ポルカ〜剣の王の伝説〜 (ガラスのハート)
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第1章 ブラック・スノーとの戦い
1話


俺は・・・、すぐに心が折れるZE☆

強いローマ「人」もいれば、弱いローマ「人」もいる。

だが、それを含めてローマ「全て」がローマ「世界」である。

そう、正しく、ローマ!!

自分は修正する気は毛頭ないので、表現さえ変えなければ駄文の修正は別にしてもいいのよ。(タグを増やすことに関しては大丈夫だ、問題ない。・・・一番いいタグを頼む。)

こんなどう使用もないローマ「作者」ですが、他の偉大なるローマ「読んで頂いた方々」達、宜しくお願いします。

最後に一言、ローマ「神祖」様の言葉を借りて、この世にローマで無いものなどない。


此処は年季の入った酒場。

 

外は凍えるように寒い。

 

普段は傭兵達が集まり仕事の話を求めて又は仕事の疲れを癒すために集まる場所。

 

ここの亭主は髭面で太っちょの赤ら顔の男、相性を込めてアベルとよばれている。

 

そして、アベルの娘、この踊る子羊亭の看板娘がエリカ。

 

アベルは今こそ肥満を気にする、只の中年親父だが、昔は一卒の軍人だったのをきっかけに傭兵の集う酒場を建てた。

 

しかし、日が沈み既に店閉まいを終えていた時に3人の兵士がその酒場に訪れたのである。

 

アベルはもう店じまいだとその3人に伝えるのだが、兵士達は一向に帰らない。

 

アベルは頭に来て兵士を睨みつけると顔を青ざめる。

 

兵士達の胸には黒龍の紋章。

 

それは、現在侵略を繰り返す大国ブラックスノーの兵士だということを示す証だった。

 

さらに、アベルが所属していた軍は彼らとは敵対関係にある連合軍である。

 

アベルは懐にある護身用のナイフに手を伸ばそうとするが、1人の兵士のサーベルで肩を刺される。

 

すると、騒ぎを聞きつけてエリカが奥の部屋から出てきた。

 

エリカは両手で口を塞ぎ青ざめる。

 

アベルが逃げろ!と叫ぶがエリカはすっかり両膝が震えていて動けなくなっていた。

 

1人の兵士がエリカに近寄って行く。

 

アベルは残りの2人の兵士に羽交い締めにされて地面に抑え込められた。

 

すると酒瓶が飛んできて、エリカに近寄る兵士の後頭部にぶち当たった。

 

兵士はお酒でびしょ濡れになり、そして、振り返ると青白い顔をした男が俯いて立っていた。

 

男は小さな声でやめろと呟く。

 

酒まみれになった兵士はサーベルを抜きその男に近寄った。

 

「自分の足と会話してんのか? 目え見て話せや!この野郎!」

 

男は剣を振り落とす、しかし男はその剣を片手で掴み剣撃を止めた。

 

みりっと鈍い音が響くと兵士は苦痛の表情を浮かべ肩膝をついた。そのまま男にサーベルを奪われる。

 

今度は男が剣を振り上げて兵士に斬りかかった。

 

しかし バッキン、と金属が割れる高音が響きサーベルが空中でバラバラになった。

 

おかげで兵士が傷を負う事態にはならなかったが、男は微かな笑い声をあげた。

 

「こんな玩具で俺を殺そうと思ってたのか?」

 

男はサーベルの柄を捨てる。

 

兵士は慌てて後ろに大きく下がり、アベルを抑えていた2人の兵士と交代した。

 

今更謝っても許さねえぞと小物臭いセリフを吐き捨てて、兵士達はサーベルを抜く。

 

男は腰にぶら下げていたロングソードを鞘から抜き取り、鞘を部屋の隅に投げ捨てた。

 

男は剣をちらちら見せつける。

 

「いいか?これが武器だ。お前達の玩具はどれも質が悪い」

 

兵士の1人が男に飛びかかった。

 

「目に物を言わしてやる!!」

 

男が剣で、横一線に切り払った。

 

すると、兵士のサーベルがものの見事に真っ二つになった。

 

男は剣先を兵士の首元に押し付ける。

 

「殺るなら、たたっ斬るぞ」

 

すぐさまもう1人の兵士が男の後ろから斬りかかる。

 

男は素早く振り返り、剣でサーベルを受け止めて、剣を滑らし、そのまま踏み込み剣を男の首元に押し当てた。

 

「暖かくないサウナみてえだな。もう1度だけ言ってやる。殺る気ならたたっ斬るぞ?」

 

兵士はサーベルを下げて、逃げ出した。

 

他の2人もその兵士を追いかけて店から走り去って行った。

 

男は兵士達が逃げたのを最期まで確認してから、アベルに近寄り肩の傷を確認した。

 

「安心しな。急所は外れてる」

 

アベルは男に礼を言うと、男は立ち上がり黙ってその場を去ってしまった。

 

~☆~

 

逃げた兵士達の後ろに男が立つ。

 

息を切らせた兵士が男を睨みつける。

 

「見逃してくれるんじゃ無かったのかよ!?」

 

男は剣先を兵士達に向ける。

 

「見逃すとは一言も言ってない。できる限り子供の前で血みどろな場面を見せたくなかっただけさ」

 

2人の兵士が手を挙げる。

 

「俺達は武器を持ってねえ!」

 

男は、手を挙げた1人の兵士の頭を力の限り蹴っ飛ばした。

 

「斬る理由など、ブラックスノーと言うだけで百の理由よりも勝る」

 

兵士の1人がサーベルを捨てた。

 

「違うんだ!これは戦場跡で拾った装備で・・・。」

 

男は剣を下ろした。

 

「紛らわしい……おととい行きやがれ!」

 

兵士に偽装した盗賊達は逃げ出す。

 

男は密かにため息をついた。

 

エリカはブロンズのツインロールを揺らして、息を切らしながら走って追いかけてきた。

 

「ちょっと!まだお礼も言ってないのに!勝手に何処かに行かないでよ!」

 

すると、男は自分の足を見て黙り込む。

 

エリカは釣り目の眉間にシワを寄せて、こちらを険しい顔で見ている。

 

「これは面倒くさそうだ。」

 

男はその場をそそくさと去ろうとした。

 

エリカは慌てて男の前に立ちはだかる。

 

「まってよ!これでこのまま帰したら、このエリカ様のメンツが立たないわ!」

 

エリカはやや強引に男を酒場まで手を掴んで連れていった。

 

~☆~

 

男は酒は飲むが至って喋らなかった。

 

アベルがある一言を発するまでは。

 

「そう言えば近頃、北の小国がブラックスノーに落とされたそうじゃないか」

 

すると、男はアベルの靴まで顔を上げて眉間にシワを寄せた。

 

「お前達連合軍が助けに来てくれれば、防ぎきれない戦いではなかった」

 

アベルは鼻で笑った。

 

「俺はもう連合軍所属の軍人じゃないさ。それよかやっと喋ったな」

 

男は小声ですまないと謝って再び俯いた。

 

すると、先程の盗賊達がさらに多くの仲間を連れて店に押し寄せてきた。

 

ざっと20から30人はいる。

 

男は剣を手に持ち立ち上がった。

 

「後始末が面倒な事になってもかまわんだろう?」

 

アベルは頷く。

 

「それで何とかなるなら」

 

男は盗賊達の前に立ちはだかる。

 

「奥に隠れてな。子供には見せられねえぜ」

 

アベルはエリカを連れて店の奥に隠れた。

 

男は盗賊達の顔を見る。そして、剣を抜いた。

 

ハッカペル(たたっ切れ)!!」

 

それは耳が痛くなる程の怒声で、盗賊達は思わずすくみ上がり皆が大きく後ろに下がる。

 

中にはそれだけで戦意喪失する者も出てきた。

 

男は其の中にたった1人切り込む。盗賊達は放心して隙をさらしている間に切り込まれたために、戦闘どころではない。

 

逃げ惑う者、腰が抜ける者、腰が引けながらも襲いかかりそのまま返り討ちにあって、周りの士気を余計下げる者。

 

男の攻撃は、殆どが相手のサーベルを切り捨てるか強烈な蹴りかで、決して血を流させる事はしなかった。

 

そして、結局一滴の血も流させずに盗賊達は降参して逃げ出した。

 

ポルカは荒れた酒場でお酒の蓋を開けて、1人晩酌に浸った。




オマケ

アホポルカ①

踊る子羊亭に盗賊たちが強盗に押し入っていた。

盗賊の2人がアベルを抑えて1人の盗賊がエリカに近寄る。

すると、何者かが入ってきて叫んだ。

「YESロリータNOタッチ!!」

こそ雄叫びは空気を震わして盗賊達を震わした。

男は叫びながら盗賊の一人の剣を切り落した。

「俺は白刃の王、スチールポルカ様だぞ!!」

盗賊たちはポルカに身構える。

ポルカは胸をはる。

「どうやら、俺が怖くないようだな、致し方ない」

ポルカは缶詰の蓋を開けた、ガスが漏れ出して中身が飛び散り盗賊たちの顔にかかった。

そして何よりもそれはとても臭い。

ポルカは大声で笑う。

「どうだ、それは我が祖国の伝統料理、世界一臭いニシンの塩漬けだ!!」

盗賊達はあまりの匂いに戦意を喪失して逃げ出した。

アベルが鼻をつまみながら、ポルカに感謝する。

「ありがとう、感謝しても感謝しきれない」

ポルカは酒屋の酒を勝手に飲み始める。

「いやー、当然の事をしたまでですよー」

アベルは手を走述べた。

「それ、ちゃんと金払えよ」

ポルカは渋々と金を払う。

エリカがポルカを睨みつけている。

「何なのこいつ!?」

ポルカは胸を貼る。

「んー、俺は白刃の王、スチールポルカ様だぜ」

アベルが首をかしげた。

そのスチールポルカ様がうちになんのようだい?

ポルカは空中どけ座を決めた。

「一目惚れです、娘さんを嫁にください!!」

アベルはポルカを警備隊に突き出して、ポルカは一生を牢獄で過ごしたんだとさ。

めでたしめでたし。


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2話

しばらく騒がしかったがやがて店の中は静寂に包まれた。

 

アベルが店から出てみると、そこには盗賊どころかあの男もいなくなっていた。

 

「きっとあの男は盗賊達とつるんでるのよ!」

 

エリカは肩を怒らした。

 

そんな中、アベルは首を横に降った。

 

「俺にはそんな奴には見えなかったがね」

 

~☆~

夜の街を男が1人歩いていると、突然数人の盗賊達が襲いかかった。

 

男は最初に飛びかかって来た盗賊の腹に鋭い蹴りを打ち込む。すると盗賊はゲロを吐いて地面に四つん這いになった。

 

次に襲いかかってきた盗賊の、振り落とされるサーベルを握る手を、つかんで止める。

 

ミシミシと盗賊の手が悲鳴を上げると、男は盗賊の手首をひねり、放り投げた。

 

男に向って矢がとんでくる。

 

男は頭を横に少し反らして矢を避けた後に、剣を鞘から抜き取った。

 

矢を再び盗賊がつがえるのを男は待つ。

 

盗賊は再び矢を男にむけた。

 

「偶然さっきは外したが、その時こそがお前の勝機だった!もう二度目は無いぞ!」

 

男は自分の足を見つめて話す。

 

「逆だ。俺が鞘から剣を抜くまでがお前達の唯一の勝機だった。もう勝ち目は無い」

 

盗賊は矢を射る。

 

「なめんな!!」

 

男は矢の起動を見ることもなく剣を振るい、矢を払った。

 

盗賊は慌てて矢をつがえて構える。

 

しかし、男は盗賊の目の前にもう迫っていた。

 

男は盗賊の手を掴み背負い投げた。

 

そして、酒場で盗んだ酒を飲みその場を去った。

 

~☆~

 

アベルの酒場にそれはそれはデカイ男が入ってきた。

 

すると周囲の腕っ節自慢の傭兵達が頭を下げた。

 

彼の名前はアルバート、ここら一帯の盗賊達の大将である。

 

その腕っ節はオークと呼ばれていて、ここら周辺の警備隊は彼を恐れて身を隠す程である。

 

アルバートはアベルの目の前に迫って、髭面の顔を近づけた。

 

「娘を借りていくぞ」

 

アベルは首を横に降る。

 

「それだけは首を縦に振ることはできないな」

 

アベルは惚けた顔で頬をかいた。

 

「そうか。命が惜しくないのか豚野郎!」

 

その言葉を聞いた瞬間、アベルは隠し持っているナイフを抜きアルバートの胸に突き刺した。

 

ナイフがへし折れる。

 

アルバートは自分の衣服を引きちぎると、中から分厚い鉄の鎧が姿を表した。

 

「ハハッ!そんな果物ナイフが効くかよ!」

 

アルバートは体重80キロは優に超えるアベルを片手で軽々と持ち上げる。

 

「俺の自慢の腕力にかかればお前なんて!紙切れのように軽いぜ!」

 

アルバートはアベルを数メートル先の机に投げ飛ばした。

 

すると、 正義感の強い傭兵が数人立ち上がった。

 

「好き勝手しやがって!」

 

傭兵が剣を抜き、アルバートに襲いかかった。

 

アルバートは近くにあった椅子を掴み、椅子を振り回して4~5人の傭兵を皆壁に叩きつけた。

 

アルバートは仲間の盗賊を呼ぶとエリカをさらい、そのまま笑いながら酒場を去った。

 

~☆~

 

盗賊達が街中を走り回り、話を触れ回った。

 

話の内容はこうだ。

 

頭を垂れる戦士が日が暮れるまでに広場に来なければ、酒場のガキが死ぬ。

 

話を触れ回っている盗賊の前に、頭を垂れたあの男が現れた。

 

「大変な事になってるな」

 

盗賊はまゆを釣り上げる。

 

「 あぁん?人の目を見て話せよ」

 

次の瞬間、盗賊は強烈なアッパーを食らって顎を砕かれた。

 

「もう伝令はしなくていい。話は聞かせてもらった。休みな」

 

男は鞘から剣を抜き広場に向かった。

 

~☆~

 

広場に男は訪れた。

 

アルバートは大きな声で笑う。

 

「思っていたよりも早く来たな」

 

男は剣を返す。

 

「来たぞ、ガキを離せ」

 

アルバートは巨大なバトルアックスを手に持ち、男の前に立ちふさがった。

 

「地面に向って何言ってんだ?」

 

男は顔を少し上げて男の斧をみる。

 

「質が悪い。そんな玩具で俺に勝つつもりか?」

 

アルバートは斧を振り上げた。

 

「玩具かどうか試してみな!貴様の剣ごとへし折ってやるよ!」

 

男は振り落とされる斧の刃を真っ二つに切り捨てた。

 

アルバートは目を疑った。

 

ばかな!バトルアックスだぞ!?

 

男はアルバートの顔面を力いっぱい拳で殴る。

 

アルバートの鼻が折れて鼻血がでた。

 

しかし、アルバートは男を掴んで持ち上げて数メートル先までぶん投げた。

 

アルバートは鼻血を腕で拭う。

 

「驚きはしたが、剣を使わなきゃそんな攻撃効かないぜ?」

 

男はふらふらと立ち上がる。

 

アルバートは立ち上がった男の目の前に迫って腕を振り落とす。

 

男は片手で受け止めるが、ブロックは通用せず地面に叩きつけられる。

 

アルバートは男の肩を掴み、軽々と持ち上げて腹をぶん殴った。

 

男は吐瀉物を撒き散らす。

 

「大したことはねえな」

 

アルバートは男を地面に叩きつけた。

 

男は白目を向き、ヒクヒクと身体を痙攣させた。

 

アルバートは仲間からサーベルを受け取る。

 

「わりぃが死んでもらうぜ!俺様のメンツが立たないんでな!!」

 

アルバートがサーベルを振り上げた瞬間だった。

 

男はアルバートの脛を切りつけ、そしてバランスを崩した時を狙って、顔に砂が入った袋を投げつけた。

 

アルバートはサーベルを振り落としたが空をきり、地面にあたってサーベルがへし折れる。

 

アルバートはそのまま肩膝をつく。

 

アルバートは鎧ごと断ち切られて、すねに切り傷が入った。

 

さらに目に砂が入って前がかすむ。

 

「きたねえぞ!!」

 

男はアルバートの肩を切りつけて鎧の下の肉に切り傷を覆わせる。

 

「殺し合いに汚いも糞もあるか!1回でも負けたなら死ぬのだから!てかお前盗賊だろ!汚い手を使わないでどうするんだよ!」

 

アルバートは立ち上がり、両手を振りあげた。

 

「うろああああ!!」

 

男は剣を振り落とすアルバートの鎧は断ち切られて胸に斜めの切り傷が入った。

 

アルバートは肩を震わせる。

 

「何故・・・」

 

アルバートは両腕を振り落とした。

 

「何故、殺さん!!」

 

男はアルバートの横に回り込み、足を払い頭に手を乗せて地面にアルバートの勢いを殺さずに叩きつけた。

 

「お前を殺せば奴らのタカが外れてあのガキは殺される、そんな結果だけはゴメンだ」

 

アルバートはのっそりと立ち上がった。

 

これには少し男は驚いた。

 

「どれだけタフなんだ・・・」

 

アルバートは血の混じったタンを地面に吐き捨てた。

 

「おい、野郎ども、ガキを離せ」

 

盗賊達は顔を見合わせる。

 

アルバートは眉間にシワを避せた。

 

「俺の言うことが聞けんのか!?」

 

盗賊達は慌ててガキを離す。

 

アルバートは地面に手をつく。

 

広場の床は石畳になっているのだが、周りの石が盛り上がり、アルバートの手がどんどん地面にめり込んでいく、腕力だけで地面を掘らずに地面の中に手を押し込んでいるのだ。

 

石畳は大いに盛り上がり地面はぼこぼこになった。

 

アルバートは手を引っこ抜いて男を睨みつけた。

 

「よく見りゃ、白刃の王じゃねえか。」

 

アルバートは地面のブロック上の石を持ち上げる。

 

「白刃の王、またの名をスチールポルカ、その身は一振りの鋼だとか…」

 

アルバートはポルカに石を投げつけた。

 

ポルカは体を少し反らして石を避ける。

 

「ガキは離したぞ、見せてみろよ、白刃の王の力を!!」

 

ポルカは剣を下ろした。

 

「お前ほどの男が何で盗賊なんかに・・・」

 

アルバートは石を手に取ってポルカに襲いかかった。

 

「剣を下ろすな!!」

 

ポルカは剣を鞘に戻しつつアルバートの攻撃を少し後ろに下がって避けた。

 

「残念だが、差し違えてやる事は出来ない」

 

ポルカは足を真っ直ぐ天に伸ばして、アルバートの顎を蹴りあげた。

アルバートは構わず腕を横に振り回す、ポルカは姿勢を相手の腰よりも低く保ち腕を避けた。

 

「しかし、白刃の王のその意味をその身を持って教えてやろう」

 

ポルカはアルバートの金的に縦拳を叩き込む、アルバートは流石に一瞬動きが止まる。

 

ポルカは立ち上がりながらアルバートの溝にブローを入れた。

 

ドスッと音をたてて拳がアルバートの腹に突き刺さる。

 

そのままポルカは足を持ち上げてアルバートに踵落としをかける。

 

「この俺が避けるだと!?」

 

アルバートは身体を背けて踵落としを避けた。

 

アルバートの額から顎にかけて縦一線に切り傷が入った。

 

「な、暗器!?」

 

ポルカはフックを放つ。

 

アルバートは一歩引き下がりフックを避けた。

 

アルバートの首に切り傷が入る。

 

アルバートは慌てて首を抑える、傷は浅い。

 

ポルカはアルバートの溝に後ろ蹴りを打ち込んだ。

 

「この身全てが鋼、一振りの刃だ!!」

 

アルバートは白目を向き、両膝をつく。

 

「てめえ、またも手を抜いたな!!」

 

アルバートは白目を向いたまま、再び立ち上がり、ポルカの胸に手を当てた。

 

「やる気がねえんなら、俺には勝てねえぜ!!」

 

アルバートはポルカを突き飛ばした 。

 

ポルカは数メートル吹き飛び、地面を転がった。

 

アルバートは肩膝をつく。

 

「そうか、錆び付いたのか白刃の王は・・・」

 

アルバートは石を拾った。

 

ポルカは鞘から剣を抜いた。

 

アルバートは立ち上がり、ポルカはアルバートに飛びかかる。

 

「殺し合いじゃ、ねえのかよ!!」

 

ポルカは投げつけられた石を剣で受け流す。

 

ポルカの剣から金属で金属を叩いた高音と火花が散った。

 

「ハッカペル!!」

 

ポルカの振り落とした剣はアルバートの頭の上で止まった。

 

「6回だ、これを入れて貴様を6回は殺せてる」

 

アルバートは剣を鞘に収めた。

 

「ガキの目の前では出来れば殺しはしたくない」

 

流石に騒ぎを聞きつけて警備隊がやってきた。

 

ポルカは急いでエリカの手を引き、その場を逃げ出した。



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3話

その後ポルカは逃走途中に倒れて、助けに来たアベルにつかまり、踊る子羊亭に匿われた。

 

ポルカは虚ろな目で床に伏せた、アベルは涙するばかりだった。

 

「こんなになってまで、娘を助けてもらい盗賊から守ってもらって申し訳ない」

 

エリカは相変わらず眉間にシワを寄せていた。

 

「私の目の前だからって、こいつが手を抜いて戦うからよ!!」

 

アベルはエリカが叱る。

 

「それが恩人に対する態度か!」

 

エリカは大声を上げた。

 

「恩人どころか疫病神よ!!」

 

アベルが肩を震わせるとポルカはくすっと笑った。

 

「疫病神か、言えてる・・・」

 

アベルは慌ててポルカを抑える。

 

「あんたはじゅうしょうなんだ、肋が折れている、変に動いて内蔵に刺さりでもしたら大変だ」

 

ポルカはアベルを押し避けて立ち上がる。

 

「肋の一本二本でギャアギャアと喚くな」

 

ポルカは出口で立ちどまり、少しふりかえる。

 

「世話になった」

 

アベルがポルカを指さした。

 

「そんな体でどこに行こうと言うのだ!」

 

ポルカはクスクスと笑った。

 

「どっかさ」

 

~☆~

 

ポルカは街の外に向かう。

 

すると、エリカが追いかけてきた。

 

「まって、街を出るつもり? 」

 

ポルカは足を止めてエリカに振り返る。

 

「見れば分かるだろ、疫病神はただ去るのみだ」

 

エリカは眉間にシワを寄せた。

 

「相変わらず腹立つね、喋ったと思えば皮肉しか言えないの!?」

 

ポルカは地面に座り込んだ。

 

「何で俺を呼び止める、俺を見る度に眉間にシワを寄せるくせに」

 

エリカは顔をそらす。

 

「あたしのせいで街を出ていったなら、後味が悪いじゃない」

 

ポルカは立ち上がってエリカに背を向けた。

 

「安心しな、此処には探し物が無かった、それだけの事だ」

 

エリカがため息をついた。

 

「探し物・・・」

 

ポルカは今一度だけ、エリカに笑顔を向ける。

 

「カーリナと言う可愛らしい花だ」

 

エリカは道ばたに咲く、エリカの花に目をやった。

 

「花なら、咲いてるけど?」

 

その瞬間、大きな怒声が響き渡る。

 

「小娘、邪魔だ!!」

 

アルバートがエリカめがけて巨大な大剣を振り落とした。

 

ポルカはエリカを突き飛ばして、変わりに大剣を受けた。

 

剣がポルカの肩にくいこみ骨を切り裂いた。

 

それでも運が良くて肩は切断されずにすみ、深いが五体を失う程の致命傷は避けた。

 

ポルカは鞘から剣を抜き、鞘を地面に捨てた。

 

いつの間に酒場から盗んでいた酒を傷口にドバドバと引っ掛ける 。

 

ポルカは酒便を地面に投げつけてたたき割って、地面を睨みつけた。

 

「エリカ、これ以上は無理だ、責めてもの耳を塞ぎ目を瞑っていてくれ」

 

ポルカの肩と唇が震えている。

 

「アルバート、このクズ野郎め!」

 

アルバートは手招きする。

 

「やっと、やる気になったようだな、白刃の王!」

 

アルバートは大剣を振り落とす、ポルカはそれを剣で受けとめて踏ん張った。

 

ポルカは俯いまま、大剣をグイグイと押し返す。

 

「ダマスカス銅の大剣か、ちゃんと精霊の宿るような剣も持っているじゃないか!」

 

アルバートはポルカを一気に押し返して振り払う、ポルカはたたらを踏みながら後ろにさがる。

 

「久しぶりなんだよ、俺を本気にさせる相手にでくわしたのは!!」

 

ポルカは再びアルバートに斬りかかる。

 

ポルカは剣を縦一線に振り落とす。

 

アルバートはそれを腕で受け止めた、剣は腕にくいこむと全く動かなかくなった。

 

ポルカは剣を引き抜こうと力を込めるが剣はびくともしない。

 

アルバートはポルカの顔面を殴って吹っ飛ばした。

 

ポルカは壁の近くの地面に倒れる。

 

アルバートは追い打ちで大剣を振り落とす。

 

ポルカは地面を転がって剣を避ける、大剣は壁にあたるが壁を引き裂き地面に到達した。

 

ポルカはアルバートの足を切りつける。

 

アルバートは片足を上げて剣を避けてポルカを蹴っ飛ばした。

 

「なんだ、期待はずれか、この程度なら国も滅ぶわな!!」

 

ポルカは口から流れる血を袖でぬぐい頭を上げてアルバートを睨みつけた。

 

アルバートはポルカをにらみ返す。

 

「ちゃんと目は見えるのか、どちらにせよ、お前やお前の国の軟弱な兵士では俺には勝てん!!」

 

ポルカは剣を上段に構えた。

 

「貴様、俺だけならともかく我が祖国をもバカにするか!!」

 

アルバートは笑い飛ばした。

 

「その祖国は今は何処にある!?」

 

ポルカは大きく一歩を踏み出した。

 

アルバートは大剣を力任せに横に振った。

 

「この、一振りで人を7人馬を2頭まとめて切り捨てたのがオークの所以よ!!」

 

ポルカは大剣を剣で受け流した。

 

火花を散らし、アルバートは大剣を振り切る無防備になった。

 

「ハッカペル!!」

 

しかし、アルバートは大剣の勢いを全て腕力で殺して大剣でブロックする。

 

ポルカの剣の起動は蛇のように動き、アルバートのブロックを避けて、首に剣が触れた。

 

アルバートの真横にはいつの間にかポルカがいて、首にはその白刃がピタリとひっついていた。

 

ポルカは鬼の様な形相でアルバートを睨んでいたが斬るのは躊躇った。

 

「この剣は王女の眠る、祖国の為に・・・」

 

ポルカは剣を下ろした。

 

「殺しをするための剣では無い、護る為の剣だ」

 

ポルカは目線をエリカに向ける。

 

エリカは目を開き、こちらを震えながら見つめていた。

 

「だから、耳を塞ぎ目を閉じろと言ったのだ」

 

ポルカは鞘を取りに向かう。

 

アルバートは大剣を背負った。

 

「牙の抜けた狼とやりあってもつまらん、きょうがそがれた」

 

アルバートはポルカが鞘をとる前にその場をさってしまった。

 

雪がふりはじめる。

 

気がつけば日はくれて青色の月がのぞき込んでいた。

 

エリカはポルカに声をかけようとする。

 

ポルカはその前に黙って街を出ていってしまった。



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4話

沢山の兵士が押し寄せる。

 

ポルカは肩に矢を受けて身体の至るところに切り傷があった。

 

その後で沢山の兵士が傷つき戦っている。

 

「あと少しだあと少し持ちこたえたら連合軍が助けにくる!!」

 

ポルカは迫り来る敵兵士を切り捨てる。

 

「あと少しだ!」

 

すると、城が燃え上がった。

 

ポルカは目を丸くして全身を震わして涙目になり、振り返った。

 

南門が破られたと嫌な情報が飛び交うがそんな物はポルカの耳に入らない。

 

ポルカはお城めがけて走り出す。

 

「カーリナ王女様ああああああ!!」

 

ポルカは燃える城の中を走り抜ける。

 

そして、王室間に。

 

そこには倒れている10歳ぐらいの王女とその周りを取り巻く侍女達が倒れていた。

 

ポルカは王女を抱き抱える、胸には短剣が突き刺さっていた。

 

城が崩れ、天上に穴が空いた。

 

穴から普段は青い月が顔を覗かすが、血と炎で月は真っ赤に真紅に染まっていた。

 

ポルカは王女を抱えて、月を睨みつけた。

 

此処で目が覚める。

 

ポルカは洞窟の中で勢いよく起きた。

 

ポルカは全身に冷や汗をかき、歯を食いしばり、胸を片手で抑えた。

 

「くそ、またあの夢か」

 

ポルカは肩を抑える。

 

アルバートにつけられた傷がズキズキと湿気で痛む。

 

洞窟の外に目をやると冷たい雨が降っていた。

 

ポルカは剣が痛むことを恐れ、鞘から剣を抜き軽く布で拭き上げた。

 

すると洞窟の中に何者かが入ってきた。

 

その物は修道士の姿をしており、外から来たためかビショビショだった。

 

ポルカはその男にいそいそと背を向ける。

 

修道士はそんなぶっきら棒なポルカに構わず近寄った。

 

修道士はポルカの後ろまで来ると懐のナイフを取り出す。

 

次の瞬間、ポルカは修道士の片足を掴みそのまま持ち上げて、修道士をひっくり返そうとした。

 

修道士は片足で地面を蹴り、宙返りして倒れずに住む。

 

ポルカは剣を下段に構えて、うつむいた。

 

修道士がナイフを手元で回しながら笑う。

 

「貴様がポルカだな、お前に恨みはねえが此処で死んでもらうぜ」

 

ポルカは物静かな声で答えた。

 

「一つだけ言っておく、既に間合いに入っているぞ?」

 

修道士はナイフでポルカを仕留めようと突きを放つ。

 

ポルカは剣をナイフの刃で滑らして修道士の首に押し当てた。

 

ナイフは剣に擦れて激しい火花を散らした。

 

修道士は生唾を飲み込む。

 

「何をしたら、そんな速度で剣が振れるんだよ」

 

ポルカは修道士の腹を蹴っ飛ばして、修道士を仕留めた。

 

「一人ではないのか・・・」

 

奥から修道士の仲間が二人現れた。

 

ポルカは肩の力を抜き、剣をぶらぶらと垂らしていた。

 

修道士の1人がサーベルでポルカに斬り掛かる、ポルカは体を反ってサーベルをギリギリで避ける。

 

もう一人の修道士が背後からポルカにサーベルで斬り掛かる、ポルカは少し体を前に倒してサーベルをギリギリで避ける。

 

ポルカは目の前の修道士の腹に1発拳を入れて、後ろの修道士に蹴りを御見舞してやった。

 

「暗殺者も大したこと無いな・・・」

 

ポルカは突如、飛んできたナイフを剣で払う。

 

両手にナイフを持った暗殺者がポルカに襲いかかった。

 

暗殺者は物凄い速度で連続の突きを放つ。

 

ポルカはそれを全て紙一重で避けてみせる。

 

暗殺者は口から仕込み針を放った。

 

ポルカはとっさに腕で針を受ける。

 

すると、暗殺者の鋭い上段蹴りがポルカの顎を蹴りあげた。

 

ポルカは少しバランスを崩す。

 

暗殺者はナイフでポルカの首を指しにかかる。

 

ポルカは暗殺者の手首を掴み、踏みとどまり、もう片手で暗殺者の肘を掴んで雑巾のように絞った。

 

暗殺者の前腕の肉が引きちぎれ、地が吹き出した。

 

「少しは出来るじゃないか」

 

ポルカは相手の二の腕をしっかりと脇に挟み、相手の肩に体重をかけてそのまま肩をへし折る。

 

暗殺者がぐったりすると手首と肘の関節を握力で握りつぶし骨を砕いた。

 

ポルカは手を離すとそのまま暗殺者の喉に手刀を叩き込み地面に倒した。

 

ポルカは顎をさすり、雨の降る外にさっていった。

 

~☆~

 

ポルカは小さな村を発見して、そこに向かった。

 

村に入った瞬間にポルカは武器を持った村人に囲まれる。

 

「よそ者だ、武器を持っているぞ!!」

 

雨が降り注ぐ中、ポルカは剣に手を当てた。

 

「王女より授かりし我が剣、どんな理由であれど手放せるものか」

 

村人は飛び掛るのを躊躇している、戦いのど素人だからだ。

 

先手必勝である。

 

ポルカは大声をあげる。

 

「ハッカペル!!」

 

村人達はすくみ上がる、こうなるともうダメだ。

 

ポルカは斬りこみ、散々村人達を追い回し蹴っ飛ばし、踏んづけて回った。

 

取り囲んでいた、村人達が散り散りになったのを確認するとポルカはその間に村を大急ぎで出ていった。

 

怪我人は出なかった、いや出さなかった。

 

怪我をしたといえば体制を立て直した村人が慌ててポルカを追いかけて石を投げつけたときに出来た頭の傷ぐらいである。

 

ポルカは血で濡れた後ろ頭を抑えながら村を離れて行った。

 

村人達がポルカを探して追いかけて来たがポルカは異常な足の速さと体力で村人達とあっという間に間を広げてしまった。

 

ポルカは村人達から身を隠すために草の茂みに隠れているとブラックスノーの兵士達がポルカを襲った村の方角に向かって進軍しているのを見つけた。

 

ポルカは後ろ頭の傷をさわる、手は真っ赤に染まった。

ポルカはその手を睨みつけていた。

 

~☆~

 

村人達はポルカを見失ってしまった、ために更に緊張が走っていた。

 

「きっと、あの男は仲間をよんでくる!」

 

村人達は慌てて村の入口にバリケードをこしらえる。

 

しかし、村人達は驚愕した。

 

ブラックスノーの軍隊がこちらに向かっているのだ。

 

「あいつ、ブラックスノーの兵士だったんだ!」

 

村人達の中には怒りに物に当たるものがいた。

 

「くそ、ブラックスノーの糞野郎め、お前達にやる物は死だけだ!!」

 

村人達は武器を手に取りブラックスノーの軍隊を待ち構えた。

 

バリスタの矢がバリケードを一瞬で破壊した。

 

沢山のブラックスノーの兵士が村の中になだれ込む。

 

ど素人の村人に対して、ブラックスノーの兵士達は手練の集まり。

 

村人達は捉えられ、あっという間に1箇所に集められた。

 

ブラックスノーの一兵士が村人達に言う。

 

「たった今から、この村はブラックスノーの物だ」

 

兵士は死体に向かって短剣の先を向ける。

 

「文句があるのなら、彼らのようになる!!」

 

村人達は涙した。

 

突如、怒声が響き渡る。

 

風に紛れて、やつが来る。

 

「ハッカペル!!」

 

ブラックスノーの兵士は一斉に声の方に振り向きサーベルをぬく。

 

まるで獣のような速度で白刃の王が現れた。

 

兵士達のサーベルを次々と切捨てて歩く。

 

そして、村人達の目の前まで走り抜けた。

 

白刃の王は怯える村人たちの中に子供がいる事を確認する、そして散らばる死体の中に子供の死体がある事を確認する。

 

ポルカはあからさまに怒っていた。

 

ブラックスノーの兵士達はポルカを取り囲む。

 

「間違いない、スチールポルカだ」

 

「こいつの首を持って変えれば一生遊んで暮らせるぞ!!」

 

「なんで、たかが一兵士にそれだけの賞金がかかってんだろな、将軍様も頭が悪いぜ」

 

ポルカは頭をあげた、ポルカは斬ると心に決めた。

 

「私は一振りの鋼・・・」

 

ポルカは一騎当千の騎兵だ。

 

だが、馬がなくても最強の剣士だ。

 

地上最強の剣士だからこそ、それだけの額がつくのだ。

ポルカの首をとろうと1人の兵士がサーベルを振り上げてとびだした。

 

ポルカの振りは凄まじい。

 

その兵士がサーベルを振り落とす前に、いや、剣を降ることに事に気づく前に胴体を横に真っ二つ。

 

兵士はサーベルをふりおとす、そして、身体がバラける。

 

切られた事にすら気づかない。

 

ポルカは空を見上げる、空には月が上り始めていて怒りで月は真っ赤に見える。

 

「ハッカペル!!」

 

ポルカは単身切り込む。

 

勇敢なブラックスノーの兵士がポルカにサーベルを振る。

 

ポルカはサーベルを素手でへし折り、そのまま首を手刀で跳ね飛ばした。

 

ポルカは指を鳴らす。

 

「そのような玩具で俺に勝てると思っていたのか、お笑いだな」

 

ポルカは他の兵士の顔面を蹴っ飛ばす、顔には深い切り傷が入り兵士は死んだ。

 

ポルカのこの身すべてが一振りの鋼、この剣はポルカの分身。

 

ポルカは剣をかざして、光らせる。

 

「ハッカペル!!」

兵士達は一斉にポルカに切りかかった。

 

ポルカは兵と兵の間を綺麗に抜けて、兵士2人を切り捨てた。

 

斬ると決めたポルカに勝てる道理はない。

 

ついにとち狂った、ブラックスノーの一兵士がポルカにバリスタを向ける。

 

「死ね!!」

 

バリスタの矢がポルカに飛んでいった。

 

ポルカは矢の起動から僅かに避けて前身しながら剣をふる、バリスタの矢と擦れ合い火花が散る。

 

ポルカが剣を振り終えるとポルカはバリスタの後ろにいる。

 

バリスタが真っ二つになった。

 

慌てて、バリスタを打った兵士が短剣を抜く。

 

ポルカはその短剣を持った手の手首を掴み握りつぶした。

 

「なんて、握力!!」

 

ポルカは兵士の首に人差し指を当てる。

 

そのまま、指を強く押すと指が兵士の首に突き刺さった。

 

「指圧もすごいだろ?」

 

ポルカは指を抜き取り、兵士の顔面を殴り倒した。

 

ブラックスノーの兵士達は恐れをかんじだした。

 

「ばっ化物か・・・」

 

一兵士がサーベルを落とす。

 

「素手で殺せるなら、あいつ武器いらねえじゃん」

 

ポルカは剣を強く握り、剣を握る手を前に突き出した。

 

「肉体は武器を使う物の基板、その上に技術力だ」

 

ポルカは小さな声でつぶやく。

 

「そんな事も知らんのかブラックスノーの兵士達は・・・」

 

ポルカは呆れ返っていた。

 

「訓練を受けた兵士とはいえ、所詮は烏合の衆か」

 

ポルカは剣を上段に構える。

 

ブラックスノーの兵士達は後ろに引き下がってしまった。

 

白刃の王の勝ちは決まった。

 

「ハッカペル!!」

 

ブラックスノーの兵士達はこの言葉を聞く度に誰かが死ぬことを知ってしまった。

 

武器を捨て、兵士達は一斉に逃げ出す。

 

ポルカは剣を降って、血を払い、布で血を綺麗に拭き取った。

 

村人達はあ然としている。

 

たった一人の男が軍隊を追い返した。

 

ポルカは剣に祈りを捧げた。

 

「どうか、精霊たちよ、この地で死んだ者達に祝福を・・・」

 

ポルカは祈りを捧げ終わると黙って村を出ていった。



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5話

今日も踊る子羊亭にはたくさんの傭兵で賑わっていた。

 

しかし、あからさまにイレギュラーな存在がひとり現れる。

 

武器を持っている所、傭兵なのだろうがサーベルのようでサーベルではない。

 

ベルセルクにしては獣の皮を被っている訳では無いが変わった格好はしている。

 

その男はアベルに近寄った。

 

「すまぬ、ちょっといいかな?」

 

アベルは男を物珍しそうなものを見るような目で見つめた。

 

「変わった姿だね、何かな?」

 

男は深く頭を下げた。

 

「ありがたい、拙者、井川斬鉄才と申す、人探しをしていて・・・」

 

アベルは焼酎をだした。

 

「なる程ねこのお酒の国か、それは遠路はるばるご苦労なこった、でっどんな人物かな?」

 

井川は席に着く。

 

「日が沈まぬ白夜の国に地上最強の剣士がおると聞いた、その名を鋼のポルカ、またの名は白刃の王」

 

井川は嬉しそうに話す。

 

「是非、一度、剣士の頂点にたった彼に会いたいと思って」

 

井川は周りの空気が張り詰めた事に気がついた。

 

さっきまで笑顔だった、アベルも井川を睨みつけている。

 

「あって、どうするんだ?」

 

井川は席を立ち上がる。

 

「是非、お手合わせをと・・・」

 

アベルが机を叩いた。

 

「帰れ、お前に話す事は何も無い!!」

 

井川は頭を軽く下げて店を出ていく。

 

すると、ブラックスノーの兵士達が店に向かっていた。

 

井川はその兵士達を見て胸騒ぎが襲う。

 

「あの店があぶないきがするでござる!!」

 

予感は的中していた。

 

ブラックスノーの兵士達は傭兵達を取り囲みアベル達を殺そうとしていた。

 

「お前達、ポルカのことを知ってんだろ、いえば命は助かるし金もたんまり手に入るぞ?」

 

アベルが首を横に降った。

 

「誰がてめえらなんかに言うか、ブラックスノーなんてクソくらえだ!!」

 

アベルはブラックスノーの一兵士に顔を殴られる。

 

「黙れ、豚!!」

 

腕利きの傭兵達もきちんと武装した、ブラックスノーの正規軍を前に手も足も出ない。

 

特にその中に雷獣と呼ばれる、ブラックスノーの兵士がいる。

 

彼の繰り出す斧の一撃は拳程の大きさの石を叩き割ってしまう豪腕の持ち主なのである。

 

刃向かった傭兵は皆、彼の斧で殺されていた。

 

雷獣は片手斧についた血を舐める。

 

それなら一人一人、処刑してやるよ。

 

「そこまでだ!!」

 

井川が店に乗り込み、頭に被っていた笠を投げ捨てた。

 

「やあやあ、吾こそは東国の夢見る剣豪、真の剣神をめざしてはるばる西えと参った、井川斬鉄才と申す」

 

井川は上の着物を脱ぎ、背中に刻んだ大きな虎と龍の彫りを見せつけた。

 

「拙者が参ったからには貴様だの悪業も最早ここまで、御天道様に変わって貴様たちに天誅いたす。」

 

井川斬鉄才は刀の持ち手に手を触れて腰を落とした。

 

「井川斬鉄才、推して参る!!」

 

雷獣は目を血走らした。

 

「名乗りが長いしうるせえ、俺の斧でぶっ殺してやるよ!!」

 

雷獣は斧を振り上げて、井川に飛びかかった。

 

井川の抜く刀の先端速度は音速を超える。

 

まさに目にも止まらぬ居合斬りで雷獣の斧と首をはねた。

 

「その斧を金が悪い、そのような玩具で拙者に勝つつもりだったのか?」

 

死人に口なし、雷獣は叫ぶ事もなくその命を終わらした。

 

すると、傭兵達は唖然としたブラックスノーの兵士達に奇襲をかけて、形成が一気に逆転した。

 

井川と傭兵達はブラックスノーの兵士達を分縛る。

 

アベルは申し訳さそうな顔で井川に頭を下げて謝った。

 

「さっきは申し訳なかった」

 

井川は刀についた血を振り払い鞘に収めた。

 

「いえ、当然のことをしたまで」

 

アベルは井川に焼酎を渡す。

 

「飲んでくれ、済まないが今はポルカは何処にいるのか分からないんだ、力にはなれない」

 

アベルは焼酎を一気に飲み干して、口をぬぐった。

 

「結構結構、感謝でござる」

 

すると、ブラックスノーの1人の兵士がまたやってきた。

 

兵士は舌打ちをする。

 

「情けない、それでもブラックスノーの誇り高き戦士かお前達!!」

 

ブラックスノーの兵士達は歓喜の声を上げた。

 

「イワンが来た、ブリザードイワンが来たぞ!!」

 

井川はイワンのシャシュカと言われるサーベルを見つめる。

 

「良いものをお持ちで」

 

イワンは井川を睨みつけた。

 

「お前達もう安心しろ、ブリザードイワンが来てやったぞ」

 

「ウォッカを飲んで机上で机が壊れるまで踊ろう、キャビアをたらふく食べて少女とキスをしよう、そして命尽きるまで祖国の為に戦おう!!」

 

ブラックスノーの兵士達は急に大声を上げて縛られた状態で抵抗を始めた。

 

「ダァーーー!!(はい)」

 

井川が居合の構えに入る。

 

「ならば受けてみよ、我が一撃!」

 

イワンはウォッカに火をつけて火炎瓶を井川の足元に投げつけた。

 

そのままイワンは近寄ってこない、井川の足元が燃える。

 

井川はイワンに駆け寄った。

 

イワンは刀をぬこうとする手を片手で押さえつける。

 

「わりいが、お前の自慢の一撃はくらいたくないな」

 

イワンは井川の顔面に頭突きを入れる。

 

井川は後ろに仰け反り、鞘から刀を抜いた。

 

そのまま、上段に構えてイワンに切りかかる。

 

「勇敢なるブラックスノーの戦士を舐めるなよ!!」

 

イワンは正面から突撃して、井川が刀を振り落とすよりも早く顔にパンチを打ち込んだ。

 

倒れた井川をイワンは髪を掴んで引き起こし、再び顔面を殴り飛ばした。

 

イワンはシャシュカを振り上げる。

 

「雷獣の仇!!」

 

井川は跳ね起きて、イワンをそれと同時に蹴り飛ばす。

 

「調子にのるなでござる!」

 

井川はイワンの股間を蹴りあげる、そして内またになったイワンの溝に正拳突をいれた。

 

イワンは吐瀉物を撒き散らす。

 

井川は再びイワンの溝に正拳突を打ち込む。

 

イワンは両膝を地面についた。

 

井川は溝に足先蹴りをいれた。

 

イワンは腹を抱えて四つん這いになった。

 

井川は四つん這いのイワンの後頭部に踵落としを入れる。

 

イワンは白目を向いて地面に頭をつけた。

 

井川が刀を構える。

 

「悪いが、その首をいただく」

 

イワンはガバッと起き上がり、尻を地面についた体制に入って息を切らしながら井川を見つめた。

 

「へ、この程度か?」

 

イワンは立ち上がりシャシュカを振り回した。

 

井川はサーベルの軌道を読み取り、最小限の動きでよける。

 

「大振りだな、ブリザードイワン悪いが敵ではない」

 

井川の横っぱらに傷が入る。

 

井川は間一髪で致命傷を避けた。

 

「なんだ今の・・・」

 

井川の首が少し切れる、これもまたギリギリで致命傷を避けた結果。

 

「また?」

 

井川は生唾を飲む。

 

「剣に殺気が闘争心が無い」

 

井川は刀を振るう。

 

イワンはシャシュカで井川の肩を斬った。

 

井川は刀の軌道を外してからぶる。

 

「まさに無の剣撃、無の心、無の境地」

 

井川は肩膝をつく。

 

「最早ここまでか無念・・・」

 

すると、大きな声が店に響き渡った。

 

「見つけたぞイワン、殺してやる、ハッカペル!!」

 

白刃の王が飛び出した。

 

イワンは白刃の王の一撃をサーベルで受け止めるが余り力にふっとばされる。

 

白刃の王は剣を振り上げてイワンに襲い掛かる。

 

「王女様の仇!!」

 

イワンは必死で白刃の王の一撃一撃をサーベルで受け止めるがその内手が痺れてサーベルを離してしまった。

 

「ハッカペル!!」

 

白刃の王はイワンに止めの一撃をいれる。

 

イワンは間一髪で避けたが片目をうしなってしまった。

 

イワンは割れた酒便を掴み白刃の王の腹にぶっさした。

 

攻撃に殺意が乗らないために頭に血が上っていた白刃の王はよけれなかった。

 

しかし、イワンの腹には白刃の王の手がぶっ刺さってる。

 

ブラックスノーの兵士達がイワンを取り押さえた。

 

「イワン将軍、撤退です!」

 

イワンは抵抗する。

 

「離せ、あと一息で・・・」

 

ブラックスノーの兵士達は白刃の王から無理やりイワンを引き剥がした。

 

「1000人でも彼に勝てないと申していたのは何方ですか、今回は雷獣様も亡くなり兵士達の被害が多くイワン様も負傷なさっております!」

 

イワンはそれでも抵抗する。

 

「離せ、離さんか!」

 

兵士達はそんなイワンを店の外までひこずる。

 

「私達には貴方が何よりも必要なのです、このあと首を飛ばされ用が構いません、ブリザードイワンに此処で死なれたら困るのです」

 

白刃の王は肩膝をつき、手を伸ばした。

 

「逃げるなイワン、祖国を返せ!!」

 

イワンとブラックスノーは退散する。

 

白刃の王は怒鳴り散らす。

 

「巫山戯るな、弱虫め!」

 

白刃の王は柄にもなく地面を拳で叩き、糞がと大声を上げた。



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6話

その後、ポルカは周りに抑えられて、傷の手当をした。

 

そうでもしないと黙って、1人で何処かに行ってしまうからだ。

 

イワンに逃げられた事がよっぽどショックだったのか、魂の抜け殻見たいになっていた為に捕まえるのは容易だった。

 

アベルが井川の背中を押した。

 

「分かるか、あいつがお前の探していた男だよ」

 

井川が生唾を飲む。

 

「あれが剣神?」

 

井川はいてもたってもいられなくなりポルカに話しかけてしまった。

 

「失礼する、拙者は井川斬鉄才と申すもの怪我が治ったら拙者と手合わせ出来ぬか?」

 

「是非、剣神とうたわれるお主と勝負がしたいのだ」

 

井川は興奮しているのか早口でそうポルカに話しかけた。

 

ポルカは首を横に降る。

 

「無理だ・・・」

 

井川は頬を痙攣させた。

 

「何故、理由を申してもらわなければ納得出来ぬ!」

 

ポルカは井川の刀を見つめる。

 

「見たことも無い武器だが良いものを持っている、それなら精霊も宿っているだろう」

 

井川は刀を褒められて少し照れた。

 

ポルカは再び首を横に降る。

 

「だが、お前とは戦えない」

 

ポルカは自分の剣を井川に見せた、剣はよく見ると鏡の様に研ぎ澄まされていて、井川の顔を写した。

 

井川は目を丸くした。

 

「先端が厚く、根元が細い、よくもそんな物が振れた物だ」

 

ポルカは剣を鞘に収める。

 

「この剣は王女の為のもの、私闘の為には使えない」

 

井川は肩を落とした。

 

「それは残念だ、群青の剣が見えると思ったに・・・」

 

アベルが机を指で叩いた。

 

「オーガのヘビィハンマー、雷獣のエクスキューションアクス、イワンのホワイトアウトどれも彼らを代表する技だ」

 

「白刃の王の群青の剣、語るものなし見れば死ぬからだ」

 

ポルカは両手を組んで溜息をついた。

 

「さっきから剣神だとか見たら死ぬとか俺はそんな大した人物じゃ無い、白刃の王も勝手に周りが騒いでいるだけで実際は女ひとり守れないクズだよ」

 

井川はポルカの肩に手を当てる。

 

「貴方の姫君は今はどうなさっているのだ?」

 

何も知らないというのは怖いことだ、そして空気が読めないということも恐ろしい事だ。

 

「ポルカは明らかにテンションが下がった声で体から捻り出すように答えた」

 

「今は奪われた国の廃城に永遠と眠っている」

 

初めて井川は状況を知ったが今度は井川が大声で泣き出した。

 

「それは申し訳ない事を聞いた、拙者、深く胸に響いたでござる!!」

 

ポルカは再びため息をついた。

 

「お前はきっと悪い奴じゃないないのだろうけども、一緒にいると疲れる」

 

井川は涙を袖で拭くとアベルの元によった。

 

「すまぬがもう一人だけ、情報を教えてくれぬか!?」

 

アベルは首を縦に降った。

 

「まだ、探し人がいるのかい?」

 

井川は首を縦に降った。

 

「オークと呼ばれる剣士が・・・」

 

アベルは頭を抱えた。

 

「この街の周辺にいるよ、彼奴だけは思い出したくもない」

 

井川は顔をしかめた。

 

「また、拙者失言を申したか?」

 

ポルカは思わず笑いをこぼした。

 

~☆~

 

エリカは機嫌が悪かった。

 

エリカは済ました態度のポルカが嫌いだ。

 

ポルカの事には感謝はして入るが、独りに成ろうとする態度がどうも気に食わない。

 

部屋の奥でいじけてるとポルカの方からこっちに来た。

 

エリカはポルカを睨みつける。

 

「あら英雄さん、私に何か用?」

 

ポルカは周りをキョロキョロと見渡して人がいない事を確認した。

 

「いや、あいつら勝手に騒ぎ出したから隙を見て抜け出してきた、もうそろそろ出かけようと思って。」

 

エリカはつっけんどんな態度をとる。

 

「あっそう」

 

ポルカは首をかしげていた。

 

「その前に一つだけ、その髪型は貴族に憧れているのか?」

 

エリカは肩を震わした。

 

「そうよ、一般人が憧れて悪い?」

 

ポルカは首を横に降る。

 

「いや、よく似合っている、とても素敵だと思う」

 

ポルカは祈る様に手を組んだ。

 

「精霊の加護があらん事を・・・」

 

~☆~

 

ポルカは裏口から抜け出して、村の外に向かう。

 

すると、アルバートが大剣を構えて待っていた。

 

「ブラックスノーの連中を見てピンと来たぜ、やはりこの村に来ていたんだな。」

 

ポルカは足を止めた。

 

「邪魔だ、相手はしないぞ」

 

アルバートは大剣を片手で持ち、剣先をポルカに向けた。

 

「お前の馬の在処を知っている、俺を倒したらおしえてやるよ」

 

アルバートは手紙を懐から出した。

 

「俺を殺せば、在処が分かるってことだ」

 

ポルカは剣を抜いた。

 

「分かった、そこまでの覚悟なら相手してやろう」

 

ポルカはアルバートに切りかかる。

 

アルバートは大剣を縦一線に振り落とした。

 

ポルカは大剣を剣で受け流し、アルバートの懐に入った。

 

「ハッカペル!!」

 

ポルカの叫びは空気を震わしそこらじゅうに響き渡った。

 

アルバートは背中に悪寒が走り、血の気が冷めた。

 

斬られる、間違いなく胴のこのラインを切り離される。

 

アルバートは斬られる予感が走る。

 

確かに感じる感触、切り裂かれる臓腑、切り離される背骨。

 

アルバートは肩膝をついた、まだ、白刃の王は剣を振ってはいなかった。

 

ポルカはアルバートの懐から手紙を抜き取り中身を確認すると手紙を破り捨てて、その場を立ち去った。

 

~☆~

途中、雨が降った。

 

冷たい雨はポルカの身体を冷やした。

 

冷たい雨に打たれながらもポルカは沿岸沿いの道を歩いていた。

 

もう日もくれそうだ、如何に白刃の王と言えど体力に限界が近づいていた。

 

村の明かりが見える、そこには小さな漁村があった。

 

ポルカは小さな漁村に立ちよった。

 

1人の初老の男性がポルカに近寄った。

 

「これはこれは旅人とは珍しい 、何も無い所ですがゆっくりとしていってください」

 

ポルカは周りを見渡す。

 

「この村には女と子供が見当たらないな 」

 

初老の男性は笑い飛ばした。

 

「この時間帯はもう、子供は寝に入ってますよ、女は子供を寝かしつけるために家にいます」

 

ポルカは雨の中、旅人を待っているこの爺さんにも違和感を覚えたが体力の限界が近づいていた為に言葉に甘えた。

 

なんといってもサウナがあると言う事にポルカは喜びを感じていた。

 

サウナの中では祖国を感じ取れる。

 

例えそれが罠だとしても。

 

サウナの扉にかんぬきで鍵が掛けられた、ポルカはサウナの中に腰掛け一つで閉じ込められる。

 

一応、剣は持ち込んでいたから敵襲には備えていた。

 

ポルカはサウナの中で横になる。

 

可能な限り長い時間そうしていた。

 

ポルカは閉じ込められていたが何時でも出れるからこその余裕だ。

 

15分ほどするとポルカは立ち上がり、かんぬきのかかった扉を蹴破った。

 

かんぬきはへし折れ、扉が外れる。

 

ポルカは直ぐに外れた扉を直し、祈りを捧げた。

 

良き、サウナでした、精霊の加護に感謝を・・・。

 

雨はすっかりやんでいた。

 

ポルカは沢山の男達に囲まれる。

 

男達はカットラスをポルカに向けて身構えている。

 

ポルカは手のひらで額の汗を脱ぐった。

 

「海賊よ、やめとけ犬死にするだけだ」

 

強靭な男達が道をあける、1人の女がポルカに近寄った。

 

「あんたがスチールポルカか、今は放浪者だろ」

 

女は顔をポルカに近づけた。

 

「どうだい、アタイの仲間にならないかい、悪いようにはしないよ」

 

ポルカは首を横に降った。

 

「我が祖国に叶うものは無い、放浪者になっても構わない」

 

女は後ろに下がっていった。

 

「そうか、残念だ」

 

女は振り返りピストルの引き金を引いた。

 

火花が散る、ポルカは弾丸を真っ二つに切り捨て横に受け流した。

 

一斉に周囲の男達がポルカを取り押さえた。

 

ポルカは数人にまとわりつかれても真っ直ぐと歩き出す。

 

女はカットラスを手に取った。

 

「お前たちどきな、そいつはお前らが数人かかってもたおせやしない!」

 

次の瞬間、男達は引いた。

 

ポルカは女の前まで歩きカットラスが胸に当たるまで進んで止まった。

 

「俺の服は何処だ?」

 

女はカットラスを振ろうとしたがカットラスはいつの間にかポルカに人差し指と親指でつままれていて微動だにしない。

 

慌ててピストルを懐から抜くとポルカに銃口を握られてサッと取り上げられてしまった。

 

ポルカは手のひらの中でピストルをクルクルと回してグリップに親指があたり、重心に他の指が当たるように持ってそのまま握りつぶした。

 

ガラクタと化したピストルを手のひらから落とすように捨てる。

 

「名前は?」

 

女はカットラスに両手を添えて力任せに引っ張る。

 

「アルビダだ!!」

 

ポルカはカットラスを離した、アルビダは尻餅をつく。

 

ポルカは肩膝をついて、アルビダの尻餅をついたカーリナの視線に合わした。

 

「良い名だな、でも俺は海の上よりも森の中の方が好きだ、空ならもっと好きだ」

 

ポルカは立ち上がりその場を去ろうとする。

 

「待な!!」

 

ポルカは足を止めた、アルビダは呆れた顔で空を見上げた。

 

「その格好でどこに行こうというのだい、お前達奴の服を持ってこい」

 

ポルカが服を着替えている間に海賊のクルーの1人がアルビダに話しかけた。

 

「良いのですか」

 

アルビダはクルーの頭に拳骨をいれた。

 

「命がいくつあっても足りないよ、私はともかくお前達まで無駄死にはさせたくないからね」

 

ポルカが服を着替え終わるとアルビダはポルカに一つ提案する。

 

どうせ何だから一晩ここで寝ていきな、安心しな寝首をかいたりはしないから。

 

ポルカは何だか胸騒ぎがした。

 

「分かった・・・」

 

~☆~

ポルカの評判は悪かった。

 

常にうつむいていて口数は限りなく少ない。

 

しかし、お酒の飲みっぷりだけは好評でアルコール度数の高い酒を顔色一つ変えずに水の様に飲む姿は感心を集めた。

 

皆がべろべろに酔っ払って寝ているとブラックスノーの軍隊にそのキャンプ場を見つかった。

 

ブラックスノーの軍隊達はそろそろと海賊達に近寄っていく。

 

「ハッカペル!!」

 

怒声が鳴り響き、周りの海賊を起こしてブラックスノーの行軍を止めた。

 

ポルカかが単身でブラックスノーの軍隊に斬り込んでいく。

 

「感があたった、良かった」

 

ポルカはブラックスノーの兵士の1人をバッサリと切り捨てた。

 

「ポルカなら、ここにいるぞ!!」

 

ポルカはできるだけ海賊達に被害を出さまいとブラックスノーの兵士達を霧殺しながら遠く遠くに走っていく。

 

ブラックスノーの兵士のサーベルがポルカを傷つけ用とマスケットの弾丸がポルカを貫抜こうとポルカは走りながら剣を振るった。

 

沢山の銃声が響いた。

 

沢山のブラックスノーの兵士が倒れて海賊達がカットラスを片手に突っ込んできた。

 

アルビダがカットラスをかざすと海賊達は力と勇気が漲った。

 

死を恐れない海の戦士達は命懸けでブラックスノーの兵士達を薙ぎ払う。

 

ポルカは眉間にシワを寄せた。

 

ポルカも周りのブラックスノーの兵士達をできるだけ多く切り捨てる、防御は捨てた数にこだわった。

 

戦いは数分間に渡って続いた、ブラックスノーの兵士達が全滅した頃には海賊達の数も半分に減っていた。

 

ポルカは全身に生傷をたくさん作り、アルビダの胸ぐらを掴んだ。

 

「何故、逃げなかった!!」

 

アルビダはポルカの手を強く握る。

 

「苦しいじゃないか、離しな」

 

ポルカは乱暴に手を離した。

 

アルビダは周りを眺めた。

 

「お前は一緒にサウナに入った者は友達だろ?」

 

ポルカは息を荒くしながら軽くうなづいた。

 

アルビダは額の誰かの血が混じった汗を袖でぬぐった。

 

「あたい達も共に酒を酌み交わした奴は友達だ、第一あたい達のために戦っている男を独りにしておくなんて一生の恥だからな」

 

ポルカは俯いた。

 

アルビダは生き残った仲間にめいをくだす。

 

「今から出来るだけ大きいサウナを作ろう、そして飲みなおそう」

 

そして、前のサウナを少しばかり大きなサウナを作り直してアルビダと海賊とポルカはサウナに入って水を飲んだ。

 

外では入りきれなかった海賊達が順番を待っていた。

 

サウナのなかだとポルカは別人のように明るかった。

 

その一時だけ、ポルカは自分が白刃の王である事を忘れた。




オマケ

アホポルカ②

ポルカの目の前にアルビダが顔を近づけた。

あたいの仲間にならないか?

ポルカは首を横に降った。

「お前今年で28来るだろ、賞味期限ぎれに要はねえよBBA」

アルビダはポルカをアンカーに縛り付けて海に沈めて鮫の餌にした。

めでたしめでたし


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7話

一先ずは第1章最終話です。
読んで下さった方、ご教鞭して下さった方、暖かい目で見て下さった方、本当にありがとうございました。m(_ _)m


 ポルカは小さな村にたどり着いた。

 

 その村では貧しいながらも少しの食べ物を何とかやり繰りして過ごしている。

 

 しかし、その中に自分は殆ど食わずに馬に食べ物を与える変わり者の爺さんが一人おった。

 

 ポルカはその爺さんの元に近寄ると爺さんとハグを交わした。

 

「お待ちしておりました、スチールポルカ様、貴方のサーモン・スネークは元気ですよ」

 

 黒毛の馬は大きな声でなく。

 

 ポルカは馬に抱きついた。

 

「ありがとな叔父さん」

 

 叔父さんは少し暗い顔をする。

 

「本当にいくのかい?」

 

 ポルカは馬に跨りうなづいた。

 

「相棒も帰ってきた、それに祖国に帰るのに何の問題がある事か」

 

 叔父さんはポルカにお酒を渡す。

 

「分かった、止めはしない、お前の祖国を取り戻しにいけ!」

 

 ポルカは酒を一気に飲み干して大声を上げた。

 

「ハッカペル!!」

 

~☆~

 

 それは地を走る風だった。

 

 ポルカは祖国の城めがけて馬を走らせる。

 

 今はブラックスノーの砦。

 

 ポルカは1人の軍隊。

 

 沢山の矢がポルカに降り注いだ。

 

 ブラックスノーの兵士は笑った。

 

 なんでたった1人のあの男を恐れなければいけないのだ、俺達には弓も矢もある、銃も砲も火薬も玉も沢山ある、勇敢な戦士が血を求めて剣を握っている。

 

 そして何よりも砦がある。

 

 たった1人のあの男を恐れなければ何故いけない?

 

 その答えは簡単だった。

 

 ポルカとサーモンスネークは矢を受けても怯むことなく突っ込んでくる。

 

 それは衰えを知らない大木のようにつよく。

 

  ポルカは弾丸の雨を受けた。

 

 だが ポルカは尚も走ってくる。

 

 身体じゅうに矢が刺さり穴があく。

 

 ポルカは間一髪で急所だけは外させていた。

 

 砦の外ではパイクを構えた長槍兵が槍で壁を作り、待ち構えていた。

 

 もう遅い、白刃の王は一騎当千の騎兵だ。

 

 馬に乗った彼を止められる者はいない事を彼等は知ることになる。

 

「ハッカペル!!」

 

 白刃の王は剣でパイクを横に払い馬で歩兵を踏み潰した。

 

 あの馬の名前はサーモン・スネークと言う、それはドラゴンという意味だ。

 

 白刃の王はドラゴンに跨った戦神その物だった。

 

 陣が崩れた歩兵をつきづきとなぎ払い城の門めがけて神は翔ける。

 

 神の剣の1振りは分厚い門を切り裂き活路を開く。

 

 彼の前に壁なんて無用、白刃の王は彼に襲いかかる勇敢な戦士達をつきづきと打ち破った。

 

~☆~

 

 イワンは困り果てた。

 

 噂を聞き、援軍として向かった。

 

 本国からも援軍を呼んだ。

 

 しかし、どの村もブラックスノーを泊めることは無かった。

 

 挙句の果ては村を焼き払い井戸に糞を投げ込んだ。

 

 盗賊にはゲリラ的に何回も襲われた。

 

 傭兵はいくら金をつもうとブラックスノーの仕事はしなかった 。

 

 東からの風来坊が単身でブラックスノーの兵士を食い止めた。

 

 海からの増援は海賊達に襲われた。

 

 このチャンスを伺い連合軍も重い腰を上げた。

 

 全ての人がブラックスノーの敵でポルカの味方だった。

 

だけどイワンも諦めなかった。

 

「俺は忘れない前の南下の時をあの勿忘草に誓ったんだ」

 

「沢山のブラックスノーの英雄達が一つの砦にこもり一年間もほぼ全滅するまで戦い抜いた」

 

「目の前で沢山の仲間が死んだ、当時の将軍も前衛で戦い抜き仲間をかばって死んだ」

 

 イワンは馬を走らせる。

 

「まってろ、ブリザードイワンが行くぞ、全てが我々の敵だという事は覚悟の上だ、それでも南下の悲願の夢を祖国の為に民の為に私はこの手で持ち帰る!」

 

イワンの後ろに沢山の騎兵がついてくる。

 

「勇敢な戦士たちよ、あの砦を護ろう、もう二度と砦を沈めてなるものか、奴らのアギトを喰いちぎれ!!」

 

騎兵達はサーベルをかかげる。

 

「ダアーーーー!!!」

 

 勇敢な戦士たちは草原を草原を翔ける。

 

 ポルカは城の周りの兵士を一掃した。

 

 すると、沢山の馬のヒヅメの足音が聞こえる。

 

 大地を揺らして怒りに肩を震わしてこちらに向かってくる。

 

 ポルカは馬を走らせる、騎兵の集団に向かって。

 

 イワン達はサーベルを振り上げる。

 

「ハッカペル!!!」

 

「ダアーーーー!!!」

 

 騎兵の一撃は強烈だ、剣の降る力に馬の加速が乗る。

 

 下手すればサーベルが折れて肩が外れる程だ。

 

 イワンとポルカの剣が触れ合い火花を散らした。

 

 ポルカはそのまま、剣を振り回して他の騎兵を斬り殺した。

 

 イワンの剣を握る手が痺れる、ポルカの奴は何でこうも馬鹿力なのだ。

 

 馬上でやつに勝てるやつなんていない事は分かってる、奴は魔法で守られているように強い。

 

 イワンは歯を食いしばる。

 

 しかし、倒さねばならない、祖国ブラックスノーの為に。

 

 イワンは馬をターンさせて、大急ぎで走らした。

 

 ブラックスノーの騎兵としての誇りがイワンにはある。

 

 イワンは意地でポルカの馬と並列に並び、剣を切り結ぶ。

 

 いくたとも火花が舞い上がり金属と金属がぶつかり合った。

 

 ポルカは手が痺れてついついサーベルを落としそうになる。

 

「これでも喰らえ!」

 

イワンは馬から飛び上がり、ポルカに体当たりをかました。

 

2人は落馬して地面を転がりもつれる。

 

 しかし、ポルカは全身が一振りの鋼、ポルカの指がイワンの肩に深くくい込んだ。

 

 イワンはポルカのマウントをとり、ポルカの顔面を剣を持ってない方の手で何回も殴った。

 

 ポルカの指が肩から抜けるとイワンはサーベルを振り上げる。

 

 ポルカの手刀が飛んできてイワンは半身になって避けた。

 

 ポルカは立ち上がりイワンに斬りかかる。

 

 イワンは殺意無き一撃でポルカの腹をかすめた。

 

 ポルカの腹に切り傷がうまれる。

 

「例えこの命尽きようと我等の牙はお前達を苦しめ続けるぞ、敗走の兵だと馬鹿にしてると酷い目に合うぞ!!」

 

 イワンはデタラメに剣を振り回す、ポルカは殺意無き攻撃をなんとかして避けて受け止めるが身体に沢山の生傷が増える。

 

 ポルカは剣を体で受けてイワンにショルダータックルをかまして突き飛ばした。

 

 イワンは尻餅をつく。

 

 ポルカは剣をかがげた。

 

 イワンは余りの光景に戦いを忘れて生唾を飲んだ。

 

 剣に青空が映り込み群青色に輝いた。

 

 キラキラと蒼く光り輝く剣をかかげてその背にお城がそびえている。

 

 これが群青の剣、それは鏡のように研ぎ澄まされた戦神の剣のことだった。

 

 全てを鋼に刻んだポルカ自身の心そのものにも感じ取れる。

 

 馬に乗れば一騎当千の騎兵、馬を降りれば地上最強の剣神。

 

「ハッカペル!!」

 

 ポルカは剣を縦一線に振り落とした。

 

 イワンも殺意無き攻撃をくりだす。

 激しい火花、飛び散る金属片、空を舞う刃。

 頭蓋骨から脳、脊椎、臓腑を切り裂き剣事イワンを断ち切った。

 

 地面に刃の先が突き刺さる。

 

 ポルカを砦から出てきた兵士達が襲いかかる。

 

 ポルカに休む暇は無い。

 

 ポルカは可能なかぎり剣を振り回した。

 

 日が暮れた、群青の剣は夕日で緋色に輝いている。

 

 ポルカは死体の山の上に座り込んでいた。

 

 そこにアルバートがやって来た。

 

「祖国が真っ赤っ赤じゃねえか」

 

 ポルカは俯いたまま、涙をこぼした。

 

「お前か、ひとつ聞いていいか?」

 

 アルバートはポルカの隣に座った。

 

「聞くだけなら無料だ」

 

 ポルカは血塗れの手を見つめる。

 

「もしも、私が死んだら妖精の花園に私の魂はいけるのだろうか・・・」

 

 ポルカは大事な剣を地面に突き立てて、それに映る自分を見つめた。

 

「きっと、王女様は妖精の花園で妖精達と楽しく過ごしているに違いない、我侭だができる限り王女様の側で守って差し上げたいのだ」

 

 アルバートは緋色の空を見上げた。

 

「王女、王女とうるせえよ、お前はロリコンか?」

 

 ポルカは眉間にシワを寄せた。

 

「俺は王女様の帯刀だ、王女様の為に戦うのが生まれ持っての運命だ」

 

 アルバートは大剣を担いで立ち上がる。

 

「くだらねえ、生まれてきたことに意味なんてねえよ」

 

 アルバートはポルカの前に立ちふさがる。

 

「ただ、生まれてきて、最後は皆誰しもが死ぬのみだ」

アルバートは死体を踏んづける。

 

「死ねば、それはただの屍だ」

 

 ポルカは剣を抜いて立ち上がった。

 

 アルバートは大声を上げた。

 

「まだ分からんのか、生まれてきたこと俺達が求めるような都合の良い理由なんてある訳ないだろ!?」

 

 ポルカは緋色に輝く剣をアルバートに向ける。

 

「黙れ!!」

 

 アルバートは大剣を身構えた。

 

「こいよ、剣士の最高峯よ!! 」

 

 ポルカは飛びかかった。

 

「ハッカペル!!」

 

 アルバートは大剣を地面に刺してその後に隠れた。

 

最高に研ぎ澄まされたポルカの潜在能力はダマスカス鋼の大剣でさえも切り裂いた。

 

「何時もの冷静さが全くないな!!」

 

 アルバートはポルカの顔面にラリアットをかました。

 

 ポルカは背中を反って、地面をの垂れた。

 

 アルバートは地面につばを吐き捨てた。

 

「今ので1回殺したぜ!?」

 

 アルバートの手にはナイフが握られていた。

 

 アルバートはナイフを地面に投げ捨てる。

 

「こいつは使わねえ」

 

 アルバートはポルカを蹴っ飛ばした。

 

「どうした、剣神!?」

 

 ポルカは地面を転がる。

 

 アルバートはポルカの上に馬乗りになる。

 

「いつまで王女の影にしがみついてるつもりだ!?」

 

 アルバートはポルカの顔面に沢山の拳を叩き込んだ。

 

 日は沈み青色の月が顔を覗かした。

 

 雪が降った、今は冬季なので白夜は見られなかった。

アルバートは手を止めた。

 

 空を見上げる。

 

「ちくしょうが・・・」

 

 青色の月がポルカの剣に映り込み剣が蒼く輝いた。

 

 アルバートは目を丸くした。

 

「剣を離してない、てっことはまだ息がある!?」

 

 ポルカは体重100キロを超えるアルバートを軽々とひっくり返してマウントを取り返した。

 

「調子に乗るなよ、馬鹿力だけ野蛮人が!?」

 

 今度はポルカがアルバートの顔面になんべんも剣の柄を叩きつけた。

 

 アルバートがポルカをひっくり返すと、ポルカはアルバートの頭をつかみ、もう一回してアルバートの頭を地面に叩きつけた。

 

 そのまま、アルバートの片足をつかみ、棒の様に振り回して地面に叩きつけた。

 

 アルバートは懐から隠しナイフを投げつける。

 

 ポルカはナイフを剣で払う。

 

 そのまま、アルバートをもう一振りして地面に叩きつけた。

 

 アルバートのブーツがちぎれて、アルバートは片足裸足になり、ポルカから開放された。

 

 アルバートは落ちているサーベルを広いポルカに斬りかかる。

 

 ポルカはサーベルを剣で払い除けて、アルバートの防御をがら空きにした。

 

 ポルカの剣がアルバートの首元に触れる。

 

 アルバートは笑顔になった。

 

「そうだ、お前はまだまだ強くなれる」

 

 ポルカは知った。

 

 生まれてきたことに意味など無いことに。

 

 ポルカは受け入れられなかった。

 

 知っても尚、生まれてきた意味を考えていた。

 

 それは決して死ぬまで導き出せない答え。

 

 自分は何で一振りの鋼なのだろうかそれさえもカフカである。

 

 ポルカはアルバートの腹に蹴り叩き込む。

 

 アルバートは腹を抱えて後ろに下がった。

 

 結局自分は何の為に剣を振るっていたのだろう、死んでしまった女王の為か無き英霊の為か自分しか居ないのに祖国を取り戻すためか。

 

 結局、斬りすぎてよく分からない。

 

 ポルカは一つの答えに出た。

 

 今、変わらなければいけない。

 

 ポルカは剣を鞘に収めて城に祈りを捧げた。

 

「さようなら王女様、皆に精霊の加護があらんことを...」

 

 さあ、これからは何の為に剣を振ろうか。

 

 この剣は何の為の剣か・・・。

 

 とりあえず、踊る子羊亭で飲もう、エリカを見れば睨まれるけど癒される。

 

 井川の奴と手合わせしてやろう、きっと喜ぶぞ。

 

 アルビダとまた、酒を酌み交わそう、なんて言ったて親友だ。

 

 この土地は放浪者たちに譲ろう、食べ物も井戸も豊富だし土地も広い。

 

 ブラックスノーの勇敢な戦士達の英霊碑を建てよう、死ねば皆同じ平等な屍だ。

 

 ポルカはアルバートに手を差し伸べた。

 

「さあ、アルバート、お前をこの白刃の王の従者にしてやるぞ」




~オマケ~

アホポルカ③

 ポルカとイワンは馬で翔ける。

 幾とも剣が交差して火花が舞い上がった。

 イワンはポルカに飛びつき二人とも落馬して絡み合った。
 ポルカはそのとき、イワンの口に何かを放り込んだ。
イワンは慌ててそれを吐き出した。

「てめえ、何を入れた!?」

 ポルカは大声で笑う。

「我が祖国の特産の世界で一番不味い飴サルミアッキだ!!」

 イワンは口を抑える。

「何だ、この味はアンモニア!?」

 ポルカは黒くて菱形の飴を口に入れた。

「みんな、不味い不味い言うけどこれって結構美味しいと思うよ」

 イワンは両膝をつく。

「うう、これが上手いとか逝かれてやがる」

 ポルカは黒色のウォッカを差し出す。

「サルミアッキ味のウォッカ、ウォッカ好きだろ?」

 イワンは首を横に降った。

「やめろ・・・」

 ポルカは黒色のウォッカを飲み始める。

「おかしいな祖国では、国民的味なのに」

 イワンはまだ、口からアンモニアの匂いが取れない。

 ポルカの持ってるウォッカのビンには原材料・塩化アンモニウムと書かれていた。

 イワンは顔を真っ青にする。

「食べても大丈夫なのかよ・・・」

 イワンはカルチャー・ショックを受けて、立ち直れなくなり、そのまま精神病棟を出られなくなった。

イワンの家族が涙ながら医者に話しかける。

「父はどのような様子で?」

 医者は首を横に降った。

「完全に手遅れです、イワンさんは重度な中毒にかかっています」

 病棟の奥から叫び声後聞こえた。

「俺にサルミアッキを食わせろ!!」

扉を叩く音が響く。

「あの味がわすれられなくなっちまったんだよ!!!」

めでたしめでたし。


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第2章 闘技場
8話


第2章入ります。相も変わらず駄文とガラスのハートですが暖かい目で見守ってください。


  ポルカは道の真ん中でお酒を飲み遠い祖国を思いやった。

 

  青色の月がポルカを照らす。

 

  ポルカは連れて歩いている馬を撫でた。

 

  馬はプルルと震えた。

 

  アルバートが退屈そうにポルカに話しかけた。

 

「本当に良かったのかよ・・・」

 

  ポルカはアルバートのヒゲを1本引き抜いてやった、アルバートは痛そうに顎を抑えた。

 

「何が正解なのか斬り過ぎてわからなくなった、お前の遊びに付き合ってやったんだからお前も俺に付き合えよ」

 

  想像以上に心を許した相手に対し、我侭なポルカにアルバートは苦笑いを浮かべた。

 

  しかし、相変わらずポルカは俯いて会話をする。

 

  これはきっと、彼の性分何だろう。

 

  アルバートはため息をつきながらも、笑顔になるのだった。

 

「忙しくなるな・・・」

 

  ポルカはアルバートを連れて踊る子羊亭に向かうのだった。

 

  ~☆~

 

  踊る子羊亭では今度、花の街で開催される大規模な武芸会での話でもちきりだった。

 

  アルバートはポルカの肩を叩いた。

 

「儲け時だぜ、俺達の実力ならぼろ儲けだ」

 

  ポルカは首を横に降った。

 

「富など興味がない、それぐらいなら綺麗な泉の前で木々に囲まれてゆったりとしたいものだ」

 

  奥からアベルが大慌てでやってきて目を丸くする。

 

「白刃の王が帰ってきたと聞いて驚いたが、白刃の王がオークと良くしていて更に驚いた」

 

  エリカはアルバートとポルカには、いい思い出がないので奥から出てこない。

 

  ポルカは事情をアベルに説明しつつも、エリカからの嫌われ用に肩を落とした。

 

  アルバートがアベルに話を持ちかけた。

 

「なあ、この店を改装しようとは思わないのか?」

 

  アベルは首を横に降った。

 

「お前が暴れたから修理代がかかっちまって、そこらじゅうガタが来てるのに改装する為の金が使えなくなっちまったじゃないか」

 

  アルバートはアベルの顔に顔を近づけた。

 

「悪いと思ってな、今度の武芸会でポルカと一稼ぎしたお金をこちらに山分け使用と思っているんだ」

 

  ポルカはアルバートを睨みつける。

 

  アルバートはポルカの耳元で囁いた。

 

「この店を改装したいと言い出したのはエリカなんだ、その話が色々とあったせいでとんじまってエリカの機嫌が悪くなってしまったんだ」

 

「それに、今こそエリカに良いところを見せるチャンスだぞ、アベルにも恩を売っとけばエリカにも好印象を与えやすくなる、エリカと仲良くしたいんだろ?」

 

  ポルカは静かにうなづいた。

 

  アルバートはポルカの説得に成功したが、少し複雑だったので聞こえない声で呟いた。

 

「やっぱ、こいつ少女偏愛だわ・・・」

 

  ~☆~

 

  会場はにぎわっている。

 

  色々な戦士達があつまっている。

 

  莫大な賞金を目指すもの強者を求めているもの自分の力を誇示するため来たもの。

 

  しかし、全ての者が一斉に振り返る。

 

「白刃の王だ!」

 

  すべての視線は地上最強の剣士に向けられていた。

 

  その中で人混みをかき分けて現れた者がいる。

 

  井川とアルビダだ。

 

  井川は笑顔でポルカの前に立つ。

 

「お主も出るので御座るか!!」

 

  アルビダも笑顔でポルカを迎える。

 

「この前のようにはいかないよ!!」

 

  ポルカは軽くうなづいて返事を返した。

 

  アルバートはアルビダと井川を見下した。

 

「その前に俺を倒してみな、東洋人と海の蛮族めが!」

 

  井川とアルビダはアルバートを睨みつける。

 

  アルバートはそんな2人を嘲笑った。

 

  周りの兵士達が宙を舞った。

 

  ポルカはその先を睨みつけた。

 

  二人の男がこっちを見てる。

 

「アレキサンダー、暴れるなと言っただろ」

 

「うるせえよ、イワン!」

 

  ポルカはイワンの名前に拳に力が入った。

 

  ブラックスノーの二人の戦士がこちらを見ている。

 

  片っぽはちびっこい、もう片っぽは良くも悪くも普通の背格好だった。

 

  そして二人共、まだ若い。

 

  ちびっこい奴は鬼のような形相でこちらを見ているのに対してもうひとりの男は冷ややかな目でこっちを見ている。

 

  ちびっこい男は井川の目の前に行き、胸ぐらを掴んだ。

 

「てめえが東洋のサムライか、俺は雷獣の息子アレキサンダー2世だ」

 

  アレキサンダーは井川を軽く突き離す、井川は軽々と1m飛び尻餅をついた。

 

「続きは死合で会おうや、それまで負けるんじゃねえぞ!」

 

  今度はイワンがポルカの目の前に移動して、軽く頭を下げた。

 

「私はイワンの息子のイワン2世でございます」

 

「父がお世話になりました、是非とも御礼を返したいので貴方が負ける事は無いとは思いますが、試合で合いましょう」

 

  イワンは頭を上げる。冷ややかな表情の奥には、物凄い殺意を感じ取れた。

 

「私もあなたと死合うまでは負けない様に努力するので・・・」

 

  ブラックスノーの、二人の戦士は去っていく。

 

  ポルカはため息をついた。

 

「難しい事をこの試合に出る奴はどいつもこいつも命知らずの強者達だ、白刃の王などと俺はもてはやされているが俺はそんな大層な物ではない」

 

  ~☆~

 

  最初の試合が決まった。

 

  あのアレキサンダーとオリバと言うベルセルクだ。

 

  フィールドに虎の皮を被った男が片手に斧を握って現れる。

 

  ベルセルクは勇敢だ。狂戦士を見つけたら逃げた方がいい、奴らの斧は骨を砕き、その命尽きるまで目に映るもの全てを破壊しつくす。

 

  オリバは会場に響き渡る声で遠吠えを上げる。

 

  そこにちびっこい、アレキサンダーが自分とは不釣り合いなハルバードを担いで現れた。

 

  試合が始まる前にベルセルクはアレキサンダーに襲いかかった。

 

  ベルセルクは非常に危険で野蛮である、奇襲をかけるなど珍しいことでは無い。

 

  アレキサンダーは大慌てで後ろにさがり、ベルセルクの斧を避ける。

 

  しかし、次の1振りが体制を崩したェアレキサンダーに避けきれず横っ腹に斧が突き刺さった。

 

  この試合はルールという物が無いに等しい。

 

  あるといえば相手が動けなくなるか負けを認めるかをすれば勝者と敗者が決まる事と1体1の戦いということだけだ。

 

  アルバートがため息をつく。

 

「何だ、あのチビスケもうおしまいか」

 

  ベルセルクの斧が止まる。

 

  アレキサンダーはベルセルクの腕を握りしめていた。

 

「調子にのんな、糞野郎が!!」

 

  アレキサンダーはベルセルクの顔面に頭突きを食らわせる、ベルセルクの鼻が折れて前歯も折れる。

 

  そのままベルセルクの顔面を殴り飛ばした。

 

  ベルセルクは観客席まで吹っ飛び白目を向いて泡を吹いた。

 

  イワンがいつの間にかアルバートの隣にいる。

 

「オーク、あいつがなんて呼ばれているか知ってるか?」

 

  アレキサンダーは中指を立てる。

 

「ギガントスレイヤーだよ」

 

  アルバートは笑みを浮かべる。

 

「そいつは楽しみが増えた」

 

  ~☆~

 

  次の試合はポルカだった。

 

  ポルカは控え室で剣を磨いている。

 

  皆がポルカの試合に期待を寄せていた。

 

  ポルカは剣を見つめた。

 

「この剣は祖国の為の剣、このような私闘に使うのはやはり・・・」

 

  ポルカは口を紡ぐ。

 

「祖国は取り戻した、この剣で・・・」

 

  ポルカは剣を優しく布の上に置いた。

 

  「俺はどうすれば良いのか」

 

  女性の声が聞こえる。

 

「それを振り回すことしかアンタには出来ないでしょ」

 

  ポルカは声の方に振り返る、エリカがポルカを睨みつけていた。

 

「それ以外アンタには何も期待出来ないんだから悩まず振り回しなさい、その身が一振りの鋼なんでしょ、錆びるわよ?」

 

  ポルカは唖然としていた。

 

「何でこんな血なまぐさい所に来てるんだ」

 

  エリカはキョトンとしていた。

 

「何でって、アンタが家の改装費稼ぎたいと言うから応援しに来たんじゃない、それじゃお父さんが探してるだろうからもう行くね」

 

  エリカは控え室をでる。

 

  ポルカは剣を拾い上げた。

 

「強くならねば・・・」



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9話

  ポルカが闘技場に立つと闘技場は一瞬で静かになった。

 

  皆が心して見守っているのだ。最高峯の剣士がどう敵を片付けるかを。

 

  ポルカはずっと俯いている。

 

  ポルカの目の前に1人の剣士が立ちはだかる。

 

  バックラーとブロードソードを構えた、青年の騎士。

 

  彼の名前・ルーク、連合軍の最終兵器とよばれている名高き騎士。

 

  ルークの目の前には皆が視線を向けるポルカが居るのだが、ルークは観客席に堂々と座るアルバートただ1人を睨みつけていた。

 

  ポルカはうつ向いているから、その顔を確認できたものはいなかったのだが、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

 

「俺も運がないな、初戦からかなりの手練だ」

 

  試合の合図が上がった。

 

  ルークは片手と肩の力を脱力して、だらんと垂らした。

 

  胴体は半身にし、肘を軽く上げて剣は胴ぐらい高さに保った。

 

  誰かが女性のようなポーズだとやじを飛ばした。

 

  アルバートが微笑む。

 

「なにも分かっちゃいねえ、あのポーズの恐ろしさを・・・」

 

  先に動いたのはポルカだった。

 

  ポルカは先手必勝を特異としている、切り込みこそが美学の騎士だ。

 

「ハッカペル!!」

 

  会場にポルカの怒声が響き渡る。

 

  ポルカは剣を縦一線に振り落とす。

 

  ルークは待ち構えていた。

 

  どんな攻撃にも対処できるようにと、ポルカの怒声にも耐えぬいた。

 

  脱力させた、バックラーを持つ手がムチのようにしなり、ポルカの剣を払い除けた。

 

  ポルカのガードはガラ空きになる。

 

  ルークはポルカのガラ空きになった胴体に斬りかかった。

 

  ポルカの服が切れて胸に横一線の切り傷が走った。

 

  ルークは目を丸くした。

 

「ありえない、半身ずらされた!?」

 

  ポルカは間一髪の所で後ろに飛び下がった。

 

  それは回避ではなく避難に近いものだったがあの状態から剣の届かない範囲まで逃げるなど人間を超えた反射神経と身体能力である。

 

  ルークの耳はキーンと音を立てていた。

 

  ポルカの怒声は耐え抜いて見せたルークにもその威力は確かに効果があった。

 

  ポルカは俯いたままである。

 

  ルークはポルカを睨みつけた。

 

「剣神と言うよりは化物だな」

 

  ポルカは自分の胸の傷を撫でる、手にはベットリと血がついた。

 

「危なかった、死ぬ所だった・・・」

 

  ポルカは剣を見つめる、磨き抜かれた剣には、怯えるポルカの顔が映っていた。

 

「怯えているのか私は・・・」

 

  ルークは再び片手を脱力させて乙女のポーズをとった。

 

「舐めるな化物、貴様の前に居るのは、連合軍の最終兵器だぞ!!」

 

  ルークはポルカに駆け寄る。

 

  ポルカは慌てて剣を振った。

 

  ルークはバックラーで剣を払いのける。

 

  ルークは剣で突きを放つ。

 

  ポルカは体制を崩して尻餅をついて、剣を避けた。

 

  ルークは情けなくも尻餅をつき、隙だらけポルカに剣を振り上げる。

 

  ポルカはルークの顔に砂を投げつけて、頭を抱えて地面を転がり剣を避けた。

 

  ルークは顔を押さえながら叫んだ。

 

「卑怯者の臆病者!!」

 

  会場は避難の嵐だ。

 

  ポルカは冷や汗を流しながら肩膝をついて生唾を飲んだ。

 

「戦場ではない、あんな技は戦場では見ない・・・」

 

  ポルカは額を斬られている事に気づく。

 

「どうすれば良いんだ・・・」

 

  エリカがアルバートの脛を蹴飛ばした。

 

  アルバートが痛いと叫ぶ。

 

  ポルカはアルバートの叫び声を聞いて顔を上げた。

 

  沢山の罵声の嵐の中ポルカはそれぞれの声を聞き分けることが出来ていた。

 

  勿論エリカからの罵声も聞こえていた。

 

  ポルカの目が座った。

 

  ポルカは剣を捨て、上着を脱ぎ、下着いっちょになった。

 

  ポルカは指の骨を鳴らしてルークに笑いかけた。

 

「お前は強い、だが調子に乗るなよ」

 

  ポルカは審判近寄る。

 

  彼に目を洗う、時間を与えてやってくれ。

 

  それは前代未聞の試合展開だった。

 

  審判はそれを承認して、ルークの元に水の入った瓶を持ってこさせた。

 

  ルークは瓶の水で目を洗い、頭から水を被った。

 

  そして、再び乙女のポーズをとる。

 

「やっと、真面目に戦う気になったのか」

 

  ポルカは両手の指を鍵爪のように曲げて手の平を開いた。

 

「殺し合いに卑怯も糞もない一度でも負ければそれは直に死につながる」

 

  ポルカはルークの瞳をしっかりと睨みつける。

 

「その意味を教えてやる」

 

  ポルカはルークに飛びかかった。

 

「ハッカペル!!」

 

  再びポルカの怒声が響き渡った。

 

  ポルカは手で引っ掻くように左手を振り落とした。

 

  ルークはそれをバックラーで弾き飛ばそうとする。

 

  しかし、バックラーにポルカの指がしっかりと食いこみ、振り上ルークの手を押さえつけた。

 

  ルークは突きを放つ。

 

  ポルカは剣を手で払う、剣はへし折れて狙いをずらされた。

 

  ポルカはルークの頭を握る。

 

「さあ、此処から逆転して見せろ!」

 

  ルークはポルカの腹を蹴っ飛ばす、しかし、それぐらいではポルカは手を話さない。

 

  ルークは折れた剣をポルカで肩に突き刺した。

 

  それでもポルカは離さないのでルークはポルカの顎を殴り飛ばした。

 

  ポルカはようやく手を離す。

 

  ルークは頭をかかえながら後ろに後ずさりした。

 

「なんて、パワーだ、意識が飛びかけた!?」

 

  ポルカはルークに話しかける。

 

「休み終わったら呼んでくれ」

 

  ルークは眉間にシワを寄せた。

 

「馬鹿にするな!!」

 

  ルークはポルカの頬を殴り、腹を蹴り、鼻を殴った。

 

  ポルカは鼻血を手で吹きとり、唾を地面に吐いた。

 

「ハッカペル!」

 

  ポルカはルークの顔面を握り拳で殴り飛ばした。

 

  ルークは向こうの壁まで吹っ飛び意識を失った。

 

  ポルカは頬をさすりながらため息をついた。

 

「だから、嫌だったんだ、こんな所にくるの・・・」



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10話

 遣られて会場の外でほうけている、ルークの元にアルバートが現れた。

 

  よう、ルーク久しぶりだな、連合軍はこんな大会に出るぐらい暇なのか?

 

  ルークは眉間にシワを寄せて、アルバートを睨みつけた。

 

「 久しぶりだな、アルバート・ジェネラル!!」

 

  アルバートも眉間にシワを寄せた。

 

「もう、将軍じゃねえやい、その呼び方をするな」

 

  ルークは拳を構えた。

 

「なら、こう呼ぼうか、敗走兵め!!」

 

  アルバートは構えない、ただ首を横に降った。

 

「敗走兵ね、間違っちゃいねえ、今じゃ立派な盗賊騎士の一人さ・・・」

 

  アルバートはあごひげを触る。

 

「だが、お前に聞きたい、忠義やプライドで飯が食えるのか!?」

 

  アルバートは腕を力ませる、まるで金属の用にパンパンに膨れ上がり硬くなった。

 

「忠義やプライドが俺達に何を与えた、忠義の元に沢山の犬死にした同士の骸とプライドが傷つき、立ち直れなくなった負け犬の群れだけではないか!」

 

  アルバートは地面をぶん殴る、地面は弾け飛び半径5m近いクレーターが出来た。

 

「装備もないのに喧嘩はやめとけよ、素手の喧嘩なら間違いなく俺はポルカにも負けねえ」

 

  ルークは半泣きになる。

 

「ヘラクレス、貴方が連合軍にいれば間違いなく私が最終兵器など呼ばれる事は無かった」

 

  アルバートはルークの頭が撫でてやった。

 

「そう謙虚になるな、お前は充分に強い、英雄ヘラクレスはあの時あの場所で沢山の同士と共に死んだのだ、今の私はオークだ」

 

  ルークは拳を震わした。

 

「私も貴方のように強くなりたかった・・・」

 

  ~☆~

 

  闘技場は大いに盛り上がっていた。

 

  腕利きの傭兵、ビルダとアリウスと言う男がにらみあっていた。

 

  ビルダは全身に鎧を纏い、大きな盾とメイスを構えているのに対して、アリウスはブロードソード1振りに腰掛け1枚の軽装だった。

 

  ビルダが怒りを顕にした。

 

「なんだその格好は舐めてんのか!?」

 

  今度はアリウスが怒りを顕にした。

 

「お前こそ、なんだその動きにくそうな格好は舐めてんのか!?」

 

  ビルダは逆ギレされて言い返せなくなり、アリウスにメイスで殴りかかった。

 

  次の瞬間ビルダはアリウスに蹴っ飛ばされて、吹っ飛ばされて地面に倒れた。

 

  鉄の鎧を来て、勢いよく走ってくる兵士を助走も付けてないようなただの蹴りで仕留めたのである。

 

  ビルダの来てる鎧は鉄の槍を通さないぐらい分厚く重い、それにビルダの100キロを超える体重と大きな鉄のたてが加わる。

 

  アリウスはビルダの上に馬乗りになり、剣をビルダの首に押し付けた。

 

「俺の祖国は大きく無い男性の胎児は殺されて、その時から戦士として選別される」

 

「俺は生まれた時から戦士だ!!」

 

  ビルダは大人しく負けを認めた。

 

  勝負はあっけなく、一瞬で決まった。

 

  しかし、誰しもにその男が要注意人物だと物語らせるには十分だった。

 

  ~☆~

 

  アルバートの試合相手はアルビダだった。

 

  アルバートは巨大なダマスカスのツヴァイハンターと呼ばれる大剣を背負って現れた。

 

  そして、眉間にシワを寄せた。

 

「初戦の相手が女かよ、話に何ねえな」

 

  アルビダは大あくびをしてみせる。

 

「なんだ、初戦の相手は猿か、話にならないね」

 

  アルバートは軽々と大剣を片手で振り回してみせる。

 

「度胸だけはあるじゃねえか、そういうのは嫌いじゃねえぜ」

 

  試合の合図がなると同時にアルビダはアルバートの膝を銃で撃ち抜いた。

 

  アルバートは肩膝をいきなりつく。

 

  アルビダが次の銃を構えた。

 

「武器はなんでもありなんだろ、これも立派な武器さ」

 

  アルバートは少しにやけた。

 

「面白いもん持ってんな・・・」

 

  アルビダも笑ってみせる。

 

「なんだい、マゾか?」

 

  アルバートは肩膝を撃たれているにも関わらず立ち上がって見せた。

 

「でも、ちゃんとどたま吹っ飛ばさなきゃ、俺は止めれないぜ?」

 

  アルビダは銃で今度は頭を狙って撃った。

 

「あんたが悪いんだよ、そこをねらえというから!!」

 

  アルバートの額が割れて血が流れる。

 

  しかし、アルバートは微笑んでいた。

 

  「いったろ、吹っ飛ばさなきゃ止めれないって、大砲を持ってくるんだったな」

 

  アルバートは大剣を力任せに振り回す。

 

  アルビダはアルバートの避けやすい大振りな攻撃を避けて、軽いフットワークで懐に潜り込みカットラスで首を斬りつけた。

 

  首には傷一つ入らず、カットラスがかける。

 

  アルビダは目を丸くした。

 

「ポルカよりも、あんたの方がよっぽど化物だな!」

 

  アルバートはアルビダを腕で払い除けた。

 

  アルビダは観客席の中まで吹っ飛んだ。

 

  しかし、すぐに立ち上がり銃で狙撃する。

 

  アルバートの胸に弾丸が当る。

 

  アルバートは歯を食い縛る。

 

「いたくねえわけじゃねえんだぞ、バカスカ撃ちやがって!」

 

  アルバートは高く飛び上がりアルビダの目の前に着地した。

 

  アルバートは大剣の縦に振り下ろす。

 

  アルビダは慌てて逃げる様に走って避ける。

 

  周囲の瓦礫が巻上がり、煙が巻き上がった。

 

  煙の中からアルバートが出てくる。

 

「これが、オークだ・・・」

 

  アルビダは歯を食い縛る。

 

「舐めるんじゃないよ、こっちは死を恐れない海の戦士だよ!」

 

  アルビダは折れたカットラスをかがげてアルバートに斬りかかった。

 

  アルビダの剣がアルバートの胸に突き刺さった。

 

  アルバートが大笑いを浮かべた。

 

  アルビダがアルバートを睨みつける。

 

「何がおかしい!?」

 

  アルバートはアルビダの頭をつかんだ。

 

「その程度でこのオークを倒せるとでも思ったのか!?」

 

  アルバートが手を離す、アルビダは意識を失っていた。

 

「脆い、やはり、白刃の王以外に俺をたのしませてくれる奴は此処にはいない様だな。」



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11話

  いよいよ、イワン2世の試合が始まった。

 

  相手は棍棒を片手にイワンを睨んでいる。

 

  棍棒兵と呼ばれる、小民族の戦士だ。

 

  しかし、試合は早かった。

 

  始まった瞬間にいきなり襲いかかった棍棒兵の攻撃を避け、なおかつ死角に潜り込み、背後から首を締め上げてあっという間に棍棒兵を落とした。

 

  イワン2世は棍棒兵に軽く会釈して無言で会場を後にした。

 

  ポルカはそれを冷ややかな目で見ていた。

 

  ~☆~

 

  井川の試合も速かった。

 

  井川の対戦相手は殺し屋のベクトルと言うナイフ使いだったのだが、井川の居合斬りで一瞬で首に切り傷が出来てひるみ、溝を思いっきり殴られて地面に倒れた。

 

  アレキサンダーが眉間にシワを寄せた。

 

「井川の野郎、つまんねえな・・・」

 

  イワンがアレキサンダーの肩を持つ。

 

「殺られてもらっても困るだろ?」

 

  アレキサンダーはうなづく。

 

「そうだな・・・」

 

  ~☆~

 

  再びポルカの試合が始まる事になった。

 

  ポルカの相手はホーテ・ドン・ベンジャミン公爵と言う貴族だった。

 

  ポルカは非常に嫌悪丸出しの顔だった。

 

  相手も嫌悪丸出しの顔だった。

 

  ホーテは咳払いをすると、ポルカに話しかけた。

 

「兄さん、どうしてこんな所にいるのかな?」

 

  ポルカは剣を速効で抜く。

 

「それは、こっちの台詞だ」

 

  ホーテはレイピアを構える。

 

「兄さん、そちらの国は滅んだんだろ、ならこっちに帰ってきなよ」

 

  ポルカは首を横に降った。

 

「祖父と父の生まれはここかもしれないが、俺はあの土地で生まれ、あの土地で育ったんだ」

 

  ホーテはため息をついた。

 

「兄さんは時代当主なんだから、放浪者されるとホントに困るんだよ」

 

  ホーテは物凄い速度で突きを放つ。

 

  ポルカは剣の動きを見切って全てを避け、ホーテの首元に剣を当てた。

 

  ホーテは呆れた顔になる。

 

「やっぱりね、剣では兄さんに勝てるわけないか・・・」

 

  ポルカは剣を鞘にしまう。

 

「俺には剣しかない、お前の方が経済とか儀礼とかしっかりしてるだろ?」

 

  ホーテはレイピアを下ろす。

 

「それじゃ、困るんだって、俺は養子で父と母の血はこの体に流れてないし、なんといってもポルカが兄さんで自分は弟なんだから」

 

  ホーテはもう1度ポルカにレイピアで突きを浴びせにかかる。

 

「それとも、こっちに戻ってくると周りが何でもしてくれるから暇なのか?」

 

  ポルカは素手でレイピアを弾き飛ばした。

 

「それも、一理あるかもしれんが、亡き王女の為にも俺は強くならないといけない」

 

  ホーテは目を丸くする。

 

「充分に強いじゃん」

 

  ポルカはグーを握る。

 

「正々堂々と戦い、今までの流儀を捨てる」

 

「姑息な手段を一採用せず、試合ごとに勝てるようになればそれこそ最強と呼ぶに相応しいんではないのか?」

 

  ホーテは呆れ返った。

 

「まあ、確かにドン・ベンジャミン家の党首が汚い男だったらお家の名に傷が入るもんな」

 

  ホーテは審判に試合放棄の意思を伝えると会場をさっていった。

 

  ~☆~

 

  皆が唾を飲み込む、井川とアレキサンダーの戦いが始まろうとしていた。

 

  井川は控え室で刀を眺めていた。

 

「さて、向こうが殺る気ならしょうがない、たちまちその首をはねてやらなければ・・・」

 

  その時だった、アレキサンダーが井川の控え室に乱入してきたのである。

 

  アレキサンダーは振り返った、井川の顔面をぶん殴って吹っ飛ばした。

 

  井川は鼻血をだす。

 

  アレキサンダーは椅子や机を井川に投げつける、そして最後に井川の顎を蹴っ飛ばして意識をグラグラにした。

 

  アレキサンダーは井川の髪を掴み睨みつけた。

 

  「公開処刑だ、ビビって出てこねてなんてことがないようにな!」

 

  アレキサンダーは井川をぶん投げて壁に叩きつけて、その場を去った。

 

  おかげで試合会場にはムキズノアレキサンダーと傷だらけの井川がたった。

 

  アレキサンダーがハルバードを地面に叩きつけた。

 

  ズシンと重い音が響く。

 

「さあ、控え室の続きをしようか!!」

 

  審判が止めに入ろうとした。

 

「拙者は構わない、このまま試合を始めてくれ!」

 

  審判は井川がそう言うので仕方なく試合を始めた。

 

  井川は居合いの構えに入る、アレキサンダーはいきなり武器を捨てて突っ込んだ来た。

 

  アレキサンダーはパチキ(頭突き)を井川の顔に刀を抜く前に決めて、そのまま押し倒してマウントを奪った。

 

「楽に死ねると思うなよ!!」

 

  アレキサンダーは拳で井川の顔を殴りまくる。

 

  アルバートがクスクスと笑う。

 

「まるで殺戮ショーだな」

 

  アレキサンダーが拳を振り上げる。

 

「トドメだ!!」

 

  井川は間一髪の所で頭を動かして拳を避けた。

 

  地面に亀裂が走る、アレキサンダーはもう1発拳を繰り出す。

 

  今度は井川は拳を見極めて、小指を握ってやった。

 

  井川はそのまま小指をへし折り、アレキサンダーを押し倒して、マウントを奪い返した。

 

  アレキサンダーは井川を乗せたまま立ち上がり、井川を地面に叩きつけた。

 

  井川は地面を転がり距離をとる。

 

  アレキサンダーは勢いよく走り、井川との距離を詰める。

 

  井川が刀を抜いた、アレキサンダーの首を外し肩に当たった。

 

  アレキサンダーは井川の胸をぶん殴る、井川の肋がへし折れた。

 

  井川はアレキサンダーの顔面を蹴飛ばした。

 

  アレキサンダーは顔を蹴られても微動だにせずに井川の顔をぶん殴った。

 

  井川は吹っ飛びふらふらと立ち上がると、ハルバードを手にしたアレキサンダーがハルバードを振り上げていた。

 

「死刑実行だ!!」

 

  岩をも砕くエクスキューションアックス、しかしそれは親父雷獣の事、息子のギガントスレイヤーの一撃は鉄塊さえも砕く。

 

  井川は慌てて小太刀を抜き、斧を受け止めようとした。

 

  小太刀はへし折れて、井川の肩に深い傷を与えた。

 

  アレキサンダーは目を丸くした。

 

「馬鹿な、手元が狂った!?」

 

  井川は片手で刀を振るう。

 

「僅かにずらせたぞ、ギガントスレイヤー敗れたり!!」

 

  井川の刀の峯がアレキサンダーの顎を強打して、そのまま力まかせに折れた小太刀の柄で、アレキサンダーは顎を強打した。

 

「かあつ!!」

 

  井川はそのまま高速でアレキサンダーの正中線を蹴り抜きアレキサンダーを倒した。

 

  井川は両手の刀を掲げた。

 

「勝った・・・」

 

  井川はそのまま地面に倒れ込んだ。

 

  ~☆~

 

  治療室で井川とアレキサンダーは一緒に倒れていた。

 

  アレキサンダーが井川に話しかけた。

 

「なんであの時、俺の首を跳ねなかった?」

 

  井川はやる気のない声で返す。

 

「分からぬ、少なくともお前を殺すつもりで挑んだはずだったのだが・・・」

 

  アレキサンダーはため息をついた。

 

「敵に貸しを作ってしまった、今回は見逃してやる」

 

  井川は少し笑った。

 

「そいつは助かる」

 

  治療室にポルカが入ってきた。

 

  ポルカは井川の隣に立つとぼそっとつぶやいた。

 

「試合の結果はお前の勝ちだ」

 

  ポルカはそう伝えたら、そのままそそくさとすぐに出ていってしまった。

 

  アレキサンダーがもう1度ため息をついた。

 

「あーあ、俺も白刃の王とやってみてかったな!」

 

  井川が大笑いする。

 

「それは譲れぬ話だ」

 

  そして、静かにしろ、傷が開くだろと医者に注意されるのだった。



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12話

  アルバートが大酒にカッくらっているとホーテがクスクスと笑いながら現れた。

 

「貴方が兄さんの友達だと聞いていたのですが、誰かと思ったらヘラクレスでは無いですか」

 

  アルバートのさけを飲む手が止まり、変わりに大剣を握らせた。

 

「よう、ドン・ベンジャミン家の貴族さんよ、ぶち殺されてえのか?」

 

  ホーテはレイピアを構える。

 

「やって見なさい、野蛮人」

 

  アルバートは大剣を振り上げた。

 

  次の瞬間、アルバートの身体に複数の穴が空いた。

 

「やはり、銃で撃たれた後は無事では無いようですね」

 

  アルバートは目を丸くする。

 

「こいつ、傷口をほじりやがった!?」

 

  アルバート大剣を振り落とす。

 

  しかし、大剣は見事によけられて片目をホーテに貫かれた。

 

  ホーテのレイピアに目が串刺しになる。

 

  ホーテはその目を見つめる。

 

「たしか、この目は義眼でしたよね、以下にあなたと言えどこういう所は脆いのですね」

 

  アルバートが大剣を落とした。

 

「て、てめえ!!」

 

  ホーテはレイピアを首元に当てる。

 

「あまり、暴れられると面倒なのでレイピアに毒を塗らして貰いました」

 

「あまり、兄さんと関わらないでくれますか、困るんですよ盗賊騎士と兄さんが一緒に入られたら・・・」

 

  部屋にルークが入ってきた。

 

「これは!?」

 

  アルバートはルークの方に顔を向ける。

 

「ルーク!?」

 

  アルバートは大声で笑い出す。

 

「面白い、どうしてこうも俺は女運が無いのか!!」

 

  アルバートは立ち上がり、避けを飲んで見せた。

 

  ホーテは目を丸くした。

 

「象さえ眠らせる毒だよ!!」

 

  アルバートが大剣を拾い上げる。

 

「やれやれ、ポルカの弟、いや、妹さんよ、毒なんかで俺をやれるとでも思ったのか?」

 

  ホーテがレイピアを向ける。

 

「私が女だと!?」

 

  アルバートはウデでレイピアを払い飛ばして、顔を近づけた。

 

「俺は大体のものは匂いで分かったりするんだよ、だけど俺は乳のある女性がタイプだからお前はノーカンだな」

 

  ホーテは思わず、アルバートにビンタを食らわした。

 

  アルバートはにやっと笑う。

 

「いってえな、でも、図星のようだな」

 

  ホーテはアルバートをキツク睨みつけるとその場を立ち去ってしまった。

 

  アルバートは肩膝をついた。

 

  ルークがアルバートを支えにいく。

 

「やはり、無事じゃないじゃないですか!」

 

  アルバートは膝を震わせながらすごい量の汗をかきつつも立ち上がった。

 

「行かなければ、試合放棄になっちまう」

 

  ルークが首を横に降った。

 

  「危険しましょう、そんな状態で戦えるわけがない!」

 

  アルバートは笑い飛ばす。

 

「ルーク、俺を誰だと思ってるんだ、アルバート様だぜ?」

 

  アルバートは試合会場に向かう。

 

「こんなもの、気合いだ気合い!」

 

  ~☆~

 

  アリウスがアルバートを睨みつけた。

 

「ずいぶん遅いと思ったら、ボロボロじゃねえか」

 

  アルバートは大剣を担いで手招きした。

 

「悪い、飲みすぎた勢いで傷口をほじり回してたみたいだが、これでもお前相手なら余裕だぜ」

 

  アリウスはアルバートに飛びかかった。

 

「何があったからは知らんが容赦はせん!!」

 

  アルバートは大剣を横凪に振った。

 

  アリウスはそれを剣で受け止めようとするが、吹っ飛ばされてしまった。

 

「何て、パワーだ!?」

 

  アルバートはアリウスに斬りかかる。

 

「すぐに終わらせてやるぜ! 」

 

  アルバートは剣を縦に振り落とす。

 

  アリウスは大剣の一撃を避けて、アルバートの片腕を斬りつけた。

 

  アルバートは腕でアリウスを払おうとする。

 

  アリウスは再び避けて、アルバートの胸を斬りつける。

 

「どうした、動きが鈍いぞ?」

 

  アルバートは剣を振り落とす、今度はアリウスがアルバートの攻撃を弾きとばした。

 

「どうした、自慢の怪力もよわくなってるぞ?」

 

  アリウスはアルバートの腹に剣を突き立てて、そのままアルバートを蹴っ飛ばして剣を抜いた。

 

  アルバートは地面に倒れる。

 

「死ぬのか…」

 

  アルバートの声はかなり掠れて周りは聞き取れないほどだった。

 

  アルビダが空に向かって発砲した。

 

  アルバートはその方向に顔を向けるルークで騎士の格好で立っていた。

 

「全ては連合軍の名の元に!!」

 

  審判がジャッジを下す。

 

「勝負あり!!」

 

  アルバートが立ち上がった。

 

  「いや、終わっちゃいねえ!」

 

  アルバートは唾を地面に吐き捨てる。

 

「余りにもここの地面が寝心地良すぎて、ゆっくりしちまったぜ」

 

  アルバートは大剣をかがげる。

 

「くそ、クソくらえだ、俺は英雄ヘラクレスだ、アルバート・ジェネラルだぞ、全ては連合軍のために!!」

 

  周りがざわめき出す。

 

「あいつ、ヘラクレスなのか」

 

「うそだろ、生きてたのかよ」

 

「だけど、オークの強さもヘラクレスだと思えば納得できる」

 

  アルバートは大剣を両手で握りしめて、アリウスに斬りかかった。

 

  アリウスは振り落とされる剣横に避けて、アルバートの首めがけて剣を振った。

 

  アルバートは刃、歯で止めた、口の周りが刃で切れたが剣は完璧に止まる。

 

  アルバートはそのまま剣を噛み砕く、アルバートの口の中が切れて血塗れになったが血を地面に吐き捨てる。

 

  「よう、覚悟は出来たか?」

 

  アルバートはラリアットを放つ。

 

  アリウスはそれをブロックするのだが、アリウスの両手がへし折れてアリウスは向こうの壁まで吹っ飛び壁を突き破った。

 

  アルバートが審判に顔を向ける。

 

  「さて、これでどっちが勝者かな?」

 

  審判はアリウスが立ち上がらない事を確認するとアルバートの勝利を宣言した。



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13話

 イワンの目の前にそれはアルバートよりも、巨大な男が現れた。

 

 これにはアルバートも驚いていた。

 

「あいつが噂のタイラントと言われる男か・・・」

 

 タイラントはイワンを見下ろす。

 

「いやあ、残念だよ、あんたの所のチビ助やられちまったな」

 

 イワンは冷ややかな目でタイラントを見つめていた。

 

 タイラントは惚けた表情を浮かべる。

 

「何だっけ、ギガントスレイヤーとか呼ばれているみたいだが、俺とぶつかれば3秒で終わったな・・・」

 

 イワンは少し大きな声を上げた。

 

「それは違う!」

 

 タイラントはイワンを睨みつける。

 

「ああ、どう違うんだ?」

 

 イワンの声は少し小さくなった。

 

「3秒もかからない、いや、コンマで試合が終わるだろう、長くて1秒だ」

 

 タイラントは大きな声で笑った。

 

「だよな、あんなチビ助に3秒もかからねえか」

 

 イワンはクスクスと笑った。

 

「勘違いするな、小物め」

 

 タイラントは眉間にシワを寄せた。

 

「何だと?」

 

 イワンはタイラントを指さす。

 

「お前が瞬殺されると言っているのだ」

 

 タイラントは巨大なハンマーをかつぎあげた。

 

「死んでも、恨むなよ?」

 

 イワンもシャシュカを構える。

 

「分かった、3秒で終わらせてやる」

 

  タイラントはハンマーをふりおとした、イワンはハンマーを避けて、ハンマーの上に乗ると、タイラントの肩を駆け上りそのまま首に腕をかけて絞め落とした。

 

 この間、3秒

 

 タイラントは白目を向き泡を吹いて気絶。

 

 イワンはタイラントの頭を踏んづける。

 

「私がなんて言われてるか知ってるか、ブラックスノーの毒蛇だよ」

 

 イワンは観客席のポルカを睨みつけた。

 

「次はてめえだぜ」

 

 ポルカはイワンの異常な程の殺意にため息をついた。

 

~☆~

 

 ポルカは会場のバーで酒を飲んでいた。

 

 すると、井川がいきなり後ろからポルカに斬りかかった。

 

 ポルカはすぐに身体を振り向かせ、テーブルに足を起き、剣を抜いて刀を受け止めた。

 

「おみごと!!」

 

 井川は刀を鞘に収める。

 

「凄いで御座るな、背中に目でもついてるのでござるか?」

 

 ポルカは剣を鞘に戻してテーブルから降りた。

 

「勘だよ 」

 

 井川は唖然のした。

 

「勘で御座るか?」

 

 ポルカはうなづいた。

 

「ああ、勘は昔から強くてな」

 

 ポルカは井川に酒を出す。

 

「試合では負けてやるつもりは無いからな」

 

 井川は強くうなづいた。

 

「拙者も悪いが本気で行かせてもらう、剣神の首を貰い受けに参る」

 

 ポルカは少し嫌そうな顔をしたが。

 

「何だか面白くなってきた、いつでも取りに来い」

 

 ポルカは何だか嬉しそうにさっていった。

 

  井川が生唾を飲んだ。

 

「どうしたのだ、ポルカ・・・」

 

 ポルカは通り掛けにアルバートの足をわざと踏みつけた。

 

 アルバートは目を丸くした。

 

「どうしたんだ、ポルカ!?」

 

 ポルカはなんだかルンルンとしていた。

 

「何時でも、かかってきやがれ!」

 

  ポルカはそう言い残すとスキップしながら、その場を去っていった。

 

アルバートの顔が青ざめた。

 

「命を狙われすぎてストレスにやられやがった、それに目覚めては駄目だポルカ・・・」

 

~☆~

 

 試合が始まる。

 

 ポルカはいち早く会場で井川を待ち構えていた。

 

 ポルカは最初はなんだか嫌だった試合が少し楽しく感じ始めた。

 

 なれたというよりはヤケ糞という方が近いのだが。

 

 井川が出るとポルカは途端に落ち着きを取り戻して、呼吸を整えた。

 

 井川が居合いのポーズに入った。

 

「いざ、尋常に勝負!!」

 

 ポルカは剣を鞘から抜いたその時、井川の鞘から刀が解き放たれる。

 

 剣先が音速を越えて、鋭き刃がポルカを襲った。

 

 ポルカはそれを1歩分後ろに下がりぎりぎりで避けた。

 

「速いのは尖端だけか・・・」

 

井川は刀を返す。

 

 刀術の心の恐ろしい所は初激の後の返し刀だ。

 

  高速の二振りがポルカを襲う。

 

  ポルカの首に切り傷が入る。

 

 半身、ずらされた。

 

 ポルカは片手で井川を突き飛ばした。

 

「今のは驚いた、此処では見た事の無い技ばかりだ」

 

 ポルカはしみじみと思いにふける。

 

「思えばこういう事は嫌いだと避けてきたが、結局は自分には剣しか無いのだから此処や戦場が自分の居場所なのかも知れない」

 

  井川は身体を起こして刀を横一線に振った。

 

  ポルカは剣で刀を受け流す。

 

 ポルカの剣が井川の首めがけて伸びる。

 

 井川は身体を反って剣を避けて、刀を再び横一線に振るう。

 

 ポルカは井川を蹴っ飛ばして井川を突き飛ばした。

 

 井川はポルカの側面に向かって走る。

 

「チェストオ!」

 

 井川は刀を横一線に振った。

 

 ポルカは剣で刀を受け流す。

 

 鋼と鋼がぶつかり合い、火花が散る。

 

 井川は息を切らした。

 

「何だと、一戦目や二戦目よりも強くなってやがる!?」

 

 どんどん研磨される鋼のように、白刃の王は強くなっている。

 

「ハッカペル!!」

 

 ポルカは叫ぶ。

 

 そしてポルカはそのまま川井に斬りかかる。

 

 井川はポルカの一撃を受け止める。

 

 井川の手がしびれる。

 

 勝てる気がしない。

 

 ポルカは井川の肩を斬りつけた。

 

 井川の肩から血が吹き出す。

 

 手を抜かれているのにこのザマだ。

 

 ポルカは剣の柄で井川の額を割った。

 

 井川は額から血を流す。

 

「巫山戯るな!!」

 

  アレキサンダーが乱入して来た。

 

 アレキサンダーはポルカにハルバードど斬りかかる。

 

  ポルカは剣でハルバードの一撃を受け流すが、余りのパワーにポルカは後ずさった。

 

 雷獣はポルカにハルバードを振り落とす。

 

 ポルカは剣でハルバードを受け止める。

 

 驚きはそのあとだった。

 

 ポルカは手首を回して、一つ踏み込みアレキサンダーを片手で突き飛ばした。

 

 アレキサンダーは勢いよく吹っ飛び、壁に叩きつけられて気絶した。

 

 井川は歯を食いしばった。

 

「そんな、合気だと?」

 

  井川は気絶したアレキサンダーを見つめた。

 

「俺のために・・・」

 

井川は刀を鞘に収める。

 

「気合いで負けたら負けだ」

 

井川は目をつぶった。

 

 全神経を刀を集中する、斬り捨てることだけを考える。

 

  ポルカがハッカペルと叫ぶが、それさえも井川の耳には入らなかった。

 

 斬り捨てる、それだけだ。

 

 一点の曇り無き心、明鏡止水の心とはこの事かと思うほどだ。

 

 ただ、この刀を速く抜く、それだけを考える。

 

 ポルカが斬りかかった。

 

 井川は目をみひらいた。

 

「チェスト!!」

 

 ポルカが吹き飛ぶ、井川の居合は全てが音速を超える。

 

  ポルカの額が切れていた。

 

 よくぞ、そこまでたどり着いた。

 

  ポルカは額の血を拭う。

 

  ポルカは深く息を吸った。

 

「ハッカペル!!!」

 

 それは今まで聞いたことないほどの怒声だった。

 

 ポルカは高速で剣を振り回す。

 

  速すぎて井川は防ぎきれず、身体の至るところに切り傷がうまれる。

 

  一撃一撃が重すぎて、井川は手が痺れて刀を落とした。

 

  ポルカの蹴りが井川の顎を打ち上げた、井川は両膝を地面につき、倒れた。

 

  ポルカは倒れた井川をしばらく見つめていた。



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14話

 皆がイライラしていた。

 

 際もイライラしていたのは恐らくはイワンだろう。

 

 ポルカが試合会場に現れないまま10分が過ぎようとしていた。

 

 審判がイワンの顔色を伺う。

 

 不戦勝で・・・。

 

 イワンは審判を睨みつけた。

 

 もう少し待て・・・。

 

 すると、ポルカがやっと現れた。

 

 ポルカは始めから剣を剥き出した状態で俯いて現れた。

 

 イワンは少しホッとした。

 

「ビビって、来ないかと思いましたよ」

 

 ポルカは軽く会釈だけ返した。

 

 イワンはいきなりポルカに斬りかかった。

 

 ポルカはその一撃を剣で受け流す。

 

 イワンはポルカの足をはらおうと蹴りを放つ。

 

 ポルカは蹴り使用とした足を足の裏で止めた。

 

「審判、速く試合を始めてくれないか?」

 

 唖然としていた、審判は生唾をのむ。

 

「しかし、これは明らかな・・・」

 

 イワンはポルカの顎を蹴りあげようと足を上げた。

 

 ポルカはそれを紙一重に避ける。

 

「遅れた私をわざわざ待ってくれたんだ、これぐらい問題ない」

 

審判は開始の合図をあげた。

 

「ハッカペル!!」

 

 同時にポルカは叫ぶ。

 

 ポルカはイワンの膝を蹴りつけた。

 

 イワンは慌てて、後ろに下がり蹴りを避ける。

 

 ポルカはすぐに下段攻撃を上段に切り替えて、イワンの顎を足の裏で蹴りあげた。

 

 ポルカは続けざまにその足でイワンの溝をつま先で貫く。

 

 その身は一振りの鋼、つま先はイワンの身体に突き刺さり刺傷を作った。

 

 イワンはそのまま、足刀でイワンの喉を蹴りつける。

 

 イワンは蹴りを紙一重に避けて、足を絡ませ両手で抱え込み寝技に持ち込んだ。

 

 その際に首元を掠めて首に軽い傷口が出来た。

 

 しかし、そんな事はどうだっていい。

 

 白刃の王の足を取ったのだ。

 

 剣の尖端がイワンの顔目掛けて飛んできた。

 

 イワンは足を離して、飛び退き剣を避けた。

 

 ポルカは直ぐに足を引いて体制を立て直す。

 

 イワンはポルカの顔に前蹴りを放つ。

 

 ポルカはそれを紙一重で避けるとイワンは足を曲げてイワンの首に掛けた。

 

 そのまま、もう片足を上げてポルカの首をロックする。

 

 そのまま、ポルカの頭を両手で掴む。

 

 後は身体を捻れば終わりだ。

 

 イワンは身体を強烈に捻る。

 

 ポルカはそれと同じ速度で回った。

 

 イワンは身体を反ってポルカにフランケンシュタイナーを掛ける。

 

 ポルカは飛び、空中で廻り元の体制を維持した。

 

 ポルカの剣がイワンの首に迫った。

 

 イワンは落ちるようにポルカから降りて背後に周り、シャシュカで足を切りにかかる。

 

 ポルカはバク宙をとって、シャシュカを避けてイワンの頭を踏んづけにかかる。

 

 イワンは慌てて後ろに下がり蹴りを避けた。

 

 イワン顔に切り傷が入る。

 

 ここまで、強いのかポルカは!?

 

 イワンは殺す気なのに死合をしているつもりなのに、ポルカは普通の試合をしていやがる。

 

 いまだって、当たっても致命傷にはならない様にしている。

 

 ポルカの後ろ蹴りがイワンの頭をすっ飛ばした。

 

 イワンは鼻血をだして、白目を向き地面に倒れた。

 

 これが白刃の王である。

 

 審判が立ち上がらなくなったイワンを確認する。

 

「ポルカの勝利!!」

 

 ポルカはイワンに背を向けた。

 

 すると、突如観客と審判がどよめきだした。

 

 イワンが立ち上がり、後ろからポルカの首を締めあげたのだ。

 

 殺意無き一撃。

 

 しかし、ポルカは冷静だった。

 

 イワンは一気にポルカの首をチョークでしめあげる。

 

「ポルカ、俺はお前を殺すためにここにいるんだ!!」

 

 ポルカはイワンの手を片手で掴んだ。

 

 指がイワンの腕にめり込み突き刺さり骨にたっした。

 

 そのまま、身体を少し前傾させてイワンの足をうかせて、ものすごい速度で後ろに下がり出した。

 

 そして、イワンを壁に叩きつける。

 

 イワンの力が弱まると隙間から抜けて、イワンの手を指で抉りながら片手でイワンを正面に投げ飛ばした。

 

 イワンはあまりの傷みに悲鳴を上げる。

 

 すると、ポルカは靴を脱ぎ出した。

 

「お前が毒蛇なら、俺は孔雀だ」

 

ポルカは両足裸足になった。

 

「かかってきな」

 

 イワンはポルカに切りかかる。

 

 ポルカはそれを剣で受け流して、イワンの肩に肘を振り落とした。

 

 肩の肉が鋭利に切り裂かれる。

 

 ポルカはそんな至近距離から、イワンの顎を蹴りあげた。

 

 顎にも切り傷が入る。

 

 ポルカは足を振り落とした。

 

 イワンは後ろに下がる、顔に傷が増える。

 

 イワンはシャシュカを構えている間にポルカに距離をつめられる。

 

 ポルカはイワンに頭突きをかます。

 

 そのまま、正中線を拳で打ち抜かれた。

 

 腹と胸に小さな刺傷が出来る。

 

 イワンは慌てて後退したおかげで致命傷にはならなかったが今のは殺しに来ていた。

 

 イワンは直ぐにポルカに切りかかろうとすると、ポルカの足の裏がイワンの胸に当てられた。

 

 そのまま、ポルカが足の指を曲げると足の指がイワンの胸に突き刺さった。

 

 イワンが足を切り落とそうとシャシュカを降るが、途中でポルカにシャシュカを剣ではねとばされる。

 

 そのままポルカはイワンを足で持ち上げて、足を振り落とす容量でイワンを投げ飛ばした。

 

 だがイワンは血まみれでも立ち上がろうとした、そのイワンに化け物は歩み寄る。

 

 ポルカは手の指でイワンの頬をかなぐりった。

 

 ポルカは下から足の裏を振り上げて、イワンの胸を足の指でかなぐる。

 

 その姿はまるで狼が人に襲いかかっているかのようだ。

 

 イワンはそれでも立ち上がろうとする。

 

 ポルカは容赦なくイワンの背後に周り首を締めあげて、今度こそ本当に気絶させた。

 

 観客は沸かなかった。

 

 化け物は黙って会場を後にする。

 

 イワンが再び立ち上がり、ポルカに襲いかかった。

 

 完璧に落としたはずだった。

 

 それでもイワンは気絶してもなおポルカの肩に噛み付いた。

 

 ポルカは剣を握る手に力が入った。

 

 戦いは長引き、夕日が照らしていた。

 

 剣は空を写して乱反射していた。

 

 皆が唾を飲んだ。

 

 ポルカが斬るぞ、地上最強の剣士が剣を降るその意味は・・・。

 

 ポルカはイワンを引き剥がした、肉を食いちぎらせた。

 

 そして・・・。

 

 イワンは宙をまった、ポルカは力の限りでイワンを殴り飛ばした。

 

 ポルカは光り輝く剣をかがげた。

 

 勝どきをあげた。

 

 イワンは殴られて、意識を取り戻したが返ってポルカの勝どきを聞いてしまった。

 

 ポルカはイワンに近寄って、手を差し伸べた。

 

「これは戦争では無い、この剣はお前をきることに使えない」

 

イワンはポルカを睨みつけた。

 

「戦うための剣だろ!」

 

ポルカはうなづいた。

 

「守る為に戦う剣だ、この剣は守る為に・・・」

 

 イワンはポルカの手を払った。

 

「随分と丸いんだな、お前」

 

 沢山の人が集まって来て、イワンは担架に積まれた。

 

 ポルカは担架で釣れられていくイワンをずっと見つめていた。



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15話

皆のおかげで第2部までやってこれました。
色々とおかしい所があったり。
駄文だったり。
作者がヒビだらけのガラスのハートだったりしましたが···。
これからも暖かい目で見守ってくださったら幸いです。
皆さん本当に有難うございました。




 周りは火の渦で覆われている。

 

  その中をアルバートが沢山の兵士を連れて突っ着ていた。

 

「最前線こそ、我らの誇り!」

 

ヴァンガード(前線を守る)、全ては連合軍のために!!」

 

  アルバートは大剣でつきづきと敵兵を薙ぎ払う。

 

「我らの命で後衛を有利に進めるのだ、走れ、走れ、足を止めるな臆病者は連合軍にいらん!!」

 

  アルバートは槍が刺さろうが剣で斬られようが矢が刺さろうが弾丸が体を貫こうが斧が深い傷を与えても馬に蹴られても石を投げられても鈍器で殴られても進軍を辞めなかった。

 

  その大剣で目の前に立つものは誰これ構わず切り捨てた。

 

白兵戦がもつれ込んだ、8方が敵に囲まれた。

 

「俺は連合軍のヘラクレスだぜ!!」

 

 1振りで数人の命が消し飛ぶ。

 

  1振りを誰も防げない。

 

  1振りが勝利を手繰り寄せる。

 

  1振り、また1振りと・・・。

 

  気がつけば誰もアルバート以外は誰も立っていなかった、味方は気が付かぬまに全滅していた。

 

  確かに無茶な作戦ではあったがヘラクレスの活躍により、前線は守り通した。

 

  しかし、後衛から軍は来ない。

 

  誰も味方は来ないまま、3日が過ぎ去った。

 

  後にこの作戦は見直されて、無かった事にされていた。

 

  ヘラクレスとその見方は全て死んだ事にされていた。

 事実上、あの戦いで生き抜く事は非常に難しい死んだと思った方が妥当だ。

 

  しかし、アルバートは生き残ってしまった。

 

  昔の友人と何とか当たった。

 

 すると、名前を変えるように進められた。

 

「連合軍に帰っても責任を取らされるだけだ、一生の不名誉となる」

 

  アルバートは歯を食いしばって怒りに震えた。

 

「何だと! それならあの前線で死んだ仲間は皆が犬死にしたというのか!?」

 

  アルバートは机を強く叩いた。

 

  ポルカが目を丸くしていた。

 

「どうした、アルバート?」

 

  アルバートは酒を飲む。

 

「物思いに老けてたか」

 

 ポルカはクスッと笑った。

 

「おまえらしくもない」

 

 アルバートは酒を再び飲む。

 

「そうだな、次の対戦相手を倒したら次はおまえだポルカ」

 

 アルバートは大剣を手に取って会場に向かう。

 

(そうだ、ヘラクレスの1振りは勝利への道だ。誰に求められんさ、あの白刃の王でさえ!)

 

 ヘラクレスが会場にたった。

 

 すると、今までこの会場で見た事が無い人物が現れた。

 

 その物は修道士の格好をしていて、目元は暗くて顔が確認取れない。

 

 その男はヘラクレスが戦うはずだった人間の首をヘラクレスに投げつけた。

 

 そして、中指を立てる。

 

「ヘラクレス、乱入試合だ」

 

 ヘラクレスは大剣を強く握って、鬼のような形相になった。

 

「なる程な連合軍のアサシンか!!」

 

 ヘラクレスは大剣を振り上げた。

 

「アサシン如きが奇襲もかけずにこの俺に正面から勝てるとでも思っているのか!!」

 

 大剣が振り落とされる。

 

 受け止めることの出来ない一撃。

 

 全ての盾を打ち砕く強烈な1振り。

 

 英雄の一撃。

 

 アサシンはその一撃をククリ一つで受け流した。

 

 大剣はアサシンの右横をすれて、地面にくい込んだ。

 

 アサシンはもう片手からククリを取り出して、ヘラクレスの足を切りつけた。

 

 しかし、カットラスが欠けるほど頑丈な皮膚はまるで鋼の鎧、ククリでは傷一つ入らない。

 

 男は口元が笑う。

 

「流石はヘラクレス、何を食べたらそんなに硬くなれるのだい?」

 

 ヘラクレスは左腕を振り落とす。

 

 アサシンはそれを受け止めて肩膝をついた。

 

 アサシンの頭から赤い血がダラダラと流れる。

 

 凄いパワーだククリが鋼にくい込んだよ」

 

 アサシンはククリの刃でヘラクレスの腕を受け止めたのだ。

 

 ヘラクレスは腕を引き、すぐに蹴りを放つ。

 

 今度はククリが足の裏に突き刺さって貫通した。

 

 アサシンは吹き飛ぶがすぐに体制を立て直して、アルバートに飛びかかる。

 

 アルバートは大剣を横一線にふる。

 

 アサシンはククリで大剣を受け流して、顎に上段蹴りを叩き込んだ。

 

 溝に掌底、膝の内側にローキック、再び顎に上段蹴り、肝臓にブロー、ストマックに一本拳、首に飛び蹴り。

 

 怒涛の乱舞を叩き込む。

 

 そして、顔面に飛び蹴りが入った。

 

 ヘラクレスはそのタイミングに動き出し、蹴りを受けながら前進して大剣を振り上げる。

 

 アサシンはヘラクレスの左肩に左足を掛けて左に移動して、大剣を避けてコメカミに一本拳を叩き込んだ。

 

 アサシンは飛びバク宙で地面に着地する。

 

 ヘラクレスは急所への打撃なんて効いてねえぜとばかりに再び大剣を振り上げた。

 

 アサシンの喜びは絶頂に至った。

 

「流石はヘラクレス、楽しませてくれる!」

 

 アサシンは大剣を避けつつ、カウンターに掌底をヘラクレスに叩き込んだ。

 

 ヘラクレスは鼻血をだした。

 

「人の体の殆どは水だ、それを利用すれば衝撃を体内に伝える事も容易にできる」

 

 アサシンは顎を強く掌底で叩いた。

 

「流石のお前も顎への打撃は効くようだなどうだ脳が揺れて気持ち悪いだろ?」

 

 アサシンはヘラクレスの金的を蹴りあげる。

 

「どうした、ここは鍛えてないのか?」

 

 アサシンは懐から銃を取り出してヘラクレスの胸に当てた。

 

「アルビダとの試合は見ていた、貫通しなくてもこれから弾丸は心臓に届く計算だ」

 

 銃声音が響く。

 

 銃からは黒煙が立ち込めた。

 

 アルビダがアサシンを狙撃したのだ。

 

 アサシンは紙一重で弾丸を避けていた。

 

 アサシンはアルビダに銃を向ける。

 

「雑魚は引っ込んでろ!!」

 

 沢山の観客席にいる海賊がアサシンに銃を向ける。

 

 アサシンはその時大量の投げナイフを投げた。

 

 投げナイフは遠くの海賊達の額を外すこと無く突き刺さった。

 

 アサシンは軽々と放たれる弾丸を避けて、確実に抵抗するものを殺す。

 

 皆がその死神のような姿に恐怖した。

 

「ハッカペル!!」

 

 その時、白刃の王の声が響き渡った。

 

 皆がポルカに顔を向けた。

 

 ポルカが闘技場に出てきた。

 

 ポルカはアルバートに触れると救護班を呼んだ。

 

「大変だ、微力ながら死に至らしめる毒が身体に廻っている、救護班は直ちに私の支持する薬草を持ってこのおとこを見て欲しい」

 

 アルバートは大剣を握りポルカを睨みつけた。

 

「これは俺の喧嘩だ!!」

 

 ポルカはアルバートを無言で睨み返した。

 

 アルバートはそれに恐怖して、落ち着きを取り戻した。

 

 ポルカは怒っていた。

 

 アルバートはポルカの肩を持つ。

 

「やめろポルカ、連合軍を敵に回すつもりか!?」

 

 ポルカは無言で立ち上がりルークに声をかけた。

「救護班と一緒にアルバートを頼む」

 

 ルークはすぐに駆けつけてアルバートの元によった。

 

 アルバートがルークを睨む。

 

「お前もだ、あのアサシンは連合軍の意志なんだぞ!」

 

 ルークは首を横に降った。

 

「貴方は私の夢だった、ヘラクレス亡き連合軍に未練は無い」

 

 ポルカは俯いているがその顔は怒っている。

 

 アサシンはククリを握りしめた。

 

「まさか、白刃の王とやり会えるなんてな!!」

 

 ポルカは黙りだ。

 

 だけど思う、無口で俯いていて陰気臭いけど、自分の信念は曲げない鋼の様な意思を持つ男。

 

 その意志も身体も一振りの鋼である。

 

 皆がポルカを応援する。

 

 イワンの試合の時では考えられなかった現実。

 

 皆が思った、恐怖を前にしてもポルカが残された、ポルカがいるじゃないか。

 

 ポルカは一言だけ、大声で叫ぶ。

 

ハッカペル(叩き斬る)!!」

 

 ポルカは猛スピードでアサシンに飛びかかり剣を振り落とした。

 

 アサシンは剣を紙一重に避けて、掌底を放つ。

 

 ポルカが突き飛ばされた。

 

 皆の歓声が止まる。

 

 アサシンは自分の腕を見て笑う。

 

 僅かにポルカの剣が振れたのか切り傷が入っている。

 

 そして、ポルカに与えたのダメージはほぼ突き飛ばしただけのゼロ。

 

 ポルカが息をつくまもなく、再び切りかかる。

 

 アサシンは剣を紙一重に再び避けて蹴りを顎めがけて放とうとする。

 

 しかし、その蹴りをポルカの足で受け止められて足の指が膝にくい込む。

 

 ポルカはそのまま自分の足を引いて、アサシンの重心をずらす。

 

 アサシンは両手のククリでポルカの首にクロスするように切りかかる。

 

 ポルカは剣の柄でアサシンの額を殴り、アサシンを地面に叩きつける。

 

 今度はアサシンは地面に片手をつき、逆立ちするように片足でポルカの顎を蹴りあげる。

 

 アサシンはそのまま、ポルカの膝にローキックを叩き込む。

 

 そして、強烈な一本拳の右フックをポルカのコメカミにかけた。

 

 ポルカは白目を向いて肩膝をつく。

 

 アサシンはククリを振り上げる。

 

 ポルカの剣は光で反射して、蒼く輝いた。

 

 ポルカはアサシンの手首を掴み捻って体制を崩させて、服の襟を掴み背負い投げた。

 

 ポルカは相変わらず俯いていたままだが小さな声で呟いた。

 

「これは試合じゃない、俺の得意な戦争だ」

 

 アサシンはすぐに立ち上がりポルカに投げナイフを投げつけた。

 

 ポルカはそれを全て剣を振り回し払い除ける。

 

 何という振りの速さ。

 

 アサシンは上着をポルカに投げつけた。

 

 ポルカは剣で上着を切り捨てる。

 

 アサシンはその隙にポルカの死角に潜り込み、中腰の状態から首の後ろの脊髄めがけてククリを伸ばした。

 

 ポルカの後ろ蹴りがアサシンの顔面に入った。

 

 アサシンの顔に横一線に足刀がくい込み、血が吹き出した。

 

 アサシンが火炎瓶をポルカに投げつける。

 

 ポルカは火炎瓶を剣で払う。

 

火炎瓶が割れ、その場は炎に包まれた。

 

「ハッカペル!」

 

 ポルカは炎の中から飛び出す。

 

 炎を斬った。

 

 白刃の王に切れない物は無い。

 

 アサシンは小さな盾を取り出した、盾にはダイヤが埋め込まれている。

 

 しかし、ポルカはそのダイヤごと盾を切り裂き、アサシンの脇腹を剣先が掠める。

 

 アサシンは鎖を取り出して、ポルカの足に巻き付け引っ張る。

 

 しかしポルカは巻き付けられた時に剣で鎖を切り、アサシンの手元には切れた鎖が返って来ただけだった。

 

 アサシンはポルカに玉砕覚悟で飛びかかる。

 

 袖から刃が飛び出す。

 

  ポルカは手首を剣を持った方の手の甲で払い、アサシンの顎を直突きで砕いた。

 

 まるで蹴りの様な威力のパンチ。

 

 ポルカはアサシンの肩に足の指をくい込ませて、地面に引き倒す。

 

 手のように器用な足。

 

 だけど、その全てがしょぼく思えてしまう。

 

 彼は地上最強の剣士なのである。

 

 ポルカは剣を横一線に降る。

 

 アサシンはククリを受け流そうとするが、剣は突如起動を変えてアサシンの左鎖骨を切り裂いた。

 

 雲の様に姿を変えるが如く、剣の起動を操るポルカの器用さ。

 

 アサシンはもう左手が動かない。

 

 ポルカはアサシンを蹴り飛ばした。

 

「ハッカペル!!」

 

 ポルカは剣を振り上げて、掛け声と共にアサシンに切りかかる。

 

 アサシンはククリで剣を受け止めようとする。

 

 剣はククリを切り裂き、アサシンの右肩から鎖骨までを切り裂いた。

 

 勇猛なポルカの一撃。

 

 ポルカの剣技を見れば例え口から火を吹いても誰も驚かないだろう。

 

 アサシンは地面にうつ伏せに倒れた。

 

 ポルカは空を見上げる。

 

 ポルカは剣士として成長している。

 

 ポルカの力を支えている物は何だろうか。

 

 ポルカはアサシンを切り捨てると一瞬だけエリカの方に目をやって、無言でその場を立ち去った。

 

 ポルカは会場を後にしてサーモンスネークと野原をかける。

 

 やるだけやったら、無言で去る。

 

 それがポルカである。




〜オマケ〜

アホポルカ④

ポルカは怒っていた。

アサシンは笑顔を向ける。

「まさか、白刃の王と殺れるなんて」

 ポルカは少しいい気になる。

「確しか地上最強の剣士なんだってな」

 ポルカは照れる。

「失望させんなよ」

 ポルカは叫ぶ。

ハッカペル(叩き切れ)!!」

 アサシンはポルカの剣を紙一重に避けて掌底を叩き込んだ。

 周りの歓声が途絶える。

 剣はアサシンを捉えて首に切り傷が走った。

 アサシンは首を抑える。

「手加減された、もう半歩踏み込まれていたら・・・」

 それに比べポルカに与えたダメージはポルカの痩せ我慢によりほぼゼロ。

 ポルカは鼻血を腕で拭う。

「やれやれ、ちょっとエッチな想像をしていたら斬り損ねたぜ」

 アルバートが息を呑む。

「いや、その言い訳には無理があるだろ、医学的にエロい妄想をしても鼻血は出ないと検証されているし」

 ポルカはアルバートの腿に剣を刺した。

 アルバートは悲鳴をあげる。

「済まないアルバート、手元が狂った」

 そうこうしているうちにアサシンがポルカに飛びかかった。

 ポルカはすぐに振り向きアサシンの手首を掴み、いつの間にか用意していた風呂桶に片手で放り投げる。

 アサシンは風呂桶の中の水でビショビショになる。

 しかも、目や鼻に激痛が走り全身がヒリヒリし始める。

 ポルカはいつまにか用意した、長い棒でアサシンを無理やり風呂桶に沈めた。

「アサシン、これが俺達の怒りだ!!」

 アサシンは数分間悶え、何とか風呂桶から飛び出す。

 すると、凄まじくまるで真冬に裸で外に出たように寒いではないか。

 目や鼻や口はヒリヒリととても痛く、まるでこの世の地獄だ。

「ポルカ、俺に何をした!?」

 ポルカはにやっと笑う。

「我が祖国ではハッカがそこらじゅうで取れるのだ、そのハッカ油が大量に入った水にお前をつけてやっただけのこと」

 アサシンはこのヒリヒリはハッカに含まれるメンソールのせいだと理解した。

 ポルカは悶え苦しむアサシンを長い棒でビシビシと叩く。

「その状態ではまともに戦うことも出来まい」

 ポルカは三十分こんな戦いを続け、アサシンの足腰を立てなくした。

 ポルカは足腰立たないアサシンにアミを被せて、再び長い棒で殴り出した。

 ポルカはこんな戦いを今度は一時間続けてアサシンを倒す。

 ポルカは立ち上がる気力も失ったアサシンをしつこく棒でしばらく叩き動けない事を確認すると勝どきをあげた。

 皆が呆れて声も出ない。

 しかし、ポルカは満足そうに会場を後にして、サーモンスネークと一緒に草原をかけた。

 やるだけやったらどんな勝利であれ喜んで去る。

 それがポルカなのだ。


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第3章 連合軍との戦い
16話


ついにポルカも第3部です。
ご愛読してくださってる方ありがとうございます。
そして、これからも宜しくお願いします。


丘の上から大草原を見守る男がいる。

 

彼は白刃の王と呼ばれ、その身は一振りの鋼。

 

ひと呼んでスティールポルカ。

 

ポルカは森のさざめきに耳を済ます。

 

小鳥の鳴き声、木々の揺れる音、ここにはポルカを癒してくれる自然があった。

 

ポルカは自らの剣を見つめる。

 

研ぎ澄まされた剣はまるで鏡のよう。

 

ポルカは今、連合軍による指名手配にんだ。

 

しかし、殆どの人々はポルカの味方だった。

 

だからこそ、ポルカは街には入らなかった。

 

連合軍はやっけになってポルカを探している。

 

街に一度入れば、誰かが巻き添えを食らってしまうだろう。

 

ポルカは剣を見つめる。

 

最早、祖国は遥か遠くに誓を立てた王女様も遥か遠くに。

 

ドン・ベンジャミン家にも、頼れない。

 

これ以上の迷惑をかけるわけには行かない。

 

連合軍を倒すのも手だが、そんな事をすればブラックスノーが再び南下を始める。

 

イワン達には嬉しい話ではあるが。

 

すると、誰かが丘に上がってきた。

 

イワンは剣にさり気なく手を触れる。

 

「兄さん、こんな所にいたんだね」

 

それは弟いや、妹のホーテだった。

 

ポルカは剣から手を離す。

 

ホーテは溜息をつく。

 

「まるで飢えた一匹狼だね、そんなにボロボロになるなら実家つげばいいのに、そうすれば連合軍も手出し出来ないよ」

 

ポルカは首を横に降った。

 

ホーテはポルカに剣が入った鞘を投げた。

 

「相変わらず頑固なんだから、その剣は兄さんにあげるよ」

 

ポルカは剣を見つめてホーテに突き返す。

 

ホーテは首を横に降って、眉間にシワを寄せた。

 

「別にドン・ベンジャミン家をつげとは言わないがアンタは長男なんだ、どんな理由であれ、その剣はポルカが持つべきだ」

 

ホーテはポルカに背を向けた。

 

「それさえ受け取ってくれれば、後は好きにしていいよ」

ポルカは鞘から剣を抜く。

 

これはドン・ベンジャミン家に伝わる伝家の宝刀である。

 

剣はサーベル上で黒い峯に紅の刃が特徴持ち手は黄色いゴムで巻かれてる、ロングソードの様な鍔の真ん中には大きなライトニングクォーツがはめられている。

 

ライトニングクォーツは水晶が地中にある時に雷を受けて水晶自体が高温となり溶けたものや、衝撃でクラックが起きて、周囲の泥を巻き込んで固まったり傷だらけになった水晶のことだ。

 

石言葉は雷、前進、変化。

 

そして鷹が刻まれている。

 

睡蓮の花言葉は信仰心、清浄、滅亡。

 

そして、鷹は強さ、勇気、遠眼、不死の象徴。

 

その鷹は平和の象徴のオリーブを咥えるハトを踏んづけている。

 

ポルカは溜息をついた。

 

「何とも、物騒な剣だ⋯⋯」

 

まるで、破壊してあるけと言わんばかりである。

 

ポルカは剣を鞘にしまった。

 

すると、影からアルバートが現れた。

 

「物騒な剣って、剣は元々物騒なものだろ?」

 

ポルカは歯噛みする。

 

アルバートはポルカに地図を渡した。

 

探すのに苦労したぜ、なんせ俺も指名手配人だからな。

 

ポルカは地図を見つめる。

 

「本当に苦労したぜ、お前の国の王女の血族を見つけるの」

 

あのポルカが顔を上げる。

 

アルバートはニカッと笑う。

 

「諦めるにはまだ早い、大好きな王女様の為に仕事できるぞ」

 

ポルカは地図を懐にしまうとサーモンスネークにまたがる。

 

アルバートは手を振る。

 

「わりいが俺に出来るのはここ迄だ、後はお前の手で切り開け」

 

ポルカはアルバートに手を振り返した。

 

「斬るのは得意だ」

 

~☆~

 

ポルカは草原の途中で馬を休めていた。

 

日も、もう時期暮れる。

 

ポルカのお腹が鳴った。

 

残りの食料はあとわずかだ。

 

流石に人里を訪れなければならないかも知れない。

 

ポルカは一先ず、眠ることにした。

 

しかし、馬のヒヅメの音が聞こえる。

 

ポルカは剣に手をやった。

 

すると、黒い鎧に大剣を持った男が黒い鎧を纏った馬に乗ってこっちに向っていた。

 

連合軍切っての腕利き、黒騎士と呼ばれる騎兵である。

 

彼自身も自らの事を黒騎士と名乗るので本名を知るものは僅かにしかいない。

 

黒騎士は馬の上からポルカを見下ろした。

 

「ふん、実に興味深い」

 

ポルカは寝たフリを続ける。

 

黒騎士は微笑の笑みを浮かべた。

 

「これからお前が行なう事に興味がある、起きたらそのまま進め、途中に村がある」

 

黒騎士は地面にビールを1口飲み、それを地面に置いた。

 

「連合軍はまともにツマラン、お前みたいに自分を持っているやつの方がずっと面白い」

 

馬のヒヅメが遠ざかる。

 

ポルカは起き上がり、ビールを手に取り飲み干した。

 

~☆~

 

ポルカは村についた。

 

ブラックスノーを追い返したというのに村人は貧相な暮らしをしていた。

 

ポルカは連合軍は中から腐っていると悟った。

 

今では、ポルカを知らない人はいないだろう。

 

彼は指名手配人なのである。

 

ポルカの予想通りだ、村人達はポルカに群がり匿う話が早くもうじょうした。

 

連合軍は信用できないだしい。

 

それにポルカを連合軍に売り飛ばそうなら、村八分にされてリンチにあい、一生を半殺しで過ごさなくてはならない。

 

いや、つるし上げられて殺されるかもしれない。

 

連合軍は村人のその後のことなんて保証しない、考えてもないのだ。

 

ポルカは連合軍をアホだと思った、安全も保証してやれば食いつく奴は少しはいたかも知れないのに。

 

どうやら今の連合軍にはまともに考える力もないようだ。

 

ポルカは急いでいると伝え、僅かだが彼らには精一杯の食料と水を貰い足早に村を去った。

 

しかし、ポルカは途端に嫌な予感がよぎり村に帰った。

予感は的中した。

 

連合軍達が村に押し入りポルカの事を問いただしていた。

 

村人は必死でシラをきっている。

 

すると、連合軍達は火を起こす準備を始めた。

 

ポルカに味方するもの見せしめにこの村を焼き払うと決断した見たいだ。

 

馬のヒヅメが聴こえてくる。

 

連合軍達は慌てだした。

 

「何かがこちらに向かってくるぞ」

 

ポルカが剣を振りかざして飛び出した。

 

ハッカペル(叩き切れ)!!」

 

怒涛の叫びが連合軍を震え上がらせた。

 

こうなってしまってはもう連合軍に勝ち目無い。

 

ポルカに蹂躙されるだけされて村を追い出された。

 

しかし、ほっとけばもっと大軍でこの村を連合軍は攻めてくるだろう。

 

この村にはもうこの村人は住めない、しかし、彼らはここ以外に行く場所が無い。

 

ポルカは頭を抱えた。

 

馬のヒヅメと人の靴音が鳴り響く。

 

相当な数の足音である。

 

ポルカは驚いた、こんなにも速く本軍が来るのか。

 

まず、まっ先に現れたのはイワンだった。

 

イワンはポルカを睨みつけている。

 

イワンの後ろからアレクサンダーが現れた。

 

「まさか、こんな所でおまえに出くわすとはな」

 

ポルカは静かに剣の刃を翻した。

 

イワンがアレクサンダーを下げる。

 

「お前と戦争しに来たんじゃない、ブラックスノーは一先ずお前の味方だ」

 

ポルカは刃を一先ず鞘に納めた。

 

「なぜ?」

 

イワンの眉間のシワが深くなる。

 

「宿敵連合軍を打つチャンスだ、我々ブラックスノーはこの辺りで連合軍を睨みつけて連合軍にプレッシャーをかける」

 

イワンはウォッカを一気に煽った。

 

「これはブラックスノーの意思だ、そうじゃ無かったら今すぐてめえを首り殺してえよ」

 

ブラックスノーの軍は大量の食料と酒と武器を村人達にアレクサンダーの支持で配給している。

 

イワンはそれを指さす。

 

「こういう事だ、連合軍は自ら破滅する」

 

イワンがウォッカの空になった瓶を地面に投げつけた。

 

「これ以上イライラさせるな、速く行け!」

 

ポルカは軽く会釈して、何も言わずにサーモンスネークとその場を去った。



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17話

ポルカの目の前に小国が広がる。

 

その国は海と面していて小さな城の城下町は貧乏ながらも活気があった。

 

そして、隣には今は復旧の目処がつかないで連合軍に土地を横から奪われたポルカの祖国が広がっていた。

 

ついたのだ、王女の血族の地に。

 

ポルカは溜息をついた。

 

「灯台もと暗し、近くにいたのか⋯⋯」

 

ポルカは国を目指す。

 

「その中でフツフツと連合軍に言いようにされていた怒りがこみ上げても来た」

 

目の前に門が現れた。

 

門番がポルカに槍を向ける。

 

ポルカは亡き王女から受け取った剣をかざした。

 

「私はポルカだ」

 

門番はその剣に刻まれた紋章に目をとめる。

 

門番はポルカにしばらく待てと伝えて、何やら門に付いてる小窓から中と連絡をとりあった。

 

しばらくすると、小窓から1人の男が覗き込みポルカの顔を見つめた。

 

その男はガッツポーズを取ると門を開けるように指示をかけた。

 

門が重い音を立てて開く。

 

門が開くと男がポルカにかけよる。

 

ポルカも男の顔を見て安心の笑みを浮かべた。

 

男はポルカと握手をする。

 

「兄貴、久しぶりです!!」

 

ポルカは手を強く握り返した。

 

「ルイーズ、お前こそこんな所にいたのか」

 

ルイーズは涙をこぼした。

 

「はい、このルイーズ・ドン・ベンジャミン、ドン・ベンジャミン家三男の名に恥じぬようにこの街で生きてきたつもりです」

 

ポルカは苦笑いを浮かべた。

 

「相変わらず堅いなお前⋯⋯」

 

すると、ルークもやって来た。

 

「ポルカさん、久しぶりです!」

 

ポルカは目を丸くした。

 

ルークはポルカに近寄る。

 

「本当はヘラクレスともう少し行動したかったのですが、ヘラクレスからはここでポルカを待てと言われまして 」

 

ポルカは空のビール瓶を取り出した。

 

「ルーク、黒騎士は味方と見てもいいのか?」

 

ルークはうなづいた。

 

「彼は変態ですが、誇り高き騎士です、彼は連合軍にクーデターを起こすつもりです」

 

ポルカはビール瓶をルークに投げて渡した。

 

「そうか、黒騎士の狙いが見えた⋯⋯」

 

すると、何者化がポルカの手をいきなり取った。

 

その人はボロボロの兵士のようなカッコをしたクリーム色の髪の女性だ。

 

歳は17ぐらいだろう。

 

その女はどこからともなく現れてポルカの手を取ったのだ。

 

ポルカは驚いて顔を上げた。

 

女の目線はポルカの靴に向いている。

 

ポルカに取ってはそれは懐かしい同民の癖で社交的な者の証拠だった。

 

周りを見渡せば俯いて歩いている人が沢山いる。

 

それは消して皆がこの国に嫌気が指しているのではなくポルカの祖国の民の癖と同じで単に皆がシャイなのである。

 

ポルカに取ってはそれはまるで祖国のような表情で暖かい後継だ。

 

まるで亡き祖国に帰ってきたような気分だ。

 

ポルカは静かに気分が有頂天になった。

 

女はポルカの手を強く握った。

 

ポルカは女に目線を戻す。

 

女は一瞬だが、ポルカの顔を見た。

 

青色の瞳は済んでいて美しい。

 

女は子猫のように高い声で喋った。

 

「そうだ、我らが黒騎士のクーデターを利用して我等が国を取り戻すのだ」

内容なんてポルカの頭に入らない、その声には亡き王女の面影があった。

 

女はポルカの頬を抓った。

 

「人の話を聞いているのか!?」

 

ポルカは我に帰る。

 

女は抓る手を離した。

 

ルイーズが大慌てで女を抱えあげた。

 

「キエロ王女様、そう何度も何度も脱走しないで下さい、それに何ですかその格好は!!」

 

キエロとは鈴蘭の花のこと、別名を谷間の姫百合。

 

ポルカはキエロのプックリと膨らんでいる胸に気が付き少し冷静になり、肩を落とした。

 

「カーリナ様も大きくなられたらああなってしまわれたのか⋯⋯」

 

キエロはルイーズの顔に蹴りを入れて地面に落ちるとポルカの方に慌ててはい寄った。

 

性格はカーリナ様によく似てお転婆見たいだ、いや、カーリナ様の方がもう少し大人しかったような気がする。

 

ルイーズが顔を抱えながら悲痛な声を上げる。

 

ポルカがそれをなだめるのだった。

 

キエロ王女はポルカの背後に隠れて静かな声でポルカに語りかけた。

 

「私のことを怨んでない?」

 

ポルカは小声で返す。

 

「なぜ?」

 

落ち込んだ声が帰ってくる。

 

「少なくとも私はカーリナを連合軍と同じで見捨てたわ、その後しばらくも遠縁ながらも血族である事を隠していたお陰で貴方には多大の迷惑を掛けたし」

 

ポルカは少し明るめの声で返す。

 

「だが、今は助けてくれる、それにカーリナ様を守れなかったのは私の責任だ」

 

ポルカは剣のグリップを握った。

 

「この剣はカーリナ様のため、我が祖国の為にある」

 

キエロ王女はポルカを背後から抱きしめる。

 

「私は?」

 

ポルカはうなづいた。

 

「勿論、王女の血族であるキエロ様のためでもある」

 

ルイーズがポルカを見つめる。

 

「兄貴、何をこそこそと話してるんですか?」

 

ポルカはルイーズの瞳を見つめた。

 

「私の決心に付いてだ、私はキエロ王女に続く」

 

キエロ王女はポルカから離れて、明るい声をあげた。

 

「好き勝手してくれた、連合軍に一泡吹かせてやろうじゃない」




その声にはカーリナ姫の面影があった。

キエロ姫はポルカに抱きつく。

すると、ポルカが泣き出した。

「巨乳は違うんだああああ!!」

ルイーズがポルカに取り次ぐ。

「兄貴、でも耳を済ましてくだい、ロリボイスですよ、甘甘ですよ!!」

ポルカはキエロ姫を見つめる。

「やっぱ違う、ロリ巨乳は巨乳からの発展系でロリでは無い!!」

ルイーズがポルカを抱きしめた。

「なら、自分の胸で、兄貴いいいいいいいいい!!!!!」

ポルカはルイーズに取り押さえられる。

「ちょっ、まっ、こんな展開だけは嫌だぞ!!!!」

ルイーズは服を脱ぎだした。

「兄貴、俺はつるペタですよ!!」

ポルカが血の涙を流す。

「それは胸板だ、それに雄っぱいがしっかりとあるからお前は巨乳だ!!」

モザイク

「アーーーーーーーー!!!!!」


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18話

我が国の兵力はたったの200と少ない、そこで我が国は今から海の上の連合軍の囚人収容所を襲い囚人をたくさん助けて味方にする。

 

囚人の多くは連合軍に不当な扱いを受けた民だ、本物の囚人は大していやしない。

 

ポルカ達は港に付くと見渡す限り船だけはやたらとあり、小さな港からは溢れていた。

 

しかし、船の殆どは軍の船では無く、海賊船だ。

 

アルビダが一つの船の上からポルカに手を振った。

 

「ダチが困っていると聞いてな、海の戦士は情に熱いんだ」

 

周りの海賊船から歓声があがり、沢山の海賊共が騒ぎ出す。

 

ポルカが入れば千の兵士も少なく感じる、万の兵士でも明らかに足りないような気がする。

 

我が国には200の兵士とポルカとポルカを応援する者達がいる。

 

キエロ王女はポルカの背中を押した。

 

「ついて行きたいけど、ここで待ってあげるから、良い評価をもって帰りなさい?」

 

ポルカは軽く頷き、海賊船に乗った。

 

~☆~

 

作戦の内容は基本人員が少ない牢獄を大量の船で襲い、本軍が来る前にできるだけ多くの人を救出してさっさとバックれると言うものだ。

 

勿論、これだけの船が向かえば見張りは気がつく、沿岸には沢山の弓や銃を構えた兵士が集まっていた。

 

アルビダがカットラスを振り上げてタルを切りつけた。

 

「戦争は始まっているよ、撃てえ!!」

沢山の海賊船が沿岸目掛けて砲撃を開始した。

 

沿岸の警備隊も弾丸や矢を飛ばして返してくる。

 

ルイーズが弓と矢をもって艦版を走り、マストをスルスルと上り船で1番高い所に昇った。

 

「あれが署長だな」

 

ルイーズは矢をつがえる。

 

「風は追い風、余裕だな外すことは有り得ないだろう」

 

ルイーズは矢を放つ、矢は風を切り裂き燕の如く空を駆け抜け外に出て支持を送っていた署長の額を貫いた。

 

ルイーズは次の矢を番える。

 

「剣の腕は兄貴には叶わねえが矢の腕ならそこら辺の兵士よりも上だ!!」

 

一つの船が轟音を立てて沈んだ。

 

沿岸にカノン砲が構えられている。

 

「良くもあたしの仲間を!!」

 

アルビダはすかさず、カノン砲の砲撃手の額を撃ち抜いた。

 

ルイーズが目をこらえる。

 

「司令は倒したはずだ、まさか軍が滞在しているのか!?」

 

ポルカが船の置くから出てきた。

 

動きは何だか酔っ払ったかのようにフラフラしている。

 

アルビダがポルカの元にスグに駆け寄った。

 

「まさか、酔ってんのか!?」

 

ポルカは静かにうなづいた。

 

そのまま船の端に向かう。

 

アルビダはポルカを止めに入る。

 

「馬鹿か、端は危ない!!」

 

ポルカはアルビダを振り切り、船の端にたった。

 

そして、船から飛び降りる。

 

ポルカは剣を鞘から抜き振った。

 

船に向かって飛んできていた砲弾をポルカは空中で真っ二つにした。

 

弾は二つに分かれて、船の側面をギリギリで飛び、海に落ちた。

 

大きな水しぶきが二つ上がる。

 

しかし、ポルカは海に落ちてしまった。

 

アルビダは唖然として声が出なかった。

 

ルイーズが大声をあげる。

 

「間違いない、軍が滞在している!!」

 

アルビダは我に帰る。

 

「お前達、速くポルカを探すんだ!!」

 

ルイーズが再び声を上げた。

 

「ポルカ発見!!」

 

アルビダは目を丸くした。

 

「見つかるのはやくねえか!?」

 

ルイーズはアルビダの方をむいた。

 

「兄貴なら、今沿岸で白兵戦を始めてるぞ!」

 

アルビダは慌てて、船の端から沿岸を見つめた。

 

向こうまで浸水して泳いで行ったのか、ポルカは陸にあがり既に沿岸の兵士を端っこから次々と切り倒していた。

 

「どんな肺活量してんだよ⋯⋯」

 

しかし、ポルカの様子はなんかおかしい。

 

アルビダは大声をあげた。

 

「まだ、酔ってんじゃねえか!!」

 

しかし、酔ってても地上最強の剣士。

 

動きはフラフラなのに次々と連合軍の兵士を切り倒す。

 

沿岸の指揮はポルカ1人に崩されて穴が出来た。

 

アルビダは手を差しのべる。

 

「全問発射!!」

 

全ての船が一箇所めがけて全段を集中砲火した。

 

道が開く。

 

「彼処を目指すよ、皆の者あたしに続け!!」

 

沢山の船が沿岸にとまり、沢山の海賊達が船からおりる。

 

するとポルカの姿は沿岸にない。

 

ポルカは単身で牢獄に切り込んでいったのだ。

 

切り裂かれた壁がそれを物語っていた。

 

気がつけば日が暮れ始めていた。

 

すると狼煙が上がった。

 

アルビダは歯を食いしばった。

 

「仲間を呼んだ!!」

 

アルビダ達は牢獄の中に急いで向かう。

 

一刻も速く達成しなければ皆が死ぬ。

 

牢獄の中に入ると沢山の連合軍のしたいと切り裂かれた壁、切り裂かれた牢屋、牢を切り裂くポルカがいた。

 

ポルカは沢山の人を連れてアルビダの元に寄る。

 

アルビダは周りに司令をだす。

 

「何ぼさっとしてんのさ、ポルカ1人じゃ短時間で皆は救えないよ!!」

 

周りの兵士が牢獄の中に散らばった。

 

すると連合軍が牢獄の中に流れ込んできた。

 

この牢獄には入口は一つしかない。

 

つまり、出口も一つしかない。

 

アルビダは銃を構えた。

 

ルイーズはメイスをかまえる。

 

「ここは何としてでも死守するよ」

 

すると連合軍の兵士の首が飛んできた。

 

沢山の首なし死体が目の前に転がる。

 

笠を被った侍が血塗られた刀を手に持って現れた。

 

「牢獄か、拙者に相応しいところだな」

 

連合軍の兵士が後ろからその男に切りかかった、次の瞬間その兵士の首が飛ぶ。

 

「首狩り井川とは祖国では有名な辻斬り魔だったのだかな」

 

井川がアルビダ達に笑いかける。

 

「井川斬鉄才、助太刀に参った!!」

 

連合軍の兵士が2人ほど井川に切りかかる。

 

しかし、一度刃を向けた兵士は瞬く間に音速の剣の前に血の花を咲かせた。

 

井川は鞘に刀を収める。

 

ポルカと沢山の海賊が沢山の囚人を連れてやって来た。

 

「皆を助けた、早く脱出を!!」

 

井川は突き進む。

 

「拙者が血路を開く!!」

 

井川が走りだす。

 

音速の刀が目の前の兵士の首を飛ばした。

 

返し刀で次の兵の首を切り捨てる。

 

直ぐに冷静に刀を鞘に収めて、振り抜いた一閃は数人の兵士の胴を両腕ごと斬り裂いた。

 

「ハッカペル!!」

 

大地が震える程の怒声。

 

ポルカが真っ赤に輝くサーベルを片手に突っ込んだ。

 

井川と肩を合わせて前衛を切り進む。

 

その後ろを1人、また1人と沢山の者が付いていく。

 

船まであと1歩だ。

 

井川が立ち止まった。

 

ポルカは足を止めた。

 

「拙者に構うな!!」

 

井川は居合の構えで止まる。

 

「白刃の王、貴方はいけ、沢山の民が貴方を必要としている!!」

 

沢山の人達が過ぎ去る中、立ち止まる井川だけが繊細に見える。

 

「早くいけ、船が沈められては全てが水の泡で御座る!」

 

他の海賊が立ち止まり井川の隣にたった。

 

ルイーズがポルカを抱えあげた。

 

「兄貴、貴方はここに残っては行けない!!」

 

ポルカは暴れる。

 

「そんなのは嫌だ!!」

 

アルビダや他の海賊がポルカを取り押さえた。

 

「ポルカ、貴方がいなければ駄目だ!!」

 

ポルカは井川の背中を見つめる。

 

そして、大人しくなった。

 

「死ぬな、サムライ!!」

 

井川は片手をグッとしてあげた。

 

沢山の連合軍の兵士が押し寄せる。

 

井川は一言呟いた。

 

「求めれば、求める程に、遠くなる、理想の自分、されど求める」

 

井川は刀から手をはなす。

 

手刀で目の前の兵士の首を跳ねた。

 

「思えば何時までも半人前の人生であった!!」

 

井川はたどり着いた、ポルカの境地に。

 

井川は上段蹴りで兵士の首を飛ばす。

 

その身は一振りの鋼。

 

カノン砲を押す兵士が遠くにみえる。

 

沢山の兵士がその周りにあつまっている。

 

「とどか無いから、理想なのだ」

 

井川は居合のポーズに入った。

 

「されど、近づくことは出来るか」

 

井川は鞘から刀を解き放つ。

 

「見よ、我こそは天下に名だたる武士よ!!」

 

音速を超えた刀は真空を切り裂き、ソニックブームを飛ばした。

 

沢山の兵士を吹っ飛ばしカノン砲を真っ二つにした。

 

音の壁を全身で超えた 井川の片手は肉がはじけ飛び1部骨さえ見えていた。

 

「求めれば、求めれ程に、遠くなる、理想の自分、されど求める」

 

ポルカを乗せた船はでる。

 

沢山の人を乗せた船がたくさん出る。

 

陸には数人だけを残して。

 

井川はもう片っ方の小刀を抜き、二刀の刀を構える。

 

「腹を斬るにはまだ速い、一人でも多く地獄の道ずれにしてくれる!!」

 

~☆~

 

船の中でポルカは泣いていた。

 

船に弱いのに酔うことも忘れて、ただずっと泣いていた。



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19話

戦争の火蓋は切って落とされた。

 

ブラックスノーから配給された武器を手に持ち、沢山の兵士が集まった。

 

目指すは連合軍本部、白き砦。

 

ポルカは愛馬サーモンスネークに跨る。

 

そこにいるポルカの姿はまさに一騎当千、無敵の騎士である。

 

作戦では途中の山脈にこっそりと気づいた砦で黒騎士の軍と合流する事になっている。

 

そこにアルバートもいる。

 

ポルカ達は馬を走らせる。

 

決心はいつだって出来ている。

 

~☆~

 

砦は燃えている。

 

黒騎士が両手に大剣を持ってアルバートと背中を合わせていた。

 

「バレちゃったな⋯⋯」

 

黒騎士がため息をつく。

 

アルバートが笑ってみせる。

 

「腐っても黒騎士だな、お前は怪しいから目をつけられるのだ」

 

黒騎士が笑い返す。

 

「盗賊に落ちぶれた騎士に怪しいと言われるようじゃ俺もダメだな」

 

アルバートは背中に大剣を背負い、金棒を構える。

 

「なんで、大剣を2個も持ってんだ?」

 

黒騎士がクククと笑う。

 

「単なる力自慢さ、お前こそ背中の大剣は使わんのか?」

 

アルバートは金棒を見せつける。

 

「こいつが折れたら使うよ」

 

黒騎士が大笑いした。

 

「使うことはなさそうだ!!」

 

アルバートが真剣な顔をになる。

 

「来るぞ」

 

黒騎士が大剣をクロスさせる。

 

「来るも何も囲まれてるだろ?」

 

アルバートが金棒を振り上げた。

 

「そうだったな!!」

 

黒騎士達は白騎士の奇襲をくらい、ほぼ全滅してしまっていた。

 

砦は燃やされて、周りは四面楚歌だ。

 

今は此処が最前線である。

 

アルバートは叫ぶ。

 

獣のような雄叫びをあげる。

 

黒騎士が二つの大剣を横一線に同時にふる。

 

これを防ぐ術はない。

 

アルバートも同じ。

 

アルバートの強烈な一振りを防ぐ術はない。

 

黒騎士は両手の大剣を力任せにしかし的確に刃長をめいいっぱい使い周囲の兵士を薙ぎ払う。

 

アルバートは金棒を力任せに振りまわしてこれまた周りの兵士を薙ぎ払う。

 

2人の余りの強さに周りの兵士は成すすべがない。

 

強靭なアルバートの肉体に剣や槍が触れることすら叶わない。

 

黒騎士も同じ。

 

二つの大剣というデタラメな装備なのにその強さのせいか、デタラメに強い。

 

すると、突如投げナイフが飛んで来てアルバートの片目を貫いた。

 

アルバートはナイフを引き抜き投げ捨てる。

 

周りはアサシンに囲まれている。

 

黒騎士がため息をつく。

 

「遂に前線にアサシンを出し始めたぞ、白騎士もヤケクソだな」

 

アルバートが地面につばを吐き捨てる。

「此処では俺達の方が強いって事を一生記憶に焼き付けてやらなければな!!」

 

アルバートが金棒を横一線に振り回す。

 

一瞬で数人のアサシンが消し飛んだ。

 

黒騎士も負けずに大剣を地面に叩きつける。

 

爆弾が飛んできた。

 

砂煙を巻き上げて弾け飛ぶ。

 

アルバートは煙を振り払うように金棒をふる。

 

周りは見えないが確かに手応えがある。

 

全身に痛みが走る。

 

激物を掛けられたようだ。

 

この程度で、怯むヘラクレスでは無い。

 

アルバートは蹴りを放つ。

 

足にナイフが突き刺さったが恐らく1人を蹴り殺しただろう。

 

アルバートは足に刺さったナイフを抜く。

 

もはやアルバートの身体には毒に対する耐性が生まれていて毒が効かない身になっている。

 

煙が晴れる、周囲は敵だらけ。

 

アルバートは黒騎士を探すが見当たらない。

 

いや、いた、後ろに。

 

黒騎士の黒い鎧がアルバートの目に飛び込む。

 

黒騎士は大剣を振り落とした。

 

黒騎士はもう1度剣を振り上げる。

 

その身体に頭はツイてない。

 

黒騎士はそのまま、倒れた。

 

「それでも連合軍の黒騎士か!!」

 

アルバートは怒りに任せて金棒を振り回す。

 

バリスタの矢が飛んできて、アルバートの横っ腹を掠めた。

 

流石にアルバートの身体は気づつく。

 

「敗走の兵だと思って舐めるなよ、きっと俺達の意思を次ぐものが後から来る!!」

 

アルバートは金棒を振り落とす。

 

「俺はいつだって、前線を守ってきた!!」

 

アルバートは再び金棒を振り落とす。

 

「ここはいつだって、地獄さ!!」

 

アルバートはまた地面に金棒を振り落とした。

 

雷のような轟音が鳴り響いた。

 

フロントガード(正面を守る)!!」

 

アルバートの身体がパンプアップして、膨れ上がり1回り大きくなる。

 

アルバートは金棒を振り落とす。

 

アサシンがそれを避けるとすかさずフェイクに変えて金棒の起動を変えて横一線に薙ぎ払った。

 

アサシンの1人が剣で切りかかる。

 

アルバートは金棒で剣を砕き、叩き潰す。

 

棘が生えている金棒は受け流せない。

 

アルバートのその姿はまさに雷神。

 

アルバートが金棒を振り落とすと雷のような轟音が鳴り響き、大地が裂ける。

 

連合軍の援軍がやって来た。

 

アルバートの肩にバリスタの矢が刺さる。

 

アルバートは突撃する。

 

バリスタを叩き壊す。

 

周囲の敵を薙ぎ払う。

 

倒れた敵を踏んづけ、天高く雄叫びをあげる。

 

「俺はアルバートだ!!」

 

アルバートをカノン砲が取り囲んだ。

 

アルバートは金棒を振り上げる。

 

「うおおああお!!」

 

アルバートは金棒を振り落とした、金棒はへし折れて身体に沢山の破片が突き刺さった。

 

しかし、カノン砲から放たれた弾丸はその一つだった。

 

沢山のまる縦と剣を持った男達が駆けつけてきた。

 

それはかつて戦ったアリウスが率いる義勇軍だった。

 

「雷神の如き男よ、良くぞ我々がくるまで耐え抜いた!!」

 

アルバートは半泣きになる。

 

「援軍が⋯来たのか⋯」

 

ホーテがアルバートの傷口をレイピアでほじった。

 

「ほら、泣くなよ、似合わねーから」

 

アルバートはホーテを睨みつける、そして大きな声で笑った。

 

義勇軍はアリウスだけでは無い。

 

様々な傭兵が集まっていた。

 

アルバートは背中の大剣を手に取り、再び敵兵士に切り込んだ。

 

敵兵士が引き始める。

 

この戦いにかったのだ。

 

とっ思いきや矢が飛んできて敵の仲間が仲間を射殺した。

 

敵兵士達は後ろから矢が飛んでくるので死にものぐるいでこちらに突っ込んできた。

 

死にものぐるいの兵士は強い、引けぬと思ったらヤケになり無限の勇気が沸いてくる。

 

アルバートは怒り狂った。

 

「仲間を射殺すなんて、白騎士てめえは人じゃねえ!!」

 

しかし、お陰でこちらは押され気味になった。

 

アリウスとホーテとアルバートは背中を合わせる。

 

アルバートが肩を落とした。

 

「ポルカ達がこちらに向かっている、生きてるものはそちらに合流する為にひいてくれ!」

 

アリウスがアルバートの膝を叩きホーテがアルバートの傷口を指で抉った。

 

「ヴァンガード、前線こそ兵士の誉れ!!」

 

アルバートは半泣きになって、謝った。

 

「よくぞ言った、その通りだ」

 

首のない黒騎士が立ち上がった。

 

アルバートが目を丸くする。

 

「生きてんのか!?」

 

アリウスがつばを飲む。

 

「そう言えば血は流れてない⋯⋯」

 

鎧の下から黒騎士の頭が出てくる。

 

「実はどうすれば敵から頭を守れるかを考えてな鎧を上にあげると頭をまるまる隠せる鎧を作ったのだ」

 

黒騎士はため息をつく。

 

「しかし、目の前が見えなくなるのと脇腹にスペースを必要とするため防御が甘くなるのが欠点でな、もう少し研究が入りそうだ」

 

アルバートはため息をついた。

 

「馬鹿なんじゃねえのか?」

 

黒騎士はムッと顔をしからめさせた。

 

「変態とはよく言われるが、馬鹿と言われるのは生まれこの方初めてだ、何だか泣けてきたぞ」

 

アルバート達が敵を見据える。

 

「最後まで戦うぞ!!」

 

その時、敵兵士の背後が段々と騒がしくなる。

 

そして聞こえる、白刃の王の轟音が。

 

「ハッカペル!!」

 

ポルカとサーモンスネークがかける。

 

敵をなぎ払い、沢山の味方を連れて。

 

敵兵は瞬く間に鎮圧されて降伏した兵は捕らえた。

 

黒騎士が焼け落ちた砦の頂上から白い砦を見下ろす。

 

「白騎士、いまそこに向かうぞ⋯⋯」



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20話

ポルカ達は白き砦の目前まで迫った。

 

門はしっかりと閉まっており。

 

周りには連合軍の精鋭が数は少ないがしっかりと守っていた。

 

ついにこの時が来た。

 

ポルカは馬の上で景気付けにサファイアを飲み干す。

 

アルバートも馬の上でジンを飲み干した。

 

アルビダはラム酒を飲もうとしていたが、ジンにかえる。

 

ルークもアルバートに合わせてジンを飲み干した。

 

黒騎士はビールを飲みほした。

 

アリウスはワインを飲み干し。

 

ポルカが続けざまに日本酒を飲み干した。

 

更にポルカがウォッカを飲み干すものだから、アルバートも負けずとジンをもう一杯あけた。

 

ホーテがポルカに質問した。

 

「ポルカ兄様飲みすぎでは」

 

ポルカは酔ったそぶりも見せずホーテに語りかけた。

 

「サファイアは王女様を思って、日本酒は井川を思って、ウォッカはイワンを思ってだ」

 

ポルカは剣をかがげる。

 

赤き剣に空からの光が反射して、周囲を赤く照らした。

 

「強くなれる気がするのだ、英雄達の魂と王女の加護を受けた気になるのだ」

 

一瞬だけ、全ての時が止まったように静寂に包まれた。

 

「ハッカペル!!」

 

「前線は頂いた!!」

 

「いくよ、野郎ども!!」

 

「兄貴ついて行くぜ!!」

 

「やれやれ、兄さんには引っぱられてばかりだな!」

 

「アルバート様ばかりに活躍はさせませんよ!!」

 

「戦士の誇りを見せてやれ!!」

 

「白騎士、今行くぞ!!」

 

それぞれの意志が交差する。

 

疾風怒涛の如き勢いでポルカ達は戦場を掛ける。

 

だが、相手も連合軍きっての強者揃い。

 

鉄壁の如き防御力を見せつける。

 

戦闘はあれに荒れた。

 

その中でポルカとアルバートだけは無双の活躍を見せつける。

 

ポルカとアルバートはあっという間に敵陣を突き進み白き砦の門まで迫った。

 

ポルカが高速の剣さばきで門を切り結び穴を開ける。

 

ポルカが通ったあと、アルバートがパンチで壁を突き破って中に飛び込んだ。

 

中には沢山のパイク兵が待ち構えている。

 

ポルカは剣でパイクを払い、アルバートが大剣で兵ごとパイクを打ち上げる。

 

今度は矢の雨がふる。

 

ポルカは高速の剣さばきで全ての矢を払う。

 

アルバートは自慢の頑丈差で矢を耐えた。

 

「ハッカペル!!」

 

「まったくもってきかねえぜ!!」

 

ポルカ達は場内に飛び込む。

 

城の中を掛ける。

 

奥まで行き、異変に気がついた。

 

「おい、城内なのに敵兵が一人もいなくないか?」

 

ポルカ達は慌てて振り返る、出口めがけて走る。

 

城の柱が爆破されて、城が崩れた。

 

出口まであと1歩。

 

城が崩れて砂煙が巻き上がる。

 

黒騎士達はポルカ達が中に飛び込んだ所までは知っており、驚愕する。

 

指揮は下がり、連合軍の精鋭に押される。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

アルバートの叫ぶ声が響いた。

 

アルバートはその身を建てにしてポルカを庇った。

 

アルバートの背中には2t以上もの沢山の石が降り注いだ。

 

アルバートは力でその全てを背負いあげ立ち上がった。

 

ルイーズが目をこらえる。

 

「城の向こうの森の中に白騎士が入っていった!!」

 

アルバートが大声で叫ぶ。

 

「いけ、ポルカ!!」

 

ポルカはアルバートに急き立てられてたちあがる。

 

サーモンスネークも共に立ち上がり、ポルカは馬に跨った。

 

ポルカは馬を走らせる。

 

満身創痍のアルバートに沢山の兵士がにじり寄る。

 

アルバートは微笑み笑った。

 

「最前線で死ねるなら、本望だ……」

 

アルビダとルークが飛び出す。

 

兵士をかき分けてアルバートの目の前に立ちふさがった。

 

「死ぬにはまだ早い!!」

 

~☆~

 

ポルカが森の中を馬でかける。

 

しかし、途中で馬の足を止めた。

 

目の前にアベルが立ちふさがる。

 

「どいてくれ、アベルさん!!」

 

アベルは頭を下げている。

 

「お前には感謝してしきれない、恩を仇で返すような事をしてしまっているとは思う」

 

アベルはそれでも剣をポルカに向けた。

 

「いくら連合軍が腐ったとはいえ、それでも私は連合軍の騎士だったんだ、連合軍の為に戦かわしてもらう!!」

 

アベルは剣を構える。

 

「この剣には毒がぬってある、あんたに勝てるとは思わないがもしその身体に触れることあればアンタを殺せるように⋯⋯」

 

ポルカは地面を見つめた。

 

そしてサーベルを強く握り。

 

「ハッカペル!!!」

 

ポルカはアベルに切りかかる。

 

アベルは剣を振った。

 

剣はポルカの脇腹を掠めた。

 

ポルカは構わず直進してアベルを置き去りにした。

 

ポルカに毒は通じない。

 

アベルは剣を地面に投げ捨てた。

 

「貴方は無口でいつもそうだ、他人の為なら傷つくこともいとわない」

「頼んでも無いのに、勝手に自分の解釈で物事を済ませてしまう、とても我が儘な人だ!!」

 

~☆~

 

白騎士の目の前に黒騎士が立ちはだかった。

 

黒騎士は両手に大剣を持って白騎士の目の前に立ちはだかる。

 

「やはり、ここに来たのか⋯⋯」

 

白騎士は黒騎士を青い瞳で見つめた。

 

金の髪には木々の隙間から漏れる光が映り込みキラキラと輝いている。

 

「懐かしいな昔はお前と此処でよく遊んだものだ」

 

黒騎士はを見つめる、木の上には古い小屋があった。

 

「私が秘密基地をつくったり、キノコの研究者をしたり、カエルを解剖したりしてるのをいつもお前は引きながら笑いながら見てたっけ」

 

白騎士はため息をついた。

 

「引くことの方が多かったけどな⋯⋯」

 

黒騎士は大剣を地面に刺した。

 

「こちらに下れ、そうすれば命だけは何とかしてやる」

 

白騎士は黒騎士に笑いかける。

 

「約束出来るかい?」

 

黒騎士も笑い返した。

 

「ああ、約束する」

 

白騎士は剣を抜き、盾を構えた。

 

「お前が私との約束を守った事なんて一度も無いじゃないか」

 

黒騎士は全ての記憶をおもいかえす。

 

そして、木々の中にひっそりと立つ、木の十字架を見つめた。

 

「お前の妹は守れなかった、だからこそお前を守らせてくれ!!」

 

白騎士は怒鳴りつけた。

 

「今更なんだ!!」

 

黒騎士は大剣を引き抜いた。

 

「私は守るぞ、英雄白騎士を英雄のままに⋯⋯これ以上堕ちる前に!!」

 

白騎士が走る、黒騎士は大剣で白騎士を阻む。

 

「白騎士、私に勝てるとでも思っているなか!」

 

白騎士は大剣を盾で受ける、余りの衝撃に馬から落ちそうになる。

 

「組手では百戦百敗だが、実績では私の方が上だ!!」

 

黒騎士は白騎士の剣を払った。

 

「お前が私よりも優れるは階位、私は伯爵でお前は公爵だ」

 

黒騎士は白騎士を大剣で馬から叩き落とす。

 

「変態と言われ友のいなかった私の優位つの友よ、さらばだ!!」

 

白騎士は剣を拾い、黒騎士の馬の足を切りつけた。

 

黒騎士はバランスを崩す。

 

「お前が言ってたな騎兵は馬の足を狙えって!」

 

白騎士は直ぐに馬に跨る。

 

黒騎士は大剣をクロスさせる。

 

「いったが、実際にやると嫌われるぞ」

 

白騎士は黒騎士に襲いかかった。

 

「此処は戦場だ、卑怯も糞もあるか!!」

 

黒騎士も馬を走らせる、2人は交差する。

 

カール、私達は何処でまちがえたのだろう、黒騎士は最後にそう頭の中をよぎり首は天高く⋯⋯」

 

白騎士は黒騎士の首無し死体を見つめる。

 

「驚いたか、いくつもの戦いと厳しい訓練で俺は強くなったのだ、もうお前に負けやしないぞエーミール」

 

白騎士が空を見上げた。

 

すると、馬のヒヅメが聞こえてくる。

 

白騎士は剣を構える。

 

「くるか、白刃の王!!」

 

ポルカが風のように飛び出した。

 

白騎士はポルカに剣を向ける。

 

ポルカは小さな声で呟く。

 

「騎士王、英雄白騎士⋯⋯」

 

白騎士は黒騎士の死体に剣を向ける。

 

「言っとくが死ぬ気などないし、降伏する気はもっと無い!!」

 

ポルカは馬を走らせた。

 

「ハッカペル!!」

 

ポルカはいつも、戦うと決めた時は先手を必ずかける。

 

先手必勝。

 

白騎士は盾でポルカの剣を受け流す。

 

舐めるなよ、仮にも騎士王とまで言われた男だ。

 

白騎士は刃長をめいいっぱい使いポルカの首に伸ばす。

 

ポルカは身体を傾けて剣を避ける。

 

白騎士はポルカの馬の足めがけて切りかかる。

 

ポルカの馬は飛び上がり剣を避ける。

 

サーモンスネークとポルカは2人で一人、これが最強の馬手である一つの条件。

 

ポルカは石を投げつけた。

 

白騎士は石を盾で受け止める。

 

ポルカは弓も鉄砲も使えないが物を投げることは得意だった。

 

白騎士のボディーに石が突き刺さる。

 

ポルカはすかさず切り込みに入った。

 

剣が白騎士の首に当たる。

 

その一瞬をみはらからって、白騎士はポルカを盾で殴り付けた。

 

ポルカは鼻血を出しながらも馬の手綱を離さず、サーモンスネークから落馬して引きづられる。

 

ポルカは手綱を手繰り寄せて、馬を何とか上がると後ろから白騎士に刺された。

 

白騎士は剣を抜く、ポルカは馬の上でぐったりと倒れた。

 

白騎士は馬を止めるポルカの馬も足を止めた。



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21話

沢山の医学書を読む男がいる、彼の名前はポルカ。

 

ポルカはドン・ベンジャミン家の長男として生まれ何不自由なく暮らしていた。

 

ポルカは医者になる事が夢だった。

 

何時かはこの世に名を残すような立派な医者になろう。

しかし、ポルカは退屈だった。

 

使いに頼めば欲しいものは何でも手に入り、食べるものにも飲むものにも困らず、踊って歌って暮らす毎日。

 

ポルカはそんな毎日に嫌気が指してもいた。

 

ある日、他の貴族からひょんなことから決闘を申し込まれた。

 

理由は確かアンジェラと言う女の取りあいだったと想う。

 

ポルカは別にアンジェラに対して何も思ってなかったのだがアンジェラはポルカに好意を寄せていた。

 

ポルカからしてみれば剣なんて持ったことも無いのに突然喧嘩を売られていい迷惑だった。

 

しかし、ポルカはその決闘で完膚なきまでに敗北してしまう。

 

余りの弱さにアンジェラは呆れて、ポルカから離れていったほどだ。

 

ポルカはそれをつまらないと感じた。

 

ポルカは医学の勉強をして、剣からは離れて行った。

 

しかし、貴族の息子、自己を守る術として父から剣の修行をさせられることになる。

 

直ぐに剣の師がやってきた。

 

ポルカは厳しい剣の修行に嫌気がさして宮廷をよく抜け出すようになった。

 

なにをしてもつまらない宮廷の生活にポルカは嫌気がさしていた。

 

ポルカは外の世界に憧れた。

 

いつか、この宮殿を出て、遠く離れた場所で暮らしたい。

 

ポルカは馬を盗み、宮廷を夜中のうちに飛び出した。

憧れた外の世界に…。

 

外の世界は貧しいながらも人々は楽しげに暮らしていた。

 

そこでがたいの大きな子供にあった。

 

その子供はガキ大正で沢山の子分を連れている。

 

自分の事をジェネラルと呼び、周りにもそう呼ばせていた。

 

ポルカはそのガキと子分に囲まれる。

 

ポルカは馬から降りる。

 

ジェネラルはポルカの目の前に立つ。

 

「お前、貴族の子だな」

 

ポルカは下を俯いて、うなづく。

 

ジェネラルはポルカの腰に指しているレイピアを見て鼻で笑った。

 

「俺なら大剣を持って、前線をかけるね!」

 

ポルカは少し顔を上げた。

 

「騎士にでもなるつもりか?」

 

ジェネラルは自分の胸を叩く。

 

「世界最強のヴァンガードになってやるよ、貴族のお前には分からないだろうけどな!」

 

ポルカはクスクスと笑う。

 

するとポルカを探して出てきた役人が現れた。

 

ジェネラルはポルカの手を引く。

 

「よく分からねえが追われているようだな、俺達の隠れ家に来いよ」

 

ポルカはジェネラルに手を引っぱられてくらい穴蔵の中に引き込まれた。

 

穴蔵の中は狭く、湿気が強い。

 

ジェネラル達はここを隠れ家と呼び、僅かなパンくずを分け合っていた。

 

宮廷育ちのポルカには到底理解できない暮らしだった。

 

だけど宮廷に帰った後もポルカはジェネラル達の事が忘れられず、剣の修行を抜け出してはジェネラル達と遊んだ。

 

ジェネラルはとても強く、大人にさえ腕相撲では勝って見せた。

 

ジェネラルは剣術の訓練と称して手作りのカカシを木の棒で叩いていた。

 

ポルカは剣の師から、そんな方法は教わらなかったがジェネラルの必死差に感動すら覚えていた。

 

だが、ある日の事だった。

 

ジェネラルから、別れを告げられた。

 

何者かが自分に連合軍宛の推薦状を渡してくれて、騎士になるチャンスを与えてくれたと言う。

 

ポルカはジェネラルとの別れを惜しみながらも手厚く別れを告げた。

 

「俺は世界最強の騎士になるぞ!!」

 

ポルカは返事を返す。

 

「俺もジェネラルのように強くなる!!」

 

ジェネラルに笑われた。

 

「弱虫がよく言った、さらばだ弱虫!!」

 

お互いの名を教え合うことは無かったがポルカのジェネラルの間には友情が芽生えていた。

 

ポルカは家に帰ると父から、ジェネラルの事を語られた。

 

推薦状を渡したのは私でポルカにはこれ以上勝手に宮廷を抜け出されると困るとの事だった。

 

ポルカは父に軽く会釈して、自室で泣いた。

 

それから数年の月日がたった。

 

ポルカは自分が考えつく限りの訓練を行い、医学の知恵さえも鍛錬に取り入れた。

 

東洋の技術や医学も熱心に学び、いつしか白刃の王と呼ばれるまでになっていた。

 

そして、ポルカはその剣の技術を維持するために家を飛びだして傭兵となり、世界の戦場を点々としているうちに世界最強の剣士と呼ばれるようになった。

 

そして、ある時、小さな国に呼ばれてカーリナ姫と出会う。

 

最初はこのブラックスノーが近いこの小さな町を守るための雇われ兵に過ぎなかった。

 

さらに、カーリナ姫よりもドン・ベンジャミン家の方が上級貴族である。

 

なのにカーリナ姫はとても我儘でポルカをまるで従者のように引っ張り回した。

 

正直、金に合わない仕事でポルカは疲れ果てた。

 

だけど、そんな生活も長く続けば慣れてしまう。

 

ポルカが雇われ兵だと言うことは周りにもほぼ忘れられて、本人も殆ど自覚しなくなった。

 

この街は雪しか無いし、みんな内気な性格をしているがとても恩にあつい。

 

ポルカはいつしか心の中でこんな生活が何時までも続けばと思った。

 

それはある日の事だった。

 

カーリナ姫が外をはしゃいで走り回っていると野生の熊が飛びだして、ポルカが熊を倒したのはいいが剣が折れてしまった。

 

カーリナ姫は剣が折れてしまったことを泣いてポルカに謝った。

 

ポルカとしてはカーリナ姫が無事で剣のことなんてどうでもよかった。

 

その次の日だった。

 

ポルカはカーリナ姫の前に片膝を尽かされた。

 

カーリナ姫は得意げに剣を取り出してポルカの肩を剣で叩いた。

 

「これをやろう」

 

カーリナ姫はとても御機嫌だった。

 

それはカーリナ姫の血族に伝わる伝家の宝刀だった。

 

ポルカの剣が折れたことを大臣に伝えたところ、この剣について知っただしくカーリナ姫はポルカに仮を返すチャンスだと思ったのだ。

 

ポルカはその時誓った、自分は傭兵だとしても騎士のようにこの方の1振りの剣になろうと…。

 

ポルカは身体を起こす。

 

白騎士は目を丸くしていたがポルカにとって白騎士に与えられた刺し傷はダメージではあるが致命傷では無かった。

 

直前にて急所は外していて、重要な内臓に傷は無い。

 

ポルカはサーベルを捨て、ロングソードを抜いた。

 

ポルカの立つ位置は上に木々が綺麗になく、青空が見える位置にいた。

 

ポルカの剣は空を写して群青色に輝く。

 

ポルカはやっと気がついた。

 

この剣は亡き王女の為に亡き王女の為は祖国の為に祖国の為は自分の為に。

 

自分は結局、自分の為に戦っていたのだ。

 

何て自分は我儘何だろう。

 

ポルカは剣を見つめる、良く手入れされた剣にはサビも傷も一つもない。

 

遂にたどり着いた、ポルカこそがこの世の全ての剣に勝る剣。

 

神剣・ポルカである。

 

ポルカはとても有頂天な気分だ。

 

この世にポルカに勝る名剣無し。

 

エクスカリバーも、東方の地のどの名刀も魔剣だって、ポルカに勝ることはなし。

 

個々は確かに剣の世界の全人類の頂点。

 

その身は1振りの鋼。

 

その身は1振りの刃。

 

その身は亡き王女の為の剣。

 

「ハッカペル!!!」

 

ポルカは白騎士に馬を走らせる。

 

ポルカの声は凄まじく大きく、木々が揺れ動き、大地を揺るがした様な錯覚を覚える。

 

白騎士は盾の後ろに隠れる。

 

ポルカは白騎士の横を走り抜け、白騎士の背中を切りつけた。

 

白騎士は馬を翻すと、石礫が飛んで来て白騎士の盾や鎧に突き刺さった。

 

白騎士は吐血する。

 

ポルカがすぐそこまで迫る。

 

白騎士は最後の力を振り絞り剣を振った。

 

ハッカペル(叩き切れ)!!!!」

 

ポルカは白騎士の剣を叩きのけて、白騎士の首を飛ばした。

 

 

~☆~

 

 

ポルカが白騎士を倒した事により戦争は終わりを告げた。

 

クーデターの主犯である、黒騎士は死んでしまったがそこはアルバートが見事にまとめて見せた。

 

アルビダは相変わらず海の男を纏めている、アルバートを海賊に誘った見たいだが返事は良くなかったようだ。

 

ルイーズは今まで通りキエロ姫の元で世話を焼いている。

 

もちろん土地を取り返して、少しずつ元の街に戻りつつある。

 

そして、白刃の王は…。

 

剣を手放し、ドン・ベンジャミン家を継ぎ、再び医者になるべく勉学に励んでいる。

 

だけど、きっとポルカはまた剣を握る時が来るだろう。

 

ポルカは我が儘だから。




~オマケ~

アホポルカ

白騎士とポルカは睨み合う。

最後の戦いが始まろうとしていた。

白騎士といえ、騎士王と呼ばれるまでの男。

白騎士はポルカ剣を盾で受け流す。

ポルカは白騎士を睨みつけた。

「どうやら、本気を出す時が来たようだな」

白騎士は目を丸くする。

「手を抜いていたのか!!」

ポルカはサーモンスネークの頭の毛をかき分けるとスイッチが出てきた。

「サーモンスネーク、本気モード!!」

ポルカはサーモンスネークの頭のスイッチを押すと、ガラスが砕けるようにサーモンスネークの表面が剥がれて鋼の肉体が顕になった。

サーモンスネークの頭、手足胴体がバラバラになり、一つの鎧となる。

その鎧はポルカを守るクロスとなった。

「これこそ最強の騎兵、俺とこいつは2人で一つ!!」

サーモンスネークとポルカの意志が一つになる。

今のポルカは馬の身体能力をもち、人間の機能を揃えた獣人。

「ハッカペル!!!」

ポルカは白騎士に飛びかかる。

白騎士が不敵に笑う。

「ポルカ敗れたり!!」

白騎士はポルカの目の前に人参をぶら下げる。

今のポルカはサーモンスネークの意志とシンクロしているために人参に逆らえない。

「卑怯だぞ!!」

白騎士はポルカを剣で叩く。

「お前が言うか!!」

ポルカは切れることは無いが地味に痛く、窮地に追い詰められた。

「そこまでだ!!」

どこからとも無く男が現れる。

白騎士は男に剣を向けた。

「誰だ!!」

男はハット帽をあげる。

「俺はお節介焼きのス…」

黒騎士が立ち上がり、男を絞めて気絶させた。

「危ないな、作者の奴暴走しすぎだろ…」

白騎士は黒騎士に刃を向ける。

馬鹿なお前の首はさっきは寝たはず。

黒騎士は鎧の下から首を出す。

「馬鹿め、それはマネキンの首だ!!」

白騎士は全身を震えさせる。

「馬鹿な、そんな!?」

黒騎士はマネキンの首を抱える。

「白騎士諦めろ、お前は俺に一生を掛けても勝てない」

白騎士は肩を落とした。

「それでも俺はお前を許せない」

黒騎士は両手の大剣を構えた。

「馬から降りろ、昔のようにこれでケリをつけようじゃないか」

白騎士は馬から降りる。

「昔のように、木の棒では無いがな」

白騎士は黒騎士に飛びかかる。

黒騎士は大剣で白騎士の剣を受け止める。

「何故、過去に捕らわれる!」

白騎士は黒騎士を払う

「過去を思って、何が悪い!?」

黒騎士は過去を思い返す。

「そうだな、過去もいいもんだ」

黒騎士は両手の大剣を捨てて、白騎士の剣を身体で受けた。

剣は深く肩にくい込む。

「懐かしいな、悲し事もあった、しかし、楽しい事もあった」

白騎士は涙を流す。

「ちくしょう!!」

すると、黒騎士はボヤけて消えて後ろからポルカに背中をきられた。

「見たか、これこそ新たな新技、幻覚の術!!」

白騎士は地面に倒れて、這う。

「う、うぐ…」

ポルカは止めをさそうと這って逃げる白騎士に歩み寄る。

「頼む、黒騎士、俺を助けてくれ!」

ポルカは白騎士を嘲笑う。

「亡きものにすがった所で亡き者が助けてくれる訳がないだろう!」

白騎士の手に何かが当たる、草むらの中に昔、黒騎士と共に遊びで作った吹き矢があった。

中に矢が入っているかは分からない、しかし、白騎士はすがるような気持ちで吹き矢を握った。

「黒騎士、力を貸してくれ…」

ポルカは剣を振り上げる。

「ぶっ殺してやる!!」

白騎士は吹き矢をポルカ目掛けてふく、中に入っていた古びた矢がポルカの目に刺さった。

「タコス!!」

ポルカは慌てて後ろに下がると黒騎士のしたいに躓き転び、石に後ろ頭をぶつけた。

「いてえええええ!!」

すると、その石は昔、黒騎士が作ったトラップで上から大量の石が降り注ぐ。

更にその重みで地面がくぼみ、落とし穴が姿を表して、ポルカは木の杭に串刺しになった。

その後、白騎士は改心して連合軍を立直し、良き賢君として世界に名を残したとさ。

めでたし、めでたし。


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囚人との戦い
22話


井川は斬った、斬った、斬った。

 

目の前に立ちはだかる敵を両の手の刀で次々と切り伏せた。

 

気がつけば周りには誰もたっていないで足元は倒れた人で見えなくなっていた。

 

井川の顎からポタポタと涙に似た汗が流れ落ちる。

 

「ポルカ、後は頼んだ……」

 

井川は骸の山の中に倒れた。

 

 

~☆~

 

 

椿の鬼、又は首狩り井川と彼は祖国でそう呼ばれていた。

 

主君を持たぬ、浪人の身であった彼は武功こそが生きがいだったのだ。

 

戦場に出ては千の兵の首を跳ね、戦場出なくとも腕が立つとの噂を持つ者の首を跳ねていた。

 

だが、ある日。

 

井川は大左衛門と言う、武士の首を跳ねた時の事だった。

 

大左衛門事態は名の知れた辻斬り魔でこれは辻斬り同士の戦いで終わる筈だった。

 

しかし、井川が独り身であるに対して大左衛門は1粒代の息子がいたのだ。

 

井川は息子の存在に気付かず、大左衛門の首を椿の花のように首から落とした。

 

息子の目の前で父を殺したのだ。

 

息子は逆上して、小太刀を握って井川に襲いかかった。

 

井川はその子の首を高々と跳ね飛ばした。

 

明らかに弱い、子供の首を跳ね飛ばした井川は辻斬りの虚しさに気付き、臆病風に吹かれた。

 

井川は先祖代々伝わってきた井川片手一伝流を封じて、その日から抜刀術もしくはできる限り二刀で戦い、先祖代々伝わって来た、切り札を捨てた。

 

それでも、井川は自らの過ちに悩み続けた。

 

世界最強の剣士、ポルカの噂は東国の地にまで及んでいた。

 

大陸に真の剣士有りき。

 

井川はその者に真の剣士とは何かを知るために東国の地から大陸に旅立った。

 

真の剣士とは、刀を握るその意味は……。

 

~☆~

 

井川が目覚めると小舟の上にいた。

 

最初は三途の川を渡っていると思ったがどうも潮臭い。

 

これは、海の上である。

 

「このまま、死んじまうと思ったぜ」

 

そう言ったのはボロボロの鎧に身を纏った女だった。

 

色白で金髪の髪を後ろで束ね手入て、目は青なので東洋の者ではないようだ。

 

背は井川よりも小さいが、背中に背負っている鉄槌は井川の背丈の二倍はありそうだ。

 

井川は自分の身を見る、とてもじゃないが適当といわんばかりに巻き付けられた包帯でミイラのようになっていた。

 

井川は心の中で自分の生命力の凄さに自分で驚かされた。

 

「あたいの名前はアージュ、お前侍だな、名前は?」

 

井川は両膝をつき、土下座した。

 

「拙者は井川残鉄斉と申す、この度は助けて頂き真に感謝する」

 

アージュは驚き、井川の肩を撫でた。

 

「別に当たり前のことをしただけだろ、そんな頭下げるなよ」

井川はその言葉にとても感心する。

 

「拙者、感動した!!」

 

アージュは驚きの連続で溜め息を吐くばかりだった。

 

「変なやつ……」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは陸についた。

 

アージュは此処で井川と別れようとしたが井川はアージュの手を握って離さなかった。

 

「是非とも恩を返したい、今の自分に出来ることはないか!?」

 

アージュは手を振り払おうとする。

 

「なら、その手を離してくれ!?」

 

井川は慌てて手を離すと、アージュは走って逃げた。

 

井川はその後をしつこく追った、そのせいで傷を開いてしまった。

 

アージュは立ち止まり、溜め息をついた。

 

 

~☆~

 

 

アージュは仕方なく井川を連れて、連合軍の倉庫の前にやって来た。

 

「彼処に私の武器と鎧を隠してんだが、見張りが多いな……」

 

井川が目を丸くする。

 

「ここは連合軍の倉庫ではないか、何故こんなところに?」

 

アージュは片手で顔を覆う。

 

「捕まる前に彼処に隠したんだ、彼処なら逆に見つかんないだろうって思ってな」

 

井川は首を傾げた。

 

「捕まる?」

 

アージュは溜め息をついた。

 

「お前、何も知らずにあの監獄を襲撃していたのか?」

 

アージュは井川を睨む。

 

「あの監獄には永遠に捕えられる事を義務付けられた囚人が6人いる」

 

アージュの顔は少し暗くなる。

 

「それは鉄槌、スリング、刀、双剣、拳、棒、の武器の達人であり、最悪最凶の犯罪者達」

 

アージュは鉄槌を背から下ろす。

 

「あたいは鉄槌のアージュ、捕まるまでは破壊屋の名前を好きなようにしていた」

 

井川が両手を組む。

 

「お前がか?、少なくとも俺には最悪最凶の犯罪者には見えないが……」

 

アージュは鉄槌を構える。

 

「余り、舐めるなよ!?」

 

井川は相手にせず、話題を切り替えた。

 

「そりより、その装備はそんなに大事な物なのか?」

 

アージュは倉庫の方を見る。

 

「父の形見でもある」

 

井川が倉庫に向かって歩いていく。

 

「拙者が気を引くから、アージュはそのうちに入れ」

 

井川は音速の居合いを放った。

 

井川の片手が吹き飛び血まみれになる。

 

ついでに傷も開く。

 

斬撃が飛び倉庫の門を破壊する。

 

倉庫の見張りが大慌てで集まり、井川に向かった。

 

井川は血まみれの手を垂らし、無事な方の手で小太刀を握った。

 

そして、出来るだけ大きな声で叫ぶ。

 

「掛かってこーい!!」

 

アージュはその間に素早く倉庫に忍び込んだ。

 

アージュは無事、武者鎧と無骨なウォーハンマーを手にして抜け出したが、井川は複数の兵士に捕えられてしまった。

 

そこにアージュが飛び込む。

 

アージュは次々と兵士を薙ぎ払い、井川を立たせて共に走って逃げた。

 

「突っ込むか、無茶苦茶する女だな」

 

アージュはきっと井川を睨む。

 

「アンタの方が無茶苦茶だよ、また傷開きやがって!!」



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23話

アルバートは少数の仲間を連れてポルカが白騎士を倒した森に向かった。

 

ここに夜な夜な黒騎士の亡霊が出るという噂がたったからだ。

 

アルバートは眉間にシワを寄せている。

 

亡霊を信じている訳では無いが黒騎士の死体があの後いつの間にか消えていたのだ。

 

「もしかして、いや、しかし……」

 

そう考えているうちに釣れてきた仲間が武器を構えた。

 

目の前に確かに首がない黒騎士が自らの首を抱えてヨロヨロとさ迷っているのだ。

 

アルバートは背中に背負った大槍を構えた。

 

「何たる事だ、よもやこんな事が起こり得るのんて……」

すると、黒騎士は足を止めた。

 

「おや、その声はアルバートか?」

 

アルバートは生唾を飲む。

 

「そのようなすがたになっても生前の記憶はあるんだな」

 

黒騎士は自らの首をアルバートの方に投げた。

 

アルバートの足元に首が転がる。

 

アルバートはギョッとして首を凝視した。

 

「……人形?」

 

アルバートは黒騎士をよく見る、すると、どうも肩の位置が可笑しい。

 

アルバートは溜め息を吐いた。

 

「何、遊んでんだ……」

 

黒騎士はかがみ込む、するとそこには首の位置に蓋のような者がして合った。

 

「私としたことがやはり、旧友をこの手で殺す事が出来なかったのだ」

 

黒騎士は背を向けると鎧にレバーの様なものがある。

 

「そこで、自らの首を白騎士に取らせたと思わせるつもりがこの鎧が脱げなくなって……」

 

アルバートは色々な気持ちが複雑に交差したがまずは呆れた。

 

「それがどれだけ仲間を危険にさらすかお前なら分かっていただろ、それ相当の責任は覚悟しとけよ」

 

アルバートは鎧のレバーを下ろしてやる、すると蓋が相手黒騎士の首が飛び出した。

 

「ありがとう、これで前が見えるよ」

 

黒騎士はアルバートの肩に手を置く。

 

「それと、私の処罰の前に1つ、実はあの解放した牢獄には最悪最凶の犯罪者と呼ばれる極悪人が6人いてだな……」

 

アルバートは頭を抱えた。

 

「これ以上、仕事を増やさないでくれ……」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは古い小屋の中に逃げ込んだ。

 

近くにあった、机を扉の前に置き、一つしかない窓から外の様子を伺う。

 

「囲まれたで御座るな」

 

井川は汗を拭う。

 

アージュは井川の肩に布を強く巻き付けた。

 

「あんたがあとのこと考えずいきなりそんな自殺まがいな事をするからだ!」

 

井川は首を横に降る。

 

「あのままなら、拙者が捕らわれるだけで終わったのにお主が助けにくるからだろ?」

 

アージュは井川の頭を叩く。

 

「そんな誰かを犠牲にしてではなくもっと違う方法があっただろ、お前がこうをあっせたせいだ!」

 

井川は窓の近くに寄った兵士の首元に窓から刀だけを向けた。

 

「下がれ!!」

 

様子見に来た兵士は慌てて下がった。

 

井川は刀を鞘に収める。

 

「幸か不幸か入口は一つ、窓も一つ」

 

アージュは溜め息をつく。

 

「不幸だよ、袋小路だ」

 

井川が小屋の壁に手を当てる。

 

「余り、溜め息をつくと運が逃げるでござるよ」

 

アージュは井川を睨みつける。

 

「誰のせいだと思ってんだ?」

 

すると、アージュの足元を何かが走った。

 

「ウワッ」

 

それは野ウサギだった。

 

「驚かすなよ……」

 

井川がタンスのすみをみる。

 

すると、穴が空いていた。

 

「こっから出られそうだ……」

 

 

~☆~

 

 

アリウスが峠を歩いている時のことだった。

 

アリウスの目の前に何者かが現れる。

 

囚人服を来たアルバート並の高身長の男だ。

 

「久しぶりだな、アリウス」

 

アリウスは盾と剣を構える。

 

「まさか、ネメアーの獅子か!?」

 

男は指を鳴らす。

 

「ネメシスと呼んでくれや」

 

ネメシスはアリウスに殴り係る。

 

アリウスは剣をネメシスに突き立てた。

 

剣が折れ、アリウスの顔が潰れた。

 

~☆~

 

アルバートの耳にアリウスがやられた話は届いた。

 

アルバートは慌てて馬を走らせて、アリウスをかくまっている宿に向かう。

 

宿には顔に包帯を巻かれたアリウスが横になっていた。

 

「アルバート、ポルカが危ない……」

 

アルバートはアリウスの手を掴む。

 

「ポルカなら心配いらない、少なくとも俺はポルカが負けた所を見たことねえ」

 

アリウスは手を強く握り返す。

 

「奴らは強者に飢えている……」

 

アルバートは眉間にシワを寄せた。

 

そこに黒騎士がやって来た。

 

「いこう、アルバート」

 

アルバートは黒騎士を突き飛ばした。

 

「何故、あの時、いわなかった!?」

 

黒騎士は尻餅をつく。

 

「あのときは言うべきではなかったからだ」

 

アルバートは肩を怒らせて部屋から出ていった。

 

アリウスが黒騎士に一言のべる。

 

「気にするな、お前は間違っちゃいない」

 

黒騎士は溜め息をついた。

 

「そうかな、自分でも分からん」

 

 

~☆~

 

 

井川とアージュは山を降りて走って逃げている。

 

すると、その道でアルバートとばったり出くわした。

 

アルバートが目を丸くする、

 

「生きてたのか!?」

 

井川は即答で返す、

 

「勝ったのか!?」

 

アルバートは笑顔で返した。

 

「ああ、勝ったぞ、お前の武勇はポルカから聞いた……」

 

後ろから追手の声が聞こえる。

 

アルバートが眉間にシワを寄せた。

 

「何かしたのか?」

 

井川は首を縦に振って、立ち去ろうとした。

 

「それでは、そう言うことで」

 

アルバートが馬から降りる。

 

「俺の背後にいろ、話をつけてやる」

 

井川はアージュのうでをつかむ。

 

「頼れるか!?」

 

アルバートは腕を組んだ。

 

「俺を信じるか否か?」

 

井川はアージュを引き止める。

 

「このままではいずれ捕まる、この者は拙者の友だ、信じてくれ」

 

アージュは眉間にシワを寄せたが足を止めた。

 

追手がアルバートの目の前で止まる。

 

「アルバートジェネラル!?」

 

アルバートが追手を睨む。

 

「死人は出たのか?」

 

追手は首を横に降った。

 

「過擦り傷などの軽症は何人か出ましたが死人は……」

 

アルバートは溜め息をつく。

 

「そうか、なら、頼みがあるんだが?」

 

追手は首を縦にふる。

 

アルバートは井川たちを指さした。

 

「実は俺の知り合いなんだ、ここは俺の顔を立てて、任せてくれないか?」

 

追手は全員振り返り、去っていった。

 

井川が土下座しようとしたため、アージュが止めた。

 

「ありがとな」

 

すると、黒騎士がそこを訪れた。

 

「アルバート、奴らを探すにしてもお前は顔も名前も知らないだろ、私に考えがある……」

 

黒騎士はアージュの顔を見る。

 

アルバートが怒りのこもった声で喋る。

 

「なんだ、言ってみろよ、ポルカを出しにするのか!?」

 

黒騎士はアルバートの顔をまじまじと見る。

 

「いや、お前か私をだしに使う、別に強者はポルカだけでは無い」

 

黒騎士はナイフを抜いて、アージュに向けた。

 

「破壊屋だな?」

 

アージュはウォーハンマーを構える。

 

「くそ、黒騎士か」

 

アルバートは槍を構えた。

 

「こいつがアリウスを襲った奴らの仲間なのか!?」

 

井川が持ち手に手を添えた。

 

「アルバート殿、黒騎士殿、落ち着いて聞いてくれ、アージュは悪い奴じゃない!」

 

黒騎士が井川を睨む。

 

「どいてくれ、そいつは何千人も無差別に人を殺せるイカレ野郎だ」

 

井川が居合いの構えに入った。

 

「人なら我らも数え切れないほど殺してきただろ!?」

 

アルバートは少し槍を下げる。

 

「盗賊騎士の時は確かに殺した……」

 

井川が少し後ろに下がる。

 

「信じろと言ったよな?」

 

アルバートは完全に槍を下げた。

 

黒騎士も仕方なくナイフをしまう。

 

アルバートは槍を地面に刺す。

 

「さっさと行け、次は無いぞ」

 

井川はアージュの手を引く。

 

「かたじけない!」

 

井川とアージュは走って逃げ去った。

 

アルバートはくらい顔でその背を眺めていた。

 

黒騎士がアルバートの肩を叩く。

 

「少し、用を思い出した、カエルが腐る前に帰らなければ」

 

黒騎士はそう言うとアルバートが何かをいう前に足早にその場を去った。



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24話

井川とアージュは踊る子羊亭の中に逃げ込んだ。

 

アベルが井川の顔を見て、目を丸くした。

 

「久しぶりに会ったと思ったら彼女なんて拵えて……」

 

アージュが顔を真っ赤にして井川の頭が腰の高さまで下がるぐらい強く頭を拳骨で殴った。

 

「彼女何かじゃねえ!!」

 

井川が頭を抱えてふさぎ込む。

 

「何故、拙者は殴られたのだ?」

 

分かっていない井川のピュア差もとい鈍感差にアベルは苦笑いを浮かべた。

 

井川はアベルに近寄った。

 

「なあ、ポルカが今何処に居るかを知らないか?」

 

アベルは思わず笑った。

 

「お前は初めてあった時も同じような質問をしたよな」

 

店の奥からエリカが姿を表して、井川を睨みつけた。

 

「知らないわ、最近ここに顔を出しもしない」

 

井川は口をつぐむ。

 

アベルはとりあえず、井川達に奥の席を勧めた。

 

疲れてるようだな、取り敢えず座って休め、1杯までなら奢ってやるから。

 

井川はアベルに頭を下げて、お酒を貰いアージュと奥の席に向かった。

 

すると、行商人がせっせとやって来て一緒の席に座ってきた。

 

「此処で会ったが何かの縁、何か買って行かないか?」

 

行商人は荷物を纏める。

 

井川はやんわりと断ろうとしたが最後に並べられた古い木箱を見て、顔を青ざめさせた。

 

アージュは井川の張り詰めた表情を見て、これは只事ではないとおもい行商人に帰れと大声をだした。

 

しかし、それを井川が止めた。

 

「そこ木箱、中身は捨ててないか?」

 

行商人は目を丸くした。

 

「いえ、捨ててないですよ……」

 

行商人が最後までいう前に井川が木箱を手に取った。

 

「みなまで言うな、中身は知っている」

 

井川は財布を取り出す。

「何円で譲ってくれるんだ?」

 

行商人は笑顔を取り繕う。

 

「これはオマケです、他のものを買っていただかないと」

 

井川は篭手を指さした。

 

「それを貰おう」

 

行商人は篭手をとる。

 

「片っぽしかないですよ?」

 

それは明らかに売れ残りの質の悪い篭手だった。

井川は首を縦に振った。

 

「片っぽが丁度いい」

 

行商人はその篭手を少々高値で売ったが井川は買った。

 

井川は行商人から木箱を受け取るとさっそうと中身を開けて中に入ってる薄い布を手に取った。

 

それを見つめると1人でうなづいて、慣れた手つきで自分の左手に巻き付けて、その上から篭手を付けた。

 

その時、違う客が入ってきたので行商人はさっそうとそっちに移動した。

 

アージュが井川を揺する。

 

「それは何なんだ?」

 

井川はアージュと目を合わせなかったし無言を通した。

 

アージュが諦めたとき、井川がポロッとボヤいた。

 

「捨てたはずだった、しかし、これは何かの縁だ、何かの意味があるに違いない……」

 

すると、踊る子羊亭にもう一人の侍が入って来た。

 

アージュが立ち上がって、侍の前に立ちはだかった。

 

「此処じゃ迷惑かかる、表に出な」

 

侍は大きな声で笑った。

 

「そりゃ無いぜ破壊屋、お前は殺すがここの皆も死んでもらう、それが1番楽しいんじゃねえか」

 

侍は刀を抜いて近くにいた人の首をはねた。

 

「改心したつもりか、お前もこちら側の人間だろ?」

 

アージュはハンマーを振るう、侍はそれをバクステで避けた。

 

「そうだ、雑魚のことなんか考えるな俺たちは強いんだ!」

 

アージュがハンマークルクルと回すと井川が止めに入った。

 

「そんな長モノを振り回すな、拙者がやる」

 

井川は持ち手に手を当てる。

 

「井川抜刀流、井川斬鉄斎と申す」

 

侍は刀を井川に向ける。

 

「俺の名前は修羅丸、我流だ」

 

修羅丸は刀を下げる。

 

「井川って、首狩り井川か?」

 

井川はうなづいた。

 

修羅丸は眉間にシワを寄せる。

 

「なら、舐めてんのか、首狩り井川なら、井川片手一伝流だろ、井川抜刀流なんて聞いたことねえぞ!」

 

井川は居合いの構えに入った。

 

「察してくれ」

 

修羅丸は刀を上段に構える。

 

「てめえも改心したつもりか、ふざけるなよ」

 

修羅丸は井川に切りかかる。

 

井川の音速の居合い斬りが修羅丸の体に触れた。

 

修羅丸の胸が切り裂かれ血が噴き出した。

 

修羅丸は冷や汗をかく。

 

「早えぇ、鬼の血統って言うのはただの噂じゃねえようだな」

 

これは修羅丸の近づくフェイントだったのだが速すぎる居合い斬りは修羅丸に届いた。

 

しかし、致命傷には至らず剣先が触れただけだったが。

 

井川も流石にここで真の音速剣を放てなかった、巻き添えを恐れたからだ。

 

修羅丸は行商人の手をつかみ盾にした。

 

「よお、井川、改心したのならこいつは切れないよな?」

 

修羅丸は行商人を盾にしながら井川に近寄る。

 

そして、井川の間合いに入り込んだ。

 

「やはり、お前は雑魚だ!!」

 

修羅丸は行商人を突き飛ばした、井川は行商人を受け取る。

 

刀が行商人を貫き、井川に刺さった。

 

修羅丸は刀を抜き、血を振り払う。

 

「俺は名前通りだ、修羅の王さ!」

 

何者かが修羅丸の足を掴んだ。

 

「てめえ、そいつは俺の獲物だ!」

 

修羅丸はその声と一緒にぶん投げられて、建物の扉を突き破った。

 

投げられ倒れた修羅丸が身体を起こすとそこにはアレキサンダーの姿があった。

 

修羅丸は立ち上がる。

 

「雷獣か、面白い」

 

修羅丸はアレキサンダーに切りかかる。

 

アレキサンダーはハルバードの柄で刀を防いだ。

 

修羅丸はアレキサンダーの顔を蹴り飛ばした。

 

アレキサンダーが踏ん張ると修羅丸はすかさずその足を切りつける。

 

アレキサンダーは体制を崩した。

 

「くたばれ!!」

 

修羅丸は刀を振り落とす刀はアレキサンダーの首に触れた。

 

刀が止まる、アレキサンダーはハルバードを杖にして、刀の進行を阻んだのだ。

 

修羅丸は刀を引いた。

 

アレキサンダーの首から血が噴き出す。

 

それでも修羅丸をしっかりと睨みつけた。

 

修羅丸が刀を振り上げて振り落とした。

 

アレキサンダーは少し体制を既でえて、刀を肩で受け止めた。

 

そのままアレキサンダーはハルバードを短く持ち石突を修羅丸の胴体に叩き込む。

 

修羅丸は吐血して、後ろに下がった。

 

アレキサンダーはハルバードを杖に立ち上がる。

 

修羅丸は刀をやっと、鞘に収めた。

 

アレキサンダーは此処で気絶して、地面に倒れた。

 

修羅丸は背を向ける。

 

「肋を折られたか、まあいい、狙いはポルカだ」



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