

「大量です」

 

料理と飲み物を取りに行っていた黒歌と白音が戻ってきた。黒歌は飲み物の入ったグラスが乗ったトレイを手にしており、白音は料理が盛り付けられた皿を持っている・・・・・料理の量が異様に多い気がするが、そこは目をつぶろう。

 

それと、当然だが二人もドレス姿だ。二人共美女美少女らしくよく似合っているのだが・・・・・・姉妹にしてはプロポーションに差が・・・・・

 

「咲良先輩、今失礼なこと考えませんでしたか?」

 

「いやまったく」

 

ジト目を向けながら尋ねてくる白音に、俺は即答した。うん、やっぱりこんなこと考えるのは失礼だよな・・・・・ごめん白音。

 

「・・・・・まあいいです。それよりも早く食べましょう」

 

「そうね。はい、咲良」

 

「ありがとう黒歌・・・・ん?」

 

黒歌からグラスを受け取ったのだが・・・・・少々おかしな点に気がついた。他のグラスに比べて、俺のものだけほんの少しだけ飲み物の量が少なかったのだ。

 

「どうかしたかにゃ咲良?」

 

「いや・・・・なんでもない」

 

黒歌に対してそう返す俺。もしかして黒歌がちょっと飲んじゃったりしたのかなと思ったが、こんな飲み放題食べ放題みたいなパーティーでそんなことする意味がないし・・・・・まあ、たまたま少なかっただけなんだろうなきっと。

 

「咲良先輩、こちらもどうぞ。美味しいですよ・・・・・咲良先輩の料理には劣りますが」

 

「いやいや、それはさすがにないだろう」

 

白音が小皿によそってくれた料理を受け取りながら、俺は思わず苦笑いを浮かべそうになった。こんな上等なパーティーで一流食材を使い、一流の料理人が作ったであろう料理より俺の料理の方が美味しいだなんて・・・・

 

「そんなことないにゃ。これも美味しいけど、やっぱり私は咲良の料理が一番だわ」

 

「我も同じ。咲良の料理の方が我好き」

 

「マジかー」

 

白音の言葉に、黒歌もオーフィスも同意する。正直ここの料理を作ってくれた人には申し訳なく思うが、めちゃくちゃ嬉しい。

 

よし、こうなったら揃いも揃って嬉しいこと言ってくれた皆には家に帰ったらとびきりのご馳走作ってやらないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲良、ちょっといい?」

 

料理を食べながらオーフィスたちと談笑していると、イッセーが声を掛けてきた。近くには当然のようにヴァーリもいる。

 

「なんだイッセー?」

 

「咲良に会わせたいひと(?)がいるからちょっと来て欲しいんだけど」

 

「あと、オーフィスもだな」

 

なんか『ひと』のところにハテナマークがついてた気がする・・・・・いや、厳密に言えばこの場に純粋な『人』は俺かどこかにいるであろう爺さんだけだろうから間違ってないのかもしれないが・・・・・・

 

「俺は別に構わないが・・・・・3人ともいいか?」

 

「咲良が行くなら我も行く」

 

「別に私たちに遠慮する必要はないにゃ」

 

「私も構いません」

 

オーフィス達に確認をとってみると、皆了承してくれた。

 

「よし、それじゃあ行くか。イッセー、ヴァーリ。案内してくれ」

 

「うん、こっちこっち」

 

イッセーとヴァーリに案内され、俺達が連れてこられたのはテラスであった。そこにいたのは・・・・・・巨大なドラゴンだ。

 

うん・・・・・確かにこれはハテナマークついても仕方ないかもしれない。

 

「タンニーン、久しい」

 

「そうだな、オーフィス」

 

どうやらこのドラゴンとオーフィスは顔なじみのようだ。というかタンニーンって・・・・

 

「黒歌、タンニーンって確か・・・・・」

 

「龍王の一角を担うドラゴンにゃ。今は悪魔に転生してるから正確には元龍王なんだけど」

 

こっそりと黒歌に聞いて確認を取る。

 

彼のことは爺さんから聞いて知っていた。ドラゴンでありながら悪魔に転生し、今では転生悪魔の中では最強クラスの最上級悪魔だとか・・・・・・これまたとんでもないひと・・・・もとい、ドラゴンが出てきたな。

 

「ふむ、お前が湊内咲良か?」

 

タンニーンさんの大きな目が俺に向けられる。

 

「はい。俺の事をご存知で?」

 

「ああ。伊槻から聞いている。あと、こいつに修行をつけてやった時にもな」

 

イッセーを指差しながらタンニーンさんは言う。イッセーが言ってた修行で戦ってたドラゴンってタンニーンさんだったのか・・・・・うん、そりゃ精神まいちゃっても仕方ないよな。

 

「あの伊槻の孫で多くの修羅神仏と交遊を持ち、その上オーフィスと婚約しているからどのようなバケモノなのかと思ったが・・・・・」

 

ああ、やっぱり俺ってそういう認識されてるのがデフォルトなのか。俺本当に至って普通の人間なのに・・・・というかイッセーはその辺り訂正してくれなかったのか?まああるいはそんな余裕がなかったのかもしれんが。

 

「まあ俺はこの通り到て普通の真人間ですよ。特別な力を持っているわけでもありませんし際立った長所があるわけでもない平凡な男です」

 

「「「「それはない」」」」

 

何故かイッセー、ヴァーリ、黒歌、白音に否定されてしまった。いやいやいや・・・・・俺本当に普通なんだけどなぁ。

 

「だがまあ、確かに何か大きな力を持っているわけではなさそうだ。てっきり伊槻並とはいかなくても俺以上の力を持っていると思っていたが」

 

「自慢じゃありませんが、俺戦闘においてはこのパーティー会場にいる誰よりも弱い自信があります」

 

そもそもオーフィスが言うには俺って戦闘の才能皆無らしいし。男の子としてちょっと泣きたい情けなさである。

 

「しかし、その一方で俺を目の前にしても一切平常心を失っていないことには感心する。お前の言う普通の人間など俺を目にしたら恐れおののくのが常であったからな」

 

「そのへんの感覚は爺さんのおかげで色々と耐性が付いてしまってるようで・・・そうでなくても胆力が異常だって言う奴はいますが。あと、オーフィス以外にもドラゴンの知り合いがいるのでタンニーンさんに対してはそれほど驚きはなかったというのもありますが」

 

「ほう?俺やオーフィス以外のドラゴンに知り合いがいるのか?」

 

「はい。クロウ・クルワッハっていうドラゴンなんですが・・・・・」

 

「「クロウ・クルワッハ!?」」

 

クロウさんの名前を出したら、タンニーンさんとヴァーリは異常に驚いてみせた。

 

「あの伝説の邪龍と知り合いとは恐れ入った・・・・・一体どうゆう仲なのだ?」

 

「どういうと言われても別に特別なことはありませんよ?たまたま知り合ってたまにうちにご飯を食べに来る程度なのだ」

 

「あと、我ともたまに戦う」

 

「・・・・・どう考えても普通はありえないのだが?」

 

説明したら何故か呆れられてしまった。どうしてだろうか?

 

「ふむ、つまり近い将来クロウ・クルワッハと会うことができるかもしれないということか。それはいいことを聞いたな」

 

「いいこと?どういうことだヴァーリ?」

 

「以前からクロウ・クルワッハとは戦ってみたいと思っていてね」

 

「ヴァーリ、事あるごとに言ってたもんね・・・・」

 

なるほど、そういえばヴァーリって結構な戦闘狂聞いたからなぁ・・・・・イッセーが苦笑いしてるし、相当なレベルなんだろう。

 

「クロウ、かなり強くなってる。今は全盛期の二天龍より強い」

 

「それはいいことを聞いた・・・・ますます戦うのが楽しみだ」

 

オーフィスの言葉でさらに高揚したのか、好戦的な笑みを浮かべるヴァーリ。全盛期の二天龍以上って多分今のヴァーリよりだいぶ強いってことだよな?それでも楽しみとか・・・・・・

 

「なあイッセー、俺余計な事言ったか?」

 

「かもね。まあ変に暴走しそうになったら私が止めるからそこは安心していいよ」

 

「そ、そうか」

 

それって暴走する可能性があるってことだよな?安心しきれないんだが・・・・・

 

「まあ、クロウ・クルワッハのことは一端置いておくとして・・・・・湊内咲良、お前に聞きたいことがある」

 

「なんですか?」

 

「お前は・・・・・オーフィスの事を心から愛しているか?」

 

いやに神妙な面持ちで尋ねてくるタンニーンさん。その真意は掴めないが、俺も真剣に答えた方が良さそうだ。

 

「はい。俺はオーフィスを愛してます」

 

「・・・・・過去に人と龍が交わったということは無くはない。だが、俺の知る限りはそのいずれも苦難と困難に妨げられていた。しかもお前が愛したオーフィスは最強のドラゴン・・・・龍神だ。お前が想像にもしない障害がこの先待ち受けているかもしれない。それでもお前はオーフィスを愛し通すことができるか?」

 

タンニーンさん・・・・・きっと俺の事を心配して言ってくれてるんだな。あったばかりだというのに・・・・・親切で優しいドラゴンだな。

 

なら、俺もちゃんと示さないとだな。

 

「関係ありませんよ。この先何があるとしても、俺はオーフィスを愛し続けます。この想いが変わることはありません」

 

「そうか・・・・・オーフィス、お前はどうだ?」

 

「我も同じ。咲良の事愛し続ける。ずっとずっと・・・・・永遠に、無限に我は咲良を愛する」

 

オーフィスもまた、俺を愛し続けると言ってくれた。ただ・・・・・その思いは、全て同じというわけではないが。

 

「ふむ・・・・・多少不安もあるが、それでも想いが本物であるということは十分に伝わった。すまなかったな、突然こんなことを聞いて。だが、一体のドラゴンとして人と龍神の交わりが気になってしまってな」

 

「いえ、タンニーンさんのお心遣いは嬉しいです。ありがとうございます」

 

「なに、礼を言うことはない。湊内咲良、そしてオーフィス・・・・・お前たちの行く末、見届けさせてもらうぞ」

 

ふっと笑みを浮かべ、タンニーンさんは俺とオーフィスに告げた。

 

俺たちの行く末を見届けてくれるドラゴンもいる。その事実は、妙に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ドラゴン界随一の良心枠タンニーンさんマジ最高

まあ実際問題ドラゴンとしては咲良とオーフィスがどうなっていくのかは気になると思う

そしてオーフィスマジ可愛い(ネタ切れ感)

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話 同じ名前だからこそ

今回は桜の季節ということでそれにちなんだ小話を

かなり短いですが・・・・・

それではどうぞ


 

我は桜が嫌い

 

皆は桜は綺麗で可憐で美しいと言う

 

我も・・・・そう思う。桜は綺麗で美しい

 

それでも我は桜が嫌い

 

大好きな咲良(人間)と同じ名前をしているのに・・・・・我は桜が嫌い

 

理由は・・・・・・わからなかった。どうして嫌いなのかずっとずっとわからなかった

 

だけど・・・・最近になってようやくわかった

 

咲良と結婚の約束をして・・・・我がどうして桜が嫌いなのかがわかった

 

桜が一番綺麗で、美しいと感じるのは――ときだから

 

だから我は・・・・・桜が大嫌い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフィスと結婚の約束をして一年が経ったある春の日のこと。今日は皆で近くの公園で花見をすることになっていた。今は桜が散り始める頃で、一番見ごたえがあるということで企画されたのだが・・・・・・俺とオーフィスはその花見に参加することはなかった。

 

理由はオーフィスが異様に桜を嫌っているからだ。桜を視界に入れるとむっとした表情を浮かべてしまう。そんなオーフィスが花見に参加などするわけがなく、オーフィスが参加しないということで俺も不参加ということになったのである。

 

「咲良と二人きり、久しぶり」

 

「ああ、そうだな」

 

いつも通り、俺の膝の上に座り、機嫌よさげに擦り寄ってくるオーフィス。黒歌や白音は花見に参加しているため、今日は久しぶりに二人きりだからいつも以上に積極的にスキンシップを・・・・・あれ?いつもこんなもんだったような気が・・・・・まあ深くは考えないでおこう。

 

それよりも・・・・・

 

(やっぱりオーフィス・・・・・桜が嫌いなんだなぁ)

 

オーフィスの桜嫌いは筋金入りだ。俺にとってそれは・・・・・ちょっとだけ悲しかった。俺と同じ名前をした桜。だからといって俺からしたら特別思い入れがあるわけではなく、単純に綺麗だなと思う程度のものなのだが・・・・それでも、俺と同じ名前の桜をオーフィスが嫌っているというのはちょっとだけ悲しい。

 

自分のことではないとわかってはいても・・・・・まるで自分がオーフィスに嫌われているのではないかと思ってしまうことがたまにある。

 

だから俺は少しでもオーフィスに桜の事を好きになって欲しいと思っているのだが・・・・・

 

「ん?」

 

ふと自分の手に視線を向けると、桜の花びらがひっついていることに気がついた。どこからか紛れ込んだのだろうか?

 

「・・・・それ、桜?」

 

オーフィスが俺の手に付いた桜の花びらを見ながら尋ねてくる。嫌いな桜を目にしたことによりオーフィスはっむっとした表情を・・・・・浮かべていなかった。オーフィスの顔から読み取れる表情はどこか悲しげであったの。

 

「この桜・・・・・死んでる?」

 

「え?」

 

「この花びらは散ったからここにある。散るってことは・・・・死んでるってこと?」

 

より一層、表情に憂いが帯びてくるオーフィス。

 

「我・・・・・・・やっぱり桜嫌い」

 

「オーフィス?」

 

「桜は綺麗。桜は美しい。けど・・・・・我知ってる。桜が一番綺麗なのは、美しいのは散るとき・・・・・死ぬ時だっていうことを我知ってる。だから我は・・・・・桜が嫌い。だって桜は・・・・・咲良と同じ名前なのに。それなのに死ぬときの方が綺麗だなんて・・・・」

 

そうか。オーフィスが桜を嫌うのは・・・・・俺の事を想ってくれているからなのか。俺の事を想ってくれてるから・・・・・散るときが一番綺麗な桜のことが嫌いなんだ。

 

桜は俺と同じ名前だから・・・・・俺と桜を重ねてしまっているのだろう。

 

ああ、もう・・・・・本当にこいつは・・・・・なんて愛おしいんだろう

 

「・・・・・オーフィス」

 

あまりの愛おしさに、俺はオーフィスを抱きしめてしまう。

 

「我、咲良が好き。だからずっとずっと桜を嫌い続ける。ずっとずっと・・・・・永遠に」

 

「そうか・・・・・ありがとうオーフィス。嬉しいよ」

 

俺を愛し、それゆえに桜を嫌うオーフィス。

 

そんなオーフィスが・・・・・俺は・・・・愛おしくて愛おしくて堪らなかった。

 

 

 




桜が綺麗なのは認めるけど、散り際が一番綺麗だから嫌いだというオーフィスちゃん

それも桜が咲良さんと同じ名前だからという・・・・・咲良さん本当に愛されてるなぁ

それでは次回もまたお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

どんどんコネが広がっていくって、もうチートでしかない

今回は新たに三人登場します

一人はアレですが…………

それでは本編どうぞ


 

タンニーンさんとの話を終えた俺達は、ある程度満腹になったこともあり、会場の隅の方で雑談に興じていた。まあ、小猫は一人だけまだ食べていたが・・・・毎度思うがすごい食欲だ。まあ、俺の料理とかも美味しそうに食べてくれるからいいのだけども。

 

「お?ツマンネーパーティだと思ってたがいい女がいるじゃねえか!」

 

雑談する俺達・・・・・いや、黒歌に声をかけるものがいた。それは少々野蛮にも見える外見の男の悪魔だ。

 

「・・・・・なにあんた?」

 

黒歌はあからさまに不機嫌そうに尋ねる。ここまで不機嫌な黒歌を見るのも初めてかもしれない。

 

「ちょっと付き合えよ。タノシイことしようぜ?」

 

「嫌よ。私そんなに暇じゃないの」

 

語尾にいつもの『にゃ』さえついてない・・・・これは相当怒ってるってことかな?しかもオーフィスも白音もこの男のこと睨んでるし・・・・・まあ、かく言う俺もあまりいい気分ではないがな。

 

「そう言うなよ。可愛がってやるからよ」

 

俺たちの気持ちなどお構いなしといった様子で、男は下卑た笑みを浮かべながら黒歌に向かって手を伸ばす。俺は黒歌と男の間に割り込み、その手を掴んだ。

 

「・・・・・あ?なんのつもりだクソガキ?」

 

「すみません、連れの女性がちょっかいをかけられてるのを黙って見ていられるほど物分りがいい人間ではないので」

 

「人間?お前人間かよ。だったらなおさら邪魔すんな。人間風情が悪魔様に逆らっていいと思ってんのか?」

 

人間風情、それに悪魔様・・・か。人間は所詮悪魔の糧ぐらいにしか思ってないんだろうなこいつは。まあ今はそんなことはいいけど。

 

「人間とか悪魔とかそんなのは関係ない・・・・・黒歌から離れてくれ。頼む」

 

「舐めた口聞いてんじゃねえよクソガキ!」

 

どうやら今ので男を完全に怒らせてしまったようで、男は俺の胸ぐらを掴む。今にも殴りかかってきそうだな勢いだが・・・・・それでも退けない。こんなやつに黒歌に手を出させたくない。たとえ殴られようとも俺は・・・・

 

「舐めた口・・・・それはあなたの方よ?」

 

「懲りないなゼファードル」

 

今まさに俺の事を殴ろうと拳を振り上げた男に、二人の男女が声を掛けて止めた。

 

「ちっ・・・・シークヴァイラにサイラオーグか」

 

二人を見た男は、忌々しそうに舌打ちした。というかシークヴァイラにサイラオーグ、それにゼファードル・・・・・なんか聞き覚えのある名前だな。確かリアス先輩やソーナ先輩と同じ有名な家柄の若手悪魔だっけか?

 

「ゼファードル、あなたが今ちょっかいをかけている相手は私達悪魔にとって大事なお客様。手荒なことをしないほうが身のためよ?」

 

「こんなガキが客だぁ?」

 

「そうだ。彼はあの伊槻の孫だそうだ」

 

「伊槻って・・・・湊内伊槻の!?」

 

爺さんの名前が出た瞬間、ゼファードルはあからさまに動揺してみせた。

 

「冗談じゃねぇ・・・・・あんなバケモノの身内と関わってたまるか!」

 

冷や汗を掻きながら、ゼファードルはそそくさとその場を去っていった。あの反応からして爺さん、ヤバげな意味で名前が広まってるようだな・・・・・まあ今回はそのおかげで助かったからいいけども。

 

「まったく、あいつは本当にどうしようもないわね・・・・・」

 

「すまなかったな。俺達の同期が失礼をした」

 

ゼファードルの素行に呆れるシークヴァイラさんと、俺に謝罪するサイラオーグさん。ゼファードルと同期ということらしいが、この時点で既に風格に差が見える。

 

「いえ、この通りなんともなかったので謝る必要は・・・・・」

 

「何を言ってるにゃ咲良!」

 

「え?」

 

何故か黒歌に怒鳴られてしまった。なんでだ?

 

「下手したら殴られてたかもしれないのよ?それなのになんともなかったの一言ですませて欲しくないにゃ!」

 

「・・・・無茶しすぎです咲良先輩」

 

「我、心配した」

 

どうやら3人に酷く心配をかけてしまったようだ。確かにあとになって考えてみれば危なかったかもしれない。オーフィスは俺の恋人だし、黒歌と白音は俺の護衛だから気が気でなかったのだろう。その気はなかったとはいえ、迷惑をかけてしまったな・・・・

 

「3人の言うとおりだわ。ゼファードルは気品の欠片もない、短気で野蛮で死んだほうがいいって思えるほどの男よ。私達が来なかったら本当に殴られていたかもしれないわよ?」

 

シークヴァイラさんにも咎められてしまった。というかこのひとゼファードルのこと嫌いなのか?死んだほうがいいって相当だぞ・・・・・

 

「確かに、あれは少々無茶が過ぎたかもしれないな。だが、俺はそんなお前の無茶を評価する」

 

「え?」

 

「伊槻からお前のことは聞いている。戦うための力も才能も一切備えていない非力な人間・・・・それが湊内咲良だと伊槻は言っていた」

 

爺さん・・・・事実だけどそんなにはっきり言わなくてもいいだろ。俺だって男なんだから結構傷つくぞ。

 

「だが、力はなくとも、誰が相手でも物怖じしない強い精神力の持ち主でもあると伊槻は言っていた。先程のゼファードルとのやりとりから、その一旦は伺い知れた。力がなくても真っ向から向き合うあの勇気は賞賛に値する。まったく、たいしたものだ」

 

「いや、それに関しては爺さんをはじめとしたその・・・・・言い方悪いですがやばい連中と付き合いがあるから感覚が麻痺しているというかなんというか・・・・別に精神力云々は関係ないかと」

 

正直もう、誰と会っても恐いとか感じそうにないんだよな本当に・・・・・なんかそれはそれで人間離れしてるようで不安になってくるが。

 

「そんなことない、咲良はすごい。我が保証する」

 

なぜかオーフィスが抱きしめながら否定してきた。今ので自分を卑下しているように捉えられてしまったのかな?

 

「・・・・そか、ありがとうオーフィス」

 

「ん」

 

ひとまずお礼を言いながら頭を撫でると、オーフィスは満足げに俺に擦り寄ってきた。やっぱり可愛い。

 

「あの無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)にさえここまで懐かれているなんて・・・・」

 

「婚約もしていると聞いたが、やはりお前は大物だな」

 

オーフィストのやり取りを、シークヴァイラさんは驚きながら、サイラオーグさんは笑いながら見ている。オーフィスの存在自体に驚いていないところを見ると、婚約の話とかはもう広まってるのかな?

 

「気に入った。お前とはじっくり話がしたいものだ。いずれバアル家に招待しよう・・・・・おっと、そういえばまだ名乗っていなかったな。俺はサイラオーグ・バアル。これでもバアル家の次期当主だ」

 

「私はシークヴァイラ・アガレス。アガレス家の次期当主で次期大公候補でもあるわ。他種族との和平の仲介役となるあなたとは今後も付き合いがあるでしょう。末永くよろしくね」

 

改めて自己紹介をしてくるサイラオーグさんとシークヴァイラさん。こうして家名まで出されるとやはり貫禄がすごいな・・・・サイラオーグさんは言ってないけどバアルって確か大王の血筋らしいし。

 

おっと、そんなことよりも俺も自己紹介しないと・・・・

 

「俺からも自己紹介させてもらいますね。俺は湊内咲良。ご存知のとおり湊内伊槻の孫で和平における仲介役を務めさせていただいております。不束者ですが以後よろしくお願いいたします。それと、爺さんに何かされたら言ってください。説教してやりますから」

 

「あの伊槻に・・・・」

 

「説教・・・・ですって?」

 

サイラオーグさんもシークヴァイラさんも、何故か戦慄し、表情を驚愕に染めた。一体どうしたというのだろうか?

 

「伊槻に説教とは・・・・・俺が思っている以上に大物なのかもしれないな」

 

「そうね。あの理不尽の塊、魔王様でさえ御しきれない伊槻に説教ができるなんて・・・・・・途轍もないわ」

 

「あの・・・・・爺さん一体何やらかしたんですか?」

 

これは真面目に気になる・・・・・魔王の居城に堂々と乗り込んだって話は聞いたが、この調子じゃほかにも色々とやらかしていそうだ。

 

「伊槻はやっぱりハチャメチャ」

 

「そうだな。もういっそすぐに見つけてこのパーティ会場の真ん中で土下座させたほうがいいかもしれないな」

 

「「おぉ・・・・・」」

 

爺さんを土下座させると言ったら、何故かサイラオーグさんとシークヴァイラさんが崇めるように感嘆の声を漏らす。

 

とりあえず爺さんの今度の夕食のメニューはタバスコ大量にかけた唐辛子の盛り合わせにしてやると心に決めた。

 




イチャイチャ成分が足りなくて申し訳ない(土下座)

にしても……イとも容易くコネ作るってやっぱりチートだ

そしてオーフィスちゃんの可愛さを全人類に知って欲しい(切実)

それでは次回もまたお楽しみ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

健気な黒歌さんとか普通にお嫁に欲しい by作者

サブタイ通り今回は黒歌さんがメインです

それでは本編どうぞ


「ご苦労だったな黒歌。それとありがとな」

 

「別に。好きでやったことだからお礼なんていらないにゃ」

 

パーティの翌日、私はグレモリーの屋敷の一室で伊槻お爺さんと二人で話をしていた。話の内容は・・・・・先日のパーティでの咲良の護衛について。ちなみに咲良はこの屋敷のメイドで魔王の女王(クイーン)のグレイフィアって女に料理を教えていて、オーフィスはそれに付き添っているにゃ。

 

・・・・・私も教えるように推したけど、正直グレイフィアには同情するにゃ。咲良がガチで料理を教えるとなると相当・・・・・・まあ今はそんなことはどうでもいいにゃ。

 

「それで?どうだった?」

 

「別に怪しい動きをしてる奴はいなかったにゃ。料理にも飲み物にも毒とかは入ってなかったし」

 

「そうか。まああんな人目に付くような場所で滅多なことを起こす奴はいないだろうと思っていたが・・・・何事もなくて良かった」

 

ほっとした様子でお爺さんは胸を撫で下ろす。どうやらよほど心配だったらしいにゃ。

 

先日のパーティで、私はお爺さんに言われて咲良の護衛として役割を果たしていた。和平の仲介役といえば聞こえはいいかもしれないけれど、他種族との和平を快く思っていないものというのは間違いなく存在する。その理由は様々だが、それでもそんな連中にとって咲良は邪魔者でしかない。だからこそ・・・・・お爺さんは咲良の命を守るために、私に護衛を頼んだようにゃ。

 

パーティでは咲良の口にするものは全て事前に毒見をして、咲良に敵意を持っている者がいないか仙術でずっと警戒していた。咲良を守るためなら、命さえ差し出す覚悟をしていたけれど・・・・まあ、結果として咲良を狙う不届きものがいなくて良かったにゃ。

 

ただ・・・・・

 

「別に我が身可愛さに言うわけじゃないけど、咲良が知ったらそれこそお説教どころじゃ済まないと思うにゃ」

 

「だろうなぁ。そんなこと俺が黒歌に頼んだって咲良が知ったらあいつは間違いなく怒る。黒歌が自分の護衛につくこと自体は認めていても、そのために黒歌が犠牲になろうとすることをあいつは良しとしないだろうからなぁ。多分俺だけじゃなくて、そうとわかっていて護衛の任を受けた黒歌にも怒るだろうな」

 

お爺さんの言っていることはそのとおりだと思う。咲良の性格上、自分のために必要以上に体を張って欲しくないと思うだろうし・・・・・だからこそ、バレたら私が怒られるのは確定的にゃ。咲良のそういう優しさは私も好きだけど、護衛した挙句怒られるのはさすがに勘弁ね。

 

「けど私の護衛なんてなくてもオーフィスが居ればよほど大丈夫じゃないかにゃ?」

 

そう、咲良にはあの世界最強の無限龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスが付いている。そのオーフィスがついていれば咲良に危害を加えようなんて奴はいないと思うけれど・・・・・

 

「まあ、確かにオーフィスがついていればよほどのことは大丈夫だと思うがな。咲良に対して異常とも言えるほどの加護が与えられてるし、戦闘面に関しては咲良を守るためなら多分俺以上に強くなる可能性あるだろうし」

 

「それってとんでもないことなんじゃ・・・・・」

 

いや、まあ冷静に考えれば咲良が関わらなければオーフィスよりも強いお爺さんも大概とんでもないような気もするけれど・・・・・というか、それならやっぱり私が護衛するまでもない気がするにゃ。

 

「ただ、世の中絶対ってものはないからな。オーフィスは強いし咲良に対する危険感知能力は高いが、それでもオーフィスでは手が回らないこともある。だからこそ、俺はお前に頼んだんだ」

 

「オーフィスでも手が回らないね・・・・・そんな事態、起きないに越したことはないけどそういうことなら了解にゃ。私は私にできることで咲良を守るにゃ」

 

それが・・・・・咲良に助けてもらった私にできる数少ないことだから。

 

「おう。頼んだぞ黒歌。と、そういえば咲良の奴、若手悪魔3人と接触したようだな」

 

若手悪魔3人というと・・・・・あいつらのことね。そういえば、そのことでこのお爺さんに言っておきたいことがあったにゃ。

 

「お爺さん、いくらなんでも咲良は物怖じしすぎない気がするにゃ。私がゼファードルとかいう悪魔に絡まれてたとき、当然のように前に出てきたし。私のためっていうのは嬉しいんだけど・・・・・」

 

「あー・・・・あいつ日常的に俺やオーフィスっていう世界最強レベルとずっと一緒にいたからなぁ。神やらドラゴンやらの知り合いも多いし、若手の上級悪魔程度ならあいつにとってそこらのパンピーと変わらないんだろう」

 

「上級悪魔がパンピーって・・・・そのへんの感覚、矯正したほうがいい気がするにゃ。危機感を持たせないとこの先・・・・・・私やオーフィスがいるから大丈夫かもしれないけど厄介事に巻き込まれることも多いと思うにゃ」

 

実際、あのゼファードルとかいうのには目をつけられちゃっただろうし。あの時サイラオーグとシークヴァイラが来なかったらもっと面倒なことになってたかもしれない。

 

「言ってることはもっともだが・・・・残念ながら無理だな。あれはあいつの魂に根付いた習性みたいなものだから今更どうこうできん。なにより、あいつのあの物怖じしないところを気に入ってる奴も多いし、だからこそ和平の仲介役を勧めたわけだしな」

 

お爺さんの言っていることはもっともね。ただ・・・・・それでもやっぱり納得はいかない。

 

「・・・・・一応言っておくけど、お爺さんが咲良を和平の仲介役に推したこと、私はまだ納得したわけじゃないから。咲良が無事でいられるように力を尽くすけど・・・・・咲良に何かあったら私がお爺さんを殺してやるにゃ」

 

私の力じゃこのとんでもお爺さんを殺すことなんて無理だなんてことはわかっている。それでも私はこういってやらなければ気がすまなかった。いくら咲良のたった一人の家族だからといって・・・・・咲良を危険な目に逢わせていい理由にはならないにゃ。

 

「・・・・・はははっ。俺の孫は果報者だな。可愛い龍神様だけじゃなくて、こんなグラマーな黒猫にも愛されてるとは。独り者としては羨ましい限りだ」

 

「はぐらかさないで」

 

「いや、そんなつもりはなかったんだがな・・・・・よし、わかった。咲良に何かあったら俺を殺せ。遠慮なくな」

 

ニッと笑みを浮かべて、なんでもないようにお爺さんは言う。

 

「もっとも、俺もそうならないために動くつもりではいるけどな。たったひとりの孫だ・・・・守るのは当然だ」

 

「その割には咲良をほったらかしにしていろんなところに行ってるにゃ」

 

「それもまあ、咲良を守るためでもあるんだよ。こう見えても俺、結構仕事してるんだぜ?」

 

「あっそ」

 

そっけないように返事を返すけれど、別にそのことに関しては別段疑ってはいなかった。もっとも、それは私がお爺さんの働き振りを見ているからではなく、咲良がそう言っていたからだけど。

 

「それじゃあそろそろ私は咲良のところに戻らせてもらうにゃ。じゃあねお爺いさん」

 

「ああ、ちょっと待った。最後にもう一つだけ」

 

咲良の下へ向かおうとする私を、お爺さんは引き止める。

 

「なに?早くして欲しいんだけど・・・・」

 

「すぐに済む。咲良のことだが・・・・・本当に頼むぞ黒歌。お前も咲良にとっては大切な存在の一人なんだからな・・・・・咲良を支えてやってくれ」

 

言われるまでもない・・・・と、返したかったけれど、できなかった。お爺さんの表情があまりにも真剣で・・・・どこか悲しそうに見えたから。

 

「さて、話は今度こそこれで終わりだ。咲良のとこに行ってこい」

 

「・・・・ええ。そうするにゃ」

 

私はなにか引っかかるものを感じながらも、咲良の下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあこの具材は85度の角度で厚さ8ミリ。1秒間に3回の速さで切ってください」

 

「え?あ・・・・・はい」

 

「・・・・・やってるわね」

 

咲良のいる屋敷の厨房にやってきた私の目に、料理を教える咲良と教わるグレイフィアの姿があった。案の定というかなんというか・・・・・グレイフィアはかなり苦戦していた。

 

無理もないにゃ。咲良がガチで料理を教えるときはとにかく細かいのだから。ミリ単位、秒単位でこだわる上に食材を切る角度まで気にして・・・・・温度とかも1度どころかコンマ単位で気にしている。

 

咲良はもう、ほとんど感覚でその辺りは平然と見極めるのだけれど・・・・・いくら普段から料理しているとはいえ、これは相当にしんどいはずにゃ。

 

「黒歌、伊槻との話終わった?」

 

私のことに気がついたオーフィスが近づいて来て尋ねてきた。

 

「さっき終わったにゃ。こっちは・・・・・まだまだ時間がかかりそうね」

 

「咲良本気で教えてる。多分あと2時間ぐらいかかる」

 

「・・・・咲良はともかく、グレイフィアの方がもちそうにない気がするにゃ」

 

あんなに細くっちゃ、ひたすらに神経を使うだろうし・・・・・ご愁傷様としか言えないにゃ。

 

「まあ、変に口出しして邪魔するのもあれだし、私はここで見てるにゃ」

 

「我も。黒歌と話ながら見ている」

 

うっ・・・・・これは墓穴を掘ったかもしれないにゃ。オーフィス、私と二人の時に話すことって大概惚気だから・・・・・胸焼けの覚悟をしたほうが良さそうね。

 

ただまあ、その前に・・・・

 

「オーフィス」

 

「なに黒歌?」

 

「咲良のこと・・・・・・絶対に守りましょ」

 

さっきのお爺さんの顔がちらついてしょうがない私は、オーフィスにそう告げた。

 

「咲良は守る。何があっても。当然のこと聞いてきて黒歌、変」

 

「ふふっ、そうね」

 

やっぱり、オーフィスにとっても咲良を守ることは当然なのね・・・・・まあ、愛し合ってるから当然といえば当然にゃ。

 

「それよりも黒歌、前に咲良が・・・・・」

 

表情は変わらないけれど、それでもどこか楽しそうな様子で咲良の惚気を始めるオーフィス。

 

さて、今度はどんな甘い話を聞かされるのかにゃ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




咲良さんのことになると本当に健気すぎる・・・・・普通に可愛いと思います

もちろんオーフィスちゃんも可愛いですが

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦闘の才能のない奴の考察とか深く考えずに済むから楽

サブタイ通り、ちょっとした考察があるけど本当に大したことではないです

それでは本編どうぞ


まもなく始まるグレモリー眷属とシトリー眷属のレーティング・ゲーム。俺、オーフィス、黒歌はその観覧に招待されたのだが・・・・・・案内されたのは明らかにVIPルームと呼ぶにふさわしい部屋であった。

 

魔王であるサーゼクスさんとセラフォルーさん、堕天使総統のアザゼルさんとヴァーリ。北欧の主神たるオーディンさんとその護衛のロスヴァイセさん。ほかにも偉そうな方々が何人も居る。別に今更そういった人たちの集まりの中に突っ込まれて物怖じしたりはしないのだが、なんでこんなところに俺はいるのだろうか?そんなに俺は重宝されているのだろうか?

 

「ついでに爺さんまで居るし・・・・」

 

「咲良、仮にも祖父である俺をついで扱いはないんじゃないか?」

 

「「「・・・・え?」」」

 

「なんでそこで疑問の声を上げるんだよ!?しかもオーフィスと黒歌まで!?」

 

オーバーなリアクションをとっている爺さん。まあ爺さんも一応重鎮といえば重鎮なのでこの場にいてもおかしくはないと思うので居ても不思議はないのだが、こういうノリはデフォルトであるので特に気にはしない。

 

それよりも気になるのは、やけに視線が俺の方に集まっていることが。

 

「なあ黒歌、爺さんはともかくとして人間の俺がここに居るのってやっぱりおかしいよな?さっきからすっごい見られてるし・・・・」

 

「いや、見られてるのはどう考えてもそれだと思うにゃ」

 

そう言いながら、呆れた様子で黒歌は俺の膝の上に座るオーフィスを指差した。

 

「え?オーフィスが俺の膝の上にいるのはいつものことだろ?」

 

「咲良の膝の上、我の特等席」

 

「それは知ってるにゃ。だけど、ここにいる連中はそれ見慣れてないから。最強の無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)が人間の膝の上に座ってるってとんでもないことよ?」

 

と、そうか。そういえばオーフィスって世界最強のドラゴンなんだっけか。なんか最近そのことを忘れちゃいそうになるんだよなぁ・・・・・オーフィスは俺にとって可愛い婚約者だし。

 

「まあ確かに見慣れない光景であるのは確かだな。そんな光景が見られる日が来ることさえ本来はありえないはずだ・・・・・・やっぱり君はとんでもないな」

 

話を聞いてたらしいヴァーリが言う。なんというか、見てる方はこの光景に違和感を覚えているようだけど、俺からしたらそう思われることに違和感を覚えるんだよなぁ。

 

「まあ、そんなことはさておいてだ。咲良、お前はこのレーティング・ゲーム、どっちが勝つと思う?」

 

アザゼルさんが興味深そうに俺に尋ねてくるが・・・・・正直そんなこと聞かれても困るんだよなぁ。俺、戦闘の才能皆無だから的確な考察とかできないと思うし。

 

それに何より・・・・・サーゼクスさんとセラフォルーさんがじっとこっちを見つめてきて答えづらいし。二人共、自分の妹ことだから気になるっていうのはわかるけどさぁ・・・・・

 

「咲良、お前が戦闘の才能がからっきしだっていうのはわかってる。だが、わかった上でアザゼルは聞いてるんだよ。熟練の戦士でもあるアザゼルは、素人がどう考えてどう考察するのかってのに興味があるんだろう」

 

「伊槻の言うとおりだな。素人目の考察ってのも聞いてて割と楽しいものだからな。だからお前が思ったままのことを聞かせてくれ」

 

まあ言ってることは理解できなくもないかな。というか、ここまで言われたからには的外れかもしれないけどちゃんと考察したほうが良さそうだな。

 

「なら言わせてもらいますけど・・・・・勝敗についてはなんとも言えませんけど、有利なのはシトリー眷属の方だと思います」

 

「ほう、どうし・・・・」

 

「どうしてそう思うの?」

 

アザゼルさんを押しのけて、セラフォルーさんが食い気味で俺に聞いてきた。自分の妹の事とは言え、随分とグイグイくるなぁこのひと・・・・・

 

「えっと・・・・まずはやっぱり今回のゲームのルールですかね。今回は屋内戦で、建物を壊してはいけないってなると力任せの派手な戦闘はできない。ゲームに参加するひとたちの力量を全員理解できているわけではないですけど、少なくともイッセーとゼノヴィアがそういう戦闘に向いてないってことは友人として知っていますのでこの二人の力が削がれるだけでもグレモリー眷属側にとっては痛手だと思います」

 

言っちゃ悪いが、イッセーもゼノヴィアも細々としたことは苦手だろう。

 

「まあ確かに、あのふたりはパワーで押し切るタイプだからな。今回のルールでは実力を発揮しきれなくはあるだろう。それで?『まずは』って言うからにはほかにも理由はあるんだろ?」

 

「はい。あとは地の利ですね。今回のゲームは駒王学園近くのショッピングモールを模したフィールドで行われる・・・・・よりフィールドを把握しているのはシトリー眷属側だと思いますので地の利はこちらにあると思います」

 

「なぜそう思うんだい?あのショッピングモールならリアス達も知っているはずなんだけれど?」

 

今度はサーゼクスさんが聞いてきた。まあ、自分の妹のほうが不利と言われてしまっては気になるのは当然なのだろう。

 

「それはそうなんですけど、グレモリー眷属側は全員が全員フィールドを正しく把握しているわけではないと思います。アーシアは春から駒王に来ているのでもしかしたらショッピングモールに訪れる機会はそれなりにあったかもしれませんが、少なくともゼノヴィアはつい最近駒王に来たわけですから他のひとよりも地形に対する理解は深くはないはずです。あ、あとつい最近まで外に出ていなかったギャスパーもですね」

 

少なくともこの二人に関しては地形の理解はそこまで深くはないだろう。それが勝敗に影響するかしないかまではわからないけど、地の利という面では多少遅れをとっていると思う。

 

「あ、それとギャスパーについては他にも不利な面はありますね。ギャスパーって元々は吸血鬼だったんですよね?ショッピングモールなら吸血鬼の弱点をつくものがいくつか置いてあるでしょうし・・・・・そこは不利になると思います」

 

食料品売り場にはにんにくはあるだろうし、アクセサリー売り場には十字架を象ったものだってあるだろう。そういったものを利用されればキツいだろう。まあ、十字架に関しては吸血鬼だけじゃなくて悪魔共通の弱点だから利用するのは難しいかもしれないが。

 

「とまあ、これが俺の考察です。なんというか、シトリー眷属が有利な面というよりは、グレモリー眷属が不利な面ばかり話してた気もしますが・・・・・」

 

「ふむ・・・・・まあ、素人の考察としてはまあまあだな。実際はそこまで単純ではないが間違ってるわけではない。ただ今の考察からしてやっぱり戦闘の才能があるかって言われるとな・・・・・」

 

「だから言っただろ?戦闘に関しては咲良はマジでこんなもんだぞ?ぶっちゃけ普通の一般人並だ」

 

・・・・・確かにそうなんだろうけど、そこまではっきり言わないでくれ爺さん。俺だって男なんだから傷つくぞ。

 

「大丈夫。咲良がいくら弱くても我が守る。咲良を傷つけようとするやつは消す」

 

オーフィスは俺の頭を撫でながら言う。慰めているつもりなんだろうが・・・・・正直さらにダメージが増した。まあ、撫でられるの嬉しいからいいんだけどさ。

 

というか、なんか部屋のいる一部のひとの顔が青くなってる気がするんだが・・・・・まあそれだけオーフィスの消す発言が怖かったということだろう。

 

(これは・・・・・今顔青くした連中は咲良にちょっかいかけようとしてたってことか?)

 

(こいつら、まさか咲良を?今のオーフィスの発言で多少萎縮してくれたようだけど警戒はしておいたほうが良さそうにゃ)

 

「爺さん?黒歌?なんか顔が険しいんだがどうかしたのか?」

 

「なんでもないにゃ。気にしないで」

 

「俺もなんでもないにゃ♪」

 

「「「「キモッ・・・・・」」」」

 

「・・・・・悪い。自分でも今そう思った。吐き気が・・・・」

 

こうして、素人である俺のレーティング・ゲーム事前考察は爺さんのせいでいたたまれない空気で幕を下ろすのであった。

 

「爺さん、今度の爺さんの晩飯、密室でシュールストレミングな」

 

「ヤメて!?」

 

 




深く考えるのが苦手だから咲良さんに戦闘の才能がなくて本当によかったと思う。主な理由は作者である私がそういうの苦手だからだが・・・・・

そして人目を気にせず咲良さんの膝に座るオーフィスちゃん・・・・・うん、可愛いですね

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あなたの胸の内

今回は甘め・・・・・なのかな?

それでは本編どうぞ


「・・・・まじかー」

 

レーティング・ゲームの観戦中、俺はあまりの展開に声を出してしまった。周りを見てみると、全員(オーフィスを除く)呆れたような困惑したような表情をしている。あの爺さんでさえもだ。きっと俺も同じような表情をしているのだろう。

 

ゲームは俺の予想通り、制約ルールから力を発揮しきれないグレモリー眷属達が戦いづらそうにしていた。特にそれが顕著なのはイッセーとゼノヴィアだった。特にゼノヴィアの方は相手の策略に嵌ってしまい、割と早い段階で脱落してしまったようだしな。

 

そしてイッセーの方は、力を発揮しきれないとはいえ相当鍛えていたらしくシトリー眷属で同学年の匙を撃破していた。だが、匙は撃破はされていたものの、神器(セイクリッド・ギア)の能力をうまく使い、イッセーから血を抜き取ることでイッセーの無力化を図っていた。どんなに強くとも、生物である以上は血を抜かれればそのうち意識を失ってしまう。力では及ばなかったようだが、匙の執念がイッセーに一矢報いたと言っていいのだろう。

 

そう、ここまでは良かったんだ。戦闘に置いて門外漢である俺でも見ごたえがあるゲームだと思うほどに。だが問題は・・・・・イッセーが発動させたあの技だ。

 

乳語翻訳(パイリンガル)』・・・・・・女性の胸の内を聞き出す技。質問すればイッセーにだけ偽りなく答えてくれるらしい。はっきり言おう・・・・・これはないと。

 

イッセーは女性ではあるが、女性の胸に対して並々ならぬ関心を持っている。そしてタンニーンさんとの辛い山篭り修行にて、おっぱいへの渇望極限まで高まってしまってこの技を編み出すに至ったそうだ。頭がおかしいのではないかと思う。これ、イッセーが女だからまだギリギリでセーフな気もするけど男だったか純然たる変態でしかない。

 

「あの・・・・・あれ、アリなんですか?」

 

「まあ・・・・正直微妙なところだな。頭の悪い技ではあるが効果は強力すぎる。下手すれば女相手なら封殺することも可能になるからな。今後使用制限がつく可能性がある」

 

アザゼルさんはニヤニヤと愉快そうに笑みを浮かべがらも俺に説明してくれた。まあ確かに、頭の悪い技ではあるが強力でもあるわな・・・・・・ほとんど読心術って言ってもいいし。

 

「ヴァーリ、お前は自分の嫁さんがあんな技を使うことに対して思うところはないのか?」

 

「あれは俺には到底想像もつかない技だ。そんな技を開発するとはさすがは俺のイッセーだな」

 

ダメだこいつ。イッセー贔屓が酷すぎてイッセーを讃えやがった。なんというか、こんなのを宿主にしてしまった今代の二天龍に結構真面目に同情する。

 

「・・・・・・」

 

「ん?どうしたオーフィス?」

 

何故か俺の方をじっと見つめてくるオーフィス。本当にどうしたんだ?

 

「咲良は我のことを愛してるって思ってる」

 

「へ?」

 

「咲良の胸の内を理解することぐらい我だってできる」

 

見事なまでのドヤ顔(傍目から見ると無表情)を披露するオーフィス。何故かイッセーの乳語翻訳に対抗意識を抱いてしまったようだ。まあ確かにそう思ってるけどさ。

 

「咲良も我の胸の内、わかる?」

 

「・・・・・俺の事愛してる?」

 

「正解。さすが咲良」

 

手を伸ばし、俺の頭を撫でてくるオーフィス。

 

うん・・・・・・もう可愛いからいっか。

 

「咲良、適当に投げ出さないで。周りのひとたち砂糖吐きそうな顔してるから」

 

俺の心情を察したように黒歌が言ってくる。砂糖吐きそうな顔って・・・・・どんな顔だよ。

 

それにしても・・・・・・

 

「あの、サーゼクスさん。聞いてもいいですか?」

 

「何かな?」

 

「このレーティング・ゲームって、その・・・・・そんなに大事なものなのでしょうか?」

 

言い方は悪いかもしれないが、正直俺には理解できなかった。グレモリー眷属もシトリー眷属も決死の思いで、覚悟で戦っている。特に顕著なのは匙だ。自分の命を削る勢いで戦っていた。だが、これはレーティング・『ゲーム』・・・・・そう、あくまでも『ゲーム』なのだ。命をかけた戦いとは違うものであるはずなのに、どうしてあそこまで必死なのかがどうしても俺には理解できなかった。

 

「彼らがあそこまで懸命に戦う理由が理解できないかな?」

 

「はい。その・・・・・すみません。戦ってる皆は真剣なのでしょうが俺は・・・・・」

 

「いいや、謝ることはないよ。いくら特殊な環境で育ったとしても君は戦いとは縁のない人間だ。理解できなくても無理はないし、理解できなかったとしても咎めるつもりはないよ」

 

サーゼクスさんはこの戦い・・・・・ゲームの重さを理解できていない俺を咎めることはなく、笑って許してくれた。

 

「このゲームは互いの夢を乗せたゲームなんだ。今戦っている彼らは、彼女たちは夢のために命をかけることを厭わない。だからあんなふうに決死の覚悟で戦っているのだよ」

 

「夢のために命を・・・・・」

 

サーゼクスさんから説明されたが・・・・・それでも俺は理解しきれなかった。

 

夢のために命をかける・・・・・それは素晴らしいことなのかもしれない。だが、夢というのは命あってのものだ。夢を叶えるためにその命を削るようなことをしてしまっては・・・・いずれどこかで後悔や哀しみが生まれてしまうような気がして・・・・・

 

周りを見てみると、誰ひとり疑問を抱いている様子はなかった。アザゼルさんもヴァーリも・・・・黒歌も爺さんも納得している様子だ。

 

やっぱり俺は、ここにいる皆とは根本からして違うのだろう。俺は戦士ではない。戦うことができない。戦いとはかけ離れている。だからこそ、戦っている者達の気持ちを理解しきれない。

 

それが正しいことなのか、間違ったことなのかはわからないが・・・・・・この中でただ一人そうだという事実が、少し俺に孤独感を与えた。

 

「・・・・・咲良、大丈夫?」

 

オーフィスが俺を見つめながら頭を撫でてくる。先程も撫でられたが、今のは少し違う。俺を心配して・・・・俺を慰めようとしてくれている。

 

「うん、大丈夫だよオーフィス。心配してくれてありがとう」

 

「咲良・・・・・咲良は咲良のままでいい」

 

「え?」

 

「戦えなくていい。戦いのことなんて何もわからなくていい。戦うひとの気持ちを理解できなくてもいい。咲良は今のままでいい・・・・・だから気にする必要はない」

 

本当に・・・・オーフィスは俺の胸の内を全て理解できているのだろう。理解して、その上で俺を肯定してくれている。俺を慰めてくれている。

 

「我は・・・・・我だけは咲良のこと理解してる。理解してあげられる。だから心細くならなくてもいい。寂しいって思わなくていい。咲良には我がいる」

 

「オーフィス・・・・そうだな。俺にはオーフィスがいる。だから・・・・・寂しくなんてないよ」

 

ギュッとオーフィスの体を抱きしめる。小さくて柔らかい体だけれど・・・・・それでもこの上ないほどの幸福感を感じる。とても暖かく・・・・・安心出来た。

 

そうだ、俺にはオーフィスがいるんだ。だからたとえ戦うひとたちの事を理解できなくとも構わない。オーフィスがいて、俺に寄り添ってくれるのだから。

 

ありがとう・・・・・オーフィス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、咲良・・・・・唐突の桃色空間やめて。不意打ちは耐えられないにゃ」

 

「我が孫ながらこんなところでイチャつくとは・・・・・」

 

「本当にラブラブじゃないですかヤダー・・・・・・」

 

なんか周りから色々と聞こえてくる気がするけど・・・・・まあ、あまり気にしないでおこう。

 




あの技からよもやこんな展開になろうとは・・・・・・・

咲良さんの胸の内を理解して寄り添おうとするオーフィスちゃんマジ良妻

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

浴衣は下着をつけないっていうけど、やっぱり嘘だよね?

またしてもひどいサブタイ・・・・・

サブタイの意味するところは本編にてお確かめを

それではどうぞ


グレモリー眷属とシトリー眷属のレーティング・ゲームは、グレモリー眷属の勝利で終わった。戦術面ではシトリー眷属が優位に進めていたが、結果としては地力の差によってグレモリー眷属が勝ったようだ。もっとも、爺さんは言うには結果はともかくとして、ゲームの内容はシトリー眷属の方が洗練されていたということで勝ったグレモリー眷属側よりも負けたシトリー眷属側の方が評価を上げたようだが・・・・・その辺りは戦闘の素人である俺にはよくわからなかった。

 

レーティング・ゲームの観戦も終わり、冥界での用もあらかた終えたということもあり、俺達は人間界へと帰ってきた。もっとも、まだ用事があるという爺さんとグレモリー眷属である白音はまだ向こうに残っているため戻ってきたのは俺とオーフィス、黒歌の3人なのだが。

 

人間界に戻ってきたのは8月の最後の週。夏休みもあと数日で終わりを迎える。夏休みが終われば、またオーフィスと一緒に居られる時間が減ってしまうのはなんとも残念だ。なので俺は残り少ない夏休みをきっちりオーフィスと満喫しようと思い・・・・・・今日は駒王町で行われる祭りにやってきた。

 

「ん~・・・・冥界のパーティで出た豪華な料理もいいけど、こういうお祭りの屋台の料理も美味しいにゃ」

 

「我もそう思う。咲良の料理には及ばないけど美味しい」

 

黒歌はたこ焼きを食べながら、オーフィスは焼きそばを食べながら言う。確かにこういう祭りの屋台の料理は何故か美味しく感じる。祭りの雰囲気もあるんだろうけど・・・・現に今俺が食べてるお好み焼きも普通の店で食べるよりも美味しく感じる。

 

「これであとお酒でもあれば文句なしなんだけど・・・・」

 

「甘酒なら向こうに売ってたぞ?」

 

「いや、さすがに甘酒は・・・・今は強めの日本酒の気分にゃ」

 

「さすがに日本酒は売ってないだろうなぁ・・・・・ラムネで我慢しておけ。ほら、オーフィスも」

 

俺は近くで買っておいてラムネを黒歌とオーフィスに渡す。

 

「零さないように注意しろよ?爺さんが珍しく裏のない善意でいい浴衣用意してくれたんだから」

 

「わかってるにゃ」

 

「この浴衣いい。伊槻に感謝」

 

そう、二人共現在爺さんが用意した浴衣を着用しているのだ。二人共黒を基調とした浴衣で非常によく似合っている。髪型もいつもと違い纏めていて新鮮だ。

 

「咲良、この浴衣似合ってる?」

 

「ああ、似合ってるよ。この世にこれ以上浴衣姿が似合う奴は居ないと断言できるほどに似合ってる。超絶可愛いぞ」

 

「うん。なら良かった」

 

「相変わらずオーフィスには過剰な賛美を送るわね咲良・・・・」

 

「過剰って・・・・・本当にそう思ったから言っただけだが?」

 

「でしょうね・・・・・わかってるにゃ」

 

黒歌は呆れ顔でラムネを飲む。黒歌がこういう呆れ顔をするのは最近多いが・・・・やはり俺のせいなのだろうか?

 

「でもこの浴衣、スースーする」

 

「ん?まあ、浴衣って普通の服より隙間とかあるし風が入りやすいからそう感じるかもな」

 

「それもある。けどやっぱりパンツはいてないのが・・・・」

 

「・・・・は?」

 

一瞬、オーフィスの言っていることの意味が分からずに俺は呆けた声を出してしまった。

 

「ちょ、ちょっと待てオーフィス。お前今下着はいてないのか?」

 

「うん。伊槻が浴衣の時はパンツはかないのがマナーだって言ってた」

 

「爺さんぶっ殺す」

 

「落ち着いて咲良。気持ちはわかるけどいつもよりも暴言がストレートすぎるにゃ」

 

黒歌はそう言うが、今回ばかりはあの爺さんに結構真面目に殺意が湧いた。次会った時がこれまでなあなあになっていた説教を炸裂させる時になりそうだ。

 

「黒歌、今度爺さんに説教してやるからその時はお前も手伝ってくれよ?」

 

「了解にゃ」

 

これは逆らえないといった様子で了承した黒歌。とりあえず協力は取り付けた・・・・・マジ覚悟しろよ爺さん。

 

「とりあえずオーフィス、何が何でも浴衣がはだけないように気をつけてくれ」

 

「わかった。それじゃあこうしてればいい?」

 

そう言いながら、俺の腕にしがみついてきた。密着していれば見られにくいと思ったのだろうか?ただ、これだと擦れる面が多くて余計にはだけやすいような気が・・・・・・けどまあ、さすがに引き剥がすのはアレだし、このままでいいか。

 

「オーフィス、離すなよ?」

 

「わかってる」

 

「結局こうなるのかにゃ・・・・」

 

またしても呆れ顔となる黒歌。仕方がないだろう・・・・オーフィスがあまりにも愛らしいんだから。

 

「さて、それじゃあ次は何を買おうか・・・・」

 

「咲良?」

 

「ん?」

 

次に買うものの目星をつけようと周囲を見わたす俺の耳に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。振り返るとそこには桐生がいた。

 

「なんだ桐生か。お前も来てたんだな」

 

「う、うん。まあそうなんだけど・・・・・」

 

どうにも歯切れの悪い桐生。どうしたんだ?

 

「ね、ねえ咲良。あんた・・・・・二股してるの?」

 

「・・・・は?」

 

急におかしなことを言い出した桐生。どうしたのだろうかと思っていたが・・・・・桐生の視線が黒歌の方に向けられていることに気がついた。

 

「もしかして黒歌のこと言ってるか?こいつはうちの居候でそういう関係じゃないぞ?」

 

「そうね。まあ、一緒に寝たことはあるけどにゃ♪」

 

黒歌、こいつ余計なことを・・・・

 

「・・・・・咲良、あんたを見る目がまた変わりそうだわ」

 

桐生の俺を見る目が、かなり冷たいものになっていた。

 

「ちょっと待て桐生、誤解だ。一緒に寝たといってもやましいことは全くない。本当に一緒に寝ただけだ」

 

「咲良の言うとおり。その時は我も一緒に寝たから保証する」

 

ちょっと待てくださいオーフィスさん。この場においてそれはフォローにならない可能性が・・・・

 

「同じ布団の中で男一人に女二人・・・・・これで咲良、やましいことがないって言われても説得力ないわよ?」

 

「ですよねー・・・・・」

 

案の定、桐生からの疑いは晴れなかった。仕方がない。だって俺が聞く側だったとしても疑わしく思えるし・・・・マジでどうやって誤解を解こうか。このままだと桐生から女たらしクソ野郎だと思われてしまいかねない。

 

「と、まあ冗談はここまでにしておきましょう。ね、黒歌さん?」

 

「そうするにゃ」

 

「・・・・え?」

 

どうやって誤解を解こうかと頭を悩ませている俺の目に、悪戯な笑みを浮かべる桐生と黒歌の姿が映った。これはまさか・・・・

 

「お前たち・・・・・元々知り合いだったな?」

 

「ええ、そうよ。前に休みの時に知り合って色々と話をしたの。黒歌さんが小猫ちゃんのお姉さんだってことも知ってるわ」

 

「じゃあ今こうしてここに桐生がいるのは示し合わせていたからか・・・・?」

 

「そうにゃ。家を出る前に私が連絡してちょっと揶揄おうと思って来てもらったにゃ」

 

この駄猫が・・・・随分と手の込んだ悪戯を・・・・!

 

「黒歌、次の晩飯さんまの骨でいいか?」

 

「それは勘弁してください」

 

黒歌は即刻俺に頭を下げて謝罪してきた。まったく、謝るぐらいならはじめからするなよ・・・・

 

「まあまあ、そんなに怒らないでよ咲良。黒歌さんから聞いたけど、普段この子とイチャイチャしまくって黒歌さんを疲れさせてるんでしょ?だったらこれぐらいの仕返し可愛いものじゃない」

 

「うっ・・・・」

 

それを言われるとなぁ・・・・確かに普段からオーフィスとのやり取りで結構疲れさせちゃってるのは事実だし。

 

「・・・・わかった。今回はお咎めなしだな。というか黒歌、本当にごめん」

 

「我も、反省する」

 

「別にいいにゃ。今の悪戯で結構すっきりしたし・・・・それに、どうせこれからも人目をはばからずイチャイチャするんでしょ?」

 

「うん、それは否定できない」

 

「我、もっと咲良とイチャイチャしたい」

 

「わかってたけど・・・・・少しぐらい否定して欲しかったにゃ」

 

「えっと・・・・ドンマイ黒歌さん」

 

俺とオーフィスの返答を聞き、遠い目をする黒歌と、そんな黒歌を不憫そうな目で見る桐生。

 

多少悪いなとは思いつつも、俺は今現在もしがみついてくるオーフィスを引き剥がすことなく、むしろ抱き寄せるのであった。




不憫な黒歌さん、ようやく一矢報いる・・・・・それでも到底相殺されませんが

それとノーパン浴衣のオーフィスちゃんを想像した方々・・・・・おじさん怒らないから正直に名乗り出なさい(嘘です)

それでは位階もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

共に居たい・・・・・・ずっと一緒に

今回もお祭りの話ですが・・・・後半ちょっとシリアスになります

それでは本編どうぞ


桐生も巻き込んだ黒歌のちょっとした仕返しを受けたあと、桐生を交えて俺達は四人で祭りをまわることにした。

 

「あ、射的あるじゃん。やってみようよ」

 

桐生が射的の屋台を見つけて俺たちに促してくる。景品は菓子類オンリーだったが、それでも普段スーパーやコンビニでもお目にかからない高級菓子も混ざっている。

 

「そうだな。せっかく祭りに来たんだしやってみるか。すみません、四人分お願いします」

 

「はいよ」

 

屋台のおじさんに四人分の料金を払い、射的用の銃と、コルクの弾を受け取った。

 

「あれ?私の分も出してくれるの?」

 

「ああ。まあこれぐらいはな」

 

「ありがと。それじゃあ・・・・」

 

俺に礼を言った後、桐生は銃を構えて狙い撃つ。弾は合計四発。桐生は比較的重量の軽いものに狙いを付け、四発中二発を当ててみせた。

 

「うん、まあこんなもんでしょ」

 

景品の菓子を受け取る桐生。高価なものはなかったが、それでも射的一回分以上の値段はしそうな菓子を取れたようで満足気だ。

 

「なら次は私がやるにゃ」

 

桐生に続いて次は黒歌がやった。黒歌は迷うことなくそこそこ重量のありそうな高級菓子に狙いをつけて撃つ。弾は全て当たるが、当たり所が悪かったのか、倒れることはなく残弾が尽きてしまった。

 

「・・・・・この銃、威力低すぎない?」

 

「いや、さすがにあれはそう簡単に落とせないだろ・・・・」

 

不満げにぼやく黒歌と交代する俺。俺は黒歌のような失態を侵すつもりはない。確実に落とせそうなのを選んで・・・・・

 

「・・・・あ、あれ?」

 

確実に落とせそうなのを選んだ・・・・・はずなのだが、俺の撃った弾はものの見事に空を切ってしまった。

 

「・・・・・咲良、正直かっこ悪すぎるわよ?」

 

「私よりもひどいにゃ」

 

「・・・・・返す言葉もございません」

 

女子二人からの冷たい視線に、恥ずかしくなってしまう。確かにこれはダサすぎる・・・・・

 

「・・・・咲良、任せて」

 

「オーフィス?」

 

「咲良の仇は私が取る。あとついでに黒歌の仇も」

 

「オーフィス・・・・・」

 

「私はついでなのかにゃ・・・・」

 

オーフィスの言葉に、胸がジーンと熱くなるのを感じた。ついで扱いで苦笑いを浮かべる黒歌のことはとりあえず気にしないことにする。

 

「大丈夫かいお嬢ちゃん?撃ち方わかる?」

 

屋台のおじさんがオーフィスに尋ねる。見た目が幼女なので気を遣っているのだろう。だが・・・・

 

「・・・・心配無用。この程度余裕」

 

自身満々な表情(パッと見は無表情)で銃を構え、撃つオーフィス。弾は黒歌が狙っていた高級菓子に向かって放たれる。一発目では倒れなかったが、それでおおよその狙いどころにあたりをつけたようで、二発目、三発目でバランスを崩す。そして四発目で見事に景品を落としてみせた。

 

「お、おお・・・・・・まさかこいつが落とされるとはなぁ」

 

「これが我の実力」

 

まさか落とされるとは思ってなかったおじさんは表情を驚愕に染め、対するオーフィスは見事なドヤ顔(やはりパッと見は無表情)を披露する。

 

「お嬢ちゃんすごいねぇ・・・・ほら、もってけ」

 

「ありがとう」

 

悔しそうにしながらも、おじさんはオーフィスを賞賛しながら景品の高級菓子を手渡した。

 

「咲良、我やった」

 

「ああ。すごいなオーフィスは」

 

オーフィスの頭を撫でると、俺の方に体を擦り寄らせてくるオーフィス。少々周囲からの視線が気になるが、まあオーフィスが可愛いから良しとするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、もうすぐ花火の時間だな」

 

時計に目をやると、花火の時間が迫っていることに気がつく。この祭りの花火は結構力を入れている。なので毎年、人が少なくてなおかつ花火が綺麗に見える穴場で見ていたので、今年もそこに行こうとしたら・・・・

 

「あ、私は桐生と二人で見てくるから。咲良はオーフィスと二人で見てくるといいにゃ」

 

「え?」

 

「それじゃあ咲良、また学校でね」

 

「ちょ、二人共・・・・」

 

急なことで黒歌と桐生を止めようとする俺だったが、二人共そそくさと俺とオーフィスの前から去ってしまった。どうやら気を遣わせてしまったらしい。

 

「全くあの二人は・・・・」

 

「けど我、咲良と二人きりで嬉しい」

 

ギュッと俺の手を握り、上目遣い気味で言ってくるオーフィス。本当にもう・・・・俺をときめかせる天才だなオーフィスは。

 

「んじゃ・・・・行くか」

 

「うん」

 

俺はオーフィスを伴って、穴場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?誰もいないな」

 

穴場となる場所を訪れてみると、そこには俺たち以外誰もいなかった。これは人目を気にせず花火を堪能できそうだ。

 

「・・・・・咲良」

 

誰も居ないとわかった瞬間、オーフィスは俺にギュッと抱きついて来て、顔をすり寄せてきた。

 

「どうしたオーフィス?」

 

「ここなら人目がない。だから存分に咲良とイチャつける」

 

これまでも十分人目がある中でイチャついてたと思うのだが・・・・・まあ、あまり深くは突っ込まないでおこう。今はオーフィスを堪能するのが最重要事項だ。

 

ただ・・・・正直今はあまり密着されても困ることもある。なにせオーフィスが下着を着けていないことを知っているからな・・・・・理性を押さえつけるのが大変だ。本当にあのクソジジイは余計なことしてくれやがって。

 

「咲良・・・・・お祭り楽しかった?」

 

「ん?そりゃまあ楽しかったよ。黒歌がいて、桐生がいて、何よりオーフィスが居たしな」

 

「我も。咲良が居て楽しかった。お祭りだけじゃない。咲良と行った遊園地も楽しかったし、冥界に行った時も楽しかった。やっぱり咲良のいる世界は楽しい」

 

「・・・・急にどうした?」

 

楽しんでくれたことはなによりだが、少々様子がおかしいような気がした俺はオーフィスに尋ねてみた。

 

「もうすぐ咲良の夏休みが終わっちゃうから・・・・また咲良と一緒に居られる時間が減る」

 

あ~・・・・なるほど。確かに夏休みも残りわずかだ。夏休みが終わればオーフィスといられる時間は激減する。それは俺にとっても・・・・・寂しく、残念なことだった。

 

「咲良・・・・どうしても学校行かなきゃダメ?学校なんて行かないで我と一緒に居て欲しい。ずっとずっと一緒にいたい」

 

オーフィスの言っていることは理解できる。俺だって学校に行くよりもオーフィスといる方が楽しく、幸せだ。

 

だけど・・・・・

 

「オーフィス・・・・・学校はやっぱり行かなきゃならないって思うよ」

 

「どうして?」

 

「オーフィスと一緒にいる時間は俺にとっては何よりも大切な時間だ。それは間違いない。だけど、学校で学んで、友達と過ごす時間があってこそ、オーフィスと一緒にいられる時間の幸せをより実感できている・・・・俺はそう思うんだ」

 

「・・・・我、よくわからない」

 

俺の言っていることがあまり理解できていないようで、オーフィスは首をかしげる。それだけオーフィスにとって俺の存在は大きくなっているということなのだろう。

 

「ごめんなオーフィス。これはきっと俺の我侭だ。だけど・・・・それではオーフィスには俺の我が儘を聞いて欲しい。学校を卒業して、大人になって結婚するまで待っていて欲しい。お願いだ」

 

「咲良・・・・・」

 

オーフィスは少し考える素振りを見せ・・・・・そして返事を返してくる。

 

「・・・・わかった。我は良妻を目指してる。夫になる咲良の本気の願いを聞き入れるのも良妻の勤めって本に書いてあった。だから・・・・もう少しだけ我慢する」

 

「ありがとうオーフィス」

 

「その変わり・・・・咲良が学校を卒業したらもう我慢しない。そこから先はずっと一緒。何があっても・・・・我と咲良は一緒」

 

「・・・・・ああ。一緒にいよう。何があってもずっと」

 

「うん。約束」

 

ひとまず納得し、そして変わりの条件を提示するオーフィス。俺はその条件を聞き入れるが・・・・それでもひとつだけ守れそうにないことがあった。

 

何があっても一緒にいる。俺としてもそれは望むべきことだ。けれど・・・・それでも俺はオーフィスとちがってただの人間だ。人間である以上、いつかは必ず死ぬ。そうなれば・・・・オーフィスと一緒にいることはできなくなる。

 

そうなったらオーフィスは・・・・・

 

(・・・・今はまだ、それをオーフィスに告げることはできないな)

 

今ここでそれを告げてしまえばオーフィスがどうなってしまうかわからない。だから・・・・今は告げることができない。

 

「咲良、花火上がった・・・・綺麗」

 

気がつけば、花火が打ち上がる時間になっていたようで、夜空に綺麗な花が咲き誇る。

 

「ああ・・・・・綺麗だ」

 

俺は心に複雑な思いを抱えながら、オーフィスと一緒に花火を眺めていた。




人間である以上はどうしてもね・・・・・・後でこれが原因で大きな事態が?

それにしてもどんどん咲良さんに依存していくオーフィスちゃんマジで健気で可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

同居人が増えるそうです

また同居人が増えますが、今回はまだ登場はしません

とりあえず本編のほうをどうぞ


 

夏休みもあと二日。この日、俺は帰ってきた爺さんを居間で正座させていた。

 

「あ~・・・・・咲良?なんで俺は正座させられてるんだ?」

 

「なんでだと?オーフィスにいらんことを吹き込んでくれたりと最近結構やんちゃしてくれたから、なあなあになってたの含めて溜まりに溜まった分一気に精算するために説教しようと思ってな」

 

「・・・・マジかー」

 

「それ俺の口癖だぞ」

 

いや、口癖っていうほど言ってない気もするが・・・・・それはあまり気にしないでおこう。

 

「さて、覚悟はできたか爺さん?」

 

「や、やだなー咲良さん。あっしは決して悪気があってやってたのではございませんよ?あっしは咲良さんのためにと思ってオーフィスに色々と教えてたわけでして・・・・・」

 

俺に媚を売るよな口調で許しを請おうとしてくる爺さん。だが、そんな爺さんの態度は余計に俺をイラつかせるだけであった。

 

「爺さん・・・・・そろそろ始めようか?」

 

「・・・・・・はい」

 

観念したようにガックシと頭を下げる爺さん。さぁて・・・・・・・それじゃあこれまでの分、一気に説教させてもらいますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじいさ~ん、生きてるにゃ?」

 

「・・・・・・・」

 

「返事がない。ただの屍のようだ」

 

「・・・・・・・哀れすぎです」

 

一時間ほどして説教を終え、まるで死んだかのように倒れ伏す爺さんを指でつつくオーフィスと黒歌、そして白音。しかし、どうやら説教で精魂ともに尽き果てたようで爺さんからの反応はなかった。

 

「私も咲良の説教を受けたことはあるけど・・・・・・今回はあの時の比じゃないわね。本当に恐ろしかったにゃ」

 

「咲良先輩の説教・・・・・・恐ろしすぎます」

 

「我でもあれを受けたら伊槻と同じようになってたと思う」

 

俺の説教の恐ろしさに戦慄している3人。それだけ恐ろしいのなら効果はあるのだろうけども、3人にそういわれると何とも複雑な気分である。

 

「安心しろオーフィス。あのレベルの説教をするのは爺さんに対してだけだ。そもそも、俺はオーフィスには説教するつもり一切ないし」

 

「贔屓にゃ」

 

「贔屓ですね」

 

贔屓結構。オーフィスは俺にとって特別なんだからな。

 

「本当に?本当に我にはしない?」

 

「ああ。本当だとも」

 

「それならよかった」

 

安心したようで、俺にすり寄ってくるオーフィス。今日も俺の恋人は可愛いなぁ。

 

「咲良、ちなみに私には・・・・・・・」

 

「(時と場合によるけど基本的には)しないよ」

 

「何か今見逃しきれない前置きがあったような気がするにゃ」

 

おっと、鋭いな黒歌。

 

「普段の行いの差です姉さま」

 

「否定しきれないのが辛い・・・・・・・」

 

白音に突っ込まれ、肩を落とす黒歌。だがまあ、安心しろ。よほどのことをしでかさない限りはあんな説教はしない。あれ俺も結構疲れるし。

 

「・・・・・・あの、咲良さん」

 

あ、爺さん復活した。思ったよりも早かったな。

 

「なんだ爺さん?」

 

「いえ、咲良さんのお耳に入れなければならないお話があるのですが・・・・・」

 

爺さんがやけにへりくだった態度で俺に声をかけてきた。

 

「話?なんだ?」

 

「いえ、その・・・・・話す前に一つお願いがありまして。どうか何を聞いても説教しないと約束していただけないでしょうか?」

 

念を押すほどに説教が嫌なのは当然なのだろうからまあ置いておくとして、わざわざ先に言っておくということは・・・・・・

 

「それは俺に説教される可能性があることを話そうとしてるってことでいいか?」

 

「いや、あの・・・・・・場合によっては?」

 

「爺さん、あんたな・・・・・・」

 

もうここまでくると呆れや怒りを通り越して感心するレベルだ。

 

「とりあえず言ってみてくれ。説教するかどうかはその時考える。あと違和感凄いいから口調戻してくれ」

 

俺としても別に説教したいとは思わないが・・・・・・・やはりそこは内容次第だからな。

 

「いや、まあそのなんだ・・・・・・・この家に同居人が数人増えることになってな」

 

同居人?

 

「それって白音みたいな咲良の護衛ってことかにゃ?」

 

「まあそういうことになる」

 

俺の護衛ねぇ・・・・・・・また随分と急な話だ。説教されるかもしれないと思ったのは、それが俺が知らない間に決まったことだからだろう。ただまあ、そのこと自体で説教することはさすがにしないけども。

 

ただ・・・・・今だって俺の傍にはオーフィスに黒歌、白音が居るっていうのにどうしてさらに増やすことになったんだ?

 

「爺さん、護衛自体はまだいいとして、俺の傍にはこの3人がいるんだぞ?どうしてそこからまたさらに増えるって話になってるんだ?」

 

「・・・・・・北欧の神話群との和平会談が近いうちに行われることになった」

 

「北欧?それってオーディンさんの・・・・・・」

 

「そうだ。その会談で咲良には一仕事してもらうんだが、向こうにはどうも和平に反対な奴が少なからずいるようでな」

 

「そいつらが咲良先輩の命を狙う可能性がある・・・・・・・ということですか?」

 

「ああ。だから念のため護衛を増やすってことになった。北欧の神の中には厄介なのもいるからな。護衛は多いに超したことはないってことだ」

 

なるほど、それで護衛が増えるってことか・・・・・・・急なことだが事情が事情だし仕方がないのだろう。むしろ俺なんかのために人手を割かせてしまって申し訳なく思ってしまう。

 

「それでその・・・・・咲良、説教の方は・・・・・・・」

 

「いや、さすがにそれを聞いて説教しようとするほど俺も鬼じゃないから。むしろ感謝しかないよ。護衛の話、爺さんが俺のために取り付けてくれたんだろ?ありがとうな」

 

「・・・・・・ああ。まあ、お前は俺にとって唯一の肉親だからな。それぐらい当然だ」

 

どこか照れくさそうに頬を掻きながら言う爺さん。普段なら年甲斐もなくとか言ってるところだが・・・・・・・・まあ今はやめておくか。

 

「ところでお爺さん、護衛って誰が来るにゃ?」

 

「ああ、護衛は悪魔、天使、堕天使が一人づつ来ることになってる」

 

「3種族からそれぞれって・・・・・・随分とまた変わった共同生活になりそうだ」

 

「咲良先輩、それについてはオーフィスとずっと以前から一緒に住んでたことを考えると今更です」

 

「確かにそうにゃ」

 

「我、一番咲良との付き合い長い」

 

一番付き合いが長いことを誇らしげに言うオーフィス。確かに、しょっちゅう爺さんが家を空けることがあったから、実質一番付き合いが長いのはオーフィスかもしれないな。

 

「ともかく、三種族からそれぞれ一人づつうちに来るってことだな。爺さん、それっていつからだ?」

 

「明日からだ。学校に始まる前に荷ほどきしたいそうだからな」

 

ん?学校?

 

「もしかして、その3人って駒王学園に通うのか?」

 

「そりゃまあ、お前の護衛なんだから、学校でも一緒にいれた方がいいだろ」

 

「確かにそうだけど・・・・・・となると色々と準備しておかないとな。俺ちょっと買い物行ってくる」

 

「これは明日はご馳走を期待できそうね♪」

 

「楽しみです」

 

準備と聞いて、歓迎のための料理を思い浮かべたであろう黒歌と白音はあからさまに嬉しそうにしている。こういうところは姉妹らしいんだよなこの2人は。

 

「買い物行くのは構わんが、行くならちゃんと3人も連れて行けよ?さっきも言った通り北欧の連中がお前を狙ってるかもしれないんだからな」

 

「そりゃ当然私たちもついていくけど、そういうお爺さんはどうするにゃ?」

 

「俺はやることがあるから一緒には行けん。北欧との会談が始まるまではまた留守にするしな」

 

「随分と爺さんもあわただしいな」

 

「これでも会談では咲良と同じぐらい重要なポジションについてるんでな」

 

まあ、爺さんはいろんな方面に顔が利くから和平となると忙しいのも当然か。

 

「結界があるからあまり意味はないが、一応の戸締りとかはやっておくからお前たちは買い物に行ってくるといい」

 

「わかった。それじゃあ行こうか」

 

戸締りを爺さんに任せて、俺はオーフィスと黒歌、白音を連れて買い物に向かった。

 

 

 




咲良さんの説教はこの世界で最強である伊槻お爺さんをも屈服させます。マジで恐ろしい・・・・・・・

そして増える同居人に関しては・・・・・まあ、そこまで難しい人選ではないので予想してみてください

そしてオーフィスちゃん・・・・・・・・マジサイコーに可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別編 甘くてとろけるチョコレート

お待たせして大変申し訳ありませんでした

今回はもうすぐ2月14日と言うことでバレンタインのお話です

激甘警報を発令しておきますので読む際は御覚悟を

それでは本編どうぞ


バレンタイン。それは年に一度、女性がチョコレートに想いを籠めて渡す特別な日

 

これは、そんな日のちょっとしたお話し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・・随分ともらったな」

 

机の上に積み重なるチョコの山を見ながらヴァーリが言う。このチョコは、今日学校で俺がもらったチョコだ。

 

「貰っておいてこういうのもなんだが、なんで俺なんかに渡すかね」

 

「それはまあ、前にも言ったけどあんたがお買い得物件だからでしょ。家事は万能で結構優しくて容姿そこそこ。婚約者が居るってのは結構知れ渡ってるけど、それでも諦めずにアプローチしようと思ってチョコを渡したんじゃない?」

 

桐生がこの大量のチョコの真意を説明してくれた。何というか、オーフィスっていう絶対の存在がいるとはいえ俺も男だからこういうアプローチは嬉しいと言えば嬉しいのだが、お買い得物件という一言で複雑な心境を抱いてしまう。

 

「あ、あとあんたからのお返しを期待してるって子もいるわね。確実にあげたものよりも美味しいものが返って来るでしょうから」

 

「それを聞いてさらに複雑・・・・・」

 

いや、まあ確かに貰ったからにはお返しはするけども。はじめからそれをあてにして送るっていうのは・・・・

 

「というわけではい。私からもあげるわ」

 

軽いノリでチョコの入った箱を俺の机の上に置く桐生。

 

「お前もお返し目当てか・・・・・」

 

「当然。美味しいの期待してるからね」

 

まったく、本当にげんきんな奴だなこいつは・・・・

 

「あれ?でも桐生さんお返し目当てという割には熱心にチョコを選んでいたような・・・・」

 

「ちょ、アーシア!?それは言っちゃダメでしょ!」

 

アーシアの一言で、異様に狼狽えてみせる桐生。これはもしや・・・・

 

「桐生、お前・・・・・」

 

「な、なによ?」

 

「俺からのお返しのグレードを上げるために良いチョコを選んだのか?」

 

「・・・・・うん。そんなところよ」

 

やはりそうだったか。桐生め、がめついな・・・・だが、そうなると俺もお返しのグレードを上げざるを得ない。桐生の策略にはまらざるをえなくなるな。

 

「えっと・・・・・なんていうか桐生さん、すみません」

 

「桐生、さすがにあれは同情する」

 

「・・・・・いいのよ。私だって別に期待してたわけじゃないし」

 

「お前らどうした?」

 

なぜかお通やみたいな雰囲気になっている桐生と、そんな桐生を慰めるアーシアとイッセー。本当にどうしたのだろうか?

 

「気にしなくてもいいわよ」

 

「そうか?ならいいが・・・・・・それよりもチョコのことなら俺よりもヴァーリの方がたくさんもらってるんじゃないか?イッセーと付き合っていると言っても結構な数のファンが居るんだから相当もらっているだろう?」

 

ヴァーリはこの学園において木場に並ぶほどに女子人気が高い。そんなヴァーリなら相当数貰っていると思うんだが・・・・

 

「確かに俺に渡そうとしてくる子はたくさんにいた。だが、俺は貰っていない。すべて断っている」

 

「え?断ったのか?」

 

「ああ。俺にはイッセーが居るからな。イッセー以外のからのチョコはいらないし貰っても嬉しくない。だから全て断っている」

 

「誠実なんだか残酷なんだか・・・・・」

 

いや、確かにイッセーを一途に想っているところは感心できる。だが、その挙句に多くの女性からの気持ちをすべて受け取り拒否というのは・・・・・・

 

しかし、オーフィスが居るにも関わらず全部受け取ってる俺も誠実とは言えんかもしれん。オーフィスから家を出る前にチョコ貰っても構わないとは言われていたけども。あの時のオーフィス、完全に俺が貰うことを前提にして言ってたなぁ・・・・・まあ実際貰ったけども。

 

「あ、ちなみに私からのチョコしか受け取らないってヴァーリを倣って私も今年はヴァーリにしかあげないって決めたよ。友チョコもないからアーシア達には申し訳ないけど・・・・・」

 

ああ、それでか・・・・なんか今日、やたらとアーシアがヴァーリのことを射殺すかのような目で睨んでいたのは。正直あの目は直接睨まれていない俺でさえ寒気を感じる。

 

「そういえば咲良、オーフィスからはもうチョコ貰ったの?」

 

ふと思い出したように桐生が尋ねてくる。

 

「いいや、まだだよ。俺が帰ったら渡すと言っていたな」

 

「ああ、それでか」

 

「それでって・・・・・何がだヴァーリ?」

 

「いや、今日の咲良はやたらとそわそわしていたからな。早く帰ってオーフィスからチョコを貰いたくてそうなっていたということか」

 

うわっ・・・・俺そわそわなんてしてたのか。確かにオーフィスからのチョコ楽しみだけどめっちゃ恥ずかしい。

 

「オーフィスからのチョコかぁ・・・・・オーフィスのことだからなんか凄いの用意してそう」

 

うん、まあイッセーの言うこともわかる。龍神からのチョコとかもう・・・・去年もバレンタインには貰ってたけど、今年は婚約者になって初のバレンタインチョコだから凄いのきそう。何がどう凄いのかは説明できんが。

 

でもまあ・・・・・それでもやっぱり・・・・

 

(オーフィスからのチョコ・・・・・楽しみだなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりにゃ咲良」

 

オーフィスからのチョコを楽しみに玄関の扉を開いた俺を出迎えたのは黒歌だった。

 

「咲良、今『なんだ黒歌か』って思ったにゃん?」

 

「まさかそんな」

 

実は少し思ったけどな。

 

「まあいいにゃ。それよりも随分と貰ってきたわね。貰えるだろうとは思ってたけど、さすがにこの量は予想外にゃ」

 

黒歌は俺が両手に持つ紙袋一杯に入っているチョコを見ながら言う。

 

「まあ貰えるのは嬉しいと言えば嬉しいのだが・・・・これほとんどすぐに食べられないからなぁ」

 

そう、貰ってはいいものの、このチョコを食べるのは結構先のことになる。アザゼルさんに万が一にもチョコに毒が仕込まれている可能性があるだそうだ。

 

そんな大げさな、とは思ったが。一応今の俺は世界的に重要な人物になってしまっている。殺したいと思っている奴も少なくないようで、そういう奴がうちの学校の女生徒を洗脳して毒入りチョコを渡している・・・・というとんでもないことも考慮しなければならないらしい。

 

よって、このチョコは爺さんによって毒の有無を確認してからでないと食べられないのだが・・・・・どうにもそれはそこそこ手間なようで、時間がかかるそうだ。爺さんでも手間が掛かることがあるなんてと驚いたが、人間である爺さんがそんなことできること自体が普通ではないと言うことに気付くのには時間がかかってしまった。

 

とまあ、こういう事情があって俺がすぐに食べられるチョコは本当に信頼できる相手からのもののみとなっているのだ。なんで一般人の俺がどこぞの芸能人みたいな警戒の仕方をせなならんのか・・・・・

 

「と、それより。咲良に話が二つあるにゃ」

 

「二つ?」

 

「そう。まずは・・・・・はいこれ。バレンタインのチョコ」

 

黒歌はラッピングされた箱を俺に渡してきた。

 

「私は咲良やオーフィスみたいに料理が上手じゃないから市販だけど、日頃の感謝の気持ちは込めたつもりにゃ」

 

「そっか。ありがとう黒歌」

 

「どういたしまして」

 

黒歌にしては珍しく、一切からかったりはしてこなかった。まあ、なにかされたら困るからいいんだけど・・・・・ちょっと物足りないと思ってしまうあたり俺もどうかしている。

 

「それで?二つ目の話って?」

 

「それは・・・・・咲良」

 

黒歌は突然俺の両肩をがしっと掴んできた。

 

「今日は夜ご飯は用意しなくていいにゃ。咲良が学校に行っている間にオーフィスがあらかた用意してくれたから」

 

「オーフィスが?それは珍しいな」

 

オーフィスは料理が得意だが、あまり自分から作ろうとしない。だからこうして自分から夕食の準備をするのは珍しいことなんだが・・・・・

 

「オーフィス・・・・・今部屋で咲良のことを待ってるから。そこでチョコを渡すって・・・・・うん、とにかく頑張って」

 

「なんだそのすっごい含みのある言い方は?」

 

頑張れってなにをだ?まさか夕食の準備をしてたのって、俺にチョコを渡すため?俺夕食の準備ができなくなるほど長い時間オーフィスに捕まるの?

 

「わかったら行きなさい咲良。とにかく頑張って」

 

二度目になる黒歌からの頑張ってを受け、俺はオーフィスの待つ部屋へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお・・・・・」

 

オーフィスの居る部屋の前に到着した俺。部屋の中からは異様なプレッシャーを感じる・・・・・ような気がする。

 

「・・・・・よし」

 

意を決して、部屋の襖を開く。

 

「おかえり咲良」

 

「ごふっ!?」

 

襖を開いた俺の目に映ったのは、白い肌に赤いリボンのみを身に纏ったオーフィスであった。あまりもの衝撃に吐血しそうになった。本当にありがとうございます。

 

「どうかした咲良?」

 

「いや、それはどちらかと言えば俺のセリフなんだが・・・・・その恰好は?」

 

「今日はバレンタイン。好きなひとにチョコを渡す日。だけど我はチョコだけじゃなくて我自身のことも咲良に食べてもらいたかったから・・・・・我をプレゼントするって意味でリボン巻いた」

 

「マジかー・・・・・」

 

オ、オーフィスを食べるだと?それってやっぱりその・・・・・男女の営み的な意味だよな?何という誘惑だ・・・・・俺の中で史上最高レベルの理性戦争が開戦してしまったぞ。

 

「また爺さんあたりになにか吹き込まれたのか?」

 

「違う。今回は我が一人で考えた」

 

「マジかー・・・・・」

 

どうやら今回のこの裸リボンには爺さんは関与していないらしい。オーフィスが俺のために考え、自らの体にリボンを巻いたようだ・・・・・・俺の婚約者が可愛すぎて辛いです(理性が)。

 

「というわけで咲良・・・・・・我を食べて?」

 

思わず『はい』と答えそうになってしまった俺は正常だろう。それほどまでの破壊力を今のオーフィスは秘めていた。正直今すぐにでも押し倒してオーフィスを堪能しつくしてしまいたい。

 

だが・・・・屈するわけにはいかない。ここで屈してしまったら色々と歯止めが利かなくなってしまう。確実に子供ができるほどにやってしまう。だがそれはせめて高校卒業するまでは耐えなければ・・・・・・耐えなければならないんだ!

 

「オーフィス・・・・気持ちは凄く、凄く凄く嬉しいけど・・・・それは高校を卒業するまで待ってくれないか?」

 

俺は本能に屈しそうになる理性を奮い立たせ、どうにかオーフィスに告げた。これほどまで強靭な理性を持った俺を誰か褒めてほしい。

 

「わかった、我慢する。けど・・・・・学校卒業したら、我のこと隅々まで食べつくしてね?」

 

「それはもうもちろんでございます」

 

その時のことを考えると、楽しみでしょうがない。変態だと罵られようが、一向に構わないと思えるほどにだ。

 

「それじゃあ今日は我を食べてもらうのは諦めるけど・・・・・こっちはちゃんと食べて」

 

そう言いながらオーフィスが取り出したのはチョコだった。とても甘くておいしそうな生チョコだ。

 

「もちろん。オーフィスからのチョコ、ありがたく頂くよ」

 

朝からずっと期待で胸を膨らませていたオーフィスからのチョコ。俺はそれを食べようと手を伸ばすが・・・・・その手をオーフィスに阻まれてしまった。

 

「違う。そうじゃない」

 

「え?」

 

「これにはちゃんとした食べ方がある」

 

オーフィスは生チョコを一つ摘み、その端を咥えた。

 

「ん」

 

どうやら食べさせるというのは口移しでということらしい。なんというか、今日のオーフィスは絶好調である。

 

まったく・・・・・俺の婚約者様は俺の理性を粉みじんに砕いてしまいたいのだろうか?だが、さっきあんなこといった手前理性を崩壊させるわけにはいかない。ここは・・・・・理性を保ったまま、オーフィスのチョコを堪能するしかあるまい。

 

「・・・・・いただきます」

 

俺はオーフィスに口づけしながらチョコを口に含む。それと同時に、口の中にオーフィスの舌も入ってきた。

 

チョコ特有のとろけるような甘さと、愛しい恋人の柔らかい舌が口内を巡る。気を抜くと理性さえも溶けてしまいそうだ。

 

とっても美味しい・・・・・・甘くてとろけるチョコレート

 

この味を、俺は一生忘れることはないだろう

 

「・・・・咲良、もっと。もっともっと、我のチョコ食べて?」

 

「もちろん。オーフィスのチョコ・・・・・もっと食べさせて?」

 

 

 




あまーい!!!!

書いてる作者が思わず砂糖を吐きそうになるほど甘々でした・・・・・咲良さんめ、羨ましい・・・・!

そして裸リボンのオーフィスちゃんを想像した方々・・・・・せいぜい興奮して鼻血を垂れ流すがいい!

それでは次回もまたお楽しみに!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別編 七夕に寄り添う人と龍神

久しぶりの投稿なうえにまたしても特別篇で申し訳ない・・・・・

今回は七夕のお話になります。七夕要素は薄いかもしれませんが・・・・・・

それでは本編どうぞ


「毎年ながら、何ともまあ立派な笹だ」

 

我が家の庭に生える、背の高い立派な笹を見ながら俺は思わず呟く。

 

今日は7月7日の七夕。我が家では定番の爺さんのなんかよくわけのわからない力で毎年この日にだけ庭に笹が出現する。どういう原理で笹が出ているのかはわからないが、そこは爺さんだからと納得せざるを得ない。

 

ただ、強いて問題を上げるとするならば、これだけ立派だともはや竹なのでは?と思うことだろう。大雑把な区分になるが、笹と竹の違いは大きさであるらしく、その理論でいけば俺の眼には庭にあるのは竹ということになるのだが、爺さんは茎やら枝やら葉っぱなどからこれは笹だと主張している。色々と細かい区分があるらしいが、正直そこまで興味はないのであまり気にしないでおこう。

 

「確かに庭の笹も気になるけど、私としてはそっちの方が気になるにゃ」

 

「同感です姉さま」

 

俺の作った七夕では定番とされるお菓子、索餅を食べ、俺の方に視線を向けながら言う黒歌と白音。いや、正確には視線を向けられているのは俺だけではない。俺と、俺にべったりとひっついているオーフィスに視線は向けられている。

 

「オーフィスが俺にべったりなのはいつものことだと思うが?」

 

「その発言に想うところはあるけど、今は突っ込まないにゃ。それよりも・・・・・」

 

「私達の眼には、いつも以上にスキンシップが密接なような気がします」

 

どうやら黒歌と白音の眼にはいつも以上にひっついているように見えるらしい。だが、言われてみれば確かにいつもよりも密着具合がいくらか増しているようにも感じられる。しかも、いつなら索餅をたくさん頬張っていてもおかしくないところなのに、それさえせずに俺の傍にいることに夢中といった感じだ。

 

「オーフィス、どうかしたのか?」

 

「・・・・・我、織姫と彦星のようにはなりたくない」

 

「え?」

 

「織姫と彦星は一年に一度しか会えない。我は、咲良とそんなふうになるのは絶対に嫌。だから我、咲良にひっついてる」

 

ああ、なるほど。おおよそ合点がいったぞ。

 

七夕というのは様々な事情により離れ離れになった織姫と彦星が一年に一度会える日でもある。その事情に関しては思うところはあれ、世間的にはロマンチックだと思う者もいるかもしれないが、オーフィスはそんな風には捉えていないのだろう。

 

一年一度会えても、残り364日も会えないというのはオーフィスには耐えられないことなのだろう。故に、離れたくないという気持ちが強くなってこうして俺にひっついているといったところかな。

 

「咲良、暖かい。近くにいると安心する。離したくない。今日一日はずっとひっついてる」

 

「わかった。それじゃあ今日はずっとこうしてるか」

 

「「私達の意見は聞いてさえもらえないんですかそうですか」」

 

ひしっと抱き着いてくるオーフィスを抱き返す俺。そんな俺達を、達観とした死んだ目で見てくる黒歌と白音。うん、何というかごめん。

 

「まあ、二人の過剰なイチャつきは今に始まったことじゃないからいいにゃ。それよりも短冊と飾りって用意してあったでしょ?飾って来るわ」

 

「お?やってくれるのか?」

 

「そんなにべったりじゃ動きにくいでしょ?それぐらいやってあげるわ」

 

「姉さま、私も手伝います」

 

「ありがとう白音。それで、短冊は?」

 

「それならそっちの部屋にあるよ」

 

俺は短冊と飾りの置いてある部屋を指さした。

 

「コネ部屋ね。まあ、せっかくだし二人の願いごとをこっそりじゃなくて穴が開くほどじっくりと見せて・・・・・」

 

「お姉さま?どうし・・・・ました?」

 

なぜか部屋にある短冊を目にしたとたん硬直しだす黒歌と白音。どうしたというのだろう?

 

「ねえ咲良」

 

「なんだ?」

 

「なんか『オーフィスと末永く一緒に居られますように』って短冊と『咲良とずっと一緒に居られますように』って書かれた短冊が思わずドン引きしそうなほどの数あるんだけど・・・・・」

 

「ああ、それな。たくさん用意すればご利益も増すかなって」

 

「それにしたって数が尋常じゃないのですが・・・・・」

 

「我、頑張った」

 

どこか誇らしげに言うオーフィス。まあ、俺もあれだけの数を書くのは結構骨は折れたな。数に関しては100を超えたあたりから数えていないけど。

 

「これ、吊るす場所足りてますか?」

 

「あ、そこは大丈夫。オーフィスとギリギリ吊るせるように調整したから。もちろん二人が吊るすスペースも確保してある」

 

本当にギリギリだから笹がほぼ短冊に埋め尽くされてしまうだろうが、まあ見かけが華やかになるからいいだろう。

 

「・・・・白音、やるわよ」

 

「・・・・了解です姉さま」

 

なぜか据わった目をした黒歌と白音が、短冊と飾りを持って笹へと突貫していった。なぜだか敬礼したい気持ちになったが、オーフィスを抱きしめるのに手がふさがっているので無理だった。

 

「頑張るなぁあの二人」

 

「黒歌も白音も働き者」

 

「そうだな。ほら、索餅食べな。あーん」

 

「あーん」

 

「「ひとが頑張ってる最中にイチャつくのやめて!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れたにゃ・・・・・」

 

「悪魔の仕事よりもしんどかったです・・・・」

 

夕食であるちらしそうめんをぐったりとした様子で食べながら黒歌と白音が言う。

 

「本当にお疲れ様。たくさん作ったから存分に食べな。オーフィスもほら、あーん」

 

「あーん」

 

「「だからやめてって!!」」

 

憑かれてはいるようだが、それでも突っ込む気力はまだまだ残っているようだ。まあ、突っ込ませている俺が言うことでもないのだが。

 

「ところで咲良、美味しいからいいんだけど今日はどうしてちらしそうめんなのかしら?」

 

「ああ、なんでもそうめんは七夕に食べられる風習のものらしい。それで今回作ってみたんだよ。ちなみにおやつに出してた索餅も七夕由来のものらしい」

 

「なるほど、咲良先輩、食べ物のことは色々と詳しいですね」

 

「まあ料理は俺の数少ない得意分野だからそれぐらいはな」

 

俺から料理をとったらそれこそ凡人の中の凡人になり下がるだろうし。こればっかりはそれなりに極めたい。

 

「でも今日ってずっとオーフィスとひっついてるのよね?今だって当然のように咲良の膝の上にいるし」

 

いつもは食事の時は行儀が悪いからと膝には座っていないオーフィスだが、今日は特別に俺の膝の上に座りそうめんを食べている。まあ、たまに食べ差し合いっこしたりもしているが。

 

「料理は今日はオーフィスと二人で作ったよ。ひっつきながらだから大変かなと思ったけど、むしろいつもより捗ったぐらいだ」

 

「当然。我と咲良の愛の力が為せる技」

 

「「はいはい、ごちそうさまです」」

 

「え?二人共もうごちそうさまか?働いた後なのにいつもより小食だな」

 

「そういう意味じゃないにゃ・・・・・」

 

「咲良先輩はやっぱりどこか抜けています・・・・・・」

 

なぜか二人に飽きられてしまった。なにか俺はおかしなことを言ったのだろうか?

 

「抜けてる咲良も我好き」

 

よくはわからんがオーフィスは好きと言ってくれているし、まあいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ七夕も終わるな」

 

もうまもなく時計の針が二つとも真上を向くかという時間。布団の中でオーフィスを抱きしめながら俺は言う。

 

「今日一日ずっとこうしてたわけだけどどうだった?」

 

「すごくよかった。やっぱり咲良の傍は心地いい」

 

「それは何よりだ・・・・・明日からも今日みたいにずっとひっついてるか?」

 

「ううん。そうしたら咲良に迷惑がかかるって我でもわかる。だから、ずっとひっついてるのは今日だけ」

 

どうやらオーフィスは俺の迷惑を考えてくれているらしい。まあ確かに、今日は特に問題なかったが、学校もあるしずっとっていうのは難しいし過剰になると日常生活に影響が出る。だからオーフィスが退いてくれたのはいいのだが・・・・・うん、やっぱりどこか少し寂しいものがある。

 

「だけど・・・・・来年の今日、七夕の日は咲良とひっついてる。再来年もその次も・・・・・何年先の七夕も、ずっとずっと」

 

「・・・・そうか」

 

「咲良も、七夕の日はずっと我とひっついててくれる?ずっと我の傍にいてくれる?」

 

「そうだな。七夕の日は・・・・・ずっと傍にいるよ。何年先の七夕の日もずっと」

 

俺が生き続ける限り・・・・・その言葉が口から出かけたが、すんでのところで飲み込んだ。

 

きっとその言葉を口にしてしまえば・・・・・オーフィスは悲しんでしまうだろうから。

 

「一緒。何年先も、何十年先も、何百年先も、我と咲良はずっと一緒」

 

「オーフィス・・・・・・」

 

「咲良・・・・・おやすみ」

 

俺を抱きしめたまま、オーフィスは目を瞑り眠り始めた。

 

ずっと一緒か・・・・・俺は一体、いつまでオーフィスと一緒に居られるんだろうか。

 

どうか『末永く』が、可能な限り長く続いていくことを・・・・・願うばかりだ。




実際ずっとひっついてると生活に支障でるんだろうけど、この二人なら一日ぐらいは普通にこなせそう・・・・・

というか一日中オーフィスちゃんとひっつけるとか爆殺したほど羨ましい(血涙)

それではこれにて失礼します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別篇 湊内家の餅つき

長らく放置した挙句、また特別篇で申し訳ありません

今回はサブタイ通り餅つきのお話です

いつもより糖度低めのほのぼの(?)系となっております

それではどうぞ


 

「行くぞオーフィス。準備はいいか?」

 

「いつでも」

 

「それじゃあ・・・・・・せーの!」

 

俺の合図とと共に、オーフィスは杵を振り下ろしもち米を叩く。そして杵を持ち上げると同時に、俺はもち米をかえし、またオーフィスが杵で餅をつく。

年が明けた翌々日。俺達は現在、庭で餅つきをしていた。今では行う家庭も減ってきているそうだが、我が家では毎年の恒例行事となっている。

 

「よし、こんなもんかな?もういいぞオーフィス。お疲れ様」

 

「我、頑張った」

 

「うん。おかげで今年もいい餅ができた」

 

無表情ながらどこか誇らしげに言うオーフィス。本当なら頭を撫でてやりたいのだが、餅をかえしていた手で撫でるわけにもいかないので、手を洗うまでは我慢しよう。

 

「咲良―。おろし醤油と生姜醤油持ってきたにゃん」

 

「こちらは黒蜜きな粉とあんこです」

 

「俺は酒を持ってきたぞー」

 

台所の方から姿を現す黒歌と白音、そして爺さん。3人には餅をすぐに食べられるように準備をしてもらっていた・・・・・・もっとも、約一名関係ないものを持ってきているが。

 

「ありがとう黒歌、白音」

 

「あれ?俺には礼はないのか?」

 

「明らかに餅に関係ないものを持ってきた奴に礼があると思ってるのかよ?」

 

黒歌と白音はちゃんと餅に合うものを持ってきたというのにこの爺さんは・・・・・・

 

「なんだと!?餅を肴に飲む酒は美味いんだぞ!なあ黒歌?」

 

「否定はしないけど・・・・・・私とお爺さん以外は未成年なんだから普通はわからないと思うにゃ」

 

「大丈夫だ。咲良は飲めるもんな?」

 

「未成年に堂々と勧めるな。確かに多少なら飲めるが今日は飲まないぞ」

 

昔からことあるごとに爺さんに勧められて多少は酒を飲むことはできるが・・・・・・さすがに未成年である手前積極的には飲みたくない。実際、今日は飲む気分ではないので飲まないが。

 

「そうか、まあ無理してまで飲ませる気はないが・・・・・・それじゃあ俺達大人は酒と餅を楽しむとしようか黒歌。ほれ」

 

「ありがとにゃん」

 

爺さんから酒の入ったお猪口を渡される黒歌。先ほどは呆れていたようだが、やはり酒は飲みたいらしい。

 

「咲良先輩、もう食べてもいいですか?」

 

一刻も早く食べたいと言った様子の白音が、餅を見つめながら俺に尋ねてくる。食欲旺盛な白音をこれ以上待たせるのはさすがに酷だろう。

 

「ああ、いいぞ。すまんな茶番に付き合わせて。冷めないうちに食べちゃおう。オーフィスもいっぱい食べな」

 

「我、いっぱい食べる」

 

食べやすい大きさに餅をちぎり、皿に乗せていく。その餅を、各々の好きな食べ方で食べていった。

 

「うん、柔らかいけど弾力があって美味しいにゃ」

 

「はい。やっぱりつきたては違います」

 

「毎年これが楽しみなんだよなぁ。咲良とオーフィスが作った餅は市販の奴とは比べ物にならないぐらい美味いからな」

 

「当然。我と咲良の共同作業で作ったものが美味しくないはずがない」

 

「そうだな。今年は特にうまくできた自信があるしな」

 

美味しそうに餅を食べる3人を見て思わず笑みがこぼれる俺とオーフィス(オーフィスはぱっと見、表情には出てないように見えるが)。まあ、今回は婚約してから初めての餅つきだし、それで例年よりもうまくできたっていうのがあるのかもしれない。

 

「だけどまあ、正直はじめ餅をついてる二人を見た時は色々と驚いたにゃん。オーフィスが杵で餅をついて咲良がかえすって・・・・・・」

 

黒歌の言いたいことはわかる。見た目幼女と男である俺・・・・・・普通であれば役割が逆であるように思えるだろう。まあ、一般的にそもそも幼女が餅つきに参加するということが珍しいのだろうが、それでも普通なら杵を持つのが俺であるはずだろう。だが、我が家にある杵は本格的なものであり、なかなかの重量がある。俺でも持つことはできるのだが、上手くつくにはパワー不足なのだ。その結果、龍神であるため俺よりも遥かに力のあるオーフィスがつく役をしているというわけだ。若干悲しくなるが、上手く作るためには致し方ない。

 

「役割に関してもそうですけど、私はあの速さに驚きました」

 

「あー・・・・・・わかるわ。ちょっと前にテレビで見た超高速餅つきに負けないぐらい速かったわよね。むしろあれよりも速いかった気がするにゃ」

 

黒歌が言ってるのは、この時期恒例の特番でやっているプロの餅つきの事だろう。確かにあれを見た時は速いなぁとは思ったが、どうやら俺とオーフィスの餅つきはそれ以上のスピードだったらしい。

 

「まあ、この二人は息ぴったりだからな。どれだけ早くてもタイミングがずれるなんてことは無いだろう。おかげで俺が餅つきに参加する機会は完全になくなったからなぁ」

 

「爺さんとの餅つきも別にやりづらかったわけじゃなかったけどな。ただ、オーフィスとやった方が息があるのは確かだな」

 

「我と咲良は一心同体。あれぐらい容易」

 

「それにしたってアレは速すぎます・・・・・・咲良先輩に至っては人間の反応速度超えてる気がしますし」

 

「たびたび思うけど、咲良ってオーフィスが関わると明らかに能力が上がるのよね・・・・・・」

 

どこか呆れた様子で言う黒歌と白音。俺としてはそんなことは無いと思うのだが。ただオーフィスに合わせているだけだし。

 

「まあ、おかげでこうして美味しいお餅を食べられてるからいいんだけど。やっぱりお餅にはおろし醤油が一番ね」

 

「私は黒蜜きな粉が好きです」

 

「我はあんこが一番」

 

「俺は生姜醤油だな。ちょっと辛いけどそれがいいんだ」

 

「確かにそれもうまいよなぁ。だけど俺はやっぱりアレだなぁ」

 

各々好きな食べ方を語る中、爺さんが俺の方をちらっと見てきた。

 

「豚汁だろ?ちゃんと作ってそこで温めてあるよ」

 

「さすが咲良、わかってるなぁ!」

 

喜々として用意していた豚汁をお椀によそい始める爺さん。本当にこれ好きだよなぁ。まあ、俺も好きだけど。

 

「豚汁にお餅ですか?お雑煮ならわかりますけど・・・・・・」

 

「それって美味しいにゃ」

 

「うまいよ。身体もあったまるしな」

 

「我も好き。つきたてのお餅に合う。二人も食べてみればわかる」

 

オーフィスに促され、黒歌と白音も豚汁に餅を入れる。

 

「これは・・・・・・確かに美味しいにゃ」

 

「お雑煮とは違う感じですが、私もこれは好きです」

 

「だろ?これで酒を飲むのもまた格別なんだよなぁ」

 

「豚汁飲みながら酒飲むってあまり聞かないけどな」

 

まあ、本人が合うと言っているなら構わないが。好きなように食べて漫喫してくれればいい。

 

「って、おお・・・・・・もうないのか」

 

皆が結構な勢いで食べ続けているためか、餅が尽きてしまった。まあ、今年は黒歌や白音もいるから無くなるのが早いのも仕方がないか。

 

「よし、それじゃあ2回目行きますか。どうせなら黒歌と白音もやってみるか?」

 

「そうね・・・・・・いつもなら面倒くさいって言ってるところだけど、白音と一緒ならやってみたいにゃ」

 

「では姉様はかえすのをお願いします。私が杵でつきますから」

 

どうやら二人共やる気になってくれているらしい。これは正直助かった。今年は和平の事もあって各方面にも贈るとか爺さんが言いだしたから、例年の倍以上つかなきゃいけなくなっている。少しでも負担が減るのはありがたい。

 

「大丈夫だとは思うけど・・・・・・白音、私の手も一緒についたりしないでね?」

 

「・・・・・・はい」

 

「なんか今見逃しきれない間があったにゃ!?」

 

「すみません。初めての事であまり自信が無くて」

 

「まあ、コツとかは俺とオーフィスが教えるからあまり気負わずにやればいいさ。爺さんも今日はたくさん作るんだから手伝ってくれよ?」

 

「うへぇ・・・・・・まあ、各方面に贈るとか言い出したの俺だし、やってやりますか」

 

「我も。もっと咲良とお餅つく」

 

「ああ。たくさん作ろうなオーフィス」

 

こうして、俺達はできたてのお餅を味わいながら、餅つきを続けていくのだった。




以上で、湊内家の餅つき風景となります

他にも正月らしいネタがある中餅つきになったのは作者の家では毎年餅つきをしているからです

少しでも楽しんでいただけたら幸いですが・・・・・・

それではこれにて失礼



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 50~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。