咲き晴れ! (アウトサイド)
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「幸せの、重み!」

――大星淡の場合「おこた」

 

「ねぇ、きょーたろ。おこたを出したのはいいけど、これちょっと小さくない?」

 

「仕方ないだろ、曲がりなりにも麻雀部なんだし、そう大きいもので場所取りできねーよ」

 

「ふむふむ、なら仕方ないね。んじゃー、ほいっ」ポンポンッ

 

「……何してんだ?」

 

「だからー、きょーたろも入りなよー」

 

「お前、さっき小さいって言ったばっかりだろ」スタスタ

 

「とかなんとか言いつつも、来てくれるきょーたろってば、やっさしー♪」

 

「うるせーよ。ていうか、本当に小さいな……これ、絶対一人暮らし用だろ? むしろ、なんでこんなものがウチの部室にあるんだよ?」

 

「菫曰く、テルーが持ってこさせたものらしいよー」

 

「何をやっているんだ、あの人は……」

 

「んー、きょーたろ、足じゃまー」

 

「仕方がないだろ、俺は淡よりも大きいんだから」

 

「なんだとー、私が小さいと申すか!」

 

「どこのキャラだよ、それ。ったく、仕方ねぇなぁ」ダキッ

 

「あわわっ! ちょっ、きょーたろ、なんで後ろから抱き着いてんの!」

 

「んー? こうすりゃ、俺もお前も温かい。その上、癒しが手に入る。一石二鳥だろ?」

 

「い、癒しって……きょーたろは、私を抱きしめると癒されるの?」

 

「おう、バリバリ癒されてっぜ」

 

「あわー♪ なら仕方ないね♪」

 

 このあとめちゃくちゃ癒された。

 

 カンッ

 

 

――竹井久の場合「暑い秋」

 

「あっついわねー。なんで十月、それもここ最近涼しかったのに、いきなりこうも暑くなるのよー」

 

「よく言う異常気象のせいじゃないっすかー? ていうか、部長。胸元開いて仰ぐの止めてもらえませんか?」

 

「んんー? 何よ、京太郎のくせに、一丁前に顔を赤らめちゃって」ニヤニヤ

 

「いやいや、京太郎のくせにってどんな罵倒ですか!? ていうか、曲がりなりにも女の子なんですから、そういうのは止めてくださいって言ってるんです!」

 

「ちょっ!? 曲がりなりにもってどういうことよ! これでも立派に美少女やってるんだからね!」

 

「……いや、部長。自分で自分のこと美少女っていうのは、さすがにどうかと……」

 

「……奇遇ね。私も自分で言って少し恥ずかしくなったわ」

 

「まあ、部長が美少女ってのは事実ですけど」ボソッ

 

「~~~~~~ッ!?」ボンッ

 

「あっ、聞こえました? って、痛いですっ! 痛いですってば部長! 照れ隠しが痛い。あと前! 前がはだけてます!」

 

「くぅ~~~~ッ! 見、る、な!」ポコポコッ

 

「あーもうっ! 仕方ないなぁ!」ガシッ

 

「キャッ! な、なによ……ていうか、近いってば!」

 

「って、暴れないでください! せっかく抑えたんですから、暴れると――あぶなっ!」

 

「サ、サンキュー……倒れた先がベッドで良かったわー」

 

「良くはないでしょう、下手したら部長が頭打ってたかもしれないんですから……」

 

「で、健全男子の京太郎としては、この二人でベッドに倒れ込むという状況どうする?」カァー

 

「……どうって……どうしましょう?」

 

「あいっかわらずヘタレねぇ」ヤレヤレ

 

 このあとめちゃくちゃからかわれた。

 

 カンッ

 

 

――宮永咲の場合「膝枕」

 

「……」ナデナデ

 

「んー…………」ゴロゴロ

 

「誰も来ないなー」

 

「誰も来ないねー」

 

「……というか、何故に俺は咲を膝枕しているのであろうか……?」

 

「京ちゃん、愚問だね。そんなの、そこに京ちゃんのお膝があるからだよ!」キリッ

 

「膝枕されてる状態でキメ顔つくられてもなー」ナデナデ

 

「~~~♪」スリスリー

 

(かわいい)

 

「京ちゃん、今私のことかわいいって思ったでしょ?」

 

「うぇ!? なんで分かった!」

 

「ムフフー、何年幼馴染をやっていると思ってるの? それくらいお見通しだよ。それに、京ちゃんってば、結構分かりやすいし。麻雀やってるときでも、ときどき顔に出てるよ?」

 

「おー……まさか、俺がそんなに分かりやすい奴だったとは……そうか! だから俺は麻雀で負けてるのか!?」

 

「いや、それは単純に京ちゃんが弱いから」

 

「ぐぉっ! なかなかに鋭いフックじゃねぇか……」ガクガク

 

「ちょっと、揺れると寝心地が悪くなるんだけど?」

 

「お前、なんか今日俺に厳しくね?」

 

「フーン、和ちゃんの体操服姿に見とれていた京ちゃんなんて、知りませーん」

 

「おまっ、あれは仕方ないだろ! だって、あんな凶悪なおもちしてんだぞ! 見ないわけにはいかなイテテッ! こら、足を抓むな!」

 

「京ちゃんは、もう少し幼馴染に尽くすべきです」

 

「これ以上どうしろと……」

 

「罰として、京ちゃんはみんなが来てもこのままの刑に処します」

 

「はいはい、分かりましたよお姫様」

 

「うん♪」

 

 このあとめちゃくちゃ膝枕した。

 

 カンッ

 

 

――高鴨穏乃「水遊び」

 

「うひゃひゃーい!」バッシャーンッ

 

「おーい、穏乃! いきなり水の中に飛び込む前に、軽い準備体操くらいしろ! ていうか、ジャージのまんま入ってんじゃねーよ!」

 

「へいきへいきー! 山の子風の子の私が水着の準備を怠るとで思ったかー!」

 

「いや、山の子風の子なのに水着かよ! ……つーか、お前何も持ってきてないけど、着替えはどうした?」

 

「……あ」

 

「まさか、本当に忘れているとは……叔母さんに着替え持っていけって言われてよかったよ」

 

「おー、サンキュー京太郎! と、いうことは私は存分に遊ぶことが可能ということだ! ってなわけで、京太郎もこっちに来なよー。この季節の沢は気持ちいいよー」

 

「知ってるっつーの。おぉっ、冷たっ!」

 

「ふっふーん、隙あり!」バシャッ

 

「うおっ、てめっ、いきなりは卑怯だぞ!」

 

「油断大敵って奴だよ! わぷっ!」パシャッ

 

「そしてこれが反撃という奴だ!」

 

「ムー、やったなぁー!」バシャンッ

 

「うわっ、お前、細っこいくせに水しぶきでかすぎんだろ!」

 

「山に鍛えられたからね!」

 

「だから山と水は関係ねぇから!」

 

 このあとめちゃくちゃ遊んだ。

 

 カンッ

 

 

――宮守女子高校「雪」

 

「うぉー、相変わらず雪がちょーすごいよー」キラキラ

 

「長野でも積もりますけど、俺がいたところはそうでもなかったですからねー。この景色は結構新鮮です」

 

「……ねぇ、トヨネと須賀の間を私が歩くってどうよ?」ムー

 

「どうって言われても……親子?」スットボケ

 

「言った! 塞が言ってはいけないことを言った!」フンガー

 

「迷子になるとダルイから、手でも繋げば?」ダルー

 

「家族!」カキカキ

 

「おおっ、見事な大人と子供の身長差」

 

「身長差言うなー!」

 

「あっ、でもそれなら私と京太郎くんはふーふってことだね!」

 

「訂正。高校生と小学生」

 

「断固阻止!」

 

「えー!」

 

「親子扱いは嫌だけど、小学生扱いでもあんま変わんないんじゃ……いやいや、とにかく夫婦発言禁止ー!」

 

「疲れた。須賀おぶって」

 

「はい!」

 

「ダーメ、シロは自分で歩く。須賀くんも甘やかさない」

 

「うぇー」

 

「甘やかしてるつもりないんだけどなー」ポリポリ

 

 このあとめちゃくちゃ甘やかした。

 

 カンッ

 

 

――原村和「おこた」

 

「な、なんでこんなことに……」

 

「そりゃああんた、麻雀で負けた罰ゲームよ」ヒラヒラ

 

「だ、だからってなんで須賀くんと一緒に炬燵に入ることになるんですか! しかも私が須賀くんの膝の間に収まるなんて……」

 

「あー、和? 嫌なら普通に断ってもいいんだぞ?」

 

「あっいえっ、嫌というわけでは……むしろ、嬉しいっていうかなんでもありません! ああああの、私重くはありませんか?」

 

「いや、和が重いっちゅーことはないじゃろ。仮に重かったとしてもそりゃあ胸のせいじゃけぇのぉ」

 

「幸せの、重み!」シャキーン

 

「染谷先輩、いきなり何言ってるんですか! す、須賀くんも変な風に動かないでください! そ、その……当たってしまいますので……」

 

「ほほう、和には須賀くんのどこが、どこに当たっているのかしらねー?」ニヤニヤ

 

「あうあうあうあう」シュポー

 

「こりゃ部長、ええ加減にせんかい」

 

「いや、言い出しっぺ染谷先輩でしたよね? っておい、和大丈夫か?」

 

「うぅー! だから須賀くんのナニがナニして、私のナニにナニのようにナニなんですよ!」

 

「うぉーい、和! 言わなくていいから、むしろお願いだから言わないで! って熱っ、なんか和、熱っ! って、部長も先輩も笑ったり呆れてないで助けてくださいよー!」

 

 このあとめちゃくちゃ顔が赤くなって気まずくなった。

 

 カンッ




以前削除した作品の再掲です。
なお、更新速度は気まぐれによりますので、平気で長期放置します。


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(怒るとこソコー!?)

――東横桃子の場合「昼食」

 

「京さん京さん、お昼っすよ! お弁当の時間っすよ!」

 

「お、おう。そう慌てることもないだろう?」

 

「だって、一緒にお弁当食べるんすよ? そりゃ嬉しくなるに決まってるっす。テンアゲって奴っすね!」

 

「ふむ、ではそんなモモには俺が作ったお手製弁当をあげよう」

 

「わーい!」パチパチー

 

「ほい、お手拭き」

 

「ありがとうっす! わー、サンドイッチすか。洋風のお弁当なんて、ピクニックくらいでしか見れないと思ってたっす」

 

「鮮度は安心しろ。ついさっきまで家庭科室の冷蔵庫借りて入れておいた奴を、作っただけだからな」

 

「……この場合、なんでさも当然のように家庭科室の冷蔵庫を使っているのか、聞かない方がいいっすか?」

 

「いや、あの冷蔵庫俺のだし」

 

「なんで学校に自分専用冷蔵庫があるんすか!?」

 

「ほら、俺昔執事の修行をしてたからさ」

 

「それで納得しろというのも無理な話っすよ!? なんなんすかっ、執事って!?」

 

「まあまあ、そういう話は置いておいて。ほら、食べようぜ?」

 

「そうっすね。では」ア~ン

 

「何してんだ?」

 

「もー、鈍いっすねー。せっかくだから食べさせてほしいんすよ! ほら、ア~ンって感じで」

 

「ほれ」

 

「あむあむ、おいしいっす♪ でも、京さんも少しくらい恥じらってもいいもんすよ? なんというか、あっさりしすぎている気がするっす」

 

「て言っても、こういうのはもう日常の一部になってるから。愛しく思うことはあれど、今更恥ずかしがることもな~」

 

「ムー、確かにア~ンなんて数えきれないほどやって来てるっすけど……」

 

「そんかわり……」チュッ

 

「――ッ!?」

 

「こ、こういうキスみたいなのはまだ恥ずかしいだろ?」カァーッ

 

「は、はいっす……」カァーッ

 

 このあとめちゃくちゃアーンしまくった。

 

 カンッ

 

 

――新子憧「ファッション」

 

「そういや須賀ってさ、私服どんな感じなの?」

 

「どんな感じって言われても……まあ、普通だよ。ていうか、いきなりどうした?」

 

「いやさ、あんたって背が高いし、地毛が金色だし、ヒョロいわけでもないからどんな服着てんのかなーってね」

 

「言っとくけど、現役JKのお前のお眼鏡にかなうようなファッションセンスなんてしてねぇからな?」

 

「別にそこまで期待はしてないわよ。ただ、見た目ヤンキーっぽいからジャラジャラとした恰好してないか心配になっただけ」

 

「お前、金髪が全員ヤンキーだと思うなよ!? あと、俺がそんなイケイケな恰好するように見えるのか?」

 

「付き合いがある今だからこそ言うけど、初対面のころのあんた、あたし含めてみんなから警戒されてたわよ?」

 

「うぉー、知りたくもなかった衝撃の事実!」ガーン

 

「そうね。あんたの鈍感ゆえのグイグイ来る性格が幸いして、今があると言っても過言じゃないわ」

 

「くっそー、そんなに目立つか、この金髪? いっそ黒に染めるかな……」

 

「あーいや、その、そこまでやる必要はないんじゃないかしら?」

 

「? どうしてだ?」

 

「あっ、いやっ、別に、あ、あんたの金髪、あたしは嫌いじゃないし……てゆーか、その、ちょっとカッコイイし」ボソッ

 

「おーなんつーか、あんがと」テレテレ

 

「ふきゅっ!? き、聞こえた!?」

 

「いや、今部室に二人しかいない状況で聞こえないわけがないだろ? そういや、お前の方は私服どんな感じなんだよ?」

 

「あたし? んー、まあ流行には気を付けてるけど、学生だからあまりお金はかけてないわね」

 

「ファッションと言えば、穏乃のジャージオンリーはなんとかならんものだろうか? さすがに女子としてどうなんだ、アレ」

 

「……言わないで。あれでも須賀が来てから多少は大人しく……なってないわね。今でも山の中を駆け回る野生児やってるわ、あの子」

 

「まあ、健康的なのはいいことだよな……」

 

「……ねぇ、今度の休みにシズを連れて買い物に行かない? いい加減、一着くらいあの子もそういう服を持つべきなのよ!」

 

「いいぜ。ふむ、穏乃に似合う服か……無難に白いワンピースとかどうだろ?」

 

「ああ、いいかもしれないわね! じゃあさじゃあさ、こんな服はどうかしら?」

 

 このあとめちゃくちゃ穏乃談義で盛り上がった。

 

 カンッ

 

 

――石戸霞「薄い本」

 

「京太郎くん?」

 

「……はい、分かってます」セイザー

 

「私、言ったわよね。こういう本は、小蒔ちゃんの教育に悪いから止めてくださいって」ウスイホンー

 

「いや、あの、一応俺も健康的な男児ですので、その、そういう欲求があるので……お願いですからマジで返してください! それ、本当にお気に入りだったんですよ!」ドゲザー

 

「……確かに、京太郎くんにだってそういう欲求があることは分かっています。ですが、どうしても納得のいかないことがあるんです」

 

「と、言いますと?」

 

「京太郎くん、あなたおもちが好きなのよね?」ジロッ

 

「えっと、はいそうです……というか、なんで知って……」ビクビクッ

 

「ええ、知っていますとも。普段から私や春ちゃん、時には小蒔ちゃんのおもちをそっと眺めていますから。言っておきますけど、女の子はああいう視線には敏感なんですよ?」

 

「す、すみません! つい、目が行ってしまって……今後は気を付けますので……」ズーン

 

「いえ、むしろ傾向としてはいい方向です。殿方のそういう願望には私も多少の理解は持っています。というよりも、初美ちゃんのような体型の子に目が行くよりは健全だと思っています。しかし、論点はそこではないのです」

 

「え、えーっと……では、なんで霞さんは怒っているんですか?」

 

「京太郎くん、あなたさっき、この本がお気に入りだと言いましたね?」

 

「は、はい!」

 

「私も先ほどこの本の内容を拝見しました。そして、思ったのです。この本に描かれているおもちは普通のサイズだと。京太郎くん? あなたのおもちへの情熱はどこへ行ったのですか!?」

 

(怒るとこソコー!?)ガーン

 

「だいたい、京太郎くんはおもちへの情熱が少し足りないの! 終いには、私たちのおもちだけでなく、初美ちゃんの着くずれした恰好や巴ちゃんのうなじにまで目が行く始末!? この結果を嘆かないはずがないでしょう!」

 

「いやいや! 初美先輩の着くずれした格好は視線が行かない方が男として異常ですよ!? 俺、最初にあの人見たときに肌の露出がおかしいことにちゃんとツッコミましたよね!? それに、巴先輩だってあんな綺麗な人に目がいかないわけないじゃないですか!?」

 

「ほーん、では京太郎くんのタイプは私たちの中の誰ですか?」

 

「え゛」

 

「二度は訊ねません。さぁ、答えてください」ニッコリ

 

「ええっとですね、霞さん」アセアセ

 

「はい、何でしょう?」

 

「み、皆さんお美しい方なので、俺にはその……分不相応と言いますか、高嶺の花じゃないかなーなんて思ってたりするので、その、タイプとかそういうのは……」

 

「はぁ、分かりました」

 

「分かってくれましたか!」パァーッ

 

「はい、京太郎くんに再教育というものが必要なようですね?」ジリジリ

 

「さ、再教育? ていうか霞さん、あの、なんで女豹のようなポーズで俺ににじり寄って……」

 

「ですから、教育です。おもちの素晴らしさを見失ってしまった京太郎くんには、私の体を使って教え込む必要が――キャァッ!?」バサァッ

 

「フー、なんとか確保したのですよ。さぁ、現行犯で逮捕です」

 

「ちょっ、初美ちゃん!? 今、京太郎くんに大切なことを教えてようと思っていたのに!」

 

「何が大切なことですか、奥手でヘタレのくせに色仕掛けとは卑怯としか言えません。どうせ、京太郎がからかわれて最後は霞がヘタレてオチがつくに決まっています。さぁ、お説教の時間ですよ」

 

「ちょっ、まっ、京太郎くーん! ていうか、初美ちゃんあなたどこにそんな力が!?」

 

「恋する乙女は強いという奴です。まったく、ヘタレな自分から共同戦線を張ろうとか言った癖に、抜け駆けですか? さぁ、こっちに来るのですよー」

 

「うわぁーん!?」

 

「……………………俺は?」

 

 このあとめちゃくちゃ放置された。

 

 カンッ



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「うおっ、あぶなっ!」

――国広一「ファッション」

 

「一さん、お願いですから普通の服を着てください!」

 

「だからホラ、着てるじゃん、服」スケー

 

「それが服と呼べるかぁー! いや、マジメな話ですけど、一さんて露出の趣味とかありませんよね? 俺、前からそこらへんのこと心配だったりするんですけど……」

 

「ハッハッハー、京太郎くんは怒られたいのかな? ボクに露出の趣味があるわけないでしょ!」

 

「だったら、お願いだから普通の服を着てください! 隣に立つ俺まで変な目で見られそうなんですよ!」

 

「えー、そんなに変かなー? いいファッションセンスしてると思ってるんだけどなー?」

 

「奇抜で大胆な意匠がファッションだというなら、これ以上なくセンスあるんでしょうが、さすがにその恰好は変な趣味があるのではないかと邪推してします!」

 

「いやいや、でも思い出してみるんだ、永水の副将の子を。あの子だって、中々に罰当たりな巫女服の着方してると思わないかい?」

 

「あの恰好が罰当たりだと分かっているのに、なんで一さんはそんな恰好してるんですかー……」ガックシ

 

「いや、だってさー、よく考えてもみてよ。ボクに京太郎くんの言う普通の恰好なんて似合わないだろう? そういうのは、かわいい女の子がやるべきなんだよ。うん、だからボクには似合わない」ウンウン

 

「? 一さんは普通に、というよりも普通以上にカワイイと思うんですが?」

 

「ッ!? ほ、ほー京太郎くんもそういうお世辞が言えるようになったんだね。いやはや、ボクとしたことが不覚にもドキっとさせられたよ」ヤレヤレ

 

「別に俺はお世辞で言ったわけじゃありませんよ。だから、俺が断言します。一さんはすごくカワイイです! 確かに奇抜なファッションというのもいいですが、普通の女の子の洋服だって似合うはずなんです! というか、似合わないわけがないでしょう!?」

 

「い、いや、熱く語ってもらってるとこ悪いんだけど、えっ、お世辞とかそういうのじゃないの? ボクってその……か、かわいいかな?」テレッ

 

「はい! もちろんです!」

 

「へ、へー。じゃ、じゃあいじわるな質問。透華とボク、どっちがかわいい?」

 

「ふむ、仕えている身ですがかわいさでいうならば、一さんに軍配が上がるはずです。透華さんの場合、かわいいというよりも綺麗と言った方が正しいでしょうから。こう言ってはなんですが、女性としての魅力の方向性が違うような気がします」

 

「ふーん、透華は綺麗でボクはかわいい……か。うん、それならいいよ。もし、ただ単純に透華よりもボクがかわいいなんて言ってたら、冗談やお世辞でもボクは怒っただろうけどね」

 

「あはは、なんとか回避できてよかったです」

 

「じゃあ京太郎くん、今度存分に執事スキルを発揮してボクをコーディネートしてくれないかな?」

 

「俺でいいんですか?」

 

「うん、京太郎くんがいいんだよ♪」アハッ

 

 このあとめちゃくちゃ一緒に仕えた。

 

 カンッ

 

 

――清水谷竜華「膝枕」

 

「京太郎」ヌラリ

 

「うわっ、な、なんすか竜華さん。いきなり背後から話しかけられると驚くんですが」

 

「なぁ、怜に膝枕したてホンマか?」

 

「あ、あー前に竜華さんが進路指導を受けてるときに、たまたま」

 

「う」ジワァ

 

「う?」

 

「ウワァァァァァンッ!」バァーッ

 

「って、うわっ! なんで突然、泣きだしてるんですか!? さすがに脈絡なさすぎでしょう!」

 

「怜が膝取られたぁー!」

 

「なんなんですか、その膝取られたーって謎表現……」

 

「寝て取られることを寝取られゆーんなら、膝枕で取られることを膝取られゆーんや!」

 

「さすがに聞いたことがない。というか、まるで恋人が取られたみたいな言い回しですね……」

 

「うっさいわボケェアホォ、怜への膝枕はうちのもんやったんやでー!?」グスッ

 

「なるほど、だから怜さんあんなことを……」フム

 

「なんや、怜がなんか言っとったんか?」

 

「ああ、俺の膝は筋肉質でやっぱ膝枕ゆーたら竜華やなーって言ってましたよ? 実際、俺が膝枕したのもそのときだけでしたし」

 

「ホ、ホンマか? ホンマにそうゆーとったんか?」

 

「はい、間違いないです」

 

「そっか、そないならええねん。いやー、早とちりしてスマンかったなー。でも、ほいなら男の子の膝枕ってのには興味あんなー」

 

「試してみます?」

 

「ええの?」

 

「はい、竜華さんみたいな綺麗な方を膝枕できるというのは、役得ですので」

 

「ふんふん、まあこの際お世辞には目ぇつぶって、大人しく膝枕されたろか」

 

「別にお世辞じゃないんですけどねぇ」

 

「ええから、さっさと膝貸しぃ」

 

 その後。

 

「京太郎、今日も膝貸してやー」ハマッタ

 

「うわぁーん、竜華が膝取られたー」ビィーッ

 

「ホントめんどくさいな、アンタら!?」

 

 このあとめちゃくちゃ三人で膝枕しあった。

 

 カンッ

 

 

――宮守女子高校「スガ分」

 

「……」ギュー

 

「ねぇ、胡桃はなんで須賀くんの背中に抱き着いてるの?」

 

「んー、よく分かんないけど、スガ分を補給してるんだってー」

 

「スガブン?」

 

「安心して、エイスリン、私も一切分かんないから。ていうか、須賀くんは須賀くんでどうしてあの状態で教本に集中できるのかしら?」

 

「須賀は一度集中するとすごいからねー」ダルーン

 

「とりあえず、あんたはその集中力とやる気を学ぶべきだと思うわ」

 

「うーん」

 

「シローどこ行くのー?」

 

「私もスガ分を補給しに」

 

「へ?」

 

「あっ、じゃあ私も行くよー」

 

「ワ、ワタシも!」

 

「えっ、ちょっ、結局スガ分ってなんなのよ! あっ、ズルい私もくっつく!」

 

「うぷっ、トヨネなんで須賀ごと私を抱きしめてるの? って、シロ! さすがに前からくっつくのは大胆過ぎないかな!? エイちゃんも塞も見てないで助けてよー!」

 

「いや、見ててあれだけど、よくあの状態で集中してられるわね……ていうか、本当に読めてるのかしら、アレ」

 

「うぅ、シロ、大胆」カキカキ

 

「いや、エイスリン? さすがにこの情景を描写するのはやめてあげて……」

 

「うふふー、ボッチじゃないよー」

 

(抱き着くのダルイなー。須賀が抱きしめてくれればいいんだけど)

 

 このあと(京太郎が気づくまで)めちゃくちゃ補給した。

 

 カンッ

 

 

――清澄高校「呼び方」

 

「なぁ、そろそろ部員同士の親睦を深めるのもいいんじゃないかと思うんだじぇ」

 

「唐突に何を言っとるんじゃ、お前は」

 

「そうですよ、ゆーき。入部したてのころならいざ知らず、今更親睦を深めてどうするんですか?」

 

「いやいや、これは大事なことだじぇ? インターハイも終えて来年に向けるための気持ちを切り替えるために、一層親睦を深める必要があるんだじぇ!」

 

「まあ、言ってることは分からないでもないけど……それで? 具体的にはどうするの、優希ちゃん?」

 

「よく考えてみるべきだじぇ。確かに全国での戦いで女子部員の絆は一層深まった。でも、清澄高校麻雀部には女子ではないメンバーもしっかりいるだろ?」

 

「それって、須賀くんのことですよね?」

 

「まあ、確かに京太郎も部員の一人じゃし絆を深めるんゆーなら、別にわしとしても構わんが。じゃけーの、京太郎だって応援とはいえ、わしらと全国に行った身じゃぞ? 同じくらいの絆があっても不思議ではなさそうじゃがな」

 

「確かに、染谷先輩の言う通りだじぇ。京太郎もしっかりとこの麻雀部のメンバーであることには違いない。でも、より絆を深める意味でちょっと試したいことがあるんだじぇ!」

 

「試したいこと? 京ちゃん相手に何をするの?」

 

「それだじぇ!」バンッ

 

「な、何!?」

 

「呼び方だよ。私と染谷先輩は京太郎って呼び捨てにしてるのに、部長とのどちゃんは未だに苗字呼び。咲ちゃんは幼馴染であるがゆえにちゃん付け……ここいらで呼び方を一新させてみるのはどうだ? 例えば、のどちゃんと咲ちゃんが京太郎を呼び捨てだったり、下の名前に君付けしたり」

 

「ほう……まあ、咲の呼び方はともかくとして、部長と和が呼び方を変えてみるちゅーのはありかもな」

 

「えっ!?」

 

「いや、よう考えてみい。おまんらは同級生じゃろ? それに同じ麻雀部としてともに戦った仲じゃ。ええ加減、下の名前で呼んでもええ時期じゃないか?」

 

「まあ、確かに須賀くんにはとてもお世話になりましたし、特に異論はありませんが……でも、名前で呼ぶって……その、ちょっと恥ずかしい気も」

 

「う、うん、私も京ちゃんは京ちゃんで固定されてるから、他の呼び方っていうのもなー」

 

「まあまあ、変に嫌がる前に、そろそろ京太郎と部長が買い出しから帰ってくるころだじぇ。で、返ってきた京太郎を下の名前で呼んでみるんだじぇ! と、噂をすれば……」

 

「ただいまー」

 

「今帰ったわよー」

 

「咲ちゃん、今だじぇ!」

 

「うぇ!? え、えぇっと、おかえり、その、きっ、京太郎……くん……」カオマッカ

 

「っと、今の咲だよな? なんでいきなり呼び方変わってるんだ?」

 

「まあ、黙って見てるんだじぇ。次、のどちゃん!」

 

「お、お、おおおおおおかりなひゃい、ひょうたろうひゅん! ~~~~~~~~~ッ!?」イタイ

 

「おおー、これはまた見事に噛みまくったのぉ」

 

「って、おい和! 舌大丈夫か!?」

 

「ひ、ひたいれす~……」ナミダメ

 

「ああ、ほら。舌見せてみろ」

 

「あう~」

 

「あー、赤くなってやがる。仕方ない。アイス買ってあるから、それで舌を冷やせ」

 

「あひあとうございましゅ」

 

「で、これはいったい何なの?」

 

「優希が部員の親睦を深めるため、京太郎の呼び方を変えてみようって言いだしたんじゃ。まあ、結果は見てのとおりじゃが」

 

「ぅぅ……やっぱり、京ちゃんは京ちゃんだよ~」プシュー

 

「舌がひたいれふ……」ペロペロ

 

「で、次は部長の番だじぇ?」

 

「私? 京太郎。これでいいの?」

 

「いやいや部長、そんなんじゃ甘いじぇ。しっかり京太郎の目を見て言うんだじぇ」

 

「別に目を見たところで変わらないと思うんだけど……まあいいわ。京太郎、ちょっとこっち来なさい」

 

「あ、はい」

 

「じゃあ行くわよ……京太郎」

 

「はい」

 

「……京太郎」ホホソメ

 

「? はい」

 

「京太郎」メソラシ

 

「いや、部長、目が逸れてます」

 

「う、うるさいわね! 分かったわよ、何回だって言ってやるわよ! 京太郎京太郎京太郎京太郎京太郎京太郎京太郎京太郎きょうたガリッ! うぅ~~~~~~ッ!?」イタイ

 

「そりゃあんだけ連呼すりゃあ、噛むわな」

 

「あーもう、部長もアイス舐めて冷やしてください」

 

「ふ~、三人ともやれやれだじぇ……」

 

「そ、そういう優希ちゃんはちゃんと目を見て言えるの!?」

 

「しょうれしゅ! ゆーきはどうなんれすか!?」

 

「ふむ、犬よ、こっちに来るのだ」

 

「お前、名前呼び云々の前に犬呼ばわりは止めろ」

 

「なるほど、いい機会だな。確かに部員をいつまでも犬呼ばわりは良くないじぇ。というわけで……京太郎♪」トビツキ

 

「うおっ、あぶなっ!」キャッチ

 

「ふふっ、ナイスキャッチだじぇ京太郎。こういうとき、避けずに受け止めるところは十分評価に値するじぇ♪」

 

「いや、何様だよお前」

 

「それはともかく……どうだじぇ!」ドヤァ

 

「くっ、優希ちゃんに負けた」ズーン

 

「負けてない負けてない負けてないそうよただの経験値の差ですそうに違いないだって私男の子の名前呼びとか初ですしそれにまだまだ仲良くなる機会は十分にありますからていうかなんでゆーきは須賀くんに抱きかかえられてるんですか羨ましい」ドーン

 

「のほか、あんた舌のいはみはどうしたの?」

 

「やれやれじゃ……」

 

 このあとめちゃくちゃドヤ顔でいっぱい名前を呼ばれた。

 

 カンッ



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「むしろ、うつしてください」

――松実玄・新子憧「体型」

 

「松実旅館の朝はやることがいっぱいなのです。ということで、まずはお掃除から始めようか」フンスー

 

「玄関の掃き掃除ですか。秋の季節は落ち葉が出てきて大変そうですね」

 

「うん、玄関は家の顔っていうからね。朝早くからお掃除するんだよ。特に昨日はちょっと風が強かったせいか、いっぱい落ち葉があるので、一緒に頑張りましょう!」

 

「はい、玄さん!」

 

「お仕事は丁寧に!」

 

「しかし、迅速に!」

 

「「全ては焼き芋を作るため!」」

 

「掃き掃除じゃなかったの!?」

 

「あっ、憧ちゃんだー」

 

「どうしたんだ、こんなに朝早くから?」

 

「別に……ちょっとしたジョギングみたいなもんよ」

 

「ジョギング?」

 

「あー、確か憧ちゃん、最近お腹周りが気になってるって言ってたから……」

 

「って、玄!? なんで、そういうこと言っちゃうの! 仕方ないじゃない、食欲の秋なんだから!」

 

「俺からしてみると、お前はもう少しくらい食べても平気な気がするんだが……」

 

「男子のあんたには分かんないでしょうけど、年頃の女子は体重が五百グラム増えただけで、床に沈むような絶望感を味わうのよ……言っとくけど、これ比喩じゃなくてマジだから。少なくともあたしに関してはね!」

 

「五百グラムぐらい成長期の誤差の範囲だろう? 別に今の体重がベストって決まったわけでもないし」

 

「京太郎くんは甘いのです。そういう気のゆるみが、憧ちゃんの贅肉となっていくんだよ」

 

「……ねぇ、玄? さっきといい、あんた喧嘩売ってるんじゃないでしょうね?」

 

「そんなことはないですのだ。私は応援してるよ、目指せ体重四――――」

 

「男子の前で目標体重まで口にする奴があるかぁぁぁー! ぜぇ……ぜぇ……いや、本当にあんた怒るわよ?」

 

「別に私は京太郎くんが作ってくれたお手製プリンを食べられた恨みなんて持ってないよ?」

 

「むー」バチバチ

 

「うー」バチバチ

 

「あーはいはい、玄さんにはまた今度プリンを作ってあげますから。それよりも憧、今日、板長がおいしい安納芋が入ったってこれから焼き芋を作ってくれるらしいけど、どうする?」

 

「あんた、これから痩せようとしてるあたしの前によくもまあ、そんなおいしそうな餌をぶら下げたわね」

 

「いらないのか?」

 

「いるわよ! その代わりあんた、今度でいいからあたしのジョギング付き合いなさい! 食べた分は、倍頑張んないといけないのよ……ていうか、玄? あんたも少し肉付きよくなってきたんじゃない?」

 

「はうあっ!? ち、違うよ! こ、これは……そう! おもちが大きくなったせいだよ!」

 

「それ以上大きくしてどうすんのよ、あんた!? ていうか、なんで大きくなってんのよ!」

 

「ち、違うもん! 京太郎くんだって前見てくれたときに、私のおもちをベストオブおもちって言ってくれたもん! あっ……」

 

「前、見た、ときぃ……?」

 

「おい、待て、落ち着くんだ憧!?」

 

「なるほど、おもちが大きくなったっていうのも、京太郎に揉まれたせいなのね? あんたら、なんやかんやありながらしっぽりずっぽりやることやってるわけね? いいわ、上等だわ。体型維持も重要だけど、おもちを大きくするのも女子にとっては大事よね? ってなわけで京太郎、あたしのも揉みなさい!」

 

「いやいや、本気で冷静になれ! おもちを揉んで大きくなるっていうのはただの……女体の神秘だな」ウン

 

「京太郎くん!?」ガーン

 

「御託はいいから、あたしのもちゃんと大きくしなさい!」

 

「ダメー! 京太郎くんのおもちハンドは私のだよー!」

 

 このあと(仕事を忘れていて)めちゃくちゃ怒られた。

 なお、後日つやつやした二人の少女の姿が見られたとか。

 

 カンッ

 

 

――福路美穂子「耳かき」

 

「はい、ごろーんして」

 

「わーい」ゴローン

 

「ふふっ、そんなに慌てなくても逃げたりしないわよ」

 

「いえいえ、福路さんの膝には追いかけたくなる魔力があるんですよ」

 

「まあ、本当?」クスクス

 

「ええ、俺が知る限り最高のお膝です」キリッ

 

「ありがとう。でも、耳かきをするときは暴れたりしないでね?」

 

「もちろんです!」

 

「では……あらあら、思ったよりも綺麗だわ」

 

「あー、音楽をイヤホンとか聞いたりすることもあるので、たまの頻度で掃除してますから」

 

「むー、ちょっと残念」カリカリ

 

「あー、やっぱり耳かきって癒されますねー」

 

「そうね、私も子供のころはよくやってもらってたわ」

 

「あっ、じゃあ今度は俺が耳かきをしましょうか?」

 

「そっ、それはダメ!」

 

「えー、どうしてですか?」

 

「だ、だって、須賀くんに耳の中を見せるなんて……恥ずかしいんだもの」カァーッ

 

「な、なるほど」

 

「その代わり、私が須賀くんの耳かきをいつでもやってあげるからね」ニコッ

 

 このあと(もう片方の耳も)めちゃくちゃ綺麗にしてもらった。

 

 カンッ

 

 

――愛宕絹恵「風邪」

 

「うぅ~、頭痛い」

 

「なら大人しく早退するべきだったんですよ。まったく、無理して部活にも行こうとして……大人しく寝ててください」

 

「そ、そないゆーても……あーダメや。なんかグワングワンする」

 

「結構、重症っぽいですね……とりあえず、冷えピタ貼りますよー」ピタッ

 

「ひぅっ、うーん貼るときのこの感覚には慣れんわー」

 

「まー、身体が熱持ってるときにキンキンに冷えたもの貼りますからね」

 

「そういや、お姉ちゃんは?」

 

「洋榎先輩なら、絹恵なら京太郎がついときゃヘーキヘーキとのことで、今頃部室で麻雀楽しんでんじゃないんですか?」

 

「なんや薄情な話やなー」

 

「ああ見えて心配はしてると思いますよ? ただそれを大っぴらに表現するのが恥ずかしいだけで。ほら、洋榎先輩ってあれで照れ屋なとこありますから」

 

「ほーん、さすがにお姉ちゃんのことはよー理解しとるみたいやな」

 

「洋榎先輩だからってわけじゃないんですけどねー」

 

「私は……」

 

「ん?」

 

「私はお姉ちゃんには麻雀じゃ勝てんし、なんや変に負けた気分やわ」

 

「……」

 

「別に姉妹で劣っとるとかそんなことで僻んだりはせんけど、それでも悔しさはある。そんで、その悔しさが自分にとって大事なもんてのも分かっとる。あれでも私には最高の姉や。でもな、でもな――」ウルウル

 

「絹恵先輩……」

 

「あー、やめややめ。変な話してもーた。所詮、気弱になった病人の戯言や。忘れ」

 

「俺は絹恵先輩のこと、好きですよ」

 

「ハァッ!? いきなりなにゆーてんの! す、すすす好きとか……アホちゃうか!? 京太郎まで熱にやられたんか!」

 

「あーいえ、別に変な意味じゃないですよ? ちゃんと異性として好きってことです」

 

「余計アカンやろ! あー、アカン。頭いとーてよー回らん。なんや? これ、夢なん?」

 

「夢じゃないですよ。気弱になったときに零れた言葉は一種の本音でしょう? さっきも言った通り、別に洋榎先輩だから理解してるとかそういうんじゃないですよ。あなたたち二人が魅力的なだけです」

 

「ハッ、なんや二股かいな?」

 

「そういわれても仕方ありませんね」

 

「ここでそれ認めるんかいな。ここはホンマは私だけが好きとかそうゆーとこやろ?」

 

「すみません、ここで嘘はつけません」

 

「まあ、あんたはそういう奴やけどな……でも、私は本気にしてええんやな?」

 

「はい、本気で受け止めてもらって構いません」

 

「手ぇ……にぎっとって。風邪のせいか、ちょっと弱っとんねん。今日は一緒におってや」

 

「分かりました」

 

「ええんか? お姉ちゃんに怒られるかもしれへんで?」

 

「大丈夫です」

 

「風邪うつすかもしれへんで?」

 

「むしろ、うつしてください」

 

「風邪のうつし方知っとる?」

 

「はい、好きですよ絹恵先輩」チュッ

 

「あーもう、余計熱上がりそうやわ……風邪治ったら覚悟しぃや。これでも愛宕洋榎の妹や。本気になったら止まらんで」

 

「ええ、望むところです!」

 

 このあとめちゃくちゃ看病した。

 

 カンッ



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「いい湯だなぁ」

――神代小蒔「秋雨」

 

「雨ですねぇ」

 

「雨……京太郎様、傘はお持ちですか?」

 

「はい、予報を見ていたのでバッチリ持っています。小蒔さんは?」

 

「霞ちゃんから念を押されていたので、ちゃんと持っていますよ。でも……」

 

 ザァァァァァアッ

 

「すごい雨ですねぇ」

 

「秋は長雨っていうのは知っていますが、これではまるで夕立みたいですね」

 

「夕立というよりも、ここまで来ると台風のような気がします。それにしても……」

 

 ザァァァァァアッ

 

「困りましたね」

 

「はい、困りました。ここまで雨が強いとカミナリも鳴りそうですしね」

 

「カ、カミナリ……ですか……?」

 

「あー、そういえば小蒔さんはカミナリが苦手でしたっけ?」

 

「い、いえ、いつまでも子供のように怯えるわけにはいきません。そうです、カミナリなんてちょっと大きな音と光でびっくりするだけなんです。そう怖がるほどのことは――」

 

 ピシャアァァァッ!

 

「ひゃぁっ!?」ビクッ

 

「あー本格的に鳴り始めましたね。さすがに傘で帰るよりも迎えが必要かな?」

 

「そ、そうですね。家の人に迎えを頼みましょう」ビクビク

 

「……大丈夫ですか、小蒔さん」

 

 ドーンッ!

 

「ひぐぅっ! ……うぅぅ……うぇ……」ウルウル

 

「ちょっ、小蒔さん泣かないでください! だ、大丈夫ですよカミナリくらい! 俺が付いてますから!」

 

「わ、分かってます。分かってますけどぉ……」ヒクッ

 

 ピカッ! ――ゴロゴロゴロォッ!

 

「きょ、京太郎様ぁ……!」ダキッ

 

「おお、よしよし、大丈夫ですよ」ナデナデ

 

「は、離れないでくださいよぉ」ヒシッ

 

 このあと(迎えが来るまで)めちゃくちゃ宥めた。

 

 カンッ

 

 

――龍門渕高校「ハロウィン」

 

「トリックオアトリート、なのだ! いたずらしてほしくなかったら、お菓子を寄こせー!」ガオー

 

「はい、衣姉さん。俺の手作りクッキー」

 

「オー、これなのだこれなのだ。ふむ、お菓子をもらったからいたずらは勘弁してやろう」フンスッ

 

「ところで、衣姉さんはなんの衣装ですか?」

 

「む、よくぞ聞いてくれた! これは猫娘らしいぞ!」ニャー

 

「ああ、だから猫耳フードかぶってるんですね。よく似合ってますよ」ニコッ

 

「うむ、ハギヨシの手作りだから当然だな!」

 

「トリックオアトリート、ですわ!」バンッ

 

「あ、透華お嬢様。衣装はトランプの女王ですね」

 

「おー、トーカも着替え終わったのか!」

 

「ええ、せっかくのハロウィン、目立たずに終わる私ではないですわ! ということで、京太郎。お菓子をくれなければ、いたずらしてしまいますわ!」

 

「ふむふむ、それはどんないたずらなのでしょうか?」

 

「えっ?」

 

「なるほど、トーカのいたずらには衣も興味があるぞ!」

 

「えっ?」

 

「では、透華お嬢様、存分にいたずらをどうぞ!」ドーンッ

 

「えっ!? えっ、えーっと、では失礼して……」チュッ

 

「……中々に情熱的ないたずらですね」ビックリ

 

「う、うるさいですわよ! ふ、普通はいたずらが嫌でお菓子をくれるのに……変ないじわるをするからですわ! 大人しくお受けなさい!」カオマッカ

 

「ムー、トーカだけずるいのだ! 衣もキョータローにチューするー!」

 

「はいはい、これでどうですか、衣姉さん」カガミー

 

「うむ、これならば……」ホッペニチュッ

 

「唇じゃなくてよかったんですか?」

 

「く、唇はその……二人っきりのときがいいというか……あーもう、人前だと恥ずかしいのだっ!」

 

「そういえば、京太郎。私、お菓子をもらっていませんわよ?」

 

「あ、はいどうぞ。それと、衣装かわいいですよ」

 

「ふ、ふん、当然ですわ!」カァーッ

 

「おいおい、お前ら行くのはえーよ」ヴァンパイア

 

「できればボクたちも待っていてほしかったなー」ミイラオンナ

 

「二人とも早い」マジョ

 

「……とりあえず、三人とも衣装似合ってますよ。ええ、似合ってるんです。ただし、一さん? いくらなんでも露出が激しすぎじゃないですか!? それ、ミイラ女じゃなくて大事な部分に包帯巻いただけでしょうが!」

 

「あっ、執事モードが終了して()()()()出た」

 

「さすがに寒い」

 

「い、いや、たまたまだから! 狙ったわけじゃねぇから!」

 

「うーん、そんなに激しい衣装でもないような気がするんだけどなー?」

 

「ていうか、そんな衣装で寒くないんですか?」

 

「それは安心なさい。冷暖房完備のお屋敷では、この時期に裸で過ごしても問題なしですわ!」

 

「いやいや、裸で過ごすこと自体がアウトだということに気づいて!」

 

「……でも、ボクら結構裸になること多いよね? どっかの変態執事さんのせいで……」ジトッ

 

「ああ、そうだな。そのくせ、アフターケアもばっちりなせいでついつい癖になりつつあるんだよなー」ジトッ

 

「そういえば、さっきも二人から熱いキスをもらっていた」ジトッ

 

「うっ」ダラダラ

 

「って見ていたんですの!?」カオマッカ

 

「うぅ、見られていたのだ……」ホホソメ

 

「今更恥ずかしがることでもないと思うけど。どうせ、このあとはみんなで……でしょ? 変態執事さん?」

 

「……ええと、皆さんがよろしければ……」

 

「じゃ、決まりだな。せーのっ!」

 

「「「「「トリックオアトリート!」」」」」

 

 このあとめちゃくちゃした。

 

 カンッ

 

 

――原村和「お昼寝」

 

「こんちはーっと。ん? 誰だ?」

 

「……スー……スー……」ベッドノウエー

 

「へー、和が部室のベッドを利用するなんて珍しいな。よっと」

 

「……ンッ……んぅ……」

 

「ったく、ちゃんとかけなきゃ風邪引くぞ」サーッ

 

「……うみゅ……スー……」

 

「さてと、教本でも読むかな」ペラッ

 

「……スー……スー……キョタロ……クン……」

 

「…………」ペラッ

 

「……ス……キィ……」

 

「……ああ、俺も好きだぞ」ペラッ

 

「……本当ですか?」

 

「って、なんだ狸寝入りかよ」

 

「はい、それよりもさっき言ったことは本当ですか?」

 

「んー? 本当に寝ぼけてて何か聞き間違いでもしたんじゃねーの?」

 

「うぅ……京太郎くんはいじわるです……」

 

「ははっ、悔しかった狸寝入りなんて手を使わずにやってみるんだな!」ポンポン

 

「ムー」プクー

 

「ありゃ、狸寝入りの次はふて寝か?」

 

「ふんっ、京太郎くんなんて知りません。私、今から少し寝ます」

 

「はいはい」ヤレヤレ

 

「…………」スー

 

「…………」パラッ

 

「もー! どうして寝るって言ったのに手を出してこないんですか!?」

 

「いやいや、和、冷静になって考えてみるんだ。ここで手を出したら終わりだと」

 

「もう、かっこつけのくせにどうしてこういうときにヘタレるんですか、バカですか!」

 

「だーかーらー、そういうんじゃなくて、ほら、向こうを見ろ」

 

「向こうって言ったって、そっちは扉があるだけで――――」

 

「ジー」サキ

 

「ジー」ユーキ

 

「ジー」マコ

 

「ジー」ヒサ

 

「あっ、私たちのことは気にしなくていいよー」ニヤニヤ

 

「そうだじぇ、存分にいちゃいちゃしてもいいじぇ?」ニヤニヤ

 

「あっ、ただしベッドはあまり汚しちゃいかんよ?」ニヤニヤ

 

「換気も忘れないでね?」ニヤニヤ

 

「…………ハッ、公認!」

 

「違う、和。それは違う」

 

 このあとめちゃくちゃ普通に部活した。

 

 カンッ

 

 

――宮永咲・宮永照「お風呂」

 

「いい湯だなぁ」カポーン

 

「京ちゃん」

 

「あー、本当にいい湯だなぁ」

 

「京ちゃん、無視はいけないと思う」

 

「……なぜいるんですか、照さん」

 

「ここは私の実家、私がいるのは必然」

 

「俺が言いたいのは、なんで俺の入浴中に入って来てるかってことですよ!? いや、確かにお邪魔した身でお風呂を借りるのは申し訳ないですけど、さすがにこれは予想外ですよ!?」

 

「大丈夫、いずれ京ちゃんが婿に入る家だと思えばいい」

 

「……色々とツッコミどころの多い発言ですが、とりあえず、仮に婿に入ったとしても照さんと入浴する理由にはならないでしょう?」

 

「…………ポッ」

 

「おい待て、あんた今どんな妄想と理由を走らせた」

 

「京ちゃんはお風呂でだって激しい」

 

「オーケー、何を言っても無駄だってことが分かりました」ペチッ

 

「アウッ、京ちゃん痛い」

 

「痛くして当然です。だいたい、こんなところを咲にでも見つかったら――」

 

「あー、お姉ちゃんズルい! 入るタイミングは一緒にって言ったのに!」

 

「なんでお前も入ってくるかなぁ!?」

 

「ムッ、京ちゃん。お姉ちゃんと入るのはいいのに、私はダメなの?」

 

「いや、ベストなのはどちらも風呂から出ていくことなんですが……」

 

「「断る」」

 

「いや、でもどうするんだよ? 二人で入るのもギリギリなのに三人はさすがに無理だぞ?」

 

「無問題。私と咲が京ちゃんをサンドイッチすればいい」

 

「ああ!」ポンッ

 

「ああ! じゃねぇよ!? 俺の理性が持たんわ!」

 

「理性が?」キュピーン

 

「持たない?」キュポーン

 

「あ、ミスった。んじゃ、そういうことで俺はそろそろ上がるから……おい待てやめろ手を離せそしてくっつくなつつましやかながらちゃんと柔らかいおもちを俺に押し付けてくるなちょまて照さん顔近い近い咲はそこ触るな握るのはもっとダメだから――――あ」

 

 このあとめちゃくちゃしてのぼせるところだった。

 

 カンッ



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「共同作業ってやつですか?」

――宮守女子高校「寂しさ」

 

「…………」ギュー

 

「あー……」ダルー

 

「えっと……どうしよ……」アセアセ

 

「何これ? どうして京太郎がシロと塞を抱きしめてるの?」

 

「あーうん、二人が卒業したあとの話しだしちゃってねー。ほら、私たちが卒業したら麻雀部も無くなっちゃうし、きょーたろーくん一人残っちゃうことになっちゃうからねー。それできょーたろーくん、ちょーさびしくなっちゃったみたいで……」

 

「あー、なるほどー」

 

「キョウタロウ……」

 

「……でも、それで二人の胸に顔を埋める必要はないよね?」

 

「しかも二人のお尻をがっちりホールドしてるよー」

 

「……ねえ、京。そろそろ離さない?」

 

「いやです、離しません」

 

「んっ……ちょっ、京太郎くん、胸に顔を押し付けたまま話さないで……」テレテレッ

 

「くすぐったい」

 

「……ハレンチ!」バンッ

 

「そんな絵を描くエイちゃんが一番ハレンチだよ!」バッ

 

「えー、どんな絵だったのかちょー気になるよー!」

 

「トヨネは気にしちゃだめ!」

 

「ね、ねぇ、京太郎くん、私たちが悪かったから、ね。さすがに三人に見られながらっていうのはちょっと……」カオアカイ

 

「私は別にいいけどね」

 

「……」ギュー

 

「ちょっ、シロのせいで余計、その、おおお尻に手がぁぁ……」ウーハズカシイ

 

「でも、たまには甘えさせないと私がダメになる」ヨシヨシ

 

「それは、そうだけどぉー……」コトワレナイ

 

「それに、私たちが卒業しても大丈夫。私が京のお嫁さんになれば万事解決だから」フンスッ

 

「ちょっ、シロォ!?」

 

「むむ、まさかのお嫁さん宣言!」オオー

 

「シロ、ダイタン!」スゴイ

 

「だ、ダメだよー! きょーたろーくんはうちのお婿さんに来てもらうんだから!」ワーッ

 

「いやいや、トヨネまで何言っちゃてんの! ていうか、京太郎くんもさすがにそこはダメな場所だから!」テヲツネル

 

「イタタッ、いやでも、シロさんのお嫁さん宣言ですよ! 喜ばないわけがないでしょ!」

 

「いや、そこでなんで私じゃなくて塞のお尻に手が伸びるのか……」アキレ

 

「あー、京太郎って塞の影響でお尻好きになったよねー」

 

「サエのお尻、おっきい!」カキカキ

 

「お尻おっきいって言われてもうれしくないし! ていうか、エイスリンはさっきからいかがわしい絵を描きすぎよ!」

 

「それもきょーたろーくんの影響だよねー」

 

「私、エイちゃんが京太郎の私物のえっちな本を漁っているところを見た!」ビシィッ

 

「ちょぉぉおっ! エイスリンさん何やっちゃってくれてるんですかぁ!」

 

「だいじょうぶ! ちゃんと勉強した!」グッ

 

「私はそーゆー問題じゃないと思うよ、エイスリンさん!」

 

「うわぁぁぁ、うちの麻雀部が京太郎君に毒されていくよぉぉ!」

 

「……そういう塞が一番影響を受けていると思うけど……」ジトー

 

「うん、シロの言う通りだと思う。お洒落に無頓着だった塞がお化粧し始めたのも京太郎の影響だし」

 

「スキンシップ、ふえた!」

 

「さえ、最近毎日きょーたろーくんの教室に会いに行ってるしねー」ニコニコ

 

「えっ、いやっ、そそそそんなことないし!」ガーッ

 

「おー照れてる照れてる」

 

「すみません、シロさん。やっぱ俺の嫁は塞さんで」

 

「へうっ!」

 

「それはダメ。私がお世話する」

 

「シロがお世話をする……だと……っ!?」

 

「てんぺんちい!」

 

「だーかーらー、きょーたろーくんは私のお婿さんだってばー!」

 

「あははっ、これなら当分の間寂しくなさそうです!」

 

 このあとめちゃくちゃに楽しんだ。

 

 カンッ

 

 

――片岡優希「エイプリルフール」

 

「俺たち!」

 

「私たち!」

 

「「付き合い始めました!」」

 

「へー、そうなんだー」ドクショチュー

 

「あっ、部長、お茶入れましょうか?」

 

「うん、ありがとう、和」

 

「いやいや、おんしらもう少しくらい付き合ってやってもええじゃろ?」

 

「……俺たちとしては想像以上にドライな反応で驚きなんですけど……」ドンビキ

 

「そうだじぇ! せっかく部活の仲間が付き合い始めたというのに、その反応はないじぇ!」

 

「もー、仕方ないなぁー。わー二人が付き始めたんだー、おめでとー」ボウヨミ

 

「えっ、何その反応。もしかして俺たち祝われてない……?」

 

「あー、すまんかったのぉ。二人がそうやってネタをやっているというのに……」

 

「ですがまこさん、二人も二人で性質が悪いですよ」

 

「んー、もしかして二人とも知らないんじゃないの?」

 

「えーっとさっきからなんの話をしてるんだじぇ?」コンワク

 

「いや、何の話って二人だってわかってるんでしょ? 今日は四月一日、エイプリルフールだよ。日本語でいうなら四月バカだっけ?」

 

「そうですね、そしてこの日についた嘘は一年間叶わないというジンクスがあります。二人もそんなウソをつくんじゃありませんよ」

 

「まー、その話知らない人も多いらしいし、仕方ないんじゃない? そういうわけで、二人もがっかりしないでいいわよ? 所詮、ジンクスなんだから気にすることはないわよ」

 

「まあしかし、一応ちゃんとネタばらしはしておけよ? エイプリルフールにはネタばらしをするんが礼儀じゃからな」

 

「「「「ハハハハハハッ!」」」」

 

「あの、俺らマジで付き合い始めたんですけど……」

 

「諦めろ京太郎、あれはもう聞いちゃいないじぇ……」

 

 このあと(誤解を解くのに)めちゃくちゃ必死になった。

 

 カンッ

 

 

――辻垣内智葉「母の日」

 

「智葉さんは、母の日に何を送りますか?」

 

「母の日、もうそんな時期か……」

 

「ええ、エイプリルフールもとっくに過ぎましたしね」

 

「その話はやめろ。あれでどれだけネリーに四月バカだと言われたことやら……」タメイキー

 

「あはは、智葉さんは変なところで真面目ですからね。いや、あの嘘に関しては俺も驚きましたけど」

 

「唯一の救いがちゃんとネタバレをしたことだな。オカルトに精通しているだけあって、そこは律儀なようだ」

 

「ええ、でももう四月も終わりますし、母の日が終われば次は父の日……プレゼントを贈るにしても学生だからあまり高いものは望めないですからねー」ウーン

 

「こういうときは、花でも送ればいいんじゃないか? あれなら安いだろ」

 

「いやいや、今お花って想像以上に高いんですよ? もちろん、ものにもよりますけど、花束とかだと意外にしそうな気も……」

 

「そうなのか? まあ、うちの親も花をもらって喜ぶとは思いにくいしな」

 

「そうですか? こういうときは感謝の心を籠めれば、喜んでくれると思いますよ?」

 

「しかし、どちらにしても私に花は似合わないだろう? ああいうのはもっとこう……明華のような清楚さがな……」

 

「さーとーはーさん? 智葉さんは十分に清楚可憐ですよ? この前のあれなんてもう……」

 

「おいこら、今何を想像した?」

 

「え、お風呂上りの智葉さんです」キッパリ

 

「……お前、最近はっきりとものをいうようになったな……」

 

「でも、ぐだぐだものを考えるよりはいいでしょ?」

 

「ああ、臨海に来たころのなよなよしていたころより好感は持てるな」ウン

 

「皆さんに鍛えられましたからねー。まあ、麻雀じゃいまだに勝てませんけど」

 

「これでも全国だからな。そう簡単には負けてやらんが……しかし、お前が強くなっているのも事実だ。お前、今は二軍といい勝負ができているんだろう?」

 

「ええ、ようやくですね」

 

「ようやくというが、麻雀未経験者が短期間でここまでこれたんだ。彼女たちもいい刺激になっているといっているしな。というか、モテているしな」ムーッ

 

「はははは、智葉さん怒っています?」

 

「よし決めたぞ、京太郎。母の日と父の日、その両方で私たちの手料理をふるまおう」

 

「共同作業ってやつですか?」

 

「ふんっ、お前は器用だからな」

 

「分かりました。では、精いっぱいおいしいものを作りましょうか!」

 

「ああ、頼んだぞ。私の彼氏くん」

 

 このあとめちゃくちゃ料理した。

 

 カンッ



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