クリュセの守護神 (ランブルダンプ)
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一期
転生 状況把握 蒲田くん


初投稿です。シンゴジラのBD観た勢いで書きました。


俺はどこにでもいるような高校生だった。

少し趣味が爺臭いとも言われる事もあったがそんなことはどうでもいい。

 

何故高校生だったと過去形で言うのかと言うと……

 

 

『あれは撤退中の我が軍のモビルワーカー隊!貴様ぁ何と卑怯な!』

 

『どの口が言うんだ……!』

 

目の前で現在進行形で鉄血のオルフェンズが始まってる訳でして……

 

それを見つめる俺は何と巨大なおたまじゃくしの様なモノになっていたからである。

 

(ちょっと待ってくれ、何でまたこんな事になってるんだ?)

 

『止めろアイン!俺が行くまで……』

 

『行けます!ライフルが使えなくてもこんな奴!』

 

(息は……出来るな。眼……は見えづらいけど集中すれば理屈は解らないが回りの事は把握出来るな、現に)

 

『武器を投げるなんて!?』

 

(アインの乗ってるグレイズにメイスを投げつけるバルバトスの姿が見えるしな……)

 

『浅いか……』

 

(ここでミカのメイスがアインのグレイズにカスって煙の中からクランク二尉のグレイズが斧で斬りかかって来るはず……)

 

『そんな旧世代のモビルスーツでこのギャラルホルンのグレイズの相手が……』

 

(うん、このへんカッコいいから何回も見直して覚えてるんだよな、しかし……ここは鉄血のオルフェンズの世界なのか?余りにもリアル過ぎるし現実としか考えられない)

 

『もう一人死んだみたいだけど?』

 

『その声……!貴様、子供か?』

 

(うーん、ここが鉄血世界なのは確かだとして俺は何だ?二期ではハシュマルなんてモビルアーマーが出てきたけど俺はどう見ても生物だしなぁ?しかしこの理屈抜きに回り把握できたりといいこのトンデモ具合……ん?……え、嘘だろ?)

 

『そうだよ、あんたらが殺しまくったのも…これからあんたらを殺すのも……』

 

(……このおたまじゃくしみたいな姿といい……まさか!)

 

遠くでアインがクランク二尉の援護射撃を始めたがこの現状を理解し始めた俺にはBGMの様に聞こえていた。

 

 

(俺シンゴジラになってる!?しかも第一形態!?)

 

 

 

 

 

クランク二尉とアインは引き上げていった様だった。

いや、こっちとしても今明かされる衝撃の真実ゥって奴に驚愕していて、気が付いたら戦闘が終わってたって感じでして。

 

取り敢えず第二形態に成らないことには進む事も出来ない。

 

しかし形態変化ってどうやるんだ?とか思ってたら出来ました。

 

足ー!さっきのMS見たいにー!って念じてたらちゃんとおたまじゃくしの体から生えてきたよ、10秒足らずで。ついでに首も伸びてお馴染み蒲田くんこと第二形態に成れた。

 

ナニコレ気持ち悪い(笑)

 

いやぁ自分の体だけどさ……形容するなら急に人から阿修羅マンになったみたいな?

 

まあ無事に蒲田くんに成れた所で、周囲の情報を探るために動き出そう。

 

 

 

……動き出そうといざ足に力を込めた時点で俺は気付いた。

 

(そういやシンゴジって核分裂とかの核エネルギーで動いてるんだよな?……放射能垂れ流し!?やべぇ!怪獣としてならこのままでいいけど、■■■に味方しようと考えてる今の自分ならマズイよな……コレどうすればいいんだ?)

 

結論、下手に動くとマズイ。

 

(何故か血がダバダバ出ることも無くて汚染は最小限といっても、何か解決策が……汚染もなく……エネルギーが得られ……あ)

 

気付いた俺は首をもたげ、一瞬第三形態に成りかけながら、潰されたオーリスのグレイズを見やる。

 

(あった!エイハブリアクター!!……って体が熱い熱い第二形態に戻れー!!)

 

第二形態に戻りじっと動かず背鰭から放熱が終わるのを待つ。

 

(第二に変化したばかりだからまだ熱が籠ってるな…それに水が無いことには形態変化も映画みたいに一瞬とはいかないし……何より熱の放熱が出来なくなった時どうなるんだ?まさか爆発?)

 

俺の脳裏で何故か『みんな下がれ!コンボイ司令官が爆発する!!』のシーンが流れる。

 

(ホアアアアア!?いやマズイって核分裂で動いてる今の俺が爆発とか汚染の度合いが半端ない!下手したら■■■全員死ぬぞ!?)

 

冷や汗は出ないが精神的な冷や汗をかきながら、辺りが暗くなり空気が冷えてくるまでじっと待った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハイ夜に成りました。今頃は一軍の皆さんは薬入りのご飯を食べて寝こけているところでしょうね。

 

さて、俺も動きだそう。

 

MS襲撃&三日月による撃退の後のせいなのかCGS乗っ取り作戦進行中のせいなのか見張りの姿は見えない。

 

(好都合だ。今のうちに……)

 

ずりずりと体を引きずらせながらCGSの近くへと進んでいく……

 

ずりずり……ずりずり……

 

(遅ッ!!)

 

劇中でも時速13kmとか言われていたが、

 

(全速力でないとはいってもこれ以上の速さで進んだら徹夜で作業してるモビルワーカーの移動とかでは誤魔化し切れそうにないしなぁ……)

 

ずりずり……ずりずり……ずりずり……

 

(しかも起伏も激しいしさぁ……)

 

ずりずり……ずりずり……ずりずり……ずりずり……

 

(まあ地道に行きますか)

 

 

 

 

何とかたどり着いた。

 

(取り敢えず、食べればいいのか?エイハブ粒子作れーって念じても出来なかったし、どんなものかをこの体が理解する必要があるよな)

 

そして俺は口を大きく開け、

 

(頂きまーす!)

 

グレイズの残骸にかじりついた。

 

(リアクターに噛みついてみたけど、エイハブ粒子出てんのコレ……?俺の体ー!分析ー!)

 

リアクター部分丸ごと引きちぎり、モグモグと口の中でリアクターをかじり続ける。

 

そして暫くして脳裏に大体こんな感じ、というこの粒子のアバウトな情報が浮かぶ。

 

(おぉ分析出来た、凄いなこの体…………いや感心してる場合じゃないさっさと俺の主エネルギー源をコレに切り替えよう)

 

核エネルギーを生成する器官を生体式エイハブリアクターに作り替え、冷却剤の役割を果たしていた血液はそのままエイハブリアクターの冷却に使うことにした。

 

(順調順調!これまた随分と熱のやりくりが楽になりそうだな。そうすれば水が無くても第三形態にいけるかも……?よし!後はこのグレイズに最低20日は近づけないように周りを堀でも作っておくか!)

 

体内の大半が置き換わり、そのエイハブリアクターから溢れるエネルギーを使い、頭で周りを掘っていく。

 

(ボーブトブーブーズヤッテクレルカイ?ボーブトブーブーズイエス!ウィ!キャーン!ははは懐かしいなぁ!昔砂場でよく遊んだなぁ!)

 

あまりに上手く事が進み、俺は一つの重要な事柄を見落としていた。

 

 

【緊急!エイハブウェーブの反応あり!繰り返す!エイハブウェーブの反応あり!】

 

 

エイハブリアクターは独自のエイハブウェーブを発する事を。

 

(あ、やべ)

 




ファーストうっかり。


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巨大な影

全力疾走(立ち漕ぎの自転車くらい)で逃げる主人公
途中地雷源に突っ込み爆風で加速しつつ逃げる!


危なかった。全長は既にMS数機分とはいえ、背丈のサイズは5メートル程だったので、全力出して走った事と埋めてあった地雷のお陰でで人が見に来る前に離脱することが出来た。

 

(あっぶな!危ねぇ!エイハブウェーブの固有周波数とかすっかり忘れてた!)

 

今この状況で見つかると俺は只の怪物としか認識されないハズだ。

 

(転生したから■■■の未来を知ってるってのもあるし、■■■の皆には幸せになって欲しいからなぁ。)

 

何とかこちらは味方だというのを分かってもらう必要がある。

 

(クランク二尉がこの後決闘をしに来るハズだ、その時に味方に思える行動をしよう、うん)

 

しかし、この良く言ってキモカワイイとでも形容するしかない姿を見て、分かってくれるだろうかとすこぶる不安な俺だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

場面は変わってCGS執務室

 

「おいオルガ!お前辞めてく一軍の連中に退職金くれてやったんだって!?何で……って」

 

そう言い部屋に入ってきたユージン。

そして今正に辞めようとしている年少組の二人の仲間を見つけた。

 

「まさかお前らも辞める気か!?」

 

憤り掴み掛かる。

 

「やめろ!仕事には正当な報酬ってやつが必要だ。こいつらはよくやってくれた」

 

それを現CGSを乗っ取ったオルガが制止させる。

 

「なっ!じゃあ一軍の連中は!?」

 

「あいつらがここを辞めてどんな動きをするかは分からねぇ。信用に傷を付けられねぇようにな。俺たちがやるのはまっとうな仕事だからよ」

 

「信用?まっとう?ざけんな!今更どの口がそんな…」

 

それを遮りオルガが尋ねる。

 

「ユージン、頼んでた昨日のエイハブウェーブの反応と爆発音の件はどうだった?」

 

まだ怒りは収まらないようだったが、先に問題の報告をするユージン。

 

「あぁ、昨日は反応が一瞬で消えたからな、機械の誤作動かと思って機械の方を見に行ったがどこも壊れちゃいなかった。それで反応があった場所へモビルワーカーで行ってみたんだが」

 

そこで一旦言葉を区切り、

 

「タカキ達が埋めた地雷が全て爆発していたのと、昨日ミカがぶっ潰した敵MSが再利用出来ない位滅茶苦茶に壊れていて、その周りの土がまるでMS用の塹壕みてぇに掘ってあった」

 

「……本当か」

 

「嘘言ってどうすんだよ、マジだ。」

 

暫し考え込むオルガ。

 

「仮に敵だったとしても何で味方のMSを破壊して俺達の地雷に引っ掛かって、しかもこっちに何も仕掛けてこないのかが良く分からないね」

 

そう自分の疑問を述べたのはビスケット。

 

「もしかして巨大な化け物とか……」

 

年少組の片方がボソっと呟く。

 

「バカ!あれは見間違いだって言ったろ!」

 

それに即座に隣の少年が反応する。

 

「ん?化け物?何の話だ」

 

オルガが尋ねると先に発言した方の少年が答えた。

 

「最初の警報で俺達が向かった時、先を歩いてたこいつが爆発の煙の中をでっかい何かが逃げてくのを見たって」

 

「その後砂埃の見間違えだって言っただろ!」

 

少年兵とはいえまだ子供、周りの年長者にそんなオカルトじみた事を言ったのが恥ずかしいのだろう、語調を強めて話すのを遮ろうとする。

 

それを聞いてオルガは笑いながら、

 

「まぁ仮に化け物だったとして、何も仕掛けてこないってんならほっぽっといても問題ねぇだろうな」

 

「そうだね」

 

賛同するビスケット、

 

「ああ……ってオルガ!俺の話を流そうとするんじゃねぇ!!」

 

そして危うく話の流れに流されそうになっていたユージンであった。

 




主人公は基本()で喋ります。

……喋ると言うより脳内発言?

次回戦闘です。


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邂逅

オーリスのグレイズは主人公がモグモグしたので、バルバトスはまだ第一形態のままです。


さぁて夕方に成りました。

 

(俺のレーダー(?)だと此方に向かってくる左腕に赤い布を巻き付けたグレイズが見えるんだが……あ、警報が鳴った。)

 

CGSの方もにわかに騒がしくなってきた。

 

(よーし、俺の本気(第二形態)見せてやるぞー!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

【監視班から報告!ギャラルホルンのモビルスーツが一機赤い布を持ってこっちに向かってる!】

 

その報告を聞き、オルガ達は予算とクーデリアの扱いの話を一旦止めて様子を見に出てきた。

 

先に様子を見に出てき来ていたおやっさんがグレイズの腕に巻かれた赤い布を見て「あれは厄祭戦時代の決闘の申し込みだ」と周りに教えている。

 

……と思う!多分俺の記憶が正しければ!

 

何でこんなあやふやなのかと言えば、今俺はグレイズに皆が注目している間に襲うのに良いポジション目指して走っ……嘘です、這いずっているからだ。

 

夕方になるまで待っている間に体内のエイハブリアクターの調整をしていて今の所三機を並列稼働でさせつつエイハブウェーブを感知されないように頑張った。

 

これでかなりのエネルギーとステルス性を手に入れた俺は現在マウンテンバイクの全力疾走程度の速度を手に入れていた。

 

お、三日月がバルバトスに乗り込んだ。

 

 

 

『ギャラルホルン火星支部実働部隊、クランク・ゼント!』

 

『えっ?ああ~えーっと……CGS参番組、三日月・オーガス』

 

お互いに名乗りを上げ、

 

『参る!』

 

お互い一直線に相手へと突進する。

 

 

(よし始まった!俺の目的は隙を見て三日月の援護、後最後に飛んで来るであろうメイスの柄から皆を守る事だ!)

 

グレイズとバルバトスがお互いの得物をぶつけ合う。

 

『ねえ決着ってどうつけるの?どっちかが死ねばいいの?』

『その必要はない!』

 

グレイズが斧を振りかぶり、叩き付ける。

 

『コーラル…いやもともとこちらが欲していたのはクーデリアの命だけ、大人の争いのために子供が犠牲になることはないんだ!』

 

(アインはクランク二尉をかなり持ち上げてたけど、クーデリアの命を犠牲にするのはしょうがないと考えてる時点でこのおっさんも相当だよなぁ……)

 

『さんざん殺しといて……まあもういいよ、俺はオルガに言われたんだ。あんたを殺っちまえってさ!』

 

そう言うとバルバトスがそのガンダムフレームの象徴たる膂力でグレイズを弾き飛ばす。

 

(今だ!)

 

その瞬間、戦闘の砂埃に紛れて密かにグレイズの後ろに回り込んでいた俺はグレイズに飛び掛かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

瞬間クランク・ゼントは困惑した。自分は何かの夢でも見ているのではないか、と。

 

しかし瞬時に状況を把握し咄嗟にシールドを使い相手の噛みつきを防ぐ。

 

 

(何なんだコイツは!?こんな巨大な生物が存在するのか!)

 

 

遠くに佇むバルバトスを一見し、

 

(連携して襲って来ないという事は少なくとも相手の味方ではないようだな、ならば)

 

 

『何者だか知らんが!決闘の邪魔をするというなb』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

(うるせー!俺も混ぜろや!)

 

俺は巨大な尻尾をスイングさせクランクのグレイズをバルバトスの方へと投げ返す。

 

その時運良く左腕を潰した様だった。

 

(よし!畳み掛けるぜ!)

 

そのまま片腕でバルバトスと打ち合っている所に再び突っ込みバルバトスから視線を感じながら背後のブースターに噛みついた。

 

バランスを崩したグレイズ、そこにバルバトスのメイスのスイングが当たりフレームを歪ませながら吹き飛んで行く。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その頃三日月の一騎討ちを見守っていた仲間達は、

 

(何だアレ……?)

 

全員の心が一致していた。

 

CGSに代わる良い名前を考えてたオルガでさえ

第二形態が飛び出してきた瞬間考えるのを止めて(何だありゃあ……?)となっていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

三日月がメイスで吹き飛ばせば、すかさず俺が尻尾で打ち返し三日月の前に強制的に戻す。

 

(中の人にはホント同情するわーってヤバいあのグレイズの斧の振る向き的にメイスの柄に当たるわアレ)

 

直後予想が当たり、折れたメイスの柄がオルガ達の居る地点に向かって落ち始める。

 

(うおおおおおおおお間に合ええええええ!!!!)

 

俺はエイハブリアクターをフル稼働させ、オルガ達を守るべく突進を開始した。

心の片隅でコレ、オルガ側から見たら完全に襲いに来ている様に見えるよなあ……と思いながら。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

⬛⬛の予測通り、オルガの周りは大混乱に陥っていた。

 

当然である、先程から何故か三日月に味方するような行動をとっていたあの化け物が突然身を翻し、地響きを立てながら急速に此方へ向かってきているのだから。

 

「ヤバいぞアイツこっちに向かってきやがる!」

 

「おいオルガ!どうする!?」

 

「お嬢様こちらへ」

 

「フミタン!?」

 

慌てふためく大多数と唯一冷静にクーデリアを逃がそうと行動しているフミタン。

 

オルガはそのどちらとも違いじっと此方に向かってくる化け物を睨んでいた。

 

「オルガ!何ボーッと突っ立ってんだ!逃げるぞ!」

 

「慌てるなユージン、さっきからのアイツの行動を見てるとどうも俺達の味方をしてる様に見えないか?」

 

「はぁ?訳わかんねぇ事言ってんじゃねえよ!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

(よし!尻尾を伸ばせば多分届く!)

 

全速力を出したこともあってオルガ達に届く前に目標地点に到着出来た。

 

一瞬第三形態になったときの影響でちゃんと生えている左腕を一気に地面に突き立てる!

 

(行くぜ!秋津洲式戦艦ドリフト!)

 

 

左腕を軸にして俺の体が凄い速さで反時計回りに回りだす。

 

胴体はざりざりと摩りつつ、尻尾を持ち上げる!

 

(当たれええええぇぇぇぇ!!)

 

 

砂埃が立つが俺の謎レーダーはしっかりと落ちてくるメイスの柄を捕捉している。

 

 

そして尻尾がメイスの柄に当たり……

 

(よし!……って痛ええええ!!??)

 

……突き刺さった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「俺達を……守った……?」

 

ユージンが信じられないと言外に滲ませながら呟く。

 

化け物に気を取られ気付いていなかったメイスの柄をその化け物当人(?)が尻尾で防いだのである。

 

「オルガの言ってた事がマジなのか……?」

 

昭弘も眼を見張って呟いた。

 

「まぁいいんじゃねぇか?味方だってんなら心強いしよお!」

 

切り替えが早いシノは早速あの化け物を味方と認識したみたいである。

 

「三日月は!?」

 

クーデリアの叫び声に、ハッとした一同は意識を目の前の化け物から一騎討ち最中である三日月に向ける。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

コクピット内のクランク二尉はシンゴジラとバルバトスの吹き飛ばしラリーのせいで体中にコクピットにぶつけて出来た傷を負っていた。

 

『こんな……!私は正々堂々とした一騎討ちを……!』

 

瞬間、グレイズがバルバトスの蹴りで吹き飛んだ。

 

『さっき犠牲がどうとか言ってたけど……俺は犠牲になんてなってないよ。俺と俺の仲間のためにできることをやってるだけだ』

 

折れたメイスの先端部分を拾い上げる。

 

『で、取り敢えず今は……』

 

『うおおおおおおおお!!!』

 

機体から火花を散らしながら全身の無事なブースターを全開にし、斧を振りかぶって突進するグレイズ。

 

『あんたが邪魔だ!』

 

バルバトスは当たる瞬間に後ろへ避け、グレイズの斧を空振らせると、カウンターでメイスの先端に仕込まれたパイルバンカーをグレイズのコクピットに叩き込んだ。

 

グレイズの動きが止まる。

 

『……ふぅ』

 

力を無くし崩れ落ちる相手のグレイズを確認して、後ろを振り返る。

 

『……………、………』

 

微かに無線から声が聞こえてくるが、無視する三日月。

 

(これでコイツは片付いた。後は……)

 

『オルガ、そいつはどうする?』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(尻尾が痛ぇ!でもこれでダインスレイヴの予行練習にもなったし!レアアロイ鋼の解析も出来るし!……やっぱ痛ぇぇ!!三日月さん抜いてコレ!!)

 

俺の方といえば尻尾に柄が刺さった後、

皆に三日月の活躍が見れるようにさりげなーく移動しながら、レアアロイ鋼の解析をしつつ、誰かに抜いて貰うのを待っていた。

 

第四形態だったら軽く弾いていたのだろうが、今の俺は第二形態。外皮もまだ柔らかく普通に刺さった。

 

しかもシンゴジラは手が短いのだ。鉱物を分解する酵素も現在製造中であるが、そもそも鉄血世界のMSと武器はべらぼうに丈夫であり、しかも俺の生体エイハブリアクターと反応して性能がアップしていて中々溶かせられない。

 

なので今はMSに乗っている三日月に頼るしかないのであった。

 

 




台詞キャンセルではなく台詞そのものを無かったことに……

流石だぜミカァ!


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君の名前は

主人公の心の中

三日月さーん!!たーすーけーてー!!


『オルガ、そいつはどうする?』

 

バルバトスに乗ったミカがスピーカーを通して尋ねてくる。

 

「ああ、今までの行動を見るに敵では無さそうだからな、こっち来て尻尾に刺さってるヤツ抜いてやってくれ」

 

『わかった』

 

そう言うとミカのバルバトスがブースターを吹かし此方へ移動し始める。

 

「おい、オルガいいのかよ?偶々俺達を守ったように見えるだけじゃねぇのか?」

 

ユージンがそう訊いてくるが、

 

「いや、俺達を認識していねぇならわざわざ尻尾使って怪我してまで俺達を庇う必要はない。少なくともコイツは俺達の事を認識している、庇ったのはどういう意図なのかは解らねぇがな」

 

「それと俺達の言葉は認識できるみたいだな」

 

その昭弘の言葉に周りのメンバーが化け物の方を向くと、

 

 

『いい?抜くよ』

 

とのミカの言葉にコクコクと首を縦に振って、いいよの合図を送っている化け物の姿があった。

 

 

 

「意外と可愛らしいですね」

 

「フミタン!?」

 

「どういう感性してんだアンタ……」

 

遠くではその姿に早速愛嬌を感じている者が一名いる様だった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バルバトスから三日月が降りていく。

 

(ありがとう三日月さん一生ついてくわ)

 

三日月さんがオルガ達と合流し、話し合いが始まったようだ。

 

(まぁ俺の高性能ボディを持ってすれば小声で話していても聞き取れるんだなコレが!という訳で聴くか)

 

耳を傾けようとしてふと重大な事実に気が付いた。

 

(……俺、耳無いハズなのにどうやって聞いてるんだ?)

 

つくづく謎の多いシンゴジラの体であった。

 

 

 

「で、オルガこいつどうする?飼うの」

「飼うって……何食うのかわかんねぇぞ」

「なら……アトラに言って夕飯の残り持ってきて貰おうか」

「おい待てお前ら!何で飼う前提で話進めてんだ!ライドもあんまり近づくんじゃねぇ危険だろうが!」

「お前は心配し過ぎなんだよ、見ろよあの目。俺達の仲間になりたそうな目をしてるじゃねぇか」

「それはお前の目がおかしいだけだシノ!」

「いや、皆見てみろ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「おーい、お前鉄華団に入りたいのか!?」

 

ライドが近付いてきて何かと思ったら、思わぬ言葉が。

 

驚きで固まっていると前方でユージンが戻ってこいと怒鳴り始める。

 

(……ハッ、このチャンス逃す訳には!)

 

 

全力で首を縦に振る。

 

(イエース!水と空気があれば生きていけるので食費も掛かりませんぜ!)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

見るからに肯定の意を示している化け物。

 

これにはユージンも目の前の化け物はコミュニケーションが取れる相手だと認めた。

 

「マジかよ……」

 

「ほら見たかよユージン!アイツ俺達の仲間になりたいってよ!」

 

「分かったからそのドヤ顔止めろ!」

 

シノが早速ユージンをからかう。

 

 

そんな雰囲気の中、

 

 

「やらかしてくれたなぁ!三日月よお!」

 

トドが登場した。

 

「ギャラルホルンを完全に敵に回しちまってどうする気だぁ?資金もマトモに調達出来ないってのに」

 

「それについては何とかなります」

 

クーデリアが前に進み出る。

 

「私の護衛任務を続けてください」

 

「はい?」

 

「そうすれば当面の活動資金はなんとかなるのでは?」

 

「お嬢様、それは」

 

フミタンがクーデリアに耳うちするが、クーデリアはお父様の許可は必要ありません。と遮る。

 

「資金を出してくれる人物には当てがあります。独立運動のスポンサーとして私を支えてくれていた人物、ノブリス・ゴルドン」

 

その名を聞き、皆が誰?となる中トドだけは、

 

「ノブリスっていやあ、確かすんげぇ大金持ちだって話だが」

 

と呟いた。

 

「だったら資金的には一息つける」

 

安堵のため息を吐くビスケット、それを聞いてタカキが

 

「そうですよ!それに俺らには三日月さんとモビルスーツがある!それにあのデカイ奴もいる!ギャラルホルンなんて怖くないですよ!」

 

「だな!」

 

と気炎を上げ、シノもそれに同意する。

 

ユージンとトドだけはそんな楽観的なと考えているようだが、大多数の団員はイケるんじゃないか?という希望を持ち始めていた。

 

 

そんな団員達の雰囲気の中

 

「引き続きのご利用ありがとうございます。俺達鉄華団は必ずあなたを無事地球まで送り届けてみせましょう」

 

オルガがクーデリアに対して言葉を述べる。

 

「ちょ、待てよオル「鉄華団ってなんすか?」」

 

ユージンの突っ掛かりがタカキの質問に遮られる。

 

「俺達の新しい名前だ、さっき決めた」

 

「うわカッケぇ!」

 

「待てよ、何勝手に決め「団長~!こいつの名前は~!」」

 

今度はライドに遮られる。

 

「そうだな……俺達新しくなった鉄華団の新団員だからな、シンってのはどうだ?」

 

「はぁ何だよそのダッセえ名前は……」

 

「良いじゃねぇか!俺の名前と似てて!」

 

シノは自分の名前に似ているので気に入った様だ。

 

「大体そんな名前じゃアイツも気に入らねぇだろ……」

 

「いや、喜んでるように見えるな」

 

昭弘が呟く。

 

「はぁ?」

 

ユージンがシンの方を向くと、ライドにシンと呼ばれる度に、我が意を得たりとでも言わんばかりに首を振るシンの姿があった。

 

「……ッ!だったら鉄華団ってのは!」

 

 

「鉄華団にシンかぁ……いいですよね!三日月さん!」

 

タカキが三日月に話しかける。

 

「うん、いいね」

 

その言葉を聞いて三日月がそう言ったのならもう何言っても変わらないとユージンは思ったが、

 

(もっとこう……あるだろうがよ!ジャスティスとか……ダークナイトとか……!)

 

 

もし仮に誰かに聞かせたら「団長の方が100倍良い!」と言うこと間違いなしのモノばかりであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「大体飼うにしてもこんなデカイのどう飼うってんだ?」

 

飼うことについては一応受け入れたユージンが早速問題になりそうな事柄に疑問を発する。

 

「アトラに言って何か持ってきて貰うよ」

 

「何食うにしても、辞めてった一軍共の食料全部回しても足りるのか?」

 

「おいライド!ソイツに何食べるのか聞いてみてくれるか!」

 

まずは聞いてみようと、オルガが一番近くにいるライドに指示を送る。

 

「はい!団長!……あー、聞こえてたかもしれないけど、お前何食べるんだ?……って聞いても答えられないか」

 

ライドは少し悩み、

 

「よし!じゃあ俺がどんどん言ってくから食べれるものがあったら頷いてくれよ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(そう言われても、俺何も食べないんですけど……)

 

取り敢えずライドが食料の候補に言う度に首を横に振っていく。

 

(どうしたら伝わるか……いや、この見た目で「霞食って生きていける完全生物です」なんて信じれるわけないよなぁ……)

 

(あ、そうだ俺が常識の外に居るって解って貰えればいいんじゃないか?)

 

手っ取り早い方法と言ったら……

 

(形態変化!!!)

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

先程からライドがシンに思い付く食材、料理を言っていくがその中の一つもシンが首を縦に振るものはなかった。

 

「おいオルガ、アイツマジで何食べるんだ?」

 

シノが疑問を呈する。

 

「俺らが用意出来る餌、ライドが言ってるのでもう殆ど網羅してんぞ?」

 

ユージンも同じ疑問を持った様である。

 

その瞬間急にシンが身を翻しライドから距離を取るように移動し始めた。

 

「何だ、何する気だ?」

 

「ライド!一旦戻ってこい!」

 

オルガの指示でライドが皆の元へ戻ってくる。

 

 

それを確認するやいなや、シンは急に体を赤く発光させ始めた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(二回目の形態変化だー!)

 

体を赤く光らせ、体のエネルギーを体構造の変化に全て回す。

 

(エイハブリアクターは全て切る。デカさがネックなら全身の残ったエネルギーを消費しつつ形態変化すれば丁度サイズダウン出来てしかも第三形態に成れるハズだ)

 

映画で見た第三形態を思い起こす。

 

(映画の描写では第三形態に進化した時に放熱が追いつかなくなって慌てて第二形態に戻って東京湾に出ていた。つまり進化するのにはかなりのエネルギーが必要になりかつ熱エネルギーも発生する、しかし第三→第二へと退化するのにはエネルギーも殆ど要らず、熱の発生も少ない。現に砂漠で第三形態に成り掛けて慌てて第二形態に戻った時に放出された熱が少なかった事がこの考えの裏付けになる)

 

手順としては体に残ったエネルギーを消費して進化し、体を縮めつつ放出熱で熱くなった冷却液、つまり血を放出して体温も一定に保つ!

 

(普通だったら冷却液が足りなくなって熱がヤバいことに成りそうだけど、体の方も縮めてるから必要な冷却液も少なくて大丈夫!)

 

凄い効率の悪いダイエットみたいなものだ!

 

問題は大出血起こしてるように見えることですよ。

 

(まービジュアル面ではひじょーに宜しくないので、蒸気で隠させて貰いますね)

 

 




という訳で《シン》と成りました。

安直だって言わないで!


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鉄華団のマスコット

蒲田くんから品川くんへ。


(よーしOK!二本足で歩けるし体色も赤で段々第四形態に近づいてきた!)

 

今の俺の見た目はシンゴジラ第三形態であり身長は立って1メートル半程になっている。全長は尻尾が長いから3メートル弱だ。

 

(鉄華団の皆の反応は……)

 

「な……え?」

「縮んでるね」

「何でオメーは素直に受け入れられんだ!?有り得ない縮み方してんだろアレ!」

「すっげえな!流石俺の名前と似てるだけあるな!」

「それは関係ないよシノ……」

 

(う~ん、好評?)

 

まあこの大きさなら宇宙にもついていけそうだな。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

近づいた俺に、再度ライドに今のサイズなら何を食べるのかと聞いてきたが、首を横に振っておいた。

 

その後ビスケットが気づき、まさか何も食べないとか……?の言葉に全力で頷づくと皆驚いた顔をしていたが、おやっさんが俺がエイハブリアクターみたいな自力のエネルギーを確保している可能性を思いつき、それに皆納得していた。

 

(この世界にエイハブリアクターなんて半永久的にエネルギーを生み出すトンデモ装置があるからすぐに納得出来るんだろうけど、俺の世界だったら捕獲→研究材料コースだろうなあ……)

 

何はともあれ、無事鉄華団に入れた俺だった。

 

 

 

鉄華団に入った俺はせっかく団員になったんだからということで、鉄華団ジャケットの特大サイズを着ることになる。

 

それを着てひょこひょこ三日月さんの後ろをついてまわったりMWとバルバトスの整備を手伝ったりして日々を過ごしていた。

あと、アトラと初対面でホント驚かれた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「えぇ!?三日月!?その……後ろにいるのは……?」

 

「ああ、アトラは初めて会うんだっけ、新しく入った団員」

 

「団員なんだ!?大丈夫なの?噛みついたりしない?」

 

「ダイジョブだって、ほら」

 

その後二人に撫でられた。

 

 

 

(誤解が解けて良かった~この見た目だとやっぱそうなるよなぁ……)

 

これが第四形態になって更に凶悪になったらどうなるのか、ちょっと憂鬱になる俺だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ライドと遊んでいた所にオルガがやって来て、正式に鉄華団の名前が登録された事と、鉄華団のマークをライドに考えてくれと言ってきた。

 

(そういえばあの鉄華団マークってライドが考えたんだよなぁ……)

 

考え出したライドをそっとしておく為、こっそり立ち去った俺はそのままオルガとビスケットについて行きクーデリアを地球に送り届ける為の会議室へ向かっていた。

 

途中トドが悪巧みをしているのが聞こえてきたが、

 

(この人がいないと宇宙へ行く切欠が出来ないからな……今は放っておくしかないか)

 

一応睨みつけてそのままオルガについて歩いていった。

 

 

 

 

会議の内容は予測通りで、航路は全てギャラルホルンの監視下に有り、裏ルートを通る必要がある事。

 

またその裏ルートにも民間業者間の縄張りがあり、トドがオルクス商会の人と話をつけること、で一旦会議は終了した。

 

オルガ達と別れて今度はおやっさんの手伝いに向かう。

 

「おう、オメェか」

 

挨拶してくるおやっさんにひょいっと頭を下げる。

 

「じゃあ悪ぃがあそこにあるバルバトスの補給ケーブル此方まで引っ張ってきて貰えるか?」

 

コクンと頷き歩きだす。

 

ここ数日で整備の手伝いをしてて、意外と頭が良く細かい作業も出来ることに気付かれて仕事を任せて貰えるようになっていた。

 

(全部エイハブリアクター様々だなぁ)

 

本来だったらズシンズシンと歩くのだろうが、エイハブリアクターのお陰でひょこひょこと早く歩くことが出来る。

 

(エイハブリアクターの慣性制御とこの体元々のパワーが合わさり最強に見える……ってね)

 

 

その日は夜までおやっさん達の整備を手伝った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一回目の会議から数日後。

 

二回目の会議も終わりに近づいていた。

 

今はユージンとトドがピンはねがどうとかで言い争っている最中である。

 

(正直トドがオルクス商会との取引でピンはねしてるのとかはどうでもいい)

 

(問題は……)

 

「地球に行くメンバーも選ばないとね」

「残るヤツらはどうすんだよ?」

「この間の戦利品の売却とこの時期ならいつもどおり農園の手伝いだな」

 

(何としても宇宙に行く船についていく事!!)

 

「みみっちいこと言いやがって。シケてるぜ」

「でかい仕事には危険が付きまとう。マトモな仕事ってのは地味なもんだろ」

 

(ここで宇宙へ行かないと色々死ぬ!最悪地球にも行けない可能性が有るし……)

 

 

「それじゃあ地球に行くメンバーは……」

 

ビスケットのその声を聞くや否や、俺は一声吠えた。

 

「うぉお、なんだコイツ急にビビらせやがって」

 

グチグチ言うトドは無視し、オルガの事をじっと見つめる。

 

「……着いていきたいってか?」

 

(流石団長!!)

 

首をブンブン振る。ついでに尻尾も。「痛ぇ!何しやがんだ!」トドに当たった様だが無視。

 

「でもオルガ、シンは結構大きいし只行きたいからって連れていく訳には……」

 

「いや、コイツは整備班の手伝いを良くしてるって話だ。それにおやっさんからの評価も高い。只でさえ整備班は少ないからな、数は多いに越したことはねぇ」

 

「おやっさんが?」

 

驚くユージン、

 

「あぁ俺も実際見るまで信じられなかったが、昨日見に行った時にヤマギと混ざってモビルワーカーの整備をしててな。おやっさんに話聞いたら頭もいい上、細かい作業も尻尾でこなしてるらしくてモビルワーカー程度の整備ならもう殆ど任せてるそうだ」

 

「そっか、ならシンも一緒に連れて行った方が良いみたいだね。宇宙では何が起こるか分からないし」

 

それを聞いたトドが発言する。

 

「オイオイ!本当にこんな何考えてんのかわかんない奴を連れて行く気か?」

 

(何考えてんのかわかんない奴って……まぁこの目と見た目ならそうなるだろうけどさ)

 

そう俺が思っていると、

 

「本気だ。それとお前がどう考えるのかは自由だが……コイツは鉄華団の仲間だ。その俺達の前で仲間の悪口を言うとはいい度胸じゃねぇか」

 

(団長……!!)

 

感動してる俺をよそに、トドは「いやぁ別に悪口ってわけじゃあ……ほら愛嬌があるっていうか……」とおべっかを使いながらそそくさと出ていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

トドが出ていった後、

 

 

「トドさんには分からないみたいだけど、よく見てれば表情とか分かるよね」

 

(マジで!?俺の表情読めんのビスケットさん!?)

 

驚きで固まった俺にユージンが話し掛ける。

 

「今は驚いてるよな……フッ確かに俺でも分かるのにな」

 

(ユージン……!)

 

「あぁ、まあアイツみたいな根っから腐った大人には一生分からんさ」

 

(団長カッケエ!!)

 

皆の言葉にかなりジーンときた俺だった。

 




鉄華団ジャケット羽織ったシンゴジラ

可愛い(確信)


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桜農場とチョコの人

謎レーダー大活躍


数日後、俺はおやっさんの整備を手伝う他に三日月さんに誘われて桜農場の手伝いもするようになっていた。

 

今日はどうするかと考えてながら歩いていると、向こうからクーデリアを連れた三日月さんが歩いてくる。その後ろにフミタンもついてきていた。

 

(ってことはクーデリアがノブリスと話して、俺達を犠牲にしてしまうんじゃないかって悩んでる所か)

 

向こうで三人とも気が付いた様で、こっちも桜農場についていこうと三日月さんの方へ走り出す。

 

(犠牲か……まぁ俺が居る限りそんな事態にさせるつもりは無いけどね)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「シンさんですね」

 

真っ先に気付いたフミタンが呟く。

 

「あの三日月、シンさんが凄い勢いで此方に向かって来ているのですが……」

 

戸惑うクーデリア、しかし三日月は何時もと変わらず、

 

「別に問題ないよ。アイツも連れて行くつもりだったから」

 

そう言えば出かけるとしか言われてなかった事に気付いたクーデリア。

 

「連れて行く……とはこれから向かう場所にですか?」

 

そう話し掛けると三日月も簡潔に答える。

 

「そう。桜ちゃんがやってる農場」

 

「農場ですか……時々見かけないと思っていましたけど、三日月の手伝いをしていたんですね」

 

何度かあの特徴的なフォルムが見かけない事があって疑問に思っていた。そして見かけない日は何故かフミタンの機嫌が悪いのだ。その事に他の人は気付いていないが長い付き合いであるクーデリアは気付いていた。

 

「今は収穫の時期だから」

 

 

そして、シンと合流すると先に車で待っていたビスケットと共に車で桜農園へと向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

農園に着いた俺達は早速トウモロコシの収穫を開始した。

 

どんどん収穫したモノを籠へ入れてゆく。

 

(向こうではアトラと三日月さんがラブコメの波動をだしてるなぁ~)

 

そんな事を考えてる俺の横では、

 

「随分と器用に尻尾を使うのですね」

 

何故かフミタンが作業していた。籠にはもう半分以上トウモロコシが入っている。

 

 

尻尾、これも必要に迫られて第四形態になる前だが口を付けた。

 

尻尾ビームはまだ撃てないが、それを使ってトウモロコシのの根っこを噛みきり、近くに置いておいた籠の中へ放り込んでいく。

 

(アンタはクーデリア放っておいていいのか?)

 

そんな意味を込めて鳴き声を出すと、

 

「お嬢様様でしたら心配は要りません。楽しんでいらっしゃる様なのでこのままで宜しいかと」

 

(え、俺の声で分かるの!?フミタン凄ぇ!)

 

その後も何故か会話が成立しながらトウモロコシの収穫を続けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

近くにあった籠が全て満杯になったので、フミタンに尻尾に結んで貰い一気に運ぶ。

 

(えーっと今の状況は……)

 

この辺り一帯の状況をレーダーで探る。

 

(ん?クーデリアと三日月さんが会話してる……?やべぇ!クッキーとクラッカーが車に轢かれそうになるんじゃねぇか!?)

 

 

急いでクッキーとクラッカーの位置を特定して走り出す。

 

(いくら原作で無事だったとはいえこの現実で無事になるとは限らない!)

 

今の俺は小型になったお陰でかなり速く走れるのだ。

 

前方で笑い合いながら車道の方へと走っていく双子を見つける。

 

(レーダーに車の反応あり!急げ俺!!)

 

体内のエイハブリアクターをフルで働かせ桜農場の農道を駆け抜ける。

 

そして、

 

(よし!間に合った!)

 

車が来ていることに気が付き固まってしまった二人の前に飛び出し、足を踏ん張りエイハブリアクターの出力を全開にする。

 

(車が壊れるかもしれないが、知ったことか!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なっ!?子供が!?」

 

前方に飛び出してきた二人の子供に気付いたガエリオがハンドルを切り急ブレーキを踏む。

 

しかし荒野を走っているのとスピードを出していたことも有り、ガエリオの努力空しく車は砂埃を立てながら二人にあと何秒かで激突する所まで来ていた。

 

その時、

 

「何だアレは!?」

 

止まってくれ、と祈りながら見ていた前方に急にトカゲの化け物と表現するしかない生き物が飛び出して来てガエリオが驚きの声を上げる。そしてその化け物は、

 

まるで双子の楯となるように体を丸め、車と衝突した。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

急ブレーキの音を聞いた三日月達が駆けつける。

 

そこには倒れた双子、そして車から双子を庇って楯となったシンの姿があった。

 

「シン!?」

 

驚いた声を上げる三日月。

 

すると車体側面のへこんだドアから蒼い髪色をした男が出てきた。

 

「お……おい、お前達大丈夫か?」

 

動かないシンの体を回り込み、その影で震えながら体を抱き締め合っている二人の無事な姿を確認する。

 

「良かった……この化け物がクッションになったみたいだッ!?」

 

ガエリオのその物言いと仲間を傷つけられた事にキレた三日月がガエリオの首もとを掴んで吊し上げる。

 

「ちょ……お前何を!?」

 

ガエリオはもがくも三日月は意に関せず力を込めて首を絞めていく。

 

「た、助け……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

(お……思ったより強い衝撃がきたな)

 

俺は先程の姿勢から微動だにしていなく、足だけ地面に少しめり込んでいるだけだった。

 

ただ、体は無事なものの双子を守るために全衝撃を余すところ無く吸収した結果、今の俺は軽い脳震盪の様な状態だった。

 

(あの車軍用の頑丈な奴だし、俺の体だってサイズ小さいからなぁ……宇宙行ったら真っ先にサイズ大きくしないと)

 

一応、今の車による衝撃で体がその攻撃について学習したようで、衝撃に多少強くなった様だった。

 

(機能は全復旧。えーっと周りはフミタンがクーデリアをトウモロコシ畑の茂みへ隠していて……ん?ガエリオ首絞められてるー!?あれ?双子は無事なのに?……あ、俺の為に怒ってるの?ありがとう三日月さんホント一生ついていきます!でも取り敢えず今は!)

 

あわてて俺は一声鳴き、三日月さんに無事である事を伝える。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

鳴き声に気付いた三日月がガエリオを下ろしシンの元へ駆け寄る。

 

「無事?」

 

コクコクと頷くシンの姿を見て三日月の顔に安堵の微笑みが浮かぶ。

 

後ろでは咳き込むガエリオがいたが気にせずシンの頭を撫でる。

 

そこに桜ちゃんが到着した。

 

「クッキー、クラッカー。何があったんだい」

 

「私たちが飛び出しちゃって…」

 

とクッキーが答え、

 

「シンが助けてくれたの……」

 

クラッカーも答える。

 

「そこで咳き込んでるのは三日月がやったのかい」

 

「そうだよ」

 

「……状況をろくに確認もせず締め上げたと?」

 

桜ちゃんは呆れを滲ませながら三日月に事実確認をする。

 

「うん」

 

その時、車の助手席からもう一人金髪の男が出て来た。

 

「いや、こちらも不注意だった。謝罪しよう。あの大きなトカゲが君達を庇ってくれていなかったら今頃大怪我をさせてしまっていただろうからね」

 

その言葉に漸く回復したガエリオが突っ掛かる。

 

「おい、マクギリス!俺はこいつにいきなり首を絞められたんだぞ!」

 

「そこのトカゲ君は無事かな?」

 

「無視するな!」

 

それに答えるようにシンも鳴き声で返事をする。

 

「……驚いたな。言葉が分かるのか?」

 

「そうだよ!シンはね、スッゴく頭がいいんだよ!」

 

「それに、尻尾も器用で凄いんだよ!」

 

双子が返事をする。それを見て一応全員無事だと分かった桜ちゃんが三日月に釘を刺す。

 

「昔っからカッとなるとすぐこれだ。気をつけな」

 

「ごめん。桜ちゃん」

 

謝る三日月、しかしそっちではない。

 

「謝る相手が違うだろ。まったく……」

 

そう言ってガエリオの方を示す。三日月はガエリオの方を振り返り、

 

「あの……すいませんでした」

 

「何がすいませんだ!」

 

それを気に食わなかったガエリオが三日月に殴り掛かる。

咄嗟にマクギリスが諌める声を出すもガエリオは拳を振りかぶり……

 

 

シンの尻尾のスイングを強かに叩き付けられ、車の開いたドアから頭を縁にぶつけながらダイナミックに再乗車させられた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ガエリオが目の前の少年に殴り掛かったが私の予想に反して少年が避ける事無く、代わりに大トカゲ……確か【シン】と言ったか、に尻尾で打ち据えられ結果的に元の車内へ強制的に戻っていった。

 

 

 

「あ~、その人生きてる?」

 

その少年の言葉にガエリオの文句を言う声が聞こえてこない事に気が付き、駆け寄りガエリオの様子を見るとシートに突っ込んだ体勢のまま動かない。

 

「生きてる、ただ気を失っているだけの様だ」

 

シートに座らせてざっと診るが血も出ていなく大した怪我はしていない。

 

「シンも三日月と同じかい……」

 

老婆が嘆息をつく。トカゲと人間、姿は違えど仲間を傷つけようとする相手には容赦しないのは同じ様である。その事にあの老婆は頭を痛ませているのだろう。

 

(ん……あれは?)

 

ふと少年の首の後ろに棘の様なモノが三本突き出しているのを発見する。

 

(あれは……【阿頼耶識システム】か。人の体に埋め込むタイプの有機デバイスシステム、未だに使われていると聞いたことはあったが……ガエリオ、いや地球に住む者がこれを見たら気分を悪くするか卒倒するだろうな)

 

かぶりを振り、阿頼耶識システムを見た瞬間に心の中から湧いてきたアグニカ・カイエルの伝説と自身の野望を振り払う。

 

(そろそろ基地へと帰らねば……おっと、その前に)

 

ポケットの中からお菓子を取り出しつつ、シンと戯れている双子に近づく。

 

「怖い思いをさせてすまなかったね。こんなものしかないが、お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか」

 

双子は笑顔でそれを受け取り、お礼を言ってきた。

 

念のために医者に診せておく事と私の名前を伝え何かあったらギャラルホルン火星支部へ、と老婆に伝える。

 

そして二人の少年の方へ向き質問をする。

 

「そういえば、この付近で最近戦闘があったようなのだが、君達は何か気付いた事はないか?」

 

それに太った少年の方が答える。

 

「そういえば2~3日前ドンパチやってる音が聞こえたような……けど近くに民兵の組織があるからそこの訓練かなって……ねっ?」

 

そう言ってもう一人細身の少年の方へ下手なアイコンタクトをとる。

 

「うん」

 

口数少なく答える。阿頼耶識といい、何か隠しているのは明白だか……

 

「なるほど。ご協力感謝する」

 

ここは放置する事にした。今ここで事を荒立てる必要も有るまい。

 

「そこの……シン君だったか、君にも謝っておこう。ぶつかってすまなかった」

 

それに答えてシンが一声鳴く。

 

「気にするな……だってさ」

 

(フム、本当に頭がいいのだな)

 

驚きつつ、車に乗り込む。車を発進させてふと後ろを振り返るとシンが尻尾を振っていた。

 

苦笑しつつ軽く手を振り返す。

 

(帰ったらこの事をアルミリアに話したら信じるだろうか?)

 

いい話の種になる事は間違いないだろう。

 

「おいガエリオ……まだ気絶してるか」

 

気絶したガエリオを乗せ、運転しながら思考する。

 

 

(農場の少年の証言どおりあの近くにはCGSという民兵組織が存在していたが、経営者が替わり社名も変更になっている。新しい名前は鉄華団、消したかったのは名前だけかそれとも……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

農場から帰ってくると、基地の壁にでかでかと鉄華団のマークが描いてあった。

 

(おお……そう言えばこんなマークだったっけ)

 

遠くでは三日月さんと団長が話していて、シノとライド、タカキがデザインについて話している。

 

(そうだ……俺がこの場所と仲間を護っていくんだ……)

 

あの未来の結末が脳裏をよぎる。

 

 

(させるかよ、そんな未来)

 

 




因みにこの作品ではガエリオの人生結構ハードになるかもしれません。

次回宇宙へ。


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宇宙へ





今は夜、俺は三日月さんと基地の見張りをしていた。

 

(ぶっちゃけ目視よりレーダーの方が範囲と精度共に上だし、三日月さんには休んでて貰いたいんだけどなー)

 

現在俺のレーダーに反応してるのは地上で星を眺めてるクーデリア位である。

 

(あー寒くないのかねぇ?三日月さーん?)

 

軽く唸るとそれに気が付いた三日月さんが窓の外を見やり、窓を開けてクーデリアに声を掛けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

毛布を取りに行って戻ると丁度クーデリアが上がって来た所だった。尻尾を使ってクーデリアに渡す。

 

「あ……ありがとうございます。シンも三日月と一緒に見張りをしているのですか?」

 

首を縦に振って肯定の意を表す。

 

「見張りはいつもはやらないけど今は交代でやってる。ギャラルホルンがいつ来るか分からないから」

 

三日月さんが懐を探り「食べる?」と言ってクーデリアと俺に火星ヤシを渡してくれた。

 

(お、初めて食べたけど……初めて?)

 

何故か初めて食べたハズだが既視感を感じる。

 

(……まぁいいや美味しい事に変わりはないし)

 

見ればクーデリアはハズレを引いた様だった。「それたまにハズレが混ざってるんだ」と悪戯が成功した顔で説明する三日月さん。

 

(……三日月さんもしかしてワザとハズレ渡しました?)

 

当たりで良かったーと思いつつ、でもちょっとハズレの方も食べてみたかったかなと思った俺だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

場の雰囲気が和んだ所で三日月さんがクーデリアに話し掛ける。

 

「……オルガは一度やるって言った仕事は絶対にやり遂げる。だから俺もあんたを絶対に地球まで連れていくよ」

 

三日月さんのその言葉に、

 

「わ……私は私の戦いを頑張ります。私には私の戦い方がある、その事にここに来て気付いたんです」

 

クーデリアも自らの思いを伝える。

 

その言葉に僅かに頷く三日月さん。少しした後、窓の外の星が輝く夜空に目をやり、クーデリアに話し掛ける。

 

「そうだ、地球に行けば月って見えるかな?三日月って名前そっから取られたらしいから」

 

「月は厄祭戦で大きな被害を受けて、今では霞んでしまったと聞いています」

 

「そっか、見えるといいな」

 

「はい……本当に」

 

 

(……いい雰囲気過ぎて俺の存在感が皆無!外の見回りに行った方が良かったかね?ま、今は邪魔をしない為に俺はレーダーに徹しますかね)

 

そうして夜は更けていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

翌朝、

 

「私を炊事係として鉄華団で雇ってください!女将さんには事情を話してお店は辞めてきました!」

 

朝御飯を食べてる三日月さんの横で火星ヤシを貰っていると、食堂の入り口にアトラが現れるやいなや大声で鉄華団に入りたい旨を告げてきた。

 

「いいんじゃねぇの?なあ?」

 

「アトラのご飯はおいしいからね」

 

と直ぐに団長と三日月さんが反応する。

 

突然の事で反応出来なかった皆も二人の反応を見て賛成し出した。

 

(家事関係が殆ど出来ない鉄華団にとってアトラは貴重な戦力だよなぁ)

 

むしろ頼んででも入って欲しい人材である。

 

その皆の歓迎する雰囲気にアトラも、

 

「あ……ありがとうございます!一生懸命頑張ります!」

 

と返していた。

 

 

皆の気分が盛り上がった所で団長が立ち上がり、

 

「よ~しお前ら!地球行きは鉄華団初の大仕事だ!気ぃ引き締めていくぞ!」

 

と気炎を上げる。意気込んだ団長のかけ声に各々反応して歓声を上げる鉄華団のメンバー。

 

ほぼ全てのメンバーの気分が高揚している中、ユージンだけは冷静にギャラルホルンを敵に回している今の状況のマズさを考え、トドはほくそ笑んでいた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

翌日、俺は三日月さんが搭乗するバルバトスと共にシャトルの格納庫に入っていた。

 

(まーそうなるわな、俺に対応した席、なんて有るわけないし)

 

それに団長に頼まれた事もある。

 

さっきまで暇なので三日月さんと無線で会話していた。

今は三日月さんに連絡が入ったので俺は黙っている。

 

因みに、何で伝わるのか分からないが、三日月さんだけは俺の鳴き声から完璧に俺の言いたい事を理解していた。

 

三日月さん程ではないが、昭弘とフミタンは俺の鳴き声から言いたい事を大体理解出来た。

 

他の鉄華団の面々は鳴き声から大体の感情を読み取ってくれる。

 

それを知って俺が考えた事はただ一つ!

 

(意思を伝達出来るって素晴らしい!)

 

この見た目で俺が鉄華団に馴染めたのも意思の疎通が出来たという事が大きいと思う。

 

そんな事を考えているとバルバトスの三日月さんから声を掛けられた。

 

『シン、オルガから連絡。もうすぐ出発だって』

 

(了解しました三日月さん!)

 

一声鳴いて尻尾を使って体をワイヤーで床に固定していく。

 

何故最初から体を固定していなかったのかと言うと、団長に言われてハッチが開くと同時スモークが炊かれるように準備していたからだ。

 

(さあ!いよいよ宇宙だ!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして10分後、マスドライバーが作動し俺達を乗せたシャトルは一気に滑走路を駆け上がり、

 

……火星の大地の遥か上空、宇宙に到達した。

 

 




(宇宙キター!!)


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シュバルベグレイズ二機の狩猟

シンの今の大きさですが、ユニバーサルユニットのバルバトスとガシャポンのHGゴジラ2016を並べると想像しやすいかもしれません。


【挿絵表示】




宇宙に出てから少し、体を固定していたワイヤーを尻尾で解く。

 

そして俺は宇宙でも自由に動けるようにする為にまた形態変化を開始した。

 

(体内で推進剤を生成……出来た。おやっさんの整備の手伝いで手に入ったデータだからバルバトスのと同じだろうしまあ平気だろう)

 

体を動かしてどこに噴射口を作るか考える。

 

(まずはエラだよな、第四形態になってたら退化しきってたと思うし、 また1から造り出すの多分面倒くさいだろうから第三形態のままでいて良かった)

 

エラから推進剤を出して無重力の格納庫を飛んでみる。

 

(う〜ん……自由度が低い、それに遅い……そうだ!いずれ背鰭からもビーム出すし背鰭に推進剤出る箇所を作るか!あとは……足!)

 

ぐもももと体を変化させていく。

 

作った推進剤を運ぶ為に、核からエイハブリアクターに変えた際に過剰になった血管による冷却機構をそのまま推進剤を通す管に改造する。

 

(よーし!ちょっと動いてみるか!)

 

その時、格納庫の外から何かが張り付く音がしてきた。

 

(……おいでなすったか。仕方無い、実地で微調整するまでだ!)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

一方コックピットの方は大騒ぎであった。

 

「モビルスーツから有線通信!『クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を引き渡せ』とか言ってますけど〜 !?」

 

ギャラルホルンのモビルスーツ。移動速度、攻撃力、防御力、全てに於いてこのシャトルを上回っている相手が自分達に狙いを定めている。

 

自分の命が相手の掌の中にあるこの状況、慌てるのも当然である。

 

当然トドは真っ先にクーデリアの身柄を差し出すように言い、クーデリアも自分を差し出せば皆の命が助かるというのならと発言した。

 

が、オルガはその両方の考えを却下した。

 

そして、「シン ! ハッチを開けろ!」と格納庫にいたシンに命令を告げた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

(了解!!いきまっせ三日月さん!!)

 

三日月さんに鳴き掛けるとバルバトスのカメラアイがキラリと光る。

 

そしてハッチを開けるレバーを尻尾で下げる。

 

仕込んでいた装置がキチンと作動し、煙幕をばら蒔きながらハッチが開く。

 

煙幕がシャトルから溢れ出す中、それを戸惑いながら見ていたグレイズのコクピットの前に煙幕の中から何かが突き出してきた。

 

それが何かを認識する間もなく、グレイズのパイロットはバルバトスによる滑空砲の超至近距離からの一撃で絶命した。

 

衝撃波がシャトルを覆っていた煙幕を吹き飛ばす。

 

現れたのはクランクニ尉のグレイズから分捕った肩装甲をカラーリングを青に塗り替え装備し、手には滑空砲を携えたバルバトス第ニ形態の姿であった。

 

……後、その側をハッチを開けたせいで中の空気と一緒に出てきたシンが漂っていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「オルガ!ハッチを開けろって……シンは宇宙服着てないんだよ!?」

 

オルガのその命令にすぐさまビスケットが反応した。

 

「ん?……やっべぇ!しまった!シン!聞こえるか!?今の命令は……」

 

しかし、オルガの制止の言葉が届く前にハッチが開いてしまう。

 

やってしまった、の思いがオルガの中で広がっていく。

 

余りにも人間染みていて失念していたがシンに合う宇宙服はこの世の中何処を探してもないのだ。

 

当然格納庫の中にはシンが着れる宇宙服なんて無かっただろう。

 

しかも、

 

(クーデリアの隣にいるフミタンって奴から凄い圧力が掛かって来やがる……!)

 

直ぐにバルバトスに繋がっている無線に話し掛ける。

 

「ミカ ! シンはどうなってる!?」

 

しかし、ミカからの返事は呑気なモノで、

 

『オルガ?シンなら普通に漂ってるよ。あ、飛んでる』

 

宇宙空間でも平然としているらしい。しかも飛んでる?

 

「は、はははは。どんだけブッ飛んでるんだアイツは……」

 

「まさか宇宙でも平気なんて……」

 

ビスケットも驚きを隠せない。

 

何はともあれシンが無事で良かった、と胸を撫で下ろした一同だった。

 

何となく一件落着の雰囲気が漂っている。

 

……依然ギャラルホルンの脅威はのこっているのだが。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

(空気と一緒に宇宙に飛び出したのにはビックリしたけどそもそも俺呼吸しないじゃん)

 

少し寒い気がするが直ぐに体が適応した。

 

無線から聞こえてきた団長の焦る声から察するに俺が宇宙服も着ないで外に出てるの知って、生きているのか心配になったってトコかな。

 

(まぁ平気ですよ、それより先ずさっさと体を大きくしないとな)

 

体内のエイハブリアクターを並列状態にして最大稼働。

 

莫大なエネルギーを生成し、それと宇宙に漂う僅かな塵を元に俺の肉体を創り出す。

 

皮膚がボコりボコりと膨れ上がり体内の骨格を巨大化させ体を突き破らない絶妙なバランスで同時に外皮を生成。

 

エイハブリアクターを大型化させ並列稼働を開始し先程の推進剤噴出口をもっとバランス良く配置していく。

 

 

(うっし ! シンゴジラ第三形態宇宙仕様!)

 

その場で八の字を描く様に動いてみる。

 

(これで宇宙戦闘もこなせるぜ……!)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『目標の確保に失敗!そ、それと……正体不明生物出現!』

 

前方にいたグレイズのパイロットが後方の味方に通信で伝える。

 

『何なんだあの化け物は!?』

 

動揺する味方のグレイズ。

 

しかしコーラルは直ぐに気を取り直し、味方に命令を下した。

 

『クーデリアがそこにいるなら正体不明の生物なんぞどうでもいい!あの船を墜とす!』

 

そこにアインから通信が入った。

 

『コーラル司令!ファリド特務三佐より殺すなという指示が……』

 

その言葉にコーラルは苛立ちながら返す。

 

『貴様の上官はいつからあの青二才になった!いいから船ごと撃ち落とせ!』

 

『は、はい!』

 

(これだから火星出身は……まぁいい監査官自らが参加している作戦中の事故ならばいくらでも言い訳は立つ。あとはノブリスとの契約だ。華々しく散ってもらうぞクーデリア!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

早速シャトルに近づいてクーデリアを始末しようと動き出したグレイズ隊、しかし直後バルバトスからの砲撃に足を止める。

 

無視してシャトルを攻撃しようにも命中率が低い筈の滑空砲を全弾命中させて来るので足が止まる。

 

執拗に砲撃を浴びせてくる敵MSから先に始末しようとコーラルの指揮官型グレイズを先頭に三機のモビルスーツがバルバトスを追いかけ始め……

 

 

『食いついた。よし、こっちに来い』

 

バルバトスがシャトルから敵モビルスーツを引き付ける。

 

俺はグレイズ三機がシャトルを通り過ぎるのを待ってから、スルッと三機の後ろから追随する。

 

そして、

 

『うわぁ!!コイツ攻撃して……!』

 

一番後ろにいたグレイズのブースターに噛みついた。

 

直ぐに別のグレイズが気付き此方にライフルを撃ってくる……くるが、

 

(ハッ!効かんわそんな攻撃!!)

 

第三形態となり外皮の硬度がまた上がった俺には一切効果を成さない。

 

そのまま肉薄し頭突きの衝撃でライフルを手放させ、尻尾のスイングでコーラルの機体に向けて弾き飛ばす。

 

ぶつかり合ったグレイズの動きが止まった。

 

不審に思い、無線のやり取りを傍受するとコーラルが全く足手まといだの能無しだのそのグレイズのパイロットを罵っている。

 

その隙がコーラルの命運を分けた。

 

接近するバルバトスに気付いてコーラルのグレイズが振り返る。しかしその時には既にバルバトスの滑空砲がコックピットに狙いを定め、砲弾を打ち込んでいた。

 

滑空砲から近距離で放たれた何発もの砲弾がグレイズの胸部装甲を打ち砕き、遂にコックピットを破壊する。

 

グレイズの動きが止まり、その胸部から血とオイルが宇宙に漂い出した。

 

(よし、これでコーラルは殺った。)

 

センサーで他のグレイズの状態も探る。

 

(他の機体も……ブースター全壊にシステム異常で戦闘不能と、三日月さん!シャトルに戻りましょう!)

 

『分かった』

 

宇宙空間を漂う三機のグレイズを置き去りにして、バルバトスとシンゴジラが宇宙を駆け、シャトルへと舞い戻った。

 

その背をただ見送る事しか出来ないアイン。立て続けに上官をあのモビルスーツにやられた悔しさで心は憎しみに満ちていた。

 

(クランクニ尉……あんな容赦なく人を殺せる奴を……あんな悪魔達を貴方は救おうとして……それなのにアイツらは……!!)

 

まぁ、もしシンが聞いてたら同じ事をお前らもやってたけどな、と思ったであろうが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

時刻は少し遡り、コーラル達が敵のモビルスーツにつられたのを見たオルクスは恩を売るチャンスだと考え、自分達でシャトルを沈めようと船の前進を開始した。

 

しかし、射程に入ろうかといった所で突然船が衝撃を受ける。

 

何事だとレーダー担当に急いで確認すれば、新たな敵艦の登場であった。

 

敵からの砲撃に回避運動をとる。その隙にシャトルが敵戦艦に収納された。

 

 

 

ブリッジにシャトルに乗っていたメンバーが到着する。

 

「昭弘、よくやってくれた。状況はどうなってる?ミカとシンは?」

 

それにビスケットが答える。

 

「三日月から通信、グレイズ三機撃退。今こっちに向かってるって」

 

「わかった、急ぐように伝えてくれ」

 

「了解!」

 

「で問題は、だ」

 

オルガは前方の艦を見て、次の指示を飛ばす。

 

「……ヤマギにあれを準備させろ」

 

《あれ》の意味に気付いたビスケットが商品を使うなんて本気かと尋ねる。しかしオルガはここで死んだら元も子も無ぇと答え、

 

「昭弘、やってくれるか」

 

その言葉に昭弘は頷いた。

 

 

昭弘が出ていってから数分後、ブリッジに新たなギャラルホルンの艦が出現したとの報告が入った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

グレイズ改で出撃した昭弘はオルクスの船に牽制射撃を行っていた。

 

三日月から新しいギャラルホルンの機体から戻る途中で襲撃されたとの無線が入ったのでここは一人で抑えなくてはならない。

 

「こっちには阿頼耶識付いて無ぇんだぞ……!」

 

始めての操縦だがやり方は筋肉で暗記している。しかしモビルワーカーと勝手が全然違いやりにくい。

 

機体の左手に掴んでいるメイスを見やる。

 

(こいつも早いとこ三日月に渡さねぇと)

 

そう考えながら相手の船からの射撃を避け、攻撃を加える。そこに、

 

「モビルスーツってのも楽じゃねぇな……っ!?シン!?」

 

視界に警告音も無くヌルっとシンが現れた。そして無線から鳴き声がする。

 

(メイス、三日月、尻尾、運ぶ……?)

 

「あ~メイスを三日月に運んでくれるのか?」

 

首を振っているので当たりの様だ。

 

「よし、頼んだ」

 

メイスを放ると器用に尻尾で巻き取り、反転して三日月の戦っている宙域へと凄い速さで戻っていく。それを見送り、

 

(これで仕事に専念できる)

 

昭弘は直ぐにまた牽制射撃を再開した。

 

 

 

 

メイスを昭弘から受け取った俺は急いで三日月さんの元へ向かっていた。

 

(三日月さん!コレを!!)

 

通信に呼び掛けメイスをガエリオに向かって投げつける。

 

飛んでくるメイスに気付いたシュバルベグレイズだが、咄嗟に避けきれず装甲をメイスがかする。

 

そのかすったメイスが進んだ先には三日月さんが待っており、掴み、その勢いで一回転。遠心力をつけブースターを全開にしシュバルベグレイズに近付き叩き付ける。

 

ガエリオは当たる直前ギリギリ機体を捻り何とか致命傷は避けたものの、代わりに武器を右腕ごとバルバトスに持っていかれた。

 

回転しながら吹き飛ぶガエリオ。追撃しようとする三日月さんに慌てて鳴き掛ける。

 

(もう一機が攻撃開始!)

 

即座に回避運動をとったバルバトスの側をマクギリスのシュバルベグレイズから放たれた銃弾が目標に当たること無く通り過ぎた。

 

(新手は俺が抑えるんで!)

 

『分かった。任せたよ、シン』

 

淡々とした短い言葉だ。しかし俺は三日月さんに任されたという思いで奮い立っていた。

 

(よっしゃ!来いやロリコン野郎!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(あれは……シンか?)

 

よく見れば火星の農場で会ったシンの姿と瓜二つの容姿をしている、だがサイズが桁違いに大き過ぎる。それに、

 

(此処は宇宙なのに何故生身で平気なんだ……?)

 

最初ガエリオがガンダムフレームに奇襲を仕掛けた際に側にいたが、直ぐに何処かへ去っていったので偶々側にいた、まだ誰にも知られていない宇宙生物か何かだと思っていた。

 

しかし、直ぐに戻って来て尻尾で持っていたメイスを投げガエリオを攻撃し、今は此方へガンダムフレームを狙う射線上を遮る様に向かって来ている。

 

あの機体を援護しているのは明らかだった。

(しかも、あれだけの巨体でMSと同等の運動性能を持っているだと……?地球では有り得ない……しかし現にこうして存在している……)

 

考えている内に敵がたどり着き、突進を仕掛けてくる。

 

すぐさま避けて頭部に蹴りを叩き込むが……

 

(何ッ!?)

 

蹴り飛ばすどころか此方の機体の方が力負けして飛ばされる。

 

(宇宙でこんな現象が起こるのは……まさかエイハブリアクターの慣性制御……?どう見ても生物だぞ……?)

 

続く攻撃の尻尾の振り下ろしを何とか避ける。しかし、流れるように次の攻撃が襲ってくる。

 

(それに今ガエリオが戦っているガンダムフレームの阿頼耶識と同等の機動。もし動力源がエイハブリアクターならば、こいつの相手をするには機体の性能が足らない……!)

 

シュバルベグレイズで倒す事は諦め回避に専念する。しかし、

 

(突進の勢いを削ぐ為の弾は全てかわしつつ、ガエリオの援護にガンダムフレームへ放つ弾丸は全て打ち落としているのか……?)

 

試しに牽制にばら蒔く弾の中に数発援護の弾を紛れ込ませる。相手は泳ぐ様に移動し牽制の弾は全て避け、援護の弾は全て尻尾で打ち落とした。

 

(偶然では無い……、異常なまでの空間認識能力で私が撃つ瞬間に弾道を計算している……何て奴だ……)

 

マクギリスの頬を冷や汗が伝った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その頃オルガ達はアンカーを小惑星に打ち込み、加速して一気にこの宙域を離脱する計画を立て、作戦を開始していた。

 

本来の歴史より早くこの作戦を思い付いたのはオルガ達鉄華団が初めてシンと会った時の秋津洲式戦艦ドリフトを覚えていたからかもしれない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

右腕を失ったガエリオのシュバルベグレイズ。作戦を切り替えバルバトスの攻撃を避け続け、虎の子のワイヤークローを使うタイミングを見計らっていた。

 

そんな事は露知らず、三日月はガエリオにメイスを叩き付けようとし、その大振りな攻撃をガエリオは避け、蹴りつけようとする。しかし三日月は阿頼耶識独特の肥大化した空間認識によって機械のパターンでは有り得ない回避行動をとって避ける。

 

そんな事が先程から何度も繰り返されていた。

 

『この宇宙ネズミがぁ……!』

 

『しぶといな……』

 

両者共この降着状態に苛立っていた。

 

そこへ三日月のバルバトスにイサリビから連絡が入った。

 

『シン、今の聴いてた?』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(聞こえてましたよ三日月さん!)

 

鳴き声をバルバトスに返す。

 

(マクギリス、そのワイヤークローを手土産に貰うぞ!)

 

シュバルベグレイズへと突進する。何度か受けた攻撃だったのでそれを軽々と避けるシュバルベグレイズ。しかし、

 

(背鰭ブースター点火!!)

 

今までの戦闘では一切使っていなかった背面のブースターを一斉に噴かす。

 

それによる急制動にマクギリスはついていけず、その隙に俺はシュバルベグレイズの左肩へ噛みついた。

 

体を捻り引き千切る。反転し、とれた左腕を尻尾で掴みとり、ブースターを吹かし三日月さんの元へ向かう。

 

遠方を見れば三日月さんがメイスの先端についているパイルバンカーでガエリオのシュバルベグレイズの左肩を撃ち抜く所だった。

 

吹き飛ぶ左腕、此方へ飛んできたそれを俺は口でキャッチした。

 

三日月さんがわざわざ手加減する訳が無い。コクピット狙いだったが避けられた、といった所だろう。

 

指定されたポイントへとバルバトスの背後を通る様にブースターを全開にして前進する。

 

その通り過ぎる瞬間、バルバトスは此方を見ずに凄い勢いで通り過ぎようとする俺の足を掴んで離脱した。

 

(流石三日月さん!)

 

俺は体内のエイハブリアクターを全力で稼働させ更に速度を上げて、三日月さんと共にイサリビとの合流ポイントへと急いだ。

 

 




◆報酬素材を受け取る
◆アイテムボックスに送る
◆売却して終了

シュバルベグレイズのNLA装甲×4
シュバルベグレイズの腕×2
ワイヤークロー×2


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整備中

シンと三日月、イサリビと無事に合流。


あの後直ぐにイサリビに辿り着き、MSデッキから船内に入った。

 

俺のデカさに集まっていた皆は驚いていたが、数分で俺が元の小さいサイズに戻るともっと驚いていた。

 

(一度サイズダウンした経験とエイハブリアクターの重力制御のお陰だなぁ……ホントこの体凄ぇ)

 

ただサイズダウンするだけでは俺の大きい時の体重が小さい時の面積に全て掛かり、歩くだけでイサリビの床が壊れるのは必至だっただろう。

エイハブリアクター様様である。

 

 

 

今俺はおやっさんの手伝いでユージンのモビルワーカーを修理している。隣ではユージンが修理を手伝いながら、アンカーを爆破した時の自分の機転について自慢していた。

 

「……でだな、その時俺は咄嗟にモビルワーカーのタンクを……」

 

本当に、ユージンの活躍が無かったらイサリビは小惑星と激突して全員死んでいたかもしれない。

 

(流石だよ副団長)

 

「おっ?今の鳴き声は褒めてんのか?」

 

頷くとユージンは嬉しそうな顔をして、今度は昔のCGSの時代の自慢話を始めた。

 

(あー……話を聞くのは楽しいけど、手動かしてよユージン……)

 

その後やって来たおやっさんに「シン一人にやらせてんじゃねぇ」と叱られるまでユージンの自慢話は続いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

修理が終わったのでユージンと別れ次の指示をおやっさんに貰いに行く。

 

「おやっさん、装甲の補強ってモビルワーカーと一緒でいいの?」

「装甲にナノラミネートアーマーを使ってるモビルスーツと一緒なわけねぇだろ……ちっと待ってろ今調べて……」

 

丁度バルバトスの整備に取り掛かり始めた所の様だった。

 

ったく、ろくな記録が残っちゃいねぇ、とぼやくおやっさんに近づいて修理が完了したと鳴いて伝える。

 

「シンか、オメェが来たってことは修理が終わったのか」

 

(イエス!こっちはバルバトスの整備ですか)

 

意味は伝わらないがバルバトスを見て鳴けば何となく伝わった様で、

 

「あぁ、俺はモビルワーカー専門だってのに…… ヤマギも今は手が放せねぇ、手伝ってくれ」

 

(大変みたいですねー。了解です)

 

同情しつつ、改めてバルバトスを見やる。

 

(モビルワーカーの整備なら今までやってきたけど、バルバトスの整備は初めてだなぁ……)

 

いつも軽やかに動くバルバトスを見ているので、こうしてじっとしている姿を見るのは新鮮だった。

 

「バルバトスの方にデータが残ってないか見てるんだが……300年も前の遺物だ、随分勝手が違ってな」

 

そう言い、ホレとバルバトスに繋がっているデバイスを見せて来る。

 

(ふ~む?……ん?んんん!?)

 

デバイスを尻尾で叩いて操作していく。突然操作を始めた俺におやっさんは驚いた様だが、それ以上に俺は自分自身に対して驚いていた。

 

(あれ?何で操作が解るんだ俺?)

 

考えてする動作では無い、手慣れた、何度も同じ事をした事があって考える前に手が動く様な……

 

(出てきた……バルバトスの機体のメンテナンス方法……初期の機体だから後期の機体に比べてメンテも全然楽……うん、何で知ってるんだ俺?)

 

戸惑いながらおやっさんにデバイスを返す。

 

「シンおめぇ……コレどうやって出した?」

 

おやっさんが驚きながら聞いてくるが、俺にだって分からない。首を横に振って分からんと伝える。

 

「んー、まぁいい理由はともあれデータが手に入ったんだ……おーいヤマギ!そっちの仕事が終わったらバルバトスの方へ来てくれ!」

 

ワカッターと遠くからヤマギの声。

 

「よし、じゃあ俺達で始めるぞ」

 

(了解!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バルバトスの整備を終えた俺は休憩をおやっさんから貰ったので三日月さんの所へ行き、そのままアトラの手伝いで皆に配る弁当を運んでいた。

 

そこへクーデリアが通りかかる。

 

「クーデリアさん?」

「何してんの?」

「今後の方針について団長さんたちと話し合ってきました。……三日月は何故参加しなかったのですか?」

「別に、俺難しいこと苦手だし聞いてもよく分かんないから」

 

なら仕方ないのか?と疑問に思いながらも一応納得したクーデリア。そして、二人と一匹が同じ荷物を持っている事に気が付く。

 

「それは?」

「皆の分の弁当」

「作業中の人に配ってるんです」

 

それを聞いて少し考え込むクーデリア。

 

(あぁフミタンが通信レーダー係になって、自分にも何か出来ないかって考えてるって所か)

 

三日月さんに鳴き掛ける。

 

(誘ってみます?人手は多い方がいいですし)

 

俺の鳴き声にアトラは首を傾げたが、三日月さんは頷いて、

 

「クーデリアも手伝う?」

 

(直球!)

 

「私も!私もお手伝……えッ?」

 

「だから、クーデリアも弁当配るの手伝うかって。アトラもいいよね?」

 

「うん!クーデリアさんが手伝ってくれるならすっごく助かるよ!」

 

決意を込めて言いかけた台詞を先に三日月に言われ暫し固まってしまったクーデリアであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(ごはんですよー!!)

 

俺が大声で鳴くと、何だ?と皆が一斉に振り向き、俺達の姿と持ってきた弁当を発見し顔が輝く。

 

 

その後も順々に弁当を配って回り、最後に整備班のいるモビルスーツデッキへと移動してきた。

 

途中クーデリアが何故地球へ向かいたいのか、の話があったが……

 

(最悪俺が地球を滅ぼせば、ある意味火星の独立成功だよな~それが出来るスペックが俺には有るし)

 

地味に恐ろしい事を考えてる俺だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

デッキに着くと、俺達に気付いた子供達が群がって来た。

 

(押すな押すな!全員分あるから!アトラの所にも行って!)

 

何故か俺は人気で、直ぐに持ってる弁当を配り切った。せがまれたので背中に乗せてデッキ内をゴジラゴーカートをする。

 

「シンさんスゲー!」「次俺!俺!」「俺尻尾掴んでいい?」

 

(はーいよっと、順番守ってねー)

 

スーッとデッキ内を二、三人ずつ乗せて泳いで行く。途中グレイズの側にいるおやっさんの横を通り掛かると、「シンおめぇ、休憩中なのに働いてんのか」と呆れた顔をされた。

 

(アトラの弁当来てますよー)

 

アトラ達の居る方を向いて鳴くとおやっさんも気付いた様で、

 

「おう、今貰いに行く。タカキー!飯にすっぞ!」

 

タカキの返事を聴きながら通り過ぎてデッキの奥まで行ってから元の場所へと戻り、また別の子供達を乗せてデッキを一周する。

 

そんな事を繰り返し全員分を終えた。三日月さん達の方を見ると、何かを話しているので体をくねらせて近づいていく。すると、着いていきなり三日月さんが話し掛けてきて、

 

「シンは文字読める?」

 

と訊いてきた。

 

(え?ハイ、読めますよ?)

 

訳が分からないが取り敢えず鳴き声を返す。

 

「そっか、色んな本とか読めるんだな」

 

(え、何いきなり)

 

びっくりしている俺を見たおやっさんが三日月さんに話し掛ける。

 

「三日月おめぇもうちっと前後の脈略考えろよ、シンがびっくりしてるじゃねぇか」

 

ドユコト?とアトラの方を見ると「今字が読めるかどうかって話してたの」との返事が。

 

(あぁそういう事か……三日月さん、いつか農場やる為にも文字を読めるといいと思いますぜ?)

 

そう鳴き掛けると、三日月さんも同じ事を思った様で、確かにと頷くとクーデリアに文字の読み方を教えてくれと話し掛けた。

 

それに反応してタカキや他の子供達も字を習いたいと騒ぎ出す。

 

(整備は俺がやっとくのでどうぞどうぞ~)

 

 

ガヤガヤと騒ぐ皆と整備室を出ていく三日月さんを見て思った。

 

いつか三日月さんの作った火星ヤシを食べたいなぁ……と。




三日月農場への布石……!


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タービンズ戦

シンのお陰でバルバトスは不調無し&グレイズの魔改造も済んでます。


グレイズの魔改造も無事に終わり、何をするともなしに船内を漂っていると、俺のレーダーに反応があった。

 

何か船映ってるなーと思い、急遽ブリッジへ向かうとモニターでマルバのおっさんが俺の船を返せと怒鳴り散らしている所だった。

 

(タービンズか、取り敢えずこっちの機体は不調どころか絶好調だし相手を殺っちゃわない様にしなきゃな……)

 

皆は……フミタンを除き俺が入って来たのに気付いていない様だ。

 

画面に映らない様にして話の推移をじっと聴く。

 

(ふ~む、やっぱ戦う流れか。まぁ俺も皆と離れ離れになるのは嫌だし、頑張りますか!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

場所は移ってモビルスーツデッキ、俺は三日月さん相手にバルバトスの説明をしていた。

 

(腕に付いているのがチョコレートの人達から奪ったワイヤークロー、二発有ります。あと、残りの武装は何時ものメイスに滑空砲です)

 

「うん、リアクターの調子もいいね」

 

(そこの調整は俺がやったんですよ!後、敵に止めを刺すのはなるべく避けた方がいいです。後の交渉に響きます)

 

「分かった、出来たらそうする」

 

(頼みます!では俺も出撃するんで)

 

「後でね」

 

(ハイ!)

 

 

 

遠くでは、

 

「……おやっさん、何であいつら完璧に意志疎通出来てんだ?」

 

シンと三日月のやり取りを見ていた昭弘がおやっさんにマイクで呟く。

 

「……俺が知るかよ。それより昭弘、阿頼耶識の調子はどうだ?」

 

足元からおやっさんがグレイズに取り付けられた昭弘のモビルワーカーから移植した阿頼耶識の調子を尋ねる。

 

「あぁ、全然平気だ」

 

過剰な情報量を送り込まれた時に見られる鼻血などは起きていない。流石おやっさんと言う昭弘の言葉におやっさんは頭を振り、

 

「ソイツを付けたのはシンだ、最新式のグレイズにモビルワーカーの阿頼耶識を取り付けるなんぞ俺にだって出来ねぇ。まったく大した奴だよ」

 

そうなのか、と驚く昭弘。

 

「そう言えばおやっさん、コイツの背中にあるこれは……」

 

「そいつはシンが提案した改修案で、三日月とシンがかっぱらってきた腕で作った奴なんだが……違和感有るか?」

 

「いや、全然。筋トレ中に背筋が答えてくれた時の様な気分だ」

 

「……そうか」

 

変な事を言い出した昭弘に引きつつおやっさんは改修されたグレイズ、【グレイズバイセプス】を見上げる。

 

相手はタービンズ、全員無事で済むか分からない。なら自分は最高の状態にした機体でコイツらを見送るだけだ。

 

マイクに語り掛ける。

 

「昭弘、武装の説明だ。よく聞け」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

先に出撃していた三日月の元へ昭弘のグレイズバイセプスが到着する。

 

『待たせたな』

 

『向こうも二機出てきた。昭弘は左の青い奴お願い』

 

『まかせとけ』

 

お互い散開してそれぞれの敵へと向かっていく。

 

 

さて俺は何をしてるのかと言えば、

 

『シン、今から俺達は相手の戦艦に乗り込むオルガ達の為に強襲をかける』

 

イサリビの真正面にいた。

 

『三日月が通訳した言葉を信じるなら、お前は相手の戦艦が撃ってきた弾を全て防げるんだよな?』

 

鳴き声で肯定の返事を返す。

 

『……信じるぜ、船の防御は任せた』

 

(どんと来い!)

 

あの二機以外に敵が出て来る可能性を考えたオルガが一機をイサリビの護衛に回すことを提案し、俺の意見で戦艦程度の砲撃なら軽く防ぐ俺が船の直掩につくことになった。

 

勿論通訳が三日月さんだったのは言うまでもない。

 

(さて、三日月さんに昭弘の機体は俺の知ってる未来予測と違って整備は万全だが、それがどう転がるか……)

 

一瞬の思考に違和感を抱く。

 

(今俺未来予測って考えた?原作じゃなくて……?)

 

火星でガエリオの車で脳震盪起こしてから何かが変だ。

 

(何故か知ってる整備技術といい、何か忘れてる……のか……?)

 

しかしその思考は長く続かなかった。

 

(っと、砲撃が始まった)

 

真正面から撃ち込まれた砲撃を尻尾で受け止める。

 

(うし、無傷!バンバン行くぜ!)

 

相手からの砲撃が一瞬止まり戸惑っているのが伺える。相手は直ぐに砲撃を再開したが全て俺が受け止め弾いた。途中ナパーム弾も撃ち込まれたが、

 

(熱効率も大分上がってるんでね!飽和攻撃でもされなきゃ熱容量の限界なんざ迎えんさ!)

 

まさに鉄壁。鉄華団にとっては頼もしい仲間であり、相手にとっては戦艦の攻撃を全て受け止める化け物であった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その頃ハンマーヘッドのブリッジでは、

 

「何だありゃあ……」

 

名瀬は驚愕していた。まさかあんな得体の知れない化け物が出て来るとは。

 

それに、

 

「ハンマーヘッドの砲撃を全て受け止めるだと……!?」

 

余りにも常識を外れすぎている。それに映像を拡大した所、尻尾に何かを持っている。

 

「めっちゃグロいし……!」

「何考えてるのかわからない顔してるし……キモいし!」

「ダーリン!あれ気持ち悪い!」

 

拡大した映像はオペレーターの三人からも大不評の様だ。

 

隣のマルバを見れば、アババババと口から泡を吹いている。

 

……いや、動揺しすぎだろおっさん。

 

自分以上に慌てている者を見たお陰で落ち着きが戻ってきた。

 

オペレーターの娘に指示を出しモビルスーツデッキのラフタに繋げる。

 

「ラフタ、やれるか?」

 

『もっちろん!ダーリン、あのウナギ見たいなのやっちゃえばいいの?』

 

ウナギ……?ちょっと思考が止まるが気を取り直し指示を出す。

 

「いや、相手の船の横っ面を叩いてくれ。あの素早い動きを越えられるのはお前の百里だけだ。任せたぞ」

 

『了解~♪』

 

ラフタの援護に此方からは砲撃を続ける様に指示を出す。

 

「アミダとアジーはどうなってる?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その頃三日月達は、

 

『ハハっ、やるじゃないさ!』

 

三日月の滑空砲の攻撃をアミダが避ける。一瞬でもブースターを吹かすのが遅れれば直撃である。

 

『当たらない……!今までの奴とは違う……』

 

三日月も歴戦の強者であるアミダの操縦技術に攻めあぐねていた。

 

そもそも三日月はモビルスーツの操縦に関して、バルバトスから得た情報のみで今まで戦ってきた。それで何とかなっていたのはひとえに本人のセンスとガンダムフレームの力、そして阿頼耶識のお陰である。

 

しかし、アミダは阿頼耶識こそ付けていないが長年モビルスーツに乗って戦ってきた経験がある。ここに来て阿頼耶識の優位性に頼っていたツケが回ってきていた。

 

『なら……!』

 

弾は当たらない、ならば重荷となる滑空砲はいらない。

 

『昭弘、残弾は?』

 

『残り少しだ』

 

昭弘の位置を確認する。そしてアミダの攻撃を避けながらグレイズバイセプスの側を通り過ぎ、

 

『ならコレ使って』

 

背中の滑空砲を放り投げた。

 

『おい、三日月!……っとと』

 

咄嗟に青い百錬に向かって牽制の弾幕を張り、三日月からの滑空砲を掴み取る。

 

そして青い百錬に向けて発砲した。

 

『三日月の奴、滅茶苦茶しやがる……!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

機体を軽くした三日月は直ぐに背中のアームからメイスを掴み百錬に接近戦を挑み掛かった。

 

『当たらないと分かったら機体を軽くして接近戦かい!嫌いじゃないよ!その潔さはねぇ!』

 

そう言って叩き付けられた三日月のメイスと腰から引き抜いた片刃ブレードで競り合う。

 

そして何合も打ち合い、弾き飛ばし、そしてまた激突する。

 

 

 

 

(早くコイツを片付けねぇと……)

 

昭弘は焦っていた。シミュレーションは何十回とこなしたが、実戦は二回目である。

 

幸い阿頼耶識の反応速度のお陰で相手からの攻撃は避けられるが、

 

『こっちの攻撃が当たらねぇ……!』

 

先程から滑空砲を撃つも殆ど避けられてしまう。

 

 

 

 

「三日月達が押さえている内に急ぐぞ!」

 

ユージンが状況を見て命令を出す。

 

そこへフミタンから新しいモビルスーツ出現の報告が入って来た。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『悪い昭弘、前の2つ任せていい?』

 

『ああ、任せろ!』

 

短いやり取りで通信を終え三日月は新しく現れたモビルスーツに、昭弘は前の二機へと向かって行く。

 

三日月を追いかける様にピンクの機体がバルバトスの方を向くが、直後滑空砲の砲撃に足を止める。

 

『ここは俺が任された!』

 

その言葉に答える様にグレイズバイセプスがカメラアイを輝かせた。

 

 

 

イサリビの側面から攻撃を加える百里、ユージンもイサリビの対空火器で撃ち返すが相手が速くて当たらない。

 

シンも先程から苛烈さを増した相手の戦艦の砲撃を防ぐので手一杯で百里の相手が出来ない。

 

そこへ三日月のバルバトスが到着した。

 

『俺達の船に勝手に手出すなよ』

 

メイスを突き出し突貫するが百里に避けられる。

 

『生意気!』

 

直ぐにラフタはバルバトスに狙いを変えて襲い掛かる。

 

そこにシンの尻尾から放たれたスモーク弾が炸裂した。

 

急に視界が閉ざされた事で百里の動きが止まる。

 

その隙を三日月は見逃さなかった。

 

『シン!』

 

相手の機体目掛けてワイヤークローを放ち、すかさずシンに声を掛ける。

 

『尻尾!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

突然の命令に戸惑ったがスモークの中から飛んで来たワイヤークローを尻尾に掴ませる。

 

(ワイヤークローを当てる隙を作るだけのつもりだったけど何をするつもりなんだ?)

 

しかし、直ぐに三日月さんの意図が分かった。

 

(成る程ね、確かに手近にあってあの素早い機体を繋いで置けるのは俺だけだ)

 

推力の違いを一目見て俺を土台にするのを思い付いたのだろう、レーダーで見ればガンダムフレームの馬鹿力でワイヤーを引っ張りメイスのパイルバンカーでブースターを貫く姿が見えた。

 

(なら、三日月さん!ついでにそれを使って……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

イサリビがスモーク弾を発射したのが見えた。

 

 

昭弘は一機で百錬二機と渡り合っていた。機体は激戦でそこかしこが歪んでいる。

 

突進して来る青い機体目掛けて弾を撃ちきった滑空砲をハンマーの様に叩き付ける。

 

相手は受け止めたが左腕を損傷した。そこへ背後からピンク色が襲ってきたが、

 

『うおおおおおおお!!!!』

 

背後の隠し腕を展開して両腕を捕まえる。

 

『やっと捕まえたなあ!!』

 

背中の片方のアームで掴んだまま反転し、その頭部を思いっきり殴り飛ばす。

 

へしゃぐ百錬の頭部、すぐさま青い機体が援護に来るが斬りかけられたブレードを頭を振ってかわして、クロスカウンターを叩き込む。

 

『イサリビへは行かせん!』

 

見ればイサリビが敵の戦艦に突っ込むのが見えた。

 

なら、作戦はもうすぐ完了だ。

 

それまでに……

 

『おおおおおおおお!!!!!』

 

何としても足止めを……!

 

『昭弘、そこ動かないで』

 

突然三日月から通信が入った。

 

『は?』

 

三日月のこういうボソッとした発言はちゃんと聞いていないと命に関わる。

 

急に動きの止まったグレイズに百錬二機が距離を詰め、

 

先程見掛けた敵の機体がワイヤーに繋がれたまま、百錬二機を巻き込んで目の前を通り過ぎていった。

 

 

『…………』

 

愕然としているとオルガから連絡が入って来た。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

団長からの通信を聞いた後三日月さんは昭弘を回収してイサリビへ、俺は百錬百里の三機を引っ張ってハンマーヘッドへと向かっていた。

 

(良かったなぁ……未来予測より全然被害が小さい)

 

足からブースターを吹かしながら遠ざかっていく二機の様子をチェックする。

 

(バルバトスはワイヤークローを使っただけでほぼ無傷。グレイズは装甲は歪んでるけど頭部も無事で修理すれば全然使える)

 

そして反対に今引っ張っている三機のモビルスーツを見る。

 

(百里はブースターを破損、百錬二機とも頭部に損傷でその片方には腕装甲の歪み……と)

 

原作ではギリギリの戦いだったが、実際蓋を開けてみれば割りといい勝負であった。

 

(名瀬さんも俺達が普通の集団ではないってのはこれで分かってくれるだろうな)

 

 

まぁ、ゴジラなんている時点で普通ではないのだが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハンマーヘッドのモビルスーツデッキに着いた。

 

尻尾で掴んでいたワイヤークローを放して、機体を一機づつ入れていく。

 

タービンズの整備班の人達が誘導してくれたのでスムーズに作業が進む。しかし、

 

(あー、表情とか見るにめっちゃ警戒されてる)

 

一瞬で慣れた鉄華団が変なだけで、この反応が普通なのだが……俺には割りとショックだった。

 

(早くイサリビに戻りてえ……)

 

 

 

 

苦行の様な時間を終え、俺は途中で体のサイズを縮めつつイサリビへと戻ってきた。

 

(戻ってきましたよー!我が家!イサリビ!)

 

モビルスーツデッキから入ると整備班の二人が迎えてくれた。

 

「シン、お疲れ」

「お疲れ様!」

 

ヤマギとタカキが声を掛けて来る。

 

(あぁこの温かい感じ……!)

 

ちょっと感動していると、早速おやっさんから声が掛かる。

 

「シン、早速で悪ぃがグレイズの修理だ」

 

(了解っす!)

 

一声鳴いて、タカキ達に尻尾を振りながらグレイズバイセプスの元に居るおやっさんへと近づく。

 

見ればおやっさんの側に昭弘が居た。近づいて鳴き掛ける。

 

(昭弘、四本腕役に立った?)

 

「あぁ、それに阿頼耶識もな。……ありがとうシン」

 

言い終えた後、暫く俺の眼をじっと見てから昭弘はモビルスーツデッキから出ていった。

 

(あ、もしかしてそれを伝えたいから待っててくれたの?)

 

おやっさんの方を見ると「昭弘の奴直接お礼を言いたいってな」と教えてくれた。

 

(いやぁ照れるなぁ……それを使いこなしたのは昭弘だよ)

 

この嬉しい気持ちはグレイズの整備にぶつけるとしようか!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

グレイズの整備を始めてから暫くして三日月さんがやって来た。

 

「シン、何か手伝う事ある?」

 

(あ、三日月さん!えーっとじゃあバルバトスの各モーターとかリアクターの出力、阿頼耶識の情報伝達のチェックお願いします。気になった事が有ったら些細な事でも言って下さい)

 

「分かった。後シン、あのワイヤークローありがとう」

 

(いえいえ、とんでもない!)

 

バルバトスの方へと向かっていった三日月さん。

 

(……やっぱり鉄華団最高だな!)

 

景気付けに遠吠えして、俺はグレイズの整備を再開した。

 

 




タービンズ戦終了。


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歳星へと向かう道中

機体の主な整備も終わって数日後。


団長からテイワズの本拠地へと向かうと教えられてから早5日。

 

(あー暇だ、モビルワーカーの整備も終わったしですること無ぇ)

 

三日月さんと昭弘はタービンズの船でシミュレーターを使って練習しているので俺は手持ち無沙汰だった。アトラの洗濯の手伝いもとうに終え艦内の掃除も昨日やったので本当にやる事が無い。

 

(俺もあっち行ってもいいのかな……?)

 

百錬達を格納するのを手伝った時の警戒する目からして行っても歓迎はされないだろう。それ故に、

 

(暇だ~)

 

俺はイサリビの艦内を泳いで回っているのであった。

 

 

 

そんな事を思ってた次の日。

 

「今日も俺達あっちの船に行くけど、シンも行く?」

 

三日月さんからお誘いがあった。

 

(え!行っていいんですか俺!?)

 

びっくりしている俺に昭弘も声を掛けて来る。

 

「あぁ、ラフタ……あの速い機体のパイロットが会ってみたいって言っててな、それと整備班の奴で一人会いたいって言ってる奴がいたぞ」

 

(マジで?行っていいの?)

 

「おやっさんに聞いたんだけど昨日から暇だったんでしょ?」

 

(そりゃあもう!)

 

結局あの後、年少組を相手に電車ごっこを延々とした位には暇だった。

 

「じゃあ俺達についてきて」

 

(は~~~い!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

イサリビからハンマーヘッドへと移り、タービンズのモビルスーツ格納庫へと向かう道中、通りすがる女の子達にびっくりされながら俺は目的地へと向かっていた。

 

(何かどうも俺の姿見てのリアクションが大体2つに分かれてるなぁ……?片方は少し引いてて拒絶気味の反応、でもう片方は……好奇心?とはちょっと違うな、懐かしさ?親戚に会ったみたいな……何だろう?)

 

鉄華団の皆は後者なのだがタービンズの人達は二通りの反応をしているのが気になった。

 

(まぁいいか、そろそろ到着だ)

 

俺達は扉をくぐり抜けてモビルスーツ格納庫へ入っていった。

 

 

 

「へぇ~!あんなにデカかったのにこんなに縮んじゃったんだ!」

 

(うぉう、ラフタさんか)

 

急に声を掛けられてビックリした。声のした方を見れば他にアジーさんとアミダさんがいる。

 

……どうやら別に恨みを持たれている訳では無いようだったので一安心だ。

 

「……あ、ダーリン?エーコそっちにいる?……うんうん、そう!あのトカゲ君こっちに来てるんだ!エーコも来なよ!」

 

直ぐにラフタさんは格納庫の無線に向かって話始めた。

 

話しているラフタさんを置いてアジーさんとアミダさんが此方へとやって来る。

 

(ドーモ。アジー=サン。アミダ=サン。シンです)

 

意味は伝わらないだろうが鳴き掛けてからお辞儀する。

 

「へぇ厳つい顔つきの割に可愛いらしいじゃないか」

 

「三日月から聞いてるけど言葉が分かるんだって?」

 

(分かりますよー!)

 

「紹介する。こいつが俺達の仲間のシンだ」

 

(お、昭弘ありがと)

 

 

 

タービンズの格納庫を見渡して色々観察していると、三日月さんが声を掛けてきた。

 

「俺達はこれから訓練するけどシンはどうしたい?」

 

三日月さんに聞かれていざ着いてみたのはいいものの、何をしようというのを全く考えていなかった事に気付いた。

 

(えー……何しよう?)

 

固まった俺を見たアジーさんから提案された。

 

「もし特に無いなら今から来るエーコって娘と話し相手になってくれないかな?あの戦いの後、シンに随分興味持ったみたいだからね」

 

(あ、じゃあそうします)

 

鳴いて返事をしたがアジーさんは「?」となっている。どうやって伝えようか?と思案していると、昭弘からフォローが入った。

 

「それ、する。だとさ。なら三日月が訓練してる間俺が通訳してやるよ」

 

(おぉ!昭弘サンキュー!)

 

 

 

 

エーコも参加しワイワイと騒いでいる一同。それを名瀬は物陰から見ていた。

 

(確かに、親父から聞いた特徴と一致しているな……)

 

マクマードの親父に歳星へ戻ると伝えた時についでとばかりに伝えたシンの情報だったが、

 

(……こりゃ思ったよりヤバイ物拾っちまったかもな)

 

アミダ、アジー、エーコと鉄華団のパイロットで談笑し合っている、その中心にいるシンを見ながら名瀬は一人胸の中で呟いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

数日後。

 

今日は団長達が名瀬さんと火星の運用資金の為のギャラルホルンの鹵獲パーツの売却の話をしてくるとの事なので団長とビスケットがいない。

 

なので今日も暇な俺は、今昭弘の筋トレの手伝いをしている最中であった。

 

(俺が重力制御出来るからってまさか筋トレに応用しようと考えるとは……)

 

確かに、俺はエイハブリアクターのお陰で自分からある程度近くの距離は重力制御の効果が使えるのである。

 

(いつもはモビルスーツの部品を運ぶのに使ってるけど……流石昭弘。大した奴だ)

 

目の前では何時もの二倍の重力を受けながら全身に汗を光らせ筋トレに勤しんでいる昭弘がいる。

 

筋肉が隆起しバーベルが持ち上がる。腹筋に力が込められ上体が持ち上がる。ダンベルが持ち上がり力こぶが出来る。背筋が締まり……

 

 

その光景を延々と見ていると次第に、

 

(……筋肉いぇいいぇーい!筋肉いぇいいぇーい!)

 

俺には心なしか筋肉が輝いて見える様な気がしてきた。

 

 

 

 

「ありがとな、シン。いいトレーニングになった」

 

(昭弘……いい筋肉だったよ)

 

「……!ありがとう。またトレーニングに付き合って貰えるか?」

 

(もちのロンさ!)

 

昭弘の右手とシンの尻尾がコツンとぶつかる。

筋肉を通じて人類とゴジラが通じ合った瞬間であった。

 

 

 

 

昭弘と別れてイサリビのブリッジへと向かうと途中で団長達と合流した。

 

(あ、団長!名瀬さんとの交渉どうでした?)

 

「交渉の事かな?それなら成功したよ、ただオルガが……」

 

ビスケットの言葉が止まったので疑問に思い目線の先を見ると、「言うな~!」とでも言わんばかりの顔をしてビスケットを見ている団長がいた。

 

(あ~、詳しくは聞かないでおきますね)

 

「うん、まぁ色々あったって事で」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「なんとでも言ってください。俺らは…鉄華団は離れちゃいけない」

「だから何でだよ?」

「それは……繋がっちまってるんです、俺らは」

「はぁ?」

「死んじまった仲間が流した血と、これから俺らが流す血が混ざって鉄みたいに固まってる。だから……だから離れらんねぇ」

「それはシンもか?」

「そうです」

「正体について何も知らないのにか?」

「アイツがたとえ何であろうと関係ありません。俺達鉄華団の仲間の一人です」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「まぁつまり、僕達は家族って事だね」

 

(家族?)

 

俺も?も団長の顔を覗き込む。すると、

 

「あぁ、勿論シン。お前もだ」

 

団長が少し照れた風に言って誤魔化す様に頭を撫でてきた。

 

(お~、何だろうこれ、めっちゃ嬉しい!)

 

感情に反応してパタパタ揺れる尻尾を抑えつつ、俺達は三人でイサリビのブリッジへと向かって行った。




この鉄血世界は原作とは色々違っています。

次回歳星。


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マクマード・バリストン

無人在来線爆弾の語呂の良さって凄いと思います。


漸く俺達は歳星に到着した。

 

早速降りようとした所、団長から待ったが掛かる。

 

「待て、行くメンバーは少人数に絞る。それとシン、お前にはタービンズから注文が来てる」 

 

何でも名瀬さんの指示で俺の容姿を誰にも見られないようにして連れて来て欲しいとの事。

 

(見た目がアレだからですかね?)

 

疑問を団長に鳴き掛けるとすかさず三日月さんが通訳してくれて、

 

「いや、お前の見た目がどうって話じゃない様だが……俺も詳しくは聞かされてねぇんだ」

 

(そうですか……)

 

取り敢えず限界まで小さくなってみる。その方が運びやすいだろうし。

 

「随分と小さくなれるんだな……まぁいい、行くメンバーだが俺、ミカ、シン、ユージン、ビスケットそれとクーデリアだ」

 

 

 

 

「シン、持つぞー……って軽ッ!?」

 

(そりゃ重力制御を全開にしてますからねー。見た目よりは全然軽いですよ)

 

俺を運ぶ役はユージンの様である。今俺は尻尾を折り畳んだ状態で全身をアトラが持ってきたシーツでぐるぐる巻きにされていた。

 

「大丈夫か?苦しかったりしねぇか?」

 

ユージンが心配してくれるが、

 

(全然大丈夫ですよーそもそも呼吸必要無いですし)

 

俺の鳴き声を完全には理解出来ないユージンだがニュアンスは伝わった様で、

 

「平気……なんだな?」

 

と呟いているのが聞こえてきた。

 

 

 

暫くすると何かに乗った音がして地面の感覚がゆらゆらとしたものになる。

 

(これは……舟か)

 

視界が閉ざされていてもレーダーはちゃんと機能しているので周囲の状況はちゃんと把握しているし、進行方向の先に目的地の館がある事も認識している。

 

そこにユージンが声を掛けてきた。

 

「しっかしスゲェなぁ。水溜まりの中に家があるぜ、それに階段みたいなのに木が沢山生えててよ!」

 

(?……あぁもしかして俺が周り見えないから教えてくれてるのかな?)

 

実はレーダーでバッチリ見えているのであるが……

 

(レーダーオフ)

 

レーダーからの情報を脳内で組み立てて現実と同じ様に見ることが出来るのだが、ユージンからの話を聞いて想像する方が遥かに楽しそうに思えたのである。

 

(ありがとねユージン)

 

「ん?羨ましいってか?えーっと、それに向こうの柱が……」

 

その後、俺は舟が着くまでユージンの話を聞いていたのであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

館の中に入ってようやく俺はシーツから解放された。

 

ぐっと伸びをした後、体のサイズも普段通りにする。

 

「いつもの大きさだね」

 

別の船に乗っていた三日月さんが声を掛けてきた。

 

(そうですね、やっぱこの大きさが一番落ち着きますよ)

 

そんな話をしていると名瀬さんが戻ってきて俺達についてくるように、と告げた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「成る程。お前らが……話は聞いてるぜ、いい面構えしてるじゃねぇか。それと、ソイツが例の……」

 

テイワズのボス、マクマード・バリストンが俺の事を一瞬だがじっと見た。

 

何なんだと思っていると名瀬さんがマクマードに話し掛ける。

 

「親父、俺はコイツに盃をやりたいと思ってる」

 

「ほぉ、お前が男をそこまで認めるか、珍しい事もあるものだな」

 

お互いの腹を探る様に視線が交わる。が直ぐにマクマードがニヤリと笑い、

 

「フッ、まあいいだろう。俺の下で義兄弟の盃を交わせばいい。タービンズと鉄華団は晴れて兄弟分だ」

 

隣で団長が俺達がタービンズと兄弟分?と驚くが、それを無視して話は続く。

 

「で貫目は?」

 

「五分でいい。どっちが上も下もない」

 

「ふむ……」

 

マクマードさんが此方を睥睨する。

 

次の瞬間。ズン、と途方もない重量の錘が乗せられたかの様な重圧が俺達にのし掛かってきた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……!」

 

オルガはマクマードからの重圧を真っ向から受けていた。思わず引いてしまいそうになる。しかし、

 

(俺は……鉄華団の団長としてコイツらの前でカッコ悪ィ所は見せられねぇ……!)

 

腹に力を込めてその場に踏み止まる。その次の瞬間。

 

マクマードの重圧を遥かに凌駕する殺気がその場に満ちた。

 

殺気、確かにそうなのだが何故か安心感を覚える。気付けばシンが大型化していて、オルガを護る様に尻尾を纏わせていた。

 

オルガ達は気付かなかったが、その時シンの背鰭は僅かに紫色に発光していた。

 

マクマードに目を戻せば驚いた顔をして重圧を掛けるのを止めていた。

 

「シン」

 

ミカの一言でシンも殺気を放つのを止めた。

 

「成る程、俺の威圧にも臆さずその上ソイツがそこまで懐いているとはな……」

 

「なら、親父」

 

「合格だ。コイツらなら五分でいいだろう。周りには俺が言っておく」




NGシーン

「親父、俺はコイツに盃をやりたいと思ってる」

「えっ」(シンを見ながら)

「……こっちのオルガ・イツカにだ」


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疑問

色々謎が出て来ます。


「あんたが火星独立運動家のお嬢さんか。時の人と会えて光栄だ」

 

マクマードがクーデリアと話し始める。

護衛に三日月さんが残る事なったのだが、何故か俺もマクマードさんの指名で居残っている。

 

(何でか分からないけど、一応大人しくしときますか)

 

話によればクーデリアが地球で話し合う予定の蒔苗さんって人はクーデリアの案に賛成しているらしい。

 

それを聞いて喜ぶクーデリア。しかしマクマードはその利権絡みで戦争が起きる、と現実をつきつける。

 

「テイワズを指名してくれないか?お嬢さんがじきじきに指名した業者って大義名分を得られれば当座の問題に関しちゃこっちでなんとかやれる。まぁ避けようもねぇ事もあるかもしれねぇが……」

 

その申し出に戸惑うクーデリア。咄嗟に三日月さんの方を向くが、

 

「これはあんたが決める事だよ。どっちにしろこれからも人は死ぬんだ。それは火星で分かっただろ?」

 

三日月さんがクーデリアを諭す。

 

「これは俺が初めて人を殺した時と同じ、あんたのこれからを全て決めるような決断だ。」

 

一端間を置き、

 

「だからこれはクーデリアが自分で決めないといけないんだ」

 

言い切った三日月さん。カッコいいなぁ……と思いふとマクマードの方を見ると、感心した目付きで三日月さんを眺めていた。

 

そして、マクマードが吸っていた葉巻を灰皿に押し付け火を消す。

 

「成る程。確かにそいつは一大事だな。……いいだろう。しかし俺はもう老いぼれだ」

 

マクマードが言外に決断を急げ、とクーデリアに伝える。

 

「ありがとうございます。では今日はこれで」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

クーデリアが部屋を出ていく。それに続いて俺達も出ようとすると、マクマードから声が掛かる。

 

「あぁそこの若い衆とシンとやら少し俺と話さないか?」

 

(へ?)

 

「は?」

 

突然の事に俺と三日月さんもびっくりする。

 

「お嬢さんを送り届けた後でいい。何もタダでとは言わん、そこの若い衆はモビルスーツ乗りだったな?」

 

「そうだけど」

 

「ならウチの職人に見せてやろう。腕は確かだ」

 

たかが会話一つに随分と豪華なものである。

 

(……何か企んでんのか?)

 

俺は訝しむが三日月さんはあっさりと「分かった」と承諾した。

 

 

 

通路に出て三日月さんに鳴き掛ける。

 

(いいんですか?三日月さん?)

 

「別に、シンが手伝えば安心でしょ?」

 

(あぁ、確かに)

 

三日月さんの即決は俺が整備を手伝えば下手な事は出来ないと踏んでの様である。

 

(変な事したらとっちめておきますね。)

 

「うん、頼んだよ」

 

 

 

そして、クーデリアに追い付き団長達の元へ送り届けると俺達は再びマクマードの元へと戻ってきた。

 

一体、何の話をされるのかと思っていたらマクマードから予想外の単語が飛び出して来た。

 

「さて、まず聞いておきたい。【ゴジラ】という言葉に聞き覚えはあるか?」

 

(え……?【ゴジラ】……?)

 

何故その名前を?と一瞬思考が止まる。

 

「俺は知らないけど、シンは?」

 

三日月さんが何か言っているが全て音声感知をすり抜ける。

 

(待てよ、確かに最初からおかしい事が沢山あった。何故俺は火星にいた?何で形態変化がああもスムーズに行く?何で阿頼耶識を付けている人達は俺の言葉が分かるんだ?エイハブリアクターがこんなにも俺の体に馴染んでいるのは何でだ?……【ゴジラ】?確か俺は最初自分の事を【シンゴジラ】って……俺は【ゴジラ】だ。【シン】?何処から出て来たんだ?団長が付け……いや、順序がおかしい。それに何で俺はバルバトスの整備方法を知っていたんだ?それに……原作?……未来予測……case116788……?鉄血のオルフェンズ?確か記憶用に……俺は……俺は、【何】だ?)

 

「■■?……■ン……シン!」

 

(ハッ!?)

 

急に我に返り辺りを見渡すと三日月さんが心配そうに俺の目を覗き込んでいた。

 

「大丈夫?」

 

(あぁハイ大丈夫です。ちょっと予想外の名前が出て来て)

 

「その反応……やはり、か」

 

俺達のやりとりをじっと見ていたマクマードから声が掛かる。

 

「ゴジラって何?」

 

三日月さんが素直に聞き返す。

 

「【ゴジラ】ってのは、300年前地球に現れた最凶の化物の事だ」

 

(……)

 

「300年前?……確かおやっさんが厄祭戦がどうとか」

 

「その通りだ若いの。300年前の厄祭戦はゴジラが切欠だったとも言われている」

 

そして俺を見て、言った。

 

「なぁ?全てのガンダムフレームの産みの親よ」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

(ガンダムフレームの産みの親?……俺が?)

 

何の事だかさっぱり分からない、が何故かマクマードの言っている事は正しいと何処かで理解している自分がいた。

 

「シンがバルバトス作ったの?」

 

「いや、産みの親ってのは言葉の綾だ。作ったのは人類だがその原型を生み出したのがゴジラだ」

 

マクマードが三日月さんの方を向き、

 

「若い衆、ガンダムフレームが72機しか開発されなかったのは知っているな?」

 

「知らない」

 

「……おう、えー……72機しか開発されなかったんだ」

 

(この流れで知らないって言えるなんて流石過ぎますよ三日月さん!)

 

少しペースを乱されたマクマードが気を取り直して続ける。

 

「厄祭戦では72機も有れば十分だったんだが、じゃあ何故それ以降も作らなかったのか……分かるか?若いの」

 

「さぁ?材料が無くなったとか?」

 

「!?……正解だ。……若いの、名前は?」

 

「三日月・オーガス」

 

(……流石三日月さん。こういう時妙に勘が働きますね?)

 

「ガンダムフレームはゴジラの尻尾から分離して来た人型を機械で制御しようと開発されたモノだ」

 

(尻尾から?……俺が覚えているのは第四形態までだが……第五形態?)

 

「シンの尻尾から?それだと小さくない?」

 

(あぁ三日月さん、俺昔大分デカかったんですよ)

 

「今は随分と小さいが300年前は120メートル位あったらしいからな。その尻尾に生えてきた人型を元にしてガンダムフレームは出来ている。故に材料は限られた。『ガンダムフレームを72機作った』んじゃねぇ『72機しか作れなかった(・・・・・・・・・・・)』てのが正解だ」

 

後期のガンダムフレームは一部だけゴジラの部品を使っていたりしたらしい。とマクマードが追加で説明をしている所で三日月さんが、

 

「へー、120メートルってどの位なの?」

 

と、唐突にぶっ込んだ。

 

「……大体縦にモビルスーツ7機分だ」

 

「ふ~ん」

 

先程から三日月さんのマイペースにマクマードが翻弄されているのが見ていて本当に面白い。

 

 

 

その後もマクマード話と三日月さんのちょっとズレた質問が続き、

 

「……で厄祭戦が終わってその辺りの情報は全て規制された、と。……まぁこれが俺の知ってる情報の大まかな所だ。シンに三日月、どうだ?」

 

(何でアンタはそんな事まで知っているんだ?)

 

「何故そこまで知ってる?って」

 

「ほぅ、三日月はコイツの言う事が完璧に解るのか」

 

感心したように頷き三日月さんに、阿頼耶識の手術を何回受けたのか尋ねて来る。

 

(質問に答えろよ)

 

「質問に答えろって」

 

マクマードに軽く殺気を飛ばす。

 

「分かった分かった、そう怒るな。厄祭戦後、人類を救ったガンダムフレームが人類を滅ぼしかけたゴジラから産み出された、何て民間人に知られたら大事だ。だからギャラルホルンは地球でのゴジラに関する情報統制を徹底した」

 

そこでマクマードはニヤリと笑い、

 

「だが、テイワズは圏外圏で成長した企業だ。そういうのを逃れつつ、初代から厄祭戦の情報を集めてきた。だから詳しいのさ」





【挿絵表示】


ユージンに運ばれてるシンの大きさはこれ位です。
実際は布にくるまれていましたが。

元社長なのは……趣味だ!


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歳星で打ち上げ

シンゴジラTOKIOが逃がしたラブカ説ってのがあるらしいですね。


あれから幾つか三日月さんを介して疑問を解消したりして時間が過ぎ、マクマードとの話が終わった。

 

 最後に三日月さんがバルバトスの整備に俺を混ぜる事を了承させてから二人で部屋を出た。

 

 

何か話したそうにしている三日月さんに目で待ってと伝えてからレーダーを使って屋敷に仕掛けられている盗聴機を全て把握し、電磁波を放出して全て壊した。

 

(盗聴機全部破壊っと……で、何でしょう?三日月さん?)

 

「シン、ずっと大人しかったのってわざと?」

 

(そうですよ。これでマクマードは俺を鉄華団が完全に管理下に置いているって考えるハズですね。もしそれで鉄華団を認めるのなら御の字、逆に……)

 

「シンを使える駒扱いするとか?」

 

(はい。鉄華団を俺の首輪にして脅しで動かそうって腹なら……)

 

「どうするの?」

 

(まぁ認識の違いを正すって所ですかね。俺、引いては鉄華団を利用しようってのならそれ相応の報いを受けさせるまでですよ)

 

「何か考えてるならいいや。シン、任せたよ」

 

(はい、任されました!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そのまま俺達が団長の元へ到着するとこれから鉄華団の打ち上げが有るとの事。

 

(団長、お金は大丈夫なの?)

 

そう思ったのだが、ビスケット曰くギャラルホルンから鹵獲したエイハブリアクターが高値で売れたらしい。

 

(あれ……?俺エイハブリアクター作れますけど……?)

 

三日月さんに通訳して貰って俺がエイハブリアクターを作れる事を団長達に伝えると名瀬さんを含んで大騒ぎになった。

 

「今やギャラルホルンが秘匿してる技術だってのに……」

 

呆れた表情で名瀬さんが教えてくる。

 

(えぇ……言ってくれたら作りますよ?)

 

「うーん……一応鉄華団の資金繰りに一息つけそうかな?」

 

ビスケットがその場をまとめて一端この話は後で、という事になった。

 

 

 

途中お店に寄り大量にお菓子を購入してイサリビへと戻る。

 

「ほら!土産だぞ!!」

 

机の上に山盛りのお菓子を乗せてから年少組の皆を食堂に呼ぶ。

 

呼ばれた皆、最初怪訝な顔をして部屋に入ってくるが机の上のお菓子の山を見るやいなや顔を輝かせる。

 

入れ替わり立ち替わりで年少組がお菓子の山をどんどん崩していった。

 

(いやぁ随分と早く無くなりそうですね)

 

「そうだね」

 

三日月さんもいつもの火星ヤシではなくお菓子を手に取って食べていた。

 

「三日月もこういうの好き?」

 

それを見たアトラが三日月さんに訊ねる。

 

「ん、甘くて美味しいよ」

 

「分かった!今度練習してみるね!」

 

(あー、いい雰囲気に……頑張れアトラ)

 

 

年少組の出入りも減ってくると、お菓子の話を聞きつけてシノ達年長組がやって来た。

 

「団長!俺らには何も無ぇの?」

 

「あぁ?有るに決まってんだろ!歳星で打ち上げだ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「気持ち悪ぃ……」

 

(大丈夫ですかー?これハンカチです。良かったらどうぞ)

 

「あぁ……悪ぃな、シン」

 

現在俺は団長の介抱をしていた。

 

「シン、頼まれてた水持ってきたよ」

 

(あぁ三日月さんありがとうございます。団長に渡してあげて下さい)

 

「はい、オルガ」

 

「あぁ……悪ぃ、ミカ」

 

(団長、あんまり飲んだ事無いのに飲み過ぎるから……)

 




一方、その頃のメリビットさん。

「何……あれ……?」(オルガを介抱するシンを見ながら)


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『我』

酔いつぶれた団長を連れてイサリビへ。


「まだ寝ないで、オルガ」

 

「あー、大丈夫……まだ……起きてr……」

 

ここまで昭弘に肩を貸して貰い何とか歩いてきた団長だがいよいよ睡魔に負けそうになっていた。

 

(団長、後少しでイサリビですから!頑張って!)

 

「あぁ、分かってる……シン……いつも済まねえなぁ……」

 

俺の応援に答える団長だが、

 

「オルガ、それは昭弘」

 

向いている方向が逆であった。

 

 

 

案の定団長が寝てしまったので、昭弘に背負って貰ってイサリビを目指す。

 

今日マクマードの屋敷で起こった事をビスケットと昭弘に話す。

 

「成る程、クーデリアさんは実質テイワズ預りになるって事か」

 

「反対した方が良かったかな……大事な事だしオルガに相談せずに決めちゃって」

 

「組織間の戦争なんてことになったらうちじゃ手に負えないってことはオルガにだって分かってるはずだよ」

 

(仮にそうなったとして、全て焼き払っていいなら俺に任せて欲しいですね)

 

「……待て、シン今何か凄い事言わなかったか?」

 

「シン、その時は任せたよ」

 

(了解です!)

 

「ちょっと待て!」

 

 

 

「へぇ、シンは俺達よりもずっと年上だったんだ」

 

「うん、後バルバトスをここで整備して貰える事になった」

 

「タダで?それは大丈夫なのか?」

 

(大丈夫だよ、俺も整備に交ざるから)

 

「あぁそれなら安心だな」

 

 

 

他にもバルバトスとグレイズの改修プラン、アトラに追加して欲しい料理、団長にはもう少し俺らを頼って欲しい、等そんな話をしながら歩いていたが、

 

 

 

(と言うか皆さんお酒強いですね?)

 

「そうなのかな」

 

「筋肉のお陰だ」

 

「飲んだこと無かったけどそうみたいだね」

 

三者三様の返事であった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

翌日、団長と名瀬さんが五分の盃を交わす予定の日である。

 

待ち合い室でアミダさんにラフタさんと話ながら待っていると着替え終わった皆が続々と入ってきた。

 

(おお、似合ってますよ三日月さん!)

 

「ありがとう、シンはいつもと変わらないね」

 

(俺は合う服がないもんで)

 

「流石にアンタに合う服作れる服屋はこの歳星には無いねぇ」

 

三日月さんの言葉に苦笑するアミダさん。

 

「あ!ユージンそこの結び違う!」

 

ラフタさんがユージンの着付けを直しに近付いて行った。

 

 

暫く他の人と話していたが、三日月さんが団長の様子を見てくると言ってきたので俺もついていく事にした。

 

着くと団長はまだ着替え中らしく、仕方ないので名瀬さんが習字をしているのを見て待つ事に。

 

「へぇ、これも字なの?」

 

(漢字ですね)

 

「字だよ。これで「御留我威都華」( オルガイツカ )って読む。式に使うんでな」

 

「……この字って俺の名前にもあるの?」

 

「ん~、ちょっと待てよ」

 

少し考えると名瀬さんは予備の紙にさらさらと『三日月王我主』(ミカヅキオーガス)と書き三日月さんに渡す。

 

「これが俺?」

 

「あぁ。どうだ?」

 

(纏まってて良いと思いますよ!)

 

「うん、確かに何か綺麗な気がする」

 

「そいつは良かった。シン、お前はもう名前決まっているのか?」

 

(あー【ゴジラ】か……名瀬さん、筆借りていいですか?)

 

「筆貸して、だって」

 

「ん?書けるのか?……って尻尾か」

 

尻尾で筆をくわえて『新呉爾羅』(シンゴジラ)と書く。

 

「へー、こう書くんだ。シンって」

 

(いや『シン』だけじゃなくて『シンゴジラ』です。三日月さんで言う所の『三日月』が『シン』で『オーガス』が『ゴジラ』ですね)

 

「ふーん」

 

漢字について三日月さんに話していると、着替え終わった団長が出てきた。

 

「失礼します。お待たせしました」

 

(団長も格好いいっすね!)

 

「おお~似合ってるじゃねぇか」

 

 

三日月さんが自分の漢字を団長に見せる。

 

「オルガ、同じ漢字が入ってる」

 

「同じ?」

 

「こことここ。『御留我』の『我』と『王我主』の『我』だ。『われ』とも読む』

 

名瀬さんは団長の目を見て、

 

「『自分』って意味さ。これからどんどん立場だって変わる。自分を見失うな。でないと家族を守れねぇぞ?」

 

 

自分を見失わない。その言葉に何故か俺も深く感じ入り、暫く団長と三日月さんの名前の中に有る『我』の文字をじっと見続けた。




特に口止めとかされなかったので、ビスケット達にテイワズが創始時から必死に集めてきた厄祭戦の機密情報をあっさりばらす三日月さん。

やっぱすげぇよミカは。


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怒り

盃を交わすのは原作と同じなのでカット。
ただ鉄華団サイドにパーカーを羽織ったシンがいてくっそシュールな絵面ですが。


団長と名瀬さんが盃を交わした後、俺はバルバトスの修理の為に一足先に式を出て歳星の整備場へと向かっていた。

 

(これでクーデリアさんはテイワズ預りに、名瀬さんのタービンズとは兄弟分か)

 

こっそりとレーダーで聞き耳を立てていたので状況は把握している。

 

(さてマクマードがどう出るか……)

 

 

 

 

暫く歩き重力ブロックを抜け、泳いで進んで整備場へと到着した。

 

……したんだが。

 

「厄祭戦を終わらせたガンダムフレーム!その72機の内の8号機!!バルバトスをこの手でいじれる日が来るなんて!!!予算は際限無し!何て最高な日なんだ!!……マズハエイハブリアクターノチョウセイニアア!モチロンフレームノショウモウヒンゼンブコウカンシナイト‼ソレニソウコウモヤクサイセンジダイノサイゲンヲ……チクショウ!ワタシハナンデモットマジメニガンダムフレームノシリョウヲアツメテイナカッタンダ‼……」ブツブツ

 

整備長(変態)がいた。

 

気付れていない様なので、先に到着していたおやっさんとヤマギの元へと近づく。

 

(何です、あの御方(変態)は)

 

「あぁ……言葉はわかんねぇが今お前さんが何を言いたいのかは凄い分かる」

 

「さっきからずっとあの調子でさ」

 

ヤマギによると何でも整備場にバルバトスを搬入しその姿を一目見た瞬間からあの調子なのだそうだ。

 

(あー、……うんうん。はい)

 

さっきから聞こえてくる言葉を拾うにマクマードがバルバトスに何か仕込もうとする等の線は完全に消えた。

 

(まぁ信頼出来る人みたいですね)

 

俺の雰囲気で伝わったみたいでヤマギも、

 

「うん、悪い人ではなさそうだね」

 

と最終的に判断した様である。

 

 

すーっと近づき、取り敢えず整備長にこっちの世界へ戻ってきて貰う為に尻尾で背中を叩く。

 

「……シカモパイロットハアラヤシキヲツケテイルソウジャナイカ!ソレナラコノバルバトスノノウリョクヲサイダイゲンヒキダセ……何だね!」

 

整備長がぐるりと此方を振り向き俺を視認した途端に目を見開いて、

 

「何だねお前は!?」

 

即座にツッコミが入った。

 

(あ、このおっさん気に入ったわ)

 

 

現実へと戻ってきた整備長に一旦バルバトスから離れて貰い、お互いの自己紹介を済ます。そして整備長とバルバトスの改修について話し合う事になった。

 

さて、俺が意思を伝える方法だが尻尾と繋げたタブレットに文字を表示させることで意思を伝えている。タービンズ相手には会話が出来ない事で苦労したのだが、その後色々と試した結果この体は生体コンピューターの様なモノらしく尻尾をタブレットに繋げるだけでタブレットを思考したままに操れる事が出来る事が分かった。

 

 

俺から整備長に俺の改修プラン、整備方法、それと俺の知っているガンダムフレームの情報の3つを教えた。

 

最初の二個は表情を驚愕と歓喜を行き来させながら聞いていた整備長だったがガンダムフレームの情報を教えていると次第に言葉を失ってポカンと口を開けたままになった。

 

(……大体こんな感じなんですが、どうしたの?)

 

タブレットを外し、尻尾を整備長の目の前で揺らして大丈夫か確かめると急に整備長が俺の尻尾を両手で掴んできた。

 

「つ、つまり!君が!ガ、ガンダムフレームを!作り出したってのかい!?あのガンダムを!?」

 

うんうん、と首を振ると整備長は俺の尻尾を握手代わりなのかブンブンと振り、

 

「嗚呼!本当に!今日は!今日は素晴らしい日だ!!ガンダムフレームだけじゃなく!それを造り出した君に出会えるなんて!!」

 

と歓喜の雄叫びを上げた。

 

「君の改修プランだが、最高だ!私から指図する事は何もない!そんなおこがましい事出来ないね!さぁどんどん指示を出してくれ!機械の使い方が解らなかったら言ってくれ!二人で最高のバルバトスを完成させようじゃないか!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それから俺と整備長はバルバトスの魔改造に没頭した。

 

(近接戦が得意な三日月さんに合わせて外装を一から作ります。図面はこれで)

 

「任せてくれ!」

 

(後、その際に腕のフレーム延長させましょう。ただ延長するのも勿体ないので俺が小型エイハブリアクターを埋め込み……やっぱ変更、いっそ全身に小型リアクターを付けて可動の妨げに一切ならないブースターを全身に配置できるように設計描き変えます。メインのツインリアクターは俺がまた新規で製造して元のと全部取り替えるんで外しといて下さい)

「OK!リアクター新造なんてギャラルホルンに喧嘩売ってるね!そこがいい!」

(アスタロトの装備を造ります。機能は絶対切断!ですね)

 

「ロストテクノロジーだよね!それ!最高!!」

 

(阿頼耶識の反応速度も三日月さんに合わせて調整しますよ!!)

 

「パイロットの彼反応速度凄いね!?」

 

(今完成予定の機体ををシミュレートしてみたんですが……わーい!割りと最強チック!!)

 

「わーい!たーのしー!!」

 

 

 

 

そして遂に完成する。

 

角は大型化し、両手首は延長され腕には専用の剣へと接続するコネクターが格納されている。

全身の至るところにブースターが増設されていてその機動力は計り知れない。

 

全身がやや丸みががった青いフレームに覆われた新しいバルバトス、【バルバトス・ルナノーヴァ】であった。

 

 

『完成しましたね……』

 

「あぁ……」

 

俺と整備長は完成した機体を見上げていた。

 

『これ以上ないって位強化しましたからね……一昨日言いましたけど現行最強機ですよコレ。造った俺が言うのもなんですが、頭おかしいですね』

 

「私もテンション上がっちゃって何かおかしくなってたね……」

 

バルバトスを見上げてふと思い付く。

 

『ロストテクノロジー再現にリアクター新造、ここで造ったってバレたらヤバくないですか?』

 

「いやぁ、その時は君らの所へトンズラさせて貰うよ」

 

そう言い整備長がハッハッハと笑っていたが、途端に真剣な顔になって考え込み始めた。

 

「いや……いっそそうするのも……」ブツブツ

 

あっちの世界へ行ってしまった整備長を置いておき、格納庫をぼんやりと眺める。

 

『……そう言えばツインリアクターが余ってますね』

 

「ブツブツ……ん?あぁ、それは予備に使うと思っていたんだが?」

 

『ウチにグレイズが一機余っていましてね』

 

「……つまり?」

 

整備長が目を輝かせて続きの言葉を待つ。

 

『ツインリアクターのグレイズってロマンありません?』

 

「……!あるとも!あぁ!これ終わったらテイワズに辞表出してくる!!君らの所の方が何倍も何十倍も楽しそうだ!!」

 

とんでもない事を整備長が言い出した。

 

『え!?流石に辞表は不味いですって!』

 

俺が慌てて考え直した方が良いですよと説得するも、

 

「何なら鉄華団の技術顧問としてでもどんな方法使ってでも行くよ!絶対説得してみせる!!」

 

もう止められない雰囲気だった。

 

『あー……。整備長ふぁいと~』

 

さて、ここで俺が何故三日月さん相手でもないのにスムーズに人と会話出来るのか、について。

 

最初は意図を伝えるのに一々タブレットの画面を見せていたので効率が悪かったのだが、途中で整備長が文字の読み上げソフトをくれた。それによって俺は人とスムーズに会話することが出来るようになったのだ。

 

追加でタブレットと繋げられるのは尻尾だけでは無く背鰭ならどこに繋げてもいいと分かったので、これで会話しつつ作業をこなせるようになった。

 

当然作業効率がぐんと上がり、たった3日で機体を新造する、という無茶が出来たのである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの後、作業は一段落したし今日は休み!という事に整備長と決定して、帰りがてらイサリビへとバルバトスを運んだ。

 

ハンガーに設置した後グレイズを搬出しようとしていると、丁度三日月さんが来たのでバルバトスに乗ってもらい阿頼耶識の調整をする事にした。

 

『ナイスタイミングですけど、どうしたんです?』

 

「テイワズからの荷物が運び込まれるからその手伝いをしようかなって」

 

『手伝いですか。忙しかったら後でも平気ですよ?』

 

「人手は足りてるらしいから平気だよ」

 

『了解です!なら始めますね!』

 

俺がバルバトスのコンソールを叩いていると、三日月さんが「シン、そういえば首のそれって?」と訊いてきた。

 

『あぁ、これは整備長に手助けしてもらって出来たものでして、やっと会話が出来るようになりましたよ!』

 

「そっか。これで皆と話せるね」

 

『はい!』

 

そんな会話をしつつ、三日月さんにバルバトスの調子を確かめて貰う。

 

各部に増設されたブースターを制御する為に情報量の負荷は増えたが、その大部分をバルバトス自体の脳とリンクさせる事によって前のバルバトスと同じだけの負担ですむようにしてあるのだが。

 

『どうですか三日月さん?』

 

「うん、反応が凄く良いしパワーも上がってるみたいだね」

 

『そうなんですよ!文句無しの最強です!』

 

「腕のコレは?」

 

どうやら腕に増設されたエイハブ粒子の供給コネクターに気付いた様である。

 

『それはですね、後で運んできますがγナノラミネートソードって言って……まぁ要するに刀ですけど凄い機能が有りまして……』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

刀が何なのかイマイチ理解出来ない三日月さんだったが、『食堂でアトラが使ってる包丁のモビルスーツ版です』と説明したら一発で理解してくれた。

 

細かいスラスターの微調整は後日やるとして、一応バルバトスを今すぐ戦闘に出しても平気なレベルには調整を終えた。

 

『そう言えばテイワズからの荷物って何ですかね』

 

「見に行く?」

 

『そうしましょう!』

 

三日月さんを連れて作業をしているタカキ達の元へ近づいていく。

 

「あ、三日月さんにシンさん!」

 

『どうも~』

 

「……、……!?え!?今のシンさんの声!?」

 

『遂に喋れるようになりましたよ~』

 

「……!ら、ライド!それにおやっさん!!シンさんが!!」

 

 

改めてタカキ達三人に話せるようになった経緯を説明する。

三人とも驚きながら俺の話を聞いていた。

 

 

ふとおやっさんが向こうのバルバトスを眺めて、言ってくる。

 

「しかしシンよ、随分とバルバトスいじくり回したみてぇじゃねえか」

 

『あはは、文句無しの最高の機体ですよ』

 

「……今までずっと一緒にいたがこうして話すのが初めてってのは、何か変な気分だな」

 

「あ、そうだ!俺シンさんにずっと前から訊きたかったことがあるんだけど……」

 

 

と、こんな感じですっかり荷物の事はそっちのけで話が暫く盛り上がった。

 

話しているとふと人の気配を感じてそちらを振り向く。

 

すると、マクマードが護衛を連れずにこちらへとやって来ていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

て、テイワズの偉い人!?とタカキ達が萎縮する中マクマードが俺に話し掛ける。

 

「おう、シン。整備長にきいたらここにいるってんでな」

 

『どーも、お陰でバルバトスの整備が出来ましたよ』

 

「……!しゃべれるようになったのか」

 

『整備長のお陰でね』

 

(……やっぱりコイツの俺を見る目が気に入らない)

 

 

 

『そう言えば、テイワズから預かった荷物ってどこです?』

 

とおやっさんに尋ねる。

 

「それはお前ぇの右のデカいコンテナだ。中身は……えっーと」

 

「中身は工業用の物資だ。ウチの系列の工場がドルトってコロニーにあってな、そこへ運んで欲しい」

 

マクマードが答える。

 

目の前のコンテナの中身をつい癖でスキャンする。

 

(あ゛?)

 

「ウチから鉄華団に任せる最初の仕事だ。しっかり頼むぞ」

 

(…………成る程、そういう態度に出るのか)

 

「なぁシンよ」

 

ポンと肩に置かれた手を振り払う。

 

瞬時に体を大きくし、尻尾をコンテナに叩き付ける。

 

ひしゃげるコンテナ。

 

「な……!シンさん!?何てことをするんだ!」

 

とっさに声を荒げるタカキ。だが次の瞬間俺の尻尾がコンテナからモビルワーカーを引き摺り出した事で止まる。

 

マクマード(人間)、これはどういう事だ?』

 

振り返りざまに尻尾でマクマード(人間)の体を打ち据え、反対側の壁へと叩き付ける。

「ガッ!」

 

『答えろよ。これのどこが工業用の物資なんだ?』

 

コンテナから大量の銃火器、弾薬が零れ出す。

 

「ゲホッ……落ち着けよ。シン。今お前が誰を相手に何をしているのか理解しているのか?」

 

マクマード(人間)がそう威圧し、

 

「お前には利用価値がある。今なら何もなかった事にしてやる」

 

と言ってきたが、俺の怒りに油を注ぐだけだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『調子に乗るなよ。人間如き(・・)が』

 

シンさんが先程のまでの落ち着いた様子からうって変わり、背鰭を紫色に発光させながら今までに感じた事がない程の殺気を放っている。

 

テイワズの偉い人も顔を青ざめて言葉を失っていた。

 

『なんだったら今ここで歳星を堕としてもいいんだぞ?』

 

『今お前が生かされているのはテイワズの持つ影響力、その一点だけだ』

 

一歩一歩シンさんが近づいていく。

 

『だがその価値も俺の力の前では意味を持たない』

 

『クーデリアの火星独立だって俺が地球の人類を全て滅ぼせばいいだけの話だ』

 

『只でさえギャラルホルンなんかの人間のめんどくさいしがらみに付き合ってやってるのに』

 

『いっそ、また人間を滅ぼすのも面白そうだよなぁ?』

 

「……!だったら!人間だってのならそいつらはどうなる!?何故お前はそいつらに従う!?」

 

『何言ってるんだ?こいつらは鉄華団だろ?人間とは別の種族じゃないか』

 

「……!?な……?」

 

『俺を利用出来ると思ったのか?こいつらを盾にして』

 

「……ッ」

 

マクマードの顔は理解出来ないモノを目の前にして恐怖で歪んでいた。

 

『俺は仲間を誰一人として見捨てない』

 

『だが、お前は仲間じゃない』




言葉は同じ、意思も通じる。

ただし『それ』はゴジラだった。


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テイワズという素敵な組織

色々と吹っ掛けてマクマードから金品その他を毟りとったシン。

もし裏切ったら歳星が無くなります。


『いやーバルバトスだけじゃなくグレイズまでタダで整備してくれて、その上イサリビに治療用ポッド三機、生活用の備品も大量にタダでくれるなんてテイワズのボスも太っ腹ですねー!』

 

「ちょっと待て、シン。鉄華団の口座にこの前のエイハブリアクターの金が目じゃない位の大量の金が振り込まれてんだが……」

 

『やだなぁ団長!きっとどっかの誰かが勝手に振り込んできただけですって!』

 

「……それにテイワズの整備長って人もついてくるって話なのは……?」

 

『本人の意思を尊重してくれたんじゃないですか?いやーテイワズって本当にいい組織ですね!』

 

「…………」

 

『そうそう、交渉とかでも特に了承無くテイワズの名前を使って良いってテイワズのボスから言われてます』

 

「………………マジか」

 

『マジです。全責任はアイツが取るのも約束させてきました』

 

「……シン、お前一体何をしたんだ?」

 

『あんまりに舐めた態度取ってたのでオトシマエを』

 

「………………そうか」

 

『あ、このこと名瀬さんは知らないので内密にお願いします』

 

「……………………」(冷や汗ダラダラ)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

テイワズのあいつを脅して色々と絞り取った後、さらに2日程かけてグレイズの改修を終えた。その間にイサリビの方でも医療用ポッドや細かい備品の搬入も終えていた様で、俺達のグレイズの搬入作業が終わり次第出航する、という事になっていたらしい。

 

グレイズをモビルスーツデッキに固定する作業をしていると昭弘が機体が届いた事を聞いてやって来た。

 

『お、昭弘久しぶり』

 

「おう、話せるようになったって聞いてたが随分と上手いな」

 

『それはあの整備長のお陰だね』

 

尻尾でグレイズの背部ユニットに取り付いている整備長を指す。

 

「あれがテイワズから来たっていう……」

 

『そうだね。まぁいい人だよ、少し変だけど』

 

 

昭弘が生まれ変わったグレイズを見上げる。

 

「随分とゴツくなったな」

 

『実はね、バルバトスのリアクターに替えてみたんだ』

 

「バルバトスの?ならあのバルバトスに付いてるリアクターは……」

 

『俺が新しく造った』

 

「お、おう……凄いな、シンは」

 

『いや……昭弘も見ない間に随分とまた筋肉を上げたんじゃないか?』

 

「分かるのか?」

 

分かるとも!ゴジラのレーダーは見逃さない!

 

『あぁ!その筋肉ならこのグレイズを使いこなすのに相応しい!!』

 

「……!あぁ、任せろ!」

 

お互いに尻尾と拳をコツンとぶつける。

 

『いいね!……さて、前の機体との変更点なんだけど……』

 

 

暫くは新しいグレイズの説明をしていたが話が次第に逸れていき、終いには筋肉談義で昭弘と盛り上がってしまった。

 

整備長が機体の固定を終えた様なので会話を止めて、昭弘を整備長に紹介した。

 

 

 

「さて、ここが私の新しい仕事場だね!」

 

『はい。ここが俺達の家、イサリビです。ようこそ!』

 

「どうも、シン君。これから宜しく頼むよ!」

 

『はい!ではまず団長の所に案内しましょうか?』

 

「いや、君は彼と一緒にこのグレイズの阿頼耶識の調整をしたまえ。私なんかに時間を使うのは勿体ない」

 

『えっと、一人で道分かります?』

 

大丈夫!何とかなるさ!と整備長は言うが何とも不安である。

 

そこにモビルワーカーの手入れをしていたヤマギが通りかかり、

 

「俺今から団長達の所にモビルワーカーの件で行くけど、ついでに整備長も連れて行こうか?」

 

タイミングのいい申し出だったので、お言葉に甘えてヤマギに整備長を任せる事にする。

 

 

『さて、じゃあ早速筋肉号の調整を始めようか!』

 

「おう。……筋肉号?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

筋肉号の調整を終えて数日後。

 

今俺は艦内の掃除をしながら艦内を泳いでいた。

 

(テイワズから掃除用具貰って良かったな。結構汚れてたし換え時だったのかも)

 

そんな事を考えていると、向こうからタカキとビスケットがやって来る。

 

『急いでるみたいだけど、どうしたの?』

 

「あ!シンさん!」

 

「火星のクッキーとクラッカーから手紙が来てね」

 

(成る程、家族からの手紙か)

 

「俺は妹のフーカからです!」

 

適当な座れる所を探してて、とビスケット。

 

『そっか……食堂ならさっき掃除したから綺麗だし、そこはどうかな?』

 

俺の言葉に二人とも顔を輝かせた。

 

「うん、ありがとう。そうさせて貰うよ」

 

「掃除今度俺も手伝います!」

 

『分かった。今度ね』

 

そう言って手を振って二人とも食堂へと向かって行った。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

場所は変わってイサリビのブリッジ。

 

あの後掃除を続けていたのだが、途中で召集がかかったのでやってきた。

 

名瀬さんが今後の俺達の移動ルートを説明してくれる。

 

アリアドネを目印にしつつ、見付からないようにテイワズ独自のルートで行くらしい。

 

ただアミダさん曰く海賊まがいの連中が出るらしく、そいつらに注意するとの事だが、

 

『あの、海賊って事は当然モビルスーツを持ってますよね』

 

「ああ、それで強襲を掛けてくるのが一般的だな」

 

『それ海賊殺してエイハブリアクターとか回収したらいいお金稼ぎになりますね』

 

「……まぁそうだな」

 

名瀬さんが何か諦めた様な表情になった。

 

 

 

話は続き俺達にテイワズからのお目付け役としてメリビット・ステープルトンって人が付くことになった。

 

お目付け役、その言葉に俺が怒る事は無い。

当然歳星でアイツを脅した時に仮に目付け役が俺達に不利益な行動を取ったら歳星を消すと言ってあるので下手な真似はしないだろう。

 

建前上は鉄華団はテイワズの下の組織なのでしょうがなく受け入れる事にしたのである。

 

商売の事に詳しい、との事で色々と役に立ちそうな人だった。

 

(まぁ裏切ったら殺すけど)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

メリビットは緊張していた。

 

最初は新しくテイワズの傘下に入った少年達のグループ、鉄華団のお目付け役をするだけだと思っていたのだが、異動の話をテイワズのボスであるマクマード・バリストンから直接説明された事で異常な事態であると知った。

 

その時マクマードはしつこい位に何度もシンという見た目はデカイトカゲの奴だけは絶対に怒らせるなと言ってきた。

 

目の前の男は圏外圏で最も怒らせてはいけない男、として知られている。それがそのシンについて話すだけで脂汗を滲ませ震えながら話すのである。

 

マクマードに何度も絶対に怒らせないと約束して屋敷を出たのだが、メリビットはこの新しい仕事に不安を感じずにはいられなかった。

 

 

そして、今目の前にはあのシンがいる。

 

正直メリビットは生きた気がしなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

話し合いも終わりブリッジから出る。

 

(そう言えばそろそろデブリ帯だし哨戒も始まるからデッキの方に行っておくか)

 

そうしてやってきたモビルスーツデッキ。丁度バルバトスに三日月さんがいて昭弘は筋肉号に乗り込みラフタさんとシミュレーション戦をしている。

 

『三日月さん、そろそろ哨戒の時間ですけどどうしましょう』

 

尻尾で昭弘の筋肉号を指し示して、

 

『まだシミュレーションかかるみたいですし、もし準備出来てたら三日月さんに出て貰っていいですか?』

 

「うん、出れるよ」

 

『お願いします!スラスターの調整具合も後で教えて下さい』

 

「分かった」

 

そうして、バルバトス・ルナノーヴァは宇宙へと飛び立った。

 

 

そうして本来の歴史とは全く異なる戦闘が幕を開けるのである。




本来よりシミュレーション戦に時間が掛かってるのはラフタが筋肉号の名前を知って暫く笑いが止まらなくて開始が遅れたからだったり。


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バルバトス・ルナノーヴァ

ブルワーズ戦スタート!


三日月さんを見送り、さてブリッジに戻ろうかと思った矢先にタカキが慌てて飛び込んできた。

 

「あ、シンさん!哨戒ってもう出ちゃいましたか!?」

 

『丁度今三日月さんが出た所だよ』

 

「あー、遅かったかぁ……シミュレーションも十分やったから一緒に行けると思ったのに……」

 

『一緒?……って哨戒に?モビルスーツが出てくるかもしれないし危ないよ?』

 

モビルワーカーは一応宇宙用にしてあるものの、密閉性は十分とは言い難く宇宙で好き好んで使うモノではない。

 

そして何よりモビルワーカーはモビルスーツに太刀打ち出来ない。火星での経験でそれは分かっていると思うのだが、

 

「さっき妹からメールが来たって言ったじゃないですか、俺それ見て思ったんです。フウカを絶対学校に入れてやろうって!」

 

決意に満ちた表情で宣言するタカキ。

 

『つまりお金が必要?』

 

俺の言葉に一気にしょんぼりとした顔になる。

 

「そうなんですよね……だから沢山他の仕事を覚えて……」

 

……決意した矢先に悪いのだが、実は十分なお金を鉄華団はもう持っているのだ。

 

『タカキタカキ、お金ならテイワズのアイツから絞り取ったのがあるから妹さん余裕で学校行けるよ』

 

「……え!?」

 

『クッキーとクラッカーも行けるし……多分鉄華団全員分位は有るんじゃないかな』

 

(無ければまた奪えばいいし)

 

驚いた表情のままのタカキにそのまま話し続ける。

 

『自分の命を削る稼ぎ方なんてしなくていいよ。だから今は将来必要になる技術を磨くのがいいんじゃないかな』

 

「えっ……でも」

 

タカキ達が命を張らなくても俺という存在がいるのだ。

 

『危ない仕事ならシンさんにまっかせなさーい!』

 

タカキに向かってそう言い放つと、一瞬ポカンとした顔になり、

 

「フフ……やっぱシンさんは凄いや。分かりました!俺なりに色々考えてみます!」

 

早速艦内に戻って行くタカキの後ろから声を掛ける。

 

『何ならライドとかも誘ってみたら?』

 

了解です!とタカキが返事をしてモビルスーツデッキから姿を消した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

さて、タカキに危ない仕事は任せろと言ったし、一働きしますか。

 

『昭弘?シミュレーション終わったよね?』

 

そう声を掛けると、ばつの悪そうな顔をして筋肉号のコクピットから昭弘が顔を出した。

 

「……気付いてたか、話の邪魔しちゃ悪いと思ってな」

 

『昭弘……もしかしてこの前話してた弟さんの事思い出してた?』

 

「……シンにはこの前の筋トレの時に昌弘の事話したんだったな……鉄華団は俺の家族だが、俺にも本当の家族がいたんだってふと思い出してな……」

 

遠い目をしてデッキ内を眺める。

 

『……弟さん、案外海賊になって生きてたりするかもよ?』

 

「ハハッ……それは無いな。もう生きちゃいないだろうさ」

 

そう言って昭弘は寂しそうな表情をした。

 

 

どう慰めようか逡巡していると、俺のレーダーに反応があった。

 

『……!昭弘、筋肉号は直ぐに出せるね?』

 

「?ああ……。敵か?」

 

レーダーが接近する三個の物体を捉えていた。

恐らく海賊のモビルスーツで間違いないだろう。

 

そして直ぐにデッキに備え付けのスピーカーから団長の声が響いた。

 

『ミカから報告だ。イサリビの前方から三機のモビルスーツが出現、直ちに援護に向かってくれ』

 

『だってさ、行こう昭弘!』

 

「おう!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

三日月はイサリビへ三機のモビルスーツが出現したのを報告し終えると直ぐに、相手のモビルスーツに向かって加速した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

相手のマンロディの操縦者の予想を遥かに越えた速度で接近する。

 

バルバトスが腰からγナノラミネートソード【繊月(せんげつ)】を引き抜き腕部のコネクターに接続し、

 

更に機体を加速させる。

 

すれ違い様に相手の右腕を切り飛ばす。

 

圧倒的な推力を持って急旋回し、更に左腕。

そして瞬時に右足のスラスター吹かし180度回転し両足を切り裂いた。

 

一瞬にして鉄の棺桶と化したマンロディ。

 

慌てて残った内の一機がスモークグレネードを投げるが、バルバトスに蹴り返され自身の周辺を煙で満たす羽目になる。

 

視界は最悪、だがそれは相手も同じ条件だと考えマンロディの操縦者はバルバトスを待ち受ける。

 

しかし、その時既にバルバトスは相手の背後に回っており三振りでそのマンロディを行動不能に追いやった。

 

切り払われる煙幕、そこからカメラアイを光らせたバルバトスが飛び出してくる。

 

一機残ったマンロディ、操縦者は恐慌状態に陥り闇雲に銃を乱射する。

 

バルバトスはその銃弾を全て避け、相手に近付く。

 

 

 

最後のマンロディも他の二機と同じ運命を辿ることになった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『昭弘、こっちこっち』

 

『?オルガはイサリビの前方って……』

 

『そっちは囮、ほら来るよ』

 

モビルスーツ三機など今の三日月さんとバルバトスなら敵にもならないだろうし、

 

何より……他の機体(マンロディ)と異なり異常に高い数値のエイハブウェーブを放つ機体がある。

 

『ガンダムフレームだ』




アトラのアドバイスで刀の扱いは完璧な三日月さん。

モビルスーツのパーツは高値で売れるのです。
綺麗に切っておけば修理して売るのも楽ですしね。


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唸れ筋肉!吼えろ筋肉号!!

三機とも倒したので、三日月はブルワーズの船に向かってます。




『ガンダムフレーム……!』

 

『俺がアイツをやるから昭弘は残りの二機お願い』

 

無線から『このクダル・カデル様のグシオンに敵うとで思ってんのかぁ!?』と煩いし。

 

一直線にグシオンに向かって前進し、向こうのハンマーに合わせて尻尾をぶつける。

 

威力は同程度、お互いに距離を取る。

 

(おぉ流石ガンダムフレーム、やっぱ他のと違って力強いな)

 

 

 

 

昭弘は筋肉号を駆り二機のマンロディに接近する。

 

『お前らが俺達家族に手ぇ出そうってんなら容赦はしねぇ……!』

 

背部の背筋ユニット(バイセプス)が起動しサブアームを展開、筋肉号が四本腕の異形となる。

 

そのまま相手に組み付き、右手で相手の機体を殴りつけた。

 

当然直ぐにもう一機が援護に来るが、サブアームに腰にマウントしてあったショートライフルを掴ませ牽制の弾幕を張り、敵機体を殴り続ける。

 

ツインリアクターの膂力を持ってして殴っているので、相手のフレームがどんどん歪んでいく。

 

「フンッ!フンッ!フンッ!うぉぉぉぉぉ!!オラァ!!ああ!」 

 

コクピットにはエイハブリアクターの慣性制御が追い付かずに激震が走っているだろう。

 

その機体の動きと阿頼耶識が同調して 昭弘の精神も高揚していく。

 

何とかして昭弘の猛攻を止めようと、マンロディが筋肉号に組み付いてきた。

 

 

 

 

さっきからお互いに有効打を与えられない。

 

双方とも堅いし強いし重い。噛みついたとしてもそもそもの素体が頑丈で引きちぎれない。

 

(流石ガンダムフレーム……ってか俺か。無駄に頑丈だなぁ……)

 

そんな事を考えていると向こうのグシオンからの砲撃が直撃する。

 

(威力は戦艦級……だが俺には効かん!)

 

余裕綽々で受け止める。その時、レーダーに相手のグシオンが体を反転させたのが映った。

 

(逃げる気か?逃げるなら……ガンダムフレーム置いてけ!)

 

そう思い突進する俺の目の前でグシオンが背中のメインブースターを点火した。

 

グシオンが進みだす。

 

俺の予想以上の速度で。

 

(ちょ、速ッ!?燃費相当悪いだろコレ!?)

 

少し相手を舐めすぎていたかもしれない。

 

『昭弘ゴメンそっち行った!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

無線からシンの声がする。

 

レーダーには猛スピードで此方へ向かって来る敵の機体が映っている。

 

(問題ない。今の俺と、この筋肉号なら!)

 

そう思いガンダムフレームが近付く前に取り付いている敵を剥がそうとすると、相手の機体から通信が入ってきた。

 

『アキヒロ……って……まさか』

 

相手の操縦者の顔が筋肉号のモニターに映る。

 

『兄貴……?』

 

「!……お前は……!」

 

モニターに映る顔。生き別れた時から長い時が過ぎ、成長したがその変わらない面影は……

 

 

「昌弘……なのか……?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『昌弘……なのか……?』

 

相手の操縦者の顔がコクピットのモニターに映し出される。

 

間違いない。兄貴だ。

 

二度と会えないと思っていた。だが何故今になって、という両極端の感情が込み上げてくる。

 

「何で……何でこんな所にいるんだよ……」

 

『昌弘!?生きていたのか!?……まさかシンの言ってたのが当たるなんて……』

 

無線から『昌弘!そいつを押さえてろ!』とクダルの声がする。

 

グシオンの接近に対処すべく、兄貴の機体がデルマのマンロディを蹴り飛ばし俺の機体ごと移動し始めた。

 

 

 

 

 

『昌弘!待ってろ、今俺の仲間が援護に……』

 

「仲間って何だよ!俺達ヒューマンデブリを態々助けに来る奴なんかいるもんか。デブリは宇宙でゴミみたいに死ぬんだよ!」

 

『そんな事無い!俺も昔はそう思ってた……だがな、こんな俺を人間扱いして家族だって言ってくれる奴らがいるんだ!』

 

 

……今何て言った?

 

「家族……?家族だって……?」

 

俺の家族は父さん母さん、それに兄貴だけだった。

 

それだけだったんだ。

 

 

『……お前だって皆受け入れてくれる!それに……』

 

兄貴の声が無線からするも全て耳をすり抜ける。

 

(……そうかよ、俺がずっと待ってた間に一人いい目を見てたのかよ……)

 

心の中でどす黒い感情が渦巻く。

 

(……アンタは俺を裏切っ……)

 

『……だから、この俺の筋肉とこの筋肉号に誓って、お前を取り戻す!』

 

そのワード(筋肉)を聞いた途端、思考が止まった。

 

(……は?……筋肉?)

 

恨みで満ちていた心の中に変な角度から亀裂が入る。

 

『俺の筋肉を認めてくれて、トレーニング談義出来る仲間もいる。だから……来い昌弘!皆お前を受け入れてくれる!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「俺が動くなって命令してんだから死んでも動くんじゃないよォ!!」

 

無線で動くなと命令し、クダルはグシオンを昌弘が組み付いている敵機体に向かって爆進する。

 

グシオンのハンマーで昌弘ごと攻撃するつもりであった。

 

殺してしまってもそこはヒューマンデブリ、幾らでも替えはきくのだ。

 

今までこのグシオンで倒せない敵は居なかった。

それなのに、

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!何なんだよさっきの化物はぁ!!」

 

逃げる寸前に確認したが、虎の子の砲撃まで使ったのに全然堪えた様子がない。

 

今はこちらが速度が上なので振り切ってはいるが、追いかけて来ているのがモニターに映っている。

 

「どいつもこいつも!!俺の邪魔ばかりしやがってぇぇぇぇ!!!」

 

 

そうして喋っている内に敵の元へ辿り着く。

 

見れば相手はブースターを吹かして昌弘の機体ごと避けようとしていて、昌弘の機体はそれに抵抗していない様に見えた。

 

(昌弘の野郎ォ……帰ったら教育だァ!!)

 

だが多少位置がずれたとしても当初とやる事は変わらない。

 

「死ぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ハンマーを振りかぶり相手の機体に叩き付ける。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

当たるその直前、掴むのが緩んだマンロディの体を筋肉号が蹴り飛ばし、蹴った反動で自身もそこから飛び退く。

 

空振るグシオンの攻撃。

 

コクピットではクダルが怒りの叫び声を上げ、筋肉号へと狙いを定める。

 

しかし、筋肉号も負けじと相手の攻撃に合わせて右足の蹴りを叩き込む。

 

お互いに相手を弾き飛ばし、接近し、次こそは相手に攻撃を叩き込もうと激しく打ち合う。

 

途中シンが到着したが昭弘の要請で動かないマンロディ二機を戦闘領域から離脱させる。

 

これでグシオンは人質も取れず、真っ向から筋肉号に立ち向かう事を余儀無くされた。

 

筋肉号の蹴りとグシオンのハンマーの応酬が繰り返される。

しかし、遂に筋肉号の右足が負荷に耐えられず壊れた。

 

筋肉号の酷使された右足から折れたフレームが剥き出しになる。

 

もし昭弘の操縦をガンダムフレームで行ったなら十分追従出来る。たがグレイズがベースの筋肉号ではフレームの強度が足りなかった。

 

 

しかし、折れたフレームも使い様である。

 

 

昭弘は筋肉号の全ブースターを一斉に吹かし突撃し、折れたフレームをグシオンに突き立てる。

 

『折れたフレームは良く刺さるなぁ!!』

 

それは装甲に深く突き刺さり、筋肉号の機体がグシオンに固定された。

 

ハンマーで払い落とそうとするのを筋肉号のサブアームが腕を掴んで止める。

 

『うおおおおぉぉぉぉおおおお!!!!!!!』

 

筋肉号のカメラアイが操縦席の昭弘の雄叫びに呼応して光輝く。

 

実はこの時、筋肉号は操縦者の意思に応じてエイハブリアクターのリミッターを全てカットし、通常のガンダムフレームが出せる以上の力を発揮出来るようになっていた。

 

筋肉号【火事場の馬鹿力形態(アンチェイン)】である。

 

『おおおおおおお!!!ああああああ!!!!』

 

列泊の気合いと共に筋肉号がただひたすらに両の拳をグシオンに叩き込む。

 

加速度的に壊れていくグシオンの装甲。

 

途中サブアームに捉えていた相手の右腕を殴り付け、ハンマーを奪い取る。

 

持ち替えたハンマーで相手を殴っていると、ある一撃で刺さっていたフレームから外れて吹き飛んでいきグシオンは近くの小惑星に叩き付けられた。

 

まだ終わらんと筋肉号が小惑星に降り立ち、ハンマーで殴り続ける。

 

そして遂にグシオンのダメージがエイハブリアクターが稼動出来ない程重傷となり、慣性制御が切れた。

 

そうとは知らない筋肉号の一撃はグシオンを激しく打ち据える。

 

それによって、中の操縦者は今まで慣性制御でギリギリ護られていたその身体を肉の塊へと変える事になったのであった。




ミンチよりひでぇや。

昌弘は無事仲間に。
この説得の為に筋肉号という名前にしておいたのです。


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180°

前回の途中から。


(おぉ!流石昭弘!筋肉号使いこなしてるね~!)

 

昭弘に言われたのでマンロディ二機を回収して戦闘領域の外から筋肉号の活躍を眺めていた。

 

火事場の馬鹿力形態(アンチェイン)】を発動した筋肉号がグシオンを圧倒している。

 

『兄貴凄ぇ……!』

 

無線から昭弘の弟の声がしてくる。もう一人の声がしないのは気絶しているからか。

 

筋肉号の壊れた脚部を見やる。

 

(やっぱ昭弘の無茶な操縦に応えるにはガンダムフレームじゃないと無理か……俺が造り出せたらいいんだけど、今は無理だからなぁ……)

 

ガンダムフレームの素体、シンゴジラ第五形態は昔俺が分裂して出来たものである。意志が生じる前は自己同一性(アイデンティティ)の問題なんかを一切考えず72体に分裂出来たのだが、今の俺は【シン】という確たる自我(クオリア)があるので分裂が出来ないのだ。

 

自分と全く同じ存在がいるなんてゾッとする。

 

(俺はゴジラだけど、そこら辺は人間の感性なんだろうな……)

 

小惑星にボロボロのグシオンが叩き付けられた。

 

(まぁ今回は都合良くグシオンがいるし、あれを使わせてもらおうか)

 

そんな感じで今後の計画を練っていると筋肉号の戦闘が終了した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

筋肉号とグシオンを回収して、イサリビへと連絡を入れる。

団長からの話では相手の戦艦を三日月さんが捕捉して砲台を全て破壊。防衛に出てきたモビルスーツを即座に無力化し、そのままイサリビへ持って帰って来たそうだ。

 

(流石三日月さん!)

 

という訳で今、中に突入して制圧するって話になっているそうだが……

 

『団長!制圧なら俺混ぜて下さい!銃弾の類い一切効かないので盾として使えますよ!』

 

『分かった。今シノ達が準備してる、昭弘達を連れて戻って来てくれ』

 

『了解です!』

 

 

 

途中で最初に三日月さんが相手(バラ)した三機のマンロディを回収しイサリビへと戻る。機体の係留やマンロディから操縦者を下ろしたりなどの諸々を整備長に任せて、武装したシノ達が乗るランチに一緒にイサリビから飛び立った。

 

 

 

「よし、行け!シン!」

 

『シンさんにお任せなのだー!!』

 

少しふざけながらブルワーズの船のモビルスーツデッキを俺の巨体でぶち抜いて侵入する。

 

瞬時に回りをレーダーで確認し侵入経路を把握する。

 

同時に尻尾を手近な回線に差し込み艦内をハッキングする。

 

遅れて入ってくるシノ達、

 

『ダンテ、データ送るからタブレットで確認して』

 

「おぉ?おお!艦内の見取り図じゃねぇか!やるな!シン!」

 

まぁね、と返す。直ぐにシノにもこの地図を見せて作戦会議を開始する。

 

色々と意見が出るが、まずは頭を抑える事になった。

 

『戦力になりそうなのは大体ここに閉じ込められてるね』

 

「俺と同じヒューマンデブリか……」

 

ダンテが複雑そうな顔をする。

 

「大丈夫だって!悪い様にはしねぇよ!な!」

 

シノの言葉に頷いて返す。

 

『じゃあ、作戦開始!』

 

 

 

その後は拍子抜けする位簡単に終わった。

 

何故か俺が声を掛けると相手が直ぐに警戒を解いてくれるのだ。

 

(確か阿頼耶識って……俺が作……んー……?)

 

何か思い出せそうだったのだが、出来なかった。

 

途中二手に別れ、俺がヒューマンデブリ達を説得しに行きシノ達はブリッジを制圧しに行った。

 

俺の説得は話せば一発でシノ達も一人も犠牲者を出さずにブリッジを制圧出来たらしい。

 

 

こうして鉄華団とブルワーズの戦いは両者とも戦闘が起きたのにも関わらず異例の死傷者の少なさで幕を閉じたのであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

オルガの部下達から制圧完了の知らせを受けて、俺とオルガはブルワーズの船長に落とし前をつけさせるべく船内に乗り込んだ。

 

「さ~てきっちり賠償金は払ってもらうぜブルック・カバヤン」

 

自信満々に脅しを掛けてきたこいつだがその最中に自分の戦力がどんどん墜とされて顔が驚愕に歪んでいくのは見ものだった。

 

「さて、何を所望する?兄弟」

 

今回は俺達タービンズに売られた喧嘩だが、こいつらが俺達が手出しする前に片付けちまったので賠償を受け取る権利は鉄華団にあると思っての行動だ。

 

「そうですね……この船と全てのモビルスーツ、ヒューマンデブリ全員」

 

随分大きく出たな。しかし、それを要求出来るに相応しい成果をオルガは上げたので黙っている事にする。

 

身ぐるみ全てを剥がされるに等しいブルックは当然抗議の声を上げるが、そこにシンが入ってきた。

 

『いやー子供達にすっかり懐かれちゃって』

 

 

 

そして、『あれ?まだ生きてたの?』と言いブルックの首を尻尾で殴り付けた。

 

 

 

ブルックの首が180度回る。明らかに即死だ。

 

突然の出来事に固まる。

 

(何をやっているんだコイツは)

 

咄嗟に自分と同じ反応をしているハズだと思いオルガを見て後悔した。

 

オルガはシンの行動に何の衝撃も受けてはいない様であったからだ。

 

「シン、余計な手間が省けた。ありがとよ 」

 

何を言っているんだコイツらは。

 

『どういたしまして!』




昔の記憶を思い出そうとすると思考がゴジラ気味になる主人公。

それを受け入れられる鉄華団。


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ズキュゥゥゥン!!!

名瀬さん達の流れ。

いやぁ思ってたよりヤバイわアイツら。……何も知らずに生きてきたんだなって→ならどうするんだい?→ここは大人として俺達が教えていかなくっちゃな→……大人として?→決まってんだろそりゃ……


首が真後ろを向いたブルックの死体を宇宙に捨てた後、俺達はブルワーズ達の説得に当たろうとした。

 

しかし、説得をするまでもなく全員が鉄華団の仲間になろうと考えていたので受け入れる事となった。

 

「うちのガキもそうだが何でこんな懐かれるんだ?シン」

 

『何ででしょう?昔……阿頼耶識で何かあった気がするんですが……』

 

団長と二人で首を傾げ合った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ブルワーズの船についてきて貰いつつ、イサリビとハンマーヘッドはドルトのコロニーを目指す。

 

モビルスーツに関してはボロボロの筋肉号の修理にマンロディを一機使い、三日月さんにバラされなかった四機はそのまま戦力として運用していく事になった。

 

 

なので三日月さんが綺麗にバラしたマンロディ達を売る為に、名瀬さんの元へ来たのだが……

 

先に部屋に入ったのユージンがうぉ!?っと言っていたので何だ?と思っていると、

 

名瀬さんとアミダさんがキスをしていた。それも深い奴。

 

(おー……)

 

何か『フフ……SEX!』とでも言いたい雰囲気だ。

言わないけど。

 

他の人もどんどん入って行くが、二人を見て直ぐに何やってんだコイツらという目線を向ける。

 

『おーい、名瀬さん』

 

俺の声に名瀬さんが気付いた。

 

「おっと、お前ら来たか」

 

「というか何いちゃついてるんすか!?」

 

ユージンが早速反応する。

 

「知らないのか?人死にが多い年にゃ出生率も上がるんだぜ?」

 

ハーレムの王が言うと説得力が凄まじい。

 

「子孫を残そうって判断するんだろう。そうすっと隣の女がめちゃくちゃ可愛く思えてくる」

 

その言葉にアミダさんが「なら普段は可愛くないってかい?」と反応し「お前はいつも可愛いよ」と名瀬さんが返したせいで、第二ラウンドを開始されたので……

 

『分かった!分かりましたから商談やりますよ!』

 

俺が無理矢理中断させた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

商談自体は早く終わったのだが、名瀬さんから俺達にこれからやっていく上で敵対者は皆殺しの方針はマズいと忠告を貰った。

 

仲間に手を出した者には容赦しない。それは結構だが、何処かで折り合いを付けるのも必要だと。

 

「地球のギャラルホルンは規模も練度も今回の海賊以上の奴等がわんさかいるんだ。いつか取り返しのつかない事になるぞ?」

 

『……俺昔全人類相手に戦ってましたけどね』

 

「でも倒されたんだろ?」

 

ぐっ……。それを言われると詰まる。昔の自分は意識も無くただ本能のままに動いていただけなので今とは違うと言いたいが事実は事実だ。

 

『そうですけど……ダインスレイヴに血液凝固剤は卑怯ですって。モビルアーマーだって50機近くいたんですよ?』

 

って……あれ?

 

『モビルアーマー?……血液凝固剤?』

 

俺の様子に疑問を思ったのか団長が話し掛けてくる。

 

「シン?何か思い出したのか?」

 

『いや、自分でも知らないワードがポロっと……』

 

何か思い出せそうなんだけど……

 

 

名瀬さんが此方を見てくる。

 

『……分かりました。今後は自重します』

 

俺に続いて団長も、「家族を守る為に敵は全部倒そうって思ってましたけど、余計な敵まで作らない様にします」と名瀬さんに伝えた。

 

……確かに冷静に考えてみたら、そのままの思考で進んで行けば何処かで犠牲者を出していたかもしれない。

 

(歳星でキレてから思考がゴジラ気味だったな……いかんいかん)

 

 

 

 

その後、お互いに何か問題が起きていないか情報交換した。タービンズからは整備長を少し貸して欲しいとの事、問題無いので許可を出す。

 

『あ、問題と言えば最近年少組のホームシックがよく起きてますね』

 

そのときは全員集めて一緒に寝てあげているのだが、後から聞いたら別の場所でライドがあやしている事もあったらしくお菓子がそろそろ足りなくなってきたと言っていた。

 

「そうか……いくら少年兵と言ってもまだまだ甘えたい盛りの子供だしなぁ」

 

名瀬さんも思案顔で頷く。

 

問題と言えば問題だがこればっかりは解決のしようがない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

イサリビに戻ってきた。時間的にもう皆寝ているので各々解散となる。

 

三日月さんはお腹が空いたとかで食堂に行った。多分アトラがまだいると踏んでの事だろう。

 

もし居なくても……流石につまみ食いはしないと思のだが。

 

 

 




~食堂にて~

「アトラ、何か食べるものない?」
「あ、ちょっと待って!今作るから!」

「おいしい?」
「うん」
「良かった~!お代わりまだあるからね!」

「ちっちゃい子達?確かに最近夜泣いてるのをライドが慰めてるのを見るけど」
「そうなんだ」
「この前なんか私が抱き締めてあげるって言ったのにフミタンさんの方がおっぱいあっていいーとか言われちゃって」
「ふーん」

「あの……三日月もさ、おっぱいがある女の人の方が好き?」
「別に?そんなことないけど」
「そっか!……えへへ、ヨカッタ」
「…………」

「あれ?どうしたの急に」
「アトラ」
「え?待、三日……んっ」


オールフェーンズ!!涙ぁぁぁぁ!!


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最初から答えの決まっている悩み事

シンの思考が人間寄りに戻ってるのが鍵です。


皆と別れた俺は一人クーデリアとフミタンの部屋へと向かっていた。

 

一つブルワーズに関して気になる事があるのだ。

 

誰が鉄華団の情報をブルワーズに流したのか、である。

 

(ログを確認しても鉄華団で通信を使って情報を提供した奴は居なかった、タービンズも態々自分が不利になる事をする必要が無いしお目付け役の人は論外だ)

 

(つまり、アンタしか居ないんだよな……フミタン)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

(【手筈は予定どおり。クーデリアを伴いドルト2へ入港せよ】……か)

 

イサリビのブリッジの機器を使い雇い主のノブリス・ゴルドンからの指示を受け取る。

 

当然暗号化してある上にログも完全に消去してあるのでバレる事は無い……若干一名不安になる存在はいるが。

 

「私は……」

 

続く文章を読み、机に突っ伏した。

 

(ただ命令を実行すればいいのに私は何を迷っている?)

 

 

 

『【クーデリアはコロニー内の暴動の中心となりギャラルホルンの凶弾によって死すべし。火種はこちらで用意する】……ね』

 

 

 

する筈の無い声を聞いてガバッと体を起こす。

 

「そんな!……シンさん……どうしてここが」

 

『クーデリアから聞いてな、それより答えろ。何だ?それは』

 

目の前の黒い巨体から威圧感が放たれる。

 

「……もう分かっているのでは?私はノブリス・ゴルドンの手の内の者、火星の独立運動の姫クーデリアを殺す為に送り込まれた刺客」

 

『やっぱりブルワーズに情報を流したのはアンタか……』

 

「えぇ」

 

肯定する。こうなっては計画は失敗だ。

 

「貴方にバレてしまっては計画も台無しですね」

 

……だが何故かその事に安堵している自分がいた。

 

 

シンさんが質問を重ねる。

 

『本当にクーデリアの事を殺したかったのか』

 

「……当たり前です。それが任務でしたから」

 

そう、任務だ。だから……

 

『なら何故その首飾りを捨てたりしなかった?』

 

「!……それは……」

 

虚を突かれた所にシンさんが尻尾を突きつけてくる。

 

『本当のアンタはどうしたいんだ』

 

『フミタン・アドモス』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

……とまぁこんな会話をしているが俺は実質このやり取り要らないよね?と思っていた。

 

大体こんなにクーデリア好きなフミタンが暗殺に加担する訳無いだろ!!

 

つまる所それである。

 

もし加担したとしても土壇場でクーデリアを庇って死にそうである。

 

しかし、人の心は複雑怪奇。

 

本人がその結論を出すまで俺はじっと待……

 

 

「フミタン……?」

 

 

……待とうと思ってたけど、その必要は無さそうだな。

 

ブリッジの入口からこっそり聞いていたクーデリアが入って来た。

 

後はクーデリアとフミタンで話し合えば解決するだろう。

 

俺は二人を残してブリッジから退室した。




~帰り道~

『あれ?三日月さんアトラ背負ってどうしたんです?』
「うん、キスしたら真っ赤になって気絶しちゃって」
『……キス?』
「アトラが可愛かったから」
『……ナルホド』


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われわれはかしこいので

イサリビでは設備が不十分なのでハンマーヘッドで作業開始。


『さて、整備長。我々やるときはやるですよ』

 

ほあああああああ!!!!!

 

極上の素材(グシオン)を前に整備長の理性が解放されていた。

 

早速仕事に取り掛かる。

 

まずは素体を回収する。流石は俺といった所で一切傷は付いていなかった。

 

元の動力はぶっ壊れていたので俺が新しいエイハブリアクターを製造する。

 

その間に整備長には図面を渡して素体の上に被せる専用のフレームを制作して貰う。

 

整備長は今自身が今ガンダムフレームを造っている、その事実にさっきから興奮しっ放しである。

 

あはははははははは!!!!!

 

そのくせ仕事は確かなのが凄いと思う。

 

 

エイハブリアクターが四基完成する。その並列稼働を調整しつつ整備長とガンダムフレームを素体に被せてエイハブリアクターと筋肉号から取り出した操縦席を取り付ける。

 

「4つ?」

 

『ツインリアクターではなくクアトロリアクターですね』

 

「YEAH!!!!」

 

 

その後も二人で分担してバルバトスの予備パーツをグシオン用に改造していく。

 

ひたすら頑丈に、どんな状況下でも確実に動作するように。

 

「腕?」

 

『六本』

 

図面を渡す。

 

フォウ!フォォォォオオオオ!!!!

 

背筋ユニット(バイセプス)の発展型、阿修羅ユニット(アスラ)である。

 

パワーを損ねないために腕一つごとに小型生体式エイハブリアクターが一基使われている。

 

武器にも手を加えた。筋肉号の闘いっぷりを見るにハンマーとも相性が良さそうだったのでハンマーにブースターを付けてみた。その他ナックルガード、ハルバート、大型バスターソード等も試しに製作する。

 

それとそんだけ出力があるならとダインスレイヴ擬きのハイパーロングレンジライフルも制作してみた。阿修羅ユニット(アスラ)のリアクターに直結して使うのでサブアーム専用武装である。

 

ちなみに、連射出来るダインスレイヴっていいよね→いい……という経緯を経ている。

 

整備長に確認した所通常弾頭を使う限りなら一応法には触れないらしいのでOKだろう。

 

 

整備長にナノラミネートアーマーの塗装をして貰い、その間にグシオンのシステムを構築する。

 

 

まずは基本の戦闘モードである【通常形態(ガーディアン)】、

センサーの感度の最大化とそれに伴う情報処理の高速化をした【射撃形態(アーチャー)】、

そして【火事場の馬鹿力形態(アンチェイン)】である。

 

火事場の馬鹿力形態(アンチェイン)】に関してはこの機体で出せる上限がまだ分からないので取り敢えず筋肉号からシステムをそのまま移植した。

 

そのシステム移植作業をして、調整を終えたのと同時に整備長から塗り終わったとの報告が来る。

 

 

程よい疲労感と共に整備長と二人で出来上がった機体を見上げる。

 

元のグシオンの緑色の影は一切無く全身蒼色を基調として所々に金色の線が走っている。

 

筋肉号に代わる昭弘の乗機、

 

【グシオン・ディアボルス】であった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

グシオン・ディアボルスを完成させた後、そのままの勢いで筋肉号も修理し、やり終えた所で整備長がぶっ倒れたので俺が整備長を休みにした。

 

(整備長……体力とか考えようよ……というか、筋肉号の操縦者どうしよう?)

 

筋肉号は壊れた手足をマンロディのパーツで修理した。

 

戦闘データから負荷の掛かる箇所は補強したので前よりは強度が上がっているハズだった。

 

名前は【強大(グレート)】を付けて【筋肉号グレート】である。

 

 

ハンマーヘッドからイサリビへと戻る。

 

宇宙空間を泳ぎながら思案していると、遠くにコロニー群が見えてきた。

 

(おぉいつの間にかあんなに近くまで来てたのか)

 

表向きのテイワズからの仕事として、工業物資をドルト2へ届ける必要がある。

 

(整備長と作業する前に覗いたら、フミタン交えて作戦練ってたみたいだけどどうなったんだろ?)

 

そんな事を考えている内にイサリビへと辿り着く。連絡してあったので開いているモビルスーツデッキからイサリビへと帰還した。

 

 

 

おやっさん達に挨拶し、モビルスーツデッキからイサリビのブリッジへ向かう。

 

道中年少組から散々声を掛けられる。

 

(たった三日会わなかっただけなんだけどなぁ)

 

しかし、少し嬉しくもあった。

 

 

 

『ただいま戻りました~!』

 

見れば主要メンバーが揃っていた。

 

「おう、おかえりシン。お前があっち行ってる間に皆で色々作戦を考えてたんだが、お前の意見も聞きたいからコレを見てくれ」

 

団長がそう言い、イサリビのモニターに今まで話し合い総合した情報を出してくれた。

 

ドルト2は主に作業従事者が住むコロニー、酷い条件で働かされているらしい。

 

反対にドルト3は地球から来た会社の経営者や富裕層が住んでいる。環境も整っていてドルト2とは雲泥の差だ。

 

その環境の差、労働条件の劣悪さにドルト2では不満が燻っているらしい。

 

「そのドルト2にお嬢様を連れ出す、と言うのが私に命じられた指令でした」

 

俺の読んでる所を見計らってフミタンが補足の説明を加える。

 

(で、そこにクーデリアとテイワズのアイツが運ばせようとした武器弾薬を同時に持って来させて難癖つけて殺そうとしたのか)

 

『……どうするんです?いっそコロニー行かなくてもいいんじゃないですかね?』

 

わざわざ危険に飛び込む必要は有るのだろうか?

 

「いえ、シンさん。私は行きます」

 

クーデリアがそう告げる。

 

「私が地球を目指したのは火星の人々が幸せに暮らせる世界を作る為でした。……でも火星だけじゃない。ここの人たちも同じように虐げられている……それを守れないなら……立ち上がれないなら、地球へ行ったとしても私の言葉など誰も聞くはずがない」

 

顔を上げたクーデリアの強い眼光が俺を射抜く。

 

「……だから私は戦います」

 

 

(……この数日で何があった!?クーデリア!?)

 

あの日のフミタンとクーデリアの会話は一切知らない……が、お互い本音で話し合って何か精神的成長があったのだろうか。

 

「ていうクライアント様の要望だ。俺達はこれを助ける……どうだ?シン」

 

『問題無いです。そういう事ならクーデリアさんの力になりますよ!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

団長達の作戦としてはこうだった。

 

まずドルト2へ行き本来の工業物資を渡す。

当然クーデリアは連れていかず、武器弾薬も無いのでギャラルホルンが来たとしても相手は引かざるを得ない。

団長達はそのまま労働者側の代表者を見つけて交渉する。

クーデリア達はドルト3に侵入。

会社側に交渉の席に着かせる事を目標とする。

いつ刺客が来るか分からないので当然クーデリアの護衛は俺と三日月さんだ。

 

ドルト2へ行くのは団長、ユージン、シノ、ヤマギ、メリビット。

 

ドルト3へはクーデリア、三日月さん、アトラ、ビスケット、俺、そしてノブリスの手先を呼び寄せて捕らえる為にフミタン。

 

 

しかし、ドルト3の経営陣はそう簡単に会話の席に着くだろうか。

 

顔を上げるとクーデリアと目が合った。

 

「分かっています。私が説得しても相手は動かないかもしれない……でも」

 

『最悪相手を無理矢理交渉の場に引きずり出すのも考えとかないとね』

 

「……はい」

 

 

 

(…………)

 

『昭弘、ハンマーヘッドでグシオンの調整するから来て』

 

「おう……完成したのか」

 

『昭弘専用機だからね、頑張ったよ』

 

 

ドルトに着く前にやり終えなければならない。

 

急いでハンマーヘッドへ行く為にランチをイサリビのモビルスーツデッキの片隅から引っ張り出す。

 

準備していると昭弘がパイロットスーツに着替えて此方へ来た。

 

しかし、一人ではない。

 

『あれ?昭弘の弟さん』

 

「シンさん。俺の事は昌弘って呼んで欲しい」

 

何故ここに?と昭弘に視線を向けると、「お前に話が有るってな」と言って昌弘の肩を叩いた。

 

……すっかり仲のいい兄弟に戻ったみたいでなによりだ。

 

 

申し訳無いが急いでいるのでランチの中で話を聞くことにする。

 

『で、話って?』

 

「シンさん、俺を筋肉号に乗せて下さい。……お願いします!」

 

昌弘がそう言って頭を下げる。

 

『筋肉号に?』

 

(確かに操縦者を探していたので好都合だけど……)

 

『どうして急に?あれは生半可な筋肉じゃ扱えないよ?』

 

「……鉄華団は俺の事を家族だって受け入れてくれた。それにオルガさんも俺達ヒューマンデブリの事を『宇宙で生まれて宇宙で散ることを恐れない誇り高き選ばれたヤツらだ』って言ってくれて……だから俺は兄貴もいるこの場所を護りたいんだ」

 

そう言い切り俺の目をじっと見てくる。

 

「俺からも頼む」

 

昭弘もそう言って頭を下げた。

 

確かにマンロディのパーツで修理したから操縦者はブルワーズの誰かがいいんじゃないかと思ってはいた。

昭弘も頼んでくるのは今まで何もしてあげられなかった弟に対する償い……かな?

 

ならば、ここは兄貴の顔を立てる事にしよう。

 

『……分かったよ。筋肉号グレートの新しい操縦者は昌弘だ。団長には俺が言っておくよ』

 

「ありがとうございます!!」

 

「……恩に着る」

 

二人とも嬉しそうな顔してるなぁ。

 

 

「「……グレート?」」

 

 

反応までそっくりだ。

 




筋肉兄弟(マッスルブラザーズ)爆誕!!!


味方にゴジラがいる状況ならではですね。



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うっかり

鉄華団の良い所であり、悪い所。


あれから、ドルトコロニーに着くギリギリまで昭弘と昌弘の機体と阿頼耶識の調整をした。

 

そのまま二人にはハンマーヘッドでシミュレーション戦をさせ、新しい機体に慣れて貰う事にする。

 

『じゃあ俺イサリビに戻るから!』

 

「分かった。ギリギリまでスマン」

 

「ありがとうございました!」

 

二人に別れを告げて船から飛び出す。

 

因みにブルワーズの子達は名瀬さんのハンマーヘッドについていき諸々手続きをしてくる予定になっているので俺達とは別行動だ。

 

名瀬さんにはテイワズのアイツによろしく伝えておいて欲しいと言ってあるのでブルワーズを下手に扱いはしないだろう。

 

(さ~て、経営陣はどう出るか)

 

 

 

……何かを忘れている気がする俺だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして降り立ったドルト3。

 

 

「うわぁぁああ!!??な、何だコイツは!!??警備……ギャラルホルンを呼べ!!!」

 

(しまったああああ!!!!)

 

 

今俺は三日月さん達と別れてドルト3を逃げ回っている。

 

この見た目で何で普通に行けると思ったのか。

 

小一時間先程の自分に問い正したい気分だった。

 

「居たぞ!こっちだ!!」

 

(ああ、めんどくせぇぇぇぇえええ!!)

 

走りやすい第2形態に戻り道路をバッキバキに壊しながら逃げる。

 

(この状況で人の言葉喋ったらヤバイよな絶対)

 

仕方ないので町中に響くように鳴き声を上げる。

 

(三日月さーん!フミターン!こうなったら俺がギャラルホルンを引き付けるので今の内に交渉進めて下さーい!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一方残されたクーデリア達。

 

「……シンが俺達以外にどう見られるかすっかり忘れてた」

「確かに全員シンに慣れきってたね……」

「どうしましょう!?シンさんが!!」

「シンさんは強いので心配は要らないかと」

「でもどうするの?行っちゃったよ?」

 

その時遠くからシンの鳴き声が聞こえてきた。

 

「分かった」

「えぇ、確かにシンさんが引き付けてくれるのなら好都合ですね」

「三日月、シンは何で言ってたの?」

「俺がギャラルホルン引き付けるから今の内に、だってさ」

「成程、なら急ごう!!」

 

そうして、クーデリア一行も行動を開始した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「しかし、シンと整備長は凄いね。前のグシオンとは全く別物だ」

 

ハンマーヘッドのモビルスーツデッキに並べられたグシオン・ディアボルスと筋肉号グレートを眺める。

 

「私的には前のカエルみたいな方が可愛かったと思うんだけどなー」

 

「カエルって……」

 

毎度毎度この娘の感性は謎だ。

 

『うぉぉぉぉぉおお!!!!!』

 

『まだだぜ兄貴ィィィィィ!!』

 

目の前のモビルスーツ達からコクピットを閉めているハズなのに暑苦しい声が響いてくる。

 

「昭弘も弟くんも頑張るねぇ」

 

「今までずっと離れてたし、それを取り戻そうとしているのかもね」

 

今思い返しても敵の親玉以外人的損失無し、ついでに全員仲間になったあのブルワーズ戦は異常だった。

 

そして昭弘が昌弘を取り戻した経緯が……

 

(それ聞いたラフタがまた笑い転げたんだっけ)

 

確かに筋肉で弟を説得して、武器も使わずあのやたら頑丈なガンダムフレームを拳で半壊(マッスル)させたのは最早ギャグだろう。

 

 

 

……聞こえてくる声からして昭弘がもうすぐ勝負を決めそうだ。

 

「さ、決着が付きそうだし次はどっちが誰を相手する?」

 

「はいはーい!私昭弘!」




アトラは一見いつも通りですが、
二人一緒にいる事が前より増えていたり、食事の時三日月だけご飯が大盛だったりして気付く人は気付いています。


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チョコレート仮面

また一つシンの記憶が甦ります。


「……武器の積み荷は一切無く、クーデリアも居なかった。計画と違う、どうなってるんだ?」

 

 

「あなた方が鉄華団ですか。私が組合のリーダー、ナボナ・ミンゴです」

「鉄華団、オルガ・イツカだ。部下から話は聞いていると思うが……」

「えぇ是非もっと詳しく聞かせて頂きたい」

 

 

「ギャラルホルンが全員出張るなんて……この隙にクーデターが起きたら誰が我々を守るんだ!」

「失礼します。面会の申し出が……」

「またあのザファランとかいう奴か!今は忙しいとでも言って追い返しておけ!」

「いえ、それが……クーデリアと名乗る女性で」

「何!?」

 

 

「まさか兄さんとこんな形で再会するなんてね……」

「俺も驚いたよ。それにクーデリアさんも連れて……しかも全部ギャラルホルンの仕組んだ罠だって?」

「はい、そんな事を起こさせない為に何とかしないと……」

 

 

 

皆が皆で動いていた。俺は……

 

「そっちへ行ったぞー!!」

「モビルワーカー隊!奴を見つけた!外壁寄りの大通りだ!」

「了解!」

 

(もっと大勢来~い!!)

 

目立つ大通りを爆走してどんどんギャラルホルンの連中を集めていた。

 

(大分出てきたな、モビルワーカーもいるし……皆はどうしてるんだろ?)

 

そうして走っていると、ふと進行方向の先から声がした。

 

「こっちだ!来い!」

 

ギャラルホルンの声では無い。それと何故か懐かしさを感じた。

 

そのまま指示に従い路地裏の隙間に体を縮めて飛び込む。

 

砂埃で相手には一瞬で消えたように見えるだろう。

 

「良かった。君に伝えたい事がある」

 

その声は……

 

『アグニカか……?』

 

何故かその声を聞いて自然とその名が出てくる。

 

「アグニカ……何故その名を?」

 

怪訝そうな顔をして此方を見てくる不審なマスクマン。

銀髪のカツラをして顔に変な仮面を着けている。

……目の所カシャカシャするの止めなさい。

 

……違うな。つーかアグニカって誰だよ?……【シン】の記憶か?

 

前にチョコレートの人(マクギリス)を見ても何とも思わなかったが、今の俺は色々と断片的に思い出しているのでそのせいで今回アグニカという名前が出てきたのかも知れない。

 

取り敢えず目の前の人物に対応する。

 

『あ、チョコレートの人……いやチョコレート仮面』

 

「……その覚え方はいいとして直ぐに気が付くのは流石だな」トイウカシャベレタノカ?

 

『何の用だ?』コノソウチノオカゲデネ

 

「ギャラルホルンのクーデリア暗殺計画の事を伝えにね」

 

『それならもう知ってるよ』

 

「…………何?」

 

『ノブリスの手先だったフミタン・アドモスを仲間にしてね。今はクーデターを起こさせないように仲間が頑張ってるよ』

 

驚いた表情で固まっていたチョコレートの人がフッとため息をついて呟いた。

 

「……流石【ゴジラ】だな」

 

……知ったのか、俺の正体を。

 

『どこでその名を?』

 

「そう言うという事はやはり正解か。私を支援してくれているある団体は厄祭戦時代の資料をギャラルホルンに秘密で大量に保存してあってね。そこで火星で見た君の容姿を検索したら見事300年前に地球に現れた【ゴジラ】だと分かったんだよ」

 

『……成る程、お前が俺の正体を認識したのは分かった。なら何故手助けする様な真似を?』

 

「私はこの腐敗したギャラルホルンを変革させようと思っている。その為に君達にはここで消えてしまっては困るのだよ」

 

『俺達を利用しようってか?』

 

「いや、君達も私を利用したまえ。ゴジラに対してそんな態度をとるほど私は馬鹿ではない」

 

(その馬鹿が歳星でテイワズのボスやってんだよなぁ……)

 

「私はギャラルホルンでも上の立場だ。多少の融通なら効くし、必要な情報も提供しよう」

 

本当はここで恩を売っておこうと思ったのだがね、とチョコレート仮面は続けた。

 

(利用し合う関係ならまあ許せる……それと何故かコイツには人間側の俺が反応してるし)

 

 

一応お互いに知っている情報を交換し合う。

 

そして、ふと気付いた。

 

(今後連絡を取る時はどうしよう)

 

流石にマクギリスと呼んで接するのは不味いだろう。

 

『そう言えば人前では何と呼べばいいんだ?チョコレート仮面?』

 

「その呼び方では人前で困るな……今後はこの姿の時はモンタークと呼んでくれ」

 

(待て……モンターク?)

 

(知らない……ハズだけど何故か俺の……【シン】の……名……?)

 

考え込む俺に対してチョコレート仮面が逆に質問してくる。

 

「一つ聞いておきたい。君はアグニカ・カイエルを知っているのか?」

 

『当然だろ、アイツと俺は……俺?ゴジラ、シン?……モンタク……阿頼耶識のデータを……?』

 

(……モビルアーマーが来て……俺が……ガンダムフレームの一号機を……)

 

 

 

『知っている……ハズだが……分からん』

 

「……そうか」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「む、ちょっと待ってくれ」

 

急にマクギリスが呟き難しい顔をする。

 

(その仮面通信機も兼ねてるのかよ)

 

「……今私の同志から連絡が入ったが、クーデリアがドルト3にいる事をギャラルホルンが認識したようだ」

 

『そっか、サンキュー。俺行くわ』

 

「礼はいらない、仲間の元へ行きたまえ」

 

『あぁ』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハァ……と経営者の男は心の中でため息をついた。

 

目の前にいるのはギャラルホルンから散々警戒されている火星独立運動の姫クーデリア・藍那・バーンスタイン。

 

面会を受けたのは噂の人のお手並み拝見くらいの軽い気持ちだった。

 

それなのに、自分は何を思ったかギャラルホルンに連絡せずにクーデリアと話し込んでいる。

 

「ですからこんな解決方法ではなく……」

 

最初の内はいつもの返答でのらりくらりとかわしていた。

 

しかし、クーデリアの話を聞いていく内に自分の中でいつもの面の厚い経営者の皮が剥がれていくのを感じる。

 

その眼に宿る熱意に忘れていた当初の心を思い出したせいかもしれない。

 

話を続けようとするクーデリアを手で抑える。

 

「……正直に言おう。私だって分かっている。こんな方法は間違っているってな。だがな、ギャラルホルンに下手に歯向かって部下を全員路頭に迷わせるのが正しいのか?」

 

どこでどうすれば良かったのか。自分にはもう分からない。

 

「仕方ないんだよ、他に方法は無い」

 

そんな事は無い、他の道は必ずあると説得しようとするクーデリア。それを経営者の男は再び止めた。

 

男にギャラルホルンからのメッセージが入ったからだ。

 

送られてきたメッセージには今すぐそちらへ向かう、何としてでもクーデリアを引き留めろ、そう書いてあった。

 

「……ギャラルホルンがここに来る。逃げろ」

 

「……何故それを?」

 

「私なりの精一杯のお礼だよ。クーデリア、君と話せて良かった。……君は私の様になるなよ?」

 

それを聞きクーデリアが不安そうな顔をする。

 

「私の事なら心配するな。何、連中とは親しくさせて貰っているからな。上手く言いくるめてやるよ」

 

そう言って自分なりに精一杯格好つけた笑顔をみせる。

 

……随分と久しぶりに笑ったな。顔が引き吊ってないといいが。

 

「君達もさぁ行け!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ギャラルホルンの兵士はたった今撃ち殺した男を睥睨しつつ、仲間に連絡を入れた。

 

隠しているつもりだったのだろうが労働者を庇っているのは丸分かりだった。ならばこの際クーデリアを殺す切っ掛けとなって貰おう。

 

労働者の中に紛れ込ませてる仲間に、クーデリアとその一行が経営者の一人を討ち取った。この機を逃すな、今が立ち上がる時だと噂を流すように伝える。

 

「はっ、今まで役に立たなかったんだ。ここで役に立って貰うぞ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

扉が慌ただしく開かれた。

 

「おい、ナボナさん聞いたか!?クーデリアさんが真っ先に先陣切って俺達の敵を倒してくれたらしい!」

 

組合員が興奮して組長に捲し立てる。

 

組長に眼を向けると、分かっていますと言うように頷かれた。

 

「その話は誰から?」

 

「誰って……皆が噂してますよ。やっぱりクーデリアさんは俺達の味方だ!って!」

 

「……不味いな」

 

クーデリアの交渉は失敗……というよりは妨害をされたのだろう。その上意図的に噂を流されている。

 

その時ユージンが急いで部屋に入ってきた。

 

「ミカからか」

 

「あぁ、全員で港に向かってるらしい。一旦そこで落ち合おう、だとさ」

 

「分かった。シノ!ヤマギ!俺達も出るぞ。ユージン、繋がるならイサリビに連絡してくれ」

 

「了解!」

 

ユージンが通信を試しに一旦部屋から出ていく。

 

「ナボナさん」

 

まだ話続けている組合員を押し退けて話し掛ける。

 

「俺達はこの事態を収束させる為に動く、そっちも……」

 

「分かっています。こちらからは手を出しません」

 

相手の思う壺ですからね、と付け加えた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

チョコレート……マクギリスと別れて俺は直ぐに三日月さん達の元へ向かったが、何故か追ってくるギャラルホルンがいない。

 

(取り敢えず誰も来ないなら情報収集しておくか)

 

手近にあった監視カメラを壊し、そのコードに尻尾を接続し、ドルトコロニーのネットワークに繋ぐ。

 

(ん?やけに通信が増えてるな……何々?クーデリア、英雄?経営者の一人を討ち取った?今こそ時は極まれり?)

 

これは……

 

(思いっきり濡れ衣着せられてるじゃねーか!)

 

……思いっきり失礼な事をクーデリアが言われて三日月さんがキレていない限りは、だけど。

 

早速例の経営者の部屋のパソコンにアクセスする。

 

(さーてどんなのが載っているか……お、監視カメラのデータ消してるな。まぁ俺には無駄だけど)

 

サクッとデータを復元する。そしてそのデータを確認すると、クーデリアではなくギャラルホルンの兵士に件の男が撃ち殺される映像が映っていた。

 

(やっぱりギャラルホルンか。本当にアイツらろくでもないな)

 

何かに使えそうなのでクーデリアとの対談からギャラルホルンの兵士に殺されるまでの一部始終を切り取り保存する。

 

(奴等は証拠は残っていないと思っているだろうし、楽しい事になりそうだ♪)

 

 

そんな事を考えていると不意に流れる情報が格段に多くなった。

 

(ん?何が起きた?)

 

気になったのでその元を探る。それと同時に近くのテレビからクーデリアの姿が映し出された。

 

(ちょ!?暗殺者もいるってのに不味いって!クーデリアの性格的に見捨てられないのは分かるけどさぁ!)

 

街中だがしょうがない。俺は体を一気に巨大化させ大通りを体内のエイハブリアクターをフル稼働させて移動を開始した。

 

(昔もこんなことやった様な……)

 

俺は街路樹、車、道路を破壊しながらクーデリアの元へ急いだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ククク、のこのこ出て来るとはバカな女だ」

「報告します!狙撃隊の配置、完了しました!」

「よし……これで目障りな火星独立の姫は平和なコロニーでクーデターを起こした大罪人だ。合図を待て」

「はっ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

労働者達に見つかってしまったクーデリア。

そのままデモの先頭へと連れられてしまう。

 

誤解を解こうとするも、周りの勢いに押され上手くいかない。

 

「ですから、私の話を……!」

 

「分かってる分かってる!俺達の声を代弁してくれたんだろ?あんたには感謝しかないよ」

「クーデリアさん!本物に会えるなんて!」

「支援者さんが言ってたのは本当だったな!各地のコロニーでギャラルホルンへの反撃の狼煙を上げるって!」

 

 

「お嬢様、ここにいる全員お嬢様の話を聞く気がありません」

「興奮しきってるな、こうなりゃ動物と一緒だ」

 

何とかフミタンとオルガが近くまで辿り着き撤退を促す。

 

「何とかしようにも、真実を伝えてもそれを上回る量の噂話でどうしようもありませんね」

 

ナボナも必死に落ち着いて欲しいと仲間を説得していたが、全員聞く耳を持たず、諦めてこっちへやってきた。

 

「ですが、このままエスカレートすればギャラルホルンと衝突して犠牲が出ます!」

 

(何か……何か流れを変える切っ掛けさえあれば……!)

 

 

 

その時、クーデリア達のいる所より前方、ギャラルホルンの建物から爆発音が鳴り響く。

 

「な!?誰が攻撃を!?」

 

あれほど厳命していたのに……!と焦るナボナ。

 

一方オルガはギャラルホルンの自作自演だと気付く。

 

「不味い!フミタン!クーデリアを避難させろ!」

 

「分かりました」

 

「待って!フミタン!」

 

 

ギャラルホルンからの反撃としてスモーク弾が撃ち込まれる。

 

辺りに満ちる白い煙。そして破砕音。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ギャラルホルンの狙撃者がクーデリアとフミタンの背中に照準を合わせ、引き金を引いた。

 

しかし、命中する寸前で何かが彼女らをガードした。

 

スコープから顔を上げれば白い煙の中で何がが蠢いている。

 

再び構えて撃つ。

 

しかし、当たる寸前に再び何かに銃弾を阻まれた。

 

「何だ!?何が起き……!」

 

その時白煙の中の何が動いた。そして、咆哮が響き渡る。

 

咄嗟に耳を塞ぐ。

 

音量としては決して大きくはない、だが何故かこの声を聴くと生理的に嫌悪感を掻き立てられる。

 

 

そして【それ】が尻尾を振り回して煙を払い、その姿を表した。

 

それを見た狙撃兵は、恐怖の叫び声を上げずにはいられなかった。

 

子供の頃に見た悪夢の具現、見ていると耐え難い吐き気に襲われる。

 

【それ】が此方を見据え、再び咆哮を上げた。

 

本能が警鐘を鳴らし立てている。

 

あれには勝てない、逃げろ、生き延びろ、と。

 




鉄華団にとっては頼もしい味方。

ギャラルホルンにとっては?


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VSキマリス

クーデリアとフミタンを狙っていた弾丸は全て尻尾で受け止めた。

 

ゴジラの謎レーダー様々である。

 

(煙幕張ってその隙に狙撃ねぇ……さっきの爆発も自作自演だし、とことん自分達の都合の良いように進めようとしてるな)

 

今まではそれで通ってきたのだろうが、それもここで終わりだ。

 

ざっと狙撃兵の状態をレーダーで確認すると全員逃げ出すか失神していた。

 

当座の危機は無いと判断し、近くにあったテレビの中継車を尻尾で掴んで近くに持ってくる。

 

扉をこじ開けて中を覗くと、中にいた人達は俺の姿を一目見た途端慌てて出て来て逃げ出した。

 

尻尾を突っ込んで回線に接続する。

 

(おーし、これでテレビはOK)

 

後ろの団長達に向かって鳴き掛ける。

 

(フミタン、テレビの準備が出来たよってクーデリアに伝えて)

 

「……!分かりました。お嬢様、シンさんがテレビを。今なら皆話を聴いてくれます」

 

「分かりました。シンさん、いいですか?」

 

(バッチこーい!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それからクーデリアは自分がドルトコロニーで聞いて見た事、殺された経営者の男の話、そしてギャラルホルンの陰謀を話していった。

 

ちなみに俺もただ全世界に放送をジャックして流すだけではなく、レーダーで把握していた自作自演で爆発を起こした証拠やギャラルホルンのクーデリア暗殺計画をテロップにして同時に放送し、色んな動画サイトに経営者の男とクーデリアの対話、ギャラルホルンがその男を撃ち殺すシーンなどを大量に投稿した。

 

また労働者の中に潜んでいたノブリスの暗殺者を三日月さんに教えて捕らえて貰う。

 

この流れでクーデリアに近付こうとして懐に銃を持っているのは暗殺者で確定だろう。

 

先程まで興奮していた労働者達は今は皆静かにクーデリアの話を聴いている。

 

話を聞いて貰う切っ掛けを作ったのは俺だが、それで皆が聴く話が出来るのは流石はクーデリアといった所だろう。

 

そして、クーデリアの話が終わる。

 

さて、これで落ち着いて……と思った矢先にレーダーに反応が。

 

(モビルスーツか、都合の悪い事を騒ぐ虫は潰すってか?)

 

直ぐに団長に状況を伝える。

 

この場はナボナさん達に任せてイサリビへと戻る事になった。

 

 

 

妨害するギャラルホルンは全て俺が蹴散らし、その後ろを団長と三日月さんが運転する二台の車が追従する。

 

港が封鎖されていたが関係ないと押し切りランチを強奪した。

 

皆に宇宙服に着替えてもらっている間に……

 

(来おおぉぉぉおおい!!バルバトス!!)

 

脳内蔵の初期のガンダムフレームはパイロットが乗っていなくても俺の簡単な指令なら聞くのだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「三日月達がピンチなんだろ?なら俺がバルバトスを運んでやるよ!」

 

「!よせダンテ!ソイツは三日月専用に阿頼耶識のリミッターを……」

 

「何だ!?こいつ乗ってないのに!?」

 

誰も乗っていないのにバルバトスが勝手に起動する。

 

そして、近くに置いてあった【繊月(せんげつ)】と滑空砲を掴んでカタパルトへ移り、飛び立って行った。

 

「……え?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「行くのかい?」

 

「ああ、この機体の感覚も大分掴めてきた。礼を言う」

 

「もー!その機体やたら頑丈だし、パワーもあるし!ホント筋肉ばかー!」

 

先程からむきになって何度も戦いを挑んでいたラフタが愚痴を言う。

 

「ありがとう、最高の褒め言葉だ」

 

……何というか、うん。ラフタにまたクリティカルヒットしたようだ。

 

「兄貴、俺も行くぜ!」

 

「ああ、奴等をぶっ倒す!」

 

「「この筋肉に誓って!!」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……シン、それも持っていくのか?」

 

着替え終わった団長が俺の持つテレビの中継車をみて呟いた。

 

『まぁ何かと役に立ちそうなんで』

 

そんな事を話していると全員着替え終わったようだ。

 

『三日月さん、もうすぐバルバトスが来るのでそっちにどうぞ』

 

「分かった」

 

「あれ?バルバトスはイサリビだし、三日月しか動かせないんじゃ?」

 

ビスケットが疑問を抱いたようだが、

 

『いや、バルバトス限定で俺が遠隔操作出来るんですよ』

 

俺の説明を聞いて驚きつつ納得していた。

 

 

 

バルバトスが到着し三日月さんが乗り込み、俺達はイサリビ目指して移動を開始する。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「攻撃を開始します」

 

先程の映像を見れば悪いのは明らかに我々だ。それを分かりつつ反乱分子として口封じに向かうとは……

 

(これがマクギリスの言っていたギャラルホルンの実態か)

 

「特務三佐、この状況ならモビルスーツを出しても問題にならないかと」

 

後ろのアインが不快な提案をしてくる。

 

「馬鹿か貴様は、こんな作戦に我が一族のガンダムフレームを使う訳にはいかないだろう。こんな抵抗する力も持たないコロニーの民を虐殺して口封じするなど……」

 

その言葉に艦長が反応した。

 

「お言葉ですが特務三佐、我々は違法な電波を垂れ流す輩の粛正をしに行くのです。虐殺などとは言わないで頂きたい」

 

「フン、その輩を始末する過程で多少の(・・・)被害も出すつもりなのだろう?」

 

(ものは言い様だな)

 

その時モニターに例のガンダムフレームの姿が映し出される。

 

「……あれは探しておられていた機体では?」

 

(チッ!!)

 

「……本意ではないがこの機会は逃せん。行くぞアイン!」

 

「はっ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バルバトス・ルナノーヴァは早速辺りを見渡して獲物を探る。

 

見ればドルト2から出てきたイサリビに敵が追い縋っていたので、シンを追い越しイサリビを通り越して、追ってきていた4機のモビルスーツに肉薄し、斬り捨てた。

 

直ぐにシンがイサリビへ到着しランチと撮影機材を運び込む。

 

それを確認しつつバルバトスは増援で此方に向かってくる敵モビルスーツに向かって加速した。

 

 

一方グシオン・ディアボルスはコロニーの人々を守るべく、グシオンブーストハンマーを振り回し、ドルトの港から侵入しようとする敵機を弾き飛ばしていた。

 

『うおおおぉぉぉぉ!!オラァ!!フン!!むぅん!!』

 

当然相手のモビルスーツでグシオンの一撃が当たった者は例外無く機能停止に陥った。

 

直ぐに敵は散開して遠距離から倒そうとする。

 

が、グシオンの阿修羅ユニット(アスラ)が起動し、携行してきた四丁の専用ライフルを掴む。

 

サブアームの小型リアクターと直結し疑似ダインスレイヴと化した【筋肉砲(マッスルキャノン)】から弾丸が相手のコックピットに向かって放たれる。

 

一瞬にして四機のコクピットを貫通し機体を停止させた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

大方敵を倒したバルバトス。その時コクピットに接近警報が鳴り響く。

 

即座に機体を捻り何者からの銃弾を避ける。

 

ランスを携え飛来する白と紫の装甲を纏った機体。

 

『ガンダムフレーム、貴様には過ぎた名だ!』

 

ガエリオ・ボードウィンが駆るキマリスである。

 

ガエリオは機体の速度と馬力が示す圧倒的強さに高揚感を覚えた。相手のリアクター反応が違うのが少し気掛かりだが問題は無いだろう。

 

『宇宙ネズミめ!身の程を……!』

 

瞬間ガエリオの背筋が凍る。

 

相手の機体がこのキマリスの機動に完全に追従してきたからであった。

 

『な……馬鹿な!?』

 

『身の程が何だって?』

 

バルバトス・ルナノーヴァの【繊月】がキマリスの肩部装甲を切り裂く。

 

『ぐぁっ!!……くそっ!』

 

咄嗟にキマリスの脚部ブースターを起動し距離を取る。

 

旋回しランスの先端を向けて突撃する。

 

『これならどうだ……!』

 

しかし、キマリスの攻撃は寸前で避けられ、ランスも斬り裂かれた。

 

吹き飛ぶキマリス、それをバルバトスは追いかけ袈裟懸けに斬りつける。

 

何とか残ったランスの柄でガードするも、キマリスは再び吹き飛びデブリの小惑星に叩き付けられた。

 

『斬れない……こいつもガンダムフレームか』

 

背部のブースターから火を吹くキマリスを眺めて一人ごちる。

 

(こいつを殺し切るのはメイスの方が良かったかな)

 

その時イサリビから戻って来いとの通信が来た。

 

キマリスを見ればもう死に体だ。

 

三日月は火花を散らすキマリスを放置してイサリビへと舞い戻った。




ASWG-01~10が脳内蔵の素体を使って出来ています。

ASWG-01は唯一有翼化まで進化した素体です。


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裏切り

アリアンロッド艦隊はどう動くのか?


バルバトスがイサリビの元へ戻ってくる。

 

何の気無しに筋肉号によって吹き飛ばされてきたシュバルベグレイズを斬り捨てる。

 

実はアインが乗っていたのであるが、

 

『!三日月さん!そいつ……が……』

 

さっきからイサリビに張り付いていた奴で……と言おうとしていた昌弘が黙り込む。

 

(兄貴ぃ……三日月さんに近付いたと思ったら相手が斬り裂かれていたんだけど……)

※アインは生きてます。

 

シンと整備長によって馬鹿みたいに魔改造されたバルバトス・ルナノーヴァである、現行最強機体とシンが太鼓判を押したのは伊達ではないのだ。

 

『で、戻ってきてって言われたんだけど?』

 

『あ、そうだ!シンさんのレーダーで敵の大艦隊が来てるって!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『オラァァァァァア!!』

 

また一機グシオン・ディアボルスにコクピットを押し潰されて機能を停止する。

 

既に周りにはモビルスーツの骸が何十機も漂っている。

 

数でも力でも敵わない相手にギャラルホルンの生き残ったモビルスーツはコロニーへ侵入するのを尻込みしていた。

 

しかし、ただ遠くから眺めていると相手の機体の尋常でない威力のライフルに撃ち抜かれてしまう。

 

戦況は膠着状態になりつつあった。

 

『くそッ!何だあの機体は!?』

 

『ダメです!また一機墜とされました!』

 

『あの機体さえどうにかなれば……!』

 

その時別の場所で戦っていた味方のモビルスーツから通信が入った。

 

『……!そうか!アリアンロッドの本隊が!!』

 

目の前でコロニーを守護するモビルスーツを睨み付ける。

 

『……これで奴等も終わりだ!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ドルトのギャラルホルンが目の前の艦隊に向かって逃げて行く。

 

合流させずに俺が第四形態で薙ぎ払うのも考えた。

 

だが、自身のレーダーからの情報、そして目の前のアリアンロッド艦隊の布陣から違和感を覚えたので行動には移さなかった。

 

『……何かがおかしい、三日月さん、昌弘、攻撃はちょっと待って』

 

今すぐにでも飛び出そうとしている三日月さんを止めさせる。

 

 

……すると、予想だにしなかった事が起こった。

 

アリアンロッドの艦隊がドルトのギャラルホルンのモビルスーツを攻撃し始めたのである。

 

「な……!?仲間同士じゃねぇのかよ?」

 

ユージンがその時全員が思った事を代弁する。

 

「何で味方同士で?」

 

ビスケットも動揺を隠せない。

 

こちらが戸惑う間にも次々とモビルスーツが墜とされてゆく。

 

『……成る程、そういうことか』

 

「シン?何か分かったのか?」

 

前髪を弄って考え込んでいた団長が訊いてくる。

 

『多分、だけど。ここまで騒ぎがデカくなって、その上口封じも出来ないとなったら口封じが出来る方を潰して俺達の味方面をして面子を守るつもりなんだろう』

 

「……ドルトのギャラルホルンに全ての責任を被せるつもりか」

 

『多分ね。まぁ腑には落ちないけど、これで戦闘は終了だ』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後は俺の予想通りの展開だった。

 

ドルトのギャラルホルンの残党を殲滅したアリアンロッド艦隊は俺達をスルーし撤退。

 

テレビの声明でギャラルホルンの不穏分子がドルトコロニーで起こしたクーデターであり地球のギャラルホルンは一切関係が無く、またそれに伴い『協力してくれたクーデリア・藍那・バーンスタイン嬢には多大な感謝を』とのメッセージもテレビを通して俺達に伝わった。

 

 

 

 

艦内は重い雰囲気で満ちていた。

 

「チッ、上手いこと蜥蜴の尻尾切りしやがって」

 

ユージンが怒りを込めて呟く。

 

「あぁ、当初の目的は果たせたんだが……だよな?ビスケット」

 

「うん、一応兄さんからの連絡だとドルトコロニーはギャラルホルンの支配を抜けて完全に独立出来たし、経営陣と労働者の仲もクーデリアさんの話のお陰でわだかまり無く手を取り合えたってさ」

 

「そうですか。良かった……!」

 

クーデリアが安堵のため息をつく。

 

『けどあれだけ不利な証拠を流したのに全部対処してくるとはね……』

 

(筋肉号を地上用に改修する為のグレイズのパーツは大量に手に入ったし、戦闘データも取れて得るものはあったけど)

 

してやられた。その感覚がどうも付きまとう。

 

ええい、こうなったら!

 

『あ~!してやられた!この借りは絶対返す!!なので皆でご飯食べましょう!!』

 

食べてストレス発散だ!

 

「……プッ、そうだな」

 

俺の言葉を聞いてユージンが吹き出す。

 

「うん、切り替えて行かなきゃね。まだクーデリアさんを地球に送り届ける仕事は終わってないんだから」

 

とビスケット。

 

「アトラ、この前食べたケーキ残ってる?」

 

三日月さんは早速食べ物の事に思考が移ったようだ。

 

「うん!クーデリアさんも食べる?段々上手く出来るようになってきたんだ!」

 

少し落ち込んだ表情だったクーデリアもそれを聞いて微笑む。

 

「……えぇ。ありがとうございます、アトラさん」

 

「私も何か作ります」

 

と、フミタン。

 

「あんた料理も出来たのか」

 

それにオルガが驚く。食堂でフミタンが料理している所など見たことがなかったからだ。

 

「えぇお嬢様のメイドですから」

 

「……関係あんのか?それ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

食堂では皆がまだワイワイと騒いでいる。

 

料理を皆で食べてひとしきり騒いだ後、クーデリアは一人抜け出して近くの通路から宇宙を眺めていた。

 

遠くに小さいドルトコロニーが見える。

 

(私は……何も出来なかった)

 

ドルトコロニーの状況が改善に向かったのは喜ばしい。

だが……

 

「私一人では何の力も無かった……」

 

シンさんが場を静めて話を聴いてくれる状況にしてくれなかったらあのまま流されるままだっただろう。

 

(人々の希望になる……とは)

 

ドルトコロニーへ着く前にフミタンの心の内を全て聞いて、私はどんな時でも諦めない、人々の希望になると自身に誓ったのに……

 

「……クーデリアさん?」

「ここにいたんだ」

 

声が響く。

 

アトラさんと三日月だ。

 

「あ、探させてしまいましたか。直ぐに戻り……」

 

アトラさんがそれを遮り話し始める。

 

「クーデリアさん、何か辛そうな顔してるから……私で良ければ相談して欲しいなって」

 

「俺は別に」

 

モウ!ミカヅキ‼とアトラさんが突っ掛かる。

 

本当にお似合いの二人だ。

 

「……いえ、ただ私は無力だ。と思っていただけです」

 

鉄華団を支える目の前の二人には敵わない。なのに、

 

「そんなことないよ!!私ドルトのクーデリアさんの話、本当に凄いと思ったもん!!」

 

「俺もクーデリアは凄いと思うよ。俺もオルガも話だけで人の心を動かすなんて出来ない。シンだって恐怖で人を縛れても人の心は動かせないから」

 

「……ですが、それでも……」

 

尊敬する二人に、そう言って貰えるのは嬉しい、だが。

心に重くのし掛かり自然と視線が下を向く。

 

「……アトラ、これって前に言ってた女の子を慰めてあげる場面かな」

 

「ん?え?う~ん、そう、かな?」

 

「分かった」

 

 

俯いていると三日月が近寄ってくる。

 

そして、顎を持ち上げられ、キスされた。

 

……

 

…………

 

……………………!!!????

 

「なっなっ……なななな!!???」

 

「三日月!?」(あれ?私の計画達成!?)

 

「?こういうことでしょ?」




♪STEEL-鉄血の絆-


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モンタークの接触

フミタンオペレーター続行です!

感慨深いですね。


ドルトを出発して少し、俺達は名瀬さんとアミダさんを加えて地球へどうやって辿り着くかの会議をしていた。

 

「この間の件でギャラルホルンには完璧にマークされちまったし……兄貴、元々はどういう手筈だったんです?」

 

「一応予定では地球軌道上にある2つの共同宇宙港のどちらかで降下船を借りて地球に降りるつもりだったんだがな」

 

さてどうしようかと皆が黙り込む。

 

暫く考えていると俺のレーダーに反応があった。

 

『団長、近づいてくる艦が1隻』

 

「何?フミタン、レーダーは?」

 

「……捉えました。通信が入ってきています、繋ぎますか?」

 

「ああ、モニターに出してくれ」

 

分かりました、と言ってフミタンがキーボードを操作する。

 

すると、画面に奇妙なお面を着け銀色のカツラを被った謎の怪しい人物が映しだされた。

 

「うぉ!?」

「お面か?」

 

鉄華団の面々から驚きの声が上がる。

 

『突然申し訳ない、モンターク商会と申します。代表者とお話がしたいのですが』

 

「鉄華団のオルガ・イツカだ。俺達に何の用だ?」

 

『実は一つ商談がありまして……』

 

 

 

団長達がモンタークとの会談の為に色々話をつけている。

 

(確かにコイツを使えば地球へ降りる手段は確保できるな)

 

ナイスタイミングである。

 

そんなことを考えていると後ろから三日月さんに背鰭を引っ張られた。

 

何だ?と思って振り替えると、小声で「チョコレート?」と訊いてきたので鳴き声で(正解です!)と返しておいた。

 

そして、その隣でアトラが「チョコレート?……ケーキ?」と呟いているのが可愛いと思った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの戦闘の後、ボードウィン特務三佐と自分はアリアンロッドの艦隊に回収され、直ぐにコクピットから救出され治療を受けた。

 

今日になってようやく外出許可が下りたので真っ先に格納庫で修理を受けているシュバルベグレイズを見に行く。

 

機体には最後につけられた大きい傷痕がまだ残っていた。

 

(あの機体……リアクターの反応は違うがクランク二尉を殺したモビルスーツ……!)

 

あの連中の船を墜とそうとするもやたら力の強く頑丈なモビルスーツに阻まれ、しかも仇の機体に敵とすら認識されなかった。

 

(私も……阿頼耶識の手術を受ければ……)

 

そこへボードウィン特務三佐がやってきた。

 

「ここにいたのか、アイン。傷に響くから戻って休んだらどうだ?」

 

「すいません、ボードウィン特務三佐。またしてもあのような者共に……」

 

「何故謝る?お前は自分の仕事をきちんと果たした。それに比べて俺は、秘蔵のガンダムフレームまで持ち出したのにこの様だ」

 

特務三佐は悔しげに無惨に斬り刻まれたキマリスを見つめた。

 

そこで先程まで考えていた阿頼耶識について話し掛けたが、特務三佐は阿頼耶識を酷く毛嫌いしているようで、「気持ちの悪いことを言うな。あんなものを体に埋め込めば人間ではなくなってしまう」と言われてしまった。

 

しかし、人間ではないというのは火星出身の自分は散々言われてきた。

 

それでつい自身の境遇を話してしまい、特務三佐の返しに焦ったりと色々あったが、ボードウィン特務三佐は「いや、いい。俺はお前のような男を初めて見た」と言って受け入れてくれた。

 

 

「お前の言うとおり鉄華団は絶対我らの手で倒さねばな」

 

「はい!ですが、このまま行けば地球外縁軌道統制統合艦隊のテリトリーです。セブンスターズといえども勝手な行動は許されないのでは?」

 

「分かっている、しかし俺もあのガンダムフレームに借りを返さなくては気が済まない。知り合いの……あんまり手を借りたくないが……知り合いに頼んである作戦に参加出来るようにしておいた。それまでにその傷を治しておけ」

 

「ボードウィン特務三佐……!ありがとうございます!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「改めまして、モンタークと申します」

 

今部屋にいるのはオルガ、副団長の俺、クーデリア、名瀬さんにアミダさんだ。

 

「で商談ってのは?」

 

オルガが問い掛ける。

 

「私どもには地球降下船を手配する用意があります。クーデリアさん、貴女の革命をお手伝いさせて頂きたい」

 

その言葉に名瀬さんが反応した。

 

「パトロンの申し込みか?……こいつは商談じゃなかったのか?」

 

直ぐにモンタークが返す。

 

「勿論商談です。火星独立の暁に貴方方が得られるハーフメタルの利権、それに私達を混ぜて貰う。その為ならどんな協力も惜しむつもりはございません」

 

成る程それが理由か~と思っていると、黙って聞いていたオルガが顔を持ち上げて話し始めた。

 

「……嘘だな。まだ始まってもいない交渉にそこまで賭けられるのは余程の夢想家か他に何か考えがあるかのどっちかだ 」

 

オルガがモンタークを睨み付ける。

 

「お前は後者だ。言え、何が目的だ」

 

「ですから私はただクーデリアさんを……」

 

「言わないのならこの交渉は打ち切らせて貰う」

 

オルガの有無を言わせぬ圧力にモンタークが黙り込む。

 

よく分かんねぇけど流石団長だな!と思っていると、モンタークが観念したかのようなため息をついた。

 

「フム……子供と侮っていましたが存外鋭い。分かりました正直に話しましょう」

 

そして、眼のシャッターを開けて話し出した。

 

 

……開くのかよ。

少し格好いいと思ってしまった。

 

 

「私はある目的の為にクーデリアさんの交渉が成功する事を本当に願っています。しかし、それはそちらが見破ったように建前、本当の目的は貴方たちからの信用を勝ち得る事。それによって得られる【ゴジラ】であるシン君からの信頼、これを私は求めている」

 

シンの……?と思っているとオルガも同じ事を考えてたようで、「何だってそんな……別に大したことじゃねぇだろ?」と聞き返した。

 

そして、なぁユージン?と振り返って訊いてきたので、あぁ、と返す。

 

 

「貴方がたは彼からの信頼を得ている事の重大さを理解していない。一つの勢力に【ゴジラ】が味方しているこの状況の異常性を……彼に刃向かうものは例外無く滅びる、それはあの厄祭戦が証明している。だからこそ私はクーデリアと鉄華団を全力でサポートする。……とまぁ本音で話すとこんな所です」

 

そんなに言うほどヤバい奴か?シンって?

 

考え込む俺だがオルガは直ぐに話を続ける。

 

「成る程……アンタのクーデリアの交渉が成功して欲しい理由は話せないのか?」

 

「それを話してしまえば私達の関係は対等ではなく脅しで動く上下関係になりますので」

 

それをお望みで?と仮面の下の眼が問い掛ける。

 

「いや……そういう関係はいつか何処かで裏切られるのは知ってるからな」

 

CGSの事か。

 

「なら……?」

 

「あぁ、アンタの協力を受け入れよう。これから宜しく頼むぜ」

 

「勿論です。宜しくお願いしますよ」

 

そう言ってオルガとモンタークは握手した。

 

……つーか名瀬さん殆ど喋ってなくね?




~その頃の名瀬さんアミダさん~

名瀬さんはオルガの交渉を見てその成長ぶりを喜んで、アミダさんはそれに気づいていて夜にからかおうと考えてました。

……完全に親目線?


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残念だったなぁ、トリックだよ

ダンテが活躍します。


「アリアドネに反応!エイハブ・ウェーブ確認。報告にあった船と一致しました!」

 

一瞬のノイズの後、画面に此方へ向かってくる敵戦艦の姿が映し出された。

 

「まさか本当に来るとは……いいえ、それでこそよ!」

 

早速カルタが命令を出そうとした所にガエリオからの通信が入る。

 

『カルタ……』と言い掛けるが、「カルタ司令(・・)よ!」と訂正された。

 

「あなたの無理を聞いて作戦に参加させてあげたのだから、精々我々の足を引っ張らぬようそれなりの働きをしなさい」

 

『分かって……イマス』

 

言葉の途中でそっぽを向く。

 

そんなガエリオにカルタは今一番知りたい情報を問い掛けた。

 

「そっ……それよりあの男はどうしたの?」

 

『?……あの男?』

 

ガエリオが首を捻る。

 

「そんな鈍いことで今回の作戦が務まるの!?金髪で高慢ちきな……地位のためにしょんべん臭い子供なんぞと婚約した、いっつも前髪を弄ってるあの男よ!!」

 

『ハァ……相変わらずの物言いだ。マクギリスなら休暇中です。地球でうちの妹と過ごしてますよ』

 

その話を聞いてカルタが眉を吊り上げる。

 

「地球に?それで私になんの報告もなかったと?」

 

『直属の上司でもないあなたに報告する義務が?』

 

ガエリオがそれに呆れた表情で返す。

 

「ガエリオ!あなたも我ら地球外縁軌道統制統合艦隊をバカにするつもり!?」

 

突然の言い掛かりにモニターの中のガエリオが焦りだす。

 

『はっ?いやそんなつもりは……』

 

「いい!?成果を上げられなかったら承知しない。折檻が待ってるわよ!」

 

『折檻!?折檻って何……』

 

カルタの手振りを受けて通信係がガエリオとの通話を終了させる。 

 

「統制局の連中にお飾りだなんだと言われてきた私達……その真の実力をここで証明してあげる!」

 

カルタの雰囲気を察して後ろに控えている親衛隊が背筋を伸ばす。

 

「我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!」

 

「面壁九年!堅牢堅固!」

 

「さあ、捻り潰してあげるわ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一方こちらは地球外縁軌道統制統合艦隊のカルタが乗ってる艦の上。

 

居るのは一人と一匹。

 

俺とダンテの電子戦得意コンビである。

 

今は中の様子をハッキングして見ていたのだが、

 

「何やってんだコイツら……?」

 

先程の面壁九年堅牢堅固にダンテが困惑を隠しきれない様子だった。

 

『まあ、お陰で違和感を感じさせずにシステムに潜り込めて良かったじゃない』

 

「そうだけどよぉ……」

 

『しっかし団長凄いね……俺とダンテで敵艦に取りついてイサリビの位置と砲撃を錯覚させるとか普通考えつかないよ』

 

「ああ、何かモンタークって野郎から色々聞き出してたな。この地球外縁……何ちゃらは未だに実戦を一回もこなしていないお飾り部隊だって話だったっけ」

 

『まぁモビルスーツを一機も出してない時点でお察しだけどね』

 

「そうだな、だからこそ付け入る隙がある」

 

『よし、じゃあ始めようか』

 

 

近くに居たお前が悪い(ガードベント)作戦】を!!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「敵艦、進路を変えずに直進して来ます!」

 

「フン、火星のネズミ風情が高度な戦術を取れる訳がない……か。全艦隊砲撃用意!」

 

「了解!」

 

「目標前方敵艦!」

 

「カルタ様、いつでも撃てます」

 

「よし……撃てぇい!」

 

 

モニターに全砲撃をもろに受けた敵艦が映る。

 

「んん……張り合いの無い……」

 

勝利の感覚に浸ろうとするカルタ。しかし、オペレーターからの敵艦未だ健在の報を聞いて引き戻される。

 

「何!?」

 

「エイハブウェーブの反応が二つに!?」

 

「まさか、艦を盾に!?……何と野蛮な!!」

 

直ぐにカルタは指示を出し、鶴翼の陣に移り敵を撃沈しようとする。

 

その判断の早さは素晴らしい。

 

それが現実に起こっている事であったら、の話だが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「よし!二隻撃墜!」

 

全部で七隻の地球外縁軌道統制統合艦隊の内、両端の艦が残りの五隻から集中砲火を喰らって爆発する。

 

それを見たダンテが次に俺達がブルワーズの船を盾にして突撃してくる様に誤認させる。

 

『鶴翼の陣ねぇ……なら、お互い向き合おうか』

 

俺はそれに合わせて各艦の位置情報を弄ってお互いがお互いを狙うように調整した。

 

ダンテは阿頼耶識接続でハッキングしている、しかも俺のやたら情報処理能力の高い身体を通しているので鼻血を噴くような事も無く膨大な処理をこなして地球外縁軌道統制統合艦隊全艦に偽装情報を送り続ける。

 

「シンの身体凄ぇな!俺のカスタマイズしたパソコンがゴミみたいに思えるぜ!」

 

『それを使いこなすダンテも凄いよ!俺一人だったら細かい所まで手が回らなかったと思うし』

 

「覚えといて良かったぜ、ハッキング。そこだけはマルバの野郎に感謝しとかねぇとな」

 

『お、お互い向き合った』

 

「よっしゃあ!!テメェら同士で自滅しやがれ!!」

 

 

 

そして各艦隊が砲撃を開始する。

 

味方を狙っているとは露も知らずに。

 




\ファイナルベント/


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マッスルインフェルノ

戦火の灯火っていい曲ですよね。




モニターには我々の総攻撃を喰らいボロボロになった敵艦が映し出される。

 

「フフフ……ハハハハハ!!これよ!これでこそ我々の実力を……!」

 

今度こそ敵を討ち取ったと確信しカルタが溢れる喜びの感情を抑えきれずに笑いだした。

 

『……ルタ……カルタ!!』

 

そこへ接触回線でガエリオの声が飛び込んでくる。

 

「何?モビルスーツに乗ってるの?残念ね、敵ならもう……」

 

『違う!!やられたのは此方だ!!生き残ってるのはお前の艦だけだ!!』

 

「……は?何をバカな……!」

 

『奴等は既にお前の所を通り過ぎた!今すぐ全モビルスーツを出せ!』

 

 

「……あの万年みそっかすは何を言っているの?モニターは?」

 

カルタがモニターを見ている監視係に質問する。

 

「はっ、画面は正常で……」

 

その時ハッキングされていた艦のシステムがシンとダンテがそこを離れて暫くした今、自動復旧システムにより復旧し本当の映像を映し出す。

 

 

 

同士討ちの結果、カルタの乗っていた艦を除きお互いを攻撃し合った事で地球外縁軌道統制統合艦隊は壊滅していた。

 

 

 

「なっ……?これは……!?」

 

艦隊が全て同時にハッキングされていたんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!』

 

「バカな!?あり得無いわ!!」

 

『実際起きたんだ認めるしかないだろう!?お前の所のモビルスーツも早く出してくれ!俺はアインとあいつらを追う!!』

 

「待っ……!」

 

ガエリオからの通信が切られた。

 

漸く現実を理解したカルタが怒りで震え出す。

 

「この……この私がしてやられたというの……?」

 

「か、カルタ様?」

 

「お前達!!何をぐずぐずしているの!あの正々堂々と勝負しない腰抜け共を……!あぁあ今すぐ!!今すぐ殺してきなさい!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そんな騒ぎを尻目にイサリビの地球降下メンバーは既に降下挺に乗り込み、モビルスーツの展開も済ませていた。

 

そしてイサリビはチャドが動かして急速離脱している。

 

降下挺を守るのはバルバトス、グシオン、筋肉号、俺のフルメンバーだ。

 

筋肉号は前の戦闘で獲得したグレイズのパーツで地上でも動けるように改修済みだ。

 

「奴等、漸く気がついたな」

 

『昭弘、撃っちゃって』

 

「おう」

 

昭弘はグシオン・ディアボルスを【射撃形態(アーチャー)】へ移行させ狙いを定める。

 

そして立て続けに発射し近づくモビルスーツを撃ち落としてゆく。

 

「ん、俺あのガンダムフレームやるよ」

 

俺のレーダーとは全機リンクしているので、目標を見つけた三日月さんがバルバトス・ルナノーヴァを駆り相手の元へ急行する。

 

「あの機体……この前の!」

 

昌弘もアインのシュバルベグレイズを見つけて移動を開始する。

 

あらかた敵を墜とした昭弘が【射撃形態(アーチャー)】を解除し基本の【通常形態(ガーディアン)】にグシオンを戻す。

 

「ふぅ……あらかた片付いたな」

 

『お疲れ様、正直過剰戦力だったかな』

 

その時、無事だったカルタの艦から五機のグレイズリッターが飛び出してきた。

 

先頭から順々に、ずらして撃てばまとめて墜とせそうな隊列で。

 

「……何であんな御丁寧に撃って下さいみたいな動きで近付いてくるんだ?」

 

『……俺には分からん、全然分からん』

 

分からないので近付いて真正面から激突してみた。

 

俺の姿に衝撃を受けたのか相手の動きが止まる。

 

そこに、

 

「おらぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

グシオンのブーストハンマーが一機を打ち据え、もう一機も巻き込み吹き飛んでゆく。

 

(残り三機……ん?このエイハブウェーブは)

 

斧で俺を攻撃しようとしていたグレイズリッターが予想外の方向から銃撃を喰らいたたらを踏む。

 

そこへ両手に金色の剣を携えた真紅の機体が斬りかかり、数回の打ち合いの後グレイズのコクピットの隙間に剣を深々と突き刺した。

 

「あれは……?」

 

『モンタークだね』

 

「正解だよシン君、動きだけで分かるとは流石だな」

 

『いや、多分三日月さんも分かると思うよ?』

 

「あのバルバトスの彼か……」

 

キマリスのブースターが増加されて通常なら対処出来ない筈の攻撃を軽々といなすバルバトス。

 

「……凄まじいな、やはり君達と手を組んで正解だった」

 

 

見れば残った二機は戸惑った様に此方の様子を伺ってくる。

 

 

すると降下挺の団長から通信が入ってきた。

 

(ん……了解)

 

降下準備が出来たから早く戻って来いとの事だ。

 

『皆、団長が戻って来いって。取り敢えず戦闘不能に出来たら降下挺へGO!で』

 

「分かった」

 

遠くの三日月さんから返答が来る。

 

昌弘から返事が無いのは戦闘で手一杯だからか。

 

それに気付いた昭弘が「俺は昌弘を手伝って来る」と言ってグシオンのブースターを全開にする。

 

「ふむ、では私は目の前の二機を倒したら退散するとしよう」

 

『ならあんたは右のを、俺左の殺るから』

 

「了解した」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

先程から何度も馬鹿の一つ覚えの単調な突進を繰り返されていたバルバトス。直ぐに慣れて完全に相手の動きについていける様になった。

 

そこで、敢えて背中を晒し攻撃を誘う。

 

それをやっと出来たチャンスだと勘違いしたキマリスが突進してくる。

 

しかし当たる寸前に避けられ、それどころかランスを奪い取られる。

 

武器を無くしたキマリス、それに向かってバルバトスが先程までの意趣返しとばかりにランスを構え突進する。

 

唯一の武器と言っていいランスを奪われた事でキマリスは逃げの一手に走る。

 

ランスの重量が無くなった事で直線的な加速はキマリスの方が上だが三次元的機動は全身にエイハブスラスターを付けたバルバトスの方が上で徐々にキマリスに迫る。

 

そして激突しランスが元の持ち主の右腕とブースターを貫いた。

 

ランスを引き抜き、追撃を加えようとした所に筋肉号と戦っていたシュバルベグレイズが駆けつけ、バルバトスに掴み掛かる。

 

しかし避けられ、右腕を斬り飛ばされる。それでもめげずに挑みかかったグレイズのコクピットにバルバトスから投擲されたランスが突き刺さる。

 

 

二機とも戦闘不能になったのでバルバトスは背を向け仲間の元へと去っていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「兄貴済まねぇ……奴を仕留めれなかった……」

「気にするな、生きていれば次があるんだ」

『そうそう、生きていれば何とかなるからね』

「お待たせ」

『あ、三日月さん。ガンダムフレームどうでした?』

「何か動かなくなったから置いてきた」

『流石!』

「なぁ、一ついいか?」

『何でしょう?』

 

 

「降下挺……無くないか?」

 

 

『………………』(冷や汗)

「シン?」

 

『すいません!!団長が連絡があった時に敵倒して戻ってくればOK的な状況だと勘違いしてました!!連絡あった時直ぐに戻るべきでした!!』

 

「……え~っと」

「俺達降りれない?」

『………………カモ』

「いや、待てシン。覚えているか?俺達が編み出した技……マッスル・インフェルノだ」

「マッスル……インフェルノ?」

「何それ」

 

『……あれ!?……確かにモビルスーツの残骸なら大量にあるけど……』

 

「やるしかないだろう」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

結果として全機とも無事ギャラルホルンのモビルスーツを盾にして地球降下に成功した。

 

俺はと言うと……

 

(あっちゃっちゃっちゃあああああ!!!このまま海水にドボンだ!!)

 

皆と落ちるポイントを大幅に変えて海へと落下していた。

 

津波が起きないようにフル並列稼働のエイハブリアクターで重力制御したせいで体内の熱が冗談では済まされない事になっていた。

 

水があって良かった!!ビバ水の惑星!地球!!

 

 




急速冷却中……



初代メイス先輩「ここが地球か……!」

レンチメイス「アインの野郎……待ってろよ」



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地球到着

シンだけ別ポイントに落下、宇宙と違って飛べないので泳いでオルガ達の元へ向かっています。


「本当にビックリしたよ~!降りるよって言ってるのに全然戻って来ないし全員何か凄い方法で降りてくるし!」

「ごめん、アトラ」

「別に怒ってる訳じゃないけど……心配するからあんまり無茶しないでね?」

「分かった」

 

 

「アンタ達も無茶するねぇ」

「いや~あんな降り方思い付いてもその場のモビルスーツ使ってやる?普通専用の盾とか使おうと思わない?」

「別に……俺は俺と皆の筋肉を信じただけだ」

「クフッ……因みに……もしかして技名とか付けてたり?」

「ああ、【マッスル・インフェルノ】だ」

「……っ!……っつ!!」

「何で絶対笑うって分かっているのに訊くのかねぇこの娘は」

「だって……フフッ……あははは!!」

 

 

「うわぁぁぁあああ!!??ライド、何捕まえて来てんのさぁ!?」

「え?コイツの事?そんなビックリしなくても……そこの茂みに居たんだけど何か可愛くない?」

「うわぁ……何だそりゃ」

「これ……蛇?」

「知ってんのか?ヤマギ」

「うん、暇だった時に地球に棲んでる生物ってデータベースを見てたから」

「じゃあ、これ何て種類なんだ?」

「う~ん?……分からない。俺の見た中でこんな胴体だけ太い奴なんて居なかったし」

「そっか、なら取り敢えず捕まえといてシンさんに見せようぜ!何か知ってるかもしれないし」

「そうだね」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

日も暮れて辺りもすっかり暗くなった。

 

降下挺から荷物の運び出しも終わり、各々寛ぎ始めている。

 

「何とか地球まで辿り着いたね」

 

「途中ミカ達が来なかった時はどうしようかと思ったが何とか降りてこれて良かったぜ」

 

その言葉にビスケットは先程倒した敵機体を盾にして地球降下を敢行した三人と一匹の勇姿を思い出した。

 

……って勇姿じゃないよ!?あれはただのアホだよね!?

 

「流石に……あれはちょっと無茶すぎないかな……?」

 

「シンが改造したモビルスーツだ。何でもアリだろ」

 

「ああ……そうだね」

 

少し煤けた表情をするオルガにビスケットは同情した。

 

話題を変えるべくこれからの計画について発言する。

 

「で、全員無事にここまで着けた。後は……」

 

「ああ、後は蒔苗ってじーさんの所にクーデリアを送り届けるだけだ」

 

そうオルガが言った瞬間、背後から突然声が掛けられた。

 

 

「ホッホッホ、儂を呼んだかな?」

 

見れば立派な着物に身を包み、やったらボリューミィな髭を蓄えた老人が杖をつき立っていた。

 

その髭の余りのボリューミィさにビスケットはその髭にオルガの前髪の行き着く先を幻視した。

 

「アンタは?」

 

「儂は蒔苗東護ノ助。お前さん達じゃな、鉄華団というのは」




シンは今回の大気圏突入でエイハブリアクターの臨界稼働情報や熱の放熱の最大効率化など莫大な情報を得ました。

その上で第四形態に変化します。

ヤバいですね。


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蒔苗との会談

イサリビも実は魔改造されてます。

というかシンがしてないハズが無いですね。




そして次の日の昼過ぎ、

 

蒔苗との交渉へ向かうオルガ、ビスケット、クーデリア、メリビットの四人は別の場所でその支度を進め、残りは蒔苗氏からの夕食の食材の差し入れを見に滞在する事になった宿の門の前でたむろしていた。

 

そして置かれたのは蓋のしてあるバケツ。

 

アトラがおずおずと蓋を開けて除き込むと、ばしゃん!と水音と共に中から見た事の無い生き物が飛び出してきた。

 

「わっ!わぁあ!?何よコレ!?」

 

反射的にアトラが近くにいた三日月に抱きつく。

 

直ぐに三日月がアトラを背中に回して庇った。

 

 

「何だよこりゃあ?」

 

地面に落ち、動きが止まったそれをシノが足でつつく。

 

すると再び激しく跳ねだした。

 

「「「「「わあああああああ!!??」」」」」

 

鉄華団の全員がその跳ねて向かってくるそれから逃げ惑う。

 

 

その時、むんずとラフタの手がそれを捕らえた。

 

「すっごーい!これカレイじゃない?」

 

「あぁ、うまそうだ」

 

「……ヒラメじゃないの?」

 

その発言にアトラが真っ先に反応する。

 

「え?……これ食べれるんですか?」

 

 

 

そんな食べれる食べれないの話をしていると蒔苗氏からの人が急に挙動不審になり慌てて車で去っていった。

 

「どうしたんだ?急によ」

 

「オメーらのその背中のだ。阿頼耶識なんて地球じゃ誰もやってる奴はいねぇ……まぁ俺の義足も似たようなもんだがな」

 

 

そこへ支度を終えたオルガ達が出て来て、また何だそりゃ食べれんのか!?の話が巻き上がった。

 

 

 

 

「三日月、私がコレ料理したら食べてくれる?」

「うん」

「よ~し!頑張るね!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ここは蒔苗の屋敷の中、海に面したその和室の中で蒔苗とクーデリアが対面して座り、側にオルガ、ビスケット、メリビットが控えている。

 

「い~やいやいやいやよう来てくださった。儂が蒔苗東護ノ介じゃ。待ちわびとったよ、腹は空いておらんか?」

 

「蒔苗さん、そんなゆっくり話出来る時間は無いんだが」

 

初っぱなから長引きそうな出だしで始まった会話をオルガがピシャリと打ち消す。

 

「ギャラルホルンなら心配無用、奴等は此処には来んよ。ここが何処の管理区域に属しているか知っておるかね?」

 

「オセアニア連邦……ですね」

 

クーデリアが答える。

 

「左様、つまり連邦の許可がなければ此処へは入ってくる事は出来ん」

 

「けど、オセアニア連邦が俺達を匿う理由は無いでしょう?」

 

オルガが突っ込む。

 

「理由ならあるとも。むしろあんたらに表彰状でも渡したいくらいに感謝しておるよ。ドルトの改革でアフリカンユニオンは打撃を受けた。それは我々他の経済圏にとっては万々歳じゃ。その恩人を売り渡す事だけは連邦はせんよ」

 

いや~あの件は痛快じゃった!と蒔苗が膝を叩いた。

 

「で、何じゃったかな?お前さん達が来た理由は?」

 

「アーブラウとの火星ハーフメタル資源の規制解放の件です」

 

クーデリアが即答する。

 

「そうだったそうだった。それは儂も実現したいと常々考えておったことだ。だが今は無理だな」

 

「無理?それはどういう……?」

 

「儂は失脚し亡命中の身だからな」

 

部屋の気温が一瞬にして下がった。

 

「つまり今の儂にはなんの権限もない」

 

「俺達は何の権力も無いじいさんに会う為だけに火星からここまで来たって事かよ……」

 

オルガがボソッと呟く。

 

その呟きを拾った蒔苗がオルガに話し掛けた。

 

「何の権力も無いとはまだ決まっとらんぞ?まだまだ逆転の目は残っておる」

 

「何だよその逆転の目ってのは」

 

「儂をアーブラウの代表指名選挙に連れていけ」

すぐにその意味を理解したクーデリアが疑問を投げ掛ける。

 

「……出れば確実に当選すると?」

 

「ああ、それは保証しよう」

 

しかし、その蒔苗の態度にメリビットが異義を唱えた。

 

「待って下さい。連れていくと簡単におっしゃられますが対抗馬のアンリ議員はギャラルホルンの後ろ楯がついているとの噂があります。もしそうならギャラルホルンからの妨害は避けられません」

 

「そうじゃな、だがそれしか道は無い」

 

会話が止まりお互いに黙り込む。

 

 

 

「……アンタの状況は分かった、ならこの話は一旦持ち帰らせて貰う」

 

「あん?持ち帰るだと?ぬるい……ぬるいな。お前さんら少し勘違いしとらんか?」

 

「当然だろ?俺の仲間に命張らせるんだから」

 

そのオルガの言葉に蒔苗が先程までの好々爺とした態度をガラリと変えた。

 

「お前らはどうやって火星に帰るつもりだ?帰る手段がどこにあるっていうんだ?ええっ!」

 

その剣幕にオルガは一向に動じず、

 

「帰る方法ならあるぞ」

 

と返した。

 

それに驚いたのは仲間の方である。

 

「え?」

 

「何言ってるのさオルガ!?」

 

「お前らは知らなかったか。イサリビは単体で大気圏突入、離脱出来るように改造されてる。……まぁ周囲の被害を全て無視するのなら、だがな」

 

「それならギャラルホルンは?お前たちをギャラルホルンに売り渡さぬようオセアニア連邦が動いてくれているのはさっき言ったな。だがそんな話わしの一存でどうとでもなる」

 

「テメーは脅す事しか出来ねぇのかよ?アンタが失脚してなけりゃしなくてよかった苦労を俺達がするんだ、素直に手伝って下さいぐらい言えねぇのか?」

 

「……あんまり調子に乗るなよ、小僧」

 

蒔苗の口調が低くなる。殺気も飛ばされるが、正直シンの殺気を知っている身からするとかわいいモノとしか思えない。

 

「まあいい、ギャラルホルンに連絡するなら好きにしろ。その時はお前を殺して俺達は火星に帰る」

 

気負う事なく立ち上がり仲間に声を掛ける。

 

「皆の所へ戻るぞ、ビスケット、 シン(・・)

 

そして、その言葉に反応し外の海から盛大な水柱が上がる。

 

そして屋敷を海水の奔流が飲み込もうとした瞬間、まるで時間が停まったかの様に静止した。

 

そして静かにその場に落ちる。屋敷は一切濡れていない。

 

 

 

現れたのは黒い異形。

 

重力制御を完全に習得した第四形態。

 

300年の時を経て、シンゴジラが地球に帰還した瞬間であった。




~オルガの心境~

何となく居そうな気配感じて声掛けたんだが……アイツやけにデカくなってないか!?


※118.5メートルです。


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なごやか夕食

蒔苗のじーさんはシンを見て腰抜かしてました。

オルガ達は帰って来て夕飯です。




「……ってな訳で蒔苗のじーさんを護衛してアーブラウまで送り届けなけりゃいけない訳だが」

 

「モグモグ……うん、それで?」アトラオカワリ

 

丁度ご飯がきれた三日月がアトラにお代わりを頼む。

 

それに対して厨房から団長達の分も作ってるからちょっと待ってー!と返ってきた。

 

「………………」ムシャムシャ

 

昭弘が黙々と魚を解体し箸を進める。

 

「……おいしいのか?それ」

 

「うん、見た目は変だけど」

 

「筋肉にいいらしいからな、少し慣れないが美味いぞ」

 

そこへ三日月のお代わりとオルガ達の分をアトラとラフタが持ってきた。

 

クーデリアは久々の魚料理に喜び、オルガはミカの見てる手前情けない姿は見せられねぇ……!と気負って料理を食べ始めた。

 

「ん、成る程。確かに美味いな」

 

「でしょ、向こうでも食べたいし火星に魚持っていけないかな」

 

ボソッとした三日月の呟きだが、その時オルガに電流が走った。

 

「……魚料理か!いいアイディアかもしんねぇな」

 

「火星で店でも出すのか?」

 

横で食べてたユージンが反応する。

 

「あ!それいいかも!地球まで行くより火星の方が近いしね」

 

ラフタも手近で魚料理が食べれるならと賛成の様だ。

 

その後どうやって魚を持っていくのか何処で飼うのか飼い方は?と議論が続き……

 

「そういやチビ共はどこ行った?」

 

オルガが周りを見渡してシノとヤマギに話し掛けた。

 

「あー、オルガが来る前にシンの所行くー!って騒いでたぜ」

 

「うん、シンやけにデカくなってたよね」

 

「アイツはなぁ……やること成すこと全部ブッ飛んでてなぁ……」

 

そこから話が此処にいないシンの話題で盛り上がった。

 

その最中、

 

「……?あれ?何か外明るくない?」

 

夕食を食べつつ話していたので外はすっかり真っ暗だったハズだが……

 

「ホントだ、紫色?」

 

「何だろうね、見てみようか」

 

ビスケットが立ち上がり窓を開けようとする。

 

丁度その時アジーとエーコが冷やしたスイカを切って持ってきた。

 

「はい、冷やしておいたスイカだよ」

 

「ジュースもあるよ~!」

 

食後のデザートの登場に皆の意識が一気にそちらへ移る。

 

もし注意をそらさず意識を窓の外に向けていれば微かな唸るような音と一瞬光が強まったのに気付いただろう。

 

 

外で年少組の歓声が上がった。

 

「むぐ、むぐ……外何してるんだろ」

 

三個目のスイカを食べながら三日月がアトラに話し掛ける。

 

「何だろ、花火かな?」

 

「花火って?」

 

「えーっとね、火薬を何かこう……丸めて火をつけてパチパチする綺麗なモノなんだって。アジーさんに教えて貰ったんだ」

 

「ふーん、どこで買えるのかな?」

 

「火星に帰る時に探してみよっか!」

 

「うん、そうだね」




さーて、何が裏で起こってるんでしょうねー(棒)


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脱出準備

?(やっべぇ無意識に迎撃しちゃったよ……まぁギャラルホルンだしいっか)


結論:ドローン飛ばそうとしたギャラルホルンが悪い。



次の日の朝、相談の結果蒔苗をアーブラウを連れていく護衛を引き受ける事になったので、前と同じメンバーでオルガ達は再び蒔苗の屋敷へ向かった。

 

部屋に入るやいなや、オルガは蒔苗からため息混じりに話し掛けられる。

 

「……お前さん達昨日ギャラルホルンの艦隊を撃沈したか?」

 

「は?んな事俺達はして無ぇぞ?」

 

「ギャラルホルンからの言い掛かりでは?」

 

覚えの無い事にオルガとメリビットが反論する。

 

「……そうかもしれんな」

 

それを聞いた蒔苗が遠い目をして窓の外にいるゴジラを眺めた。

 

「……で、結論はどうなったんじゃ?」

 

明らかに昨日と比べると覇気が無い事が気になるものの、オルガは護衛の仕事は引き受けたと伝えた。

 

「おー……そりゃ安心だな……」

 

「……なぁ蒔苗さんよ、アンタ大丈夫か?」

 

「いやぁ、あんな常識外れの存在が目の前に居たらなぁ……」

 

誰だって少しはこうなるわい、と蒔苗が一人ごちる。

 

それに少し同情しつつ、オルガは話を進める。

 

「まあいい、早速この島から脱出するから準備を始めてくれ」

 

「わかっておるよ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

整備長とおやっさんはモビルワーカーをエーコはタービンズの機体の整備でてんてこ舞いだった。

 

「整備長整備長!筋肉君達のモビルスーツは地球用のセッティングにしたりしなくていいの?」

 

「フフフ、コイツらはね地球へ降りてきたら勝手に適応するんだよ。シン君がそうプログラミングしたからね」

 

「へぇ~!何か生きてるみたい。整備長!そっち終わったらこっち手伝ってね!」

 

「分かってるよ」

 

漏影の置いてある場所へ向かいながらエーコは考える、普通のテンションの整備長違和感有りすぎ!と。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

クーデリアはモンタークに連絡を取りエドモントンまでの交通手段を確保し、オルガ達は来た船にどんどん荷物を乗せてゆく。

 

俺はといえば……身体のデカさが仇になりまともに手伝えない。

 

もう少ししたら最適化して小型化出来るんだが……

 

なので今は全力でレーダーを張って警戒する位しかやる事が無かった。

 

 

昨日の出来事を思い出す。第四形態になったのもそうだが、

 

(放射線流が撃てるようになったのが一番デカいな)

 

昔を思い出すなぁ……あのムカつく爆撃機を墜とそうとして初めて撃ったんだっけ。

 

昔で思い出した。

 

(核エネルギーじゃなくて今はエイハブリアクター使ってるから放射線流ってよりリアクターカノンって言うのが正しいか。ただ威力が強すぎて街中じゃあ使えないなぁ……)

 

一応、昨日のデータを元にリアクターカノンのエネルギー効率の改善も済ませてある。

 

それにしても昨日のギャラルホルンの艦隊で試し撃ちが出来て本当に良かった。

 

初使用が街中だったら目も当てられない。それこそ300年前の日本だ。

 

 

(……そろそろか)

 

レーダーに大気圏を降りてくる準備を整えたグレイズリッターの集団が映る。

 

(来いよ人間、シンゴジラ第四形態の初陣だ)

 

 

 

島中に響く鳴き声を上げる。

 

完全に意味が分かったのは三日月さんに昭弘フミタン位だろうが、敵襲!のニュアンスは伝わっただろう。

 

赤熱化したシールドを盾にして八機のグレイズリッターが降下してくる。

 

俺の攻撃意思に反応して体内のリアクターが出力を上げる。

 

背鰭が紫色の光を徐々に放ちだす。

 

降下中の敵に背鰭を向け、俺はリアクターカノンをぶっ放した。

 

八つの光線が背鰭から目標に向かっていき寸分違わす突き刺さる。

 

当たって数秒で盾が溶解し、貫通したレーザーが機体に突き刺さる。

 

運良くコックピットを外れた敵は盾を捨てて飛び降りたが三機が運悪く直撃し力を失って崩れた。

 

落ちてゆく五機に今度は口からリアクターカノンを放ち横凪ぎにする。

 

武器に当たった二機が派手に吹っ飛んで行った。

 

三機は腕や足を両断されたが、何とか島へ降り立つ。

 

『何て……何て卑怯な!!!絶対に許さ……』

 

指揮官機から怒鳴り声が聞こえてくるが、武器を携えたバルバトスとグシオンが登場した事で言葉が止まる。

 

『殺っていいんだよな』

 

『当たり前じゃん』

 

そう確認し合うとお互いにバルバトスはメイスをグシオンはブーストハンマーをコックピットに降り下ろした。

 

残るは先程まで煩かった一機。

 

バルバトスがメイスを掲げる。

 

『ま……待て!私はセブンスターズのカルタ・イシューだ!!先程までの貴様らの無礼は許そう!だから正々堂々と……!!』

 

バルバトスがグレイズリッターのコックピットにメイスの先端を押し付ける。

 

『ヒッ!?わ、私を殺せばギャラルホルンが……』

 

『うるさいよ、さっきから』

 

パイルバンカーが撃ち出され、コックピットを貫いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「イシュー家の娘が死んだか」

「ラスタル殿……!先程の映像は……!!」

「えぇ、あれが【ゴジラ】ですバクラザン殿。300年前に現れた厄祭、ガンダムフレームの産みの親、厄祭戦の元凶」

 

その言葉に場が静まりかえった。

 

「クジャン公を呼ばなかったのは?」

「彼はまだ若く、厄祭戦の知識も知らない。呼べば無駄に会議の時間が長引くだけだと判断しただけですよ」

 

【ゴジラ】、【厄祭戦】それに【ガンダムフレーム】の情報は党首を継いだ者だけが知る決まりとなっていた。

 

「それもそうか……戦後ギャラルホルンは【ゴジラ】の情報を秘匿し続けてきた。英雄たるガンダムフレームが【ゴジラ】から出来ている等と知られたら大変なスキャンダルだ」

「どうする。対策は考えているのか?」

「えぇファリド公。心配せずとも此方にはダインスレイヴと血液凝固剤があります。それに300年前には無かった力、阿頼耶識の技術も此方は保有している」

 

ラスタルはモニターを操作し独自の研究機関で研究が進められていた機体の情報を表示した。

 

「グレイズに阿頼耶識を組み込んだ試験機を使います。生き残ったカルタの部下達を被検体にして」

 

誰も反対意見を述べず、ラスタルは話を続けた。

 

「彼らには【ゴジラ】を討つ英雄になって貰う、その代償は彼らの命だ」




カルタは艦隊壊滅の責任を全て鉄華団になすりつけてラスタルに報告。
ラスタルはそれを了承したものの心の中でその失態をゴジラの実力を図るために捨て駒にすることで償わせようと考えた。


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旅行計画

祝☆ビスケット生存!




軌道上の監視衛星をリアクターカノンで撃ち落とす。

 

(俺の姿見られたな、さてギャラルホルンはどう反応する?)

 

取り敢えずこの姿でやる事は全てやったので体を小型化させてゆく。

 

肉体をエネルギーに変換して小型化したとはいえ、宇宙ではそんなに気を使わなかったが一歩一歩で地震が起きては始末に負えないので、重力制御をフルに使って自身のみ影響下に置く。

 

移動しやすい第二形態に退化して重力制御で宙に浮かぶ。

 

(おお!こりゃいいや!)

 

早速ほぼ準備を終えた団長達の元へ向かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『で、どうするんです?』

 

出航して暫く、団長からの召集で主要メンバーは蒔苗を含めて地図を囲んでいた。

 

俺はその前に整備長に会って装置を貰い、また会話が出来るようになっていた。

 

「……喋っておる……それに縮んで、浮いて……もう儂訳がわからん……」

 

俺を見てやけに沈んだ雰囲気を出している蒔苗のじーさん。

 

団長が首を振りながらポンポンと背中を叩いているのが印象的だった。

 

「じーさん、俺も最初はそうだったさ……コイツに関しては常識を投げ捨てた方が早いぜ?」

 

「若いの……!お前さんいい奴じゃな……」

 

何か分かり合っていた。

 

数日前まで喧嘩腰同士だった人達とはとても思えない。

 

そんな二人をさておきクーデリアが話を始める。

 

「まず、この船はエドモントンへ向かって進んでいます。ですがそこへ辿り着くまでにギャラルホルンからの妨害が十分に予想されます」

 

『俺がレーダーで見張るからこのまま突き進んでも大丈夫なんじゃない?』

 

「いえ、シンさんのレーダーが凄いのは知っていますが、相手はギャラルホルンです。昔一度シンさんと戦った事のある」

 

「成る程、知られているからこそ裏をかかれる心配があるのか」

 

クーデリアの提案に団長が納得する。

 

確かに資料がどの程度残っているのか知らないが、用心するに越した事はないだろう。

 

「はい、なので行き先をアラスカ・アンカレッジへ変更しました。そこにはテイワズの現地法人が持つ鉄道が有るのでそれに乗り換えて進みます。この定期貨物列車は月に一度アンカレッジからフェアバンクスを経由しエドモントンまで走っています」

 

「定期便なら怪しまれる事も無い……か」

 

団長が呟く。

 

「ええ、それに移動経路は都市部を外れているのでモビルスーツの輸送も可能です」

 

「成る程、よく考えておるな。しかしそんな都合良く定期便を使えるのか?」

 

蒔苗の疑問に、クーデリアは答える。

 

「はい、テイワズにはマクマードさんの名前を出して許可を取ってます。それと、この航路の変更についてもモンターク商会から了承を得ています」

 

「ほう……!地球に来たのは初めてだというのに良くここまで思いついたな」

 

「勉強しましたから、人々の希望になる為に」

 

「うむ……儂からは異論は無い!全て任せよう!」

 

「ありがとうございます。それと蒔苗さんには議会までに幾つかやって頂きたい事が……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「クーデリアさん凄かったね」

「うん、オルガも何かやったら?」

「……!?」

(こりゃまた随分と無茶振りっすねぇ……)

 




という訳で次回、団長演説!

やってやろうじゃねぇか!ミカァァ!!


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団長演説

一話丸々全部です。


翌日の朝早く、夜明け前にオルガが皆に召集をかけた。

 

船の甲板に集まる面々。

 

「……急に集まって貰って悪ぃな、だが聞いてくれ」

 

全員の顔を見渡した後、オルガは話始めた。

 

「お前ら!今まで良く頑張ってきた!!」

 

「今まで俺達は奇跡的に一人も死なずにここまで来れた。ブルワーズの時やドルトコロニー、地球降下作戦、昨日の敵襲、冷静に考えてみりゃどこかで誰か犠牲者が出てもおかしくない戦いばかりだった」

 

「だが誰一人として死んじゃいねぇ」

 

そしてオルガは三日月の隣に浮かぶシンを見つめた。

 

「シンがいたのもデカいな。お前が色々してくれなかったら俺達は大人達にいいように使われていたかもしれねぇ、ありがとう」

 

いえいえ、と尻尾でジェスチャーするシンにオルガはニヤリと微笑み「まぁたまに何かやらかすのは玉に傷だけどな」と付け加えた。

 

そして、シンから視線を外して全員を見渡す。

 

「だが何より!お前らが火星から皆で協力してこなけりゃ今のこの結果はきっと無かったハズだ」

 

そこでオルガは一旦話を止めて区切りをつける。

 

そして、再び息を吸い込み語りだした。

 

「これから俺達は蒔苗のじーさんをアーブラウの議会に送り届ける」

 

「道中ギャラルホルンの妨害もあるだろう」

 

「モビルスーツが出て来りゃ生き残れる保証なんか誰にも出来ない」

 

「だがな!俺達は怯まない!」

 

「これは俺達が引き受けた仕事だからだ!」

 

「鉄華団は一度引き受けた依頼は必ず完遂する」

 

「ここから先はテイワズに任せて俺らは火星に帰る、なんて恥知らずな真似は出来ねぇしな!」

 

その時丁度夜が明けてオルガを暁の光が後ろから差し始めた。

 

その光を背負いオルガは声を張り上げる。

 

「俺はお前らに命令する!」

 

「団長命令だ。いいか?……絶対に生き残れ、何としてもだ!」

 

「もし死んだら俺があの世で会った時に団長命令違反でもっぺん殺すからな!」

 

「もう一度言うぞ、生き延びろ!何としてもだ!それこそ死んでも生き延びろ!!」

 

「んで、火星でまた皆で馬鹿やろうぜ!」

 

「死んだら美味ぇ飯もお菓子も酒もジュースも食えないんだからな!」

 

「お前ら!分かったか!!」

 

「全員生きて火星に戻るぞ!!」

 

その言葉を皮切りに話を聞いていた全ての団員から莫大な声量の歓声が上がった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「お疲れ様です。お茶でも飲みますか?」

「あぁ……済まねぇなフミタン」

「……お嬢様には及びませんが、中々でしたよ」

「何だよ、誉めてんのか?それ」




?「おいしいものを食べてこその人生なのです!」


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グレイズアイン

ツヴァイ、ドライ、フィーア……


「アインの意識が戻ったというのは本当か!?」

 

地球の阿頼耶識研究施設へアインが運び込まれてから1週間。

 

ラスタル公からの提案で俺はこのままでは死ぬだけだったアインを阿頼耶識手術を施し延命させる事にした。

 

その提案を聞いた俺は最初激しく反対したが、親父からいずれ知る事として【ゴジラ】【阿頼耶識】【厄祭戦】の真実を教えられ、アインを救う道はこれしかないと自分を納得させ手術に踏み切った。

 

そして何の音沙汰も無い日々が続き、今日遂にアインの意識が戻ったと知らされたのである。

 

「えぇ、お待ちしておりました。ついて来て下さい」

 

研究員に案内され通路を奥の方へと進んでゆく。

 

消毒液の匂いが満ちる空間。しかし、微かに不安を煽る臭いがすっと鼻を掠めてゆく。

 

前を行く研究員が阿頼耶識の反応速度や本来の用途、発明者のモンターク氏の事を話し掛けてきたが全て生返事で返す。

 

頭の中にあるのはアインの事だけだった。

 

アイツは恩義のある上官……クランクニ尉と言ったか、の仇を討たんとする誇り高い戦士だった。

 

アイツをこのまま終わらせる訳にはいかない……だから俺はアイツを戦士として戦場に戻れる体にする為に……

 

「アイン……俺は……」

 

「ボードウィン特務三佐、こちらです」

 

考えている内に着いたらしい。

 

直ぐに扉を開けさせて中へ飛び込んだ。部屋に入るやいなや俺は声を張り上げた。

 

「アイン!アイン!起きているか?何処にいる?」

 

すると、機械の合成音が返事をした。

 

『……!ボードウィン特務三佐!!』

 

目の前のモビルスーツから聞こえてくる。

 

通常のグレイズより二回り程大きい機体だ。

 

「アイン……コレ(・・)がお前なのか……?」

 

『はい!グレイズアイン(・・・・・・・)です!これでまた戦えます!クランクニ尉の仇を……!今度こそ火星のネズミ共を……!』

 

「そうか……そうか。これで良かったんだな……」

 

『心から尊敬できる方に人生の中で2人も出会えたなんてこれ以上の幸せはありません!!このご恩、この命をもって必ずやお返しします!』

 

尚もアインが言葉をつのらせる。

 

それを尻目に研究員は今のアインの状態を嬉々として解説しだしたが俺はそれには耳を傾けず、アインの言葉を聞きつづけた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アンカレッジに着いた俺達は荷物を電車に乗せ替えて、陸路でアーブラウを目指す。

 

もうすぐお昼なので食事の材料をタカキとライドを連れて取りに行く。

 

「そういえばシンさん、あの島で何か変な蛇?っていう奴捕まえたんだけど」

 

取り出し終えた時にライドが話し掛けてきた。

 

『変な蛇?今いるの?』

「いや……蓋閉めてたハズなんですけど、いつの間にか居なくなってて」

 

タカキが申し訳なさそうに答える。

 

『う~ん、見た目が分かれば何か分かるかもしれないけど』

 

「あ、ならシンさんの首に架けてるタブレット貸してもらっていい?」

 

ほい、と渡すとライドがサラサラと絵を描いていく。

 

(鉄華団のマークとかイサリビの艦内の落書きといいライドって芸術方面に才能あるよな……)

 

そう考えていると描き終えたライドがタブレットの画面を見せて……

 

見せ…………!?

 

(ツチノコじゃねーか!!??)

 




この後、マクギリスが味方なのでエドモントンまで無事に到着。

もし敵襲があったらシンから裏切り認定されてました。


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アーブラウ到着

近づくドローンは全て巨大化したシンが撃ち落とす中、皆は積み荷を下ろしたりと大慌て。

シンは何かの気配に感づいてピリピリしてます。



積み荷を下ろし弾薬や補給の手筈、モビルスーツの立ち上げが大方終わった頃にグリムゲルデを携えたモンタークが到着した。

 

「久しぶりだなオルガ・イツカ。相手方に阿頼耶識を搭載した機体がいる、という情報は来ているか?」

 

「あぁ、途中でアンタの部下から聞いたよ」

 

「君達が今まで保持してきた阿頼耶識の優位性はもうない。後はどちらが強いかで勝負が決まる」

 

「分かってるさ。なら勝つのは俺達だってな」

 

「随分と自信があるようだな……?根拠は?」

 

「俺達は全員生き残る為に戦う……この戦いの先を見てんだ。この戦いの為だけに作り替えられた奴らとは違う」

 

「おう、良く言ったぜオルガ!」

 

モビルワーカーの整備を終えたシノが昭弘を連れてやって来た。

 

「シノ、昭弘、そっちの準備は出来たか」

 

「ああ、いつでもいけるぞ」

 

「一丁かましてやろうぜ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

他の団員と最後の打ち合わせをして、皆が持ち場へ散っていく。

 

それを見ながらオルガはマクギリスへ向き直った。

 

「アンタに訊きたい事がある。エイハブリアクターを都市内に持ち込めない本当の理由は何なんだ?」

 

それがこの作戦の最大のネックだった。それさえなければ一瞬で蒔苗を議事堂に送り届けられるのだが……

 

「エイハブウェーブの影響で都市機能が失われる、というのが表向きの説明だが……本当の理由は我々も知らない」

 

『エイハブウェーブに反応する【何か】がいる……とか?』

 

近くの機器からシンの声が発せられる。背鰭から伸びたらコードと繋がっており、巨体のままでコミュニケーションが取れるようになっていた。

 

「【何か】……とは?」

 

マクギリスが問う。

 

『……300年前の厄祭戦ではモビルアーマー共が独自進化してモビルスーツを狙うようになっていた』

 

ふとシンの言葉が止まり、そして声のトーンを下げて更に言いつのる。

 

『あぁそうだ……素体のゴジラを動かす為に必要な大量のエネルギー。それをまかなう為に使われた自身と同じエネルギー源のエイハブリアクターを検出し攻撃を加えようと……だが火星にその基地があるとは奴等は知らなかった。ロディフレームを奴等が地球で潰しまくっている間に俺達は』

 

「待て、シン。今のお前はどっちだ(・・・・・・・・・)?」

 

前からシンに攻撃的な側面とメカオタク的な側面の両方を感じていたオルガが問い掛ける。

 

シンの失った記憶と関係があるのだろうか。

 

『俺?俺はシンゲツ・モンタ……』

 

そこでシンの熱に浮かれた様な口調が止まった。

 

『……あれ、俺何言ってました?』

 

口をつぐみ、困惑を示すように尻尾が揺れる。

 

その時突然マクギリスが叫び出した。

 

「今何と言った?シンゲツ・モンタークだと!?300年前に阿頼耶識システムを発明した人じゃないか!」

 

仮面を投げ捨て、有り得ないという表情をしながらマクギリスはシンを見つめた。

 

「300年前に自らの身体に阿頼耶識手術を施し」

 

「世界で初めてガンダムフレームを動かした男」

 

 

クリュセの守護神(・・・・・・・・)……!

 

 




ようやくタイトル回収。やったぜ。


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目覚める厄災(笑)

ゴジラと比べたらぺーぺーです。



「シンゲツ・モンターク……?それがシンの名前なのか?」

 

マクギリスの反応を聞いた団長が俺に問い掛ける。

 

『いや?……あー……そうだったかもしれないです』

 

何だかじわじわと思い出してきた。

 

モビルアーマーの気配にアグニカの面影があるマクギリスがいたからかな?

 

『確かに……阿頼耶識を作ったのは俺でしたし……あれ、俺が乗ったモビルスーツ?』

 

全然心当たりが無い。

 

なので、マクギリスに訊いてみた。

 

「覚えていないのか?かつて君が乗りその後英雄アグニカ・カイエルが乗ったガンダムフレーム一号機、バエルを」

 

『バエル?……あー……微妙ですね。ん?……そういや、何で俺はゴジラになってるんです?』

 

「分からんよ!?こっちが知りたい位だ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アーブラウから少し離れた荒野。

 

そこには三機のモビルスーツが佇んでいた。

 

ダインスレイヴ発射機構を内臓し肥大化した両腕と対照的に細い脚をしている異形の機体。

 

その正体はかつてのカルタの部下の成れの果て、グレイズツヴァイ、ドライ、フィーアである。

 

『…………』

 

思考は完全に制御され、操縦者は命令で動くロボットと成り果てていた。

 

彼等に命じられた指令は戦闘が開始されて暫くしてから両陣営のモビルスーツの抹殺。

 

それをダシにゴジラを誘き寄せダインスレイヴを撃ち込み凍結させる。

 

そして命令を果たした暁には速やかに生命維持装置が停止する事となっていた。

 

彼等はそれに何の疑問も持たない。

 

ただ朧気にカルタ様の仇を獲れる事が出来る、と信じていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

巨大化したゴジラが咆哮を上げる。

 

その咆哮を上げるのと同時に今まで打ち消してきたエイハブウェーブの反応を解き放つ。

 

今や体内で無数のエイハブリアクターが並列稼働している今のシンが放つエイハブウェーブはアーブラウの通信機能とレーダーを麻痺させ、街の中心に眠っていたモビルアーマーを目覚めさせた。

 

自身のエイハブリアクターに繋げられていたコードを引き千切りモビルアーマーが300年ぶりの雄叫びを上げる。

 

しかし、それを打ち消すゴジラの咆哮が辺り一帯の空間を震わせた。

 

すぐさま反応したモビルアーマーが街を飛び出しゴジラへと一直線に向かう。

 

それを皮切りに戦闘が開始された。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「蒔苗のじーさんはもう少し待っててくれ。今シンが町からモビルアーマーを引き剥がす」

 

仮に蒔苗を送り届けた所で敵が掟を破り街中へモビルスーツを向かわせた場合、モビルアーマーが目覚めて全てを破壊する可能性があった。

 

その追加でもたらされた情報を加味したオルガは作成変更し、シンにモビルアーマーを呼び寄せさせて倒させ、後はシンとモビルワーカーで蒔苗を送り届け、背後から迫る敵モビルスーツはミカ達が撃退するという作戦にした。

 

「何と、儂のアーブラウにあんなものが……」

 

蒔苗といえば街から飛び出してきたモビルアーマーに驚きを隠せないでいる。

 

何故都市部にエイハブリアクターを持ち込んではいけないのか。それはエイハブリアクターに反応するモビルアーマーを都市の電力として利用しているからであった。

 

マクギリスの話では仮に街の電力をモビルアーマーが賄っているのだとしたら、プルーマが全滅した事に気付かずガンダムフレームと相討ちになったモビルアーマーが自己修復の為休止し続け、それをわざわざ壊す為にモビルスーツを近づけて再起動させるよりはこのまま動力として利用しようと考えたのだろう、という話だった。

 

 

 

 

ゴジラにモビルアーマーが飛び掛かる。

 

だが圧倒的な体格差で体勢は崩せず逆に尻尾に打ち払われる。

 

果敢に組み付き内蔵してあったダインスレイヴの発射体勢をとる。

 

しかし、ゴジラの重力制御により打ち出した弾丸は停止し撃ち返された。

 

その威力でモビルアーマーの半身が吹き飛ぶ。

 

破れかぶれにビームを撃ち出すが、そもそもそのビームは300年前にゴジラを凍結した後、効率的に人類を殺す為に付け加えられた機能である。

 

なのでゴジラの装甲には傷一つつけられずに逆に全身を重力制御でひしゃげさせられ、モビルアーマーは何の成果も上げる事なくその機体を破壊された。

 

300年前の戦いではゴジラは50体ものモビルアーマーと渡り合っていた。その上今はダインスレイヴに対抗する為の重力制御まで身に付けている。

 

そもそも壊れかけのモビルアーマー1機でゴジラに勝てというのが無茶な話であった。

 




次回三日月さん達の戦いです。


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グシオン・ディアボルス

アーブラウの人達、原作でミカとアインがどったんばったん大騒ぎしても普通に選挙してたんですよね。

逞し過ぎる……



シンが郊外へ移動している間、三日月達は既に戦闘を開始していたが……

 

『よし……終わった』

 

『こっちもだ』

 

遠くの敵はグシオン・ディアボルスの筋肉砲(マッスルキャノン)が撃ち倒し、その弾幕を縫ってγナノラミネートソード【繊月(せんげつ)】を構えたバルバトス・ルナノーヴァが次々と敵を斬り捨てていく。

 

結果として相手は撤退を許される事なく操縦者は一人残らず絶命する事となった。

 

弾丸を撃ち尽くしたグシオンは筋肉砲を捨て阿修羅ユニット(アスラ)を格納し腰にマウントしてあったハルバードを手に取る。

 

バルバトスは手に持った【繊月】を背部にマウントしておいたメイスに持ちかえた。

 

因みにバルバトスはマクギリスからの手土産のレンチメイスも背負っている。

 

その上で先程の機動である。改めて頭のおかしい移動性能としか言いようがない。

 

 

その武器を持ちかえた数秒後に状況を認識した阿頼耶識グレイズ三機が襲い掛かってきた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『三日月!』

 

『分かって……る!』

 

オルガの予想通りに此方が敵を殲滅し終えたタイミングで襲い掛かってきたグレイズ達。

 

バルバトスがメイスを振り回して突撃し、三機を分断させる。

 

そしてグレイズツヴァイは三日月、ドライは昭弘、フィーアは昌弘とラフタとアジーが請け負い、戦闘を開始した。

 

 

 

 

真っ先にぶつかり合ったバルバトスとグレイズツヴァイ。

 

バルバトスのメイスの連打をグレイズツヴァイは全て腕で受け止めた。

 

『へぇ……頑丈だな』

 

グレイズツヴァイが一瞬にしてバルバトスの背後に回り脚に備え付けられたパイルバンカーを打ち込もうとする。

 

それに合わせてバルバトスは柄をひょいと回し、メイス内蔵のパイルバンカーで相討ちさせた。

 

メイスは壊れたが引き換えに相手の右足を破壊する。

 

膝を着いた相手が逃げる前にすぐさまレンチメイスで左足を掴む。

 

チェーンソーを起動しつつ振り回して相手の脚をねじ切った。

 

両足を失い吹き飛ぶグレイズツヴァイ。

 

機動力を失った機体で反撃するべくダインスレイヴを起動する。

 

しかし、発射する前にレンチメイスによって向きを変えさせられ、【繊月】で根元から斬り落とされる。

 

続けて残った腕を斬り落とそうとするバルバトス。

 

そこに新たな影が襲い掛かった。

 

『見つけた……!罪深き子供達!!クランクニ尉の慈悲を受け取らず殺した火星ネズミ共!!あぁああああ見ていて下さいクランクニ尉……!私はあなたの正義を全うします!!』

 

グレイズアインである。

 

『角付きいいいい!!!』

 

『チッ、変なのが来た』

 

襲い掛かるグレイズアインの両手の斧を【繊月】の腹で受け止める。

 

『お前がぁ!!クランクニ尉を!!』

 

間髪入れずグレイズアインが蹴りを入れた。

 

『ぐっ!』

 

押さえ付けられていた状況で避けられず、バルバトスは蹴りを受ける。

 

しかし、その受ける直前にレンチメイスを地面に突き立ていた事でその勢いを利用し、それ軸に一回転し蹴り返した。

 

お互いに吹き飛ぶ両機体。

 

 

バルバトスは左手に【繊月】右手にレンチメイスを持って突撃した。

 

迎え打つグレイズアインはそれを見てバルバトスに斧を投擲する。

 

レンチメイスで防ぐもよろけた相手にグレイズアインは踵落としを決めた。

 

地面に叩き付けられるバルバトス。

 

舞い上がる土埃。

 

その中から【繊月】が飛び出して来てグレイズアインの左腕に突き刺さった。

 

『外した……!』

 

『このネズミがぁ……!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

昭弘は敵機の素早い動きに対応するべく【射撃形態(アーチャー)】を起動していた。

 

既に何度も打ち合っている。

 

(動きにはついていけるが……こっちの攻撃が当たらねぇ……)

 

お互い決定打を与えられないままずるずると時間が過ぎていく。

 

(三日月は二機目を相手してるってのに……!)

 

二機目の手合いは先程までと違うようで三日月も苦戦している。

 

手助けに行きたいが、此方の相手がそうさせてくれない。

 

見れば昌弘とラフタとアジーさんも三機で撹乱しているものの苦戦していた。

 

その時グシオン【射撃形態(アーチャー)】の増大したセンサーが警告を発する。

 

見れば先程三日月が墜とした敵機体が残る片腕のダインスレイヴを起動し昌弘達に狙いをつけていた。

 

『っ!ラフタァ!!避けろおおお!!!』

 

『えっ!?きゃああああ!!!』

 

とっさに機体を捻った漏影だが、直撃は避けたものの左脚を吹き飛ばされる。

 

それを見た瞬間俺の中の何かがキレた。

 

気を失ったのか漏影の動きが止まる。

 

その機を逃さず止めを刺そうと近づくグレイズフィーア。

 

昌弘とアジーさんが射撃をするも全て避けられる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『ラフタさん!!くそっ!コイツ速い!!』

 

『ラフタ!!返事しな!!ラフタァ!!』

 

漏影と筋肉号グレートの二機がかりで斬り掛かるも受け止められ、吹き飛ばされる。

 

『ぐっ!!』

 

此方が機体を立て直している内に相手はラフタの元へたどり着いてしまった。

 

敵が右手の装置を展開し何かを発射しようとする。

 

『ラフタ!!起きろ!!避けて!!』

 

もうダメだ。そう思った瞬間、

 

『させるかあああああああ!!!!!』

 

 

筋肉バカ(アキヒロ)の声が響き渡った。

 

ハルバードがグレイズフィーアの腕を千切り飛ばす。

 

そのままハルバードは飛んで行き数キロ先の地面にクレーターを作り漸く停止した。

 

突如喪失した腕を不思議そうに眺めてグレイズフィーアはそれが飛んで来た方向へカメラアイを向けた。

 

そのカメラアイに地面を割って突進してきたグシオンの拳が突き刺さる。

 

よろめくグレイズフィーア、グシオンはその一発だけで終わらせず、機体を阿修羅ユニットで押さえつけ両手のラッシュを叩き込む。

 

一瞬にして相手はスクラップと化した。

 

コックピットに最後の一撃を叩き込み、グシオンはボロ雑巾となったグレイズフィーアを投げ捨てる。

 

そこで漸くアジーはグシオンの様子が通常とは違う事に気が付いた。

 

装甲の隙間から紫色の光(・・・・)を溢れさせるグシオン・ディアボルス。

 

その形態をシンは想定していなかった。

 

しかし、【ゴジラ】を素体としているのならば存在して然るべき形態。

 

 

 

グシオン・ディアボルス【覚醒形態(マッスルオブフィナーレ)




覚醒した筋肉(マッスル)


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【覚醒形態】

バルバトスもです。


グシオン・ディアボルスは残していたグレイズドライの攻撃をあっさりと受け止め、起動していた阿修羅ユニット(アスラ)で敵の機体を逆さに掴み上げる。

 

そして、跳躍した。

 

空中で両腕は相手の足を、副腕が両腕、胴体を固定しグレイズドライは一切の身動きが取れないまま、グシオンが地面に着地するのを待つしかない。

 

 

『筋肉!バスタァァァァァァ!!!』

 

 

そして着地時の衝撃と【覚醒形態(マッスルオブフィナーレ)】となり異常な馬力を発しているグシオンの腕がグレイズドライの機体を真っ二つに引き裂いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『味方が……!絶対に許さんぞ貴様らぁ……!!』

 

それを見ていたグレイズアインが喚きだす。

 

『凄いな、流石昭弘』

 

三日月はチラリと横目でそれを確認して昭弘の状態を知った。

 

それを自身の乗機に問い掛ける。

 

『おい、バルバトス。アレ(・・)お前も出来ないの?』

 

答えるかのようにバルバトスの目に光が灯る。

 

『出来るんだ。なら殺ろうか』

 

三日月の意思に反応しコックピットを紫色の光が満たしていく。

 

『バルバトス』

 

両眼のカメラアイから紫色の燐光が迸る。

 

『お前の力……見せてみろ』

 

両眼の燐光をたなびかせ、グレイズアインの反応速度を上回るスピードで跳躍した。

 

 

バルバトス・ルナノーヴァ【覚醒形態】の蹂躙が始まる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『なっ!?』

 

グレイズアインが気が付いた瞬間には地面に叩き付けられた上に、自身の首をレンチメイスが挟み込んでいた。

 

起動するチェーンソー。

 

『ぐっ!?がぁぁぁあああああ!!!』

 

ツヴァイ達と違い痛覚のカットが一切されていないアインはグレイズアインからの首を切断される痛みを送り込まれた。

 

『うがぁっ!放せぇ!!』

 

レンチメイスを首からむしり取る。

 

しかし、続けざまに【繊月】の斬撃が襲い掛かってきた。

 

必死に避けるが次の瞬間いつの間にか背後に移動していた敵機に背中を袈裟懸けに斬られる。

 

『何で……!急に動きが!!』

 

(私の完全な阿頼耶識をコイツは上回るとでもいうのか!?)

 

『そんなハズがあるか!!』

 

距離を取り、予備にマウントしておいたバスターソードを構えて敵と対峙する。

 

 

相手の僅かな動きに反応して防御体勢を取った瞬間に相手の攻撃が剣に当たった。

 

『ぐぅ……!』

 

(認めたくない……認めたくないが……今はコイツの方が強い!!)

 

走馬灯がよぎる、火星で出会った恩師クランクニ尉、二人目の恩人ボードウィン特務三佐。

 

その恩義に報いる為にも自分は負ける訳にはいかない!と気持ちを奮い立たせ、走馬灯を断ち切る。

 

そして、直感に全てを任せ相手の機体と紙一重で打ち合った。

 

しかし、此方が体勢を崩したわずかな瞬間を逃さず、レンチメイスが機体を吹き飛ばす。

 

その衝撃でカメラアイがひび割れ、視界にひびが入った。

 

倒れ込むグレイズアインに【繊月】を構えたバルバトスが飛び掛かる。

 

(クランクニ尉……私は私の信じる正義を……!)

 

最期にグレイズアインが見た光景は自身のコックピット目掛けて鋭い突きを放たんとする敵の姿で……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【繊月】は相手のコックピットを正確に突き刺さり、機械に繋がれた容器内に固定されていたアインの脳味噌を容器ごと完全に破壊し尽くした。。

 

 




【覚醒形態】の影響はシンの言葉が分かるようになる、つまり少しゴジラ化するだけです。

そして、第四形態よろしくエイハブリアクターのエネルギーを使い果たすと休止モードに強制的になる点がデメリットです。

メリットは言うまでもなく絶大な破壊力。


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グリムゲルデVSキマリストルーパー

時系列は少し前。


『待てアイン!……くそっ聞こえてないか』

 

俺はラスタル公から指示が有るまで動くなと言われていたがアインは鉄華団と交戦が始まった事を知るや否やゲートを突き破り出撃して行った。

 

飛び出していったアインを追い掛けるべく俺は地上用にセッティングされたキマリストルーパーに乗り込み、阿頼耶識研究所のモビルスーツ格納庫から先程アインが開けた穴をくぐり抜けて外へ出る。

 

 

次の瞬間背後から襲い掛かってきた爆風に機体を吹き飛ばされた。

 

近くの木々を薙ぎ倒し漸く停止する。

 

『ぐ……あ……一体……何が?』

 

揺れる意識を何とか保ち辺りを見渡す。

 

『!研究所が……!』

 

見れば地球阿頼耶識研究所、表向きは新型医薬品の開発研究所であるそれが爆発で僅かな面影を残すのみとなり全て吹き飛んでいた。

 

『こんな事……一体誰が?』

 

『私だよ』

 

……!?

 

その声……聞き間違えるハズが無い。

 

機体を声のした方へ振り向かせる。

 

『マクギリス……!』

 

『久しぶりだな、ガエリオ』

 

静かに佇む真紅の機体、そいつからマクギリスの声がする。

 

『何故お前がここにいる?それに先程の言葉はどういう意味だ!!』

 

徐々に目眩がおさまってきた。それと同時に疑問が沸き上がる。

 

『言った通りさ、そこの違法な阿頼耶識研究所を爆破したのは私だ』

 

『何を言っている!?お前がそんな事をする理由は無いだろう!?』

 

『理由なら有るさ、私は鉄華団と手を組んでいるのだからな』

 

?ナニヲイッテイル?

 

『出鱈目を言うな!お前が火星ネズミ共と……』

 

『その火星ネズミという侮辱を今すぐ止めろ!!』

 

『なっ……』

 

マクギリスの剣幕に気を飲まれかける。

 

『彼らは火星で生まれ阿頼耶識手術を受けただけのただの子供達だ。地球で生まれただけ(・・)の人類に侮蔑出来る権利なんか無い!』

 

阿頼耶識……。

 

『……お前はもう知っているのだろう?ギャラルホルンの創設者アグニカ・カイエルは阿頼耶識をつけていた事を』

 

確かにそれは知っている。だからといって!

 

『何故お前が鉄華団に肩入れする!?』

 

一番疑問に思ったのはそこだ。

 

 

『……最初は小さな火種だった』

 

マクギリスが語りだす。

 

『しかし、彼らを見ていく内に……私は彼らならば今のギャラルホルンの支配体制を覆す存在になると確信した』

 

『革命の火種は消させない、最も(シン)が消させないだろうがね』

 

……理解はした。しかし納得出来ない。

 

『お前は……アインの誇りを……』

 

『君は彼の事を誇り高い戦士だと思っている様だが、子供を火星ネズミ扱いし、正々堂々とした誇り高い決闘の結果をいつまでも引きずり続け、今正に私怨を撒き散らしている彼は本当にそう言えるのか?』

 

『っ!ならカルタは!』

 

『カルタを唆したのはラスタルだ。ゴジラの戦力を測る為の当て馬としてな』

 

『なっ!?……なら!ラスタル公がアインに阿頼耶識の手術を勧めてきたのは!』

 

『都合の良い手駒にする為だ。アレを見ろ』

 

マクギリスが指した方向には通常のモビルスーツの二倍の体躯をし、四枚の羽を備えた異形の機械が街の中から飛び出してくる光景があった。

 

『あれは……!?』

 

モビルアーマー(・・・・・・・)だ。蒔苗がアーブラウに辿り着いた時にアインをクーデリア嬢の元へ向かわせアレを起動させる目論見だったのだろう。あわよくばゴジラを倒せるかもしれないと思ったのかもしれないな』

 

『そんな……。まさか……!俺の父はそれを知った上で!?』

 

『当然だ。ギャラルホルンの会議はセブンスターズの党首が話し合うのだからな』

 

『あ、あぁああ……嘘だ!嘘だぁぁぁあ!』

 

ガエリオが慟哭を上げる。

 

『認めろ、ガエリオ。間違っていたのは我々ギャラルホルンだ』

 

 

 

そして少し間を置いた後、

 

マクギリスはガエリオに悪魔の取り引きを持ち掛けた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

元研究所があった森林地帯を二機のモビルスーツが蹂躙していく。

 

『マクギリスゥゥゥゥゥ!!!!』

 

『フッ!!』

 

キマリストルーパーのランスとグリムゲルデのヴァルキュリアブレードが交差する。

 

『そら!どうした!私への憎しみはそんなモノか!』

 

『ちいっ!』

 

継ぎ目の無いグリムゲルデの二刀剣撃をサブアームに構えさせた盾から引き抜いたブレードとランスで凌ぐ。

 

しかし、操縦技術の差で徐々にキマリストルーパーは追い詰められてゆき、そして……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

翌日、ボードウィン家の元へガエリオ・ボードウィンの訃報が届けられた。

 




……。


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Parade

恐怖のパレードが来る。(ゴジラ)の名の元に。




「すっ……凄ぇえ……」

 

兄貴も三日月さんも突如とんでもない力を発揮して敵をあっという間に倒してしまった。

 

『これがガンダムフレームの本当の力……?』

 

通信からアジーさんの呟きが聞こえてくる。

 

『ラフタ!!無事か!?』

 

兄貴のグシオンがぎこちない動作でこちらへ戻って来た。

 

ぎこちない……?

 

見れば眩いまでに漏れ出ていた光がすっかり無くなっている。

 

そして漏影のすぐそばで動かなくなってしまった。

 

『あぁ?動け!動けってんだこのポンコツが!!くそっ』

 

見れば兄貴がグシオンのハッチを無理矢理抉じ開けて出てきた。

 

そしてコックピットから垂らしたロープで降下し漏影のコックピットに辿り着く。

 

「おい、ラフタ!返事しろ!!」

 

兄貴がコックピットの上から拳で叩く。

 

『昭弘、そこから右下の装甲の隙間に緊急時にコックピットを開けるレバーが……ある……んだけど』

 

アジーさんの言葉が尻すぼみになってゆく。

 

当然だろう、兄貴が筋肉で無理矢理コックピットのハッチを開け始めたのだから。

 

……筋肉って凄ぇ。改めてそう思った。

 

「ふぅん!!……ラフタ!生きてるか!?」

 

「…………ん?あれ?作ってたプラモデルは?ごーらい?」

 

 

後で聞いた所、何やら女の子のロボットが戦って、プラモを作ってetc……というよく分からない夢を見ていたらしい。

 

 

「ラフタ!無事だったか!」

 

「昭弘?……あっ!敵は!?」

 

「俺と三日月が全員倒した。作戦完了だ」

 

「お~!……。あのさ、何でそんな必死に私の事助けに来た訳?」

 

 

……ん?何か雰囲気が?

 

アジーさんの漏影の方を向くとモニターでニヤニヤしているのが見えた。

 

「ん?団長の命令で誰一人死なせる訳にはいかなかったからな。無事で良かった」

 

「……ふ~ん」

 

「?何で怒ってるんだ?」

 

「怒ってない!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(何ださっきの!?)

 

モビルアーマーを倒した俺はすぐに三日月さん達の援護に向かおうと思っていたが、突如パワーアップして相手を殲滅した三日月さん達に俺は驚きを隠せなかった。

 

(まぁ……確かに理論上はガンダムフレームだってゴジラなんだから覚醒形態は存在するのか)

 

予定していなかった強化形態である。

 

向こうで三日月さんが昌弘達に『何かバルバトスが動かなくなったんだけど』と言っているのと既に停止したグシオンを見るに、

 

(第四形態で分裂した俺が元だったから覚醒後は強制停止か)

 

その辺は昔の第四形態と同じらしい。

 

三日月さんの【繊月】が覚醒形態になった後急に斬れなくなったのはエイハブ粒子を受け取る基部が覚醒形態の粒子供給に耐えられなくて壊れたのが原因だろうか。

 

今後は覚醒形態も視野にいれた改造をするべきだと思った。

 

(いやぁ……楽しくなりそうだ!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「よし、これで全ての敵は消えた」

 

通信を聞き終えたオルガはそう言って後ろにいた蒔苗を振り返る。

 

「行くぞじーさん。約束通りアンタを議事堂まで送り届ける」

 

「ほっほっほ。早いのぅ!お前ら鉄華団に頼んで正解だったわい」

 

「当然だ」

 

オルガがニヤリ笑う。蒔苗もそれに笑い返した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ほ、報告します!モビルワーカーと謎の巨大生物は蒔苗氏を護衛しつつ街の中へ侵入を開始しました!!!」

 

「くそっ!ラスタルの目算が甘かったのか……!」

 

党首だけが受け継ぐ【ゴジラ】の資料。しかし、今私はその膨大な資料を一人で探すのは無理だと諦め部下に開放して対抗策を探させていた。

 

「何か策はないのか!?」

 

携帯は先程から鳴り止まない。議会にいるアンリ議員からだろうが今はそんな場合では無い。

 

「報告します!資料の中に【ゴジラ】に良質な歌を大音量で聴かせれば体内の冷却機構を混乱させ凍結出来る可能性があるという推論が!!」

 

「バカな事を言ってないで他の資料を探せ!!」

 

「はっ!申し訳ありません!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ズシン……ズシン……と地響きを立ててゴジラが進む。

 

蒔苗東護之助を護衛するかのように。

 

それを見たギャラルホルンの兵士は死ぬまでその光景を忘れず悪夢にうなされたという。

 

恐怖からゴジラに発砲した仲間もいたが、ゴジラの尻尾が一瞬光り、蒸発(・・)してしまった。

 

 

そして遂に蒔苗がアーブラウの議事堂前に立つ。

 

オルガが声を掛ける。

 

「じーさん、ここまでが俺らの仕事だ。ここから先は……」

 

「分かっておるよ、オルガ・イツカ。ここから先は儂の仕事じゃ」

 




次回、一期最終話です。

お楽しみに。


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旅路の終わり、そして

夢をみた。

 

 

 

俺は門拓真月(もんたくしんげつ)

 

俺はどこにでもいるような高校生だった。

 

背丈は同年代でも平均的、体格もガチムチ過ぎずガリガリ過ぎず中庸。

 

アニメは多少見るし運動もそこそこ出来る。

 

趣味は釣りや盆栽と少し趣味が爺臭いとも言われる事もあったがどうでもいい。

 

 

昔の……人間だった俺が過ごしていた何気ない日常、それはゴジラが現れた事で終わりを告げる。

 

 

俺が住んでいた日本は混乱の中心になった。

 

当時の政府は何とかしようと奔走していたらしいが、結果として国連軍がゴジラに対して核攻撃を行うのを止める事は出来なかった。

 

世界の予想を越えてゴジラは核爆弾を輸送していた飛行機を迎撃し、世界に核の汚染が広まった。

 

それと同時にゴジラにはもう核などは通じない事が明らかになった。

 

 

世界はそこで漸く手を取り合った。

 

 

日本の矢口という人が船頭を取り、血液凝固剤によるゴジラ凍結作戦が開始される。

 

当然問題となったのはどうやってゴジラの体内へ投与するのか……である。

 

一度アメリカがありったけの無人戦闘機を投入しゴジラの体内のエネルギーを放出させ再び休止状態へさせようとした事があったが、ゴジラはアメリカの無人戦闘機を全て撃墜してみせた、結果としてその作戦はゴジラがエネルギー効率を大幅に上げている事を明らかにしただけだった。

 

そこで生まれたのがゴジラの体内の新元素を分析した結果得られたエイハブ粒子、それを利用して造られたエイハブリアクター。

 

そのエイハブリアクターを動力源とするモビルアーマー。

 

そしてそれの専用武器たるダインスレイヴ。

 

ダインスレイヴはゴジラの体内へどうやって血液凝固剤を投与するのか、という課題に対する人類の答えだった。

 

つまり、レベルを上げて物理で殴る。

 

そのニュースを知って、脳筋過ぎるだろ……と思ったのは俺だけでは無いハズだ。

 

 

そして、全世界の残った力で作り上げたダインスレイヴを装備したモビルアーマー部隊。

 

それとゴジラが激突した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

結果としてゴジラは50機ものモビルアーマーと激戦を繰り広げた挙げ句、血液凝固剤によって凍結された。

 

俺はといえば復興のゴタゴタの最中上手いこと研究所に就職出来て、そこでゴジラの細胞やエイハブ粒子の研究に没頭出来た。

 

そこで俺はゴジラの細胞が異常な計算処理能力を持っている事にマウス実験を通して気付き、

 

 

 

試しに自分の身体にゴジラの細胞を打ち込んでみた。

 

 

 

結果は、予想を遥かに上回る計算処理能力の向上、そして副次的に空間把握能力の増大。

 

そして何より機械と直接(・・)繋がる事が出来る。

 

その頃研究所の仲間は俺をマッドサイエンティスト、ミスターゴジラ等と好き勝手呼ぶようになってきたが、俺は気にせず、それを世界に発表すべく資料を作成し始めた。

 

その間にモビルアーマーの暴走事故があったと知ったが、俺は気にも止めず研究所を進めた。

 

 

 

しかし、俺は拉致された。

 

……連れて行かれた場所は火星(・・)だった。

 

 

その場所で俺は■■■■■から無数に分裂した■■■■

■■をエイハブリアクターで動かし ■■■のバエル■■■■■■■■阿頼耶識■■■■■■■■■■襲撃■■■■■死すら■■■■■■■■克服■■■■アグニカ■■■■■■■気を失■■■■■地面へ■■■■■眠■■■■■

 

 

 

ゴジラとなった俺は意識を回復する事無く、火星の大地で眠り続けた。

 

無論ただ寝ていた訳ではない。阿頼耶識を開発した時から分かっていたがゴジラの情報処理能力はとてつもない。

 

その能力は全世界のどのスーパーコンピューターをも凌駕する。

 

活動にエネルギーを割いていない今ならば、世界そのもの(・・・・・・)をシミュレートする事が可能な位に。

 

俺は無意識下でこの世界の行き着く先を見続けた。

 

 

それを何十年、何百年と繰り返し……

 

 

ある昔、マルバ・アーケイがCGSを開業した。

 

そして連れて来られた阿頼耶識を付けた子供達、

 

自身と近しい者の未来を俺は何度も計算し続けた。

 

何度も試行を繰り返していくと、段々とある一本の道へと絞られていく。

 

俺はそれを何度も何度も観測した。

 

 

それを原作(・・)と思う程に。

 

 

 

その頃の俺は意識が覚醒しているとも覚醒していないともどちらとも言えず、ただ漠然と【孤児たち(オルフェンズ)】とラベル付けされたその未来を見続けた。

 

そのままではただ悲劇を思考の出来ない頭で眺めるだけだっただろう。

 

しかし、転機が訪れた。

 

ギャラルホルンによるCGS襲撃。その時の少年達の激情が俺の体を貫き、300年のまどろみから(ゴジラ)を解き放ったのである。

 

そしてシンゴジラは現れた。鉄華団の守護神として。

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

結果として、蒔苗はアーブラウの選挙に勝利した。

 

そしてイズナリオ・ファリドとアンリ・フリュウ議員の癒着が発覚し、ギャラルホルンの権威は揺らいだ。

 

 

オルガは今回の仕事の報酬として、蒔苗にシンと整備長が満足するだけの資材、工作機械を用意させた。

 

そして、蒔苗は鉄華団をアーブラウの軍事顧問に任命し、鉄華団の名はそれまでの業績と共に世界に広く知られるようになった。

 

 

マスドライバーで打ち上げられて行く鉄華団のメンバーを乗せたシャトル。

 

それをシンと昌弘は眺めていた。

 

「なぁ、シンさん……良かったのか?俺達について火星に戻らず地球へ留まるだなんて」

 

『三日月さん達のモビルスーツの改造もやり終えたし、それに整備長だっているから俺が居なくても安心だよ。……何より俺を狙って団長達が殺されるのが心配だったからね』

 

「こんだけやられてまだ仕掛けてくると?」

 

『あぁ。人間は執念深く、そして一度決めたら決して曲げない意思を持つ』

 

そう言ってゴジラは鉄華団地球支部の方へ身を翻した。

 

『だがそれは此方も同じだ。何をして来ようと俺は負けないし、仲間は絶対に見捨てない』

 

 

 

『俺はゴジラだからな』

 




一期終了。

映画『シン・ゴジラ』でヤシオリ作戦が行われなかった世界から繋がっているのが、この作品の鉄血世界です。


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二期
変わる世界、そしていつも通りの鉄華団


二期スタート!


シンさんが暴露したドルトコロニーの件、アーブラウでの総選挙によって世界は少しずつだが確実に変化し始めていた。

 

今までの戦いで上げた知名度、圧倒的戦力であるゴジラの存在、勝ち取った火星のハーフメタルの利権。

 

今までテイワズの傘下だった鉄華団は独立し、テイワズと対等の組織として振る舞うようになった。

 

地球に残ったシンさんとブルワーズ組による鉄華団地球支部は順調に発展しつつある。

 

先日正式な軍事顧問として認められたそうだ。

 

そんな訳で鉄華団は今では誰もが注目する急成長を遂げた企業となった。

 

火星に戻ったクーデリアさんは凄くて、フミタンさんと協力してハーフメタルの採掘一次加工輸送業務を行うホープ商会と桜農園の敷地内に孤児院を設置し、社会的弱者への能動的支援と火星全土の経済的独立のため日々奔走している。。

 

……本音を言うとあんまり会えなくて少し寂しいかな。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ギャラルホルンは社会的信用を失い世界は戦火で満ちようとしていた。

 

それを引き起こした張本人はというと……

 

 

『今日も暇だねぃ……』

 

「……暇ってか、シンさんが敵が来るや否やビームぶっ放して殲滅してるんだけどな!?」

 

『そんな固い事言うなよアストン。タカキ達とは上手くやれてるかい?』

 

「あ、あぁ……まだちょっと慣れないけどな」

 

困った様にそっぽを向く。

 

ある程度地球支部の経営が回ってきたので、適当にアーブラウに家を買って皆で分けて住む事にしたのだ。

 

その際アストンはタカキ兄妹と一緒に住む事になって今に至る。

 

「おーい、シンさーん!火星からメッセージが来てるー!」

 

遠くからデルマが声を掛けてくる。

 

『お、何だろ?じゃあアストン、この後のモビルスーツ訓練頑張ってね!』

 

「分かってる。ただ相手が昌弘なんだよなぁ……」

 

最近昌弘は兄貴に近付こうとますます筋肉に磨きをかけていた。

 

その結果ランドマン・ロディでプロレス技を繰り出すという訳の分からない状態へとなっている。

 

筋肉号グレートは強過ぎるので試合では使っていないが、モビルスーツの操縦技術を上げた今では相当な強さになっているだろう。

 

『成る程……まぁガンバ!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

通信ルームへ行くとタカキとチャドが待っていた。

 

『お待たせ』

 

「おし、じゃあ繋ぐぞ」

 

チャドが機械を操作する。

 

『……、……聞こえるか?』

 

団長の顔が映り声が聞こえてきた。

 

『バッチリ聞こえてますよ』

 

「オルガ、何だ?緊急の用件ってのは?」

 

『ウチが【夜明けの地平線団】から襲撃を受けた』

 

『被害は?』

 

『ゼロだ。ミカのバルバトスと昭弘のグシオン(筋肉)が直ぐに蹴散らしたからな』

 

「理由は分かってるんすか?」

 

『ダンテが調べた所、アリウム・ギョウジャンってのと夜明けの地平線団が繋がってる証拠が取れた』

 

「何だってのそアリウムって奴は依頼してまで鉄華団を?」

 

『クーデリアを消す為だ』

 

『なら殺しましょうよ』

 

『当たり前だ』

 

目線で団長と通じ合う。

 

(三日月さん(ミカ)の嫁だからな!!)

 

『コホン……という訳で、これからそいつらの所に行ってケジメを付けさせて来る』

 

「了解したぜオルガ」

 

『そっちの調子はどうだ?』

 

「まぁぼちぼちだ。この前テイワズから来た……何だっけ?」

 

「ラディーチェの事?」

 

タカキが助け舟を出す。

 

「そうそう、ソイツが何か色々嗅ぎ回ってるぜ」

 

『……成る程、分かったのはお前のお陰か』

 

団長が俺を見てくる。……照れるねぇ。

 

『いやぁそろそろ俺達の好き勝手にテイワズ内部の反発する人達から刺客が来る筈だと思った矢先に来ましたからね』

 

「数日間隙を見せたら、直ぐに無用心に行動し始めてな」

 

「なので交渉材料にしようと泳がせてます!ただシンさんの事を知能の低いトカゲと思っているのが癪ですけど」

 

『まぁそこは俺を舐めてくれていた方が見返りはデカいから多少はね?』

 

どうやってそう思い込ませたんだ?という団長の疑問にチャドが答える。

 

「シンのレーダーでな、近くに居る時は喋らないようにしてるんだ」

 

『成る程、またテイワズから絞り取れるな』

 

「団長、悪い顔してるっすよ」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

暫し時は遡り……

 

 

「ちわーっす。予備隊のハッシュ・ミディですけど獅電の動作テストが始まるって……んだよ誰もいねぇじゃねぇか。……ったく」

 

そうぼやいているとコックピットが開いているガンダムフレームの中で誰かが居るのが見えた。

 

「っ!三日月……さん!って寝てるのか」

 

ほっと息を吐く。

 

いつぞやチビッ子達の前で三日月と呼び捨てにしたら一斉に「あ゛ぁ゛?……さんを付けろよデコ助野郎」と殺気の籠った声で怒鳴られたのは記憶に新しい。

 

気になって色々訊いたり調べてみると、鉄華団の悪魔、鬼神、鉄華団のやべー奴、など様々な呼び名を持っている様だった。

 

(そんなにスゲー人なのか?俺より背低いし多少モビルスーツの腕が立つってだけじゃないのか?)

 

俺の目標はモビルスーツに乗って次のビルスになる事だ。

 

まだ実力は見た事が無いが、どうせ噂は誇張された物ばかりだろう。

 

……俺は三日月を越えてみせる!

 

 

 

 

走り込みの訓練が終わった後、団長から召集が掛かったので集まる。

 

「……ってわけで来週末ホープ商会の仕切りで採掘現場の視察が行われる。そこでクーデリアから鉄華団に護衛を依頼された」

 

「お、久しぶりにお嬢様の依頼か!」

 

鉄華団の古いメンバーの人達が盛り上がっている。

 

俺には何の事か分からないが、隣でリーゼントのザックが「お姫様!?」と騒いでいるのが煩い。

 

「いいか?これがお前らの初陣だ。お前達はライドのモビルワーカー隊に入って貰う」

 

副団長がそう言い終え、団長が再び話始めた。

 

「いいか?お前らに一つ命じる。生きて帰って来い」

 

……え?それだけ?

 

戸惑っている俺を置いて、小さい奴……ライド?とかが訓練じゃねぇんだぞ!気ぃ抜くなよ!と喚いているが。

 

(実戦か……)

 

俺の心はいかに活躍してモビルスーツに乗れる権利を手に入れるか、に移っていた。

 




次回、夜明けの地平線団に合掌を!

ハッシュ君、君の認識は甘いよ!


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新しい血(敵の)

ハッシュ君の認識のコペルニクス的転回。




「地球外縁軌道統制統合艦隊を組織改編しアーブラウの件で難しくなった地球上での活動を再編各経済圏との新たな関係を構築した手腕。見事だな、マクギリス・ファリド新司令」

 

ボードウィン家の当主、ガルス・ボードウィンが誉め称える。

 

「シン司令?……おっと失礼。いえいえ、これも皆様方のご指導の賜物です」

 

一瞬シンの名前かと勘違いしたマクギリス。華麗に失態を取り繕う。

 

「いやいや地球外縁軌道統制統合艦隊をもうお飾りなどと呼べませんなぁ」

 

ファルク家当主のお世辞に対しマクギリスは自分はカルタ司令の後を継いだだけに過ぎず、また監査局時代に起きた火星の件をまだ片付けてられていない事を言い謙遜する。

 

「なので、我が地球外縁軌道統制統合艦隊が火星区域へ干渉することを許可いただければと思います」

 

その言葉に直ぐ様イオク・クジャン公が反応した。

 

「貴様それは!エリオン公のアリアンロッド艦隊の職域を侵す行為だ!断じて認められる物では……!」

 

「まあまあ落ちついて」

 

「ハハハ、若者が血気盛んなのはいい事ではないですか」

 

二人の当主がまだ若いイオクを宥める。

 

「ラスタルさ……エリオン公それは……」

「クジャン公。我らギャラルホルンは世界の秩序を守る為に存在する。その為ならば『誰が』など小さな問題に過ぎない。……我々に必要なのは秩序を維持するための力なのだからな」

 

「そう、力。……アーブラウに居座るあの化物については皆さんはどうお考えで?」

 

マクギリスが唐突に議題をぶっ込んだ。

 

これまでの会議で皆がそれと無く避けていた話題だったがそれもお構い無しだ。

 

(シン君に今度会ったときの手土産にでもなればいいがな)

 

「痛い所を突いてくる。しかし、それも若さか。……ファリド公、以前ゴジラが再出現した際に偶然(・・)アーブラウの街に眠っていたモビルアーマーが再起動し戦いを挑んだ。しかし、ゴジラ相手には余りに無力だった。今の我々には戦力を拡大させる必要がある」

 

「左様。昔はモビルアーマー50機が戦闘に投入されたがその殆どが破壊された上で何とか倒せた相手だ。その上昔の文献にはさらに進化する可能性まで示唆されている」

 

「幸い今のゴジラはまだ進化していない上に人を無闇に殺さずアーブラウに留まっている。この期がチャンスだ」

 

「成る程。……質問にお答え頂き感謝します」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

執務室へと戻ると早速石動に会議の顛末を話す。

 

聞き終えた石動から早速質問された。

 

「火星側はどう出るでしょうか?」

 

「問題ない。今の火星支部の臨時司令は監査局時代に私が推薦した男だ。それに火星には頼りになる仲間がいる」

 

(一番頼りになるのとその次に頼りになるのは地球にいるのだがな)

 

「成る程。ご友人ですか?」

 

「……一人は友人なのだが……もう一人は……人?いやしかし匹というのは失礼では……?元は人だと聞くし……う~む……」

 

一つで完結している個体なのだからいっそ新しい数え方を作るのが正しいのではないか?

 

「……一ゴジラ?……成る程!石動!一人と一ゴジラだ!!」

 

「准将、准将!分かりましたのでそこまで悩んで頂か無くても!」

 

「あ、あぁ済まない」

 

石動は内心で考えていた。

 

もしかして、この上司は会議でもこんな面白ミスをしでかしているのではないかと。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一方鉄華団はクーデリアの護衛任務を無事終えようとしている所だった。

 

「は~あ、結局何にも来ないでやんの。初陣がこんなのでいいのかねぇ」

 

ザックがぼやく。

 

「ちゃんと見張ってろって」

 

そう言いつつハッシュも意気込んでいただけに落胆は大きかった。

 

背後に控えるグシオンとバルバトスの両機を見上げる。

 

ハッシュは知るよしも無かったが、今のグシオンは【射撃形態(アーチャー)】で周囲を警戒していた。

 

シンのレーダーが出鱈目過ぎるだけで周囲を警戒する分には十分過ぎる警戒網をグシオンは持っている。

 

そして、グシオンのレーダーが敵を感知しカメラアイが輝く。

 

『!……敵が来た。早く持ち場に付け!!』

 

三日前に夜明けの地平線団が火星に降りたという情報を入手してからバルバトスと交代交代で監視していたのだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「グシオンはもう先行してるよ!それとその装備がシン君が提案した新装備のソードメイス!メイスとして使える上に中にγナノラミネートソードが入ってる!起動すれば勝手に鞘ごと斬れるから叩き付けて、受け止めた!と思わせて斬るのが楽しい使い方だね!」

 

「分かった。要するに何時でも刀になるんだね」

 

「うん!大体合ってるよ!!じゃあ頑張って!!」

 

 

バルバトスが出撃する。

 

「三日月……あのテンションの整備長相手に普通って凄くない?」

 

同じく格納庫に居て、流星号の最終調整をし終えたヤマギがドン引きしつつ呟いた。

 

「おう、ヤマギ!流星号の準備は出来たかぁ!!」

 

「うん、準備万端だよ。シノ」

 

「うっし!行くぜ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やはり仕掛けて来ましたね。あの男」

 

モニターを見つつフミタンが呟いた。

 

「テラ・リベリオニスだな。俺らの家族に手ぇ出したんだ。ケジメは取らせるさ」

 

「……随分と頼もしく成りましたね」

 

「当たり前だろ?俺達を誰だと思ってる?」

 

「鉄華団です」

 

「正解だ。安心しろよ。お前とお嬢様は俺達がきちんと守る」

 

「……」

 

(……あれ?フミタンと団長さんってもしかして?)

 

狙われている張本人にも関わらず、その後ろで空気と化していたクーデリアだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

夜明けの地平線団が送り込んできたモビルスーツは15機。普通の組織相手に奇襲を掛けるのには些か過剰戦力である。

 

しかし、それでも鉄華団を相手取るには全然足りなかった。

 

『ぬぅん!!!』

 

先行したグシオンが接触と同時に二機をハルバードで葬る。

 

混乱しつつも纏まっていては不味いと散開する敵モビルスーツ。

 

予定通り、逃げ切れなかった重武装のモビルスーツをグシオンが相手取る。

 

『シノ!そっちに行ったぞ!!』

 

グシオンと相手している三機を残し残りの10機は半々に分かれて鉄華団の本部を目指そうとする。

 

そこにシノ率いる流星隊が襲いかかった。

 

『オラオラァ!!こっから先は通行止めだぁ!!』

 

『シノ……どっちが悪役か分かんねぇよ……』

 

ダンテが呆れつつ敵のモビルスーツに挑んで行く。

 

シノの流星号は阿頼耶識を搭載しており、他の紫電と違い流れる様な動きで敵を翻弄する。

 

『オラオラどうしたぁ!?』

 

『くっ……!しかし、ガンダムフレーム【鉄華団の悪魔】は仲間が抑えてる!お前らを倒せば……!』

 

『ん?何か勘違いしてねぇか?鉄華団の悪魔って呼ばれてんのは……』

 

その時敵モビルスーツが何者からの攻撃によって横凪ぎに吹っ飛んだ。

 

『がはぁっ!!……な、何が』

 

『ソイツだよ。【鉄華団の悪魔】って呼ばれてんのは』

 

そこに立っていたのはバルバトス・ルナノーヴァ。

 

カラーリングは以前の白と青に加えて新たに各所に赤色のアクセントが入っている。

 

バルバトスがシノの流星号以上の異常な動きで敵を叩き潰して行く。

 

『ば、馬鹿な……』

 

一瞬にして五機のモビルスーツがコックピットを潰されていた。

 

ゆらりと相手の機体が動いた瞬間、反射的に盾を構えていた隊長機。

 

それが功を奏し何とか受け止める事に成功した。

 

『そっか、ならこれだ』

 

次の瞬間起動したγナノラミネートソードに隊長はコックピットごと両断される。

 

その後は流星隊とバルバトスに残った敵は殲滅された。

 

 

 

一方グシオンはというと、残った敵に対して……

 

『パロ・スペシャル!!』

 

『タワーブリッジ!!!』

 

『筋肉!バスタァァァ!!!!』

 

その技の後にはモビルスーツだったもの(・・・・・)しか残らなかった。

 

 

基地ではそれを見たせいで笑いすぎて腹筋がつったラフタと呆れて眺めるアジーが居たという。




ギャラルホルン最大最強を誇る月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド。

それに対抗する為に用意したシンゴジラです。


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根回し

紫電は整備長考案の阿頼耶識、非阿頼耶識どちらにも対応したテイワズの次世代試作機です。

整備長の希望で鉄華団に大量に配備され、日々稼働データを蓄積しています。

その中でもずは抜けた成績だったシノは専用機を貰い、それが今の流星号と成りました。




「何なんだ……あのモビルスーツは……」

 

俺はその戦闘の凄まじさに感動すら覚えていた。背筋がゾクゾクする。

 

あれがバルバトス、三日月が駆る鉄華団最強の存在。

 

いや……三日月さん(・・)だ。

 

(あの人に着いて行けば俺も……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

戦闘は終わった。襲ってきた相手は全て倒し終えて今は皆回収や整備で大騒ぎしている。

 

そんな皆を他所にクーデリアとフミタン、オルガとビスケットとユージンは会議室で今後の事を話し合っていた。

 

「当座の危機はこれで無くなったが、アンタ達は鉄華団に避難して貰う」

 

オルガが二人に告げる。

 

「そうだね。そっちの方が安全だ。……オルガ、どうするつもり?」

 

ビスケットがオルガに問い掛けた。

 

「夜明けの地平線団相手にやらかすかって話だな。……どっちみち奴らに目を付けられた以上、いずれ事を構えるんだ。ならこっちから手を打つのが俺は手っ取り早いと思う」

 

「確か戦力が……艦艇十隻にモビルスーツ多数。正面からはシンが居ないとキツイが奇襲なら倒せるだろうな」

 

ユージンが相槌を打つ。

 

「本当に大丈夫なのですか?」

 

無謀な戦いを仕掛けようとしているのでは?とクーデリアは心配しオルガに話し掛けた。

 

「平気だ。俺は勝てない戦はしない主義だ。家族を失ったらキレてヤバい奴もいる事だしな」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

会議も終わり、三日月に挨拶しておこうと格納庫へフミタンと共に向かう。

 

「この角を曲がって突き当たりの……」

 

「あ!クーデリアさん!!」

 

偶然通りかかったアトラさんが此方に気付いて駆け寄ってくる。

 

そして、ぴょんと私の腕に飛び込んできた。

 

「わぁ!ビックリしましたよアトラさん」

 

「えへへ……久しぶりだね」

 

そう言ってぎゅーっと抱き締めて来る。

 

(……あぁ可愛い。この数日間の疲れが癒えて……)

 

「お嬢様、にやけてるのが隠せてませんよ」

 

「ハッ!?いやこのまま事務所まで持ち帰りたいなんて思ってませんよフミタン!?」

 

「……承知しております」

 

「っはぁ!クーデリアさんの匂いだー!」

 

「可愛いですアトラさん」(三日月に挨拶しておこうと思っていたのですが)

 

「お嬢様心の声が漏れてます」

 

「ん?三日月の所?案内するよ!!」

 

 

 

(……何でアトラさんはお嬢様の心の声の方が聞こえたのでしょうか?)

 

 

 

 

場所は移って格納庫。

 

「三日月ー!!クーデリアさんがが来てるよー!!」

 

バルバトスの側に居て整備長と話していた三日月が気付いて振り返った。

 

「あ、アトラにクーデリア。それにフミタン」

 

「お久しぶりです」

 

「うん。久しぶり」

 

 

……え?それで終わり!?と考えているのが分かる顔をアトラさんがしている。

 

そこで整備長が気を利かせて三日月に暫く一緒に散歩しておいで、と提案した。

 

「よろしいのですか?」

 

「ハハハ、正直シン君作のこのモビルスーツは機体側の損傷はほぼゼロな上に多少の傷は自己修復するからね!戦闘後の阿頼耶識の調整しかする事が無いよ!!それも終わったし、私はこれから他の機体を見に行くよ!!」

 

そう言い放つと「ハッハッハァ!!待ってろォ!!新しい機体よぉぉお!!!」 と言って駆けていった。

 

それを見送ったアトラさんが呟いた。

 

「ちょっと変だよね」

 

「うん」

 

「随分とバッサリいきますね!?アトラさん!?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「久しぶりだな。モンターク」

 

「君達か。何の用かな?」

 

クーデリアとの会議を終えたオルガは早速ギャラルホルンのマクギリス、モンタークにコンタクトを取っていた。

 

「宇宙海賊の夜明けの地平線団、名前は聞いてるな?」

 

「あぁ、地球圏まで手を伸ばす神出鬼没の大海賊だ」

 

「その大海賊サマが俺達に目を付けた。鉄華団はコイツらを叩き潰す予定だがそちらにとっても良い話がある」

 

オルガの言わんとしている事に直ぐ気が付いたマクギリスは通信カメラ越しにニヤリと笑い掛けた。

 

「成る程。不安な戦力差をうちで補う積もりか」

 

「察しが良くて助かるぜ。その通りだ、海賊を捕らえたっつー手柄はそっちにやる。そっちは此方の命令に従える戦力を寄越せ」

 

「分かった。私にとっても益がある話だ。手配しておこう」

 

しかし、とマクギリスは思案顔になり、

 

「正面からは迎え撃つには少々厳しい戦力差だったハズだが何故叩き潰そうと?」

 

「クーデリアを殺そうとしてきた輩だ」

 

「成る程、バルバトスの彼の彼女か。ならば此方は私の右腕の石動を送ろう」

 

(確実に殺らなくてはな)

(あぁその通りだ)

 

目線で通じ合い、形式的な別れの言葉を告げて通信を切った。

 

 

「フー……次はテイワズだな」

 

手柄はやるとは言ったものの、実質的な手柄は此方が立てるのだ。

 

ならばテイワズに鉄華団はゴジラ抜きでも夜明けの地平線団を潰すだけの戦力が有るぞと知らしめるいい機会だとオルガは考えた。

 

「お、繋がった。……お久しぶりですマクマードの親父」

 

「オルガ・イツカか。何の用だ?」

 

「夜明けの地平線団が俺達に喧嘩を売ってきたので叩き潰して来ます。そちらの新型機の紫電の実戦テストに持って来いですし」

 

「お、おお……分かった……好きなようにやれ」

 

「報告は以上です。好きにします」

 

そう言って通信を切った。

 

(マクマードの親父……随分と老けたな……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「何だあのガキ!親父相手に!!」

 

通信を切れたのを確認した後、テイワズの自称No.2ジャスレイ・ドノミコルスは怒鳴り散らした。

 

「何だ、なら面と向かって文句言ったらどうだ?」

 

「キレて何してくるかも分からないガキ共ですぜ?」

 

「奴等はまだ若いがテイワズと肩を並べる鉄華団だ。一応昔目を掛けてやったという事があるから向こうの対応も下に出ているが、戦力で言ったら到底敵わねぇ」

 

「チッ!いつから親父はそんなビビりになっちまったんだ!此方は圏外圏では泣く子も黙るテイワズですぜ!?ここらで力の差って奴を見せたらどうです?」

 

「その前にこの一件をよく見ておくんだな。力の差って奴を語るんなら」

 




次回夜明けの地平線団戦です。


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VS夜明けの地平線団

シンが居なくても十分ヤバい集団ですね。



「エイハブ・ウェーブを捕捉。固有周波数を確認。合流予定のギャラルホルン艦艇と一致しました」

 

「艦艇5隻ちゃんと揃ってるな」

 

「これで不安な戦力も埋められるね」

 

ビスケットが安堵のため息をつく。

 

「うし!早速作戦会議だ!」

 

 

 

 

会議室にはオルガ、ビスケット、ユージン、昭弘。そしてギャラルホルンの石動とその部下二人が集まっていた。

 

「まずはご協力頂く事に感謝を」

 

「止せよ、話は聞いているんだろ?作戦の指揮権は此方が貰う。いいな?」

 

「当然だとも」

 

その言葉にオルガは満足そうに頷いた。

 

「さて、コレがウチが観測した奴等の最新情報だ」

 

資料を取り出そうとする石動を止めて昭弘からデータの入った端末を貰う。

 

機械を操作しディスプレイに映し出した。

 

「此処から十二時間の場所に奴等の艦隊を捕捉した。3隻しか居ない様に見せかけてるが、エイハブリアクターを切って牽引されてる艦が7隻いる」

 

オルガが言い終えた後、補足をビスケットが続ける。

 

「夜明けの地平線団が保有する艦隊は10隻。恐らくボスのサンドバルもこの中にいるハズです」

 

「な……!此方は三隻しか捕捉していなかった。正確な情報提供を感謝する」

 

「そこで俺らの作戦はこうだ」

 

ユージンが得意気な顔で説明を開始した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「どう?三日月、美味しい?」

 

「ん、美味いよ」

 

「良かった~!」

 

格納庫ではバルバトスの側で三日月とアトラがいちゃついていた。

 

(ビスケットから戦いまで少し休んでろって言われたからミカに会いに来てみたが……こりゃ入れ無ぇな)

 

格納庫の入口からくるっとUターンし通路に戻る。

 

(……お嬢様の様子でも確認するか)

 

頭にふと浮かんだ顔がフミタンだったのでそれを行動に移す。

 

それが何を意味しているのかはまだオルガは気付いていない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「夜明けの地平線団の艦隊のエイハブウェーブ周波数を確認!」

 

「良し、グシオンの準備も出来てるな?」

 

「バッチリです!」

 

よし、と頷きオルガはユージンの方を振り向いた。

 

「ユージン、イサリビの操縦は任せたぜ」

 

「応!!」

 

そこで、夜明けの地平線団から通信が入ってきた。

 

『俺は夜明けの地平線団団長サンドバル・ロイターだ』

 

「鉄華団団長、オルガ・イツカだ」

 

ユージンが「何で頭にターゲットマークが付いてんだよ、あのオッサン」と呟いた。

 

モニターを見た瞬間全員が抱いた疑問を的確に表現した言葉に皆一斉笑いを堪える羽目になった。

 

「……っ!……クク」

 

『せめてもの慈悲として降伏する機会を与えてやろう』

 

『フフッ……あぁ?降伏だって?……』

 

意地で笑いを堪えて会話を続けるオルガ。

 

サンドバルは訝しむがそのまま会話を続行する。

 

『あぁそうだ』

 

「アンタこそウチに手ぇ出した詫びを入れるなら今の内だぞ」

 

『フン、ギャラルホルンの弱兵を従えて気でも触れたか』

 

「いや、こうしてアンタが会話してくれるが一番の要だったんでな」

 

『?何を言って……』

 

次の瞬間夜明けの地平線団の艦隊の回りから多数のエイハブリアクター反応が起こった。

 

『何!?いつの間に!?』

 

「ウチのガンダムフレームにはな阿呆みたいに馬力がある奴が居るんだ。そいつにギャラルホルンのモビルスーツを全機(・・)投げて貰ったんだよ」

 

「昭弘から連絡!サンドバルの通信は中央の船から!」

 

ビスケットが入ってきた情報を叫ぶ。

 

「ユージン!ナノミラーチャフ!」

 

「そう言うと思って装填済みだ!!」

 

「グシオンとバルバトスのレーダーと全機リンクし終えているな?真ん中の奴以外全部墜とせ!!」

 

オルガがユージンに合図を送る。

 

「発射ァ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

戦闘宙域にナノミラーチャフが広がる。

 

その中でサンドバルの艦隊はレーダーの目を失い身動きが取れなくなっていた。

 

誤認用に戦艦を牽引してきたせいで密集してしまっている。

 

その為ただモビルスーツ隊を送り出すことしか対抗策が取れなかった。

 

一方鉄華団とギャラルホルンのモビルスーツはグシオンとバルバトスの疑似ゴジラレーダーとリンクする事で一方的なアドバンテージを手に入れていた。

 

グシオンの筋肉砲(マッスルキャノン)が艦の推進部を的確に貫いていく。

 

出てきたモビルスーツは紫電とグレイズが連携して葬る。

 

バルバトスは【繊月(せんげつ)】で艦とモビルスーツを切り裂き、グシオンはブーストハンマーで艦橋を潰しモビルスーツを叩き壊していった。

 

勿論降伏する隙も与えずコックピットを潰す。

 

サンドバルのモビルスーツはその圧倒的な数にも関わらず数をみるみる減らしていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「何とかしてこのチャフを突破しろ!」

 

サンドバルが指示を飛ばす。

 

味方がもう全滅しかかっている事にはまだ気が付いていない。

 

そして、チャフを抜けた瞬間、

 

『行っくぜぇぇぇぇぇ!!!』

 

ユージン操るイサリビがサンドバルの艦に突貫してきた。

 

「ぐッ!?この糞餓鬼共がぁ!!!」

 

怒りで目眩がする。

 

しかし、直ぐにサッと青ざめた。

 

敵艦に突き飛ばされた先に砲を構えたギャラルホルンの五隻が待ち構えていたからである。

 

イサリビとギャラルホルンの艦隊からの総攻撃を喰らいサンドバルの艦が火を吹く。

 

「っ!メインブースター損壊!火器も全て壊されました!!」

 

震える声でオペレーターが告げる。

「……!そんな……この俺様の艦隊が……!他の艦は!」

 

まだ戦力は残っているハズだと指示を飛ばす。

 

しかし、ナノミラーチャフが晴れたそこにあったのは、鉄屑と化した残り9隻の艦と大量のモビルスーツの残骸だった。

 

「……なッ!?……馬鹿……な……」

 

艦に強い衝撃が走る。

 

モニターには艦橋を覗き込んでくるガンダムフレームの姿が映っていた。

 

「……!鉄華団の……悪魔……!」

 

噂に聞いていたそのモビルスーツが目の前に居る。

 

そこに敵艦から通信が入ってきた。

 

『よお、大海賊サマ(・・)よ。詫びを入れる準備は出来たか』

 

その言葉に合わせて悪魔が刀を艦橋に向けて突きつけた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そのもう少しで戦闘が終わろうとしていたその時、アリアンロッドの艦隊が到着した。

 

「地球外縁軌道統制統合艦隊所属のハーフビーク級5隻と民間船籍の1隻を確認」

 

「民間組織?何者だ?」

 

イオク・クジャンが隣に居るジュリエッタに尋ねる。

 

「存じ上げません」

 

 

直ぐにアリアンロッドの艦隊からモビルスーツが出撃を開始した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バルバトスがアリアンロッドの艦隊に注意を向ける。

 

サンドバルはその隙に部下を二人引き連れヘキサフレームのユーゴーに乗り出撃した。

 

艦のすぐ側にいたギャラルホルンのモビルスーツに襲い掛かる。

 

そして両手の円月刀でコックピットを叩き潰した。

 

『聞け!夜明けの地平線団に刃向かう愚かなる者達よ!』

 

グレイズの残骸を掲げる。

 

『これが貴様らの末路である!命を捨てる覚悟のある者だけかかってこい!このサンドバルが相手をしてやろう!』

 

直ぐにオルガの指令でバルバトスが駆け付ける。

 

それをジュリエッタが駆るレギンレイズが止めようとし……

 

『これは、私の獲』

 

『邪魔』

 

オルガにギャラルホルンのモビルスーツに被害は出すなと言われたので、レギンレイズを粒子供給を止めた状態の【繊月(せんげつ)】で横殴りにする。

 

反応出来ず吹き飛んでいったレギンレイズ。

 

バルバトスはユーゴーの元に辿り着き、粒子供給を再開した【繊月】でサンドバルのユーゴーの手足を斬り落とし、側にいたユーゴーはコックピットごと切り裂く。

 

サンドバルが乗っていた艦は【覚醒形態(マッスルオブフィナーレ)】を発動したグシオンがブーストハンマーで叩き潰し、これによって夜明けの地平線団の戦力は全て打ち砕かれる結果となった。

 




イオクが出撃する前に全て終わりました。


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後始末

サンドバルのユーゴーは三日月がイサリビまで引っ張って来ました。



「これで終わりではないぞ!成り上がりの餓鬼共が!忘れるなよ、お前達を目障りに思っているのは俺達だけではない事をな!」

 

「夜明けの地平線団もアンタだけになったってのによく吼えるな」

 

呆れた表情でオルガが返す。

 

「まぁ、もし来たらそいつらはあんたと同じ末路を辿らせるまでだ」

 

そして、サンドバルを捕らえていた団員に命令する。

 

「そいつを石動の所に連れていけ」

 

「分かりました!」

 

サンドバルは団員に連れていかれた。

 

「ふぅ。何とか全員無事で終わったね」

 

「そうだな、夜明けの地平線団もいい叩き台になった」

 

「俺達の実力にマクマードの爺さんもビビるんじゃねぇか?」

 

ユージンが調子に乗って意気込む。

 

「駄目だよオルガ、ユージン、今回俺達が勝てたのは奇襲が成功したからだ」

 

それを止めるのはビスケットだ。

 

「……そうだな。まぁシンが居なくても俺達でこれだけ出来るって分かったんだ。それは収穫だな」

 

「……わーったよ。少し調子に乗ってたぜ」

 

二人とも素直に反省した。

 

「うん、じゃあ打ち上げで何を食べるか決めようか!」

 

二人の様子を見てとって、ビスケットが話題転換に打ち上げの話を始める。

 

「そうだな……火星に出した刺身屋なんてどうだ?」

 

「お、いいなそれ」

 

「自分達が出したお店で打ち上げってどうなのかな……?まあ楽しそうだしいいか!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「夜明けの地平線団を全滅させるとはな……」

 

報告を聞き終え通信を切ったマクマードが深いため息と共に呟いた。

 

「……ギャラルホルンの手助けがあってこそだろうよ」

 

まだ認められないとばかりにジャスレイが反論する。

 

それに対して名瀬が補足した。

 

「敵の首を取ったのはアイツらだ。それに人的被害はゼロときた」

 

睨みつけてくるジャスレイに名瀬はすげなく返す。

 

「事実を言ってるんだ」

 

「そうだな、奴等の実力はテイワズと肩を並べる所かそれ以上だ」

 

マクマードは心の中で「ゴジラもいる事だしな」と付け加えた。

 

「これで航路の安全も確保出来た。ジャスレイ、お前の鉄華団に対する愚痴は全て聞かなかった事にしてやる。テイワズはこれからも鉄華団と付き合っていく。これは決定だ」

 

それに対してジャスレイが一瞬だけ不満げな表情をするのを名瀬は見逃さなかった。

 

(ま~だ何かやらかすなコイツは。もしジャスレイがやらかしたらシンにフォローを入れておくか)

 

そんなジャスレイを置いてマクマードは話を進める。

 

「今回の航路の安全確保のお礼として、クリュセ郊外の採掘場の利権を鉄華団に譲ろうと思う」

 

「……は!?ちょっと待てよおやじ!そいつはテイワズ本体のシノギにすべきでかいヤマでしょ!」

 

流石に聞き逃せなかったジャスレイが反論する。

 

「鉄華団と今後も仲良くやっていくんだ。お礼は気前がいい方が良いだろう」

 

(ほ~こりゃまた随分とデカイヤマを)

 

名瀬はじっと静観しつつ、鉄華団も大きくなったもんだなぁと感慨に浸っていた。

 

その側でジャスレイとマクマードがその利権をあげるかどうかで言い争っている。

 

(オルガに教えたらきっと喜ぶだろうな)

 

「黙れジャスレイ。これは俺が決めた事だ。名瀬、お前から伝えてやってくれ」

 

「分かりました。では、アイツらに早く伝えてやりたいので今日の所はここで失礼します」

 

そう言って名瀬は退室した。

 

 

 

 

名瀬が屋敷の外へ出ていくと、柱の影でアミダが待っていた。

 

「どうしたんだい?嬉しそうな顔をして」

 

「鉄華団のシノギがまたデカくなったって話さ」

 

クリュセ郊外の採掘場の利権を鉄華団が手に入れたとアミダに伝える。

 

それを聞いたアミダはそれはいい報せだと喜んだ。

 

「そうさね……アンタと同じで味方にやっかまれるのは同じだろうけど……」

 

「力押しが……通じるんだよなぁ……あのガキ共の場合は」

 

二人の脳内には呑気に振る舞うシンの姿が浮かんでいた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「三日月さん!少し時間を頂いてもいいですか!」

 

夜明けの地平線団との戦闘も無事終えた鉄華団は火星に戻り、クリュセの刺身屋で打ち上げをしていた。

 

「ん?何?」

 

アトラにあーんをされながら三日月がハッシュに返事をする。

 

「俺、三日月さんの闘いっぷりを見て尊敬しました!俺を是非三日月さんの舎弟にさせて下さい!!」

 

「いいよ」

三日月が即答する。

 

「勿論ただでとは……いいんすか!?」

 

「今アトラとご飯食べてるから後で。確か整備長が一人阿頼耶識付けてない操縦者探してたから訊いてみるよ」

 

「あ、ありがとうございます!では基地でまた!!」

 

ハッシュはウキウキとした足取りで去っていった。

 

「……良かったの?三日月」

 

少し顔を赤らめながらアトラが三日月に尋ねる。

 

「シンが一人増える様なもんでしょ?」

 

「あ、確かに」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

先にアトラだけ帰らせた後。

 

帰りに皆でアリウムの事務所に寄っていく。

 

事務所にはオルガと三日月が入り、裏口から筋肉(アキヒロ)とダンテが侵入する。

 

出てくる敵を昭弘が徒手空拳で沈黙させ、その間にダンテが事務所のパソコンにハッキングを仕掛ける。

 

そんな事が裏で進んでいるとは知らないアリウムはオルガと三日月に必死の弁解を続ける。

 

二人としてはダンテがアリウムの口座から有り金を全て抜き取るまで待っていれば良かったのでぼーっと全ての弁解を聞き流した。

 

食事の後なので三日月は欠伸をし露骨に話を聞いてませんよアピールをする。

 

アリウムはそれを見て青筋を立てながらも何故か繋がらない内線に焦りつつ弁解を続けた。

 

そして、遂にオルガの端末にダンテからの任務完了の報告が届く。

 

オルガが三日月に合図すると三日月は直ぐに銃を構え、制止の声を上げるアリウムを無視し銃弾を叩き込んだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

打ち上げから帰って来たアトラをクーデリアとフミタンが迎える。

 

「アトラさん一人ですか?」

 

「うん、一人」

 

「……そういう事ですか」

 

フミタンが複雑そうな顔をしながら呟いた。

 

「……皆少し怖い顔をしてたよ」

 

「私のせい……ですね」

 

クーデリアの抱え込むような発言にアトラが直ぐ反論する。

 

「クーデリアさんが悪い訳無いよ!!殺そうとしてくる方が絶対悪いって!」

 

「そうです。アトラさんの言う通りお嬢様が全て抱え込む必要は有りません」

 

「いえ、そういう手段を取らせてしまったのは私の責任です。……でもいつの日かそれを変えなければならない。彼らを幸せにすると約束しましたから」

 

場の空気が暗いものとなる。

 

そんな空気を変えようとアトラが別の話題を話し出した。

 

「そういえばクーデリアさんは三日月がやってる畑見た?」

 

「えぇ。クッキーとクラッカーに案内して貰いました。すぐ枯らしちゃうって言ってましたよ」

 

「三日月、農場のことたくさん勉強したんだよ。色々調べて新しい栽培方法を試してみたり新しい種を蒔いてみたり」

 

「読み書きはどうでしょう?」

 

「う~ん……農業の本が読めるようになってから勉強してる姿を見てないような……」

 

「フフッ三日月らしいですね」

 

「さっぱりしてるよね。そこが良い所でもあるんだけど」

 

恋話に花を咲かせる二人にフミタンが話し掛けた。

 

「お嬢様もアトラさんも三日月さんの事が好きなのですね」

 

「うん!でもクーデリアさんの事も大好きだよ! 」

 

「私もです。アトラさん」

 

フム、と思案顔になったフミタン。

 

それを見たクーデリアは悪戯を思いついた顔をしてフミタンに話し掛けた。

 

「……そういうフミタンだって団長さんの事気になってるんじゃ?」

 

「……えぇ!?そうなの!?フミタンさん!??」

 

 

それから暫く桜農場にて、少女達が楽しげに話し合う声が響き渡る事となった。

 




シンの出番は次回です!


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アーブラウ防衛軍発足式

久しぶりにシン登場。


『アーブラウの防衛軍も鉄華団の協力で何かと形になってきてな。発足式を行う段取りになった』

 

ここはクーデリアがクリュセに構える事務所の中。

 

地球の蒔苗が最近の経緯をクーデリアに話している。

 

「えぇアレジさんから案内状を頂きました」

 

『まあ難しいだろうな。いろいろと噂は届いて……』

 

「なので参加させて貰い……」

 

『…………』

 

「…………」

 

『「え?」』

 

そこから今クーデリアが動くのは色々不味い!と蒔苗による必死の説得が始まった。

 

 

まぁ、クーデリアもそこまで行きたい訳では無かったので直ぐに納得したのだが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あれ?今日はアーブラウの人達は?……って例の発足式典の打ち合わせか」

 

「アーブラウ防衛軍な」

 

「だからしばらく訓練は休み」

 

鉄華団の少年達がモビルワーカーの回りで会話をしている。

 

「あんな使えねぇじじいどもが防衛軍かよ」

 

「まぁそうなったとして俺らはどうするんだろな」

 

「俺結構地球の暮らし気に入ってきてるんだけど」

 

「う~ん、団長からは何も聞いてないなぁ」

 

タカキは困った様子で頭を掻く。

 

「俺は好きだな、地球」

 

隣でボソッとアストンが呟いた。

 

「俺も俺も!」

 

「そういえばシンさん最近見ないよな」

 

「ラディーチェを泳がす為とはいえ、シンさんと遊ぶ時間が減ったらつまんねえんだよなー」

 

シンと最近遊べていない事に年少組は不満なようだ。

 

「そもそもいつまでラディーチェの野郎は居るんだよ?」

 

その疑問に向こうから筋トレを終えて帰って来た昌弘が答える。

 

「さっきシンさんとすれ違った時に話したんだが、ギャラルホルンの方でキナ臭い動きがあるらしいぜ」

 

「マジかよ昌弘!なら防衛軍発足式の時に何かしてくるかもしれないな!」

 

「それなら後少しの我慢だー!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「おぉ!チャドさん!似合ってますよ!!」

 

発足式の為にチャド専用にしつらえたスーツが届いたとの情報を聞いてタカキ、アストン、俺はそれを見にやってきた。

 

「そうか?……本当に俺でいいのかな……」

 

「いいに決まってるじゃないですか!チャドさんは鉄華団地球支部のリーダーだし、蒔苗先生から指名されてるんです!もっと堂々として下さい!」

 

そうタカキが褒め称える横でアストンが驚いた様な顔をしてチャドを眺めていた。

 

「あ……やっぱ似合わねえか」

 

その視線に気づいたチャドがアストンに似合っていないと思われているのかと誤解をしてしまう。

 

「いや……そうじゃなくて……」

 

 

(ハイ、今良いシーンなんだから引っ込んでろラディーチェ)

 

ラディーチェが既に開いている扉を態々ノックして注意を引こうとした直前、俺の尻尾でラディーチェは廊下へと飛んでいった。

 

「……シン、今何か」

 

気にしないで!と目線でチャドに訴えたら通じたようだ。

 

「アストン、今何を言い掛けたの?」

 

タカキがフォローする。

 

「俺頭が悪いから何て言っていいのか分からないんだけど……正装したチャドさんを見て凄く驚いたっていうか……皆にチャドさんを見てほしいっていうか……」

 

「もしかして……誇らしい?」

 

「あ、それだ。誇らしい」

 

「何だよ……照れるじゃねぇか」

 

誤解が解け場が明るくなる。

 

俺はその間に廊下のラディーチェに目をやると当たり所が悪かったのか気絶していた。

 

(成る程。なら端末だけ貰うか)

 

乱暴に小突いて仰向けにし尻尾で服から端末を引き抜く。

 

戻ってチャドにそれを渡した。

 

「お、サンキュシン。……アーブラウ防衛軍発足式の最終確認か」

「そっか、いよいよだね」

 

「変更点は……ウチから出すモビルスーツの数?一個増えたのか?」

 

知ってるか?とチャドが二人に問う。

 

見映えを良くする為に手持ちのモビルスーツを全機出すつもりだったが、何故か一機枠が増えている。

 

「俺は知らない」

 

「俺もです」

 

二人とも否定する。

 

その二人の間からピョコンと尻尾が飛び出してきて左右に振れる。

 

「あぁシンか。なら問題無いな」

 

流石の信頼感というか、俺が原因だと分かるや否やその疑問はお流れとなった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして式典当日。

 

鉄華団の出したモビルスーツの中に一際異彩を放つ機体が居た。

 

筋肉号の隣に直立する漆黒の機体。

 

羽の様な推進機と刀じみた何かを背中に着けている。

 

 

 

 

 

「鉄華団は軍事顧問としての仕事を立派に務め上げてくれている。今日という日が来たのも鉄華団のおかげだ。礼を言うぞチャド・チャダーン」

 

「あ、俺の名前……」

 

「ほっほっほ、これからも地球支部を束ねるものとして宜しく頼むぞ」

 

「いやぁ……俺なんかを、そんな」

 

照れるチャドを蒔苗が微笑みながら眺めていると、秘書の人が入ってきた。

 

「失礼します。蒔苗先生間もなく挨拶となりますので」

 

「ふむ、分かった。……そう言えばその机の上に爆弾があったんじゃよなあ……」

 

外に見える漆黒の機体を眺めながら蒔苗は感慨深く呟いた。

 

「シンのお陰です。見つけられたのは」

 

 

 

 

 

 

アーブラウ防衛軍発足式の会場から離れた酒場で二人の男が酒を飲んでいた。

 

「君は心が痛まないのかな?仮にも今まで寝食を共にしてきた子供達を戦火に放り込む事について」

 

「彼らは教育も受けず野放しにされた獣のようなものです」

 

そして、憎しみを込めて呟いた。

 

「特にあの憎たらしいトカゲめ……何度撃ち殺してやろうと思った事か」

 

「トカゲは嫌いかね?」

 

「私は動物にアレルギーがありましてね……特に宇宙ネズミ」

 

「ははははっ!そうか。いや君は実に面白いな」

 

そう言いガラン・モッサはラディーチェに話し掛けた。

 

「俺は面白い男が好きだよ」

 

「何ですか急に気持ち悪い事を……まさか貴方の機体がゲイレールだというのも」

 

「それは違うからな!?ゲイレールはギャラルホルンがつけた名前だっつうの!!」

 

とんでもない誤解が生まれそうだったのを阻止する。

 

(……というか爆弾が中々爆発しねぇな?)

 

 




漆黒の機体についてですが、黒いバエルにテイルブレードが付いてるのを想像して貰えればと思います。

次回筋肉弟の活躍です。


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第五形態

先に言っておきます。

二期終盤オルガがはっちゃける予定です。


式典の三日前、俺は昌弘に作戦を伝えていた。

 

『ラディーチェの消してた通信ログを見るに、奴はガラン・モッサという男と式典当日に接触するハズだ』

 

「俺は二人とも倒せば良いのか?」

 

昌弘が力こぶを作りながら尋ねてくる。

 

『いや、ラディーチェだけでいいんだ。ガラン・モッサという男についてデルマと手分けして調べてみたんだけど、ある日を境に一切の記録が残ってなくてね』

 

「シンさんが調べても見つからなかったのか?」

 

昌弘が驚く。

 

『流石の俺も紙媒体は全部調べられないからね。あとギャラルホルンからの支援もあるみたいだ。それが恐らくラスタルだと思う』

 

調べた所ガラン・モッサが関わったであろう事件は全て結果的にラスタルの益になっていた。

 

『その繋がりの確証が欲しい。その為には奴が何処にその情報を隠しているのか知る必要がある』

 

「そういう事なら分かったぜ。ラディーチェをボコしてガランは逃がす」

 

『ありがとう、ガランは他の人に追って貰うよ。……何かやたら志願者がいたんだよね』

 

「そりゃ皆シンさんと遊べなくてイライラが貯まってたからだろうな」

 

『あー……。成る程』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

段々と式典会場から爆発音が聞こえて来ない事に焦りを感じ始めたガラン。

 

爆発音がしたらラディーチェに格好つけて別れるつもりだったが……

 

(おかしい……誰かが爆弾を見つけて処理でもしたのか?)

 

見つかるとは思えない。だかもしそうなら今すぐ此処を離れる必要がある。

 

「……じゃあ今日の話はここまでd」

 

「なら拳で語り合おうか。おっさん」

 

その声に振り返った俺の顔面に拳が鋭く突き刺さった。

 

椅子ごと地面に倒れ込む。

 

「な!?貴方はヒューマンデブリの……!」

 

ラディーチェの困惑した声を聞きながらぐらつく頭を押さえる。

 

「ラディーチェ、テメェには聞きたい事がある。着いてきて貰うぞ」

 

「待て!まってください!これは何かの誤解で」

 

「散々シンさんの事を……よくもディスってくれたなパンチ!!」

 

カエルが潰れたような声を出しながらラディーチェが壁に叩き付けられる。

 

見れば殴っているのはやたら筋肉を鍛え上げた少年だった。

 

羽織ってる服から鉄華団だと分かる。

 

奴の意識がラディーチェに向かっている今の内に、俺は逃走を開始した。

 

 

 

 

「ふぅ……これで計画通りだな」

 

視線を向けずとも逃げ出すガランを背筋で感じながら昌弘は呟いた。

 

「あ……が……何で……?」

 

未だに何が起きているか理解していないラディーチェ。

 

「おいラディーチェ」

 

「は?」

 

こちらを向いたそのタイミングで腕の筋肉を活かした全力のスイングでガチビンタを喰らわせる。

 

バットで肉を打った様な音が響き、そのビンタ一発でラディーチェは意識を刈り取られた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ハアッ……ハアッ……ここまで逃げれば十分だろう」

 

アーブラウ郊外の森の中までガランは走って逃げてきた。

 

もうそろそろ自身の乗機、ゲイレールが待つ格納庫だ。

 

(すぐにここからトンズラだ。……ラスタルには悪ぃが此方も捕まった洒落にならないんでな)

 

 

 

……ガランは呼吸を整えるのに意識を向けていたせいで気がつく事は無かった。

 

鉄華団の年少組がずっと物音を立てずに追跡していた事に。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『成る程、その進行方向からして……多分ここの倉庫か』

 

年少組の報告を聞き、アーブラウの地理情報と照らし合わせて当たりをつける。

 

『ありがとう。戻ってきて』

 

今から戦闘を起こすので皆には退却して貰う。

 

そして早速マクギリスに連絡を取った。

 

 

『やぁ!シン君!』

 

マクギリスはいい笑顔だ。

 

『テロリストを捕らえる名目でラスタルの弱味を握りに行かない?』

 

『行くとも!!』

 

『ちょ……准将!?』

 

通信の向こうではマクギリスの部下の人が慌てている。

 

『あぁ、その人が石動か。夜明けの地平線団の時はどうも』

 

『あ、いえお構い無く。……シンさん、ですか?』

 

『そうだよ』

 

『フム、何故画面にはUNKNOWNと出ているのだろう』

 

今さらですか准将!?と石動さんのツッコミが入る。

 

『あー俺最近形態変化して第五形態になってさ。自力で通信してるんだよね』

 

『なるほど?……進化?』

 

『見た目は黒いバエルっぽいよ』

 

『OK分かった!聞いたか石動?すぐに出撃だ!!』

 

『……了解しました』

 

そうして通信は切れた。

 

……マッキーポンコツ化してない?大丈夫?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あ、親方!そんなに急いでどうしたんで?」

 

「敵が来る!急いで逃げる算段を取れ!!」

 

俺の命令にその場の全員の動きが一瞬止まり、直ぐ様慌ただしく動き出した。

 

俺はゲイレールに向かって歩を進め……

 

『見つけた。ここか』

 

突如漆黒の機体が天井をぶち破り侵入して来た。

 

それに続いて青いグレイズリッター二機が降下してくる。

 

『シン君!後で一緒に写真を撮って貰ってもいいかな?』

 

『いいよ~』

 

『准将、もう少し緊張感を……』

 

そんな漫才を開始した奴等にモビルスーツに乗った仲間が背後から武器を振りかぶり……

 

一機は漆黒の機体にコックピットを引きずり出され、もう一機はグレイズリッターに二刀をコックピットの隙間から突き刺さされていた。

 

その一瞬の攻防の凄まじさに周りの機体が動きを止める。

 

それを見た石動は日本に伝わる【馬鹿と天才は紙一重】という諺を思い出していた。

 

 

 

『ラスタルとお前の繋がりを示す情報は確保させて貰ったよ』

 

漆黒の機体のパイロットからの声がする。

 

……奴の口ぶりからするにまだ敵は俺のゲイレールにこそ全ての情報が入っているとは気付いていない。

 

何とかしてゲイレールに乗り込み自爆を……!

 

『成る程ね。ゲイレールを見たって事は情報は全てこの機体の中か』

 

「なっ……!?」

 

カマを掛けられた事に気付き、悔しさで歯を食い縛る。

 

『なら他の機体はもういらないね』

 

言うや否や漆黒の機体から伸びたテイルブレードが倉庫の全てのモビルスーツを切り裂いた。

 

『な……!?何て切れ味だ!?』

 

グレイズリッターの一機が驚きの声を上げる。

 

『おぉ格好いいぞ!シン君!!』

 

……もう一機は何か変というか……指揮官型?まさかアレに乗っているのはマクギリスか!?

 

『お前は来たるラスタルとの戦いでの弱味の一つになって貰う』

 

漆黒の機体が紅色のカメラアイを輝かせこちらを覗き込んでくる。

 

咄嗟に銃を構えたが、直後に襲いかかってきたとんでもない圧力、まるで地球の重力が三倍、四倍にもなったかの様な圧力に体が地面に倒れ、そのまま動けない。

 

『ガラン・モッサ。貴様をアーブラウにおけるテロ未遂で確保する』

 

マクギリスが宣言する。

 

それを見つつ石動は考えていた。

 

(こういう時の准将は真面目で格好いいのだが……なぁ……)




という訳で、シンゴジラ第五形態でした。


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仮面の男、ヴィダール

ガエリオ仮面……一体何者なんだ……?



アーブラウでの式典も無事に終わり、ラスタルの弱味も握る事が出来た。

 

今ガランはモンターク商会に拘束されて尋問されている事だろう。

 

その情報を使ってラスタルを失脚させる事は出来るだろう。しかし、それではラスタル陣営を根こそぎ潰す事は出来ない。

 

マッキーの話曰くクジャン家の当主がラスタルの傀儡なのだとか。

 

それにラスタルを信頼するアリアンロッドの艦隊もいる。

 

なので切り札はここぞという時に使うべきだと俺とマッキーは決めたのだった。

 

 

 

……そういえばガランを確保した後、ギャラルホルンの基地に一緒に戻り、マッキーがこっそり隠していたグリムゲルデと並んで記念撮影をした。

 

「おぉ……いい写真だ……」

 

『次はこう……見栄をはったポーズで』

 

『こうかね?』

 

二機のモビルスーツが武器をケレン味たっぷりに構えて戦っている最中の様なポーズをとる。

 

普通に考えれば倒れる体勢だが、シンの重力制御の無駄遣いによって何とかなっていた。

 

「ハイ、撮りますよー准将ー!シンさーん!」

 

それを次々と撮影していく石動。

 

表面上は普段と変わらないが、正直格好いいロボは石動も好きなので地味にテンションが上がっている。

 

その後も、小型化し人間サイズとなった俺と記念撮影をしたり、ロボット談義をして過ごし……

 

 

そして三時間後、久しぶりに楽しい時間を過ごした三人はいい笑顔でそれぞれの帰る場所へ戻って行った。

 

(あはははは、楽しいと時間忘れるって本当だね~)

 

(いやぁ!楽しかったなぁ!!早く帰ってアルミリアに見せるとするか!!)

 

(私とも一緒に撮ってくれるとは……どこに飾ろう)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一方ラスタル陣営はガランからの連絡が一切絶えた事に戸惑っていた。

 

「まさか……髭のおじさまが……」

 

彼を信頼していたジュリエッタは驚きを隠せない。

 

「彼は仕事をきちんと果たす男だ。その彼から一切の連絡が無いという事は……」

 

「そんな……」

 

ジュリエッタの目に涙が浮かぶ。

 

「泣くな、ジュリエッタ。……彼はどこにも存在しない。私の活動に裏で協力するため彼は家も所属も本当の名前すら捨て戦いの中で生きそして死んだ」

 

ラスタルは重い雰囲気のまま続けた。

 

「存在しない彼の死を悲しめば、それこそそこまで尽くしてくれた彼の思いを踏みにじる事に他ならない」

 

「……はい」

 

ジュリエッタが涙を拭う。

 

ラスタルは窓からアーブラウの方向を向き、目を閉じ黙祷した。

 

(友よ……)

 

 

 

 

ラスタルの部屋から退出した後、自身のレギンレイズの待つ格納庫に直行したジュリエッタは脇目もふらずにシミュレーターに没頭していた。

 

そんなジュリエッタに仮面の男が声を掛ける。

 

『随分と熱心じゃないか』

 

「邪魔を!……貴方ですか」

 

水をさされキレようとしたジュリエッタだがその仮面を見て丁度良い相談相手が来たとシミュレーターを打ち切った。

 

『何があった?』

 

「髭のおじさま……私の師匠に当たるお方が亡くなりました」

 

『……どんな人だったんだ?』

 

ヴィダールのその質問にジュリエッタは暫し沈黙した後、話し出した。

 

「……身寄りもない私をラスタル様に推薦してくださったのがおじさまです。……私の戦い方はおじさまに教わったものです」

 

『そのおじさまと言うのはラスタル・エリオンの手の内の者か』

 

「そうです。名も家も全て捨てラスタル様の為に尽くしたお方です」

 

それを聞いたヴィダールがふとジュリエッタに呟いた。

 

 

『だがテロリストだったのだろう?』

 

 

「な……!貴方!!言って良い事と悪い事が!」

 

『良く考えろ。我々の組織の名前は何だ?』

 

「何を今さら……ギャラルホルンです」

 

『そう、ギャラルホルン。世界の秩序を守る存在だ』

 

そこでヴィダールは区切りを付け、続けた。

 

 

『なら何故ラスタルは秩序を乱す存在であるテロリストと手を組んでいる?』

 

 

「……!それは……古くからの友で」

 

『友がテロリストになったのなら断罪こそすれ、手を組むのはおかしいだろう』

 

「…………!」

 

この身はラスタル様の剣であればいい。そう考えていた自身の信念が揺らぐ。

 

「……もういいです。シミュレーションに戻らせて貰います」

 

それ以上考えるのは不味いとヴィダールとの会話を切り上げた。

 

足早に去っていくジュリエッタにヴィダールから言葉が投げられる。

 

『【人の間違いを正すのはいつだって人間だ】……俺の友が俺に言った言葉だ』

 

その言葉を聞いたジュリエッタは立ち止まり、振り返らないままヴィダールに疑問をぶつけた。

 

「……貴方は間違いを犯したのですか?」

 

その言葉にヴィダールは背後の自身と同じ名のモビルスーツを見上げ、呟いた。

 

『……あぁ。だから俺はここにいる』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ゲイレールからあらかた情報を引き出し終えた俺達は早速団長に報告をしていた。

 

『……というのがこの糞野郎のしでかそうとしていた事ですね』

 

地球支部をガランに売り自身の安全は保証して貰う。

 

まったく……テロリスト相手にそんな口約束が通じると本気で思っていたのかね?

 

『成る程な、おいラディーチェ。何か言い訳はあるか?』

 

「全て貴方達の言い掛かりです!私は何も悪くない!あのガラン・モッサという男から地球支部を守ろうと私は!」

 

『その口を閉じろ』

 

余りに苛つく事を言い出したので重力制御で地面に叩き付ける。

 

立っていた状況から急に三倍の重力を掛けられた事でラディーチェの体が土下座をしている様になった。

 

「コイツ口を開けば言い訳ばかり言いやがって」

 

チャドが憎々しげに呟いた。

 

 

『さて……テイワズにはどうして貰おうか』

 

『歳星墜とします?』

 

『いや、搾れるだけ搾りとってからでも遅くねぇ』

 

『……確かに。最近クリュセ郊外の採掘場くれたし』

 

夜明けの地平線団を壊滅させ航路の安全を確保してくれたお礼として貰ったのである。

 

『あ、そうだ。その採掘場からガンダムフレームとモビルアーマーが出てきたぞ』

 

団長から驚きの情報が。

 

『え?大丈夫でしたか?』

 

『ミカと昭弘が倒したぜ』

 

『おぉ!流石!』

 

『だよなぁ……すげぇよミカは』

 

ふーむ、モビルアーマーの素材とかガンダムフレームか……火星に戻りたいな。

 

『団長、俺火星に戻りたいです』

 

その言葉にチャドが反応した。

 

「お、なら地球支部もそろそろ終わりか!かー!辛かったぜー!慣れない纏める立場ってのも!」

 

早速、後ろではタカキやブルワーズの皆が帰るまでに何処へ遊びに行こうかの相談を開始している。

 

『……何か帰るのが確定事項になってないか?』

 

『……すいません』

 

俺の影響力強すぎない!?

 

 

 

 

 

『……結局テイワズから何奪います?』

 

『金と他の採掘場だな』

 




火星には何故か原作より多目のモビルアーマーが眠っています。

モビルアーマー編でのクリュセの守護神の活躍をお楽しみに。


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地球支部の帰還

色々伏線。



「ほう、火星へ帰るのか」

 

『うん、地球もいいけどやっぱ火星が一番落ち着くからね』

 

俺の意見で火星に帰る事になった鉄華団は手続きや荷物の運び出しなどで忙しくなっていた。

 

そんな中蒔苗のじーさんが挨拶に来たので第五形態の俺が相手しているのである。

 

「鉄華団のお陰でアーブラウの防衛軍もちゃんとした形になった」

 

改めて感謝する。と蒔苗さんが頭を下げた。

 

いえいえ。と俺も謙遜して返す。

 

『テロリストも捕まえたからね。当分は安心だよ』

 

「ふむ……何かお礼が出来ればいいんじゃがの」

 

『う~ん……じゃあアーブラウの美味しいお菓子のお店教えてよ。荷物積め終わったら適当に探して皆で行くつもりだったし』

 

それを聞いた蒔苗さんが腕を組んで思案する。

 

「お菓子か……う~む……ハニーデュークスなんかどうじゃ?昔の書籍に出てくるお菓子屋を再現したモノで評判も高いぞ?」

 

『ハニーデュークス……?確か昔読んだ……バリトン・ポイズナー……?』

 

絶対違う。頑張れ人間サイドの俺の記憶!

 

『……まぁいいか。ありがとう、そこに行ってみるよ』

 

「こんなのでいいのか心配じゃがな 」

 

『いいんだよ。あ、それと地球支部開設記念に貰った薔薇だけど』

 

「おお、アレがどうかしたか?」

 

『チビッ子達に任せてたら枯れかけてね。今は俺が育ててるよ』

 

以前地球支部が出来た時に蒔苗さんやアレジさんから色々花束を貰ったのだが、その中にレア物らしい青色の薔薇の苗が入っていたのである。

 

最初は皆物珍しさに水の世話をしていたが、次第に飽きて枯れかけてしまっていた。

 

丁度その頃、俺はラディーチェを油断させる為に皆と遊べず暇だったので、その枯れかけた薔薇を引き取り地球支部の裏手で飼育し始めた。

 

流石に水をあげるだけではどうしようも無かったのでゴジラ特製の肥料をあげてみた所、みるみる元気を取り戻し今に至る。

 

「ほう、お前さんがあの薔薇を」

 

蒔苗さんが驚いて俺を見てくる。

 

『花言葉は【夢かなう】【奇跡】【神の祝福】だっけ』

 

何とも今の状況に的確なものである。

 

「大事にしてやってくれよ」

 

『うん……最近何か動くんだよね』

 

「そうか動……」

 

暫し静寂が広がった。

 

『…………』

 

「…………は!?!?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

シンさんの薔薇も改めて鉢植えに植え替えシャトルに積み、皆で蒔苗さんから教えて貰ったハニーデュークスでしこたまお菓子とジュースを買い込んできた。

 

後は出発するだけだったが何故かシンさんがまだ来ない。

 

「なあ昌弘、シンさん知らないか?」

 

座席でハンドグリップをニギニギしている昌弘に問い掛けた。

 

「ん?俺は知らないぞ?」

 

「あ、アストン。シンさんは自力で地球から出れるからシャトルに乗るのは俺達だけだよ」

 

タカキが教えてくれた。

 

「そうなのか……相変わらず凄いな」

 

「俺達のシャトルが墜とされないように見張ってくれてるんだろうな」

 

デルマがパソコンを弄りながら言ってくる。

 

窓の外を見ると丁度漆黒の機体が通り過ぎていった。

 

「今さらだけどさ……あのモビルスーツみたいなシンさん、格好良くない?」

 

「「「「「分かる」」」」」

 

全員の意見が一致した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

俺はレーダーで周囲を警戒しながらシャトルが宇宙へ昇って行くのを見守っていた。

 

(無事到着っと。よし、俺も行くか)

 

第五形態の漆黒のボディ。

 

その体の所々には第四形態の名残で紅色のラインが走っているのだが、それが紫色の光を放ち出す。

 

(あばよ地球!!)

 

重力制御を全開にした機体が海を割り一直線に宇宙に向かって飛び出して行く。

 

それをラスタル陣営は唖然として見ていて、マクギリスと石動の二人はテンションアゲアゲで双眼鏡を覗いていた。

 

「准将凄いですよシンさん!光るとか格好いいですね!!」

 

「石動!お前もシン君の凄さが分かったか!黒いバエル!あぁ格好いいなぁ!!」

 




蒔苗(あ、『薔薇が動く』の話が強烈過ぎてハニーデュークスにジュースそっくりの見た目のお酒が売ってる注意をし損ねたわい。……まぁシンがついているし大丈夫じゃろ)


……このミスが後の鉄華団対アリアンロッド艦隊の最終決戦においてとんでもない事態を引き起こす事をまだ蒔苗は知らなかった。


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鉄華団の悪魔達VSモビルアーマー

『シンゴジラ バルバトス』でGoogle検索してこの小説以外それっぽいものが無い悲しみ。

鉄血とゴジラって相性良いと思うんですけどねぇ……



「分かった。こっちも準備して待ってるぜ」

 

シン達が地球を無事出発したとの報告をオルガは受けていた。

 

通信を切り、椅子に座る。

 

「ふぅ。シンが帰って来たらこっちのガキ共も嬉しがるだろうな」

 

かれこれ会わずに一年である。

 

(俺達も最初の頃と比べると随分とデカくなったもんだ……)

 

鉄華団は大きく変わった。しかし、それはシンも同じである。

 

(形態変化とやらで今度はモビルスーツみたいになってるしな)

 

まぁシンについては難しく考えるだけ無駄なのだが。

 

(少し眠ぃな……ビスケット達との打ち合わせまでまだ時間はあるか……)

 

なので少し仮眠を取る事にする。

 

(…………)

 

目を閉じたオルガは二週間前のモビルアーマーとの戦いを思い出し始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「団長ー!!採掘場から新しいガンダムフレームとモビルアーマーが出てきたって!あとプルーマとかいうちっこいのが沢山!」

 

部屋でユージン、ビスケット、デクスターと事務仕事をしていたオルガの元へ年少組の一人が息を切らせてやってきた。

 

「モビルアーマーだぁ?」

 

「アーブラウのあれか……」

 

先程の事務仕事の最中も難しい顔をしていた二人だか、新しい厄介事に更に眉をしかめた。

 

「二人ともここは俺とデクスターさんに任せて行ってきなよ」

 

そんな二人にビスケットが気をきかせて提案する。

 

「済まねぇな二人とも」

 

「いえいえ、お二人がついていれば皆さんも安心すると思うので是非行ってあげて下さい」

 

そのデクスターの言葉に押されて、二人とも急いで出る準備をする。

 

「うし、行くぞユージン」

 

「後は任せたぜビスケット!」

 

そう言い二人は出ていった。

 

 

 

 

 

 

「ライド!状況はどうなってる?」

 

二人でモビルワーカーを飛ばして来て郊外の採掘場へ到着する。

 

それを見つけ駆け寄ってきたライドにオルガが現状の報告を求めた。

 

「あ、今整備長が叫びながら走って行っちゃって……」

 

「……本当ブレねぇな、あのオッサン……」

 

それを聞いたユージンが呆れ顔をする。

 

「整備長はまぁいい。モビルアーマーは起動して無ぇんだな?」

 

「そうだよ。団長」

 

「……分かった。皆を下げさせろ」

 

それを聞いたライドが整備長は?とジェスチャーする。

 

「ふん縛ってでも連れて来い」

 

「了解!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

ゴジラを倒す。索敵。エイハブリアクター。壊す。壊す。壊す。壊す。壊す。壊す。壊す。否。地球。火星。到着。人類。発見。殺す。人類。殺。殺。殺。殺。殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺。

 

妨害。対象検索。

 

……Aswg01。

 

阿頼耶識。人類。人類ではない。攻撃。攻撃。攻撃。

 

対象停止せず。

 

攻撃。攻撃。

 

味方機が停止。攻撃。攻撃。攻撃。

 

味方機が更に二機停止。子機の被害甚大。

 

異常。コックピット。破壊。

 

……対象停止せず。想定外。異常。異常。

 

味方機全滅。全ての子機の指揮権を掌握。

 

対象を包囲。殲滅開始。

 

異常。異常。全ての子機の停止を確認。

 

対象。接近。回避。不可……

 

 

本機の被害甚大。被害甚大。至急修理。要請。至急……

 

 

……自己修復。開始。ナノマシン放出。修復完了まで本機を一時休止……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

モビルアーマーの元へやって来た鉄華団が誇る二機のモビルスーツ。

 

バルバトス・ルナノーヴァとグシオン・ディアボルスである。

 

モビルアーマーを視認した事で二機は自然と【覚醒形態】へとなっていた。

 

それも相まって、異常な出力のエイハブリアクターがモビルアーマーの覚醒を促す。

 

システムの再起動が終わり、モビルアーマーのカメラアイに光が灯る。

 

そして哭く。

 

嘗ての厄災が目を覚ました。

 

両方のブースターを全開にし自身が眠っていた大地から羽ばたく。

 

そして土煙を巻き起こしながら滞空し、テイルブレードを青色の鈍重そうな機体へ飛ばした。

 

直撃。

 

確かな手応えを感じテイルブレードを引き戻そうとするモビルアーマー。

 

しかし、何故か引き戻す事が出来ない。

 

『よぉ、大層なご挨拶じゃねぇか』

 

相手の機体がテイルブレード受け止めていた。

 

それも片手で。

 

300年前の戦いを思い出しモビルアーマーが何とか距離を取ろうとブースターを吹かすも逆に、

 

『どっこら……しょっと!!』

 

相手の機体に引き寄せられてしまった。

 

『ナイス昭弘』

 

そこでテイルブレードをもう一機の白い機体にテイルブレードを基部ごと切断される。

 

『フン!!!』

 

そしてグシオンの拳がモビルアーマーを採掘場の中へ叩き戻した。

 

底に叩き付けられたモビルアーマーが体勢を立て直す。

 

その一瞬の隙にバルバトスが近付き……

 

『じゃあね』

 

繊月(せんげつ)】が煌めき、数秒後には羽を落とされ首を切り落とされたモビルアーマーの残骸が転がる事となった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「オルガ!オルガ……って寝てるね」

 

「何だよ。これから会議があるってのに」

 

「疲れてるのかもね。少し寝かせておいてあげようか」

 

 




オルガ「すげーよ……ミカはぁ……」ムニャムニャ


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厄災の帰還(鉄華団以外にとって)

(鉄華団にとっては)お帰りパーティー。



「なぁ……ハッシュ。俺夢みてんのかな……」

 

ザックが口をポカンと開けたまま此方に問い掛けてくる。

 

「……安心しろ俺も同じ気分だ」

 

俺も目の前で起きた冗談しみた光景に唖然としていた。

 

チラリと隣のデインを見上げると何時もの細い目では無く、目をクワッと見開いて目の前の光景を凝視していた。

 

『団長!三日月さん!只今帰りました!』

「あぁ、おかえり」

「お帰り、シン」

『はい!!』

 

モビルスーツの背丈を優に上回る体躯の持ち主が人語を喋り三日月さん達と会話していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

……地球に居たメンバーを乗せたシャトルが降りてきたのにも関わらず古株のメンバーが発着場へ行かず空を見上げたままだった。それに気付き、俺も三日月さんに習って空を見上げていると、突如黒いモビルスーツが何の装備も付けずに落下してきた。

 

それを見た俺達新参が騒いでいると、そのモビルスーツの大きさが急激に巨大化していく。

 

そして遂にはモビルスーツの何倍もの体躯の龍となり地響きを立てて火星の大地へと降り立った。

 

 

「あれが……シンさんか……」

 

ここへ来る前に三日月さんから「シンが帰ってくるよ」とは聞いていたが……

 

「やっべぇなこりゃ……」

 

……あれ?そのヤバい奴がさん付けする三日月さんって相当凄いんじゃ……?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

団長達と話ながら俺はスススーッと体のサイズを落としつつ第二形態になり、宙に浮いて三日月さん達に近づいた。

 

『昭弘も久しぶりだね!ナイス筋肉!』

 

「……」(無言のガッツポーズ)

 

相変わらず凄い筋肉だ。

 

さて、挨拶はこれくらいにして。

 

『団長、俺向こうの荷物下ろすの手伝ってきますね』

 

「分かった。此方も手伝いに行くから先に始めててくれ」

 

『了解です!』

 

 

 

その日は荷物を下ろすのが終わるや否や火星に居た年少組の皆とひっきりなしに遊び続ける羽目になった。

 

ゴジラの高性能レーダー&情報処理機能&重力制御が合わさって世界一スリリングな遊園地と化したシンゴジラ印のアトラクション。

 

フリーフォール(第四形態時の俺の頭の天辺から自由落下、重力制御でふんわりと着地)!

 

ジェットコースター(但しコースは無い)!

 

空中散歩(歩いている人の動作を認識し思い描いた通りに自由に空を動き回れる)!

 

途中から地球支部、年長組、大人組も参加し大にぎわいになった。

 

 

「わ!三日月!凄いよ!浮いてる!」

「うん」

「何でスタスタ歩けるんですか三日月は……」

 

 

「スゲェなぁミカは……」

「団長さん、良ければあのフリーフォールをやってみませんか?」

「ん?アンタか……って……アレか……」

「皆さん叫び声を上げて……余程楽しいのでしょうね」

「いや単純に怖いんじゃねぇかな……」

 

 

「うぉぉぉぉぉおおお!!フリーフォールってのスゲェ!!シンさん!もう一回!」

『はーいよーっと』

「ふ、ふーん……な、中々面白そうじゃねーか」

「何だよユージン、びびってんのかぁ?」

「は?違ぇよ!」

「オーイ!シン!ユージンもやりてぇってよ!」

『りょーかーい!鉄華団副団長様一名ごあんなーい!』

「は?オイ馬鹿シン止めろおぉぉぉぉぉ!!??」

「はっはっは!ヤマギ!俺達ももう一回やろーぜ!」

「こういうの好きだねシノ……」

 

 

「小さくなったりデカくなったりアトラクションしてたりもう俺訳わかんねぇ……」

「ザック……もう理屈抜きで楽しむのがいいんじゃねぇかな……」

「その通りだ。ジェットコースターってのがオススメだな」

「……やってきたのかよ」

「楽しかったぞ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その日の夜。

 

三日月さんとアトラが住んでいる桜農場へと帰って来た後、二人についてきてと言われたのでついていく。

 

「じゃーん!コレ!」

 

「花火っていうんだって」

 

二人が見せてきたのは元日本人の俺にとってかなり懐かしく感じる花火だった。

 

『どうしたんですか?コレ』

 

「前に地球へ行った時に買ってあったんだよ」

 

「その時アトラがシンが帰って来た時にやらないかって」

 

(え?てことは……)

 

『俺の為に取っておいてくれたんですか……?』

 

「そうだよ!」

 

「うん」

 

アトラは満面の笑みで。三日月さんは少し微笑んで頷いた。

 

「「お帰り、シン」」

 

『……っ!……ただいまです!』

 

 

そんな感じで俺は火星へ帰って来たのだった。

 

改めて絶対に鉄華団(この人達)を守り抜くと誓いながら。

 



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魔改造

ヤバいです。



地球から持ってきた青い薔薇も鉄華団本部の裏手に植え、早速整備長と二人でバルバトス、グシオン、発掘されたガンダムフレーム、モビルアーマーの残骸をガレージへと運び込む。

 

『さて、整備長。覚醒形態のデータ見せてもらえます?』

 

「バルバトスがこれでこっちからがグシオンだね」

 

『フム……同じ覚醒形態のハズなのに随分と違ってきてますね』

 

覚醒形態。機体の全パラメータが底上げされるのは勿論なのだが、特にバルバトスは反応速度と推力の向上、グシオンはひたすらパワーを上げることに変化していた。

 

「何か生きてるみたいで凄いよね!」

 

『いや実際俺から分かれたんだからある意味生きてるというか……』

 

まぁそろそろこの二機も改修するべきだろう。

 

それと、問題なのは……

 

『新しいガンダムフレームかぁ』

 

「ヒャア!たまらねぇぜ!!」

 

『ちょっと休止してるリアクター再起動させてみてくれません?』

 

「ElectricalCommunication!」♪

 

頭をヘドバンし歌いながら手だけは冷静にエイハブリアクターの休止モードを解除していく。

 

……二重人格?

 

「誰~にも邪魔さーせーないー!!……おっと出てきた。名前は……フラウロスだ」

 

『ってことは……64番目の機体か』

 

俺はもうその頃いなかったハズだ。

 

『どんな機能を持ってたかって分かります?』

 

「任せたまえ!!ナ~ウ!イッツァショーターイム!!」

 

……整備長が順調にヤバい。

 

「出てきた!!そっちの端末に送るよ!!」

 

『お?……変形してダインスレイヴね……只でさえ威力の高いダインスレイヴを接近して撃つとか、設計者頭沸いてるんじゃないですかね』

 

「ならどう改造するんだい?」

 

『決まってるでしょう。ダインスレイヴの威力をもっと上げて機動力も上げるんですよ』

 

「ロマンがぁ!!あるねぇ!!!!」

 

『あるよぉ!!!』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あの……ヤマギさん」

「あれデイン?どうかした?」

「あのガレージの二人……」

「あぁアレ?放っておけば馬鹿みたいに性能がいいモビルスーツが出来上がるから放っておいて大丈夫だよ」

「アッハイ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『さて、先ずはバルバトスですね』

 

覚醒形態の変化や三日月さんの戦闘スタイル的に反射速度、運動性能の強化が必要だった。

 

「バルバトスの彼からの要望でテイルブレードを付けたいと言っていたよ」

 

『そうですねぇ……ならテイルブレードは【繊月】のデータを活用して造りましょうか。それにアンテナをデカくして各部のセンサー増加、足はブースター増設して……パイルバンカーも仕込みますか』

 

敵を斬る為に手が塞がるのは勿体ない。

 

一番(ゴジラ)に近い三日月さんならテイルブレードを【繊月】のように使いこなせるだろう。

 

余った両手で使えるようにメイスを色々新造してみた。

 

それと、必要な馬力に合わせて俺が第五形態に変化した事を境に生成出来るようになった(ゴジラ)リアクターを積むことにした。

 

このリアクターは通常時でさえ四個の並列可動エイハブリアクターを上回り、その上持ち主の意思に反応して出力がさらに上がる。

 

俺以外では三日月さんとバルバトスにしか使いこなせないだろうと思う。

 

昭弘のグシオンは脳が無いので多分使いこなせない……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『……そう思っていた時期が俺にもありました!』

 

後で見て気付いたんだけどグシオンの素体の脳が筋肉で補われていた件について!!

 

グシオン昭弘の影響受けすぎじゃね!?

 

マジで脳筋じゃねぇか!!

 

 

 

結果的にグシオンもGリアクターを二基積むことにした。

 

阿修羅ユニット(アスラ)は引き続き装備し、筋肉砲(マッスルキャノン)はロングバレルに変えた超筋肉砲(グレートマッスルキャノン)へと強化した。

 

機体は今まで貯めた全てのデータを元にひたすら頑丈さと動作の確実性を突き詰めていく。

 

後は武装だがグシオン時代から使い続けていたブーストハンマーとハルバードがそろそろ限界だったのでこの際に新しく、筋肉大剣(マッスルバスターソード)を作った。

 

この筋肉大剣(マッスルバスターソード)、滅茶苦茶頑丈であり、かつ非常に重い。

 

バルバトスは持ち上げられるだろうが、武器として振り回せるのはこの機体だけだろう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

フラウロスの魔改造も終わった。

 

『で、最後にコイツですか』

 

「モビルアーマーだねぇ!!」

 

『確か三日月さんの舎弟でモビルスーツに乗りたがっていた人の名前がハッシュだった気が』

 

「この機体の名前はハシュマルだったっけ」

 

俺と整備長は目線を合わせ一瞬で意志疎通を終えた。

 

『モビルアーマーを無人機から有人機に変えましょうか』

 

「モビルアーマーって存在に喧嘩売ってるねぇ!!!」

 

『やりますか!!!』

 

「ヴァ↑ーーーーハハハハァァッ!う゛ァ゛ーはははははははははァッ!ふ゛ぅ゛ん゛♡」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

倉庫の中には三機のモビルスーツと一機のモビルアーマーが鎮座していた。

 

【バルバトス・ルナクレッセント】

 

最大の特徴はテイルブレードを装備している事。

 

ルナノーヴァと比べると足が肥大化しアンテナは大型化。

 

リアクターはGリアクターを使用し各部センサーの増加に伴い反応速度はルナノーヴァの比ではない。

 

上半身はスッキリとしていて、全体で俯瞰するとまるで俺の第四形態みたいだ。

 

【グシオン・カタストロフ】

 

ディアボルスとはシルエットは変わらないものの、リアクターは全てグレートアップされ、馬力は素でディアボルスの覚醒形態に匹敵する。

 

筋肉大剣(マッスルバスターソード)超筋肉砲(グレートマッスルキャノン)を装備した破壊の化身。

 

 

超銀河(スーパーギャラクシー)流星号】

 

機体のコンセプトをそのまま俺と整備長で高めきった機体。

 

アルティメットギャラクシーキャノン一基につき一基の生体エイハブリアクターを使い、それを二基装備。

 

グシオンからのお下がりの筋肉砲(マッスルキャノン)改め銀河砲(ギャラクシーキャノン)を二挺携えている。

 

姿勢制御、機動性向上の為のブースターを各部に増設。

 

しかし、それに伴い機体制御の複雑化を招き、フラウロスの素体には脳が無いので急遽複座式に変更。

 

この辺はあの整備士(ヤマギ)なら絶対断らないだろうという読みからである。

 

 

最後に【ハシュ丸】

 

モビルアーマーの有人機化機体。

 

ビーム機能はオミットし両足のパイルバンカー機能を修理した。

 

パッと見はテイルブレードを無くしただけのハシュマルである。

 

しかし、俺と整備長である機能を追加しており……

 




【王様の椅子】もちゃんと登場しますよー!


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二頭追うものは……

(但し獲物二頭を追いかけるのはシンゴジラ)



『ふー……流石に少し疲れたかな』

 

体力は問題無いが精神的な疲れだ。

 

……まぁ、一週間もぶっ通しで改修を続けたのだから当然であるのだが。

 

整備長は途中途中で何度も急に電池が切れた様に動きがガクッと止まり、数十秒後に「continue!」と叫びながら目を覚ましたりしていた。

 

途中心配になって簡単な診察をした所、気絶した瞬間に異常な量のアドレナリンが放出され、またその寝ている数十秒間に体力が驚異的な回復を果たしている事が分かった。

 

俺は心の中で勝手にこれを【神・整備長(デンジャラスゾンビ)モード】と名付けた。

 

因みに今は改修が終わったので整備長は爆睡している。

 

「あ、シン。改修終わったの?」

 

『あ、ヤマギ。終わったよ』

 

ガレージから出ていくと丁度紫電の整備をしていたヤマギが声を掛けてきた。

 

「団長がシンの改修が終わり次第話が有るって言ってたよ」

 

『団長が?分かった、すぐ行くよ』

 

何かあったのだろうか?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『団長~!話って何ですか!』

 

すぐに鉄華団本部へ行き扉から入る。

 

ユージンや三日月さんなど主要なメンバーが勢揃いしていた。

 

「来たか、シン」

 

「シンがガレージに籠っている間に色々あってね……」

 

ビスケットが俺が居なかった間にモンタークから連絡があった事を教えてくれた。

 

「ギャラルホルンから直々に七星勲章を渡しに来るって話が来ててな」

 

『七星勲章って……あぁ三日月さんと昭弘がモビルアーマーを倒したからですか』

 

「その通りだ。ギャラルホルン内ではそいつの数で席次が決まるらしいが……」

 

ユージンの言葉を引き継いでオルガが続ける。

 

「ギャラルホルンじゃない俺らには関係ねぇ。それでも奴等がわざわざ渡しに来るって事はウチの戦力偵察やゴジラ関係で来るので間違い無いハズだ」

 

『来るのはマクギリスじゃ……無いよね……』

 

「ラスタルの手下の一人、イオク・クジャンって野郎だそうだ」

 

『クジャンって事は当主の一人か』

 

「そうだ。因みにマクギリス曰く【権力を持った無能】だそうだ」

 

『最悪の存在じゃないですか』

 

「だな」

 

その後どう対策を取るか、という事を皆で議論していく事になった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

会議が一端休憩になったタイミングで鉄華団本部の裏手にいる青い薔薇の様子を見に行く。

 

鉄華団の皆に一週間の間世話を頼んでいたのでちゃんと枯れずに青々と葉を伸ばしていた。

 

俺が近付くと葉っぱがゆらゆらと動く。

 

『久しぶり。一週間も放ったらかしてゴメンね』

 

近くの水道からホースを引っ張ってきて第五形態になって水を掛けてやる。

 

(………………!)

 

葉を振っているのは喜んでいるという意味なのだろうか。

 

(………………♪)

 

『じゃあね。明日からはちゃんと俺が世話するから』

 

(………!………♪♪)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

鉄華団がギャラルホルンのアリアンロッドから視察を受ける、という内容はテイワズにも伝わってきていた。

 

「親父、ギャラルホルンのガサ入れだ。奴等ガキ共は絶対にボロを出すハズだ。この機会にいっそギャラルホルン側に味方して……」

 

「ジャスレイ、話が有るっていうから付き合ってやったのにまたその話か」

 

「親父!目を覚ませよ!!コレが奴等を潰す絶好のチャンスでしょうが!」

 

「くどい!!さっさと俺の前から消えろ!!」

 

本気の殺意を込めて怒鳴り付けると一瞬怯んだジャスレイはそそくさと出ていった。

 

「……名瀬よ聞いてたか?」

 

マクマードの言葉に隣の部屋から名瀬が入ってくる。

 

「えぇバッチリとね。ジャスレイは必ず鉄華団にちょっかいを出すでしょうよ」

 

「只でさえラディーチェとか言う馬鹿な若造のせいでこっちの立場は弱いんだ。その上トップの一人が堂々と弓引いたんじゃ歳星を堕とされても文句は言えねぇ」

 

「鉄華団の作戦に乗っかるのが最上の選択肢ですかね」

 

マクマードの無言の頷きを見て、名瀬が退室する。

 

一人きりになったマクマードはポツリと呟いた。

 

「……ジャスレイよ、お前はゴジラの恐ろしさを何も分かっちゃいないんだ」

 



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ハシュ丸

マスコット枠に一機追加。


「……じゃあ兄貴の方も手筈通りに頼みます。では」

 

そう言い終えオルガは通信を切った。

 

「タービンズの方もこれで安心だ。タカキ、シンから連絡は来たか?」

 

「今歳星で急ピッチで作業中だそうです!」

 

タカキが答える。

 

「まぁあの二人なら間に合うだろ……最近の整備長、何かヤバいしな」

 

「あはは……確かにそうだね」

 

ユージンの意見にビスケットが賛成した。

 

「こっちはこっちでモビルスーツの訓練だ。もう始めてんのか?」

 

「あぁ、今三日月がバルバトスの試運転をしてる所だ。それとモビルアーマー」

 

「ハシュ丸か……」

 

シンの指名で初めてのモビルスーツがモビルアーマーになってしまったハッシュ。

 

シン特製のシミュレーターを1日に何十時間もこなし今日が初搭乗である。

 

「ちょっと見に行くか?」

 

ユージンが提案する。

 

「あぁ。模擬戦やるってミカが言ってたしな」

 

「……ちょっと待てオルガ!!その面子で模擬戦やるってのか!?」

 

「ヤバいんじゃないかな……」

 

 

 

『うおおぉぉぉお!!……ぐはッ!!』

 

(((そんな事なかった!!)))

 

着いた時にオルガ達が見たのは模擬戦が始まった一瞬でメイスを携えたバルバトスにのされるハシュ丸の姿だった。

 

「凄ぇなぁ……ミカは」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バルバトスが突きつけたメイスをどけるや否やハシュ丸が体を一回転させ両足を纏めて叩き付けようとする。

 

それをバルバトスは一歩引いて紙一重でかわし、頭を掴んで地面に叩き付けた。

 

『まだまだぁぁぁぁ!!!』

 

『熱くなってちゃ勝てないよ』

 

その後もバルバトスはハシュ丸の攻撃を完全に見切りカウンターでモビルアーマーを沈めていく。

 

30戦全てバルバトスが勝ち、模擬戦が終わった。

 

 

 

「ハアっハアっ……」

 

ハシュ丸のコックピットで俺は荒い息をついていた。

 

シンさんの厚意で乗せて貰ったこのモビルアーマー。

 

しかし、自分はまるで乗りこなせていない。

 

「ちくしょう……」

 

座ったまま項垂れていると、急に頭上から硬い音がする。

 

誰かがこの機体に上に居のだろうか。

 

「開けるよ」

 

三日月さんがハシュ丸の強制開放レバーを使って此方のコックピットを開けてきた。

 

「ッ!……三日月さん」

 

「落ち込んでる?」

 

「……はい。そりゃ落ち込んでますよ。シンさんから乗機もシミュレーターも貰ってスゲー練習したのにカスりもしないなんて」

 

「そっか。なら次はマサヒロ辺りとやってみるのがいいかな」

 

「……え?それってどういう……?」

 

訊き返す間もなく三日月さんはハシュ丸からバルバトスの掌へ飛び移り、コックピットへと戻ってしまう。

 

『マサヒロ、次行ける?』

 

『行けます!!』

 

 

次の相手は筋肉号グレート、グレイズがベースのハズだがシンさんが魔改造したせいで下手なガンダムフレームより強いというおかしな事になっている機体だ。

 

『昌弘・アルトランド、筋肉号グレート!行くぜ!』

 

『ハッシュ・ミディ、ハシュ丸!!うおおぉぉぉ!!!』

 

 

最初の何戦かは直ぐに負けた。

 

しかし、段々とバルバトスと比べたら遅い機体に目が慣れていく。

 

5回目の模擬戦が終わった時に自分の中で何か掴んだ気がした。

 

6回目、記憶の中の三日月さんの様に相手を攪乱させる為に機体を左右に振って近付いていく。

 

『フン!!』

 

『……ッ!!』

 

カウンターで回し蹴りが来る。しかし、バルバトスを相手にしていた経験から避ける事に成功する。

 

背後に回り込み右翼を叩き付けようとしたが、直ぐに反転した相手に防がれて一撃を喰らい負けてしまった。

 

けど……初めての防御から一連の反撃までを流れる様に繋げる事が出来た。

 

『それ。今までハッシュはこう……出だしを見て後が分かる動きしかしてなかった』

 

三日月さんの声を聞きつつ、直ぐに機体を立て直し戦いを再開する。

 

それからは模擬戦を重ねる毎に筋肉号との一回の戦闘時間が伸びていった。

 

30回目の最後の模擬戦で此方の攻撃とあちらの攻撃が同時に重なり組み合いになる。

 

直ぐにお互いを弾き飛ばし睨み合う。

 

機を伺い神経が研ぎ澄まされていくのを感じる。

 

バルバトスからの三日月さんの声が遠く離れていく。

 

『見た感じ訓練もちゃんとしてるし反応も良い。センスは有るから後は実戦でそれを磨いていけば……』

 

「そこだッ!!!」

 

筋肉号の隙を突いて機体を一回転させ両翼による連打で相手を地面に叩き付ける。

 

審判をしていたグシオンから決着を知らせるブザーが鳴った。

 

『勝者!ハシュ丸!!』

 

 

今の出来事が信じられず、暫く呆然として握っていた操縦棍から手を放し、両手を見つめる。

 

 

じわじわと実感が湧いて来て、無意識に機体の頭部を動かしバルバトスの方を見た。

 

「……!!三日月さん……!俺……!!」

 

『うん、良い感じだね』

 

「……ッ!!ありがとうございます!!」

 

三日月さんに見えていないのは知っているがコックピットの中で俺はバルバトスに乗っている三日月さんに向かって頭を下げた。

 

その瞬間コックピットに変な機械音声が鳴り始める。

 

それと同時に操縦棍のカバーが開き色々ボタンや形状が変わった新しいモノになった。

 

(!?何だ何だ何だ!?)

 

《おめでとうございます、ハッシュ・ミディ様。シミュレーターと実戦での両データから判断し【補助輪システム】を終了。当機【ハシュ丸】の全機能を開放します。シミュレーターは全機能開放状態に更新完了。ではまずAIの名前を設定して下さい》

 

「は……え!?」

 

《【蝿】はあまり推奨出来ません。設定しますか?》

 

(不味い……何か始まったぞ!?)

 

「待ってくれ、何でそもそも名前を設定しなくちゃならないんだ!?」

 

《当機【ハシュ丸】は(ゴジラ)リアクターを内臓しています。本来阿頼耶識とセットで使われますがハッシュ・ミディ様は阿頼耶識を付けておりませんので、補助制御システムとしてGリアクター自体にハシュマルのAIを搭載させています。今までではハッシュ・ミディ様の制御に満足せず暴走の可能性があった為【補助輪システム】によって停止状態にしてありましたが、今ならばその操縦に満足してハッシュ・ミディ様の手助けに回るでしょう》

 

(成る程……って暴走!?俺そんなヤバいのに乗ってたのか……)

 

いい名前が思い付かないので、外に居る三日月さん達に状況を説明していい名前がないか訊いてみた。

 

『三日月さん、何か格好いい名前ないっすか?』

 

『オルガ』

 

「いや、ミカそれはちょっとな……」

 

『昭弘さんに昌弘さんは……』

 

『『筋肉』』

 

『ですよね~……団長にビスケットさんは』

 

「スマンが咄嗟には出て来ねぇな」

 

「ゴメンね。俺もちょっと思い付かないかな」

 

『そうすか……どうしたら』

 

「オイ!ハッシュ!!副団長の俺に訊かねぇのかよ!?」

 

『あ、その……前ライドさんから副団長のネーミングセンスはアレだって話聞いた事があって……』

 

「ライドの野郎……!まぁいい。俺の考えた格好いい名前はな……」

 

溜めた後に副団長が自信たっぷりに宣言した。

 

凰華(おうか)ってのはどうだ!」

 

『おうか?……桜の方の桜花っすか?』

 

「違ぇよ!!鳳凰ってカッケぇ鳥の名前と鉄華団の華!」

 

「凰華……」

 

《了解しました。AI名【凰華(オウカ)】登録中……完了しました。では音声ガイドを終了します》

 

「あ゛」

 

「どうよ!ハッシュ!!」

 

『副団長さん……その名前になっちゃいました』

 

「「「ええええぇぇぇぇええ!!??」」」

 

(凰華……凰華かぁ……まぁ悪くはないか……?)

 

外野が騒ぐのを他所に一人考えているとコックピットの画面が上へ上がっていき、中から輝く何かがせり上がってくる。

 

「これは……?」

 

そのまま見ているとその光輝く何かは立方体の形をしているのが分かった。

 

その形を認めた次の瞬間その物体が駆動音を立てながら変形していく。

 

(まさか……コイツがAI?)

 

その予想が当たったようで、その物体は白銀の胴体に羽の一部と爪が朱鷺色をした鳥の姿になっていた。

 

「お、凰華(おうか)?」

 

『Gyaaaa!!』♪

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「という訳で俺の機体のAIだそうです。Gリアクターが変形して機械の鳥に……鷹ってのがモチーフだとか」

 

「ふーん。可愛いね」

 

「何でそう毎回毎回直ぐ受け入れられるんだよ三日月は……」

 

全然動じない三日月さんに副団長がツッコむ。

 

「で、名前は……」

 

「【凰華(おうか)】!!俺が考えたんだぜ!!」

 

「凰華になりました」

 

『Gya!』♪

 

嬉しそうに鳴いて俺の頭に止まってくる。

 

う~ん、可愛い。

 

「それとシンさんがハシュ丸に掛けてきたリミッターが取れたそうで」

 

「……それでこの状況って事か」

 

団長が呆れた表情で演習場の周りにびっしりと集結した無人随伴機【プルーマ】を見渡す。

 

「最初何事かと思ったよ」

 

ビスケットさんが呟いた。

 

……俺も全く同じ気持ちっす。

 

 




AIの名前は凰華になりました。

虚空さん、素晴らしい名前をありがとうございました。


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たわけが行く!

(来るな!!)



「ではクジャン公、鉄華団の戦力調査を頼むぞ」

 

「お任せを!ラスタル様!!」

 

そう言ってイオク様は勢いよく出ていった。

 

『彼に任せて本当にいいのか?』

 

「いや、端から奴の調査能力は期待していない。しかし何かをしようとすればするほど余計に被害を撒き散らすのが彼の欠点であり長所だ。私はそっちには期待しているよ」

 

『成る程、それが目的か』

 

ヴィダール、ラスタル様に反感を持つ男。

 

……私も私だ。何故私は彼がラスタル様にとって信頼できる人物では無いことを伝えないのか。

 

「ジュリエッタ、先程から黙ったままだがどうした?」

 

急に話を振られたので咄嗟に話をでっち上げる。

 

「いえ、以前鉄華団と戦ったときに相手にすらされなかった事を思い出していて……」

 

「そうか……しかし余り気にするな。奴等は阿頼耶識を使っている。人じゃない」

 

『人じゃない……か。姿は人間だが?』

 

「ゴジラの遺伝子を自らの身体に埋め込んでいるんだぞ?いわば小型のゴジラだ」

 

今までは何とも思わなかったのに何故かラスタル様の言葉を聞くのが嫌になってくる。

 

「ラスタル様、では戦力調査の方は私が引き受けます」

 

ではこれで、と言って扉へ向かう。

 

歩いている背後でヴィダールもラスタル様に別れの言葉を告げているのが聞こえてきた。

 

 

 

(………………)

 

廊下を少し歩いた所で立ち止まりヴィダールが歩いてくるのを待つ。

 

『おや、どうした?』

 

「別に。格納庫までちょっと話しませんか」

 

暫く歩いた所でヴィダールから話し掛けてきた。

 

『君は俺がラスタルを良く思っていない事をラスタルに伝えていない様だな』

 

少しドキッとしたが平常を装って返す。

 

「……それが何か?特に報告する事では無い、それだけの事です」

 

フム、と呟いてヴィダールが止まったので此方も歩くのを止める。

 

『阿頼耶識を付ける事は化け物に成るのとイコールだと君は思うか?』

 

「知りません。それを決めるのはラスタルさ……」

 

『君はどう考える?』

 

「……阿頼耶識を付けていようといまいと……人は人です」

 

その私の言葉にヴィダールはすこし間をおいて反応した。

 

『そうだな。……君は凄い。俺はその答えを得るのに親友から目を覚まさせられる必要があったというのに』

 

「それは……前に言っていた貴方の罪の話ですか?」

 

ヴィダールは何も言わなかったが、その沈黙が答えなのだろう。

 

「貴方は……」

 

私がいいかけた言葉を遮りヴィダールが話し始める。

 

『ラスタルに交渉して俺も火星へ行く事になった。いざという時にイオクを止める為にな』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やあ!鉄華団の諸君!民間組織の一つでありながらモビルアーマーを討ち取るとはこのイオク・クジャン自ら……ん?誰も居ないではないか」

 

火星のシャトル発着場から降りたイオクはシャトルから出るや否や盛大に自己紹介をし始めた。

 

『クジャン公、特に出迎えはしないと前もって言われている』

 

「何!?何と無礼な!!」

 

憤慨するイオクを側近の人達が宥めている間に私とヴィダールでタクシーの手配をした。

 

それからは何かと騒ぐイオクとそれを宥める側近達。

 

そして観光気分で楽しんでいる私達の二人と見事に対照的に別れて目的地の鉄華団本部へと向かっていった。

 

 

そして漸く鉄華団本部の近くにあるクリュセの街へと着く。

 

「ここがクリュセですか」

 

『あぁ、嘗てガンダムフレームが造られていた土地だ』

 

ふと街の中心にモビルスーツの彫刻が有ることに気づく。

 

「あれは……?」

 

『ガンダムフレーム一号機、バエルだな』

 

「お、そっちの仮面の兄ちゃんは良く知ってるじゃないか!」

 

近くのハンバーガーの屋台の人が声を掛けてきた。

 

何処から来たんだい?地球からだ。へーそりゃまた遠い所から……といったやり取りがあって、良くバエルの名前を知ってるな、という話に移った。

 

『少し資料を読んだ事があってな』

 

「へぇ、そうかいそうかい!でもその資料って奴にそのバエルの別名は載っていたかい?」

 

『別名?知らないが……』

 

何故私を見てくるのですかヴィダール。

 

「私も知りません」

 

クリュセの守護神(・・・・・・・・)ってんだよ!300年前に火星にやってきたヤバい敵共をたった一人でやっつけた英雄さ」

 

『英雄?アグニカ・カイエルの事ではないのか?』

 

「アグニカってのはその機体を受け継いだ人さ。地球ではそっちが有名かもしれんが火星ではクリュセの守護神の方が有名だな」

 

『そうなのか』

 

このまま話が長引きそうだったので話を変えようと質問する。

 

「私達は鉄華団本部を目指しているのですが、いい行き方はありますか?」

 

「鉄華団本部かい?こっからずっと荒野だから車を借りるのが一番だろうね。鉄華団に会いに行くならついでにクリュセの守護神に会えるんじゃないかな」

 

「……?300年前の人物ではないのですか?」

 

『…………』

 

「今はあの子供達の守護神をやってるよ。まぁ会えば分かるさ」

 

「会えば分かる……」

 

何となくその言葉に含みを感じていると店主が手を動かしながら言葉を続けた。

 

「子供達もいい子ばっかりだ。会ったらたまにはウチにハンバーガー食べに来いと伝えてやってくれよ」

 

『ご主人、情報をありがとう。ではそのハンバーガーを二人分頼む』

 

「お、毎度あり!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『鉄華団の子供達は愛されているようだな』

 

「何で分かるのですか?」

 

『あの店主の目を見れば分かるさ』

 

「そういうものですか。……所で仮面をつけているのにどうやってハンバーガーを食べる気です?」

 

『知らなかったのか?この仮面は口の所だけ開くんだよ』

 

「…………ソウデスカ」

 




一方たわけはMrビーンばりの騒ぎを起こし、部下の人が奔走する羽目になっていました。


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たわけの機転

本人的には華麗と思っているそうで。



「来たか」

 

遠くでライドが俺を呼んでる声がする。

 

「シンと整備長の仕事も終わって今は潜入中と……後はイオクってのがシンの予想以上の阿保ならいいんだが……」

 

「団長!イオクってのが来ました!」

 

ライドがドアを開けるや否や俺に報告してくる。

 

「分かった。今行く」

 

椅子に掛けておいた上着を手に取りドアへと向かう。

 

「さて……大勝負の始まりだ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

出て来た鉄華団団長とイオク様が握手をした後、イオク様が話し始めた。

 

「貴方が鉄華団団長のオルガ・イツカ殿か!会えて光栄だ!私はイオク・クジャン、セブンスターズのクジャン家の当主をつとめている」

 

「これは挨拶どうも。ようこそ鉄華団へ」

 

暫くは相手を伺うような会話が続く。

 

そこでタイミングを見計らい私は七星勲章の授与へ話を持っていった。

 

「私達ギャラルホルンがここへ来たのは貴殿の鉄華団がモビルアーマーを討ち取った事に対する御礼としきたりに沿い七星勲章の授与を……」

 

「待てジュリエッタ!確かに私達は七星勲章を授与する為にこんな田舎の火星まで足を伸ばした。しかし!世界の管理者として本当にモビルアーマーを討ち取ったのか証拠を確認する必要がある!」

 

「ちょ……!イオク様それは失礼ですよ!」

 

本人の居る前で疑ってるだの火星を貶める発言をするなんて正気なのですか!?

 

「ははは、まあそう仰るのも無理はない。いいでしょう案内しますよ」

 

幸い団長の方は優しいらしく聞いても怒ったりしなかった。

 

それどころか案内までしてくれるらしい。

 

席を立って私、ヴィダール、イオク様の三人で建物の通路を歩いていく。

 

(どうだジュリエッタ!私の華麗な機転は!)

 

イオクさ……イオクが小声で話し掛けてくるが全て無視してヴィダールを盾にする為に隣へ移動する。

 

「はぁ…………」

 

『君も大変だな』

 

ヴィダールが話し掛けてくる。

 

「……なら少しは手伝って下さい」

 

『承知した』

 

 

 

 

そしてガレージへと到着する。

 

目の前にボロボロになったモビルアーマーが鎮座していた。

 

「……!モビルスーツの何倍も……!」

 

「おお!確かにこれは正真正銘モビルアーマーだ!」

 

どうやって倒したのだ?とイオクが団長さんに質問して話始めた中、後ろから何か聞こえてきた。

 

『Gyaaaa!!』

 

「よーしよし。シミュレーター終わったらシンさんの青い薔薇に水やりに行こうなー」

 

『Gya!Gya!!』

 

その聞き慣れない音に振り向くと少年と……機械の鳥?が戯れていた。

 

『あれは……?』

 

隣のヴィダールも驚いた様子だ。

 

「そのマスクで翻訳出来ませんかヴィダール?」

 

『済まないが犬と猫にしか対応してないんだ……』

 

「……むしろ犬猫に対応してる事に驚きですよ」

 

誰がそのマスクを作ったのだろう?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「へっくしゅ!!」

 

「どうした?新入り?」

 

「いやー何か噂話されてる気がしまして」

 

「そうか?体調管理はしっかりしとけよー。クジャン公の艦のオペレーターになったんだからな」

 

「はっはっは!分かっていますよ!」

 

その笑っている黒髪の少女は紫色(・・)に光る瞳を細めて返答した。

 

「大丈夫ですって。万事オーケーですよ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ではそのモビルアーマーを倒したモビルスーツを見せて頂きたいのだが……」

 

「そう来ると思ってましたよ。地下の方です。こっちへ」

 

何かどんどんイオクの要求がエスカレートしているような気がする。

 

「こんな堂々とした戦力調査があっていいのですかね……」

 

『まぁ、彼は役目を果たそうと頑張っているだけだ』

 

そして団長さんについていき、地下のモビルスーツ倉庫へと到着する。

 

「……!あれは……」

 

夜明けの地平線団の件で歯牙にも掛けられなかったモビルスーツ。

 

見れば各所があの時と変わっていて強化されているのが分かる。

 

「おお!全部で何機なんだ?」

 

「そこまで教えるのは流石にですね……」

 

「そうか……済まなかったな」

 

団長さんからイオクが離れてひーふーみーと数えだしたので余計な事をしないように追いかける。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ガレージ内を見渡していた俺はとんでもないモノを見つけてしまった。

 

『団長殿、少し耳を』

 

「ん?」

 

慌てて近くにいたオルガ・イツカへと声を掛ける。

 

(このガンダムの背中の装備!これはダインスレイヴじゃないのか!?イオクは馬鹿だから気付いていないが、ラスタルが気付いたら難癖をつけられるぞ!?)

 

(それはシンが造ったギャラクシーキャノンだから違うな)

 

(あー……そうなのか?)

 

それでいいんだろうか?まぁいいのかな……?

 

(アンタがマクギリスの協力者か?)

 

(そうだ。今はヴィダールと呼んでくれ)

 

(ならヴィダール、マクギリスに一つ伝言だ。これからイオクの野郎が何をやらかしても放って置いてくれ)

 

(それは……本当にいいのか?)

 

(ああ。この後の戦いの為に必要なんだよ)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

最初の部屋に戻ってきた。

 

「ではオルガ・イツカ殿。貴殿に七星勲章を授与する」

 

「光栄です」

 

ガレージでは転んで重要そうなケーブルを抜きかけ、立入禁止の場所では何故か入ろうとするイオクを何とか止め、無事に七星勲章も渡す事が出来たと思ったその矢先。

 

またイオクが爆弾を投下しやがった。

 

「ではガンダムフレームの返却も了承して頂こう」

 

「は?」

 

何言ってんですかこの人は。

 

『……は?何を言ってるんだクジャン公?』

 

ヴィダールも当惑した声音だ。

 

「何を言っているも何も、先程の話よりモビルアーマーを討ち取ったのはモビルスーツ、そのモビルスーツは元々ギャラルホルンが製造したガンダムフレームだ。ならばモビルアーマーを倒すという大役を果たした今、持ち主の元へ戻すべきだろう」

 

「イオク様!そんな300年前の所有権がまかり通る訳無いでしょう!!大体探しもせず放置していたモノを他の探した人から取り上げるような真似……!」

 

『オルガ殿。どうするのだ?』

 

「ちょっと!ヴィダール貴方も止めて下さいよ!!」

 

 

 

「クク……いいでしょう。確かにガンダムフレームは元々貴殿方ギャラルホルンの所有物だ」

 

 

 

……団長さん今笑っていた?……まさか。

 

「機体の外装は他から流用したり新造したものなので当てにはなりません。なのでエイハブリアクターの波長でそちらのデータベースと一致するモノは持っていって貰って構いませんよ」

 

「おお!貴方は実に話が分かる御方だ!!では早速……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

イオクと団長さんは部下の人を連れて地下のガレージへ行き、私達は同じ部屋で二人の帰りを待っていた。

 

「こんな横暴……!許される訳が……!」

 

そんな怒りに震えていた私にヴィダールが声を掛けてきた。

 

『安心しろ、ジュリエッタ。団長殿には何か考えがあるようだった』

 

「考えと言ったって……あれは紛れもないガンダムフレームです。エイハブウェーブの固有の波長は誤魔化せません」

 

『確かにな。しかし、イオクは知らん。悪魔(ガンダム)悪魔(ガンダム)たらしめているのはエイハブリアクターの方では無い事を』

 

「……それはどういう……?」

 

ヴィダールに尋ねようとした所、イオクが不機嫌そうな顔で帰って来た。

 

「……帰るぞジュリエッタ、ヴィダール」

 

「?どうしたんです?イオク様。不機嫌そうな顔して」

 

「どうもこうもない!回収できた機体が筋肉何とかというグレイズにしか見えん機体だけだったからだ!!!」

 

わめき散らすイオクを尻目にヴィダールがこっそり囁いてきた。

 

『な?言った通りだろ?』

 




筋肉号グレートのエイハブリアクターはバルバトスに元々使われていたモノでしたので。

イオクの部下の人達はこっそり夜明けの地平線団戦でのエイハブウェーブも試してみましたが、バルバトスにグシオンも全く違う反応で泣く泣く回収を断念しました。

盗人猛々しいクジャン公残念!!


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たわけの逆襲

第四形態ズ。

【挿絵表示】




鉄華団本部からまたクリュセを経由してシャトルの発着場を目指す。

 

「そういえば、クリュセの守護神が何なのかは未だに分からずじまいですね」

 

『そうだな。まぁ俺は正体を知っているが』

 

「そうですか……って知ってるのですか!?」

 

『ああ。俺の予想が正しければだがな』

 

なら教えて下さい、と言おうとする前にヴィダールが先に話し始める。

 

『アーブラウで最後に確認されたあの漆黒の機体は鉄華団の中には居なかった』

 

「単独で大気圏離脱をしたあの機体ですね」

 

今思い返してもあの機体は何もかも異常だった。

 

『ラスタルはあの機体が鉄華団に有ると考えていたようだが……』

 

「それとあの機体とゴジラを関連付けて考えていらっしゃるようでした」

 

『関連付けて、というよりゴジラそのものだと考えているのだろうな』

 

「……?余りに姿が違いすぎませんか?」

 

『ラスタルは君にゴジラについて何か言っていたか?』

 

ラスタル様からは特には何も聞いていない。

 

「いいえ?」

 

『そうか。……ジュリエッタ、これから話す事は機密だぞ』

 

「え?何です何です?」

 

ヴィダールの出す内緒話じみた雰囲気に釣られて顔を寄せて小声になる。

 

『300年前から今に至る【ゴジラ】の話だ』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

火星上空に待たせてあったアリアンロッドの艦隊へと帰還する。

 

道中やシャトルの中でずっとヴィダールから【ゴジラ】の話を聞いていた。

 

例えるならそれを纏めただけで映画が何本も作れそうな話だった。

 

「【ゴジラ】……」

 

話を聞いて思ったのは彼、ゴジラは一概な悪とは言えない。

 

寧ろ人類の被害者で正当な復讐の権利を持つとも言える。

 

ラスタル様はそれを一方的に悪と断じていた。

 

確かにそれは人類の味方としてのギャラルホルンならば正しいのだろう。

 

しかし、ヴィダールに指摘されたその人類の味方の地位を保持する為に行った非道の数々。

 

今の私には一つの疑念が渦巻いていた。

 

「ギャラルホルンは本当に正義なのですか……?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「今帰ったぞ……留守の間ご苦労だった」

 

ブリッジにイオク様が帰還する。

 

「お疲れ様です。イオク様」

 

「あぁ……鉄華団で何か悪い噂はないか?」

 

唐突だが何時もの事だ。

 

「何か火星でおありになったのですか?」

 

「当たり前だ!ラスタル様への手土産に奴等からガンダムフレームを全て取り上げてやろうと思ったのに結果はグレイズもどき一機しか徴収出来ないとは!!」

 

そこでイオク様はブリッジの壁に拳を叩き付けて怒りを顕にした。

 

「この侮辱、必ずや返してやるぞ……鉄華団!」

 

「ではイオクサマ、どのような悪い噂を集めましょうか?」

 

私の後ろから少女の声が問い掛けてきた。

 

「お前は……?見ない顔だな。新入りか?」

 

「えぇそうです。彼女は急遽体調を崩したオペレーターの代わりを務めていまして……」

 

新入りについてイオク様に説明する。

 

「ほう、元は整備士……名は何と言う?」

 

「シ……ハサン・サッバーハです!」

 

「非常に優秀でして、前のオペレーターの三人分以上の働きをしております」

 

「それは凄いな!だが無理しすぎるのは身体に毒だ。適度に休めよ」

 

「は~い!」

 

イマイチ礼儀に欠けているのが気になるがまぁ整備士上がりなら最初はしょうがないだろう。

 

そう考えていると彼女の腕に着けている端末からアラームが鳴った。

 

「おっと、では交代の時間なので私はこれで失礼しま~す。ヴィダールさんが帰ってきたのでガンダムフレームの整備を再開するので」

 

そう言い終わるや直ぐに彼女は荷物を纏めて出ていった。

 

何だか嵐みたいだというか……。

 

……まずは鉄華団の他の組織との繋りについて調べるとしようか。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(あっぶねぇ!危うく本名言い掛けた!!)

 

俺の名前はハサン・サッバーハではなく勿論シン。

 

団長達と作戦を練っている時に潜入するなら何か偽名を付けようという話になり、人間サイドの俺の朧気な記憶が『暗殺者(アサシン)なら【ハサン・サッバーハ】だろ!』だと叫んでいたのでそれに決定したのである。

 

それと女の子の姿になっている理由は不明。

 

ガンダムフレームの産みの親だの鉄華団の皆に感じてる家族愛的な感情が作用してこうなったっぽい。

 

「確か研究の片手間に昔流行ってたゲームをネットから発掘してたっけ……」

 

俺が発掘したのがfateやマイティブラザーズでアグニカがアーマードコアやヘキサギアだのロボット系を発掘してたハズだ。

 

他の研究者もデンジャラスゾンビなんかのゾンビ物や爆走バイク、ギリギリチャンバラなんか見つけてお互い教え合っていた。

 

「……その辺の記憶は思い出せて来たけどなぁ」

 

肝心のゴジラになった瞬間は未だに思い出せていない。

 

バエルに乗り込んだ後何があったんだっけ?

 

「おっと失礼」

 

記憶を思い出そうとしていると、廊下の曲がり角で金髪の小柄な女の子とぶつかりかけた。

 

俺も俺で今は第四形態が嘘の様に小柄だけど。

 

「あ、いえ。少し考え事をしていて……すみません」

 

「いえいえこちらこそ……つかぬことをお伺いしますがヴィダールさんがどちらに居るか知ってます?」

 

「ヴィダールですか?」

 

何故か少女が目を丸くして驚く。

 

「……知り合いなのですか?」

 

首を傾けて訊いてくる。

 

「知り合いというか、彼のモビルスーツの整備を担当してます、ハサンと申します」

 

「あぁあの未だにフレームだけの……」

 

「そうなんですよね~。まぁ俺が三日で完成させてみせますよ」

 

「彼は多分格納庫ですから……案内しましょうか?」

 

「あ、ありがとーございます」

 

レーダーで場所はもう把握したのだが、先程の「ギャラルホルンは本当に正義なのですか……?」という言葉は少し気になる。

 

なので道案内をして貰う事にした。

 




放射線流(ザバーニーヤ)

ハサンですので一応。


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闇に潜むは我らが得手

潜入中……。
魔改造開始……。


「うわぁ……」

 

格納庫に到着して開口一番にその声が漏れた。

 

(ダインスレイヴ持ってきてたのかよコイツら……)

 

レーダーで確認したところ奥の倉庫に二十基のダインスレイヴが隠してあった。

 

(少しイオクを嘗めすぎてた。勲章授与でダインスレイヴ持参とか歩く核弾頭じゃねーか!)

 

「……?どうかしましたか?」

 

ジュリエッタが怪訝な顔をして声を掛けてくるが何でもないと返す。

 

「え~と、ガエ……ヴィダールさんはどこでしょうね」

 

「ヴィダールは多分……」

 

「あ、居ましたね。行きましょう」

 

「ちょっ!……見つけるの早いです」

 

実はレーダーで把握していただけなのだが「たまたまですよ。あははは」と笑って誤魔化しておいた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ドーモ。ヴィダール=サン」

 

『あぁ……何だその喋り方は?』

 

「300年前に地球で流行ったネタですよ」

 

「?……ハサンさんは随分と昔の事に詳しいのですね」

 

『【ハサン】か。よろしく頼む』

 

「えぇ。三日で仕上げてやりますよヴィダール。機体の要望は何かありますか?」

 

『そうだな……』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

さて、格納庫から全員居なくなった所で俺の任務開始だ。

 

ここに潜入した最大の目的はイオクの周りを調べて失脚へ向かわせる為の証拠集めとマクギリスの仲間であるガエリオの乗機、ガンダムキマリスの改修である。

 

監視カメラにはダミーの映像を流しつつ重力制御をフルに活用して機体に魔改造を施していく。

 

ガエリオは阿頼耶識を付けていないのでそれに合わせた改造、ハッシュのハシュ丸の様な機体にするつもりだ。

 

詰まる所またAIサポート機体である。

 

というか阿頼耶識にただの人間が匹敵するには機械と共生するしか勝ち目は無い。

 

サポートAIの名前は【アザー】。

 

八本足の蜘蛛型ロボットだ。超小型生体式リアクターで動いているので飛んで移動出来、人型にも変形出来るらしい。

 

……思いっきり昔読んだアメコミに影響されてるなぁ。

 

体の各部分に姿勢制御スラスターを付けたが、今以上にいいカメラアイにしないと早さに目が追い付かない気がする。

 

なので、前方認識の性能を上げる為に適当に倉庫をひっくり返してみた所、グレイズアインの残骸が出て来た。

 

ジャンクパーツとして使うつもりだったのだろうか。

 

せっかくなので頭部の高性能なカメラアイを拝借して割れたレンズを交換し、キマリスの左のカメラアイにする。

 

機体は装甲を青色に塗り、頭部のアンテナはバルバトスと同じく金色で塗装してみた。

 

キマリスの売りである脚部のブースターはゴジラ印のより性能のいいものに取り替え常時剥き出しになるブースターを左右に二個づつ増設した。

 

背中も元々あった可動式のブースターを更に大型化して機動力を底上げする。

 

メイン武器のランスはある隠し機能を付けた上で生半可な攻撃では曲がらない物を製造した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【キマリス・オーディン】

 

外見は原作と同じガンダムヴィダールに近いものの、頭部の左のカメラアイはグレイズアインのものが無理矢理埋め込まれていて異形感を上げている。

 

脚部や背中にはブースターがこれでもかと増設され一期のブースターパックを背中に付けた素のキマリスを遥かに凌駕する。

 

腰にはキマリストルーパーから続投の武器を支えるサブアームがついており、武器はある隠し機能付きの巨大ランス。レアアロイ鉱で出来ており非常に頑丈。

 

操縦が複雑化した分をサポートAIの【アザー】が補っているのでハッシュと凰華よろしくお互いに信頼出来るレベルになった暁には原作のキマリスヴィダールを軽く一蹴する強さを発揮するであろう。




マクギリス家の模様、フェンリルを倒すヴィダールからフェンリルに飲み込まれるオーディンへ。

仲間の機体になったというのが分かりやすいかなと。


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アザー

\スパイダーマンのテーマ/
テーテテン テーテテーン テーテテテテテ テーテテン



「はい、という訳でこれがサポートAI。仲良くするといいことあるよ」

 

『キマリスの面影が完全にないんだが……』 

 

[ジゴクカラノシシャ!スパイダーマッ‼]テッテレー

 

蜘蛛形態から変形したアザーが変なポーズをとりながらヴィダールの手の上で動き回っている。

 

『喋るのか……』

 

[ワタシコソガ、ヨリスグレタスパイダーマン。スーペリアトヨンデモラオウ]

 

「喋ってますね」

 

若干性格がおかしい気がする。

 

[フタリキリノトキハ、オットートヨンデクレ]

 

『……オットー?』

 

[ナンツッテ!オレサマチャンガアザーダヨ、ヨロシクナヴィダール]

 

「何というか……AIなのに随分とハチャメチャな…… 」

 

ジュリエッタも驚いた目でアザーを見てくる。

 

……うんまぁ驚くよね。ってか何故スパイダーバースのネタを知っている。

 

「アザー、何でそのネタ知ってるんだ?」

 

[グレートウェブノオカゲサ、マスター]

 

『グレートウェブ?』

 

偉大なる蜘蛛の糸(グレートウェブ)……ってインターネットの事じゃねーか!」

 

その後詳しく訊いてみた所、300年前ネットに違法にアップロードされてた壊れかけのデータを暇なので修復して読んでいたとか。

 

[コノスパイダーマンッテノガオレノモトネタナンダロ?]

 

「うんまぁ……何かお前他のAIと違うよな」

 

[ハッハッハ、オレハシンアイナルリンジンダガ、ショウタイハフメイダゼ、マスター]

 

……ん?そういえば、俺コイツをどのタイミングで作ったんだっけ?

 

……あれ?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

キマリス・オーディンの整備も終わり久し振りにブリッジへ戻るとやけに慌ただしくなっていた。

 

「何かあったんですか?」

 

「おぉハサン、今呼び出す所だった丁度いい」

 

ハイハイと応対しつつ、イオクが部下に話している命令を盗み聞きすると、どうやらタービンズを潰しに行くらしい。

 

どうやったらその発想になるんだ……?

 

「ではこのハサン、只今よりオペレーターに復帰しますね」

 

取り敢えずイオクの補佐の人と話を切り上げる。

 

パソコンのモニターに向き合い、この数日で何があったのかログを見る。

 

 

……

 

…………

 

………………えぇ(困惑)

 

 

どうやら鉄華団に対する制裁を模索している最中にテイワズの所のジャスレイってのから鉄華団を共闘して潰したいという申し出があったみたいだ。

 

ジャスレイはイオクを上手いこと言いくるめてまずタービンズに矛先を向けさせた。

 

ジャスレイの手引きでタービンズが普段使っている宇宙港にイオクの艦が入ってそこで違法な武器ダインスレイヴが見つかった事にするらしい。

 

難癖だが流星号関連でダインスレイヴを扱った事があるのでこちらとしては少し弱い。

 

(どうすっかな……団長に連絡しとくか)

 

さらっと暗号を掛けて鉄華団本部へとメールを送る。

 

(まさか筋肉号を送ってきたのもこれ見越してかな?そうだとしたら団長流石!)

 

「では諸君!我々はこれからタービンズに制裁を下しに行く!!出発だ!!」

 

それに答えて声を上げる部下の人達。

 

その大声の中俺は一人静かに状況を考察していた。

 

(部下の人は何も知らないっぽいな……盲目的過ぎるだろ……)

 

猪突猛進の頭イオクなトップとそれにただ従うだけの優秀な部下達。

 

(マクギリスの言ってた『権力を持った無能』そのものじゃねーか……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

[ジャアヴィダール、サッソクシミュレーターデレンシュウハジメテクレ]

 

『あぁ分かった』

 

[ジュリエッタノネーチャンモスコシマッテナ]

 

そう言い終えるとアザーは腕から蜘蛛の糸みたいなのを使ってモビルスーツのジャンクパーツの山へと飛んでいった。

 

「あ、ヴィダール。シミュレーター使うなら私と模擬戦しませんか?」

 

『いいぞ。初めての機体だから少し練習してからだが』

 

そう言っているとジャンクパーツの山が弾けた。

 

耳障りな金属音が響き渡る。

 

「!?」

 

『……何が爆発したんだ?』

 

おそるおそる二人で見に行くと……

 

《うっし……k変身完了だな!よぉお二人さん!!》

 

等身大になったアザー?がいた。

 

「『……は?』」

 

カラーリングは先程までの銀一色からメタルレッドとメタルブルーのドきついものになっていて、体の表面には蜘蛛の巣のような模様が描かれている。

300年前の人がいたら皆口を揃えてスパイダーマンじゃん!と言うであろう容姿になったアザーだった。

 

《何呆けてんだよ、さっさとシミュレーター始めんぞ!》

 

(ヴィダールヴィダール!!私訳がわかりません!!)

 

(俺もだよ!!あれホントにただのAIなのか!?)

 




アザーは何者でしょうか。

割りとエンディングに関わってきます。


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タービンズ壊滅

……に見えるだけ。




団長からの連絡で歳星で整備長と作っておいた囮用のダミーハンマーヘッドをちゃんと向かわせたらしい。

 

(ジャスレイとかテイワズの俺達を良く思っていない連中とやり合う時用に作っていたのがまさかここで役立つとはな……)

 

あの後はちゃんとオペレーターとして仕事をし、目標宙域に無事に艦隊を到着させる。

 

今俺はイオクの指示でグレイズにダインスレイヴを装着する為に再びガレージへと向かっている。

 

「ねぇねぇアンタなんだって?あのヴィダールのモビルスーツを整備したの」

 

「そーですよ」

 

「何でアタシは関われなかったのかな!?あのガンダムフレームなのに!ガンダムフレームなのに!!」

 

「さあ?」

 

……それとずっとガレージから追い出していたヤマジンとかいう女整備士に絡まれていた。

 

「というか何でアタシがいきなり整備主任から外されるわけ!?」

 

「知りませんよ」

 

まぁ俺がデータを改竄したのが理由なんだが。

 

「キチンと仕事はやったので見といて下さいよ」

 

「分かったわ!!あとそれと……」

 

ひたすら五月蝿いので適当にスルーする。

 

ヤマジンの話は置いといて考えるのはアザーの事だ。

 

(アイツは一体何なんだ?明らかにハシュマルなんかのAIとは違うし……俺が無意識に作った……?うーん……)

 

考えてもどうにも答えが見つからない。

 

(アザー……お前は誰だ?)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《俺の中の俺~♪なんつってね!!よぉシn!アブネエ……ハサン!!》

 

ガレージに入るとアザーがアマゾンオメガ(・・・・・・・)になっていた。

 

「………………は?」

 

ポカーンとしているとキマリスのコクピットからヴィダールが出て来た。

 

『なぁ……ハサン、本当に何なんだコイツは』

 

何も言えずに呆然としていると向こうからジュリエッタが駆けてきた。

 

「ヴィダール!訓練が終わったならこれ観ませんか!」

 

手に持った端末を指差す。

 

覗いてみると仮面ライダー剣だった。

 

「……何でそんな昔のが……?」

 

《俺がウェブで拾ってきたんだよ》

 

アザーが説明してくる。

 

『むっ……では俺はこれで』

 

ジュリエッタが俺も誘ってきたが仕事があるので丁重に断る。

 

《おっと待ってくれよ!俺も久し振りに観たい!》

 

そう言ってアザーも向こうへ歩いていった。

 

……そうして三人でガヤガヤとモニターを囲んで仮面ライダー剣を観始めた。

 

 

「………………え?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(はっはっは、まぁそういう反応になるよな~)

 

仮面ライダーを見ながらアザーは一人ごちる。

 

(大いなる力には大いなる責任が伴う(スパイダーマン)お前は誰だ(アマゾンオメガ)か。分かりやすいねぇ……まったく素直な娘だ)

 

首を傾げながらダインスレイヴをグレイズに装備させる作業に向かうシンを眺める。

 

(次はマイティブラザーズXXかな?)

 

俺の存在の意味を知ったらそうなるに違いない。

 

後ろを振り向きキマリス・オーディンを見上げる。

 

(……お前がガンダムフレームを無駄に高性能にするのはその不安の大きさの現れだ。やっと見つけた自分の仲間、それを失うって事のな)

 

(大いなる力には大いなる責任が伴う。だけど大いなる責任が伴うってのは何も力を手にした者は必ず大切なモノを失うって訳じゃないんだぜ?……いいじゃねぇかハッピーエンド)

 

(お前の家族(ヒト)になりたいって願いだって叶えてもいいんじゃあねぇか?)

 

 

 

 

黒幕じみた思考を続けるアザー。

 

その思考を刺すようにテレビからオンドゥルルラギッタンディスカー!?と聴こえてくる。

 

(300年振りに聴いてもオンドゥルにしか聴こえねぇ……w)

 

ちゃっかり楽しんでいた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後の俺の行動は完全に無意識だった。

 

自分を遠くから眺めているような気分だ。

 

ヴィダールとジュリエッタのイオクを責める声が聞こえた。

 

イオクが停戦信号や降伏信号を無視しダミーのハンマーヘッドをダインスレイヴで沈めるのも、勿論艦内のカメラや俺自身がちゃんと記録を取っていたがぼーっとしている内に過ぎていった。

 

(武装していない艦を降伏信号を黙殺して墜としたのは決定的な証拠だ。……筋肉号使ってずらかるか……)

 

データを書き換えヤマジンを整備主任へと戻す。

 

艦隊が近くのコロニーを通りすがった時を見計らいガレージへと侵入する。

 

《よっ!鉄華団に帰るのか》

 

暗がりからアザーの声がする。

 

振り向かずにコックピットに入り黙々と筋肉号のシステムを立ち上げていく。

 

「じゃあな、アザー」

 

《ああサヨナラだ。俺だって明るく振る舞ってるが心に穴が空いた気分なんだぜ?》

 

「フフッ……そうかよ」

 

《まぁお前には鉄華団(家族)が居るから問題ないだろうよ》

 

「……お前は……一体何者なんだ?」

 

《お前にとっての他者(アザー)さ。それ以上でもそれ以下でもない》

 

「……良く分からん」

 

《まぁいずれ分かるさ、いずれな》

 

 

 




アザーの伏線は張ってあったので探してみると面白いかもしれません。


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三日月さん

今回は閑話、次回からまた話が動きます。


火星へ帰る途中、イオクがダインスレイヴをぶっ放した宙域に立ち寄った。

 

(あれが偽装したハンマーヘッドか)

 

見れば船体には何十もの穴が空いていた。

 

(……ん?俺が知ってるダインスレイヴの威力なら艦に突き刺さるだけのハズなんだが……?)

 

艦を回り込み検分すると反対側から突き抜けかけて漸く止まっていた。

 

(マジか。俺が知ってる奴より威力上がってるじゃねぇかよ)

 

ダインスレイヴ、俺を仕留める為に作られた武器。奴等はそれをさらに改良している。

 

(そこまでして俺を殺したいのか、ギャラルホルンは……)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

筋肉号を駆り漸く火星の上空に到着する。

 

俺一人ならさっさと降りるのだが、これからジャスレイの所にカチコミに行くので二度手間にならないよう火星のステーションに筋肉号をしまいに行く。

 

第五形態に戻り一人で機体を固定していると背後から声が掛けられた。

 

「シンじゃないか!久しぶりだね!」

 

『あ、お久しぶりです!アミダさん』

 

話を聞けばここにハンマーヘッドごと隠れているのだとか。

 

「アンタ達のお陰でうちらは皆無事さ。ありがとね」

 

『いえいえそんな……』

 

話しつつ作業を終えて人の姿をとる。

 

「よし完了っと。俺はこれから火星に戻りますけどアミダさん達はこれからどう動きます?」

 

「………………」

 

「?」

 

「………………」

 

ポカーンと此方を見つめている。割りとレアな表情ではないだろうか?

 

「アミダさ~ん?」

 

「し、シン!?」

 

ガシッと肩を捕まれた。

 

「は、はいぃ?」

 

どうしたんだ急に!?それとアミダさんやっぱ近くで見ると美人ですね!?

 

「女の子だったのかい!?」

 

「え?……あ」

 

すっかり忘れてた。俺人の姿だと何故か女の子になるんだった。

 

「あ~そうみたいですね。自分でもびっくりですけど」

 

「はぁ~まさかアトラが言ってたのが正しいなんてねぇ」

 

アトラ?

 

「アトラが何か言ってたんですか?」

「いや、前に少し話した時にシンの性別はどっちかって話になってね。私はさばさばしてるし男じゃないかと思ってたんだが、アトラは『絶対女の子ですよ!だって三日月の事大好きですし!』って」

 

……俺が三日月さんの事好きだって?

 

「……アミダさん、貴女から見て俺の三日月さんに対する態度ってどう見えてました?」

 

「お互いに信頼しあってて何と言うか……戦友?でもアンタが女の子って考えると献身的に尽くしてて……好きって見えなくもないねぇ」

 

「…………」

 

「まぁウチにも一人称が『俺』の娘だっているし変ではないさ」

 

「俺男ですよ?」

 

「チンコついてんのかい?」

 

何て事を真顔で訊いてきやがりますか。

 

「いや身体的には女の子ですけど……」

 

「三日月の事好きかい?」

 

「仲間として好きですけど」

 

「他の鉄華団の仲間と比べたら?」

 

「家族ですから誰が一番って……訳…………」

 

あれ?三日月さんが一番な気が。

 

待て待てマテまて……これ以上考えるのはまずい。

 

アミダさんが獲物を見つけたライオンの様な笑みを浮かべる。

 

「…………何か」

 

「何だアンタにも可愛い所があるじゃないか!何時でも相談してくれて構わないからね!」

 

そう言ってギューっと抱き締められた。

 

 

だから、待ってくれって……決めつけんなーー!!

 

 

だが反論する気が何故か起きず、エーコや他の皆がアミダさんを探しに来るまで暫く抱き締められ続けたのであった。

 

……その後更にタービンズの皆から質問攻めに合ったのだが割愛させて貰おう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

鉄華団に戻ってきた。

 

あの後は第五形態になっていつぞやと同じく自由落下で火星に降り立った。

 

団長や他の皆に挨拶して早速裏手の青い薔薇を見に行く。

 

周囲には誰も居ないのて人の姿をとって歩いていくと、

 

「久し振りー……ってデカッ!?」

 

最初は鉢植えサイズだったのに今や本部の建物と同じ位の大きさになっていた。

 

(何で!?何があった!?…………あ)

 

すっかり忘れていたがこの場所、俺が初めて第三形態になった時に血をダバダバと流した場所だった。

 

「俺の血の栄養かぁ~それにしても元気になりすぎじゃね?」

 

葉っぱを振って答えてくれる。

 

久し振りに会って向こうも嬉しいみたいだ。

 

そこへもう一機新たな仲間がやって来る。

 

『gyaaaaa!!gya!!』

 

「ちょっと待てよ!……どうしたんだよ凰華!」

 

ハッシュと凰華だ。

 

凰華は一直線に此方に向かってくる。

 

そのまま俺の胸に飛び込んでこようとする。

 

「よーしこーい……ガフッ」

 

(……人の姿になってたの忘れてた!)

 

「おい!凰華!人にぶつかって……!大丈夫?君?」

 

「大丈夫大丈夫、ゴジラ舐めんな」

 

凰華の首根っこを掴んで立ち上がる。

 

「はいハッシュ、これ」

 

「ありがとう……ってゴジラ!?シンさん!?」

タービンズと同じ反応だー……。

 

う~ん、そんなに驚く事かなぁ?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハッシュに三日月さんの場所を尋ねた所、今日は農場に行ってるらしいので徒歩で向かう。

 

途中で面倒くさくなり背中から第五形態の羽だけ生やして飛んでいった。

 

(到着……一つ気になってる事を試してみるか)

 

レーダーで探った所アトラに三日月さんも農作業をやっている。

 

二人とも少し離れて作業しているようなので三日月さんの方へ近付いていく。

 

後ろから声を掛けてみた。

 

「三日月さん、ただいま戻りました!」

 

「うん、おかえりシン」

 

三日月さんはこちらを振り向き何の疑問も浮かべず俺におかえりと挨拶してくれた。

 

「……何か疑問とか湧きませんか?その姿は?とか女?とか」

 

「?別に。シンはシンでしょ?」

 

「……っ」

 

今までポッカリ空いていた心の穴に熱いものが溜まっていく。

 

「三日月さん、俺……」

 

何を言おうと思った訳でもないがそれでも何か言おうとしていると、

 

「シンの声が聞こえた気がする!!」

 

左手にトウモロコシ、右手に鎌を持ったアトラが飛び出してきた。

 

「えーっと……」

 

俺を見て一瞬固まり、

 

「シンだーー!!可愛い!!おかえり!!!」

 

と言って抱き付いてきた。

 

 

何でこの人達は俺だって分かるんだろう。

 

……何だか嬉しかった。




次回アザーのギャラルホルン潜入記。

……ギャラルホルンの秘密が明らかになります。


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アザーのギャラルホルン潜入記

俺は門択シンゲツ、20歳の誕生日に襲ってきたモビルアーマーに倒され、ゴジラとなって鉄華団の整備士を勤めてる。

残された時間はあと99日。


《以上仮面ライダーゴースト風アバンタイトルでした~》

 

俺ことアザーは只今絶賛暇だった。

 

暇なので途中途中でヴィダールジュリエッタを誘ってガレージで発掘した仮面ライダーを観ていたが、そろそろ地球が近いので二人共居ないので本格的に暇だった。

 

《しっかし慣れねぇなーこの姿は》

 

今俺はシンが変装していたハサンの容姿になっている。

 

あっちは元が女だから自然だったがこっちとしては違和感しかない。

 

(ツナギ着てるからまだマシな方だけどな)

 

今頃アイツは恐らくアトラ辺りにショッピングに連れ出されているだろう。

 

「ハサーン?ハサン?居ないのー?」

 

そんな事を考えてるとヤマジンがやってきた。

 

(居なかったらコイツどうするんだろ)

 

気になったので黙っているとヤマジンは辺りをキョロキョロ見渡しながらキマリスへ近づいていく。

 

「へっへっへ……いないなら少し位どんな改造したのか見ていいわよね……そうこれは整備、整備……」

 

整備じゃねーよ!

 

腕から蜘蛛の糸を射出して天井に張り付け、隠れていた場所から飛び出す。

 

そのままスイングしヤマジンの頭に踵をクリーンヒットさせた。

 

「ガッ」バタッ

 

(シンの野郎は改造してハイ終わりってしてたけど機密を守る為には俺が何とかしなくちゃなあ……)

 

しれっと居なくなる予定だったようだが、あんなに腕が立つ整備士がフラッと居なくなって怪しまれない訳がないだろう?

 

自分の異常さに無頓着なのはゴジラらしいが。

 

(まぁ俺が分離して色々混乱してたみたいだからしょうがないか)

目を回しているヤマジンを担ぎ上げる。

 

(理由は……整備に熱中し過ぎて気絶してたので連れてきましたって事にしとこう)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

地球に着いた。

 

着いて早速私とヴィダールはイオクと一緒にラスタル様の所へ報告に向かう。

 

「……以上が今回の鉄華団訪問で得た敵の情報になります」

 

イオクが喋ると自慢話が長引いて話にならないので途中から私が纏めた報告書を読み上げる形になった。

 

「ラスタル様!お貸しになって下さったダインスレイヴの威力!報告に書いてあった通り鉄華団に味方する悪の組織の艦隊を殲滅する程の素晴らしい威力でした!」

 

『……ダインスレイヴは貴方が持たせたのか』

 

ヴィダールが発言する。

 

「そうだ。何せ相手はゴジラだ、過剰ではあるまい」

 

それでいいのだろうか?

 

「しかしイオク…様は民間船舶に対して使用しました」

 

『停戦信号、降伏信号も無視してだ』

 

流石にこれにはラスタル様も反応するかと思ったが、

 

「構わん。ゴジラを誘き出せる餌になるならそれは仕方の無い犠牲だ。クジャン公はよくやってくれた」

 

「は!ありがたき幸せ!」

 

 

 

……何なんだこの人は。

 

出会ってから初めて私はラスタル様に得体の知れない恐怖を覚えた。

 

余りにも人の命を軽く見ていて、その上ゴジラに対する底無しの悪意が滲み出ている。

 

……本当に同じ人間なの?

 

アザーさんの方がよっぽど人間らしい。

 

 

気後れして無意識に後退りすると、ドンと背中がヴィダールにぶつかった。

 

「あっ、すみませ……」

 

『報告は以上だ。行くぞジュリエッタ』

 

「わっ!」

 

ぐいっと手を引かれて部屋から出る。

 

彼の手から伝わる温もりに正直に言ってホッとした。

 

先程のラスタル様はまるで機械みたいだったから。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《潜入開始っといきますか!》

 

ハサン女の子フォームから俺の記憶通りのザイール(ハサン)の姿にチェンジする。

 

地球に着いてからずっと気になっている事があった。

 

ネットに接続して思考を探索させていると何故かごっそりと空いた空間があったのだ。

 

(紙のやりとりだけで全て完結してるみたいだな……何を警戒してるんだ?……ゴジラ?)

 

シンが何故気付かなかったのかといえば目覚めるまでゴジラのレーダーを使っていたのは俺だったからしょうがない。

 

(【孤児たち(オルフェンズ)】の未来は一緒に見てたけど計算を主導してたのは俺だしな……そのせいで最初にグレイズとバルバトスを何度もスキャンして一度見た事があるって勘違いしてたみたいだが)

 

という訳で今はその情報の流れが停まってる工場を突き止めてここまで来たのである。

 

(フッフッフ……他愛なし……他愛なし!!)

 

セキュリティが阿保ほど掛かっていたが全てスルーして中枢へ入っていく。

 

その途中誰も人が居ないのが不自然だった。

 

《工場……のはずなんだがな》

 

疑問を抱きつつも遂に地下の工場まで辿り着いた。

 

(……!エイハブウェーブ反応?)

 

近付く程にその反応がどんどん強くなっていく。

 

(何だこの馬鹿みたいな出力は……?)

 

シンがガンダムに搭載させてたリアクター並の……

 

嫌な予感が心の中で広がっていく。

 

地下の工場のさらにその最奥に着いた。

 

《……っ!》

 

予想外の光景に息をのむ。

 

《何だ……?これは……》

 

 

俺の目の前には、ゆうに千体はいるモビルアーマーとそれらを全て収容出来るであろう移動要塞のようなものが鎮座していた。

 

 

「驚いたかね。コレが私の切り札、モビルフォートレス(・・・・・・・・・)だ」

 

 

俺の眼前の要塞から声が掛けられた。

 

「久し振りだな、シンゲツ・モンターク。三百年ぶりだ」

 

《……何者だ》

 

潜入用のハサンからスパイダーマンへと形態変化する。

 

「三百年前に君に倒された者だよ」

 

その声と同時にモビルフォートレスの表面に一人の男が立った。

 

「今はラスタル・エリオンを名乗っているがね」

 

目の前の男をスキャンする。これは……!

 

《その体……お前、機械か》

 

「あぁ、良くできているだろう?君達ゴジラを駆逐する為だ」

 

《機械が世界の警察を名乗るトップに立ってるとはね》

 

そう俺が言うとラスタルは完全に人を模倣した微笑みを返した。

 

「ギャラルホルンの名において、ここに宣言しよう……君達ゴジラとその因子を持つ火星を殲滅する」

 

「【第二次ヤシオリ作戦】の開始だ……!」

 



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ホームカミング

アルミリア初登場。


《ヤシオリ作戦ね、随分と懐かしい単語じゃないか》

 

俺が高校の時か。

 

「あぁ、ゴジラに関わる全てを根絶する。私は人類(・・)の味方だからな」

 

《成る程、人類の味方ね。なら俺はゴジラ(シン)の味方だ……っと》

 

その場を飛び退く。

 

直後俺の立っていた地面にダインスレイヴが突き刺さった。

 

「この数を相手にして勝てる気かね?」

余裕綽々のラスタルが問い掛けてくる。

 

《確かに少しキツイ》

 

(今の俺は人間にしか形態変化出来ないからな……)

 

吹き荒れるダインスレイヴとレーザーの雨を避け続ける。

 

《まぁ、俺一人だったらの話だけどな!》

 

 

轟音と共に天井から一機のモビルスーツが飛び込んできた。

 

 

『無事か!?アザー!!』

 

《待ってたぜ!ヴィダール!!》

 

飛び込んで来たのはキマリス・オーディン、俺の指示通りに超高々度から突撃し、この場所までランスで突き破って来てくれた。

 

蜘蛛糸を飛ばして機体に取り付く。

 

「ヴィダール、いや……ガエリオ。何故だ」

 

ラスタルがダインスレイヴを撃つのを止めてガエリオに問い掛ける。

 

『何故?それが分からない貴様だからだ!!最初から俺はお前を信用しちゃいない!!』

 

《キマリス!ブースター全開!!動力は俺を使え!!》

 

ダインスレイヴが撃たれる寸前に俺のエネルギーを供給され爆発的な加速でキマリスが急速離脱する。

 

 

《ふぅ……助かったぜ。ありがとよヴィダール》

 

『礼には及ばないさ。それより例の件は本当なのか?』

 

機体を操りながらガエリオが問い掛けてくる。

 

《あぁマジだマジ。お前の妹さんとマクギリスにジュリエッタ、他に連れていきたい奴が居たら一緒に逃げるぞ》

 

『分かった……信じられる、仲間だけは!ってやつだな』

 

《その通り!相手は機械だしある意味不死生物(アンデッド)だね!》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《よう!マクギリス!こんななりで信頼出来る訳が無いだろうが信じてくれ!俺は門択真月!お前が俺だと思ってたシンは俺の中の俺の阿頼耶識のマイティブラザーズXX!!つまりだな!今からそこにモビルアーマーが攻めてくるからバエルに乗って逃げて来い!セキリュティは全部解除した!隣の石動はモンターク商会とかいう俺の名前からとった秘密結社のメンバーと連絡とっとけ!アルミリアは俺とガエリオで保護するから!後ラスタルの野郎の正体はロボットだ!!ギャラルホルンの内部には内通者だらけだ!本当に信頼出来る人だけ連れて逃げるぞ!落ち合う場所はアーブラウの郊外だ!!じゃ!!》

 

 

……蜘蛛柄のマスクを着けた男が通信に出るや否や捲し立て、そして言い終えるとこちらが質問する間もなく切ってしまった。

 

「石動、敵の正体は機械、ロボットらしいな」

 

「そうですね准将、SF映画の登場人物の気分です」

 

「……石動、正直私はテンションが上がっている」

 

確かに見れば准将は残像が残った様に揺れている。

 

「奇遇ですね、私もです」

 

「ではミッション開始といこうか」

 

「はい」

 

何故准将と私がこんなに容易くあの不審な人物(スパイダーマン)の言葉を信じたのか。

 

その答えは私達の輝いた目を見れば分かるだろう。

 

彼は信頼出来る人物だ(なにあれカッコいい)と思っているからだ!!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『アザー、アーブラウで集合と言っていたが脱出する算段はあるのか?』

 

《鉄華団地球支部があった時にシンがこっそり作ってた脱出挺を借りるのさ》

 

ついでに蒔苗のじーさんも連れていくつもりだ。

 

『着いたぞ。ジュリエッタも後から来る』

 

《分かった。アルミリアちゃん連れて直ぐ戻る!アイツら宜しく!》

 

ハッチから飛び出し地面に着地する。

 

今俺達はボードウィン家の土地へやって来ていた。

 

マクギリスの嫁を保護する為だ。

 

背後でキマリスがやってきたギャラルホルンのモビルスーツを蹂躙している。

 

 

(急がなくちゃな!)

 

 

幸い木が多いので蜘蛛の糸でスイングして直ぐに屋敷に辿り着く。

 

空いていた窓から侵入する。

 

 

(無事だといいんだが……)

 

 

その瞬間、屋敷に悲鳴が響き渡った。

 

急いで部屋を駆け、扉を蹴破り階段上から下の階を見渡す。

 

「お父様……!何で彼女達を……!」

 

「私はお前の父親ではない。私はお前の父親を模したモノだ。お前は交渉材料になる。強引にでも確保させて……」

 

手には銃、側にはメイドの死体が二つ。少し不味いな。

 

《ちょ~っと待ったぁ!!》

 

注意を引くべく大声を出して階下に降り立つ。

 

《ちょっとお父さん?思春期の娘相手に手を上げるなんて真似は家庭内暴力だぜ?》

 

「シンゲツか。何だそのふざけた姿は」

 

《心外だなぁ!これは俺が今まで観た洋画で一番好きなヒーローなんだぜっと!?》

 

言い終える前に発砲した相手の腕に蜘蛛糸をくっ付ける。

 

《親子喧嘩に銃なんか持ち出すんじゃなーい!!》

 

糸を引っ張り引き寄せた相手にカウンターで殴り付ける。

 

《アルミリア!!俺はマクギリスの知り合いだ!!コイツをとっちめるから隠れててくれ!!》

 

「でも……!お父様!」

 

《コイツは機械だ!!君の父親はとっくに殺されてる!!おっと》

 

首が曲がっちゃいけない角度に傾いているのに何事もなかった様に掴みかかってくる。

 

《さぁ来いよ!!家族に手を上げる奴はお仕置きだ!!》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《戻ったぜヴィダール》

 

俺が敵を倒し終えると同時にアルミリアを背負ったアザーが帰って来た。

 

ハッチを開けて中に入れるとアルミリアがきょとんとした顔で此方を見てきた。

 

「あれ?お兄様?どうしたのその変な仮面は」

 

『お前……驚かないのか!?俺が生きてたって事に!』

 

「生きてるってマッキーが教えてくれてたのよ」

 

マクギリスゥ……!!

 

『親父はどうだった?』

 

アザーに問い掛けると途端にアルミリアの顔が曇った。

 

「お兄様……お父様は機械だったわ。私に襲い掛かってきて……私を庇ったメイドを全員殺して……」

 

(なっ……!?)

 

確認するようにアザーに視線を向ける。

 

《……気の毒だが、その通りだ》

 

(親父……)

 




セブンスターズ、ファリド家とクジャン家以外全員機械でした。

じゃなきゃ優しいガエリオパパがアインに阿頼耶識を付けるようにガエリオに言う訳がなかったんですよね。


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ヒトかゴジラか

アトラのハーレム計画、続いてました。


「ねぇ!シン!!折角人の姿になったんだからさ!行こうよ!買い物!」

 

三日月さん達の所に帰って来て一週間、農場の仕事をしたその日の夜にアトラが提案してきた。

 

「えぇ……?別にいいですよ鉄華団のパーカーで」

 

今の俺の格好はつなぎに鉄華団パーカーを羽織っただけのものである。

 

「よくないの!三日月も何か言ってやって!」

 

「分かった。……行ってきたら?明日は俺も鉄華団の本部に用事があるし」

 

「機体の整備ですか?」

 

もしそうならそれを口実に逃げようかと思っていたのだが、

 

「いや、オルガに報告するついでにハッシュの訓練を見に行くだけ」

 

「……特に整備とかは?」

 

「しないね」

 

バッサリっすか三日月さん。

 

「ほら!だから明日はクーデリアさんにフミタンさん誘って四人で買い物しよう!似合うの選んであげる!」

 

アトラさ~ん……滅茶苦茶笑顔ですね……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「来てしまった……」

 

翌日、アトラに引きずられるままにクリュセのショッピングモールへと来てしまっていた。

 

「成る程、可愛らしいですね。どんな服を着せましょうか」

「何かこう……フリフリってした可愛い奴とか!」

「フム、確かにそれもいいですが、ここは敢えてボーイッシュなモノにして可愛さを引き立てるのは……」

「それもいいかも!早くシンに色々着せたいなぁ!」

 

(誰か俺を殺せ……恥ずかしくて死ねる……)

 

 

死んだ眼でクーデリアに目線を向ける。

 

「シンさんならきっとどれを着ても似合うと思いますよ」

 

そういって微笑まれた。

 

違うそうじゃない……そうじゃないんだ……

 

なし崩し的に真月の記憶ではついぞ入らなかった女物の服コーナーに連れていかれる。

 

 

 

やめっ……ヤメロォー!!

 

 

 

 

結果的に小柄な身長から可愛さをアピールする服を着せられる事になった今着てる。

 

何だよスカートって足がスースーするんだよそれに萌え袖って何だ、何でフミタンはそういうのに詳しいんだよご高説垂れてんじゃねぇアトラにクーデリアもフムフムじゃねぇよ「じゃあこれは?」ってそれゴスロリってフミタン解説するな着せようとするな。……巫女服パーカークッキークラッカーの通ってる学校の制服似合ってるじゃねぇやかましいわ……猫耳?ゴジラだから猫の遺伝子くらい持ってるのにわざわざ付けるかよ、あー……けもみみ談義始まったかーうぇるかむとぅよーこそゴジラパークぅ……

 

三日月さんタスケテ。

 

 

三百前のヤシオリ作戦にて人類はゴジラに物理的な攻撃をもってして凍結に成功した。

 

その頃の人類はまさかその三百年後、ゴジラにヤシオリ作戦時に与えた以上の精神的ダメージをゴジラに与えたのが女三人だとは思いもよらなかっただろう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……………………まぁ似合いますね」

 

着せ替え人形になり本格的に眼が死んできてようやくして、皆がマトモな服を選んでくれた。

 

女である事に違和感は無いものの可愛く着飾る事には抵抗があるので格好いい系でまとめて貰い、上がBusterと書かれた赤色のTシャツに七分丈の紺色のズボン、黒色のロングパーカーを羽織っている格好に落ち着いた。

 

「でしょう!来て良かった!三日月に早く見せたいなぁ!」

 

「あー……何て言いますかね」

 

「押し倒したい」

 

流石に吹いた。何言ってんのフミタン!?

 

「冗談です」

 

「…………ハイ」

 

いや冗談……冗談て……

 

「では店員の人に包んで貰ってきます」

 

俺のジト目を完全スルーしフミタンが会計に服を持っていった。

 

「ハァ……」

 

俺ががっくり項垂れてるとアトラが話し掛けてきた。

 

「シン、今日は楽しかったかな?ちょっと強引だったかもだけど……」

 

「………………」

 

「それとも迷惑だった……?」

 

「アトラさん……」

 

クーデリアが心配そうな声を掛ける。

 

「……迷惑じゃありませんよ。何か人間ぽくって(・・・・・・)楽しかったですし」

 

「シンは人間だよ?」

 

「は?」

 

ゴジラですよ?何処まで行っても俺は。

 

「だって三日月の事好きでしょ?」

 

「好き……って」

 

まだ結論は出てないけど。

 

「三日月とえっちな事したいって思うでしょ?」

 

「あ、アトラさん!?」

 

「鉄華団の皆はシンの事、種族は違うけど家族って思ってる。けどシンは寂しかったんだよね?だからもっと近づく為に人間になった」

 

「俺は……ゴジラで……」

 

「好きな人とえっちして子孫を残せるのは人間だけだよ?他の動物はそんな事考えなくて強いのだけ生き残るようにしてるらしいし」

 

クーデリアさんに薦められた本に書いてあったんだけど、と言ってアトラは続きを話し出した。

 

「矛盾した行動を取るのも人間だけなんだって、シンはゴジラだったんだよね。完全に一人で完結した個体」

 

【ゴジラ】、個体にして唯一の完全生物。

 

「それが女の子っていう一人では完結しない種族の片方になってる。これって変だよね、わざわざ自分から完全さを放棄してるんだから」

 

「あ…………」

 

呆然としていると黙って聞いていたクーデリアが声を掛けてきた。

 

「シンさん、アトラさんの言う通りです。貴女は人間の女の子です。私達と同じ三日月が好きな」

 

「……っ!」

 

突きつけられた事柄に脳が思考をオーバーヒートさせる。

 

「……俺は……」

 

そんな情報処理は一瞬で終わる筈なのに。

 

「……ずっと仲間が欲しかった……世界でたった一人きり。俺を殺そうとしてくる奴等しかいない……」

 

熱に浮かされたように言葉が溢れてくる。

 

「目が覚めて鉄華団の皆に会って、受け入れられるか心配だった……三日月さんだけは俺の言う事を完璧に理解してくれて……仲間が出来た……初めて。絶対に手放したくないから色々無茶苦茶やった。……地球で昔の姿(第四形態)に戻って気付いたんだ。……鉄華団の皆は阿頼耶識を、俺の細胞が入っているだけの人間……所詮は別の生き物なんだって。それから怖くなった……同じ人間になりたいと思った。……三日月さんに嫌われたくないと思った」

 

ふと俺が両目から涙を流してるのに気付く。

それと二人が抱き締めてくれてるのも。

 

「……俺は人間(家族)になりたかったんだ。本当の。俺を仲間って認めてくれる人と」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……ミカヅキさんと」

 

 

 

「笑わせる、ゴジラが人になりたいなど何の冗談だ」

 

 

 

その時背後から声が聞こえてきた。

 

はっとして涙を拭い振り向くと、俺達から2,3メートル離れた先に黒い服を着た男が立っていた。

 

「冗談なんて……!シンは本当に……!」

 

「待って、アトラ。何だその体は?」

 

スキャンしたら驚いた。人の要素たる肉や脳、心臓が全て存在してない。機械だ。

 

「消された艦内データから貴様の姿を復元した。よもや少女になるとは些か計算外だったが……まぁいい、貴様をここで消す」

 

「消す?どうやってさ」

 

しれっと戻ってきたフミタン、クーデリアとアトラの三人を背後に庇う。

 

レーダーを一帯に飛ばした所、目の前のコイツしか機械人間はいないと分かったので問い詰める。

 

「嘆かわしいモノだな。嘗ては衛星を堕とした君だろう、人間ごっこでその狭い視野でしか計れなくなったのかね?」

 

「……!」

 

悪寒を感じレーダーの範囲を最大に拡大する。

 

「三人とも掴まって!!」

 

床を蹴って走り、そして大跳躍、デパートの窓を重力制御で蹴破る。

 

「三人共手荒になるけどゴメン!!」

 

形態変化し俺を軸にコックピットを作り第五形態となる。

 

そしてデパートから急いで距離をとる。

 

直後その建物にダインスレイヴ(・・・・・・・)が何本も突き刺さった。



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クリュセ防衛戦

『ダインスレイヴ!?……っ!いつの間に!?』

 

レーダーの範囲を火星上空まで広げた所、空には何十機ものモビルアーマーが居るのが分かった。

 

空でチカッチカッと光が瞬く。

 

『……シッ!!』

 

体内の三人への重力制御を確認しつつブースターを吹かして生成した両手の剣でダインスレイヴを弾いていく。

 

『くぅ……!』

 

縦横無尽に空を駆けて町に撃ち込まれていくダインスレイヴを郊外へ弾き飛ばす。

 

この身体にスペックをフルに活用して防戦するのが手一杯だ。

 

『…………くそっ』

 

上空のモビルアーマーを倒すには第四形態のリアクターカノンしか届かない、だけどそれを撃つ暇がない……!

 

『はぁぁぁああ!!』

 

時間差で纏めて撃ち込まれた何発もの弾丸を機体の膂力と重力制御で撃ち飛ばす。

 

(数が多すぎる……!守りながらだと攻めに回れない!)

 

そんな折に通信が入ってきた。

 

『……!シン!聞こえるか!!』

 

『団長!至急応援を寄越して欲しい感じなのですが!!』

 

『分かってる、その前に上のモビルアーマー共の正確な位置座標だけ送ってくれ。流星号で墜とす』

 

『……!分かりました!……送りました!戦闘中で詳しくは無理ですけど大体正確なハズです!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ヤマギ!データ来たか!?」

 

オルガから話を聞いて直ぐに後ろに座るヤマギに確認をとる。

 

「……うん、オッケーだよシノ。何時でも撃てる」

 

「よし、オルガ!何時でもいけるぜ!!」

 

『分かった!えー……アルティメット……』

 

覚えてねぇのかよ!……ったく。

 

「アルティメットギャラクシーキャノンだ!!」

 

そここだわる所?って、全くヤマギは分かっちゃいねぇなぁ。

 

「流星号!ノルバ・シノ!!」

 

「……」

 

「お前も言うんだよ!!」

 

「あ、あぁ。ヤマギ・ギルマトン」

 

「行くぜ!!アルティメットギャラクシーキャノン!発射ァ!!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ふと弾幕が薄くなり上を確認すると、モビルアーマーの何機かがギャラクシーキャノンに撃ち落とされてるのが見えた。

 

(シノナイス!!)

 

『お待たせ』

 

『待たせたなぁ!!』

 

更に三日月さんに昭弘も駆けつけてきた。

 

『み、三日月さん!俺は何をすれば!?』

 

ハッシュもハシュ丸に乗って出撃してきたらしい。

 

丁度良い。

 

『ハッシュ!凰華!ハッシュはそのままテイルブレードでダインスレイヴを弾き飛ばして!凰華はプルーマ全機でクリュセの皆を避難させて!!』

 

『お?おお!分かりました!!(gyaaaa!!)』

 

『なら俺達はクリュセの街を守るだけだな』

 

『メイス持ってきて正解だったね』

 

新たに三機加わり随分と防衛が楽になった。

 

『三日月さん達、少し防衛任せていいですか?』

 

『策があるんでしょ?任せて』

 

三日月さんは相変わらず二つ返事だなぁ……

 

他の二人からも許可が出たので一旦地上に降りて第五形態から第四形態に形態変化する。

 

その折りに近くにいたプルーマにアトラ、クーデリア、フミタンの三人を預けた。

 

(喰らえ……!!)

 

 

(リアクターカノン!!!)

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

後の歴史でこの戦いは【クリュセ防衛戦】と名付けられる事となる。

 

そして、この戦いこそが【火星独立戦争】の切っ掛けとなったと誰もが口を揃えて言うだろう。




ハシュ丸の機能開放に伴いテイルブレードの使用が可能になったのでおやっさんが取り付けました。


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青い薔薇

頭上の敵は殲滅したので再び第五形態へと戻る。

 

『三日月さん!昭弘にハッシュ!終わりました!』

 

『うん』

 

『た……助かった~……』

 

そこへ昭弘から通信が入ってきた。

 

『シン、早速だが団長から呼び出しだ、急いで戻るぞ』

 

『了解!』

 

レーダーで地上を探りアトラ達を探す。

 

直ぐに見つけたのでそこへ急行する。

 

『アトラ!クーデリアにフミタン!無事?』

 

「シン!こっちは無事だよ!」

 

「えぇ、私にフミタンも無事です」

 

『良かった……団長が呼んでるらしいから皆乗って!』

 

コックピットを開けて掌に乗せた皆を収納する。

 

……周りから何か聞こえてきた。

 

「おい……アレって広場に立ってた像の……」

「クリュセの……守護神……!」

「あの伝説の……?」

「伝説って?」

「ああ!」

「三百年前にクリュセに迫った危機を救ったらしいが……まさか本物を拝む日が来るとはな……」

 

……そんなに大袈裟に言われると照れるんだが。

あの時は特に深く考えずに戦ってただけなんだけどな。

 

そう考えている内に三人とも乗ったので、ハッチを閉めてクリュセの街から飛び立った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『何だこれは……?』

 

鉄華団の本部に戻った俺達の前には衝撃の光景が広がっていた。

 

本部の建物を巨大な植物が覆い尽くし、その上に何十本ものダインスレイヴが突き刺さっている。

 

驚きながらもアトラ達を下ろして俺も人型へと戻る。

 

「これって……シンが連れてきたあの薔薇かな?」

 

「……っ!」

 

確かに、ただの植物が重なった程度ではダインスレイヴは防げない。ならばこの植物は俺の遺伝子が入ったアイツである訳で。

 

急いで本部の裏へと羽を生やして飛ぶ。

 

よく観察すれば葉は茶色の枯れた色になっている。

 

「おい!無事なのか!?」

 

仲間が居なくなる。その思いを抑えながら本部の裏の薔薇の株を植えた場所へと到着する。

 

「…………そんな」

 

枯れていた(・・・・・)。最後に見た時の緑の美しさは無く、死の気配が漂う茶色に変化していた。

 

「あいつラ…………」

 

奪ワレタ。仲間ヲ。同類ヲ。

 

「あ…………あァ…………!」

 

思考ヲ殺意ガ支配シテイク。

 

「殺………」

 

スと言い掛けた所に枯れた植物の中から何かが飛び出してきた。

 

「えっ?えぇ!?」

 

慌てて受け止めると。

 

『…………!…………♪』

 

「お前……あの青い薔薇の!」

 

まるで植物版ゴジラといった容姿の小さな怪獣になっていた。

器用に八本の触手を使い歩いている。

 

「生きてて良かったー!!」

『!!』

 

嬉しさの余り抱き締める。驚いているのか?可愛い奴め。

 

「名前決めないとな。う~ん……」

 

『……?』

 

「ビオランテとかどう?」

 

何かふと頭に浮かんだ。これ以上なくしっくり来る。

 

『♪♪……!』

 

気に入った……のかな?

 

じゃれつくように肩に乗ってきたので落とさないように支えながらアトラ達の元へと戻った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

戻ったら既に皆は居なくて、レーダーで探ると会議室に集まっていたので急いで通路を駆け抜け……

 

「という訳で新メンバーのビオランテです。よろしくね!」

 

『♪!』

 

会議室にビオランテを抱えて滑り込んだ。

 

「……?」

 

何故か皆固まってる。ビオランテを見ると、

 

『……??』

 

俺と同じ不思議そうな顔をしていた。

 

「あのー……皆さんどうかしました?」

 

俺が恐る恐る尋ねると団長が困惑した風に問い掛けてきた。

 

「その新メンバーは何処で拾ってきたんだ?」

 

「あの裏に生えてた青い薔薇が変化してこうなりました」

 

「そうか……(ゴジラだけじゃなくて植物も常識を捨て始めたか……)」

 

何か理解を放棄した表情をしている。……確かに昨日まで水をあげてた動く不思議青薔薇がゴジラっぽくなってたら驚くだろう。

 

「いや、オルガ!その前に驚く事があるだろうが!?」

 

ユージンが突っ込む。

 

「シンって女の子だったのかよ!?」

 

「あれ?ユージン知らなかったの?」

 

しれっと三日月さんが返す。

 

「知らねぇよ!?」

 

 

……そういえばこの姿、三日月さん達以外の皆に見せるの初めてだったね。




久しぶりにうっかり発動。

ビオランテ抱えた見知らぬ美少女が駆け込んできたらそりゃ固まります。

団長だけは潜入の関係で先に知ってました。


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地球脱出、雑談

アザー側。


《おーし全員集まったな?出発するぞー!!》

 

『シンゲツ君……これに乗るのに機体を降りる必要があるんだね?』

 

《?そうだけど?あと、アザーって呼んでくれ》

 

『……念願のバエルにやっと乗れたからもう少し乗っていたいんだが』

 

《子供かよ!?》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「マッキー~~!!」

 

マクギリスの姿を認めた途端にアルミリアが抱きついた。

 

「おぉ、よしよし」

 

それを見たガエリオは首を振りつつ、

 

「全くアルミリアは……。ん、どうかしたか?ジュリエッタ」

 

「いえ……(ヴィダールの素顔……!)」

 

何の脈絡も無くヴィダールの素顔を見る事になり思った以上に整った顔をしていた事に固まるジュリエッタ。

 

《いきなり仮面を外したからだよ、そのくらい気付けって》

 

「ホッホッホ……(何が起きているのか誰か説明してくれないかのう……)」

 

「シ……アザーさん、この船は今火星に向かっているという事ですか?」

 

《あぁ、その辺説明まだだっけ。よーし皆一旦ちゅうもーく!!》

 

手を叩いて注目を集める。

 

《簡単に纏めると、ギャラルホルンのボスがロボット人間でした。総力戦で潰し合うので今火星の鉄華団に合流すべく向かってます……以上!》

 

「あの、ロボット人間とは文字通り?」

 

石動が問い掛けてくる。

 

《俺が三百年前に戦ったモビルアーマーのAIの生き残りだね》

 

「三百年と言ったが、お前さんは何者じゃ?」

 

《俺は門択真月、詳しく話すと長くなるんだけど……まぁ時間があるから全てを話そうか》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やぁ、アザー君」

 

《マクギリス》

 

皆が布団にくるまって眠る船室の外、通路で一人佇んでいた俺にマクギリスが話し掛けてきた。

 

「さっきの話は驚かされたよ。シン君が女の子だったとはね」

 

《俺にとっては手が掛かる妹って感じなんだよな》

 

ゴジラ側の思考に振りきれたアイツをそれとなく戻していたのが懐かしい。

 

「しかし一つの肉体に何故二つの人格が?」

 

《簡単な話さ、ゴジラは元々単体で完結している。つまり子孫を残す為の機能、雄雌なんかの区別が存在しない》

 

「ほう」

 

《そんなゴジラに俺という雄が混入した。元の均衡を保つ為には何が必用だ?》

 

「成る程、対となる女性人格が生まれる。それがシン君だったのか」

 

マクギリスが得心がいった表情で呟く。

 

《そういう事。まぁ俺が元になったから大分性格は男っぽいがな》

 

「私はてっきり男だと誤解していたよ。……しかしバルバトスの彼への献身っぷりもよく考えると」

 

《好きな相手に誉めて貰おうって頑張る女の子だよね》

 

「しかし、何故君が身体の主導権を握らなかったんだ?」

 

そこ訊いてくるか。

 

《……【クリュセの守護神】って伝説あるだろ?》

 

「あぁ有名だがそれが?」

 

マクギリスが続きを促す。

 

《あの称号、俺じゃなくてシンの事を言ってるんだよ》

 

つまり、

 

《俺が三百年前に火星に侵攻してきたモビルアーマーを一人で全て倒したってなってるけど、前半までは俺の話だけど後半はシンがやったんだよね》

 

「……?」

 

《最初の何機かは俺が倒したんだけど……反撃喰らってコックピットグサーってされて途中で俺死んだんだよね。で、その身体を生かそうと俺の阿頼耶識のゴジラ細胞が勝手に俺の身体使って敵を殲滅したってのが本当》

 

「…………」

 

《その時敵を倒してたのが今のシンだ》

 

《アイツは誰に何も教わる前に、失われそうになってる命を守る為に行動出来る奴だった》

 

後で意識が戻ってから、それを知った俺はこの人格に身体を譲り自分はそのサポートに回ろうと決意したのだ。

 

「シン君が最初ゴジラの姿だったのは?」

 

《急いで体力を回復させるべく形態変化して、ゴジラ寄りの姿になって地下で眠りについてたからな~。アイツの精神が生まれたてで俺も死にかけたりてたんでかれこれ三百年間ゴジラレーダーでただ人間の歴史を眺めるだけの装置になる羽目になったんだよね》



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作戦会議&合流準備

「で、だ。そこのビオランテのお陰で俺達は無事だったがモビルスーツはどうなってる?」

 

「紫電が20機にマンロディが10機。全機無事だったよオルガ」

 

「それとガンダムフレーム三機にモビルアーマーに……」

 

「俺だね」

 

フム、と頷いた団長が次に名瀬さん達に連絡をとらせる。

 

「兄貴!」

 

『おう兄弟!話は聞いてるぜ、ハンマーヘッドなら何時でも出せる』

 

「……?誰に聞いたんです?」

 

《俺だよ!!》

 

名瀬さんが映っていたスクリーンに横からスパイダーマンの格好をした変態(アザー)が現れた。

 

「……何やってんのお前」

 

「知り合いなのか!?」

 

ユージンが驚いてくる。

 

「……誠に遺憾ながらね」

 

《オイオイ酷い言い草じゃないか!お兄ちゃんに向かって!!》

 

「「「「お兄ちゃん!!??」」」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「何でお前はこの緊急時に話を混乱させる事言うんだよ!?」

 

ん、お兄ちゃん……って事は……

 

画面の中のアザーがオレンジと青色のカラーをした仮面ライダー、三百年前の人が見ればマイティブラザーズXXと言うであろう姿に変化した。

 

《……そう、正解だ》

 

「急に変化しやがった!?」

「格好いいな!!」

「ライド今そういう雰囲気じゃないからね?」

 

回りが騒がしいが、その姿は……

 

「俺がお前で……?」

 

《お前が俺だ》

 

「どういう事?」

 

アトラが首を傾げる。

 

「えーっとつまり……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「つまり思考がゴジラ寄りになってたシンを毎回元に戻してたのが……」

 

《そう!余だよ!!》

 

最初の蜘蛛の覆面を被った状態に戻ったアザーが返答した。

 

「……つまりシンって妹なの!?やったー!!私姉妹とか居ないから妹欲しかったんだー!!可愛いー!!」

 

「ちょアトラくる、苦し……」

 

《ハッハッハ!!百合はいいねぇ!!》

 

百合……花か?同じ疑問をクーデリアも持ったようで、

 

「百合?……花は飾って有りませんが……?」

 

《三百年経つと伝わんないのかチクショウ!!》

 

……コイツからは整備長と同じ空気がする。

 

 

「アザー、そういえば地球から火星までモビルスーツ三機も抱えてた割には着くのが早くねぇか?」

 

《あぁそれは俺を直接動力に繋げたからだよ。不眠不休の慈善事業で火星まで一直線!どこのブラック企業だって話だよ!って俺寝ないし体力無限だから平気だがなアッハッハ!!デンジャラスゾンビィ……!!!》

 

くねくねしながら変な構えを取るアザー。

 

((((シンとは別の方向にやべー奴……))))

 

全員が認識を一致させた瞬間だった。

 

そして、アザーとマクギリスから敵の親玉についての情報が伝えられる。

 

その事実に鉄華団の面々がどよめく。

 

 

その後、暫くして話が雑談に移り始めた所で兄貴が手を上げて注目を集める。

 

『一つ気掛かりな事があってな、歳星のおやじと連絡がつかねぇんだ』

 

「それは……まさかジャスレイとかって奴が?」

 

『有り得る話だ。お前達はどう動く?』

 

「……シン、イサリビ、ホタルビは動かせるな?」

 

「うん、……あっ」

 

「分かった。……兄貴、俺達も直ぐに宇宙に出ます。今回の戦いの整備もしたいので目標は歳星で」

 

『了解だ。準備して待ってるぜ』

 

「皆!これから鉄華団は宇宙に向かう!!機械共に俺達に手を出したオトシマエ付けさせるぞ!!」

 

 

 




「シン『あっ』って言ってたけど何かしたの?」
「三日月さん……あの……少し改造を……」
「少し?」
「魔改造です、ハイ」


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反旗

「これでテイワズは俺のモノだ。親父」
「……ジャスレイ」



本部から運び込んだ三機のガンダムフレームと筋肉号にモビルアーマーwithプルーマ。

 

その他のモビルスーツは全て本部の防衛に回す為に置いてきた。

 

ぶっちゃけモビルアーマー相手ではガンダムフレーム級の機体でないと対処出来ないのでそう判断したオルガの考えは当然のものとして受け入れられた。

 

半数は本部の防衛に周り、残りはダインスレイヴの掃射によって壊滅的な被害を受けたクリュセの瓦礫の撤去を手伝う事になった。

 

途中合流したアザーとマクギリス一行は元ブルワーズのメンバーと共にホタルビに乗っている。

 

「団長、歳星から何か返信あった?」

 

「全くねぇ」

 

「困ったね……この状況でジャスレイがマクマードさんに反旗を翻したのだとしたら……」

 

「敵側についた可能性が高いって事だな」

 

ユージンがビスケットの言葉を受けて続けた。

 

「タービンズの人達で歳星に残ってた人はいるの?」

 

当然の心配をアトラが発言する。

 

「兄貴の話ではこの前のダインスレイヴの件で全員纏めて行動していたからその心配は無用だ」

 

「良かった~」

 

アトラがニコニコしながら抱きついてきた。

 

……妹キャラと判明してからアトラからスキンシップが増えた気が。

 

「そうだね」

 

「三日月……えへへ」

 

そうやってナチュラルにアトラの頭を撫でれる三日月さんは流石だなぁ……!

 

ぽんやりしてきた雰囲気の中、団長が纏めた。

 

「着くまで何が起きるか分からねぇって事だ。いきなりの敵襲もあり得る。三日月とシン、昭弘と昌弘とハッシュの二班に別れて何時でも出撃出来るように準備しておけ」

 

「分かった」

 

「了解!最初俺達が待機しておくよ」

 

「兄貴!なら筋トレしよーぜ!」

 

「そうだな……ハッシュもやるか?操縦には筋肉が必要だぞ」

 

「そ、そうなんすか!?」

 

「ハッシュハッシュ、三日月さん見てみ?」

 

ハッシュの視線が三日月さんに向けられる。

 

その小柄ながらも鍛えられた肉体を見たハッシュは……

 

「よろしくお願いします昭弘さん昌弘さん……!」

 

「「(マッスル)!!」」 

 

 

その日、筋肉に魅せられた漢がまた一人増えたのであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「こうしてみると」

 

「………………」

 

今俺は格納庫にて目を瞑ったままレーダーを最大限に働かせて周囲を精査していた。

 

「シンって小さいね」

 

「………………」

 

三日月さんに抱えられてバルバトスのコックピットの中で、だ。

この状況について聞きたい事があったので閉じてた目を開けて背後の三日月さんに目線を向ける。

 

「流されて自然にコックピットの中に連れ込まれた俺も悪いですけど、どうしたんです?突然」

 

「アトラがせっかく二人っきりなんだからシンと一緒に居てあげてって言ってたから」

 

「アトラぁ…………」

 

確かにね?三日月さんの事好きって認めたけどいきなりアトラクーデリア並みの対応されても処理が追いつかないんですよ。

 

「三日月さん、一つ訊ききたい事があるんですけど……」

 

ふとそこまで言って我に返った。

何を訊く気だ俺。

 

「……アザーから聞いたモビルフォートレスについてどう思います?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

《ヘタレだな~グイグイ訊けよ!?妹よ!!》

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

何か変な電波が届いたが気のせいだろう。

 

「……俺の家族に手を出した以上全員潰すよ?」

 

「ホント全くブレませんね……!」

 

流石です三日月さん。モビルアーマー千機以上なんて情報もこの人にとってはめんどくさいのが増えた程度の認識なんだろうなぁ……

 

「俺もアトラとクーデリアに手を出された以上全力で行きますよ!」

 

「俺の家族のシンとアトラとクーデリアに手を出したからね」

 

「え」

 

「?」

 

「あ…………は、はいぃ…………」

 

 

 

 

その後歳星からの連絡があったとオルガから呼ばれるまでバルバトスのコックピットには顔を赤くしたシンとぼーっとしつつシンの頭を撫でる三日月の姿があったという。

 





【挿絵表示】


誰かシンの絵を描いてくれませんかね。


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テイワズの苦労人

お待たせしました。

ぼちぼちまた更新していきます。


「団長!!歳星から連絡があったって!」

 

「来たか、シン、ミカ」

 

どうなったの?とモニターへ顔を向けると。

 

『よぉ!連絡とれずに済まなかったなぁ!鉄華団よ』

 

「は?何その上から目線……人間風情が」

 

『……ハッ!すいません!!シンさん!!』オヤジィ……

 

何か出会いがしらの上から目線にイラっと来たので威圧すると、俺の声を聴いて直ぐに正気に戻ったマクマードが足元に簀巻きにしていたジャスレイを掴み上げた。

 

『いや、スマン。年甲斐も無く暴れたばかりでつい……な』

 

鉄華団のメンバーも薄々シンの方がテイワズのボスより立場が上っぽい事を察していたが、いざ目の当たりにすると驚きを隠せなかった。

 

(((ゴジラの見た目ならともかく、女の子にへーこらするテイワズのボスって……)))

 

その後、『え、その格好……』「文句あるかよ?」『いえっ!!』というやりとりを経て本題に入った。

 

「で、親父。何があったんです?」

 

『このジャスレイがな、「機械の助っ人が味方についた。今なら鉄華団を潰せるぜ親父!!」とかふざけた事抜かしてきて、追い返そうとしたら銃を向けられてついカッとなってな……』

 

画面見た感じジャスレイの他に五人位倒れている。

そしてカツラがとれてるぞマクマード。

 

『俺だってなぁ、髪が無くなる位のストレスに日々耐えてテイワズを存続させようってしてんのに……それをこの馬鹿は何も知らず……!』

 

マクマードの愚痴が続く中、団長が尋ねてきた。

 

「なぁシン、もし親父が裏切ったらどうするって言ってたんだ?」

 

「リアクターカノンですね」

 

「親父も大変だな……」

 

それを聞いて、まぁいいか。と流せる団長は流石だと思う。

 

「親父、愚痴は後で聞くから今は歳星を使わせて貰うぞ」

 

『……ああ、分かった』

 

 

 

 

歳星にイサリビとホタルビを入港させ直ちに装備の改修に取り掛かる。

 

「天災と天才が合わさり最強に見える!!」

「ガンダムフレームがこんなに沢山ア゛ハハハハハ!!!ハァ゛ア゛↑!!」

 

 

「俺これに混じって作業するの?」

「おやっさん元気だして」

 

俺と整備長で気炎を上げているとそれを脇からみていたおやっさんとヤマギがずーんとした表情をしていた。

 

さぁやるぞ!!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『という訳で決戦兵装が出来しだい連絡しますね!』

 

「分かった」

整備室からの通信を終えて内線を切る。

 

「で、ジャスレイの処遇だが」

 

「くそっ!!この糞餓鬼共が!!お前らさえ居なければ俺は……!」

 

簀巻きにされたまま地面に転がっているジャスレイが吠える。

 

「おいおい、お前の悪手が元で歳星が消える所だったってのに随分好き勝手言いなさる」

 

兄貴が入ってきた。

 

「な……!名瀬!?」

 

「殺されたハズなのにってか?残念だったなぁ」

 

《フッフッフ……はっはっはっは!!……すり替えておいたのさっ!!》

 

アザーの言動に兄貴が生きていた驚きから復活したジャスレイが噛みつく。

 

「そこのふざけた格好の奴は何だ!!」

 

《元ゴジラ》

 

「…………は?」

 

「話を戻すぞ。ジャスレイ」

 

親父が話し始めた。

 

「今までのお前の言動には目を瞑ってきたがな、これが限界だ」

 

「待て……待ってくれ!!本当にこのままでいいのか!?あの火星圏に名を轟かせたテイワズがあんな怪物ごときに……。お前ら鉄華団もだ!!あんな化物が仲間なんてガフッ!?」

 

「おっと、悪いな足が滑った」

 

家族を虚仮にされて我慢できるか。

 

《あったま固いな~。アイツは嘗て一人で人類に喧嘩売った奴だぜ?天下のテイワズ様でも世界敵に回す覚悟はあんのかよ?》

 

「それは……!」

 

《まぁ名瀬を殺してテイワズ継いで、晴れて強いテイワズを手に入れるってのが夢だったんだろうが相手が悪かったな》

 

「親父、コイツの始末は」

 

兄貴がマクマードに尋ねる。

 

「鉄華団の手を煩わせるまでもない。俺が斬る」

 

それでいいか?と親父が目で訊いてきたので頷く。

 

「待っ……!」

 

日本刀に手を掛けたマクマードにジャスレイが一瞬声を上げかけて、直後ゴトリと首が落ちた。

 

《ほい、重力制御~》

 

血渋は俺達に掛かる事なく地面に落ちていった。



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決戦前夜

全機の機動性を上げるブースターを増設し、また阿頼耶識の最終調整を行った。

 

一応イサリビとホタルビに搭載しておいた隠し機能も確認しておく。

 

「……整備長、これ搭載したはいいけどエネルギーどうしましょう」

 

「あー……。シン君は?」

 

「俺は第五形態で前衛なので無理かもです」

 

「そうか……まぁネタ機能のようなモノだし頑丈になったと思えばいいんじゃないかな!!」

 

「そうですね!」

 

あの機構仕込んだので余計に頑丈になったのはまぁ計算外だったけど、まぁ使わなくても平気かな!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

シン達の整備も終わったとの報告を受けて全員を集める。

 

「皆、アザーからの報告で地球から大量のモビルアーマーが飛び立ったそうだ。それと一際大きい反応、例のモビルフォートレスとかって奴だろう」

 

アザーからの情報を元にした敵のデータを表示させる。

 

「今回の作戦はガンダムフレームが戦力の要だ。ミカ、シン、昭弘、昌弘、シノ、ヤマギ、マクギリスにガエリオ。お前らに掛かってる」

 

「任せて」というミカの言葉を聞きつつ(俺は?)という顔をしていたハッシュに話しかけた。

 

「ハッシュ、ラフタ、ジュリエッタは艦の護衛を頼む」

 

視線を向けた三人が頷くのを確認し、全員に顔を上げる。

 

「皆、これが最後で最大の戦いだ。気ィ引き締めて掛かるぞ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後、皆で作戦を話し合い時間を過ごす。

艦の防衛は遠近こなせる流星号を新たに加えたりした。

 

整備グループは機体を完璧にする為にギリギリまで調整するべくガレージへと戻っていった。

 

ユージンと交代交代で艦長席に座って敵がレーダーの範囲に入るまで待つ。

 

タービンズのハンマーヘッドは兄貴から譲り受けて巨大な整備室としてシンが改造して連れてきている。

 

何度目かの交代で部屋へ仮眠を取りに向かっていると、通路の先に誰かが待っているのが見えた。

 

「アンタか」

 

「団長さん。少しお話をしてもよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、いいぜ」

 

皆がドタバタと忙しない中、人気の無かった食堂へ入る。

 

席に座ると対面にフミタンが座ってきた。

 

「…………あの」

 

「おう」

 

「………………」

 

「………………?」

 

「……………………」

 

(……何か話せよ!?)

 

座ったきりフミタンが何も言わず俯いたままのでつい心の中で突っ込んでしまった。

 

「なぁ、どうしたんだ?体調でも悪いのか?」

 

「いえ、あの……もうすぐ敵との戦いが始まるのですよね」

 

「あぁ。正直アンタにアトラ、クーデリアが来るのは反対だったんだがな」

 

「……それは死ぬかもしれない戦場だからですか?」

 

「あぁ。アトラとクーデリアは反対してもどうせミカが心配で着いてきたと思うが、アンタが来るのは……お嬢様の護衛とは言え……」

 

「私はお嬢様の護衛でついてきたのではありませんよ」

 

「……?」

 

「私がついてきたのはお嬢様やアトラさんと同じ理由です」

 

「それは……鉄華団の中に誰か好きな人が「貴方です」」

 

……………………はい?

 

 

「この戦いで生きて帰れる保証がない以上ここで言っておきます。団長……いえ、オルガ・イツカ。私は貴方の事を愛しています」

 

「え、お、おぅ?」

 

「つまりこういう事です」

 

いやちょっと待てフミタンが俺の事を好き?いや確かによく話し掛けられたりして俺も少し気にしてたが、いや別に好きとかそういうのより家族として大事なのであってだな。彼女なんか鉄華団盛り立てるのに必死で作ろうとすら思ってなかったんだががががが

 

グルグル渦巻く思考の中席から立ち上がったフミタンが俺の襟首を掴んで顔を引き寄せ…………

 

 

 

~~~~~~~~あれ、俺は何を……

何か思考がオーバーヒートしていて纏まらないので適当に食堂に備え付けの冷蔵庫をあさりに行く。

 

……見た所食材が押し込まれていて飲み物が見当たらない。

辺りを見渡すと注意!と書かれた段ボールが有り、それを開けると沢山ジュースの缶が入っていた。

 

一つ取って蓋を開ける。

 

「ん、うまいなこりゃ」

 

後でミカに教えるかー……と考えながら喉が渇いていたので一気に中身を飲み干す。

 

(う~ん、まだ沢山あるしライド達の分はあるから平気だよな……)

 

「あー!全部飲んだのかよ団長!」というライドを想像し缶を半分残し残りをちびちびと飲んでいく。

 

(あー……頭がグルグルしてきた)

 

ふと幻聴が聴こえてくる。

 

「そういえばイサリビ魔改造してたって言ってたけど何したの?」

「あの、少し合体機能を……」

「合体?」

「そうです。ただ合体するにしても動力がなくてですね、完全にネタ機能なんですよ。ただその構造の方が頑丈なので……」

 

 

次第に声が遠ざかっていった。

 

(イサリビが変形?ハッ格好いいじゃねぇか。ユージンが喜びそうだな……)

 

 

そして意識が暗転し…………

 



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最終決戦

BGMに明るい曲を掛けながらお楽しみ下さい。


「ユージン!シンから報告!相手の姿を捉えた!」

「来たか!オルガを呼ぶぞ!!」

 

しかし、艦内放送を掛けても一向に来る気配が無い。

 

なし崩し的にユージンが指揮を執り三日月、シン、バエルの三機を前衛へと向かわせた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『三日月さん!!俺が撃ったら突撃を!!』

『分かった』

『バエルに乗ってる……!俺はバエルに乗ってるぞおおおお!!!アグニカァアアアアいっぱあぁぁぁぁあつ!!!』

 

テンションのおかしいマクギリスが突っ込んでいった場所とは別方向に第四形態のリアクターカノンで凪ぎ払う。

 

爆煙に紛れてバルバトスが突進し、テイルブレードを縦横無尽に振り回しモビルアーマーを沈めていく。

 

モビルアーマーがバルバトスの予想以上の攻撃速度に一瞬動きが止まった所を、

 

『墜ちろ』

『遅い!!』

 

三日月さんのダインスレイヴ滑空砲による砲撃と俺の斬撃で的確に仕留めていく。

 

『アグニカ!!バエル!!俺がガンダムだあああああ!!!』

 

キチガイに刃物とはよく言ったもので、シン達により当時以上のスペックを持つバエルがアグニカの子孫たるマクギリスに駆られふざけた掛け声とは裏腹にバッサバッサと敵を切り伏せていく。

 

アグニカの戦い方を模倣していたマクギリス。

 

それはバエルにとって一番アシストしやすい操縦であったので、阿頼耶識がついていないにも関わらず、阿頼耶識持ちと同等の戦闘を展開しまるで英雄のアグニカが甦ったようだった。

 

ざっと50機程倒した所でユージンから交代の指示が入る。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

三日月達と交代で昭弘、昌弘、ガエリオの三人に出動命令が下る。

 

『昌弘、その機体はガンダムフレームじゃない。慎重に行けよ』

『分かってる、兄貴!!』

 

(あの時あった昭弘がここまで強くなるなんてねぇ……)

 

二人を見ながらラフタはモビルスーツの中で一人考えた。

 

(最近昭弘の事考えるとざわざわするし……この戦いに参加する!って言ったら姐さんもダーリンも何かニヤニヤしてたし……)

 

何なのだろう。

 

(ま、色々考えるにしてもこの戦いを乗り越えてからだよね~)

 

そう考えながら機体のチェックをしていると急にグシオンから通信が入ってきた。

 

『ラフタ』

 

「わっ!?……ど、どうしたの?何か心配事?」

 

『いや……お前の事は俺が守る』

 

は、へ?

 

(え、ちょっと待ってそれってそういう(・・・・)?)

 

『ガンダムフレームでなければダインスレイヴの相手はキツいからな』

 

(やっぱりかーーー!!)

 

ガッカリした瞬間急に自分の気持ちに気が付いた。

 

 

(あれ?つまりガッカリしたって事は私……)

 

 

『撃たせる前に倒す。だが万が一の時は……』

 

「大丈夫だって!シンが防御強化してくれたし、盾もあるしね」

 

だから、

 

「安心して敵を倒してきなよ。昭弘の家族は私が守るからさ」

 

『お前も俺達の家族だ。頼んだぞ』

 

そう言うと通信が切れた。

 

多分今の私の顔は真っ赤だろう。

 

(あ~~!!もう!!絶対生き残ってこんな気持ちにさせた責任取らせるんだから!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

宇宙へ飛び出したグシオン達。

 

超筋肉砲(グレートマッスルキャノン)を撃ち放ってキマリス・オーディンが突撃する道を切り開く。

 

《準備はいいか?》

「ああ!【グングニル】起動!!」

 

グシオンの背後から飛び出してきたキマリスが追加ブースターの推力も加わり、弾丸の様な速さで敵陣へと突っ込んでいく。

 

キマリスのコックピットでは最初の機械型の蜘蛛の姿をとったアザーが自身を介して擬似的な阿頼耶識を成していた。

 

《そういやお前の先祖な!数ミリ単位で軌道修正して敵に突撃する人だったらしいぜ!》

「今の俺達はどうなんだ!」

《その精度以上の姿勢制御かつ俺が動力だから当時以上さ!!》

 

そう。今のキマリスは【グングニル】システムを発動した事により、特徴的な頭部からのレーダー、増設された巨大カメラアイ、アザーによる動力の増加が同時にリンクし恐ろしい正確さと威力を持った思考するダインスレイヴと化していた。

 

「しかし、粒子の過剰供給でこの様な光の槍になるとは……」

《今は失われた技術だがγナノラミネートソードの研究は元々その現象の追求だったんでね。研究データを拝借して完成させてやったんだよ》

 

旧来の槍ならいくら頑丈でも一定数の敵を貫けば壊れるのは必至だろう。しかし、この状態の槍ならば無敵の槍となるのだ。

 

《……ただこの状態を維持し続けると槍が自壊するからな。気をつけろよ》

「分かってるさ。時間以内に出来るだけ相手を墜とす……!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『ロングホーン!!』

『トレイン!!』

 

これで五度めの出撃で、今回は昭弘、昌弘、三日月が出撃している。

 

「ハハハハハ!!!何だその必殺技……!!」

「シノ笑ってないで撃って!」

「ほいよ!ギャラクシーキャノン!!」

 

両手に構えたグシオンからお下がりの銃をぶっ放す。

 

「直撃……流石だね」

「しゃあ!次だ!!」

 

ヤマギからの三機の予想進路からモビルアーマーが密集している場所へ両肩のスーパーギャラクシーキャノンを撃ち込んでいく。

 

先程までの無茶苦茶な軌道を描いていたバエルが居ない分支援砲撃がやりやすい。

 

「グシオンの銃と剣ももう無いしそろそろキツくなってきそうだね……」

 

グシオンは銃は撃ち放った後棍棒代わりにそれで殴り掛かり何故か昌弘も真似したせいで二人とも強制的に前線へ出てプロレス技でモビルアーマーを沈めていた。

 

「でもそっちの方が戦果が上だぜ?」

「そうなんだよね……滅茶苦茶だよ」

 

そして二人とも素手の方が戦闘力が上という普通のモビルスーツの開発者が聞いたら卒倒しそうな状況になっていた。

 

『タワーブリッジ!!』

『ベルリンの赤い雨!!』

『筋肉バスター!!!』

『筋肉ドライバー!!!』

『『完成!!マッスルドッキング……!!!』』

 

 

モビルスーツのプロレス技でモビルアーマーが倒されていく状況の中、連戦で少しボーッとしてきたシノが何ともなしにヤマギに問い掛けた。

 

「そういやお前って俺の事好きなの?」

「ブッ!!……今訊くの!?ってシノ!!あのモビルアーマーから……!」

「!何処だ!?」

「えっと……!」

 

ヤマギが慌てている間にダインスレイヴがイサリビへと撃ち込まれそうになるが、

 

……ハンマーヘッドの格納庫から光条が伸び迫るダインスレイヴを焼き払い、撃ったモビルアーマーはバルバトスが周囲の機体ごとメイスで吹き飛ばした。

 

「あっぶねぇ……サンキュ、シン、三日月」

「ほらシノ、今の話は後で!!次が来るよ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

戦闘開始から何時間も経った。

 

 

鉄華団のモビルスーツは圧倒的だった。

しかし、倒しても倒してもモビルフォートレスから敵が出て来る。

 

一向に減る様子の無いモビルアーマーの群れに徐々に鉄華団の士気が落ちていく。

 

精神的支柱となる団長が不在なのも大きいだろう。

 

「くそっ、オルガは何処に行ったんだよ!!」

 

戦いが始まってから何度目とも分からない愚痴をユージンがこぼす。

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

「困ってるみたいだなァ!ユージン!!」ヒック

 

上半身の服を脱いだオルガがイサリビのブリッジへと姿を現した。

 

「オルガ!!何処行って……え」

 

予想外の格好にビスケットが目を見開く。

 

「あの、団長さん。その格好は……?」

 

「はっはっは!!」

 

(((答えになってない!?)))

 

「任せて済まなかったなユージン。俺が代わる」

 

そのまま艦長席に居たユージンにそう告げる。

 

「お、おう」

 

謎の威圧感に素直にどくユージン。

 

そしてドッカリと座ったオルガは自身の阿頼耶識をイサリビへと接続する。

 

「ちょ!?オルガ!?」

 

慌てる周りを気にせずオルガは堂々とした声で命令を放った。

 

「イサリビ!!ホタルビ!!合体だァ!!!」

 

「……は?オルガ何を」

 

【了解シマシタ、団長ノ声紋認識……確認完了。イサリビ、ホタルビ、ドッキングモードヘ移行シマス】

 

「はあぁ!?」

 

ユージンが驚愕する。

艦長席には馬鹿笑いするオルガと謎のコマンドを受け付けたイサリビ。

 

これで驚くなという方が無茶である。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【コレヨリイサリビ、ホタルビ、両艦ドッキングモードヘ入リマス】

 

当然ハンマーヘッドに居た俺達へもその警告が送られてきた。

 

「は!?誰がやったの!?」

「シン君!!アレって確か団長の音声認証が必要だったよね!?」

「そうだよ!?何で?……ホント何で!?」

 

今は三日月さんに昭弘のツートップが出撃している。

 

一体何が起きてるんだ……?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《そういや動力無いんじゃね?……俺の出番かな♪》

「アザー?何処へ行くんだ?」

《いやいやチョーっとお手伝いをね!!》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【イサリビ、上半身変形完了】

【ホタルビ、下半身変形完了】

【団長ニヨル最終承認ヲ……】

 

「やれ!!ドッキングだああああ!!」

 

【団長ニヨル最終承認ヲ確認、ドッキング開始】

 

「何がどーなってんだよー!!??」

 

ユージンの悲痛な叫び声が響く中、両艦が合体していく。

 

【動力確認……該当セズ。直チニ確認ヲ】

 

《いるさ!!ここに一人なぁ!!!》

 

ハンマーヘッドから飛び出してきたアザーが形態変化をして黒い正方形へと変化する。

 

そしてイサリビが変形して出来た巨大な上半身の胸部へと格納された。

 

悪魔ノ心臓(デーモン・コア)確認。最終プロセスヲ開始】

 

イサリビ、ホタルビの赤い外装が一斉に弾け飛び、中から純白の装甲が姿を現す。

 

心臓部から身体の各所に走るラインが紫色の光を放ち、最後に一本角の巨大なガンダムの頭部がせり上がって来た。

 

【全行程終了。ガンダムフレーム・番外個体(ロストナンバー)王様の椅子(ソロモン)】起動シマス】

 

「ハッハッハッハッハァ!!!お前らァ!!これが俺らの最終手段だ!!止まるんじゃねぇぞ!!!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

艦内はアザーの重力制御によって一切負荷は掛かっていない。

またご丁寧にもこの機体の活躍を教えるべくハッキングした監視衛星からアリアドネを経由して、乗組員と全世界へと最高に格好いいアングルから撮られた映像を送り届けていた。

 

 

『行くぞオラァァァァァ!!!』

 

ゴジラ一体を丸々使った出鱈目な出力にものを言わせて【王様の椅子(ソロモン)】が爆進し一気にその戦闘宙域の中心へと殴り込む。

 

艦長席のオルガが拳を握り締めると【王様の椅子(ソロモン)】もそれに同期して拳を固め紫色の光を溢れさせる。

 

そして手近にいたモビルアーマーに殴り掛かる。

 

圧倒的な出力により粘土のようにモビルアーマーの姿が押し潰れる。

 

そのまま拳を振り抜き、吹き飛ばした残骸が近くにいたモビルアーマーを纏めてスクラップへと変貌させた。

 

三日月達を相手にしていたモビルアーマー群が一斉に新たに出現した敵へと突進する。

 

オルガがその軍団に左手を掲げた。

 

王様の椅子(ソロモン)】がその左手を変形させキャノン砲の形態を取る。

 

そして、アザー制御によるリアクターカノンを敵の密集地帯へと放つ。

 

シンの放つものより大口径の光条がモビルアーマーを焼き払う。

 

戦場に突如現れ圧倒的な戦力で敵の半数を駆逐した【王様の椅子(ソロモン)】。

 

それに対して今まで沈黙を保っていたモビルフォートレスが動いた。

 

全モビルアーマーを体内へ格納し、そのエネルギーを持ってして超巨大なダインスレイヴを連射する。

 

そんなものに当たる【王様の椅子(ソロモン)】では無く、味方狙いの玉を弾く以外は全て回避した。

 

『おい!刀!刀はねぇのか!!』

 

【検索……一致。該当項目:【団長のアホ毛(シグマナノラミネートソード)】起動シマス】

 

右腕が変形し腕そのものが巨大な対艦刀へと変貌した。

即座にエイハブ粒子の過剰供給が行われ、刀身が極光を放つ。

 

【超過駆動開始、約300秒後ニ自壊シマス】

 

『上等だァ!!その前にたたっ斬る!!』

 

ブリッジにいたメンバーか全員その気迫に飲まれて何も言えない中、フミタンだけ滅茶苦茶キラキラした目で団長の勇姿を目に焼き付けていた。

 

 

王様の椅子(ソロモン)】の滅茶苦茶な性能に怯んだモビルフォートレスから何百何千ものモビルアーマーが突撃させるも、オルガの「しゃらくせぇ!!」の一振りで次々と墜ちてゆく。

 

そして。

 

『オラァァァ!!!』

 

遂に【王様の椅子(ソロモン)】の右腕がモビルフォートレスを捉える。

 

蹴りと斬撃の継ぎ目無い連撃になす術もなく甚大なダメージを与えられていく。

 

生き残ったモビルアーマー達がモビルフォートレスを攻撃する【王様の椅子(ソロモン)】に背後からダインスレイヴを撃ち込もうとするも、

 

『させないよ!!』

『やっぱオルガは凄いな』

『アレがオルガかよ!?』

『団長さんも鍛えてたからな!!』

『アッヒャッヒャッゲホッゲホッ!!』

『シノ笑いすぎだよ』

 

この千載一遇のチャンスに総攻撃を仕掛けた俺達が敵を刈り取る。

 

『素晴らしいぞ!!オルガ・イツカ!!最っ高にCOOLだ!!』

『何だあの出鱈目な性能は……』

『気にしたら負けですよ。ヴィダー……ガエリオ』

『これは勝ったね~!撃ち漏らしたのを倒しに行きますか!』

 

 

 

最後の一撃をくれてやるべく一旦距離を取った【王様の椅子(ソロモン)】が自壊し始めた刀に敢えて更に今まで以上の粒子を供給し、巨大な光剣を形成する。

 

『バカな!!人間ごときが!!この私達を!!』

『機械ごときが!!俺達の未来に立ち塞がるんじゃねえぇぇぇぇ!!!!』

 

光の束が機械を真っ二つに斬り裂き……



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打ち上げオーダー!

前話加筆しました。


「では、皆さん。火星独立記念&色々ごたごたが終わってお疲れ様でした会を始めまーす!!」

「店は一晩中貸しきってあるからな!!皆潰れるまで飲んで騒げ!!」

「全員グラスいったかー?」

 

「せーの!」

 

「「「「お前らぁ!!止まるんじゃねーぞぉ!!!カンパーイ!!!」」」」

 

 

「誰か……!誰か俺を殺せ……!」

「多分飲み会の恒例の挨拶になると思うのですが」

「がはっ……」

 

 

ここは火星。

クリュセで一番大きいお店に鉄華団全員と元ギャラルホルンのマクギリス等のメンバーが集まっている。

 

宇宙にてモビルフォートレスを討ち取ってからの俺らは勢いに任せて地球に残っていたモビルアーマーの残党を全て片付けに侵攻した。

 

親玉がやられて混乱していた所にガンダムフレーム達によるダイナミック降下からの奇襲により呆気なく全滅させることに成功する。

 

その後はマクギリス一党が会見を開きギャラルホルンが事実上厄祭戦時代の生き残り達に牛耳られていた事を暴露し、地球は嘗て無い大混乱へと陥った。

 

まぁその辺はマクギリス達に任せて火星へ帰るつもりだったのだが、どさくさに紛れて火星独立等の利権を根こそぎ勝ち取ってきたクーデリアは流石だと思う。

 

 

因みにゴジラ関係の事は全て伏せられて報道されている。

その情報が出回れば今ギャラルホルンに代わる組織を立ち上げようとしているマクギリス達にとって障害になるだろうという考えからである。

 

鉄華団が急速に力をつけた事に疑問を持つ人もいたようだが、団長のあの大活躍を目の当たりにして『ゴジラなどという化物が鉄華団に味方していた』というよりは『鉄華団のやべー奴のカリスマの元にヤバい集団が形成された』と考えるようになったらしい。

 

これで事情を知る一部の人以外は(ゴジラ)が人間になった事を知らないので俺の子孫も安心して暮らせるだろう。

 

 

「シンー!!こっちこっち!!コレ美味しいよ!!」

 

マクギリス達や蒔苗のじーさんに軽く挨拶しながら三日月さん達の姿を探していると先に見つけたアトラの方から声を掛けられた。

 

(レーダー使わない人間の感覚にも大分慣れてきたな……)

 

無論探し物等する時は活用するが、出来るだけ人間へと歩み寄った生活スタイルにしている。

 

「おまたせ。でどれが美味しいの?」

 

「えっとねーまずこれと、これと、これと……」

 

「え、多くない……?」

 

「シンさん、私も食べたのです。道連れですよ」

 

クーデリアの顔が怖い。この状況で『ゴジラボディで太るとか無いんですよー!』とか言ったら夜に啼かされそうだ。

 

「三日月も、はい!!」

 

「ありがとアトラ。選んだの全部美味い」

 

…………あれって。

 

(……クーデリア)

(えぇ。見事に精のつく料理ばかりですね)

(……あれ、分かってやってる?)

(……違うと思います)

(アトラ……恐ろしい娘!!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「マッキー!次アレ食べましょ!」

 

「ハッハッハ、引っ張らないでくれアルミリア」

 

そう言いつつも手を引かれて嬉しそうなマクギリス。

その様子を二人の人物が眺めていた。

 

ガエリオとアザーの二人である。

 

「……マクギリス、お前」

 

年の差を考えろよ……という言葉を飲み込む。

そんなガエリオに対してアザーが話しかけた。

 

《そういや知ってたか?アグニカってロリコンだったんだぜ》

 

「……マジか」

 

《マシマジ。元々ロリキャラが出てくるロボゲーを極めてて、それから実家のフィギュア、ゲーム全てを避難中にモビルアーマーにぶち壊されて。そこからキレて軍のモビルスーツを強奪からの撹乱戦法でモビルアーマー撃墜を成し遂げた奴だからな》

 

「…………何?」

 

《その頃はモビルスーツ何十機を使って漸くモビルアーマー一機倒してたってのに凄いよな》

 

唐突に明かされる真実にガエリオが驚愕する。

 

「待ってくれ、その話は本当なのか!?」

 

《本当だぞ?その戦果からこのまま地球に居させるのは勿体ないとして急遽ガンダムフレーム計画に加えさせられたんだよ。で奴さん結構なオタク気質でな。俺が日本人ってのもあって直ぐに意気投合して……》

 

アザーが次々と当時のガンダムフレーム開発陣のはっちゃけぶりを語る。

 

頭が痛くなってきたので途中でガエリオは遮った。

 

「……つまりだ。アグニカ伝説は」

 

幼い頃に読んだ本【アグニカ・カイエルの伝説】について話題を出すと、

 

《格好悪い所全部排除されてるな。まぁ世界を救った英雄の原動力がエロとか嫌だろ》

 

アグニカの容姿はマクギリスと同じイケメンなので動機さえ改竄すれば、人類の危機に立ち上がった無名の一般人という英雄譚になるのだ。

 

「戦後ギャラルホルンに席を置かず一般人へと戻ったのはまさか……」

 

《バエルの専属整備士だったロリっ娘とイチャイチャするのに忙しかったからだな》

 

因みにその後アグニカは『ロボゲーを阿頼耶識で挑戦してみた』というタイトルで別方面に人気になるのだが、それはまた別のお話。

 

「………………ハァ」

 

予想の斜め上を行く先祖によって世界が護られていた事を知ったガエリオは複雑な顔をしていた。

 

《まぁ歴史なんてそんなもんだよ。日本だって凄いぞ?前田利家なんて奴は12歳のロリっ娘を嫁に貰って最年少出産&最多出産の記録ぶち上げたからな》

 

「あー……ハイ」

 

《マクギリスとアルミリアは置いといて、ジュリエッタとはどうなのよお前》

 

衝撃の真実に精神が疲弊した所に、敢えて本人が一番触れて欲しくない話題に持ってくアザー。

 

「な、ちょっ……お前ここで訊くか!?」

 

《肚くくっちまえよ~好きだろ~?》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

打ち上げから数日後。

 

鉄華団は謎の勢力からの襲撃を受ける。

 




アグニカの見た目は筋肉モリモリマッチョマン。
そんな見た目でロリコンかつ日本のサブカル好き。
嫁は元整備士でスパナ片手にアグニカにツッコミ入れまくってた御方。現在幼妻。

世界を救った英雄でなけりゃ逮捕案件です。

晩年に厄祭戦時代の事を纏める組織、『モンターク商会』を設立。
伝記を書いてと依頼されたものの、アグニカから送られてきたモノは8割以上自分の妻の自慢(R18の描写有り)だったので急遽発売中止に。

死後モンターク商会によってまともな1割半の部分と歴史的考察を纏めて『アグニカ・カイエルの伝説』を発刊。

因みに送られた来た原本を読んだ初代ボードウィン卿は(何故こんな変態が世界を救ったんだ……!)と暫く頭を抱えたそうです。


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オーバーキル

《アザーの真の力を見よ!(ご都合主義とも言う!!)》


「団長!!襲われたって聞いたけど無事なの!?」

 

三日月農場で土を耕してたら本部からまさかの一報。

クリュセへ買い出しに出掛けていた団長達が謎の勢力に襲われたというのだ。

 

続きを聞く前に直ぐに三日月さんを抱えて飛んできたので抱きかかえてた三日月さんをまず下ろす。

 

「俺は無事だ。コイツのお陰でな」

 

見れば団長の背中にビオランテが乗っかっている。

 

「そいつクリュセの地下中に根を張ってるみたくてな、敵の銃弾を全て地中から飛び出してきた根っこが受け止めてくれたんだよ」

 

ユージンが追加で説明する。

 

「全員無事かー!良かった!!」

 

「オルガ、敵は分かってるの?」

 

喜ぶ俺とは対照的に三日月さんが冷静に尋ねる。

 

「あぁ、マクギリスから連絡が来てな。元ギャラルホルンのイオク・クジャンが留置場から脱走。……部下全員が手助けに走った結果らしい」

 

「イオク……ってあの無能か!!」

 

部下の人達……いくら前頭主の息子とはいえ全員イオク脱走に手を貸すとか何考えてるんだよ!?

 

「因みにその部下の人達は?」

 

「アザーが全員殺した」

 

「お、やるじゃん兄貴」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

《まぁな!!もっと誉めてもいいんだぜ?妹よ!!》

「虚空に向かって何叫んでるんだお前?」

《俺のゴジラレーダー改め妹レーダーだよ!!》

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「しかし、部下の人が居ないイオクに何が出来るんです?」

 

「その場に居たのはアザーが殺したがな、まだ奴には沢山味方がいる。襲ってきたヒットマンはその一味だ」

 

「けどさ、あいつバカじゃん。誰かが唆したんじゃ?」

 

その時ドアを開けて昭弘と腕を絡めたらラフタが入ってきた

 

「オルガ、マクマードさんから資料が送られてきたぞ」

「黒幕の情報だよー!」

 

受け取った資料を読む団長にユージンが尋ねる。

 

「オルガ、何て書いてあった?」

 

「……親父がついさっき俺の暗殺を依頼されたらしい」

 

「一体誰から……?」

 

暗殺と聞いて生半可な事態ではないとビスケットが次の言葉を急かす。

 

「ノブリス・ゴルドン。確か前にクーデリアを支援してた輩だ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「テイワズの長ももう年だな。新興の組織一つ潰せないとは」

 

ノブリスは先程の鉄華団団長暗殺計画を即座に拒否したマクマードを思い出していた。

 

ニュースを見た限り、鉄華団は団長オルガ・イツカという頭を潰せば簡単に落とせる。

故に腕利きのヒットマンを使えば、と提案したものの……

 

(所詮火星などという未開の地で御山の大将を気取る小物だったか……大局を見れないとはな)

 

ギャラルホルンが無い今、その最大の戦果を上げた鉄華団を潰せば世界は混沌に堕ちてゆく。

そして自身は更に私服を肥やし、いずれ世界を裏側から牛耳る存在に……。

 

「ノブリス様、面会の予約が入っています」

 

「何?今日は誰も来ないハズではないか?」

 

「それが緊急の要件だと……」

 

「知るか!突き返せ!」

 

そう怒鳴りつけたノブリス。

 

 

 

次の瞬間、

 

 

『シン、右側潰せばいいんだよね』

『はい!レーダー的に合ってます!』

 

《はいノックしてもしも~し!!》

 

 

轟音と共に屋敷の右半分がメイスによって叩き潰された。

 

 

「なっ…………!?」

 

 

 

消え去った自身の眼前の部屋からモビルスーツの双貌が此方を射抜く。

 

《はーい関係無い秘書のおねーさんは退避しましょー!》

 

赤青の全身タイツを着たふざけた格好の男が入って来るや否や秘書を捕まえて逃げていった。

 

「な、何だお前らは!?ここが誰の屋敷だと……!」

 

「俺を殺そうとした奴だっけなぁ……!」

 

モビルスーツのコックピットから一人の男が出て来た。

 

「な……!バカな!お前はオルガ・イツカ!?」

 

あり得ない。つい先程暗殺失敗の報を受けたのに何故?

 

《俺、最近第七形態に進化してね!空間弄って繋げるなんてお手のモンよ!!》

 

 

 

「味方だから頼もしいけど、絶対敵に回したくない能力だよね……」

《それだけはないから安心してくれよ!!俺はハッピーエンドが大好きだからな!!》

 

コックピットからの声にふざけた格好の男が返す。

 

 

しかし、待て。つまり……空間転移……だと?

そんな能力がもし有るのなら上手く利用すれば莫大な利益が

 

 

そこまで考えた所で銃弾が肩を撃ち抜いた。

 

「ぐぁぁぁぁぁああああ!!??」

 

突然の痛みに叫び声を上げる。

 

「……待て!なら取引をしないか!?そのふざけた格好の男の能力を使えば私達に莫大な利益が……!!」

 

銃声が鳴り響き今度は膝を撃たれた。

 

「があああああ!!!ごの青二才の若造が!!ぞごのお前!!私が有効利用してやるがらゾイヅを殺ぜ!!」

 

《やなこった~♪誰がお前につくかよ!》

 

また無言でオルガが弾を撃ち込む。

 

土手っ腹に空いた2つの穴をノブリスは土下座の様な格好になりながら押さえる。

 

「お前は俺の家族に手を出した」

 

近付き、そしてノブリスの髪を掴み引き上げた。

 

「あ゛、が……」

「鉄華団に手を出したのが運のつきだったな」

 

そして銃弾がノブリスの頭蓋を撃ち抜いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

《ハイ録画オーケー!!敵対する動きがあった所全部に今の送っときましたー!!》

 

「……待て、撮ってただと?」

 

今明かされる衝撃の真実ゥにオルガがアザーの方を振り返る。

 

《当然!これで此方に手を出そうとするバカは減るでしょう?》

 

「格好良かったよ。オルガ」

 

「そういう問題じゃねーんだがなぁ……」

 

 

実際団長の命令一つでモビルスーツという対抗不能な戦力が飛んでくるというのは相当な抑止力となり以降鉄華団に喧嘩を売る組織は殆ど居なくなったという。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「そういやイオクはどうします?」

 

《下手に殺すと部下が煩いしどうするかな……》

 

そう考えてつつ火星に戻った数日後、嘗てのコネと元部下の人達の尽力で元ギャラルホルンの戦艦を強奪したイオク達が火星へ向けて出発したという連絡がマクギリスから寄せられた。

 

追加で乗っているのは全てイオクの元部下、共感した人達だけという情報が。

 

何やら騎士道精神?とかで元々乗っていた船員は無関係だとして全員降ろされたらしい。

 

……バカで助かったと言うべきか。

これで遠慮なく叩き潰せる事が出来るのではあるが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして戦いが始まり、開幕早々イオクからいかに俺達が愚かな事をしてきたか、ラスタルへの忠誠心をまだ持ってる俺超格好いい、俺達を倒し次第地球へと戻りラスタルの意思を継いだギャラルホルンを再編すると言われたので……

 

俺のリアクターカノンで推進部を墜とし、出て来るモビルスーツはバルバトス、グシオン、筋肉号が片っ端から沈め、土手っ腹には流星号からのアルティメットギャラクシーキャノンが穴を開ける。

 

途中敵から通信が入るも全て罵倒と上から目線の降伏要求なので完全無視。

 

最後はアザーが召喚したソロモンを団長が操縦し艦橋ごと宇宙のゴミへと変えた。

 

 

因みに、この戦闘もアザーの独断により全世界放送されており、世界中にイオク家の醜聞はしっかりと伝わり後世にまで腐敗したギャラルホルンを語るには欠かせない存在になったのだった。

 

 

この戦闘をもって【火星独立戦争】は終わりを告げ、鉄華団は火星という国の王となるに至ったのである。




次回エピローグです。

……多分。


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エピローグ

ここは火星。

 

5年前に鉄華団が火星独立を宣言し、今や一つの国として認識されている土地である。

 

一大レアメタル輸出国として地球の経済に一枚噛む程の存在となって久しい。

 

そんな鉄華団の日常をワタシの感覚で捉えた皆を通じて見て貰おう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

まずは鉄華団の本部。

ここにはオルガさん、ビスケットさん、ユージンさん主要メンバーと手伝いの元年少組が居る。

 

クリュセで行われる火星独立5周年記念の行事について話し合っている。

 

食料保管庫を経由して外に出ると、お母さんと三日月さんが居た。

 

目線の先を追えばハシュ丸と紫電三機が模擬戦をしている。

 

「お、ビオランテじゃん。元気?」

「おはよ」

 

二人から声を掛けられたので触手を振って返す。

 

三日月さんは最初に会った時から随分背が伸びたと思う。

 

記憶と照合……うん、伸びてる。

 

オルガさんには届かないけど、小さいという印象は完全に無くなってるね。

 

その反面お母さんは……

 

「シン、そろそろ野菜も届け終わったし帰ろう」

「了解です!……っと……何でお姫様抱っこ!?」

「アトラがこういうの女の子は憧れるって言ってたから」

 

自然な流れでお姫様抱っこされていた。

 

まぁ身長はほぼ伸びずお陰で今だに子供扱いされる人だ。

昔はキレて人類滅ぼそうとしてたのが今ではただの恋する女の子。

 

そう考えると三日月さんって然り気無く人類救ってたのでは……?

 

 

つらつらと考えていると二人とも騒ぎつつ車に乗ってしまったのでワタシも別の場所へと向かう事にした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

やってきたのはガレージ。

 

バルバトスを除く鉄華団のモビルスーツがここにはしまわれている。

 

「あ、ビオランテ。誰か探してる?」

 

ヤマギさんに話し掛けられた。

 

特に探している訳ではないので触手と鳴き声を駆使して伝える。

 

「分かったよ。ただ重いものが落ちてくるかもしれないから注意してね」

 

通じた。

 

皆第二形態だったお母さんと接してた経験が有るからかワタシの身ぶり手振りでも何となく伝わるのでありがたい。

 

「よう!ヤマギ!次は俺の流星号だ!準備しとけ!」

 

シノさんも来た。

 

「おうビオランテじゃねぇか!俺の流星号と模擬戦してみねぇか?」

 

え、いいの?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「いやー参った参った!スーパーギャラクシーキャノン無しの素手喧嘩で互角とはな!」

「整備するこっちの身にもなってよシノ……」

 

接戦だった。結構本気の植獣形態で戦ったんだけど、上手いこと流星号の変形を切り替えて此方の触手を避けきるとは……

最後はがっつり組み合って押し合いへし合いの力勝負。

 

向こうがダインスレイヴ使えてたら負けてたと思う。

 

「悪かったって!お返しは……そうだな……」

 

シノさんがヤマギさんに耳うちする。

 

「ばっ、まだ演習が終わった午前中に何言ってるのさ!?」

「いいじゃねぇか!なぁビオランテ!」

 

……お母さん譲りのこの高性能な耳め。

バッチリ聞こえていたので頷きつつそっとその場を離れた。

 

お父さん(アザー)が教えてくれたネタで表すなら『ようこそ……男の世界へ……』といった所だろうか。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

とまぁこんな1日だったよ。と兄の凰華に話す。

 

【俺の主人のハッシュもなぁ……中々いい人が見つからないみたいで……】

 

(あれ?そうなの?何か意外)

 

【ザックとどっちが先に恋人出来るか勝負してるけどどうなるやら……】

 

(その点お母さんは……)

 

【結婚してんのに未だに恋人のまんまって感じだよな。まぁあの三人全員に言えるけど】

 

(態度に変化ないのは三日月さんだけだね)

 

【あの御方はもう流石としか】




エピローグです。

これにて終わり……と言いたいですが、思い付いたらまたエピソードを書き加えると思います。

ともあれここまで読んで下さった皆さんに最大限の感謝を。

ありがとうございました!


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クリュセの守護神:設定集&裏話

※ちょこちょこ追記していきます。


【キャラクター紹介】

 

・シン

 

この作品のオリジナル主人公。三日月の戦友兼嫁。

 

本編では第一形態で初登場した。

 

メインエネルギーを核からエイハブリアクターに変えた事で鉄華団と共に活動する事が可能に。

 

第三形態で宇宙に適応、第四形態では放射線流の代わりにリアクターカノンを習得。

 

一期の前半は基本は第三形態で過ごしていたが、第四形態になり重力制御を使いこなすようになってからは第二形態で浮いた状態がデフォに。

 

二期の前半で第五形態に形態変化しバエルを模した姿になる。

 

最初はゴジラの意識と人の意識が交互に出て来て不安定な人格だったが、一期終盤新月の記憶が甦った事で安定した。

 

鉄華団は家族。仇なす存在には容赦しない。

 

たわけの艦に潜入時にアザーと分離。

 

密かに持っていた『人として鉄華団の家族の中に在りたい』という願い。

 

黒髪紫眼の少女となり三日月の近くで過ごす内にその願いを自覚する。

 

アザーと分離した事で第六形態から先への可能性は無くなっており、寿命も人として同じ長さになった。

 

 

本編後はアトラに引きずられる形で三日月ハーレム入りし、共に三日月農園を盛り立てている。

 

人とゴジラの種族の違いもチートボディで乗り越え、子を授かる。

 

名前はまだ未定、四人で話し合って決めるのだとか。

 

 

・アザー(門拓新月)

 

この作品のオリジナルキャラクター。

 

300年前の地球で生まれ映画『シン・ゴジラ』を経て阿頼耶識の研究者に。

 

そこからモビルアーマーに対抗する為のガンダムフレーム製作の為に火星へ拉致される。

 

仲間からは阿頼耶識を自分にぶち込んだ事からMrゴジラと呼ばれ、変人同士気が合ったのかアグニカ・カイエルと親友に。

 

その後ガンダムフレームを10号機まで完成させた所でモビルアーマーが襲来。

 

バエルに単身乗り込み応戦するもコックピットへの攻撃で死亡。

そこに後にシンの人格となるゴジラ細胞がシンゲツの意思を継ぎモビルアーマーを全機撃退する。

 

そのままでは死ぬので身体を形態変化しコックピットから脱出させられ、地下へと潜り眠りについた。

 

その後未来予測により幾千もの結末を見届ける。

 

シンが復活してからはシンに身体に主導権を譲り、時折ゴジラ寄りになるシンの思考を人間寄りに戻していた。

 

たわけの艦に潜入時にシンと分離。

 

人間になりたいシンの願いを叶えるべく第六形態から先の可能性を一手に引き受けている。

 

 

シンゴジラ第七形態であり、宇宙と地球と火星を自由に行き来し体内で自在に元素を創り出す。

 

エネルギーは無限になり空間制御と無限再生との能力を持つ不老不死の文字道理化け物。

 

本編後はチートスペックを生かして世界中を旅して過ごしている。

 

珠に三日月農場に遊びに来ており、三日月の子供達にとって良き遊び相手。

 

第八形態になれば世界の壁を飛び越えられるようになるので鉄血原作に介入しに行っているかもしれない。

 

 

・三日月

 

原作主人公。

 

色々主人公にあるまじき容赦が無いなどまさに『さすミカ』状態。

 

作者が鉄血で一番好きなキャラ。本当格好いい。

 

原作では一期でしか使わなかった刀をこの作品ではメイン武器として使う。

 

メタとしてはシンは第一形態→第五形態になるにつれて三日月(バルバトス)に近付いていき、三日月はテイルブレードに足の肥大化とシン(第四形態)へとお互いに近付いていっている。

 

原作より感情表現が豊か。

 

なのでアトラ、クーデリア、シンに対して割りと積極的に好意を示している。

 

またシンに対しては背中を預けられる戦友とも思っている。

 

本編後はアトラ、クーデリア、シンと結婚。

 

三日月農場を経営しつつ、鉄華団のモビルスーツ訓練もオルガに頼まれた時にやっている。

 

因みにシンが張り切ったせいで農場開始一年目にして生産量が火星一に躍り出たとか。

 

 

・アトラ

 

三日月の嫁。

 

三日月が大好きでクーデリアも大好き。

 

色々積極的に三日月に好意を示していた結果、原作と違いクーデリアより先に三日月からキスをされ、それ以降三日月といちゃつく時間が増えた。

 

本編後は三日月と結婚。

 

 

・クーデリア

 

三日月の妻。

 

三日月とアトラが大好き。

 

ドルトコロニーでの事件で一皮剥け政治家として目覚める。

 

火星独立も最終決戦のごたごたで成し遂げてしまった革命の乙女。

 

ゴジラ関係はカットしてある鉄華団の軌跡を書いた『クリュセの守護神』を出版した所大ヒット。

 

本の帯にはマクギリスの推薦文が載ったりした。

 

それ以降政治家を辞めて主に作家として活動するようになる。

 

三日月の事は好きだがハーレムは……と結婚を渋っていたが、三日月農場に泊まった日に何か色々あってそれから三人纏めて結婚。

 

 

・オルガ

 

鉄華団団長。

 

シンの存在で一番大きく運命が変わった人。

 

原作で背負っていた責任やその他諸々を纏めてシンが吹き飛ばしたので最高に格好いい団長に仕上がっている。

 

最終決戦での出来事は未だに仲間とフミタンに弄られる。

 

最終決戦後にフミタンと結婚。

 

 

・フミタン

 

元クーデリアの付き人、現鉄華団団長の妻。

 

最終決戦の時にオルガに告白。

 

その後のオルガのハジけ具合は二人の間でしょっちゅう話題になる。

 

鉄華団のオペレーターと経理を務める。

 

団長曰くベッドの中では可愛いらしい。

 

 

・昭弘

 

筋肉。本編では筋肉に目覚め筋肉で弟を救い筋肉でガンダムフレームを操縦する。

 

書くと何故か暴走するキャラ。筋肉いぇいいぇい!!

爆肉剛体ボディ。筋肉で大体全て解決する。

 

 

・ラフタ

 

原作とは違い生き残って昭弘の嫁となる。

昭弘の筋肉ネタに全然耐性が付かず事ある毎に腹筋を鍛えられている。

昭弘からの告白時にまず腹筋を誉められ乙女として少し複雑な気分になったのだとか。

 

 

・昌弘

 

筋肉弟。兄にブルワーズから筋肉で救われる。そして筋肉に見入られ【筋肉を鍛える者はまた筋肉をも鍛えられるのだ】というのを座右の銘に今日も筋トレに励む。

 

兄貴の筋肉にはまだ遠い。

 

 

・ユージン

 

鉄華団副団長。

 

決める所はしっかり決める格好いい男。

ネーミングセンスがアレなのをよくネタに使われる。

 

凰華(おうか)の格好いい名付けは鉄華団の間で『副団長の奇跡』と呼ばれているとか。

 

ツンデレ。

 

 

・ビスケット

 

鉄華団のおかん役。

 

シンの活躍で兄共々生き残った。

珠に兄がドルトコロニーからはるばる遊びに来る。

 

 

・シノ

 

流星号のパイロット。

 

最終決戦後ヤマギに告白され『まあ別に家族なんだからいいんじゃねぇの?』とあっさりOKを出す。

 

バイ。

 

 

・ヤマギ

 

流星号専属整備士。

原作と違い、シノが余裕で生き残った為無事思いを伝えられて……

現在シノと同居している。

 

 

・ライド

 

最終決戦後、成長期で一気に背が伸びイケメンに。

 

どこぞの姿がそっくりな姉妹に迫られていて、第二の三日月になるかと目されている。

 

 

・タカキ

 

妹のフーカがアストンと付き合い出した事で寂しくなり、何故か忍者修行に明け暮れる。

 

赤色の忍者コスチュームに身を包み、今日もクリュセの街の平和を守っている。

 

 

・マクギリス

 

最強のロリコン。何だかんだ成し遂げた事はデカイ人。

ギャラルホルンに代わる組織【フェンリル】を設立し日々奔走する。

 

休日はアルミリアと遊び仲を深めている。

深めすぎてて兄貴が心配するレベル。

 

お巡りさんコイツ……しまったコイツが世界の警察じゃないか!

 

・ガエリオ

 

常識人枠の苦労人。

 

戦後は責任を取って隠居する予定だったのだがマクギリスに引っ張り回され何故か新組織の幹部に抜擢される。

 

妹と親友がいつ一線を越えるのかハラハラしている。

 

ジュリエッタには尻に敷かれているのが現状。

 

 

・マクマード

 

苦労しすぎてハゲてしまったおっさん。

カツラを被り今日もテイワズを切り盛りする。

 

ゴジラの影響を一番受けたポジションでありキレられて唯一生き残っている人間でもある。

 

シンの「歳星墜とすよ?」は今でも夢にみてうなされている。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【転生 状況把握 蒲田くん】

 

シン・ゴジラを観た勢いで書き始める。

 

この頃丁度二期終盤で結末はどうなるのか悶々としていた頃。

 

その辺りでシン・ゴジラのBDをTSUTAYAで借りてきて視聴。

 

……すっごい面白かったです。

 

それでいっそ『こんなのが鉄血にいてくれたら不条理も何も吹っ飛ばせるのになー』と思いつき、取り敢えず原作にシンゴジラ第一形態をぶち込む。

 

この頃はまだろくに設定も固めていないので主人公の名前も決まっていず、転生設定もまだ生きていました。

 

本編でも書きましたがこの回でシンが【この辺何度も見返して……】と言っているのは目覚めたてでゴジラレーダーが暴走していて周囲を過剰にスキャンし、それとまだ未来予測を計算していた為です。

 

段々と話が進んでいくにつれて未来予測も停止。

 

シンゴジラが核エネルギーで動いているのは人が主体のこの作品で仲間にする際にネックでしたがこの鉄血にはエイハブリアクターというトンでも装置があるのでそれを取り込む事で解決しました。

 

シンが形態変化した時に血が余り出なかったのは300年前に一度やっていたからですね。

 

これを書いていた時はまさか定期的にうっかりを起こすキャラになるとは思ってもいませんでした。

 

 

【巨大な影】【邂逅】

 

この頃はまだシンも三日月の事を三日月呼ばわりですね。

 

(一生ついてくわ)と決めた後からずっと三日月さんと呼んでいます。

【君の名前は】

 

どうやって鉄華団と関わらせようかと考えながら書いてました。

 

名前はシン+ゴジラだからシンでしょという安直な発想で。

 

この頃はシンの設定が代わりバエルに乗っていたのではなく、人を知覚しその構造をコピーしようとして近くにいた作業員をスキャンし、ゴジラの中でデータとして取り込まれたのがシン、という設定になってました。

 

ゴジラにはちゃんとした意識が無く、人のシンにはあったので乗っ取る形です。

 

途中でエグゼイドの永夢とパラドみたく人格統合イベントでも起こそうかと思っていましたが、設定変更に伴いボツに。

 

 

【鉄華団のマスコット】

 

まだ会話が出来ないのでボディランゲージに頼る事に。

 

しかし、限界もあるので阿頼耶識の本数に応じて理解出来るように設定を変えました。

 

風呂に入っているときに、阿頼耶識のヒゲとゴジラの背鰭似てるな!と思いつきそこから阿頼耶識とゴジラの設定が生まれました。

 

 

【桜農場とチョコの人】

 

マクギリスをハッピーエンドにするのは決めていたのでシンへの対応はマイルドです。

 

原作にシンを突っ込むので精一杯で余りオリジナル展開にはなりませんでした。




この人書いて欲しい!とかあったら是非どうぞ。


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レディ・プレーヤー シン

映画観てきたのでパロディを
時系列は二期終了直後です。

《よう!別の次元で面白そうなゲーム見つけたんだ。やらねーか?》

「やる!!」




イオク撃退から始まった色んな問題も片付き、久しぶりに鉄華団揃って本部でのんびりしていた、そんなある日。

 

アザーが一つのゲームを持ち込んできた。

その名前は【Oasis】仮想VR空間で自分の好きなアバターを設定し自由に遊ぶ事が出来るゲームである。

バトルも賭け事もカーレースにスポーツ、果てはえっちな事まで何でも出来る。

阿頼耶識が着いてる人達はシステムを専用のケーブルを使ってプレイし、持ってないアトラやクーデリアは専用ゴーグルとグローブを使ってプレイする事になった。

 

休日はまだ続くので今日一日はアバター作りや戦闘練習に専念し次の日に皆揃って遊ぶ事に。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「アザーが皆に一万コイン配ってくれたから大抵のコスチュームは買えるね」

 

「どうしましょうアトラさん?」

 

「どうしよっか?……あ、このジャパンコトブキヤシリーズって可愛いいかも!」

 

「アトラさんみたいな髪型の子もいますね」

 

「うーん……私このとどろくかみなりって子にしようかな!」

 

「そうですか……なら私はこちらの金髪の迅雷って人にしましょうか」

 

「あ!それクーデリアさんと同じポニーテールで可愛い!」

 

二人ともFAGのシリーズに決めたみたいだ。

俺はまだ決めかねてるので三日月さんがどんなのにしてるか見に行く。

 

「三日月さーん、どんなのにするか決まり……まし……た……か」

「こんなの」

 

凄いこの人、パーツ組み合わせてバルバトス作ってる……!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

結局ずっと迷った結果アザーの勧めでジャパン擬人化シリーズから暁ってキャラの容姿にしてみた。

 

黒髪でちんちくりんで……確かに似てる。

 

現在の時刻は12:00、そろそろ集合時刻の筈なんだが。

 

「お待たせ」

 

バルバトスが居た。

 

「三日月さん!?何ですかそのクオリティは!?」

 

「おやっさんからバルバトスのデータ貰って頑張った」

 

「頑張ったで済むんですかそれ……」

 

凄いなぁ…………。

 

「待たせたな」

 

「その声は団長……って」

 

「どうだ?何か変か?」

 

「普段とあんまら変わらないですね」

 

「偶然似てるのが合ったんだよ」

 

(駿足の人参って名前なのが腑に落ちないがな)

 

それからどんどん集合してったものの、予想外の容姿にした面々ばかりでずっと驚かされっ放しだった。

 

 

「全員集合したみたいですけど、どうします?」

 

「バトル出来る星があるみたいだからそこに行こうと思うんだが」

 

「あー、でもアトラとクーデリアは……」

 

二人の居る方に振り向くと

 

「その心配は無用です、シンさん。お嬢様とアトラさんには私が着いて別の星で遊んで来るので」

 

こそっと耳打ちされ、

 

(安心して三日月様とデートしてきて欲しいと二人から言われております)

 

「…………分かった」

 

別にデートじゃないけどね!?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アザー曰く別の世界線の地球と繋がってるので敵は殆ど戦闘の素人、こっちは何度も死線をくぐり抜けてるので練度が違う。

 

なので初戦は苦戦したものの、アバターを動かすコツを覚えたら後は鉄華団の独壇場だった。

 

俺は錨型のハンマーを振り回して敵を吹き飛ばし、団長は敏捷値極振りのステータスを生かして槍を片手に戦場を駆け巡り、三日月さんはいつもよりはマイルドな戦い方で敵を切り捨てていた。

 

遠くでは明宏のアバターがマグマを迸らせながらパンチの連打で敵を沈め、昌弘は緑色の筋肉巨人となって敵を次々とコインの塊に変えていく。

 

別の場所ではユージンの持つ剣【Sorry Blade】から放たれるビームが広範囲の敵を消滅させ、シノは流星号と同じカラーの仮面の戦士の容姿でキックやパンチの度に派手なエフェクトを表示させながら敵を倒していった。

 

 

 

 

「「「「「いやー楽しかった!!」」」」」

 

戻ってきた全員の感想である。

 

バトルの場所に居なかったビスケット達は別の場所でカーレースをしてたらしい。

 

《楽しめたか~?》

 

「ああ、ゲームだが身体も動かせてトレーニングになるな!」

 

「バーチャル動物園って場所見たこと無い生き物が沢山居て凄かったよー!!」

 

「あの剣マジでカッコ良かったな……」

 

皆からはかなり好評みたいだ。

 

それから月に一度くらいに皆で集まって【Oasis】をプレイするようになったりした。

 

後でアザーから聞いた話だと、俺達は一ヶ月に一度現れる謎の凄腕プレイヤー集団って言われてたらしい。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そんなある日、ふとユージンが気付いた。

 

「なあオルガ、あの上にあるスコアボードって何だろうな」

 

「さぁ?分からん」

 

《あれか?あれは【イースターエッグ探し】って言ってな、今は第2の鍵が手に入れられてるみたいだが、3つの鍵を手に入れたらこの【Oasis】の全てを創造者のハリデーって奴から貰えるってものらしいぜ》

 

「へー、そうなんだ」

 

「三日月さん興味あります?」

 

「別に、経営なら俺の農場だけで十分だよ」

 

 

そんな事を言っていると、突然【Oasis】上のモニターが全て一人の少年のアバターを映し出した。

 

第3の鍵が眠る場所、そこをある企業が鍵を得る為に封鎖したと。

奴等に【Oasis】は渡せない。

手を貸してくれ、と。

 

 

これまでこのゲームで遊んできて彼の言葉に響かない人は居ないだろう。

 

「どうするよオルガ?」

 

ユージンがオルガに尋ねる。

 

「ふっ……分かってんだろユージン」

 

「まぁな」

 

団長が俺達の方に振り向いて告げる。

 

「まぁ部外者の俺らがでしゃばる事じゃないのかもしれねぇが……このゲームが好きっていうアイツの気持ちを応援してやろうじゃねぇか」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

シノが早速表示枠を操作し武装すると同じく装備を整えた面子と先を争ってポータルへと向かう。

 

他の面々も次々とポータルへと準備を整え向かっていく。

 

俺も三日月さんと一緒に行こうとすると、アザーに呼び止められた。

 

《ほれ、三日月はこれ、シンはこれアイテムに追加しとけ》

 

「巨大化……成る程、分かった」

 

「こっちは……初期設定の球?」

 

《少し改造してあるがな。それ使って暴れてやれ、他のプレイヤーがそれを使えば現実世界の身体と同じ容姿になるだけなんだが……》

 

「……なるほど、確かに俺にぴったりだね」

 

《だろう?》

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ポータルから抜け出ると、既に辺りはパーシヴァルの呼び掛けに応えて集まったアバターで溢れ返っていた。

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

誰がそう叫んだのか。

 

皆が謎の熱気を孕みながら敵の居る場所に向けて走り出した。

 

程なくして出てきた敵のIOIの兵隊と衝突し戦闘が勃発する。

 

「あれがパーシヴァルが言ってたシールドか」

 

「シン、どうするの?」

 

アトラが訊いてくる。

 

「ふっふっふ!お任せあれ!!」

 

アザーから貰った球を起動する。

 

可愛らしい少女の外見(アバター)が崩れ去り、嘗ての人類の敵が仮想空間上に現出した。

 

【Oasis】史上最大、規格外の大きさと攻撃力を持つアバターである。

 

空想世界とはいえ嘗ての姿に戻った景気づけに衝撃波が発生する程の音量で吼えてみた。

 

戦場に突如現れた怪獣王(ゴジラ)の存在に敵味方の動きが止まる。

 

その隙に体内のリアクターを循環させ、収束させた最大火力をシールドに向けて解き放つ。

 

何分照射していたのだろうか、本来ならば内側から解除しない限りは10万年は持つと言われていたシールドはほんのわずかな時間でダメージの限界量を迎えて崩壊した。

 

それと同時に俺の方もシステムエラーで元の暁のアバターへと戻ってしまった。

 

「まぁいいさ、後は任せた!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「任された!」

 

「凪ぎ払え!!幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!」

 

「はぁぁぁぁぁああああ!!」キメワザ!!

 

「これで!!」ファイナルベント

 

次々と敵の兵隊は倒れていく、しかし次々と涌いてきてキリがない。

 

「おい!前の方何かメカのシンみたいなのとモビルスーツがバトってるぞ!?」

 

「オルガ!あのパーシヴァルともう一人の救助に向かって!」

 

「分かったぜビスケット」

 

オルガが向かおうとした瞬間三日月がオルガの腕を掴んだ。

 

「ミカ?」

 

「俺も行く」

 

「分かった、やってやるよ……!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アイアンジャイアントは地に伏したまま、ダイトウのガンダムは相手のメカゴジラに致命傷を与えたものの制限時間を過ぎて戻ってしまった。

 

「パーシヴァル!!避けて!」

 

「無茶言うなって……!」

 

相手のミサイルが発射されてあわやこれまでといった、その瞬間。

 

「余波に巻き込まれる前に離れるぞ」

 

いつの間にか車の屋根に乗っていた男がドアを切断して俺達を脇に抱えると、猛烈なスピードで走り抜けてミサイルの範囲から逃れる事に成功した。

 

「やっちまぇ!!ミカァァァァァ!!!」

 

 

見た目ニンジンのその男が叫ぶとミサイルの黒煙を振り払い戦場に新しいガンダムがその姿を現した。

 

Aswg08、ゴジラより産まれたガンダムフレームの八号機【ガンダム・バルバトス】である。

 

「何!?何だお前は!?」

 

戸惑う相手にバルバトスが飛び掛かり、メイスをがら空きの胴体に叩き付ける。

 

「ぐおぉおお!?」

 

たたらを践むメカゴジラの頭部にバルバトスの手刀が突き刺さり、コックピットを引きずり出し、そして相手に何も言わせる事なく握り潰した。

 

「流石だぜミカ!」

 

「パーシヴァル!アルテミス!」

 

「二人とも!」

 

ダイトウとショウトウが追い付いてきた。

 

「ダイトウ!無事だったのか!」

 

「ああ、あの見たこと無いガンダムのお陰でな」

 

「よし、じゃあお前ら、あの橋を渡す。俺に掴まれ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そこから先は俺達の出る幕では無かったので素直に撤退する。

 

幸いパーシヴァルが中継してくれてたので誰が勝者になったのかは全員が知る事が出来た。

 

現在、パーシヴァルは仲間達とハリデーの理想を継いで【Oasis】の運営をしているらしい。

 

 

 

 

俺達はと言えば……。

 

 

《悪い、三日月とシンに渡したアイテムせいで歪みが出てちょっと【Oasis】に繋げなくなっちゃった》

 

何となくあの戦いでやりきった気持ちになってた面々なので誰も文句言う事なく【Oasis】の事は思い出の中にしまわれてこの話は終わりになったのであった。




誰がどんなアバターだったのか設定集

オルガ アホ毛の生えたアキレウス
三日月 バルバトス
アトラ FAGの轟雷
クーデリア FAGの迅雷
シン 艦これの暁
アザー ヴェノム
フミタン シドニアのつむぎ
明宏 仮面ライダークローズ
昌弘 キン肉マングレート
ユージン fateのジークフリード
シノ 仮面ライダーエグゼイド
ヤマギ 戸塚彩加
ビスケット シルバークロウ
ライド 仮面ライダーゾルダ
タカキ アカニンジャー


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