Fate/erosion (ロリトラ)
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簡易設定

こちらはサーヴァントとマスターの簡易設定となります。

参考にしていただければ。

 

 

【サーヴァント】

 

セイバー

 

「三騎士」の一騎でバランスの取れた能力から最優とも称される「剣士」のクラスのサーヴァント。

長い黒髪と和服の幼女。しかし、最優とは似てもつかないレベルの低いステータスしか持たない。彼女の真価はとある状態でのみ発揮されるのだがーーー

 

※キャラクターイメージ

 

【挿絵表示】

 

 

アーチャー

 

「三騎士」の一騎で高い単独高度スキルと遠距離攻撃手段を持つ「弓兵」のクラスのサーヴァント

巨大な犬のような獣であり、どう見ても遠距離攻撃を持つようには見えないのだが、マスターからはアーチャーと呼ばれている。

 

 

ランサー

 

「三騎士」の一騎で高い敏捷と白兵戦能力を併せ持つ「槍兵」のクラスのサーヴァント。

軽装に身を包んだ美少女と見間違う程の可愛らしい容姿の少年。生前に借り受けた様々な宝具を所有する。

 

 

ライダー

 

高い機動力と豊富で優秀な宝具を特徴とする「騎兵」のクラスのサーヴァント。

筋骨隆々とした南国風の出で立ちの男性で、軽いノリだが高い実力を併せ持つ。

 

 

キャスター

 

陣地に篭もり様々な謀略や魔術で勝ちを狙う「魔術師」のクラスのサーヴァント。

目に隈を作った背の高いダウナー系の女性。木の根から作った杖を持ち、様々な道具を収納したローブを着ている。

 

 

アサシン

 

気配を隠しマスター殺しに特化した性質からマスターからは最も恐れられることもある「暗殺者」のクラスのサーヴァント。

平均的な身長の痩せぎすの男。現代衣装に身を包んでいる。何故か複数人で存在している。

 

 

バーサーカー

 

狂うことで理性を奪い、その代償としてステータスの底上げをはかる「狂戦士」のクラスのサーヴァント。

鎧姿に毛皮のジャケットを羽織った壮年の男性。何故か理性を保っている。

 

 

 

 

【マスター・その他登場人物】

 

伍道(ごとう) 戈咒(かしゅ)

守掌市平斗町に住むロリコン高校生。

先祖に優秀な魔術師がいたらしく、魔術回路数こそ少ないものの魔力量はかなりのもの。趣味は骨董品収集。小さな娘の観察とナンパはライフワーク。

 

 

爆霧(はぜきり) 風破(ふうは)

 

守掌の地の管理者。42歳。かつては時計塔の天体科に所属していた魔術師で爆破魔術の使い手。表向きは骨董品をメインに扱う貿易商。そしてオネェ。

 

 

 

繰空(くりから) 鎖姫(さき)

守掌の地土着の魔術師の8代目(名前だけ)の11歳の少女。

ゴーレム使いの一族だが、魔術回路が衰退しており正式に後継とは認められていないため魔術刻印は移植されていない。家族に認められる為に聖杯戦争に参加する。

また、一般人の兄がいる。

 

※キャラクターイメージ

 

【挿絵表示】

 

 

イリマ・カフナ

 

時計塔から派遣されたハワイ出身の魔術師。16歳。属性は虚数。霊体操作に特化した魔術師の家系の末裔。祖父からの期待に応えるため、自らの一族の繁栄の為に聖杯戦争に参加する。

 

 

ラバック・アルカト

 

元彷徨海所属で現アトラス院所属の錬金術師。今回は個人の魔術師として聖杯戦争にとある目的のために参加している。髭を蓄えたダンディな男性。

 

 

ライカ・マクスウェル

 

魔術協会から派遣された黒魔術師。武功の為に聖杯戦争に参加する。27歳。

 

 

六道(りくどう) (みこと)

 

大量殺人と死体損壊の罪で守掌刑務所で受刑中の犯罪者。元は一流ホテルの料理人だったが実はカニバリストであり、人間を調理して食べていた。起源覚醒者であり、「調理」の起源を持つ。警察からは猟理人(シェフ)と呼ばれている。

 

 

 

レア・アーネス

 

この聖杯戦争を起こした張本人であり、ナチスの残党と共謀して聖杯を作り上げた。上級死徒であり、高い魔術の腕前を持つ。人理を崩壊させかねないとも言われる自らの目的の為に聖杯戦争を開催する。

 

 

 

ルキア・ザビーヌ

 

今回の聖杯戦争の監督役のシスター。信仰心は凄く低く不真面目な態度でやる気のない姿勢。しかしレアに復讐心を抱いており、その為ならどんな手段でも取りかねない危うさを持つ。思考能力は高いのだが如何せん短気なため活かされにくい。常人よりは高い戦闘能力を持つが上級死徒やサーヴァントにはとても及ばない。、



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第1章 聖杯戦争、開幕
プロローグ


その施設は日本有数の霊地である守掌市、そこに存在する霊山である水原山の地下に存在した。

 

そこは様々な魔術礼装や霊薬の入ったフラスコなどが並び、同時に最新鋭のコンピューターが所狭しと置かれた研究所。しかしなにより目立つのはあちこちに掲げられたハーケンクロイツの紋章である。

 

ここは嘗て第三次聖杯戦争の折に冬木聖杯を奪取したもののダーニック・プレストーン・ユグドミレニアに出し抜かれまんまと聖杯を奪われたナチス、その残党の集まる基地である。

 

その施設の中心部に集まるのは兵士達とそれを統率する指揮官、そしてこの場にはとても不釣り合いに見えるゴシックロリータの服装をした金髪の少女。

顎髭を立派に蓄えた初老の指揮官らしき男が少女に声をかける。

 

「ついに…なのですな、アーネス殿。総統閣下の崩御から半世紀以上、貴公の協力により完成したこの真なる聖杯、そしてこの聖杯戦争に我々ナチスが勝利することで世界は今度こそアーリア人のものになる。これまでの様々な協力、感謝の念を抱くしかありません。」

 

指揮官の男は恭しい礼とともに感謝の意を告げる。それに対しアーネスと呼ばれた少女は見た目とは不釣り合いなほど、いやこの場においてはその声色こそが釣り合っていると言えるほど落ち着いた声色で言葉を紡ぐ。

 

「いえいえ、少佐殿のおかげですとも。それによって私としても納得のいく出来となりました。……故に、あとはこの聖杯戦争に勝利するだけです。」

 

そう言いながら、少女が後ろを振り向くとその頭に拳銃が突きつけられる。

 

「これは……どういう事ですかな、少佐殿。」

「なに、聖杯の器が出来た今、貴女は不要と言うことです。」

 

そう言うと同時に弾丸が男の拳銃から放たれ、頭蓋を貫く。そしてそれを合図とするかのように、兵士全員から向けられたライフルの弾が少女を襲う。放たれた弾丸はあるものは右眼を貫き、あるものは歯を砕き喉を貫き脳幹を抉る。そしてあるものは心の臓腑に孔を穿つ。

そして全ての弾丸が撃ち込まれた少女の肉体は当然のごとく物理法則に従い崩れ落ちる。

 

ーーしかし。その穴だらけの肉体は、逆に当然ではなく。物理法則、いや自然の摂理すら無視して少女が起き上がった。

そうしてニタリ、と口の端を歪めて笑顔で何事も無かったかのように、少女として極めて自然であるかのように言葉を発する。その行動全てが不自然であるというのに。

 

「えぇ、えぇ。分かりますとも。不要になった道具は処分する、当たり前の考えです。私だってそう考えます。けれど、貴方は甘かった。」

 

指揮官の男は余りにも奇妙に過ぎる目前の現象に対し、震えながらも部下の手前逃げることも出来ずに少女に問を投げるしか出来ない。

 

「な、な、何故なのだ!何故死なない!魔術師は近代兵器の前に無力だと!最悪殺せなくても機能停止には追い込めるはずではないか!お前も言っていたことだ!」

 

「えぇ、そうですとも。魔法使いや執行者クラスの実力者、バルトメロイのようなバケモノを除けば近代兵器は有効です。少なくとも私レベルの魔術師なら当たれば殺せる、というところには間違いはありません。」

「ならば、なぜ……!!」

「ただの魔術師なら、ね。最期にいいことを教えてあげましょう、少佐殿。人類を超越した吸血種である死徒なのですよ。故に銃弾などでは私は殺せません。では……」

 

少女はそう右手を掲げる。

 

「ま、待て!協力する!貴様に協力するから私を生かせ!誇り高きアーリア人である私なら貴様の役に立つ!世界中にいる友軍も呼び寄せよう!そうすれば聖杯戦争など一瞬で片がつくぞ!どうだ?悪い話ではあるまい!私はまだここで無駄に死ぬ訳にはいかないのだ!!」

 

少女は考え込む素振りを見せた後、優しく(じゃあくに)微笑み言い放った。

 

「……そうですね。魔術師としても、無駄は確かによくありません。」

「な、ならば……」

「ですので、ただ殺すのもなんですし、これから召喚するサーヴァントの餌となって頂きましょうか。」

「な、なにを」

maledizione, malattia, debolezza(呪いは心を犯す・病は肉を犯す)ーーーー!」

 

少女の詠唱とともに吹き荒れるは呪詛の嵐。肉体を衰弱させる北欧の呪術、ガンドと類似した効果を持つ呪詛の病が兵士達や指揮官の男を襲い、倒れさせた。

 

「貴方がたを死なない程度に衰弱させました。サーヴァントを喚ぶまでは生きてもらわないと困りますからね。これが何をしたかに対する返答です。……まぁ、既に意識も朦朧としてて分からないでしょうけど。」

 

そう言い捨てると少女は懐から毛皮の切れ端のようなものを取り出して地面に置き、何事かを唱えるとそれを中心として魔法陣が光り浮かび上がる。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」

 

少女が唱えるは聖杯戦争における英霊召喚の詠唱。

 

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

魔法陣に流れる魔力は活性化し、少女の周囲の大源(マナ)が軋みをあげだす。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する」

 

魔力による施設の鳴動は更に肥大化し地下施設全体を震わせる。通常の英霊召喚では有り得ないほどの魔力がこの事態を引き起こしている。

 

「ーーーー告げる(セット)。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者」

 

英霊召喚の儀は順調に執り行われる。

しかし、続けて唱えられるのは本来の聖杯戦争で、勝つためにこの英雄を呼ぶならばまず有り得ないクラスの選択肢。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」

 

それは狂戦士を喚ぶための追加詠唱。

嘗て行われた冬木の聖杯戦争ではそのクラスを喚んだマスターは例外なく魔力不足で脱落したと言われるほどの外れクラス。しかも一流の英霊と呼んでも差し支えないこの存在を剣士のクラスではなく狂戦士のクラスで喚ぶという事態。これは通常ならば勝つことを放棄していると思われても仕方ない程の暴挙であるといえるだろう。

しかし少女は気にした様子もなく詠唱を続ける。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

最大規模の魔力の奔流が周囲の風を巻き上げ視界を奪う。

しかし視界が晴れた時そこにいたのは予想に反して。いや、少女にとってはこれこそが予想通りだったのだろうか。精悍な体つきを鎧と毛皮のジャケットで覆い剣を携えた英霊の姿。

されどその目に狂乱の色は無く、まっすぐに目の前の少女を見つめている。そして重々しく口を開き、問いを放った。

 

 

「サーヴァント、バーサーカー。ここに推参した。故に問おう、貴様が私のマスターか。」

 

にこやかに笑い少女が返答する。

 

「ええ、私こそが貴方のマスターです、バーサーカー。」

 

少女とサーヴァントとの間に因果線が結ばれ、ここに聖杯戦争一組目の契約が完了する。

 

マスターとサーヴァントとの関係は聖杯戦争においてやはりかなり重要なファクターであるといえる。なので最初の命令(オーダー)はその後を、引いては勝敗までを左右すると言えるであろう。

 

「では、バーサーカー。マスターとしての命令です。その辺の魂を一つ残らず、喰らいなさい。」

 

故にこれは少女にとってもある種の賭けであったと言えよう。

 

「ーーー了解した、マスター。俺はこの人間達の魂を喰らおう。」

 

そして、少女は賭けに勝った。それはバーサーカーのクラスであるのに狂化していないことによる不具合か。本来なら多少は示すであろう聖杯戦争に関係のない、そして現時点での必要性のない魂喰らいに対し、彼女のサーヴァントは何の違和感も抱かず従ったのだ。その真名からは考えられない結果である。故に非道を良しとする彼女はサーヴァントとの間に軋轢を生じさせずに自らのサーヴァントを強化することに成功した為、大きなアドバンテージを得たと言えるだろう。

 

自身の目論見通りに進んでいることを確信した少女は再び口元を歪める。

 

 

ーーーしかし、そのマスターとサーヴァントの邂逅に水を指す存在が1人。

地下施設へと侵入していた。そして、ついに対面する。

 

「ーーーなんてことだ。レア、やはりキミは作り上げてしまったのかね。このような兵器を。」

 

現れたのは白髪を蓄えた老人。しかし白髪から受ける印象とは裏腹にハリのある肉体、濃密なまでの魔力。彼もまた、魔術師であることは明白であろう。

 

「おや、おやおや、おやおやおやおやおやぁ!?これはこれは懐かしきかな我が同胞、ラバック・アルカトよ。いや、元同胞と言うべきですかな、何しろ貴方が彷徨海を捨てアトラス院に行ったことで袂を分ったのは既に5世紀も前のことなのですから!」

 

少女はまるで久々にあった友人と出会ったのような気安さで声を放つ。

そこだけ見たならまさに年相応という言葉が相応しい程の心からの再開を喜ぶ声。

しかし、彼からの返答は逆に吐き捨てるような声色であった。

 

「何が久々かね、使い魔は送ってくるではないか。とはいえ、会うのは貴様の言う通り5世紀ぶりか。」

 

嘆息しつつ老人は言葉を続ける。

 

「貴様が50年前に使い魔で私を誘った、かの忌まわしき毒聖杯計画。人理を崩壊させるに等しいあのような計画、人類の滅びを回避するために動き続けるアトラス院の一員である私の元にあんな誘いを送ること自体狂っているとしか言いようがない。貴様、断るのを分かってて誘ったろう?」

「いや?そんなことは考えていませんでしたが。そりゃあ受けてくれない可能性のが高いとは思っていましたけれども、貴方も若かりし頃は同じく彷徨海で神代の魔術について学んだ身だ。この世界に神代の環境を再現するといった計画に興味が湧いてこっちにつかないとも限りません。だって魔術師ってそういう生き物でしょう?」

「ふん……だが世界を滅ぼしてでも、しかも根源に至るためでなく己の研究を充実させる為だけに世界を滅ぼそうとした魔術師は過去にも類を見ないと思うのだがね。」

「うふ、うふふふふ。けれどそれはそれ、ですよ。さて、そろそろ本題を伺いましょうか。単なる雑談の為にわざわざ極東までいらっしゃる方ではないでしょう?」

 

にこやかな笑みを崩さぬまま少女は問いかける。

 

「相変わらず食えない毒女め……しかし、勿論私も世間話をしに来た訳では無い。ここまで来たのは貴様の計画を止める為。私に貴様の潜伏先までは掴めなかったのでね。亜種聖杯戦争として喧伝されるのを待っていたのだよ。」

「つまり、協力してくれにいらした訳では、無さそうですねーーー!」

 

少女は身振りでバーサーカーに攻撃の指示を出す。

 

「無論、そう言っているだろうーーー!」

 

老人は黒塗りの拳銃のようなものを放つ。

 

 

そして、一閃。

しかし、老人はバーサーカーの剣戟を躱し、バーサーカーは老人の放った微細な糸のようなものに絡め取られた。

 

「何…?サーヴァントの攻撃を避けるどころか、捕縛!?何をしたのです!」

 

流石の行動に少女も慌てた声で問うが、逆に老人は落ち着いた声音で返答する。

 

「これは私の開発した兵器が1つ。アトラスの7大兵器であるブラックバレルの拙い贋作さ。銘を《贋の黒い銃身・神秘殺し(イミテーション・ブラックバレル)》という。撃ち抜いたものの神秘を霧散させる魔術礼装でね。限定礼装を無効化し、サーヴァントを弱体化させる。貴様の為に作り上げた兵器だよ。」

「な……!」

「さて、おしゃべりはここまでだ。効果が切れる前に毒聖杯を無効化させてもらうとしよう!」

 

言い放つと同時に老人は素早く走り出す。

 

colpo, morte(吹き病め、死の毒)ーーー!」

 

聖杯の破壊を防ぐため、少女は範囲全てを溶かして殺し尽くす致死の毒風の魔術を放つ。

 

acceleration, acceleration, acceleration(加速、加速、最大加速)ーーーー!」

 

しかしそれでも手足の末端部分が溶けだすのも無視して老人は自身に加速術式をかけて先へと進む。

 

「とったーーー!!」

 

銃声が響き渡り、弾丸が聖杯を撃ち抜いた。

それは撃った老人が何よりも確信していたであろう。

だがーーー

 

「残念だね、こんなのも見抜けなくなってしまったなんて。」

「な、にーー」

「ここはナチスの基地です、何よりも聖杯を求めていた彼らがそう簡単に手の届く場所に聖杯を保管するはずがないでしょう。」

「あぁ、そうだな。全くその通り。魔術的な仕掛けは無いようだが、大方光学迷彩などの科学的な仕掛けが残っていたのだろうよ。」

「おや、理解しましたか。つまり、貴方は聖杯を外し、地脈に撃ち込んだだけ……地脈!?まさか!?」

 

ようやく気づいたかと嘲るように老人はニヤリ、と不敵な笑みをこぼす。

 

「その通りだ、私の目的は最初から地脈に撃ち込んでルーラー召喚阻害の為の術式の効果を打ち消すことだったのさ!」

 

溶けて崩れ落ちる身体ながらも老人は笑いながら種明かしをしていく。

 

「私の演算によれば《贋の黒い銃身・神秘殺し(イミテーション・ブラックバレル)》だけではあそこまで高度な魔術礼装を無効化することは出来ない。しかしこのような人理案件を処理するためのルーラーのサーヴァントなら?だが貴様は間違いなくそれを防ぐ手立てをしていると私の思考は弾き出した!だからその為に行動していたのさ。ハハハハハハハハハハ!!」

「そんな不安定な可能性に命をかけたと?全く君らしく無いじゃあないですか!だが面白い!!」

 

しかしそこで老人は不敵に笑う。

 

「いいや?私は死ぬつもりはないとも。私は不滅なのだよ。いずれわかる時が来る。ではいずれ、今度会うときは貴様の計画を完全に潰す時だーーー!」

 

そう言い残し完全に老人の肉体は溶け、消え去った。

残された少女は1人笑い、決意を新たにする。

 

「うふ、うふふふふ。面白い!私は貴方がどうしようと、必ず世界を神代へと染め上げてみせるぞーーー!」

 

 

全てを蝕む聖杯戦争、その幕はまだ開幕のベルがなり終えたところ。その終幕がどのようなものになるのかーーーそれはまだ誰も知りえない。




見切り発車スタートのオリジナル聖杯戦争ssです
よければごゆるりとお楽しみください
批評から意見から感想をいただけるとありがたいです

あと、プロットも途中までしか書きあげて無いためある程度進んだら亀更新になると思います


17/07/23 改稿して一つに纏めました


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0日目/いつもの朝、いつもの学校

ーー夢を見ている。それは遠く、遠く、追憶する夢だ。

 

そこはとあるマンションの1室。

 

目の前にいるのは絶対的な強者。

 

そこには幼い子供というボクの立場においては何よりも畏怖すべき存在となった、両親(あくま)がいた。

 

「その目だ……その目をやめろよ、こそ糞ガキがぁ!」

 

投げつけられた金属製の灰皿がボクの額をかち割る。

 

「あんたが、あんたが生まれてから何もかもおかしくなったの!何もかもよあんたのせいよ!」

 

それは違う。

無為で無能な父親(おとうさん)がリストラで職を失ったのは不況の煽りをたまたま受けただけであり。

叫び喚くだけの母親(おかあさん)が近所の婦人会でイジメを受けているのはたまたまそこの上位者の癇に障ってしまっただけである。

 

とどのつまり、それらは全て間が悪かったに過ぎないのだ。

しかしボクの両親は怒りの余りそんなことに気づけない。

 

確かにボクが生まれて以降全ての歯車は狂ったのかもしれない。けれど、それはボクのせいではなく、こうしてボクの皮膚に火傷や痣が残るのは単に両親(おろかもの)の心の弱さに過ぎない。

 

「なによ、

なによ、なによなによなによーーー!達観した目で見ちゃってさぁ!その目、その目をやめなさいよぉぉぉ!!アンタなんて産むんじゃなかった!!」

 

母親がヒステリックに叫びながらタバコをボクの肩や腹部に押し付けてくる。

 

「お前さえ、お前さえ生まれていなければ俺は会社で出世して幸せな人生を歩めたんだ!それを!このっ、このっ、このっ!!」

 

父親は怒りに身を任せつつも、痣が目立たないであろう腹部や胸部もねらって的確に蹴りを叩き込んでくる。

 

このままではボクは死んでしまうだろう。

 

ーーーだから。

 

 

ズプリ、と音がした。

包丁が母親の腹部に刺さった音だ。

 

ーーー殺す。

 

サクリ、と音がした。

カッターナイフが父親の喉に刺さった音だ。

 

 

ーーーボクは自由になった。けれどこのままじゃあ生きていけない、だから。◼◼を、◼◼ことにしよう。

今は、眠りにつく時だーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ーーーなんだ、今の夢。」

 

目覚めるといきなり頭の奥に鈍い鈍痛を感じた。

何やら自分が自分でないような夢を見ていた気がする。自身を把握出来てるだろうか。

 

えーと、ここは日本の地方都市、守掌市平斗町(もりてしひらとちょう)の駅前から徒歩15分のところに存在するアパート、鎖山(さやま)ハイツの1室。そして俺はそこに済む高校生の伍道(ごとう) 戈咒(かしゅ)

うん、ちゃんと把握出来てる。

あんな訳の分からない夢なんて

俺は知らない/ボクは知ってる

あんな虐待なんて記憶に

存在しない/残っていない

 

一瞬訳の分からない鈍痛を感じたが、それ以上の痛みは感じることもなかった。夏とはいえ夜に体を冷やしすぎたのだろうか。

とはいえそんな呑気な思考はすぐに振り払い朝食の支度をする。

今日は夏休みが目前とはいえ月曜日であり、憂鬱だが俺も健全な高校生である以上学校に行かなくてはならない身なのだ。とはいえ男1人の朝食など簡単なものでパンを焼いたトーストにフライパンで焼いたプライドエッグとカリカリのベーコンを乗せただけのシンプルなものである。とりとめもないことを考えながら作っているうちに出来上がってしまった。

 

 

「ごちそうさま。」

 

1人での朝食などすぐに片付き、洗い物までがスッと終わる。そして支度をして家を出ようとした時、左手の甲に鈍痛を感じた。うっすらと痣のようなものが出来ている。今日の帰りにでも湿布を買ってくるとしよう。

 

 

「よーっす、戈咒。どした、体調悪そうだな。」

 

家を出るとクラスメイトの(いぬい) 錬土(れんと)が声をかけてきた。いつも通り俺を待ってたらしい。

 

「おっす、錬土。いやな、なんか変な夢見てな。」

「へぇー、どんな夢?エロいの?」

「いや、違うんだが……あれ、なんだっけか。」

「おいおい、そりゃなんだよ。よく分からんのに気分悪いのか。」

「……ん、そうみたいだ。だがまぁ大したこっちゃねぇさ。それより、今日の数学の課題やったか?」

「んまぁ、そりゃ流石にその程度は。豪ちゃん無駄に迫力あるからなぁ、怖ぇよ。」

「まぁ、確かに……ホント初見だとその道の人にしか見えねぇしな。」

 

俺らの担任でもある雷禅(らいぜん) 豪三郎(ごうざぶろう)を初見で教師だと見抜いたのは噂だと校長1人だとも聞く。寧ろ逆に何故校長は見抜けたのか不思議なレベルだ。

 

「まぁそんなことはどうでもいいさ。それより戈咒、昨日送った動画見たか?あれならお前も気に入ると思ったんだぜ。いいよなぁ、やっぱあのたわわ感こそ最高だぜ!」

「開いたけどすぐ閉じた。お前は全く何も分かってない。」

「え?なんでそんなに怒ってるん?ロリコンのお前ならロリ巨乳も好きだと思ったんだけど……」

 

コイツは何度言っても懲りないようだ、やはりここは俺がビシッと素晴らしさを伝えなくてはなるまい。

 

「お前は学習能力がないバカなのか。ロリに巨乳を付けるだと?それは甘く瑞々しく実ったイチゴに練乳を付けてその素晴らしさを台無しにするかの如く愚かな行為だ!ロリはあの清らかさの溢れるぺったんこそが至高なのだ!巨乳なぞという低俗なBBA要素を付属させるんではない!だいたい過去にも言っただろう、ロリこそが至高にして究極の女性であると。」

「いやいやいやいやいや、俺はストライクゾーンは広い方だがその考え方は頂けないね。女の価値は胸で決まると言っても過言ではない。それほどにおっぱいとは苛烈なるまでのパゥワーを秘めているのだよチミぃ。故にロリに巨乳を乗せれば相乗効果でむぅわぁさにぃ!ビッグバァン!!と言えるほどの破壊力を身につけるのは当たり前じゃあないか!だからこそそのぺったん以外をロリとして認めないその姿勢には断固反対するね。」

「いいや、俺はその反対を認めないぞ、錬土。何故ならそれにはリアリティというものが存在しないじゃないか。お前の動画しかり、ロリ巨乳というものは非現実の存在か或いは年増だ。つまりその存在こそが清く美しいロリータに対する冒涜とすら言えるのだよ。つまりだなぁ、俺は高らかに主張させてもらおう、18以上はBBAだと!!」

「……お前今、全国の女性を敵に回したぜ。」

「構うものか、ロリへの愛の前においては些細なことだ。ん……おや。」

 

俺の両の眼が前方で談笑しながら通学途中と思われるランドセルを背負った女子小学生の二人組を見つけた。

 

「悪い、錬土!また今度な!」

 

考えるより先に身体は動き出していた。そして彼女達の前に現れて俺の口は甘く誘いの言葉を紡ぐのだ。

 

「おはようございます、麗しきレディの御二方。俺は伍道 戈咒といいます。唐突で不躾だとは思いますが今からお茶でも如何ですかな?勿論お代はこちらで持ちますし、学校の方にも連絡はさせて頂き…ブベラッ!」

 

後頭部に強烈な衝撃を感じて言葉を詰まらせてしまう。これからレディをお茶に誘おうとしていたのに一体何をするのだ、この錬土(バカ)は。

 

「何をする、バカ錬土。お前のせいでレディの前で言葉を詰まらせてしまうなどという失態を演じてしまうことになってしまったではないか。」

「バカはてめぇだこの真性ぺド野郎!放課後に遊んであげる程度なら近所の優しい高校生で済むけど今のは完全にアウトだろうが!!ほら見ろ今の子達防犯ブザー鳴らす寸前だったぞ!……あー、ごめんねー、このお兄さん頭がおかしいんだ、こんなバカは無視して小学校で勉強頑張ってねー。」

「おい、邪魔を……」

「捕まる気かこのペドロリコン。節度くらい守りやがれこのドアホ。」

「……すいません。」

 

今のは逆らってはいけないと言葉でなく心で理解した。それだけのスゴ味があった。

 

 

「ったく……相変わらずのバカ野郎だなお前は。」

「面目ない……あのように美しいレディを見るとどうにも抑えが効かなくなってな……」

 

あれから俺が落ち着いたところで歩き出し今は錬土と共に教室で会話を続けていた。

ちょっとした高台にある守掌市ではそこそこ名を馳せた進学校である鎖山高校(さやまこうこう)の2年1組こそが俺らの所属するクラスである。

 

「戈咒……お前いつか手出しして捕まるぞ……」

「いや、その心配はない。俺はデートに誘ってお茶をしたいだけだ。それ以上はロリコンとしての名誉にかけてないと誓おう。」

「その名誉自体がすげぇ信頼ならねぇぞ……。ったく、お前もやっぱロリじゃなくてもっとほかの女性に目を向けようぜ?もっとボンキュッボンなお姉さんとかを守掌駅の方に行って引っ掛けてそのまま夜までしっぽりとよぉ。」

「錬土、前にお前がその計画をやろうとしてるのを見守ってやったけど1日で50戦50敗だったじゃねぇか。逆によくあそこまでナンパ出来たもんだと思うぞ、いやマジで。」

「バッカ野郎、戈咒お前そんな程度で諦めてられっかよ。俺はいい女を沢山捕まえて退廃的な生活を高校在学中に実現するのが夢なんだぜ?」

「その夢は叶いそうにないけどな。」

「ぐっ……言ってくれるじゃねぇか。しかしそうだな、やはり身近な所から始めるべきなのかもしれないな。まず委員長とかどうだ?ロリ系だけどもボンキュッボンだしいいと思うんだが。」

「委員長か……悪くは無いが、胸があるのが唯一の欠点だな。」

「そこがいいんだろうが……やはりお前とはそこに関しては永遠に平行線だな。」

「あぁ、委員長の胸とは真逆にな。」

「上手いこと言ったつもりかよ、おいおい。」

「ええ、ちっとも上手くありませんねぇ、伍道君に乾君。」

 

噂をすれば影、というやつか。

我らがクラスのロリ巨乳型委員長、二階堂(にかいどう) 京子(みやこ)さんが目に見てわかるほど、ふつふつと怒りを煮えたぎらせてそこにいた。

 

「伍道君、乾君。いったい、誰がロリ巨乳ですって?」

 

怒っていた。彼女は、とてつもなく。

 

「な、なんだ聞いてたのか、ひ、人が悪いや委員長。俺らはただ、なぁちょっと男としての性について話してただけだよな、戈咒?」

「お、おうそうだな、錬土。俺らはただ……」

 

膨れ上がる殺気。

これがいわゆる蛇に睨まれた蛙、死を覚悟する瞬間だと理解した。

瞬間、パァンパァンという小気味いい平手打ちの2連撃が俺と錬土を襲った。

 

「全く!少しは反省したらどうなのよ!毎日毎日毎日毎日……風紀が乱れるのが分からないの!?それに、今回は、わ、私…じゃなくて!クラスメイトに欲情するとか何を考えてるのあなた達は!これだから鎖山高校変態四天王なんて呼ばれるのよ。まったくあなた達は……」

 

そして、それから始業の鐘がなるまで俺らは彼女にお説教を受け続けた。




委員長は校内では眼鏡だけどプライベートではコンタクトレンズを付けるんです(果てしなくどうでもいい情報)


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0日目/守掌市都市伝説

4限目の終了を告げる鐘が鳴り、昼時となった。今日は弁当を持ってこなかったので購買でイチゴミルクとサンドイッチを買って机に戻ると錬土と委員長が昼食を取りながら何やら話していた。

 

「お、昼飯は購買で買ってきたのか。ところで戈咒、お前守掌(もりて)の都市伝説知ってるか?」

「守掌の都市伝説?」

 

この町に住んで2年になるが未だに聞いたことのない話題だった。

 

「最近この学校で話題になってるのよ。そんな心霊現象なんてものが実在するはずもなし、いたずらに風紀を乱されるのは困るから真相を突き止めようと思って。ほら、乾君はうちの学校でも無駄に顔広いし都市伝説の正体も知らないかなーって聞いてみてたのよ。」

「んー、でもよー。悪いが俺も学校で噂になってる程度までしか知らねぇなぁ。」

「そもそも、その都市伝説ってどんな内容なんだ?」

 

興味が湧いてきたのでつい尋ねてみてしまう。

 

「幾つかあるんだが、有名なのは鎖山森(さやまもり)の人狼、そして守掌の人喰い鬼、平斗(ひらと)の幽霊屋敷の三つだな。」

「鎖山森で最近狼人間を見かけたって噂が1年生の子達の間で流行ってるのよ。なんでも人のように見えたけど叫び声がどう聞いても獣のものだったらしいわ。

人喰い鬼には人を襲って食べる化物が守掌市に最近現れたって噂よ。私に言わせればどちらも眉唾物ね。まぁでも最近行方不明者が増えてるのは事実みたいだし注意を呼びかけておいて損は無いと思うんだけども。」

 

鎖山森とは俺達の家や学校がある平斗町から水原川(みはらがわ)の方にも向かって進んでいくとその県道の両端に広がってくる森林地帯のことだ。何かめぼしいものが取れるわけでもないのに迷いやすいため普段は立ち入り禁止となっている。

 

「あと1つの平斗の幽霊屋敷はお前のが詳しいんじゃないか?お前の家から駅を挟んでちょっと行った辺りだったろ。」

「あぁ、あの空き家の洋館だろ?お前とも昔行ったことあるじゃないか。なんで都市伝説になってるんだ?」

 

平斗町にある幽霊屋敷は俺も過去に錬土や他の同級生との肝試しで使ったことがあるがただの空き家の洋館であり何もいなかったということを覚えている。というよりこれは平斗町側の子供にとっては常識レベルのことであり、今更都市伝説になるほどのことではないと思うのだがーー

 

「俺もそう思ってたんだがな、どうやら見たらしいんだわ、それも小さな女の子の幽霊をガチで、だとよ。」

「ただの噂じゃないのか?」

「……その話を聞いたのは俺らと一緒に肝試し行った奴らからなんだよ。」

 

錬土は弁当の野菜スティックを齧りながら声色に真剣味を帯びさせて話を続ける。

 

「だから、さ。ここからが本題なんだか今夜辺りでも行ってみねぇか?真相を確かめに幽霊屋敷によ。」

 

ーーなるほど。ここまでのは前フリに過ぎなかったということか。

幽霊の幼い女の子(ゴーストレディ)か。夜のデートの相手としては悪くない。

 

「ちょっと。私の前でクラスメイトが不法侵入の計画を立ててるのを私が止めないとでも思ってるの?」

 

俺が錬土の案に賛同しようとした瞬間、委員長が待ったをかける。

元は委員長が持ち込んだ話題だがクラスメイトが問題に取られかねない行動とるのを見過ごしてくれる程甘くはなかったらしい。

 

「でもこれ委員長が持ち込んだ話題じゃないか。なんで委員長が止めるんだよ。」

 

俺としてもこの件には強い興味があるのでで錬土に対し援護射撃を送る。

 

「ぐっ……それはそうなんだけど……でもクラスメイトが不法侵入を行おうとしてるのをみすみす見逃す訳には……」

「でもここで真相をはっきりさせてこれば学校に広まる噂の根を1つ断ち切ることが出来るよ?」

「うーん……そ、それは……」

 

よし、これならもう一押しでいけるぞ!

そう考えた矢先である。

 

「なら委員長も一緒に来れば?」

 

俺の思考が凍りついた。

ーーーな、何を考えてやがるんですかこの巨乳好きの変態はーーー!?

俺だからこそ分かる、コイツ絶対に「胸が足りねぇ、ボインがよぉ」とかそんな理由で委員長の同行を提案しやがったーーー!!

 

「い、いやそれはちょっと。慣れてる俺らだけで行ったほうがやっぱり、ね?」

 

「確かに……私が同行すればこの2人の悪さを止められるかも……」

 

や、やばい委員長も思いの外乗り気だ!これじゃ折角の幽霊少女(ゴーストレディ)との夜のラブラブデート計画が崩れてしまうっ!!

 

「ちょ、ちょっと待ってよ委員長。それは女の子としてどうなの?夜に俺らみたいな男2人と、それも錬土みたいな女好きと一緒にいたら何されるか分からないよ!?」

「た、確かに……やっぱやめておく方が安全よね……」

 

よし、勝った!

そう思ったのもつかの間。

 

「あ、てめぇずりィぞ戈咒!お前だってどうせ幽霊のロリにコナかけるつもりだってのに俺だけ無しとかそんなんねぇぜ!」

 

やっぱり俺の考えは向こうも読んでいたらしい。でもそれはそれとして曝露しないでも良かったじゃん……委員長が急に俺から距離とりはじめたよ。

 

「そ、そうだった……!忘れてたわ、あなた達両方とも変態四天王の1員じゃない……!伍道君が私を行かせないようにしてたのはもし幽霊の女の子がいたら邪魔だからだったのね。その幽霊が不憫になってきたわ……」

 

なんか、話が妙な方向に進んでいるような。

 

「よし、決めたわ。幽霊をあなた達から性的な意味で守るために私も同行します。」

「っしゃーーー!!よく言ってくれたぜ委員長!」

「ハァーーー!?え、ちょ、なんでそうなるの!?というか俺はロリがいても性的な意味で手出ししたことは無いから!」

「いつやってもおかしくないからそう言われるってことを自覚なさい。それと、乾君。もし何か私にやらかしたら死んだ方がマシって思える程の責め苦を与えてあげる。」

「げ……ハイ、ワカリマシタ。」

 

俺の目論見も失敗したが錬土の目論見も失敗したようだ。ザマァ。

 

「とりあえず、今日の夜11時に平斗の駅前広場に集合しなさいね。遅れたらシバくわよ。」

「「……ハイ。」」




書き溜めがあるうちな毎日1話から2話投稿する予定です
書き溜め切れたらできる度に更新……という形で


……書き溜め無くても週一更新出来るようになりたい


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0日目/ゴーストウォッチャーズ

ーー放課後。

錬土と分かれた俺は夕食の材料を買いに平斗駅前の平斗ファミリー商店街に来ていた。

 

「安いよ安いよー!今日はトマトがお買い得だよ!」

「イワシが5匹のまとめ買いでなんと単価が30%低くなるお得なセットだよー!買ってっておくれー!」

「今日仕入れたばかりの無銘の日本刀だ!是非見てっておくれよ!」

 

いつも通りこの時間は活気がある。色んな店の呼び込みの声がーーーなんだ、あれ。

よく見ると馴染みの骨董品屋の店長だった。骨董品ってそういう売り方するもんじゃねぇだろ。

ーーーでもまぁ、日本刀だって言うし。新入荷らしいし。ちょっとくらい。ちょっとくらい見てっても問題ないよね、うん。

 

 

 

「ありがとうございましたーー!」

 

ーーどうしてこうなった。

俺は夕食の材料を買いに来たと思ったらいつの間にか無銘の日本刀を8万円で購入していた。何を言っているのか以下略。

いや、うん、この刃紋が美しすぎるのがいけないんだよ。これだけ引き込まれる骨董品は久々に見たのにお値段が10万切ってるなんてお手頃価格過ぎるからね、買うのはしょうがなかった!俺は間違ってないぞ!!

 

でも、これからしばらくの食費どうしよう……預金崩すしかないのか……?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夜の11時。住宅街の駅で飲み屋もない平斗駅の駅前広場は既に人がまばらになっている。飲み会帰りと思わしきサラリーマンを数人見かけるだけだ。

周囲を見渡すと2人とも既に着いていたらしい。走るのを想定してか、動きやすい私服姿を2人ともしている。

「2人ともすまん、待たせたか?」

「約12分ほどね。気にしないでいいわ。」

「……委員長、そこは嘘でも今来たとこって言うもんだろうがよ。」

「何故偽装する必要があるのかしら?」

「いや偽装とかじゃなくてさ、女子力というか。まぁ、うん、いいや。委員長はそれで。」

「そうね、そんな話より早速向かいましょう。向かう方向はこっちでいいのよね?」

「ああ、そっちで問題ないよ。徒歩で25分くらいかな。」

「そう、分かったわ。行きましょ…ヒャウッ!」

 

突然委員長が嬌声をあげて仰け反る。

理由は明白だ。後ろから錬土が首筋に息を吹きかけたのだ。夏の生暖かい夜だけあって余計に怖気が増したのかヒクついている。

しかしすぐに正気を取り戻た様子で錬土を睨みつけビンタを食らわせながら声を荒らげた。

 

「この、ばか、馬鹿、大馬鹿、錬土!2人きりの時に何もしてこないからって安心したらこれって!もう!バカ!」

 

ひとしきり錬土に罵声を浴びせて気が済むまでビンタを食らわせると、すこし落ち着いたように思えた瞬間、こちらの目に気づいたのか頬を朱に染め上げる。

 

「……み、見てたわよね。」

「はい……」

「いい、何も言わないこと。お願いだから。そして忘れなさい。れん……乾君とは何も無いんだから!」

 

それ自体が何かあると公言してるに等しいということに気づかない様子で委員長は俺に対し詰め寄る。とはいえ俺もわざわざ熱湯を被りにいくような趣味がある訳では無いのでそれ以上追求せず、時間も遅いので幽霊屋敷に向かって3人で歩を進める。

 

 

取り留めもない雑談をしながら、隙を見てふと先程の錬土の行動に違和感を感じたため聞くことにする。錬土は女好きだが女性の嫌がることを訳もなくするタイプではないと親しい奴なら皆知っているからだ。

 

「錬土、なんであんなことしたんだ?」

「なんで…か。いや、な?なんか委員長お前が来るまで落ち着かない様子だったからさ。ちょっと緊張を解そうとだな。」

「錬土。」

「……わーったよ。誤魔化せねぇな、お前は。落ち着かない様子だったってのは本当だ。だからてっきりお前に気があるんじゃねぇかなって思って気を使おうとしたつもりだったんだがな、いやはや難しい。俺が委員長を怒らせれば俺を置いて2人で行くのかなーと思ったんだがな。」

 

……この男、鈍感にも程があるぞ。

誰がどう見ても明白だろあんなもん。ぜってぇコイツに好意抱いてんだよ委員長は。俺が来るまでってそれ要するに好意を抱いた相手と2人きりで緊張してただけだろ。やっぱし馬鹿なのかもしれない、コイツは。

……まぁ、教えてやるのが友人としての親切だろうな。

そう考えて口を開くものの。

 

「あのなぁ、錬土。それは俺に気があるんじゃ…」

「お、着いたぞ着いたぞ!」

 

幽霊屋敷が見えた瞬間錬土はとびだして走っていってしまった。

 

「……ってこら待て馬鹿!バラけるとめんどくさいから委員長も付いて来て!」

「あ、はい!」

 

 

追いかけていくと錬土は入り口の前で立ち止まっていた。何事かと思って中を見やると『私有地につき、立ち入り禁止』の看板がかかっている。しばらく見ない間に買い手がついたのだろうか?

 

「どうする、錬土。」

「どうする?って忍び込む以外ないだろ。やるからには最後までやりきらねぇと。」

「だよな。よし、じゃかその塀の上から乗り越えて…」

「ちょ、ちょちょっと待ちなさい。完全に不法侵入よこれ!やめておかないとまずいわよ!」

「なーにを今更言ってんだよ委員長。買い手がついて無かったところでどのみち不法侵入には代わりなかっただろ。」

「う、それは…」

「だったら大人しく忍び込もうぜ?まぁ嫌なら此処で待っててくれてもいいけど?」

「それは嫌!待つだけなんて、もう………いえ、なんでもないわ。それなら仕方ないわね、お目付け役もあることだし私も付いていくわよ。」

「さっすが委員長!話がわかるぅ!戈咒、登りやすいところあったか?」

「ここら見てきたけどそこの街路樹を使って飛び移るのが一番楽そうだな。」

「オッケー。良し、行くぞ委員長。」

「……貴方達って、ホント無駄にハイスペックよね……」

 

委員長が何か惜しいものを見るような目で俺たちを見つめながらそう呟く。

何かそんなに変だったのだろうか。愛の為に自身の全てを利用するのは至って普通だと思うんけどなぁ。

 

 

 

 

塀を乗り越え敷地内に入ったところで幽霊屋敷をもう1度ぐるりと俯瞰しながら見回る。

外から見た感じ前回と比べ大きな変化は見当たらないが、以前は開きっぱなしだった正面玄関のドアが閉まっている。蝶番が壊れていて閉めても勝手に開くのが怖さを煽るとして有名だった為、修理されてるみたいだ。やはり誰かが越してきてるのかもしれない。

 

「なぁ錬土。今更だがホントにいたのか?見た感じ新しく誰かが越してきただけにしか思えねぇんだが。」

「ホント今更な話だな……まぁ、その可能性もなくはない。どころか寧ろ高い気もする。だがこの近くに住んでるダチ何人かに聞いても引っ越してきたなんて話知らねぇんだよなぁ。だから俺は幽霊がいるって可能性を信じるぜ。しかもこんな広い屋敷に女の子1人ってのも胡散臭いだろ?」

「確かに……乾君の言う通り引っ越してきたとして考えると不自然な点が残るわね。ならもう少しだけ調査してから引き上げるのはどうかしら?勿論家主の方が居れば即撤退よ。」

「あぁ、そうだな。」

 

うん、俺としても委員長の言うことに反対どころか賛成なんだけど。なんか妙にノリノリになってないか、この人。

 

「……何よ、その目。私の態度がそんなに気になる?」

「え、そんなに目に出てた?」

「出てたわよ、思いっきり。伍道君は分かりやすいのよ。それに比べ錬土の奴は……なんでもないわ。それよりなんで私が調査に乗り気かって話でしょ?」

「あぁ、あれだけ文句言ってたわりにはなんかなーって。」

「だって、もう不法侵入までしちゃったのに今更じゃない。それに私が持ち込んだ話題がきっかけなのよ。ここまで来たら私が止めるのも筋違いでしょ。けど、家主の人にあったらすぐに帰るからね。」

「……なるほど。やっぱ委員長って責任感強いんだな。」

「お、確かにな。だてに11年間連続委員長やってる訳じゃないな。」

 

11年?やけに詳しい年数をふと疑問に思うとその様子に気づいたのか錬土が答えを返してくれた。

 

「あぁ、いや一応幼馴染みなんだよ。小学校の時はずっとクラス一緒だったしな。まぁ中1からは疎遠になってたんだが。」

「にしても中学の時は1度もクラス一緒じゃないのによく知ってたわね。話した覚えもないけど。」

「学級委員くらい覚えてるもんだろ。別に、それだけだ。」

 

 

錬土はそう言い放つと顔を背ける。

ふむふむ、なるほど。この2人は昔からこんな感じだったのだろう。

何かあって疎遠になっていたのだろうがやはり友人同士がくっつくのを見るのは微笑ましいものだ。

 

「……お前、ゼッテー何か勘違いしてるだろ。」

 

え?心読まれた?

 

「だから顔に出まくりなんだよお前は……それより気を引き締めろ、入るぞ。」

 

 

屋敷の正面玄関の大きな両開きの扉のノブを錬土と2人でそれぞれ握る。

ドアノブを握る右手が汗ばむ。力を込め、扉を開け放つとうと引いた右手はーーー

 

「おっと、そこの小僧っ子ども。ここは私有地だぜ?」

 

ーーー背後から伸びてきた丸太のような腕に止められた。

 

「確かにこんなお化け屋敷みたいな洋館、探検したくなるのは分かるがな。残念ながらここは俺らの拠点なんだ、勘弁してくれねぇか。」

 

振り向くと、そこには飄々とした雰囲気でコンビニの袋を抱えたーー筋肉がいた。

いや、なんなんだあれ!Tシャツがパツンパツン過ぎて筋肉が形出るほど押し上げられてるしそもそも丈が足りてねぇーーーー!!このガタイでそのへそ出しステキファッションってなんなんだコイツーーー!?

 

「す、すいませんでした!ここの屋敷に住まれてる方ですよね?ホントすいませんでしたぁ!私からもこの2人にはよく、よぉーく言い含めておきますんで、何卒警察だけには!お願いします!」

 

この筋肉事件(マッスル・ショック)から真っ先に正気を取り戻したのは意外にも委員長だった。

そして正気を取り戻したと同時に流れるような謝罪動作に移り頭を下げる。

と眺めているのもつかの間、すぐに俺と錬土の頭も委員長に掴まれて下げさせられる。

 

「ほら、貴方達も謝りなさい!すいません、すぐ出てきますんでどうか学校と警察には……」

「あー、いやいや嬢ちゃんよ。別に警察に突き出すつもりはねぇから安心しろや。俺もそこの小僧っ子2人の気持ちは分からんでもないしな。」

「じゃ、じゃあ。お咎めは……」

「おう、ねぇぞそんなもん。だいたい子供そんなの気にせずに遊ぶもんだ。それじゃ、俺はこれから晩酌をするんでな、さぁ帰った帰った!」

 

そうして門の外へと送り出される。

そこで今まで黙っていた錬土が質問をする。

 

「そうだ、ところでオッサン、この屋敷で幽霊って見てないか?」

「いんや、見たことねぇな。背伸びした魔女がいるだけさ。まぁ、ガキンチョだけどな。」

 

笑いながらジョークを返すあたり、本当に幽霊はいなかったようだ。やはり見間違いだったのだろう。

しかし錬土は納得いかなかったようで質問を続ける。

 

「オッサン達、挨拶も無しに引っ越してきたばかりみたいだけどさ。幽霊みたいに、何にもしねぇよな?」

「安心しろや坊主。お前らは無関係(・・・・・・・)っぽいしな、何もしねぇさ。あとそのオッサンってのやめろ。」

 

この近所の友人達を心配したのだろうか。しかし軽く流され会話は続く。

 

「じゃあなんて呼べばいい。」

「そうさな……まぁ、ライダーとでも呼んでくれ。」

「なんだそれ。DXゲーマドライバーでも持ってるのか。」

「ん?…げ……ま?なんだそりゃ?」

「なんだ、今のは見てないのか。まぁそれはいいや。」

 

どうやらライダーさんは今期のは見てないようだ。見た目の年齢的に考えて太陽の子の世代だろうか。

ちなみに俺はファイズドライバーが1番変身アイテムとしては好きだ。

 

……そうこう考えてるうちに門の前にまで出てきていたようだ。

 

「そんじゃあな。ライダーのおっさん。」

「おう、気をつけて帰れよ小僧っ子ども!」

「すいません、お世話になりました。」

「ありがとうございました。」

 

いつの間にか打ち解けていた錬土とライダーさんが気さくに別れの挨拶をを交わし合うのを皮切りに俺と委員長もくちぐちにお礼を言いながら俺たち3人は帰途につく。

さて、随分と夜も更けたし早く家に帰って寝ることにしようーーーー




ちなみに俺はエグゼイドでは社長が好きです

毎週楽しそうな社長を見るのが楽しみだったーーー!


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幕間/魔女談笑

ーーーinterludeーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

3人組の来訪者が去った後の幽霊屋敷。

 

そのうちの静まり返った一室で珈琲を飲みながら黒髪の少女は己が従者を呼びつける。

 

「出てきなさい、ライダー。」

 

彼女の声と共に霊体化していた彼女のサーヴァントが現れる。格好こそ筋肉質な肉体に対し小さ過ぎるパツパツのTシャツを来てるというアンバランスな姿だが、そのうちを渦巻く濃密な魔力と神秘はそれだけで彼が人間でなくそれを超越した存在であるということを明確に表している。

 

「呼んだか、マスターよ。」

「呼んだか。じゃないわよ。あんたは私の使い魔なんだから、それらしく従いなさいってのよ。なんてったって私は千年以上続く魔導の大家、カフナ家の後継者なのよ!アンタは強大な力を確かに持ってるけれど、私と主従契約を結んだからには私の使い魔なの。そこんとこ、もーちょっと自覚して欲しいのだけれど?」

「相変わらず注文のうるさいマスターだ。『お呼びでしょうか、マスター。』とでもやればよかったのか。」

 

その筋骨隆々とした肉体には似合わないほど無駄に爽やかな声でライダーが丁寧な態度を取ると、少女は途端に顔をしかめ

 

「うわ、ごめん、私が悪かったわ。それ気持ち悪いからやめなさい。」

 

その身に似合わぬ殊勝な態度に思わず謝罪の言葉を発す。

 

「だろう?だから分かったならマスターはそうした態度を取ればいいのさ。俺も好きにやる。」

「そんな事は言ってないでしょ。それは最初の契約と違うわ。私は魔術協会からの派遣でカフナ家の魔術師の名に恥じぬ戦いをしにここに来たの。使い魔の手綱1つ握れないようじゃ家名の名折れなのよ。」

「……はぁ、やれやれ。家名、家名とマスター、お前さん家系に縛られ過ぎてないかい?もっと年頃の娘らしいことでもしたら?」

「余計なお世話よ。それに魔術師はいつか子孫が根源にたどり着くために人生を使い潰す生き物だもの。家系に縛られるのは当然じゃない。」

「それは自分自身で生き方を選んでからの話だろ、お前さんのは見たところそれ以前のーーーいや、いいさ。今のところはな。」

「何よ、含みあるような言い方をして。だから使い魔としての基本がなってないって言うのよ。使い魔なら使い魔らしく主人を讃えなさい。」

「讃えろっつーてもお前さん、まだまだへっぽこじゃねーの。現代の練度がどんなもんが知らんが俺の頃と比べたらしょぼ過ぎるね。」

「あのねぇ、幾らなんでも神代の魔術、それも神霊級のものと比べるんじゃないわよ。私をおちょくるのもいい加減にしなさいよ?」

 

少女が青筋を立てて左手を右肩の痣に添える。

 

「うぉっと、すまんすまん。俺が悪かったからこんなアホなことに令呪を使うのはやめてくれ。」

 

その痣こそは令呪。サーヴァントに対しマスターが持つ3画の絶対命令権。

濃密な魔力の塊でもあり、それをどう使用するかが勝利の鍵を握るといっても過言ではない。

しかし、慌てるライダーを見て腹の虫が収まったのか、はたまた自分のやろうとした愚かさに気がついたのか少女は右肩に添えた手を下ろす。

 

「……はぁ。使わないわよこんなことには。それにライダー、余り現代の魔術師というものを舐めない事ね。神秘の満ちた時代に生きたあなたみたいなのとは違う、神秘の薄れた現代で神秘を求めるからこその魔術師の凄さってものをこの聖杯戦争で見せてあげるわ。」

「ふ、はははは。言うじゃねぇか、マスター。いーぃ啖呵だ。ならせいぜい俺を上手く使ってその現代の魔術師の凄さ、見せてもらおうじゃねぇか。」

「……どう聞いても皮肉しか聞こえないのだけれど。」

「ンなことねぇよ。俺はいつだって本気(ガチ)だぜ?」

「そう?……まぁいいわ、ライダー。それより聞かせて欲しいことがあるのだけれど。」

 

そうして軽口はこれまでと言わんばかりに少女は声のトーンを落とし、呼び出した理由をライダーに告げる。

 

「ん?なんだ?そこのこんびに、とやらで買ってきた中で1番美味い酒がどれかって話か?」

「誰もそんな話はしてないわ。さっきの侵入者達よ。あのまま工房内に引き入れていればそのまま分解して魂を魔術の材料にしたりあなたに食べさせて強化することも出来たのに、何故わざわざ飛んで火に入る虫たちを逃したのかしら。」

「無辜の民を殺す理由も喰らう理由もないだろう。俺らがしているのは聖杯戦争だ。目撃者でもないものをわざわざ目撃者にして死地に送り込む必要もあるまい。」

「そういうことじゃあないんだけど……まぁ、いいわ。それだけ大口を叩くなら戦果で持って示しなさい。成果を出す使い魔には意見を出す程度の報奨は認めるのもやぶさかではないわ。逆に、無様に敗走を示すようなら勝つ為に無辜の民であろうが何であろうが殺し、魂を喰らわねばならぬものと覚悟しなさい。」

「ふ、この俺に負けるなというか。つくづく未熟なくせに傲岸不遜なマスターよ。」

 

ライダーは少女の言葉がツボに入ったのか高笑いを始める。しかし少女は気に食わなかったようで霊体化を命じ、姿を消させる。その後、珈琲をあおりながら少女は1人呟く。

 

「教会の監督役によれば私は6人目のマスター。つまり、あと1人。開始が待ち遠しい。お爺様の期待に答えるためにも、何としても勝たなくてはーー」

 

少女が1人決意を固める中、守掌の夜は更けていく。彼女が望む7騎目のサーヴァントとそのマスターが現れる時は、近い。

 

ーーーinterlude outーーーーーーーーーーーーーーーーー




戈咒のサーヴァント、早く召喚したい……もうちっとだけ待っててね!


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1日目/運命の夜

切りどころが見つからなかったからすこし長めです
やっと召喚できた……!


ライダーさんに見送られてから3人で歩くこと30分。俺たちは駅前まで無事に戻ってきた。

 

「いやー、しかし拍子抜けだったなぁ……あの筋肉にはビビらされたけども。」

「全くね。でもこれで根も葉もない噂だって分かったわけだし、安心して眠れるわ。」

「んだよ、委員長ビビってたのか?」

「そ、そんな訳…ってもうこんな時間!?ああもうお父さんからのお説教確定だわ……」

 

ふと携帯を確認すると既に時刻は2時近くを示している。明日もあることだし、早めに解散して帰宅するべきだろう。

 

「それじゃ、もう遅いし俺は先に帰るぞ。おやすみ、錬土に委員長。」

「お、そうだな。それじゃまた明日。委員長、送ってってやろうか?」

「……1人は物騒だし、お願いするわ。こんなのでもいないよりはマシだろうし。」

「おいおい、こんなのってなんだよきずつくぜ。」

 

2人の掛け合いを聞いて苦笑しながら自宅への道を歩いていく。

 

 

 

商店街の路地裏に入って数分。夜も遅くなった為いつも時間が無い時に通る裏道に入ったがそれは間違いだったろうか。街灯の灯りもなく、携帯電話のライトしか道を照らすものが無い為に夜闇の恐怖は商店街をそのまま通るより煽られている気がする。

 

「うぉっ!」

 

そしてやはり神経が過敏になっているのか道脇から飛び出してきた猫に驚いて声を上げてしまう。こんな所を錬土などに見られたら弄られかねない。さっさと抜けて街灯のある表通りに出ようと考えたその瞬間。

 

ふと、何かを齧り、咀嚼するような物音が聞こえた。この時間のこの場所。人はほぼいないが0とは言えない。

誰かこの近くに住む人がコンビニでお菓子でも買って食べているに違いない。

足を進めるとその物音はどんどん大きくなる。

恐怖からか、好奇心からか。

足を進める速度は1歩事に増していく。

心臓は早鐘のごとくバクバクと脈動している。全身が怖気だつような不気味さとともに肉体の血流は今すぐ全力でスパートを掛けられる程に高まっている。やはり夜闇は無駄に人間の根元の恐怖を煽るものらしい。全然この状況には無関係な筈の都市伝説。昼は聞き流していた守掌の人喰い鬼の噂が耳から入る咀嚼音の音とともに嫌でも脳に呼び起こされる。

これは関係ない。全く関係ない。

何かを啜るような音も/関係ない

何かを齧るような音も/関係ない

何かが折れるような音も/関係ない

誰かが助けを求めるような嗚咽も/関係ない

ーーー全て無関係。

全て無関係でこの音は酔っ払っいがきっとそこらのどこかで寝っ転がってお菓子を食べてるだけなんだーーー

 

その時。ふいに、足が、止まった。

恐怖からか、好奇心からか。

耳から入る物音は最高潮に達している。首がまさにギギギ、と擬音をたてて動くようなぎこちなさで首を音の方へと向ける。しかし俺の両の眼は何も捕えない。暗闇しか写せない。

だから、近づく。1歩、また1歩と。そして、携帯のライトを向けると。

 

ーーーゴミ箱の裏にサラリーマン風の服装をした男が座り込んでいた。

ここからじゃ顔は見えないが手が動いているのだ。死体を見つけてしまったなどという都市伝説のような話では無かったらしい。

ここで見かけたのも何かの縁だ。声くらいかけるか警察に場所を連絡するくらいはしてあげよう。

 

「はぁ、なんだよ。ビビらせやがって。」

 

何も無かった。その事実は俺を深く安心させ、つい気持ちが抜けて、そう言葉を溢れさせた。

 

 

ーーーしかし、その気の緩みこそが失態だった。

 

安心して近づくと男は目が覚めたのか小さく嗚咽を漏らしている。こんな程度の嗚咽に俺はビビっていたのかと思うと無性に情けなくなる。何か文句の一つでも言ってやりたい気持ちを抱えながらその男の前に立つと。男が言葉を発した。

 

「ひゃ……ひゃふけ、へ……」

 

そう懇願する男は胸を、腿を、肩を、顎を腹を、腕を、脹脛を、身体中を。食い破られていた。とどのつまり、ゴミ箱の上にのってかろうじで肩から腱が繋がっていただけの左手以外、ヒトのカタチをしているというにもおぞましい、食べ残しがあるだけだった。

そして、それを作り出した捕食者の声が夜闇から聞こえる。

 

「ねぇねぇ、そこのお兄ちゃんや。それ、食べるか?」

 

無邪気な、それでいてイタズラ盛りの少年の声。

内容としては異常としか思えないその言葉は、しかし純粋な好意によるものであるのが余計に心を踞らせた。

姿を現したのは赤いTシャツと濃い紺色のジーンズに身を包んだ中学生になるかならないか程度の少年。しかしその濃密なまでの存在感は、彼が人ならざる異形であることを何よりも雄弁に語っていた。

 

「……!?」

 

口はパクパクと酸素を求める金魚のように、声も出せずにただ恐怖で立ち尽くす。

 

「ねぇ、お兄ちゃん?無視すんなよ。折角俺があげようって言ってるんだから断るか食べるかしろよー。まぁそこまで美味しくなかったからさ、別にいいんだけども、食べ残しはいけませんって親父も猟理人(シェフ)の奴も言うからよー。片付けなきゃなんだよ。」

 

それは、子供が食べ残しを見つかって親や先生から怒られるのを嫌がる自然な発言で。

それは、何よりも雄弁な犯行声明であった。

 

「ねぇ、ねぇってばぁ!俺のこと無視しないでよ。もう、ひどいなぁ。ん……?お兄ちゃんから薄いけど沢山魔力の匂いがする?お兄ちゃん、ひょっとして魔術師?」

 

魔術師?一体何を言っているんだコイツは。現実に理解が追いつかず、恐怖からか、金縛りにあったように俺は動きを止めた。逃げなくては、そう心は何よりも雄弁に語るのに、身体はその展開についていってくれず動かない。

そうこうしているうちにコイツは俺に近寄ってきて、壊れた言葉を紡ぎーー

 

「魔術師は殺さなきゃダメって親父も言ってたし、そして何よりいい匂いだし。ねぇ、お兄ちゃん食べていいかい?」

 

ーー処刑宣告がその身に下された。

 

「返事がないならいいよね。まぁ、俺はもう食べる気マンマンなんだけどーーー!!」

 

俺が死を理解したその瞬間。

この場で起きていたその全てを無視するかのように。

この場で起きていた何もかもを分かりながら最善手を選んだかのように。

 

「なぁぁーーご」

 

と、先程の猫が喉を鳴らして俺たちを見つめていた。

 

ーーーそして。アイツの気がそれたその瞬間。心と身体は完全に意志を一致させて。逃げるというただその為に全力を尽くし、アイツを全力で殴り飛ばして全速力で脚を回した。

 

 

とばす、とばす、とばすーーー!!

今の俺は何よりも早く道を駆けている。遠くから聞こえる少年の怒り声と俺を捕食しようとする宣言。

それから逃げようとする全身全霊の走りは、音を置き去りにするかの錯覚を覚えるほどに速く、鋭く、激しく俺を自宅へと導いたのであった。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」

 

自宅に入り、鍵をかけ、チェーンをかける。そしてようやく、息を整えて一息つく。冷蔵庫にまだペットボトルのお茶があったはずだ。それを飲んで、ゆっくりと寝て、明日朝イチで警察に通報することにしよう。そう考えながらお茶を求めて冷蔵庫を空けたその瞬間。

 

「ねぇ、人を殴り飛ばしておいて一方的に逃げるのって俺はどうかと思うなぁ。お兄ちゃん。」

 

恐怖からは、逃げられない。

そう告げるかのように自身を脅かしたその存在は再び襲来する。逃げ場の無い密室においてアイツは美味しい食事を目前にした子供のように涎を口端から垂らしながら俺にそう声をかけた。

 

「ひ、ひぃ……」

 

死が再び襲ってくる。それを理解した瞬間腰が抜けてしまう。逃げたい、逃げたいのに身体はもたついて動きが鈍い。

 

「それじゃあ……イッタダキマァス!!」

「ぐうっ!」

 

少年は獣の如き俊敏さで俺に飛びかかってくる。首を噛み切ろうとしたのだろうか。咄嗟に恐怖から身体を屈めた結果躱すことが出来たのだろう。結果的には肩の肉を少し食いちぎられるだけで済んだようだ。その痛みのお陰で多少は意識が冴えて恐怖が薄れる。何か、何か対抗出来る道具はないのか。

コイツは獣だ。獣と人間が戦うならライフルをもってようやく対等。ライフルはなくとも、せめて何か武器になるものが無くては話にすらならない。

周囲を見渡すと、目に付いたものがあった。今日の下校時に骨董品店で買った日本刀だ。

 

「あぁ、美味い、美味いよお兄ちゃあん。魔力が篭ってていい味が出てる。」

 

アイツは食いちぎった俺の肩肉を夢中になって食べている。今がチャンスだ、不意をついて一気に叩き斬るーーー!!

 

「うおおおおお!!!!」

 

しかし、その全霊を込めた上段は。

人ならざる肉体の前に容易く受け止められた。

 

「お兄ちゃんさぁ、人の食事を邪魔したらダメって教わらなかったの?その年にもなって。常識がないよ。」

 

まるで楽しい食事を途中で中断させられた子供のごとく、いやまさにコイツにとってはその心境なのだろう。不機嫌を露わにしてこちらを睨みつける。

 

「それとも、もっと食べて欲しいの?」

「う、あ……あ、ああ」

 

俺の心は既にストレスで極限まで細く削れてしまっている。あと一つ何かがあればもう壊れてしまうだろう。

 

「怖がりすぎだよ、お兄ちゃん。死ぬ時に怖がりすぎて死んだにお肉はあまり美味しくないんだ。だから笑顔さ。そうだら話を変えようよ。お兄ちゃん、聖杯戦争って知ってる?」

「せいはい……せんそう…?」

「うん、聖杯戦争。7人の魔術師がマスターとなって過去の人間をサーヴァントとして呼び出し戦い抜くバトルロイヤルさ。勝ったチームにはどんな願いも叶うんだ!」

「なんでも…」

 

コイツは何を言っているんだ?そんな、訳もわからない眉唾物のゲームの為に俺を襲ってるのか?

心はぐちゃぐちゃになって掻き混ざった恐れと痛みで逆に冷静に物事を考え始める。

 

「うん、だからお兄ちゃんみたいな魔力を持ってる魔術師を狙って食べてたんだ。俺たち家族は人が大好きなんだよ。」

 

その言葉は、子供が牛のお肉が好き、というかのような歪さに溢れており。

 

「だけど、お兄ちゃんは魔術師でもマスターでも無かったみたいだね。だけど、もしかしたらさ、結構体力もあったし、お兄ちゃんが7人目だったのかもね?」

 

そう軽く言い放つと

 

「ーーまぁいいや!さて、そろそろ落ち着いたかな?ならーーーいただきまぁす。」

 

言い切ると同時に俺に食欲と殺意が襲い掛かる。

だが。

こんなとこで/やっと自由なのに

 

喰われて死んでたまるか。

 

 

俺は/ボクは

 

自由に生きるーーーー!!!

 

 

 

ーーーその瞬間、手に持った刀から一筋の閃光が疾る。

 

そして、俺を襲った獣はそこから現れた刀に打ち払われ、窓から外へと弾き飛ばされる。

 

その瞬間は、例えこれから何があっても永劫忘れることはないのだろう。

 

日本人形のような艷めく長い黒髪。

全てに憧れるあどけなさ、そして羨むような不気味さを併せ持つ紅い満月の如き赫い瞳。

天の川を布地に起こしたかのような美しい着物。

そして、小学校高学年を思わせる小柄な姿。

 

 

その艶めかしい口が言葉を発す。

 

 

「問おう。お主が、儂のますたぁか。」

 

 

ーーーそれは、何よりも美しく。

俺の心に色を付けた、愛しき彼女。

剣の英霊、セイバーとの出会いだった。




見てわかる通りSNオマージュというかおもっくそ意識しまくった召喚シーン。
こういうのが二次創作の醍醐味だよね!


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1日目/VSカニバルボーイ

 

 

「ます…たぁ……?」

 

言ってる意味が分からず咄嗟に彼女の言葉を反芻する。

けれど。本当は意味が分からず反芻していたのでなく。何も考えられなかったのだろう。それほどに目の前の彼女は美しく。

命の危機だというのに。

それ以外は全て褪せて気にならないほどに、夢中で。

とどのつまり。

伍道戈咒は、一目で心を奪われたのだ。

 

その一秒にも満たない、けれど何よりも長く感じた瞬間から目を覚ますように左手の甲に鋭い痛みが走る。

左手を見やると、赤く光る刻印のようなものが輝いている。

そして同時に目の前の彼女もそれを見つめ、続けて口を開く。

 

「令呪の導きにより、ここに契約を完了した。。儂は剣士のクラスをもって現界したサーヴァント、セイバー。故に儂はお主の刀となり、お主は儂の身体となる」

 

彼女は続けて口上を述べる。

そして彼女の出てきた刀と俺を小脇に抱えると、自らが弾き飛ばした少年を追って窓から外へと飛び出した(・・・・・・・・・・・)

 

「え、ええ、えええええええぇぇぇぇーーーーー!!!!」

「ええい、うるさいぞますたぁ!男子(おのこ)ならも少しシャンとせぬか!」

「だ、だってここ、2階、というか俺を抱えて!?」

「ふん、そんな事か。儂も表の(わっぱ)と同じくサーヴァントじゃ。お主ごとき軽い軽い!……っと、見つけたぞ、アサシン。」

 

慌てふためく俺を抱えたまま飛びだしたその先には、先程吹っ飛ばした少年がいた。

 

「……っ痛ぅ。何してくれてんの、アンタ。俺も怒ったよ。肉の無いアンタなんて食べる気もしないけどさぁ。親父達の言いつけもあるし、ムカついてるし。殺してもいいよねぇぇーーー!!」

 

油断が抜けたのか。少年は今まで使ってこなかった肉切り包丁を腰から抜いて逆手に構える。そして、先程よりもさらに素早く、獣の如き獰猛な突進が彼女を襲うーーー!

 

「止まーーー!」

 

俺の咄嗟の静止の声は意味をなさなかった。

しかし、俺の予想とは違う形で。

彼女がその身に持つのは丈に見合わない2振りの長刀。1本は俺が昨日購入した、無銘の日本刀。もう1本は彼女の腰から抜かれたものだった。

そしてその両方を使い、少年の振るった肉切り包丁を封じていた。

 

「なーーーー」

 

驚きのあまり声も出ない。

少年は不敵に笑い、素早く下がると次の攻撃を繰り出す。

それを再び、少女は2刀を巧みに使って弾き間合いを取る。

素早い動きで撹乱し、死角から肉切り包丁や鋭く尖った爪を振るう少年。

それを全て2刀のみでさばききり、それどころかカウンター気味に攻撃を加えていく少女。

数分間の打ち合いの後、天秤は火を見るよりも明らかな傾きを示していた。

 

少年はその身に纏った赤いTシャツと濃紺こジーンズは裂傷によりダメージ加工のようになり、その下から覗く青白い皮膚は致命傷こそ避けているものの幾つもの刀傷で血を滲ませている。

一方彼女は少年の攻撃を全て紙一重で躱し、避けきれないものは2刀でさばくことで身に纏う夜空如き着物には傷一つ、それどころか汚れ一つない。

少女はその差を見せつけるかのように少年に向かい言い放つ。

 

「さぁ、これで技量差も見えただろう。貴様ではどうあっても儂に傷一つ負わせることは出来ぬ。だからーー潔く死ね、アサシン。」

 

アサシンと呼ばれた少年は冷徹なるまでの実力差と処刑宣告を受けて気がふれたのか。

急に頭を掻き毟り喚き散らす。

 

「ああぁあああぁぁぁああぁぁぁぁぁああああ!!」

「喚こうが叫ぼうが何も変わらぬ。これ以上見ても見苦しいだけじゃ。介錯をしてやろう。」

「なんだよ……なんだよなんだよなんだよぉ。どうしてこうなるんだよ。ホントは今頃そこのお兄ちゃんの肉をたらふく食べて、家でゆっくり寝れたはずなのに!!どうして、どうして!」

 

アサシンは錯乱したまま意味の通らないことを叫び続ける。

 

「聞くに耐えん。故にーーー死ね。」

 

 




犯罪の匂いがするとかいう不本意な噂を聞いたけど真のロリコン紳士は最低でも同意の上でないと行動は起こさないんですよ!(同意の上だからといって犯罪でないとは言ってない)


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1日目/install

 

少女が一刀のもとにその首を断ち切ろうと構えたその瞬間。

 

「あ、そっか。これ食べれば良いのか。」

 

突然何の脈絡も無くアサシンは懐から生肉の塊とおぼしきものーーーいや、あれは心臓だろう。それも、認識したくはないが人の心臓。

そしてアサシンは、その心臓に食らいついた。

自身の肩の肉も先程一部齧り取られたものの、改めて見るそのおぞましさに思わず吐き気をもよおすが唾を呑みこみ耐える。

それは自分より小さな、とても小さな幼女が戦っているのに俺が情けない姿を見せられるかという、ロリコンとしての微かな意地だったのかもしれない。

 

「貴様、何をしている……!」

「んまぁぁいいぃ〜〜。え?何してるかって見てわかんねぇのかよ能無しがっ!心臓食ってんに決まってんだろ!やばくなったら親父にこれ食えって持たせられてたのさ。」

 

そう言いつつ食べ終わると同時にアサシンの存在感がグン、と増す。

何かがあの心臓にあったのだろうか。

 

「……なっ!この魔力量の増大、貴様何を!」

「だーかーら、心臓食べただけだってのに。でもさ、少しでも食べたからかな。傷も塞がってパワー全開だ、今ならお前くらい余裕だぜ、ガキンチョセイバー。」

「ふっ……ほざいたな、(わっぱ)ーー!」

 

再びアサシンと少女が激突する。

しかし、それが先程の再現となり、彼女の二刀に攻撃は防がれるという予想は見事に打ち砕かれる。

アサシンの肉切り包丁は少女のガードをすり抜けて頬を浅く裂いていた。

 

「ぐっーー!」

「はーーーひやぁはぁっ!まだまださァ!」

 

心臓を喰らったことにより更に頭がおかしくなったのか。狂ったように高まったテンションで少女に猛攻を続ける。

先程までのうって変わり彼女の剣さばきは衰えアサシンの攻撃を捌ききれていない。

いや、衰えてはいない。アサシンの攻撃が素早過ぎて彼女の技量を持ってしても抑え切れないだけなのだ。見ているうちに一歩、一歩と彼女は追い詰められ、遂にはアサシンの一撃でセイバーの刀のうち一振り。彼女が飛び出してきた方の刀が俺の目の前まで吹き飛ばされてくる。

 

「ほらほら、もう終わりかよぉ。なんだかなぁ。セイバーも大したこと無かったしこれで親父からまた肉を奢って貰えるぜぇ。」

 

アサシンは既に勝ち誇ったかのようにこちらを見ている。

いや、アサシンの中では既にこの少女は脅威足り得ないのだろう。だからトドメをさした後に食べるデザートである俺を見て舌なめずりをしているのに違いない。

 

『ますたぁ……よ。よく聞け。」

 

その時、脳内に直接少女の声が響き渡った。

 

「えっ、え!」

 

慌てて目の前の少女を見るも口を開いた様子はない。

 

『落ち着け、ますたぁよ。儂は因果線を通して直接脳内に語りかけておるのじゃ。おっと、アサシンの奴に気づかれるなよ。考えるだけで儂には伝わる。』

 

少女の声が続けて響く。いわゆる念話といったやつだろうか。不可思議な現象だが目の前にそれを上回る不可思議がある以上、それを疑うのはナンセンスだし時間の無駄だ。

 

『……分かった。俺は何をすればいいんだ。』

『ふふふふ、ますたぁが話の分かる人間で何よりじゃ。なぁに、やることは簡単じゃ。儂が出てきた刀を手に取り戦えば良い。』

 

何を言っているんだこのロリ。

 

「え……はァ!?」

 

俺も思わず声を上げてしまう。

 

『うるさいわ!気づかれたらどうするのじゃこのど阿呆ますたぁ!』

『だってお前なにいってんのか分かってんのか?あれに素人の俺が刀一本で立ち向かえって自殺と同義だろうが!』

『あぁ、あぁ、すまん。儂の言葉が足らんかったか。何もただ死にに行けと言うとる訳ではないわ。勝機があるから言うとるんじゃ。』

『はァ?勝機!?このどこに勝機があるってんだよ!!』

『ええい、女々しいの!それでもますたぁは男子(おのこ)か!とにかく、このままじゃ儂は遠からずアサシンに倒される。そうしたらお主は喰われて死ぬしかない。つまりお主の選択はここで刀を抜いて戦って死ぬか、ボーッと来もしない助けを求めて喰われて死ぬかとどちらかだ!』

『はぁ!?おい、それこそ無茶だ!』

『なら死ぬしかないな。この腑抜けが。』

 

ーーーその一言が、俺の心を目覚めさせた。

そうだ、幼女に戦わせて、守ってもらって、何がロリコンだ、何が紳士だ!

ロリコン紳士たるもの、幼女の為なら命すら捨てる覚悟で生きるべきだろうにーーーー!!

 

『すまない。見苦しい所を見せた。俺は覚悟を決めたぞ、戦い方を教えろ!』

『ほぉ……いい顔じゃ。それもただ生きる為だけではない。護るものを見つけた男の顔じゃ。』

『そりゃあそうだ、俺は貴女の様なロリの為に戦う紳士なんだから。』

『ふふ、ふふふふ!面白い!ならばまずは足元の刀を握れ!急げ、もう持たん!』

 

彼女の言葉に従い急いで足元の日本刀を掴むと同時に、彼女はアサシンに吹き飛ばされてくる。

 

ーーーしかし、その瞬間。

彼女が突如自身の肉体に入って溶け込むような錯覚を覚える。

いや、これは錯覚なのだろうか。意識が全体俯瞰するような状態になり、肉体の支配権が徐々に失われていく。

そしてその代わりに俺を満たすのは全てを斬ろうとする邪悪にして醜悪な妖刀の本性。心の中で全てを斬って斬って斬り尽くせと暴れている。

そうして、自らにもよく分からないままに身体は動き出す。

俺の身体が、俺の見知った手足が、俺の見知らぬ挙動で刀を振るう。

 

「へぇ、何。ご飯の癖に俺に攻撃しようって?セイバーでも無理なものをどうやって……まぁいいか。それじゃ、いっただっきまぁぁあすっ!!」

 

アサシンが再び突っ込んでくる。いきなり喉笛を咬み切ろうとしているのだろう。

何故か、自分の目では追えないはずの速度のアサシンを見て。

そうして身体は半身になり。

何故か、自身の足では躱せないはずのアサシンを避けて。

そうして腕は刀を構え。

何故か、自身の腕では当てられ無いはずのアサシンに刀を当て。

そうして刀はアサシンを一太刀の下に、断ち切ったーーーー!

 

「ぐっ……がっーー!」

 

アサシンが断末魔の悲鳴をあげる。

それを聞いて、何故だか頬は釣り上がり。光る粒子となって消えゆくアサシンの肉体を見て、俺は満面の笑みを浮かべーーー

 

 

 

ーーー俺は、何をしていた。

頬が釣り上がった感覚の直後、何かが自身から酷い倦怠感を残して抜け落ちた感覚とともに、俺は正気を取り戻した。

 

「俺は……何を……?」

 

振った事もない刀を自在に操り、人外の速度で迫りくるアサシンを一刀両断にした。

何が起きたのだろう。狐につままれたといった方がまだ信憑性があるかもといったレベルだ。

今のこれについて知ってるであろう存在を見やると、俺の疑問を予期していたかのように俺に対し笑みを浮かべている。

 

「おい、今のは何なんだよ。」

「質問されると思っておったよ。が、それに関しての説明は後でお主の家に帰ってからだ。」

「っておい、付いてくるのかよ。てかお前は一体何なんだ?」

「聞いておらなんだか。仕方が無いもう一度言おう。儂はサーヴァント・セイバーじゃ。セイバーと呼べ。」

「サーヴァント……?お、おいセイバー、もっと詳しく説明を……」

「それに関しては後でと言ったじゃろう。茶でも飲みながらゆっくり語ってやるわい。」

 

そうして自宅へと歩いて戻る途中。

セイバーが何気なく「それより」と口を開いて放った一言。

 

「先程の啖呵、なかなか様になっててカッコよかったぞ。」

 

その、何気ない褒め言葉が何よりも俺を高揚させ。そして俺の頬を紅葉させた。




大分ストック減ってきた上に明日から春期講習が始まって本格的に浪人生活始まるので更新速度落ちる可能性高いです、すいません。


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幕間/鬼の晩餐

今回、ちょっと一部表現がエグめかもしれないのでご注意ください


 

ーーーinterludeーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

守掌市に纏わる都市伝説の一つ、守掌の人喰い鬼。人々の間では未だ一笑にふされる存在に過ぎない彼らは、守掌の地下でその息を潜め、今この時も巣食っている。

 

 

守掌市の地下を流れる下水道。冬でも暖かいここは真夏を控えたこの時期、蒸し暑さを地上より多く蓄えている。だが、そこに佇む黒衣の現代衣装に身を包んだ痩せぎすの男は汗一つかかずにこれより訪れるであろう朗報と自分達家族の好物(・・・・・・・・)を待ち望んでいた。

 

しかし、その期待は不発に終わり。

家族の一人を失った空っぽの喪失感が彼の胸を蝕み。

その哀しみにつんざかれるように絶叫をあげはじめる。

 

「ああ、ああ、ああああああ!!私の、私の息子セドリックよぉぉおお!なぜ、何故死んでしまったのだぁぁああ!!」

 

その声には深い哀しみが刻まれている。

 

「……まぁ、いっか。」

 

しかし、一転。

まるでそれまでの哀哭が嘘であったかのような豹変。だがそれは先程の慟哭が演技であったのでも嘘であったのでもなく、確かに本物であった肉親の喪失による悲しみをすぐにどうでもいいもの(・・・・・・・・)として切り捨てただけであり。

それこそが、その男の異常性を何よりも表していた。

 

「なんだい、アサシンの旦那。セドリックの坊ちゃん死んじまったのか。折角魔力を含んだいい肉を持ってきてくれると思ったのにねぇ。しかし、こうなるとなかなかにそれを倒したサーヴァントは厄介じゃねぇか?」

 

黒衣の男に対し、親しげにそう言い放つのはこの場所には徹底的に不釣り合いなコックコートを着た金髪の男性。

そして呼ばれる名は、先程セイバー陣営により脱落させられたはずのアサシンの名。

 

「おぉ、猟理人(シェフ)か!全く、我が息子ながら実に不甲斐ない。聖杯戦争に勝ち抜き、我らの悲願を達成しなくてはならないというのに。」

「あぁ、だがアサシンの旦那。それはは別に気にすることじゃあないだろう。旦那は俺の料理さえ喰えば幾らでも家族を増やせるんだからさ。」

 

そう言うと猟理人は手に持った紐を引っぱる。

そうして引きずりだされてきたのは手足を縛られて紐で繋がれた全裸の女性だった。

 

「た、助けて……お願い、何でもしますからぁ………」

 

彼女はなぜ、と必死に考えながら助けを乞う。数時間前にアサシンの家族に捉えられて、服を毟られ縛られたことにより彼女の恐怖は臨界点へと既に近づきつつあった。

だが、その恐怖は彼らの次の発言で容易く臨界点を突破した。

 

「それじゃ、旦那。早速だけどさっき捕まえたこの獲物、どう調理します?なかなか絞ってるみたいで腹筋の肉付きもそこそこいいし刺身でいきます?それとも背筋をミンチにしてハンバーグってのもなかなかイケそうだと思うんですよねぇ。或いは頭部をそのまま網焼きにしながら醤油をたらーりと垂らして頬肉や脳ミソ辺りをスプーンでほじくりながら食べるのも行儀悪いけどなかなかに乙なものですよ?」

 

その発言を聞いた瞬間、彼女の思考はぐちゃぐちゃになり自身も知らないほどの恐怖に包まれた。自身が食べられる、という恐怖。自然界の動物においては当たり前な、されど現代社会に生きる人間にとっては想像もしないほどのもの。目の前の彼らが本気で自分を食べる相談をしていると気づくとともに、必死にそれを否定する材料を周囲を見渡し探そうとする。

しかし、その結果見えたのは纏めて棄てられたであろう人骨とおぼしき白骨と臓物であり。それは逆に彼女の推測を確定づけることになってしまう。

 

「ヴぉぇっ、ヴぇロロロロろろ」

 

彼女は余りにも自身の理解を超えた展開と自身を食べようとする目の前のバケモノの恐怖に嘔吐する。

 

「おっ、この人間食べてもらう気満々だな旦那。胃の中を空っぽにしてくれるなんて捌きやすくて有難い。」

 

その言葉は更に彼女の精神に負荷を与え。

 

ーーーそこで、彼女は生きることと考えることを放棄した。

 

「あれ、気絶したのか。まぁ生きてればいいか。それで、アサシンの旦那はどの料理にします?」

「では刺身とその網焼きとやらを。そして同じものを家族の皆にも頼むぞ。材料は調理場に送るよう念話で伝えておいた。」

「おぉ、それは有難い。ではまず旦那の分から調理を始めますか。じゃあまず血抜きして頭蓋焼きから始めますね。」

 

そう言うが早いか猟理人は手馴れた様子で気絶した女性の頸動脈を切り裂き、バケツに血を流し入れる。

 

「前から気になっていたのだが猟理人よ、なぜお前は人を食べる時にいつも血を抜くのだ?そのまま切り落とせば早いではないか。」

 

アサシンは猟理人の行動が不可解でしかないと言わんばかりに不思議な声で質問をする。しかしそこにこの行動に疑問を抱く気持ちはあれど、人を喰らうというこの行動に疑問を抱く気持ちはまるで存在していなかった。

そしてその質問に対し猟理人は、チッチッチと指を振りながら解説を始める。

 

「動物を食べる際に血抜きをするだろう?それと同じで人間をしっかり血抜きをしないと臭みが出て美味くないのさ。まぁそれでも多少は臭みがあるから初心者には香草とかで食べやすくしたりもするけど、旦那みたいな慣れてる人にとっちゃそれじゃ逆に物足りないだろうから今日は使わないけどな。」

「なるほど、磨きあげられ洗練された料理人の知恵ということか。そのお陰で私は美味しい人肉料理を食べられる訳だから、感謝しなくてはな。

 

そうこう話しているうちにバケツは血で満たされ、首から流れ出る血も僅かになっていた。

すると猟理人は大鉈を振るい、首を完全に断ち切って、更に頭頂部の辺りを横に切り裂き脳を露出させると、バーベキューコンロの上に乗せて焼き始める。

 

「まずは弱火でじっくり……っと。それじゃ、眼球内の水分がとぶくらいまで火を通すのでその間に腹筋の刺身用意しちゃうから、申し訳ないけどちょっと待っててな。」

「いやいや、君の美味い料理の為ならこの程度待つのはなんとも無いさ。この度の現界で私が君のような素晴らしき友を得ることが出来たのはまさに僥倖だったよ。最初の召喚者は実につまらない上に肉の味も不味いと、まるで価値が無かったからねぇ。そもそも勝手に呼び出しておいて外れクラスだの知ったことかというのだ。」

「あぁ、確かにその召喚者も見る目がねぇぜ。俺もまさか収監中にこんなに素晴らしい同士が来てくれるとは思ってなかったからな、とても嬉しいのはお互い様だぜ。旦那とその家族は俺の味を理解してくれる最高の客だからな。っと、あがりぃ!」

 

そうこう話しつつも猟理人の包丁捌きは止まらず腹直筋を綺麗に整った刺身へと切り分けてしまう。

 

「んじゃ、このポン酢につけてで食べてくれ。生姜も合うんだが慣れてないだろうしやめた方がいいかな。お、頭蓋焼きもそろそろだなぁ。」

 

そう言うと猟理人はバーベキューコンロの上の生首、いや焼き首の眼球を菜箸で突くと水分が抜けて一気に萎みはじめる。それを確認すると同時に醤油を素早くザッとかけ回して火を止めた。

 

「これで頭蓋焼きも完成だ。併せて食ってくれ!」

「ああ。では、いただきます。」

 

アサシンはそう言うと黙々と人肉料理を食べ始める。

よく火の通った脳を掬って食べ、香ばしく醤油の香りのついた頬肉を食べ、ポン酢へとつけた腹筋の刺身も食べる。すると、通常では有り得ないほどアサシンの肉体に魔力が補給されていきくではないか。

これこそがアサシンの固有スキル、食人。おぞましきことに、人肉を喰らえば喰らうほどにこのサーヴァントは強化されていっているーーー!

 

 

「いや、此度の食事も実に美味かった。猟理人、君の料理は本当に素晴らしいよ。」

「いやぁ、照れるなぁ。それじゃ、俺は旦那の家族の分の調理に取り掛かってくるな。」

「いやぁ、かたじけない。そうだ、ついでにセドリック(・・・・・)を手伝いに寄越そう。ちょっと待っててくれ。」

 

アサシンはそう言うが早いか、魔力を自身の内に集中させる。

そして渦巻くは大量の魔力の奔流。

アサシンの宝具がここに開帳される。

 

食 人 一 賊(ビーンズファミリー)

 

そうして宝具の発動とともに、アサシンの腹がボコリ、と盛り上がる。その膨らみはだんだんせり上がり、ついには喉を経て口から外へととびだすーー!

 

「うおおおおおえええええ!!」

 

そうして口から吐き出されたのは先程セイバー陣営に倒され消滅したはずの方のアサシン。いや、正確には本来のアサシンの家族、と言うべきか。

アサシンの宝具は恐るべき、いやおぞましきことに、人肉から家族をサーヴァントとして召喚する宝具。そして彼と行動を共にするのは人肉食のスペシャリストである猟理人。

 

そうしてそれを見た猟理人は一言呟く。

 

「いつ見てもその召喚はビビらされる。それにしても、7騎目のサーヴァント、セイバー……か。旦那、全員の食事が終わったら計画を練り直しましょう。」

「あぁ、分かったとも我が友よ。」

 

 

そうして守掌地下の鬼の巣窟でも、夜は更けていく。

 

7人目のサーヴァントが召喚されたこの夜、守掌に人知れず吐き気を催す程の願いを抱えた食人鬼達が新たに動きをみせようとしていたことを知るものは、未だない。

 

 

ーーーinterlude outーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 




ここで1章は終わりです

2章は正直プロットも書ききってないくらいなのでしばらく時間かかるかもです
出来るだけ早く投稿できるよう頑張ります


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第2章 かくして愚者は踊り演じる
1日目/ますたぁに捧ぐ基本授業


ただロリ……只のロリ


アサシンとの戦い、その決着からおよそ15分後。俺とセイバーと名乗る幼女は家に戻ってきていた。

 

「にしても夏だとはいえ、この時間に窓無しは応えるな。」

「ふむ、誰か間抜けが割ったのじゃろうな。」

 

いけしゃあしゃあと言い放つセイバー。おのれこのロリっ子、ロリじゃなかったらぶっ飛ばしてたぞ。

少し怨嗟を込めながら睨んでいると気づいているのかいないのか、こちらに対して笑いながら口を開く。

 

「それにしても、客を入れておきながら茶の一つもでないとは。それが人にものを頼む態度か?」

 

うん、これは、ダメだ。

幾らロリでも。いや、ロリだからこそ怒るべきところは厳しく怒らなくては。つまり、一発殴るーーー!

 

「っておいおい、何じゃその目は。おいますたぁ、まさかこんなか弱い女子(おなご)に手を上げる気じゃないだろうな。」

 

これは躾です、問題はない。

しかもあんなふうに二刀流をばんばん決めてたのをか弱いと世間では言いません。

 

「ちょ、ちょっと待つのじゃますたぁ。儂が悪かったから、その手を収めて欲しいのじゃ。ほら、窓も直すから。」

 

そう言って祝詞か何かを数言唱えると割れたガラスの破片が元に戻っていく。今更この程度では仰天こそしないものの、それでも十分に驚くべき所業だ。

 

「おお、すげぇなセイバー。お前こんなことも出来たのか……」

「当たり前じゃ、なんと言ったって儂は最優のクラス、セイバーじゃぞ!」

 

セイバーはえへん、というオノマトペが見えそうな程に無い胸を張る。

……やはり眼福だなぁ。この時間がずっと続けばいいのに。

……っと、そうもいかない。俺としてもしっかり聞くべきことを聞かなくては。敵ではないのだろうけど味方かどうかもわからないのだし。

 

「いや、だからそのクラスとかがそもそも分からないんだってば……お茶淹れてくるからそうしたら説明してくれ。」

 

そうしてペットボトルの麦茶を取り出すと2人分のグラスに並々と注ぐ。

 

「……随分と注ぐの。」

「だって、話長引きそうだしな。……さて、それじゃあ話してもらおうか。まず、お前は俺の敵か?味方か?」

「その問いに答えるのは容易い。味方じゃ。お主が裏切らぬ限りはな。」

 

その返答にほぅ、と一息をつく。

これでやっと少しは安心出来るのか。いやまぁ今まで緊張が全く切れてなかったかって言われると既に怪しいところではあるけれど。

 

「それじゃあ、本題だ。まず話してくれ、俺が何に巻き込まれたのかを。」

「うむ、まずはだな。………ますたぁよ、お主は聖杯というものを聞いたことがあるか?」

「聖杯……?いやまぁカードゲームとかでなら覚えはあるけどそうじゃねぇよな。それで、それが何なんだ?」

「聖杯とは、神の子の血を受けた奇跡を起こす杯じゃ。そして奇跡を起こす、万能の願望器たる聖杯を奪い合う聖杯戦争。これが、お主の巻き込まれた争いじゃよ。」

「聖杯……戦争……」

「ま、偽物なんじゃがの。」

「偽物なのかよッッ!!」

 

これだけシリアスな展開でボケてくるとはやはりこのロリ、ただロリではないーーーー!!

 

「あぁ、偽物じゃ。……じゃが、願望器としての力は本物じゃ。ならば聖杯が嘘でも真でも関係あるまい。」

「だから……さっきの奴はお前を。でも、なら何で俺は狙われた!?」

「ふむ、詳しくは分からんが、お主の魂を食いたかったのではないのか。」

「魂……?どういう事だよ。」

「儂達はサーヴァントと呼ばれる存在であり、伝承、神話、歴史から呼び出された英雄などの写し身のような存在なのじゃ。そして、聖杯戦争とはそのサーヴァントとそれを従える7人の魔術師。ますたぁのような参加者との戦いのことじゃ。」

「えーっと、うん、ちょっと待って。怒涛過ぎて付いてくのも大変だから。えーと、とりあえず偽物だけど何でも願いが叶う聖杯ってものがあって。それを7人のマスターが伝説の英雄を引き連れて戦い奪い合う……ここまでOK?」

 

セイバーは満足そうな顔で首肯する。

 

「それで、なぜ魂が食われるとか俺が狙われるとかに繋がるんだよ。」

「それを話そうとしたらお主が会話を切ったんじゃろうが。まぁよい、思ったより理解が早いようじゃしの。で、魂の説明じゃが儂らサーヴァントは幽霊みたいなものなのじゃ。で、簡単に言うと幽霊は幽霊を食べて強くなる。だから自分のサーヴァントを強くしたい参加者はサーヴァントに人間の魂を食べさせる。非常に簡単な結論じゃろ?まぁ、あのアサシンの場合それだけとも思えなかったがな。それに、あのそれくらいなら有情じゃろう。他の魔術師の参加者なら生かさず殺さず有効利用、なんてことをする輩もいかねないのが聖杯戦争というものじゃ。」

「んな……!!」

 

とんでもない事実に言葉も出ない。

生死がかかった事態。それもとんでもないし生かさず殺さずなんていう単純に殺されるより酷そうな予想もとんでもないが、何よりとんでもないのは。

 

諦めた幽霊少女(ゴーストレディ)はここにいたーーー!

 

まぁ、色気もデートも可愛げも、あったもんじゃなかったのだが。

やはり、現実は非情である。

 

「ん、どうした涙なんか流して。やはりお主、今更聖杯戦争が怖くてやめたいとでも抜かすか?情けないのう。」

「そんなことで涙は流さねぇよ……とはいえ抜けたいんだけど、そうもいかないよ、ね?」

「あったりまえじゃ。儂とて叶えたい願いがあるのじゃ。その為にはますたぁに勝ってもらわねば。まぁ、どうしても聖杯戦争に参加したくないと言うなら、お主の魂を吸い尽くして人生ごとリタイアさせてやってもよいぞ。それだけあれば暫くは戦えるからのう。」

 

訂正。現実は非情なんてもものじゃなかった。卑劣非道にして卑怯悪辣である。ああ神よてめぇは死んだのかゴルァ。ニーチェは正しかった……ガクリ。

 

「……はぁ。何を惚けておるのじゃお主は。これは現実じゃぞー、受け止めのが吉じゃぞー。」

 

セイバーが小さくて柔らかい指で俺の額をぷにぷにと突いてくる。あぁ、なんかいいなこれ……なんてやってる場合じゃないか、流石に。

そうして冷静に気を取り直す。でもまあ、ここまでやられたら逆にロリなのが救いだったのかもしれない、そうだ少しでもポジティブに考えよう。そうしよう。明日はきっといいことがあると信じるんだ!

ーーーだから、まずは。

ここで1歩を踏み出そう。

 

 

「どうやら、心は決まったようじゃの」

「あぁ。」

「では、まず選んでもらおうかの。聖杯戦争に参加するか否かを。」

 

ここは運命の分かれ道。

そして、俺はーーー

 

「勿論ーーー参加する。」

 

ーーー戦いを、選択した。

 

「覚悟を、決めたか。」

 

セイバーがニヤリ、と口角を歪めながらこちらを見る。

 

「ーーーあぁ。」

 

ゴクリ、と唾を呑む音が聞こえるほど緊張したままこちらも答える。

こちらも覚悟は決めたんだ。だから、今は後ろを向くもんか。

というか、まぁ。後ろ向きになったとこでリタイア出来るわけでもなし、生きるためには戦うしか無いのだから

 

「ならばよし。しからば話を次に進めよう。具体的に勝つため、負けない為に必要な知識じゃ。」

「あぁ、教えてくれ、セイバー。」

 

それでは、生きるために、死なないために。

まずは知れることを知っていくとしよう。

 

 

「まず、ますたぁには参加者の殆どは魔術師ということを知ってもらおう。」

「その魔術師ってのは……」

「慌てんでも今から説明するのじゃ。落ち着かんかますたぁ。」

「ご、ごめん。」

「ふん……謝ることはないじゃろ。それより、魔術師についてだが。コイツら魔術という体内にある魔力を使って色々できる連中じゃ。が、まぁ斬ればだいたいは殺せる。儂を装備したお主にの敵では無いわい。強いていうならサーヴァントの現界や戦闘には魔力が必要じゃ。その魔力をたっぷり持っておるからサーヴァントを万全に戦わせられる、といったところじゃろうな。」

「儂を装備……?まぁ、魔術師とマスターについては分かった。」

 

疑問点はあるものの質問は最後にした方が話の流れを切らないだろうと考えて、続く先を促す。

 

「うむ、そして次にサーヴァントじゃな。これは先程も言った通り7騎の英雄やらなんやらが呼び出されるのじゃ。そしてその呼び出されるサーヴァントは7種類のクラスに1つずつ当てはめられる。」

「遠距離攻撃を主体とするサーヴァント、アーチャー。

白兵能力は低いもの、気配遮断をしてマスター殺しを狙うサーヴァント、アサシン。

陣地にこもり、権謀術数で勝利を掴むサーヴァント、キャスター。

理性と引き換えに得たステータス上昇で最強の破壊力を生むサーヴァント、バーサーカー。

高い機動力と沢山の宝具を持つサーヴァント、ライダー。

最速にして白兵戦特化のサーヴァント、ランサー。

そして、この儂。最優と呼ばれる剣士のサーヴァント、セイバーじゃ。

たまにこれ以外のエクストラクラスってのと入れ替わることもあるものの、基本はこの7つのクラスでサーヴァントは召喚されるのじゃ。」

「えーと、なんだ、ジョブみたいなもんか。」

「ジョブ……?まぁ、職業というのも遠からずといったところではあるな。」

 

RPGのジョブ的な意味だったんだけど……まぁいっか。それにしても、7つのクラスか。

最優……最優か。アサシンに手こずってたのにホントに?

 

「なぁ、1ついいか。セイバーって、白兵能力の低いアサシンに苦戦したのにどこが最優なの?というかへぼい剣士の英雄聞いたことないんだけど。」

「…………。」

 

途端に黙りこくるセイバー。

あ、これはやっぱし聞いちゃいけない事だったのかもしれない。

よく見ると涙目で肩がぷるぷる震えてきてるし泣かれたらこの時間だし俺の家から幼女の泣き声が響き渡るのは流石に色々と不味いーーーー!

 

「す、すまん!俺が悪かった!頼むから泣かないで!」

「な、泣いてなんか無いのじゃ!そ、それにこれには深刻な理由があるのじゃ。」

「深刻な理由?」

 

ひょっとしたら俺の力不足で本気が出せないとかそういうものだろうか。だとしたら不甲斐なさがこみ上げてくる。多少いけ好かないことはあるけれどもロリの邪魔になるなんてことは俺の存在として有り得ない事なのだ。

 

「うむ、それはな。そもそも、儂は英雄でもなんでもないのじゃよ。」 

「………は?」

 

英雄ではないとはどういうことだ?それではそもそもの大前提が崩れている。

 

「いや、じゃから、言ったじゃろ。」

 

セイバーはしどろもどろになりながらお茶を濁す。

 

「さっき儂は英雄やらなんやら、と。儂は言うならその何やらにあたるのじゃよ。儂は言うならば『妖刀』といった概念が形を持った存在……?みたいな感じの気がするのじゃ。」

「おい待てコラなんでそんな曖昧なんやねん。」

 

こっちも命がかかっているのだ。ツッコミどころには全力で突っ込んでいかなくては戦う前に負けてしまう。

 

「だ、だってしょうがないんじゃよ!お主がいい加減でめちゃくちゃな召喚する上に聖杯もなんか不完全感凄いんじゃからっ!」

「………うっ、それは、その、なんか、すまん。」

「そうじゃそうじゃ、お主はもっと儂に謝るべきなのじゃ。」

 

こう出られると俺も強くは言えない。

しかしなぜこんな見た目と中身以外ハズレを引いてしまったのか。採用理由は愛、とかそんなタグがこいつの育成論には付いてるに違いない使いにくさだ。

 

「じゃ、じゃが!儂だって儂にしか出来ない凄いことがあるのじゃぞ!」

「……え?マジ?なになに!」

「それこそが、憑依スキルと妖刀スキルじゃ!なんとこのスキルのおかげでお主がこの触媒である日本刀を装備すればB〜Aランクサーヴァント並の戦闘力を発揮できるのじゃ!凄いじゃろ!」

 

おお!それはすごい。確かに、だからさっき俺が刀を持っただけで一刀両断出来たのか。これなら……ん?いや待てさっきの倦怠感、まさか。

 

「あの、さ。セイバー。確かに凄いんだけども、このスキル……」

「じゃろ、じゃろ!やっぱし儂って最優なのじゃ!」

「このスキルって、代償とかない?」

 

セイバーはギクギクゥッ!という擬音が見えるほどに動揺を顕にする。やっぱりこの娘、わかりやすいなぁ。

 

「な、なぜそれを……お主、エスパーか何かか!?」

「いや、だってこんだけ凄いのに代償ないとか、しかも妖刀なのに有り得ないでしょ。少なくとも漫画ならそうだし。あぁ、あとさっきアサシン斬った後の倦怠感凄かったし。」

「ぬ、ぬうう、恐るべきは現代の書物か……!!」

 

セイバーはおのれ、と言わんばかりに歯ぎしりをしてこちらを睨みあげてくる。なんか悔しがるところ違う気もするんだけどなぁ。

 

「じゃ、じゃが!負けて殺されたり死んだ方がマシな目にあうくらいならまだマジじゃろ!それに、儂はちーっとだけ魂を頂くだけじゃから!」

「いや、それかなり大問題じゃねぇの。そーゆーのって最終的に死んだりするやつだろ!?」

「そ、そんなことはないわい!ただ儂が魂を吸い切ったら儂と完全に同化するだけじゃから!」

 

なん…だと…幼女と、同化……!?

それはなんと甘美な響きなのだ。寧ろ御褒美ではないのか!?

いやいや待て待て、冷静になるのだ戈咒よ。これは俺の命がかかっているんだぞ、同化したらつまり死ぬってことだよなこれやっぱりうーん……………やはりその死に方なら悔いはないな!!

 

はっ!冷静になれてないぞ落ち着け欲望に身を任せるな冷静になれ、なるのだ俺。よく考えたら同化したらセイバー1人になるわけだしどのみちまともに戦えなくなっちゃうじゃねぇか。

こんな幼女1人に戦わせるなんてとんでもない。

だから、ならやはり。限界を知ることが先ではないのか。

 

「なぁ、セイバー。同化までの猶予はどのくらいだ?」

「ぬ…どうしたのじゃ。急に態度変えて。」

「べ、別にどうでもいいだろそんなこと。」

 

やばい、顔に出てただろうか。俺が興奮してることに気づかれたら色々まずいし気づかれてないよな、うん。大丈夫だよね……?

 

「まぁそうじゃな。猶予というならあと三ヶ月といったところじゃろうな。」

「三ヶ月……!」

 

予想以上に短い、やはり契約を切るべきなのか思案する。しかし、もし再びあんな奴に襲われたら俺1人じゃ死ぬしかない。リスクを背負おうと戦った方が生きられる可能性は高そうな気もする。人の魂を使うとかいう欠陥サーヴァントだが実際セイバーが取り憑けば弱めのクラスであったとはいえアサシンは一撃倒された訳だし。でもなー、下手に隠れられて長引いたらその間に俺死にそうだもんなぁ……

 

「安心せい、聖杯戦争は2週間経てば時間切れで自動終了じゃ。だから基本的には問題ないじゃろうよ。じゃが、気を付けろよ。戦えば戦うほどその猶予は短くなる。儂としても聖杯戦争半ばで倒れられては適わんからな。出来るだけ戦闘時間は減らし、暗殺に近い初撃で仕留める戦い方にすべきじゃな。」

 

そんな俺の迷いを汲み取ったのか、セイバーは俺を安心させるように言った。

そしてセイバーの言うことは理にかなっている。俺たちはセイバー陣営だがアサシンのように振る舞うべき、ということなのだろう。確かにサーヴァントすら一撃で倒したあの力なら魔術師とはいえ人間くらい楽に倒せるだろうし、それが最善だろう。

 

「……なるほど。要するにリスクこそあるが無茶さえし過ぎなきゃ充分に戦っていけるし勝ち目もあるってことか……」

「うむ、分かってくれたようで何よりじゃ。それじゃあ説明を続けるぞ。次は令呪についてじゃ。令呪とはお主の左手にある赤い痣のこと。それはそれぞれがなんと高密度の魔力の塊で、これを使えばサーヴァントに転移とかの普通はできない命令も出来るのじゃぞ!凄いじゃろ!」

 

な……に……普通は出来ない命令も、だと。つまり、それは。この小生意気なセイバーにあんな事やこんな事もし放題………!!いや待て、落ち着け何を考えている。無理やり手を出しては紳士失格ではないかッッ!!

俺はなんということを考えていたのだ。

そう思うが否か俺は頭を床へとひたすらに叩きつけていた。

 

「お、おいますたぁよ……何をしておるのじゃ、怖いぞ。やめんか。ていうかぶっちゃけ引く。今まで以上に怖い。」

 

冷めた目線と口調でセイバーが言う。どうやらガチで引いてるみたいだ。しかしこっちとしても落とし前をつけずにはいられないということを伝えなくては。

 

「いや、しかし、俺はこうでもしなければ俺は俺を許せんッッ!」

「何を許せんのじゃよ……まぁいい。よく分からんが儂が許すからそれでええじゃろ。その頭を床に打ち付けてリズム取るの止めんかい。」

「せ、セイバーがそういうのなら……」

 

セイバーが許した故に俺は渋々中断する。しかし今後は2度とこのようなことが無いようにしなくては。

そう深く心に紳士としての心構えを再度刻みつけて俺は此度のことを深く反省した。

 

「で、令呪の説明はさっきのでだいたい分かったと思うが……お主がいきなり訳分からん行動取り出したから一応説明し直すと3回限定の絶対命令権。ということじゃ。くれぐれも無駄うちするのではないぞ。」

「あぁ、紳士としての誇りに誓ってそのようなことはしないと約束しよう!」

「なーんか、噛み合ってない気がするんじゃが……まぁいいわい。それじゃ、宝具と真名についてじゃ。」

「宝具と、真名?」

 

なんだろう、まるで聞いたことのない単語だ。やはりまた魔術師関連なのだろうか。

 

「うむ、宝具とはサーヴァントの持つ必殺技、リーサルウェポンじゃ。」

 

なんか妙に俗っぽい例えだな……ホントに妖刀の化身か?コイツ。

 

「そしてその宝具はサーヴァントごとに違って色んな効果がある。ここで大事になってくるのが真名じゃ。」

「どう関係があるんだよ。」

「真名っていうのは要する本名じゃからな。サーヴァントの宝具は逸話やら昔から持ってたものが殆どじゃからそれさえ知っちゃえば弱点も分かるし勝ちゲーも同然!ということなのじゃよ。」

「なるほど……如何にして自分たちの真名をバレないように相手の真名を暴くかってのも重要な訳か。」

「そういうことじゃ。」

「ところで。セイバーの真名ってのは何なんだ?やっぱし『妖刀』とかそんな曖昧な感じなのか?」

「いや、真名はちゃんとある、あるはずなのじゃ。」

「あるはずなのじゃってなんだよ。あるならあるで……っておい、まさか。」

「うむ。忘れちゃった。」

 

どこで覚えてきたのかてへぺろ的な仕草で誤魔化そうとするセイバー。しかし甘い、並のロリコンならともかく一流のロリコン紳士であるこの俺はこの程度の奸計に引っかかるものかーーー!

 

「しょうがねぇなあ。俺の召喚がまずったせいなんだろ?まぁいい。許す。」

 

ロリのてへぺろには勝てなかったよ……

 

「さっすがますたぁ!心が広い!お主が儂のますたぁで嬉しいぞ!」

 

余程嬉しかったのか、セイバーが抱きついてくる。うん、まぁ……これはこれで可愛いし、いいってことにしちゃえ……うん。

 

「まぁ、うん。じゃあとりあえず真名は分からないってことでいいのか?」

「うむ、そうなるのじゃな……はっ!待てよ、お主が儂を召喚した日本刀の銘を見れば儂の真名が分かるのでは!やはり儂って冴えてるのじゃ!」

 

名案を思いついたかのように喜ぶセイバー。うん、彼女には悪いけど。確か、あの刀って……

 

「あー、いや、うん。ちょっと見せて……やっぱし。この刀、無銘だ。」

「なん…じゃと…。つまり、儂の真名は無銘ということなのか!」

「いや、これは見た限り銘の所が磨り潰されてるかは本当は無銘じゃないはずなんだけども……まぁ結果としては無銘なのかな、うん。」

「真名なのに無銘とは何なのじゃ……気に入らぬ。ますたぁよ、お主は儂をセイバーと呼ぶのじゃぞ。」

「ああ、分かったよ無銘ちゃん。」

「全然分かってはおらんではないかっ!!可愛くもカッコよくもないからそんなの却下じゃ却下!」

 

名前を気にする辺りやっぱし年相応な可愛らしいところもあるなぁ。

もっとこんな可愛らしさを見せてくれれば俺も全力を尽くせるのに。

 

 

「それで、無銘ちゃん。宝具はどんなのなんだ?」

「だー、かー、らー!無銘ちゃんってのやめるのじゃー!!恥ずかしいじゃろうが!」

 

セイバーの頬が朱に染まる。

まさかセイバーの照れ顔がこんな状況で拝めようとは。

うん、やっぱかわええ。

仏頂面とか怖い顔じゃなくてもっとこんな可愛い顔を見たいもんだなぁ。

 

「おい!聞いておるのかますたぁよ!」

 

無銘ちゃんの声で久々にたっぷりと全身で味わうロリニウムで歓喜の声をあげていた心が現実に引き戻される。

危うくトリップしかかっていたようだ。あぶないあぶない。

無銘ちゃんも不穏気な目つきに戻っちゃってるしここは全国の小学生女児を一発で落とせるようなブレイクスルーを決めなくては。

そうして呼吸を整え、口を開く。

コツはあくまでもわざとらしくなり過ぎないようにさり気なく。

それでいてかつ彼女に対する親しみを込めて名前を呼ぶことだ。

 

「なんだい?無銘ちゃん。」

 

ーー決まった。

我ながら過去最高と確信するキメ顔。どうやら今夜の俺はキてるみたいだ。あたまのわるそうな妖刀ぱぅわーは戦闘力だけでなく俺の対幼女悩殺力まで上昇させていたようだ。

 

「ふ、どうやら俺の笑顔は君には刺激が強過ぎーーーーツォラッ!!!」

「ーーーだ!か!らぁ!その呼び方やめるのじゃあっ!!!これ以上は流石の儂もブチ切れるぞっ!!」

 

怒声と共にレバーブローが極まる。

あと、既に怒ってます。セイバーさん。

 

「あとその笑顔マジで気持ち悪いのでやめてくださいお願いしますなのじゃ。」

 

「フェブラッ!?」

 

そしてまさかの精神面にまで来る追撃。いきなりの敬語ってダメージデカいなぁ、ふふふふふ。

あ、なんだぁ、お花畑で沢山の幼女が戯れてるぞ、わぁーい。うふ、うふふ、うふふふふふふふ……

 

「って、ちょーーッッ!?ますたぁ何満面の笑み浮かべて呼吸止めてるのじゃ!?死ぬ気か阿呆っ!え、ちょマジでやめるのじゃーー!!」

 

それからしばらくの間、余りのショックで息を止めようとする俺と止めさせようと身体を振りまくるセイバーの争いは続いた。

え?結果?サーヴァントの膂力で頭の上でジャイアントスイングされたら嫌でも止めさせられるよちくしょう。

もうやだあのロリ。やっぱし可愛くねぇよ。いやでもやっぱりかわええ。

違う、可愛くない。

そう自問自答しながら俺の意識は闇の中へと落ちていーーー

 

「ーーちべたっ!!」

 

ーーーけなかった。

顔面に冷水を浴びせられたのだ。

 

「何すんだこの!!」

「お、やっと目が覚めたか、ますたぁよ。」

「いや、起きてたから。起きたくなかっただけだから。そこんとこ理解してよ。」

「いや……そもそもお主に対してまだ説明の途中だったんじゃが……」

 

そうだった。余計なことばかりしているとすぐに本命を忘れがちになるのは俺の悪い癖だ。説明を聞いてこれからのことを考えなくては。

 

でも、このままやられっぱなしってのも性に合わない。やはりもう1度からかってやろう。

 

「えーと。お前の宝具についてだっけか?無 銘 ち ゃ ん(・・・・・)?」

 

ーーー瞬間、一閃。

俺の前髪、その穂先を断つは煌めく白刃。その奥で俺を睨むのは照れではなく。静かな怒りを漂わせながら満面の笑みを浮かべるセイバーの双眸であった。

 

「ま す た ぁ ?」

「マジすんませんしてもう1度可愛い照れ顔が見たいだけっていつ出来心だったんです許してくださいなんでもしますから。」

 

ロリにすら躊躇無く頭を下げる。服従を誓う。これこそがこの業界で通報されずにやってきた俺の手に入れた唯一絶対の交渉術!趣味と実益を兼ねた究極の謝罪法!

大日本帝国式謝罪儀礼法ーーー即ち、土下座(DO-GE-ZA)である!

 

「ちょ、お主、そんな土下座までせんでも……ますたぁよ、儂もやり過ぎた。うむ、すまぬのじゃ。それに……儂も女子(おなご)の身。可愛いと言われて悪い気もせぬからな、うむ。だから、許すからどうか頭をあげてくれ、ますたぁよ。」

 

ーーーー何この娘。ちょろい。めっちゃちょろいやんけ。こんなに警戒心甘くて大丈夫なのーー!?判断ゆるゆる過ぎだろ、やはり俺が付きっきりで見てやるべきなのかもしれないな、うん。

ん……?いやそんな話じゃなかったような。今のうちに軌道修正しとねば。

 

「いや、それはよかった。じゃあ早速話を戻そう。うんそれがいいそれが。

えーと、宝具?の話だったよな。」

「そ、そうじゃ宝具!宝具なのじゃ!ふふふふ、聞いて驚くな、儂の宝具は妖刀という霊基を持った儂自信なのじゃ。凄いじゃろ!なんかカッコよくないかの!?」

 

えーと、うん。それって。

 

「あのさ……それって。」

 

心を落ち着かせるために深く息を吸い込む。この娘がポンコツ気味なのは分かってた事じゃないか、何を今更騒ぐことがある、うん。

よし、息も整った。冷静に反論するぞ!

 

「それって切るべき切り札が切りっぱなしで新たに一切切れねえってことじゃねぇかっ!!やっぱしハズレサーヴァントだよこのロリ!!!」

 

うん、やっぱし冷静に反論とか無理だったよーー!

だってしょうがないじゃん、こっち命かかってるのになんでこのロリそんなふざけた性能なんだようん。使い勝手悪すぎじゃろっ!

 

「な、誰がハズレサーヴァントじゃ!し、真名解放出来ればもっとすごい効果だってあるはずなのじゃ!敵をばったばった斬り倒せるようなのがのう!」

「ふーん……出来れば?」

「お主の召喚がいい加減なせいじゃろうがっ!」

 

う……そこを突かれると反論しづらい。しかしここは立場をハッキリしておくべきだ。

俺は上!セイバーは下!

 

「だからってダメなのは変わらんだろうが!」

「今更そんなこと言ったってしょうがないじゃろ!儂だって好きでこんな喚ばれ方したわけじゃないわいッ!大体お主も男子(おのこ)なら配られた手札に文句なぞつけずに精一杯戦いきらんかッ!」

「その手札が不良品塗れだからこんなこと言ってんじゃねえかこのダメイバー!」

「だ、ダメイバー……!?お主、ますたぁとはいえ言ってはならんことをーー!」

 

その一言がきっかけとなって俺とセイバーは口論はもみあいの喧嘩へと発展し、戦闘の疲労もあったせいかいつしか俺の意識は今度こそ闇へと落ちていった。




2章スタート&説明回。
切りどころが見つからなくていつもより長めになった、というか一万文字超えてた。
そしてそのせいでストックが完全に尽きてしまったので頑張って書き進めますわーい。
一応2章のプロットは書き終わって3章途中くらいまで進めてるので一気に書き進めるぜ!(プロットから会話を膨らましたりし過ぎて全然進まないフラグ)

それにしても無銘ちゃんポンコツ可愛いけどどこでこんなにダメイバーになってしまったのか。
初期プロットはもっとしっかりしてたはずなのになぁ……


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1日目/ロリータ・ショック

久々の更新
こっちより一発ネタの向こうのが人気出てて複雑な気分なのでこっちにも投票してくれてもいいのよ?(露骨ななアピール)


 

「ん……む」

 

カーテンで遮蔽された窓の隙間から漏れる日差しによって緩やかに覚醒する。

妙に密度の濃い1日を過ごしたせいかまだ火曜とは思えないほど身体が辛い。しかし学校は今日も待ってくれないと身体を起こすと、目覚まし時計の針はちょうど2本ともが頂点を指そうとしていた。

 

「………あれ?」

 

どう見ても昼であり、その時刻が遅刻という事実をハッキリと突きつけていた。

 

「マジかよ……」

 

どうやら相当疲れが溜まっていたのか。寝すぎてしまったらしい。

これもすべてあのポンコツ和服ロリセイバーのせいである。一体どうしてくれようか。そう考えながら布団から出ようとすると。

 

ーーー和服をはだけたセイバーが横で寝ていた。

 

これはどういうじょうきょうなのだろう。

 

え、なんでこんな同衾状態なの?朝チュンしてるの?

というか傍から見たらどう見ても事案ものじゃねこれ?健全なロリコン紳士としてはどうするべき?こっそり布団から抜け出るのがやはり最適解か……?

 

「うん、これ以上立ち位置をやばくする必要もないし、ここは服を戻してさり気なく出るべきだな、うん。」

 

そうしてはだけた和服を元に戻すものの、見てしまわないように作業するとなかなかにこれが難しい。

距離を取りながら作業をするため不安定な立ち方で服を直していると倒れ込みそうになってしまう。

 

慎重に、慎重に。なんとか帯を占め直して一息ついたその時、携帯が鳴り出した。

 

「うわわわわぁ!!」

 

慌てて電源を切るも、それが逆にまずかった。バランスを崩して転んでしまう。地味に痛い。

 

咄嗟に閉じてしまった瞼を開けると

なんだ、これ。

眼前にセイバーの寝顔が位置していた。もうなんかさっきよりまずい、これはもういろいろやばいーーー!

そう思い慌てるが時すでに遅し。

 

「んむ………なんじゃますたぁ。」

 

セイバーが目を覚ましてしまった。

あ、もうこれ終わった、ハハハハ

自身のロリサーヴァントに手を出したロリコンの風上にもおけないぺドマスターてして扱われるんだ、おれは……

 

「いや、何を儂の上で惚けておるのじゃ。なにか?儂に興奮でもしておったのか?」

「んなな、そんなことはないっ!」

「ふふふ、そうじゃよな。幾らマスターでもこんな幼子の身体に………もしかして興奮するのかの?」

「は、はぁっ!?」

 

いきなりの展開に思わず頭に血が登って熱くなるのを感じる。

 

「これは、案外図星かのう?見たいなら……ますたぁなら、いいんじゃよ?」

 

そう言うとセイバーは肩の辺りを誘うようにはだける。

思わず生唾を飲み込んでしまった。

だが、幾らなんでもそれはダメだ。そこを通り越すとロリコンとして守らねばならない最後の一線を超えてしまう……!!

 

「ふふふふ……なんての!まさかお主が本当に幼子で興奮する変態だとは思わんかったぞ。」

「べ、別にお前なんかに興奮なんてしてないっ!それに俺は幼女は好きだが手は出さないんだ!」

「ほうほうふむふむ、別にますたぁなら儂は色々とさせてもよかったのじゃがそう言うなら仕方ないのう。」

「だ、誰がお前なんかに。」

 

騙されないぞ、このダメイバーこうやって俺で遊んでるんだ。これ以上いいようにされてたまるか。

 

「そんなに見せたいならどこか外で見せてきたらどうだ?きっとそういうのが好きなやつが連れてってくれるだろうぜ。」

「儂は別に構わんのじゃが。けれどそれだとお主を守るものがおらんじゃろう。家で大人しくしておるというなら別にそうしても良いがの。」

 

は……はぁぁーーー!!?

コイツ羞恥心って物がねえのかそれとも痴女なのかーーー!?

 

「ふむ、じゃあ家で大人しくしてるなら儂は服を脱いで出歩いてくるとしよう。」

「すまん、俺が悪かったからやめてくれっ!何か要求があれば聞くから頼むっ!」

「ふふふ、そうやって最初から素直に下手に出ておればいいのじゃよ。昨日みたいに儂をからかうかからこうなるのじゃ。」

 

まんまとやられた……ちくせう。

何を要求されるのだろうか、まさか魂をもっと寄越せとか言われるんじゃ……

 

「それじゃあますたぁ、ここに連れてってもらおうか。」

 

不安に頭を抱えているとセイバーはそう言ってチラシを目の前に突きつけてきた。

なになに……どうやら、駅前にオープンしたお洒落な感じのパンケーキ屋のようだ。

俺には縁がないし気にもとめてないチラシだったのだが……

 

「……ここに、連れてけ?」

「うむ、このパンケーキというものは甘くて美味しいと朝のテレビでもやっておったのじゃ。さぁさぁ、連れてくのじゃ連れてくのじゃ。」

 

……なんか、心配してた程やばくなかったな。

でもこういうところって高そうだし昨日刀買ったばかりのお財布には優しくないんだろうけど、この必死にねだる顔を見たらそれくらいはしてやらないとって気分になってしまったのは悪い癖なのかもしれない。

仕方ない、この時間だし学校はもうサボるとするか。

 

 




書きだめするつもりは無くてきりのいい所まで書いてからってやってたら2日くらいで13000字以上書いてたので書きだめ消えるまでは毎日更新する予定


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1日目/パンケーキ・パニック

その後、着替えて身支度を済ませて2人で駅前まで来ていた。

 

「うわ……すげぇ。やっぱオープンしたての昼過ぎなだけあって混んでるな……」

「何をぼやぼやしておるのじゃ、並ぶぞますたぁ!パンケーキが儂を待っておる!」

「わわっ、そんな思っきり手ぇ引っ張るなよ。」

 

セイバーに手を引かれて列に並ばされる。

それにしてもやっぱこんな形だけど人間じゃないんだな……引っ張る力が其の歳頃の女の子の15倍はあったぞ、間違いなく。

 

「それにしても、そんなにここに来たかったのかお前。甘いもの好きなの?」

「べ、別にそういう訳だけじゃないのじゃ。戦略的にも人目のある日中に出回って地の利を得ておくのは意味あることなのじゃ。」

 

そういう訳だけ(・・・・・・・)じゃないってことはそういう訳もあったんだな、うん。

 

「……にしてもそういう理由があるならそう言ってくれれば俺も文句なんて言わなかったのに。だいたいあれはやり過ぎだ、女の子が裸を見せても何にも思わないとかそういうのはどうかと思うぞ、いくら俺でも。」

 

そう聞くと、セイバーはまるで不思議なものでも見たかのように目を丸くしてこちらをひとしきり見つめた後、笑い出した。

 

「ふふ、ふふふふ!お主まさか儂を女の子扱いしてくれとるのか。ふふふ、はははは。」

「な、何がそんなにおかしいんだよ!」

「いや悪い悪い。そうじゃった、お主は我がますたぁであっても魔術師ではないものな。そう考えるも不思議ではないかの。」

「考えるって、何をだよ?」

「儂の事を人間だとして考えるか、ということじゃよ。」

「別に、お前達が人間なんて思ってねぇぞ?というかあんな化物地味た人間がいてたまるかって話だよ。」

「そういう話ではない。サーヴァントは基本的に人間から英霊へと押し上げられて『座』に登録された魂、そのコピーなのじゃよ。だからそもそも人間ですらなくなっておるのじゃよ。だから、儂は裸を見られる事に何も感じぬ。幾ら話が通じて対話が出来ようと自分と違う生き物に欲情はせぬし羞恥も湧かぬじゃろ。」

 

思いもしなかった事実に言葉も出ない。

このセイバーは羞恥がないのではなく。

人間を別の生き物としてしか見れてないのだ。

 

「そ……そうは言っても元は人間だろ。それにお前は今ここにいるじゃねぇか、コピーだろうと英霊だろうと、心の在り方が人ならまだ人間のままだろ。」

「忘れたのか?さっきのは普通のサーヴァントの話であり、そもそも儂は妖刀の概念が霊基を得ただけのサーヴァントもどき。『座』にも登録されておらん紛い物じゃよ。つまり儂は人間として生きていたこともないし、人生というものを経験したこともない。知識としてしか人を知らん生き損ないが、人と同列なわけあるまい。それとも、まだ言うことがあるのかの?」

 

……そうか。コイツは。

人間を見下している訳ではなく。

どこまでも、紛い物な自分を見下しているんだ。

 

「そ、それは……」

 

俺には、何も言えない。

人として、家族との平和な生活を/ナンダソレハ?/送ってきた俺には。

 

軽い頭痛が頭を襲う。

幾ら人ではないとはいえ、ロリがこんなふうになってるのに気づいて精神的にショックを受けてしまったのだろうか。

 

「おい、ますたぁ。急に頭を抱えて大丈夫か!?見たところ、呪術の類を掛けられたとかでは無さそうじゃが……」

「あぁ、いや問題ないよ。ちょっと痛んだだけだ。昨日誰かさんのせいで安眠出来なかったからじゃないかな。」

 

これ以上彼女に心労を負わせるわけにはいかない。何事も無かったかのように、平然を装わなくては。

 

「……ふん。酷くなるようなら言うのじゃぞ。まぁよい、それならパンケーキじゃパンケーキ。下らんお喋りの間にもう次の順番だぞ!」

 

どうやら誤魔化しきれたようで、ほう、と息をつく。

そしていつの間にか次呼ばれるタイミングまで列は進んでいたらしい。

 

「2名でお待ちの伍道様ー、お席の用意が出来ました。」

 

「呼ばれたぞっ!はやくするのじゃますたぁっ。」

「はいはい、慌てないでもパンケーキは逃げねぇよ。」

 

そうして2人してテラス席に案内され、席についた頃には先程の痛みは何事も無かったかのように失せていた。

やっぱ大したことなかったな。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

ウェイトレスさんが来たのでメニューをザッと眺めて注文を決める。朝昼兼用とするの甘いものより食事系のパンケーキの方がいいだろう。

 

「それじゃ、このサラダパンケーキください。」

 

それにしてもこのウェイトレスさんは胸がつるぺたすっとんなのに背が高めだ。とても惜しい。あと20cm背が低かったら全力でアプローチしたのだが。顔も童顔で好みだし実に惜しい。

そう考えているとまだセイバーが悩んでいるようだ。

 

「まだなのか?早く決めろよ、お姉さん待たせてるだろ。」

「待つのじゃ、どれも美味しそうで決め難い……んむむむむむ。よし!これとこれとこれーー!」

 

「はい、ご注文確認します。サラダパンケーキがお一つ、ベリーミックススペシャルがお一つ、オレンジのチーズパンケーキがお一つ、抹茶パンケーキがお一つですね?以上で宜しいでしょ……」

 

な、一体幾つ頼んでんですかこのあほー!金欠だって言ってるだろ!……いや、言ってなかったか。でもこんなに払ったらマジでやばいから辞めさせなくてはーー!

 

「ちょちょちょっと待って待って待っ、ゲフッ!」

「?」

 

こ、このロリ……鞘で鳩尾ど突きやがった………そこまでパンケーキが食いたいか……ガクッ

 

「な、何でもないのじゃ、それで注文は以上じゃ。」

「分かりました、少々お待ちくださいませ。」

 

そう言うとウェイトレスさんは去っていった。今の反応見て一切引かないとかプロだなこの人……

 

「おい、セイバー。てめぇコラ、何しやがんだこの野郎……」

 

恨みがましく睨みつけて問いつめるとセイバーは慌てて弁明を始めた。

 

「だ、だってあのままますたぁをそのままにしたらパンケーキを1つにしてしまったじゃろう?」

「ったりめぇだろ。やっぱお前パンケーキ沢山食いたいからって……」

「ば、ばかもの!これでも儂は最優のサーヴァント、セイバーじゃぞ!そんな卑しいことなどせぬわ!あれは、そう!いっぱい頼むことで長くここに居座って通る人間にマスターがいないか調査する為なのじゃ!」

 

いや、どう考えても今考えたよねその口実。というかさっきは出歩いて地の利を得るとか言ってたじゃねーか。

 

「……金のことは考えて貰えてるんですかねぇ。払えなかったらお前ここで皿洗いさせるからな。」

「ふふふん、儂がそんな間の抜けたことをすると思うてか。見くびるなよますたぁ。ちゃんと出てくる前にお主の財布の中の金子(きんす)くらい確認してから来ておるわ。ちゃんと払い切れる金額じゃぞ。」

 

ふふん、と無い胸を偉そうに張って自慢げに言うセイバー。

いつの間に……というかそこまで考えてるなら、払った後の我が家の財政状態まで考えてくれませんかねぇ……いやホント。

 

 

 

そうこう落ち込んでいる間にパンケーキが運ばれてきた……のだが。

 

「ますたぁ、ますたぁ凄いぞパンケーキは!このベリーミックススペシャルというのも何種類もの果物によるソースの酸味と甘味が絶妙なバランスをとっており最高じゃ!じゃがオレンジのチーズパンケーキというのも見た目からは予想できないほどの味の重厚さと爽やかさが同居しておって絶品としか言いようがないの!こっちの抹茶パンケーキは抹茶の苦味と渋みを最大に活かして甘いのに詫び寂びを感じる素晴らしい一品じゃのう!まったく、洋菓子に抹茶を練り込むとは現代の菓子職人は素晴らしいのう!」

 

こんな事になるとは誰が予想したよ。

……めっちゃハッスルしてるよこの娘。

人間味がどうこうカッコよく脳内でキメた感じなのがやべぇすっげぇ恥ずかしいんですけど。

甘いもの好きなんだろうなぁとは薄々思っていたがまさかこれ程までとは……!!

というかお前さっきの長く居座って魔術師来るかどうか見るって言ってたけど俺の3倍あるのに俺より食べるの早ぇじゃねぇか。やっぱ口実だったかコノヤロウ。

思わず呆気に取られて手が止まるとセイバーは食べながら口を開くが何言ってるかわからん。

 

「はむ、はむはも、ましゅたぁよ。手を止めてひょうひた。ひゃべないのならひゃひがもらうひょ。」

「飲み込んでから喋れ行儀悪い。」

 

そう言うとセイバーはゴクリ、と飲み込んでからもう一度話し出す。

 

「じゃからますたぁよ。要らんのなら儂が食べるぞ、ということじゃよ。で、どうなんじゃ?」

「どうなんじゃ?じゃねぇよ……お前ここに来た趣旨完全に忘れてるだろ……」

「え、パンケーキ食べに……じゃないじゃない勿論覚えておるとも!魔術師をいないか見張りに来たのじゃよな!うむ、儂が見た限りそれらしきものはおらんぞ!」

「いや、さっきまで見てなかったのにそんな事言われてもなぁ………」

「ふっ、安心しろますたぁよ。サーヴァントが近づけばサーヴァント同士はいつでも分かる。気配遮断を持つアサシンは無理だがアサシンは昨日倒したから問題なしじゃ」

「………それってさ。ここに居座る理由なくね?むしろ適当に歩き回ってた方が地の利を得られたんじゃ……」

「な、何を言うのじゃ!そんなことは別に……あったね。うん。まぁそれはいいのじゃ。大切なのはこれからじゃよ!これから!」

 

うわすっげぇムカつく。いや待て落ち着け俺。これ以上いいようにされてたまるか。冷静に、それでいて的確に反論するんだ。

 

「いや、あのなぁ……」

「あれ、戈咒じゃねえか。こんなとこで何やってんだ?」

 

唐突に掛けられた声に向かって振り向くと、そこにいたのは下校途中の委員長と錬土だった。

 

「伍道君、珍しく休んだと思ったらまさかこんな所でサボってたとはねぇ……ってどうしたのよその子。え、まさか、誘拐!?」

「マジかよ戈咒……お前は変態だけどロリコンとしての筋は通してると思ったのに……見損なったぞ!」

 

あれ、なんか一気に未成年略取誘拐の犯罪者にされたーー!?

やばいやばいやばやばやばやばい!

委員長これ携帯取り出してるし警察呼ぶ気だこれ!

 

「ちょ、ちょっと待ったちょっと待った!誘拐してきた訳じゃないから!というか何故俺のナンパが成功したって可能性は考慮されないわけ!?」

「されない。」

「ないわね。」

 

一蹴ですかー、ふたりともひどいなー。

 

「だってあんな気持ち悪いのについてく女の子がいる訳ないじゃない。小学生だからって舐めすぎよ貴方。」

 

いや、別に舐めてないんだけどな……むしろロリの御御足なら舐めたいけど!

 

「お前良からぬ妄想してるのが顔に出てるぞ……てか、俺も委員長と同じ理由に加えてお前がナンパ成功したなんてことを認めたくないからお前が誘拐してきた説を推すぞ。」

「そんな理由で人を犯罪者にするなや!俺はロリの為に人の尊厳を失う程度ならまだしもロリを攫う犯罪なんてすることぜったいにない!!」

「伍道君が言うと妙な説得力があるのが困りものよね……言ってることはダメダメなのに。まぁとりあえず、話を聞いてからよね。」

 

そう言うと委員長パンケーキを丁度食べ終わったセイバーを呼びつける。

ここで止めたら自分でやましいことがあるって言ってるようなもんだけどコイツはコイツで誤解招くようなこと言わねぇだろうな……

 

「ねぇ、お嬢さん。貴女とそこの伍道君ってどういう関係なの?」

「ん?ますたぁとの関係か?そりゃあまぁ、主従関係じゃよ。儂がますたぁに隷属してますたぁが儂の願いの為に動く。見事なまでの等価交換じゃ。」

 

………うん、終わった。

確かに嘘はないけどさ、もう少し、その、言い方とかあったよね。

そうして俺は思考を放棄した。

 

「ッッッッッあ、アウトでしょうがこんなもんーーーー!!変態っ!変態よこのペドロリ犯罪者っ!近づかないでっ!」

「お前、そーゆープレイは昼間からやるもんじゃないんだぜ?分かる?」

 

委員長は完全に勘違いしてしまってるようで、完全に動転しているようだ……が、錬土。お前完全にこれがそーゆーことじゃないって気づいてるだろおい。やめろそのニヤニヤ顔。自分が女引っ掛けられないのに俺がロリとお茶してたのが気に食わないのかこの。

 

「おいコラ錬土てめぇ分かってておちょくってるだろ。これ以上やるとお店に迷惑だしちょっと外出て説明してやるから委員長説得しとけ、な?」

 

二の腕を思いっきり圧迫しながらそうお願いする。後で一発追加で殴らせてもらおう、うんそうしよう。

 

「あたたたたたギブギブギブ!痛い痛いからマジすんませんやめてちょっと調子乗ってたすまんやめて。」

「分かればいいんだ、分かれば。」

「え?ちょ、どういうこと?」

「はぁ、ハァ。とりあえず先外で待ってよ委員長。安心しなよ、犯罪性は無さそうだからさ。」

 

そう言うと錬土は委員長の肩を抱いて歩いていく。

 

「え、あれ、そうなの?……っていうか何で肩抱いてるのよこの変態っ!スケコマシっ!」

「ふぁんでっ!?」

 

が、その直後自分の状態に気づいて顔を真っ赤にした委員長にビンタされてやがった。やっぱアイツ主人公属性みたいなの持ってるよなぁ……俺もこんな物騒な迷惑ロリじゃなくて可愛いロリとお近づきになりたかったなぁ……やっぱアイツ爆発しろよ。

 

「ん、ますたぁよ。話は終わったのか?」

「終わるわけねぇだろ……というかお前のせいでよりややこしくなってんだからな?とりあえず弁明しにいくから店出るぞ。」

「いや、儂としては特に誤解を招こうとしたつもりは無かったんじゃがのう。」

 

うわマジかよコイツ。天然だったのか。

 

「それはそれとして、じゃ。」

 

急に声を潜め、真剣な声色で話しかける。

 

「お主は魔術師の家系では無かったのじゃよな?」

「あ、ああ。そうだけど。どうしたんだいきなり。」

「いや何、今の小僧の方じゃよ。何らかの魔術が掛けられとる。パッと見大したものではないし、魔術に反応して居場所や生死を術者の下に伝える程度のものじゃろうが……それでも用心するに越したことは無いの。」

 

唐突に伝えられた事実に思わず思考が硬直する。

 

「な……なんだと……!錬土が魔術師だっていうのか!?」

 

しかし俺の不安は杞憂に終わり、セイバーはきっぱりのその懸念を否定した。

 

「いや、それは無いじゃろ。そもそも儂は掛けられとる、と言ったんじゃぞ。それに、あの小僧からは魔力を感じられん。恐らく魔術回路自体が無いのじゃろうな。じゃから、そう。あ奴とお主の関係を知っておるものに魔術師や他のますたぁが存在する可能性がある、ということじゃよ。」

「な……!?それって、学校の中に他のマスターが!?」

「一概には言えんがの。適当にそこらの人間に掛けてレーダー代わりに使っておる可能性も十分あるからのう。じゃが、覚悟くらいはしておけという事じゃよ。身近なものをその手で斬る覚悟をな。」

 

告げられた宣告に、目の前が真っ暗になったような錯覚を受ける。学校ですら安全でないとしたら、常に命の危機があるってことじゃないか……

 

「おいおい、儂が言ったからって気にし過ぎじゃよますたぁ。ますたぁは魔術師の家系ですらないんじゃから、ますたぁにマスター適正があることを知ってるもの自体がほぼおらんじゃろう。じゃからそれよりは適当に魔術を掛けられた相手があの小僧だったって可能性のが高いわ。じゃが、覚悟だけはしておけ。いざという時に殺されぬよう、な。」

 

そう、セイバーは念を押すと途端に顔を明るくして。

 

「それじゃ、店を出るぞますたぁ。それにしてもここのパンケーキは絶品じゃったのう。また連れてきてもらいたいものじゃ。」

「か、勘弁してくれ……」

 

これ以上の出費だとマジでもやしライフになってまうぞ俺……

 

 




戈咒君の財布はこの小悪魔ロリの甘味おねだり攻撃に耐えることができるのか!つづく!


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1日目/開幕

会計を済ませて店を出ると、委員長と錬土の2人が俺を待っていた。

 

「それじゃ伍道君、その女の子について説明してもらおうかしら。」

「そうだな。俺もお前が誘拐してきたとは思わねぇけどそのロリっ子が何なのかは皆目検討つかねえしな。」

「えーと、だな。この娘は親戚に預けられた子なんだ。名前はセイバーっていうんだけども。」

「セイバー(騎兵剣)?またけったい名前だな……というかどう見ても日本人なのにそんな名前なのかよ。」

「ちょっと、ホントのこと話してもらえる?私たちも別に疑いたい訳じゃないんだから。」

「いや、本当じゃよ。儂の名はセイバー。伍道 聖化(ごとう せいば)じゃ。戈咒お兄ちゃんの従姉妹じゃよ。」

 

よしっ!ナイスゥ!

よく口裏合わせてくれたなっ!

『ふふふ、儂に任せればこの程度お茶の子サイサイよ。』

得意げにセイバーが因果線を通じて会話してくる。そうか、この手があったな。

よし、打合せしながらうまく誤魔化すぞセイバー!

『任せておくのじゃ!儂はお主の従姉妹で両親の旅行の間ますたぁが儂を2週間預かってるという設定でいいかの?』

よし、それでいこう!

というか……さっきの受け答えする前に一言相談してくれれば良かったろ……

『と、とっさのことじゃからしょうがないじゃろっ!忘れてたわけではないぞ、ただびっくりしただけなんじゃからっ!』

お、おう……

そんな必死になって否定しないでも……

『とにかく、その受け答えでいくからの!』

よし、分かった。ところで、お兄ちゃんってのいいな。どうした急に。

『あ、あれは咄嗟になんか口にしてたんじゃ。儂にも分からんがなんかしっくりきたのでそう呼んだのじゃが…不快か?』

いや、全然オッケー。寧ろ呼んでくれ。

『やっぱお主変態じゃろ……』

自分でも薄々感づいてるからそれを言うのはやめてやってくれ。

 

「セイバーはあだ名なんだ。2人もセイバーって呼んでやってくれ。」

「なるほど、あだ名か。それで、一緒に暮らしてるってことか?」

「ああ、セイバーの両親が帰ってくるまでの2週間の間だけな。」

「そう……それにしてもセイバーちゃんの御両親もよく貴方に預けようなんて思ったわね……」

 

うわぁ、俺の信頼無さすぎぃ。

 

「人をなんだと思ってるんだよ、委員長は。」

「ロリペド野郎の変態クラスメイト。」

 

うわぁ、辛辣。

 

「ま、それなら心配はいらねぇか。何だかんだ戈咒は面倒見もいいしな。それじゃあ、俺らは帰るけど。何かあったならいつでも連絡しろよ、特にセイバーちゃんのことでおかしなことでもあったら‪(・・・・・・・)。」‬

‪「なに?その言い方だと貴方まで手出ししそうに聞こえるんだけども。」‬

‪「冗談。俺は胸のある女が好きなんだよ。その点委員長は背は低いがおっぱいが素晴らしゅぼっ!」‬

 

‪あ、殴られた。やーいざまぁ。ついでに俺も1発殴っておこう。‬

 

‪「なにっ、言ってん、のよっ!このっ、変っ、態っ!もう知らない!」‬

‪「やめ、やめ、やめって。痛い痛い、痛い。というか戈咒てめぇこら一発どさくさに紛れて殴るな!」‬

 

‪あ、バレた。‬

 

‪「いやでも仕方ないだろ、お前さっき分かってて敢えて話ややこしくしたし。一発は殴ってしかるべき。」‬

‪「ぐっ……それより委員長怒って行っちまったぞ。フォローしとけよ。」‬

‪「え、なんで俺が。」‬

 

‪うわぁ何このラノベ主人公体質。ぶん殴りてぇ。‬

 

‪「ぐはっ!てめぇこら戈咒なにいきなり殴ってんだ。」‬

‪「あ、つい。鈍感ぷりにムカついたもんで。」‬

‪「ついじゃねぇよ!……ったく。とりあえず委員長に謝っときゃいいんだろ、ほいほい。……そこまで鈍感な訳ねぇだろ、阿呆。」‬

‪「おう、それじゃあな。」‬

‪「明日はサボんなよー、豪ちゃん怒ってたぜ。あと手出すなよー!」‬

‪「俺は紳士だからしねぇっての!というかそれマジか、うわやだなぁ行きたくねぇ……」‬

‪「はははは、ザマァ。」‬

 

‪うわくっそムカつく。というか豪ちゃんキレてるってマジかよガチで行きたくねぇなぁ……‬

 

‪「いや、お主どんだけ自分の担任にビビっとるんじゃ。」‬

‪「いやお前も見れば分かるから。あれは教師の風格じゃないから。その道のプロの風格だから。」‬

‪「なんでますたぁの学校はそんなんが教師やっとるんじゃ……」‬

 

‪しょうがないだろ、校長がヘッドハンティングしてきたんだから。地下闘技場か何かで。‬

 

‪「それにしても、あやつ。儂が人間じゃないと気づいておったの。」‬

‪「え……はぁ?マジで!?」‬

‪「何を驚くんじゃ……そりゃ感の鋭い奴なら人間じゃないって何となく感じる奴はおるじゃろ。ただそれを確信出来るほどの真人間はそうそういないというだけじゃ。」‬

‪「……真人間?アイツが?」‬

‪「魔術師でないという意味じゃよ。魔術回路はあの女子(おなご)諸共存在しておらんようじゃからの。サーヴァントのマスター足りえないし、聖杯戦争の関係者ではないじゃろ。」‬

‪「……そっか。ならいいんだ。」‬

 

‪いやホント、最悪の自体は避けられたようで何よりだな……それにしてももう夜か。晩飯の用意しないと。‬

 

‪「セイバー、晩飯何食いたい?」‬

‪「パンケーキ!」‬

‪「却下だ。ていうか今さっき散々食っといてまだ足りねぇのかよ……」‬

 

‪底無しか?コイツ。‬

 

‪「えー、ダメなの?戈咒お、兄、ちゃ、ん?」‬

‪「ぐはっ!」‬

 

‪うわちょっと何この娘あざといやばい。だが耐えるのだ俺、まいにちもやしライフを防ぐ為に!‬

 

‪「だ……だめ、だっ!リクエスト無いなら今日の晩飯は素麺!文句は言うなら食うなっ!」‬

‪「えー、まぁ儂和食は基本的に皆好きじゃからいいけど。」‬

 

‪よしっ!よく耐えた俺!頑張った!‬

 

‪「そうだ、素麺なら手のべ素麺がいーなー。」‬

‪「そんな高いもんはお前さんがパンケーキ喰いすぎたお陰で食べられません。安物で我慢しなさい。」‬

‪「えー。情けないのぉ、儂のますたぁは。そのくらいの甲斐性は見せぬかい。」‬

 

‪俺はお前のメシ使いじゃねえんだよ。‬

‪というかそんな食に拘る必要ねえだろサーヴァントなのにっ!‬

 

‪「まぁいい、うちに薬味類はまだあったからスーパーで素麺だけ買って帰るぞ。」‬

‪「うむ。」‬

 

‪そこでふと本来の目的を思い出して聞いてみる。‬

 

‪「そういえば、魔術師いたのか?」‬

‪「おらんかったなぁ、それらしきものは。」‬

‪「マジで何のために出てきたんだよ俺ら……」‬

‪「ふふふふ、気にするな気にするな。この程度へこたれとって駄目じゃぞ。まだまだ先は長い。早速今夜から見回りに出発じゃ!」‬

 

‪え、なにもう今夜から戦いに出るの?まだ疲れ抜けきってないし明日からでいいじゃん。‬

 

‪「えー、明日からにしようぜ。今日は疲れたし、ゆっくり寝たい。」‬

‪「何腑抜けとるのじゃうちのますたぁは。そうこうしとるうちに気づいたら詰んでても知らぬぞ。魔術師はあくどいからのう。そうなったら幾ら儂を装備したところで切り抜けられないかもしれんぞ。」‬

 

‪ぬぬ、痛いところを突いてくる。確かに俺も死にたいわけじゃないからなぁ。そこに関しては完全に利害も一致してるのだし。‬

 

‪「ぐむ……しゃーない。ただしあんまし自分から首突っ込む気は無いからな。なるたけお前を使いたくないんだし。」‬

‪「分かっておるよ。だから遠くから観察して他のサーヴァント同士が戦ってるところでマスターの首を背後から取る!一般人の振りして近づけば何とかなるじゃろ。」‬

‪「お前、ホントに剣士の英霊かよ……」‬

 

‪それガチモンの暗殺者(アサシン)じゃん。昨日のが実はセイバーでこのロリこそアサシンなんじゃないの?‬

 

‪「……そんなに儂がセイバーか疑うなら儂をよく目を凝らして見てみるのじゃ。ちゃんとステータスと共にセイバーってクラスも見えるじゃろ。」‬

‪「いや聞いてねぇよ。」‬

‪「そういえば言っとらんかったか。まぁよい、論より証拠。とりあえず見てみるのじゃ。」‬

‪「わ、ホントだ…」‬

 

‪目を凝らして見るとセイバーのクラスとステータスがグラフ状になって見える……のだが。‬

 

‪「お前さ、ステ低すぎだろ!なんだこれ、セイバーなのに近接戦闘ダメダメって……」‬

‪「い、いやだから待つのじゃ!それは儂単体のステータスであって、お主が儂を装備したらもっと高いステになるのじゃ!」‬

 

‪なんだ、それならまだマシか。良かった、装備してもあんなゴミステかと思ったぜ……‬

 

‪「……納得してくれたのはいいのじゃが、なーんか気に食わん。」‬

‪「いや、別にお前がそのままじゃ使い物にならないのは気づいてたから気にすることは無いぞ、うん。」‬

‪「うわますたぁよ、お主ハッキリというの。地味に傷つくぞ。」‬

 

‪いや知るかよそこまでは流石に。‬

‪っと、スーパー見えてきた。さっさと買って帰るか。‬

 

‪「よし、じゃあ素麺買って帰るぞ!セイバー!」‬

‪「ちょ、スルーはやめるのじゃぁあ!」‬

 

‪スーパーへ向けて走っていく時に正面に見えた夕日が少し目に染みた気もした。‬ちょっと黄昏た気分になりたいだけで別にそんなことは無かった気もした。

 

 

‪ーーーーーーーーーーーーーーーーー‬

 

‪素麺を食べ終わって、テレビを見ながらだらだらとしていれば、時刻はいつの間にか午後10時。人気が減ってくる時間だ。‬

 

‪「それじゃ、行くかのう。ますたぁよ。」‬

‪「おう、良いぞ。」‬

 

‪そうして家を出る。‬

 

‪「で、何処に向かうんだ?」‬

‪「とりあえず昨日ますたぁが襲われたとかいう駅前周辺かのう。アレだけ暴れてたサーヴァントじゃ。おそらくますたぁを失ったはぐれか何も知らないますたぁじゃろう。痕跡を多く残してるじゃろうからな、同じように探しに来てるやつもいるはずじゃ。」‬

‪「なるほど、そこを隠れて不意打ちで叩くってことか。」‬

‪「そういうことじゃ。」‬

 

‪そのまま駅前付近まで歩いていくと、瞬間。空気が変わったように何かに呑まれた。‬

 

‪「なんか、空気が変わったような。なんかあったか?」‬

‪「お、鋭いのますたぁよ。まぁ気にするな、人払いの結界内部に入っただけじゃよ。どっちが張ったか分からんが、なかなかに高度な術式じゃ。気づかれてるのは間違いないじゃろうな。」‬

‪「はぇー……っておい。それじゃ、奇襲とか不可能じゃねぇか。」‬

‪「うっ……だ、大丈夫じゃよ!張ったのは誰か1人だけだからそれ以外のマスターなら何とかなる、多分!」‬

‪「うわぁ……この勢いだけで動いてる感、ホントに大丈夫か。」‬

‪「ライブ感は大事じゃよ!」‬

 

‪誰もライブ感は求めてないです。‬

 

‪そんな軽口を叩きながら人気のない道を進んでいくと、硬いもの同士がぶつかり合う金属音が聞こえてきた。‬

 

‪「これって!?」‬

‪「うむ、既に戦闘は始まっておったようじゃの。急ぐぞますたぁ!」‬

 

‪音のする方へと走っていくと破壊痕がところどころに見られる。そしてどうやら音源は駅前広場のようだ。駅ビルの非常階段に登って様子を確認すると。‬

 

‪巨大な犬だった。それこそ、あれは象にも匹敵するサイズだろう。‬

‪そしてその巨躯から振るわれる爪は電柱を軽くなぎ払い、口腔内からそびえる牙は並の一軒家くらいなら噛み砕きかねない。そんな圧を感じさせる強大な獣だった。そしてその振るわれる爪と直槍で同等に打ち合っているのは俺より幾らか歳上くらいにしか見えないスレンダーな女性だった。‬

‪だがその身からは有り得ぬ膂力で爪を打ち払い、薙ぎ、突いている。‬‬

‪しかし獣もただやられるだけでない。四脚の利点を活かして縦横無尽に女性を翻弄しつつ攻撃を仕掛ける。‬

‪その状況が数秒、いや数分だろうか。とにかく短くも濃い時間、打ち合いは続いたが互いに致命の一撃には至らない。そして、先程とはうってかわって互いを牽制しつつも動かない睨み合いとなった。しかし溢れ出る魔力と神秘は他の追随を許さず、ここまで覇気が流れ込む程だ。‬

 

‪最大級の神秘と神秘のぶつかり合い。‬

 

‪これがーーー聖杯戦争か!!‬

 




このペース配分をまるで計算していないようなぐだぐだ状態。
これでこの時点での書きだめは尽きてるので暫く時間かかるかも
それはそれとしてやっとだよ!久々のサーヴァント戦!ほんと半月ぶりくらいじゃね?
なんかずっと戈咒とセイバーのイチャイチャ書いてた覚えしかないこの半月。
連続更新はこれで終わりだけどこれからもよろしくお願いします


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1日目/妖しき毒は呪いのように

三日連続だと思ったか!
四日連続だ!

いやまぁ気が向いたから書いただけなんですけどね


‪牽制の爪と槍が打ち鳴らす金属音を皮切りに再び視界の中のサーヴァント達による戦闘が再開される。‬

 

‪「すげぇ………。というか俺はあんなのと戦わされるのか……?」‬

 

‪咄嗟に弱音が漏れる。しかしセイバーは特に気にすることでもないと言ったふうに語る。‬

 

‪「何をびびっとるのじゃますたぁは。お主もあの状態なら十分互角以上に打ち合えるじゃろうが。」‬

‪「え、えぇ!?嘘だろセイバー!」‬

‪「いや、こんな嘘ついて儂にメリットなんざないじゃろ……少なくともあのランサーかの、それ相手なら一方的に打ち倒せるじゃろうな。」‬

 

‪マジでか。あれやっぱこのロリ実は凄いの?どうせ大したことないとか思っててごめんね。‬

 

‪「お主ひょっとして今まで儂が憑依したところでそんな強くないとか思ってたんじゃないじゃろうな……」‬

‪「そ、そんなことないない!それより、なんでランサーなんだ?見たところあのクラスは分からんがデカ犬の方が打ち込まれているように見えるんだが。」‬

 

‪セイバーはハァ、どダメなものを見るような目でこっちを見て呟く。‬

 

‪「お主、少なくとも戦術眼に関してはまるでダメじゃの……確かに一見ランサーの方が多く切りつけとるように見えるがありゃ全然刃が通ってないじゃろうが。」‬

‪「え?刃が通ってない?」‬

‪「ますたぁみたいな並の視力じゃ見えんじゃろうがかすり傷程度にしか傷がついておらんよ。見たところあのデカ犬は最低でも幻獣クラス。それこそ宝具でも使わんとロクに切りつけられんじゃろうな。」‬

‪「じゃあランサーなのに、あの槍は宝具じゃないってことか?」‬

‪「珍しい話じゃが、その可能性はあるじゃろうな。或いは宝具だとしてもあの槍が魔術的な礼装であり武器としてではない場合、というのも考えられる。そして何よりあのデカ犬は機動力もさるものながらあの巨躯じゃ。放たれる1発1発が致命必至の一撃じゃろう。」‬

‪「じゃ、じゃあつまり劣勢なのはランサーってことか。」‬

‪「うむ。それに加えてランサーの動きにキレがない。マスターがうちと同じく半端モンの可能性も高いじゃろうな。」‬

 

‪……悪かったな、半端モンでよ。‬

 

‪「ふふふ、そう気を悪くするなますたぁ。お主は戦士として重要な死を恐れる臆病さと死を恐れぬ蛮勇さを併せ持っておる。それだけで儂のますたぁ足るりえるわい。」‬

‪「な、なんだよ急に褒めて気持ち悪い。」‬

‪「きも……儂はただ、お主にも見るべきところはあるぞと……」‬

 

‪やべ、落ち込んじゃった。‬

‪ま、まあセイバーなりに俺を心配して気遣ってくれてるんだろうし、うん。‬

‪無事に帰れたら帰りにコンビニでシュークリームの一つでも買って帰ろう、うん。‬

 

‪「ほ、ほら元気出せセイバー。元気出せば帰りに……」‬

‪「うるさいわい!そんなことより話を続けるのじゃ!」‬

‪「お、おう。」‬

 

‪どうしたんだよ全く。いきなり怒り出して訳が分からねぇ。‬

 

‪「あの加えて言うならあのデカ犬はまだ余裕があるようにも見える。恐らくすぐ後ろに見えるマスターの指示かのう。」‬

‪「つまり、あのマスターはランサー達相手に余裕をこいてるってことか。」‬

‪「うむ。おそらくの。」‬

‪「なら、狙うべきは。」‬

‪「そう、狙うべきは。」‬

 

 

‪「ランサー」「デカ犬」‬ 「「のマスター」」‬

 

‪……え?‬

 

‪「いやいやいやいや、慢心してるならそこにつけ込むのが基本だろ、なんでわざわざどこに隠れてるかも分からんランサーのマスターなんて探しに行くのさ!」‬

‪「いやいやいやいやは儂のセリフじゃ!お主ホントに見る目がないのう……魔術師としての実力は明らかにデカ犬のマスターのが上なんじゃぞ?よって恐らく儂ら以外の第三者がいなければこの人払いの結界を張ったのもあのマスターじゃ。儂ら存在にも気づいておるだろうじゃろうから奇襲にならんわ。」‬

 

‪ぐっ……そう言えば結界張ったやつには俺らが入ってきたことバレバレなんだった………!!‬

 

‪「で、でも。どうどうとしてる分不意打ちには強いだろ?マスター相手ならお前を装備すれば十分……」‬

‪「いいや、まだじゃ。単純に、位置が近過ぎる(・・・・・・・)のじゃよ。あのデカ犬を呼び戻されたら恐らくそれにかかり切りでマスターに不意をつかれて倒される可能性も高い。」‬

‪「あっ、そうか……」‬

‪「それに半端モンのマスターなら敵から追い込まれにくく、かつバレにくい場所にいるじゃろうからここからなら大体絞れる!そうして絞り込んでから一気に仕留めにいくぞ。」‬

‪「あ、あぁ分かった。しかしやっぱ凄いなセイバーは。俺にはやっぱ戦況を読む力が無い。」‬

‪「そんなのは当たり前じゃろ。というかますたぁが儂以上に凄かったら儂は必要ないわい。さて、それじゃあそろそろ行くかの。刀を抜くかいい、ますたぁ。」‬

‪「………………あぁ。」‬

 

‪セイバーから日本刀を渡される。‬

‪ーー重い。‬

‪ズシリとした重みは、生命を断つということを俺に伝えているのか。‬

‪これを抜けば、俺は再び妖刀としてのセイバーに意識を支配される。‬

 

‪目を瞑り。深く深呼吸。‬

 

 

‪いざ……抜かん!‬

 

 

‪ーーーーーーーーーーーーーーーーー‬

 

‪抜刀と同時に彼女の意識(ほんのう)が流れ込む。‬

‪骨に。肉に。血に。‬

‪全てを切り刻も蹂躙せしめるという欲望が渦のように、坩堝の如く流れ込む。‬

‪甘く。甘く。甘く。‬

‪毒のように、呪いのように精神(こころ)に染みとおる。‬

 

‪ーー血ガ欲シイ‬

‪ーー血ヲ寄越セ‬

‪ーー血ヲ刃ヘト満チサセロ。‬

 

‪あぁ、あぁ、煩い。‬

‪頭の中にジンジンと響いて。‬

‪あぁ、あぁ、まるで。‬

 

‪まるで。‬

 

‪人を斬りたくなるーーー!!‬

 

 

‪視界は既に狭まりこの結界の中で最も弱い命を目指し、血を啜り肉を斬り骨を刻む醜悪な剣士が一目散に空を駆ける。‬

 

‪俺はこんなこと戦い方など望んでないのに。‬

‪ただ生きたいだけだというのに。‬

‪身体は既に俺のものでありなが俺のものでなく。‬

‪どこまでもこの妖刀を振るうのに最適化されてランサーのマスターの首を狩る為に向かいゆく。‬

 

‪そして、眼前に見えるはこちらに背を向けたランサーのマスター。‬

‪綺麗に上段に構えた両腕は、堪えきれなくなったかのように、堰を切り殺気を津波のように溢れ出させる。‬

 

‪その殺気に感づいたか。ランサーののマスターはこちらを振り向くが時既に遅し。‬

 

‪その無垢なる肉は一太刀の下に肉の(むくろ)へとなりてーー‬ーー

 

 

 




今回結局サーヴァント戦までも行けなかったから多分日曜のうちにもう少し書いてアップするかも


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1日目/さぁ、聖杯戦争をはじめましょう

今回ヘブライ語とかの詠唱が入ってるけどグーグル先生頼りなので正しさはかなり怪しい
ま、まぁ型月の呪文ってのは自身を作り替えるための合言葉だからね!文法とか知らねぇ!


‪お兄ちゃん。今日はねー、おままごとしよう?私は職場のツバメを狙う女上司役で、お兄ちゃんは若いツバメ役ね?‬

 

‪また変な役にされた………なぁ(しきみ)。お前のおままごとってどうしていつもぶっ飛んでるんだ……?‬

 

‪んーとねぇ。これは、昨日おばあちゃんがひぞうのこれくしょんだよって見せてくれたドラマを元にしたんだよ?‬

 

‪あの婆さんは何考えてんだ……付き合わされるボクの身にもなれよ。‬

‪いいか?樒。そーゆーの見ると悪い影響受けちゃうから見ちゃダメだぞ?‬

‪えー、つまんなーい。ぶりっこの新入社員?がばーん!ってうちのめされるのとか面白かったよ?‬

 

‪それが悪い影響なんだよ……ボクが付いていられりゃいいけど、今の家のこと考えるとそうも言ってられないし……お前を婆さん家に預けたのはホント蒙昧愚劣な母親(おかあさん)にしちゃファインプレーだよ、ホントに。‬

 

‪んー?私は、むつかしいことはよく分からないけど悪い子じゃないよ、いい子にしてる!‬

 

‪あぁ、そうだな樒。お前はいい子だ、ボクの救いだよ……‬

 

 

 

 

‪危ないお兄ちゃん!‬

 

‪あっ、このガキ!‬

‪ヤベェ人が来る!そっちだけでも攫って逃げろ!‬

‪ちくしょう!噂の神童じゃねぇぞコイツ!‬

 

 

‪可哀想にねぇ……誘拐犯も酷なことするわ。でもどうせならあっちのお兄ちゃんの方攫って殺せば良かったのに。‬

‪いい加減あそこの夫婦の自慢顔にはウンザリだわ。……しっ!聞こえるわよ、アソコにいるわ。‬

 

 

‪どうして頭を働かせない!‬

‪お前に出来ることはそれだけだろうがっ!!‬

‪そうよ!あんな出来の悪い妹が死んだところで貴方にとって-は何も無いわ!貴方にはかの名門小学校からの入学免除の書類も届いているのよ!?だからお願い馬鹿なことはやめてちゃんとやって私達に楽させてちょうだい!‬

 

 

 

 

‪お前のせいだ!お前が生まれてから全ておかしくなったんだ!!‬

 

 

 

‪ああ、なんてバカなんだボクは……こんなボクは生まれたことが間違ってるんだ。けれど樒に助けられた命を捨てられるものか…………なら。‬

 

 

 

‪ーーーーーーーーーーーーーーーーー‬

 

‪瞬間、眼前の視界に入るのは幼い女児の横顔。‬

‪意識が飛び、何かを感じ、身体に戻る。そして。‬

 

‪ーーー身体が、止まる。‬

 

‪ピシリ、と。何かに気づいたように。‬

 

‪「キャ、キャアアアアアアア!!」‬

 

‪目の前の女の子のつんざく悲鳴が耳朶に響く。‬

 

‪『何故動きがとまる、ますたぁ!というか何故儂に操れん!』‬

 

‪セイバーの焦る声が内から聴こえる。‬

 

‪そんなものは、総じて軽微、今この場に置いては芥とすら同価値だ。‬

 

‪それよりも、なんだ今の記憶は。‬

‪俺は知らない/ボクは知ってる‬

‪何なんだ、あの妹の存在は。‬

 

‪そして、何よりもおかしいのは。‬

‪そう、あの樒という存在しない妹の見た目は。‬

 

‪「セイ……バー……」‬

 

‪そう、俺を救った。俺の刀。彼女に瓜二つだったのだから。‬

 

‪『だーかーらー!何をボケっとしてるのじゃこの阿呆ますたぁ!さっさと支配権を戻さんかい!……っ後ろっ!」‬

 

‪セイバーの鶴の一声で意識が戻る‬

‪咄嗟に反転し刀で受ける。‬

 

‪槍の一撃……ランサーか!‬

 

 

‪「よく受けたな、セイバーよ。」‬

 

‪目の前に立つは見目麗しき女騎士。‬

 

‪「一つ聞きたい。何故、サキを、マスターを斬らなかった。彼女は戦士としてここにいる。返答次第では容赦はせんぞ。」‬

 

‪それは……誤魔化すのは簡単だ。だがこの前の圧力はそれを許さず、そうすれば死をもって償わせるだろう。‬

‪ならば、俺が言うことはひとつ。‬

 

‪「それは……彼女がロリだからだ!幼女だからだ!」‬

‪『はぁ!?何言っとるんじゃこのバカますたぁは!?』‬

‪「……ならばっ!」‬

 

‪ランサーに槍の柄で殴られ、鍔迫り合った状態から弾き飛ばされる。‬

‪そしてランサーは構えを解き。‬

‪再度訪ねた。‬

 

‪「ならば、貴様にとってロリとは、幼女とはなんだセイバーー!」‬

 

‪「小児性愛とは、俺の本能であり。そして、ロリコンとは。」‬

 

‪「俺のッ!生き様だッッッ!!」‬

 

‪何やらおかしかったのかランサーは一通り笑った後、こちらに向き直り口を開く。‬

 

‪「ふは、ふはははははは。なるほどそうか面白い!そんなことの為に戦う人間は久々に見たぞ!これだから聖杯戦争は面白い!」‬

 

‪そしてランサーのマスターも叫び出す。‬

 

‪「ば、馬鹿なの君!いきなり人に奇襲しかけたかと思ったら動きを止めて、挙句の果てにその理由がロリコンだからですって!?私をおちょくるのもいい加減にしなさいよ……ランサー!コイツを殺しなさい!」‬

‪「な……!」‬

 

‪しかし、俺らの動揺に反してランサーは予想外の答えを返す。‬

 

‪「悪いがサキ、それは断る。」‬

‪「はぁ!?」‬

‪「そんな事をしている余裕は俺にはない……避けろっ!」‬

 

‪突如空間に吹き荒れるは莫大なるまでの爆風。‬

‪映画で見るバックドラフトの如き爆炎が渦となってランサーを吹き飛ばした。‬

 

‪「ランサー!」‬

‪「なっ……!!」‬

‪「心配はいらない、俺は無事だ。それより上を見ろ!」‬

 

‪ランサーの一声で上を見る。すると先程までは何もいなかったはずの街灯の上に、今の爆発の下手人と思われる1人の引き締まった肉付きの中年男性が立っていた。‬

 

‪「あらあら、まぁまぁまぁ。少しズレちゃったかしら。戦闘に使うにはまだまだ難しいわねぇ。あら?誰が結界の中に入ってきたのかと思ったら、セイバーだったのねぇ。私はこの街の管理者(セカンドオーナー)爆霧(はぜきり) 風破(ふうは)よぉ。遊んであげるわ、いらっしゃい。」‬

‪「お、お、オカマーーーッッ!!??」‬

‪「あら、いきなり失礼ね坊や。私はオネェよ。」‬

‪「お、オネェ……」‬

 

‪にしても、いや、気にするところそこなのか?‬

 

‪「坊や……魔術師、には見えないわねぇ。ならいいわ。ねぇ、繰空のお嬢ちゃん?貴女のお家とは私も少なからず親交がある訳だし、ここでサーヴァントを自害させれば安全に抜けさせあげられるんだけど、リタイヤする気は無い?貴女のサーヴァントと魔力量じゃ、私に勝つのも難しいでしょ。」‬

 

‪その物言いが我慢ならなかったのか、ランサーのマスターは怒りのままに反論する。‬

 

‪「な…何がリタイヤする気は無い?よ!さっきからそこの君といい!皆して、ちょっと私を舐めるのもいい加減にしてくれないかしら!私は繰空の後継者、ここで引いたら家の名折れよ!」‬

 

‎‪「העובר שלי החוט שלי הכוונה שלי(私の意思は意図を伝いて真理を知る)ーーーהתקפה(襲え)!!」‬

 

‪彼女の口から紡がれる詠唱。それと同時に彼女身体中から魔力の糸が地面に突き刺ささる‬

‪すると、なんということか。‬

‪地面より土塊の腕が幾本も伸び、爆霧を襲うーーー‬

 

‪「これが、今代の繰空の魔術?情けないわァ、ハリボテじゃない。七代目とは大違い。いいわ、本当の魔術ってものを見せてあげるーーー!」‬

 

‪そう言うと爆霧は複数の小石の様なものを投げ、ただ一言、詠唱する。‬

 

‪「b,u,d,t,o,d(星屑よ、天の如く爆ぜよ)ーーー!」‬

 

‪その一言と同時に複数の小石は爆裂し、土塊の巨腕を破壊する。‬

 

‪「っーーあれは、ノタリコン詠唱。」‬

‪「これで、実力差は見て取れたかしらぁ?私には別に弱いもの虐めの趣味は無いし、大人しく降参してくれると楽なのだけれども。」‬

‪「だ……だれがっ!それ位……それくらい!」‬

‪「あらあら、面倒ねぇ。仕方ないわ、殺しましょうか。」‬

 

‪咄嗟に刀を構えて歩を進めようとした瞬間。‬

 

‪「いいこと、それ以上進めば貴方も殺すわ。」‬

 

‪その言葉で一瞬の、躊躇がうまれる。‬

 

‪「アーチャー、殺しなさい。」‬

‪「ガルルルゥッ!」‬

 

‪そして、足が走り出したその時には。‬

‪牙が、爪が、失意の彼女に突きたーーー‬

 

‪「させるかァ!」‬

 

 

‪ーーたなかった。‬

‪ガギン、という激しい金属音をさせてランサーが割り込みアーチャーの攻撃を防ぐ。‬

‪無事なのを確認してほう、と息をつくとこの状況にも慣れてきたのか、目の前のデカ犬とランサーの戦いを見守る。そして同時にあのデカ犬はアーチャーだったのかと驚かされる。‬

‪『いや、ホントにあれのどこがアーチャーなんじゃよ……まさか何か飛び道具があるとかその程度でいいのか、弓兵のクラスは。』‬

‪全く同感である。‬

‪『儂はてっきりデカ犬はバーサーカーじゃとばかり。』‬

‪「俺もデカ犬はバーサーカーだと思ってた。」‬

‪「ざんねん。ハズレですね。今回のバーサーカーは勇猛果敢な戦士なのです。」‬

‪「へぇ……勇猛果敢な戦士……ッッッ!!」‬

 

‪咄嗟に横を振り向くと、そこにはいつからいたのか。まるでずっといたかのように感じさせるほど自然に、金髪ゴスロリの少女がいた。‬

 

‪「あれ?気づかれちゃいましたか。穴埋め枠だと思ったら意外とやるぅ。」‬

 

‪なんだ、コイツは。‬

‪キモチワルイ。‬

‪存在感が、人じゃない。‬

‪かといって、サーヴァントですらない。寧ろその逆。ある種清廉で精錬された感じすら受けるサーヴァント達の気配と真逆に位置するおぞましさ。‬

‪それには、全身の毛穴から侵されて蝕まれるような錯覚すら抱く。‬

 

‪「お、お前は……何だ?」‬

‪「あら、鋭い。これはうちの毒聖杯ちゃんもいい仕事してくれたかな。よし!バレたことだし、開催宣言でもしますか!」‬

 

‪そういうなり彼女は飛び上がり、アーチャーとランサー戦いの中に飛び込んでいく。‬

 

‪普通に見ればどう見ても少女の挽肉(ミンチ))が出来上がるはずが。‬

‪突如虚空より現れた巨躯の戦士により、2騎のサーヴァントはその動きを押しとどめられていた。‬

 

‪「ありがと、バーサーカー。」‬

 

‪そう言うと彼女は大きな声で、叫ぶ。‬

 

‪「レディース・アーンド・ジェントルマーン!!私はこの聖杯戦争の主催者、レア・アーネスでーっす!あ、風破ちゃんおひさー、元気してたー?」‬

 

‪いきなり挨拶された爆霧は不満そうにレアに言葉を投げる。‬

 

‪「何のつもりよぉ、レア。聖杯戦争を邪魔するなら主催者とはいえ、容赦しないわよぉ?」‬

‪「えー?そんなつもりはないよ。ただ、久々だったから声かけただけなのになー。あ、そうそうそれでね。今来たのは、遂にマスターとサーヴァントが七人ずつ揃ったから、開催宣言をしに来たんだ。と、いうわけで!」‬

 

‪そう言うと彼女は耳朶が腐る様な声で。‬

 

‪「宣誓!僕達私たちは!正々堂々魔術師のルールに従って真正面から不意打って殺し合います!!」‬

 

‪その声でパリン、と何かが砕けた音がした。しかし、それよりも目の前のアレ(・・)から目を離せない。‬

 

そうこう俯いているうちに‪レアはニタリ、と不吉な笑みを残して呟く。‬

 

 

‪「さぁ、聖杯戦争をはじめましょう。」‬

 




ノタリコンを爆霧さんに使わせたけど今後作中で紹介する機会があるかも分からないから一応ここで解説
ノタリコンはこの作中では頭の文字を取って言いやすく縮めた短縮詠唱。ただし余程使い慣れた呪文だったりそれなり以上の実力がないと失敗するし威力も落ちる
爆霧さんが唱えたものの完全版は「blow up, dust to dust」って呪文だったり。



明日から予備校の本講義が始まるので暫く更新が滞る可能性あります
なるたけ空けないようにはするつもりですが宜しくお願いします


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幕間/ランサーvsアーチャー

連続更新だぞヒャッホー!


ーーーinterludeーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

初めに動いたのは風破だった。

 

「ゲーt……アーチャー、ランサーを殺しなさい!」

 

命じられると同時に、いや実際はそれより前に飛び出していたのかと思えるほどに素早く、ランサーの喉元に向かい飛び込む!

 

だがランサーも魔力不足気味とはいえれっきとした英雄。

それを紙一重とはいえ躱し、続く爪の一撃も捌く。

とはいえ、元よりはランサーは武勇に優れた英霊ではない。その事は召喚した私自身が何より理解している。

 

だが、それは私とて承知の上。彼を使いこなせないようでは、お兄ちゃんを守れなんてしない!

 

幸い、既にセイバーはあのレアと名乗るバーサーカーの下に向かったのだろう、真名が漏れる恐れはない。決めるなら、今だ。

 

「ランサー!下がって第2宝具の使用を!ここで仕留めるわよ!!」

 

「待ってたよ、その言葉!おら、退きな犬っコロぉ!」

 

槍でアーチャーの身体弾くものの、ランサーの膂力では押し切れず距離を取り切れない。

 

「ッ!宝具を使われる前に仕留めなさい、アーチャー!」

「ガルルルァッ!」

 

アーチャーは大口をあけてランサーの頭に喰らいかかる。

やられるーーー!

 

そう思った瞬間、ズブリ、と肉を貫く音がした。だがその音は、アーチャーの牙がランサーの頚に刺さった音ではなく。

 

ーーーランサーの槍が、逆に穂先を口内に突き刺すことでつっかえ棒のように支え、防いでいる。

 

「あらん、驚いたわぁ。てっきりもうダメだと思ったのだけれど。なかなかいい駒を引けたようじゃない、お嬢さん。」

「ふ、ふん。なんてったって私は繰空の後継者だもの!当たり前じゃない!」

 

でも、今のままじゃ虚勢を張るのが精一杯。確かに防ぐことは出来たけど、あれは所詮一時の延命手段だ。

向こうからは見えないだろうけれど、アーチャーの口内の傷跡が盛り上がってそのまま穂先を押し出そうとしている。

あのままでは、ランサーがやられるのは時間の問題だ。そう感じて令呪を切ろうとした瞬間ーー

 

『おいおい、お前は俺のマスターだろう。少しは信用してくれよ。』

 

ーーそう、念話が入る。

そうか。私は、マスターなのだ。サーヴァントと共に聖杯戦争を戦い、そして勝ち抜くパートナー。マスターである私が自分のサーヴァントを信じきれなくては勝てるはずもないだろうに。

そうして令呪を切ることをやめる。代わりに、私が言うのはただ一つだけ。

 

「頑張って!勝つのよランサー!」

 

それを聞くとランサーは目蓋を一瞬閉じ、口を開く。

 

「その言葉が聞きたかった。」

 

そう呟き、ニヤリと笑うと、ランサーは指先に魔力を収束させる。

 

「ここまでしてもらったんだ。応えなきゃサーヴァントの名折れさね。」

 

そうして、三角形のような図形を描き。

 

「喰らいな、犬っコロ。《ケン》!」

 

そう言い放つと空中に描いた図形から火炎が激しく吹き上がり、喉を焼く。

そうか、あれはルーンか!

 

「距離は取れた……このまま決めさせて貰うぞ。」

 

そう言うと同時にランサーが懐から紐を出す。あれがランサーの第2宝具。高まる魔力の収束は、真名解放により真価を解き放つ瞬間をまだかと催促しているようにすら見える。

 

「戒めろ、貪る(グレイプ)ーー」

 

 

そしてそれを手中より解き放つ!!

 

「ーー魔枷(ニィィィィル)!」

 

ランサーの手の中から幾本ものの紐が飛び出し、アーチャーの四肢に絡みき動きを封じる!

 

「……なっ!フェンリルを戒めたドヴェルグ共の紐!?まさか貴方、北欧の天空神だっていうの!?」

「はっ、それこそまさかだね。俺はあんなに勇敢じゃないし、愚かでもない。親友(ダチ)1人守り抜けない、ただの人間だ。」

 

ランサーはそう自重するように苦笑すると、槍を構え直して一気にアーチャーへと詰め寄る。

 

「アーチャー、抜け出るのよ!紐を噛み切りなさい!」

「ガグルッ、グラルラッ。」

「無駄だ、その紐は並の霊基じゃ抜けられない。それに獣となればなおさらな。」

「で、でもこれで漸くイーブンよ!いえ、寧ろアーチャーにロクにダメージを与えられない以上貴方が有利な訳じゃないわ!」

「……確かに。さっきまで、ならな。」

「……え?」

この紐は縛った相手の魔力を俺に還元する。つまり今の俺なら、ダメージくらい楽に与えられるって訳だ。」

 

そう言いながらランサーは地面にガリガリとルーン文字を書き続ける。

 

「だからな、これで終いさね。」

 

そう、処刑宣告のように言い。

 

「《ソーン》!」

 

その一言と共に無数の棘が濁流のように伸び、アーチャーを槍衾にするーー

 

 

ガギンガギガギギガギン!!

 

 

ーーかに思われたが。そこに入ってきた影が伸びてきた棘を全て叩き折った。

 

「Grrrrrrrrrーーー!!!」

 

耳をつんざく大咆哮。思わず耳を塞いでしまう。一体何なのだ、あれは。

煙が晴れ、姿が見える。

あれは、まさか。

 

「人狼……!」

 

時代と共に、人の世を追われ、世界の裏側へと消え失せたはずの幻獣。幻想となった、人狼(ワーウルフ)がそこに佇んでいた。

 

 

ーーーinterlude outーーーーーーーーーーーーーーーーー




一応言っておくとアーチャーは魔神王とはなんの関係もありません


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1日目/三日月の獣

本当はこれと次の併せて一話予定だったのに気づいたら七千字近くなってたので分割されたとかなんとか。
だから書くのに時間かかるんだよ!


遠くで戦闘音が聞こえる。いいや、違う。

あれはランサーとアーチャーの戦闘音だ。だから殆ど離れているはずが無い。

だからこれは、単純に俺の意識がそれだけ目の前のコイツに集中しているだけなのだ。

 

「もうやだなぁ、そんな心配しなくてもとって食ったりはしないわよ。ま、殺しはするだろうけどね。それじゃあ、やっちゃえバーサーカー!」

「……承知した、マスターよ。」

 

指示と共に両手剣を構えた戦士が踏み込み、一気に距離を詰めてこちらを断ちにくる。

 

「グッ……はあっ!」

 

ーー重い。さっきのランサーや昨日のアサシンなんかとは比較にならないほどの一撃の重さだ。

 

『馬鹿かますたぁ!日本刀は受けるのに向いてない、受け流せ!というか儂に支配権を寄越せ!』

 

セイバーがこちらに叫んでくる。

そして肉体の意識を刀に、妖刀(セイバー)の本能に委ねると意識が薄れ身体が勝手に動き出す。昨日や、さっきと同じ。遠隔操作を見ている気分だ。

 

「……中身が変わった、か。先程はただの小僧だったが。フッ……なるほど。これが剣士の英霊の真の姿ということか。では、お手並み拝見といこうかッ!!」

 

バーサーカーは期待するように口角を吊り上げ、一足飛びに間合いを詰め、再び戦闘が再開される。

 

俺の身体は刀身を斜めに使いながら両手剣の一撃を受け流しつつ、相手を断とうとするがバーサーカーもさしたるもの。強靭な肉体と高い膂力で両手剣を振り回し近づかせない。しかし剣術としての技術はセイバーの方が上なのか、向こうもこちらに有効打を与えられない。さしづめ剛剣のバーサーカーと柔刀のセイバーと言ったところか。

 

そうして幾分ほどか。息をつかせぬ、されど気を抜かせぬ剣戟の果てにバーサーカーが惜しそうに呟く。

 

「まさか死後に、これほどの難敵と見えられるとは。だがそれだけに、残念だ。ここで終わりとは。」

「褒められるのは光栄じゃがの。最後のは聞き捨てならんの。儂はまだピンピンしておるが?」

 

気分を害したかのようにセイバーが俺の身体で話す。しかし、なんだ。自分の声で小さい女の子(ロリータ)が話してると考えるとそこはかとない背徳感が……

 

『……おい、こんな時まで何を考えとるんじゃこの馬鹿ますたぁは。シリアスをぶち壊す天才か?お主。』

 

セイバーに怒られてしまった。いや、なんかほんとすみません。

と、こちらが念話で騒いでる間にもバーサーカーは残念そうに呟き続ける。

 

「いいや、違うのだ。()()()()()()()()からな。」

 

そう言いながら、バーサーカーが頭上を指さす。

 

「ええ、そうね。天気予報は見てなかったのかな。今日は日が沈む頃から曇だったけれど、日付が変わる頃からは星空が綺麗に見える程の快晴なのよ。」

 

空を見ると。丁度それまで天を覆っていた雲の切れ間が見え。病的な程に青白く、幽鬼のように燦く三日月が、姿を見せた。

 

「ぐ……ぐぉ、オオオ、オオオオオオオオオーーーーーーーー!!!!」

 

同時に。月光を浴びたバーサーカーが絶叫を発する。

 

「はじまったはじまった♪」

「な、なんなんじゃあれは……」

 

肉体はパンプアップしたかのように膨れ上がり、羽織っているジャケットの毛皮は広がりバーサーカーの全身を覆っていく。

 

「が、がうう、ルラ、がらルララ……grrr……!!」

 

声からも人間性が失われ、段々と獣性を帯びていく。

そして、月の光が止んだ時。

そこに立っていたのは、人狼となったバーサーカーだった。

 

「さぁ、行きなさい!バーサーカー!」

 

その号令と共に人狼と化したバーサーカーが迫り来る。

 

「疾いーー!」

「GRRRRAAAAAーーーーーー!!」

 

剣こそ使わなくなったものの、一撃一撃がより鋭く、速くなっている。更に両腕の爪を振るう分リーチこそ落ちたものの手数は優に2倍以上。明らかにセイバーを受け流しきれず、かすり傷が増えてきている。

 

このままじゃーーやられる!

その瞬間、捌き損ねた一撃が頭上より顔面に振り下ろされる。

が、その瞬間。セイバーが一言。

 

「すまんの、ますたぁ。ギアを、上げさせてもらうぞ。」

 

そう、謝るように呟くと。

 

宝具擬似解放・妖刀斬神(みかふつのかみ)

 

その一言と共に全身に再び妖刀の呪詛(いし)が流れ込む。いや、これはさっき以上だ、だル、ろう斬。斬、斬ルル。

 

ーー血を寄越せ

ーー血を満たせ

ーー血を我が刀身(にくたい)へと焚べるのだ

 

我は呪の刀である。

我は妖の刀である。

 

ーーーー故に、ただ斬るのみ。

 

「ル斬斬、ル斬ル斬ル斬ル斬ルルル。」

 

ナンだ/斬/何かがオカしイ/斬れ/セイばーノ意/斬れ/思スラ感じラレなイ/切り刻め/気ヅケば片/断て/手にハ/断ち斬れ/もウ1振リの刀ガーーー/総テヲ、斬レ

 

こうして、俺の意識は沈んで還り。

 

身体にと毒の如く染み渡った悪しき斬妖の意識(ほんのう)が浮き上がる。

 

ーーーーさァ、斬戮(ヒトゴロシ)の時間だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さァ、ヤロウか人狼(ヴェアヴォルフ)。斬り殺シテあげよウ。」

 

ーーーそして、一閃。

 

バーサーカーの胸に、十字の裂傷がはしる。

 

「ヘェ。斬れなイナンてすゴイな、キみ。ならバ……両断シテあげよウ!」

 

そのまま戈咒だったものは間合いを詰め、斬りつける。

しかしバーサーカーも初撃で危険度を悟ったのか、素早く反応し爪で応戦する。

 

「GRRRRRAAAAAAAーーー!!!」

斬斬斬斬(キキキキ)()ャハハハハハ!!!」

 

バーサーカーは人を越えた回復速度と獣性により力で押し。

戈咒だったものは人を越えた剣戟と素早さにより翻弄する。

永遠に続くとすら思われる2人の人外の殺し合い。

 

 

ーーしかし。終わりの時は唐突に訪れた。

 

()ャハ。斬斬斬(キキキ)。ちくしょう、もう時間斬れかよ。」

 

戈咒だったものはあくまで刀の毒により身体を間借りしているに過ぎない。戈咒の身体自身の自浄作用によってその毒が抜けてしまえば、この斬撃の化身とも言うべき状態は消えてしまう。

 

だからこそ、戈咒だったものは。また全力で殺し合う機会が生まれるよう。今の表層の意識は、いけ好かないガキだから。再び自分が出てこざるを得ない状況が生まれることを祈り。敢えてここでバーサーカーを殺さず、ランサー達の下へとはねとばした。

 

目的はただ一つ。自分が出ていない間に戈咒の肉体を殺させない為。

 

()ヒャヒャ……人狼(ヴェアヴォルフ)……テメェは(おれ)が殺スぜ斬斬斬斬斬斬(キキキキキキ)ャヒャヒャヒャ!!」

 

そう高笑いと共にその目にハイライトが戻り、戈咒の意識は再び浮上した。

 



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1日目/シスターズ・キック

サブタイがいつもセンス無さすぎて辛い……もっといい感じの言語センス欲しい……


…………

 

…………

 

……………………

 

 

……………………………ハッ!

 

俺は、何を。

意識が飛んでからよく思い出せない。何があったんだ、そうだ、バーサーカーは!?

 

『安心せい、ますたぁよ。どうやら、儂の意識(ほんのう)が追いやったようじゃの。今はランサーと戦ってるようじゃ。』

 

そうか……なら、助かったのか。

 

『……目の前のアレを見て、もう終わったと言えるようならの。』

 

言われて前方に意識を向けると、レアがこちらを向いて嗤っている。

 

「まさか、バーサーカーと互角に渡り合うなんて、思わなかったわ。ホントうちの毒聖杯ちゃんは、穴埋め枠にすらこんな掘り出し物を見つけてきてくれるなんて……わくわくしちゃうわ。久々に……()()()()()()()()()()。」

 

そう言ってレアは怪しげに舌なめずりをする。

アレは、危険過ぎる。斬らなくては。

 

『おいおい落ち着くのじゃ、ますたぁよ。その身体、既に限界じゃろうに。ここは引くべきじゃろ。』

 

そんな悠長なこと言ってられるか。アレは早く斬らなくてはいけない。

もういい。セイバーにはこれ以上俺の身体を預けてられるか。

そう思いセイバーと別れて駆け出す。

 

「あいたっ!……お主、まだ抜けきっておらなんだか……止めねば!」

 

セイバーが後ろから止めようと付いてくるが関係ない。ここで一気に叩き斬るーーー!!

 

「だから。残念だなぁ、これで終わりだなんて。」

 

何故だ。何故。俺は確かに身体が動く通りに袈裟斬りにした、なのに。

死なない、どころか。肉が刀に食らいついてるなんて。

 

「上級死徒がその程度で死ぬ訳ないじゃない。それじゃあ、さよなら……!?」

 

と、それまで笑みを浮かべていたレアの顔が突如驚愕に染まる。まるで有り得ないものを、それこそ死者が立って歩いているような奇跡を目にした人間の如くに驚きを顕にする。

がしかし、それも束の間。すぐに納得を見せ、理解を言葉にする。

 

「どういうことなの、私が貴方の身体を浸食出来ないなんて……そう。貴方他の毒に(ひた)されてるのね。なんて面白いの、そんな風に私から逃れた人はいなかったわ!うふす、気に入っちゃった、貴方。私の《子》になりなさい?」

 

そう、金色に煌めく視線で。蕩ける様な声色で問いかける。

確かに、こんな可愛い娘にならーーー

 

「ゲブゥ!?」

 

ーーッッ!?

痛っ!腹蹴られたぞおいっ!

 

「何を甘言に乗せられようとしとるのじゃこのバカますたぁはッ!!そしてそこの主催者よ!この男は儂の贄じゃ、誰にも渡さんッッ!!」

 

そう、セイバーは力強く言い放った。

今ので目が覚めた。そうだ、俺は、何をしているんだ。こんな見た目だけで、匂いがBBAの偽ロリに拐かされるなんて、ロリコン失格じゃないか。

 

「ふーん、そう。でも、君のマスターはどうかしら、ねぇ。」

 

こんなにロリに言わせて応えないなんて、漢じゃない。

ーーだから、拒絶する!

 

「ーーー断る!生憎俺は、お前みたいなBBAの臭いのするロリに興味はねぇ!」

「なーー」

 

レアは驚愕の後、喜悦に(かお)を歪めて、嗤う。

 

「ーーーハハハハハ!!ホント面白いわね貴方!ますます《子》に欲しくなってきたわ……」

 

そう、レアが再び怪しげに笑みを浮かべたその瞬間。

 

 

 

「あーーーーーー、テステース。」

 

 

この緊迫した雰囲気にそぐわぬ程気の抜けた、やる気のなさが滲み出る声。

 

「聞こえるかー、夜中とはいえ駅前でドンパチやらかしてるアホども。せめて結界くらい掛けねぇか。アタシゃ監督役のルキア・ザビーヌだ。以後よろしく。あととりあえず全員武器下ろせ。」

 

監督役と名乗る銀髪のシスターが、俺たち全員を見下ろすように、公園中央の噴水に立っていた。

 

そして指示通り目の前のレアが戦闘の気配を無くしたのを見て、俺らも厳戒態勢を解く。

 

そうしたのを感じ取ったのか、気怠げに口を開く。

 

「つーわけでお前ら暴れすぎだ。神秘は秘匿するもんなんだろ?だったら今日のところはお開きだ、ほら散った散った。アタシゃ気持ちよく晩酌してる時にいきなり仕事させられてイライラしてるんだ。あんましギャーギャー騒ぐようだとペナルティ与えるぞコルぁ。」

 

しかしその言い草がランサーのマスターの気に入らなかったのか、彼女が口論を始めるが、自身のサーヴァントと監督役に説き伏せられていた。

そうそう、サーヴァントってああやってマスターを諌めてくれるような立ち位置がきっと正しいんだろうなぁ。

間違ってもこんなパンケーキ食べまくる外れロリ、縮めてハズロリじゃないはすなんだ。お、なんかハズロリって略すと恥ずかしがってるロリみたいでそう考えるとなかなか……うむむ。

 

『頼むからもう少しシリアスを続けられんのか、お主は……』

 

セイバーが呆れたように、そして諦めたように心内で呟いてくる。

だって、しょうがないじゃないか。俺はロリコンなんだからさ、うん。

 

「おー、そうだそうだ今夜はそんなもんで大人しくしとけー。」

 

そうこう思考してる間に向こう側のやり取りにもケリがついたみたいだ。

やれやれ、漸く帰れるのか……

 

「うーっし。粗方ケリもついたみてぇだな。そんじゃアタシゃ帰らせて……おい、なんだお前。」

 

と思ったのもつかの間、監督役のシスターが突如俺に質問を投げてきた。

まさか、何かやらかしてしまったのか!?

 

「な、なんです?」

「お前じゃねぇよ。というか邪魔だお前どけ。そこのバーサーカーのマスターだ。」

 

そう言われて慌ててレアと距離を取る。そうだ、今まで何あんな近距離でらのうのうとしていられたんだ。

そして、俺が離れたのを確認するとレアに向かって再度問いかける。

 

「お前、()()()()()()?」

 

しかし、その不安は杞憂に終わり。代わりに横にいるレアへとこの場全員の意識が注がれる。

確かに、コイツは人間ではないだろう。だが、なんなんだ?

 

「そちらのランサーの言ってる通り、私はサーヴァントではないわよ?何かと勘違いをなされてるのではなくて?()()()()()()()()()()()。」

 

バケモノ地味た聴覚でランサーの呟きを聞き取ったのだろう。

それにサーヴァントでないことなんて、近くでこのキモチワルサを感じれば誰にでも分かる。

しかし、ルキアは怒りを滲ませながら言葉を続ける。

 

「誰もそんなことは聞いてねえ。アタシが聞きたかったのは死徒かどうかって話だが……今のやり取りでほぼ確信したぞ。テメェ、レアだな?」

 

その問いかけに対し、いけしゃあしゃあと答えるレア。やはり何らかの因縁があるのだろうか。

 

「あら、バレちゃったのね。まぁ隠すつもりも無かったし、別にいいんだけど?それにしてもお久しぶりねぇ、その魂の色、覚えてるわぁ。()()()()()()?」

 

「テメェェェェェェ!!」

 

その台詞は彼女にとって、きっと禁句だったのだろう。羅刹の如き怒りの形相を顔に刻ませながらルキアが全力で跳び蹴りをレアの顔面に打ち込む。しかし、それをレアはなんとなしに躱し、外れた蹴りが砕き弾いたコンクリートの破片を全て叩き落とす。

しかし彼女の猛攻は止むことなく連続で襲いかかる。

あの足技は……そうか、サバットだ。昔テレビで見たのとは少し違う気もするが大別的にはきっと同じようなものだろう。

ルキアは流れるような連続技を組み合わせ、確実に追い込んでるように見える。しかし、ただ追い込まれているとはとても思えないし、あの偽ロリは何が目的なんだーー!?

 

「どうした、何も出来ねぇのか、いやそんなことはねぇだろうこのクソ野郎!()()()はもっとこんなんじゃ無かったはずだ!」

「やれやれ、あなたが矛を収めろって言ったんじゃないですか。私も帰りたいんだけどなぁ。」

「はっ、死徒なんざ相手に収める矛なんざこちとら持ち合わせてねぇっての!とっとと土に還りやがれ!オラオラぁっ!!」

 

そしてレアは公園の端にまで追い詰められる。後ろは駅ビルであり、逃げ場はない。まさか駅ビルに穴を開けて逃走なんて事が出来れば別だが幾らバケモノ地味てるとはいえ、耐震工事をしたばかりの鉄筋コンクリート建造をぶち壊すのは難しいだろう。

 

「と、ど、めっ、だっ!」

 

そして、ルキアが顔面に今までで最も鋭い爪先の一撃を撃ち込むーーーー!

 

 

しかし。

レアはそれを何気ないことのように片手だけで受け止めていた。

なんつーバケモノだよ、コイツ……

 

「気はすんだかい?じゃあ私は帰りたいのだけれども。今日の私はいい玩具(こいびと)を見つけて機嫌がいいんだ、見逃してやるから帰れよ。」

「なっ……ふざけっ、うわぁっ!」

 

そう言い放ち、片手で掴んだ靴ごとルキアを上空に投げ捨てる。あれじゃ受け身をとれてもダメージを受けるぞ!?

 

しかしそれだけでなく、完全に止めを刺す気なのだろう。レアはバーサーカーに追い討ちの命令をする!

 

「地面に叩きつけろ、バーサーカー!」

「Graaaa!!」

 

が、しかし。それは流石に見咎めたのか。

 

「受け止めて、ランサー!」

「あいよ、マスター!」

 

ランサー主従が受け止めていた。

何とか、人死には出なかったようだ。これ以上面倒事には関わりたくないし、よかったよかった。

そう考えていると、レアがこちらを再び見て可憐(じゃあく)に微笑む。

 

「それじゃあ、また会いましょう。今度こそ《子》にしてあげる。」

 

そう言うとレアはバーサーカー共に霧のように消え去ってしまった。

アイツらは何なんだろうか……何やらの因縁があるらしいあの監督役か、魔術師のマスターであろうランサーのマスターに聞くのがいいのかもしれない。それに、ランサーのマスターには1つ言いたいこともある。

 

そうして彼女らの下へとかけやり、声をかける。、

 

「なぁ……今のヤツらについてお前は何か知ってるのか?」

 

しかし彼女は心外と言わんばかりに返答する。

 

「そんな訳ないでしょ。死徒の知り合いなんていないわよ。このシスターに聞くのが手っ取り早いんだろうけど……伸びちゃってるわね。まぁ、それはいいわ。で、それだけ?なら私もこのダメ人間を教会に送って貸しを作りたいからもう行きたいんだけれども。」

 

彼女は自身のサーヴァントの腕の中で気絶しているルキアを蔑むよう見つつも連れていくようだ。

貸しを作るという理由があるとはいえ、根はそんなに悪人ではないのかもしれない。魔術師はおっかないのばかりと聞いていたがこれなら、頼むのも悪くない。

 

「それとも、今から続きをするってのなら私もやぶさかでないのだけれど?さっきの侮辱の借りも返してないしね。」

 

と、そう考え込んでいるといつの間にか物騒な話になっていた。折角安全に話が出来ると思ったのに早速剣呑な雰囲気になりかけてるとか危ない。いや、俺の発言が原因だけども、うん。

とはいえこちらに戦う意志はないし、会話の流れを変えるためにもここで持ちかけるのが一番いいだろう。

そして、一呼吸。

 

「俺たちと同盟を結ばないか?」

 

そのように俺は、ランサー陣営との同盟を持ちかけた。

 



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幕間/人狼蹂躙

これの一つ前の幕間と今回ははじめて他者視点で描いてみたけれど、違和感があれば次回から幕間はまた三人称視点に戻します

あと今回最後に現時点で判明してるランサーのステータス欄を載せました


ーーーinterludeーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

なんで、なんでこんなもんがここにいるのよ!誰かの使い魔!?いやいや有り得ない!色位クラスの魔術師でも不可能よ、そんなこと!

 

「ランサー!アーチャーはそこから狙える?」

「……いや、無理かな。コイツが邪魔だ。下手に無理すりゃ俺が仕留められる。」

「グッ……あと少しなのにっ!」

「ホント、あと少し。危なかったわぁ。こっちも奥の手を切らなくちゃ行けないかと焦っちゃった。でも、この人狼さんのおかげで助かったわ。紐もついでに切れたし、今夜はこれで引いてあげる。それじゃあね、豊穣神の幼馴染みさん。」

「はっ……なんだい。気づいてたのかよ。」

 

どうやらランサーの真名は気付かれてしまったようだ。とはいえ、宝具を使ったのだからある程度はしょうがないだろう。幸い真名がバレて特別不利になるサーヴァントでもない、早めに倒すことを心がけるだけだ。

 

「なんだ、気づいてるならわざわざ隠さなくても良かったかもね。それとも知っていたの?」

「まさか。あれだけヒントをくれれば誰でもわかるわよ。さて、次会った時こそ決着をつけましょう、繰空のお嬢さん。……いえ、繰空 鎖姫ちゃん。それじゃあね。」

 

そう言うと風破は自由になったアーチャーに乗って、戦闘から離脱していく。

 

「私達も追う……訳にはいかなさそうね。」

「あぁ、どうやら俺らを獲物と定めたようだな。」

 

低い唸り声をあげて人狼がこちらを見つめている。

 

「仕方ないわね……苦しいだろうけど、やるわよランサー!」

「ふっ、この程度。親友(ダチ)の無茶ぶりのがよっぽどだったさ!」

「Grrr……GRRRAAAAAA!!」

 

三者三様の声を上げると同時に人狼とランサーがぶつかり合う。

 

人狼の爪がランサーの頬を裂く。が、浅い。人狼はどうやらアーチャーに比べると膂力は低いようだ。だが、硬い。何らかの加護か何かでイマイチダメージが入らなかったアーチャーとは違い、純粋に筋肉の硬さだ。

 

「今だ、《ケン》!!」

 

人狼の背後、完全に死角からの炎の噴射。しかし、野生の勘によるものか。人狼はそれすら完全にとは言わずとも躱し、距離をとる。

 

「はっ、今のを躱すかよ。ホント野生じみてんなぁ……」

 

ランサーは今の回避の瞬間になぐられたのだろうか。口元の血を拭い。

人狼は火炎の熱によって炙られた左腕を舐める。

そして。体勢を整え、互いに再びぶつかり合うかに見えたその時。

 

 

「あーーーーーー、テステース。」

 

 

この雰囲気をぶち壊し、それでいてまるでやる気のない声が響き渡った。

 

「聞こえるかー、夜中とはいえ駅前でドンパチやらかしてるアホども。せめて結界くらい掛けねぇか。アタシゃ監督役のルキア・ザビーヌだ。以後よろしく。あととりあえず全員武器下ろせ。」

 

そう言って影から現れてきたのは左眼に眼帯をした銀髪のシスターだった。あれが、監督役か。

 

……あの、まぁ、うん。それはそれとしてさ。あのスリットはなんなのよ。チャイナドレス並に開いてるじゃない、何?痴女なの?シスターなのに?

 

「つーわけでお前ら暴れすぎだ。神秘は秘匿するもんなんだろ?だったら今日のところはお開きだ、ほら散った散った。アタシゃ気持ちよく晩酌してる時にいきなり仕事させられてイライラしてるんだ。あんましギャーギャー騒ぐようだとペナルティ与えるぞコルぁ。」

 

な、なんなのよこの監督役。すごい上から目線で、魔術師でもないくせに。

 

「これは私達の戦いよ、貴女にとやかく言われる筋合いはないわ。」

 

つい、そう言い返してしまう。

 

「それならこっちも楽なんだけどなぁ……戦争である以上ルールはあるしこっちも仕事だから監督しなくちゃいけねぇんだよ。ホントはこんなのさっさと終わらせて帰りたい、ホント。」

 

しかもめちゃくちゃやる気無さそうだし。舐めてるの?聖杯戦争を。

 

「そんな理由で中断できるとでも?」

「いいから矛を収めろっつってんだよ。ドゥーユーアンダスタン?」

「っっざけないで!ランサー、いいからあの人狼……を…」

 

そう人狼のいた方を見やると。

既にその姿はなく。

 

「あぁ、アイツなら大人しく引いちまったよ?というか見なよ、ありゃバーサーカーだ。」

「え……え?えーーー!?ちょ、どういう事よバーサーカーって!全然見た目も違うじゃない!というか人狼の英雄とか聞いたことないわよ!?」

「落ち着きなよサキ。大方宝具か何かだろ。」

 

確かに、見た目や姿を変化させる宝具ならアレくらいは訳ないだろう。それにこの場に来た時の騎士然とした姿よりは余程あちらの方がバーサーカーらしい。何を私は動転していたのか。

 

「それよりも問題はだ。さっきのバーサーカーのマスターだよ。見なよマスター、戦闘を収めるためだけに令呪を使ったぜ。悪手だが上手い手だ、マスターの目的を見抜いてこれ以上戦闘させる気がまるでねぇなありゃ。それに、主催者とか言っていた以上、予備の令呪くらい持ってる可能性もあるしな。、」

 

確かに、私の目的は魔術師として恥じない戦いをして勝つこと。令呪まで使ってサーヴァントを引かせた相手に一方的に追撃をしてはそれこそ誇りも何もあったものではない。でも、予備の令呪なんて、卑劣過ぎるわ。と考えても相手に伝わるわけでもなし、証拠があるわけでもなし。仕方ないのかしら。

 

「おー、そうだそうだ今夜はそんなもんで大人しくしとけー。」

 

こちらの悶着が片付いたのを悟ったのか、監督役のルキアは手に持ってた酒瓶の口を閉め、再び声を張り上げる。てかなんなのよアイツ、仕事中なのに酒呑むとか飛んだ不良シスターじゃない!聖堂教会にはもっとまともな人材はいないの!?

 

「うーっし。粗方ケリもついたみてぇだな。そんじゃアタシゃ帰らせて……おい、なんだお前。」

「な、なんです?」

 

先程のセイバーの少年が思わず反応する。

 

「お前じゃねぇよ。というか邪魔だお前どけ。そこのバーサーカーのマスターだ。お前、()()()()()()?」

 

どういえことなの……まさか。あれもサーヴァント?そう言えば、破格の魔術師であるキャスターなら召喚に介入したり別のサーヴァントを使役することも可能という。

 

「いや、マスター。その杞憂はお門違いだろうよ。アイツからはサーヴァント特有の気配が感じ取れねぇ。」

「そちらのランサーの言ってる通り、私はサーヴァントではないわよ?何かと勘違いをなされてるのではなくて?()()()()()()()()()()()。」

 

バーサーカーのマスター……レアと言ったか。レアが砂金のような髪を揺らしつつ反論する。

 

「誰もそんなことは聞いてねえ。アタシが聞きたかったのは死徒かどうかって話だが……今のやり取りでほぼ確信したぞ。テメェ、レアだな?」

「あら、バレちゃったのね。まぁ隠すつもりも無かったし、別にいいんだけど?それにしてもお久しぶりねぇ、その魂の色、覚えてるわぁ。()()()()()()?」

 

瞬間、ルキアから発せられるは、ここにいても明朗に分かる程の怒気。

 

「テメェェェェェェ!!」

 

そして、溢れる赫怒(かくど)のまま、絶叫と共に。レアの顔面にルキアが跳び蹴りを放つ。

しかし、体操選手のような身軽な動きで軽やかにそれを回避し、更には榴弾の如く飛び散ったコンクリートの破片すらも素手で弾き飛ばした。

 

あれが、死徒。私なら強化魔術を掛けたところで捌ききれないどころか、初めの跳び蹴りで頭をふっ飛ばされてるだろう。

 

そしてルキアの攻撃はまだ続く。鋭い蹴撃が幾度となく掠めるものの、完全に中てることは能わず、まるで演舞を見ているような気分にすらさせられる。

 

「どうした、何も出来ねぇのか、いやそんなことはねぇだろうこのクソ野郎!()()()はもっとこんなんじゃ無かったはずだ!」

「やれやれ、あなたが矛を収めろって言ったんじゃないですか。私も帰りたいんだけどなぁ。」

「はっ、死徒なんざ相手に収める矛なんざこちとら持ち合わせてねぇっての!とっとと土に還りやがれ!オラオラぁっ!!」

 

更により鋭くなった蹴りが連続で地面や建築物の壁を蹴り砕きながら逃げ場を塞ぎ、確実にレアを追い詰めていく。

 

「と、ど、めっ、だっ!」

 

そして側頭部に吸い込まれるようなローリングサバットが撃ち込まれる。

 

「気はすんだかい?じゃあ私は帰りたいのだけれども。今日の私はいい玩具(こいびと)を見つけて機嫌がいいんだ、見逃してやるから帰れよ。」

「なっ……ふざけっ、うわぁっ!」

 

そのままレアは片手だけで掴んだ靴ごとルキアを空中に投げ飛ばす。

 

「地面に叩きつけろ、バーサーカー!」

「Graaaa!!」

 

20mはあるであろう高さから頸椎を殴られ叩きつけられる。

 

「受け止めて、ランサー!」

 

咄嗟にランサーに指示を出す。

 

「あいよ、マスター!」

 

キャッチしたのを見て一息つき、周囲を見渡すと既にレアとバーサーカーは去ってしまったようだ。

 

「なぁ……今のヤツらについてお前は何か知ってるのか?」

 

先程人をロリ扱いした巫山戯たセイバーがこちらに問いかけてくる。

 

「そんな訳ないでしょ。死徒の知り合いなんていないわよ。このシスターに聞くのが手っ取り早いんだろうけど……伸びちゃってるわね。」

 

見たところ当分起きそうには思えない。厄介なお荷物を拾いこんでしまったと思わず溜息が漏れる。

 

「まぁ、それはいいわ。で、それだけ?なら私もこのダメ人間を教会に送って貸しを作りたいからもう行きたいんだけれども。それとも、今から続きをするってのなら私もやぶさかでないのだけれど?さっきの侮辱の借りも返してないしね。」

 

そう言うとそのような展開は予想して無かったのか、慌てて顔を振りある意味予想外な提案をしてきた。

 

「俺たちと、同盟を結ばないか?」

 

ーーーinterlude outーーーーーーーーーーーーーーーーー




ランサー
真名:******
属性:中立・中庸
性別:男性
身長:158cm
体重:62kg

基本ステータス
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A

クラス別スキル

・対魔力:A+++(C) 神霊級のものを含むほぼ全ての魔術を無効化する。第1宝具により底上げされているだけで本来はCランク相当。

固有スキル

・騎乗:A 騎乗の才能。幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

・ルーン魔術:C 主にして幼馴染みでもあるフレイから幼い頃に習ったもの。フレイに纏わるルーンのみを使う事が出来る。

宝具

******
第1宝具・詳細不明

貪る魔枷(グレイプニル)
ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:1〜5
最大捕捉:1人
フェンリルを捕縛する為に作られた伝説の紐。これで縛られたものは抜け出すことが出来ない。ただし縛られた対象が戒めや枷から抜け出た逸話がある場合はその限りではない。
真名解放をすると魔力を縛られた対象から一定のペースで魔力を吸い取り、ランサーに還元される。
フェンリルを縛った紐のため、獣や魔性のものに対しては効力が強まる。

****
第3宝具・詳細不明

*****
第4宝具・詳細不明


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1日目/同盟拒否・ロリコンに厳しい女児

繋ぎ回的な

超ぼんやりした構想だけどもルート分岐とかするとしたら多分ここから


 

「はぁ!?」

 

ランサーのマスターは俺達が同盟の提案を持ちかけた瞬間、「何言ってんだ、こいつ」って顔で驚いた。

 

「よく殺そうとした相手にサラッと同盟頼む度胸があったわね……殺されても文句言えないわよ?」

 

た、確かにそうかもしれない。

だがあんなのを見せられた以上当面の間は敵を減らした方が有利になるのも事実だ。

 

「ま、まぁそれはそうなんだが。お前も見たろ?あのバーサーカーやアーチャーのバケモノっぷりを。しかもまだまだ奥の手があるような感じだ。そして何よりもあの主催者って言ってたレアだ。アイツを何とかしないとまずいと思う。」

「ふーん、なるほどなるほど。強敵を倒すための同盟ってことね。」

 

ランサーのマスターは考え込むようにしてから、微笑みながらその答えを返した。

 

「別に悪くは無いし、メリットの方が多いけど……私はパスね。」

 

受けるだろうと思っていた同盟の提案が蹴られ、思わず唖然としてしまう。

それに気づいたのか、微笑みを絶やさぬまま彼女は言葉を続ける。

 

「理由としては私は本気でこの聖杯戦争を最後まで勝ち抜くつもりだもの。それを考えると手の内をこんな早いうちから明かすことになるのは得策じゃないし、時間がある分対策を取られるかもしれない。それが嫌だからよ。それに、訳の分からない理由で剣を下ろされたとはいえ殺されかけたことには変わらないしね。それに、サーヴァントだけを交渉のテーブルにつかせて自身は出てこない、なんて相手を信用できる訳ないじゃない。」

 

確かに、彼女の言うことには筋が通って……通って……いやまて!?

 

「ちょ、ちょっと待った待った!俺 マスターならここにいるだろうが!」

「ハァ!?サーヴァントと戦えるマスターなんているわけないじゃない、巫山戯ないでよ。」

 

いやまぁ確かに彼女の言うことは筋通っているし普通マスターがサーヴァントと戦えないのはそうなんだけども!事実戦ってるんだからしょうがないじゃん!!俺だって戦わずに済むなら戦う気はなかったんだから!

 

「違うんだって!さっきのは俺の力じゃなくて、俺のサーヴァントの力なんだよ!セイバーのお陰で戦えてるだけで、俺が戦えるわけじゃない。」

 

しかしその返答は彼女には余計不信感を与えらしく、高圧的に反論してくる。

 

「はっ、馬脚を表したわね。キャスターならともかくセイバーにそんな高レベルのエンチャント使いがいる訳ないじゃない。」

「いや、エンチャントとかじゃなくてセイバーを俺に憑依させてるというか、なんというか……」

 

余りにも堂々と言われる為こちらとしてもつい萎縮してしまう。俺が悪いわけじゃないのに………

 

「ハァ?貴方正気なの?英霊なんて規格外の魂を人間の中に入れたら内から破壊され尽くして死ぬだけじゃない。一升瓶にニトログリセリンぶち込んで振り回すようなものよ?そんなことして爆発しないとか信じられないわ。」

 

そう例えられると今の状況の頭おかしい度合いが俺にも理解出来た。

けど、うん。セイバーお前そんなこと全く言わなかったよなゴルァ。

 

『まま、待つのじゃますたぁよ。普通ならそうじゃろうが、儂ってほら英霊もどきだし?どっちかってー精神だけが乗り移ってて魂自体はその刀の方に入ってるわけじゃから大丈夫じゃよ?………多分。』

 

おいコラお前最後の多分ってなんだおい。

 

『え、ええい!男子(おのこ)のくせに細かいことばかり気にするでないわ!それより!この分からずやのランサーのマスターに分からせるために憑依を解いた方が良いのではないかの?』

 

あ、話そらしたなコイツ。

 

『そ、逸らしてなんかおらんわい!』

 

ふーん、まぁいいや。確かにそうだしお前見せた方が早いな。

そう考えて憑依状態を解除する。

 

ーーすると、目眩がした。疲れが出たのだろうか。

しかしすぐに意識もはっきりとした為気にせずセイバーを紹介する。

 

「これで分かったろ、コイツが俺のサーヴァントだ。」

「うそ……こんなことがありえるなんて。」

「まぁ英霊とはえてしてそういうものだろう。規格外の例外だらけだからこそ英雄だと俺は思うぞ、ああ。」

 

納得しようとしないランサーのマスターをそう言ってランサーが頭を撫でつつ宥める。やっぱりランサーのマスターは丁度いいロリロリしさがあってなかなか………セイバーがこちらを見る目がきつくなった気がするのでこの辺りにしておこう、うん。

 

「ちょ、分かった、分かったからランサーは頭撫でるのやめて!恥ずかしいでしょ!それはそうとして、ランサーのことどう見てるのか知らないけれど、コイツこのナリで男よ?色目使わない方がいいと思うけど……」

 

な、なんですとっ!!

い、いやいや落ち着け俺。ここで慌てればロリを見ていたのに男を見ていたなんて不名誉な称号を負わせられかねない。ここは、ハッキリと宣言せねば!!

 

「俺がランサーに色目なんて使うわけがないだろう。何度も言わせるな、ロリコンだっっ!!今もランサーのマスター、君を見ていただけだ!」

 

それを聞くとランサーのマスターは一瞬ポカンとして、その後犯罪者を見る目でこちらから遠ざかる。

そんなに避けなくても……嫌がる事はしないのに。

 

「うわ、気持ち悪いゴメン近づかないでくれる?ほら今日は帰ってあげるから。急ぎなさいランサー、私があのロリコンに襲われてもいいの!?」

「あっ、ちょ……」

 

声をかけようとするもむなしく、ランサーのマスターはランサーに抱えられて去っていってしまった。名前だけでも聞きたかったのにな………まぁ仕方ない。それにランサーの呼んでいたサキという名前と脳内に記憶してある守掌市小学生女児名簿リストを照らし合わせる。

 

確か……一昨日読んだ7月版のリストによると、サキという名前の小学6年生は守掌小学校には0人。平斗小学校には2人。ならば後は明日朝方でも学校近くで張っておけば判明するだろう。ふふふ……ロリコンの情報網を舐めるなよ。

 

「ますたぁ、さっきから因果線を伝って思考がダダ漏れなんじゃが………先に言っとくが、儂は警察に捕まっても助けんからな。」

「なんだ、聞こえてたのか。だが安心しろ、俺はそんなヘマはしない。じゃなくて、そもそも俺は名前を知りたいだけで危害を加えるつもりなんて毛頭無いんだから捕まる道理もないだろう?」

 

しかしセイバーは怪訝な面持ちで俺に言う。

 

「儂にはお主の行動をどう見ても捕まる道理しか無いように思えるんじゃが……」

 

失敬な。これでも俺は紳士だと言うのに。そう言い返そうとして口を開こうとした瞬間、ろれつがまわらなくなり、あしがもつれ、おれのからだは、ちにふせた。

 

「……!!?お、おいますたぁ!しっかりせい、ますたぁ!!」

 

セイバーのその舌足らずな声と共に俺の意識は深く沈んでいったーーー

 




それにしても戈咒君コイツいつ捕まってもおかしくねぇんじゃねぇかな………


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幕間/繰空邸にて

次とその次であと二つ幕間挟んだら二章は終了予定です


ーー過ぎ去った春を振り返るような夏の熱気。

 

ーー生い茂る草木の香りが漂う空色の風。

 

ーー周りにいるのは偏屈だけど誠実なメリィおばさんにお調子者だけどかっこいいキリアお兄さん。

 

ーー隣にいるのは少し怖いけど優しいお父さんに優しいけど怒ると一番怖いお母さん。

 

ーーここはクレア村、質素だけど喉かな農村。

 

ーー今日は村祭りの日、皆が笑って楽しんでいる。

 

ーーーふと、眩暈がした。

 

 

そしてーー視界、暗転

 

 

ーー過ぎ去った過去(へいおん)にむせ返るような熱気。

 

ーー炭化した人の蛋白質の臭いが漂う紅煉の風。

 

ーー周りにいるのは炎熱の余波で全身が爛れたメリィおばさんにそれを庇って身体の正面が完全に炭化しもう誰かも分からなくなったキリアお兄さん。

 

ーー隣にいるのは私達のためにこの元凶に突っ込んでいって四肢を溶かされたお父さんに私の盾となって毒を受けて肉体が膨れ上がったお母さん。

 

ーー今日は村の終焉(おわり)。皆が嘆き死んでいく。

 

ーーふと、眩暈がした。

 

ーーそして、揺らぐ陽炎の向こうから砂金の如き髪を持つ悪魔のような幼子が姿を現す。

 

ーー容貌は私より幾許か幼いほどなのに、そうとは感じさせぬ圧力に身体が屈する。

 

ーーアレが、目の前のアレこそが、今この場所の元凶なのか。

 

ーーソレは私を見つけると醜悪に(かわいらしく)嗤う。

 

ーーなんで、なんでこんな。

 

ーーソレはどうでも良さそうに語る。

 

ーーやめろ、聞きたくない、聞きたくない聞きたくないききたくききたくきたくききききききききききーーーー!!

 

 

ーーーふと、目を覚ます。灼けた夢を、見ていたようだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その邸宅は守掌市、守掌町側の中心から少し外れた高級住宅街の片隅に存在した。

 

そしてその一室で、ルキアは目を覚ました。

 

「うう………うん、……はっ!」

「あら、起きたのね。監督役さん。」

 

繰空邸、客間のベッドで気絶状態から自身を取り戻したルキアに鎖姫は声を掛ける。

 

「………アタシはアイツにやられて、それから……地面に。」

「叩きつけられそうになったとこを助けてあげたのよ?感謝してほしいわね。」

 

ルキアはそのまま地面に叩きつけられ、トマトのようになっていたかもしれない自分に対しておもわず身震いをする。

しかしすぐに気を切り替え、鎖姫(さき)に対して目線を向ける。

 

「お前さんのお陰か、ありがとう。」

「あら、意外ね。監督役ともあろうものがこうも簡単にマスターに対してお礼を言うなんて。」

 

鎖姫はルキアに対してそのように怪訝そうな顔を向けるがそれに対してルキアはさも当然とばかりに答えを返した。

 

「お互いこんなふざけた戦いの関係者。いつ死んでもおかしくないし、それなら礼は言うべき時に言うべきさね。」

 

そして、軽く目を伏せると自重するように呟く。

 

「だって……人は簡単に死んじまうからな。」

「……そう。まぁ私は死なないから。貴女だけ気をつければいんじゃないから。」

 

何かを感じ取ったのか、されど鎖姫はそう気分を損ねたかのように吐き捨てる。

それを聞いたルキアは苦笑いしながら

 

「ハハハ、手厳しいねぇ……」

「貴女が臆病なだけじゃないの?」

「アタシは……確かにね。そうかもしれない。」

 

それを聞いて鎖姫はフン、と鼻を鳴らし嘲る。

 

「臆病者が監督役なんて、聖堂教会も落ちたものね。まあいいわ。……それじゃ、目が覚めたなら帰っていただけないかしら?教会に貸しを作るのは悪くないけど、監督役と結託して不正をしている!なんて思われたら私としては迷惑なのよ。

 

それに対しルキアは苦笑しつつ感心したかのように言葉を返す。

 

「おや、意外だな。効率のみを重視する魔術師らしく、てっきり私から貸しを盾にして余剰令呪の一つでも二つでも毟り取るかと思ってたのに。」

「バカなこと言わないでよ、そんな不正で勝ったところで自身の証明にはならないわ。私はね、私を認めさせる為にこの戦いに挑んだんだから。」

 

そう、内に確たる決意を感じさせる静謐な声色で返答する鎖姫に対し、ルキアは大笑いで返した。

 

「な、なによ!人の決意を笑うなんて貴女人間がなってないわよ!?」

「いやはははははは、悪い悪い。久々にこんな楽しいものを見れたもんでつい楽しくなっちまってさ。いやぁ、面白い。魔術師ってのはドイツもコイツもつまらん奴らばかりだと思ってたが気持ちのいい奴もいるもんだ。」

「貴女、それで謝ってるつもり?」

 

不快感を露わにする鎖姫に対し、ルキアはくつくつとした笑みを崩さずに言葉を紡ぐ。

 

「いやいや、すまんな。お詫びと言っちゃなんだが、アタシゃアンタのことが気に入ったよ。アンタがどうしょうもなく困った時に、アタシは1度だけ手を貸してやる。」

「はぁ?何勝手に決めてんのよ!それに私は監督役と手を組む気は無いって……」

 

そう声を荒らげる鎖姫をルキアが静止し言葉を続ける。

 

「おい、人の話は最後まで聞くもんさ。監督役としては手は貸さないさね、不平等だしめんどくさいしな。だから、アタシ個人。一介のシスター、ルキア・ザビーヌとして手伝えることなら1度だけ手を貸すさ。勿論監督役の特権なんかは使わないしな。」

「私としてはそれでも不満なんだけど……まぁいいわ、頼らなきゃいいだけの事だしね。」

「おうおうそーゆーことさね。それじゃ、アタシは帰らせてもらうとするかね。よっこらせっ、と。」

 

そう言うとルキアはベッドから起き上がり、窓から出ようとする。

 

「……せめて玄関から出てってくれないかしら。」

「え?だってお前ら魔術師の家って出ようとする相手を牛乳塗れにするトラップとか付けてるんだろ?アタシはそんなヤだぞ。」

「どこの魔術師よそれ……そんな心配しなくてもトラップは無いからちゃんと玄関から帰りなさいよ……」

 

そうしてルキアを見送った後、鎖姫の横に一人の老婆がどこからと無く、現れる。

 

「全く、本当に才も何も足りてないね、お前は。」

「お祖母様……!!戻っておられたのですか!?」

「ふん…自分の土地でこんな一大事だ、戻っているに決まってるだろう。それはそれとしてなんだい、情けないねぇ。宝具まで使っておきながら相手の真名の手掛かりすら掴めず、挙句恩を売れた監督役に暗示をかけることすらせず見逃すなんて、それでも繰空の名を持つ魔術師なのかい?」

 

そう、老婆は鎖姫を罵り嘲る。

鎖姫は悔しそうに唇を噛み締めながら、口答えをする。

 

「ま、まだですお祖母様!まだやられた訳ではありません!それにランサーは真名がバレたところで不利になる訳ではありません!私は、鎖姫は……この聖杯戦争に必ず勝ちます!!」

 

その宣誓に対しフン、と鼻で笑って見せたあと、老婆は醜く嘲笑しながら言葉を続ける。

 

「それなら、どんな手を使おうとも勝つ事だね。元よりお前には魔術師としての価値はまるで足りてないのだから。」

 

そう言うがはやいか、再び老婆の姿は消え去る。

ーーいや、消え去ったのではない。崩れ落ちたのだ。いままで老婆の(かたち)を取り、人の様に話していたのは本体より魔力糸によって操られ、操作された即席の土人形(ゴーレム)であった。

そして、それをみて自身の未熟さを再び痛感させられたのか、唇を血が出る程噛み切りながら、鎖姫はランサーに吐き捨てる。

 

「……この戦い、何としても勝つわよ、ランサー!」

「あぁ。だがサキよ……いや、今は何も言うまい。必ずや勝利を、我がマスターに。」

 

そう、再び決意を新たにしながら、2日目が始まるーーー

 




余談だが、某最弱のサーヴァントは留守中の優雅な屋敷に侵入して出る時に牛乳塗れにされたとかなんとか


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幕間/聖女降臨

更新遅れてすみませんっ!毎日予習と復習とタガタメの復刻イベとCCCコラボに追われてそれどころじゃなかった……


駅から港へと向かう始発のバスに乗り、ルキアは守掌教会へと帰ってきていた。

 

「はぁ……もう朝か……結局晩酌をほぼ楽しめなかったじゃねぇかよ……どうせ昼は客なんて来ねぇだろうし今から飲み直すか?」

 

そう呟きながらルキアは戸棚からサラミとチリ産の赤ワインを取り出しグラスへと注ぐ。しかし、そうして飲んでいると突如皿がカタカタ揺れ始めた。

 

「んぁ……なんだ?もう酔ってきたか…………いや!?ちがう!」

 

始めはアルコールのせいだと思っていたルキアも、すぐに実際に周囲が、大気が震えていることに気づき警戒心を最大まで上げてソファから立ち上がる。そして酔いを覚ますために水をあおり周囲へ意識を向ける。

 

「どこだ……この感じ、どこから来てる……中庭か!?」

 

そして周囲を見回して中庭から光が漏れてきているのに気づいたルキアは全力で駆け出すーー

 

 

結論から言えば、やはり元凶は中庭に在った。いや、今まさに()()()()()()()()()ところであった。

中庭の中心から魔力が激しく溢れ、周囲を塗りつぶしかねないような大源(マナ)の奔流。そしてそれが収まると同時にその中心から現れたのは黒い髪を幾本にも束ね、修道服を着た女性であった。

 

満ち溢れるほどの濃密な魔力。しかしそれよりも。それが些細なことに見えるほど彼女の纏う雰囲気には聖なるものが満ちていた。

 

「サー……ヴァント……!」

「あら、あなた……サーヴァントを知ってらっしゃるという事は、聖杯戦争の関係者なのかしら。なら、ちょうどよかったですわ。」

 

そう、召喚された英霊はとう柔らかな物腰でこちらに目を向けると、名乗りをあげる。

 

(わたくし)はこの度、この聖杯戦争において裁定者(ルーラー)として喚びだされたサーヴァント、ルトガルディス。あの方の名に恥じぬようこの聖杯戦争を審判させていただきますわ。」

 

その真名、更にはクラスに驚愕する。

ルーラーといえば聖杯戦争において全てのサーヴァントに対する令呪を持つという最高権力の持ち主。加えてその名はルキア自身も嘗て祈ったことがある盲目などに纏わる保護聖人。

 

「あ、貴女が、聖女ルトガルディス様……!?」

「あら、あなた私のことを知ってらっしゃるの?私はジャンヌちゃんみたいな有名人じゃないから知名度はあんまりだと思ったのですけれど……いえ、なるほど。あなたもシスターでしたのね。」

 

私服姿のルキアだが手首のロザリオとルーラーが召喚された場所が教会の中庭であることからルーラーはそれについて納得する。

 

「は、はい。監督役のルキア・ザビーヌと申します。」

「別に、そんなに固くならなくても結構でしてよ?私は既に死者であり、この度のも有り得てはいけない復活ですもの。聖女などではなく、ただのルーラー、ルトガルディスとして接してくだなさいな。」

「で、ですが……」

 

思わず気後れして戸惑うルキア。しかしルーラーは目を細めて言葉を続ける。

 

「ーー取り繕わなくても結構でしてよ。だってあなた、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

その言葉にルキアは顔を硬直させて驚嘆し、そして口を結んで笑むと

 

「ーーー、ハ、ハハハハハ、すげぇな聖女様!いや、やっぱ人徳なのかね?アタシみたいな似非シスターの誤魔化しなんざ効かないわけだ。」

 

高笑いと共に素の喋りで会話を始めた。

 

「別にそんなことはありませんでしてよ。私も若い頃は結構ヤンチャをしてたものですし、同類は匂いでわかる、というやつですわ。」

 

そしてルーラーは目を伏せた後、窘めるように言葉を続ける。

 

「……それに、私もこれでも聖女の端くれ。見ればあなたの信仰心が嘘でないことくらいは分かりますわ。不真面目なのはそうでしょうけど、神の愛を信じていらっしゃるのは紛れもない事実でしょう?」

 

ルーラーに真剣な眼差しでそう断言されると、恥ずかしさからかルキアは顔を逸らしつつ弁明する。

 

「……ンなことないですよ、こんなの所詮形だけですって。」

「……そう、ならそういうことにしておくのも吝かではありませんでしてよ。」

 

そうルキアに対して微笑みながら言うルーラーにやりづらさを感じたのか、ルキアは話題を変えて話し出す。

 

「それにしても、まさかこんないい加減な似非シスターのところに厳格なことで有名なルトガルディス様が現れて、そして何もお咎めなしなんて珍しいこともあったもんですね。」

「あら?それは皮肉かしら。でも先程も言いましてよ、私も若い頃はヤンチャでした、と。確かに私が壮年期の姿で召喚されたのなら確かにあなたのような半端者は徹底的にシゴいて鍛え直したでしょうけども。この肉体のせいか、多少は寛容になってる所もあるようですわね。」

 

その発言を聞いてルキアはそうか、とルトガルディスについての逸話を思い出す。彼女は修道女になってからこそ敬虔に修道生活を行い、老いてからは更に厳格な規則を突き詰めた。しかし10代の頃は修道院に預けられていながら修道生活に興味も示さず、活発に友人と遊んでばかりいたという逸話があるのを思い出したのだ。

 

「ってことは……まだ修道生活をする前の時代ってことなのか?」

「まぁ、肉体だけ見ればそうでしょうね。けれど、信仰心は少しも変わってはいませんわ。」

 

そう、凛とした声で言い放つ。

 

「あの時私が見た、あの方の姿は今も心に鮮明に残っています。ですから今後何があっても忘れませんし、信仰を失うこともありませんわ。」

 

そして、そう誇らしげにルーラーは語る。

 

「とはいえ、私も今は若いですし。多少はやらかしてしまうかもですけれど。」

 

その直前の真面目な顔付きから一変、イタズラを企む少女のような笑顔でそう、ルキアに笑いかけた。

 

「全く……めんどくさいルーラーだよ。」

「ツンデレさんの監督役に言われたくはありませんわ。」

「誰がツンデレだ誰が!」

「あなた以外誰がいるのでして?」

「………もういい。勝手にしてくれ。」

 

そう2人が掛け合いのようなやり取りをしていると、突如2人の間に黒い影が舞い降りた。

 

「ッッ、なんですの!?」

「敵か!?」

 

思わず身構えるルーラーとルキア。しかしそれは杞憂に終わり。そして舞い降りた黒い影ーー烏の使い魔から初老の男性のようなややしわがれて、それでいて通りの良い声が響き渡る。

 

『落ち着きたまえ。私は敵ではない。』

「敵じゃ…….ない?中立地帯にいきなり使い魔を飛ばしておいて、よくもまあいけしゃあしゃあと。」

 

その言葉に対しての怪訝さを隠しもせずにルキアは不快感を表す。

 

『それは確かに誤解を招く可能性はあったが。理由があったのだよ。』

「理由、ですって?」

『そうだ。』

 

ルーラーが思わず聞き返すも使い魔からの声は流暢に返答し、続きの言葉を話し始める。

 

『再度確認する、監督役と、ルーラーだな?私はラバック。アトラスの錬金術師、ラバック・アルカトだ。貴殿らに伝えたいことがあるのだ。』

 




プロローグ以来の復活、ラバックさん
何気にしぶといお人である

※ここに記載していたルーラーのステータス欄は数話先のあとがきに移転しました


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幕間/第8の契約

イヤほんと遅れてすみません、一週間更新とか言っといててここ最近逆転検事の1・2と逆転裁判6にハマってて全然書くのが進まなかったッス……あとCCCイベのミッションも地味に大変

とりあえず、次からは定期的に更新できるように努力しますね……


「アトラスの……錬金術師……!?」

 

アトラス院といえば、世界の滅びの回避を命題として活動する魔術協会・三大部門の一角だ。まさかこの聖杯戦争、それ程までに大事だってのか……?

 

『そうだ、私はアトラスの錬金術師として、人類の滅亡の回避の為にこの地に来た。』

「人類の滅亡……とは少々大袈裟ではありませんこと?」

『いいや、紛れもない事実だ。あやつの計画が成功すれば、今の人類は滅びるだろうよ。』

 

ラバックは落ち着いた、されど重々しい口調でキッパリと断言し、それに思わずアタシとルーラーは固唾を呑む。

 

『だが、私では少々あやつに対しては力不足でね。故に情報の共有のみでも行っておこうという次第だよ。』

 

ーー胡散臭い。とてつもなく胡散臭いが、話してることには筋が通っている気もする。

ここは、話だけでも聞くべきか。

 

「なるほど……そちらの言い分は分かったけどよ。その内容ってのはなんなんだ?何となくヤバげなことは伝わってくるがそれ以上は何もだぜ?」

「そうですわね、言いたいことはハッキリと言うべきですわ。回りくどいんですのよ。」

 

ルーラーもアタシに同調して不満そうに言う。いや、このルーラーの場合本当に回りくどいのが嫌なだけかもしれないが。

 

『勿論、この聖杯戦争、いや毒聖杯に関する全てについてお話することを約束しよう。とはいえ、この状態で話すのは盗聴の不安もある。』

「つまり、どこか別の場所で落ち合うと?」

『Exactly. 察しがよくて何よりだ、レディ。今からそちらに迎えを寄越そう。』

 

ーーーうわ、スゲェ怪しいなこれ。間違いなく罠だよなぁ……無視するか?

そう、思考しているとルーラーが勝手に返事を返す。

 

「よろしくってよ。私も、ここの監督役もすぐに向かいますわ。」

「っておい……何勝手に人の分まで返事してんだ。行くなら自分1人で勝手に行ってくれよ。アタシはこんな見え見えの罠にハマりに行くのはやだぞ。」

 

思わず小声でツッコミながらルーラーを肘で突っつく。

いや、だってしょうがないじゃん間違いなく罠だろうしあと疲れるし。監督役はあくまで聖杯戦争の監督役なんだからそれ以外は裁定者に任せるべきだよ、うん。アタシは業務外労働なんてしたくないんだよ……

 

「表情から働きたくないって本音がありありと出てますわよあなた……」

 

しかしその直後のラバックの発言によりその働きたくないという考えは改めさせられることになる。

 

『その毒聖杯の製作者がレアであり、人類を守る為の手段があやつの抹殺だと言ってもかね?』

 

思わず目を見開く。何故コイツがアイツに対するアタシの怨恨を知ってる?いやそれよりも、抹殺だと?アイツの不死性を突破して殺し尽くす方法があるとでもいうのか!?

 

「……何が、狙いだ。ルーラーならともかくアタシにはさしたる戦闘力もないし、足でまといにしかならないと思うが?」

 

結局、出たのはそんな当たり障りのない疑問だけだった。

 

『なに、私は想いの力というものを信頼しているだけだよ。君のレアに対する怨恨、それはあやつに対する切り札になるのでは、と私は期待しているのだがね。』

「……この上なく最悪だぜ、クソ野郎が。だが、乗った。罠かどうか知らねぇが、最大限利用させてもらうぞラバック・アルカト!」

『理想的な返事だ、レディ・ザビーヌ。さて、そろそろ迎えが来そちらに着く頃だ。ではまた、後ほど。』

 

そう会話を締めくくると烏の使い魔は再び明けの空へと飛び去っていく。

それが完全に去ったのを見届けるとルーラーに顔を向ける。

 

「さて、ルーラー。ものは相談だが、レアを滅ぼすまでの間、アタシと組まないか?」

 

その申し出は予想外だったのか、ルーラーは目を丸くしながらこちらを見つめ、その後納得したかのように頷きはじめる。

 

「……なるほどですわ。この状況の対応するための、急造のマスターとサーヴァントのコンビというわけでして?」

「そんな大層なもんじゃないさね。レアをぶち殺す為の同盟関係みたいなもんだ。だいたいお前はマスターいらねぇだろうが、聖杯が依り代なんだからよ。」

 

思わずそう返すとルーラーは首を降り、アタシの言葉を否定した。

 

「いえ、実はそうではありませんでしてよ。私には今、依り代もマスターもいないのですわ。」

「は……!?ルーラーの依り代とマスターは聖杯って事じゃねぇのかよ?」

「本来なら……そうですわ。ですけれど、今回の聖杯はおかしいですわ、召喚も曖昧、魔力供給も依り代も無し、とまるで分かりませんの。それに肌に感じるこの濁った気配……恐らくですが、聖杯自体ロクなものではありませんでしてよ。」

「ってことは、やっぱラバックの話は本当か……めんどくせぇな。」

「あら、聖杯がロクなものでないということには驚かないのですわね。やはりあの方の血を受けた杯以外にロクなものはないと思ってらっしゃるんでなくて?」

 

ルーラーが関心したような声を出す。

いかにも聖女様らしい勘違いだな。

 

「悪いね、残念ながら違うさね。単純に他の亜種聖杯戦争で爆発する失敗作の亜種聖杯とかを見てきたからの話しさ。」

「……そう、でして。まぁいいですわ、それで、同盟の話でしたわね。私としては賛成どころかこちらからお願いしたいくらいですわ。現状、私にはマスターが必要ですし、あなたは監督役ですし。そして何よりろ気に入りましたから。」

 

ーーそうか。ルーラーの依り代が聖杯でない以上、何かしらの依り代が必要となる。サーヴァントはこの世のものならざる幽体。現世に留めおくには、マスターなりなんなりが楔となってつなぎ止めなくてはいけない。過剰に魔力を消費すれば限界し続けるのも不可能ではないが、相当不可能に近いだろうし、近場にいたアタシと組むのは必然だっただろう。

 

「なるほど、確かにこの教会の人間で魔術回路持ちなのはアタシだけだしな。」

「勘違いなさらないでくださいな。私はあなたが気に入ったからあなたをマスターにするのです。楔とするだけならそれこそこの教会でもなんでも依り代にしてましたわ。」

「ーーーッッ!!」

 

照れからか、思わず頬が熱くなる。

いきなり聖女様から認められるとかハードル高いってーの!

 

「そ……そんなのはどうでもいい。とりあえず問題なら契約を結ばせてもらうぞ。」

 

意識を契約に向けることで頬の赤みを冷ましつつ、ルーラーに右手を向ける。

そして口から紡がれるのは英霊召喚……いや、この場合は契約か。その為の問い掛けだ。

 

「ーーー告げる(セット)。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら我と共に。」

 

「ーー望むならばこの命運、汝の剣に託そう……!」

 

「ルーラーの名に懸け誓いをうけましょう……!今この時から貴方は私の友であり同胞ですわ、ルキア・ザビーヌーーー!」

 

そして、ルーラーと自身の魔術回路を繋ぐ因果線(パス)が出来た感触を確かに感じると、どちらからともなく手を差し出し握り合う。

 

「これから、よろしくお願い致しますわね、ルキア。」

「レアを止める為に協力してもらえるんだ、こちらこそよろしく頼む。聖女様。」

 

しかし、こちらとしては敬意を十分に払ったつもりなのだがお気には召さなかったようでルーラーは頬を膨らませて不満そうな顔をする。

 

「あれ……なんか機嫌を損ねちまったか?聖女様。やっぱ敬語に直した方が……」

「喋り方は似合ってない敬語なんかより今の言葉のほうがよっぽど素敵ですわ、そうじゃありませんのよ。その、聖女様ってのやめていただけませんこと?」

 

なるほど、確かに聖女と呼ぶと聖人認定されたという所から真名が特定されてしまう可能性もあった。そこまで考えていたとは……やはり凄いな。

 

「なるほど、真名の露呈を畏れたということか。じゃあルーラーと呼べばいいのな。」

「ち、違いますの!大体私の真名なんて洩れたところで何ともありませんわ!」

 

?じゃあ何が気に食わなかったんだうか。

そう首をひねりながら悩んでいると、ルーラーがしどろもどろになりながら口を開く。

 

「あの……ですから、その……ルトガルディスと、呼んで下さいまし。」

「…………………へ?」

「ですから!私のことはルトガルディスと呼んで下さいましと言ったんですのよ!」

 

ーー驚いた、聖女様もこんな表情するのか。なんというか、その、やべぇ可愛いぞコレ。

 

「だ、黙ってないで返事して下さいまし!」

「あ、ああ、すまん。つい見蕩れてた。了解した、それじゃあこれからよろしくな、ルトガルディス!」

 

アタシがそう呼び返すと。

 

「ええ!」

 

彼女は、咲き乱れる百合の花のような笑顔でそう応えた。

 

 



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幕間/送迎

全然書くのが進まないぞ!何故だ!

……検事2やってたからですね
弓彦カッコよかったよ弓彦

でもクリアしたし来週からはもう少し早く……おや、こんなところに3DSと逆裁6が……(おいコラ)


……とまぁ茶番は置いておきまして、ほぼ一週間ペースなので次回もこのくらいのペースかなぁとは予想しております

それにしても2章がなかなか終わらない……!!


守掌市上空500m程の空中に、その女性と獣はいた。

 

「ふぅ………全く、マスターも人使いがあらいわねぇ。」

 

自らのマスターが錬成した鷲獅子型の合成獣(キメラ)の背に立ちながら、彼女は低いテンションで気怠げにそう呟く。

 

「まぁ、マスターの頼みだし逆らえないんだけどさ……ふぅ。大体……うちのマスターがあんなダンディなイケオジなのが悪いわよねぇ……。そこら辺、どう思う、ねぇ?」

 

そう、自身の足元の合成獣に話しかけるも「グルル……」といった唸り声しか返っては来ない。

しかし彼女はそれで言いたいことを理解したのか、頷きながら言葉を続ける。

 

「だよねぇ……ワタシも本当なら聖杯なんて興味無いしさぁ。適当に済ませたかったのに……ふぅ。まぁ、とりあえず言われたことはこなそうかねぇ……ふぅ。」

 

そう言いながら背中を踏んで合図をすると合成獣は翼をはばたかせながら螺旋運動で下降を開始する。

人間ならまず引きちぎられる程の風圧と遠心力。しかしそれをものともせずに合成獣の背に立ち続けるのは人間を超越した英霊であるサーヴァントとしての面目躍如と言ったところだろうか。

 

そして流星のように迅く、鋭く。

されど羽毛のように軽く、柔らかく。

そうして教会の中庭に降り立った彼女の前には、ルキアととルーラーが待ち構えて並び立っていた。

 

「ふぅ……おたく達が監督役と、裁定者様かい……ふぅ。ワタシはラバックのサーヴァント・キャスター。マスターの頼みで迎えに来たよ……ふぅ。」

 

しかし同盟相手を前にしても気怠げな態度を崩さないその姿勢が気に触ったのか、ルーラーが不満そうに注意を投げかける。

 

「もう少しシャキッと出来ませんこと?あなた、それでも英霊でして?」

「ふぅ……しょうがないでしょ……。ワタシ、そんな大層なのじゃないからさ……ふぅ。」

「せめてその溜め息を止めてもらえませんこと?幸せが逃げますわよ。」

「いやお前なんでそんな知識知ってるんだよ。」

「勿論、聖杯からの知識ですわ。」

 

余りにも俗過ぎる知識を披露するルーラーにルキアが思わずつっ込むが、ルーラーは何故かドヤ顔で答える。

 

「いやいやいやいや、何でそうなるんだよおかしいだろその聖杯。」

「?ですから、こうして同盟を組んでいるのではなくて?」

「いや……そういうことじゃあないんだけどな……まぁいいや。」

 

そうして言葉切ったルキアは周囲を見回すとキャスターに尋ねる。

 

「で、ラバックの野郎はどうした。自分は来ないのか。」

「……………ふぅ。マスターは、『すまないが、説明用のパワポのの準備があるから君1人で行ってくれ』って……言ってたわね。」

「おいコラなんで魔術師がパワポ使うんだよ魔術はどうした。」

「……知らないわよ。ワタシ……キャスターだけど魔術なんて使えないもの……ふぅ。」

「……はぁ!?どういうことだよ、そりゃ。魔術師のクラスが魔術使えないとか色々とおかしいだろう。」

「ふぅ……もどきみたいなものなのよ、私は。別に足を引っ張るつもりは無いから安心してくれていいわよ……ふぅ。」

 

余りにも予想外なキャスターに対しルキアは思わず顔を顰めるもすぐに気を取り直し目の前の合成獣を指しながらキャスターに尋ねる。

 

「ーーで、だ。アタシ達はそれに乗ってけばいいのか?」

「ええ……そうね。ワタシが首元に乗るからあなたは背中の鞍にでも乗ってくれないかしら…………ふぅ。」

 

溜息を繰り返しながら彼女は懐から取り出した煙管に火をつける。

 

「気を抜いてるところ、悪いのですけれど。(わたくし)は、どこに乗れば良くて?この鞍はどう見ても1人用のようですし、私は乗れないのでは?」

 

と、ルーラーが合成獣の背を見回しながら鋭く指摘する。その指摘で初めて気づいたのか、はたまた全て分かった上でわざとやっているのか。キャスターは気怠げに溜息を1つつく。

 

「ふぅ……あぁ、本当だねぇ。おたく、コイツの足に捕まってぶら下がってかないかい?」

 

キャスターはそういって合成獣の鷲の様な脚を指し示す。

 

「そんな場所、いざと言う時に困りますわ。私もまだあなた達を信用したわけではありませんでしてよ。……そうですわね、私が首元に乗りますからあなたがぶら下がったらどうですの?」

「…………ふぅ。ワタシがそこにいたら操縦出来ないじゃない。おたくじゃコイツと意思疎通は出来ないでしょうし………ふぅ。仕方ないわね、5分貰うわよ。」

「5分?どういうことだ?」

 

ルキアがそう問うとキャスターはかったるそうに教会の片隅にある廃材を示して言う。

 

「あの廃材を使って、5分で鞍を作ってあげるって言ってるのよ。だから……大人しくしてなさいな。」

 

そう言うとキャスターはすたすた歩き出して廃材の下へ言ってしまう。

 

「日曜大工の得意なサーヴァント……ってとこか?」

「そのようなわけないでしょう。道具作成スキルが確認できましたし、恐らくスキルによるもの、ですわ。」

「なるほど。で、なんて英霊なんだ?」

「……分かりませんわ。真名看破でも見破れませんでしたの。おそらく、隠蔽系のスキルや宝具を持っているに違いありませんわ。」

「なるほどな……にしても初っ端から真名看破出来なかったりルーラーって割にはそこまで強権発動出来そうじゃないよな、ルトガルディスって。」

 

すると、その言葉に腹を立てたのかルーラーは頬を膨らませてムキになりながら反論を始める。

 

「し、仕方が無いでしょう!私にだって苦手なことくらいありますわ!!自分が出来ないのに人を悪く言ってはいけないんですのよ!そ、それにだいたい聖杯からの召喚からしておかしかったんですもの!」

「わわ、そうムキになるなよ、冗談だって冗談。予想だけど、ラバックの言うことが本当なら、ルーラーが召喚されるのは予想できたはずだ。だから予め真名の隠蔽能力のあるサーヴァントを狙って召喚したんじゃないかね。」

 

そしてそのルキアの推理を聞いたルーラーはハッ!とルキアの眼を見やる。そうしてルキアがコクリと頷くのと同時に自身も辿りついたその予想の先を口にする。

 

「ということは、私達と敵対できる用意がある……と?」

「その可能性は多分にある……と

思ってもいいと思うね。味方だと思ってて後ろからグサリ、なんてのはアタシとしてもゴメンだからさ。」

「そんなの……私だって御免ですわ。それにしても、気怠げな表情の裏にそんな考えを持っていたなんて……戦うなら正面から来るべきですわ!許せませんわ!」

「お、おいおいちょっと待った待った。まだそうと決まった訳でもないから問い詰めようとするのやめてやめて。ただそういう可能性もあるから油断しきらないでって話だからこれ、ね?」

「……あ、そうでしたわね。見苦しいところを見せてしまってお恥ずかしい限りですわ。」

 

そうして恥ずかしそうに呼吸を整えるルーラーを宥めつつルキアはルーラーに質問を投げる。

 

「いや、まぁルトガルディスはそれくらい直情的でもいいさ。アタシと足してバランス良さそうだしな。……それで、質問だなんだけどさ。さっきの時に言ってた聖杯の召喚がおかしかったって言ってたよな。アレってどういう意味?」

「あぁ、その事ですの?なんか、喚び出される時に何かにつっかえたような感じがしましたのよ。きっとそのせいでクラススキルのランクが下がったんですわ!」

「なにかに……つっかえた?」

「ええ、勿論イメージの話ですけれど。急に何やら考え込んで、何かわかったんですの?」

「いや、ちょっとな。ランクが下がったのはクラススキルだけか?固有スキルは?」

「……固有スキル?固有スキルは特に、これといった変化はありませんわね……ルキア?ルキア?」

「クラススキルだけ……つまり最初からルーラーを狙い撃ちしてた……?だが、目的と手段は………?それに、レアの仕業とするにはいまいち違和感が残る……………ダメだ、情報が足りない。」

「聞こえてますの!ルキアーー!」

「いっ!?」

 

ボソボソと1人で何やら考え込むように呟き続けたいたルキアに対して堪忍袋の緒が切れたのか、ルーラーが思わず耳元で叫ぶ。

 

「な……なんなんだよ。びっくりするよ、ルトガルディス。」

「なんなんだよ、じゃありませんわ!私が何度呼びかけたと思ってますの?」

「わ、悪い悪い……で、なんだった?」

 

ルキアがそう問いかけるとルーラーが返事するより早く、背後からの声により答えが返される。

 

「準備……出来たわよ………ふぅ。」

「ーーーー!!?お、お前いつの間に!?」

「……さっきからよ。時間に余裕があったから、肘掛けも付けておいたわ……ふぅ。」

 

ルキアは完全に気配を感じなかったことに怖気を覚えながらルーラーと共に鷲獅子の合成獣、その背の鞍に跨る。

 

「それじゃあ……出発するわよ。」

 

そう言うが早いか、キャスターはブツブツと合成獣に話しかけ、同時に一気に舞い上がった。

 

「うわっーー!」

「きゃ……!!」

 

そして雲を突き抜け、空を翔け。

守掌の端、鎖山森へと到着した




オマケとして、ルーラーが読み取れたキャスターのステータスを載せておきますね

キャスター
真名 ◼◼◼◼◼
属性:混沌・中庸
性別:女性
身長:168cm
体重:53kg

基本ステータス
筋力B 耐久D 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具B+

クラス別スキル

・陣地作成(森):C 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる……スキルだがキャスターの場合魔術師ではなく森に住んでいたことから森限定で獲物の為のトラップを隠したり強化することに特化した結界を作ることが可能。
キャスターは魔術師ではないので、通常の陣地作成スキルで作れるような魔術工房などを作ることは出来ない。

・道具作成:B(E) 魔力を帯びた器具を作成できる。森での長い生活から植物や野生動物の素材を使った道具や罠の作成が得意だが、魔術の心得がある訳では無いので逆に通常の魔術道具などの作成においてはランクE相当のものしか作ることが出来ない。

固有スキル
・狂化:C- 戦闘時に判定を行い、その結果によりこのスキルが発動するかどうかが決まる。
発動した場合は魔力と幸運以外のパラメーターをワンランクずつアップさせるが、言語能力が不自由になり、複雑な思考、及び意思疎通が困難になる。

・動物会話:C 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。
動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

・啓示:C- 目標の達成に関する事象全てに最適な展開を“知覚する”能力。
自身や他人の死にまつわる運命は通常よりはっきりと知覚できるが、その代わりにその運命の改変が一切出来ない。

・森の隠者:A
森に隠れ潜む者に与えられるスキル。それ以外の説明は滲んでいて解読不能。


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幕間/鎖山の魔森

あと1話とか次の更新で終わるって?こんだけガッツリした設定の開示して1発で終わるわけねぇだろよく考えてものを話せ前回の俺!

という訳ですいません、今回2話更新ですが終わりきりませんでした。
あと、少し前の更新で載せたルーラーのステータス、自分のメモの作りかけの時のデータで載せちゃったので変更しました、すいません。


「なんなんだよ…こりゃあ……!」

 

地に着いた鷲獅子の合成獣(キメラ)の背からルトガルディスと共に降り立ったルキアは鎖山森を見るなり思わずそう、言い放った。

 

それもそのはず、アタシ自身の知るこの森とは完全に雰囲気が変化していた。

嘗て、と言っても一週間前頃までは霊脈沿いに位置するが故に多少の魔力を感じるスポットではあっても、ここまでじゃなかった。

 

ーーーそれが今は。皮膚に伝わる刺すような感覚はこの森自身がアタシ達を排斥しようとするかの如くに意思を持つ魔力の波が漏れ出ている。

 

「……こっちよ。」

 

そう声をかけるキャスターの先導で森の中に入ると、さらに分かる。この森は、いや、森自体に被せられた結界だろうか。それの本質は排斥ではない。入れた者を逃がさず喰らい尽くす、バケモノの森、異界迷宮(ダンジョン)だ。

肌に感じるその怖気は以前教会の資料で読んだことがある俯海林(アインナッシュ)を連想させる。アレと同じような存在なのだろうか。

 

「ふぅ……監督役さん。考えるのに夢中なのはいいけど、そっち行くと死ぬわよ……ふぅ。」

「へ?」

 

完全に意識の外から掛けられた忠告に思わず思考は断絶し、道を曲がった前の2人とは違う方向にそのまま進もうとしていたことに気づく。どうやら、また考え込み過ぎて周りが見えなくなっていたらしい。

 

「ーーっと。すまな……うわああああ!!」

 

そう、引き返そうとした瞬間足下の絡み合った木の根が一瞬にして解け、奈落へと通じる。ここも罠だったのかーー!!

 

「ルトガルディスーー!」

 

サーヴァントの名を呼びながら必死に手を伸ばすも届かない。

 

ーーその時、ルキアは耳にした。熟練した魔術師の高速詠唱に匹敵する速度の彼女の詠唱を。

 

「罪の荊よ、私が育み私が許す。我が手から取り零す者は1人もいない。我が目の届かぬ者は1人もいない。」

 

何をする気なのか。だが既にアタシが墜落した孔は伸ばした手の指のスキマから覗けるほどに小さくて。

 

「生涯の罪は、死の中でこそ償われる。

ーー許しはここに。仮初(かりそめ)の私が誓う。

"この魂に荊罰を(キリエ・ティモリア)"ーーー!!」

 

詠唱と共に蔦のようなモノが伸びてきて伸ばした腕に絡みついた。

 

ーーッッ!!絡みついた腕に鋭い痛みが走る。これは蔦じゃない、茨だ。アタシの体重を支えたが故に引っ張られてより強く食いこんだんだろう。

そして、そのまま身体に感じるのは浮遊感。サーヴァントととしての膂力で引き上げられる。

 

そうして。地上に引き上げられたアタシが見たのは。腹部から流れる血を手で抑えながら、アタシを引き摺りだしたルトガルディス。そして、キャスターを携えながらそれを横から眺める初老の男の姿だった。

 

その状況に、頭に血が登り、思考が集約する。

すなわち、目の前のコイツらが敵だと。

 

「る…ルトガルディス!!その傷は!おいテメェら、アタシのサーヴァントに何しやがった……!!」

 

そう、怒りのままに問いかけると。男は何も悪いことはしてないといった体でいけしゃあしゃあと言葉を返す。

 

「何か……と問われたならば。私は何も、としか返す言葉を持たないな。」

「てめぇ……!!蹴っ飛ばす!!」

 

しかし男はアタシの怒りなど柳に風といったふうに受け流し飄々とした笑みを崩さない。

 

ーーいいさ、そのニヤついた顔面を蹴り砕いてやるよ。

 

そうして、左脚を踏み込み軸とする。そのまま勢いを右足の甲に乗せて、側頭部へと回し蹴りを叩きこーー「point(座標運動・固定)」ーー瞬間。肉体が突如停止する。急激な停止命令は筋肉に負荷を与え、ダメージとなってアタシの身に返ってくる。

 

「ガ……ッ!?」

「……ふぅ。流石の私もチョッピリ焦っちゃったよ。短期はイケナイなぁ、レディ?」

「……て……めェ……なに……を!?」

 

呂律が回らない、いやそれどころか呼吸すら上手く動かない。まるで。そう、まるで。肉体がその()()()()()()()()()()()()ようなーーー

 

「ふむゥ。なるほど……僅かながら呼吸と撥音は成っている…か。やはり、まだ()()()()()()()()()()()()()……ということか。それとも、度重なる転写の悪影響か……?」

 

男はアタシの呼吸や眼球運動を睨め回す観察しながら、そのように呟く。くそ……一体なんなんだよ、これ。

 

「ーー思考はいいのですけれど、彼女を自由にしてくれませんこと。確かに貴方に非が無いのは分かっていますし、手伝っていただけた事には感謝しておりますわ。けれどもマスター、いえ。友人をこんなにされて黙ってられる程私人間が出来ておりませんのーー!」

 

ルトガルディス!どうやら、無事だったようだ。よかった。ホントよかった。奴の首に掌を突きつけてアタシを解放させようとしてくれてるみたいだが、何か……これを破る手は……あるのか……?

 

「マスターに何してんのよ、おたく。……()()()ぞ。」

 

どうやら……キャスターが激昴して…………いるようだ。だめだ……もう……息が………

 

「待ち給え、キャスター。ーーrelease(固定・解除)

 

 

「ぷっはァ!……ハァ、ハァハァ、ハァ。」

 

視界が開ける。振り上げた脚はそのままバランスを崩し一気に尻からへたりこむ。呼吸が、整っていく度に身体が楽になるのが分かる。ああーー空気が美味い。アタシは助かったのか……

 

「それで、説明してもらえますこと?今のような蛮行に及んだ理由を。」

「ルトガルディス!無事だったか!?」

 

そう叫んで、ついとびかかってしまう。傷は、平気なのか?

 

「る、ルルルキア!?傷なんて、だだ大丈夫でしてよ!私なんかより、貴女のほうこそ!」

「アタシこそ大したことねぇよ、溺れかけたのと変わらねぇさ。」

「なら……よかったですわ。」

 

そうしてると、さっきの男とキャスターが言葉を交わしながら近づいてくる。

 

「いやぁ……美女同士のくんずほぐれつってのはなかなかに目の保養になるねぇ。そう思わないかい、キャスターも。」

「……超どうでもいいわ………ふぅ。」

「テメェ……さっきはよくも……」

「ちょ、ちょっと待ってくださいですの!先程のアレは私もカッチン来てしまいましたがその前は一応助けてくださったのですわ。」

「……え?」

 

そうしてそちらを見ると如何にも、といった顔で男がドヤついてる。めっちゃ殴りてぇ。

 

「うむ、ではまずその辺りからの説明をしようか。私はラバック・アルカト。アトラスの錬金術師だ。」

 

やはり……か。示す証拠は数多くあった。キャスターの態度といい、この森の状況といい。

 

「まず、この件に関してだが、全ての原因は君の不注意だよ、レディ・ザビーヌ。君が思考に明け暮れた果てにキャスターの先導を無視して外敵用の罠に掛かったのが原因だ。」

 

ぐむむっ……。確かに、それに関しては言い訳のしょうもない。完全にアタシの落ち度だ。

 

「そして、君が落ちた時に、そこのルーラーは君を助けるための魔術行使をした。いやぁはじめて見る魔術基盤でねぇ、つい年柄にもなく興奮してしまったよ。いや、見覚えはあった気がするんだが、どうにも珍しくてね。おっと、話が逸れてしまったな。ともかく、君を救うために魔術を行使していたのだ。」

 

なるほど……それがあの茨か。腕に絡みつき、アタシを持ち上げた。ふと、腕を見ると傷一つない。さっきのは幻痛だったのか……?

 

「それで、私としても同盟相手をこんな事で失う訳にはいかないのでね。君を救うのに微力ながら、力を貸させてもらったよ。」

「いえ、私1人じゃあそこまでスムーズに救出が出来たかは分かりませんでしたわ。本当に、礼を申し上げましてよ。」

「いやいや、苦しんでいるレディを救うのは紳士としての務めですとも。ふふふふふはははは!」

「ふぅ……うちのマスターってのは……全く。ふぅ……それにそもそも……紳士はあんな事しないわよね……ふぅ。」

 

なるほど……あの時感じた不思議な浮遊感はラバックの魔術によるものだったのか。

 

「それで、君を救いあげたと思ったら君が私を敵と勘違いして襲ってきたからね、仕方なく迎撃したまでさ。」

「それでも……あそこまでする必要は無かったはずですわ。」

「いやぁ、お恥ずかしいことだが、この身体で結界に接続(アクセス)するの初めてでね、少し試運転も兼ねてたものでつい、感覚を確かめてしまってたんだ。」

「……最低ですわね。」

 

ルトガルディスがそう、吐き捨てるように言う。彼女も魔術自体は使うようだが、その在り方は魔術使いに近い。この様な自身の探究心を優先する魔術師らしい魔術師に嫌悪を覚えるのは必然か。

 

「なるほどな……確かに、ここまでの経緯は分かったよ。それに、ルトガルディスの所見同様アンタが『魔術師』だってこともな。とはいえ、一つ腑に落ちないことがある。そこを明かしてもらえないことには同盟どころか、今ここで聖杯戦争が勃発するぞ?」

「ああ、分かっている。今は話の流れをスムーズにする為に私としても意図的に省かせてもらったのだ。なにしろ、私としてもよく理解ができていないのでね。」

 

ラバック自身も理解出来ていない……?どういう事だ。いや、ここはこれ以上思考を重ねても仕方がない、まずは話を聞かなくては。

 

「……ルトガルディスは、どうしてダメージを負っているんだ?キャスターかテメェと交戦したとでもない限り考えつかねぇ。仮にもコイツは聖杯戦争最高特権を持つ裁定者だ。そこらにいる程度の合成獣(キメラ)如きにはビクともしねぇだろうよ。」

「言っとくけども……ワタシにも無理よ。そんな運動神経良くないし……ふぅ。」

「キャスター、君これでも私のサーヴァントなんだからそんな不安になるような事言わないでくれよ。」

「……話を逸らすなよ。アタシのルトガルディスに手を出したのは誰だって聞いてんのさ。」

「だから、それなのだがね。私にも分からない。」

「んだと?」

「……いや、予想なら出来るが、真実を知るのはそこのルーラーだけだろう。」

「ルトガルディスだけ……?」

 

そうしてラバックはルトガルディスに向き直ると襟を正して問いただした。

 

「レディ・ルトガルディス。君の魔術には、何らかの反動があるのではないかね?」

 

なん……だって……!?

 

「私は君の前に出て魔術を使っていたし、視界も孔の中に飛ばして中途半端に落ちた人間が引き上げられる場合森がどう反応するのか観察するのに夢中だったから意識が一切向いていなかった。キャスターにも茨を引かせていたから君を見てはいないだろう。そしてレディ・ザビーヌが引き上げられた後に君の方を見ると腹部を抑えてうずくまっていた。これはそう考えるしかないだろう。」

「案外……すぐバレてしまうものなのですわね。これを見てくださいまし。」

 

ルトガルディスは、そう言うとシスター服を捲りあげて腹部を顕にする。

 

「なんともはや……」

「へぇ……」

「な……!」

 

彼女の左脇腹。そこには、魔力として霧散しているものの今なお血が流れ続けている、深い刺傷が存在した。

 

「なるほど……そういえば、聖ルトガルディスという名をかつて聞いたことがあるな。聖人であり、左脇腹の傷。とくれば答えは一つ、か。」

「ああ、そうだ。アタシも忘れていた。ルトガルディスの逸話にはもう一つ有名な話がある。二十歳前後の頃に『あの方』を見たというのの他に、左脇腹に聖痕を受けたというものが……!」

 

その答えにルトガルディスは頷きながら聖痕をなぞり、応える。

 

「ええ、その通りですわ。これは『あの人』と同じ傷痕。私の信仰の証。この聖痕は常に痛みを発し、血を流す。そしてそれは私の使う魔術に反応して大きくなるのです。」

「ふむ…なるほどな。実に興味深い……が、今はそれ以上話を進めるべきではないか。レディ・ザビーヌ、誤解が解けた以上、改めて同盟締結、と致したいのだが、返事は如何かね?」

「あぁ……依存はないさ。そして、済まなかった。勘違いとはいえいきなり攻撃しちまった。」

「いやいや、私こそ。君を苦しめる意図は無かったのだが……すまないね。」

「ハッ……そんなんはなんとも思ってねぇさ、魔術師なんて所詮そんなもんだろ。」

「おやおや手厳しい。まぁ否定出来ないのが辛いところなんだがね。」

「別に……魔術師じゃなくてもね……ふぅ。人は自分のことしか……考えないわよ……1人で死ぬのだから……ね……ふぅ。」

「あら、その言葉は聞き捨てなりませんわね。」

「ふぅ……経験談……よ。」

「お、おいルトガルディス落ち着けよ。」

「る、ルキア……」

「キャスターもだ。不要な諍いの種を撒くんじゃない。」

「ふぅ……つい……すまないね。」

「いえ、私も大人げなかったですわ。」

 

キャスターの言葉が気に触ったのかルトガルディスの語調が荒くなり、いきなり諍いを止めるハメになってしまった。

折角同盟締結だってのに初っ端からこれじゃ、先が思いやられるな……

 




ルトガルディスさんの色々も出したのでここで宝具を除くステータス欄を公開します

ルーラー
真名:ルトガルディス
属性:秩序・善
性別:女性
身長:156cm
体重:54kg

基本ステータス
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具B

クラススキル
対魔力:A
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。ただしルーラーの場合、教会の秘蹟には対応しない。

真名看破:C-
ルーラーのクラス特性。直接遭遇したサーヴァントの真名・スキルなどの一部の情報を即座に把握する。
あくまで把握できるのはサーヴァントとしての情報のみで、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情は対象外。
また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つ場合は見ることが出来ない。
不完全な召喚の影響でランクが低下している。

神明裁決:C-
ルーラーの最高特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、1回まで令呪を行使できる。他のサーヴァント用の令呪を転用することは出来ない。
不完全な召喚の影響でランクが低下している。


固有スキル

啓示:B
"神の子や聖人からの声"を聞き、最適な行動をとる。魂が持つスキル。
『直感』は戦闘における第六感だが、啓示は目標の達成に関する事象全て(例えば旅の途中で最適の道を選ぶ)に適応する。
だが根拠がない(と本人には思える)ため、他者にうまく説明できない。

奇跡:C-
時に不可能を可能とする奇跡。
星の開拓者に似た部分があるものの、本質的に異なるものである。適用される物事についても異なっている。
ルーラーの場合は逸話より治癒能力及び直近の未来を視認する未来視としてのみ発動する。

聖痕:B
ルーラーの脇腹に残る槍で突かれた聖痕。常に血を流しており毎ターン幸運の判定に失敗するとダメージ。常に痛みを感じているが、ルーラーの意志力により全くそれを感じさせない動きをする。このスキルにより聖人スキルのランクが上昇している。

聖人:B(C)
聖人として認定された者であることを表す。
サーヴァントとして召喚された時に“秘蹟の効果上昇”、“HP自動回復”、“聖骸布の作成が可能”から、ひとつ選択される。
ルーラーはカリスマスキルを持たないことから“カリスマを1ランクアップ”の選択肢が消滅している。
聖痕スキルによりランクが上昇している。
ルーラーは秘蹟の効果上昇を選択している。


洗礼詠唱:A+
教会流に形式を変化させた魔術。霊体に対し絶大な効果を及ばす。
ルーラーの場合、生前の神秘家としての研究により対人間霊や対自然霊、などそれぞれの対象に最適化させるアレンジを加えた独自の詠唱を使うのみでなく、教会の教えに影響を受けた魔術というものも行使可能。
ただしその場合、聖痕からダメージを受けてしまう。


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幕間/聖杯の真実

今回、レアの目的に関連してかなりの独自解釈と独自設定が含まれる恐れがあります、お気をつけてお読みください(予防線を張ってくスタイル)


「それで……着いてきたは良いけど、ここか?」

 

ラバックに連れられてきた先には如何にも、といった巨木がそびえ立っていた。

 

「うむ、、ここが私の自慢の魔術工房さ。神殿とはいかないが、なかなかのものだと自負しているよ。」

「はぁ……アタシ、魔術師の工房になんて入りたくないんだけどなぁ……」

 

そうぼやくと、ルトガルディスがつんつんと肩をつついて聞いてくる。

 

「あの、ルキア?魔術師の工房ってそんなに危ないものなのでして?」

「ん?あれ、お前も魔術使うのに工房知らないのか?」

「私は魔術の研究といっても神秘の研究の副産物みたいなものでしたし……魔術基盤をそのまま使ったバージョン違い、みたいな魔術もどきみたいなものなのでそこまでガッツリ研究してた訳ではないので……」

「なるほどなぁ……一般的な魔術師の工房ってのは単なる魔術の研究場所兼修行場所ってだけじゃなくて多くの場合超危険地帯だからな。どうせここも、部外者や外者撃退用のデストラップだらけだろうぜ……」

 

そう嫌そうな顔をすると、安心しろとばかりにいい笑顔でラバックがこちらに親指を突き出す。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だとも。私の工房は安心安全のトラップフリーだ。罠だらけの森よりよっぽど安全だとも。いや何、以前何度か死ぬ目に合ってから全撤去したんだよ。どうせこの森を抜けて来れるようなのはほぼいないし、抜けてくる奴には無意味なレベルのトラップだったからね。」

「自分の罠に引っかかるなよ……」

 

 

そして、奥に入ると、居間のような部屋に通された。

そして全員が席につくと、指をパチン、と打ち鳴らすが早いか、奥の部屋からカップとソーサーを乗せたお盆を持った猿らしき使い魔が現れる。

 

「どうだね。まずは、一口。寛ぎながら話そうとしようではないか。」

「生憎だが、魔術師の工房で出されたものを飲む程アタシは油断しきれないんでね。すまないが、お猿さんたち。これは君たちが持って帰って飲んでくれ。」

「キキッ。」

 

そう言うとアタシとルトガルディスの分の茶を持って使い魔は去っていった。

 

「やれやれ、信用には至らないか。まぁいい、それでは本題に入ろうか。まずはこれを見てくれたまえ。」

 

そう言うとラバックは机の上にあったリモコンを操作する。すると壁からスクリーンが下がってきて、机の上にはプロジェクターが現れる。そして、スクリーンには『レアの計画について』と書かれたプレゼンテーションらしき画面が表示された。

 

ーーうん。ほ、ホントにパワポ用意してやがったコイツーーー!

 

「まず、レアの目的から説明しよう。」

 

そう言いながらラバックはページを進める。

 

「まず、レアの目的についてだ。まず第一に、世界の神代回帰。」

 

……どういう事だ?やべぇいきなり分からんぞ。

 

「といっても伝わりにくいだろうから、画面にイメージ図を用意した。」

 

そう言いながらラバックが操作すると幾つもの楔で布地を縫い止められた球体に、一点から染みが広がり全てを染め尽くした。

 

「見ての通り、彼女は『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』のような楔を抜くのではなく、現在の世界という布地を専用の礼装である毒聖杯で……」

「ちょ、ちょっと、ちょーっとストーップ!」

 

思わずラバックの説明を静止する。いや、だって、流石に置いてきぼりだぞこのレベルの解説は!!

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。全くついてけねぇ。もっとわかり易く解説してくれ。」

「……ふむ。イメージ図なども使ってわかり易く解説したつもりだったのだが。」

「いやごめん、世界という布地とか言われてもついてけねぇぞ。アタシは魔術師じゃねぇんだから。」

「そうか……では仕方ない。一から解説するとしよう。」

 

そう言うとラバックはプロジェクターと電源を落とし、口頭で話し出す。いや……そこでこそ使ってくれよ!パワポ!

 

「まず、この世界は神代……つまり神々の時代の終わりだ。大気中に今とは比べ物にならないほどの大源(マナ)が満ち、神霊達が跋扈していたその時代。ある王によってその終わりは訪れ始めたというが、それにより地上は人間のものとなり、神々や神秘の濃い幻想種は消え去った。」

「幻想種……って言うと、昨夜見た人狼(ワーウルフ)みたいな……」

「レアのサーヴァントか……まぁ、アレはおそらく本物ではないだろう。とはいえ、人狼が幻想種であるのは紛れもない事実だろうし、500年前ならともかく、現在は北欧などにもいないだろうな。そして、他には竜種なども含まれる。」

 

竜種……最強の幻想種。他の亜種聖杯戦争でもサーヴァントの宝具として現れたという話をたまに聞く他、先の聖杯大戦では終盤にも観測されたという話を聞いたことがある。

 

「そして、その消え去った先は世界の裏側。」

「世界の……裏側?」

「そうだ。地球という星の表面に薄い織物がかかっているとイメージしてもらえばいい。そう、丁度このテーブルクロスのようにだ。私達が今生きているのはこの表面。物理法則が支配する世界だ。そして、神々や幻想種が消え去ったのはこの織物の裏側、ここが世界の裏側だ。通常、ここの織物は何かの間違いがあってひっくり返らないように幾つも楔となるものが撃ち込まれ、固定されている。」

 

先程の神代回帰、という言葉が思い出され、嫌な予想を打ち立てる。

 

「まさか……聖杯でその楔を抜いて、その織物をひっくり返すのがレアの目的だって言うのか……!?」

 

しかし、ラバックは首を降りその予想を否定する。

 

「いんや、そうではない。流石にそれをやるには魔力が足らない、聖杯でもとても無理だ。それこそ人理をエネルギーに変換するレベルの偉業でないとな。……だから、奴は考えた。裏側をそのまま持ってこれないなら、表側を裏側の色に染めればいい、と。」

「染める……?」

「あぁ、今の物理法則が支配する世界、神々の権能が支配する神代へと写し取り、染め替える。この表側を侵食させるんだ。」

「ちょっと、そんなことしたら……」

「ああ、直接ひっくり返さない分人類即死滅……なんてオチにはならねぇだろうがその環境が再現されれば、幻想種や、下手すりゃ神霊までもが再びこちら側に帰ってくる。第一に並の人間じゃその濃すぎる大源(マナ)に耐えられずに肉体が崩壊するだろうよ。」

「そして……それを示したのがさっきのイメージ図か。」

 

漸く、話が繋がる。さっきのイメージ図はそういう事か。だが……いきなりの説明で分かるかあんなもん。

 

「そういう事だ、この地を起点として神代という毒はこの星という織物を侵し、蝕み尽くす。だからこそ、人類の滅亡だ。」

 

ちくしょう……そういう事かよ。だが、奴は何故そんなことをしたがるんだ……?理由の無い虐殺レベルではない、この行為は、今の地球という星が滅びるに近い。それに、まず。そんな事が個人の手で可能なものなのか?

 

「三つ程……気になることがある。」

「私の答えられる範囲ならば、答えよう。」

「まず一つ目、レアはそこまでして何がしたいんだ?そして二つ目、そんなことが本当に可能なのか?」

 

その問いに対し、ラバックは顎髭に手をやりながら、考え込むようにして答えた。

 

「まず一つ目。これは本人が言っていたこと故に間違いないだろうーーあ奴の目的は、根源への到達だ。」

「根源……だと?」

 

根源、それは総ての出づる場所にして全ての魔術師の最終目標。

あらゆる魔術師は根源へと至る為に人生を使い潰し、次世代へと研究を重ねながら発展を目指す。

 

「確かに、魔術師でもあるアイツならば不自然では無い理由だ。だがしかし、何故それが神代回帰へと結びつくのだ!?」

「……神代ってのは、神秘がそこらじゅうに、至って普通に溢れていたのだ。神も近く、幻想種だって沢山いた。だからこそ、根源も今よりずっと身近だった。それが神代の魔術師が根源を目指さなかった理由の一つとも、伝え聞くが……ともかく。それだけ根源が身近ということは、辿り着くことも容易い、ということだ。そして、人間ならば即死しかね無いような大源(マナ)の濃さであろうとも、死徒であるあやつなら生存し続けることも可能。そういう事だ。」

 

そういう事か……だが、何か違和感を感じるような……意図的に何かを隠した、か?……いや、穿ち過ぎか。それより、次の答えを聞こう。

 

「そして、二つ目だが。こちらは私としても確実とは言えないのだが。可能である、と私は思っている。まず、この地の聖杯はサーヴァントを生贄としてくべて根源への孔を空けるものでは無い。まずそのレベルが実現できる大聖杯はアインツベルン以外に鋳造は不可能だし、それ自体も聖杯大戦により失われてしまった。だからといって、他の亜種聖杯のように、サーヴァントの魂を魔力に変えた願望機でもない。これは、この地の毒聖杯は。奴自身の魔術回路を一部移植して作り上げた世界という織物を侵食するための限定礼装だ。英霊召喚はそれを起動させる為の、エネルギーを蓄えるための機能。敗北したサーヴァントの魂を無色の魔力に変換し、それを媒介として神代という色を写し取る。それが、この地の聖杯戦争の真実だ。」

 

思わず、絶句する。言葉も出ないとはこのことか。まさか、ここまで仕組まれていたとはーーー!

 

「ふぅ………俺が語れることは、今の質問で大体語り尽くしたと思うが、まだ、三つ目の問があるのか?」

 

息をつき、カップの茶を飲みながらラバックは問う。

勿論だ。そして今の返答により、益々聞かなくてはならなくなった。

 

「ああ、三つ目の質問だ。……なぁ、ラバック・アルカトよ。お前……()()()()()()()?」

 




でもこれでかなり思いの終わったし?あと1話くらいで二章終われる?

……とか言うとまた伸びそうなので何も言わないことにします……


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幕間/ラバックの秘密

やっと二章終わった!次回から久々にあのロリコンが出てくる!

……だいたい一ヶ月ぶりか?それだけの間出番がなくてなおかつその間に重大事実の明かされてる主人公とは。


「ああ、三つ目の質問だ。……なぁ、ラバック・アルカトよ。お前……()()()()()()()?」

 

そう、問いかける。

しかしラバックは一切動揺を見せず、どころか表情すら変化させず。ただ、顎をしゃくるようにして続きを促した。

 

「アンタの話にはところどころ、不可解ないところがある。」

「ふむゥ……私が嘘を話していた、或いは本当のことを話していない、と?」

 

しかしあたしは首を横に振り、その答えを否定する。

 

「いいや、違う。アタシとルトガルディスの両方が騙されているのでなければ、アンタは間違いなく真実を、それも知りうる限り全てを話してくれてると思う。だからこそ、おかしいんだ。」

「ふ…だからこそ、とは?」

「アンタがそこまでの情報を握ってるってことがだよ。何故そこまで詳しいのか?そこまで思考した時、脳裏に浮かび上がったのはルトガルディスが召喚時に感じたという違和感だ。彼女は、召喚される時に引っかかる様な違和感を感じている。事実、その不完全な召喚のせいでクラススキルのランクが低下していた。」

「クラスランクの……スキルが……!?なんだって……!」

 

それは流石に予想外だったのか、ラバックも驚いた表情を見せる。

 

「特定のスキルでも、固有スキルでも無くクラススキルだけが低下している……これは召喚されうるルーラーのみを狙ったたと考えていいだろう。そして、今聞いた奴の手段と併せればその理由にも十分納得がいく。」

「……ルーラーが召喚されるのは、その聖杯戦争が特殊な形式で、結末に予想も使い場合……または。」

「そう、その聖杯戦争によって世界に歪みが出る場合、だ。」

「だからこそ、世界の歪みどころか人類の滅びかねないこの手段を取ることを決めた時点で、ルーラーの介入は予測できていたはず。よってそれを邪魔した可能性のある協力者がいるはずで、それが私……という推理かね?」

「その通り…だ。何か、反論はあるか?」

「勿論。だいたい、何故そこでレアを疑わない?」

「理由は簡単。アイツが仕掛けをしたならまずルーラーの召喚からして阻止されるだろう。アイツは遊び半分の行動を重ねることも多いが、何らかの目的、計画を立てた場合はその不確定要素を潰すために徹底した動きを取る。」

「ふむゥ。どうやら、なかなかにレアの行動パターンについて詳しいようだな。……君こそ、レアの協力者ではないのかね?」

「なんだよ、イヤミか?あんな奴に協力なんて死んでもしたくねぇことはお前も百も承知だろうよ。」

「勿論、それに私も君の立場と情報なら同じ結論を出しただろうと言う程度には君の推理は信憑性がある。だが違うのだよ。どうやら君には、情報が足りていなかったな。」

 

なんだって……情報が?

 

「君は思考の方向性を誤った。『中途半端なルーラーの召喚阻害を起こせたのは誰か』、ではなく『何が起きたらルーラーの召喚が中途半端になるのか』と考えるべきだったのだよ。」

 

一体、どういう事だ……?

 

「つまり、だ。アレは元は完璧な召喚封じだったが、私がそれを破壊した結果、中途半端にクラススキルのランクを低下すレベルに召喚阻害として残ってしまった、と言うことだ。」

「な……なんだとっ……!」

「私としても完全に予想外でね、君から聞くまで全くその可能性を考慮していなかった。いやはや、こちらも考えが浅かったということだ。」

「だ、だがーそんなことをして、生きて戻ってこれるはずがない。レアの留守を狙ったとしても、いや、留守だからこそ仕掛けられた罠を突破出来るとは思えない……まさか、アンタも死徒……なのか?」

 

思わずそう言うとラバックは苦笑しながら首を降り、否定する。

 

「それこそまさか、だ。正々堂々正面から突っ込んでいったとも。」

「それじゃあどうやって……!」

「生き延びた……か。最初はここまで伝える気はなかったのだがな……仕方がない。クラススキルのランク低下の詫びと君の百点満点中五十点の推理への褒美だ、こちらの部屋に来たまえ。」

「その部屋で、全てが分かるってのか?」

「あぁ。それと、レディ・ルトガルディス。君は待っていてくれないか。」

 

そう言ってラバックは突如ルトガルディスを制止する。

 

「なぜですの?ルキアには見せられて、私には見せられないと?」

「そうい訳ではないが、おそらく君の機嫌を損ねかねないのでね。出来れば待っていてもらえれば、と思ったのさ。」

 

ルトガルディスの機嫌を損ねるような何かが、そこにはあるというのか……?

しかし、ルトガルディスは首を縦に振りついていくことを表明する。

 

「いい、たとえどのような外道が行われていようと私は真実を知る為、止まりませんわ。それにあなたの力が、世界の為に必要なのも事実ですし、ね。」

「……そうか、ならキャスター、君も来たまえ。君にも一度は見せておくべきだろう。」

 

そうして、案内された隣室は。ガラスケースの中に満たされた培養液と、その中にたゆたうホムンクルスが両端にズラリと並んでいた。

 

「そうか……錬金術師だったな、アンタ。だが、この大量のホムンクルスがそれなのか?」

「いいや、違うとも。ところで、レディ・ザビーヌ。君は『アカシャの蛇』と呼ばれた魔術師を知っているかい?」

 

アカシャの蛇……!?確か、元聖堂教会司祭でありながら永遠を求めて死徒となった魔術師の呼び名のはずだ。転生を繰り返すという話を聞いたことがあるが……まさか!?

 

「ミハイル・ロア・バルダムヨォン。かの魔術師は死後に魂を次の肉体へと転写することで次代のロア、更に次代のロアへと転生を行い、実に十八代に渡って転生を繰り返したという。」

「お前も……その転生をくりかえしたってのか……」

「いいや、私にはそのままでは使えなかったからね。人のままの私には無理だったし、そもそも次の復活までにラグが生じるこのやり方では私の目的には適さなかった。だから、私は転写ではなくーーーー複写を選んだのだ。」

 

思わず息を呑む。転生ってだけでも充分突飛な話だったのに、それを軽く上回ってきた。

 

「て、転写ってことは自分のコピーを大量に作れるってことか?でもそれなら人形だって……」

「所詮長く生きて研究を重ねただけ程度の私にはそんなものは作れない。というより、そもそもそんなのが作れるのはかの『橙』の称号を持つ人形師くらいだろう。」

 

魂の転写ではなく複写。無限転生ならぬ無限増殖。それこそがこいつの秘密……!

 

「理屈は分かったけどよ、それがどうしてこのホムンクルスと繋がるんだ?」

「ーーこのホムンクルスは、未来の私だ。読み取ってある私の魂でホムンクルスの魂を上書きする用に調整して作られた素体なのだよ。もちろん、肉があればそれだけで魂は宿る。だから完全なコピーとはいかないがそこは精神と記憶を脳に電気信号で焼き付けることによって………」

「ちょ、ちょっと待った待った。専門的な解説は完全についてけなくなるからいい。それよりも、これがルトガルディスを入れたくなかった結果なのかよ。」

「あぁ、と、いうより非道を良しとしないであろう善属性の英霊すべてに見せたく無かったがね。感情で敵対されては非効率的だろう?君たち正統の英霊というものはえてして他者の命を道具として使い潰す行為に嫌悪を覚えるらしいからね。」

 

そう、なんの悪びれもなく言う姿に対して「チッ」と激しく打ち鳴らすような舌打ちが背後から聞こえる。自分でああ言った手前怒りはしないだろうが、それでも不機嫌になるのはある種当然とも言えるか。だがここで不快感を表せるだけルトガルディス(コイツ)はアタシよりなんだかんだ純粋だと言えるのかもしれない。アタシには目的の為ならこの程度、何とも思えなくなってしまったのだし。

と、心中で何気なく自嘲しているとルトガルディスが口を開いた。

 

「……やってる事は理解しましたわ。しかし、何故あなたはそこまでして永遠を求めるのでして?」

「永遠を求める……か。その考えからして既にボタンをかけ違えてるのだ。私はね……彼女に、レアの隣に並び立ち、そして引き止めるためにこの術式を開発したのさ。まぁ、上手くいかなかったからこうなってる訳なんだが。」

 

ラバックそう言うと、苦笑するようなジェスチャーをとり首をやれやれと振る。

 

「…………マスター。」

「ん?なにか質問かい?キャスター。」

「…………ふぅ。いいえ、何でもない……わ。ふぅ……」

「それじゃあ、今日はこの辺りでお開きにしようか。もう日もだいぶ傾いてきたし、ご婦人がた2人の帰り道はぶっそうだ、キャスターに送らせよう。」

「……は、すまんね。ルトガルディス、荷物を持って先に表に行っててくれ。」

「わかりましたわ、ルキア。」

 

そう言うとルトガルディスはキャスターと共に部屋から出ていった。これでここにいるのは2人。

 

「なぁ……結局上手い感じにはぐらかされたりして答えてないことがひとつあるよな、アンタ。」

「ふむゥ、何のことだろうかね?」

 

顎髭を撫で回しながらラバックは答える。

 

「アンタがレアに詳しすぎる理由、より具体的に言えば執着する理由だよ。ストーカーかってレベルで執着しているように見えるぜ?」

「……別に、そんなことは無いさ。これは、ただの感傷。過去の因縁と感情の残り滓に過ぎない。」

「……あんたがそう言うならいいけどよ。まぁとりあえず、アタシはアンタのことを信用ならないなりに信頼させてもらうとするよ、これからよろしく頼む。」

 

そうやって右手を差し出すと、ラバックは一瞬目を見開いて。されどすぐにその胡散臭い笑みを取り戻して強かに笑う。

 

「魔術師を信頼する、ときたか。本当、シスターのクセになかなかに面白いな君は。妙にフェアなのも面白い。」

「……それ、褒められてんのか?てか妙にフェアってなんだよ。」

「それは勿論、惜しむことなく私達に真名を晒したその態度さ。ルーラーはルーラー故にこちらの真名を望むと望まざるとに関わらず看破してしまう。それを考慮してくれたのだろう?」

 

……え。え。え。なんか凄いいい感じに解釈してくれてるんだけど、これ。何がどうなった。

……いや、そうか。サーヴァントが自分から真名で呼んで欲しいなんてことは通常は有り得ないし、そもそもそれを呑むメリットはまるで無い。つまりセオリーから逸脱した行動でなおかつ合理性もまるでない。だから、そんな行動をとるという発想がまるでないんだ。それよりは同盟の関係性を良好にするために明かした、という方がよっぽど納得のいく理由なのだろう。

……まぁ、とりあえず口裏を合わせておくか。

 

「あ、あぁ。まぁな。アタシとしてもこれから同盟を組む相手には仲良くしていきたいと思ってたからな、うん。まぁ、キャスターの真名は分からなかったみたいなんだけど。」

「……分からなかった?」

「ああ、ルトガルディスは何らかの隠蔽スキルか宝具のせいだろうと言っていた。」

 

するとラバックは突然考え込むようにしてブツブツ呟き出していた。

……アタシのこと言えねぇじゃねぇかコイツも。

 

「おい、急に考え込んでどうしたんだよ。」

「ハッ……!いやすまん、少々な。それより、キャスターの真名を知らないのだろう?ならば伝えておこうじゃないか。」

 

うわ、露骨に逸らしたな……って、え、マジで?

 

「……一体どういう風の吹き回しだ?」

「何、借りを作るのが怖いだけの話よ。」

「それだけにはみえねぇけどなあ……」

「ふ、それは穿ち過ぎというものよ。」

 

そう言うとラバックは息を大きく吐き、キャスターの真名を口にした。

 

「では、伝えよう。私のサーヴァント、キャスターの真名は"ミルディン"」

「……ミルディン?」

 

まるで聞いたことのない名だ。知名度補正も無いに等しいだろう。とはいえそもそもこの国では西洋の英霊は軒並み知名度が低い。ヘラクレスなどといった優秀なサーヴァントを用意出来ないなら弱点から何からが分かりづらい、知名度の低いサーヴァントを選んだ方が有利ということか……?

 

「それ以上を知りたければ、せいぜい自分で調べるのだな。」

 

その一言を最後にして、ラバックは奥へと引っ込んでしまった。

 

 

同盟は無事に締結されたが、やることはまだまだ沢山ある。

 

ーーーだが、まずは。教会に戻ってルトガルディスとゆっくり晩酌の続きといくとしよう。

 




今回チョロっと名前の出た人気投票0票でもお馴染みのピアニストことミハイル・ロア・バルダムヨォンさん。
こないだのカルデアエースで色々Fate時空での奴のアレコレが発表されちゃいましたがこのssの設定立てたのはそれより前なのでこのssの時空では姫君に会ってます
そして二十一世紀初頭に絶倫メガネに殺されてます


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第3章 剥落する日々
2日目/夢


やっと3章!久しぶりの戈咒君!
いやぁ……すごい久々に書いた気がするなぁ….


ーーーカァン!カァン!

 

甲高い金属音が響く。

 

ーーーガギィン!ガギィン!

 

少し、音が変化した。

 

ーーージュゥウウウ!

 

液体が熱せられらる様な音だ。

 

 

ーーーー視界が、開ける。

 

そこは、真っ暗な。いや、仄かに橙色の燈りが感じ取れる。

目が慣れてきたのか、周りが見えてくる。

 

ここはーー、工房?何やらそのような雰囲気だ。

手元にはやっとこに挟まれた朱く熱せられた金属の刃。そして右の手には鎚が握られている。ここは、鍛冶場のようだ。

 

「全く……なんつーもんが出来ちまったんだか………」

 

口から声が零れる。いいや、違う。これは俺の声じゃ、/ボクの声でも、ない。それで自身の腕を見て気づく。これは俺の身体じゃない。

つまりーー夢か?

 

そう自問自答してる間にもこの身体の持ち主は鎚を振り上げ両刃だった刃を日本刀の刀身のように成形していく。

 

「ーーお前さんは、危険だ。だから、人しか斬れない妖刀になるしか無かった。この俺様にすら、そこまでしか打ちなおせなかった剣。そんなものをまぐれとはいえ造れちまう俺様の才能が末恐ろしいと同時に、お前さんが不憫でならねぇ……」

 

何を言っているんだ?刀に語りかけてるのだろうか。

鎚の音は益々激しくなっていき、遂には最高潮へと達する。

 

「いつか……お前さんを満足に振るえる使い手が現れることを祈って、俺様はこの銘を刻もう。この◾◾の名を。」

 

吹き上がる蒸気の音で言葉にノイズがかかる。

ーーそうして蒸気が晴れた後に。目の前に打ち上がったのは、俺自身もこの一両日中で見慣れてしまったセイバーそのもの、即ちあの妖刀だった。

 

意識が、急速に引き戻される。ここが夢だというのなら目が覚めようとしているのかもしれない。そう考えている間にも意識は遠のきーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーたぁ」

 

「ーーすたぁ」

 

「ーーますたぁ!!」

 

「ーーー!!」

 

目が覚める。周囲を見回すとそこは既に鍛冶場ではなく、見慣れた自室であった。セイバーが横で呼びかけてくれていたようだ。

 

「ーーはぁ、はぁ、はぁ。俺は……そうか、あの後。」

 

俺の様子を見て一心地ついたのか、安堵の表情を顔に浮かべてセイバーがちょこん、とその場にへたりこむ。

 

「ふん……どうやら無事だったようじゃの。こんな所で倒れられては儂にとっても困るのじゃ、全く。」

「あぁ……ごめんな、迷惑をかけた。ちょっと無理し過ぎたみたいだ。」

「全く……運んできた儂の迷惑も考えて欲しいものじゃの。……ん?なんか今朝のお主妙に殊勝ではないかの?」

「そうか……?ただ申し訳ないって気持ちがふつふつと湧き出てきただけなんだがな。」

 

護るべき幼女に守られるなんてロリコンとして三流だ。今後はこのような事のないようにしなくては。そう、心中で自戒しているとまたその心中の声を因果線越しに聞き取ったのか、セイバーが引きつった笑みを目の前で浮かべている。

 

「あぁ……そのどこまでも気持ち悪い思考回路、間違いなくいつものますたぁじゃったわ……殊勝になったなんての儂の勘違いだったの。」

「そこまで言わなくても……まぁそれはそれでご褒美みたいなものだからいいけどさ。」

「お主は常に気持ち悪いことを話し続けないと死ぬ病かなにかなのか……!?」

 

セイバーがそう、戦慄した表情で少し後ずさる。

え、なんか今そんなにやばいこと言っちゃったっけな。

と、考えたところで幾つかふと気になっていたことを思い出す。

 

「そう言えば、さ。セイバー。」

「ん……なんじゃい。裸なら見せんぞ。」

「そんなこと要求しねぇよ、俺は犯罪者じゃねぇんだ。同意もなしそんなこと頼むかよ。」

「同意があれば頼むって時点でかなり近しいと思うのじゃが……まぁいいわい。それで、お主の気になることとはなんじゃ?」

「いやまぁ、こっちは大したことじゃないんだけども。お前ってすぐ俺の心の中聞き取るけど、サーヴァントとマスターの因果線ってそんなに互いに筒抜けなの?」

「ん……聖杯から与えられた情報に余り具体的な情報は無かったから分からぬが多分そんなことはないと思うぞ。サーヴァントにしろマスターにしろ、相手に伝えたくないことの一つや二つはあるじゃろ。」

「ん、別に俺はないけど。それどころか俺の全てを余す所なく知ってもらいたいまであるぞ。」

「お主みたいなのは例外じゃ例外!聖杯だって想定しとらんわこんなマスターの存在は!」

 

例外って……聖杯も想定外とか、ほこまで言わなくても。まぁ……呆れた顔も可愛いからいいか、うん。それにしてもだとすると少し気になるのは確かだ。

 

「それじゃあ、俺のは何で筒抜けなんだ。」

「儂の考えてることが丸伝わりしてないことから考えるに、じゃな。仮説じゃが…….お主阿呆なこと考えてる時、大体心の中で大声でさけんどるじゃろ。」

「ん?何を当たり前のことを確認してるんだ。ロリに出逢えば心中で快哉をあげ、ロリが可愛ければ弁舌を尽くしてその素晴らしさをとうとうと語る。至極当然のことじゃないか。」

 

幼女は可愛い。だから喜ぶ。

幼女は美しい。だから楽しむ。

幼女は素晴らしい。だから幸せ。

 

うん、とても。それは、とても。当たり前のことじゃないかーーーー!

 

「当たり前であってたまるか阿呆っ!!」

 

瞬間、頭蓋に衝撃が走る。な、何しやがるんだこの妖刀ロリめ……刀の柄は拳銃の台尻と同じくらい人の頭を殴るところじゃないんだぞ……

 

「お主さっきから因果線越しで心中でとうとうと語りながら口でもペラペラ語り続けてサラウンドで気持ち悪くて完全にアウトじゃ阿呆!お主みたいな思考が当たり前であってたまるか!そんなんじゃから昨日のランサーのマスターにも同盟を拒否られるんじゃ!」

 

セイバーが怒りながら呆れたようにまくしたてる。確かに、ちょっとからかい過ぎたかもしれないな。

……まぁ、八割型本音だけども。

 

閑話休題。それにしてもいいことを思い出させてくれた、昨日のロリを小学校を張って探し出さなければならない。

 

「そうだ、セイバー。今から小学校に張り込んで…」

「却下じゃ。それなら大人しく学校にでも行くぞ。」

 

えー、そんなー。

渾身の計画はすげなく却下されてしまった。絶対見つける自信があったのになぁ。いや、ここで食い下がるようではロリコンの名折れ。もう少し粘るべきではないのか?うんうん、きっとそうだ。

 

「いやいや、セイバー。今は聖杯戦争中だぜ?呑気に学校なんか言ってる場合かよ、それよりは他のマスターの調査をした方が遥かに有意義ってもんだぜ?」

 

しかし、セイバーの信用は得られなかったらしく白い目をこちらに向けてくる。

 

「ますたぁよ…….今までの流れからなぜそれで誤魔化せると思ったのじゃ……?大体、お主こそ聖杯戦争中ってことを理解しとるのか……その全てを幼子目的で考えるのいい加減にして欲しいんじゃが……」

 

ふむ、流石俺の可愛いサーヴァント。こちらの思考はお見通しというわけか。しかし、後者にそう簡単に頷くわけにはいかないな。

 

「俺に幼女中心の行動をやめろって?ソイツは無理な相談だぜセイバー。それは魚にエラを動かすな、人間に息を吸うな、っていうのと同レベルの無茶だ。俺が全ての幼女を愛で続けるロリコンである限りそれは変わらないさ。」

 

あれ……なんか視線が冷たい……?

 

「ますたぁ……なぜそこでそんなここ一番のキメ顔を浮かべるのじゃ……」

 

セイバーはそこで一つ、大きく溜息をつくとやれやれ、といった様子で言葉を吐く。

 

「まぁ、いいわい。確かに土着の魔術師の情報が無い以上、マスターの身元候補すら分からぬのじゃからお主の張り込みという作戦自体が理にかなっとるのも事実じゃ。……だからこそ、腹に据えかねるのじゃが……それはもうよい。それより、じゃよ。」

 

そうして言葉を切ると、俺の全身を見回しながら、心配そうに口を開く。

 

「それより……ますたぁ。身体の方は大丈夫なのか?昨日アレだけ負荷を掛けて……反動がないわけ無いと思うのじゃが……」

「いや……何もないぞ?それどころか寧ろ身体の調子はいいくらいだが。」

「な……そ、そうか。それならいいのじゃが。」

 

?そんなに俺を心配してくれてたのか。なんか嬉しいな。

 

「それより、セイバーもいいなら張り込みに出てかないか?絶好の観察ポイント自体は幾つか知ってるが同業者に取られないようにも行くな早めの方がいいし。」

「いや、同業者ってなんじゃ同業者って。」

「なんじゃって、我々の同士のことだよ。老若男女、幼女同盟には様々なメンバーがいるぜ?」

「死ぬほど知りたくなかった情報をどうもありがとうの……というかそもそもお主、今の時間見てないのか?」

「え、時間?」

 

何を急に。ブラインドから夜明けの西()()が差し込んでるしまだ日が昇って少ししたくらいじゃ……ん?西日?

慌てて時計を見ると、針は午後5時を指し示している。

 

「げえっ!」

「漸く気づいたかの。実にお主、半日以上も寝ておったのじゃぞ?」

 

ここから平斗小学校まではどう頑張っても30分はかかる。下校時刻を考えると、おそらく間に合わないだろう。

 

「くっ……仕方ない。なら今日は身体を休めて明日に備えるとするか。セイバー、今日の晩飯は素麺ともやし炒め丼、どっちがいい?」

「何故その二つしか選択肢がないのじゃ……」

 

仕方ないだろ!お前がパンケーキ喰いまくるから金欠なんだよ!!

 

「ぬぬぬ……仕方ないのう。その2種なら、素麺を頼むのじゃ。あ、汁は胡麻ベースで。」

 

セイバーは悩んだ果てに注文をアレコレつけてくる。というか胡麻ベースの汁って、さてはコイツ俺の秘蔵の胡麻タレ見つけたな?

 

「わーったよ。それじゃ茹でるから、少し待っててな。」

「うむ、儂はクイズ番組でも見とるから準備は頼むぞ、ますたぁよ。」

 

そうして素麺を茹であげて2人で静かな夕食……いや結構騒がしかったような夕食を食べて順にシャワーを浴びて床につく。

 

そこで、ふと寝覚めの直前に見ていた夢を思い出す。セイバーのような日本刀が打たれていたあの光景。

 

「なんだだったんだろうな……あれ。まぁ、明日でも聞くとするか……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そうして、夜は更ける。

蠱毒の釜は今宵もその(うち)侵食(どく)を蓄え。

聖杯戦争は刻の針を進めゆく。

 

残るサーヴァント、マスターは共に7つ。均衡の崩れる刻は、近い。



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3日目/観測者たちのセレナーデ

やったー!いつの間にか評価が6つもついてて色がついてるぜーー!
よし、次は目指せ赤色バー!

と、まぁ先程からこんな感じで狂喜乱舞してる作者ですがこれも全て読者の皆様のおかげです
これからも是非ご意見ご感想よろしくお願いします


「んんーー…….見当たらねぇなぁ。」

 

双眼鏡を片手に見回しながら、そうボヤく。

 

ひゃふぁり(やはり)ひょうはひほはんほひゃはいほう(今日は来とらんのじゃないかのう)?」

「あんパンで口の中いっぱいにしながら喋るなよ……ほれ、牛乳。」

「ん…んぐ、んぐ、んぐ、んぐ。ぷはぁ……やはり、今日は来とらんのじゃないのかのう?」

「んーむ、やっぱりそうっぽいな。聖杯戦争中だしある意味妥当っちゃ妥当か。一応もう1人のサキちゃんを確認して違うことが分かったから、あの娘の本名が分かったのは朗報っちゃ朗報だが。家にまで行ってみるか?」

「阿呆。魔術師の自宅なんぞ罠の巣窟じゃぞ、死にに行くようなもんじゃわい。」

「だよなぁ……」

「うむ。…………ところで、いつまでこれ続ける気じゃ、お主。」

「んー、下校時刻まで?」

「……警察に知らせてやろうかの?」

「わ、わわわ、冗談だっての。そうだな、今の11時過ぎだしあと10分くらいしたら降りるか。」

「ふん……お主も筋金入りじゃの……」

 

そう。今俺らは平斗小学校のすぐ脇に聳え立つ大きな街路樹の枝に潜んでいる。

事の発端は朝の5時、セイバーを起こすのに手間取って寝ぼけなまこのセイバーを漸く連れてきた時には既に遅く、最大のビュースポットである校庭内部と校門前の2大スポットは俺たち幼女同盟の同士である見守りのジョーと歳上キラーのアンディに確保されていたのだ。万一の発見確率などを考え基本的に小学校の敷地に入れるのは2組までと同盟のしきたりにもある以上、それらには多少劣る通学路沿いの街路樹の上で観察……もとい見張るしかなくこうして登校を監視した後は双眼鏡で教室を順番に覗き見ながら調べていたのだが、どうにも昨日のサキちゃんは見つからない。

しかし、逆にもう1人の候補が見つかったことで身元の特定は済んだのだ。これだけでも今日は御の字としておくべきか。焦ってはいけない。地道にコツコツこそがロリコン道の第一歩であるのだから。

さて……十分とはいえないがある程度は目の保養……でなく調査も済んだことだし撤退するとするか。

 

「よし、そろそろ行くかセイバー。」

「やっとか。よし、これだけ待たされたのじゃ。昼餉は儂の好みで決めさせてもらうぞ。」

「……パンケーキと高いもの以外にしてくれよな。」

「ふ……任せるのじゃ。このチラシを見てみよ。」

 

そういうと懐からチラシを取り出し見せてくる。いや、うん和服の合わせから覗く肌色がちょっと眩しいので肌着着て欲しいな、帰りに量販店でも連れてくかな……

 

「ん?何を顔を逸らしとるのじゃ、これじゃよこれ。」

「ん……なになに?『甘味処・りべり庵、真夏の大出血サービス。なんと特盛パフェを食べれば料金タダ』……?」

「ウム、腹も膨れてさらに無料なのじゃぞ!完璧ではないか!」

「お前そんな余裕こいてるけど残したらこれかなりの金額払わなアカンやつだろ?俺はやだぞ。」

「大丈夫じゃよ。イザとなったら分子レベルに細かく切り刻んで消滅させるから。」

「おいコラ馬鹿か。そんな目立つことしたら1発でモロバレじゃねぇか。」

「むー、お主が心配ばかりするからではないか。そんなに心配せずとも儂なら食べ切って見せるのじゃ!」

 

大丈夫かなぁ………俺の財布。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お替り!」

 

うん、大丈夫でした。

というか何なのうちのセイバーなんなの何でこんなに食べられるのあれどう見ても2キロくらいあるのに3杯目とかおかしいだろ!!

 

「お前……まだ食べるの……?お願いだから普段からそんなに食べるのやめてね、家計崩壊するから……」

「ふ、安心せい。甘いものは別腹、というやつじゃよ。甘いものなら幾らでも入るが流石に食事はそこまでじゃよ。」

 

……それ、普通逆じゃないだろうか。

 

「……まぁ、食べきってくれるならいいや。それでさ、ちょっと聞きたいことがあったんだけどさ、聞いていいか?」

 

様子を見計らってそう、セイバーに問いかける。セイバーは口の中をもぐもぐさせながら答えようとして、自分の行儀悪に気づいてか口の中をもごもごさせて食べていたパフェを飲み込むと、口を開く。

 

「ふむぅ…顔つきから珍しく真面目な話かのう。というか、いい加減そうだと信じたいんじゃが。」

 

いい加減あきあきしてきたのか、俺に白眼視を向けてくるセイバー。なんていうか、そこまで信頼性を失ってしまったのか……少しは反省するべきだろうか。

 

「安心してくれ、流石に真面目な話だ。けどさ、その前に……」

「その前に……なんじゃ?」

「ほっぺ、生クリームべったり付いてるぞ。」

「ん?おぉ、本当じゃの。そうじゃの……礼に()()()()()()()()()()()()()()?」

「〜〜〜〜〜!!!」

 

んな、な、な、な、な、な、何言ってんのこのロリ!?

 

「おま、ば、ばばばば馬鹿なこと言うのはその辺にしとけよ!あまり人をからかうのもいい加減にしとけよおままえ!!」

「……狙い通り、と言えば狙い通りなんじゃが。お主あれだけ日頃気持ち悪い思考垂れ流しの割には随分と、その、なんじゃ。可愛い反応してくれるのう。」

 

そう、物凄いいい笑顔で。セイバーはにっこりと微笑んだ。

……っていうかやばい、マジで恥ずかしいんだけど!!というかロリコン的にもロリからこう誘ってくれたなら舐めとったりせめて拭いてあげるのが常識でかつ本望だろ!でもむりだわこれ!恥ずい!やばい!布団に入ってガタガタ震える準備はOKだからここから逃げさせて!!

 

「なんか……うむ。ますたぁのそう恥ずかしがる姿を見られるとは思っとらんかったから未だに意外感は否めないが、うむ。これは、その、なかなか……」

「うわああああもうそれ以上何も言わないでくれぇぇええ!!」

 

 




今回名前は出たけど多分2度と出番のない2人のキャラ紹介



見守りのジョー

本名:真芝 錠治
齢68にして幼女同盟のご意見板。枯れ木のような見た目から行われる恐るべき迄の気配遮断技術による「静」と老人とは思えぬほどの身体能力を万全に活かした「動」を使い分け幼女を危険から守る見守りの使徒。ジョーにより大抵の誘拐事件などは未遂で終わっている。また、幼女同盟から犯罪者が出そうになった時、ソイツを始末する粛清担当でもある。好きな幼女は8歳。


歳上キラーのアンディ

本名:安東 正汰
齢7歳にして「女性の賞味期限は13歳」という信条を掲げておりその身に備わる類希なる演技力を活かして歳上(主に小学校高学年)のレディから絶大な支持を得ている。表では堂々と幼女と触れ合い、裏ではひっそりと幼女を観察する、ダブルスタンダードという触れ合いスタイルの創始者でもある。好きな幼女は12歳。賞味期限ギリギリの熟れ具合が好みとのこと。ちなみに、賞味期限は13歳だが、消費期限は16歳。


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3日目/ドリームリンク

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。よし、何も無かったな!」

「え、いやますたぁよそれは流石に無理が……」

「無 か っ た な !」

「う、うむ。そうじゃの。」

 

よし、これで何も問題は無かった。今度から甘いもの食べさせに来る時は細心の注意を払わなくては……

そう心に戒めていると、ゴホンと咳払いが目の前から入る。見やるとセイバーが真面目な顔付きでこちらを見つめていた。

 

「で、じゃ。お主のしたい真面目な話ってのは何なのじゃ?」

 

ーーそうだった。すっかり忘れ……いやいやそれを忘れるだなんてとんでもない。もちろん忘れてなかったよ俺はうん。

 

「そ、そうだったな。実はさ……セイバー。昨日、変な夢を見たんだ。」

「夢……か。ふむぅ…もしそれが、ただの悪夢とかではないなら、サーヴァントか、或いはマスターに夢魔や混血がいる可能性があるということかのう。サーヴァントだとすれば未だ見ぬキャスターが怪しいのう……」

「あ、いやちょっと待った待った。多分そういうのは関係無いと思うんだ。」

「ん……?はて、お主がそう思う根拠はなんじゃかのう?」

「実はな……セイバーの夢だったんだ。」

 

突如、目の前から息を呑む声が聞こえる。

ーーやはり。重大なことだったか……!!

 

と、顔を向けると。絶句した表情で、口をパクパクさせているセイバーがいた。

 

 

「あ……あれ?ど、どうした、セイバー?」

「ど…どうしたじゃないわ、馬鹿者!!」

「なーにが真面目な話じゃ!結局その思考に行き着いとるのじゃろうが!」

 

と、とんでもない勘違いされてる……だと!まるで俺が常に、死闘の最中ですら幼女のことしか考えてないようなダメ人間扱いを受けてるーー!!

 

 

「ま、待て、セイバー!落ち着け、ここでポン刀抜くのはやばい!」

「抜かぬわ阿呆っ!全くお主は毎度毎度……どうしてなのじゃあっ!!」

 

ついに堪忍袋の緒が切れたのか、ぽかぽかと頭蓋を殴りつけてくる。って、痛えっ、これ、予想外にっ、痛いぞっ!

 

「お……おお、落ち着けセイバー!安心しろ!セイバーっていっても刀の方だ!!刀!」

 

声が通じたのか、セイバーの腕が止まる。あー、痛かった。

 

「ま、ますたぁよ……お主今度は幼子の肉体だけじゃ飽き足らず、刀にまで興奮するように……」

「なってねぇよ!」

 

謂れのない事実でドン引かれてた。いくら俺といえども流石にこれは否定せざるを得ない。

 

「あのなぁ、お前の夢ならそりゃ幾らでも見たいと思うが流石に日本刀の夢を見たいとは思わねぇぞ……?」

「〜〜〜〜!!お、お主は本当に……ゴホン。」

 

突如セイバーは顔を紅潮させると咳払いをして、そっぽを向きながら話し続ける。そんなにまずいこと言ったのか、俺。

 

「ま、ますたぁよ。頼むからそういう事は他では言うなよ、捕まりたくなかったらのう。」

「え、お、おう。それで、分かってくれたか。」

「あ、ああ、うむ。儂の刀の姿、本来の儂の夢、じゃったか。具体的にはどんな夢だったのじゃ?」

「あぁ……….なんか、鍛冶場みたいな所でさ、お前が…….まさに打たれた瞬間を見たんだ。」

「ーー!儂が……打たれた瞬間じゃと!?」

 

セイバーはそれを聞いて思わず血相を変える。

 

「あ、あぁ……やっぱし、重大なことだったのか?」

「確かに、重大…といえば重大じゃな。いや、どちらかと言えば重要といったほうが正しいかの。」

「どういう、ことだ?」

「恐らく……儂の記憶じゃ、それは。」

「セイバーの、記憶……?」

「うむ、サーヴァントと契約したマスターは、そのサーヴァント生前の記憶を夢に見るらしいのじゃ。また、その逆も然り、な。」

 

そうか、あれはセイバーの夢……いや待て、だとするとおかしいぞ。

 

「けど、それっておかしくねぇか。だって、セイバーは記憶が無い、って。」

 

それに対してセイバーをコクリと頷き肯定し、続きを口にする。

 

「うむ、儂は確かに記憶が無い。じゃが、打たれて振るわれた記憶自体はあるはずなのじゃ。しかし真名と共に、それも思い出せなかったという訳なのじゃよ。」

「なるほど……ってことは、まさか。真名の手がかりがあの夢には!?」

「うむ……その可能性は十分にあるじゃろうな、何かヒントでもいい、思い出せるかますたぁよ。」

 

そう言われて思い返そうとするも元々薄れかけている夢だ、なかなかハッキリとは思い出せない。

 

「うーー……ん。確かに、何か銘を付けてたはずなんだけど……蒸気の音で何も聞こえんかったなぁ。あ、そういえばお前を打ってた刀工がお前は妖刀になるしかなかった、とかこんなの作れちゃう俺の才能が末恐ろしい、とか言ってた気がするな……ダメだ、これ以上は思い出せない。」

 

俺の記憶を聞いたセイバーは口元に手を当てて何やら考え込み出した。

ふむぅ……セイバーって考え込む姿がわりと似合うよなぁ、折角だしちょっとパシャってもバレないバレない……そう考えて懐から消音カメラを取り出そうとすると、セイバーが口を開く。

 

「何ごそごそやっとるのか知らんが、阿呆な事はやめるのじゃ。それより、今のことから分かったことはどうやら2つ、あるな。」

「え、や、やだな俺がこんなシリアスな状況でそんなことするはずがないだろ、うん。というか2つも分かったのか、それって一体……?」

「うむ、一つは恐らくの儂は名のある刀工によって打たれた妖刀だということ。この国に妖刀として、かつ名のある刀工に打たれたものは少ないじゃろう、これだけでも大分儂の真名に近づけたと言える。」

「なるほど……後で調べに行こうか。それで、セイバー。もう一つは?」

「それはじゃな……」

 

セイバーが言葉を溜めるとこちらも思わず息を呑む。一体何が分かったというのか。

 

「儂を打った刀工がナルシスト野郎じゃったってことじゃ!」

 

……………え?

 

「儂みたいな半端もん作っといて何が『俺の才能が恐ろしい……』じゃ!いい加減にするのじゃ!」

「お、おう落ち着けよセイバー。で……それだけ?」

「それだけじゃが、何か?真名に関しては調べれば大体絞れるじゃろう。それとも何か、文句でもあるのかのう?」

「い、いや、ないけど、うん。でもセイバーは半端もんじゃないと思うぞ、うん。」

「〜〜〜!!じゃ、じゃとしても!儂が気に食わないから駄目なのじゃ!」

「そ、そっか。まぁでもそんな深く考えなくてもいいと思うぞ、うん。」

「……ふん、まぁいいわい。それじゃあ、これからどうするのじゃ、ますたぁよ。」

「そうだなぁ……図書館にでも……」

 

そう考えていると突如携帯が鳴り出した。ワルキューレの騎行が流れてくるということは、錬土から、それも緊急通話だ!まさか何か学校であったのか!?

 

「もしもし、どうした錬土!」

『どうした錬土、じゃねぇよ!お前なんで学校フケてんだよ、三日連続無断欠席になりそうだから委員長がかなりガチギレしてんだよ!!』

「三日連続無断欠席……あっ!!」

 

そうだ……うちの学校は三日連続無断欠席すると二週間の間学年中のトイレ掃除を押し付けられるんだ……そして異性のトイレの担当は本人でなくクラス委員長……キレるのも当然だ。

 

「す、すまん完全に忘れてた!」

『忘れてたじゃねぇ!と、いうか俺にとばっちりが飛んできかねないんだよ!!頼むから早く、今すぐ来い!!でなきゃ呪うぞ!』

 

そう言うが早いか通話はプツリ、と切れる。

どうするべきか。このまま錬土を見捨てた方が楽だし暫く学校に行くのもキツいことを考えるとこのまま無視する方がいいだろう。そうしよう、うん。

 

そう考えていると、再び携帯が振動し、メールが届いたことを通知する。錬土からのメールか。メールを開くと『お前はそのままだと俺を見捨てて帰りそうだから来ざるを得ないようにいいことを教えてやる。昨日からうちのクラスに転入生が来ててだな。…………そいつ、金髪ロリだぞ。』と書いてあった。

 

ふ、ふふ、ふふふふ……流石我が親友としか言う他ないな。完全に俺の行動パターンはお見通しということか。仕方ない、これは行くしか……!!?

 

「な、なんで、コイツが……!?」

 

そうして、添付されて送られてきた写真を見るためにメールをスクロールさていると。

その目に写ったその姿は。

この聖杯戦争の主催者である似非ロリ。レア・アーネスそのものだった。

 




なんか君たちイチャつき過ぎじゃないですかねぇ……別にデート回でも何でもないのになんでこんなんなってんだ……まぁ、少しはシリアス出来たかな、うん。


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3日目/邂逅

わーい、久々にシリアスしてるよ!
戈咒君でもやれば出来るんだ!


走る。

 

全速力で学校へと向かい、校門を潜る。

 

走る、走る。

 

階段を一足飛びに駆け上がり教室へと向かう。

 

頼む、間に合ってくれーーー!

 

そうして、扉を開けると。

 

「誰も……いない……」

 

遅かった……のか、俺のせいで錬土達を巻き込んでしまった……!!

 

心底から湧き上がる無念の感情と慚愧の心がうちより精神を蝕む。

なぜ……こんなことに……!!

 

「お、やっと来たか戈咒。やっぱあの画像は効果覿面だったなぁ。イザという時の餌になるかもって保存しておいてよかったぜ。」

 

そう、声が聞こえて。

振り返ると、よく見知った錬土の顔がそこにあった。

 

「……っ、お前!よく無事で……!」

 

思わず手を握りしめる。

 

「う、うおっ!お前何いきなり人の手を握りしめてんだ気持ち悪い。てかお前もはよしろよ、もう全員化学室に向かってるぞ。」

 

……………へ?

 

「どうした、鳩が豆鉄砲食らったような顔しやがって。今日実験の日だから化学室で授業やるって昨日……あ、お前はいなかったのかそーいや。まぁいい、とりあえず向かうぞ!」

「お、おう。ちょっと待て今教科書持ってく!」

 

そうして前を走る錬土の後を駆けながら霊体化させておいたセイバーと相談する。

 

『どうやら、魔術の痕跡も感じられぬし。誰も被害にはあっとらんようじゃの。』

 

あぁ、そうみたいだな。だがそうなると気になるのは何故行動を起こしていないか……警戒は怠らない方が良さそうだな。

 

『うむ、儂も少し周囲に気を配るとしようかの。じゃが、もし儂が間に合わぬタイミングで襲われたならこれを抜くのじゃぞ。』

 

セイバーがそう言うと同時に腰にズシリとした感覚を感じる。刀そのものも霊体化させることが出来たのか……!

 

そうこうしているうちに化学室は目の前だ。奴が、いないことを祈るしかない。

息を呑み、覚悟を決めて扉を開く。

 

ーーしかし、そこには。見慣れたクラスメイトと化学の教科担任がいるだけであった。

 

「あー!ようやく来たわね、伍道君!全く無断欠席なんてなにかんがえてるの!?」

 

げ……委員長だ。めんどくさいのに見つかったな……ここはさっさと自席についてやり過ごそう……そう考えていると教科担任から声がかかる。

 

「伍道、あなた遅刻なら生徒指導室寄ってきたの?」

「あ、いえ。まだです。」

「そう、なら先に向かって入室許可証貰ってきなさい。」

「あ…はい。」

 

そーいやそんな校則もあったな、と思い出される。とはいえレアはいなかったのだ、これで少しは安心できるというものか。

そう心の中で一人呟きながら、化学室を出て生徒指導室へとのんびり歩き出す。

授業中の廊下特有の、ヒヤリとした静謐な空気がどことなく肌に、喉に、心地いい。

 

 

ーーー「あら、来てくれたのね。私の玩具(こいびと)さん♪」ーーー

 

 

だから。

そう、だから。

その(じゃあく)は余計にまっさらと響き。

その(どく)は余計にねっとりと絡む。

(くう)を侵蝕して、気を凌辱する。

彼女の言葉には、呼吸には。それだけの『魔』があった。

 

「レア…アーネス……!!」

「はぁい、2日ぶりくらいかしら、戈咒君♡」

「なんっ……で!お前が、ここに、いるんだ!!」

「何でってぇ、ひっどいなぁ。私はキミに興味がある。だからキミをもっと識りたいのよ。そうやって近づいてきた女の子をそんな無碍にしちゃうんだァ、ひどいなぁ……」

 

そう言いながらレアは肢体をくねくねさせつつこちらを上目遣いに見やる。

並の男なら、堕ちるのかもしれ無いが……俺にはそんなものは効かない!

 

「ハッ、残念だったな魂BBA!俺は幼女にしか興味の無い、ロリしか好きになれないロリコンだ!一昨日来やがれ!」

 

と、思いっきり啖呵を切る。

 

『お主、もう少し真っ当な……いや、もうなんでも良いわ。』

セイバーには不満げに呆れられたがそうだとしても仕方がない。俺は、ロリコンであるのだから。

 

「ふ、ふふふ。やっぱり、だ。魅了ももはや君には効いてない。そして呼吸に混ぜて流した毒も、言葉に混ぜた呪いも全てがキミには効いてない!」

 

仕掛けてきていたのかー!しかし、セイバーと契約した、セイバーの担い手となった影響か。レアの言う通り確かに肉体には何も変化はない。

一方のレアは身体を確認している俺を見つめながら、頬を紅潮させ、表情を喜悦に歪め、恍惚としながら絶頂したかのように嬌声をあげる。

 

「あぁ、あぁーー!!なんて素晴らしいんだ、(わたし)が効かない人間がいるなんて!それを犯して、蹂躙し尽くせたなら。それはなんてーー、幸せなんだろう!!」

「気狂いが……セイバー!」

『うむ、任せるのじゃ!』

 

セイバーに呼び掛けると同時に霊体化した彼女がスルリと体内に入り込む。何度も感じたこの感覚。霊体化させた刀を実体化させ抜き放つ。

刀の呪い(どく)が血を求め叫ぶ。

斬りたいという感情(こころ)が既に操作権の無い肉体を疾らせたがる。

 

だが、心なしかこの間より毒の荒々しさが弱い様な……いや、俺を見ているようで見ていないと言った方が正しいのだろうか。何か、致命的にボタンを掛け違えたような。そんな気の所為(いしき)が俺を掠めるも、血の狂気にその迷いはすぐに呑み込まれる。そうして、俯瞰的な意識へと身をやつす。

 

「ふぅ、戦闘準備完了……かの、ゲホッ。……どうやら、貴様はバーサーカーを今は連れていないようじゃの。ならば殺すのは容易い。」

 

そういい、セイバーは令呪の赤い光が宿る、奴の眼球に切っ先を合わせる。

 

「貴様がその瞳の令呪を使うより早く儂の刀はその脳髄を令呪ごと貫くぞ。よって抵抗は無駄じゃ。」

「あらら、詰み(チェック)かしら。」

「その通り、王手じゃよ……折角じゃ。辞世の句くらい述べてみせい、聞いてやろう。」

 

そう、俺の口元が緩み。

セイバーが不敵に嗤う。

やはり、おかしい。いつもならここまでセイバーが肉体を支配してるなら俺の意識は完全に妖刀としての意識(ほんのう)にとってかわられているはずだ。

……けど、なにがおかしいんだろう。

 

そう考えているとレアが口を開く。

 

「あのー、さ。私別に戦う気は無いんで、その物騒なの下ろしてくれない?」

「……は?下ろす訳がなかろう。貴様は生かしておいたところで害にしかならぬ魑魅魍魎の類よ。それにここで殺せばバーサーカーも消滅に勝利に近づけるのじゃ、理由が無いわ。」

「そうかー、なら仕方ないや。バイバイ、セイバーちゃん。」

 

そう言うとレアは刀を掴みそのままズブリ、と。自身の眼球を、脳髄を、抉り、貫くまで押し込んだ。

 

「んなっーーー!!?」

 

ズブリ、ブチュリ、グチュリと脳味噌を掻き回す音が響く。セイバーも思わず呆然としていたが、何かに気づいたように顔を歪めると一気に刀を引き抜いた。

 

「貴様……何をした……!?」

「ふむふむなるほどぉ、妖刀の呪い(どく)をもって、私の毒(どく)を制すってやつかー。そうやってたとはねー。けどそうすると今撃ち込んだのもすぐにかき消されちゃうかなぁ。」

 

言われた通り、確かに指先から肉が変色し始めているのが見える。刀も切っ先から微妙な朽ちかけている。このままでは、セイバーが!!

 

『安心せい、ますたぁよ。じゃが、このままだと少々キツい。スマんが刀の呪い(どく)を多く流させて貰うぞーー!』

 

セイバーのその気合いとともに俯瞰している俺の意識すら血を求める斬妖の如き本能に飲み込まれ乱激の渦にと俺は沈んでいったーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ますたぁの意識は飛ばした。これで後はますたぁの魂に呪いが回るまでにコイツを斬り殺すーー!

 

「あれれー、戈咒君寝ちったんだー。てか、セイバーちゃんまだやる気なの?人払いもそろそろ限界だよ?」

「知らぬわそんなもの……今ここで貴様を斬らずしていつ斬るというのじゃ……!!」

「もー、怖いなぁ。だいたい主催者として隠蔽も図らなきゃいけないんだしあんまし人目を気にしないみたいなこと言わないでよ……でも私の毒じゃまだキミには勝てないからさ、今日は休戦といかない?だって私も戈咒君のクラスメイトなんだから♡」

「何を……」

「戈咒君だって()()()()()()()()()()()()?」

 

ま……まさかっ!

この学校全てを人質に……!?

 

「物分りが早い子は私も好きだよ、私が戈咒君を玩具(こども)にしたらキミと契約してあげてもいいなぁ。」

「……外道め。」

 

そう、吐き棄てるように呟くとレアは心外といったような顔で軽々しく呟く。

 

「何を今更〜、魔術師にとって他人の命なんて綿毛くらいの重さしかないのにさ。というか、それはキミも変わらないでしょう?ーー妖刀◾◾さん?」

「な……何故その名、を。」

 

何故、何でその名に辿り着いてるのじゃ!?儂ですらさっきの夢の話を聞いて、それでようやく仮説程度だというのに!しかし、否定出来ない。身体が、霊基が、それを真実だと訴えている。

 

「まぁ、さ。私にとってはそんなのなんでもいいんだけど。ここは大人しく刀を納めてくれないかな。」

 

学校中を龍旋処(りゅうせんじょ)のようにする訳にはいかない……ここは、従うしかないのか!諸悪の根源を目の前にしてーー!!

 

「何が……何が目的なのじゃ…!!」

 

思わずそう問いかけるとレアは極めて真顔で。

 

「世界を、神の庭にするんだよ。」

 

そう、答えると。

また雰囲気を人畜無害そうな女子生徒のものへと変化させ、にこやかに微笑む。

 

「それじゃあ、納めてくれたみたいだしこれから仲良くやりましょうね、セイバーちゃん!戈咒君にも宜しくねー!」

 

そう、廊下の角を曲がって姿が見えなくなるまで。

こちらに手を振りながら去っていく姿を。

儂はただーー眺めるしか、無かった。

 




龍旋処ってのは毒の地獄です、分かりづらい例えだこと!

あとレアの令呪は右目に浮かんできてます。そんなんありなの?とかあるとは思うだろうけどかっこよければそれは全てに優先されるんですよ!!


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3日目/籠釣瓶

多分今回のネタでセイバーの真名は分かる人なら一瞬かと
それはそうとしてここ数日サボってたのに一気に今日の夜からテンション上げて書いたので疲れましたわ……やっぱ毎日コツコツって大事ですね(当たり前)

あ、今回書き過ぎたんで2話更新です


ゆらり、ゆらり。

陽炎のように虚ろぎ揺らぐ意識がふと、覚醒する。

 

視界が開け、眼前の風景が顕になる。

畳張りの部屋に、色鮮やかな内装。とても煌びやかな部屋だ。そして、目の前には美しい花魁姿の女性が見える。つまり、これはまたセイバーの記憶の、夢だろうか。しかしそれにしては、随分と雰囲気が違う。

 

「あい、お出でんなし。おあがりなんし、お客様。」

 

目の前の花魁の様な女性が声をかけてくる。

おい、まさか。情事の記憶じゃねぇよな、これ。

 

「久しいなぁ、八ツ橋。お前さんが見受けを断ってから、俺はずっとお前に会うのを楽しみにしとったんじゃ。」

 

そう、俺の意識の入った身体は下卑た笑いを浮かべながら言う。

 

「こちこそ、お久しぶりでありんす。今日は、来てくれてありがとうござりんした。」

 

しかし目の前の花魁はたおやかな笑みを崩さず、こちらを受け入れている。

が、しかし。

俺の意識の入ったこの身体は、突如として何もない空から刀を引っ張り出す。いや、これは引っ張り出したというより、見えなくしていたのかもしれない。

そして、その刀はーーやはり。俺の見慣れたセイバー自身であった。

 

おそらく遊郭であるが故に、武装禁止のこの場に突如刀を取り出したこの身体の持ち主に、目の前の花魁は表情を青ざめて怯えを顕にし始める。

 

「じ、次郎左衛門の旦那。な、何をするつもりでありんす。」

「何をだァ?八ツ橋ィ、お前この間は俺に赤っ恥をかかせておいてよく言ったじゃねぇかよォ。なァに、この籠釣瓶(かごつるべ)なら一瞬さァ。」

「ひ、ひぃぃぃ!」

 

目の前の花魁からは先程までのたおやかな仕草は完全に失せ、こちらに背を向けて慌てて逃げ出す。

が、遅い。その背を袈裟懸けに一太刀。物の見事に一撃で、絶命させた。

 

「あァ、あァ、あァ。いいねェいいねェ。ひゃ、ひゃは、ひゃはははははははは!!!!」

 

そう、この身体の主が高笑いをあげているとドタドタという足音共に下男らしき男がやってくる。

 

「き、貴様、八ツ橋に何を!」

「あァん、そうか、てめェも斬ればいいのかァ。ひゃは!!」

 

今度は逆袈裟に一閃。下男も体の前面から血を吹き出しながら倒れる。

それを見届けると、この身体は窓をあけ、物干しと屋根を伝いながら走り出す。そして途中にある遊郭の遊女を斬り、客を斬り。男を斬り、女を斬り。人を斬り、人を斬り、人を斬り、人を斬り人を斬り人を斬り人を斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬りーーーー!!

 

幾十人、いや三桁を越えただろうか。それ程の血を浴びたところで、俺の意識の入ったこの身体は動きを止め。

そして再び、いつかのように意識がブレる感覚を錯覚する。つまり。この身体から意識が離れ、夢から覚める時がーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん……む……。」

 

目を開けると、眼前に広がるは白い天井。横を見渡すとカーテンに覆われており、俺が横たわるはベッド。

ここは、保健室か。

今の、夢はーー

 

『目を覚ましたかっ!ますたぁ!」

「うわわわわっ!!」

 

突如の脳内に叫びかけてくるセイバーに仰天し、思わず声を上げてしまう。

すると、その声に気づいたのか目の前のカーテンがサッと開き、養護教諭が顔を覗かせる。

 

「あら、目が覚めたのね伍道(ごとう)くん。体調が良くなったなら、あと15分ほどで7限目が終わるし教室に帰りなさいな。」

「あ、え、あ、はい。もう楽になったので帰ります。ありがとうございました。」

「いやー、びっくりしたわよ。何てったって廊下で気絶してるんだもん、君。」

「え、あ、はい、すいません。」

 

そうか、レアとの戦いの時、俺はセイバーによって意識を失ってーー

 

「まぁ、次から気を失う程体調が悪くなるより早く保健室に来なさいね、それじゃあ。」

 

そう言うと養護教諭はカーテンを閉めて、奥の事務部屋へと引っ込んでいった。

 

「さて、と。とりあえず、教室に戻るか。そして、セイバー。アレからどうなったのか聞かせて貰うぞ。」

 

籠釣瓶に次郎左衛門、どうにも聞き覚えのある名だがイマイチ思い出せない。だが、その夢の事も気になるが、とりあえずはレアとの戦いがどうなったのか確認しなくてはなるまい。それに、アレは場所的にセイバーの情操教育に悪いから話さない方がいいだろう。

 

『う、うむ……その、じゃな。』

 

廊下に出て歩き始めた頃に、歯切れ悪くセイバーの声が聞こえ始める。

 

『どうした、何かあったのか、セイバー。』

『う、うむ……すまぬっ!ますたぁよ、レアをみすみす取り逃がし……それどころかこの学校中を人質に取られ、儂はなす術も無かった!何が最優じゃ!何がサーヴァントじゃ!儂は……サーヴァント、失格じゃ。』

 

心中での会話だからか、声で言葉を交わすよりもありありとセイバーの悲壮感、絶望、そして自己嫌悪が伝わってくる。

違うんだ、違うんだよセイバー。戦わせていただけで何も出来なかった俺に。気絶していただけの俺にそんなことを言われる資格なんて無いんだ……

そのまま何も言えずに廊下を5分程歩き続けて、セイバーに声をかける。

 

『……セイバー。ありがとうな。』

『……へ?』

『だって、セイバー。俺の為にレアを見逃してくれたんだろ?』

『……………悪いが、ますたぁの頭のおかしい趣味に付き合う余裕も今はないのじゃよ……』

『……いやいやいやいや!!そうじゃない、そうじゃないから!レアがどうこうじゃなくてさ。あの時俺の意識は無かったんだ、俺の意思なんか無視して人質を殺されようとレアを斬ろうと思えばお前は斬れただろう?』

『む……ま、まぁ……それは……』

『それをさ、俺の為にわざわざとどまってくれた。ありがとな、セイバー。』

『か、かか勘違いするでないわいっ!わ、儂はただ……そう!儂はただあそこで勝った所でお主との関係を悪くするのは聖杯戦争全体で見た時得策でないと考えただけなのじゃから!』

『……そっか。でも、それでも俺は嬉しいさ。』

『〜〜〜!!』

 

どうしたのだろうか、きゅうに唸り出したぞ。何か不味いこと言っちまったかなぁ……

そう考えているとチャイムの音が響き渡る。7限目が終わったようだ。丁度目の前に自分の教室も見えた。とりあえず、ホームルームくらいには参加しなくては。

そう思い、教室に入る。

 

「あら、戈咒さん!大丈夫でしたか?」

「れ、レア・アーネス……ッッ!!」

 

教室には入ると、俺の目の前にいたのは先程去っていった筈のレア・アーネス本人だった。

 

「私、昨日付けで鎖山高校2-1に転校してきたレア・アーネスです。これから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「あれ、戈咒お前レアさんと知り合いだったのか?」

 

錬土が俺にそう問いかけてくる。知り合いなんてもんじゃねぇよ……

 

「ええ、先程廊下でお会いしました。急に気絶してしまったので心配してたんです。」

「はははは、おいおいお前いくら金髪ロリに会ったからって感動の余り気絶って。そりゃねえだろうよ。」

 

錬土か思わず笑い飛ばす。そんな簡単な話ならよかったんだがな……とりあえず、人目につかないところに連れ出さなくては。

 

「ちょっと、レア…さん。こっちに来てくれるか。」

「あのう、熱烈なお誘いは嬉しいのですけれど。今からHRですのでそれが終わってからにして頂けますか?」

「流石見境の無いロリコン、いきなりナンパとはねぇ。」

 

違ぇよ!!てかてめぇだけには言われたかねぇぞ錬土!!!

 

「いや、そういうのじゃないから。あと、とりあえず、分かった。」

 

わざわざ俺にそう言ったってことは、向こうも目立つ行動をわざわざ取る気は無いって事だろう。ならそれこそ幸いだ。放課後に、もう1度問い詰めてやる。

 



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3日目/大切なもの

放課後の、校舎裏。

人気のなく、それでいて開けているこの場所はコイツを相手にするのには一番適している。

 

「それで……こんな校舎裏にまで連れてきて、何のようですか?戈咒君。」

 

何を今更、白々しいことを言ってやがる。

 

「おふざけはいい。単刀直入に聞く、お前…何が目的なんだよ。」

 

するとレアの顔から貼り付いたようなたおやかさが消え、そこには可憐(じゃあく)な笑みが残る。

 

「何って……さっきセイバーちゃんには伝えたじゃない。そんなことも忘れちゃったの?それとも聞かされてないほど仲が悪いの?」

「違う。お前の神の庭が云々とかいうどうでもいい目的じゃねぇ。そんなんは聖杯戦争での目的だろう。俺が聞きたいのは、なんで学校に、うちのクラスに来たかってことだ。」

 

レアはいつもの様に笑みを崩さず、されど口端で嗤いながら答える。

 

「何故って、私だって学校生活を楽しみたくなることぐらいあるでしょう?」

「セイバーは魔術師なんてロクな奴がいないとか、魔術の探求以外どうでもいいって人種だって言ってたぜ。そんな奴がそんな為に来るとは思えねぇよ。」

「酷いなぁ、君は目の前のいたいけな少女と、いきなり君の前に現れて君を殺し合いに巻き込んだ幼子の姿をした人外、どっちを信じるんだい?」

「なーにがいたいけな少女だよクソババア。んなもの聞かれるまでもねぇ、ロリを信じるに決まってるだろうが。」

「………いやー、君。筋金入りだね。まぁいいさ、その過ちは君がいつか気づくといい。」

 

レアはそう意味深に呟くと、再び顔にたおやかな笑みを貼り付けて理由を話し出す。

 

「で、私が来た理由だったね。それは君に興味があるからさ、伍道 戈咒。今までで私の毒を弾いたのは君が初めてなんだよ。セイバーちゃんの呪い(どく)のお陰ってのは分かってはいるけど、それでも私としては興味深いことに代わりはない。」

「だから、俺を捕らえる為に、学校を人質に取って迫りに来たってことかよ……!!」

「うーん、まぁ、そんなとこかなー。だからほら、私の『子』になりなよ。心配しなくても悪いようにはしない。永遠に近い生も与えてあげられるよ。」

「ふん、何を言いよる。騙されるなよ、ますたぁ。」

 

と、そこでいきなり霊体化していたセイバーが実体化する。

 

「いや、今みたいなあからさまなのに騙される奴はいねぇよ流石に……竜王の誘い並に怪し過ぎるだろうが。」

 

「あ、セイバーちゃん久々ー。どう?戈咒君説得してくれない?」

「する訳でなかろう、阿呆。」

 

セイバーのすげない反応にレアは唇を尖らせながらとんでもない言葉を放つ。

 

「ちぇー。ならさ、この学校中に設置した私の病毒を、発動してもいい?」

「なッーーー!!」

 

その時、セイバーが背中に手を置いて言う。

 

「落ち着くのじゃよ、ますたぁ。お主が焦っては思うつぼじゃわい。それに、お主が『子』になったところでこの魔性が約定を守るなど到底思えないしのう。」

 

セイバーの諭す声で、思わず冷静になる。

 

「そう……だな。それに、魔術師は無駄と目立つことを嫌うんだったか。そんな大袈裟なことやるはずがない。」

「あららー、気づかれちゃったかー。やっぱ私って化かしあいに向いてないなぁ。」

 

自嘲するようにへらへら嗤うレア。

だがもう種は割れた。躊躇う理由はない。

 

「ここまでだ、レア。観念して大人しく斬られるんだな。」

「ふふふー、調子に乗ってるとこ悪いけどさ。私、誰か特定の人間に病毒を仕掛けなかったとは、言ってないよ?」

「な……に……?」

「惑わされるなますたぁ!ハッタリに決まっとる!」

()()()()()()と、()()だっけ。昨日から転校してきたばっかの私にも色々 構ってくれてさ、それこそ仕掛けるチャンスはいくらでもあったとも。」

「なっ……てめぇ!」

 

咄嗟にそのままで斬りかかろうとするが、目の前に手を突きつけられて思わず身体が動きを停止してしまう。

 

「だから、待ちなよ。私には戦闘の意思は無いんだってば。それにさ、これで無理やり『子』にしたいとも思わない。だから、さ。」

 

そうして指を構える。指に魔力が集中しており、何か魔術式を、いや。この状況で発動するとしたらアイツらに仕掛けたソレしかない。

 

「私に、これを使わせないでよ。」

「ーーーーッ!!」

 

これ以上、振れない。振り下ろせない。

 

「分かってくれたならいいんだ。それじゃあ、これからクラスメイトとしてよろしくね、戈咒君。」

 

そう言い放つと俺とすれ違うようにしてレアは去っていく。

その時、追い放つように声をかけ、言葉を放つ。

 

「1つ……言っておく。俺はロリコンだ。ロリが大好きだ、愛してる。」

「と、突然何を言い出すんじゃお主……」

「いや、知ってるよ?私もそれくらいは流石に。」

 

セイバーは俺に呆れ顔を向け、レアも俺に苦笑いを向ける。

 

「けどな……ロリコンにもそれ以外に大事なものはあるんだよ。アイツらは、ベクトルは違えど幼女達と同じくらい大切なんだよ。だから……もし何かあったら、絶対殺してやる。」

 

「ふ、ふふ、ふふふふ。ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!いやぁ、いいなぁ!最っ高の殺害宣言(ラブレター)だ!!ふふ、ふふふ、そうならないといいなぁ!ははははははは!!!」

 

そう、高笑いと、微かに鼻の曲がるような残り香を残して。レアは消え去った。

 

「………セイバー、この聖杯戦争。勝つぞ、何があっても。」

「うむ、任せよ。……それはそうと、先程の啖呵は。様になっておって、なかなかカッコよかったぞ、ますたぁ。」

 

な、な、ななな〜〜〜〜!!!

 

思わず顔が熱くなる。

 

「ど、どうしたのじゃますたぁ、顔を赤らめてまさか奴の毒でも食らったか!?」

「ち、違ぇよそんなんじゃねぇよ問題ないぞ!とりあえず今日は帰るぞセイバー!」

「え、あ、うむ。なんじゃ、この釈然とせんのは……」

「なんでもないっ!」

 

そうして、茜色の空の下。

俺達は家へと帰宅した。

 




殺害宣言(ラブレター)のルビ振りは割とお気に入り
それにしても、今回で初期からの課題の一つであったシリアスなロリコンってのに一つの答えを見つけられたようなかもするのですが、どうでしたでしょうか


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3日目/2人の休息

長めなので分割したら少しこっちが短くなっちゃいました。
安定した分量で更新するのって、難しいなぁ……


学校からの帰り道。

俺達は商店街の総合スーパー『オールマート』に晩御飯の材料の買い物に来ていた。

 

「……おい。何お前はカゴにさらっとお菓子入れてんだ。買わねぇぞ?」

「えー……そんな無体な事を言わぬでも……ほれ、儂も今日は頑張ったじゃろ?」

 

セイバーは猫なで声を出しつつ、そう上目遣いでこちらを見てくる。

ぐぼァッッ……やばい。益々こちらのツボを心得て来てやがる。それこそまるで()()()()()()()()()()()。とはいえ、これはまずい。幾度も言うように今月の家計は異常にピンチなのだ、節制に努め他ごとに割く余裕など………

 

「ありがとのう、ますたぁよ。」

 

ロリのおねだりには、勝てなかったよ………

 

「このマシュマロなるもの、前から気になっておったのじゃよ。はむぅ……なんじゃ、この柔こさは!!神の発明か!!これを生み出したのは神域の天才に違いないのじゃ!!はむはむふがふが。」

 

見るとセイバーはまるで齧歯類のように頬を膨らませてマシュマロを食べていた。

 

「おい食べ過ぎだダメイバー、後で焼く分が無くなるだろ。」

「ん〜〜む〜〜!」

 

そうして袋を取り上げると頬をいっぱいにしたまま不満気に睨んでくる。

コイツどんだけ甘いもん食いたいんだ……

 

「はぁー、分かった分かった。食後にクッキーくらいなら焼いてやるからそれで勘弁してくれ。」

「ホントじゃな!?嘘じゃったら舌刻むからの!?」

 

お、おぉ……すげぇ食いつきだな……これからはこの手に限るな。

 

「分かったってーの、俺も舌刻まれたくはないしちゃんと作るさ。」

 

そうこうしているうちに帰宅。

セイバーにはテレビでも見てもらってるうちにさっさと作っちゃうか。今日のメニューは炒飯だから、野菜とハムを刻まなきゃな……ん、待てよ?

 

「ちょっと、セイバー。」

 

セイバーをちょいちょいと台所まで呼び寄せる。

 

「……んむ?なんじゃ、ますたぁよ。」

「ちょっと思ったんだけど、この野菜とハムを全て微塵切りに出来るか?」

「……お主、なかなかに剛毅な奴じゃの。普通サーヴァントに、それもその武装で料理の手伝いしろなんて言わぬぞ。」

「いやー、だってセイバーの腕前なら一瞬で終わるかなーって。それに実体じゃないもう1振りの方なら汚れとかも無いだろうし?と思ってさー。」

「いや、そういう問題ではないじゃろ……まぁ良いわ。これくらい十秒で終わらせてやるのじゃ。その代わり……」

「ああ、分かってる。今から生地を作るから待っとけ。」

 

そうして任せろとばかり親指を突き出すとセイバーも満面の笑みとともにサムズアップして返してきた。

さて、じゃあ向こうはセイバーに任せて、米が炊けるまでの間にクッキーの生地も作るとしよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうして夕食を終え、約束通りセイバーにクッキーを振る舞いながら一服ついていると、セイバーが提案をしてきた。

 

「なぁ、ますたぁよ。お主、見回りに行く気は無いかの?」

「見回り?どうしてまた、そんな急に。」

「なに、今日の1件でお主もやっと本気で聖杯戦争に臨んでくれるようになった訳だし、今までのように受身なだけでなく攻めの姿勢。ついでに情報収集も兼ねて行くのはどうかと思っての。本来は昼にやろうと思ってたんじゃがレアのやつが学校に通う以上そうそう休むことも出来まい。」

 

確かに……昼が基本的に学校という予定で埋まってしまった以上、何かアクションを起こすなら夜が主体になるのは必然か。そこで時計をチラリと見やると時刻はちょうど10時を回ったところか。

 

「セイバーの言う通りだな……じゃあもう少ししたら出てくか。こないだは結局案内できなかったこの街の地理の案内も兼ねようと思うから港の方に行こうと思うがいいか?」

「うむ、構わぬぞ。じゃが、まずは……もう一杯紅茶を頼む。砂糖たっぷりでの。」

「はいはい分かりましたよお姫様。」

 

そう呟きながらティーポットの中が空になるまで注ぎ切る。

場合によっては今夜から早速戦闘になるかもしれない。

だから今は、セイバーとの束の間の休息(ティータイム)を楽しむとしよう。

 

 



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3日目/umbilical cord

夜、10時半すぎ。

鎖山ハイツ2B号室の自室を出て、街灯の灯のみが照らす闇の中をセイバーと2人、埠頭方面に向けて歩き出す。

 

「にしても……レアか。厄介なのに目をつけられたなぁ、俺も。」

「全くじゃよ、お主女難の相でも出とるんじゃないのか?」

「うーむ、あながち否定出来ない……あ、そこ右に曲がって。そこからバスで向かうから。」

「なんじゃ、歩いて向かわんのか。」

「遠いから時間かかるしな。それに帰りはバス無いから嫌でも歩きになるって。」

「ふむ、なるほどのう。」

「だから霊体化頼むぞ、セイバー。」

「え、何故じゃ?」

「そりゃこんな夜遅くにロリっ子と2人でとか間違いなく誘拐に思われてポリスメン呼ばれるからだろうが、いやーあの時は大変だったなぁ。」

 

「……え、え、え。」

 

ふと横を見るとセイバーが50m近くも距離をとっていた。

それを見ていまの失言に気づく。

 

「い、いやちょっと待って待って!違うから!誘拐はしてないから!」

「いつかやらかすやらかすとは思っていたがお主まさか、そこまでとは……」

「だから勘違いだから!迷子の幼女見つけたから丁度住所も調べてある娘だったし家まで送り届けただけだから!!」

「お主……それ弁明どころか別の罪状の告白になっとるぞ……」

「捕まりかけたけど無事にやり過ごして送り届けたから!」

「儂はますたぁが捕まるだけでこの街の幼子は安心して暮らせるようになると思うぞ……」

 

冷めた目付きで俺を見続けてくるセイバー。おっかしーなー、少しは懐いてくれたと思ったんだけどなぁ。

 

「はぁ、まぁいいわい。儂の認識が甘かったということじゃろう。」

 

溜息をつきながらそう言うとセイバーはふっと姿を霊体化させ、俺の横に潜む。

 

『それで、じゃ。そのバスはいつ来るのじゃ?』

『うーむ、もうそろそろだとは思うが……おっ、来た来た。』

 

そうして乗り込み、バスに揺られること30分。

 

『次は終点、守掌港です。お忘れものの無いようにお気を付けてお降りください。』

 

終点のアナウンスでうつらうつらとしていた意識が覚醒する。

 

『お、到着か。起きろセイバー、もう着くぞー。』

 

霊体化しながらうとうとしてるセイバーに対して声をかけて目を覚まさせる。

 

『ん、む、マシュマロ……いっぱい……はっ!』

『お、目ぇ覚めたか。てかなんだその寝言。まぁとりあえず着いたからこっちゃ来い来い。あ、霊体化はもう解いていいぞ。』

 

バスから降りるとそう、セイバーを招き寄せる。

 

「なんじゃ急に……ここか港かの?」

「あぁ、割と眺めいいだろ。でもそれ見に来たわけじゃなくてさ、ここは夜だと人目につかないんだよ。だかや、セイバー頼みがある。」

「お、おお主まさか……儂に…」

「あぁ、お前に魔術を教えて欲しいんだ。最低限の自衛用で構わない。守られっぱなしじゃなくてせめてお前の手助けになりたいんだ。」

「やらしいことを……って、へ?」

「ん?」

 

え、今なにかすっごいことが聞こえたような。

 

「え、セイバー。今、なん「うわわわわわわ何も無いのじゃ何も!それより魔術じゃな!分かったぞうむうむ!」

 

「え、あ、お、おう。」

「そ、それで魔術じゃったな。ハッキリ儂も門外漢じゃし、どちらかというと呪術みたいなのの方がメインなんじゃが……」

「じゃあそれでもいい、俺もこのまま守られっぱなしは嫌なんだよ。」

「うむむむ……じゃが…….うむむ。」

「たのむ、セイバー。俺はお前の足でまといにはなりたくないんだよ。」

「う、うむ、むむむむ〜〜!

…………はぁ。分かったのじゃ。なら、一つだけ、これだけじゃぞ。それと、多用は禁止じゃ。」

「ほ、ホントか!で、どんなのなんだ!」

「慌てるな、ますたぁよ。それに教えるとは言ったがお主は魔術回路こそあるものの魔術師ではないし魔術基盤にアクセスも出来ない。じゃからこれから使えるのは儂と契約してるから無理やり使えるだけの裏技と心得ておくのじゃぞ。」

「あ、あぁ分かったよ。で、一体どんなのなんだ。」

 

セイバーは一呼吸ついてらそれから躊躇うように息を吐き、その名を口にした。

 

「ガンド撃ちじゃよ。」

「ガンド撃ちって言うと北欧のルーンか……?」

「厳密には違うがの。儂とて日本出身故に馴染みはないが、この儂を打った刀工にはその辺も含めて魔術の心得があったのじゃろうな。知識としては入ってるいるが故に儂と契約している限り使えるじゃろう。とはいて、今のままでは儂が取り憑いてないと使えん。」

「ふむ……ってそれじゃダメじゃねぇか!」

「……じゃから、人の話は最後まで聞かぬか。その為に今からやってやるんじゃよ。」

「………?」

 

そう言うとセイバーは躊躇うように顔を伏せ、首を振って顔を上げ、再び俯き、という行動を幾度か繰り返すと決意したかのようにこちらに向き直る。

 

ーーそして。

 

ーー次の瞬間、気づいた時には。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「〜〜〜〜〜〜〜!!!??」

 

舌と舌、粘膜と粘膜がねっとりと触れ合い、絡み合う。

 

俺の唾液がセイバーの口腔への染みていき、逆にセイバーの唾液が俺の口内から魔力へと、魂へと溶けていく。

 

息をつかせぬ蠱惑的な魅了。

息を呑み込む倒錯的な魅力。

視界は暗澹に閉ざされ、ここにいるのにここにいないような錯覚を受ける。

 

魔力の経路(パス)はより太くなり、因果は同期する。おれの魂の一部が溶けだし、セイバーの魂と混ざり始める。

その量は僅かだが、たとえ僅かといえど他者の魂など。ましてや人の身にとっては過ぎたる毒にしかならない。

 

身を裂くような激痛。

自身という存在が犯され、人生という過去が穢されるような苦痛。

それだけで、生きたくなることをやめたくなるような。

他人(じぶん)自分(たにん)になるような気持ち悪さ。

俺という存在が、俺という存在価値(アイデンティティ)が、ポロポロと剥落していく。

余りの絶望に全てを忘れ、投げ打って絶叫しそうになり。

そこで、ふと我に返る。

 

 

 

ーー辛い。とてつもなく辛い。

 

ーーーだが。それは俺だけじゃないはずだ。

 

ーー目の前の女の子も同じだけの辛さを味わってるはずなんだ。

 

 

全て、俺の我儘の為に。

それなのにここで投げ捨てる。

ふざけるな、そんなものーーロリコン失格だ。

いいやーー男としても落第だ。

ここで踏ん張らないで、いつ踏ん張るんだーーーー!!

 

 

ーーーーそれから幾刻が経ったか。

 

先ほどのまでの苦痛は嘘のように晴れ、視界は再び目の前の景色を映し。

ぷはぁ、とセイバーが唇を離した。

 

「……どうじゃ?儂の接吻は。」

「〜〜〜!ん、んんん、なな、なななななななななななななな!!!!!」

 

咄嗟に先までの苦痛すら忘れて頬が熱くなる。いや、額まで熱くなっているかもしれない。

だめだ、口は酸素を求める魚のようにパクパクと必死に動くも言葉が出ない。

落ち着け、落ち着け俺ーー!

 

 

 

「……どうじゃ、じゃねぇよ。せめてやる前に一言言いやがれ。」

 

漸く落ち着いた心で、必死に言葉を発する。

しかしその必死の抵抗はすげなく受け流され、やれやれと言わんばかりに反論される。

 

「言ったらお主あーだこーだ言って、、必死に断ろうとするじゃろ。ますたぁ、チキンじゃし。」

「なっ………!?」

 

とてつもなく不名誉なことを言われた気がする。これは反論せずにはいられるか。

そう思っているとセイバーは俯くように続きを呟く。

 

「それに、じゃ。期待させてあんな苦痛を与えるのも嫌じゃからの。」

「ふ、ふん、あんなもん全然大したことなかったっての!」

 

思わず虚勢を張る。意味なんてない。でも、何故かそうせずにはいられなかった。

 

「ふふ、ふ。そうか…………さて。それじゃあ試しに1発撃ってみるかの。」

「おう!えーと、指を向ければいいんだっけか?」

「うむ、あのコンクリートの壁でも狙って撃ってみるといい。指先から発射するイメージじゃ。」

 

言われた通り壁に向き直り右手の人差し指を向ける。意識を指先に集中させ、弾丸を撃つイメージでーー放つ!

 

それと同時に、赤黒い呪いの塊が壁に激突し、破壊音と共に穴を穿った。

 

「すげぇな……ガンドってこんなやばい呪いだったのか。」

「ん、いや?普通は風邪をひかせる程度で破壊力なんて無いぞ。ただ儂と呪いの親和性が高くて、更にお主は魔力量だけはやたらあるからのう。上手くハマったというだけの事じゃ。それより、じゃ。」

 

セイバーは急に声のトーンを落とし、警告するように告げる。

 

「今、ガンドを使えるようにする為にお主と儂の魂は端っこ同士を溶かして混ぜて繋げてある。今までのように魔力の因果線(パス)ではなく、魂同士がへその緒のように結びついた強固な繋がりじゃ。じゃが、それはそれだけお主の寿命が縮まるとも言える。契約当初、儂を使い続ければ三ヶ月で魂を喰らい尽くす言ったが今はもうそれどころではない。3週間あるかどうか、じゃ。」

 

3週間……それは、かなり短い。

 

「しかも、儂を振るったりガンドを撃てばその度に儂との同調が進み、お主の魂は少しずつ儂の、妖刀としてのものに侵食されていく。それを………ゆめゆめ忘れるなよ、ますたぁ。」

「……あぁ、分かってる。」

「ふん、ならいいのじゃがのう……さて、用事も済んだのじゃろう?そろそろ帰らぬか、此処では潮風が肌寒くなってきおった。」

「あ、そうだな。じゃあ……」

 

 

ーー瞬間。

 

地響きが埠頭を襲う。

 

「な、なんじゃ……!?」

 

海を見やると水面が漣立ち、まるで何かを畏れるかのようにすら感じ取れる。

 

「まさか……サーヴァント…!?」

 

地響きは益々大きくなり。最高潮に達したその瞬間。

目の前のマンホール、その蓋が大空高くへと水流により打ち上げられた。

 

「んなーーーー!!」

「こ、これは……!!」

 

マンホールの重い蓋をはね飛ばした水流の勢いはとどまる所を知らず、垂直の濁流として打ち上がり続ける。

 

そして、その滝のカーテンから出てくる人影が一つ。

 

「ん、なんだぁ。なんか見た顔だと思ったら、こないだの坊主じゃねぇか。ほかの2人はいねぇのか?」

 

 

それは、セイバー召喚よりも前。あの幽霊屋敷で出会った、ライダーを名乗る男だった。

 




久々のライダーさん登場!ホントいつぶりだよコイツ!

あと戈咒君はカッコいいこと言ってるふうだが傍から見ると幼女に唇奪われてるとかいう過去最高レベルに(社会的に)やばい状態だから困る


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3日目/カニバルボーイズアンドガールズ

今回、場面転換的なのを少し変えてみました


 

「よう、久々だな坊主。奇遇じゃねぇか。ん……その小娘は、サーヴァントか。」

「ら、ライダー、さん。」

 

マスターとなったいまだからこそ分かる。漏れ出づる神威はそれだけでここにいる俺を圧迫して、まるで荒れ狂う大海の中1人溺れているような錯覚すら覚えてしまう。

 

「ますたぁよ。お主、あのサーヴァントと知り合いじゃったのか?」

「あぁ、以前に、な。勿論聖杯戦争を知る前だ。ライダーとか言われても日曜朝的な意味だと思ってたけどな。」

 

けれど、今聖杯戦争を知ってから考えればわかり易すぎるほどにヒントは出ていた。そもそも、あの屋敷自体マスターが潜んでいたのだろう。元々人が立ち寄らない空き洋館、拠点とするにはもってこいじゃないか。そしてあの時にライダーの言っていた魔女というのがおそらく、ライダーのマスター。

 

……と、ここまで考えてふと思い出す。あの時の都市伝説は確か幽霊少女(ゴーストレディ)が現れるとかそんなん……つまり、ライダーのマスターもロリ……!!!これは確認しなくては。

 

「……ライダー。戦りあう前に1つ、確認しておきたい。」

「お、なんだ、質問ごとか?」

 

「お前のマスターは()()()()()?」

 

夏の夜の埠頭、開けた夜空の下の空間に静寂がはしる。

 

「ふむぅ、詳しい年齢までは気にしてねぇが……ガキンチョではねぇが、大人でもない。お前さんと同じくらい、ってところだろうぜ。」

 

思わず額に指をやる。

 

ーーーーー残念、だ。

まさか、俺の夢見た幽霊少女(ゴーストレディ)は所詮幻想に過ぎなかったとは……な。

 

思わず心中で自重しながら。横のセイバーを見やる。やはり俺にとってのベストパートナーは……って、あれ?

なんか、めっさ、プルプルしてません?

 

「ど、どうしたセイバー!体調崩したか!?はっ、ひょっとしてさっきのが何かお前に負担を……!?」

 

 

「ますたぁよ……お主、儂がどれほどの覚悟でさっきの行為を行ったと思っておるのじゃ……?」

 

へ?なんだって?

 

「すまん、もう少し大きい声で頼む。もし声が出せないなら筆談でもいいから、なにか必要なものでもあれば…」

「ば……」

「ば??」

 

バケツ?バンバンジー?それとも晩御飯か?

 

「バカァァーーーーーーーーーッッ!!!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーッッ!!

 

耳をつんざくような叫び。

その一声とともに、セイバーは何処かへと走り去ってしまった。

 

な、なにかやらかしてしまったろうか。何が一体まずかった?俺はどこで間違えたんだ!?

 

「ふは、はっはは、はっははっははははははははははははは!!!!おもしれぇなお前ら!!」

 

特大の笑い声で思考が現実に引き戻される。そうだ、おそらく俺が原因だがその理由はともあれ、目の前にはライダーがいる!!

何とかしてこの場をやり過ごさねば探しに行くどころじゃない!

ここは、どうにかしてでも時間を稼ぐは見逃してもらうためになにか手立てを考えなくては……!

 

「な、なぁライダー。1つ提案があるんだが。」

「なんだ?聞いてやろう。」

「お、俺達と。同盟を組まないか?」

 

た、頼むっ!受けてくれ!ここで俺が死んだら、セイバーも消えちまう!そんな事、させられるかーー!

 

「ふ、同盟か……断る。」

「な、何故だっ!俺達は未熟かもしれないが、アサシンだって倒してるんだぞ!」

「理由は2つ……いや、3つに増えたか。」

 

そう言うとライダーは指を立てて話しだす。

 

「1つ目は俺は聖杯戦争の参加者ではあるが、あくまでも俺のマスターの協力者に過ぎん。俺が聖杯戦争について考えることはない。」

 

そうして、ライダーは指をもう1本立てて続きを話す。

 

 

「2つ目、そもそも自身の功績に拘るマスターが、同盟を組むとは思えん。」

 

交渉……失敗か、何か何か、何かないのか!

 

「そして3つ目、これは断った理由というよりは訂正だが……アサシンは未だに生きている。」

「……なっ!!」

 

突如の宣言に思わず思考が固まる。

 

「だ、だが、奴は確かに俺が……」

「詳しくは言わんが俺は確かに確認した。そうして……実際ここに現れた。」

 

そう言うや否や、未だに水の噴き出るマンホールから複数の影が飛び出て、地面に着地する。

 

その中には、あの時確かに斬ったはずの。俺を喰らおうとしたアサシンの姿があった。

 

 

「な、何でだ……お前は確かに斬ったはず!それに、何でこんなに沢山っ!」

 

「んー、んー、んーー?あっっ!!テメェ、俺をぶった斬ってくれやがったクソったれセイバーのマスターじゃねぇか!!どうやらセイバーもいねぇみてぇだし、今度こそ喰らってやるぜぇ!」

 

アサシンはそう、とびかかろうとするが。

 

「待ちなよ、セドリック。アンタは逸るからしくじるんだよ。物事は順番に、だ。先にこのムキムキマッスルを片付けてからだよ。」

 

その暴走は、横にいるTシャツとホットパンツ姿の少女に止められる。どことなく青白さを感じさせる皮膚に、痩せぎすの姿。姉弟かなにかだろうか。

よく見ると残りの3人も同じような服装をして、見た目も似通っている。まさか、家族でサーヴァント……なんてことがあるのだろうか?

 

「えー、でもよぉ、ミランダ姉ちゃん。あのムキムキマッスル、サーヴァントといっても俺らから逃げたくらいだし()()()()()()()4人も居れば十分でしょ?それよりセイバーがいないうちアイツを肉しないとさぁ……」

「確かに、セドリック兄貴の言い分にも一理あるね。兄貴にしては珍しく。」

「あぁ?何が珍しくだシバくぞジョージ!」

「やるか?クソ兄貴。昨日も俺の肉喰いやがって、ふざけんなよ?」

「やめなさいよみっともないわぁ、2人とも。ねぇアニー。」

「そうねぇみっともないわぁ、2人とも。えぇジェニー。」

 

そうながめていると、4人で言い争いを始めた。これは、逃げるチャンスでは?

そう思い後ずさりを始めようとすると港中に響き渡る声がアサシン達を一括する。

 

「2人とも。アニーとジェニーの言う通りよ。我ら家族でいがみ合ってどうするの。腹いっぱい食べたいんでしょう、なら家族で協力しなくちゃ!!」

 

それは、さっき俺に飛びかかろうとしたアサシンを止めた最年長らしき少女の声であり、それを聞くと奴らは全員冷静にこちらを見据える。

 

「確かに、セイバーを呼ばれても厄介だし、セドリックはあなたの意思通りセイバーのマスターを解体してちょうだい。ジョージにアニー、ジェニーは私と一緒にあのムキムキマッスルを消すわよ!」

「やりぃ!」

「わかったよ。」

「「えぇ、ミランダ姉様。」」

 

奴らは口々に答えると一目散に向かい出す。まず俺の下に向かってくるのは一番近くにいた、セドリックと呼ばれていたあの時のアサシンだーー!

 

「ひゃっはははぁぁ!!念願の俺の肉だぁぁぁ!!」

 

だがーーしかし。俺だってあの時とは違う。ライダーみたいなのにはとても効かないだろうが、()()()()()()。刀に振り回されていたとはいえ嘗て斬り捨てたからこそわかる。

だから、右手の人差し指をやつの心臓……霊核へと向け。

ーー撃ち込む!!!

 

瞬間、ズガンという破壊音。指先から放たれた魔力の収束、呪詛の塊は確かにアサシンーーセドリックの霊核を貫いた。

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

ーーが、しかし。

人が心臓を撃たれても即座に死なぬよう、サーヴァントも霊核を破壊されてから数秒の間ではあるが、自由に動く猶予がある。基本的に怠惰なこのサーヴァントは、その間際まで足掻こうとはしないが。この場合、2度も自身が喰らう筈の獲物に土壇場でやり返されたことが、彼の肉体をギリギリのまま動かした。

 

「まだ、まだまだまだァ!!」

 

無論、そのように叫んだところで限界突破など現実には起こりえない。現に今も、撃ち抜かれた霊核を中心に肉体は霧散を始め、既に肩で繋がった腕と頭は慣性の法則に従い戈咒を狙うだけである。しかしそこまでの動きは腐ってもサーヴァント、もはやその爪と牙は人間の反応速度では逃れ得ぬ程に迫り、戈咒の首元へと迫るーーー!!

 



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3日目/魔刃

決まった……そう、確信した瞬間。

目の前のアサシンは消えゆく肉体を気にも止めず、こちらへと慣性に任せて突っ込んでくるーー!!

 

回避ーー不可能。

生半可な回避行動はそれ以外の動きを出来なくする、逆に無防備な身を晒すだろう。

 

迎撃ーー不可能。

ガンドは貫通力はあっても衝撃が足りない、そのまま攻撃されるだろう。

 

ならば、腕を犠牲に。それも彼女を振るう為に出来れば片腕のみ。その犠牲のみでここを切り抜けねばならない。

左腕に力を込め、両の眼で相手の軌道をしっかり把握し確実に受け止めるーー!

 

 

ーーその瞬間。意識が、世界が。斬り離される。世界が停止し、俺の意識だけが動けるような……

 

()斬斬(キキ)ヒャ、()ヒャヒャヒャヒャ。よウ、久しイナぁ生贄君。」

 

そう、目の前の。姿の見えない禍々しいモヤの様なものが声を掛けてきた。

 

「だ、誰なんだ……」

「あン?なンだヨつれネェなァ、といウカお前さん気ヅイてるダろう?理由あル無駄はイイものだガ、意味の無い無駄はよくネェよくネェ。」

 

確かに……目星はついている。いや、目の前にいるこれに関しては確信を持ってすら言える。1度アレに支配されたものなら確実に分かるだろう、それだけの禍々しさと悪しき斬妖(ようとう)の気配。

 

「妖刀の……意識(ほんのう)……」

「ひュゥッ、やルネぇ。流石ハ、ますたぁ。」

 

ーーッ!

その呼び方は、彼女だけのものだ。断じて軽々しくお前なんかが使っていいもんじゃないんだ。

 

「おイオい、わールかッたッテ。オふざケガ過ぎタぜ。」

 

だが、そのへらへらとした雰囲気のまま声色に殺気を乗せて言葉を続ける。

 

「けドよ、俺にはあのイケスかねぇガキとつるンデルお前を助ケる義理は存在しねェンダぜ?その気ニナれば(おれ)ハ、コのまマオ前の意識を斬り刻んだっテイいんダ。」

「………っっ!」

 

確かに、何の因果か俺の意識は奴に攻撃されるギリギリで己のうちに、妖刀の(なか)に、引き込まれた。

けれど、確かに何故。言葉通りなら俺を嫌って、それどころか憎んでても不思議ではないのに。

 

「なぁ、何でお前は……」

「助けタのかッテか?気まぐレダ気マグれ。ソレにな……まダ暴れたタリナかったノサ。まァそんなコトはどウデモイい。今かラお前ニ残さレタ道は二つ。」

 

そう言ってやつは俺に2つの未来を提示する。

 

「2つ……」

「1つハコのまマ意識を戻シ、左腕の犠牲で逃れウル。もう1ツは、(おれ)の力デ迎撃すル……ダ。」

 

コイツの力を借りる。それは益々妖刀としての力に(おもね)るということ。それは俺の寿命を縮めることであり、セイバーにも止めるよう言われていること。

だから当然、断る以外の選択肢はない。

 

 

ーーけれど。

 

 

ーーけれど、それで本当にいいのか。

 

 

ただ、守られているだけ、俺の身体こそ担保に乗せてはいるものの、全ては彼女に任せっきり。そんな、自分の意思をなげうったような戦いで、彼女の為に戦えたと。本当に俺は誇れるのか。

 

未来まで、結果まで考えたらここの最善手は左腕を犠牲にする事だ。この誘いは妖刀の悪辣な罠で、俺を妖刀の本能(やつ)が蝕む為の策。そんなことは百も承知。こんな提案を呑むことは誰も。それこそ、セイバーすら望まないだろう。

 

 

けれどーーこのまま。左腕を犠牲にして生き延びたら、セイバーは間違いなくそれを気に病む。自分のせいだとして自らを責める。そんなこと、俺のせいで幼女が、彼女が悲しむなんてことはあってはならない。

 

それなら寿命くらいーー幾らでも払ってやる!!

 

 

 

「いいさ、乗ってやるよお前の策に。……寄越せ、力を!」

 

斬斬斬(キキキ)()()ャハハ!!いイ返事だ!」

 

モヤはひとしきり嘲嗤(わら)うとこちらへと意識を向ける。

そして同時に、流れくる呪詛(ちから)の奔流に意識は肉体へと、現実へと引き戻されていく。

 

「教えてやるよ……妖刀(おれ)を振るうってことなどういうことかな!」

 

その、最後の瞬間。

何故か晴れたモヤの中。

振り向かぬままこちらに笑うその白装束の妖刀(やつ)の顔は。

彼女に/ボクに

似ているような気がした。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

斬り刻まれ、斬り離された俺の意識と現実が、再び噛み合う。

 

目の前に、アサシンが。

 

「いただきまぁァすス!!」

 

しかし、耳に触れるのは。

牙が、爪が。肉を、血管を。

裂き、破る音ではなく。

 

「が……へ………?」

 

紅黒くガンドのような色に染まった、俺の左腕(やいば)がすれ違いざまにヤツを斬り捨てる音だった。

 

『そうだ、今のお前は1振りの刀。そしてその呪い(ちから)は使えば使う程馴染み、(おれ)に近くなる。さあ、楽しませろ!斬斬斬(ききき)()ャハハハ!』

 

うるせぇ。思わずそう心中で毒づく。サーヴァントとしての、表層のセイバーではなく。より深部の、妖刀としてのアイツから力を受けているからか、声も多少は流れ込むようになったようだ。だが、この力さえあれば、俺もセイバーの役に……

 

「ふぅん、面白ぇ事するな坊主。」

 

声の方を見やると、向かってきた4人全ての動きを封じたライダーがいた。

 

「まさか……ここまでなんてね」

「私達の連携が」「通用しないなんて!」

「畜生、この水、離しやがれ!」

 

よく見ると、アサシン達の表面に滴る水は糸のように絡みついている。水の中から出てきたアサシン達は濡れていた……それで縛られているのだろうか。つまり、水を操る宝具……?

 

 

「ぎゃあぎゃあ鬱陶しいぜ、お前ら……そうだ。サービスで坊主に俺の手品を見せてやるよ。」

 

そう言うとライダーはこちらに向き直り、指をパチンコ と鳴らす。

 

すると水の糸は、瞬間的に肉へくい込み、ウォーターカッターのように容易くアサシン達をバラバラにした。眼球から、手足から。全身を濡らしていた奴らは完全な細切れに変化し、消滅した。

 

「な………!!?」

「ほれ、すげぇだろ?」

 

和やかな笑みを見せてくるライダー。水をあそこまで操る相手に、この港での戦いはとてもまずい。連続して使いたくはないが、ここは妖刀(アイツ)の力を借りてでも全力で逃げなくては……!!

 

「おいおい、そうビビんなよ坊主。俺は別にお前らと戦う気はねぇんだ。」

 

……………へ?

 

「いや、だからそんな指示は受けてねぇし。大体マスターはともかく、俺は聖杯自体どうでもいいしな。」

「な……ならなんで。」

「俺はマスターの支持で調べ物をしてただけよ。それに俺は、アイツを見定めるためにサーヴァントやってるだけだ、それ以外に興味はねぇ。」

「そうなのか、なら……」

「ああ、見逃すぜ。今回も。」

 

そうしてライダーは背を向けて、海へ向かって歩いていく。

どうやら……助かったのか……

 

「けどよ、次は知らねぇぞ。」

 

そう、ゾッとするような声色で言うと。ライダーGパンのポケットから丸い何かを取り出して、それを身長程のサイズに変える。

あれも、宝具かーー

 

そしてそれを海に浮かべ、その上にサーファーの様に乗ると。

 

「それじゃあな坊主、長生きしろよ!」

 

そう言うが否や、ライダーはものすごい勢いで水平線上に消え去っていった。

 

 

聖杯戦争は、未だ3日目。

その終焉(おわり)が如何なるものか、未だ識る者はない。

 




書いてて思ったんですけど……ライダー、チート過ぎない?
いや、原典の方がもっとやばいんですけどさぁ!

という愚痴はおいておいて、やっと強そうなところを見せてくれたマンホールおじさんもといサーファーおじさんの今後に期待して貰えれば幸いです。


そして今後も着実に縮まるであろう戈咒君の寿命……セイバーちゃん早く気づいて止めてあげないとやばいぞコイツー!!


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3日目/仕置きーーー4日目/朝餉

なんか前半ネットに染まったような暴走してますが戈咒君も現代っ子、ネット文化の汚染をしっかり受けております
もちろん某先輩の存在も知ってます、ホモじゃないけどな!(超どうでもいい余談)


 

ライダーが去ってから凡そ5分後。戦闘音を聞きつけたのか、今更セイバーがやってきた。

そして戻ってくるなり無差別格闘早乙女流奥義、猛虎落地勢……つまり有り体に言うところの土下座で俺に平伏してる訳なんだが……俺はこれ、なんて言えばいいんだ?

 

「すまぬ、すまぬますたぁ!敵サーヴァントを前にして怒って走り去るなどサーヴァント落第じゃ!!申し開きのしようもない!!」

「お、落ち着けよセイバー。俺はほら、怪我だってしてないし。ただ情報交換しただけだから、さ。ほら顔上げて。」

「ますたぁはそう言ってくれるが、儂は儂を許せんのじゃ!!」

「そうは言っても、気にしてないし、ね?」

「じゃが、儂は…….儂は……!」

 

このままじゃ埒が明かない。こうなったら、セイバーが程よく何か罰と感じてくれるようなことを、命令した方が早いのか?

でも、そんなことって何がある……?

おれは どうする?

 

①ハンサムの戈咒君は突如セイバーを抱きしめる。

②セイバーが来てキスしてくれる。

③手を繋ぐ。現実は非情である。

 

 

 

①……弱みにつけこんで命令でそんなことをさせるなどで言語道断、ロリコンとしてあるまじきおこないだ。

 

②……上に同じ、いや寧ろそれより酷い。論外だ。ロリコンどころか人としてもアウトだそれは。

 

答え……③

 

 

って、なんで俺はこんな脳内選択肢出してんだ……頭がどうにかなりそうだぜ……じゃない、落ち着け俺。ネタに逃げるんじゃない、現実を見据えるんだ……とはいえ。実際に手を繋ぐ、辺りがセイバーにとってはそこそこ屈辱を感じさせて罰を受けた気にさせられて、丁度いい落とし所のような気もする。よし、もう良くわからん!これでいこう!

 

「よし、セイバー……なら、罰だ。」

 

セイバーは神妙な面持ちでコクリと頷く。

 

「ああ、覚悟を出来ておる。如何なることでもこの身を差し出すことに後悔などない。」

「よし、いい覚悟だ。その代わり罰に文句言ったり、それが済んでもまだ文句言うのはなしだぞ。」

「当たり前じゃ。そんなことは了承している。」

「よし……なら。俺と、手を繋いで帰るぞ、セイバー。」

「……………」

 

あれ?セイバー固まってる?やっぱアレだったか?

 

「……………へ?それだけ?」

「そ、それだけだけど。何が悪いか。」

「そ、そんなんでは罰にならんどころか寧ろ御褒美ではないか……ダメじゃダメじゃ、もっと別のをじゃな……」

「ダメだ、文句言わないって言ったろ?」

「じゃ、じゃがしかし……」

「しかしも駄菓子もない、ダメなものはダメだ。」

 

頼むから、呑んでくれ……地味に理性で抑えるのも最近キツいんだから……!

 

「む、むぅぅぅう……ハメたの、ますたぁ。まぁ、仕方ないわい。全く嫌じゃが、全然嬉しくないどころか触りたくもないが、帰るまで手を握ってやるわい。」

「よ、よぉっし!」

 

た、助かった……!!

 

「いや、お主そんなに手を繋ぎたかったのか……儂もちょっとびっくりじゃぞ。」

「あ、いやそう言うわけじゃないんだけど、ま、まぁいいだろ!よし、帰るぞ!」

「う、うむ。」

 

そうして、2人で手を繋いで自宅へと帰還し。明日に備えて床に着く。

 

1つだけ、失敗と言えるのは。手を握るくらいなら大丈夫とかなくて、普通に気恥ずかしさで心臓バクバクしっぱなしで。

寝付けたのが朝の5時前になったくらいだった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

翌日の朝。目覚ましの音で目が覚め、ソファから身体を起こす。

本当は今日も学校には行かないつもりだったが、レアが転入してきている以上何をしでかされるか分からない。監視の為にも、いざと言う時守れるようにも、行くかないだろう。

が、その前に。

 

「朝飯炊かなきゃ……」

 

いつもなら寝る前に米を研いでおいて炊飯器のタイマーをかけておくのだが、昨日は帰りが遅くすっかり忘れていた。だが、早炊きなら30分ほどで炊ける7時過ぎの今から支度すれば間に合うだろう。

 

そう考えて立ち上がり、顔を洗うとエプロンをつける。

そして米を研ぎながら昨日のライダー。そして、この身体の中で繋がった妖刀野郎(アイツ)について考える。

 

やはり俺の身体を支配するのが目的なのだろうか、しかしこれまでの経験上奴が現れやすいのは俺が生命の危機瀕した時が多かった気もする。セイバーが抑えてくれている結果なのかもしれないが、そうだとするとなぜ奴は俺に力を貸している……?目的がイマイチはっきりしない。セイバーに訊ねれば1発なのだろうが、怒られるだろうし余計な心配をこれ以上かける気にもならない。これは俺が自分でやった事なんだから、自分で責任くらい取らなくては。

 

と、そう考えているうちに研ぎ汁も大分薄くなってきたので水を釜の目盛りまで入れ、炊飯器にセットし早炊きで炊く。これで後30分後くらいには炊きあがるだろうし、それまでに何か1品……昨日の特売の鯵の干物にするか。それと、目玉焼きくらいでいいだろう。

そういえば、茄子の漬物も賞味期限が近かったはずだし一緒に片付けなくては。

そう考えてまずは冷蔵庫から取り出した干物をグリルに入れて焼き始める。

 

そして上のコンロで目玉焼きを焼く……前に先程の思索の続きに頭を巡らせる。今焼くと米が炊けるまでに冷めてしまうしそれまで待つとしよう。

 

ライダー……は、水を操る恐らく宝具の使い手。サイズの変わるサーフボードのようなわ薄いボートのような宝具も持っていたな。今分かることはそれくらいか。あとでセイバーに聞いてみてもいいかもしれない。

 

そして、この俺の身体(やいば)。コイツを使いこなせば使いこなす程ヤツに近づくが、ぶっちゃけ昨日もたまたま斬れただけで自発的に斬った訳では無いし。せめてもう少しは使いこなせなくては意味が無い気もする。またセイバーの見てないスキを見計らって振るう練習をしないとな……ところで。

男の子的には最も重要な問題がまだ残っている。

 

そう、それは即ち名前。技の名前だ。必殺技の名前というのはそれだけでテンションに影響し強さにも変わるとかどっかの偉い人も言っていた気がする。

シンプルに、妖刕(ようとう)とでも名付けてみるか?

或いは斬人(ブレイド)とか?

うーむ、なにかしっくりこない。

ふと、目をやると病院とかでよく配ってるくしゃみするとツボからでてくる魔神だか大魔王だかのイラストが目に入った。

魔神か…まじん、魔ジン……?

……魔刃(まじん)。いいな、これ。よし、これからあの技の名称は魔刃(まじん)だ!!

 

と、そうこうしているうちにグリルから焼き上がりの音があがる。こうしちゃいられない、目玉焼きをさっさと焼かねば。

 

個人的な好みとしてはフライパンに蓋をすることで半蒸し焼き状態に仕上げるのが好きなのだが、セイバーのお気に召すかどうか……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そして。セイバーを起こしてきて食事にする。

「ますたぁ、塩胡椒取ってくれんか。」

「え、あ、お前塩胡椒派か。日本系のサーヴァントだし醤油派かと思ってたわ。」

「別に儂は日本系といっても実際に生きてたわけじゃなし、そこまで拘りはないのじゃよ。」

 

なるほど、そういうものか。

 

「ところで、ますたぁ、骨取ってくれんかの。」

 

セイバーは干物から骨をペリペリと剥がすのに慣れてないのか、剥がし損ねて骨が大量に残った干物をみせてくる。

 

「自分で取れよ……」

「……ダメかのう?」

 

セイバーは潤んだ目でこちらを見つめてくる。

 

「あぁもう仕方ないなそれ寄越せ!で、俺の干物は骨もう剥がして抜いたからそっち食べろ!」

「さっすがぁ。ありがとのう、ますたぁよ。」

 

にっこり笑顔で微笑まれる。もう完全にいいように操縦されてんな俺……!

にしてもそれはいいのだが時間が益々推してく……セイバーはいつかの通り食べるとなれば一瞬でぺろりと平らげるので問題ないのだが俺はそうもいかない。

 

これから時間の無い朝に魚を焼くのはやめておこう……そう、必死に剥がし損ねた骨を抜きながら思った。

 




とりあえず書いてて思ったこと……お前ら爆発しろ!

よし、こうなったら戈咒君にはもっともっと苦難を与えてやらねばなるまい……!!


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幕間/祭の前夜、或いは嵐の前の静けさ

久々のイリマさん登場
もう少しで本編にも出せるかな……?

あ、今回幕間なので多少短いです


そして、時は戻り。

未だ欠けた月が輝く闇夜の中。

 

平斗の幽霊屋敷、いやライダー陣営の拠点と呼んだ方が既に適切か。その1室で報告を待つ彼女の下に、ライダーのサーヴァントが現れる。

 

「遅かったわね、ライダー。また何か道草でも喰らっていたの?」

 

開口一番、サーヴァントに苦言を呈するマスターに対してライダーは肩をすくめる。

 

「はー、これだからうちのマスターはアレだねぇ。俺の本分とかけ離れた偵察させといて遅いって?当たり前だろうよ。」

「ふん、まぁいいわ。それよりも報告を聞かせてちょうだい。」

「ああ。まず、お前さんの予想に関しては大当たり、だ。近頃多発してる失踪事件の犯人はアサシン達と見て間違いねぇ。」

「やっぱりそうだったのね。ふふん、どう、これで分かったでしょライダー。」

「どうって、なんだよ?」

「ふふん、決まってるじゃない!もちろん私の溢れる知性がよ!全て私の予想通りだわ!」

「あー、はいはいそうだな。まぁたしかにマスターの観察眼と推理力に関しては及第点をやるよ。けどそれだけだぜ、今認めるのはよ。」

「ふん、まぁいいわ。そのうち私の、カフナ家の凄さがあんたにも分かるでしょうから、覚悟しときなさいよ!」

 

と、少女はビシィッ、と思いっきり指を突きつける。それを興味無さそうに眺めながら、ライダーは報告を再開する。

 

「あー、はいはい。それで、報告の続きだが。奴らは捉えた人間をだな……」

「やっぱり、魂喰らい(ソウルイーター)だったわね?」

「いんや、違う。奴らは魂でなく、肉を本当に()()()()()()。」

 

その言葉の意味がすぐには呑み込めないのか、少女は一瞬ポカンとして口をもぐもぐさせると形相を驚愕の色に染める。

 

「人を、そのまま……!?なんで、そんなことを。効率も悪いしその行動の意味が分からない……!」

「俺にだって分からねぇよ。サーヴァントがイカレなのか、マスターがイカレなのか。とにかく捕らえた人間を調理して喰らってたぜ。」

「………わ、訳が分からないわ…なんで、そんな無駄な行動を取ってるのよ。勿論、そんな奴らは神秘の秘匿なんてしてないんでしょうね。」

「あぁ、とはいえ魔術を行使している様子は一切見受けられなかったな。」

 

と、その報告で少女は怪訝な顔を見せる。

 

「一切見られない……それでよくあんなにもたくさんの人間を攫えたものね。」

「あぁ、いや。そこが報告の根幹なんだが、アイツらは複数存在する。」

「分裂した群体型のサーヴァント、ということ?」

「いや、どちらかと言うと家族だな。家族自体がサーヴァントとしてなっているのか、誰かが正しいアサシンで家族を呼び出す宝具を使えるのか。それは分からんが。」

「なるほど……で、ライダー。あなたの宝具でソイツらは纏めて薙ぎ払える?」

「可能だが。マスターはそれでいいのか、武功を示すんじゃ無かったのかい?」

 

と、ライダーは皮肉な笑みを浮かべて少女を見やる。

そして彼女はうんざりした顔で答える。

 

「そんなイカレ、相手にする価値もないわ。わざわざ極東くんだりまで来たっていうのになんでマトモな魔術師との戦いが出来ないのよ。嫌になるわ。」

「そんなこと俺に言われてもなぁ。」

「うるさいわね!別にあんたには言ってないわよ!それより、報告は終わりなの?まさか本当に道草を食ってただけ?」

「いや、セイバーのマスターと出会ったぜ。よく分からんが呪術系統の使い手に見えたな。」

 

その報告で少しは機嫌を直したのか少女はカップの珈琲をあおる。

 

「そう、呪術とは私の相手にしては派手目じゃないけどなかなかにセンスはいいじゃない、初戦の相手に相応しいわ。」

「じゃあ、監督役にでも頼んでソイツに宣戦布告でもする気か。」

「いえ、それはまだよ。まずは地下のゴミを洗い流してから。人目につかないところだし、どうせなら派手に行きましょう。カフナ家のイリマここにあり!ってこの街の凡百の魔術師どもに私の存在を知らしめるのよ!!」

「あー、そうですか。じゃあ決行は明日の夜か?」

「いいえ、明後日よ。それまでに私は準備を整えておくわ……」

 

そう言うと少女は部屋を出て姿を消す。

そしてそれを見送ったライダーは1人嘆息しながら呟いた。

 

「全く……うちのマスターは何を考えいるのか。まぁ、せいぜい俺は見定めさせてもらうとするか。」

 

その呟きの意味は、それを窓から眺める朝日すら知らず。

聖杯戦争の4日目が幕を開けた。

 



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4日目/バトル・オブ・ナンパ

シリアス「旅に出ます。探さないでください。」


食事を終え、セイバー霊体化させたまま表に出ると錬土が丁度やって来たところだった。

 

「よーっす、戈咒。今日はちゃんと登校する気みたいだな。」

「当たり前だろ、俺は基本的に真面目なんだ。ただこの間は小学校を監視してたからたまたま行けなかっただけだ。」

「お前の中のマジメの基準ってなんだよ……」

 

錬土が嘆息しながら呟く。

失敬な。とても大事な理由があったからしょうがないだろうに。

 

「それに、学校サボって1日ナンパチャレンジしてたお前には言われたくねぇぞソレ……」

「いや、俺は流石に不真面目な自覚はあったからな?」

「なん……だと……」

「ふふふ、どうやらマヌケは見つかったようだな……お、あそこの姉ちゃん胸でかくね?」

「そうだなー、まぁでかいんじゃね?」

 

俺は巨乳などという堕肉に興味はないので生返事を返すが、錬土の奴は興味津々である。

 

「うわー、棒読みー。なぁ戈咒よ、やはり時代は大艦巨砲主義だぜ?大は全てを飲み込む究極にして完全無敵の至宝、女体という楽園(エデン)に遺された最後の秘宝よ。」

 

その余りにも余りな主張に思わず溜息を深くつく。やはりダメだな。巨乳など邪道に過ぎる。やはり胸は薄さこそ、ソリッドさが素晴らしき女性らしさであり力なのだと。コイツにとくと伝えねばならないーーー!!

 

「いつもながら、何腑抜けたこと言ってやがるんだよ錬土。時代が真に求めているのは貧乳、ひいてはロリだ。真の淑女(レディ)というものは幼き蕾の中にこそ存在するものなんだよ。」

 

しかし俺の一大演説も錬土には馬耳東風だったようでお前こそわかってねぇ、わかってねぇよ。と言わんばかりの深い、深い溜息をつく。

 

「かーーーっ、これだからロリコンはよお。巨乳撲滅とかどこの世界に喜ぶヤツがいるんだよ。」

「おいおい待てよ錬土、俺は確かにロリコンだが巨乳を全否定してる訳じゃねぇぜ。確かに俺の好みからは外れるし邪道だとも思っているがそこに幼き精神(こころ)が宿っているならロリ巨乳であろうとも立派な幼女(レディ)だ。」

「うわー、これだから真性はー。」

「うるせぇ、だいたいお前だって真性の巨乳スキーだろうが。」

「いやいや、そんなことは流石にねぇし。」

「ほぅ……なら、可愛い巨乳の彼女が出来たらまず何を頼む?」

「ンなモン決まってんだろ!!勿論挟んでもらってむしゃぶりつくに……あ。」

 

やはり、な。やはりコイツはおっぱい星人(こういうやつ)なのだ。人のことを偉そうに言える立場に無いのは確定的に明らかと言える。

 

「おい、なんだよその勝ち誇ったようなドヤ顔。お前の真性ロリコンの方が普通にアレだからな。」

「いやぁ、俺は幼女(レディ)に対してそんな要求しないから。俺は紳士だから、もっと清く正しいお付き合いを求めてるんだよね。」

「……………へーーーー。」

 

チベットスナギツネのような目で俺を見てくる錬土。コイツ、ぶん殴ってやろうか。

 

と、その時。脳内にセイバーの声が聞こえてくる。

 

『……お主ら、いつもこんなコントみたいな会話しとるのか……』

『なんだ、盗み聞きとは趣味が悪いぞセイバー。』

『そんなもんせんでも嫌でも聞こえてくるわい馬鹿者。はぁ……どうやらますたぁが阿呆というより、この時代の若者が阿呆なのかのう……』

『失礼な、錬土みたいな見境の無い女好きと一緒にしないで欲しいな。』

『儂からすれば変わらんわい……』

 

そう話してるうち、錬土がボソリと負け惜しみのように呟く。

 

「……でも、社会的に見たらお前の方が圧倒的アウトだからな。」

 

なんですと?これは聞き捨てならねぇぜコノヤロウ。

 

「おいおいおい、女の敵が正義の紳士(ロリコン)に対して随分の舐めた口聞いてくれるじゃないの。そこまで言うなら1つ、勝負といこうじゃねぇか。」

「いいだろう、戈咒。で、勝負の種目は?」

 

俺の提案に対し、錬土はニヤリと笑いそれを受ける。

 

「おいおい錬土、忘れたのか。俺達の間で争いがあったなら勝負の手段は当然、アレだろ?」

「いいや、ただの確認さ。なら始めるとするか、俺は巨乳のお姉さんを。お前はロリを。どっちが先にナンパ成功するか、ナンパバトルのスタートだ!!」

「望むところ!!」

 

かくして俺達の決闘、すなわちナンパバトルの火蓋は切られた。

俺達はおもいおもいの方向へと走り、目指すレディへと声をかけるーー!!

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

それから、15分後。

 

結論から言うと。

俺らは、ボコされた。

 

錬土は、見かけた推定Eカップのお姉さんに声をかけてる最中、通りかかった委員長の華麗なまでのワンツースリーでダウン。そのまま引き摺られ。

 

俺は、見かけた恐らく7歳の幼女(レディ)に声をかけ、華麗に口説いているところを実体化したセイバーに刀の柄で後頭部を殴られてダウン。そのまま委員長のところまで引き摺られ。

 

結果、2人揃って首根っこを掴まれたまま。大人しく学校へと向かうことになるのだった。

 

「女って、難しいな……戈咒よ。」

「あぁ……そうだな……」

 

あぁ、諸行無常なり。

 



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4日目/スクールライフ・アンダーマイン

日常パートなのに書いてたら9000字超えてたので分割です



 

朝の学校、朝の教室。いつも通りのぐだぐだな授業前。

 

「にしてもよー、あのワンツースリーはどうかと思うの。」

 

錬土が腹を擦りながらボヤく。どうやらダメージが抜けきってないようだ。かく言う俺も刀の柄で殴られた後頭部が割とかなり痛いのだが。

そこんとこどうなんですが、セイバーさん。

 

『あ、あれは儂悪くないじゃろっ!?寧ろお主の毒牙から(わっぱ)を守った功労者じゃぞ儂!?』

『酷い、その言い方だと俺がまるで幼女を襲う犯罪者みたいじゃないか。』

『いや、実情はともかく傍から見たら割と同じじゃろ、それ……』

 

失敬な。

少し不満げながらも目の前に意識を戻すと委員長が錬土に謝ってた。これこれ、こういう素直さがうちのセイバーにも欲しいよねー、全く。

 

「でも、殴ったことについては謝るけど後悔はしてないからね、私。」

「ひでぇなおい!?」

「いえ、寧ろグッジョブ私とすら思ってるわ。アソコでキメなかったら伍道君より先にブタ箱行きになってたわよ。」

「それはやべぇ……って流石にないだろそれは!?」

「ものの例えよ。とはいえクラスメイトが他所様に迷惑をかけてるのを止めないわけにはいかないじゃない。」

「あー、もう堅物なんだからよー。どうせなら男漁りでもしたらどうだよ委員長も、どうせ日照ってんだろ?」

「〜〜〜〜!!あ、あなた……!!」

 

あ、コイツ地雷踏んだな。

 

再び、華麗なまでのワンツースリー。

錬土はダウンでテンカウント。新チャンプは委員長だ!

いやー、全く。これだから女心の分からん鈍感系はねー、困ったもんですよ全く。

 

『五十歩百歩とはよく言ったものじゃの……』

『え……?』

『何でもないわい。それより気を引き締めるのじゃ、この気配。』

 

言われて気づく。扉の前に感じるこの感覚。ここ数日度々感じたあのバケモノの気配。心なしか空気すら呼吸の際に肺を焼いてくる気すらするこの空気そのものが、アイツがすぐ側にいるという存在証明にほかならない……!

 

「どこから、どこから来るんだ……!」

「なにが来るんですか?戈咒君。」

 

ーーーーーッッッ!!?

 

振り向けば、そこにはいつの間にかレアが平然と佇んでいた。おいおい、嘘だろ。

 

『儂も全く気づかんかった……どういう事じゃ。』

 

セイバーすら感知出来ないレベルでの隠形……!!

 

「どうしたんです、そんなに慌てて。え、もしかして何か私まずいことしましたか!?」

 

レアがまるで無害なただの女生徒であるかのように振る舞う。改めて見るとそれに全く違和感を覚えないのが。この記憶さえ無ければ俺自身も平然と受け入れそうな程に普通なのが怖い。

なんだそれは、お前はそんな生き物じゃないだろう、やめてくれ。なぜ違和感無く紛れ込むんだ、吐き気がする。

 

「気にしないで大丈夫よ、レアちゃん。伍道君ロリコンだから、きっと貴女をみて感極まっちゃっただけよ。」

「そ、そうでしたか。私が何かしてしまったのかと思ってびっくりしちゃいました。」

「早く慣れた方がいいわよ、この馬鹿共は四六時中これだから。さて、私はこの昏倒してるバカ1号は保健室にHR始まるまでに送り届けてくるわ。それじゃ、また後でね、レアちゃん。」

「はい、ありがとう京子さん。」

 

そう言うと委員長は錬土の首根っこを引っ掴み教室から出ていく、

すると、それを見計らったかのように小声でレアが俺に話しかけてくる。

 

「まったく、なんだい?さっきの無様なのは?」

「はぁ……!?てめぇのせいだろうが……このクソッタレめ。」

「やれやれ、女の子に使う言葉じゃないよね。それに、もっと自然にしてくれないと困るよ?怪しまれるのは君も困るだろう。あくまでもこの教室、この学校では私とキミはクラスメイトなんだからさ。」

「…チッ……レア、さん。せいぜいよろしく。」

「あぁ、こちらこそ、戈咒君。」

 

仕方なくリップサービスで挨拶を交わすと。

そう、甘い。毒のような声で、返してきた。

 

そうこうしているうちに、委員長が教室に戻ってきてほぼ同タイミングにHRの開始を告げるチャイムが鳴り響く。

 

そして、前方の扉をガラリと開けて数学担当にして担任教師の豪ちゃん……雷禅先生が入ってくる。だが、そのHR開始早々に言われた一言は。俺の不安感を再び煽った。

 

「あー、唐突だが。お前らに1つ伝えたいことがある。重大なことだ、よく聞け。最近、この街で行方不明者が多発している噂は分かるな?ありゃあ事実だ。」

 

その一言で教室中にどよめきが走る。そして俺はレアを見る。しかし、平然としておりそれが犯行が明るみに出たからなのか、それともそもそもこの件には完全に無関係なのか読み取ることは出来なかった。

 

その時、教室中に響き渡る爆裂音。クラス中の人間がその音源を見やると、そこには豪ちゃんがいる。その指から見るに、今の爆裂音は指パッチンのもの………え?

 

 

俺と同じことに気づき始めたクラスのの何名かがさっきのは別の意味でどよめきだすが、そこですかさず有無を言わさぬ指パッチンによる爆裂音が再び鳴り響く。いや……一体どんな指してんだよ………!?

 

「落ち着け、お前ら。原因……いや、おそらく犯人に関しては目下全力で警察が追ってくれてるし、行方不明の者も校長もあらゆるツテを使って探してくれている。だからお前らに出来ることは寄り道をせず速やかに帰ることだ、それがお前達の身の安全に繋がり、俺達の職務遂行に繋がる。だが、もしも危険な目にあったのなら、警察……いや。」

 

そう言葉を切ると、黒板に素早く数字の羅列を書いていく。

あれは……携帯電話の番号、か?

そうして書き終えるとこちらに向き直り真剣な表情で言葉を続ける。

 

「この番号に連絡しろ。市内ならどこだろうと15分以内に駆けつけてやる。だがその後も万一を考え電源は切らないように。もしその間に攫われていたらGPSでの追跡ができなくなるからな。そして、ソイツらには俺の生徒に手を出したことを地獄ですら生温い俺の一撃で後悔させてやる………っと、ゴホン。とりあえず、周囲には注意し素早く帰宅することを心掛けろ。部活動もしばらく中止だ。」

 

余りの威圧感に普通なら文句の出るであろうと部活動の中止にすら文句の一つすら出なかったのはある意味伝説に残るのではないだろうか……というか、ホントうちのクラスの担任何者だよ……!!

 

そして、この心からの叫び(ツッコミ)は。クラス全員の心が一つになっていたと確信を持って言えるだろう。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

何はともあれ、色々な意味で波瀾の朝はその後は何事も無く進み。

昼休みへとなる。

 

「飯どうする?戈咒。」

 

朝から2度のワンツースリーを喰らった錬土はいつの間にかピンピンして保健室から戻ってきており昼飯の予定を元気に考えている。コイツの耐久力も大概じゃないか……?

 

「おいコラお前今失礼な事考えてたろ。」

「え。」

 

な、何故バレたんだ!?

 

「そんな驚いた顔されてもなぁ……お前の感情は顔に現れやすすぎるんだよ。まぁ……いいや、それより昼だよ。」

「あ、あぁ。学食か、購買かか。」

 

錬土は基本的にそのどちらかで昼飯を済ませており、俺も普段は弁当派だがこと聖杯戦争が始まってからは時間が取れずそのどちらかに収まっている。

 

ここは、どちらにするべきか……

 

「購買で買ってきて教室で委員長達と食べようぜ。」

 

今の状況を考えると、もう1人の人質である委員長から易々と目を離すのは得策ではない。ならば、弁当派であるが故に教室に残る委員長とも共に食べられる購買を選択するのがベターだろう。

 

と、ここまで考えていると目の前の錬土がニヤついた顔でこちらを見ている。

なんか、嫌な予感がする。

 

「いやぁ、分かってるぜ。お前の目的はレアちゃんだろ?狙ってんだろ?昼は教室で委員長と食べてるからなあの娘。」

 

……はぁ?何言ってんだコイツ。今までの俺を見てて俺が魂BBAに惚れるとでも思ったのか?見る目がないな、全くこいつも。

 

「ンなわけねぇだろ。俺は魂がロリの奴しかロリとは認めねぇよ。」

「うわっ、筋金入りだなお前やっぱ。まぁいいや。向こうからも割と気に入られてるっぽいし、仲良くして損は無いんじゃねぇか?」

 

錬土は純粋な好意で勧めてるんだろうが、全く大きなお世話というものである。

と、いうかだ。それはそっくりのしつけててめぇにこそ返してやりたいんですがねぇ!?委員長アレ絶対お前のこと好きだからな!?……とは思っても言わないけれど。委員長怖いし。ワンツースリー喰らいたくないし。薮をつついて蛇を出すのは俺のキャラじゃないからな、うん。

 

「………まぁ、とりあえず買って帰ろうぜ。お前何にする?」

「コロッケパンと緑茶。」

「よし、じゃあ俺はカレーパンとコーヒー牛乳な。」

 

そして、どちらからとも無く掛け声を出し素早く手を出す。

 

「「ジャンケンポン!」」

 

結果はグーとグー。つまり、まだ終わらない!

ここから予想されるのは錬土の行動パターンから考えてあいこの後は、同じ手を出してくる。しかし錬土も俺がこの思考をしてくることを読んでくるに違いない、ならば……最後は直感!!

 

「あいこで……」

「しょおっ!」

 

結果は俺がチョキ。

そして、錬土がグー。

 

「よし、戈咒。後は任せたぜー。」

 

おのれ……やはり直感より分析データに頼るべきだったか………

机をずらして席を作る錬土を尻目に俺はカレーパンとコロッケパンを買いに行くことになった……

 

とはいえ、これは逆にセイバーの昼飯を考えれば最適だったかもしれない。

念話でセイバーに呼びかけてみる。

 

『セイバー、今どこにいるんだ?』

『うん?ますたぁか。儂なら屋上におるぞ。何か学校全体でやらかせば一瞬で分かるし、ついでに周囲に怪しいのがおらんか見ることも出来るからのう。』

 

なるほど。それは理にかなってるし俺が授業を受けている間も見張っていてくれたということだ。やっぱりこれは労わなくては。

 

『セイバー、昼飯にパン何か買って持ってくけど何か希望あるか?』

『ふむ……じゃあアンパンと牛乳を頼む。それが現代の見張りのスタイル何じゃろ?』

『だからどこでそういうこと覚えてくるんだお前は……』

『聖杯からの知識にあったぞ?』

『前も思ったけど、この聖杯やっぱおかしくね?』

 

なんでそういうどうでもいい知識ばっか持っているのだこの聖杯は。

 

『ふん、そんな事を儂に言われても知らぬわい。まぁとりあえず、アンパンと牛乳は任せたぞ!ますたぁよ。』

『へいへい、分かりましたよっと。』

 

そうして念話を終了して、購買に向かうと既に人だかりが出来ていた。この人だかりを越えなければ獲物の入手は難しいだろう。

だが、ここにいるのはただの人間でも、ただのロリコンでもない。歴戦のロリコンであり、数々のロリータウオッチングをこなしてきたこの俺からすればこの程度、障害物にすらなり得ないーーー!!

 

助走をつけ、背面跳びの要領で人混みを跳び越える。そして、先頭集団の肩に手を置いて着地。そしてここからが肝要だ、まさにスピードが命。

冷静さを取り戻して文句を言われる前に速攻で買って逃げる!!

 

「おばちゃん、コロッケパンとカレーパンとアンパン一つずつ緑茶とコーヒー牛乳と牛乳1本ずつ!」

「あいよ!お題は670円だ!」

 

流石に購買のオバチャンはプロである。数々の購買戦争をくぐり抜けてきただけあってこの状況でも冷静に、そして的確に注文に応えてくれる。

そしてその差し出された掌を交すようにして五百円硬貨を1枚、五十円硬貨を3枚に十円硬貨を2枚手渡し、それと同時に商品を受け取る。そして購入者専用のレジ出口から素早く脱出!

 

この間、実に6.40秒。過去最高記録を1秒以上縮めている。どうやらここ数日の聖杯戦争の経験はこんな所にまで影響を及ぼしていたようだ、と小さな達成感を得るがすぐにそんな事してる前にセイバーにアンパンと牛乳を渡しに行かなくてはと思い直す。

あまり遅くなると錬土にもレアにも怪しまれるし手早く済まさねば……

 



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4日目/推測

屋上の扉を開けると少し強めの風が吹き付ける。

暑くなってきたとはいえ

これだけ風が吹くと少しは肌寒くなりそうなものだが、大丈夫だろうか

薄手の上着くらい帰りに買ってやってもいいかもしれない。

 

「お、来たかますたぁよ。」

 

と、そう考えていると頭上から声がかかる。

どうやら出入口の上の給水塔の横に座っていたらしい。ヒョイと飛び降りてくるととてとてと俺の横までやってくる。

 

「それじゃ、セイバー。アンパンと牛乳だ。」

「うむ、礼を言うのじゃ。」

 

 

「……ところで、レアの奴は何かしとらんじゃろうな?」

「あぁ、午前中は特に何も無かったが……未だ油断は出来ねぇな。この後すぐ教室に戻って監視を続けるべきだと思うしな。」

「そうか、なら手短にこれだけ報告しておくかの。」

「これ?」

「なに、大したことではないがのう。学校をさらっと見て回ったのじゃが、怪しい魔術の類は発見されなかった。恐らく結界などが仕掛けられている可能性は低いじゃろうな。」

「……そうか、よかった。」

 

すこし、心が落ち着く。自分が見落としていてそれで被害にあった人がいればそれはそれで寝覚めが悪かったしある意味朗報とも言えるだろう。

なら、あとはレアをどうにか対処するか。或いは解呪の方法を探すのもありかもしれないな……そこまで考えて一昨日、レアに突っ込んでボコボコにされていた監督役とやらを思い出す。

そうだ、レアを知っているようだったし監督というくらいには何かいい方法を知ってる可能性もある。

また時間が空いた時にでも訪ねるべきだろうか。

 

「さて、じゃあ俺は余り遅くなり過ぎてま怪しまれるし。そろそろ戻るよ。」

ひょうか(そうか)ひゃらひゃひは(なら儂は)ほうふこひはんひをふひゅへふほひひょう(もう少し監視を続けるとしよう)。」

 

セイバーが口にアンパンをもごもごさせながら喋る。

また行儀悪いことを……思わずチョップを入れる。

 

ひゃ()ひゃひふふほひゃひゃふはぁ(何するのじゃますたぁ)!!」

「お行儀が悪い、ちゃんと口の中を空にしてから喋りなさい。ほれ、牛乳。」

 

渡すと牛乳をグビグビと凄い勢いで飲み始める。そんなに好きなんだろうか。

 

「んぐんぐんぐんぐ、ぷはぁ。……ぬぬぅ、お主に行儀悪を指摘されるとはのう……」

「いや、俺マナー悪くないからな?寧ろ幼女(レディ)との食事の為に恥ずかしくないようなマナーを身につけるのは紳士としての嗜みだぞ?」

 

そう言うと、セイバーは急に白けた目になってぞんざいに言葉を発する。

 

「あー、そうじゃなそうじゃな。お主はそういう奴じゃったよ。さて、なら儂は監視に戻るからお主も早く戻る事じゃな。ここにもう4分もおるぞ。」

 

慌てて時計を見ると確かにその通り。昼休みが始まったはそろそろ10分が経過しようとしている。これは確かにちょっと急ぎ目に戻らないと怪しまれるな……

 

「それじゃ、また放課後でなセイバー。」

「うむ、じゃあの。」

 

そう、一時の別れを交わして屋上を後にする。

このまま何も起こらなければいいんだが……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

教室に戻ると、既に俺以外の購買組は大体が戻ってきており、部屋中が昼食時の賑やかな雰囲気に包まれていた。

 

「遅せぇぞ戈咒、何してやがった。」

「あ、あぁすまんな。ただ移動中、窓から可愛いロリが見えたもんでな。見えなくなるまでつい食い入るように見てたら遅くなっちまった。」

「なるほど、まぁお前なら納得か。にしてもブレねぇなぁ、お前。」

「 まぁなぁ。」

「貴方達、その感覚が異常だって自覚をもう少し持ちなさいね……?」

 

委員長がゾッとした顔でこちらを見やる。

失敬な、確かに今回のは嘘だが実際に嘗て経験したことだというのに。

 

「んじゃ、ほらよ錬土。コロッケパンと緑茶。」

 

そう言ってペットボトルとコロッケパンの袋を渡す。

 

「お、サンクス。じゃあこれ金な。」

 

そう言って金を寄越す。

 

「おい、多いぞこれ。」

「いいから取っとけって。そのうちまた何かお前の家で奢ってもらうから。」

「ったく……」

 

そして席について食べ始めようとした辺りでレアがいないことに気がつく。急に席外してるとか不穏に過ぎるな……

 

しかしその心配は杞憂に終わりレアが教室に入ってくる。何かしてれば流石にセイバーも気づくだろうし、本当にたまたま席を外しただけだろうか。

 

「あら、戻ってきたんですね戈咒さん。」

「あ、あぁ。」

 

ああもう、言葉を交すのすらこの異物感が拭えない。

しかし錬土達に違和感を感じさせるわけにもいかない。普通に会話するよう気をつけなくては。

 

そうして昼を食べ始めているといつものように錬土が話題を振ってきた。

 

「なぁ、そういや最近の行方不明事件らしいけどよ。あれってどうやら連続誘拐事件らしいな。」

 

なんだ、その話か。朝保健室送りにされていた錬土以外はあの指パッチン付きでその内容を聞いているため、特にインパクトを受けない。しかしそれが錬土に対しては予想外だったのか逆に狼狽する。

 

「あ、あれ。お前ら全然驚かないのな。もしかしてもう有名だった?」

「少なくともこの教室ではな。」

「今朝、あなたが京子さんに保健室に連れてかれた後に先生が話してたんですよ。こう、バッチンって物凄い指パッチン付きで。」

 

スカッ、スカッと音の鳴らせない指パッチンをしながらレアがそう言う。

 

「あー、なるほどなぁ。というか俺的にはその指パッチンの方が驚きだよ。」

「安心しなさい、クラス全員その気持ちは一つだから。」

「だよな……というかやっぱうちの担任の地下闘技場でスカウトされたって噂本当何じゃねぇのか……?」

「た、確かに信憑性出てきたなぁ……」

 

実際説教の時の威圧感はすごいから困る。

 

「にしても、話のネタにならなくなっちまったなぁ。……んー、じゃあこの噂は知ってるか?」

 

そう言うと錬土は新たに話題を振ってくる。

 

「どんなのだ?」

「都市伝説の人喰い鬼、あるだろ。アレが最近数が増えてそれが誘拐犯の正体って噂。」

「何それ……眉唾よね。というかそのそもそもの噂自体は結構前にこの街にいた猟奇殺人鬼の犯行から生まれた根も葉もない都市伝説って聞いたわよ?」

「あぁ、俺もそう思ったんだが複数犯の怪しい奴らが目撃されてるって話は色んなところで聞くからな。恐らく本当の誘拐犯も複数犯でその辺の噂が複合したものだと思うんだがな。」

 

話を聞いて突如、脳裏に閃きが走る。

複数犯……人喰い……おいおい、まさか。

でも、今まであつまたマスターを見る限りレアですらバーサーカーを制御していたし、無秩序にサーヴァントが暴れているというよりはマスターも揃って暴走している。その方が考えやすい。だとすれば、その猟奇殺人鬼がマスターという可能性は割とあるのでは……?

 

「なぁ、委員長。その、嘗てこの街にいた猟奇殺人鬼。今どうなってるか知ってるか?」

「た、確か死刑を求刑されて裁判中で守掌刑務所に収監中……だったはずよ。私もニュースでやってたことしか覚えてないから、それ以上は微妙だけれど。」

 

これは、俺の推論が割と近いのではないか……?

 

「守掌刑務所……っていうと、この市内にそんな人が。刑務所の中だとしても怖いです。」

 

レアが大袈裟にビビってみせるが、お前なら逆に殺し返せるだろうに。

まぁ、いい。それより今はその情報をもっと集めるべきだ。

 

「なぁ、委員長。それ以上のことって分かるか?」

「いえ、残念だけど知らないわ。」

「そうか……仕方ない。」

「おいおい戈咒、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ。当然話の種になるかもとそんな話題も情報はちゃんと確保してあるのがこの俺様よ。」

「え、マジか錬土!!」

「あぁ、だが流石に食事時にする話じゃねぇんでな、夜にでもメールで情報を送るわ。レアちゃんビビってるぜ?」

「そう、だな。じゃあ、後で頼む。」

 

言われてみれば、確かに猟奇殺人鬼の話なんて、食事中にするものでは無いな。俺ら3人だとすぐ変な話題にとぶからなんとも思わなかったが、平凡な女生徒に擬態してるレアのおかげでそんなことに気づけるってのもなんとも皮肉が効いてる。

心の中でそう自嘲する。

 

その後は秋の文化祭について委員長達がレアに紹介したり当たり障りの無い会話をしたが、レアは特に一切の行動を起こすことがなく。

 

そのまま、帰路についた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

夜8時過ぎ。

宿題を適当に片付けて晩飯のペペロンチーノをセイバーと食べてると錬土からメールで詳細が届いた。

 

「どうしたのじゃ、ますたぁ。」

「ある奴の情報をな、纏めて送って貰ったんだ。」

「ある奴……まさか、お主また幼子に手を……!?」

 

セイバーから殺気が漏れ出る。

 

「違う違う、そんなじゃねぇよ。」

 

と、いうか。俺はそんなに信頼性がないのか。聖杯戦争中だというのに関係の無いことを頼むわけが無いじゃないか。

 

「お主よく自信満々でそんなこと思えるの……で、誰の情報なんじゃ。」

「まだ確定かは分からねぇが、アサシンのマスターの可能性がある奴の情報だ。」

「な、なんじゃとっ!」

 

セイバーがガタッと机に手を打ち付け立ち上がる。

 

「一体どこでそんな情報を!」

「いや、まぁただの噂らしいからあまり詳しくは分かんねぇんだけどな。それにそいつはムショに収監されてるはずだからあくまで仮説というか、確認だ。」

「なるほど……一応儂にも顔くらいは見せてくれんかの?」

「いいぜ……これだな。」

 

メールをスクロールしていくと顔写真が載っている。柔和な顔つきだが、これで猟奇殺人鬼だというのだから全く恐ろしい。他の情報も見てみよう。

名前は六道(りくどう) (みこと)、37歳。警察からは猟理人(シェフ)の名で呼ばれていた、か。フランスのレストランで15年修行した後日本の和食店で5年修行、その後は逮捕されるまで放浪生活を送っていた……か。

具体的な犯行のところを見ると……死体損壊……いや、死体を調理していて食していたのか。本人の供述によると至高の美味を求めてだとか書いてあるがそんなのはどうでもいい。

これは、アサシンの行動と併せて考えれば、そして思い返してみればあの時のアサシンのシェフという言動。全て辻褄が合う気がする。やはり、可能性は高い。

 

とはいえ、刑務所内にいるとなるとマスター殺しをしづらくなるな……なにかアテを考えなくては。

 

「どうじゃ?ますたぁよ。なにか分かったか?」

「あぁ、十中八九コイツがアサシンのマスターだ。だが、貰った情報だと収監中ってなってるからな。マスター殺しを狙うのもキツし、かと言って何人いるかわからない上に倒しても復活してくるような奴らだ相手にしづらいことこの上ないな……」

「なるほどのう。ならばとりあえず、明日の放課後にでもそこまで連れていってくれんか?」

 

何をする気だ?

 

「別にそれは構わねぇが、面会は出来ねぇぞ?」

「そうではない、霊体化して儂が1人で見てくるのじゃよ、様子をな。」

「お前1人だと危なくねぇか?」

 

脳裏に思い浮かぶはあの時、肉を食べて強化されたアサシンにやられるセイバーの姿。あんな目にあわせに行くわけにはいかない。

 

「安心せい、儂もまだやられる訳にはいかぬしそこまで深入りはせぬよ。それに、もし本当にやばくなったら令呪で儂を転移させてくれればよい。」

「なるほど、まぁそれなら……」

「それに、まだ100%そ奴がマスターと決まった訳でもなかろう。ならばそれ以上今考えても仕方なかろうて。」

「それも、そうだな。」

「うむ、じゃからとりあえずお代わりをじゃな……」

 

そう言って空になった皿を突き出してくるセイバー。

 

……やっぱりこいつ、食べる量増えてねぇか?

 

「増えとらんわっ!多分っ!」

「多分かよ……」

 

そうしてセイバーの分のお代わりをよそいながら俺も食事を再開する。

 

明日は、なかなかハードになりそうだなぁ。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

こうして、聖杯戦争4日目は幕を下ろす。しかし、舞台に上がる演者は彼らだけではない。聖杯戦争の4日目はまだ、終わり切ってはいないのだから。

 




もう1話更新です


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幕間/地獄鬼

ハァ、ハァ、ハァ……

 

全力で道を駆ける。なんで、こんなことに!

こんなことなら、雷禅先生の言う事をちゃんと聞いておけばよかった……!

 

だが、そう考えても時は戻らない

私の後悔はそのまま、覆らないものとして刻まれるのだ。

 

 

私の名前は椎崎(しいざき) 雷火(らいか)。17歳、鎖山高校2-A所属で陸上部。

これでも地域じゃそこそこ名の知れたスプリンターだ。だからこそ、雷禅先生に誘拐犯による部活動中止を告げられても(その場は余りの威圧感に納得しちゃったけど)納得出来ず、こんな町外れの公園まで練習に来てたのに。

でも、やっぱり人の言うことは聞くものだ。例え誘拐犯が現れても、私の脚なら逃げ切れる。そう過信してたし。だから携帯も持ってきてなかった。

 

でも、現実はそんなに甘くはない。

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ!!まだ逃げるとは、なかなか健脚なお嬢さんだ!!だが、このハンサムな僕から逃げるのには少し遅かったようだねぇ!」

 

そう、すぐ後ろにまでその男が迫る。

顔色こそ青白いけれどイケメンと読んでも差し支えのないほどには顔立ちは整っているし、服装も少しホストみたいだけれどもセンスが悪いわけじゃない。

だからこそ、話しかけられた時は不審に思わなかったし。ナンパされてると気づいた時は、私もこれでも女だ。悪い気はしなかった。

 

けれど。ついて行ったその先ので。彼のポケットからこぼれ落ちた骨を見た時に。気づいてしまった。転がっていたそれが、ヒトの大腿骨だと。

普通なら気持ち悪がる程度でヒトのものだとは思わないかもしれない。

けど、私はお姉ちゃんが検死官だからか人体の骨の模型は小さい頃から見せられてきた。だからこそ、それがすぐヒトのだと気づけてしまったんだ。

でも、それが逆にまずかったのかもしれない。そこで、悲鳴をあげたからこそ。

あの男も私に見抜かれたと気づいて追ってきたのだから。

 

だから、走って逃げた。

 

私の全力で、走って。走って走って。走って走って走って。走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走ってーーーーーー!!!

 

 

でも。こうして、すぐ後ろにつかれちゃう。なんで。どうして。なんで。どうして。

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!!

 

けど、焦りは余計な動きを生み。それは最適な走りに無駄を生む。そしてその無駄を無理やり押して走ることは、確実に良くない結果を生む。

即ち、足のもつれから来る転倒という形でだ。

最悪だ。もう、起き上がっても間に合わない。

 

「ヒュウ、なかなか良かったよキミィ。でも、このハンサムな僕から逃げるのは流石に無茶ってものさ。」

 

息一つ切らせずに、その男は私の目の前で停止する。

周りを見やると、どうやら最初とは別の公園まで逃げてきていたみたいだ。

でも、周りには時間的にも人っ子1人いない。

 

やだ、怖い、助けて、誰か!

そう思うのに、声が、出ない。呼吸がまだ整ってないから?それとも恐怖から?分からないけど、私の口は酸素を求める金魚みたいにただ口をパクパクさせるだけ。

 

それを気にもとめないのか、目の前の男は聞いてもいないことをペラペラ喋り始める。

 

「やっぱり、僕のようなハンサムは食事も一流じゃないと相応しくない。セドリック…あぁ、セドリックってのは僕の家族の1人さ。アイツみたいに若い肉ならなんでもいい、なんて品のないことは言えないんだ。それに、僕は脳味噌が好きでね。脳味噌はやはり知識が詰まっているものじゃないと美味しくない。キミが見て逃げ出したこの骨の女、繁華街でちょっと甘い顔したらひょいひょい来たけど考え無しで動いてるだけあって脳の味の薄さと言ったら!」

 

な、なんなの!?何を言ってるのコイツ!!??

私の困惑をそのままにコイツはまだ話を続ける。

 

「その点、キミは素晴らしい。この骨を見ただけでそれをヒトの大腿骨と見抜いた知識、私からそこそこ逃げ続けられたその引き締まった肉体。きっと肉も、脳も。このハンサムな私が食べるのに相応しい一流の食材に違いない!!」

 

食……材……?わた、しが……え、えっと。つまり、私を食べるの……?

 

訳がわからない。というより、分かりたくないのか。

そうだ、なんであの骨はあんなに綺麗だったの?

いえ、石灰でも被せたに決まってる。いいや、そうじゃない。

もしそうならあの表面の動物が齧ったような跡は残らない。

 

なら。

なら、なら。

 

やっぱり、コイツは。私を食べようと……!!

そう、心底理解した瞬間。恐怖のタガが外れたのか、悲鳴が口から零れる。

全てを嘆き、全てを忘れ。全てを無かったことにしたいと願う程の絶望を乗せた絶叫が、日の暮れた守掌市の夜空に響き渡る。

 

が、その叫びはすぐに止むこととなる。目の前のコイツに、物理的に口を塞がれることによって。

 

「おいおい騒ぐなよ。食材ってのは新鮮な捌きたてが美味しいんだ。だから猟理人(シェフ)の所に持ってくまで殺せないし、人目につくのも面倒なんだ。だから、黙って僕に食べられるようついて来いよ。このハンサムな僕の血肉となれるんだ、光栄だろ?」

 

話が通じないし訳もわかりたくない。シェフ?なに?いやだ?こわい?

口を塞がれて呼吸が辛くなったからか思考がさらにグルグルと揺れ動く。

もう何もわからない。

でも、助けて。

死にたくない、お願い。嫌だ。誰でもいい。助けて。お願い。助けて。助けて。助けて。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてーーー!!!

 

ーーーーその時。

 

 

「貴様。ウチの生徒に何してやがる。」

 

 

ーーー聞き慣れた、声が。

 

瞬間、轟音。

 

彗星のように脇の建物の屋上から落ちてきた、雷禅先生の拳が背中に突き刺さるーー!

 

「ぐ、ぐぼああああ!!」

「ぷはっ、げほっ、げほっ。」

 

口を塞いでいて手が除けられたことで、呼吸をなんとか取り戻す。

助けて、くれた。死ぬかと思ったのに!!

 

「椎崎、大丈夫か。」

 

いつものような厳しい声で。けれど今日はその中にハッキリとした優しさと想いを感じ取れる声で先生は私に問う。

 

「は、はい。私は特に。」

「そうか、ならいい。にしても、俺は出歩くなと言ったはずだが。」

「す、すいません!私、わたし……」

 

しかし、私の返答を待つまでもなく先生は私の頭をわしわしと撫でるようにして言葉を遮る。

 

「説教は後だ。携帯は持っているか?」

「い、いえ、持ってきてないです。すいません。」

「そうか、ならこれで警察に連絡をしろ。」

 

そう言って折り畳み式より前のタイプである、小さなガラケーを投げ渡してくる。

 

「それと、俺から余り離れないようにしろ。コイツが誘拐犯なら複数犯の可能性も高い。周りに潜んでいないとも言い切れん。」

「え、先生は……」

「俺はコイツの相手をする。どうやら、余り効いてないようだからな。」

 

そう言うと先生は吹き飛ばしたアイツの方へと向き直る。

 

「え、そんな……まだ、動けるんですか!?」

 

今の一撃、アイツの足下のアスファルトにヒビが入る程の威力だったのに!!

 

「あぁ、どうやらそこそこ硬いようだ。嘗て地下でもこの手の手合いは稀に見た。対処は心得ている。」

 

そうこうしていると、吹き飛んだ先の砂煙が晴れ。平然と立つあの男が目に映る。

 

「椎崎、早く警察を呼べ!」

「は、はい!」

 

急いで119……じゃない!落ち着け、私!110に電話をかけ、コールを待つ。まだなの!?

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

雷火が電話をかけたのを見届けると豪三郎はアサシンの息子の1人、ロジャーに向き直る。

 

「なに?まぐれ当たりで一発くらいぶち込めたくらいで誤解しちゃった?だったら残念、ハンサムな僕はこれくらいじゃ何ともないぜ。さぁ、僕の食事の邪魔は償ってもらおうか。」

「言いたいことは、それだけか。」

「……は?」

「なら、俺の生徒に手を出したことを後悔するがいい。地獄が生温い程の一撃を、この地獄鬼からの手向けとしてやる。」

「は、言ってろよオッサンーー!!」

 

サーヴァント特有の人知を超えた身体能力で目の前の豪三郎をぶち殺そうと距離を詰めるロジャー。

が、しかし。ここに立つのはただの人間でも、ただの達人でもない。嘗て地下闘技場で様々な武人だけでなく、改造人間や薬投与による強化措置を受けた獣。果ては魔獣すら打ち破ってきた地下闘技場伝説の拳闘士・地獄鬼の豪三郎である。

ただの身体能力のみに任せた突進など、彼にとってはサンドバッグと何ら変わりはしない。

 

「ぐ!ぼ!ぼ?おぇぇぇえ……」

「……ふむ。何らかの強化措置か、或いは特殊な改造か。割と、堅いな。」

 

故に、この結果も必然。彼の得意とする一瞬の三連レバーブロー、通称地獄打ち。それはロジャーの臓腑に確実なダメージを与え、サーヴァントとしての肉体であるロジャーの肝臓と膵臓。それを破裂させた。しかし、ロジャーも流石にサーヴァント。その程度では痛みを感じこそするものの倒れはしない。

すかさず距離を取り、息を整える。

 

「ぐはぁっ……はぁ、はぁ、はぁ。なんなんだよオッサン……ふざけるなよ……!!なんで、この僕が、ハンサムなこの僕がこんなオッサンにぃぃぃい!!」

「何か?と言えば。先程も答えたが、地獄の鬼だ。何故か、と言えば。それは貴様がその程度だからだ。」

「ふ、ふふふ、ふざけんなよコノヤロウ!!」

 

安いプライドを煽られ激怒したロジャーは自身の持ち歩く武装である肉切り包丁を取り出す。

そして自身のみが武装しているという優位性からか、冷静さを少しは取り戻し素早さを活かして撹乱しながら豪三郎の首を狙うーーー!

 

「ふん、先よりはマシだが。その程度か。」

 

首に向けて突き出した二本の肉切り包丁。その二振りほ包丁は。

豪三郎の両手の指、2本ずつで切っ先から受けられた。

 

「な、な、なな、なんで刺さらねぇんだよぉぉ!?」

「なに、こんなものはただの隠し芸だ。だが、こんな余技でも貴様に屈辱を味わわせるのに役立つのなら、幾らでも使ってやる。」

 

そう言うと、豪三郎はその包丁を折るどころか。刃を曲げ、くるくると丸めて握り潰した。

 

「は、はは、ははは、嘘だ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぉぁああーーー!!」

 

混乱と、焦りと、怒りのまま。突進してくるロジャー。

しかしそれこそ豪三郎の敵どころか、障害物ですらなく。奴の服を掴み、ジャーマンスープレックスを極める。

 

が、全てをかなぐり捨てたのか。ロジャーは無理やり素の膂力の差で抜けると牙を剥き出しにして頸動脈に喰らいつこうとする。しかし、平然と豪三郎は声帯の辺りに抜き手を放ち、無理やりその動きを停止させる。そして怯んだ所に再び、地獄打ちが入り。ロジャーの肉体は完全に崩れ落ちた。

 

しかし攻勢は止まらない。

そして、マウントを取ると。

 

「貴様は、そのハンサム顔が自慢のようだったな。」

 

そう、豪三郎は冷たく言い放つと。左から右へと薙ぎ払うチョップを右手で、ロジャーの上顎へと放つ。

 

ゴギギギゴギャゴギャギギゴギギャという嫌な音が耳を襲い、それと共に。上顎の全ての歯が折られていた。

 

ロジャーは悲鳴をあげたくても既に声帯を潰された以上、ヒューヒューというような音しか出すことが出来ず、苦悶の表情を浮かべる。

そして恐怖の余りか歯を打ち鳴らそうとしても、既に歯が下顎にしかない以上音は全く鳴りはしない。

 

「次は、下だ。」

 

そう告げると同時に下顎の歯も折りとられる。

 

そして。

 

拳を顔面へと構え。

 

「これで、とどめだ。悔いて死ね。」

 

そう言い放ち。顔面どころか頭蓋ごと粉砕する右拳吸い込まれるように撃ち込まれーーーー

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「はい、平斗町の公園です!すぐ来てください!!」

 

通報を終えて、再び先生の方を見ると。

アイツは先生にボコボコにされて、マウントを取られていた。

でも、なんか不安な気持ちになって。少し近づく。

 

そのまま寄っていくとすぐ後ろまで辿り着いた。でも、声を掛けづらい。

 

その時。先生の冷たい声が響いた。

 

「これで、終わりだ。悔いて死ね。」

 

そう、言って。振り下ろせば、頭部がトマトのようになりそうな右拳を振り下ろして。

 

ーーー気づけば。

 

「ダメぇぇぇぇーー!!」

 

思わず、そう叫んで先生にしがみついていた。

 

予期していなかつたのか、先生の動きが止まる。

 

「先生、ダメです。殺しちゃダメです。殺したら……ソイツと同じになっちゃいます……だから……。」

 

思わず泣きながらそう、呟く。私を救ってくれた人が、目の前で人を殺すところなんて見たくない。そんな身勝手なエゴだけど、紛れもない本心で先生に言った。

 

「そう……か。そうだ、な。ああ、済まない椎崎。生徒に教えられるとは俺もまだまだだ。」

 

そう、先生は右拳を下ろし。こちらを向いて優しく、けど何処か哀しく微笑んだ。

 

 

ーーその時。

 

「ええ、その通りよぉ。あなたはこれ以上踏み込むべきではないわぁ、先生。」

 

そう、野太い声と共に。1人のオネェが姿を見せる。

 

「え、え、え?」

「あらン。驚かせちゃったかしらん。私は爆霧 風破。お嬢さん達には爆霧ビルのオーナーと言った方がわかり易かったかしらん?」

 

え?え、え、え?

 

「えぇぇぇーーー!?」

 

この人が、このオネェが、あの。爆霧ビルのオーナーさん!?

爆霧ビルといえば、守掌駅の目の前に昨年出来た高層ビルだ。上層部はオフィスになっていて、下層部は色んな流行りのお店が入っている。かくいう私も部活の友達と何度か行ったことがある若い子達にも大人気の駅ビルだ。

 

そのオーナーが、まさかオネェだったなんてーーー!!?

 

「椎崎。人を見た目で判断するのはよくない。特にこれからの時代、人の在り方は多様化していく。一概的に決めつけるようではいかんぞ。」

 

私の態度に気づいたのか、雷禅先生が注意する。

 

「いえ、いいわよぉ別にそんな気にしなくても。それより、そこのアレ。引き取らせてもらうわぁ。」

 

そう、倒れ伏したアイツを指さして爆霧さんは言う。

 

「そこの輩は、あなたの関係者ですか……?」

「いいえぇ。でも、私の仕事上、管理して始末する必要があるのよ。地上にいたうち、コイツだけ取り逃しちゃってね。ご迷惑をおかけしたわぁ。」

「で、ですが……」

 

しかし納得がいかないのか食い下がろうとする先生。それはもちろん私もだ。だいたい、さっきの始末するって、まさか殺す気じゃ……

 

「雷禅先生、それ以上はおまかせしてください。」

 

その時、凛とした声が公園内に響き渡る。

 

「それは私達の理解の及ばない存在です。これ以上は彼に任せることです。」

「こ、校長!?」

「校長先生っ!?」

 

そこに来たのは、長い黒髪に括れたウエストと大きなバスト。童顔だけれど、女の私から見ても魅力的なスタイルをした鎖山高校の校長先生、その人だった。

 

「ど、どういう事ですか校長先生。なにが、どうなってるんですか?警察に引き渡すんじゃ?」

 

思わず校長先生を問い詰める。しかし校長先生は毅然とした表情を崩さずに答える。

 

「いいえ、この輩は彼が引き取ります。警察に引き渡したところで意味がありませんから。」

「ど、どういう事ですか!説明してくれなきゃ、納得出来ません!!」

「言葉では、説明出来ないこともあるのです、椎崎さん。」

「そんな、卑怯です!私だって巻き込まれたんです、ちゃんと教えてください!!」

 

その時、その問答に助け舟を差し伸べたのは意外な人物だった。

 

「ふふ、そんなに知りたいなら、いいわよぉ。」

「爆霧さん、いいのですか!?」

「ええ、このまま伝えない方が色々嗅ぎ回られそうだしねぇ。ただし、一切。家族であろうとも口外しないように。」

「は、はい!」

「それじゃあ、まずは見せた方が早いかしらねぇ。」

 

そう言うと爆霧さんは先程アイツの横に行き。心臓にナイフを突き立てた。

 

「きゃっーーーー!!」

「よく見なさいなぁ、椎崎さん。」

「え……!?」

 

見ると、目の前の男の姿は光の粒子になって消えていく。

 

「これで分かってもらえた?コイツは、人じゃない、幽霊なのよぉ。そして私はそれを除霊する、ゴーストバスターよ!!」

「「え、えええーー!!?」」

「な、なんと……」

 

私達全員が驚きを口にする。というか、先生達も知らなかったのか。

ま、まさか。そういう事だったなんて!!

 

「し、知らなかった……まさかホントにそんな人達がいるなんて。でも、そうでもしないと今の消滅に理由がつきませんよね。分かりました、私信じます!そして誰にも言いません!」

「えぇ、そうしてくれるとありがたいわぁ。」

 

まさか、そういう理由だったなんて。

でも、それなら先生が動けない人をボコボコにした訳じゃないし、少しは安心かも。

 

「それじゃあ、夜も遅いし公園の入口にタクシーを呼んであるから。それで帰りなさい。」

 

そう言って校長先生は私にタクシーチケットを渡してくれた。

 

「それじゃ、お世話になりました。また明日学校で!」

「これだけの事があったのに……椎崎さん、強いわね。」

「いえ、心細かったですけれど。先生が守ってくれたおかげです!それじゃおやすみなさい!」

 

最後にもう一度挨拶をしてからタクシーに乗って自宅へと向かう。

 

それにしても、私を助けに来てくれた時の雷禅先生、カッコよかったなぁ……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

雷火がタクシーに乗って去っていった後。

 

 

「それじゃあ、我々もそろそろ解散としますか、校長先生。」

「……御裂(みさき)。私の方が歳下なんだし妹弟子みたいなものなんだからいい加減、御裂(みさき)って呼びなさいよ、豪くん。」

「い、いえ校長先生は上司ですし、師匠の娘にして俺の恩人です。そんなぞんざいな呼び方など、断じてできません!」

「あー、もう!フラグばかり立てるくせにどうして私ルートに入らないのよ!!」

「は……?フラグ?ルート?何のことですか校長先生。今後の新しい教育システムか何かですか?」

 

その答えを聞いてはぁ、と校長……獅王堂(しおうどう) 御裂(みさき)は深く溜息をつく。

そしてそれを見ながら風破はくすくすと笑う。

 

「朴念仁相手は大変ねぇ……獅王堂さんも頑張ってねぇ?」

「よ、余計なお世話です、爆霧さん!!帰りますよ雷禅先生!運転をお願いします!!」

「は、はぁ。それじゃあ、失礼致します。」

「ええ、それじゃあ。」

 

そうして、1人残った風破は煙草に火をつけながら1人ごこちる。

 

「あんな嘘を信じて、騙されてくれるなんてねぇ。ホントに皆、いい人達だこと。だからこそ、私達とは交わらせる訳にはいかないわねぇ………さて、私達も行くわよぉ。」

 

そう呟くと、巨大な犬型の獣が現れ。風破を背に乗せ、夜の中に消えていく。

 

聖杯戦争の4日目はこうして、今度こそ幕を下ろした。

 




Q:教師の癖に強すぎない?


A:型月の二次創作の一般人です、逸般人に決まっています


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5日目/侵食

アガルタ良かったですよね、不夜城のアサシンちゃんが可愛くてカッコよくてプロポーズしたいです

あと叔父貴とドリカムおじさんも好きです


その朝もいつもと変哲はなかった。

強いて言うなら錬土が迎えに来てなかったことだが、これはここ最近は珍しいことでは無かったものの嘗てならそこそこある事だったためそのまま気にせず学校に向かった。

 

しかし、それが間違いだったのかもしれない。俺はこの時逆に錬土を迎えに行ってでも行動を起こすべきだったのだ。

 

だが、それ以上考えても今は無駄にしかならない。

今出来ることは、ただ目的に向かって走ることなのだから。

 

地下下水道の異臭の中、足元の跳ねる水音と共に曲がると目の前が急に開ける。そこにはーーーー

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

HRの開始を告げるチャイムが鳴る。

結局錬土の奴は来なかったな……またナンパにでも向かったのだろうか、アイツ。

 

そうこう考えているうちに豪ちゃんが入ってきて点呼を取り始める。

 

「乾、は……おらんな。伍道、なにか聞いてるか?」

「え?いえ特に。学校に連絡は入ってないんですか?」

「いや、無いな。ここ最近は物騒だし何も無ければいいが……まぁいい。後で連絡を取ってみるとしよう。では次、斑鳩!」

「はーい。」

 

斑鳩の返事と共に再び豪ちゃんは点呼に戻る。

 

だが、錬土が無断欠席?確かに、した事が無い訳では無いが極端に少ないのは事実だろう。何しろ、うちの学校は無断欠席3日でペナルティがあるのだ。サボるにしろ仮病などで欠席連絡を入れるのが基本になる。

それに、朝から3本ほどトークを送ってるが、既読が付いた様子もまるでない。

もちろん、何でもなくてまだ寝てるだけとかナンパしに行ってるだけの可能性もあるのだが……

 

『セイバー、どう思う?』

『わ、儂か?うむむ……儂はそやつのメンタリティについて余り詳しくないからのう。お主ほど確信を持っておかしいとは言えんが、確かに昨日注意を促されたばかりで、尚且つその誘拐事件についてもお主などより詳しかったと考えると連絡を断たれておるのは不自然な気もするの……』

 

突然話を振られたからか慌てつつもセイバーはセイバー自身から見た錬土に対しての所見を述べてくれる。

やはり、不安だ。

 

ーーその時。

ふと、目を教室の端にやったら。

レアと目が合う。そして、笑みを見せてくる。

まさか。まさか。まさか、いや、でも、アイツが手を出さない保証なんて無かったじゃないか、しまった、しまったしまったしまったまさかまさかこうもやられるとはっ!!

 

『お、落ち着くのじゃますたぁ。冷静さを失っては思うツボじゃ!』

『だ、だけどどうしろって……目立つのは得策ではない、それにお主にはまだもう1人の人質がおるのじゃろうが。下手に騒いで手を下されてはそれこそじゃ。』

『ぐっ……』

 

セイバーに諭されることで何とか冷静さを取り戻す。そうだ、ここで焦っても意味は無い。アイツが今ここにいる以上、最悪の事態で無ければまだ手を出してはいないはずだしそうしようとすれば奴の魔術回路が励起するから分かるはず。だからきっとまだ大丈夫。だからせめて。せめてHRが終わるまで待たねば………

そう、自身に必死に言い聞かせるようにしてともすれば数時間にすら感じられるほどの数分間を終え。

HR終了と共にレアを廊下の端へと連れ出した。

 

「あらあら、随分と熱烈なアプローチね。やっと私の(もの)になることを決めてくれた?」

「そんなのはどうでもいい。お前、錬土をどこへやった。さっきの笑い、知らねぇとは言わさねぇぞ。」

 

有無を言わさず実体化させた妖刀。首筋へと突きつける。

するとレアは両手をあげてニタリと笑う。

 

「はぁ……私は何もやってない。それどころか関与すらしていないよ。」

「嘘をつくな!俺に対しての人質が急に消えたんだ、何も無いはずがねぇだろ!!」

「おいおい、別に私は監禁してる訳でもなんでもないんだよ。それなのに消息を絶ったら私のせいってのは流石に言い過ぎだと思うなぁ。」

「てめぇ……!!」

 

衝動のままに妖刀を振り抜く。

が、それは躱され。そのまま追撃に移ろうとした瞬間、奴の言葉がその動きを停止させた。

 

「おいおい、危ないなぁ。私を殺したら何処にいるか分からなくなるぜ?」

「ーーぐっ……!やっぱりてめぇ、関与してるじゃねぇか。」

「とんでもない、私はただ知ってることを知ってるだけだ。……仕方ない、身の潔白の為だ。教えてあげるさ、今回の下手人はアサシンだよ。」

 

そう、アッサリ下手人を口にした。

 

「大体、君を篭絡する作戦が全くと言っていいほど進んでないのに貴重な人質に手を下す訳がないじゃないか。」

 

い、言われてみれば確かにそれはそうだ。でもならどうして下手人も分かってるのにレアはみすみすそんな事をさせたんだ?コイツならアサシンの1人や2人、目でもないだろうに。

………まてよ。

 

「お前らが……手を組んでいるとすれば。みすみす攫われたことに関しても筋が通る。そうじゃないのか。」

「なかなかに案としては魅力的だけどそれはない。あんなキチガイどもと手なんて組めないさ。」

「どの口が言うんだよ、この気狂いめ。」

「酷いなぁ、クラスメイトにそんなこと言うなんて。」

「うるせぇ、なら何故それを知ってるんだ。」

「全く……せっかちな男は嫌われるよ?街中の監視カメラ、あるだろ。」

「それが……どうした。」

 

確かに、この街には監視カメラが多い。それ故にそれに写らず歩く道も俺たちは当然把握しているがそれがどう関係あるのだろう。

 

「アレを設置したのは私なのさ。正確には元・協力者と言うべきかもしれないがね。」

「なっ……!?」

「まぁ、君みたいに全然写らないのもいた訳だが。」

 

待てよ、それはつまり日頃の動きから全て監視されてたということか……セイバーと歩く時は職務質問を回避しようと監視カメラを避けて歩いていたのが思わぬ役に立ったわけか。

 

『お主、いつも妙な道を通るなと思ったらそういう訳じゃったのか……』

『いや、だって警察とかに注目されたらサーヴァントの説明とか面倒だしね?』

『それだけかのう……?』

 

ほ、ホントにそれだけだって。うん。

 

「で、それに昨夜彼を担いで攫っていくアサシンが写ってたってわけよ。だから彼がどこにいるかも知っていて、なおかつ私が関係ないってこと、分かってくれた。」

「……信用はしないが、とりあえず言い分は分かった。じゃあまず、そのどこにいるのかを教えろ。こんな言い方したくねぇけど、お前も人質が減るのは困るだろう?」

「そうね……一つ、条件を呑めば教えてあげなくも無いわよ?魔術師の原則は等価交換。タダで教えるなんて嘘でしょう?」

「俺は……魔術師じゃない。」

「マスターだし、同じことよ。だから……そうね、教える代わりに片手でも貰おうかしら。」

 

ーーーーーッッ!!

 

「そんな条件、呑めるか!」

「あら、乾君がどうなってもよくって?」

「グッ……」

「それに、心配しなくても切り落とすわけじゃないわ。意味が無いもの。ただ私という存在でそこから刀の毒を抜いて完全に塗りつぶすだけよ。この病毒(どく)は練るのに時間がかかるから戦闘中に使うのは難しいのよね。」

「なっ………!!」

 

それこそ、切り落とされるより質が悪い。下手したら、全身蝕まれてしまうのでは無いのか!?

 

「安心してくれていいわよぉ、手首から先の侵食なんて、貴方がセイバーと契約している限り殆ど出来ないから。これはただの、第一段階。現時点では、ただの私の自己満足。特に動かすのにもなんの支障もないわ。」

 

そう言うとレアは再びこちらの目を正面から見つめて問い掛ける。

 

「で、どうするのかしら。乾君を取るか、左手を取るか。」

「そ、そんなの……」

『惑わされるなますたぁ!コイツから力づくで聞き出せばそんなものを差し出す必要はない!!』

「そ、そうか無理やり聞き出せば……」

「なるほど、京子ちゃんを犠牲にして左手と乾君を救うのね、君は。それもまた悪くないも思うわ、私は。とっても人間臭くて、吐き気がするほどにね。」

 

そ、そうだ。ダメだそれは!まだ委員長も人質のままだ。くそ、こうなったら……!!

 

『ま、待つのじゃますたぁ!片手が使えなくなれば……!!』

 

そう、片手が使えなくなれば。それは大きなハンデとなるに違いない。聖杯戦争で死ぬ可能性も高まるかもしれない。

 

ーーけれど。

それで帰るべき日常(ばしょ)を無くすなら。

命を引き換えにするわけじゃない、だったらそれくらいのリスクは負わなくてどうする……!!

 

 

「……分かった。この左手はお前にやる。だから錬土の居場所をすぐに教えろ。」

『ますたぁ!!』

 

頭の中でセイバーの静止の声がするが無視してレアに左手を差し出す。

 

「へぇ……そう来る、それを選ぶんだ。まぁ、僕としては最良の形だけれども、さ。」

 

そう言うとレアはひんやりとして、それでいて毒の灼けるような臭いを放つ両手で俺の左手を包み込む。

 

I veleni(我が毒). I malattia(我が病). l anima(我が魂). Ho penetrare nel cuore(それは心に染み入るもの). Correre come cavaliere pallido(第四の騎士の如く駆け), Diventa veleno per coprire la vostra(汝を包む毒となれ). Il mio peccato è la sua malattia(我が罪よ、汝を侵す病となれ).」

 

紡がれる詠唱。左手に感じる異物感と魔力。思わず目を閉じる。

 

そして、目を開くと。

 

「……終わりよ。これで貴方の左手は私のもの。」

 

俺の左手は膿んだような、鬱血したような。それでいて何かが蠢くような毒々しい、死んだ血の色をしていた。

 

『ますたぁ……お主。』

 

セイバーが咎めるような、労るような、嘆くような。そして、哀しむような。

そんな顔でこちらを見つめる。

 

「これが最善だったんだ、きっとそうなんだ。」

 

そう、自分に言い聞かせるようにセイバーへと言う。

 

「それに、左手だって思ったよりちゃんと動く。最悪壊死して使い物にならない可能性も考えたけどこれならまだまだ普通に戦えるはずだ。」

「それはそうよ、私としてもどこかその辺で野垂れ死なれたら困るしね。だって私は君を『子』にするんだから。」

「そうやすやすとされてたまるかよ……それより錬土はどこだ。教えて貰うぞ。」

「ええ、そういう約束だものね。あの子はアサシンの隠れ家につれていかれたわ。その場所はーーーーこの街の地下下水道。」

 

息を呑む。地下下水道と言えば、幼女同盟の間でも緊急避難用に使われることのあるこの街の地下を網目の様に張り巡らせる下水道だ。確かにアソコなら、隠れ家としては申し分ない。

 

「行く気かい?」

 

窓に足をかけて飛び出そうとするとレアが声を掛けてくる。

 

「当たり前だろ、まだ何かあるってのか。」

「何、死んでもらっては困るし、一つ助言をね。」

「助言……?」

 

何やら物凄く胡散臭いが、聞いておくだけなら損も無いか。そう判断して耳を傾ける。

 

「ヤツら……アサシン達と戦う時は出来るだけ1対1を構図を作って戦うよう心掛けるといい。それじゃあ先生には君が早退したと伝えておくよ。」

「そうかよ、有難く受け取っとく。」

 

そうしてレアを尻目窓から飛び出して再びセイバーを装備したまま道路のマンホールを斬り裂いてそのまま地下下水道へと潜り込む。

間に合ってくれよ……!!




いやー、主人公ってこうやってボロボロにされてくものですよね

全身を呪いに蝕まれ、左手はレアのものにされ、漸く主人公らしくなってきたぞぉ〜(歪んだ主人公観)


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5日目/地下侵攻〜アミス〜

更新久々になりました

次回はもう少し早く書きあげるつもりなのでよろしくお願いします……


 

マンホールから縦穴を垂直に落下して地に着地すると下水の臭いが鼻につく。

セイバーを装備したままだからだろうか、暗闇に対しても目が素早く慣れてアサシンの下へと走り出そうとしたところで足がピタリと止まる。

 

………しまった。具体的にどの辺にいるか聞いてない。

 

この地下下水道は街中に張り巡らされている。つまりやみくもに探すということは下手をすると日暮れくらいまでかかっても見つけ出せない可能性もある訳だ……戻ってレアに問い詰めた方が?いやアイツも監視カメラで見ていたと言うなら地下下水道のどこにいるかまでは把握できないだろう……虱潰しに探すしかないのか。

 

そう走り出そうとすると頭の中にセイバーの声が響く。

 

『お主……もう少し考えて動いたらどうじゃ?先程の左手といい、焦るのはわかるがどうにもヤケになっとるように感じるのじゃがのう……』

『べ、別にそんなつもりは無いんだけども。でも、考えて動けって今更どうするんだよ。学校まで戻ってレアに聞くのか?』

『いや、恐らくあやつもそこまでは知らんじゃろ。じゃがな、サーヴァントにはサーヴァントの気配が感じ取れるものよ。それもここまでの気配、全く隠す気が無いようじゃの。』

 

そうか!その手があった!流石セイバー、可愛いだけじゃなくて冷静でいてくれて本当に助かる。

 

『お、おいお主……そういう思考は、そのじゃな、もう少し心の中でそっとじゃな……』

『そんなことより、どこなんだアサシンは。』

『む……そ、そうじゃったな。じゃが、実はのう、サーヴァントらしき気配は2つ、ハッキリと感じるのじゃよ。』

『2つ?アサシン達じゃないのか?』

『いや、他にも微細な気配を感じるしこれが他のアサシン達のじゃろう。つまり、今この地下にはアサシン達親玉に加え他のサーヴァントも1騎存在している可能性が高いということじゃ。それが味方か敵かまでは分からんがの。』

 

なるほど……とはいえ、ここで考えていても始まらない。

 

『セイバー、まずは近い方の気配に案内してくれ。』

『うむ、一時の方向に直線距離でおよそ1kmじゃ。探知に集中すれば恐らく気付かれる距離ではあるし、一気に近づいて仕留めるぞ、ますたぁ!』

 

この地下下水道は海の手前の下水処理場へと続く幾つもの本流とそれを繋ぐ細い通路部により格子状になっている。故に直線距離で1kmなら実質距離はおよそ1.3〜4km。今の俺の脚力なら全開で40秒程度で詰められる距離だ。

だからこそ、一気に走る。この際そこらの木っ端アサシン共に気付かれるかどうかは二の次だ。まずは1人、アサシン達の親玉にしろ或いは協力者にしろ、不意打ちで斬りとばすーーー!

 

残り、500m弱。曲がり角を地を蹴り無理やり曲がることで速度をほぼ落とさず間合いを詰める。そして、3、2、1ーー見えたっ!

暗闇に慣れてきた目がサーヴァントをの姿を捉えて、両腕で大上段に振りかぶった刀を振り下ろす。

しかし、その一撃は相手の獲物によって防がれた。

弾き飛ぶ火花の光が闇に慣れた目を刺激する。

そのまま、打ち合うこと数合。互いに弾き合うことで間合いを取る。

 

「なっ、ロリコンセイバー!じゃなくて、セイバーのマスター!」

「ーー馴染んだか、先より動きが良くなってるなお前。」

 

聞こえる声は聞き覚えのある、彼女達の声。

 

「ランサー……に、鎖姫ちゃんか。こんな可愛いロリまでこんな事件に関わってるとかな……まったく、魔術師ってのはとんでもないもんだよ。だが、時間が無いんだ。信条には反するが、例えロリであろうと今は押し通らせてもらうぞ。何、君の美しさに傷1つ付けないことを約束しよう。」

 

そうい言い放つと同時に。

ギリ、とここまで聞こえるほどの激しい歯軋りの音。

 

「そう……あなたまで。あなたまで私を半人前扱い、命を奪う価値すら無いと言うの………!!」

 

彼女の逆鱗に触れたか、怒りのままに攻撃を仕掛けようとする。

 

הגוף שלי החיים שלי הדקל שלי(我が身体は命を用いて全てを握る)ーーלְהִתְרַסֵק(潰せ)!!!」

 

彼女の呪文ともに励起した魔術回路を魔力が流れ、細い通路全てを押しつぶすようにコンクリートの手が幾本も周囲から地響きと共に生えてきて俺を握り潰そうと襲いくるーー!!

 

「うおっ!!」

 

バックステップを取りつつ必死に回避を続けるが、キツい。これだけの質量を動かされるといなすのが難しい分回避に専念しなくてはならない。

このし状態でランサーも相手にするのは……と、警戒するがランサーはこちらに目を向けない。それどころかランサーの足下からも同じような手が出てくる為それを回避する事に気を取られている。

連携が取れてないのか?だとしたら、回避に専念出来るからこの程度……!

そう回避しつつコンクリートの腕が落ち着くまで後ろへと引く。300mくらいは下がったか……?

完全に視界も塞がれ、道としては機能しなくなってしまった元・通路部を見やりつつひと心地つく。

にしても……何か地雷踏んだか俺!?

 

『いや、どう見ても思っきり爆発させてたじゃろ……じゃが、好都合じゃ。ランサーのマスターの後先考えない行動でランサーと完全に分断された。あやつらからも目視はう出来んじゃろうし、ここはもう一つの気配……アサシンの親玉の下へ向かうぞ、ますたぁよ。』

『……そうか、鎖姫ちゃん達は攫ってきた人達を連れているようには見えなかった。だからこそいるとしたらアサシンの親玉のところってことか。』

『うむ、それにもしその場にいなくとも捕らえている場所は知っているだろうし、間違いなくランサーよりは格下のサーヴァントじゃろうからの。戦うにも戦いやすい。』

『よし、なら……』

 

そう、向かおうとした時。背後から地響きが聞こえる。

見ると、先程まで俺らを襲っていた手が逆向きに。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、なんだ……!?」

 

そうして、奥からとびこんでくる一筋の影。

 

「悪いが、この俺の前では。あらゆる魔術は、意味を成さん。」

 

射し込んでくる一筋の穂先。それを刀身でギリギリ受けるがそのまま吹き飛ばされる。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

あいつまで!どう見ても素人なあのロリコンまで私をバカにして!

 

「ちくしょおおおおおおおお!!!!」

「お、おいサキ、落ち着け。」

 

なにか聞こえるがまるで聞こえない。

魔力を勢いに任せて魔術式に流し込む。

ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、 ふざけるな!!

 

「おい、だから落ち着けサキ。」

 

どいつもこいつも私を認めない!!私は!お祖母様の後を継ぐ魔術師にならなくちゃいけないのに!お母さんの為にも!

 

「ああああああああああ!!!!」

 

私の貧弱な魔術回路が焼け付きそうになるほど魔力を回して魔術を行使する。

 

もう既にセイバーのマスターの姿は見えない。けれど、けれど、止まらない。止める気が起きない。このまま……全てーー

 

「あぴゃっ!?」

 

後頭部を強い衝撃が襲い、目から火花が飛び出そうになる。

 

「……落ち着け、サキ。触れられたくないところにぶつかったのだろうがそうカリカリするものではない。それでは勝てる戦いにも勝てなくなる。」

 

ランサーが諭すように私に語りかける。

少し……落ち着いた。ちょっと怒りのまま暴走し過ぎたかもしれない。魔力を使い過ぎて少し目眩もする。

 

「ごめん……ランサー。あのままランサーに任せておけば倒せたかもしれないのに。というかそれどころじゃないのに、とんでもないミスを………!!」

「気にするな。そんなもんどうとでもなる。ただサキは俺にこう命じればいいんだ。アイツらを倒して彼を救い出せ、と。」

 

そう、女性のようにしか見えない美しい相貌と声で、ランサーは力強く言い放つ。

 

「ありがとう……あなたが私のサーヴァントで良かったわ、ランサー。」

「礼を言うのは早いさ、サキ。その礼はここから無事出てから受け取らせてもらうよ。だいたいこういうのは帰りまで苦労させてくるもんだったからな。」

 

そう笑うと私の魔術でかさなりあって通路部を塞ぐコンクリートの手の前に立つ。

 

「ランサー、そこを壊して抜けるのは流石に時間がかかりすぎるわ。回り込んで……」

「おいおい、サキ。俺の宝具を忘れたのか?俺にとって魔術は何の障害にもならねぇのさ。」

 

そう言うとランサーは槍の、その穂先を突き刺す。すると、コンクリートの手はまるで逆再生を見ているかのように壁へと戻っていく。

 

「あなたの宝具、効能は知っていたけれどまさかここまでの力だったなんて……」

「はははっ、驚いたか?なら驚きついでにセイバーをとっちめて吐かしてきてやるさ。」

「ええ、お願いランサー!」

 

そう言うと、ランサーはこちらに向けて親指を立ててそのまま出来始めた隙間を縫って一気にセイバーのマスターを追い始める。

 

ランサーがいれば、助け出すまで後少しだ。

だから……生きてて。()()()()()!!

 



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5日目/地下侵攻〜リプレイス〜

更新を早くすると言ったな、あれは嘘だ

シンフォギアを二日間くらいかけて一気見してたので全然進みませんでした……いやでもめっちゃ面白いですねシンフォギア
クリスちゃん可愛いです、作者は紛うことなきロリコンなのに一番好きです


吹き飛ばされながらなんとか姿勢を立て直すとそのまま一気に縮地の技法で間合いを詰める。

アイツの力を借りた副産物だろうか、より妖刀の内に秘められた人斬りの術理や技法が身体に馴染み、セイバーに身体を委ねなくともそれを行使できるようになっている。これなら、俺1人でも……!

 

そうして一月に首を狙うが当然その突きは防がれる。そうしてそのまま弾かれた勢いで刀を振り回し、遠心力に任せて首を落としに振り抜くが、これもダメ。逆にその出来た隙に右眼を狙われて回避を余儀なくされる。

経験とスピード、片方が上回り、もう片方が下回る。

それ故に互いに拮抗し槍を上回る速度で急所を狙う刀。

それ故に互いに切削し刀の軌道を読んで防ぎ生まれる隙を狙う槍。

 

幾分、幾合打ち合ったか。互いに再度間合いを取ったタイミングでランサーが口を開く。

 

「解せないな。この間の夜よりも確実に太刀筋には磨きがかかっている。同時に禍々しさも増しているが……それほどの実力ならわざわざアサシンと組んでの魂喰らいなどせずとも、寧ろ他の陣営と組んだ方がメリットが大きいだろうに……いや、そこまでの強さだからこそ地下に隠れ、アサシンの手数に頼り情報収集を行うつもりだったのか。」

 

何を……言ってる?

今の言い方では、まるで俺達をアサシン共の仲間と認識しているような……まさか、ランサー達もアサシン達と敵対している……のか?

 

『いや、簡単に信じるのは危ういぞ、ますたぁよ。ブラフや罠の可能性もある。それにアサシン側でなかっとしても、向こうが攻撃の止めない以上背を向けるのも武器を下ろすのもリスクが大き過ぎるじゃろう……』

 

セイバーか念話で彼女の意見を伝えてくる。

確かに、その通りだ。それに、先に不意打ちを仕掛けたのがこっちである以上仮にアサシン側でなかったところで味方につけるのは難しいだろう。

 

そう思考を続けるうちにどちらとも無く距離を詰め再び戦端が開かれる。

先程の焼き直しのようになるが、この均衡はギリギリの上に成り立っているに過ぎない、どちらかが宝具を切ればそれで一気に崩れる天秤は傾くだろう。

更にそれだけでなく俺達の場合は真名がハッキリしない以上、宝具の開放にも難がある。かといってこの間の擬似解放は精神と肉体に負担があり過ぎる。ランサーを倒してもまだアサシン達がいる上にこのような敵の本拠地で活動できるのがセイバー1人というのはかなりまずい……故にここは多少の無理をしてでも、宝具を使わせずに倒さなくてはならないだろう。

 

ココロが、震える。

 

ーーそうだ、だからこそ。大事なのは迅速な勝利。迅速な斬人。迅速な殺戮。さぁ、振るえーー

 

心が、ブレる。

 

ーーならばこそ。防ぐのは致命傷のみ。肉を、骨を穿たせて命を斬る。心の内から、精神の底から、そんな考えが。ふと浮かんでくる。

澱のような、呪詛のような、ぼんやりとした濁り。朱黒く、血の様にこびり付いて心を侵す。白装束に包まれた、彼女のような嘲嗤(わら)い顔。

心も、躰も。この呪いに侵されていく。その時身体から何か大事なものが抜け落ちたような錯覚。だがそれは、(おれ)には必要の無いものだ。

 

 

そうだ、肉体のダメージなど気にはならない。この身は刀だ、刃がこぼれようと、折れようと、斬れればいいのだ。

 

そう、歪な決意が胸に宿ると。空いた8mほどの距離を縮地で瞬時に詰める。

脇腹をカウンター気味に抉られているが致命では無い、無視だ。

 

『お主、何を考えておるっ!!』

 

後ろから何かが言っている様だが聴こえない(ワカラナイ)

しかしその致命の筈の一撃はギリギリで防がれる。

 

ーーまだだ。

もっと、もっと、鋭く、刳れ。

もっと、もっと、素早く、斬れ。

 

今度は向こうも読んだか、こちらの進行方向、心臓の前に槍を置いてきた。

 

ーーだが、構わない。

 

心臓の前に右腕を突き出し、刺し貫かせる。

 

「こいつ、右腕と引き換えに槍を……!!」

 

これで槍は封じた。肘から槍が飛び出て、神経と骨がやられたが大したことではない。そのまま突き進み、右腕全体で振れなくする。

 

「ますたぁっ!もうやめるのじゃっ!何故、何故儂がお主の身体から追い出されるのじゃ!?頼む、やめてくれますたぁっ!!」

 

また何かが(泣き声が)聴こえた気がするが、今の(おれ)には通じない(ワカラナイ)

 

刀は既に喉元に。

槍は未だ背後に。

 

さぁ、斬って(ころして)()ろう。

 

 

……そう、刃がスルリと首筋に入る瞬間。

 

「全力で下がって!!ランサー!!」

 

鋭く地下下水道に響く声。

 

同時にランサーより更に奥から発光する赤色の光と多大な魔力。

即ちーー令呪。

 

三角のみの絶対命令権にして聖杯戦争参加者の証。

それは振り抜いた刀を空振らせ、ランサーを引き合う磁石のように物凄い勢いで後ろへと引かせる。

 

更に奴が握ったままの槍も同時に吹き飛び、己(おれ)の右腕の肘から先はその勢いでバラバラに吹き飛び散った。

 

『ますたぁっっっ!!頼む、引いてくれ!やめるのじゃっ!』

 

再度脳裏に響く叫び声(ざつおん)

だが、今の(おれ)には届かないし、ワカラナイ。そう、俺には、ワカラ……いや。

 

わからない……?

そんな訳はない。

届かない……?

あってはいけない。

 

幼女(ロリ)に涙を流させる流させるロリコンなんていてはいけない。

そんな奴は畜生にすら劣る塵屑(ごみくず)だ。

幼女の涙を流させるようなら勝利も、斬人も、殺戮も。必要ない。(おれ)は引っ込め、この身体は、ロリコンは俺だ!!

 

そう思った瞬間心の澱が流れていく。淀みは薄れ、沈んでいく。

俺は……いや、今の力こそがアイツとの契約の結果、か。右腕を見ると、飛び散ったはずのそれは既に()()()()()()()()()

 

後ろを見るとセイバーが座り込んでいる。彼女をまた、悲しませてしまったのかもしれない。

 

「ます……たぁ。戻った、のか?」

「あぁ……心配かけて、ごめんな。」

「全くじゃ……アソコまで進行していたとはの……いや、まさかお主……伏せろますたぁっ!!」

 

セイバーが鋭く叫んで俺の頭を抑えつける。

そして地に伏した俺達の頭上を通り過ぎた飛来物が地面に突き刺さるーー包丁だ。

 

と、いうことは。奴らのお出ましか。

振り向くとグラサンをかけ、キャップを斜めに被ったラッパー風味のアサシンが肉を持ちながら複数のアサシンと共に現れていた。

 

「Hey!YO!これ食べれる肉、どうせ普通の肉?」

 

そう言うと抱えた肉を口に含み咀嚼する。あれは……俺の、飛び散った右腕の肉か。

そう気づくと途端に胃の奥から不快感が湧き上がってくる。

 

だがそれにも構わずラッパーアサシンは肉を咀嚼し続けると突然叫び出す。

 

「ん〜〜〜〜!!ジュゥゥゥシィィィィィーーーーー!!!やっぱ魔術師の肉は最っ高だぜぇぇぇ!!さぁ皆、こいつのお肉を食べたいかー!!」

「「イエーー!」」

「世界の人間を食べたいかー!!!」

「「イエーー!!」」

「よーし、なら、解体の時間だぜベイベー!!」

 

な、なんなんだコイツ……

そう思うが否や、目の前のラッパーアサシンが先陣を切って襲い来る。

 

「セイバー!!」

「ぐ、ぬぬぬ……仕方ないっ、儂が全力で瞬殺してやるのじゃっ!」

 

構えると同時に流れ込む呪い。それはいつも通り俺に斬人の感覚を覚えさせるが、さっきのアレを知った後ではそれに深い思いやりも加わっていたことがハッキリ伝わる。

彼女を心配させない為にも、より早く倒れてくれよーー!

 




裏話として、今回のラッパーアサシン、最初は仮○ライダーグミのCMのジューシーボーイみたいになる予定でしたが流石にギャグ過ぎるので変更になりました


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5日目/地下侵攻〜バーサーク〜

 

先陣を切って突っ込んでくるラッパーアサシン。

ふむ、この場の音頭をとっているように見えるだけあって動きはこないだのアサシンより素早いか。

……じゃが、儂の敵ではない。

 

今まで同様一太刀で斬りふせてーーー!?

突然突っ込んできたラッパーアサシンの動きがぐん、と一気に後ろへと引き戻され、振り抜いた一撃は虚しく空を斬る。

 

「甘いぜチョロいぜションぼいZE!俺達家族の絆を舐めるなYO!!」

 

そう言い抜くラッパーアサシンを見るといつの間にか腰に紐が巻きついておりそれで引っ張られることで無理やり躱したのか……!

 

「ふざけおって……じゃが気にするなよ、ますたぁの身体にこれ以上負担をかけぬようとっとと終わらせてやろう」

 

ますたぁにそう声を掛ける。

じゃが、なんなのじゃ、この不安感は。喩えるには知識がないが、それでも感じ取る不安感。

 

じゃがその不安感はますたぁには伝わらず、儂の動かすますたぁの身体は縮地でラッパーアサシンまでの距離を瞬時に詰めて頸を断ち斬る為に振るう。

 

「ジェニー、ラハール!」

「了解、兄貴!」

「OK、ブラザー!」

 

しかし、唐突に響くラッパーアサシンの声とその背後から共に突如現れたポニーテールと角刈りの2人の小柄なアサシンの刃により受けられる。

 

ぶつかり合う刃から火花が散り髪の穂先を焦がす。じゃが、所詮はただの刃物。儂ならこのまま纏めて……!?

 

しかしそのまま刃物ごと完全に切り伏せられるタイミングで今度はラッパーアサシンがポニテアサシンと角刈りアサシンを掴んで共に後ろへと弾き飛ぶことでまたしても儂の太刀筋を躱しおった!

 

こやつら……連携を高い精度で取ることで儂の斬撃的確に回避しておる。

勘か、計算か。

儂の妖刀としての経験は1VS1の立ち合いか、或いは無抵抗の人間を連続で斬り捨て続けていくものに限られている。

 

つまり、複数の戦闘員との同時戦闘の経験が儂の刀身()には()()()()()

 

そも、断片的な知識やますたぁは言わぬようだが見た夢から窺える儂の真名からすればある種当然とも言えるか。儂が打たれたのは恐らく天下太平の世となった後。そもそも合戦自体が存在しない。

 

じゃが、身体能力が高いと言っても所詮は素人。

ならば、これなら……!!

 

刀を鞘へと納め、息を吐く。

呼吸を落ち着け、気を呑む。

 

「Hey!怖気付いたかYO!テメーのますたぁ差し出すなら聖杯手に入れるまでつかつまてやってもいいぜベイベー?」

 

ラッパーアサシンがこちらを煽る。じゃが、その内容は今の儂の耳には入らない。

ようは、奴らに連携させるより素早く切り伏せ続ければ良い。そうすればやっておることは1vs1を幾度となく繰り返すのに等しいのじゃから。

そう考え心を静かに、水面の如く。

 

間合いを一息で詰め、抜刀。

逆袈裟から袈裟に転じ、二の太刀までを叩き込む。

そのまま左右への斬り払いで胴を断つと、同時に胸の中央に感じる感覚。

 

先の尖った鉄パイプが胴を斬られたラッパーアサシンの()()()()()()()()、儂の……ますたぁの肉体の心臓を貫いている。

後ろから小柄な、儂本来と同じ位の背丈のアサシンが鉄パイプを握ってるのが見える。

 

「兄貴の作戦…….恐れ入ったか!」

「へへ、Hey……良くやったミハイル……見ろよ大成功だぜ、こんちくしょうめ。戦闘はともかく、戦争は俺達家族の方が、上だな……おら皆!今がチャンスだ!俺の再召喚までにはちゃんと部位ごとに分けとけよ!!!」

 

アサシンが光の粒子として消失しながら命令を出す。

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

その号令と共に周囲から聞こえる声。

傷口を押さえながら周囲を見渡すとどこにここまでの数が隠れていたのか。ザッと30人程のほどアサシンが周囲を取り囲む。

 

「おのれ……よくも……よくもますたぁに傷を……!!」

 

儂が憑いている限り、妖刀の力を使っている限り契約者のますたぁは死なぬ。現にこの今現在も心臓が修復されていっている。

じゃが、それはヒトから遠ざかることと同義。

そも、心臓を貫かれれば生物は死ぬ。サーヴァントですらそれは変わらぬ摂理。そこからすら蘇ろうとするものがマトモなヒトであるいえるのじゃろうか。

儂は、またこうじゃ。何が儂に任せておけ、じゃ。戦闘を焦らず落ち着いて見ておけば後ろに伏兵を潜ませていたのにも気づけていたはず。

目の前のリーダー格さえ倒せば残りは烏合の衆だと侮りそれ以外を見ておらんかった。いや、いたところで儂の敵ではないと過信しておった……そのせいで、またますたぁは。

 

港の時も儂がますたぁを放置してどこかに行ってしもうたから……先の力、出力という事じゃろう。儂の中の本能(いしき)に魂を売り渡す事に……

ならば、もう儂なぞ。ますたぁを守護する事の出来ぬこの(わし)なぞ不要。

 

全て、総て、統べて。

ーーー斬リ尽くシテやるのジャ。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「おい、サキ!」

「いいから、ランサー!私たちもアサシンを追うわよ!」

 

あのいけ好かないロリコンからランサーを呼び戻し、傷を修復して再びお兄ちゃんを探す為に探索していると突然アサシン達が1箇所に私たちを無視してある方向へとむかって動き出した。

 

ーーその方向は、先程のあのロリコンがいた方向。ならば、やはりあいつが黒幕……!

 

そう思うと、ランサーの静止も聞かず飛び出していた。

あのロリコンが黒幕なら、あいつをぶっ倒せばお兄ちゃんは助かり、私の屈辱も晴らせる。

一石二鳥の行動だ。

 

「これじゃアイツらには追いつけねぇだろ……よっと。」

「ちょ、ちょちょっとランサー!何サラッと抱え上げてるの!?私は子どもじゃないのよッ!」

「いや、普通に子どもだろ……お前さんの脚じゃ《強化》したところで効率が悪い。ならこの方がより早く着けるってことだ。」

「う、うう確かに……でも!着く直前には下ろしなさいよ、こんな屈辱的な姿あのロリコンに見られたら今度こそ理性を保てる自信がないわ、私……」

「分かったさ、だが今は一気に追いかけるぞ、サキ!!」

 

そう言うとランサーは一気にスピードを上げて追いかけていく。

 

「サキ、戦闘音だ!」

「え、どういう事なの!?まさか仲間割れ?」

「それは分からねぇが、とりあえず一気に突っ込むぞ!!」

「え、ちょっ、私を下ろしてくれる話は!?」

「あぁ、下手に放置してアサシンに裏かかれても困るからこのまま突っ込む!!」

「え、ちょっと!?待ちなさいよランサーー!!」

 

 

そうして、先程ランサーとセイバーが戦った辺りに辿り着くと。

 

そこには、集まった最後のアサシンを斬り捨てたセイバーのマスター……いや、中身はセイバーか。

ともかく、そこに立ち尽くしていた。

 

「なるほど、アサシンと仲間割れしたのかもしれないけどそれで全て返り討ちにしたってわけ。流石、セイバー。それでこそ私が討ち取る価値があるッ!!さぁ、魔術師の誇りをかけて、勝負しなさい!!」

「………………くれ。」

 

その宣言に返るのは沈黙と、僅かな言葉。

 

「何かしら、聞こえないわね。それとも私達に怖気付いたの!?」

 

「……助けて、くれ。」

「命乞い?お断りね。あなたは私が殺すと決めた、絶対によ。まぁ、まずはお兄ちゃんの居場所を吐いてもらう方が先だけれど。」

 

だが、その言葉も届かぬ様子で虚ろな目のままアイツは言葉を紡ぐ。

 

「頼む……ますたぁ、を……助けてくれッ…」

 

そう言うとともに崩れ落ち、その肉体から黒の粒子のようなものが出現して私より数歳歳下くらいに見えるセイバーの、そのままの姿になる。

 

「どういう……ことよ、これ。」

「あー、普通に考えて相打ちだろうな。だが、チャンスだ。勝利を取るならここで殺せば、セイバー陣営を排除出来る。」

「私は、そうすべきと?」

「それは、お前の決めることだ。サキ。」

 

目の前には無防備なまま倒れているロリコンとセイバー。私はただ、ランサーに命令するだけで聖杯戦争の勝利へと駒を1つ進められて、尚且つ最優のセイバーを脱落させたとあればお祖母様にも認めてもらえるかもしれない。

なら、答えは決まっている。

 

「ランサー……そいつらを。」

 

「……こいつらを?」

 

「捕縛しなさい。ただし、傷つけないように。」

 

ランサーは難しい顔のままこちらに問いかける。

 

「どういう風の吹き回しだ、サキ。お前の目的は聖杯戦争の勝利だろ?」

「何度も言わせないで、ランサー。こんな勝ち方では私の屈辱は晴れないし胸を張って繰空の後継者を名乗ることなど出来やしない。一時休戦よ、そして…….コイツらが回復した時こそ正面から正々堂々叩き潰してぶち殺すッ!!」

「………フッ、流石マスター。ただの勝利に意味は無い、ああそうだ。その通り、本当に俺はお前に召喚されてよかったよ、サキ。」

 

それまでの難しい顔を崩し、笑いながらこちらの頭を撫でてくるランサー。

 

「ふん、私に召喚されるサーヴァントがそれを喜ばないはずがないじゃない。何を当たり前のことを言ってるのかしら。それより、コイツらが敵対したというのならアサシンの親玉やマスターが逃げ出す可能性もあるわ。手早くお兄ちゃんを助け出さないと……っと、いうか!いい加減頭撫でるの止めなさいランサー!」

「ははは、すまねぇなサキ。さて、いよいよこの臭い地下ともお別れだ。一気に片をつけようぜ、サキ!」

「ええ、勿論よ!ランサー!」

 

そうして再び奥へと私達は進む。後少し、待っていて、お兄ちゃんーー!

 




主人公……って、誰だっけ?


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幕間/出逢いの食卓

更新が遅くなりました
いやー、夏って忙しい
シンフォギア二週目見始めると時間がありませんねぇ

ところでお気に入り50件いきました、ありがとうございます


地下下水道、その奥に据え付けられた一室で猟理人は地下の様子を映し出す監視カメラを見ながら一人呟く。

 

「ふぅ……なんともはや。最優の名はやはり伊達ではないということか。」

 

その部屋は壁をくり抜いて厚い壁の向こうにあり、外部とは完全に臭いから何からを遮断された調理場と食事所として相応しい清潔な空間になっており、同じ下水道内部とは思えない。

 

その部屋にガチャリと扉開く音がしてアサシンのサーヴァントが入ってくる。宝具で召喚された紛い物の家族ではなく、正真正銘聖杯に招かれたアサシンのサーヴァント。彼は普段の現代衣装ではなくボロボロの布キレを纏った姿で現れていた。

 

「猟理人よ、悪い知らせだ。私の子供たちが、長男のジャンクも含めてやられた。まさか、ここまでだとはな。」

「あぁ、監視カメラで私も見ていたよ。もう一度、作戦を練り直すべきかもしれないな。だが、その前に献立を考えなくてはな。」

「おぉ、それは頼もしい。君の料理は活力がとても湧いてくるからな、我々が生前していたのはただ餌を喰らっていただけだと恥ずかしながら思い知らされたよ。」

「まさか、礼を言うのは私の方さ。私ももう一度料理を振る舞うことが出来るとは思っていなかった。」

 

そう言うと数週間ほど猟理人は前を懐かしむように思い返す。

 

「そう、あの時。君が私の独房に現れるまでは。」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

その日は、独房の中でもハッキリと分かるほど強い雨の降る日だった。

 

警察からは猟理人の名で呼ばれていたその男は1人、残り少ない夜を噛み締めていた。

 

その横顔には、かつて10代前半でフランスでの修行を始め、そこで10年の修行を積んだ後各地で数年ずつ修行を繰り返し料理の天才の名を欲しいままにした男の姿はどこにもない。あるのはただ一つ、人非人の姿である。

 

彼が、長い修行の果てにある時見つけた。いや、気づいた食の真理。美味の禁忌。同族喰い。

 

即ちーーー人肉食(カニバリズム)

 

 

以来、彼は煌びやかな料理の表舞台から姿を消した。獣を獲る為に嘗て学んだ罠や、テレビ出演の経験を生かした話術で人を捕らえ、殺し、調理し、喰らう。

一流料理人、六道 尊の姿はそこに無く。猟奇殺人犯、六道 尊の姿がそこにあった。

 

彼は頭の回る人間だったが故に、巧みに警察の手を逃れ続けたが、所詮は料理人。1人目の被害者殺害から実に10ヶ月。その時点で遂に警察に囚われることとなった。

 

が、しかし。彼の逮捕によって新たに発覚した被害者を含めると10ヶ月で実に25人。個人の殺害規模としてはトップクラスの事件となり、本人の知名度もありお茶の間でも盛大に取り上げられた。

そしてそれから10年後、死刑執行の期日がいよいよ決まった今日。過去に思いを振り返りながら、彼はあることだけを考えていた。

 

ーーもっと、もっと美味な料理を作りたい

 

彼の未練とも言えるその願いは天に、いや煉獄の悪魔に届いたのか。

1人きりの独房に音がする。

次いで、彼の嗅覚は臭いを嗅ぎつける。人の血の、肉の臭いを。

 

そして、目の前に現れるは成人男性らしき肉塊を片手に抱え、黒いボロ布を纏った人間。

どこから現れたのか気にはなるが、彼にとってはそれはそこまで気にならない。

 

何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そして、その男はこっちにようやく気づいたのか意識を向け、小声で尊に声をかけてくる。

 

「………チッ。雨を凌ごうとしたら人がいたか。おい、騒ぐないでもらおうか。私は静かに食事がしたいんだ。」

 

そう、ドスの効いた声で凄んでくるが彼にとってはそれすらも気にならない。

彼の頭の中は、人肉を抱えて食事と言ったその男の言葉を聞いた瞬間有頂天になっていたからだ。

 

「………すばらしい。」

「あん、なんだって?」

「すばらしい!!君は、人肉食を解するのだね!?この腐ったような現代にもやはり同士は存在したのだ!!」

「おい、だから騒ぐなと……何?お前、肉の味がわかるのか。」

「ーーもちろん。猟理人ことこの私は現代における人肉食の第一人者と自負しているさ。だが、それだけに惜しい……ここが私のキッチンなら!その肉をより素晴らしく調理出来るというのに!!ようやく現れた同士との出逢いがこのようなところだとは!!」

「なに……調理、だと?」

「あぁ、まさか君は今まで生のまま食べていたのか?」

「そうだが……お前は、そうではないのか?」

「勿論、素材の味を活かして様々な調理を施す。そうして出来上がった美味なる料理で客を喜ばせる、それが猟理人である私の存在意義にして生き甲斐だッッ!!」

「ほう……美味、か。気が変わった。お前をキッチンとやらに連れていこう、その代わりに私に人肉料理を食べさせてもらおう。」

 

そう言うと男は鉄筋コンクリートの壁を素手でブチ抜き外への道を開く。

 

「ーーー喜んで。至高の料理を振る舞わせて頂こう。」

 

これが、猟理人と食人鬼の出会いだった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「どうした、猟理人よ。」

 

アサシンの声で、過去へと追想していた意識が引き戻される。

 

「あぁ、なに。君との出会いを思い返していてね。まさにあれは運命的だった。」

「あぁ、その通りだ。あの時の私はまだ何も人肉食というものを理解していなかった。君の料理を食べるまではな。」

「なに、人肉食を行っていたと言うだけで私からすれば充分な程に同士さ。さて……献立も思いついたが、色々仕掛けたから奴らが来るにはまだ少し時間があるだろう。本格的な調理に入る前に、軽くどうだい?」

 

グラスを傾ける仕草共にアサシンに言う。

 

「なるほど、悪くないな。君と2人で食事をしながら語り合う機会も少なかったし、丁度いいとも言えるか。」

「なら、少し待っていてくれ。三日前に君のところのフランクが殺してきてくれた肉がそろそろ食べ頃のはずだ。」

「三日前?いくらなんでも、それはさすがに古いのではないか?」

「肉には熟成期間というものがあるのだよ、アサシン。まぁ論より証拠、今調理してくるとしよう。」

 

そうして私は厨房に入る。コックコートに着替え、手を洗い、気を引き締める。

そして冷蔵室から取り出すのは三日前にフランクが持ってきてくれた小学生くらいの牡の肉。

この年代ならまだ第二次性徴に入っていないので肉が柔らかく熟成もそれほど長くする必要は無い。

皮を剥いで部位ごとに切り分けて冷やしておいたそれのムネ肉の部分を取り出し、二つに切り分ける。そして塩、胡椒、小麦粉を丁寧にムネ肉にまぶす。

 

そうしてフライパンを加熱しながら皮の裏からから削り取った皮下脂肪をしき、馴染ませる。

やはりサラダオイルなんかよりは人の油が一番だ、特に子供の脂は臭みが少なくて使いやすい。

 

パチパチとしかれた脂が熱され弾けてきたタイミングで、小麦粉をまぶしたムネ肉を投入して強火で一気に焼き始める。

数分間しっかりと焼き、こんがりと焦げ目がついたタイミングでひっくり返して裏からも火を通す。

うーむ、香ばしい匂いが食欲をそそる。

 

そして裏面もこんがりと焼けたタイミングで火を止め、冷めないように温めておいた陶器の皿に盛り付ける。

そして、仕上げにレモンを軽く絞ると、ワインと共に皿をトレーに載せてアサシンの待つ私室へと向かう。

 

「出来たぞ、アサシン。」

「おぉ、待っていたよ。さて…一体なんの料理かな……これは。」

 

アサシンが目を見開く。

 

「そう、子供のムネ肉を使ったヒューマンソテーだ。私たちの出会いの料理さ。」




今回のソテーの調理法はクックパッドのポークソテーの調理法を元にしました
あと色々熟成やらなんやかや書いてますが作者は人肉なんて食べたことはないのですべて想像で書いてます
ちなみに参考資料というか肉の熟成やらの知識の元は美味しんぼ()


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幕間/始まりの食卓

いや、ホントお待たせしました………最近モチベーションが全然出てこなくて、全然書けませんでした

これからはもう少しお待たせせずに更新出来ればな、と思います


 

篠突くように降り続ける雨の中、目の前の男によって空けられた穴を潜り独房の外へと出る。

しかしそれと同時に警報がなり始める。

 

「チッ……喧しいな。お前、肩に掴まれ。走って逃げるぞ。」

「あぁ、了解したとも。」

 

そうして彼に掴まると、彼は人間離れした身体能力で塀を一息で跳び越えるとそのまま屋根づたいに忍者のように、逃げていく。

そのまま彼は私に問いかけた。

 

「で、キッチンとやらはどこにある……?」

「あぁ、それなのだがね。そこに行くのは恐らく危ないだろう。」

「何……?どういう事だ。」

 

怪訝な顔をする男。それに対して私は予測を述べる。

 

「キッチンは私が根城としていた場所だ、当然警察にも知れ渡っている。下手に突入されたら落ち着いた食事も出来ない。真の美味には落ち着いた時間もまた重要な要素の一つなのだから。それに、長らく帰っていない故にそもそも食材が尽きているのだよ。」

「……貴様、私を謀ったのか?」

「無論、そんなつもりは無い。この近くでも幾つか使えそうな場所には心当たりがあるのだ、そこへ向かってもらえるかな。」

「ふん……だが、その料理とやらが不味ければ貴様も肉にして喰らってやろう。」

「私はまだ至高の美味へと至っていないが故に、死ぬ訳にはいかない。最善を尽くさせてもらうとしようか……と、ここだ。」

 

そう言って下ろしてもらったのは高級住宅街に位置する一軒家。

ここは修行時代の同期の自宅であり、何度も招かれたこともあるだけに調理設備の整いぶりもよく知っていた。

 

そして、何より。

 

この家には、10になるかならないか程の()()()2()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ここは?」

「ここは私の知り合いの家でね、調理設備の整い具合はなかなかのものだ、そしてこの家には子供がいる。」

「なるほど……確かに若い子供の肉は柔らかくしっとりとしているが、些か肉の味は薄い。そんなもので私を満足させられるとでも?」

 

「御安心を、お客様。確かに子供の肉は淡白で柔らかい。そのまま食べるだけでは味の薄さがくっきりと出てしまうがキチンとした調理をするならこれ程その場で落として食べるのに向いた肉もないのですよ。まぁ……論より証拠です、まず捌いて調理を行わなくては。」

 

お客様を迎え入れる料理人としての言葉遣いに切り替え、共に家の中へと入る。そして、ひとしきり屠殺を終えると解体作業に入る。

 

「それでは、私は調理に入ろうと思うのでお客様は食卓にかけていてください。そう待たせは致しません。」

 

そうして子供の肉を使い、料理を作り始める。

ムネ肉のソテーは私自身も初めて作った人肉料理であり、思い入れも深い料理だ。シンプルだが、それだけに彼も生の人肉ではなく、人肉料理の素晴らしさを知ってくれるに違いない。

彼は間違いなく私と同じく真の美食を知る人間だ、絶対に分かってもらえるはずなのだから。

それならば、人間とは思えないような挙動をしていようが、人間で無かろうが、()()()()()()()

 

そうこう考えをはせているうちに調理は完了し、盛り付けに入る。

 

そして。

 

「お待たせしました、お客様。子供のムネ肉を使ったヒューマンソテーでございます。」

「ふん、見た感じただ焼いただけ……いや、その割には匂いが食欲を唆るな……」

 

そう呟きながら彼はソテーを不器用な使い方ながらナイフで切り、フォークで刺して口に含む。

 

「熱ッ……だが、美味い。」

「光栄でございます。」

 

そう言った私の返答も聞こえていないのか、彼は夢中にガツガツと喰らってくれている。ここまで自分の料理を求められると料理人冥利に尽きるというものだ。

 

「ふぅ……美味い、私が今まで食べてきたものと比べても確かに数段以上上の味だった。先程の無礼に謝罪をしよう。君の料理は素晴らしい。」

「感謝の極みという他ありませんな、お客様。私の料理に満足して頂けたのなら、それは料理人として最高の幸福というものです。」

 

そこで言葉を切って1つ、訊ねる。

 

「ところでーーお客様。お客様が何者かは存じ上げませんが、もし良ければ私を連れていっては頂けませんか?」

「それは、何故だ?」

「見ての通り、私は囚人でしたので。捕まって料理が出来なくなるのも、人肉料理を食べられなくなるのも不本意なのですよ。それに私はあくまで料理人、逃げたりする術に長けているわけではありませんのでお客様の力をお借りしたいという訳です。」

「………なるほど。確かに、それならこっちとしても願ったり叶ったりという奴だ。君は私と同じ匂いのする同胞だと感じている、だから君を信頼して私のことをまず、語るとしよう。」

「お客様のこと、ですか。」

 

張り詰めた空気に思わず、唾を飲み込む。

 

「あぁ。だが、まずは名乗りから始めるとしよう。私は、アサシンのサーヴァント。真名はソニー・ビーンだ。ついでだ、君の名前は……?」

「ビーン様、わざわざご丁寧にありがとうございます。私の名は六道(りくどう) (みこと)でございます……ですが。私のことは猟理人(シェフ)、と呼んでいただければ。」

「そうか。では、猟理人(シェフ)と。さて、次は私のことをアサシンのサーヴァントと名乗ったが、その説明に移らせてもらおうか……」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「なるほど……聖杯戦争、サーヴァント、そしてアサシンのクラスにマスター、と。」

「なかなか物分りがいいじゃないか、猟理人。信じるのか?」

「ビーン様が人並外れた動きをするのは実際に体感しましたし、それに人肉食を理解する同胞である貴方を疑ったりはしませんよ。」

「ふふ、やはり君は素晴らしいな。そこまで私を信じてくれている以上、同胞であり、そして君の料理に惚れ込んだものとして共に戦おうではないか。」

「えぇ、ビーン様。」

「猟理人、その呼び方はやめてくれ。私と君は只の客と料理人の関係ではなく、同胞なのだ。もっと軽くいこうではないか。」

「それじゃあ、アサシン。これから宜しく。」

「あぁ、こちらこそ。猟理人。」

 

そうして、ここに。この聖杯戦争最凶のマスターとサーヴァントの組み合わせが誕生した。

 

「ところで、猟理人。君の願いは何なのだ?」

「何、ある……夢ですよ。それこそ万能の願望器でも無ければ叶えられないほどの、ね。」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そして、時間は再び現代へと戻り。場所は地下下水道の一室へと戻る。

 

「やはり、この料理は美味いな。いや、美味いと言うなら君の作る料理全てだろうか。だが、あの時よりも美味く感じる気もするのだ。」

「それは、熟成によるものでしょうね。冷蔵庫などをここに一月近くかけて整備しただけあって、大分調理環境も良くはなってきました。ですがまだまだ、私の理想には程遠い。」

「あぁ、そうだな。君の語ってくれた夢、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を作り上げること……完成すれば今よりももっと簡単に味のいい肉が手に入り、より美味な食事を楽しめるという訳だ。」

「ええ、ですから。その為にもまずはセイバーとランサーをここで始末して、聖杯を取る為にまた一つ、駒を進めるとしましょう。」

 

そう言うと2人はどちらからともなくグラスに注いだワインを掲げて共に誓う。

 

「「乾杯」」

 



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幕間/悲痛

やっとこさ書けました
なかなか展開が定まらなかった………


 

額に垂れる雫の感触。

そこから垂れるひやりとした水滴。

その冷感により、気絶より覚醒する。

 

「……ここ、は……臭っ」

 

まず鼻に感じるのは異臭。生ゴミを腐らせたような腐臭が鼻を刺激する。

見渡すと周囲は薄暗く、天井に無理やり括りつけられた電灯の明かりのみが僅かに周囲を照らす。

 

「地下の……下水道か?というか、俺はなんでここに……」

 

未だ覚醒したばかりでぼんやりとハッキリしない記憶を順に辿っていく。

昨日の夜、戈咒の奴にデータを纏めて送った後にコンビニに向かって、その帰りに青白い女に……そうだ、首を絞められて気を失ったのか。

あれがウワサの、人攫い集団か…?

そう考えて身体を起こし、携帯を取り出そうとすると手に木製の枷が嵌められていることに気づく。

 

「くそ……完全に囚われの身ってことか……」

 

だが、何の為に俺をさらったんだ?身代金目当てだとしたらパッと見は俺より小さくて可愛いから攫いやすそうなアイツを狙うはず。まぁ、そもそもあのクソババアはそんなもん要求された所で見捨てるだけだろうが、な……

それにそもそも今の俺とあの家との関係を知ってるのがまず珍しい、戸籍を調べたり小学生時代の知り合いを訪ねれば分かるだろうがそんな事をすれば怪しまれ記憶に残るのは必然。誘拐犯がそんな手段を取るだろうか?

だとすれば、俺をさらった目的はどこか別のところに……?

 

「ふむ……目が覚めたようだね。」

 

思考を巡らせていると突如背後から声がかけられる。

 

「お前、は……六道、尊……!」

「ほう、若いのに私のことを知ってるとは。驚いたな。」

 

昨日調べていた連続殺人犯にして食人鬼、現在は刑務所に収監中のはずの男が、そこにいた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「……で、だ、 。縛り上げたはいいが、どうするんだコイツら。2人とも気絶してるから、ここに置いてったらアサシンに横取りされる可能性もあるぞ。」

 

セイバーとそのマスターをコンクリートを傀儡として使役し縛り上げたのを見て、ランサーが私に注意をとばす。

 

「確かに……でも、地上に返すと目が覚めたら逃げられそうだし……仕方ないわ、ランサー。抱えて運びなさい。」

「……え、運ぶの?俺が?」

「えぇ、勿論。貴方は私のサーヴァントなんだから構わないでしょ?」

「別に荷物持ちではないんだがな……まぁいいか。」

 

そうしてランサーはセイバーとそのマスターを抱えて持ち上げる。

 

「さて、いよいよアサシン共の親玉の下へ向かうとするか、サキ。」

「えぇ、勿論よ。どれだけいるのか知らないけれど、このセイバーが雑魚を散らしてくれたから進みやすくなったし、一気に向かうわよ!」

 

今となってはここでごたごたやっている時間すら惜しい。無駄に焦ってはいけないと分かってはいるけれど、それでも心は逸ってしまう。

だからこそ、ランサーと共にランサーの感じるサーヴァントの気配を頼りに地下下水道を全力疾走する。《強化》を掛けているとはいえ、それでも脚がちぎれて肺が破れそうに痛い。というか脇腹が凄く痛い。こんな事ならもう少し運動しておくべきだった……でも、泣き言を言うのは後。

今は少しでも早く、少しでも近づかなくては……!!

 

そうして角を曲がり、いよいよというところで。

 

「………………へ?」

 

そこには、いくつものコンテナを組み合わせたような、歪な小屋が建っていた。

 

「どう………いうことかしら、ランサー。というか、本当にここにアサシン共がいるの?」

「俺としても信じ難いが……確かに気配は感じる。」

「そう……でも、いくらなんでも怪しすぎるでしょう、これは!アサシンが魔術に長けているとも思えなかったし、宝具か何かかしら……?」

「いや、これは見たところ普通に建てた感じだぜ、サキ。」

「どういう事なの……?アジトにしては看板まで出てるし明らかに違うわよね、これ。てか何よ、『肉料理・カーニバル』ってレストランなのここ!?」

「みたいだな……明らかに罠だろうが、どうする?」

「決まってるじゃない、正面から叩き潰すだけよ。」

「よく言った、さて思いっきりぶちかますとするか。」

「あ、ランサー。ここがアジトなら逆にあしでまといになるからそいつらはその辺に放置しときなさい。」

「おう、了解した。」

 

そう言うとランサーは壁際まで抱えて運んでいき、地面に放り捨てるように彼らを置く。

 

そしてランサーを霊体化させ、扉をくぐるとーーー

 

「いらっしゃいませ、お客様。レストラン『カーニバル』へようこそ。」

 

……………は?

 

「それでは、こちらのお席にご案内いたしますね。今すぐメニューもお持ちいたします。」

 

コックコートを着た中年男性に席へと案内される。

 

「あ……ど、どうも。じゃなくて!ちょっと!悪いけど、私は食事をしに来たんじゃないの。死にたくなければとっととアサシンのマスターを出しなさい。」

 

そう言ってランサーを実体化させ、槍を突きつけさせて脅しをかける。さしずめ、この男は協力者といったとこだろうか。暗示をかけられた一般人の可能性も考えたが焦点があってないわけでもなく、意識もはっきりしている。これでも操作と使役に特化した魔術系統の家系の後継者なのだ、そのくらいは余裕で判断できる。

 

「え、え、ひえええええ!!?な、何をなさるんですお客様!?」

 

突如現れたランサーに槍を急に突きつけられた男は数メートルもの距離を一気に後ずさる。

予想通りただの協力者、それもカネで雇われただけの魔術すら知らない一般人のようだ。

 

「アサシンのマスターと言って伝わらないなら貴方の雇い主を連れてきなさい、命が惜しいならね。」

「ひ、ひぃぃ。了承しましたぁ……」

 

奥の扉を開けて男は部屋を出ていく。

そして、それを見計らったかのようにランサーが口を開く。

 

「しかし、妙だな……本当にここにアサシンのマスターはいるのか?」

「……?どういうこと、ランサー。」

「感覚だが、人の気配を今の男以外に感じなかった。かと言ってマスターにも見えないし、そもそもマスターならわざわざあんなふうに近づいてくることはあるまい、特に数の多いアサシンを使えるならば尚更だ。」

「確かに……妙よね、それ。……まさか!アサシン共は囮で本物は別の場所にーー!」

 

そう、思わず立ち上がった瞬間。

足下から聞こえる甲高い電子音。

 

その、直後。

閃光と、猛熱と、爆音の渦に、巻き込まれた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

白煙が晴れ、視界がクリアになる。

今のは……爆発……?

 

「ともかく……助かったわ、ランサー。今のは、爆発、よね……アサシン共の宝具かしら?」

「いや、全くと言っていいほど俺がダメージを受けてない以上、今の爆発は宝具でもなんでもないただの爆弾、それも魔術による強化なども一切されてないヤツだろう。」

 

ただの爆弾……?サーヴァントにそんなものが効かないのは相手も承知のはず、一体どうして……

 

「何不思議そうな顔してるんだ、サキ。こんなの仕掛けた理由は一つだろ、マスター殺しだ。」

「マスター殺し!?そういえば、亜種聖杯戦争の黎明期にはマスター殺しに特化した山の翁達が活躍した……って資料を読んだわね……でもアサシン関係なく、魔術師同士の闘争でそんなことする奴がいるなんて……」

 

アサシンによるマスター殺しならまだサーヴァントの特性を活かしただけだと分かるけども、こんなテロ紛いの手口をとるなんて………

 

「なに、不思議がることでもないだろうよ。そこまでしても叶えない願いがあるってことだ……逆に言えば、そうまでして勝ちに来るってことはそれだけ自身のサーヴァントを信用してないとも言えるがな。」

 

「信用してないって?酷いな、アサシンさんと相談して決めた事だよこれは。でもやはり普通のマスターとサーヴァントだと防がれちゃうか。」

 

奥の暗がりから、声が聞こえてくると同時に現れる人影。

 

「さっきの男……マスターだったの……!?」

「どうやら、俺もサキも完全に騙されたみたいだな……」

「まぁ私達は弱小陣営ですから、このくらいはハンデですよ、ハンデ。」

 

その口調には既に先程までの飄々とした態度は無く、こちらを見下すような、そんな響きがこもっていた。

 

「何がハンデよ、それより人様の家族を攫った覚悟は出来てるんでしょうね。」

「家族を……?すみませんが心当たりがありませんね、多分もう解体して肉にしてしまったかと。」

 

解……体………?

 

「どういう……ことよ、それ。」

「どういうこと、と言われましても。普通に食肉用に解体しているだけですよ。私達は、真の美食とは人肉食にあると辿りついたのです。」

「え……食肉、人肉食……?」

「……あぁ、なるほど。あなたも私たちの美食にケチを付ける方でしたか。人知を外れた魔術師なら人倫など気にせず私たちを認めてくれるかと思いましたが……残念ですね。」

 

お兄ちゃんを………食べる……?

肉に、解体して、食べる。

 

どういう、どういう、どういう、こと

 

肉に、解体。食べられる。つまり、死ぬ。

 

 

お兄ちゃんが、死ぬ。

 

また私を遺して、死ぬ。

 

嫌だ。

 

イヤだ、イヤだ、嫌だ、いやだ、いやだ嫌だイヤだいやだ嫌だイヤだいやだ嫌だイヤだいやだイヤだいやだ嫌だイヤだいやだ嫌だイヤだいやだ嫌だイヤだいやだ嫌だイヤだいやだいやだいやだイヤイヤイヤイヤイヤイヤイーーーー!!

 

‎「אני הנפש שלי החיים שלי(我が生は魂を用いて総てを毀す)ーーーהכחדה(滅べッッッ)!!」

 

殺す、アイツだけは絶対殺す。お兄ちゃんの弔いだ、ぶち殺して解体して犬のエサにしてやるッッッッ!!!!

 

全ての魔力を、ここで倒れ伏しても構わないレベルで全力全開で魔術を発動する。

周囲の瓦礫、天井や壁のコンクリート、足元に付近に充満する下水、そこに済む微生物やネズミなどの小動物。その全てを使役し操作する。

狙うはあの男、ただ1人ーーー!!!

 

「んなーー、予定変更!!速攻であの子供を殺せっ!!これだから子供の家畜は手に負えない!!」

 

男は慌ててアサシン共を呼び寄せて逃げようとする。だが、逃がすものか。天井と壁のコンクリートを操作して道を完全に塞ぎ切る。

今の私の限界を越えた無茶な魔術行使、魔術回路が焼けつきそうだ。

だが構わない、殺せるのなら、仇を取れるならッッッ!!

 

「おい!落ち着けサキ!!……くっ!」

 

ランサーが私を狙って襲ってきたアサシンをひとり返り討ちにする。

 

「それ以上やるとお前が倒れちまう!後は俺に任せて心を落ち着かせろ!!」

 

倒れる……?別にもうこの際死んだって構うものか。もう聖杯戦争だってどうでもいい、今はアイツを仕留める方が先だ。

 

……そうだ、なら丁度いい。令呪(コレ)も使ってしまおう。

 

「令呪を持って我が傀儡に命ずる。ランサー、アサシン共を全てぶち殺せ。」

「んなっーーー!!」

 

これでいい、これで私は直接の仇であるあの男だけに集中出来る。

 

さぁ、死ね、殺してやる、死ね死ね、無様に死ね!!

 

「ひいいいいいい!!!」

 

男は無様に怯えて死に縮み上がる。

いいざまだ、少しは気分が晴れた。

さぁ、殺してやるーー!?

 

腹に、熱い感覚を感じた。

触ると、ヌメリと温かくて紅い、血が。

 

「『獲物は、ソイツが狩りを終えて油断した瞬間こそが最も無防備になる。』かつて私がジビエ料理を学んだマタギから教わった言葉です。お前みたいな獲物にも、よく当てはまりましたね。」

 

目の前の男の手には、銃口から煙を燻らす拳銃が握られている。

 

ちくしょう……私は、仇すら取れないのか……!!

そんなの、イヤだッッ!!

 

‎「יים שליー」

「おっと、そこまですそれ以上呪文なんて唱えさせません。」

 

再び呪文を唱えようとすると口に銃口を突っ込まれて塞がれる。私の実力じゃ、この消耗状態で無詠唱の魔術発動なんてとても無理だ。

ここまでなの……?ごめんなさい、お兄ちゃんーー

 

その、瞬間。

 

目の前を通り抜ける鈍色の光。

 

銃身が斬り落とされ、私は首根っこを掴まれたまま後ろへと引っ張られる。

 

「あぁ、漸くの到着ですか。予定外が続いてまいりましたよーーーセイバー。」

「悪いけど、ロリコンは幼女のピンチに駆けつけるものって相場が決まってるのさ。」

 

私を助け、目の前に立つのは。

 

爆破されたアジトに入る前に置き捨ててきた、ロリコン(セイバーのマスター)だった。

 





やっと出てきたロリコン主人公、いつぶりだよ君


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5日目/ドレイン

「にしても、ホントにギリギリだこと。」

 

鎖姫ちゃんを抱え直しながら思わずそうつぶやく。

 

「全くだ、まさかホントにこうなるとはなぁ。俺もまだまだ読みが甘かった。」

「いや正直俺も予想外だった。というか割とアソコは勢いというか口に出しちゃったから引っ込みつかなくなっただけと言うか。」

「………まぁ、結果オーライってやつだ。」

 

ランサーが呆れ果てたようにこちらを見ながらこぼす。

いやだってね、仕方ないじゃん。半ば暴走してたとはいえセイバーに加えてあのヤロウの力まで引き出したのに互角に近いって相手が守ってるんだもの、普通に考えたら危険なんて無いしデマカセでもハッタリでもいいから何か言わないとまた気絶させられそうだったし。

 

「ちょ、ちょっと待って。ランサー……貴方、セイバーのマスターとグルだったって言うの?」

 

ランサーとの関係にようやく気づいたのか、鎖姫ちゃんが声を荒らげる。

 

「あー、悪ぃ。それに関しては確かに勝手に一時的な協力関係を結ばせてもらったぜ、サキ。あー……まさかこんな事になるとは思ってもなかったんだがなぁ。」

「そう………いいわ。貴方まで私を信頼しないなんて……言い訳は結構、誰が貴方のマスターか骨の髄まで叩き込んであげ……!!」

 

と、そこまで言ったところで突然クタリとなってしまう。

 

「さ、鎖姫ちゃん!?大丈夫!?どうしたの急に!!」

『安心……せい、ますたぁ。ただの疲労による気絶じゃ。それより、こうしてる間にもお主には負担が掛かっとるんじゃ。とっととそやつをランサーに渡して片をつけるぞ………ますたぁ。』

 

息を軽く切らしながらセイバーが心中より呟く。

 

「ランサー、鎖姫ちゃんを頼む。」

「言われるまでもねぇ、マスターを護るのはサーヴァントの本業だぜ?」

 

そう言うとランサーは鎖姫ちゃんを抱えてアサシン達の少ない方へと下がっていく。

 

にしても、よく間に合ったもんだよ、ホントにな……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

揺れる振動と鈍い鈍痛で、目を覚ます。

意識が消える前に、何があったのか。レアの奴の毒に犯された左手以外の全てがズキズキ、ビクビクと脈打つように俺の肉体を痛みとして斬り刻む。

ここ……は………

 

「お、目が覚めたか。」

 

小声で横から声が掛かる。確認すると、ランサーの顔がそこにあった。

 

「うわッ……モガモガ……」

 

驚愕の叫喚をあげようとするもランサーの華奢だが力強い手のひらで口を塞がれる。よく見ると、今のこの身体はランサーに丸太のように抱えあげられている状態だ。反対側を見るとセイバーも同様に抱えあげられている。

 

「しーーーっ!静かにしろ、バカ。サキに気づかれちまうだろうが。」

 

そう、ランサーが小声でこちらに話しかけてくる。

にしても、鎖姫ちゃんに……?そうして後ろの方にこっそりと意識を向けると鎖姫ちゃんがランサーを追走しているのが見える。

 

「どういう、ことだ?」

 

小声でランサーに言葉を返す。何を考えている……仮にも敵陣営の俺に、しかも自身のマスターに気づかれないようになんて。まさか、裏切るつもりなのか……?

 

「そう警戒するな、ただの話だ。もうすぐ、奴らの本拠地に着くだろう。そしてその前でお前らを放置して解放する代わりに俺らの邪魔をするなってことだ。」

「なんで、そんなことを?」

「簡単だ、うちのマスターはどうにも気性が激しいからな。折角落ち着いただろうにお前が目覚めたのに気づいたら前哨戦とかなんとか言って喧嘩売りかねん。そうじゃなくともお前がナチュラルに地雷踏んで冷静さを欠かせかねないからな。」

「つまり、俺の存在が邪魔だと。」

 

そう言うとランサーはコクリと頷いて肯定の意を示す。

 

「端的に言えば、そういうことだな。」

「だが、俺にだって……」

「あぁ、お前が助けたい人間か?安心しろ、ことここに至ってお前らがアサシン達とグルとは思ってねぇし、生きてる人間は全部救出してくるさ。それなら問題ないだろ?」

 

「つまり、任せて引けってことかよ。」

「そうだ、サキは最高のマスターだからな。冷静ささえ保てればなんの支障も無くアサシンどもなんざ倒せるに決まってる。」

 

ランサーはそう言って言葉を切る。まるでこれ以上の会話は不要とすら言うかのごとく。

 

「百歩譲って……助けに来た俺の友人をお前らが助けてくれるってならそれでもいいさ。一個人としての俺は敵味方はともかく、邪な者じゃないと信頼してるしな。」

 

 

「……だがな、ロリコンとしての俺は鎖姫ちゃんをそんな危険性があるところにお前がいるとはいえ、1人で行かせるのには賛同できない。」

「……じゃあ何か?付いてくるって?それが余計に危険を呼び込む可能性があるとしても、か?」

「あぁ。」

 

その瞬間、ランサーは声に凄みを効かせて俺を問い詰める。

 

「勘違いするなよバカ野郎。俺はお前に提案してるんじゃねぇんだ。マスターを、サキを危険な目にあわせかねないから消えろっつってんだよ。本当ならこのまま気絶させて再度放置させてもいいんだが、敢えてお前に話をしたのは戦闘中に目覚めてのこのことやってこられたりするのが迷惑だからだ。いい加減に…」

「それだよ。」

「あん?」

「だから、戦闘中にのこのこやって来るってとこさ。俺は邪魔をする気はたしかにない。だが、助ける気はあるんだ。」

「……何が言いたい。」

「簡単な話だ、俺達は気絶したフリをしてお前に放置される。そして、もし鎖姫ちゃんがピンチになれば助けに入る……ってことだ。」

 

だがその提案をランサーは一笑に付す。

 

「はん、それこそ有り得ねぇな。邪魔さえなければサキがあんな奴らに遅れなんぞ取らねぇよ。」

 

……確かに、そうだ。ランサーの強さは実際に手合わせした俺がよく知っている。アサシン如きでは足止めすら厳しいだろう。だが、このままでは気絶させられて終わりだ。何とかしてここで食らいついて鎖姫ちゃんの手助けをして、そして出来ればアサシンをも倒してセイバーの力になりたい。

何かないか、可能性でいい。保険としてでも、コイツに俺をそのまま置いていかせる理由を探すんだーーーそうだ。

 

「………冷静さを欠いたとしても?」

「……何?」

「そっちの言葉を返すようだが、俺達も今となってはそっちがアサシンとグルとは疑ってない。ならば、何故ここにいるか?そして必死になって俺らと戦ったか。それは勿論とらわれた誰かを助ける為だろう。友人、家族、それはわからないがもしそれらを人質に取られたら?或いは既に殺したと宣告されたら?冷静さを欠かないと言えるのか?」

「ぐっ……」

 

よし、これなら行けるぞ。このまま押し切ってロリ2人の手助けをして、あわよくばついでに好感度を押し上げてやる……!

 

「いざという時の為の保険として、役立つんじゃないかな?」

「………ったく。仕方ねぇ。その代わり、冷静さ欠くような自体になるまで絶対に手出しするんじゃねぇぞ。もしそれでサキに危害が及ぶようなことになったらお前だけは道連れにしてやるからな。」

「安心しなよ、俺は一人前のロリコンだ。幼女に危害なんて加えるはずもない。」

 

その時、後ろの鎖姫ちゃんから声がとぶ。

 

「ランサー?何をボソボソ言ってるのよ。まさかそいつ起きたの?」

「い、いや。まだ気絶してやがる。それより、そろそろだ。気を引き締めろよ、サキ。」

「ええ、もちろんよ。お兄ちゃんは私が必ず助け出してみせる。」

 

なるほど……鎖姫ちゃんはお兄ちゃんを助け出そうってことか。健気だなぁ、可愛いなぁ。

 

「……おい。」

「ん?」

「仕方ねぇから、気絶はさせずに放置しといてやる。その代わり……邪魔だけはするなよ。」

「あぁ、分かってるって。」

 

ピンチにならないのがベストだし、その間にこっそり錬土を探しに行ければベストだな……けど。その前に未だ眠ったままのセイバーが目を覚まさないと話にもならないか。

そうこうしていると、目の前が開けて歪な建築物が目の前に現れる。

 

「どう………いうことかしら、ランサー。というか、本当にここにアサシン共がいるの?」

「俺としても信じ難いが……確かに気配は感じる。」

 

鎖姫ちゃんとついでにランサーも驚愕に包まれているのが分かる。これが、アサシンのアジトか?

 

「そう……でも、いくらなんでも怪しすぎるでしょう、これは!アサシンが魔術に長けているとも思えなかったし、宝具か何かかしら……?」

「いや、これは見たところ普通に建てた感じだぜ、サキ。」

「どういう事なの……?アジトにしては看板まで出てるし明らかに違うわよね、これ。てか何よ、『肉料理・カーニバル』ってレストランなのここ!?」

「みたいだな……明らかに罠だろうが、どうする?」

「決まってるじゃない、正面から叩き潰すだけよ。」

「よく言った、さて思いっきりぶちかますとするか。」

「あ、ランサー。ここがアジトなら逆にあしでまといになるからそいつらはその辺に放置しときなさい。」

「おう、了解した。」

 

そうしてランサーは離れたところまで来ると俺とセイバー放り投げ立ち去る。

ちくしょう、思ったより尻も痛ぇしさっきのショックでおさまりかけてた痛みがまたぶり返しやがった……覚えとけよ……

 

「万が一目覚めて来られても面倒だし、一応捕縛しておこうかしら。」

 

鎖姫ちゃんはそう言うとボソボソと呪文を唱え、それと同時に俺を縛り付けるように周りのコンクリートが紐状に縛り上げた。

え……ちょっと待って……緊縛プレイされてたらこれ動けなくない?俺。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そうして、ランサー達がアジトらしき建物に入った直後、コンクリートの戒めに力を込めるが思った以上に硬い。おいおい、これのせいで間に合わないとかなったら情けないどころじゃねぇぞ……!

 

「いや、お主何やっとるんじゃ。」

 

呆れたようにこちらに声をかけてるくる和服ロリ、即ちセイバーが完全にコンクリートをぶち壊して俺の横にいた。

 

「セイバー、目が覚めたのか。」

「阿呆、ずっと意識はあったわい……ちょっと、クラクラはするがの。じゃが、その程度じゃ。それより、お主こそ平気なのか?」

 

痛みが顔に出ていたのか、セイバーが俺を気にかけてくれる。だが、これ以上心配をかけるわけにはいかない。表情を必死に取り繕って誤魔化す。

 

「え?俺?俺はなんともないけど……どうしたんだ……?」

「そうか……なら、いいわい。それより!」

 

セイバーが語気を強めて話題を変える。

 

「ますたぁよ。お主、本当にランサーのマスターを助けに行くつもりか?」

「当たり前だろ、とはいえ邪魔すると悪いからぴんちになったら、な。」

「はぁ……やはり、か。お主と来たら幼子と見れば見境なく全く………!!」

「悪いな、セイバー。でもそれがロリコンって生き様なんだよ。」

「分かっておる、儂も本気で止められるとは思っとらんわ。」

 

「にしても、どうして儂は此奴を斬り捨てて別の相手に乗り換えんのかのう……」

「ん、何か言ったか、セイバー。」

「何でもないわい!それより、そのお主を縛っとるコンクリート……斬りとばさんとな。」

「いや、俺1人でこれくらいなら斬れる。見てろよ……フッ!」

 

右腕に刀身をイメージし、全てを断ち斬る刃のように自らの身を縛り上げるコンクリートと斬り裂く。

 

「どうだ?俺もある程度なら……」

「や、やっぱし……お主、その力。儂の(精神)の彼奴のもの……じゃな?」

 

セイバーは凄い気迫で掴みかかってくる。

 

「お主……何故そんなものを……!!益々人から遠ざかるだけではないかッッーー!!」

 

理由を言うのは簡単だ。彼女の笑顔を守るため。けれど、その真実を言って傷つくのもまた、彼女だ。

ならば、ここはーーー

 

「力が、欲しかった。レアに勝てる様な、聖杯を掴めるような。」

「聖杯……?お主、願いなど無かったのではないのか?」

「何でも叶う万能の願望器だぜ、願いなんていくらでも生まれてくるし考えつく。だから、勝つために。負ける可能性を低くする為に寿命を売った、それだけだよ。」

「………そうか、ならば。勝手にするがいいじゃろう。儂には預かり知らぬことじゃ………じゃが、聖杯戦争中に倒れられても儂としては困る。じゃから、指を出せ。」

 

そう言われて思わず左の指を出すと首を横に振ってセイバーは言う。

 

「違う、そっちの気味の悪い毒に犯されたほうじゃないわい。右の人差し指を、ほれ。」

 

言われて人差し指を差し出すとその指をーー一閃。

 

居合抜きの要領で浅く斬り抜いた。

 

「ッッッーー!?」

「阿呆、落ち着かんか。舐め取りにくいわ。」

 

そう言うとセイバーは俺の右手の人差し指をそのまま掴みとり、()()()()()()()()()()()()()()

 

「ーーーーーーーーッッッ!?!?」

ひゃはは(じゃから)ふぁふぁへふはほひってほほう(暴れるなと言っておろう)ふほひほはいははひゃ(少しの間じゃ)ほほはひふひへほへ(大人しくしておれ)。」

 

指を舐め回すセイバー自身がそう言う以上、逆らうことも出来ずに全身ごと右指を硬直させる。

 

れろ……ちゅぷ、ちゅぽ、といった血液を舐め取る音が静寂たる地下下水道中に広がって響いてるように感じ、その響きは耳を刺激する。

それこそ、果てしない時間に思えてーーー実際は1分程だったその時間が過ぎると、セイバーはこちらを向く。

 

「……どうじゃ?随分楽になったとは思うがのう?」

 

確かに、痛みは完全に消え、逆に絶好調と言っていい程だ。

 

「妖刀の呪い(どく)は物質的な毒とは違い、人の血液に乗せて魔力のように吸収出来るからのう。お主に降り掛かってた分の呪いを肩代わりしただけよ。」

「そ、そうなの……か?って、ちょっと待て。俺の分の呪いを肩代わりした……?大丈夫なのかよそれ!!」

「阿呆、大丈夫に決まっておるじゃろう。河豚が自分の毒で死ぬか?それと同じじゃよ。」

「そ、そうなのか……なら、良かった。」

「ふん、お主は心配し過ぎなんじゃ。儂はサーヴァントなんじゃぞ、大人しく自分の心配でもしておけ。」

「そういう訳にはいかないよ。大切なパートナーなんだし………でも。さっきの指チュパは心臓に悪いからもう勘弁して欲しい………」

「………え、お、お主。まさか、アレで欲情しておったのか……!?さ、流石の儂もドン引きじゃぞ………!!」

「し、仕方ないだろ。だいたいなぁ、お前が……」

 

ーーその、瞬間。

 

爆音が鳴り響き渡った。

 

 

「……セイバー。」

「あぁ、ますたぁよ。いくぞ。」

 

セイバーの意識が再び俺の中に入り込み、俯瞰するように俺の意識が外に出る。

 

そして爆発音に釣られて戻ってきたのか、それとも単純にこの時を待っていたのか。アサシン達が複数で取り囲む。

 

「やるか、セイバー。」

「うむ。先程までの、1人で戦っていた儂らとは違うということを此奴らに思い知らせてやろうぞ……!!」




指チュパは天啓を受けたのでノリで追加されたシーン
ロリの指チュパって興奮しません?え、それで興奮するのは変態だけ?あ……そう。


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5日目/斬人波涛

前回の更新分、初めのひと段落抜けてたので追加しました


激しい音のした方にへとたどり着くと、そこには瓦礫と化したさっきの建築物があった。

 

いったい……なにが。

 

『見ろ、ますたぁよ。ランサーとランサーのマスターが戦っておるわ。』

 

言われてそちらを見やると手前でアサシン達相手に1人で戦い続けるランサーの奥に、鎖姫ちゃんが1人で魔術戦を挑んでアサシンを追い詰めている。というかアサシンのマスターらしき男は逃げるのに精一杯で応戦が出来てない。あれはもはや蹂躙と言った方が正しいだろう。

 

『未熟な小娘かと思いきや思ったより出力が凄いのう………というかお主より素なら強いな、あれは。』

 

うるさいな、こちとらただの高校生(ロリコン)なんだ。あんなドッキリかくし芸みたいなの期待されても困るっつーの。

 

「だけど、まぁ……どうやら俺の出番はなさそうだな。圧倒してるよ。」

『……何を言っとるんじゃ?寧ろ逆じゃろ。どう見てもあの小娘逆上して周りが見えておらん。このまま後先考えずに戦い続けたら後ろからアサシンに寝首を欠かれてグサリ、じゃ。』

「なっ………!?」

『それに、ランサーが例えアサシン達を抑えきったてしてもあのアサシンのマスターがなにか隠し玉を持っとる可能性も十分にある。少なくともこの戦闘で主導権を握っとるのはアサシン側じゃのう』

 

そんな……なら今すぐ助けに行かないと!!

そう地面を蹴って走り出そうとしたタイミングでセイバーに肩を掴まれる。

 

「待て、()()()()。お主、その行動の意味を理解しておるのか?わざわざ同盟相手ですらない敵を助ける理由を。」

 

セイバーはいつになく剣呑な目付きでこちらを見据え、そう問いかける。

 

「意味……?自らの有利を潰すことになるってことか?」

「分かっておるなら、何故。お主は儂を勝利させるのではななかったのか?」

 

セイバーの言うことは最もだ。マスターとして、人として正しいのはここで傍観するか、或いはさっさと錬土を探しに行くことだろう。何しろ彼女は俺のように巻き込まれた訳でもない、自分の意思で覚悟を持って殺し合いに臨んだ1人のマスターなのだから。

 

けれど、俺はその道を選べない。

だって、俺はマスターであり、1人の人間であるその前に。

ただのロリコンなのだからーーーー!!

 

「悪いな、セイバー。だけど、俺はロリコンなんだ。目の前で幼い女の子がやられそうになってるのを無視なんてできない、それがその子の覚悟の上だとしても、だ。」

「そうか………つまり、お主は勝ちを捨て、儂を捨てて勝利を諦めるのか?儂達は決してこの聖杯戦争において有利な立場にない。勝つ為に手段をのうのうと選べるほどの強さは無いのじゃ……それでもか?」

「あぁ、それでもだ。」

「…………そうか、ならば。」

 

セイバーの声のトーンが落ちる。

でも、彼女を失望させるわけにはいかない。

 

「ーーだけど。

だけど、勝ちを捨てるつもりもない。君の為に聖杯戦争に勝つと決めた、それは真実だ。なら、俺は彼女を救い、ランサーを倒して。そして君を聖杯へと到らせるよ。ロリコンとして誇りにかけて誓ってみせる。必ずだ。だから………彼女を救わせてくれ、俺に目の前で幼女を見捨てるようなことをさせないでくれ………!!」

 

数十分にも感じられる、されど実際は数秒程の静寂。

それを断ち斬るようにセイバーの溜息がこぼれる。

 

「あぁ、あぁ………そうじゃな。お主はそういう奴じゃった。全く、儂も見る目がない……こんな変な男をマスターに選ぶとは。じゃが、そこまで言い切って見せたのじゃ、あの小娘を救い、他のサーヴァントを斬り伏せ、必ずや聖杯を儂と共に掴むぞ、ますたぁよ!!」

「あぁ!!」

 

そうして、霊体となったセイバーが再び身体に入り込む。けれど、今までのように意識が斬り離されて俯瞰するような事はなく。そのまますっぽりと彼女の中の意識と経験のみが心に収まる。

まるで侍が腰に刀を据えるように、いとも自然な、これこそが武器と人の関係であるかのような形で。

 

「あれ……俺の意識がある……?」

『儂が肉体の主導権を手放し、且つ妖刀(カタナ)の呪い呪い(どく)を儂という刀身(からだ)に押しとどめたからこそ、じゃのう。というか、これが本来の儂の立場じゃし。』

「え……どういうことだよ?」

『………ぶつぶつ言っとる暇はない、往くぞますたぁ!!』

「え、あ、あぁっ!」

 

余分な思考を振り払い急いで彼女の下へと向かう。

セイバーと話している間に彼女はアサシン達のマスターを追って更に奥へと行ってしまったようだ。

というか、彼女の魔術で床や天井、壁がめちゃめちゃにせり出していて既に音しか聞こえてこない。

 

これだと何が起こっても分からない、急がなくては……と、ランサーとアサシン達の戦闘をすり抜けてく時、ランサーから声が掛かる。

 

「おいロリコンセイバー!令呪の縛りで動けねぇ俺の代わりに、マスターを、サキの奴を頼む!今のアイツは……このまま死ぬ気だ!!止めてくれ!!」

「任せろ!!」

 

死ぬ気だって?冗談じゃない。これ以上目の前で………目の前、どういう事だ?

いや、今はそんなことを考えてる暇はない、一気に道を斬り拓くのみ!!

 

『ロリコンセイバーって……儂がセイバーなのに……完全にますたぁにイメージが侵食されておるのじゃ…………』

 

セイバーが恨みがましい呪詛のようにぶつぶつとつぶやく。

 

て、え、ちょ、そこで落ち込むの?ちょっと今そういう雰囲気じゃないから空気読んで、ね?

『お主がその台詞を口にするか……!?』

 

都合の悪そうな事は聞かなかったことにする、これが1番。それにセイバーがガチ呪詛とか洒落にならないし。

そんな他愛もない思考をしながら幾重にも蔦のように絡み合ったコンクリートの茂みを斬り裂いて奥へと向かう。

 

ーーーそうして見えた光景は、まさに鎖姫ちゃんにとって危機一髪といったところだった。

 

アサシン達の のマスターに拳銃わ向けられ、まさにその引き金が引かれるその瞬間。

 

限界を超えた縮地で距離を詰めながら鎖姫ちゃんに向けられた拳銃を斬り捨て、彼女を抱きあげる。

 

「あぁ、漸くの到着ですか。予定外が続いてまいりましたよーーーセイバー。」

 

アサシン達のマスターは俺を見て一瞬驚くが、すぐに平静を取り戻し喜悦の笑みをあげる。

 

「悪いけど、ロリコンは幼女のピンチに駆けつけるものって相場が決まってるのさ。」

 

まぁ、今回のは偶然なんどけどね!

『そんなんだからお主はどこか締まらんのよなぁ……』

いいじゃないか、別に。

 

「にしても、ホントにギリギリだこと。」

 

鎖姫ちゃんを抱え直しながら思わずそうつぶやく。

 

「全くだ、まさかホントにこうなるとはなぁ。俺もまだまだ読みが甘かった。」

 

自分に向かってくるアサシン達を捌ききり、倒したランサーがこちら側に来ながらそうつぶやく。

 

「いや正直俺も予想外だった。というか割とアソコは勢いというか口に出しちゃったから引っ込みつかなくなっただけと言うか。」

「………まぁ、結果オーライってやつだ。」

 

ランサーが呆れ果てたようにこちらを見ながらこぼす。

 

いやだってね、仕方ないじゃん。半ば暴走してたとはいえセイバーに加えてあのヤロウの力まで引き出したのに互角に近いって相手が守ってるんだもの、普通に考えたら危険なんて無いしデマカセでもハッタリでもいいから何か言わないとまた気絶させられそうだったし。

 

「ちょ、ちょっと待って。ランサー……貴方、セイバーのマスターとグルだったって言うの?」

 

ランサーとの関係にようやく気づいたのか、鎖姫ちゃんが声を荒らげる。

 

「あー、悪ぃ。それに関しては確かに勝手に一時的な協力関係を結ばせてもらったぜ、サキ。あー……まさかこんな事になるとは思ってもなかったんだがなぁ。」

「そう………いいわ。貴方まで私を信頼しないなんて……言い訳は結構、誰が貴方のマスターか骨の髄まで叩き込んであげ……!!」

 

と、そこまで言ったところで突然クタリとなってしまう。

 

「さ、鎖姫ちゃん!?大丈夫!?どうしたの急に!!」

『安心……せい、ますたぁ。ただの疲労による気絶じゃ。それより、こうしてる間にもお主には負担が掛かっとるんじゃ。とっととそやつをランサーに渡して片をつけるぞ………ますたぁ。』

 

息を軽く切らしながらセイバーが心中より呟く。

そこまで無茶をした覚えはないけれど、そんなに負担をけてしまったか。

考えてみればこんな汚くて暗いところに潜って随分経つ。小さな女の子達がこんな所に長居するなんてとんでもない、一刻も早くけりをつけないと。

 

「ランサー、鎖姫ちゃんを頼む。」

「言われるまでもねぇ、マスターを護るのはサーヴァントの本業だぜ?」

 

そう言うとランサーは鎖姫ちゃんを抱えてこちらに向かってくるアサシン達の少ない方へと下がっていく。

 

「ああ、ランサーには逃げられてしまいましたか。でも仕方ない、二兎を追う者は一兎をも得ず、私は目的通りセイバーをここで討ち果たすとしますか。」

「倒せるものならやってみろよ……それより、錬土の奴はどこ行きやがった。」

「あぁ、彼ですか。安心してください、まだ解体はしてませんよ、人質の意味がなくなりますからね。それとも、()()()()()()()()?」

 

思わず咄嗟に手が出て斬り付けるが集まってきたアサシン2人がかりに受け止められる。

そうだ、こいつに話が通じるわけが無い。こいつは錬土からの資料にあった通りの顔。つまり、殺人と死体損壊の罪で捕まっているはずの人肉食者(カニバリスト)、六道 尊なのだから。

 

「ひいっ……!あぁもういやだなぁこれだから美食を理解しない獣は!会話の最中に斬りつけてくるなんてマナーの欠片もありやしない!」

 

急に斬りかかったことにビビったのか情けない声をあげながら六道は距離を取る。

 

「お前みたいな気狂いの人肉食者(カニバリスト)なんかと交わす言葉はねぇんだよ。」

 

そう吐き捨てるように言うと、六道は首を振りながら見下すように言い放つ。

 

「はぁ………やはり十年近くが経過したとはいえ真の美食を解する者は少ないのか。ならば仕方なし、貴方達にはここで死んでもらって聖杯へと私たちが至る為の供物とさせてもらいましょう。」

「は、なんじゃ。お主らも聖杯を求めておったのか。」

 

俺の声帯を使ってセイバーも嘲るように言い放つ。

 

「当たり前でしょう、でなければ誰が好き好んでこんな殺し合いをしますか、私達は狂人じゃないんですから。」

「……どの口が言うんだよ、お前達のがよっぽど狂人だ。」

「はぁ……あなた達はいつもそうだ。私は料理人として美食の粋を究めたいだけだというのに。そしてその果てに辿り着いたのが人肉食、ならばそれを喰らうことに何の問題があるというのだ、なのに世間はそれを解なさい!だからこそ、私は聖杯へと願う!!世界を我が美食を解する客と、それ以外のヒトという家畜へと分けるように!!そうして真の美食を理解する者だけが好きなだけヒトを食べられる理想郷(アルカディア)が誕生するんだ!!!」

 

「…………完全に、どうしようもねぇな。」

『世の中には偶にこういうどうしようもないあ方が生まれでるものじゃよ。じゃが……』

「この場合は噛み合わせが悪かった、ってこか。アサシンと猟理人、2人の人肉食者(カニバリスト)の運命の出会いとか巫山戯すぎだろコノヤロウ。」

 

「あぁ、やはりあなた達も理解せず、拒絶する。ならば私の客たりえない。ここで解体し刺身にしてくれましょう!!」

 

その号令と同時に周囲にいつの間にか潜んでいたアサシン達が一気に襲い来る。

今の会話はその為の時間稼ぎ、か。

 

だが……今の俺にはこの程度。

 

地を蹴り、まずすれ違いざまに最初に飛び込んできた2人を同時に斬り伏せる。

身体が軽いーー今までのような、身体が勝手に動く感じではなく自分の意思で動けて、なのに身体はどう動けば最適なのかを覚えていて。

まるで負荷を感じない。これが、セイバーの本当の力か……!

 

「陣形を組め、先程より奴は手強くなっている!!」

 

目の前のアサシン達が号令と共に陣形を組む。妖刀の呪い(どく)に意識を侵されずにクリアなままだからだろうか、剣技の経験だけでなく戦力を見取れるだけの経験が加わり今まで意識できなかったところまで感じ取れる。隙が大幅に減り、戦力としても大幅に強化されている。

自分で動かしている分、何が出来て何が出来ないのかもよく分かる……試してみるか。

 

「宝具・限定解放ーー」

 

魔力を収束させ、刀身に束ね、身を思いっきり捻じる。

そうして、アサシン達に向けて纏めて解き放つーー!!

 

「ーーー妖刀・釣瓶堕とし!!」

 

一気に振り抜かれた刀身から吹き荒れる烈風、そしてそれに乗りアサシン達を切り刻む無数の魔力の刃。

それは、俺を取り囲むように対峙していた十数騎のアサシン達を霊核ごと微塵と斬り刻むのに十分な一撃だった。

 

『おい、ますたぁ!!やるなら一言言わんか阿呆!!!負荷の緩衝材(クッション)代わりになってる儂のことも考えんか!』

「あ……す、すまんセイバー。……大丈夫か?」

『そんな取ってつけたように謝られても儂の機嫌は治らんのじゃ。じゃから今の償いは……そうじゃのう、パンケーキ3枚くらいで勘弁してやろう。』

「え………本気かよ……」

 

この分じゃ、ホントに毎日もやしライフも遠くないんじゃあないだろうか。

 

「にしても、やっぱ数が少ないな……アサシン達も残り少ないのか?」

『或いは、最大数が思ったよりはいないのかもしれんな。』

 

そう見回すと、確かに遠くに疎らにいる数騎を除いて存在するのは、少し離れたところで今の一撃を躱した残り数十騎くらいのようだ。

しかし、六道の姿が今度は見えない。あいつ、今度は何を考えている……?

 

『考えるより斬れ、じゃ。ますたぁ。今のうちに空いた隙間から先に奴を追うぞ!!』

「あ、ああ!」

 

そうして奥へ奥へと道中の数騎のアサシン達を斬り捨てながら進むと、奥には伏せた状態でぐったりとした錬土がいた。

 

「錬土!!」

 

そう呼び掛けながら向かった瞬間。

 

「馬鹿野郎、後ろだ!!!」

 

意識を失っていたと思われた錬土が突如顔を上げてこちらに向け放った声で、後方へと意識を引き戻す。

そして、後方より飛来した無数の弾丸を全て斬りとばす。

 

「おいおい……作戦が失敗しちまったじゃないか。ジェニー、君確かに睡眠薬飲ませたんだよね?」

「はい、勿論餌として与えたパンの中に埋めておきました。間違いありません。」

 

背後から現れた六道の問いに対し、ジェニーと呼ばれた女性のアサシンがそう答える。

 

「じゃあ……なんで起きてる訳なんだ?」

「そ、それは……私にも。」

「いやいや、お姉さんいくらなんでも杜撰すぎでしょ。あんな真ん中だけ思いっきりへこんだパン、誰だって怪しむよ?」

 

戸惑うジェニーに対し、錬土が呆れたように話す。

 

「それに錠剤のままって普通に食べてても気づくからね。俺なら水に溶かして渡すと同時に万一見破られてもいいように近くに隠した水のポリタンクとかにも混ぜ込んでおくくらいはするね。」

「そ、そうか……そんな手が!」

 

自慢気によりいいやり方をレクチャーする錬土とそれに驚くアサシン。

………うん、どう考えてもお前の方が悪辣じゃねぇか。

 

「……まぁ、何はともあれ元気そうで何よりだ。」

「お前も、とりあえず話聞かせてもらうぞ。」

「あぁ、こいつを片付けてからな。」

 

そう言って向き直り、刀を構え直すと。

 

「全く、仲間意識の強い動物はこれだから楽だ……ジョン、手筈通りに。」

 

六道が指示を出すと同時に後ろから締め上げる声が聞こえる。慌てて振り向くとどこに潜んでいたのか、果物ナイフを錬土の頚動脈にあてている、小柄なアサシンがそこにいた。

 

「錬土…!」

「どんなことでも念には念をいれて仕込みをしっかりしておく。仕込みは料理人として基礎中の基礎ですからね。さて、大人しく死んでもらうとしますか。」

 

くそ……完全に油断した。大したことなかったからこのまま余裕で仕留められると思ったのに。

 

『と、いうか。これ、かなり詰んどらんか?ますたぁよ……見捨てて斬り捨てるか?』

 

実際、セイバーの言う通り。かなりヤバい、だがアイツならなんかきっと上手くやってくれるはずーー!

 

「よし、俺の為に死んでくれ戈咒!!」

「って死ねるかアホッ!?」

「童貞のまま死ねるかコノヤロウ、お前が原因なんだからお前が死ね!だいたい俺に人質以上の価値ないしお前が死んだら解放されるじゃん!」

「いやいや、俺だってまだ見ぬ世界中のロリが俺を待ってるんだよ?だから仇はちゃんと取ってやるから安心しろ!」

 

そうして言い争っていると背後から銃弾が飛んでくるのを感じ取り、それを斬って弾く。

 

「やはり、ダメですか。ならば、まずその刀を手放してもらいましょうかね。」

 

言われて仕方なく刀を投げ捨てる。

こうなったら……賭けになるがあの手段しかないのか。

『……あの手段?おい、まさか……ますたぁよ。また呪いをその身に被せるつもりじゃなかろうな。』

妖刀の精神(アノヤロウ)の力を借りて身体を銃弾を受けた瞬間だけ刀へと変質させる。これ以外に手がないから仕方ないだろ。

『バカ者!そんなことしたら儂ですら緩衝仕切れぬ、一気に侵食されてしまうわ!』

けど……他に方法が。

 

その時。唐突に地下下水道全体を激しい揺れが襲った。

 

「うわっ……!!」

「なっ……地震だとっ!?」

 

そしてその揺れに慣れる間もなく突如として床と壁から間欠泉のように幾つも吹き出してきた濁流に呑まれ、声を出す間もなく俺達は流され、そして意識を失った。

 




やーっとこさ話が進んできた……もう少しで3章も終われるかなぁ……


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5日目/選別

 

セイバー陣営が地下に乗り込んだことで巻き起こった、アサシン陣営、ランサー陣営、セイバー陣営による敵味方の入り乱れた戦列が開始してから、既に3時間近くの時が経過していた。

 

そして、この時。2人の新たなる闖入者が乗り込んだ、小舟が地下下水道の水路を自在に駆け巡っていた。

 

「どう、ライダー。まだアサシン達は脱落してないわよね?」

「あぁ、サーヴァントの気配はしっかりと感じる。それどころか更に2つもあるな、つまり既に三つ巴だったって訳だ。」

「へぇ……いいじゃない。イカレをただ討伐するだけなんて、この私のデビュー戦にしては華がないもの。舞台を既に暖めておいてくれるなんて、そこらの凡百の魔術師(マスター)にしてはいい仕事するじゃない。なら、私のやることはただ一つ。派手にのりこむだけよ!!」

「そりゃいい、マスター。派手な喧嘩は俺も大好きだ。火山が噴火し、豪雨が巻き起こり、溶岩流が島の大地を覆い、津波が島を飲み込んだ、アイツとの喧嘩を思い出すな。」

 

100円の缶コーヒーを飲みながら、平然とした顔で物騒な事を呟くライダー。

 

「はぁ……ライダー。それは派手だけど流石に神秘の隠匿が出来ないからダメよ。神秘の隠匿は魔術師にとって第一の義務なんだから。」

「チッ……つまらねぇな。どうせやるなら思いっきりやりきりたいもんだ。」

「ふふん、安心しなさいライダー。私は出来る魔術師なの。配下(サーヴァント)の希望を一方的に無下にするつまらない女じゃないわ。神秘の隠匿できる最大限で派手にやらせてあげる。」

「ほう……じゃあ、波に乗って一掃しながら参戦ってのはどうだ。俺と戦う価値のある英雄かの選別も出来て一石二鳥よ。」

 

ライダーは手に握った空きのスチール缶をクシャりと握り潰してイリマに問う。

 

「いい案出すじゃない……のったわライダー。討滅と選別を一度にこなせるなんて無駄がなくていいじゃない。」

「よっしゃ、じゃあ決まりだな。気配は……あっちの方向か。ぶっ飛ばすぞ、掴まれっ!」

 

そう言うやいなや、ライダーの身を纏う魔力の圧が強まる。そしてそれと同時に周囲の水面に魔力で刻まれた魔法陣が浮かび上がる。

それと、同時に。水面が爆発するように膨れ上がり、2人を小舟ごと押し流す。

壁の方へと叩きつけるように小舟は吹き飛ばされるが、激突するよりも早くそのコンクリートの壁は荒れ狂う激流によって破壊され、そのまま水路というものを無視して真っ直ぐにサーヴァントの気配の方に向かって突き進んでいく。

 

「はっはーー!どうだいマスター、乗り心地はよ!」

「あはははははははは、いいわねこれ!最っ高に目立つじゃない!このまま最高速でぶっ切っちゃいなさいライダー!!」

 

そしてその2人を乗せた小舟とそれを運ぶ激流は更に速度を上げて突き進み、遂に最後の壁を壊して、その先で対峙していたセイバーやアサシン達を呑み込んで押し流した吹き飛ばした。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「………ぐ、ぶふぉっ、かハッ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

口から水を噴き出し、目を覚ます。

あの時、確か俺は噴き出した水に呑まれて……

錬土は!?アイツは何処だ!?

 

『落ち着けますたぁよ、あの女好きならそこに転がっとるわい。というか、水の中で互いにバラバラにならないようしがみつきあってたのに忘れたのか。』

 

セイバーに言われてそう言えばそうだと思い出す。何しろあの時は無我夢中だったが故に、必死だったのだ。

 

とりあえず急いで駆け寄るが、どうやら息はちゃんとあるみたいだ。よかった……

 

「へぇ、とりあえず2人は生き延びたの。よかったわ、討滅だけで終わっちゃうなんて拍子抜けだもの。」

 

こちらを眺めながら笑う、幼女(ロリ)と呼ぶには少し歳を取りすぎている黒髪の少女。

そして、その傍らには南国風の装束に身を包んだライダーが立っていた。

 

「ライダーの……マスター……!!」

「あら正解、そういえばあなたはライダーと会ったんだっけ、セイバーのマスターさん?」

 

俺のことは既に知られてるってわけか……

 

「そこの男は……あなたの知り合いかしら?随分と心配してたようだけれど。」

「こ、こいつは関係ない!?ただのアサシンに捕えられた人間だ。聖杯戦争とは無関係の人間のはずだ。」

「そう……ね。確かに、魔力は感じられないし。でも神秘の秘匿の為にーーー!?」

 

その時、突如彼女の側面から包丁が飛んでくる。

しかし、同時に危なげもなく彼女の足下の影からはペラペラな、影の幽霊のようなものが溢れ出て壁のように立ち塞がり、突き刺さった包丁を完全に吸収してしまった。

 

飛んできた方向を見ると、アイツらも耐えきったのか。六道とアサシンがそこに居た。

 

「……なんだ、まだ生きてたの。本当にちゃんとやったの?ライダー。」

 

その問いかけに

今まで沈黙を貫いていたライダーがここに来て初めて言葉を発する。

 

「あぁ、俺はちゃんと最速でぶっ飛ばしたぜ?まだ生きてるってことはサーヴァントが身代わりになったか、よっぽど悪運が強かったかのどちらかだろうぜ。」

「そう、なら纏めて討とうかしら……ところでライダーあなた何で今攻撃を防がなかったの?気づかなかった訳もないでしょう?」

「ハッ、何。あの程度も防げない奴に俺が仕える必要もねぇだろ。前も言ったが俺は今のところお前を心の底からマスターとして仕えようとは思ってねぇぜ?自由にサーヴァントとしたいならまずは俺を魅せてみろよ。」

「……まったく、相変わらず使いにくい配下(サーヴァント)ね。まぁいいわ、ここでコイツらを纏めて倒せば認めてくれるのかしら?」

「ふん……それはお前の指示次第、だな。」

「ふ……まぁ、私に軽口叩けるのも今のうちよ。楽しみにしてなさい。」

 

ライダーとそのマスターの少女は共に軽口を叩き合いながら六道の方に意識を向けている。

 

今なら……錬土を連れて逃げられる……!!

そう、一歩後ずさりした時。

足首から先が、消失したような感覚を受ける。

 

『下がるなますたぁ!前へでるのじゃ!!」

 

セイバーの咄嗟の声に、思わず前に出ると足の感覚が戻る。振り向くと、そこには先ほど飛来した包丁を飲み込んだ影の幽霊が足下に蠢いていた。

 

「なっ……!」

「へぇ……なかなか見込みあるじゃない。私の肩慣らし相手くらいにはなるかしら?」

 

当然、それを仕掛けた張本人であろうライダーのマスターの少女もこちらに意識を向ける。

 

全部、お見通しだったってことかよ……!?

思わずお前はだれだ!と問いそうになったとき、横合いから声が飛ぶ。

 

「ぐああ、あぁ、あぁ……私の足が………!!いや、そんなのはもう別にいい。それよりもお前は誰なんだ一体!!折角練り上げた私の調理工程が台無しだ!」

 

やけになったように叫ぶ六道。見ると、その左足首から先は消失しており、血が滴っている。

俺も、一歩間違ったらああなっていたのか……

 

思わず戦慄すると同時にライダーだけでなくそのマスターである彼女への警戒度も高める。

 

「そうね……なら、名乗りをあげるとしましょうか。私の名はイリマ・カフナ。千年以上の歴史を持つハワイの魔道の大家、カフナ家の今代当主よ!!」

「そして俺がその暫定サーヴァント、ライダーだ。」

 

腕を組み、胸を張りながらそう名乗りをあげるイリマ。

ハワイのマスター……道理でライダーがやたら南国感のあるムキムキだった訳だ。

 

『……いや、別にマスターとサーヴァントの出身地に関係性とかは特に無いじゃろ……』

 

そうかな、地元の英霊とかの方が詳しいしよく理解した上で呼び出せそうな気もするんだけどなぁ。

そんな事を考えているとイリマが再び俺たちに声をかけてくる。

 

「さぁ、あなた達も名乗ってみなさい。つまらない端役だとしても、名前くらいは覚えておいてあげるわ。この私の輝かしい功績を彩る飾りとしてね!!」

 

その時、後ろから声が聞こえる。

 

「そう、なら私も名乗りをあげないとね。」

 

ザリ、と地を踏む音に振り返ると。

 

「私こそがこの土地に根を張るゴーレム使いの一族、繰空家の七代目当主!!繰空鎖姫よ!!」

 

それは、ランサーと共に地に足を突き立てて堂々と胸を張る、鎖姫ちゃんの姿だった。




次回、どちらも果てしなく噛ませの匂いしかしないマスターと有能サーヴァントと対決が始まる……!(かもしれない)


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5日目/覚悟と罠

タージャードルー♪

オーズにハマって毎晩見てるせいで更新が滞ってましたすみません

出来るだけ遅くならないように次も投稿したいと思います

カウントザエピソード!現在の作者が見たオーズの話数は28!

……つまりまだ割と時間かかるかもです()


「へぇ……この土地の魔術師、ね。やっと良さそうなのが出てきたわね。管理者(セカンドオーナー)との決闘前の前哨戦には丁度いいじゃない。にしても、コイツらを庇いに来たってわけ?なかなかに酔狂なことするじゃない。」

「私が?冗談言わないでよ、こんなロリコン庇う価値もないわ、それどころか散々人のことを虚仮にしてきたんだものぶちのめしたいとしか思ってないわよ。」

 

うわぁ……そこまでは言われると流石の俺でも凹むな………

 

「ふぅん……なら、さしずめ獲物を取られそうになって慌てて出てきたってとこかしら。まぁ私としては、素人よりは魔術師相手の方が決闘の相手とさては相応しいし願ったり叶ったりってとこかしら。」

「言ってくれるじゃない、ならここらでどちらが強いマスターか決めましょうよ。」

 

そう言いながら彼女は俺の横に並び立つ。

 

「何してるの、早くお兄ちゃんを連れてどっか行きなさいよ。」

「え、へ?お兄ちゃん?というか、どういう事、俺の事を庇ってくれたの?」

「はん、冗談は寝言だけにするべきよ。貴方は私が倒すべき敵よ。けれど、さっき命を救われたのも、お兄ちゃんを救ってくれたのもめちゃくちゃムカつくけど事実。ならまずは借りを返さないと私が気持ちよく戦えないじゃない。」

「俺は別に鎖姫ちゃんと戦う気は無いんだけども……」

「貴方が無くても私にはあるのよ、というか馴れ馴れしく呼ばないでよロリコン、キモい、気持ち悪い。」

「ガフッ……きも……」

 

こうかはばつぐんだ!

きゅうしょにあたった!

いちげきひっさつ!

 

『ちょ!?ますたぁ勝手に意識トリップするのはやめるのじゃ!?』

 

「……とにかく、アイツの相手は私がする。貴方は大人しくお兄ちゃん……あの男を連れて早く逃げなさい、邪魔よ。」

「なら、俺も共に……」

「結構よ、背中を刺されかねない敵と戦う趣味はないし……貴方達まで参戦したら益々この周囲が危険になるじゃない」

 

トリップしていた意識を無理やり取り戻し必死に提案するも、ぐうの音も出ない正論で反論される。

確かに、ここで誰かが足止めしてもう1人が逃げるのが1番の方策だろう。けれど……

 

「だとしても、それなら俺が足止めをすれば……」

 

ーーーー!!!!!

 

突如、痛みが走る。不意をつかれての金的、あまりの激痛に思わず脳内が黒白に明滅する。

崩れ落ちそうになる足をなんとか気力で支え、鎖姫ちゃんに疑問を投げかける。

 

「な……なんで……」

「人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ、ロリコン。私は誰かに強制されたわけでもなく、自分の意志で今、ここに立ってるの。それは例え私を慮ってだろうと誰にも否定させやしないわ。」

 

『お主の、負けじゃな。幼子だからと覚悟を見誤ったの。』

 

そう、セイバーが語りかけてくる。俺としてはまだ納得は言っていないが……これ以上時間をかけても鎖姫ちゃんが引くことはないだろう、寧ろ痺れを切らしたイリマが襲いかかってきて3人ともジ・エンドって可能性すらありえる。でも、それでも俺はーーー

 

「私を信じなさいよ。貴方を倒すべき好敵手はこの程度で死にはしないわ。」

 

ーーその、言葉が。

 

『私を信じて、◼◼◼◼。』

 

遠い過去の、なにかの記憶と重なったようで。

 

ーーーーッッ!

 

()が痛む。これ以上見てはいけないとカラダが悲鳴をあげる。

これは、この思いはーーいや、違う。

 

こんな痛みも、記憶も、今はどうでもいい。とにかく、俺の答えはーーー

 

「ーー分かった、信じるよ。」

「……意外ね、まだ粘られると思ったわ。」

「正直、まだ不安だけど……信じることにしたから。」

「……ふん。」

「だから、これだけ。ライダーは強いよ、おそらくバーサーカーよりも。」

「上等よ。それでこそ私の……私たちの戦う相手に相応しいわ。ねぇ、ランサー。」

「あぁ、そうだなサキ。目に物言わせてやろうぜ。」

 

霊体化していたランサーが現界して鎖姫ちゃんの言葉に答える。

 

「それより、貴方もお兄ちゃんを頼むわよ……もしかすり傷一つでも付けたら、殺すからね。」

「分かってるさ、自分の友人くらいは守ってみせる。」

「………あなた、お兄ちゃんの友達だだったの……!?い、いえ、今はそんなことはいいわ。とにかくお兄ちゃんは任せたわよ、ロリコン!」

「あぁ!」

 

そう言うと鎖姫ちゃんとランサーは再びこちらをニヤニヤと見つめているイリマ達の下に向かって歩き出す。

俺も錬土を一刻も早く安全な場所に連れ出さないと。そうしたらーー

 

『そうしたら、助けに戻る、か?お主が本当に聖杯戦争というものを理解しとるのか理解に苦しむのう……この戦いはサバイバルじゃというのに。』

「そんなこと言いながらもいつもセイバーはなんだかんだ付き合ってくれるじゃん。やっぱいい子だよセイバーって。」

『あ、阿呆!儂はただお主に死なれては困るから仕方なくいやいや付き合うとるだけじゃ、勘違いするなよ!』

「はいはい、そういうことにしておきますよっ、と。」

 

セイバーの可愛らしい反論をそこらで切り上げて倒れ伏した錬土を背負って鎖姫ちゃん達の会話を尻目に一気に走り出す。そして角を曲がり彼女達が完全に見えなくなった頃合から、激しい金属音と地響きが響き渡る。戦闘が始まったようだ……早く安全なところまで錬土を連れてかないと。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「……なぁ、セイバー。鎖姫ちゃん達が示した方向って元は俺達が来た方向だよな?」

「おそらく……そのはずじゃが。何か気になることでもあったのか?ますたぁよ。」

 

錬土を背負って走り出してから十数分。

既に憑依を解いて俺と並走しているセイバーは小首を傾げながら問いかけてくる。

 

「いや、なんていうか。さっきから何度もぐねぐね曲がってるから俺達の向かってる方向はこれで本当に正しいのかなって思ってな。」

「そうはいうものの、ここまでの道は全て一本道じゃったではないか。他の分岐とかは全て瓦礫で塞がれておったし、もしあ奴らが通ってきたならそんなのは崩れておるじゃろう。」

「確かに……そうなんだよなぁ。考え過ぎかな。」

 

いや……ちょっと待てよ。()()()()()()()()……?

 

「なぁ、セイバー俺も思い返すからお前ももう一度思い返してみてくれ。本当に()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「?いや……うーむ、儂の記憶では確かにそうじゃったと断言出来るな。」

 

俺の問いに首を捻りながらもそう確信を持って答えるセイバー。

 

「でもさ、それっておかしくないか?ランサーの戦い方じゃ瓦礫で天井や壁が崩れるほど激しく戦うことは無いだろ。」

「何、そこはあの小娘がやったのじゃろう。あ奴の魔術なら……ん?」

 

セイバー自身も話してて違和感に気づいたのか疑問を覚える。

 

「そう、鎖姫ちゃんはそもそも魔力切れで倒れる程無茶してたんだ。あそこで時間稼げるほどには回復したとはいえ、アサシン達だけならランサーだけでも十分相手出来るはず、鎖姫ちゃんが無理する通りはない。そしてライダーの起こした激流で崩れたにしては……」

「……濡れてない、か。」

 

俺の言葉を引き継ぎ、セイバーが結論づける。

 

そう、だからこそここまでの道のりはどこか不自然なんだ。

 

「じゃが……一体誰がどんな目的でこんな事を……?」

 

そう、次の問題はその点だ。まず、この地下に存在する陣営は4つ。

俺達はまずありえない。

次にライダー陣営、これもありえない。彼女達は水の流れと共に襲いかかってきたことを考えればここを通っていないであろう事は明白だ。

そして、鎖姫ちゃん達の可能性も低い。わざわざ逃げ道を減らすようなことをするとは考えにくいからだ。

 

ならば、残ったのはーー

 

そう考えながら、角を曲がった瞬間に陰から飛来するいくつもの刃物。

 

「セイバー!!」

「うむ!」

 

指示を飛ばすと同時にセイバーが前に出て手に持つ二刀で飛来したその全てを叩き落とす。

 

「やっぱり……おまえか、六道、尊……!」

 

その奥には、アサシン達を引き連れその背に抱えられた六道が俺たちを待ち構えるようにその場にいた。






イリマと鎖姫の一人称が同じです口調も似てるせいで書きわけが難しい……



ところで、オリジナルの魔法少女ものを不定期連載で書くかもです
そうなったらそちらもよろしくです


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5日目/醜悪なる食欲

オーズ最終話まで見て、新作もチョロっと書いてたのに嘗てとほぼ変わらないペースで投稿できてしまった……これで筆者が今まで色々言い訳にしてたけど実はサボってただけという事実が明るみに……

これからは更新頑張るので新作の方もよろしくお願いしますね!(誤魔化し)


 

「あぁ……やっと、来ましたか。まったく、どいつもこいつも……調理工程を乱しやがって、嫌になる。」

 

そうポツリ、ポツリと呟く六道の左足は先程見た通り失われており、傷口を縛って塞いだ布が血に滲んでいる。

 

「あの闖入者共のせいで全ては台無しだ……だが、だからといって妥協をしていい理由にはならない。せめて、最低限の工程だけは完遂させないと……だからここで殺処分してやる、セイバー。」

 

そう言うと同時に奴の傍に控えていたアサシン達が一斉に襲いかかってくる。

 

だが、しかし。

 

「いくぞ、セイバー!!」

「分かっておる!!」

 

互いに余計な言葉は不要ず。

互いに自分の在るべき姿へと成る。

 

そうして妖刀(セイバー)を腰へ備える。

 

セイバーが認めてくれたのか、それとも必要に駆られてなのかは分からないけれど。

 

セイバーが俺を操るのでなく。彼女が、俺の一振りの刀(サーヴァント)として俺に仕えてくれてる今なら。

今の、俺たちなら。

 

「お前達程度、何人いようが敵にならねぇんだよッッ!!!」

 

鯉口を斬る速度が音を置き去りにしたかのような一閃。

それだけでーー襲い来るアサシン共の霊核は両断される。

 

「さぁ、次はお前の番だ。大人しく地獄へ向かうんだな。」

 

しかし、六道は狂っているからだろうか、笑みを崩さない。

 

「いいえ、いいえ、いいえええ。まだでございます、お客様ァァァ……!!さぁ、君の出番です、アサシンッッッ!!」

 

そう叫ぶと同時に、奴の左肩が赤く光り始め紋様が浮き出る。

 

『ッッーー令呪による強制転移か!!』

 

そして俺と六道の間に魔力の高まりと共に現れるのは今迄よりも多少大柄な、それでいて変わらぬ青白い死人のような皮膚。

その口をくちゃくちゃさせながらそこから覗かせるのは紅い人肉か。

 

アサシン達の生みの親にして、真なるアサシン。

その外道極まる存在が、そこに姿を表した。

 

()()()

 

彼はおもむろに周囲を見回すと。

 

霊核を破壊され、だんだんと消え始めているアサシン達、その斬られた肉体の一部をその手に掴み、()()()()()()

 

「なっ……!?」

「あぁ、悲しい……何故お前達は死んでしまったのだ、愛しい我が子らよ……我が友を守る為にその命を散らしたのか……?よくやってくれた、その命を弄んだこの外道には、父が仇を取ってやる……あぁ、それにしても何より悲しいのは……一番悲しいのは。」

 

な、何を言ってるんだコイツは……?いきなり現れて攻撃をするのかと思ったら家族のはずのアサシン達の死体を食べ始めてる……だと……!?

 

『冷静に考えるだけ無駄じゃ、ますたぁよ。この様なイカレは本当にどうしようもないわ。せめて儂らの手で、介錯してやろう。』

 

そう、この隙だらけの頸に刃を通そうと、腰だめに構えようとすると、口の中のアサシン達を呑み込んだのか、再び言葉の続きを口にする。

 

「なぜ、わが子達は受肉をしてないエーテル体の体なのか。もし生きた肉ならば、より美味であったろうに。私はそれが何よりも悲しい……!!」

 

ーーー最高に、イカレている。

でも、思うところは、もうない。

ただ、一言。

 

「死ね」

 

そう、踏み込もうとしたその時。

 

「おおっと、我が友の大事な食事を邪魔する訳にはいかないな。さぁ、()()()()のお子様がた!食事の邪魔をさせないようにッッ!!」

 

その命を受諾したのか、再び奴の左肩の令呪が煌めく。

 

そして、この地下下水道中に散らばっていたであろう、生きている全てのアサシンの家族達が俺たちとアサシンの間に入り、文字通りの肉壁として俺達を防ぐ……!!

 

「にゃろう……!!」

『ぶつくさする時間はない、やるぞますたぁ!』

「あぁ、限定解放で一気に片付ける!」

 

さっきより数が多かろうが、今の俺達の敵ではない。

 

「宝具・限定解放ーー」

 

魔力を流し込み、再び妖刀(かのじょ)の力の一端を引き出す。

 

「ーーー絶刀・徒花返し!!」

 

抜刀からの横一文字、更に返しながらの縦一文字に合わせて、魔力で編まれた幾本ものの刀身が同様の軌跡を描くことで、賽の目の様にアサシンの家族達による肉壁を微塵への斬り刻む。

 

「……ふぅーーー。」

 

残心を終え、息を吐き、構え直して今度こそアサシンの首を落とそうとしたその、瞬間。

 

「すううううううぅぅぅぅぅ………!!」

 

たった今斬り崩したアサシンの家族達、その残骸をアサシンは一息に吸い込み、呑み込んだ。

 

「な……また……?」

『気にするなよますたぁ、イカレの行動なんて……』

「いや、でもセイバー。流石におかしくないか?この段階で、命のやばいってこの段階でそれはさ。そして何より、六道の奴がちっとも慌ててないのがおかしい。全て計画のうちじゃないのか?」

『馬鹿なことを、味方のサーヴァントの死体を喰らうことに意味なんぞ…………まさか。』

「なにか、心当たりがあるんだな。」

「おや、そちらもやっと気づきましたか?」

 

セイバーからその続きを聞き出そうとすると、六道から声がかかる。

 

「サーヴァントの本質は魂喰い(ソウルイーター)。英霊は人間霊を喰らうことでその霊格を強化出来る。」

 

セイバーが俺の声帯を使って話し出す。

 

「そう、なので私は英霊周りの説明を聞いた時に聞きました。サーヴァントを喰らえば……どうなるか?」

 

んなっっーーー!?

 

「理屈では可能じゃろうて。じゃが、現実的には不可能じゃ。」

「ええ、その通り。だが、アサシンは違う。彼の宝具は食人一族として謳われた自身の家族を霊格こそ低いものの、サーヴァントとして呼び出せる。ならば!それを全て食らえばどうなる?」

「…………」

 

セイバーも、俺も思わず無言になり、その言葉の先を待つしかない。

 

「結論から言えばーーー霊核を無数に喰らえば、霊基は補強できる。だいたい、貴方達は疑問に思わなかったのか?アサシンの家族の中に、彼らを産んだ母親……つまり、アサシンの妻が存在しなかったことに。」

「ーーーまさか。」

「そう、その通り。彼女は私達の契約後、実験の為にアサシンに食べられ、それ以降は再召喚が出来なくなったというだけのこと。」

 

そこまで言うと、一気にまくしたてたからか一息つきながら、六道は言葉を続ける。

 

「だから、ここでこの手段に出る気はなかった。こうすると、アサシン1人で戦い抜かねばなりませんからね。だが、これで。確実に貴方達を殺処分できる!さぁ、アサシン……君の力でねじ伏せろッッ!!!」

 

その言葉と同時に、全ての家族を喰らったアサシンはゆっくりと肉体を震わせる。

 

そして、見る間に高まっていく霊基と共に、全身の肉は膨れ上がり、獣のような四つん這いの姿勢ですら既に背中が地下下水道の天井を破りそうなサイズにまで、巨大化していく。

 

「んなっ………!!」

「さぁ……我が友との夢の為、捻り潰してやろう。」

 





敵の巨大化、これは勝ちフラグですね(特撮脳)

多分3章を日曜朝で考えるならそろそろ9時50分くらい。


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5日目/逃走劇(エクソダス)

いや、ホントにお待たせしました……模試が二つもあったんです……は言い訳です

にしても9:50とか大嘘ついたの誰だよ、まだ終わんねーじゃねぇか()


「さぁ……我が友との夢の為、捻り潰してやろう。」

 

巨大化したアサシンがそう言い放ち地ならしを起こしながら一歩ずつこっちに詰め寄ってくる。

逃走劇(エクソダス)

「ぐっ……んむ?」

「錬土!?」

 

何もこのタイミングで起きなくても……いや、逆か。ここで起きてくれたならコイツなら只の人間の六道相手くらいなら適当に距離取ったりして自衛出来るだろうし、片手が空く分一気にここで型をつけられる!!

 

「錬土!説明は後でするから降りて安全な場所で見てろ!」

「!!ーーとりあえず了解!!」

 

素早く状況把握だけはしてくれたのか、俺の背から降りて流れ弾は防げそうな瓦礫の影に、それでいて互いの状態が人目で把握できる程度の位置関係。ホントこいつは理解が早くて助かる。

 

「よし、セイバー!限定解放で方を付けるぞ!」

『了解じゃ!』

「宝具・限定解放ーー」

 

再び妖刀(かのじょ)刀身(からだ)に魔力を注ぎ、一気に方を付ける為に力を込める。

 

「ーーー妖刀・鶴瓶落とし!!」

 

魔力を今までで一番込めた一刀だけあり、振り抜くお同時に放たれた豪風は無数の魔力の刃を乗せて首を斬り刻もうとする。

 

「ーーー効かんわ。」

 

しかし、その全てはアサシンの皮膚に傷を与えるに留まり、肉を断ち、骨を斬り、命を抉る一撃とは程遠かった。

 

「我が家族の霊核、その総数は47。その全てを取り込んだ私を阻むことなど不可能と知れ!」

 

アサシンはそう言い放つと共に腕を振り叩きつけてくる。

 

「ぐっ……!!」

 

何とか躱すものの、同時に巻き起こる風圧はそのまま俺を吹き飛ばした。

 

「ちくしょう……これ、やばくねぇかセイバー。」

『じゃな……じゃが、何か手は……』

「よし……こうなったら。」

『おい、お主。何をする気じゃ……?まさかまた……』

「安心してくれ、危険なことはしないから。」

 

そう言ってセイバーの言葉を制止し、錬土に呼びかける。

 

「錬土!全力で逃げとけ!」

「……はぁ!?あぁもう、分かったよ!」

 

半ばやけクソ気味にも見えるが、錬土が走り出したのを見て、こっちも走り出す。

 

「逃がすか……!」

 

しかしアサシンもこちらを逃がす気はなく、腕を伸ばし掴もうとしてくる。

 

「喰らうか……っ!」

 

だがそれは三角飛びの要領で壁を蹴りながら躱し、全力で走り去る。

 

『……おぬし、まさか策って。』

「あぁ、取り敢えずは逃げる。」

『やはり………』

 

仕方ないじゃん、どう考えても無茶なんだから。

取り敢えず、錬土を拾って距離をなんとか離さないと!

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

まず前提として、巨大な質量はそれだけで凶器と化す。

そこにサーヴァントの膂力とスピードが加われば、まさにそれは台風が暴れ回るのと同等と言う他ない。

ましてや、それが狭い密室状態で行われるとなれば、それに対抗する手段など存在しない。

 

「…と、思うんだけど。どう思う、セイバー?」

『泣き言をいう暇があったら脚を少しでも動かさんか、阿呆!』

「だいたいお前はどうしてこう面倒ごと巻き込まれる質なのかねぇ!」

「ナンパしに行ったと思ったら女じゃなくて喧嘩を呼び込んできたてめぇだけには言われたかねぇぞ錬土!!」

 

背中におぶった錬土に全力でツッコミながら走り続ける。

 

あの後、先に逃げてた錬土に追いつきそのまま抱えあげて背負いながら走って逃走を続けている。なんとか距離を置いて身を隠せれば、策を練る暇もあるのに……!

 

「まぁそれもそうだな……でも、このまま強制スクロールACTみたいな逃走劇をずっと続けるのは不可能だぜ。だいたい、お前じゃアイツどうにもならねぇのか?」

「無理だっての!さっきも見たろ!」

「だっていつの間にかやたら動きが人外じみてるから……まぁいい、じゃあ逆に目くらましとかないのか。一旦身を隠せれば……」

「出来ればやってるってーの!!」

「……だよな。せめて、何かやつの気をそらせるものがあればな……攫われてきたから爆竹とか何も持ってきてねぇや。まぁあったとしてもサーヴァントには効かねぇか……

 

サーヴァント。即ち、聖杯戦争における使い魔。

魔術師でない錬土は知らなくて然るべき存在。

ーーなのに、なぜ。

 

「どうして、その名を……?」

「悪いが、その疑問は後回しだ。来たぞ!」

 

それを問うよりも早くアサシンが四つん這いになってもこの狭い空間でまだ有り余るその巨体で、地下下水道を破壊しながら迫ってくる。

このままだと追いつかれる……!?

 

その時ーー耳朶にねっとりとした、絡みつき、粘りつき、犯すような不快感が纏わりつく。

 

《ねぇ……聞こえる?私の呪わしい(いとしい)玩具(こいびと)さん。》

 

そうして、脳に、いや、左手に伝わる声。

左手には勿論聴覚なんて無いし、脳がある訳でもないから念話(テレパシー)なんてものも有り得ない。だけど、それは確かに左手に聞こえているように感じられた。

 

《ねぇねぇ、聞こえてるなら私に返事くらいくれてやったっていいじゃない。私と君の仲でしょ?》

 

左手の歪め、捻じり、溶かしつくすような人の尊厳をその音だけで蝕むような声。

こんな声は、1人しかいない。

 

「なんの……」

《おっと、喋らなくていいわよ。気づかれると面倒だしね。》

 

つもりだ、と。言おうとするに先んじて、左手が口を塞ぐ。

 

《君はただ左手に意識を向けて考えるだけでいい、君の左手は既に私のもので、私なんだしね。》

『てめ……やっぱりあの時左手に何かを……!』

《人が悪いわ、私は侵食させて貰っただけよ。あの時塗りつぶすって言ったんだからその通りにしただけよ。》

『……チッ。で、なんだ。悪いが俺は逃げるのに忙しくて喋ってる余裕なんてないんだが。』

《あら、つれないわねぇ。淑女(レディ)を冷たくあしらうようじゃなってないわよ?》

『うるせぇよ毒女(ババァ)。』

《……まぁ、いいわ。それより私の話を打ち切っちゃっていいの?このままじゃ合体したアサシンに殺されちゃうんじゃなくって?》

『んな……お前やっぱり……!?』

《待った待った待った待った、私とアサシンに繋がりはないわ。寧ろ繋がりがあるのは私と貴方なんだし。》

『なに……?』

《その左手は君の左手である前に既に私の一部分、だから左手が視たもの聴いたもの触れたもの、全てを私が感じられる。》

 

……………!!!

それじゃあ、今までの地下での全ても。

 

《ええ、とっても視てて楽しかったわよ、ありがとう。》

 

怒りのままに怒鳴り散らしたくなる心を必死に抑えつけてレアに問う。

 

『それで、なんのようだ。ただ単純に嫌がらせってんなら……』

《違うわよ、なんかピンチっぽいからサービスしてあげようかなって。ただのお節介よ、余計だったかしら?》

 

……確かに、こいつのヤバさは本物だ。頼れば状況を打開出来る可能性があるかもしれない。それがサーヴァント相手でも、少なくともきっかけを作れるのは間違いないだろう。

 

ーーだけど、それでいいのか?こいつはまた俺の一部を対価に要求してくるに違いない……つまり、セイバーにこれ以上心労を負わせていいのか?俺はそれでもロリコンと自分に誇りを持って言えるのか?

 

ーーーでも。

ここで親友とロリと、両方を失ったらそれこそ誇りなんてあったもんじゃない。ロリを悲しませるのはロリコン失格だが、目の前で奪われるロリや親友の命に対して打開策があるのに黙ってるなんてそれこそ、ロリコン以前の問題だ。人として誇れない。

 

せめて、せめて。この2人をここで守れるくらいには。

 

『……その、お節介とやらを呑んでやるよ。何を今度はお前に引き渡せばいい、右手?足か?それとも俺の全てとでも言うつもりか?』

《あら、別に今回はそんなもの取る気無いわよ?だからサービスって言ったじゃない、だいたい魔術師でもない相手と真面目に等価交換なんて言ったりしないわよ。》

 

どの口でそんなこと言ってんだこいつ……!?

思わずまたキレそうになるが再び意志で抑えこむ。ここで心変わりされたらたまったもんじゃない。

 

《ーーそれに、君の意志で捧げてもらったってちっとも楽しくない。屈服させた上で私のものにしないと、ね。》

 

そう言った時、ニタリ、と左手の奥で奴が可憐(じゃあく)嘲嗤(わら)ったように見えた。

それは、俺に取り返しのつかない選択をしてしまったのではという恐怖と。

同時に、俺にこれでまだ命を繋げるという安堵を与え。

そして左手に、燻るような心の痛みを感じた。

 

……ような気がした。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

《じゃあタイミングは君に任せるけれど。私の名前を、声を出して読んでね。その時は、殺意(あい)を込めて♪》

『勝手に言ってろ……わかったよ、次の次の角を曲がったらだ、用意しとけよ毒ババァ!』

 

そうして、意識を内から外へと戻す。

 

「あ、漸くトリップから元に戻ったか。考え過ぎる余り意識を埋没させるのはお前の悪い癖だぞ、戈咒。」

「そう、だな。すまん錬土。だけど、いい案が思いついた。」

『本当か!?』

 

セイバーが歓喜を滲ませた声で咄嗟に問いかける。

それに心が痛まないといえば嘘になるが、今はそれよりも優先するべきことがある。

だから、その気持ちは(はら)の底へと呑み込んで。

 

「ああ、取っておきのだ。けど、足止めにしかならないその間に身を隠してからその後のことは考えよう。」

『うむ、うむ、そうじゃな。三人寄れば文殊の知恵とも言う、落ち着いて考えればきっと活路も開けよう!』

 

そして、一つ目の角を曲がる。

 

「よし、錬土、次の角を曲がったら下ろすから全力で走ってくれ。俺も足止めが済んだらすぐ追いつく。」

「っし、了解!」

「セイバーは……その時に話す。」

『うむ、信じるぞ。ますたぁよ!』

 

そうして、次の角を曲がるーーと、同時に錬土を投げるように着地させ、その勢いで後ろへと振り向く。

 

『よし、それで策というのは?ますたぁ。』

「策は……これだ。」

 

セイバーにまた心配をかけてしまうという罪悪感が心を支配してく中、口ははっきりとその名を紡ぐ。

 

「レア……てめぇの出番だ、頼む!」

 

《えぇ、勿論よ。私は約束を守るいい女なのよ?》

 

左手から、今度は俺だけでなくセイバーにも、それどころか目の前に迫るアサシンにさえも聞こえるようなハッキリとした、それでいた更に禍々しさを増したその嫌な、聴覚を侵蝕し尽くすようなその声は告げる。

 

そうして、同時に鬱血したようなどす黒い左手が更に暗く、壊死したように変化し、畝り、流動し、膨らんでいく。

 

『おい、ますたぁ!お主、何をする気……!』

 

《男の子の覚悟に泥を塗ろうなんて無粋よぉ、セイバーちゃん♪》

 

そう、セイバーの声を遮るようにレアの声が再び渡ると、膨れ上がった左手は遂に弾け、毒々しい色の液体が俺たちの目の前から、アサシンの足下までの間に降り注ぐ。

そして、いつの間にか元に戻った俺の左手に目をやっている隙に、変化は起きはじめた。

 

「んな……!?」

 

地盤が溶け、歪み、朽ち、沼の様にアサシンの巨体を沈めていく。

足掻こうとしてもその小回りの効かない巨体ゆえか、更に更にと沈んでいく。

 

「これなら……!」

《さ、早く逃げてなさいな。あと5分くらいしか持たないし、近づいたらあなた達も呑み込まれるわよ、これ。》

 

それだか言うと、満足したかのように不快な声は聞こえなくなる。

 

『……話は後じゃ。奴の言が真実にせよ虚偽にせよ、今が逃げるチャンスなのには変わらない。いくぞ、ますたぁ。』

「……あぁ。」

 

セイバーのその言葉で、再び逃走を開始する。

そして、道中で再び錬土を抱えあげ、隠れ場所になりそうなところを探す。

 

「おい、あれ……なんだ?」

 

すると、錬土がなにかみつけたのか俺に声を掛けらそっちを見るとこの地下下水道ではまず見ない白い蛍光灯の灯りが漏れているのが目に入る。

 

「蛍光灯の光……だよな?」

「あるもんか、普通?」

「取り敢えず、行ってみる価値はあるだろ。六道の隠れ家かもしれねぇ。だとすれば一息つくことも可能だし、あの狭さなら奴に気付かれずに侵入されるってことはまずない。取り敢えずそこで情報共有からだ。」

「そうだな。」

 

錬土の弁に賛成し、光の方へと進む。

すると、そこは調理場だった。

 

「おいおい……なんだこのすげぇキッチン。」

「多分、六道が調理に使ってたんだろうぜ。」

「だよな……俺もあと一歩間違えたらそうなってたかと思うとゾッとしねぇや。だが、取り敢えず休憩に使えるのには違いない。ここで互いに話そう。」

 

椅子を三脚用意しながら錬土が言う。

 

「……そうだな。セイバー、出てきてくれ。」

 

そう言うと未だ不機嫌なままのセイバーが姿を現す。

 

「じゃあ、まずは俺達から話させてもらうか。」



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5日目/妖刀・村正

二話目です、頑張りました


そうして、俺は聖杯戦争のこと、セイバーのこと、そして錬土が攫われたと思ってここに来たことを話した。

 

「なるほど……な。お前も大概不幸体質だ。」

「うるせぇ、ここにいる次点で似たようなお前も似たようなもんだろうが。というか拐われてる分ヒロイン体質まで持ってるだろお前。」

「ハッ、違いねぇ……にしても、よく地下にいるってことまでわかったな。誰かの同盟相手の使い魔とかにでも聞いたのか?」

「あぁ、まぁそんなところだ。」

 

そう、言葉を濁して誤魔化すと今まで基本的には静観していたセイバーが念話で口を挟む。

 

『なぜレアの事を言わんのじゃ、ますたぁ。此奴自身に注意喚起しておくだけでもまだお主が背負う気苦労は減るじゃろうて。』

 

そう問いかけてくるセイバーに対し、俺は不安を告げる。

 

『言えないんだよ。』

『なに……?』

『この、左手。さっき使う前にアイツからの声が俺の中にとんできた。』

『なんじゃと……!?』

『そしてその時言ったんだよ、この左手は私自身だと。つまり、全て筒抜けなんだ。この会話の全てが。』

『つまり……あやつは。それを伝えることで言外にお主に余計な事は喋るな、と脅しをかけたという訳か……』

『あぁ、多分な。だからサービスとか言って特に対価を要求することなく足止めをしてくれたんだろうさ。勿論、俺に死なれちゃ困るとかつまらんとかも思ってそうだがな。』

『チッ……ほんにイラつく奴じゃのう。それに、ますたぁもますたぁじゃ。あのような事をするならせめて、儂に一言言わんか。』

『ごめん、つい……』

『つい、では無かろう。だいたいお主のサーヴァントは儂なのじゃ。まず頼るべきは儂が筋じゃろう!儂だって思いつきさえすればあんな感じで足下を崩しての足止めくらい出来たわ!』

『え、あ、そうなのか……』

『とにかく!お主は儂のますたぁなのじゃ。だから、頼る時はまず儂を頼れ。いいな。』

 

そう、念話で言い含めると同時にこちらを上目遣いで見上げて確認するように見つめてくる。

 

『……あぁ。』

 

ちくしょう、こんなの卑怯だって。ちょっと何このサーヴァント可愛すぎないか。もうダメ、ヤバい。

 

「おい、見つめ合ってるとこ悪いがそこのロリコンとロリ。」

「み、み、み、見つめ合ってなんかおらんわ阿呆ッ!」

「そそそうだぞ俺は可愛いなーとか俺のサーヴァント可愛すぎないかとか考えてただけだからなにもやましいことしてねぇぞ!」

「お前この状況でもロリコンをブレさせねぇってホントすげぇな……まぁいい。次、俺の話言っていいか?俺がサーヴァントについて知ってた理由とかも聞きたいんだろ?」

「あ、あぁ。」

 

そう言うと、錬土は深呼吸を、深く、深くして話し始めた。

 

「むかーし、むかし。具体的には16年7ヶ月程前。」

「語り口の割に随最近だな!?というか嫌に具体的だなおい!?」

「お、ナイスツッコミ。その調子で頼むぜ。」

「いやお前は何を語り出すつもりなんだ!?」

 

しかしその全霊の問いかけはスルーされ、錬土は再び続きを語り始める。

 

「この街に繰空(くりから) 錬土という未来のジュノンボーイ間違いなしなハンサムが産まれました。」

「お前それ自分で言ってて恥ずかしくねぇの!?というかハンサムって半分死語じゃね!?」

「そのハンサムボーイは見た目だけとっても非凡でしたが、非凡なところがまだありました。それは、生まれが魔術師の家だったのです。」

 

思わず息を呑む。やはり、錬土は魔術師の……!

 

「そしてそこでそのハンサムボーイはすくすくと成長し、様々な知識を蓄えていきます。しかし、彼が家を継ぐことはありません。彼には魔術師に必要な魔術回路が無いからです。そして、彼は11歳の頃にそんな家が嫌になって飛び出しました。そして今は母親の旧姓を名乗っているのでした、チャンチャン。」

 

色々気になることはあるが、語らないということは語りたくないということだろう。それに、今この場に関係があればコイツなら言うはずだしそこを問い詰めるのは気が引ける。

だから、俺はこう結論付けるように言った。

 

「……つまり、お前が色々知ってるのは生まれが魔術師の家系だからってことか。」

「そーそー、そういうことだ。本を読むのは元々好きだからな、文献とかは読んでて面白いし読み漁ってたのよ。んで、聖杯戦争ってのは結構向こうじゃメジャーな儀式な訳だ。厳密には亜種聖杯戦争ってのの方なんだがな。」

「亜種……?」

「モンハンは関係ねーぞ。」

「流石にそれは分かるわ、そこじゃねーよ。ただ、亜種ってなら本来の聖杯戦争が別にあるのか、と思ってな。」

 

その疑問に関しては錬土は無言で首肯して、話し始める。

 

「そ、まさにその通り。聖杯戦争ってのは本来冬木って町で確か200年前だったか?に始まった儀式らしくてさ、7騎のサーヴァントを使って、根源に至るのが目的だったらしいんだ。けど、決着がつかなくて数十年周期で持ち越しってなってたんだが、70年くらい前の第三次聖杯戦争でナチスが介入して大聖杯をかっぱらってったんだと。」

「そんなことがあったのか……」

「で、それ自体はつい最近まで行方不明になってたらしいんだが、その技術はどこからが流出しててみんながみんな聖杯を作ろうと躍起になったんだ。そうして生まれたのが出来損ないの亜種聖杯、呼び出せるのはどんなに出来が良くても5騎が限度の聖杯戦争だ。で、欧州だとそれが盛んに行われるってその本には書かれてたな。」

 

ナチスやら200年前やらスケールがデカくて正直ついていけないが、取り敢えずとんでもない儀式だったというのは改めて理解出来た。しかし、同時に今の説明で疑問も生まれる。

 

「5騎ってのは、本当なのか?セイバーは7騎って言ってたんだけども。」

「冬木のモノホンの聖杯なら7騎だが、それ以外ならまず有り得ないと思うな。だが……つい10年くらい前に聖杯大戦ってデカい戦いがあったらしくてだな、俺も殆ど情報は知らないんだが親父の話によるとなんでも冬木の大聖杯が出てたとか何とかって聞いたから、その時に誰かがデータを取ってたとかなら有りうるかもしれないな。といっても仮説に仮説を重ねた推論なんてまるで意味が無いが。」

 

そう言うと錬土は再び一呼吸つく。

 

「取り敢えず、俺の話はこんなもんだ。納得いったか?」

「あぁ、腑に落ちないところはあるが、そこはお前に聞いて分かるところでも無さそうだしな。」

「ならいい、なら次はあのアサシンにどうやって勝つか、だ。」

「……あぁ。取り敢えず、真名が分かればまだ何とかなるんじゃないかと思うんだが。」

「いや、どうにもならん気もするぜ?あいつらの真名に弱点に繋がるようなものは無さそうだったからな。」

「そうか……ならほかの手段を……」

 

え?

 

「いやいやいやいやちょっと待てお主、なんでアサシンの真名が分かっとるんじゃ!?」

「いや、俺も100%の確証は無いけどさ。ただ捕えられてた時にアイツらのことを、六道の奴が客って言ってたからアイツらも食人趣味のある英霊かなーと。で、家族とか言ってたから後はさっきここに逃げてきてからグーグル先生に《食人 家族》のワードで調べてもらったら普通にそれっぽいの出てきたからさ。人数もあってるし多分間違いないと思うぜ。」

「そ、そんな方法で真名が……」

「なるほどな、確かに出てきたわ。」

 

言った通りに検索をかけると確かにその名前が出てくる。その名はーー

 

「ソニー・ビーン、か……」

 

なになに……十五世紀から十六世紀のスコットランドにいたとされる人物。一族を率いて多数の人間を殺害、その肉を食したとして処刑されたという伝説で知られる、か。

 

「確かに、これじゃなんの打開策にもならねぇな……しかも合体して巨大化とかそんな逸話これっぽっちもねぇ。だいたい合体して巨大化ってなんだよスライムかよ。」

「それは俺も思った。」

「だよな!」

「儂は話についていけんが、取り敢えずお主らが至極どうでもいい話をしとるのだけは伝わってくるぞ………」

 

ジト目を向けられた錬土は気まずくなったのか、咳払いをすると話を戻す。

 

「で、だ。そこのロリセイバー、お前……まだ真名思い出せないんだっけか。」

「う、うむ……すまんが、の。」

「でも宝具だけ使えたりとか、そういう都合いいことだったりはしない?」

「じゃったら苦労せんわ……擬似解放が出来ておる以上、あと少しだとは思うのじゃがな……」

「それに関しては、俺に考えがある。一つ、手を打ちたい。」

「わかった、ならお前に任せるぜ、戈咒。」

「あぁ、恩に着る。」

「で、次の案だが………」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「よし、じゃあそういう事で行くか!」

 

錬土が勢いよく立ち上がったその時、地響きがキッチンを揺らす。

 

「何が、そういうことだ?」

 

俺達が入ってきた狭い入口を無理やりこじ開けるようにして、アサシンが顔を突っ込んできていた。

 

「うお、気づかれたのかよ!よし、後は任せたぞ戈咒とセイバーちゃん!」

 

錬土は気づかれたことに対して反応するも、これはこれで計画通りだ。

錬土はそのまま扉を開け、本来のキッチンの出入口から出てこの場を離れる。

ここは、俺たちの番だ。

 

「さぁ、行くぞセイバー!!」

「うむ!!」

 

セイバーを再び、腰に備えるような感覚。

 

そして、抜き放つと同時に穿つ突きは覗き込んだアサシンの顔面を抉りながら押し返した。

 

「よっ……と。綺麗に決まったけど、どうせまた再生するんだよなぁ、こいつ。」

『やはり、火力不足かのう。』

「だろう、な。だが、取り敢えずは牽制だ。1発言っとくぞ、セイバー。」

 

「宝具・限定解放ーー」

 

魔力を呪いの塊として、これぞ妖刀の本分とばかり纏わせ巨大な斬馬刀のようなサイズの刀身へと変える。

そして、それを袈裟懸けに振り下ろす!!

 

「ーーー呪刀・魍魎殺し!!」

 

それは、(どく)をもって異形(どく)を征す一太刀。

その全霊を使い、放たれるセイバーのとっておき。

その一太刀はアサシンの身体に今までとは違う、確実な一撃を傷痕として残す。

 

「……これで、終わりか?」

 

だが、それだけだ。その一太刀であっても霊核を断ち切るには至りはしない。

 

「やっぱ火力不足か……!」

 

そう言いながら距離を取りつつ、戈咒は唇を噛み締める。

本当はこんな、問い詰めるような形にはしたくはなかった。だが、背に腹は変えられないし俺が代わりになんとかできる訳でもない。

覚悟を決め、セイバーへと語りかける。

 

『なぁ、セイバー。』

『なんじゃ、ますたぁよ。さっき言っておった考えというやつか?悪いが儂もうお主の考えがロクなものではないと疑っとるからのう、まずは話してからにするのじゃぞ。儂はお主に無茶ばかりされるのは御免じゃからの……』

『……ごめん、けど、そうじゃない。寧ろ、セイバーに無理をしてもらうかも。』

『なに……?』

 

下がりつつ詰め寄ってくるアサシンの攻撃を時に受け、時に躱し、時に後ろに回り込みと、決定的な一撃は避けつつ呼吸を整え、セイバーへと問いかける。

 

『なぁ、セイバー。お前、本当は真名に心当たりがあるんだろ?』

『……!?ば、馬鹿なことを言っとる場合か、ますたぁよ。時と場合を考えてみぃ、それならそうと言っておる筈じゃろうが。』

『そう、か……それならそれでいい。なぁ……マスターってサーヴァントの夢を見たりとか、しないか?』

『ーーー!!』

 

静かな、だけど、確かな動揺が伝わってくる。

皮肉にも、これまで共に戦ってきたからこそ、その動揺はどうしようもなくありありと分かってしまう。

 

『数日前……明らかに、俺のものじゃない夢を見たんだ。妖刀の……夢だ。出てくる名前に覚えがあったから調べてみたら、とある歌舞伎の一幕にもなってた話だった。だから、お前の真名もわかったんだ。お前の真名は……』

 

「やめてッッッーー!!!」

 

そう、全力でそれを否定するように、その答えは認めたくないというように、その声は俺の心だけでなく、音となってまで響き渡る。

 

「やめろ、やめるのじゃ、ますたぁよ。それ以上言ってはならぬ、ならぬ。儂は消えたくない、消えたくないのじゃ。今ある己を…この(自己)を失いたくないのじゃ……!!」

『やっぱり……セイバーも勘づいてたんだね。いや……もしかしてセイバーもあの夢を……』

『そうじゃ、儂もあの夢を。本来サーヴァントは眠りにつくことは無いしあの時もそうであったはずなのに、儂の意識はいきなり断絶し、あの夢を見てお主と当時に目が覚めていた。』

『あの時に……』

 

だから、保健室から出るまでセイバーの姿が見当たらなかったのか……

 

『じゃが、儂にはあんな記憶に実感も何もかもがない。儂の記憶の筈なのに、どうしてなのじゃ!?じゃから、怖いのじゃ。あの記憶は、儂のものでは無い。ならばこの霊基はなんじゃ?聖杯のイレギュラーから生まれた仮初の霊基か?真名がハッキリすると同時にバラバラになって消えてしまう存在しない意識か!?いや、いやじゃ、儂は確かに此処に在る。肉の身体すら持たない半端であろうと、存在しておる!!なら消えたくなど、喪いたくなどないのじゃ!!そんなならば真名など要らぬ、儂は、無銘の妖刀でいい。』

『セイバー……』

 

その語りは悲壮に満ち、絶望に溢れ。

けれど、俺はこう言うしかない。彼女は、彼女こそが真のその霊基の持ち主で、存在そのものだと。真名の判明なんかで揺らぐ様な、そんなヤワな存在ではないと、俺が証言しなくて誰がそれをすると言うんだーーー!!!

 

『聞いてくれ、セイバー。』

『ます……たぁ?』

『お前は……君は。仮初なんかじゃない。確かに此処に在る存在だ。そして、それでいて。確かに君は無銘なんかじゃなくて。(なまえ)を持った、俺のサーヴァントだ。真名が、記憶がどうした!俺は確かに此処に在る君を知っている!!君はそんな真名の存在で揺らぐ不確かな存在じゃない!!寧ろ、逆に君こそがその真名を名乗るに相応しい存在なんだ!!』

 

言い切った。言い切ってしまった。

けど、俺はそう信じている。

だから、呆気に取られたような、セイバーのポカンとした顔が目に浮かぶようだ。

 

『な……なぜ、そこまで信じられるのじゃ。儂はサーヴァントとしても不完全な、お主がいなければ戦えない存在だというのに。』

『だからこそ、だ。常に俺は君と共に戦ってきた。だから、君を一番近くに感じていた。だからこそ分かるんだ。それに……』

『それに……?』

 

 

『ロリコンが、ロリを信じないでどうするんだよ!!!』

 

 

『………はぁ…………ほんっっっに、阿呆じゃのう、お主は。』

『え、そこまで深く溜息つかれるほどに?』

『あぁ、底知れぬ阿呆じゃとも。けれど、その阿呆の言を信じてみとうなったわ。それに、ますたぁにここまで言わせたのじゃ。儂がますたぁを信じねば、妖刀(サーヴァント)が廃るというものじゃろうて。』

『……なら!』

 

『あぁ、今こそ認めよう。我が諱は籠釣瓶。そして我が真名……いや、真銘こそは、江戸に仇なす刀の一振り。妖刀・村正であるとーーー!!』

 

 

その、瞬間。確かに、彼女という存在が認められたの如く。腰に帯びた彼女自身(ようとう)にも、熱が伝わってくるような気がする。

 

『さぁ……ゆくぞ、ますたぁ!!』

「あぁ!!」

 

「何をブツブツと、先程から受けたり流したりと小手先ばかりでいい加減邪魔くさい。我ら家族全員の力を込めた一撃で葬り去って、その肉を骨を、欠片と遺さず喰ろうてやろう!!」

 

アサシンが天井を破壊しながら立ち上がり、腰だめ力を溜めながらこちらを見据える。

 

「望むところだ……セイバーの、俺たちの本気を見せてやるよ!!」

 

腰だめに構えたその妖刀(かのじょ)から伝わる力が更に増してくるのが分かる。

今なら、今の俺たちならいけるーー!!

 

「真銘解放ーーー妖刀……」

 

「そのまま死ねぇぇぇえぇいいいい!!!」

 

「村正ァァァァァァァ!!!!!」

 

 

振り下ろされる地へと迫る超質量の拳……いや、それは振り下ろされるより早く、地に着いた。

 

抜き放った一太刀が、霊核ごとその身を斬りおとすことによって。

 

「ーー斬られて死ね、キチガイ野郎。」




やっとサーヴァント1騎脱落した……なげーよホセ

にしても今回はかなり頑張ったと思います(意訳:感想ほしいれす)

……サボらずに続きも書き上げたい
どうでもいいですけどモンハン3Gってめちゃくちゃ楽しいですよね!!(だからサボるな)


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幕間/もう一つのアサシン戦

久々に筆が進んだので今回も2話更新です(なお主人公の出番なし)


キッチンから1人戈咒達に背を向けて走り出した錬土は、いつしか目的の場所、その目前へと近づく。そして、そこに至るまでにアサシンを1人も見かけなかったことを考えながら、ポツリと呟く。

 

「にしても……見張り一ついないとはな……俺なら護身用に数体は合体させずに残しとくところだ。」

 

しかしそうしなかったところを見るに余程焦っていたのだろうか。だとすれば流れはこっちに向いていると言える。

 

そうして、そっと袋小路を覗き込むと、そこには確かに座り込んで目を瞑る六道の姿が確かにあった。

 

「よし……後は気付かれずに背後に回りたい所だが……」

 

そうして呼吸を整え、遠くから伝わる戈咒達の戦闘音に紛れさせる事で残り10メートルというところまで近づく。

 

あとは……一気に駆け寄って決める!

 

そうして走り出した瞬間膝に鈍い痛みが走る。

礫だ。投げつけられた、細かな瓦礫。

 

しまっっ……!!気づかれて!!

 

「……君1人、ですか。なるほど、セイバー達は陽動に回し、私を倒しに来ましたか。」

「くそっ……!」

 

もうこうなったら無理やり距離を詰めるしかない、呼ばれるより前に何とか行動を……!

そう考えて走る。残り5メートル、このまま行ける……!!

 

「君にはもう1度人質になってもらいましょう…!」

「がっ!」

 

そして、手が届くといったギリギリで、どこにまだ持っていたのか、小型のナイフで伸ばした手を切りつけられる。

 

「アサシンはもう少しでセイバーを倒せるというところ、幸い魔術師でもない君なら1人で抑え込めないこともない。大人しく捕まってもらおうか……!」

 

こちらにとっての最悪、アサシンを呼び出されることは無かったが、状況としては依然不利なままだ。だが、1VS1なら此方としても何とか出来る余地はある。俺とてそれなりに喧嘩慣れ自体はしているのだ、アイツが追い込まれていると言うならば、ここで俺が踏ん張らなくてどうする……!

 

「うおおおおおおおお!!!!」

 

そう、裂帛の気合と共に殴りかかる。そして、奴がナイフで再び切りつけようとしたタイミングで腰から抜いた()()を突きつける。

思わず半歩程あとずさりをしたのか、奴の足が水溜まりに突っ込んだ水音を起こす。

 

「……それは、私のっ!!」

「どうせ攫ってきた警察か何かから奪ったもんだろ。偉そうに吼えるなよ。」

 

拳銃を向ければ人は嫌でもそちらに注視せざるを得なくなる。だから、このまま引き付けて一気に……!?

 

その瞬間、目に何か液体が飛んできたのを受け、咄嗟に目を閉じてしまう。

 

「っ……泥水か!?」

 

さっきのあとずさりは、これが狙いか……!?

 

そして振り抜かれるナイフと共に拳銃を取り落とす。

飛んだ先は、六道の後ろ側。

つまり、距離としては圧倒的に俺の方が遠い。

 

ーーだが、()()()()()

 

「私の勝ち……だ!」

 

俺に背を向けて拳銃を拾い上げた隙をつき、背後から腕を回し、首を一気に締め上げるッッ!!!

 

「が、かハッ……!!」

 

六道は必死にもがき、俺もそのまま倒れ込むが決して腕だけは緩めないーー!

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「で、次の案だが……そっちの策も今公表しないってことは成功率100%って言えるほどではないだろ?勿論お前の心構えの話じゃなくて客観的な成功率の話だ。」

「あ、あぁ……それは、そうだな。」

「だから……保険とひての手段を、いや保険というよりはもう一つの策、というべきかな。」

「もう一つの策じゃと……?」

 

セイバーちゃんが怪訝な顔で俺を見てくる。

 

「なに、簡単だ。お前らが戦っている間に、俺がマスターを落とす。」

「……はぁ!?無茶言うなよ、また令呪でアサシンを呼ばれて殺されるだけだ!」

「ますたぁの言の通りじゃな、無謀過ぎて突っ込む気も起きんわ。」

 

驚愕と呆然、それぞれの形で俺の意見に対し否定的な意志を向けてくる。

 

「それに、まず六道の奴が何処にいるかなんてまるで分からないだろうが。」

 

戈咒の問いに対し、待ってましたとばかりに俺は地図を見せる。

 

「これは……まさか、地図か?」

「お、セイバーちゃん正解。アイツらが用意したんだろうが、このキッチンの奥にあったんだよな。」

「で……どうなるってんだよ。アイツがどこにいたかなんて覚えてないぞ、それもさっきの水流でこれだけあちこちがボロボロになりかかってるってのに。」

「ロリが絡んでねー時のお前の記憶力になんて期待してねーよ。だいたいそんな事しなくたって何回、どっちに、どれ位の距離で曲がったかさえ理解してれば逆算して出す事は容易いだろ。流石の俺も全力疾走しながらならキツかったろうが、お前に運んでもらったおかげで数えるのに集中出来たからそういう意味でもホント助かったぜ。」

「と、いうことはお主、奴の場所が……」

「あぁ、アサシン達が全員合体した以上、不用意にあの場を動きたいとは思わないはずだ。だから、そこをつく。」

 

そう言葉を切ると、地図の上に指先を這わせ、目的の為の道順を描く。

 

「こうすれば、相手のいたとこまでは恐らくアサシンと鉢合わせずにいけるはずだ。」

「なるほど……じゃが、それであっても令呪による転移はどうするのじゃ?」

「そこは簡単だ、背後から近づいて絞め落とす。」

「「………は?」」

「なに、息ができなくなれば人は必然的に呼吸を取り戻そうと逃げ出そうと必死になるだろ?令呪に意識なんか向けてられないはずだ。それに万一使おうとしたところで声を出せなければ、魔術師でもない人間に令呪での転移がマトモに行えるとは思えねぇしな。」

「ふむ……なるほど。そこまで考えた上でなら、儂は賛成しても良いがな。そもそも……ますたぁの策がどこまで当てに出来るものやら。」

 

そう言ってセイバーちゃんは溜息をつきながら戈咒を見やる。

 

「いや、ちょっと待て。あいつは拳銃を持ってるんだぞ?もし絞め落とし切る前に撃たれたら……!」

「………あぁ、これのことか。」

 

そう言ってふところから拳銃を机の上にゴトリ、と置く。

 

「あの時、水流で流されてもがいてた時にたまたま掴み取ってな。いざと言う時の為にそのまま懐にしまってからお前にしがみついてたんだよ。」

「……抜け目のないやつ。で、いざという時はそいつで?」

「いや、残弾は撃ち尽くしてある。あったところで使いこなせねぇし、ブラフ用にしかならねぇなら奪われた時の事を考えるとな。」

「なるほど……まぁ、それならお前を信じるさ。もしもの時は、頼むぞ?」

「安心しろ、もしもとか関係なく俺が終わらせてやる。」

「言ってろ、先に俺とセイバーが倒してやるからな。」

 

そう、どちらからともなく笑みを交わし合い、立ち上がる。

 

「よし、じゃあそういう事で行くか!」

 

そして立ち上がったその時、地響きがキッチンを揺らす。

 

「何が、そういうことだ?」

 

俺達が入ってきた狭い入口に首をねじ込むようにして、アサシンが顔を突っ込んできていた。

 

「うお、気づかれたのかよ!よし、後は任せたぞ戈咒とセイバーちゃん!」

「あぁ、行くぞセイバー!!」

「うむ!!」

 

そうして2人の声に背を向け、俺は走り出した。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そうして、もがきながらカチカチと虚しく音を立てるだけの引鉄を引く六道に対し、タネ明かしをする。

 

「なんで俺がさっさと撃たなかったと思ったんだ?脅しだけのつもりだったからとでも思ったか……違うね。俺は最初からこの状態に持ってく為に用意したのさ。だから、このまま絞め落とすッッーー!!」

 

六道は口から呼気にならないような息を漏らし蠢くが、緩めない、アイツのためーー!!?

 

その時、締め上げていた右腕に先程とは比べ物にならないほどの痛みが走る。

肩越しに

見れば、腕には深々と……それこそ骨まで達するかのごとくナイフが刺さっていた。

 

そして、その痛みは必然的に張っていた意識に緩みをもたらし。

必然的に締め上げていた右腕に緩みをもたらし。

 

一呼吸の猶予を与えてしまうーー!!

 

「来い、アサ……!!」

「しまっ……!!」

 

言い切る前に再び締め上げるものの、六道の左肩に残された2画の令呪は赤く輝き出す。

 

「くそっっ……!!」

 

そして、赤く輝いた令呪は。

完全に、()()した。

 

「ーーーーー!?」

 

腕の中の六道が驚愕するのが伝わる。

そうか……アイツら、やりやがったーー!!

 

そうして、諦めたのか。もがくのをそれと共に止めた六道が意識を失うと同時に腕を解き、ポケットから取り出した紐で手足を縛り上げる。

 

そして、もう一息つくと。

 

「……やった。生き延びたぞッッッーーー!!」

 

そう、心からの歓喜の声をあげた。



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幕間/ライダーVSランサー

一方、少し時間は戻り。

地下下水道でも軒並み広い、ライダーの起こした大波によって無理やり作られた空間では2騎のサーヴァントがぶつかり合っていた。

 

「先手必勝よ、ランサー!一気に追い詰めて!」

「了解した、サキ!!」

 

ランサーの持つ敏捷値はAランク。この聖杯戦争でもトップクラスのその速度で懐へと踏み込み、突き入れようとする。

 

「っと、そう上手くいくかね!!」

 

然しそれを相手にするライダーは文字通り格の違う存在。その魔術は権能の目前に至るレベルであり、間欠泉の如くに噴きつける水は刃のように薄く、ランサーを狙い打つ。更に外れた水は天井を削り、既に崩壊しかかっていた地下下水道の天井を打ち崩した。

 

崩落する瓦礫の中、双方躱しつつランサーが攻め、ライダーが迎撃し、という図を描き続ける。

そして、幾度目かの被弾。

 

「グハッ……!」

「ランサー!?」

「いや、ダメージは大したことはない。しかし、厄介だなアレは。」

 

ライダーの反撃に攻めきれなさを思うか、ランサーは背後へと跳躍し間合いを取り直す。

その頃にはが天井は崩落しきり、一部とはいえ夕焼けの茜空が見える程に穴が空いていた。

 

「なかなかいい眺めにしてくれたじゃないか、ライダーよ。」

「ふん、皮肉のつもりかランサー。」

「いいや。」

 

そしてその合間にイリマがライダーへと声を掛ける。

 

「先程の崩落の間も、ランサーの攻撃を触れることなく反撃する。流石は私のサーヴァントと言うべきかしらね、ライダー。」

「ふん、偉そうに構えてるが今のは何一つお前さんの功績じゃねえだろうよ。俺が1人で判断して戦っているだけ、俺の実力で俺の功績だ。」

「……!わ、分かってるわよ、それくらい!!私だってあのくらい……ライダー、今の()()でそのまま攻め続けなさい!!」

「はいはい。」

 

そうしてライダーはその場から動かずに指を弾くと、それと同時に地面に染み出た水が鞭のような、蛇のように、畝り襲い来る。

 

「……ランサー!槍で薙ぎ払ってーー!」

「なるほど……了解した、サキ。」

「無駄よ……そんな槍で薙いだくらいじゃ止められーーー!?」

 

驚きからか、イリマの声が途切れる。

しかしそれもむべなるかな。ライダーの魔術で操られた水に槍の穂先が触れた瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

破魔神杖・改(ガンバンテイン・スプーヨート)……どうだ、俺の槍は?」

 

その槍は、あらゆる魔を祓い、寄せ付けぬ神の一本。穂先に触れたものに掛かっていた魔術は全て解かれ、魔術が掛けられる以前へと逆転する魔術を否定する一撃。

それは権能一歩手前の魔術であっても例外なくかき消し、無効化する。

 

「ほう……やるな、ランサー。」

「貴方が舐め過ぎなのよ、ライダー。私のサーヴァントが弱いわけないじゃない。」

「おいおい、持ち上げるのは程々にしてくれ、サキ。」

 

軽口をたたきながらランサーと鎖姫は意気を高める。

一方、自身の指示では追い詰めるどころかダメージを与えることすら出来なかったイリマは怒りのを顕にしながらライダーに更なる指示を下す。

 

「ええい!魔術が駄目なら物理攻撃よ、そのまま追い詰めなさい、ライダー!」

「おっ、了解だ。」

 

そうしてその距離を詰めた一撃はランサーの胴体に当たり、その身体を10メートル以上、壁へと激突するまでま吹き飛ばす。

 

「ランサー!大丈夫!?」

「大丈夫……と言いたいところだが正直かなり辛ぇ。膂力までバケモノ地味てるぞアイツ……!」

 

そしてその隙を見逃すイリマではなく、追加攻撃の指示を出す。

 

「よし……やったわ!今よライダー!間合いを取らせずにそのまま押し切って!!」

「へいへい……っとぉ!」

 

再び地を蹴り、拳を放とうと間合いを詰める。

 

「させるかっっ……‎הרחם שלי הידע שלי הבשר שלי(我が知は胎を用いて肉を持つ)ーーー‎להיוולד(生まれろ)ッ!!」

 

残り少ない魔力を振り絞り、鎖姫は詰め寄るライダーと壁に激突したままのランサーとの間の地面から即席の、それこそ30秒程で自壊してしまう程度のゴーレムを5体地面を変形することで精製し、盾とする。

 

「助かった、サキ!」

「私は……ハァ、マスターなのよ……はァ…これくらい当たり前よ!」

 

そしてそのゴーレムは盾になるかならないか程の強度しかなく、稼げた時間も本の数秒がいいところだがここはその数秒が運命を分けた。

 

「何やってるのよ、ライダー!そのまま押し切りなさいッ!」

「分かってるっての。というかお前さんも命令するだけじゃなく少しは自分で動いたらどうだ、マスター。」

「……ッッ分かってるわよっ!Ke alanuiʻekolu ke aka(我が手を握れ、三叉の虚影)ッ!!」

 

詠唱と共にイリマの魔術回路を魔力が流れ、大洋の島国に残された神秘が牙を剥く。

 

彼女の足下をから拡がった三本の影は、三叉に交錯するように、ランサーを襲う。

彼女の影はありえるが、物質界に存在しないもの。それ故に既に死者である英霊においてはある種特効ともいえる拘束力を発揮するーー!

 

「チッ……!」

「ランサー!全力で耐え……!」

「サキ!令呪はまだ切るなっ……!」

 

攻撃を耐えさせるために令呪を切ろうとする鎖姫に対してランサーは静止の声をかける。

そして、虚数の影に縛られ、未だ抜け出られないランサーを目の前にしてライダーは不遜に笑いながら問いかける。

 

「ほう、令呪無しで俺の攻撃を耐えられるかねぇ?」

「耐えてみせるさ、アイツはまたまここで敗退するような器じゃねえんだよっッ!」

「よく言った……なら、耐えてみせるがいい!!」

 

そして、轟音。

その一撃による衝撃は足を縛っていた影の拘束さら引きちぎるほどの勢いで後ろへと吹き飛ばす。

 

「が……ハッ……ここまで効くかよ。こりゃあ思った以上に厳しいな……」

「ランサー!」

 

鎖姫の悲鳴にすら近い声がランサーに投げかけられる。しかしそれを受けても態度を崩さぬまま、ランサーは彼女へと言葉を返す。

 

「すまないな、サキ。割とキツそうだ……負けるかもしれねぇな、これ。」

「何、謙遜するな……()()()()よ。俺も自壊覚悟で試練の一撃としたのだ。その黄金の腕輪の効果もあるだろうが、よく耐えた。賞賛に値する。」

「ハッ……腕輪のこと、気づかれてたのかい。まぁ、備えあれば憂いなしってな。生前からアンタみたいな神様の理不尽には慣れてるもんでね……」

「ふん、そうか……とはいえ俺も今は英霊の枠に収まるレベルに過ぎん。見ろ、今の一撃で右腕かボロボロだ。」

 

そう言うとライダーは骨が全て砕けたかの如くにふにゃふにゃの右手首から先を降ってみせる。

 

「ちょ、ちょっとライダー!誰がそこまでやれって言ったのよ!というかそこまでやるならちゃんと仕留めなさいよ!!不利になる状況を作り出してどうするのよ!!」

「知らんわ、俺はサーヴァントとして最低限はマスターであるお前の意思を尊重するといったがまだ俺はマスターとして相応しいとまでは思っていない。故に俺の意思とかち合えばそこは俺の意思を尊重させてもらう。」

「ぐ、ぐぅぅぅ……ライダー、貴方ってのは……!!いいわよ、なら好きなようにやりなさい!でも今度こそ仕留めなさい!」

「それはこの槍の英霊次第だな。だが請け負った、もう一度食らわせてやろう……!」

 

そうして再び小源(オド)からの魔力がイリマの魔術回路を通り、虚数の影を作り出す。

しかし、この聖杯戦争。二度も同じ手が通ずるほど甘い戦いではない。

 

「ランサー、跳んで!」

「了解した!」

 

鎖姫の一言によりランサーは影を躱すように飛び上がる。

だがその行動自体は子供でも思い浮かぶ程に単純。

故にそこを狙い打つかのようにライダーも跳び上がり、残った左腕を振りかぶる。

 

「さぁ、どうするっ!また耐えてみせるかッ、槍の英霊よッッ!!」

「いいや、違うね。」

‪「はぁ…はァ……העובר שלי החוט שלי הכוונה שלי‬(私の意思は意図を伝い真理を知る‬)ーーー‎לעלות(上げろ)ッッッ!!‪」‬

 

再びの鎖姫の詠唱により、天井から土塊の腕が伸び、それがランサーを弾き飛ばすように跳ね上げるーー!

そして、そこで魔力を完全に、今度こそ使い切ったのか地面へと鎖姫は倒れ伏す。

 

「なっ、もう一度即席ゴーレム……!?」

「サキ……!?いや、こうなったらここで決めるッ……ウル!!」

「後ろへと回られようが、問題ない……!!」

 

その状況に三者三様の反応を見せつつ、局面は収束へと向かう。

 

ライダーはそのまま空中で反転しながら、無理やりな体制とはいえ全力の一撃を振り放つ。

 

そしてそれを迎撃するかの如くランサーは己が槍に古代の某牛を意味するルーン、ウルを付与し、防御を捨てた最後の一撃へと込める。

 

そして、それがぶつかり合う瞬間ーー!

 

 

「令呪を持って命ずるーーランサー、ライダー、共に戦闘を停止せよッッ!!」

 

何処からか、突如放たれる令呪の縛り。

しかし、それを受ける2騎のサーヴァントの対魔力は共にAランク、令呪とはいえ1画では縛りとして機能しえない。

 

ーーだが、それでもそこに一瞬の間隙は誕生する。

そして、その間隙に入り込む存在が1騎。

 

「我が手を避ける者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない。護られよ。

ーー許しはここに、仮初の私が誓う。

"主よ、加護を与えたまえ(キリエ・プロスタシア)"ーーー!」

 

ライダーとランサー。ぶつかり合うその寸前にその間に入った彼女から双方に突き出された両手の先には、円形の魔術的な守護が形成される。

そして、2騎のぶつかり合いを中断させた。

 

「ーーはい、そこまでだバカ野郎共。白昼堂々人通りの多い道を崩落させて、さらにドンパチとかふざけんじゃねーぞ、隠蔽の手間とかかる費用なんだと思ってるんだ。というから神秘の隠匿って知ってるか?」

「ルキア……今はもう日暮れ前ですし白昼ではないのでは?」

「いや、そこツッコまなくていいから、ルトガルディス。」

「あら、そうでして。」

 

2人のやり取りを見て、既にルキアの方については存在を知っているランサーが問いかける。

 

「監督役……に、それにさっきの令呪からするとお前がルーラーか。手を組んだと、いうことか?」

「ええ……そんなところでしてよ。共に聖杯戦争の秩序を守るものとして、立場を共有した方が物事はスムーズに進みますし。」

「で……何のつもりよ、私達の家名を賭けた誇りある戦いを邪魔するなんて。」

「何のつもりィ?そりゃぁこっちのセリフだぜ、ガキ魔術師。ここの上は商店街近くの大通りだぜ?そんなとこ崩落させて、さらにその下でドンパチやり続けて……神秘の隠匿って原則すら守らねー奴が魔術師気取んなよ。」

「なっ………!」

 

熱くなってすっかりその辺りのことはイリマの意識から抜け落ちていたのか、その指摘で怒りに頬を染めながらも黙りこくってしまう。

 

「だいたい、こんな派手にぶっ壊していくら修繕にかかると思ってるんだよ……亜種聖杯戦争がこれだけ行われてる現代、聖堂教会だって金持ちじゃねーんだぞ……!」

「う……!」

「ふん……そんな人間の事情は俺にはどうでもいい。俺の戦いを中断した罪、どう償う気だ。」

「悪いが、あたしの神は1人だけでね。アンタがどう思おうと関係ないさ。だが、これ以上やろうってなら令呪で強制自害させるぜ。」

「……チッ。」

「ふん……興が削がれたわ。ランサー、貴方のマスターが……繰空 鎖姫が目覚めたら伝えておきなさい。セイバーのマスター共々今日の借りは必ず返してやるとね……!」

 

そう言うと地下下水道の奥へとイリマとライダーの主従は姿を消して去っていった。

 

「さて、ランサー。お前はどうする気だ?」

「どうするも何も、俺はサキを連れて……それから奥にいるはずのセイバーのマスターと合流してサキの兄を連れて帰るだけだな。」

「なんだ?セイバー陣営もいたのか、というかこいつの兄を連れて帰るってなんだ。ひょっとしてかなり入り込んだ事態になってんのか……?」

「あら……ルキア。噂をすれば影というやつですわ、ちょうど来たようですし、話は彼らから詳しく聞くとしましょう。」

 

そう言うとルキアとルトガルディスは向かってくる戈咒達に向かい歩を進め、ランサーはサキを抱き抱えてそちらへと向かう。

 

空には、日が沈んだ事により煌々と照り始めた膨らみかけの月が浮かんでいた。




次回、(多分)3章完結です


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5日目/一時閉幕

これで3章はやっと終わりです……長かった………!!


背後で、破壊された霊核の霧散と共にアサシンのサーヴァントととしての肉体が風に溶け、消えていく。

そうして、最後の一欠片まで。完全に霧散したのを見計らって、憑依を解く。

 

「はぁ……はぁ……つっっっかれたぁぁぁあ!!」

「儂……もじゃ……!」

 

2人して地面へとへたり込む。

 

「礼を……言おう、ますたぁよ。お主のおかげで儂は真銘を受け入れられた。あのままじゃったら、儂はお主ごとやられてたじゃろうて。」

「礼なんていいよ……セイバー。俺が信じたくて、信じたんだ。寧ろアレで俺の言っていたことが間違ってて、セイバーの人格が消えちゃったら俺は俺を許せなかった。だから、本当に良かった。」

「ふふ……全く、素直でないますたぁじゃのう……」

 

セイバーが、その言葉とともに、肩にしなだれかかってくる。慌てて声を上げそうになるが、顔を見ると疲れきったのか寝息をたてて始めていた。

 

「お疲れ様……セイバー。」

 

そうして頭を少しだけ、撫でると彼女を霊体化させて立ち上がる。

すると、ポケットのスマホに錬土からの着信が来ており、それを取る。

 

「はいはい、こっちは無事に済んだぜ、錬土。そっちの首尾は?」

『お疲れさん、こっちもちゃんと拘束したぜ。けどまぁ、少し負傷したから運べねぇし迎えに来てくれ。』

「ったく……しょうがねぇな。さっきお前が示した場所にいるんだよな?」

『ああ、そうだ。んじゃ、頼むぜ。』

「はいはい……分かりましたよっと。んじゃ、待ってろよ。」

 

そう言って通話を切ると、ポケットから先程のキッチンで見つけた地図を取り出し、歩き出す。

 

……そして。

 

「……お前。余裕こいて一人で向かってそれはだせぇぞ。」

「うるせぇな、割と痛いんだぞこれ。」

 

腕に深々とナイフの刺さった錬土にひとしきり驚いた後に淡々と呆れながら腕の傷より上を服を斬って作った即席の包帯で処置を始める。

 

「だいたい俺はお前の為にやってやったっていうのに……かつてない程の功労者だぜ?俺は。」

「はいはい……それだけ元気なら大丈夫だな、お前。」

「かー、つれないねぇ。あれ、ところでセイバーちゃんは?」

「疲れたのか、霊体化して寝てるよ。よし……と。応急処置はこんなもんだろ、ナイフは抜くと出血ひどくなりそうだから病院に行ってからにしとけ。」

「お、サンキュー。割と痛いからな、地上に出たらとっとと救急車呼びたいところだぜ。」

「そうだな……」

 

ん?何か大切なことを忘れてるような…………

 

「どうした戈咒、急に考えこんで。」

「いや……何か……あ!?」

「おい、何かあったのか!?」

「しまった……俺としたことがロリの事がすっぽり頭から抜け落ちてたなんて……鎖姫ちゃんどうなってるんだ今!?」

「え。」

「悪い錬土、急用思い出したから先上に上がって救急車呼んでてくれ。んじゃ!」

 

そう言って駆け出そうとすると後ろから錬土に片手で肩を掴まれる。

 

「だから済まんって、急がないと……!」

「おい、今……鎖姫って言ったよな。それって、()() ()()のことか……!?」

「え、ど、どうしてその名前を……え、まさか、お兄ちゃんって、ホントに……?」

「あぁ、そうだ。鎖姫は俺の妹だ。だからアイツの名前がなん今出てくるのか……いや、聖杯戦争関係に間違いないよな、なら今どういう状況になってるか教えろ!!」

「向こうでライダーと戦ってたはずだ、必ず勝つって言ってたから信じて来たんだけど……」

「この……バカ!そんなこと言ってる時のアイツはいっつも無茶するんだよ……どこだ、案内しろッ!」

 

な……なんだって。いや、自分を責めるのは後だ。今は急いで向かわないと……!

 

「分かった、ここからならアサシン達のお陰であそこまでは一本道だ。全力で飛ばすぞッッ!」

「あぁっ!」

 

そうして、ランサーとライダーが戦っていた地点にまで行くと。

 

「おいおい……地上が見えるぞ……!?」

「そんなことより鎖姫は、鎖姫はどこにいる……!!」

「た、多分向こうのほ……あれは、監督役に、サーヴァント……!?」

 

俺の一言に冷水をぶっかけられたかの如く錬土の声から狼狽が引く。

 

「あれがライダーってことか!?」

「いや、見たことないやつだ……どんだけ集まるんだよここに……!!」

「全くだ、というか戈咒、お前まだ戦えるか……?」

「正直キツい……けども、アレ監督役にと共にいるなら敵じゃないんじゃ……?」

「少しは考えろ、監督役がサーヴァント引き連れてる時点で参加者ってことだし怪しいだろ完全に……」

 

言われれば、それは確かに。

そして、近づいてくる2人の後ろから鎖姫ちゃんを背負ったランサーが歩いてくる。

 

「いや、待て錬土!ランサーと鎖姫ちゃんもいるぞ、どういうことだ……!?」

「俺にも分からねぇよそんなの。敵じゃないといいがな……」

 

そう疑心暗鬼になりかけた時、向こう側から監督役が声をかけてくる。

 

「おーい、セイバーのマスター。それにランサのマスターの兄貴か?ちょっとツラ貸しな。」

「ルキア……もう少しくらい丁寧な言葉遣いの方がよろしいのでは?」

「こちとら昨日も森まで行って疲れてんだよ仕方ないだろ。」

「いや、それ私もですよね……あ、申し遅れました私は裁定者(ルーラー)として召喚されたサーヴァント、真名をルトガルディスと申しますわ。これで、信用して頂けましたか?」

 

共にいたサーヴァントが自らのクラス名と真名を信用させる為の証とばかりに明かしてくる。

なので、小声で錬土に訊ねてみる。

 

「どうする……敵じゃないか?あの人達。」

「……多分な。あのサーヴァントが本当に裁定者(ルーラー)なら審判役のサーヴァントだからな……監督役といることに違和感もねぇ。」

 

審判役のサーヴァント、そんなのもいるのか。

 

「でも、そうってことは審判役が2人いるってだけだし心配は無さそうだな……良かった。」

「ホント……良かったぜ。なら……」

 

そう言うが否や錬土は全力で駆け出し。

 

「あ、じゃあまず話を……」

 

「鎖姫ィィィィィィィ!!!!」

 

2人をガン無視して後ろのランサー、その背にもたれ掛かる鎖姫ちゃんへと慟哭と共に全力疾走していった。

 

「……聞きたかったんだが。ちょっと落ち着くまで無理そうだな……はァ。」

「ど、ドンマイでしてよ、ルキア。」

 

なんかルーラーに慰められてる監督役の人を横目に俺も鎖姫ちゃんへと駆け寄る。というか監督役の人の名前何だったっけ……?

 

「おい、鎖姫!目を開けろ、死ぬな、死ぬんじゃない、おい鎖姫ィィ!!」

「落ちつけ、サキの兄よ。」

 

錬土がそう叫んでいるとランサーに額を指で弾かれる。

 

「ただの魔力切れによる気絶だ。サキなら1晩ほど霊脈の上で休めば元に戻る。」

「え……あ、ほ、ホントだ。息もあるし脈も有る……よかった。」

「だいたいな、錬土。ランサーが消えてない時点で死んでるってことはないだろ。」

 

とはいえ、俺も錬土が慌ててなかったら焦ってあわあわしてた気もするけども。

 

「いや、それは違うなセイバーのマスターよ。俺は単独行動スキルを持つが故に、マスターからの魔力供給無しでも短時間なら活動可能だ。現に今もそうしている……というよりこの状態のサキから魔力を貰うわけにはいかないだろうが。」

「い、言われてみればそれもそうか……」

「さて、サキの目的としての兄の救出は既に済んだ……と見ていいのか?セイバーのマスターよ。」

「あぁ……アサシンは倒した。」

「ならば、後はお前に預けるとしよう。俺は一刻も早くサキを休ませねばならんのでな。ではな!」

「え!?」

「おい!!」

 

そう言うとランサーは鎖姫ちゃんを抱えたまま天井に空いた穴から地上へと飛び上がり去っていく。そこから見える空は既に夜の星空へと切り替わっていた。

 

「あ、あの野郎……勝手に人様の妹を連れてきやがって……いや、どうせ行き先は分かってるんだ。それに今は一刻も早く休ませた方がいいのも事実……か。」

 

そう言うと錬土はこちらに向き直って声を掛ける。

 

「よし……まぁ、とりあえず帰るとするか。俺も怪我をどうにかしたいしな。」

「そうだな、帰るか。」

 

そう帰ろうとした矢先に、俺たちに声がかかる。

 

「おい、帰る前に話だけしてけよコラ。」

「「あ」」

 

……すっかり存在を忘れかけてた。

 

「監督役の事情聴取ってとこか……悪いが、見ての通り怪我人なんでまた後日ってことで……」

「ルトガルディス、頼む。」

「わかりましたわ。」

 

ルーラーはそう言うと錬土の腕の傷からナイフを引き抜き、手を翳す。

すると数秒と経たぬ間に傷が塞がった。

 

「お、おおお……」

「さ、これで話をしてもらえるよな。」

「仕方ねぇ、治療の礼だ。戈咒、お前も話せよ。」

「はいはい……分かったっての。」

 

そうして、俺たちはアサシン達についての一連の件について話した。

 

「誘拐殺人事件に、猟理人に、アサシン……マジかよ、仕事がまた増える……頭痛くなってきた。」

「る、ルキア、しっかりしてくださいまし!?」

 

頭を抱えながら横のルーラーにもたれ掛かるとルーラーが慌てながら慰める。

 

「ところで、お前らが捕縛した猟理人ってのはどこにいる?」

「どこって……あ。」

 

警察に突き出すために連れてこようとしたけど、ダッシュで来るのに邪魔だから放置してきたんだった……!」

 

「しまったな……」

「ああ、置いてきちまった……」

「そうか……まぁ、一応回収して記憶処理をした後に警察にこっちで突き出しておく。そっちで勝手にやられると面倒だからな…んじゃまぁ。聞いておきたいことはこのくらいか、お疲れさん地上まで送らせてもらうぜ。」

 

そこまで監督役……ルキアさんが言ったタイミングで、今度は錬土が口を挟む。

 

「一つ、聞かせてくれ。」

「ん?なんだ。」

「なんで、()()()()()()()()()()()()?」

「それは……参加者でもないお前さんには関係の無い話だ。それじゃあ、ルトガルディス。コイツらを地上まで運んでくれ。」

「わかりましたわ、ルキア。」

「おい、話はまだ……!」

 

そう応えるとルーラーは俺たちを抱えて穴から跳びあがり、俺達を地上へと送り届ける。

 

「それでは、私はここで。」

 

そう言うとルーラーは再び穴から地下下水道へと戻っていく。

 

「錬土……何だったんだ、さっきの。」

「いや、まぁ、とりあえずは大したことでもないだろうから大丈夫だ、それより疲れたな。とっとと家帰ろうぜ!」

「あ、あぁ…そうだな。」

 

そうして、俺たちは共に家へと向かい。

俺は、家に着くと同時に泥のように眠りについた。

 

それほどまでに疲れていたから、俺は気づけなかった。

セイバーが、アサシンを倒した後から霊体化したまま、反応のないことにーー




次は以前要望のあった3章終了時点でのサーヴァントマテリアルのようなものになります


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Fate/erosion pre servant material

セイバー

真名:妖刀村正

属性:混沌・善

性別:女性

身長:142cm

体重:44kg

 

基本ステータス

筋力D 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運B 宝具B

 

クラススキル

 

対魔力:A-

妖刀としての魔力でAランク以下の魔術を全て相殺してしまう。故に事実上現代の魔術師ではセイバーに傷を与えることが出来ない。ただしこれは本人の意思によるものではないので味方からの回復魔術や強化魔術も相殺してしまう。例外は令呪や令呪の強制によるもののみ。

 

騎乗:-(C)

器物である為セイバーから騎乗スキルは失われている。

しかしセイバーを装備した人間にはランクC相当の騎乗スキルが付与される。

 

固有スキル

 

妖刀:A

妖刀としての性質を表すスキル。人間に対する攻撃へのボーナスや混血や魔性特性を持つ者が装備した時にステータスに上昇補正がかかったりする。

また、傷が塞がらないなどの呪いに近い特性を持つ。このスキルは宗和の心得、無窮の武練などの武術系スキルを内包する。

 

憑依:A+

装備した人間に取り付くことでセイバーに記憶されている技術を再現させることが出来るスキル。A+ともなればそれが日本刀によるものならば宝具クラスの剣技すら再現可能となる。

 

強化武装:A+

器物であるセイバーの持つ固有スキル。セイバーを装備した者に通常より大きいステータス補正をかける。A+ともなれば装備者にB〜Aランクサーヴァント並のステータスを持たせることが出来る。ただしサーヴァントや守護者でもないただの人間がそれだけの力を振るうには当然代償が付いてまわり、振るえば振るうほど装備者の魂を喰らい、無茶な動きをすればそれだけ装備者の肉体にダメージが返る。

 

マスター装備時の基本ステータス

筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力A 幸運B 宝具-

 

想念集合:C

人々(だれか)の想いによって作られた擬似霊基。刀剣としての姿を取らない時はこの擬似霊基を核として存在している。何故かこの擬似霊基は幼女の姿をしている。正しい英霊でなくこのような擬似霊基によるものなので村正妖刀伝説の知名度がある限り魔力が自然に少しずつ回復していく。

 

 

宝具

妖刀・村正(ようとうむらまさ)

ランク:B

種別:対人宝具

レンジ:1

最大捕捉:-

妖刀として、その在り方そのもの。本来なら英霊足りえない妖刀という人々の想念の集合体が村正という妖刀の代名詞により補強され手にした妖刀としての霊基そのものであり、この刀を妖刀として扱う為の必須条件。

真銘解放をすると、一時的に全てのステータスをワンランクずつ上昇させ、更に剣技を強化する。しかし、使用後に反動を受ける。

 

また、この(サーヴァント)を妖刀村正として扱い、そう振るう限り妖刀として、振るった人間を支配し破滅させる程度の人斬りにする程度の力を持つ。

 

 

人々の妖刀に対する想念が妖刀として最も知名度の高い村正を媒介として妖刀という概念になったサーヴァント。本人は人々が思い描く妖刀としての存在なのでマスターなどの、誰か人間に装備して貰わない限りサーヴァントとしての戦闘は不可能。擬似霊基によって人間形態を持つがその状態では戦闘能力はせいぜい三流サーヴァントレベルというものである。人間よりは強いが並のサーヴァントよりは余裕で弱いという強さ。根は意外といい娘。

人間形態は黒髪和服ののじゃロリ。出自故に呪いや他者に魔術にある程度は精通している。

村正を触媒として呼ばれただけ、というよりそもそも生前が無く、知識はあるものの経験は何も無い。なので聖杯への望みもまだ存在しない。

 

 

召喚時は紛い物の亜種聖杯、さらに聖杯戦争の為の数合わせで儀式すら無理やりの召喚であった為記憶に損傷があり、真名についてハッキリとした情報が思い出せなかった。

 

 

アーチャー

 

真名:*****

属性:秩序・中庸

性別:雄

身長(体高):184cm

体重:512kg

 

ステータス

筋力A++ 耐久D 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具A

 

・**:ー

詳細不明。現時点では使用不可。

 

 

・怪力:A

一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

 

 

・****:A+

アーチャーの固有スキル。詳細不明。

 

 

・****:A

詳細不明。

 

 

・****:D

 

何らかの神から受けている加護。詳細は不明。

 

 

宝具

 

????

ランク:A

種別:対人宝具

レンジ:1〜5

最大捕捉:10人

アーチャーの第一宝具。詳細不明。

 

 

????

ランク:D

種別:対人宝具

レンジ:1

最大補足:ー

アーチャーの第二宝具。焼き菓子のように見えるが詳細不明。

 

ランサー

真名:******

属性:中立・中庸

性別:男性

身長:158cm

体重:62kg

 

基本ステータス

筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A

 

クラス別スキル

 

・対魔力:A+++(C) 神霊級のものを含むほぼ全ての魔術を無効化する。宝具により底上げされているだけで本来はCランク相当。

その為直接ランサーを対象として放った場合を除いては宝具を適用しなければランクC相当の効果しかない。

また、味方からの補助を無効化しない為令呪は普通に通る上にかかった令呪をキャンセルする為に自身に槍を突き刺すことも出来ない(自害命令などは別)。

 

固有スキル

 

・騎乗:A 騎乗の才能。幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

 

・ルーン魔術:C 主にして幼馴染みでもあるフレイから幼い頃に習ったもの。フレイに纏わるルーンのみを使う事が出来る。

 

・単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

 

宝具

 

破魔神杖・改(ガンバンテイン・スプーヨート)

ランク:A++

種別:対人宝具

レンジ:1

最大捕捉:1人

フレイから授かったあらゆる魔術をかき消す槍。常時真名解放型の宝具である為、この宝具を装備しているだけで自身を対象としたあらゆる魔術・呪術を無効化出来る。

本来は破魔神杖(ガンバンテイン)という直杖の宝具なのだが、ランサーが魔改造をして穂先を付けることで槍にしてしまった。穂先を突き刺すことで刺した対象にかかっている魔術や加護をかき消すことも出来る。

 

????

ランク:A

種別:対軍宝具

レンジ:1〜50

最大捕捉:100人

ランサーの第二宝具。詳細不明。

 

貪る魔枷(グレイプニル)

ランク:B

種別:対人宝具

レンジ:1〜5

最大捕捉:1人

フェンリルを捕縛する為に作られた伝説の紐。これで縛られたものは抜け出すことが出来ない。ただし縛られた対象が戒めや枷から抜け出た逸話がある場合はその限りではない。

真名解放をすると魔力を縛られた対象から一定のペースで魔力を吸い取り、ランサーに還元される。

フェンリルを縛った紐のため、獣や魔性のものに対しては効力が強まる。

 

????

ランク:D

種別:対人宝具

レンジ:1

最大捕捉:-

黄金の腕輪の形をしたランサーの第四宝具。装備することで筋力・耐久・魔力のステータスをワンランクずつアップ出来る。

厳密には召喚の触媒のため、持ち込んだ宝具ではない。

 

 

ライダー

 

真名:*****

属性:中立・中庸

性別:男性

身長:228cm

体重:160kg

 

ステータス

筋力A+ 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運B 宝具A

 

クラス別スキル

 

・騎乗:C+ 騎乗の才能。幻想種を除き、大抵の乗り物を人並み以上に乗りこなせる。 ただし、自身そのものとも言える豚や猪に乗る場合には自身に有利な補正がかかる

 

・対魔力:EX 女神が放った噴煙を数言の詠唱でかき消した逸話より、神霊クラスの魔術すらキャンセルする。事実上、魔術ではライダーに傷をつけられない。

 

固有スキル

 

・神性:A 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。女神の息子とされる半神で、海の神としても崇められているライダーの神霊適性は最高クラスであると言える。

 

・魔術:A+++ 大量の海水を火口に流し込む、雨雲を呼び寄せて豪雨を起こす等水属性の魔術においては破格の効果を数節の詠唱で行うことが可能。

他の魔術においても現代のそれに特化した魔術師と同等以上の効果を出せる。実質並のキャスター以上の魔術使いであるとも言える。

 

・変化:B-

 

宝具

????

ランク:A

種別:対軍宝具

レンジ:1〜100

最大捕捉:300人

ライダー自身そのものとも言える第一宝具。詳細不明。

 

????

ランク:A

種別:対軍宝具

レンジ:1〜50

最大捕捉:100人

ライダーが騎乗する小舟の第二宝具。詳細不明。

 

????

ランク:C

種別:???

レンジ:2〜50

最大捕捉:ー

ライダーの第三宝具。詳細不明。

 

 

????

ランク:B++

種別:対軍宝具

レンジ:???

最大捕捉:???

ライダーの第四宝具。詳細不明。

 

 

キャスター

 

真名 ミルディン

属性:混沌・中庸

性別:女性

身長:168cm

体重:53kg

 

基本ステータス

筋力B 耐久D 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具B+

 

クラス別スキル

 

・陣地作成(森):C 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる……スキルだがキャスターの場合魔術師ではなく森に住んでいたことから森限定で獲物の為のトラップを隠したり強化することに特化した結界を作ることが可能。

キャスターは魔術師ではないので、通常の陣地作成スキルで作れるような魔術工房などを作ることは出来ない。

 

・道具作成:B(E) 魔力を帯びた器具を作成できる。森での長い生活から植物や野生動物の素材を使った道具や罠の作成が得意だが、魔術の心得がある訳では無いので逆に通常の魔術道具などの作成においてはランクE相当のものしか作ることが出来ない。

 

固有スキル

 

・狂化:C- 戦闘時に判定を行い、その結果によりこのスキルが発動するかどうかが決まる。

発動した場合は魔力と幸運以外のパラメーターをワンランクずつアップさせるが、言語能力が不自由になり、複雑な思考、及び意思疎通が困難になる。

 

・動物会話:C 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。

動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

 

・啓示:C- 目標の達成に関する事象全てに最適な展開を“知覚する”能力。

自身や他人の死にまつわる運命は通常よりはっきりと知覚できるが、その代わりにその運命の改変が一切出来ない。

 

・森の隠者:A

森に隠れ潜む者に与えられるスキル。自身のステータス、スキル、真名を隠蔽しランク相当の気配遮断能力を行使可能になる。ただし森から出ると気配遮断のランクは2ランク下がり、ステータス、スキルの隠蔽も不可能となる。

 

宝具

????

ランク:B+

種別:対軍宝具

レンジ:2〜50

最大捕捉:100人

キャスターの第一宝具。詳細不明。

 

????

ランク:B

種別:対人宝具

レンジ:1

最大捕捉:-

キャスターの第二宝具。詳細不明。

 

スタイルは良いけどネガティブ気味な女性。酒癖が悪くてイケオジ好き。

聖杯にかける願いは自身のトラウマでもあるアルスレッドの戦いを無かったことにして欲しいということ。

ちなみにハープの演奏が趣味。今回の召喚でも道具作成スキルを使いハープを作りだした。

 

 

アサシン

 

真名:ソニー・ビーン

属性:混沌・悪

性別:男性

身長:174cm

体重:56kg

 

ステータス

筋力C 耐久E 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具C

 

クラス別スキル

 

・気配遮断:B+ 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てば並の人間にはほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

逸話より人間を襲う時には補正がかかる。

 

固有スキル

 

・連携:A+++ 連携行動に特化したスキル。このスキルを所持している相手との連携行動時に自身と相手の幸運を除くランダムな3つのステータスにボーナスが入る。更に連携行動する相手の人数が多い程ボーナス効果がアップする。また、それ以外の相手との連携行動時は自身の敏捷にのみ多少のボーナスがかかる。

 

・食人:A 人肉を喰らうことに特化したスキル。人肉を経口摂取することで魔力をかなり回復出来る。また、一定量の人肉を経口摂取するとパラメータが一時的に上昇することがある。

 

・精神汚染:A 混乱・混沌とした精神状態を表す。混濁・錯乱した精神構造のため、第三者による精神干渉系の魔術を遮断する事が可能。ただし、他者との意思疎通を行う場合、相手が同程度の『精神汚染』スキルを保有していないと成立しない。

 

 

宝具

食人一賊(ビーンズファミリー)

ランク:C

種別:対人宝具

レンジ:1

最大捕捉:1人

アサシンが喰らった人肉を触媒として一族をサーヴァントとして1騎召喚する。

最大で47騎迄召喚可能。

召喚されたサーヴァントは全員アサシンと同じパラメータ・スキルに加え、Eランクの単独行動スキルを保有する。霊核を破壊されたり魔力切れで消滅しても同じ手順を踏めば再召喚が可能。しかし正史による第四次聖杯戦争のアサシンの宝具「妄想幻像」とは違いアサシン自体が倒されるとその時点で呼び出された一族のサーヴァントは消滅する。

 

十六世紀の近親相姦によって増えた食人一族の家長。旅人を集団で襲って殺しその肉を食べていた。

基本的に食欲以外においては怠惰、聖杯戦争を戦う気は無い。

基本的に裏切るという発想がないので裏切られることはほぼないが人肉を好む食人者であるアサシンにとってはマスターも所詮食糧の1人に過ぎないため襲われることは十分に有り得るだろう。聖杯にかける願いも特になかった。

召喚者を殺して食べた後、はぐれサーヴァントとして街をさまよっている時に血の匂いに誘われて守掌刑務所で猟理人(シェフ)と出会う。人肉好き同士意気投合し、猟理人の人肉料理を食べてからはその味と、その夢に一目惚れして聖杯戦争に勝つため、一共に殺戮(しょくじ)を始める。

彼ら2人の出逢いもまた運命(Fate)であったと言えるのだろう。

 

 

バーサーカー

 

真名:*****

属性:秩序・中庸

性別:男性

身長:196cm

体重:111kg

 

基本ステータス

筋力B 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A+

 

クラス別スキル

 

・狂化:― 固有スキルにより狂化スキルは失われている。

 

固有スキル

 

・無辜の怪物:A 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられなった怪物。能力・姿が変貌してしまう。このスキルを外すことは出来ない。このスキルにより、人狼の姿へと変貌する。

 

・対毒:B 強靭な肉体によりほぼ全ての物質的な毒を無効化する。しかし魔術的な性質を併せ持っていると無効化できない。

 

・神々の加護:B 神々の加護により攻撃を回避しやすい。また、戦闘中にデバフを受けず、バッドステータスも発動しない。しかし、スキル:無辜の怪物による理性喪失はこちらも同様の神によるものなのでこのスキルが無効化されてしまう。

 

・神性:D 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

 

・獣化:- 獣としての性質を表す。このスキルのランクが高ければ高いほど人間から遠ざかり獣へと近づく。

通常時ではこのスキルは失われている。

 

宝具

????

ランク:A

種別:???

レンジ:???

最大捕捉:???

バーサーカーの第一宝具。詳細不明。

 

 

????

ランク:EX

種別:対人宝具(自身)

レンジ:1

最大補足:―

バーサーカーの第二宝具。毛皮のジャケットのようだが詳細不明。

 

 

ルーラー

真名:ルトガルディス

属性:秩序・善

性別:女性

身長:156cm

体重:54kg

 

基本ステータス

筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具B

 

クラススキル

・対魔力:A Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。ただしルーラーの場合、教会の秘蹟には対応しない。

 

・真名看破:C- ルーラーのクラス特性。直接遭遇したサーヴァントの真名・スキルなどの一部の情報を即座に把握する。

あくまで把握できるのはサーヴァントとしての情報のみで、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情は対象外。

また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つ場合は見ることが出来ない。

不完全な召喚の影響でランクが低下している。

 

・神明裁決:C- ルーラーの最高特権。

召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、1回まで令呪を行使できる。他のサーヴァント用の令呪を転用することは出来ない。

不完全な召喚の影響でランクが低下している。

 

 

固有スキル

 

・啓示:B "神の子や聖人からの声"を聞き、最適な行動をとる。魂が持つスキル。

『直感』は戦闘における第六感だが、啓示は目標の達成に関する事象全て(例えば旅の途中で最適の道を選ぶ)に適応する。

だが根拠がない(と本人には思える)ため、他者にうまく説明できない。

 

・奇跡:C- 時に不可能を可能とする奇跡。

星の開拓者に似た部分があるものの、本質的に異なるものである。適用される物事についても異なっている。

ルーラーの場合は逸話より治癒能力及び直近の未来を視認する未来視としてのみ発動する。

 

・聖痕:B ルーラーの脇腹に残る槍で突かれた聖痕。常に血を流しており毎ターン幸運の判定に失敗するとダメージ。常に痛みを感じているが、ルーラーの意志力により全くそれを感じさせない動きをする。このスキルにより聖人スキルのランクが上昇している。

 

・聖人:B(C) 聖人として認定された者であることを表す。

サーヴァントとして召喚された時に“秘蹟の効果上昇”、“HP自動回復”、“聖骸布の作成が可能”から、ひとつ選択される。

ルーラーはカリスマスキルを持たないことから“カリスマを1ランクアップ”の選択肢が消滅している。

聖痕スキルによりランクが上昇している。

ルーラーは秘蹟の効果上昇を選択している。

 

 

・洗礼詠唱:A+ 教会流に形式を変化させた魔術。霊体に対し絶大な効果を及ばす。

ルーラーの場合、生前の神秘家としての研究により対人間霊や対自然霊、などそれぞれの対象に最適化させるアレンジを加えた独自の詠唱を使うのみでなく、教会の教えに影響を受けた魔術というものも行使可能。

ただしその場合、聖痕からダメージを受けてしまう。

 

 

 

宝具

 

????

ランク:A

種別:対人宝具

レンジ:1〜3

最大捕捉:10人

ルーラーの宝具。詳細不明。

 

 

13世紀の聖人にして神秘家。幼い頃は綺麗な格好を好み活発的な少女だったが、修道院で神の子の姿を幻視したことで一変し敬虔な修道女となった。聖痕を受け聖心崇敬においては偉大な先駆者の1人ともされている。

サーヴァントととしてはやや過激派な宗教家お姉さん。でも基本はいい人で人々に優しく神に祈る聖人。

逆に悪人には容赦なく徹底的に叩きのめし改心させる。また神の子を悪く言う人間に対しても容赦ない。

ただの異教徒ならば優しくするが(ついでに改宗を勧める程度だが)、異教徒かつ極悪人だったりすると宝具をつい使ってしまうレベルで悪徳と神を信じないことを嫌う。また、魂喰らいをするサーヴァントを見つけたら令呪で縛った上で警告し、もし2度目があったなら再度の令呪で動きを封じた上で宝具を使用する。ただしそれがマスターによる強制だった場合はその矛先がマスターに向く。基本的には中立であるが、自身が召喚されたということは何か世界に危害が及ぶ可能性があるとして調査をしておりそれを手伝った陣営には報奨を与えることもある。自身が神秘家であったこともあり、聖堂教会のように魔術そのものを嫌ってはいない。ただし非人道行為を平然と行ういわゆる魔術師らしい魔術師は大嫌いである。

 

とはいえ若い頃の、神の子の姿を見る前の肉体で召喚された為、テンションが高めで少し落ち着きが無くなっている部分がある。



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第4章 想いと願い
幕間/くらやみのなかで


お久しぶりです。
やっと書きました。これからは少しづつペースを取り戻していけたらなとも思います。


意識が戻ると、そこは真っ暗なところだった。深い、深い、水底のような。意識が溶け合い、混ざり合い、揺れ動くような空間。

懐かしささえ覚えるようなそこで眠りにつきかけたその時、水揚げされるかの如く意識が浮上する。

そしてーーー

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そこは、広々とした空間だった。

ひんやりとした空気がしんとした雰囲気を醸し出し、それ故にこの場に浮かび上がるこの人理の穢す染みをより克明に映し出す。

そしてその世界に妖刀の少女(セイバー)が浮かび上がる。

 

「……あらら、本当に引っ張ってこれちゃった。パスに負荷でもかかってたのかしら、それとも逆に繋がりが強まったからこそ左手経由で呼び出せた……ってところかしら?」

 

レアが微笑みを浮かべながらじっとりとセイバーに目を向ける。

 

「ん………むぅ……ん。」

 

すると、目をこすりながらセイバーが起き上がり目を向ける。

 

「お目覚めかしら、セイバー。」

「ん……お主、レア!?ここは……それに、ますたぁは!?」

「ここがどこかなんて、そんなことはどうでもいいじゃない。それに、今回呼んだのは貴女だけよ。彼のサーヴァントである貴女に用があるの。」

「儂に……?というより、それはどういうことじゃ。そもそも、どうやって……」

「簡単な話よ。パスが繋がっているサーヴァントを呼び出すのはマスターなら誰でも出来ること。そして貴女と彼を結ぶパスの基点は令呪のある左手……ここまで言えば分かるんじゃないかしら?」

「んなっ……まさか、お主最初からそれが狙いで……!?」

「いや、まぁこれは私にも出来るかどうか半信半疑だったし、一応って感じね。でも、私は賭けに勝った。彼の左手は彼自身のものであると同時に私そのものでもある、それによってマスター権を一時的に聖杯に誤認させて、更に私の用意しておいた予備令呪で無理矢理転移させたって訳よ。簡単でしょ?」

 

あっけらんと言い放つレアに対してセイバーは驚きからか、沈黙で返す。

 

「他の参加者の契約ラインに介入し、更には予備令呪なんて大反則。主催者にあるまじき行動じゃのう。」

「あら、心外ね。私に言わせれば逆よ逆。主催者特権みたいなものじゃないかしら?わざわざ手間をかけて聖杯を用意したりしてるんですもの、それくらいの役得はあって当たり前というのが筋でしょう?それに、そのリスクを背負ってでも私に左手を空け渡したのは貴女のマスター。考えの及ばない方が悪いのよ。」

「ぐっ……まぁ、それは確かに……」

「だから私はあくまでも私の目的の為に、ありとあらゆる手段を取る。それだけの事よ。」

 

歯噛みするセイバーに対してレアはそう言い放つ。

 

「……まぁいいわい。それで、儂1人わざわざ呼び出したのは何の狙いじゃ?ひょっとして、儂にますたぁを裏切ってお主に付けとでも?」

「あら、察しがいいわね。将を射んと欲すば先ず馬を射よ……まずは君から私の手元においておこうかなってね。どう?私と手を組む気は無い?」

「断る。そんな提案、呑む理由もメリットもないわい。まぁ、例え儂にどんなメリットがあったところで儂はますたぁを裏切る気は無いがのう。」

 

そう言い切るセイバーに対してレアは肩をすくめながら、やれやれといったように言葉を紡ぐ。

 

「まぁ、そう言うのは予想済みよ。だから話を最後まで聞いてもらおうかしら。」

「なんじゃと……?」

「なら、メリットって言ったわよね?それなら確実にあるわ。まず、貴女のマスターである彼と、貴女自身の命の保証。ずばり言うけれど、貴女たち、互いに相当無茶してるでしょう。彼の左手からも確実に寿命やら縮んでるのが分かるし、このまま戦い続けると例え生き残ったところで彼はそう長くは生きられないでしょうね。オマケに貴女も自身の内にある呪い(どく)にかなりやられてる……違わない?」

「な、なぜそれを……」

「やっぱり、ね。これでも専門家なの、毒に耐えてる人間の動きなんて見れば大体分かるわ。とはいってもサーヴァントだし、自信は無かったんだけれどね。」

「のせられてカマをかけられたということか……」

「まぁ、そういうこと。」

「それを知ってどうするつもりじゃ……」

「どうするもないわ、本当にただの確認。貴女が毒に浸されているっていうね。」

「確認、じゃと?」

「そ、確認よ。呪いであろうと、その身を蝕むものは毒の一種として定義できる。なら、専門家の私にはどうにかする手段がある。つまり、私に付けば彼も、貴女も、私の庇護の下で安全に聖杯戦争も、その後の余暇も味わえるってわけ。どう?この上ない条件だと思うんだけれど。」

「たしかに、破格と言っていいほどの条件じゃな。じゃが……それでお主は一体何を得る。話が上手すぎるからこそそんなもの、罠としか……」

だが、セイバーの言葉を遮り、先手を取るかのようにレアが言葉を放つ。

「簡単よ、貴女たち、イレギュラーなのよ。だから不測の事態が起きないように、手元に置いておきたい。それになにより、彼は面白い(・・・)、だから欲しいのよ。」

そうして、一呼吸すると再び語気を強めて詰めるように語り出す。

「それに。私は聖杯に用はあるけれど、願望器としてのそれには興味が無いのよ。だからそう使いたいならそうすればいい。イレギュラーとはいえ、貴女もサーヴァントなら聖杯へ望むことがあるのでしょう?それとも、ここまで好条件を引き出しておいて、ビビってるのかしら?」

「何じゃと?ふん、そんなわけは無かろう。じゃが、そんな詭弁を信じろとでも?聖杯に用はあるが願望器には用がないじゃと?くだらん。」

「あら、私は事実を言っただけなのに。これは本音なのよ?」

「あいにく儂には禅問答をする気はない。交渉を持ちかけるならもう少しマシな言い訳をするんじゃな。」

「事実よ、これは。そもそもこの聖杯戦争の為の器は私が用意したもの、仕様はよく理解しているわ。」

 

息を思わずセイバーが呑んだのを見届けてからレアは続きを語り出す。

 

「この聖杯はただの小聖杯ではなく、毒聖杯。私が作り出した新たなる限定礼装。だからこそ、イレギュラーたる貴女にも適応するし、妖刀の呪いがサーヴァントとなった貴女なら私の協力さえあればそれこそ受肉だって出来るでしょうね。そうすればもう消えるかどうかなんて気にする必要もなくなる。呑まない理由はないでしょう?」

 

その誘いの言葉と共に、レアは手を伸ばす。

そして、その手に向けて、セイバーは手を伸ばしーーー

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「そうすればもう消えるかどうかなんて気にする必要もなくなる。呑まない理由はないでしょう?」

 

その言葉に、思わず唾を呑む。

レアの提案は確かに魅力的じゃ。

儂にとって一番の願いは、この霊基を失いたくない。それが一番儂が欲しておるもの。

なにかまだ思惑はあろうが……それでもここまで言った全てが嘘とは考えにくい。

ならば、悩む理由などどこにもない。

ますたぁの命も保証されているのだ、迷う理由などどこにもない。

けれど、思い出されるのは、自身をなげうって儂の為に戦ってくれた、ますたぁのこと。

あやつは、本当にこんなことを望むのか?と考えれば、それはおそらく正しいだろう。

あやつは儂の願いが叶い、かつ友人達に危険が及ぶわけでもなければ迷い無く命を投げ捨てかねない。それが、ロリコンーーーあやつの生き方なのだから。

けれど、だからこそ、それに甘えるのは正しいのか。

儂の存在そのものを認めてくれて、肯定してくれたあやつを裏切るような真似をしてしまうのか。

そう、考えたとき。

儂の手は自然とレアが伸ばした手に向かって動いていた。

 

「……決めたのじゃ。」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ーーー差し出されたレアの手を、セイバーはペシン、と振り払った。

 

「……決めたのじゃ。」

「………・そう。結局、貴女や彼とは正面から屈服させるしかないってことかしらね。」

「そうじゃな。」

「けど、意外ね。てっきり貴女は私の誘いを呑むかと思ってたわ。」

 

それに対し、自重するかのようにセイバーは言い放つ。

 

「ああ……儂もそのつもりじゃったよ。けれど、今まで見せられてきたあの在り方を、生き様を…そして、恩を。忘れられなかったのじゃよ。だからこそ、儂はこの命が尽きようとも、自我が溶け落ちようとも、ますたぁのしたいようにさせる!

それが儂に自己(いのち)をくれたますたぁへの報恩じゃ!!

だから、例え命が助かろうとも、お主の「子」へなど断じてさせぬ!

……それが、儂の決めた道じゃ。」

 

そう、セイバーが言い放つ。

すると、レアは狂ったように笑い始める。

 

「ふふふふふっ、ふふふっ、ふふふふははははははははははは!!!!なんだ、貴女も面白いじゃないか!!」

 

そうして笑いながらレアは更に言葉を続ける。

 

「彼のオマケではなく、本当に貴女も欲しくなったよ。残念ながら今回は時間切れのようだが、次は君たち2人と揃って戦場で相対したいものだ。ふふっ、ふははははははっ!!」

 

その言葉と対応するかのように、再びセイバーの意識が真っ暗な空間へとシフトしていく。

 

「ふん……その時が、貴様を殺して儂らで聖杯を握るその時が楽しみじゃわい……!!」

 

そうして、セイバーのその言葉を最後に再び静寂が舞い戻る。

そして、それを誤魔化すようにレアが一言だけ、ポツリとつぶやく。

 

「せっかく楽しみになってきたんだ。かなりの負担を背負ってたみたいだけど、それくらいは乗り越えてきてくれよ、セイバーちゃん♪」

 




ところで、願望器としての機能とかレアは言ってたけど毒聖杯にそんなものはないです。
セイバーはあやうく空手形をつかまされるとこでした。






血迷って思いついて即没ったオマケ


セイバー「ハーハッハッハァ!ナラバァ!(デーレーレー)コタエハヒトツゥ!(バキッ)(刀の折れる音)
オヌシニィ・・チュウセイヲゥ・・チカオォォォォォォォ!(コノーママーアルキツヅケーテルー)


まじでここの演出狂ってたよね、神を思い出したもん


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6日目/地伏す妖刀

「ん……む」

 

雲の隙間と窓の隙間から漏れる日差しによって、緩やかに覚醒する。

身体に未だ残る気怠さを感じつつも、一晩の休息はこれから動けるだけの確かな活力を肉体に与えていた。

 

「さて、やっとの日曜日だ。昨日は学校が半日だってのにそれどころじゃなかったし、やっとゆっくりと羽を伸ばせる。」

 

……とは言っても今日もそれほど余裕はないのだろうけど。

まったく、つくづく厄介な出来事だ。この聖杯戦争というものは。

と、そこまで考えを巡らせたところで、セイバーが部屋に見当たらないことに気づく。まさか、昨日の今日で1人で外出ということも無いとは思うのだろうけど……そう考えながら廊下へと出ると。

 

「おーい、セイバー。今日の予定なんだけど……ッッ!?」

 

そこには黒い和服の白い模様が血で赫黒く染まり倒れ伏したセイバーの姿があった

「どうした、セイバー!?いつやられた!!いや、傷が開いたのか!?と、とにかくしっかり、しっかりしてくれ、セイバー!」

 

しかし、答えとして返ってくるのは沈黙ばかり。

 

「クソッ、こうなったら救急車…じゃ、駄目だよな。そうか、錬土に聞けば何か……」

 

あいつならばなにかサーヴァントのこういう事態についても知っているかもしれない。

そう考えて急いで電話をかける。そうして、コール音が止むと同時に声をあげる。

 

「おい錬土!!セイバーが、セイバーが!!!」

『うおっ!?声でけぇって、落ち着け戈咒!!おまえがそこまで焦るってことは幼女のことだろ?そしてこのタイミングで俺に連絡してきたってことはおそらく聖杯戦争絡み……鎖姫絡みではないはずだから、セイバーちゃんに何かあったんだな?』

「お、おう。理解が早くて助かる。朝起きたら廊下で、血を流してセイバーが倒れてたんだ。治療の魔術なんか使えないし、セイバーを助ける方法を探すにはお前に頼るしかなくてな。」

『まぁ、色々言いたいことはあるが、取り敢えず俺に相談したのはよかったろうな。下手に余所の陣営に情報を流す羽目になりかねないだろうし。とりあえず、俺が今から原付で向かう。話はそれからだ。』

 

そう言うと、通話が切れる

そして、心の中で一言セイバーに謝罪した後、血糊で固まりひっついた和服をベリベリと剥がし、傷を探す。

だが……

 

「傷が、ない……?」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

その、少し前。

錬土の自宅では、彼が電話を再びかけていた。

 

「お、そっちはどうだ?」

『ーーーーーー!!!ーーーー!!』

「はははは……悪い悪い。でさ、教会に行こうかと思うんだ。」

「ああ、それならありがたい。じゃあ、現地で待ってるぞ。」

 

錬土はスマホをスリープモードにして懐に入れると一呼吸、ため息をついてから窓の外を見る。

 

「よし、これで打てるだけの手は……打ったか?……いや、あれも用意しておくべきか。」

 

そう言うと再びスマホを手に取り操作を始める。

そして数分後、鳴り出したスマホで戈咒との会話を済ませると、今度はヘルメットを持って家を出る。

そして、原付に乗って朝の日差しの中、公道を賭けて駆けていった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

結局セイバーの意識は戻らず、それ故に霊体化も頼めないので寝床に寝かせ、様子を見ること15分。

インターホンがなり、来客…いや、錬土の到来を知らせる。

 

「来たか……!」

 

そうしてドアを開け錬土を部屋に連れ込み、まずセイバーを見せる。

錬土はセイバーをしげしげと見つめ、ゆっくりと口を開いた。

 

「まず、セイバーちゃんのことだが。俺も専門家でもないどころか、知識が多少あるだけの一般人だからな。魔力も感じ取れないくらいだし、正直容態は分からん。ただ、傷がないのは気にかかるな。」

「ああ、それは俺も気になったんだ。外傷でないなら病気か、()か……」

「サーヴァントが通常の病気にかかるなんて話は聞いたことがない。あるとすれば他のサーヴァントの宝具って可能性だが…これはひとまずおいておこう。どんな奴がいるかもロクに把握できてないのに考えるのは無理がある。」

「つまり、十中八九、毒に犯されている……?」

「俺はそう考えるな。まぁ一応、治癒されたって可能性も残るが。ただ、その場合はなぜ目を覚まさないって話になるわけだがな。」

 

なるほど……確かに、その考えには筋が通っている。けれど、それにはどうしても違和感が残るのだ。

 

「でも、それは変な気もするんだよな。セイバーがいうには、セイバー自身が呪いや毒の集合体みたなものだから、生半可なものじゃ逆に塗りつぶし返すだけだって。実際に無効化した場面も目撃してるし、俺にはどうもセイバーが毒でやられるとは考えにくいんだ。」

「なるほど……確かに耐性持ちのサーヴァントを正面から毒で弱らせるのは相当無理があるか……おまけにこのサーヴァントは三騎士の頂点にして最優のクラス、セイバーだ。なにか反則じみた裏技を使われたと考えた方がいいかもな……」

「なら、審判の監督役に伝えにいけば治療して貰える、とか?」

「その可能性は、ある。裁定者がいたってことは向こうもその可能性の考慮はしててもおかしくない。」

 

審判による治療、きっとそれならセイバーも助かるかも知れない。

そう考えると心が逸る。一刻も早く向かわなくては……!!

 

「なら……!」

「だが、証拠がない。今言ってもただの難癖付けて監督役から不当に便宜を図って貰おうとしてるとしか思われないだろうな。」

「……クソッッ!」

 

せっかく、セイバーが助かるかも知れなかったのに……なにか、何か無いのか。視界に入った左手の、かすれかけの令呪が不安を増大させる。

 

「……令呪、そうだ。令呪を使えば治すこととか出来ないのか!?」

 

思わず左手の令呪を見せつけるようにして錬土に詰め寄る。

だが、その浅い考えは錬土が首を横に振ることであっさりと打ち砕かれた。

 

「残念だが……令呪ってのはただの魔力の塊だ。優秀な魔術師ならそれでブーストした治癒魔術を行使するって手もあるかもしれないが、少なくとも俺たちには……ちょっと待て。なんで令呪がかすれている?戈咒、お前もう使い切ったのか?」

「んなわけないだろ、セイバーの衰弱が関係してるんじゃないのか?」

「いや、そんな事例は俺も読んだことがない。令呪ってのは契約の繋がりを表すもんだ。だからサーヴァントが消えたら令呪が消滅する、くらいしかとくにはないはずだ。」

「ってことは……?」

「何者かがお前達に契約(パス)を通じて干渉しようとしている、そんな反則があったかもしれない。そう主張する根拠には少なくともなりうる、はずだ。」

 

つまり、それは。セイバーを治療して貰える目が出てきた、ってことで。

 

「なら……!!」

「ああ、すぐ支度して表に止めてある俺の原付に乗れ。教会のある海浜地帯までかっ飛ばすぞ!」

 




執筆の感覚が、いまいち取り戻せない……!!

それはそうと最新体験版のでたオクトパストラベラーとカービィの夏のアプデ、たのしみですね(すぐサボる予定立てる奴)


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6日目/交渉開始

だらだらしてたら遅くなってしまった……不覚

ところで帝都イベ面白かったですね、以蔵さんいいキャラだった……それはそうと老人書文はまだです?


吹き込む潮風を感じながら、俺たちは停止した原付から降りる

「ここが……守掌教会。」

「ああ、監督役と裁定者(ルーラー)がいるところにして中立地帯だ。本来は参加者がここに来るのは基本的にルール違反だが……まぁマスターであることを申告しにきたことにしておけばいいだろ。」

「ふーん、そうか。」

 

そんなことより、はやくセイバーを見てもらわないと。

そう思い、慌ててセイバーを実体化させ、抱えて教会に入ろうとしたとき。

 

「お待ちなさい、セイバーのマスター。これより先は、不可侵たる領域。サーヴァントを連れたマスターがおいそれと立ち入っていい場所ではありませんわ。」

 

そういいながら、内側から扉を開いて現れる1人の女性。

いや、こいつは確か昨日見た裁定者の……!!

 

「……たとえ、それが手負いの消えかけなサーヴァントだったとしても。」

「ま、待ってくれ!消えかけって……セイバーはまだ、大丈夫だろ?なぁ!おい!治してもらいに来たんだよ!!なぁ!!」

「落ち着け、戈咒。」

「錬土……」

「おいおい、裁定者(ルーラー)さんよ。話くらい聞いてくれてもいいんじゃないか?というか、俺達も遊びで来たんじゃない。もちろん、不正をしに来た訳でもない。情報提供に来たんだよ。」

「情報提供……?」

「あぁ、この茶番劇の裏に潜む黒幕のな。」

「……仕方ない。ルキアを呼んできましょう。」

 

そう言うと裁定者(ルーラー)は再び教会の中へと戻っていく。

だが、今はそれより錬土の言った言葉だ。黒幕……まさか、この聖杯戦争にはまだ何かあるのか?

 

「おい、錬土。どういう事だよ黒幕って。」

「ん?あぁそれか、言葉の綾だ。つーか半分くらいは適当にカマかけただけだ。」

「…………おい。そのせいでホラ吹き扱いされて追い返されてたらどうするつもりだったんだよお前は……!!」

「その時はその時だろ、それに結果として成功した。なら文句はねぇだろ。」

「……まぁ、それもそうか。」

 

とにかく、今はセイバーを救うことが第一だ。その為なら確かにどんな手段でも構わないし、治療してもらう迄にバレなければ嘘だって問題ない。

 

「それに、半分くらいはっていった通り心当たりがまったく無いって訳でもないからな……だが、今は関係ない。」

「……そうか。」

 

気にはなるが、今は関係ないというなら信じるべきだろう。

実際今はそれどころではないのだし。

 

「で、どういうことだお前ら。昨日は何もそんなこと言ってなかったのに今日になって急に来て。」

「いやぁ、なに。昨日は早く帰りたかったもんでね。わざわざ言うまでも無いと思ってたんだけれど、ちょっと事情が変わったもんでね。」

「……まぁいい、話してみな。」

 

そう促されるがままに錬土はさっきの考察を所々大げさに強調しながら、全ての責任は聖杯戦争のルールを守らず反則で契約を奪おうとした黒幕にあると語り出す。

にしてもホント口上手いな……俺も見習わなくては。

 

「……なるほど。話は理解したさ。」

「そりゃあよかった。なら早速…」

「で、なぜ治療する必要がある?いくら反則だと言われても、こっちがその証拠を観測していない以上はただの言いがかりに過ぎない。」

「…そう来ると思ってましたよ。戈咒、令呪を見せろ。」

「…で、それがどうしたって?セイバーのマスターが契約を奪われかけたマヌケってだけだろう。そこまで想定してなかったそちら側の落ち度だ……いや、待て……その左手。

 

そう言うとルキアは俺の左手をしげしげと見つめ出す。

そしてひとしきり観察すると、俺の右手をつかんで奥へと引っ張っていく。

 

「え、あ、ちょっ!?」

「セイバーのマスター……伍道戈咒、だったっけか。気になることが出来た。ちょっと奥まで来い。ルトガルディスは待っててくれ。」

「……?分かりましたわ。」

「え、おい、監督役さんよ、まだ話は……」

「悪いがそれより優先することが出来た。話は後だ、大人しく待ってろ。」

 

そう言うやいなや入り口の扉は閉められてしまい、俺はそのまま奥へとドナドナされていった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そして、教会の奥。客間のような場所にまで連れてこられると、ルキアは俺の胸ぐらを掴み俺を問い詰める。

 

「おい、その左手だ。」

「あ、え、ああ、だから、なぜか令呪が…」

「そっちじゃない。だいぶ見た目は元に戻ってるようだが、その鬱血したような左手首だ。レアの仕業だな?」

「!?」

 

どうして、それを……?いや、ここでうかつな反応をしたらまずい。レアにはこの会話も全部筒抜けなのだから。それに、数日前のことから考えてもこの監督役とレアには何らかの因縁があるはず。下手に関わりすぎてレアの機嫌を損ねるのはまずいーーー

 

「レアに聞かれたらどうしよう……そんな顔だな、伍道戈咒。安心しろ、あたしはそれがどういう状態かは知っている。」

「え……?」

「なんせ、かつてこの左目をそのせいで抉り出すことになったんだからな。」

 

そう言うとルキアは左眼をコロン、と取り出した。

 

「ぎ、義眼……!?」

「まぁ、そういうことさね。それから解放されるにはあたしみたいに早い内に聖別済みのもので切り落とすなりなんなりしておかないと、どうにもならなくなるよ。その契約に関してもそいつが原因の一つじゃないのか?」

「な…なら、ルキア…監督役はレアと敵対してるんですよね?貴女たちに協力する代わりにセイバーを……」

「断る。」

「な、なんで…」

「あたしは今ここに聖杯戦争の監督役としているんでね。例え聖堂教会に仇なすアイツを倒す為だとしても、必要以上の肩入れは監督役としてはできない。」

「そ、そんな……」

「大人しく脱落してたらどうだ。そうすれば聖杯戦争が終わるまでの安全は保証してやるさね、仕事だからね。」

「そんな……そんな話が聞けるか!?セイバーを、彼女をこのままだと失うって言うんだぞ!!いい加減にしろ!!」

「いい加減にするのはお前だ、伍道戈咒。無茶言ってるのはお前の方だろうよ。大体なんでそこまで聖杯戦争に固執する。お前はそもそも巻き込まれただけの一般人だろうが。」

「そんなの決まってる!彼女が幼女で!俺は彼女を愛すべき幼女好き(ロリコン)だからだ!!大切な人だからだ!!!」

 

ーーそう。彼女は、俺にとって愛すべき、守るべき幼女(ロリ)だ。

そして、それだけじゃなく。

彼女の過去を知り、覚悟を知り、決意を知った。

それが、俺には大切に思えたんだ。

だからこそ、俺は。

 

幼女好き(ロリコン)として、1人の人間として。彼女を支えたい、その為に戦いたいと、思ったんだ。」

「……何だ?つまりサーヴァントに惚れたとでも?」

「いや、それはない。というか、駄目だ。ロリコンたるもの、YesロリータNoタッチの鉄則は守らなくちゃいけないし。」

「……ハ、ハハハハハ、ハハハハハハハハハ!!なんだお前、訳が分からねぇよ!!まったく面白い奴だよ、レアが唾付けるわけさね。」

 

ルキアはひとしきり笑うとこちらに向き直る。

わりとこっちのことを認めてくれたか、気に入ってくれたのか……?なら、今ならチャンスが……

 

「な、なら……」

「だが、それとこれとはやはり話が別だ。監督役として、手出しはしない。」

「ぐっ………!!」

 

もう、駄目なのか……!?

 

「なら、貴方個人が手を出すならーーーいいのかしら?」

「お前は……!」

「鎖姫ちゃん……?」

 

この部屋の扉を開け放ち、そこにいたのは。

ランサーのマスター、繰空鎖姫ちゃんだった。

 

 



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6日目/この気持ちに蓋をして

今週週末が忙しそうなので少し頑張って早めにあげ
人間やれば出来るもんだなぁ!(自画自賛)


 

「鎖姫ちゃん……どうしてここに?」

「なれなれしく呼ばないでよこの変態。どうしてこんなのがお兄ちゃんの親友なのよ……」

「お兄ちゃんってことは……錬土に呼ばれて?」

「……ええ、そうよ。貴方がいるって聞かされてたら来なかったろうけどね。」

「でも……なんで。」

「貴方から受けた屈辱を晴らすために決まってるじゃない。でも、安心したわ。ここで私との再戦を投げ捨てて逃げるようなやつだったら私のイライラがもっと高まるところだったし。」

「……いや、俺は別に君と戦うつもりは。」

「貴方に無くても私にはあるのよ!!……はぁ、今はこんなことに付き合ってる場合じゃなかったわ。」

 

そう言うと鎖姫ちゃんは今度はルキアに向き直り、堂々と話し出す。

 

「それじゃあ、監督役さん。いえ、シスター・ルキア。以前の約束通り、貴方個人に借りを返してもらおうかしら。」

「なるほど、そういう……ことか。だが、あの時こうも言ったはずだ、一介のシスターとしてとして、監督役の特権は使えないとも。」

「ええ、だからこれは監督役としての貴女ではなく、裁定者(ルーラー)のマスターとしての貴女への頼みよ。」

「そ、そんなの詭弁ですわ!だいたい、そのときには私はまだ召喚されて無かったのです。そんな理屈が……」

「通るだろう、そりゃあ。そこまで想定してなかったそちら側の落ち度(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、だろう?」

 

そこに追いついてきた裁定者(ルーラー)と錬土も会話に加わった。

 

「それに、貴女は監督役の立場でありながら、ルーラーとはいえマスターを兼任していた。これは公平性を欠く行為には変わりないわよね?」

「……ふ、ハハ、ハハハハ。なるほど、そう来たかい。」

 

ルキアは頭を掻きながらため息を一つついて、答える。

 

「いいさ、セイバーの治療、やれるだけのことはやってやろうじゃないか。」

「ルキア!?」

「ほ、本当か!?」

「嘘は言わないさね。戈咒、ルトガルディス、奥に行くぞ。」

 

そうして、奥の寝室にセイバーを寝かせると、ルーラーが手を当てて治療を開始する。昨日錬土の傷を治したのと同じ力だろうか。

でも、これで一安心だ。

 

「これで、お前がここで脱落することはなくなったわけだ。」

「ああ……あなた達のおかげだ。ありがとう。」

「よせよせ、あたしは嬢ちゃんへの借りを返しただけさ。」

 

そして、ルキアは懐からスキットルを取り出すとそれをあおりながら、こちらに向かって話し出す。

 

「……1つだけ、忠告しておこう。」

「……忠告?」

「ああ、かつて同じ目に遭った先輩からのな。」

「この、左手に関してか。」

「いや、そんな小さなことじゃない。アイツに関わってしまったせんぱいとしてのさ。まぁ、酒のつまみにでも話させろ。」

「つまみって……」

「この先、アイツに気に入られちまったお前は間違いなくあの手この手で苦しめられるだろう。だが、決して。折れるな、立ち止まるな、諦めるな。」

「諦めるな……」

「アイツは悪趣味だからな。お前みたいな変な奴が足掻くのを見て楽しんで、欲しがる。だが手に入れたら、ポイだ。飽きられても殺されるだろう。だから、対抗できるだけの力の無いお前はとにかく生きることに専念するといい……しまった、これ以上の助言は肩入れしすぎだな。忘れてくれ。」

「いや……