咲-saki- 絶体絶命!?プロ雀団編 (園咲)
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運命の日

新連載開始!気分を変えてプロ編を書いてみたいと思い立ちました。


 世は正に麻雀時代。麻雀人口は世界で1億人を超えた。麻雀対局があちこちで行われ、テレビでは野球中継に変わって、麻雀中継が放送されるようになった。中学生や高校生の全国大会も毎年開かれるまでとなり、麻雀のイメージは賭け事などのマイナスイメージからクリーンなものに変わっていった。

 プロ雀団もあちこちで設立され、その数は日本だけでも16もある。そのプロ雀団にとって年1回、チームの命運を左右する大イベントがある。

 

 …2021年12月14日午後5時。この日この時間、とある大会場にてドラフト会議が始まろうとしていた。

 毎年この時期になると開催される、プロ行きを志す高校生、大学生…はたまた実業団の雀士たちがプロ雀団から選抜されるこの会議。日本中の熱狂的な麻雀ファンはもちろん比較的そうでもない者も皆テレビにかじりついて、状況を見守る。各贔屓チームの指名選手を確認し一喜一憂するのだ。

 毎年注目されているが、特に今年は注目度が凄かった。雑誌では事前に一大特集が組まれ、テレビは密着取材、新聞も一面記事を飾った。

 なぜなら当時全国的に無名だった清澄高校で全国優勝を成し遂げ、信濃大に入っても活躍を続け、次々と既存の記録を塗り替えていった姿から「インカレ女王(クイーン)」とまで呼ばれた宮永咲の指名が控えていたからである。

 

「先輩!そろそろ始まります!」

「咲さん…落ち着いてください」

「でででで…でも和ちゃん…私不安で不安で…」

「…不安なのは私もです。今日人生が決まるようなものですから…」

 

 信濃大学の麻雀部部室。二人の部員が指名の瞬間を待っていたが、まもなく始まるという後輩部員の声に一人が緊張してナーバスになっていた。

 この部室では普段は麻雀卓が並び部員たちが打ち合っているのだが、今は片付けられ変わりにひな壇が組まれており、チームメイトはもちろん雑誌記者やテレビカメラも入り二人の姿を映していた…宮永咲と原村和である。

 インハイで目覚しい活躍を見せた彼女たちは地元にある信濃大学に進学。高校時代と変わらず副将と大将としてインカレの団体戦で2度優勝し、ドラフト指名候補筆頭となっている。

 ちなみに余談だが清澄三羽烏最後の一人である片岡優希は高卒で横浜に入団し、なかなかの活躍を見せている。部室に運び込まれた大型テレビからドラフト会場のざわつきが聞こえてきた。

 

***

 

「さあまもなく始まりますドラフト会議!今年はどのようなドラマを見せてくれるのでしょうか。実況は私、針生えりがお送りします。そして解説は…」

「皆ー!久しぶり!はやりんだよー!」

「…あの今日は二代目を襲名した福路プロをお呼びしたはずなんですが…」

「しょうがないじゃん!みほりんが風邪ひいちゃって声が出ないっていうから私が来たんだよ!オフが潰れて不機嫌なんだからね!」

「…」

 

 えりは彼女の派遣を急遽決めたであろうハートビーツ大宮を恨みたくなった。風邪をひいて欠席というのは仕方ないとしても、なぜ瑞原はやりを呼んだのか…しかも当時の格好で。

 まあ仕事さえしてくれれば何でも言いわけで…彼女なら()()()()()()()解説をしてくれるだろう…とえりははやりの腰回りの衣装が昔に比べて大分ピチピチになっているのは敢えて見なかったことにした。

 

「今年の注目選手はなんといっても…」

「信濃の咲ちゃんだね。打点もあるし、間違いなく即戦力だから競合は必至だね。今年は高校生には残念だけど有力選手が少ないから…照ちゃんの競合記録を塗り替えるかも…」

「そ…そこまでですか!?」

 

 現在の競合記録は7年前のドラフトで宮永照が残した8雀団の指名競合。その時は小鍛治健夜も所属していた強豪チームである恵比寿が交渉権を引き当て、まもなく入団した。その後の活躍は言わずもがなである。

 そして今年は全体的には不作と見られており、有力選手は原村和の他、関西学院大の二条泉や森垣友香位だろうか。それらの要素もあり、咲に指名が集中するのでは…と言われていた。

 

「ではいよいよです!各チームの一位指名選手の集計が終わりました。開票は西地区の最下位…広島からですね」

「広島かぁ…苦労してるよねあそこも。…でもみっちゃんが監督になったんだっけ…」

「え?何か…」

「いやいや何でもないよ」

 

 ボソッと呟いた声が聞き取れなかったえりは、はやりに聞き返すが何でもないとごまかす。えりも指名が始まる為、特に気にすることはなかった。

 

『第一回選択希望選手…広島…宮永咲…信濃大学…大将』

 

 淡々としたその声に、まず信濃大の麻雀部が歓喜の声に覆われた。咲もまず指名があったということに一安心というところか。そしてその後も各チームの指名が続く。

 

『新潟…宮永咲』

『沖縄…宮永咲』

『横浜…宮永咲』

『宮永咲!』

『宮永咲!』

『宮永咲!』

『宮永咲!』

『宮永咲!』

『宮永咲!』

 

「一位指名発表が終わりましたが…なんと10雀団が宮永咲選手を指名!史上最高競合となりました!まもなく世紀の抽選です!」

「いやはや…驚いたね…ここまでなんて」

 

 指名を回避した6雀団は比較的大将が固定できているところであり、あらゆるポジションの経験があるユーティリティプレイヤー二条泉や打点の高い森垣友香が指名を受けている。

 そして和も地元雀団の佐久フェレッターズと京都グランセローズの2雀団から指名があった為競合…咲の後抽選となる。

 

「やりましたね!すごいですよ咲さん!」

「う…うん…」

「ただもう一緒にプレーできないのは残念ですがまたいつでも…」

 

 受け答えは出来ているものの、咲はこれからの抽選に全神経を注いでいた。この抽選で自分の行き先が決まる…そう思うと心臓が飛び出しそうだった。

 ただ仲直りした姉とまた一緒に打ちたい…それが咲の本音であった。幸い恵比寿も咲を指名してくれている。後は祈るしかなかった。会場の壇上では各チームの代表が次々と箱の中からくじを取っていく。その数10枚…この中に当たりくじは1枚だけである。

 

『それでは…開けてください』

「さあくじが開かれます!宮永選手はどこへ行く!」

(恵比寿…恵比寿…恵比寿…)

 

「…当たったー!」

 

 その声を合図にくじを開いていくチームのオーナーや監督。しかしその殆どが外れ…白紙ということもあり首を振ったり、項垂れる姿が目立つ。だが暫くして歓喜の声が会場に響き渡った。高らかに挙げられたその手にあるふたつ折りの紙には確かに「交渉権確定」の文字が刻まれている。その持ち主は…

 

「なんと手を挙げたのは達川監督ー!広島です!」

「流石だねー。10分の1を引き当てるなんてさ」

 

 この抽選において広島の達川監督は真っ先にくじを引いた。その時点で当たりくじは箱から消えていたのだ。この強運ぶりにはやりも苦笑いを隠せない。

 この競合に部室で控えていた周りの記者もざわついている。

 

「ひ…広島か…よりによって…」

「姉妹同雀団ならず…か。記事のネタが…」

「み…宮永選手!広島に決まりましたが…今の感想は!」

 

 当然記者たちは咲のコメントを聞きたがり、マイクを向ける。

 

「えび…恵比寿に…おね…お姉ちゃんと…」

「すすすすいません!私たち少し席を立ちますね!ほら行きましょう咲さん!」

「えっ!?今からですか!?今から原村選手の抽選が…」

「些細なことです!」

 

 だが肝心の咲はというと、余りのショックにまともな受け答えができなかった。その姿を見かねた和はすぐさま助け船を出す。

 自分の抽選を見届けないという和に部室は困惑に包まれるが、それを尻目に和は咲を半ば強引に連れ出した。向かう先はいつも無人である空き教室だった。

 

「じゃあ咲さん…落ち着いたら電話くださいね…後輩を迎えに向かわせますから」

 

 そう言い残し和は部室に帰っていく。最初は傍に座ろうとしたが、一人にさせて欲しいと咲が言ったのでやむなくであった。ここで戻ってきてと言わずに、迎えを出すと言うあたりが和と咲との付き合いが長いことを証明している。

 少しガタがきているドアが閉まり、少し冷静になれた咲は悩み始める。

 

(どうすればいいんだろう…広島だなんて…)

 

 広島となると親元を離れて、寮暮らしとなるだろう。未だ実家暮らしの咲にとってはかなりハードルが高い。

 そしてなによりも姉である照と一緒に打てないということ。プロで活躍する姉の姿に憧れ続けただけあってそれは余りにもショックだった。

 とその時、右ポケットに入れていたスマートフォンに着信が入る。実は咲の迷子癖に対応するべくGPSつきのスマートフォンを持たされ、その操作を叩き込まれたのだ。

そのかいあって電話などの本当に最低限の操作だけだが、マスターしていた。その着信は最初は和だと思っていたが、意外な人物からだった。

 

「…え!?お姉ちゃん!?」

 

 表示に「お姉ちゃん」とある事を確認した咲は反射的に電話を取る。すると聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

 

『ええと…ここを押すんだっけ?』

『だめだよテルー!電話切れちゃう!』

『そうかこっちか…久しぶりだね咲。ドラフト見てたよ』

 

 ドラフトの時期にはプロ雀界は完全にオフであるため、たまに解説の仕事が入ってくる時を除いて意外と暇を持て余す。

 そしてドラフトとなると自分の雀団に直接関わってくるためチェックしている者も多い。今回照はドラフト会見中に姿を消した咲を心配して電話をかけてきたのだった。

 

『広島…どうするつもり…?…私は咲の意見を尊重する』

『どうするっていわれても…まだなんとも…』

 

 どうしても入団したくないのであったら大学に残ったり(但し公式戦には出場できない)実業団に入ったりといくつかの選択肢がある。

 しかしいずれも簡単に決めることができるものではない。二人は会話を続けるが、話は全くの平行線であり進展する素振りを見せなかった。

 それに我慢しきれなかったのか、あーもう!と照からスマートフォンを奪い、誰かが叫ぶ。

 

『サキー!プロに来なよ!』

『その声…淡ちゃん!?』

 

 電話口で叫ばれたので耳に響き、頭を抑えながら咲が声の主を言い当てる。

 大星淡。かつて白糸台高校で一年生でありながら大将を務め、団体戦決勝で咲と激戦の末惜敗。その後も幾度となく戦った因縁の相手である。…淡が一方的にライバル認定しているだけだが。そんな彼女は、高校卒業とともに恵比寿にこれまた競合で入団し大活躍をしている。 

 

『私が唯一負け越してるのがサキーなんだから!早く敵に回ってくれないと困るよ!』

『あ…あわい…?』

『テルーは黙ってて』

『…はい…』

 

 何やら電話越しに言い争っている声を聞き、つい笑ってしまう咲。その顔にはもう憂鬱な表情は浮かんでいなかった。

 

『淡ちゃん』

『ん?何?』

『決めたよ。入団するよ広島に』

『え!本当に!』

『ちょっと昔を思い出してね…』

 

 大学に進学した咲はそれこそ輝かしい成績を収めてきたが、心のどこかでは物足りなさを感じていた。それは強敵が減った物寂しさ。

 高卒でプロになった者が多い上に、信濃大学は中部リーグに所属している為、インカレは別として強敵と巡り合う機会が少ない。ようは未知の強敵との対局に飢えきっていたのだ。

 

『貸して淡…今の話…本気?』

『うん…本気だよ…お姉ちゃん』

『そう…なら私は何も言わない…頑張って』

 

 そう言い残し電話は切れた。最後は小さい声だったが確かに咲の耳に届いていた。決意を固め席から立ち上がり、部屋を出て部室に走る。この気持ちを早く伝えるために全力で走った。…部室とは反対方向に走っていたらしく救助の電話を和にかけるのはそれからまもなくである。4年間慣れ親しんだはずのキャンパス内で迷えるのは最早才能と言えるのではないだろうか。

 こうして次の日の朝刊一面に大きく記事が載った。

 

「宮永咲 広島入団即日受諾!近日正式交渉へ。関係者「驚きです」」

 

 広島に入団を決めた咲。だがまだ知る由もなかった。この先大きな大きな困難が待ち構えているということに。

 




 咲のプロ編って見ないなーじゃあ書くか!と思ったのが始まりです。原作の7年後が舞台ですね。咲は22歳となっています。
全16雀団のデータや特徴を次話にまとめましたのでよければどうぞ。


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プロ麻雀特集記事

西地区(ウエスタンリーグ)

 

広島レッドコメッツ

昨年度成績 8位

本拠地 広島県広島市

 かつての強豪も7年連続最下位と、その姿は見る影もない。そのせいかチームに活気が見られず、優秀な選手の放出に歯止めがかからない状態である。新人もなかなか加入しないため、穴埋めとして他雀団の戦力外選手を漁る姿からいつの頃からか「雀界のゴミ箱」などと呼ばれている。

 しかし今年は10雀団競合の「インカレ女王(クイーン)」宮永咲を達川新監督が引き当て、さらに入団交渉に成功。今年こそこの屈辱を晴らしたいところ。

 

Pickup Player

宮永咲 清澄(16卒)ー信濃(20卒)ー広島(21~)

 言わずと知れた「インカレ女王(クイーン)」。インハイでも大活躍だった彼女は周囲の期待とは裏腹に、当時全国的にも無名の麻雀部しかなかった地元信濃大学に進学。

そしてインカレでも猛威を振るい、いくつもの記録を打ち立てチームを団体戦2年連続優勝にまで導き、個人戦でも2度優勝した。

 姉である宮永照が所属する恵比寿入団は叶わなかったが、広島入団を即決。嶺上の花はプロの世界でも見事に花開かせるか。

 

沖縄ブルーオーシャンズ

昨年度成績 7位

本拠地 沖縄県那覇市

 毎年7位が定位置のチーム。土地柄有力選手が集まりにくいのが難点か、地元出身選手でオーダーを固めている。今年はオープン戦からキャプテン銘刈が絶好調。活躍が期待されている。当面の目標は定位置脱出。

 

Pickup Player

銘刈彩音 真嘉比(15卒)ー沖縄(16~)

 沖縄を支え続ける屋台骨。3年次のインハイでは団体戦では前年の雪辱を晴らすかのように準決勝に残り、個人戦でもベスト8に残る活躍を残した。

 個人タイトルの獲得経験こそないものの安定した成績を長年残している。 

 

名古屋グリズリーズ

昨年度成績 6位

本拠地 愛知県名古屋市

 Aクラス常連だったがいわゆる黄金世代の選手が軒並み引退し、近年は他チームに押され気味でありBクラスに落ち着いている。チームの方針として暫く中堅、ベテラン頼りになっていただけに、新戦力が育っていないのが問題点である。

 

Pickup Player

対木もこ 覚王山(16卒)ー無所属(17~18)ー名古屋(19~)

 隠し玉として名古屋から下位指名を受ける。当人は入団に消極的だったが長い交渉の末、様々な条件付きで入団。一躍チームの中心選手に躍り出た。

 顔や服装に似合わない大胆なプレイングが持ち味。

 

松山フロティーラ

昨年度成績 5位

本拠地 愛媛県松山市

 京都との熾烈なAクラス争いに敗れ、あと少しクライマックスシリーズ進出を逃す。とはいえ着実にチーム力が上がっている。

今期からコーチ兼任となった戒能良子の手腕にも期待したいところだ。

 

Pickup Player

戒能良子 大生院女子(12卒)ー松山(13~)

 一時期海外流出の噂が絶えなかったが、それに反して松山に残ったミス・フロティーラ。時折見せる不可思議な和了りが特徴。上記のとおり今期からコーチ兼任。当人の活躍はもちろん後進の育成にも力が入る。

 

京都グランセローズ

昨年度成績 4位

本拠地 京都府京都市

 昨年は何とかクライマックスシリーズ出場圏内の4位を確保した。しかし日本シリーズ進出からはすっかり遠ざかっているだけに、今年こそはという思いが強い。

 目立った新戦力はいないものの、既存の戦力の底上げで十分上位が狙えるだろう。

 

Pickup Player

清水谷竜華 千里山女子(14卒)ー関西短期大(16卒)ー無所属(17)ー京都(18~)

 幕張1位指名を一旦蹴り、改めてドラフトを受け直した異色の経歴を持つ。今やチームメイトの園城寺怜と並んでチームのダブルエースとまでに成長した。

 時折不可解な打牌で打つことがあり、プレイスタイルが安定していない。

 

エミネンシア神戸

昨年度成績 3位

本拠地 兵庫県神戸市

 野依理沙の博多への電撃移籍など慌ただしく始まった昨シーズン。痛恨の流出に苦戦必至と言われていたが、それでも3位と健闘できたのはチーム一丸となってコツコツ点を稼いでいたに他ならない。そして今年は新戦力としてインカレでも活躍した森垣友香を獲得。躍進に期待がかかる。

 

Pickup Player

森垣友香 劔谷(16卒)ー関西学院大(20卒)ー神戸(21~)

 高校時代こそ目立った成績を残していなかったが、大学に入ってその才能が開花。手なりでなく役を決め打って大きく和了る姿が印象的。

プロの世界でも光り輝くことができるか。

 

シャイニー博多

昨年度成績 2位

本拠地 福岡県博多市

 地元選手野依理沙の獲得に成功。その影響はチームにも大きく5位から2位に大きく順位を上げ、日本シリーズの出場も果たした。

 今年の目標はもちろん優勝、そして日本一。常勝大阪の壁を打ち破ることはできるか。

 

Pickup Player

鶴田姫子 新道寺女子(15卒)ー博多(16~)

 一年先輩である白水哩を追うように念願の博多入り。以来不動の大将として活躍している。個人戦での戦績こそそこそこだが団体戦では無類の強さを誇る。ちなみに余談だが白水哩とはかなり親密な関係のようだ。

 

大阪ワイバーンズ

昨年度成績 1位

本拠地 大阪府大阪市

 数年前から千里山で指揮を取っていた愛宕氏を監督に据えるとそこから3年連続西地区優勝と輝かしい成績を残している。

 しかし日本シリーズでは幾度となく恵比寿に敗れてきた。厚い選手層を引っさげ、今年こそはと雪辱に燃える。

 

Pickup Player

松実宥 阿知賀女子(15卒)ー沖縄(16~20)ー大阪(20~)

 安定感のある打風で知られており、昨年のシーズン途中上重鈴との交換トレードで大阪に移籍。以前から「あいつはまだ伸びる」と語っていた愛宕監督の熱烈な指導のもと、手薄だった中堅に定着した。

 今期もスタメン争いが激しい大阪において「宥は中堅、セーラは大将や」と確約をもらっている。

 

東地区(イースタンリーグ)

 

新潟ドルフィンズ

昨年度成績 8位

本拠地 新潟県新潟市

 創立10年にも満たない若いチーム。戦力がまとまっておらず、Aクラスの経験はない。また新潟岩田監督の方針か一癖も二癖もある選手たちが揃う。

まだまだ発展途上のチームだけに上位に食い込むのは難しいが、是非とも健闘してもらいたい。

 

Pickup Player

妹尾佳織 鶴賀学園(15卒)ー新潟(16~)

 インハイでは目立った成績を残していなかったが、ドラフトではその年新規参入した新潟から1位指名を受けた。またこれで会場が騒然となったのは記憶に新しい。

 入団後は岩田監督が半ば強引に先鋒に起用し続け、当初から手つきや並べ方が多少改善し、まともに打てるようになった。

横浜所属の渋谷との役満王争いは見どころの一つとなっている。

 

横浜ロードスターズ

昨年度成績 7位

本拠地 神奈川県横浜市

 かつてはAクラス常連だったが三尋木咏の海外移籍を機に徐々にチーム力が衰退。

しかし再び戦力を整え、逆襲の牙を研ぎ澄ませてきた。まずはクライマックスシリーズ圏内の4位が目標。再起なるか。

 

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片岡優希 清澄(16卒)ー横浜(17~)

 東風戦なら恵比寿の宮永照をも凌ぐ、人呼んで「東風の神」。その反面、南場に入ると極端に失速する癖は未だ治る気配すら見せない。

 横浜では三尋木咏の抜けた先鋒に起用されている。東場でいかに貯金ができるかが勝敗を分ける。

 

幕張マーリンズ

昨年度成績 6位

本拠地 千葉県幕張市

 日本雀界屈指の頭脳派集団。相手の隙を見つけて的確に狙うプレイスタイルを取っている。しかし昨年は他チームに押され気味となり、中盤には優勝戦線から脱落した。研究に研究を重ね、今年はまずAクラス復帰を狙う。      

 

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船久保浩子 千里山女子(15卒)ー帝王大(19卒)ー幕張(20~)

 千里山にて作戦参謀役を務め上げた後、日本最難関である帝王大学を受験し見事現役合格。インカレでもなかなかの戦績を残し、幕張に競合の末入団。

 相手のデータを一から洗い流し、特徴を見つけるのが彼女流。現在最も高学歴の選手となっており、引退後のフロント入りは確実とまで言われている。

 

札幌スノーフォックス

昨年度成績 5位

本拠地 北海道札幌市

 AクラスとBクラスの境目を行ったり来たりしている、どうにも決め手に欠けるチーム。昨年はシーズン終盤に失速し、5位でフィニッシュ。

 絶対的エース獅子原爽にどう繋げるかが毎年の課題となっているが、今年はアメリカ・ニューヨークから放出されたメガン・ダヴァンの獲得に乗り出しまさかの成功。

飛躍が期待されている。

 

Pickup Player

メガン・ダヴァン 臨海女子(13,14)ーデトロイト(15~16)ーシンシナティ(17~19)ーニューヨーク(19~20)ー札幌(21~)

 臨海女子では留学生として副将を務めていただけに日本での知名度も高い。アメリカリーグでは3雀団を渡り歩き、その実力を発揮していた。

 だが今年はニューヨークとの契約の折り合いがつかずに退団し、新天地を探していた。アメリカや日本の恵比寿などからはさらに好条件を提示されたものの、なぜ縁もゆかりもない札幌を選んだのかは謎。札幌では流動的になっている副将に固定される。

 

ハートビーツ大宮

昨年度成績 4位

本拠地 埼玉県大宮市

 昨年は今ひとつ波に乗りきれず、遠野に大きく離されての4位。札幌の失速がなければBクラス転落も有り得ただけに危機感は拭えない。そのせいもあってかオフシーズンはトレードなど活発に動き、横浜から竹井久を獲得。更に松山から松実玄を獲得。昨年からのスタメン大幅変更が予想される。 

 

Pickup Player

福路美穂子 風越女子(14卒)ー明次(18卒)ー大宮(19~)

 インハイ個人戦での活躍もあり、明次大に推薦にて入学。六大学リーグでも先鋒に定着し、活躍を見せた。他家を自在に操って自分に有利な場況を作ることから「他家遣い(マリオネット)」と異名が付いたが、当の本人は嫌がっている様子。大宮では「牌のお姉さん」の称号を瑞原はやりから受け継ぎ活動しているが、そのせいか対局機会が少なくなっている。

 

遠野ポポポーズ

昨年度成績 3位

本拠地 岩手県遠野市

 新潟に数年遅れて新規参入し、暫くは低空飛行が続いていたものの雀界の明伯楽と呼ばれ、実績もある熊倉氏を監督に招聘するや否や成績が軒並み向上。昨年は遂に3位となり、Aクラス入りを果たし佐久を差し置いて日本シリーズ出場も決めた。今や打倒恵比寿の最右翼である。

 

Pickup Player

姉帯豊音 宮守女子(14卒)ー東北セネターズ(15~17)ー遠野(18~)

 3年時のインハイ団体戦では2回戦止まりだったものの個人戦ではベスト8まで勝ち上がった。宮守卒業後はプロ入団を拒否して地元の実業団にて活動していたが、岩手にプロ雀団ができると入団を熱望。そのかいあって遠野の指名第一号となった。

 追っかけリーチや裸単騎で和了ったり、赤ドラが配牌に集まったりと多彩な攻めを見せる姿からついた異名は背向のトヨネ。

 

佐久フェレッターズ

昨年度成績 2位

本拠地 長野県佐久市

 毎年恵比寿に食らいついているもののどうしても打ち勝つことができない。昨年は2位となったもののクライマックスシリーズで敗退し、涙を飲んだ。 

 今年はドラフトで地元出身の「デジタルの化身」原村和を2雀団競合の末獲得。絶対王者恵比寿からの覇権奪回へ。

 

Pickup Player

藤田靖子 大岡山(07卒)ー富山(08~10)ー佐久(11~)

 人呼んで「まくりの女王」。昨年は産休と育休を取り、シーズンを全休。

無事に第二児となる男児が生まれ、私生活も充実している彼女も32歳となり、ベテランの域に差し掛かっている。新戦力も出てきており世代交代が(ささや)かれる中、シーズンに復帰する今期は真価が問われる。

 

アストライア恵比寿

昨年度成績 1位

本拠地 東京都渋谷区

 言わずと知れた雀界の盟主。昨年は宮永照、大星淡らの活躍で順当に5年連続日本一を決め、日本記録に並んだ。昨年は大きな流出もなく、また昨年退団した外国人選手の補強として西アジアリーグで活躍していたネリー・ヴィルサラーゼを獲得。日本新記録となる6連覇に死角なし。

 

Pickup Player

宮永照 白糸台(14卒)ー恵比寿(15~)

 今や日本雀界の宝といっても過言ではない。昨年は最高和了率、首位打点王、ビックファイブ、ゴールドハンドの4冠を獲得する大活躍を見せた。

 世界ランキングも4位まで上がってきており、小鍛治健夜でさえ成し得なかったランキング1位も視野に入っている。国内に敵なしの今、必ず海外移籍すると言われていたが恵比寿に残留を決めた。今年も圧巻の和了りを見せてほしい。

 

日程

2月下旬     オープン戦

3月第一日曜日  リーグ開幕戦 (以後毎週日曜日にリーグ団体戦)

5月       プロアマ交流戦(個人戦)      

6月       東西交流戦 (4試合)

7月中旬     オールスター戦

10月最終日曜日 シーズン終了

11月中旬~   クライマックスシリーズ

12月上旬    日本シリーズ

 

クライマックスシリーズ

東地区、西地区の各1~4位までに出場権を与えられる。リーグ優勝チームともう1チーム日本シリーズ進出チームを決める戦い。3日にかけて行われる。

 ハンディがあるものの4位のチームが勝ち上がることもできる。

 

日本シリーズ

東地区、西地区の代表2チーム…計4チームで行われる。5日間に渡る激戦が繰り広げられる。

 ハンディはなし。ここ5年連続で恵比寿が制して日本一の座を守っている。

 

 

 毎年白熱するプロ雀界。今年はどのようなドラマが生まれるのか。記者である私も非常に楽しみである。

 

週間(WEEKLY)麻雀TODAY 2021年7号 開幕直前!プロ雀界特集より抜粋)




 設定を考えるのだけでも楽しかったです。反響があれば続きを書くかも…
各選手の年表は原作のインハイを2013年、三年生卒業年を2014年と仮定して書きました。


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