蠢け艦隊、春爛漫 (ポン酢放置禁止区域)
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蠢け艦隊、春爛漫

連載しているやつが思った以上にシリアスになってしまってコメディを挟む隙間があまりなかったのでここで発散してみました。
色々おかしいところがありますが、榛名が大丈夫らしいので私も大丈夫だといいな。



 春、ピンク色の春、桜が舞い散る季節なのだ。

 明るい日差しが注ぐ四月、磯の香りが風に乗ってくる鎮守府は明るく楽しいね。

 おさげを揺らしながら廊下をランランスキップで進む北上の右手に魚雷、左手にも魚雷、腰に、魚雷、頭にもたくさんの魚雷、これじゃあ北上さんだか魚雷マニアだかわからねえよ。

 

「らんらんと言って鼻歌を歌うわたしは重雷装巡洋艦のアルティメット北上様だよーー!!」

 

 誰に向かって名乗っているのだ。

 

 春になると頭のおかしい人が増えるのと同じで艦娘の中にもおかしくなる奴が増えるんだって。

 これがそのわかりやすい例だ。

 

 さてもさて、魚雷だらけといったからって北上さんが向かっておるのは執務室じゃ、その顔は夢見る乙女、スキップしているからスカートがまあめくれるはめくれるわ、大井っちがこの鎮守府にいなくてよかった。

 季節の変わり目だから心機一転、提督に愛の告白をしようと思いったったが吉日、緊張しながら北上さんはランランルーン、フンフンフーン。

 進んでいくと三叉路、広くて迷路のように道が入り組んでいて、入るたびに形が変わる鎮守府には数えきれないくらいに分かれ道があるのよ。初めてここに来た人で帰って来ない人もいる事からその複雑さが分かる。

 その複雑さからやくざが消したい人間を……関係ないね、はあと。

 

「ん~いや~どこに向かえばいいのかさっぱりわかんないな~、こういうときには少し踊っとこうかな?」

 

 冷静になるために北上さんはサンバのリズムでボサノバを踊り出したけど何の問題もないか。

 マイペースに踊り続けて二十分後。

 

「クソ提督~~~クソて、長いわね、クソ提~~~~これも長い、クソ~~~~、って何言わせるのよバカ!このクソ提督!」

 

 虚空をののしるぼのたんがトリプルアクセルを決めながら登場、スカートの下にスパッツを履いてるから恥ずかしくないもん。でもスカートめくられるのは嫌に決まっている。

 

「あっ! デラックスアルティメットゴールデン北上じゃない! クソ提督知らない? 特型駆逐艦ラブリーユアエンジェルぼのたんこと曙よ!」

 

 誰に向かって名乗っているのだ。

 

 疾風の拳が曙んの稲妻を襲う! 殴りかかったのは、北上んだ!

 

「さんをつけろよラブリーエンジェル、北上さん(・・)だよ♪」

「ごめんなさい」

 

 人によってはマナーにうるさいから間違えないように気をつけましょう、礼儀は大切だって事がよくわかるね、いいね~

 

「しびれるね~ありがとね」

「うるさいわよ、傷に響くわ」

 

 さてと、出会った二人共に向かうのは提督のいる場所という事で一緒に向かう事になったね、龍驤。

 

「何でや! うちに何の関係があんねん!!」

「あっ! 龍驤じゃん、こんなところで何してんの?」

「しまった! 登場してもうた! やっぱうちって関西人やなあ~」

 

 それはどうかな、という事で三人で執務室へと向かう事になったのだが、道は三叉路、どこに行けばいいのか。

 

「こういう時は空を見てみい、北上」

 

 まな板の内課に北上さんの魚雷がカットイン。

 

「うちはまな板やない!!!!!!!」

 

 飛んで行った洗濯板が鎮守府の三叉路に第五の道を作り出してくれた。

 北上さんとぼのたんは三叉路に現れた立体交差をいく事にしたってよ。

 勿論龍驤も一緒だから安心してね。

 

「さんをつけてね、マナイタ・キャリー」

「やだ///うちそんなにマライヤに似とる?////(.> 7 <.)」

 

 赤くなって照れ龍驤、いやいやと体をくねらせる、とっても可愛くね? しかし馬鹿にされているぞ。

 

「そんなこと今は関係ないわよ、早くクソ提督に会わなくちゃ」

「奇遇だね~わたしもおんなじ気持ちだよ、早く提督に会いたいな」

 

 はやる気持ちは二百ノット、募る思いは面舵一杯、進め恋する艦娘達!!

 望みの提督はもうすぐ、残り排他的経済水域位の距離だ。

 もう王手飛車取り十五手前。

 赤信号、みんなで塗れば青信号になるのさ!

 

 

 

「隊長! 隊長! 隊長! 緊急事態です!! 緊急したいです!! 緊急事態です!!」

「どうしたんだいあきつまりゅ!!」

「発声練習であります!」

「ややこし! おみこし!」

 

 わっしょいわっしょい。お祭り気味な男は提督、そしてややこしいプロ意識の美白の陸軍あきつまりゅ。

 

「自分は、陸軍の特種船…その、乙型のあきつ丸であります」

 

 誰に名乗っているのだ、この詐欺師!

 

「なのです! 司令官! 大変! デスなの! 司令官! 変態!」

「おっ! 電も発声練習か、すごくかわいいな!!」

「はうっ! て、提督、嬉しいのですけど発声練習じゃないのです・・・」

 

 ラブコメしてんじゃねえよ。

 

「え! じゃあ僕って変態なの?」

「そうなのですけど今はそれは置いておいてほしいのです」

「そうか、ならちょっと倉庫に置いてくる、留守番は任せた」

 

 脱兎のごとく走り出す提督、その目からきらりと悠久に光る星々のパレード。

 口からは深紅の奔流。

 

「はい。任され……ってそうじゃないのです! 敵襲が、行っちゃった、やばすぎるのです」

「敵襲ならば任せるであります、大淀さんに連絡!!! 大淀さんに連絡!!!!! 敵襲あり!!!!! 第一艦隊出撃許可をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 あきつ丸は叫んだ、三千世界に轟く魂を鎮守府に炸裂させた、その思いは大地を伝わり、世界を越えて大淀へと届く。

 執務室の電話が鳴った。

 

「もしもし、こちら執務室のあきつ丸であります!!!!!!!!!」

「第一艦隊、出撃を許可します! そしてあきつ丸さんの叫びで鼓膜が破れたので入渠しますが構いませんね?」

「自分にそういう事聞かれても困るであります! そういう判断は提督へ、詳しい応募方法は番組の最後で」

「勝手に入渠するのは艦娘では無くクズなのです!!」

「じゃあ番組の最後を待ちます、グットラック」

 

 明石からの電話は切れた、そして鎮守府が揺れて姿を変え、普通の鎮守府みたいな形になった後、地球の衛星軌道上にある小型のコロニーから一つのポットが射出された。

 そして鎮守府の上に落ちてくるとプラグを伸ばす、鎮守府側の衝撃吸収装置がプラグを接続し、ポットをキャッチした。

 開いたポットから立ち上がる六人の艦娘。

 こんな所に無駄に資産をかけているからこの鎮守府は資金繰りに困り、施設管理の為に魔術に手を出して迷宮を作り出してしまうのだ。

 

「HISASIBURINOSYUTUDOUNE.SOSITEHISASIBURINOTINNJUHUNE~.TEITOKUHAGENNKINISITEIRUNOKASUKOSIDAKESINNPAINE」

 

 金剛が大きく伸びをして景気づけに空に向かってバーニングラァブ! 空砲ではなくもろちん実弾さ。

 飛んで行った砲弾が遠くの離島で一人ドッチボールに興じていた離島棲鬼を轟沈させて金剛に経験値が入り、レベルがカンストしたので、後で改造していい加減に改二にしろよ提督!! お前、俺の鎮守府なんて改二は那珂ちゃんと北上さんだけだッつうのによぉ、すいません嫉妬です。

 

「ずずい、ずずずずずずずずずいい、ずいいすいんずい」

 

 ずいずいと喋り出したのが瑞鶴ちゃんだと思った提督方、不正解、ボッシュートン、ひとしくんは没収!

 もう一人の瑞、ずいずいの座を狙う軽空母、瑞鳳、俗にいう卵焼き食べ龍驤? の艦娘。

 正解した方には抽選で卵焼きを送ります、応募方法は番組の最初にやった合言葉を書いてね。

 

「いやいや、まな板関係ないやろって」

 

 龍驤だと思った? 残念さらにボッシュートン。

 

「黒潮や、よろしゅうな」

 

 誰に名乗っているんだ、おしとやかに。

 黒潮の手には食べかけのタコ焼きや新品のタコ焼きがありますがあなたが食べるならどっちのタコ焼き? ぜひぜひ答えてくださいね。

 そして先程飛んでってポットに入った龍驤は気絶してぐっすり寝ていたが今目を覚ました。

 

「ここはどこや? うちは……は! 無くなっとる!!」

 

 目覚めて体を探る龍驤は驚愕に声を上げる、ない、ない、龍驤のあるべきところにあるものがなくなってしまったようだ。

 

「何がなくなったん?」

「胸がない!!」

「元からないやん」

「何やとこら! 海に出ろ!」

「言われなくてもこれから敵を倒しに海へでんねん」

 

 何もなくなっていないようでよかったわ。

 さて、これから出動だ! へ? 残りの二人? 伊58こと卑猥なピンクゴーヤと新参松風だ! ちなみに松風がどんな奴何だかよく知らない。

 

 今調べました、僕っ子なのね。

 さて、この六人がいれば敵なんてさっさと追い払えるだろう、だって敵襲と言っても駆逐艦のイ級がたったの六十七隻くらいだもの。

 

 

 

 執務室に向かっている北上様と大天使ぼのたんの二人は道なき道を行く。

 絡まりあう木の根、生い茂る雑草、さらには手を取り合う人々、それらを踏み越えて目指すは執務室、提督の元へ。

 

「そういえば曙は何で提督を探しているの?」

「へっ? ひ、人にそういう事を聞くときはまず自分からじゃないの?」

「う~ん、そっかあ」

 

 たとえ同じ鎮守府の仲間と言っても恋心を開示するというのはなかなか恥ずかしいだろう。

 しかし、北上さんは賢い、とっても敏い、ぼのたんの顔も恋する乙女な感じなことに気付いた。

 も、もしや……。

 

「曙、もしかして提督に告白するんじゃない?」

「なっななな、いきなり何言ってんのよ! 誰があんなクソ提督なんかと……」

 

 顔を真っ赤にして

 わかりやっすいなあ。

 これじゃあよくライトノベルで見るツンデレキャラだぜ。だが、そのわかりやすさ、嫌いじゃないぜ。

 味噌汁。

 

「そうか~、曙もかあ~」

「えっ、も、ていう事はまさか北上さんも?」

「うん、そうなんだ」

「へ、へえ……」

 

 思わぬ目的の一致に二人の間に微妙な雰囲気が流れる、しかし足は止まらない、まっすぐに提督の元へと向かっている。

 お互いに無言の時間が少し流れた後、あきつ丸の叫びがどこかから聞こえてきた、執務室が近い証拠だ。

 大量に爆薬の詰まったコンテナを乗り越えていきながら、北上さんが曙を見た。

 曙は少したじろいでコンテナにかけた手が滑りそうになったが何とか抑えて北上さんを見返す。

 

「どっちが選ばれても恨みっこなしだからね」

「………わかったわ、望むところよ」

 

 その時、ぶつかり合う視線から火花が散り、コンテナの中の爆薬に続く導火線に火が着いた。

 これがのちに大変なことになるのだが、そんな事より恋の行方だ。

 乗り越えた二人に運命の瞬間がやって来た。

 あの姿を見よ、その双眸からは光を反射する水をまき散らし、口からはおびただしい量の赤を垂れ流しながら、血染めの軍服を着た何者かが二人に向かってかけてくるではないか。

 その異様な姿を見てしまった二人に通常ならばSAN値チェックが発生するところだが今回は無しで。

 だってその男が提督だったからだ。

 その姿を見たら北上さんもぼのたんも緊張して、言おうとしていた言葉なんて飛んで行ってしまった。

 だって好きなんだもん、心臓が弾けそうな程好きなんだもん。

 月並みな言葉しか浮かばない、切り出そうと思った言葉はいずこへ消えたのか、探しに行きたかったけれど今この時に北上は、曙は、全てをかける決意をした。

 それは直感、今告白しなければ一生告白できないかもしれないという乙女の勘。

 

「提督!!!!!!!!!!!!!!!」「クソ提督!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 呼ぶ声が重なる、涙で前が見えていなかった提督だったが声を聞いて二人に気づき、涙をふいた、ハンカチも血まみれなのでふいた後も前は見えていない。

 

「その声は北上と曙か、どうしたんだこんな所まで、何か報告か? ……まさか敵襲!?」

「ち、違うの、その……ね」

「今日は伝えたいことがあるんだよね」

「? 何だ、何か困っている事でもあるの?」

 

 二人の何かおかしい様子に提督は首をかしげるばかり、両手に花だというのに全く気付いていない。

 鈍感、なんだ、だけど二人にとってはそんな所まで愛しい。

 二人はちらり視線を合わせた。

 言いたい言葉は忘れてしまったけれど、伝えたい思いはただ一つ。

 

「「好きです! 付き合ってください!」」

 

 タイミングを合わせたわけではないのに同時にその言葉は出た。回りくどい言葉はない、直球勝負、まっすぐ、その球速は思いが乗って三百キロ、偶然にも新幹線。

 提督は突然の告白に驚いたがそこはさすが提督といった所ですぐに状況を判断しようと努めた。

 そして、理解して、心がとても幸せになったが、同時に選択が生まれた事に頭を悩ませた。

 長年同じ鎮守府で共にすごしてきた二人、どちらかを選べるわけがない、どっちも好きなのだ。

 

 ここで一旦執務室に戻る、また執務室の電話が鳴った。

 

「はい! こちら天井点検口鎮守府!!!!!!! 提督はお留守なので代わりにあきつ丸であります!!!」

「酒保兼原子力兵器開発室の明石です、先程とある離島にて存在が確認されていた一人遊びをする離島棲鬼がこの鎮守府からの砲撃で討伐されたので大本営が勲章を授与したいそうです」

「それはすごい!!!! ちなみに離島棲鬼は何をしていましたか!!!!!!!!???????」

「離島に残された痕跡とボールから察するに一人ドッチボールらしいですよ」

「一人ドッチ!!!! せめて誰かよんで二人ドッチでよかったのに離島棲鬼には友達がいないのでありますな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「そ、そうですね、ごめんなさい、今ちょっと鼓膜が完全に修復できていなくてよく聞こえませんでした、もう一度言ってもらえませんか!?」

「誰か呼んで二人ドッチでよかったのに離島棲鬼はボッチのヒキニートって言ったであります!!!!!!!」

 

 

 場所を提督と北上と曙の方に戻そう。

 あきつ丸の声が響く、二人ドッチでよかった? とは何ぞや、二人ドッチ……。

 天啓、提督の脳に(かみなり)が走る、(いかずち)じゃないわ。

 

「ごめん、こんな事を言ったら怒るかもしれないけれど僕は二人を選ぶ事は出来ない、僕は――」

 

 その時、爆薬の入ったコンテナが爆発、提督の答えは砲撃の轟音が響く中で互いに意思疎通ができる艦娘である北上と曙にしか聞こえず、三人は爆発に巻き込まれた。

 何? どんな答えだったか知りたい? 人の恋路をなんて野暮だろ?

 でもここまで話してしまったならしょうがないちょっとだけ。

 三人とも幸せになったとだけ言っておこう、あ、だからと言ってみんな一緒に天国とかいうワケじゃないよ。




春のイメージってピンクの桜のイメージがありますよね。
ピンクと言えばピンク色の髪の毛の艦娘って何人かいますね、私はその中だと明石かゴーヤが好きなんですが、ゴーヤのセリフを聞くたびにちょっぴりエッチでは、と思うわけなんですが皆さんどう思います?
ゴーヤの魚雷さん(いみしん)はおりこうさん(いみしん)でち、とか
提督、一緒にイこ? とか
おっきな魚雷(いみしん) 大好きでち、とか

いや、よく考えたら私の思考が汚れているだけなのかもしれません、というか汚れている。
人類を守るために海から来る敵と命を懸けて戦っている艦娘の一人にそんな劣情を抱くなんて私はなんて人間なんだ。
クズ、人間の屑なんだ私は、きっとそうだ。
ああごめんなさい、伊58様、でも中破した時の格好に興奮する事だけはしょうがないんで許してください。


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