吸血鬼に恋愛なんて出来るわけがない! (緋月霊斗)
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物語の始まり

なんとなく、書きたいので書くことにしました。
では、どうぞ。



朝。

俺は目を開けた。

「俺……リビングでそのまま寝ちまったのか……」

目の前のテーブルには小説が十六冊積まれていた。

昨晩読み返していた小説だが、これがなかなか面白い。

「吸血鬼か……」

この主人公がなんかめっちゃ強い。

「吸血鬼になったら……楽しそうだなぁ……」

俺はそんなことを考えながらふと時計を見た。

時刻は七時三十分。

「やべぇ!新学期早々遅刻する!」

俺は急いで着替えると家を飛び出す。

「くそっ、朝メシ食えねぇ……」

愚痴るが、俺が悪い。うん、知ってた。

そうそう、忘れていたが自己紹介をしよう。

俺は緋月(あかつき)霊斗(れいと)。今年で高校二年になる。

因みに友達は少ない。

(うん、完璧だな」

「何が完璧なんだ?」

「うおっ!?」

どうやら口に出ていたらしい。

「なんだ、久遠か。急に声掛けたらびっくりするだろ」

「悪かったよ」

「全然悪いと思ってねぇ……」

口では謝りながらも笑っているこいつは桜坂久遠。

俺の数少ない友人であり、クラスメイトだ。

「で、霊斗。春休みの課題やったか?」

「むしろやらないのか?」

「疑問文に疑問文で返すとは……まさかお前、国語の課題をやっていないな!」

「全部終わらせたけど」

「馬鹿な!?」

「はぁ……どうせやってないんだろ。どれやってないんだ?」

「あと数学だけやり忘れた」

「……ほらよ」

「すまん、恩に着る」

「まったく……新学期早々課題忘れたとか、弛みすぎだろ」

「そうだなぁ……まぁ、さっきこの近くまで全力疾走してた霊斗が言えた立場じゃないよなぁ」

「げぇっ!?一樹!?」

「げぇっとは失礼だな」

「すまん」

ナチュラルに会話に入ってきたこいつは夜桜一樹。

もう一人の俺の友人で、なぜかモテる。

「で、なんだよモテ王子」

「殺すぞ」

やばい、めっちゃドスの効いた声で脅された。

こわいなぁ(笑)。

「まったく、私だって好きでモテている訳じゃないんだがな」

「うわー、出たよリア充の余裕」

「今全国の非リアを敵に回したな」

「霊斗や久遠もまったくモテない訳ではないだろう?」

「「モテません(キッパリ)」」

「はぁ……お前らは……」

そんな会話をしながら歩いていると既に学校に到着していた。

「じゃ、俺はこっちだから」

「ああ。じゃあ、また帰りに」

留学コースの一樹だけが別れ、俺達は自分の教室に向かう。

「ってか、俺達はクラス替えがあるな」

俺が言うと、久遠は露骨に嫌そうな顔をした。

「クラス替えか……教室の移動がダルいな」

「お前なぁ……何言ってんだ。新しいクラスになれば彼女が出来るかもしれないだろ!」

「そうか!おっしゃー!やる気出てきたァー!」

現金なやつだな……。というか、なにこの不毛な会話。

ちょー虚しい。

「霊斗は誰か気になってるやつとか居んの?」

「いや、俺は女子と基本関わらないからな……」

「お前……かわいそうだな。俺でも多少は関わるのに……」

「うるさいやい」

やめろ!その憐れんだ目で俺を見るな!

と、教室に着いた。

「はぁ……」

「はぁ……」

二人して席に着きながらため息をつく。

すると、俺と久遠の隣の女子が二人してこちらに話かけてきた。

「ねぇ霊君、朝からため息って……なんかあった?」

「ああ、天音か。おはよう」

「久遠、一樹となんかあったの?」

「いや、なんもないけど……」

久遠の隣の席にいるのが桜坂美桜で、俺の隣の席にいるのが焔宮天音。

因みに、名字からわかるように久遠と美桜は双子……と言いたいがこれは偶然同じだっただけらしい。

天音の方は俺の幼馴染で、幼稚園からここまですべて同じクラスという謎。

「で、なんで美桜さんはいきなり一樹の話をしだすのかな~、なんて」

「わ、私は別に一樹が心配とか、そんなんじゃなくて!」

「あーはいはい、リア充は幸せそうでいいねー。はぁ……」

「違うってば!」

「なるほど、二人が朝から沈んでいるのは自分が非リアな事に絶望していたわけね」

「はうっ!?」

「いや、俺は忘れた課題やんなきゃなーって」

「あ、霊君は図星なんだ……」

「大丈夫だよ、霊斗君!君のことを好きな人だっているよ!例えばあ――」

「はいストップ!美桜!言ったら怒るからね!?」

「冗談だって~」

二人がなんかいってるけど、なんか耳鳴りが……。

「まぁ、霊君も希望を捨てないで!」

「ああ、どうも」

あ、治まった。なんだったんだ?

「あ、クラス発表の紙、張り出されたみたい」

「じゃあ、見に行ってくるわ」グイ

俺は紙を見に行こうと席を立つ……ぐい?

見ると、天音が俺の制服を掴んでいた。

「なんだよ」

「なんで一人でいこうとするの!?一緒に行こうよ!」

「いや、わざわざ二人で行く必要がないだろ……」

「むー!」

なんでこいつこんなに怒ってるんだ?女子ってわかんない。

「……わかったよ。ほら、見に行こう」

「うん!」

なんか、子犬みたいだな……。

仕方なく、天音を連れてクラス発表の表を見に行く。

「俺は……一組だな」

「私も一組だよ」

また同じか……。

「あー、今、もううんざりって顔したー」

「し、してねぇよ」

「こーんな美少女と同じクラスなんだよ!?何が不満なのさ!」

それだよ。

確かに顔もいいし、スタイルもいい。

「でも、自分で美少女とか……ないわー」

「う……」

あ、声にでてた。

まずい、こいつ涙目だよ。なんか、なんか言わないと!

「まぁ、俺は天音と同じクラスで嬉しいよ」

「ほんとに?」グスン

「ああ、本当だ。だから泣くな」

「うん……じゃあ、今年もまた一年よろしくね」ニコッ

「……」

不覚にもドキッとしてしまった。

……可愛い。

「よ、よし。席に戻ろう!」

「うん」

席に戻ると、久遠がつついてきた。

「なんだよ」

「クラス、どうだった?」

「ここの四人はまた同じだったよ」

「おー。じゃあ、美桜にはまた一樹の情報が提供できると」

「……」ボンッ

うわっ!?美桜さんの顔が真っ赤になった。

……リア充って妬ましい。

「まぁ、美桜さん、頑張ってね」

「あ、ありがとう……」

うん、この人も美少女なんだよな……一樹が妬ましい。

と、皆が教室を出始めた。

「始業式が始まるぞ」

「え、ダジャレ?」

「霊斗……死にたいのか?」

「冗談だよ。行こうぜ」

「まったく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

ここはどこだ!?

「どうした霊斗」

「く、久遠。始業式は?」

「は?もう終わっただろ?なに言ってんだ?」

「いや、教室を出た辺りから記憶がない」

「はぁ?」

「まぁ、いいや。もう放課後だろ?帰ろうぜ」

「ああ、そうだな」

俺達は校門へと向かった。

「おーい一樹」

「来たか……久遠、後ろにいるのは……」

「ん、美桜だけど」

「なんで隠れてんだよ……おいで、美桜」

「一樹、久しぶり」

「いや、朝その辺まで一緒に来たろ」

「うぅ……でも、教室違うし……」

「……一樹」

「なんだよ」

「たまには二人で帰れば?」

「……悪いな」

「気にすんな」

うん、友人の恋愛を応援する俺偉い。

「じゃ、久遠、行こうぜ」

「ああ……天音も行くよな」

「うん、霊君と家近いし」

なんで着いてくるんだよ……。

まぁ、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、なんで俺リビングに……。

「これはまさか……編集というやつか」

違うよね。知ってた。

「……眠い……」

しばらくは両親もいないので自由に過ごせるが、生活リズムは整えたい。

従って昼寝などもっての他だが……。

「寝よう」

俺は自室に戻った。

「おやすみー」

その日は自分でも驚くほどぐっすり眠れた。

だが、それが異変の前兆だったのかもしれない。




久しぶりに書きました。
では次回。


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人間、やめました。

書きます。


寝すぎた……か」

時計を見ると、時刻は午前四時。

外はまだ暗い。

「風呂、入ってねぇ……」

昨晩は帰ってすぐ寝た。

とりあえずシャワーだけでも浴びよう。

そう思い、リビングに出た時に異変に気付いた。

「あれ、灯りつけたっけ……?」

夜明け前にしてはあまりにも明るい。

たが、灯りのスイッチは「切る」になっている。

おかしい。

灯りも無い。

日も出ていない。

なのに、なぜこんなにもはっきりと闇の中が見えるのか。

「し、しっかり寝たから……だよな……」

俺は自分にそう言い聞かせて、風呂場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂を出ると、外がうっすらと明るみ始めた。

……朝日でも浴びてリフレッシュするか。

「うーん……いい朝だ……」

だんだんと日が差す。

俺は目を細め、手を目の前に翳した。

しゅぼっ。

「ん?なんだ、今のマッチみたいな音?」

周りを見渡すが、それらしき物は無い。

それよりももっと、顔の近くで音がした気が……。

視線を戻すと、眼前に一面の赤が覆った。

「は?炎?」

俺の手が。

「燃え……てる……?」

それを視認した瞬間、激しい痛みと熱が。

「ぐぁぁぁぁっ!?熱っ!?なんで!?」

室内に走り込み、水道から水を出し、鎮火する。

「うわ……グロいな……」

これは酷い。

手首から先が炭化している。

「もう痛みもねぇ……」

聞いた事がある。

人間は末期の痛みを脳が遮断するとかナントカ。

つまり、そういうことだろう。

「はぁ……こんな手じゃあ学校なんか行けねぇな……」

俺はゆっくりと手を持ち上げる。

たが、再び異変に気付いた。

「傷が……治ってる?」

もうこれアレだ。幻覚とか見ちゃってる?俺。

だが、皮膚が自棄に綺麗だ。

「ああ、わかった……」

俺はここまでの現象が全て現実だと仮定し、一つの結論を導きだした。

「俺、吸血鬼になったんじゃね?」

試しに包丁を持ってきて、指を切ってみる。

鋭い痛みが走り、血が滲んでくる。

だが、数秒経つと傷は完全に塞がった。

「……つまり……」

圧倒的回復力。喧嘩に役立つね!って違うし!

「……どうすっかなー……」

これじゃあ日中に外に出られない。

……よし、再チャレンジ!

俺はもう一度外に出た。

お、燃えない。よし、学校は行けそうだ。

「いや、学校は無理だな……」

よく見るラノベの吸血鬼には、大抵「吸血衝動」なるものが存在する。

確か、条件としては……興奮する、空腹を感じる。だったか?

いや、知らんけど。

さて、試しに女の子の写真でも……持ってない。

お腹は……空いてるけど、衝動はない。

あれ、行けんじゃん。俺最強。違うか。

そうと決まれば遅刻しないように学校に行こう。

いつもよりのんびり支度をできるな。

じゃあ、朝飯でも食うか――。

 

 

 

 

 

 

 

 

――やばい。これはやばい。

「……のんびりしすぎた」

現在七時半。

のんびりとかってレベルじゃねぇよ!

全力疾走しながらふと思った。

(疲れねぇな。いつもならもうバテてるんだが)

これが吸血鬼化の影響か、超便利(笑)。

だけど、周囲の人間には知られないようにしなきゃな……。

やべぇ、自分だけの秘密とか……かっけぇ。

おっと、あそこに居るのは……。

「天音、おはよう」

「あ、霊君。おはよう……あれ、なんか雰囲気が違う?」

いきなり正体ばれそう。

「そ、そうか?いつもと同じだろ?」

「うーん……なんか人間やめてる感じがする」

「俺はどこのブランドーさんだよ」

俺は人間を辞めるぞぉー!って違うわ。

「ふーん……ま、霊君は霊君でいいんだけどね」

「そりゃそうだ。俺は俺以外の何者でもないからな」

俺がそう言うと、天音が俺の事をジト目で見てきた。

なんだよ。可愛いじゃねぇか。

「なんだ?」

「んー、なんでもない」

「なんでもないのに人の顔をまじまじと見るな」

「ごめんごめん。あ、そうだ!霊君、今日の放課後空いてる?」

「あ、ああ。むしろ予定がある日の方が少ないぞ」

「……なんで今日は某ラノベの主人公みたいに捻くれてんの?」

「え、そんなに捻くれてた?」

「うん、かなり」

「……無意識だったわ。で、なんで放課後?」

「ああ、買い物に行くから付き合って」

「荷物持ちですねわかります」

「理解が早くてよろしい」

なんでそんな上から目線なんだよ。

「あ、美桜ちゃんだ!おーい、美桜ちゃーん」

「天音ちゃん、おはよう」

一樹の彼女の美桜さんだ。今日も可愛いな……。

一樹が妬ましい……。

「霊斗君もおはよう」

「ああ、おはよう。昨日はなんか進展したか?」

「そ、その……き、キスを……」

「は?魚?」

「なんで半ギレ……」

「一樹が……おでこに……(///∇///)」ポッ

「キシャァーッ!」

「(びくっ)れ、霊君!?落ち着いて!」

「落ち着いてられるかぁーっ!リア充がぁぁぁっ!」

「ちょっと黙れ(ドスの効いた声)」

「はい」( ;´・ω・`)

怖い!怖いよ、天音さん!

「美桜ちゃん、良かったね!」

「うん!天音ちゃん達のおかげだよ!」

うんうん、俺達のおかげ。だから一樹は感謝しろ。

おや、学校に着いた。じゃあ、女子二人は置いて先に行くか。

俺が先に廊下を歩いていると、見慣れた後ろ姿が……。

「おう久遠、おはよう」

「霊斗か、おはよう」

「一樹は?」

「さぁ?私とは一緒に来ていないぞ」

「あ、昨日の口調の変化はやっぱりふざけてたのか」

「ま、まぁな(作者が間違えたとは言えない)」メメタァ

ん、どこからか変な擬音が……。

「まぁいいや、行こうぜ」

今日の目標、誰にも変化に気づかれないように生活する。

頑張るぞ!だって、さっき危なかったからな……。




主人公の視点で書くのって難しい。
では、また次回!


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波乱の予感

書きます。


「あー、終わった……」

「全くだよ。何故私達はこんなにも過酷な授業を受けなければならないんだろう……」

「……久遠、そんな口調だったか?」

「?なにかおかしな点でも?」

「いや……」

おかしすぎだろ!

口調変わりすぎだよ!……まぁいいか。

「ところでおかしいと言えば……霊斗」

「ん、なんだ?……ぁふ……」

「今日はやけに眠そうですね?」

「そ、そうか?いつもと同じだろ?」

「それ、今朝天音にも言ってたよ」

「……聞いてたのかよ」

「隣を通りすぎるときにね」

「え、通った?」

通ったっけ……。ま、本人が通ったって言ってんだから通ったんだろう。

「で、寝不足の理由は?」

「い、いや。寝不足って訳じゃ……」

「寝不足でもない人間が大好きな教科で爆睡する?」

「う……」

確かに、大好きな国語でも爆睡してしまった……。

気付いたのが授業終了五分前だし。

「寝不足ではないのなら他に原因でも?」

「……ないこともない」

「ほぅ?その原因とは?」

「……屋上でいいか?」

「わかった」

おっと、天音と帰る約束をしてたな……。

「天音、用事が出来ちまったから先に帰ってくれ。買い物には間に合わせる」

「え……う、うん、わかった!じゃあ後でね」

「ああ。悪いな」

よし、屋上に行かなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に行っていた久遠にはすぐに追い付いた。

「天音とは、良かったのですか?」

「え、なにが?」

「はぁ……本当に鈍感だね」

「え、嘘。俺って鈍感なの?」

「どこのラノベの主人公だ……」

俺って鈍感だったのか……。気を付けないとな。

あ、ハーレム築いたりとかしないよ?

「屋上、とは言ったものの……」

「流石に放課後は施錠されてるね」

「あ、じゃあ。無理矢理開ければいいんだよ」

「……は?」

よし、たぶんこの身体なら……。

「よいしょぉぉぉっ!」

バギン。

「よし、ねじ切れた」

「何をやってるんだ!?」

「何って……」

鍵をねじ切っただけだよね?

「……化け物かよ」

「あ……」

しまった、ばれないようにしてたのに。

「まぁ、要はそういうことか」

「う……」

これは……あれだ。正体がばれて距離を取られるやつだ。

「今更吸血鬼程度じゃ驚かないけどな」

は?

「どういうこと?」

「……こういうことさ」

俺の目の前で久遠が進化した。

いや、変化した。

銀髪に、黄金の瞳、長い牙。

「マジの吸血鬼じゃんΣ(゚◇゚;)!?」

「いや、お前も出来るだろう?」

「え、無理。吸血鬼になったの今朝だし」

「え?」

「え?」

「……吸血衝動は?」

「今のところはないっぽい」

「じゃあ、これを見ろ」

久遠が差し出してきたのは……天音?

「一部の人間の間で取引されているものを偶然おさえたんだ」

「……下着じゃね?」

「だから一部だと」

「なんか結構スタイルが良いな……おぅっ!?」

久遠が何か言っているが聞こえない……。

なんだ、これ。

血を……吸いたい。

吸いたい。

吸いたい!

「ほら、落ち着け」ゴスッ

「あだっ!?なんでいきなり殴るんだよ!?」

「衝動、収まっただろう?」

「……ほんとだ」

俺が安堵していると、久遠が何かを取り出した。

「治ってなかったらこれを使うところだったよ」

「なにそれ」

木刀?

「時雨桜鳴雷という特殊な桜の木から削り出した木刀だ。因みに、殴った相手から養分を吸える」

「恐ろしいな」

っつーか、どこから出したんだよ。

「気にするな」

「心を読むな」

に、しても……俺以外にも吸血鬼が居たとは。

しかもめっちゃ友達。

「まぁ、霊斗」

「んー?なんだ?」

「とりあえず、他の人間にはばれないように」

「ああ。わかってる」

「じゃ、帰るよ」

そう言うと久遠は吸血鬼化を解き、翼を生やして飛び去った。

吸血鬼化解いてねーじゃん。

「あ、俺も出来るかな」

イメージすればできるはず。

翼……翼……。

よし、行ける(気がするだけ)!

屋上からジャンプ!って……。

落ちる……。

「あぁぁぁぁ!」

ビターン。

地面に叩きつけられた……。

「痛ぇ……」

吸血鬼って丈夫だな……。

「ん、電話?」

誰だろう。

「はい、もしもし」

『霊君』

「!?」

天音!?怖いよ!?

『約束、忘れたなんて言わないよね?』

「覚えてる!今終わったところなんだよ!すぐ行くから!」

『……早く来てね』

「わかった(プツッ)切りやがった……」

はぁ、走るか……。




だんだん霊斗の人間関係があきらかに!?
ではまた。


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前途多難!?

書くよ。


ショッピングモールってなんでこんなに広いんだろう。人多いし。

そんな中を走る。

走る走る。

「流石に人の家飛び越えたりは出来ないからなぁ……」

全く、なんて無能な吸血鬼だ……俺か。

に、しても……。

「俺、早く帰りたいんだよなぁ」

いや、行くけどね?

あ、居た。

「天音!ごめん!」

「もー遅い‼」

「ごめんって、久遠との話が長引いて……後、屋上から落ちた」

「ふーん、話がねぇ……って落ちた!?」

「うん。あ、めっちゃ元気だよ?」

「な、ならいいんだけど」

怪しまれてないな。よし、大丈夫。

「じゃあ、行こうか」

「えっ、あ、うん」

早く終わらせて帰ろう。

「で、何買うの?」

「えっと、服とか……し、下着とか……」

「おぶふぁっ!?」

「れ、霊君!?大丈夫!?」

「げほっ、だ、大丈夫だ。埃が気道に入っただけだ」

ごめんなさい、貴女の下着姿の写真を見ましたなんて言えない。

「ふ、服から見るか」

「そうだね、じゃあ……五階かぁ」

「エレベーターで行こう。楽だし」

「やだ、エスカレーターがいい」

「え、わざわざ回るのが面倒なんだけど」

「むー……」

「……はぁ、わかったよ」

仕方ないな。

……涙目上目使いとか、勝てる気がしない。

「えへへー、なんかこうしてるとデートみたいだね」

「ごぶふっあぁっ!?」

「霊君!?なんで急に吐血すんの!?」

「いや……あれだ」

「?」

「女子とデートとか、俺にはハードルが高いよ……」

と言うか、無理。

「あ、そう……なんていうか……ヘタレ?」

「いきなりディスらないで頂けます?」

死にたくなるから。

「あ、ご、ごめんね?……でも、霊君と買い物なんて久しぶりだよね」

「ん、まぁ、そういやそうだな」

確かに……いや、待てよ?

「一週間位前に行かなかったか?」

「……」

「……」

「行ったね」

「だろ?」

忘れてたのかよ……。

「まぁいいか、早く帰ろ……行こうぜ」

「う、うん」

ん、そういえば……。

「なぁ。その髪飾り、俺が昔あげたやつだろ?まだ使ってくれてたんだな」

「あ、わかった?中学一年のホワイトデーに霊君がくれたんだよね」

やけに説明臭いな。

「そうだな……あの頃は楽しかった……」

「今は楽しくないの?」

「だってこの身体……なんでもない。結構楽しいわ」

「?まぁいいけど……あ、着いた」

うわー、なんか華やかだなぁ……。

「ねぇねぇ、このワンピ、どっちの色がいいかな?」

「俺に聞くなよ……」

「霊君の好みでいいから!」

赤と白か……。

「白の方が俺は好きだな。清楚な感じがして」

「ふーん……じゃあ、白にしよっかな」

「おーう、好きにしろー」

女子の好みなんかわかるか。

にしても天音のやつ、やけに楽しそうだな。

「お前といるからだったりしてな」

「んなわけ……一樹!?」

「お前もデートだったとはな、吸血鬼君」

「んなっ!?お前、なんで!?」

「久遠から聞いたよ。昨日なったばかりだとか?」

「天音には言うなよ?」

「わかってるよ」

「で、一樹の方は美桜さんとデートか?」

「まぁな」ドヤァ

「ムカつくやつだな」

「ま、お前も精々頑張れよ」

「頑張れって……なにを?」

「彼女つくるとか」

「俺の事を好きになるやつなんか居ねぇよ」

「そうかな……案外近くにいるかもな」

「はぁ?それってどういう……」

「ヒントはここまでだ。後は自分で考えろ」

「んなこと言われても……」

「じゃ、俺は美桜を待たせてるから」

あ、逃げやがった。

はぁ……。

「ね、霊君。これはどっちがいいかな?」

「あ?どっちがってごぶふぇっふぉあぅ!?」

く、黒の上下セットか赤の上下セット……。

明らかに勝負に行くやつ。

「なぜ……それを俺に聞いた……」

「え……霊君になら、いいかな……って」

可愛い。

違うよ。そうじゃない。

「俺が言いたいのはそう言うことじゃなくて……なんで男に下着を選ばせるの?」

「え、おかしかった?」

「おかしいも何も……変態だぞ」

ってか、いいの?俺で。

「う、うん!冗談だよ!」

「ならいいんだが……」

「……残念だなぁ……」ボソッ

「ん?どした?」

「なんでもない!じゃあ、お会計してくる!」

「あー、いいよ。そんくらいなら出してやるよ」

「え?」

「待たせた侘びだ。むしろ払わせてください」

「別にいいんだけど……じゃあ、お願いしよっかな」

「よし、いくらだ?」

「九千八百円」

「一万円で」

「はい、お釣り」

「サンキュ」

に、しても……こいつやっぱり可愛いよな……。

「ん?どしたの?ボーッとして」

「ああ、いや。なんでもない。もう帰ろうか」

「うん、そうだね」

天音が以外にもすんなり応じた。

こいつも疲れたのか?

「霊君、おんぶ」

「……ほら」

「なんか懐かしいね」

「昔から散々やったからな」

「ふふっ、霊君は昔からやさしかったよね」

「や、優しっ!?ごぶふるっあっぇぅげぉふ!?」

「だ、大丈夫!?」

「大丈夫だ……でも俺、そんな優しかったか?」

「うん、私が苛められてたらすぐに助けてくれたよね」

「人として当然だろ?」

「そう言うと思った……」

「悪いかよ」

「ううん……そういうとこ、大好き」

「けぷぱっ!?」

「どうしたの!?なんか変な音したけど!?」

「喉の調子が悪いだけだ。気にするな」

と、もう家か。

まぁ、こいつの家は隣なんだけどね。

「ほら、着いたぞ」

「うん、今日はありがと」

「いいよ。俺も楽しかったし」

「じゃあ、また明日」

「ああ」

よし、寝るか。

「あ、霊君」

「ん?」

「さっきの……本気だからね」

「!?」

「返事、まってるから……じゃあね」

か、帰りやがった……。

「本気って……」

どうやら今夜は眠れなさそうだ。




どうなるかな!?
じゃ、また。


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不穏な影……?

書きます。


想定外。

それ以外に形容できない。

彼がまさか……。

「素質は昔からあったけど……このタイミングでか……」

私の迷いを表すかのように尻尾がふわふわと揺れ動く。

「んー、でもなっちゃったもんは仕方ないよねぇ」

仕方ない……果たしてそう言いきれるだろうか。

だってこれは……彼が人外になったのは……。

「長時間人外と一緒にいると影響が出るっていうけど……」

だけど、[人外そのものになる]という前例はない。

従って、治す方法も不明。

「まぁ、強くなったんなら良いよね―――」

そう……強ければ強いほど良い。

「――良質な精が手にはいるから」

吸血鬼の彼とサキュバスの私。

これほどお似合いなカップリングはない。

「じゃ、今夜も夢にお邪魔しまーす」

私は彼の夢へと飛びこんだ(ダイブした)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝か……」

吸血鬼になって二日目の朝。

とりあえず眠い。

「にしても……変な夢見たなぁ……」

全く、天音が下着で迫ってくる夢なんて……。

「うっ、思い出したら恥ずかしくなってきた……」

なんだろう、欲求不満なのか?

まぁ、現実ではあり得な……あ。

「昨日の答え……考えてない……」

どうする、どうする俺!?

落ち着こう。

「ゆっくり深呼きゅ(ピンポーン)誰だよ畜生!」

全く……出るか。

「はーい、どちら様……で……」

「おっはよー、霊君」

「さらばだっ!」

ガチャ。

し、しまった。つい衝動的に閉めてしまった。

『ねぇ!なんで閉めるの!?霊君!開けてよ!!』

罪悪感で死にそう\(^o^)/。

「(ガチャ)なんだよ……」

「学校行こ!」

「断る」

「即答!?」

「き、今日は体調が優れなくてな……」

「元気そうだけど?」

「お腹が痛いんだ」

ヤバイ、ほんとに胃が痛くなってきた……。

「わかった、じゃあ。昨日の答えだけ聞かせて?」

「さらばっ!(ガチャン!)」

『元気じゃん!出てこい!』

「やだ!今日は休む!」

『ふーん……じゃあ、霊君は私の下着を見て喜ぶ変態だって噂を流そうかな……』

「今日もいい天気だな。さぁ、学校に行こう」

「早っ!?」

し ん で た ま る か

「ほら、置いてくぞ?」

「あ、待って!」

全く、人を脅迫するとは……そんなに俺と行きたかったのか?

「んなわけあるかぁっ!」

「(ビクッ)ど、どうしたの?」

「あ、ああ。すまん、寝ぼけてた」

うわぁ……って顔すんなよ、傷つくだろ。

「……で、霊君」

「今の間が気になるが……なんだ?」

「昨日の返事は?」

「あー……うん、あれだ」

「なに?(ワクワク)」

「……もうちょっと待ってくれるか?」

「へ?」

「その……お前のことは好きだし、付き合いたい……けど」

「なら……」

「けど、もっとしっかり考えたい」

「……」

「納得出来ないかも知れないけど……」

「わかった」

「へ?」

「でも、期限はつけさせて」

「あ、ああ」

「そうだね……修学旅行までかな」

「以外と長いのな」

「じゃあ、夏休み前まで」

「う……わかった」

「じゃ、行こ」

「お、おう」

もっと怒られると思ったんだがな……。

まぁ、夏休みまでに答え位だしてやる――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日から夏休みだね、霊君」

「どうしてこうなった」

まだ新学期始まったばかりだった気が……。

「はっ!まさか……作者のやるk――」

「霊君、それ以上は消されちゃうよ?」

「すまん、ちょっと錯乱してしまっただけだ」

「まぁ、いいけど……で、今日が期限だけど」

「Oh……」

なんてこったい。なんも考えてなかったよ。

どうしたものか……。

天使霊斗『付き合うべきだよ!天音ちゃんのためにも!』

そうだよなぁ……。やはり付き合うべきか……。

悪魔霊斗『いや、何を企んでいるのかわからない女だぞ?危険だろう』

そうだな……利用するだけして捨てられる可能性も……。

天使『でも彼女の性格は僕ら自身が一番良く分かってるじゃないか』

悪魔『だからこそ利用しやすいんだろう?』

ま、まぁまぁ。落ち着けって。

天使&悪魔『お前(君)がさっさと決めないからだろ!』

は、はい。すんません。

うーむ……じゃあ、こうしよう。

「期限の延長とかは……」

「ビンタしていい?」

「嘘です冗談だからその手を下ろして!」

おお怖い……。

さて、どうするか……。

「うー……」

「……(ワクワク)」

あまりキラキラした目で見るなよ……。

はぁ……腹をくくるしかないな……。

「……あー、その……」

「うん……」

「お、俺で良ければ」

「ぇ……」

「な、なんだよ。なんかおかしなこと言ったか?」

「い、いや。霊君はさ、昔から……そういうの断ってたから……」

「意外だったと?」

「うん。断られるかと思った」

「むしろこんだけ待たせて断るとか、鬼畜だな」

「うん……でも、うれしい……(ぴょこん)」

なんだ、喜んでもらえたなら……ぴょこん?

「霊君?どうしたの?」

「いや、俺……疲れてんのかな……」

「え?……あっ!」

よし、もう一度眼を開いてあったら掴もう。

「あれ、ない?」

「さっきからどうしたの?」

「いや、ここに尻尾があった気が……」

「尻尾?なに言ってるの?」

「いや、なんでもない。疲れてるだけだ」

「ふーん……じゃ、帰ろっか?」

「ああ」

まぁ、二人で帰るのは慣れてるから全然大丈――

「……」

「……」

かいわがない。

「……」

「……」

まってよ、いつもの口数の多さはどうしたの?

「……」

「……(ギュ)」

「¥@'#¥$+/^%。!?!?!?」

急に無言で手を掴むなよ!

あ、まずい……。

「~~~~ッ!」

吸血衝動がぁっ!?

まずいまずいまずいまずいまずい。

「れ、霊君?苦しそうだけど……」

「だ、大丈夫だから……とりあえず手を離してくれ」

「え……嫌だった?」

「ち、違うんだ!そう言うことじゃなくて……た、体質的に?」

「?どゆこと?」

「う……お、襲っちゃうぞ」

「え……ど、どうぞ?」

違うだろぉぉ!

「すまん、冗談抜きに襲いそう……」

「ひっ!?(ズザッ!)」

そんな距離取らなくてもいいじゃん……。

あ、でも治まってきたかな……。

「ごめん、もう大丈夫だよ」

「そ、そう?なら……(ギュ)」

おお、予測出来てれば大丈夫だ。

にしても柔らかいなぁ……あ。

「―――」

っとあぶねぇ!

はぁ……俺の今後の生活、大丈夫かなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、少年の隣に居るのは……夢魔の女……?」

ほう……わが従僕に手を出すとは……。

「いい度胸だ……」

見せてもらおう。

「我が従僕を虜にできるのか……夢魔のお手並み拝見と行こうか」




疲れた。
じゃ、また。


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苦悩

書くよ。


今日から夏休み……ゆっくり寝るか。

「で、俺は寝たいんだが……」

「寝てもいいよー」

「いや、なんでお前がここにいる」

なんで天音がここにいるのか。

話は数分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、夏休みくらい吸血鬼らしく昼夜逆転の生活をしてみよう」

つか、徹夜で課題終わらせたから流石に眠い……。

「じゃ、寝るか(ピンポーン)誰だよ畜生」

ったく朝から誰だ。

「はーい、何の用ですか(ガチャ)」

「おっはよー霊君!遊ぼ!」

「無理」

「なんでー?遊ぼーよー」

「無理、俺もう寝るから(ギィ――ガシッ)あ?」

「なんで閉めるの?(ギチギチギチ)」

「ヒィッ!」

「(ギィッ)お邪魔しまーす」

「あ、こら!」

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

「なぁ、俺は寝たいんだが」

「むー……」

「はぁ……おやすみ」

「じゃあ、霊君が寝てる間に秘蔵コレクションとか探そうかな」

「ねーよ、んなもん」

よし、寝るか――

「なにこれ、裏取引写真?って私!?」

――詰んだ。

久遠に渡されたのそのまま持ってきちまってた!

「れ、霊君……」

「殺せ」

「その……霊君になら、いくらでも……」

「そうだよな、死んで当然だよな……へ?」

「だ、だから!霊君になら見せてあげるって言ってるの!」

「し、正気か?」

「うん。だって私は……霊君のか、彼女だから……」

うっ、可愛い。

はぁ……俺もしっかり彼氏しないとな……。

「……なぁ、天音」

「ん、何?」

「海、行くか」

「え?」

ん、フリーズした?

「天音?」

「えぇぇぇぇ!?」

んなに驚くなよ。

「きゅ、急に海って……なんで!?」

「いや、夏と言ったら海だろ?」

「そうだね……うん!行こう!」

そうと決まれば早速海に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――着いた。

この流れ、どっかでみたな。

まぁいいか。

「じゃあ、着替えたらここに集合な」

「はーい」

うん、いい笑顔で走っていった。

じゃあ、俺も着替えてくるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅いな」

もうだいぶ経ったはずだが……。

「まさか、ナンパ?」

だとしたらまずい!

確か天音は向こうに……!

「くっそぉ!」

この炎天下で吸血鬼の力を使うのは気が引けるが、そんなことをいっている暇ではない。

「無事なら良いけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いた!」

案の定ナンパされてやがる。

男が二人か、余裕だな。

男A「ねぇ、少しならいいじゃん?」

「あ、あの、私、人を待たせてるので」

男B「そんな時間掛からないって」

「で、でも」

はぁ、行くか。

「おい、あんたら」

男達「あ?」

A「なんだ?テメェ、この女の連れか?」

B「邪魔だ、失せな」

「失せるのはテメェらだ。消えろ」

A「んだとぉ!?」

B「ちょっと面貸せや!」

はぁ、面倒だな。

「わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない岩影か。馬鹿も馬鹿なりに考えたか。

A「ちょっとばかし痛い思いしてもらうぜ!」

ケンカなれした動きだな……でも。

「遅いな(ヒョイ)」

B「くらえっ!」

「まだまだ(ヒョイ)」

なんだこいつら、遅いな。

A「ちょこまかすんな!(ドゴッ)よっしゃ!」

B「まだまだいくぜ!(ドガッ)」

A「どうした?やり返してみろよ!(ゴガッ)」

B「くたばれよ!(ボゴッ)」

A「くたばれ!(ガッ)」

B「死ね!(ゴッ)」

AB「なっ!?」

「ちょこまかしないで全部受けたが……なんだ、こんなもんか」

沖にでも投げ捨てるか。

「よっと(ヒョイ)」

AB「や、やめろぉー!」

「吸血鬼の彼女に手を出したこと、後悔しろ(ポイッ)」

よし、おーわり。

「天音、無事だな?」

「う、うん。ありがと」

ふぅ、無事で良かった……。

「ねぇ、霊君……」

「うん?」

「吸血鬼って……なんの事?」

「え……」

しまった……。

「それにさっきの……人間に出来ることじゃないよ」

やばい、やらかしまくりだ。

どうやって誤魔化すか……。

「あ」

「あ?」

「あ、愛の力だよ」

「真面目に答えて」

「……」

ああ、きっと嫌われるんだろうな……。

「俺は……」

嫌だなぁ、天音に嫌われるのは。

「俺はっ……」

どうして……俺なんだ。

「俺……」

俺は……。

俺は、何者なんだ?

「わからない……」

「霊君……?」

「わからないんだよ!なんで俺がこんな目に逢わなきゃなんないのか!」

「……」

「いきなり訳もわからないまま化け物にされて……」

「……」

「でも、これまで通りにしようって、周りに嫌われないようにしようって!」

「……」

「でも、大事な人を護ろうとして……それだけでまた!」

「……」

「護ろうとしただけなのに!」

ああ、なに言ってるんだろう俺。

「もう……嫌なんだよ、自分が段々……自分じゃなくなるみたいで……」

涙が出てくる。

天音に言ったって、どうにもならないのに。

「……霊君」

「……」

「私は霊君が人間じゃなくたって、ずっと大好きだよ」

やめてくれ。

同情なんて……辛いだけだ。

「霊君が人間じゃなくなったのがいつかは知らないけど、今日まで私は気付かなかった。それってさ……」

もう、いいよ。

それ以上は……駄目だ。

言わないでくれ。

「霊君は霊君で、ずっと変わってないってことでしょ?」

やめてくれ。

そんな、優しい笑顔なんて。

俺には、眩しすぎる。

「だからさ、何があったのか正直に話して……」

「なん……で」

「ん?」

「なんで、人間じゃない俺に……そんなに優しいんだよ」

「人間か人間じゃないかなんて些細な事だよ……だって、そういうことで悩めるってことは、心は人間のままってことでしょ?だったら、いいじゃん」

「ッ!……わかったよ……話すよ。これまでの事」

「うん、聞くよ」

「天音には敵わないな」

「あ、先に言っておくね」

「ん?」

「これからも、その力で私を護ってね」

「……」

「……嫌、かな?」

「……その笑顔は反則だろ」

「そう?」

「ああ……まぁ、ずっと護ってやる」

「うん、お願いね」

「んじゃ、本題に入るか」

俺の身に起きた異変。

この三ヶ月の間におきた出来事を。




次回、省いた部分を書きます。
ではまた。


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ちょっとした思い出1

書くよ。


久遠に呼び出され、天音の買い物に付き合った翌日。

俺は図書室に来ていた。

「海外文学は……この辺りか?」

お、あったあった。

「タイトルは……吸血鬼伯爵ドラキュラか……有名だよな」

俺、読んだことないけど。

「あとは……女吸血鬼カーミラ、ねぇ…これも有名だな」

「あれ、緋月君?」

「ひゃいっ!?」

噛んだ。死にたい。

「な、なんだ。委員長か……驚かさないでくれ」

「驚かしてないけど……」

彼女は俺のクラスの委員長、冬坂小雪。

面倒見はいいし、成績は優秀。さらに超美少女。

「緋月君が図書室に居るのって久しぶりにみたなぁ」

「久しぶりに来たからな」

「本当だよね。しかも海外文学なんて……頭でもぶつけた?」

「どういう意味だよ」

「いや、緋月君が海外文学なんて読むと思わなかったから」

「奇遇だな。俺も自分が海外文学を読むことになるとは思わなかった」

「ふふっ、おかしな事言うね」

「そんなにおかしかったか……?っと、もう昼休みが終わるな」

「あ!私、次の授業のプリントを運んでくれって頼まれてたんだった!」

「大変そうだな、手伝うぞ」

「いいよ、そんなに多くないし」

「そうか……?じゃ、大変だと思ったら次から言ってくれ。手伝うからな」

「うん、その時はお願いね」

「ああ。んじゃ、俺は先に戻る」

「うん、またね」

俺は片手を挙げて答える。

にしても……本、借りられなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二日目にあった吸血鬼関連の出来事はこんなもんだな」

「ふーん、委員長にも優しくしてたんだー?」

「いや、それは……」

「むー……」

「ああもう、撫でてやるから怒るな」

「ん……うん、許してあげる」

「じゃあ、次は……その一週間後だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間かけてやっと二冊読み終わるとは……海外文学恐るべし……。

「あ、緋月君」

「おお、委員長か」

「今回は『ひゃいっ!?』って言わないんだね」

「言うかっ!」

二度と言わねぇよ。

「あ、緋月君、それ読み終わったんだね」

「ああ。長かった……」

「そんなに長いかなぁ……」

「長いだろ。で、なんか用があるから声をかけたんじゃないのか?」

「あ、そうそう。放課後、桜坂君と一緒に屋上に来て」

「?ああ、わかった」

「それだけ。じゃ、後でね」

「ああ、走ってこけるなよ」

「大丈夫だよ――あっ(ズベッ――ビタン!)」

「あ」

痛そうな音したな……。

「いてて……」

「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫……」

あ……スカートが。

「す、スカート……」

「え――あっ!」

耳まで真っ赤だな。

「み、見た!?」

「いや、見てない」

ほんとは見えたけど。

「よ、良かったー。じゃ、私は行くね」

「ああ、気を付けろよ」

「わかってるよ!」

ああ、また走って……水色しましまが見えちゃうぞ。

 

 

 

 

 

 

「で、放課後屋上って言われたが……」

「なぜ本人がいないのでしょう」

うーん……どういう事だ?

「あ、教師の雑用をさせられてるとか?」

「ありえますが……っ!霊斗!避けろ!」

「え?っておわあっ!?」

なんか飛んできたぁ!

「これは……氷?」

「死ぬだろうが!誰だ!」

ん?貯水タンクの上に誰か……。

「あ!委員長!」

「ばれたかぁ……にしても、桜坂君は良い感覚してるね」

「それはどうも、"雪女"さん?」

雪女?

「水色しましまの委員長が雪女ぁ!?」

「見てないって言ったじゃない!嘘だったの!?」

「あ。適当に言ったんだけど……当たった?」

見たけど。

「~~~~っ!死ねぇーっ!」

「危ないって!止めろ!」

「はいはい、そこまで」

サンキュー久遠。

「で、委員長は私達に話があって来たのでは?」

「うん……ほんとは緋月君はいなくてもいいんだけど」

「あれ、俺だけ要らない子?」

「では霊斗、離れていてください」

「ご、ごめんね、緋月君」

「良いよ。じゃ、俺扉の向こうにいるから」

男はクールに去るぜ。

ま、聞き耳は立てるんだがな。

『桜坂君はもう知ってると思うけど……反人外派が動き出したみたい』

『やはりですか。狙いは……恐らく霊斗でしょうね』

『うん。人間が人外になるのは本来有り得ないからね。イレギュラーは消しておきたいんだと思う』

『となると……"あれ"の開発を急がないといけませんね』

『早くて来週には本格的に動き出すと思うから……』

『ええ。急ピッチで開発します』

『お願いするね』

『任せてください――霊斗、聞いているのでしょう?事情は把握しましたか』

ばれてたのかよ。

「ああ。大体わかった」

「恐らく今現在のこちらの切り札は貴方です」

「んなこと言われてもな……」

「大丈夫。緋月君なら出来るよ。だって、吸血鬼の事を知るためにあれを読んだんでしょ」

「わかってたのかよ……」

「まぁ、吸血鬼化のコントロールは桜坂君に教えてもらってね」

「だ、そうだ。久遠、頼めるか?」

「ええ。ただし、開発を手伝ってもらうことになりますがね」

「わかった」

「あ、桜坂君。あと、もう一つだけいい?」

「ええ、構いませんが」

「じゃ、じゃあ……」

ん、なんだこの流れ。

「桜坂君、君の事が好きです」

「申し訳ありませんが、その気持ちは受け取れません」

は?即答?

「あ、うん……そ、そうだよね。私なんて――」

「ですが、とりあえず霊斗の件が一段落するまで考えさせてください」

「え?」

ん?なんかデジャ・ビュ?

「霊斗の吸血鬼化のコントロール。それが出来るようになったら私と付き合ってもらえますか」

「は、はい!喜んで!」

おぉ、なんか久遠がかっこよく見える。

それに比べて俺は……。

全然デジャ・ビュじゃなかったわ。

「では霊斗、早速訓練ですよ!」

「嫌だぁぁ!」

なんでこんなにやる気なんだよ!

あ、冷静なフリしてほんとは嬉しいんだな?

「ああ、さっさと出来るようになってやるよ」

「言いましたからね?」

「緋月君、がんばれー」

この後、死ぬほど訓練して、その日のうちに出来るようになったのは余談だ。




次回も思い出編です。
じゃ、また。


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ちょっとした思い出2

続きです。


「ほぇー、久遠と雪ちゃんがねぇ……」

「俺も意外だったな」

「それでそれで?次は?」

「あぁ、次はその翌日だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい久遠、開発って何するんだ?」

「そうだな、基本は魔力をカートリッジに込めるだけだな」

「魔力?」

「吸血鬼化したときに使えるようになるエネルギー源みたいなものだな。普段でも訓練すれば使えるようになる」

「まじか……で、カートリッジとはなんぞ?」

「これだよ」

久遠の手にあるのは……

「マガジン?」

「基本的にはそうだな。それをこいつに装填する」

「銃……か?」

「正式名は"試作型魔弾拳銃"だな。これを使うと殺さずに戦闘不能にできる」

「へー……スタンガンとかで良くね?」

「効かない場合があるからな」

「なるほど、理解した」

「じゃあやってみてくれ」

「はいよ」

エネルギーを込めるように……そいっ!

ボンッ!

「やりすぎだ馬鹿者」

「ご、ごめん」

「私が手本を見せるから」

久遠がカートリッジを握ると、わずかにカートリッジが発光している。

「ファンタジーだな」

「諦めろ、お前ももうこちら側だ」

はぁ……じゃ、もう一回やるか。

そっと……力を……。

「おお、成功だ。だが……」

「何か問題でもあったか?」

「いや、この属性……初めて見る属性……」

「属性?」

「ああ。特に強弱関係とかはないんだが、例えば小雪なら"氷属性"。私や一樹は"木属性"だ。だが……」

「俺の場合、それらに該当しない、と?」

「ああ……まぁ、こちらで調べておこう」

「頼んだ。で、後は?」

「今日は十分だ。助かった」

「いいさ。それより、この後委員長とデートだろ?頑張れよ」

「んなっ!……まぁ、頑張る」

はぁ、リア充め。

「んじゃ」

「また明日」

俺はここで帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久遠って天才なの?」

「ああ、こちらの方面に関してはな」

「で、次はいつ?」

「いや、まだこの日に事件が起きたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた」

吸血鬼化するの、疲れるんだよな。

に、しても……謎の属性か。

「わっかんねぇなぁ……」

「ならば、教えてやろう、少年」

誰だ!?

「ふむ、良い具合に成長している。この短期間でここまでとはな……やはり君は危険だな」

覆面の男……。

「何者だ?」

「反人外派、と言えば分かるか?」

「っ!」

こいつは危ない。

本能的な部分が危険信号を発している。

逃げよう。

「逃がさぬよ」

「ぐぁっ!?」

速い!

「クソッ!」

「甘い」

「ぐっ!」

駄目だ、このままじゃ勝てない。

「少年、本気でかかってくるがよい。まだ吸血鬼化していないだろう」

「ばれてたのかよ……じゃあ、本気でいくぞ‼」

やりたくはないが……仕方ない。

俺が吸血鬼化したときの変化……それは。

「緋色の瞳に真紅の髪が一房。噂通りの見た目だな」

「そこまで知られてんのか。俺も有名人だな」

「当たり前だ。人間が人外になるなど本来有り得ない」

「だが、そのイレギュラーが発生した。そしてその脅威を取り除きに来た、ってとこか?」

「ふむ、良い勘をしている……」

よし、今だ!

「(ガッ)遅いな。予備動作が見え見えだ」

「チッ、まだ見切られるのか」

「ほう、まだ速くなると?」

「ああ。このくらいなっ!」

「(ピッ)む……。ここまでとなると……勝ち目は薄いか……」

「どうする?」

「今日の所は一端退かせてもらおう」

「ああ、そうしてくれ」

「では、さらば」

暴風とか発生させんじゃねぇよ!

わざとだろ!

「ふぅ、助かった……」

ああ、急にどっと疲れが……。

あ、まずっ……力が入らねぇ……。

(ガッ)

ん、誰……だ?

「全く……無理して。駄目だよ?」

「あ……ま、ね?」

「今はゆっくり眠って。おやすみ」

意識が途切れる瞬間、天音に翼と尻尾がついてるように見えたのは気のせいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、俺は吸血鬼化を解いたところまでは覚えてるんだけどなぁ……」

「へ、へー。大変だったんだね」

「まぁ、その後家に居たってことは、久遠か一樹辺りが助けてくれたんだと思うんだが……」

「う、うん」

「でも、二人共知らないって言うんだよなぁ……」

「へー……で、続きは?」

「ん、あとは……大体今日から三週間前かなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと……完成だ」

「やったね、桜坂君!」

「ああ、小雪のお陰だよ」

「あ、ありがとう……」

チッ

「あのー……お二人さん?」

「ひぁっ!?あ、緋月君?」

「どうした霊斗」

「いや、イチャイチャすんなら外行けよ」

「イチャイチャしてないよ!」

「なんだ?羨ましいのかい?」

「その喋りやめい」

「というか。緋月君だって天音ちゃんと散々イチャイチャしてるでしょ」

「っ!?なに言って!」

「図星か」

「図星ね」

「うわぁぁぁぁぁっ!そんな目で見るなぁぁぁ!」

恥ずかしい!恥ずかしいよぉぉぉ!

「まぁ、霊斗。こいつを持て」

「なんだ?魔弾拳銃じゃん」

「お前専用に調整してある。それと、お前の属性は……"神属性"だ」

「は?神?」

「ああ。他に例を見ない属性だが、過去に一人だけ……"神属性"を持った吸血鬼がいた」

「吸血鬼?」

「エリス・ラ・フレイア・カーミラ。吸血鬼カーミラの末裔で、その時代ではたった一人の純血の吸血鬼だったそうだ」

「たった一人……?」

「つまり、この"神属性"は……イレギュラーな存在にしか発現しない、極めて特殊な属性だ」

なんだそれ。主人公感パネェ。

「あと、これはあくまでも噂だが……彼女はまだ生きている、らしい」

「まぁ、吸血鬼だしな。不老不死でもおかしくないだろ?」

「いや、私でも不死ではないな。そもそも純血の吸血鬼以外に不老不死を持つ人外なんていない」

「なん……だと?」

じゃあ、俺も普通に死ぬんか……。

「まぁ、お前の武器は特殊だから、すぐ死ぬことはない……はず」

「おい、断言しろよ」

「まあ、緋月君。なんか凄いし、良いと思うよ?」

「ああ。まぁ、頑張るよ」

「じゃあ、今日は解散で。小雪、帰ろう」

「うん!あ、緋月君、またねー」

「ああ、お幸せにー」

はぁ、いろいろあって疲れたなぁ。

帰ろう。




じゃ、また次回!


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嘘と真実

書きます!


「今も生きてる吸血鬼ね……」

「まぁ、いるとは思えないけどな」

つか、生きてたらクッソババアだろうな。

「にしても、話してたら日も暮れちまったな」

「うん、帰ろっか」

「ああ、じゃあな」

「え?」

「え?」

なんだ?なんかおかしかったか?

「いや、じゃあな、じゃないでしょ?帰ろうよ」

「俺も帰るのか?」

「一緒に帰ろう?」

う、上目遣い……。

「わかったよ。行くか」

「バスあったかなぁ……」

「もっと速い方法があるぞ」

「え?タクシーとか?」

「いや。俺だよ」

「……えっと……どゆこと?」

「俺がお前を抱えて跳ぶ」

「……」

「ジェットコースターみたいなもんだ」

やっぱり嫌がるか……?

「な……」

「ん?」

「なにそれ!楽しそう!」

意外と好反応だな。

「やるか」

「やるやる!」

「よし、じゃあ……よっ、と」

「わわっ!びっくりしたぁ」

「ん、すまん」

「いいよ……それより、これ……」

お姫さま抱っこってやつだな。

「嫌か?」

「ううん、嬉しいかな」

「そうか……」

不覚にもドキッとしてしまった。

「じ、じゃあ行くぞ!」

「レッツゴー!」

吸血鬼化して……っと。

「おらぁっ!」

「おぉ!高い高い!凄い!」

「急降下するぞ!」

「ひゃほー!」

ダンッ!

「あ、足いてぇ……」

「凄いよ霊君!もう家まで半分だよ!」

「そ、そうか……」

足首捻った……。

「よ、よし!もう一回!」

「む、無理しないでね?」

「大丈夫だ。よいしょー!」

「おお!また高ーい!」

「うう、足がぁ……」

「霊君!着地体制!」

「え……あ!」

ダムっ!

「いてぇよぉ……」

「足首の向きがおかしいよ!?」

「ああ……外れてるかなぁ……」

よいしょっと。

「ふう、治った」

「治療が雑!」

まぁ、とりあえず家には着いたから、良いだろう。

「じゃ、じゃあな……」

「うん……お大事に」

帰った帰った。

「んで、さっきから着いてきてる奴、出てこい」

っと、出てきたのは女か……。

「気づかれていたのか」

「そりゃああんな勢いで跳んでる俺に着いてきてるんだ。おかしいだろ」

「ふむ。まぁ、お主に会うためにここまで来たのだからな」

「俺に……?」

「うむ」

「そうか、あんたも反人外派か」

「違うぞ?」

「え?」

反人外派じゃないのに俺に会いに……?

怪しいな。

「じゃあ、あんたは何者だ?」

「そうじゃな………エリス・ラ・フレイア・カーミラ、と名乗れば分かるか?」

「確か……唯一の純血の吸血鬼か?」

「いかにも。欧州からお主に会うため、わざわざ来てやったのだ」

「ふ~ん。で、なんの用だ?」

「お前の顔を見ておきたくてな。我が血を引く唯一の吸血鬼であるからな」

「……どういう……事だ?」

「確か……お主の母親は事故で死んだ、はずだな?」

「ああ。父親からはそう聞いている。だから再婚した、とな」

「ふむ。子供には信じさせやすいな……だが、それは嘘だ」

「なっ……!」

嘘……?

父さんが……俺に嘘を?

なぜ?

「本当の事は……お主の父親に聞くがよい」

「ま、待て!」

「さらばだ……」

霧化!?

追えない!

「クソッ!」

父さんと義母さんはしばらくは帰ってこない。

それまでは保留か……。

「なんなんだよ……」

「霊斗」

「!?」

嘘……だろ?

「父さん……」

緋月霊哉。

俺の父親だ。

「出張だからしばらく帰ってこないって……」

「ああ、あれは嘘だ。お前の今の義母さんと……離婚裁判に行っていたんだ」

「離婚……?」

「ああ」

「なんで……」

「お前を殺そうとしたんだよ。あいつがな」

「義母さんが……?」

「そうだ。あいつは反人外派だったんだ」

「そんな……」

つまり……俺が人外化したから、殺そうとした……?

「なんなんだよ……」

「辛いだろうが…まだ話さなくてはならないことがある」

「……エリスのことか?」

父さんの表情が変わった……。

「そうだ。エリス・ラ・フレイア・カーミラは……お前の母親だ」

「は?」

つまり……俺は……吸血鬼と人間のハーフ?

「俺は……」

「いいか、霊斗。お前は、吸血鬼と半人半魔のハーフだ」

「は?」

「俺は人間と猫又のハーフで、それと吸血鬼のハーフがお前だ」

「婆ちゃんがやけに若いと思ったらそういう理由かよ!?」

「だから俺もお前も猫化できるぞ」

「出来んのかよ!?」

猫か……便利そうだな。

「んで、エリスが俺の本当の母親だと」

「そうだ。しばらく行方不明だったんだが……数ヵ月前に再会してな。だから、再婚することにした」

「即決すぎる!」

ったく、なんて女たらしな父親だ。

「あと、お前、妹いるから」

「はぁ、妹ね。妹ぉ!?」

「そうだ。つか、腹へった。なんか作ってくれ」

「ったく。待っててくれ。さっと作る」

手洗いうがいはしっかりして……。

「うーん、ご飯は炊いてあるから、野菜炒めと……目玉焼きでいいか」

「お兄ちゃん適当だなぁ……」

「誰が適当だ」

失礼な奴だなぁ。

さて、人数は四人っと……。

四人?

「二人ほど増えてる!?」

「お兄ちゃん、どしたの?」

「だ、誰だお前!」

「誰って、お主の妹だろう」

「エリ……じゃなくて母さん!?」

妹ぉ!?

あれ、さっきもこの反応したな。

「妹のエイラ・ラ・フレイア・カーミラだよ。よろしくね、お兄ちゃん」

「あ、ああ」

「因みにお兄ちゃんと一歳しか違わないよ?」

「そうなのか」

にしても……綺麗な金髪だな。

「ねぇお兄ちゃん、お腹すいた!早くなんか作って!」

「できたぞ」

「はやっ」

「霊斗も料理が上手になったな」

「うむ、霊哉が昔食べさせてくれたものにそっくりだ」

「私の方が上手だもん!」

「じゃあ、エイラの料理も今度食べさせてくれよな」

「うんっ!」

なんだかんだ、前より楽しいかもしれない。

明日からも、頑張らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで霊斗。お前のフルネームを知っているか?」

「知らないけど」

「教えてやろう!お前の名は――――レイト・ラ・フレイア・カーミラ・緋月、だ!」

「長い!普通に緋月霊斗でいいよ!」




はい、急展開ですみません。
じゃ、次回。


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彼女の正体

書きます


俺は今、人生の岐路に立たされている。

と、いうか。死にそう。

「……どうしてこうなった……」

事の発端は数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊君!おっはよー!」

「んだよ朝から、眠らせてくれ」

「吸血鬼だからって寝てていいわけじゃないんだよー!」

「うるさい!つか、どうやって入ってきやがった!」

「え?窓から?」

「鍵かかってるしここ二階だしおかしいだろうが!」

「おお、ナイス肺活量」

「全く……せめて午後にしてくれ」

「やーだー!デートしようよー!」

「出掛けたくない。晴れてるし」

「むー」

なんでそんな出掛けたがるんだよ……だるいんだって……。

「お兄ちゃん?なに騒いで……は?」

「おうエイラ、おはよう」

「お兄ちゃん、その女……誰?」

「誰って、ああ。エイラは会ったことないんだよな。俺のか、彼女の天音だ」

「彼女……?」

「ど、どうしたんだ?」

「知らない!お兄ちゃんの馬鹿!」

バチーン!

「おぐっ!?な、なんで殴った!?」

あ、逃げやがった。

「なんなんだ全く……」

「ねぇ、霊君?」

!?

「な、なんだ?」

「妹がいるなんて言ってなかったし一回も会ったことないよ?」

「あ、ああ。父さんの再婚相手の子供だからな」

「ふーん……あの子も吸血鬼だよね?」

「!?な、なんでわかったんだ!?」

「話してるとき、牙が見えたの……あと、魔力が霊君と似てたから」

「な、なんでそんな事が?」

「まだわからないんだ?ほんとに鈍感だね」

「お、おま……それ……」

翼に尻尾?

人外?

「霊君は前にも二回、これを見てるはずなんだけど……覚えてないかな?」

二回……。

一度は夏休み前。

そして本当に初めて見たのは……。

「反人外派と……戦った時……」

「やっぱり覚えてたんだね?昨日話してくれなかったから覚えてないのかと思ったよ」

「いつから……なんだ?」

「ん?何が?」

「いつから天音は人外になったんだ?」

「私が人外……サキュバスになったのは……霊君より少し前。高校に入学した年の秋、だよ」

そんなに前から?

「サキュバスって……確か、人の夢に浸入してあんなことやこんなことをするって……」

「言わないでばかっ!(バチーン)」

「はうっ!?だ、だって事実だろ!」

「うぅ……私はまだ少ししかしたことないもん」

「あんのかよ!」

「したけど、霊君だけだもん!」

「俺にはしたのかよ……ってえぇ!?」

「う……最近……ちょっとだけ」

「じゃ、じゃあ最近お前と(自主規制)したりする夢見んのは……」

「言うなぁー!私だってやったあとに恥ずかしくなるんだよ!?」

「じゃあやんなきゃいいだろ!?」

「それは……所謂吸血衝動のようなものだから……」

「ああ、なるほど。それを押さえられない、と」

「うう……最近は押さえられるようになってきたもん……」

「……まぁ、俺だったらいつでも付き合ってや(ゴギッ)え……」

「お兄ちゃんは、変態だったんだね……」

「エイラ……?」

「霊君!?首折れてる!」

「え、まっ、待って……」

あ、意識が……なくならない。

痛い。

とにかく痛い。

「が……あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

「まったく、妹を構わないでサキュバスなんかの誘惑に負けるなんて……カーミラ家の名折れだね」

「霊君に……なんてことを……」

「やる気みたいね。サキュバスごときが吸血鬼に勝てると思わないで」

「吸血鬼?そんな貧弱な種族に負けないよ?」

「……」

「……」

まずい。非常にまずい。

何とかして止めないと……。

しかし、綺麗に折れてやがる。

身体が全く動かない。

声も出ねーし……どうする……。

回復を待つわけには行かない。

「吸血鬼を舐めたら痛い目見るわよ」

「舐めてるんじゃなくて見下してるの。お兄ちゃんが捕られるのは悔しい?」

「ぐっ……」

ゆ、指が動くようになった……。

そうだ!母さんに電話を……。

「……」

番号知らねぇ!

駄目だ。二人が魔力を放出し出した。

家も倒壊するな。

万事休す……か。

「そこまで」

「っ!」

「お、お母さん!」

母さん……貴女が天使に見える。

「エイラ……霊斗の首を折った上に緊急時以外の吸血鬼化。我らの約束、忘れたわけではないだろう?」

「う、う……だって……」

「如何なる理由があろうと客人に手をあげるなと言ってあるはずだが」

「そ、それは……」

「後でお仕置きが必要なようだな」

「ひっ……」

「さて、客人よ。我が娘が大変な無礼を……申し訳ない」

「い、いえ。私も熱くなっちゃったので……」

「お詫びと言ってはなんだが、霊斗の精を好きなだけ搾り取ってもらって構わないぞ」

「ありがたき幸せっ!ぜひお義母さまと呼ばせてください!」

おかしいだろ!俺が犠牲になってるだけじゃねーか!

「ふむ。将来的に霊斗と結婚……吸血鬼と夢魔のハーフ……ありだな」

なしだろ。

「では私は失礼する。霊斗を末永く頼む」

「こちらこそ……不束者ですが」

あぁ、母さん……行っちゃったよ。

「じゃあ霊君……しよっか?」

「待て待て!いきなり服を脱ぎ出すな!」

「え、だってお義母さんの許可ももらったし……」

「だからっていきなりすぎるって!もっと良く考えろ!つか、俺に心の準備をさせろ!」

「ん~……じゃあ、明日?」

「しばらく待て!」

「霊君はヘタレだなぁ……」

「うるせぇ……こちとら生き返ったばっかだっての」

「病み上がりみたいな?」

「そう。だからしばらく安静にするから」

「わかった。じゃ、また夢の中でね」

「わかってねぇな!」

はぁ……最近いろいろありすぎて辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、霊君のお母さんって外国の人?」

「ああ。欧州の方だかって」

「名前、なんて言うの?」

「エリス・ラ・フレイア・カーミラ」

「え、こないだの……」

「そうだ。俺も正直驚いてる」

「じゃあ、霊君のフルネームってどうなるの?」

「レイト・ラ・フレイア・カーミラ・緋月、だな」

「長っ!」




ではまた次回。


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人外デート~序章~

書くよ


「あふ……眠いな……」

朝の9時。

なんでこんな時間に起きてしまったんだ……。

原因は……。

「あいつ……早速夢の中に入ってきやがって……」

そうだ。天音に夢の中で犯されかけた。

「前までは夢だと割りきれたけど……昨日の今日じゃなぁ……」

天音がサキュバスだと知ったのが昨日。

あのまま午後は買い物に付き合わされた。

そしてゆっくり眠ろうとした矢先に襲われた。

「ふぁ……仕方ねぇ、飯でも食うか」

よし、そうと決まればキッチンに行こう。

「ん?誰か料理してる?」

キッチンを覗いてみよう。

「ん、霊斗か。おはよう」

「母さんか。おはよう」

「今日は早起きなのだな」

「朝から夢の中で天音に襲われたんだよ……」

「そのまま童〇も捨てれば良かったではないか」

「朝から何言っちゃってんの!?しないから!まだしないから!」

「ふむ、つまりいずれヤるつもりでいると」

「今は考えてないって意味だよ!」

「お主の父親は私と簡単にヤったがなぁ……」

「聞きたくなかった!あのケダモノ親父!」

父さん……しっかりした人だと思ってたのに。

「ケダモノ……確かにな。たまに猫姿で襲ってきたぞ」

「まさかの猫プレイ!?」

と言うか、それを許容できる母さんって……すげぇ。

「ところで霊斗、今日は夢魔の娘とデートではなかったか?」

「そういえばそうだね。母さん、朝御飯できたら呼んでくれる?支度してくるから」

「うむ。今日は晴れているからな。日光対策はしっかりな」

「わかってるよ。ありがと」

なんだかんだ、良い人なんだよなぁ……人?吸血鬼か。

さて、金はまぁそれなりにあるし……服だな。

「まぁズボンは……ベルト着けてこ……あ、これでいいか」

長ズボンか……熱そうだな。

「上は……長袖でいっか」

やべぇよ。熱中症で死ぬやろ。

「……まぁ大丈夫だろ」

まぁこんなもんか。

『霊斗ー、出来たぞー』

「今行くよ」

ちょうどだな。

にしても、母さんの作るご飯は初めてなんだよな。

「おぉ……旨そう」

「和食は久しぶりに作ったからな。味の保証は出来ぬ」

「まぁ大丈夫だよ。じゃ、頂きまーす」

卵焼きか。よし。

「ぁむ……旨い!」

「そうか。それは良かった」

「こっちは……焼鮭だ。久しぶりだなぁ……」

「昨日魚屋の大将がオマケしてくれたのだ」

おっちゃんか……美人に弱いからな。

うん、これも旨い。

「味噌汁は玉葱だ。自信作だ」

「おお……旨い!」

うちの母さんはハイスペックです。

「ふぅ……ごちそうさまでした」

「どうだ?外国に住んでいたとは言え、和食も得意なのだ」

「うん。すごく美味しかった。父さんが羨ましいな」

「そうか。では私は霊哉を起こしてくる」

「わかった。片付けはやっとくよ」

うん?やけに嬉しそうに父さんの部屋に向かったな。

あ、朝からヤったりしないよな……?

まぁ、気にせず片付けだ。

「はぁ……確か今日は遊園地だったよな……」

本当に遊園地は嫌だなぁ。

ジェットコースターとかまじで無理。

憂鬱だ。

「あ、寝癖直してねぇや」

直さないとマヌケみたいだからなぁ……。

「ん、なんだこの寝癖……直らないな……」

猫耳みたいな寝癖だな……猫耳?

「って、猫耳がついてる?」

試しに顔の横に手をやってみる。

耳がない。

つまり。

「微妙に猫又化してる……?」

嘘だろ!?こんなんで天音に会ったら……犯される。

「あいつ絶対『猫耳霊君かわいいー!』とか言って襲いに来るだろ!」

どうする、俺!

「とりあえず寝癖直し使って……(ピョイ)駄目だぁぁ!」

くっ……どうすれば良いんだ!

「はっ!帽子を被れば!」

そうと決まれば、さっさと帽子を!

「って……不自然に浮くなぁ……」

むぅ……どうする。

「他に何か(ピンポーン)ファッ!?」

まずい!そうだ!フードを被れば!

「(ガチャ)おはよう天音、行こうか」

「なんでフード被ってるの?(バサッ)あ……」

なんで取るんだよぉぉぉぉぉぉ!

「……」

「……(スッ)」

「……」

「……(ナデナデ)」

「……」

「……(ツン)」

「(ビクッ)……」

「霊君」

「はい」

「猫耳?」

「うん」

「本物?」

「本物」

「……(ツン)」

「……(ピクッ)」

「霊君」

「はい」

「抱き締めていい?」

「駄目」

「駄目って言われても抱き締めるもーん!ぎゅー!」

「離せェェェェ!」

離れねぇ!なんだこいつ!

「離せ!離せよぉぉぉ!」

「やだ!もっと猫耳霊君をモフモフするの!」

「ひいいい!誰かっ!誰かぁぁぁぁ!」

「ふふふ……遊園地は中止して家においでよぉ……」

駄目だこいつ!目が正気じゃねぇ!

「モフモフモフモフ……」

「ひいいい!」

「モフモフモフモフモフモフモフ……」

「回数が増えてる!?」

「モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……」

「ちょ、熱っ、摩擦がっ!」

天音がおかしいよぉぉぉ!

「あー、霊斗、お前も大変だな」

「父さん!助けて!」

「無理だな。お前は今無意識に吸血鬼の魅了を使ってるからな。さらに中途半端な猫又化……手に負えない」

「そんなぁぁぁぁ……」

「あと、朝からひどい目にあったからお前も苦しめ」

「最悪だあんた!」

つか、何があった。

「どうにか助けて!あっ!母さんを呼んで!」

「エリスなら俺の部屋のベッドで失神してる」

「何があった!?」

「いや、朝から(自主規制)しようとしてきたから、お望み通り(放送事故)してやったら失神した」

「「なにやってんの!?いや、ヤってんの!?」」

おお、天音が正気に戻った。

「霊君のお父さんとお母さんは朝からヤったりしてるの!?」

「俺も初耳だ」

「だろうな。嘘だし」

「嘘かよ!」

「びっくりしたぁ……」

じゃあ、なんでそんな嘘を……。

「適当なこと言っただけ」

「「内容が最低すぎる!」」

あと心を読むな。

「それより霊斗。遊園地に早く行かなくていいのか?」

「そうだ!天音!急ぐぞ!」

「うん!霊君お願い!」

「うし、行くぞ!」

天音を抱えて全力疾走することになるとは……案外悪くないな。

楽しい。

自分の力で速く走れるのは。

まぁ、これならなんとか遊園地の開園前には着くかな。

 




下ネタが多かった気がするが、後悔はしていない。
反省はしてます。


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人外デート~本番1~

書きます。


「朝から疲れた……」

「霊君、結局猫耳直ってないけど……」

「諦めた」

「あはは……」

なんだって今日に限って……。

フード被ってるから大丈夫だろうが……心配だ。

「あ、見えてきたよ!」

「意外と近くなんだよな……」

「近くはないでしょ」

いや、全力疾走したからか。

「ちょうど開園時間だね」

「ああ。まだ空いてるだろ」

「じゃあ……ジェットコースター行こ!」

「おーう。行ってらっしゃい」

「え?」

「ん?」

「いや、行ってらっしゃいって……一緒に行くんだよ?」

「いやいやいや。俺ジェットコースター苦手だから」

「行くよ!」

「嫌だ!」

「むー……じゃあこっちも強硬手段に出るしかないね」

なんだ!何をする気だ!?

「ふふふ……サキュバスだけの特権……"催眠"!」

催眠!?まさかっ!

「これで私の言うことしか聞けないように……あれ?」

「うん、全然効かねぇな」

「なんでぇー!」

危ねぇ……。

「うー……行こうよー」

「やだよ」

「いーこーうーよー」

「嫌だって」

「……駄目?」

うあーっ!涙目上目遣いは駄目だって!

「ぐ……仕方ねぇな」

「やったー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷ……気持ち悪い……」

「だ、大丈夫?」

三半規管がおかしくなりそう……。

「吐き気が止まらねぇ……」

「ち、ちょっとそこのベンチで休も!」

「ああ……悪いな」

はぁ……なんてこったい。

「ん……あれ、久遠と小雪ちゃんじゃない?」

「本当だ。偶然だな」

これは嘘。

実は今日は一樹からもらったチケットで来ている。

あいつらも居るはず。

「呼んでみよっか」

「やめろ。邪魔したら悪いからな」

「じゃあ俺達は邪魔させてもらおう」

「やっほー、天音ちゃん」

「美桜ちゃん!?」

「一樹か……」

「なんだ。案外仲良くやってるんだな」

「ねぇ、一樹!聞いてよ!霊君ってばジェットコースターだけでへばってるんだよ!」

「霊斗は酔いやすいからなぁ……」

「じゃあ……皆でお化け屋敷行こうよ」

「美桜ちゃん……あわよくば一樹に抱きつこうと?」

「そ、そんなこと!……ある、かな 」

「良かったなー、一樹」

「まぁ、悪くはないな」

素直じゃねぇな。

ま、行くか「霊斗に一樹。何やってるんだ?」げ……。

「久遠……」

「あと委員長か」

「緋月君に夜桜君、久しぶり」

「小雪ちゃん!やほー!」

「委員長、久しぶりー」

ふぅ……こうなったら……。

「レッツ!お化け屋敷!ルール説明、一樹!」

「ルールは簡単だ。どのチームが一番怖がりかを決める。判定にはこの小型マイクをつかう。最も悲鳴の小さかったチームの優勝だ」

「「「なんか始まった!?」」」

ふふふ……俺達の秘技。名付けて"いきなり選手権"。

まぁ、楽しむだけだよな?

「またか……。まぁやるけどよ」

久遠も乗ってきた。じゃあ決定だな。

「最初に久遠、小雪ペア!」

「わ、私達!?」

「よし、行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷

久遠side

 

「小雪、大丈夫か?」

「う、うん……大丈夫」

怖がってるな~。

おっと、蒟蒻か。

「(ヒョイ)よっと」

「(べちゃっ)ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

あ、しまった。

「ひぇぇ……久遠君……」

「よしよし……っと(ヒョイ)」

手か。避けるのは簡単。

問題は……。

「(ぴとっ)うひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

またか……。

「ぐすっ……ひぐっ……」

「よしよし。大丈夫大丈夫」

気を付けないとな……。

ん?

唐笠お化け「ばあっ!」

「うおっ」

「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁ……あぅ(カクッ)」

「ん?小雪?大丈夫か?」

失神してる……。

仕方ない。リタイアだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷

小雪side

 

久遠君がいれば大丈夫。大丈夫。

「小雪、大丈夫か?」

優しいなぁ……。

「う、うん……大丈夫」

でも怖いなぁ……。

ん?久遠君が横に動いて……。

「(べちゃっ)ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

何!?今の何!?

怖いよぉぉ……。

ん、また久遠君が?

「(ぴとっ)うひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

もうやだよぉ……。

「ぐすっ……ひぐっ……」

「よしよし。大丈夫大丈夫」

久遠君……助けてぇ……。

唐笠お化け「ばあっ!」

いやぁぁぁぁぁぁぁ!?

「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?……あぅ」

あ、もう無理……意識が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、リタイアしたと」

「まぁな。下手すりゃ最下位だな」

「おお大変だなぁ」

思ってないけど。

じゃあ、次は……。

「俺達が行こう」

「そうか。じゃあ次は一樹、美桜チーム」

さて、こいつらは手強そうだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一樹side

 

「さて、美桜。お前は大丈夫だよなぁ?」

「う、うん。全然平気だひょ。(ガタガタガタガタ)」

あ、駄目だこれ。

む、前方から……蒟蒻?

「子供だましか(スッ)」

「(べちゃっ)~~~!?」

おお。声を押し殺した。

「美桜?本当に大丈夫だよな?」

「……(コクコク)」

っと、次は手か。

「ふっ(ヒュッ)」

「(ぐわし)いやぁぁぁぁぁぁぁ!?掴まないでぇぇぇぇ!」

「おいこらぁ!お化け役の奴!ぶっ殺すぞ!」

手の人「す、すみません!」

まったく。負けたらどうすんだ。

「ううぅ……一樹ぃ……」

可愛い(確信)

次は唐笠お化け?

唐笠お化け「ばあっ!」

「「……」」

唐笠お化け「あ、あれ?」

「行こうか」

「うん」

なんか冷めるなぁ……つまらん。

久遠達はここでリタイアだったな。

次は……ゾンビか。

ゾンビ「ウボァァァ」

「……(すっ……がっ)」

ふっ、足掛けてやったぞ。

ゾンビ「あっ」

「(がっ――ずりっ)ひゃぁぁぁぁぁぁ!?スカートがぁぁぁ!」

やべぇーっ!

ゾンビ「……(頭ぶつけて気絶)」

「ふぇぇ……一樹……見た?」

「……すまん、少し」

「もうやだぁぁぁぁ!」

致し方ない。リタイアだな。




また次回!


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人外デート~本番2~

書きます。


お化け屋敷

美桜side

 

うーん、怖がるフリして一樹に甘える作戦だったんだけど……。

「さて、美桜。お前は大丈夫だよなぁ?」

「う、うん。全然平気だひょ。(ガタガタガタガタ)」

薄暗くて本当に怖い。もう無理。

にしても涼しいなぁ……。

「(べちゃっ)~~~!?」

何!?なんかヌルッとしてた!

「美桜?本当に大丈夫だよな?」

「……(コクコク)」

一樹……頼りになる……。

「(ぐわし)いやぁぁぁぁぁぁぁ!?掴まないでぇぇぇぇ!」

今度は手!?いきなりだとビックリするって!

「おいこらぁ!お化け役の奴!ぶっ殺すぞ!」

手の人「す、すみません!」

い、一樹……私の為に……。

「ううぅ……一樹ぃ……」

もうダメ、リタイアしたい。

唐笠お化け「ばあっ!」

「「……」」

唐笠お化け「あ、あれ?」

「行こうか」

「うん」

怖くないなぁ、こいつ。

ん?前から誰か

ゾンビ「ウボァァァ」

「……(すっ……がっ)」

ん、一樹?何して――

ゾンビ「あっ」

「(がっ――ずりっ)ひゃぁぁぁぁぁぁ!?スカートがぁぁぁ!」

いやぁぁぁぁぁぁぁ!?なんでピンポイントで下げてくの!?

ゾンビ「……(頭ぶつけて気絶)」

「ふぇぇ……一樹……見た?」

「……すまん、少し」

「もうやだぁぁぁぁ!」

うぅ……恥ずかしい……リタイアしようよぉ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……それは災難だったね……」

「天音ちゃん……私、もうお嫁に行けない……」

「大丈夫だ。一樹が貰ってくれるさ」

「なっ!?霊斗お前、なに言って!」

「おやおやぁ?照れてるのかなぁ?」

「小雪まで……」

「まぁ一樹なら責任は取ると思うし」

「久遠……」

さて、一樹を程よくいじった所で。

「さて、俺達の番だな。天音、行くぞ」

「はーい!じゃ、行ってくるねー」

この勝負、貰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷

霊斗、天音ペア。

 

さて、入った訳だが……しっかり見えるな。

吸血鬼にお化け屋敷って反則なんじゃ……。

「さて、天音。準備はいいか?」

「オッケーだよ!」

こいつ元気だなぁ……。

さて、最初は……蒟蒻か。定番ですな。

「よっ(ヒョイ)」

「わわっ(スッ)」

あ、やっぱり天音も見えてるんだな。

ま、進むか。

「霊君、やっぱり見えてる?」

「まぁな……」

手か……じゃあ……。

「お疲れ様です(握手)」

手の人「あ、どうも」

「頑張ってね(タッチ)」

手の人「楽しんでくださいね」

いい人だなぁ。

はい次次。

唐笠お化け「ばあっ!」

「おー、よくできてんな」

「ちゃんと和紙で張ってあるんだね」

唐笠お化け「……」

「あ、頑張ってください」

唐笠お化け「どうも……」

あれ、落ち込んでる?まぁ、ビックリしないから仕方ないね。

「いやー……涼しいな」

「ふふっ、霊君の猫耳がピクピクしてる」

なんか動いちゃうんだよ。ほっとけ。

お、次はゾンビか。

ゾンビ「ウボァァァ」

「演技力高いっすね」

「本物みたーい!メイクとか!」

ゾンビ「あ、自分でやったんですよ」

「凄いっすね……あ、頑張ってください」

ゾンビ「どうもー」

いやー、まさか自分でやってるとは。

あ、そういえば一樹達はここでリタイアだったっけ。

この先は……お、後もうちょいじゃん。

「ん、なんだあれ、テレビ?」

砂嵐状態……地デジにしてないのか?

「ひっ……霊君……あれ……」

まてよ、テレビ画面から手が……。

「いっ、いや。まさかな?CGだろ?」

「でも……近付いてきてない?」

つか、人?が出てきてる?

「さ、貞子みたいだな」

「うん……なんか、ヒトならざる者みたいな雰囲気……」

「……」

「……」

……あ、出てきた。

なんかゆらゆらしてるし……。

……これは……。

「霊君!走ってきた!」

「っ!出口はこっちだ!走れ!」

逃げるしかねぇ!

「うわぁぁぁぁぁ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

出口だぁぁぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……死ぬ……」

「本当に、怖かった……」

た、助かった。

「霊斗、大丈夫か?」

「一樹……あのお化け屋敷、ヤバいぞ」

「ヤバい?」

「人外が居やがる」

「そうか。どんなのだ?」

「貞子みたいなの」

「貞子?」

「ああ。テレビからヌルッと……」

「待て。あのアトラクションにテレビなんてないはずだぞ?」

「は?どう言うことだ、久遠」

「私は小雪を抱えてあの道を通ってきたんだが……テレビなんかどこにもなかった」

って……ことは……。

「あれって……」

「本物の幽霊?」

嘘だろ……。

「まぁ、着いてきてる訳じゃないしいいんじゃないか?」

「そういうもんか?」

「そういうもんだろ……んじゃ、解散でそれぞれ楽しむように。以上!解散!」

「はぁ……じゃ、行こうか……天音?」

「う、うん……あのね……」

「なんかあったか?」

「腰が抜けちゃって……」

「だから座りっぱなしなのかよ……んじゃ、よっと」

「あ……ごめんね」

「いいんだよ。それよりそろそろ飯にしようぜ」

「うん……何食べる?」

「うーん……どうするか……」

「あ!あの屋台で焼きそばとか買って食べよ!」

「そうだな。んじゃ、俺はたこ焼きにするかな」

よし、買おう。

 

 

 

 

 

「人を抱えたまま買い物するって大変だなぁ」

「ご、ごめんね。もう大丈夫だから」

「そうか……ほら、焼きそば」

「ありがと……頂きます」

「頂きますっと……熱っ」

「んー。おいしい」

「あふふひふぇ、あひはははははひ(熱すぎて、味がわからない)」

「霊君は猫舌なんだね。あ、焼きそば食べる?」

「(ごくん)ああ。貰おうかな」

「はい、あーん」

「い、いや。自分で食えるし」

「あーん」

「外だし、恥ずかしいだろ」

「あーん」

「……あーん」

「うん、よろしい」

「(もぐもぐ)ん、旨いな」

「でしょ?あ、私もたこ焼き貰っていい?」

「ああ。ほら」

「ん」

「……ほら、あーん」

「あむ……おいしいっ」

「そりゃ良かった」

恥ずかしいな……ん?

「なあ、天音。このあと、あの観覧車……乗るか?」

「観覧車!乗る乗る!」

喜んでんな……。

「んじゃ、さっさと食うか」

「うん!」

俺もあと焼き鳥と肉まんも食っちまわねぇとな。




また次回!


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人外デート~終章~

書くよ。


さて、この後は……観覧車か。

と、いうわけで列にならんでいるわけだが。

「……(カタカタカタ)」

「霊君……大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ」

「そう……」

って大丈夫な訳あるか!

観覧車だぞ!高いんだぞ!揺れるんだぞ!

何を隠そうこの俺、高所恐怖症である。

観覧車とか怖すぎ。

「あ、私達の番だよ!」

「そうだな……」

ああ……扉が閉まる……。

「……(カタカタカタ)」

「霊君……」

「ひゃい!?」

あ、噛んだ。

「霊君、怖いんでしょ」

「んなっ!そんなわけないだろ!」

「怖くないの?」

「……怖いです」

「やっぱりね。顔真っ青だよ?」

「仕方ねぇだろ……高い所は苦手なんだよ」

「もう、しょうがないなぁ……はい(ギュ)」

「な、おま……手……」

「これなら怖くないでしょ?」

「あ、ああ。サンキューな」

うん、感想を一言。

柔らかい。

「なんか落ち着く……」

「そう?ならよかった……あ、見て見て!もう頂上だよ!」

「ん……おお。絶景だな」

「わぁー……霊君とこんな絶景が見れるなんて、私は幸せだよ」

「俺だって天音みたいな可愛い奴と一緒に居れて幸せだよ。いつもありがとうな」

「か、可愛い……もう!恥ずかしいじゃん!」

「ごめんごめん。でも、今のは俺の本心だからな」

「ん……じゃあ……えいっ」

「な!?なんで急に飛び掛かって――ムグッ!」

「……」

「……」

「……」

「……」

「ぷはー……」

「ゴホッゲホッ……お、お前……何を……」

「ベロチュー」

「ブッフォッ!?」

「んー……ふぅ……。あ、もう一回していい?」

「駄目だ!ってかお前今サキュバスの力使って――んむっ!?」

「ん……ふ……」

「んーっ!んーっ!」

「んむ……ん……ぷはー」

「あ、あ、あぅ……」

ヤバい……力が入らない……。

「ふー満足満足。あ、もう下着くよ」

「か、肩貸してくれ」

「もう、仕方ないなぁ……はい」

「すまん……(ガクガク)」

降りよう。係員の人が、うわー……みたいな目で見てるから!

「ふー、楽しかったぁ!」

「そうだな。んじゃ、もう帰るか」

「あ、待って!ショップに寄ってからにしよ?」

「おう」

ショップねぇ……。

「あ、ねぇねぇ!見てこれ!」

「なになに……"じゃぱにーず・山"?」

「独特のデザインが良いよね!」

「そうか?……ん?」

なんだこのキーホルダー。

なになに……"恋人の誓石"?

富士の洞窟内の水晶を使用している、と。

買うか。

「天音、俺ちょっと買って来るから」

「あ、待って!私も買う!」

「ほら、貸してみ」

「えっ、良いよ。自分で払うから」

「いや、それくらいなら出してやるって……」

「自分で買わなきゃ意味ないの!」

「あっ、はい」

なんなんだ?

まぁ良いか。

んじゃ、自分の分を買って待ってるか。

にしても……地味に高いな。

「痛い出費だ……」

「お待たせー。じゃあ、帰ろっか」

「ああ……」

何使って帰るの?

「霊君……」

「はいはい。よっ……と」

また走るのか……。

「しっかり捕まってろよ」

「うん」

「んじゃ……ひとっ走り行きますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ……」

「お、お疲れ様」

「ああ……あ、そうだ。ほいこれ」

「なにこれ……"恋人の誓石"?」

「お揃いにできるかと思ってな」

「えへへ……ありがと。じゃあ、私からも。はい」

「おお、これは……万華鏡?」

「ちっちゃいから良いかなって。あ、これもお揃いだよ」

「なんだ、同じ事考えてたんだな」

「なんか照れ臭いね」

真っ赤じゃねぇか。

「天音」

「え、なに――んっ!」

「……」

「……」

「っは!か、観覧車の時の仕返しだ!」

「ふふ……霊君からキスしてくれるとは思わなかったなぁ……」

「~~~~っ!もう解散だ!」

「うん。またね、霊君」

「ああ。おやすみ」

「おやすみ」

ふぅ……やってしまった。

あああ!恥ずかしいぃぃぃぃ!

「恥ずかしい……死にたい……」

「不死の吸血鬼が死ねるわけが無かろう」

「うわっ!母さん!?」

びっくりしたぁ!

「ふむ……なかなか良い雰囲気であったな。あのまま吸血すれば尚良かったがな」

「しないって……」

「その割にはだいぶ吸われたように見えるが」

「いろいろあってね……」

「ふむ、2回程吸われたな?」

「んなっ!なんで分かっ……あ」

「カマを掛けたら簡単に分かるな。霊斗はちょろいな」

「くぅーっ!否定出来ねぇ!」

はあ、母さんには敵わないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ……かれたぁー。寝よ寝よ」

お休みだぜ。




と言うわけでデート編はおしまいです。
ではまた次回!


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夢に忍び寄る

最近夢に見る景色。

崩れたビル。

燃え盛る街。

ありとあらゆるモノが破壊され、自分以外は誰もいない。

あるのは無数の亡骸。

何があったのかはわからない。

それなのに自分はここに立っている。

なぜ、自分が――自分だけが生き残った?

わからない。

何も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っは!……はぁっ、はぁっ……」

また、あの夢……。

私は何度も見る夢。

自らの愛する者も全て消えた、絶望の世界。

「いずれこうなると……言うのか……」

隣には愛する夫が眠っている。

まだ、壊す訳にはいかない。

「壊す訳には……いかないのだ……」

拳を握り混む。

しかし、強くではない。

優しく、包み込むように。

「エリス、どうした?」

「霊哉……私は……」

「嫌な夢でも見たのかい?」

「あぁ……全てを失う夢だ……」

怖かった。

何もかもを失うのが。

今だって怖い。

「失う……か」

笑っている?

「どうして……笑うのだ?」

「いや、そんな事を言えるのは吸血鬼くらいだとおもってね」

「?」

どういうことだろう。

「俺達みたいな人外や、ふつうの人間は有限の時を生きてる」

「それは知っている」

「全ての人がそうだとは限らないが、俺は失う事は仕方ないと思う」

「仕方ない……?」

仕方ないと、そう割りきるというのか……。

「ああ。吸血鬼じゃない俺達はいずれ死ぬ。何も失わない為には永遠の命を手にいれるしかない。でもそんなことはできないだろう?」

「ならば私がっ……!」

「違うんだよ。そんなものは要らないけど、代わりにその時を精一杯生きるんだ。そうすれば、失うのは怖くないと、俺は思う」

「霊哉は……強いのだな……」

「違うさ。弱いからこそ、割りきるしかないんだよ」

弱いからこそ、割りきる……。

それで……。

「それでいいのか?」

「いいんだ。俺の決めた生き方だからな」

「だが、霊哉が死んだら私は……」

「大丈夫だ。あと数百年は一緒にいられるさ」

「え?」

数百年?

数百年しか……?

「数百年しか……いられないのか?」

嫌だ。

たったの数百年なんて。

「嫌だ!数百年経ったらあなたと別れなければいけないなど!耐えられない!私はっ……私は!」

「エリス……」

「霊哉……」

「そんなこと言われたら……俺も辛くなるだろ?」

「……すまない」

「なぁ、エリス。俺が居なくなるのは嫌か?」

「ああ、嫌だ」

「じゃあ、俺を吸血鬼にするか?」

「ッ!それは……ッ!」

「吸血鬼になって、数千年たって心の死んだ俺と、一緒にいたいか?」

「それは……嫌だ。私が辛い」

「はは……エリスはわがままだなぁ」

う……わがまま……。

……わがままか。

霊哉といたいと願うのも、わがまま。

霊斗やエイラといたいと願うのも、わがまま。

全部、わがまま。

「……」

「なぁ、エリス。今は、どうなんだ?」

「えっ?」

「今、俺や霊斗、エイラと暮らして、幸せかい?」

「ああ。幸せだ。とても……とても」

「俺も幸せだ。だけど、いつまでもは、続かないだろ?」

霊哉は死ぬ。

霊斗も、遅かれ早かれ死ぬ。

エイラも霊斗と同じ……。

また、私だけが生き残る。

「霊哉……私は……どうして生きてしまうのだろうな」

「さぁ……吸血鬼の特性じゃないのか?」

「いや……私の母も、祖母も、皆死んだ」

「そうか……じゃあ、なんでだろうな」

「私は、呪いだと思うのだ」

「呪い?」

私は……人を殺めすぎた。

母よりも、祖母よりも。

どんな吸血鬼よりも多く。

「私への……罰だと……」

「まったく……なに言ってるんだよ」

「え?」

「俺はこの長命の体を罰や呪いだと思ったことはない。偶然、他の人より長いだけだと思ってる。それと、同じじゃないか。他の人より生きる力が強いんだ」

「だが……死にたくても死ねないのは……」

「別に、難しく考えなくていいんじゃないかな?そんな未来の話より、今の楽しい話をしよう」

「霊哉……」

「なんだい?」

「いい話っぽく纏めようとしたな」

「はうっ!」

図星か……。

まぁ……。

「まぁ、いろいろ話せて楽になった。その……ありがとう」

「いいさ。ほら、もう寝よう」

「うむ。おやすみ」

「おやすみ~」

すぐに寝息をたて始めた……。

普段も高校生のような顔が、今はもっと幼くみえる。

「ふふ……愛しているぞ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離せッ!離せぇぇぇぇ!」

「駄目だよ、霊君。抵抗しないで?」

「くそっ!なんで吸血鬼化もできないんだよ!」

「え、だって夢の中だし」

なんだと!?

つまり、俺は今、無力な人間?

「離せぇぇぇぇ!」

「はいはい、騒いでも誰も来ないよ?」

まずい、やられる!

逃げるには……。

「逃げようとしても無駄だよ?ふふふ……新鮮な精を……」

「止めろっ、やめろぉぉぉぉぉ!ズボンに手をかけるなぁぁぁ!」

「?なんで?」

「いや、いろいろ見えちまうだろ?」

「霊君のなら別に構わないよ?」

「俺が構うんだよ!」

しかも、精って生命力とかじゃなくてそっちかよ!

「うふふふふ……大丈夫、優しくするから」

「止めろっ、せめて現実でそう言うことをしてから!」

「じゃあ、する?」

「しないよ!つか、まだそう言うことをするつもりはないから!」

「そう……残念だなぁ」

「まぁ……俺らが成人したら、考えてもいい」

「霊君のヘタレ」

「返す言葉もない」

「……もう帰る」

「そうか、おやすみ」

「おやすみ……ばか」

なんなんだよ……。

まぁ、とりあえず貞操は守れたという事で。

「安眠だな」

ああ、視界が暗くなる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく!霊君のヘタレ!無駄貞操観念!」

なんで、駄目なのだろう。

「って言うか男の子ってそういうことが大好きなんじゃないの!?」

って、雑誌で見た。

なのに……。

「なのにぃー!なんで!」

私は……。

「霊君の事考えるだけで……」

心臓がドキドキする。

体が暖かい。

「霊君は私の事、どう思ってるんだろう」




ふぅ……文を書くのが楽しい。
じゃ、また次回!


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新学期

書きます。


あの日からは特に何が起こるわけでもなく平凡に過ぎた夏休み。

今日からは二学期が始まる。

因みにうちの学校は三学期制だ。

 

霊斗「あぁ、眠い……」

 

一樹「霊斗はそればっかりだな」

 

久遠「私と合流してから既に五回は聞いたね」

 

霊斗「なんだよお前らー、久しぶりに会ったってのに冷たいなー」

 

天音「私とは毎日会ってたけどねー」

 

一樹「天音は勝手に夢の中に侵入してたんだろ?」

 

霊斗「昨晩なんてなぁ……」

 

天音「わーっ!駄目駄目!言わないでー‼」

 

久遠「言われて困るようなことをしたのか?」

 

天音「う……それは……あ!小雪ちゃん!」

 

小雪「おはよう、天音ちゃん、久遠君、あとモブの皆さん」

 

霊斗、一樹「ひどいなおい!?」

 

久遠「おはよう、小雪」

 

小雪「あ、そうだ。そろそろ美桜ちゃんが……あ、きたきた」

 

美桜「おはよう、一樹」

 

一樹「おはよう美桜」

 

霊斗「リア充ばっかだなー」

 

一樹「お前もだろう」

 

久遠「まったくだよ。昨晩も天音と……」

 

天音「待って!なんで久遠が知ってるの!?」

 

久遠「え、なんとなく」

 

霊斗「なんとなくでわかるって……お前どんだけ単純なんだよ……」

 

美桜「まぁ、いつもやってるから……」

 

小雪「私も久遠君としたいけど……ねぇ?」

 

久遠「!?!?!?」

 

一樹「ちょ、久遠!?無言で気を失うんじゃない!」

 

霊斗「委員長が卑猥な事を言うからピュアな久遠が気絶したじゃないか!」

 

小雪「私のせいなの!?」

 

美桜「小雪ちゃん……朝からそういうのは……ね?」

 

天音「自重しようね!」

 

小雪「天音ちゃんにだけは言われたくない!」

 

ああ、朝から賑やかだなぁ……。

だけど……。

 

天音「霊君、どうしたの?」

 

霊斗「いや、なんでもない」

 

いけない、頬が緩んだ。

まぁ、悪くはないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の教室はやけに賑やかだった。

その理由はこの噂だ。

 

モブ1「なぁなぁ、聞いたか?一年に外国人美少女が転校してきたらしいぞ!」

 

モブ2「まじか!?見に行こうぜ!」

 

とまぁ、こんな噂で……。

 

霊斗「あぁ……めんどくせぇ……」

 

天音「いやー、あの転校生って……」

 

霊斗「まぁ、うちの妹だろうなぁ……」

 

久遠「ん?霊斗って妹がいたのか?」

 

霊斗「ああ。ずっと海外に住んでたのが帰ってきたんだよ」

 

久遠「ふーん……」

 

まぁ、学校では特に関わることなんかないだろう。

ん?入り口の方が騒がしいな?

 

天音「れ、霊君……ねぇ、あそこにいるの……」

 

霊斗「ん?」

 

入り口に誰か――。

 

エイラ「あ、おにいちゃーん!」

 

霊斗「え、エイラ!?何しにきたんだ!?」

 

ですよねー、さっきの発言がフラグだったか……。

で、だいたいこの後は……。

 

モブ1「お、おにいちゃんだと!?緋月の妹!?」

 

モブ2「くそっ、超巨乳じゃねぇか!奴は毎日家であれを拝んでいるのか!?羨ましい!」

 

モブ3「しかも百パー義理だろ!?恋愛フラグビンビンじゃねーか!」

 

ほら、嫉妬の目線が痛い。

あと、肘から先が変な方向に曲がっていたたたたた!?

 

霊斗「痛い痛い!折れるって!」

 

エイラ「お兄ちゃんが無視するのが悪いんでしょ!?」

 

久遠「確かに今のは霊斗が悪いなぁ?」

 

エイラ「そうだよ!あ、まだ名乗っていませんね。エイラ・ラ・フレイア・カーミラ・緋月と申します。長いので、エイラでいいですよ」

 

久遠「私は桜坂久遠だ。よろしく、エイラ」

 

美桜「私は桜坂美桜だよ。よろしくね」

 

エイラ「おや?もしかするとお二人は双子だったりするのですか?」

 

久遠、美桜「偶然です」

 

エイラ「あ、はい」

 

霊斗「で、エイラ。もうHR始まるから戻った方がいいぞ」

 

エイラ「うわ!ほんとだ!それじゃ、またねーお兄ちゃん!」

 

霊斗「おーう」

 

やっと戻ったか。

さて、疲れたし……。

 

霊斗「寝るかぁ……ふぁ……」

 

天音「あ、おやすみー」

 

モブ1「緋月!いや、お義兄さん!」

 

モブ2「妹さんを」

 

モブ3「俺にください!」

 

霊斗「おぅ、とりあえず死ねお前ら」

 

モブ123「ぐはぁっっっ!」

 

霊斗「人の家族をその肉欲にまみれた穢らわしい目で見るな。〇玉潰すぞ」

 

久遠「おぉこわ」

 

モブ共がすごすごと帰っていった。

よし、悪い虫は祓わないとな。

さて……今日はどのくらい寝るかなぁ……。




書き方を変えてみたんですが……。
前とどっちがいいか、教えてくれたらありがたいです。
では、次回!


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新学期~放課後~

久しぶりに書きますね。
頑張るZOI!


その後も何度も言い寄ってくるモブ共を撃退しつつ放課後。

「あーーーーー、死ぬほど疲れた」

「いや、霊君寝てただけじゃん」

「うるせぇ」

天音とそんな下らない会話をしていると、下駄箱の前に見慣れた影が。

おや、我が麗しのマイシスターじゃないか。

どうやら周りをモブに囲まれて困っているようだ。

よーし、お兄ちゃん頑張っちゃうゾ★

「おーい、エイラ?どうs」

「私はお兄ちゃんが好きなの!!!」

え?

「エイ……ラ?」

「えっ、おに……えっ!?なっ!あぇっ!?」

おお、これはだめだなぁ。お互いに処理不足だな。

と、周りのモブが何やら言っている。

「……お兄ちゃんって、この人が?」

「まじかよ……つまり……」

「「「これがあの鬼畜シスコン!?!?」」」

まて、なんだその斬新すぎるあだ名。

「し、失礼しましたァー」

「エイラさん、お幸せにー」

「待って!?誤解だから!そんなあだ名は!待って!待ってぇぇぇぇぇぇぇ!」

だっめだぁー、続々と人が減っていく……。

「おっかしいなー、涙が止まらないや」

それに何だか悪寒が…… 。

「霊君……どういうことかな?」

違うこれ悪寒じゃねえ!背後からの殺気だ!

「あ、天音サン?可愛いお顔が台無しですヨー(棒)」

「ど・う・い・う・こ・と・か・な?」

「すみません僕にも状況がわからないんですどうか命だけは!」

しまった、つい本気で命乞いしてしまった。

だがまあこれで命はたすか……

「お兄ちゃん」

……ってないかぁー、新たなる驚異が。

「な、なにかな、エイラ?」

「聞いた?」

「何が?」

「き・い・た?」

「……はい」

「うわぁぁぁぁぁん!もう私生きていけないぃぃぃぃ!」

「ちょっ、泣くなよ!あれだろ!?家族として好きって事だろ!?」

そうだよね!?そうだと言ってよ!!

「違うもん、一人の男としてお兄ちゃんのことが好きなんだもん……ってなに言わせんのよ馬鹿ぁ!」

「おごっ!?」

な、殴られた……理不尽すぎる。

さらに災難なのは殴られて倒れこんだ先が……。

「れ、霊君……なにしてるの……?」

「……」

倒れこんだ先が天音の胸の谷間だったってことだ。

いや、むしろ……。

「むひふぉふぇんふぉふ!?(むしろ天国!?)」

「ひゃっ!?ひ、人の胸に顔埋めたまましゃべるなぁーっ!」

「むごっ!?」

まずい、強くホールドされている……しあわ、いや、どうやって逃げるか……。

「……」

「……」

「……」

よし、天音の腕を叩いてギブアップを伝えよう。

「……(すっ……むに)」

「「!?!?!?」」

なに!?やらかした!?

「こ……この……」

「は、はわわ……」

「……!!!(ジタバタ)」

ちょっ、そんなに怒るんなら早く離してよ!

「霊君(お兄ちゃん)の馬鹿ぁーーーーっ!!!」

「あがぁっ!?」

二人で殴りやがった!あ、やばい……意識が。

「り、理不尽すぎる……だろ」

薄れ行く俺の視界には軽蔑の目を向けるエイラと羞恥に顔を真っ赤にした天音の顔が写っていた。

……真っ赤になった天音、可愛いな。




今回はこんなものですかね。
では、また次回。


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崩れる日常!?

書くのです。


新学期始まって二日目。

昨日は色々あったが、あのあと二人とも説得できたし万事解決だろう。

そう思って昨晩寝付いた俺。

そして現在、午前十一時過ぎ。

「どうしてこうなった……」

よくここまでの流れを思いだそう。

まず起きて一番に思ったのは夢に天音が出てこなかったということだな。

そして直後時間を確認し、現在に至る。

「ってこんなことしてる暇じゃねえ!今からでも行ってせめて遅刻位に!」

そうと決まれば支度だ。

と、そこで俺はとある重大な事実に気が付く。

「天音のやつ、今日は起こしに来てない……?」

そう、いつも起こしに来てくれる俺の幼馴染兼彼女の天音が起こしに来ていない。

つまり……

「え、振られた?あいつに?俺が?」

まさか、そんな……。

そうと決まったらやることは一つだ。

「引きこもろう、辛いし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく放課後だ。

今日は昨日の仕返しのつもりで霊君を起こさないで来ちゃったけど……一日来なかったな。

「どうしちゃったんだろ……」

「おやおや~?彼氏がおやすみで寂しいのかな?」

「小雪ちゃん……そんなこと言ってると久遠に言っちゃうよ?イ・ロ・イ・ロと」

「ひゃぁぁ!だめぇ~!」

小雪ちゃん可愛いなぁ……。

「あ、私は霊君のとこ行くから。もう行くね?」

「はいはーい。しっかり看病してやんなさいよ?」

「病気だったらそうするね」

さあ、行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、どうしたんだろ」

今日は一度もお兄ちゃんと会っていない。

学校にも来てないみたいだし……。

「はっ!もしかして、昨日のことがあって何か後遺症が!?」

だったら大変!早く帰って……

「早く帰ってお兄ちゃんが動けないのを良いことにあんなことこんなこと……えへへ……」

よし!待っててねお兄ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、なんもやる気おきねえー、死にてー」

生きる意味がないよぅ……うぅ。

とりあえず引きこもりっぽくパソコンでも開いてっと。

「うおっ!?揺れた!?」

家の目の前から爆発音がした気が……。

そっとカーテンを開いて見てみよう……どれどれ……。

「……母さん?」

母さんが黒装束達と戦ってる!?

しかもあれは……

「反人外派……!」

久遠と一樹に連絡しなきゃ!

とりあえずグループラ〇ンにボイスメモを残そう。

「うちの前に反人外派がいる。できるだけ急いできてくれ」

よし。じゃあ窓を開けてっと。

「猫又化:100%!」

俺がそう言うと同時に身体が猫の形に変わっていく。

「そぉいっ」

この身体なら素早く動ける。

反人外派A「なっ、なんだこの猫は!?」

「うちの前で騒ぐんじゃねえよ。うざってえんだよ」

反人外派B「こいつ!例の抹殺対象だ!仕留めろ!」

「遅ぇなぁ。死にたいのか?」

反人外派C「くそっ!銃だ!銃を使え!」

「よっと、ほっ」

おお、猫又便利だな。速いし小さいから撹乱しやすい。

「猫又化:解除」

まあ、猫又はもう楽しんだしな。こっちのターンだ。

「おらぁ!」

反人外派A「がぁっ!?」

「とっとと……」

反人外派B「げぶぅ!?」

「くたばりやがれ!」

反人外派C「ぎゃぁぁぁぁ!?」

これで全員気絶させたな。さて、後処理をどうするか……。

「霊斗、そこをどけ」

「母さん?何を――」

母さんがなんか持ってる。魔法の杖的なやつ。

「我が身体に流れし魔力を糧とせよ、神に反逆せし吸血鬼に地獄の劫火の叡智を――発動!炎属性高位魔術『死にさらせ☆ファイアー』!」

「なんか仰々しい呪文だったのに最後ので台無しだー!?」

母さん……『死にさらせ☆ファイアー』はないだろ……。

「これで後処理には困るまい」

「それはそうなんだけどさぁ……」

そのネーミングでどうしてそんなに堂々としてるの?

なに?俺がおかしいの?

「はぁ……もういいや。俺もう寝るわ。誰か来ても追い返して」

「うむ、承知した。いい夢を見ろよ」

「おやすみー」

部屋まで戻るの面倒だなあ……。

あぁ、だめだ。何もかもが面倒だ。

我慢、我慢だ。面倒でもせめて自室で寝るんだ。

「ついた……おやすみ……」




毎回思うんですけど、ここってなに書いたら良いんでしょうね?
ではまた次回。


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三人の眠れぬ夜

書きます。


「ただいま~」

「エイラか、おかえり」

帰ったらお母さんが迎えてくれるっていいね。

そうだ、それよりもお兄ちゃんだ!

「お母さん、お兄ちゃん部屋にいる?」

「ああ、だがもう寝ると言っていたが……」

「よーし、起こしちゃえ!」

「あ、こらエイラ!」

早くお兄ちゃんと色々するんだもん!

階段を昇るのももどかしい。

早く会いたいよ、お兄ちゃん!

「お兄ちゃーん、開けるよ(ガキン)……え?」

鍵?

「お兄ちゃん?なんで鍵かけてるの?」

返事がない、ただのしかb違う違う!

寝てるのかな?

体調が悪いんだったらそっとしておいた方がいいよね?

「……お大事にー」

私は部屋に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャイムを鳴らす。

「はい……久遠に一樹か」

来たのは霊斗……ではなくエリスさんか。

「霊斗から反人外派が現れたと聞いてきたのですが……」

「うむ、私と霊斗で片付けた」

「流石伝説の吸血鬼……滅茶苦茶ですね」

おお、珍しく……でもないが久遠が呆れてる。

「で、霊斗は?」

「寝るから誰か来ても追い返せと言われたのだがな……」

「起きてますね」

「やはりか……」

久遠は気付いてるか。

さて、ならば……。

「エリスさん」

「なんだ一樹」

「奴を引きずり出しても?」

「構わん。家の一棟くらいなら余裕で建て直せる」

どんなオーバースペックだよ……。

「じゃあ、久遠……やるか」

「了解――時雨桜鳴雷」

どうでもいいけど久遠が吸血鬼化してんの久しぶりに見るなぁ。

俺も戦闘形態――銀人狼の姿になり、手に鎌を持つ。

「一樹のその格好、久しぶりだな」

なにおんなじ事考えてんだよ。

「さて、とっととあいつを引きずり出して話を――っ!?なんだ今の魔力は!?」

普通じゃない!

なのになぜこいつらは平然としている?

「霊斗の魔力、一段と強くなってんなぁ……」

「流石私の息子といったところか」

は?今のが霊斗の魔力?

「急成長しすぎだろ……」

「しかし、やるしかないよ」

「わかってる、久遠は中から頼む」

「はいよ」

久遠が室内に飛び込んでいく。

よし、俺もやるか。

「闇に燻りし冥界の焔よ、我が刃を包み込み悪しき血を焼き払え――」

俺の祝詞と共に鎌に黒い焔が灯る。

「――『死神の鎌(デスサイズ)』」

そう唱えると同時に俺は飛び上がり、窓に鎌を叩きつける。

「よし、割れ――は?」

窓には傷一つついていなかった。

「これは――物質硬化魔法!?」

あいつが魔法を使えるなんて聞いてないぞ!?

「なんであいつが魔法を……」

「ああ、私が教えた」

「あんたかァァァァァァ!」

エリスさんなにしてんだよ!

しかしそうなると……。

「一樹」

「久遠か、どうだった?」

「無理だね、解除術式も効かない」

まあそりゃそうだろなぁ、伝説の吸血鬼直伝の魔法だもんなあ。

「じゃあ……」

「うん」

「「帰るか」」

満場一致で帰宅を選択。

「うむ、気を付けてな」

「はい、お邪魔しました」

「じゃあまた」

俺たちはエリスさんに挨拶をすると帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?寝るから誰か来ても追い返せ?」

思わず聞き返してしまった。

「そうだ、霊斗がこの時間に眠るなどないことなのだがな……」

「そうですか……ありがとうございます、お義母さん」

「いやいや、こちらこそ。ヘタレで情けない息子だが、末永く頼む」

「はい、それじゃあ失礼します」

そう言って私は自分の家に帰る。

そのまま自室に直行する。

「よーし、寝てるんなら私の能力の出番だねっ」

そう言って私は意識を集中させる。

しかし、いつまでたっても霊君の夢に入り込むことが出来ない。

「おっかしいなー……あれ?」

私の部屋の窓は霊君の部屋の窓と向かい合っている。

そしてその部屋の窓から微かに光が漏れている。

「霊君……起きてるの?」

何かあったのかな。

心配になって電話を掛けてみる。

『お掛けになった電話は電波の――』

「駄目かぁー……」

電源が入ってないって事は、あの光はパソコンのディスプレイの光……。

「パソコンにも確かメール機能ってあったよね?」

たしか霊君がセットしてくれたはず……。

「あった……えっと、本文……」

なにかあったの?大丈夫?っと……。

送信は……これか、えいっ。

よし、送れたね。

じゃあ、あとは……。

「待つだけだねっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天音からメール?

いまいいところなのになぁ……。

というか今更なんだ?

「ま、いいか……ロクな内容じゃないだろ」

それよりも俺はゲームで忙しいんだ。

メールのタブを閉じて俺はゲームを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中に喉が渇いて目が覚めた。

私は水を飲もうとキッチンに向かう。

その途中、お兄ちゃんの部屋の前を通ると微かにマウスを操作する音が聞こえる。

「お兄ちゃん……」

まだ起きてるの……?

寝る前、天音さんからメールをもらった時は気にしなかったけど、流石にここまでとなると心配になる。

水を飲みつつ原因を考える。

思い当たること……あ。

いや、流石にお兄ちゃんといってもそんなこと……。

「ない、よね?」

結局その後は明け方まで眠れなかった。




今回はここまで。
ではまた次回。


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必死の攻防

お久しぶりです。
書きます。


「結局眠れなかった……」

私は明るくなっていく窓の外を見ながらため息をついた。

あの後も何度かお兄ちゃんの部屋の前に行ってみたけれどお兄ちゃんが眠っている様子はなかった。

「……支度しよ……」

何時までも呆けている訳にはいかない。

私は頬を両手で叩いて気合いを入れて、学校へ行く準備をはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局徹夜でネトゲをしてしまった……」

俺はネトゲをログアウトすると、椅子に座ったまま大きく伸びをする。

「……腹へったな」

そういえば昨晩から何も食べていない。

「カップ麺でも食うか」

そう言って立ち上がると、俺は部屋のドアを開ける。

「あ……」

「へ……?」

そこには天音がいた。

「お、おはy――(バタム)」

なんか言ってた!?いや、今はそれよりも……。

「どうする、俺……」

これはまずい。元カノが同情心で起こしに来るとか拷問かよ。

この状況をどう打破するか――。

『開けろーー!(ドンドンドン)』

うわ、めっちゃノックされてる!殺される!

「意地でも開けるか!」

『……へーぇ、ふぅーん?いいんだぁー?そんなこと言っちゃって?(メキメキメキ)』

ドアノブからヤバイ音が!?

「くそっ!こうなったら……」

あれをやるしかねぇ!

「我が身を包め遥かなる闇よ、その役目は他者を拒絶する壁――"拒絶の盾(A○フィールド)"!」

この魔術の効果は他者に認識されない結界を張るというもの。つまりこれを使えば無敵。

「(バキィッ)御用だー!ってあれ?」

ああ、ドアが……。

母さんに頼めば直してもらえるかなぁ……。

「霊君?どこに隠れてるの?」

よし、今のうちに部屋から脱出しt「あ、見っけ」はぁ!?

「んな馬鹿な……」

「馬鹿は霊君でしょ?何で逃げるの?」

「逃げるに決まってんだろ!さらばだっ」

俺は猫又化しつつ走り去る。

玄関を抜け、そのまま町の方へと。

「待てぇーっ!」

ちっ、もう追いかけてきたか。

「ふん」

俺は鼻を鳴らしながら塀の上に飛び乗る。

このまま走り去れば撒くことができるだろう。

そう考えた俺はそのまま走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……み、見失った……」

私は膝に手をついて、呼吸を整える。

そしてふと周りを見渡す。

「あれ、ここって……」

視界一杯に広がる青。

忘れもしないあの場所。

霊君と付き合いはじめてから、初めてのデートで来た海。

まだ1ヶ月も経っていない筈なのに、随分と昔の事のように感じる。

「そういえば、あのときだっけ。ちゃんと話してくれたのは」

まだ人のいる海。

その一角にある堤防の上に座って海を眺めていたら、なんだか視界が潤んできた。

「私、霊君に嫌われちゃったのかな……」

何かしてしまっただろうか。

もう、一緒にいれないのかな。

他にも様々な想いが頭の中を回る。

「うっ……ぐすっ……」

涙が溢れる。

止まらない涙を拭う。

嫌だ、嫌われたくない。

会いたい。

「ひっぐ、ぐすっ……」

涙が止まらない。

私は声を抑えて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走っていたら、海に着いてしまった。

「まぁここまで来れば大丈夫だろ……」

そう呟いた俺は一休みしようと、堤防に向かう。

しかし、途中で先客がいることに気がつく。

「げっ……」

しかも先客というのは天音だったのだ。

逃げようと思ったが、様子がおかしい事に気づく。

「……泣いてる?」

そっと耳を澄ませる。

『ひぐっ……霊君…………』

なぜに俺。

『私、何か嫌われるようなことしたかな……ぐすっ』

いや、むしろやらかしたのは俺……あれ?

なんであいつが俺に嫌われたと勘違いしてるんだ?

まさか――

俺は携帯を取りだし、PCメールの項目を開く。

そこには天音からのメールが。

内容は『なにかあったの?大丈夫?』。

つまり纏めるとこういうこと?

1・俺がやらかし、そこに天音が起こしに来なかったことで、振られたと勘違い。

2・引きこもった俺を心配した天音がメールを送るも無視した俺。

3・そして今朝を経て今に至る。

「Oh……」

全面的に悪いのは俺だ。

そしてその結果、一番大切な人を泣かせた。

「……どうしよう……」

立ち尽くすことしか出来ない俺の視界から、天音はいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が泣いていると、誰かが声を掛けてきた。

「大丈夫かい、姉ちゃん?可愛い顔が台無しだぜ?」

「あなたは……あ、あのときのナンパ男達!」

ナンパ男A「ん?あぁーっ!てめぇよく見たらあん時の化け物の彼女じゃねぇか!」

ナンパ男B「ちょうどいい!あのときの借りを返させてもらうぜ!」

「ちょっ、やだ!離して!」

だめだ、振りほどけない。

魔族化していない私の力は普通の女子となんら変わりない。

しかもサキュバスは昼間は魔族化するのに大量の魔力を消費する。

「離してよぉっ!やだぁ!」

男A「うるせぇ!ギャーギャー喚くんじゃねえ!」

「んむっ!?んーっ!」

声も出せない状態では助けも呼べない。

それでもなんとか抜け出そうともがく。

「んんーーっ!!」

男B「ちっ、うるせえな。ちょっと静かにしてろ」

バチン

「!?!?」

首の後ろに電撃を喰らったかのような感覚。

恐らくスタンガン……。

そこまで考えたところで私の意識はプツリと途切れた。




次回に続くよ!


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雨のち晴れ

久方ぶりの更新です。


私が目を覚ますと、そこは薄汚れた廃工場のようだった。

「チッ、意外と早く目覚めやがったな」

声の方をみると、そこには先程のナンパ男がいた。

片方は見張りでもしているのか、ここにはいない。

状況を確認しようと視線を巡らすと、窓の外に海が見えた。

あまり場所は移動しなかったようだ。

と、そこまで考えたところで、男が私の制服のボタンをはずし始めた。

「!?」

慌てて逃げようとするも、身体が縛られている。

声を出そうにも口には猿轡が。

「お、いいねぇ。その青ざめた顔」

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男に、嫌悪感を覚える。

どうにか逃げ出そうと身をよじるも、縄と男の身体が邪魔をして上手く動けない。

そうこうしているうちに、最後のボタンが外された。

「■■■■■■■」

男が何か言っているが、パニックを起こしかけている私には雑音にしか聞こえない。

笑う男の手が私の胸に伸びる。

「~~~~~!!!」

男の手が私の胸に触れる直前、私は全力の頭突きを男の顔面にお見舞いした。

おでこに鈍い痛みと、固いものが潰れる感触がする。

今ので軽く脳震盪を起こしたのか視界が歪み、猛烈な吐き気がする。

それでも構わず這って工場の入り口に向かう。

(今のうちに逃げれば……!)

しかし、あと数メートルで外につくというところで、追ってきた男に捕まってしまった。

「やってくれるじゃねえか!こいつっ!」

怒りで顔を真っ赤にした男が私の頬を叩く。

バチン!という音と共に頬が熱くなっていく。

同時に、私の身体から力が抜ける。

「やっと効いてきたみたいだな」

だんだん身体が熱くなる。

クスリか何かを打たれたか飲まされたか。

そんなことも考えられないくらいに意識が朦朧とする。

男が私の足に触れる。

ゾクゾクとした感じが背筋を伝う。

それが、不快ではない。

そして男が私のスカートの中に手を伸ばし―――吹き飛んだ。

「!?」

驚く私の前に、人影が。

その人は、笑っていた。

暗く、残酷な表情で。

「■■■■」

彼は短く何かを呟くと、一瞬で男に肉薄する。

そして、何故か既に血に濡れた拳で、男の首を、切り落とした。

そこから先は見れなかった。

見られるわけがなかった。

最後に、何かが弾け飛ぶ音を聴いて、私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が再び目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる小雪ちゃんがいた。

「あ、起きた?」

私は小さく頷くと、起き上がった。

「ここは……?」

私が辺りを見渡しながら呟くと、小雪ちゃんが教えてくれた。

「ここは久遠の研究室だよ、現場から近かったからここに運んだんだ」

「そう……」

周りには謎の機材が大量に置いてある。

そこには、不思議な形状の拳銃――恐らく、霊君の言っていた"試作型魔弾拳銃"だったか――が収納されていた。

そこで、私はとあることに気づく。

さっき私を助けに来てくれた人物。

意識も朦朧としていて、逆光だったから確信はないが、きっと霊君のはず。

私は思いきって小雪ちゃんに聞いてみることにした。

「ねぇ、小雪ちゃん」

「なに?何か欲しいものでもある?」

「霊君はどこ?」

私がそう聞いた瞬間、小雪ちゃんの表情が強張る。

やっぱり。

「何か、あったの?」

私がそう聞くと、小雪ちゃんは少し目を逸らしながら言った。

「私は、緋月君が必死に走ってるところしか見てないから……ごめんね」

「ううん、大丈夫」

そう答えたのに、また涙が出てくる。

あの時、助けに来てくれたのはやっぱり霊君だ。

「天音ちゃん、大丈夫?」

そう聞いてくる小雪ちゃんに、私は思わず抱きついてしまった。

「あ、天音ちゃん!?」

「うぅ……」

涙が止まらない。

嫌われてしまったと思っていたのに、私の事を、助けに来てくれた。

そのことが、ただ嬉しくて。

「小雪ちゃん……」

「なぁに?」

「霊君は、今どこ?」

私がそう言って立ち上がった時だった。

突然ドアが開き、人がはいってきた。

「ったく、後片付けするこっちの身にもなれよ」

「とか言って一樹も殺りすぎるときあるでしょうに」

「久遠は黙ってろ」

騒がしく入ってくる一樹と久遠。

その後ろに居たのは――

「――霊君!」

その姿が見えた瞬間、私は彼の元に飛び込んでいた。

「うわっ!?ちょ、天音!?」

突然の事に慌てふためく彼。

その姿が、懐かしく感じる。

会わなかったのはほんの数日なのに。

「霊君……」

「な、なんだよ……」

至近距離から彼の顔を見上げると、恥ずかしそうに目を逸らす。

少し線の細い、中性的な顔立ちが紅くなる。

「……大好き」

「なっ!?き、急にそんなこと言うなよ!」

そう言って真っ赤な顔を更に紅くする。

でも、すぐに諦めたようにこっちを向くと、彼は言った。

「その、なんだ……心配かけて、ごめん。……俺も天音の事……だ、だ……だ、だ、愛してるよ」

「"だ"関係ないじゃん!?」

でも、きっと、彼の気持ちは伝わった。

だって、こんなにも心が暖かいんだから。




久しぶりすぎて色々わかんなくなってます。
では、また次回!


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