新 三好春信は勇者である (mototwo)
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家に帰るまでが遠足です!

原作改変、オリジナル主人公など閲覧注意の内容が含まれます


「またね」

 

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいん!!!!」

 

大橋から落され、自分を呼ぶ友の声

3体の異形は既に再生を終え、すぐ目の前まで迫っていた

 

「さーて、と……」

 

覚悟を決める

ここがアタシ、三ノ輪銀の最後の見せ場だ

 

「ここは任せろって言った以上…

責任持たないと、かっこ悪いからね……

いっとくかァ!!!!!!」

 

「ダメだ」

 

「えっ?!」

 

急に体がふわりと浮き上がる

いや、誰かが自分を抱え上げたのだ

その手が尻を撫で上げる

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「尻も硬いし胸もペタンコ。。。」

 

「なっ、なっ、なっ!?」

 

「あんなに会いたいと恋焦がれた少女が、こんなガリガリの男女だったとは。。。」

 

「なっ、なんなんだっ!アンタはっっっ?!」

 

「まったく、泣けてくるぜ。。。」

 

なんて失礼な奴だ!

確かに須美や園子に比べたら女らしいとこなんて無いって自覚はしてるが…

アタシだって一応お年頃の女の子なんだぞ!

 

身を翻して地に立ち、そいつの顔をひっぱたく!

が、アタシの右手はアッサリとかわされ、奴の右手に掴まれる

って、ホントに泣いてやがる?!

どこまで失礼なんだ!

こっちまで泣きたくなってくるぞ!

 

掴んだその手を軽く捻ったかと思ったら視界がグルリと回転する

いや、手首の捻りだけで投げ飛ばされたんだ

 

「このっ!」

 

空中で体勢を整えて着地すると

さっきまで自分たちがいたところに巨大な針が突き刺さる

 

蠍座のバーテックスだ

あまりの出来事にうっかり忘れるところだった

今は戦闘中、それも大ピンチだ

 

「遊んでる場合じゃないぞ、気合入れろ!」

 

そう言った奴の姿を改めて見る

 

赤い勇者服…

でもアタシのとは大分違う…

 

「おっと!」

 

じっくり考えてる暇もない、敵は容赦なく襲ってくる

どうやらこの赤い勇者も共に戦う仲間らしい

2体のバーテックスを相手に武器も持たずに立ち回っている

 

「どうした!一人で3体追い返すつもりだったんだろ!

1体くらい片付けないと落っことした二人に格好がつかんぞ!」

 

後から来といて言いたい事を!

 

「言われなくたって!」

 

2体を引き受けてくれるなら、今は目の前の蠍座に集中だ!

コイツの攻撃は針とその長い尾っぽ

園子が相手をしてくれてたおかげでそのパターンは容易に読める

 

「でやぁあああああ!!!」

 

振り回す尾の攻撃を避けつつ両手の斧で斬りかかる!

 

「どうだい!この銀さまのお手並み!!」

 

今度は針を振りかざして突きにかかる

避けると樹海が…!

斧を構えて受け止めようとしたそこに…

 

「うわっ!」

 

いきなり背中から衝撃を受けて蠍座の懐に飛び込む形になる

振り向くとアイツがアタシを蹴り飛ばしたらしい

その場所には蠍座の針と射手座の大きな矢が突き刺さっていた

 

「ヤバヤバじゃん…」

 

しかし折角(せっかく)懐に入り込めたんだ!

奴の攻撃が再開する前に斬りつけまくる!!

 

「その調子だ!

今回ばかりは樹海を気にする余裕は無いぞ!

いくらこっちで相手をしてても2対3の状況だってことは忘れるな!」

 

なんなんだ?アイツは?

なんでもかんでも知ってるみたいに…

 

しかしこの機を逃す手は無い

考えるよりも、一気に蠍座を追い詰めてやる!

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

息をするのも忘れて斬りつけ続けた

蠍座も回復しつつ何度も攻撃しようとしてきたが

攻撃の(かなめ)の尻尾を根元から切り落としてやると

やっと壁の向こうへ下がって行った

 

そのとき後ろから聞こえる叫び声

 

「ディバイディング!」

 

振り返るとアイツが刀を手に地面に切りかかるように振りかざしていた

 

「ドライバアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

しんっ………

 

静かな一瞬を挟んで射手座の攻撃がアイツ目掛けて飛んで来る!

 

「くっ!」

 

すんでの所でかわすと蟹座の陰に隠れて斬りつけている

 

何がしたかったんだ…?

 

「えやあぁっ!」

 

追いすがって射手座に斬りかかる!

 

「おう、戻ったか、蠍座は?」

 

「首尾は上々よ!」

 

斧を持ったまま親指を立てて応える

 

「これで2対2!もう負けは無いぜ!」

 

「いい気になってる所悪いが。。。」

 

「ん?」

 

「こっちは勇者の力を半分も出せない状態だ」

 

「はあ?!」

 

「さっきも封印の儀に失敗した」

 

フウインノギニ失敗?なんの話だ?

 

「という訳で引き続き、蟹座の相手を頼むぞ!」

 

ついさっきまで蠍座の相手してて疲れてるのに!

なんて弱音を吐くわけにもいかない

なにせコイツはその間、2体を引き付けてくれてたんだ

 

しかし、半分も力を出せないってどういうことだ?

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

蟹座はさっきまで相手をしていたから、なんとなく戦いやすい

豪快に振り回してくる鋏を避けて斬りかかる

タイプは似ているが、蠍座ほどのトリッキーさもない

樹海を気にして攻撃を受け止める必要がないなら

強敵というほどの相手じゃない!

壁まで押し返すのにさほどの時間もかからなかった

 

とはいえ、この連戦は疲れる…

息を切らして射手座のところまで戻るとアイツはまだ1体相手にもたもたしている

 

「はぁ、はぁ…偉そうに…出てきた割には…大した事ないジャン?」

 

「息切れしながら言う台詞か、よっ!」

 

射手座が矢を出そうとすると的確に攻撃を仕掛けて邪魔をしている

こっちが蟹座の相手に集中できたのはこのおかげか

強いのか弱いのか、よくわかんねぇな…

 

「銀!!!!」

 

「ミノさ~ん」

 

須美と園子だ、二人がなんとか回復して戻ってきてくれた

 

「おおう!マイラブリーフレンズよ!よくぞ戻って…」

 

パアァァァァァン!

 

いきなりだった

須美の平手打ちがアタシの頬に飛んできたのだ

 

「痛った~、なにすん…」

 

頬を押さえて須美を見ると

須美は…目に一杯涙を溜めて睨んでいた…

 

「ミノさんのバカ、バカ、バカァ~」

 

園子がアタシの胸を叩きながら泣いてる

 

「心…配…したんだから…」

 

言葉と共に目に溜めた涙を零している須美

 

よく見ると二人ともまだ傷だらけのボロボロだ

回復し切れてない体に鞭打って来てくれたのか…

 

流石のアタシも二人に泣かれると弱い

 

「ゴメン…」

 

園子の頭を撫でながら謝るしかなかった…

 

すると

 

「あの~。。。」

 

後ろで声がする

 

「感動的なとこ、空気、読まなくて、すまないんだがっ」

 

アイツだ

 

「結構、こっちがキツイんでっ、手伝ってくんないっ。。。?」

 

アイツが射手座を斬り付けながら助けを求めてた

 

「…あの人は?」

 

「…だれ~?」

 

もっともな疑問を口にする二人に

 

「説明は後!とにかくあの敵をやっちゃうよ!」

 

アタシは涙を拭い、バーテックスに斬りかかった

須美と園子もそれぞれの距離で攻撃する

射手座が矢を放つ瞬間は相変わらずアイツが潰してくれてる

例え傷だらけでも3人が勢いに乗って攻撃に集中すれば

たった1体のバーテックスなんて目じゃなかった

 

大した時間もかからず壁の向こうへ追いやる事ができた

しかし…

 

「「「疲れた~!!!」」」

 

今回ばかりはダメかと思った…

正直、二人を逃がした時点で自分の命は…

 

「よく。。。やったな、3人とも。。。」

 

アイツ…また泣いてる…

 

「それで…貴方は一体…」

 

須美が声をかける

 

「そうだよ!いきなり現れてこの銀さまの尻を撫でて!!」

 

「「ええっ!!」」

 

「胸までペタンコとか言ってくれちゃって!!!」

 

「「ええええっっ!!!」」

 

あれ?二人の反応がちょっと大袈裟な様な…

 

「ちょ、ちょっと銀!」

 

須美が手招きする

 

「あ、あなた、あの人に痴漢されたの?!」

 

園子もめずらしく驚いている

 

「ち、痴漢さん~?」

 

ああ、そうとらえたのか…

確かにあの部分だけ聞くとただの痴漢だな、このオッサン…

 

「どうすんだ?痴漢呼ばわりされてるぞ、オッサン?」

 

苦笑いしながら頬をポリポリ掻くその男に話しかける

 

「実際、何者なのさ?アタシと同じ赤の勇者、それも男がいたなんて初耳だよ?」

 

「何者でもないさ、あえて言うなら。。。」

 

「「「?」」」

 

「通りすがりの勇者(ヒーロー)だ」

 

思わず溜息が出る

 

「何かっこいい事いってんだよ、オッサンが」

 

「オッサン言うな、

『僕はまだまだ若いんだ』」

 

「『僕』ってガラかよ…って…」

 

オッサンはかけてもいないメガネをクイっとやる仕草でニヤリと笑う

 

「え…いや、確かに声は似てる…でもあのあんちゃんは…」

 

「中年太りと見紛うほどのおデブさんってか?」

 

「え?じゃあ?ビームとロボの?」

 

「ビーム?って…」

 

「ロボ~?この間の話の~?」

 

「ああ、開発は出来なかったからな、お詫びに助けに来た」

 

「え?え?え?」

 

ザアァァァァァァァ

 

「樹海化が解けるな。。。」

 

困惑するアタシらをよそに

 

「いいか、俺が助けられるのはこの一回きりだ

もう命を粗末にするんじゃねえぞ、銀」

 

オッサ…あんちゃんはアタシの頭をくしゃくしゃに撫でながら寂しそうに笑った

 

「じゃあな。。。」

 

そう言い残して

 

「あわわわわわわ…」

 

「おお~っ☆」

 

須美と園子がそれぞれに反応する

アタシは…

顔を真っ赤にして固まる事しかできなかった

 

別れ際に抱きしめて残していったアタシの額へのキス…

 

一体どういうつもりであんな…

ダメだ!

思い出すと恥ずかしくて死ぬ!

忘れよう!

それしかない!

 

そう思うが、二人…特に園子がやたらとこの事でつついてくる

 

「ぎ、銀!あ…ああいうのはまだ私たち小学生には早いと思うわっ!」

 

「きっとあの人は時を越えたミノさんの恋人なんだよ~」

「このネタだけでご飯3杯はいけるよ~」

「ミノさんはどうっ?!オデコでもファーストキッスだよね~?!」

 

園子…鼻息が凄く荒いぞ…

そのおかげで二人を海へ落した事はうやむやになってくれたんだけど…

ああっ!モヤモヤする~っ!!

ちなみに…

戦闘後に大赦で治療してもらってたら

あのあんちゃんがおにぎりを差し入れしてくれた

別に痩せてもいなかったし、食堂で働いてるって言ってた

一体何がどうなっているのやら…

 

「だから、時空を越えた恋人なんだってば~!」

 

「はいはい、園子の妄想は小説の中だけにしといてくんな」

 

「でも、本当に誰だったのかしら…」

 

3人でにぎり飯を食べながら帰路に着く

須美は

 

「歩きながらご飯をいただくなんて…」

 

と最初は躊躇(とまど)っていたが

アタシと園子の食べっぷりに観念したのか

 

「お塩だけでも結構おいしいわね、流石は香川のお米ね!」

 

などと言いながらかぶりついていた

 

何がなんだかサッパリ訳が分からないが

戦いに勝って美味い飯も食えた

明日もきっと大丈夫!

アタシら3人がそろっていれば!!

 




ご覧の通り、これは銀生存シナリオですが、裏があります
「どうしてこうならなかった?!」が欲しかった方は
続きの裏の話は見ないことをお勧めします

なお、助っ人の赤い勇者は私の書いた
『三好春信は『元』勇者である』
の主人公であります

目次の作品紹介にurlがあるので
興味をもたれた方はそちらもご覧下さい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


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刻を越えて

『家に帰るまでが遠足です!』の別サイドストーリーです



<春信side>

 

いつもの樹海化した大地

しかし少し違う

大橋が壊れていない

綺麗なままだ

その方角へ駆け出す

 

急げ、間に合え!

 

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいん!!!!」

 

鷲尾須美の声が大橋から海へと流れる

3体の異形は少女のすぐ目の前まで迫っていた

 

「…いっとくかァ!!!!!!」

 

「ダメだ」

 

「えっ?!」

 

その少女の体を抱き上げる

赤い装束

少年のような顔立ち

その声。。。

 

銀だ。。。間違いなく銀だ

銀が生きている。。。

間に合ったんだ

 

思わずこみ上げる感情と涙を無理に抑えると

震える手がその尻にあたっていたらしい

銀が叫び声を上げる

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ぎゃあって。。。

相変わらず女らしさも色気も無いガキだ。。。

 

「尻も硬いし胸もペタンコ。。。」

 

「なっ、なっ、なっ!?」

 

「あんなに会いたいと恋焦がれた少女がこんなガリガリの男女だったとは。。。」

 

「なっ、なんなんだっ!アンタはっっっ?!」

 

「まったく、泣けてくるぜ。。。」

 

思わず憎まれ口を叩いてしまう

生きた銀が僕の肩の上で大声を上げてる

笑ってしまいそうなシチュエーションなのに涙が溢れる

 

銀が身を翻して地に立ち、ビンタをしかけてきた

が、あの日の東郷と同じように鼻先で避け、その手を掴む

視界の端で蠍座バーテックスがその巨大な針を振り下ろすのが見えた

 

掴んだその手を捻って銀を投げ飛ばす

 

「このっ!」

 

空中で体勢を整えて銀が着地するのと

針が樹海の地面に突き刺さるのがほぼ同時だった

 

「遊んでる場合じゃないぞ、気合入れろ!」

 

ゆっくり自己紹介している暇も無い

 

「おっと!」

 

更に繰り出される蠍座の攻撃をかわす銀

この少女を守る事、今回ばかりはそれ以上は望めない

かといって敵を放って置いて逃げ出すわけにもいかない

射手座と蟹座、2体のバーテックスを相手に時間稼ぎをするしかない

 

「どうした!一人で3体追い返すつもりだったんだろ!

1体くらい片付けないと落っことした二人に格好がつかんぞ!」

 

「言われなくたって!」

 

檄を入れると銀が応える

それだけで感極まる

 

「でやぁあああああ!!!」

 

蠍座の尾の攻撃を避けつつ両手の斧で斬りかかるのが見える

こっちも2体を相手に立ち回る

が、いつものようにはいかない

これがこの世代の勇者の限界か

それとも量産型の限界なのか

刀一本出すにも溜めが要るようだ

2体相手だとその隙もなかなか見つからない

仕方なく素手のまま2体の攻撃をいなす

 

徒手空拳。。。

結城友奈のようにはいかないが

それでも(つちか)った経験と訓練は活かせる

 

「どうだい!この銀さまのお手並み!!」

 

チラリと見ると振りかざす蠍座の針を受け止めようと斧を構えている

 

しまった!

蟹座の相手に手間取って射手座に一手届かない!

 

「うわっ!」

 

咄嗟(とっさ)に銀の背中を蹴り飛ばして射手座の光の矢をギリギリで回避させる

 

「ヤバヤバじゃん…」

 

こっちを向いて呟くが、その好機も逃さない

銀は蠍座の懐、至近距離で斬りつけている

 

「その調子だ!

今回ばかりは樹海を気にする余裕は無いぞ!

いくらこっちで相手をしてても2対3の状況だってことは忘れるな!」

 

この程度の敵、叫びがそのまま力になってた頃なら瞬殺なんだが。。。!

考えてもしょうがない

せめて銀が蠍座に集中できるように2体を引き付けなくては!

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

蠍座の尻尾を根元から切り落とし

なんとか壁の向こうへ追いやる銀

 

今なら!

 

射手座の矢を避けて後ろへ飛びのき叫ぶ

 

「ディバイディング!」

 

声と共に刀が手の中に現れる

 

「ドライバアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

渾身の力を込めて大地へ刀を振り下ろす

 

しんっ………

 

ダメか!

やっぱり封印の陣が展開しない。。。

射手座の攻撃が飛んで来る

 

「くっ!」

 

すんでの所でかわして蟹座の陰に隠れて斬りつける

 

「えやあぁっ!」

 

銀が射手座の後ろから斬りかかる!

 

「おう、戻ったか、蠍座は?」

 

「首尾は上々よ!」

 

斧を持ったまま親指を立てて応える

いい笑顔だ。。。

 

「これで2対2!もう負けは無いぜ!」

 

「いい気になってる所悪いが。。。」

 

「ん?」

 

「こっちは勇者の力を半分も出せない状態だ」

 

情けないが、言っておかない訳にもいかない

 

「はあ?!」

 

「さっきも封印の儀に失敗した

という訳で引き続き、蟹座の相手を頼むぞ!」

 

本当に情けない

助けに来たはずなのに

結局、銀一人に戦わせる羽目になってる

 

それでも、1体を追い返した勢いからか

銀の動きがさっきよりも良い

グイグイと蟹座を壁の方へ追いやってくれる

 

こっちは射手座を相手に攻撃を潰すくらいしかできない

コイツは遠距離から光の矢を放つ分、攻撃の一瞬に溜めがある

パターンさえ読めれば攻撃をさせないくらいは出来る

さっきの封印失敗は痛いが

刀が出せたおかげでなんとか戦いになる

 

「はぁ、はぁ…偉そうに…出てきた割には…大した事ないジャン?」

 

息を切らして銀が戻ってきた

調子に乗ったときの銀は流石に勢いが違う

思ったより蟹座の対処は早かった

 

「息切れしながら言う台詞か、よっ!」

 

射手座の攻撃を潰しているとまた後ろから声がした

 

「銀!!!!」

 

「ミノさ~ん」

 

鷲尾須美と乃木園子だ、二人が回復して戻ってきたか。。。

 

「おおう!マイラブリーフレンズよ!よくぞ戻って…」

 

あ、バカ。。。

 

パアァァァァァン!

 

鷲尾須美の平手打ちが銀の頬をとらえる

 

そうだよな、そうなるよな。。。

 

「痛った~、なにすん…」

 

何か言い返そうとした銀を睨むその目は涙を一杯に溜めている

 

「ミノさんのバカ、バカ、バカァ~」

 

乃木園子は銀の胸を叩きながら泣いてる

 

「心…配…したんだから…」

 

鷲尾須美も言葉と共に目に溜めた涙を零している

銀も涙ながらに二人に謝っていた

 

「ゴメン…」

 

なんとか落ち着いたみたいだな。。。

しかし。。。

 

「あの~。。。」

 

そろそろ限界。。。

 

「感動的なとこ、空気、読まなくて、すまないんだがっ」

 

これ以上そっち見ながら敵を抑えてらんない。。。

 

「結構、こっちがキツイんでっ、手伝ってくんないっ。。。?」

 

射手座を斬り付けながら助けを求めた

 

「…あの人は?」

 

「…だれ~?」

 

涙を拭きながら問う二人

 

「説明は後!とにかくあの敵をやっちゃうよ!」

 

銀が両手の斧で斬りかかる

須美と園子もそれぞれの距離で攻撃する

一気に楽になった

このまま射手座が矢を放つ瞬間を潰していれば3人が攻撃してくれる

 

おかげで大した時間もかからず壁の向こうへ追いやる事ができた

 

「「「疲れた~!!!」」」

 

3人が声をそろえてへたり込む

 

誰も犠牲にならなかった。。。

銀が。。。生きてる。。。

 

あの時のことが思い出され

また涙が溢れてきた

 

「よく。。。やったな、3人とも。。。」

 

「それで…貴方は一体…」

 

問う鷲尾須美

銀はいきなり立ち上がって

 

「そうだよ!いきなり現れてこの銀さまの尻を撫でて!!」

 

「「ええっ!!」」

 

おい、銀。。。

 

「胸までペタンコとか言ってくれちゃって!!!」

 

「「ええええっっ!!!」」

 

その言い方は。。。

溢れた涙も思わず引っ込むぞ。。。

 

「ちょ、ちょっと銀!」

 

鷲尾須美が銀に手招きしている

 

「あ、あなた、あの人に痴漢されたの?!」

 

乃木園子も声を上げる

 

「ち、痴漢さん~?」

 

銀がやれやれといった表情でこっちへ振る

 

「どうすんだ?痴漢呼ばわりされてるぞ、オッサン?」

 

誰のせいだと思ってんだ。。。

 

「実際、何者なのさ?アタシと同じ赤の勇者、それも男がいたなんて初耳だよ?」

 

何者、か。。。

 

「何者でもないさ、あえて言うなら。。。」

 

「「「?」」」

 

「通りすがりの勇者(ヒーロー)だ」

 

はあ、と溜息を()いて

 

「何かっこいい事いってんだよ、オッサンが」

 

銀にオジサン扱いされて懐かしさを感じ

 

「オッサン言うな

『僕はまだまだ若いんだ』」

 

あの時(・・・)の言葉で返す

 

「『僕』ってガラかよ…って…」

 

かけてもいないメガネをクイっとやる仕草で笑うと

僕の顔を見て驚く銀

 

「え…いや、確かに声は似てる…でもあのあんちゃんは…」

 

「中年太りと見紛うほどのおデブさんってか?」

 

銀の反応が嬉しくて、思わずからかってしまう

 

「え?じゃあ?

ビームとロボの?」

 

「ビーム?って…」

 

「ロボ~?この間の話の~?」

 

正直、その話は忘れて欲しいところなんだが。。。

 

「ああ、開発は出来なかったからな、お詫びに助けに来た」

 

(うそぶ)いてみる

 

「え?え?え?」

 

訳がわからず、銀は困惑している

 

ザアァァァァァァァ

 

「樹海化が解けるな。。。」

 

もうお別れか。。。

 

「いいか、俺が助けられるのはこの一回きりだ

もう命を粗末にするんじゃねえぞ、銀」

 

生きた。。。

話す銀と会えるのはきっとこれが最後だ。。。

 

銀の頭をくしゃくしゃに撫でる

 

「じゃあな。。。」

 

名残惜しさに強く。。。強く抱きしめ

その傷だらけの額に口付けした。。。

 

「あわわわわわわ…」

 

「おお~っ☆」

 

須美と園子がそれぞれに反応するが

当の銀は顔を真っ赤にして固まっていた

 

さよなら、銀。。。

樹海化が解け、祠の前に戻される

 

「どうだった?春信」

 

「それはこっちの台詞だ

どうなったんだ。。。?」

 

「こっちは何も変わらんよ

三ノ輪銀はあの時の戦闘で死亡

生き返ったりはしない」

 

「そうか。。。」

 

ついさっき抱きしめたばかりの少女の温もりに涙が溢れる

 

「泣くなよ…

言った筈だ

例え過去を変えたとしても

その過去はお前の経験した過去ではない

単なる平行世界の出来事に過ぎない」

 

「それでも。。。」

 

「ん?」

 

「それでも。。。どこかの時空では銀が。。。

生き残って。。。二人の親友と過ごしている。。。

今は。。。それだけでいい。。。」

 

「ふん…そうか…」

 

「そうだ。。。それだけで。。。」

 

零れ落ちる涙を拭う事も無く、春信は笑っていた

 

 




正直、コイツはお蔵入りしようと思ってた銀生存シナリオです
一応設定もありますが、説明も続きもなしです
投げっぱなしです
投げっぱなしジャーマンです

だって、誰も死ななかったって事は精霊システムが生まれない可能性が…
そうすれば友奈達の活躍するあの時間軸も存在しない可能性が…
別の平行世界を、一人の少女を救いたいという勝手な都合で改変した
そんな事実にこの先、泣き虫でシスコンでロリコンの春信が耐えられる筈もありません
この先を描くと…

待てや

あ、春信

誰がシスコンでロリコンだ

いや、今回のは完全に言い訳できんだろ
銀にあんなことしちゃって

ハグしてオデコにチューなんて、ただの親愛の情の表れだろ
可愛い孫に爺ちゃんが頬ずりするのと変わらん

それを成人男性が血縁でもない小学生にしたから問題なんだが…

俺と銀の仲だからな!

あっちは見ず知らずのオッサンだと思ってる筈だが

硬い事いうなよ~

馴れ馴れしいな、なにそんなに浮かれてんだよ

ふっ、今月は『鷲尾須美』の第2章も公開だしな!

いきなりのダイレクトマーケティングだな

今回こそは『勇者部所属』で夏凜ちゃんも大活躍のはず!!

あ、そのこと気づいたんだ

流石にあれはショックでかかった。。。

まあ、俺は笑ったけどな

相変わらず性格悪い。。。

まるっきり出番なしじゃないとこが狙い目だね!

ぶっ飛ばすぞ
ってか、なにいきなりこんな小説あげてんの?

なにって、テコ入れだよ

映画の?

それもあるけど、俺の前作の

テコ入れしたところで、そんな読者が増えるとは思えんが。。。

いいんだよ、一人でも増えればそれで勝ちなの!

勝ち負けの問題でもなかろうに。。。

一応「完結」って設定しちゃったし、そのまま続き上げるのもかっこ悪いし

それで新たに作品ページ立ち上げちゃったのか

メインタイトル考えるのに苦労したけどな

またか。。。
あのタイトルのどこに苦労する要素があったんだ?

色々考えたんよ?
候補で言うと『改変!』とか『時を渡る春信(オッサン)』とか

人の名前におかしなルビを振るな

タイムスリップで蛇足だから『新デビルマン』にならって『新三好春信は勇者である』にしました

伏字(ふせじ)を使え、そして巨匠をバカにするのはヤメロ

サブタイトルも困ったわ

『家に帰るまでが遠足です!』ってホント、バカにしてんの?

いや、あの日ちゃんと3人で家まで帰れなかったから…

重い!そして原作見てないと欠片(かけら)も伝わらん!!

「ゆゆゆ」の二次創作自体少ないし
「あの日」が「遠足の日」ってのはきっと読む人は皆知ってるだろうって

さり気に原作ディスるのはやめろ

ディスってないよ~

二次創作少ないって、人気無いって言ってるのとほぼ同義だからな、ここでは。。。

少し反省…

ってか、それなら遠足帰りからの描写とか入れろよ

う~ん、前作がほぼ原作の流れをトレスしてたから

パクリだな

今回は原作からの台詞とか極力省いたんだ

それで伝えたい事伝わらなかったら意味が無いだろ

わからない人は前作読んでみてね!
目次がここ
https://novel.syosetu.org/111171/
遠足話がここ
https://novel.syosetu.org/111171/10.html
だよ!

推していくなぁ。。。

てへっ!

てかそこ、勇者が一人も出てないときの話じゃねぇか。。。

過去編はお前目線の過去を夢に見てる設定だからな

3人の遠足風景がないのは当然か

そこんとこはホントの原作本『鷲尾須美は勇者である』を読んでもらわないと!

露骨な宣伝だな、なにか良い事でもあったのか?

まあ、普通に銀が活躍してるとこ書けたしな

ふん、しかし含みのあるラストだったが。。。

ああ、原作レイプは程ほどにしとかんと

自覚ある分、厄介だなお前は

意味も無く新キャラ出しちゃったし

意味なかったのか、『新デ○ルマン』とか言うから『飛○了』的なキャラ作ったのかと。。。

うん、それはそうなんだけど

なんだよ

自分で言うのもなんだけどテンプレじゃん?
訳知り顔で後から出てくる達観したような友人キャラとか

確かに恥ずかしいくらいのテンプレキャラだな

90年代ならCV:石田彰だね!

伏字使わずに昔の人みたいに言うな
あの人その路線でも、いまだにメッチャ現役だぞ。。。

続き書くなら名前とか設定とかも考えるけど

全然考えてないってことか?

実は流暢に喋れるようになった義輝(よしてる)だったとか!

ある意味意外だが、消えたはずの精霊、戦闘不参加、流暢に喋るって、もう別キャラじゃねえか

いっそ読者から募集するか?!設定と名前!

そんなの書いてくる奇特な読者がいるか?

っていうか

読者自体がいないんだったな。。。

そ、その為のテコ入れだし!

増えるといいな。。。読者

哀れみの目で見んな!

哀れ哀れw

くっそー

大体、ホントに感想にでも書かれたらどうすんだ?
先のこと何も考えてないくせに

うん、タイムスリップもので平行世界なら、結構好き勝手できるかなと

ほう?たとえば?

今読んでる最中の『乃木若葉は勇者である』も使えるかもって

まだ読み終わってなかったのか。。。

それも上巻をな!

遅いにも程がある

序盤の絶望感は『ガンパレ』や『マブラヴオルタ』に通ずるものがあるぜ

なんで(じか)でタイトル言っちゃうかな。。。

つい、チャッカリ!

ホント、ケンカ売っていくスタイルだな、お前は

あの絶望の中なら、満開どころか勇者になれるだけでも腕一本と引き換えで良いよ、俺なら

そんなだから男は勇者に選ばれないんだろうな。。。

神樹様のい・け・ず!

そういや、四国以外の勇者も出るんだっけ?

流すなよ…
うん、長野の勇者がいた
蕎麦(そば)推しだった

なんだ?そりゃ?

香川の若葉がうどん推しだからなんじゃない?

訳がわからんぞ。。。

まあ、その辺は『乃木若葉は勇者である』を読んでもらえば良いということで

ふむ、ネタバレは感心せんからな

なんか今回、宣伝ばっかしてる気がする

いいんじゃない?映画の2章も来週公開だろ?

あ、それなんだけど

うん?

書いてる時点では公開前だけど、アップするのは公開後だからコレ

はあ?

内容が内容だし、2章後にすべきだろうと判断した

いや、それはいつものことだから今更気にしないが

どした?

俺の認識を一定させろ!
アップ時点の感覚なのか、書いてる時点の感覚なのか!

その場の勢いで書いてる後書きにそんなん求められてもなあ

ちゃんと考えて書け!
人様の目に晒される文章だぞ!

本気で考えてたら…

考えてたら?

自分の文章なんて恥ずかしくてアップできんわ!

考えなしの素人って怖い。。。

<ではまた会う日まで~>


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3話 インターミッション

第2話の続きです
数分後です
なんで今上げるかって?
それは後書きを見てください



春信はひとしきり泣いた後、彼と共に研究室へ向かう

 

「。。。っ、あれ?お前の研究室ってこっちだったっけ?」

 

「うん、そのまえに寄る所があってな」

 

「寄り道か、お前が研究より何かを優先するなんて珍しいな」

 

「ところで…」

 

「ん?」

 

「俺が出立前(しゅったつまえ)とさっき言った事、理解してるか、春信」

 

「さっきって。。。」

 

「『どうだった?春信』って言ったろ」

 

「ああ、それが何か。。。」

 

ドサッ

 

いきなり全身から血を噴き出して倒れる春信

 

「医務室までもたなかったか」

 

「あ。。。ああ。。。」

 

訳が分からず呻く春信にしゃがみこんで話しかける

 

「やっぱり気づいてなかったんだな」

 

「どう、いう。。。」

 

「お前、あっちで戦ってるとき、ダメージ考慮してたのか?」

 

「ダメージって。。。そんなの。。。一発も。。。」

 

「食らってない訳無いだろ?」

 

「?」

 

「お前の話が本当なら、以前はずっと精霊の加護で戦ってたんだ

防御や回避が下手なんだよ、お前は

三ノ輪銀がどの程度の勇者だったのかはわからんが

一人の勇者が命を落すほどの戦いで

お前一人が参入したからって全員無傷でいられると思ったのか?」

 

「それじゃ。。。」

 

「擬似精霊システムが一応は上手く作動したようだな

そのおかげでダメージも痛みも(しばら)くは感じずに済んだんだ

他の量産型にはない、特殊機能だぞ、感謝しろ」

 

「。。。」

 

「おーい、なんか言えー」

 

指先でつつく彼を睨みつけて何か言おうとする春信

 

「し。。。」

 

「ん?なんだ?」

 

「死ぬほど痛いぞ。。。」

 

「余裕あるじゃないか」

 

「。。。」

 

「ノックしてもしも~し」

 

血まみれの頭をコンコンするが、今度こそ反応が無い

 

「しかし、このままにもできんか…」

 

彼は端末で医療班に連絡する

 

「あ、オレオレ~、急患なんだけど担架まわしてくんない?

詐欺じゃないって、春信が倒れてるんだってば

いや、すぐそこの廊下なんだけど…」

「にわかには信じがたい話だがな」

 

「ま、そうだろうさ

でも僕にはそのときの記憶と経験がある

量産型でも『声』の戻った今なら使えるかもしれない」

 

「しかし、使えたとしても

お前の使う量産型では戦力は期待できんな…」

 

「失礼な奴だな、これでも小型バーテックス相手なら万単位で殲滅したんだぞ」

 

「小型バーテックス?」

 

「ああ、なんか口だけの白い奴らさ

小型っても人間の数倍はあるし数も多い」

 

「ひょっとして『星屑』のことか…」

 

「名前なんて知らん、端末のレーダーにも赤い点以外出てなかったし」

 

「まあ、それだけの数に表示できる筈もないだろうしな」

 

「『星屑』か。。。言いえて妙だな」

 

「しかし万単位とは凄いな

西暦の末期にはあいつらの襲来で人類が滅びかけたって聞くが…」

 

「そうなのか?

あいつらの攻撃なんて噛み付きと体当たりぐらいだったからな

噛み付きは精霊ガードを越えられないし

体当たりなんて訓練を積んだ勇者なら地面につく前に体勢も整う

武器を振り回す体力が続けば誰だって勝てたと思うけどな」

 

「体力ったって、いつまでもは戦えないだろ?」

 

「そりゃそうさ、でも疲れたら結界の中に戻れば奴らは追って来れないからな」

 

「精霊ガードに結界か…」

 

「なんだ?」

 

「いや、まるで無敵チートと安全地帯、ゲーム感覚だなと」

 

「実際、あいつらなんて12星座のバーテックスに比べりゃ数が多いだけのザコだったし」

 

「春信、お前はそのチートなしでも戦えたか?」

 

「え?」

 

「精霊ガードや結界のそばって条件抜きでも戦えたかってことだよ」

 

「そりゃそうだろ、勇者の強さは敵を倒せてこそだろ」

 

「その強さも精霊なしの量産型じゃ雲泥の差だ

やはり俺はお前が勇者システムを使うのに賛成はできんな」

 

「なんだよ、今更。。。」

 

「協力はするさ、俺の研究の為でもあるからな、しかし」

 

「しかし?」

 

「今までと同じように考えてたら死ぬぞ、お前…」

(目が覚めると知らない天井が目に映った。)

(いや、以前も見たあの病室の天井。。。)

(あれ?でもあの経験は無かった事になるから初めての病室なのか。。。?)

 

自分でも混乱していると自覚しつつ、状況を確認する春信

 

「あの時なら夏凜ちゃんが僕の手を握っててくれてたんだけど。。。」

 

呟くと

 

「じゃあ、代わりに俺が握っててやろうか?」

 

ビクッ!と体を勢い良く起こし、声の主を見る

 

「~。。。!」

 

「痛くて声も出んか、無理して起きるからだ」

 

「お前が。。。」

 

「うん?」

 

「お前が気持ちの悪い事を言うからだ。。。」

 

痛む体に震えながら精一杯放った嫌味だったが

 

「そうか、俺の言葉でそれだけ元気が出たなら何よりだ」

 

本気か嫌味で言ってるのかもわからないテンションで返される

 

「目覚めて最初に見るのがお前の顔なんて最悪だ。。。」

 

「そいつはすまないな、すまないついでに」

 

「?」

 

「お前の汚い花火で汚れた白衣、弁償しろよな」

 

「お前。。。それを言う為に僕が目覚めるの待ってたのか。。。」

 

「目が覚めたら真っ先に言ってやろうと思ったからな」

 

(なんて奴だ。。。)

 

そう思っていると、部屋の隅からクスクスと笑う女の声がする

 

「?」

 

顔を向けると若い看護師が声を抑えて笑っていた

 

「すみません、お二人のやりとりがおかしかったもので」

 

(一体アレの何が面白かったのやら。。。)

 

「こんな事言ってらっしゃるけど、彼がここに運んで来てくれたんですよ?」

 

(コイツが?僕をわざわざ運んだ?)

 

「救護班を呼んだんだが、『近くで倒れた』って言ったら『自分でつれて来い』って言われた」

 

「だって、大赦内であんなに血まみれで倒れてるなんて誰も思いませんよ!」

 

「まあ、実際近かったし、事情を説明するのも面倒だったからな」

 

「その後も目が覚めるまでずっと付き添ってたじゃないですか」

 

「目覚めと共に白衣の弁償を叩きつけたら面白いかと」

 

「うん、お前はそういう奴だ。。。」

 

「仲がよろしいんですね」

 

(どこをどう解釈したらそうなるんだ、この看護師は。。。)

 

「とにかく、丸1日眠ってたんですから、ゆっくりと休息を取って下さいね

食事は後で持って来ますから」

 

(丸1日。。。ホントに暇だったんだな、コイツは)

 

彼を見ながら考えていると看護師は席を外した

その途端に本題に入る

 

「で、俺の研究成果はどうだった?」

 

(結局はそれか。。。)

 

「ああ、確かに凄かったよ。。。

これだけのダメージを一時的にとはいえ、無かった事に出来るシステム

もし戦闘中にこの状態になってたら銀の代わりに僕が死んでたかもな」

 

「何言ってんだ」

 

「あ?」

 

「代わりに、どころか共倒れだ

あっちじゃ見知らぬ勇者の死体が一つ増えて大変だったろうさ」

 

(確かにそうか。。。)

 

溜息を吐くと

 

「大体、転移前にちゃんと伝えてたのにろくにダメージ考慮してなかったお前が悪い」

 

「そうは言うが、実際に痛みもダメージも感じないんじゃ危機感も薄れるって」

 

「ふむ、そういう弊害もあるのか

精霊ガードと違って後々ダメージが来る事を考えると…」

 

(あ、完全に思考モードに入ったな)

(こうなるとコイツは周りが見えない)

(ほうっておけば研究室に戻って何かやり始めるだろう)

 

「それじゃ僕はゆっくり療養させてもらうよ。。。」

 

ベッドに横になると彼はブツブツ言いながら出て行った

翌日、また彼が病室に来る

研究について話してる間に

春信は大きなが溜息を吐いた

 

「何か欲しい物でもあるのか?」

 

「夏凜ちゃん成分が足りない。。。」

 

「妹に心配させたくないから連絡取らないって決めたのは、お前だろ」

 

「でも、寂しいんだもん!夏凜ちゃんに会いたいんだもん!」

 

「いきなり幼児退行するなよ、お前がいいなら知らせちまうぞ?」

 

「いや、それはダメ」

 

「我侭な奴だ」

 

「勇者ってのはワガママだからな!」

 

「なんだ?それは?」

 

「僕の自論だよ、以前勇者だったときに悟ったのさ」

 

「世界を救う勇者たちが我侭な小娘だらけだったら世も末だが」

 

「ん、あれ?そういうことじゃなくてね。。。」

 

「ああ、いいよ、お前なりの理屈はあるんだろうが聞かせなくて良い」

 

「少しは興味持ってくれないと()ねるぞ。。。」

 

「面倒くさい奴だな」

 

ふうっ、と溜息を吐くと鞄から何かを取り出し

トンっとベッド脇のTV棚に小さなモニターを置く

 

「?」

 

怪訝な顔をする春信をよそにスイッチを入れると

 

『おにーちゃん、ちゃんととれてるー?』

 

その声に飛び起きる春信

 

「こ、これは。。。」

 

「お前の実家の部屋から無断で持ち出したデータだ、今はこれで我慢しろ」

 

そこには春信秘蔵の『幼夏凜ちゃん映像集』がまとめられていた

 

「僕の部屋から。。。なんてことしやがるんだ。。。」

 

「ニヤけた(ツラ)で言うな、見てるこっちが恥ずかしい」

 

「しかもコレ、編集までされてるじゃねーか!」

 

「あんな馬鹿でかいデータ、そのままもって来れる訳がないだろ」

 

「編集中に変な気起こさなかったろうな?」

 

「なんだ、変な気って」

 

「コレ見たら、誰だって夏凜ちゃんに惚れちゃうだろ~」

 

「お前、気持ち悪いぞ」

 

「相変わらず表情も変えずにキツい事を言う。。。」

 

「幼女の可愛さなんて、犬猫の可愛さと同じだろ」

 

「ふーん。。。」

 

「なんだ?」

 

「いや、お前でも動物を可愛いとか思う感情があるんだなって」

 

「人の事を冷血男みたいに言うな」

 

「すまん、動物実験とか平気でしそうだって思ってた」

 

「それは平気だが?」

 

「やっぱ平気なんだ。。。」

 

愛玩動物(ペット)実験動物(モルモット)は切り分けて考える、研究者なら当然だ」

 

「僕にはよく分からん。。。」

 

「お前は勇者だからな、全部を愛せるならそのままの方がいいさ」

 

「そういうもんか。。。」

 

「しかし」

 

「ん?」

 

「会話中も一向(いっこう)にモニターから目を離さないな」

 

「『夏凜ちゃん分』を補給中だからな」

 

「『糖分』や『鉄分』みたいなもんか」

 

「僕には必要不可欠な要素だからな!」

 

「乃木園子に仕えてた一時期は忘れてたんじゃなかったっけ?」

 

「あの頃は世界が灰色だったぜ。。。」

 

「勇者部の小娘たちの事を気にして、それどころじゃ無かったようだが」

 

「ついでに園子嬢と世界の命運も気にかけてた」

 

「優先順位が無茶苦茶だな」

 

「とにかく今は目の前の夏凜ちゃんだよ~」

 

「ふうっ、これ以上は話も進められそうに無いな」

 

「帰るのか?」

 

「ああ、お前が思うほどには暇じゃないんでな」

 

「そっか」

「。。。サンキュウな」

 

「なにが?」

 

「まあ、色々と。。。

この夏凜ちゃん映像とか」

 

「いいさ、じゃあな」

 

「ああ、またな」

 

(ホントは、銀に会えた事とか、色々と感謝する事はあるんだけど。。。)

(言っても伝わらないだろうな、こんな感情)

 

 




はい、一段落です
次の時間移動までは療養中の春信
なぞの男(名前未定)とのやりとり
(うるお)いがないですね…
若い看護師はきっと美人だけど腐女子に違いない!

。。。なんでわざわざ潤いをなくす方向に設定付け足すんだよ
美人ならラブロマンスに発展させるとか考えろ

おう、春信、体はもういいのか?

こっちの俺は本文とは切り離して考えてもらわんと何もできんよ

それもそうだな、しかし大人の女性とラブロマンスとか
シスコンでロリコンの春信には苦痛でしかないだろ

だから違うっつーに

っていうかインターミッションなんでここで話す様な事は無いんだが

折角出てきたのに、不要扱いはやめて。。。

あ、『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』<第2章>「たましい」観て来たよ!

おう、映画か

うむ、『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』<第2章>「たましい」をな!

う、うむ

いやー、よかったぜ『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』<第2章>「たましい」!

何かそれはフルで言わないといけない呪いでもかかってるのか?

長いタイトルってなんとなく言いたくなるよな!

いや、知らんけど。。。元気だな

まあ、空元気(からげんき)なんだけどな…

どうした?

結末は分かってるから覚悟して観に行ったんだが、それでも辛かった…

そ、そこに触れちゃうんだ?
今までわざわざ後書きでは触れないようにしてきたのに。。。

今回ばかりは客が少なくて助かった!いい年してボロボロ泣いてたから!

だから!客が少ないとかイチイチdisり入れんじゃねぇ!

あ、大丈夫

何がだよ。。。

平日の昼の部観てきたから、客が少ないのは他の映画も同じだった

え?

どした?

ゆ、優雅だな、平日の昼から映画って。。。

ん、まあそうかな?

へ、平日だと安い曜日とかもあるしな!

ああ、確かに安かったな、別にそれ狙ったわけじゃないが

いや、収入なくなるなら節約はしないと!

何言ってんだ?

だって無職のニートに成り下がったんだろ?

なんでだよ!お前じゃあるまいし!

なんだ違うのか、気を使って損した。。。

お前に気を使われるとは…

じゃあ、ちゃんと買い物はしてきたんだろな?

うーん

なんだよ?

いや、既にパンフレットは売り切れだった…

ひゃっほう!人気上場ジャン!?

買えなくて落ち込んでる人間の前で露骨に喜ぶな

日を改めればきっと買えるさ!

くっ!

他には?金余ったんだから買ったんだろな?

余ってるわけじゃないんだが…
『乃木若葉』の下巻と『勇者部所属』の原作、3冊とも買ってきた

クリアファイルは買わずか。。。

それは前に言ったろ

しかし3冊全巻か、奮発したな!

まあ、お安くないから結構迷ったけど、買ってよかった

「お安くない」とか言わなくて良いから。。。

思った以上に原作に忠実にアニメ化されてて笑う

お前の言い方に棘しか感じられないのはなんでだ?

気のせいだろ?純粋に楽しんでるぞ、俺は

しかしそうか、原作に忠実か。。。ふふふ



え?

一箇所だけ

何が?

お前の影だけ消されてた気がするな

は?

夏凜ちゃんのあの話だからてっきり出てくると思ってたんだが

えーと

買ってから原作読んだら1コマだけ影が出てたのに

おい。。。ネタバレはそこまでに。。。

やっぱ公式でもこんな扱いなんだな!お前!

うっさいわ!

ぷぷぷぷー

大体、こんな本文、前の2話に続けて出すのが普通なのになんでこんなに間空けたんだよ?

だって映画見てから何か書きたいこと出来るかもって思ったんだも~ん

それで入れる話が俺の出番カットとか。。。

はっはーん!ざまあー!

やっぱ死ね!


<番外編>

「でも本当に、どうして大赦内であんな大ケガを?」

「いやそれは。。。」

「大した事じゃない、全身から血を噴き出して貧血で倒れただけだ」

「充分、大ケガです!」

「そーだそーだ!他人事(ひとごと)だと思って適当に言うなー」

「三好さんは自分の事なんだからもっと自覚を持ってください!」

「大体、医療班には伝えたから、知ってるはずだろ?」

「えっ?話、通ってるの?!」

「じゃあ、本当だったんですか、アレ?」

「まあ、普通に考えれば信じられないってのはわかる」

「意外とアッサリ事情話したんだな。。。」

「事情って言うか、三好さんの事はわりと皆知ってますし…」
「そうですか、それではお大事に…」

「あれ?なんでいきなりよそよそしく出てったんだ?あの看護師。。。」

「そりゃそうだろ」

「?」

「妹の事、妄想しすぎて全身から血噴き出すような男とは係わり合いになりたくない」

「なんだよそれ!」

「だから医療班に言った、いいわけだよ」

「そんな人間、いるわけ無いだろ?!」

「それを信じる奴らがいるんだから、大赦ってのは面白いところだよな」

「ちょっと待て、さっき『知ってるはずだろ』って言ってたが。。。」

「もう大赦中の噂になってるぞ、『あのシスコンが全身から鼻血噴き出すほど悪化した』って」

「嘘だといってくれぇぇぇぇぇっ!!!!?」

退院後、周りの態度で本当だと知り
『アイツは悪魔だ。。。』
と本気で思う春信なのですが

それはまた別のお話


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4話 ユウキユウナ

この話には『乃木若葉は勇者である』のネタバレ、訳のわからんギャグが含まれます



瓦礫の町に佇む春信

 

(ここで待っていれば勇者たちに会えるって話だったが)

(神世紀以前の勇者か、どんな娘達(こたち)なんだろうな。。。)

 

「人だ!人がいるぞ!」

 

球子の声に一斉に振り向く6人

瓦礫の町で見つけた生存者

喜び勇んで春信の方へ駆け寄ってくる

その6人の少女達をジックリと見比べた

 

(一人は長身の。。。なかなかの美人だ)

(ハンサムといってもいい)

 

「きみ、大丈夫か!」

 

(一人は巫女だな、オデコが輝かしい)

 

「他に生き残った方はいるんですか?」

 

(一人はおとなしそうな文学少女って感じか)

 

「よかった…無事な人が一人でもいて…」

 

(一人は子供?チンチクリンはいなきゃダメなのか?神樹様の選択には)

 

「タマが見つけてやったんだぞ、感謝しタマえ!」

 

(一人は影のある少女だな、これまたタイプの違う美人だ)

 

「周りに…敵は…?」

 

(一人は。。。)

 

「みんな、足速いよ~」

 

「友奈。。。?」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「友奈じゃないか、何でお前がここに?」

 

両肩を掴んで問い詰めると戸惑ったようにうろたえる友奈

 

「えっ?え?え?」

 

「ちょっと…高嶋さんが困ってるじゃない…」

 

千景が割って入る

 

「タカシマ?いや、結城友奈だろ?間違うわけ無いよこんなチンチクリンの。。。」

 

「チンチクリン…?」

 

春信が友奈の頭をポンポンしてると

千景が段々と敵意をあらわにしていく

 

「あ~!き、きっと誰かと勘違いしてるんじゃないかな!?」

 

「確かに。ユウキユウナと言われたが、彼女の名は高嶋友奈だ、人違いではないのか?」

 

友奈の言葉を助けるように説明する若葉

友奈は今にも男に斬りかかりそうな千景をなだめる

 

「ほら、ぐんちゃんもあんまり一般の人に鎌向けないで…」

 

「でも…この人、失礼…高嶋さんに…」

 

そんな様子に気付く事もなく、春信は友奈を見つめる

 

「いや、その気の使い方とか。。。

多分、人の言うこと聞いてない様に見えて、一番周りを見てるような

人が傷つくの見てるくらいなら自分が危険に飛び込んじゃうような子。。。だろ?」

 

「良く…わかってるじゃない…」

 

「いやー、そんなに褒められるような事してないんだけどなぁ」

 

同意する千景と

頭を抱えて照れる友奈

 

「しかしその様子、高嶋って姓。。。」

 

そのとき、ポク、ポク、ポク、チーン!という音が春信の頭で響いた

 

「そうか、そういうことか。。。」

 

「今度はなにを…」

 

友奈の両手を握り、春信はヨヨヨとでも言いそうな顔で祝辞を放つ

 

「ご結婚おめでとうございます、友奈さん!」

 

「「「「はあっ?!」」」」

 

「えーと、あれ?」

 

「ちょ、ちょっと…あなた一体なにを…」

 

今度は割って入った千景の手も取り

 

「そして貴方がお相手ですね、高嶋グンさん!」

 

「「「「ぶっ!」」」」

 

「えっ、えっ?私…?」

 

いきなりの話の展開について行けず、千景もうろたえる

 

「いやー、女の子にモテるとは思ってたけど

西暦の末期がこれほど性にリベラルだったとは!」

 

「は、ははは、ぐんちゃんと結婚かぁ、なんか照れるね」

 

上機嫌で祝う春信と

わけが分からないまま照れまくっている友奈を見つつ

ひなたがこっそり若葉に話しかける

 

「若葉ちゃん…」

 

「どうした?ひなた」

 

「この人おかしいですよ」

 

「うん、それは誰もが気づいている」

 

「いえ、そうではなくて『西暦の末期が』なんて言葉、普通使いませんよ?」

 

「ふむ、言われてみればそうだな…」

 

「これはきっと…」

 

「きっと?」

 

「バーテックスの襲撃に衝撃を受けて

『自分はこの時代の人間じゃない』って思い込んでるんじゃ?」

 

「なるほど、天恐症のステージ3か4がおかしな形で発症しているわけか」

 

天恐症(天空恐怖症候群)、あの日いきなり空から襲来したバーテックスの恐怖が

精神に刻み込まれ、様々な障害を表す人が出てきた

主に空を見上げる事に恐怖を感じる人が多い為、この名が付けられたのだが

その症状には4段階があり

もっとも酷いステージ4では自我の崩壊、記憶の混濁、発狂に至る場合もある

 

「ええ、あまりにも普通に話しているから気づかなかったけど」

 

「そう考えると可哀想な人だな…

しかし友奈の名前を知っていたぞ?」

 

「私たちの会話をどこかで聞いていたか

ホントに知り合いにそんな名前のそっくりさんがいるか…

多分、前者でしょうね、苗字も適当だったし…」

 

「適当?」

 

「『勇者のユウキユウナ』ですよ、略して『ゆうゆうゆう』なんて冗談みたいじゃないですか」

 

「た、確かに…」

 

「千景さんの名前も友奈さんの言葉から想像したんでしょう

高嶋グンとか適当にも程があります」

 

(なにか。。。あの二人からおかしな視線を感じる?)

 

不審に思った春信が若葉とひなたに話しかける

 

「なにか。。。?」

 

「ああ~、なんだ、その~君は~」

 

珍しくオドオドしている若葉を撮影しながらひなたが囁く

 

「若葉ちゃん、言葉はちゃんと選んであげてくださいね!」

 

「?」

 

「き、君は~、み、未来かなにかから来たの…かな?」

 

「「「「はぁ?!」」」」

 

突然の若葉の発言に驚きを隠せない4人と

あちゃ-と顔に手をやるひなた

 

「な。。。なぁにを言ってるのかなぁ~?」

 

「「「「ええっ?!」」」」

 

露骨にうろたえる春信に更に動揺する4人

ひなたは若葉の腕を引き、耳元で囁く

 

「バカですか!若葉ちゃんは!言葉をちゃんと選んでって言ったでしょう!」

 

「そ、そうは言ってもこんな症状の人を相手にどう話しかければいいのか…」

 

はぁ、と溜息を()き、ひなたは諦めたように耳打ちする

 

「こうなっては仕方ありません、ごにょごにょごにょ…」

 

「なに!わ、私にそんなことをしろと言うのか?!」

 

「しょうがないでしょう、あの反応を見るに

彼の脳内設定では『未来人』がビンゴだったみたいですし

これ以上傷を広げない最善の方法です!」

 

「くっ…!やるしかないのか…!」

 

「若葉ちゃん、頑張って!」

 

スマホ片手に送り出すひなた

若葉はぎこちない足取りで春信の前に出ると

 

右手の人差し指を口元へ持っていきながらヘタクソなウィンクをして

 

「き…禁則事項です!…か?」

 

凍りつく4人の勇者たち

春信もどう反応したら良いのか迷っている

その瞬間をひなたは迷い無くスマホのカメラに収めていた

 

「ひなたぁぁぁぁぁぁっ!きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「仕方が無いでしょう、あそこまでいっては誤魔化しようがありません

この機に私の若葉ちゃんコレクションを増やす計画に切り替えたんです!」

 

(ああ。。。西暦の勇者もアホの子だらけで。。。なんか安心した。。。)

 

最低の出会いになぜかホッコリする春信をよそに

若葉はひなたのスマホからいつか恥ずかしい自分の記録を消してやると誓ったのだった

<挽歌>

 

瓦礫の町で休憩中、春信は歌っていた

 

♪~

 

ふと耳に入ったその歌声に若葉が足を止める

 

(あれは三好春信…なにやら歌っているな…)

 

♪~

 

(行軍歌、戦意高揚歌か、なかなかに勇ましい歌だな)

 

♪~

 

(悲しみさえも…いつか勇気に、か…)

 

♪~

 

歌い終わった春信に若葉が声をかける

 

「やあ春信、なかなかに良い歌だな」

 

「おっ、若葉か、分かるか、この歌の良さが」

 

歌を褒められて春信は上機嫌だ

 

「うむ、まるで我ら勇者を歌っているかのような歌詞、気に入ったぞ、しかし…」

 

「しかし?」

 

「歌の最後に出てきた言葉はなんと言っていたのだ?」

 

「えっ?」

 

「浅学ですまないが、思い当たる単語が浮かばんのだ」

 

「あ。。。そ、そうなんだ。。。うん、若葉なら知らない。。。かもな」

 

「むっ、何か西洋の言葉なのか?」

 

「い、いや、そうじゃなくてね。。。」

 

「良かったら教えてもらえないだろうか?」

 

「あ~、なんていうか~、勇者の心意気を表す言葉で~」

 

「ほほう!それはますます聞きたいな!」

 

「え~と。。。『頑張ればダメな事など何もない』っていう意味で、漢字もそのままこう書くんだ。。。」

 

春信が地面に文字を書いていく

 

「なるほど、それは確かに勇者の心意気だな!うむ、ありがとう!

そうか、勇者の心意気、いい言葉だ、頑…」

 

呟きながら皆の(もと)へ戻っていく若葉を見ながら春信も呟く

 

「平和だった3年前が2015年で若葉は小5だったっけ。。。」

 

はあ~と溜息を()

 

「そっかぁ、知らないのかぁ、ガ○()ダム(駄無)。。。」

 

物凄く残念そうに呟く春信だった

 




春信(以下略):あっ、終わりなのか

mototwo(以下略):うむ

どうしたんだ?急にこんなの断片的に上げて
ノリが前の後書きみたいになってんぞ?

アホみたいな明るい話が書きたくなった

は?今まででも結構書いてたじゃん?

もっと書くの!西暦末期のあっかるい話書くの!

どした?いきなり

そんで「『乃木若葉は勇者である』って楽しい話なんだな」って思った人達が原作本読むようにするんだ…

珍しいな
いや、今までも「人気出ますように」とか言ってはいたが、そんなに積極的に出るとは。。。

そして俺と同じように絶望に身を裂かれるがいいさ…

うおいっ!

あ、ちゃーんと明るいとこは明るい話だよ、アニメ『このすば』の朱白あおいさんが書いてるし
西暦勇者たちの馬鹿っプリも楽しかった

いやいや、その後に絶望が待ってるって言い切っちゃったぞ、お前。。。

どうせ300年後には四国以外滅んでるのは分かってるんだから、それは皆承知の上だろ…

うわぁ、病んでるなぁ。。。

元々、そういうの分かった上で読んでるのに、なんでこの子達こんなに報われないのって…

もういい、もういいんだ。。。

春信ぅ…

これ以上話すとネタバレにしかならんから、もう喋るな。。。

ハルルン、冷たい~

その呼び方も()せ、こっちしか読んでない人には訳が分からんだろ

詳しくは『三好春信は『元』勇者である』読んでくれぇ…

そういうとこ、ホントいやらしいな、お前

実は、この前に大阪と諏訪の話も書いてるんだが

大阪と諏訪って長野?よく分からんが、上げろよ、じゃあ

あの結末考えると愉快な話上げるの躊躇(ためら)われる…

よっぽどなんだな。。。

特に諏訪の話は…

話は?

あァァァんまりだァァアァ!

泣き出すなよ、読んでないこっちは訳がわからん。。。
ってか本文の内容だと、俺いきなり瓦礫の町で「嗚呼~ガン○ム~」って熱唱してるんだが?

流石は勇者部部室に「俺の忘れ物」歌いながら闖入(ちんにゅう)した男、一味違うな!

いや、ホント訳が分からん。。。

まあ、今回お前は何もわかってないまま過去に行って色んな人と出会う予定だから

説明なしで?

そそ

一体それに何の意味が。。。

旅なんて、意味や理由がハッキリしない方が楽しめるもんだって!

絶対嘘だ!なんか企んでる顔だ!!

ひょんな事から始まったセンチメンタルジャーニー…

は?

やはりこの旅は単なるセンチメンタルジャーニーなどではなかった…

おい。。。

次回も春信と地獄に付き合ってもらう…

ノリだけでボトム○使うの()めろ、ホントに

次回「大阪」

って、ホントに次回予告してんのか?!

<ホントになるかは気分次第!☆>


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5話 大阪

この話には『乃木若葉は勇者である』のネタバレ、訳のわからんギャグが含まれます



(ここは。。。建物の中、いや。。。)

(こんなところで何をさせるつもりだ。。。)

 

思案する春信の耳に女性の叫び声が飛び込んだ

 

「いやあぁぁぁぁぁっ!」

 

「へっへっへ…どうせもう皆死ぬんや、エエ事しようぜ…」

 

「まさかこんなお約束の現場に出くわす機会があるとは。。。」

 

「な、なんじゃ!お前!?」

 

女性と男の間に割って入ると、躊躇いも無く懐からナイフを取り出す

 

「追い詰められすぎだろ。。。もうちょっと冷静になれよ。。。」

 

(正直、素人の扱うナイフなんかに警戒する気すらしないんだが)

 

しかし相手はよそ者の話を聞く耳など持たないらしい

 

「ブッ殺す!」

 

叫びながらナイフを突き立てて来るその男を

軽くいなして手首を捻るとナイフを落して声を上げる

 

(いた)(いた)たたた」

 

「どうせ死ぬと思ってるなら、このまま腕を折って外に放り出しても良いんだが。。。」

 

勿論ただの脅しだ

だが、こういう輩には多少きつめの言い回しの方がわかりやすい

 

「わ、わかった!わかったから放してくれ!」

 

溜息を吐いて突き放すと痛そうに手首を撫でながら睨んでくる

すると奥から他の生存者も出てきた

 

「あっ、アニキ!」

 

(アニキって。。。流石は西暦って言うべきなのか?)

 

「おう、どうしたんだ?」

 

数名のグループのリーダー格らしい男が声をかけると

さっきまで怖気づいていた男がまた調子付く

 

「アニキ、あの赤い奴がいきなり俺にケンカ売ってきたんですよ!」

 

(うわぁ。。。適当な事言ってやがる。。。)

 

「ほぉ~う、あの赤い奴がか」

 

「確かに赤いな」

 

「うん、赤い」

 

「見事な赤さや」

 

「いや、赤さは言及してないっスよ!」

 

(なんだ、この昔見た漫画みたいなノリ。。。)

 

「そんだけ赤いって事は、3倍速かったり、強かったりするんか?」

 

「いやいや、きっと新ルパ○三世のコスプレやって」

 

「いや、何言ってんだ、アンタら。。。」

 

「とにかく!赤いってだけで偉そうに出来ると思ったら大間違いやぞ、小僧!」

 

「せや!赤さが強さと直結しとらん事教えたんぞ!」

 

(赤いジャケット着てるだけでなんでこんなに赤に(こだわ)ってるみたいに言われるんだ?)

(コレはツッコミ待ちなのか?)

(西暦の大阪ではコレが普通の会話なのか?)

 

「ま。。。まてまて、こんなとこで人間同士で争ってる場合じゃないだろ?」

 

「お前がケンカ売ったんやろが!この赤が!!」

 

(ついに共産主義者みたいに言われだしたぞ。。。)

 

「いや、そっちのソイツが女の子を襲おうとしてたから止めただけだって」

 

「なぁにぃ~?」

 

(まあ、見知らぬ他人の言葉なんか信じないよな。。。)

 

春信は諦めてチンピラグループを相手にする覚悟をする

自然体の両手を構えようとしたそのとき…

 

「だぁほ!お前、またやったんかい!」

 

(は。。。?)

 

「あのナンパは絶対失敗するって何回も言うたやろ!」

 

「大体、この状況やとシャレにならんっちゅーねん…」

 

(なんか兄貴分たちに(いさ)められてる。。。?)

 

「せやかて…このまま童貞で死ぬんかと思たら、つい…」

 

「せやから()ようにお店で捨てて来い言うとったんや」

 

「素人相手に拘っとるから…」

 

「すまんな、兄ちゃん、コイツちょっとお調子もん過ぎてな」

 

「あ、ああ。。。いや、分かってもらえたらそれでいいんだけど」

 

「しっかし見ん顔やし、言葉も変やな、どっかからの旅行者かいな?」

 

「ああ、四国から来たんだ」

 

「そうか、災難やったな、旅行中にこんな目におうて」

 

(こんな目に、か。。。一体どういう状況なんだ?地下街みたいだが。。。)

 

「そうだ、今の状況、知ってる事があるなら教えてくれないか?」

 

春信の質問に互いに顔を見合わせて首を振る

 

「多分、アンタの知ってるのとおんなじやで」

 

「何日か地震やら続いた後…」

 

「あの日、いきなり空からあの白い化けモンが降って来たんや」

 

(白い化けモン。。。小型バーテックスか)

(大赦は『星屑』とかいうコードネーム付けてたんだっけ)

 

「周りの(たて)もんも人間も食い散らかす化けモンから必死でウメ地下逃げて」

 

「ウメチカ?」

 

「ああ、梅田の地下街のことや」

 

「とにかくアイツらが入ってこんようにバリケード作って」

 

「色んな店や事務所から物運ぶん大変やったで」

 

「そんで食料とか、かき集めてもう1週間や」

 

「なんぼウメ地下が広い言うても食料なんて限られとる」

 

「いずれはジリ貧になる、その前になんとかせんといかんのやが」

 

「どうしようもないっスよ、アニキ…」

 

「弱音吐くな、気合で乗り切るんや!」

 

「だって、俺見たんスよ!ポリさんが拳銃撃ったのに」

「あの化けモン、怯みもせんとポリさん食うてしもたんやで!」

「あんなん、人間が勝てるわけ無いって…」

 

「そやからって女の子襲ってもしゃーないやろ!」

 

「だって、俺、童貞のまま死にたない…」

 

「あのなぁ」

「こういうときこそ、男の真価が問われるんやぞ」

「ここで男見せたら、本気で惚れてくれる女も出てくるもんや!」

 

「せや!お前みたいな童貞こじらせた奴には逆にチャンスやと思わんと!」

 

なんだろう、世界の趨勢(すうせい)がかかってる時期の筈なんだが

弟分の童貞卒業が同レベルで語られてる気がする。。。

 

「しかし。。。」

 

「ん?」

 

「今の話だと銃は効かない、建物も壁にならない」

 

「せやな」

 

「なんでバリケード食い破ってこっちに入ってこないんだろ?」

 

「そんなん知らんがな」

 

「地下が苦手なんか、地上片付ける間放ってるだけなんか…」

 

「もう1週間やで、流石に自衛隊とか米軍も助けに来ててええはずやろ?」

 

「でもドンパチの音なんか聞こえてけえへんぞ?」

 

「なんぼなんでも梅田で戦車や戦闘機出すわけにいかんやろ」

 

「そもそも、軍隊で勝てるんかどうかも…」

 

いかん、不安を煽ってしまったか。。。?

 

実際、僕の時代には四国以外地上はなくなっていた

なんでああなったのかはまだわからないが

いずれは人の住めない土地になる

300年の間のどの時点でそうなったのかわからないが。。。

 

この人たちとその子孫が生き残るためには四国へ行くしかない

しかし。。。

 

「皆が動けるうちに、食料をもって安全な場所に避難するってのは。。。」

 

「それはもう皆に提案した」

 

「でもここ以外にどこが安全やっちゅーねん?」

 

「そう言われたら行き先も考えんと出るわけにいかん」

 

「少なくとも、今この場所にアイツらは入って()んのやし」

 

「助けを待つんやったら篭城するしかないもんなぁ」

 

「助け、か。。。」

 

正直、この時代の資料は大赦内でも極秘扱いだ

僕程度の権限ではほとんど知らない事ばかり

助けが来るのか、来ないまま全滅したのか

それすら分からない

 

「軍隊の助けがアテにならない以上、自分でなんとかするしかないよな?」

 

「なんとかって?」

 

「ここで過ごす為に適応するか」

「ここを出て戦うか。。。ってか逃げるんだけど」

 

「さっきも言うたやろ?逃げるとこなんかあらへん」

 

「四国へ行ってみないか?」

 

「はあ?」

 

「こういうときは神頼みっていうじゃん?」

「四国は八十八ヶ所巡りがあるくらい寺社仏閣に守られてる」

「大橋で陸続きにもなってるし!」

 

「…にいちゃん」

 

「うん」

 

故郷(くに)へ帰りたいのは分かるけど、無茶言うたらアカンで?」

 

「え?」

 

「なんぼなんでも理由がこじつけ過ぎや、それで付いてく奴なんておらんで」

 

「そ、そうかなぁ。。。」

 

「アンタ一人を外に出せるなら無理には止めんけど」

 

「バリケードどけたらあいつ等が入ってくるかも知れん」

 

「誰も手伝わんし、勝手も許されんで」

 

「なるほど。。。」

「いいか春信、今回は自分の身が危ない時以外変身するな」

 

「なんで?変身しないと勇者の力が使えないじゃないか?」

 

「だから勇者の力を使うなって言ってるんだ」

 

「どういうことだよ?戦いに行くんじゃないのか?」

 

「違う、調査だ」

 

「調査?」

 

「西暦末期の状況ってのは大赦でもほとんど記録が残ってないんだ」

 

「極秘事項って事か」

 

「それもあるが、情報自体が無いんだ」

「なにせほとんどの都市は全滅させられた時期だからな」

 

「だから情報を集める為の調査を僕にしろって?」

 

「別の時空とはいえ、同じ歴史を辿る予定の過去だ

調べれば現在に活かせるデータは取れるだろう」

 

「僕なら万一のときは自衛できるってことか。。。」

 

「できればそれも最小限にして欲しい」

 

「なんで?!」

 

「お前のいなかった筈の場所でお前が敵を倒したという事実が

その世界の未来にどういう影響を及ぼすかわからんからな」

 

「できるだけそのままでデータだけ取れってか、しんどいなぁ。。。」

 

「1回目はお前の希望通り、三ノ輪銀を助けに行かせてやったんだ、こっちの希望も聞け」

 

「。。。わかったよ」

 

「あと、この間の戦闘で分かったと思うが、今の自分が昔のように無双できると思うなよ?」

 

「わかってるよ、量産型じゃ小型バーテックス相手でも油断できないんだろ?」

 

「ああ、囲まれて噛み砕かれて死ぬ」

 

「ハッキリ言うな。。。本人の前で」

 

「お前はこれ位言っても足りないくらいだからな」

(これは思った以上に厄介だぞ。。。)

 

データを取ろうにも外に出ることすら難しい状況

 

(出られても今の僕一人じゃ皆を助けて四国へなんて。。。)

 

しかも先の見えないジリ貧の戦況

 

(一旦帰った方がいいんじゃないか?コレは。。。)

 

そう考えてふと気づく

 

(どうやって帰るんだ?今回って?!)

 

神樹様の加護の無い大阪

当然、樹海化などしていない

前回のように樹海化が解けて祠へ戻るという訳にはいかない

 

(アイツ、帰り方とか考えてなかったんじゃ?!)

 

しかしすぐに別の考えが浮かぶ

 

(んな訳ないな、考えた上で僕に話さなかったんだ。。。)

(話す必要が無かったか、話さない事に意味があるのか。。。)

(考えるだけ無駄か、とにかく目の前の事に取り掛かる以外ない)

 

春信はアニキ達の案内で地下街を周ることにした

<With>

 

丸亀城の石垣の上で春信は歌っていた

 

♪~

 

ふと耳に入ったその歌声に千景が足を止める

 

(あれは三好春信…何か歌っているわね…)

 

♪~

 

(この歌は…)

 

♪~

 

(友を気遣う…(すべ)…)

 

♪~

 

(本当に…いつから私は…)

 

♪~

 

歌い終わった春信はふと背後の気配に気付き、振り向く

 

「うわぁっ!」

 

そこには無表情のまま涙を流す千景がいた

 

「ど、どうした、千景?!なんかあったのか?」

 

「?」

 

千景は不思議そうな顔をしている

どうやら自分が泣いている事に気付いてなかったようだ

やっと自分の涙に気付き、顔を拭いながら言う

 

「いい…歌ね…」

 

「あ、ああ。。。わかってくれるか、この歌の良さを。。。」

 

(まさか泣くほど感動してくれる人がいるとは思わなかったが。。。)

(アニメの歌って事は言わない方が良さそうだな、千景には)

 

「皆と出会って…いつかは別れる時が来るのかしらね…」

 

寂しそうに呟く千景

 

(ああ。。。自分の境遇と歌詞を重ねちまったのか。。。)

 

心境を察するが、ここで無責任に励まして良いのか迷う

 

(『別れなどない』そう言葉で言うのは簡単だが。。。)

(彼女たちにはこの先も過酷な戦いが待っているだろう)

 

「。。。」

 

ひと時の沈黙の後、春信は口を開いた

 

「君の心はすでに答えを見た。。。あとは。。。正直に生きろ」

 

少し驚いたように春信を見た千景はその言葉に頷き、応える

 

「マグナ○エース、かっこいいわよね…」

 

「アイア○リーガー知ってんのかよ!なんでだよ!14歳だろ?!

絶対年齢詐称してるよ、お前!!」

 

全力で突っ込まずにはいられない春信だった

「ところで。。。」

 

「え?」

 

「ホントにどこで知ったんですかね?『疾風!ア○アンリーガー』?」

 

「ネットでよ。GB版のゲームもクリアしたわ」

 

「ふーん」

 

「なに?」

 

「いや、千景ってああいう友情とか熱血とか馬鹿にして観ないタイプかと思ってたから。。。」

 

「そうね、昔はそうだったわ…」

 

「というと?」

 

「皆と一緒にいて、クリスマスパーティーなんて体験もして…」

「友情とか日常ってのも悪くないって思えるように…」

 

思わず顔のほころぶ春信に気付き、口をつぐむ

 

「ニヤついてんじゃないわよ…変態…」

 




春信(以下略):えーと

mototwo(以下略):どした?

ひょっとして皆の前で歌っていくの?俺?

そういう展開もありだな

あ、何も考えてないな、コレは。。。

最初の書き出しが定型文っぽくなるから、ネタさえ続けばやりたいけどな

まあ、そうそう思い付かんか

ま、ね

ところで大阪の方なんだが。。。

うん

なんなの?中途半端にも程があるだろ

あの後描くと原作のネタバレになるから

珍しく気を使ってるんだな

それに展開変わっていくから、アホ話はあの程度しか書けなかったの

真面目な話になるのね

そう、んでその辺はこの小説が佳境に入ったら補足していく

ふむ

つもり

うおいっ!!

だって、ホントに「ネタバレ含む」になっちゃうんだもん

前作でアホほどそれやってた奴がそれを言うか。。。

う~ん、やっぱ再放送までやってるアニメの話と発売して間もない小説の話じゃねぇ…

言わんとすることは判るが。。。

『わすゆ』での反省も踏まえてんのよ、コレでも一応は

ありゃあ、酷かったもんなw

春信って人物使って別視点から小説の話を駄々流しにしてたからな、過去編は…

最終回の引用っぷりも見事だったな。。。

いやあ///

照れるな、嫌味だ

まあ、アレも発売から1年半近く経ってたからって言い訳は心の中にあったんだが

今回は流石に。。。か

だからいきなり途中経過抜かして最終回になるかも知れん

最終回は決まってるんだ、内容

それも小説と結構かぶるからどう修正するか、だけどな

こんな見切り発車じゃその言葉すら信じ切れんな

良くあるよな、完結しないうちに原作の続編が始まって立ち消えする二次創作!

嬉しそうに言うな!
そうならないように頑張れよ。。。

は~い、頑張りま~す
皆さんも馬鹿が馬鹿な話書いてると思ってお付き合い下さい

ここで言い訳してる内は怪しいわな
さて、そろそろボ○ムズいっとくか?

ここは丸亀城
人類最後の砦にして勇者たちの学び舎

ん?

ここに乙女達の戦いの火蓋が切られ
男の笑い声がこだまする

あれ?

「さあ、ショーの始まりだ。。。」
次回「丸亀バトルロワイヤル」
勝者には全てが与えられる

○トムズじゃ。。。ない?

<作者は基本的に天邪鬼(あまのじゃく)!☆>


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6話 丸亀バトルロワイヤル

mototwo(以下略):前回、次回予告で「諏訪」と言ったな、アレは嘘だ

春信(以下略):は?

あの部分の予告も入れ替えた

なんだそりゃ?

ちょっとした都合だ、上げる順番が変わった

はあ。。。

というわけで
この話には『乃木若葉は勇者である』のネタバレ、訳のわからんギャグが含まれます

その注意書きは入れるんだ。。。



「はっはっはっはっは!」

 

丸亀城の天守閣の一番上の屋根の上で春信は大笑いしながら拍手していた

 

勇者同士のバトルロイヤル模擬戦

その勝負の行方がこんな形で決着するとは思ってもいなかったのだ

 

「いやぁ、大したもんだ、あのお嬢ちゃん!」

 

「いつの間にそんな所に(のぼ)ってたんですか?」

 

すぐ上から聞こえる男の声に3階窓から戦いを観戦していたひなたが声をかける

もちろん、真上なので春信の姿は見えていないのだが…

 

「最初っからだよ」

「ひなたちゃんは一番良いとこで見るだろうと思ってたからその上にいたのさ」

 

「まったく抜け目のない…で、どうでした?模擬戦の感想は」

 

「面白かった!まさかひなたちゃんまで…」

 

熱く感想を語り合う二人は

まるで観たばかりの映画の話で盛り上がる友人のようだった

(しかし、なんであんな模擬戦やることになったんだろな?)

 

思案しながら廊下を歩いていると

教室から話し声が聞こえる

 

(なんだ?)

 

「…になれよ…」

 

(揉め事?あの娘達が珍しいな。。。)

 

「…そんな事言われても…他に…きな人が…」

 

そっと扉のそばに行き、覗き込む

 

「待ちなよ!…嫌がっている!」

 

そこには友奈と若葉、それに小柄な少女が言い争うような場面が見えた

 

(何かあったか。。。?)

(ここはアレだな。。。)

(場の雰囲気を壊して闖入するあの手だ!)

 

「あ、高嶋くん…って…」

 

ガラッ

 

「俺の忘れ物~♪」

 

歌いながら扉を開ける春信

その目に飛び込んだのは

 

男子の詰め襟学生服に身を包んだ友奈

同じく学生服で小柄な少女に壁ドンしている若葉

何か言おうとしている小柄な少女

 

と、メガホン片手に目をキラキラさせている杏

スマホで3人の様子を撮りまくっているひなた

呆れた顔で固まっている千景

 

(6人。。。千景、ひなた、杏、友奈、若葉、そして。。。)

 

「誰だお前?!」

 

春信は小柄な美少女に問いかけていた

いや、突っ込んでいたというべきだろうか

6人いるのだからその少女が誰なのか解りきっているのだが

春信の頭はそれを理解し、受け入れる事を拒んでいるようだった

 

「み…」

 

「え?」

 

「見るなぁ~!今のタマを見るんじゃな~いっ!!」

 

「あ、ああ、タマ、球子、ああ。。。」

 

その言葉で納得したように球子を見つめ直す春信

女子の制服をきちんと着こなし、髪を下ろして

真っ赤になった顔を手で押さえて恥ずかしがる球子

そして春信はまた叫んだ

 

「いや、誰だよ、お前!!!」

<ともだち>

 

丸亀城の食堂で春信は歌っていた

 

♪~

 

ふと耳に入ったその歌声に球子が食堂へ入る

 

「おばちゃん!肉うどん二つね!」

 

「いや、聴けよ、俺の歌!」

 

一瞬の溜めもなく、うどんを2杯注文した球子に思わず突っ込む

 

「お、おお、歌か、ヒーローの歌だな!続けてていいぞ!」

 

「まったく、タマは。。。」

 

文句を言いつつ続きを歌いだす春信

 

♪~

 

(今を生きる…熱い心…)

 

♪~

 

(杏は何が幸せなんだろう?何をしたら喜ぶんだろう?)

 

♪~

 

パチパチパチ

 

うどん2杯を食べ終わる頃

春信が歌い終り、球子は拍手する

 

「いやー、ヒーローの歌って深いもんだな!タマ、感動したぞ!」

 

「おお、そうか、お前にも良さがわかるか!」

 

思いの外、好評だった事に気を良くする春信

 

「でもヒーローは『こどく』だなぁ…」

 

「えっ?」

 

「たった二人しか友達がいないなんて、タマには耐えられないぞ…」

 

「ふむ。。。」

 

「タマは杏が一番好きだし、一番大事だ

でも、若葉やひなた、友奈と千景も大事な友達だ!」

 

「そうだな」

 

「二人だけを選ぶなんてきっと出来ないぞ…」

 

「それは。。。」

 

寂しそうに俯いた球子の頭をかいぐりながら春信は語る

 

「ヒーローは確かに『友達』と呼べる人が少ないかもしれない

でも思いだぜ、このヒーローの事を」

 

「え?」

 

「彼は寂しそうだったか?周りに誰もいなかったか?」

 

「そ、そういえば…」

 

「それは彼の周りにいる連中がもはや『友達』を越えた『仲間』『戦友』になっていたからさ」

 

「おおっ!」

 

「タマも同じさ、皆とはもうただの友達じゃない、親友で戦友で仲間で。。。

そういうのをかけがえのない『(とも)』と言う」

 

「そうか…そうか!すごいな!春信は!」

 

「えっ?俺?」

 

「ああ!まさか『アンパン○ン』でそこまで語れる大人がいるとは思いもしなかったぞ!」

 

「。。。」

 

「いやー、食堂入った瞬間は昼間っから『アン○ンマン』歌う、

アホな大人がいるもんだと馬鹿にしてたんだけど

色々とためになったぞ!ありがとうな!」

 

「。。。」

 

そこには走り去る球子の背中を見守りながら

子供に『アホな大人』呼ばわりされて涙を流す春信(オッサン)の姿があった

 




春信(以下略):なあ、無理してないか。。。?

mototwo(以下略):いきなりだな、何がだ?

最後の歌のくだりだよ、なんでアンパンマ○歌ってんだよ、俺?
ネタがないなら無理しなくて良いじゃないか。。。

何言ってんだ

あ?

アンパンマンネタは前回の書く前にもう思いついてたぞ

馬鹿なの!?

まあ、オチは書いてるうちに変わっていったけどな

どうでもいいわ!オチなんて!

いやー、ヒーローソングでアンパンマンで球子、こんなに親和性が高いとは!

ホント、勘弁して欲しいわ。。。
で、諏訪の話だけど

次回のお楽しみだな

っていうか、今回の丸亀城の話ってギャグでもなんでもない。。。

お前がその場にいて突っ込んだだけだな

何がしたかったんだ?

いや、ホントに突っ込みたかっただけ
挿絵の球子の美少女っぷりに笑ったから

タイトル見て俺の参戦を期待した人に謝れ!

いねーよ、そんな最弱勇者のズッコケ期待する人

くっ!
わざわざ入れ替えたのって球子回にしたかったのか?

うんにゃ、単に文章量の都合。次の本文そこそこ長いから

短い話と入れ替えたのか

そそ、んでこっからアレの再開

ん?

生き残ったことが幸運とはいえない。それは次の地獄への誘いでもある。

え?

ここは300年戦争の始まりの地。荒れた大地がお前たちは要らないと呻きを上げる。

ああ、またボト○ズでいくのか。。。

呻きは恐怖を呼び、血を求める。その罪を互いの血で購えと断末魔の『星』が叫ぶ。

ってか、書き直しだな、単なる

次回「諏訪」白くただれた『星』が狂気を促す

ボ○ムズ使うと嘘予告になる気がするんだが。。。

<きっとホントも混じってるはず!☆>


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7話 諏訪

この話には『乃木若葉は勇者である』のネタバレ、訳のわからんギャグが含まれます



ザクッ、ザクッ

 

長野県守屋山ふもと近くの平地

 

ザクッ、ザクッ

 

今日も諏訪の勇者、白鳥歌野(しらとりうたの)は一人で畑を耕していた

 

ザクッ、ザクッ

 

「結界の中で暮らしを保っていくために、自活が必要です。」

 

ザクッ、ザクッ

 

「畑を耕し、魚を獲りましょう!生き抜いていくために!」

 

ザクッ、ザクッ

 

生き残った皆に声をかけ、自ら鍬を振るう

 

ザクッ、ザクッ

 

しかし、人々はあまりに死を直視しすぎた

 

ザクッ、ザクッ

 

この先、この狭い結界の中で生きていく事など不可能だと諦めていた

 

ザクッ、ザクッ

 

誰も一緒に畑仕事をしようなどと考えなかった

 

ザクッ、ザクッ

 

それでも歌野はたった一人で畑を耕し続けた

 

ザクッ、ザクッ

 

この1年で作物も少しずつだが育つようになってきた

 

「ふうっ」

 

休憩しながら自分の耕した畑を見る

 

「…」

 

「おつかれ、うたのん…」

 

諏訪の巫女、藤森水都(ふじもりみと)が水筒の麦茶を差し出す

 

「あっ、ありがと、みーちゃん!

見てよ!私一人でここまで耕したんだよ!」

 

「うん、すごいね、うたのんは…」

 

「まだまだ広げていくよ!皆が食べられるようになるまで!」

 

「うん…」

 

水都は辛かった

 

「きっと皆もまた立ち上がってくれる!」

 

ろくに手伝う事のできない自分

 

「そうすれば畑だってどんどん広くなる!」

 

歌野を助けようとしない大人たち

 

「私の作る野菜で皆もっと元気になる!」

 

そんな中でも明るく、弱音を吐かない親友の姿を見ているのが辛かった

 

「うたのん…もう…」

 

もう、いいよ、もう()めよう、そう言おうとした時

 

ザクッ、ザクッ

 

「「!」」

 

「こんな感じでいいのかい?」

 

歌野と水都は畑で鍬を振るその男を見つめたまま固まっていた

 

「鍬なんて持つのは初めてなんだが。。。」

 

ハッとして男のそばへ駆け寄る歌野

 

「…ええ、ええ!良いですよ!才能あるんじゃないですか!?農耕の!」

 

「才能って。。。別に本気で畑仕事するわけじゃない、暇潰しの運動不足解消さ」

 

「それでも!一緒に耕す人がいれば畑は増えます!作物は実ります!」

 

よほど嬉しかったのだろう、歌野は笑顔に涙さえ浮かべて喜んでいた

 

「そうだな、折角神様が護って下さるんだ、自給自足はできるようにならないとな」

 

水都の方へ振り向き、大きく腕を広げる歌野

 

「すごいよ!みーちゃん!やっぱり人は立ち上がれるんだ!どんなに辛い目にあったって!

これで戦力は2倍!勝ったも同然だね!」

 

「もう、うたのんってば…いったい何に勝つんだよ…」

 

親友の嬉しそうな顔に思わず水都も涙ぐんでいた

「しかし、お兄さんも頑張りますねぇ!」

 

「僕は肥満体質だからな、体を動かしてないとすぐに太ってしまうんだ」

 

「肥満?結構な筋肉質に見えますけど…」

 

「まったくです!エクセレントに農耕向きですよ!」

 

「一時期、物凄い勢いで鍛えたんだ

その前は十代にして中年太りかと思われる事もあった」

 

「それは…すごいですね」

 

「いや、凄いのはお譲ちゃん達の方だろ

こんな広さを二人だけで耕すなんて。。。」

 

「違いますよ、私は全然!全部うたのんがやったんです!」

 

「ほう、一人でかい、そりゃすごい」

 

「それは違うよ、みーちゃん」

 

「えっ?」

 

「私が挫けずに頑張ってこれたのはみーちゃんが一緒だったから

私は初めから一人なんかじゃなかったんだ!」

 

「うたのん…」

 

「だからお兄さんの言うとおり!やっぱり二人で耕した畑だよ!」

 

「仲がいいんだな、二人は」

 

「はい!」

 

「もちろん!親友ですから!」

 

休憩を挟み、そんな話をしながら耕し続けた

夕日が山々を赤く染める

 

「さあ、今日はこのあたりにしておきましょうか!」

 

「ふう。。。おつかれさま、だな」

 

「おつかささま、うたのん」

 

甲斐甲斐(かいがい)しく歌野の顔をタオルで拭く水都

その姿は勇者と巫女というより

運動部の選手とマネージャーのようだ

 

「そういえば、お兄さんはどこの人なんですか?言葉が…」

 

「「あれ?」」

 

つい先程まで話をしていたその男の姿はなかった

 

「夢だった…ってことはないよね?」

 

「ないない、ちゃんと畑も耕してたし」

 

そこには畑の端まで駆けていった足跡もある

 

「来るのも帰るのもいきなりだったねぇ…」

 

「まったく…って、ああぁっ!!!」

 

「ど、どうしたの?うたのん」

 

「あんまり嬉しくて、お兄さんの名前を聞くのも忘れてた!」

 

「そ、そういえば…」

 

「くっ…この白鳥歌野、一生の不覚っ!!」

 

「あはは、なんだか乃木さんみたいな口調になってるよ」

 

乃木若葉(のぎわかば)、それは四国を守る勇者のリーダー

直接会ったことも話したこともないが

歌野は毎日、通信で彼女と蕎麦うどん論争をしている

結界に閉じ込められた今の状況でも、他の土地に同じような勇者がいる

そのことが歌野や水都を支えてくれていたのだ

 

「ふふふん、このクオリティ!なかなか上手いもんでしょ!」

 

「でも、乃木さんもうたのんみたいに普段は違う喋り方なのかもよ?」

 

「え…?う~ん…

いいや!乃木さんはきっと普段から武士のような話し方をしているに違いないね!」

 

そう、通信で聴く乃木若葉の声はいつも凛としていて、話し方は武士のようだった

それに対応する歌野はまるでお嬢様のように丁寧な言葉で話していた

本人曰く、「電話とか手紙だと、なんとなく丁寧語にならない?」とのことだ

 

「まあ、あの調子なら明日も来てくれるだろうし」

 

「うん、その時に聞けば良いわね!」

 

初めての協力者に二人の心は晴れやかだった

次の日早朝

 

「お兄さん、遅いねえ…」

 

「なあに、きっと寝坊してるんだよ!先に始めちゃおう!」

 

「うたのんは朝から元気だねぇ…ふわぁ」

 

水都は欠伸(あくび)をしながら木陰に腰掛ける

歌野にああは言ったが、水都も普段は起きないような時間にここに来ていた

協力者の出現で気持ちが高ぶり、朝早くから目が冴えてしまったのだ

「はっ!」

 

慣れない早起きに木陰で居眠りしていた水都が目を覚ます

 

ザクッ、ザクッ

 

鍬の音に目をやると歌野が一人で畑を耕していた

 

ザクッ、ザクッ

 

日はもう高くなり、木陰も小さくなっている

 

ザクッ、ザクッ

 

(お兄さん、来てないんだ…)

 

ザクッ、ザクッ

 

いつものように元気に鍬を振る歌野

 

ザクッ、ザクッ

 

しかし、心なしか寂しそうにも見える

 

(なんで…来てくれないの…)

 

そのとき、水都の背筋を悪寒が走り、脳裏にイメージが浮かぶ

 

(こんなときに!)

 

諏訪の土地神様からの神託である

バーテックスが襲来したのだ

 

「うたのん!敵が!」

 

その言葉に歌野の表情が引き締まる

 

「オッケイ!私に任せて!敵はどこっ?!」

 

駆け出し、二人で本宮へ武器と勇者装束を取りに向かう

「これでフィニッシュ!」

 

最後のバーテックスを倒し、追いついたばかりの水都に胸を張ってVサインを送る

 

「どう!畑仕事もバーテックス退治も私にかかればこの通り!」

 

「は、速かったね…」

 

息を切らして言う水都に

 

「いやいや、みーちゃんが追いつく前に片付けて戻るつもりだったのに

遅かったくらいだね!」

 

「もう、うたのんったら…」

 

明るく言い放つ親友に呆れた顔で返す

 

また作業着に着替えるため、本宮へ戻る歌野と一旦別れ

水都は先に畑に向かうことにした

 

(また…)

(誰もいない畑に戻るのか…)

 

重い足取りで考えていると

 

ザクッ、ザクッ

 

畑の方から鍬を振るう音が聞こえる

 

(あれ?うたのん、もう戻って…?)

 

ザクッ、ザクッ

 

(ううん、そんな訳ない…)

 

ザクッ、ザクッ

 

(そうか!お兄さんが来てくれたんだ!)

 

駆け出し、畑にいるその人に声をかける

 

「「お兄さん!」」

 

「えっ?」

 

水都の声にかぶったその声の主は歌野だった

歌野も戻る途中で鍬の音を聞き、駆けて来たのだ

 

「お兄さんって…そったらおだてて、どういでぇ」

 

振り向いて二人に声をかける男性

それは”お兄さん”というにはあまりにも無理のある、ご老体だった

 

「宮阪のおじいさん!来てくれたんですね!」

 

「ああ、歌野ちゃんにばぁっかり助けてもらってはおれんて」

 

嬉々として老人に話しかける歌野

 

「うたのん…このお爺さんは…」

 

「あっ、みーちゃん!宮阪さんはね!昔からお世話になってる農業の大先輩なんだよ!

おじいさんが来てくれたら百人力です!」

 

「調子のええこと言うてっけど、誰かと間違えたんでねかぁ」

 

「え、いやー、あはははは」

 

「もーっ、うたのんたら!」

 

「ええっ?!私だけ?みーちゃんも間違えたんじゃあ?」

 

「まあ、わしも今までやるずくがねがっだし、おあいこだに」

 

(お兄さんじゃなかったけど…うたのんが元気だしてくれて良かった…)

 

宮阪老人と楽しそうに話す歌野を見て

ホッと胸を撫で下ろす水都だった

それから

日に日に増えていく協力者たち

よくよく聞くと皆、誰かにそそのかされるようにここへ来たという

 

「よそから来たって言う若い奴が『体動かして汗かくとなんか元気出るんだよな!』って」

 

「ワシんとこには『僕みたいな素人じゃ何やっていいかわかんないから

教えてくれる人が欲しいんですよねぇ』って」

 

「俺んとこには『ガキだけに働かせて恥ずかしくないのか!』ってハッパかけに来たっぺよ」

 

そして特徴を聞くと決まって皆が言う

 

「年甲斐もなく真っ赤なジャージを着た男だ」

 

お兄さんだ、きっとあの人だ

歌野も水都も顔を見合わせる

 

「誰だったんだろうねえ、あのお兄さん…」

 

「突然現れた謎の人物…まさか!」

 

「なに?うたのん?!」

 

「土地神様が遣わした神の使いとか!」

 

「それにしては随分俗っぽかったね、肥満体質だとか…」

 

「うーん、ホントに誰だったんだろ?名前くらい聞くんだったなぁ」

 

諏訪の結界は今日も安定、日々明るく過ごす勇者と巫女がそこにはいた

<農業王>

 

畑仕事の休憩中、その男は歌っていた

 

♪~

 

隣で休んでいる歌野と水都も一緒に歌っていた

 

♪~

 

(ピンチはチャンスか…)

(アピールに自意識過剰ってうたのんみたい)

 

♪~

 

(仲間を増やす言葉)

(ついて来いって言葉)

 

歌いながらお互いを思う

 

♪~

 

「いい歌だよね~」

 

「元気が出るよな!」

 

「私たちのパーフェクトな歌唱力も合わさってね!」

 

「しかし二人ともよくフルコーラス知ってたな、結構古い歌なのに。。。」

 

「有名ですから!」

 

「うたのんは特に好きそうだよね、このアニメ」

 

「えっ?なんでわかったの?」

 

「いつも言ってるもん」

 

「何の話だ?」

 

「ホラ、うたのん、アレ、気合入れて言っちゃってよ!」

 

「アレ?いっちゃう?しょーがないなー!」

 

「?」

 

(いぶか)しむ男に向かい、スックと立った歌野

胸を張り、腰に手を当てて大きな声で叫ぶ

 

「農業王に!わたしはなぁ~るっ!!」

 

「○フィーか!」

 

大笑いする男と親友と共に、にこやかに諏訪の勇者の休憩時間は過ぎていった

 




春信(以下略):歌も諏訪、それも○ィーアー!できたか

mototwo(以下略):うん

で、諏訪の話本編だけど

ブツ切りだよ

自覚はあるんだな。。。

大阪と同じだ、この後の事は今は書けん

ってか、名前出てなかったけど、あの「お兄さん」って俺なんだよね?

どうだろな?

意味もなく秘密にしようとすんな。。。

まあ、そうなんだけど、あくまでも諏訪の主役はあの二人だからな

えらく肩入れすんじゃん

「若葉」の上下巻読んだらそうなるって

まあ、いい娘達(こたち)だよな

頑張る少女を応援したくなるのは当然だ

別に少女に限った事じゃないが。。。

あと勘違いしないで欲しいが、最初のお爺さんは自分で来た協力者だ

あ、そうなんだ

「お兄さん」はその間ずっと他の人たちのとこ回ってる

あれ?ってことはもしかして。。。

別に「お兄さん」がいなくても爺さんの姿見て協力者は増えてたろうな

なんだそれ?いた意味あんのか?

いたこと自体に意味があると困るんだよ、この「お兄さん」は

なにしに行ってんだか。。。

きっと最終回になればわかるから

いいけど
そういや、そのお爺さんモブなのに珍しく名前が付いてたな

うむ

苦手だって言ってたのにどうした?

話の流れ的に名前出さないのが不自然になったもんだから

それで考えたのか

いや、諏訪で多い苗字を検索で探した
苗字だけでその土地に多い名ならいいかなと

どこにそこまで気を使う必要があったんだか。。。

まあ、読んでない人には解らんだろうからそれ以上は言わんよ

ギャグらしいギャグも入ってなかったし、真面目に終ったな、諏訪は

もっとアホみたいな話書けたらいいんだけど、二人が良い子過ぎてな…

短編だか番外編だかでしか出てないんだろ?

4コマでも言うほどはっちゃけてなかったしな、だからキャラも掴みきれてないかも…

なんなの?あの勇者の子の農耕推しは。。。

アレは原作でもあんなもんだと思う「農業王」目指してる子だから

アレ、歌ネタのギャグじゃなかったのか。。。
あと口調がバラついてたようだが?

ああ、通信以外に大人と話すときも丁寧語だったりしてたから

「!」とか「…」書けばいいってもんじゃないと思うぞ。。。

だって、文面だけだと特徴掴みにくいんだもん

思い入れがあるんだかないんだか。。。

文章書くって難しい!

で、どうすんだ?

ゴールデンウィークも終るし、一段落だな

休憩入るのか

んで、しばらくしたらシリアス上げる

ほう

予定

またか。。。

これ以上はギャグ回が思いつかん

思いついたら書くわけか

多分無理
本職の物書きさんってスゴイね、俺なんか鬱話書いた後でバカ話書けないもん

それで時系列無視して上げてたわけか

そゆこと

後で何とかしないと読みにくくなるぞ、コレ

そだな
で、シリアス回はほとんどがネタバレに通ずる

厄介だな。。。

書きたいけどっていうか、結構書き溜めてる分もあるんだけど

上げられないってか

まあ、文章としてちゃんと結べてないから上げられないってのもあるが
正直、話の流れは盛り下がる一方なんだな、この先

どういうことなの。。。

原作が佳境に入ると春信の入り込む余地がないんだわ、最弱勇者だから

また最弱って言った

書いてて気付いたけど、ほとんど泣きっぱなしだよ、お前

どんだけ酷い状況なんだよ。。。

しかも前作と原作を読んでないとわかんない話も混ざってくから

初心者お断りとか、何様だ

「読みたいけど『若葉』の原作本手に入んないよ!」って人がどれだけいるかだな

まあ、気にすんな、どうせコレを読んでる人は3人くらいなんだろ?

それを言われると痛いんだが。あっ

どした?

前作に感想が増えてた

おお!読んでくれてる人がまだ他にもいたのか!

「ホントに四つしかねえww」って

感想の数のこと?!また馬鹿にされてんじゃん!

その後に「結構好きですw」って書いてくれてた

そ、そうか。。。

そして!

なんだ?

遂にこの作品にも感想が!

なになに?何書かれてた?クレーム?誹謗中傷?

なんで悪評前提なんだよ…

なんて書いてあったんだよ?

まだ読んでない

はあ!?

いや、ホントに罵詈雑言書かれてたら泣きそうだから
コレ上げてから読もうかと…

乙女か!

という訳で早く読みたいから締めるぞ

次回予告は?

まだどこから上げるか決まってないから無し!

もう、第二期開始直前に一気上げしちまえ。。。

それもアリかもな

えっ?冗談だよ?!

<ホントにそうなったら笑ってやって下さい>


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8話 ダイナマイトガイ

この話には『乃木若葉は勇者である』のキャラを使った、訳のわからんギャグが含まれます


丸亀城の中庭を走っている高嶋友奈の耳に春信の歌声が流れ込む

 

(あ、春信くんだ、何か歌ってる!)

 

♪~

 

(平和を守るため…)

 

♪~

 

(ありったけの勇気…ハートにやき付けて!)

 

♪~

 

(なんか…勇者な歌だ!)

 

♪~

 

(えっ?!嵐を呼ぶ…マイト○イ?!)

 

♪~

 

パチパチパチパチ・・・

歌い終わった春信の背中で拍手が鳴る

振り向くと友奈が瞳をキラキラさせてこちらを見ている

 

「カッコいい歌だね!」

 

「お、おお、友奈か、そうだろう、いい歌だろう!」

 

「私も大好きなんだ!マイ○ガイ!」

 

「へえ、そうなのか!いい趣味してるな、さすが勇者だ!」

 

「でもそんな歌があったなんて全然、知らなかったよ!」

 

「え?でもマ○トガインって言えばこの曲だろ?」

 

「そうなの?初めて聞いたなぁ」

 

「まあ、他も名曲ぞろいだけどな」

 

「そうだね、やっぱり昭和のヒーローは違うね!」

 

「え?○イトガインって昭和だったっけ?」

 

「そうだよ!私の生まれるずっと前の作品だもん!」

 

「あ~、確かに友奈達は生まれてない時代だよなぁ~」

 

「でもすっごいなぁ!小○旭さんって色んな歌が歌えるんだね!」

 

「え?」

 

「あ、走りこみの途中だったんだ!じゃーね、春信くん!また聞かせてね!」

 

走り去る友奈の背中を見守り呟く春信

 

「たしか、21世紀生まれのはずなんだけどなぁ、友奈。。。」

 

ぼんやりしながら思案する

 

「親父さんかお爺さんあたりの趣味だったのかなぁ。。。」

 

そして一人になってから大声で突っ込む

 

「なんでだよっ!マイトガ○知ってて、なんでマイトガ○ン知らないんだよっ!

勇○特急知ってろよ!勇者シ○ーズチェックしろよ!」

 

丸亀城に空しく響いた声は友奈の耳には届いていなかった

<鋼の・・・一筋の光>

 

(あの時空。。。銀たちは元気でやってるのかな。。。

アイツはもうあそこに飛ぶことは出来ないって言ってたけど。。。)

 

丸亀城の石垣の上で春信は歌っていた

 

♪~

 

ふと耳に入ったその歌声に杏が足を止める

 

♪~

 

(あれは三好さん…歌とか歌うんだ…)

 

♪~

 

(綺麗なメロディ…ラブソングかな…)

 

♪~

 

(でも…なんだか悲しい歌…)

 

♪~

 

(「君はもうどこにもいない」って…)

 

♪~

 

(そうか…きっと亡くなった恋人の事を思い出してるんだ…)

 

♪~

 

(そんな話、全然、全く、一度もしてないけど、きっとそう!)

 

♪~

 

(だって歌ってる声もなんだか震えてるし…)

 

♪~

 

(ああ~ん、死に別れた恋人を思って歌うなんてなんてロマンチックなの…)

 

♪~

 

(まるでこの間読んだ恋愛小説の一説みたい…)

 

♪~

 

「。。。」

(なんか。。。感傷的になっちまったな。。。)

 

目尻に浮かんだ滴を拭い、立ち上がる春信

 

「うっぐ…えっぐ…」

 

「えっ?」

 

その声に振り向くと

後ろで杏がボロボロと涙を流して泣いていた

 

「ど、どうした?杏?なんかあったのか?(ってなんか前にもこんな事が。。。)」

 

「みよじざ~ん(グスグス)」

 

「な、何?どうしたの?何で泣いてんの?」

 

「げんぎだじでぐだざい~(ズビズビ)」

 

「元気出してって僕?お前じゃなくて。。。?」

 

「だいじょうぶでずよ~ぎょうよりあじだば(グジュグジュ)」

 

「え?なに?」

 

「ぎっどづよぐなれまずがら~(タラーッ)」

 

「強くって、今の歌の事?」

 

「ぎもぢばぎっど~(ズーッ)」

 

「え?気持ち?」

 

「ぎっど、みよじざんのごえ、うだになっでどどいでまずがら~(鼻かみチーン)」

 

「なに?なんなの?だんだん何言ってんのか分かんなくなってんぞ、お前?」

 

ドドドドドドドドドドド

 

「「え?」(ズビッ)」

 

「あ~ん~ず~を~」

 

ダッ

 

「泣かせるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

遥か彼方から全力ダッシュで駆けて来た球子が春信にとび蹴りを食らわせる!

杏の様子に動揺していた春信は避ける事もできずモロに食らい…

 

ドガァッ!!

 

石垣の下に落ちていった

 

「なんっでだあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。。。。。」

 

フンッ!と鼻息荒く見下ろした球子

親指を下に向けたポーズで言い放つ

 

「杏を泣かせる奴は地獄に落ちるがいい!」

 

 

 

その後

 

ボロボロになった春信が石垣をよじ登った頃には

 

なぜか更に大泣きしている杏と

若葉とひなたと友奈に囲まれ正座で説教を受ける球子の姿があった

 

「意外と…心配されてないのね…僕…」

 

自分で思ってるよりずっとタフガイ認定されている事実に

ホッとしつつも落ち込む春信だった

<巫女と看護師>

 

祠前に立つ彼の元に春信が帰還する

 

「どうだった春信…ってどうした?!ソレ?」

 

春信の顔には引っかき傷のような痕が残っていた

 

「どういうことだ?戻る前に傷つくなんて?」

 

「変身前だと擬似精霊システムが作動しないらしい。。。」

 

「変身前?」

 

「うん。。。」

 

「お前…何やったんだ?」

 

「なにって。。。」

 

<回想>

 

宿舎から丸亀城の教室へ向かうひなた

若葉はいつも通り早起きして先に出発していた

 

♪~

 

(あれは…春信さん?何か歌ってる?)

 

♪~

 

(え~と…)

 

♪~

 

(やっぱりおかしいわね、この人…)

 

♪~

 

(黙ってやり過ごしましょう…)

 

すると歌い終わった春信がひなたに声をかける

 

「いよう!ひなたちゃん!おはよう!」

 

「ひっ!」

 

「『ひっ!』って。。。なにビビってんの。。。」

 

「な、なんでもありませんよ、急に声をかけられて驚いただけです」

 

「そうなの?ひなたちゃんでもこんな事で驚くんだねぇ。。。」

 

「え、ええ…まあ…」

(なぜか熱い視線を送られていることに気付いてしまう自分が嫌だ…)

「な、何か?」

 

「いやぁ、僕が歌ってると何か皆、声をかけてくるから、ひなたちゃんもかな~って」

 

(できれば声をかけてもらうのも避けたかったんですが…)

「そ、そうですね、今の歌…え~と…その~…ユ、ユニークですね!」

 

「おっ!わかる?面白い歌だろ?」

 

「面白い…、ですか…」

 

「早口だし、結構難しいんだけどね!」

 

(仕方ありません…念の為、確認しておきますか…)

「は、春信さんは…」

 

「え?」

 

「い、今の歌の中身だと…」

 

「うん?」

 

「どっちが好きとか…あるんですか?」

 

「どっちがって。。。」

 

春信の頭によそよそしく病室を出て行ったあの看護師の姿が思い出された

 

(アレは。。。ないな。。。)

「まあ、看護師(ナース)よりやっぱ巫。。。」

 

ゾワッ……

途中まで聞いたひなたの体に鳥肌が立ち

寒気と共に体が勝手に動き…

春信の顔に爪を立てていた

 

<再び祠前>

 

「という事なんだ。。。もう訳がわからんよ。。。」

 

「あ、そう、わかんないんだ…」

 

「え?」

 

訝しむ春信を置いたまま

 

「そっかぁ、訳わかんないんだぁ…」

 

などと呟きながら彼は去っていった

 

<数日後>

 

「きっさまぁぁぁぁぁぁっ!またやったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

怒り心頭で研究室に飛び込んだ春信

その目には誰もいない研究室と机の上に置かれたメモが写った

メモを手に取り読み上げる春信

 

「なになに。。。『春信、コレをお前が読む頃には大赦中に例の噂が広まっているだろう』?

やっぱアイツか!『しかし、今回もお前が悪いぞ』だと?何がだ!

『それでもまだ怒ってるなら、一度状況を整理してくれ』?

『ひなたって子は中学生であると同時になんだ?』神樹様の巫女だろ?!

『お前はひなたの前で何を歌ったって?』巫女み○ナース・愛のテーマだろ?!

『ひなたに引っ掻かれる前に何を言ったか覚えてる?』看護師(ナース)よりはやっぱ巫女。。。」

「。。。」

「嗚呼ああああああ亜ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっ!」

 

自分のしたことを振り返らされ、絶望に打ちひしがれた男の姿がそこにあった

 




春信(以下略):うわぁ。。。

mototwo(以下略):う~ん…

酷いな。。。

流石の俺も今回ばかりはそう思う…

お前、俺に恨みでもあんの。。。?

いや、単に友奈・杏・ひなたとも絡ませたいってだけだったんだが…

それがどうしてこうなった。。。

無理して書いた感がありありと出てるな…

歌ネタ3連発、しかもひなたと杏に至っては出番無い方がマシなくらい酷い。。。

コレの後にシリアス上げる予定なんだが…

いや、もうどうやっても俺の汚名返上にはならんぞ。。。

ああ、そこは大丈夫

あ?

なんの活躍も出来ないから、お前

いい加減にしろよな。。。

前にも言ったろ、最弱勇者だからシリアス展開だと何も出来んって

その上、直前に上げる話がコレって、どう考えても俺に対するイビリだろ。。。

おっかしいなぁ、なんでこうなったんだろ?

おかしいのはお前の頭だ。。。

今回はツッコミにも切れがないな

ホントはここに出るのも拒否したいぐらいだ。。。

気分がダウナー状態ですな!

3本の話が段々酷くなるってどういうことだよ。。。

ひなたの話を最初や間に持ってくるともう何がなんだかわからん酷さだからw

もう、お(うち)帰って夏凜ちゃんの膝枕で寝たい。。。

ありもしない妄想に逃げてると(ろく)な目に遭わんぞ?

今正に碌な目に遭ってないから現実逃避してんだよ。。。

はははっ、まあこれ以上酷い目なんてそうそうないか!

いいから、もう締めてよ。。。

しょうがないか!

無駄に元気なのが腹立つ。。。

皆さん、これで分ったでしょうが、もうギャグ回書くの限界です!

だったら無理に書くなよ。。。

次はギャグ要素排除の鬱展開!

なんで明るく言うんだよ。。。

君は、生き延びる事ができるか!

2017年って人類ほぼ全滅状態なんだってな。。。

<次には春信が元気になることを祈って!☆>

<書き足し次回予告>
争いのための安息
罵倒のための賞賛
歴史の果てから、連綿と続くこの愚かな行為

ある者は悩み、ある者は傷つき、ある者は自らに絶望する
だが、営みは絶えることなく続き、また誰かが呟く
「味方なんていない、みんなあなたを傷つける敵」

次回「軌跡」
神もピリオドを打たない

。。。

ふうっ

やりきった顔してんじゃねえよ、何いきなり書き足しちゃってんだよ。。。

ボトムズだな

伏字を使え!つか会話しろ!

書いちゃったもんは仕方ないよね!

鬱回っつってる割に軽い!予告は重そうなのに。。。!

まあ、まだ予告だし!

ああ、また嘘予告か?

どうかな?意外とホントっぽいぞ?

書いた本人が「っぽい」って。。。

<後は読んでのお楽しみ!☆>


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9話 軌跡

この話には『乃木若葉は勇者である』のネタバレが含まれます
訳のわからんギャグは無くなってます、鬱話ばかりです
前回までのノリを期待している方は読まれない方がよいでしょう



<祠前>

 

「え?また大阪?」

 

「ああ、そして諏訪、丸亀と…」

 

「なんだ、行った事ある所ばっかりだな、再調査ってことか?」

 

「まあ…そんなとこかな…」

 

「そもそも調査って言っても大した成果も上がらなかったからなぁ」

 

「ああ…だから今回はそれぞれに、そこそこ長い期間いてもらうつもりだ…」

 

「長いって。。。何日も?」

 

「何週間…場合によっては何ヶ月…」

 

「ホントに長いな。。。ってか、今回はちゃんと戻れるんだろうな?」

 

「?」

 

「最初に大阪行った時のこと忘れたのか?!」

 

「なんだっけ…?」

 

「戻る方法もタイミングも話さなかったろ!」

 

「ああ…必要なかったからな…」

 

「時限式にするならするで言っとけよ!」

 

「一応…他の予備措置も取ってたしな…」

 

「予備措置って?」

 

「死ぬほどダメージ受けたときには強制送還される…」

 

「お前。。。」

 

呆れたようにジト目で見る春信

 

「特に今まで使うことも無かったようだがな…」

 

「当たり前だ!お前僕がそんなにバカみたいに戦ってると思ってたのか?」

 

「お前が馬鹿なのは周知の事実だ…」

 

「それはお前が流した根も葉もない噂のせいだ。。。」

 

「火の無いところに煙は立たん…」

 

「その火の元がお前だって言ってるんだよ!」

 

「俺が足したのは燃料だけだ…火種は元からあった…」

 

「シスコンで巫女好きでバトルバカとか、どこにも僕の要素が無いわ!」

 

「(シスコンは元からあったイメージだが)そうか」

 

「そうだよ!」

 

「(無自覚ってのは怖いもんだな)そりゃすまなかったな」

 

「謝罪がいつも以上にテキトーだ。。。何か思うとこでもあるのか?」

 

「(普段鈍いくせにこういうとこだけ…)いや、別に…」

 

「ふうっ、もういいよ。。。あっちで何かすべきことは?」

 

「現地の人々の様子…今まで通り見てきたことを伝えるつもりで行って来てくれ…」

 

「期間を延ばしただけかよ。。。食事とかは?」

 

「コレだ」

 

カードのように薄いピルケースを春信に放り投げる

 

「コレって?」

 

「お前用に調剤した…まあ栄養剤ってとこだ

1粒で一日の栄養が摂取できる…

他は現地で何とかしてくれ…」

 

「こんなに小さい粒でか。。。」

 

ビーズよりも小さな粒を取り出し、細目で見つめる

 

「腹は満たされんし、他人には使えんがな」

 

「栄養剤なのに?!」

 

「そのサイズにするのに特別な調剤を行った

間違っても他人に飲ませるなよ、死ぬから」

 

「何ソレ、怖い!」

 

「お前なら殺したいほど憎い奴がいても、そんなのは使わんと信じてる…」

 

「何言ってんだ、当たり前だろ、そんな事」

 

「そうだな…」

 

「?なんか今回はいつになく真面目だな。。。」

 

「俺はいつでも真剣だ…」

 

「そうなのか?」

 

「お前こそ真面目にやれよ、今回は辛い旅になるぞ…」

 

「長旅程度でへこたれないさ、僕だっていつも真剣だからな!

でもそうか、また皆に会えるんだな。。。」

 

「くれぐれも慎重に動けよ…」

 

「わかってるって!じゃーな!」

<大阪3>

 

ウメ地下をアニキ達と探索した春信

しかし、やはりめぼしい情報も収穫もなかった

 

(今日で何日目だ?こんなこといつまで続ければ。。。)

 

春信は焦っていた

ここのところ同じようにウメ地下を巡回し

各ブロックにいる人たちに声をかける日々

日を追う毎に切迫する食糧事情

巡回の途中で(いさか)いの様子を見かけるのも毎日だ

 

(元々、敵と戦う為に来たわけじゃないが。。。

このままじゃバーテックスと出会わない内に餓死者でも出るんじゃ。。。)

 

自分の懐にあるカードサイズのピルケース

その中の栄養剤が自分の命綱である事実と共に

それがもし他人に見つかったらと想像する

 

(飲んだら死ぬなんて誰も信じないだろうな。。。

下手をするとコレが原因で奪い合いの争いになるかもしれない)

 

それどころか

切羽詰れば毒であると解った上でなんでも良いから口にしたいという人さえ出るかもしれない

空腹は人の正しい判断力を削ぐ

普段、食に困らない生活をしているせいで感覚は鈍っているが

本来、人の生存本能はモラルを軽く凌駕してしまうのだ

 

(そんな中でもアニキさん達は皆を励まして少ない食料で頑張ってる。。。

なんとか助けたい。。。ここにいる人たちを。。。)

 

しかし春信自身も自分が正しい判断力を保てているのか自信がなかった

栄養剤で体調こそ万全であったが、『彼』の言ったとおり空腹は満たされない

 

(普通、栄養剤って血中カロリーとかの影響で空腹感も減退するんじゃないのか?)

 

ここに本来いないはずの自分が皆の食料を減らすわけにはいかない

大阪に戻ってから、春信は栄養剤以外に何も口にしていなかった

もちろん、アニキ達は春信にも少ないながらも食料を分け与えてくれていたが

春信はそれをその都度、近くにいる子供や病人に少しずつ分配していた

 

(本当は一番衰弱している人に全部渡してしまう方がいいんだけど。。。)

 

一度に渡すと自分が食べていないことがバレてしまう

栄養剤の存在が知られるのは自分にとっても周りの人間にとっても死活問題だ

 

(今度戻ったら。。。アイツに空腹を押さえる薬も作ってもらおう。。。

いや、そもそも、他人にも使える栄養剤を。。。)

 

などと考えているうちに病人と老人が集まった区画に辿り着く

いつものように明るく話しかけるアニキ達

 

「みんな~!帰ったで~!少ないけど瓦礫ん中から缶詰も見つけてきたで~!」

 

「ちょこっとやけど、ひっさしぶりに魚が食えるで~!」

 

「あ、ちょこっと言うてもチョコは無いで、ゴメンな~!」

 

「?!」

 

にこやかに帰った春信達を迎えたその光景

それに誰もが硬直した

『それ』を見渡す春信

 

(あれは。。。朝、出かける前に「いってらっしゃい」って声をかけてくれたお婆さん

あれは。。。昨夜食事をほんの少し分けただけなのに何度も頭を下げて感謝していたお爺さん

あれは。。。辛そうな顔を無理に笑顔にして「まだまだ頑張れるよ、僕」と言っていた男の子)

 

(なんで。。。皆、頭から血を流して倒れこんでるんだ。。。?)

 

すすり泣く子供たちの声に混じる血の匂い

その元は頭を砕かれ倒れた人々だった

 

「どないしたんや!これは?!」

 

アニキの声に我に返り、すぐさま駆け寄って応急処置を施そうとする春信

しかし、その誰も彼もが既に事切れた後だった

 

「こんな小さな子まで。。。なんで。。。こんなことに。。。」

 

血まみれの少年を抱き上げ涙を流す春信

アニキたちは生き残った子供たちに話を聞いていた

そして激昂して立ち上がる

 

「アイツら…ぶっ殺す!」

 

「アニキさん。。。?」

 

懐から匕首(あいくち)を引き出し、ある区画へ歩き出すアニキ達

春信は抱き上げた少年を床へおろし、アニキ達の前に立ちふさがる

 

「な。。。何する気だよ?!」

 

「言うたやろが…アイツらブッ殺したるんじゃ!」

 

その目は怒りに猛り、正に誰を殺してもおかしくないほどの激情を蓄えていた

 

「何言ってんだよ!そんなの。。。」

 

「お前は(なん)も思わんのか!

ここにおったんは何の抵抗も出来ん、年寄りと病人やぞ!

それを口減らしのためにて、俺らのおらん()にアイツら…」

 

アニキが手を開いたその先に倒れた人たちがいる

その惨状は彼らと短い期間しか接していない春信の目から見ても許せるものではなかった

 

「で、でも。。。」

 

「お前はついて()んな…」

 

「えっ?」

 

「おっても邪魔になるだけじゃ…」

 

「そんな。。。」

 

「残ったあの子等だけでも守ったってくれや…」

 

アニキが顎で示した先には

殺された人々にすがって泣く子供や呆然と座り込む人たちがいた

 

「いくぞぉ!お前らぁっ!!」

 

「おう!」

 

「弔い合戦じゃぁっ!」

 

「殺ったらぁ!」

 

普段明るく励ますアニキたちの怒り狂う姿に残された子供たちは怯えていた

春信はそんな子供たちの肩を抱き、アニキたちの背中を見つめることしか出来なかった

 

「人が。。。人を殺すなんて。。。」

 

「別に珍しい事やない…」

 

「?!」

 

振り向くとそこには少女がいた

少女はうなだれ小さな子を抱きかかえて呟いていた

 

「珍しくないって。。。」

 

「お兄さんが知らんだけ…ここでは…毎日のように人が殺されてる…」

 

「なんでっ?!」

 

「ささいなケンカが原因やったり…食べ(もん)が足りんかったり…」

 

「そんなバカな事で。。。」

 

「それがおかしいって…誰も言わんようになってきてる…」

 

信じられなかった

目の前の惨状がそれが事実である事を物語っていた

しかし春信には人がそんなことで人を殺す

その感情が信じられなかった

 

「そんな訳ないじゃないか!こんなのおかしいよ!

助け合わなきゃ。。。一番助け合わなきゃいけないときに!」

 

状況は見えないが、きっと外ではまだバーテックスがいるのだろう

こんなところで人同士が争っている時ではない

人類の天敵があのバリケードの向こうに徘徊しているのだ

今こそ人が一つになって立ち向かうべき時なのだ

 

「でも…どうしょうもないから…」

 

しかし希望も力も感じられない震える小さな声で少女が呟く

 

「どうしようもないって。。。君だってその子を守ろうと思ってるんじゃないのかっ?!」

 

春信が少女の肩を掴み、顔をあげさせる

 

「っ。。。!」

 

少女は泣いていた

抱きかかえた子供は頭から血を流し

その顔からは血の気が失せ

既に冷たくなっていた

 

「私は…この子を…妹を守れなかったの…」

 

「あ。。。」

 

少女はなおも呟く

 

「守ろうと思って…抱きかかえてた…でも大人たちに引き剥がされて…」

 

「あああ。。。」

 

呟くその声はどんどん力を失う

 

「邪魔するんやったらお前も殺すって…怖くてそれ以上動かれへんかった…」

 

「そんな。。。」

 

その情景が今も目に焼きついているかのように瞬きもせず涙を流している

 

「こんな想いするなら…あの時に一緒に殺されてた方が良かったのに…」

 

「そんな訳ない!」

 

「?」

 

「そんな訳ないだろ。。。そんな風に言われたって妹さんだって喜ぶわけない。。。」

 

「…」

 

「君に。。。お姉ちゃんに自分の分も生きていて欲しいって思うもんだろ。。。?」

 

「そう…かもね…」

 

「だったら!」

 

「でも…私は妹に私の分も生きてて欲しかった…

病気になって…だんだん弱っていく妹を見るのが辛かった…

私が代わりになれればって…いつも…思てた…」

 

「あ。。。」

 

目の前で愛する家族を奪われた少女に対し

ありきたりな言葉しか出ない春信には

励ます力も慰める術もなかった

 

「もう…ええねん…ごめんな、お兄さん…」

 

妹の亡骸を抱きしめて震える少女に春信はそれ以上何も言えなかった

 

(これが西暦の現実か。。。!

追い詰められた人間はこんなにも利己的になれるのか。。。!)

 

追い詰められた状況でも明るく励ましあうアニキ達を見て来た

しかしそうやって守ってきたものが天敵ではなく、人の手によって奪われる

こんな状態の人々をどうやって守ればいいのか

いや、そもそも自分は勇者としてこの人々を守ることができるのか

己の無力に拳を握り締め、春信はただただ、少女と共に涙を流すばかりであった

<諏訪4>

 

バーテックスに蹂躙された諏訪を手分けして捜索する若葉たち

一人佇む若葉は背後に何かの気配を感じ、戦闘態勢で振り向く

 

「酷いもんだろう。。。」

 

そこには仮面をつけた赤い勇者装束の男が立っていた

 

「貴方は…」

 

「残念ながら、ここの生存者って訳じゃない」

 

若葉の言葉を待たず、男は唯一の可能性を否定する

 

「どう思う?この惨状を」

 

「…」

 

周りを見渡す若葉

ここ諏訪には人が作った文化の痕跡がほとんど見られなかった

バーテックスに蹂躙し尽くされ、その形を(とど)める物が何もなかったのだ

 

「なぜ…なぜ奴らはここまで徹底的に…ここは今までの、どの町より酷い…」

 

「そうだな。。。まるで最後まで逆らった者に対する報復のように徹底していた。。。」

 

「最後…まで?」

 

問いかける若葉に仮面の男は語る

 

「ああ、勇者、白鳥(しらとり)歌野(うたの)は。。。」

 

そして『あの日』のことを思い出す

最後に四国と通信する傷だらけの歌野とそれを見守る水都

 

「どれだけ。。。社が破壊されても」

 

空を埋め尽くすほど大量のバーテックス

更に融合し、進化して諏訪に襲い掛かる悪夢のような戦況

 

「目の前で諏訪の人々が食い。。。殺されても。。。」

 

結界が壊され、歌野がどれだけ戦っても守りきれない村人たち

助けたと思った瞬間、その人が別のバーテックスに目の前で食われる衝撃

 

「自分の身が砕かれ。。。親友の巫女が食われた。。。その時すらも。。。」

 

仮面の男がどれだけ奮戦しようと、守りきれる命など一つもない地獄

 

「自分の命の火が尽き果てる。。。最後の瞬間まで。。。戦い続けた。。。」

 

そして諏訪の勇者の、巫女の、最期の瞬間…

男の声は震えていた

 

(泣いているのか…?)

 

「この跡形(あとかた)のない惨状は。。。奴らの執念であると同時に

白鳥歌野が最後まで戦う、奴らの脅威であった事の証しだ。。。」

 

若葉は拳に力を込め呟く

 

「白鳥さん…」

 

「それに。。。それに、何もかもが失われたわけじゃない、残された物もある」

 

「それは…」

 

「自分たちで探せ、そして忘れるな

白鳥歌野という勇者と、藤森(ふじもり)水都(みと)という巫女がいたことを

彼女たちの。。。諏訪の人々の(いしずえ)があったからこそ、四国は守られたことを。。。!」

 

背を向け立ち去ろうとする仮面の勇者

 

「ま…待て!」

 

若葉にはまだ聞きたい事がいくらでもあった

彼が何者なのか

一人でこんな所でどうしていたのか

そもそも男である彼が本当に勇者であるのか

 

「お前は…!」

 

生存者ではない、彼はそう言ったが

若葉にとっては四国を出て初めて出会う生存者に間違いは無い

必要であれば保護し、四国へ連れ帰らなければならなかった

しかし仮面の男には助けを請う気もそれ以上語る気もないようだ

 

「俺の事はいい、また会うこともあるだろう

俺はお前たちが何も知らないまま、ここを去るのが我慢できなかっただけだ。。。

必ず生き残れよ、ここの犠牲を無駄にすることは俺が許さん。。。」

 

そう言い残すと一気に跳躍し、遥か彼方へ去って行った

その身体能力は間違いなく、勇者のそれであったが

そのときの若葉にはそれが何者なのか、わかる筈もなかった

<丸亀5>

 

「蠍座の。。。バーテックス。。。」

 

仮面の赤き勇者は驚愕していた

300年近く経った後も一人の勇者を殺した十二星座の1体

それが今、目の前に存在しているのだ

 

「今の勇者の力で。。。勝てるわけがない。。。」

 

どういうことだ?

こんな話は聞いていない。。。

十二星座のバーテックスなんて

300年も前の勇者に立ち向かえる相手じゃない。。。

これは現実なのか?

こんな状況でどうやって勇者が。。。神樹様が生き残れたというのか?

 

思考は巡る

これは本当に僕の世界で起きたことと同じ過去なのか?

僕が来た事で知らないうちに何か悪影響を引き起こしているのか?

それとも。。。

蠍座の針が何度も球子の旋刃盤に突き出される

球子の後ろで杏がクロスボウを撃ち続ける

しかし敵にはまるで効いていないように見える

旋刃盤にもヒビが入り、限界を告げる

突き出す威力も速度もどんどん上がっていく針に耐えられなくなっているのだ

 

「やめろぉぉぉぉおぉぉっ!!」

 

考えている余裕などない、自分に今出来る事をするしかない!

仮面の男は飛び出し、蠍座と球子たちの間に割り込んだ

しかし

針を止めようと構えた小太刀は弾き飛ばされ

 

気付くと蠍座の尾がその体を突き抜けていた

いや、正確にはすり抜けていたというべきか

小太刀をはじいた針はそのまま仮面の男の体を何の抵抗もなく通り抜け

 

後ろにいた二人を旋刃盤ごと貫いていた

 

「あ、ああ、あああぁ。。。」

 

振り向いた仮面の男の目に見るも無残な二人の姿が写る

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

半狂乱で蠍座の尾に掴みかかる

しかし蠍座はそんな男を意にも介さず

尾を振り払い

針で貫かれた二人の勇者を放り投げた

 

「球子ぉっ!!杏ぅっ!!」

 

叫ぶ仮面の勇者の姿と意識はその場から消え去った

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

祠前で待っていた彼が

泣き喚く春信に拳を振るう

 

「あ。。。」

 

ようやく正気を取り戻した春信を捕まえ、医療ブロックへ急がせる

 

「またやったのか!諏訪の時でわかった筈だ!あっちじゃお前は何も出来ん!」

 

呆然とする春信を連れ込んだ医務室で医療班に告げる

 

「すぐに全身から血ィ噴き出してぶっ倒れるはずだ!

それまでにどういう攻撃を受けたか聞けるだけ聞いておいてくれ!」

 

事情を知る特別班に(ほう)けながらも蠍座のことを話すと

 

「がはっ!」

 

春信のわき腹に大穴が開き、口だけでなく目や耳からも血を流す

 

「スコーピオンの毒だ!すぐに分析にまわせ!こっちでは傷の処置を行う!」

 

ドクターの指示で全員がテキパキと動き出す

まるでこの事態を想定していたかのように

 

その間も春信はずっと泣いていた

傷の痛みではない

また救えなかった

その心の痛みに泣いていた

<インターミッション2>

 

病室のベッドで春信は彼に怒鳴り散らしていた

 

「なんでだ!何も出来ない僕をなぜあの時代へ送るんだっ?!」

 

彼は黙ってその様子を見ている

 

「…」

 

「僕が行ったところで何も変わらない!変えられない!」

 

「…」

 

そう、何も変わっていなかった

春信は既に彼から聞いていた

自分が見て来た過去は

今いる現在に連なる過去となんの差異もない事を

彼はバーテックスの進化も勇者の犠牲も

すべて知った上で春信に話さなかったのだ

それを知らなければ

知らずに準備を進めていなければ

今回、蠍座の毒を受けた春信は死に至っていたことだろう

 

「誰一人守れない!救えない!」

 

「…」

 

だが、その事が更に春信の心を(さいな)んだ

自分も初めから知っていれば何か出来たかもしれない

誰かを助ける事が出来たかもしれない

 

「ただただ、人々が!勇者たちが!傷つき死んでいくのを見ているだけ!」

 

「…」

 

どれだけ勇者として戦っても誰一人助ける事ができなかった

それはあらかじめ知っていたところで変わるはずの無い現実だった

しかしそれに納得し、人々の死を受け入れる余裕など春信にはなかった

 

「こんなことに何の意味がある!意味なんてないじゃないか!!」

 

春信は泣きじゃくる子供のように訴えている

もう怒鳴り散らす気力もないのだろう

 

「親しくなった人たちがみんな死んでいく。。。」

「まるでそれを見るために時を渡る。。。」

「そんなの。。。もう耐えられない。。。」

 

春信の心は限界まで追い詰められていた

元々、春信自身が心の強い人間ではないのだ

神世紀の平和な時代に生まれ

一般的な家庭に育ってきた

たまたま大赦の組織に所属することになり

勇者としての経験と大赦の仮面の者としての経歴を持つことにはなったが

彼自身は、争いごとや人の死に対して耐性の強い人間ではなかった

そんな彼がこの時間移動で何度も人の死を見て来たのだ

そのどれもが理不尽で救いの無い死ばかりだった

心が折れ、振り向き、立ち止まってしまうのも仕方の無い事であった

 

「春信…」

 

俯き呟く春信に対し

 

「甘えるな…」

 

彼はその襟首を掴み上げた

 

「?!」

 

驚く春信に訴えかける

 

「何の意味もないとは言わせんぞ…」

「お前は多くの死を、絶望を、地獄を見てきたんだ…」

「それを見た者にはそれを背負う責任がある…」

 

「せ、責任。。。?」

 

手を離し、問いかけるように語る

 

「神世紀298年の戦いをお前は大赦の人間として見てきた」

 

乃木園子をリーダーとする3人の勇者の戦いをサポートしようと奮闘する人々を春信は見て来た

その中で犠牲になった少女たち、その犠牲に苦悩する仲間たちを見て来た

 

「神世紀300年の戦いをお前は勇者としても大赦の暗部としても見てきた」

 

犬吠埼風をリーダーとする勇者部の戦いを一度は共に戦う勇者として見て来た

どれだけ困難の中にあっても挫けない少女たちを、自分を支えてくれる仲間たちを見て来た

 

また一度はその戦いをを監視し管理しようとする仮面の者の一人として見て来た

少女たちに満開の秘密を告げず、その事を知って大赦に乗り込もうとした少女を

あろうことか園子を使って力で押さえようとすらしていた仮面の者たちを見て来た

 

「つまり春信、お前は大赦の良心と体質、そして勇者たちを見てきたんだ」

「どんな組織でも綺麗な面、汚い面がある」

「お前はそれを知らなくちゃならない」

 

「な、何を。。。」

 

彼の言い知れぬ迫力に春信はいつもと違う何かを感じていた

 

「知らなくちゃいけない、人の本質を!人の醜さを!美しさを!」

「それによって犠牲になるものの痛みを知らなくちゃならない!」

 

「どうして。。。」

 

顔を近づけ、呟く様に小さな、しかし力の込められた声で春信に告げる

 

「大赦という組織の(うみ)を吐き出させるんだ」

「そうして大赦を…変えるんだ」

 

「大赦を。。。変える?」

 

意外、というよりも考えの及ばない話だった

今の春信は大赦の一部であり、少しくらいは権限もある

しかしそれも先の戦いにおいて、園子を利用しようとした筆頭らを止めるにも至らない程度だ

そんな自分にこの友人は大赦を変えろと言ってきたのだ

 

「ただの一人の勇者で終われると思うな」

「三好春信、お前は背負わなければならない」

「今まで戦ってきた勇者たちの思いを」

「今まで犠牲になってきた人々の思いを」

 

「僕に。。。そんな事。。。」

 

出来るわけがない、何をどうすれば良いのか、いや、そもそも大赦をどう変えたいのか

それすら思いつかない今の状況で応えられる返事など持ち合わせていなかった

故に男は春信の答えを聞かない

 

「今は休め」

 

「。。。え?」

 

「回復してから話を聴く」

「その時にもまだ行きたくないと言うなら…」

 

「。。。」

 

彼は最後まで告げず部屋を出て行った

<インターミッション3>

 

祠前で対峙する二人

春信は旅支度を整えていつもの様子で立っていた

 

「行くんだな」

 

男が聞く

 

「行くよ」

 

春信は応える

 

「いいんだな」

 

更に男は聞く

 

「いいわけがない」

 

しかし春信は応えない

 

「お前…」

 

呆れる男の顔を見ながらそれでも春信はハッキリと言い放つ

 

「今まであっちで犠牲になった人々のことを無意味にはしたくない、だから行く」

 

「…」

 

男も黙ってその言葉を聴いていた

 

「だけど僕は勇者だ、救える命があるなら勇者として戦う

無茶も無理も通してみせる!」

 

それが春信が出した答え

人によっては何のことはない問題を先延ばしにしただけだと言うかもしれない

彼にはあっちで守れる命などないと言われた

 

正直、彼が春信に見せたいもの

それによって大赦を変える意味

そのどれも春信は理解しきれていなかった

 

それでも見届け、守れる努力をすると誓った、それだけなのだ

そして勇者である春信にはそれだけで充分だった

 

「まあ…今はそれでいい」

 

「お前の言った話は、全て見届けてから考えるよ。。。」

 

自分の答えは正解ではない、そう自覚しながら春信は彼にすまなそうに言う

 

「…そうしてくれ」

 

彼は納得したように、あるいは諦めたかのように嘆息し、春信を見送った

<高知>

 

「私たちを蔑むなら、あなたも……自分より圧倒的に強い者と、戦ってみなさい……!」

 

「ひいいあああ!」

 

「戦いなさい…!」

 

千景の振り下ろす大鎌が鈍い金属音を立てて少女の眼前で止まった

 

「ひっ、ひいぃぃぃぃぃいぃっっ!いっ……」

 

鋭利な刃物を目の前にして少女は気を失う

 

「あなたは…」

 

「やめておけよ。。。もう。。。」

 

千景の目の前には仮面をつけ赤い勇者服を纏った男がいた

2本の小太刀で千景の大鎌を受け止めている

 

「どういうことか分からないけど……

あなたも私を邪魔するのね……

私が…間違ってるって言うのね…!

その子達の味方をするって言うんでしょう……!!」

 

「お前は間違ってないっ!!」

 

いきなり叫ぶ仮面の男に気圧される千景

 

「?!」

 

「確かにお前の父親はクズだ!」

「今のお前の心に気づきもせず、お前をクズ呼ばわりするクズ野郎だ!」

「だが!そんな父親の娘だってだけでお前をクズ呼ばわりしたこの村の連中もクズだ!」

「そのくせ勇者になった途端、手のひら返してお前をチヤホヤして!」

「戦況が不利になったらまた手のひら返すようなクズだ!」

「皆を守るために戦って死んだ、球子や杏をコケにする様なクズ揃いだ!」

「お前が怒りに任せてこいつ等を殺しても、敵に襲われるのを見捨ててもしょうがねぇ!」

 

「な、何言ってんのよ、アンタ!」

「そ、その格好、アンタも勇者じゃないの?!」

「私たちを助けなさいよ!」

 

気を失った少女のそばで3人の少女たちが仮面の男を責める

しかし返ってきたのは彼女たちにはあまりにも意外な言葉だった

 

「うるせえ!!!

俺はお前らの勇者なんかじゃねぇっ!

お前らみたいなクズが死のうが生きようが知った事か!」

 

その声に言葉を失い小さくなる少女たち

しかし当の千景はその言葉にも苛立ちを感じていた

 

「あなた…言ってる事が無茶苦茶じゃない…」

 

鎌を持つ手に力を込め千早が呟く

 

「私が…間違ってないって言うくせに…私を止めて…」

 

その声は徐々に荒々しい叫びとなる

 

「勇者じゃないって言ってるくせにその子達を助けて…!

やっぱりあなたも私を馬鹿にしてるんだ……!!」

 

「やかましい!

こいつ等を助ける義理なんて俺にはねぇ!

俺は俺のワガママのためにしか勇者の力を使わねぇ!」

 

「わが…まま…?」

 

「俺はお前が人殺しをするのが嫌なだけだ!」

 

「なにを…!」

 

「精霊の悪意に飲まれたお前の『正義』と!

元のお前の『正義』を信じる俺の『ワガママ』と!」

 

「正…義…」

 

「どっちが強えぇか勝負だっ!」

 

小太刀を持つ手に力を込め、千景を突き放す

だが仮面の男は内心焦っていた

 

(くそっ。。。大見栄切っちっまった。。。どうする。。。?

きっとひなたちゃんが僕に教えてくれた事はこんな風に使う為じゃなかったはずなのに。。。

正直、この時代の勇者相手でも今の僕が正面から戦って勝てる気はしない。。。

言ってる事が無茶苦茶か。。。確かに何の理論立ても無い

親や故郷(さと)の人間をクズ呼ばわりした男の説得なんて聴けるはずも無い。。。

でも。。。それでも。。。!)

 

仮面の男の脳裏にあの時、大阪でアニキたちを止められなかった後悔が蘇える

あの後悔をもう一度繰り返すわけにはいかない、だから…

 

「このまま放ってなんておけるかぁぁぁぁぁっ!」

 

両手の小太刀で切りかかる仮面の男

しかしその狙いは千景ではなく、その手の大鎌に向かっている

 

(なんなの…この男?

私の『正義』…?

そんなものもう…どこにも…)

 

『そうよ…騙されちゃダメ…』

 

「あ…」

 

『この男も同じ…あなたと正面から向かい合ってなんていない…』

 

「お、同じ…?」

 

『言ったでしょう…?味方なんていない、みんなあなたを傷つける敵…』

 

「敵……」

 

『そうよ…自分の勝手な思いを押し付けて…』

 

「勝手な…思い…」

 

「?」

 

まるでこちらが見えていないかのように独り言を呟く千景に春信の手が止まる

 

(なんだ?『同じ』とか『勝手な思い』とか。。。いきなり?)

 

手は止めるが、いつ誰に斬りかかるかもしれない千景に構えを解く訳にはいかない

敵対行動を取り続ける仮面の男に今度は千景が斬りかかっていった

 

その連撃を両手の小太刀でなんとか受け流す

 

その間もブツブツと誰かと会話するように呟いている千景

仮面の男はその姿にかつての自分を見出した

 

(あの時の僕と同じ。。。?

だとしたら話してる相手は『弱い自分の心』?!

迷ってる余裕はない、賭けてみるか。。。!)

 

斬りかかる千景の攻撃をいなしながら仮面の男は叫ぶ

 

「どうだ、千景?!」

 

「?!」

 

「『弱い自分』の言葉は心にクるだろう?!」

 

「『弱い自分』…?」

 

「そりゃそうだ!自分に都合のいい言葉を並べ立てて自分を騙そうとするんだからなぁ!」

 

「なにを…!」

 

「だがなぁ!そいつの言葉に耳を貸している間は一歩も前に進めやしねぇ!!」

 

「うる…さいっ…!」

 

「おおっと、耳をふさごうとしても無駄だぜ!

俺の『声』はどこまでもお前の心に響くんだ!」

 

「うるさい…うるさいっ…!」

 

「だから俺が教えてやる!一番の心構えを!

いいか!千景!自分を信じるんじゃねぇっ!!」

 

「っ…?」

 

「お前を信じる俺を信じろ!!

お前を信じる『友』を信じろ!!!

そいつが一番お前にとって大事なことのはずだ!」

 

「私を信じる…」

 

千景の心にまたその声が聞こえる

 

『嘘よ…』

 

「嘘…」

 

「嘘じゃねぇっ!」

 

仮面の男の声を更に否定するその声

 

『騙されないで…』

 

「騙してる…」

 

「騙してねぇっ!」

 

その声は確かに自分と同じ声だった

 

『だって、彼もあなたに刀を向けているわ…』

 

「刀を…むけて?」

 

「!(今だっ!)」

 

仮面の男は小太刀を捨て、千景に向かって両腕を広げた

 

「お前を信じて俺はその刃を受ける!」

 

「?!」

 

「さあ、来いっ!千景ぇっ!!」

 

無抵抗の仮面の男に千景の鎌が振り下ろされる!

その刃は甲高い金属音とともに仮面の男の眼前で止まっていた

 

「乃木…さん…」

 

「若葉っ?!」

 

力なく振り下ろされた鎌は割って入った若葉の刀で受け止められていたのだ

 

「無茶をするな、赤いの!」

 

「いいとこで割って入って来たな。。。」

 

「何っ?」

 

「さあ!お前を信じる『友』が迎えに来たぜ!どうする?!千景!」

 

「友…」

 

「それともこのギャラリーの前でもう一戦やらかすかいっ?!」

 

「え……?」

 

周りを見渡すと4人の少女たち以外にも村人たちが集まっていた

考えてみれば昼日中(ひるひなか)から村の有名人と謎の男が大立ち回りをしているのだ

騒ぎで人が集まるのは当然であった

しかしそんなことにも気付かないほど千景は冷静さを失っていたのだ

 

村人たちも困惑していた

騒ぎの初めの方からいた者は謎の仮面の勇者の「クズ」発言も聞いている

自分たちが千景の家に何をしてきたかも語られていた

謎の男は千景が怒りに任せて自分たちを殺しても、

敵に襲われるのを見捨ててもしょうがないと言い切ったのだ

 

目の前にいる勇者たちは自分たちの味方ではない

そんな思いの渦巻く中

 

「あ、ああ…」

 

鎌をその手から落とし、千景が(ひざまず)

 

「やめて…そんな目で私を見ないで…」

 

頭を抱え、叱られた子供のように小さくなる

 

「嫌わないで…ください……お願い…私を…好きで…いて……」

 

俯き、涙を流して訴えるその姿を見て仮面の男は自分の小太刀を拾い村人たちに言い放つ

 

「チッ、命拾いしたな、クズ共が!!」

 

「なっ、何を言うんだ!貴様は!」

 

「うるせえな。。。俺は元々こいつ等を殺そうと思ってたんだ。。。」

 

「何ぃ?!」

 

「お前は平気だろうさ!

聖人君子様は自分や仲間が役立たずのクズ呼ばわりされても

『弱き者の為に』って戦えるだろう!」

 

仮面の男はなおも村人たちへ敵意を込める

 

「俺は違う!そんな奴らに守る価値なんざねえ!

今回はその娘に興が削がれただけだ!」

 

小太刀を村人に向け一人一人に言い放つ

 

「覚えておけ、テメエら!自分たちが何をしてきたかを!

その報いを受ける日は必ず来ることをな!」

 

「む、報い…?」

 

戸惑う若葉を尻目に男はしゃがみ込み

村人たちに向けたその手の小太刀を地面に突き刺し、そのまま高速でターンする

その勢いで巻き上げられた土が煙幕のように広がる

 

「め、目くらましっ?!」

 

それが収まったときには仮面の男の姿はそこにはなかった

その身体能力で既に村の外れまで跳躍している仮面の男、春信

 

(くそっ!何をしているんだ、僕は!

千景を助けに行ったはずなのに。。。

これじゃ、勇者の評判を落としただけじゃないか?

一体何ができたんだ?何をすれば。。。

どうすれば良かったんだ?)

 

結局、何も出来ず苛立つ春信

何か出来たのではと考える春信

何もしなければ良かったのかと悩む春信

しかし

いつまで経っても答えは出なかった

 




mototwo(以下略):話が酷いブツ切りだぁ…

春信(以下略):自覚があるならなんとかしようぜ

まとめてみて思った

何を?

コレ、原作読んでないと訳わかんないわ…

読んでても何がしたいのかわからんけどな

何をしたいのかはともかく、どこの場面かは大体わかるはずだから、原作読んでれば

それでいいのか。。。

言いたい事は<インターミッション2>でほとんど彼に言ってもらったし

アレがか。。。

それぞれの土地の結末は上げないって決めてたし

そのせいで何がなんだかわからん読者もいるだろうに。。。

原作読んでね!としか言いようがないな

投げっぱなしかよ

あとは次回でまとめるだけ!

まとまんのか。。。?

それはもう書いてあるし

この後書きの前に書き上がってたのか

そうそう

なら、いっそまとめて上げりゃ良かったのに

次の話がちょっと雰囲気違うから

ほう?

大体、上の話書いたすぐ後にお前との会話なんて後書きに書けないわ

相変わらずメンタル弱い。。。

今のうちに言っとくと、原作の最終局面は描きません

うおいっ!

今回と同じ
一部を除いて結末は上げない、そうなると最終局面全体がカットにならざるを得ない

それで何を書く気だよ。。。

今回みたいな感じで色々春信が見てきましたって(てい)でまとめに入るの

手抜きか!

そう言われてもしゃーないけど、原作写すようなマネは少なくとも今回はやめとこうと

前作の反省ってか?

それにどの場面でも春信は何も出来ないからな
救出はおろか説得も励ましも空振りだ

惨め過ぎる。。。

それでも最後まで見届けるって決めた、それが今回の話

で、次回は?

決戦、決着、しかしそれは人類にとって決して勝利とはいえない苦渋の決断であった

え?

残された勇者と巫女は苦悩し、決意する

あ、もう予告に入ったのか。。。

そして後へ続く者へ遺す想い

いきなり入るから引っ込みどころなくしちゃったじゃん、俺。。。

「生きろ。ただ、生きてくれ。」

うわー、なんか真面目っぽい。。。

次回「新 三好春信は勇者である」最終回「引き継ぐ想い」

俺が台無しにしたみたいでヤなんだけど、コレ

泣き虫最弱勇者のセンチメンタルジャーニー、ここに終結

え、コレ、真面目なの?ギャグなの?

どうせ半分以上、嘘予告だから

開き直んな!

<最終回も嘘だったら笑う?>


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10話(最終回) 引き継ぐ想い

この話にはネタバレが含まれます
二つ目の話に出る『勇者御記(検閲済)』は
『乃木若葉は勇者である』原作本および
『乃木若葉は勇者である』公式ページの<STORY>で閲覧できます
http://yushadearu.jp/nogiwakaba/story/1/



<勇者システム>

 

薄暗い社殿の中

ひなたを中心に巫女たち、神官たちが集まっている

 

(何かの儀式でも始めるのか。。。?)

 

こっそり潜んで様子を伺う春信は、そのただならぬ雰囲気を

14歳の少女であるひなたが作り出しているという事実に驚いていた

 

(あの()達に比べて、僕は一体なにをしてこれただろう。。。)

 

「それでは企画書の1ページ目をご覧下さい…」

 

考え悩む春信の耳に、やっと口を開いたひなたの声が聞こえる

 

(。。。ん?)

 

聞き耳を立てる春信の鼓膜を揺るがすひなたの声

その中におかしな単語が入っていた気がした

 

「本プロジェクトは勇者の…」

 

(。。。んん?)

 

なにかの聞き間違いかと更に耳をそばだてるが

確かにひなたのその口が、その声が「それ」を発していた

 

(メソッド?コミット?)

翌日の丸亀城、ひなたと若葉の会話を廊下で聞く春信

 

(昨日の話、途中からどーでもよくなって帰っちゃったけど、どうなったんだろ?)

 

「ボツになりました…」

 

「何ぃっ!?なぜだっ!?」

 

しょぼくれるひなたと驚く若葉だったが、春信は納得していた

 

(うん、途中で聴くのやめてやっぱ正解だった。。。)

 

ひなたの用意していた数十枚はあろうかという企画書には

以前、春信の書いた報告書を思い起こさせる勢いがあった

 

(あれは。。。苦い思い出だ。。。)

 

今となっては、恥ずかしさに頬が引きつる思いだ

 

実は以前、鷲尾須美が作った遠足のしおりも同様に”無駄に”分厚い代物だったのだが

無論、春信の知る(よし)も無い

どうやら勇者とその周りには凝り性で人を呆れさせる能力の持ち主が集まるらしい

 

その後もなにやら話し込んでいるが、どうやら企画を諦めた訳ではないようだ

 

「そうか!私が義経のような精霊になるのか。なるほどなるほど…」

 

(精霊。。。ねぇ)

 

「うむ!カッコイイかもしれないな!」

 

(きっとシャーマ○キングの阿弥陀○みたいなの想像してんだろうなぁ。。。)

 

春信は牛鬼や木霊を思い出し、そのイメージの落差に苦笑していた

 

(まるで魔法少女のマスコットだったもんなぁ。。。)

 

あのデザイン自体、大赦の少女たちへの精霊への疑念を逸らす為の偽装だった

そう考える事も出来るが、精霊たちは確かに勇者部の娘達を守ってくれていた

春信自身、あの時の義輝がいなければ、ここにこうしていられたかも怪しいのだ

 

(しかし、この時代の精霊とはあまりにも違う。。。)

 

まるで悪霊のように憑依者の心を蝕んだ精霊たち

 

(千景。。。)

 

あの時の少女の目は、まるで荒みきった頃の自分を見ているようだった

 

(僕には周りに大赦の皆がいて。。。

勇者部の少女たちが助けてくれた。。。)

 

(千景にもいたはずなのに。。。

ちょっとした行き違いが続いて。。。

助けを得られなかった。。。)

 

(人の心は弱い。。。

その弱さゆえに人を傷つけ、自分も傷つける

天の神はそんな人間に憤りを感じ、バーテックスを遣わしたんだろう)

 

(でもその弱さゆえに人は助け合い、愛し合う

地の神はそんな人間を愛し、加護し勇者たちに力を与えてくれた)

 

(僕たちは。。。)

<引き継ぐ想い>

 

久し振りに乃木園子宅へお邪魔する春信

 

「園子嬢、僕にも見せてもらえるかな、その『初代勇者御記』」

 

「あれ~?春信さん~来てたんだ~?」

 

「こんにちは、夏凜ちゃんのお兄さん」

 

「やあ、こんにちは、春信でいいよ、東郷さん」

 

「にぼっしーはもう帰っちゃったよ~」

 

「そいつは残念、会って抱きしめてやりたかったのに」

 

本当は妹の前で西暦勇者の話をする事に気が引けて

わざと訪問の時間をずらした春信だったが

 

「そういうこと言うから避けられるんじゃないですか…」

 

「家族愛って難しいねぇ。。。」

 

冗談を交わしながら御記に手を伸ばす

 

「はい~どうぞ~」

 

「ありがとう」

 

1ページずつめくり、修正だらけの御記を読んでいく

 

「塗りつぶしが酷いな。。。乃木若葉。。。」

 

「私のご先祖様だよ~」

 

「なるほどね、不安定。。。弱気な発言には検閲が入ってるのか?」

 

ページをめくると他の名前も書かれていた

 

(若葉だけじゃなく、他の皆も書いてるのか、学級日誌。。。だったのかな?)

 

 

「土居球子。。。」

 

「誰かのことを心配してますね」

 

(球子のことだ。。。多分、杏だろうな。。。)

 

 

「伊予島杏。。。」

 

「『切り札』か~、どんなものだったんだろうね~」

 

(肝心なところが消されてる。。。『満開』のときと同じか。。。)

 

 

「高嶋友奈。。。」

 

「友奈ちゃんと同じ名前で驚きました?」

 

「あ?ああ、友奈さんと字も同じだし、すごい偶然だね」

 

「それが偶然でもないんだよ~」

 

友奈の名前の由来を得意げに話す園子

 

「風先輩は『友奈因子をもつ友奈の一人だ』なんて言ってましたけど」

 

「なるほど。。。」

 

笑いながら言う東郷の言葉に思う

 

高嶋友奈と結城友奈を見た春信だからこそ感じた

まるで同一の存在が別の時空にいたかのような感覚

 

(もしかしたら本当に友奈は何度も生まれ変わっているのかもな。。。)

 

 

「土居球子。。。」

 

「ムフ~ッ!」

 

園子が鼻息を荒くして御記に顔を近づける

 

「園子嬢。。。女の子同士の”好き”ってのはそういうんじゃないからね。。。」

 

「あう~><」

 

(また球子か、この消されてる部分って。。。)

 

「敵に対して、なにかが通じなかったと書いてあるみたいですね」

 

「なんだろうね~?」

 

「な、なんだろうな、ホントに。。。」

 

(噂に聞いた例のアレか。。。

西暦の末期からあの信仰具合。。。

ある意味病んでるな、この土地の人間は。。。w)

 

 

「伊予島杏。。。」

 

「なんでしょう、これ?本の検閲でもあったんでしょうか?」

 

「言論の統制は許せないよ~」

 

「あんまり百合物に偏った著作も検閲すべきかもなw」

 

「そんな~」

 

 

「乃木若葉。。。」

 

「ご先祖様も色々悩んでたみたいだね~」

 

「そもそもの原因、か。。。」

 

(神話の時代から続いてきた人間の横暴、神の裁き

確かにずっと人類を見続けた神様がいるなら。。。

でも、それでも僕たちは諦める訳には。。。!)

 

「何か思い当たる事でも?」

 

「いや。。。別に。。。」

 

またページをめくっていく

 

 

「高嶋友奈。。。」

 

「この時代には四国以外にも生き残った土地があったみたいですね」

 

「でも~、なんだか挫けないために無理に信じてるようにも見えるね~」

 

「。。。」

 

(結局、北と南の地には行けずじまいだったようだな。。。)

 

 

「土居球子。。。」

 

「『やっこさん』っていうのがバーテックスの事なんだろうね~」

 

「進化に神樹様。。。か」

 

(十二星座にまで進化した後、更なる合体もしてきた。。。きっと今後も。。。)

 

 

「伊予島杏。。。」

 

「あっ、そこは皆ビックリしましたよ、いきなり『勇者部』ですからね」

 

「犬吠埼風さんはこの事を。。。知っていた筈もないか」

 

「そ~だよね~」

 

(いつの時代も少女達の考える事は似てくるってことか。。。)

 

思わず苦笑しつつ

ページをめくった春信の手が固まる

 

 

「?!」

 

「あ~、ここは酷いよね~、全部塗りつぶされてて~」

 

「日付や名前まで消すなんて、よほどの事が書かれてたのかしら?」

 

(それにしても、ここまでは名詞らしい単語だけだった塗りつぶしがこんなに。。。)

 

仕方なく次のページへ進む

 

 

「乃木若葉。。。」

 

「ここは容易に想像できますね、『うそ・虚偽・偽り』といった事でしょう」

 

「偽の情報で大衆を誤魔化す、今の大赦と同じような事してたんだねぇ~」

 

「いつの時代も戦況が不利になるとこんな事をしてしまう

それだけ苦しい状況だったんでしょうが…」

 

「そうだな。。。」

 

しかし春信は別の違和感を感じていた

 

(前のページが全部消されてたってのにここはそこだけ。。。どういうことだ?)

 

 

「伊予島杏。。。」

 

「また『切り札』の弊害についてだね~この杏さんって人はよほど警戒してたんだね~」

 

「それに『精霊』についても書かれてるわ

私たちのバージョンアップ前には精霊なんていなかったのに…」

 

「精霊か。。。」

 

ページをめくると

 

 

「またっ?!」

 

またも全てが塗りつぶされたページ

 

 

「次も?」

 

(何かがおかしい。。。)

 

心に引っかかる違和感

 

 

「塗りつぶしの酷いページと少ないページとの落差が大きいですね…」

 

「内容だけならともかく、日付や名前もだもんね~」

 

(なんだ?何に違和感を感じているんだ、僕は。。。?)

 

違和感の原因を探ろうとページをめくる手が自然と速くなり、汗ばんでくる

 

 

「高嶋友奈。。。」

 

「こっちの友奈ちゃんは四国の生まれではなかったのかしら?」

 

「思い当たる土地が。。。?」

 

「神話の里というと、鹿児島の霧島、宮崎の高天原とか…」

 

「奈良の大和地方にもそういうのあるって昔言ってたね~」

 

「よく覚えてたわね」

 

「えへへ~」

 

「流石ねそのっち」

 

 

「乃木若葉。。。」

 

「…」

 

「…」

 

「『…という勇者がいたことを、私は忘れない。』。。。」

 

勇者の『死』を連想させる文面に二人の少女は口をつぐむ

きっと自分たちの大切なともだちの事を思い出しているのだろう

 

だが春信はそれ以上に何かに驚いているようだった

 

「あ、あ。。。ああ。。。」

 

違和感の正体に気付いた春信は乱暴にページを前後させる

 

「ああ~、古い紙なんだから~乱暴にしないで~」

 

いつもより少しだけ慌てた口調で注意する園子をよそに

春信は感じていた違和感の正体、それを探していた

 

(ない、ないっ、ないっ。。。)

 

そして初めの方に見た土居球子のページで手を止める

 

(ここの人数。。。文字。。。消された名前は。。。

球子が心配してたのは杏じゃなかったんだ。。。)

 

・・・(郡千景)。。。」

 

消え入るように呟いたその名は二人には聞き取れていなかった

 

「どうしたんですか?春の…」

 

怒りと悲しみと悔恨と…

様々な感情がぶつかり合って涙を流す春信に

東郷は声をつまらせた

 

(こおり)千景(ちかげ)は。。。

確かに英雄となるには心が弱かったかもしれない。。。

だが、それでも勇気を振るい立たせて、世界の為に戦ったんだ!

千景は間違いなく勇者だった!

それを。。。

その名すら残させないなんて。。。

勇者という拠り所を死して尚奪い去るなんて。。。

これが大社の。。。大赦のやり方かっ。。。

若葉もひなたもそれを止める事が出来なかったのか。。。)

 

彼の言葉が脳裏によぎる

 

(『お前は背負わなければならない』

『今まで戦ってきた勇者たちの思いを』

『大赦を…変えるんだ』)

 

「変えてやるさ。。。」

 

「えっ?」

 

「どうしたの~、春信さん~?」

 

「今のままじゃ足りない、大赦はもっと変わっていかなくちゃいけないんだ。。。」

 

「足りないって…」

 

「大赦は今、世間にバーテックスや世界の事を公表する準備をしている」

 

「うん~、いい事だよね~」

 

「でもそれは皆が頑張って戦況が有利になったからだ、大赦の体質が変わったわけじゃない」

 

「それは…」

 

「勇者システムの量産もすすめている

だがそれも、また沢山の少女たちを戦いに巻き込むって事だ

戦況によってはまた大衆や少女たちを騙しかねない」

 

「…」

 

「変えなくちゃ、僕らが

今まで歩んできた人達のためにも

後に続く人達のためにも

人類が一枚岩にならなきゃ

”天の神”になんて勝てるわけがないんだ」

 

「春信さん~、一体なにを~」

 

「園子嬢、僕は君たちが戦っているとき大赦の人たちの優しさを見てきた」

 

「優しさ…」

 

「そして東郷さん、君たち勇者部が戦っているときの大赦の忌むべき体質も見てきた」

 

「体質…」

 

「大赦の両面、そして勇者たちを見てきた僕には責任がある」

 

「「責任…」」

 

「園子嬢、東郷さん

二人にも。。。

いや、皆にもきっと協力してもらう時が来る

その時には。。。頼めるかい?」

 

顔を見合わせ、二人は春信に力強く頷いた

 

天の神の使徒バーテックスとの真の決戦

それは間近に迫ろうとしていた

 

 




mototwo(以下略):終わり!

春信(以下略):終わりってお前。。。

終わったの!

何の解決も完結もしてねぇじゃねぇか。。。

そういう話だったからな、今回のコレは

どういうことなの。。。

『その後の園子』読んでない俺には

まだ読んでないのか。。。

大赦が変わったって思えなくて

ほう

戦況が有利になったから都合のいい事言ってるだけじゃないかって

ふむ

きっと第二期に入ったらまた友奈達は勇者になって戦うんだろう

公式のキービジュアルが勇者部の6人だもんな

それを支える人たちがいて欲しいなって

それがお前の希望か

一期の大赦があまりにもあんまりだったからな
せっかく春信っていう大赦の偉い人がいるんだし

非公式扱いしてるくせに。。。

実際、公式の本編では出てこない可能性の方が高そうなんだもん

しょぼ~ん。。。

前作のおかげで、「ここ」では3つの立場にいる唯一の人間ってことになってるし

大赦の表と裏と勇者か

そのうえ西暦末期の地獄絵図を見てきた

どの程度まで見てたか前回からブツ切り過ぎてわからんが。。。

原作ネタバレ部分を出来るだけ切り取ってシェイプアップしたらアレしか残らなかった…

それでもネタバレは酷かったがな!

球子、杏、千景の話はこれ以上切れなかったし

友奈については?

俺が触れるとこでもないだろうから丸々カットだ

友奈と絡んだの、最初の出会いの時だけだったな。。。

歌もあったろ

あれは。。。カウントしていいのか?

アレ外すと杏とは会話すらしてないみたいになってるぞ、色々カットしたから

えっ?!



おお。。。ホントだ。。。出番が出会いのとこと珍劇のとこと蠍座のとこしかねえ。。。

また見直してたのか…
まあ、そこらへんはちょっと心残りではあったが…

勇者としての活躍が欲しかったな、もっと。。。

お前が活躍するには「斉天大聖(せいてんたいせい)」くらいその身に宿さんとあの子達とつり合いが取れん

無敵の大妖怪、しかも大陸産じゃねえか。。。

それぐらい地力が違うんだよ、少女たちと最弱勇者は

男勇者はつらいよ。。。

まあ、コレで一段落だし、一視聴者として第二期を楽しむとするわ

嘘設定満載だったから、第二期で設定説明入ったら整合取れなくなるもんな!

バラさなくてもいいんじゃないかな、そーゆーことは…

タイムトラベルとか擬似精霊システムとかなんなんだよ

ま、こっちの設定説明はまた気が向いたときにオマケでも入れるわ

説明できるほど設定あんのかよ。。。

しっかし、次は映画の3章が7月公開か、間あいちゃうなぁ

コレ上げる時点では映画の3章って終わってるのかな?

どうだろ?ホントにいつ上げるか考えてないから

GW中に書き終わってたって知ったらみんな笑うかな?

だからそういうことバラすなって…

そんで映画観てなんか思いついたらこの下に書き足すんだろうなw

バカにしやがって

とにかく、終わりは終わりだ

うむ、映画と第二期見るまではのんびりするとしよう

あ。。。言い忘れてたことがあった

なによ?

コレ、言って

カンペ渡すなよ、いきなり
えーと…
「仮面の赤い勇者、お前は一体…?」

「通りすがりの勇者(ヒーロー)だ、もう会うこともあるまい、覚えなくていい」

なんだこりゃ?

本文で言えなかった台詞だ
コレ言わんと終われんからな!じゃーな!

<お・し・ま・い>





<そのごのそのこと…>

園子の部屋でゆっくりお茶を(たしな)む3人
ふと園子が春信に問いかける

「春信さん~私のことなんで『園子嬢』って呼ぶようになったのかな~?」

「え?直接お仕えすることもなくなったし、『様』付けは嫌だろうと思ったからだけど。。。」

突然の問いにそれが当然であるかのように答える春信
しかし園子は少々不満げだ

「そっか~」

「何?また『園子様』って呼んで欲しかったの?」

「違うよ~、なんだか『嬢』って言葉に距離感が感じられたんだよ~」

「ふむ。。。それじゃ、こんなのは?」

「「?」」

はて、何をするのかと疑問符を掲げるような表情の二人を前に
春信は流暢な発音で語りかける

「Oh! my Honey Sonoko!」

「ぶっ!」

思わず吹き出す東郷を尻目に
更に流暢な発音で返す園子

「Year! my Darling Harunobu!」

「ぶふぅっ!」

いかに日本贔屓(びいき)な東郷でも今の英会話の意味くらいわかる
これには反応せざるをえない
しかし二人は清々しいまでにいつもの調子で会話を続ける

「コレは違うか」

「何か違うね~」

「ちょ、ちょっと待って二人とも…」

「どうしたの~わっしー?」

「『違う』以前に今の流れはおかしくなかったかしら?」

東郷の指摘に互いを見つめ合う園子と春信
そして東郷に向かって同時に話す

「園子嬢が」「春信さんが」
「「おかしいのはいつものことだから」~」

声をそろえる二人に呆れる東郷

「な、仲がいいのね、二人は…」

見つめ合うとまた同じように

「いや?」「ん~ん」
「「別に」~」

「いや!息ピッタリでしょう?!」

我慢しきれず、思わず突っ込んでしまう東郷
そのまま、先程から気になってた事を小言のように注意しだす

「大体、呼び鈴も鳴らさずに女の子の家に平気で上がって来る春信さん…
それに対して何も言わないそのっちも…」

しかし東郷のお説教は当の二人にはまるで効き目が無い

「おやおや、コレはアレですわよ、奥様。。。」

春信がわざとらしく東郷に聞こえるように園子に向かって囁く

「アレ、と言うと何かしら~?」

園子もノリノリで聞き耳を立てる

「こ、小芝居まで始めだした…」

「焼きもちですわよ、や・き・も・ち!」

「まあ~!わっしーさんが焼きもち~?!」

「何を言ってるんですか…私が春信さんに焼きもちなんて」

呆れた顔で溜息をつく東郷

「久し振りに会った親友が、自分の友達はおろか
ほとんど知らない男性とまで仲良くしてるもんだから!」

「あらあら~私に焼きもちを~?!」

「しかもそっちですか!」

目をキラキラさせて喜ぶ園子と
慣れない全力突っ込みに息を切らせる東郷

「いやー、東郷さんが突っ込み役って珍しいねぇ。。。」

「そうかな~?2年前はわりとこうだったよ~」

お茶をすすりながら(なご)む二人と、息が整わない東郷

「くっ…友奈ちゃんのいない所でそのっちと話してるとペースが乱されっぱなしだわ…」

なぜか無駄に敗北感に(さいな)まれる東郷をよそに話を続ける園子

「ほらほら~わっしーもそうだし、他の皆も『さん』付けでしょ~?」

「ん~?東郷さん、友奈さん、風さん、樹さん。。。」

「ね~?!」

「愛しい愛しい夏凜ちゃん」

「にぼっしーは別格だね~」

「そこは突っ込むべきところじゃないかしら…」

「春信さんはコレが平常運転だよ~」

「いや、ワザとだからね!ボケただけだからね!突っ込むとこだからね!!」

突っ込みに疲れた東郷に代わって春信が突っ込む
突っ込み体質の春信はボケにボケを被せられると自ら突っ込まざるを得ない

「とにかく、私だけ違うじゃないの~」

「そういやそうだな。。。」
(皆の昔の呼び方が出ないように意識してただけなんだが。。。)

そう、春信はうっかり勇者時代の皆の呼び方が出ないよう意識して、さん付けしていたのだ
勇者時代に東郷の事を「お嬢ちゃん」と呼んでいたのも
うっかり「鷲尾須美」の名を出さないよう気を使ってのことだ
高嶋友奈に対しては驚きのあまり初対面から「友奈」と呼んでしまったが…
そもそも春信はウッカリさんなのである。アホなのである
それがバレないよう、いつも気を張っているだけなのだ

「なんか失礼な事を誰かに言われた気がする。。。」

「よく分りませんが、もう突っ込みませんよ…」

「そんな事より!さあ、ここは私もも~っとフレンドリーに呼ぶべきだよ~!」

「なんで目ェ、キラキラさせてんのよ。。。」

「いいから!わっしーみたいにあだ名で呼んでもいいよ~」

「無駄に鼻息荒いな。。。でもまあ、そういうなら。。。」

「HEY!カモ~ン!」

「もう、二人で勝手にやってて下さい…」

妙なテンションの園子についていけず、放置することにした東郷
春信は先程とは違い、普段のノリで話しかけてみる

「やあ、そのっち、元気かい?」

「お~うっ!元気だよ~っ、ハ~ルル~ン!」

「。。。」
「…」

静かな空気が流れた
ニコニコ顔の園子と
またか…という顔の東郷

(『ハルルン』。。。コレが言いたかっただけか。。。)

そしてお茶をすすりながら冷静に返す春信

「。。。健康なのは結構なことですね、『園子様』」

「うおっ!=△=
距離を縮めようとしたのに、なぜか突き放されてしまったよ~!><」

「そのっちは自分のネーミングセンスに自信を持ちすぎよ…」

「わっしーまで~!?」

東郷の指摘に本気でショックを受けている様子の園子
どうやら相当自信のある呼び名だったようだ

「とにかく、その呼び方したら、僕も『園子様』って呼びますからね。。。」

「いいニックネームだと思ったのに~」

どうしてそこまで自信が持てるのか、春信にとっては正直参考にしたいくらいだったが

「それに、園子嬢は園子嬢でいいんじゃないかな?」

「そうですね、そのっちになんとなく合ってますし」

(ちょっと懐かしいと思ったことは内緒にしておこう。。。)

消えてしまった過去を思い出して微笑むその姿は二人に見せない、春信であった

<END>





「『みよっしー』だとどうかな~?」

(まだ諦めないんだ。。。)
「それは夏凜ちゃんに使ってあげてください、きっと『にぼっしー』よりは喜びます」

「あ~お茶がおいしい」

「わっしー流さないで~!せめて感想を言って~!」

先の誓いとは裏腹に、勇者部の元神樹館コンビと春信のティータイムは賑々しく過ぎていった

<今度こそおしまい☆>





ほほう。。。

うむ…

第3章公開すら待てなかったか。。。

う、うむ…

どういう心境の変化だ?

い…いや、単に書きたいことが出来ただけで

はあぁ~ん?なんですかぁ~?!

う、うっさいな!なんでお前に話を上げるタイミングまで文句言われなきゃなんないんだよ!

上に書いたこと忘れたのぉ~?

くっ…

まるで「3章の映画観るまでは上げません」って宣言したかのような後書きぃ~!

あ、あれは…

それをそのまま直しもせずに上げる勇気ぃ?!

べ、別に勇気とか…

いやぁ~!おみそれしましたわぁ~!

ううぅ…

さぁすが、作者さん、物書く人はやりますなぁ!

ぐ、ぐぅぅぅ…

まるで案山子ですなぁ!

ぐっすん…

あ~!スッキリした!

へ?

で、何を書きたくなったって?上の<そのごのそのこと…>ってやつ?

あ、あれ?

どした?はよ答えんさい

さ…さっきまでのイジリはなんだったの?

なんか後書きのお前がいい気になってる気がしたから泣かしたかっただけだ!

なんだ!それ?!

長い事放置された俺のストレス解消だ、気にすんな!

ホント、なんなのよ…

で、上のあれが書きたくなったの?

いや、あれは全部書き終えてから日にち経ったら
また馬鹿話が思いつくようになったから書き足しただけ

ほう、そんじゃホントのきっかけは?

皆さんに良くない話と良い話があります

は?

さあ、どっちから聞きたいですか?

え。。。

さあ!

おい。。。

どっちから!

ちょっと。。。

き・き・た・い・で・す・か?!

待て待て待て!

少しも待てませんなぁっ!

キタキ○おやじかっ!

では悪いお知らせから

うおいっ!

実は今日!

まてまて

映画館行ったら!

「良くない話」が「悪い知らせ」になっちゃってるだろ!

もう2章の公開時期終わって結局パンフレット変えませんでした!

あ~。。。

あ~…(泣

そういうお知らせか。。。

買えなかっただよ…

第3章観るときに再販されるのに期待するしかないな!

まあ、そうなんだけど…

しっかし、こんなどうでもいい話に何行使うんだよ、お前。。。

だから待たずに言い切っただろ?それに俺にとっては重大事項だ

大体、この「今日」っていつの事だよ。。。

言わない

は?

「そんなの公開終わってるに決まってんだろ?」って言われるような日にちだから

はぁ~、もういい、文字数の無駄だから良い話の方いってくれ

「鷲尾須美は勇者である外伝 勇者行進曲」買ってきた

おお、「勇者部所属」の人が書いてるアレか!

うむ、それに G'sマガジンでやってたらしい
元祖勇者と本家勇者の時空を越えた「勇者GP(グランプリ)」が巻末収録だったんだが

元祖と本家?

「乃木若葉」組と「結城友奈」組の対決なんだが

ほうほう

個人戦と団体戦って流れだったんだが

うん

個人戦のカードが序盤で発表されるんだが

「だがだが」しつこいな。。。

そのカードの中に一つ気になるものがあったんだが!

わざとだろ、もう。。。

当然なんだが!

もういいよ、気になるって「友奈」vs「友奈」とかか?

あ、うん
それもある意味、気になるっちゃー気になるんだけど…

何よ?

俺の中の春信があるカードに反応した

は?俺?なんて?

「千景ぇーっ!駄目だーっ!お前じゃそいつに勝てないーっ!」って

なんじゃそら?!

「お前がソイツに勝てるのは幼少期の不幸自慢くらいだーっ!」って

失礼な奴だな!お前の中の俺は!

実際、他のカードはどう転んでもおかしくないが、アレだけは千景の勝つ姿がイメージできん

一体誰との対決だったんだよ。。。

あの前後編の話であの女の「黒さ」を再認識させられたぜ…

「黒さ」って…ああ、あの()か。。。

上の話で叩いておいて正解だったぜ!

って、バラすんかい!秘密にするんちゃうんかい!

まあ、雑誌で掲載されたの半年も前だし、知ってる人も多いだろうし

しかし、ああ。。。確かに勝てるビジョンが浮かばんな。。。

だろ?

唯一、性能的に有利なはずのゲームですら叩きのめされそうなイメージが。。。

千景さん、可哀想…

人のあしらいに長けたあの娘と、コミュ症引きずった千景じゃあなぁ。。。

夏凜ちゃん以外じゃお前が唯一勝てそうなコミュニケーション能力の相手だからな

え?俺ってそんなにコミュ力低いの。。。?

自分の経歴確認しろ、『非公式版』春信!

お前、いちいち神経逆撫でしに来るな。。。

なんの苦労も知らない学生時代!

イケメンでサッカー・美術の両立、完璧超人お兄ちゃん!



。。。

ま…まあそこはいいだろう、公式とほぼ設定同じだから

ふっふ~ん!

しかしここからは俺のターン!

な、なんだとぅっ?!

夏凜ちゃんへの引け目でデブオタニートに転落!

ぐっ!

鍛えてイケメンに戻るも、ニート時代の自分を引きずって女性とまともに会話できず!

はあ?!

勇者となるも勇者部メンバーとのコミュニケーションは(ことごと)く思惑を外れ!

ええっ?!

時間を戻されてからは話すこと自体出来なくなり、無言の仮面に!

ちょっ!

言葉を取り戻してからまともに会話してる女性相手は園子のみ!

なんでやねん!

順を追っていくと
苦労知らずのボンボン→デブオタニート→女子とコミュ失敗→言語能力喪失
→特定の少女としか話せない

うわ、(ひで)ぇ。。。

酷いもんだろう、以上が前作からのお前の経歴だ

いや、酷いのはお前の作った設定が、だよ!

同じ事だ、ここのお前は俺の設定した『非公式』春信なんだからな

い、いや、そうかも知れんが、なんで今更そんなの掘り返してくるのよ。。。

あ~多分アレのせいだな

アレって?

後書きまで書き終えて暇なときに「三好春信」で検索したのよ

ほう?

そしたら結構いろんな人が春信を扱った二次小説書いててなぁ…

俺様人気、バッツグ~ン!

どれも落ち着いた大人だったり

うんうん

大赦仮面だけど努力を重ねてとんでもなく強かったり

俺とおんなじだね!

時には園子と淡い恋物語演じちゃったり

園子嬢とねぇ、ま、そういう見方もあるのか

そういうの見てたらさぁ…

なになに?俺のこと見直した?

突っ込み体質でコミュ力不足の最弱勇者なんてウチの春信だけだよなぁ…って

お前のせいだろうが!それは!

それで他の春信っていうか、『公式の』春信と混同されると悪い気がしてきて…

え?なに?何言ってんの?

すいません、ウチのは『非公式』なんで、許してやってください…

ネガティブになんな!俺が全否定されてるみたいで気分悪いわ!

いっぺん、コレくらい卑屈になっとかんと
「あの作者、春信バカにしすぎ!舐めてんの?」
とか言われるかも知れんから…

だったらもっとカッコいい俺を書けよ。。。

「7000度なんて目じゃないぜ!俺のハートは10万度さ!」

お前、それ自体がマイ○ガインのパロじゃねえか!

てへっ!

しかも後書きで書いた妄想、本編の俺とまるで関係ねぇ!

そうだっけ~?

俺、本編で「~さ!」なんて言った覚えねえよ!

いや、きっとキャッキャウフフ話のどこかで言ってたよ~

えっ?!



言ってなかったぞ!どっちの話も!

わざわざ見て来たんだ、恥っずかしぃ~い

く。。。まるで反省してねぇじゃねぇか。。。

卑屈になっても反省などしない!後悔しても反省などしない!

ロクデナシめ。。。大体、新刊読んだだけにしてはテンション高すぎねぇか?

ふ、やっと気付いたか

なに?何かあんの。。。?

以前言ってた「感想」、好評でしたーっ!

え、あ。。。ああ、すっかり忘れてたわ!どれどれ?
『面白いです!応援しています!』
か、やったな!

うむ、罵詈雑言だったらどうしようかと本気で悩んだ末のオープンだったが、良かった!

相変わらず、外からの評価には弱いな。。。
しっかしそうか~「面白い」か~、あれ?「面白い」?

どした?褒め言葉だぞ、「面白い」ってのは!

いや、そうなんだけど、日付が。。。

日付?

この感想書かれた日付と時間って『乃木若葉』編に入ってすぐじゃね?

あ、そうだね

つまり、あの西暦勇者との邂逅と嗚呼ガンダ○の回。。。

そう…なるな?

コレってやばくね?

え…?どういうこと?

あの回ってシリアスの欠片も無かった回だよ!
お前に求められてるのはギャグ回ってことなんじゃ…

え?ええ?

その証拠に、大阪とか諏訪でちょっと真面目な回入ってから感想来てないよ!

ええっ?そんなっ?

どうすんの!お前今回と前回、シリアス上げちゃったぞ!

ど、どうしよう?!

あ~!もう駄目だ!お前もう見捨てられたわ!

い…いや、いくらなんでもそんな事は…

無いって言い切れるのか?

え…

絶対の自信持てるのか?あの話に?

ええ…

自分で完結も解決もしてないって自覚ある話に?

えええ…

そこまで自信があるのか?

ええええ…

ふ~っ、残念だったな。。。

で、でもさ

なんだ?何かいいわけがあるのか?

『ダイナマイトガイ』のときって完全ギャグ回だったのに感想なかったよ?

既に見捨てられた後か

ふえっ

あまりのクオリティの低さに評価に値しなかったか

ふえぇっ

自分でも酷いって言ってたしなぁ。。。

ふえぇぇっ

あ~残念、残念!

あ、そ、そうだ!もしまだ見捨てられてないなら!

まだなにか?

今回の後書きに書いた話、ギャグっぽくない?

東郷さんツッコミ話か

そうそう!

あんな東郷さん、フツー書かねぇよな。。。

だろ?!

不評じゃないといいな。。。

え~~~~…

「東郷さんは黒くてなんぼ!」
「突っ込み疲れる東郷さんなんて!」
「そもそも東郷さんはツッコミなんてしない!」
「清楚で可憐な東郷さんを返して!」
とか言われるともう取り返しがつかないなぁ。。。

が~~~~~~~~ん…

東郷さんファンまで敵に回すとか、ウチの作家様は度胸ありますなぁ!

い、いや、アレは…

まだ諦めきれないのかね。。。

アレは園子といると鷲尾の頃が甦るっていうか…

へ~

そういう…話を…だね?

ふ~ん

ね、聞いてる?

『上の話で叩いておいて正解だったぜ!』

え?

さっきのお前の台詞~

あ…
ああ~っ!

そっか~、叩いちゃったか~、正解だったか~

ちょっ!それっ!

いや~、東郷さんファンはご立腹でしょうなぁ!

い…今からでも消せば…

おうおう、吐いたつば飲まんとけや、オッサン!

くっ…

どうした?もういい訳はないのかね?

あ…

あ~?なんだって~?

…せん…

ああ~?聞こえんな~?

ありませんっ!

いよっしゃぁ!勝った!

負けたぁ…何がなんだかわからん内に負けてしまったぁ…

ふっ、コレに懲りたらこれからはイケメンダンディーな俺様を描くことだ。。。

いや…今のやり取りでお前の株は大分下がったと思うぞ…

え。。。?

<なんだ?この最終回?>



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11話 オ・マ・ケ

このオマケは
『新 三好春信は勇者である』
の設定説明を
作者:mototwoと
主人公:春信が
ダラダラと会話するだけの
実の無い話です


mototwo(以下略):さあ、設定説明だ

 

春信(以下略):ホントにやるんだ。。。

 

一応は、な

 

んじゃ早速聞くけど、あの仮面って?

 

仮面の赤い勇者か、一応正体隠してるの、本来存在しない勇者だから

 

バレないの?

 

バレてるよ、何人かには

 

意味あんのかよ。。。

 

バレるくらい察しのいい子は、何か意味があって隠してるって思ってくれるから

 

賢さを逆手に取るわけか

 

ギャグ回で出てたらきっと

「仮面の赤い勇者…一体『なに(のぶ)』なんだ…」

とか言ってる横で誰かが苦笑してるんだろうな

 

完全に俺がバカみたいじゃねーか。。。

 

そもそも、春信の存在自体曖昧だしな

 

瓦礫の町での生き残り扱いなんだよな?

 

若葉たちが四国に帰る途中だったから

仮面と春信の出会いが本人の感覚と逆になってるけどな

 

は?

 

時間軸バラバラに上げたけど、春信的にはあの順番なの

5話の大阪と7話の諏訪は別として

 

ほう?

 

で、若葉的には諏訪で仮面の赤い勇者に会って

その後、四国へ帰る途中で見つけた生存者が春信

 

メッチャ怪しいじゃないの。。。

 

そうだな、でもそのときの春信は若葉と出会ってたこと自体知らないから

 

ひなたあたりがカマかけてきても引っかからんな

 

どうだろ?「未来から来た?」って言われてあんな反応しちゃうキャラだからな、お前は

 

どんどん俺の株が下がっていく。。。

 

そのおかげで、可哀想な天恐症持ち扱いだw

 

障がい者かよ。。。

 

そういう名目でしかも普通に外に出て空も見れる奴

 

おかしいじゃねえか!

 

特殊な症例だから大社も丸亀城に出入りするのを許してると

 

そのかわり行く度に検査とか受けてそう。。。

 

勇者でも大社の人間でもないお前を丸亀城に入らせるための苦肉の策だ

 

誰の策だよ。。。

 

多分、春信が仮面の勇者だと気付いてる誰かだろうな

 

多分って。。。

まあ、解剖されるわけじゃないんだし構わんが

 

されてたりしてな、知らないうちに!

 

怖いわ!

 

ひなたなんかは特に気付いてるだろ

そうでもなきゃ春信に千景の過去なんて話すはずがないし

 

ああ、あれはそういうことだったのか

 

いくらなんでも春信一人で千景の過去の事なんぞ調べられる訳ないから

 

勇者の力とは関係ない部分だしな

 

まあ、結局今回は原作に無いところで春信がいたらどうしただろう

ってのが中心の話だったわけ

 

そういう意味では諏訪の最後とか見届けるとこ書けたんじゃ。。。

あれって結末描かれてないんだろ?

 

俺の精神がもたん

はるの…仮面の赤い勇者に

 

言い直す意味あんのか、ソレ?

 

仮面の赤い勇者に状況話させるだけでも俺の心の大部分が死んだ

 

入れ込み過ぎだろ、あの二人に。。。

 

だから本当は球子と杏の話の方を削る予定だったんだが

 

あそこも抜いたら<インターミッション2>が。。。

 

そう、あんまし意味をなさなくなるから

 

千景のとこでも死んだって言い切ってたし

 

やむなく入れた

その代わり…って言うのも変だが、仮面の赤い勇者は即退場

 

あれだけ何の役にも立たなきゃ泣くわ、そりゃ。。。

ってかあの後、蠍座ってどうなったの?

 

原作読め

 

もっともな意見だが、読んでない人には辛いな

ここの読者自体が少ないのがせめてもの救いだ

 

うっせ!

千景の話も原作にあったところだから削ろうか迷ったけど

 

なんで残した?

 

言いたい事言って、説得と励ましに失敗するとこだったから

 

いや、尚更なんでって感じだよ?!

 

忘れたのか?前作で少女たちとのコミュニケーションを(ことごと)く失敗してたのを

 

今ソレを掘り起こさんでも。。。

 

こっちだけ読んでる人にも、お前がそういう奴なんだという事は伝えとかんとな

 

酷い。。。ホントに西暦に何も残せてねぇ。。。

 

だから最初の後書きでも言ってたろ、お前今回はただの傍観者だって

 

言ってねーよ

 

え?

 

言ってない!

 

あ、以前書くだけ書いて上げなかった部分だ、ソレ

 

ごっちゃになってんじゃねーよ

 

今回、本文削る関係で後書きも大幅に削ったり書き直したりしてるからなぁ

 

見切り発車ばっかするからだ。。。

 

ホントに行き当たりばったりだったわ、途中まで

 

大体、タイムトラベルってなんなんだよ?どっからきた設定だ?

 

あー、アレは一応前作からの流れなの

 

はぁ?何が?

 

前作で時間遡行しちゃっただろ、春信が

 

神樹様にさせられたんだけどな

 

その影響で、量産型で勇者になったときに神樹様の力の一端が残ってた事実が発覚する

 

それが時間移動能力?

 

ただ、自分の意思でどうこう出来るもんでもなかった

 

使えねーな、んで?

 

それを祠を用いた霊的回路を端末に同期させて使えるようにしたのが例の「彼」

 

ほう

 

それにも制約があって

 

どんな?

 

基本は時間遡行のみ、つまり過去にしか行けない

 

帰れないじゃん!

 

だから基本はだ

 

どゆこと?

 

過去から今という未来に行くんじゃなく、時間遡行を復元するイメージ

 

どう違うんだ?

 

一つは現在から未来には行けない

 

ああ、まあ、そうなるか

 

もう一つは復元するんで過去での出来事は現在に影響を与えない

 

ふむ、なるほど

 

でも過去でやってしまった事がチャラになる訳でもなく

そういうことが起きた世界線が出来るという

 

世界を作っちゃうって事?!

 

実際はそういう事が起きたパラレルの世界が既にあってそこに移動するんだけどな

 

分りにくい。。。

 

まあ、その辺は無理に説明したり理解する必要もないから

 

ふーん、擬似精霊システムは?

 

コレも時間移動の副産物

 

どこが?!

 

過去で勇者のときに受けるダメージを元の春信の時間軸に復元する

 

え?わからん。。。

 

んーと、まず過去に行ってからダメージ受けるまでに時間差がある

 

当然だな

 

んで、帰るときにも時間差があって

 

ん?

 

過去で1日いたからって元の時間でも1日経ってるとは限らないってこと

 

よくあるアレか、異世界で1年冒険したけど現実に戻るとほとんど時間経ってないって。。。

 

それに近いな、双方の時間差を復元することで過去の春信はノーダメージ

 

復元が終わると現在で一気にダメージ受けるのか

 

時間停止中にエロい事すると元に戻したときに一気にアヘる、あれの亜流だな!

 

理解できそうだったのに、一気に想定の範囲から斜め下の方に外れて行った。。。

 

分りやすいように例えたのに~

 

いや、余計分りにくいし、なんでソレに例えようと思った。。。

 

ついウッカリ!

 

絶対わざとだ!チャッカリだ!

 

まあ設定って言えば他にも

 

あん?

 

大赦の情報公開と勇者端末の量産ってどっちが先になるかわからんのだが…

 

俺、めっちゃ使ってましたが。。。

 

量産が終わらんと安心して発表できないだろうって前提だ

 

「量産中です」ってのと同時発表の可能性も。。。

 

もしそうなら開発中のを借りパクしたってことで誤魔化そう

 

「彼」の暗躍振りが目に浮かぶ。。。

 

結局、名前出さずじまいだったな

 

「彼」のか、どうせ考えてなかったんだろ?

 

いや、考えてたし、名前を明かす「彼」が主役の話も思い付いてた

 

なぜ書かない。。。

 

男が主役のオリキャラの男だらけの話なんて誰も読みたくないだろ

 

偏見だなぁ。。。

 

それに書いちゃうとネタだか真面目だかわかんない展開だったし

 

なんだそりゃ?

 

例えるなら「グレンラガン」でアニキが死んだ後みたいな

 

伏字を使え!

 

あれってどう見ても「あしたのジョー」のパロディなのに笑える場面じゃなかったじゃん?

 

だから伏字を。。。って、ああいうのイメージしてたのか?

 

いや、ただの例えだから

 

さっぱり伝わらん。。。

 

どうせ書きもしなかった話だし!

 

テキトーだな!

 

おっと、話がそれたな

 

設定説明回だったな

 

そうそう

 

んじゃ聞くけど俺、なんであんな弱いの?

 

言葉としておかしくないか?その質問は…

 

そう聞くしかないだろ

最弱勇者って言うけど

話が進むごとに弱くなる主人公ってどうなのよ?

 

量産型使ってんだからしょうがないだろ?

 

いやいや、「鷲尾」時代と「若葉」時代だと同じ端末のはずだろ?

 

ああ、そのことか

 

死にかけたとはいえ、十二星座とやりあった俺がなんであっちだとボコボコに?

 

ふむ…そもそも人間がバーテックスにまるで適わないってのは解ってるよな?

 

勇者じゃない人間?当たり前だろ、星屑相手でも逃げることすらままならない

 

じゃ、なんで勇者になると勝てるんだ?

 

なんだ?今更。。。神樹様の力を借りるからだろ?

 

そう、そして勇者となれるのは…

 

清らかな乙女、だろ?俺は例外だが!

 

うん、ここでお前が例外的なこの小説の中の理屈で説明しよう

 

ふむ?

 

神様と繋がる事が出来る人間が勇者になれる

 

あ~、前作でそんな話したっけな。。。

 

だけどその適性は個人差がある

 

勇者の強さもまちまちか、若葉や友奈なんか別格の強さって感じだな

 

より強く戦う意志で繋がった者ほど強い勇者となる資質を持つ

 

うん

 

それはそういう意志に対して神樹様が力を分け与えるから、でも春信は?

 

俺はって。。。

 

春信はいきなり別の時空から来て神樹様の力を端末使って分けて貰おうとする輩な訳だ

 

神樹様にしてみれば「お前誰よ?」ってことか

 

ここじゃ時空を操る全知の神って事になってるからホントに知らないって事も無いだろうけど

 

感覚的には似たようなもんだな

 

そう、だから乙女達に10の力与えてる状況で春信になんで100も200もやらにゃあならんのと…

 

それ相応の力しか分けてもらえない訳か。。。

 

その上、あんまり戦うなって「彼」から言われてたから

 

ああ、大阪の途中で入れた回想か

 

深層意識の中で戦う強い意志が生まれにくくなってる

 

アレ、今見直すと「彼」と話してるって判りにくいな

 

え?そう?

 

前作の「男」と話してるようにも見える

 

マズったな…「彼」以外の大赦の人間には基本丁寧語で話すんだが春信は…

 

台詞だけで回してたツケだなw

 

今回、懇意にしてる医療班には根回ししてるけど、基本的に大赦には秘密裏に動いてた

 

大赦をひっくり返す陰謀が渦巻いてたからなぁ。。。

 

フツーに考えて、組織を内部から潰そうとしてると取られても仕方ない事やってるから

 

暗部に消されかねないな。。。バレたら

 

実際、そういう話も考えてたんだけど

 

おいおい、物騒だな。。。

 

そこまでいっちゃうと、もう色々原作キャラと絡めなくなる展開が待ってたんでやめた

 

どういう展開だよ。。。

 

春信が大赦の暗部相手に『ズバット』やる流離(さすら)いのヒーロー話

 

「彼」を殺したのはお前かぁぁぁぁぁぁぁぁ?!お前だなぁぁぁあぁぁぁぁっ!

 

そうそう、そんな話

 

伏字使え、思わず突っ込む前にやっちゃっただろ。。。

 

『ディケイド』だと思ってたら『ズバット』でしたって展開は面白いかとも思ったが

 

伏字!

結局本編で「通りすがりの勇者(ヒーロー)」って言ったの一回だけだったしな

 

仮面って大赦仮面じゃなかったのかよ!って突っ込みも出来るし

 

仮面まで『ズバッ○』仕様か。。。確かに赤いけど。。。

 

そこまでやるとどんだけ頑張ってもギャグに見えそうだよな

 

ギャグかどうかはおいといても、もう『ゆゆゆ』じゃねぇ。。。

 

だな、そこまで行き着くと方向性見失うのは目に見えてるからやめた

 

どこかで通りすがりの勇者(ヒーロー)って言いたかったな。。。

 

ギャグ回は変身しないし、変身するときはほとんど誰かが死ぬときだったから

 

言う余裕ないわな。。。

 

第1回で上手いこと言えたのが不思議なくらいだな

 

第1回かぁ。。。

 

色々思うところがあるのは俺も同じだ

 

あの時空ってホントにもう行けないの?とか。。。

 

「彼」が行けないって言ってる以上、春信が行けない事に変わりは無いな

 

実際に行けるかどうかは問題じゃないってか

 

行かせたくないのか、本当に行けないのかは「彼」にしかわからん

 

お前が言うか。。。

 

大体、あの回の銀自体が…

 

ん?

 

ん~、なんて言うか、本当の銀ってああじゃないんじゃないかな?って…

 

はあぁ~?

 

いや、別の時空にいる本当の三ノ輪銀なのは確かなんだけど

みんなの知ってる銀とちょっと違うって言うか

 

どういうこと?

 

さっきも言ったけど、元々存在するパラレルの世界に飛んでるわけだから

 

うん

 

あの世界の銀はそもそも誰かが助ける運命にあった銀って事になる

 

まあ、そうなる。。。のか?

 

ってことはそこにいる人達の感性って言うか、考え方なんかも元々少しずれてる可能性が…

 

何が言いたいのかわからん。。。

 

まあ、書いた俺が感じる違和感みたいなもんだから気にする事でもないんだろうけどな

 

む~、俺にとっては勇者の力使って銀を助けられた、それだけで充分だけどな

 

そう…だな、しっかし

 

なによ?まだ何かあんの?

 

あの回の戦闘描写って今読み返すの恥ずかしいくらいテキトーだったなぁ

 

それ言うならこっちは大声で「ディバイディングドライバー」不発させた恥ずかしさで一杯だ

 

あでも、封印の儀の不発現象は過去だからってだけじゃなく、端末の性能でもあるんだよ

 

あれ?そうなの?

 

TVの夏凜ちゃん初登場回思い出してみろ、一人で封印したことに風先輩が驚いてたろ?

 

ああ、そういやあ。。。

 

そもそもTV時代でも複数で行うのが当たり前の封印の儀を

弱体化した量産勇者が一人で出来る訳ないだろ

 

い、言われてみれば。。。

 

それが更に神樹様の力を受けにくくなる過去の時空じゃ、な~んも出来ねぇって

 

あ、もしかして西暦で俺の刀が小太刀になったのも?

 

表現上、小太刀って書いたけど、ホントはナイフ程度の懐刀だ

 

変身前から持ち歩いてるってわけか。。。

 

西暦勇者は皆そうだよ

彼女たちは公の勇者として隠す必要が無いから堂々と持ち歩けるが

 

俺が常に日本刀2本担いでたら怪しさ爆裂だな。。。

 

いかに可哀想な天恐症患者とはいえ、見逃してはもらえんなw

 

職質、没収、下手すりゃ拘束されちまうな。。。

 

だから捨てたり拾ったりもしちゃうわけだ

 

土佐で千景とやり合った時か

 

今回、設定もそうだけど、ビジュアル的にも説明文は結構省いちゃってたなぁ

 

なんでまたそうなった。。。?

 

ギャグ回ばっか書いてたじゃん?

 

歌ネタとかな

 

ああいうのってテンポ第一なとこあるから無駄な説明は極力省いてたのよ

 

ああ、そういうとこあるよな、笑いのテンポって

 

それに慣れちゃって、説明省くクセがついてたみたい

 

ほう?

 

最終回とその前のシリアス回、実は上げる直前まで台詞ばっかで文章半分くらいだったの

 

なんじゃそら!

 

他の人の文章見て、自分の文があまりにも説明不足なのに気付いて書き足した

 

それでも情景の説明は少ないな。。。

 

うん、感情の補足くらいしか入れられなかった

慣れって怖いねぇ…

 

普段から文章真面目に書かないからだ

 

しょうがないよ、元々作文とか嫌いだったんだもん

 

それでよく二次創作小説なんて書く気になったな。。。

 

思いついた話を誰かに伝えたいが

知り合いに同じ作品観たり読んだりしてる奴いなかったし

漫画に出来るような構成力も画力もないし

仕方なく文章という形を選んでネットに上げただけなの

ホントは文章書くの苦手なの…

 

なんとも情けない理由だな!

 

だから別作品で書いてたときに

「読みにくい」って感想かかれてもどう直せばいいのかわかんなかった

 

例のアレか。。。

 

アレのおかげで感想開くの凄く躊躇うようになったぜ!

 

なんで強気に言ってんだよ

 

漫画で「エロマンガ先生」読んだとき、主人公の気持ちが良くわかった

 

伏字使え!特にその作品は!

 

自作品の評価とか気になっちゃうけど悪評は見たくない!

 

話聞かねぇ上に無茶言うなぁ。。。

 

気持ち的には悪評でもなんでも感想聞きたいって思ってんのよ?

 

で?

 

実際に悪評見るとヘコむ…

 

ワガママなオッサン。。。

 

勇者ってのはワガママだからな!(泣

 

まあ、ある意味勇者だな、こんな駄文を人様の目に晒すんだから

 

いうなぁ…

 

あ、また設定説明から話がそれたな

 

まだなんかあったっけ?

 

今回、シリーズとしても短かったし、もうないかな。。。?

 

実質、最後の2回以外って趣味の話だったしな

 

いや、全部趣味だろ

 

まあ、そうなんだけど、続けられるならああいうダラダラした話を延々続けるのもいいなって

 

ああいうのはネタのストックか才能が必要だよ?

 

そう、俺にはアレが限界、何年も日常系4コマ漫画描ける人ってどういう人なんだろね?

 

新聞に毎日書く人もいるからねぇ。。。

 

正直、子供の頃はああいうのバカにしてたけど、今考えるとスゲーわ、あの人たち

 

バカにしてたのか。。。

 

だって、日によって話のクオリティ大分違ってたから…

 

毎日描くってのは大変なんだろうな

 

それでも休まず描き続けるのがプロなんだもんなぁ

 

良かったな、趣味の範囲で好き勝手書けてw

 

まったくだ、締め切りに追い詰められて文章書くなんて仕事でもヤだわ

 

いや、仕事の書類は締め切り前にシッカリ書けよ。。。

 

あーあー、きこえなーい

 

こいつホントに働いてんのか。。。?

 

 

え?

 

話は変わるんだけどさ…

 




<神の祝福って?>

「神の祝福、か。。。」

「あれ~?なんで知ってるの~?」

「うん?」

「私のことだよね~」

「へえ?」

「私がどうしたの~?」

「え?何が?」

「どうにも噛み合ってないみたいですね…青薔薇の花言葉ですよ、”神の祝福”って」

「青薔薇っていうと。。。」

「うん、私の勇者の花だよ~」

「あ~、ああぁ!なるほど!そうだったのか!」

「な、なにがですか?」

「園子嬢だよ、園子嬢と東郷さんたちが出会うって話だったんだ!」

「はあ?」

「いやー、花言葉とか全然詳しくないし、興味もなかったから気づかなかった!」

「なんだかわからないけど、スッキリしてよかったね~」

「え…これってこのまま突っ込まなくていいのかしら…」

「なにか突っ込みどころがあったの~?」

「気にする必要はないよ、TV第8話後半の話だから」

「なにいきなりメタなこと言ってるんですか!」

「めた~?」

「駄目よ!そのっち!今の春信さんに近づかないで!」

「どうしたの~?わっしー」

「今の春信さんにはオッサンが乗り移っているわ!」

「おっさん~?」

「なんでやねん!」

「言ってる間に馬脚を現したわね!」

「な。。。なにぃっ?!」

「春信さんは本編では一度も関西弁でツッコミなんてやってないわ!」

「いや!本編って!東郷さんがメタなこと言い出してどうすんの?!」

「めた~?」

「大体、それ言い出したら東郷さんはこんなノリノリでツッコミやるキャラじゃないでしょ!」

「私はすでに『ラブ』で『ライブ』な黒髪ロングが乗り移ってるから大丈夫よ!」

「何いぃっ?!あの『園田』だか『海』なんとかだかの黒髪ロングだとぉっ?!」

「二人が~二人がおかしなこと言い出したよ~」

「たしかに。。。あの少女ならツッコミも大胆にこなせる上に声も何となく似ている。。。!」

「ふっふっふ、東郷未森の冷静さと弓道少女のツッコミ力を併せ持つ今の私に死角はないわ!」

「くっ。。。ここは一旦退散した方が良さそうだな!」

「待って~、話に置いてけぼりにしないで~」

「だが忘れるな!オッサンはいつの時代にも存在する!
オッサンの血は絶えることがないという事を!」

「それでも…それでも私たちは負けない!世に美少女戦士アニメがある限り!!」

「ふ。。。いいだろう、では園子嬢!」

「ふえ~?」

「また逢う日までさらばだ!アデュー!!」

「あ~!いきなり現れたマントを(ひるがえ)して春信さんが窓を割って出て行っちゃった~!」

「説明ありがとう、そのっち、でももういいのよ…」

「ええ~?」

「ここからは二人だけの時間…」

「ふ、二人だけ~?」

「今夜だけはそのっちの大好きな、あんな事やこんな事に付き合ってあげるわ…」

「わっしーが治らないよ~どうしたらいいの~?」





という夢を見たんだ

なんじゃそら!

だから、夢

嘘つけ!何か言いたいことがあるなら回りくどい事すんな!

あ、バレたか

いったい何がしたいんだお前は。。。

うん、一つは台詞だけでどれくらい話作れるかやろうと思ったんだけど

無理な説明台詞が入った上に、内容も無茶苦茶じゃねぇか。。。

いや~、前回の後書きで<そのごのそのこと…>っての書いたじゃん?

ああ、園子嬢と話してると鷲尾が蘇るとか言い訳してたアレか、あの話の続きなのか?

アレの東郷さんが「園田海未」の声で再生されたもんだから

なんでお前はわざわざ伏字も誤魔化しも使わず名前出しちゃうの。。。?
前も「暁○ほむら」とか言っちゃうし。。。

そんでふと前作の時に話してたサブタイトルのことも思い出して

話を聞けぇ。。。

ああ、TV『ゆゆゆ』のサブタイって花言葉使ってるってどっかで聞いたっけ!って

何を今さら。。。

そんで調べたら青薔薇が「神の祝福」ってわかったから

そんな話、今頃してるのお前ぐらいだよ。。。

まあ、周知の事実なんだろうな!

どうでもいいくらいにな!

でも俺、花言葉なんて全然知らないから、全く気付かなかったよ~

まあ、お前みたいなオッサンが花言葉に詳しかったら不気味だし、いいんじゃねぇの?

不気味ってお前…

実際、そうなんだから。。。って自覚ないのか?

いやな質問だな

どうなのよ?

ノーコメントだ!

答えられないことが答えである、と。。。

うっさい!

しかし、そうなると8話後半に俺が入った前作の話、
「サツキとバラと牡丹」ってのは期せずして被ってたわけか。。。

知らずに書いてて被るって恥ずかしいんだけど…

前回の<そのごのそのこと…>みたいにパクリ前提で書いてると気にならないくせにな!

前作最終回の<その後の…>ってのも書き直そうか本気で悩んだくらいだ

自分で「パクってやったぜ!」は良くて
他人から「こいつパクってんじゃねーか!」はダメって訳わからんわ。。。

乙女の恥じらいよ!

そーゆーとこが気持ち悪いっていうんだよ

ほほう…だったら俺も言わせてもらうが

おう?

前回の後書きで言ってたやつ

どれだよ。。。

『「7000度なんて目じゃないぜ!俺のハートは10万度さ!」
お前、それ自体がマイ○ガインのパロじゃねえか!』

の流れだけど

実際そうだろうが。。。

お前が前作でバリバリに戦ってた5話までって
設定説明なしで既存のキャラの台詞叫ぶばっかだったんだからな

それが?

お前のカッコいいとこは全部どっかのパロだって事だよ!

がーーーーーーーーーーーーん!

ちなみに俺のお気に入りは5話の3回目の満開直前の大見得ね

てゆーと。。。

「無理を通して道理を蹴っ飛ばす!それが俺たち勇者団だろ?!」

うわ。。。完全にグレンラ○ンのアニキだ。。。

しかもそれに乗っかるのは友奈だけで他の3人には呆れられるという

お、俺の大見せ場がなぜ恥ずかしい過去の掘り下げみたいな扱いに。。。

実際、カッコいいなんて感想は一度も無かったぜ!

それ、お前の思惑が外れただけじゃねーのか。。。?

そう…なんだよなぁ…

なんか。。。寂しい話になってきたな。。。

もう締めるか…

次の予定は?

思いついたら1週間後、何も思いつかなきゃフェイドアウト

ホントに寂しい締めになったな。。。

<一応、ここでおしまいっ!>


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12話 オ・カ・ユ

この話には『結城友奈は勇者部所属 第3巻』のネタが含まれます



「ういーす、おっじゃましま~す」

 

いつものように園子の部屋へお邪魔する春信

 

「っても、この時間は学校だから、いないのわかってんだけどね~」

 

「あれ~、春信さん~、どうしたの~?」

 

「。。。」

 

「…?」

 

「って、うわぉっ!」

 

「ん~?」

 

「な、なんでこんな時間に園子嬢が家に。。。って、その格好?」

 

園子はパジャマにドテラ姿だ

 

「似合ってる~?部長に教わったんだよ~」

 

「いや、その頭。。。」

 

そして額に冷えピタも貼っている

 

「ちょっと風邪引いちゃったみたいで~それよりどうしたの~?」

 

「あ、ああ、こないだ好きな時に実家から持って来た資料、見てもいいって言ってたから」

 

「そうなんだ~、今お茶を用意するね~」

 

台所に向かおうとする園子に怒鳴る春信

 

「いや、そういう気を使われると思ったから、いないとき狙って来たんだよ!

大体、風邪引いてる奴が客をもてなそうとすんな!」

 

「え~、でも~」

 

「でもじゃねぇ、さっさと寝ろ!」

 

「なんだか今日の春信さん厳しいよ~」

 

「園子嬢はこれくらい言わんと人に気を使ってばっかだからな!さあ!ベッドに入れ!」

 

「人に気を使われるのは苦手なんだよ~」

 

「。。。どうせ家には何も言ってないんだろ?」

 

「言うと心配して大袈裟にお手伝いさんが来ちゃうから~」

 

「来てもらえよ。。。こんな時くらい甘えてもいいじゃないの」

 

「でも、学校終わったらわっしーたちも来てくれるだろうし~」

 

「ああ、間違いなく来るよな。。。」

 

「そこでお手伝いさんのお世話になってるの見られるの恥ずかしいよ~」

 

「何を今更。。。

あんた元々、家事もろくすっぽ出来ない、名家のお嬢様じゃねぇか。。。」

 

「せっかく自立できるように家を出たのに、そういうのダメだよ~」

 

「熱で顔真っ赤にして言う台詞かよ。。。しょーがねー!」

 

「ふえっ!」

 

ひょいと園子を抱き上げる春信

寝室へ向かいながら小言を言っている

 

「さっさとベッドに入っちまえ!」

 

「おお~!お姫様抱っこだ~!」

 

「あんなとこで喋ってて熱が上がったら俺がまわりに怒られる!」

 

「(おれ~?)ひゃんっ」

 

ポイっとベッドへ放り投げると足元の布団を被せる

 

「は~い、おとなしく寝ててね~、お兄さんは退散するから。。。って」

 

しかし園子は帰ろうとする春信の服の裾を掴んで目を潤ませている

 

「なんか僕に言いたいことでもあんの。。。」

 

「(あ、もどった~)お腹がすいたの~」

 

「は?」

 

「何か食べようと思って起きたところに春信さんが来たから~」

 

「それは僕に何か作れと。。。?」

 

「ダメ~?」

 

「気を使われたくなかったんじゃねーのかよ。。。」

 

「こんな時くらい甘えてもいいんでしょ~?」

 

お互いに相手の言葉を返す

 

「は~、やれやれだぜ。。。」

 

どうやら軍配は園子に上がったようだ

 

「やった~!」

 

「お粥くらいしか作れないからな」

 

「ありがと~」

 

「米。。。の前に炊飯器に。。。飯が少しあるな、んじゃコレで」

 

「うわ~、ご飯に水かけて火にかけるだけとか乱暴だね~」

 

「寝ながら文句言うな、コレが一番楽なんだ、あと卵とネギをと。。。」

 

「おいしいうどんが食べたいな~」

 

「次、ワガママ言ったら、このネギ尻に刺して帰るからな」

 

「『ハルルン』怖~い」

 

「おとなしくしててね、『園子様』!」

 

「こんな時でも容赦ないね~」

 

「僕に夏凜ちゃん以外の女の子を甘やかす趣味は無いんだ」

 

「ブレないね~シスコンだね~本物だね~」

 

「シスコンじゃないっての!」

 

「それは家族だから~?」

 

「ん~、どうだろな?両親にはそれほど思い入れないし。。。」

 

「そうなのか~」

 

「残念そうだな?」

 

「ん~、私も家族になれば春信さんに甘やかしてもらえるのかな~って」

 

「。。。大分、疲れてるんだな。。。」

 

「え、どうして~?」

 

「園子嬢のそんな弱気な発言、初めて聞いたよ」

 

「弱気…かな~?」

 

「いつだったか、東郷さんに言ってたろ?『乃木家を継ぐからって自分の夢は捨てない』って」

 

「あ~、よく知ってるね~」

 

「大赦仮面なめんな」

 

「あははは~」

 

「園子嬢は結婚とか考えないか、するとしても大赦がらみじゃない人を選ぶと思ってた」

 

「そっか~、そうだね~、でも~」

 

「ん?」

 

「私は自由に相手を選ぶから、大赦がらみでも気にしないよ~!」

 

「なるほど、こいつは一本取られたな、さあ、出来たぞ卵とネギと塩だけのお粥!」

 

「お~、思ったよりちゃんとしてるね~」

 

「さあ、食え、食って元気出せ」

 

「あ~ん」

 

園子は口を大きく開けている

 

「。。。」

 

「あ~ん」

 

どうやら食べさせて欲しいと言っている様だ

 

「。。。ホレ」

 

熱々のお粥の乗った(さじ)を園子の口にねじ込む

 

「あふっ!あひゅひ(熱い)よ~!」

 

「ふーふーしてもらえるとでも思ってたのか?」

 

「ハルルン酷い~」

 

「ネギ刺して帰らんだけ優しいと思えよ、園子様」

 

「花も恥らう乙女のお尻にネギを刺すとか、ドSだよ~、エロスだよ~」

 

中学生(こども)にリビドー感じるほど餓えてません!」

 

「中学生は子供なの~?」

 

「僕だってこの歳で小中学生からオッサン呼ばわりされることだってある、お互い様だ」

 

「じゃ~、大人の恋を教えてよ~」

 

「じゃあって、どういう意味で言ってんの。。。?」

 

「小説のネタにしたいから、春信さんの経験談を教えて欲しいな~」

 

「あ、そういう意味ね。。。」

 

「ん~?」

 

「はいはい、寝物語に話してやるから、とりあえずお粥食え?」

 

「わかったよ~、ふーふー…」

 

「美味いか?」

 

「フツーだね~」

 

「ま、そうだろな、粥に美味い不味いとかなさそうだし」

 

「愛情が足りないんじゃないかな~」

 

「じゃー、無理だ、諦めろ」

 

「冷たいね~」

 

「その分、粥が熱いだろ?まあ、僕も人に言えるほど恋愛経験があるわけじゃないんだが」

 

「そうなの~?」

 

「周りに綺麗な女性は多かった気がするけど」

 

「タラシだね~」

 

「どこで覚えてくんだ?そういうの。。。」

 

「それでそれで~?」

 

「別に、綺麗な女性だからって声をかけるでもないし、あっちから親密になることもないし」

 

「なんだか寂しい恋愛経験っぽいね~」

 

「だから、ここから話すコレは僕の経験談じゃなくて、他人(ひと)様のお話だ」

 

「なになに~?」

 

「昔、大赦に格式のある家柄の娘たちがいた」

 

「私みたいに~?」

 

「そう、それこそ『乃木』や『上里』みたいに」

 

「おお~(『上里』~…)」

 

「二人の娘はとても仲が良くて、いつも一緒で、ずっと一緒にいようと誓い合った仲だった」

 

「女の子同士で~?」

 

目をキラキラさせてグッと食いつく園子

 

「嬉しそうだな、シイタケみたいな目ェしやがって。。。

そ、女の子同士で、ずっとずっと、お婆ちゃんになっても一緒にいようって」

 

「素敵だね~」

 

何を思っているのか、熱で赤い頬をさらに赤く染めてウットリしている

 

「でも、その娘達には大きな志もあった」

 

「どんな~?」

 

「大赦という組織を正しく導いていく、そうして勇者たちを支えて、世界を取り戻そうって」

 

「随分大きな志だね~」

 

「そうだな、だからとてもとても苦労をすることになった」

 

「全然、恋物語に発展しないね~」

 

「ちょっとはしょるか。。。

大人になった二人は自分達の代だけで志を成すのは難しいことを理解していた」

 

「おお~、一気に飛んだね~」

 

「だから自分たちの血族を残す必要があると考えた」

 

「結婚だね~、やっと恋バナが出てきそうだよ~」

 

「また、格式ある家柄の為、その娘たちには年頃になると結婚相手も決められるようになった」

 

「それってもしかして~」

 

「そう、子孫を残すためと権力を維持する為の政略結婚だ」

 

「それで、二人の娘はどうなったの~?」

 

「どうなったんだろうな?」

 

「ええ~?!」

 

「小説のネタにするんだろ?結末がわかってちゃ面白くないじゃないか」

 

「そんな~」

 

「園子嬢ならどうする?」

 

「どうって~?」

 

「勇者部の皆を守るために権力が必要で、その為に必要な政略結婚が仕組まれたら。。。」

 

「む~~~~~」

 

園子は頬を膨らませて春信を睨んでいる

 

「ちょっと意地悪だったかな?」

 

「酷いよ~」

 

「考えてみるといいよ、その子達がどうしたのか、自分ならどうするのか」

 

「う~ん」

 

「じゃあ、もし仕上がってアップしたら教えてよ、読ませてもらうから」

 

「あ~ん、モヤモヤするよ~」

 

「あっはっは『命短し、恋せよ乙女』って言うだろ?恋をしないなら悩みなさいな」

 

「悩みすぎてまた熱が出そうだよ~」

 

「きっとその頃には皆も来てるだろ、たっぷり甘えな

そんでもって夏凜ちゃんによろしく頼む!連絡くれないからお兄ちゃんが寂しがってたって!」

 

明るく言い放ち、部屋を去る春信

園子は見送ることも忘れて悩んでいた

 

(若葉。。。ひなた。。。君たちはどうしたんだろうな。。。)

 

乃木家初代勇者と親友の巫女の事を思い、空を見上げる

少女達の物語の結末は春信も気になるところではあったが

今は園子の回復を祈り、小説が上がるのを楽しみにするのであった

 




春信(以下略):なんだ?こりゃ?

mototwo(以下略):なにが?

なんで俺が園子嬢の看病みたいなことしてんだ?

単なる話の流れだな

お前、まさか俺と園子嬢くっつけようとか考えてんじゃないだろうな。。。?

そういうつもりは無いが…
そうだな、園子に政略結婚とかであてがわれる相手が大赦の重役様でもおかしくはないな

勘弁してくれ。。。

まあ、それは冗談だが

たちの悪い冗談だ!

単にタイトル通り、おかゆの話をしたかっただけなんだけどな

はあ?おかゆ?

アニメなんかだと、お粥ってご飯に水かけて鍋にかけるだけだとダメって言われがちだけど

あ~、よくある。。。かな?

俺、普通にそうやって作ってきたから何がおかしいのかわからんのよね

はあ。。。

そんでそういう話を書こうとしたんだけど、お粥といえば看病ネタじゃん?

まあ、そうだな

そんで春信がまともに話せる女性って園子しかいないから

そこ!そこがそもそもおかしい!

え?

俺、大赦の重役なんだから、美人秘書とか美女の部下とか、いてもいいだろ?

そんな大人の女性の家に無断で入り込んだり、わざわざ看病しに行ったり?

あ、ゴメン、無理。。。

そして女性相手でなくなったら例の『彼』相手になる

別にそれでも構わんけど

何言ってんだ!

は?

そんなことしたら『ゆゆゆ』なのに『BL』タグ付けなきゃならなくなるだろ!

バカか!お前!

なにがバカだ!

うわ。。。言い返してきた。。。

男が二人っきりで部屋で看病とか、腐女子の目にはカップリングにしか見えないんだぞ!

うわ~、すごい偏見だぁ。。。

それが世界の真実って奴だ

いや、そもそも、『ゆゆゆ』の二次創作をそんな腐女子が読むわけないだろ?

わからんぞ、勇者部のあの子たち、女の子同士でイチャイチャしてるから

関係ないだろ、腐女子には。。。

性別逆転とかで既にカップリングが作られているかも知れん!

どんだけディープなんだよ!お前の言う腐女子ってのは!

深く、腐れ切ってるからこその腐女子なんじゃないか

もういいよ。。。で結局、園子嬢の看病までさせて、お粥の何を語りたかったんだ?

うん、なんか書いてるうちに方向性見失って、お粥がどっかいっちゃった

なんなんだよ!なにがしたいんだよ!

そんで、話の流れで番外編が出来たんで下に書く

もう流れも何も無茶苦茶だな。。。

数日後ってやつです、ど-ぞ





<番外編>

その後の容態が気になり、また園子の部屋へお邪魔する春信
すっかり元気になった園子に歓迎され、お茶をすすっている

「ところで春信さん~」

「なにかな?園子嬢?」

「あの時は熱のせいでうっかりしてたんだけど~」

「めずらしいな、いや園子嬢は元々ウッカリさんだったか?
まあ園子嬢も人の子だ、熱でうっかりぐらい気にする事もないだろ」

「私がわっしーに『お家の仕事も自分のやりたい事も選ぶ』って話したこと、知ってたね~」

「ああ、大赦仮面はなんでも知ってるのさ」

「あれ、どういう状況で話してたか覚えてる~?」

「え~っと、東郷さんの家に友奈さんとお泊り会したとき。。。じゃなかったっけ?」

「そうだね~、やっぱりそうだよね~」

「なんだい、お泊りの事、僕や大赦にバレてるのが恥ずかしかったのかい?」

「ん~、恥ずかしいって言えばそうなんだけど~」

「煮え切らないな、どうした?遠慮なく話せば?」

「アレってたしか~」

「ん?」

「3人で『お風呂に入りながら』話してたんだよね~」

「あ~、そうだったそうだった、『ダメになるわっしー布団』の話なんかもしてたっけw」

「春信さんのそういうデリカシーのないとこ…ダメだと思うな~」

「え。。。?あ、あれ?園子嬢。。。
いまは勇者じゃないのになんでそんな槍持ってんの。。。?
あら?なんか背中から黒いオーラ出てない。。。?
そういうのは東郷さんに任せて。。。
園子嬢はいつも笑ってる方がいいんじゃないかなぁ。。。
いや、そういう黒い笑いじゃなくてね。。。もっと明るく。。。あのn。。。。。。。。。」





<春信の自室にて>

「どうした春信、仕事溜まってるって聞いてるぞ?」

「女の子怖い。。。」

「は?」

「女の子怖い、女の子怖い、やっぱ夏凜ちゃんがいい。。。」

「なんだ、いつもの病気か…」

その後暫くは大赦の仕事をサボって自室で膝を抱えて震える春信の姿があったそうな

<つづかない!☆>


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13話 オ・マ・ケ・2

今回も『結城友奈は勇者部所属』ネタが含まれます



春信(以下略):おい。。。

 

mototwo(以下略):ん?どした?

 

前回のラストの付け足し。。。ありゃなんだ?

 

ああアレか、お粥の話書いたじゃん?

 

いや、ちょっとまて

 

え?

 

俺が求めてるのは説明じゃない!

 

は?「ありゃなんだ?」って聞いたじゃん

 

俺のテンションと表情で空気読め!コレは説明求めてる顔か。。。?!

 

ほほう、まるで怒っているかのような顔だ…

 

実際、怒ってんだよ!なんだよ、アレ!なんで俺が覗き見したみたいになってんだよ!

 

いや、春信は園子、東郷、友奈の3人相手だと別に興奮もしないだろうから見てないと思うよ

 

そうそう、俺は夏凜ちゃん以外の女の子には。。。ってそうじゃねぇ!

 

なにがだよ…

 

俺があの子達の入浴時の会話知ってる時点で見たかどうかは問題じゃねぇ!

 

そうだな、だから園子に怒られたんだろ?

 

だ~か~ら~!

 

なに地団太踏んでんだ?

 

俺があの時の話知ってること自体おかしいし、それを迂闊(うかつ)に喋っちまう事もおかしいだろ!

 

大赦仮面時の春信は真面目さんだったし、今の春信はウッカリさんだし、仕方ないな!

 

ううう。。。なんで。。。

 

スマンスマン、泣くなよ…

 

どーして俺があんな話をする流れに。。。

 

あー、あの話って元々お粥の話をするつもりで書き出したって言ったろ?

 

ぐすっ、そんで方向性見失ったんだろ。。。?

 

そうそう、「わすゆ」の園子って甘え上手なイメージあったから

 

そうだっけか。。。?

 

その感覚で書いてたら甘え方がおかしくなって、なんか春信にアピールしてるみたいになって

 

園子嬢は男女のべつなく同じように接しそうだからな

 

こりゃいかん、と春信にしっかり意思表示させようとしたらあの台詞が出て

 

あの台詞?

 

『乃木家を継ぐからって自分の夢は捨てない』

 

ふむ

 

それでおかしなフラグは回避したんだが、どこで出た話だったか思い出せなくて

 

ほう

 

もしどっかの2次創作のネタだったらまずいかなって手元の本調べたら

「勇者部所属」のネタだったから、これなら安心、って書いてったの

 

おいおい。。。

 

で、後から「風呂場の会話知ってるのってどうなんだ?」って思って

 

ああ、そうだよな。。。

 

「大赦仮面なめんな」って言っちゃったし、傍で話きいてた事にすればいいか!って

 

お前は大赦仮面を何だと思ってるんだ。。。

 

俺の中のイメージは…

「常に園子様に付き従い!」

 

「常に園子様の容態を気にし!」

 

「常に園子様の安全をお守りする!」

 

「「「それが我ら!大赦仮面ズ!!!」」」

 

ドカーン!

 

色とりどりの爆煙がバックに展開している中、ポーズを決める仮面の3人組

 

「今日、園子様は東郷さんに連れられて結城さんと一緒に東郷さん()にお泊りだそうだ!」

 

「なに!それは一大事だな!」

 

「え?そんなに一大事なの?それ?」

 

「「当たり前だ!!」」

 

「ふえっ?!」

 

「我々の監視の行き届かない場所でお泊りなど、どんな事件に巻き込まれるやも知れん!」

 

「そんなことが無いよう、我らできっちり見守らねばなるまい!」

 

「まあ、心配は心配だけど、別に男の子の家に泊まるわけじゃないし。。。」

 

「「男の子の家だとおぉっ?!」」

 

「いや、だからそうじゃないんだからって話で。。。」

 

「「当たり前だ!!」」

 

「ふえっ?!」

 

「もしそんな事になっていたら…」

 

「その男の一族郎党を皆殺しにしなければならなくなる…」

 

「物騒だな!お前ら!」

 

「そうでなくてもあの園子様にベタ惚れの東郷さんと…」

 

「東郷さんがベタ惚れなのは結城友奈さんだろ。。。」

 

「あの女ったらしの男前、結城さんが一緒に泊まる…」

 

「女ったらしの男前って中学女子に失礼だな、お前。。。」

 

「「園子様の貞操の危機が迫っているやも知れん!!」」

 

「お前らのその考え方の方が危機的状況だよ!」

 

「「お前は心配ではないというのか?!」」

 

「いや、園子様が心配なのはわかるけど

あの二人が園子様を傷つけるようなことする訳ないだろ?」

 

「「当たり前だ!!」」

 

「ふえっ?!」

 

「園子様を傷物にだとうっ?!」

 

「そんな事があったら我々は、我々はぁっ!!」

 

「あー!もう!お前らと話してても埒があかん!」

 

「ほほう、言うではないか」

 

「それではお前はどうするというのだ?」

 

「僕が東郷家へ赴いて、密かに護衛に当たるよ。。。」

 

「あ、行ってくれるの?」

 

「サンキュー!」

 

「。。。え?」

 

「なんだ?」

 

「どうかしたのか?」

 

「い、いや。。。あのテンションだからてっきり自分たちが行きたいものだと。。。」

 

「ふむ、確かに」

 

「我々も行きたいのは山々だが」

 

「何かあるの。。。?」

 

「女の子のお泊り会と言えば」

 

「お風呂で女子トークがつきもの」

 

「はあ」

 

「東郷さんのあのおっぱ…いやいや」

 

「あの豊満なむ…いやいや」

 

「「とにかく、中学生に欲情するわけにはいかないからな!!」」

 

「はあ?!」

 

「お前なら妹一筋だし!」

 

「他の子に欲情する心配ないし!」

 

「人をシスコンみたいに言うな!」

 

((まだ違うって言ってるのか…))

 

「それに俺たち~」

 

「今夜は彼女とデートの約束あるんだも~ん!」

 

「なにいぃっ!?」

 

「「じゃー後はまかせたぞー!」」

 

「えっ?お前ら大赦で待機じゃ。。。」

 

「「全て任せたー!」」

 

二人がダバダバと走り去った後、一人ポツンととり残された大赦仮面

彼は仕方なく園子のガードという名目で東郷宅へ不法侵入するのであった

なげーよ!

 

勢いで何も考えずに書き出すと面白いように筆が進むな

 

それにいつの間にか3バカの一人が俺って事になってんじゃん!

 

この流れなら何の違和感もなく、春信が覗きをしていたことになる

 

してねーし!最初から最後まで違和感バリバリだったし!

 

まあ、大赦仮面はおいといても

前回のオチはいくつかあったオチの案の中ではまともなヤツだったから

 

え?他にも酷いオチが待ってたの。。。?

 

気付かなかったのか?定番オチのフラグが立ちかけてただろ?

 

ど。。。どれ?

 

ネギ

 

ネギって。。。

 

風邪のときネギを尻に刺すって民間療法にあるけどさ

 

フツーだよな

 

いやいや、フツーやんねーよ

 

まあ、ネタとしてフツーってだけか

 

そう、そしてあのシチュエーションだと…

「あ~ん」

 

園子は口を大きく開けている

 

「。。。」

 

「あ~ん」

 

どうやら食べさせて欲しいと言っている様だ

 

「。。。尻を出せ」

 

「あれ~?」

 

「次にワガママ言ったら尻にネギ刺して帰るっつったろーが!」

 

「あ~れ~」

 

「抵抗するんじゃねー!」

 

「や~め~て~」

 

「さあ!コイツを尻に。。。!」

 

「わっしー、た~す~け~て~(棒)」

 

ガチャ

 

「風邪引いてるのに、なに一人で騒いでんのよ、アンタは…」

 

「「え?」」

 

それは勇者部の皆が園子の見舞いに来て扉を開けた音だった

 

「あ…あ…あ…」

 

園子のパジャマと下着をずらしてお尻を出させた春信がネギを掴んでいる様子が

夏凜を初めとする勇者部のメンバーの目に映る

 

「あ…兄貴…アンタって人は…」

 

「い、いや、違うよ、夏凜ちゃん、誤解だよ。。。」

 

「風邪引いて弱ってる中学生相手に何やってんのよっっ!!」

 

そs

ストーップ!!ストップ!ストップ!!ストップだ!!!

 

どうした、まだオチまでいってないぞ?

 

いや、もう充分だ。。。これ以上は書かなくていい。。。

 

あ、そう?まあ、書かなかったオチだし、定番過ぎるってのもあるしな

 

色々危ないところだったんだな、俺。。。

 

園子とラブラブになってれば、どう転んでも安心だったんだけどな

 

いや、その方向性自体が安心出来ないから。。。

 

あの6人の中じゃ一番考え方が大人だし、立場的にも可能性あるかと思うんだが

 

お前、そういうつもりは無いって前回言ってただろ

 

そうだな、俺もラブコメ書けるほど心に余裕ないし

 

リアルが寂しい人は大変だな

 

い…いやいや、ラブコメなんてものは

リアルが寂しい人がその願望をぶつけた結果じゃないかな?

大体、複数の女の子たちとキャッキャウフフなシチュエーションなんて

現実にある訳ないんだし、そもそもラブコメってリアルが寂しい人向けっていうか

そういうのに縁がない人ほど求めるものだし、自分が充実してたらそんなの書く必要も

読む必要も無いわけじゃん?それを見越して俺がラブコメを書かないって訳でもないんだけど

いや、書こうと思えば書けないことも無いんだよ?でも、俺の文章にそんなの求めてる人がいるわけでもないし、俺もそんなにそういうの書きたいって訳でもないんだし、それこそ無理して書いて読んでもらうようなものでもないって言うか

 

饒舌だな、いきなり

 

うっ…!

 

まあ、今の反応で大体お前のリアルの充実っぷりが理解できたから、もういいよ、ウン

 

絶対バカにしてる…

 

してない、してない、したこともないってw

 

くっ…

 

それにラブコメっていうなら

 

ん?

 

もう一度、今度の時間軸で夏凜ちゃんとデートしたいな。。。

 

兄としては問題発言だぞ、それ

 

あの時間軸では結構いい感じだったのに、今じゃすっかり疎遠だし。。。

 

当たり前だろ、今の時間軸じゃ夏凜ちゃんが勇者になってからほとんど会ってないんだから

 

色々あって、会いに行けなかったからなぁ。。。

 

いっちょ比較してみるか

 

何を?

 

前の時間軸と今の時間軸の夏凜ちゃんの好感度

 

ほ、ほほう。。。

 

やめとく?

 

い。。。いや、是非頼む

 

そんじゃまずは

お兄ちゃんにそこそこ甘えてた幼少期

→なんかお兄ちゃんだけ親に贔屓されてるみたいで避け始める

→春信も家族を避けてデブオタニートになり家庭内断絶

→春信が大赦につれられてホントに断絶

→夏凜ちゃんが勇者に選ばれる(兄に追いついた気分で呼び名は「兄貴」へ)

→2年間断絶

→完成型勇者となった夏凜ちゃんと再会(完全に兄を越えた気分)

ただし、常に春信に対する劣等感は深層心理に残った状態

までが時間戻される直前だな

 

なんか。。。思ったより酷いな。。。

 

そう?

 

最初の一行以外、好感度0じゃん?!

 

最後の方なんかもうライバル意識みたいなもんだよなw

 

あ、でも「強敵」と書いて「とも」と呼ぶ関係も特別感あって良いかも。。。!

 

前向きだなぁ、んじゃ続きいくぞ

 

お、おう

 

前の時間軸

いきなり春信に自分の勇者システム掻っ攫われる

→怒りをぶつけて「返して」と泣いて懇願するが兄に冷たくあしらわれる

→いい気になってる所に劣等感MAXの煽りを受け好感度マイナスへ

 

ちょ。。。ちょっと待って。。。!

 

どした?

 

あの時点でそんなに好感度下がってたの?

 

お互いに泣くほど罵声浴びせ合ったじゃないか、忘れたのか?

 

いや、忘れてないよ、でもそんなに酷かったっけ。。。?

 

あの時点の夏凜ちゃんにとって唯一の拠り所が最高の勇者になれたって事実だったんだよ?

 

うん。。。

 

清らかな乙女しか勇者になれないから、春信に対する絶対優位だったわけだよ?

 

う、うん。。。

 

それを優秀な兄がいきなり横から掻っ攫って「お前じゃ無理だ」って怒られた

 

俺。。。酷い兄貴だな。。。

 

まさに好感度はどん底、マイナスMAXなわけだ

 

あああ。。。。

 

まあ、気にすんな

 

気にするよ!

 

どうせ消えた時間軸だろ?

 

夏凜ちゃんとの思い出は消えないもん!

 

夏凜ちゃんの記憶からは完全に消えてるじゃん?

っていうかお前以外の世界からは無かった事になってるけどな

 

割り切れないぃ。。。

 

割り切れよ、じゃないと…死ぬぜ?

 

ホントに死んでお詫びしたい。。。

 

まあ、どん底にいった上で大きなイベントが起きたから好感度はこの後上がっていったんだが

 

おおぉ。。。

 

面白くないからここでやめるか

 

うおいっ!

 

だって血の繋がった兄妹が仲良くなってデートして、とか面白みが無いだろ?

 

いやいや、そこが大事なんだから、ちゃんと最後までやろーよ!

 

目が血走ってて怖いよ…

 

いいから続きっ!

 

ちっ…

 

いま、舌打ちしたか?

 

いや、なんでもない、続けるぞ

 

おうっ!

 

え~っと、どん底からは第5話の決戦終わるまで会えてないんだったな、んじゃ

→バーテックスの決戦が終わったという報せが入る

→ボロボロの春信の姿に思わず「お兄ちゃん」に(すが)って泣いちゃう夏凜ちゃん

→自分に代わって戦い、傷ついた兄に付きっ切りで看病

(ここで行き場の無い怒りの矛先はろくに面識のない勇者部メンバーへ)

→目が覚めると思いの外元気な兄に呆れるが、友奈の存在もあってわだかまりが消える

→仮想デートに付き合ってくれるくらいに好感度アップ

→兄の様子がおかしいと聞き夏凜から仮想デートに誘いに行くが醜態を晒す春信

→しかし弱気な兄が心配になり、逆に好感度アップ

 

あれ?

 

なんだ?

 

俺が駄目なときの方が好感度上がってない?

 

そうだな、その通りだ

 

どういうこと?カッコイイお兄ちゃんに憧れる可愛い妹夏凜ちゃんって構図じゃないの?

 

お前の頭がどういうことなんだよ…

夏凜ちゃんは元々優秀すぎるお兄ちゃんに劣等感抱いてるのになんでそんな発想が出るんだ?

 

いやいや、世の妹は誰しもカッコいい自慢のお兄ちゃんを求めるもんだろ?

 

それを否定するつもりは無いが、お前に関してはそういう方向に行くと逆効果だったんだな

 

そ、そんな。。。

 

いいじゃないか、好感度は上がったんだから

 

そう。。。なのか、そうだよな、よしっ!続きだ!

 

ないよ?

 

へ?

 

お前、テンパリすぎだろ…この後は夏凜ちゃんに会う前に時間遡行されちゃうだろうが

 

ああっ!そうだったぁぁぁぁっ!!

 

ちなみに

 

うん?

 

あの最終局面を勇者部の皆と協力して、満開無しで乗り切れてたら…

 

え、なんかあったの?

 

→戦いの事は話してないが、両腕の負傷で疑念を持つ夏凜ちゃん

→仮想デートは後回しでつきっきりの看病に変更

→両腕がまともに使えないと甘える兄に「あ~ん」してあげる定番イベント

→入院中に戦いの事がバレ、怒られる春信

→春信の本当の気持ちが伝わり、ぎこちないながらも兄への好感度更にアップ

→兄のピンチを救った勇者部に感謝しつつちょっとジェラシーな夏凜ちゃん

→退院したら約束どおり仮想デートでフルコース

 

え?なに?そこは天国なの。。。?

 

まあ、辿り着けなかった境地だからな、それぐらいの御褒美は待ってたろうな

 

バカバカバカバカ、ワシの馬鹿!なんで一人で戦おうとしちゃったの?!

 

取り乱すな、どうせありもしなかった過去だ、単なる予想でしかない

 

でも~。。。

 

そんなことより、現実を見ろ、な…

 

げんじつ~?

 

では時間遡行後の流れを見てみよう!

→TVと同じ流れなので春信に対する劣等感は深層心理に残った状態

→そのまま勇者部と接触、勇者部のメンバー、特に友奈との好感度はグングン上昇

→勇者部と友奈のために自分を犠牲にして満開を繰り返す夏凜ちゃん

→友奈の活躍である程度まで欠損回復

→もう、勇者部と友奈なしでは考えられないくらい好感度アップ

 

なんで友奈との好感度の話になってんだよ。。。

 

だってこの裏じゃお前は『夏凜ちゃん』を欠損として忘れてるし

夏凜ちゃんは皆のおかげで春信の事を忘れていられた時期だもん

 

酷い。。。

 

まあ、心のどこかでは劣等感抱いたままだったみたいだけどな~

 

ますます酷い。。。

 

でも、友奈達のおかげで「自分は自分だ」って思えるようになったから

(わだかま)りは消えていってるんだろうな

 

それは確かに。。。感謝すべきなんだろうけど。。。

 

そんじゃ、この小説部分で続き行くぜ!

→友奈がまだ目を覚まさない状態で春信と再会

(マジ泣きの兄を半べそくらいにしか感じない)

→園子宅で再会できるかと思いきや、その前に抱きついた経緯で避けられる

→やっとまともに再会、普通に兄妹の会話が展開するが最後に心の声を漏らしてやらかす

 

待て待て待て待て!

 

なんだよ?

 

お前、それ後書きのコント含めちゃってるじゃねーか!

 

それが何か問題でも?

 

いやいやいや、俺、あんなミスしねーし!夏凜ちゃんに変態とか言われねーし!

 

ふむ…確かにあのタイミングでまともに再会してると

BD特典のゲームにあった『兄が来る!?』に辻褄合わなくなるんだよな

 

だろ?公式のゲームにそぐわない設定のコントは省くべきだね!

 

ふん、そうなると…

 

ささ、続きをどーぞ!

 

ないぞ?

 

は?

 

だって、そのゲームに合わせると夏凜ちゃんと会わないじゃん、お前

その上、西暦末期に行ってる間は心配させまいと連絡も絶ってるし

園子の部屋に行ったときもわざわざ夏凜ちゃん避けて行っただろ?

 

あああああああああ。。。。

 

だから友奈達に蟠りを消していってもらったくらいで夏凜ちゃんの中のお前の好感度とかない

昔の劣等感があるから苦手意識くらいはあるかもしれんが、基本なんとも思ってない

その証拠に夏凜ちゃんから上のゲーム話絡み以外で、連絡もらった事とか無いだろ?

 

いや、確かにないけど。。。

 

まあ、「勇者部所属」で園子が夏凜ちゃんに「甘えてあげなよ~」とか言ってたから

 

園子嬢!もっと頑張って!お兄ちゃん大好きな夏凜ちゃんを取り戻して!

 

いや、そんな夏凜ちゃん元々いないだろ…

 

小さい頃は甘えてくれてたんだよ~

 

それも妄想じゃないとは言い切れんぞ?

 

妄想じゃないもん!夏凜ちゃんは元々お兄ちゃん大好きだもん!

 

そういや、その話の捏造ネタもやったっけな

 

それも後書きの<番外編>だ!コントだ!ノーカンだ!

 

細けえなぁ…

 

夏凜ちゃんの事では一切の妥協は許さん!

 

まあ、せいぜい頑張ってくれ、俺はこっちでお前と夏凜ちゃんのラブラブとか書く気ないし

 

書いてよ~頼むから~

 

(すが)り付くな、俺にラブコメなんぞ無理だってさっきお前が言ったんだろうが!

 

じゃあ、これ見てる誰でもいいから、俺と夏凜ちゃんとのラブラブ話書いてくれ~

 

もう無茶苦茶だな…

 

読者さえ多ければこういう声も効果があるのに。。。

 

うるさい!もう締めるぞ!

 

<まあ、書けたらラブコメも書いてみたいですが>

 




<サツキとバラと>

樹の悩み相談後、道々話をする園子と夏凜

「私はひとりっ子だから、いっつんが羨ましいな~」

「そう?」

「甘えるのも甘えられるのも…絆だからね~」

「…まあ樹に甘えられるのは悪くないかな」

「にぼっしーもたまには甘えてあげなよ~、春信さん寂しがってたよ~」

「うおいっ!兄貴と連絡取り合ってんの!?」

「うん~大赦メールとか~」

「た…大赦メール…?」

「実家からの資料の片付けも、皆が帰った後手伝ってくれたよ~」

「あの後、来てたんだ、相変わらずお手伝いみたいな事してんのね…」

「こないだは連絡もしてないのに、風邪の看病しに来てくれたよ~」

「えっ!わざわざ?」

驚く夏凜に気を良くしたのか、
園子は頬に両手を当てて恥ずかしそうにかぶりをふりながら更に言う

「熱でおぼつかない私をお姫様抱っこでベッドに運んでくれたり~」

「お…お姫様抱っこぉっ?」

「お粥を作って、『あ~ん』もしてくれたの~」

「あ~んって…あの兄貴が…そんなベタベタと…」

「『ハニー』『ダーリン』って呼び合ったり~」

「えええっっ!ちょっ!!アンタたちそんなに親密だったの?!」

「そうだね~、もう恋人同士と言っても過言じゃないのさ~」

どや顔で言い切る園子に頭を抱える夏凜

「あの男…中学生、それも妹の友達に手を出すとか何考えてんのよ…」

「でも~、春信さんはにぼっしーが大好きなんだから~」

「はあ?」

「中学生が好きだっておかしくないと思うんだよ~」

「どこをどうしたらそういう事になんのよ…」

「気付いてなかった~?春信さんもにぼっしーに似て不器用だからね~」

「いやいや、あの兄貴が私の事大好きとか、おかしいから」

「ゆーゆみたいにストレートに好意を示してくれたらわかりやすいんだろうけど~」

「なっ、なんでそこで友奈がでてくるのよっ!」

「さっきはいっつんの事羨ましいって言ったけど~」

「アンタ、私の話きいてる?」

「ホントはにぼっしーの事、一番羨ましいって思ってるんだよ~」

「わ、私?」

「にぼっしーは皆から愛されてるからね~」

「何言ってんのよ、アンタこそ、周りから愛されまくりじゃないの」

「そうだね~、でも~」

「ん?」

「春信さんが一番愛してるのは『夏凜ちゃん』だから…」

「えっ?!」

「だから…羨ましいんだ…」

急に雰囲気の変わった園子の様子に驚く夏凜

「な、何言ってんのよ、自分が恋人宣言とかしておいて…」

しかし園子はすぐにいつものように話し出す

「あれは嘘だよ~」

「へ?」

「春信さんは優しいから、私にも色々と気を使ってくれるけど~」

「はあ…」

「にぼっしーが春信さんと同じような反応するから、楽しくてついからかっちゃったよ~」

「アンタ、私の事おちょくってんの?」

「でも、春信さんがにぼっしーを好きなことと、私が春信さんを好きなことは本当だよ~」

「まだ言うか…」

「私の周りにあんなに素敵な男性って他にいないよ~」

「どこがいいのよ、アレの」

「顔立ちは整ってるし~」

「まあ、悪い顔ではないわよね…」

「背も高いし、筋肉もしっかりついてるし~」

「昔の肥満ぶりからは頑張ったみたいだけど…」

「大赦でも重要な仕事を任されてるし~」

「そうなんだ、頑張ってるじゃない…」

「私のわがままにもなんだかんだ言ってつきあtt」





だあぁーっ!もう耐えられん!やってられるかぁっ!!

なに途中で投げ出してんだよ。。。

なんで俺がお前にベタ惚れな園子とそれに(あお)られる夏凜ちゃんとか書かなきゃならんのだ!

自分でもラブコメ書ける様になりたいって言ってたじゃないか。。。

だからってこんなお前を褒めちぎるようなハーレム展開、書いてて苦痛だわ!

ちゃんと煽り切って、夏凜ちゃんが俺への愛に気付くとこまでやらんと意味がないだろ。。。

いや、この話の内容自体が意味無いよ!

夏凜ちゃんの愛が俺に向かうことの何が無意味だ。。。

実の妹になにを期待してんだよ、お前は!

全てだ!俺は夏凜ちゃんの全てを期待している!

だったらありのままの夏凜ちゃんを()でてろよ!

やだい!やだい!夏凜ちゃんとラブラブになりたいんだい!

もう…
やっとれんわーーーーーーっ!

<この後書きは無かった事にしてください…>


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14話 花結いにきらめけ!

この話はスマホゲーム
『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』花結いの章
の一場面をイメージして読んで欲しいでござる


「いえーい!ビクトリー!」

 

ボスバーテックスを倒し、決めポーズをとる勇者たち

その背中に樹海の影から襲いかかろうとする生き残りのバーテックスがいた

獲物を仕留めた後の一瞬の油断、誰もが気を使いながら誰もが取りこぼしてしまう緊張の糸

 

「危ない!歌野ぉっ!!」

 

気付いた若葉が叫ぶが、とても助けられる距離ではない、そこまでバーテックスは迫っていた

 

(ダメだっ!間に合わない!)

 

若葉がそう思ったそのとき

 

いきなりそのバーテックスに突き刺さる数本の刀、それが爆発し、バーテックスは光と散る

何が起きたかわからず戸惑う若葉たちの下へその男は降り立った

 

「お…お前は!」

 

驚きを隠せない勇者たちの前に立ったのは仮面の赤い勇者だった

 

「久しいな、乃木若葉。。。」

 

「お前もこの時代に召喚されていたのか?」

 

「ん。。。ま、まあそんなところでござる」

 

(ござる…?)

 

「若葉ちゃん、この人は?」

 

「ああ、結城さん、この人は…

この…人は…」

 

「この人は?」

 

「あ~…」

 

「ん?」

 

「か…『仮面の赤い勇者』だ!」

 

「そうなんだ、仮面の赤い勇者さん、はじめまして!」

 

「助けてくれてありがとうございます!仮面の赤い勇者のお兄さん!」

 

「うむ、よろしくでござる

勇者同士で助け合うのは当然、気にする必要はないでござるし、敬語も不要でござるよ」

 

(またござるって言った…それも3回も…)

 

「いやいや、待ちなさいよ、友奈、歌野!」

 

「ホワット?」

 

「どうしたんですか?風先輩?」

 

「『仮面の赤い勇者』とか、見たまんまじゃないの!何の紹介にもなってないわよ!」

 

「まったくだわ…、なに普通に受け入れようとしてんのよ、友奈は!」

 

「えー!?夏凜ちゃんまでー?!」

 

「はははっ、二人のツッコミ力はなかなかにエクセレントね!」

 

「そうじゃなくても、私や銀と同じ赤の勇者

しかも男なのよ?!ちょっとは疑問に思いなさいよ!」

 

「どっちかっていうと勇者服はアタシより夏凜さん寄りみたいだけどなー」

 

「後ろ髪のまとめ方はミノさんに似てるよ~」

 

銀と園子が前後から囲んで回りつつ、仮面の赤い勇者を見定めるように眺める

 

「男で私みたいなツインテールだったら皆で笑ってやるわよ!」

 

(夏凜ちゃんとお揃いか、それは考えが及ばなかったな。。。)

 

「でも、仲間が増えるのは頼もしいよー」

 

「ふっ、結城友奈よ、気を使ってくれるのはありがたいが。。。

あまり期待はしないで欲しいでござる」

 

(また言ったぞ?)

 

「拙者は乃木若葉や白鳥歌野と共に戦い、男勇者の力が乙女達に及ばぬことを痛感した。。。

故に今はこの姿なのだ。。。」

 

「うむ、その姿も色々と聞きたかったが…」

 

「おお!さっきからタマも気になってたことがあるぞ!」

 

「どうした?土居球子よ」

 

「お前、なんでござる口調で話してるんだ?一体なにキャラなんだ?それは?」

 

「ふふふ、流石は土居球子、野生の勘で気付いたでござるな。。。」

 

「いやいやいや、春信の事知ってる奴なら誰もが疑問に思うぞ、それは…」

 

球子の口から出た聞き覚えのある響きに反応する夏凜

 

「え…?ハルノ…」

 

「あー!夏凜ちゃん!

僕の名前はただの『仮面の赤い勇者』でいいから!

深く追求しちゃダメだから!」

 

「夏凜ちゃんって…馴れ馴れしいわね、ちゃんと私もフルネームで呼びなさいよ」

 

夏凜と仮面の男が話している間に

球子を後ろから引っ張り、たしなめるように囁く杏

 

「タマっち先輩!ダメじゃないですか!春信さんはバレてないって思ってるんですから!」

 

「お、おお…、そうだったな!謎の仮面の赤い勇者、誰も正体は知らないんだったな!」

 

「?」

 

「と。。。とにかく、拙者は自分の力がお主たちに及ばない事を痛感し

裏方に回ることを決意したんでござる」

 

「ほほう、裏方だと?」

 

「うむ、それ故、仮面に加えこの赤い長マフラーを巻き

忍の者に徹する事を誓ったのでござるよ、ニンニン」

 

「侍かと思ったらハットリく○かよ!」

 

「先程のようにおいしいとこでおいしいとこだけを()(さら)い、いずれは

『汚いな、流石(さすが)忍者、汚い』と言われるようになるでござる」

 

「お前の忍者感はいろいろと間違ってるぞ…」

 

「まあ、今後もピンチの時には助け舟を出すでござるが

あまり戦力としては期待しないで欲しいでござる」

 

「確かに、あなたって戦闘では何の役にも立ってなかったものね…」

 

「郡千景か、相変わらずクールに決め込んでるでござるなぁ。。。」

 

「嫌味を言われたんだから、少しは(こた)えなさいよ、変態」

 

「えっ!?仮面の赤い勇者さんは変態さんなんですか?」

 

「ふふふっ、そんな訳ないでござろう?これはツンキャラ特有の照れ隠しでござるよ!」

 

「めげない男ね、相変わらず…」

 

「なんだか西暦の勇者の皆さんは彼のことを話されている以上にご存知のようですね」

 

「でも、私はこのお兄さんと共闘した記憶が無いんだけどなぁ…?」

 

「白鳥歌野よ、それはきっと拙者と出会う前にこの時代に召喚されたという事でござろう」

 

「なるほど、私たちがひなたと再会したときに時差があったのと逆だな」

 

「もしかしたら時空そのものがずれている可能性もあるでござるが。。。」

 

「む…?なぜそう思うのだ?」

 

「そもそも、神樹様の奇跡は時間だけでなく空間にも及ぶもの

それは樹海化で現実世界を護って下さっている事からも明らかでござる」

 

「うむ、それはそうだな」

 

「それ故、長野、北海道、沖縄といった別の土地からも

お互いの神同士、協力があれば勇者が召喚されているでござる」

 

「仮面の赤い勇者さんは、私や棗さんのことも知ってんだー」

 

「無論でござるよ秋原雪花、そして拙者の知る乃木若葉たちは。。。」

(そうだ、僕と接触した時点で若葉たちは諏訪の崩壊を目にしていた筈。。。

しかしこの若葉たちはあの遠征にすらまだ行っていないようだ。。。

なのに僕の事を知っている。。。)

 

「どうした?」

 

(でも、ここでハッキリさせられるようなことでもない。。。か)

「いや。。。これは今語っても仕方のない、単なる妄想の域を出ない意見でござった」

 

「?」

 

「とにかく、今後もご油断召されぬよう、気を引き締めていくでござるよ!」

 

「うん!まかせておいて!」

 

「流石は高嶋友奈、良い返事だ!それでは皆の者、さらばだ!アデュー!」

 

そう言い残して飛び去る仮面の赤い勇者

皆は、特に西暦の丸亀組はその様子を呆れたように見守っていた

 

「あー、行っちゃったよ」

 

「なんだかスゴイ事になってきたね!男の人の勇者まで合流するなんて!」

 

「そうだね!あのキャラ作りはなんだかわからないけど、面白かったね!」

 

皆が呆れる中、ワクワクが止まらない二人の友奈たち

 

「それはそれとして…」

 

「どうした?球子」

 

「やっぱりココは言っとくべきなんじゃないかな!」

 

「な、何を言うつもりだ…?」

 

わざとらしく苦悶の表情を浮かべ、拳を振るわせる球子

 

「『仮面の赤い勇者』…一体『なに(のぶ)』なんだっ…」

 

「あ…あはは…」

 

そう呟く球子の横で苦笑するしかない杏であった

 

 

 

 

 

<勇者部部室>

 

「へえ~、そんなことがあったんだ~、謎の仮面の男性勇者、ミステリアスだね~」

 

「そうなのよ、でも丸亀組の皆さんは彼のことをいろいろ知ってそうなのよね…」

 

「そうなの~?」

 

「ええ、でもあまり語りたくないのかしら、必要以上に触れないような空気を感じたわ」

 

「ますますミステリアスだね~、私も一度会ってみたいよ~」

 

「ただ…」

 

「ん~?どうしたの~わっしー?」

 

「いいえ、ただの気のせいだとは思うんだけど…」

 

「なになに~?言ってよ~」

 

「私もどこかで彼と会ったような気がしてならないのよ…」

 

「そうなんですか?私はまるで記憶にないですけど…」

 

「それはそうよね、彼は西暦の勇者なんだから、私や須美ちゃんが会っているはずないもの」

 

「ふ~ん」

 

「なに?そのっち、何か思いついたの?」

 

「ん~ん、別に~?そ~だ!園子ちゃんはその人の事どう思った~?」

 

「面白い人だったよ~、私も会った事はないですけど~」

 

「なるほど、なるほど~」

 

「何か気になったようね、そのっち」

 

「ん~、ただの気のせいかもしれないし~」

 

「二人して同じような事言ってますね…」

 

「でも~」

 

「どうしたの?」

 

「その生き残りの敵の攻撃って、その人がいなくても多分精霊が防いでくれてたんだろうね~」

 

「えっ?あ…それもそうか…!」

 

「はははっ、若葉はあわてん坊だな!」

 

「むー…、そうは言うが、我々の戦いでは一瞬の油断が命取りになることが多かったからな」

 

「そうですね、特に若葉ちゃんはあの時(・・・)以来、仲間のピンチには敏感になりましたし」

 

「そ、それを今いうのかっ…」

 

「なになに~?なにがあったの~?ご先祖様~?」

 

「ひ…秘密だっ!」

 

「そうです、これは私と若葉ちゃんだけのひ・み・つです」

 

(まあ、私たちも知ってるんだけど…)

 

(ここは言わないでいてあげるのが)

 

(いき)ってもんなんだろ?任せタマえよ!)

 

(若葉ちゃんは仲間思いだからね!)

 

「丸亀組に…強い…結束力を感じる…」

 

「棗が自分から語るとは珍しいわね…」

 

「仲がいいのは良い事よ!私たちも負けてらんないわよ!夏凜!」

 

「ええ、あのポッと出の男勇者にも銀と私が本家の赤い勇者だって見せ付けてやるわよ!」

 

「そこは勇者部の結束力を見せ付けるところでしょ…」

 

「何を今更、私たちのチームワークは誰にも引けを取らないわよ」

 

「ううっ…あの夏凜が…こんなにも成長して…」

 

「お母さんか!アンタは!」

 

そんなこんなで勇者部部室はいつまでも賑わいに溢れていた

 




<番外編>

樹海での戦闘中、その片隅である男の泣き声が密かに響いていた

「おろ~ん!おろろろろ~ん!」
「あう~ぎ~ん!銀が生きてる~!」
「歌野が~元気に戦ってる~!」
「球子も、杏も喋ってる~!」
「千景も友奈とイチャついてる~!」
「うう~、涙でまともに戦闘に参加できそうにないよ~」

死に別れたはずの皆の活躍に感極まって泣いている春信
彼もまた召喚され、勇者に変身はしたものの、まったく戦闘に参加できていなかった
ひとしきり泣いて落ち着いた頃に思案し始める

「アカン。。。これはアカンやつやでぇ。。。」
「このまま合流してもあの()達のやり取り見てるだけで泣いてしまいそうだ。。。」
「実際、銀が東郷さんの銃の名前聞いたときなんか涙が溢れて動けなかったし。。。」
「ここは以前以上にしっかりと役作りしていかないと、ただの怪しいオッサン扱いに。。。」
「いや、それどころか皆のその後の結末をバラしてしまいかねないぞ。。。」

「それに。。。」

勇者としての力の漲りを感じつつ、自分の手を見つめる春信

「今回は仮面を外してカッコよく夏凜ちゃんの手助けしようと思ってたけど。。。」
「力が戻っても乙女達には適いそうにないし、どうしたものか。。。」
「大体、なんでマフラーがついてるんだ?今回の勇者服は。。。」
「仮面つけて赤い長マフラーとか、アニメの忍者みたいな。。。」

そのとき、春信の頭に古典的な裸電球が灯る

「忍者。。。忍者か、その方向性で行くのはアリかもな。。。」
「風車の○七みたいにピンチに颯爽と登場するだけなら実力に劣る僕でも出来るんじゃ?」
「普段から一緒にいないなら、余計な話を漏らす心配もないし」
「よし!ここは皆のピンチまで身を隠していることにしよう!」

「忍者なら言葉遣いからキャラ作り出来そうだし!」
「いやー、こうなるとこの時代で戦った記憶が皆にない事もプラスに考えられるな!」
「西暦末期でも顔隠してたから、正体はバレてないはずだ!」

「そうと決まれば練習でござる!」
「拙者は『仮面の赤い勇者』、何者でもないでござるよ」
「あえて言うなら『通りすがりの勇者(ヒーロー)』とでも呼んで欲しいでござる」

こうして歌野のピンチに
「烈風手裏剣!」
を繰り出すまでの間
春信の一人芝居が続いていたのであった


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15話 オ・マ・ケ・3

オマケでは本文でグダグダ話、後書きでキャラのやりとりが基本となっております
キャラ崩壊なども含むのでご注意ください



春信(以下略):春信でーっす!

 

mototwo(以下略):mototwoでーっす!

 

二人合わせて。。。

 

オマケだよ♪

 

コンビ名みたいに言うな!

 

最初にそのノリで始めといてよく言うな…

 

しっかし、遂に公開されましたなー

 

そうですなー

 

「「『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章- 第3章「やくそく」』!」」

 

長い事待った甲斐がありましたなー。。。

 

まあ、私が書いてる時点で公開まだなんですけどねー

 

またそれかい!

 

むしろ余裕もって書いてることを褒めてほしいくらいですわー

 

仕事ももっと余裕もってしましょーなー

 

ソーデスネー(棒)

 

それにしても前回の話ですけどー

 

はいはい

 

出しちゃいましたねー、『花結いのきらめき』

 

そうですなー

 

。。。

 

 

もう、普通に話そうぜ

 

うん、俺もアホらしくなってきた

 

で、なんでいきなり俺をあれに参戦させようと思ったの?

 

いや、ここんとこ週1で更新してたじゃん?

 

ああ、最終回以降も意外と続いてたな、フェイドアウトせずに

 

んで、オマケ2まで書いたらもうネタが思いつかなくなって

 

そんじゃフェイドアウトしかないはずだろ

 

そうなんだけど、ふと「あれ?もう1回更新したら映画の第3章公開されるな」って

 

それでわざわざアレを書いたと。。。?

 

まあ、折角だから、2・3章の公開の間をつないで頑張ったって言いたかったし

 

いや、頑張ったのって5月末からだけじゃん?!

 

まあ、そうなんだけど、その分はGW期間にほぼ毎日上げてたし

 

ほぼが付いてる時点で頑張りは足りなかったと思えよ

 

まあ、私事もあったもんで

 

しっかし、だとしても他のネタはなかったのか?

 

ない訳じゃなかったんだけど

 

だったらそっちで書けばよかっただろ?

アレだと「ゆゆゆい」で話続けることになるんじゃ。。。?

 

それは困るな、『花結いの章』ってまだそこまで話が公開されてないみたいだし

 

え。。。?

 

ん?

 

「みたい」って、お前。。。まさか。。。

 

ん?なに?

 

また公式のゲームもやらずにネタだけ使ったのか?!

 

そうだよ?

 

なんで開き直れるんだよ!今回のは無料アプリだぞ!

 

いや、俺スマホ持ってねーし

 

なんでそこで「ゆゆゆい」ネタに走ろうと思ったんだよ!頭使えよ、ちょっとは!

 

一応考えた末だったんだよ?こっちにしたのは…

 

いや、どう考えてももう一つのネタにすべきだろ、何のネタか知らんけど。。。

 

う~ん、もう一つのネタって主人公がお前じゃない話だったから…

 

え?あー、前に言ってた「彼」の話か?

 

いや?全然違うよ?

 

は?じゃあ誰の話だよ?

 

夏凜ちゃん

 

ほ。。。

 

ん?

 

ほわぁーーーっ!

 

お、おいどうした?

 

うきゃっほーうおぉーーいっ!!

 

え、ちょ、それ浮かれてんのか?

 

ウニョラー!ウラー!ゲッテルフンケン!ハーザイ!フーレーイ!トッピロキー!

 

なんだ?何語だ?それは?

 

夏凜ちゃん!夏凜ちゃん!!夏凜ちゃん!!!

 

落ち着け、とにかく一度落ち着け!

 

はあーーーーーっ!はぁーーーっ!はぁぁっ!

 

過呼吸起こしそうな勢いだな…

 

書け!

 

 

夏凜ちゃんの話を書け!

 

いや、それは…

 

夏凜ちゃんと俺のラブラブ話を書くんだぁーーーーーーっ!!!

 

ラブラブじゃねえよ!

 

。。。え?

 

誰もお前とのラブコメ書くなんて言ってないだろ…

 

えええぇぇぇぇぇぇぇっ?!

 

意外そうな反応すんな、俺がラブコメなんぞ書けないのは以前も言ったろうが

 

そこを頑張って書こうと決意したって話じゃなかったのか?

 

勝手に都合のいい解釈すんな、それにどっちかっていうとその逆の出だしだぞ、考えてたのは

 

え。。。逆って?

 

夏凜ちゃんの独白で始まる物語なんだが

 

ほうほう

 

書き出しが

 

「私は兄のことが嫌いだった」

 

うおいっ!

 

「いや、違うな」

 

うん、違うよねー、夏凜ちゃ~ん

 

「私は今でも兄のことが大嫌いだ」

 

なんでやねんっ!!

 

「だってあの男は…」

 

おう、待てや、オッサン、夏凜ちゃんの声使って何書こうとしてんだ、コラ!

 

だからお前のことが嫌いな夏凜ちゃんの独白から始まる物語をだな

 

いらんわ!そんな話!

 

まあ、お前はそう言うだろうな

でも別にお前のためにこの話をやめたわけじゃないんだわ

 

ほほう、いい度胸だ。。。

 

この話、結構長くなりそうだったから映画公開までのつなぎに使うのもなんだなって思って

 

まるで今後本気で長編に取り組むかのような発言だなぁ、おい

 

いちいち怒るな、別にそう決めたわけでもないし

 

決められてたまるか!

 

それにこの話自体はお前を嫌いなままの夏凜ちゃんで終わるわけでもないから

 

ほほう?あ、いや、夏凜ちゃんはそもそも俺のこと大好きだし!

 

妄想にばかり逃げてると前みたいなことになるぞ?

 

前みたいって。。。

 

身に覚えはないのか?

 

身に覚えはないよ、ないけど。。。

 

ないけど?

 

心当たりが多すぎてどれの事かわからんっ!!

 

見事なダメ兄貴ぶりだな、まあ今は書いてない話のこと言ってても始まらんし

 

そうだよ、続きそうなのに続き書く気ないのか?「ゆゆゆい」の俺の活躍!

 

お前の活躍って…w

 

鼻で笑いやがった。。。俺、あの設定なら力戻ってるから必殺技叫べば結構強いだろ?!

 

皆、必殺技持ってるみたいだし、あんまり特別感ないだろ

 

それはそうかも知れんけど。。。

 

大体、乙女達が16人もいるのに、今更お前が参戦してどうするんだよ?

 

そんなにいたのか、アレ。。。

 

「ゆゆゆ」の5人、「わすゆ」の3人、「のわゆ」の5人、長野、北海道、沖縄の3人で16人だ

 

あれ?勇者部は6人じゃないの?

 

うん、中学生園子はなぜかまだ勇者になれない

 

まあ21体も精霊出されたら、それこそ他の()達の立場なさそうだしなぁ。。。

 

メタな理由を1番に出すところがお前らしいというか…

まあ、ゲームの性質上、精霊がいてもダメージは受けるみたいだから

 

ピンチを救う裏方って発想自体は成り立つじゃないか!

 

別にそれで話書いても良いんだけど、面白く出来るかは疑問なんだよなぁ

 

俺が活躍するだけでも喜ぶ読者はいるって!

 

お前、こないだこれ読んでる人が少ないって嘆いてたの忘れたのか?

 

それでもこんなメインタイトルで読みに来る人たちなんだから!

 

まあ、それはそうかも知れんが…

ふむ…ちょっと書いてみるか、あの前作前半のバカ騒ぎみたいな三好春信を

 

おおっ!

 

んじゃ、結城友奈がピンチになったところから

 

えっ!今ここで?!

ちょっと待て、それっていつものg。。。

ボスバーテックスの範囲攻撃に苦戦する乙女達

皆が膝をつく中、ボスの攻撃が最前線の結城友奈に集中する

 

「うあぁぁぁぁぁぁーっ!」

 

その攻撃に吹っ飛ばされる友奈

 

「友奈ちゃん!」

 

東郷がその姿に気力を振り絞り引き金を引く

だが、その攻撃は効いているのかいないのか

ボスの攻撃の手を緩める事すら出来なかった

 

「友奈ちゃんが、友奈ちゃんがっ!」

 

更なる攻撃を仕掛けようとエネルギーを溜め始めるボスバーテックス

東郷はそのエネルギーにも攻撃するが、効果があるようには見えない

焦りをつのらせ、連射する東郷、あの攻撃が放たれたなら

先程の攻撃で倒れたままの友奈がそれを避けることは難しい

 

そこへ

 

「待たせたでござる。。。」

 

焦る東郷の(もと)へ馳せ参じる仮面の赤き勇者

 

「仮面の人!」

 

以前の宣言通りピンチに現れたその男に安堵の表情を浮かべる東郷

しかし、この距離では彼の刀の攻撃は届くのかどうかすら怪しい

再び不安な表情を見せる東郷に仮面の男は叫ぶ

 

「東郷美森!結城友奈のピンチを救うため、拙者に力を貸すでござる!」

 

「え?は、はいっ!でも…どうすれば…」

 

戸惑う東郷に更に指示する仮面の男

 

「拙者の前に立ち、両腕を前へ(かざ)すでござる!」

 

何をしようとしているのかさっぱりわからないが

他に打つ手のない東郷は自信満々に支持してくる仮面の男の言葉に従う

 

「こ、こうですか!?」

 

「うむ、そのまま敵へ意識を集中するでござる!」

 

「はいっ!」

 

そうしている間にも敵のエネルギーチャージは進んでいる

これを失敗すれば友奈が危ない、そう思う東郷は冷静な判断力を失っていた

 

その東郷に

 

ムニュ

 

「?!」

 

ムニュ、モニュ

 

「きっ…」

 

ムニュ、モニュ、フニュ

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

樹海中に轟く東郷の悲鳴、皆がそちらへ振り向く中

仮面の男に後ろから胸を揉みしだかれた東郷が背後へ力の限りのピンタを繰り出していた

 

しかし仮面の男はその攻撃をさらりとかわし、そのまま空中へ避難

空中回転しつつ叫んでいた

 

「ハイエロ粒子ッ、フルッチャーッジッッッ!!」

 

そして東郷を飛び越え、敵に向かって左手を構えた状態で樹海の大地に着地すると同時に

 

「必殺っ!!」

 

その手から閃光が放たれる

 

「ユビビイイィィィィィィィィッム!!!」

 

その閃光は遠く離れたボスバーテックスを

溜め込んでいたエネルギーごと貫き、一瞬で光と散らせる

 

「ふうっ。。。。」

 

仮面で隠された顔をスッキリさせ、息をつく仮面の赤い勇者

乙女達はその周りに駆け寄り

 

「この痴漢!」

 

「乙女の敵!」

 

「死ね!死んでお詫びしろ!」

 

口々に罵りながら足蹴にしていた

しかし

 

「ふはははははははは。。。」

 

その背後で響く男の声に自分たちの足元を見ると

 

「こ…これは変わり身の術…!」

 

適当な大きさの丸太に仮面と長マフラーだけが付けられたそれを

乙女達はいつの間にか足蹴にしていたのだ

そして背後の声に振り向くとそこには仮面の赤い勇者が

 

「痛いでござる。。。」

 

まるで今の今まで皆から足蹴にされていたかのようなボロボロの姿で佇んでいた

 

「あ、最初の感覚はやっぱちゃんと蹴りが入ってたんだ…」

 

「た、タマは全部お見通しで蹴り続けてたけどな!」

 

適当な事を言っている球子を尻目に

 

「痛かったでござるが、皆が無事で良かったでござるよ」

 

一人納得してウンウンと頷く仮面の男

 

「いや、何言ってんのよ!一人の乙女の心が無事じゃないわよ!」

 

「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い…」

 

顔面蒼白で胸を押さえて呟く東郷を指差し抗議の言葉を連ねる風だったが

 

「それでは皆の者、さらばだ!アデュー!」

 

仮面の男はそんな事に気付きもせずに去っていった

 

なお、東郷の心のケアは

その後、復活した結城友奈の顔をその胸に(うず)めて抱きしめることで事なきを得たという

は~、どっとはらい

やっぱりいつものギャグじゃねぇか!!!

 

何がだよ、大活躍じゃないか、本家主人公をピンチから救ったんだぞ

 

やった事は女子中学生の巨乳揉みしだいただけじゃねぇか!

 

それで手から必殺技が繰り出せるなら安いもんだよな!

 

乙女の胸を安売りすんな!なんで「ダイ○ダラー」持ってきたんだよ!

 

なんという健全さ!

 

会話しろ!

 

なんでも何も、最初に思いついた叫ぶ必殺技が「指ビーム」だっただけだよ?

 

ますますなんでだよ?!

 

まあ、俺、「ダイミダラー」って原作もアニメもほとんど観た事ないんだけどな

 

おかしいだろ?!何もかもが!

 

そうだな、本編でやってたらお叱りを受けそうな内容になってしまったな

 

途中で書き込むコントとしても最低だよ!なにが「は~、どっとはらい」だ!

 

便利な言葉だよな、アレ言うとなんか何もかもが上手くいったような気になる

 

完全に気のせいだけどな。。。!

 

まあ、とにかく春信を活躍させるノルマは達成したし、満足満足

 

訳の分らん事言うとらんで、本気でちゃんと書けよ。。。

 

まあ、次は映画第3章見た後だな、どっちにしろ

 

その前に書いた話が今のコントってもう、俺の株は下がりっぱなしだよ。。。

 

「花結いの章」も10月の2期放送に向けてゆっくり更新していくんだろうし

 

お前の元にその情報が入るまで俺は痴漢のまま放置か。。。

 

何言ってんだ

 

あ?

 

情報が入っても話を思いつかなきゃ放置だぞ?

 

最悪だ。。。

 

第3章観たら、園子や須美絡みでバカ話も暫く思いつかんだろうし

 

先に結末わかってるってのは厄介だな。。。

あ、それで神樹館の二人絡みでバカ話続けてたのか?

 

え?あ、うん、そうだよ

 

違うんだ。。。

 

そうだって言ってるだろ!

 

顔と言い方は「違いますよ?」って言ってるぞ

 

でもまあ、ホントのとこ今回のコントも東郷さん使うのちょっと気が引けたんだが

 

とてもそうは見えないノリノリっぷりだったが

 

東郷さん以外にあの役にハマりそうなのがいなかったから

 

よっぽど好きなんだなぁ、メガロポリス。。。

 

他の子たちも大きいとかいう話は出てるんだけど、東郷さんはその中でもデカ過ぎる気が…

 

いい歳したオッサンが中学女子の胸のデカさを気にしてるのってキモイぞ。。。

 

だって、東郷さんって変身やら温泉やらそれっぽい描写ばっかなんだもん

 

それにまんまとはまった一人のオッサンがここにいるわけだ。。。

 

そういえばデカい組っていやぁ、ひなたにも気持ち悪がられてるんだったな、お前

 

お前のせいでな。。。

 

まあ、夏凜ちゃん見てたらお前が巨乳好きじゃないのはハッキリ分るし、問題ないだろ

 

ざんねんでしたー!夏凜ちゃんだってちゃーんと出るとこ出てますー!

 

その言葉が実の兄の口から出たと知ったら夏凜ちゃん絶望しそうだな

 

知られた時点で俺が絶望するわ!

 




<三好の勇者・・・?>

「あ~、夏凜…さん?」

「夏凜でいいわよ、私も若葉って呼ばせてもらうから」

わざわざ部室ではない空き教室に夏凜を呼び出した若葉は
ぎこちない切り出しに気さくに返す夏凜に少しホッとしていた

「そうか、助かる」

「で、なに?若葉」

「夏凜は確か、『三好』という姓だったな」

「ええ、そうよ、『乃木』や『上里』とは比べらんないけど、一応大赦の家系なのよ」

「み…『三好春信』という名に聞き覚えはないだろうか?」

「聞き覚えも何も、兄貴の名前じゃない、なんで若葉が知ってるのよ?」

「御令兄か!」

「そんな大したもんじゃないわよ、兄貴で充分
ま、一応大赦で結構な重役には就いてるらしいけど…」

「ふむ、立派な兄上なのだな」

「だっ、だからそんな大したもんじゃないって///」

「ふふっ
ところで…それはやはり何か(いわ)れのある名なのかな?『友奈』のように」

「え?なにが?」

「だから、『春信』という名だ
何かの謂れで付けられたとか
代々、三好家で受け継がれてきたとか…」

「いいえ、聞いた事ないわね」

「そうか…」

「何?若葉の時代に『春信』って立派な人でもいたの?」

「い、いや…立派な人かと言われると返答に困るんだが…」

「どういうことなのよ…」

「ま、まあ、この件は気にしないでくれ、きっと私の勘違いだ!」

そそくさと部屋を後にする若葉の後姿に違和感を感じる夏凜

(そういえば以前、球子の口からも
兄貴の名前が出たことがあった様な…
アレっていつだったかしら…)

記憶の糸を手繰り寄せ、ある事象を思い出す

(仮面の赤い勇者!アイツが来たときだわ!
そういえば西暦組の丸亀城チームは何か知ってそうって
東郷も言ってたっけ…)

思い切って話を聞こうと球子の部屋を訪ねる夏凜



「で…どうしたんだ?急に部屋まで来るなんて?悩み事ならタマに任せタマえよ!」

「あ~、悩みって程の事じゃないんだけどね…」

「そうか?まあ何か話があるんだろ?気を使わず話しタマえ!」

「その「タマえ」って言わないと気がすまないのね…
あの男勇者、『仮面の赤い勇者』について聞きたいんだけど」

「ハル…じゃなくて『仮面の赤い勇者』か!そいつは困ったな!
いくらタマでも謎の男の正体までは知らないぞ?!」

「今、ハル…とか言わなかった?」

「言わない、言わない!なに?春がどうかしたのか?!」

そう言った後、あらぬ方向を見ながらピューピューと口笛を吹く球子に

(何か隠してるわね…)

流石の夏凜もその様子に何かを感じ取ったが、それ以上はウッカリ話す事もないだろうと踏み

「いいえ、ただ単に、丸亀組が知ってる仮面の赤い勇者の話が聞きたくてね」

「アイツの話~?」

「だって気になるじゃない、銀や私以外に赤い勇者なんて」

「2人いるんだから、3人目がいたっていいじゃないか、タマたちの色は皆1人だけだぞ」

「ああ…そうか…」
(銀の端末を私が引き継いだことは皆知らないんだったわ…)

「ん?」

「なんでもないわ、でも男勇者ってだけでも気にはなるでしょ?」

「まあ、それはそうだなぁ…」

「何でもいいのよ、知ってる事教えてよ、後でうどん奢るから!」

「うどん?!肉うどんでもいいのか?!」

「え、ええ、いいわよ」

「じゃー、何でも話すぞ!アイツは基本アホな大人だ!」

「あ…アホな大人ぁ?」

「うん、時々カッコいいことも言うけど、基本はアホだ!」

「基本アホ…」

「それと、それとぉ~」

流石にアホだけでは申し訳ないと思ったのか、何か情報をひねり出そうとする球子

「アホ以外には~」

その様子に本気でそれ以上なにも思うところがないと見た夏凜

「い、いいのよ、無理に考えなくっても…」

「いや!他にも何か…そうだ!」

「何か思い出したの?!」

「丸亀組の皆にも話を聞けるように言っておいてやるぞ!皆から聞けば色々わかるだろ!」

「そ、それはありがたいわね」
(正直、球子以外にはどう話しかけたらいいのかわからなかったから
これは本当にありがたいわ…)

「そうと決まれば善は急げだ!隣の杏の部屋へ行こう!」

「え?あ、ありが…」

言い終わる前に球子に腕を引かれ杏の部屋へ行く夏凜



「かくかくしかじか、という訳なんだ」

「なるほど、かくかくしかじか、便利な言葉だね、タマっち先輩」

「それじゃー、杏が話してる間に他の皆にも話は通しておくから、適当に周るといいぞ!」

「あ、球子ありが…」

またしても言い終わる前に部屋を出てしまった球子

「すみません、ウチのタマっち先輩、(あわただ)しくって…」

苦笑いしながらお茶を出す杏に礼を言うと

「で、仮面の赤い勇者のことなんだけど…」

「はい、その正体は誰も知りません」

にこやかな表情でキッパリと言い切る杏
その物言いからは隠し事をしているのかどうかすら読み取れない

(手強いわね…でもまあいいわ)
「正体はわからなくても、どんな人物かは分るでしょ?一緒に戦ったんだから」

「そ、そうですね…あの時話されていたように、あまり強い勇者ではなかったですね」

「ふーん、そうなんだ」

「あ、あと凄くロマンチックなところがあって…」

「ロマンチック?」

「亡くなった恋人をずっと思い続けて戦ってるような人でした…」

どこか遠い目でうっとりしながら語る杏

「へ、へえ、謎の人物なのにそんな込み入った話までしたのね…」

呆れ気味に問う夏凜にサラリと答える

「いえ、全然?」

「へ?」

「でも、なんとなく伝わるんですよ、そういうのって…」

また遠い目をする杏に思う

(あ、これ、勝手な思い込みってやつね…そういうの好きそうだものね、この子)

「夏凜さんや銀さんと同じ、赤い勇者服っていうのにも
きっと何か強い思い入れがあるんだと思うんです…」

(なんかうっとりしてる…これ以上は妄想しか出て来そうにないわね…)
「そ、それじゃ他の子たちにも聞かなきゃいけないんで、私行くわね」

「はい~おかまいもしませんで~」

何か色々と妄想したままの杏を置いて次の部屋へ向かう



「変態ね…」

呟くように、しかしキッパリ言い切る千景

「変態…なの?」

「ええ…、変態よ…」

「でもそれって照れ隠しとかアイツは言ってたけど…」

「いいえ…、変態だわ…」

「そ、そうなの…」

「そうよ…」

(なんていうか、取り付くしまもないわね…)
「そ、それってなにか…イヤらしい事でもされたの?」

「!」

急に顔を赤らめて俯く千景
夏凜はそれにピンと来る

「何かされたのね!アイツ!本当に変態痴漢野郎だったとはっ!」

「い、いえ…」

「ん?」

「直接、触られたとか…そういうんじゃないんだけど…」

「なに?それ?」

「なんていうか…友情、とか…」

「え?友情?」

「友達が好き…とか大切…とかって気恥ずかしい…じゃない…?」

目線を逸らし、指をもじもじさせ、顔を真っ赤にして呟く千景

(好きって…)

夏凜も友奈や勇者部の皆の事を思い

「はっはっはっはずかしいこといきなり言わないでよ!」

ボッとでも音の鳴りそうな勢いで顔を赤らめてしまう

「そ…そういうのを言わせて、ニヤニヤしてるような奴なのよ、アイツは…」

「そ、それは確かに恥ずかしいわね、変態野郎だわ…」

お互いに顔を赤らめ俯いてしまう

「あれ?でも?」

「え…?」

「アイツって仮面で顔、隠してるのになんでニヤニヤしてるって…?」

「!」

「…千景?」

「いけない!これから24時間耐久ゲームマラソンの時間だったわ!」

「え?」

「ごめんなさい、そういうことで!」

「え?なにそれ?今の思い付きよね?完全に嘘よね?」

千景に背中を押され、部屋から追い出される夏凜
バタン!と閉じられた扉に一応声をかける

「いつ出動するかわかんないんだから、24時間耐久はやるんじゃないわよ!」

「…」

「それと…
話してくれてありがと」

「…ええ」

「じゃあね」

扉越しに声をかけ、次の部屋を目指す



「いらっしゃい!夏凜ちゃん!」

「お、お邪魔するわね(ホントに友奈そっくりね…)」

「夏凜ちゃんがわざわざ遊びに来てくれるなんて嬉しいなぁ!ねえねえ、何して遊ぶ?」

「え、そ、そうね…」

「ババ抜き?UNO?7ならべ?」

「いや、それって二人でやるゲームじゃないわよ…」

「そっか!じゃあスピードにしよう!グンちゃんに鍛えられたから結構強いんだよ、私!」

「ふふん、私だって反射神経のゲームならそうそう負けないわよ!」



「って、違ーうっ!」

「どうしたの?夏凜ちゃん」

ひとしきり遊び、気付いた夏凜が声を上げた

「私、遊びに来たんじゃないわよ!アンタ、球子から話聞いてんでしょ?!」

「え?タマちゃんからは夏凜ちゃんが部屋に来るって事しか聞いてないよ?」

「アイツ…段々テキトーになってきてるわね…」

「ごめんね…私がちゃんと話を聞かなかったから…」

(こ、この顔でショゲられると胸が痛むわ…)
「べ、別にいいわよ!私も楽しかったからつい用件を忘れちゃってたんだし!」

「そう?楽しんでくれてたなら嬉しいなぁ!」

「くっ…」
(危ないわ…この子といるとつい友奈といるみたいに…ってこの子も友奈なんだけど…)

「ん?」

「と、とにかく!本題に入るわ!」


「仮面の赤い勇者さんかぁ…」

「別に正体までは聞こうとは思ってないから、何か知ってる事を教えてくれる?」

「と言われても、う~ん、あの人って神出鬼没だし…」

「以前から忍者みたいだったわけ?」

「うん、戦闘中もいつの間にかいなくなってることが多かったよ」

「なにそれ、無責任な奴ね」

「でも、戦ってる間はすっごく必死にやってる風なんだよねぇ」

「だけど弱いのよね」

「そうだね、星屑数体に囲まれると、もう危ない感じだったよ」

「弱すぎじゃない…足手まといでしょ、それじゃ」

「あ、でも私たちの時代では星屑相手でもわりと苦戦してたから」

「ああ、勇者の力自体が今ほど強くなかったんだっけ…」

「そう、だけど私たちはピンチになったら精霊をその身に宿して
パワーアップしたりしてたんだ、でも…」

「アイツにはそれすらなかったと…」

「大変だったんじゃないかなぁ、ただ…」

「ん?」

「あの人っていつも無傷なんだよねぇ」

「無傷?」

「私たちは楽な戦闘の時でもわりと傷だらけになるんだ、今みたいに精霊の加護がないから」

「そっか、厳しい戦いなら尚更ね、でも」

「あの人はなぜか無傷なんだ」

「弱い分、回避や防御は上手かったってこと?」

「そう…なのかなぁ?そうは見えなかったけど…」

「どういうこと?」

「なんていうか、敵の攻撃が時々すり抜けるみたいに見えるんだよね」

「紙一重で素早く避けてたってわけじゃ…なさそうね」

「だとしたら凄いんだけど、皆も…若葉ちゃんですら、すり抜けて見えるって言ってたし…」

「謎ね…」



「ごめんね、私が遊んじゃってたせいで、あんまり話せなくって…」

「べ、別に気にする事ないって言ったでしょ、私も楽しかったし!
それに今までで一番まともに話が聞けたくらいよ!」

「ふふふっ」

「な、なによっ?」

「夏凜ちゃんは優しいなあって思って」

「なっ!なに言ってんのよ!?そんなわけないでしょ!」

「あんな話で一番まともなんて、私でもお世辞だってわかるよ」

「え?それは本当なんだけど…」

「照れない、照れない!」

(こういう、人を良いふうに勘違いするとこもそっくりなんだから…)
「まあ、そういうことにしておくわ…」

「ありがとう、夏凜ちゃん」

「逆でしょ、私の方こそ、ありがとう、よ」

「あははっ」

「ふふっ」

「じー…」

「………
って、千景?!」

「あっ、グンちゃん!」

「高嶋さん、偶然ね…」

「偶然って…私たちが部屋出て話してたのを見つめてたわよね、アンタ」

「何のことかしら?」

「はあぁ…別に『アンタの友奈』を取ったりしないから、心配しなくてもいいわよ」

「別に…心配なんて…それに高嶋さんは私のものってわけじゃ…」

「いいのよ、なんとなく苦労はわかるから」

「?…ああ、結城さんの事ね…」

「べっ別に友奈のことで心配とか苦労とかした覚えは…
って、ああ、この『友奈』はこっちの『友奈』のことでこの『友奈』のことじゃ…」

「ぷっ、ふふふ…」

「あー、めずらしいね、グンちゃんがこんな風に笑うなんて!」

「そ、そうね…ふふふっ」

「うー、なんだか私が恥ずかしい思いしただけみたいじゃない…
まあいいわ、それじゃあ二人とも、ありがと!」

「あ、またねー夏凜ちゃん!」

「また…ね」

友奈がそのまま千景の部屋へ遊びに行くのを見送った後、夏凜は次のターゲットを目指す

(せっかく話が出たんだし、ここは彼女よね…)



「で、話とは?」

「警戒しなくてもいいわよ若葉
『春信』って人の話を聞きに来たわけじゃないわ」

「そうか…
い、いや別にその事を警戒しているという訳でもないんだがな」

(なんていうか、まっすぐで不器用な子ね
なんとなく親近感が湧くのは誰かに似てるのかしら?)
「で、私が聞きたいのは『仮面の赤い勇者』のことなんだけど…」

「やっぱり聞きに来たんじゃないかっ?!」

「え?」

「え?あっ!」

「いまの話の流れって…」

「あーっ!『仮面の赤い勇者』か!そっちの話だったかぁ!いやー勘違いしてしまったなぁ!」

「か、勘違い…?」

「いやぁ、すまんすまん、空耳してしまったみたいだ!」

「空耳…だったの?」

「うむ、まるで違う言葉に聞こえてしまったな!
で?仮面の赤い勇者の何が聞きたいんだ?正体なら私も知らないぞ?」

「え、ええ、だから彼の人となりとか、戦闘力とか、どうだったのかな?って思って」

「人となりについては…正直掴みどころがないな、正体不明で普段どこにいるかもわからん」

「そっか、勇者のままで日常生活してたらただのおかしい人だものね…」

「そうだな、おかしい人だな」

「え?」

「え?
あーっ!もちろん!そんな人がいたらおかしい人だなって意味だぞ!」

「そ、そう…」

「あとは戦闘力の方だが…」

「弱い…のよね?」

「勇者としては、だがな」

「どういうこと?」

「夏凜は勇者部の中でも勇者となるために特別な訓練を積んだと聞いているが」

「ええそうよ、初代勇者様に語るのはおこがましいかも知れないけど
勇者の能力は変身前の基礎能力に大きく左右される
普段から鍛えておくことでより強い勇者となれるのよ」

「うむ、それは我々の時代でも同じだった
だから特訓メニューなども学校生活に組み込まれていたんだ」

「へえ…学校でも勇者として特訓できるなんて、ちょっと羨ましいわね」

「ふふっ、球子などウンザリすることもあったようだがな
だから、変身前の技量が勇者としての強さ、そういう認識が成り立つわけだが」

「そうね」

「しかし、彼は少し違っていた」

「違うって?」

「その動きを見ればわかるんだが、彼は相当の手練(てだれ)だ」

「そうなの?」

「うむ、どういう系統かはわからんが、その動きは洗練されていて、達人のそれに近い」

「じゃあ、友奈の言ってた敵の攻撃がすり抜けて見えるってそういう技ってこと?」

「友奈からその話を聞いているのか、いや、それは別だな
おかしな話だが、本当にすり抜けているとしか考えられんのだ
バーテックスの攻撃は人のそれとは違う
動き・物量・速度
それらは達人に近い動きができるからと言ってかわし切れる物ではない」

「そうなんだ…」

「にもかかわらず彼はその攻撃をすり抜ける
いや、攻撃の方が彼をすり抜けると言った方が正しいか…
武道をたしなむ者としての私の見解も
射手としての杏の目もそう判断するしかなかった」

「やっぱり謎ね…」

「それと話を元に戻すが、彼自身は手練だが、勇者としての彼はそう強くはない」

「どうして?」

「なんというか、一つ一つの能力が我々より劣るんだ」

「一つ一つ…」

「攻撃力、速さ、跳躍力、その他諸々の能力が勇者のそれであるにも(かかわ)らず
どういうわけか、その全てが我々より数段低いレベルなんだ…」

「それじゃ…」

「そうだ、数と力で押してくるバーテックス相手の戦いでは圧倒的不利に立たされるわけだ」

「歯痒いでしょうね、それは…」

「それでも彼は必死に戦い続けていた
だからこそ、我々も彼を勇者として認めていたんだ
あのふざけた仮面も含めて…」

「ふざけたって…大赦仮面でしょ?」

「大社仮面?」

「そう、大赦仮面。知らないの?大赦のまつり事に携わる人たちが着けてる仮面よ」

「いや…我々の時代の大社ではそんな物を着けてまつり事に携わる人などいなかった
皆、普通の宮司や巫女たちだ」

「それって…」

「うむ…」

「「まさか、彼が今の大赦(社)の始祖ということでは…」」

「…」

「…」

自分たちはとんでもない真理に近づいたのではないか、そんな雰囲気に包まれそうな中

「違うわね、きっと」

「うむ、私もそう思う、根拠はないが」

二人の意見は合致した

「大体、あんなふざけた忍者男が始祖の訳ないわよ」

「今の大社の体制はわからんが、あの男が始祖ではトンデモ組織になってしまう」

「そうよね…ってあれ?」

「ん?」

「さっき人となりはわからないって…」

「そうだな?」

「なのに彼が始祖ではトンデモ組織にって…」

「あーっ!そっ、それは単に彼の勇者としての言動がおかしいと言う意味だ!
それ以上の含みはないぞ!」

「そ、そうなの…」

「い、一度会った夏凜ならわかるだろう、そのおかしさは」

「まあ、確かに…勇者なのに忍者とか訳がわからなかったわね」

「あー、アレは本当に訳がわからんな…」

「仮面といい、あの行動といい、何か正体を隠す理由があるのかしら?」

「ふむ…それは我々もいつも不思議に思っていたのだが…」

「戦闘でしか会わないならそれを聞く機会もないものね…」

「えっ?」

「えっ?って戦闘以外会わないわよね、神出鬼没で普段どこにいるかもわからないんだから」

「え…
ああ!そうだな!まったくもってその通りだ!」

「なにか…隠してない…?」

「なにか…とは何かな…?」

「例えば…」

「た、例えば…?」

「『仮面の男』と『三好春信』って人が…」

「ごくり…(これはもう隠し通せないか…)」

「頭ん中でごっちゃになってんでしょ!」

「すまん!実はそうだったんだ!
…ってあれ?」

「やーっぱりそうだったのね!
そっちの人の事は今回は聞かないって言ってるのに、警戒しすぎよ、若葉は!」

「え…あ…
ああっ!そうだったか!
私とした事が無駄に警戒してしまっていたんだな!
いやー、まいったまいった、いかんいかん!」

「ふふっ、もっと気楽に話してもらっていいのよ」

「そ、そうだな、しかし仮面の男の正体については
我々は追及しないと言う事で意見統一しているんだ」

「そうだったの?」

「ああ、隠している以上、なにか理由があるんだろうし、何より…」

「ん?」

「ひなたがこの話をするのを嫌がるんだ…」

「ひなたが?」

「うむ、ひなたはアレで怒らせると怖いところがあるからな、皆それ以上何も言わないんだ」

「へぇ、あのひなたがねぇ」

「だから、もしこの後ひなたの所にも行くつもりなら気をつけた方がいいぞ」

「な、なにを?」

「仮面の男の正体について突っ込みすぎると訳のわからない怨みを買うことになるやもしれん」

「そ、そうなの…気をつけるわ」



若葉の部屋を出てすぐにひなたの部屋の前まで来ている夏凜

「そうは言っても、ここまで来て、話さないのもなんだし…
球子も一応、来るって言ってくれてるみたいだし…」

頬を叩いて気合を入れる

「ぃよっし!行くわよ!」



「あらあら、いらっしゃい、夏凜さん」

(いつものひなた…よね)
「お、おじゃまするわね」

「昆布茶でいいですか?」

「え?ああ!気を使わなくてもいいわよ!話をしに来ただけだから!」

「そうですか?」

といいつつ二人分の昆布茶を用意して夏凜の前に座るひなた

「まあ、とりあえずどうぞ」

「あ、ありがと…こういうとこ、ソツがないわね…」

「はい?」

「いえ、いいのよ、それで話なんだけど」

「はい、なんでも聞いてくださって結構ですよ」

「『仮面の赤い勇者』って知ってるわよね?」

ピク

「え?」

ピクピクピク

「ちょっと…ひなた?」

ピクピクピクピクピクピクピク

「ゆ、湯飲みが震えてるわよ…」

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク

「ちょっ!昆布茶こぼれてる!」

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク

「落ち着いて!とにかくひとまず落ち着いて!」

「はっ!?」

「どうしたのよ…今の…怖かったわよ…」

「な、なんでしょう?なんだかいきなり意識が飛んでしまいました」

「大丈夫?」

「ええ、もう大丈夫ですよ」

「まったく、『仮面の赤い勇者』の話をした途端だから、ビックリしたわよ…」

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク

「って、それはもういいから!」

「はっ!?…す、すみません、なにかあったんでしょうか…?」

「なにかも何も…」
(どうなってんのよ、若葉!
突っ込みすぎるどころか名前出しただけで拒絶反応起こしちゃってるじゃない!)

「え~と、仮面…」

ピク

「を着けた人たちが大赦で働いてるんだけど」

「そうなんですか、今の大社には変わった習慣があるんですね」

「赤い勇者…」

ピク

「服って私と銀の二人いるじゃない?」

「そうですね、他の皆さんは同じ色の人がいないのに、珍しいですね」

「3人目がいたら…驚く?」

ピク

「い…いいえ、2人いるんですから、3人目がいても不思議ではないと思いますよ」

「それが男性でも…?」

ダンッ!

「ひっ!」

テーブルを叩いてひなたが立ち上がる

「あの男が…」

「え?」

「あの男が出たんですねっ!?」

「出たんですね、ってこないだ話してたの知らなかったの?」

「この間、というと…」

「アンタも会話に参加してたわよ!『若葉は仲間のピンチに敏感だ』って!」

「そうですか、あの時に…」

「ホントに気付いてなかったの…?」

「私があの男の話を嫌がるのを丸亀城の皆さんは知ってますから
その部分が聞こえないようにしてくれていたんでしょうね」

「さっきの様子からすると記憶から抹消された可能性も否定できないけど…」

「そうですね、可能であるならあの男の記憶は私のメモリーから全て抹消しておきたいです」

「そこまで…」

「あんな男の記憶に()く位なら、抹消してしまって
若葉ちゃんとの栄光の日々を上書きした方が余程記憶細胞の有効活用といえるでしょう」

「普段、人当たりのいいひなたが言うとキツいわね…」

「あ、皆さんとの記憶は全て大切な思い出ですよ、もちろん夏凜さんも」

「う、嬉しいんだけど、その前の反応見てると正直微妙な気分だわ…」

「とにかく!あの男には気を許さないでください、同じ赤い勇者だからって」

「それは大丈夫よ、むしろ警戒してるくらいだから」

「そうですか、ならいいんですが…」

「それにしても、なんでそこまで毛嫌いしてるの?」

「…」

「ひなた?」

「…なぜでしょう?」

「はあっ?!」

「いえ、最初に会った頃からおかしな人という認識ではあったのですが
気付くとその存在そのものが許せないくらいになっていて…」

「まさか、嫌い嫌いも好きのうちってやつでは…」

キッ!

「ないわよね、わかってるわよ…」

「まあ、真面目に戦っている部分もあるらしいんですが…」

「え?ああ、そっか
ひなたは戦闘中は樹海化で動けないから奴の戦ってる姿は見えないのよね」

「はい、皆は共に戦う仲間、と見ている様なのですが…」

「ひなたにとっては違うってのはわからなくもないけど…」

「勇者は皆、美少女ぞろいですから…」

「ん?」

「その中で男が一人というだけでもあの男にとってはハーレム状態…」

「ひなた?」

「あの仮面の下では
『うきゃっほーう!ウニョラーウラーゲッテルフンケンハーザイフーレーイトッピロキー!』
と浮かれているに違いないんです!」

「何語よ!それは?!」

「しかも『看護師(ナース)よりも巫女がいい!』とか言いながら巫女服や勇者服に興奮をっ!」

「具体的過ぎない?!何かあったの?」

「いえ、私自身なにかあった訳ではないんですが」

先程とは打って変わったケロリとした表情で言うひなた

「なんでそれがそんなに具体的なのよ…」

「なぜでしょう?魂がそう言わせるというか…神託にも似た感覚が…」

「どんな神託よっ!」



「なんか、長居した上に嫌な思いさせちゃったわね」

「いえ、気になさらないで下さい、私も少し興奮してしまって恥ずかしい限りです」

「少しじゃなかったけど…あ、そうだ聞き忘れてたわ」

「はい?」

「『あの男』じゃなくて、『三好春信』って人のことについて…」

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク

「って、そっちもかい!」

扉にもたれかかり、震えるひなたを引き戻すのにまたしばらくかかる夏凜であった


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16話 オ・マ・ケ・4

オマケでは本文でグダグダ話、後書きでキャラのやりとりが基本となっております
キャラ崩壊なども含むのでご注意ください


春信(以下略):終わったねぇ。。。

 

mototwo(以下略):終わっちゃったねぇ、映画…

 

どうだったよ?

 

うん、第2章のパンフは再販されなかった

 

そこか。。。

 

んで、今回は売り切れ前にって思って急いで観に行ったら

 

いいことだ

 

来場特典翌日から配布だった…

 

公式HPのチェックすらしてなかったんだな。。。

 

公開期間中にもう一回映画館まで行ける余裕あるかなぁ…

 

社会人は大変だねぇ

 

第2章のパンフが手に入らんかった時点であんまし(こだわ)る必要も感じてないんだけどな

 

まあ、次は10月の第2期か

 

どんな話になるのかねぇ…あ!

 

どした?

 

G'sマガジンでまた連載始まったらしい

 

ほほう

 

今度は勇者になれなかった少女達の話だとさ

 

ほっほう?

 

夏凜ちゃんとの選抜争いに負けた子の話らしい

 

お!それじゃ夏凜ちゃんも出るのか!!

 

どうだろ?第2期と繋がる話になるらしいから

 

へ?298年と300年を繋ぐ話じゃないの?

 

どうなんだろうね?

 

また。。。読まねぇんだな。。。

 

書籍化されたら買うけどな

 

なんでそこまでG'sマガジンは手を出さない?

 

単に一回途切れた過去があるからだ

 

途切れた?

 

アレ、創刊時から買って溜め込んでたんだよ

 

電撃G'sマガジンを?!

 

そ、でもあまりにも整理しないもんだから親にキレられて捨てられた

 

一体何年分溜め込んでたんだか。。。

 

覚えてねぇし、思い出したくもねぇ

 

で、それ以来買ってないと?

 

そーゆーこと

実際はアレの前身の雑誌からだからショックでかかったのよ

 

前身?

 

昔、角川でお家騒動があって、色んな角川の雑誌が分裂したりしたんだわ

 

へえ。。。

 

その煽りでなくなったゲーム雑誌の後釜の一つがアレなのよ

 

ふーん

 

まあ、あの形式になるまでにも紆余曲折あったんだけど、今更って話だしな

 

俺ら市井のものには関係のない話ですなぁ。。。

 

だな、そういうわけでいまだにG'sは手を出す気になれん

 

情けない話だね

 

っていうか、こんな話書いてていいのかね?勇者と関係ないけど

 

映画終わってマッタリしまくってるお前見てると突っ込むのも面倒になってな。。。

 

で、オッサンの昔話に付き合ってたと

 

まあ、そうなるな

で、もう一回聞くけど

 

あ?

 

どうだったよ?映画

 

まあ、面白かったよ、構成とか設定とか、色々いじってきたなとは思ったが

 

そっか

 

勇者部所属もちょっとしんみりしたの持ってきたから

 

へえ

 

今回は本編と前後しても良かったかもって思った。東郷さんに関しては

 

園子嬢は?

 

重くて悲しかったとだけ伝えておこう

 

まあ、今のアレを知ってるから忘れそうになるが、その頃から友奈の帰還までの2年は。。。

 

神樹様に祀り上げられる日々だからなぁ

 

ちょっと頑張ってわがまま通したら、記憶なくした須美に「初対面」とか言われるし

 

いかん、しんみりしすぎだぞ、コレ

 

そういう流れだったんだからしょうがないだろ?

 

いや、いつもならお前が無茶なツッコミで軌道修正してたのに、そんなだから

 

俺のせいにすんなよ。。。

 

よし!前回の後書きの話しよう!

 

前回~?

 

夏凜ちゃんメインの話だよ!

 

夏凜ちゃん?!

 

そうだよ、覚えてないのか?

 

忘れる訳ないだろ!夏凜ちゃんが俺を求めて3千里しちゃう話だ!!

 

まだ寝てんのか、お前?

 

何がだ!特に間違ってはいないだろ!

 

いや、既に表現が間違ってるぞ…

 

可愛い可愛い夏凜ちゃんが、久々に聞いた愛しい俺の名に郷愁を感じて、兄を訪ねて3千里。。。

 

いや、丸亀組の部屋巡っただけだから

お前を愛しいとか絶対思ってないから

こないだ聞いたばっかなのに忘れかけてたから!

 

どうしてお前はそんな酷い言い方が出来るの。。。

 

泣くな、鬱陶しい、現実見ろ

 

はあ~ぁ、それじゃ聞くけど

 

おう?

 

丸亀組の持つ俺の記憶ってどうなってんだよ?遠征前なんだから

俺と出会う前のはずなのに歌ネタの時の話とか踏襲してたじゃん?

 

ひなたに関してはその記憶が無いみたいだったな

 

みたいって。。。

ホントに俺の記憶抹消しちゃったんじゃないだろうな。。。

 

そうだったら説明楽だし、そういうことにしちまうか?

 

なんでだよっ!

 

まあ、簡単に言うとあの若葉たちはお前が会った若葉たちとは別人だ

 

は?

 

元々、こっちの春信が行った過去は全て別時空のパラレルワールドなんだから、当然だろ

 

いや、普通に俺の事知ってたし、会話も成り立ってたじゃん?

 

色々と内容に齟齬があったろ?さっき自分でも言ってたみたいに

 

ああ、それはまあ。。。

 

「ゆゆゆい」に出てくる若葉たちが所謂(いわゆる)正史に連なる存在かはわからんが

少なくともお前が会った若葉たちとは別の時空から来た存在なのは確かだ

 

じゃあ、なんで俺と会った記憶が彼女たちにあったんだ?

 

実際に春信や仮面の赤い勇者と会ってたからだろ

 

どういうことなの。。。

 

要はあの若葉たちのいた過去にも別時空から飛んできた「別の春信」がいたわけだ

 

別の俺。。。

 

「別の春信」って言っても春信なのは間違いないから、似たような事してきたんだろうな

 

それで俺と同じような記憶があるってのか?

 

そう、ただし「別の春信」はお前と違って遠征前から頻繁に丸亀城に出入りしてたみたいだな

 

それで戦いの記憶も皆にあるわけか。。。しかし

 

ん?

 

その俺は随分やらかしてるみたいだな!

 

ほう?

 

だってそうだろ?あの様子だと丸亀組全員にバレてるんじゃないの?正体

 

はあ

 

おかげで球子の口から俺の名前が出たもんだから、結構取り乱しちまったよw

 

ああ、うん…

 

別時空とはいえ、俺を名乗って仮面の勇者やるんだから、ちゃんとしてもらわねーとな!

 

んー、別にその「別の春信」をかばうつもりは無いが

 

うん?

 

そいつはひなたの前で「巫女みこナース・愛のテーマ」歌うようなポカはやってない

 

へ?

 

やってないんだ…

 

いやいやいや、どう考えてもアレの影響受けてただろ、あのひなたは!

 

そう、あの歌とその後の「看護師(ナース)よりもやっぱ巫。。。」の台詞の影響で

春信と仮面の勇者をこの上なく嫌ってる

 

やっぱやってんじゃん!やらかしてんじゃん!

 

ひなたが言ってたろ、「魂がそう言わせるというか…神託にも似た感覚が…」って

 

う、うん。。。

 

アレの元凶がお前なの

他の時空の春信はそのとばっちり受けてんの

 

え?え??え???

 

あのイベントがあまりにもあの時空のひなたのトラウマになったもんだから

その感情が他の時空のひなたにも繋がったんだよ、神託に近い感覚で

 

ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。。。

 

しかも「巫。。。」で止まってたもんだから、その後の台詞は

それぞれの時空のひなたに補完されちゃって更に気持ち悪いことに…

 

そ、それは俺のせいでは。。。

 

いや、お前が言った台詞のせいだよ、間違いなく

 

い、いやそれ自体お前が無理やり書いたシナリオで。。。

 

あの後、「巫女みこナース・愛のテーマ」をちゃんと聴いてみたんだが

 

え。。。

 

アレを現役女子中学生巫女の前で歌うとか、春信さんマジ勇者っすわw

 

全部お前の思い付きのせいだろうが!!!

 

ぼくにはとてもできない

 

いきなり魔○陣グルグルねた持ってくんな!

 

まあ、落ち着け

映画観終わって惚けてるのに、こんなどうでもいい説明回持ってきたのには理由があるんだ

 

理由?

 

前回のオマケ3って本文も後書きもノリと勢いで書いたもんだから、スイスイ筆は進んだんだが

 

そいつは良かったですねーだ!

 

その代わり、締めの言葉が全く浮かばなかったからあんな形になっちゃって

 

あー特に本文はまるでブツ切りみたいな終わり方だったな

 

それでも続けていく内の話の一つならそんなのもアリかと思ってたんだが

 

元々テキトーな話ばっかだったしな!

 

映画観てもなーんも思い浮かばんし

書きかけてる話も2~3あるけどすぐには上げられそうにないし

 

しばらく放置って訳か。。。

 

そ、だから一応少ないながらも読んでくださる方々にご挨拶をとな

 

設定説明はついでだった訳だ

 

まあ、秘密にするほどの設定でもないし、続き書かないならここしか説明するとこないし

 

それも済んだから、いよいよお別れかぁ。。。

 

あのまま何もなしに立ち消えでも俺らしかったんだけど

 

流石に失礼だろ。。。

 

まあね、そんでここからご挨拶

私のつたない文章にここまで付き合ってくださった皆さん、ありがとうございました

また何かの機会があったら書くつもりですが、一旦ここで終了です

なんだかんだで楽しく書けました

反応の少なさには泣けましたが…

 

ガッカリすんな!少なくとも4人くらいは読んでくれてるんだから、むしろ感謝だ!

 

そうね…前作読んでた人が続けて読んでくれてたと信じるのみだな

今後とも「結城友奈は勇者である」と共に皆さんの心の片隅に

コイツ「『非公式版』春信」も残っていればと思います

 

最後にそこを強調するところがお前の悪いところだ。。。

 

それでは皆さん!

 

「「さーよーぉーなーらぁー♪」」

 

チャンチャン

 

まあ、後書きどうするかまだ決めてないんだけどね

 

最後の最後までいい加減だな!

 




<『元』の世界と今の夏凜>

と、いうわけで今回で一旦締めらしいわよ

え?いきなりどうしたの?風…

締めって言われても何をどうするのか、お姉ちゃんちゃんと考えてる?

樹?何普通に対応してんの?風の奴わけのわかんないこと言い出してんでしょ?

大丈夫だよ、夏凜ちゃん!私たちは一心同体!説明不足でも適当に補えあえるよ!

友奈まで?「というわけで」から始まった会話に説明不足も何もないでしょ!

兎に角、今回で春信さんに関わった話が一区切りということなのよ、夏凜ちゃん

なんで東郷はちゃんと理解してんの?なんで兄貴の名前いきなり出してきてんの?!

この後書きのアタシたちは夏凜の知ってるアタシたちじゃないから春信の事は結構知ってるのよ

ど、どういうことなのよ…

私たちは無くしてしまった未来、今となっては失った過去の勇者部4人なんですよ、夏凜さん

そう!そこでは私たちと春信くんがバーテックスと戦っていたんだよ!

わけがわからないわよ、何言ってんのよ、皆…

ふっふっふ、頭の固い夏凜はそうなるとわかってたわよ!だから一行で説明してあげるわ!

い、一行って…

「「「「かくかくしかじか」」」」

はー、そういうわけなんだ、最後の締めだから私を交えて5人でスペシャルトークとか…

便利な言葉だね、「かくかくしかじか」

まったくよ、頭の固い夏凜でもこれだけで説明終わっちゃうんだから、「ゆゆゆい」様様ね!

さっきから、私のこと頭が固いって…
あっちの風はそんなに面識ないんだから、その物言いはおかしいんじゃないの?

あ、スペシャルだからその辺は適当らしいわよ

適当にも程があるわよ!

アタシの女子力は時空をも超えるって設定にすれば納得いくかしら~?

いらないわよ、そんな設定!

でも懐かしいな~、あの戦いも

結局、三好さん以外誰も散華しなかったから、辛いイメージは無かったですねぇ

そのおかげで私はそのっちに会えなかったけどね

東郷さん、顔が笑ってるのになんか怖いよ…

そういえば、園子はどうしたのよ?6人じゃないのはなんで?

いろいろと理由があんのよ

理由って?

園子さんは…その…キャラが強いですから…

ああ、いろいろ持って行っちゃいそうよね…

あとは映画観た後で書いてるから、あんまり触れたくないんだって、作者さんが!

友奈も言うようになったわね…

実際、私も出そうか迷ったらしいんですが…

普通に出てるじゃない

あそこで戦った4人だし、友奈ちゃんがいるのに私がいないのはおかしいでしょ?

前半はともかく、後半の理由を自信満々に言うアンタが怖いわ、私は…

でもあっちの夏凜ちゃんも可愛かったなぁ!いかにもお兄ちゃん子って感じで!

はぁ?私がお兄ちゃん子ぉ?おかしいんじゃない?ソレ

でも、私たちのせいで傷ついた三好さんに付きっ切りで看病してましたよ?

ワンワン泣いてたもんねぇ~

え、どういうこと?私が兄貴をそんなに思ってるとか、信じられないんだけど…

あれ?夏凜ちゃんは春信くんの事嫌いなの?

嫌いも何も、なんとも思ってないわよ、今では

今では、という所がミソね

流石ね、東郷

ということは以前は三好さんに何らかの感情が…?

樹、期待させてるとこ悪いけど、あんまりいい感情は持ってなかったわよ

ほほう、それはどういうことなのか、言ったんさいよ、ホラ!

以前、どこかで誰かに話したんだけど(チラ)、兄貴って小さい頃から出来が良くてね
なにかと比べられてたっていうか…

わかります!出来のいい兄姉とかってコンプレックスになっちゃいますよね!

あっら~?樹は女子力高すぎるお姉ちゃんに嫉妬してたのかなぁ~?

え、いや…女子力に関してはそんなに…

なんでよ!?

女子力はともかく、私はお姉ちゃんが褒められてる事の方が誇らしかったから平気でしたけど

そこはお姉ちゃんみたいな女子力満点女子になりたいってカミングアウトするとこじゃないの?

まあまあ風先輩、先輩の女子力に関しては皆が同じような認識なんで置いておきましょう

うわ~、東郷にまで適当に流されてるわ、アタシ…

大丈夫です!先輩の女子力は食べたうどんの数だけ保証済みです!

友奈、アンタの慰めは相変わらず勢いだけね…

慰め?なにがですか?

いいわ…この話続けると夏凜と春信の話が進まないから

そうですね、で、夏凜ちゃんもコンプレックス持ってたの?春信さんに

そうね…兄貴は兄貴で私に気を使ってくれたりしてたんだけど
それが余計に惨めな気持ちにさせられたりね

へえ~、複雑なもんね、妹の心理って

そうなんだよ、もっと妹を知らなきゃダメだよ、お姉ちゃんは

な・ま・い・き・よ~

痛い痛い、頭グリグリしないで~

ふふっ、だからどっちかって言うと嫌いだと思ってた筈なんだけど、兄貴の事は

あら~

っていうか、出来の悪い妹を嫌ってるんだと思ってたから、あんまり話もしなくなってね
って、この話アンタたちにもしたんじゃなかったっけ?

したっけ?

どうでしょう?

どうかな?

どうだろう?

記憶の統合がホントにいい加減になってるわね…まあ、いいわ

ごめんね、夏凜ちゃん、ちゃんと覚えてなくって…

べ、別にアンタが悪いわけじゃないわよ!こっちの友奈達に話しただけなんだから!
とにかく、私は兄貴に嫌われてるし嫌いだと思ってたのよ

そうなんですか…

だって、ろくに努力するところも見せないのに、何でも出来て、両親は兄貴ばっか褒めるのよ
私はどれだけ頑張っても兄貴には追いつけなかったわ…
贔屓されてるって思った時期もあったくらいよ

ううう、辛い思いをしてたんだねぇ、夏凜や…

わざとらしい演技しなくていいから!
でも勇者部の皆と一緒にいたら、そんな事気にするのがバカらしくなって

そうそう、アンタはアンタなんだから、気にする必要なんてないって!

そうだよ!夏凜ちゃんは今のままでもすっごく凄いんだから!

そうね、すっごくすごいと思うわ

夏凜さんは頼りになる先輩です!

皆…でも、樹が教えてくれたのよ、兄貴は私のこと愛してくれてるって

私が、ですか?

そ、さっきの話をしたときにね
流石に「かなり愛されてる」ってのには抵抗あったけど
家族として妹の私を愛してくれてたのかなって

じゃあ、今では!

逆になんとも思ってないわよ、家族としては愛せると思うけど
だから私がそんなお兄ちゃん子になるとは到底思えないんだけど…

どこかで大きな分岐点があったという事でしょうか…

おおっ!東郷の分析力が発揮されそうね!

そもそも、男性である春信さんが勇者になったのは
妹の夏凜ちゃんを勇者にしたくなかったからと言ってましたし

へえ、そっちの兄貴はそんな事まで話してたんだ…

春信くん、満開と散華の事を知った上で勇者になったって言ってたもんね!

え?そんな事まで知っててなんでエリートの兄貴がわざわざ勇者に?

だから言ってるじゃない、夏凜の為だって
アタシだって最初から知ってたら樹を勇者になんてしなかったわよ

お姉ちゃんは私に甘すぎだよ…

まあ、なった後だし、皆でちゃんと話したから全員で春信を支えるって決めたんだけどね

そっちはそっちで大変だったみたいね…

こっちと違って満開と散華は全部、三好さんが被ってくれてたんですけどね

ひとりで?それって…

そうなんだよ、こっちの私たちの散華と同じ順で欠損していったから

同じって言うと

あ、満開と散華は順番が違うから気をつけてね

なにげに風がメタな発言してくるわね…
ええと、散華だと最初に風の左目か

そうそう

次は東郷の左耳だっけ?

そうね

次が友奈の味覚か

そうだね!

それで樹の声だったわね

ですね

で、次が私の…

あ、次は無いのよ

え?無いって?

なんだかわからないけど、春信が声を失った後で例の「かくかくしかじか」がおきたから

なるほど、それで一旦リセット、今の私たちの時間に繋がっていくわけね

あの戦いも、アタシたちが一緒に戦うって言ってるのに、一人でやろうとしてたわよねぇ…

せっかく東郷先輩がピンチを助けたのに、いきなり満開しちゃったもんね

あのドリル、カッコ良かったなぁ…

ドリル?兄貴は勇者として戦ってたんじゃなかったの?!

そうよ?

満開したらドリルが着いてたって事?

いいえ、満開した姿は夏凜ちゃんそっくりだったわ

白装束は男性用って感じでしたけどね

それが何でドリル…

装備が同じでも、戦い方は人それぞれって事じゃないかしら?
もちろん夏凜と同じような戦い方もしてたわよ

それってやっぱり兄貴の方が私より優秀だって事じゃない…悔しいわね

そ、そんなことないよ!夏凜ちゃんもカッコ良かったよ!

あ~、カッコ良かったって言えば…

あれは…友奈さん以外にはどう見えてたんですかねぇ…

それを私たちの口で語るのは…

え?どういうこと?カッコ良かったって友奈オンリーの感想なの?

友奈さんは、ホラ、初陣で迷い無く「勇者パンチ」って叫べるタイプですから

さすがのアタシもアレは…ねぇ?

アレは、友奈ちゃんだからいいんです!カッコいいんです!

で、春信は?

バカみたいでしたね

言っちゃった…

実際、私たち3人の意見は一致してましたから、あの時点で

え?一致って?

「「「バカみたいに叫ぶと強くなる」」」

なによそれ!?

実際そうだったのよ、春信の戦い方って

ほとんど叫びっぱなしだったから分りにくかったですけど…

叫ばない時の力ってそれほどでも無かったみたい、夏凜ちゃんの数割って感じかしら?

え?そうだったんだ?私気付かなかったよ!

まあ、友奈は周りを見てても分析するタイプじゃないから、何となく想像つくけど…

だから、勇者としてはやっぱり夏凜のほうが優秀なんじゃないの?よく分んないけど!

そっか…それならまあ…いいか…
それにしても

ん?

バカみたいに叫んで戦う兄貴って全然想像つかないんだけど

そこらへんも謎なのよね、話に聞く春信って大赦のエリートらしいし

とてもそうは見えませんでしたね

部室に来た時も、初めはおかしなツッコミのお兄さんって感じでしたし

あんなに若いのにエリートって凄いよね!

友奈の意見は参考にならないって事は良くわかったわ

酷いっ!

大体、春信っていつから大赦に勤めてたのよ?

知らないわ

知らないって…お兄さんなのにですか?

さっき言ったみたいに、色々あったから…
家で話さなくなって、顔も合わせなくなって、気付いたら家にいなくて

既に大赦に勤めてた、ということね

だから両親は門出を祝うとかしてたかもしれないけど、私は全然知らなかったわ

冷めた家庭ねー

私自身、勇者の適性がわかってからは自分を鍛える事に専念してたし
選抜で選ばれるまでは、兄貴の事考える余裕なんてなかったもの

選ばれたら春信くんの事、考えたんだ!

っていうか、偶然会ったのよ、大赦で

運命の出会いだね!

そんな大袈裟なもんじゃないわよ
私が大赦内で本格的な勇者の訓練と教育を受ける為に来た時に会ったってだけ
それ以降はまた2年くらい会わなかったし

ええっ?家族なのに?

随分厳しい環境だったんですね…

まあ、厳しいのは確かだったけど、別に家族と会わないこと自体なんとも思ってなかったから

尖ったナイフみたいになるわけだわ、コレは…

誰の事よ、それは

その頃から春信さんってエリートだったの?

どうかしら?大赦に務めるってだけでもエリート扱いされてる気はしてたし、あ、でも

なになに?

次にあったときは雰囲気変わってたわね

次って2年後?

そう、なんか…シュッとしてたわ

シュッですか…?

へえ、カッコ良くなってたんだね!

よく今の言葉だけでわかったわね…

カッコ良くかどうかはわかんないけど、少し痩せた感じだったわ

以前はポッチャリさんだったんだね!

ふふ、そうね、あの時期だけだったんじゃないかしら
兄貴をデブ男と言っても違和感なかったのは

そ、それはもうポッチャリさんの域を超えてしまっているような…

…?

どうしたの?東郷さん、何か気になる事でもあった?

ええ、なんだかその時期で大赦勤めの若い太った男性というところになにか引っかかって…

えらくピンポイントね…

その時期って東郷先輩は園子さんと一緒に勇者やってたんじゃないですか?

だったら、東郷も会ってたのかもしれないわね、春信に!

でも、全くその情景が思い浮かばないんです、記憶がまだ戻っていない部分なのかしら?

なのに兄貴の特徴には引っかかるの?おかしな話ね

まあ今のアタシたちの記憶自体が色々混合状態だからホントに知ってる事かもわかんないしね!

それもそうですね、気にするのは()めておきましょう

アッサリしてるわね

春信さんのことですから

あー、春信のことじゃしょうがないわね

三好さんの事ですしね

ん?ん?ん?

どうなってんの?友奈以外、兄貴の事に関心薄すぎない?

だって…ねえ?

兄貴って、結構学校とかでモテてるって聞いた気がするんだけど…

え~?アレが~?

ま、まあ顔立ちは綺麗かなとは思いますけど…

アタシは勘弁だわ、あのノリは友達としては楽しそうだけど

私もまるで気になりませんでしたね

東郷は…まあ何となくわかるけど、友奈は?

私も春信くんみたいな友達、いいと思うよ!

完全に対象外、と…樹?

あ~、私みたいなのがそんな贅沢な話するのは…

いいから率直な意見を言ってみなさい、例えば、デートに誘われていたと想像して!

ごめんなさい

決定ね、兄貴には男性としての魅力に欠けているわ、少なくともこのメンバーの中では!

春信さん自身、私たちを子ども扱いしている所がありましたしね

なのに夏凜ちゃんにはベッタリだったよね!

そういえばそうね、夏凜の事になるとバカさを増してアホみたいに乗ってきてたわ

どういうことなのよ…

それだけ愛されてたってことですよ、夏凜さんは

そういえば、デートもしてたんじゃなかったっけ?

誰が?!って兄貴がか、誰とよ?

アンタよ、夏凜

わっ、私とぉ~?!

さすがに内容までは知らないけど…

知ってたら怖いわよ!

最後の戦いの前には春信さん、もう一度デートする約束もしてたらしいです

なによ、その死亡フラグ…
っていうか、なんで実の兄妹でデートとかしてんのよ!

仮想デートだってあっちの夏凜ちゃんは言ってたよ!

え?友奈、連絡とってたの?あっちの夏凜と?

なによ、連絡くらいとっててもおかしくないでしょ、私と友奈なんだから

いや、あっちのアンタって春信にベッタリで

傷だらけの三好さん見て、私たちが近寄るのも許してくれなかったんです…

え?そうなの?

その上、目を覚ました時には「アンタ達が頼りないから兄貴が寝込んでるんでしょ!」って

厳しい意見でしたね、実際その時には春信さん、3つの欠損を抱えてたんですし

そ、それはあっちの私がご迷惑を…

でも、友奈さんがその場を治めてくれたんですよ

え?そうだっけ?

そうね、その後の友奈と夏凜のやりとり見て、春信が大笑いして…
大赦の(いか)ついオッちゃんが来るまでずっと笑ってたわね

ずっと大笑い…あの兄貴が…

その流れで連絡先聞いたんだよ、夏凜ちゃんの

あの流れで、ですか…

凄いわね、このコミュ力…

さすがは友奈ちゃん!

で、仮想デートだってあっちの私が言ってたの?

うん、えーと、
「兄貴が休日なのに一緒に出かけるガールフレンドの一人もいないって
泣きついてくるもんだから、仕方なく仮想デートに付き合ってあげんのよ」
って話だったよ!

兄貴が私に泣きついて?ますますイメージ湧かないわ…

さっき言った大きな分岐点の話なんだけど…

お、なんか思いついた?東郷!

ひょっとして、分岐自体は春信さんが勇者になったかどうかだけで
大きな違いってないんじゃないかと…

でも私の思ってる兄貴とあんた達の話してる兄貴って大分違うわよ?

そう、それが大きな間違いなんじゃないかしら?

それってどういうことなの?東郷さん

勇者になったかどうかだけで人間の本質が変わるとは思えない
そもそも、春信さんは私たちと出会った時点で自分を演じているような感じだったわ

演じてるって?

ああ、わざとアタシたちに嫌われようとしてたのよ、最初は

なんでそんな事を?!

私たちを戦いから遠ざける為だったみたいです、だから三好さん一人で満開して…

それで、12体のバーテックスを倒した後、勇者部の合宿をしたでしょ?

ああ、そっちでもやったんだ、アレ

その時に春信くんも参加してたんだよ!

女子中学生の合宿に兄貴が?!

三好さんは特別顧問って名目でしたけどね

あの時は緩みまくってたわね~、こっちの夏凜くらい楽しんでたわ

あの兄貴が…

今思うと、あの時は私たちが一旦端末を返していた時期ですし
私たちは戦いも終わったと思ってましたから

ああ、アタシたちに嫌われる必要もなくなったって安心してたわけね

ええ、だからアレが春信さんの本来の姿なんじゃないかと…

だとしたら相当愉快なお兄さんですね…

最後まで楽しい合宿だったもんね!

アンタ、ハリセン受けてもそれを言えるんだから大したもんよ

ハリセン?なにそれ?

合宿の最後にやったレクリエーションなんですけど…

あれは今でも私は許していません!

みんなで小芝居やって、最後のオチで春信が友奈をハリセンでどつくっていう…

なにそれ?わけわかんないわよ!

あいつ自身、何かを再現したかっただけとか訳のわかんない事、言ってたから…

そんな事で友奈ちゃんの頭を叩くなんて、ありえません!

そ、それはウチの兄がとんだ粗相(そそう)しまして…

東郷、興奮しないで、今はそういう話してんじゃないから…

はっ、そうでした、要は春信さんの本質はそういう人だって事で
今は立場があるから自分を出せないだけなのかもっていう話なのよ

そういうものなのかしら?

きっと今でも勇者になれるなら愉快なお兄さんやってるわよ、あの『仮面の赤い勇者』みたいに

えっ?その記憶は共有してんの?あんた達!

スペシャルトークだからね!

もう無茶苦茶ね…

実際、あの勇者の正体は私たちには大体見当がついているんだけど…

私にだって大体わかってるわよ

あ、そうなんですね?

ええ、若葉たちの時代にも『三好春信』って人がいて、『仮面の赤い勇者』をやってた

ふむふむ、なるほど~

そんで色々やらかしちゃって、ひなたにはトラウマ植えつけてる

アレはなんなんだろうねぇ…

ひなたさんほど落ち着かれた方があんなになるんですからね…

問題はなんで兄貴と同姓同名なのかってとこだけね、多分偶然なんだろうけど

そうね、きっと偶然ね

そうそう、偶然よね~

偶然に違いないです!

偶然だよね、多分!

妙に言い方に引っかかるんだけど…

気にする必要は無いわよ、どうせここの会話はスペシャル!

そうです、無かった事にされちゃうんですから!

え!?そうなの?

だって、私たちが春信さんのこと、夏凜ちゃんに語るなんておかしいでしょ?

そ、それはそうだけど

でも楽しかったね!色々と話せて!

そうね、どの時空でも友奈達は友奈達なんだってわかったわ…

お兄さんと作者さんの挨拶は本文で終わってるから、ここはアタシたちで締めるわよ!

最後までメタでいくのね、風は…

みんな!いっくよー!

「「「「「「皆!今まで読んでくれてありがとう!また会う日までサヨナラ!」」」」」~」

あれ?一人多くない?今の

みんな酷いよ~私だけのけ者にして~

園子?!

<お・し・ま・い>


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17話 名誉勇者

大赦は常に勇者たちを見守り、監視している
そう、それが例え神樹様の中の世界であっても
これはそんなお話。。。


放課後、勇者部部室へ向かう夏凜

 

(部屋の明かりついてる?風がもう来てるのかしら)

 

「早いわね、今日は部長会議じゃなかったの?」

 

「いや、今日は会議の予定はないが?」

 

「え?」

 

「久し振りだな、夏凜」

 

思いもしない声が返ってきたことに驚く夏凜

 

「あ…兄貴!なんで部室に?!」

 

そう夏凜の兄、春信である

 

「大赦の命令でな、勇者部の皆さんや名誉勇者の方々にご挨拶することになった」

 

「名誉…勇者ぁ?」

 

「ひゃっほぉ~い!こんちわぁ~っす!あれ?夏凜さん、その人は?」

 

「あ、銀」

 

「園子もいるんだぜ~!」

 

「銀もそのっちも、もう少し落ち着いて入りなさい…」

 

小学生組3人の入室に一瞬、春信の顔がほころぶが

すぐに表情を引き締め(うやうや)しく挨拶する

 

「これはこれは三ノ輪(みのわ)(ぎん)様、乃木(のぎ)園子(そのこ)様、鷲尾(わしお)須美(すみ)様、始めまして

(わたくし)は大赦から参りました、三好夏凜の兄、春信と申します

以後お見知りおきを」

 

「三ノ輪銀…さまぁ?」

 

「私も様付けだよ~!」

 

「あの…なぜ私たちのような子供に大人のお兄さんが様付けを?」

 

「お三方は先代勇者、我々大赦の者は代々の勇者様を名誉勇者として祀り上げておりますので」

 

「はぁ…」

 

「現在も勇者でいられる皆さんには違和感もあるかと思いますが。。。

これも慣習と思い諦めてください」

 

肩をすぼめ、にこやかに話す春信の雰囲気になんとなく反論しにくくなった3人は

もう一つ気になった話題に切り込む

 

「で、夏凜さんのお兄さんで大赦の人って?」

 

「はい、私、こう見えて大赦で色々な仕事を任される立場でして」

 

「重役、という事でしょうか?」

 

「そう呼ばれる事もありますね」

 

「へえ~、若いのに凄いんだね~、お兄さん」

 

「もーっと若い頃から、嫌味なくらい出来る兄貴よ」

 

「夏凜、そういう言い方は()めてくれ」

 

「ふん!」

 

「あらら~」

 

「お恥ずかしい

あまり兄妹仲が良い方ではないもので。。。」

 

「まあまあ、ケンカするほど仲がいいって言うじゃないっすか!」

 

「それが、ケンカするほど近くにいる機会も少ないもので」

 

「え、そうなんですか?」

 

「ええ、こうして顔を合わせるのなんて、何ヶ月ぶりか忘れちゃいそうなくらいよ」

 

「仕事にかまけて、妹に構ってやる事もできなかったんですよ」

 

「べ、別に構って欲しかった事なんてないから!」

 

恥ずかしそうに顔を背ける夏凜の背にまた声が聞こえた

 

「こんにちは~!結城友奈、ただいま参上しました~!」

 

「園子もいるんだぜ~!」

 

「こんにちは、あら?」

 

結城友奈、中学生園子、東郷美森である

 

「やあ、こんにちは、友奈さん、東郷さん

園子嬢、小学生の園子様と同じ入り方でしたよ、いま」

 

「あちゃ~!先にやられちゃってたか~!」

 

「後先以前に小学生と同じ行動って事を気にしてください。。。」

 

「まったくよ、そのっち」

 

「え?あれ?え~と…」

 

「ああ、友奈さんとは初顔合わせでしたね、私は夏凜の兄、春信です」

 

「ああ~っ!噂のお兄さん!」

 

「ははは、何か噂になるような事がありましたか」

 

「こないだのビデオレターの件とか、色々と」

 

「その節はどうも、皆さんの思いのこもったビデオレター、大切にしまってありますよ

私の送った秘蔵の映像集の方は、楽しんでいただけましたか?」

 

「あれ、夏凜ちゃんがすぐに止めちゃって、全部はまだ見てないんですよぉ!」

 

「おやおや、意地悪はいけないな、夏凜」

 

「ば、バカ言ってんじゃないわよ!

あんな子供の頃の恥ずかしい映像、見せられる訳ないでしょ!」

 

「ええー、すっごく可愛かったのにぃ」

 

「そうね、すっごく可愛かったわ」

 

「そうだよ~すっごく可愛かったよ~」

 

「ほほう、それはぜひ観てみたいですな」

 

「私も観たいよ~」

 

「私も…可愛い夏凜さんって興味あるかも…」

 

「あ、でも今の夏凜ちゃんも可愛いんだけどね!」

 

「バカバカバカ!何言っちゃってんのよ!友奈は!」

 

皆で騒いでいると更に後ろから声がかかる

 

「こんにちは~、今日はなんだか賑やかですね」

 

「やあ、こんにちは、ここでは始めましてかな?樹さん、夏凜の兄、春信です」

 

「あ!お噂の!」

 

「はは。。。あの件はよほど勇者部の皆さんの印象に残ってらっしゃるようだ」

 

「そりゃー、夏凜ちゃんを連れて行くのかと皆思いましたから!」

 

「そんな文面を送ったつもりではなかったのですが。。。ご心配を掛けて申し訳な。。。」

 

「ああーっ!春信だ!!」

 

春信の謝罪をぶった切るように挟まれた叫び声の主は球子だった

 

「タマっち先輩、その事は秘密だって…ああっ!」

 

(あん)ちゃん、どうしたの?…って、ああ~っ!!」

 

「三人とも何を騒いでいるんだ?入り口で突っ立ってないで…あああっ!!!」

 

「乃木さんまで何大声出してるの、恥ずかしい…ってあなたっ!?」

 

「おお、これは西暦の勇者の皆さん、はじ。。。」

 

「春信!」「三好さん!」「春信くん!」「春信!」「三好…っ!」

 

「はい?」

 

「なんでお前がここにいるんだ?!」

 

「はい?」

 

「いきなりこんな所に来て、他の皆さんにどう説明するつもりなんです?!」

 

「はい?」

 

「久し振りだね!元気にしてた?!」

 

「は、はい」

 

「やっぱりお前もこの時代に召喚されてたのか?!」

 

「はい?」

 

「よくも恥ずかしげもなく顔を出せたわね…」

 

「はい?」

 

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!」

 

口々に話す丸亀組の勇者たちに夏凜が割って入る

 

「か、夏凜、どうした?」

 

「皆こそどうしたのよ?兄貴のこと知ってるみたいに…」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「と言うと…この男性が以前話していた御令兄…」

 

「いえいえ、そんな大した者ではありませんよ」

 

「夏凜の兄貴…」

 

「はい」

 

「お兄さん…」

 

「はい」

 

「え?でも?」

 

「はい?」

 

「こいつは『三好春信』じゃ…」

 

「はい、そうですよ」

 

「「「「「やっぱり!!」」」」」

 

「だから!『三好春信』ってのはウチの兄貴の名前なのよ!」

 

「「「「「ええっ?!」」」」」

 

もう何度目かの驚きかも分らなくなった5人は円陣を組んでヒソヒソ話を始める

 

「どういうことだ?」

 

「春信なのに夏凜の兄貴だって?」

 

「三好さんがお兄さんの振りとしているという事でしょうか?」

 

「なるほど!それなら!」

 

「伊予島さん、高嶋さん、いくらなんでもそれは無理があると思うわ…」

 

「うむ、私も流石にそれはないと思う」

 

「じゃあ、一体何なんだ?アイツは?」

 

「他人の空似…でしょうか?」

 

「そんな事ってあるの?」

 

「それを高嶋さんが言うのはどうかとも思うけど…」

 

「「「あ」」」

 

千景の言葉に、4人は高嶋友奈を見た後

5人で結城友奈の顔を見る

 

「ん?」

 

不思議そうに首をかしげる結城友奈を見るとまた顔を見合わせ

 

「あはは、どういうことかはわからないけど…」

 

「結城と友奈のこともハッキリしないままだしな…」

 

「タマも深く考えるのは苦手だ…」

 

「そういう問題じゃないけど、ここは…」

 

「そういう事にしていた方が良さそうね…」

 

頷きあい、円陣を解いた5人は改めて春信に向かい話しかける

 

「し、失礼した、少し知人に似ていたものでな」

 

「いえいえ、気になさらないで下さい」

 

「少しじゃなかったけどな」

 

「ほう、そんなに似た方がいらっしゃいましたか」

 

「その方は三好さんほど落ち着かれた方でもなかったですけどね」

 

「ははは、私もそうそう落ち着いた男でもないんですがね」

 

「いいえ、その男はそういうレベルの奴じゃなかったから…」

 

「そ、そうなんですか。。。」

 

「でも本当に似てるね!名前まで同じだし!」

 

「ふふふ、それは私も同じ思いですよ」

 

「えっ?」

 

「結城友奈さんと高嶋友奈様。。。話には聞いていましたが、これほどそっくりとは。。。」

 

「あぁ~、それは私もビックリしたかな、ははは」

 

「正直、服装と髪飾り以外で見分けられる自信がありません」

 

「海に行ったときはおそろいの水着も着たんだよ!」

 

「そ、それではますます周りは見分けが付かなくなったのでは。。。」

 

「あ、でもね!東郷さんとぐんちゃんは私達の事、ちゃんと見分けられるんですよ!」

 

「それも顔も見ずにだよ!」

 

「それは凄い、さすが親友同士ですね」

 

「おっと、紹介が遅れたな、我々は…」

 

「存じ上げておりますよ、乃木家初代勇者、乃木(のぎ)若葉(わかば)様」

 

「うむ」

 

土居(どい)球子(たまこ)様」

 

「おう!」

 

伊予島(いよしま)(あんず)様」

 

「は、はい!」

 

高嶋(たかしま)友奈(ゆうな)様」

 

「うん!」

 

(こおり)千景(ちかげ)様」

 

「ええ」

 

「そして」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「北海道の勇者、秋原(あきはら)雪花(せっか)様」

 

「ちーっす」

 

「諏訪の勇者、白鳥(しらとり)歌野(うたの)様」

 

「はい!」

 

「沖縄の勇者、古波蔵(こはぐら)(なつめ)様」

 

「うん」

 

「3人ともいつの間にいたんだ?」

 

「結構最初の頃からいたわよ」

 

「but、誰も気付いてくれなくって」

 

「黙っていたらどんどん騒ぎが大きくなっていたんだ…」

 

「は、ははは…」

 

申し訳なさそうに笑う5人に

 

「気にしなくていいわよ、なかなかに面白いコントだったから」

 

「そうね、アバンギャルドな5人が見れたわ!」

 

「退屈はしなかった。しかし…」

 

棗の視線が春信へ向く

 

「はい?」

 

「なぜ夏凜の兄が我々の名に様を付けるのだ?」

 

「大赦の方たちは過去の勇者を名誉勇者として祀り上げてるからだそうですよ」

 

「私たちも様付けだよ~」

 

「なんか、こそばゆいけどな」

 

「この神樹様の中の世界では皆さん現役ですから、違和感もあるかと思いますが。。。」

 

「私は気にしないかなー、イケメンに様付けされるのは悪い気しないわ」

 

「イケメンって、雪花、ウチの兄貴に…」

 

「いいじゃない、兄妹揃って美形ってことで」

 

「ははは、美少女ぞろいの勇者様にそう言われると照れますね」

 

まるで照れた様子も見せず、春信が笑う

 

「そういう事をさらっと言える上に嫌味も臭さもないのが

イケメンのイケメンたる所以(ゆえん)よねー」

 

「ふっ、雪花はこういう男性が好みなのか?」

 

「え?いや好みって程の事はないけど…

アレ?若葉たちはイケメンだと思わない?この人」

 

「あー…」

 

お互いの顔を見合わせた上でなんとなくまた円陣を組む5人

 

「どう思う?」

 

「タマにはよく分からん…」

 

「そう言われれば顔立ちは綺麗な(かた)かも知れませんが…」

 

「物言いも立ち振る舞いも落ち着いてるしね…」

 

「ただ…あの男に似すぎているわ…」

 

「名前まで同じだしな」

 

「タマには見分けがつかないぞ…」

 

「私も同一人物にしか見えません…」

 

「これだけ似てればねぇ」

 

「あの男の言動が頭にチラつくわ」

 

また5人で春信の顔を見る

 

「?」

 

少しぎこちなく笑い、手を振る春信

5人はまた顔を見合わせ

 

「私は無理だ」

 

「タマも」

 

「同じく…」

 

「あははは…」

 

「決まりね…」

 

また頷き合うと円陣を解き、代表するように若葉が答える

 

「すまん!三好春信!我々には君の魅力は分らん!」

 

「若葉ちゃん!」

 

「言い方を考えて下さい!若葉さん!」

 

「タマでも、もっと気を使うぞ!」

 

「酷い人ね…乃木さんは…」

 

「え?え?え?え?」

 

4人に一気に突っ込まれ、戸惑う若葉

春信はさらに顔を引きつらせて笑っていた

 

「は、は、ははは。。。」

 

「兄貴も、若葉たちにかかっちゃ形無しね」

 

「ま、まあ仕方ないさ、こっちは初対面だし

どうやらその『春信さん』って人の印象が強い様だし。。。」

 

「by the way ところで…

お兄さんはなぜこのタイミングで勇者部へ?

どうやら私たちとこの世界の事情も知ってるみたいだけど」

 

「え、ええ、実は。。。

こちらの世界の大赦でも巫女が神託を受けてはいたんです」

 

「なるほど、開放されているのは一部とはいえ

大赦ごとこっちに取り込まれたなら巫女もいるのは当然ですね」

 

「だから、割と早い時期にこの世界の事情はわかっていたんですが」

 

「何か問題でもあったのか?」

 

「皆さんに自覚はないでしょうが。。。

ここに集まった方たちは名誉勇者ばかり、英雄の集いです」

 

「そうなのか?タマたちはあっちでも結構祭り上げられてたからな」

 

「その比ではありません、もちろん大赦内に限ったことですが。。。」

 

「大社内だけとは?」

 

「この時代、バーテックスと勇者の存在は大赦以外には伏せられております」

 

「そういうことね…」

 

「その反動か、大赦内では過去の勇者を英霊として扱い。。。ある意味腫れ物扱いですね」

 

「なんか急に嬉しくない表現が…」

 

「申し訳ありません、大赦の上層部ではもし無礼があってはと恐れる者もいるもので」

 

「別に怖くないのになー」

 

「そうですね、こうして会ってみれば分るんでしょうが。。。

立場のある老人たちにそれを望むのは酷でしょう」

 

「あ、それで若いお兄さんに?」

 

「ええ、歳が近ければという以外にも

もし無礼をはたらいたら若気の至りと私を切る事もできますしね」

 

「尻尾きりですか…」

 

「困ったものです」

 

「兄貴はそれに怒らなかったの?!」

 

「皆さんに会えるのは光栄な事だしな、怒って事を荒立てる理由もないし」

 

「その扱いは気にしてもいいじゃない!」

 

「組織ってのはなかなか道理ばかりが通せるものでもないのさ」

 

「む~っ!」

 

「ありがとう、夏凜」

 

「なにがよ!」

 

「私のために怒ってくれてるんだろう?」

 

「べっ、別に兄貴の為じゃないわよ!大赦のそういうとこが気に入らないってのよ!」

 

「ふふふっ、そうだな、そういうところは変えていかなくてはいけないな。。。

まあとにかく、香川もほとんど解放されたこの状況で放置するわけにもいかず

名誉勇者の皆さんにご無礼のない様、大赦を代表してご挨拶に伺ったわけです」

 

「大赦の代表か、そう考えるとすごい話だね、夏凜ちゃん!」

 

「そう?私にとっては身内が参観に来たみたいで居心地悪いだけだけど」

 

「もう、夏凜ちゃんたら、お兄さんにそんな風に言うもんじゃないわよ」

 

「そうですよ、それに思ってた以上に若くてビックリしました!」

 

「ははは、大赦内だと若さだけが取り得ですよ」

 

「確かに若いよね~始めて会ったときっていくつだったっけ~?ハルルン」

 

ハルルン…?

微妙な空気が部室内に流れる中、中学生園子の言葉が続く

 

「そういえば、わかちゃんたちと話してるの見てて思い出したんだけど~、仮面の赤い…」

 

スパーン!

 

どこから出したのか、春信は大きなハリセンで園子の顔面をすっぱ抜いていた

 

「あははは、『園子様』いきなりどうしたんですかー?顔が赤いですよー?」

 

「い、痛いよハルルン、ただ赤い勇者のはなs…」

 

スパパーン!

 

「だいじょうぶですかー!『園子様』ぁっ?!」

 

「は、春信さん!そのっちに何するんですかっ!?」

 

「はっ!わ、私は一体なにを。。。」

 

わざとらしくうろたえる春信の背にまた別の入室者3人の声が

 

「みんなどーしたのよ、今日は特に騒がしいわね、廊下まで響いてたわよ」

 

「あ、風先輩、夏凜ちゃんのお兄さんですよ!」

 

「え?なになに…」

 

「うたのん…なにかあったの?」

 

「みーちゃん!会議は終わった?」

 

「うん!って言っても風さんについてっただけだけど…」

 

「若葉ちゃ~ん、長い時間離れ離れで寂しかったです~慰めて下さい~」

 

「ほんの小1時間だろう、何を甘えてるんだ、ひなたは」

 

「小1時間も若葉ちゃんと別れているなんて、拷問以外の何ものでも…」

 

それぞれの会話を(つんざ)く悲鳴が遮った

 

「きエエエエえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇっぇぇぇぇぇっ!!!」

 

若葉も今まで見たこともないような綺麗な飛び蹴りで春信に飛び掛るひなた

そのままマウントポジションで殴りかかるひなたを

勇者全員で傷つけないよう春信から離すのにまた小1時間かかったという

 

「ちがっ!違うんだ!ひなた!この人は春信では!いや、春信だが我々の知ってる春信では!」

 

「え?なに?いきなりどうしたの?!ひなた?」

 

「おお~う、デストロイ…」

 

「ひなたさん!ヤバイっす!その位置からその拳は本気でヤバイっすよ!」

 

その間、様々な声が校舎内に響き渡ったが

勇者部のことなのであまり誰も気にしなかったため

大事(おおごと)にはならなかったのは幸いといっていいのだろう・・・か?

 




春信(以下略):大事(おおごと)ですよ。。。

mototwo(以下略):あ、春信、顔中ボッコボコだなw

酷い目に遭いました

そのキャラ続けるのか?

キャラも何も、私は仕事の時は普段からこうですよ?

ここでは勇者としての仕事をしてもらいたいもんだが

勇者?なにかここでやる事がありましたか?

ツッコミに決まってんだろ

ははは、そういうキャラではありませんから、私は

俺が言うのもなんだが…
気持ち悪いな、この春信

これは手厳しい

大体、何しに勇者部に行ったんだ?

おや?設定説明は次回以降というのがここの慣習なのでは?

こんな後書きに書いてもいいようなコント、次回まで引っ張れるか…

私のまともな登場をコントとはまた酷い
本文でも話したでしょう?大赦からの命令ですよ

勇者たちに挨拶に来たって?適当な言い訳じゃなかったのか、アレ

私だって悩みましたよ、若葉様たちの前にこの顔でどう接すればいいのか。。。

誰がどう見ても同一人物だからな

っていうか、本人なんですけどね。。。
だから開き直って、まるっきり知らない振りをしようと思ったんですよ

で、他人だって強調したくてそのキャラ作りか?

別にキャラを作ってるわけじゃないですよ
私は本当に普段の仕事ではこうなんですから

それが素とも思えんがな…

友奈さんと高嶋様がいなければ、この策も思いつかなかったでしょう

あの二人も普通に見たら双子か同一人物にしか見えんからなぁ…

私が過去に行った時も、何らかの方法で友奈さんも過去で戦っているものと。。。

だからってあの反応はバカそのものだったけどなw

仕方ないでしょう。。。いまだに東郷さんと郡様以外は見分けが付かないんですし

お前に見分けられるわけがないか

お恥ずかしい話ですが
しかし。。。

ん?

私、妹に会ってしまいましたが、良かったんですか?

会いたくなかったのか?

そんな訳ないでしょう
ただ、公式では延々会わない状態で引き伸ばされてるようですし。。。

どうせゲームの世界は事態が終結したら皆記憶消されて各時代に戻っちまうだろ

ああ、私が西暦に行った時と同じように考えてるんですか

だから、割と好き勝手やっても大丈夫なんじゃないかなと

納得です

そういや、千景の事はどうしてるんだ?

どう。。。とは?

郡の名は大赦内では抹消されてるはずだろ?

どうもしませんよ、私にとっては郡様も勇者ですから

一瞬言いよどんだくせに

気付かれましたか

ホントに一瞬だったから誰も気にしなかったみたいだけどな

皆に気づかれなかったなら僥倖(ぎょうこう)です

実際、大赦内ではどうなんだよ?
知らない名前の勇者が戦ってんだぞ

割と皆、気にしない振りしてますね
大赦の隠蔽気質(いんぺいきしつ)は今に始まった事でもないですし
秋原様の名も大赦の記録にはありませんから

何か過去にあったんだろうなぁ、ぐらいには思ってるか

神樹様のお告げも明確な言葉ではないですし

ハッキリした事は神託受けた巫女にもわからんってか

現時点では勇者たちを全力でサポートする事に専念していますしね

その割には挨拶は遅れたし、中途半端な重役よこしたけどな

これでも気を使ったつもりなんですよ、あっちでは

少女たちには伝わらん気遣いだろうな、きっと

誤解を生むのも当然でしょうが。。。
そこは私がフォローするしかないでしょうね、今のところは

大体、サポートって何に全力注ぐんだよ?

無論、勇者たちが普段どおりの生活を送れるように、ですよ

戦闘については…

我々は樹海化されれば何もできませんから。。。

そりゃそうか、部室にいる園子たち以外は皆、時間停止で保護されてるんだろうしな

システムのバージョンアップまで神樹様がされるんですから
戦闘における我々の仕事はほとんどありませんよ

また歯痒い状況だな

私個人としてはいつでも仮面の赤い勇者として出撃できるよう待機していますがね

仕事中にいきなりいなくなったことにならんの?それって

ああ、それも神樹様が皆の認識を誤魔化してくれてるようですよ

そっか、友奈達も授業中にいきなり戦闘始まる可能性もあるんだしな

普段どおりの生活というのも、この神樹様の中の世界の重要なファクターですから

でも結局、挨拶しに行って殴られただけだったな、お前

いくらなんでもアレは酷いと思います。。。

ひなたに悪意がないのが救いだな!

悪意どころか意識もないまま殴られてたように見えましたが。。。

ひなたの中ではなかった事になってるわけだ!

どんどん悪化してませんか?上里様の症状。。。

おかげでボロ出す前に退散できて良かったじゃないか

園子嬢にも困ったものです

察しはいいのに空気読まんときあるからな、あの子は

もう少し銀様や歌野様ともお話したかったですが。。。

話してたらきっと、知らん間に泣いてるぞ、お前

それは。。。

ないとも言いきれんだろ

まあ、確かに。。。

今回の件でいつ部室に行っても不自然ではないだろうから、行こうと思えば行けるだろ

そうですね、水都様にも声ぐらいはおかけしたいです
あ、そういえば。。。

ん?

歌野様は私を見ても何も気づかれなかったようですが
畑仕事を手伝った事って忘れられたんでしょうか。。。?

どうなんだろ?忙しい中で2年前に一回会っただけだし
顔はボンヤリとしか覚えてないって可能性もあるが

それ以外にも可能性が?

そもそも西暦の勇者たちに会ったのは『別の春信』だからな
歌野たちとは春信として出会ってない可能性もある

勇者としてだけ?でもあの時点で歌野様には共闘の記憶がないとも言われましたが

諏訪に行ったのかどうかもハッキリしないわけだな

一体、どこに何しに行ったんでしょうねぇ、『別の春信』さん。。。

まあ、その辺はおいおい

何か書く気で?

いや、そういうわけでもないというか、書き溜めてる分も吐き出すかどうか悩んでるし

随分と弱気ですね、まだ書き上がりそうにないといったところですか

ま、ね

早くしないと『勇者の章』が始まってしまいますよ?

もう、『勇者の章』観終わってから各部分に修正入れてあげても良いんだけどな

芽吹(めぶき)さんたちも大丈夫なんでしょうか。。。

気にしてんならなんとかしろよ、重役

実は第1回の調査前にゴールドタワーには顔を出したんですよ
あのスペックで壁外調査なんて無謀すぎるって

それで?

仮面の女性神官にあしらわれて終わりです

情けないな、重役様は

そうは言いますけど、あの女性神官、なかなかに手強いですよ

お前がネゴシエイトで成功してるとこなんて見たことないけどな

というかあの方、口調は丁寧なのに私の話まるで聞く気ないって態度なんですから

ほう?

なんだか苦手な匂いがします、あの人

つーか俺、『くめゆ』は公式に上がってる各話のさわりしか読んでないし

この話されても困りますか

今は正直なとこな…

書籍で発売されるまでは触れない方針で行くわけですね

さわり程度なら触れてもいいかも知れんが

中学生にさわりで触れるってなにかいやらしいですね

お、下ネタか
調子戻ってきたんじゃねえか

やめて下さい、下世話なツッコミなどしませんよ、私は

なんかやりにくいな、ツッコミのない春信って

そうですか?私は気になりませんけど

なんていうか、卵のない卵焼きっていうか

お出汁や砂糖は重要ですよね

違うか、卵のない目玉焼きだ

塩だけでも酒やご飯はいけますよね

なんだ、その貧乏飯…

(つう)は塩を肴に酒を飲むんですよ

俺、基本アルコールの味嫌いなんだよ

そうなんですか?お酒はたしなむ程度には飲めた方が良いですよ

飲めないんじゃないから、カクテルみたいな甘いのなら飲めるし

ああ、味覚がお子様なんですね

なんだろな、普段の言われ様より腹立つわ~

そう気負わないで下さい、もうお歳なんですし

完全に年寄り扱いだ…オッサンくらいならまだ納得いくが…

おやおや、お気に触ったのなら申し訳ない

こういう謝罪の言葉って謝意が一切伝わらんの、わかっててやってる?

モチロン、わざとですから

ああっ、この話し方ってだけで普段の数倍性格悪い!

話し方だけのせいでもないんでしょうね

あ?

私も思います、仕事モードの私ってほぼ別の人ですから

くっそ~、いつかその仮面剥いでやるからな!

仮面の勇者、だけにですか?

上手い事言ったつもりでドヤ顔すんな!

ははははは、では皆さん、ごきげんよう

締めまで持っていきやがった…


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18話 必殺技

mototwo(以下略):あ、忘れてた…

春信(以下略):は?なにをだよ

前回のって思いつきでいきなり書いた上に久々の投稿だったから…

だから何を?

前書きに「キャラ崩壊を含みます」って入れるの忘れてたわ…

お前。。。ひなたにあんな無茶させたくせにそんな大事な事忘れてたのか?

いきなり奇声上げて飛び蹴り食らわせてマウントポジションで殴る巫女か

おおよそ『ゆゆゆ』界には出てこんキャラだな。。。

やっちまったかぁ

キャラ崩壊って書いとけばOKってのもどうかとは思うが

ほ、ホラ、公式では見れない一面を描くのも二次創作の醍醐味って言うか…

若葉もお前が書いてるとただのポンコツ女子みたいだし。。。

え、あれ?カッコいい若葉って書いた事なかったっけ?

ないんじゃねえの?初登場から原作の切り抜き部分までポンコツ部分ばっかだったと思う

おかしいな、俺普段は『若葉様』って普通に言っちゃう位は若葉の事、気に入ってるんだが

するとアレか、お前が気に入ったキャラは出番増える代わりに酷い扱いうけるのか

ええー、そんなことは…
そーだ!土佐で千景と仮面の赤い勇者の間に割って入った若葉はカッコよかったはず!

確かに他のシーンと比べるとマシだが。。。
単に割って入って、俺に因縁つけられただけだぞ

あう~

しかも元々、原作にあったとこに俺が先んじて千景に話しに行ってっから
なんか出遅れた人みたいになってるし。。。

考えてみりゃ、9話って『のわゆ』原作の佳境部分ばっかだから
皆、酷い目に遭うだけの話だったなぁ…

俺も泣いてるばっかりで何も出来ない話だからあんまし振り返りたくないんだが。。。
っていうか、ここ前書きじゃね?

そうだね

なんでこんな無駄話書いてんだよ
オマケか後書きでやれよ、こういうのは

まあ、それもそうか
んじゃ始めよう
この作品にはキャラ崩壊成分が含まれます

前の話に書き足すだけで済むものをわざわざ。。。



「そうそう、お兄さんに聞いてみたかったんですけど」

 

「私に。。。ですか?」

 

再び訪れた勇者部部室

お茶をしながら突然、銀が春信に切り出す

 

「私が知っていることなら。。。

大赦の事でもなんでも聞いてもらって構いませんよ、三ノ輪銀様」

 

「そ、その前に…そのフルネームに様って付けるのなんとかなりませんか?」

 

「おや?やはりお気に召しませんか?」

 

「言われるたびにこそばゆくって…」

 

「ふむ。。。しかし皆さんには勇者としての

私には大赦の使いとしての立場というものがありますし」

 

「そこをなんとか!お兄さんに名前呼ばれるたびにこう…背中がムズムズって…」

 

「ははは、そうですね、勇者様のお願いとあっては聞かない訳にもいきませんし」

 

「それじゃ!」

 

「『三ノ輪様』と『銀様』どちらがよろしいですか?」

 

「ええっ!肝心の『様』が抜けてないじゃないっスか!」

 

「それは。。。申し訳ありませんが」

 

苦笑いで返す春信に須美と東郷が言葉を重ねる

 

「こら、銀、あまり夏凜さんのお兄さんを困らせるんじゃありません」

 

「でも、銀の気持ちも分るわ

ここでの呼び方くらいはもっとざっくばらんでも良いんじゃないかしら

はい、ぼた餅」

 

「おお~、やっぱり大きい須美は優しいなぁ」

 

「むっ、東郷さんは銀に甘すぎます

年上の方なんですから、相手を立てることは必要だと思います」

 

「それを言うなら、年上の方に『様』付けさせるのはどうかと思うけど

はい、春信さんもどうぞ」

 

「ありがとう、東郷さん」

 

「だから、それは立場があるからという事ではないですか

それにその場その場のけじめというものも考えれば」

 

「けじめをつけるという意味でも、その場その場の使い分けは必要よ

この部室ではざっくばらんにというのであれば」

 

「ああ~!待った待った!!」

 

「「銀?」」

 

「アタシのことで二人が言い合うなんてナシだぞ!」

 

「「あ」」

 

「ご、ごめんなさい、私ったらけじめと言いながら年上の東郷さんに…」

 

「いいえ、私こそ須美ちゃんが昔の自分だからって遠慮なく言い過ぎたわ…」

 

「そうですね、それに元はと言えば私の呼び方のせいですし。。。」

 

「ああ~、だから3人でションボリしないで!

わかった、わかりましたよ、『銀様』でいいです、そこで妥協しましょう!」

 

「まあ、偉いわ銀、ちゃんと我慢が出来て」

 

「本当、銀が妥協なんて言葉知ってるなんて驚きだわ!」

 

「おい須美、結構失礼なこと言ってるぞ、お前…」

 

「ははは、まあとにかく皆さん仲良しでよかった

では、あまたの勇者を魅了したという東郷さんのぼた餅をいただきましょうか」

 

「そうですね、お、今日はきな粉もあるのか、いっただっきまあ~す!」

 

「やっぱり和菓子はお茶に合いますね」

 

「まったくだ!東郷さんのぼた餅ならいくらでも入るってもんさ!」

 

「ええ、実に美味ですね、皆さんが魅了されるのもわかります」

 

「いやあ、本当に…

って違ぁ~う!!」

 

ぼた餅を食べながらの談笑が銀の叫びで中断される

 

「おや?どうされました?」

 

「アタシ、お兄さんに聞きたい事があるんだってば!みんな忘れてないか!?」

 

「忘れてないわよ」

 

「え?」

 

「そうね、いつ切り出すのかと待っていたんだけど」

 

「ええ?」

 

「どうやら銀様だけがぼた餅に夢中で忘れていたようですね」

 

「えええ~、アタシだけ~?」

 

3人に素で返され落ち込む銀

 

「まあまあ、それだけ東郷さんのぼた餅がおいしかったという事でしょう」

 

「あら、お上手ですね」

 

「単に銀の食い意地のせいとも言えますけどね」

 

「それはあるかも

銀の食べ物に対する執念にはいつも驚かされるものが…」

 

「あ~ん、W須美でアタシを追い詰めないでくれ~」

 

「ふふふ、それで私に何を尋ねようと?」

 

「ああ!そうそう、以前風さんにも聞いてみたんですけど…」

 

「な~に?アタシがどうしたって?」

 

「あ、風さん」

 

「これはこれは勇者部部長、あたらめまして、夏凜の兄、三好春信です」

 

前回まともに挨拶できなかった事を気にしてか、

春信は席を立ち、風に対し(うやうや)しく頭を下げる

 

「あらあら、ご丁寧に、樹の姉、犬吠埼風よ、よろしくねん」

 

それに対し風は気を使わないでくれといわんばかりの気さくさで返す

 

「お互いの妹の名前から紹介って、なんだかおかしいですね」

 

「アラ、アタシのはわざとよ、東郷」

 

「え、そうなんですか?風さん」

 

「ああ~、銀にはまだこういう大人のやり取りは分りにくかったかな~?」

 

「そうやって皆すぐお子ちゃま扱いする~」

 

「いいじゃない、銀のそういう子供らしいとこ好きよ」

 

「ええ~」

 

嬉しいような困ったような複雑な表情の銀に更に追い討ちをかける須美

 

「そうよ、銀から子供らしさを抜いたらただの乱暴ものになっちゃうわ」

 

「須美まで~」

 

「無理に大人っぽくする必要はないって事なんだからいいじゃない」

 

「でもぉ~」

 

「そうね…銀は無理に大人になる必要なんてないのよ…」

 

「え?」

 

「子供なんだから、お役目なんかに縛られないで…」

 

「東郷さん?」

 

「銀は…もっと…」

 

「ああっとぉ!しまったぁ!!」

 

東郷の言葉を断ち切る様に挟まれた大きな声の主は春信だった

机に倒れた湯飲みとこぼれたお茶を見て東郷がハッとなる

 

「あ!い…いけない!すぐに布巾(ふきん)を」

 

「ではお茶は私が淹れなおしてきますね」

 

「ああ、すみません、東郷さん、鷲尾須美様」

 

「いいんですよ、その代わり私も名前で呼んでくださいね」

 

にっこり笑って背を向けた須美に断ることも出来ず苦笑いする春信

 

「はは、これで須美様も名前呼びになってしまいましたね」

 

「ちゃっかりしてんなぁ、須美は」

 

「で、結局アタシがどうしたって言うのよ?」

 

「え?風さん?」

 

「銀、風先輩にも話を聞いたって所からよ」

 

「すみません、東郷さん」

 

東郷が机を拭きながら銀に促す

 

「ああ!そうだった!

な~んか、さっきから話がそれまくってんなぁ」

 

「銀、アンタもしかして話それるたびに忘れてんじゃない?」

 

「え?いや、そんなことは…ない、と思いますよ」

 

「自信なさげな言葉が全てを物語ってるわよ、銀

はい、お兄さん」

 

「ああ、ありがとうございます、須美様」

 

新しいお茶を持って来た須美もまた会話に混ざる

 

「もう勘弁してくれよぉ、須美~」

 

そんな皆を春信はお茶をすすりながら楽しげに見守っていた

 

「アハハ、で何を聞いたって?」

 

「そうそう、以前いまの時代の勇者システムについて聞いたじゃないですか」

 

「え、そんなこと聞いたっけ?」

 

「聞きましたよ~、ホラ、『必殺技』のことで!」

 

「「「!」」」

 

その言葉に一瞬、銀と須美を除く3人の表情が固まる

 

「忘れたんですか~?『ビーム』と『ロボ』の話!」

 

「「え?」」「ぶふうっ!」

 

銀の言葉に二人が気の抜けた返事をするのと

春信が横を向いてお茶を噴き出すのは同時であった

 

「だ、大丈夫ですか?お兄さん!」

 

「す、すみません、むせてしまったようで。。。」

 

須美が春信を気遣う中、話は進んでいく

 

「『ビーム』と『ロボ』って、そういや以前聞いてきたわね」

 

「がはっ!」

 

「それって昔、話してた『ビーム』と『ロボ』事、風先輩に聞いたの?銀」

 

「ごほっごほっ!」

 

「そうだよ、2年も経ってるならきっと

勇者システムに『ビーム』と『ロボ』が組み込まれてんじゃないかって」

 

「げへっ!ごほっ!」

 

「そういえば私たちの初陣の後そんな事があったって言ってたわね『ビーム』と『ロボ』って」

 

「ぐふうっ!」

 

「ちょっと、おにーさん大丈夫?さっきから吐血しそうな勢いで咳込んでるけど…」

 

「だ、大丈夫ですよ、ちょ、ちょっとむせただけで体調が悪いわけではありませんから。。。」

 

酸欠状態(チアノーゼ)を起こしそうな顔色でにこやかに話す春信に

 

「そ、そう?」

 

と返すとまた『ビーム』と『ロボ』の話が突き進む

その度に春信は咳込んでいくのであった

(なんだ?この羞恥プレイ。。。)

 

しばらく続いた『ビーム』『ロボ』談義に咳込み疲れた頃、春信にやっと話が振られる

 

「という訳で、そのとき話してた大赦のあんちゃんから聞いた『ビーム』と『ロボ』

大赦での開発ってどうなってるんですか?」

 

「び、びーむとろぼですか。。。

そ、そうですね、2年ほど前に大赦内でそういう噂が広まったのは私も知ってはいますが」

 

「おお~!やっぱり話には出てたんだ!それでどうなったんです?!」

 

玩具を目の前にした少年のように目を輝かせている銀

それにどう答えたものかと悩む春信

 

「それは。。。」

 

明らかに自分のことではない心配事で表情を曇らせて春信の言葉を待つ風と東條

先程の反応から見るに、おそらく春信の口から『満開』という『必殺技』の事が

漏れはしまいかと心配しているのであろう

 

(報告では勇者部の一連の話は伝えられていると聞くが。。。)

 

その二人を視界の端に置きつつ考える

 

(『満開』と『散華』についてどの程度話しているか。。。)

 

さりげなく期待している様子の須美も銀の横で話を聞いている

 

(もし全て話していればあの頃の『園子様』の話にも繋がるしな。。。)

 

「それは?!」

 

期待に胸を膨らませる銀を見て言葉を紡いだ

 

「残念ながらそれ以降話は聞いていませんね、立ち消えになったか、未だ開発中なのか。。。」

 

「なあ~んだ、結局情報なしかぁ~」

 

ホッと胸を撫で下ろす勇者部の2人と残念そうな小学生の2人に頭を下げる

 

「申し訳ありません、ご期待にそえず」

 

「ああ~!また、そうやって恐縮しないで下さいよ~」

 

「でも、銀ったら余程その話が気に入ってたのね」

 

「だって、考えても見ろよ、その時観たビデオの話!」

 

「ビデオ?」

 

「あ、風さんには話してなかったっけ、その時あんちゃんが見てた特撮番組なんですけど」

 

「もしかしてその番組で出てたロボとビームで話が?」

 

「そーなんですよ!しかもそれって神世紀以前の番組らしいんです」

 

「へえ、でも特撮番組なんて今でもあるのに、なんでそんな昔の見てたんだろねえ?」

 

「今でもあるんですか?」

 

「ああ、須美ちゃんはそういうのあんまり見ないか、日曜の朝に今でもやってるわよ」

 

「そうね、私たちも幼稚園の慰問の参考になるからそういう番組は結構観てるのよ」

 

「なるほど、子供たちの心を掴むケレン味の研究という訳ですね…」

 

「いやー、そこまで考えてる訳じゃないんだけど」

 

「アタシも観てますよ、ニチアサ!でもちょ~っと違うんだなぁ」

 

「そうなの?」

 

「今の番組って凄く人数多いじゃないですか、16人とか」

 

「そうね、そうやって人数が増えてくのも醍醐味みたいなもんだし」

 

「でも、そのあんちゃんが観てたのって3人なんですよ!」

 

「3人って…」

 

「そう、アタシたちと同じ!最後まで3人で戦い抜いた話なんだって!」

 

「最後…まで」

 

「そう最後まで!たった3人で人類を守り抜いた勇者の話だって!コレって凄くない?」

 

「そう、ね…凄いわ…」

 

「まあ、次の世代の勇者がいるって事はアタシ達が守り抜いたわけじゃなさそうなんだけど」

 

「そんな事…ないわ…銀は…」

 

東郷の様子に気付いた風が囁きかける

 

「東郷、アンタまた泣きそうになってるわよ…って、お兄さんも?!」

 

その言葉に涙を流す春信へ視線が集中するが

 

「ぐはぁっ!がはっ!げへっ!ごほぉっ!」

 

「だっ大丈夫ですか?さっきから」

 

咳込む春信を須美が気遣う

 

「す、すみません今度はきな粉が気管に入ったようで。。。」

 

「あ、ああ、それで涙が」

 

「はい、話の腰を折ってしまって申し訳ありません」

 

「気にする事ないっスよ、東郷さんのぼた餅は美味しいから、思わずガッついちゃいますよね」

 

「そ、そうですね、いや、いい大人がお恥ずかしい。。。」

 

(いかん、ここで話してると色々ボロが出そうだ。。。)

 

目尻と口元を拭きつつ立ち上がる春信に

 

「アラ、どうしたの?お兄さん」

 

「風さんにもご挨拶出来ましたし、藤森(ふじもり)水都(みと)様にもお目通り願おうかと」

 

「ひなたには?」

 

「流石にいきなり殴りかかられるのは避けたいですから。。。」

 

「あはは、流石にあんな事はもうないと思うけど

あ、水都ならきっとここより先に歌野の畑に向かうだろうから」

 

「ええ、そちらで畑仕事のお手伝いをしながらお待ちします」

 

「あ!それならアタシが道案内しますよ!」

 

「え。。。い、いえ道ならわかっていますので」

 

「いいっていいって!アタシも歌野さんの手伝いしたいし!」

 

「それなら私もお茶を差し入れに行こうかしら、いつも銀がお世話になってるし」

 

「おい須美、アタシが手伝ってるんだってば」

 

「ふふ、そうね、東郷さん、ぼた餅もいくつか貰っていっていいですか?」

 

「ええ、もちろんよ、流石に気がきくわね、須美ちゃん」

 

「相変わらずの自画自賛ぷりね、東郷は…」

 

「あら風先輩、須美ちゃんが良い子なのは確かでしょう?」

 

「そうだけど…2年前のアンタって事、わかった上でそれが言えるのが凄いわね」

 

「ははは。。。それでは3人で向かいましょうか」

 

「「はいっ!」」

 

さて、そんなこんなで歌野の畑へ向かう春信・銀・須美の3人

この面子でそんな所へ向かって、春信は平静でいられるのか?

待て次回!

 




春信(以下略):えっと。。。

mototwo(以下略):どうした?色男

これは。。。以前言っていた仮面を剥がそうって魂胆ですか?

いや、そういう訳でもないんだが

じゃあ、なんなんですか?この悪意に満ちたパーティーは?
完全に追い詰めにかかってるじゃないですか!

単に現実逃避したかっただけなんだけどな

現実逃避?

『勇者の章』が始まっちまっただろ?

ああ、どうでした?第1話くらいは日常回なんでしょ?

うん、ほとんど日常だった
勇者への変身もなかったし

ほう、1期と違って1話では変身せずですか、しかしほとんどって。。。

冒頭の勇者部が「全員揃った」って風先輩が言った時に

はい?

東郷さんだけいなかった…

揃ってないじゃないですか

なのに皆普通に日常続けるんだよ!なんのフラグだよ?!改変だよ?!改ざんだよ?!

ほう。。。そういう切り口できましたか

段々気付いていく友奈と園子、二人に言われて気付く勇者部メンバー!

気付いちゃうんですね、展開早いなぁ。。。

また友奈泣いてたよ!あの子泣くことなんてほとんどないのに!

友奈さんって東郷さんや友達のこと以外で泣きませんからねえ

夏凜ちゃんだって
「あ、そういえば東郷って今どこ?」
って普通に話した後で気付いた時の顔とか!

夏凜はどんな表情でも可愛いですねぇ。。。

お前のその冷静な反応、イラっとする

八つ当たりはよしてください、私のせいじゃありませんよ

どうせここまで改ざんできるなんて神の力なんだから、神樹様か天の神がらみだろ

まあ。。。そう考えるのが普通でしょうねぇ

じゃあ、大赦がらみだろうが
お前もきっと噛んでるだろ

おおっと、それ以上の考察はどっか他でやって下さい

他って…

番組の感想サイトなんて腐るほどあるでしょう、ここで叫ぶのは()めていただきたいですね

ええぇ~…

どうせ本文に反映させる気なんてないでしょう?

それはまあ、そうだけど…

だったらここでは『ゆゆゆい』時空で癒されましょう、わざわざストレス抱える事ないですよ

正論なんだけど…なんか納得いかねぇ

TV本編で大赦や三好春信が噛んでたとしても、私『非公式』ですし

ここでその設定、盾にとるか…

そう決めたのはあなたでしょう?

くっ

とにかく、しばらくは一視聴者としておとなしくしてて下さい
大体、いつまで現実逃避するつもりで始めたんですか?

いつまでって…

今回みたいな文章、ダラダラといつまでも続けようなんて思ってるんじゃないでしょうね?

いや、今回のだって1回で終わる予定だったんだよ?

ほう?

ビームとロボの話から歌野の所へって流れで書き出したんだが
なんか4人の会話が妙に弾んで、流れで風先輩まで出て来て

はあ

ちょっと長くなったから2つに分けようかなって思っただけだ

前作と違って何話から読んでも大丈夫ってつくりじゃなかったんですか?こっちは



また何も考えずに上げようとしてたんですね。。。

勇者の章1話観たら2話が放送される前にって焦っちゃって…

後書きで感想言うために小説上げるなんてあなたくらいですよ

いやあ

褒めてませんからね

ええ~

とにかく、もうすぐ第2話放送されちゃいますよ、上げるなら早くして下さい

ああ~、でも締めの言葉が浮かばない~

いつも適当なくせに妙なとこでこだわりますね。。。

どどど、どうしよう…

普通に終わればいいでしょう

普通って言っても何をどうすれば…

ちょうど本文の話も途中なんだし、後書きもそうだと思えばアレが使えるでしょう?

アレ?

そう、ア・レ ですよ

ああっ、そっか、それだ!

はい、どうぞ

次回につづく!

ホント、世話の焼ける。。。


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19話 中学生

いやあ、年末年始はきつかったわぁ。。。

はあ…

友奈はボロボロになっていくし。。。

え?私ですか?!

勇者部は崩壊せんばかりの勢いで言い合いになっちゃうし。。。

は?ウチらが?

お姉ちゃん、突っ込むとこそこじゃないよ…

天の神まで降りてくるし。。。

天の神って!何の話よ!

にぼっしーもどこに突っ込めばいいのか困惑してるね~

仕方ないわよ、そのっち

銀が出てきてからの流れが随分速くて初見ではついていけなかったけど。。。

ミノさんならまだ学校じゃないかな~?

そこでそのっちまで話に乗ると収拾がつかないんだけど…
ところで…

でもまあ、皆笑顔で終われてって。。。
え?なに?東郷さん

あなたは一体…

皆さん!騙されないで下さい!

兄貴!?

そいつは私じゃありません!ただのオッサンです!

え?
あ、はい…

ふふふ、早かったな!三好春信!

何のつもりです?!私に化けてこんな所に来るなんて!

化けてって…えっと、あのね…

はっはっは!TVの『ゆゆゆ』二期で溜まった愚痴を吐き出しに来たのさ!

そんな事の為にまた無駄に行数を使ったって言うんですか?!

どうしよう、東郷さん…

だが!最終回も観終わったから、思ったほど愚痴が出てこなかったぜ!

馬鹿なんですか!あなたは!

春信…さん?

くっくっく、春信本人も来た事だし、俺はお(いとま)させてもらうぜ!さらばだ!

さっさと帰りなさい!帰って続きを書くんです!

お~い、ハ~ルル~ン

ふう。。。皆さん、大丈夫でしたか?

兄貴、なんなのよ、今のは

さっきも言っただろう、オッサンが私に化けて勇者部部室に入り込んでいたんだ
皆さん、おかしな事はされませんでしたか?

はあ…ああはい、それは何も

本当に愚痴言ってただけだったわよね

それもわけの分からない事ばっかりだったし~

私がボロボロになってるとか

天の神がどうとか

大体兄貴、化けてるとか言ってたけど…

どうした?夏凜

あの人、一人称も口調も見た目も何一つ兄貴とかぶるとこなんてなかったじゃない

え。。。

ですよねぇ、私、誰かの知り合いのおじさんでも来てるのかと思ってましたよ

私と樹の親戚にはあんな人いないしね

私は噂に聞く『用務員さん』って人が現れたのかと思ってたよ~

そのっち、用務員さんは普通に学校に勤めてるから、噂に上がるような人じゃないわよ

花壇の手入れとか手伝うと結構会えるんだよ、今度紹介するね!

ありがと~、ゆーゆ~

と、言うことは。。。

ええ、誰一人、兄貴と間違えるような事はなかったわよ
誰よ、アレ、兄貴の知り合い?

あ~。。。



前書き終わり!下から前回の続き!

え?なに?いきなりどうしたの?兄貴?!

<このお話にはキャラ崩壊成分が含まれます>



「ふわぁ~むにゃむにゃ」

 

大きな欠伸をしながら少し小高い公園のベンチで起き上がる小学生園子

 

「思ったとおり、いい場所だったよ~」

 

どうやらまた居眠りできる陽だまり探しをしていたようだ

 

「これはベスト5に入るかもね~

ん~、あれ~?」

 

ふと道を見下ろすと須美、銀、春信が歩いている

 

「わっし~、ミノさ~ん!」

 

「ん?」「そのっち?」

 

手を振り声をかけるが、上からの呼びかけに二人はキョロキョロと周りを見渡す

 

「ぶ~~~~~~~~~ん…とうっ!」

 

「おわぁっ!」「きゃぁっ!」

 

坂道を駆け下り、二人に飛びつく園子

銀と須美はいきなり抱きつかれ、バランスを崩し…

 

「おっと」

 

春信に支えられ、なんとか転ばずに立ち止まった

 

「す、すみません、お兄さん」

 

「ホント、助かりましたよ~」

 

「いえいえ、銀様も須美様もご無事でなによりです」

 

「園子~お前、いきなりすぎんぞ~」

 

「まったくよ、もう少し考えて行動なさい…」

 

「あはは~ゴメンゴメンゴ~」

 

「乃木園子様も大丈夫でしたか?」

 

「ん~?」

 

園子はあどけない顔で春信の顔を覗き込んでいる

 

「どうか。。。されましたか?」

 

「園子だよ~」

 

「「「は?」」」

 

いきなりの園子の自己紹介に頭にハテナマークの浮かぶ3人

 

「園子だよ~」

 

「は、はい、存じ上げておりますよ、乃木園子様」

 

「園子だよ~」

 

「わ、(わたくし)は大赦から参りました、三好夏凜の兄、春信です」

 

「園子だよ~」

 

「乃木。。。園子様?」

 

「園子だよ~」

 

「ええっと。。。」

 

困惑する春信の袖を銀と須美がくいくいと引っ張る

 

「お兄さん、そのっちはフルネームを気にしてるんですよ」

 

「自分だけ名前呼びじゃないから怒ってるんじゃないっスか?」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「園子だよ~」

 

はあ、と溜息を()くと

 

「園子様、とお呼びすればよろしいですか?」

 

そう言うと園子は少し考え

 

「ん~、ホントは様もいらないんだけど~」

 

「それは。。。」

 

「わっしーやミノさんとお揃いだからオッケ~!」

 

ビシッと親指を立てて満足げに笑う園子

 

「まったく、そのっちは強引ね…」

 

「えへへ~」

 

「どさくさにまぎれて名前呼びにした須美が言うのもどうかと思うけどなー」

 

「そうなの~?」

 

「ああ、さっき部室で…」

 

楽しげに話す3人を数歩下がって見守る春信

 

「。。。」

 

微笑む春信に気付いた園子が振り向き、少し思案するように右手の人差し指をあごに当てると

 

「!」

 

トテトテと春信のそばまで来てその腕に手をからめる

 

「「?」」

 

「あ、あの。。。園子様?」

 

「おにーさん、すき~」

 

「「ええっ?!」」

 

驚く二人を見て園子はまた少し思案する

 

「ん~~」

 

そして二人に抱きつくと

 

「わっし-、ミノさん、だ~いすき~!」

 

「そ、そのっち?」

 

「なんだなんだ、なんなんだ?いきなり甘えんぼかぁ?」

 

照れる須美と訳がわからないという顔の銀に

 

「ん~、なんていうか~

おにーさんの私たちを見る目がす~~~っごく優しくって~」

 

「はあ…」

 

「特にミノさんを見つめる目がすっごくすっごくす~っごく優しいの~」

 

「ア、アタシィ?」

 

「そう思ったらなんだか嬉しくなっちゃったんだよ~」

 

「それで今の行動に…?」

 

「うん~!」

 

「相変わらず自由だなあ、園子は…」

 

「何をするのかまったく読めないわね」

 

「まったくだ、いきなりラブコメでも始めるのかと思ったよ、アタシャ」

 

「ラブコメ?!どこどこ~?」

 

目を輝かせてキョロキョロと周りを見る園子に突っ込む銀

 

「いや、お前だろ!」

 

「え~?なんで~?」

 

しかし園子は首をかしげている

 

「いきなり男の人に『好き』なんて言うからでしょ!」

 

思わず須美までツッコミを入れるが

 

「おお~、そういえばそうだね~」

 

当の園子はまるでその気もないようだ

 

「。。。」

 

「お兄さんもビックリしたでしょう?ってお兄さん?!」

 

「え。。。ど、どうされました?銀様」

 

「顔が真っ赤ですよ~、なんですか~園子に好きって言われて照れてんすか~」

 

顔を赤くして目線を逸らし何やら考え事をしていた春信に寄り添い、ツンツンと肘を当てる銀

 

「い、いえ。。。そういうわけでは。。。」

 

「あはは、そうっすよね!お兄さんハンサムだから、告白とか慣れてんでしょ~?」

 

あっけらかんと笑う銀ににこやかな笑顔で返す春信

 

「ふふふ、そんなことはありませんよ

そう言われてみれば面と向かって女性から『好き』と言われたのは初めてかも知れませんね」

 

「そうなんだ~」

 

「お!じゃあ園子の方が一歩リードだな!」

 

「リードって何がよ…」

 

「だぁって、園子はラブレター貰ったじゃん?」

 

「おやおや、そうなんですか?園子様」

 

「えへへ~」

 

「まあ、女の子からだったんすけどね」

 

「なるほど。。。それでも人から好意を伝えられるのは嬉しいものですよね」

 

「そうだね~嬉しかったよ~」

 

「そうね…私には苦情の手紙しか来なかったものね…」

 

どんよりした顔で呟く須美

 

「く、苦情ぉ?」

 

「そ、そんなお手紙が。。。?」

 

「ええ、

『鷲尾さんは優等生

ですが、注意するとき

口うるさく感じます。

気をつけてください。

匿名希望より』

って…」

 

「お、覚えてんだ…一言一句…」

 

「紙きれ一つに色めき立った自分が恥ずかしい…」

 

「おーい、須美ー、その顔は『恥ずかしい』じゃなくて『腹立たしい』だぞー」

 

「わっしーの面白さは近くにいないと伝わらないからね~」

 

「別に面白さを感じてもらう必要はないのだけれど…」

 

「ははは…

あっ、そろそろ畑に…

お~っい!うったのさ~ん!

また手伝いに来ましたよ~!」

 

鍬を振るう歌野が銀の声に振り向き手を振る

 

「おーっ!銀君!それに園子君、須美君に夏凜さんのお兄さんも!」

 

「こんにちは~」

 

「おじゃましますね」

 

「お忙しい中、申し訳ありません、白鳥歌野様」

 

「うむうむ、苦しゅうない、(おもて)を上げい!」

 

堅苦しいまでの春信の挨拶に、腰に手を当て胸を張って軽く返す歌野

 

「流石に歌野さんは大物だなぁ」

 

「ホワット?なにが?」

 

「だって、フルネームに様付けでもまるで気にせず、堂々としてるんだもん」

 

「あはは、確かにそうね、そういうのあんまり気にしないかな、私は」

 

「そう言って頂けると私としても有り難いです」

 

「あ、でも」

 

「はい?」

 

「園子さんみたいに『農業王』と呼んでもらっても構わないわ!」

 

「。。。」

 

「歌野先輩は園子先輩のその呼び名、気に入ってたんだね~」

 

「ええ!そもそも諏訪にいるときから目指していたからね!」

 

「目指す?」

 

「そう、私は農業王になり、その上の農業大王、そのさらに上の農業神へと…」

 

「か、神までいっちゃうんすか…」

 

「ノンノンノン、農業神で終わりじゃないわ、農業の道はエンドレス、果てしなく続くのよ!」

 

「ゴクリ…農業の道がそこまで奥深いとは知らなかったわ…」

 

「いや…多分、歌野さんの農業道が特別なだけだと思うぞ、須美」

 

「わっしーはなんでも真面目に考えちゃうからね~」

 

「軽い気持ちでお手伝いに来てしまった自分が恥ずかしい…!!」

 

「ドンウォーリー!いいのよ!須美君!とっかかりは軽くったって、農業の受け皿は広いわ!」

 

「う、歌野さん!」

 

「まずはお手伝いでも始めよう!その気持ちこそがプレシャス、大切なのよ!」

 

須美の肩を抱き、あらぬ方向を指差す歌野

 

「二人であの栄光に輝くファームスター、農業の星を目指しましょう!」

 

「はい!歌野さん!私、頑張ります!」

 

両手を祈るように握り締め、同じ方向を向いて目を輝かせる須美

 

「さすがは歌野先輩、わっしーの為にいつもより和訳多めだよ~」

 

「感心するとこ、そこじゃないだろ…

お~い、そろそろ戻って来~い、須美~、歌野さんも~」

 

「おおっと、いけないわ!せっかく皆で手伝ってくれるって言うのに、待たせちゃ悪いわね!」

 

「いやあ、それは別に気にしてませんけど」

 

「制服だと汚れるから、そこの物置兼更衣室で着替えるといいわ」

 

「あれ?こんなの前からありましたっけ?」

 

「こないだ、急に出来たのよ」

 

「急にって~?」

 

「私が『いつも通り』学校帰りに畑を見に来て」

 

「ふんふん~」

 

「『いつも通り』作業着に着替えてたら」

 

「ん?」

 

「急に後ろでひなたさんの叫び声が聞こえて」

 

「ひなたさんの?」

 

「一度、畑を見に来るって言ってたからそれで来てたんだと思うけど」

 

「はあ…」

 

「物凄い勢いで走って行ったと思ったら、1~2時間後に大赦の人たちとなんかトラックで来て」

 

「トラックゥ?!」

 

「その小さな更衣室を建てていったのよ

物置のスペースもあるから有り難く使わせてもらってるの」

 

「ひ、ひなたさんは何と…?」

 

「『次からはちゃんとこの中で着替えてください!』って凄い剣幕だったわ」

 

「ああ…」

 

「それは…」

 

「なるほどだね~」

 

「ホワット?何が?」

 

「ち、ちなみにこれが出来る前はどうしてたんですか?着替え…」

 

「どうって…普通に『いつも通り』よ?」

 

「それってまさか…」

 

「諏訪にいたときと同じ、こうしてバッと脱いで…」

 

「わあっ!!!歌野さん!」

 

「そ、そのっち!お兄さんを!」

 

「見ちゃ、ダメ~!」

 

3人は小さな体で全力で歌野の体を隠そうと動き回る

 

「はい、何も見ていませんよ。。。」

 

春信は既に後ろを向いて目を閉じていた

後ろでしばらくドタバタした後

 

「そろそろ、そちらを向いても大丈夫ですか?」

 

「は、はい、大丈夫です」

 

「勘弁してくださいよ~、歌野さん~」

 

「ど、どうしたの?3人とも…」

 

「歌野先輩はおおらか過ぎだよ~」

 

「そのっちに言われるなんて相当ね…」

 

「いくら私でも、外で男の人がいる前でなんて恥ずかしいよ~」

 

「え?ああ!そういうことね!」

 

「やっと気づいて貰えましたか…」

 

「私の裸なんて見ても誰も喜ばないわよ、気にしなくてもドンウォーリー!」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

「それに~、歌野先輩は充分綺麗だよ~」

 

「あらま、お上手ね、園子君」

 

「いやいや、本当に結構な美人ですから!」

 

「褒めてくれてサンクス!でもいいのよ」

 

「いいって…」

 

「私はみーちゃんほど可愛い訳じゃないから、女性としての魅力はナッシング!

でも私は農業王だから!その道を極めていくのよ!」

 

「ああ、もう!なんて言ったらいいのかしら!」

 

「ふ、ふふふ。。。」

 

4人のやり取りに思わず笑ってしまう春信

銀はその春信に助け舟を求めた

 

「お兄さんも笑ってないで、何とか言ってくださいよー!」

 

「そ、そうですね。。。ではこういう例えはどうでしょう?」

 

「「「「?」」」」

 

藤森(ふじもり)水都(みと)様は白鳥歌野様より可愛い、というお話でしたが。。。」

 

「オフコース!みーちゃんのキュートは人の心を潤わせるわ!私のなすびの様に!」

 

「ふふふ、なすびですか。。。

そうだ、昔、ミスユニバースというものがあったそうです」

 

「みすゆにばあす?」

 

「ああ、申し訳ありません、須美様。

西暦時代にあった女性の美しさを競う世界的な大会とその栄誉のことです」

 

「ミス香川みたいなもんっすね!」

 

「ええ、そういう大会で優勝された方はとても美しかったでしょう」

 

「それは当然ね」

 

「ですが、優勝されなかった方々は美しくなかったでしょうか?」

 

「それは…そんなわけないわ」

 

「そうです、女性の美しさも多種多様です。

畑の野菜に値段の優劣がつけられたとしても、みな美味しいのと同じように」

 

「その例えはどうだろ~?」

 

「いいえ!とても分かりやすいわ!」

 

「そうなんですか…」

 

「白鳥歌野様も、たとえ藤森水都様に可愛さで負けていたとしても

ご自身なりの美しさというものが当然あります。いちごとなすびの違いのように」

 

「なるほど!よくわかるわ!」

 

「そこも作物でいくんスね…」

 

「それに、農業王が裸の王様では困ってしまうでしょう?」

 

「裸の王様!?見栄を捨てたつもりが、虚飾に包まれていたの?!私は!

まるでデパートでデコレーションされ展示される作物のように!」

 

「最後までその路線で突き進んじゃうんだ、歌野さん…」

 

「折角の美味しさを飾られるだけで腐らせてしまう

そんな野菜になってしまう所だったのね、私は…」

 

「そこまで深読みできる話だったかな~?」

 

「ゴクリ…農業の道がそこまで奥深いとは知らなかったわ…」

 

「須美、流れに飲まれてさっきと同じセリフ言ってるぞ、お前」

 

「まあ、折角更衣室が出来たんですし、それを使わないのはもったいないと言う事で。。。」

 

「それもそうね!」

 

「そんな簡単な話に?!」

 

「その上で人前でおいそれと脱がなくなっていただければよろしいかと」

 

「わかったわ!」

 

「あっさり解決しちゃったよ~」

 

「一体なんだったの…さっきまでのやりとりは…」

 

「ホントにな…」

 

「こういうのは一種のレクリエーション、言葉遊びですから」

 

「疲れる遊びだぁ…」

 

「銀は体を動かす方が楽だものね」

 

「そう!そうだよ!畑仕事の手伝いに来たんだった!」

 

「そうですね、さあ御三方は先に更衣室を使って下さい」

 

「私たちなら3人一緒に着替えられそうね」

 

「え?アタシは外でも構わないんだけど…」

 

「銀…さっきの話、聞いてた…?」

 

「お、怒るなよ~、須美ぃ。アタシだって中学生になってまでそんなことしないって…」

 

「今もやめなさいって言ってるのよ!ホラ、入って!」

 

小さめとはいっても流石は大赦の用意したものだ

そこそこの大きさと頑丈さで小学生組なら3人入っても余裕があった

 

「でも中学生のミノさんか~、どんな風なんだろうね~」

 

「大赦に務めてるって話だったかしら?」

 

「でも、な~んか誤魔化されてる気もするんだよな~」

 

「中学生で大赦務めなんて、すっごいエリートだもんね~」

 

「確かに…今の銀からは想像付かないわね」

 

「まさか…逆に…」

 

「え?」

 

「すっごい落ちこぼれで二人と一緒の中学に入れなかったとか?!」

 

「ええ~?!」

 

「そんな、まさか、いや、でもありうる…?」

 

「そこは否定してくれー!」

 

「冗談よ、讃州中学は公立でしょう」

 

「それに私たちの住んでた地域と離れてるもんね~」

 

「そういやそうだな、なんで二人はこっちに進学したんだろ?」

 

「引越しでもしたのかしら?」

 

「いや、そもそも、なんで須美は東郷さんなんだ?」

 

「なによ、今更…」

 

「今更過ぎて聞けなかったんだよ、園子はそのまま園子さんなのに、なんで須美だけ?」

 

「私は生まれた時から乃木園子だよ~」

 

「そうよ、私は元の家に戻っただけで…」

 

「だから、それがなんでだよ?」

 

「なんでって、そういえばそうね…

私はお役目に就く為に鷲尾家の養子になった…

なのに今の東郷さんはそのままの名で勇者をしているわ…」

 

「それに~、勇者部の先輩たちの中に、大赦の名家の人なんていないよ~?」

 

「そうなのか?」

 

「西暦の人たちは、ほとんどが名家ぞろいだけどね~」

 

「そのっちの記憶力は確かだものね」

 

「じゃあ、もう勇者と大赦の家柄は関係ない?」

 

「今の大赦と勇者の体制がそうなのかもしれないわね。

養子でいる必要がなくなったから私は家に戻ったのかも」

 

「ぴっかーん!」

 

「おっ!なんか閃いたのか?園子」

 

「これは悲しい物語が隠されていると見たよ~」

 

「悲しい物語?」

 

「聞きたい~?」

 

「気になるな、早く話せよぉ」

 

「大橋が壊れていたでしょ~?」

 

「ああ、あれは辛い光景だったわ…」

 

「アタシ達が守ってた橋だもんなぁ…」

 

「アレはきっとバーテックスが壊したんだよ~」

 

「それはそうでしょう、それ以外ないでしょ」

 

「それくらい、アタシでも想像つくぞ、園子」

 

「大事なのはそのときの戦いだよ~」

 

「ほうほう」

 

「その戦いでわっしーは傷ついちゃって、勇者をやめなくちゃいけなくなっちゃったんだ~」

 

「ええっ!」

 

「だから東郷の家に戻されたんだよ~」

 

「ア、アタシは?!」

 

「ミノさんは逆にその戦いで大活躍~」

 

「よっしゃぁ!」

 

「えええぇっ!!」

 

「その功績が認められて大赦のエリートコースに乗っちゃったんだ~」

 

「園子は?」

 

「私はそのまま~」

 

「えええええぇぇっ!!!」

 

「そのままじゃ、神樹館中等部に行ってるはずだろ?」

 

「あ、そっか~、じゃあ、可愛そうなわっしーを追いかけて転校だ~」

 

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」

 

「そうか、それなら全てのつじつまが合うな…」

 

「えっへん~!」

 

なるほどと納得する銀と腰に手を当て胸を張る園子

しかし須美は今にも泣きそうな顔で抗議の声を上げる

 

「ちょ、ちょっと待って、二人とも…」

 

「どうした須美?」

 

「どうしたの~わっしー?」

 

「い、いくらなんでも酷すぎると思うわ!私だけ責任取らされて左遷だなんて!」

 

「ええ~、左遷なんて言ってないよ~」

 

「そうそう、言ってない言ってない

…サセンってなんだ?」

 

「左遷じゃないとしても私だけ可愛そうな境遇になってるじゃない!

左遷ってのは役職を降ろされて地位を落すことよ」

 

「なるほど、そういう意味か…」

 

「でも~、これくらいしないとミノさんを大赦のエリートになんて出来そうにないよ~」

 

「そ、それもそうね…確かにそうだわ…そんな事でもないと絶対に無理よね…」

 

「お前ら…時々アタシのこと無茶苦茶バカにするよな…」

 

「もういいわ…そういうことにしておきましょう…」

 

「やった~!」

 

「そのっちの頭の中だけでね」

 

「ひどい~」

 

「ははは、しっかし、大赦に務めるエリートなら、キャリアウーマン予備軍!

今のアタシは先生みたいに凛々しい顔のバインバインになってるに違いない!」

 

「それはないわね…」

 

「あー!ひっどいなー!」

 

「銀をどうやったら2年で安芸先生みたいにできるっていうのよ…」

 

「だあって、東郷さんは最高峰だし!園子さんもかなりおっきくなってたし!」

 

「そしてミノさんだけペタンコ~」

 

「園子までー!コラー!」

 

「あひゃー!あはははは、そ、そこはくすぐっちゃだめ~~~~~!」

 

「うりうりうりうり、ここか、ここがええのんか!」

 

「バカやってないで、早く着替えなさい!」

 

「あ~ん、須美がぶったー!」

 

「早くしないと、扉開けて出ちゃうわよ!」

 

「ま、まって~」

 

「ア、アタシもすぐ済むから!」

 

「まったくもう…」

 

「「「お待たせしました~ってアレ?」」」

 

「はい、それでは次は私が」

 

入れ替わりに更衣室へ入った春信を見送り、須美が歌野に声を掛ける

 

「う、歌野さん?」

 

「なにかな?須美君」

 

「お兄さん、顔が真っ赤で目が腫れてませんでしたか?」

 

「ええ、なんだかわからないけど、更衣室の前でキミ達の話を聞きながら…」

 

「聞きながら?」

 

「急にオロオロしたり、そうかと思ったら急に涙を流したりしてて…」

 

「泣いてたんですか?!」

 

「ああ、いえ、目に埃が入っただけとは言ってたんだけどね」

 

「それにしては…」

 

「不自然なくらい号泣してるように見えたわね…」

 

「やっぱり…」

 

「やっぱりって?」

 

「部室にいたときからそんな感じで、いきなりむせたり…」

 

「体調でも悪いのかしら?」

 

「ご本人は大丈夫って言ってましたけど…気をつけたほうが良さそうですね」

 

「そうね、作業中も注意して見ておくわ」

 




春信(以下略):。。。

mototwo(以下略):何か…言いたいことでもあるのか?

1ヶ月以上あけて、上げた話がコレですか。。。

まあ…言わんとする事はわかる

私はいつになったら藤森水都様にお目通り願えるんですかねぇ。。。

嫌味はやめろ

一体何やってたんですか?この間

前書きでも言ったろ、『勇者の章』観てたんだよ

関係ないでしょう、こっちとは。。。

いや、友奈のあんな姿見てたら筆なんか進まないって!

その割にはちまちまとPC前で何か書いてたじゃないですか

あれは…『くめゆ』読んだから、他の話をだな…

ほほう?

まあ、相変わらずお前は何もしてないし何も出来てないんだけど

酷い話ですね。。。

『くめゆ』の話の時期じゃ、量産型の勇者端末だからな、基本弱いし

それはそうですが

防人でもないから、壁の外で自由に動けるわけでもないし

援護すら出来ませんね

まあ、使うこと無いと思ってた『のわゆ』の時の話も持ってこれたから

いつ上げるんですか?それ

え?いつって…

一体いつになるんですか?

こ、こっちの話が終わったら…

終わるんですか?ちゃんと

ちゃんとって…

本当に終わるんですか?ちゃんと

ちゃんとも何も、そもそも『ゆゆゆい』ギャグ回で書いてるんだし

知ってます?ギャグってちゃんとオチがついて初めてギャグって言えるんですよ
今回みたいなブツ切り、ギャグでもなんでもないでしょう。。。

正論が胸に痛い…

まあ、いいです

え?いいの?

次こそ、ちゃんと藤森水都様とご挨拶させてくださいよ!
話はそれからです!

あ、気にしてんだ、そこ…

勇者ではありませんが、私にとっては思い出深い少女の一人ですから

うん、そうね…

彼女の満面の笑顔が見れるよう、お願いしますよ

満面のって、水都がそんなに明るく笑うとこ『ゆゆゆい』でも見ねえぞ、基本困り眉で…

なんですか?

近い近い、顔が近い

しっかりしてください

が、頑張る!

<また続く>


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20話 作業着

<このお話にはキャラ崩壊成分が多分に含まれます>



歌野と須美が話している間に、赤いジャージに身を包んだ春信が更衣室から出てくる。

 

「お待たせしました」

 

「Oh!ピッタリね!お兄さん、背も高いし手足も長いからちょっと心配だったけど」

 

「ありがとうございます」

 

「そういえば歌野さん、なんであんなにジャージが?」

 

「私たちのサイズもピッタリだったし…」

 

「そういえばそうだね~」

 

「あれも大赦の人が置いていったのよ、皆の勇者の色で用意してあるから

サイズも調べてたんじゃないかしら?」

 

須美は紫がかった薄い青、銀は赤、園子は濃い紫のジャージを着ていた。

 

「ただ…」

 

「ただ?」

 

「赤いジャージだけ3着あって、しかも1着は大きいし不思議に思ってたのよね」

 

「ああ、以前私が使用していた物ですね、友人が気を回してくれたんでしょう」

 

「なるほど、だからね。それだけ新品じゃなかったのは」

 

「でしょうね。クリーニングの袋に入ってました」

 

「色はアタシとおそろいっすね!」

 

「そうですね、銀様」

 

にこやかに言葉を交わす銀と春信。

そんな中、歌野は何か引っかかるように声を漏らした。

 

「でも…友人か…」

 

「なにか。。。?」

 

「こういう言い方は失礼かもしれないけど…」

 

「構いませんよ、遠慮なくおっしゃって下さい」

 

「大赦のあの人たちの間で友人関係ってあったんだなぁって…」

 

「というと?」

 

「いえね、この更衣室作ったときも、大赦の人たちってあの格好だったのよ」

 

「あの格好って、まさか…」

 

「もしかして~」

 

「仮面の宮司、ですか…?」

 

「そうよ、とんだサプライズよ、ビックリしたわ!」

 

「それは…怖い絵面ですね…」

 

「でしょう?流石の私もちょっと引いちゃったわ」

 

「ひなたさん、よく平気で同行できましたねー」

 

「慣れって怖いね~」

 

「そうね、大赦との連絡役は風さんかひなたさんに任せていたものね…」

 

「だから、今思うとお兄さんみたいに素顔で行動する人のほうが珍しいのかなって」

 

「ふふふ、確かに表に出る実働隊は基本、あの仮面をつけていますからね」

 

「あ、でも私達は顔を出している人と一緒だったんだよ~」

 

「おや、そうなんですか?」

 

「ええ、安芸(あき)先生っていって、私たちのクラスの担任でもあったんです」

 

「ほほう。。。」

 

「あれ?知らなかったんすか?」

 

「ええ、おそらくお会いした事がないですね」

 

「そうなんだ~」

 

「勇者部の時にはそんなサポート役はつきませんでしたし。。。

夏凜が1月(ひとつき)後に補充されただけだったはずですね」

 

「あら、夏凜さんは後から来たのね」

 

「考えてみれば、勇者部には神託を受ける巫女もおらず

大赦との連絡もメールばかりだったと聞きます」

 

「世界を守る勇者なのに冷遇されてたんですね…」

 

「精霊の護りを過信していた部分もあるんでしょうね」

 

「あ、でも東郷さんは巫女の素養があるって話ですよね?」

 

「そういえばそうですね、しかし勇者部の戦いの間には神託は受けなかったそうです」

 

「リアリー?」

 

「そもそも巫女の神託にない不規則な進攻ばかりだったようですし。。。」

 

「不思議な話ね、ミステリアスだわ」

 

「まあ、勇者部の事はともかく

実際は大赦内で仮面をつけない人員も多いですし、フレンドリーな関係もありますよ」

 

「そうなのね、少し安心したわ!」

 

「さて、そろそろ作業にかかりましょうか」

 

「おっと、そうだった!」

 

「おしゃべりをしに来たんじゃないものね」

 

「がんばるよ~」

 

「それじゃあ、小学生組には収穫を手伝ってもらおうかしら?

立ったりしゃがんだりで結構、体力がいるわよ」

 

「体力には自信があります!任せてください!」

 

「私は疲れたら寝ちゃうかも~」

 

「さっき頑張るって言ったばかりでしょう、そのっち」

 

「ふふふ、無理せず、ゆっくりで良いからね」

 

「よっしゃ、行くぞー!須美!園子!」

 

「ええ!」

 

「ああ~、まって~」

 

「3人とも元気で良いわね~」

 

「で、私は。。。」

 

「ああ、お兄さんにはちょっと力仕事をお願いしようかしら」

 

歌野は鍬を取ると畑の一角へ春信を案内する

 

「ここの土が意外と固くて、いつか耕そうと後回しになっていたの」

 

「なるほど、ここだけ掘り返されていませんね」

 

「ええ、下手なやり方をすると手がしびれちゃうから、慌てずにやってね」

 

「わかりました」

 

歌野から鍬を受け取り、しっかりと腰を入れて振り下ろす

 

ザクッ

 

堅い手ごたえを越えたその下に確かな土の感触を確かめるように鍬を振る

 

ザクッ

 

「いいわね!どこかでやった事があるの?」

 

「ええ、実は以前少しだけですが、畑仕事を教わった事がありまして」

 

「なるほど!教えた人はいいセンスしてるわね!」

 

「はい、私もそう思います」

 

「あはは、それが出来るお兄さんもいいセンスよ、才能あるんじゃないですか?農耕の!」

 

「。。。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「い、いえ、ありがとうございます」

 

「じゃあ、私は須美君たちと収穫してるから、こっちは頼んだわ!」

 

「はい、お任せください」

 

ザクッ、ザクッ

 

歌野と小学生組が賑やかに収穫している間

 

ザクッ、ザクッ

 

黙々と畑を耕す春信

 

ザクッ、ザクッ

 

確かに疲れる仕事ではあったが

 

ザクッ、ザクッ

 

何も考えずに鍬を振り、土に触れるのは心地よかった

 

ザクッ、ザクッ

 

こんな平和な時間がいつまでも続けばいいと思っていた頃

 

ザクッ、ザクッ

 

一人の少女の声に春信の手が止まった

 

ガシャンッ

 

「お兄さん?!」

 

その音と声に皆が振り向くと、倒れた自転車の横に

零れそうなほど目に涙を溜めた藤森(ふじもり)水都(みと)が立っていた

 

「みーちゃん!どうしたの?!」

 

そのただならぬ雰囲気に歌野は収穫中の野菜を抱えたまま水都へ駆け寄る

 

「え?うたのん、ど…どうしたの?」

 

しかし、当の水都は歌野の行動に驚いたように目をパチクリさせる

その瞬きで水都の目に溜まっていた涙が頬を伝った

 

「え…あれ?涙が…」

 

「なにかあったの?みーちゃん、いきなり泣き出すなんて…」

 

須美たちも近くまで来て心配そうに見ている

 

「な…なんでだろう?何も悲しいことなんてないのに…」

 

「大丈夫?みーちゃん、こっちに座って、とにかく落ち着いて…」

 

「うん…ひっく…」

 

少しオロオロしながらも水都を気遣い、休ませる歌野

水都はしばらく涙を流すと、にこやかに笑って歌野に応える

 

「うん!もう大丈夫!心配かけたね、うたのん」

 

軽いガッツポーズで元気をアピールする水都にホッとしつつ

 

「でもいきなりどうしたの?なんでもないのに泣き出すなんて…」

 

尋ねる歌野に「んー」と考えるような素振りで顎に指を当てる水都

 

「うたのんは…2年前のこと覚えてる?」

 

「2年前って…」

 

「バーテックスの侵攻が始まって、諏訪で1年過ごした頃のこと」

 

「忘れる訳ないわ!あの1年はみーちゃんと二人で頑張ったんだもの!」

 

「うん、私は畑仕事が手伝えなくて申し訳なかったんだけど…」

 

「そんなことないわ!みーちゃんが傍にいてくれるだけで心強かったもの!」

 

「ありがと、うたのん。でも実際、畑仕事はうたのん1人でやってて…」

 

「大変だったんですね…」

 

「大人はみんな、バーテックスの侵攻に絶望してたからね、誰も手伝わなかったんだ…」

 

「そうなんですか…」

 

「でも、1年頑張ったら手伝ってくれる人たちが出てきたんだ」

 

「それはよかったね~」

 

「うん!最初に手伝ってくれた人の事は今でも忘れないよ」

 

「。。。」

 

「宮阪のおじいさんだね!」

 

「うん!そう!嬉しかったなぁ…」

 

「バット、なぜ今その話を?」

 

歌野の疑問にまた水都は考える

 

「んー、なんでだろう?お兄さんの赤いジャージを見たらその事を思い出して…

なんだか涙が出ちゃったんだ。おかしいよね、こっちでは皆が手伝ってくれてるのに」

 

「そのおじいさんが赤いジャージを着てたって事ですか?」

 

「いいえ、おじいさんは野良仕事の作業着だったわ、赤くもなかったし…」

 

「不思議な話ですね…」

 

「おにーさんは何か…って?!」

 

「そうですね、藤森水都様は巫女ですから。。。」

 

「…?」

 

「何か別の情報が神託に近い形で、感情を揺さぶったのかも。。。」

 

「あの~」

 

「まあ、単なる予想ですし。。。」

 

「お、おにい…さん?」

 

「私には少々分かりかねますが。。。」

 

「な、なんでお兄さんまで泣いてるんですか?」

 

「え。。。」

 

話しながら両目一杯に溜まった涙を零す春信

どうやら何度も泣いていたせいで、自分が涙を流していることも気付かなかったようだ

 

「部室にいた時からそうでしたし、本当は体調が悪いんじゃ?」

 

「い、いえ、これは。。。嬉しくてつい。。。」

 

「え?嬉しくて?」

 

「。。。!

そ、そうです!やっと藤森水都様にお目通り願えたので

嬉しくて思わず泣いてしまったんですよ!」

 

「え!ええ!えええ~!!

わ、私なんかに会えてもなんにも良い事なんてないですよ!勇者でもないし!」

 

水都は顔を真っ赤にして両手と首をブンブン振っている。

 

「いえいえ、そんな事はありませんよ。

それに、お会いできるまでに随分かかった気がしますから。。。」

 

「随分って、さっき来たばかりだし、部室で会ったのも数日前だったわよね?」

 

「そうですね、しかし体感時間ではなぜか(・・・)『2ヶ月以上』待たされたような気が。。。」

 

「な、なんだろう…お兄さんがアタシにツッコミを求めてるような気がする」

 

「何かツッコミどころがあったの~?」

 

「わからんっ!でも…何かメタな匂いがする!」

 

「めた~?」

 

「何をわけの分からない事言ってるの、銀」

 

「と、とにかく、こうしてお目通り願えたわけですから、あらためてご挨拶させてください」

 

「え…いえ、あ…はい…」

 

「諏訪の巫女、藤森水都様。

私は大赦より参りました、三好夏凜の兄、春信と申します。

どうか、以後お見知りおきを」

 

「あ、あわわわ、は、はい、わたっ!わたしぃはぁ、うたのんの…じゃなくて

白鳥歌野さんの巫女をやってます、諏訪でやってましたぁ、フジモリミトです~!」

 

「み、みーちゃん、緊張しすぎて自分の名前がカタコトになってるわよ…」

 

「ううぅ…は、はずかしい…」

 

「ははは、硬くなられずとも大丈夫ですよ、藤森水都様」

 

春信がにこやかに近づこうとすると歌野の後ろにささっと隠れる水都

 

「あらら~」

 

「これは…」

 

「嫌われちゃいましたかねぇ?」

 

「え、ええっと。。。」

 

「ああ、大丈夫よ。みーちゃんは若い男性と話すのが特に苦手なだけだから」

 

「そ、そうだったんですか。。。?」

 

「ご、ごめんなさいぃ…」

 

「なにせ、諏訪の結界で3年間、純粋培養されたもの!私の手で!」

 

「。。。」

 

「歌野さんの?!」

 

「どういうことだ?!」

 

「おお~!」

 

「って、なんで園子が嬉しそうなんだ?!」

 

「うたのん、誤解を生む言い方はやめてぇ!」

 

「誤解?!なにが?!」

 

「誤解じゃないわ!真実よ!」

 

「真実なの?!だからなにが?!」

 

「あらたな風だよ~!」

 

「風?!何の話だ?!」

 

「お、落ち着きなさい!そのっち!」

 

「須美?!お前なんで興奮してんだ?!」

 

「みーちゃんは私が一生守るから大丈夫よ!」

 

「歌野さん?!なんでいきなり戦いの話に?!」

 

「うたのん、皆の前で恥ずかしいよぉ」

 

「恥ずかしい?!何か恥ずかしい話が?!」

 

「コレはご飯3杯いけるよ~!メモメモ」

 

「ご飯?!いつの間にメシの話に?!」

 

「これは何かが開いた気がするわ!」

 

「開くってなんのはなs…ってがはぁっ!!」

 

「銀!」「ミノさん!」「銀君!」「銀ちゃん!」「銀様!」

 

「モ、モウ、コレイジョウ、ツッコメナイ…バタン」

 

「銀っ!!『バタン』は擬音よ!口で言うものじゃないわ!」

 

「そこ、お前が突っ込むのかよ!須美!」

 

満身創痍でもツッコミには動いてしまう、真の勇者の姿がそこにはあった。

 




春信(以下略):酷いオチですね。。。

mototwo(以下略):ゆ、『ゆゆゆい』ギャグ回だから…

あなた、銀様を何だと思ってるんですか。。。

元気で愉快なツッコミ小学生勇者

バカにしてるんですか?

い、いやいや、銀や球子の本質ってそういうもんだって!

あの方たち、世界の為に命を奉げた英霊ですよ?

だから!それがおかしいんだって!

はあ?

ああいう子たちって、ワガママ言ったり、皆にバカにされたりしながらも
周りの空気を和らげるような雰囲気を素で出す子たちなんだってば

ほほう?

そういう子たちは絶対に死んじゃダメなの!
命懸けの戦いでどれだけボロボロになっても帰って来なきゃダメなの!

ダメって。。。

『勇者は根性』なんだから、根性で帰って来るの!友奈みたいに!

友奈さんは、ある意味特別ですけど。。。

もちろん、他の誰が死んでもいいってわけでもないけど、ああいう子は特にダメなの!

ワガママなお年寄りですねぇ。。。

そいつは前作からのこの小説のコンセプトだ

は?

『勇者はワガママ』だからな!

『勇者は根性』じゃなかったんですか

それは本編の方だ。俺の話はこっちがコンセプト

だいたい、あなたは勇者でもなんでもないでしょう。。。

それはそれ、これはこれ

何の説明にもなってませんよ?

それに、他のオチの方が酷かったんだよ?

またですか。。。一体他にどんなオチが。。。

こち亀オチ

こち○オチって。。。







水都への挨拶を済ませた春信が去った後、土煙を上げて突撃してくる影
その影がその手に持つのは『生太刀(いくたち)
それを振りかざし少女は叫んだ

「春信はどこだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

その勢いに気圧されながらも正直に答える小学生3人

「お、お兄さんなら~わけの分からない理由で~愛媛に~」

「な、なんでも長い事本編に戻ってこない球子さんを迎えに行くとか」

「ア、アタシたちにそんな言葉だけ残してダッシュで行っちゃいましたよ」

「おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!逃げたかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

3人の言葉を聞くと同時に叫びながら走り去るその少女を見送り呟く5人

「ど、どうしたんだろう…?」

「ワッツハプン?一体なにがあったの…ひなたさん?」

「あ~やっぱり今のひなた先輩だよね~」

「だよね~って、まあ確かに疑いたくなるくらい言動がおかしかったけどな…」

「風さんはもういきなり殴られる事はないと思うって笑ってらしたけど…」

「それどころじゃ済まなそうだな、こりゃあ…」

「あ、そうだ歌野さん…」

「どうしたの、須美ちゃん…」

「お茶と牡丹餅も持ってきたんです…」

「そう、みんなで食べましょうか、何も考えずに…」

「ノーマインドだね…」

「そこ、水都さんが英語で言うんすか…」

「ミノさんのツッコミもいつもとちがうね~」

牡丹餅でお茶しながら5人が見送った土煙と叫び声は遥か遠くへ響いていくのであった







またひなたかよ!結局ひなたかよ!!ひなたに恨みでもあんのかよ!!!

おっ、やっと突っ込んだか

突っ込むわ!こんなアホなオチ見せられたら突っ込んでまうわ!

春信も素に戻ったし、今回はここまでだなっ!

突っ込ませただけで放置すんな!

バイバーイ

勝手に終わんな!

<一・段・落>





<番外編>

《2話前の部室にて》

「ははは。。。それでは3人で向かいましょうか」

「「はいっ!」」

歌野の畑へ向かう銀、須美、春信。
それを見送る風と東郷は

「「はあぁ~っ」」

大きな溜息をついた。

「さっきはちょっと焦っちゃったわぁ」

「いきなり『必殺技』ですからね」

「アタシャ、てっきり誰かが『満開』の事、漏らしたのかと思ったわよ…」

「私も、風先輩が銀に話したのかと…」

「言わないわよ、須美ちゃんの脚とか、園子ちゃんの事とか、ややこしいじゃない…」

「実際、どんな話をしたんですか?風先輩忘れかけてたみたいですけど」

「あー、さっきの話で思い出したんだけど、正直忘れててもしょうがないのよ…」







<ある日の勇者部部室>
風は大赦へ勇者一同の旅行をお願いするメールを打ち込んでいた。

「えっと、『勇者たちの中でも疲れが目立って…』いや、ここはもっとこう…」

ドタドタドタ
そんな擬音が見えるかのような音を立てて勇者部へ舞い込んだ球子と銀。

「風~!」

「風さん風さん風さん!」

「あー!なによ、騒がしいわね、何かあったの?」

打ちかけのメールを置いて二人の話を聞く風。

「お前ら!ロボに乗ったのか?!」

「必殺技でビームは撃てるんですか?!」

「はあ?!」

「「だから!」」

「勇者の合体技でビーム撃ったり!」

「勇者ロボを呼んで大きな敵と戦ったり!」

「なによそれ!そんなのできるわけないでしょーが!」

「ほーらな!タマの言うとおりだったろ!」

「えー!きっともう出来てると思ったのにー!」

「まあ、そう残念がるな、銀よ。
ロボなんてなくてもタマが旋刃盤に乗せて今度飛ばせてやるから」

「ホントッスか!」

「ああ、まかせておきタマ…」

またドタドタと廊下を駆けて行く二人を風は呆れた顔で見送っていた。

「なんだったのよ、いまのは…
ああ、さっきなんて打とうと思ってたんだっけ?
えーと、『勇者たちを労って』だったっけ…?」







「ってな感じだったから、『必殺技』なんて言葉自体、印象に残ってなかったのよ…」

「それは…」

「しょうがないでしょ?」

「まあ、確かにそうですね。それにしても」

「あん?」

「あの二人、本当に仲が良いですね。」

「男の子の兄弟ってあんなんなのかねぇ?」

「まあっ、風先輩ったら」

「男の子の兄弟ですか?」

「あら、ひなた、それに若葉も」

「いつも一緒で仲が良いですね、お二人も」

「もちろんです。今もデートの帰りですから」

「おい、ひなた、単に宿題をしに図書室へ寄っただけだろう」

「若葉ちゃん、それを図書室デートっていうんですよ、世間では」

「そっ、そうなのか?」

「おいおい、簡単に丸め込まれてるんじゃないわよ、若葉…」

「え?あっ!ひなた!お前また…」

「そんな事はありませんよ。東郷さんにも聞いてみればわかります」

「ええっ!私にですか?!」

いきなり横から振られて戸惑う東郷。
若葉は真剣な面持ちで質問しようと詰め寄るが

「よし、確かめてやる」

ひなたの言葉のほうが早かった。

「では東郷さん、『東郷さんが結城さんと図書館で宿題をした』とし…」

「デートですね」

東郷の返事は更に早かった。

「なにいっ!」

「東郷!?」

「それはデートです。間違いありません。問題もありません」

「東郷…アンタって子は…」

「ほらみなさい、若葉ちゃん」

「むう、そうだったのか。すまない、ひなた。お前を疑うなんて」

「いいんですよ、若葉ちゃん。それより男の子の兄弟って?」

「え?(ひなた…ここで終わらせちゃうんだ、今の会話…)
あ…ああ、球子と銀が仲の良い男の子の兄弟みたいだって話よ」

「あの二人か、ふふふ、確かにな」

「私は男の子の兄弟がどんなものかあまり分からないですけど」

「我々勇者の中には兄弟がいる者は少なそうだな」

「銀には弟さんが二人いますよ」

「そういえばそんな事言ってたわね、こっち来た頃に」

「きっと話に出ると会えなくて寂しいと思いますから、銀の前では言わないであげて下さいね」

「東郷さんはいつも銀ちゃんのことを気に掛けていますね」

「ええ、大切なともだちですから」

「そういえば、夏凜にも兄がいたな」

「あら、そうなんですか?」

「あ…しまっ…」

「ああ、さっきまで来てたわよ。ってか覚えてないの、ひなた?」

「あっ…風さん…」

「この間、すごい事になったじゃないですか、春信さんと」

「ああっ…東郷、それはっ…」

「ハル…?」

その名を聞いた途端、ひなたの目の色が変わり、部室の匂いを気にしだす

「匂う…」

「「え?」」

「ヤツの匂いだ!」

「ひ、ひなた…」

「若葉ちゃん」

「な、なんだ?」

「『生太刀』を」

「え…そ、それは…」

「『生太刀』を出せ!」

「はいぃ!」

ズザッと跪くように生太刀をひなたに差し出す若葉。
ひなたはそれを受け取るとスラリと抜き身にし

「春信はどこだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

叫びながら飛び出していった。
若葉はそのあとへ続き

「ひっ、ひなたっ、さつっ殺人だけはっ、それだけはっ…」

嘆くように呟いていた。
呆然としながらそれを見守っていた二人が呟く。

「東郷…」

「なんですか、風先輩」

「訂正するわ…」

「なにをですか、風先輩」

「『あんな事はもうない』ってお兄さんに言ったこと…」

「あれですか、風先輩」

「あれ以上の事しかもうないと思うわ…」

「そうですか、風先輩」

「いや、なにがよ!一体なんなのよ!何があったのよ!二人とも!」

廊下で若葉が飛び出したのを見て慌てて部室へ来た夏凜には
残った二人にツッコミを入れるのが精一杯であった。


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21話 オ・マ・ケ・5

オマケでは本文でグダグダ話、後書きでキャラのやりとりが基本となっております
キャラ崩壊なども含むのでご注意ください



春信(以下略):久々のオマケだな、今回

 

mototwo(以下略):うん、まあな

ちょっと触れておきたいことがあってな

 

なによ?

 

感想…増えてました~!!

 

ほほう!どれどれ。。。

おお!6つも増えてる!

 

その内の二つは前の締めを書いた後と

動画を作った後に増えてたんだぜ~

 

また随分と放置してたんだな。。。

 

うむ、実は結構前に気づいてそれに対するお答えとか書いてはいたんだ

 

なんで上げなかった。。。

 

一旦終了ですって言って、オマケだけ上げるのもなんだし

かといって何か話も思い浮かばなかったし…

 

おかしなとこばっか気にする奴だ。。。

でも、だったら17話の『名誉勇者』の後書きに書けばよかったじゃん?

 

うん、そうなんだけど、あの時は久々の投稿で色んなこと忘れてたし

 

ああ、注意書きも忘れたんだっけな。。。

 

その上、後書きはあの春信だったろ?

 

あの気持ち悪い奴な~

 

お前が言うか…

 

アイツが色々持ってったおかげで俺の出番ほとんどなかったからなぁ。。。

 

いや、あれもお前だろ…

 

アイツ自身言ってたじゃん?

「仕事モードの私ってほぼ別の人」って

 

ああ、まあな

 

しかも「私のまともな登場」とか言ってやがったし

 

ギャハハハ、お前は「まとも」じゃない訳だ

 

その上、アイツ。。。

 

まだあんのかァ?

 

夏凜ちゃんのこと呼び捨てにしやがるんだ。。。

 

いや、それは結構な人数いるだろ…

 

男で夏凜ちゃんを下の名呼び捨てとか許さん!例え兄でも俺でも許さん!

 

俺でもって…

 

俺、アイツ嫌~い!

 

なんか…もっと自分を好きになる努力というか、好かれる努力とかしたらどうだ?

 

イラネ

 

いらねって…

 

そんな事より、感想に触れなくていいのか?

 

あ、ああそうだったな、まあ以前書いた文を貼り付けるだけになるけど

 

んじゃさっさといこう!

 

【 】の間が貼り付けた分です

そんなに読者とかいねえから心配ないだろ

 

ふっふっふ、そう思うだろ?

 

あ?なんだ?強気だな

 

また感想が増えてたのさ!

 

なにぃ!!どれどれ!

「動画を見てから来ました。」

か!アレ、ちゃんと見てくれた人いたんだな!

 

youtubeとニコニコ動画で閲覧数が1桁違うから正直、どこが失敗だったかばかり考えてたが

 

コメントもほぼなかったしな

 

「雑コラでもいいのよ」には心が揺り動かされたけどな

 

お許しが出てるなら作ればいいのに

 

ツールがなぁ…

 

ホント、そういうとこのやる気ないねぇ。。。

 

ちなみにこないだの締めの直後にも感想もらってた

お前のファンみたいだったぞ

 

え?俺?いやー主人公の面目躍如ってわけか!

 

「シスコンでロリコンで変態痴漢野郎なツッコミ体質コミュ力不足の最弱勇者である春信」

と的確な評価をしてくれている

 

なんでだよ!

 

更に追記で

「そして僕はデブオタニート時代の春信も忘れない。」

とまで書いてくれたぞ

 

それは。。。俺としては喜んで良いのか?

 

ファンのありがたいお言葉だ

ホレ、喜べよw

 

お前の口から出ると、むかつきしか感じられんな。。。

 

っていうか、前書きと後書きが順序逆になったから読んでる人には訳が分らんかもな

 

ホント、文章書くの下手だな、お前

。。。?

 

どした

 

いや、ホントに切り取って貼り付けただけなんだな。。。

 

そう言ったろ?

 

最初と最後の数行、どういうつながりだよ!わけわかんねえぞ?

 

最初のは、元々『別の話』に今の後書き書いてたんだけど、

その『別の話』が読者受けするかわからん話だって流れで…

 

それでそんなに読者いねえから大丈夫、か。。。で、最後のは?

 

最後のは『ある話』の前書きに別の感想のお答え書いたんだけど、

その前に今のをまた『別の話』の後書きに書いてあって…

 

順番に上げろよ。。。

 

『ある話』ってのは短いから今回の後書きにした

 

そんなに短いの?

 

うん、単体で上げると「ショートコントか!」ってくらい短い

 

俺のツッコミ取るなよ。。。『別の話』ってのは?

 

逆に長くて上げるタイミングが無い。まだ最後まで書けてもいない

 

それってお蔵入りのパターンじゃね?

 

そうならないように頑張ろう…とは…思う…

 

アテにならんなぁ。。。

ま、いい次の感想いこ!

 

次のは「17話 名誉勇者」の後で書かれた感想だな

『鷲尾須美の章』の最終回放送後『結城友奈の章』の総集編あたりで書いたやつ

 

【 】の間が貼り付けた分です

ってことは新しい2つは一気に増えたわけか

 

うむ、考えてみりゃ放送中だから書いてる人も読んでる人も増える時期なんだよな

 

上手く乗っかって感想5倍か!やったな、おい!

 

ホントにな、『ゆゆゆい』の新しい情報入って思いつきで書いちゃったが

良いタイミングだったぜ!

 

相変わらず考えなしに動く奴だな。。。

 

結果オーライよ!

んでその新しい2つだが

 

え?その前の2つは?触れんの?罵詈雑言だったの?

 

あ、そっちは後書きで触れるから

 

え。。。なんで?

 

単に順番だ

この前書きより後書きのが先に書いてたんだよ

 

そ、そうなのか、まあいいけど

 

で、一つが

「面白かったです。

続き待っております!」

だってよ!

 

待ってもらえるってのは嬉しいもんだなぁ。。。

 

続きなんていつになるかわからんのになあ

 

をい!

 

だって、前回書いたのって思いつきだから

続きとか何か降りてこない限りひり出せない…

 

降りてくるはともかく、ひり出すって下劣な表現ヤメロ

だいたい、これ書いてるって事は本文では続きがあるんじゃないのか?

 

あ~、うん、続きっていうか、続かなかったっていうか

 

また後先考えずに見切り発車したってか?

 

まあ、うん、そんなとこ

 

ホントにもう。。。

 

そ、それはともかく、いっちゃん新しい感想はだね

 

おう、どんなだ?

 

「春信君、ひなた様にマウントポジションを取られる(裏山)」

 

俺は意識高いドM提督じゃねーんだよ!

 

また分りにくいネタツッコミを…

 

いや、アレを羨ましがられても困るわ。。。

 

「ifルートで園子様とのラブラブルート欲しいなー?」

とも言っているが

 

ラブラブ?

園子嬢の顔面はたきまくる夫婦漫才でもすればいいのか?

 

その行為のどこにラブが二乗されるのか説明して見せろ…

 

俺は夏凜ちゃんのハリセンなら愛と受け止められるぜ!

 

んで、さらに

「ところで勇者の章について何かありますか?自分は不安です」

と言っておられるな

 

説明したのに流すのか。。。

 

あんなものが説明になるか

 

俺の夏凜ちゃんへの愛は愚鈍なオッサンには理解できんのだろうなぁ

 

今の流れで言えば理解したくもないけどな

 

っていうか、紹介したなら返事しとけよ感想

 

あ、そうね

俺も不安しかないわ

鷲尾須美の章が始まる前の友奈だけが出てるCMも

「15秒で不安にさせるCM」とかタグ付けられてたし

こないだ公開された公式のPVも園子の満開箱舟っぽいの見えてたし

 

俺はその前の

「ノギ…園子だぜぇ~!!」

でなんか安心しちまったけどな

その後の夏凜ちゃんの反応も可愛かったし!

 

夏凜ちゃん、園子の事「伝説の勇者」として話聞かされてたみたいだな

 

銀と園子嬢の事は聞いてても不思議じゃないか

須美の事はやんわりぼかしてそうだが。。。

 

勇者部に既にいるとか、ややこしいもんな

なんていうか、ややこしいな、こうやって貼り付けると。。。

 

まあ、あの頃はこんな事考えてたんだなあって程度に見るしかないな

 

今回のオマケが21話で、今貼った会話の後で見た『勇者の章』1話の感想が18話にあるとか

 

ハハッ、ホントややっこしいわw

 

お前が言うな!

 

ほら、俺の投稿ってノリと勢いでやってるとこあるから…

 

計画性の無さがありありと浮き彫りになってる訳だ

 

今紹介した感想のお返事も書き直そうかと思いはしたんだが

 

最終回まで見た後でそれを書いてもなぁ。。。

 

いつか上げられたらと書いてて良かった、と思う事にしよう!

 

いい加減さがにじみ出てやがる。。。

 

そして更に新しい感想が来てます!

 

ほう、どれどれ?

『地味に気に入っていた小説なので最近更新してくださってうれしいです。』

か、喜んでもらえてよかったな、『地味に』

 

ああ、嬉しい限りだな、『地味』な主人公のせいで『地味』な人気しかでない話だからな

 

いやいや。。。『地味』なオッサンが書く『地味』な話のせいじゃねーかな、そ・れ・は

 

人の頭、アイアンクローで押さえつけてんじゃねーぞ、『地味』な若造

 

そういう事は、俺の鼻と顎引っ張ってるその手離してから言えよ、『地味』過ぎオヤジ

 

 

。。。

 

「「ケッ!」」

 

まったく、読者様の感想にいちいち突っかかりやがって

 

流しゃー良いんだよ、ああいうネタは。。。いちいち引っ掛かってんじゃねーよ

 

 

。。。

 

「「あ”あ”ん?」」

 

って、ちょっと待て、ここ二人だけだから

空気悪くしても誰も突っ込みもフォローも入れてくれねえ

 

それもそうだな、軌道修正しようぜ。。。

 

地味にでも気に入ってもらえてるなら嬉しいのは確かだ

 

うむ、ここは素直に喜んでおこう

 

「「ひゃっほーい!」」

 

これはこれでわざとらしいな。。。

 

いいんだよ、ちょっとあざといくらいが丁度いいって言うだろ?

 

誰の言葉だ、それは。。。

 

さあな、さてと次だ

 

おう、コレが最後か

『改めて読み返しましたが、園子様のヒロイン感がすごい高いように感じましたね。

もう、春信は園子様とくっつくのがいいんじゃ…』

いや、よくねーよ?

 

即答か

 

この小説のヒロイン、夏凜ちゃんだからね?

みんな、勘違いしちゃダメだよ?

 

ほとんど出てこない

出てきてもツッコミしかしない

主人公に好意を示さない

ヒロイン要素皆無だな、妹って事を差し引いても

 

何言ってんだ、好意なら示してたろ

 

は?どこで?

 

17話のここ

『「べ、別に構って欲しかった事なんてないから!」』

『「ば、バカ言ってんじゃないわよ!』

ホラ、典型的なツンデレ台詞じゃん、夏凜ちゃん俺のこと大好きじゃん!

 

お前、本気か…

 

本気も何も、夏凜ちゃんが俺のこと大好きなのは事実だし

 

すげえな…お前くらい大らかなら人生幸せなんだろうなぁ…

 

夏凜ちゃんに愛されまくりの人生、幸せしかないな!

 

まあ、夏凜ちゃんは置いとくとしても

 

置くな!

 

過去から戻ってからは、基本からめる原作キャラが園子くらいしかいなかっただけなんだよな

 

ああ、夏凜ちゃんと会わないようにしてたからなあ

 

面識の無い勇者部メンバーと外で会うのも不自然だし

園子となら会っててもOK的な空気が原作ゲームや勇者部所属で示されてたから

 

どうせ『非公式』謳ってんだから、開き直って

夏凜ちゃんとの禁断の兄妹愛に突き進めばいいのに

 

開き直りすぎだろ、それは…

 

ま、ゆゆゆい時空では勇者としても三好春信としてもみんなに会えるし!

 

あ、それなんだが

 

あん?

 

『ゆゆゆい』でも春信にはどうせ触れてこないだろうと思って油断してたんだが

 

おう?

 

正月イベントでちょっとだけ触れられてたわw

 

俺様っては人気者~!

 

はっはっは、よかったな

 

お。。。う?

 

どした?

 

いや、素直に喜ばれるとなんか裏がありそうで気持ち悪い。。。

 

まあ、その辺はおいおい触れていくと思うから

 

はあ?やっぱ裏があんのかよ!

 

気にするほどの事でもないぞ、名前も出てなかったってだけで

 

なんだよそれ?!ホントに俺の話だったのかよ?!

 

そんでやっぱ触れてたのは園子だったんだけど

 

おい!話聞け!

 

園子についてさっきの感想の続きが

『もしifルートか後日談があるなら是非春信と園子様のお話を期待しています。

追伸:楽しく読ませてもらっているのでこれからも頑張ってください。』

だそうだ

 

え?ifルートはともかく、後日談ってなんだ?

 

書き込んでるのがTV最終回以降だから、そういう後日談じゃないかと

 

勇者部が炊き出ししてたような世界の話か

 

大赦の重要人物から土だか麦だかになってそうなあの世界で春信って生き残ってんのかね?

 

俺が夏凜ちゃんを置いて神の眷属なんぞになるわけないだろ

 

こっちのお前はそうだろうけど…

そうだとしても一体何してんだろうな?あの世界で

 

頑張った少女たちがその後も頑張ってんだ、それを支える為に頑張るに決まってる

 

大赦って組織もどうなってるかわからんし、色々情報が欲しいところだな

 

どうせ情報があっても。。。

 

書くかどうかは気分次第だけどな!

 

ホントいいかげんでテキトーだな

 

悪くない

 

は?

 

良い加減に適当な調整は大事だ

 

勝手にポジティブに解釈すんな!

 




<16.5話 犬吠埼大車輪>

「プロテクトッ!ウォーッルッ!!」

「のうわぁーーーっ!!」

球子の首根っこを掴んで盾にする仮面の勇者!
構えた旋刃盤と輪入道のバリアが敵の攻撃を防ぐ

「おっ、お前ぇっ!いきなり何すんだーっ!!」

怒り心頭で抗議する球子に対して
落ち着いた様子で返す仮面の勇者

「大丈夫でござるよ、土居球子
今のお主は精霊バリアと旋刃盤で鉄壁の守り!
どのような敵の攻撃も防ぐ事ができるでござる!」

「いや、そういう問題じゃないだろ!」

「その上、お主が本気になれば、マホ○ンタ並の反射力すら身につけられるでござる!」

「え?マホカ○タってドラク○の?ホントか!?」

「無論でござる!土居球子の力はこんなものではないでござるからな!」

「あ?ああ!まあ、そうだな!タマが本気出したらあんな攻撃跳ね返すくらい楽勝だけどな!」

「期待してるでござるよ!」

「おう!タマに任せタマえ!!」

「ああ…タマっち先輩、簡単に言いくるめられてる…」

心配する杏をよそに更に調子に乗る仮面の勇者

「さあ!次は攻撃でござるよ!」

「え?ええええっ?!」

結城友奈の足を掴み、ブンブン振り回すと敵に向かって投げ付ける!

「ブロウクン。。。マグナァァァァムッ!!」

「ゆっ、勇者パーンチッ!」

しかしその攻撃は敵のガードに阻まれ友奈はまた仮面の勇者の下へ飛ばされる

「いっ…痛たたたっ!」

「くっ。。。これでは足りぬかっ!ならばっ!!」

今度は近くにいた高嶋友奈の足も掴み、両手で一人ずつぶん回して投げ付ける!

「「えええええ!!」またぁっ?!」

「いっけぇっ!!ブロウクンファントオォムッ!!」

「「だっ、ダブル勇者パァーーーーンチッ!!」」

声をそろえて突き出した二人の友奈の拳が敵のボディを貫く!

「よおっし!トドメでござる!!」

敵の懐へ飛び込み、必殺の一撃を繰り出そうと構える仮面の勇者!

「ヘル!」

「え?」

千景の手を取り

「アンド!」

そのまま敵に突っ込むと

「ヘブン!」

「なに?」

途中にいた夏凜の手も取り
二人を連れたまま敵に向かって体当たりする!!

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

巨大なボスの目の前に突き出された二人は
思わず各々の必殺技を繰り出した!

()怒レル!狂気ノ刃(やらせない)っ!!」
()っ、二双殲滅斬(くらえ)っ!」

二人の同時攻撃により
瞬殺されるボスバーテックス!

「ふうっ。。。完全勝利でござるな!
それではさらばだ!アデュっゲフッ。。。」

「待ちなさい…」

そのまま立ち去ろうとする仮面の勇者のマフラーを掴み、その場に倒しこむ千景

「どういうつもり…」

仮面の勇者の上から見下ろし睨みつけている
その様子にハッとなり夏凜も問い詰める

「そっ、そうよ!私達を何だと思ってんのよ!」

「い、いや、以前、白鳥歌野が『合体奥義』とか言ってたのを思い出して。。。でござる」

「それで?!バカなの?アンタ?!」

「そんな事は聞いていないわ…」

「え。。。?」

「そうよ!もっと言ってやんなさい!千景!」

「なんで三好夏凜は『天国(ヘブン)』で私は『地獄(ヘル)』なのよ…」

「そうそう、まったく…って千景?!」

「納得のいく答えをもらえるかしら…」

「あ、あの…そこは気にする所じゃ…」

「いいえ…重要よ…」

「そうだよ!ぐんちゃんは天使なんだから!地獄なんて酷いよ!」

「高嶋さん…///」

「いや、それ以前にあの扱いを…っていうか、そっちの友奈も投げ飛ばされたでしょうに…」

「もちろんその事もこの後、問い詰めさせてもらうわ…
さあ、答えてもらいましょうか…」

弱腰のツッコミを入れる夏凜をサラリと流し、更に詰め寄る千景

(う~。。。僕にとっては夏凜ちゃんが天使だし、
鎌持った千景は地獄っぽいな~ってだけだったんだが。。。)

「何を黙っているのかしら…」

(ま。。。まともに答えても許してもらえそうにないな、コレは)

「ふ。。。ふははははははははははっ!」

「「えっ?!」」

「てえいっ!イミテイトレプリカ!!でござる」

ボウンッ

「え、煙幕?!」

「甘いわね…マフラーはまだ私の手の中よ!」

グイッとその手のマフラーを引き寄せる千景
しかしその手に寄って来たのはまたしてもマフラーと仮面のついた丸太であった

「くっ…また変わり身…」

カッ

丸太に鎌を打ちつけ悔しがる千景を高嶋友奈が慰めつつ
勇者たちは拠点へ帰って行った

その後…

「や、やばかった。。。」

丸太がパカリと開くとその中から姿を現す仮面の赤き勇者(仮面と長マフラーなし)

「あと数ミリ深く鎌が刺さってたら即死だった。。。」

丸太から外した仮面で血まみれの顔を隠しつつ

「だが。。。これでハッキリしたな」

長マフラーを巻きなおし言い放つ

「僕がまともに戦闘に参加すると碌な事にならない!やはりピンチ以外は隠れていよう!!」





コレって、以前上げた動画のネタじゃねーか?

そうだよ?

手抜きもはなはだしいな。。。

まあ、そう言うな、必要だったんだ

だいたい、16.5話とか、犬吠埼大車輪とかなんだよ?
犬吠埼姉妹なんて1ミリも出てねーじゃねえか!

ああ、『犬吠埼大車輪』は『ゆゆゆい』本編で出てきた犬吠埼姉妹の合体奥義だ

えっ。。。あの二人、そんな事してたの?

ちゃんと叫んでたぞ、技名も

はっはっは、姉妹揃ってアホな子だな!

素でそれをやるお前が言うか。。。

俺のは設定上仕方なくだもーん

今回の見る限り、好きでやってるとしか思えんけどな…

いいんだよ!俺の事は!
で、16.5って?

16.5ってのは17話の名誉勇者で部室行ったろ?

あの気持ち悪い春信がな

気持ち悪いって…
まあ、そんときに千景が怒ってたろ
『よくも恥ずかしげもなく顔を出せたわね…』
って

ああ、あれな。なんであんな怒ってたんだろ?

アレはこの話が間にあったからなのよ

え。。。

お前の無茶苦茶な行動が千景の逆鱗に触れたわけだ
あの時点で 仮面の勇者=春信 って認識だったからな

ええ~~

高嶋さんがいなきゃいきなり引っ(ぱた)かれてたかもな

そ、そんなバカな。。。

いや、むしろなんで怒られないと思ったのか、小一時間…

くっ。。。裏方に徹すると言いながら前に出てしまった報いか。。。!

いや、出るなら一人で出ろって事なんだけど

しかし、ホントに短かったな、動画にすると結構あるように見えたのに

うむ、前後の駄文合わせて10分近くあったからな、5分くらいで出来ると思ってたのに

もうちょっとシェイプアップできたんじゃねーの?

まあ、台詞1つずつの時間も調整しないまま上げたからな

手抜きばっかだな。。。

いや、アレは元々自分でもありえんくらい期間制限したから

ああ、ツールの使用期間が終わる寸前だったんだっけか

溜まってるビデオもラジオも消化せずに作ってアレだからな
正直もうツールがあってもやろうとは思わんだろ

他の人たちがどれだけ苦労して作ってるか、ちょっとでも体験できて良かったと思え

そうね、ただのスライドショーでもあれだけ手間なんだから…

ちなみに、どんな作業が一番辛かった?

え?一番?そうだな…ストーリーは元々あるやつだったし
画像は基本スクリーンショットの半々で切り貼りだったし

ほうほう?

その画像っていうか表情の選択はしんどかったけど、一番って言うと…

なんだ?

音だね

おと?

無音にするのはなんだからBGM入れたんだけど
音楽って知らない曲だとしばらく聴かないと雰囲気掴めないから

知ってる曲使やいいんじゃないの?

ん~、版権とかややこしいと嫌だなって思って
実際、フリー音源でも強制的に広告が入るやつもあって
知らずに作った1作目はそれで作り直しになった

は~、意外と面倒なんだな。。。

ホントはBGM以外にも効果音とか入れたかったんだけど、音源も入れ方もよくわからんかった

ま、次に活かせばいいさ

いや、だからもう作らんって…

どうせ気分次第だろうからこれ以上言わんけどなw

勝手に期待されても困る…

とにかく、そろそろ締めにかからんと1週間経っちまうぞ

お、そうか。んじゃ、あれ行っとくか

あん?

あの日、あの時、春信はどこで何をしていたのか

え?

(くすのき)芽吹(めぶき)たちの集められたゴールドタワー、そこに集まる大赦の思惑

芽吹って。。。

過去の奉火祭、そして勇者の章へ繋がる物語

ああ、前に言ってた『くめゆ』読んで思いついた話か

『新 三好春信は勇者である-楠芽吹の章-』全3話

3話か、随分短いな。。。

次回より開始!

でも、俺何もしてないし何もできないって言われたんだよなぁ。。。

注:芽吹たち防人は誰も出てきません。過度な期待はしないで下さい。

っておい!

<ホントかな?ウソかな?>


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22話 ゴールドタワー

今回から少しだけ『楠芽吹(くすのきめぶき)は勇者である』の話が続きます。
ネタバレを含みますが、メインキャラは誰も出てきません。
過度な期待はしないようにお願いします。


「センケイデン?」

 

春信は女性職員からあるプロジェクトの説明中に

耳馴染みのない名を聞かされ思わず反芻(はんすう)した。

 

「ご存知ありませんか?宇夫階(うぶしな)神社の駅向かいにある改装中の高層ビル…」

 

「ああ、ゴールドタワーの事ですか」

 

「ええ、大赦内では昔からあのタワーを…」

 

「大赦内だけの呼び名など、どうでもいいでしょう。。。

で、ゴールドタワーで何が進行中だと?」

 

「あ、はい、この資料にある…」

 

女性職員の説明を聞きつつ資料に目を通す春信

 

ダンッ!

 

「馬鹿な!」

 

「ど、どうされたんですか?」

 

いきなり机を叩き、立ち上がる春信の声に驚く女性職員

 

「壁外調査、この資料は。。。」

 

「ああ、防人の少女達のデータですね」

 

「サキモリ。。。」

 

「ええ、勇者候補生たちが量産型の勇者端末を用いた戦士たち、防人です」

 

「勇者でもない少女達をあの壁外へ向かわせるなんて。。。」

 

「勇者ではないと言っても、量産型の勇者端末は使用していますし

彼女たちは候補生として訓練も積んでいます」

 

「訓練を積んだといってもこのスペックでは。。。」

 

「先のバーテックスとの戦闘では半数近くがずぶの素人である讃州中勇者部が戦ったんですよ?

もちろん、防人は戦闘力は勇者に遠く及びませんが、壁外のマグマ状の土壌でも耐えられるほど

耐火性能は上がっています、調査だけでそれほど気になされる事は…」

 

「外は星屑が無尽蔵に生み出される世界です!

そんな中を調査だけで帰ってこれる筈が!」

 

「勿論、それも対応装備が準備されています。万一、戦闘になった場合

星屑程度なら集団戦術で倒せる銃剣、攻撃を防ぐ盾を持つ者たちもいます。

32人の防人たちならきっと任務をこなせる筈です」

 

「くっ。。。」

 

(なんてことだ。。。

友奈達の頑張りがこんな形で裏目にでるなんて。。。

讃州中勇者部が無事帰ってこれたのは精霊の加護があったからだ。

それを素人でも生き残ったからと上層部が判断してしまうなんて!)

 

立ち上がり、掛けてあった上着に袖を通すとまた職員が声を上げる。

 

「どこへ行かれるつもりですか?!」

 

「決まってます、ゴールドタワーですよ」

 

「そんな、これから午後の予定が…」

 

「全てキャンセルです、これは最優先事項ですから」

 

話しながら足も止めない春信を、職員はだた(あき)れて見守るしかなかった。

ゴールドタワーに着いた春信の応対をしたのは仮面をつけた白装束の女性神官だった。

 

「ええ、確かに彼女たちは『勇者』ではありません」

 

「その『勇者』でもない少女達を壁外へ(おもむ)かせるおつもりか」

 

「彼女たちは『防人』ですから」

 

「『防人』。。。そのスペックは資料で見せて頂きました」

 

「ではお分かりでしょう」

 

仮面をつけている上、その言葉には抑揚がなく、何を思っているのか読み取れない。

 

「ええ、わかりますよ。

アレで壁外調査など無謀の極みだってことくらい」

 

「壁外調査はマグマ状の土壌採集から始まります。

戦衣(いくさぎぬ)』を(まと)わぬ『勇者』ではその熱に耐えられません」

 

「だが『防人』の纏う『戦衣』では戦闘に耐えられないでしょう。。。」

 

「危険は承知の上です、勿論彼女たちも」

 

「机上の話をしてるんじゃないです!

実際に敵と遭遇したら戦うのは何の経験もない少女達なんですよ!」

 

「誰でも最初から実戦経験豊富な者などいません。

そして彼女たちはいずれも厳しい訓練に耐えた勇者候補です」

 

「あなた達は何もわかっていない!あの化け物共と実際に対峙して戦う恐怖を!」

 

「まるで…ご自身は経験があるように仰るのですね…」

 

「ぐっ。。。」

 

思わす答えに詰まる。

春信が勇者として戦った事実は現在の記録にはない。

これでは何も知らずにただ喚いていたずらに恐怖を煽っていると思われても仕方が無いのだ。

 

「ご心配されずとも我々も彼女たちが『戦衣』で

星屑以上の相手と戦闘しないよう言い聞かせております」

 

「しかし現場では。。。」

 

「第1回調査の結果をお待ちください」

 

「くっ。。。」

(これ以上は。。。無駄か。。。)

 

言葉を遮《さえぎ》られ、この女性神官がもう自分の意見を聞く気はないのだと悟る。

現時点、春信には身を引く事しかできなかった。

 

「わかりました。。。

ですが、覚えておいてください

万一、一人でも犠牲者が出たなら。。。」

 

その言葉にも女性神官は深々と礼をするだけで何も答えはしなかった。

 




春信(以下略):短っ。。。!

mototwo(以下略):うん、ホントに短いんで今回は次の話も同時投稿だ

一つにまとめろよ、だったら。。。

まとめる文章力が無かった

ホント、だらしねぇ。。。

んで、次回予告

えっ?

奉火祭…
それは火の中へ巫女を奉げる祭り…儀式…
西暦の末期に行われたその儀式が神世紀にまた…
儀式を止めようと急ぐ春信はとある少女に思いを馳せる
「お前たちは。。。いつもそうだ。。。」
次回『新 三好春信は勇者である-楠芽吹の章-』第2回「巫女」
なぜいつも僕は出遅れる。。。

コレ、必要。。。?

<すぐ次へ!>


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23話 巫女

今回は『楠芽吹(くすのきめぶき)は勇者である』の話を借りた『乃木若葉(のぎわかば)は勇者である』の話です
ネタバレを含みますが、『くめゆ』のメインキャラは誰も出てきません。
過度な期待はしないようにお願いします。



奉火祭(ほうかさい)。。。だと?」

 

「ええ、(たてまつ)る燃える火の祭と書いて奉火祭だそうです。

巫女を何人か集めて行う祭事(さいじ)のようですね。

たしか、防人(さきもり)担当の神官が中心に…

きっと、国土(こくど)亜耶(あや)も選ばれているからですね…」

 

「ふざけるな!」

 

あごに指を当て、思い出しながら言う女性職員の言葉に、怒りのままに部屋を飛び出す春信。

女性職員は「またか」という顔で、声をかけることも出来ず見送っていた。

 

(奉火祭。。。あの()まわしい儀式(ぎしき)をまただと?!)

 

ゴールドタワーで会った仮面の女性神官

彼女に話をつけようと急ぐ春信の脳裏に西暦の時代へ飛んだ頃の記憶が蘇る。

 

 

<西暦末 大橋上>

 

大勢の神官を引き連れ輿(こし)(かつ)がれた6人の巫女と共に(おごそ)かに歩みを進めるひなた

 

「やはり…現れましたか…」

 

その行く手を遮るように立つ姿。

仮面の赤き勇者である。

 

「。。。」

 

「こうしてお会いするのは初めてですね…初めまして、私は…」

 

上里(うえさと)ひなた、こんなに大人数でどこへ向かう気だ?この先には壁と結界しか。。。」

 

初対面でいきなり名を呼ばれてもまるで動じる様子も無く

感情の無い人形のようにひなたは答える。

 

「その壁を越え、結界の外へ行くのです。『奉火祭』の為に」

 

「ホウカサイ。。。?」

 

「我々人類は天の神との戦いに敗北しました」

 

「敗北。。。だと?」

 

「ですから(ゆる)しを()うのです天の神に」

 

(確かに若葉以外の勇者を失い、四国以外の土地すらも失った状況は。。。)

「それで巫女を引き連れて天の神に許してくれって祈りでも(ささ)げるってのか?」

 

「奉げる…そうですね、我々は神に語りかけることなどできません。奉げるのみです」

 

「そんな事で天の神が許すとも。。。」

 

「奉げるのは祈りではなく、巫女そのものです」

 

「巫女。。。そのもの?」

 

「彼女たちにはこれから壁の外、天の神の領域でその身を奉げてもらいます」

 

「何を馬鹿なことを。。。

外の世界はもう火の海だ。人が生きていられるような場所じゃない、そんな所に。。。」

 

そこまで話すと仮面の勇者は言葉を詰まらせた。

 

「まさか。。。ホウカサイってのは。。。」

 

「結界の外、天の神が作りたもうた火の中へ巫女を奉げる祭り…儀式です」

 

「。。。!」

 

仮面をしているため表情は見えてはいない。

だが、その上からでも赤き勇者の動揺は明らかだった。

 

神代(しんだい)の時、それで赦されたという前例に(なら)った…」

 

「それは。。。生贄(いけにえ)だ」

 

淡々と説明を続けるひなたの言葉に(つぶや)くように言葉を重ねる

 

「…」

 

「それは生贄だっ!!」

 

表情も変えず黙ってしまったひなたに仮面の勇者が叫び(うった)えると

互いに会話にもならない思いをぶつけ合う。

 

「あなたに…何がわかるというんですか…」

 

「巫女を生贄に奉げて天の神に赦しを請うて!」

 

「戦う力を持つ事すら出来ない者達の…」

 

「それで残された狭い土地で生き続けるって言うのか!」

 

「ともだちの最期(さいご)看取(みと)る事すらできない私達の…」

 

「戦う事も諦めて何もしないまま生きていくのか!」

 

「戦う力がありながら、何一つ成せなかったあなたに…」

 

「ぐっ。。。」

 

自分の激情のまま発する声に対し

感情を殺したまま静かに話すひなた。

そのひなたの言葉に赤き勇者は思わず声を詰まらせる。

 

「勝手な話でしょうが…私はあなたに(ひそ)かに期待していたんです」

 

「期待。。。だと?」

 

「友奈さんのいないあの時、あなたなら千景さんを救えるかもと…」

 

「俺は。。。友奈にはなれない。。。」

 

固めた表情のまま眉だけをひそめ、ひなたは言葉をつむぐ。

 

「当たり前です…友奈さんの代わりなんて若葉ちゃんにだって出来ません」

 

「だったら。。。!」

 

「女に出来なくても、男のあなたにならと託したんです…三好…春信さん」

 

「。。。!

やはり。。。気付いていたのか」

 

仮面を外し、その素顔を(あら)わにする春信。

それはいつも彼女たちに見せていた顔ではない、苦々しい表情だった。

 

「だからこそ千景さんの過去をお教えしたのでしょう?

あなたなら男にしか出来ない方法でと」

 

「力ずくで止めれば良かったって言うのか?残念だが俺の力は乙女達には。。。」

 

「そんな風にしか考えられないから…」

 

「?」

 

「千景さんが友奈さんに心を開いたのは…無条件の肯定と愛情を感じたからです」

 

「肯定と愛情。。。?」

 

「本来、幼少期に誰もが得られるはずのそれを

千景さんは感じることが出来なかった…」

 

「あの。。。環境ではな。。。」

 

「なのに…あなたは…」

 

「?。。。どういうことだ?」

 

「まだわからないのですか!そんなだから…」

 

「上里様」

 

「!」

 

輿の上の巫女がかけた声に、ひなたは自分が押し殺していた感情を露わにしている事に気付いた。

 

「もうよろしいでしょう、それ以上は…」

 

「そう…ですね…もはや過ぎてしまった事…それに人の心を勝手な都合で…」

 

「。。。?」

 

巫女はそのまま顔を春信に向け語りかける。

 

「勇者様

私はあなたがどういう方なのか存じ上げません。

ですからお願い申し上げます」

 

巫女はひなたにも劣らぬ凛としたいでたちと声でハッキリと一言願い出た。

 

「道をおあけください」

 

「。。。」

 

あまりに迷いのない願いに一瞬言葉を失う春信だったが、それならばと

 

「乙女達には敵わなくても

ここにいる全員を蹴散(けち)らしてお前たちを無理やり戻すことぐらいなら出来るんだぜ?」

 

「まだ…そんな事を…!」

 

斜に構えた物言いの春信に抗議の声を上げようとするひなただったが、

巫女は手を差し伸べるようにして静止し

 

「輿を」

 

巫女の言葉に神官たちはゆっくりと輿を下ろす。

輿から下りた巫女は地に膝をそして手をつき頭を下げ春信に懇願した。

 

「どうか道をおあけください」

 

その姿には卑屈さが欠片もなく、むしろ気高さすら感じさせた。

その空気に気圧(けお)され、思わず(ひる)んでしまうが、それでも春信は声を上げる。

 

「な。。。何を言っているのかわかってるのかっ!?

このまま進めばお前たちは生贄として壁の外の業火に焼かれるんだぞ!」

 

しかし巫女は顔を上げるとその美しい瞳を真っ直ぐに春信に向け、

まるで動じる様子も無く応えた。

 

「私たちにはもう家族はいません」

 

自分たちが死んでも悲しむ家族はいない。

そんな意味合いを含ませたその言葉と表情はやはり真っ直ぐであった。

だがそれは春信を苛立たせた。

 

「。。。っ

だからどうした!家族でなければお前たちの死を悲しまないとでも思っているのか?!」

 

「そうですね…巫女となってからは人と深く接する事も少なくなりましたが…

きっとあの方々(かたがた)は私たちのことで悲しんでくれるのでしょうね…」

 

誰を思っているのか、その巫女は遠い目で空を仰ぐ。

 

「だったら。。。その人たちの為に生きようとは思わないのか?」

 

もう誰にも死んでほしくない、誰の死も見たくない、

そう思い放つ春信の言葉に巫女は首を横に振る。

 

「私たちはそういう方たちの為にこの命を奉げることを決めたのです。

私たちがこの身を奉げる事であの人たちは生きていける。

そのために…」

 

「ふざけるなよ。。。」

 

「えっ…」

 

巫女の言葉に返す春信の声には静かな、しかし確かな怒気をはらんでいた。

 

「ふざけるな!

そうやって。。。

残された者がどれだけ涙を流すのかわかっているのか!

どんな思いで生きていく事になるのか知っているのか!」

 

先ほどから感じていた苛立ちは明らかな怒りとなっていた。

だが、春信はなぜ巫女に対してこうまで苛立つのか良く分かっていなかった。

 

「いつも。。。いつもそうだ!

お前たちは。。。自分さえ犠牲になればと!」

 

言葉に出して春信は気付いた。この怒りは天の神とその使徒への怒りであり、

それに赦しを請う為に少女たちを犠牲にしようとする大社への怒りであり、

それを受け入れその身を犠牲にする巫女を今まで犠牲になってきた者たちと重ね、

それを救う事の出来なかった自らへの怒りでもあった。

 

「あの時も、あの時も。。。お前たちは。。。お前たちは。。。」

 

「…」

 

激情に任せ叫ぶ声は、犠牲になった人々の顔がその脳裏に浮かぶ毎に弱々しく震えていった。

そんな春信に巫女は悲しい笑顔で声をかける。

 

「あなたは…悲しいお別れを何度も繰り返して来たんですね…」

 

「くっ。。。」

 

「それでも…

人はきっと立ち上がれます…今のあなたのように…

どれだけ辛く…悲しい思いをしても…生きてさえいれば…きっと…」

 

「!」

 

(『どんなつらい目にあっても、人は必ず立ち上がれる』)

 

今は亡き諏訪の人々が語っていた勇者の言葉。

 

白鳥(しらとり)歌野(うたの)の。。。言葉。。。)

 

それと同じ思いを持つ名も知らぬ巫女に、春信は返す言葉を失い(ひざまず)く。

 

「ありがとう、勇者様。

最後にあなたのような方にお会いできて良かった…」

 

「僕は。。。勇者なんかじゃない。。。

目の前のお前たちすら救えない。。。ただの。。。」

 

弱々しく声を震わせ涙をこらえるのが精一杯の春信。

巫女はそんな春信の下へ身を寄せると

 

「では、勇者となってください

もう私たちのような娘達が出ることの無いように

世界を守る勇者に…」

 

そう言ってそっと手を伸ばし

春信の頭を抱え込むようにその胸に抱いた。

 

「ううっ。。。うああぁ。。。くそぉっ。。。ちくしょう。。。」

 

巫女の胸に抱かれ、こらえ切れず涙を流す春信。

勇者の力

己の無力

自分がここにいる意味

何もかもが分からなくなり

春信は涙を流すしかなかった。

 

 

(あれだけは。。。絶対に認めん!二度と僕のいる時代で起こさせない。。。!)

 

もはやなりふり構ってはいられないと端末まで用意した春信。

その決意に満ちた行動はあまりにもアッサリと終焉(しゅうえん)を迎える。

 

()()()使()()()奉火祭は中止になりました」

 

春信を出迎えた仮面の女性神官の言葉はあまりにも意外なものだった。

 

「は?」

 

間抜けな声を発する春信に神官は続けて言う。

 

「選ばれた巫女たちもそのまま元の部署に戻っています」

 

「い。。。いやいやいや、おかしいだろ?!

世界が、人類が滅ぶかもって状況でわざわざ行われる奉火祭がアッサリ中止って!」

 

思わず素で突っ込む春信に神官は

 

「お疑いなら巫女たちの所在を確かめられてはいかがですか」

 

そう告げると

 

「おひきとりください」

 

あくまでも感情を表さずこの言葉を繰り返す神官に、春信は引き下がらざるを得なかった

 

 

 

 

 

<大赦>

 

大赦に戻った春信は久々に彼の研究室を訪ね、

しばらく何も言わずに彼の仕事の様子を見守っていた。

 

「何か言いたい事でもあるのか?」

 

特に気にした様子もなく放置していた彼だが突然

春信の方を向くことも作業の手を止めることもなく、聞いてきた。

 

「うん。。。」

 

春信は何から話したものかと思案しつつ言葉をつむぐ。

 

「なんというか。。。大赦から僕の手元に色々な情報が届くのが。。。」

 

「遅い気がしてきたか?」

 

正に自分が言おうとしているその言葉を先取りされ、驚く春信。

 

「そ、そうなんだ!

防人の件にしても、奉火祭の件にしても僕の元に情報が届いた時にはもう事態が進んでいて!

奉火祭なんて資料が来る前、話を聞いてすぐに動いたのに既に中止が決まってたんだよ!」

 

だが彼はそんな春信に呆れたように返す。

 

「お前はまだ自分の微妙な立場というものが理解できていないようだな…」

 

「はあ?」

 

気の抜けた声を上げる春信にやっと体を向けると今度は質問を投げかける。

 

「お前は自分が大赦からどういう目で見られているのかわかっているのか?」

 

「どういうって。。。割と重要な仕事も任される立場だと思ってるんだが。。。」

 

「そうだ、それなりの発言力のある立場だ」

 

「ゴールドタワーの女性神官に軽くあしらわれる程度だけどな。。。」

 

「その上、当代勇者、三好夏凜の兄でもある」

 

「お前の流した噂のおかげで、ろくでもない評価の元だけどな。。。!」

 

「おまけに大赦の体制を変えようなんて思ってる(やから)だ」

 

「それは誰も知らんだろうが。。。」

 

「どこにも漏れてないと思ってる時点で考え方が甘いんだよ」

 

「え?」

 

怪訝(けげん)な表情で彼の顔を覗き込む。

 

「何を思ってどう動くかまでは分かっていないようだが…

お前は大赦の造反分子の一員と見られているんだよ」

 

「はあっ?!」

 

「だから大赦はお前に重要な情報を優先して開示する事がない」

 

「だ。。。だったら更迭(こうてつ)するとか、情報自体を渡さないとか、してくるんじゃ?」

 

「だから言っているだろう、微妙な立場なんだって」

 

「どういうことだよ。。。」

 

犬吠埼(いぬぼうざき)(ふう)東郷(とうごう)美森(みもり)の件があったように

勇者が大赦の思い通りに動くとは限らんのだ」

 

「あ。。。」

 

「お前をどうこうする事で身内である三好夏凜(かりん)を刺激したくない。

しかし発言力のあるお前に自由に動いてもらっても困る」

 

「だから。。。情報を得た時にはもう事態が収束している状況を?」

 

「全てがそうとは言わんが、そういう可能性もあると知っておけ、三好春信」

 

「。。。すまん」

 

「その奉火祭って儀式の事もただの中止で収まったとは思えん」

 

「既に僕の手の届かないところで動きがあるって事か」

 

「お前に渡った情報が当代勇者たちに渡ることも危惧(きぐ)しているだろうしな」

 

「夏凜ちゃんや皆に話してしまうかもしれないから、か。。。」

 

「少なくとも、お前はそれくらい考えた上で動かなきゃならんって事だ。

防人の壁外調査の結果、どう伝わってる?」

 

「計画通り順調にって、まさか。。。」

 

「第1回の後、何人か補充されたはずだ。死者こそ出なかったがな」

 

「そんな。。。」

 

「ただ待つだけで正確な情報は集まらん。お前は特にな」

 

「ぬう。。。」

 

「大赦としても犬吠埼風みたいな事はもう避けたいだろう、乃木園子がアテに出来ない以上」

 

「確かに。。。

ってあれ?」

 

「どうした?」

 

「さっき、風の事ともう一人誰かのこと話してなかったっけ?」

 

「お前の妹、三好夏凜のことだろ?」

 

「いや、そうじゃなくって。。。」

 

「何言ってんだ?一体誰の話をしてるんだ?」

 

「え?あれ?誰だっけ。。。」

 

なぜか消えない心の引っかかりを残したまま春信は彼の研究室を後にする。

既に事態は勇者部を妹を世界を巻き込む状況に来ていることにも気付かぬまま…

 

 

<西暦末>

 

涙を拭い、奉火祭の列が再び動き始めた時

泣きはらした目のまま春信はひなたに声をかけた。

 

「若葉は。。。怒るだろうな。。。」

 

話している間も二人の目は巫女たちを追っていた。

これから壁の外で炎に身を投げる巫女たちの姿を。

 

「そうですね…でもそれ以上に泣いてしまうでしょう。きっと大きな声で…」

 

「泣く?若葉が?」

 

春信には想像がつかなかった。

どんなに傷ついても

苦しい局面でも

絶望的な状況でも

友を失った時でさえ

若葉が泣いている姿など見たことがなかった。

その若葉が大声を上げて泣く姿などまるで思いもよらなかった。

 

「あなたは…本当に朴念仁ですね…」

 

「それは。。。否定出来ないが」

 

「知っていましたか?私があなたの事を大嫌いだって」

 

「知ってるさ、お前は若葉第一だからな

若葉はなぜか僕といる時はズッコケ娘になっちまう

カッコいい若葉が大好きなお前は、それが気に入らないんだろう?」

 

「本当に何もわかっていませんね」

 

「え?」

 

「私は若葉ちゃんを一番に愛しています。

それはどんな若葉ちゃんでもです。

あなたの前で出てきちゃうドジっ子若葉ちゃんだって大好きなんです」

 

「え?あれ?じゃあ。。。なんでだ?」

 

「だから…朴念仁なんですよ」

 

「むう。。。」

 

「あの子の願いを受け止めるなら…少しは女の子の気持ちも知って下さい」

 

「そう。。。だな。。。」

 

そのまま巫女たちの列に続いて歩くひなたを見送り春信は背を向けた。

 

もう邪魔はしない

 

そう決めたとはいえ巫女たちが炎に身を投げる姿など見守る事はできなかった。

名も知らぬ巫女に別れを告げることも名を問う事もできず背を向けた。

せめて巫女たちの祈りと魂が救われる事を願って…




神樹が枯れる
天の神が侵攻する
神世紀が終わる
それを予見しながら
大赦という組織には何も出来なかった
たった一人の少女を犠牲にする事しか
「俺の力では限界だがな。。。」
諦めを口にする赤き勇者に出来ることはあるのか?
次回『新 三好春信は勇者である-楠芽吹の章-』第3回「最終回」
「限界を超えてこそ勇者というものでしょう?」


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24話 神世紀301年 1/17

今回で『楠芽吹(くすのきめぶき)は勇者である』の話は終了です。
ネタバレおよびキャラ崩壊を含みます。



「それじゃ、またね」

 

「ええ、また」

 

結界の壁の上、夏凜(かりん)芽吹(めぶき)は再会の言葉を交わし別れた。

夏凜は壁から飛び降り、去っていく。

その背中を芽吹は静かに見送り振り返った。

 

なぜそうしたのかは芽吹にも分からなかった。

だが、なぜか結界の外が気になり、再び身を乗り出す。

 

結界の外は何も変わらない。

いや、ますます熱気を帯びているかのような灼熱の世界。

そこに(うごめ)き、空を漂う星屑たち。

 

その灼熱の世界で星屑たちを足場に飛び跳ねつつ

その身に集まってくる星屑を切り裂く赤い影。

 

「三好さん?さっき別れたばかりなのに…」

 

しかし目を凝らした芽吹の双眸が捕らえたシルエットは、三好夏凜とは少し異なっていた。

 

「でも、髪が…後ろで束ねているの?」

 

その影に芽吹のある記憶が重なる。

 

「そんな…」

 

以前、映像で見た先代勇者たちの戦う姿。

 

「バカな…」

 

その中の一人に

 

三ノ輪(みのわ)(ぎん)っ?!」

 

思わず叫んでいた。

そんなはずはない。

頭では分かっていたのに。

彼女がもうどこにもいないことなど、知っているのに。

 

「くっ!」

 

芽吹の声に気付いた星屑が集まってくる。

まだ結界を越えて壁の上にいた芽吹は数歩戻ればすぐに結界内へ逃げられた。

しかし迷ってしまった。

目に映るその赤き勇者の姿を見失ってしまって良いのか?

本当に三ノ輪銀なら会ってみたい、話をしたい。

そう思う気持ちが後退と戦闘開始を迷う隙を生んだ。

 

迫り来る星屑たちに銃弾を乱射し、撃ち落し切れなかった星屑を銃剣で切り裂く。

 

(しまった!)

 

初めから戦闘にとりかかっていれば、あるいは防人の誰かと一緒であれば

今の芽吹なら問題なくさばき切れたであろう。

しかし一手足りない。

最初の隙が決定的であった。

目の前の星屑を銃剣で突き、消滅させた後ろから迫る1体、更に両側から迫る2体。

それら全てに間に合う攻撃手段は無かった。

口を開き、芽吹という獲物目掛けて飛び来る3体が

 

光を放ち霧散した。

 

ハッと目をやると、芽吹に近づく星屑たちが(ことごと)く散っていく。

それは先程見た赤い勇者が放つ武器によるものだった。

 

その手際に驚きながらも芽吹も銃弾で星屑を撃ち抜いてゆく。

そうして見える範囲の星屑が掃討され、最後に赤き勇者の踏み台になっていた固体も散る。

 

既に星屑から飛び降りていた赤い勇者はその背を芽吹に向け、壁の上に立っていた。

 

(刀…違う…)

 

その髪を後ろでまとめた後姿は芽吹の記憶にある三ノ輪銀とは明らかに違っていた。

両手に刀を持ち、勇者服は三好夏凜のものに近く思える。

なにより、芽吹よりも高いその背と体格が女性のそれとは思えなかった。

 

「あなたは…」

 

「三ノ輪銀は。。。

もういない。。。」

 

両手の刀を消し、呟くように発したその声は男性のものだ。

 

「そっ、そんなこと…」

 

そんなことは知っている、わかっている、そう言おうとするが芽吹の言葉が詰まる

 

「だがっ!」

 

そんな芽吹に対し男は振り向き、その胸に手を当て声をあげる。

 

「その心は!たましいは!ここに生きている!」

 

「!」

 

男の顔にはあの女性神官と同じ、大赦の仮面があった。

 

「三ノ輪銀だけじゃない!今まで戦ってきた勇者たちのたましいが!

俺の!お前の!全ての勇者のここに生きている!」

 

「私が…勇者?」

 

「楠芽吹、お前だけじゃない、お前の仲間たちも皆、勇者だ」

 

「私のことを知って…しかし、私たちはまだ防人(さきもり)で…」

 

「大赦の与える名や地位など関係ない!

お前たちが勇者であろうとする事!

そのありようこそが勇者なんだ!」

 

「…」

 

「。。。」

 

「ふふふ…」

 

少しの沈黙の後、芽吹が呆れたように笑った。

 

「何がおかしい?」

 

「まさか、その仮面をつけた人にそんな事を言われるとはね」

 

「これは。。。

単に素性を隠す為に使っているだけだ。

俺は大赦の勇者ではないからな。。。

顔を隠せるなら別に『おかめ』や『ひょっとこ』でも問題なかった」

 

「いえ、それを問題ないと思うあなたに問題があると思うけど…」

 

男の間抜けな返答に思わずジト目で突っ込む。

 

「ふん、流石は赤き勇者の系統。いいツッコミをするじゃないか」

 

「そんな不名誉な評価はいらない…って赤き勇者の系統?!」

 

「どうした?」

 

「まさか…三ノ輪銀って…」

 

「三ノ輪銀も三好夏凜もツッコミが得意だぞ」

 

「そ、そんな…」

 

「乃木園子から聞いた話だ。間違いない。」

 

「乃木って…あの名家の、伝説の勇者の…?

し、知りたくなかったわ。それはこういう場面では…」

 

「何を今更。。。お前も知ったはずだ」

 

「え?」

 

「勇者もただの人間、崇高なたましいもあれば自堕落な顔だってある。

ただの人間が勇者であろうとする、その心こそが勇者の証だ」

 

「ふ…おかしな人ね、あなたは…」

 

「むう。。。なぜかよくそう言われるな。。。」

 

「自覚が無いのは問題ね…

でもなぜこんな所で?何をしていたの?」

 

「天の神の侵攻が近い」

 

「!」

 

「天の神そのものが降りる気配すらあるそうだ。」

 

「天の神…」

 

以前、芽吹たちがあの神官から聞かされた事、それが現実に起ころうとしている

 

「それは数ヵ月後かもしれないし、今この瞬間にも起こるかもしれない」

 

「一体何が…」

 

「神世紀が始まって以来の大きな侵攻だ。何が起こるか想像もつかない」

 

「そんな…」

 

「だが、誰もが何かが出来るはずだ。そしてそれは自分で出来ることをする以外にない」

 

「出来ることを…それであなたは星屑の掃討を?」

 

「今の俺の勇者の力ではこの程度が限界だがな。。。」

 

男は自分の拳を見つめ、悔しそうに語る。

巫女を使った奉火祭は中止になった。

しかしその裏では東郷美森を生贄とした奉火祭が行われていた。

それを救うために妹たちはこの結界の外で戦い、今度は結城友奈が生贄となっている。

自ら動き、情報を集めても全てが後手に回る。

結局、今やっている事もどれだけの効果があるのかも分からない。

男は自分の力の限界に不甲斐なさを感じてばかりだった。

 

「ふんっ、限界を超えてこそ勇者というものでしょう?」

 

男の弱気な発言を突っぱねるように芽吹は言う。

 

「!」

 

その言葉に、俯きそうになっていた男は顔を上げ、高らかに笑った。

 

「ふ、ふふ、ふふふははははははははぁっ!」

 

「な、なによ?」

 

「楠芽吹、お前の言う通りだ。限界の先にこそ勇者の真価が問われる!」

 

そして腰に手を当て、小首をかしげるように言葉をつむぐ。

 

「『まあ、お主はお主で頑張れ』」

 

「はあ?なによそれ…」

 

いきなりおかしな口調で話す男に突っ込んでしまう。

 

「神樹様のありがたいお言葉だ」

 

「何言ってるのよ」

 

大赦の教義にある神樹様の教えにもそんなおかしな言葉など無い。

ましてや、神樹様は人に対して言葉で語らない。芽吹でもそれくらいの事は知っている。

巫女である国土(こくど)亜耶(あや)からも以前聞いた事がある。

巫女に降りる神託はイメージのようなものであって、ハッキリした言葉ではないのだ。

 

「そんな訳ないでしょう…」

 

男のふざけた返答に呆れ顔で返すが

 

「そうだな、こいつはただの俺の妄想かも知れん。だが。。。」

 

男は吹っ切れた様に語る。

 

「結局は同じ事なんだよ」

 

「え?」

 

「自分たちで出来ることを頑張る。限界が来ればそれを越えて頑張る。それしかないんだ」

 

「それしかない…か、そうね。確かにそうだわ」

 

「今までの勇者たちが、そうして来たように」

 

「これからの私たちも、そうしていく」

 

「「そして未来を掴む!」」

 

合わせた声のままに、ガツンと拳を合わせる二人。

 

「そういえば、名前を聞いていなかったわね」

 

「この仮面を着けている時は名を捨てている。

『仮面の赤い勇者』と呼ぶ者もいたが、あえて名乗るなら。。。」

 

「?」

 

「『通りすがりの勇者(ヒーロー)』とでも呼ぶがいい」

 

「…あなたって本当におかしな人ね…」

 

「勇者は皆そうだ」

 

「私は違うわよっ!」

 

「ふふふ。。。」

 

芽吹の鋭いツッコミに笑みの声を漏らす男。

芽吹も思わす笑みをこぼす。

 

「ふふ…

じゃあ、行くわ。

機会があったらまた会いましょう」

 

「ああ、行くがいい。友と共に」

 

「ええ」

 

結界の外でまた少しずつ湧き出す星屑を睨む仮面の男。

芽吹は振り向き、仲間の待つ結界の中へ飛び去った。

 

これから何が起きようとも、どんな時にも、絶望だけはすまいと互いの心に誓って。




春信(以下略):これで。。。終わり?

mototwo(以下略):『くめゆ』の話はな

本当に何もできてないな、俺

最初からそう言ってたろ?

そうだけど。。。夏凜ちゃんも台詞一言しか出番ないし

防人なんて芽吹以外は名前すら出てないけどな

よくコレを『くめゆ』の話だって言えたな。。。

いや、元はそれだし、時間軸もそうなんだから、そう言うしかないだろ?

2回目にいたっては時間軸すら『のわゆ』時代がほとんどだったが。。。

元々、最終決戦後のネタバレだし、お蔵入りだって諦めてたとこだから、
『くめゆ』と『勇者の章』で奉火祭の話が出た時にここしかない!って思ってな

結局、西暦では誰も救えなかったってことか。。。

お前には別時空の歴史を変えられるほどの存在力が無かったって事だ

ホント、惨めだな

あの後で10話の二つの話が入るから元の時代で頑張ろうって思えるようになったんだし

それでも今回の話で芽吹に活入れられてたんだよな。。。

お前は挫けそうになると誰かが言葉をくれるんだよ
そういう意味ではすごく主人公してるぞ

そう。。。なのか?

前作でも、今作でもずっとそう。こういう周りの人に恵まれた環境と
その言葉をもらえるタイミングは主人公属性の持ち味なんだろうな。

それならまあ。。。いいか

勇者としては最弱だから、属性がまるで生かせないけどな!

いちいち一言多いな、お前は。。。

さて、ここで一段落だが、次どうするかねぇ…

え、何も考えてないの?

あ~、色々書き留めてはいるんだけど、書きあがってるのって何もないなぁ、と

ま、なんか思いついたら一週間後、なんだろ?

そうね、それしかないわな

じゃ!またな!みんな!

<次はいつかな?>


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25話 その子と夏凜と

今回はまた『ゆゆゆい』のお話です。
キャラ崩壊なども含みますのでご注意下さい。



「そうそう、にぼっしー兄が来た時なんだけど~」

 

勇者部部室で部員6人が揃っている中、突然園子が思い出したように語りだした。

 

「どうしたの?そのっち」

 

「あの時って、どたばたして聞けなかったんだけど~」

 

「そういえば園子さん、何か聞こうとしてましたっけ」

 

「そうなの?アタシが戻った時にはすぐにひなたが暴れ出したから訳分かんなかったんだけど」

 

「そういや聞こうとしてたわね、例の赤い勇s…」

 

「お正月に間違って大赦に送ったにぼっしーの晴れ着写真ってどうなったんだろ~?」

 

「ああ~、どうなったんだろうねー?」

 

「はあっ?!なんでその話なのよ!

っていうか、折角忘れかけてたのに蒸し返すんじゃないわよ!」

 

「ささ~っと~」

 

夏凜が園子の頭に振り下ろそうとしたチョップは軽やかに避けられた。

 

「よけるなーっ!」

 

「ゴメンゴメン~、体が勝手に~」

 

「ごめんなさい、夏凜ちゃん。そのっちってこういうのを本能的に避ける癖があるみたいなの」

 

「と、東郷に謝られても困るんだけど…」

 

「晴れ着写真って何の話ですか?」

 

「あっ、樹ちゃんと風先輩はいなかったっけ、あのとき」

 

「二人に着物を着せた後、私たちも着たのよ、振袖」

 

「そういや、乃木からメッセージ回って来てたわね、友奈に何色が似合うか」

 

「あの時はありがと~、おかげでケンカにならずにすんだよ~」

 

「えっ?ケンカになりそうだったんですか?!」

 

「大袈裟ね、単に友奈に似合う色で意見が分かれただけでしょ」

 

「ビックリさせないでよ…で、その時撮ったの?写真」

 

「はい、みんなで撮り合って、お互いに送ろうって」

 

「その時に、園子のバカが調子に乗って私の写真を大赦の総合窓口に送ったのよ!」

 

「総合窓口?!」

 

「あるんですか…総合窓口が…」

 

「あるんだねえ、私もその時初めて知ったけど」

 

「あの写真って結局、にぼっしー兄にも届いたのかな~?」

 

「ええ、届きましたよ、『園子様』。。。」

 

ガシッと後ろから園子の頭を掴んで登場したその声の主は春信だった。

 

「兄貴っ!」

 

「い、いたたた、きょ、今日はまだ『ハルルン』って呼んでないよ~」

 

「そうだねぇ、僕のいないところでは『にぼっしー兄』なんて呼んでたんだねぇ」

 

「僕?」

 

「おかげであの写真の騒動の事思い出せたよ、ありがとう『園子様』」

 

「いや~、どういたしまして~って痛い痛い~なんで怒ってるの~?」

 

「あ、あら?なんだか…」

 

「なんで怒られてるか分かってないのかぁ、そうかぁ、はっはっはぁ」

 

「お兄さんの雰囲気がいつもと違うような…夏凜ちゃん?」

 

「『園子様』は普段はすっかりアホの子だなぁ」

 

「あ、兄貴、今日はどうしたの?」

 

「ああ、すみません、皆さん。名誉勇者と巫女の皆さんへの挨拶が一通り終わったんで

今日はプライベートで来たんですよ」

 

「『ハルルン』は仕事以外ではこんな感じなんだよ~」

 

「はっはっは、流石、『伝説の勇者様』は僕のアイアンクローくらいじゃ余裕だねぇ。。。」

 

にこやかな顔でギリギリと園子の後頭部を締めつける。

 

「はわわわわ~キツイキツイ~!頭に響くよ~!」

 

「は、春信さん!ひとまずそのっちを離して、事情を教えて下さい!」

 

「おおっと、これじゃ僕が園子嬢をいじめてるみたいだね、わかった、事情をお話しましょ」

 

「はう~、春信さん~、私にだけ厳しすぎない~?」

 

やっと解放された園子が抗議の声を漏らすが

 

「愛だよ、愛」

 

適当な言葉で流す春信に

 

「「なぜそこで愛っ?!」」

 

待ち構えていたように風と夏凜が突っ込む。

 

「愛か~、愛ならしょうがないか~」

 

しかし園子はなぜか幸せそうにボケていた。

 

「まあ、園子嬢への愛はどうでもいいんで置いておくとして。。。」

 

「どうでもいいんかいっ!」

 

「置いとくんかいっ!」

 

二人の突っ込みは止まらない。

 

「お兄さんって普段はボケを振りまくタイプだったんですね…」

 

「そうなの樹ちゃん?私よく分かんないよー」

 

「友奈ちゃんは気にしなくていいのよ?」

 

「ウチの妹、可愛い夏凜ちゃんのちょっと頬染めたビューリホーな振袖姿が大赦に送られて」

 

「おおう…実の兄がそこまで言うのか…」

 

「兄貴、それ、わざとよね?私が嫌がるのわかってて言ってるわよね?」

 

「大赦内で一騒動おきました」

 

「一騒動、ですか?」

 

「まず、総合窓口担当が叫びました」

 

「はあ?」

 

「叫ぶって何をよ?!」

 

「『園子様からのお恵みじゃ~』って」

 

「喜んでもらえて良かったよ~」

 

「それがプリントアウトされて窓口の壁に飾られて」

 

「飾っちゃったんですか…」

 

「晴れ着の夏凜ちゃんは特に可愛いから飾っちゃうよね!」

 

「そうね、飾っちゃうと思うわ、友奈ちゃん」

 

「簡単に手のひら返すなー!」

 

「『勇者様の晴れ姿じゃー』なんて言って神棚に飾る奴が出てきて」

 

「いや、神棚って!」

 

「た、大赦はお正月忙しいはずなのに…」

 

「大赦内報の表紙を飾ったり」

 

「いい仕事したね~」

 

「なんて事してくれてんのよ!」

 

「そうなるともう勢いは止まらず、遂にファンクラブが。。。」

 

「夏凜ちゃんのファンクラブ?!」

 

「やるわね、夏凜…」

 

「アホかー!」

 

「いえ、皆さんのです」

 

「え?」

 

「皆さんって私達6人全員ですか?」

 

「いや、だから皆さん。19人全員の。。。」

 

「「「「「19人ーっ?!」」」」」

 

「前にも言ったように、勇者の存在は大赦内にしか明かされていない。。。

その反動か勇者は、特に歴代の勇者と巫女は大赦内では英霊として祀り上げられてる。。。」

 

「で、でも、それって(おそ)れの対象だったんじゃ…」

 

「よねー?無礼を働くのが怖いって」

 

「上層部ではそうなんだけど、一般職員の間ではちょっと違ってて」

 

「違うの?」

 

「大赦の一般職員はなぜか可愛い女の子が頑張る姿に惹かれる奴らが多くて。。。」

 

「それは普通だよ~」

 

「度が過ぎないようにソレまでは自重してたんだけど。。。」

 

「自重って…」

 

「ウチの妹、可愛い夏凜ちゃんのちょっと頬染めたビューリホーな振袖姿に

そのタガが外れた。。。」

 

「繰り返すなー!」

 

「それまで水面下にあった各勇者の派閥が表面化し、ファンクラブとして対立。。。」

 

「な、何でそんな事に…」

 

「勇者の姿は資料の映像と写真以外、手に入らないというのが暗黙の了解だったのに。。。」

 

「そうなの?」

 

「というか、私たちの資料があるんですね…」

 

「ウチの妹、可愛い夏凜ちゃんのちょっと頬染めたビューリホーな振袖姿を見た連中が

『プライベート写真、撮ってもいいんだ!』なんて言い出して。。。」

 

「だから繰り返すなー!」

 

「とことんボケるわね、このおにーさん…」

 

「風さんと樹さんの晴れ着姿を見たって連中や。。。」

 

「わ、私達ですか…?!」

 

「ふっふーん、アタシの女子力は大赦の人たちも巻き込んじゃうわけよね~」

 

「高嶋さんや郡さんの晴れ姿を見た連中が。。。」

 

「高嶋ちゃんとグンちゃんも綺麗だったもんねー!」

 

「友奈ちゃんも可愛かったわよ」

 

「息をするように友奈を褒めるわね、東郷は…」

 

「『なんで俺は写真を撮らなかったんだー!』と血の涙を流したり。。。」

 

「いや、血の涙は言いすぎでしょ…言いすぎよね?」

 

「『後悔しても始まらん!次に生かすんだ!』と励ます奴らがいたり。。。」

 

「励ましあいは大事だね!」

 

「え…あ、まあ、そう…ですね」

 

「そして本当に勇者たちのプライベート写真が出回り始め。。。」

 

「え!」

 

「いつの間に撮られたのよ…」

 

「大赦には隠密行動を旨とする部隊もいるもので。。。」

 

「全然気づかなかったね!」

 

「そんな人たちが女の子の隠し撮りするなんて、世も末ね…」

 

「あ、友奈さんと園子嬢は東郷さんと本人のガードが固くて出回りませんでした。」

 

「ええっ!そうなの?!」

 

私以外が(・・・・)友奈ちゃんを隠し撮りなんて許せませんから」

 

「私は全然気づいてなかったんだけどな~」

 

「素でガード状態とか、やるわね…園子」

 

「出回ったプライベート写真の没収、データの消去、

勇者と巫女に対する一次二次三次接触禁止項目の設定。。。

各ファンクラブの暴走を止めるのに僕がどれだけの時間と労力を費やしたかっ。。。」

 

「大変だったんだね~」

 

ガシッ

 

瞬く間に園子の頭を鷲掴みにする春信。

 

「はっはっは、誰のせいだと思ってるんですかぁ、園子様ぁ」

 

またしても、にこやかな笑顔でギリギリと園子の頭を締め付けている。

 

「いたいいたいいたい~もっと優しくして~」

 

「優しくって…あれ?そういえばなんで兄貴の攻撃は避けないのよ?」

 

「そういえばそうね、どうしたの?そのっち」

 

「ええ~?わかんないよ~」

 

「ああ、園子嬢は殺気や敵意を肌で感じて本能的に避けるんだ」

 

「それでアタシたちの拳骨は簡単に避けられるのね…」

 

「じゃあ、なんで春信さんのは避けられないの~?」

 

半べそで春信に問いかける。

 

「だから言ったろう、愛だよ、愛」

 

「「だからなぜそこで愛っ?!」」

 

「愛か~、愛ならしょうがないか~」

 

「「その流れも、もういいから!」」

 

もはや様式美のような流れに満足した春信は園子を解放し、思案する。

 

「ふむ、分かりやすく言うと。。。

そうだ、友奈さん」

 

「え?はい?」

 

春信が友奈に耳打ちすると

 

「はあ…わかりました、やってみますね」

 

「「「「「?」」」」」

 

「園ちゃん、ダメだゾ、イタズラばっかしちゃ」

 

ぽふん

 

友奈の優しいチョップが園子の頭に当たると、園子はにこやかに謝る。

 

「えへへ~ゴメンゴメン~」

 

「。。。というわけだ」

 

「「いや、何がよ!」」

 

ドヤ顔の春信に、わけがわからないよと風と夏凜が突っ込んだ。

そんな二人に春信は丁寧に説明する。

 

「要は敵意は避けるが、愛情がこもった攻撃は逆に引き寄せられるように当たるんだ。

それこそ本能的に」

 

「な、なるほど…攻略法さえわかればっ!

てぇい!『愛情チョップ!』」

 

「ささ~っと~」

 

納得し、勝利を確信した夏凜の振り下ろした手刀はまたしても軽やかに避けられる。

 

「なんでよけるのよ!」

 

「ええ~、そんなこと言われても~」

 

「いや、『愛情』って言ってるだけで敵意剥き出しじゃない…」

 

「そうだね、僕への愛を園子嬢に向けるくらいの気持ちでやらないとダメだゾ

ちょっと頬染めたビューリホーな振袖姿が最高に可愛い我が妹夏凜ちゃん」

 

「どこまでもボケを振りまきますね…」

 

「兄貴、いい加減にしないと本っ気で怒るわよ…」

 

「と、とにかく自分が園子嬢を愛してると勘違いするくらい愛を込めないと当たらないよ」

 

「ええ~、ハルルンの私への愛は勘違いなの~?」

 

そう言って抱きつこうとする園子の顔を鷲掴みにする春信。

 

「はっはっは、そんなわけないだろぉ、ちゃんと好きだよぉ」

 

「いたいいたい~ホントに~?」

 

園子は春信の方へ届かぬ手をばたつかせている。

 

「僕が妹を好きな気持ちの1パーセントくらいはねっ!」

 

「やった~!」

 

「いや、もうそれって『嫌い』って言われてるようなもんでしょ…」

 

呆れた顔で呟く夏凜を見て他の部員が囁く

 

「それはどうなんだろうねぇ」

 

「夏凜さん、まだ自分がかなり愛されてるって自覚が無いみたいだね…」

 

「春信さんの愛情表現も相当歪んでるみたいですし」

 

「仲のいい兄妹って見てて微笑ましいね!」

 

「コラそこ!勝手な事言ってんじゃないわよ!」

 

「私のこと、『お姉ちゃん』って呼んでくれてもいいんだよ~、にぼっし~」

 

「ああ~もう!、頭潰されすぎて園子がおかしな事言い出したじゃない!」

 

「大丈夫だよ、園子嬢がおかしいのはいつもの事だから」

 

「そういう問題じゃなーーい!」

 

今日も勇者部部室は楽しく賑わっていました。

 

<つづく>

 




春信(以下略):なんていうか。。。

mototwo(以下略):どうした?

色々とツッコミどころ満載な話が続いたな。。。

そうかな?割と真面目に書いたんだが。

どこがだよ。。。大体、何で話数が逆なんだ?

ああ、先にこの25話を上げてたんだけど、『ゆゆゆい』のバレンタインイベントの情報が
入ってな、それで一気に26話書いて14日に上げたんだ。

また思いつきでテキトーな事を。。。

次の話が上がったら順序入れ替える予定だぜ!

ややこしいな。。。別に順序を気にするほどの話か?

まあ一応。春信が部室で素になる過程が今回の話なんでな

ああ、廊下での夏凜ちゃんの反応が良すぎたか

そもそも、26話って後書きから書いたからな

はあ?なんじゃそら?

今回の話で出た『僕が妹を好きな気持ちの…』のくだりで、あ、コレ『俺妹』だって思って

パクリだな

んで後から黒猫も花澤香菜さんだったなー、と思ってそのくだりを書き取って

開き直ってるな

あの後書きが出来たんだけど、短いからボツだーって思って、『ゆゆゆい』の情報漁ってたら

ヒマなの?ねえ、ヒマなの?

バレンタインイベントやってんじゃん!ってことであの本文が出来て、
ボツは後書きとして復活したわけだ

どうでもいい内情が知らされたな。。。

今回の後書きもホントはキャラのやりとりが入る予定だったんだけど…

え?

意外と長くなって、1000文字越えたから本文にした。次回上げる

お前、ホントに後先考えないな。。。

んで、次回が決まってるから予告だ!

ほう、では見せてもらおうか、貴様の言う予告という奴を!

(BGM)
  赤い勇者で忍者のおっちゃん
         母乳は出ないよ…
遂にもぎたくなったか?
       もませちゃったんだ…
タマも大好きだぞ!
     OPPAI!
  次回「パル○・フォルゴレ」

え。。。ナニコレ?

ゆゆゆ本編風予告。BGMに乗っかって次回の台詞が並ぶだけのアレ

台詞のチョイスがカオス過ぎる。。。!

まあ、それは狙ってるから
次回の話読んだ人には是非、予告BGMと共に各セリフを脳内再生してもらいたい

大体、順番入れ替えたら予告の意味無くね?



やっぱ考えてなかったか。。。

<それでもそのまま行く!>


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26話 バレンタイン

今回は内容もオチもありません。
何も考えずにお読み下さい。



「かーりーんちゃーん!」

 

浮かれた様子で勇者部部室へやって来た春信。

丁度、部室に鍵を閉め、帰ろうとしている夏凜と鉢合わせになった。

 

「うわ…今日はこっちの兄貴なのね…」

 

「こっちのって。。。夏凜ちゃんのお兄ちゃんは僕だけだよ~」

 

「わかってるわよ、そんな事。ただ…」

 

「ん。。。?」

 

「部室で久々に会った兄貴っていかにも大赦のエリートって感じだったのに…」

 

「なんだ?夏凜は、こういういけ好かない兄の方が良かったのか?」

 

「いけ好かないって自分で言うか…っていうか、いきなり切り替えないでよ!」

 

「夏凜がこっちの方が()いと言うなら、いつでもこうしているぞ?」

 

「え、いや…それはそれで居心地悪いんだけど…」

 

「でっしょー?だから僕は僕でいるのさ~」

 

「うわ…ウッザい…大体、何しに来たのよ、こんな遅くに!」

 

「何って。。。夏凜ちゃんが僕に渡したい物があるだろうな~って思って!」

 

「は?何をよ?」

 

「またまた~今日が何の日かわかってるくせに~」

 

「今日?ああ、2月14日のバレンタインデーね」

 

「そうそう!も~、夏凜ちゃんったら焦らせちゃって~」

 

「いや、焦らすも何も、兄貴に渡す分のチョコなんてもう無いわよ」

 

「へ?」

 

「今日は園子と園子ちゃんの企画で一人二つずつチョコを配ったから、疲れちゃったのよ」

 

「ナニソレ、友チョコ?不毛な恋愛事情?修羅場?!」

 

「何わけ分かんない事言ってんのよ…」

 

「じゃあ!夏凜ちゃんも誰かに?!」

 

「ああ、雪花にも貰ったわよ。羨ましい?」

 

「そうじゃなくて!夏凜ちゃんも友奈さん以外の誰かに渡したって事?!」

 

「なっ!なんでそこで友奈が出てくんのよ!」

 

「え。。。だって~」

 

「だっ大体!バレンタイン狙って女の子ばっかの所に来るなんて、浅ましいわよ!」

 

「浅ましいって。。。」

 

「どうせ、男っ気が無いから僕一人でハーレム状態~

バレンタインチョコ貰い放題~とか思ってきたんでしょうけど」

 

「ええぇ~」

 

「残念だったわね、さっき言った企画のおかげで皆クタクタになってもう帰ったわよ」

 

「いや、皆の事は。。。」

 

「私もなんか疲れたから帰るとこなんだから、ハイハイ、そこどいて」

 

「か、夏凜ちゃ~ん」

 

「帰ったら鍛錬があるんだから、ついて来たりしないでよね!」

 

ギヌロと睨まれ、廊下にポツンと取り残された春信。

とっぷりと夜もふけた頃

 

「そこのお兄さん、もう学校閉めるから、早く帰って下さいねぇ」

 

「ハッ!」

 

守衛さんに声を掛けられ意識を取り戻す春信。

 

「う。。。」

 

「はい?どうしたの?」

 

「うわ~ん!夏凜ちゃんのバカ~!もう、園子嬢に浮気とかしちゃうんだから~!」

 

妹からチョコを貰えず、わけの分からない事を叫んで泣きながら大赦へ帰る春信でした。

 




<俺の妹がこんなに可愛い事は誰よりも俺が知っている>

春信「あんまり男を勘違いさせるような事、しない方がいいぞ?」

園子「…」

春信「それとも。。。おまえ、俺のこと好きなの?」

園子「好きよ……」

春信「はあっ?!」

園子「好きよ…あなたの妹が、あなたを好きなくらいには」

春信「っ、そりゃどうも。。。」
(眼中無しかよ。。。)



「。。。って、バカかぁっ!!!」

起き抜けにいきなり叫んだ春信。

「はあっ、はあっ、はあっ。。。」

夢見が悪かった様だ。

「どうした春信?居眠りしてたかと思ったら、いきなり叫んで」

どうやら『彼』の研究室で仕事中に酒盛りをしたまま、眠っていたらしい。

「な、なんで僕があんな夢を。。。あんな事言ったからバチが?」

「あんな夢ってどんな?」

「僕が中村悠○みたいな声で園子嬢と。。。」

「中村○一って、神世紀じゃほとんど誰も知らんぞ、そんな名前」

「園子嬢も声は似てるけど全然雰囲気が違って。。。」

「なんだ、そりゃ?」

「大体、夏凜ちゃんと同じくらい好きってもう、僕を大好きって事なのに!」

「大丈夫か?何言ってんだ、お前…」

「あれじゃまるで夏凜ちゃんが僕の事、眼中に無いみたいじゃないかーーっ!!」

「ああ…いつもの春信だわ、こりゃ」

「神樹様、反省してます。僕は夏凜ちゃん一筋です。神樹様反省してます。。。」

ブツブツと懺悔の言葉を繰り返す春信。
神樹様の中では今日も大赦の対バーテックス班はとっても暇です。
その頃、自室には夏凜ちゃん名義の義理チョコが届いているのですが…それはまた別のお話。


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27話 パル○・フォルゴレ

今回はちょっと前のお話(15話後書き~17話の間くらい)です。
キャラ崩壊成分も含みますので、ご注意ください。



ある日の球子部屋

そこへ訪ねた銀は突然、神妙な面持ちで球子に話しかけていた。

 

「球子さん…」

 

「ん?どうした、銀」

 

「アタシ、東郷さんの『OPPAI!』を見てると思うんです…」

 

「なんだ?遂にもぎたくなったか?」

 

球子のアホな問いかけにも更に真剣な顔で首を横に振る。

 

「いえ、あれをもみ続けていたら…ビームが出せるんじゃないかって…」

 

「はあっ?!大丈夫か?銀!アレをもんでも出るのは母乳だけだぞ!」

 

「東郷さんの胸から母乳は出ないよ…タマっち先輩…」

 

ベッドにもたれかかって本を読みながら二人の話を聞いていた杏が思わず突っ込んだ。

 

「そうじゃなくって、揉み続けると自分の手からビームが出せるようになるんじゃないかって」

 

「ますます大丈夫か?!自分が何言ってるかわかってるか?銀!」

 

「わかってます!自分がどれほどバカな話をしてるかは!でも夢に見たんですよ!」

 

「夢ぇ?」

 

「夢の中でアタシら全員がピンチになった時」

 

「ほうほう」

 

「あの赤い勇者で忍者のおっちゃんがやって来て」

 

「おっちゃんって…春信が聞いたら泣くぞ…」

 

「えっ?」

 

「タマっち先輩!」

 

「お…おお!それで?!仮面の赤い勇者忍者が来てどうしたって?」

 

「は、はい…どういう経緯かはわからないんですけど…」

 

「ふんふん」

 

「おっちゃんが東郷さんの胸をもんでて」

 

「げえっ!」

 

「それは…犯罪的な光景だね…」

 

「杏の最近の言動もちょっと犯罪じみてて心配だけどな…」

 

しかしポツリと呟いた球子の言葉の意図は銀には伝わらなかった。

 

「…?

えっと、それで怒った東郷さんの平手打ちを軽やかに避けたと思ったら、

おっちゃんの手からビームが…」

 

「む、無茶苦茶な夢だな、それは…」

 

「また、そのビームが強くって!」

 

「まあ、ビームは強いよな!」

 

「アタシらが苦戦してたバーテックスを一撃で倒したんですよ!」

 

「そりゃすげえな!」

 

「ゆ、夢の話だよね…?」

 

「それから、東郷さんの胸を見るたびにもみたくなって…」

 

「もませてもらえば()いじゃないか、東郷はなぜか銀には甘いからな」

 

「流石にそれはどうだろう…?」

 

テキトーな返事をする球子に異を唱える杏。

 

「ええ、もませてもらったんです」

 

「もませちゃったんだ、東郷さん…」

 

「でも違うんです!気づいてしまったんです!」

 

「気づいたって何に?」

 

「アタシは胸がもみたいんじゃない!ビームが出したいんだ!」

 

「東郷も災難だな…こんな訳の分からん欲望に付き合わされて…」

 

「本当だね…」

 

「それで、今話しててふと思い出したんですけど」

 

「あ?なんだ?」

 

「昔、大赦に務めてるあんちゃんから聞いた事があったんです

『ビーム』と『ロボ』を開発中だって」

 

「び、『ビーム』と…」

 

「『ロボ』ぉっ?!」

 

「はい!特撮番組みたいに、合体技のビームや巨大ロボで敵と戦う!」

 

「おお!タマもそういう番組、大好きだぞ!」

 

「え…タマっち先輩、今も見てるの?中学生だよね…?」

 

杏のもっともな突っ込みは

しかしまるでなかった事のように流される。

 

「でぇも、さすがに勇者システムでロボとビームはないんじゃないか?」

 

「あったら今までに使ってるよね…」

 

「でも、ひょっとしたら今まで使ってないだけでもう完成はしてるかもしれない!」

 

「なにいっ?!」

 

「そしたら、ビームだけじゃない!ロボで空を飛べるかも!」

 

「そ、それは流石に…」

 

「よぅし!そこまで言うなら風に聞いて確かめてみよう!」

 

「え!風さんに?」

 

「ああ!今の勇者システムについては現行勇者のリーダーが一番詳しいはずだ!」

 

「なるほど!行ってみましょう!」

 

「ええぇ…本気で聞きに行くつもり?タマっち先輩…」

 

「そうと決まれば善は急げだ!ついて来い!シルバー!」

 

「はい!球子さん!」

 

ダバダバと寮の廊下へ駆け出す二人を、見送る杏。

 

「ごめんなさい、風さん…私にはあの二人の暴走を止める力は…ないんですっ!」

 

空々しい泣きの演技でそれらしくまとめた杏は、二人の始末を風に(ゆだ)ねるのであった。

 

<20話後書きの回想に続く>

 




mototwo(以下略):お気付きになられただろうか?

春信(以下略):は?なにが?

今回の銀が見た夢、実は既に公開されている事に!

あ?まあ、前書きに15話って書いてあったしな

これはオマケの本文が俺たちの駄文だけだと飛ばしていた人へのアンチテーゼなのだよ!

いや、実際駄文なんだから、飛ばされてもしゃーないだろ。。。

そうだけど…話の流れで入れたコントも読んで欲しいじゃん?

自分でコントって言ってる時点で駄目な気がするが。。。

ちなみに今回のエピソードを順に読むと、15話本文のコントからだね

次が今回、27話の本文から20話の後書き<番外編>内の回想にいくのか

で、18話の本文から実は一旦20話の後書きの<番外編>にいってひなたルート

分岐した俺ルートが18話から19、20話へ続くと。。。

そして二つのルートが20話の後書きで繋がるわけだ

15→27→18→20番外→20後書と。。。

15→27→18→19→20→20後書だね!

なんでこんなメンドクサイ書き方したの。。。?

なんでもなにもない。ただ思いつくままに書いたらこうなっただけだ

はあぁ~

真面目にこの順番で読んで行ったら、きっと粗探しが出来るよ!

それを推奨してどうする。。。

見つけたら感想に書いてね!

必死だな、感想貰うのに。。。

いや、そういう訳でもないんだけどね

いやいや、どう見てもそうだろ

まあ、感想欲しいのは欲しいんだけど、色々と思うところがあってな

思うところ?

以前書いた別の作品の二次創作で、感想もらえたのが嬉しくて

以前のってあのバッドエンドか。。。

投稿ペースは崩すし、感想に対するお答えを後書きで書くしで

アホだねぇ。。。でも、お答えに関しては今といっしょじゃん?

うん、でもそれってどうやらマナーと違ってたらしくて、感想で怒られた

そうなの?!だったらなんで今もやってんの?!

もはやこのスタイルを直す気になれん!

いーかげんな。。。

考えてみたら、これって名前こそ出してないけど、
感想に興味の無い読者にまで、自分の文章さらされるリスク背負うようなもんだからなぁ

それをわかった上でやってるお前って一体。。。

俺だけが駄文晒して恥ずかしい思いするのもなんだからな、皆にも同じ思いで…

サイテーだよ!アンタ!

前作のラストでも言ってたろ、俺は元々こういうオッサンなんだよ

それにしたって酷い気がする。。。

それに、最近『ゆゆゆ』関連で凄いペースで上げた人の話読んでさ

おう?

その人の感想ってスゲーの!数は何十もあるし、一つ一つに丁寧に答えてるし

え?感想に答えるのってマナーに反するんじゃないの?

いや、ちゃんと感想には『返信』って機能があるんだ。それを使ってらっしゃる

だったらお前もそれを使えよ。。。

さっきも言ったろ、もう変えられん。それに…

それに?

あの量の感想にちゃんと返信するとか、俺にはムリ。キャパが追いつかん

まあ、モノによっては半年も放置するくらいだからな。。。

だから、オマケとか読んで、
『コイツんとこに感想書くのやベー!』
くらいに思ってもらった方が楽な気がしてきた。

相変わらず動機が酷い。。。

そしてぇ!

この流れで感想発表か、度胸ありすぎだろ

あー、でも後書きも長くなるから次回のオマケに回すか

ええっ?!

<そんなわけで次回はオマケです>





<バレンタイン・その後>

浮かれた様子で『彼』の研究室へ訪れた春信。

「ふっふっふっふ~ん」

「最近よく来るな、春信…なんだ?今日はやけに上機嫌じゃないか」

「じ・つ・は!夏凜ちゃんからバレンタインのチョコが届いてたのさー!」

「ほう、お前の妹がそんな気の利いたことを?」

「なんか失礼な言い方だな。。。」

「実際、今までそんな事一度も無かったろう」

「ぐ。。。か、夏凜ちゃんもそれだけ大人になったって事さ」

「家族チョコか、確かに大人の方がやってそうだな」

「何を言う!バレンタインカード付きの愛情たっぷりチョコだぞ!」

春信は懐からチョコの包みを取り出す。

「ほほう、それが…ってそのチョコは…」

「どうだ!羨ましいだろ!?」

「お前、正気か…?」

「は?何がだよ」

「それ、薬局とかの店頭で88円くらいで並んでる板チョコだろ…」

「夏凜ちゃんの愛はお金じゃ買えないんだよ!」

「そのチョコは100円で買えるけどな」

「そこに込められた気持ちがプライスレスなんだよ!」

「いや、大赦で配られてる職場チョコでも、もうちょいマシだったぞ…」

「あんな大赦から予算の出てる愛情の欠片も無いチョコと比べて欲しくないね!」

「大体、愛情ってそのカード…」

「そう!このカードこそ愛情の証!」

「あ~…まあ、考え様によっちゃあ、愛情篭ってるかも知れんが…」

「ふっふ~ん、やっとシャッポを脱いだかね!」

「そうだな、お前には参ったよ…」

「お、おう、わかればいいんだ、わかれば。。。」

「3月14日にはちゃんとお返ししておけよ」

「当然だ!愛情を込めて手作りにしようと思ってる!」

「なんだ?神樹の木彫りでもするのか?」

「なんでだよ!手作りお菓子に決まってんだろ!」

「え?お前、そんな経験あったっけ?」

「いや?菓子作りなんて高校の家庭科以来だな。だから特訓だ!」

「そういうとこは無駄に本気で取り組むよな…」

「見てろ。。。1月(ひとつき)後の『オトメン』と呼ばれる程になった僕の姿を!」

「まあ、お前はなんでも器用にこなすから、それは心配ないだろうけど…あ、そうだ」

「え?」

彼はごそごそと机の下から何かを取り出している。

「これ、餞別だ。使え」

「なんだ?コレ、白い袋?」

「部室までリヤカーで行くわけにもいかんだろ。特別製だから軽くて頑丈だ」

「いや、いくらなんでも、こんなデカイ袋に入れるほど菓子は作らんぞ。。。」

「いいから持ってけ。絶対必要になるから」

「?。。。なんか分からんが、わかった。サンキュウ」

「おう」

「さあって、さっそく食堂のチーフに道具借りに行こっかな~っと」

入ってきたときと同様に浮かれた様子で出ていく春信。
しかし彼は

「またややこしい話にならなきゃいいけどな」

と嘆息していた。

<つづく>



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28話 オ・マ・ケ・6

オマケでは本文でグダグダ話、後書きでキャラのやりとりが基本となっております
キャラ崩壊なども含むのでご注意ください



mototwo(以下略):というわけで感想紹介!

 

春信(以下略):もはや嫌がらせの域だな。。。

 

おいおい、前回の後書き読んでない人には分かんない話を出すなよw

 

『というわけで』で始めた奴にだけは言われたくねえ!

 

そんな春信は置いといて~

 

いつか殴る。。。

 

まずは!前回のオマケ5、21話直後の感想から!

『相変わらずの長文ですね・・・。』

スンマセン、文章まとめるの苦手なんす、スンマセンっす

 

いきなり卑屈な。。。

 

んで、その話って後書きに例の勇者王ネタやって丸太で逃げたときだからこんな話も

『身代わりで発生させた丸太に自分が隠れるって

どんなに大きい丸太なんだろうと思ってたりします。』

アレは勇者の力の一部の応用だね

 

夏凜ちゃん見れば分かると思うけど、満開以前でも刀は無尽蔵に作れたし、

風みたいに剣を変形させることも出来るから

 

叫びさえすれば、大抵のものは作れるってわけだ。便利な設定だね

 

あの時も叫んでたね

『丸太は刀で出来ている マフラーは鉄で仮面は硝子 幾たびの戦場を越えて』。。。

 

いや、『イミテイトレプリカ』としか言ってねーだろ!

なんでガルフォードがエミヤになるんだよ!

 

おやおや、勘違いでしたかのう。。。

 

まったく…

まあ、最弱が作ったもんだから、振り下ろした千景の鎌にも耐えられないけど

 

お前もイチイチ、いらん一言いれるな

 

お前が言うな。んで

『勇者(?)として居るときと大赦関係者としているときのギャップ?が激しすぎません?

面白いからいいんですけど・・・。(逆に飽きないんですよね、ギャップがある方が)』

 

もう、4人が別キャラみたいなもんだな、それこそ仮面がガラスで出来てるが

 

演技派女優ね!もうどれが素かわからんよな、俺・僕・私・拙者で

 

いや、女優じゃないし。。。少なくとも「拙者」は完全に演技だからな。。。

 

「僕」のときも「私」のときの丁寧語が混ざったりするしな。んで続き

『本作品の『オ・マ・ケ・3』でスマホを持っていないとおっしゃっていましたが

PCブラウザ版はやっているのでしょうか?

(私も持っていないのでPCブラウザ版をプレイしております)』

 

おお!そんなのが出てたんだな!

 

うん、情報は集めてたんで、PC版サービス開始前に登録して、

事前登録特典の「鷲尾須美」コードも手に入れてた

 

で、どうだった?プレイした感想は?

 

プレイ…出来てない…

 

はあ?また時間が無いとかそういう。。。

 

いや、開始当日にログインしたけどロード画面から進まなかった…

人気あるから混雑してるのかなー?ってそれから毎日試してるけどダメだった…

 

え?

 

ちゃんと確認したら俺のノートPC、CPUが32bitで、

動作環境は64bitないとブラウザが対応しないらしい

 

それって。。。

 

新しい情報は今まで通り、ネット任せだな!

 

開き直ったー!

 

そういうわけで、プレイしてませーん!

もうしょーがないし!(泣

 

もういい、泣くな

 

さて、次の感想だ

 

切り替えはやっ!

 

この人も21話直後に書いてくれてるね

『おお、メシアよ!

ようやく叫ぶ春信(厨)が帰ってきたのですね!

最近の春信はやれクールだ、やれイケメンだ、なんてチヤホヤされてて幾度となく

「お前誰やねん!」とか、「あれ、作品間違えた…?」なんて思いながらヤキモキしてました。

やっぱり春信(偽)は叫んでツッコミをする。

はっきりわかんだね。』

だそうだ!

 

俺の名前の後ろになんか付いてるんだが。。。

 

オヤオヤ、本当だねぇ

 

お前が書き込んだんじゃねーだろな。。。

 

しないしなーい、したこともなーい

 

くっ。。。以前の仕返しか!

 

まあ、再開後はあのイケメン春信だったから

後半見るまで「誰?」「新しい話?」と思った人もいたかもね

 

俺を無かった事になぞさせんぞ!

 

まあ、勇者部はツッコミ要員が優秀だから、どっちかっていうとボケに回りそうだけどな

 

叫んでツッコミするには戦闘要素が必要か。。。

 

まあ、そのうち部室でも叫ぶようにはなるだろ

 

お楽しみに!

 

で、次なんだが…

 

ん?どした?

 

まあ、読んでみよう。時期は『芽吹編』の1・2話、22話と23話を上げた直後だな。

『更新ありがとうございます……ありがとうございます!

前回は「微妙に」などと付けて申し訳ありません。

嘘ですすごく楽しみにしています。』

 

ほほう。。。

 

分かるな、春信

 

うむ、「地味に気に入っていた」と言って下さってた方だな。。。

 

そうだ。どうやら本当は「微妙に気に入ってた」ようだな

 

「微妙」なオッサンが書く「微妙」な話だからしょうがないんだろうなぁ

 

いやいや、「微妙」な主人公のせいで「微妙」な人気しかでない作品だからじゃないかな?

 

ひほのはにゃにょあにゃに(人の鼻の穴に)ひゅび()ちゅっこんでんぢゃねーろ(つっこんでんじゃねーぞ)、「みみょう(微妙)ひょやじ(おやじ)

 

ひょーひゅーこひょ(そーゆーことは)おりぇのりょーひょひょちゅかみゅにょ(俺の両頬つかむの)ひゃめてきゃらひへよ(やめてから言えよ)

ひひょー(微妙)にゃ()ひゃひゃぞー(若造)

 

。。。

 

 

「「ケッ!」」

 

前回の(てつ)もある、ここはどう乗り切るのかわかってんな。。。

 

オッサンを舐めんな、ガキの考えなんぞお見通しよ…

 

「「せーの」」

 

ネタにしてスンマセン。。。っ!

ネタの提供を、ありがとう…っ!

 

ん。。。?

 

どした?

 

なにか、微妙に意志の疎通が(はか)れていなかったような。。。

 

気のせいだろ?文字数もピッタリだったし

 

そ、そうか。まあ、なんにせよ『すごく楽しみにしています。』ってのはありがたいな!

 

そうだねぇ、いつ期待を裏切るかもわからんけど

 

お前はホントに。。。

 

気にすんな、ただのツンデレだ

 

オッサンがやるとキモイあれだな。。。

 

んで、次が最後だね

 

(こた)えないやつだねぇ

 

むう、最後の…コレは…

 

あ?なんだ?

 

い、いや、この方は『芽吹編』の最終回上げた直後に書いておられる。

『更新お疲れ様です。

最新話の春信が芽吹に言ったセリフは私の心に響くものがありました。

これからも頑張ってください

PS.銀の魂を春信に受け継がせてくれてありがとうございました、

私たちにも銀の魂は受け継がれているのかもしれませんね。』

 

。。。

 

 

真面目な。。。感想だ。。。

 

うむ…初めてだ…

 

ど、どうしよう?!こういうのってどう答えたらいいんだ?

 

お、落ち着け!答えるのは基本書いてる俺だ!

 

そ、そうか!じゃあ答えろ!

 

でっ、でも、こういうのってどう答えたらいいんだ?!

 

俺と同じ反応すんな!落ち着け!人を呑むんだ!

 

いや、人の字を手に書くんだろ

 

おお、少し落ち着いたな。。。

 

あ、ホントだ

 

じゃあ、真面目な感想だし、真面目に答えようぜ!

 

そうだな。えーと

ありがとうございます。

シリアスの時の春信のセリフは『勇者である』シリーズが大好きな私のメッセージとも

言えるものなので、共感していただけて嬉しいです。

仰る様に、銀のたましいは彼女の生き様を知るもの全ての心に受け継がれると思ってます。

そして全ての勇者のたましいは、それを知らなかったものたちにも

いつの間にか引き継がれているんだと思います。

だからこそTV最終回の『全部のせ勇者パンチ』(公式名称)なんだろうなと。

 

アレ、そんな名前だったのか。。。

 

正直、アレを書いてる時点では年末だったから、

最終回で的外れな話になってたらどうしよう?

とか考えてたんだけどね

 

相変わらずビビリだな。。。

 




<バレンタイン・その後2>

「三好さん…」

仕事中、不意に女性職員から声を掛けられた春信。
書類に目を通しつつ、その声に耳を傾ける。

「はい?なんですか」

「最近、ロリコンが再発して、讃州中勇者部に入り浸ってるって本当ですか…?」

「なんでだよ!」

思わず素で突っ込んでいた。

「え?」

「あ。。。」

「今のは…」

「な、何でもありませんよ。そっ、それよりなんですか?その訳の分からない質問は。。。」

「いえ、最近の大赦勤務の女性職員の間で噂になっていて…」

「なぜそのような噂が。。。」

「なんでも、『中学生から貰ったチョコを持ってはしゃぎ回っていた』とか」

「ぐっ。。。」

「『女性職員からのチョコには目もくれなかった』とか」

「はあ?」

「その上、頻繁に勇者部に出入りしているものですから…」

「い。。。いやいや、待って下さい」

「はい?」

「その情報、というか噂には、かなりおかしなフィルタがかかってます!」

「そうなんですか?」

「その中学生からのチョコというのは、妹から貰った板チョコです、家族チョコです!」

「ああ…例の勇者の…」

「そうです。それに、バレンタインに女性職員からのチョコなんて誰からも貰ってません。」

「え?」

「あの日前後は、なぜか仕事が山積みで。。。誰かと会う事もなかったんですよ」

「でも妹さんからのチョコは受け取ったんですよね?」

「それも部屋の前に届けられていたのを、日が変わってから気付いただけです。
今年は大赦の職場チョコすら貰う暇もなかったですから。。。」

「部屋の前に?」

「そうです、部屋の前に一つだけ、それがその家族チョコだったんですよ」

「一つだけ…」

「それに、勇者部へ出入りしているのは、名誉勇者と巫女の皆さんへの挨拶の一環で。。。」

「そんなことより、部屋の前には一つしかチョコが無かったんですか?」

「ええ、まさか今までの噂を真に受けて、義理すら貰えなくなっていたとは。。。」

「そう…ですか、そうなんですね…」

「だから、私のその噂は。。。」

「あ、私ちょっと用事を思いつき(・・・・)ましたので」

「え?」

「調査に出ます。しばらく戻れないと思いますが、お気になさらず」

「は、はあ。。。」

パタン

女性職員の出た後、一人ポツンと部屋に取り残された春信。

「なんだったんですか、今のは。。。」

ハア。。。と溜息をつくと

「学生の頃は良かったなぁ。。。義理チョコ一杯もらえて、モテ()気分に(ひた)れたのに。。。」

と一人ごちるのでした。

<つづく>


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29話 ホワイトデー・その前に

今回も勇者たちが誰も出てきません
は~、こまったもんだね~



「で、出来た。。。!」

 

大赦の食堂にあるオーブンの前で春信が声を上げた。

 

「おっ、やっと満足いく物ができたかい?」

 

「ああ、チーフ、ありがとうございます。厨房まで貸していただいて。。。」

 

「なあに、気にする事ないよ、妹へのお返しなんだろう?」

 

「ええ、まあ。。。板チョコしかくれなかった小娘への当て付けみたいなものですよ」

 

「それにしちゃ、本気で作ってたけど…」

 

「はっはっは、チーフの前だから、気合が入っただけですって」

 

「アンタもすっかり上っ面が綺麗になっちまったねぇ」

 

「はい?」

 

「もっと、自分を出していかないと、若い娘にゃ伝わんないよ」

 

「な。。。何の話ですか?」

 

「まあ、自分で気付かないと意味ないけどね」

 

「は、はあ。。。」

 

「ところで、それ持って今から讃州中へ行くんだろ?」

 

「あ、はい。ちょうど3月ですし、当日は園子嬢の発案で色々あるでしょうから」

 

「じゃあ、コレも持ってってくんな!」

 

「これは。。。」

 

それは3つの大きな菓子の包み。どうやらチーフの手作りのようだ。

 

「須美ちゃんと園子ちゃんと…銀ちゃんの分だよ」

 

「先代の御三方。。。銀様の分だけ少し大きいようですが。。。」

 

「色々、考えてたら…ねえ…ちょっと気合が入りすぎちまったかね!」

 

チーフは年甲斐もなく、目に涙を溜めて鼻の下をこすっていた。

先代勇者の戦いは今の大赦に務める者なら誰もが知っている。

その結末を知る者にとって、あの3人はあまりにも思い出深く、

特に銀に対して特別な思いを持つ者は多い。

 

「。。。ここに来ていただければ皆さんにも会えるんですが。。。」

 

「過去の勇者…特に銀ちゃんとの接触は厳禁だって言われてるからねぇ…それに」

 

「それに?」

 

「もし、会っちまったら、泣いちまって話も出来ないだろうよ…」

 

「そう。。。ですね、そうかも知れません。。。」

 

「アンタもその仮面を脱いで、ちゃんと話したらどうだい?折角直接会えるんだから…」

 

「それは。。。」

 

「まあ、今のままじゃあ無理かね」

 

「すみません。。。」

 

「気にしなさんな!さ、もう行くんだろ?」

 

「あ、はい、行ってきま。。。」

 

「ちょっと待ったーーー!!」

 

「「え?」」

 

いきなりの声に振り向くと、そこには大赦の職員が大勢並んでいた。

 

「み、皆さん、一体どうしたんですか。。。?」

 

「勇者や巫女の皆さんに色々と思いを伝えたいのは何もチーフだけじゃねえ!」

 

「我々とて、お会いしたいのを我慢して日々を過ごしているのだ!」

 

「そんな思いをプレゼントで示せるホワイトデー!」

 

「こいつを使わねえ手は…あ!ねえってえもんよ!」

 

「な、なんでそんなに芝居がかった言い方を。。。」

 

「特に意味はねえ!ノリと勢いってえやつだ!」

 

「そ、そうですか。。。」

 

「とにかく!」

 

「荷物にならないよう、各ファンクラブで1つずつにしてある!」

 

「さあ!持って行きやがれい!」

 

「そ、それでも19個ですか、これは結構な荷物に。。。」

 

「あ”?」

 

「い、いえ、持って行きますよ、ちゃんと持って行きます」

 

「当たり前だ!飛鳥からちゃんと持って行ける様にしてあると聞いてるんだ!」

 

「アイツから?ってこの袋のことか。。。」

 

春信は『彼』から貰った白い袋を取り出す。

 

「その袋?確かにデカいが、全部入るのか?」

 

「ああ、きっと大丈夫でしょう、彼がそう言ったなら」

 

春信が箱を受け取り、袋に入れていくとどんどん袋が膨らむ。

だが、一定の大きさに膨らむとなぜかそのままの大きさで箱が入っていく。

 

「な、なんか不思議な光景だな…」

 

「中はどうなってるんだ…?」

 

「あ、覗かない方がいいですよ。きっとろくな事になりませんから。。。」

 

「そ、そうなのか…」

 

「あいつ、実は未来から来た猫型ロボットとかじゃねーのか…」

 

「何を言ってるんですか、ただの研究の副産物ですよ。多分。。。」

 

「いや、これ一つで一生食ってける特許取れそうなんだが…」

 

「さてと。。。これで全部ですね」

 

「待って下さい!」

 

「はい?」

 

声に振り向くと今度は大勢の女性職員がなにやら後ろ手にもじもじとしている。

 

「あ~。。。皆さんも?」

 

「は、はい!荷物になるからと遠慮してたんだけど、その袋なら!」

 

「はぁ。。。一体どなたに?」

 

「もちろん!」「須美ちゃんと!」「園子ちゃんと!」「銀ちゃんに!」

 

「ああ。。。それは。。。断れませんね」

 

「きゃー!」

 

女性職員たちは歓喜し、春信の下へ殺到して贈り物を渡していく。

その様子を見た男性職員たちは

 

「なんか…」

「ただ受け取ってるだけなのに…」

「三好がちやほやされてるみたいで…」

「イラっとするな…」

 

なぜかイラっとしていた。

 

「さて、それじゃ今度こそ行きますよ」

 

「ああ、行ってきな」

 

「皆さんによろしく!」

 

「銀ちゃんに食べ過ぎないように注意してあげて!」

 

「ちゃんと渡して来いよ!」

 

さまざまな思いを抱えて

物理的にも色々抱えて

春信は讃州中学勇者部へ向かうのでした。

 

<つづく>

 




<バレンタイン話の頃>

大赦内にて

「三好の部屋の前、見たか?」

「ああ、やっぱりチョコが積み上がってたぜ…」

「許せん!シスコンでロリコンで巫女好きでバトルマニアのクセに!」

「今日は絶対にチョコを受け取らせまいと仕事を溜めに溜めて奴の前に積み上げたのに」

「ギリギリ、終わらせて勇者部に行ったそうだぜ」

「まあ、あの時間に行っても誰もいないだろうけどな」

「ふっふっふ、後はあのチョコの山だ」

「一体どうしてくれようか…」

「義理チョコ以外は回収?」

「いや、もういっそ全部回収でいいんじゃね?」

「妹以外にもらっても困るだろうしな!」

「となれば…」

「「「いざ、回収!」」」

「あ、コレ秘書課のあの子のだ」

「こっちは経理課のあの子からだな」

「おお、オペレータのあの子からも!」

「くっ、なんか惨めになってきた…」

「考えるな!考えたら負けだ!」

「あ、これは…」

「どうした?」

「そ、それは…!」

「「「『三好夏凜より 愛を込めて』?」」」

「妹から?」

「でもこれって…」

「…だよな」

「ふ…」

「コレだけ置いて行ってやるか…」

「慈悲ってやつだな…」

「ま、面白そうだってのもあるが」

「後のは大赦務めの子達ばかりだったし」

「全て回収で良かろう」

「では…」

「「「ハッハッハ!さらばだ!三好春信!」」」

ダバダバダバ~

こうしてチョコを横取りした3人は、その後、女性職員たちにバレて酷い目に遭うのですが…
その所業と結末が春信の耳に届く事は無かったそうです。



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30話 ホワイトデー・その1

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



3月もそろそろ1週間が過ぎる頃、勇者部部室へ訪れた春信。

 

「夏凜ちゃ~ん、ハッピーホワイトデー!」

 

「うわ…兄貴また来たの…」

 

頭から花でも生えたのかという明るさで入ってきた春信を、露骨に嫌そうな顔で迎える夏凜。

 

「またまた~、来るの分かってたくせに~」

 

しかし春信はまるで気にせず話を進める。

 

「こんにちわ~お兄さん!」

「こんちわ、おにーさん」

「こんにちは、春信さん」

「こんにちは、お兄さん」

「ハルルン、げんき~?」

 

「やあやあ、みなさん、こんにちは」

 

部室には部員6名が揃っている。

 

「ホワイトデーか…今月は前もって来たってわけね」

 

一月(ひとつき)前はなぜか仕事が積み上げられて、

当日のあの時間にしか来れなかったんだけどね。。。」

 

「そ、そうなの…」

 

「で!まずは夏凜ちゃんにハッピーホワイトデー!僕の手作りだよ!」

 

「え?手作り?木彫りの熊でも彫ったの?」

 

「なんでよ!」

 

しかし風のツッコミはさらりと流される

 

「やだなぁ、手作りのオランジェットだよ」

 

「オラン?え、ああ、ありがとね」

 

春信会心の作だったが、お菓子に興味のない夏凜には名前を言っても伝わらなかったようだ。

 

「ひゅーひゅー!やけるね、夏凜ちゃん!」

 

「バッ…何言ってんのよ!友奈は!」

 

「ああ、皆さんにもちゃんと用意してありますよ、はい、友奈さん」

 

「え!わぁ、ありがとうございます!」

 

「はい、風さん」

 

「な~んか悪いわね、バレンタインに何もあげなかったのに」

 

「気にする必要ないわよ、わざわざ貰おうとしてここに来る様な兄貴だから」

 

「はい、樹さん」

 

「ありがとうございます。え…でもこれって結構高級なお菓子の詰め合わせじゃ…」

 

「はい、東郷さん」

 

「ああ、お気遣い感謝します…って、そうね私のは老舗の和菓子の詰め合わせになってるし…」

 

「え?皆が高級菓子で私だけ手作りとか、なんの嫌がらせ…?」

 

「愛だよ、愛」

 

「「だから何故そこで愛っ?!」」

 

「それはハルルンの愛で合ってるんじゃないかな~?」

 

「あ、そか」

 

「合ってないわよ!完全に嫌がらせでしょ」

 

「にぼっしーは素直じゃないね~」

 

「そこも可愛いとこなんだよ」

 

「あ!わかります!夏凜ちゃんのそういうとこも私、大好きだもん!」

 

「え…?あ…あう…」

 

「………………………」

 

「お、お姉ちゃん…東郷さんが…」

 

「東郷、もっと落ち着いて、温かい目で見守ってやりなさい…」

 

「さてと。。。」

 

「わくわく、わくわく」

 

「。。。」

 

「わくわく、わくわく」

 

「そろそろ歴代の勇者の皆さんのところにも。。。」

 

「ちょぉ~っと待った~!ハルル~ンっ!」

 

サンタのような大きな袋を担いだまま、部室を出ようとする春信の襟を後ろから掴む園子。

 

「なんですか、『園子様』?」

 

振り向き、にこやかな顔で問う春信。

だが、言葉尻には色々と(とげ)がこもっている。

 

「あ~、『春信さん』、何か忘れてないかな~?」

 

珍しく空気を呼んだ園子は呼び方を改めた。

 

「さっきも、あの呼び方。。。してましたよね?」

 

「き、気のせいじゃないかな~、『春信さん』~?」

 

「え、なに?どういうこと?」

 

二人のおかしな空気に頭に疑問符の浮かぶ風。

東郷はあのときの事を説明する。

 

「ああ、風先輩、そのっちは以前、あのあだ名で呼んだら

『園子様』で返すって春信さんに言われたんですよ」

 

「ああ…いい歳した大人があのニックネームは恥ずかしいものね…」

 

「ええっ、可愛いのに?」

 

「友奈のセンスもちょっと問題あるわね…」

 

「夏凜ちゃん、酷いっ!」

 

「普通はお兄さんの見た目からあのニックネームは出ないですから…」

 

「樹ちゃんまで?!」

 

色々と話している4人の話を聞き流しつつ、春信は園子を問い詰める。

 

「だいたい。。。正月のことは反省したんですか?」

 

「お正月~?」

 

「「え…?」」「「え”っ?!」」

 

「そ、そのっち!夏凜ちゃんの写真の事よ!」

 

犬吠埼姉妹の呆れた声と三好兄妹の怒気をはらんだ声に思わず東郷が助け舟を出した。

 

「ああ~っ!お正月の事!はんせ~い!反省してま~っす!」

 

園子はワタワタと左手を振りつつ、目線を泳がせている。

 

「。。。っ、バレンタインも皆さんにご迷惑を掛けた様ですし」

 

「ええ~?あれは結構好評だったんだよ~。ねえ、わっし~!」

 

「え?ええ、そうね、えっと…」

 

園子の言葉に、東郷は(うつむ)き加減に頬を染め、友奈に目線を送っている。

 

「わっしー!その反応は!やっぱりあの日、ゆーゆと何かあったね~?!」

 

目を輝かせ、鼻息を荒くしてメモを用意する園子。思わず春信を放してしまう。

 

ガシッ

 

解放された春信が園子の顔面を鷲掴みにした。

 

「そ~の~こ~さ~ま~?」

 

「うひゃ~っ!たんまたんま~!ゆーゆ~!フォローを~!」

 

「えっ?ああ!そ、そうですね、たっ、楽しかったですよ!お兄さん!とっても!」

 

友奈の全身を使った不器用かつ一生懸命なフォローに春信は溜息をつき

 

「友奈さんに感謝しておくんですよ。。。」

 

園子を解放した。

 

「ありがと~!ゆーゆ~!」

 

「どういたしまして、園ちゃん!」

 

友奈に両手でハイタッチするように礼を言う園子。

友奈もそれに応え手を合わせていた。

 

「まったく。。。はい、園子嬢」

 

袋から菓子詰めの箱を取り出し園子へ渡す。

 

「ありがと~!ハルルン~」

 

受け取った箱を手に持ったまま抱きつこうとする園子。

 

ベチッ!

 

しかしまたしても春信に顔面を受け止められる。

 

「『園子様』はそういう男女のべつなく抱きついたりする癖、直した方がいいですよ。。。」

 

「ええ~、なんで~?」

 

届かぬ両手を春信の方へばたつかせながら問う園子。

 

「男の子はそういうの勘違いしちゃうからです」

 

「おやおや~?それはハルルンが何か勘違いしちゃったってことなのかな~?」

 

園子の挑発的な言葉にまた溜息が出る。

 

「しませんよ、僕は『園子様』がそういう人だって知ってますから」

 

「ん~、でも~」

 

「?」

 

「確かに女の子には結構、抱きついたりしてるかもしれないけど~」

 

「けど?」

 

「男の子に抱きつくのはハルルンだけだよ~」

 

「『園子様』、僕はもう男の子じゃありません。。。」

 

「ええっ!?ハルルンは女の子だったの~?!」

 

「何言ってんですか、成人男性は『男の子』って言わないんですよ?」

 

「ああ~、そういう意味か~、ビックリしたよ~」

 

「どうしてそういう発想になるのかしらね…」

 

「まったく、頭ん中がお花畑すぎない?」

 

「こういうアホな思考も直して欲しいところなんだけど。。。」

 

「そ、そのっちの感性は独特ですから…」

 

「見習いたくなる事もあるんですけどねぇ…」

 

「ホントにねっ!」

 

「でも尚更、ハルルン以外の男性に抱きつく事なんてないよ~」

 

「まだその話、続いてたんですか。。。」

 

「だってそうだもん~」

 

「それは『園子様』に男の子のお友達がいないだけでしょう?」

 

「ぎっ、ぎくぅ~!そ、そんなことはないよ~、クラスメイトに男の子たちもいるし~」

 

ハァ。。。と春信は更に深い溜息をつき

 

「園子嬢は見た目がお嬢様級の美少女で、実際、乃木家のお嬢様で、頭も良くて」

 

「ええ~、いきなりハルルンにそんなに褒められると照れるよ~」

 

頬を押さえて(かぶり)を振り照れる園子。

しかし顔面を春信の掌で抑えられているため、まるで頭をすり寄せている様だ。

 

「なのに基本アホで、中身は変な人で、年中百合ネタ全力で探してるような子ですから、

一般の人は『園子様』の友人になれないでしょ。。。」

 

「いや~、照れ照れ~」

 

まだ照れている。

 

「いや、後半のは褒めてないでしょ…」

 

「兄貴も園子相手だと容赦なくオチをつけてくるわね…」

 

「あいかわらずですね、お兄さん…」

 

「え!いま、何かオチがあったの?」

 

「いいのよ、友奈ちゃんは気にしなくて」

 

「園子嬢はクラスメイト感覚の交友と、勇者の皆さんみたいな交友の両極端だから」

 

「それは…本当に極端ですねぇ…」

 

「親しい男友達とか出来たら距離感間違えそうで。。。これでも心配してんだよ?」

 

「ああ、そのっちの事、気にはかけて下さってたんですね…」

 

「その割には兄貴のアイアンクロー、さっきから園子が声出せないくらい締め付けてるけどね」

 

「おお…あの乃木が気絶寸前まで痛めつけられてる…」

 

「そ、園ちゃん!大丈夫!?」

 

よりそった友奈に園子をあずける春信。

 

「あ、ゴメンゴメン~、もう平気だよ~」

 

「って、兄貴が声真似すんなー!気持ち悪い!」

 

春信の気持ち悪い園子の物マネだった。

 

「はっはっは、スマンスマン、なんか照れてる園子嬢見てたらイラっとしてしまったw」

 

「そ、そのっち!」

 

「あー!園ちゃんが!」

 

「し、白目むいちゃってますよ、園子さん…」

 

「ええっ!こ、こういう時はぁ、じ、人工呼吸とか?!」

 

「ばかっ!心臓マッサージが先でしょ!」

 

東郷と友奈と樹が心配する中、風、夏凜がワタワタしていると

 

「ああ、大丈夫、大丈夫。僕に任せて」

 

「「「「「ええっ?!」」」」」

 

「あわわわ、お兄さんが?」

 

「そのっちに?」

 

「人工呼吸ー?」

 

「心臓マッサージ?!」

 

「で、できるんですか!夏凜ちゃんのお兄さん?!」

 

5人が慌てる中、横たわる園子へ

 

「ハッ!!!」

 

気合と殺気のこもった春信の手刀が脳天に繰り出されると

 

「ささ~っと~」

 

園子は素早く転がり避けた。

 

「「「「「え?」」」」」

 

「ね、平気だったでしょ?」

 

「園ちゃ~ん!」

 

「そのっち!大丈夫なの?!」

 

「あ、ゴメンゴメン~、もう平気だよ~」

 

今度は本物の園子だ。

 

「き、気絶してても殺気に反応するなんて…」

 

「や、やるじゃない、園子…」

 

「すごいです…」

 

「えへへ~」

 

「ああ、今のは違うよ?」

 

「「へ?」」

 

「避けたのは殺気に反応したんだろうけど、気絶なんてしてなかったよ。園子嬢」

 

「「は?」」

 

「あはは~、ビックリした~?」

 

「心配したよ~、園ちゃん~」

 

「まったくもう、そのっちったら…」

 

「ビックリさせないでください…園子さん」

 

ホッと胸を撫で下ろす3人

 

「いや、アンタたち、もっと怒りなさいよ!」

 

「このお騒がせ娘がー!」

 

風の拳骨と夏凜の手刀が園子に振り下ろされる

 

「ささ~っと~」

 

が、やはり園子には当たらなかった。

 

「「だから簡単によけるなー!」」

 

「前にも言ったろう、園子嬢には愛情を込めないと当たらないって」

 

「ぬぐぅ~!」

 

「でっ、でもおにーさん!アタシ達のも度が過ぎる乃木を心配して、愛情がこもってる筈よ!」

 

「そ、そうよ!なんで当たんないのよ!」

 

「ええ~、そんなに二人に愛されてるなんて、嬉しいよ~」

 

嬉しそうに体をくねらせる園子。

 

「あ、なんかイライラする…」

 

「そうね、風…」

 

二人はジト目で園子を睨んでいる。

 

「だろ?でも、そういう怒気が愛情を上回ると避けられるのさ。」

 

「くぅーーーっ!」

 

「何とかならないの!兄貴?!」

 

「ん~。。。

そうだ!二人とも耳を貸して」

 

「「え?」」

 

ヒソヒソ話をすると二人は頷き、目を閉じて園子の前にたった。

 

「ん~?」

 

「「「?」」」

 

首をかしげる4人を前に、なにやらブツブツと呪文のように唱えている二人

 

「メノマエニイルノハイツキメノマエニイルノハイツキメノマエニイルノハイツキメノマエニイルノハイツキメノマエニイルノハイツキメノマエニイルノハイツキメノマエニイルノ…」

 

「メノマエニイルノハユウナメノマエニイルノハユウナメノマエニイルノハユウナメノマエニイルノハユウナメノマエニイルノハユウナメノマエニイルノハユウナメノマエニイルノ…」

 

そしてカッと目を見開くと

 

「もぉ~う、樹ったら~」「友奈の…バカ」

 

なぜか赤い顔でデレデレのふたりが繰り出すチョップは

 

ぽよん へにょん

 

園子の脳天にやさしく当たった。

 

「おお~!なんか心地よいよ~!」

 

「「あ…当たった…!」」

 

「すごいわ、夏凜ちゃん、風先輩も!」

 

「初めて当たったね!」

 

「あれ?でも今みたいな事、前にも見たような…」

 

「ああ、以前やった友奈さんのチョップと同じやり方だからね」

 

「ああ、なるほど」

 

「当たったけど、なんかスッキリしないわね、コレ…」

 

「乃木も喜んじゃってるしね…」

 

「そういえば、友奈ちゃん、あの時なんて耳打ちされたの?」

 

「え?それはね…」

 

「わあっ!友奈!言わなくていいから!」

 

「夏凜ちゃん、どうしたの?」

 

「とっ、東郷には秘密よ!そっ、園子にバレると効果なくなるかも知れないから!」

 

「あら、そのっちにバラしたりしないわよ?」

 

「と、とにかくダメなのっ!」

 

「でも…あの時と違って、二人がそのっちの事を呼ばなかったのは気になるわ…」

 

「ああ、『大好きな人に抱きつかれてるのを振りほどくつもりで』って言ったからだよ」

 

「兄貴っ!?」

 

「あっさりバラされちゃいましたね…」

 

「なるほど、それで…」

 

「あ、あれ?東郷、怒って…ないの?」

 

「ふふふ、怒る訳ないわ、友奈ちゃんを皆が大好きなのは当然だもの」

 

「さっきの自分に見せてあげたい余裕ね、東郷…」

 

「お姉ちゃんも、わざわざ地雷踏みに行かないでよ…」

 

「おお~!正妻の余裕だね、これは~!」

 

「正妻の余裕って…」

 

「にぼっしー!ここは愛人としてガツンと言っておくべき…」

 

スパーン!

 

春信が久々に取り出した大きなハリセンが園子の顔面をクリーンヒットした。

 

「い、いたいよハルルン…」

 

「『園子様』。。。バレンタインもそうやって、周りを(あお)って面白がってたんでしょう?」

 

「まるで見て来たみたいに言い当てるわね、おにーさん」

 

「正にその通りだったもんね…」

 

「毎度毎度、皆さんにご迷惑ばかり掛けて。。。」

 

「そ、その事では、わかちゃんにみっちり絞られたよ~」

 

「その反省が足りないから、同じ事やって僕に怒られてんでしょうが。。。」

 

「確かにそうね、普段アホでガッカリな発言ばっかりで、ろくなこと言わないけど、

珍しく兄貴が良い事言ったわ」

 

「ぐ。。。」

 

「夏凜ちゃんは夏凜ちゃんで春信さんに容赦ないわね…」

 

「愛情の裏返しだねっ!」

 

「思いつきでテキトーな事言ってんじゃないわよ、友奈!」

 

「いや。。。分かっているよ、夏凜ちゃん」

 

「は?」

 

「夏凜ちゃんが僕を愛してくれている事は」

 

「いや、何言ってんのよ、兄貴?」

 

「だあって、僕も夏凜ちゃんからバレンタインチョコ貰ったからね~!」

 

「え、何の話?」

 

「恥ずかしがらなくても大丈夫だよぉ、ちゃーんと名前も書いてあったもん!」

 

「友奈ちゃんの前だからって気を使わなくてもいいのよ、夏凜ちゃん」

 

東郷はにこやかな顔で語りかけている。

 

「私に…気を使う?」

 

しかし、友奈はまるで意味が分かっていないようだ。

 

「え、いや本当に知らないんだけど、それ…」

 

「ハハハ、そんなバカな。。。ほら、こうしていつも懐に入れて持ってるんだから。。。」

 

そう言いながら懐からチョコの包みを取り出す春信

その安っぽい板チョコの包みを綺麗にデコレートしたリボンには

 

三好夏凜(にぼっしー)より 愛を込めて』

 

と書かれたカードが挟まれていた。

 

「「「「「これは…」」」」」

 

「いや~、喜んでもらえて良かったよ~」

 

「え?」

 

「そ、園子…コレは何のつもり…?」

 

「サプライズだよ~、ハルルンがいっちばん喜ぶ名前で贈ってあげたんだ~」

 

「は?」

 

「一ヶ月間、その読み仮名に気付かなかった兄貴も兄貴だけど…」

 

「へえ。。。」

 

「おにーさんも乃木のイタズラの餌食になってたって訳ね…」

 

「ほお。。。」

 

「ご愁傷様です…」

 

「ふふふ。。。」

 

「ん~?」

 

「ふっふっふっふっふっふ。。。」

 

「あれ~?ハルルン~?」

 

「許っさーーーんっ!」

 

「うひゃ~!」

 

そのとき、怒りに震える春信の怒気が部室の空気を変えた!

髪を逆立て、怒りのままに叫ぶ春信!

 

「俺のこの手が光って(うな)る!お前を倒せと輝き叫ぶ!」

 

「なんてこと!兄貴の右手から闘気が(あふ)れ出ているわ!」

 

「アレを喰らったら人間なんてひとたまりも無いわね!」

 

「な、何を言っているの、二人とも…」

 

「お姉ちゃんたちが変な空気に飲まれてるよぉ…」

 

「でも!私もビシバシ感じるよ!強い力を!」

 

「ああ、友奈ちゃんまで…」

 

「ひっさぁつ!シャアイニングゥ。。。フィンガアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「ささ~っと~」

 

春信の繰り出す渾身の掌底は、しかして園子にアッサリとかわされる。

 

「うおのれぇ!オトメンの純情を踏みにじりやがってーっ!」

 

「ささ~っと~」

 

「おお!園子が初めて兄貴の攻撃を避けたわ!それも連続で!」

 

「本気の殺気がこもってるって訳ね!ゴクリ…」

 

「ふ、二人とも、その『これは勝負の行方が分からなくなってきたぜ』的な解説は()めて…」

 

「オトメン?」

 

「友奈さん、そこに引っかかってる場合じゃないですよ…」

 

「ふっふっふ~、そんな殺気に満ちた掌では私は捉えられないよ~!」

 

まるで鳥類が威嚇するように両手と片足を上げ、挑発する園子!

 

「ああ~、園子さんもノリノリで返しちゃってますぅ…」

 

「二人っていつも仲良しだね!」

 

「さあ!『園子ちゃん大好き!結婚して!』って言ってごらん~?掴まってあげるよ~!」

 

(どぅわれ)が言うかーーーっ!!」

 

ノリと勢いだけで繰り出されるワザとセリフの応酬は、過去の勇者達が来るまで続きました。

 

<つづく>

 




mototwo(以下略):バレンタインネタがやっと終わった…

春信(以下略):ホワイトデーネタに移っただけだけどな。。。

また1回で終わらなかっただよ…

もうドタバタばっかで何が書きたいのかも伝わってこんのだが。。。

流れを掴んだつもりで書き出すのに、キャラのやり取り書いてると楽しくなっちゃって…

そんなだから長文乙とか言われるんだよ。

29話で前振りしたのに小学生組は出せなかったし…

大体、なんなんだ、今回の話は?

何って?

夏凜ちゃんにホワイトデーのお菓子作って来たのにまるで園子嬢との話みたいになってんだろ。

風先輩と夏凜ちゃんが「知っているのか、雷電?!」状態だったな。

ウチの可愛い妹をモブ扱いとは、どういう了見だ。。。

どうもこうも、優秀なツッコミは自分の戦闘時以外は解説にまわるのが世の常なんだよ。

それにしたって、園子嬢をメインに持っていく必要はねーだろ。

別にそういうつもりもないんだけど、園子って『ゆゆゆい』時空を一番満喫してる感じだから。

他にも来れて良かったって子は結構いるんじゃね?

そうだけど、割とみんな自制が効くから、園子ほどハッチャケられないっていうか…

園子嬢と園子様は自由すぎるからな。。。

それに、25話のせいで、なんか春信が園子に対してイニシアチブとってるみたいに見えて…

俺のが年上なんだから、それでいいだろ?

いやいや、最弱泣き虫勇者があの園子相手に優位に立つとかおかしいだろ。

別に勇者として相対してるわけでもなし。。。

春信は偉そうに説教たれるけど、乙女達ひとりひとりと対等に接するような奴だから…

ああ、まあそれはそうだな。

そんな訳だから、次回は歴代の勇者たちとのコミュニケーションだ!

女の子との仕事抜きのコミュニケーションとか、結構苦行だな。。。

勇者部に来てる時点で仕事みたいなもんなんだから気にすんな、そしていきなり次回予告!

脈絡ねえなぁ。。。

勇者部ではしゃぎ続ける春信と園子のもとに訪れる歴代勇者たち!

勇者部部室だからな、そりゃみんな来るだろ。

春信の脳天に打ち下ろされる『生太刀(いくたち)』!

またひなたが暴れるオチか。。。

園子の拳も炸裂する!

え?

そんな中、春信の取る行動とは?!その命は無事次の日を迎えられるのか?!

勝手に殺そうとすんな。。。

次回 新三好春信は勇者である 31話『ホワイトデー・その2』!
ホワイトには血の赤が良く似合う

物騒な話にするんじぇねえよ。。。


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31話 ホワイトデー・その2

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



園子と春信が大暴れし、それを実況する風と夏凜

そんなホワイトデー間近の勇者部部室へやって来た若葉

 

「今日はまた一段と騒がしいな、何かあったのか?」

 

「あ、若葉」

 

「これはこれは乃木若葉様、本日はご機嫌麗しゅう」

 

先程までとうって変わってキリリと顔を整え若葉に対応する春信。

 

ズザーッ

 

それまで一緒に駆けずり回っていた園子(中)は滑り込む様にずっこけ

 

「…」

 

「うわ…若葉見た途端、キャラ切り替えてきた…」

 

夏凜は兄のその切り替えの早さに呆れかえっていた。

 

「春信っ?!いかん!逃げ…」

 

「どうしたんですか、若葉ちゃん?」

 

「ああっ、遅かった…」

 

「お久し振りです、上里ひなた様、その節はお騒がせを」

 

「あらあら春信さん、来ていらしたんですね」

 

落ち着いた様子で挨拶を交わす二人に、オロオロしていた若葉の頭に疑問符が浮かぶ。

 

「あ、あれ…?」

 

「なんです、若葉ちゃん、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして」

 

「ひ、ひなた、春信を見ても平気…なのか?」

 

「当たり前じゃないですか、春信さんはあの男とは違うんですよ」

 

「そ、そうか、やっと誤解が解けたんだな、良かった、本当に良かった…」

 

「ホッとしすぎて泣きそうになってるわよ、若葉…」

 

「…」

 

「ところで…そこでうつ伏せになってる園子は何をしているんだ?」

 

「おや、園子嬢、暴れていたかと思ったら、もう疲れて寝てしまったんですか?」

 

そらぞらしい説明をする春信だが

 

「なんだ、またひと暴れしていたのか、いい加減に学習しろ、園子」

 

「…」

 

「すまないな、春信。ウチの子孫が迷惑を掛けて」

 

若葉はその言葉を素直に信じきっていた。

 

「いえいえ、園子嬢も思春期ですから、じっとしていられない時もあるのでしょう」

 

「…」

 

「ふっ、流石に大人の余裕を見せるな、あの男とは大違いだ」

 

「いやはや、お恥ずかしい」

 

にこやかに言葉を交わす二人

その傍らで無言でうつぶせになっている園子に誰も声を掛けられないでいた。

話題を切り替えようと風がひなたに問いかける。

 

「そ、それにしても、あの勢いで飛び出して、よく誤解が解けたわね…」

 

「本当ですね、あの時はもう春信さんの命はないものと思ってましたが…」

 

「ええっ!そうなの?東郷さん!」

 

「一体そのときに何があったの、お姉ちゃん…?」

 

「それは…」

 

「アタシと東郷もひなたが生太刀(いくたち)持って、飛び出したところしか見てないから…」

 

「生太刀を?!」

 

「一体どうしてそんな事に…」

 

「よく生きてたわね、兄貴…」

 

「はははは。。。」

 

「うふふ、お恥ずかしい」

 

「実際、あの後どうやって誤解を解いたんだ?」

 

「そうですね、ちょっと再現してお見せしましょうか、手っ取り早く」

 

「再現。。。ですか。。。」

 

「若葉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「生太刀を」

 

「うむ」

 

何のためらいも無く、すんなりとひなたに生太刀を手渡す若葉

 

「若葉…もはやそこまでひなたの(しつけ)が行き届いちゃってるのね…」

 

「はっ!つ、つい…」

 

風のツッコミに若葉が我に返るが、ひなたはまるで気にもせず生太刀をスラリと抜き身にし

「春信、死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

袈裟懸けからまっすぐ春信の脳天に振り下ろす

 

「う、上里さま。。。」

 

目をみはる者、そむける者、それぞれの中

ハッシと生太刀を素手で挟み込み、春信はひなたを見上げている。

 

「こ、これは…っ!」

 

「真剣白羽取りっ?!」

 

「ほほう、なかなかにやるものだな」

 

「あ、あまり驚いていませんね、若葉さん…」

 

「西暦の世ではこれくらい普通だったのかしら…?」

 

「西暦、すっごーい!」

 

それぞれが呟く中、春信とひなたの攻防は続く

 

「あ、あの。。。」

 

「何をしているんですか、春信さん。さあ、あの時の再現を!」

 

そういいつつ生太刀に体重を乗せていくひなた

 

「し。。。仕方ありませんねっ!」

 

押し切ろうとするひなたと刀の重みを右手側へ逸らし、生太刀の峰を右のつま先で

コンッ

と蹴り出すと、バランスを崩したひなたは刀の柄を手放し、前につんのめる。

 

「きゃっ」

 

そのひなたの前腕(ぜんわん)(すね)に手を当て、空中でクルリと回転させると

仰向けになったその背中と膝裏に腕を回し、抱え上げる。

所謂(いわゆる)お姫様抱っこ状態である。

そのまま右手を伸ばし、回転力を落として降ってくる生太刀の柄を掴む。

 

「え?あれ?今どうなったんですか…?」

 

その挙動に頭が追いつかない樹は目をパチクリさせ

 

「白羽取りから一瞬でお姫様抱っこに…」

 

「しかも生太刀も落さないなんて…」

 

風と夏凜はその動きの無駄のなさに感心していた。

 

だが、ひなたは尚も左手は生太刀へ右手は春信の延髄へ伸ばし、抵抗する。

春信はその左手から逃れるように右腕を膝裏からスルリと抜き、ひなたを直立させ、

延髄を狙う右の抜き手は左肩で上腕を弾く様に押さえ、

そのまま両腕をひなたの両腕ごと背中まで巻きつけた。

 

「こ、今度は抱きしめちゃったー」

 

あっけにとられる友奈と

 

「見ちゃダメよ!友奈ちゃん!」

 

その目をふさごうと友奈の前に立つ東郷

 

しかしひなたはその状態からも首をしならせ、春信の胸板へ頭突きを繰り出していた。

その勢いを殺そうと春信は胸を引いて受け止めつつ叫ぶ

 

「う、上里ひなた様!私は『三好春信』ではありません!」

 

その言葉にピタリと動きを止めるひなた

 

「違…う…?」

 

その隙に頭を左手で包み込むように左肩へ抱え込む

 

「はい、この世界は神世紀300年の再現、あなたの時代の『三好春信』という人はいません」

 

「いない…」

 

「そうです、もうその人はいないんです、私はただ顔が似ているだけの別人です」

 

「もう、いない…」

 

「大。。。丈夫ですか?」

 

その言葉にふいにひなたは春信から離れる。

なぜかその顔は少し紅潮して目尻に涙が浮かんでいるようだった。

 

「そ、そうですか、それは失礼しました。私は神樹様の巫女、上里ひなたと申します」

 

「はい、存じ上げていますよ、私は。。。」

 

名乗ろうとして春信は一瞬戸惑う

 

「?」

 

「あ~。。。落ち着いて聞いていただけますか?」

 

「はい?ああ、はい、もう大丈夫ですよ」

 

「私も、偶然!偶々(たまたま)!何故か!『三好春信』。。。という名前なんです!」

 

ひくついた笑みで名乗るその名に一瞬、ひなたの体が硬直するが

 

「そっ、そうなんですね、おかしな偶然もあるものですね!」

 

乾いた笑いを浮かべたひなたは思いの外、落ち着いていた。

ポスポス

 

「…というわけです」

 

「なんか…凄い攻防が行われたのね」

 

ポスポス

 

「いえ。。。実際はもっと殺気と勢いと力に満ちてました」

 

「アレよりもって、ホントよく生きてたわね、兄貴…」

 

ポスポス

 

「ふふふ、お恥ずかしい限りです」

 

「ひなたさん…さらりと笑顔で言ってますけど…」

 

ポスポス

 

「まったく、普段はまるで運動は苦手なのに、春信に対しての切れ味の鋭さには感心するな」

 

「若葉さんも落ち着いてよく見ていられますね」

 

ポスポス

 

「愛と信頼の成せる(わざ)だね!」

 

「ところで。。。」

 

ポスポス

 

「なぜ園子嬢は先程から私のお尻を殴っておられるのでしょうか。。。?」

 

「う~~~」

 

ポスポス

 

「滑り込んでずっこけた自分をずっと無視してひなたとイチャイチャしてたからじゃないの?」

 

「イチャイチャって夏凜。。。今のやりとりのどこにそんな要素があったと。。。」

 

ポスポス

 

「う~~~」

 

「いやいや、お姫様抱っこしたり」

 

「背中に腕を回して抱きしめたりしてましたよね…?」

 

「それは誤解です。ただの緊急回避です。双方が傷つかないやり方が他になかっただけです」

 

ポスポス

 

「う~~~」

 

「大体、あれだけ構ってたそのっちをいきなり放置してたのは事実でしょう…」

 

「はっはっは、あれは床で寝てしまった園子嬢を起こさない様、気遣っただけですよ」

 

「やさしいんだね、お兄さん!」

 

ポスポス

 

「う~~~!」

 

「友奈もそろそろ流れを見て突っ込む事を覚えなさいよね…」

 

「む?今の流れになにか突っ込みどころがあったのか、夏凜?」

 

「ありませんよ、私は常に乃木家のお嬢様を気遣う立場にいますから」

 

「うわ…いけしゃあしゃあと…」

 

ポスポス

 

「う~~~!!」

 

「そろそろ乃木も涙目になってきたから、相手してあげたら?おにーさん」

 

「私も、なんだか可愛そうになってきました…」

 

「ふふふ、風さんと樹さんはお優しいですね、分かりました」

 

ポスポス

 

「う~~~!!!」

 

「園子嬢」

 

「!」

 

くるりと反転して園子の方へ向くとその腋へ手を伸ばし

 

「ほーら、たかいたかーい!」

 

「…」

 

仏頂面の園子を高い高いしだした。

 

「あ、兄貴…なにやってんの…」

 

「何って、子供をあやすならこれだろう?」

 

「うわ…どこまでも空気読まないわね…おにーさん」

 

「で、でも…心なしか園子さんの表情が少し和らいだような…」

 

「あら、本当、段々にこやかになってるわね、そのっち」

 

「なんだかすっごく楽しそう!よかったね、園ちゃん!」

 

テキトーな扱いになぜかキャッキャと喜ぶ園子

その姿をみんなは優しい笑顔で見守っているのでした。

 

「いや、その流れ、おかしーでしょ!」

 

「夏凜、気持ちは分かるけど、ナレーションに突っ込むのやめなさい…」

 

風も諦めたように呟くだけでした。

 

<つづく>

 




<番外編>

「それにしても…」

「どうした?ひなた」

「あのとき、あんなことがあったんですね…」

「はあっ?!覚えていて再現したんじゃなかったのか?」

「いえ、生太刀で斬りかかったりしたことはおぼろげに覚えていたんですが…」

「う、うむ」

「気付くとあの男にそっくりな春信さんに抱きしめられているという状況だったので」

「そ、それは驚きだな!」

「斬りかかった後は体の赴くままに動いただけだったんですが、再現できるものなんですね」

「そうだな!まったくもって驚愕だ!」

「あら?若葉ちゃん、何か怒っていますか?」

「怒る?!私が?!何故だ?!」

「だって…」

「別に怒ってなどいないぞ!
ひなたが春信に抱きしめられていたのは覚えていたのにそれを再現しようとした事など!」

「あらあら、やきもち若葉ちゃんでしたか」

「やきもち?!やきもちを焼く要素など、どこにもないぞ!うん!どこにもな!」

「大丈夫ですよ、私が…
こうして抱きしめてあげるのは若葉ちゃんだけですから」

「ずっ、ずるいぞ、こんなふうに優しく抱きしめて誤魔化すなど…」

「誤魔化していませんよ、若葉ちゃんは怒ってないし、やきもちも焼いてないんですから」

「ううっ、それは…」

「それに」

「うん?」

「私の一番は、いつだって若葉ちゃんですから」

「うっ!うむぅ…」

「はいはい、よしよし」

「こ、こら!皆がいるところで撫で撫でするな!園子に見つかったら…」

「みんな、園子さんの高い高いに気をとられて気付いてませんよ」

「そっ、それでもこういうのは二人だけの時にっ!」

「うふふ、そうですね、続きは部屋に帰ってからにしましょうか」

二人のイチャコラムードはいつまでも続くのでした。



「そんな事があったんだね~」

「まったく、勇者部はネタの宝庫だよ~」

「園子に乃木?なにを見ているのだ?」

「あ、わかちゃん!なんでもないよ~、ただの昨日の日記だよ~!」

「そうか、昨日は春信が来たせいか、大騒ぎだったからな」

「楽しかったね~」

「うん~!書くことが多くて日記も増し増しだよ~」

「あまり他人のプライベートに関わる事は書くんじゃないぞ」

「「は~い、わかってま~す」」

全然、わかっていない、園子ズでした。





次回予告
(BGM)
 ぶろまいど?!
      ワザとね、アレ…
サプリ大好きだもんね!
   勇者様に最大限の敬意を
        大赦をぶっ潰す!
  陳謝
     アタシ、気付いちまったんだ…
  次回「ホワイトデー・その3」





春信(以下略):おーい、手ぇ抜くなー

mototwo(以下略):しっ、黙ってろ!

何も言わずに上の予告だけですまそうなんて甘すぎんぞー

黙ってりゃ、そういうもんだと思うんだよ、みんな!

そうやって困った時はこのパターン、とかいうのはどうかと思うなー

『ゆゆゆ』の二次創作なんだから、『ゆゆゆ』の次回予告パロって何が悪い!

だったら堂々としてりゃいいのに、こんなの書き込んで。。。

それすらもネタだ!

<もう自分でも何書いてんのか訳が分からなく…>


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32話 ホワイトデー・その3

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



「さて、それでは。。。」

 

高い高いしていた園子をゆっくり降ろすと、春信はあらためて若葉とひなたに向かい

例の袋からホワイトデーの贈り物を渡す。

 

「乃木若葉様、上里ひなた様、これは大赦の職員たちからの心ばかりのお礼の品です」

 

「我々に?」

 

「大赦の皆さんから、ですか?」

 

「え?大赦から?」

 

いきなり出た大赦という言葉に夏凜が反応する。

 

「ええ、本当はファンクラブからご迷惑を掛けたお詫びの意味もあるんですが。。。」

 

「ファンクラブ?」

 

「ああ、若葉ちゃん、アレですよ、以前若葉ちゃんの写真を撮らせて欲しいって取材に来た」

 

「む?あれは勇者の訓練姿を撮って戦意高揚に使うという事ではなかったのか?」

 

「いえいえ、大赦に若葉ちゃんのファンクラブが出来たから、そのブロマイドの為ですよ」

 

「ぶろまいど?!」

 

「ひ、ひなたはよくそれを了解したわね…」

 

呆れたように問う風は

 

「ええ、私以外が撮る若葉ちゃんの写真がどんなものか、知りたかったですし、

たくさんの人に若葉ちゃんの魅力を伝えるのは大賛成ですから」

 

「ある意味、東郷よりもこじらせてるわね、こっちは…」

 

ひなたの答えた理由にどう突っ込むべきか悩んでいた

 

「ひなた、しかしあの時は…」

 

「あら、若葉ちゃん、嘘をついた訳ではありませんよ。

アレを見た大赦の皆さんが更にお役目に張り切るようになるのは確かなんですから!」

 

「そ、そうかな…?」

 

「当たり前です!若葉ちゃんの凛々しい姿を収めたブロマイド…

ああっ…どれほど大赦の皆さんの心の支えになる事かっ!」

 

「む、むう…そうか、大社の方々からは旅行の件などでも世話にはなっているしな…」

 

「そうです!それにシステムのバージョンアップも、もっと頑張ってもらわないと!」

 

「え?」

 

春信の頭に疑問符が浮かぶ

 

「ああっ、でもなぜかファンクラブの活動は沈静化してしまって、あまりブロマイドも…」

 

「あの。。。上里ひなた様?」

 

「もっと出回れば若葉ちゃんの魅力も…」

 

「上里様?」

 

「そうすれば私のコレクションの充実度も…」

 

「ひなた様!」

 

「なんですか、春信さん。大きな声を出して」

 

「い、いえ、気になったんですが、システムのバージョンアップを大赦で行っていると。。。」

 

「当たり前でしょう、他に誰がやるんですか?」

 

「こ、こういう世界なので、てっきり神樹様がやっているものと。。。」

 

「まさか、そんなわけないでしょう。神樹様があんな丁寧に説明書まで作るはずありません」

 

「そ、そうだったんですか。。。」

(絶対ヒマしてると思ってアイツのとこに遊びに行ってたけど。。。まずかったかな?)

 

「兄貴って重役って割には大赦の情報に(うと)いとこもあるのね」

 

「意外なような…」

 

「さっきまでの様子を見てると納得のような…」

 

犬吠埼姉妹から複雑な表情で視線を送られる

 

「は、ははは、重役といっても所詮(しょせん)は若手ですから、まだまだ修行中の身なんですよ。。。」

 

「それに、さっき風たちに渡してたお菓子もファンクラブからだったわけ?」

 

「うむ、そうだが?」

 

「まるで自分で買ってきたみたいに格好つけて…」

 

「そ、それは誤解だ。言うタイミングが少しずれただけだよ」

 

「ふんっ、どうだか!」

 

「あれ?」

 

「どうしたの?友奈ちゃん」

 

「でも、だったら…」

 

「なに?なんか気付いた事でもあるの?」

 

「夏凜ちゃんにもファンクラブからの分があるんじゃ?」

 

「あ!そういえばそうですね」

 

「19人全員にファンクラブが出来たって言ってたもんね~」

 

「あーっ!そうよ!私には兄貴からの分しか貰ってないわ!」

 

「ぐ。。。そ、そうだったな、いやあ、すっかり忘れていたよ」

 

「ワザとね、アレ…」

 

「ワザとだよね、お姉ちゃん」

 

「きっと夏凜ちゃんに他の男性からのプレゼントを渡したくなかったんでしょうね」

 

「あざといね~、ハルルン~」

 

「え?なに?どういうこと?」

 

すぐさま悟った4人とまだ良くわかっていない友奈

 

「は、はい、夏凜」

 

「ふふん、ありがと!あら?私のには何か瓶詰めが…」

 

「半分はサプリじゃない…」

 

「ホワイトデーにこれを贈るって…」

 

「いいえ、ありがたいわ!大赦の連中もなかなか分かってるじゃない!」

 

「まあ、夏凜ちゃんならそう言うでしょうね…」

 

「サプリ大好きだもんね!」

 

「いやいや~にぼっしーに煮干を贈らないなんて、まだまだだね~」

 

「残念ね園子、残りの半分は高級煮干せんべいよ!」

 

「が~ん!大赦にそれを用意できるコネクションがあるなんて~」

 

「ちゃーんと大赦の人にありがとうって伝えておいてよね!」

 

「わ、わかったよ。。。」

 

「我々の分もな」

 

「アタシたちのもね」

 

「ええ、きちんとお伝えしておきますよ」

 

「なんか私だけ扱いが雑っぽくて腹立つんだけど」

 

「妹なんだからしょうがないだろう、それに。。。」

 

「それに…なんだ?」

 

「これでも歴代勇者や巫女の皆さんに対しては

大赦の使いとしては御無礼ギリギリの気さくさで接しているんですよ」

 

「そうなの?!」

 

「大分堅苦しい気がしてますけど…」

 

「いえいえ、本来ならもっと堅苦しくて対話になんてならないんですよ」

 

「へえー、ちなみにどんな?」

 

「普通なら、神官服着て仮面をつけて床に手をついて、こんな風に感情を押し殺した声で

『勇者様に最大限の敬意を』って。。。」

 

「それはきついわね…」

 

「それが普通なんですか…」

 

「それだと私も兄貴だってわからないかも…」

 

「それは流石に…」

 

「でも、私もそれはちょっと嫌かも…」

 

「私も以前は周りが全部そんなだったから、息苦しかったよ~」

 

「ふむ、私たちの時代でもそこまではされなかったな」

 

「そうですね、私も巫女としてああいう接し方をされるのは…あまり好きではありません」

 

「そうか、ひなたは大社との連絡役だからそういう機会があるんだな」

 

「アタシにはメールでしか対応しないのはなんでかしら…」

 

「お姉ちゃんは前科があるから…」

 

「きっと怖がって誰も直接話そうとしないのよ」

 

「なんだとー!」

 

「前科?」

 

「な、なんでもないわよ、若葉!」

 

「そっ、そうよ、風が『大赦をぶっ潰す!』とか言って乗り込んだりする訳ないでしょ!」

 

「夏凜さん!」

 

「あ」

 

口の滑った夏凜を咎める樹だったが

 

「はっはっは、確かに風さんがそんな事をしたら私でもビックリするな!」

 

「ふふふ、そうですね」

 

若葉とひなたはまるで信じていないようだった。

 

「あ、ああ、そうか、普段の風を見てたら信じるわけないわね…」

 

「ふ、風先輩は頼りになるリーダーですから!」

 

「そ、そうよね、友奈ちゃん、その通りだわ!」

 

「二人のフォローがぎこちないです…」

 

「アタシャ…申し訳ない上に情けないよ…」

 

「こ、ここは私も陳謝すべきなのかしら…」

 

「ややこしくなるから、やるんじゃないわよ、東郷!」

 

ガラリ

 

風と東郷が落ち込み、夏凜が突っ込む中、部室の扉が開かれる

 

「タマ、参上!おっ、まーた春信が来てるのか」

 

「こんにちは、あれ、今日はなにか小豆じゃない甘い匂いが…」

 

「こんちわー!ホントだ、すっごく甘い匂いがしてる!」

 

「本当ね、それに乃木さんたちが持ってるその箱は…」

 

「14日も近いし、ホワイトデーかにゃぁ?」

 

「ホワイトデー!みーちゃんにも当日プレゼントしなきゃ!」

 

「うたのん、そういうことは皆の前で言わないで…」

 

「白き恋の日…私も杏や樹にお返しをしなくては…」

 

勢揃いする西暦の勇者と巫女に大赦からの贈り物を渡していく春信

今度はきちんとファンクラブの説明もしている。

自分たちのファンクラブの存在に

タマげた!とか、どうでもいいわ…とか、う~ん…と微妙な反応をしたりとか色々であったが、

お菓子の箱はそれぞれのファンクラブが用意した物とあって、

質より数だったり、ちんすこうをはじめとする沖縄菓子だったりと

なかなかに趣向を凝らした品々が揃っており、思った以上に好評で、

早速食べ始めている者も出てくると、なんとなく茶話会のような賑やかさになっていた

そんな中

 

ガラッ

 

また部室の扉が開かれ、小学生組三人がやって来た。

 

「遅くなってすんませーん!」

 

「すみません、途中でトラブルがあって…」

 

「ミノさん大活躍の巻だったよ~」

 

「トラブル?」

 

「大活躍の巻?」

 

「一体何があったのよ?!」

 

「大袈裟だなぁ、二人とも。ちょっと困ってる人たちの手助けしただけだろ?」

 

「ああ、いつもの銀のあれね」

 

「ミノさんらしいね~」

 

「そ、それに二人も手伝ってくれたからこの時間に来れたんだし」

 

「それって三人とも、すっごく勇者だね!」

 

「そ、そんなに褒められる程のことでは…」

 

「えへへ~」

 

中学生たちに褒められ、頬を染めて照れる3人。そこへ

 

「そんな勇者な皆さんに大赦の職員たちからプレゼントです」

 

春信が袋の中身を次々と3人の前に積み上げていった。

 

「えっ?あ、ありがとうごさいます」

 

「うわぁ~、お菓子がいっぱいだ~」

 

「おお!大きな箱の上に、色んな包みが次々と…まだ…どんどん…」

 

「3月ということで、みんな色々と気合が入ってしまったようです」

 

そう言いつつ更にどんどん積み上げる春信

 

「え?あれ?3人ともタマたちよりずっと…特に銀が多くないかぁ?!」

 

「そうだね、小学生の皆が可愛くて何かあげたくなるのは分かるけど…」

 

「伊予島さんが言うと、不穏な空気が漂うのはなぜかしら…」

 

「3人とも可愛いし、元気な銀ちゃんには特に一杯あげたくなるよね!」

 

「友奈さんが言うと心洗われるのに…この違いはなんなんでしょう…」

 

「しかし、こうして積み上げると本当に多いな、

特に銀は他の二人の山より一回り大きい山にって…」

 

「そ~っとぉ…」

 

「こら!球子!子供のお菓子の上前を撥ねようとはどういうつもりだ!」

 

「わ、若葉ぁ、見逃してくれぇ!あんなにあるんだ!銀一人じゃ食べ切れないだろぉ?」

 

「そういう問題じゃない!人様からの贈答物を他人が勝手に持っていくなど言語道断だ!」

 

「ううっ…」

 

「タマっち先輩、若葉さんの言うとおりだよ、お菓子が欲しいなら私のを分けてあげるから」

 

「あう~、ごめんよ~」

 

「謝るなら銀に、だろう?」

 

「う~、スマン~銀~」

 

「あはは、いいっすよ、球子さん!

ホント、一人じゃ食べ切れそうもないですし、一緒に食べましょう!」

 

「ぎ~ん~お前、本当にいい奴だな~」

 

「ああもう、タマっち先輩ったら、あんなに嬉しそうにして…」

 

「本当に二人は仲がいいな」

 

「ああ、銀様、お菓子を分けるならその包みだけは銀様ご本人が食べていただけませんか?」

 

「え?これですか?」

 

「ええ、食堂のチーフからの贈り物です」

 

「チーフから?!そりゃ絶対美味いやつじゃないっすか!」

 

「そうね、あら?私とそのっちにも同じ包みがあるけど」

 

「ミノさんのだけ大きいね~」

 

「「あ」」

 

「え?」

 

「わっしー先輩、園子先輩、なにか知ってるの~?」

 

「何か気付かれたのですか?」

 

「…」

 

「な、なんでもないわよ、ねえ、そのっち?」

 

「え?!そ、そうだね~!みんながミノさんのこと大好きなのは昔からだよ~!」

 

「それにしてもこの差は何か理由が…」

 

「何か秘密があると見たね~」

 

「須美、園子…」

 

「銀?」

「ミノさん~?」

 

「あまり二人を問い詰めないであげてくれ…」

 

「えっ…銀…?」

 

「アタシ、気付いちまったんだ…」

 

「み、ミノさん…?」

 

「これは単に勇者を祀り上げるようなプレゼントの量じゃあない…」

 

「ぎ、銀様?何を言って。。。」

 

「お兄さんも、大赦に勤めてるって事は知ってるんでしょう?今のアタシの事…」

 

「今のって、大赦で務めるエリートって話?」

 

「ただのエリート中学生の子供時代にこんなに贈り物をすると思うか、須美?」

 

「それはそうだね~」

 

「そうだ、これはそんなもんじゃないんだ、園子。これは…」

 

「これは?」「これは~?」

 

「これは!アタシがエリートの上に大赦のアイドルとしてもてはやされている証拠!!」

 

偶像(アイドル)?!」「アイドル~?!」

 

「そう!そのアイドルの2年前の姿であるアタシにならこんなに贈り物が集中するのも納得!

いやー、二人には更に差をつけちゃって申し訳ないなあ!」

 

「まさに偶像(アイドル)崇拝(バンザイ)ね…」

 

「これだけの人気ならもう確定的!今のアタシの胸は!」

 

「多分、バインバインにはなってないよ~、ミノさん~」

 

「なんでだよ~!園子ー!」

 

「前にも言ったでしょう、今の自分の現実(むないた)を見つめなおしなさい」

 

「須美までー!」

 

「まあ、落ち着け、銀」

 

「球子さん!」

 

「タマを見ろ」

 

「え?」

 

「タマと銀の年の差が2つだ」

 

「はい?」

 

「つまり…」

 

「つまり?」

 

「つまり!今の銀はタマと同じくらいのナイスバディーだって事さ!」

 

「たっ、球子さんっ!!」

 

「銀っ!!」

 

ひしっと抱きあう銀と球子

そのたましいとボケ具合はその名と同じく、

皆から『ギンタマ』と讃えられるほどであったそうです。

 

<おしまい>

 




<番外編>

「しっかし、アイドルかぁ」

「どうしたの?タマっち先輩」

「これはタマもアイドルを目指すべきかな…」

「ええっ?!どうしたの、いきなり?」

「初代勇者でアイドルともなれば、銀より更にお菓子が集まるはず!」

「お菓子の為にアイドルを目指そうなんて、土居さんは相変わらず浅はかね…」

「なんだとー、千景ー!」

「ううん、そんなことない、いいと思う!」

「伊予島さん…?」

「タマっち先輩は可愛いから、髪を下ろしてフリフリの可愛い服着て、
歌って踊れば絶対人気者になるよ!」

「か、可愛い服?そ、それはちょっと…」

「面白そうな話じゃない、私もアイドルしてるタマちゃん見てみたいにゃあ」

「雪花まで?!」

「二人の心の何かに火が灯ったようね、目が輝いて鼻息がとても荒いわ…」

「さあ!タマっち先輩!」
「さあ、さあ!タマちゃん!」

「ぎ、銀~!た~すけてくれ~!!」





「アタシ、三ノ輪銀と!」

「タマこと、土居球子は!」

「「アイドルになる覚悟を決めました!」」

きらびやかなステージで向かい合い、両手を開いてポーズを決めているフリフリ衣装の銀と球子

「ならば!」
「私達も!」
「「全力で応援するわ!」」

その両側にはハッピを半脱ぎにし、さらしを巻いた胸をあらわにした須美と東郷
2人は両手にバチを構えて大太鼓を叩いている

「「私たちもバックダンサーとしておどるよ~!」」

猫の着ぐるみを着てサンチョの巨大なぬいぐるみを抱いた園子ズが後ろで踊っている。大勢で…
そして中央にはポンポンを持ってみんなを応援するチアリーダー姿の杏と雪花

「こんな可愛いみんなに囲まれて私は幸せです!」
「私も!もうこのまま、この世界で人生が終わっても悔いはないわ!」

「「「「「「「「私達!最っ高に幸せです!」」」」」」」」





「っていう夢を見たんよ~」

「またか…園子はその手の夢が好きだなぁ」

「な、なぜ私と東郷さんがもろ肌を脱いで太鼓を叩いているの…」

「いやいや、杏さんと雪花さんのキャラの壊れ具合もとんでもないぞ」

「夢の話だからね~、どう言われても答えようがないよ~」

「で、客の入りはどうだったんだ?」

「あ、球子先輩~」

「そこ気にするなんて、ロックっすねー!」

「ろ、ろっく?」

「よく分からなかったけど~、大盛り上がりだったから、きっと満員御礼だよ~」

「ならばよーっし!」

上機嫌な球子なのでした。





mototwo(以下略):疲れた…

春信(以下略):まーた3話構成か、ほんとに懲りねえな。。。

いや、読んでたら分かると思うけど、これでもかなり省略したんだよ?

西暦のみんなへの対応、10行ですましてたもんな。

人数多いから、それぞれのキャラを立たせるとなんぼでも会話が弾んで話が進まない…

にもかかわらず、書く必要のない番外編まで入れてるという。。。

ホント、キャラが立ってるから、短いアホ話はバンバン出てくるわー

その割りにオチは弱いんだよな、相変わらず。

そう?俺のギャグセンスだとこんなもんじゃないのかな?

19人もいると誰が喋ってるのか分からん事も多いし。。。

うん、絵と声ありきの『ゆゆゆい』を文章にすると、とんでもないって事が良く分かった。

そうでなくても状況描写が少ないからなぁ、お前の文章。

なのに文字数はアホみたいにあるという…

どんだけ、まとめる力が無いんだか。。。

読んでる人はどう思ってるんだろ?

どうって?

いや、状況説明って長くなると読むのタルいかなーって気もするんだが。

だからって台詞ばっかじゃ分かりにくいだろ。

そう、だから今の俺の文章ってどの程度の読みやすさなんだろうって…

そんなの読む人にもよるだろ。。。

それはそうだけど…

大体、気にするほどの事か?読んでる人11人くらいなんだろ、感想の数がそうなんだから。

いやいや以前も言ったけど、俺のとこに読んでる人全員が感想書いてるなんて思ってないから。

あ?あれはいい訳だろ?読者が少ない事の。

それだけとちゃうもん!ホンマに感想一杯やったら困るって思ってるもん!

幼児化と方言使いはゴマカシの証、と。。。

勝手に分析すなー!

<か、書きたければ書いてもいいんだからね、感想!(ツンデレ)>


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エリンジウム

これは、けして語られる事のない…
あったかも知れない、小さな小さな物語…


立てかけられた白無垢を前に向かい合う二人の少女

いや、もはや少女ではない、既に神の力を顕現する適性も失い

何年にもなる立派な女性だ。

 

「ついに明日か…」

 

「早いものですね…」

 

「お前が二人の結婚式を一緒にやると言い出した時は、流石の私も面食らったがな」

 

「でも、あなたもそれに反対はしなかったでしょう?」

 

「お前とはずっと一緒だと誓ったからな」

 

「あら、覚えていて下さったんですね」

 

「ふ…忘れるわけがないだろう。

あれほど泣いたひなたを見たのは、後にも先にもあれっきりだからな」

 

「もう、若葉ちゃんは意地悪ですね、そんな事をわざわざ言うなんて」

 

成人し、美しく成長した乃木(のぎ)若葉(わかば)上里(うえさと)ひなた

二人は明日の結婚式を控え、慌しい中、二人だけの時間を作っていた。

 

「ふふ、その代わり誰にも言わないぞ。墓まで持っていく。私達二人だけの秘密だ」

 

「あらあら、明日やっと結婚だというのに、気の早い話ですね」

 

「結婚、か…」

 

そう言うと若葉は少し俯き加減で、不安げにひなたへ尋ねる。

 

「お前は後悔してはいないか、家と権力を守るためのこの結婚を…」

 

「若葉ちゃん…」

 

「私と違って、お前は器量良しで、家事や人付き合いも…」

 

「若葉ちゃん」

 

「上里の名を残し、権力を高める事に(こだわ)らなければ、もっと良い縁だって…」

 

「若葉ちゃん!」

 

「!」

 

「若葉ちゃんは、後悔しているのですか?今のお相手と結ばれる事に…」

 

「そっ、そんな事はないぞ!」

 

やっと顔を上げ、ひなたに面と向かって思いを告げる。

 

「確かに、乃木の権力と名を残すために彼には乃木家へ婿に来てもらう、それは事実だ。

だが、彼はそれも承知の上で、私という一個の人間を女性として愛してくれている!

私はそんな彼の愛情に応えたい!私自身、彼を愛していると向かい合いたい!だから…」

 

「当然です」

 

「え?」

 

「若葉ちゃんを愛さない男なんていません。その中でも彼はなかなかの逸材です」

 

「へ?」

 

「私がここまで育てた若葉ちゃんを託すのですから、

いいかげんな男をあてがう筈がないでしょう?」

 

「ええぇ~」

 

ひなたの迷いの無い物言いに、若葉は呆れたように声を漏らしていた。

 

「それに私だってそうですよ、彼も私を本当に愛して下さいます。きっと今際(いまわ)(きわ)まで」

 

「それは…巫女としての勘か?」

 

「いいえ、女の勘です」

 

「ぷっ…」

 

「ふふふ」

 

「ははは、やはり、ひなたには適わんな」

 

「私も彼を愛し、子を成しますよ。愛を確かめ、上里の家を残すため」

 

「うむ、私もだ。」

 

全てに納得し、清々しい笑顔で頷く若葉

それを見たひなたが、いきなり大きな声を上げる。

 

「そうです!」

 

「うん?どうした?」

 

「子供ですよ!」

 

「子供が…どうかしたか?」

 

「結婚させましょう!」

 

「はあっ?!」

 

「お互いの子供に男の子と女の子が出来たなら、互いの娘を嫁にやるんです!」

 

「互いのって…」

 

「いい考えです!そうなればその子たちにとって私たちは母と義母!

親戚関係であり、もはや姉妹のような!」

 

「いや…それって意に沿わぬ相手との結婚を子供たちに押し付ける事にはならんか?」

 

「何を言うんです!若葉ちゃんが育てた子と私の育てた子が引き合わない筈がありません!」

 

「そ、そうかな…?」

 

「ええ、子供の頃から私達のように一緒に過ごせば、おのずと惹かれ合うに違いありません!」

 

「ふ…ひなたのそういう無茶なところは、いつまでたっても変わらんな」

 

「もちろんです、私はいつだって若葉ちゃんを一番に愛して…います…から…」

 

胸に手を当て、生き生きと話していたひなただったが

急に言葉を詰まらせ、頬に一筋の涙が伝った。

 

「ど、どうした、ひなた?!」

 

「な、なんでもないんです」

 

「なんでもないことはないだろう!お前が急に泣き出すなんて!」

 

「い、いえ、これは少し昔を思い出して…」

 

「昔を?」

 

「ええ、昔誰かにも今のような話をしたと…」

 

「あの頃の話か…」

 

「わかって…しまいますか…」

 

「当たり前だろう、私たちが最も戦い、祈り、駆け抜けた時代だ。

どんなに苦しい事も、あの頃の事を思えば乗り越えられた」

 

「皆も…生きていれば結婚相手を考えたりしていたんでしょうか…」

 

ひなたの涙を拭う若葉。それと共にひなたは頬を紅潮させ懐かしそうに白無垢を見つめた。

 

「想像もつかんな。あの4人は、お互い同士をとても大切にしていたからな。男性の事など…」

 

「ふふふ、それは私たちも同じでしょう?」

 

「む、それもそうか…しかし、男性か…」

 

「思い出してしまいましたか?彼のことも」

 

「できれば忘れていたかったのだが、皆の事を思い出すとな…」

 

「どうしても彼の顔も思い浮かびますか…」

 

「格好をつけるが、基本は阿呆で」

 

「ロマンチストで、デリカシーがなくて」

 

「達人のようでありながら、どこか脆くて」

 

「いつも笑っているくせに、泣き虫で」

 

「何者だったんだろうなぁ?」

 

「結局、何もわからないまま、姿を消してしまいましたものね」

 

「信じられるか?アレでただ一人の男の勇者だったんだぞ」

 

「知っていますよ、若葉ちゃんには言ってませんでしたが、

私は彼が仮面を外すところを見ましたから」

 

「なにっ?!それは初耳だぞ!」

 

「言えなかったんですよ、色々とあって…」

 

「色々と…?」

 

「別に勘ぐるような事は何もありませんよ、私は彼が大嫌いでしたから」

 

「むう、そうか、そういえばそうだったな」

 

「そのせいで彼には酷い事も言ってしまいました…」

 

「まあ、気にする事もなかろう、奴なら次の日には平気な顔で現れただろうさ」

 

「ええ、確かにそうでしたね」

 

「そういうところは妙にタフな奴だったな」

 

「朴念仁なんですよ。女の子の気持ちなんてまるで分かっていない」

 

「くくく…しかし」

 

「なんですか、おかしな笑い方をして?」

 

「皆の事を思い出していたはずなのに、春信の話ばかりしているな、私たちは」

 

「そうですね…こうやって空気を読まずに顔を出してくるところが春信さんなんでしょうね」

 

「酷い言い草だ」

 

「でも、否定はしないんでしょう?」

 

「まあな、だが…なぜこんなにも彼の事を思い出すのか…」

 

「あら、わかりませんか?」

 

「む、まるでひなたには分かっているようだな?」

 

「ええ、明日は結婚式ですから」

 

「ん?それが何の関係が…」

 

「女の子はそういう人生の大切な区切りで思い出すんですよ、色んな事を」

 

「色んな?」

 

「初恋の相手だったり、昔の恋人だったり」

 

「初恋っ?!恋人ぉっ?!」

 

「若葉ちゃんはそういう人はいなかったでしょうけど」

 

「う、うむ、ずっとひなたと一緒だったせいか、そういう機会もなかったな」

 

「なら、分かるでしょう?思春期に会った若い男性の事…」

 

「あ…そういえば、あの頃に親しく話した若い男性など春信以外いなかったか」

 

「ええ、若葉ちゃんに近づこうとする男の子は全て私がシャットアウトしてましたから!」

 

「おいおい、本当っぽくて怖いぞ…」

 

「ふふふ、はたして冗談なんでしょうかね?」

 

「冗談としてもたちが悪いぞ。大体、本当なら春信だって近づけなかったろう?」

 

「彼は別に良かったんです」

 

「む、なぜだ?」

 

「春信さんの心には既に誰かがいましたから」

 

「そうなのか?!」

 

「あら、ショックですか?」

 

ひなたに聞かれ、思わず頬を染め否定する若葉。

 

「い、いや、そんな事はないが…」

 

「まあ、春信さんもそういう事を話すような人ではなかったですからね」

 

「うむ、そういう意味では意外だ。驚きだ。衝撃的だ」

 

今度は自分を納得させるように何度も頷いている。

 

「だから、杏さんの言っていた、『亡くなった恋人の為に』っていうのも

案外、的外れではなかった気がするんですよ、私は」

 

「それで世界を守る戦いに赴くか、とんでもない浪漫チストだな」

 

「女の子はそういう陰のある男性に惹かれる事も多いですから」

 

「だったら、ますます近づけたくなかろう?」

 

「そうですが…皆がそういう気持ちになればもっと精神も安定するのではと…」

 

「恋愛感情は人間関係を壊すんじゃないか?」

 

「それでも、恋する乙女は強くなるんですよ、精神的に」

 

「そんな思惑でひなたが奴を丸亀城に引き入れていたとは…」

 

「でも、彼の朴念仁っぷりは私の予想をはるかに超えていました…」

 

「誰一人、そんな空気にはならなかったものな」

 

「心に決めた人に一途(いちず)なのか、まるで空気を読めていないのか」

 

「きっと両方だったんだろう」

 

「そうですね、だから私も…」

 

言いかけてひなたは自分の口を指先で押さえる

 

「どうした?」

 

「いえ、ええ、だから私も最後まで彼のことが大嫌いだったんですよ」

 

「はっはっは、面白い奴ではあったがな」

 

「そう…ですね…とても面白い…私たちが初めて接するタイプの…男性でした…」

 

白無垢に目を移し、呟くように言葉をつむぐひなたに

若葉はそっと寄り添い、肩に手を置いて自分たちの花嫁衣裳を見つめていた。

二人の思い出に残る、その人の事は心の奥底にしまって、未来を見つめていこうと…

 

<完>

「ふーん。。。」

 

「どうかな?ハルルン!なかなかの傑作だと思うんだけど!」

 

印刷された原稿を見つめる春信に感想を求める園子

 

「ふーん。。。」

 

「以前、神樹様(こっち)の世界に呼ばれる前に聞いた話から作った小説なんだけど!」

 

「ふーん。。。」

 

「タイトルも『秘めたる愛』を花言葉にもつ花の名前なんだよ~!」

 

「ふーん。。。」

 

だが、春信は気のない返事ばかり返していた。

 

「『ふーん』ばっかりじゃなくって、ちゃんと感想とか意見を言ってよ~!

折角、ネットにあげる前に紙ベースで読んでもらってるのに~」

 

「あ~、園子様?」

 

「いや~、作家先生だからって様付けはよしておくんなよ~」

 

「いや、さっきあの呼び方したから言ってるだけだけど。。。」

 

「あれ~?そうだっけ~?」

 

「無意識に呼ぶようになってるのか。。。まあ、いいけど。。。

それより、なんで登場人物がこうなったんだ?」

 

「こうって~?」

 

「だから!なんで若葉。。。様とひなた様と僕の名前が使われてんの?」

 

「ああ~、あのとき、『乃木』や『上里』みたいにって話だったでしょ~?」

 

「そ、そうだったっけ。。。?」

 

「そうだよ~だからいっそ、わかちゃんとひなタンにしたら感情移入できるかな~って」

 

「だ、だとしても!『春信』ってなんだよ?僕が出てくるのはおかしいでしょ?

しかもコレじゃあ、僕が勇者やってるみたいじゃん!」

 

「ああ~、それはハルルンとは別の春信さんだよ~」

 

「別って。。。」

 

「ハルルンも部室でわかちゃんたちと話してて気付いたでしょ?

あの時代にも『三好春信』って人がいたって~」

 

「そ、それは。。。」

 

「にぼっしーからもその春信さんが例の仮面の赤い勇者っぽいって聞いてたし~」

 

「か、夏凜ちゃんが?!」

 

「だから、その話を盛り込んで、二人が思春期に淡い恋心を抱いてたって設定にしたのさ~」

 

「ぬぐぐぐぐぐ。。。」

 

「それでそれで~どうかな~?感想は?」

 

「ぬう。。。」

 

春信は息を整えると原稿を読む手に力を込め

 

バリッ

 

「ボツだ!」

 

一気に引き裂いた

 

「ああ~!なんてことを~」

 

「僕と同じ名前が使われてるのを誰かが読んだら、『また三好は』って風評が流れる!」

 

「ええ~」

 

「大体、杏様の名前も出てあの流れって、4人の勇者様が亡くなられた事になってるでしょ!」

 

「そうだけど~」

 

「そんな不吉な物語は発禁です!検閲です!ボツです!」

 

「そんな~」

 

「そんなもこんなもありません!

データを消すか、少なくとも名前を変更しないとネットに上げるのも禁止です!」

 

「あう~傑作だと思ったのに~」

 

「傑作じゃありません!」

 

「ハルルンのわからずや~!」

 

「ダメったらダメーーーっ!!」

 

その後も園子と意見をぶつけ合う春信は

 

(淡い恋心とやらはともかく、園子嬢の妄想力は時々凄いレベルで現実とシンクロするからな

今後も要注意だぞ。。。)

 

園子の無意識の能力にまた悩まされそうな予感がするのでした。

 




次回はオマケ
感想に答えるだけでキャラ同士の掛け合いもない
飛ばしても大丈夫な回だよ


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34話 オ・マ・ケ・7

今回はオマケです
感想に答えつつ春信と乙女達の関係についてオッサンが語る、気持ち悪い回です。
いつものコントも後書きのキャラの掛け合いもありません。

飛ばしてokです。



さて皆さん、前回の話はいかがだったでしょうか。作者のmototwoです。

今回はちょっといつもと趣きを変えて感想に答えることにしました。ええ、春信抜きで。

さて、まずは3/3(土)…「28話 オマケ6」の後の感想ですね

 

『そういえば春信って意外とフラグ建築してるよね?.......してない?

後、春信的にはどうかなぁと思うんだけど、なんかこの小説の春信って夏凛ちゃんと絡んでるより、園子嬢と絡んでる時のほうが生き生きしてるよね(苦笑)

PS.折角ヒロイン候補がそこそこいるのに夏凛ちゃんに気を取られすぎてフラグをへし折るのは流石だと思うぜ!』

 

はい、実はそうです。

っていうか、フラグ建築どころか乱立してます。

そして叩き折ってます。

基本ラノベ主人公なので。

また、こんな感想も3/8(木)…「31話 ホワイトデー・その2」のあとですね。

 

『不意に気になったのですが、今勇者たちから春信に対する信頼度・好感度はどうなっているのですか?

後、春信的には 夏凛・銀>>超えられない壁>>園子>>>>>>わすゆ(銀除く)・のわゆ・ゆゆゆ(夏凛、園子除く)みたいな感じで信頼・好感度を持ってる感じであってるんですか?.......銀は、夏凛とは違いけど言葉では表せない春信の深い所にいるって感じ?』

 

今の乙女達の信頼度と好感度ですか…

正直、私にもはかりかねますね。

『ゆゆゆい』世界の春信って僕・私・拙者を使い分けてて、

西暦組は『私』と『拙者』を別人として認識しながらもごっちゃになってる部分があったりで…

勇者部は『僕』と『私』の切り替えを見てるけど『拙者』は別人だと思ってるし

他の皆は『私』と『拙者』が別人という認識で、『僕』の存在を知らない

今まで、まともに相対してるのも数名しかいないから、そこまで関係も発展してないですね。

 

ただ、丸亀組は過去の春信の事は友奈以外、大抵みんな嫌ってます。それぞれの形で。

例えば千景は、若葉のことが嫌いなのと同じくらい春信が嫌いです。ややこしいですね。

 

春信的には信頼や好意と言う意味では19人にそれ程、差はありません。

接し方と態度には大分差がありますけど。

まあ園子との絡みも含めて、それには理由があるんですが、とりあえずもう一つの感想を。

こちらは3/4(日)…「29話 ホワイトデー・その前に」の直後ですね

 

『作者さんと春信的には無いの一点張りでしょうけど

春信には夏凜にこだわらず他の勇者とも恋愛的に仲良くして欲しいですね。

もちろんシスコン春信も好きなのですが頑なにする必要はないと思うので。』

 

春信的には無いって言うでしょうね。

『夏凜ちゃん一筋』って思いもあるんですが、前作からの流れもあるんですよね。

先程の方の感想にもありましたが、結構フラグは立ってるんです。

それをホワイトデーから今回の話に盛り込んだわけですが…

 

正直、36話まで書いてた状態でこれらの感想見たので、驚きました。

先読みされてる?!って

だってまだ29話までしかアップしてないときでしたから。

 

前回、園子の小説という形式をとりはしましたが、

あの話の若葉とひなたのように、西暦の乙女達も春信に色々と思いを抱いています。

基本は『嫌い』ですから、淡い恋心とは限りませんが。

 

ただ、それぞれパートナーがいますので、大人にならないとその感情に気付きもしないという…

その原因が春信の方にあって、それが前作からの流れというやつです。

 

そもそも春信が大赦でやる気を出したのは銀に出会った経緯からです。

その銀の最期は今でも彼の心に棘を残しています。

これは愛情でもあるのですが、それとは全く別の感情が強く、素直に愛情と認識できません。

 

それから更に須美、園子の戦いの結末を見た事で彼女たちの為に何かをしたい、

そういう思いで勇者を目指す事になりました。

 

勇者としての彼の行動は失敗に終わりましたが、その思いは消えていません。

勇者部の乙女達に須美や園子と同じ思いをさせたくない。

そして銀や園子の行為に報いたい。

そういう気持ちで2度目の時間を生きてきました。

 

また、2年という時を友奈と共に歩んだ須美と違い、

一人でずっと寂しい思いをしていた園子に対して強い感情移入をしています。

 

西暦の乙女達に対しても同じです。

過酷な運命を背負い、命を落としていった少女達。

その死を見つめてきた少女たち。

その誰に対しても強い思いを抱いています。

 

春信はそれを同情だと思っています。

そして彼女たちに同情する事は失礼であるとも思っています。

その行為に対する侮辱だと。

 

だから(かしず)くのではなく、対等に話をしようとしています。

彼女たちが自分を担ぎ上げる(しもべ)など欲していないとわかっているから。

そして今という時を最大限に楽しんでもらおうとしています。

 

同情が愛情に変わることなどいくらでもあります。

でも彼はそれを自分の心に認めません。

だって自分は同情なんてしていないから。そう思い込んでいるから。

だから彼の心はそういう感情においては、一歩も前に進めていないんです。

 

さて、ここまで読んでくれた奇特なあなたは気付かれたでしょうか?

中学生の園子だけがなぜ、特別に見えるのか。

春信が乙女達を「愛おしい」と思う感情には実はそれほど差はありません。

夏凜も銀も他の勇者や巫女に対してもそう違いはないんです。

ただ、接し方や理由が違うだけで。

 

勇者部の4人は共に戦った仲間、2度目の時間軸でのその運命に涙しましたが、

その希望に溢れた生き方には尊敬の念すら抱いています。

また、以前と違い『三好春信』ではなく、

『三好夏凜の兄』としてしか接してもらえない事に複雑な思いを抱いています。

 

小学生3人や諏訪の2人、丸亀城の6人には、今でもまともに話すことができません。

勇者として、または大赦の使いとしての仮面を被っていないと泣いてしまうから。

特に丸亀城の6人とは勇者部の4人と同じように、

以前と別の形でしか接する事が出来ないもどかしさを感じています。

 

北海道と沖縄の2人とは付き合いが短すぎて距離を詰められません。

 

結局、春信が自分を出していける相手は妹以外には園子しかいないわけです。

 

中学生=こども という先入観もある為、

彼女たちに異性としての愛情は感じないと思い込んでるのも要因の一つですが。

 

ちなみに夏凜は妹なので、年下でこどもで愛情の対象であるのが当たり前と思ってるようです。

 

自分も子供である事を認めれば、それほどの歳の差でもないんですが…

 

次回の話を読んでもらうと分かりますが、彼はまだ心が子供です。

子供がいきなり大人の列に並ばされて、大人の振りをしたまま大きくなっただけです。

大人の振りばかりが上手くなったのでチーフにも(たしな)められたのですが、気付いていません。

 

春信(以下略):チーフがどうしたって?

 

mototwo(以下略):おう、遅かったな、春信。

 

遅かったなって。。。勝手に始めてんじゃねえよ。

 

まあ、気にすんな、それより感想が増えてたぞ、2つも

 

おっ!やったじゃねえか、どれどれ。。。

 

『そういえば春信って意外とフラグ建築してるよね?.......してない?』

 

おう!夏凜ちゃんとフラグ立ちまくりだぜ!

 

『後、春信的にはどうかなぁと思うんだけど、なんかこの小説の春信って夏凛ちゃんと絡んでるより、園子嬢と絡んでる時のほうが生き生きしてるよね(苦笑)』

 

園子嬢はタフだからな、ちょっとぐらいなら殴っても大丈夫な気がしてる!

 

『PS.折角ヒロイン候補がそこそこいるのに夏凛ちゃんに気を取られすぎてフラグをへし折るのは流石だと思うぜ!』

 

ん?ヒロイン候補?夏凜ちゃんがヒロインなのに候補ってなんだ?

 

まあ、そういうわけです。

 

は?何が?

 

いいから次の感想いけよ。

 

お、おう。。。

 

『作者さんと春信的には無いの一点張りでしょうけど

春信には夏凜にこだわらず他の勇者とも恋愛的に仲良くして欲しいですね。

もちろんシスコン春信も好きなのですが頑なにする必要はないと思うので。』

 

あー、そういう事か。。。

俺はラノベ主人公じゃねーんだからハーレム展開とか期待しても無駄よ?

それに夏凜ちゃんに拘ってもいないし!

美人のお誘いならアッサリ乗っちゃうぜ!

夏凜ちゃんはお兄ちゃん大好きっ子だけどな!

 

そういや、大赦内での女性関係ってどうなんだ?

 

どうって。。。なぜか職員は美人ばかりだよな、見た目で選んでんのかってくらい。

 

で、そういう美人とお付き合いする可能性は?

 

無いわな。

あっちは俺の豚時代知ってんだし、アイツのせいでろくでもない噂流れてるし。。。

 

だそうです。

 

え?なんなの?なに読者に語りかけてんの?コビ売ってんの?

 

俺が読者にコビ売るのは今に始まった事じゃないだろ。

 

まあ、それはそうだけど。。。

 

んで、ついでに聞くけど、夏凜ちゃんと園子ってどれくらい好き?

 

え?なんで園子嬢も好きなこと前提なの。。。

 

勇者や巫女のみんなの事は好きだろ?当然、園子のことも。

 

ああ、そういうことね、それなら以前本文で言ったろ、夏凜ちゃんのが100倍好きだって。

 

園子はそれ聞いて喜んじゃってたけどな。

 

なに考えてんだろうね、あの子は。。。

 

あと、これは聞いとくかどうか迷ったんだけど

 

ん?

 

銀のことどう思ってる?

 

銀?!ど、どうって?!

 

好き?嫌い?

 

バッカ、そんなの大好きに決まってんだろ!

俺は銀みたいになりたくて勇者になって、銀みたいに。。。

夏凜ちゃんや。。。みんなを。。。護り。。。たくて。。。

 

泣くな

 

泣いてねぇ!

 

まあ、しばらくは仮面外せないわな

 

ふぇ?勇者の大赦仮面?

 

あー、うん、もうそれでいいや

 

いいやって何だよぉ。。。

 

それじゃまた次回、またね

 

なに、その投げやりな締め。。。

 




<次回予告>

乙女達は遠きあの日に思いを馳せる。
それが例え忌まわしいほどに苦しい日々であったとしても
それが例え自らの血に濡れた思い出であったとしても
それは自ら望み、足掻き、掴んだ未来への道だから。
例え今という瞬間が幸せなこの世界にあったとしても
その記憶が色褪せることなど永遠にないのだから。

次回「(いくさ)思い出(きおく)


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3/21 誕生日おめでとう

『ゆゆゆい』誕生日イベントネタです。
3月のバースデーイベント 『花盛りの誕生日を君に』
を先にご覧いただかないと訳の分からない話になっています。



「私、ちょっと、みんなを捜しに行って来る!」

 

「ああああ、待ってください!

お茶! お茶を入れ直します!」

 

部室を飛び出そうとする友奈を引きとめようと、

ひなたはまだたっぷりお茶の残っている湯飲みに急須を傾ける。

 

ドボボボボボボ

 

「わあっ! 零れてるよ! 拭く物拭く物!

ディッシュ! 布巾っ!」

 

「あわあわ…みんな、早く帰って来て~」

 

慌ててこぼれたお茶を拭く物を探す友奈

水都はもうどうやったら友奈を引き止められるのかと根を上げそうになっていた。

 

「友奈さん、ティッシュではなく、ティシューです」

 

「春信さん!」「お兄さん!」「夏凜ちゃんのお兄さん!」

 

いきなりティッシュボックスを片手に現れた春信に驚く3人。

友奈生誕祭準備の為の足止めに東郷から連絡をもらっていたのだ。

 

(教えてもいない僕の端末にメール送ってくるとか、相変わらず東郷さんは怖いな。。。)

 

「あ、ありがとうございます!」

 

差し出された箱からティッシュを大量に取り出すと零れたお茶を手際よく拭き取る友奈

 

「さあ!これでみんなを捜しに行けます!」

 

そのまま部室を出て行こうとする友奈を引きとめようとひなたと水都は扉の方へ立ち塞がる。

 

「あああ、ちょっと、もうちょっと待ってください!」

 

「そ、そうですよ、ひなたさんがまた泣いてしまいます!」

 

そんな風に必死に言い訳を考え、わたわたする二人と友奈の間に春信は割って入り

 

「そう、待って下さい。このまま出て行ってもみなさんには会えませんよ?」

 

ニヤリと友奈に笑いかける。

 

「え?夏凜ちゃんのお兄さん…どうしたんですか?!」

 

「ふはーはははは!今の私は夏凜の兄などではない!

邪悪の使者ダークブレイブニンジャ春信なのだ!」

 

怪しげなポーズをとり、ノリノリで口上を上げる春信

 

「邪悪の使者ダークブレイブニンジャ春信?!

一体どういうことなの?!夏凜ちゃんのお兄さん!」

 

「ふっふっふ、どうもこうもない!

勇者の皆はこのダークブレイブニンジャが捕らえさせて貰った!」

 

「ええーーっ!?」

 

「あとは貴様、結城友奈を捕らえれば。。。

我々の勝利ら!」

 

「な、なんだってー?!」

 

「なぜでしょう…いま一瞬、若葉ちゃんがバカにされたような気がします…」

 

「いきなりどうしたんですか、ひなたさん…?」

 

ダークブレイブニンジャの言葉に苛立ちを感じるひなたと疑問符しか浮かばない水都。

 

「さあ!他の勇者を返して欲しくば、私を倒すのだな!」

 

「許さない!行くよ!」

 

そして勇者に変身しようと端末を取り出す友奈。しかし…

 

「おおっと、待て待て待て!勇者に変身するのは無しだ!」

 

「ええっ!どうして!?」

 

「このダークブレイブニンジャが操っている体は貴様の言う夏凜の兄、春信のものだからだ!」

 

「そ、そんなぁっ!」

 

「この男を傷つけずに私を倒すには生身の体で戦うしかないぞ~さあ、どうする?!」

 

「くうっ、なんて卑怯で卑劣な奴なんだ!」

 

「はっはっはっは!邪悪の使者である私には最高の褒め言葉だよ!さあ、負けを認めるか?」

 

「そんなわけない!例え変身出来なくたって、勇者は負けないんだ!」

 

「よくぞ言った。では。。。かかってくるがいい!」

 

どこからか取り出したマントを翻し、友奈を挑発すると大仰に構えるダークブレイブニンジャ

 

「はあっ!てやっ!とおっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

友奈はそんなダークブレイブニンジャに空手の技を駆使して向かって行った。

 

「無駄ぁ!無駄ぁ!無駄ぁ!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!」

 

次々と繰り出される拳と蹴りはその速度をどんどん増していく。

だがダークブレイブニンジャはほとんどその場を動かずに受け流していた。

 

「あわわわわ、一体何がどうなってるの~?」

 

「ああ…結城さん、あまり足を上げると下着が見えてしまいます…」

 

事情がつかめずにオロオロする水都とひなた

そんな二人にダークブレイブニンジャはチラリと顔を向け

 

パチッ

 

ウインクで合図を送った。

 

(ああ!お兄さん、そうか!足止めの為にお芝居を!)

 

それを見た水都はすぐさま事態を察し

 

「が、がんばってー!結城さーん!ダークブレイブニンジャなんかに負けるなー!」

 

とヒーローショーの子供のようにエールを送ったが

 

「ふんっ!」

 

ドガアッ!!!

 

「え?」

 

ひなたは春信の後ろから見事なローリングソバットを繰り出し

 

「いまだ!だだだだだだだだだだだだあっ!」

 

その蹴りでよろめいた春信を友奈は滅多打ちにしていた。

 

「あばばばばばばば」

 

「ひ、ひなたさん!なにしてるんですか!」

 

「え?どうかしたんですか、水都さん?」

 

「だだだだだだだだ」

 

「あばばばばばばば」

 

「せっかく、お兄さんが時間稼ぎしてくれてるのに、なんで邪魔したんですか!」

 

「ああ、いえ、邪魔するつもりはなかったんですが…

ウインクが気持ち悪かったので、思わず体が動いてしまいました」

 

「だだだだだだだだ」

 

「あばばばばばばば」

 

にこやかに水都に説明するひなた

 

「な、なんでそんなに爽やかな笑顔で…」

 

「だだだだだだだだ」

 

「あばばばばばばば」

 

「まあまあ、お待ちください。ちょうど東郷さんから準備が出来たとメッセージが来ました」

 

「え、あ、本当だ!結城さん!東郷さんから連絡ですよー!」

 

「だだだだだ…え?」

 

「あばばばば。。。」

 

ドシャァッ!

 

その言葉にやっと手を止め、春信を見下ろす友奈

 

「え!東郷さんから!それじゃ!」

 

「ふっふっふ。。。見事な。。。戦いだった。。。

約束どおり。。。この男と勇者たちは。。。解放。。。したぞ。。。ガクッ」

 

ボロボロになりながらも最後までダークブレイブニンジャを演じきった春信は

満足げに水都へサムズアップしていた。

 

「ああ…お兄さん、顔が原形とどめない位腫れ上がって…」

 

「そんなことより、水都さん、私たちもそろそろ向かいましょう」

 

「ええっ!お兄さんをこのまま放って置くんですか?!」

 

「春信さんなら大丈夫でしょう、さあさあ、結城さんと共に急いで、着替えて合流です!」

 

「ああっ、お兄さん、ごめんなさい…」

 

申し訳なさそうに連れられる水都へ向かい、

腫れ上がりながらもやり遂げた顔で親指を立て続ける春信なのでした。

 




今回も思いつきでいきなり書いたから、時系列は無視だよ!
前回の予告の内容は次回!


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36話 (いくさ)思い出(きおく)

乙女達は遠きあの日に思いを馳せる。
それが例え忌まわしいほどに苦しい日々であったとしても
それが例え自らの血に濡れた思い出であったとしても
それは自ら望み、足掻き、掴んだ未来への道だから。
例え今という瞬間が幸せなこの世界にあったとしても
その記憶が色褪せることなど永遠にないのだから。



香川の各要所も開放され、攻勢に移ろうかという頃、

神託により敵の大攻勢があると告げられた。

日を待たずして樹海化警報の鳴動と共に戦闘地域へ向かう勇者たち。

樹海による結界の中、16人の乙女たちが空を仰ぐ。

 

「これは…」

 

「すげえな…」

 

「壮観だね~」

 

呟く小学生組の目に映るのは曇天の雲の如く空を覆い尽くし迫り来る白い影、星屑たち。

そして視線を下方へ移せば、進化型や星座型も控えている。

 

「思い出すわね…」

 

「ああ、私も同じ思いだ」

 

歌野と若葉は敵を見据え、語り合う。まるで懐かしさすら表情に浮かべて。

 

「う、歌野さんや若葉さんたちはこんな光景を以前も見た事があるんですか?!」

 

「オフコース、もちろんよ」

 

「そうか、須美たちはこちらに来るまでは星屑と戦った事もないと言っていたな」

 

二人の言葉に他の丸亀組のメンバーも敵から目も離さず言葉を紡ぐ。

 

「星屑は集団戦闘を旨としているから、一定の期間を置くと増殖した軍団で攻めて来るんだよ」

 

「タマたちも最初にあの大軍を見たときはタマげたけどな!」

 

「とても…苦しい戦いだったわ…」

 

「でも!私たちはそれを乗り越えたんだ!」

 

「そうだ!そして今は頼りになる仲間がこんなにいる!」

 

「エグザクトリー!これくらいの敵、ちょっと大変ってとこかしら!」

 

強がりや軽口ではない、今の仲間たちと一緒なら乗り越えられる、

そんな確かな思いが言葉に込められていた。

 

「おお~、ご先祖様たちが燃えているよ~!」

 

「私たちも気合を入れないと!」

 

「ああ!勇者は根性だ!!」

 

《『勇者は根性』か、良い言葉だ》

 

「えっ?!」

 

いきなり樹海に響くその言葉に驚く若葉たち

 

《だが、お主たちには後に控えたボスたちの為に力を温存してもらうでござる》

 

「ハル…仮面の勇者忍者?!」

 

《ここは拙者に任せてもらおうか!》

 

「どっ、どこだ?!」

 

樹海中に響くような声にキョロキョロと辺りを見回す勇者たち。

そんな中、いきなり乙女達の傍らで叫びが轟く。

 

『ゆくぞ!』

 

その刹那、勇者たちの周りの樹海から千本に及ぼうかという日本刀が突き出し

 

『散れ!!』

 

その全ての刀が星屑の飛び交う上空へ射出された。

 

『千本桜ァーッ!!!』

 

その言葉を合図に、刀は砕け散り、その破片が星屑たちを切り裂き、消滅させていく。

その攻撃範囲はすさまじく、ゆうに数万はいるかという星屑の1/3ほどが一瞬で消え去った。

 

「ふっふっふっふっふっふ。。。」

 

腕を組み、不敵に笑いながら佇む仮面の赤き勇者。

 

「うわあ!いつの間に!」

 

彼はいつの間にか乙女達のすぐ後方に立っていた。

 

「ノって来たでござる!!」

 

ノリノリで右手を敵にかざし、更に叫ぶ

 

U・(アンリミテッド)B・(ブレイド)(ワークス)(無限の剣製)!」

 

かざした手の周りから刀が現れ、敵に向かっていく

その右手を左から右へとゆっくりと動かしていく。

 

「体は剣で出来ている」

 

「血潮は鉄で心は硝子」

 

その手から射出される刀は途絶えることなく

 

「幾たびの戦場を越えて不敗」

 

「ただ一度の敗走もなく、」

 

「ただ一度の勝利もなし」

 

むしろ赤き勇者が唱える詠唱と共に増えていくばかりだった。

 

「担い手はここに独り」

 

「剣の丘で鉄を鍛つ」

 

「ならば我が生涯に意味は不要ず」

 

ゆっくりと唱える詠唱が終わる頃には、空にいるほとんどの敵は消滅し、

 

「この体は、」

 

「無限の剣で出来ていた」

 

幾体かの進化体とボスバーテックスのみが残っていた。

 

「なんと…」

 

「イッツ、グレイト…」

 

「ほとんど倒しちゃった…」

 

「あ、アイツってあんなに強かったっけ?」

 

「いえ…そんな筈はないわ…」

 

「でも、すごいよ!これで後はいつもの敵だけだよ!」

 

「たいしたものだ…」

 

「増殖タイプもいないし、こぉれなら楽勝だにゃあ」

 

「さあ!ザコ共は一掃したでござる!あとは任せたでござるよ!」

 

フウ、と一息ついた仮面の赤き勇者の言葉に、夏凜が前進する。

 

「や、やってくれるじゃない…アイツばかりにいい格好させてらんないわ!行くわよ、銀!」

 

銀もその隣で既に斧を構え駆け出していた。

 

「了解です!赤い勇者はおっちゃんだけじゃないってとこ見せてやりましょう、夏凜さん!」

 

飛び出した二人を見守りながら思わず球子の口から言葉が漏れる。

 

「銀の奴、まぁた春信のことおっちゃんって言ってるぞ…」

 

「タマっち先輩!」

 

「おおっと、タマは何も言ってないぞ~」

 

「ふふ…さあ!我々も二人に続くぞ!」

 

若葉の号令で一斉に突き進む勇者たち。遠距離からの援護、先行した夏凜と銀の猛攻、

その勢いに乗った全員の攻撃にバーテックスが殲滅されるのはあっという間であった。

完全に敵を殲滅した勇者たち。

勝利の余韻に浸る中、銀が仮面の赤い勇者に駆け寄る。

 

「おっちゃん!おっちゃん!おっちゃん!」

 

「ああ~、銀の奴、また言ってる…怒るぞ、アイツ」

 

頭をかきつつ心配する球子をよそに

 

「はっはっは、なんでござるか?三ノ輪銀よ」

 

仮面の勇者は上機嫌で銀の頭をクシャクシャと撫でていた。

 

「あ、あれ、怒ってないのか?」

 

「ふっふっふ、拙者もいい歳でござるからな、

子供におじさん呼ばわりされるのも仕方のない事。でござる」

 

「そっかぁ、んじゃ、タマもこれからはおっちゃんと…」

 

「ただし!」

 

「え?」

 

「そう呼ぶ者はこれから小学生として扱うでござる!」

 

「ぐっ…ひ、卑怯だぞ!そんな予防線張るなんて!」

 

「卑怯でもなんでもござらん。拙者をおじさんと呼ぶのは子供だけで充分でござる」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬうぅぅぅぅ」

 

「いい加減にしなよ、タマっち先輩」

 

「あんずぅ~、アイツ、アホのくせに頭使ってくるんだぁ~」

 

「はいはい、わかったから、こっちで大人しくしてようね…」

 

杏に連れられる球子を見送る銀は、わけがわからず首をかしげていた。

 

「どうしたんだろ、球子さん?」

 

「さてな、きっと何か楽しい事でもあったんでござろう」

 

テキトーな言葉でお茶を濁す仮面の勇者。

 

「ところで、お主は何か言いたい事でもあるでござるか?」

 

「あっ、そうだ!おっちゃんすげえな!あんな大技持ってるなんて!」

 

目をキラキラさせて語りかける銀。

それに比べ千景は少し冷めた態度で皮肉めいた言葉をかける。

 

「まったくね、あんな力があるなら、あなた一人で戦ってくれればいいのに?」

 

「む、郡千景か」

 

だが雪花は逆にその言葉に明るく同意した。

 

「それいいわね!その間、私らは女子会でも開いて…」

 

「残念だが秋月雪花、それは無理というものでござる」

 

今度は棗が仮面の勇者の言葉に疑問を持つ。

 

「無理、なのか…?」

 

「うむ、古波蔵棗よ、拙者のあの必殺技は単に攻撃範囲が広いだけ。

派手ではあるが、ボスクラスにはほとんど効かないのでござる」

 

「でもでも!他の必殺技なら強いのもあるんじゃ!?」

 

「むぅ。。。三ノ輪銀、一体何を。。。」

 

更に興奮して訊ねてくる銀に少々腰の引ける仮面の勇者。

 

「たとえば!オッパイビームとか!」

 

「おっぱい?!」

 

「びいむ…?」

 

その銀のいきなりの言葉に雪花と棗は思わず反芻してしまった。

 

「。。。」

 

「なあなあ!どうなの?!」

 

「せ、拙者の胸からビームは出ないでござるよ。。。?」

 

「まあ、そうだろうね…」

 

「違う違う!そうじゃなくて!オッパイもんだら手からビームが!」

 

「ぎ、銀!落ち着け!お前、夢とごっちゃになってるぞ!」

 

慌てて止めに入る球子、その後ろで仮面の勇者は呟く。

 

「揉んでビーム。。。ひょっとして『指ビーム』のことか。。。」

 

「えっ?!」

 

「あ。。。」

 

つい口から漏らしたその言葉に銀はすかさず反応した。

 

「やっぱあるのか!アタシにもそれ、教えてよ!」

 

「い、いや、それは。。。」

 

「お~し~え~て~よぉ~、アタシもビームが出したいんだよぉ~!」

 

手足をばたばたさせておねだりする銀。

 

「め、珍しいわね、銀がここまで我侭言うなんて…」

 

「よっぽどビームが出したいんだね~、ミノさん」

 

基本的に勉強嫌いで遊び好きの銀はよくワガママを言うが、それは常識的な範疇での事。

あまりにも無茶な要求をする事などない。

それを知っている須美と園子(小)は少々呆れていたが、

それほどまでにビームというものに銀の子供心をくすぐる魅力があるという事なのだろう。

 

「銀ったら、あんなにビームを…

ひょっとしてこの間、私の胸をもみたがってたのはこの為に…?」

 

「え!東郷さん、銀ちゃんに胸をもませちゃったの?いいなぁ~…」

 

「あら、友奈ちゃんならいつでも構わないのよ?」

 

「本当?やったぁ!」

 

「わっしー先輩、友奈先輩!そのときは是非、私と園子先輩の前で~!」

 

「そのっちまで何をバカなこと言ってるのよ…」

 

いきなり二人の会話に割り込んだ園子の耳を須美がひっぱる

 

「いたいいたい、わっしー、まだ交渉は終わってないよ~」

 

そんな騒ぎをよそに、仮面の勇者は困ったように銀に答え、説明しだした。

 

「ざ、残念だが、それは無理なのだ、三ノ輪銀よ」

 

「ええ~、なんで~?」

 

「指ビームとは、ハイエロ粒子という物質を体に溜め込み、手から射出する技」

 

「はいえろ?」

 

「そしてそのハイエロ粒子は清らかな乙女には生成出来ない物質なのだ」

 

「な、なんで…?」

 

「それは穢れた男が、穢れなき乙女に抱く劣情を物質化したもの。。。」

 

「れ…レツジョウ…?」

 

「なんかおかしな事言い出してない、アイツ?」

 

突っ込む風に

 

「それ故。。。それ故に!清らかな乙女がどれだけ気合を入れようと、無理なのだ!」

 

「がーーーーーん!」

 

「小学生の女の子相手に、なに熱弁してんのよ、このアホは…」

 

呆れる夏凜

だが、銀はなおも純粋に仮面の勇者に語りかける。

 

「でっ、でも!おっちゃんなら男だから出せるんだろ?ビ-ム!」

 

「せ、拙者も最近、穢れなきオトメンにクラスチェンジしたから、無理かな~。。。でござる」

 

「オトメン?」

 

「なんか、どこかでその言葉の響きを聞いたような…」

 

「駄目よ!友奈ちゃん、樹ちゃん!彼からは危険な匂いがするわ!」

 

聞き慣れない言葉なのになぜか聞き覚えがあるという、不思議な違和感に首を捻る友奈と樹。

その時間を越えたメタな違和感に東郷は二人を仮面の男に近づけまいと躍起になっていた。

 

「と、とにかく!安易なビームなどに頼らず、

拙者たち勇者は己の武器を駆使した戦いを昇華させていくでござる!」

 

「なんかいい話風にまとめて逃げる準備しだしたぞ、アイツ」

 

球子ですらその焦りを読み取り

 

「自分の武器を…」

 

「う、うむ、そうすれば先の拙者のような技もおのずと身に付くものでござろう。。。多分」

 

「語尾に自信のなさがあふれ出してるよね…」

 

杏も同意していたが

 

「そっか!アタシも頑張るよ!」

 

それでも銀は素直に赤き勇者の話に感心していた。

 

「純粋すぎるわね、三ノ輪さんは…」

 

「そっ、それでは!皆のもの、良い健闘であった!さらばだ!アデュー!!」

 

銀を心配しつつも呆れている千景から逃げるように飛び去る仮面の勇者。

それを見送る若葉と歌野も

 

「なんだったんだ、今の茶番は…」

 

「インコンプリヘンシブル…わけが分からないわね…」

 

呆れて二の句がつげずにいたのでした。

 

 




さあ!今回は俺様!仮面の赤い勇者が大活躍だ!みんな!楽しみに読んでくれよな!

どうした、春信?そんな昭和な入り方して。

最近、俺の勇者としての活躍が無かったからな!昭和テイストでハリキリマンボだぜ!

でも、お前、言うほど昭和のヒーロー使いこなせてないぞ?

え。。。そ、そんなばかな!俺が昭和好きなのは当たりマエダのクラッカーなのに!

ほとんど平成だろ。その内ウッカリ2015年以降の作品も出るんじゃないかとヒヤヒヤする。

なーに言ってんだい!
俺たちの世界の西暦は2015年7月のバーテックス襲来で文明が滅びかけたんだぜ!
それ以降のヒーローなんて神世紀のものになるだけだろう?!

だから、それが現実の2018年作品とかとかぶるとおかしいだろ?

なんだバカヤロー!文句あるか!何見てんだよ!何がおかしいってんだよ!

原作が2015年以前にあるならまだいいが、そうじゃないなら問題だろ。

ふむ。。。だけど、俺は気にしない!何故なら昭和のヒーローは細かい事にこだわらないから!

まあ、ここの作者は新しいアニメや特撮観る余裕なさそうだから、大丈夫だろうけど。

あれ?お前、作者じゃなかったのか?!

何言ってんだ、いつも顔合わせてんだろ、忘れたのか?俺を

もしかして。。。いつも名前も出さない『彼』か?

いや、一回出たぞ、苗字だけ。

え。。。

飛鳥…

あ、ちょっと待って、素になってた。仕切りなおすから。。。

ほう?

ア、ソ~レ!アナタっのお名前、なんて~の?

アスッカ、シロウっとも~します!

イッエ~ッイ!わっかりにく~い!

だろうな、飛鳥志郎だ。みなさん、以後よろしく。

えええ。。。あんなに隠してたのに、今更~?

もういちいち『彼』とか表記するのが面倒くさくなったらしい。

これ以降出てくるかも分からんオリキャラに名前つけるとかアイツ、何考えてんだ。。。

きっと何も考えてないんだろ、お前の今日の出だし見ればよく分かる。

そりゃそうだな!はっはっはっはっは!コイツはたまげたもんざえもんだ!

まだそのノリ続けるのか…っていうか、こんなアホな文章で前書き埋めていいのか?

おおっと、そうだったな!ウッカリクッキリシャッキリだぜ!

もはや昭和ですらないな、さっさと始めろ。

おう!仮面の勇者ハルノブ、出撃だぜ!いっきまーっす!



mototwo(以下略):という前書きを考えて一度書き込んだんだけどさあ…

春信(以下略):は?ここ後書きだぞ?

うん、折角の仮面の勇者の活躍だから、ちょっと真面目に始めようかと思って

それで前書きがあのデスポエム風の文章になったわけか。。。

あの文章、結局コピペで前々回の次回予告にも使った。

はあ?あんな締めの後に何やってんの、お前?

そんで折角書いた↑は、前書きからこっちに持ってきちゃった。

今のを前書きで読んだらあの出だしが茶番だって言ってるようなもんだからな。。。

いつもがいつもだから、シリアスだと思ってくれる人は少なかったろうけど

時間軸もずれてるの分かりにくかったしな。

あ。そう?基本的に戦闘シーンは日常シーンよりずっと以前の話になってんだけどな。

赤嶺さん出したせいでますます時間のずれがテキトーになってるし。。。

勢いで書いたから、アレは。

しっかし、アッサリと名前出したもんだな、『彼』

まあ元々、もったいぶる程の物でもなかったんだけど

まーたタイミング逸したってやつか。。。

だからバレンタインネタで出した時も逆に自然すぎて誰の名前か気付かなかったかも知れんなと

誰が?

読者

はあ~、ちなみに、名前の由来は?やっぱ『新デビルマ○』の飛鳥○からか?

いや、『快傑ズバット』の飛鳥五郎から。
大赦の暗部に暗殺される予定だったんだけど

おい!

その話やめたから、験担(げんかつ)ぎで五郎やめて四郎にしようと思って
んで宮内洋さん繋がりで風見志郎を思い出したから「飛鳥志郎」

テキトーすぎる。。。ってか、伏字使え、いいかげん。

もう、みんな諦めてるだろ。

みんなって誰だよ。。。

読者

ホント、いいかげんにしろよ。。。

謝っておくべきかな?

誰にだよ

読者

3回やったらなんでも天丼でオチがつくと思ったら大間違いだぞ。。。

そこで強いツッコミが来ないと終わるに終われないんだが

おう、そうか。じゃあもう一回だ。

えーと…
この無駄な文章でいーっちばんイライラして早く終われって思ってるの、だ~れだ!?

え、読者だろ?

お前が答えたら天丼にならないだろ!

<はい、台無し>





さあって、次回は!

<次回予告>

郡千景よ。

次回予告?
原稿を読むの?
はあっ?!近況報告?
なんでそんなこと…
え…時間がない?
ああもう、わかったわよ…

最近、あの男にそっくりな三好さんのお兄さんがよく部室に来ているわ。
あの顔を見ているとイラつくんだけど…
三好さんのお兄さんに非がある訳じゃないのよね…
だからってどうなるものでも…って次は原稿?!何なのよ一体…

さて次回は…
「Cシャドウ引くデレ」
「TKG引くデレ」
「ツンデレひくデレ」
の3本です?

次回もまた見て下さいね?
ジャン・ケン・チョキ?
うふふふ?

って、なんなの?この原稿?バカにしてるの?
え?パロディ?サザ…

<ホントは一本だよ!>



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37話 ツンデレひくデレ

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



春信が早めに勇者部部室へ来ていたある日

千景が一人で部室へ入ってきた。

 

「おや、これは珍し。。。」

 

「げっ…三好…!」

 

口を歪め、露骨に嫌そうにする千景

 

「は、はい、三好春信ですが。。。何かお気に触りましたか?」

 

その言葉を聞いて我に返ったように無表情でフゥ…と小さく溜息をついた千景は

部室の隅の椅子に座り、携帯ゲーム機の電源を入れた。

 

「…」

 

無言でゲームを始める千景

 

「あ、あの。。。(こおり)千景(ちかげ)様?」

 

「なに?」

 

返事はするが、画面からは目を離さず、その手も止めようとはしない

 

「何かお気に触ることがありましたら、是正致しますので、仰っていただければ。。。」

 

「別に何もないわ」

 

「しかし、先程の反応は。。。」

 

「…」

 

「あの。。。ひょっとしてゲームのお邪魔でしょうか。。。?」

 

「気にしなくていいわ。この程度のゲーム、会話やよそ見をしていてもミスなんてしないから」

 

言葉の通り、画面から目を離していてもゲームを操作する千景の指先は忙しく動き続けていた。

 

「そ、そうなんですか、随分お上手なんですね」

 

「大した事はないわ。何度かクリアしてパターンを知っているだけよ」

 

「はあ、ではこのままお話を続けても。。。?」

 

「特に問題はないわ」

 

「そうですか。。。ではあらためてお聞きしますが、お邪魔でないとしたら

何か(わたくし)に不手際があったのでしょうか?」

 

「不手際?なぜ?」

 

「お顔を拝見した途端、表情を崩されましたので」

 

「ああ、あれは…あなたに問題があったわけではないわ」

 

「では。。。」

 

少し安心したように表情を緩めた春信に千景の言葉がかぶさる

 

「あえてあなたの問題点をあげるなら…」

 

「あるんですね。。。」

 

「顔と声と名前よ」

 

「。。。」

(ツッコミたい!『それほとんど全部やん!』ってツッコミたい。。。!)

 

ツッコミを我慢してひくついた笑みを浮かべる春信に少しだけ申し訳なさそうに説明する千景。

 

「…っ、勘違いしないで、あなたの存在が鬱陶しいとかではないから」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「あなたの声と姿と名前があの男とそっくりなだけよ…」

 

ゲームをしている千景の表情がわずかに歪む

 

「あ、ああ。。。以前お話されたそちらの時代の『三好春信』さんですか

そんなに似ていますか?」

 

「正直、話し方と接し方が違う以外、見分けなんてつかないわ」

 

大分(だいぶ)嫌っておられるように見えますが。。。」

 

「ええ、キライよ。いつも笑っていて、おせっかいで、人の懐にずけずけと入り込んでくる…」

 

「は、ははは。。。」

 

「大して強くもないくせに戦いに紛れ込んで、かと思えばいつの間にかいなくなる…」

 

「えっ?」

 

「人の話はろくに聞かない上に、自分の事はもっと話さない、

そのくせ人から話を聞き出すのが上手くて…」

 

「あ、あの、郡千景様?」

 

気になる言葉を確かめようと声をかける春信に

 

「なに?」

 

苛立つように言葉を返す千景。

 

「そ、その方は一般男性なのに戦いに紛れ込んでいたんですか。。。?」

 

「あ…」

 

千景の手元の動きが止まり、画面には『GAME OVER』の文字が浮かんでいた。

 

「ミス。。。されましたね」

 

「…」

 

千景はゲーム機の電源を落し、パタンと膝の上に倒すと

フッ…

と乾いた笑みを浮かべる。

 

「どうやら勘違いでおかしな事を言ってしまったみたいね」

 

「勘違い。。。だったんですか?」

 

「ええそうよ、私たちの時代で戦闘に紛れ込んだ男なんてあのバカ勇者だけだから」

 

「ば、バカ勇者ですか。。。」

 

「ええ、なぜか今の時代にも召喚されているあの仮面のバカよ」

 

「ゆ、勇者様なら召喚されるのはおかしくないのでは。。。」

 

「あんな弱くてバカな勇者がいても仕方ないでしょう!」

 

「弱くてバカ。。。」

 

「ああ、でも今の時代の性能に上がってるせいか、時々バカみたいに強く見えることもあるわね

バカ勇者だけに」

 

なぜか嬉しそうな顔でせせら笑うように言い放つ千景。

 

「バカ勇者なのは変わらないんですね。。。」

 

「ええ、とんでもないバカで変態よ」

 

「バカな上に変態なんですか。。。」

 

「そうよ!あの男、人の心の内を巧みに聞き出してはせせら笑うような…!

私がまるで仲間や友達という言葉に恥じらいでも見せるとでも…」

 

「せ、戦闘時にそんな話をされたんですか。。。?」

 

「え? あ…」

 

「どうか。。。されましたか?」

 

千景は一旦息を整えると、遠い目で冷や汗混じりに語り出す。

 

「ま、また勘違いで三好の事を話してしまったようね…」

 

「か、勘違いですか。。。」

 

「ええ、そもそもあの男の話をしていたんだったわね」

 

「そ、そうでしたね、確か私に似ているという。。。」

 

「ええ、そうよ…!」

 

「ああっ、申し訳ありません!」

 

「なぜあなたが謝るのよ…!」

 

「な、なんとなくお怒りを買ってしまった気がして。。。」

 

「お怒り?ええ、そうね、あなたを見ていると苛立つわ…!」

 

「顔が似ているから。。。なんですよね?」

 

「え…?」

 

「違うの。。。ですか?」

 

「ちっ、違わないわ!アイツに似ているその顔が気に入らないのよ…!」

 

「そ、そうなんですね。。。」

 

「そうよ、それ以外なにもないわ!

ああぁ…もう!あなたの顔をもっとよく見せなさい!」

 

「は、はい!」

 

言われるままに千景に顔を向ける春信

千景はその顔をじーーーーーっと睨みつける。

 

「あ、あの。。。千景さ。。。」

 

「うるさい!」

 

(あ。。。)

 

(「うる…さいっ…!うるさい…うるさいっ…!」)

 

(ダメだ。。。)

 

「え…?」

 

「?」

 

「な、何も泣く事はないじゃない…」

 

「え。。。?」

 

記憶の中にある千景の面影に思わず涙が流れる。

 

「べつに泣かせるつもりで睨んでたわけじゃ…」

 

「申し訳。。。ありません」

 

「…」

 

「。。。」

 

「三好…」

 

「。。。はい」

 

「今までの話はみんなには…」

 

「黙っておいた方が。。。良いのですね」

 

「特に…上里さんには言わないで…」

 

「了承しました」

 

「素直ね…」

 

「私は名誉勇者様の補佐の為にここにいますので」

 

涙を流していた事など忘れそうなくらい大赦の使いとしての顔で言い放つ。

その言葉を聞いて、千景は複雑な表情で微笑みながら

 

「本当…気に入らないわ…」

 

春信の両頬をつねるように引っ張ると椅子から立ち上がり、部屋を後にした。

 

「ふう。。。」

 

再び誰もいなくなった部室で一息つくと

 

「ちょっと。。。気が緩んだか。。。」

 

自らの不甲斐なさに顔を歪め、反省する。

 

「しかし。。。飛鳥(アイツ)は千景たちが会ったのは『別の春信』だって言ってたけど。。。」

 

たった今つねられた頬をさすりつつ

 

「一体ナニやったらアレだけ嫌われるんだ?『別の僕』。。。」

 

身に覚えのない自分の行為に、ぼやくように呟くのだった。

 

<つづく>

 




ここで今回から短編続けて各勇者や巫女と春信が絡む話を続けるよ!
って予告入れるつもりだったんだけど

は?つもり?

球子や雪花で途中まで話作って予告も書いてたんだけど

はあ。。。じゃ、載せれば?

なんか、オチが降りてこないから、しばし休もうと思う

なんじゃそら!

まあ、無理して仕上げるような話でもないしな

しかし、いきなりだな。。。

まあ、ハーメルンの原作:『結城友奈は勇者である』カテゴリもいつの間にか3桁越えてて

ほう

ほとんど毎日、誰かが話をアップしてくれてるし

ありがたい話だな

以前から思ってたのよ
ワシのような老人がいつまでも出しゃばるのもなんじゃしのう…

ネタが尽きたから休むだけのクセに。。。

まあな、思いついたら続きと前に書いてた話も上げるし
休んでる間は他の人の話読むし

悠々自適だな

その分、仕事は忙しくなる時期なんだけどね

そっか、また暇ができたら遊びに来やがれだぜ!

というわけで皆さん、またしばらくお達者で~

まったねー!

<また、いつか>


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38話 球子と春信

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。

あと、37話の直後です。



千景が部室を出て行った後、頭を掻きつつぼやいている春信。

 

「しっかし、どうしたものかな。。。僕の責任じゃないとはいえ。。。」

 

「おーっす!誰かいるかー!?」

 

「あ」

 

そんな中、いきなり部室へ飛び込んできた球子に

春信は振り向きざま、間抜けな声を漏らしていた。

 

「あれ…?春信?」

 

「は、はい、土居(どい)球子(たまこ)様、ご機嫌麗しゅう」

 

「ん~~~?」

 

球子は春信の顔をジロジロと睨みながら首を捻っている

 

「ど、どうかされましたか?」

 

「オマエ、ホントにこっちの『春信』かぁ?」

 

「。。。」

 

「んんん~~~~~?」

 

「何を仰っているんですか、(わたくし)は私です、他の誰でもありませんよ」

 

涼しげな顔でにこやかに話しかける

 

「そうかぁ、一瞬、あっちの『春信』の顔に見えたんだけどなぁ…」

 

「あっちの。。。と仰られるのは西暦の時代の『三好春信』さんのことですか」

 

「そうだ!タマの知ってる春信はそっちの方だからな!」

 

「土居球子様は西暦の『春信』さんと私の見分けがついてるんですか?」

 

「タマはって…誰かに春信のこと聞いたのか?」

 

「ええ、先程郡千景様にも。。。」

 

「千景が?」

 

(いかん!千景には誰にも言うなって口止めされたのに。。。!)

「。。。」

 

「どうした?」

 

「い、いえ、千景様にも顔をあわせた途端、怪訝な表情をされましたので、そうなのかな?と」

 

「そっか!千景は春信のこと大分嫌ってるみたいだもんな!」

 

「そのようですね。。。土居球子様は『春信』さんのことは。。。」

 

「キライだぞ!」

 

「そ、そうなんですか。。。」

 

「まあ、アイツ自身が嫌いって訳でもないんだけどな~」

 

「と、いいますと?」

 

「アイツ、大人のクセにタマよりアホだからな!」

 

「土居球子様はそれほど頭がよろしくないとも思いませんが。。。」

 

「いやいや、タマだって自分の事はよく分かってるって、タマは勉強が嫌いだからな~」

 

「その分、体を動かされるのはお好きと聞き及んでおりますが」

 

「まあな!でも、勇者としての鍛錬とか毎日続くとイヤになることもあるしな~」

 

「なるほど。。。」

 

「正直、若葉や夏凜の修行好きには感心もするけど呆れるぞ…」

 

「ふふ。。。妹がご迷惑をおかけします」

 

「ん?迷惑なんかじゃないぞ?二人がああだからタマも頑張らなきゃって思うしな!」

 

苦笑いで答える春信にあっけらかんと返す球子。

 

「それはよかった」

 

「あっちだと、ひなたを入れても6人しか丸亀城の学校にいなかったからな…」

 

「お友達が少ないのは寂しいですか」

 

「いや、杏もいるし、寂しいとかじゃないんだけど…

タマと一緒に遊べるのが友奈や春信くらいだったからな~」

 

「高嶋様と。。。」

 

「ああ!友奈は誰とでも仲良くできる奴だからな!タマにも色々付き合ってくれるんだ!」

 

「こちらの友奈さんと同じようなタイプですね」

 

「そうだな、アイツら二人もほとんど見分けがつかないけど」

 

「伊予島杏様とは遊ばれないのですか?」

 

「杏とは…一緒に遊ぶっていうか、いつも一緒にいるって感じだな!

タマはアウトドアグッズをいじってて、杏は本を読んでる!」

 

「なるほど、別の事をしていても一緒にいて苦にならない…

心が繋がっていられるんでしょうね」

 

「おう!杏はタマの妹みたいなもんだからな!」

 

「『春信』さんとは。。。」

 

「アイツはアホだからな!大人のクセにタマに本気でかかってくる!面白い奴だ!」

 

「そ、それは大人気(おとなげ)ないということでは。。。」

 

「大人気ない!そうだな!それだ!春信の奴は大人気ないんだ!」

 

「随分と楽しそうに話されますね」

 

「アイツ、何やっても本気だから」

 

「本当に大人気ないですね。。。」

 

「まあ、最初は大人ぶって余裕見せるんだけどな」

 

「ほほう?」

 

「途中からムキになって本気になるんだ!」

 

「中身は子供ってことですね」

 

「ああ!遊んだり歌ったり鍛錬したり!」

 

「えっ。。。勇者の鍛錬にも参加されていたんですか?」

 

「ああ、なんでも若葉が春信の所作が気になるって言って、訓練に参加させた事があったんだ」

 

「それはまた。。。」

 

「まあ、タマたちも変身しなけりゃ普通の女の子だからな

何かあっても多少怪我する程度だろって見てたんだけど」

 

「違ったわけですか?」

 

「アイツ実は凄い達人じゃないかってその時は思ったな!」

 

「意外と出来る男だったわけですか」

 

「でぇも、そん時だけだな」

 

「というと?」

 

「アイツ、まともに戦うと若葉でもちょっとヤバイ位強かったのに

こっちが不意を突くと簡単に攻撃食らうんだ」

 

「油断してしまうタイプなんですか」

 

「一番酷かったのはアレだな、タマもやりすぎたってちょっと反省してる」

 

「アレ、と申しますと?」

 

「丸亀の城壁だったかなー、春信と杏が見えたんで声かけようと思ったら杏が泣いてたんだ」

 

「え。。。」

 

「だからタマも頭に血が上って一気に駆け寄って飛び蹴り食らわせたんだ」

 

「そ、それは。。。」

 

「後で聞いたら春信に泣かされた訳じゃなかったらしくてなー

若葉とひなたと友奈にこっぴどく叱られたぞ」

 

「。。。」

 

「春信なんだから、城壁から落ちたくらいじゃ大した怪我もしてなかったけど

さすがにタマもアレはまずかったかなーって」

 

「は、ははははは。。。」

 

「お前はどうなんだ?『春信』なんだから城壁から落ちたくらいなら平気か?」

 

「や、やめて下さい、土居球子様。

私は一般人ですから、城壁から落ちたら死んでしまいますよ、多分。。。」

 

「そっかぁ?一度くらい試した方がいいと思うんだけどなー」

 

「やらないで下さいね」

 

「わかってるわかってるって」

 

「本当にやらないで下さいね」

 

「知ってる知ってる。フリってやつだろ?」

 

「違います。絶対にやらないで下さい」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

そんなやり取りを続けている所へ割って入る一人の乙女の声

 

「タマっち先輩、三好さん!」

 

いつの間にか杏が勇者部部室へ来ていた

 

「おうっ、杏!やっと来たのか!」

 

「伊予島杏様、本日はご機嫌麗しゅう」

 

(うやうや)しく礼をする春信に対し、少し苦笑いで挨拶を返す杏

 

「こんにちは、珍しいですね、二人でいるなんて」

 

「タマが一人で来たら、タマタマな」

 

「楽しそうだね、何話してたの?タマっち先輩」

 

「あー、向こうの『春信』の話をちょっとな」

 

「向こうの『三好さん』?まさか…タマっち先輩?」

 

「だーいじょうぶだって、あの事は話してないから」

 

「あの事?」

 

「あっ、いえ、なんでもないんです!」

 

「そうそう、特にぶっタマげるような話はないぞ!」

 

「そ、そうですか。。。」

 

「ふう…あぶないあぶない…」

 

「え。。。?」

 

「あー!そうそう!私も三好さんに一度お聞きしたい事があったんです!」

 

話を逸らすようにいきなり声をあげ、杏が春信に聞いてくる

わざとらしいなと春信も思いながらも特には突っ込まず、杏の話を聞いていた

 

「私にですか?構いませんよ、何でも聞いて下さい」

 

「え、あ…えっとぉ…」

 

にこやかに顔を向ける春信に、なぜか顔を赤らめモジモジしながら何かを迷う杏

 

「杏…?どうしたんだ…?」

 

そんな杏の様子に不安げな表情を見せる球子

杏は意を決したように春信に向かい、たどたどしく口を開いた

 

「み…三好さんは…その…」

 

「はい?」

 

「こっ、恋人とかいた(・・)んでしょうかっ?!」

 

「ええっ?!」「がーーーーん!!」

 

「こ…恋人がいる(・・)か尋ねるなんて…そんな…杏がぁ…」

 

「ど、土居球子様。。。?」

 

「だから春信はキライなんだぁーーーーーっ!!」

 

半べそかきながら部室を飛び出す球子

取り残された二人はあっけに取られたままその後姿を見送る事しかできなかった。

 

(球子のキライはコレだったわけか。。。)

 

脱力したまま杏へ目をやる春信だったが

 

「あれ、どうしたんだろ、タマっち先輩?」

 

杏はまるで分かっていない様子で首を傾げるだけだった。

 




さあって、次回は!

<次回予告>

伊予島杏です。

タマっち先輩どうしたんだろ?
私が夏凜さんのお兄さんに話しかけてるといきなり飛び出して行っちゃった。
ああっ、でも今は、折角の機会だからあの話を三好さんに聞いておきたい!
ラブコメは乙女の生きる糧だもん!

さて次回は…
「文学少女と大赦のお兄さん」
「伊予島杏様と三好さん」
「ワザリングハイツ伊予島と赤い勇者忍者」
の3本です。

次回もまた見て下さいね。
ジャン・ケン・チョキ!
うふふふ

<ホントは1本だね>


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39話 伊予島杏様と三好さん

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。

あと、前話の直後です。



「あれ、どうしたんだろ、タマっち先輩?」

 

顔を赤らめ、春信に「恋人がいたか」を聞いた杏

それに驚いた球子は部室を半べそで飛び出して行ったのだ。

 

「どうしたも。。。というか、なぜいきなり(わたくし)にそのような質問を?」

 

春信に問われモジモジと指を絡ませながら呟く杏

 

「え、えと…私たちの時代の『三好さん』って…亡くなった恋人の為に頑張ってる様な人…

だったんです…」

 

「ほ、ほほう。。。そんな込み入った話までされる程、仲良しだったんですね、皆さん」

 

「いいえ?全然!」

 

「は。。。?」

 

「でもそういうのって何も言わなくても、なんとなく伝わるものなんですよぉ…」

 

ホゥ…と遠い目で顔を赤らめて言う杏に

 

(ああ、絶対違うな。。。あっちの『春信(ぼく)』、勘違いされてるだけだ、コレ。。。)

 

「だから!三好さんもひょっとしてそういう事がって!」

 

今度は鼻息を荒くしてキラキラとした目で春信を見つめている

 

「ざ、残念ながら恋人と呼べるような方とお付き合いした事はありませんね。。。」

 

グイグイと押してくる杏に引き気味で答える春信は思わず目を逸らしていた

その様子に杏は残念そうに…

するどころか、まるで何かを察したように更に嬉しそうに両の手を組み、

瞳を輝かせて春信を見つめていた

 

「そうですか!そうですよね!そういうのって軽々しく口にしないものですよね!」

 

「え。。。?」

 

「わかります、わかります、心に秘めた想いってそういうものですよね!」

 

伊予島(いよじま)(あんず)様。。。?なにか勘違いを。。。」

 

「わかってます!わかってますよ!私、そういうお話たくさん読んできましたから!」

 

「いえ。。。思い違いしてますよね?私、恋人とかいませんでしたからね!」

 

「ああっ!誰にも言えない、秘めたる気持ち…!」

 

「聞いてます?ちゃんと聞いてもらってます?」

 

ガシッ!

 

杏は春信の手を強く握り締め

 

「応援してますから!私!!」

 

目を爛々と輝かせ鼻息を荒くしていた

 

「全然、聞く耳持ってませんね。。。」

 

ハア、と深い溜息をつくと

 

「しかし、それほどご執心とは、そちらの『三好春信』さんは余程魅力的な方だった様ですね」

 

「え?」

 

「そうなんでしょう?随分な人気者ではないのですか?」

 

「えーっと、それはどうでしたか…」

 

「え?」

 

「え?」

 

互いに意外なものでも見たかのように目を合わせる

 

「あ、ああ、皆さんに人気というわけではなく、

伊予島杏様が個人的にお好きだっただけなんですね」

 

「え?そう言われても…」

 

「え?」

 

「あ、いえ、悪い人ではないと思うんですが…特に男性として魅力的というわけでも…」

 

「え?」

 

「私自身の好みで言うならああいう、いつもヘラヘラしている人より

タマっち先輩みたいな王子様の方が…」

 

「え?」

 

「あーっ!なんでもないですよ!なんでも!」

 

「は、はあ。。。それでは好みのタイプかどうかで言うなら。。。」

 

「どちらかと言えば嫌いな…あ、いえ、苦手なタイプかもしれませんね、あはは」

 

にこやかに答える杏の様子に

 

(別に子供にモテたいとか思ってる訳でもないけど。。。なんか酷い評価だな。。。)

 

苦笑いで返すしかない春信だった。

 

「ああっ!三好さんは魅力的な男性だと思いますよ!一般的に見て!」

 

「散々、その春信さんにそっくりだといわれてきたところなんですが。。。」

 

「ほ、ホラ!確かぁ…そう!雪花さんがイケメンだって言ってましたよ!初めて会ったとき!」

 

「若葉様にも何か言われたときですね。。。」

 

「わ、若葉さんは歯に衣を着せない…じゃなくて、物言いがストレート…でもなくて…」

 

「クスッ」

 

「え?」

 

「フフフ、冗談ですよ。気にしていません」

 

「はあ…」

 

「元々、私も女性にもてるタイプでもないですから」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、周りにはなぜか綺麗な女性が集まっていた気がしますが。。。」

 

「ほうほう」

 

「私に好意を寄せるような方はいなかったようですね」

 

「ふむふむ」

 

「それでも学生時代は義理チョコくらいはたくさん頂けたんですが。。。」

 

「モテモテじゃないですか」

 

「いえいえ、ただの義理ですし。今年のバレンタインなど妹からしか。。。」

 

「夏凜さんが?」

 

「ああ。。。違いました。。。」

 

「どうしたんですか?」

 

「いえ、その日にもらったチョコはイタズラだったんですよ、園子嬢の」

 

「ええっ!園子先生からっ?!」

 

「ええ、わざわざ妹の名でメッセージカードまで付けて」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「はい?」

 

いきなりぶつぶつと何かを分析するように独り言を呟き始める杏

 

「園子先生が三好さんにチョコを?そういえば園子先生は1つを園子ちゃんに渡しただけで本命は誰にしたのかわからず仕舞いだった様な…でもそれをわざわざ夏凜さんの名で三好さんに?そんな意味のない事を園子先生が…いいえ、園子先生はバレンタインでネタ集めに奔走してらしたわ…無駄や無意味な事なんてする筈がない…それに学生時代は義理チョコをたくさん…それって本当に義理なの?こう言ってはなんだけど、三好さんは見た目だけなら本当に綺麗な人だし、三好さんと違って中身もまともっぽい…結構本命チョコも混ざってたんじゃ…だとすると園子先生のも…いえ、だったら夏凜さんの名を使うような回りくどい事をする?園子先生は自分の恋愛よりネタを優先する、そんな人だわ…だったらコレは新作の布石?ということは、新作は百合以外の恋愛小説…それも兄妹の禁断の愛?!」

 

「あ、あの、伊予島杏様。。。?」

 

「こうしちゃいられません!」

 

「はい?!」

 

「私、園子先生のところに用事を思いつきました!」

 

「お、思いつき。。。?」

 

「それではっ!」

 

シュタッ!っと左手を上げて走り去る杏

その顔はまるでご馳走に食いつくワンコのように嬉々とした表情で

すれ違う者全てがビビッて廊下を端に避ける程であったそうです

 

ハア。。。と溜息をついた春信も

 

「妄想文学少女の考える事はわからん。。。」

 

ろくに突っ込めませんでした

 




<次回予告>

あの問題作が…
装いも新たに帰ってくる!
西暦の勇者たちのその後を描いた問題作!
君はコレを許容する事が出来るか?

「エリンジウム(改訂版)」

全ては園子の妄想から生まれる…


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雪花さんと春信くん

この話にはキャラ崩壊成分、および誤解を招く表現が含まれます。
ご注意ください。



「突撃!いきなり家族訪問!夏凜ちゃんハッピーバースデ~!!」

 

「あれ~、夏凜のお兄さん?」

 

「へ。。。?」

 

夏凜の部屋へいきなり訪ねた春信。

呼び鈴も鳴らさず、サプライズを仕掛けようと飛び込んだのだが、

しかし部屋で出迎えたのは夏凜ではなく、雪花だった。

 

「どうしたの?夏凜なら今は留守だよ?」

 

「。。。」

 

「ん?どったの?めずらしく間の抜けた顔して?」

 

サプライズを返されたような気持ちで思考が停止していた春信は慌てて取り繕う。

 

「こ、これは秋原(あきはら)雪花(せっか)様、本日は夏凜の部屋に遊びにいらしてたんですか?」

 

「え?ま、まあね、ちょっとゆっくりさせてもらってますよ」

 

「それにしても夏凜はどこへ。。。お客様を放っておいて。。。」

 

「あ~、違う違う、私が来た時から留守だったのよ、夏凜」

 

「えっ、それでは鍵もかけずに外出を?なんて無用心な。。。」

 

「ああ、そっかぁ、お兄さんには言っといた方がいいかな?」

 

「はい?」

 

「これ」

 

部屋の合鍵を取り出し、顔の横でプラプラとぶら下げる。

 

「そ、それはまさか。。。」

 

「そ。ここの部屋の合鍵。夏凜から預かってるの」

 

「えええぇっ!」

 

「いや、そんなに驚くとこ?」

 

「う。。。ウチの妹が秋原雪花様と同棲。。。」

 

「え?」

 

「友奈さんや風さんだけでなく、遂に過去の勇者様にまでその手を。。。」

 

「ちょ、ちょっと、お兄さん?」

 

「秋原雪花様!」

 

「はい?!」

 

「なんというか、女の子同士とはいえ、まだ皆さん子供なんですから、

もっと節度のある交際をですね。。。」

 

「交際って…」

 

「部屋に自由に出入りして(ただ)れた関係になるなんて、そんな事。。。そんな事。。。」

 

「爛れた…?」

 

「お兄さんは許しませんよ!」

 

「…」

 

「。。。」

 

しばしの沈黙の後

 

「ぷっ…あははははははは!」

 

雪花の大笑いが部屋に響いていた。

おなかを抱え、目尻に涙まで浮かべて笑っている。

 

「な、何を笑って。。。」

 

「あははは、おにーさん、面白いわ!」

 

「な、何が面白いというのですか!私は雪花様のことも思って。。。」

 

「いやー、部室で見たときはもっと堅物かと思ってたけど、大分愉快な人だわ、こりゃ」

 

「愉快って。。。」

 

「あー、入って来たときの反応からすると、まだちょっと隠してる部分とかありそうだけど…」

 

雪花は値踏みするように春信の顔を覗き込んでいる。

 

「え。。。」

 

「うん!いいや!おニーさんからは敵意とか全然感じないし、事情を教えてあげよう!」

 

「事情。。。ですか?」

 

「まあ、大した事情でもないんだけどね。

私が一人になりたい時の為に部屋を自由に使っていいって、夏凜が合鍵くれたのよ」

 

「お一人に。。。?」

 

「ほーら雪花さんってば人気者でしょ?部屋で一人でいてもみんなが押し寄せてきちゃうのよ」

 

「あ。。。」

 

「それはそれで嬉しいんだけど、

たま~に一人になりたいな~ってぼやいたのを夏凜が聞いてたのよ」

 

「それで夏凜が合鍵を。。。はっ!」

 

「ん?」

 

「も、申し訳ありません!そうとは知らず、ご無礼な物言いを!」

 

春信は赤面し雪花に頭を下げている。

 

「あらあら、顔赤くしちゃって~、おニーさんたら可~愛い~」

 

だが、雪花の方はまるで気にしていない様子だ。

 

「あ、あの。。。」

 

「ん~?何かな~?」

 

「怒っていらっしゃらないので?」

 

「怒る?なにを?」

 

「先程、私は大変ご無礼な物言いを。。。」

 

「無礼?あんなのが?あれくらい、無礼でもなんでもないわよ。あっちに比べたら…」

 

「あっち。。。?」

 

「ああっ!なんでもない、なんでもない!おニーさんは夏凜と私のこと心配したんでしょ?」

 

「は、はい」

 

「じゃあ、それは気遣いってもんでしょ、無礼なんかじゃないわ」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「それとも何?『無礼だ!大赦の使いを別の者に代えよ!』って言って欲しい?」

 

「い、いえ、そういうわけでは」

 

「じゃー、その話はここで終了、いいわね?」

 

「はあ。。。あ、いえ、ありがとうございます」

 

「ふふ、それにしても…」

 

「え」

 

「さっきのアレは傑作だったわね」

 

「アレ。。。?」

 

「『おニーさんはゆるしませんよー』ってね!」

 

「ぶっ!!」

 

「お、思い出すとおなかが…」

 

雪花はまたおなかを抱え、声を殺して笑っている。

 

「あ。。。秋月雪花様?」

 

「ふぇ?なに?」

 

「先程のことは皆には黙っていていただけますか?」

 

「えー、どっしよっかなー」

 

「雪花様!」

 

春信は口をへの字に曲げ、真剣な面持ちでズイッと顔を寄せる。

 

「ち、近い近い…わかった、わかりました。皆には内緒ね」

 

雪花の言葉に春信は小さく溜息をつき距離を戻した。

 

「ありがとうございます」

 

「あ、でも」

 

「はい?」

 

「そうなると、私とおニーさんだけの秘密って事になるのかな?」

 

「そう。。。なりますね?」

 

「むー…」

 

キョトンとした顔で返す春信に雪花はわざとらしく不機嫌そうな顔を向ける。

 

「こーんな美少女と二人っきりの秘密を共有するのに、つれないわねー。おニーさんは」

 

「え。。。?

ああっ!も、申し訳ありません」

 

「ふふっ、冗談よ。本気で自分の事、美少女とか言う程、自惚(うぬぼ)れてないわよ」

 

慌てて姿勢を正す春信に今度はイタズラっぽく笑いかけた。

 

「いえいえ、秋月雪花様も間違いなく美少女だと思いますよ」

 

「ありがと。でも『も』って付けてる時点でねー」

 

「は、はははは。。。」

 

「そこで誤魔化そうとしないなんて、正直だねぇ、おニーさんは」

 

「申し訳ありません」

 

「まあ、私も皆の中で特別だなんて思ってはいないけど」

 

「勇者様も巫女様も一人ひとりが特別だとは思いますが」

 

「それはそうなんだけど、ちょっと浮いてる気もするんだよねー、私って」

 

「そうなんですか?」

 

「あー、皆の真っ直ぐさに当てられて目立たなくなってきてるのかなぁ?」

 

「それは。。。北海道での勇者活動がなにか?」

 

「あんまり…思い出したくないんだけどね…」

 

「そうですか、では聞かないでおきましょう」

 

「って、あっさりしてるわね。そんなに私に興味ない?」

 

「いいえ、興味はとてもありますが、嫌がる乙女から話を聞きだすほど無粋でもありませんよ」

 

「そういう言い方は初対面の時のまんまね。調子取り戻しちゃったかな?」

 

「からかい甲斐がないですか?」

 

「ちょっとね」

 

「お話したくなったらいつでも話してください。私でも、夏凜でも、他の誰かでも」

 

「そうね、いずれは…ね」

 

「では、私はこれで」

 

「えっ、夏凜を待たないの?」

 

「今日訪ねてきたのは、ちょっとしたサプライズのつもりでしたので」

 

「サプライズねぇ…確かに一日遅れのバースデーとかビックリだけど」

 

「え?」

 

「え?」

 

思わずキョトンと返事を返す春信に同じように返してしまう雪花

 

「は、ははは。。。何を仰ってるんですか、夏凜の誕生日は6月12日ですよ。。。」

 

「え?」

 

さらにキョトンとした顔で返す雪花

春信はハハーンとわかったような顔で返す

 

「なるほど、またからかっておいでなんですね、残念ですが妹の誕生日を間違えるほどウッカリしてませんよ。夏凜の誕生日は間違いなく6月12日です」

 

「ええ…そうよね」

 

「?」

 

雪花の反応に首を捻る春信

雪花は申し訳なさそうに

 

「今日って…13日よ?」

 

「。。。え?」

 

「ほら」

 

雪花の取り出したスマホの画面には6月13日の日付と現在時刻が表示されている

春信はそれを見て一瞬で真っ白になった思考を最速で復帰してめぐらせ

フゥ。。。

と溜息を吐くと

 

(大赦中でカレンダーにイタズラした奴らがいる。。。)

 

最適解に辿り着き、冷静さを取り戻すと、さっきと同じ台詞を繰り返す

 

「では、私はこれで」

 

「ええっ?いいの?勘違いだからって」

 

「いえ、勘違いではありませんでした。サプライズは失敗ですが。。。」

 

あたまに疑問符を浮かべる雪花ににこやかに返す

 

「部屋で待ち構えてたら充分なサプライズにはなると思うけど」

 

「こんな美少女と二人っきりでいたと知ったらサプライズでは済まないでしょうから」

 

「言ってくれるわね」

 

調子を取り戻した春信に呆れたように言い放つ

 

「別に嘘やおべっかで言ってる訳でもありませんよ、本当に」

 

「でも、そういうのは特別な誰かに言う台詞よ」

 

「なるほど、軽口が過ぎますか」

 

「大切な言葉は伝える相手も選ばなくちゃね」

 

「気をつけます」

 

「素直で余裕があるとホント、イケメンだにゃあ。面白味はないけど」

 

「。。。褒められたと思っておきます」

 

「ふふっ、じゃあね」

 

「はい、失礼します」

 

深々と頭を下げ、夏凜の部屋を後にする春信。

 

(いつか。。。雪花の話が聞けるといいな。。。)

 

おそらく愉快な話ではないだろう

そう予想しながら彼女の話が聞けるその日を待とう

そう思いながら空を見上げると

 

「だが!今は大赦に戻って犯人をぶっ飛ばす!」

 

雰囲気も何もぶち壊しで駆け出す春信なのでした

 




さあって、次回は!

<次回予告>

タマだ!

最近、春信の奴が良く部室に顔を出す
夏凜の兄貴って言ってるけど、タマにはわかる。アレは春信だ!
仮面の赤い勇者も戦闘に参加してるしな!
タマの勘は良く当たるんだ!

え?ああ、さて次回は…
「タマと春信」
「土居球子と兄貴」
「タマっち先輩と赤い勇者」
の3本だ!

次回もまた見ろよなー!
ジャン・ケン・パー!
うふふふ、ふははは、うわーっはっはっは!

<ホントは1本だけどね>


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○○さんちの友奈さん

今回は思いつきで書いただけです。
時事ネタです。順番無視です。
後で順序入れ替えます。

あと、ネタバレ含みます。



春信っ!大変だ!!

 

あ?どしたよ?

 

のんびり鼻ほじってる場合じゃねえぞ!

 

わざわざ言うなよ。。。で、どうしたんだ?

 

最近更新された『ゆゆゆい』本編に新しい友奈が出てきた!

 

新しい友奈?!3人目って事?!

 

そう!それも赤嶺友奈だって!

 

赤嶺って。。。噂に出てた、過去の暴徒鎮圧で活躍した家の子かぁ

 

そうだけど、大事なのはそこじゃないんだ!

 

あー、友奈が3人目か、なんか秘密があるんだろうな、やっぱ。

 

だから、そこじゃねーっつってんだろが!

 

なんなんだよ、一体なにが大変なんだよ?

 

その赤嶺さんちの友奈さんはな…

 

ああ?

 

赤い勇者服で…

 

え?

 

変わり身の術とか使って来るんだよ!

 

はあ?!俺と丸被りじゃねーか!

 

そうなんだよ!

そうでなくても『春信(偽』とか『勇者(笑』とか言われてんのに、このままじゃ…

 

更に俺がパチモン扱いに。。。

 

しかも、その友奈さん、風だか嵐だか使って不意に現れて去っていくんだ!

 

アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

 

忍殺語で誤魔化してる場合じゃねーぞ!

 

やべーよ。。。俺の存在意義、なくなってくよ。。。

 

もう、勇者としての活動やめるか、こうなったら?

 

なんでだよ!

 

いや、どうせ最弱勇者なんだし、まともな活躍なんてできないんだから…

 

いやいや、前回活躍したばっかじゃん?!

 

あれも結局ギャグに行き着くための前振りでしかなかったし…

 

俺の大活躍を何だと思ってやがんだ。。。

 

読者の感想もラブコメ寄りだし…

 

夏凜ちゃんとのラブコメか、それはアリかもな。。。

 

感想で来てるのは園子ばっかだけどな

 

勇者として頑張ろう!

 

頑張ろうって言ってもどうすりゃいいんだ?

 

まあ、待て勇者が増えるのは望ましい事だ。ここは赤き勇者4人でカルテットをだな。。。

 

ああ、赤嶺さんは造反神側の勇者だから

 

はあっ?!敵なの?!

 

まあ、そうなるな

 

じゃー、簡単だ。アレで行こう。

 

アレ?

 

味方じゃないなら、敵として出てきた時にいちゃもんつければいいんだよ。

 

いちゃもんって…

 

だから。。。

嵐のような風と共に勇者たちの前に現れた赤嶺友奈

バーテックスを操るとはいえ、本来であれば数で勝る神樹側の勇者の方が有利であるのだが

そのトリッキーな言動に勇者たちはいまひとつ全力を出し切れていない。

 

「あー!まったくぅ、どうにかなんないの!あの赤嶺って子!」

 

「落ち着きなさい、雪花!相手の言動に惑わされないで!」

 

「三好夏凜の言う通りでござる」

 

「仮面の赤い勇者?!」

 

「なにかなあ?その変な男は?関係ないんだからどっか行っててくんないかなぁ?」

 

「ふん、貴殿が赤嶺友奈でござるな」

 

「へえ…、私のこと知ってんだぁ」

 

「無論、聞いているでござるよ。。。

拙者のパチモンが出たとなぁっ!」

 

「ぱ、パチモン?!」

 

「そうでござる!後から出てきて、赤い勇者服で風と共に現れ消える!

おまけに変わり身の術まで使うときた!」

 

「それがどうしたっていうのさ?」

 

「そのような忍者風勇者など、まるっきり拙者のコピーではござらんか!」

 

「え、なに?この人なに言ってんの?」

 

「ものすごい言いがかりつけてきたわね…」

 

「あ、でもなるほどだー」

 

「うん、確かにそうだね」

 

「友奈達で納得するとややこしいんで黙ってなさい…」

 

「そんな劣化コピーの相手は!」

 

シュッ!パッ!

 

「拙者一人でぇ!」

 

シュタタタ!

 

「充分でござるっ!!」

 

バッバッビシィッ!!

 

「あ、あれはグレートサイ○マンのポーズっ?!」

 

「知っているのか、球子?!」

 

「ああ…伝説のスーパー○イヤ人と地球人の間に生まれた子供が

成長してその力を発揮する時にとる決めポーズだ!」

 

「な、なにぃ!それでは彼は宇宙人との混血児だったというのかっ?!」

 

「おーい、ノギー、真に受けてんじゃないわよー」

 

「な、なんだかわかんないけど、邪魔が入ったみたいだねぇ…ここは引いとこうかなぁ」

 

「ああっ!また嵐のような風が!」

 

「くっ。。。逃げられたでござるか。。。それでは拙者もさらばだ!アデュー!!」

 

「うわっ!こっちも風が吹き巻いて!!」

 

あとに残された17人の勇者たち。

ボンヤリと去っていった二人の事を考え

 

「アイツ…絶対対抗意識で出てきただけだよな…」

 

「去り方まで真似するなんて、大分気にしてるんだろうね…」

 

「もう出てくんなー!」

 

仮面の勇者ばかりがバカにされるのだった。

って、なんで俺がオチになってんだよ!

 

いや、こういうことだろ?いちゃもんつけるって…

 

いちゃもん部分まではそうだったけど。。。なんでああいう流れにしちゃうかなあ?

 

普通にキャラが自然な流れで会話しただけだ。

 

まるで俺がバカにされるのが当たり前みたいに言うのはやめろ。

 

実際、これから赤嶺さんのいるとこに出てったらパチモン扱いされるのはお前だと思うぞ。

 

だから先にあっちがパチモンだって言っちゃうんだろ、言ったもん勝ちだなんだよ、

こういうのは、へっへっへっへ。。。

 

悪い顔で言うな、一応主人公なんだからお前。

 

あー、あの子、もうずっと戦闘に絡んでくんのかなー?

 

どうだろ?

 

裏方に回ってくれれば、そん時は今まで通り俺が自由に動けるのにー

 

いや、どうせいても自由に動くだろ、パチモン扱いされるけど。

 

それがイヤだって言ってんだろ!

 

もう開き直って『赤い勇者忍者(パチ』とか名乗ればいいんじゃね?

 

やだー!せめて『仮面の』つけてくれー!

 

『(パチ』は取らなくていいんだ…

 



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エリンジウム(改訂版)

これは、あまり語られる事のない…
あったかも知れない、小さな小さな伝説の物語…



立てかけられた白無垢を前に向かい合う二人の少女

いや、もはや少女ではない、既に神の力を顕現する適性も失い

何年にもなる立派な女性だ。

 

「ついに明日か…」

 

「早いものですね…」

 

「お前が二人の結婚式を一緒にやると言い出した時は、流石の私も面食らったがな」

 

「でも、あなたもそれに反対はしなかったでしょう?」

 

「お前とはずっと一緒だと誓ったからな」

 

「あら、覚えていて下さったんですね」

 

「ふ…忘れるわけがないだろう。

あれほど泣いたひなたを見たのは、後にも先にもあれっきりだからな」

 

「もう、若葉ちゃんは意地悪ですね、そんな事をわざわざ言うなんて」

 

成人し、美しく成長した乃木(のぎ)若葉(わかば)上里(うえさと)ひなた

二人は明日の結婚式を控え、慌しい中、二人だけの時間を作っていた。

 

「ふふ、その代わり誰にも言わないぞ。墓まで持っていく。私達二人だけの秘密だ」

 

「あらあら、明日やっと結婚だというのに、気の早い話ですね」

 

「結婚、か…」

 

そう言うと若葉は少し俯き加減で、不安げにひなたへ尋ねる。

 

「お前は後悔してはいないか、家と権力を守るためのこの結婚を…」

 

「若葉ちゃん…」

 

「私と違って、お前は器量良しで、家事や人付き合いも…」

 

「若葉ちゃん」

 

「上里の名を残し、権力を高める事に拘こだわらなければ、もっと良い縁だって…」

 

「若葉ちゃん!」

 

「!」

 

「逃げましょう!」

 

「ええっ?!」

 

「今ハッキリわかりました!私にとって一番良い縁は若葉ちゃんです!

他の男に託すなんて出来ません!」

 

「ひ、ひなた…」

 

「さあ!私と共に!若葉ちゃんさえいれば何もいりません!」

 

「ひなたぁっ!」

 

ひしっと抱き合う若葉とひなた

二人の心にもう迷いなどなかった

幼い頃から共に過ごした二人にとって、お互い以上に大切なものなどない

その気持ちは互いの目を見つめるだけで伝わっていたのだ

 

「もうお前を離さない、愛しているよ、ひなた」

 

「私もです、若葉ちゃん。二人でどこか遠いところで暮らしましょう…」

 

「しかし…」

 

「はい?」

 

「そうなると我らの悲願も諦めねばならんか…」

 

「心残りですか?」

 

「まあ、少しはな、しかし…」

 

「大丈夫です!」

 

「え?」

 

「乃木家と上里家は世に残し、私たちの子孫に悲願を達成してもらいましょう!」

 

「子孫って、いや私たちは女同士だぞ、いかに私が男らしく振舞おうとそれは覆せない事実だ」

 

「何を仰います、若葉ちゃん!私は神樹様の巫女ですよ!」

 

「いや、関係ないだろう、それは…それに巫女も、もう何年も前に引退を…」

 

「大丈夫です!私は最も神樹様に愛された巫女ですから!IPS細胞(神樹様の恵み)が得られるのです!」

 

「なにいっ?!IPS細胞(神樹様の恵み)だとっ?!」

 

「ええ!これさえあれば、女性同士で子供を生むのも問題ありません!」

 

「し、神樹様にそんな力まであったなんて…」

 

「若葉ちゃんと私との間に生まれた子供…ああっ!想像するだけで可愛すぎます!」

 

「その可愛い子供に大変な仕事を任せる話をしている訳だが…」

 

「ええ!可愛い子には旅をさせ、ですから!」

 

「ふっ、ひなたのそういう無茶なところは変わらんな」

 

「もちろんです!私は若葉ちゃんを一番に愛していますから!」

 

「ふふふ、しかし私はその倍、ひなたを愛しているぞ」

 

「まあ、若葉ちゃんったら!」

 

「さあ、方針も決まったし、誰かに見つかる前に逃げるとするか!」

 

「そうですね、急ぎま…」

 

手に手をとって部屋を飛び出そうとする若葉とひなた

しかしその目の前に現れた影があった!

 

「ちょおっと、まったぁ~!」

 

二人に行く手を遮る影、それは…

 

「球子!それに杏も!」

 

そう、土居(どい)球子(たまこ)伊予島(いよじま)(あんず)、言わずと知れた、若葉と共に戦った勇者二人である

 

「話はタマタマ聞かせてもらったぞ、二人とも!」

 

「ぬう…聞かれてしまっては仕方ない…見逃してはくれんか?球子よ…」

 

「そういうわけには行かないなぁ、なあ、杏?」

 

「そうですね、今の話を聞いてしまっては…」

 

「そ、そんな!お二人だって私たちの気持ちは分かるはずです!」

 

「ああ、分かるさ、だからこそタマたちには見過ごせない話なんだ」

 

「くっ、こうなっては二人を倒してでも…」

 

「い、いけません!若葉ちゃん!大切な友達を傷つけるなんて!」

 

「ひなた!しかし二人の愛を貫くためには…」

 

「いいえ、若葉さん、私たちを倒す必要なんてありませんよ」

 

「杏?」

 

「そう、見過ごせないとは言ったが、お前たちを邪魔するとも言ってないぞ、タマたちは」

 

「球子さん?」

 

「どういうことだ、二人とも?」

 

「それは…」

 

「「それは…?」」

 

「タマと杏にも!」

 

IPS細胞(神樹様の恵み)を分けて欲しいんです!」

 

「な、なんだってぇー!?」「ああ、なるほど!」

 

「え?」

 

自らの驚きの叫びに重なる、ひなたのあっさりとした納得声に思わず声の漏れる若葉

 

「そういうことなら大歓迎です!お二人も子宝を授かりましょう!」

 

「え?あ、そういうこと…なのか?」

 

「ああ!タマたちもそれぞれの家を子供たちに継がせて二人でラブラブな余生を送るぞ!」

 

「やだなあ、タマっち先輩ったら、まだまだ若いのに余生だなんて…」

 

そういう杏もまんざらではないようで、頬を染め、重ねた両手の指先をもじもじさせている

 

「ふふん、タマはひと目あったその時から杏をお姫様みたいだと思っていたんだ、

嫁にするのになんの抵抗もないぞ!」

 

「わ、私もだよ、タマっち先輩!初めて会ったときからタマっち先輩が私の王子様なんだって…

ずっとそう思ってたんだよ…」

 

「杏ぅ!」

 

「タマっち先輩!」

 

強く強く抱きあう球子と杏

二人はもう一生離れない、そう心に誓っていた。

 

「いつの間にか…杏は小さくなっちゃったな…」

 

「何言ってるんだよ…タマっち先輩が大きくなったんだよ?スタイルも抜群だし…」

 

もはや球子と杏は二人だけの世界に入り込んでいた

 

そこへ…

 

「フッ、話は聞かせてもらったわ…」

 

「千景!それに友奈も!」

 

「みんな~!ひっさしぶり~!」

 

「お二人も…なんですね?」

 

「いいえ、それは少し違うわね…」

 

「なにっ?!」

 

「二人はこのまま逃げるつもりだったようだけど…

明日の結婚式の準備をしていた人たちはどうするの?」

 

「それは…」

 

「もはやあなたたちの結婚式は国民的行事と言っても過言ではないスケールよ、それを…」

 

「心苦しいが、私たちは全てを捨てる覚悟で出て行くのだ、そんな事は…」

 

「でしょうね、だからそれは私と高嶋さんで引き受けるわ」

 

「なんだって?!」

 

「まさかお二人で全ての民の非難を受け止めるというのですか!そんな事をさせるわけには…」

 

「勘違いしないで、私は高嶋さんと不幸になる気なんてないわ」

 

「「えっ?」」

 

「あなたたち二人の結婚式を私と高嶋さんの結婚式にすり替えるのよ、サプライズと称して!」

 

「さぷらいず?!」

 

「国民的英雄という意味では私たちも同じ

その二人の女性同士の結婚式となればもはや誰も文句は言えないわ!」

 

「さすがグンちゃん!これで全て丸く収まるね!」

 

「こいつはタマげた!そんな事を思いつくなんて!」

 

「千景さんは私以上の知将ですね!」

 

「し、しかしそれでは高嶋と郡、どちらかの家が途絶えることに…」

 

「それももう決まっているわ、私が高嶋さんに嫁ぐの、郡の名は捨てるわ」

 

「なっ!そ、そんな簡単に…」

 

「若葉ちゃん、物事は簡単に、単純に考える方が上手くいくんだよ」

 

「もっとも、上里さんのIPS細胞(神樹様の恵み)発言がなければ思いつきもしなかったけど」

 

「ふふふ、神樹様はいつも私たちの味方というわけですね」

 

「そういうことになるな、ふふっ」

 

6人が嬉しそうに神樹様に感謝しているその中に

またしても飛び込んでくる人影があった。

 

「そういうことなら!」

 

「私たちもその話に乗せてもらうわ!」

 

「歌野!雪花も!」

 

「私もいるぞ」

 

「はは…皆さん、お久し振りです」

 

「あらあら、棗さんに水都さんも」

 

そう、諏訪の勇者であった白鳥歌野、巫女であった藤森水都、

北海道の勇者であった秋原雪花それに沖縄の勇者であった古波蔵棗である。

 

「なるほど、ここに居合わせたのもタマタマじゃあなさそうだな」

 

「ええ、二人のマリッジを祝福に来てたのよ!」

 

「だけど話を聞いてたら私もうたのんとの子供が欲しいなって…」

 

「タマっち先輩と私と同じですね」

 

「私は棗さんと結婚するわ!」

 

「雪花はしっかり者だ。いい嫁になると思う」

 

「私とグンちゃんと同じだね!」

 

「ということは、高嶋家と郡家、古波蔵家と秋原家、二つの挙式を行うわけか」

 

「元々合同結婚式の予定でしたし、ちょうど良いですね!」

 

「うむ、私たちと結婚する筈だった二人には申し訳ないが…」

 

「「気に病む必要はありません!」」

 

いきなり襖を開いて飛び込んできた男性二人

 

「お前らは若葉とひなたの結婚相手?!」

 

そう、それは明日、乃木家と上里家へ婿入りする結婚式を控えた二人だった。

突然飛び込んできた男達がまるで怒りもせず、にこやかに話す様子に千景が怪訝な顔をする。

 

「気にやむ必要はないって、どういうこと…?」

 

「我々もお二人が幸せになるのを心から望んでいるからです!」

 

「お二人が…いえ、10人の英雄の皆様が結ばれるならこれほど喜ばしい事はない!」

 

「ああっ、流石は若葉ちゃんのお婿に選ばれる方っ!なんてお心が広いんでしょう!」

 

「ふふふ、それを言うなら、ひなたの婿に選ばれた彼も同じだ」

 

「まったくだ!こんな男前たちだったとはタマげたぞ!」

 

「タマっち先輩には敵わないけどね!」

 

「あははは、とにかく、めでたしめでたしだねっ!」

 

「「「「「「「「「「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」」」」」」」」」」

 

みんなの笑顔と笑い声はいつまでも続くのでした。

 

<おしまい>

「。。。」

 

「どうかな~、ハルルン?改訂版『エリンジウム』の出来は!」

 

「。。。」

 

「いや~、苦労したよ~、ハルルンの無茶な要望に応えるのは~」

 

「。。。」

 

「本当はわかちゃんとひなタン二人の婿を『三好春信』さんにしようと思ってたんだけど~」

 

「。。。」

 

「ハルルンが同じ名前だと嫌がるから、見知らぬ誰かってことにしちゃったよ~」

 

「。。。」

 

「さあさあ!黙ってないで、感想でも意見でも賞賛でも惜しみなく言ってくれていいんだよ~」

 

「あ~、園子様?」

 

「やだよ~、様付けなんてよそよそしい~」

 

「だったらいい加減ニックネームで呼ぶなよな。。。」

 

「そんな事より!さあ、感想タイムだよ~」

 

「そんな事って。。。それじゃあ言うけど。。。」

 

「うんうん!」

 

「なんだこりゃ?」

 

「なにが~?」

 

「なにがも何も、読後の感想だよ。全編通してなんだこりゃ?だろ。。。」

 

「ええ~、例えば~?」

 

「例えば、前書きからなんだよ、『伝説の物語』って」

 

「ヒナたんが『強力な伝説』を残してるって以前誰かが言ってたんだよ~

女性同士の結婚とか、国家的行事とか伝説的でしょ~?」

 

「誰かって。。。それになんなの?このIPS細胞(神樹様の恵み)って。。。」

 

「ふっふ~ん、さすがの春信さんも知らなかったみたいだね~

西暦の時代に発見されたIPS細胞っていうものがあったんだよ~」

 

「はあ。。。」

 

「大抵の不思議な事はこの細胞で説明がつくくらい汎用性の高い細胞だったんだって~」

 

「へえ。。。」

 

「それを神樹様が奇跡の力で復活させたのがIPS細胞(神樹様の恵み)なのさ~」

 

「ほう、そんなものが実際に。。。?」

 

「あるわけないよ~、お話の中だけだよ~」

 

「ああ、うん、やっぱそうだよね。。。」

 

IPS細胞(神樹様の恵み)のおかげで西暦の皆はハッピー間違いなしのエンディングだよ~」

 

「いや、西暦の皆さんのキャラも、もう無茶苦茶じゃないの。。。」

 

「どこが~?」

 

「どこもかしこもだよ!最後にゃ雪花。。。様と棗様まで結婚してるし!」

 

「ああ~、あの二人は悩みどころだったんだけどね~でも~」

 

「あん?」

 

「郡と秋原の家だけが大赦の名家に残ってない理由がぴっかーんと閃いたんだよ~

これで全てのつじつまが合うでしょ~?」

 

「はっはーん、分かったぞ、園子嬢、実はバカなんだろ!」

 

「うわぁ…そんなあしざまな罵倒、今までで初めてだよ~

今まではアホの子とか、おバカとか、ドジっ子園子ちゃん程度だったのに~」

 

「いや、最後のは言った事ないだろ。。。」

 

「あう~」

 

「む。。。少しは(こた)えたか?」

 

「うん~、なんだかゾクゾクするよ~」

 

「全然堪えてないな。。。謝ろうと思って損した」

 

「あはは~、ハルルンは女の子に甘いね~」

 

「ほっとけ。。。ってか、いいかげんに反省しろ」

 

「反省~?」

 

「今回のなんて、もうただの趣味だろ?百合で結婚書きたかっただけだろ?

改訂とか、ただのいいわけだろ?!」

 

「もちろんだよ~、私は趣味で小説書いてるんだからね~」

 

フンスと鼻息荒く、目を輝かせて誇らしげに語る園子

確かに趣味で書いている小説に対してあれこれと注文をつけるのはどうかと春信も思う

しかし…

 

「それでも。。。」

 

「ん~?」

 

「それでも内容はもっと考えて書けーっ!」

 

突っ込まざるを得ないのでした。

 

<おしまい>

 




mototwo(以下略):さあ!今回からはしばらく短編が続くよ!

春信(以下略):いきなりだな。。。ってか中断前に言ってたやつか

各キャラと春信が絡んでいくだけの実のない話だ!

始まったばっかで実がないとか言い出したよ。。。

『ゆゆゆい』で言うところの日常みたいなものだね!

どうしてそこで公式にケンカ売ろうとするかな、お前は?

丸亀組にどれだけ春信が嫌われてるのか、みんなで確認だ!

俺にもケンカ売る訳か。。。

さあって、次回は!

<次回予告>

雪花です。

秋原って苗字と眼鏡のせいでオタク系女子だと思われたり
属性と眼鏡のせいで闇眼鏡って呼ばれたり
過去をほのめかすと病み眼鏡とか言われたり
結構散々です。
って私ゃ、眼鏡しかないんかい!

さて次回は…
「オタク女子と春信さん」
「闇眼鏡とお兄さん」
「病み眼鏡と大赦の使い」
の3本です。

また見て下さいねー!
ジャン・ケン・グー!
うふふふ

って、3本とも「雪花と俺」じゃねーか。。。

<ホントは1本だよ>





という後書きを書いてたんだけど…

いや、何言ってんだ?上の流れおかしいぞ?

うん、実は今回の話を7月1日に上げるつもりで、そこから再開の予定だったんだ

は?

だけど春信が勇者部に来てて夏凜ちゃんの誕生日ガン無視とかおかしいなと思って…

当たり前だ、っていうか俺が夏凜ちゃんの誕生日に遅れて登場した時点で全てがおかしい!

うん、あの誕生日に遅れた話もちゃんと6月12日に上げれてたら
もうちょっと違う展開もあったんだけど

夏凜ちゃんの誕生日ネタなのに雪花としか話してないしな。。。

正直、誕生日ギリギリまで夏凜ちゃんのこと忘れてたし
当日は仕事で遅くなって書き直す余裕もなかった

ほほう。。。夏凜ちゃんを忘れてたとはいい度胸だ。。。

これも散華の影響かっ?!

前作の設定、ネタにしてんじゃねえ!
ウチの妹をないがしろにした罪は償ってもらおうか!

すまん…俺にはお前と比べて夏凜ちゃんへの愛が足りなかったようだ…

当然だ!夏凜ちゃんを俺ほど愛する奴など他にいないからな!
俺と比較しようなんて百年早えぜ!

いやー、流石は夏凜ちゃんソムリエの春信さん!

はっはっは!それほどでもあるかな~?
なんてったって俺が一番夏凜ちゃんとの付き合いが長いんだからな!

さすはる、さすはる!

なんだ、その『さすはる』って。。。

さすがはハルルン!の略だよ

いいかげんその呼び名出すのヤメロ。。。

おおう…顔面に食い込むアイアンクローが脳髄を刺激する…

大体、そんなおべっかで誤魔化しきれるとでも思ってんのか。。。

いや、別に誤魔化すつもりはないんだよ

ほっほう。。。

真面目に取り合うつもりもないんだけど

つ・ぶ・れ・ろ!

いたいいたいいたい、もっと愛情を持って…

お前に対する愛情なんぞ欠片もないわ!

あーーーーーーっ!

。。。



やっと静かになったか。。。

さて、それでは次回予告!またサザエさんの予告BGMに乗せて読んでね!

何事もなかったかのように流すなっ!





さあって、次回は!

<次回予告>

古波蔵棗だ。

この世界はとてもいい…
ペロやシーサーもいる…
海も近い…
仲間がいるというのは良いものだな…

さて次回は…
「古波蔵棗と大赦の使い」
「沖縄唐手と大赦舞闘」
「お姉さまと通りすがりの勇者(ヒーロー)
の3本だ。
ん?いったい誰の事だ?

うん?ああ、次回もまた見てくれ。
ジャン・ケン・ぱー…
ふふふ、本当に愉快だ…

<ええ、1本しかありませんよ>



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古波蔵(こはぐら)(なつめ)と大赦の使い

このお話にはキャラ崩壊成分や誤解を招く表現があります。ご注意ください。



その日、春信はある海岸に訪れていた

 

「ふんっ!」

 

そこはいつも夏凜が鍛錬に使っている砂浜

 

「はっ!」

 

そこへ妹の姿を見る為やってきていたのだが…

 

「こおぉぉぉぉぉぉぉぉ…」

 

凛々しい掛け声と共に鍛錬に励んでいたのは古波蔵棗であった

 

(なんか最近夏凜ちゃんとすれ違ってばっかな気が。。。)

 

「……ん…?」

 

呼吸を整えていた棗が春信に気付いたようで、こちらを見ているが

声を掛けてくるような気配はない

 

春信にとって、棗は雪花と共にほとんど面識のない勇者であった

大赦の使いとしても、仮面の赤い勇者としても幾度か話はしたが

無口な少女という印象で、雪花のように積極的に会話に参加するイメージもない

 

二人きりで会ってしまうとどう話しかけたものか、悩んでしまう

しかし会った以上、大赦の使いとして何も話さずそれではまた、というわけにもいかない

とりあえず砂浜まで歩を進めると何気ない会話から接触を図ることにした

 

「これは古波蔵棗様、今日は浜辺で鍛錬ですか?」

 

「……うん…」

 

「。。。」

 

「…」

 

「いつもは夏凜もここで鍛錬に励んでいるんですが、今日はいないようですね」

 

「……ああ…今日は見ていない…」

 

「。。。」

 

「…」

 

「こ、古波蔵棗様はヌンチャクを使う勇者と聞きましたが、空手もおやりになるんですね」

 

「……そうだな…」

 

「。。。」

 

「…」

 

(か。。。会話が続かないっっっ!)

 

大赦の使いを演じているとはいえ、春信自身はさほどコミュニケーション能力が高い訳ではない

今まではなぜか少女たちが話してくれていたから会話にはなったが、元々無口な棗を相手にして

内心春信はうろたえていた。

 

「……お前は…なぜ正体を隠しているんだ…?」

 

「え。。。?」

 

にこやかな顔のまま、次の言葉を頭の中で探し回っていた春信は、

棗のいきなりの問いかけに、自分が何を問われているのか気付けなかった

そんな春信に更に言葉を重ねる棗

 

「……仮面の赤い勇者…あれはお前だろう…?」

 

「な。。。何を仰っているんですか?」

 

「……何となく気配でわかる…アレは…お前だ…」

 

「。。。」

 

(気配か。。。この子には下手な嘘は通じそうにないな。だが。。。!)

 

「……どうした…?なぜ答えない…」

 

棗の静かな問いかけに意を決したように春信は口を開く

 

「西暦の時代にも『三好春信』という方がいたそうです」

 

「…?」

 

「その方は若葉様たちとお知り合いで」

 

「……いきなりなにを…」

 

「見間違えるほど私と似ていたそうです」

 

「…」

 

「そして若葉様たちから妹が聞いた話では」

 

「……夏凜が…」

 

「その方が仮面の赤い勇者であったのでは、という事です」

 

「……つまり…」

 

「ええ、その『三好春信』さんの気配が私と似ている為、同じように感じられたのでは?」

 

「……なるほど…」

 

「わかっていただけましたか?」

 

「……では…」

 

スッと構えた拳を春信へ向ける棗

 

「え。。。?」

 

「……確かめてみよう…」

 

それは単に構えただけではない、相対した者の出方を見ようという覇気を発していた

 

「。。。っ!」

 

「……やはり…」

 

その覇気に反応するように春信は自然と構えをとっていた

その構えに対し、更に覇気を上乗せする棗

 

「一応お伝えしておきますが、これは単に古波蔵棗様の覇気に気圧(けお)されて構えただけです」

 

「…?」

 

「私も大赦で一通りの武術は習得しましたので、思わず反応したという事。。。」

 

「覇っ!!」

 

「うっ。。。」

 

春信の言葉を遮り、覇気の乗った力ある声を発する棗

 

(余計な言葉など要らないということか。。。)

 

二人の間にピリピリとした空気が漂い、その目は互いを見つめている

いや、凝視しているのではない、相手の動きを寸分も見逃さぬよう、

全身を視野に置き、それでいてどこも見ていないような視線を送っていた

 

構えた当初は下手に動けば自分が仮面の赤い勇者である事を悟られる

そんな事を思案していた春信だが、こうなっては何かを考えている余裕などない

それ程、目の前の少女は自分を打ち倒さんという気を発していた

 

肌を刺すような空気は次第に張り詰めたそれになり、波の音すら気にならなくなる

相手の息遣いのみが感じられる中、二人は構えたまま微動だにしない

その二人の息遣いがいつの間にか重なるように同期し、互いの存在以外何も感じなくなった頃

 

棗の視界の中で春信の両腕が自然に持ち上がる

頭の上でその手を合わせ、そのまま振り下ろしてきた

 

「……っ?!」

 

相対していると言っても、二人の間には数歩の距離がある。それが攻撃であったとしても、

暗器でも仕込んでいない限り、無手の春信のその手が棗に届く筈もない

その無意味とも思える春信の動作があまりにも自然な事に棗は一瞬戸惑い

絶好の攻撃の機会を逃してしまった

 

(……しまった…今のはフェイント…?!)

 

だが、そう思った瞬間、何かが棗の左腕をかすめる様に飛んでいき…

 

バッシャーン!

 

後ろの海で大きなしぶきが上がり、声が聞こえた

 

「ガボガボガボ…ぶっひゃー!なんでだ?!なんでタマの攻撃がわかったんだ!?」

 

「シーサー?!」「土居(どい)球子(たまこ)様?!」

 

海にはたった今、海に飛び込んだような姿の球子が棒切れを持ってバシャバシャと暴れていた

慌てて球子を浜辺へ引き上げにかかる棗と春信

幸い砂浜である為、球子の所まで行っても脚は届き、あっさり引き上げることが出来た

 

「いったい、どうなされたんですか?いきなり服を着たまま海へ飛び込むなんて!」

 

「…シーサー…服を着たときの泳ぎ方は以前教えただろう…なぜまた溺れそうになったんだ?」

 

「はあぁ~~~~?何言ってんだ、二人とも!」

 

心配する二人の顔を見て球子は呆れたように声を上げていた

 

「「え?」」

 

「タマが春信の後ろからこの棒で殴りかかったら、

いきなり白羽取りで受け止めた上に投げ飛ばしたんだろうが!」

 

「……いきなりって…」

 

「今の話だと土居球子様の方がいきなり私に殴りかかった様にしか聞こえませんが。。。」

 

「そうだよ!タマはあんずの愛を勝ち取る為に春信を倒す必要があったのにー!」

 

「……杏の…愛?」

 

「なぜそこで伊予島(いよじま)(あんず)様の名が。。。」

 

球子はもはや半べそで喚くように声を上げていた

 

「だあってー!あんずが春信に恋人がいるか聞いたりしてー!」

 

「「ええっ?!」」

 

「その事で泣きながら走ってたら園子にー!」

 

「園子嬢が?!」

 

「だからタマはー!」

 

「ちょっとお待ちください、土居球子様」

 

「ふぇぇぇー?」

 

「伊予島杏様の件は誤解です。あの方のお心には土居球子様への思いが詰まっていますから」

 

「そっ、そうなのかー?」

 

「……そうだな…。杏の球子への愛情は疑うべくもない…」

 

「はい、そこはご安心ください。ですから。。。」

 

「ふぁ?」

 

「園子嬢から何を言われたか詳しくお教え願えますか?」

 

にこやかな顔で球子に迫る春信。その顔の近さに少々ビビりつつ球子はその記憶を手繰り寄せる

 

「そ、それは…」

 

 

「なるほどなるほど~、あんずんとハルルンがね~」

 

「タマはー、タマはどうすればいいんだー?園子ー!」

 

泣きながら駆け回っていた球子を偶然見かけた園子が引き止めると、

球子は堰を切ったように思いのたけを打ち明けていた。

 

「タマ坊、それはタマ坊の心次第だよ~」

 

「タマの?」

 

「そう!タマ坊がそのまま黙ってあんずんとハルルンの幸せを祈るのか!

それともあんずんの愛を再び得る為に努力するのか!」

 

「タマはー、春信なんかにー!でも…あんずがー!」

 

「ハルルンは女ったらしだよ~、あんずんは騙されてるんじゃないかな~?」

 

「女ったらし?!」

 

「自分で『周りには美人ばかりが集まってくる』なんて言ってたんだよ~」

 

「ほ、本当か?!」

 

「本当さね~!それにね~」

 

「それに、なんだ?」

 

「タマ坊、愛って言うのはね~、戦って勝ち取るものなんだよ~!」

 

「戦って…勝ち取る…」

 

「そう!勝ち取るんだよ~!あんずんもきっとタマ坊のそんな姿に惚れ直すに違いないよ~!」

 

「あんずが…タマに惚れ直す!」

 

「さあ~!タマ坊!このダークネス園子リヴァイバルブレードを手に~!」

 

「って、木刀じゃないか、さすがにそれはマズいだろ…」

 

「大丈夫~!見た目は木刀でもこんなにグニャングニャンだよ~」

 

そう言って園子の手で振り回された木刀はゴムのように曲がっていた

 

「そ、そうか!これなら思いっきり殴っても大丈夫そうだな!」

 

「それにハルルンはああ見えて大赦で鍛錬を積んでるからね~、意外と手強いんだよ~」

 

「そうか、やっぱりこっちの春信も強いんだな!じゃー、遠慮は無しだ!」

 

「頑張ってね~、タマ坊には期待してるよ~」

 

「よっしゃあぁぁぁぁっ!春信ー!どこだあぁぁぁぁっ!」

 

「いってらっしゃ~い」

 

駆け出す球子を見送る園子。

その顔はキラキラと輝かせた目で嬉しそうに球子の背中を見つめていた。

 

 

「…というわけなんだ…」

 

「なるほど、なるほど、やはりそうでしたか。。。」

 

話を聞き終えた春信は更ににこやかな顔で球子から顔を離す

 

「……なぜだ…笑っているのにまるで闘気が立ち込めているようだ…」

 

棗はそのただならぬ雰囲気に先程まで相対していたことも忘れたように立ち尽くしていた

春信はスクッと立ち上がると周りを見渡し

 

「ふむ。。。さすがに気配は消していますか。。。」

 

「「?」」

 

怪訝な顔で見つめる二人に小声で話しかけた

 

「純真な土居球子様をたぶらかした園子嬢におしおきがしたいのですが、

お二人にもご協力願えますか?」

 

「協力?」

 

「……一体なにを…?」

 

「大したことではありません、大きな声を出さないようにしていただければ。。。」

 

「「?」」

 

首を捻る二人を見ると春信はいきなり球子の足元を(すく)い、

 

「うわっ!?」

 

小さな声を上げる球子を素早くお姫様抱っこにして砂浜に寝かせる

 

「古波蔵棗様、土居球子様の顔のどこがシーサーに似ているのですか?」

 

「……いきなりだな…例えばこの(まと)めた髪が耳のように…」

 

そう言って棗は球子の前にしゃがみ込んで球子の髪をなでるように手を伸ばすと

春信はいきなり大きな声を上げた

 

「ああーっ!土居球子様が溺れてしまったあ!

古波蔵棗様、人工呼吸をお願いしますう!」

 

「ふぁっ?!」

 

「……何を言って…」

 

わざとらしく叫ぶ春信の言葉に驚く二人。そこへ…

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

砂煙を上げて近づいて来る影。それは目を輝かせ両手でメモを取りながら砂地をものともせず駆け寄ってくる園子(中)の姿だった。

 

「ハルルン、じゃま~!そこどいて~!!」

 

スルリとかわす春信の横をすり抜けあっけに取られる棗と球子を凝視しつつまくし立てる

 

「水難事故から救う為、互いの唇を寄せ合う二人!

それをきっかけにそれ迄はまるで気にも掛けていなかった相手を意識するようになってしまう!

顔を見るたびにその視線はあの時合わせた唇へ!

赤面しつつもお互いに意識している事を否定しつつ、恋人への後ろめたさを感じる二人!

恋人への愛は薄れてしまったのか?!いいや、そんな筈はない!これは一時の気の迷いだ!

でもこの胸の高まりは何?!あの子の顔を見るとなぜこんなに気持ちが高ぶるの!

そんな思いが頭を巡り!更なる愛の泥沼へ向かう4人の運命は!

ああ~っ!妄想が膨らむよ~!イマジネーションが爆発するよ~!

流石はハルルン!私が見込んだお兄さんだよ~!いくらでも筆が進むよ~!

さすはる!さすはる~!」

 

ガッ

 

後ろで無言で聞いていた春信がにこやかな顔で園子の後頭部を鷲掴みにした。

 

「そ~の~こ~さ~ま~。。。」

 

「うひゃ~!たんまたんま~!なっつん!タマ坊!フォローを~!」

 

「……いや…そう言われても…」

 

「この流れで何をどうフォローしろって言うんだ?」

 

「という訳です。さあ、戻って正座でお説教会にしましょうね。。。」

 

にこやかな顔で鷲づかみのまま、何かを喚いている園子を連れて行く春信

残された球子と棗は

 

「……園子は…いったい何がしたいんだ…?」

 

「タマに聞くな。タマの方が教えて欲しいくらいだ」

 

自分たちが何をしていたのか、何をしに来ていたのかも忘れ、ボンヤリと言葉を漏らすのでした。

 

 




<その後>

「ハルル~ン」

ズルズルズル

「ダメです」

「まだ何も言ってないよ~」

ズルズルズル

「何を言ってもこの右手は頭から離しませんよ、説教部屋までは」

「う…ち、違うよ~そのまま引きずられると足が痛いの~」

喚くのに疲れた園子は無抵抗のまま砂浜から引きずられていた
元々身長差があるため、地面にこすれているのは靴のつま先だけだが
確かに心地よいものではないだろう

「じゃあ、歩いて下さい、自分の足で」

「す、砂地を走ったせいか、まともに歩けそうにないな~、なんて~」

あれだけ元気に砂浜を走り回っておいて良く言えたものだ、と嘆息する春信だが

「そうですか、では持ち上げましょう」

にこやかに園子の頭を持ち上げ、脚を浮かせた

「あひゃ~!そ、そのまま片手で持ち上げると首が~!首がのびる~!」

「おや、お気に召しませんでしたか、園子様?」

「わざとだ~、絶対わざとやってる~!」

笑顔のまま問いかける春信に、半べそで抗議の声を上げる園子

「泣かないで下さい、仕方ないですね。。。」

春信は左腕を園子の膝裏に通し、ひょいと抱え上げる

「おお~、これなら楽チンだよ~!」

「楽をさせる為にやってるわけじゃありませんからね。。。」

ギリギリギリ…

「あがががが…頭に~頭にひびくよ~ハルルン~」

「園子様は大切な乃木家のお嬢様ですから。
間違っても落さないようにシッカリと掴んでおかないと」

「これで目的地に着いたら、更に正座でお説教なんて~!横暴だよ~!」

「横暴じゃありません、今日はちゃんと反省するまでとことんやりますよ」

「ふえぇ~ん、もう勘弁して~」





そんな二人を監視する影が…

夏凜「なにやってんのよ、兄貴と園子は…」

樹「街中で堂々とお姫様抱っこ…」

風「その上、痴話喧嘩をしているようにしか見えないわね…」

東郷「そのっちったら、また何かやらかしたのかしら…」

友奈「二人っていつも楽しそうだね!」

ひなた「でも…園子さん、頭を掴まれている様な…」

若葉「うむ、私もそう見えるな」

杏「タマっち先輩も見かけないし…」

千景「園子さんのことだから、また土居さんを煽ったりしたんでしょう」

友奈(高)「でも結城ちゃんの言うとおり、楽しそうだよね!」

千景「そうね、楽しそうでとてもいいと思うわ」

水都「あっさり手の平返した?!」

歌野「みーちゃん、そこはスルーしてあげるのがラブなのよ!」

水都「ら、ラブって…」

雪花「棗さんもいないし、どぉこ行ったのかにゃあ?」

須美「そうですね…それにしても、お姫様抱っこというのはこうして冷静に見ると気恥ずかしいものですね…」

銀「自分たちがやってるのを鏡で見せられるのもかなり恥ずかしかったけどなぁ」

園子(小)「あれは良いものだったよ~」

須美「そんなので喜ぶのはそのっちくらいなものよ」

雪花「そうだねぇ、って須美ちゃんたちもいたの?!」

須美「皆さんがこんな大人数でコソコソと覗き見していれば気にもなります」

雪花「あー、小学生組、特に園子ちゃんには見せていいのか悩んじゃうとこなんだけどねぇ…」

銀「だ、そうだけど、どうだ?園子」

園子「仲がいいのは良い事だよ~」

須美「あら、意外と冷静ね。そのっち」

銀「で、本当のところは?」

園子「成長した自分が男の人にお姫様抱っこされてるとか、妄想がはかどるよ~!メモメモ~!」

銀「やっぱそうか、園子はブレねぇなぁ…」

こうして、春信と園子(中)を先頭としたおかしな集団が町の人たちから奇異の目で見られる事になっていたのですが…
やはり勇者部の関係者なのであまり騒ぎにもならなかったのでした。

<おしまい>



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必殺技に熱中時代

これは「ゆゆゆい」5月イベント「勇者☆オンステージ!後編【ハード】」に関するネタです。
その為、その話を知らないと分かりにくいかもしれません。
また、キャラ崩壊成分を含みますので、ご注意ください。



ニードル・ミサイル、龍翔閃(りゅうしょうせん)龍槌閃(りゅうついせん)

おー えーと それからぁ 加速装置とクロックアップと

あっ!そうそう ギガドリルブレイク! やぁったわやったぁ なあつかしいなあ。。。

「いっくぞぉー!勇者ぁキィーック!」

ドドーン!

「高嶋ちゃん!」

 

「オッケイ!勇者ぁパーンチ!」

ババーン!

「今だよ!アンちゃん!」

 

「は、はい!疾風(はやて)をまといて闇を払え、射貫け閃光一射(せんこういっしゃ)!」

シュピーン!

「若葉さん、お願いします!」

 

「くっ、杏がやるなら仕方ないか…轟き世界を分かて、乃木両斬波(のぎりょうざんは)!!」

スパーン!

「棗さん!」

 

「……うむ…母なる海深くニライカナイに誘おう…

連波海流撃(れんぱかいりゅうげき)…!!」

ザザーン!

「…頼んだぞ、風…」

 

「任されて!我が剣に宿れ、女子力の獣よ。

その力を以って眼前の敵をなぎ払え、女子力一閃(ビーストブレイド)!!」

ドゴーン!

「トドメは譲るわよ、千景!」

 

「わかったわ…死が呼んでいる…汝が命の一切を刈り取り、

彼岸に送ろう--…落命死葬(らくめいしそう)

スパァッー!

 

勇者たちの必殺技の連撃に耐え切れず、光と散る巨大バーテックス

その様子を見守っていた仮面の赤い勇者はフラフラと皆の前に出てきていた

 

「な。。。」

 

「あっ!仮面の赤い勇者さん!」

 

「な。。。」

 

「なんだか久し振りだね!」

 

「な。。。」

 

「今回は活躍の場はなかったですね」

 

「な。。。」

 

「我々の勢いが敵を圧倒したという事もあるしな」

 

「な。。。」

 

「……うむ、どうやら出遅れたようだな…」

 

「な。。。」

 

「それともアタシ達に見惚れてた~?」

 

「な。。。」

 

「だとしたら気持ち悪いわね」

 

「な。。。」

 

「どうしたの?さっきから」

 

「『な』しか言ってないぞ?」

 

「な。。。」

 

「ん?」

 

「なんでみんなして必殺技叫んでんの!!」

 

「なんでって?」

 

「な~に言ってんのよ!必殺技は叫ぶもんでしょー?」

 

「……うん、そうだな…」

 

「まあ、そういうものよね…」

 

「いやいやいや、3年トリオで何言ってんの?!

今までダブル友奈以外、技名叫んだりしてなかったじゃん!!」

 

「じゃんって…」

 

「あー!もう!そうじゃなくても赤嶺友奈の登場で僕の存在感薄れてんのにー!」

 

「僕?」

 

頭を抱えて悶えている仮面の勇者の言葉に違和感を感じる高嶋

 

「必殺技の叫びまでみんなでやったら僕の存在意義なくなっちゃうでしょーがー!」

 

地団太(じだんだ)を踏んで喚いている仮面の勇者

 

「どうでもいいが、ハ…仮面の赤い勇者よ…」

 

「何だよー、若葉?」

 

「さっきから素になってるぞ、お前…」

 

「え。。。?」

 

「語尾も一人称も完全にハ…勇者じゃない時に戻っている」

 

「勇者じゃない時?」

 

「。。。」

 

若葉に突っ込まれて固まっている仮面の勇者

だが今度は若葉の言葉に結城が反応する

 

「若葉ちゃんは仮面の赤い勇者さんが勇者じゃない時の姿を知ってるの?」

 

「え?あっ!しまっ…!いや、それはぁ~」

 

途端にしどろもどろになる若葉

そこへ仮面の勇者が言葉を挟む

 

「ふ。。。ふっふっふっふっふ。。。」

 

「え?」

 

「ど。。。どうやら乃木若葉は拙者の事を誰かと勘違いしているようでござるな!」

 

「か、勘違いだと?!」

 

「そう!拙者は仮面の赤い勇者、それ以上でもそれ以下でもござらん!」

 

「えぇ、いまさらそれを言うのか…」

 

「どうしても他の名が呼びたいのであれば、通りすがりの勇者(ヒーロー)とでも呼ぶがいいでござる!」

 

「一体なにを言って…」

 

「そうなのかー」

 

「ええっ?!」

 

「通りすがりのヒーローさん、って呼べばいいんだね!」

 

「ゆ、結城、それで納得するのか…」

 

「はっはっは、さん付け等不要!

それにどうしても呼びたいのでなければ今まで通りでもOKでござるよ!」

 

「そっか!分かったよ!通りすがりのヒーロー!」

 

「うむ!それではさらばだ!アデュー!」

 

いつもの調子を取り戻し、跳び去る仮面の勇者

それを見送る若葉たちは

 

「奴は…いったい何の為にここに来ているんだ…」

 

「それしにても、さっきの反応ってどっかで見た事あるような…」

 

「そっ、そうなのか?風さん」

 

「あ、いえ、彼は過去の勇者なんだから、知ってる筈ないんだけどね」

 

「そうだね…でもなんで私もなんとなく知ってる気がしたんだろ?」

 

「え?!樹ちゃんも?私はよく分からなかったけど…」

 

「そうね、友奈ちゃんも樹ちゃんも気にする必要はないんじゃないかしら?」

 

「そうそう、あんな奴の事なんて気にしてもしょうがないわよ」

 

「わっしーもにぼっしーも辛辣(しんらつ)だねぇ~それにしても~」

 

「どうした?園子」

 

「仮面の赤い勇者さんは、いつまで自分の正体がばれないと思い込んでるのかな~?」

 

「は、ははは、こ、今回の園子の発言に追求するのはやめておこう…」

 

もはや彼の正体など割とどうでもいい域に来ていることに改めて気付かされたのだった。

 

 




mototwo(以下略):というわけでちょっと一区切り

春信(以下略):なにがというわけで、だ。中途半端に古いネタ持ってきやがって。。。

あーうん、手持ちの小ネタをはき出そうと思ってな、5月に思いついたネタ、仕上げて上げたの

ああ、これでネタ切れってわけか

小ネタはな、次はちょっと間空けて外伝やるつもり

は?外伝?

そう、勇者の出てこない、オッサンばかりの誰得話

ホントに誰得だな。。。

うむ、読者層考えたら完全にチョイスミスなんだろうな

分かっててもやるんだな。。。

まあ、春信は出るんだけど

主役(オレ)が出るのに外伝とは一体。。。

でも、捨てゼリフ的に言うと…

あ?

お前の出番、ねーから!

はぁっ?!どういうことだよ!!あっ、おいっ!逃げんな、コラ!

<ま・た・ね>


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外伝 三好春信は勇者である
第1話


バーテックス行動形式
(1)人を襲う
(2)人以外は襲わない
(3)通常の兵器は、ほぼ効果なし
(4)神の力を宿す勇者なら対抗できる
(5)敵の目標は神樹。破壊を狙っている

皆さん、ごきげんよう、三好春信です
いきなりバーテックスの行動形式が出てきて驚かれたでしょうか?
今回は趣きを変え、僕の思い出話をしようと思います
思い出話といっても、我が最愛の妹、夏凜ちゃんが出てくるわけではありませんし
それどころか皆さんの知っている『勇者』は一人も出てきません
ですが、僕にとっては彼らも、勇気を振り絞った者
『勇者』であったと
そう思えるのです


<大赦内訓練場>

大赦という組織は勇者となる素養を持つ清らかな乙女を選び出し、それに相応しい知識と技量を育成する、そうして来たるべき日に備え、世界を取り戻す事を命題としている。

今でこそ讃州中学勇者部のように四国中にその網の目を広げてはいるが、元々は大社と呼ばれていた頃からの神々を祀り上げる家系、そして初代および初期の勇者たちが生まれた家系のみが名家と呼ばれ、その中から勇者となる素養を持つ者が選ばれ、またそうでなくてはならないという強迫観念めいたものまで持つに至った。

そのため、先代勇者の鷲尾須美も大赦に勤める東郷家に生まれながら、その家の格が低いという理由で鷲尾家へ養子に出され、名前まで変えて勇者としての務めに勤しんだのだ。

 

大赦内にはそんな勇者をサポートする様々な施設がある。この訓練場もその中の一つだ。

訓練場、といっても床が板の間で壁の片側が大きな池に面した大部屋という雰囲気で、正面には掛け軸まで飾られ、どちらかというと武道の道場といった雰囲気だ。

 

そこに一人鎮座する影

仮面をつけた宮司姿のその男

ふと音もなく立ち上がり

また何分か微動だにせず佇み

武術か何かの構えをとるとまた動きを止めた

 

そうしてやっと動き出した男は優雅な動きを見せる

まるで舞を舞うかのごとく

 

かと思うといきなり大きな袖で風を切り

ババッと音を立てて鋭く手刀や突きを繰り出した

 

ダンッとひときわ大きな音で床を蹴り

宙を舞うその間に幾度かの突きや蹴りを繰り出すと

トンっと軽い音で着地したかと思うと

また静かに鎮座し呼吸を整えた

 

その一連の動作を入り口の影から息を潜め見つめる者があった

細身で猫背の体に白衣を纏い、無造作に伸ばした髪と無精髭は

その眠そうな(まなこ)と相まって『だらしない』という形容が似つかわしい

 

名を飛鳥(あすか)志郎(しろう)という大赦の科学者である

彼もまた勇者を助けるための人員として大赦に身を置き、日々研究に勤しんでいるのだ

 

飛鳥は呼吸を整えた仮面の神官に向けて口を開いた

 

「『ぶっ、武と云うよりは舞、舞踊だな。

しかし何故、仮面や神官服を……?』」

 

「『なんだァ?てめェ。。。』」

 

「《春信、キレた!!》」

 

「。。。」

 

「…」

 

暫くの沈黙の後、春信と呼ばれた仮面の神官は仮面を外し、呆れたように言葉を漏らす

 

「何しに来たんだ、お前は。。。」

 

「いや、最近トレーニング以外にやけに気合入れて体動かしてるって聞いたもんでな、

様子を見に来たんだ」

 

「それでなぜ今のネタ振りを。。。」

 

「見てたら言わなきゃいけない気がした」

 

いまの一連のやり取りは何かのネタだったようだ

春信はハァ…と大きな溜息を返す

 

「しかし本当に気合が入ってたな、仮面と神官服なんていつ振りだ?」

 

「わりとつい最近まで身に着けてたんだがな

園子嬢の警護から外れて、こっちの仕事に就いて。。。

まあ、お前に言われなきゃ、普段の鍛錬以外にこんなおさらいみたいな演武、

やったりしなかったろうけど」

 

「俺?何か言ったっけ…」

 

「おい!」

 

飛鳥のまるで覚えていないような口ぶりに春信は思わず突っ込んだ

 

「今度の量産型は勇者になったときに仮面が付くってお前が言ったんだろ!」

 

「ああ、アレの事か…過去に行くのに素顔のまま勇者はやれんだろう」

 

大赦(この)仮面、視界悪いんだよ!」

 

「つーか、ソレのどこから見えてるのかさっぱりなんだが…」

 

「それに量産型で過去に行くと勇者服の性能も下がるって言ってたろ!」

 

「まあ、勇者服(ソレ)に関しては量産型ってだけでも性能ダウンは確実だし、

過去に行けば更に力は減少するはずだ」

 

「はずってお前。。。」

 

「理論上はな、神樹の力が今ほど安定していない時期へ行くんだから当然だ

実際のところはお前が過去に行って立証試験をしない事にはわからん」

 

「人を実験動物(モルモット)扱いしやがって。。。」

 

「そのデータが正規の量産型にフィードバックされれば

それを使う娘達の助けにもなるし、性能も上がる、お前も納得済みだろ?」

 

「『知ってるがお前の態度が気に入らない』」

 

「喋るな。スケブ持て」

 

「無茶言うな」

 

「ま、ネタに走る余裕があるなら大丈夫だな。さっさと準備しろ、最後の調整するぞ」

 

どうやらまた何かのネタだった様だ

春信は外した面を指先で器用に回しながら飛鳥の後へついて行った。




長くなったので分割して掲載です


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第2話

1話でも書きましたが、この外伝 女の子が全然出ません


<祠前>

後日、初めての過去へのジャンプ実験。

春信は飛鳥と共に大赦内の祠へとやって来ていた。

 

(いよいよ西暦の時代へジャンプか。。。流石に緊張するな。。。)

 

「じゃあ、いくぞ、春信」

 

(あ、なんかもよおして来たかも。。。)

「ちょっとタンマ、トイレへ。。。」

 

「バカっ!今動くんじゃないっ!!」

 

「へ?」

 

「春信っっっっっっっっっっ!!!」

 

「あ~~~~~~れ~~~~~~~~えっ」

「ここは。。。?」

 

気がつくと、そこは海岸だった。僕は砂浜に倒れていたようだ。

潮の香り、周りには海以外なにも。。。

 

「こちらO島南海岸、生存者1名を発見、直ちに保護に入る」ザッ

 

後ろで響く声に振り向くと

 

「軍人。。。さん?」

 

濃緑色の軍服とヘルメットに身を包んだ男性がそこで通信器に話しかけていた。

 

「我々自衛隊は軍隊ではありませんから、軍人と呼ぶのはやめていただきたい」

 

少し困ったように微笑む男性の顔は武骨ながらも温和な印象があった。

 

「じ。。。えいたい。。。?」

 

「自分は中尾一曹。失礼ですが、貴方のお名前は?他に無事な方はいるんですか?」

 

「他に。。。?僕の。。。なまえ。。。?あれ?名前が。。。わからない。。。?」

 

考えると頭が痛くなり、意識がもうろうとしてくる。

 

「どうしたんですか?!君!大丈夫か!きみ…」

 

遠のく意識の中で男性の声がからっぼの頭に酷く響いていた。。。

次に目を覚ました時、僕の周りには中尾と名乗った男性以外にも

同じように軍服を身にまとった4人の男性がいた。

 

「あ、班長!目を覚ましましたよ!」

 

「大丈夫だったかい、坊や」

 

「坊やって…彼、成人男性でしょ、どう見ても」

 

「そうなのか?今の若い奴はみんな童顔だから歳がわかりにくいな」

 

「みんな、少しは静かにしろ、彼が怯えているだろう」

 

周りを見渡すと岩肌に包まれた洞窟のような場所らしい。

 

「ここは?貴方たちは軍人さんなんですか。。。?」

 

僕の言葉に顔を見合わせると、途端に笑い出した。

 

「あーっひゃっひゃっひゃ!」

 

「ぐ、軍人さんなんですかときたよ!」

 

「くくく…た、確かに軍服にしか見えないな、自分らの制服…」

 

「み、みなさん、笑いすぎですよ、民間の方にむかって!」

 

「伊達も笑ってるじゃねーか!しっかしこの状況でギャグが言えるなんて大したタマだ!」

 

「????」

 

「静粛!!!」

 

訳がわからずオロオロする僕を見て中尾さんが叫んだ。

その声に4人はピタリと話を()め、直立不動の姿勢をとる。

 

「失礼したな、彼らには君が倒れる前の状況をまだ話していないんだ」

 

その言葉にひときわ大柄な軍人さんが片手を挙げ、声を上げた。

 

「よろしいでしょうか!班長!」

 

「柿崎士長、発言を許可する」

 

柿崎と呼ばれたその男性は姿勢を崩さず話す。

 

「彼が倒れた時の状況の説明を願います!」

 

「うむ、よかろう、だがその前に…」

 

中尾さんは僕に向かって優しく問いかけてきた。

 

「君は今の状況がわかるかな?」

 

僕は正直に首を横に振る。

 

「自衛隊を知っている?」

 

僕は首を横に振る。

 

「「「「?!」」」」

 

その様子に4人の軍人さんは姿勢はそのままに、視線と表情が変化する。何か驚いているようだ。

 

「自分の名前を覚えていますか?」

 

「それは。。。」

 

自分の名前くらい、と思って口を開くが、次の言葉が出ない。

 

「あれ?僕は。。。」

 

その様子を見て中尾さんが優しく僕に語りかけ、柿崎さんに語る。

 

「ありがとう、もういいんだ。

…という訳だ、一時的なものとは思うが『記憶喪失』ってやつだな」

 

なるほど、という顔で納得した様子の4人に座るよう指示すると中尾さんは説明を始めた。

 

「心配しなくてもいい、というのも無理な相談だろうが

ひとまずは落ち着いて今後の事を考えよう」

 

「は、はい。。。」

 

「まずは我々の事を話しておこう。我々は自衛隊の隊員、自衛官だ。

自衛隊とは日本の自衛権を行使し、専守防衛を…」

 

「???」

 

「班長、流石にその説明は…」

 

「む、これではいかんか?」

 

「彼は記憶喪失なんですから、子供にも分かるくらいの説明でなきゃダメですよ!」

 

「す、すみません。。。」

 

「いいっていいって!要は俺たちゃ日本の軍隊みたいなもんさ。

日本は戦争しないって言ってるから名前も違うし、災害救助とかの方が大きな仕事だ」

 

「な、なるほど。。。」

 

「そんで君を連れてきたこの人が中尾1曹。俺たちの部隊の班長だ」

 

「よろしく」

 

初めの印象通り、武骨で真面目だが優しげな雰囲気の人だ

 

「で、階級順に行くと、こちらのデッカイ人が柿崎士長。最年長で頼りになるオヤッサンだ」

 

「オヤッサンはよせ、まだまだ自分は若い」

 

紹介通りの大柄な体に温厚そうな顔の柿崎さんが紹介してくれている人を窘めるように言う。

 

「んで俺は小野沢1士。熱血タイプのナイスガイだ!」

 

背丈は僕と同じくらいだろうか、袖から見える腕が鍛えられた肉体を思わせる元気な人だ。

 

「小野沢さん、何のアピールですか、それは…」

 

まだ紹介されていない小柄な人が小野沢さんにツッコミを入れる。

 

「それからこっちの細目が浜本1士。俺と階級は一緒だが、ちょっとだけ後輩だ」

 

「よろしくな」

 

長身で細身の体に切れ長の目が特徴的な人、浜本さんが言葉少なに片手で会釈した。

 

「最後が伊達2士。見ての通りのひよっこだ」

 

「あー!ひどいですよ小野沢さん、僕だけ!」

 

「さっき、いらんツッコミ入れたお返しだ」

 

先程、小野沢さんに突っ込んでた小柄な人。。。

なるほど、一番若くて階級が下だから、からかいやすいのか、皆も笑っている。

 

「み、皆さん、よろしくお願いします。自分の名前もわかりませんが。。。」

 

「うむ、それで何か身分を証明できそうな物は持っていないかな?」

 

「あ、そうか!ええと。。。」

 

中尾さんに言われ、上着やズボンのポケットを探るが、出てきたのは携帯端末が一つだけ

 

「使えるかな?」

 

「ロックが。。。暗証番号が思い出せません。。。」

 

「ふむ、体が自然と動くかと思ったが、流石にそう上手くはいかないか」

 

「すみません。。。」

 

「君が悪いわけじゃない、気にする必要はないよ」

 

中尾さんは落ち着いた様子で優しくなだめてくれた。

 

「しかし班長、今後の事ってどうするおつもりですか?」

 

「そうですよ、今の状況ではジリ貧なのは分かりますが…」

 

「正直、穴蔵で隠れっぱなしというのは性に合わん」

 

「それじゃ!」

 

「だが、出て行ったところで我々の武器が通用しないのは明らかだ」

 

「それじゃぁ…」

 

「なにせ、相手はファランクスですら効いていたのか分からん化け物だ」

 

「ファランクス?」

 

「ああ、対空機銃って言ったらわかるかな?ミサイルも落せる連射砲なんだが…」

 

「なるほど、何となく分かります。でもそれが効かない化け物って?」

 

「な~んか、口だけの白くてでっかい奴が空から降って来てな」

 

(口だけの白くてでかい。。。)

 

「他の(ふね)も人間もそのでかい口で食いまくってた…」

 

「機銃が当たっても、怯みもせずに突っ込んできましたもんねぇ…」

 

「あれでは近くにいた奴らはどうしようもない」

 

「海の上じゃ、船から下りても逃げ場はないしな…」

 

「我々は(おか)にいたから、とりあえず逃げる事はできたんだが」

 

「それでも散り散りに逃げたからな、俺たち以外がどうなったのか…」

 

「そう。。。なんですね。。。」

 

「そういう訳だから、よほどの事がない限り、外へは出ないようにしてくれるかな」

 

「は、はいっ」

 

「まあ、とりあえずは寝る事だ。

われわれが交代で見張りをするから、ひとまずは安心して眠るといい」

 

「はい。。。あ、ありがとうございます」

 

「っても、毛布もないんだけどな!」

 

「すまないな、我々も最低限の装備しか持ち出せないまま、ほうほうの(てい)で逃げてきたんだ」

 

「い、いえ!気にしないで下さい」

 

中尾さんたちが見張りの相談をしているのを見守りながら、眠れそうな地べたを探す。

相談が終わってどうやら中尾さんと伊達さんが最初の見張りらしく

他の3人も僕の近くで眠る準備を始めた。

 

(とにかく、寝よう、今日は疲れた。。。)

 

上着を布団代わりにかけて眠る。

 

コツン

 

何かが腰に。。。?

ジャケットの内脇に。。。隠しポケット?

ナイフがある!両脇で2本?!

 

(ナニコレ?怖い!なんでこんなの隠し持ってるの?僕?)

 

「どうした?眠れないのか?」

 

眠ろうとしている時にゴソゴソと動き出した僕に柿崎さんが声をかける。

 

「不安になってもここじゃママの子守唄は用意出来ないぜぇ」

 

「なんで浜本さんはそういう言い方しか出来ないんですか…」

 

「察してやれ伊達!浜本はこういうのがカッコいいと思う年頃なんだ!」

 

「ちょっ、俺のこと中二みたいに言うのやめてくださいよ!」

 

「騒いでないでさっさと寝ろ、寝不足でも見張りの交代はまけてやらんぞ」

 

「す、すみません、僕がおとなしく寝てなかったから!」

 

「気にすんな、俺らはいつもこんなんだ」

 

にこやかに小野沢さんが話しかけてくる。

訳がわからなくて怖いけど。。。

この人達のこの空気を壊すのは嫌な気がする。。。

このナイフの事はしばらく黙っていよう。。。

 

僕はジャケットのナイフが地面で音を立てない様、そっと抱え込んで目を閉じ眠りについた。

「…」

 

何かの物音に眠りが浅く。。。

誰かの話し声が。。。

伊達さんと浜本さん。。。?

 

「僕は…災害で人命救助が出来ると思って自衛隊員になったんです

こんな時代だ、いくら世界の情勢が傾いても日本が戦争をするなんてないだろうって…」

 

「そうか、そいつはツイてたな」

 

「え?」

 

「人間同士の戦争になる前に化け物退治で人命救助ができる時代が来た」

 

「冗談じゃないですよ!」

 

「しっ…みんなが起きるぞ…」

 

「あ…」

 

「しかし伊達の言うとおりだ。冗談だったらどれだけ救われたか…あのインベーダー共が」

 

「インベーダー?」

 

「ああ、いきなり空から降ってきた異形の化け物、宇宙からのインベーダーだろ、あんなの」

 

「な、なるほど、確かにインベーダー…そうか、インベーダーか…」

 

「ん、どうした?」

 

「いえ、インベーダーって聞いてちょっと昔のこと思い出して」

 

「お、インベーダーゲームか?名古屋撃ちとかレインボーとか」

 

「違いますよ、っていうかいつの話ですか、それ?浜本さん生まれる前なんじゃ…」

 

「そうだっけか?それが分かるお前も結構なもんだと思うがな」

 

化け物、インベーダー。。。例の白い奴。。。

何故だろう?見た事ない筈なのに。。。

特徴を聞いた時からその姿が思い浮かんでる。。。

記憶を失う前にどこかで見た事が。。。?

 

考え事をしていると、柿崎さんが見張りを交代するのか、起きて出口へ向かって動く。

それと入れ違いに伊達さんがこちらに来て眠る準備を始めた。

僕もまた目を閉じるとゆっくりと眠りに(いざな)われた。

カチャ、カチャ

 

また物音に目が覚める。

目を開けると中野さんたちが何かの支度をしていた。

 

「何かあったんですか。。。?」

 

「やあ、おはよう。もう少し寝ていても良かったんだがな」

 

僕の声に中野さんがにこやかに返してくれる。

 

「定例の巡回だ。

と言っても、奴らに見つかったらひとたまりもないから、ただ隠れて様子を伺うだけだが」

 

「伊達は置いてくから、寂しかったらお話してもらいな」

 

「浜本、また中二風になってるぞ、お前」

 

「ええっ!小野沢さん、今のは普通でしょう?」

 

「そうか…今のが浜本の普通なのか…」

 

「柿崎士長まで?!」

 

「ハア…バカやってないでさっさと行くぞ」

 

「「「ハイッ!」」」

 

それまでふざけるように話していた3人が中尾さんの言葉で一糸乱れぬ動きで隊列を組む。

きっとこれがこの隊のいつもの雰囲気なのだろう。

 

「では伊達2士、後を頼むぞ」

 

「はい、皆さんお気をつけて」

 

伊達さん。。。

昨日の紹介の時は小柄な印象だったけど、5人の中ではというだけで

部隊として訓練を積んでいるのだろう、中肉中背の鍛えた身体に幼い顔が

学生のスポーツマンのような見た目だ。

 

「あの。。。伊達さん」

 

「はい?寂しくなりましたか?」

 

「い、いえ。。。」

 

「ふふっ冗談ですよ」

 

冗談めかして言う伊達さんに、僕は思い切って昨日の事を聞いてみる事にした。

 

「そ、その、伊達さんは人命救助の為に自衛隊に入ったって。。。」

 

「えっ?ああ、昨夜の浜本さんとの話、聞かれちゃってましたかぁ」

 

「す、すみません、ちょうど夜中に目が覚めた時に聞こえちゃって。。。」

 

「別に気にしなくていいですよ、聞かれて困る話なんてしてませんし」

 

「は、はあ」

 

「あ、でも」

 

「?」

 

「国民の皆さんを護るはずの自分が戦いたくない、なんてのはいい話でもないですか」

 

「い、いえ、そんな!」

 

「いいんですよ、自分だってこんな銃構えて戦闘なんて向いてないと思ってるんですから」

 

伊達さんは手に持った。。。自動小銃とか言うのだろうか、大きめの銃を見て苦笑いしている。

 

「そう、なんですか?」

 

「自分は災害現場なんかで自衛隊員が人命救助やってるのテレビなんかで見て

ああ、ああいう『大丈夫か、よく頑張ったな』って声かけてるんだろうなって光景、いいなって」

 

「ああ、なんとなくわかります」

 

「はは、そういうのに憧れて訓練も頑張ってきたから、

銃器の扱いが今一つでもそれほど気にしてなかったんです」

 

「。。。」

 

「でも、こんな事態になって…人が大勢死んで…救助どころか、自分の仲間たちすら…」

 

伊達さんは(うつむ)き加減でだんだん声が小さくなってる。。。

 

「でっでも、それって銃が使えたら助けられたってことでもないんですよね?」

 

「え?」

 

「だ、だってその化け物ってすごい砲弾でもほとんど効かないような相手なんですよね?」

 

「ええ、まあ確かに」

 

「じゃあ、ここに生き残ってる誰もが逃げ足が速かったから助かっただけで。。。あれ?

そ、そうじゃなくて、助からなかった人たちが遅かったとかそういうんじゃなくて。。。

運が。。。そう、運がたまたまよかった?いやこれも、なんていうか。。。」

 

「ふふっ」

 

「?」

 

「ああ、すみません、おかしくて笑ったわけでは…

ええ、大丈夫です、慰めてくれているんですよね」

 

「えっ、はぁ、まあ、そう。。。なのかな?」

 

「そうですよ、だから大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫…」

 

「いやそれ絶対大丈夫じゃない奴ですよね?!」

 

「ぷっ」

 

「へ?」

 

「あはははははは」

 

なんか笑ってる。。。

 

「いやあ、いいツッコミしますねえ、ククク…」

 

「???」

 

「すみません、気を使ってもらったのに

僕より若い人と話すのが久しぶりなんで、ちょっと冗談を」

 

「はあ。。。」

 

「笑ったらすっきりしました。

正直まだ怖いし、後悔もあるけど…

はい、前に進めそうです。ありがとうございます」

 

なんだかよくわからないけど。。。

伊達さんが元気になったなら、いいか

 

その後は自衛隊の訓練の事とか聞きながら、皆が帰ってくるのを待った

これから一体どうなるんだろう。。。




また続きます


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第3話

今回で一区切りです


それから何日か経ったある日、朝のまどろみの中で目が覚める

と言っても、日も差し込まない洞窟では時間の感覚も今一つと言ったところだ

そんな中、耳に入ってくる中尾さんたちの声

 

「…かすかに届いた通信だから確かとは言い切れんが」

 

「目指すは四国本島って訳ですね」

 

「まあ、他に行けるところもありませんしね」

 

「でだ、巡回を通して分かったのはこの島にいるあのバケモノは5体だけのようだということ」

 

「ええ、アイツ等人間がいないときはフワフワと同じ所を漂ってるんで、間違いないでしょう」

 

「ここで仮説だが…彼は浜辺で気絶したまま襲われていなかった」

 

これは僕の事か。。。

 

「これはまだ彼が奴らに見つかっていなかったからではないだろうか?」

 

「ええ、自分もそう思います」

 

「もし見つかってたら浜辺で倒れてる時なんて格好の的ですからねぇ」

 

「そして我々5人を残して他の生存者が見つからなかった事を踏まえると」

 

「奴らはそこにいる人間と同数で対応していると?」

 

「流石に大勢いたときには分からんがな」

 

「じゃあ、もしかして…」

 

「我々がいなくなればアイツ等もいなくなる可能性が?」

 

「ちょっと待ってください!」

 

我慢できずに上げた僕の声に皆が振り向いた。

 

「起きていたのか…」

 

「一体何の話をしているんですか!」

 

「何って、これからの方針ってやつだよ」

 

悪びれもせず浜本さんが答えた。

 

「どうせこのまま隠れてても食料が尽きればおしまいだからな」

 

「かといって我々の装備では君を守って逃げることはおろか自分達の身を護る事すらあやしい」

 

中尾さんが言葉を継いで説明する。

 

()()に覚悟の特攻なんてバカげてると今まで思っていた

だが、我々の命で君だけでも助かるというならそれは無駄死にではないだろう」

 

「僕の為に皆さんが死ぬなんてこと。。。!」

 

「別に本当に死ぬと決まったわけじゃない、どうやら四国本島はなんとか無事らしい

そこまでたどり着けたら俺たちの助かる可能性も高くなるって寸法だ」

 

「幸い、敵は5体だけのようだしな」

 

「1体でも倒せりゃ御の字、囲みをくぐる可能性も高まる」

 

「そ、それに倒せなくても何とか振り切れれば僕たちも助かるんです」

 

「なんだよ、伊達は消極的だな」

 

「いや、敵は強大だ。慎重かつ臆病なくらいで丁度いいだろう」

 

「そういう事だ。君を救うためだけではない、これは我々にも必要なミッションなんだ」

 

「でも。。。」

 

「正直、食料が切迫する前に行動したいというのもある」

 

「ここに残る君の分、作戦に成功した後の自分たちの分」

 

「そろそろ行動を開始しないとギリギリだからな」

 

「レーションだらけの食事も飽き飽きなんでな」

 

「ふふっ、僕たちも腹ペコでは戦いたくないですから」

 

「あれ、伊達笑った?俺今おかしな言い方したか?」

 

「浜本はそのままでいいんだよ、気にすんな」

 

「え、どういう事っスか?!」

 

これから死地へ向かう話をしているのに。。。

いつもと変わらない様子で話す彼らに何を言えばいいのか。。。

黙り込んでしまった僕に中尾さんは申し訳なさそうに説明してくれた

 

「すまないな、もう少し話が固まってから君には説明するつもりだったんだが

こうなったからには君にもここまでの流れを聞いてもらおう」

洞窟の入り口で装備の確認をしている5人

 

「いいか、再度確認するぞ、作戦はこうだ」

 

中尾は地面に地図を広げ5つの点を指し示す

 

「奴ら5体の中で比較的離れた位置で漂っている個体、これをα(アルファ)と呼称することにしよう」

 

4人がその指を凝視している

 

「他の個体は時計回りにβγδε、攻撃目標はαに固定、全員で集中攻撃を仕掛ける」

 

頷く4人に更に

 

「当然、銃声を聞けば他の4体も集まってくるだろうが、基本はαに集中、

他の個体に構っている余裕はない。後はその場の判断で臨機応変に、だな」

 

「大雑把な作戦っすねえ」

 

「実に俺たち向きだな」

 

「だな、自分もそう思う」

 

「こ、これが一番生存率が高そうですもんね、やるしかないです!」

 

小野沢の言葉に浜本、柿崎も不敵な笑みを浮かべ、伊達も意を決したように頷く

 

「後、これは一番大事なことだが…

俺が死んでも気にせず進め。俺もお前たちが死んでも気にせず進む

死人に振り返る暇があったら引き金を引け。死者を(いた)むのは生き残った者でやればいい」

 

その言葉を受け、誰もが真剣な面持ちで小さく頷くだけだった

 

装備の確認が終わり、洞窟から正にいつ飛び出すかと構えている5人

そんな中、伊達2士が小声で提案した

 

「…歌っても…いいですか?」

 

「なんだ?いきなりどうした、伊達?」

 

「実は…怖くてどうしようもないんです、何かしていないと」

 

「それで歌か、随分ロマンチストだな」

 

「ふと昔見たアニメの歌を思い出したんです」

 

「アニメ~?」

 

「なんだか凄く今の僕達の状況に歌詞が似てて…」

 

「ほう…」

 

「歌えば、勇気がもらえるかも、頑張れるかもって…」

 

「よろしいのではないですか?班長」

 

「そうっスね、俺達って真面目に隊歌歌うタイプでもないですし」

 

「知ってる歌なら俺たちも歌ってやるよ」

 

「班長…」

 

「…皆がいいって言ってるのに俺だけが反対できる訳ないだろ?」

 

「あ…ありがとうございます!」

 

伊達は半べそをかいたような表情で礼を言うと

スウ~ッ

ゆっくりと息を吸い込み、震える声で歌いだした

 

「いのちを~もやせ~いかりを~もやせ~」

 

「「「「!」」」」

 

震える声のまま歌い続ける伊達

そこに声が重なる

 

「「風が唸る大地から」」

 

「柿崎士長!」

 

ニカッと笑う柿崎

伊達の声も少し震えがおさまっている

 

「成程な、インベーダー…こっちだったか」

 

「「「この青い地球に明日はあるか」」」

 

「浜本1士も!」

 

浜本はどこか得意げだ

3人の声が重なると歌にも勢いが出てくる

 

「チェンゲとは、若いのに渋い趣味してんなぁ」

 

そう言うと小野沢も歌いだす

 

「「「「立ち上がるんだ!」」」」

 

「小野沢1士~」

 

「まったく、俺の部隊はバカばっかりだな…

さて、それじゃあ、行くぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

中尾の号令で飛び出すとその中尾の声も重なり、全員で歌いながら星屑へ突撃する5人の男たち

 

「「「「「暗い闇の宇宙から迫りくる恐怖の声が」」」」」

 

「中尾班長も知ってたんですね!」

 

「言ったろ、皆バカばっかりだって。

大体俺を何歳(いくつ)だと思ってやがる!元祖ゲッター直撃世代だぞ!」

 

歌いながら駆け出す5人の顔には緊張感とともに口元に笑みが浮かんできている

 

「「「「「心に燃える炎消しちゃいけない」」」」」

 

2丁の小銃を小脇に構えて後方から撃ち続ける柿崎

その援護の中、個体α、星屑に突撃しつつ撃ちまくる4人

足の速い浜本はその中でも突出して星屑に近づいていた

背中からの攻撃だったが、弾丸など星屑はまるで効いていないかのように反転し、

口を開いて先頭の浜本に迫る

 

(そんな単調な攻撃!)

 

「「「「「きっと君が行かなけりゃ」」」」」

 

歌いながらもギリギリのところで(かわ)すと後ろから至近距離のフルオートで撃ちまくる

 

(くそっ、全然効いてる気がしねえな!)

 

そう思う浜本を援護していた柿崎の撃つ2つの射線が大きく逸れて大空へ流れていく

星屑越しに後方を見ていた浜本の目に背後から星屑に喰いつかれ、

上半身が折れるように後ろへ倒れ込む柿崎の姿が見えた

 

(もう別の個体が来やがったか)

 

「柿崎さあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

射線の異常に振り向いた伊達がその様子を目の当たりにして叫んでいた

 

「立ち止まるな!歌い続けろ!伊達ぇっ!!」

 

振り向かず撃ち続ける小野沢の声にハッと気づき、前を向く伊達

そう、隊長の中尾に言われたのだ。誰が死んでも前に進めと

後ろにいる個体に構っている余裕などない、前に進みαと名付けた星屑に集中するしかない

 

「「「「美しいこの星が絶えてしまう」」」」

 

個体αのすぐ後ろで小銃の弾が切れ、それを捨てる浜本

個体αはぐるりと軌道を描いて浜本の方へ向き直る

その隙に雑袋から両手に円筒型の手榴弾を持った浜本は

 

(柿崎1士、1人じゃ逝かせませんぜ)

 

自分の方へ向いた星屑の口へ体ごと突っ込む

その口の中で爆発が起きた

 

(浜本さんっっ!)

 

「「「命を燃やせ!怒りを燃やせ!」」」

 

その攻撃で停止する個体α。いや、口の中の人間を咀嚼(そしゃく)するために停止しているだけなのか

とにかく動きを止めたそれに右から中尾、左から小野沢、真っ直ぐに伊達が

小銃を撃ちながら駆け寄っていった

 

「「「敵を倒すまで」」」

 

中尾と小野沢はほぼ同時に弾を撃ち尽くし、ナイフを構えて中尾は敵の横っ腹に

小野沢は飛び掛かって敵の頭頂部に突き立てた

それを見た伊達もナイフを出そうと装備に目をやった瞬間

 

(伊達っ?!)

 

小野沢の右目に後方から来る猛スピードの星屑が映る

その体当たりで個体αとの間に挟まれるように潰される伊達

 

「「全てを捨てて俺は戦う」」

 

中尾もその姿は見ていた。だがそれでも目の前の敵に集中し、

突き立てたナイフをそのまま突き上げるように

踏ん張っていた足に力を籠め、星屑の表面を切り裂いた

 

(やった?!)

 

そう思った瞬間、どこから来たのか、3体目の星屑が上空から現れ

一気に中尾の両腕と頭を突き上げたナイフごと齧り取った

 

(班長!!)

 

皆の死に何かを思う間もなく、個体αは小野沢ごと浮き上がり、

振り落とそうとしたのか、体を傾ける

 

(逃がすかよっ)

 

小野沢は傾きと逆側、丁度中尾が切り裂いた傷口に右手をかけ、星屑をよじ登る

 

「今がそのときだぁっ!」

(この傷を開けば!)

 

そう思った小野沢の手におかしな感触が伝わる

見ると切り裂かれた大きな傷は見る見るうちに小さくなり、塞がろうとしていたのだ

それに驚く暇もなく、小野沢の左腕と右足が強い熱を帯びる

2体の星屑が今度は小野沢の手足を噛み千切っていたのだ

だが小野沢の心はその痛みや死の恐怖より怒りに満ちていた

 

「ふざけるなぁっ!」

 

4人の犠牲の中でやっとつけたと思ったその大きな傷が、

いま目の前でなかったかのように消されようとしているのだ

こんな理不尽が許せるものか、この傷だけは

その思いが、塞がりかけた傷にかけた右腕に力を籠め、

そこに頭を深く潜り込ませて(かじ)りついた

そう、これが人間の牙だ、思い知れ!とばかりに

 

(テメエら!空から見下してんじゃねえっ!

人類なめんなぁぁぁぁぁぁぁっ!!)

 

心の叫びとともに齧りついた部位を首の力で引きちぎる

 

その瞬間、個体αは傷口から光を放ち、全身が光の粒のようになって上空へ散っていった

支えを失った小野沢だが、その光の粒に押されるようにゆっくりと降下していく

 

「やっ…たぞ…みん…な」

 

そう呟くと光の粒子はいつしか消え去り、背中から大地に叩き落とされる

動かなくなった小野沢に向かい、2体の星屑たちが迫っていた

 

「俺たちは確かに倒したんだ、あの化け物を…

たった一匹だったが…俺たち5人だけで…

確かに…ぶっ殺して…やったんだ…」

 

群がる星屑の影に小野沢の姿は見えなくなる

その様子を春信はずっと見ていた

「小野沢さぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

僕は思わず飛び出していた

あんな化け物相手に自分が何か出来るはずもないのに。。。

 

僕の声を聞きつけて化け物たちが寄ってくる

無我夢中でジャケットのナイフを1本取り出し

両手で掴んで振り回すが

化け物はそんな物には意も解さず僕の腕を。。。

僕の記憶はここで途切れていました

気がつくと祠前で飛鳥に叩き起こされ、その時には記憶も戻っていました

飛鳥が言うには、時空の復元で記憶も復元されたんだろうとのことですが

詳しくは検証も出来ないのでわからないそうです

 

 

 

 

 

このことがきっかけで僕は積極的に西暦の時代へ赴き、戦い続けることになります

 

この『三好春信』のシリーズをお読みの方はお気づきになられたかもしれませんが

僕は皆さんの知る「三好春信」ではありません

 

ご存知の通り僕、三好春信がタイムスリップできる過去はこことは違う、パラレル世界

僕は以前、話に出た「別の春信」です

 

彼らの戦いを経て、僕は積極的に西暦の戦闘へ参加する事になります

結果は若葉たちの語っていた通り、散々なものでしたが。。。

それでも1体でも多くのバーテックスが倒せるなら

彼らに恥じる事の無い戦いをと心がけて戦い続けました

 

ただ。。。彼らの戦いの記録は大赦には存在しませんでした

それは小野沢1士があのままこと切れてしまったからなのか

勇者以外の戦果を大社が隠蔽したのか、それはわかりません

英霊たちの碑の中にも彼らの名前はありませんでした

そもそも、彼らの戦いが僕の時空にも存在したのかすら確かめる術がないのです

 

でも、対バーテックスマニュアルのバーテックス行動形式(3)にある

その言葉を見るたびに思うのです

きっと『彼ら』はそこに存在し

それを伝えた者がいたのだと

 

【対バーテックスマニュアル

 バーテックス行動形式

 (3)通常の兵器は、『ほぼ』効果なし】

 

彼らの死から300年以上経った今でも

この言葉は消されてはいません




mototwo(以下略):『戦翼のシグルドリーヴァ 狂撃の英雄』『ゆゆゆちゅるっと』終了アンド『新米勇者のおしながき~乃木若葉は勇者である すぴんあうと4コマ~』公開開始おめでとー!

春信(以下略):またいきなりだな。。。

いやー、まさかまたTVであたらしい『ゆゆゆ』が観れるとは思いもしませんでしたぜ、ダンナ!

誰がダンナだ。大体『シグルリ』とやらは関係ないだろ。。。

ふっふっふ、ところがどっこい
この話を今まで上げなかったのは『狂撃の英雄』の影響だったのだよ

は?

この外伝、プロットが決まって書いてる途中でニコニコ漫画で
『戦翼のシグルドリーヴァ 狂撃の英雄』の掲載が始まってさ

ほう?

なんとなく読んでたら色々とこの話とかぶるとこがあってな

というと?

TVの前日譚、現代兵器の利かない敵に現行戦力で臨む男達、気合と根性でなんとか倒す、という

今回の外伝そのまんまじゃん!

うん、それで流石に「これ出したらパクリとしか思われんわ」ってなって筆止めた

よくそれで書き上げる気になったな。。。

まあ、逆に最終回まで読んだら書き上げたくなっちゃったから

一体どういう思考の方向性なんだよ。。。
大体、あの話の締めでよく今みたいな後書き書けたな!

そらお前、あのラストは筆止める前に書いてたとこだから
後書き書いてる時点と数年の差があるんだもん
あれ描いた時点じゃ後書きまともに書けなかったし

相変わらずのメンタルよのう。。。

ま、これでなんとか需要のない「ゆゆゆ」なのにオッサンだらけ・三好春信出るけどお前の出番なしって話も公開できたわけだ

あ!あんときに言ってたのこのことだったのか!

そう、お前じゃない三好春信の話。あーなんか肩の荷が下りたわ

はあ。。。で、この三好君の出番はここまでって事か?

あ、いやこのままだと逆に若葉たちから聞いてた春信とキャラが繋がらんから、そこに行き着くまでは書いておしまいにしようかと

ああ、ラストのあれは割と愉快な三好君のイメージとは違いすぎるな



ん、どした?

これ書いてるうちに溜まってるアニメ見てたら『大満開の章』が10月から始まるってCM流れた

なにぃっ!『ゆゆゆ』の新作TVアニメだとぅっ?!

驚き方がわざとらしいな…

これは来るか?俺の本編登場が!

出ない方に3ガバス賭けるぜ!

せめて花〇院の魂くらい賭けろや!

勝ちの見えてる賭けにそれを賭けるのもなんかなあ…

わかんねーだろ!どういう話になるか、その流れによっては!

あーはいはい、わかんないねー

流すな!

それじゃまた次の更新までー

勝手に終わんな!

<続く>


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