今日から俺は唯一王 (アスフィア)
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物語の始まり〜やりのはしら〜
小物っぽい創世神と性別不明なヒロイン(笑)と唯一王な俺


ポケモン主人公作品を書いてみたいと思い、投稿。不定期更新だけど、出来るだけ早く出していきたいと思ってます。


「やぁ!気分はどうだい?」

 

……えーと……

 

「あはは、『何が起きてんだ?』みたいな顔してるね。まぁ、そりゃそうだよねぇ?なにせ目の前に創造神がいるんだもんね〜」

 

訳も分からないまま、俺の目の前にいる創造神『アルセウス』は喋り続ける。

 

「んー、それじゃ早速本題に入ろーか。君は死んじゃったんだ。覚えてる?」

 

えっ?死んだ?俺が?えーと、こんな夢みたいな馬鹿げた状態になる前は何してたっけ……?

 

「……覚えてないみたいだね。なら思い出さない方が良いんじゃないかなぁ?僕は()()()()()()をしたポケモン廃人を選んでここに連れて来てるからね」

 

なんか凄い物騒な事とポケモンが言っちゃいけない事を言ってる。俺、どんな死に方したんだっけ?

 

「まぁ、君は死んじゃった訳で。どうせだからポケモンの世界に転生してみない?」

 

『どうせだから』程度なんだ……。何か、こう、世界に危機が迫ってるから、みたいな感じじゃなくて。

 

「……なんか不満そうな顔してるね。普通に輪廻転生の方が良いのかい?」

 

そんな事は無い。むしろポケモンになりたい。

 

「……あー、ゴメン。実は、現在君は肉体が無いから喋れないんだよね。魂の状態でも表情は読めるから話し続けてたけど……」

 

ちょっ!?肉体が無い!?しれっとトンデモナイ事言ってるよこの創世神!!

 

「ポケモンになりたい?」

 

なりたいです。ちゃんと伝わってください。

 

「なりたそうな顔してるねぇ。アッハッハッ!何になりたい?カッコいいポケモン?可愛いポケモン?それとも強いポケモン?」

 

そうだなぁ……伝説系か……いや、それともガブマンダみたいな600族系か……?

 

「我が主。また人間に関わっているのですか?主は人間を嫌っていたでしょうに……」

 

そんな事考えてたら、これまた神様の『ディアルガ』が出て来る。やっぱりデカくてカッコいいなぁ。

 

「んー?人間にちょっかい出すのは僕の勝手でしょ?あ、そうだ!どうせだからさぁ、ディアルガが決めてよ!この子の転生先のポケモン!!」

 

「(はぁ!?)」

 

俺の心の声とディアルガの声が被った。いや、え、俺の意見無視の方向ですか!?

 

「えー、不満でもあるのー?」

 

「いっ、いいえ、滅相もございません!!え、えぇとですね……」

 

肝心のディアルガさんはメッチャ焦ってる。そりゃそうだよね……今、アルセウスがすっっっごい良い目の笑ってない笑顔で言ってたもんね。

 

「……そ、そうだ!確か転生させた人間達の中には、炎タイプのポケモンはいなかった筈です。で、ですから、炎タイプのポケモンにするのは如何でしょうか?」

 

「そうだったっけ?えーと最近だと……悪・飛行、フェアリーに……地面・毒タイプだったっけかな」

 

「他にも虫・鋼や岩・ドラゴン、電気・ゴーストや草・格闘等がおります」

 

……結構分かりやすいなぁ。悪飛行はバルジーナかドンカラスだろうし、地面毒はニド夫妻のどっちか。虫鋼はハッサム、岩ドラゴンと電気ゴーストはガチゴラスとロトムしか居ないし。草格闘は多分キノガッサかな?フェアリー単体はうまく絞り込めないな……多分ニンフィアだろうけど。

 

「んー……水とエスパーと氷とノーマルも居ないね。このタイプも転生させてたっけ?」

 

「たっ、確かラプラスとネイティオとスリーパーとケンホロウも居ます」

 

「飛行タイプ多いなー。あと何だっけ。ガブリアスとかのドラゴン系も多かったよね?『600族』がどうたらって言って。で、炎タイプで何か案ある?」

 

意外に多いな、転生してる人達。

 

「そっ、そうですね……えぇと……」

 

炎タイプか……バシャーモとか強いしカッコイイよなぁ。リザードンも良いし、ウルガモスも有りかなぁ。ウルガモスって雌のイメージ強いけど。

 

「……ぶ、ブースターは如何でしょうか!」

 

……は?……いや待て!!なんで選りに選って唯一王なんだよ!?確かにブイズは人気だけど!!

 

「ブースター……あぁ、あの『唯一王』だっけ?」

 

「へ?なんですかその名前……」

 

「あぁ、気にしなくて良いよ。『こっち』に言ってるから」

 

クッソ!!このアルセウス分かってんじゃねぇか!!止めろ!!なんで唯一王なんだ!!せめて、せめて唯一王だけはヤメテ!!

 

「なら最下位さんにでも……」

 

ブースターは可愛いとカッコいいを兼ね備えた良いポケモンだよね!!

 

「……うわっ。我が主、下界の炎猿が一斉に不機嫌になってますが……何かされたのですか?」

 

「えー?心当たりないなぁ。うわ、本当に不機嫌になってるねー……あっ、ゴリラドライブくらってる」

 

なにそれ超見たい。いや違うそうじゃない。ブースターか。ブースターなのか。最下位さんじゃないってのはまだ良かったけど、それでもブースターなのか。

 

「ブースターってもふもふじゃん。夏は暑いかもしれないけど冬は困らないだろうし、可愛い女の子とかに抱きつかれてもふもふされるんじゃない?」

 

ブースターでお願いします。

 

「……決心したみたいダネ!それじゃ、早速ブースターにしてあげよう!」

 

そんな事を言ったアルセウスは俺の前に立つと、何やらブツブツ言い始め……

 

『我は無から有を創る創造の神なり。無の魂よ、我の力により有へと成れ。この有の名はブースター。焔を纏う獣なり』

 

厨二病全開の台詞言ってるなぁ……恥ずかしくないのかな」

 

「声に出てる!声に出てるよブースター!」

 

「えっ?」

 

あれ、うわっ。ブースターの足だ。視点もさっきより若干低いし……本当にブースターになったんだ……

 

「で、何が恥ずかしいって?」

 

「あっ」

 

やっべ。聞こえてたのか。ディアルガさんが言ってたのはこういう事か。

 

「ま、恥ずかしい云々はいいよ。じゃ、君の役目を伝えるよ」

 

「え、役目なんてあるんですか?最初の言い回しだと『暇だから転生させた』程度の考えだと思ってたんすけど……」

 

「……あながち間違ってないから黙っててやれ。主を怒らせると面倒だから」

 

「ディアルガ君、格闘タイプと地面タイプ、どっちの裁きがお好み?」

 

「「選択肢が無い!?」」

 

「君達仲良いね」

 

ディアルガさんと台詞が被るけど、それはいい。俺の役目って何なんだ。

 

「使命、じゃなくて役目。好き勝手やってくれればいいんだよ。内容としては、『人間達への嫌がらせ』だね」

 

「……うわぁ」

 

すっげぇ小物っぽいよこのアルセウス。嫌がらせって……

 

「いやー、人気の品物とか盗んで来たり、人の家のガラス割るくらいでも良いんだよ?」

 

「本当にただの嫌がらせなんですね」

 

正直想定外。ディアルガさんがアルセウスは人間が嫌いって言ってたから、嫌がらせって言っても命に関わるレベルの事を言ってるのかと……

 

「……あー、ディアルガ。後の話はしてあげて。僕はちょっとロベルタちゃん呼んどくから」

 

「……分かりました」

 

……ロベルタ?誰なんだろう。人の名前か、それともポケモンのニックネームなのか。

 

「んじゃねー♪」

 

そう言ってアルセウスが姿を消すと、今俺達がいる空間まで消え去った。

 

「ここって……」

 

「あぁ。『やりのはしら』だ。さて……何から話そうか……」

 

ディアルガさんが悩んでる。そりゃそうだよね……で、どうせならさっき足を見た時からずっと気になってる事を聞いてみようかな。

 

「あの、ディアルガさん」

 

「む?何だ?」

 

なんとか笑顔を作るディアルガさん……不憫だ。上司に振り回されてる社員感半端ない。

 

「あの、俺……色違いじゃないですか?」

 

気になってた。足を見た時に、普通の色じゃない。鏡があるわけじゃないから全身は見れないけど、おそらく色違いだと思う。

 

「あぁ。そうか、それじゃまずはそれを話すべきだな」

 

ディアルガさんは一息吐くと、話し始める。

 

「色違いのポケモンと言うのは、2種類存在する。1つは、極稀に自然発生する天然ものだ。で……君達みたいな転生者を区別する為に、主は転生者は強制的に色違いにしてる。それがもう1つの色違いだ」

 

「成る程……」

 

「やっほー!ロベルタちゃん連れて来たよー!」

 

「「早っ!?」」

 

相変わらず常識が通じない……と思ったけど、アルセウスだからこそこんなに早く帰ってくるんだろうなぁ……

 

「はい、こちら悪・飛行タイプの転生者ロベルタちゃんね」

 

あ、ロベルタって悪・飛行タイプの人だったんだ。ちゃん付けなら女性だろうし、それならバルジーナで確t

 

「宜しくね、ブースター君!ん〜!!やっぱりもふもふしてて気持ち良い〜!!」

 

「イ、イイイイベルタルゥゥゥ!?」

 

うっそだろオイ。色違いのY字ポケモンが俺の事抱きしめてる。声だけ聞いてりゃ最高かもしれないけど現実は甘くない……って違うわ!!

 

「待って!!ストップ!!俺の事石に変えたりしないよね!?つかなんでイベルタルなんだよ!!女の人ならバルジーナでも良かっただろ!!」

 

「僕の気分さ☆」

 

創世神マジふざけんな。気分1つで第2の人生……ならぬポケモン生が始まった瞬間に終わりそうなんですけど。

 

「その娘が転生した君をサポートしてくれるロベルタちゃんだよ。ポケモン怪盗団のリーダーでもあるよ」

 

「なにその怪盗団。え?そもそも伝説が怪盗とか有り?てかイベルタルが盗み働いたら怪盗じゃなくてただの強盗じゃ……」

 

「んー……説明面倒だから、百聞は一見にしかず!!って事でロベルタちゃん、GO!!今度来る時はお土産に最近発売したって話の『MHXX』盗ってきてね!!」

 

「分かりました!!」

 

いや、勝手に話を進めないで……って待って。嫌な予感がする。ちょっとディアルガさん、目を逸らさないで下さい。もう嫌な予

「目指すは私の怪盗団が今いる場所、カントー地方!Let's GO!!」

「感しかしなぁぁぁぁぁァァぁぁぁぁぁっっっ!!!???」

 

あれ、意外と遅いな……あ、そう言えばギリギリ100族じゃ無いんだっけ?イベルタルって……じゃ無いんだよ俺!!

 

「すと、ストップ!ストップ!!脚で持つのヤメテ!!巣にお持ち帰りされる餌の気分だよ今!!背中に乗せて!!」

 

「ブースター君の足じゃ掴まれないでしょ?だからこうするしかないよー。あ〜本当にもふもふしてる〜」

 

「Heeeeeeeeeeeelp!!!」

 

こんなコントみたいな流れで、俺の新しいポケモン人生が始まった。

 




何故主人公を唯一王にしたのか。

それは……とあるゆっくり実況が好きだからです。


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いざ、アローラ!〜メレメレ島〜
アローラへ行く前に


「ねーブースターくーん。生きてるー?」

 

「生きてまーす……生きた心地はしてませーん……」

 

俺です。ブースターです。3日かけて、ようやくカントー地方に辿り着きました。てかシンオウ地方から直線&ほぼ無休で行けば3日でカントー行けるんだね……

 

途中、何回かは御飯食べるために別の地方に降りたりしたけど……うん。食料がね……やっぱり、ポケモンなんだなって。あと木の実が想像以上に堅い。

 

「もうケムッソとか食いたくないでーす……もっと美味しいもの食べたいでーす……」

 

「美味しいものー?そうねー……ポッポの丸焼きとかは?」

 

「鳥肉はスバメの所為でしばらく見たくないです」

 

そう、俺はブースター。ブースターなんだ。サンムーンの図鑑説明にあった『木の実や餌をウェルダンになるまで焼く』という文。それの通りに焼こうとしたさ。

 

「あー……ブースター君、火傷根性空元気でぶっ飛ばされてたもんねー」

 

俺は転生して間もない。身体の動かし方にやっと慣れてきた辺りなんだ。転生して間もない俺と、進化前とはいえ何年もこの世界を生きているスバメとでは差がある。

 

……まぁそのスバメ、ロベルタさんにバリボリ喰われてたけどね。その時のスバメの悲壮感溢れる表情は忘れられねぇなぁ……

 

「魚介類は……カントーには居ないか……」

 

「んーとねー、テッポウオ辺りは来てるんじゃないかなー?でも水タイプだからブースター君にはキツイかなー」

 

「キツイっすね……泣きたい」

 

「泣きたいならわたしの胸で泣いていーよー!」

 

「俺の事もふりたいだけですよねソレ」

 

女性の胸で泣くなんて夢の様な気もするけど……イベルタルだからなぁ。中身女性でも見た目鳥だし性別不明だし。

 

「……そういやロベルタさん、此処ってカントーの何処ですか?」

 

「グレン島より南の無人島ー。ここが私達の活動拠点なんだー」

 

「ロロロロロ!!やっと来たねロベルタ!!アルセウス様から通信来てたロロロ!!」

 

ロベルタさんが喋ってた時に、色違いのロトム……ロトム図鑑がやって来る。色違いって事は、このロトムも転生者なのかな……?

 

「あ、モーター君。えー、アルセウス様から通信?通信するくらいなら私に直接言ってくれればよかったのにー」

 

「ロロロ!言い忘れたって言ってたロロロ!!で、その唯一王が新しい転生者仲間ロロロ?」

 

「よーしそこから動くなよ。燃やしてやる」

 

色々言いたいが、まずはこのロトムも転生者って事は分かった。もう何体か居れば別だけど。

 

「ロロロ!!じゃあ君の名前教えて欲しいロロロ!!僕はモーターだロロロ。思いつかなかったから捻りのない名前にしたけど、気に入ってるロロロ」

 

「な、名前?」

 

そういえば、名前決めてないな……というか、人間の時の名前ってなんだったっけ……?

 

「ロロロ……まぁ、決まってないなら決まってないでいいロロロ。ただ、そうしたらブースター呼びだから別個体出てきた時にややこしくなるロロロ」

 

「あ、えと……すみません」

 

「謝る必要無いロロロ。僕も3日悩んでこれだロロロ」

 

「ねぇモーター、結局通信ってなんなのー?」

 

「そうだったロロロ!えーと確か『アローラに行け』って言ってたロロロ」

 

「「アローラ地方に?」」

 

そういえば、この世界は何が基準なんだろうか。ゲームか、アニメか、それとも全く関係無いのか。……聞いてみるか。

 

「おいおい、待ってんのにそっちで随分元気に話してんじゃねぇか!!俺達にもさっさと新入り紹介してくれよな!!」

 

「デパルト、口が悪いよ。怖がられたらどうするの?」

 

「あら……このブースターが新しい子?可愛い子が仲間になったのねぇ」

 

聞こうと思ってたら、他の転生者らしき3人……人?……3体のポケモンがやって来た。

 

……ニドキングとキノガッサは当たってたけど、フェアリーはフラージェスだったか……

 

「おー、みんな集まったねー。それじゃ、このもふもふ君はブースターだよー。みんなも自己紹介お願いねー」

 

「その紹介に異議を申し立てたい。なんだもふもふ君って」

 

「え?間違ってた?」

 

正直あまり間違ってないから困る。

 

「なぁ、自己紹介していいか?」

 

「あ、どうぞ」

 

「俺はニドキングのデパルト!!勿論珠ずく型だぜ!!」

 

「僕はコブシ。見ての通りキノガッサだよ。特性はテクニシャンね」

 

「私はフラージェスのシラユリよ。特性はきょうせい。よろしくね、ブースター君」

 

新しい仲間達の紹介を受け、俺は笑顔を浮かべる。

 

「ところでだブースター!俺、見ちまったんだよ!!」

 

「え?何をですか?」

 

そんな時、デパルトが驚きの発言をする。

 

「この前、この近くを船が通ったんだ!!そこに乗ってたんだよ!!『サンムーン』の主人公の女の子が!!」

 

「「「「「…………えっ!?」」」」」

 

デパルトのその発言に、何故か俺以外の4人も驚いた。聞いてないのか?

 

「あれ?皆に言ってなかったっけ?」

 

「言われてないよ!!」

 

「ロロロ、やっぱりデパルトは脳筋だロロロ」

 

「まったくねぇ……言ったかどうかも覚えてないんだもの。こればっかりは擁護してあげられないわ」

 

「これだからデパルトはー……そういうの見たらまずリーダーに報告でしょー!?」

 

「お、おう、すまん……ところで、それが理由なんじゃないか?アルセウス様が『アローラに行け』って言ったのは」

 

「「「「「成る程」」」」」

 

ゲームのストーリーに一致するのが理由ならアローラに行けというのも納得出来るが、ポケモンがポケモンゲームの内容把握してて良いのだろうか。そこが疑問だ。

 

「それじゃあ早速アローラに行きましょう!!えーと、どうやって行くべきかな……」

 

こういう時モンスターボールがあれば便利なんだろうなぁ……

 

「ロロロ。シラユリは風に乗れるから、ロベルタがデパルト持ってデパルトがコブシ持ってコブシがブースター持てば解決ロロロ」

 

「それ100キロ超あるんだけどー。流石に無理よー」

 

「流石にロベルタちゃんでもキツイよねー」

 

「あ、アルセウス様。何かいい案あるー?」

 

「んー、パルキア君に頼んでワープするのが1番手取り早くない?」

 

「頼める場所にいないじゃないですか、それ……って、え?」

 

「「「「「「アルセウス様ぁ!?」」」」」」

 

何故か普通に会話に混ざってるアルセウス様。いつの間に来た?

 

「やぁ!通信の返事なかったから来ちゃった☆」

 

いや、『来ちゃった☆』じゃなくてね……

 

「で、流石にロベルタちゃんでもこのメンバー全員乗っけてくのは無理だと思ってね。僕ならパルキア君に頼めるからさ。というか僕が連れてく事も出来るけど……面倒」

 

「前々から思ってたけどそれで良いのかアルセウス様……」

 

デパルトが思い切り呆れた感じで呟く。カリスマ無いからそう思うのはよく分かる。

 

「威厳なんて食えないでしょーに。いい?僕はね、君等のいた世界の八百万の神とかじゃないんだよ。信仰がエネルギーになる訳じゃないんだよ。僕のエネルギーはご飯と昼寝とゲームと可愛い女の子なんだよ」

 

「あーるーじーさーまー、前の転生者達の顔見てます?『何でこんな奴が創世神なんだ』みたいな顔してますよ?お願いですから、威厳持って下さい。貴方がどうでも良くても周りが良くないんです。神なんですから尚更です」

 

到底神とは思えない事を言っているアルセウスに、何処からともなく現れたパルキアが言う。……ディアルガさんといいパルキアさんといい、何故こっちが下なんだ。絶対に2人の方が創世神に相応しいだろ……

 

「もー、いちいちうるさいなぁ……まぁいいや。パルキア君、この子達をアローラ地方に連れてってあげて。変な所には送らないでね?ただでさえこの子達色違いで狙われやすいってのに、あそこ夫が消えてちょいと狂っちゃった人妻いるから」

 

「なにそれこわい」

 

((((((ルザミーネさん……))))))

 

転生者である俺達は分かるけれど、そうじゃないパルキアさんからしたら恐ろしい人間だよなぁ……フーパとかキュレムまで手に入れようとしてたし……

 

「あぁ、そうだ!アローラに着いたら、まずテンカラットヒルに行ってみなよ。確かそこに技教えを極めたスリーパーがいた筈だから!」

 

「……スリーパー?」

 

「スリーパー。ついでに、そのスリーパーの弟子が転生者の色違いスリーパーだからスグに仲良くなれると思うよ!」

 

「そうですか……」

 

「いやブースターはそんな適当な感じじゃダメだろ。お前教え技無いと技範囲悲惨だろ。馬鹿力ないと……な?」

 

「デパルトさん後で焼く」

 

「ヒデェ!?」

 

「ねー、茶番はもういい?パルキア君が帰りたいオーラ出してるからさー」

 

「あ、はい、分かりました」

 

若干やる気無さげのパルキアさんが腕を振るうと、そこに大きな空間の裂け目が現れる。

 

「よーし!ポケモン怪盗団行っくよー!!アローラでグズミヅが私を待ってるよー!!」

 

ロベルタさんが叫び、空間の裂け目に飛び込もうと……いや、待て。

 

「おうリーダー!!グズミヅだとぉ!?ふざけてんのか!?この世はリーリエ×ミヅキの百合カップルだろ!!」

 

「あら……まさかデパルトと意見が合うなんてねぇ……」

 

「シラユリさん、まさかその名前の由来って……因みに、僕はイリミヅ派かなぁ。……いや、本当はミヅキじゃなくてヨウだった場合にリーリエとのカプが1番なんだけど」

 

「ロロロ、コブシと意見が合ったロロロ。ヨウリエが1番ロロロ」

 

「……あの、早く行きません?パルキアさんキレそうなんですけど」

 

「……ブースター、君は優しいね。ディアルガが君をブースターに転生させたのも分かるよ」

 

カップリング論争をしてる中、パルキアさんが何か呟いた。上手く聞こえなかったけど……何て言ったんだろうか。

 

「もー、取り敢えず私達にはどうしようも無いからミヅキちゃん次第ねー!!因みにブースター君は推しカプあるー?」

 

「グラミヅです。異論は認めない」

 

「早く行かないと裂け目閉じるよ?」

 

パルキアさんがシャレにならない事を言い始めたので、俺達は急いで裂け目に飛び込んだ。

 

「いってらっしゃーい!!お土産よろしくねー!!」

 

後ろでアルセウス様が何か言っていたけど、聞こえなかった事にしておこう。

 

ようやく、俺の転生者ライフがスタートするんだから。今まではチュートリアルだ。チュートリアルだからスバメに負けたのはノーカンだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、僕は帰るよ。パルキア君はどうする?」

 

我が主は、何時ものような気軽な口調で聞いてくる。

 

「そうですね……ちょっと寄って行きたい場所がありますので」

 

「そう?それじゃ気を付けてねー」

 

そんな事を言って、我が主は空へ消える。……さて。

 

「……あれから何年だ?まったく……」

 

カントー地方の南にある無人島。それよりも南に飛ぶ。

 

「……やはり居たか」

 

無人島とさえ呼べないような、小さい島。島というよりかは大岩と表現出来そうな程に、島としては小さい。

 

「……パルキアか。何の用だ?」

 

そこで、ディアルガが此方を向くこともせず強い口調で聞いてくる。

 

「別に何の用もない。ただ、今日もここに居たのかと思っただけだ」

 

「……どこに居ようと私の勝手だろう。ここに眠る者に祈りを捧げに来た訳じゃ無いならさっさと帰ってくれないか?」

 

小さな3つの墓石の前で佇むディアルガは相変わらず強い口調で話す。

 

「……まったく。相変わらずだな、お前は」

 

「何がだ」

 

「お前はその者達の事になるとヤケに短気になる。一応、理屈としては分かるが……俺にその気持ちは分からない。だから不思議に感じるがな」

 

「…………」

 

「人は愚かだ。だから俺は人間が嫌いだ。だが、ポケモンも同じく愚かだ。故に、人もポケモンも等しく嫌いだ。あの戦争が、俺をそうさせた。お前も……そうだろう?」

 

『戦争』というその言葉に、ディアルガはゆっくりと振り向く。

 

「……私は、別に嫌いでは無い。種族で嫌おうとは思わない。……我が()()が、私の概念を打ち砕いた。……お前が分からなくとも、私には分かる。それでいいだろう?」

 

「……そうか。まぁ、そうだな。ところで、だ。新しい転生者をブースターに決めたのは……やっぱり其処に眠っているブースターを思い出したからか?」

 

「……どうだろうな」

 

小さく、聞こえるかどうかギリギリな声でディアルガは呟く。

 

俺はその言葉を聞き取り、何も言わずにそこから飛び去った。

 

 

 

……さて。ディアルガがあの転生者に関わり過ぎない様に監視しなければな。

 



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