【遊戯王ARC-V短編】終わってしまった反逆 (生徒会副長)
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【遊戯王ARC-V短編】終わってしまった反逆

遊戯王ARC-V最終回を視聴した末に、反逆組を想って筆を取ったら一千字を無事に越えましたので投下します。鬱注意です。救いはありません


 夜の帳が降りた部屋を覗いたが、明かりを灯そうとは思わなかった。

 その部屋に誰もいないことから、目を背けたかったから……。

 

ーー※ーー

 

「おかえり、柚子……!」

「私は信じてたよ……。遊矢なら、きっと皆を笑顔にできるって……」

 

 あの日、彼女が帰ってきた。レイという俺が何も知らない少女から分かれて出でて、瑠璃という俺が全てを知っている妹と同じ顔をした少女、柚子が帰ってきた。

 

「やったー!柚子が帰ってきた!」

「おかえり、柚子お姉ちゃん!!」

「柚子うううう!! 本当に、本当に帰ってきたんだな!!」

 

 皆が笑い、皆が祝った。大切な人が帰ってきたのだから当然だろう。

 

(瑠璃……!)

 

 俺もその輪の中に入ろうとして……その脚は止まってしまった。

 柊柚子を瑠璃と呼んで駆け寄ったあの日を思い出したのだ。

 たとえ柚子の中で瑠璃が生き続けているのだとしても……。

 

(お前の言う通りだよ、ユート。彼女は……瑠璃ではない)

 

 柊柚子にはあんなにたくさんの仲間が、暖かい家族が、未来を生きていく世界がある。

 瑠璃として、ユートやアレンの元へは、俺という兄の元へは、14年生きてきたハートランドへは、帰るまい。

 

「は、ハハハ……」

 

 戦場と化したハートランドで枯れ果てた涙は出ない。周囲の祝いと喜びに抗えず、俺にはもう笑うことしか出来なかった。

 

「おっ! 黒咲も思わず笑っちまったか!」

「仕方あるまい! エンタメデュエルに敵うものなし!!」

「うん! やっぱり笑顔が一番だよね!!」

 

 ああ……その通りさ。

 

 反逆なんて闇がーー。

 

 笑顔という光に勝てる道理などなかった!!

 

ーー※ーー

 

 その部屋ーー瑠璃の部屋には、やはり誰もいない。瑠璃が使っていたカードも、瑠璃が着ていた服も、瑠璃が読んでいた本も失われた。窓は割れ、壁紙は剥がれた、荒れ果てて殺風景な一室。

 ただ1枚ーー。俺とユートと、その肩を抱く瑠璃の3人が映った写真だけを遺して。

 もうこの写真は二度と撮れないのだろう。ユートと瑠璃が、遊矢と柚子の中で生き続けていくとしても、ユートの眼差し、瑠璃の髪……それらの色彩はもう戻ってこないのだから。

 

『隼! 鉄の意志と鋼の強さはどうした! 俺達の反逆はこれからだ!!』

『何ヘラヘラ笑ってるのよ兄さん! 兄さんは兄さんなんだから、キリッとカッコつけてくれないと駄目なんだから!』

 

 今の俺に、二人がそんな言葉をかけてくれたら、どれ程救われたことだろうか。

 

 ユート、瑠璃……。

 

 もし許されるなら……。

 

 3人でずっと……反逆を……続けたかった……。

 



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