個性以前に個性的な奴等ばかりなんですけど (ゴランド)
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番外編
番外編 天倉の休日 午前編


今回は番外編を投稿しました。少し長くなってしまったので午前編と午後編に分けました。



寝ている彼の鼻に心をリラックスさせる様な心地よい甘い香りが入ってくる。

次第に彼の脳は覚醒して行き、重い瞼が開かれていく。

目が覚めるとそこはまるでおとぎ話に出てくる様な城の一室、ファンタジーな光景が目に入ってくる。

 

「・・・・ここは、どこだ?・・・見覚えの無い・・・知らない場所だ。」

 

彼が辺りを見渡す。すると風通しの良い構造になっているのか、外の景色を見ることができる。

 

彼の目に入ってきたのは"花"

 

万遍なく花で広がる美しい景色。その景色を見ていると今まで生きていた全ての疲れが無くなっていく感覚がした。

まるで此処は天国いや、理想郷だ。

彼は、天倉孫治郎はそんな美しい光景を眺めている途中に違和感を感じた。

自分は今、バルコニーらしきところからこの光景を見ている。

 

いや、正確には"見下ろしている"のだ。

 

そう、此処は塔の形をした建造物だ。自分はその建造物の中でこの美しい景色を見ているのだ。

 

そして、この場所の正体がやっと天倉には理解できた。

 

 

「そうか、此処は━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━カリン塔」

 

 

 

 

「いや、違うから!この景色からどうやったら其処へ辿り着く⁉︎どう考えてもおかしいだろう!」

 

声がした方向、つまり俺の背後にその声の主は居た。

白いフードを被っており、白いマントを羽織り・・・・とにかく全体的に白い好青年だった。

ただ、なんというか見た目は草原に吹く風のようにカッコイイのだが、関わったらロクでも無いことに巻き込まれそうな、胡散臭い詐欺師の様にも見える。

 

だが、そんなことよりもこんな所にいるということは、この人はこの塔に住んでいるのだろうか?

 

「カリン様にしては全然ネコっぽく無いけど・・・・。」

 

「だから違う!確かに全体的に白っぽいし、杖も持っているが、仙豆も持っていないぞ!職場(カルデア)から間違えて持ってきてしまった星晶片はあるが!」

 

なんだ、カリン様じゃあ無いのか。仙豆貰えるかなーと期待していたのに・・・。

それじゃあこのカリン様似の好青年(ロクでも無い)は一体誰なのだろう。そもそも此処は何処なのだろうか。

 

「まぁ、疑問に思うのは無理も無い。私だってしばらくブラック職場で酷使され、サボりのために此処に戻って来てみればいつの間にか君が迷い込んでいた。

一体どうすればこんな世界の外側に迷い込んで来るんだい?」

 

・・・・・?

一体彼が何を言っているのか分からない。ブラック職場?サボりのために戻って来た?世界の外側?

と言うかそもそも彼は何者なのだろうか?

 

頭の中では疑問でいっぱいだ。

 

「おっと、そんな深く考えなくてもいいよ。これはあくまでも夢の続き。

グットナイト!いや、君にとってはおはようかな?私の名前はマーリン。みんなの頼れる相談役さ。」

 

夢の続き・・・・そしてみんなの頼れる相談役マーリン・・・。あぁ、成る程。やっと能天気な俺でも飲み込めた。

 

 

「大体、分かった。つまり

 

━━━お前を倒せばこの夢から覚めるんだな。」

 

 

「あぁ。ようやく分かってくれたy・・・・・・・・何だって?」

 

おかしいと思ったんだ。俺が最近変な夢ばかりを見ると思ったらそう言うことか。

全てはコイツが起こした仕業だったんだ。

 

なんと言うか、まさしく全ての元凶って感じがするし。

 

「ちょ、ちょっと待て⁉︎いきなり何故そんな事になるんだ!!おかしくないか!?そもそも僕が元凶って一体どんな根拠なんだ⁉︎」

 

「なんか自分の欲望の為に国一つを滅ぼしたような顔をしているし、別に元凶じゃ無くてもここで倒しても損は無いかなーって。」

 

「くそっ!正論過ぎて反論ができないぞ!いや、そうじゃ無くてなんだその脳筋思考は!ボクが味方っていう考えは無いのかい⁉︎」

 

確かに言われてみれば白っぽい青年、マーリンの言う事には一理あるだろう。しかし、しかしだ。

 

考えて欲しい。知らない場所、目の前に知らない人、そして胡散臭い

此処から導き出されるのは誘拐、拉致だ。

こんな場面で味方と考えるのは軽率だろう。

 

そもそも初対面の人をすぐに信用なんてコミュ力が低い俺には到底無理な事である。

 

と言うわけで

 

 

「まてまてまてまて、なんでジリジリこちらに寄ってくる⁉︎クソッ!舐めるなよ!仮にも私はサーヴァント!そして筋力はBだ!そう簡単に勝てるとおm」

 

 

 

〜〜5分後

 

 

 

「がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!??なんだこの痛みはぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??って言うかボクはキャスタークラスでも仮にもサーヴァントだぞ⁉︎なんで力負けしてええええええええええええええ!!!」

 

「お前が!!!死ぬまで!!!技を掛けるのを!!!やめない!!!」

 

なにやらサーヴァントやら、筋力Bやら言っていたが、さっきまでの威勢はどうしたのだろうか?

まぁ、関節技を掛けるのも飽きたのでそろそろトドメを刺そう。せめて最後は楽にしてあげよう。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!負けるかああああああああああああキャスパリーーーーグッ!!!助けておくれぇええええっ!」

 

するとなんだろうか白いフワフワした生き物の姿が浮かび上がる。するとその生き物はいきなり喋って来た。

 

 

━━━━マーリンシスベシフォーウ!イッテイーヨ!!

 

「キャスパリーグ!!??」

 

「逝っていいってさ。」

 

 

━━━━マッスルスパーーーークッ!!!

 

━━━━ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!??

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

AM 5:30

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・変な夢を見た。」

 

 

天倉孫治郎の朝は早い。そして起床は最悪だ。

ここ最近変な夢ばかりを見る。やっぱりあのマーリンって奴の仕業なのか?

 

天倉は重い体を無理矢理起こし、ジャージ姿に着替えるとリビングへ移動する。

カーテンを開け、朝日を浴びるとキッチンへ移動する。ガチャガチャと音を立てながらフライパンを出すと、油を少し垂らすとフライパン一面に引き伸ばすとガスコンロのスイッチを入れ、火をつける。

 

冷蔵庫から卵、ベーコンを取り出し、卵を割るとベーコンと共にフライパン乗せる。

ジュワァと良い音と共にフライパンに蓋をするとすぐに食パンを2枚取り出しトースターの中へと入れると電源スイッチを入れる。

 

さらにヤカンに水を入れ、こちらもコンロの火をつける。大きめの皿とマグカップを用意するとフライパンの火を止め、ベーコンエッグを皿に盛り付ける。

 

するとチン♪と言う音が鳴りトースターから2枚のトーストを取り出しこちらも皿へ乗せる。

ヤカンから湯気が出てくるとコンロの火を止めた後、棚からドリッパーとコーヒー粉を取り出し、コーヒーを淹れる。

 

そして皿とマグカップ、フォークをリビングのテーブルへ運びリモコンを操作し、テレビをつける。

 

 

 

『Levelを━━━超えた!!

輝け流星の如く!黄金の最強の力で無双しろ!!!

"マイティアクション"シリーズ最終章!

見よ!これが集大成だ!!

マイティアクションシリーズ【ハイパームテキ】明日発売!!

初回購入特典で限定エナジーアイテムを手に入れろ!「神の恵みを受け取ォるがいィィィィィィ!!」

 

・・・・・・次のニュースです━━』

 

 

「この社長さん・・・・相変わらず凄いテンションだなー」

 

 

テレビを見ながら空っぽの胃袋にカリカリに焼いたパンとベーコンエッグを詰め込む。

そしてコーヒーを一口、二口、飲み「ふぅ・・」と一息。コーヒーの苦味と酸味が絶妙に合わさり脳を刺激し、チラチラと時計に視線を移し、時間を確認する。

 

 

 

 

AM 7:00

 

 

 

 

「おっ!相変わらず早いじゃん、今日は・・・・ベーコンエッグ〜♪分かってる〜」

 

「ハイハイ、おはようを忘れずにね。しばらくしたら出掛けるから、あと父さんの分も作っておいたから、ちゃんと起こしてきてね」

 

天倉はそう一言、添えると側に置いてあるロッドケースとクーラーボックスをそれぞれ持つと玄関へと向かい「行ってきます」と言いながら外へと出る。

 

 

 

 

AM 8:00

 

 

 

 

「〜〜〜〜アロワナノー♪ヘタナシンジツナーラ〜〜〜アロワナノー♪」

 

天倉は鼻歌交じりに約1時間、マイバイク(自転車)で漕ぎ続ける。

そしてしばらくすると鼻の中にツンと海特有の潮の香りが漂ってくる事が分かる。

そして、灯台が目立つであろう港に到着すると自転車を止め、しっかりと盗難防止の為にしっかりと鍵を抜いておく。

 

ルンルンとした様子でクーラーボックスとロッドケースを持ちながら堤防を歩く。

いつも通りの釣りポイントにどっかりと座り竿掛けを設置し、ロッドケースから釣竿を取り出し。ルアーを取り付ける。

釣竿を両手でしっかりと持つと思い切り振りかぶり、糸を垂らす。

 

 

「〜〜〜〜エッキッサーィエッキッサーィ〜た〜か〜な〜る〜♪エッキッサーィエッキッサーィこーこーろーが〜〜〜〜〜♪」

 

天倉は再び鼻歌を口ずさみながら獲物が来るのを待つ。そして、その獲物はすぐに来た。

 

「ッヘーイ〜〜アモザフフフフ〜フ〜〜ン・・・・・お」

 

釣竿に先程まで感じなかった重みを感じる。クンと竿の先が曲がるのを見て獲物が掛かったことを確信する。そこからの天倉の行動は単純だった。

 

「よい・・・・しょッッッと!!」

 

持ち前のパワーで一気に釣竿を引き上げ、獲物を海中から引き摺り出したのだ。

そして、ピチピチと生きの良い獲物をこちらに引き寄せた後。

 

「らあッッ!!!」

 

━━ズドォッ!!!!!!

 

 

獲物「!!??」

 

 

獲物を殴った。グーパンがねじ込む形で獲物に命中したのだ。

ビクンビクンと痙攣した後、獲物は数秒もかからず、チーンという効果音を出すように気絶した。

 

「ほぅ・・・・イサキか・・・悪くないな」

 

と言うとイサキを大量の氷が入っているクーラーボックスの中に丁寧に入れる。パタンと蓋を閉めた後、再び釣り糸を海へと垂らす。

果たして次の犠牲魚は一体・・・・・。

※魚を殴るのはやめましょう

 

 

AM 9:30

 

 

 

「あぁ?んだよ。坊主じゃねぇか中々釣れてんじゃねーか」

 

「お、久しぶりですねランサーさん。さっきから良い引きばかりなんですよ」

 

天倉の元に青髪のリーゼントのように髪を上げ金色の髪留めをしておりアロハシャツを着たまるで893のような人物が近づく。どうやら知り合いらしく、ランサーと呼ばれたその男は天倉の隣に座るとバケツを置き釣り針に餌を掛けそのまま釣り糸を垂らす。

そのまま片手でタバコを咥え火をつけ「フゥー」と一服しながら釣り糸を眺める。

 

「そういやよ、体育祭のアレ見たぜ。見かけによらず結構乱暴なんだな麗日つったけか?あの嬢ちゃん」

 

「うっ・・・・それはやめて。マジで心に来るものがあるから・・・」

 

ランサーと呼ばれた男はケラケラと笑い、天倉はどんよりとした暗い雰囲気になる。

傍から見ればどう見ても高校生が暴力団関係者に絡まれているようにしか見えないだろう。しかしこの男は気さくで基本的に良い人である為そこまでは怖くはないのだ。

 

「にしても凄いのは確かだったぜ。俺も槍さえ持っていれば是非お前と立ち合ってみたいもんだぜ?」

 

「えぇ〜・・やですよ。ランサーさんに槍を持たせたらそれこそ鬼に金棒。プリズムにフォレストボムですよ」

 

「おう、エグゼ2の凶悪コンボはヤメロ」

 

2人は他愛無い会話を続ける。するとランサーの釣竿に獲物が食いつく。するとランサーは慣れた手つきでパバパッと魚をバケツの中へと入れる。

 

「クロダイか・・・・そっちは何が釣れたんだ?」

 

「んーと・・・イサキが3匹、マアジ5匹、ヒラメ1匹にキジハタ3匹ってところですね」

 

「ハァ⁉︎お前キジハタって言ったか⁉︎キジハタって言えば高級食材じゃねぇか!!しかもそれを3匹・・・・こりゃあ負けてらんねぇな」

 

ランサーはそう言うと再び釣竿を握り直す。

しばらく2人が2、3匹釣ると、再びランサーの口が開く。

 

「話を戻すがよ、俺を強いって言ったが俺の師匠なんかもっとヤバいぞ。なんせ一槍流、二槍流に加え、何もねぇ場所から沢山の槍を出したりっていうか、俺の立場がねぇんだよなぁ・・・」

 

「うわぁ・・・マジすか」

 

「しかも、アレだぜ。最近調子に乗ってるのか私を殺せる者は何処だーとか言っている始末だ。

全くいい歳してんのに何やってんだか・・・・きっと学生服でも着て「ふむ・・・まだまだイケるな」とでも言ってんだろうよ」

 

「あ・・・・ランサーさん。ちょっとそこから動かない方が良いと思いますよ」

 

「あぁ?一体何を言っt━━━━━━

 

 

 

━━━ドスッ!!!!

 

 

瞬間、ランサーの身体スレスレ横に紅い槍が突き刺さっていた。

2人の間にしばしの沈黙・・・・。

 

 

「・・・・女性に対して年齢は禁句だと思いますよ」

 

「・・・・だな」

 

2人がお互いに女性に対して失礼な事を言わないと誓った後、釣りは再開された。

 

 

 

 

AM 10:00

 

 

 

 

「おーい!遊びに来たよー!」

 

と釣りをしている天倉とランサーの元に2人の少年が寄ってくる。

1人はツンツンの逆立った緑がかった黒髪で大きな一重の目をした白いシャツに半ズボンといったラフな格好をした大体12歳辺りの少年。

 

もう一方の少年も髪の毛がツンツンで同い年のようだが、短髪で銀髪であり切れ長のツリ目をしている。こちらもラフな格好をしているが先程の少年に比べ生意気そうな雰囲気を出している。

どうやらこの少年達も天倉の知り合いらしい。

 

「おおーーー!!大漁だね!コレって全部、孫治郎が釣ったの⁉︎」

 

「そうだよ。今日は結構引きが良くてね。好きなの1匹選んで持っていって良いよ」

 

「えぇーーーー⁉︎たった1匹⁉︎」

 

黒髪の少年が声を上げてガックリと項垂れると銀髪の少年が肩に手を乗せる。

 

「そう言うなってゴン。こいつの食い意地を考えれば1匹だけでも珍しいもんだぜ」

 

「まぁね。ちなみにキルアくんには1匹もあげないよ」

 

「否定はしないのかよ。って言うか子供か!」

 

銀髪の少年キルアは天倉の発言に思わずつっこんでしまう。その様子を見てランサーはケラケラと笑っていた。

 

「冗談だよ冗談。大体釣り終わったら2、3匹好きなの選んで良いよ」

 

「全く・・・それよりもさ体育祭見たぜ」

 

「うんうん!凄かったよ!俺もあんな感じのヒーローになって見たいなぁー!!」

 

「ソ、ソウナンダ・・・・取り敢えず俺見たいなのは目指したらダメだからね」

 

と2人の子供を入れ、会話は盛り上がってくる。

そして、ゴンは持ってきたであろう自分の釣竿を取り出しそのまま海へと糸を垂らす。キルアはどうやらゴンの付き添いらしく、隣でその様子を見ているだけだった。

そしてしばらく時間が経ち・・・・・・・。

 

 

「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・ねぇ孫治郎。全然釣れないんだけど・・・・・」

 

「まぁまぁ、しばらくしたら来るとおm・・っと!キタキタ」

 

ゴンは未だに1匹も釣れている様子は見られなかった。そんな中、天倉は順調に釣り上げておりまた1匹、魚を釣り上げたのだった。

 

「これは・・・・カサゴか・・・毒あるからなぁ。手袋持ってくれば良かったなぁ」

 

「ん?だったら俺に任せな」

 

と天倉が毒を持つカサゴを釣り上げ、困っているとキルアがカサゴをガシッと手掴み。

※危険なので真似しないで下さい

 

ジタバタとカサゴは暴れ、ヒレや棘がキルアの手に刺さるが本人は気にせず力を入れると

 

━━バチッ!!

 

と言う音が鳴った後カサゴがダラリと気が抜けた状態になる。そしてキルアはそのままカサゴを天倉が持ってきたクーラーボックスの中へと放り込む。

するとキルアは天倉のそばに寄り、座り込む。

 

「手伝ったんだから、なんかジュース買って来てくれよ。毒を持った奴だぜ?これくらい良いだろ?」

 

「パシリかよ⁉︎・・・・まぁ良いか、分かったよ」

 

「じゃあ俺、コーラ」「うーん・・オレンジジュース」「缶ビール頼むわ」

 

「ハイハイ・・・・って全員かよ!しかも缶ビールは未成年だから無理だからね!!」

 

天倉はそう言いながら堤防を後に自販機へと向かう。

そして、彼は知らなかったこれからとんでもない事が起きる事を。

 

 

 

 

AM 10:30

 

 

 

空は快晴。強い日射しはジリジリと自分を照りつけてくる。そんな中時々吹いてくる潮風が心地よく感じる。

文句の付けようがない最高の釣り日和だろう。しかし、そんな釣り日和も堤防では赤と青の交差によってギチギチとした雰囲気に包まれていた。

と言うか、ここに新たな暇人が登場してきた。

 

「あれ?あの人って・・・・・」

 

「む?君も来ていたのか。どおりで釣り道具一式が不自然に置かれていt・・おっと失礼・・・・フ、イナダ十六匹目フィッシュ」

 

こちらも天倉の知人。頼れる背中がキラリと光り褐色の肌に白い髪の毛、赤い服といったランサーとは対照的な容姿をした男性だった。

するとその男性はランサーに向けてわざわざ皮肉を言うように口を開く。

 

「良い漁港だ。面白いように魚が釣れる。

・・・・ところで後ろの男、今日はそれで何フィッシュ目だ?」

 

「うるせぇな、なんでテメェに答えなきゃいけねえんだっての、余所でやれ余所で」

 

ランサーはグググと苦虫を噛み潰した顔をしており、その顔には「うわ、厄介な奴が来やがった・・・・」と言うのを読み取る事が出来るだろう。それに対し赤い方の男性はフッと勝ち誇ったような顔でさらに口を開く。

 

「ハッハッハ、まだサバが八匹だけか。

時代遅れのフィッシングスタイルではそんなところだろうよ、っと十七匹目フィィィィィイッッシュ!!」

 

「だからうるせぇっての!この近代かぶれ!魚が逃げるだろうが!魚が!」

 

「ふ、腕のなさを他人の所為にするとは落ちたなランサー。近場の魚が逃げるのならリール釣りに切り替えればいいだろう。

もっとも、石器人であるお前にリール釣りのなんたるかが理解できるとは思えないが、おっとすまないね。十八匹目フィィィィイィッッシュ!!!!!!」

 

赤い人はヒャッホーと歓声を上げながら釣りを楽しむ。しかし何故だろうか天倉がそんな様子を見ていると心が酷く痛む。

取り敢えず、買って来たであろう飲み物を全員に配ることにした。

 

「ハイ、アーチャーさんもどうぞ。余分に買って来たんで喉乾いた時はいつでも言ってくださいね」

 

「ふむ、気が利くな。ありがたく貰おうか」

 

とカシュッと蓋の開ける音が気持ちよく鳴り、ゴクゴクと中身を飲み干していく。

すると天倉の背後から声がかかってくる。

 

「おーい、こっちも来てるみたいだぜ」

 

「え?本当に?」

 

と天倉はキルアの言われた通りに自分の釣り場へと戻り確認すると確かに釣竿が獲物を引いているのだ。

天倉は釣竿をしっかりと握ると、いつもとは違う重みを感じる。

・・・大物だ。

 

「せーの・・・・ソラァ!!!」

 

と海面から獲物が飛び出てくる。太陽に照りつけられたその美しい体はあらゆる漁師を魅了するだろう。

そしてその大きさは今までの魚とは違い1mも越すであろう大きさだ。

 

「あ、これカンパチだ」

 

「「何ィィィィィィイ!!??」」

 

と大の大人二人組が天倉が釣った獲物に驚愕する。その大きさは自分たちが釣ったであろう獲物と比べかなりの大きさだ。二人は天倉に対し敗北感を味わう。

 

「ぐ・・・負けらんねぇ・・・、絶対に負けてたまるかぁ!!!」

 

「獲物の数ではまだこちらの方が有利。大きさでは負けたがすぐに君の記録を越してみせよう!

別にこの港の魚を釣り尽くしても構わんのだろう?」

 

しかしいい歳をした大人達はすぐに立ち直ると「うおおおおおおお」と釣りを再開し始める。

そんな様子に天倉とキルアは溜息をつく。

 

「うわぁ・・・童心に返った大人を見るのってこんなにも辛い事なんだね」

 

「放っておこうぜあんな大人達、俺たちはのんびりとやろうぜ」

 

と天倉は再び釣竿を握り、釣りを再開する。そしてチラリと隣に視線を移す。

するとゴンが先程から釣り糸を海に垂らしたまま微動だにしていない事が分かる。

 

「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜全然釣れない・・・・一匹も釣れない〜〜〜〜〜〜〜」

 

どうやらあちらは一匹も釣れていない様子。

天倉はそんなゴンに釣りのコツを教えようと近づこうとするが、キルアに止められる。

 

「やめとけってゴンの奴お前に今まで釣りを教えて来てもらったから今回は自分の力だけで釣りたいんだってさ」

 

「あぁ、成る程。それじゃあ邪魔しちゃ悪いか・・・・」

と言うと天倉は釣りを再開。

したその時、天倉の釣竿に再び獲物がかかる。しかも竿にかかる重さは先程のカンパチと比べるとそれ以上の大物と判断できる。

 

「キタキタキタキタ!!連続で大物!!多分さっきよりも凄い奴!!!」

 

「マジかよ!!俺も手伝うからカンパチくれよ!!!」

 

「えぇ〜〜〜〜〜孫治郎ばっかりズルイ〜〜〜〜〜〜〜」

 

すると先程までヨーヨーで遊んでいたキルアは目をキラキラ光らせながら釣竿に手をかける。

彼もまだ12歳なのでこう言った所は子供なのだと分かる。

 

「よっしゃ!いくよ「せーーーーーーーーのっ!!」」

 

 

━━━ザバァッ!!!

 

 

と水飛沫を上げながらソレは姿を現わす。

ソレは美しかった。その鱗は薄い青色であり、まるで透き通った水のようだった。

そして深緑色の和服が青とベストマッチし、ひらひらとしたフリルがまるで水中に漂うクラゲを連想させる。

そしてそのどこまでも深い青の髪の毛はクルクルとした縦ロールに整えてあり、まるで人魚姫の様な姿をしていた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・と言うか人魚だった。

 

 

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 

 

 

しばしの沈黙。天倉とキルアはどうコメントすればいいか分からなかった。

人魚の服には釣り針が引っかかっており、まるでクレーンで吊るされている様子だった為物凄くシュールである。

すると人魚はこちらに気付きしばらく間を空けてからこちらに話しかけてくる。

 

 

「え、えっと・・・・・すみません。私・・わかさぎ姫と言います・・川で泳いでいたのですが・・いつの間にか海に来ちゃって・・・・その・・・降ろしてもらっても」

 

 

(人魚・・・・あぁ、個性ね。ってアレ?何だろう?この人(?)を見ているとなんか・・・・)

 

「おい、どうしたんだ?早く降ろしちまえば・・・・って聞いてねぇし」

 

天倉は不思議に思い釣り針にかかっている人魚をじっと見つめる。キルアは何度も天倉に声をかけるが反応が無い事が分かると溜息をつく。

するとわかさぎ姫と名乗った人魚の頰が赤く染まっていき、次第に顔全体が赤くなっていく。ハッと我に返ると両手で顔を抑える。

 

「あ、あのー?(え?え?えええええぇぇぇぇええ⁉︎な、何この展開!も、もしかしてこれってよくある目と目が合う瞬間好きだと気付いた〜って感じのアレ⁉︎)」

 

 

━━ジーーーーーー

 

 

「え、えっと・・・・・(ま、マジで?マジでこれって期待しちゃって良いの⁉︎ま、まぁ確かに顔も体つきも案外悪くは無いし。で、でもいきなりすぎるのはちょっと・・・・いやでも・・)

 

 

━━ジーーーーーー

 

 

「あ、あうぅ・・・・(い、良いよね⁉︎も、もうゴールしちゃって平気よね⁉︎ぶっちゃけ自分の容姿には自信あるし!

・・・影狼、赤蛮奇。私・・・・先に幸せを掴むね!!」

↑声が出ている事に気付いていない

 

(えーーーっと・・・・確か・・・青・・・水・・・・女性・・・・あ)

 

瞬間、天倉の脳内にとある記憶が蘇った。忌々しく初めて殺意を覚えた女神の記憶が━━━━━

 

 

━━━ぷーくすくす

 

 

「えっと・・・あの・・もしよろしければ私とおつk━━━━

 

 

 

━━━ボシャア!!!!

 

 

瞬間、天倉は手の力を抜き、人魚を海の中へ降ろした。急な出来事だったのかその場の時間が止まった様な感覚に陥る。

しばらくすると海面にブクブクと泡が発生し、そのままバシャアと人魚が手と尾をバシャバシャと激しくバタつかせなが水面から出てきた。

 

「アッ⁉︎この川・・じゃなかった、海、深いッッボボボボボボボボッ!ボゥホゥ!ブオオオオバオウッバ!?」

 

「お、おい何やってんだ⁉︎」

 

「あ、ごめん。なんか殺意の様なものが湧き出して・・・・・」

 

キルアは思わず天倉の行動につっこんでしまう。真顔で人?を海の中へ落とす行為を突然されれば誰だってツッコミを入れるだろう。

 

「ボボボボボボッッ⁉︎た、助けッ⁉︎わたっ私、海水で泳ぐのにがっ苦手でッッ!!たっ、淡水じゃ無いと⁉︎ボッボボボボボボボボッバボッ⁉︎」

 

その後、無事に人魚は救出されました。

 

 

 

 

AM 11:30

 

 

 

 

天倉は救出した人魚に的確な処置を施した後、釣り場から少し離れた場所に寝かせておいた。あと少しすれば目も覚ますだろう。

しかし、そんな事をしている間にもう一人この釣り場に新たな戦士(暇人)が現れる━━━━

 

「やっと、ひと段落ついたな。なんか処置している間、顔を真っ赤にしていたけど・・・熱中症かな?ちゃんと日陰に寝かせて、水分補給させておいたから大丈夫だとは思うけど・・・・ん?」

 

天倉が目をやるとそこにはまるで盆と正月が一緒に来たような賑わいを見せていた。

その中心となる人物は金髪オールバック、黒シャツの上に高級感の漂う白いコートを羽織り金ピカの装飾品を身に付けている男性。言ってしまうと坊ちゃんっぽい大人だ。

そんな大人が数人の子供を引き連れているのだ。

 

「うおー!すげー!ギルー、これサカナか⁉︎サカナだな!うおーサカナーー!一匹くれよーーー!」

「ギルギルー。三号の糸ピンピン動いているよー。あたし引いちゃっていいかなーー?」

「あれぇ?となりの兄ちゃんのサオ安物だねー。ギルのサオのが金ピカでかっこいいなー。バカっぽいけど」

「ぎるー、今週のジャンプどこー?」

「すっごーい、いっぱい釣れてるー!ねぇギル、後ろのお兄ちゃんにサカナ投げていいー?」

 

「はっはっは。騒々しいぞ雑種共。周りのオケラ共に迷惑であろう。

それはともかくジロウ、一匹と言わず十匹、二十匹持っていくがよい。ミミ、恐れることは無い。怒らぬから引いてみよ。イマヒサ、当たり前の事を言っても我の気は引けんぞ。だがその嗜好は良し、これでガリガリさんを買ってくるがよい。カンタ、ジャンプは俺が読み終わるまで待て。コウタ、アレは狂犬故な注意してぶつけてやれ」

 

 

大漁旗の如く高級釣竿を展開し、子供達を引き連れた大人の姿はまるでガキ大将・・・もしくはみんなのヒーロー?的な感じだろう。

 

この人も天倉の知り合いなのだろうか?

 

 

「あれ?もしかして・・・・ギルさん?」

 

 

知り合いだった。

 

 

「む?誰かと思えば貴様か狂獣。

先日の戦いで見せたアレは何だ?我を笑い殺す気か?フハハハハハハ!今思い出しても腹が痛いわ。良いぞ褒めてつかわす。ありがたく思え!」

 

「全然ありがたくねぇ!て言うか狂獣って呼ぶのやめろ!」

 

いきなりの態度を見せるギルさんに天倉は的確なツッコミを見せる。それを他所にワラワラと子供達が天倉の方へと詰め寄ってくる。

 

「あーー!体育祭の時のお兄ちゃんだ!本物だー!」「すげー!地獄からの使者だ!」「ねぇねぇ、変身してよ!」「おいデュエルしろよ」「必殺技!必殺技見せて!」

 

どうやら子供達は天倉が体育祭に出ていた事を知っているようで、とりあえず天倉のファン?になるのだろう。

とりあえず色々とつっこみたい気持ちを抑え彼はギルさんに質問する。

 

「そう言えばギルさんも釣りですか?」

 

「ふん、別にそう言うつもりでは無かったがな港で最強と名乗る者がいたが拍子抜けだったな。所詮は番犬と贋作使いに狂獣。王たる我と比べるべくも無い」

 

あっはっはと愉快そうに笑うヒーローギルさん。いつの間にか天倉までカウントされ、あれー?と納得できていない本人。

すると隣に釣りを続けているアーチャーが話に割り込んでくる。

 

「フ。相変わらずの物量作戦か。しかも金に糸目をつけぬ最新装備とはな。

・・・・がっかりだ。道具に頼るとは見下げ果てたぞ英雄王・・・!」

 

と子供達に囲まれながらも負けじと魚を釣り続けている赤い男。しかし、その釣竿には最新式のリールが装備されている為、明らかなブーメラン発言である。

 

「うわぁ、あんな大人にはなりたく無いな・・・・」

 

と天倉は可哀想な視線を大人気ない二人に向けつつ、自分の釣り場へと戻る。

そこには退屈そうにしているキルアと未だに奮闘中のゴンがいた。

 

「ほんと、どうして世の中ってあんな大人達ばっかりなのかなぁ・・・」

 

「俺もそう思う。ビスケもある意味アレ等と同類みたいなもんだし」

 

と天倉とキルアは再び童心に返った痛い大人達を見据える。お互い苦労しているのだと溜息をついていると再び天倉の竿に反応がある事に気付く。

 

「お、来てんじゃん」

 

「ほんとだ。よっ・・・・・と!!!おぉ!!これってブリじゃん!」

 

と釣り上げたのは1m超えのブリだった。先程釣ったカンパチ以上の大物であり、周りの子供達もおぉ!と驚いていた。しかしそれ以上に驚いていたのは大人達の方であった。

 

「なっ!何でアイツばっか大物引き当てんだよ⁉︎運どうなったんだチキショー!!」

 

「おのれ、我の許可を得ずに大物を・・・・!!!」

 

「なっ⁉︎まさかあのロッドはスーパーオートメーションや電撃ガマカツ2006を超えると言われた幻の"デンオウ・青カメ公ver"だと・・・・・⁉︎世界に一つしかないと言われるものを何故⁉︎」

 

天倉はそんな大人達を他所にブリをクーラーボックスの中に入れる。ほっこりした顔で彼はクーラーボックスの中にある海の幸を眺める。時間的に腹が減っているのだろうか、口元から涎が少し出ている。

すると隣にいるゴンが声を上げる。

 

「きっ、来た!!!しかもすごい!物凄く重いよ!」

 

「やっとか!ゴン、俺も手伝おうか?」

 

「大丈夫だよ、キルア。俺の力だけでやってみるよ・・・・んぐぐぐぐ!」

 

とキルアは自分の事のように友達の釣竿に獲物が掛かったことを喜ぶ。しかし、ゴンがいくら力を入れても獲物は一向に姿を見せない。

天倉はそんな様子を不自然と感じたのか、海の中をよーく観察する。すると釣針が海底に引っかかっている事が分かった。

 

「あぁ、やっぱり。これ針が底の所にかかっているよ」

 

「んだよ、ダメじゃんか。おーいゴン。あきらm━━━━

 

 

 

 

 

 

 

━━━━もうこれで終わってもいい

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、ゴンを中心に黒い瘴気のようなオーラがブワリと出てくる。そしてそれを渦のように立ち込めていき、先程まで快晴だった空も雨が、いや雷が落ちてくるような曇天へと変わっていく。

 

 

「何だあの不気味な王気(オーラ)は見たこともないぞ⁉︎」

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイ⁉︎なんかやな予感しかしねぇぞ⁉︎」

 

 

とその場の全員は戸惑いを隠しきれなかった。天倉は子供達を港から離れるようにと言い、避難させる。

そして、ゴンを中心とした黒いオーラは次第に勢いを増し、風が吹き荒れ、波は激しくなる。

そしてゴンの身体は急激に変化していく。

 

腕が、脚が次第に強く強靭なまるで丸太の如く太くなっていき、身長も先程まで子供だったとは思えないほど高くなり、筋肉は極限まで鍛え上げられたように引き締まり、大きくなっていく。そして目は光を失いまるで全てに絶望したような顔つきになる。

 

そして注目すべきなのは髪。

その髪はただ、ただ長く、長く、長く、長かった。髪は上へと天に昇るようにただ伸びていた。

 

その様子にその場の全員は言葉を失った。

 

 

「ゴン・・・・さん・・・・」

 

 

その場の中でキルアだけは喉からやっと声を出すようにその名を言う。

そしてゴン・・・いやゴンさんは釣竿を持った手を中心に力を込める。すると全身のエネルギーを一点に集中するかのように手が光りだす。

次第にゴゴゴゴゴゴゴゴゴと地が唸り、次第に波が激しくなり、空はまるで不運を呼ぶかの如く悪天候になっていく。

 

 

「こっちだ・・・・・・」

 

そう呟きながらこれでもかと更に力を込める。全員が動かない中キルアは心の底から叫ぶ。

 

 

「駄目だ!そんな!もうこれ以上の力!一体!この先!!どれほどの(ry

 

 

するとゴンさんはこちらに顔を見せると

 

━━━ニコリ

 

大丈夫と笑顔を見せながら涙を流していた。

 

 

そしてその場の全員は「あ、コレ死ぬわ」と死を覚悟した。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ハッ!!あ、あれ?私・・・確か・・・。あ・・・」

 

と人魚が目を覚ますとそこには日陰としてパラソルがあり、すぐ隣にはスポーツドリンクとメモ書きが置いてあった。

メモには「目を覚ましたら水分補給としてそれを飲んでください」と書き記してあった。

すると人魚は顔を赤くしていく。彼女は人魚だ。しかしそれ以前に女性でもある。彼女は彼に一目惚れしてしまったのだ。

 

彼女は川から海へと流され、釣り上げられたかと思えば海へと落とされ散々な1日だと思った。しかしそれを覆すように素敵な人物と出会い事が出来た。

彼女は彼の事を想う度、不思議と胸が熱くなるのを感じる。

 

「ふふ、素敵な人だったなぁ。

散々な1日だとは思ったけどそんな事は無かったな・・・・何だかいい事が起きそうなよかn━━━

 

 

 

 

ボ!!!!!!

 

 

 

 

瞬間、自分を含め堤防が吹き飛んだ。

 

 

━━━やはり散々な1日だった。

 




今回の番外編では他作品のキャラを色々と出してみました。
知っているキャラはいましたか?

アドバイス感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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番外編 天倉の休日 午後編


〜〜いつかこんな仮面ライダーが出てくると良いなーという願望第2弾

今回は複数あります。


「キバさん!」

『行くよキバット!』『キバって行くぜ!』

「オーガさん!」

『俺はオルフェノクとして生きていく!』

「帝王の力、お借りします!!」


個人的に滅茶苦茶好きな組み合わせ



「カブトさん!」

『おばあちゃんが言っていた』

「クロノスさん!」

『審判の時だ』

「時を司る力、お借りします!!」


高速化、時止め、時間逆行
リセットもできるよ!



「王蛇さん!」

『イライラするんだよ・・・』

「カイザさん!」

『俺のことを好きにならない人間は邪魔なんだよ・・・』

「とてもキツイやつ、頼みます!!」


結果、使いたくない。



「ゲンムさん!」

『私こそ・・・・・神だああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

「アマゾンシグマさん!」

『アンタは5手で詰む』

「不死身の力、お借りします!!」


逆に使いこなす自信が無い




PM 0:10

 

 

 

港では色々あったが何とか生き延びる事が出来た天倉。そんな中ランサーだけ死んでしまった。

ランサーが死んだ!このひとでなし!

※生きてます

 

その他の皆もしぶとく生き延びており、ゴンに至ってはしばらくゴンさんモードが続くと言う事でその場は収まった。(収まってない)

 

しかし、腹が減った。

天倉はとにかく腹を空かせていた。彼はとにかく食べたかった。何かを口に入れたかった。何かを空っぽの胃袋に入れたかった。何かを味わいたかった。何かを噛み締め堪能したかった。旨味が凝縮された何かを食べたかった。

と言うわけで時間も時間なので食事をすることにした。

 

天倉はこの近くに行きつけのラーメン屋がある事を思い出し、その店へと足を運ぶ。

時折腹をグゥーと鳴らしながらまだかな?まだかな?とラーメン屋への道のりをルンルンと自転車を漕ぎながら楽しみにする。

そして目的地であるラーメン屋の前に自転車を停め、ロッドケースとクーラーボックスを持ち、ラーメン屋の中へと入る。

入った瞬間、香ばしいスープの香りと香辛料のピリッとした辛味の効いた香りが漂ってくる。

 

そして、店の中には客が一人おり、その客が何やら見覚えのある人物だと言う事に天倉は気付く。

 

 

「・・・・あれ?」

 

「・・・・・あ?」

 

それぞれ、天倉孫治郎と【爆豪勝己】は気が抜けたような声を漏らす。すると爆豪の顔はみるみるうちにいつものように苛ついた表情に変化していき、天倉は冷や汗を掻いていく。

 

「んでテメェがこの店に・・・・!」

 

「あ、いや・・・よく来るからさこの店」

 

天倉はハハハと苦笑いしながら席に着く。

・・・・爆豪の隣の席に。

次第に爆豪の形相は鬼の如く凄い事になっていく。

 

「テメェ!んで俺の隣に座るんだよ!」

 

「え?あ、いや、なんか問題でも!!??」

 

「るせぇっ!!別に仲良くもねぇのに隣になる必要ねぇだろ!!!」

 

 

━━━シャキン

 

 

アタフタと天倉と爆豪が揉め合っていると厨房から刃物を研ぐような音が店の中に響く。

そして中華包丁を片手に死んだ目をしたラーメン屋店主がバンダナ帽子、エプロン、長靴という格好で二人の前に姿を現わす。

勿論、天倉の知り合いと言う事は言うまでも無いだろう。

 

「お客様、店内ではお静かに」

 

とドスの効いた声で注意してくる。するとその言葉に反応した爆豪が身を乗り出すように掌から爆発を起こす。

 

「うっせぇ!!!引っ込んd━━━━━━

 

瞬間、爆豪の頭が何者かに押さえつけられカウンターテーブルに叩きつけられる。

叩きつけた原因である人物は一人しかいない。天倉である。彼は爆豪が店長に暴言を吐こうとした瞬間に押さえつけたのだ。

 

「スッッッミッマセェンでしたァァァァァァァァァアアア!!!!!!」

 

そして大声で天倉も頭を下げ店長に謝罪する。爆豪は「テメェ何を」を呟く。すると天倉は小声で爆豪に言う。

 

(バッッカ⁉︎分かんないの⁉︎アレはヤバイって!絶対に敵対しちゃアカン奴だから!!ラーメン屋の店主が出してよくない殺気を放っているんだよ!

なんか背後に大剣構えた死神っぽいサムシングが「首を出せ」って言っているんだよ!!!なんかゴーンゴーンって鐘の音が聞こえるんだよ!!)

 

と震えた声で必死に爆豪を説得しようとしている。爆豪はその必死さに負けたのか「覚えていやがれ」と一言だけ呟くとムスッとした顔で頬杖をつく。

 

するとカタン・・・と天倉と爆豪の目の前に皿が2つ置かれる。

 

「あぁ?頼んでねぇぞ」

 

「勿論だとも、私が勝手に置いたからな」

 

「あぁ⁉︎」

 

と爆豪は店主の態度に苛立ちを隠せない。天倉はそんな爆豪をどうどうと落ち着かせる。

だが、爆豪は納得できない様子だった。それもそうだろう、客相手にあんな態度は普通、一般人なら納得できないだろう。

 

「取り敢えずさ、此処の店主の言峰綺礼さんはいつもあんな感じだから。これぐらいで怒るとすぐに体力使い切るよ」

 

「ッッ〜〜〜〜〜!」

 

爆豪は渋々と引き下がり(顔が凄い状態で)出されたメニューに視線を移す。

その皿に盛られていたのは真っ赤な餡。そしてその中にある白い四角形の物体。

その名状し難き料理?は麻婆豆腐だった。

 

 

 

━━ドドドドドドドドドドドド!!

 

 

 

なんだこの威圧感は。

爆豪の好物は辛いモノだった。しかし、なんだこれは確かに見るからに辛いのだろうが、これは辛いと言う概念を超えているのではないのか?と思うレベルのモノだった。

チラリと天倉の方へと視線を向ける。爆豪の目に入ってきた光景は、名状し難き物体が盛られた皿に対し、悟ったような表情を向けた天倉であった。

天倉は「フ・・・」と笑うと何かを呟く。

 

「やれやれ・・・・また拒絶反応を起こすか・・・・」

 

とハイライトの入っていない目をしながら隣に置いてあったレンゲを取る。

しかし天倉の腕はガクガクと震え、まるで身体そのものが麻婆豆腐を食べる事を拒んでいるかのようだった。

 

 

な ん だ こ れ は

 

 

爆豪は遅れたようにレンゲを取り、麻婆豆腐を掬う。掬っただけでプゥンと麻婆からはかけ離れたような香りが漂ってくる。

その香りを嗅いだだけで爆豪は汗が噴き出る。

もう一度言おう。

 

 

な ん だ こ れ は

 

 

取り敢えず一口だけ麻婆豆腐を口の中に入れる。

 

 

(ッッッ!!??辛ッッッ!!??)

 

 

瞬間、爆豪の頭の中には【辛】と言う単語で埋め尽くされる。

全身の血が逆流するように感じ腕が震え全身の穴という穴から汗が噴き出てくる。

爆豪勝己は辛党だ。しかしその爆豪を唸らせる程の辛さだか美味さだか分からないコレは一体何なのだろうか?まるでラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んで合体事故の挙句『オレ外道マーボー今後トモヨロシク』みたいな料理だ。

 

しかし、不思議と手が動く。一口一口食べていくごとに体中の水分が奪われていき、脳に危険信号のようなモノが送られる。だが、やめられない。まるでこの麻婆豆腐の中には何かヤバイクスリでも入っているのではないか?と言うぐらいの中毒性だ。そして爆豪と天倉は麻婆豆腐を完食。

どう考えてもヤバイ料理だった。しかし爆豪はもう一皿麻婆豆腐を平らげたかった。だがその前に喉が渇いた。とにかく喉を潤したかった。だがテーブルのどこを見ても水は置いていなかった。

 

「(仕方ねぇ。頼むか・・・)おい、水くれ」

 

「200円になります」

 

「ハァ⁉︎金とんのかよ!!!」

 

「此処では水のセルフサービスはやっておりません」

 

と一言。

すると天倉は「おかわり」と言うと、すぐさま彼の目の前に麻婆豆腐が出てくる。

すると店主言峰は爆豪に向けてとある事を言う。

 

「ちなみに麻婆豆腐一皿 1600円だ」

 

「・・・・・は⁉︎金とんのかよ⁉︎あの流れじゃあサービスじゃねぇのかよ!!つーか何だその値段は!」

 

「誰が無料と言った?それとも・・・・無銭飲食のつもりか?」

 

爆豪は何も言えなかった。ハッキリ言って勝手に置いたのは店主であり、勝手に食べたのは自分の方だ。ぐうの音も出ない正論だった為か半ば投げやりに彼は店主に向かって叫ぶ。

 

「ダアァァァァアッッ!!わったーーーーよっ!!!払えばいいんだろ払えば!!あと!麻婆豆腐おかわり寄越せや!!」

 

「お水もいかがですか?」

 

「水もだ!!水も寄越せ!!!」

 

(隣すげぇ怖ぇ)

 

爆豪がおかわりを言うと、言峰は厨房から既に用意していたのだろうか、麻婆豆腐とコップ一杯の水を爆豪の元へ持っいく。

爆豪が苛立ちながら麻婆豆腐を食べ始めると

 

━━ガララッ

 

と店の引戸を開ける音が響く。

新しい客だろう。その客は茶髪で無表情。爆豪から見た第一印象は"どんなクラスにもいそうな3番目くらいの容姿をした無個性のモブ"であり、人口約8割が個性持ちの超人社会においてすぐ記憶から抜けてしまうような感じだった。

その客は爆豪の隣、丁度その客と天倉が爆豪を挟むような形で席に座ると、

 

 

━━麻婆豆腐下さい。

 

 

と言う。

平然と言ったその言葉に爆豪は何ィ━━━と衝撃が走る。辛党の自分でさえ一口食べていくごとに脳に危険信号が送られ、大食漢の天倉でさえも

 

 

「━━━ふ、フフ。全身が━━━身体がコレを食べるなと━━━拒否反応を起こしている━━━イイだろう━━━━オレノ身体ハ━━━━━━オレダケノモノダ━━━━」

 

と3皿目でどう見てもヤバイ状態だ。

まるで冒涜的な物質でも食べるているような光景であり、一般人が見れば恐怖を抱くような様子だ。

なのにだ、なのにこの客は勝手に出された訳でもなく

 

━━カタン

 

「へいお待ち」

 

脅された訳でも無いというのに何故?

何故、自分から進んで麻婆豆腐を平然と食せるのだ?

 

その客は顔色を一つも変えず徐々に麻婆豆腐を平らげていく。爆豪はそんな様子に言葉を失う。

すると隣に座っている天倉が声をかけてくる。

 

「爆豪クン━━あの人ハね、岸波白野って言う名前デ━━━言ってシマウと━━━━オリハルコン製のハートをモッタヤバイヒトダヨ」

 

爆豪はお前が言うなと物凄く言いたかったが、確かにこの光景を見るとそう思えてくる。

と言うよりもこいつは本当に人間なのか?と思えてなるほどのレベルだ。

2人は麻婆豆腐に再び手をつける。逆立った金髪赤目の三白眼の不良を真ん中にし、明らかにモブっぽい見た目をした2人が食事している姿はまるで不良とその取り巻きが食事しに来ていると言う光景そのものだ。

 

(ヤッベェ・・・凄く気不味い)

 

(癖になんな麻婆豆腐)

 

(どうやら同士がいたようで良かった。何故他の皆は麻婆豆腐の良さが分からないのか、そもそも麻婆豆腐とは(ry━━)

 

天倉はこの雰囲気に耐えられなかったのかすぐに3皿目を平らげ勘定をする為席を立ち言峰に代金を渡す。

 

「3皿で4800円でスよね。それデハご馳走様でした━━━━━」

 

彼は未だに麻婆豆腐のえいきょうをうけつつも逃げ出すように店の外にあるマイ自転車へ猛ダッシュで駆けていくのであった。

 

 

 

 

PM 1:30

 

 

 

 

「ただいまー・・・・って鍵かかってる。2人とも出掛けてんのかなぁ?」

 

天倉はアパートに戻るが玄関の鍵がかかってる事に気付き、留守だと言うことが分かった。

合鍵はしっかりと自分用のものを持っている為、ダラダラ過ごすか?と思った。

別に午後は何か予定がある訳でも無いのでこれからどうしようかな?と考えているとガチャリと隣の玄関から誰かが出てくる。

 

「ん?」

 

その人はツルリと何も無い頭が特徴的な隣人であり、天倉に強くなる秘訣を教えてくれた人物だ。

 

「おい、なんか変な事考えなかったか?」

 

「いえ、何も・・・・あ、そうだ。実は魚釣ってきたんですけどサイタマさん何匹か持っていきます?」

 

「え?いいの?マジで!」

 

と、隣人のサイタマはクーラーボックスの中にある沢山のの魚に食いつく。すると扉からサイタマが出てきた玄関から同居人だろうか、金髪黒目で誰がどこから見てもイケメンと分かる程、顔立ちが整っており服の袖から先はロボットのように機械の腕となっている人物だ。一言で表すならイケメンサイボーグだろう。

 

「お前は・・・なんだ天倉か。体育祭が終わった後なのによく元気だな」

 

「まぁ、釣りは趣味みたいなもんですし。ジェノスさんも魚いかがですか?結構釣れたんですよ」

 

と隣人同士、釣りの話で盛り上がっていき、サイタマは手頃な魚を2匹手に取る。

するとジェノスが「自分が持ちます」と言うが、2人の部屋はすぐ目の前だったのでそれくらい自分でやれるとサイタマは魚を玄関からキッチンへと持って行く。

 

「サンキューな天倉。んじゃキングでも呼んで鍋パーティーでもすっか」

 

「先生!!俺も鍋の準備をします!!」

 

どこからどう見てもジェノスが舎弟にしか見えないのは偶然だろうか。

・・・・・いや、確かジェノスはサイタマの弟子だったなと天倉は思い出し考えるのを止める。

 

「あ、せっかくだしあそこにもお裾分けしてこようかな?」

 

 

と、言うと彼はアパートの最上階へと歩を進める。もちろんクーラーボックスを持ってだ。

エレベーターを使うのも良いが階段を使うのに慣れているせいか、わざわざ階段を利用して最上階へ来てしまった。

取り敢えず目的の部屋の前に立ちインターホンを鳴らす。彼の予想が正しければこの時間には彼女がいるはずだ。

 

するとガチャリと言う音と共に玄関の扉が開く。

 

「はーい・・・って天倉さんじゃないですか」

 

扉から出て来たのはなんと今時珍しいメイドの格好をした女性だ。しかし彼女は普通のメイドではなかった。

それは彼女の頭には、まるで鹿の様な立派な角が生えており、さらにスカートからはワニのような緑色の鱗をした大きな尻尾が生えている。

そんな彼女と天倉は勿論、知り合いだ。

 

「午前中に釣りに行って来たんですよ。トールさん、もし良かったら好きな魚選んでください。焼くもよし、煮るもよし、刺身もよし!ですよ」

 

「いやぁ、ありがとうございます。

あ、そうそう!テレビ見ましたよ天倉さん。アレは凄かったですねぇ何処と無くドラゴンに通ずるものがある感じでとても良かったですよー」

 

と2人はまるで主婦同士の会話の如く談笑していく。一区切りついたところで2人は会話を打ち切らせる。

 

「それじゃあトールさん。小林さんに魚料理振舞ってあげてくださいねー」

 

「わかりました!これで小林さんをハートもろともキャッチしてみせますね!」

 

ちなみに小林さんと言うのは女性だ。

つまりトールさんがソッチ系の趣味を持っていることは言うまでも無いだろう。

すると天倉は「あ」と言葉を漏らすと同時に何かを思い出したような顔をする。

 

(そう言えば最近、あそこに顔を出してなかったけど・・・・・様子見て来ようかな?)

 

と天倉は再び歩を進め、エレベーター・・・では無く階段を利用する。

相変わらずエレベーターは使うつもりが無いらしい。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「えーっと、こっちで合ってるはず・・・っとここ・・・だよな」

 

ここはアパートの一階。最上階から階段を利用し降りて来た天倉。何故エレベーターを使わないのかワカラナイ。そして目的の部屋であろう扉の前に立つ。

 

「いるかなぁ、あの人たち・・・まっ、取り敢えず確認はしておくか」

 

と天倉はインターホンを鳴らし、ピンポーン♪と言う音が響く。すると部屋の中からガタンゴトンと慌ただしい音が聞こえる。

確実に誰かがいる事が分かる。が、もしかしたら空き巣という可能性もある。

彼は"個性"の一部である。ピット器官(サーモグラフィー的なもの)と強化された聴力によって中の様子を探る。

 

すると部屋の中には五人の存在を確認する。そして強化された聴力によって中で話しているだろう会話を聞き取る。

 

 

「だ、誰か来た。よよ、吉田くん。お客さんじゃぞ、早く見てくるんじゃ」

 

「嫌ですよ!なんで僕が行かなきゃなんないですか。大家のババアだったらどうするんですか!総統が行ってくださいよ」

 

 

と二人の人物が何やら言い争っている事に気付く。

天倉はそんな様子にやれやれと溜息をつきながら、いつも通り鍵のかかっていない玄関の扉を開く。

 

 

「取り敢えず、お邪魔しまーす」

 

「うわわわわっ!!?ど、どっから入って来たんだね⁉︎」

 

「いや、普通に玄関からですけど?」

 

「吉田くん!また玄関の鍵を閉め忘れたのか⁉︎」

 

「あ、いっけね。うっかりしてました・・・ってなんだ天倉じゃねぇか」

 

天倉が礼儀正しく?玄関から入るとそこにはちょび髭で帽子を被り、黒いスーツの上から赤いマントを羽織った尖った耳の大体50代あたりの男性と覆面をボサボサの茶髪に赤いシャツ、青いズボンを着た身長が1mに満たない子供?だ。

信じられない事にこの人たちも天倉の知り合いだ。

今更ながら天倉はとんでもない知り合いばかりである。

 

「お久しぶりです。小泉さんにカツヲさん」

 

「あ、天倉くん。ワシらは一応悪の秘密結社なんじゃから本名はちょっと勘弁してくれんかのぅ」

 

「アッハイ、分かりました。総統さんに吉田さん」

 

天倉と総統と呼ばれた男性は普通に会話しているが、先程おかしな単語が出て来た。

【悪の秘密結社】

それは一体どこのコミックの敵組織だ。とツッコミを入れたくなるだろう。こう見えてこの総統という男性は悪の秘密結社鷹の爪団の総統をやっている。

すると吉田と呼ばれた子供?は天倉に向けて口を開く。

 

「って言うか、お前一応ヒーロー志望なんだろ。なんで悪の秘密結社と仲良くしてんだよ。

仮にもヒーロー目指してんだから普通おかしいだろ」

 

ごもっともである。

天倉がいくらお人好しでも悪の秘密結社と仲良くするヒーローなんているはずもないだろう。

・・・・・いるはず・・・無いよな(震え声)

 

 

「いや、でもですね。近所と仲良くなるのは当たり前ですし。それに怪人組織フロシャイムって所は世間から認められるほどのホワイト企業ですし、そこの怪人もヒーローと仲良くしてるのって珍しくもなんとも無いですし、それに鷹の爪団って世間から認められるほどの"放っておいて良い認定"されてますし」

 

「ええええええ!!ワシらって世間からそんな扱い受けてんの⁉︎と言うかソッチ曲がりにも怪人組織なのに、なんでヒーローと仲良くなってんの⁉︎」

 

 

いた。と言うか本当に存在してしまった(絶望)

どうやら自分たちが所属している鷹の爪団が世間からそんな扱いを受けている事にショックを受けたのか総統は酷く落ち込んでしまった。

 

「天倉サーン」

 

「うわァっと!!?・・・ってなんだ。フィリップさんか。

びっくりしたぁ・・って幽霊状態じゃないですか道理で気配もしなかった訳ですよね」

 

と天倉の背後に瓜と書かれた赤いマスクと赤いタンクトップを装着し、両腕には入墨を彫り込みマイクを片手に持ったスキンヘッドの強面の男性がうっすらと立っていた。

と言うか本当にうすかった。

 

すると吉田が「あ、いけね」と呟きリモコンのスイッチを押すとフィリップと呼ばれた男性の姿がハッキリとなる。

おそらくこれも個性によるものだろう。天倉はこれくらい日常茶飯事だなと言う顔で「気をつけてくださいよ」と気に留めていない様子だった。

すると続々と奥から二人?の人間??が現れる。天倉達の目の前に出てきたのは外見がどう見ても白衣を着た熊とブルーベリー色の肌をした子供だ。

 

「あ、どうも。レオナルド博士に菩薩峠くん」

 

「何かと思えばテメェじゃねぇか。何の用だオラッ」

 

「相変わらずですね・・・・っと今日は港で釣りしてきたんですけど大漁だったのでもしよかったらお裾分けしようと」

 

と天倉はクーラーボックスの中から魚を取り出す。

すると総統は沢山の魚を見るとギョッと驚き、慌てふためく。

 

「おお⁉︎いいい、いいのかね⁉︎いやいやいや流石に悪いよぉ〜」

 

「いいじゃないですか総統。ここ最近のご飯は綿ぼこりとコピー用紙だったんですよ」

 

「いや、ソレどう考えても食べちゃ駄目なやつですよね!!?よく生きていたな⁉︎」

 

と天倉は思わずツッコミを入れてしまうが、鷹の爪団はそんな事、御構い無しに手頃そうな魚を何匹かを手に取る。

 

「いやぁ、天倉くん。本当に悪いのぅ」

 

「まぁ、いいですよ。そのくらい助け合いは当たり前ですからね。んじゃDXファイターが来る前に俺行きますね」

 

と天倉は部屋を出て行くと、そのまま階段を登って行く。すると一階から何か聞こえて来る。

何だ?と耳をすましてみると

 

 

━━デラックスボンバーー!

 

 

と言う声とともに轟音が響き、緑色の淡い光が先程まで自分がいた一階にある一室を照らす。

天倉はしばらく無言でその場にとどまっていると

 

「>そっとしておこう」

 

そう呟き、再び階段を駆け上がって行った。

 

 

 

 

PM 4:10

 

 

 

 

家でテレビを見たりトレーニングに励んだり新技開発に力を入れたりなど天倉はかなり暇そうにしている。

 

「ふむ、取り敢えず必殺技の名前とか考えておかないとな。

ふぅん例えば・・・ヒレカッター・・チョップ? マグナム・・・思い切りパンチ? 灼熱爆発連続放火アタックの型?いや、なんかイマイチ来ないんだよなぁ・・・・・ん?」

 

と天倉は自身のスマホにメッセージが届いている事に気付く。また新聞記者か?と殺意を放ちながら見てみると、それは母から買い物をして欲しいという内容だった。

丁寧に何を買ってくればいいのかも書いてある。天倉はやれやれと呟くと、エコバッグを持ち玄関から外へと向かう。お人好しの彼は基本的に誰のお願いも断らない。

そんな自分の性格に自覚しつつ彼は「フゥ・・」と溜息をつく。

 

そんな彼は自転車にまたがりスーパーへと漕ぎ出す。

 

 

 

 

PM 4:40

 

 

 

 

彼はスーパーの駐車場に自転車を止めるとエコバックを持ち、店内へと入って行き、入口に積まれているカゴを手に取ると、スマホを取り出し改めて買う物の内容を確認する。

 

「えーーーーーーっと、ネギに人参、かぼちゃ・・・っとコレだな。あ、こっちの方がいいな」

 

と天倉は品定めをしていきながら買い物カゴに色々と入れていく。そして記憶を頼りに買う物を思い出す。

 

 

「えぇーーーっと、今日安いもの安いものは━━━「お餅」あ、そうそう。おm・・・ん?」

 

ふと背後からから声をかけられ「何だろう?」と振り向くとそこには見覚えのある顔をしたクラスメイトが立っていた。

彼女の名前は【麗日お茶子】体育祭にて力をぶつけ合った友達だ。

天倉はギョッと驚いたのか、まるで獣の如くその場からバックステップする。

 

「麗ららららららら、ららら日サン!!?アイエエエエエエエエ⁉︎麗日サン!ナンデ!!?」

 

「ただ声をかけただけなのに、そこまで驚く⁉︎」

 

と麗日は天倉の慌てふためく姿に逆に驚いてしまう。

何故彼がここまで驚いてしまうのか、それは体育祭にて彼女を痛めつけてしまったからだ。

男性ならともかく女性である麗日を必要以上に痛めつけ、彼は負い目を感じていたのだった。

 

「えっと・・・怒ってない・・・訳ないよね。体育祭の事」

 

と天倉は麗日に顔色を伺うように尋ねる。彼自身、自覚する程の脆い心の持ち主だ。もしもここで怒ってるなどと言われれば確実にぶっ倒れるだろう。

麗日は「うーん」としばらく悩んだ後、口を開く。

 

「特に・・・・そうは思ってないかな?逆にこれからどうすれば良いか方針決まったからね。お礼言いたいぐらいだよ」

 

(・・・・天使・・・?いや、女神か)

 

天倉は彼女から放たれる慈愛に満ちたオーラによって傷付いていた心に何か暖かいものを感じた。

すると彼はいつの間にか彼女に対し頭を下げていた。

 

「貴女こそ女神だ」

 

「急にどうしたん!!?」

 

麗日お茶子は天倉の中で神格化された。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「へぇ〜〜〜〜、天倉くん師匠的な人いたんだ」

 

「うん。響鬼さんって言ってさ。滅茶苦茶いい人なんだよ」

 

と天倉と麗日は雑談に盛り上がりながら買い物をしていく。時折、麗日のカゴの中にある大量の餅が気になってしょうがないが、天倉は敢えてつっこまない事にした。

ちなみにこれはデートではない。

 

もう一度言う。

 

デ ー ト で は な い。

 

 

「ん?」

 

すると麗日の足が止まる。天倉はどうしたのだろう?と麗日に呼びかけるが麗日は微動だにせず止まったままだ。

しかし麗日がとあるコーナーを凝視していることが分かった。

 

(と、ところてんコーナー?)

 

天倉は麗日がところてんが売ってあるコーナーを凝視したまま動かない事に不思議に思う。

まぁ、確かにところてんは美味いだろうが足を止める程でもないだろう。

 

しかし違和感を覚える。ところてんコーナーのどこかに何か不自然さを感じる。

一体これは何なのだろうか?と再びところてんコーナーを注意して観察すると

 

 

「・・・・・・・」

 

━━プルン・・・プルン・・・

 

 

ところてんコーナーの上に水色のボディをわずかに揺らしながら体育座りをして『天の助 20円』と書かれたボードを首から下げた謎の物体がそこに存在した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

(なんかいるーーーーーーーーーーー!!??)

 

 

何なのだろうかコレはこのところてんコーナーにどっさりと置かれたゼリー体は果たして何者?いやそもそも人なのだろうか?

天倉はそんな謎の存在Xに対して冷や汗を掻いてしまう。

とにかく早くこの場から立ち去ろうと思ったが、麗日が口端から涎をわずかに垂らしながら謎の存在Xに近づこうとしていた。

瞬間、天倉は麗日を止めに入る。

 

 

「ヤメロォ!!何やってんだよ!何しようとしてんだよ!」

 

「ただ、私はところてんを買おうとしているだけで・・・ジュル」

 

「嘘つけェ!!!アレはところてんじゃねぇよ!!!ところてん だとしても ところてん の形をしたサムシングだよ!!!」

 

と2人が揉み合っていると、天倉と麗日の背中に何かポンと叩かれる。何だろうと背後を振り向くと

 

「お二人さん、ここは公共の場。そしてところてんには罪はありません」

 

と謎の存在Xがそこにいた。

天倉はつい言葉を失ってしまう。その顔はまるで絶対に倒せない敵を過去へタイムスリップして倒そうとしたら逆に敵が増えたと言う謎の現象を目の当たりにした様な顔だ。

と言うより原因である謎の存在Xに正論を言われ、どう言えばいいか分からなかった。

 

「ところで・・天の助 20円・・安いよ・・・」

 

(買えってか⁉︎俺たちに謎の存在X(お前)を買えって言うのかコイツは!!??)

 

「今なら・・・ぬのハンカチもついてくるよ」

 

(いらねぇ!!!"ぬ"の文字で敷き詰められたハンカチなんていらねぇ!!!)

 

天倉はグイグイと自身を買えアピールしてくる謎の存在Xにわずかながら恐怖を覚えてくる。

と言うかそんな事をしているから売れないのでは?と思ってしまう。

 

「20円・・・ぬのハンカチ・・・・」

 

「麗日さぁぁぁぁぁあああああああんんんんんん!!??」

 

しかしそんなアピールに食いついた麗日に対し天倉は驚愕の表情をする。天倉は何度もヤメロォ!!と言うが麗日は止まらない。

 

「まぁまぁ、そう言わさんな・・・取り敢えず一口味見してはいかが?」

 

と何処から出したかわからない巨大な皿の上で横になりいつの間にか置いてあったポン酢を自身の頭の上からかける存在X。

そして天倉と麗日の2人に割り箸を渡すと「召し上がれ」と言う。

ここまで来ると逆に呆れて物も言えなくなり仕方なく一口だけ食べる事にした。

 

口の中に入れた瞬間、ポン酢の香りが広がりところてん特有の食感がさらに味を引き立てる。

さらに隠し味なのか、フルーティな味?だろうかライチの香りがスッと現れさらにコクを引き立てる。

・・・・天倉は思った。

 

(・・・普通にうめぇ・・・・・)

 

しかし、そんな美味しさもこの存在の所為ですべて台無しにされると思うと少々不憫に思えてしまう。

 

「あ、そんなに美味しくないや」

 

「えぇーーーーーー!!??」

 

しかしそんな雰囲気をぶち壊す様に麗日がダメ出しをする。先程まで涎を垂らしながら買おうとしていた人物の言葉じゃなかった。しかし麗日の追撃は終わらない。

 

「これ、なんかドロドロしてるし風味もおかしいし、なんかフルーツの味までしてくるし、ポン酢よりは醤油の方が合ってるし・・・・・・って言うかこれ多分賞味期限切れだよね」

 

「!!??」

 

ガーーーーーーン!!

 

と存在Xのハートはもうボドボド・・・ではなくボロボロだった。容赦の無い言葉によって存在Xは地に伏せてしまった。

天倉は「うわぁ」とわずかながら同情してしまった。

 

「う、麗日さん。流石に酷くね?」

 

「ご、ごめん。なんか本気でそこまで美味しくなかったし」

 

(・・・・え?じゃあ俺の方がおかしいの?)

 

と天倉が思っていると背後から先程地に伏せた筈の存在Xが襲いかかってきた。

・・・・大根を片手に侍の格好をして。

 

「よくも言ってくれたなァァァァァァ!!魔剣大根ブレードのサビにしてくれるわぁーーーーっ!!」

 

「フンッ!!!」 ズバァッ!!

 

「ぎゃぁあああああああああああッ!!??」

 

「・・・・・・あ」

 

と天倉は謎の存在Xの上半身と下半身を真っ二つにしてしまう。天倉は思わずその存在Xに駆け寄ってしまう。

 

「ちょ・・・⁉︎すいません!つい思い切り⁉︎」

 

「ゴフッ・・・い、いいさ。このところ天の助様の魔剣大根ブレードごと俺の因果を断ち切ってくれたんだからな・・・・」

 

天倉は物凄くつっこみたかった。しかしグッと我慢する。何故だろうか此処でツッコミを入れたら確実に負けな気がしたからだ。

 

「さ、最期に・・・・誰かに・・・美味しいって言われたかっ・・・た・・・・ガクッ」

 

「え、まぁ・・・・確かに美味しかったですけど・・・・」

 

と天倉が美味しかったと言った瞬間、真っ二つに分かれた筈の上半身と下半身がまるで機動戦士の如く合体。

わずか3秒足らずで復活&再生を果たした。

 

「じゃあ!!ところてん買ってくれるよなぁ!!テメェ!今日から主食ところてんだ!!!もちろん主菜も副菜も汁物も全部ところてんだ!!分かったな!!コノヤr」

 

 

 

 

━━━グシャッッ!!!!!

 

 

 

 

刹那、謎の存在Xもとい天の助は木っ端微塵になり辺りに水色の物体が飛び散る。

天倉は何故か近くにあったモップとチリトリを使い飛び散った水色の物体を集め、ゴミ箱の中に突っ込む。

 

「んじゃ、買い物の続きしないと」

 

(さっき何が起きたの⁉︎)

 

麗日は先程天倉が何をしたのか分からなかった。いや、正しくは天倉が何をしたのか見えなかったのだ。

よく分からないが、とりあえず天倉は怒らせてはいけない人種なのだと理解した麗日だった。

すると再び後ろから声が聞こえる。

 

 

「あれ?もしかして雄英の人・・・っぽい?」

 

声をかけてきた人物は金髪あるいは亜麻色のストレートヘアを背中まで長く伸ばしており、前髪は斜めに軽く揃えてカットしている変わったヘアスタイルをし、瞳は美しい緑色をしたお嬢様っぽい女の子だ。

おそらくこの子も体育祭を見たのだろうと思い、天倉は

 

「人違いだよー」

 

「天倉くん⁉︎」

 

と早歩きでその場からすぐさま離れる。麗日が何か言いたげな反応をしていたが、そんなのお構い無しに彼はトラブルを回避しようと逃げる。

 

「なんで逃げるのー!待つっぽーい!」

 

しかし女の子はすぐに追いかけてくる。天倉はそんな彼女を無視するかのように肉、魚など買い物カゴに食材を淡々と入れていく。

 

「待って!っぽい」

 

だが彼女は何処までもついていく。

何故、天倉はここまで彼女を無視するのか?それはあまり店内で騒ぎを起こしたくないからだ。

 

タダでさえ謎の存在X(天の助)で注目されているというのにこれ以上騒ぎを起こしてしまえば確実に店から追い出されるだろう。

とにかくこれ以上荒事を立てたくない為、女の子には悪いが彼は買い物を済ませすぐさま店の外へと出る事にする。

 

「ふぅー。これでいいかな?」

 

買い物を終え外に出て一息つく。

 

 

 

 

 

 

 

━━ジャキッ

 

 

「動くんじゃねぇ」

 

 

すると天倉の背後に誰かが冷んやりした固いナニカを首元に当ててくる。

天倉はゴクリ・・と唾を飲み込む。買い物袋を地面とソッと置き両手を上げる。自分には戦闘意欲が無いことを見えない相手に伝える為の体勢だ。

 

 

「フフフ・・・随分と素直じゃねぇか。どうだ、怖いか?」

 

(くっ・・・誰なんだ一体。

まさか!敵連合⁉︎だとしたらマズイ・・・一般人に被害が・・・!)

 

「あれ?天倉くんどうしたの?」

 

「ぽい〜〜〜〜?」

 

するとスーパーから見知った2人、麗日と先程まで自分を追いかけていた女の子が出てきた。

天倉は「しまった」と焦ってしまう。おそらくコイツの狙いは自分だ。もしコイツが敵連合に関係しているとするならあの2人が巻き込まれる可能性も捨てられない。

隙さえできれば、隙さえ見つけられればこの場を乗り切ることができる。

 

「・・・ぽい?何やっているっぽい?」

 

「あ?・・・ってなんだ、夕d「隙を見せたな」━━ってうおおぉぉお⁉︎」

 

背後にいた人物が隙が生じた瞬間、天倉は足払いで相手の体勢を崩した後、背後に回り、腕を抑える。

持ち前の腕力で天倉は無理矢理ねじ伏せる事が出来た。

 

「どうだ!誰だか分からないが、参ったか!」

 

「ちょ、痛たたたたたたた!!?ギブギブ!ちょっとした冗談だだだ⁉︎」

 

「何がちょっと冗d・・・ってあれ?」

 

と天倉がよーく観察するとねじ伏せていた相手は女性であり、その女性は龍の角のような装飾品を頭に付け、左目には眼帯を取り付けた常闇が喜びそうな《中ニ病チック》ファッションをした女性だ。

ちなみにスタイルもボンキュボンであり、峰田が物凄く食いつきそうな程の凄まじさだ。

そんな彼女を見た天倉は驚愕を露わにする。

 

「て、天龍さん?」

 

「そーだよ。つーかさっさとコレ解いてくれ!めっちゃ痛いんだよ」

 

「「?」」

 

どうやら彼女も天倉の知り合いらしく、その場にいた麗日とぽいが口癖の女の子は何が何だか分からない様子だった。

 

「え、えーーーと。それじゃあ私帰るからーーーー!」

 

「ちょ、なんか誤解していないーーーー⁉︎」

 

麗日お茶子はそのまま逃げ出すかのように帰路へと駆けていった。天倉の声を振り切って、ただ、ただ走っていた。

 

 

 

 

PM 5:10

 

 

 

 

「にしても、お前が雄英なんてな。未来ってのはどうなるかわかんないもんだな」

 

簡単に纏めると天倉と天龍は同じ小学校の同級生だったらしく、いたずらっ気のある彼女は脅かそうとあんな事をしていたらしい。

 

「で?天龍さん、その子は一体誰なの?」

 

「ん?あぁ、まだ名前も知らないんだっけか。こいつの名前は夕立って言ってな。まぁ俺が中学ん時の後輩だ」

 

「よろしくっぽい!」

 

と夕立は元気に挨拶をする。天倉もよろしくと夕立に対し返事をする。すると打って変わって急に頬を膨らませ、不機嫌そうにする。

 

「さっきは無視するなんて酷いっぽい!」

 

「あぁ、ごめん。ちょっと慌ただしいのは苦手で・・・」

 

「むぅ〜〜〜〜そう言えばさっきの人なんだけど」

 

と彼女は急に話を変えてくる。おそらく何を言っても無駄なんだろうと思ったのだろうか夕立は天倉に対してとある疑問をこちらにぶつけてくる。

おそらくさっきの人と言うのは先程帰ってしまったばかりのお茶子の事だろうと天倉は分かった。

 

 

「何?」

 

「さっきの人も雄英なんでしょ」

 

「ん?あぁ。そうだよ」

 

「へぇー、さっきのもねぇ。なーんか、やや呆れて帰ったようにも見えたけどな」

 

「うん。でさ、あの人と付き合っているっぽい?」

 

「!!??」

 

「いや、付き合ってないよ」

 

と天倉は淡々と答えると「つまんないっぽい〜」とブーブーと文句を言う。天倉はそんな彼女の反応に対し、えぇと言った困惑した表情になる。

しかし天龍は何故か固まったままだ。天倉はそんな彼女を心配し声をかけるとすぐに我に返る

 

「・・・な、なぁちょっt━━「だーれだ?」

 

と天龍が天倉に声をかけようとしたその時、天龍の両目を隠す存在が彼女の背後に現れる。

突然の事に天龍はパニックに陥る。

 

「わ、わ、わ、わ⁉︎だ、誰だ⁉︎姿見せやがれ・・ってこんな事すんのお前だけだろ!!龍田!!」

 

「ふふふ、せいかーい」

 

そこには紫がかった黒のセミロングヘアーと同色の瞳を持ち左頬に泣き黒子を持った女性がいた。そして、頭の上にフワフワと天使の輪のような謎の物体が浮かんでいる。

 

「あれ、龍田さんじゃないですか。久しぶりですね」

 

「久しぶりね〜。天倉くん」

 

彼女の名は龍田。天龍の妹であり、姉妹の怖くて可愛い方を担当している。天龍とは真逆のお嬢様風な外見と喋り方をしている為、本当に姉妹なのかと疑ってしまう。

 

「天龍ちゃん遅いから心配したのよ〜、夕立ちゃんもあまり道草食っちゃダメよ」

 

「ぽい〜〜〜〜〜〜〜」

 

まるで子供の扱いが慣れている先生の如くそれぞれ2人に注意していく。彼女からは母性が溢れるオーラを感じてしまう。

 

「天龍ちゃんがごめんなさいね〜〜。迷惑かけてない?」

 

「龍田お前な!俺のお袋じゃあないんだからやめろ!」

 

(相変わらず仲良いなこの2人・・・羨ましいな)

 

とまるで親子のようなやり取りに天倉は苦笑いを浮かべると同時にそんな親友のような存在を羨ましく思ってしまう。

・・・つまり自分には親友と呼べる人が少ないという意味でもある。

 

「そうそう、コレ天龍ちゃんのメルアドなんだけど、天龍ちゃん寂しがっているから偶には連絡してあげてね〜〜」

 

「あぁぁああああぁぁああああああっ!!!龍田ァ!いい加減にしろヨォ!何度も言ってるがお袋かお前は⁉︎」

 

「フフフ〜〜♪天龍ちゃんったら天倉くんの事狙ってるのに何を言っt「あぁぁああああああああああああああああああッッッ!!!」

と彼女らが何やら言い合っているが、そんな事天倉にはどうでもいい事だった。先程の会話で気になった言葉が出てきた。

「狙ってる」この言葉が何度も何度も天倉の頭の中で響いていた。そして彼は確信してしまった。

 

(え・・・・・狙ってる?・・・・・(タマ)狙ってる⁉︎)

 

「あれ?なんか顔色悪いっぽい?」

 

彼はまるでフラグをゴルドスマッシュでぶち壊すかのようにとんでもない発想をしてしまった。

夕立に心配されるほど青い顔をしながらガクガクと震えているのが分かる。

と言うか、彼には彼女が好意を抱いているという発想は浮かばなかったのだろうか?

 

「それじゃあ、天龍ちゃんに報告 お ね が い ね 」

 

「アッハイ」

 

さらに追い討ちの極みをかけるが如く怖くて可愛い方に釘を打たれてしまった。彼は「救いは無いんですね」と退路が存在しない事を確信し総てを受け入れる事にした。

 

「ったく・・・・・体育祭見させてもらったけどよ、随分と立派になったな」

 

すると天龍は呟き始める。

 

「こりゃ、とんでもないライバルが登場したみたいだな」

 

「え?それって・・・天龍さんもヒーローに・・・?」

 

すると彼女はプイッとそっぽを向きそのまま「それぐらい察しろ」と彼に告げる。

 

「そんじゃ帰るぞ龍田。夕立も寄り道すんなよ」

 

「分かったっぽい!またお兄さんに会いたいっぽい!」

 

と天龍はそのまま早歩きで帰ろうとする。先程の言葉は彼女なりの自身への宣戦布告なのだろうと思った。すると天倉の顔は自然と笑みが浮かぶ。

天倉は龍田に向き合うと

 

「それじゃあ、天龍さんの事よろしくお願いしますね」

 

「フフフ、分かったわ。天倉くんも天龍ちゃんに負けずヒーロー頑張ってね」

 

そして彼女は姉の後を追いかけるように走っていく。

その様子を見ながら彼はスマホの画面に映されている時間を確認する。

すると苦笑しながら空を見上げる。

 

「もうこんな時間か・・・・・負けてられないな」

 

彼の顔つきは先程までとは全然違う。

彼はこの一日で様々な人達と出会った。その人達は自分よりも強い人、おかしな人、楽しそうな人ばかりだった。

ヒーローになるという事はその人達を守る立場になるという意味になる。しかしヒーローを目指すのは自分だけでは無い。ヒーローを志す者達は数え切れないほどいる。

 

━━負けられない。

 

そう彼は思った。

 

━━グギュルルルルルルルルルルルルルルル

 

しかし腹が減ってしまい思わず笑みがこぼれる。彼は待っている家族の元がいる方向、帰路に着く。

 

 

「腹が減っては戦はできぬ明日も頑張ろう。きっと明日は今日よりもいい日になる。そう信じて歩き続ける何処までも。

1日は終わるが人生はまだ終わっていない。だからこそ皆は明日も頑張って生きていくのです」

 

 

・・・・と謎の存在Xもとい天の助が良い感じ風に締めた。

 

「ぎゃーーーーーーっ⁉︎また出やがった!!?て言うか何しに来た!!?」

 

「ところてん買ってくれぇぇぇぇ!!お前となら良いコンビになれそうな気がすんだよーーー!!」

 

「ギャアアアアァァァァァァアアアアアア!!??ところてん撒き散らしながらおれのそばに近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

 

 

こんな感じに彼の日常は過ぎ去っていく。

体育祭が終わったばかりでこの始末☆はてさて、この先どうなりますことやら。

 





〜〜募集したキャラ紹介。

『艦隊これくしょん』から
【天龍】

艦隊これくしょんに登場する艦娘の1人でありオレっ娘。序盤から入手しやすいキャラと言うことでゲーム初期から主戦力になりやすいキャラだがステータスは高いと言うわけでもなく、よく提督の皆さんからはいじられキャラとして扱われる。
フフフ、怖いか?が有名なキャラで「フフ怖」と略して呼んでいる提督も多い。だがシリアス・ギャグ・アダルトなどネタに事欠かない豊かなキャラを持つ為、艦娘の中でもトップ5に入るほどのイラスト量を誇っている。

番外編では天倉とは小学校の時の知り合いという事にしてみました。そもそも僕自身、天龍はお気に入りのキャラでもし可能なら本編でも弄り・・ゲフンゲフン再登場させたいです。

今回ゲストとして天龍の妹である【龍田】も出してみました。やはり天龍と言えばこの人。この2人を絡ませる事によって真のキャラが発揮できると自分は思っている。

"個性"は【軽巡洋艦】

軽巡洋艦の様な事が大体できる。
制限はあるが、体の至る所から魚雷・偵察機を召喚することが可能。頭の角は電探としての機能を持つ。
原作同様水上で移動する事が可能でありコスチュームを身につければ完璧に艦娘そのものとなる。


同じく『艦隊これくしょん』から
【夕立】

こちらはおしとやかでお嬢様風の外見をし、口癖が「〜っぽい」となっている。ふわふわした感じで掴み所のないキャラクター。人懐っこく可愛い癒し系の駆逐艦娘となっている。

・・・・・しかし、彼女を侮ってはいけない。
ソロモン海戦において彼女は『阿修羅』と評された程の武闘派であり単騎で突撃して大将首持って行くと言うトンデモナイ艦娘。
戦闘開始時には「さぁ、素敵なパーティ(血祭り)にしましょう」と言う台詞を吐き、改二へとパワーアップを果すと瞳が赤くなり、とんでもない強さを見せる。「お前の様な駆逐艦がいるか」
その強さからは想像もつかない、まるで仔犬のような無邪気さで提督にじゃれつく姿に撃沈される提督も多い。

設定では元ヤンキーであり単体で脳無とタイマンを張れると血迷った事があるが、結果的に中学時代の天龍の後輩で癒し系キャラという事で落ち着いた。



番外編はいかがだったでしょうか?もしよろしければ活動報告の方で出して欲しい他作品のキャラを募集してますので興味のある方は是非コメントしてください。

そしてまだ出せてないキャラも早く出したいッッ━━!!












そう言えば天の助ってバイオライダーっぽい能力持っているよな。
・・・・・・・よし


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番外編 神は言っている…TSネタ(笑)を出せと



改めて自分の小説のタグを見た。


【ギャグ】


( ゚д゚)………



(つд⊂)ゴシゴシ



【ギャグ】


( ゚д゚)………




( ゚д゚ )………




Σ(;゚ Д゚)やべぇ!この小説ギャグだったわ!




と言うわけで頭カラッポにして呼んでくれると幸いです。

ちなみに時系列的には職場体験は終わった後になります。




《簡潔なあらすじ(笑)》

 

 今回のヒーロー基礎学の授業は外での訓練。

しかしそこに敵が乱入してしまい授業は大混乱状態になってしまった。

 

 

「大変だーーーッ!!!天倉ッ!なんやかんやあって生徒の何人かの性別が転換しちまったーーーーーッ!」

 

「今すぐオッパ──安全確認しに行こうぜ!」

 

「な、なんだってーーーーー!!??」

 

 

そんな天倉の元に上鳴と峰田がやって来る。何故か2人共興奮気味なのは気の所為だろうか?と言うか峰田は本音が隠しきれていない事に天倉はツッコミたいがグッと我慢する。

 

 するとそこに全身をコスチュームで身を包んだ飯田がやって来る。

 

 

「皆、無事か!」

 

「おう、なんとかな!」

 

「けど、他の奴等が心配だ!すぐにオッパイの確認をしなきゃならねーぜ!」

 

 

もはや本音を隠しきれていない峰田。だが、天倉はとある事に気付く。「飯田くんの声高くね?」そう思った天倉は飯田の正面に立ちマスクをガバッと外す。

 

 

「ほえ?(可憐なボイス)」

 

「ゴパァッ!!?(吐血」

 

「「天倉!?」」

 

 

なんと、飯田は既に敵による被害に遭っていた!マスクの下はまさかの美少女。そして不意打ち気味の可愛らしい声が天倉のハートに会心の一発ゥッ!!自身の異変に気付いた飯田は他の生徒の被害を確かめるべく"個性"を使うが……

 

 

「きゃっ!」

 

「あ、危な────」

 

 

━━━ムニュン(程よい弾力が自分の胸に押し付けられる音)

 

 

「ホァぁぁぁぁああああああああああああああああああああッ!!??」

 

 

 

 

━━ラッキースケベ

 

 

 

 

思春期真っ盛りボーイの天倉にとってそれは初めてのものだった。

彼にとってソレは神話の類と同列。バカップルとか二次元とかそんな自分とは住む世界が違うソレに対し、天倉は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ……ピッ……ピ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉおおおおおおおおおおッ⁉︎心臓ーーーーーッ!まだ止まるな!俺はまだ止まれねぇッ!!」

 

 

心臓が拒絶反応を起こし、止まりそうになるも天倉は自前のタフネスさで復活を遂げる。

 

話は戻るが、飯田(♀)が転んでしまったのには理由がある。乱入して来た敵の"個性"は『反転(リバーシブル)』。性別だけでなく"個性"そのものをひっくり返す"個性"だった。

それにより飯田が"個性"の『エンジン』を使うと足が速くなるのではなく、逆に遅くなってしまいバランスを崩し天倉とラッキースケベを起こしてしまったのだッ!!

 

 

「あ、天倉ーーッ!!テメェーーーーッ!!」

 

「ザッケンナコラァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!!どれくらいの柔らかさだ!固めのマシュマロか⁉︎フワフワのクッションか⁉︎その感触をオイラにも分けやがれぇぇぇぇぇぇええええええッ!!」

 

 

血涙を流しながら2人は天倉に詰め寄る。天倉自身、先程何が起こったのか分からなかった。いや、覚えていなかった。

自身の脳が先程の感触を覚えていると心臓が再び拒絶反応を起こすと判断し天倉の脳が彼自身の意思とは別にその時の記憶を消去していたのだッ!!

 

 

「2人共!やめっ──あっ!」

 

 

すると仲裁に入ろうとした飯田は転んでしまい上鳴と峰田の2人に激突。

流石の事に天倉も反応できず見るしかなかったが、彼が言うには2人共「悪くねェ!」と満足気な顔をしていたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

弱体化してしまった飯田の代わりにクラス全員の無事を確認しに行くと言う建前を得た上鳴と峰田のスケベコンビとその暴走を止める為について来た天倉は走っていた。

 

 

「よし!まず最初のターゲットは轟だ!あのイケメンフェイスなら完全に美少女になってるに違いねぇ!」

 

「ヒャアたまんねぇ!天倉ァ!お前はここで他の奴等が来るか見張ってろ!俺達はオッパイを求めに探しに行く!!」

 

 

そんな暴走気味の2人はすぐさまその場から走り去り、その場に残ったのは天倉だだ1人だけだった。

ボッチに慣れている天倉は涙を流しながら(慣れてないやんけ)近くに誰か居ないかグルリと見渡していると───

 

 

「────」

 

 

どんよりとしたオーラを放ち、何かを呟く赤白ヘアーの女子が居た。

天倉はその特徴的な髪の毛ですぐさま誰なのか理解できた。

性転換してしまった轟焦凍だ。声をかけようと近づくと次第に何を呟いているのか聴き取れるようになる。

 

 

「俺の"個性"はだだ右左の炎と氷が入れ替わっただけで問題は無いがこっちの炎は元はお母さんの"個性"でこっちの氷はクソ野郎の"個性"だ。だけどよくよく考えてみたら炎はアイツのもので氷がお母さんのものだ。敵を捕らえるんならここは氷……だけどこれはアイツのが変質したものだから結果的にアイツのを使う事になって、だけど炎を使えばアイツのものと同じ。待てよ⁉︎お母さんが反転したらソレはもはや父親⁉︎わ、分からない……俺は……あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!?」

 

 

謎の哲学的問題により混乱している轟(♀)。体育祭にてソレは完全に解決……とまではいかないが収集はついた筈だ。

しかし敵の"個性"は身体の性別だけでなく精神的な性別も反転させており、現在の轟は精神的に色々と脆くなっているのだ。

 

だがそんな様子を見て天倉は不思議と涙する。

そしてすぐに天倉は理解した。「あぁ、轟くんも"個性"で苦労してるんだなぁ……」そう直感した天倉は後ろから轟の肩に手をポンと置くと一言呟く。

 

 

「苦労してるのは君だけじゃない。俺も理解者の1人なんだ。だからさ、もう1人で抱え込まなくていいんだよ……」

 

 

 

瞬間、轟(♀)に衝撃が走る─────。

この懐かしいような感覚は覚えがある。ずっと小さな頃に知った安心感。天倉からヒシヒシと伝わってくる感覚。

 

 

━━━母性(バブみ)を。

 

 

小さな頃に母に拒絶され、現在では母との関係は昔のものに戻って来たが、その間に空いた母との時間を経験していない彼…いや彼女は飢えていたのだ。母に対する甘えと言うものを。

 

 

「うわぁぁぁぁぁあああああああ!!お母さんんんんんん!!!」

 

「うんうnお母さん⁉︎……ま、まぁいいや」

 

 

轟(♀)は無意識に天倉(バブみオーラ放出中)に抱き着く。一瞬の事に天倉は驚いてしまうが、彼女(?)の家族関係を考えると納得したのか、ヨシヨシと轟(♀)の頭を撫でる。

 

「大丈夫、俺がいるからもう安心だよ。だから、ほら泣いちゃダメだよ」

 

「うっ、グスッ、ぁぁぁ……。うん。ひぐっ」

 

 

涙目でグスグスと泣いている轟(♀)に天倉は微笑む。

元々轟は男だが性転換の影響で精神も女子になってしまったのか、涙脆くなっているようだ。轟が元男だとしても男の胸元で美少女が泣きたくと言う如何にもアウトな光景には変わりは無い。

 

しかし、天倉はとある事実に気付く。

現在、轟(♀)の顔は自身の胸元に位置する。そして轟(♀)の腕は自身の腹部と背にグルリと回されている。

 

 

 

それでは……彼女(?)の驚異的な胸部は一体、天倉の何処に位置するのか?

 

天倉自身、ソレを考えた瞬間───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───と言うわけでお前さんは死んでしまった。ちょっとした手違いで迅雷を下界に落としてしまった。本当に申し訳ない。まさか落ちた先に人が居るとは────え?その程度では死なない?それでは何故………はぁ、ショック死とな。お前さん、一回それで女神の所に逝かなかったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スマホを持っていく意味無いじゃねぇかぁッ!!!」

 

「⁉︎」ビクッ

 

 

突如として大声で叫びながら荒げる天倉。一瞬、へんな老人と空の上にあるお茶の間らしき場所で何か話していたような気がしたが気のせいだろう。

しかし急に大声で叫んでしまったのか驚いた轟(♀)は「あう」と言いながら尻餅をついてしまう。

 

 

「あっ、ごめん⁉︎えっと、とりあえずさ轟くん歩ける?」

 

「あ、いやその……お願いが────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……天倉。説明してもらおうかぁ……」

 

「その通りだ……オイラのモギモギボールを顔面にぶち込まれて窒息死しない内に3行以内で説明しやがれぇ………でないとお前をブチ殺す………」

 

 

血涙を流しながら2人は再び天倉に詰め寄る。いや正しくは轟(♀)をおんぶした状態の天倉にだ。

 

しかも轟(♀)自身、顔を少し赤らめて天倉の背中に顔を埋めている為、上鳴と峰田から見るとどう見ても二次元の恋愛漫画のワンシーンとなっているのだ。

 

ちなみに、これは天倉が進んでやっている訳ではなく尻餅をついてしまった轟(♀)が腰を抜かしてしまい動けないのを建前に母性を求め、天倉におんぶしてもらう作戦である。

ソレに対して天倉は女子と密着する経験など皆無に等しい為、色々とヤバイ状況である。

 

 

「チクショォォォォォオオオオオオオッ!!オイラの背がもう少し高けりゃあッ!!!」

 

「天倉ァッ!!俺と変わってくれぇ!!頼む!俺にも密着の感触を味わわせてくれぇッ!いや、味わわせて下さいお願いしますッ!」

 

 

上鳴が天倉に土下座しながら懇願する。天倉は背中に双丘が押し付けられている事実に対し「ヨロコンデッ!!!」と叫ぼうとするが

 

 

「……やだ。コッチの方が安心する」

 

「ゴフォオッ!!?(吐血」

 

 

耳元で囁かれた尊すぎるその声に天倉は本日2回目の吐血をする。

口から血が飛び散る中、彼は心の中で誰にも届かない叫びを発する。

 

 

━━━マジで勘弁して下さい。血が足らなくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで甘えん坊と化した轟を飯田に押し付け、他の生徒を探しに行く事となった。

 

 

「天倉ァ!お前は手を出すなァ!今度は俺達が美味しい思いをするんだよぉぉぉおおおおおお!!!」

 

「ウッヒャァア!今度こそオッパイに触れてやるゼェ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

 

天倉はそろそろ2人に性転換しているとはいえ、元男の胸に触って嬉しいのか?とツッコミを入れたかったが、元男の胸に押し付けられて吐血しているヤツが言っても意味は無いんだろうなぁと思った。

 

天倉がそう思っていると路地裏に謎の人影がチラリと自身の視界に映る。

 

 

「2人共!路地裏に誰かが……!」

 

「うおっ!今度は誰が性転換してるんだ!」

 

「ほぉらおいで……ぐへへへ」

 

 

そろそろアウトな発言をしている事に自覚していない峰田だが、天倉が手で制す。「邪魔してんじゃねぇ!」と峰田は掴みかかるが天倉は冷静に口を開く。

 

 

「峰田くん。確かに生徒の1人の可能性は高いけど、そこにいるのが敵という可能性も捨てきれないんだよ!」

 

「「……あっ、忘れてた」」

 

「あとで殴ってもいいかな?」

 

 

2人の頭の中がピンク一色だと言う事を改めて認識すると天倉は「ふぅ」と息を吐き、腰を落とす。

そしてカッと目を見開くとそのまま路地裏に向かって走り出す。

 

 

「先手必勝!必殺!一夫多妻去勢けぇぇぇぇええええええんッ!!死ねぇッ!!!」

 

 

そのまま空中で回転を行なったあと、人影に向かって蹴りを放つ。なんか「死ねぇ!」と爆豪のような台詞を吐いているがあくまでも死にたくなければそこから動くなと言う意味を込めて叫んだ為、本気で蹴り殺すつもりは無く人影のすぐ横に蹴りをブチかますつもりだった。

 

 

━━━ドゴォッ!!!

 

 

そして見事に人影のすぐ横の壁に天倉の脚が突き刺さりヒビがピシリと走る。

 

 

────が、

 

 

 

「あ、天倉……くん………」

 

「……え?」

 

 

その人物はどこか見覚えがあった。鮮やかな緑色のくせっ毛に特徴的なそばかす。ウルウルと涙腺がぶち切れたように涙目でこちらに視線を送る巨乳の女の子。

 

飯田(♀)が『ドジっ娘系メガネ委員長』ならば轟(♀)は『クール系で実は甘えん坊の美少女』。そして目の前の女の子は『恥じらう地味系女子(巨乳)』と言ったところだろう。

 

そしてそれに該当するのは……緑谷出久。天倉の友達の1人であると同時に原作主人公だ。

その原作主人公が性転換した存在は今。

 

 

「……あうぅ……」

 

 

困ったように涙を浮かべこちらを上目遣いをしている。

現在の状況を簡潔にまとめると

 

 

 

・緑谷(♀)が天倉に壁ドン(脚ver)をされている

 

 

 

 

こんな感じである。

その事実と同時に緑谷(♀)の上目遣いに天倉のハートは撃ち抜かれ罪悪感が襲い掛かってくる。

 

その後、ナニが起きるかって?そりゃ勿論。

 

 

 

「ガフォアッッ⁉︎(吐血」

 

「あ、天倉くん⁉︎」

 

 

本日4回目の吐血(笑)である。

曲がりなりにも天倉は女子に対して壁ドン的なアレをしてしまった事実に耐えきれず、そのまま倒れてしまう。本来ならこれくらいでくたばる訳ではないが、本日4回目であると同時に2回も三途の川を渡りそうになっている為そろそろ限界に近づいて来たのだった。

 

 

「み、緑谷か⁉︎」

 

「お、お前!最高じゃねぇかヒャッホウ!!」

 

「あっ、そ、その……見ないで……ってそうだ!天倉くん大丈夫⁉︎」

 

「コヒュー……コヒュー……死ぬ……そろそろ死ぬ……」

 

 

出血多量によるグロッキー状態の天倉の元に緑谷(♀)が駆け寄る。自分の所為(?)で瀕死に追いやってしまい緑谷(♀)は負い目を感じてしまう。

なんとしてでも彼を助けよう。そう意気込んだ緑谷(♀)はヒーロー基礎学で学んだ事を実践する。

 

 

「えっとまずは……意識、呼吸確認!大丈夫!しっかりして!」

 

「うぅっ……なんか向こうで誰かが手を振っている……コスチューム来た…女性?……え?俊典を頼む?誰ですかそれ?」

 

「あ、天倉くん⁉︎しっかりして!!!」

 

 

思った以上にヤバイ状態なのか、緑谷は焦って天倉を抱き起こす。

 

 

しかし、ここで想像してもらいたい。仮に()()()()()が他人を抱き起こす展開になったとしよう。

そしてその女子がパニックになってしまい、慌てて抱き起こすとしよう。その行為は相手の上体を自身の胸部に引き寄せるように起こすものだ。

 

そうなると必然的に

 

 

 

━━━フニュ

 

 

「……ふにゅ?」

 

 

抱き起こされた人の顔にとある物が当たる。ここまで言えば想像がつくだろう。

 

そう───彼の顔面に緑谷(♀)のツインマキシマムが命中しているのだ。

 

 

 

天倉にダイレクトアタック!!

 

MAXIMUM MIGHTY CRITICAL BREAK!!!

会心の一発ゥッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァァァアアアアアアアアアアッ!!??また来たの⁉︎ねぇ、なんでまた来たの⁉︎いやぁぁぁぁぁぁぁ!!どうせ私を殴りに来たんでしょ!!女神を殴ってストレス発散したいんでしょこのバチ当たり!!お願いだからもうコッチ来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!トラウマがやばいのぉぉぉぉおおおおお!!生き返らせてあげるから殴るのだけはやめてぇぇぇえええええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───うん、なんか慣れて来た。慣れちゃダメなんだけどナー」

 

「あ、天倉くん!大丈夫⁉︎」

 

「お前……白目向いてガクガク痙攣していたけど大丈夫か?」

 

「いやさ、天倉なら大丈夫だと思うけどよ、オイラ達の精神が持たねえんだよ。で?オッパイの感触は?」

 

 

目を覚まし、3人から質問責めに会うが天倉はソレを手で制する。

 

 

「うん、うん。大丈夫、うん。もう大丈夫だから。うん」

 

「あ、天倉くん?」

 

 

天倉はうんうんと何かを納得したような表情をしながら頷き、その場から立ち上がる。そして意を決したような口調で彼は呟く。

 

 

「殺す」

 

「「「……え?」」」

 

 

天倉の中でとある結論が出ていた。

何故自分がこんな目に遭うのか?何故自分はいつも死にかけなければいけないのか?何故男子が美少女とかしているのくわぁッ!!

 

その答えはただ一つ。(ヴィラン)だ。(ヴィラン)の所為だ。

おのれ敵。敵コロス慈悲は無い。

 

 

 

───覚えていろ敵……地べたを這い泥水をすすってでも貴様を見つけ次第ブチ殺してやる。

 

 

 

口から血を垂れ流しながらデストロイ(ゆ゛る゛さ゛ん゛)モードへ移行した天倉の逆襲が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、麗日お茶子(♂)と爆豪勝己(♀)、常闇踏影(♀)は敵と激闘を繰り広げていた────

 

 

「超必殺!」

 

「死ねぇッ!!」

 

「ダークシャ……聖光(ホーリーライト)!」

 

『アイヨ!』

 

 

「ぐぁぁぁあああああああああっ!!??」

 

 

訂正。一方的な闘いを繰り広げていた。

麗日と爆豪は敵の"個性"を喰らい性別と"個性"がひっくり返りピンチに陥って……いる訳では無かった。何故なら

 

爆豪自身は性別が反転しても胸が出てコスチュームがきつくなった位の認識で"個性"も反転したが手から液体窒素のような汗を出し凍らせると言う普通に強い感じの"個性"だった。

 

そして麗日お茶子(♂)は性別が男になったお陰で女の時と比べ身体能力は高くなり容量超過により気分が悪くなると言うデメリットも容量超過により気分爽快とメリットに反転したのだ。

それにより触れたものを重くし、敵を追い詰めている状況となっている。

 

しかしその中でも特に常闇(♀)は凄まじく"個性"が反転し、闇が深い程強く制御し難い『ダークシャドウ』が、光が強い程、強力になり制御しやすい『ホーリーライト(常闇命名)』になったのだ。

 

 

───だが

 

 

「痛ッタイ目ガァ⁉︎常闇くん!それ眩しいよ!」

 

「ぐぉぉぉお⁉︎そ、ソレ仕舞えや!鳥頭!」

 

「………神!」

 

『我トテ望ンデコウナッテイル訳デハ無イ』

 

 

意外にも光系の厨二チックな『ホーリーライト(笑)』が気に入ったのか常闇(♀)はジーンと感銘し、その『ホーリーライト(痛)』の眩しさに爆豪と麗日の二人は目をやられていた。

 

ピエロの格好をした敵は流石に分が悪いと思ったのか、その場から退散しようとする。

 

 

「おっと、悪いが逃がさねぇぜ!」

 

「切島さん!援護しますわ!」

 

「相手は一体!先生が居ない今、俺達で敵を捕まえるぞ!」

 

 

だがそこに切島、八百万、砂藤、瀬呂の4人が立ちはだかる。

各々、"個性"を使い敵を捕まえようとするが

 

 

「ぐっ、この……っ!お前らも反転してしまえ!」

 

「危ねぇ!」

 

 

苦し紛れに敵は"個性"反転をその場の4人に対して使う。

その中で瀬呂は前に出ていた切島が"個性"の影響を受けないように"個性"テープで巻きつけ、自分達の後方へ投げる。

 

その結果────

 

 

「な、何も……できない………」

 

「あ、あぁ……いいわぁ……頭が冴えるぅ……」

 

「こんな腕でどう生活しろと……?」

 

 

八百万(♂)の場合『創造反転』。何も生み出せない。

 

砂藤(♀)の場合『シュガードープ反転』。白い粉(砂糖)の摂取により身体は弱くなるが頭が冴え渡る。色々とヤバイ。

 

瀬呂(♀)の場合『テープ反転』。腕がハサミになる。リアル蟹。おいデュエルしろよ。

 

苦し紛れに放たれた"敵"の個性は結果的にすごい結果となった。

そしてチャンスと思った敵はそのまま脱兎の如く逃げ出す───

 

 

 

 

 

 

「───と思っていたのか?」

 

 

 

瞬間、ズガァン!と言う凄まじい轟音と共にビルの壁を突き破り天倉が登場する。

ちなみに現在の天倉は"個性"をまだ使用しておらず、生身でビルの壁を突き破って来た事となる。

 

 

……え?現実でそんな事起きる訳無いだって?小説(フィクション)だから問題ねぇんだよ!

 

 

「あ、天倉くん……?なんか怒ってない……?」

 

「しっ、やめろお茶夫。今の天倉は色々とヤバイ事になってるんだよ」

 

「あ、そうなんd───お茶夫⁉︎」

 

 

上鳴がお茶子(♂)を制している間、謎の黒いオーラをぶちまけながら天倉は敵に指を指し一言だけ呟く。

 

 

(ヴィラン)。まずお前から血祭りに上げてやる」

 

「お前、ヒーローを目指してるんだよな⁉︎」

 

 

天倉の一言に驚いたのか流石の敵もツッコミを入れてくる。

だがご心配無く、そんな口の悪いヒーローを目指す生徒もいるのでご安心を。

 

 

「………口悪ぃな。どんな教育受けたんだ」

 

「……(それはひょっとしてギャグで言ってるのか⁉︎)」

 

 

ポツリと呟く爆豪(♀)の言葉に心の中でツッコミを入れる常闇(♀)。まさしくその通りである。

そんな2人を尻目に敵は"個性"を使おうとする。

 

 

「ぐっ、お前も反転させt「死ねぇッ!!」うわらばッ!!」

 

 

だが、敵が"個性"を使う直前に天倉は蹴りを叩き込む。爆豪のような台詞を使っているが闘っているのは天倉である。そんな天倉は指の関節をバキバキ鳴らしながら敵に近づいて行く。

 

 

「動いたら殺す。話したら殺す。"個性"を使ったら殺す。逃げたら殺す。泣いても殺す。声を出しても殺す。息をしても殺す」

 

「………え?最終的に殺すの……?」

 

「お前は俺の必殺技(未完成)でトドメを刺すとしよう」

 

 

そう言うと天倉はユラァと右手を下に左手を上の方へ流れるように動かし構える。

ソレを見た麗日(♂)は興奮するように叫び始める。

 

 

「あ、アレは……『天地魔闘の構え』!」

 

「知ってるのか麗日!」

 

「うん常闇くん!天地魔闘の構えは「天」は攻撃、「地」は防御、「魔」は個性の使用を意味するカウンター技なんだよ」

 

「そうなのか?それは普通のカウンターとあまり差は無いと思うが?」

 

「いや、天地魔闘の構えは相手の攻撃を静かに待ちながら、全てを切り裂く手刀『バイオレントパニッシュ』、全ての攻撃を耐え抜く『三戦(さんちん)』そして"個性"による身体能力の底上げの三動作を同時に行う高難度の奥義なんだよ!」

 

「なんと……よく知ってるな麗日。まるで武術博士だ」

 

「ううん、デクくんが教えてくれたよ?」

 

「緑谷の情報網凄まじくないか……?」

 

 

呑気に会話している2人だが敵側からしたら絶望的な状況である。天地魔闘の構えは麗日が説明した通りカウンター技でありこちらが先手を打たない限りあちらが仕掛けて来る事は無いので、こちらが逃げれば問題無いという事だ。

 

しかし敵の周りには生徒達がおり、天倉が突き破ったビルからは共に行動していた上鳴達が潜んでいる。

 

しかも天倉は先程、敵に対してこう言った。

 

 

『動いたら殺す。話したら殺す。"個性"を使ったら殺す。逃げたら殺す。泣いても殺す。声を出しても殺す。息をしても殺す』

 

 

要約すると『楽にしてやるからさっさとかかって来い。逃げたら殺すからな』である。

もはや、退路は塞がれ絶望へのゴールが目の前に存在していたのだ。

 

流石にヤバイと思ったのか切島は天倉を止めに入る。

 

 

「おいおい!殺すのは流石にやり過ぎだって!」

 

「ヤメロー!HA☆NA☆SE!!!アイツを殺して俺も死ぬぅっ!!」

 

「俺の知らない所で何があったんだよ⁉︎」

 

 

色々と精神状態が危うい天倉と切島がしっちゃかめっちゃか取っ組み合いを始める。途中、天倉がタワーブリッジやパロ・スペシャルなどを決めていたがそれでも尚、切島は天倉を止める事をやめない。

 

その光景を見た敵はチャンスと確信した。今なら逃げ出せ───いや、個性を使って一泡吹かせてやる!

 

 

「隙ありィ!!!」

 

 

そう思った敵はすぐさま取っ組み合いをしている2人に個性を使用する。

 

 

「あっ──────」

 

「えっ?ちょっ─────」

 

 

すると偶然にも切島が盾になるような形で天倉は"個性"の影響を受ける事は無かったが、切島に身体の"個性"の影響が現れる。

切島の骨格と共に肉体は変形して行き、慣れない身体と天倉との取っ組み合いによりバランスを崩してしまう。

 

 

そして不幸にも──────

 

 

 

「……あ、あはは……あ、あのさ。手を退けてくんない……かな…?」

 

「」

 

 

 

 

切島(♀)を押し倒すような形となってしまった。しかも切島のコスチュームによって現在の切島(♀)は上半身裸であり本当の意味でヤバイ状況だ。

 

 

そして───天倉の手には何かフカフカしたものが握られていた。

 

 

切島(♀)の"個性"はガッチガチの硬い肌では無く、フワッフワの柔らかい肌に反転しており、女性の身体の中で1番フワッフワの胸部が天倉の手に触れていたのだ────ッ!!

 

 

 

 

瞬間、天倉目の前は真っ白になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所、そこに峰田と天倉が居た。

 

 

 

「なんか静かだなー。街の中に敵も居ないし、USJの時とは偉い違いだ」

 

「うん、敵の戦力は軒並み向こう(教師側)に回してんのかもね」

 

「まっ、そんなのもう関係無いけどな!」

 

「上機嫌だね」

 

「そりゃそうだぜ!皆助かるし、緑谷も頑張ってるし、オイラも頑張らないと!」

 

 

「……うん。(そうだ。俺達が今まで学び続けて来たものは無駄じゃなかった。これからも俺達が立ち止まらない限り道は続く)」

 

 

キキーーーッ

 

 

すると校舎から出た天倉、峰田。そして外で待っていた上鳴の元に一台の黒い車が止まり、そこから敵達が銃を乱射して来る。

 

上鳴は右肩を撃たれ、そのまま倒れてしまう。無数の銃弾が峰田に襲い掛かって来るが天倉は峰田の倍ある体格差で盾となり背中の肉で弾丸を受ける。

 

 

「天倉……何やってんだよ!天倉ァ!」

 

「うっ……うぉぉぉおおおおおおおおッ!!」

 

『Needle Loading』

 

 

━━ドン!ドン!ドンッ!

 

 

「うっ」

 

「ぐぁっ⁉︎」

 

 

すると天倉も負けじと発目からいただいた発明品の一つ『ニードルガン』を起動させ、次々と敵達に針弾を命中させていく。

そして、敵達は恐れをなしたのか車に乗り込むとそのまま校舎から離れていく。

天倉の身体に隠れていた峰田は敵を撃退された事に安堵するが、目の前の光景に目を見開く。

 

……そこには血の海が広がっていた。

 

 

「ハァ、ハァ……なんだよ……結構当たんじゃないか……ふぅ……」

 

「あ……天倉……あっ……あぁ……」

 

「なんて声……出してるんだよ……峰田くん…」

 

「だって……!だって……!」

 

 

天倉の身体からドクドクと血溜まりが出来ており、友人が生命の危機に陥っている事実に峰田は混乱し、目から涙が溢れて出てくる。

そんな峰田に対して安心させる為なのか、笑みを浮かべるとその場から立ち上がる。

 

 

「俺はヒーロー。天倉孫治郎だぞ……こんくらい…なんて事は無い…!」

 

「そんな……オイラなんかの為に……!」

 

「他人を守るのはヒーローの役目だ…」

 

「でも」

 

「いいから行くぞ!皆が待っているんだ!」

 

 

天倉の生命は残り僅かとなった。ここまで彼を突き動かすものは何なのか。

それは信念。

 

━━誰かを守る。

 

その信念だけで彼は進み続けるのだ。

騒ぎを聞きつけてやって来た麗日と蛙吹の2人だが、彼女達はその光景に涙を流す。

 

 

(やっと分かったんだ。俺達にはたどりつく場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。止まらないかぎり、道は続く)

 

 

フッと死期をを悟った天倉は笑みを浮かべながら前へと進む。彼は最後の言葉を此処に遺す事を決めた。

 

 

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ───────」

 

 

バタリと倒れ込む。

友の死を目の前にその場の全員は涙を流す。死を迎えた彼は最期に振り絞るように声を出す。

それは彼なりの、共に歩んだヒーロー達への

 

 

 

━━━止まるんじゃねぇぞ

 

 

 

メッセージだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天倉ァーーー!しっかりしろ天倉!」

 

「やべぇ!痙攣しながら口から泡吹き出して全身の至る所から血が⁉︎」

 

「ギャァァァアアア!!全身から血がビュービューとぉぉ!?」

 

 

突如として天倉の全身から血が噴き出すと言う少年誌にはあってはならない光景が敵の視界に映り込む。

先程まで自分を追い詰めていた筈の恐怖の魔王がいつの間にか戦闘不能状態に陥っている事に対して唖然とするが、すぐに我に返るとこれは逃げるチャンスなのでは?と敵は確信する。

 

 

さすがの雄英生でも相手はまだ中学から上がったばかりの子供達だ。生徒の1人が重大になり、自身の"個性"が全く別のものに反転している今が好機と判断した敵は今すぐにそこから逃げ────

 

 

 

 

 

 

 

───だせなかった。

 

 

(ッ⁉︎足が……動かない⁉︎)

 

 

敵の身体が動かない。先程、あの生徒に蹴りを喰らった以外に何かされたワケでもない。捕縛系の"個性"による影響でもなければ一体なんなのか?

 

その答えはすぐに出た。

 

 

 

 

「俺がお前の動きを止めた」

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

 

謎の擬音が聞こえた気がした。自身の心臓の音かもしれないし、個性によるものかもしれないが、今はそんな事どうでもよかった。

自身の背後から声が聞こえたのだ。

あの魔王の声が。すぐ後ろから聞こえたのだ。

 

 

バカな。あり得ない。一瞬であの距離を移動したのか?と言うかコイツさっきまで血を吹き出しながら倒れてなかったか?

 

 

「むぅ、あれはまさしく『阿修羅閃空』!」

 

「知ってるのか麗日!」

 

「その動きは滑走するように残像を描き、片足で直立して片腕を下げ、もう片方の腕を肘を突き出すように上げた体勢で下がる動作からその姿は雷神の如く!殺意の波動に目覚めた者しか扱えないと言う技がこの目で見られるとは……!」

 

 

いや、あっちはあっちで何をしているんだ?

 

謎のやり取りをし始めた麗日(♂)と常闇(♀)の2人に対してそう思う敵だったが自身の真後ろにヤバイ奴が居るという現状に冷汗が止まらない。

 

これはまさしく殺意だ。背後の者から発せられる殺意に当てられ身体が硬直してしまったのだと敵は直感する。

一体、何がコイツを動かすのだろうか?何故コイツはこんなにも殺意を抱いているのだろうか?

 

 

「動けないのに背後から近づかれる気分ってのは例えると……水の中に1分しか潜れない男が……限界1分目にやっと水面で呼吸しようとした瞬間!」

 

 

敵の背後に立つ天倉は引き寄せるようにガッと敵の肩を掴む。

 

 

「……と、さらに足を掴まれて水中に引きずり込まれる気分に似てるってのは……どうかな?」

 

 

敵は思った。

 

───いや、どうかな?じゃねーよ。

 

 

天倉の言っている意味が理解できない敵は困惑していた。それもその筈、現状の天倉は血を流し過ぎており頭に血が回らなくなっており思考能力が低下し意味の分からない言葉を発しているのだ。

 

ただ、今の天倉はプッツンと怒髪天を衝いている。それだけは理解できた。

 

そして敵は侮っていた。ヒーローの卵と言う存在を。

入学早々敵連合の侵入を許し、体育祭では性格面に問題があった雄英生に対して『大した事の無いガキ共』と侮っていたのだ。

 

今もそうだ。どこか問題を起こして自分が逃げる隙が必ず出来ると確信してしまっている。

 

 

「お、俺の個性を喰r「無駄ァッ!!!」

 

 

「ぐぼぁっ!!?(き、効いてない?俺の"個性"がッ⁉︎)」

 

 

 

容赦の無い鉄拳が敵を襲う。

ドゴンッと大砲を撃ち出したような音を響かせながら吹っ飛ばされる敵。それに対して身体中から蒸気を発しながら拳を突き出す緑色の狂戦士と化した天倉。

 

オイオイオイ、どう見てもガチに殺りに行ってるわアイツ。

 

 

「抜きなどっちが素早いか試してみようぜ」

 

 

血のように赤い複眼をギラつかせながら黒光りする腕を構える天倉。

もはや敵に選択肢は無かった。

"個性"は効かず、逃げられもせず、目の前には心火を燃やしてぶっ潰す系ヒーローの卵。

今の自分に何が出来ようか?無理だ。ではどうする?

 

諦めるか?

 

自身に出来る事………それは必死の抵抗。もはや、頼れるのは己の身体のみ。

 

 

『我、境地に至れり』

 

 

悟った敵が編み出した答え、それは────

 

 

 

「ウワアアアアアアアオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

───グルグルパンチ

 

 

駆け出しながら腕を伸ばしきり絶え間無く円を描き放たれる拳は彼なりの天倉への抵抗を表していた。

 

それに対し拳をより一層強く握り締めた天倉は敬意を評するように腰を深く落とし迎撃するように構える。

 

 

 

 

 

そして2人の勝負の結末は───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「…………で?その後、普通に勝った天倉が更なる追い討ちをかけようとしたからクラス全員で死なない程度に袋叩きにして動けなくしたと?」

 

「はい。そういう事になります」

 

「よし、言いたい事は分かった。お前等全員明日から居残り授業を行う」

 

 

「「「「「「「「「そんなっ⁉︎」」」」」」」」」

 

 

あれから敵は無事?に警察へ引き渡され全員も反転した相澤先生の"個性"による強制発動により元に戻った。

約2名、男子と女子の比率を半々にする為、数名はそのままにしたいと希望したが蛙吹(♂)によりシメられ事無きを得た。

 

それから敵の顔が陥没していたり、クラス全員が天倉をボコボコにしていた所をものすっっっっっっごく不思議に思った相澤先生は峰田から話を聞き、現在に至る。

 

 

「天倉もそうだが、お前達はヒーローと言う立場では無い。そのコスチュームもあくまでヒーロー活動を想定してでの訓練で着てるものだ。無断で"個性"を使用し相手を傷つける。それは敵と同じだ」

 

「ですが天倉くんはほとんど"個性"ではなくステゴロで敵をボコボコにしていましたがソレは……」

 

「ソレは過剰な防衛だ。後日天倉には身をもってその罪深さを知ってもらう為に特別授業を用意するつもりだ」

 

((((((((((天倉ェ………))))))))))

 

 

この中での1番被害者が確定した瞬間にほぼクラス全員から同情される事となった主人公であった。

 

 

「……うーん?何か変な夢を見ていた気がする」

 

「あ、天倉くんが起きた!」

 

 

コンクリで出来た地面の上で横になっていた天倉がムクリと起き上がる。

どうやら彼の様子を見る限り何があったのか覚えていないようだった。ボロボロの身体を動かし彼はよろめきながら立ち上がる。

 

完全に立ち上がった彼だが、自分の身に違和感を感じ視線をすぐ下に移す。

 

 

「………あれ?いつの間に変身して("個性"を使って)いたんだっけ?」

 

「器用な奴だな。"個性"を使いながら寝るって………ったく、さっさと元に戻れ」

 

 

相澤先生の瞳が緑色の戦士と化している天倉の姿を捉えるとブワリと髪の毛が逆立ち"個性"が発動される。

 

そして見る見るうちに天倉の姿が─────

 

 

「………あれ?」

 

「…………あ?」

 

 

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

 

───ゴソゴソ……ピチャッ

(目薬を取り出して、目にさす音)

 

 

気を取り直して………相澤先生の瞳が緑色の戦士と化している天倉の姿を捉えるとブワリと髪の毛が逆立ち"個性"が発動され、天倉の姿が元に戻r─────

 

 

「相澤先生?あの……大丈夫ですか?」

 

「………八百万、お前ちょっと"個性"使ってみろ(ジッ」

 

 

元の姿に戻るどころか何も変化が起きない天倉。

それに対し相澤先生は自身の"個性"が正常に働くかどうか確認する為、ジッと八百万を見つめ"個性"を発動する。

 

 

「………使えませんわ」

 

「どうなってんだ天倉?」

 

「え、いや……俺に聞かれても」

 

 

全く状況が飲み込めてない天倉はオロオロと困惑し始める。

するとAクラスの何人かは「あっ」と何かを察したように言葉を漏らす。

そして、その何人かの1人である緑谷出久は天倉に声を掛ける。

 

 

「あ……あのさ天倉くん。逆に()()()使()()()()()くれないかな?」

 

「え?何を言ってるのかサッパリなんだけど」

 

「いや、とにかく"個性"を発動してみて」

 

 

「……あ、うん別にいいけd────」

 

 

 

───ボシュゥッ!!

 

 

 

瞬間、天倉の身体中から姿が見えなくなる程の蒸気が発せられる。

ほとんどのAクラスの生徒がゴホゴホと咳き込んだり、手で蒸気を払ったりする中、ユラリと蒸気の中から人影が現れる。

 

次第と蒸気が晴れていくと黒のセミロングの髪をしたスレンダーな体型の()()()が居た。

 

 

「……………」

 

「「「「「「「「……………」」」」」」」」

 

 

そして目の前に現れた女の子はニッコリと笑みを浮かべる全員に向かって一言放った。

 

 

「うん、こうなるだろうとは思ってた!」

 

 

 

開き直った天倉孫治郎(♀)の声は高らかに大空へ響き渡っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

 

 

「ひょぉおおおおおおおおおおッ!!!たまんねぇッ!!!オッパイ触らせろやぁぁぁぁあああああああああああああああッ!!!!!!」

 

「キャァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 ※天倉(♀)

 

 

───ゴキャッ!!

(峰田の顔面にエルボーが命中する音)

 

 

 

天倉の性別が元に戻るまでに1週間も費やしたのは言うまでも無い。

 

 







天倉孫治郎(♀)


天倉(♀)容姿

『艦隊これくしょん』の羽黒をイメージしてください。


天倉(♀)"個性"

【蜥蜴変身反転】

性別が♂の時とは反転しているので通常時がアマゾン態となっており"個性"を発動する事によって人間態へ変身する。
つまり、日常生活の姿はアマゾンオメガと言う物凄くシュールな光景となっている。

例:授業を真面目に受けるオメガ。学食でモキュモキュと焼肉定食を頬張るオメガ。


ちなみにデメリットであるカロリーの消費量だが反転している為、"個性"を使い、人間態に変身するとカロリーが自動的に摂取される。
なので何も食べてなくても普通に生きる事が可能。勿論お腹もふくれる。






久しぶりの番外編いかがだったでしょうか?
次回、番外編を執筆するならもしかしたら天倉(♀)が登場する可能性もあります。

と言うわけで次回の更新(未定)もお楽しみに。





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本編
始まってばかりでこの始末


僕のヒーローアカデミア2期と仮面ライダーアマゾンズ シーズン2が始まったので思いつきで書きました。
初投稿なので悪い箇所などがあったらどんどん指摘してください。

後、作者は豆腐メンタルなので悪口はやめてください。いや、フリじゃないです。マジで

※作風を少し改善してみました。



始まりは中国のとある場所 軽慶市にて、【発光する赤児】が生まれたことであった。以降、各地で超常が発見され、原因も判然としないまま時は流れる。

 

いつしか【超常】は【日常】に【夢】は【現実】に。

 

それと共に世界総人口の8割が特異体質【個性】を持つ超人社会となった今、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びていた。

 

その名は『ヒーロー』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「どうしよう、ボールが池に落ちちゃった。」

 

「うーん、困ったなー。」

 

そこには二人の子供がいた。子供たちは先程までキャッチボールで遊んでいたが、池にボールを落としてしまったのだ。

仮にこの子供達をAとBとしよう。

この子供AとBはヒーローの真似事で技名を言いながら全力投球をし続けた結果、Bの「飛鳥文化アタックゥゥゥウウウ!!!」という掛け声と共に池にポチャンと落ちてしまったのだ。

流石に空中で回転しながら投げるのは無理があった。

 

こういう時こそヒーローの出番だが、そう都合よく近くにヒーローがいるわけでもなく、子供たちが諦めかけていた。

 

 

━━━その時、不思議なことが起こった。

 

「あれ?何だろうナニかがいる?」

 

「ほんとだ魚かな?」

 

池の中に大きな影が現れたのだ。

しかし、その影は魚というにはあまりにも大きかった。例えるならば人間サイズの影だ。するとその影はまるで某サメが襲ってくる映画のbgmがマッチするようにこちらに近付いてくる。

そして浮上してきたのだ。

 

そして音を立てながらソレは現れた。

 

ソレは体の所々に銀色をした鋭利な棘をもち、両手両足には鋭い爪、まるで刃のようなヒレが付いている赤い大きな吊り目をし、ボールを抱えた人間型の黒いトカゲだった。

そして子供たちはそのいきなり過ぎる光景に思考が停止していた。

 

「」

 

「」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

子供たちは何だコイツと思ったに違いない。

それと同時にそのトカゲ人間はトカゲというには大きい虫のような眼をもち、攻撃的なフォルムをしている為、下手な(ヴィラン)よりも怖いだろうそして何よりまだ、小学生である子供たちはそのトカゲ人間は自分たちを襲いに来た怪物にしか見えないだろう。

しかしトカゲ人間は善意で子供たちが池に落としたボールを拾ったのであって敵意はない。

そして

 

"グゥ〜〜〜〜”

 

と運悪くトカゲ人間の腹がなってしまう。トカゲ人間は腹をさすり溜息をもらし、ポツリと呟く

 

「はぁ・・・・・・お腹が減ったな・・・・・"肉が食いたいなぁ"」

 

「「‼︎⁉︎!?⁉︎‼︎‼︎⁉︎」」

 

その言葉を聞いてしまい、子供たちは最悪な未来を想像した、いや、してしまったのだ。さらに子供達の勘違いは加速する。

 

 

 

━━このままじゃあ確実に喰われる

 

 

 

そんなことも知らずトカゲ人間は子供たちにボールを返そうとする。

 

「あっ、これ君たちのボーr『ぎゃああああああぁぁぁぁぁあ⁉︎』えっ?あのボーr『ごめんなさいいいいいいいぃぃぃぃぃ‼︎』・・・・」

 

子供たちは逃げ出した。

その速さはあのターボヒーロー【インゲニウム】に匹敵する程だ。

 

ちなみに、将来その子供達はそのトラウマを乗り越え立派なヒーローとなるのはまた別の話だ。

 

 

そしてその場に残されたのは子供たちが池に落としたボールとソレを抱えたトカゲ人間である

 

"天倉 (あまくら) 孫治郎(そんじろう)"

 

は池から抜け出しそのままボールを地面に置いた後

個性を解除し、人間態になった後そのまま家の帰路へと歩んでいった。

その後ろ姿はまるでゴルゴム絶対許さないマンのEDが流れてくるかのように哀愁が漂っていた。

 

 

その後、無茶苦茶枕を涙で濡らした事は言うまでもない。

 

 

これは彼がヒーローになるまで腹を空かせながら四苦八苦する物語である。

 

 

 

 

天倉 孫治郎(あまくら そんじろう)

 

個性 【蜥蜴変身(トカゲメタモルフォーゼ)

 

見た目が怖いトカゲ人間に変身できる。筋力や聴覚、視力など身体能力が大幅に上がる。身体の一部分だけ変身できることもできる。

しかし、変身するたびにカロリーを消費する為すぐに空腹になってしまうぞ。

 

 

 

 




主人公である 孫治郎が変身したトカゲ人間状態の容姿ですが、仮面ライダーアマゾンズのアマゾンオメガオリジン(素体)を黒くした感じです。
例えるとアマゾンオメガのグローイングフォームと思ってくれれば幸いです。
因みにちゃんと(クラッシャー)はついています。

もし良かったら感想、評価をお願いします。


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第1話 やっぱり現実は甘くない

小説を投稿するのはまだ慣れないので読者の皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。

後、初心者なので続けられるのかどうか、とても不安です。

少し改善しました。


現実はそう甘くない。

うん、知ってた。そりゃあそうだよなぁ

俺こと天倉 孫治郎は個性を所持したとして良いことではないということを四歳で悟った。

人それぞれであり、性格のこともあるかもしれないけど、正直無個性の方が良かったと思うこともあった。

 

俺の個性は【蜥蜴変身】というものであり、全身もしくは身体の一部分だけを"トカゲのようなモノ"に変身させることができる。

 

そう、あくまでトカゲのようなモノであり、決してトカゲではない。トカゲにしては両腕両足からヒレのようなカッターがついており、背中にも魚のようなヒレがついており、眼もトカゲというより虫の複眼のように大きな瞳だ。

・・・・いや、コレ絶対トカゲじゃねぇよ。

因みにこのヒレのようなカッター《命名ヒレカッター》やら背ビレやら全体的な所はどうやら父さん譲りらしく、父さんも自分のように変身できるらしく、父さんの場合はトカゲではなく、ピラニアだったらしい。

いや、正確にはピラニアのようなモノだが。

 

 

俺の父親は天倉 大河(あまくら たいが)今年で45歳で動物学者をやっている。

個性は【鋸刺鮭変身(ピラニアメタモルフォーゼ)

ピラニア人間になれる個性で俺の個性のピラニアバージョンであり、20代の頃はワイルドヒーロー【フィッシュタイガー】だったらしい。ちなみに「何故魚なのに虎なの?」と聞くと、

 

「こまけぇことはいいんだよ!」

と返された。

どうやらうちの父さんは全く考えていなかったようだ。

と言うかただバカなだけだと思う。

ちなみに現在は海外に飛んで仕事しているらしく最近は帰ってきていない為、母親と共に暮らしている。

 

 

話を戻すが俺自身はこの個性はあまり好きではない。

父さんは個性は俺と似ているが性格はとてもワイルドであり自身の個性や悩みなどを抱えないタイプなのだ。だが、俺の場合はそうじゃない。

自分で言うのもアレなのだが繊細な所があると言うかガラスのハートなのだ。

体は剣でも心は硝子なのだ。

この個性のおかげで自分は周りの人達とイザコザがあり、中学生活ずっと現在進行形でボッチだ・・・。

だ、だが小学校では友達は・・・・あれ?手で数えるくらいしかいないぞ?

あれれ〜?おかしいなー目から熱い何かが・・・・・。

 

 

「おい!さっきから何してやがる!さっさとこっちに来い‼︎」

 

そして現実に戻ると俺は"腕から刃物を生やしている男"に捕まっていた。な、何を言っているか分からねーと思(ry

 

そして俺の目の前には

 

「くそっ!人質か!」

 

「迂闊に手を出せないわね・・・・。」

 

 

目の前には人気上昇中の若手ヒーロー【シンリンカムイ】とデビューしたての女性ヒーロー【Mt.レディ】がいる。

2人ともこちらを見据え、下手に動けない状態だった。

 

そして・・・・・・・。

 

「ハハハハハこれは困ったことになったね。」

 

と、隣で一緒に捕まっているネズミっぽい生物がこちらに話しかけてきている。何故ネズミ?と思ったがそんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。

現在進行形で俺とネズミっぽい人が何か怖い人に捕まってヒーローが手が出せない状態。

 

はい、どうみても人質です。ありがとうございます。

 

……いや、訳わかんないよ!なんかネズミっぽい生物が一緒に捕まっているんだけど⁉︎

さっきから愉快そうに笑っているし。何が面白くて呑気に喋ってんだ、この人(ネズミ)は⁉︎

て言うか紅茶どっから取り出したんだよ!

 

「いやー、こいつは大変なことになった。こっちは学校のことで忙しいのにまさか強盗に巻き込まれるとは君も災難だねHAHAHA」

 

「あのー、とりあえず犯人を刺激しないように静かにしてくれませんか?マジでお願いですから。呑気に紅茶飲んでる場合じゃあないですからね!」

 

「おっと、それはすまなかったね」

 

さっきからとても話が長くこれで15分は喋りっぱなしだ。よく息が続くな・・・。

いや、そもそも何でこの人はこんなに余裕があるんだろうか?

するとネズミっぽい人は次第にブツブツの何かを呟き始めた。

 

「HAHAHA、いやぁこうしてみると何だか昔のことを思い出すよ。あの時もこんな風に人間たちに色々なことをされてね。

・・・いやぁ、今じゃかなり懐かしい思い出に・・・・・・・・・・・・フフ・・・」

 

「(・・・・あれ?・・・何だか様子が?)」

 

ちなみにBボタンを押してももう遅いだろう。

すると隣のネズミっぽい生物がブツブツと何かを言い始めると

狂ったように笑い始めた

 

「フフフフ・・・HAHAHAハハハハハハハハハハハHAHAHAHAHAHAHAHAHAハハハハハHAHAHAハハハハハハハハハハHAHAHAハハハハハHAHAHAHAHAHAHAHAHAハーッハハハ‼︎」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁあ⁉︎

隣のネズミの人が壊れタァァァァァァァ⁉︎すいませーん‼︎俺よりもこの人(ネズミ?)を助けてあげてくださいいいい!ていうかめっちゃ怖いんですけどおおおおお‼︎」

 

「うるせぇぞ!ガキィ!黙ってろ‼︎」

 

「俺だけなの!!??」

 

こっち(ネズミの人)は⁉︎こっち(ネズミの人)はいいの⁉︎

どう考えても黙らすのはコッチ(ネズミの人)だろ!?

 

くそう‼︎俺が何をしたんだ!

昨日は個性を訓練するために変身した状態で池の中を泳いでいたら、子供たちが池にボールを落としたから、渡そうと思ったら逃げられるし‼︎

コンビニで買い物しようとしたら強盗に巻き込まれるし‼︎

なんか現在進行形で隣で笑っているネズミがいるし‼︎

 

━━なんて日だッ!!!

 

「待ちなさい!そして人質を解放しなさい!」

 

 

と、思っていると新しいヒーローがやってきた。

・・・・やってきたのだが、まずそのヒーローはまず女性だ。

しかし、最初に目に付くのがその格好である。その格好はまるでSM嬢のような過激なコスチュームに身を包んでおり、胸部分を含め肌色の極薄タイツを着用している。

この世の中で早々お目にかかる事はないだろう。

 

まぁ、つまり何を言いたいのかと言うとですね。

 

「(へ、変態だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎)」

 

 

そのヒーローは18禁ヒーロー【ミッドナイト】だ。女性ベテランヒーローなのだが・・・・・。コスチュームがなんと言うかギリギリセーフと言うかどうみてもアウトだ。

よくこんなコスチュームが認められたな。もっと別のがあっただろうに、しかしこれでももっとマシな部類と言うのが恐ろしい所だ。

デビュー当時はこれ以上にもっとアカンコスチュームだったのだ。

 

見た目がエロい為、男の人にはかなり人気のヒーローだ。だが俺はそっちの趣味は無い。変態な人はタイプじゃない。

 

ちなみに彼女が30代だと言うのは秘密だ(秘密になっていない)

 

いや、変態に見えるがミッドナイトはしっかりとしたヒーローだ。18禁ヒーローと呼ばれているが。あくまで正義の味方だ。

・・・・・・正義の味方だ(震え声)

 

 

しかし、腕から刃物を生やしている敵、苦戦しているヒーロー二人、狂ったように笑っているネズミ。そして新しく現れたアブナイ格好をした痴女のようなヒーロー・・・・・・・・。

 

 

何だこの混沌(カオス)な空間は⁉︎

 

 

「はっヒーローが増えたとしても関係ねぇ!俺の個性は【全身刃物】!全身の至る所から刃物を出すことができるお前らが怪しい動きをした瞬間こいつらは一瞬で八つ裂きだ‼︎」

 

「くっ、人質がいるとやっぱりやりにくいはね・・・・・って校長⁉︎何で捕まっているの⁉︎て言うか何でそんなに余裕n・・・・あ、余裕じゃないわね」

 

・・・・・・・・え?まさかの知り合い?

このネズミっぽい人とミッドナイトが?・・・・・マジで⁉︎

て言うか、校長って?このネズミっぽい人?が?

 

・・・・・・何この展開、訳が分からないよ・・・。

類は友を呼ぶってか?

というかいい加減ネズミっぽい人の笑い声で犯人がブチギレそうだし。

 

「〜〜〜〜〜〜〜っ‼︎さっきからうるせぇぞこの犬っころ‼︎」

 

 

あれ?この人って犬なの?まぁ、確かにそう見えるけど・・って今はそんなことどうでもいい重要なことじゃない。

今、犯人の意識がネズミっぽい人にずれた、隙ができている今しかチャンスはない!

 

喰らえ!なんか狐っぽい女の人に教わった奥義【一夫多妻去勢拳‼︎】

 

一夫多妻去勢拳とはとりあえず金的に蹴りをかます技である。

そして、足が敵の股間にめり込み、敵の顔の色が青くなり拘束する力が緩んだ。

・・・・何か変な感触だったが気にしない。とりあえず俺は強盗犯からすぐに離れて━━ってオイ、シンリンカムイ!なんでアンタまで股間を抑えているんだよ!

強盗犯に同情なんて良いよマジで!!

 

まぁ、良い。すぐにここから離れよう。ここに居てもヒーローの邪魔になるだけだ。

 

「っ!よしっ!今の内に早く離れましょう!」

 

と俺がネズミっぽい人に声を掛けるとその当人であるネズミっぽい人は

 

「ハハハハハHAHAHAハハハハハハハハハハHAHAHA」

 

「」

 

まだ笑っていました。

何なんだよ⁉︎なんかトラウマスイッチでも入ったのこの人(ネズミ)⁉︎

っていうか笑ってないで逃げろよ!

確かにコレ余裕じゃないわ。アカンヤツだわ。

 

「っ!!テ、テメェ!!よくもやりやがったな!!!俺に楯突いたらどうなるか見せてやるよぉ!」

 

「‼︎」

 

俺が心の中でツッコミを入れていると、敵は全身に刃物を生やし、標的を俺・・・・ではなく、近くにいるネズミっぽい人に標的を変えたのだ。

 

 

そう、俺の軽率な行動で周りの人に危害が及んでしまうのだ。

 

 

 

そして俺は後悔した、俺のせいでこの人が、傷ついてしまう。

また、俺のせいで周りの人達を傷つけてしまう。

また中学の最初の頃のように周りの人達を傷つけて勝手に一人になってしまうのだ。

 

・・・・あぁ、クソ。何でこんな時にトラウマなんて思い出すかなぁ。

 

 

俺は高校生になったら"個性"を使わない人生を歩んでいくと決めていた。せいぜい俺の"個性"は人がいないとき、自分が一人になったときぐらいにしか使わないと決めていた。

 

どうして俺はこんなことを考えているんだろう、どうして俺は無意識に走り出しているのだろう。きっと"俺の中の俺"はこの時を待ちわびていたんだろう。今まで傷つけることしかできなかった個性を誰かの為に、誰かを助ける為に使う時を、

 

俺はそのまま個性を発動し、全身に刃物を生やした敵がネズミの人に刺そうとしている刃物だけを狙い、腕のヒレ状カッターで斬り落とした。

 

「⁉︎」

 

「「「なっ⁉︎」」」

 

その場にいた全員が驚いた。驚くのも無理はない。俺だって驚いている、今こうやって初めて人を傷つけるしかできなかった個性で人を助けることができたのだから。

 

・・・・いや、違うか。単に俺が個性を発動している状態の姿に驚いているだけか。

 

「なっナニィ⁉︎お、俺の刃を斬り落としやがっただとぉ〜⁉︎ ざっけんじゃねぇぞ!このエイリアンもどきがぁ‼︎」

 

と敵か全身に刃物を生やし襲いかかってくるが、俺はあえて動かず、敵の刃を受け止める。

って言うかエイリアンもどきって酷いな。俺は人は襲ったりしないぞ。

 

「なっ⁉︎」

 

ただし、俺に危害を加えるヤツ以外にだが。

そしてそのまま力任せに一本背負いの要領で相手を地面に投げつける‼︎

 

「ぐぅっ⁉︎」

 

そのまま敵は気絶し、個性が解除されるように全身から刃物が引っ込んだ。そして、全身に刃物が刺さりまくった俺は軽く血を流しながら敵に気絶しているにも関わらずこう言った。これだけは言っておかなければならない。

 

 

 

「正義は勝つ・・・・俺の近くにいたお前が悪い」

 

 

俺はそう犯人に向けて言った。

しかし何故だろうか、周りの人達は俺に対して何か怯えたような目をしているのだが・・・・気のせいだろうか?

 

 

※言動共にどう考えても敵にしか見えません。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

その後、敵は警察に確保され何事もなく、連行されていった。

そして勿論俺は、ヒーロー達に注意された。

だが、不思議と俺の心は軽かった。

俺はやるべきことをやり終えたと思ったのだ。もうこのまま最終回でもいいんじゃないかという位の気持ちだった。

 

「さっきはありがとう。おかげで校長も助かったわ」

 

「いやぁ、迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない」

 

「あぁ、いいですよそれくらい。ところで・・・・えっと・・・」

 

と感傷に浸っているとそこに18禁ヒーローのミッドナイトと先程まで俺と一緒に捕まっていたネズミっぽい人が感謝を述べてきた。

 

「おっと、失礼したね。私の名前は根津。ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は

━━━雄英高校の校長さ」

 

「は、はぁ・・・・・は⁉︎」

 

名前を【根津】というらしい。そして更に驚いたことがある。

それは何と、根津さんはあの【雄英高校】の校長先生だったのだ。

と言うかこんなフワフワした感じのカワイイ生き物が校長をやっているのかと逆に関心してしまった。

 

すると根津さんが口を開く。

 

「君、何歳だい?」

 

「え?15ですけど・・・それが何か?」

 

「ふむふむ、成る程・・・・それじゃあ、雄英高校に来てヒーローを目指してみないか?」

 

「は・・・・・え!!?」

 

根津さんは信じられない事を言ってきた。しかし自分なんかがあの雄英高校に合格する自信など無い。不合格が目に見えている。

 

「えっ・・・いや、でも・・・・。」

 

「大丈夫。あなたの個性なら諦めずに頑張れば合格できるはずよ。」

 

「・・・・・・・。」

 

ミッドナイトさんは俺をフォローしてくるように励ましてきた。

本当に俺なんかが・・・・?

・・・・俺は根津さんに質問する。

 

「えっと・・・・根津さん」

 

「何だい?」

 

 

 

「こんな"個性"の俺でも・・・・・誰かの役に立てるヒーローになれますか?」

 

 

すると根津さんは少し間を空けた後、ニコリと笑い当たり前のように答える。

 

 

「ああ、勿論さ。

だが、なれるかは君次第だよ。真に大切なのは自分がヒーローになりたいと思う気持ちなのさ。」

 

 

・・・・・これからやるべきことが決まった。

目指すべき場所を俺は見つけたのだ。

 

すると急に空気の読めない音が自分の腹からしたのだ。すると根津さんが再び口を開く。

 

 

「さあ、どうやら君がするべきことは決まったようだ。だから、明日の為に今はそのからっぽの身体にエネルギーを蓄えないとね。」

 

と、根津さんは笑って言う。そして俺も笑ってこう返す。

 

 

「俺、雄英に合格します!そして、この個性で誰かの為に役に立つことができるようなヒーローになって見せます!」

 

そう言って俺は家に向かって帰るのだ。明日から始まる目標のために

 

 

 

そしてその場に残った根津はミッドナイトに話しかける

 

「彼は果たしてヒーローになれるのかどうか・・・・ ・実に楽しみだ。待っているよ、天倉孫治郎くん。」

 

 

 

 

これはビビリで常にツッコミ役に回りで意外と度胸のある彼が本当のヒーローになるまでの物語

 

そして、

彼は忘れていた。個性を解除することを。

 

 

「いや、違うんです。その、個性を使ったまま解除するのを忘れていて、敵じゃないですよ!見た目アレですけど!いや、その・・・・・すみませんでした。」

 

「ああ、うん。わかっているけどね、個性の無断使用も禁止されているからね。」

 

この後、無茶苦茶 職務質問を受けた。

 

 

そして彼は学んだのだ。

 

 

やっぱり現実は甘くない

 




孫治郎ですが、彼の性格は臆病で傷つきやすいガラスのハートの持ち主です。その彼が成長するのを見守ってください。

やっぱりギャグが性に合っている気がする。

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第2話 やっぱり神様は俺の事が嫌いなんだろう。

感想ありがとうございます。感想は作者にとっての栄養源です。
皆様に楽しんでいただけるように頑張りたいです。


「準備できた?できたなら、試験会場に行って合格してくるんだよ!」

 

「うん!絶対に俺、合格してみせるよ……多分。」

 

 

俺がヒーローとなる目標ができて、7ヶ月が過ぎた。

あの日から色々あった。入試に絶対に合格する為に苦手な勉強を頑張り、実技試験の為にもスポーツジムに通い続け、山籠りを兼ねて師匠に様々な身体の鍛え方を教えてもらった。

 

最初は偏差値が79もあり、倍率300のマンモス校なんて絶対に無理だと思っていた。

と言うか、今になってなんで雄英を目指そうとしたのだろう。と疑問に思ってしまった。

 

そもそも俺はそこまで頭が良いわけではなく、どちらかと言うと平均辺りだったので諦めかけていたが、血が滲む努力の末にここまで来たのだ。

長かった、実に長かった。ここまで来たなら後は悔いが残らないように全力でやるだけだ。

 

「行ってきます!」

 

そう言って俺は、

 

 

ガッ←つまづく

 

ゴッ!←頭を強く打ち付ける

 

ゴロゴロゴロゴロ←その場で痛みに悶え苦しむ

 

「………うん。元気があっていいんじゃないの?」

 

 

このザマだよ。ちくしょう!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ここが、雄英高校の試験会場か……」

 

 

俺は今、試験会場の門前に立っている。今も足がガクガクと震えている。そして俺は、深呼吸して精神を統一している。やっぱり最初の一歩が肝心だ。試験当日に転ぶなんて縁起が悪すぎる。

 

……え?さっき転んだって………ナンノコトデショウカ?

 

「よしっ!」

 

と、言い俺は改めて一歩を踏み込んだ。

 

そして気づかなかった。背後から箒に乗った魔女っ子風の金髪の女子学生が突っ込んでくるのを。

 

 

━━ドゴォッ!

 

 

「あっ!悪い!ちょっと急いでいるんだぜー。」

 

俺は思った。何故箒?何故魔女っ子?何故突っ込んだし?

俺は後頭部を抑えながらそう思った。

しかしそれ以上に神が俺を見放したのを悟ったのだ。

 

痛い、背中がまだ痛む。どうして俺はこんなにも運が無いんだろうか。と思っていると、何やら会話が聞こえてきた。

 

<どけデク‼︎俺の前に立つな‼︎殺すぞ!

 

<か、かっちゃん!

 

知り合い、もしくは友達だろうか?緑色の癖っ毛の男子学生と顔が怖い男子学生が話している。ボッチの俺には無縁な光景だ・・・。

悲しくなってきた。

 

しかし、あの"かっちゃん"と呼ばれた男子学生はかなり嫌な人物だとわかる。あのような知り合いは作りたく無いな。

と呑気に眺めていると、黒髪のボサボサしたなんか小汚い人が出てきた。

 

「ハイハイ、受験生は並んで。適当でいいから早くな、時間の無駄だ」

 

と、黒髪の人が言うと、緑髪の癖っ毛の男子学生が物凄いスピードで並んだ。

 

「前に立つなって言っただろうが‼︎」

 

「はい、お前うるさいぞ帰らせるぞ」

 

「ぐっ………」

 

顔が怖い男子学生が悔しがっていると、緑髪の癖っ毛の男子学生はかなり嫌な顔をしていた。

………こっちも嫌な人物でした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

受験会場待っていると。そこに、金髪のDJ風な人物が現れた。その人物はボイスヒーロー【プレゼント・マイク】だった。

 

 

『今日は俺の入試(ライブ)へようこそー‼︎エヴィバディセイヘイ‼︎』

 

よし!ここは好印象を持ってもらうために大きな声で返事をしよう!

 

「「HEY‼︎」」

 

 

と、返事をしたのは俺を含めてたった2名だった。

 

………ああああああああああああああああああああああああ‼︎

すっごい恥ずかしいいいいいいい!なんで返事しないんだよしろよ‼︎やったこっちが馬鹿みたいじゃないか‼︎

 

って言うか俺と同じく返事をしたメガネの人オオオオオオオ!こっち見んな!バレたらどうすんだよ!

 

いや、だがさすがに他の学生達は学習しただろう。こう言った場面では挨拶が大事だと言うことを!

 

次こそ必ず!

 

『実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!アーユーレディ?』

 

「「イエス!アイム!レディ!」」

 

 

…………殺せ!殺してくれ!頼むからそんな目で俺を見ないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 

 

そしてそのまま実技試験の説明を受け、俺は実技試験の会場に移動した。

そして周りの学生達から温かい目をされながら。

やめてくれ、もう俺は満身創痍だ・・・。俺がうなだれていると、

 

『ハイ、スタート!』

 

 

……………え?

 

『どうした⁉︎実戦じゃカウントなんざねぇんだよ‼︎走れ‼︎走れぇ‼︎』

 

……………………………え?

 

『賽は投げられてんぞ‼︎』

 

……………えええええええええええええええ⁉︎マジで⁉︎早くね⁉︎急すぎるんだけどおおおおおおおおおお⁉︎

 

「ああっもうっ!やってやる‼︎お゛お゛お゛お゛ッ!!」

 

と、俺は個性を発動し、ビルの壁によじ登る。そして、ビルの頂上から俺は個性の一つである【ピット器官】を使う。

 

【ピット器官 】

別名赤外線感覚器官とはヘビやトカゲが持つ器官であり、

熱によって獲物を見ることができるサーモグラフィーの様なものである。

 

ピット器官によって敵の位置を確認。そして、そのまま奇襲を仕掛ける。

個性を使った状態の腕力、握力ならば鋼鉄を引き裂くことは容易だ。だか、時間は有限だ。なるべく一撃必殺で敵を仕留め次の敵を探さなければいけない。その為狙うのは装甲の隙間にある関節部分を切り裂き、行動不能とする。これが理想だ。

 

ザシュッ!!

 

敵の関節部分を切り裂くと、機械は動かなくなった。

 

(よし!次の敵は………?)

 

辺りを見渡すと、敵に囲まれている赤髪の男子学生がいた。

どうやらポイントが低い敵らしいがかなり苦戦しているようだ。

ここでは普通、ポイントの低い敵ならばもっと強い敵を探し見捨てるのが妥当だ。

 

しかし、俺は例えこれが試験だとしても見捨てることはできなかった。ヒーローになる者として、それ以上に自分が見捨てるのを許さなかった。

 

俺は敵に近づくと敵の背後からボディの隙間に腕を無理やり入れ、動力源であろう機械を引き千切った。

そして敵の機械はそのままガシャンと音を立てながら動かなくなった。

 

「うおっ!びっくりした。サンキューn━━ってうおっ‼︎なんだコイツ‼︎(ヴィラン)か⁉︎」

 

やめてくれ。その言葉は俺に効く。

そのまま俺は八つ当たり気味にその場にいた敵を殴る、蹴る、裂く、バラバラにした。

 

…………結局、心は変わっても、周りの反応は同じか。

 

「サンキューな!助けてくれたんだろ。男らしいぜ!お前‼︎」

 

この人メッチャいい人だ!絶対に主人公タイプだよこの人‼︎友達になってください。お願いします‼︎

 

え?手の平返し?ハハハーナンノコトカワカラナイナー

 

と、そんなこと言っている暇はない。残念だけど、次の敵を探さなければならない。

 

 

━━ズゥン……

 

━━ズゥン

 

━━ズゥン!

 

━━ズゥン!!

 

 

すると、大きな地響きがした。上を見ると、そこには規格外な大きさをした。敵がいたのだ。コイツが0pの敵だ。

 

 

 

 

…………………………うん。無理だな。

 

 

絶対に倒せないよコイツ!なんだよ!

金の使い方絶対に間違っているだろ!コイツを壊されたら予算会議荒れるぞ!

倒せる奴が居たらの話だけど‼︎

※後に壊した奴とクラスメイトになる

 

こんなのを目の前にしたらどんな人間でも行動は正直になるぞ!

 

 

「無課金の帝王とか自称してたけど、隠れて課金してました‼︎」

 

「みつるくんのこと蹴ったりつねったりしてたのはホントは好きだからです‼︎」

 

「父さんのスマホでよくエロサイト見てます‼︎」

 

「隣の娘のイスの匂いを嗅ぎました‼︎」

 

違う‼︎そうじゃない‼︎いや、確かに正直になるって言ったけど、そうじゃないからね!

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁあ助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「まだ死にたくねえええええええええええええええ‼︎」

 

「ママーーーーーーーーーーーー‼︎」

 

何人もの助けを求める声が聞こえる。たくさんの受験生が0p敵が壊した建物の瓦礫によって動けなくなっていたのだ。

 

「なっ⁉︎逃げ遅れた人が⁉︎あのままじゃまずい‼︎死ぬなんてシャレになってないぞ‼︎」

 

俺は一刻も早く逃げ遅れた受験生たちを助ける為に走り出した。俺が近づくにつれて受験生たちはパニックになっていく。

 

シャアアァァァァァァァァァァァッ(今助けるぞおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ)!!!」

 

「うわああああああくるなああぁぁぁぉぁぁぁあ!」

 

「助けてお願いしますなんでもしますからあぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

「ガクガクガクガクガクガクガクガクブルブルブルブルブル」

 

「おばあちゃん今すぐにそっちへ行きますね……」

 

くそっ!ここまで怯えているなんて、将来、ヒーローになるのならもっと落ちついた行動をしないといけないだろうに。

とりあえず受験生たちを挟んでいる瓦礫などを持ち上げる、切り裂くなどをして撤去しよう。

 

「よっ………と、これで大丈b」

 

「うわあああああああにげろおおおおおおおおお‼︎」

 

「ごめんなさいいいいいいいぃぃぃぃぃ‼︎」

 

…………え?もしかしてこの人たち、0p敵に怯えていたんじゃなくて、俺に怯えていたの?

………………ガチで泣いていいですか?

あ!いや、泣いている場合じゃない!早く一つでもポイントを!

 

『試験終了〜〜!』

 

ああクソ!終了か!でも、ある程度の敵は倒せたはず………あれ?俺、敵10体も倒せていない?

 

い、いやまだだ、まだ慌てるような時間じゃあない。

倒した敵が全員3pならば、まだ希望が………あれ?確か赤髪の男子学生を助けたとき、ほとんどの敵が1pだった気が……。

 

…………あれ?ダメじゃねコレ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜一週間後〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「まだうなだれているの?大丈夫だって!孫治郎なら大丈夫だって。」

 

「いや、流石に無理だよ。………あぁ、もうダメだ、おしまいだ。」

 

「大丈夫大丈夫。絶対に合格してるって」

 

「根拠は?」

 

「ん?ないよ、そんなもん」

 

 

ですよね、ちくしょうめ‼︎ああ、せっかくヒーロー目指して努力したって言うのに、こんな結果って…………。

あぁ、鬱だ、死にたい。よし、死のう。

 

「あ、そうそう、孫治郎に伝えたかったことがあるんだけど。」

 

「なに………?これから俺、練炭用意しなきゃならないんだけど」

 

「雄英から封筒きてるよ」

 

 

「へぇ………………」

 

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

 

「いや、それ先に言ってええええぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!??」

 

マジで⁉︎い、いやおおおおお落ち着けと、とりあえずもちつけ、ま、まままずはぐ、偶数を数えるるるんだ。あれ?素数じゃなかったか?

 

「とりあえずさ、後は自分を信じるだけだよ?」

 

「!…………うん。」

 

そうだ、ここまで来たなら、後は腹をくくるだけだ。

母さんは、俺の為に料理や家事をやってくれた。

そして、今はいないが父さんは帰ってきた時に、格闘技を教えてくれた。なぜ父さんが格闘技の心得を得ているのかはわからない。

 

俺は両親の為、何より自分のためにヒーローになりたいのだ。

 

とりあえず封筒の中身を出した。普通、封筒の中には合格に関する通知が入っている筈なのだが、

 

「………何だこれ?」

 

入っていたのは変な機械らしきものだった。

………いや、ホント何だこれ?雄英が間違って送ってきたのか?

と、思っているとその機械から急に映像が流れた。

 

『わたしが投影されたぁ!』

 

「⁉︎‼︎⁉︎⁇⁈⁉︎」

 

ズコォーン!←ひっくり返った。

 

「オ、オオオオールマイトォ⁉︎」

 

『ハーッハッハッハ‼︎驚いたかい?天倉少年‼︎』

 

そりゃあ驚くよ!まさか、一人一人に映像で合否を発表しているのか?

 

『そう!その通り!わたしが一人一人にこうやって合否を発表しているんだ。』

 

こ、心の中読んできやがった………。

 

説明すると、実技試験中、人助け、正しいことをした人間を排斥するのはヒーロー科にあってたまるか、と言うことらしく隠しポイントとして【レスキューポイント】があり、その分のポイントが加算されると言うのだ。

 

そして、俺のポイントは

 

 

天倉 孫治郎

 

ヴィラン 9ポイント

レスキュー 49ポイント

合計 58ポイント 9位

 

 

 

 

 

俺はヒーローへの一歩を踏み出せたのだ。

 

 

「やったじゃん。」

 

「!………母さん!」

 

母さんはいつもの様に軽い感じだったが、気のせいだろうか母さんが泣いている様な気がする。

………泣きたいのはこっちだって言うのに………。

 

「それじゃ、雄英に行く準備をしないとね」

 

「!………うん」

 

ありがとう、母さん、父さん、そして、ここまで僕を導いてきてくれた神様、ありがとう。

 

僕は早速コスチュームを学校に要望するため、デザインを考えることにした。俺はもう、雄英高校の生徒、否 ヒーローの卵なのだから。

とりあえず俺はノートを取り出し、

 

 

ガッ←つまづく

 

ドサッ!←すっ転ぶ

 

バサバサバサ←本棚から本やノートなどが落ちる

 

ドゴォッ‼︎←本棚自体が倒れる

 

 

 

訂正。やっぱり神様は俺の事が嫌いなんだろう。

 




ここで天倉の両親の紹介をしておきます。


天倉 大河 (あまくら たいが)
年齢 45歳
個性 【鋸刺鮭変身(ピラニアメタモルフォーゼ)
人間型のピラニアに変身、もしくは身体の一部を変身することができる。孫治郎の個性と似ている。変身した時の姿は全身が赤く、所々に緑色の傷があり、緑色の大きい垂れ目をしている。

動物学者であり、よく海外出張しており家に居ることが稀な父親。
かなり野生的な性格をしており、料理や家事洗濯が苦手で、食材を生のままで食べることを好む。
20代の頃はヒーローをやっており、ワイルドヒーロー【フィッシュタイガー】を名乗っていた。しかし、とある事故によってヒーロー稼業を引退した、と言っている。
後輩のヒーローに【ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ】を持ってる。





天倉 絵音(あまくら えね)
年齢42歳
個性【エネルギー変換】
運動した分のエネルギーを火、電気、風などに変換することができる。かなり万能な個性。孫治郎は個性はこっちの方が良かったと、いつも言っている。

性格はかなりノリがよく、夫の大河とは知り合ってから意気投合し、そのまま結婚という形になった。料理、家事全般をよくこなし、息子の孫治郎に一人でも生きていける様に料理や家事をよく教えている。

個性に対してコンプレックスを持っていた孫治郎を心配していたが、ヒーローになる目標を志した孫治郎に対して、「よかったよかったそれじゃガンバ。」という具合にノリが軽い返事をしたが、心の奥底から孫治郎の目標を信じる様になった。



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第3話 クラスのチェンジってできますか?

感想ありがとうございます!
この小説はまだまだ改善する点があり、この先の展開やヒロインもまだ悩んでいるのでアドバイスを貰えると嬉しいです。




やばい、どうしよう……。

 

俺は雄英高校の制服を身に纏い、見慣れていない廊下を歩いている。

しかし、いま現在俺はとある問題に直面していた。

 

「何処が教室なんだ?」

 

がっつり道に迷いました(笑)

いや、雄英高校なめていたよ、ここまでの規模だとは思わなかった。

確かにマンモス校と言われていたけどさ………マジでどうしよう。この歳になって迷子っていうのは相当恥ずかしいぞ。

 

「ねぇ、君どうしたの?」

 

「⁉︎」

 

振り向くといつの間にか背後にオレンジ色の髪の毛でサイドテールの女子がいた。

………というかいつの間に?

 

「もしかして、君もBクラス?」

 

「え⁉︎………いや、Aクラスだけど」

 

彼女は"君も"と言ったからもしかしてBクラスなのだろうか?だとしたら何故ここに?

 

「あれ?Bクラスはここであっているけど、Aクラスはあっちだよ………もしかして迷った?」

 

「………ハイ」

 

やばい、ものすごく恥ずかしい。よりによって女子に迷子だったことがバレたなんて。………やばい。死にたい。というか、ここ、Bクラスだったんだ。

つーか扉でかスギィ‼︎

 

「あ、そうなんだ。確かに雄英って結構広いから、迷うのは仕方ないかも。Aクラスはそこをまっすぐ行けばあるからね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

この人、メチャクチャいい人だ!実技試験のときの赤髪の人並にいい人だ‼︎この人と一緒のクラスだったらよかったのに!

 

「私、拳藤 一佳 って言うんだ。違うクラスだけどよろしく」

 

「あ、俺の名前は 天倉 孫治郎 です。よ、よろしくお願いします?」

 

「あー、そんな緊張しなくていいけど、もうちょいフレンドリーにできない?それじゃ」

 

…………気付いてしまった。

久しぶりに声を掛けられた‼︎

しかも女子に‼︎"中学三年間ボッチ"だった俺が‼︎

 

俺は期待した。このままいけば普通に友達できるのではないか?

新たな人生の一歩を踏み出せるのではないか?

素晴らしい‼︎これが雄英‼︎ これがヒーロー科‼︎

 

「いや、でも扉デカすぎない?なんで5メートルもあるの?」

 

流石に扉が大きいのはどうなのだろうか?バリアフリー?そこまで身体が大きい先輩がいたのだろうか?

………どんな人たちがいたんだ?

 

世紀末覇者?

山のフドウ?

アンドレアス・リーガン?

ザンギエフ?

諸星きらり?

 

………そんなクラス想像したくねぇ。地獄絵図じゃねぇか。

取り敢えず、さっさとクラスに入るとしよう。基本的にヒーロー科はいい人たちばかりだと思う。流石に初日から問題を起こしている輩はいないだろう。

 

ガララッ

と教室の扉を開けると。そこには

 

 

「机に足をかけるな‼︎雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか⁉︎」

 

「思わねーよ、てめーどこ中だよ端役が!」

 

 

ピシャッ!

 

………うん。チェンジで。

 

やべーよ。いたよ初日から問題起こしているヤツ。

ていうかアレ試験会場の入り口で見たヤツだ。絶対ヒーロー向きじゃないよ。どっちかいうと敵にむいているよ。

 

と、俺は混乱していると。後ろにいた人物に気がつかなかった。

 

「あのー……?」

 

「⁉︎」

 

いつの間に背後に⁉︎………あれ?デジャヴ?

よく見たら、この人もさっきの人と一緒にいた緑髪の癖っ毛の学生だった。

 

「あ、あぁごめん。ちょっと驚いていたからさ」

 

「そ、そうなんだ」

 

と、言いながら緑髪の学生が扉を開くと。

 

 

「くそエリートじゃねぇか。ぶっ殺し甲斐がありそだなぁ。」

 

「ぶっ殺し甲斐⁉︎君ひどいな本当にヒーロー志望か⁉︎」

 

緑髪の学生は固まった。

ですよねー。っていうかぶっ殺し甲斐って………。予想以上にクレイジーな学生じゃないですかやだー。

マジでクラスをチェンジしてくれないかなぁ………。

 

と、思っていると。クレイジーな………口が悪い学生と揉めていたメガネの学生がこちらに寄ってきた。

 

「俺は私立聡明中学の………」

 

「聞いていたよ!あ………っと僕の名前は緑谷。よろしく飯田くん」

 

「あ、俺の名前は天倉 孫治郎だよ。よろしく」

 

ふむ。緑谷くんに飯田くんか。悪い人ではなさそうだし。なんか仲良くなれそうだな。特に緑谷くんとは同族の匂いする。

 

「よろしく頼むぞ。二人とも。ところで緑谷くん……君は、あの実技試験の構造に気づいていたのだな」

 

ん?気づいていた?………もしかしてレスキューポイントのことなのか?………確か、緑谷くんはレスキューポイントだけで合格したんだよな。だとしたら凄いな!

 

(へぇ、緑谷くん凄いんだね。俺とは大違いだよ。) ヒソヒソ

 

(いや、僕は気づいていなかったよ⁉︎たまたま運が良かっただけで。)ヒソヒソ

 

アレ?そうなのか。だとしてもレスキューポイントだけで合格は凄いことなんだよなぁ。

飯田くんは勘違いしているけど。

 

「あ!そのモサモサ頭は‼︎ 地味めの‼︎」

 

二人と会話していると、後ろから茶髪のフワフワした雰囲気の女子が声をかけてきた。

 

いつの間背後に⁉︎ってコレ何回目だよ‼︎何回背後取られているんだよ!

でもまぁ、この人も優しそうだから仲良くなれそうだけど。

 

…………しかしさっきから気になっていることがある。緑谷くんと飯田くんと会話している間から後ろから視線を感じていたのだ。

そしてこの女子が話しかけて、振り向くことができたので視線の正体を知ることができたのだか。

 

 

 

ジーーーーーッ

 

 

 

……………なんかいる。

なんか寝袋に入ってこちらをガン見している小汚い人がいるんですけど⁉︎

え⁉︎誰も気づいていないの⁉︎なんか怖いんですけど⁉︎まさか俺にしか見えていないってオチ⁉︎幽霊⁉︎いや、どんな幽霊だよ‼︎なんか片手にゼリー飲料取り出しているし⁉︎

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。」

 

『』

 

「ここは、ヒーロー科だぞ。」 ヂュッ!

 

しゃ、喋ったあぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎………

いや、人間だから喋るか。普通に。え?もしかして先生?担任の?………せめて担任の先生じゃありませんように。

と、俺が心の中で思っていると。それを無視するかのように、その人は喋り続けた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限君達は合理性に欠けるね。」

 

(((( 先生⁉︎ ))))

 

やっぱり⁉︎………ってことはこの人もプロヒーローなのか?雄英高校の先生は全員プロヒーローって聞いたけど。

でも俺はそこまでヒーローに詳しくはないからな………。

 

「担任の相澤 消太(あいざわ しょうた)だ。よろしくね」

 

担任だったー‼︎やっぱりかよちくしょう‼︎しかもとても面倒くさそうな人だし!

 

と、ツッコミを入れていると、相澤先生は寝袋から何かを取り出した。それは雄英高校の体操服だった。

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

 

体操服?なんで入学式は?ガイダンスはどうなるんだ?

どうも嫌な予感がするな………。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

『個性把握テストォ⁉︎』

 

やっぱり、嫌な予感は的中してしまった。

 

「入学式は⁉︎ガイダンスは⁉︎」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ。」

 

俺の疑問を茶髪の女子が代弁してくれたが相澤先生に一蹴されてしまった。

相澤先生はそのまま話を続ける。

 

「雄英は"自由"な校風が売り文句そしてそれは"先生側"もまた然り。」

 

『…………?』

 

いや、それってどうなんだ?みんなが困惑しているぞ。

全員がどういうこと?って顔しているぞ。

 

相澤先生は困惑している全員を無視し、口の悪い学生・・爆豪くんに声をかける。

個性を使ってのソフトボール投げだ。確か爆豪というと、実技試験で1位をとった猛者だ。しかもレスキューポイントが0でだ。

………性格がアレだが、凄い人物には間違いない。

 

爆豪はソフトボールを持ち、投げると同時に個性を使用する。

 

「死ねぇ‼︎‼︎」 FABOOOOOM‼︎‼︎

 

俺を含む全員は心の奥底から思っただろう。

………死ね? どんな掛け声だよ?・・と。

しかし、爆豪くんの投げだボールは驚くほど距離を伸ばした。

 

「まず、自分の【最大限】を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

爆豪 勝己 705.2m

 

「なんだこれ‼︎すげー面白そう‼︎」

 

「705mってマジかよ」

 

「個性思いっきり使えるんだ‼︎さすがヒーロー科‼︎」

 

なるほど8種目の個性ありのテストによって自身の個性の限界を知ることによって自分が今どれくらいのレベルなのか、自分がどれほどの成長の余地があることを知ることができる。

 

これはチャンスかもしれない。通常できないことを相澤先生は用意してくれた。このことに感謝しなければならない。

 

クラスのチェンジなんてとんでもない。これはヒーロー科Aクラスに与えられた。ヒーローになる為、誰よりも一歩手前に進むことができるチャンスなのだ。

 

「………面白そうか。」

 

「ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

『⁉︎』

 

おや?相澤先生の様子が………。

 

「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し【除籍処分】としよう。」

 

 

 

 

……………え?

 

は、はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎

マジで⁉︎除籍処分ってあの除籍処分⁉︎

相澤先生はいい表情で言う

 

 

「生徒の如何は先(俺たち)の"自由"」

 

 

「ようこそ、これが【雄英高校ヒーロー科】だ。」

 

 

相澤先生はチャンスと一緒に大試練も与えてきたのだ。

 

 

 

 

すみません。やっぱりクラスのチェンジってできますか?

 

 




他作品のキャラを出すといっても多くは決まっていないので、どうすればいいのだろうか?

よろしければ感想、評価をお願いします。

………いっそ読者から案をもらうという方法も。


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第4話 止めてくれ先生その言葉はオレに効く


仮面ライダーアマゾンズシーズン2 が予想の数十倍エグかった。特に目玉のシーンはトラウマになりそうでした。流石にこの小説でそこまでのエグさは書けないと思います。

感想ありがとうございます。楽しんでいただけるよう頑張りたいです。


 

 

「最下位除籍って・・・・!入学式初日ですよ!いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」

 

そういったのは麗日お茶子さんだった。相澤先生の一言によって俺を含む生徒全員は戸惑うばかりだった。

当たり前だ。いきなり除籍処分なんて文句を言うに決まっている。誰だってそーする俺もそーする。

 

だが、相澤先生は答える。

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵たち。いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれている。そういう理不尽《ピンチ》を覆していくのがヒーロー。」

 

‼︎ 理不尽を覆していく・・・・・・。

 

「放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから三年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。」

 

周りの生徒たちの顔が強張る。全員の思惑はそれぞれだろう。冷静に分析するもの、積極的なもの、緊張するもの

 

そして・・・・笑っているもの。

 

俺は今まで自分の持つ個性によってあらゆる"理不尽や苦難"を味わい続けてきた。怯えることはない。俺は不敵な笑みを浮かべていた。

簡単なことだ。

 

要するに・・・・・・・・。

 

「Puls ultra《更に向こうへ》さ。全力で乗り越えて来い。」

 

乗り越えていけばいいだけだ‼︎

 

「さて、デモンストレーションは終わりだ。こっからが本番だ。」

 

まずはこの第一関門を乗り越えてみせる‼︎

 

 

 

 

 

だけど、除籍処分だけは勘弁してください。

 

 

 

 

 

種目を始まる前にボールやストップウォッチ、コーンなどを準備しなければならない。

しかし、こちらも同じであり、個性を使用する準備をしなければならない。俺の個性は使用するたびに多量のカロリーを消費するため、個性を長時間使ってしまうとあっという間に動けなくなってしまう。

そのためにも前もってからカロリーを摂取しておかなければいけない。

 

とりあえずカロリーメ○トを口の中に放り込む。ちなみに俺が好きなのはフルーツ味だ。

しかし、種目のことを考えると、見積もってあと4箱以上食べないといけない。

 

「まあ、余裕で10箱は食べれるな。」

 

「何をだ?」

 

と、後ろから声を掛けられる。見覚えのある赤髪の男子生徒だった。

 

「よぉ、天倉だよな。実技試験のときはありがとうな!」

 

「え、あ、い、いやこちらこそどうも。」

 

あのときの良い人だ!覚えていてくれた!しかも同じクラス!

 

「俺の名前は切島鋭児郎だ。よろしくな!」

 

「こちらこそよろしく!切島くん‼︎」

 

っしゃああぁぁぁぁぁぁああ!友達できたぁぁぁぁ!しかもメチャクチャ良い人がだよ!万年ボッチの俺があぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎我が世の春がきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎

 

↑友達1人ができたらテンションがやたらと高い人の図

 

あ、あれおかしいな?目から熱いものが出てきたぞ・・・嬉しいはずなのになんでだろう・・・・・。

 

「お、おいどうした?めっちゃ涙出てるぞ?」

 

「い、いやなんでもないよ。突然のことでちょっと涙腺が崩壊しただけだから。」

 

「俺なんか悪いことしたのか⁉︎」

 

とりあえず自分を落ち着かせるため、カロリーメ○トを片手に話題をそらすことにした。

 

「そんなことより種目の準備をしよう。コーンを運ぶの手伝うよ。」

 

「おっサンキューな!にしても相澤先生いきなりとんでもないこと言うよなー。最下位除籍って。」

 

 

最下位除籍。改めて聞くと、心配になってきた。 この個性把握テストによって問答無用でヒーローの夢が潰されるのだ。

 

しかし、相澤先生は言った。あらゆる理不尽を覆していくのがヒーローだと。

俺は相澤先生の言葉を聞いて理解した。もう既に自分たちはヒーローとしての一歩を踏み出している。もう、そこらの学生ではないのだ。

これから先もきっと先生が言ったように苦難を与え続けられるだろう。だからこそこんなところでつまづいていられない。

 

この壁を乗り越えいくのだ。"Puls ultra"《更に向こうへ》

 

俺はこの言葉を一生刻み続けるだろう。

 

 

 

とりあえず切島くんを手伝おう。ヒーローとして友人と助け合うことも大切なことだ。

 

「このコーンここら辺でいいかな?」

 

「Puls ultra」

 

・・・・・・・・・・・・ん?

 

「Puls ultra《もっと 向こうへ》?」

 

「Little ultra《もう少しかな》」

 

「Just ultra《ばっちり》」

 

・・・・なんか流行し始めて合言葉みたいになっているんだけど。

相澤先生の言葉が全然違うところで使われている・・・。

なんだろう。俺が感動的になっていたのがアホらしくなってきた。

と言うか、相澤先生が覚醒した野菜人のごとく髪が逆立っているんですが。

とりあえず俺だけでも黙って準備をすることにした。

カロリーメ○トを頬張りながら。

 

 

 

第1種目の50m走では飯田くんが3秒04というとんでもない記録を出した。個性がエンジンという脚が速い個性だ。全員はそれぞれの個性を工夫し、タイムを縮めている。

 

ちなみに俺は中学の頃の50m走のタイムは【5秒42】である。

とりあえず靴を脱いでから脚限定で個性を発動する。変身している部分の身体能力跳ね上がるので全身はやめておく。そして爪をスパイクのように地面に突き立て、クラウチングスタートをする。

そして、タイムは【4秒02】となった。

 

あれ?上から数えた方が早い順位になった?マジで?

 

 

 

第2種目は握力。中学の頃は53㎏であり、平均よりちょっと上という感じだった。その時はまだ身体を鍛えていなかったので今現在ではどのようになっているのかはまだ不明だ。

素の身体能力はまた後日測るということでとりあえず肩から指の先にかけて部分的に変身し、測ってみることにする。

 

「すげぇ!540㎏て‼︎あんたゴリラ⁉︎タコか‼︎」

 

「タコってエロいよね・・・・・。」

 

測ろうとしていると後ろから声が聞こえてきた。

3つの腕を持った男子生徒が540㎏を叩き出したのを醤油顔の男子生徒と特徴的な髪型をした背の低い男子生徒が驚いていた。

・・・・背の低い方は全然違うことを言っているが・・・。

 

隣のポニーテールの女子学生は万力を使って計測している。

かなり物騒だ。

余談だか、激怒したメスのチンパンジーの握力は572㎏らしい。

・・・・女って怖い。

 

とりあえず俺も個性を発動した状態で測る。

腕をまっすぐ下に伸ばし、肩の筋肉も使うように意識すると握力が伸びるらしい。

あとついでに八つ当たり気味にすると尚更らしいのだ。

 

とりあえず肩から腕にかけて八つ当たり気味に思いっきり力を込めて握ると。

 

 

 

ゴキンっ!

 

 

「・・・・・・・あれ?」

 

 

恐る恐る握力計を見ると見事に壊れていた。

周りの生徒たちも相澤先生も驚いたように見ていた。だが、1番驚いているのは俺自身だ。

 

ヤベェよヤベェよ・・・。やっちまった。

 

とりあえず相澤先生の前まで行き、土下座をした。

 

「す、すみません先生壊すつもりは無かったんです。」

 

「あ、あぁいや大丈夫だ予備があr」

 

「いや、本当に悪気は無かったんです。弁償します、ですからこのまま除籍という流れは勘弁してください。」

 

「いや別n」

 

「本当にすいませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!お慈悲を、お慈悲をくださいいいい!お願いします!なんでもしますからぁぁ‼︎」

 

「(・・・・・性格は全く似ていないが面倒臭さだけは父譲りだな・・・・。)まあ、握力計の限界を超えたってことで∞でいいよ。」

 

周りからおぉっ!と声が上がる。

・・・・・・・・・え?マジで?

 

「すげぇ!∞が出た!」

 

「ゴリラ超えやがった‼︎」

 

「どんな握力してんだ⁉︎」

 

「化け物か⁉︎コイツ⁉︎」

 

・・・・∞《測定不能》ってそんなのありなのか?そもそも、いきなりこんな高得点を叩き出せるとは思わなかった。

こうなってくると、反動で後半悪くなりそうなんだけど・・・。

 

 

第3種目は立ち幅跳び。50m走と同じく個性を工夫し、全員が記録を伸ばしている。

自分も個性を全身に発動し、まるで獲物にグワッシャアアと飛びかかる要領で跳躍すると、中々の記録となったが、反対側にいた生徒の半数が悲鳴をあげた。

 

何人かが「喰われるかと思った」や「捕食者される側の気持ちを理解した」、「もう、アレトカゲじゃねーよ」など言っていた。

 

やめてください、泣いてしまいます。

 

「そうかしら、そんなに怖いとは言えないけど。」

 

そう言ってくれたのは蛙吹 梅雨さんだった。この人も切島くんのように俺の個性を見た上で怖がらないでくれている。

・・・・・・女神か⁉︎いや、カエルだけど。

 

蛙吹さんにお礼を言うと、「梅雨ちゃんって呼んで」と言ってくれた。

 

やめてください。別の意味で泣きそうです。

 

 

 

 

 

第4種目の反復横跳びでは、特徴的な髪型をした峰田 実くんが両側に変なボールのような物を大量に設置し、そのボールの弾力を利用し高得点を出した。

 

俺の個性はただでさえ燃費が悪いのに、連続して個性を使いすぎると後半から支障をきたすので個性を使わず素の身体能力ですることにした。

 

結果としては中間あたりでまぁ、ある意味安心できる記録だった。

 

 

 

 

第5種目、ボール投げは麗日さんが∞《無限》を叩き出した。

一体ボールはどこまで行ってしまったのだろうか?

 

とりあえず肩から腕にかけて個性を発動し、思いっきり投げてみる。

すると、記録は思いの外伸びなかった。

 

個性を最初から飛ばし過ぎたのか、ここにきて反動が返ってきてしまったらしい。

とりあえずカロリーメ○ト3箱分を頬張り、次の種目に対して控えることにした。

 

次はいよいよ緑谷くんの番だ。緑谷くんは今のところ目立った記録を出せていない。友人としてとても心配になってくる。

 

「緑谷くんはこのままだとマズイぞ・・・?」

 

「ったりめぇーだ、無個性のザコだぞ!」

 

ん?緑谷くんが無個性?緑谷くんは個性を持っていなかったのか?

あと、爆豪くん、君は人に対して暴言を振るうのはやめなさい。

 

緑谷くんの記録は46m、緑谷くんの記録は平均的な記録だった。

どうやら相澤先生が緑谷くんの個性を消したらしく。

相澤先生は見ただけでその人の【個性】を抹消する【個性】を持つ抹消ヒーロー【イレイザーヘッド】らしいのだ。

 

父さんからイレイザーヘッドというメディアの露出を嫌っているヒーローがいると聞いたことがあるが、先生がそうだったのか。

 

緑谷くんと相澤先生が何かを話し合っている。内容は上手く聞き取れないが、緑谷くんは個性の制御がまだできていないらしい。

 

どおりで記録も伸びないはずだ。個性の制御ができていないのは、赤ん坊がまだ歩き始めたようなものだ。

本来個性は4、5歳あたりに発現する筈だがもしかしたら最近発現したばかりなのかもしれない。

 

俺が考え込んでいると、どうやら話は終わったらしい。緑谷くんが2回目のボール投げを行う。

 

 

 

そして、緑谷くんは大きく振りかぶり投げると

緑谷くんの投げたボールは轟音を発しながら記録を伸ばした。

 

記録は【705.3m】

爆豪くんの記録とほぼ同じだ。

 

しかし、緑谷くんの指は赤く腫れあがっていた。どう見ても重症だ保健室で診てもらった方がいいだろう。

 

 

「緑谷くん大丈夫?指がとんでもないことになっているけど、保健室で診てきてもらったら?」

 

「ああ、これぐらい大丈夫だよ、それより種目の続きを」

 

「どーゆうことだ‼︎こら‼︎ わけを言え デクテメェ‼︎」

 

「うわああああああああああ⁉︎」

 

心配してる矢先いきなり爆豪が何か気に触ったのかものすごい形相で襲いかかってきた⁉︎

やめろ!緑谷くんの指はもうボドボドダ!

 

とりあえず個性を発動し爆豪くんを抑えておく。あとは先生がなんとかしてくれるだろう。先生マジで早くなんとかしてください!

 

「離せ‼︎黒トカゲ野郎‼︎そこどけ、邪魔だ‼︎」

 

「流石に初日から問題起こすのは不味いって‼︎」

 

「うるせぇ!指図すんじゃねぇ!あと、さっきから棘がいてぇんだよ‼︎」

 

「よし、そのまま抑えていろ天倉。やむ得ない場合は気絶させろ。」

 

とりあえず先生から許可が下りたので爆豪くんを抑えておく。

 

「とにかく、いくら緑谷くんが君よりもいい記録を出したからってそんなに怒るなって。」

 

「テメェからぶっ殺されてぇか!」

 

怖い怖い怖い怖いいいい!なんか怒りの矛先がこっちに向かった⁉︎予想の数倍怒られた⁉︎爆発も数十倍の威力になっているし!

 

その後先生が爆豪くんの個性を抹消したのでそのまま個性把握テストを続行。

爆豪くんがこちらを睨んでいたので物凄く怖かった。

ついでに相澤先生がドライアイで、個性が勿体無いことを知った。

 

 

 

第6種目は上体起こし。口の中にカロリーメ○ト含みながらやったら先生に没収された。次は無いと言われたので、体育館の隅でうなだれていた。

何人かに心配されたがショックで次の種目が始まるまではしばらくそのままだった。

ちなみに記録は個性をフルに発動し中々の記録となった。

 

 

 

第7種目は長座体前屈もともと身体は柔らかかったことに加え、没収されたショックがまだ抜けていなかったのか記録がいい感じに伸びた。

ちなみに個性は使っていない。使っても全身の棘が邪魔なだけだ。

 

 

 

最後の種目は持久走。最後だったので個性をフルに活用し全力で行った。

これが最大のミスだった。そもそも俺の個性は燃費が悪いので走っている途中空腹状態になり、酷い結果となってしまった。

 

途中全員が空腹状態の自分と並走しているとき何人かが「喰われると思った」、「栄養補給(捕食)される」、「俺は美味しくない」などと言っていた。

物凄く泣きたい。そして物凄く腹が減った。

 

 

そしていよいよ結果発表、トータル最下位の者が除籍となる。50m走や握力で良い記録を取れたので多分最下位ではないとは思うが、それでも心臓がバクバク言っており、腹からも音が鳴り止まず、周りから物凄く心配された。

 

「ちなみに除籍はウソな。」

 

「!?」

 

「・・・・・・・・・は?」

 

「君たちの全力を引き出す"合理的虚偽"」

 

「ーーーー⁉︎」

 

「はーーーーーーーーーーーーー⁉︎」

 

「⁉︎‼︎!⁉︎??⁉︎」

 

俺は言葉にもならないほど驚いた。

緑谷くん、麗日さん、飯田くんが驚いており、特に緑谷くんがまるでムンクのごとく凄いことになっていたので逆にこちらが物凄く驚いてしまった。(2回目)

何人かはウソだとわかっていたらしい。大半は気づいていなかったが。(自分を含む)

 

 

ちなみに順位は9位であり、意外と上の方だったため安心できた。

初日から色々あった為か物凄く疲れてしまった。

切島くんにラーメン屋に行こうと誘われたので快く返事をしラーメン屋に寄って帰ることになった。

 

ラーメンを6杯おかわりしたことに驚かれてしまった。腹が減っているんだ仕方ないだろう。

 

 

次の日いよいよ授業が始まるので楽しみ。

と思ったが、午前は必修科目で英語などの授業を行う。英語担当の先生はプレゼント・マイクだった。

どうやら入試の時返事をしていたのを覚えていたらしく。

 

「オラオラ!エヴィバディヘンズアップ!盛り上がれー!どうした天倉?入試のときの大きな返事はどこ行った⁉︎」

 

さんざんネタにされ精神的にキツかった。一種のイジメじゃねーか‼︎

そんなこんなで授業を乗り越え昼となり、大食堂では一流の料理を安価でいただける。

 

とりあえず物凄く腹が減ったので、カウンターで料理の注文をしたいのだが

 

「不幸だ・・・まさか財布を落とすなんて、同居人に俺の分の朝食を食われたから昼食を楽しみにしていたのに・・・・。」

 

目の前に不幸なオーラを全開にしている黒髪のツンツン頭の学生がうなだれて物凄く邪魔なんですけど・・・。

どうしよう。物凄く面倒臭そうだけど無視したら罪悪感が、そもそもヒーローとして放っておくのはどうなのだろう。

 

「あのー、もしよかったら奢りますよ?ちょうど5品くらい頼もうとしていたし。」

 

「え・・・・・、いいの⁉︎」

 

とりあえず可哀想なので奢ってあげることにした。

注文した料理を待っていると、

 

「何やっているんだ?上条?」

 

紫色の立った髪で目の下に濃い隈ができている学生が話しかけてきた。不幸なオーラを出している学生と知り合いのようだ。

どうやら黒髪のツンツン頭の学生が【上条 当麻】で、紫色の立った髪をしたのが【心操 人使】というらしい2人とも普通科だ。

 

2人の個性は中々強力で上条くんは"右手で触れた個性を無効化させる個性"という相澤先生に似た個性を持っており、心操くんは呼びかけに応じた相手を洗脳することができる個性だというのだ。

 

【洗脳】敵が使いそうな個性だが、少なくとも俺の個性と比べたらマシな方だと思うし普通にかっこいいと思う。なんというか、コード○アスの絶対遵守の上位互換みたいで凄い個性だ、と言うと心操は褒められることに慣れてないのだろうか?お礼を言いつつ戸惑っていた。

 

心操くんも普通科だが、ヒーローを目指しているらしくヒーロー科の俺を羨ましがっている。

 

とりあえず注文した料理を6回ほどおかわりし続けると2人に物凄く驚かれた。

 

「そんなに食うのか?腹壊すんじゃないのか?」

 

「インデックスみたいな胃袋を持っているやつが他にもいるとは流石に思わなかった。」

 

インデックスとは上条くんと同居している人物らしく、その同居人も大食いらしい。

 

「今度その人に会ってみたいな。」

 

「おいおい、お前とアイツが意気投合しちまったら俺の冷蔵庫の中身が一瞬で無くなる気がするからやめてほしいんだけど。」

 

マジか?本気でそのインデックスって人に会ってみたくなってきたんだけど。その人と行きつけのラーメン屋に誘って行きたくなってきた。

 

 

 

そんなこんなで新しい友人もできて、いよいよ午後の授業。

午後の授業はヒーロー基礎学!ヒーローとしてあらゆることを学ぶことができるのだ。

そしてヒーロー基礎学を担当する先生がなんと!

 

「わーたーしーがー‼︎ 普通にドアから来た‼︎」

 

そう!あのオールマイトである!本当に雄英高校の教師をやっており、今目の前にいるのだ!

 

「オールマイトだ・・・!すげぇや、本当に先生やっているんだな!」

 

「銀時代《シルバーエイジ》のコスチュームだ!」

 

「画風違いすぎて鳥肌が・・・。」

 

「サインください‼︎」

 

あ、やばいあまりの興奮で直球で言ってしまった。だがサインは必ず貰う。オールマイトのアメリカンチックな画風が存在感を出すと言うか感動して涙が出てきそうだ。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ‼︎」

 

そう、その通りだ俺はこの授業を楽しみにしていたんだ。ちなみにヒーロー基礎学は単位数も最も多い。

 

「早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!」

 

いきなり戦闘訓練か、てっきり救助訓練かと思ったのだが、最初からとばしてくる感じでドキドキしてくる。

 

「そして、こいつに伴って・・・・こちら!入学前に送ってもらった【個性届】と【要望】に沿ってあつらえた戦闘服《コスチューム》‼︎」

 

「おおおお‼︎」

 

ついにきたか!自分だけのコスチュームが!改めて着てみるとなると、緊張してくる。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」

 

『はーーい‼︎』

 

 

 

雄英には被服控除というものが存在し、入学前に【個性届】と【身体情報】を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれるのだ。

コスチュームはただの服ではない。ヒーローの象徴でもあるのだ。

 

俺が要望したのはライダースーツにグローブとブーツそしてベルトだ。

丈夫な緑がかった黒のライダースーツ、コレはちょっとやそっとの攻撃では敗れたりはしない繊維で出来ている。そして黒のガンドレッドグローブとブーツ個性を使っても爪やヒレを出し入れしても破けないような作りになっている。

 

そして最も注目するべきなのが、このベルトである。コレは必要に応じてナイフ、ロープそして伸縮式のロッドなどサバイバルや、救助活動においての小道具となる便利なベルトだ。

 

ただ一つ気になるのは何故か全身に個性を発動した後、服を着ていないんだよな、個性を解除すると服はちゃんと着ている。

なんでだろう?

まあ、そんなことはどうでもいい。重要なことじゃない。

俺はそう思いながらコスチュームに着替え、全員が集合しているグラウンドβに行く。

 

「始めようか!有精卵ども‼︎戦闘訓練のお時間だ‼︎」

 

辺りを見回すと全員個性的なコスチュームばかりだった。

特に八百万さんはなんと言うかレオタードのような露出が高いコスチュームだった。やめてくれ健全な学生に対してその格好はやめてくれ。

八百万さんの性格上なんらかの理由があってこの格好にしたのだろう。しかし切島くんのコスチュームは、ほぼ半裸だ。何故に?

 

と、思っていると全身を緑色のコスチュームに身を包んだ緑谷くんに声をかけられた。

 

「あ、天倉くん意外と軽装なんだね。」

 

「その声は緑谷くん?中々良いコスチュームだね。ウサギをモチーフにしたの?」

 

「・・・いや、オールマイト・・・なんだけどね。」

 

あれ?そうだったのか、確かにオールマイトのV字の髪型に似ているけど。パッと見ではウサギにしか見えないんだよなぁ。

 

「あ、天倉くんにデクくん⁉︎かっこいいね地に足ついた感じ!」

 

「麗日さ・・うおおおおおお⁉︎」

 

「おーなんか、かっこいい。ヘルメット要望しておけばよかったかなー?」

 

「要望ちゃんと書けばよかったよ。パツパツスーツんなった。」

 

本当だ身体のラインがくっきりしている為これはこれで危ない感じがする。

峰田くんがヒーロー科最高と言っていたが確かにある意味で最高だが・・・。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

全身メカっぽいスーツに身を包んだ飯田くんが質問した。

あぁ、俺もフルフェイスのヘルメット要望しておけばよかった。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込む!屋内での対人訓練さ‼︎」

 

二歩先⁉︎これが雄英のヒーロー基礎学か。ぶっつけ本番でいきなり対人訓練とは。

しかも敵退治は基本的に外で見られるが実際は屋内の方が敵の出現率が高いのだ。敵だってわざわざ外で目立つ訳にもいかないだろう。

だとしたらオールマイトの言う通り屋内の訓練は必須だ。

 

「君らにはこれから敵側とヒーロー側に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう‼︎」

 

2対2なるほど。コンビを組んでコンビネーションを高めることも考えて・・・・・・・・・ちょっと待て、2対2?コンビ?

・・・・・・・なんだかボッチとしての直感が危険信号を発している。

 

「えっと、先生は全員で21名なんですけどこの場合余ってしまう1名はどうすればいいのでしょうか?」

 

 

「ん?大丈夫さ!天倉少年!この場合1組は3名のチームを組んでもらう!

と、言うわけで!」

 

あ、やな予感。そして再びボッチとしてのトラウマが蘇ってくる。

そしてオールマイトはその言葉を言ってしまった。

 

「それじゃあクジで対戦相手、そして"2人1組のコンビ"を決めてもらうぞ‼︎」

 

 

 

止めてくれ先生 その言葉はオレに効く

 





ボッチとしてのトラウマの一つが2人1組で組むとき相手がいなくて1人だけ残されるだと思います。皆さんはどう思いますか?

感想、評価お願いします。


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第5話 かかったなアホが‼︎


ゴールデンウィーク中に小説を進めるだけ進めようと思っている自分。
そしてゴールデンウィーク中に本当に進められるか心配している自分がもう1人。


 

「なぁ、いい加減に元気出せって。」

 

「そんなところで横になっていても何も変わんないぜ。」

 

どうも皆さん、天倉孫治郎です。くじ引きによってコンビを決めることになったのですが、案の定俺だけ余ってしまい尾白くんと葉隠さんのチームに加わることになりました。

そして俺はボッチのトラウマが蘇り、ショックで倒れ今に至る。

 

「いや、まぁ確かに1人だけハブられた感じは同情するよ。」

 

「でも、よく言うじゃん!"残り物には福がある"って!」

 

尾白くんはともかく葉隠さんはフォローになってないよ。

むしろ残り物と言われて傷に塩を塗られているんだけど。

 

「天倉少年‼︎2人の言う通りだ!ヒーローたるものそれくらいでへこたれてはいけない!常にポジティブにならなきゃいけないぞ‼︎」

 

オールマイトに注意されたので取り敢えず起き上がり、皆がいるモニターの前まで移動する。

第1戦、ヒーローチームは緑谷くんと麗日さん それに対し敵チームは爆豪くんと飯田くんだ。

 

初戦から激しくなりそうな予感がする。

敵チームの飯田くんと爆豪くんは共に強力な個性を持っている。正面から戦うとなると、ヒーローチームの勝ち目は薄いだろう。しかし2人の仲はあまり良くないため連携をとるのは難しいだろう。

対してヒーローチームは制御が完璧ではない緑谷くんに長期戦になればなるほど不利になってしまう個性を持つ麗日さんだ。こちらは敵チームと違い個性を頼る戦い方は難しいが、その分連携をとることが鍵となるだろう。

 

お互いの勝利条件は確保テープを相手に巻きつけることだ。さらにヒーローチームはどこにあるかわからないハリボテの核に触れることができればヒーロー側の勝利となる。

 

相手がどこに現れるか予測する為の【分析】、どう行動するべきか対応する為の【判断】、そしてお互いをカバーしあうための【連携】

この3つが大切だと俺は思う。

 

相変わらず敵チームの2人は何か言い合っているようだが。

 

モニターから向こうのチームの様子を見ることができるが、カメラからは音声は流れず映像だけが流れてくるので何を喋っているのかは理解できない。

 

「何を喋っているんだろう?作戦とか喋っているなら今後の戦い方に生かすことができるんだけどなー。」

 

「そう?表情やポーズで何を喋っているか結構わかるけど。」

 

「え?そうなの、スゲェ!」

 

どうやら耳郎さんは何を喋っているのか理解できるようだ。

すると耳郎さんはアテレコをし始めた。

 

『何よ!じゃあお腹の子はどうするつもり⁉︎』

 

『うるせぇ知ったことか‼︎』

 

『そんなヒドイ‼︎愛してるって言ったじゃない。』

 

・・・・・・うん違うわ。2人はこんな事絶対言わねぇよ‼︎

 

「お前の親父が社長だったからだよ」

「嘘よ!」

 

「おい、変な話当てるなよ。」

 

「取り敢えず爆豪くんだけには絶対言わないようにしておこう。殺されるビジョンしか映らない。」

 

切島くんと俺はツッコミを入れておいた。というか耳郎さんって結構お茶目な部分があったんだな。クールで素っ気ないイメージだったんだけど。

 

モニターに視線を移すと、そこにはすでに戦いを始めていた爆豪くんと緑谷くんが映っていた。爆豪くんの奇襲から始まり、そこで緑谷くんが個性を使わずうまく立ち回っていた。

 

緑谷くんから学ぶことはたくさんある。俺の個性は第三者から見れば【強い個性】なのだろう。しかし俺の個性はあくまで殺傷特化の個性なのだ。本物の敵の勝利条件は相手の殺害、逃走、etc、それに対してヒーローの勝利条件は被害者を出さず敵を捕らえることだ。

俺の個性の力に頼らず、今の緑谷くんのように自身の力にも頼らなければいけないのだ。

緑谷くんの冷静な分析力や柔軟な思考は俺にとって凄く勉強になるのだ。

 

もう一方はどうしたんだろうとハリボテの核がある部屋のモニターに視線を移すとそこには飯田くんと見つからないように隠れている麗日さんが映っていた。このまま核に触れることができればヒーローチームの勝利だ。

相変わらず何を喋っているのかはわからない。

 

「見ろォ人がゴミのようだ。」

 

「ブフォ⁉︎」

 

「どこへ行こうというのかね?」

 

びっくりした。飯田くんが一瞬大佐になったと思った。ていうか上鳴くんと耳郎さんはいつまでアテレコをやっているんだよ⁉︎

ていうかなり上手くてビビったわ‼︎

 

「「○ルス」」

 

「「だからお前ら‼︎やめろってば‼︎」」

 

俺と切島くんはツッコミを入れる。頼むからちゃんとモニター見てくれよぉ‼︎

しかし、麗日さんが飯田くんに見つかってしまったのは痛いな。飯田くんの俊足ならば核に触れることは困難だろう。

緑谷くんと爆豪くんが映っているモニターに再び視線を戻すと何やら爆豪くんが籠手を緑谷くんに向けて装着してあるピンのような物を抜こうとしている。

 

何をしようとしているんだろう?まるで手榴弾のピンを抜くようにしているが?

 

 

・・・・・・待てよ、緑谷くんに爆豪の個性について聞かせてもらったが、確か爆豪くんの個性は掌の汗腺からニトログリセリンのような汗を出し、爆発させる個性だった筈だ。

もしも爆豪くんがその爆発の威力を何倍も引き上げるようなコスチュームを要望に出していたら・・・・・‼︎

 

 

「せっ先生‼︎コレって不味いんじゃ‼︎」

 

「爆豪少年ストップだ殺す気か?」

 

オールマイトが俺の言葉を察し爆豪くんを止めようとするが時すでに遅し

 

瞬間、建物内が揺れた。モニタールームは地下にあり、振動がここまで伝わってくるのはその爆発の威力が証明している。

 

「先生!止めた方がいいって爆豪あいつ相当クレイジーだぜ殺しちまうぜ⁉︎」

 

「いや、切島くん。向こうも殺しはしないようにわざと外したみたいだよ。意外と冷静な面もあるらしい、でもさっきのアレ《爆発》を何度もやるとさすがに緑谷くんも御陀仏だけど。」

 

「危険には変わりねぇって事か⁉︎」

 

さすがのオールマイトも爆豪に注意を施す。

しかし状況は一変し爆豪くんの優勢になる。

爆豪くんの性格はヒーローか敵かと問われればきっと大半は敵と答えるだろう。爆豪くんはニトログリセリンのように触れれば爆発するような性格だ。

戦い方もその性格のように相手を徹底的に潰す、ヒーローか敵かと問われれば大半が敵と

 

俺と爆豪くんの荒々しい戦い方は似ているところがある、しかし決定的に違う点がある。

それは恵まれた才能、センスなのだ。

 

「常人なら肩を壊す程の爆破をいとも簡単に扱っている。しかもあんなアクロバティックな動きをするなんて、本当に前まで中学生だったのか⁉︎」

 

「それに目眩しを兼ねた爆破で軌道変更、そして即座にもう一回。考えるタイプには見えねぇが意外と繊細だな。」

 

「慣性を殺しつつ有効打を加えるには左右の爆発力を微調整しなきゃなりませんしね。」

 

推薦枠である轟くんと八百万さんも爆豪の動きには驚いているようだ。

爆豪くんの戦闘のセンスは物凄いものだ。おそらく、爆豪くんはこのクラスの中でもNo. 1の戦闘能力の持ち主だ。

俺が爆豪くんと戦って勝てるイメージが湧かない。そもそも戦おうとは思わない。

 

そして一方的なリンチが始まった。

殴る、蹴る、爆破、etc、緑谷くんの体はボロボロだ。

コレはあくまで戦闘訓練である。確保テープで緑谷くんを巻きつければ、捕獲すなわち爆豪くんの勝利だがあの性格から考えるとそんなことは考えてもしようとしないだろう。

緑谷くんは逃げるしかできない状態だ。

 

 

しかし、何故だろうか俺はこの状況に違和感を感じている。

緑谷くんは爆豪くんから逃げるしかない状況だというのにだ。

 

「・・・・いや、違う。何かおかしいんだよな。」

 

「それは追い詰めている筈の爆豪さんが焦っているからですか?」

 

尋ねてきたのは八百万さんだ。確かに優勢な筈の爆豪くんが余裕がなさそうにしているのは全員が見ても明らかである。

 

だが違う。

 

「確かにそうだけど、それだけじゃない。ただ逃げるだけなら僕たちでもできる。だけどヒーローは逃げるだけじゃない。俺たちだって逃げるだけじゃなくて個性を使って何かをできる。ヒーローを目指している緑谷くんが逃げるだけで終わる筈がない。」

 

「!」

 

何よりも緑谷くんの目はまだ諦めていない。

俺たちは緑谷くんと爆豪くんの戦いを見届けたのだ。

 

 

 

 

 

え?ナニコレ?

 

 

 

 

 

 

緑谷くんと爆豪くんがクロスカウンターの要領でお互いを殴る展開だと全員、オールマイトも思っていた。

そう思っていたんですけど、気づいたら緑谷くんがアッパーを繰り出した後、ビルが吹き抜け状態になったんですよ。

 

あれですね、仲の良い同級生が実はゴンさんでしたっていうぐらいの衝撃でしたね。

爆豪くんが"ボ"されていなくてよかったと思いました。

 

ちなみに訓練はヒーローチームの勝利となりました。

勝利となったが、今回のベストは飯田くんでした。

理由は爆豪くんは私怨丸出しの戦い、そして屋内での大規模攻撃。

緑谷くんも同様の理由だ。

麗日さんは中盤の気の緩み、最後の攻撃が乱暴すぎたことがダメだったらしい。

あ、飯田くんが嬉しそうな顔をしている。よっぽど褒められたのが嬉しかったんだろうか?

 

まぁ、今そんなこと思い出しても意味ないですよね。

 

「おーい、大丈夫?意識どっかに行っているよー?」

 

「あ・・・・・・そうだった。もう出番だったんだっけ。」

 

葉隠さんに言われて俺は意識を戻す。そう、2回戦は俺たちの番なのだ。

俺と尾白くんと葉隠さんは敵チームなのだが、ヒーローチームが体格がでかく複数の腕を持つ障子くん、そして推薦枠の轟くんだ。

 

「うん。勝てる気しないな。」

 

「いきなり勝てない宣言⁉︎初戦を見ていたときはあんなカッコいいこと言っていたのに⁉︎」

 

「そう思っただけで腹が空いてきた。飲料ゼリー食べよっ。」

 

「いやいや、さっき昼飯食べただろ?っていうかどっから出したんだソレ⁉︎」

 

やばい、本当に勝てる気しないよ。葉隠さんと尾白くんが色々言っているけど、食べなきゃやってらんないよ。

なんて言うか一瞬で負けそうなイメージしか湧かないし。

と後ろ向きに考えていると葉隠さんが脱ぎ始めた。

※葉隠さんは既に裸です。

 

「むー・・しょうがない!2人とも、私ちょっと本気だすわ手袋とブーツも脱ぐわ。」

 

「あー・・・・・どうしよう尾白くん。これって葉隠さんに言った方が良いのかな?」

 

「確かに透明人間としては正しいことなんだけど、女の子としてはな・・・・・・・。」

 

「いや、それもあるけど、そうじゃなくて。」

 

「?」

 

いやまあ確かに女の子として倫理的にアウトだけど、違うんだよなぁ。えーとコレって言った方がいいのかな?

 

「あー・・・・俺の個性の一部でさ、サーモグラフィーみたいな温度を探知する能力があって・・・・。」

 

「「?」」

 

「えーと、俺から見ると葉隠さんはある意味丸見えっていうか、なんと言うか・・・・・。」

 

「‼︎」

 

「あっ、あー・・・・。なるほど・・・・・。」

 

うん。尾白くんは理解してくれたようだ。どうしよう。結構、辺りが気まずい雰囲気になったような・・・・・。

 

「・・・・!こっ、こっち見ちゃダメだよ!天倉くんのエッチ!」

 

「い、いやまだ見ていないよ!」

 

「ま、まだ見ていないってことは・・・!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎だーーーかーーーらーーー違うから!極力そういうのは避けるから‼︎」

 

「(・・・・・なんというか天倉も結構苦労しているんだなぁ。なんか苦労人って顔しているし・・・。)と、とりあえずお互い、頑張ろうな・・・・・。」

 

「いや、なんなの⁉︎その可哀想な人を見るような目は⁉︎」

 

やめてぇ‼︎お願いだから!このままじゃあ中学の二の舞になるぅ‼︎

俺のライフはもうゼロよ‼︎

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「とりあえず確認するけど尾白くんは純粋な身体能力はかなり高い!その身体能力を生かして5階で核を守るように!葉隠さんは敵に気づかれないように1階で確保テープを使って捕まえるようにね!俺はヒーローが4階に来たと同時に奇襲を仕掛ける!それじゃあ!作戦開始!」

 

俺はしっかりと聞こえるように何度も確認してから作戦を開始した。

ちゃんと作戦通りに上手くいけばいいんだけど・・・。

 

ちなみに今俺は、いつでも対応できるように個性をフルで使用し、変身している状態だ。なので俺は身体能力と五感が強化されている。

腕力は車を持ち上げることができ、視力も暗い場所もよく見え、

聴力も底上げされており全階もはっきり聞こえるようになっている。2人をフォローできるようにいつでも準備をしておく。

 

(しかし、今になって物凄く緊張してきた。とりあえず、○ロリーメイト2箱を食べて万全な状態に・・・ん?)

 

俺は気付いた。ピット器官によって、いや野生的な直感によって気付いたのだ。すぐ目の前に氷が迫っていることを。

 

「⁉︎」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「さて、さっさと済ませるか・・・。」

 

轟は自身の個性【半冷半熱】を使用しビルそのものを凍らせ、相手全員を行動不能とし、核の安全を確保する。

後は核に触れればいいだけだ。

 

轟は階段を登ると同時に外へ避難させた障子の言葉を思い出していた。

 

『先ほど天倉が2人に対して作戦を伝えているのが聞こえた。1階には透明になる個性を持つ葉隠が、4階で天倉が待ち伏せをし、5階で尾白が核を守っている。足音を確認したが、1、4、5階に1人ずつちゃんといるのを確認した。』

 

「(1階で気づかれないように透明な葉隠が尾行、捕獲そして天倉の身体能力の強化の個性によってすぐ駆けつけられるようにフォロー、そして1対1でも戦えるように尾白が待ち構える。悪くない作戦だが、俺には関係ねぇ。)」

 

轟はこの訓練は自分にとって些細なことと感じていた。

そして天倉孫治郎は第一回戦の訓練のとき、全員とは違った着眼点、そしてまるでどちらが勝つか知っていたような顔をしていた。

 

が、それだけだ。まるで子供のようにすぐうろたえヒーローにはなれそうにない性格をしている。天倉の第1印象は精神的にはヒーローとは言えないヤツ、そう轟は認識していた。

 

「(ま、わざわざ大声で作戦の内容を言っちまうようじゃまだまだってところか。)」

 

轟が3階に達した直後、通路の角から何かが飛び出し轟の腕に何かが巻きつこうとした。

その正体は、

 

「ッ!確保テープッ⁉︎」

 

轟が腕に巻きつこうとするものが確保テープだと認識するとテープを凍らせ巻きつくのを防ぐ。そして確保テープが出てきた場所を凍らせる。すると、そこから黒い影が飛び出てくる。

 

「ふぅ、あぶないあぶない。油断はダメだよね。そうでしょ轟くん。」

 

「・・・天倉。」

 

轟の目の前には天倉が立っていた。

 

そして天倉は轟に対して心の中で叫ぶ。

 

 

 

 

かかったなアホが‼︎

 

 

 





透明人間の葉隠ちゃんが裸を見られるとこんな反応するかなーって思いました。

評価をしてくれた方が増えました。ありがとうございます!
これからも感想、評価をお願いします。


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第6話 こんなんじゃ・・・満足できねぇぜ・・・。


前回の話を投稿したら感想が結構きたことに驚きました。
たとえ感想が指摘、文句でも僕にとっては良い糧となるのでどんどん感想、評価をください。

あ、でもやっぱり悪口とかはやめてくださいお願いします。


 

「ふぅ、あぶないあぶない。油断はダメだよね。そうでしょ轟くん。」

 

「・・・天倉。」

 

やっぱり動揺しているな。爆豪くんよりは落ち着いているけどちょっとだけ自分の力を過信している部分があったのかな?

だけど、1人だけでくるなんてなぁ、確かにさっきのは流石に危なかったけど。

 

とりあえず作戦通りに。まずは自分に注意を向けるため、挑発をしないと。

 

「どうしたんだい?轟くんさっきまでの余裕たっぷりの顔が焦った顔になったけど?さっきの攻撃が避けられたから?それとも急に確保テープが飛んできたから?それとも"4階で奇襲を仕掛けてくるはずの俺がこの場にいる"こと?」

 

「ッ!」

 

やっぱり、まぁ仕方ないけどそうしなければ、わざわざ偽の作戦を障子くんに聞こえるようにしていないし。

 

「(・・・・どうやってこっちの現状を把握しているのは知らねぇが、おそらく向こうの目的はあくまで【時間稼ぎ】そうでも考えねぇと、目の前でペラペラ喋ったりはしないからな。)」

 

「(俺が轟くんに勝てる確率はかなり低い、こちらが3人がかりで挑んでも勝てる算段も低い。こちらの個性は強力だが、あくまで短期決戦型、それも接近戦限定だ。それに対して向こうは強力な広範囲攻撃。炎と氷どちらも応用が利く。半分こっちに分けてくれないかなぁ。)」

 

天倉の目の前に立っているのは恐らくクラス最強、まともに戦って勝てる相手ではない。

ならばどうする?簡単だ。誰でもできる行動をすればいいだけだ。

 

「逃げるんだよぉ!」

 

「逃すか!」

 

俺が逃げようとするそぶりを見せた瞬間、轟くんは右脚から冷気を出し、地面に沿って凍らせてくる。大方、足元を凍らせて身動きを取れないようにするところだろう。

でもまぁ、"それがくるのはわかってた"。

 

「よっ!っと!」

 

「(!コイツ、避けやがった。)」

 

天倉は脚限定で個性を発動し跳んで足元の氷を回避した。

しかし、それだけでは終わらない。天倉はそのまま壁を走るようにつたい、そのまま轟の後方に着地する。

さらに

 

「ッ!またコレか!」

 

そう。確保テープだ上手く背後に回り込みテープを巻き付かせようとする。

しかし轟はテープを凍らせ逆にテープを伝って天倉を凍らせようとする。

 

「っと!失敗か。」

 

天倉は心の中で舌打ちする。天倉は腕部分に個性を発動しテープをすぐさま切り、その場から離れる。

 

「2人とも、とりあえず今の所は作戦を続行するよ。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

約10分前

 

「ッ!跳べ!」

 

目の前に氷が迫ってきていた。だが運が良かった、個性をフルで発動していなければ、下の階の温度が低くなっているのに気づかなかったし、反射神経もフルでなければ動かなくなっていたところだ。

 

「2人とも、大丈夫?」

 

『わ、私は平気だよ〜、天倉くんが跳べって言ってなかったら危なかったよ〜。』

 

良かった。どうやら葉隠さんは無事みたいだ。

ただし、葉隠さん"は"だ。

 

『悪い、遅かった。俺は無理っぽい。』

 

「ッ!マジか、氷は溶けそう?」

 

『いや、ダメだ。火でもないと溶けないぞコレ。』

 

・・・・尾白くんはリタイアか。

一応、事前に障子くんが自分の腕に自身の身体の一部を複製できることは、個性テストと複製した口で喋っているのを見かけて知っていたため

あらかじめはっきりとこちらの嘘の作戦を聞かせておくことができた。

 

そして個性によってこちらの聴覚を強化し、あちらの会話を聞くことができた。

あちらは轟くん1人だけで来るらしい。

 

うわー、余裕たっぷりじゃないですか、やだー。

ぶっちゃけ勝てる気出ないよ、コレ一瞬でビルを丸ごと氷漬けにするヤツだよ、絶対に勝てる気しないって。

 

『天倉くん!』

 

「何?葉隠さん?」

 

『こっちも負けてらんないね!頑張ろう!』

 

よし、何がなんでも勝ちに行こう!

↑女子にカッコいい所を見せたい男子の図

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ただ、凍らせて来るだけならジャンプなり、廊下の角に逃げ込むなり、俺ならいくらでも回避できる。

・・・・・・ただし制限付き。

 

「チィッ!」

 

「(っと、今度は右の手の平から!)危なっ!」

 

「(・・・・やっぱりか、天倉のヤツ俺がどう攻撃するかわかってやがる。)」

 

さっきのは危なかった。

ピット器官でどの部位から氷、炎が出てくるのか体温の変化でわかる。

そのため轟くんの攻撃がどうくるかは予測可能だ。だが、あくまでこれは轟くんに対して相性がいいだけだ。

もし仮に相手が緑谷くんだと、ピット器官は意味をなさない。ただ、相手の体温を見ているため、緑谷くんのような個性とは相性が悪い。

 

とりあえず、逃げるべし、逃げるべし!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

モニタールーム

 

 

「なんつーか、ワンパターンだな。」

 

「ああ、さっきから天倉が轟から逃げているだけだしな。」

 

「ええ、確保テープで捕まえようとしてもアッサリと破られちゃうしね。」

 

モニタールームでは、生徒たちと共にオールマイトが訓練の様子を見ていた。モニター越しの様子はどう見ても天倉が不利に見える。

が、しかし何人かは天倉と轟の一方的な戦いに違和感を覚える。

 

「けど、天倉も凄くね。轟の攻撃を全部避けているんだぜ。」

 

「どうやったら避けつつ壁を蹴りながら三回転半ひねりできるんだよ。人間じゃねーよ。」

 

「ですが少し妙です。あれだけの身体能力なら、轟さんから逃げ切ることなど容易なのでは・・・。」

 

「(そう、その通りだ。一見すると轟少年が優勢に見える。だが、それは違う。天倉少年はただ逃げている訳ではない。轟少年と一定の距離を保ちながら逃げている。)」

 

モニタールームではあちら側の音声はオールマイトにしか聞こえていない。つまり天倉の立てた作戦も耳に入っているということだ。

 

「(天倉少年の個性を考えると、少々分が悪いぞ。・・・・流石に大河の息子というだけはあるな。何がなんでも成し遂げようとするところがそっくりじゃないか。・・・・・性格とかは全く似てないけど。)」

 

オールマイトは天倉の身体能力ではなく、その目標を成し遂げようとするための大胆さに関心を抱いていた。

天倉は実行に移す前からすぐにネガティブな思考に入ってしまうため、精神はヒーローとして周りよりも劣っている部分が見れるが、何がなんでもやろうとする覚悟を彼はもっている。

 

彼の精神が大きく成長すれば将来は大物になるとオールマイトは予感していた。

すると、生徒たちが急にざわつき始めた。

 

「お、おい。天倉やべぇんじゃね?もう最上階まで追い詰められちまったぞ⁉︎」

 

「確かに、天倉ちゃん逃げ場はもう無いわね。」

 

「(さて、天倉少年、轟少年これからどうでる?)」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

とりあえず、最上階まで登って逃げてくることはできた。

だけど、そろそろ体力が限界に近づいて来た。腹もものすごく減ったし。

 

「おい、大丈夫か?さっきから腹の音が鳴り続けているぞ。」

 

「あ、うん。大丈夫。気にしないで、コレいつものことだから。」

 

「(いつもなのか?)」

 

さて、このままどうするか?制限時間までまだまだ時間かある感じだけど

それに・・・・。

向こうも何やら少々限界が近づいて来ているらしい。

轟くんの右半身の所々に霜がついている。推測するに、個性が強力な為使い続けると身体に影響がでる為、使える限界値があるということだろうか?

それにしては、さっきから右半身しか使ってないけど。

 

「そっちこそ大丈夫なの?氷しか使ってないけど、左側の炎は使わないの?」

 

「ああ、そうだな。そのせいで油断してまんまと、お前の策に嵌ったしな。障子にわざと偽の情報をながし、こちらの位置を特定すると同時に別の場所に誘い込む。核がある場所が最上階と聞いたが、お前の様子を察するに、核から一番遠い場所、一階にある核から俺を遠ざけるためにお前はわざわざ囮になるように俺から一定の距離を保ちつつ逃げてここまで誘導したんだろ。」

 

・・・・・・うわぁ、マジか。全部当たっている。

本当に勝てる気でないよ。そもそも俺に対してまだ全力も出していないのに、俺の策をあっさりと見破ったし。本当に勝てるのかなこのチーターに?

 

・・・・・仕方ない。これだけ注目されているならやってみるしかないか。これが奥の手みたいなものだし。

 

「それじゃあ、どうする?このまま一階に降りて、あるかもわからない核を見つける?それとも」

 

「今、その場でお前を倒すか?」

 

ああ、かなり自信満々だよ。ピット器官で轟くんの体温を見ているけど、左半身の体温がどんどん上昇していく。

 

よし。こっちも覚悟を決めるか。

俺は体制を低くし、前のめりになる。そしてそのまま全身に個性を発動する。

 

「(あっちが何を考えているのかわからない。だがわかるのは使ってくるのは炎ではなく、また凍らせてくる!)」

 

「(相変わらず凄い迫力だな。恐竜か、コイツ?)」

 

お互いの思惑は微妙にずれているが、一瞬の隙を見逃さないように構える。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・冷たっ!」

 

「⁉︎」

 

「注意が逸れた?今だっ!」

 

背後から聞こえた声に注意が逸れた轟に喉元を食い破る勢いで襲いかかる天倉は両手を轟の顔の前まで伸ばす。

轟が気づいた時にはもう、遅かった。

 

屋内に破裂音が響き渡った。

そして天倉の掌は轟の顔の前で合わさっていた。

 

相手の目をつぶらせることを目的とした奇襲戦法"ねこだまし"だ。

 

天倉は全身に個性を発動しているため身体能力も上昇している。そのため

 

「っ!耳が!」

 

相手の耳に少しだが、ダメージを与えることもできる。ねこだましを天倉が自分の個性を上手く使い、アレンジしたものである。

※個性を発動してねこだまししただけです。

 

「今だっ!葉隠さん!」

 

「やっと出番がきたー!」

 

天倉は轟くんの背後に潜んでいた葉隠に伸ばした確保テープの端をそのまま投げ渡す。

 

「(くそっ、さっきの声は葉隠か!)」

 

轟は心の中で舌打ちするが、天倉と葉隠はお互いテープの端を持ちつつ円を描きながら轟にテープを巻き付けようとする。

 

「(よしっ!あともう少し!)」

 

その時、轟の左半身から熱気が溢れ、屋内の壁や床の所々についていた氷が溶け始めた。

それと同時に轟の身体に密着していたテープも燃え始めた。

 

「っ!葉隠さん、テープを離して!」

 

「うわっ!あちちちちち!」

 

屋内は熱気に溢れ、溶けた氷は熱され水、熱い湯になる。

そして葉隠は先程まで裸足だったためチャプチャプと音を立てながら足踏みした。

 

轟は葉隠の声、そしてチャプチャプとした足音の方向に対して右足から床にかけて凍らせた。

 

「ひっひえええ!さっきまで熱かったのに、また冷たい!」

 

「悪いな、こうでもしないとお前の場所を知ることができなかったからな。ここに葉隠がいるとなると、一階で尾白が核を守っているということか。」

 

今、この場には轟(本気モード)、天倉(体力限界)、葉隠(身動き取れない)がいる。実質は轟と天倉の一対一だ。

いや、ほぼ勝負は決まっている。誰がどう見ても轟の勝ちだろう。

しかし、お互いはそうは思っていなかった。

 

轟は天倉の作戦に何度も引っ掛かったため次は確実に慢心せずに天倉に負けたくないと、

 

天倉は轟と真っ向に当たれば負けると理解していたが、尾白と葉隠の分を取り戻したい。何より自分のプライドが戦わないことを許さなかった。

 

『轟、こっちの状況だが、』

 

「悪いな、今こっちの方を先に済ませる。」

 

『悪い、天倉。こっちだけど。』

 

「分かっている。だけど、これだけは譲れないんだ。」

 

2人の通信機から障子と尾白の声が聞こえるが、お互いこの勝負を途中でやめたりはしない。

これからお互いの意地がぶつかろうとしているのだ。

 

「(・・・・・あれ?私、ものすごく空気?)」

 

1人、ものすごいアウェイな空気に包まれていた。

 

互いのしびれを切らし、2人が踏み出そうとした瞬間屋内にオールマイトの声が響き渡った。

 

『ヒーローチーム WIーーーN‼︎』

 

「「・・・・・・は?」」

 

天倉と轟の思考が停止した。そして再び2人の通信機から連絡が入る。

 

『えっと、悪いな。天倉、お前らが戦っている途中に障子がこっちに来てさ、一応、足の氷は溶けかかっていたから核に触れさせないようにしたんだけどさ。』

 

『いくらお前が強かったとしても1人で行くのは危険だと思ったからな。しばらくして核を見つけ、尾白と戦っていた。なんとか核に触れることはできた。』

 

2人は通信機から何があったのかを聞くと、ものすごく気まずいオーラが吹き出ていた。

 

「(・・・ど、どうしよう。ものすごく気まずい空気に。)」

 

葉隠は気まずい空気にオロオロし、オールマイトはその場にいる生徒たちに声をかける。

 

『うん!障子少年よく頑張った!尾白少年もあともう少しだったな!おっと葉隠少女も出番は少なかったものの良い活躍だったぞ。そして・・・天倉少年、轟少年。えっと・・・お疲れさん!』

 

オールマイトからドンマイと言われるが、2人の耳にはオールマイトの言葉は入ってこなかった。

轟は自信が嫌悪する左側の力を使う寸前に追い込まれ自信の未熟さにショックを受けていた。

 

「(くそっ!何をやっているんだ俺は!これは訓練だぞ。それなのに油断して、こんなのじゃあアイツを見返すことなんてできねぇ。それに、天倉に全力を出さずに舐めきっていたなんてすげぇ失礼だしな。)」

 

そして天倉の場合、個性の副作用による空腹感、不完全燃焼による虚無感に見舞われていた。そしてどこからか出したIPPON満足のバーを頬張りながら天倉は呟く。

 

 

こんなんじゃ・・・満足できねぇぜ・・・。

 

 





注意。天倉くんは決して蟹、鴉、元王がいるようなチームには所属しておりません。ましてや満足ジャケットも着こなしてもいません。

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USJ編
第7話 悪意襲来《敵が来た》



僕のヒーローアカデミア 雄英体育祭編とても面白いですよね。ちなみ個人的に僕は心操くんが好きです。

皆さんは誰が好きですか?


 

今、俺は窮地に立たされていた。

 

「ねぇ、どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?」

 

「ーーーッ!〜〜〜‼︎」

 

俺の目の前には今にも爆発しそうな爆豪くんとツッタカツッタカと煽っている女性が対峙していた。

 

俺はこの場にいながらも走馬灯のように前日の訓練が終了した後のことを思い出していた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

あれから屋内訓練が全て終了し、クラスの全員は反省会を始めていた。

しかし教室内の一角に気まずい雰囲気が漂っていた。その雰囲気を漂わせているのは八百万、峰田、天倉の3人だった。

 

「天倉はわかるけど、あの2人訓練で何かあったのか?」

 

「らしいよ。ちょうどカメラの死角で映ってなかったんだって。」

 

八百万と峰田に何があったのかを見ていたらしい常闇は黙秘し続けているらしく、上鳴と耳郎は余計に何があったのか気になってしまった。

 

「ところであっちはどうする?」

 

「い、いやどうするって言われてもな・・。」

 

しかしそれ以上に天倉が気になってしまったのだ。天倉は2人よりも暗いオーラを漂わせており、たまに口から「満足・・・満足・・・」と聞こえてしまい、一種のホラーを感じてしまう。

 

そんな天倉に轟が声をかける。

 

「なあ天倉、今大丈夫か?」

 

「満ぞk・・・大丈夫だけど。」

 

周りから見れば全く大丈夫の様には見えないのは野暮であり、轟は天倉に話し始めた。

 

「俺は本気も出さずにお前を舐め、あともう少しのところで負けるところだった。結果は俺の勝ちだったかもしれないが、俺にとっては負け当然だ。だからそんなに気を落とすな。」

 

「轟くん・・・しかたないんだ。俺は・・・轟くんも、自分の気持ちにも尾白くんも葉隠さんも裏切れない・・。だったらクラスメイトである君に負ける・・・・。それで満足するしかないじゃないか・・・。」

 

「???お、おう?」

 

謎会話のドッジボールが始まった。

どうやら天倉に色々なことが起こり過ぎて思考回路が意味不明状態になっているらしい。

 

「(・・・満足するしか?どういう意味だ?何か俺に伝えたいことがあるのか?)」

 

「お、おい。どうした轟?別に天倉の言ったことはそんな大したことじゃないだろうから、そんなに深く考えなくても。」

 

轟が先ほどの会話の意味を考え始め、それを切島が落ち着かせようとする。すると轟に謎の天啓が降りた。

 

「(ッ!まさか、満足するというのは、俺の左側のことを言っているのか⁉︎左側の力も俺の自信の力だから、受け入れない限り俺は強くなれないということなのか⁉︎)」

 

天倉の言葉を深読みし過ぎである。

 

「そういうことだったのか、天倉。」

 

「え⁉︎何が⁉︎さっきので何がわかったんだよ‼︎」

 

さすがのことに切島も困惑する。

当たり前だ。なぜ満足から自分の力についてのことに解釈できるのか、ある意味奇跡だろう。

 

「ッハ⁉︎・・・お、俺は今まで何を・・?」

 

今頃になって戻ってしまった天倉であった。

そしてもう少し早く戻っていればよかったと思ったのは切島から何があったのか話を聞いてからだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

マジで、俺は轟くんに何を言ったんだ?俺、訓練が終了した後の記憶がぼやけているから何があったのかをあまり覚えていないんだよなぁ。

 

俺は昨日の出来事を登校しながら思い出していた。

 

「いや、本当に何が起こったんだろう?なんか妙に轟くんとの距離感が近くなったような?」

 

「ほうほう、それはそれは。入学して新しい友達ができたのはよかったじゃあないですか。」

 

まあ確かに仲良くなれたのはいいことだけど、なんか釈然としないんだよなあ。

・・・・・・・・・・・。

 

「誰だお前は⁉︎」

 

「おっと、これは失礼しました。この辺を張っていれば雄英の生徒が通ると思いまして。」

 

まただよ。なんでこうも俺はいつも背後を取られるんだ?

目の前にいるのは学生だろうか?頭には赤い布製の小さな頭布を被っており、この現代社会には珍しく赤い下駄を履き、片手にカメラを持ち、背中にカラスのような黒い翼が生えた少女だ。

 

「えっと?誰でしょうか?俺はこれから雄英に行かないといけないんですけど。」

 

「おおっと、自己紹介がまだでしたね。私、守矢高校《もりやこうこう》にて新聞部をやらせてもらっています、射命丸文と申します。」

 

守矢高校といえば、この市にある私立高校だったはず。なぜか御柱が立ってある高校として有名だ。

そんな高校の新聞部がなぜここにいるのだろうか?

 

「ああ、なぜここに私がいるという顔をされていますね。お答えしましょう。実は新聞部内で誰が一番良い記事を書けるか競っておりまして、それで是非雄英の生徒の方に取材をさせて欲しいのですよ!」

 

「はぁ、なるほど。別に時間が掛からなければ大丈夫ですけど。」

 

「やめとけ、やめとけ。そいつは有る事無い事をでっち上げるんだぜ。」

 

見切った!また後ろから来るな!何度も同じ手に引っかかると思うなよ!

 

「・・・・どこ見てんだ?私はこっちだぜ?」

 

と、上を見上げると箒に乗った少女がフワーッと降りてきた。

上かよっ!後ろからじゃなくて上からかよっ!

 

「よっ・・・と、また懲りずに新聞作りか?いやー大変だねぇ、もしよかったら私にもインタビューしていいんだぜ。」

 

「あっ、いや、魔理沙さんの記事では全く話題性がないので、あくまで私は雄英のヒーロー科の方に話を聞きたいので。」

 

・・・うーん?この魔理沙って人は俺と同じ雄英の生徒みたいだけど、あれぇ?どこかで会ったことがあるような気がするんだけどなぁ?

 

「おいおい?どうした?まさか私のことを忘れちまったのか?そりゃないぜ、入試の時に会っただろ。私はしっかり覚えているぜ。」

 

「・・・・・?(やばいマジで誰だっけ?)」

 

「・・・・・はぁ、ちょっと待ってろ。」

 

魔理沙さんは自分が背負っているバックから何かをゴソゴソと取り出した。

それはやや大きめの黒いとんがり帽子だった。魔理沙さんはその取り出した帽子をかぶる。

 

・・・・・・あ。

 

「これで思い出しt「あの時の後ろから突っ込んできた失礼な人かよおおおお⁉︎」なんで帽子だけでわかるんだよお前は⁉︎」

 

あの時のおおぉぉぉ‼︎あの時、突っ込んできた挙句にあっ、ワリって軽い感じに謝りもせずに試験を受けた奴かああぁぁぁぁ‼︎

 

「まあ仕方ないと思いますよ。なんせ魔理沙さんへの印象の7割が帽子ですからね〜。」

 

「おい、それは私の本体が帽子とか言うんじゃないんだろうな。」

 

「おぉ、怖い怖い。」

 

なんだろう、この2人に関わると物凄くめんどくさく感じる・・・・。

そんな事より早く、学校に行こう、こんなところで道草食っていると遅刻して相澤先生に除籍される未来しか見えない。

 

「あっ、そうそう。確か名前は・・・・・」

 

「天倉ですけど?」

 

「そうです!天倉さん是非インタビューをs「すみません、急いでいるんで」むぅ、即答ですか、まあいいでしょう。私も行くところがあるので。それでは!」

 

と、射命丸さんは背中に生えた翼を羽ばたかせ猛スピードでどこかに行ってしまった。

 

なんだったんだアレは、まるで嵐のように過ぎ去っていったんだけど。

 

「運が良かったな。私が通りかかってなきゃ、新聞にとんでもないことを書かれていたからな。まっ、入試の時のことは水に流して欲しいんだぜ。」

 

この人に至っては良い人なのか、悪い人なのかわからないな。というか、いつまで魔理沙さんは箒に乗っているのだろうか?

まさか、チャリの代わりに箒で来た!って感じなのかな?

 

 

・・・・・ハッ⁉︎そういえば俺、朝から初対面(1人は対面済み)の女子達と会話している・・・だと・・・・⁉︎

なんだろう、魔理沙さんと射命丸さんがあまりにも馴れ馴れしくて、異性だってことを忘れていた⁉︎

 

なんだろう、そう思って来たらものすごく心が軽くなって来た!

 

なんだか今日は良いことが起こりそうな予感‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜そして今に至り

 

 

 

「教えてくださいよ〜雄英入試1位の貴方が敵に襲われた時の気持ちを〜〜。」

「この・・・カラス女ァァ‼︎」

 

「ねぇ、どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?」

 

「ーーーッ!〜〜〜‼︎」

 

 

訂正。今日は嫌なことが起きるわ。

 

 

ていうかヤバイ。

よくわからないけど周りにオールマイト目当ての取材陣がいて、その中心で射命丸さんと爆豪くんが対峙している。

爆豪くんも自分が手を出すと色々まずいことになるのは理解していると思うけど、あの爆豪くんだからなぁ。

 

「全く、あのブン屋こんなところに居たのかよ、自分の学校があるってのに、呑気なもんだぜ。まぁ、良いか。さっさと教室に行くとするか。」

 

「いや、まずは止めようよ!このままだと確実に流血沙汰になると思うんだけど⁉︎」

 

俺はそう言って射命丸さんと爆豪くんの間に割り込む。

とりあえずはこんな感じでいいと思うが、流血沙汰(主に自分)にならなければいいが。

 

「おい!邪魔だどけ!黒トカゲ野郎!そこのカラス女に一発入れねぇと気がすまねえんだよ‼︎テメェも殺されてぇのか‼︎」

 

「おやおや?天倉さんではないですか!もしかして、インタビューを受ける気になったんですか⁉︎」

 

う、うわぁ・・・・面倒臭い。

なんでここにはこう、性格に難がある人ばっかりなんだろうか。

とりあえずさっさと射命丸さんには退散して貰おう。早くしないと、いつ爆豪くんから爆破されるかわからない。

 

一旦、爆豪くんを落ち着かせ(落ち着かない。)射命丸さんには放課後自分が代わりにインタビューを好きなだけ受ける約束(向こうが一方的に)をして、退散してもらった。

 

・・・・・・ふぅ、とりあえずこれで一安心。

 

<オールマイトに直接話を伺いたいのですが

 

おっと?取材陣もなんだか騒がしくなってきた。こっちも早く教室に行かないt

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガッ‼︎

 

 

 

・・・・・あれ?門が鋼鉄の壁に・・・・。

 

「・・・・え?・・・ナニコレ?」

 

「おお、これが噂の雄英のセキュリティ【雄英バリアー】か。」

 

「なんだそれ、ダサっ⁉︎」

 

一緒にインタビューに付き合ってくれた魔理沙さんが説明してくれた。どうやら学校関係者以外が入ろうとするとセンサーが反応し、自動的にセキュリティが働くというのだ。

 

まぁ、だけど。生徒である俺は問題なく入れるから大丈夫だけどね。

さて、早くしないと相澤先生に叱られr・・・・・・・・。

 

 

 

 

いや、雄英バリアーのせいで入らなくねコレ⁉︎

 

どうするんだああぁぁぁぁぁぁぁぁ!このままでは、先生に除籍宣告されてしまう!それだけは何としても阻止しなければ!

と俺が思っていると隣にいた魔理沙さんが箒に乗って門を余裕で乗り越えて行った。

 

「お前も早くしろよー。」

 

いや、乗せてよ‼︎乗せてそのまま学校に連れて行ってくれないの⁉︎

・・・・ええい!こうなったら頼れるのは自分自身!個性を全身に発動して、一気に門を乗り越えて登る‼︎

 

「うおおおおおおおおおおっ‼︎」

 

「あっ!ちょっと⁉︎」

 

「すみません!急いでいるんで‼︎」

 

何か言っているが無視して門を乗り越える!行き先は1-A教室‼︎

絶対に間に合わせる‼︎

 

「いや、そうじゃなくてその先には害獣駆除用の最新式レーザーが!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「すみません、遅くなりました。」

 

「おう、遅かった・・・・・ってどうした、なんか焦げているぞ。」

 

「いや害獣駆除用のレーザーに」

 

「そ、そうか。次からは気をつけろよ。」

 

うん、最悪だ。門を乗り越えた瞬間あらゆる方向からレーザーが襲ってきたから死ぬかと思った。

 

 

そんなことはさておき、どうやらこれから学級委員長を決めるらしく、雄英高校でやっと学校っぽいものが始まったのかこの場にいるほぼ全員のテンションが高かった。

 

ちなみに俺は学級委員長なんてやれる柄じゃないので立候補していない、

全員が手を上げ、学級委員長になりたいようにアピールしている。

 

峰田くんは下心が丸見えだが。

 

「静粛にしたまえ!」

 

教室内に飯田くんの声が響く。

 

「多をけん引きする重大な仕事だぞ。"やりたい者"がやれるモノではないだろう!真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案‼︎」

 

飯田くん・・・・・この場にいる全員を静かさにさせることができ、しかも自身の発言をはっきり言うことができる君が学級委員長に相応しく思える。しかも眼鏡だし。

 

だが、これだけは、ハッキリ言わせてもらおう。

 

「そびえ立ってんじゃねーーーか‼︎何故発案した‼︎」

 

日も浅く、それでなお複数票をとった者が学級委員長に選ばれるらしい。

そして結果だが。

 

・・・・・・・・・・・ゴフッ

 

「おい!天倉が倒れたぞ⁉︎」

 

「0票だからといってどんだけメンタル弱いんだよ‼︎」

 

ぜ、0票何故誰も入れてくれなかったんだ・・・・。ほとんどの皆は1票ずつ入っているのに・・・・。

と、俺がうなだれていると蛙吹さんが話しかけてきた。

 

「もしかして、天倉ちゃん別の人に票を入れたの?」

 

「そうですよ・・・・蛙吹さん。」

 

「梅雨ちゃんでいいわ。多分ほとんどの皆は自分に票を入れていると思うけど、天倉ちゃんはそうしなかったのね。」

 

・・え、皆、自分自身に票を入れてたの?・・・マジで?

 

ちなみに学級委員長は緑谷くん、副委員長は八百万さんとなった。

よかった、まともな人選で本当によかった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

お腹も空く頃の昼休み、食堂では緑谷くん、飯田くん、麗日さん、天倉の4人が食事をしていた。

 

「はむ・・・むぐ・・んぐんぐ・・・もぐ・・。」

 

「人すごいな・・・。」

 

「ヒーロー科の他にサポート科や経営科、普通科の生徒も一堂に会するからな。」

 

「うん。お米がうまい!」

 

4人はこの食堂にいる生徒の数にやや驚くも、それぞれが頼んだ食事を口にし楽しそうに談笑する。

 

「むぐむぐ・・・もぐ・・・ごくん・・・んぐんぐ・・はむはむ」

 

「いざ、委員長をやるとなると務まるか不安だよ・・・。」

 

「ツトマル。」

 

「むごまぶぼばびどうぶ(務まるよ大丈夫)。」

 

「大丈夫さ。緑谷くんのここぞという時の胆力や判断力は多をけん引きするのに値するだから君に投票したのだ。」

 

緑谷は飯田が自分に投票してくれたことにやや驚きながらも少し嬉しそうに顔を緩ませた。

 

「はむむぐんぐ・・・ごくん。・・んぐんぐ・・・もぐもぐ。」

 

「やりたいと相応しいか否かは別の話・・・、僕は正しいと思う判断をしたまでだ。」

 

「ムグムグ・・・・はむはむ・・・・んぐ・・。」

 

「「「・・・・・・・。」」」

 

「ごくん・・・・・・おかわり。」

 

「まだ食べるの⁉︎」

 

麗日は天倉の異常な食欲にものすごく驚いた。ちなみにこれでおかわりは7回目だ。

 

「え?・・・・まだいけるけど?」

 

「いけるとかそういう意味ではないと思うぞ、天倉くん。君の胃袋はどうなっているんだ⁉︎」

 

「大丈夫。大丈夫。あと2はいけるから。」

 

「いや、天倉くん。あと2杯ってこれ以上食べるとなるとさすがに無理があると思うけど・・・。」

 

飯田と緑谷は天倉のまだ余裕があることに驚いたが、天倉が緑谷に注意を施した。

 

「2杯じゃなくて、2倍。」

 

「え?」

 

「いや、あと2倍はいけるって意味だったんだけど。」

 

「」

 

あまりのことに緑谷は固まってしまった。中学の時にオールマイトに教えてもらった食事メニューを軽々と超えるカロリー量を天倉は目の前でとっているため仕方ないのかもしれない。

 

と、緑谷が固まっていると、麗日はこの場の空気を変えようと別の話題を出した。

 

「そういえば、飯田くんさっき"僕"って言っていたけどもしかして、坊ちゃん⁉︎」

 

「坊っ⁉︎・・・・そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが・・・。」

 

飯田は話を続け、自身がターボヒーロー【インゲニウム】の弟だということを明かした。

それを知り、その場にいた3人は驚く。

 

「すごーーい!」

 

「むぐっ!知らなかった。」

 

「わっわっ・・そんな‼︎こんな身近に有名人の親族の方がいるなんて‼︎さすが雄英‼︎」

 

「良ければ今度遊びに来るかい?」

 

「えーーーーーー⁉︎いいの⁉︎ウソ‼︎やったーーーーー‼︎」

 

明らかに緑谷だけ飯田の話にものすごく食いつき、飯田は緑谷のその反応にまんざらでもない表情を浮かべていた。

 

そして、麗日と天倉の2人は話についていけなかったのでお互いのおかずを交換していた。

 

「あんな大人気のヒーローの家にお邪魔できるなんて‼︎どうしよ‼︎何着ていけばいいのかな‼︎」

 

「堅くならずとも気さくな兄さ、スーツの試着頼んでみようか?」

 

「ええ⁉︎いや!そんな‼︎えっ・・・いいの⁉︎うわぁ生きててよかった‼︎」

 

テンションの高い緑谷に対して周りがドン引きしている。しかしそんなこと御構い無しに緑谷と飯田は話を続ける。

そして、天倉はとある食堂の隅にあるものを見つけた。

 

「(オールマイト、あんなところでどうしたんだろう?なんか落ち込んでいるけど。)」

 

あとでオールマイトに話を聞くと、緑谷が自分よりも反応が凄くて釈然としなかったらしい。

とりあえず、そっとしておこう

と天倉は思った。そして、天倉はとあることを思い出した。

 

「あれ?そういえば俺の父さんもヒーローやっていたって言っていたけど。」

 

「えーーーーーー!本当に‼︎誰なの⁉︎こんな近くにヒーローの親族がいるなんて‼︎」

 

「い、いやでも今はもうすでに引退しているから詳しくはわからないけど」

 

 

ウゥーーーーーーッ‼︎

 

『セキュリティ3が突破されました、生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。』

 

と、天倉が緑谷に詰め寄られていると食堂、いや学校中に警報が響いた。

警報を聞いた生徒たちはパニックになる。

 

「いたっ!急になに⁉︎」

 

「さすが最高峰‼︎危機への対応が迅速だ‼︎」

 

「迅速すぎてパニックに。」

 

「こっ・・・のぉっ‼︎」

 

4人は生徒の波にのまれるが、天倉は個性を発動し、壁にしがみつき難を逃れる。

天倉は辺りを見回し、怪我もしくは危険な状態になっていないかを見る。

すると、飯田に声をかけられる。

 

「ぐっ、天倉くん!侵入してきたのは取材陣だ!俺はなんとか皆さんを落ち着かせる!君は怪我人がいないか探してくれ。」

 

「元より、そのつもりだよ!」

 

天倉は個性を生かし、縦横無尽に壁や天井を駆け回る。

すると天倉は隅の方で轟が女子生徒と一緒にいるのを見つけた。

 

「天倉、手を貸してくれ!」

 

轟が天倉に気づくと声をかけてきた。ちなみに轟は女子生徒守るように壁に手をついている。つまり轟が女子生徒に壁ドンしているということだ。

そして天倉は轟に殺気を覚えた。

 

「(なんだろうあの状態の轟くんを見ているとものすごくムカつく。)」

 

「お、おい?天倉⁉︎」

 

天倉は轟のことを見なかったことにしたように別方向に移動した。

そして聞き覚えのある声が人混みの中から聴こえる。

 

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「あ、上条くん‼︎早く捕まって‼︎」

 

天倉が上条の右手を掴むと"パリン"という音が響き天倉の個性が解除された。天倉のもう片方の手は壁にしっかりと固定されているが、個性が解除された状態では腕の筋力も落ちてしまうため、上条とともに人混みの波にのまれてしまう。

 

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

「全くだよおお‼︎」

 

とその時天倉の手を掴む者がいた。箒に乗っている女子生徒だ。天倉はその人物を見たばかりなのですぐに誰だか理解した。

 

「よっ!間一髪だったな。」

 

「魔理沙さん‼︎・・・・今朝は置いていったのに・・・。」

 

「いつまで引きずってんだ?もう過去のことだ水に流して欲しいぜ。」

 

魔理沙が天倉を引き上げると非常口の方から飯田の大きな声が聴こえてきた。

 

「皆さん・・大丈ーーーーーーー夫‼︎ただのマスコミです‼︎なにもパニックになることはありません‼︎大丈ーー夫‼︎」

 

飯田は非常口の上に標識のようなポーズをとりながら大きな声でパニックに陥っていた生徒たちを落ち着かせた。

その行動は生徒たちにわかりやすく大胆なためすぐ周りを鎮めることができたのだ。

 

「ぶっは‼︎なんだありゃ⁉︎確かにわかりやすくていいな‼︎」

 

「いや、笑わないであげて、あれで真面目にやっているつもりだからね飯田くんは‼︎」

 

その後無事に警察が到着し取材陣もといマスコミは退散。騒ぎは無事に収まったのだった。

そして緑谷が飯田の勇気ある行動に対して委員長は飯田くんが相応しいと委員長の座を明け渡したのだった。

 

余談だが轟に対する変な会が結成されたらしい。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

放課後、校門の前に見覚えのある姿が見えた。今朝会ったばかりなのですぐにわかった。

 

「可愛い女の子だと思った?残念。清く正しい射命丸文でしたー。」

 

「あれ?どうしたんですか?」

 

射命丸さんこんなところでなにをやっているんだろうか?魔理沙さんを待っているなら彼女は既に帰ったはずだけど。

 

「あやや?忘れたんですか?約束したではないですか。放課後、取材を受けてくれるって。」

 

「・・・・あーーー。そういえば。」

 

すっかり忘れていた。今日ものすごく濃い1日だったからすっかり忘れていた。

というかもしかしたら今日のトラブルの原因はこの人じゃあないんだろうか。もの凄く胡散臭いし。

 

「ところで・・・・聞きましたよ。昼頃になにやらマスコミ達によるトラブルが発生したと。いやーさすが雄英高校まさにネタの宝庫ですね。」

 

「確かに本当大変でしたよ。一応セキュリティにレーザーが装備されていたはずなんですけどよく突破できましたよね。」

 

本当に大変だったよ。ていうかなんでレーザーは俺を狙ったんだよ。確かに見た目は敵だけどさ。

 

「そうそう、それについてなんですがこれを見てくれませんか?」

 

「え?写真ですか?この写っているのってなんですか?」

 

「はい。ここにあったはずの雄英バリアーですよ。」

 

・・・・・・・・・え?俺の知っている雄英バリアーは写真に写っているような壊されたものとは違うんだけど?

というか壊された?いったい誰に?

 

「これって・・・マスコミの誰かがやったんでしょうか?」

 

「いえ、それなんですがね私が調べたところによると誰も雄英バリアーを破壊できるような個性を持っていなかったんですよね。」

 

・・・・それはつまりマスコミをそそのかした者、第三者による仕業ということなのだろうか・・・・。

いったい何故こんなことをしたのだろうか。目的はいったいなんなのだろうか。

 

「まっ、そんなことよりも取材をさせてもらいますよ〜。」

 

「そんなこと⁉︎そんなことで済ませた⁉︎」

 

「まぁいいではないですか。取材ついでに何か奢るので。」

 

「・・・・ん?今何か奢るって言った?」

 

「・・・・・え?」

 

その後、天倉は射命丸に泣きながら「取材はまた今度でいいので勘弁してください‼︎」と言われるまで飯を食べまくったという。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

翌日の12:50

 

俺は○ロリーメイトを食べながら、先生の話を聞いていた。

周りからラーメン9玉食ったのにまだ食うのかよ‼︎と言われたがぶっちゃけこれでもまだいける方だ。

 

そして今日のヒーロー基礎学が始まる。

相澤先生がオールマイトと自分ともう1人の3人制で見ることになったらしいのだ。

今日やることは

 

「災害水難なんでもござれ人命救助《レスキュー》訓練だ。」

 

人命救助ヒーローとして敵退治以上に大切なことだ。ヒーローの本分でもあることだ。

そして周りも楽しみなのか騒ぎ始める。

とりあえず先生の視線が怖いのでみんなを落ち着かせる。

 

「とりあえず、話し始めるのは先生の話が終わってからということで皆、静かにしよう!」

 

「クッ!委員長としての仕事が⁉︎」

 

何故か飯田くんは悔しがっているけど・・・。

今回コスチュームは各自自由に着ていいらしい。勿論俺はコスチュームを着ていく。

 

そして全員が着替え終わり、訓練場に移動するためバスに乗り込む。

 

「こういうタイプだったくそう‼︎」

 

飯田くんは委員長としての仕事ができると思ったのか張り切ってバスの乗る順番を決めていた。

感動的な行動だ、だが無意味だ。そもそもバスの形がよく町中で見かけるタイプだからだ。

 

俺はバスの中で昨日のことを思い出していた。校門前で射命丸さんが教えてくれたことだ。第三者による雄英バリアーの破壊。

これにどんな意味があるのか、そしてこれから何が起こるのかとても不安だった。

 

「派手で強えったらやっぱり轟と爆豪と天倉だな。」

 

・・・・ん?今、切島くんがとんでもない化物(チート)たちと俺を一緒にしたような・・・。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだからだ人気出なさそう。」

 

「んだとコラ‼︎出すわ‼︎」

 

「ホラ。」

 

あ、確かに蛙吹さんの言う通り人気出なさそうだ。こんなにキレればそりゃ人気出ないだろうな。

て言うか挑発するのやめて!なんか危なっかしいから!

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよ。」

 

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ‼︎殺すぞ‼︎」

 

やめろおおおおおぉぉぉぉぉぉ‼︎火に油じゃなくて火にダイナマイトを投下するようなことをやめろぉぉぉぉぉぉ‼︎

 

「天倉、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど。」

 

「え?どうかしたの耳郎さん?」

 

急に耳郎さんが俺に話しかけてきた。どうしたんだろうか気分が悪いなら一応酔い止めの薬は持ってきたけど。

と思っていると峰田くんがボコボコにされ縛られているのに気づいた。

 

「コイツの始末を頼んでいいかな?」

 

「バスが汚れるからついてからでお願いするわ。」

 

「命だけは・・・命だけはおたすけを・・・・。」

 

俺が見ていないところで何があったーーーーーッ⁉︎

 

とりあえず今度やったら首チョンパすると警告し、訓練場に無事(1人を除いて)到着した。

 

そこには巨大なドーム状の施設があった俺を含む全員が中に入るとそこはまるでテーマパークのようだった。

そして俺たちの先生を務めるスペースヒーロー【13号】がそこにはいた。

 

「あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。」

 

すげぇ‼︎これ13号先生が作ったのか⁉︎スペースヒーロー13号は戦闘ではなく、災害救助で活躍しているヒーローだ。俺が目指すべきヒーローの1人でもある。

 

「その名もUSJ《ウソの災害や事故ルーム》‼︎」

 

はい、アウトオオオオオォォォォォォォ‼︎やばいって訴えられるよコレ‼︎もしも名前が夢の国だったら13号先生どころか雄英高校と夢の国との全面戦争不回避だったよ‼︎

 

そして13号先生は話を始める。

先生の個性【ブラックホール】は色んな人を災害から救い上げている。しかし、簡単に人を殺せる個性でもある。

・・・・俺と同じだ。

 

今までの体力テストでは自身の力を秘めている可能性を知り、対人戦闘では個性を人に向けることの危うさを知った。

 

そうだ、これだ。俺が待ち望んでいたヒーローとしての授業は。

 

「この授業では・・・心機一転!人命の為に個性をどう活用するか学んでいきましょう。

君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。」

 

・・・・あれ?おかしいな胸から何か込み上げてきた。しかも目元が熱くなってきた。

 

「救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上!ご静聴ありがとうございました。」

 

うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁっ!先生えええええええええ‼︎

 

「うおっ!どうした⁉︎天倉⁉︎目から尋常ないほどの涙が⁉︎」

 

「まさか13号先生の言葉でか⁉︎泣くほど⁉︎」

 

こんなに俺に合っている言葉あるだろうか?いや無い‼︎断じて無い‼︎

ありがとう!13号先生!俺、ヒーローやりたいです‼︎

 

「ブラボオォーーーッ!ブラボオォーーーッ‼︎なんか初めて劇団○季のライオ○キングを見たぐらい感動しました‼︎」

 

『そんなに⁉︎』

 

いや、本当に感動した!俺の尊敬する人ランキング不動の第1位は13号先生に決定した。これは絶対だ!

 

「一かたまりになって動くな‼︎」

 

「え?」

 

何だろうか?何か黒いブラックホールのようなものから変な奴らが大量に出てくる。

 

「13号、生徒を守れ‼︎」

 

守れ?・・・・・待てよ。昨日のマスコミ達の件、第三者による仕業によるトラブルだった。だが、もしもそれが今回の為の宣戦布告だとしたなら・・・・・ッ⁉︎

 

「何だアリャ⁉︎また入試みたいなもう始まったんぞパターン?」

 

いや、違う。あのこちらを見ていいオモチャが見つかったような子供の目をした純粋で邪悪な雰囲気、あれは

 

「動くなアレは‼︎」

 

そう奴らこそ敵《ヴィラン》俺たちヒーローに対する存在だ。

奴らは雄英《ココ》を狙って来たのだ。

 

 

 

悪意襲来《敵が来た》

 





何だろう?僕が思い描いていた轟くんはクールながらも相手のことはちゃんと心配するイケメンキャラだったのに、いつの間にか天然キャラになっていた。な、何を言っているかわからねーと思うが俺も(ry

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第8話 ここからは俺のステージだ!


仮面ライダーエグゼイドで社長がコンテニューした時、声を出しながら腹を抱えて笑いました。
アレは卑怯ですよw更に社長が好きになりました!




 

相澤先生は入学初日の個性把握テストで、あらゆる理不尽を覆すのがヒーローだ。と言っていた。

 

「やはり、先日のはクソ共の仕業だったか。」

 

しかし、今俺たちが向き合っているのは途方も無い悪意。

今の俺たちが、かなうはずもない邪悪

 

そして、俺は後悔した。個性を部分的に発動し聴力を強化し、奴らが何を喋っているのかを聞いてしまった。

 

「どこだよ....せっかくこんなに大衆、引き連れて来たのにさ.....オールマイト.....平和の象徴.....がいないなんて.....。」

 

それと同時に俺は理解してしまったのだ。

 

 

「子 供 を 殺 せ ば 来 る の か な ?」

 

 

俺たちヒーローに対する敵《ヴィラン》の純粋な悪を

 

「⁉︎‼︎⁉︎‼︎」

 

俺は咄嗟に口を塞いだ。叫んだら殺されるのか、奴らと同じ空気を吸ってしまったら死んでしまうのかと俺は錯覚してしまったのだ。

否、俺たちはこれから殺されてしまうと俺は恐怖しているのだ。

 

中学の頃のとき、巻き込まれた事件とは全く違う。

イメージしたのは明確な死だった。

 

「先生、侵入者用センサーは⁉︎」

 

「もちろん、ありますが......!」

 

「現れたのはここだけか学校全体か....何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことができる"個性"がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間そこに少人数が入る時間割、馬鹿だが、アホじゃねぇこれは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」

 

八百万さんと轟くんは冷静に現状を把握し、相手の目的を予測している。

どうしてこんなにクールなのかその秘訣を教えてほしいものだ。

だが、そんな事よりも俺は聞いてしまったのだ相手の目的を、今からやることを

 

「やっぱり、オールマイト......のことを。」

 

「どういうことだ?天倉、何か聴こえたのか?それに顔色が悪いが...。」

 

「聴こえたんです。あいつらオールマイトを探しに来たって、"俺たちを殺せば来るかな?"って......‼︎」

 

『⁉︎』

 

そこから相澤先生の行動は早かった。俺の言うことを既に察していたかのように。

俺たちに次々と指示を出してくれた。正直言って助かる、雄英で避難訓練を受けていない以前に訓練場の詳しい地形も理解していない。

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にある敵だ。電波系の個性が妨害してる可能性もある。上鳴お前も個性で連絡試せ。」

 

「ッス!」

 

上鳴くんも自身の個性をうまく活用し、連絡を取ろうとする。と言うか、耳についていたもの通信機だったんだ。俺も通信機要望に取り入れたい。

と思っていると、相澤先生が1人で敵集団に立ち向かおうとする。

緑谷くんは相澤先生の戦闘スタイルを理解しており、行くのは危険と行っているが、先生は俺たちのために単身で突っ込んで行った。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号!任せたぞ。」

 

その後の先生は敵の個性を抹消し、捕縛武器の布を使い倒していく、中には抹消できない異形型の個性持ちもいたが、格闘技や捕縛武器をうまく使いながら有利に立ち回っていた。

 

す、すげぇあんな戦い方ができるなんて......。もし、生きて帰れたら相澤先生に戦い方を教えもらおう。

生きて帰れたらだが。

 

「すごい!多対一でこそ先生の得意分野だったんだ!」

 

「いや、冷静に分析している場合⁉︎早く避難しないと!」

 

こんなところで緑谷くんの分析する癖は出なくてもいいから、早く避難しないといけない。

 

あちらの狙いは俺たちなんだ。人質にされたらとても厄介なことになる。

ってなんだ?目の前に黒いモヤみたいなものが......ッ⁉︎

 

「させませんよ。」

 

コ、コイツいつの間に⁉︎いや、敵が何もないところから出て来たのを考えるとワープ系の個性を持った敵か‼︎

コイツ以外に全身が手だらけの敵と脳みそが剥き出しの敵が居たが、こいつも同じくらいにやばいっ‼︎

 

「初めまして我々は敵連合、僭越ながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは"平和の象徴オールマイト"に息絶えて頂きたいと思ってのことでして。」

 

は?コイツは何を言っているんだ?オールマイトを殺す?あの平和の象徴であるオールマイト?

もしかしてギャグで言っているのか?オールマイトを殺すことなんてできるはずがない。

 

・・・・いや、殺すことができるから、殺す算段があるから奇襲して来たのか。

奴らの目的はあくまでオールマイト、俺たちはついでみたいなものなのだろうか?

だとしても俺は今、心の底からコイツを含めた奴らに恐怖している。

 

この状況を乗り切るには逃げることが1番いい。戦うのは最後の手段だ。今、生徒全員が密集しているこの場所で戦うのは無理がある。

 

「おい、天倉、お前にやってほしいことがある。」

 

と、轟くん?もしかして!この場を乗り切るいい手段を思いついたのか‼︎よし!轟くんもこの場で戦うのは流石に無理があると思っているだろう。なんせ轟くんの個性では全員を巻き込んでしまうからね。

さて、どんな作戦だ?

俺がコクリと頷くと

 

「あいつらが攻撃した後、隙を見つけて奇襲を仕掛けてくれ。」

 

・・・・え?あいつらって?

 

俺が辺りをよく見回すと、というかもう既に爆豪くんと切島くんが黒いモヤのような敵に攻撃を仕掛けてっておおおおおいいい⁉︎

何やってんの⁉︎お前ら⁉︎というか外見上物理効かなそうな相手に特攻仕掛けんな‼︎

 

「危ない、危ない。」

 

ほらぁ、どう見ても効いていないよ。なんか危ないっていいながら余裕そうにしているし‼︎

 

「天倉!今だ‼︎」

 

今なの⁉︎マジですかい⁉︎やんなきゃいけないのかよ⁉︎

あぁぁぁぁぁぁ‼︎もうっ!やってやる!やってやるよ‼︎

 

個性フル発動‼︎からの、跳躍+引っ掻く‼︎有名なゲームでもゴーストタイプにはノーマル技が効くはずないけど、とりあえずその首もらったあぁぁぁぁぁっ‼︎

 

 

ガリッ‼︎

 

 

・・・あれ?なんか妙な手応えが⁉︎まさか、コイツ実体のある部分が⁉︎

そうか!そうでなきゃ、さっき「危ない、危ない」って言わないよな!

 

「くっ・・・、生徒といえど優秀な金の卵。さすがに肝が冷えました。」

 

焦っている?弱点がバレたからか?確かに実体のある部分がバレればそこを集中砲火されるから焦るか。

 

って、アレ⁉︎ いつの間に周りに黒いモヤが⁉︎しまった!逃げ場を失った‼︎

っく!こいつの目的はワープ系の個性で俺たちを分断する気か‼︎

 

「駄目だ、退きなさい!3人とも!」

 

む、無茶だ!コレをどうやって退けばいいんだよ⁉︎

ッ!せめて、何人か転移される前に弾き飛ばせれば!俺は咄嗟に障子くん、芦戸さん、瀬呂くんを全力で押し飛ばした。

 

そして、直後視界が真っ暗になり気づくと、周りには燃え盛るビルや瓦礫の山があった。

先程までいた訓練場とは全く違う形状であることがすぐ分かり、ドーム状の建物の中に存在する火災ゾーンだとわかった。

 

現在進行形で俺は落下中であり、真下には炎が・・・ってうおおおお‼︎危ねぇっ!なんとか空中で身体をひねりながらの着地

火傷は免れたが、気付くと周りには敵だらけだった。

一対多かよ。今の所俺しかいないみたいだし、

 

「へっへっへ、運が悪かったな。まさか1人だけなんてな。」

 

「餓鬼1人とは歯応えがねぇな。もっと来れば良かったのによ。」

 

「もう後戻りは不可だぜ、覚悟しな。」

 

わらわらと敵が集まってくる。周りには燃え盛る炎と沢山の敵。

分かりやすく状況を説明すると絶体絶命。

もう、後戻りはできない。ゲームならやられてもコンテニュー可能だが。こんな状況でできるはずもない。

 

こいつらはオールマイトを殺す為に集められた敵。到底俺が勝てるとは思えない。

だが、俺だけではなく、皆もこんな状況になっている筈だ。

攻撃手段の個性を持っていないやつも飛ばされた筈だ。その人と比べれば絶望なんてしていない。

 

ヒーローはあらゆる理不尽《ピンチ》を乗り越えるもの‼︎

来い‼︎敵《ヴィラン》共‼︎

 

 

「ノーコンテニューでクリアしてやるぜ‼︎」

 

 

さぁ‼︎始めようか‼︎

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う、なんか違うんだよ‼︎」

 

弱かった。もう一度言おう。

弱 か っ た !

 

違うんだよ!俺が想像していたのってもっとこう。疲れ果てて、やっと勝利を掴み取ったって感じなんだよ。

弱すぎるんだけどこの敵達。

 

本当にこいつらオールマイトを殺す為に来たのか?なんて言うかチンピラ共の寄せ集めっていうかなんというか。拍子抜けだった。

 

とりあえずベルトからロープを取り出し、敵達を捕縛しておく。

ふと、誰かがこちらに向かってくるのが見えた。

 

「敵か⁉︎ならばご退場願おうか。」

 

「天倉か!無事・・・だよな、この有様を見れば。」

 

誰かと思ったら尾白くんだった。君までここに飛ばされていたのか。

だとしても不思議に思う。なぜこいつらはこの程度の実力でオールマイトを倒せるなどと思ったんだ?

 

最初、敵全員がプロヒーロー並みの実力だと思ったが、全然違かった。

これはどういうことなのだろうか?

 

「天倉、考えているところ悪いけど、一旦ここ《火災ゾーン》から出よう。どうやら敵全員は天倉がやっつけたみたいだしな。」

 

「え?こいつらで全員?だとしたら更に不可解なんだけどなぁ。」

 

この数で俺たちを倒せると思ったのだろうか?それともオールマイトを倒せる算段が本当にあるのだろうか?

例えば対オールマイト用の個性持ちを連れて来たとか・・・・。

 

・・・・待てよ⁉︎俺が敵が出て来たのを見た時、明確な恐怖を感じた!だけど、こいつらには全く恐怖を感じなかった。

精神論になるかもしれないけど、それは俺がその敵に対して強大な力を本能で感じたから⁉︎

いや、本命はあの手が沢山付いている敵のすぐ隣にいた"脳丸出しの敵"なんだ‼︎

 

 

・・・・・だが、それに気づいたとして俺に何かできるのか?

俺の個性はこのクラスの中で強力な部類だが欠点もある。そもそも俺の個性でなんとかできる相手なのか⁉︎

 

いや、無理だ。俺にはあいつらを相手にできるような度胸を持ち合わせていない。

そもそも敵に一矢報いたところで、すぐに返り討ちにあうのが関の山だ。

 

そんなことを考えながら俺は尾白くんと火災ゾーンから出る。ここからだとよく広場が見える。

 

「確か、あっちで相澤先生が戦ってくれているんだよな。だとすると、広場に行くのは危険だな。」

 

「う、うん。そうだよね。主犯格も広場にいるみたいだし。」

 

 

・・・・あそこで相澤先生が俺たちを逃がす為に戦ってくれている。そう思うと、胸の奥がキュッとなる。

 

この後はどうする?相澤先生なら大丈夫だと言っていたが、あそこには本命の敵がいる。オールマイトを倒せる切り札となる敵に果たして先生は無事に済むのだろうか?

加勢をするか?いや先生は避難しろと言ったのだ。ならば広場を迂回して入口で皆と合流する方が賢明だ。

 

それで・・・・合っている筈だ。

 

 

「天倉、悪いけどお前の個性で周りに敵がいないか探してくれ、あと他の奴らも飛ばされているかもしれないからな頼む。」

 

「わかった。やってみる!」

 

いや、合っているんだ。尾白くんだってまずはこの場から避難することを第一に考えている。俺は尾白くんに言われた通り、個性を発動し、強化された視力、聴力、嗅覚を駆使し辺りに誰かいないか探す。

 

 

・・・・いた。

 

「水難ゾーンの広場近くに・・緑谷くん、蛙吹さんに・・なんか蛙吹さんに水の中に抑えつけられているけど峰田くんがいる。そして、ちょうど倒壊ゾーンから爆豪くんと切島くんが出てきた。そして土砂ゾーン近くに轟くんがいる。パッと見てこれぐらいだ。」

 

「パッと見でそんなに分かるのか・・・・天倉の個性って見た目怖いけどものすごく強いよな。」

 

尾白くんが褒めてくれるがそこまで強力ではない。

いや強力だが、それと同時に弱点が大きくのだ。はっきり言うと、この時点で既に空腹状態だ。

俺はすぐに尻ポケットから大豆バーを取り出し口の中に入れる。

 

「大豆バーっていつの間にそんなもの入れていたんだよ。」

 

ずっと前からだ。

俺はもう一度あたりを見回す。今度は広場をよく見てッ⁉︎

 

俺の手から大豆バーが落ち、そのままコンクリート製の床に叩きつけられる。

 

俺の目には今、無残な光景が映っている。

血にまみれた相澤先生が脳丸出しの敵に為す術なく他に伏せている光景だった。

無意識のうちに俺は全身に個性を発動し体勢を低くしながら構えていた。

 

「尾白くん。悪いけど、先に行ってて欲しい。やることができた。」

 

俺は尾白くんの返事を待たず走り出していた。

何故こんなことをしているのだろうか?俺はどうしようもない馬鹿野郎だ。

先程まで俺は逃げるのが優先。敵とは極力戦闘を行わない。相澤先生の言う通りにするなどと言っていたのに、俺は広場に向けて走り出している。

このまま真っ直ぐ行くと水難ゾーンの大きな湖に当たるが、関係ない。俺は大きく跳躍し飛び越える。

 

途中、緑谷くん達が目を大きくして驚いていたような気がしたが、どうでもいい。

 

「ガアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!」

 

俺は唸りを上げながら相澤先生を拘束している脳丸出しの敵の顔に爪を立てながら飛びつく。

それだけでは終わらない。こいつの頭を両脚で挟み込みそのまま体を何回も捻り、体が旋回する勢いで両脚を使って投げ飛ばす。

 

ヘッドシザースホイップ

 

身長171㎝の俺がこんな全長2mを越すような敵にできる技ではないが、俺の強力な(ここぞと言う時に使える)個性だからこそ強引に使用することができる技だ。

 

しかし、投げ飛ばすことができたものの脳丸出しの敵は上手に受け身をとりすぐさまこちらに向かい構えた。

 

「.........おいおい、こいつは"対平和の象徴"オールマイトを殺す為に連れてきた【改人脳無】だぞ。......それなのになんでこんな様を見せているんだよ......?」

 

・・・・この手だらけの敵が連れてきたこの脳丸出しの敵は【脳無】って言うのか・・・・。

そんなこと考えるよりもまずは先生の無事を確認する。

・・・腕と顔面が酷い。おそらく骨折、特に腕の骨はバキバキになっているだろう。

 

 

「...おい、黒霧あんな奴いたか?.....黒くて大きい赤い瞳をしたトカゲ人間................どう見ても敵にしか見えないが?」

 

「ふむ............!死柄木、思い出しました。アレは生徒達の中でも私の実体を見破り攻撃を加えた人物です。あの姿はおそらく個性によるものでしょう。」

 

「......見破られた?攻撃を加えられた?............はぁーーー。黒霧お前、本当に粉々にしたい気分だよ......。」

 

・・・・・やってしまった。

今更ながら俺はどうしてこんなことをしてしまったんだ。

さっきまで理由をつけて相澤先生を見捨てようとした俺が無理矢理なんでこんなことをしているんだろうか?

 

そんなこと考えながらも俺の身体は相手を威嚇する様に体勢を低くしいつでも攻撃を仕掛けることが出来るようにしている。

 

「グウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・」

 

「......何だ?もしかして自分の先生が傷つけられているのを見て頭に血が上ったのか?...見た目は敵なのにな。」

 

 

・・・・あぁ、そうかやっとわかった。俺は"激怒している"のか。

どおりで急に変な行動を取ったり、今現在脳無に対して恐怖していない理由がやっと理解できた。

 

だけど、俺はどんな理由で激怒しているんだろうか。先生が傷つけられているからか?それともこいつらがオールマイトを殺そうとしているからか?どっちにしろ、俺はヒーローらしい行動ができたんだな・・・。

こんな傷つけるしか能が無いような俺でもヒーローらしい行動が。

 

「......ハァーーー、萎えたな。オールマイトは来ないし、脳無は投げ飛ばされるし、変な奴は乱入してくるし、もう良いや帰るか。」

 

・・・・・・帰るって言ったのかコイツは?

何なんだ最初コイツを見た時俺は子供の様に純粋で泥の様な悪意を感じたが、まるで本当に子供だな・・・。

俺は、いや"俺の個性"がコイツをブッ飛ばすと心の中で訴えかけている。うるさい、良いじゃないか帰ってくれるなら。

 

帰ってくれるなら・・・な。

 

 

「だけど............ボーナスゲームは必要だよな。レアなヤツを殺して得点をゲットだ。」

 

 

帰ってはくれないよな。

 

あぁ、いいさ。俺はこんな奴らに真正面から堂々と戦う様な自信は無いが、それ以上に周りの大切な人を見捨てようとする度胸は持ち合わせてはいない‼︎

 

 

さぁ、来いよ敵《ヴィラン》共。

 

 

 

 

ここからは俺のステージだ!

 

 





〜〜その頃の尾白くん〜〜

「くそっ、待ってろ天倉!今助けを呼ぶからな!」

「見つけたぞ雑魚が‼︎」BOOM‼︎

「うおっ⁉︎爆豪それに切島⁉︎いや待て俺だ!尾白だ!」

「・・・・誰だ?」

「いや、同じクラスメイトだろ⁉︎確かに自分でも影は薄いと思うけどさ‼︎」

「爆豪!ここはコイツの言葉を信じてみようぜ!」

「(いや、俺はお前の席の前だぞ⁉︎マジで忘れているのか⁉︎)ほら!天倉と一緒に訓練していた!」

「「思い出した‼︎」」

「お前らな‼︎」

その後、轟と合流し広場へ向かいました。


評価を見てみると低評価が無くて逆に驚きました。
こんな小説を読んでくれている皆様に感謝感激です!

感想、評価をよろしくお願いします!

今後も頑張っていきたいです!


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第9話 私が来た


うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
評価バーに色がついたぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

評価してくださった方々ありがとうございます!!
例え評価星1だとしてもその方も僕の小説を見てくれているので僕にとっては嬉しい限りです!!!

これからも皆様の期待に応えられるように頑張ります!!!



 

僕の名前は緑谷出久。小さい頃からヒーローを目指して、無個性だと告げられたとき僕は現実を知った。だけどある日僕は"憧れの人"と出逢いヒーローになる為この雄英高校に入る事になった。

 

だけど、入学してからまだ1週間足らずで敵連合と名乗る集団がこのUSJを襲撃してきた。

今、僕たちは何とか敵たちを無力化して別の場所に移動しようとしたとき、相澤先生が・・・・やられた。

僕たちを助ける為にだ。

 

初先頭にして初勝利し、浮かれていた。僕らは勘違いしていたんだ。途方も無い悪意には僕たちは無力だということを思い知らされた。

 

その時だ。峰田くんが何かに気付いた、蛙吹さ......つ、梅雨ちゃんもだ。

 

「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎こっちに猛スピードで何か来るぅっ⁉︎」

 

「本当だわ。敵かしら?」

 

「いや、アレは・・・・天倉くん⁉︎」

 

そう、こちらに向かって来るのは個性を発動している状態の天倉くんだった。

っていうか速い⁉︎自動車並のスピードが出ているんだけど⁉︎

だけどこのまま真っ直ぐ走ると、この水難ゾーンに当たって湖に落ちる⁉︎と言うか僕達も危ない⁉︎

 

と思っていた矢先、天倉くんは跳んだ。高く、高く、大きく空を飛んだ。僕は勿論、峰田くんそして予想外に梅雨ちゃんも目を大きくして驚いてしまったんだ。

そしてそのまま敵に飛びつき、アクロバティックな動きをしてから敵を・・・・投げ飛ばしたぁっ⁉︎

 

そのまま天倉くんは敵3人を相手に戦い始めた。

 

「お、おい。やっぱり天倉って化物だぜ。あんな敵とタメ張れるんだぜ。やっぱりヤベェって。」

 

「でも、いくら天倉ちゃんが強くても、相手は3人そのうちの1人は相澤先生を倒した敵なのよ。勝機はあるのかしら?」

 

いや、違う。天倉くんは何も考えなしに戦ってはいない。その証拠に戦っている位置が徐々に"此処から離れていっている"。

 

「相澤先生を安全な場所に避難させよう!天倉くんの邪魔にならない様に!」

 

今、僕たちができるのはこれぐらいだ。

お願いだ。天倉くん、決して無茶だけはやめてほしい。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「あーあ、ムカつくな〜。......まんまとお前の策に乗っちまった。さっきの場所から離れた位置に俺らが気付かない様に移動してイレイザーヘッドを避難させようとわざとお前は真っ向から仕掛けてきた。......本当に嫌になるよヒーローは。」

 

と死柄木と呼ばれた男は首を引っ掻く。

しかし天倉はその隙を与えない。攻撃を更に加える。それを脳無が庇う。

 

天倉は脳無に攻撃をした瞬間に何か違和感を感じた。しかし、そんなことを考えているうちに脳無が右手を振りかぶっていることを"感じ取る"天倉はバク転で回避し、脳無にラッシュを加える。

鳩尾、首、肩、下腹部、胸部、顔面、しかしどこに攻撃を加えても脳無はダメージを受けるどころか怯む様子も見られない。

 

脳無は天倉が攻撃を仕掛けている間に両手を組み振りかぶってから天倉に振り下ろす。

天倉はすぐさま脳無の股の下をくぐり抜け、ハンマーナックルを回避する。

 

天倉が先程までいた場所は木っ端微塵に粉砕されていた。もしそのままあの場所にいたら、ミンチになっていただろう。

 

「グウウウウウウウ・・・・・ッ⁉︎」

 

「脳無に気を取られては足元をすくわれますよ。文字通りね。」

 

天倉の真下にワープゲートが現れ、膝から下までがワープゲートに入っている。

 

「このまま・・・ぐっ⁉︎」

 

しかし、それは黒霧にとって誤算だった。

天倉はワープゲートの中に腕を突っ込みそこに繋がる黒霧の首、実体のある箇所に強力な握力で首を絞める。

 

「チッ......脳無やれ。」

 

死柄木が脳無命令すると、脳無はワープゲートに中途半端に入っている天倉の首を目掛けて腕を薙ぎ払う。

が、天倉はそれを察知していたかの様に、自らワープゲートの中に入り、黒霧のモヤから天倉が出現する。

 

丁度、死柄木の近くだ。天倉はそいつを確認したと同時に回し蹴りを食らわせた。

そして、天倉は足に異変を感じた。

 

天倉の足の表面が崩れ、血が流れている。

 

「(これは・・何だ?攻撃を食らったのか?いや、違う。これは【ヤツの個性】か‼︎)」

 

回し蹴りを食らった死柄木は立ち上がる。

 

「あー、全く。蹴りを食らっちゃったよ。物凄いダメージだ。防御した手も痺れて、使い物にならない。だけど、さっきまでよりは"弱くなっている"な。」

 

「ハァーッ・・ハァーッ・・ハァーッ・・・。」

 

死柄木の言う通り天倉は先程までよりも明らかに弱っている。

天倉の個性は確かに強力だ。だが、あくまで短期決戦としてなら強力だ。長期戦に持ち込まれれば、極端に弱くなる。

天倉の個性は使えば使うほど自身のエネルギー《カロリー》を消費する為

 

個性のフル発動した状態で戦える時間は精々、10分が限界だ。

 

それが天倉の強力な個性の弱点だ。

 

「さっきから脳無の死角からの攻撃を避けていたのは......何だ?もしかして直感、野生の勘ってヤツか?明らかにそんなことをしそうな個性だもんな。だとするなら、相当弱っているな。

 

脳無の攻撃を避けることができていないからな。」

 

天倉の背中に強力な衝撃が来る。そして天倉は気付くと宙を舞っていた。

脳無が背後から攻撃を仕掛けていたのだ。

追い討ちをかける様に脳無は天倉の足を掴み、地面に叩きつける。

そして地面にクレーターができる。

 

「まだだ、徹底的にやれ。脳無。」

 

更にクレーターが増える。そして、天倉の身体中から血が流れる。

 

そして、時間切れだ。

 

天倉の個性が解除され元の姿に戻る。個性が発動している状態でダメージを受けていたのが幸いだった。

元の姿でダメージを受けていたならば相澤先生以上の重体に、もしくは死は免れなかっただろう。

 

「本当にコイツ、ヒーロー志望なのか?敵の方が似合っているぞ......。まぁ、いいや。脳無、"コイツを殺せ"。」

 

死柄木がそう言った瞬間、何かがこちらに向かって来た。

そしてその何かが叫ぶ。

 

「離せぇっ‼︎」

 

緑谷出久だ。彼は右腕を大きく振りかぶり、脳無に向けて拳を放つ。

 

 

「 S M A S S H ! ! 」

 

 

100%の彼の力が脳無に対して放たれる。緑谷の腕は折れなかった。緑谷の個性はその強力さ故に自身の身体をも傷付けてしまうが折れなかった。

緑谷は内心喜んだ。やっと調整することができたと。

しかし、脳無にはダメージどころかビクともしなかった。

 

「・・・・え?」

 

「いい動きするなあ......スマッシュってオールマイトのフォロワーかい?」

 

天国から地獄、自身の力をコントロールしたと思った矢先に憧れの人の力が通用しなかったことの絶望。緑谷の思考が一時的に停止してしまう。

そして、死柄木の手が緑谷の顔面に伸びる。死柄木の個性は触れたものを粉々に崩す個性だ。この後、何が起こるかは容易に想像できる。

 

蛙吹梅雨も何かが起こると感じたのか自身の長い舌を伸ばし、緑谷を助けようとする。しかし、距離が足りない。

 

正に絶体絶命。

 

その時、脳無の身体中に突起物が生えた。

 

『⁉︎』

 

いや、正しく言うならば天倉の身体中から無数の棘が伸び、ソレが脳無身体を貫いたのだ。

丁度、緑谷を巻き込まないように助けた様にも見えて。

 

そして天倉の身体に異変が起きる。身体の所々に蒸気が発生し、徐々に姿を変えていく。

その姿は個性によって変身した天倉だが、違うところがある。

 

「黒じゃなくて、翠?」

 

変身した天倉の姿は鈍い黒ではなく、混じり気のない純粋な翠だった。

そして、身体中には先程の激闘を象徴するかの様に赤い傷の様な模様が浮かび上がり、額には黄色の触覚が生える。

 

天倉のその姿は正に化物、怪物の様な姿にまた近づいただろう。

天倉は身体中から伸びた棘を引っ込めると腕に生えている刃を使い、脳無の手首の腱を切る。

すると天倉の足を掴んでいる手の力が緩む。天倉は脳無の拘束から逃れると全身から蒸気を放出しながら脳無に襲いかかる。

 

天倉は既にエネルギーを使い果たし、個性を発動出来ない状態だった。

だが、使えるのは何故か?それは自身の身体の中にある細胞を一つ一つの中にあるタンパク質を分解し、その分解でできたアミノ酸から新しくタンパク質を作り出すリサイクルシステムが発動したのだ。

 

これを自食作用《オートファジー》と呼ぶ。

 

天倉の個性はさらなるエネルギー、強さを求めて姿を変えた。より強靭に、より力強く、天倉の身体に合わせて進化したのだ。

 

だが、これにも時間制限がある。エネルギーの供給が追いつかないのだ。自身の細胞が生み出すエネルギーだけでは個性を維持できる時間が少ないのだ。

それにより、自食作用が発動した天倉はエネルギー、カロリーを求め凶暴化し、先程までよりも荒々しくなるのだ。

 

「グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

天倉は腕の刃で脳無の右腕の上腕二頭筋と肩の中間地点に斬撃を加える。

すると脳無右腕がだるんと力が入らないように垂れ下がった。そこから天倉はすれ違いざまに左脚に刃を入れる。瞬間、脳無が左膝をつく。

 

「......脳無の右腕、左脚を簡単に壊しやがった......。」

 

「馬鹿な!仮にも対オールマイトに連れてきた個性持ち!あの一瞬で膝を突かせたと言うのか⁉︎」

 

死柄木と黒霧は信じられない光景を目の当たりにする。それは緑谷たちもそうだ。クラスメイトの天倉が一瞬のうちに状況を一変させたと共に驚き、そして喜びを感じた。

 

だが、緑谷は別のものを感じた。

アレは本当に天倉なのか?天倉の姿をした別の存在なのではないか?そう感じてしまった。

まるで別の何かが天倉を乗っ取っているように思えた。

 

しかし、ただやられているだけの脳無ではなかった。残っている左腕を使って天倉を捕まえようとする。しかし、天倉はそれをいとも簡単に回避する。

 

「ルゥアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

そして、その突き出された左腕に天倉は噛み付いた。そのままフルスイングの要領で脳無を投げ飛ばした。

 

一方的な戦い、それは長くは続かなかった。天倉は糸が切れたかのように突如倒れた。

正真正銘、時間切れだ。それを見た敵は好機と判断する。

 

「死柄木!アレは必ず我々の邪魔になる存在です。一時的だとはいえ脳無を圧倒した。今殺しておくのが良いかと。」

 

「あぁ......そうだなぁ、脳無も色々やられたけど、大丈夫だ。さっさとアイツを殺してから帰るとするか......。」

 

と死柄木が天倉に向かって走り出す。だが、それは緑谷も同じだった。

2人が走り出すのはほぼ同時だった。

 

「やらせて・・・ッたまるかぁッ‼︎」

 

ヒーローと敵の手が伸びる。助ける、殺す、2人のしていることは同じであり、全く違う。

 

バァンッ!!!

 

そして、入り口から大きな音が聞こえる。

そこに居たのはヒーローにとっての憧れる者、敵にとっての嫌悪する者

 

 

「もう、大丈夫。」

 

 

【平和の象徴オールマイト】

 

 

"私が来た"

 

 





「・・・おや?天倉の様子が・・・!」

デッデッデッデッデッデッデッデレレレ〜デッデッデッデッデッデッデッデレレレ〜デッデッデッデッデッデッデッデレレレ〜♪

チャ〜チャッチャチャ〜♪チャララチャッチャッラ〜♪

「おめでとう!天倉グローイングフォーム(個性未完成形態)は天倉アマゾンオメガオリジン(素体アマゾン)に進化した!」

あっ!やめてBボタン連打はやめてください!


感想、評価よろしくお願いします!



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第10話 何故お前がいるんだ⁉︎


最近は驚きの連続でした。
評価バーに色がつき
∑(゚Д゚)

そして1日で同じ方から感想が4件もきて

( ゚д゚)

さらには今週の仮面ライダーエグゼイドを見て

(((;゚Д゚)))))

て言うか僕、驚きスギィ‼︎


※警告 今回は主人公の活躍が全くありません。



 

平和の象徴とは存在するだけで犯罪の抑止力となる

 

「嫌な予感がしてね・・・校長の長い、いや、ありがたいお話を振り切りやって来たよ。来る途中で飯田少年とすれ違って・・何が起きているかあらまし聞いた。もう大丈夫だ。」

 

平和の象徴だからこそ、常に胸を張り、常にかっこよく、常に恐れず、常に人々を安心させなくてはならない。

 

だからこそオールマイト《平和の象徴》はこう言うのだ。

 

「私が来た!」

 

 

『オーーーールマイトーーーー!!!』

 

 

「...来たか、社会のゴミめ。」

 

オールマイトは階段を一瞬で降り、それと同時に階段のすぐそばにいた敵たちを瞬殺した。殺してはいないが、あの一瞬で無力化したのだ。

 

「(・・・相澤くん、すまない・・。腕に・・顔も・・・・!)」

 

オールマイトは敵の方向へ向き直る。そこには緑谷と死柄木、そして所々に血を流して倒れている天倉がいる。

 

「(そして、天倉少年・・・・・ッ!!)」

 

オールマイトの拳に力が入る。そしてオールマイトは敵を睨みつける。その眼光はまるで子を傷付けられ激怒した獅子のようだった。

 

そして気付いた時には緑谷と倒れている天倉は蛙吹と峰田の近くまで移動していた。

 

「え⁉︎え⁉︎あれ⁉︎速ぇ・・・⁉︎」

 

「皆!入口へ相澤先生と天倉少年を頼んだ‼︎天倉少年は意識が朦朧としなんとか大丈夫だが、相澤先生は意識がない!早く!」

 

緑谷は心配そうにオールマイトのことを見た。彼は知っているのだオールマイトの秘密を・・・。

 

「ああああ....だめだ....ごめんなさい......お父さん.........。」

 

死柄木は臆病そうに身体を震わせながら床に落ちた手の形をした装飾品を拾う。

先程までの様子が嘘のような言動を取っている為とても不気味だ。

 

「さすがに速いや、さっきのヤツ以上だ。......けれど思った程じゃない。やはり本当だったのかな...。」

 

手の装飾品を顔に装着する直前にこちらを向いていることがわかる。

死柄木は口の端を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべる。それはまるでオールマイトをあざ笑うかのようだった。

 

「弱ってるって話.........。」

 

死柄木がそう呟くと呼応するかのように脳無が死柄木の前に立つ。

脳無がまだピンピンしている様子に峰田は怯える。

 

「あっ⁉︎あいつ!天倉が倒した筈なのに⁉︎」

 

「オールマイト!だめですあの脳みそ敵‼︎ワン・・・!僕の腕が折れない程度の力だけど、ビクともしなかった!きっとあいつ・・・。」

 

「緑谷少年‼︎大丈夫!」

 

心配する緑谷にオールマイトは安心させるようにする。これ以上生徒を傷付けない為にも。

そしてオールマイトは死柄木に向かって走り出し、両腕を胸の前でクロスさせる。

 

「 C A R O L I N A・・・。」

 

「脳無。」

 

「 S M A S H ! 」

 

オールマイトのクロスチョップは死柄木ではなく、庇った脳無に命中した。だが、脳無に攻撃が効いている様子は無かった。

 

そして脳無はオールマイトを捕まえようと"両腕を振りかぶる"

 

「マジで全っ然・・・効いていないな‼︎」

 

オールマイトは脳無の攻撃を避けながら的確に拳を命中させる。胴体、頭あらゆる箇所に攻撃を加えても効いている様子は無い。

 

「効かないのは"ショック吸収"だからさ。脳無にダメージを与えたいなら、ゆっくり肉をえぐったり、切ったりするのが効果的だね......やらせてくれるかどうかは別として。」

 

「(・・・・本当にそれだけなのか?)」

 

緑谷は先程から脳無の動きに違和感があった。天倉と脳無が激闘を繰り広げていたというのにおかしな点がいくつもあったのだ。

 

「(峰田くんの言っていた通り、なんであの敵は"動けるんだ⁉︎天倉くんが無力化した筈なのに‼︎)」

 

天倉は脳無の右腕と左脚の筋を切り、動きを制限させた筈だ。それなのに、何故天倉と戦う前の状態のようにピンピンしているんだ⁉︎と

 

オールマイトは物理攻撃が無意味なら別の方法でダメージを与える為、脳無の背後に周りこみバックドロップを仕掛けた。

 

「わざわざサンキュー、そういうことなら‼︎やりやすい!」

 

オールマイトと脳無が戦っている場所で爆発が起きた。だが、あくまでコレはオールマイトのバックドロップによって起きた爆発だ。これがオールマイトがどれだけ実力を持っているかわかる。

 

1-A生徒達はオールマイトが来てくれたことにより、絶望から一転希望に満ち溢れていた。

 

「すげぇ!ヤツらオールマイトを舐めすぎだぜ‼︎」

 

「あ!デクくんだ‼︎」

 

だが、緑谷出久は知っているのだ。

 

「やれええ!金的を狙ええーーっ!」

 

「私たちの考え過ぎだったかしら・・・天倉ちゃんも凄かったけど、やっぱりオールマイトも凄いわ。」

 

彼だけが知っているオールマイトの秘密《ピンチ》を

 

「ッ〜〜〜〜〜〜!そういう感じか・・‼︎」

 

オールマイトは脳無をコンクリートの地面に突き立て、動きを封じようとしたが、ワープゲートの個性をもつ黒霧が援護し

脳無の上半身がオールマイトの真下から出現し、オールマイトの脇腹に指を深く突き刺していた。

脳無はオールマイトとほぼ同等のパワーを持ち、簡単に拘束を解くことができない。

 

「先程、あなたの生徒に似たような手を使ったのですが、逆にそれを利用されてしまい、アイアンクロー(首締め)を受けてしまったので、今度はそんなことがないようにしておきました。」

 

「(マジか!天倉少年凄いな⁉︎っていうかそこは弱いんだやめてくれ!)」

 

黒霧は天倉との戦闘で学び確実にオールマイトを倒す為の方法を編み出した。

更に黒霧は自慢気に話を続ける。

 

「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目、そしてあなたの身体が半端に留まった状態で"ゲートを閉じ引きちぎる"のが私の役目。」

 

それを聞いた瞬間、緑谷は行動を始めた。

 

「蛙ス・・・っ・・・ユちゃん!」

 

「頑張ってくれるのね、なぁに緑谷ちゃん」

 

天倉が脳無に立ち向かったとき、それはとある光景によく似ていた。

 

「相澤先生担ぐの代わって・・・‼︎」

 

「うん・・・けど何で・・・?」

 

「そっ、その通りだ!天倉見た目はスラっとしているけど、相澤先生よりもすっげぇ重いんだぞ⁉︎俺1人じゃあ運べねぇよ・・・・っておい!緑谷!何処行くんだよ!」

 

天倉が見せてくれた行動、それは緑谷が"まだ無個性だった頃"1人の幼馴染を助けるときの光景に・・・自分と同じことをしていた。

 

それに感化されたのか、緑谷はオールマイトに向かって走り出した。

そして彼は心の中で叫ぶ。

 

教えてもらいたいことが まだ! 山程あるんだ‼︎

 

「 オールマイトォ‼︎ 」

 

 

緑谷の目の前にワープゲートが出現する。まるで見計らっていたかのように、そして黒霧はあざ笑う。

 

「浅はか。」と

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼は笑う。

 

 

 

 

 

「 どっ!!!け‼︎ 邪魔だ‼︎ デク!!! 」

B O O O O M ‼︎

 

ヒーローらしからぬ素敵(凶)な笑顔で

 

笑顔?を浮かべながら爆豪勝己は黒霧を抑えつける。そして、脳無の半身が凍りつく。

 

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた。」

 

そこには2つの個性の力を持つ相変わらずクール《氷のように冷静》な性格をした轟が脳無の半身を凍らせたのだ。

そこにもう1人の生徒が死柄木に殴りかかる。しかし、大きな声を出しながら殴りかかってきたことにより、死柄木は最小限の動きで回避した。

 

「だぁーー‼︎ってありゃ?くっそ!いいとこねぇ‼︎」

 

「スカしてんじゃねぇぞモヤモブが‼︎」

 

「平和の象徴はてめぇらが如きに殺られねぇよ、天倉に手こずっているなら尚更だ。」

 

助けに来てくれた3人否、ヒーローの卵が3つ来てくれたことにより緑谷は感激する。

 

「かっちゃん・・・みんな・・・!」

 

オールマイトを助ける為、敵に借りを返す為、友の為とそれぞれの思惑は違うが、ここに強力な個性持ちが集まったのだ。

 

 

「2人共!運ぶのを手伝うぞ!」

 

「お、尾白!お前も来てくれたのか・・!」

 

「ナイスなタイミングね、助かるわ。」

 

尾白も勝手な行動を取ってしまった天倉を助ける為、合流した爆豪たちに助けを求めたのだ。性格にちょっと難があるメンバーてあると同時にこのクラスでこれ以上に頼もしいメンバーはいない。

 

尾白は自分の個性と戦闘スタイルの関係上、戦闘に参加しても自身は足手まといになってしまうと判断し、自分に出来ることを。怪我人の避難を手伝うことを優先することにしたのだ。

 

「尾白ー!頼む、天倉ってかなり重いんだー!」

 

「え、天倉?"何処にいるんだ"?」

 

峰田と尾白が何やら揉めている間にオールマイトは氷結によって動きが鈍くなった脳無の拘束から逃れる。

 

「このウッカリヤローめ!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られている。そのモヤゲートで実体部分を覆っていたんだろ!"偶然お前にダメージが入ることが知った"からすぐに分かったぜ‼︎偶然にだ!」

 

実は天倉が攻撃して初めて理解できたのだが、彼はみみっちい器の為、偶然ということにしており、天倉を認めたくないようだ。

 

「おっと、動くな!怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐに爆破する‼︎

 

「ヒーローらしからぬ言動・・・。ていうか弱点見破ったのは天倉であって、偶然ってわけじゃないだろ。」

 

「うっせぇ!偶然だ!偶然‼︎」

 

切島が先ほどの発言にツッコミを入れると、爆豪が否定する。まるで漫才をやっているかのように見えた。

 

「攻略された上に全員ほぼ無傷....すごいなぁ、最近の子供は...恥ずかしくなってくるぜ敵連合......!脳無、爆発小僧をやっつけろ、出入り口の確保だ。」

 

すると、先程まで停止していた脳無が動き出す。凍りついた半身がバキバキと音を立てながら崩れていく。そして、脳無の右半身は粉々に砕けた。

それと同時に緑谷は先程まで違和感に気付く。

 

「っ・・・オールマイト!あいつもう一つ個性を、【自然治癒系の個性】を持っています‼︎」

 

「何っ⁉︎ 皆下がれ‼︎」

 

緑谷の予想は当たり、脳無の右半身に骨格、筋肉、皮膚と次々に再生されていった。

そう。先程まで感じていた違和感は天倉の攻撃によって脳無は筋を切断され、動きを制限されていたはずなのだが、脳無はそんな事御構い無しのようにオールマイトとタメを張れる程の動きを見せていたからなのだ。

 

 

「そこの地味なやつの言う通り、こいつにはもう一つの個性【超再生】が備わっている。脳無はお前《オールマイト》の100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さ。」

 

刹那、風が巻き起こった。周りにある木々はその風により激しく揺れ、そこには爆豪がいた場所に殴った体勢をした脳無がいた。

だが、オールマイトは寸前のところで爆豪を庇い、脳無の拳をもろに食らってしまった。

オールマイトは苦しそうに口から血を流している。もし、オールマイトが爆豪を庇っていなかったらどうなるかその場の全員が理解する。

 

そして死柄木は勝ち誇ったかのように堂々とオールマイトに向けて喋りだす。

 

「俺はなオールマイト、怒っているんだ。同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まる世の中に、何が平和の象徴‼︎所詮、抑圧のための暴力装置だお前は。暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ!」

 

死柄木はもっともな事を言い出す。ここで心に隙が生まれてしまうとこの言葉に付け込まれ、敵の美学に酔いしれてしまうだろう。

 

感動的な台詞だ。 だが、無意味だ。

 

「めちゃくちゃだな。そう言う思想犯の眼は静かに燃ゆるもの、自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ。」

 

「バレるの早・・・・。」

 

彼《死柄木》の言葉には一切の意味などない。ただあるのは自分がゲーム感覚で楽しみたいだけの愉悦感だけである。

 

そして、敵のふざけた言葉に刺激された"5人"が戦闘体勢に入る。

 

「3対5だ。」

 

「モヤの弱点は天倉くんが暴いた!」

 

「ちげぇ、俺が偶然知った。」

 

「とんでもねぇ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートをすりゃ・・・・撃退出来る‼︎」

 

「脳無はオールマイトが相手をするとして、俺たちは残り2人を!」

 

「ダメだ!君たち逃げn・・・・ちょっと待った。今、1人多くなかったか?」

 

全員は頭の上に?マークを浮かべる。オールマイトはどうしたのだろうか。1人多いなんて何を言っているのか意味がわからなかった。

 

とりあえず、全員はそれぞれ確認する。

上から"轟"、"緑谷"、"爆豪"、"切島"、"天倉"、"オールマイト"

 

そして、1人を除いた全員が瞬時に理解し、心の中で叫ぶ。

 

 

「?」

 

 

 

何故お前がいるんだ⁉︎

 

 

 

 





主人公の出番無さスギィ⁉︎

と言うか、ヒロインとかどうしよう・・・。まだ誰にするか決まっていない・・・。
この場合ってアンケートとか取った方が良いのでしょうか?

どうかアドバイス、そして感想、評価をください。
よろしくお願いします。


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雄英体育祭編
第11話 この日、俺は大事な何かを失った



やっぱり僕はシリアスよりもギャグの方が合っていると思うこの頃。やっとシリアスから抜け出せたので一安心。

ギャグなら任せろー バリバリ
あっ、でもやっぱり不安です、ちゃんとできるかなぁ。



 

「天倉少年⁉︎いつの間に!」

 

「?あの脳丸出しの敵が再生した辺りからですけど?」

 

天倉は脳無が右半身を再生させていた時から皆のちょっと後ろ辺りにずっといたのだ。

ただ、全員はそれどころじゃなかったので気付くことはできなかった。

 

「天倉くん!怪我は大丈夫なの⁉︎それに個性の使い過ぎでもう、エネルギーは。」

 

ありとあらゆるヒーローの個性を纏めることが趣味の緑谷はクラスメイトの個性についてもある程度だが纏めている。

そして緑谷は天倉の個性は強力な分、エネルギーを大量に消費することを知っている。

 

しかし、天倉は大丈夫だとジェスチャーを送る。

 

「大丈夫、それに俺だってヒーローなんだ。轟くん、爆豪くん、切島くん、緑谷くんだって怪我をしていても、俺みたいに諦めたりしないはずだから。」

 

天倉にも意地があった。たとえそれが愚かな行為だとしても、敵の目の前で逃げることはできない。ヒーローとして負けられないんだと。

 

「天倉くん・・・・・・。」

 

緑谷は勘違いをしていた。

彼もまた自分と同じだ。轟たち同様にヒーローとしてここ《雄英高校》に来ているのだと。

そして緑谷は天倉に声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっちは僕じゃなくて、かっちゃんなんだけど。」

 

「トカゲ野郎コラ‼︎デクと間違えんじゃあねぇ!!!」BOOM!

 

訂正。ダメだった。

 

現在、天倉は血が流れ、極度の空腹状態になり、頭に血が回っていない状態だ。

そもそも怪我人が戦ってはいけない。そう判断し、轟は天倉を下がらせる。

 

「オッ、オールマイト!俺も戦えますよ!」

 

「あぁ、わかった。お前がヤバイ状態だったことはわかったから、とりあえず休んどけ。(こりゃ重症だな)」

 

しかし、死柄木はチャンスだと思った。オールマイト程ではないが子供たちも厄介な存在になる。特に先程まで脳無と戦っていた子供は現在弱っており、今ならば確実に息の根を止めることが可能だ。

 

「脳無、黒霧やれ、俺は子供をあしらう。さて.........クリアして帰ろう!」

 

「おい来てる、やるっきゃねぇ!」

 

「トカゲ野郎は戦えねぇ!引っ込んでろ!」

 

「(ッ‼︎かっちゃんが天倉くんを気遣った⁉︎敵の狙いは天倉くんか‼︎)」

 

オールマイトと脳無の拳がぶつかり合った瞬間強力な突風が生まれる。

お互いの拳の衝撃でこの突風が作り出されているのだ。

 

「"ショック吸収"って...さっき自分で言ってたじゃんか。」

 

そして、オールマイトと脳無のラッシュが始まる。この場にいる全員には2人の拳は捉えることができない。そして衝撃による風も荒くなる。

しかしオールマイトのラッシュのスピード、手数が徐々に脳無のラッシュを上回っていく。

 

「"無効"ではなく"吸収"ならば‼︎限度があるんじゃないか⁉︎私対策⁉︎私の100%を耐えるなら‼︎さらに上からねじ伏せよう‼︎」

 

オールマイトのラッシュにより、脳無の体勢が崩れる。そしてすかさずタックル、アッパー、浮かんだ瞬間腕を掴み地面に叩きつける。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵《ヴィラン》よこんな言葉を知っているか⁉︎」

 

そして、彼は右手を上に突き出し自身の全パワーを集中させるようにして目の前にいる敵《ヴィラン》に腰が入った拳を叩き込む。

 

「さらに向こうへ! P u l s U l t r a !!! 」

 

 

脳無はUSJの天井を突き破り、雲を抜け、ついには見えなくなってしまった。

 

彼はオールマイト、平和の象徴にして常にピンチをぶち壊すヒーローだ。

 

「・・・・漫画かよ。ショック吸収を無い事にしちまった。究極の脳筋だぜ。」

 

「デタラメな力だ・・・再生も間に合わねぇ程のラッシュってことか・・・。」

 

「というか、敵が星みたいに飛んでいった・・・・。」

 

爆豪と轟は実感した。これがトップ、これがプロの世界、そしてこれがオールマイトの力なのだと。

 

「やはり、衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに、300発以上も撃ってしまった。・・・・・さてと敵、お互い早めに決着つけたいね。」

 

「(ち、チートがここにいる・・・・。)」

 

天倉は心の中で全盛期のオールマイトの実力にツッコミを入れる。

 

「全っ然弱ってないじゃないか!あいつ......俺に嘘を教えたのか⁉︎」

 

「(・・・・あいつ?協力者がいるのか?)」

 

天倉は死柄木が呟いた言葉を聞き逃さなかった。そして轟と切島が天倉を支えるようにして、歩くのをサポートする。

 

「さすがオールマイト、俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな・・・。」

 

「緑谷!ここは退いた方がいいぜもう、却って人質にされたらヤベェし・・・。」

 

切島は緑谷に下がろうと呼びかけるが、緑谷が反応しないことに天倉は違和感を感じる。

そして、オールマイトの周りに何やら煙のようなものが出てきている?アレは一体何だろうか・・・と不思議に思っていると緑谷が急にオールマイトと敵に向かって飛び出した。

 

そして天倉は緑谷が苦痛の表情をしているのに気付く。足が折れている、個性を使用したのだと理解できた。

そして、ワープゲートから死柄木の手が伸びているのに気がつく。

 

「がグッ!んぐっぐっ!ごめん2人とも!」

 

天倉はどこから取り出したのか棒状の携帯食料を口に入れ個性を使用し天倉も飛び出した。

天倉は個性を発動し、緑谷を庇うようにして敵に触れられないようにした。

 

瞬間、天倉の背中に激痛が走った。しまった触れられてしまったと理解した。

それと同時に個性を発動した状態の天倉の背に生えている刃状の背ビレによって死柄木は掌を切り、血が出る。

 

「一矢・・・報いてやった・・・ぞ。」

 

天倉はそう言いながら目の前が暗くなった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

夢の中だろうか?周りは真っ白で何もない部屋だということがわかる。

そして夢の中でもものすごく腹が減る。

 

「(ま、まずい。ものすごく腹が減った・・・・な、何か食べるものはないだろうか・・・。)」

 

相変わらずの食欲をした天倉の目の前に肉料理が出てくる。その瞬間、天倉はダッシュでその肉料理に手を伸ばし、すぐにむしゃぶりつく。

すると、その肉料理から味わったことのない珍味が口の中に広がる。

天倉はさらに食べていく。

 

悪くない味だ。

しかし何でだろうか、どうしてこんなに

 

悲しい気持ちになるのだろうか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

そして、また目が醒める。今度は見知った部屋だ。雄英高校の保健室だ。

とりあえず俺は鬱憤を晴らすかのように叫ぶ。

 

「なんてベタな夢のさめ方⁉︎」

 

と叫ぶと隣から焦ったような声が聞こえる。緑谷くんとオールマイトの声だ。

ちょうどカーテンが仕切っていたのでそのカーテンを開ける。

 

「あっ⁉︎あ、あああ天倉くん⁉︎よよよ、良かった⁉︎ぶぶぶ無事で‼︎べっ別に何か変な相談とかしていないからね⁉︎」

 

いや、そっちがどうしたんだ?ものすごく動揺しているけど、ってあれ?緑谷くんの隣にベットがある・・・。布団も膨らんでいるし。

もしかしてオールマイトか?

 

「もしかしてそこにいるのはオールマイト?」

 

「そっ・・・HAHAHA!そっその通り!天倉少年!どうやら目が覚めたみたいで良かった良かった!」

 

と布団の中にくるまりながら言う。何で布団にくるまっているんだ?そもそも

 

「なんかオールマイト、小さくなっていませんか?」

 

「⁉︎・・・・・・・き、気のせいじゃないかな!天倉少年!君は疲れているんだよ!とりあえずリカバリーガールが処置をしておいてくれたから、あとは栄養を取ればいいらしいぞ!皆すでに家に帰ったらしいから君も親に心配をかけないようにもう帰った方がいいと思うぞ!あっ!でも帰れたらだからあまり無茶をせずにな!」

 

なんか早口言葉みたいになっているし・・・、まぁいいか。今日はもう、帰ろう。

と緑谷くんと布団にくるまっているオールマイトにさよならと言う。

 

 

 

 

 

 

 

校門から出るとそこにはパトカーなどが大量に停まっており、どれほどのことが起きたのか再認識させてくれた。

 

そして、パトカーに混ざって一台だけものすごく目立つ車があった。

 

「・・・・何だこの車?」

 

パトカーに混ざって一台だけ派手な車があるのだ。しかも、赤と黒のカラーリングで形状もパトカーと比べてシャープであり、タイヤも4つではなく6つだ。

 

「・・・・絶対パトカーじゃぁないだろ。コレ」

 

《何故分かった⁉︎》

 

いや、そりゃあ見れば誰だってわかると思うけど・・・・・?あれ?さっき俺じゃない別の人の声が聞こえたような・・・。

 

「ーーーー?おかしいなどこにもいないぞ・・・。」

 

確か、この車から聞こえてきたような・・・。

俺はこの車の隅々を調べる。

 

《まっ、待ちたまえ!トライドロンにベタベタと触らないでくれ‼︎》

 

「キェェェェェアァァァァァシャァベッタァァァァァァァァァ⁉︎」

 

車がシャァベッタァァァ⁉︎どうなっているんだコレ⁉︎というかトライドロンってどんな名前だよ⁉︎

 

「おっおい⁉︎何やってんだよ⁉︎」

 

と、振り向くとそこには1人の刑事さんがいた。何やら変なバンドを着けているのが目につく。何だアレ?

 

「ほらっ、勝手に触っちゃダメ・・・・って君?もしかしてヒーロー科の生徒?」

 

「そ、そうですけどそれが何か?」

 

どうしたんだこの刑事さん?というかもしかしてこのスポースカーの所有者ってこの人?なんて言うか、趣味全開って言うか。

 

「そうなの⁉︎あんな大怪我だったのに⁉︎」

 

《全身打撲、筋肉裂傷、右足と背部を割創、更には極度の空腹状態により、衰弱していたと聞いていたが・・・。》

 

そんなに⁉︎よく生きていたなオレ‼︎

というかそう言われると、ものすごく腹が減ってきた。や、やばい減りすぎてなんか目が回ってきた。

 

「だ、大丈夫か?とりあえずこれ食え!ほらキャンディーだ。」

 

刑事さんが飴が入った袋を渡してくれた。ありがてぇ、ありがてぇ、早速袋をもらい。そこから一掴みしてキャンディーを食べる。お、ミルキーな味わい。うまい‼︎

 

「お、俺のが一瞬で・・・・しかも包み紙のまま・・。」

 

《何と言う食欲⁉︎ヒーロー科にはこんな者もいたのか・・・。》

 

「んぐ、んぐ。・・・さっきからするこの声って誰なんですか?」

 

さっきから自然に会話しているが本当にどこから喋っているんだ?というかマジで腹減った。仕方ない、帰りにタコ焼きでも食べに行くか。

 

「あ、あぁベルトさんのこと?あーーー・・・どうする?ベルトさん?」

 

《いや、私に聞かれてもだね・・・・。そこは気にしないでほしいということにしてくれたまえ。》

 

「アッハイ。わかりました。」

 

よくわからないが、あまり検索しないことにした。これ以上質問しても意味がないようなので俺はそろそろ帰ることに

 

「あっ、ちょっと待った。君にはまだ事情聴取をしていないんだ。」

 

《その通りだな。君の名前は何と言うんだ?こちらも刑事である以上自己紹介はするが。》

 

「(・・・片方はベルトだけどね)天倉 孫治郎と言います。」

 

《そうかそうか・・・ん?天倉?どこかで聞いたような・・・。》

 

その後ある程度したら、事情聴取が終了し無事に家に帰ることができた。

母さんは相変わらず、いつものようにご飯を作っておいてくれていた。だが、俺を信じてくれているとかが母さんの良いところだ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

敵の襲撃した日の翌日。

 

俺が教室に入ると皆がおぉっ!と詰め掛けてくる。

 

「天倉っ!オメェもう大丈夫なのか⁉︎てっきり休んでくるのかと!」

 

「よく死んでなかったな、不死身かよ⁉︎」

 

「良かったー‼︎本当に!運ばれていたとき、背中と足から血を出しながら痙攣していたからもうダメかと思ったよー!」

 

よく死ななかったな‼︎マジで!!!

俺ってそんなに重症だったのかよ!!!無事だったことにある意味恐怖覚えるわ‼︎

 

「まるで不死鳥のようだな・・・。神に見放されたと思いきや死神にも見放されたとは。」

 

おい!常闇くん!そう言うのやめーや!なんかすぐ後ろに斬魄刀を持った死神に狙われる気がするんだけど‼︎

 

やれやれ。本当に良かった。前回までシリアス続きだったけどなんかこう、和やかな雰囲気が戻ってきたって感じがするよ。

 

「天倉くん‼︎本当に大丈夫なの⁉︎あっでも、確かに個性の応用なら自身の再生能力を高めて一気に傷を治癒することもできるし、そもそもリカバリーガールの治療もあったことだからそれによってブーストされて・・ブツブツブツブツ」

 

 

な、なんか緑谷くんが怖くなってきた。そこまで分析されると、個人情報まで解析されるんじゃないかとヒヤヒヤする。

 

「皆ーーーー‼︎朝のHRが始まる‼︎席に着けーーーー!」

 

「全員着いているよ。とりあえず、飯田くんも席に着けば?」

 

俺がそう言うと渋々自分の席についていった。なんか堅すぎるって言うか何と言うか。

と、思っていると相澤先生が教室に入ってくる。

 

「お早う。」

 

全身包帯グルグル巻きで。

 

『相澤先生、復帰早ええええええッ⁉︎』

 

な、なんというプロ精神。よく来ようと思ったな・・・。

まぁでも、先生が無事で本当に良かった。

 

「俺の安否はどうでも良い。何より戦いが終わってねぇ。」

 

その言葉に俺を含めた生徒全員がざわめく。

 

「戦い・・?」

 

「まさか・・・。」

 

「まだ敵がーーーーー⁉︎」

 

 

「雄英体育祭が迫ってきている。」

 

俺はその言葉にずっこけると同時に、切島くんが叫ぶ

 

「クソ学校っぽいものきたぁぁ!!」

 

「ま、待って待って。」

 

「敵に侵入されたばかりなのに大丈夫なんですか⁉︎」

 

上鳴くんと耳郎さんの質問に相澤先生は逆に開催することで雄英の管理体制がバッチリだと証明するらしい。それと警備は定年の5倍だというのだ。

いや、だとしても

 

「そこはやっぱり中止した方が良いんじゃないですか。ぶっちゃけあんな戦闘はこりごりだし。」

 

「え・・・天倉くん"雄英体育祭"見たことないの?」

 

「?・・・・大体5月あたりの番組表にそれが生放送でやるのは知っているけど、見たことはないな。」

 

すると、クラスの空気にピシリという擬音が出るくらいに場の雰囲気が固まった。

あれ?皆どうしたんだ?

 

「天倉、お前その時期はいつも何してんだ?」

 

轟くんが質問してきた。その時はいつも知り合いと一緒に山籠りで身体を鍛えているけど。

 

「山籠り⁉︎男らしいな!・・・じゃなくて!」

 

相澤先生が説明する。

 

雄英体育祭は日本ビックイベントの一つであり、そして日本に於いて「かつてのオリンピック」に代わるのが【雄英体育祭】

 

だというのだ。

・・・・・・そんなに大事なビックイベントだったの!!!??

 

「当然、全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」

 

うごごごごごご、ぷ、プレッシャーがどんどん襲いかかってくる・・。

 

「時間は有限。プロに見込まれれば、その場の将来が拓けるわけだ。年に一回・・計三回だけのチャンス ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。」

 

・・・コフッ(吐血)

 

 

<天倉が吐血した⁉︎

 

<どんだけメンタル面弱いんだよ⁉︎

 

<戦闘はあんなに強いのに・・・

 

 

 

 

ーーーー昼休みーーーー

 

 

 

 

や、やばい。どうしよう‼︎知らなかった。そんなに大事なビックイベントなんて知らなかった!!!そもそもその頃の時期の俺はヒーローになろうとは思わなかったんだよ‼︎

やべえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!どうする!俺⁉︎

しかも残り2週間!!!

 

 

「天倉くん・・・。」

 

「え、何?麗日さn」

 

「わ"た"し"か"ん"は"る"う"う"う"う"う"う"う"!!!」

 

何が起きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎

こっちはタダでさえ情報が少なくて混乱しているっていうのに、なんで麗日さんまで混乱しているんだよぉ⁉︎

 

 

あーーーもう、仕方ない。こうなったら飯でも食べて落ち着くしかない。マジで

俺は食堂に行く途中、轟くんを見かけた。話しかけると、

「あの2人の関係、詮索しない方がいい気がしてきた・・・。」

と何やらショックを受けているようだった。

 

 

食堂に行くと何やら周囲から目線を感じる。とりあえず唐揚げ定食を手に持ち、一体なんだろうか?と考えていると、

 

「よぉっ!昨日は災難だったな。おっと、ソレ貰うぜ。」

 

話しかけてきたのは魔理沙さんだった。あと、唐揚げを奪おうとした手を叩いておいた。

 

とりあえず魔理沙さんに周囲からの目線と雄英体育祭についての話をすると、

どうやら敵に襲撃された1-Aヒーロー科の視察らしい。雄英体育祭では周りがライバルになるというのだ。

 

雄英体育祭についてのルールはある程度、魔理沙さんに聞いたが、ライバルになるかもしれないのにどうしてここまでするのか聞くと

 

「私の目的はあくまで個性を極めることだ。体育祭はただの通過点に過ぎないんだぜ。」

 

だというのだ。一度そんなセリフを言ってみたいものだ。魔理沙さんに元気を貰ったので10回ほどお代わりをして体育祭で良い結果が残せるように頑張ろうと思った。

 

あと、唐揚げを何度も奪おうとしたのでいい加減にアームロックを掛けて黙らせておいた。

 

 

 

ーーーー放課後ーーーー

 

 

 

教室から出たいのに。出れないでゴザル。

 

これも視察か・・・・と思っていると爆豪くんが前に出る。

そして

 

「意味ねぇからどけモブ共。」

 

おおおおおおおおいいいいいい!!!何やってんのおおおお⁉︎何挑発してんのおおおお⁉︎

 

すると、奥の方から人混みを掻き分けてやってきたのはなんと心操くんじゃあないか‼︎

 

「ヒーロー科に在籍する奴は皆こうなのかい?こういうの見ちゃうと幻滅するなぁ。」

 

「あぁ⁉︎」

 

やめろ‼︎こんなところで喧嘩するのはやめて!!!巻き添えを食らう未来しか思い浮かばないんだけど!

すると心操は話を続ける。

 

「体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科の編入も検討してくれるんだって、その逆もまた然りらしいよ。」

 

なん・・・・だと。

や、やばい本格的にやばい。さっきの10倍プレッシャーがかかってきた・・・。

 

「あ・・・ああ"しっかり"しているぜ‼︎」

 

「そうだよいつだって"しっかり"だよ‼︎」

 

だ、駄目だこいつら早くなんとかしないと・・・・。心操くんまで呆れている。

まぁ、つまり宣戦布告しにきたと解釈すれば良いのだろうか?

ていうか大胆だな。

 

「隣のB組のもんだけどよぉ!敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよ、エラく調子づいちゃってんなオイ‼︎本番で恥ずかしいことになっぞ!」

 

・・・・え、えらいこっちゃ。何してくれてんのこの人(爆豪)は⁉︎

 

「上に上がれば関係ねぇ。」

 

・・・・・爆豪くん・・・・・。

 

せめて巻き込むのはやめてくれ。

 

 

 

とりあえず俺は逃げるように教室を去る。すると急に声を掛けられる。

 

「・・お?君!私のこと覚えている?」

 

そこにいたのは雄英高校初日で親切にしてくれたオレンジ髪のサイドテールをした女子生徒の拳藤さんだった。

 

「拳藤さん⁉︎どうしてこんなところに?・・・ってもしかして視察を?」

 

「いや、鉄哲・・さっき叫んでいたB組のやつを様子見にね。なんか悩んでいる顔しているけど、やっぱり狙われる立場だから緊張する?」

 

拳藤さんのいう通りだ。ほぼ全員に狙われる立場、まだ精神的に未熟な俺にとっては苦痛でしかない。

 

 

「はい、・・・そうなんですけど、それ以上に"自分はまだ弱い"って感じます。敵と戦ったそれだけで周りとは違うと優越感に浸ってはいけないんだ。」

 

 

そう、だからこそ俺は・・・・・・・・

 

「貴方たち《他のヒーローの卵》に負けたくないです‼︎」

 

「・・・・ぷっ⁉︎」

 

これはまだ弱い俺の振り絞った言葉だ。その言葉に拳藤さんは急にクスクス笑い出した。

 

「(笑われた!!??女子に⁉︎)」ガーーーン!!

 

↑傷つきやすい行為の一つ 【女子に笑われる】

 

 

「ははははっ!違う、違う。なんかショック受けてるみたいだけど違うよ。まぁ確かに告白されたみたいでそのギャップに吹いちゃったけどさ。私たちB組もAクラスの奴らは調子に乗っている〜とかそう決めつけちゃっていたからさ。」

 

拳藤さん・・・・いや、告白って・・俺だったら笑うんじゃなくて物凄く驚くけど・・・・。

でも、そうか調子に乗っていたか・・・あの面子(A組)ならなぁ・・。

 

俺と拳藤さんは口を揃えて一斉に言う。

 

「「私/俺は上に上がる‼︎」」

 

そう言ってお互いに笑い合う。

 

そして俺は2週間後に向けて帰路に向かうのだった。

 

 

家に帰ったら拳藤さんに言ったくさい台詞に物凄く恥ずかしくなった。

 

 

 

この日、俺は大事な何かを失った

 





さて、久しぶりに出した他作品キャラと初めて出す他作品キャラが出てきました。
初めての方はわかる人にはわかると思います。

次回はある程度サクサク進めるため日記形式になるかもしれないですし、ならないかもしれないです。

もし良かったらアドバイスと感想、評価をください。


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第12話 What's the next stage?

ヒロインを誰にするか決めはじめた近頃。

皆さんの感想、評価でモチベーションが上がるので頑張り続けます!


 

1日目 晴れ

 

 

今日から体育祭に向けて日記を書いて見ることにした。

こうすることによって自分の成長過程を見ることができる。その為にわざわざ緑谷くんにノートを貰ったりはしていない。

そもそも買う為の金が食事代でパーとなっている為買うことができない。

 

今日から走り込みを10㎞、腕立て伏せ、腹筋、スクワットを100回ずつやる事にした。

アパートの隣に住んでいるハゲている人に教えて貰った。どうやら趣味でヒーローをしているらしいが、この人ヒーロー免許を取得しているのだろうか?なんかサイボーグっぽい人もいるし・・・。

 

 

 

 

 

2日目 雨になった

 

 

今日、切島くんに特訓に付き合ってくれと言われた。特訓といってもタイマンはらせて貰うぜ!って感じに1対1の模擬戦を行う感じだ。とりあえず戦ってみて、俺の個性の爪や刃はそこまで効果があるようには見えなかった。

だったら関節技はどうだろうと、アームロックを掛けると効果は抜群だった。

途中、通りがかった八百万さんが「それ以上いけない!」と止めなかったら危ないところだった。

切島くんに次こそは負けないと三日後にもう一回戦う約束をした。

 

しかし、中々面白いことがわかった。切島くんは硬化する際に関節部は硬化しないということだ。まぁ、仕方ないかもしれない。関節を硬化してしまうと一切動かなくなってしまうからな。まさかこんなところで硬化系の個性の弱点を見つけるとは・・・。

 

よし、切島くんには悪いがパロ・スペシャルやマッスル・インフェルノの練習台になってもらおう。

 

 

 

 

 

三日目 曇りになったなぜ晴れぬ

 

 

やっと怪我が完治した。まぁぶっちゃけそんなに動いても問題なかったけどね。だけど不思議なことに俺の姿、いや個性使用時の姿が前と比べてなんか緑色になっている。

別に悪くはないんだけど、なんで緑色に?

 

とりあえず今日も特訓をしつつ、行きつけのタコ焼き屋に向かう。ちなみにそのタコ焼き屋はタコ焼き屋フーミンという名前だ。

前まではフミというお婆さんがやっていたのだが、今現在はフミ婆さんの後を引き継ぐようにアランという人がタコ焼き屋フーミンをやっている。

アランさんは「タコ焼きで笑顔を」を信条にタコ焼き屋をやっているらしい。

なんだろうかまるでヒーローのようだ。見た目は金持ちの坊っちゃんなのだが。

 

 

 

 

 

四日目 太陽が眩しい。メガマブシー

 

 

今日はUSJで敵連合の襲撃によって中止になった訓練を再開することになった。

ただ、問題が起きてしまった。それは俺のコスチュームがボロボロになってしまったのだ。

周りから「まぁ、仕方ない」「怖かった」「着てない方が似合ってる」と言われる。やめろ!モウオレノココロハボドボドダァ!

 

そんなこんなである程度進むと、敵連合の残党が俺の目の前に現れた!

いや、正確にはそんな設定を持ったオールマイトが出てきた。どうやらオールマイトはサプライズとして皆の前に敵として出るらしい。

そこでオールマイトは俺にやられた役をしてほしいというのだ。

 

面白sじゃなくて、オールマイトの為に、皆の為に良かれと思ってやるだけだ。うんその通りだ。

 

結果、オールマイトがリンチされそうになっている。とりあえず、ネタばらしをしておく。

 

「なーーーんちゃって!」「お菓子食って腹痛いわー。」

 

「いま、明かされる驚愕の真実ぅ!!!」

 

 

この後滅茶苦茶 オールマイトと一緒にボコボコにされた。

 

 

 

 

5日目 今日は風が騒がしいな・・・

 

 

現在、コスチュームは修理に出しており、先生の話ではパワーアップして返ってくるらしい。

 

そして気付いたのだが、俺の攻撃手段は肉弾戦と父さんから教わった格闘技(何故かアニメやら漫画やらの技)だ。

問題は敵を無力化させるような捕縛系の技を持っていない。

ぶっちゃけ、体育祭では全国に放送されるようなものだ。そんなところでキン肉バスターや地獄の断頭台なんか出すとなると色々とやばい気がする。

 

そんな訳で相澤先生に捕縛技術を教えてもらうことにした。

結果としては嫌そうな顔をした。全身ボロボロの状態で教えることもできないし、何より教師側も体育祭の準備で忙しいというのだ。

 

だが、相澤先生は

 

 

「三日間だ、三日間のうちに俺が教える技術をマスターしてみろ。」

 

 

相澤先生がくれたチャンスに俺はもちろん了承し明日の土日と月曜の放課後に相澤先生に特訓を見てもらうことになった。

 

 

 

 

6日目 でも少し、この風泣いています・・・・。

 

 

相澤先生は俺の身体能力を一通り見る為に入学初日にやったテストを個性を一切使わずやり、相澤先生に体力面やその他諸々は問題ないと言われた。

 

そして、今お前が使える技を見せろと言ったので、等身大オールマイト人形にタワーブリッジやロビン・スペシャルを決めると相澤先生が頭を抑えてその技を誰から教わった?と聞かれたので

父さんに教わったと言うと、ものすごく嫌そうな顔をした。

 

驚いたことに相澤先生は俺の父さんと面識があるらしく、一時期俺の父さん天倉大河の相棒《サイドキック》を務めたというのだ。

なんで相棒やめたのかは知りたいが、今は一刻も早く相棒先生の捕縛技術を習得する為、話を聞くのはまたの機会にすると言うと

 

「合理的だな。真面目なところは似ていないが、突拍子なことをしでかすところは親父さん譲りだな。」

 

やめてくれ先生!あんな秋刀魚を生のまま食べて「鯖じゃねぇ!」って言うような父さんと一緒にしないでくれ!

 

その後は先生に道具を使った戦い方を教えて貰った。なるほど、そんな戦い方もあるのか・・・・。

 

 

 

 

7日目 どうやら風が街に良くないものを運んで来ちまったようだ。

 

いそがしい、ねる

 

 

 

 

 

8日目 急ごう、風が止む前に

 

っしゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

やってやったぞおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎

 

ついにマスターしてやったぞおおおおおおおおお!

大事な日曜が丸潰れだこらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!

でも先生!ありがとぉぉぉぉぉぉぉ!

これで体育祭もバッチリだ!待ってろ雄英体育祭!!!

 

 

 

 

9日目 やべぇ!近くのコンビニ、ポテト半額だ!よし行こう!

 

 

はよ、言ってくれや。まぁ確かに当たり前だけど、体育祭にヒーロー科はアイテムの使用禁止って・・・・

相澤先生、先に言ってくれや・・・・・・。

 

だが、とりあえずわかったことがある。体育祭では全国からヒーローが集まる、それにはまず注目されるようなことをしなければいけない。

ならば!必殺技を習得しよう!

 

 

死にたい。爆豪くんに必殺技の練習をしているのを見られた。だって仕方ないだろ!この技一度やって見たかったんだよ!

 

やめて!そんな目で俺を見ないで⁉︎

 

 

 

 

 

10日目 すごーい!あなたは曇りが好きなフレンズなんだね。

 

GW中に遊園地でヒーローショーをやることになった。

なんだかこういう企画になるとものすごく議論が白熱する・・。

 

安全の範囲内ならば個性の使用もOKらしい。

ちなみに出て来た案は

 

・一人のヒーローが敵どもを殲滅

・囚われの女を助ける

・会社の倒産(父さんではない)で闇に堕ちた敵社長

・摩天楼でのアクション

・最後は皆でダンス

・天倉は秘密兵器

 

なんだこれ⁉︎どんな内容になるんだ⁉︎途中グダグダになりそうな予感が・・・。

ていうか、ちょっと待て最後がおかしいぞ。

 

配役は

・ヒーロー役 緑谷

・囚われの女役 八百万

・敵役 悪の親玉 爆豪

手下 切島、常闇

・演出やその他 他のクラスメイト

・黒幕 天倉

 

考えたヤツ誰だぁ!!!

 

 

 

 

11日目 晴れはいいよなぁ、どうせ俺なんか

 

 

ヒーローショーではなんだろうか、色々とすごいことになった。

敵役になった爆豪くんが突然の暴走により敵役たちが仲間割れの展開、木役の峰田くんが摩天楼に登って蛙吹さんと戦闘(一方的にボコられている)により観客たちに大受け

 

そして緑谷くんの台詞の「倒産だからって悪いことはいけない」という台詞の"倒産"を"父さん"と聞き間違え、悪役になった父親がヘタレ息子を成長させるというストーリーとして深読みして大賑わい。

 

最後に俺が真の黒幕として行ってこい、と言われたので摩天楼から俺が「ケケケケーーーッ‼︎」

と高笑いしながら登場する。

俺が登場すると、観客たちは驚きと戸惑いに満ちるのだが

 

観客の一人の言葉によってなんかすごいことになる。

 

「アトラ○ティスだーーーっ!」

 

違ぇよッ‼︎誰がアトラ○ティスだよ!!!確かに似ているけどさ‼︎口から水は出せないんだよ!!!

 

そしてリアルアトラ○ティスがヒーローの父親を唆し、悪の道へ引き込んだ全ての原因と深読みされた。

そして黒幕であるアト○ンティスvsヒーローと親父with手下達というすごい展開になった。

とりあえず手下達にはナパームストレッチで即刻退場させて貰った。多分死んではいないだろう。

※常闇と切島は無事です。

 

その後は緑谷くんと爆豪くんのダブル攻撃によって俺はノックアウト(爆豪くんの攻撃をもろに食らった)

その後は全員(俺と上鳴くんと八百万さんを除く)のダンスで終わった。

 

動画サイトでこのショー録画した映像が10万回再生されていたのはものすごく驚いた。

 

 

 

 

12日目 晴ればっかじゃねーか

 

さぁ、いよいよ体育祭まで残り"三日"となった。

俺は毎年GWと休みの日に山籠りで修行をする。事前に手紙で修行に付き合ってもらうのだ。

 

修行に付き合ってくれるのはヒビキさんという人だ。初めて会ったのが小学五年生あたりだ。

さて、やりますか!修行!

 

 

 

 

13日目 雨は来ないのか・・・

 

よっしゃあ!絶好調!俺はバチを太鼓に一定のリズムで打ち付ける。

仕上げとして山の中を一通り走り、滝に打たれ精神統一

 

そしてヒビキさんと共に同じ一定のリズムで太鼓を鳴らす。山に太鼓の音が響き渡る。

まるでこの山を清めているようだ。

俺は明後日の体育祭に向けて明日はしっかり身体を休めることにする。

飯もいっぱい食べたし、明日はしっかり休むぞー!

 

 

オヤスミー

 

 

 

 

14日目 今日が体育祭。

 

遅刻

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

してたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!

 

「ありがとうございます‼︎ヒビキさんっ!」

 

「おうっ!そっちも頑張れよ。」

 

「はいっ!・・って急がないと⁉︎」

 

ギリギリだった。まさか今日が体育祭だなんてヒビキさんに言われるまで全く気付かなかった。

マジでありがとうございますヒビキさん。今度何か美味しい店紹介します。

 

「(マジでギリギリだ。ていうか、母さん準備良スギィ!!!)」

 

ヒビキさんのバイクに乗せて貰ってアパートまで来ると母さんがそうだろうと思ってもうすでに準備をしておいたというのだ。

マジでありがたい!

 

俺が1-Aの控え室に行くとクラスメイト全員が準備万端だった。

すると飯田くんが声をかけてくる。

 

「天倉くん!君、一体n「ごめん邪魔!準備を終わらすから!」邪魔⁉︎」

 

俺はロッカーに自分の荷物を入れ、スポーツドリンクをガブ飲みする。

すると、横から轟くんが声を掛けてきた。

 

「・・・天倉、俺は緑谷にも言ったが「ごめん!ちょっと今、精神統一させて!プレッシャーがやばいから‼︎」・・わ、悪りぃ。」

 

『(さっきまでの雰囲気がぶち壊された⁉︎)』

 

とりあえず俺は深呼吸をし、周りを見渡す。クラスメイトはそれぞれ緊張している者や、強張っている者、テレビに出たがってウキウキしている者など様々だ。

やっぱり全員、気合い入っている・・・いつものお気楽でフワフワした感じじゃない。

 

「辛っ⁉︎んだコレ!!!」

 

「勝手に俺のジンジャー(激辛)飲んでんじゃねー‼︎」

 

爆豪くんと切島くんの漫才に

 

「飲むか?」

 

「いや・・・いい。」

 

砂藤くんが練乳を尾白くんに勧めたり

 

「なんかこの緑茶薄くない?」

 

「あ、それは池の水よ。」

 

「ブフゥ!!!???」

 

耳郎さんが間違って蛙吹さんの持ってきた池の水を飲んだり・・・・・。

いや、いつもと変わんなかった。

ていうか、この状況でどう精神統一すればいいんだよ!頼むからさせてくれよちくしょう!!!

 

その後も爆豪くんが手汗で爆破を起こしたり、八百万さんが何故か仏像を沢山創造したり、蛙吹さんが擬死によって倒れたり・・・。

 

何故だろう・・・逆に安心感が・・・。

・・・・・・いや、これが1-Aなんだろうな。俺みたいに焦っているんじゃなくて、皆のように馬鹿馬鹿しいことをやっているのが正しいんだな。

 

「ふふふ、いいなー皆。俺も混ざりたいなぁ〜、楽しもうぜぇ〜。」

 

「や、やべぇ。天倉も緊張で頭が・・・・。」

 

「そっとしておきましょう。だけど私たちが原因だと思うわ。」

↑正解。

 

 

いよいよ始まる雄英体育祭、少年少女たちはこの舞台で何を見て、何を経験するのか?彼らは歩きはじめる。次の舞台へ

 

 

 

What's the next stage?

 





〜入れられなかったネタ

その1必殺技


「か〜〜〜〜○〜〜〜〜は〜〜〜〜め〜〜〜〜はぁっ!」

・・・・・いや、なんか違うな。
必殺技といってもこれしか思いつかないし・・・・!
そうか!アクセントの問題か⁉︎

「きゃ〜〜〜〜めぇ〜〜〜〜○〜〜〜〜めぇ〜〜・・・。」

視線を横に向けると、爆豪くんがかわいそうな者を見る眼をしていた。
これ以来、かめ○め波の練習は外でやらないようにした。



その2切島のリベンジ

ヒーローショーにて

「天倉ァ!前回のリベンジだ!前とは違って関節技対策をしているんだ!」

「なるほど、感動的な台詞だな。だが、無意味だ。」

天倉は切島をホールドし、そのまま小声で常闇に離れろと言う。そして個性によって強化された脚力でジャンプする、

「お、おい?天倉!これさすがに俺死ぬんじゃねーのか⁉︎」

「硬化すれば大丈夫。ナパームストレッチィ!!!」

ドゴオオオォ!という爆音と共に切島は舞台に叩きつけられた。
※死んでいません。

「なんという・・・まさに獣・・。」

「次、常闇くんの(退場される)番だよ。」

「⁉︎」

このショーの動画が拡散された後、子供たちの間でナパームストレッチか流行ったという。


アドバイスに感想、評価をよろしくお願いします。


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第13話 よかれと思って


この度、初めてアンケートを取ることになりました。どうか皆さんの力をお貸しください。


これまでのあらすじ

修行開始

ヒーローショー

完全に一致

遅刻

壊れた

今ここ



 

雄英体育祭、それはかつて世界中から各国代表の選手たちが競い合い、一番を決める国際大会に代わる新たな大会。

 

ヒーローを志す少年少女が今、熱き戦いを繰り広げる。

 

『雄英体育祭‼︎ヒーローの卵たちが我こそはとシノギ削る年に一度の大バトル‼︎』

 

プレゼント・マイクが実況を務めるらしく、相変わらずのテンションの高さだ。

そのまま彼は実況を続ける。

 

『どーせ、てめーらアレだろこいつらだろ⁉︎敵の襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星‼︎ヒーロー科‼︎一年‼︎A組だろおおおおぉぉぉぉぉぉ⁉︎』

 

1年A組の生徒たちは緊張する者、責任感を感じる者、この場を楽しむ者、そして

 

「大きな星が点いたり、消えたりしている。アハハハハ、大きい...彗星かな?いや、違う、違うな。彗星はもっとバーって動くもんな?暑っ苦しいなココ。出られないのかな?おーい、出してくださいよ、ねぇ。」

 

現実逃避する者。

 

「やべぇってアレ!天倉やべぇよ!見えちゃいけないもの見えてるって、アレ!」

 

「上鳴ちゃん、そっとしておいてあげて、ああでもしないとこの場を乗り切ることができないの。」

 

上鳴が天倉を心配するが、蛙吹は逆にそっとしておくことで天倉のメンタル面を回復させてあげようとしているのだ。

それもそのはず先程までクラス全員を落ち着かせるために天倉が宥めたり、慰めたりなどをしていたのだ。

 

それはさておきA組に続き、B組、C組、D組と続々と会場に入ってくる。

そして、全員が揃うと台の上に教師の1人兼ヒーローである18禁ヒーロー【ミッドナイト】が手に鞭を持ちながら上がってくる。

 

「選手宣誓‼︎」

 

「ミッドナイト先生、なんて格好だよ・・。」

 

「さすが、18禁ヒーロー。」

 

「18禁なのに高校にいて良いのか?」

 

「いい!!!」

 

思春期真っ只中の男子高校生にとってミッドナイトは目のやり場に困る格好をしている。だが、あくまでアレはヒーロースーツであり、裸ではない。エロいが裸ではない

 

「ミッドナイト先生、公式の場くらいはちゃんとした服装になれば良かったのに。」

 

天倉はミッドナイトを見て、去年の出来事を思い出していた。あの時の出来事があったからこそ自分はここにいるのだ。根津校長先生とミッドナイト先生には感謝をしているのだ。

初めて会った時の印象はあまりよくなかったが・・・。

 

「天倉!お前は何てことを言うんだ!アレがミッドナイトの正式な服装《コスチューム》だろうがぁよぉ!テメェは"メシ"と"エロ"どっちが大事なんだよぉ!!!」

 

「メシ。」

 

「静かにしなさい!!!選手代表!」

 

天倉と峰田が注意され、代表の選手が呼ばれる、そして飯田は何故かソワソワしている。まるで自分が呼ばれるのを待っているように。

 

「選手代表1-A爆豪勝己‼︎」

 

「ハイ!!!」

 

爆豪の名前が呼ばれた瞬間、飯田が返事をした。そして、天倉は何かを察したかのように飯田を温かい目で見た。

しばらく生徒の間でヒソヒソと呟きが終わった後、爆豪が台に上がる。

選手宣誓はヒーロー科入試1位がやるものだ。決して学級委員長がやる訳ではない。

 

「せんせー。」

 

『・・・・・・・・・・』

 

あたりが沈黙に包まれる。生徒たちは一体あの素行の悪いヤツは何を言うのか、楽しみにする者が入ればドキドキする者もいる。しかし、A組は既に察したかの諦めた表情を見せている者もいた。

 

「俺が一位になる。」

 

『『絶対言うと思った!!!』』

 

さすが爆豪、俺たちができないことを平然とやってのけるぅ!そこに痺れもしないし憧れもしない‼︎

 

そしてA組の生徒以外からブーイングのコールが巻き起こる。さらに追い討ちをかけるように爆豪は火に油、もといダイナマイトを投下した。

 

「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ。」

 

「アーアー、キコエナイー。ブーイングナンテーキコエナイーヨー。」

 

天倉はこれ以上、プレッシャーが掛からないように周りからの声に対して聞こえないフリをした。

そして、ミッドナイトはブーイングを無視するかのように第1種目を発表する。

 

「いわゆる予選よ!毎年、ここで多くの者が涙を飲むわ。さて、運命の第1種目!今年は・・・・コレ‼︎」

 

スクリーンに映された文字は"障害物競走"だった。計11クラスでの総当たりレース、スタジアムの外周4㎞を障害物を避けながらゴールを目指すシンプルなルール。

ただ、コースさえ守れば何をしても構わない点を除けば。

 

天倉は雄英体育祭に向けて、毎朝10㎞を走っているのでスタミナなどは問題無いだろう。ただ、問題なのは個性を使った妨害だろう。

 

などと思っていると天倉の背後から声がかかる。その瞬間、天倉の首が一瞬で真後ろを向く。

 

「やぁ、天くっ⁉︎」

 

「見切っt⁉︎」ゴギィッ‼︎

 

ちなみに首が真後ろということは首が180度真後ろを向くということなので、当然首を痛める。そして声をかけてきた拳藤は申し訳なさそうに大丈夫?と声をかける。

 

「アハハハハ。A組なのに、勝手に首を痛めるなんてバカじゃないの?」

 

何やら馬鹿にするような声が聞こえるが、天倉はそれどころじゃなかった。

そしてドゴォッと鈍い音がした後、ズルズルと何かを引きずる音が聞こえた。

 

「えっと・・・そ、それじゃあ天倉、そっちも大変だろうけど頑張りなよ。・・・・あ、どうしよう気を失ってる・・・。」

 

天倉は拳藤に励まされ、やる気が出てくるように感じた。首は痛むが。そして、ゲート前に生徒たちが集まる。天倉はちょっと下がった場所に立った。

あの集団の中で天倉が個性を使ったら身体から生えている棘などで周りの生徒たちを怪我させてしまうからだ。

 

そして、いよいよ始まる。第1種目!全員がその言葉と同時に駆け出す。

 

「スタート!!!」

 

そしてゲートがぎゅうぎゅう詰めになる。生徒全員が一斉に動いたため、ゲート前でこうなってしまったのだ。

そして天倉は。

 

「うん、知っていた。ていうか絶対こうなるでしょ。」

 

普通に考えてしまえば当たり前だ。生徒一人一人が先頭に行こうと前に出るため、こうなるのは必然だ。だが、全員それは当たり前に思っている。何故なら後ろにいる生徒はそのゲートにできた壁《ぎゅうぎゅう詰めの生徒》によって通れなくなるからだ。

 

「・・・ふぅーーーーーっ!」

 

天倉は精神を集中させるように息を吐いた。そして天倉はさらに何歩か下がり、クラウチングスタートの体勢になる。

 

「下がダメでも、上が開いているっ!!!」

 

天倉は走り出す。そして目の前の生徒の背中に飛び乗り、ジャンプする。そしてそのままゲート内で詰まっている生徒の頭、肩、背中を踏み台にして走る。

 

「っで⁉︎天倉ァ!!!」

 

「しまった!!!その手が⁉︎」

 

「そう簡単にできるもんじゃないよ、アレ⁉︎」

 

「テメェ!!!俺を踏み台にしてんじゃねぇ!!!」

 

上から切島、拳藤、芦戸、爆豪が言う。

天倉は山籠りによって険しい山道を踏み越える技術を習得しているため、この程度は楽勝だ。

そして天倉は一気にトップに出る。

 

「よしっ!!!まず、第一関門突破!・・・ってもしかして俺1位⁉︎」

 

天倉が自分で驚いていると、背後から感じたことのある冷気が遅いかかる。着地した瞬間、天倉の足と地面が凍りつく。天倉は一体誰の仕業か理解した。

 

「轟くん⁉︎」

 

「悪いな、1位は俺が貰う。」

 

天倉は足が凍結してしまった為に動けなくなってしまったのだ。そして轟の凍結攻撃を逃れた生徒が次々と天倉の前に躍り出てくる。それはA組の生徒たちだった。

 

「お先にっ!」

 

「ドンマイ!」

 

「ごめんね、天倉くん!」

 

「調子に乗っているから。」

 

「悪いが、自分でなんとかしてくれ!」

 

「失礼しますわ。」

 

「ざまぁねぇーーーぜ!」

 

「ザマミロ!!!緑トカゲ野郎が!!!」

 

次々とクラスメイトに抜かれ、時々言われる罵声に心が折れかける天倉。しかし、その程度で諦める天倉ではない。しかし動けない。

 

「よっ、天倉。お先にっ!」

 

「よ、よかった〜、凍らされなくて。」

 

魔理沙や上条にも追い抜かれる。そして後ろから騎馬を組んで上に乗っている形で心操も追い抜く。

 

「・・・・この程度で諦めるなよ。ヒーロー目指しているなら尚更だ。」

 

「!」

 

天倉は心操の言葉に嬉しい気持ちが半分、そして心操から伝わる、やる気を感じた。心操もこの雄英体育祭で1番になる気なのだとわかった。

そして、何故だか天倉の顔は不思議と笑っていた。入場時の現実逃避やゲート前でのバカっぷりがまるで嘘のように消えていた。

 

「ァァァァァァァァァアアアアアアッ!ハァッ!」

 

天倉は足限定で個性を使用する。そしてその脚力で無理やり、足の氷を破壊したのだ。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

天倉はその脚力を生かし、グングンと走るスピードを上げていき次々と他の生徒たちを抜かしていく。

そして、目の前に"本当の第一関門"が現れた。

 

『さぁ、いきなり障害物だ!まずは手始め...第一関門ロボ・インフェルノ‼︎』

 

天倉は90度回転し逃げようとした。だが、ギリギリのところで踏みとどまることに成功した。

アレはヒーロー科の生徒たちは見覚えのあるロボットだった。入試の時の0pの仮想敵だ。

 

非運用時は各国家機関に貸し出され有事の際の可動型のシェルター大規模災害時の救助基地などとしても使用される総工費2400億円。軍事費の5%を占めるこの国の国防設備の要

 

 

パキパキッ!ドゴオオオォ!!!ズガアァ!ドゴオオオォ!バゴオォ!!!ドゴオオオォォン!!!!ズドシャアアァァ!!!!ピシピシ!ボゴオオォォォッ!!!!ドガアァァァン!!!!!

 

 

ソレがこの始末☆

何人かの生徒が次々と容赦なく破壊していくのを見て、天倉は心配する。

 

「(ウチのクラスに賠償責任とか押し付けられなければいいんだけど・・・・・・。)」

 

ちなみに最低でも6体はいたため、【合計1兆4400億円】だ。

それを知ったらAクラスはどう思うのだろうか・・・・・。

 

周りを見てみると0p仮想敵以外にも妨害用の仮想敵が沢山いた。中にはそれに逃げている者もいた。

そして、天倉にも仮想敵が襲いかかってくる。

 

『ザッケンナコラーーー!!!』

 

『ナカマノカタキジャーーー!!!』

 

『パパヲヨクモーーーーー!!!』

 

「(喋るのコイツら⁉︎)」

 

天倉はロボットが喋ることに驚き、そして、何故か目の敵にされていることに戸惑いを感じ、動きが止まってしまった。

 

『ヘイヘイヘーーーイ!!!心情を揺さぶる為の音声付きだ!ボサッとしてるとやられちまうぞ!!!』

 

天倉は理由を知ると、ロボットを無視するかのように次々と攻撃を回避し、第一関門を突破した。

 

「(よし、なんとか個性の使用をギリギリ抑えられている。問題は次だけど。)」

 

そして、次の場所へと天倉は走る。しばらく、走り続けやっと第二関門に到着した。

そこには断崖絶壁の見るからに危険な場所だった。そこで何人かの生徒が立往生している。

 

『第二関門はどうさ⁉︎落ちればアウト‼︎それが嫌なら這いずりな‼︎ザ・フォール!!!』

 

第二関門は綱が張り巡らされており、それに這いずりながらこの断崖絶壁を渡っていくということを天倉は一瞬で理解した。

そして、天倉が個性を使い一気に飛び越えようと思った時、不思議に思った。

ほとんどの生徒が綱を渡っている途中で止まっているのだ。よくよく見ると綱の大体中心辺りに色々なものがぶら下がっているのが分かる。

 

『一見普通の綱渡りだが、様々な誘惑があるから気を付けろぉ〜〜〜〜‼︎特に13号の素顔が入った封筒が人気だそぉ!!!』

 

天倉はさらに見るとその誘惑に負け、必死に手を伸ばしているA組を見た。

そして、天倉は一言心の中で呟いた。

 

「(うわっ・・・・なんて醜い・・・・。)」

 

A組や他の生徒たちの行為を哀れんでいると隣から1人、知り合いが出てきた。

 

「ひょー。こりゃあ獲物が沢山!盗りたい放題だぜ!!!」

 

と霧雨魔理沙が片手に先程の仮想敵の部品の一つである棒状の先端に変な突起物がある物体を取り出す。

 

「え?盗るって⁉︎何を⁉︎」

 

天倉が戸惑っている間に魔理沙は棒状の物体を跨ぐとフワッと魔理沙が浮かぶ。そしてそのまま空を飛んでいく。向かう先は誘惑の元、様々な封筒や雑誌などだった。

 

「よっ!まずは一つ!」

 

魔理沙は"慣れた手つき"でどんどん吊るされているものを盗っていく。

 

『おいおいおい!罠を自分からとっている・・・っていうか飛んでるー‼︎魔女か何か⁉︎』

 

『そもそも、なんであんなに慣れた手つきで取れるんだよ。』

 

魔理沙が吊るされている物を取っていくと、負けじと他の生徒たちも自ら進み取りに行く。

 

なんという・・・醜い争いだ。

 

このまま続けていれば体育祭で1位どころかヒーローにもなれない。天倉は決心したかのように個性を発動し、綱に向かって跳ぶ。そして片手で綱を掴む。

その反動で綱が大きく揺れる。

 

「うおおおおおお⁉︎天倉!危ねぇよ気をつけ・・・・・ろ・・?」

 

叫んだのは峰田だ。しかし、峰田の声は次第に小さくなっていく。目の前にはとある光景が映っていた。

それは天倉が、峰田が求めていた大人用の雑誌。通称【エロ本】を手にしていたのだ。

 

「あ、天倉・・・?お、お前何をしようと・・・・ま、まさか・・・・・⁉︎」

 

天倉のエロ本を持っている手の力が弱まっていくのが峰田には理解できた。そう、天倉はこの醜い争いを、その元凶を全て潰そうという魂胆なのだ。

そして峰田の声が震える。

 

「あ、天倉・・・・・俺たち、友達だよな・・・苦労を共に分かち合った仲間だよな・・・・。俺たちソウルフレンド(?)じゃねぇかよ。」

 

しかし、天倉の手の力は徐々に抜けていく。そして天倉は言う。

 

「俺はこれ以上、皆が醜く争うところなんて見たくない。じゃあやるべき事は簡単じゃないか・・・。」

 

「や、やめろおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

天倉の手からエロ本が落ちていく。そしてエロ本は谷底の深い闇に消えていき、2度とエロ本が戻ってくる事はなかった・・・・・。

 

「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

峰田は嘆いた。悲しみが爆発した。

自分にとっての希望《エロ本》が深い絶望に落とされたのだ。しかし、天倉はあくまでA組の為にやっている事なのだ。悪気がある訳ではない。

そして、他の生徒は先程までの流れを見て理解した。次はこちらの番なのだと。

 

天倉はこちらに顔を向け、笑顔でこう言うのだ。

 

 

 

よかれと思って

 

 





な ん だ こ の 茶 番

現在、活動報告でアンケートを募集中です。

アンケート内容は小説内に仮面ライダーを出しても良いか?です。仮面ライダーに変身するキャラではなく、仮面ライダーです。もしかしたら皆さんの好きなのが出るかもしれません。

1.仮面ライダーを出しても構わない。

2.仮面ライダーを出して欲しくない。

3.作者の自由で?

アンケートの締め切りは小説内で雄英体育祭編が終わるまでにします。どうか、アンケートのご協力をお願いします。

ついでにアドバイス、感想、評価もよろしくお願いします。


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第14話 騙し討ちは奇襲にて最強


今までのあらすじ。

カ○ーユ

俺を踏み台にしたぁ⁉︎

クラスメイトからの罵倒

パパヲヨクモーーーーー!!!by仮想敵K

ボッシュートになります。




 

悲鳴が所々に響き渡る。そして己が求めていたものが無慈悲に暗闇の底へと落とされていく。

それを見ている者たちは次は自分の番だと怯える。

 

「やめてください天倉さん!そ、その【ドジを踏まない生き方】を手放すのはやめっ・・い、いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「やめろぉ‼︎天倉!【学食一年間無料券】を返してくれ!もう、インデックスの食費で家計が火の車にぃ!あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ちょっ!天倉くん!私の【おしるこ】ってああああぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎食われたぁ⁉︎」

 

そして、悪魔の手はこの少年にも襲い掛かる。天倉が次の狙いを定めた。その綱にいたのは緑谷出久だ。

 

「こ、これだけは渡せない!【オールマイト学生時代日誌】だけは!!!」

 

緑谷は【オールマイト学生時代日誌】を大事そうに抱きかかえる。しかし、不安定な綱の上。緑谷の手元からあっさりと日誌は奪われてしまった。

 

「あ、天倉くん!君には分かるだろ!その日誌がどれ程の価値があるのか!!!あの誰もが憧れるオールマイトの学生時代の頃のものだ!僕にとってソレはオーパーツに匹敵する程の大事な物なんだ!だから・・・・!」

 

緑谷の必死の抵抗。天倉は緑谷に笑顔を見せる。

 

「感動的な台詞だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、無意味だ。 」

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

絶叫、それと共にオールマイトの学生時代日誌が谷底へと、暗闇へと消えていく。そして、緑谷は手を伸ばすが日誌に届くことはなかった。

そして、彼に残るのはただ、虚しい気持ちだけだった。

 

 

 

『何だこれ。』

 

相澤先生はこの茶番劇にただ、呆れるしかなかった。この場合天倉は正しい行動をしている筈なのだが、どう見ても天倉が加害者で他の生徒が被害者に見える。

 

そして天倉はショックを受けている生徒達を無視するかのように前へと進んでいく。

すると、天倉のすぐ横に並走するものが現れた。霧雨魔理沙だ。さきほどまで吊るされていた物を勝手に取っていたが、どうやら取り尽くしたらしい。

 

天倉は個性を生かした跳躍力で次々と谷を越えていく。一方魔理沙は個性のおかげなのか、第一関門で破壊されたロボの部品を箒代わりに使い、空を飛んでいる。

天倉は魔理沙から差をつけようとするが、それでもなお魔理沙は天倉に食らいつくように追いかける。

 

天倉の個性は長時間は使用はできない。だが、個性を解除すれば魔理沙や他の生徒に追い抜かれる可能性がある。

特に空を飛ぶこともできる魔理沙をこのまま放っておけば、1位を取られてしまうかもしれない。

 

「道草を食っちまったが、1位は取らせてもらうぜ!」

 

「(どうする、そろそろ4㎞も近くなってきた。妨害、と言ってもさすがに直接攻撃は駄目だろ。何か手は・・・・・・あ。)」

 

天倉は何か思いついたような顔をした。するとすかさず魔理沙に声をかけた。

 

「魔理沙さん。僕が落とした物を全て拾いましたか?いくつか落としたんじゃないんですか?」

 

「おう?まぁ、バッチリ全部拾った筈だぜ。えーと、」

 

魔理沙は天倉に言われ、懐からガサゴソと拾った(盗った)物を取り出す。ちなみに箒(ロボの部品)は片手で操作をしている。

 

「えーと、あった。これはオールマイトの日誌だな。そして13号先生の素顔写真に、学食券、イレイザーヘッドの寝顔集・・・・これはいらないな。最後に・・・・・・っ⁉︎」

 

最後に取り出した物は峰田が求めていた物。エロ本である。ちなみに"ジャンルは魔法少女"しかも、表紙の絵には魔理沙に似た裸に近い状態でキャラが過激なポーズをしている。

 

「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎?!!‼︎??なっ、ななななななんだコレエエエエエェェェェェ⁉︎」

 

そして、こういったものには縁がなかったのか、もしくはエロ本の表紙の絵に自分そっくりのキャラが描かれていたか、理由はわからないがとにかく魔理沙はものすごくテンパっている。

 

そして、混乱してしまった為箒(ロボの部品)の操作を誤ってしまい、魔理沙は箒から落ちる、そして運が良かったのかちょうど下には地面があったので何とか着陸はできたらしい。

しかし、魔理沙は顔を赤くしたまま両手で顔を隠して動かない状態になっていた。

 

『おーーーっと‼︎霧雨魔理沙、墜落〜〜〜⁉︎さすがにそっちの耐性は無かったのか〜〜〜〜〜⁉︎男勝りな性格して、そこは純情って中々の乙女なんじゃねぇのか‼︎えぇ⁉︎』

 

「うっ、うるせええ!そ、そういうんじゃないんだぜ!うう・・・・天倉ァ!ゆっ、許さねぇぞ!」

 

天倉は魔理沙の言葉を無視し、先に進む。天倉は魔理沙にそういうものは効くのかどうかわからなかった。一か八かの賭けだった。そして結果は予想以上である

まさか、あんなに動揺するとは思わなかった。と天倉が思っていると、最後のコースに到着した。

そこはかなりの広さを持つコースだが、普通とちがう点は前にいる生徒たちの足元が所々で爆発していることだ。

 

最終関門一面地雷原 怒りのアフガニスタン地雷の場所はよく見ればわかるが、避けながら行くのは中々難しいところだ。

天倉は全身に個性を発動し、スタートの時と同じようにクラウチングスタートの体勢をとる。

 

「(ここが、最終関門。だが、おそらくこの後も競技が控えている。だけど、先頭のあの2人に並ぶには直線コース+地雷回避が重要だ。俺の個性によって視力が強化されるから何とか避けれるかもしれないけど・・・・・。)」

 

天倉の頭の中にどんどん考えが浮かぶ。だが、先頭はただ前に進んでいるだけで何も変わっていない。

 

「考えるのはヤメだ!動いてから考える!!!」

 

天倉は走り出した。そして、最初に大きく跳躍し安全な着地点を探す。地雷のない場所に着地したら、もう一度跳躍する。そして着地する。これの繰り返しだ。

 

天倉の強靭な脚力により、どんどん前にいた生徒たちを追い抜いて行く。そして、先頭にいる2人である轟と爆豪に追いつく。

 

「っ!巻き返しただと‼︎」

 

「くそっ邪魔だ!緑トカゲ野郎!!!」

 

轟から氷、爆豪から爆破、2人から同時に妨害されるが天倉は難なくそれを回避する。

 

だが、天倉は身体に異変を感じていた。先程から脱力感を少しづつ感じていたのだ。

ゴールするまでのエネルギーはまだ余裕があるが、問題は轟と爆豪が妨害してくる為、エネルギーをかなりの勢いで消費してしまうかもしれないのだ。

だが、天倉はいや、3人は己の為に負けられないのだ。

 

「(こいつらには)」

 

「(ぜってぇ‼︎)」

 

「(負けて・・たまるかぁっ!)」

 

瞬間後方から巨大な爆発が起きる。その爆音、光によって3人は一旦足が止まってしまう。

 

「何だ⁉︎」

 

「ぐぁっ!目が・・・眩しいっ!耳も痛みが・・・!」

 

何故か天倉にはダメージが入ってしまうが。そんなことはどうでもいい。後方から何かが猛スピードでやってくる、それは

 

『A組 緑谷 爆発で猛追ーーーーーーっつーーか‼︎抜いたぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

「デクぁ‼︎俺の前を行くんじゃねぇ‼︎」

 

「後ろを気にしている場合じゃねぇ・・!」

 

「ウオオオオオオオォォォォォォォ!!!」

 

3人は自分たちを追い抜いた緑谷を追いかける要領でスピードを上げた。爆豪は爆発の反動を使って、轟は氷の道を作って上手に滑りながら走り、天倉は力任せにただ走る。

 

だが、緑谷はこれだけでは終わらない。ボート代わりに使っていたロボの装甲の一部を振り下ろし、地面に叩きつける。

 

カチ、カチ、カチッ!

 

そして再び爆発が起きる。緑谷は爆発を利用し、反動で一気に前へと出る。それとは逆に天倉は爆発をもろに受けてしまった。

 

「あっつ!!!??」

 

爆豪と轟はその爆発を何とか避けることができた。そして、再び走り始めたのは天倉だった。

残りの2人も天倉に気づくと後を追うように、走り始めた。

そして・・・・・

 

『さァさァ序盤の展開から誰が予想できた⁉︎今、1番にスタジアムに帰ってきた男 緑谷出久の存在を!そして、次々とゴールインだ!』

 

1位 緑谷

 

2位 天倉

 

3位 轟

 

4位 爆豪

 

 

 

トップを争った4人の結果が出た。

轟と爆豪は悔しそうにしている。2人とも負けたくない相手に負けてしまったのだ。それに対して天倉は嬉しそうに緑谷を褒める。

 

「さすが、緑谷くん凄いよ!まさかあんな逆転劇を見せてくれるなんて!」

 

「あ、天倉君の顔から煙が⁉︎」

 

天倉の顔面に煙がブスブスと立っていた。緑谷が地面を叩きつけた際の爆発が天倉の顔面を直撃したのだ。だが、緑谷には悪気は無いはずだ。

・・・・・多分。

 

「デクくん、天倉くんもすごいねぇ!・・・って顔面から煙が⁉︎」

 

麗日も少し遅れてやってくる。その後ろには飯田もおり、自身の個性と最初の競技の関係について悔しそうにしている。

 

「やってくれたなこのバカーーー!!!」

 

と先程、ゴールインした魔理沙が天倉の背中にドロップキックをしてきた。顔を真っ赤にしてご立腹の様子だ。

 

「よっ、よくも乙女の純情を・・・!」

 

「乙女の純情?ってそんなことよりも天倉くん!酷いよ!私のおしるこを目の前で食べるなんて!」

 

「いくらライバルだとしても、妨害行為は卑怯じゃないか!!!」

 

上から魔理沙、麗日、飯田の順で天倉に詰め寄る。天倉の行為による被害者は多数だ。今もなお恨んでいる者もいる始末である。

 

「い、いやごめん。おしるこはお腹が空いて美味しそうだったからつい・・・・。って言うか、そんな罠に引っかかっている方が駄目でしょうに!」

 

天倉が言い訳をしていると、順位の結果発表が終わりミッドナイトがステージに立ち、話し始める。

 

「予選、通過は上位42名‼︎残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ‼︎そして次からいよいよ本選よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!!!」

 

ミッドナイトがそういうと、ステージにある巨大なモニターに文字が映し出される。

予選の時と同じく、本選の競技が発表されるのだ。生徒たちはドキドキしながらモニターに注目する。

 

「コレよ‼︎」

 

映し出されたのは"騎馬戦"お互いがライバルなるこの大会に協力し合う競技が出てきたことに生徒たちは戸惑いを感じ始める。

 

ミッドナイトは騎馬戦のルールを説明する。

・参加者は2〜4人のチームを自由に作る。

・ルールは普通の騎馬戦と同じだが、違うのは先程の障害物競走結果によって個人に与えられるポイントが存在する事。

・ポイントは下から5pずつ与えられる

・制限時間は15分

・ハチマキを奪われる、騎馬が崩れてもアウトにはならない。

・そして1位には1000万pという破格のポイントが与えられる。

 

最後のルールを耳にした瞬間、緑谷以外の生徒たちの目が獲物を狙うような眼に変わったのだ。

緑谷の周りには敵ばかり。1位は上に立つ者と同時に狙われる者となるのだ。

そして、これから始まる戦いの運命を決める交渉タイムが始まる。制限時間は15分。その間に生徒たちはお互いの個性と相性を考えチームを作ることになるのだ。

 

「緑谷くん・・・。俺は爆豪くんや轟くん、そして君にも負けたくない。だから・・・・・恨みっこなしだ!」

 

天倉は拳を突き出す。

 

「・・・・・!・・・うん!」

 

緑谷も天倉の拳に合わせて自分の拳を突き出し、くっ付ける。すると、天倉が緑谷のおでこに手を伸ばす。

 

「?天倉くん?」

 

「餞別だ・・・・受け取れ。」

 

と、天倉は魔理沙から奪った捨てたはずのオールマイト日誌を渡した。

 

「あ、天倉くん⁉︎これって・・・・!!!ありがとう!天倉くん!」

 

「いいさ、そしてもう一つ。」

 

天倉は緑谷のおでこに指をつける。そして、

 

 

「あの爆発はマジで痛かったぞ。」

 

 

柔拳 八卦掌 ズドォッ!!!

 

 

 

騙し討ちは奇襲にて最強

 





アンケートが1日で沢山来て物凄く驚きました。これを見て皆さん見てくれているんだなぁ。と思いました。皆さん本当にありがとうございます!

アドバイス、感想、評価をお願いします。


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第15話 単細胞でトップギア


最近の仮面ライダーエグゼイドの展開が凄くて見逃せない。キャラデザがやだとか言われているが、そんなことはなかったぜ!
て言うか次回予告にあの人がああぁぁぁぁ⁉︎


 

雄英体育祭ではヒーローとしての気構えよりもヒーロー社会に出てからの生存競争をシュミレートしている。

ヒーローがひしめく中生き抜くには時に助け合い、時に蹴落としてでも活躍しなければならない。そう、まさに雄英体育祭はヒーロー社会を表しているのだ。

 

これからやる騎馬戦もそうだ。ヒーロー社会に出て、他のヒーローと協力し合う事と同じだ。その場の状況、個性を考えどのようにチームを組むのかが大切なのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「俺と組め!」

 

「爆豪!私と組も‼︎」

 

「僕でしょ!」

 

 

今、俺の前には爆豪くんがA組のみんなに一緒に騎馬を組もうと誘われている。

もちろん、俺も爆豪くんと騎馬を組むつもりだ。爆豪くんの性格がアレなのはA組のみんなも承知の上だ。その承知の上で爆豪くんの個性は魅力的だ。

 

「てめぇらの個性知らねぇ‼︎何だ⁉︎」

 

マジですかい⁉︎なんて言う、自己中心的な・・・。

いや、これはチャンスだ!逆にこちらを売り込みにいけば一緒に騎馬を組んでもらえる!

 

「おーい!轟の奴、即効チームを決めやがったぜ!爆豪!俺と組もう!」

 

轟くん、もう決めたのか。早いな・・・・って切島くんもか!

くそう、全員考えていることは同じってことか。だけど切島くんもいると中々良い騎馬ができそうだ!

 

「・・・クソ髪。」

 

覚えていない⁉︎名前はちゃんと覚えておきなよ!これで名前を覚えているのは緑谷くんだけだよ!アレは侮辱を込めたあだ名だけど・・・・。

 

「切島だよ覚えろ!お前の頭とそんな変わんねーぞ!」

 

す、すげぇ。あの爆豪くんと対等に話し合ってやがる・・・ッ!さすが切島くん!俺たちにできないことをやってのける!

 

「そこに痺れる!憧れるぅ‼︎」

 

芦戸さんが乗って来た⁉︎って言うかどうやって心の中を読んだ⁉︎そんな個性持っていないよね⁉︎

 

「オメー、どうせ騎手やるだろ!そんならオメーの爆発に耐えられる前騎馬は誰だ?」

 

「・・・・根性ある奴。」

 

うん。合っているけど、違う。爆豪くん察してあげて切島くん前騎馬やりたいんだよ。

なんだかんだで天然なところがあるんだなぁ。

 

「違うけどそう!硬化の俺さ!ぜってーブレねぇ馬だ!取るんだろ1000万!他の奴らに勝つんだろ!!!」

 

爆豪くんは切島くんの言葉に笑みを浮かべた。

・・・・・いつの間にか爆豪くんの切島くんへの好感度が上がっているんですけど。

いや、今はそんなことどうでもいい!重要なことじゃない!これに乗じて俺も騎馬に入れさせてもらおう!

 

「おい、緑トカゲ野郎。テメーは駄目だ。」

 

「」

 

「爆豪⁉︎んな直球な!!!」

 

「天倉があまりのことでフリーズしてんぞ⁉︎」

 

 

返事がない、どうやらただの屍のようだ。

すると、爆豪がその天倉《緑トカゲ野郎》に話を続けた。

 

「テメーの個性じゃあ俺たちとの相性は最悪だ。それに短時間しか持たねぇ。だけどな、デクの後だ。デクを倒したらテメェもあの半分野郎も倒す。」

 

そして爆豪は口端を吊り上げながら親指を下に向けて天倉に言い放った。

 

「せいぜい、強い騎馬でも作ってくれや。その方が潰し甲斐があるってもんだからなぁ!!!」

 

爆豪は現時点で天倉を敵と、勝つべき相手と認識した。

これは爆豪から天倉への宣戦布告、挑戦状を叩きつけたのだ!

 

これにより、周りのA組生徒が騒ぎだす。

 

「爆豪の宣戦布告⁉︎すげーな天倉!」

 

「良かったじゃん!いや、どっちか言うと良くないのかな?」

 

「こりゃすげぇことになりそうだな!」

 

ワイワイとほぼお祭り騒ぎ、爆豪は残りの騎馬を探そうとするが、切島があることに気付く。

 

「なぁ、爆豪。さっきから天倉フリーズしっぱなしなんだけど・・・・・もしかして聞いていないんじゃねぇの?」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いたいた。おーい上条くん。無事にゴールしていたんだね。」

 

「お!天倉か。すげーな2位って・・・・・ところで顔面が焦げているけど何があった?」

 

あの後、爆豪くんに何故か顔面を爆破された。全員からはアレは仕方ないと言われた。俺の記憶が飛んでいるときにマジで何があった⁉︎

とにかく、これで強力な個性持ちをゲットだ。上条くんの個性ならほとんどの個性に対応できるはず。

 

次は誰にしよう・・・・・って言うかヤバイA組はもうほとんどっていうか俺を除いた全員が既に誰と組むか決めてしまった。

 

残っているのはB組と普通科の生徒だけか・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけなのでそちらから1人誰かを貸してください。」

 

『(大胆だなコイツ・・・。)』

 

今、俺はB組に対して頭を下げている。いや、確かにA組が気に入らないのはわかるかもしれない。けど、こちらもそうは言っていられない。

A組のメンバーと戦うとするなら同じ実力を持つヒーロー科B組の力が必要なのだ。

 

「あれれー、おかしいなー?A組なのにB組に頭下げてるよおかしいなー?僕たちよりも強い筈なのになー?」

 

と、こちらを煽ってくるような言い方をする生徒が来た。金髪碧眼でややタレ目の爽やかなルックスをしている。

だけど、

 

「(・・・・誰だっけ?この人?)」

 

いや、声は聞いたことがあるんだけど、マジでどっかで会ったことがあるのだろうか?

 

「・・・別に協力してあげてもいいよ。僕たちに土下座してくれるならね。」

 

「・・・ッ!お前‼︎」

 

上条くんは金髪碧眼の生徒の胸倉を掴んだ。上条くんは俺の為に怒ってくれているのだ。

彼は自分よりも他人を、友達を大切にする。正義感の強い男なのだ。

 

「なんで、君が怒っているんだい?僕は彼に言ったんだよ。君に言ったわけじゃ「うるせぇ!天倉が頭下げて頼んでんだ!それを楽しんでいるなんて!俺が許さねぇ!」

 

上条は金髪碧眼の生徒に言い放った。そして、それに対して天倉は。

 

 

「すいません。お願いします。」

 

 

と天倉は地に伏せていた。そして、その場の全員、上条を含めた生徒が心の中で叫んだ。

 

 

『『(いや、土下座っていうか五体投地じゃねーーか!!!)』』

 

 

五体投地

 

五体すなわち両手、両足、額を地面に投げ伏して行う最高の敬意を表す礼法。土下座以上の行為である。

別名 接足礼拝《せっそくらいはい》

 

さすがのB組もこれには面くらっただろう。天倉にプライドはないのだろうか?

 

「だったら私が組んであげるよ。」

 

そう言ったのは拳藤だった。しかし天倉は申し訳なさそうに言う。

 

「え⁉︎でもいいの?自分で言うのもアレだけど俺A組だよ。」

 

「いいよ、いいよ。それに天倉は悪いヤツじゃないことは特に私が知っているし。」

 

天倉はその言葉にものすごく感動を覚えた。A組の生徒たちはぶっちゃけ物凄く個性的なキャラばかりでツッコミどころが満載なのだ。

B組もそうなんじゃないかと思っていたが、違う。特に拳藤さんは物凄くいい人物だったのだ。

 

「ありがとう拳藤さん!こんな常識人がいるなんてマジで嬉しい。入学当日の時も親切にしてくれたし、元気もらえるし、明るいし、可愛いし。」

 

「いやぁ、そんなに褒めなくてもさ・・・・ってちょっと⁉︎最後なんて言ったの⁉︎」

 

天倉の最後の一言に気になった拳藤だが、天倉はそんなこと御構い無しに最後の騎馬のメンバーを決めようとする。

最後のメンバーはなるべく連携を取る為、仲の良い人物が好ましい。その為、最初の時に心操の元へ行ったのだが、

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ありがとな、けど悪りぃ。もう騎馬を決めちまった。それに、お前と組むと俺の個性に掛かっちまうからな。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

と言い断ってしまったのだ。その後は爆豪、緑谷という順番で騎馬を組もうとするのだが、爆豪からはあっさり断られ(フリーズしている間に宣戦布告)緑谷は既に騎馬が決まっていた。

 

あとは仲が良いのはA組なのだが、そのA組全員は既に騎馬を組んでしまった。最後の1人は一体どうすれば

 

「ん?まだ決まっていないのか?」

 

天倉の目の前に魔理沙《仲の良い人》が現れた。

天倉はどうする?

たたかう

どうぐ

>はなしかける

にげる

 

 

>ころしてでもつかまえる

 

魔理沙は逃げ出したしかし回り込まれてしまった。

 

「知らなかったのか、大魔王からは逃げられない」

 

霧雨魔理沙は仲間になった!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

よし、これで全員が揃った。あとは騎馬を組むだけでokだ。まずはこの場にいるメンバーの個性を改めて把握しておかないといけないんだよな。

 

「あれ?なんで私はこんなところに?っていうか無理矢理、仲間にされたような気がするぜ?」

 

そんなことないぜ。何か魔理沙が言っているような気がするがそんなことはないんだぜ。

 

とりあえずこの場にいるメンバーの個性をまとめる。

 

・上条当麻 個性 幻想殺し

右手で触れたあらゆる個性を打ち消す個性。個性によって生み出されたものも打ち消すことも可能

 

・拳藤一佳 個性 大拳

自身の拳を巨大化することが可能。巨大化した拳のサイズは中学生を包み込めるほど

 

・霧雨魔理沙 個性 魔法(?)

ゲームのMPのようなものが存在し、使う魔法の種類によって消費するMPが違う。中には道具がないと使えないものもある。

例 箒などを使って空を飛ぶ 星型の爆竹程度の威力の弾幕をばら撒く 大火力のレーザーを撃つ(道具を通じて使わないと、自身の掌を火傷してしまう)

 

 

ざっとまとめるとこんな感じだ。天倉はメンバー全員に騎馬の構成を伝える。

 

「よし、こうしよう。前騎馬は上条くんにやって欲しい。上条くんの個性なら個性による全体攻撃などを防ぐことが可能だよ。そして右翼は拳藤さんが拳を巨大化させてなるべく敵を近づけさせないように。左翼の魔理沙さんは弾幕で周りの生徒への目眩しと同時に牽制。そして最後に俺が騎手として相手のハチマキをぶんどる!」

 

よし、これでOKだ。あとはどの騎馬を狙って行くかが問題だ。複数の騎馬が一つのターゲットに狙いを定めてしまったら乱戦になるのは間違い無しだ。

 

「あのー、ちょっといいか?別に俺が前騎馬やるのは問題ないんだけど、そうすると俺の右手が拳藤に触れちゃうわけで、それって不味くないか?」

 

あぁ、確かにそれもそうだろう。だが、大丈夫だ。その点を含めてパワー系の拳藤さんを右にさせてもらったのだ。この場合は上条くんの右手は自由にさせてもらうために右は拳藤さんだけでバランスを保たなければならない。

そのことを全員に伝え、大丈夫か?と聞いておく。これはあくまで俺が考えた案なので俺だけが決めていいことではないからだ。

 

「よし、わかった。天倉の言う通りにしよう!」

 

「今の所それがベストっぽいしね。」

 

「足場は任せておくんだぜ!」

 

とどうやら全員OKらしい。なんと言うか嬉しいな。俺の案をすんなり受け入れてもらえて。

 

「でも、騎手で大丈夫なの?聞くと、個性を使える時間がもう残り僅かみたいだけど?」

 

「大丈夫!伊達にこの2週間、修行はしていないよ。」

 

「心配すんなって拳藤。コイツ《天倉》の関節技はやばいぜ。くらった私もそうだが、マジで骨が折れるところだったぜ。」

 

拳藤さんはやや引いたような表情を見せた。

失敬な、アレは魔理沙さんが俺の唐揚げを何度も盗もうとしたからアームロックをかけただけだ。自業自得だ。

 

と言うわけで騎馬の構成も決まった。あとは相手よりも多く、ポイントを奪うだけだ!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

『さぁ、上げてけ閧の声!!!血で血を洗う雄英の合戦が今!』

 

ついに始まった。雄英体育祭本戦。

 

『狼煙を上げる!!!』

 

周りの騎馬を見るとぶっちゃけ物凄く強そうだ。

 

爆豪くんは凡庸性の高い個性持ちばかりで隙がないし、轟くんの騎馬は全員実力者揃いだ。緑谷くんたちも何やらゴテゴテした物を装備しているし・・・・。

 

『よーし、組み終わったな⁉︎準備はいいかなんて聞かねぇぞ‼︎』

 

言っちゃうと、今にもピリピリした雰囲気の中、プレッシャーで押し潰されそうだ。上条くん、魔理沙さん、そして拳藤さんの期待も俺が背負っているのだ。

 

『いくぜ!残虐バトルロイヤル!カウントダウン!』

 

だからと言って負けていられない。きっとこの場の全員は俺と同じことを考えている。

 

『3』

 

いきなり、全員が緑谷くんのポイントを集中して狙うのはさすがに無いだろう。

ここは日本最難関の雄英高校。全員がそんな単純な訳がない。

 

『2』

 

だとしても!負けられない!!!俺の為に!ヒーローになる為に!拳藤さんとの約束を果たす為に!!皆に挑戦する為に!!!

 

『1』

 

皆!!!ひとっ走り付き合えよ!!!

 

 

『START‼︎』

 

そして、ほぼ全員が緑谷に向かって走り出していた。

 

 

とりあえず一言だけ言わせて欲しい。

 

 

ほぼ全員が

 

 

 

単細胞でトップギア

 





〜〜〜〜心操の心情〜〜〜〜

「俺とか・・・・・・・?」

「うん、そうだよ。」

こいつの名前は天倉孫治郎、初めて会ったのが食堂だ。こいつの食欲と考え方にはいつも驚かされる。
コイツが俺の個性のことを聞いた時もそうだ。

『かっけぇ⁉︎なんかコード○アスの絶対遵守みたいじゃん!ル○ーシュなの⁉︎』

あいつはまるで自分の事のように喜んでいた。こいつはもしかして馬鹿なのだろうか・・・?
だが、悪い気はしなかった。初めて俺の個性をかっこいいと言ってくれた。
そして、今も。

「友だちと一緒にやると連携も取れるし、何より楽しいじゃん!」

「・・・・・・・・・・。」

そして、分かった。こいつは俺を個性とか関係無しに"友だち"として接してくれているんだ。
俺はこいつと一緒にヒーローを目指したい。そう思ったんだ。

だからこそ・・・・・。

「ありがとな、けど悪りぃ。もう騎馬を決めちまった。」

「えぇー、マジかぁ最初に決めていたんだけどなぁ。」

だからこそ。俺はお前にも挑戦したいんだ。

「それにお前と組むと俺の個性に掛かっちまうからな。」

今の俺じゃあ、お前と同じ土俵に立つ事は出来ない。
だから俺もそこへいく為に勝ち進む。俺が憧れていた場所、俺を認めてくれた奴がいる場所に。


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第16話 そんなこと俺が知るか!!!

疲れた・・・・。騎馬戦で天倉くんが2位になったから全部計算し直してからのチームをそれぞれ組み直すのものすごく疲れた・・・・・・・・・・・・・・・。

<タイヤコウカーンマッドドクター
<(0M0)ウワアアアアアアアアァァァァァァ!!!




俺の目の前には1組の騎馬に対して多数の騎馬が襲いかかりそれを物と

もせずに空を飛び、影みたいなものが伸び縮みしたり、爆発したり、すごい光景が広がっていた。

 

ただ、緑谷くんだけを狙うのはどうかと思うけど・・・・・・。

 

「天倉!早く指示出して!さっきから私たち全然動いていないんだけど⁉︎」

 

あっ⁉︎そうだった。あまりの予想外の出来事に思考が停止していた。拳藤さんのおかげで正気に戻った。よし、とりあえず行動に移そう。

目指すは1位ではなく、2〜4位!

 

「狙うのは緑谷くんの騎馬以外を!狙うとするなら、制限時間が迫ってから!それまでは地味だけど一つずつポイントを奪う!」

 

漁夫の利で全員が緑谷くんたちに注意がされている間にポイントを奪うというわけだ。

全員がこの作戦で行くと思ったのに全然違かったんだよなぁ

と思っていると急に騎馬が止まり、上条くんが話しかけてくる。

 

「おーい、天倉。ちょっといいか?」

 

「え、何?上条くん?」

 

どうかしたんだろうか?今、色々と考えていることがあるのであまりよそ見してはいけないと思うのだが。

 

「いや、上から1位のチームが。」

 

「え?・・・・・・・・・・・・全力で回避いいいいいいいいいい‼︎」

 

とその場から離れると、そこには緑谷くんたちが空から降ってきたのだ。

親方!空から地味な男子と麗らかな女子とカラスっぽい人とへんなゴーグルをした女の子が⁉︎

何で着地点がここなんだよ!危ないだろう!

 

・・・・・・・ってコレ、もしかしてチャンス?

 

「全員!全力でポイントを奪うぞ!」

 

「ええ⁉︎さっきの作戦は⁉︎」

 

「さっきのは作戦《プラン》βだ!とにかくなんだっていい!ポイントを奪うチャンスだ!」

 

上条くん、魔理沙さん、拳藤さんはとりあえず頷き緑谷くんたちの方へ進む。

すると、カラスっぽい人。常闇くんの胴体から影が現れる。

 

あれは何だ?自宅の近所の占い師もあれみたいなの使うけど、炎は出ていないな・・・・。

 

「いけっ!黒影《ダークシャドウ》!!!」

 

『オウヨッ‼︎』

 

黒影と呼ばれたものはこちらへと伸び、攻撃をしてくる。伸縮自在なのか!!!

だが、それ位は想定の範囲内だ。

 

「うおっ⁉︎何だこれ?」

 

上条くんは癖のように右手を伸ばし黒影に触れる。すると

 

パリン!!!

 

「⁉︎」

 

「なっ⁉︎黒影《ダークシャドウ》!!!」

 

黒影はその場から消えてしまった。まるで個性が抹消されたようにだ。これが上条当麻の触れたものを打ち消す個性だ。緑谷くんのチームは何が起こったか理解しきれていないようだ。

チャンスだ、このまま離脱されないうちにハチマキを奪う。

 

「くっ!脱出・・・・・間に合わない⁉︎」

 

「はっ‼︎」

 

「ぐうっ⁉︎」

 

俺は腕を伸ばし緑谷くんのハチマキを取ろうとするが、あっさりと防がれてしまう。

何度も取ろうとするが、いなされる。右手、左手、両手で連続で取ろうとするが駄目だ。

 

どうなっているんだ⁉︎まるでこちらの手を知っているかのように・・・・・・・・そうか、緑谷くんは確か・・・。

 

「天倉くんの個性も戦い方もノートにまとめてあるんだ!天倉くんはいつも近接戦のときは相手を引っ掻くようにヒットアンドアウェイの戦い方を得意とするんだ。それに狙ってくるのは頭にあるハチマキ。それさえわかれば対処しやすい!」

 

グググ、まさかそこまで読んでいるとは・・・・!と、緑谷くんも手を伸ばしてくる。

くっ!あちらもハチマキを!

 

「悪いけど!ハチマキはもらうよ!」

 

・・・・・・させるかぁ!!!同じ大食漢の40代半ばのスーツ姿のおっさんに教わった奥義!

 

片手で相手の手首を掴み、もう片方の手を相手の膝の下を通す形で自分の前腕を掴み捻りあげる

 

アームロック!!!

 

肩、肘からの痛みにより、さすがの緑谷くんもたまらず叫ぶ

 

「がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

「で、出たーーーーっ!天倉の伝家の宝刀アームロックだ!」

 

魔理沙さん。別にアームロックは伝家の宝刀ではないよ。ただ、やりやすいからやっているだけだよ。しかも教わったのは定食屋で知り合ったおっさんだよ。

 

「むぅ!あれぞまさしく、アームロック!!!」

 

「知っているのか⁉︎麗日!と言うよりも何だそのキャラは?」

 

俺が緑谷くんにアームロックを仕掛けていると麗日さんが何やら解説を始める。

常闇くんはいきなりの解説に戸惑っているが。

何だ?麗日さんはテリーポジションでも取りたいのだろうか?

 

 

「腕を捻り肩と肘を極める関節技の一つで、腕を捻る方向によってV1アームロックやチキンウイングアームロックって感じに名称も変わったりするんだよ。でも、アームロックは難易度が高い技。相手と自分との体が離れていればどれだけ捻っても拘束しかできない相手からギブアップを奪うにはかなりのテクニックが必要なんだよ!それを天倉くんはいとも簡単に・・・・・・!アームロックと同じ要領で肘を伸ばすストレートアームバーもまさか!やはり天倉くん・・・・・・天才か⁉︎」

 

 

「麗日!よくわからんが落ち着け!何を言いたいのか全くわからん!」

 

 

とりあえずさ・・・・・緑谷くんを助けてやれよぉ。

さっきから緑谷片方の手を俺の肩にパンパンと叩いてギブアップを示しているんだけど。

すごく辛そうなのですが、俺もさすがに可哀想だからアームロックやめてあげたいけどさ。今は敵同士だし・・・・。

 

しかもハチマキを取りたくてもアームロックをかけているせいで両手塞がっているし・・・・。

 

「がああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁギブギブギブギブギブギブギブギブ!!!マジで折れるから!骨が折れるからぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『おおいいいい⁉︎緑谷大丈夫か⁉︎ていうか天倉!それ以上いけない!!!マジで可哀想だから拘束解いてあげて⁉︎』

 

実況もこの始末である。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「緑谷少年、何で関節技に⁉︎っていうか騎馬戦で関節技アリなの⁉︎」

 

そして平和の象徴《オールマイト》もこれにはビックリ

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

可哀想なのでそろそろアームロックを解いてあげようとすると顔面スレスレでボールのような物体が通り過ぎた。

飛んできた方向に向くと、そこには障子くんが1人で走ってきた。

・・・・・・何で⁉︎

 

「大丈夫⁉︎デクくん‼︎」

 

「う、うん。ありがとう麗日さん。(できれば助けて欲しかった)とにかくここから離れよう!」

 

緑谷くんは一刻も早くここから逃げるようとする。そしてアームロックに恐怖の念を覚えたのかすぐさまジェットパックを使って離脱しようとするが、麗日さんに異変が起きる。

 

「何これ⁉︎全然動かない!なんかボールみたいなのが足の裏に張り付いている⁉︎」

 

「みっ、峰田くんの⁉︎さっきもそうだけど何処から⁉︎」

 

俺と緑谷くんが障子くんの方へ向くと障子くんの腕の隙間から峰田くんが顔を覗かせていた。

 

「ここからだよぉ、緑谷。そして天倉ァ。」

 

なんと、峰田くんが障子くんの腕によって覆いかぶさっていたのだ。これじゃあハチマキを奪うことは困難だ。

 

・・・・・・・・・・そして、何故だろうか。俺に対して明確な殺意を感じるのだが。

すると障子くんの腕の隙間からピンク色のムチのようなものが飛び出してきた。

俺と緑谷くんはギリギリで回避する。その正体は蛙吹さんだった。というか蛙吹さんまで障子くんの腕に中にいるのってすごいな。狭くないのかな?

 

「これから始まるのは奪い合いじゃあねぇ。一方的な略奪よぉ‼︎そして天倉ァ!!!テメェだけは許さねぇ!エロ本の恨みだ!オレガクサマヲムッコロス!!!」

 

峰田くんがそう思うのは俺の責任だ。だが、私は謝らない。ぶっちゃけ罠に引っかかったのを善意?で助けただけだ。

 

っていうかモギモギや舌がめっちゃきてる⁉︎

 

「フハハハハハハハノ\ノ\ノ\ノ\ノ\ノ\!!!緑谷のポイントをゲットしてからじわじわといたぶってやるよぉーーーっ!」

 

やばい、アレかなりやばくなっている。緑谷くんたちもすでに離脱してしまった。

ていうかエロへの執着怖っ⁉︎

 

「とりあえず、アレを相手にするのは面倒だ!ここは逃げよう!」

 

「よしっ・・・・・って天倉ァ⁉︎ハチマキが⁉︎」

 

え?ハチマキ・・・・・・・っ!なっ、無い・・・・・だと⁉︎

ど、何処へ行った?というかいつの間に無くなっていたんだ?

 

「漁夫の利さ。君、目の前のことに熱中になると周りの事見えなくなるんだね。」

 

「も、物間!!!」

 

拳藤さんが叫ぶ。しまった、僕と同じ考えをしていた騎馬がいたのか⁉︎

いやそもそも何人かが俺と同じ考えをしていると想定していた筈なのに・・・・・・。

 

320p→0p

 

『おっーーーと、天倉チーム!0p!バチでも当たったか⁉︎』

 

くそっ!やられた!!!

 

「おい、天倉!落ち込んでないで次のやつを狙うんだぜ!私たちを上手く使ってくれなんだぜ!」

 

ッ!そうだ、これくらい騎馬戦では当たり前だ。大事なのは他を蹴落としても生き残ること!俺がすることは全員を勝利は導くことだ!

 

「よしっ!まずは上位チームを狙おう。ハチマキを複数所持する上位チームなら奪える可能性も高まる!」

 

ちょうど目の前にいい獲物がいることだしさっさとポイントを頂戴させてもらおう

 

「なっ、来るか!拳藤、悪りぃが手加減はしねぇぞ!」

 

「鉄哲も!戦うのは天倉だけど!」

 

そして俺たちは鉄哲と呼ばれた男子生徒率いるチームに向かっていく。

鉄哲くんのハチマキを奪おうと手を伸ばすが、あっさりと防がれる。しかもそれだけではなかった。

鉄哲くんの身体が硬くなっていたのだ。まるで切島くんのようにだ。違う点は体全体が肌色ではなく、鉄のように鈍い銀色となっているのだ。

 

これが鉄哲くんの個性か、っていうか切島くんとダダ被りじゃん。

・・・・?何か違和感がするような・・・・

 

「なっ、何だこれ⁉︎足がどんどん沈んで・・・・⁉︎」

 

これは相手の個性か⁉︎しまった!いきなりかよ!

 

「ぐっ・・・俺の右手で!」

 

「やめとけ上条!おそらくこの状態でソレを使ったら私たちは埋まったままだぜ!」

 

「気をつけて!骨抜は推薦入学者だから強いよ!」

 

B組がここまでやるとは思わなかった。いや、油断をしていた。しかしこの状態をどうするか、このままじゃあ進むことも戻ることも出来ない。

 

 

「・・・ッ!やるっきゃないか!全員気を付けろよ!気を付けないと火傷するからな!」

 

魔理沙さんは手を下に向けるすると魔理沙さんの掌に何かキラキラと輝いたものが集まる。そして

 

「いっけぇ!!!」

 

 

ドゴォンッ!

 

 

魔理沙さんの掌から爆発が起き、その反動で俺たちは柔らかくなった地面から抜け出すことができた。

 

「これなら!!!」パリン!

 

上条くんはすぐさま地面に右手を押し当て、地面が元の柔らかさに戻る。

いや、そんなことより魔理沙さんだ何だったんださっきのは?あの爆発は爆豪くんの個性並の威力だ

 

「へへへっ、名付けて【星符ドラゴンメテオ】ってな。あっちちち。」

 

魔理沙さんは爆発させた方の手をヒラヒラとさせている。余裕そうに見えるが、実際はものすごく痛いのだろう。俺たちを心配させまいと我慢しているのだ。

 

「・・・・・・⁉︎天倉!」

 

と、魔理沙さんが星型の弾幕をこちらに放ってきた。

いや、正確には俺の後ろにだ。すると爆竹程度の威力を持つ星型の弾幕が俺の背後にあったツルに命中した。

 

「ごめん、ありがとう!」

 

「どういたしましてっと!悪いな、背後から忍ばせて来るやつとは何度もやり合ってきたからな。私にはバレバレだぜ。」

 

あのツルは・・・・・棘が付いている髪の毛の女子か!よく見ると髪の毛が伸びている。背後から拘束するつもりだったのか

 

「よそ見するんじゃねぇぞ!!!」

 

と鉄哲くんが拳を放つ。それを俺は個性を腕に発動し防ぐ。さすがに硬い・・・・だが、もらった。

 

硬化系の個性持ちがパンチをする際に硬化する部位は前腕部だろう。しかしパンチの威力をあげるには振りかぶってから拳を放つという手順となる。

この場合、肘関節を硬化してしまうとパンチの威力が低くなってしまう。そのため硬化系の個性持ちは攻撃する際、関節部は硬化されていないのだ。

 

まぁ、つまり言うと硬化系の個性持ちはカウンターの関節技でいけるということなので

 

アームロック(二回目)

 

「があああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

「「「それ以上いけない⁉︎」」」

 

「再び出たぜ!伝家の宝刀アームロックだーーーーーーーーっ!」

 

だから、そのくだり何度やるんだよ⁉︎

 

アームロックをかけている間に、頭のハチマキを取る。

しかし、今俺の両手はアームロックを鉄哲くんにかけているため塞がっているので、

俺は口でハチマキを二ついっぺんに取る。

 

ハチマキを取ったらすぐさまアームロックをやめ、みんなに距離を取るように言う。

 

「よしっ!ハチマキは取った、これ以上取りに行くのは危険だ。一旦離れよう!」

 

そして全員は無言で頷き鉄哲くんの騎馬から離れる。ハチマキのポイントは・・・・405pと150p!合わせて555!

ゾロ目⁉︎

 

0p→555p

 

STANDING BY COMPLETE

 

 

『天倉!0から555pへ!4位へと一気に行ったーーー‼︎まさかのゾロ目かよ!!!』

 

 

まだだ!5位のポイントは520pこのままだと順位を抜かれる可能性がある!

せめて・・・せめて600p以上は取らないと‼︎

 

いや、取るのは1000万p!ここまで来たなら!!!

 

「さらに上を目指す!」

 

今はもう、2〜4位とかはどうでもいい。手のひら返しになるけど、1位になりたい、今この場の全員はそう思っているはずだ。

狙うのは轟くんの騎馬か!緑谷くんから奪ったのか!

 

って、氷の壁⁉︎轟くんめ、邪魔をされないようにしたか!!!

 

「上条くん!君の個性でこの氷を・・・・・あ。」

 

「あ"?」

 

すぐ隣に爆豪くんの騎馬が・・・・・・・え?いつの間に?

 

「てめぇーら⁉︎何でここにいやがる!!!邪魔だ!!!」

 

「いきなり罵倒って酷くない⁉︎」

 

「ふむ、ハチマキ沢山あるな・・・・・・。」

 

魔理沙さんがハチマキを見て何か呟いているけどどうでもいい!上条くん!さっさと氷を消して欲しい!

残り時間はあと・・・・・・・・

 

 

『そろそろ時間だカウント行くぜ!エヴィバディセイヘイ! 10!!!』

 

 

瞬間、その場の全員の行動は早かった。

 

『9』

 

上条くんが轟くんの個性で生み出した氷を打ち消し

 

『8』

 

魔理沙さんが爆豪くんから何かを盗み

 

『7』

 

爆豪くんが自身の個性で飛び

 

『6』

 

芦戸さんたちが爆豪が飛び出したのに唖然し

 

『5』

 

拳藤さんが拳を大きくさせて

 

『4』

 

拳藤さんが俺を掴み

 

『3』

 

そのまま俺を投げる

 

『2』

 

投げられた俺は爆豪くんの横を抜け

 

『1』

 

そのまま緑谷くんの騎馬と轟くんの騎馬に

 

『タイムアップ!!第二種目、騎馬戦終了!!!』

 

当たりもせずにそのまま二つの騎馬のちょうど真ん中当たりの地面に突き刺さった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「い、いやぁ本当にごめん。かなり焦っていたから・・・。」

 

拳藤は申し訳なさそうに天倉に謝っていた。ちなみに天倉は奇跡的に無事だった。

※普通無事では済まない。

 

「大丈夫、大丈夫。ところで魔理沙さんは掌は平気?」

 

「ん?おう全然ッ⁉︎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜へ、へいきだぜ(涙目)」

 

魔理沙の掌は明らかに大きな火傷をしており、一目見ればわかるほど酷いものだった。

 

「で、順位は・・・・・?」

 

と上条くんが質問すると場の空気が固まった。そうだった、どうなったんだ?と、言っても555pじゃあ自信がない。ぶっちゃけあと100pは欲しかった。

 

「おいおい、天倉。私に感謝して欲しいぜ。私がいなければここまで来れなかったんだからな。」

 

いや、それはわかっているけどそれは後にしてくれない?順位が発表されるからかなり心臓がバクバクいっているから、プレッシャーでやばいから。

 

「おいおい・・・・そりゃあないぜ。それじゃあ何の為に【コレ】を盗ったと思っているんだよ。」

 

魔理沙さんはコレを見せてくる。それは・・・・・・・・

 

 

「・・・・・ひゃ、110p⁉︎」

 

555p→665p

 

「665pって・・・・・⁉︎」

 

「いっ、いける⁉︎コレもしかして4位以内入る⁉︎」

 

「ふ、不幸じゃない⁉︎し、幸せだーーーっ⁉︎」

 

こ、幸運だ!俺たちは幸運に恵まれている!!!

よっしゃラッキーーーーーッ!!!!!

 

 

『それじゃあ結果発表と行くか!!!第1位轟チーム!1000万405p!!!』

 

轟くんが、1位か・・何というかあのチームならそうなるんじゃないかなとは思っていた。

 

『第2位爆豪チーム!!!1240p!!!』

 

ものすごく悔しそうにしている。そして最後の最後、俺に抜かれたのが癪に触ったのかこちらを睨んでいる。

やめてくれ、アレは拳藤さんがやったんだ。

 

『第3位鉄て・・アレェ⁉︎オイ!心操チーム!!!??』

 

し、心操くん⁉︎3位ってすげぇ!!!洗脳でここまで来たのか⁉︎

 

『そして最後!第4位!!!665p!!!』

 

!!!・・・・・・・俺はここまで来たのだ。今思えば雄英体育祭がこんな大会なんて子供の頃じゃあ思わなかっただろう。

だが、今は違う。俺は、俺たちはコレを乗り越えてヒーローに、目標に向かって歩き続けなければいけないのだ。

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・。』

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アレ?

 

 

プレゼント・マイク?

実況どうした?おーーーーーーい?ちょっと?マイクの音量もしかして最低になっていませんか?

 

『・・・・・おい、イレイザーコレどうする?』

 

『知るか、そもそもこれくらい想定しておけ。』

 

 

・・・・・・・・・・・・え?マジでどうした?

 

 

『おいおいおい、これってありなのか⁉︎第4位 緑谷チームAND天倉チーム⁉︎両チーム665p!!!???』

 

 

・・・・・・・・・・・え?

 

 

「「「「「「・・・・・・・は?」」」」」」

 

 

 

『あーーーーうん。まぁ、1時間ほど昼休憩挟んだら午後の部だから。じゃあな!!!・・・・おい、どうすんだコレ⁉︎』

 

 

天倉を含む7人は何かを言いたい気持ちをぐっとこらえた。そして

 

 

『(何故か納得いかない・・・・・・。)』

 

この場の全員の心が一致した。

 

 

「あ、天倉くん?よくわからないけど、よかったね?ええと、どうしてこうなっちゃったんだろう?」

 

 

 

 

そんなこと俺が知るか!!!

 

 




〜〜〜天倉の技をまとめてみた。

一夫多妻去勢拳

自称良妻系狐キャスタークラスに教わった技。
本人からは中々のイケ魂だが、ものすごく不憫と同情されこの技を教わった。
何人かは忘れていると思うが、第1話あたりで人質に取られた際に使った技であり敵を一撃でノックアウト状態に追い込んだ。

ちなみに作者はFGOではキャットの方しか持っていない。



ヘッドシザースホイップ

独学で身につけた技。個性によってほぼ力任せに相手を脚で掴んでぶん投げる。脳無も不意打ちの形でこれを食らった。



アームロック

定食屋で知り合った40代半ばのスーツ姿の大食漢のおっさんに教わった関節技。天倉自身が気に入っており、ほぼマスターしているので反射的に仕掛けてしまうことがある。



その他の技

天倉大河から教わった。と言ってもほぼ全て漫画の技なので実際使ったら無事では済まない。(相手が)
1番気に入っている技は地獄の断頭台とタワーブリッジ


アドバイス、感想等があればください。
評価もよろしくお願いします。


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第17話 さぁ、よからぬことを始めようじゃないか‼︎by天の声

FGOでばらきーが欲しくて何度も回したその結果。

「殺してでも救う!」

いや、あんた《婦長》かよおおおおお!!!
星5だからめっさ嬉しいけど。


雄英体育祭の午前と午後に挟まれる束の間の休息。だが、それはこれから始まるであろう激しい戦いの、嵐の前兆なのである。

そんなことも知らず生徒たちはそれぞれの思いを胸にこれから始まる戦いに心を躍らせる

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はぐ、ムグムグんぐ・・・・ごぶっがふっ!がっ・・がっ・・ごくん・・・あむ・・んぐんぐむぐむぐ・・じゅるるがぶっ・・・ん!ごくん・・・・・・・・がっまぐむぐあぐ・・・はむはむ・・・んん・・・んっんっんっ・・・・ごくん・・・あぐあぐ、ごぶっ・・・がぶっ・・・・・もぐ・・・んぐ・・・・じゅるる・・・・。」

 

『』

 

 

目の前の光景にその場の全員は圧倒されるしかなかった。山のような料理の品々は天倉の口の中に吸い込まれていき、そのまま胃の中へボッシュート。

この光景に驚くものもいれば、逆に面白がって見る人、それに対して恐怖するものまでいる。

 

「(とにかく沢山食べておかないと・・・・・一筋縄ではいかない人たちが大勢いる。きっと個性を多用する筈だから今の内にできるだけ摂取しておかないと・・・・。)」

 

天倉は無意識の内に焦っていた。最悪の事態を想定し、そんなことが起こらないよう今の内に準備をしているのだ。

 

「天倉さん、ものすごく食べるのですね。・・・・・・わ、私は最近過食気味なので今日はサラダだけで・・・・。」

 

「わ、私もー。コレ《ししゃも》をよく噛んで誤魔化すつもりで・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

天倉のすぐ隣では天倉の食欲にやや押されながらも健康管理・・・を建前にし、ダイエットをしている八百万と麗日がいる。

そして、今までの栄養が2人の身体のとある部位に行き渡っていることに納得がいかない耳郎。

 

 

何故、ここまで差があるのだろうか。神は不公平だ。例え神が存在したとしてもそれはきっとロクでもない神なのだろう。

どうせアルバイトを複数掛け持ちして果物と戦国武将を混ぜたような姿でもしているのだろう。

 

と耳郎は心の奥底から2人と神を妬む、それと同時に耳郎に天啓もとい神からのメッセージが降りた。

 

 

『マヨネーズは世界で一番偉大な食べ物だ。』

 

 

『マヨネーズが足りないんだけどオォォォォォォォ!!』

 

 

 

耳郎は手元にあったマヨネーズを2人のサラダとししゃもにたっぷりとかける。

 

「「何を⁉︎」」

 

「いや・・・・・美味しいから。」

 

耳郎は悔しさと妬みを胸に抱えながらマヨネーズをかけ続ける。これでもかと言うほどに。

 

そして、

 

 

 

「50食限定の和牛ステーキ定食、全部食べられちゃったね。・・・・・・・・・天倉くんに。」

 

「あぁ、・・・・・・蕎麦でも食べるか。」

 

先程まで会話をしていた緑谷と轟は空腹に負け食堂に立ち寄ったのだが、天倉《全自動暗い雰囲気ぶち壊すマシーン》の存在をすっかり忘れていたのだった。

限定の定食も全て食われ、緑谷には何やら虚しい気持ちが押し寄せていた。

 

そして轟は

 

「(・・・・なんか、天倉を見ていると俺のやっていることが馬鹿らしく思えてきたな・・・・・。)」

 

半分悟っていた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

天倉の食欲はひとまず落ち着いたが、午後から始まる最終種目にソワソワしていた。

天倉はあくまで食欲によって緊張を抑えていたのだが、それも長くは続かない。アリーナ内を歩き周り、自分を落ち着かせようとしているのだ。

 

 

「Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・Be cool・・・・。」

 

 

ブツブツと緑谷のように呟きながら天倉は歩き続ける。その様子に周りの人達は若干引き気味だ。

すると、その人達の中から天倉に声をかけてくる人物がいた。

 

「やぁ、もしかして天倉くんかい?」

 

「Be cool・・・・Be cool・・・・Be・・はい。そうですけど?」

 

天倉は呼ばれたことに少し遅れて反応し、声をかけてきた人物に向き直る。

その人は白髪のショートボブに一本だけ跳ね上がったくせ毛が特徴的で瞳の色は金色でメガネをかけた男性だ。

服装は黒と青の左右非対称のツートンカラーをした洋服と和服の特徴を持った服でここら辺では見かけない格好をしていた。

 

天倉は見知らぬ人に対して少々戸惑っていた。そもそも人に話しかけられることに慣れていないので、ものすごく困っている。

 

「あぁ、やっぱりかい。魔理沙がよく話してくれていたから一目見ただけでわかったよ。"緊張しているときは変な行動をとっている"ヤツって言っていたからね。」

 

「あぁ、魔理沙さんの知り合い・・・・・・・って魔理沙さん⁉︎何を吹き込んでんだよ⁉︎」

 

と、魔理沙の天倉に対する扱いに対してその男性が苦笑をもらしていると横から少女の声が聞こえた。

霧雨魔理沙だ。

 

「おーい、香霖。やっと見つけ・・・・お?天倉も一緒か。」

 

魔理沙がこちらへと向かってくる。香霖と呼ばれた男性と魔理沙は知り合いなのだと天倉は理解した。

 

「天倉紹介するぜ香霖だ。変な物ばっかり売っている店をやってんだ。まっ、何に使えるか分からないものばかりだが結構面白いものも売っているんだぜ。」

 

「おいおい、変なことを言うのはやめてくれないか。おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前は森近霖之助。魔理沙からは香霖と呼ばれている。先程魔理沙が言った通り、古道具屋・・・・まぁ、雑貨店をやっている。といってもほぼ僕の趣味で集めたものばかりだけど、興味があるなら是非立ち寄って欲しい。」

 

霖之助にそう言われ、天倉は少々興味が湧いてきた。雄英体育祭が終わったら立ち寄ってみようと思った。

 

霖之助はどうやら魔理沙の保護者代わりらしく、魔理沙の父親は仕事で忙しく魔理沙の世話を霖之助に任せているらしい。

天倉から見て魔理沙と霖之助は本当の親子のように見える。ふと、天倉は思い出す。

 

 

「(そういえば、父さん・・・今頃何やってんのかな・・・・。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

雄英体育祭アリーナ内の観客席に続く通路、一見するとなんの変哲も無い通路だ。しかし、その通路には異様な光景が映っていた。

 

【炎】

 

全身に炎を纏ったようなコスチュームを着ており、顔面からも炎が噴き出し強者のオーラが出ているのがわかる。

 

彼は事件解決数史上最多の異名を持つ燃焼系ヒーロー【エンデヴァー】

実力は本物であり、知らない人はそうはいないだろう。しかし、世間からの扱いはNo.2となっており、女性や子供からの受けも悪く20代〜30代の男性が彼を支持している為、層が偏っているのだ。

 

それもその筈、エンデヴァーは極めて強い上昇志向の持ち主であり、自身の野望の為に個性婚を強いたのだ。実力はあるが、性格に問題があるといったところだ。

 

だが、現在進行形でエンデヴァーは不機嫌だった。

轟焦凍、自身の息子が左側《父から引き継いだ炎》を全く使わないのだ。

しかし、半分の力で上位になっており、それについては轟焦凍の反抗期とエンデヴァーは認識している為不機嫌の原因はそれでは無い。

 

不機嫌の理由はエンデヴァーの瞳にたまたま映った名前だ。

 

 

【天倉 孫治郎】

 

 

「天倉・・・・・気に食わん名前だ。」

 

エンデヴァーがまだ駆け出しのヒーローだった頃の時だ。彼と同年代のヒーローが2人いた。

1人は現在、No.1ヒーロー、平和の象徴と呼ばれているオールマイトだ。

 

そして残りの1人、エンデヴァーにとってこの人物はオールマイト以上に気に食わない存在だった。

その実力はまだ駆け出しのヒーローとしての域を超えていた。

 

エンデヴァーはそのヒーローを妬み、嫉み、そして憧れた。そのヒーローは誰よりも強く、欲がなかった。

彼はその頃のヒーローの中では珍しく、色々なヒーロー事務所からのオファーを全て断り、フリーのヒーローとして活動していた。

彼には実力がある。だが、上に行くことに興味が無かった。

 

そして、30代で彼はヒーローを辞め、今では動物学者となり世界中を飛び回っている。

 

そして今、そのヒーローと同じ苗字の生徒がいる。

 

「だが、性格はヤツと全く似てないな・・・。」

 

息子と父との性格がこうも違うとは思わなかった。てっきり父譲りの性格の読めなさと面倒ごとを押し付けるいい加減さを兼ね備えたエンデヴァーにとっての強敵が出来上がると思ったが、そうでも無かった。

 

だが、実力は申し分無い。ヤツと性格が全く違うのならばその強さは高く評価できる。

あの生徒《天倉孫治郎》の強さをこれから見極めさせてもらおう。そしてその実力が確かならば自分の事務所、いや息子の相棒《サイドキック》として活躍してもらおうではないか。

エンデヴァーはそう考える。だが、それを一瞬のうちにして壊す者がいた。

 

 

 

「そうでも無いぜ。あいつは俺と似て友達思いのところがあるからな。そうだろ、俺たち友人同士だしな。」

 

 

エンデヴァーの耳に性格の読めなさと面倒ごとを押し付けるいい加減さを兼ね備えたような者の声か入る。

 

 

「友人というのはまさか俺のことじゃ無いだろうな・・・・。」

 

「いやぁ、やっぱり分かるか?久しぶりだな。お前の分のお土産あるぞ?」

 

エンデヴァーのこめかみに血管が浮き出る。いや、炎で覆われているので詳しくはわからないが、とにかくエンデヴァーはものすんごい"怒っている"。

 

 

「貴様を友人だと思ったことはないわ!天倉大河ァ!!!」

 

エンデヴァーの後ろには昔からの知り合い兼エンデヴァーが最も嫌う性格を持つ男【天倉大河】がいた。

 

「おいおい、いきなりひでぇじゃねぇかよ。友人同士、お互い仲良くやろうぜ。」

 

「黙れ!!それに貴様の言う友人は自分の代わりに買い物に行かせたり、ヒーローの雑務を一方的に押し付けるような存在なのか!!!??」

 

エンデヴァーが声を荒げながら一段と炎が大きくなる。激おこぷんぷん丸を通り越してカム着火インフェルノ状態である。

エンデヴァーにとって天倉大河はこれ以上ないほどの天敵である。大河が喋ればエンデヴァーは怒り出す。

火に油どころか火にダイナマイトという表現の方があっているだろう。

 

「落ち着けって、そんなに怒っているから親子の関係が上手くいっていないんだろう?」

 

「黙れ!!貴様には関係ないわ!!!それに貴様こそ息子と全く会っていないそうだな、貴様の方はどうなんだ!」

 

 

ともはや手がつけられない状態だった。

天倉大河、約1時間前に南アフリカから日本へ到着。

 

アジア経由で南アフリカ航空に乗り継ぎ、成田から香港間で約4時間30分、香港からヨハネスブルグ間で約13時間15分

合計時間 約17時間 45分。

 

息子の晴れ舞台を観にわざわざ南アフリカからやってきたのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「あーーーーー、酷い目にあった・・・・・。」

 

「うん、天倉。本当に悪かった。でもあくまであっちが巻き込んだだけだからな。」

 

今、俺と上条くんは学校関係者以外立ち入り禁止の部屋に居た。そして、先程までとても危険な目に遭っていたのだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜数分前

 

 

事の発端は上条くんが修道服を着た女の子と喋っていたところからだった。

俺が気になって上条くんに話しかけると、その女の子が前に言っていたインデックスという同居人だったのだ。

 

「わたしの名前はインデックスって言うんだよ!とーまから聞いてるよ。そんじろーって言うんでしょ。よろしくね。」

 

なんだろうか・・・ものすごい犯罪臭が・・・・。とりあえず通報しても良いだろうか。

 

「マジでやめろ!洒落になってねぇよ!」

 

など、3人で駄弁っていると年齢は14歳あたりだろうか?女子が近づいてきたのだ。

どうやら彼女も上条くんとの知り合いで名前は【御坂美琴】お嬢様学校に通っている強力な個性持ちだと言うのだ。

常に突っかかってくるビリビリ中学生らしいが・・・・。

 

「まさか、あんたが最終種目まで生き残るとは思わなかったわ。まぁ、あんたの事だから最初の方で負けると思うけど、そうならないように足掻きなさいよね。」

 

「その最初の方で負けると思われているヤツに挑んで現在、全戦全敗中なのはいったい誰でしたっけ?」

 

その後もギャーギャーと痴話喧嘩が始まる。・・・・・・・・あ、分かった。

この子ツンデレだわ。がっつり上条くんに好意寄せてるわ。

 

「ねーねー、そんじろー!こっちはスフィンクスって言うんだよ!」

 

インデックスは俺に猫を見せる。・・・・・・・スフィンクス?・・・・・・・・・すごいネーミングだ・・・・。

徐々にカオスになりつつある空間。

 

途中、おねぇさまああああああああ!!!とツインテールの女子が一瞬のうちに現れ、御坂美琴さんに抱きつく。

そして

 

「やーーーっと見つけました!!天倉さん、覚えていますか!清く正しい射命丸文ですよ!」

 

と後ろから猛スピードで射命丸さんが迫ってきた。そして後ろから遅れてくるように白髪の犬耳を付けたような髪型をした女子もカメラを片手に遅れてやってきた。

て言うか女の子の比率多くね?

 

あ、やばい。これ絶対面倒臭い流れだ。悪いが俺にはまだこのカオスな空間は早かったようだ。

天倉孫治郎はクールに去るぜ!(駆け足)

 

「天倉⁉︎・・・俺も逃げる!」

 

「天倉さん!今度こそ取材を!」

 

「あー、とーま!勝手に行くなー!」

 

「ちょっと!まだ話の途中n「おねぇさまああああああああ!!!」あんたはいい加減に離れなさい!」

 

「文さん・・・まって・・・くださ・・・・い・・・・。つ、疲れ・・・・」(肩で息をついている)

 

な ん だ こ れ

 

いや、マジでなんだこれうちのクラス《A組》以上の世紀末さなんだけど。

修道服をきた女の子が猫を持って追いかけて

そして雷を纏っている女子がいてそれを追いかけるように瞬間移動しまくる女子がいて

猛スピードで残像を残しながら追いかけてくる自称新聞記者がいて、かなり後ろで遅れてカメラを持った女の子がゼェゼェと息を吐きながら追いかけてくる。

 

すると、目の前の通路の角から白髪で赤い瞳をした中性的なヒョロッとした色白の大体俺と同じくらいの年齢の少年と現在後ろから追いかけている御坂美琴の妹だろうか?頭にアホ毛を生やした幼い少女が出てきた。

 

あ、やばいこれ確実にぶつかる。

 

 

「あぁ?何だぁいきなり騒がしっ・・ぐがああぁぁぁっ!!??」

 

「あーーーっ!一方通行《アクセラレータ》が吹っ飛ばされたーーーーーーっ!!!とミサカはミサカはものすごい勢いで飛んで行った一方通行に驚きながらも実況してみたり!」

 

 

意外と白髪の人の体重が軽かったのか、白髪の人が錐揉み回転をしながら吹っ飛ばされた・・・・・。

すまない・・・本当にすまない・・・・・。後で謝るから今は逃げさせてくれ。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜回想終了

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じにすごいことになっていました。ほんと、最後にあの御坂美琴って女子がコインを電磁砲として打ってきたのはマジでビビった。それをいとも簡単に弾いた白髪の人も驚いたけど・・・。

 

とにかく、昼休みが終わるまでしばらく待機することになった。

 

 

 

 

 

 

そしてすぐに昼休憩(と言う名の混沌とした時間)終了。

 

 

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

 

会場に次々と生徒たちが入ってくる。もちろんその中には天倉の姿もある。

そして、生徒たちを盛り上げようとチアリーダー達の姿も見える。

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ・・・ん?アリャ?』

 

「なーにやったんだ?」

 

実況をしていたプレゼントマイクと相澤もといイレイザーヘッドがとある事に気付く。

チアリーダーの中に見覚えのある者達がいたのだ。しかもイレイザーヘッドが最も知っている者達だった。

 

『どーーしたA組!!?』

 

そう、その者達はA組女子だったのだ。女子全員は上鳴と峰田の策略によりチアリーダーの格好をしていたのだ。

騙された事がショックだったのか女子全員、目が死んでいる。

その中で葉隠がかなりノリノリである。意外とコスプレ好きなのかもしれない。

 

天倉はかなり気まずかったので見て見ぬ振りをし、赤の他人を装った。だが、天倉がA組であることは既に知られているので意味はない。

 

 

しばらくするとプレゼントマイクの実況が再開した。

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション‼︎それが終われば最終種目!!!本来進出チームが4チームだったのに対し!今回は"進出5チーム‼︎総勢20名"からなるトーナメント形式!!!』

 

『一対一のガチバトルだ‼︎』

 

プレゼントマイクはテンションを上げながら最終種目を発表する。しかしテンションが上がっているのはプレゼントマイクだけではない。生徒達もテンションが上がっているのだ。

 

ミッドナイトが箱を持ちながらこれからの事を説明する。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。」

 

ちなみにレクリエーションに関して最終種目に参加する選手は力の温存の為レクリエーションに出るのも出ないのも個人の自由だ。

出ずに精神統一するのもよし。出て緊張を和らげるのもよしだ。

 

「んじゃ、1位チームから順に・・・・。」

 

「あの・・・!すみません。」

 

とミッドナイトがくじを引こうとすると尾白が急に手をあげる。何だ何だと周りの生徒の視線が尾白に集中する。

 

「俺・・・・辞退します。」

 

 

ざわ・・ざわ・・

 

 

と周りがどよめく。それもそのはず一年に一回、高校三年間計三回のチャンスを無駄にしようとしているのだ。それを踏まえて尾白は辞退しようとしているのだ。

 

「チャンスの場だってことはわかってる、それをフイにするなんて愚かな事だってのも・・・・・!」

 

「尾白くん・・・・。」

 

「でもさ!皆が力を出し合い争ってきた座なんだこんな・・・こんな訳わかんないままそこに並ぶなんて・・・・俺は出来ない。」

 

それは尾白の心の奥底からの本心だった。しかしA組の全員の中で納得できる者は多くない。

尾白自身の為に説得し始める者も出てくる。

 

「気にしすぎだよ!本選でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」

 

「そんなん言ったら私だって全然だよ⁉︎」

 

「その通りだよ!尾白くんだってちゃんと成果を出せる実力を持っているんだ!」

 

葉隠、芦戸、天倉の3人が尾白を説得しようとする。

 

「違うんだ・・・俺のプライドの話さ・・・。俺が嫌なんだ。」

 

尾白は自身の目頭を押さえ、身体を震わせる。彼がいったいどのような気持ちなのか理解できる。

 

「それに、天倉。お前を見て、俺は思ったんだ。自身の力で掴み取らなくちゃいけないんだって。対人訓練の時、敵連合が襲撃してきた時もあれはお前が居たからこそなんだ。俺はお前に助けられてばかりだったんだ。

恥ずかしいよ、俺は今まで無力だったんだ。

だからこそ、勝利は俺自身の手で掴み取りたいんだ!」

 

「(・・・・尾白くん、君は・・・・。)」

 

尾白は天倉に自身の葛藤する気持ちをぶちまける。その言葉を受け、天倉の心が揺れ動く。

 

「あと、なんで君らチアの格好をしてるんだ。」

 

『ギクッ!』

 

揺れ動いたのは女子達もだった。

そして、その言葉に呼応されたようにB組の庄田二連撃も辞退した。

コレを了承するかはミッドナイトの采配に委ねられる。

 

結果は・・・・。

 

「そう言う青臭い話はさァ・・・・・好み!!!」

 

OKのようだ。ちなみにミッドナイトは熱血フェチである。

 

『(好みで決めた・・・・・!?)』

 

天倉達がミッドナイトの判断基準に唖然していると、尾白の肩に手が乗せられた。

 

「僕はやるからね。」

 

青山はこの流れだと自分も辞退させられる可能性があると思ったのか、とりあえず先手を打ってきた。

そして、尾白と庄田が辞退してしまった為。次に成績が優秀だった6位の鉄哲チームから鉄哲、塩崎が出ることとなった。

 

 

 

それから数分が経過し合計20名の抽選結果が発表された。

 

 

第1試合 緑谷VS心操

 

第2試合 轟VS瀬呂

 

第3試合 上条VS上鳴

 

第4試合 飯田VS発目

 

第5試合 爆豪VS芦戸

 

第6試合 切島VS鉄哲

 

第7試合 霧雨VS塩崎

 

第8試合 拳藤VS青山

 

第9試合 常闇VS八百万

 

第10試合 天倉VS麗日

 

 

 

※なお、第7〜10試合で勝ち上がった選手は他の選手より試合をする回数が多い可能性もある。

 

 

抽選の結果により、選手達はより一層緊張をする。

 

「心操って確か・・・・。」

 

「よお、あんただよな緑谷出久って。」

 

緑谷の背後に心操が現れる。緑谷が心操に話しかけようとすると、尾白が止めに入る。

 

「心配すんなよ、こんなとこで個性は使わない。使うのはお前《緑谷出久》と戦う時だ。」

 

 

轟が抽選結果を静かに見る。宣戦布告をした相手と戦うのが2回戦からだからだ。

 

「(来いよ、緑谷。この手で倒してやる。)」

 

芦戸と爆豪が対峙する。芦戸はいつもの調子で爆豪に挑戦する。

 

「爆豪ー!例えあんたが相手でも容赦しないよ‼︎」

 

「うっせぇ‼︎こっちの台詞だ!!!」

 

爆豪も相変わらずだった。

 

そして、第10試合の天倉と麗日。

 

「麗日さん。この戦い負けないからね!」

 

と天倉は麗日に宣言するが、麗日は天倉を見たまま硬直している。

 

「・・・・麗日さん?」

 

 

麗日は天倉の実力を知っている。そして、何故だろうか麗日の瞳には天倉ではない何かが映っていた。

 

 

 

 

麗日vision

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 

目の前にいるのは天倉なのだろうか・・・。麗日の目の前には雄英高校の体育着を着ている身長が190㎝以上で筋肉が膨れ上がっており、顔は幼さを残しているが目が完璧に死んでおり靴は脱ぎ捨てており何故か裸足である。

しかし、それ以上に目に付くのが髪の毛である。

それは髪と言うには長すぎた。長く長くそして長すぎた。天高く髪の毛が伸びており先が全く見えない。

 

そして、ソイツは口を開いた。

 

 

 

 

 

「・・・THIS WAY《こっちだ》」

 

 

 

「FOLLOW ME《ついてこい》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒイイイイイイイイイ!!!!????」

 

「⁉︎」

 

麗日の瞳に何か見えてはいけないものが映ってしまった。そしてそのことを知らない天倉は驚いてしまう。

 

 

「どっ、どうしたの⁉︎麗日さん⁉︎」

 

「や、やめてください。"ボ" はだけは"ボ"だけはやめて・・・"最初はrock"って言いながら構えるのはやめてください・・・・・。」

 

「何が見えたあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??どう考えてもヤバイもんが見えてるよ!SAN値直葬だよコレ⁉︎」

 

 

麗日はあまりの錯乱状態に保健室へ運ばれていった。

直ぐに回復したが、麗日は髪の毛が長い筋肉質の人に対してトラウマができてしまった。

 

とにかく初戦の相手がチートじゃなくて良かった。と思う天倉であった。

 

『よーし、それじゃあひとまずトーナメントは置いておいてイッツ束の間、レクリエーション‼︎もちろん全員参加のレクリエーションも用意されてんぞ‼︎』

 

 

『『(あ・・・すっかり忘れていた・・・。)』』

 

 

 

 

さぁ、よからぬこと《レクリエーション》を始めようじゃないか‼︎

 

by天の声

 




とりあえず幽々子様も出して天倉、インデックス、幽々子の大食いトリオを結成してみたい。そんな妄想が脳裏をよぎるのですが・・・・。
と言うか中々良い他作品のキャラが思いつかない。
どなたか出したい他作品キャラの案をプリーーーーズ‼︎

ちなみに現在、アンケートの結果が1が多く2が全く無いという感じです。

感想、アドバイス等があったらください。
評価の方もよろしくお願いします。


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第18話 Wake up 戦う者達

すまない・・・トーナメントはまだだ、本当にすまない。

今週のヒロアカ緑谷VS轟やばかったんですけど。
天倉がもし、あの2人と戦うことになったら・・・・・ヤバイ勝てる気しねぇ。

・・・・・あ、そうだ。天倉をヤバくしよう。

ぶっちゃけ、やるとするなら3期もやって欲しい。



レクリエーションそれは雄英体育祭で疲れた生徒たちを休養や楽しみで癒すための行事の一つである。

と、いってもそう大したものではない。この場合深く考えずに楽しめばOKって感じである。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

雄英体育祭レクリエーション最初の競技は借り物競争。この借り物競争はトーナメントに出場する者は参加してもしなくても、どちらでも大丈夫らしい。

ちなみに俺はウォーミングアップとして借り物競争に参加する。

 

俺を含める参加選手はスタート位置につく。すると、トーナメントに参加する瀬呂くんと拳藤さんがいた。この2人も参加するのか。

 

「よぉ、天倉も参加すんのか。やっぱ体育祭だからな。楽しまないと損するぜ。」

 

「うん、確かにこういう競技で身体を温めておくって手もありだからね。負けないよ。」

 

参加する選手がスタート位置につく。そして、ミッドナイト先生がピストルを鳴らし俺たちは一斉にスタートする。

そして、落ちているカードに書かれた物を借りてゴールするそんな簡単でシンプルな競技だ。

 

「よしっ、猫だな。」

 

「誰かー、カバン持っていませんかー?」

 

<カバンちゃんはここだよー

 

<サーバルちゃんそれ多分ちがうよ

 

なんか変な声が聞こえたような気がするが気のせい気のせい。さてと俺のお題は何かな?

 

俺は拾ったカードの裏面を見るとそこには

 

 

 

【ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲】

 

 

と書かれていた。そして俺は思わずカードを地面に叩きつけてしまった。

 

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ってなんだあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

『おーーっと!天倉どうしたーー⁉︎カードを地面にたたきつけたぞぉ!これはメンコじゃあねぇんだよ!借り物競争だぞ‼︎』

 

知ってるわ!!!それぐらい!っていうかなんだよネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲って!!!なんでアームストロング二回言ったんだよ⁉︎どう考えてもおかしいだろうが‼︎

 

「天倉ァ!頼む!お前の持っているものを貸してくれ〜〜〜っ!」

 

と俺が困惑していると峰田くんが寄ってきた。なんだ?変な物は勘弁してくれと俺が峰田が持っているお題の書かれているカードを見るとそこには

 

 

【背脂】

 

 

と書かれていた。

・・・・・・・・・・・・・なんで背脂?

 

「頼む!お前しか持っているヤツが思いつかなかったんだ、持っているならくれよぉ〜!」

 

いや、なんで背脂なんだよ。俺のよりはマシだけどなんなんだよコレ・・・・・・。まぁ、いいや。

 

「ちょっと待って・・・・・・・・・・・あーーー、【ラード】しか無いけど駄目?」

 

「いや、なんでラードを携帯してんだよ⁉︎何に使おうとしてたんだよ⁉︎まぁ、いいや貰っておくぜ!」

 

うん、まぁ別にいいんだけどさ・・・・・、俺どうすれば良いの?いやマジで。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲なんて知らねぇよ。いったいどういった物なんだよ。

・・・・・・物?

 

あ、そうか!物か!物なら八百万さんがいるじゃないか!

俺は八百万さんの元へ行き、そのネオアームストロ(以下略)を創造させてもらいに行った。

 

「え⁉︎私にですか⁉︎」

 

「うん、お願い。っていうかマジでどう言った物かわからないからさ。お願いだ!"今、頼れるのは八百万さんしかいない"んだ!八百万さんのような"凄い人"にしかできないんだ!」

 

すると、八百万さんは口を押さえ目に涙を浮かべた。

・・・・え?どうしたの?なんで震えているの?なんで泣きそうなの?

 

「(ほ、褒められたーーーーーーーーーっ!!!)」

 

「八百万さんーーーーーーーーっ⁉︎どうしたーーーーーーーーーーーーーー⁉︎」

 

いきなり膝をついてマジでどうした⁉︎俺頼んだだけだよね⁉︎何で泣かれるの!?何で俺が泣かせたようになってんの⁉︎

 

「・・・・・はっ⁉︎お、お待ちくださいすぐに造ります!」

 

と、八百万さんの腹部から大きい筒のような物が出てきた。それはぶっちゃけ言うと大砲だった。

だが、気になるのは大砲の側面の根元あたりに二つの丸い物体が付いていた。

うん、いや・・・・コレ・・・・・どう見ても男の象徴であるアレなんですけど⁉︎

 

 

「いや、なんだよ⁉︎この卑猥な大砲⁉︎どう見ても男のアレなんだけど!!!??何でこうなったんだよ!!!」

 

「天倉さん、知らないのですか⁉︎江戸城の天守閣を吹き飛ばし、江戸を開国させたと言われる決戦兵器を!!!」

 

「いや、知らねぇよ!!!え、何?日本こんな大砲に負けたの⁉︎なんか物凄いショックなんだけど⁉︎いや、さすがに嘘でしょソレ!!!」

 

 

マジであり得ないよ。こんな卑猥な大砲絶対あり得ないよ。マジで訳わかんないやだけど。

八百万さんとやり取りをしていると麗日さんがこちらに寄ってくる。

 

 

「おっ⁉︎コレってネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃん!完成度たけーなオイ。」

 

「えええええええええええええ!!??知ってんの⁉︎麗日さんマジで知ってんのコレ⁉︎嘘だろぉ!!!」

 

 

俺が麗日さんの発言に対して困惑しているとプレゼントマイクが急かすように実況する。

 

 

『おいおい、どうした⁉︎天倉!さっさと走んねぇとビリっけつになっちまうぞ!ってもしかしてアレネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか!完成度たけーなオイ。』

 

嘘 だ ろ

 

え?マジで?もしかしておかしいのって俺なの?俺だけ間違っているの!!??

ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ってマジで実在すんの!!??

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

その後ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を担ぎながら無事にゴール結果は2位だった。

 

ちなみに作って貰ったネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は八百万さんが記念に持ち帰って下さいとキラキラした目で言われたので仕方なく、待合室に置いておいた。

ぶっちゃけて言うと物凄くいらねぇ。

 

 

この後、全員参加のレクリエーションが始まる。全員参加といっても何をするのか全くわからない。

ミッドナイト先生がレクリエーションの内容を発表する。

 

 

『では全員参加のレクリエーションの内容は・・・・・フォークダンスです!!!』

 

フォ、フォークダンスだとぉーーー!?

フォークダンスとは世界各地で踊られる土着の踊りの総称。広義には盆踊りや神楽のような日本の踊りも含まれるが、一般的に日本では外国から紹介された踊りを指すことが多い。

また、キャンプファイヤーとかでもよく使用される

 

まさか思春期絶好調である高校生にこれをやらせるとは・・・・!いや、確かに嬉しい気持ちもあるが物凄く緊張する。緑谷くんを見てみろ。めっちゃガチガチになっているぞ。

しかも轟もクールぶっているが、緊張しているのか?足元が凍っている。

 

ただし、峰田くん、てめーはダメだ。完全にアウトな顔になっているぞ。

 

するとミッドナイト先生が再び口を開く。

 

『と、思ったけどテンション上げるためにやっぱり野球にします!!!!』

 

瞬間、一部の男子たちが

 

 

「「「「ふざけるなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

 

と騒ぎ始めた。峰田くんもがっつり抗議している。いや、まぁ俺的にはどっちでもいいけどさ。

 

と、言うわけで1クラスでそれぞれチームを分けてやる事となった。

ちなみに俺は爆豪くんが率いるチームになった。相手は何故か野球のことに詳しい麗日さんが率いるチームと戦う事となった。

 

 

まずは麗日さんチームからの攻撃。

こちらのキャッチャーは切島くん、そしてピッチャーは爆豪くんだ。

爆豪くんは自身の個性を上手く使い、豪速球を生み出していた。これが本当の爆豪速球ってか?

・・・・・うん、虚しいからやめよう。

 

あ、ちなみに俺のポジションはショートなのだが・・・・。

 

カキン!

 

「っと!」アウト!

 

「っしゃ!」アウト!

 

「・・・・・。」アウト!

 

3アウトチェンジ!

 

いや、爆豪くん打たれ過ぎなんだけどいやね、確かに豪速球が好きなのはわかるよ。うん、わかる。

けどな・・・・・・・。

 

「何でコッチばっかり来るんだよ‼︎滅茶苦茶ヒヤヒヤすんだよ‼︎」

 

「落ち着いて天倉ちゃん。」

 

「その通りだ。焦っている割には全てキャッチしている。このまま攻めに転じるぞ。」

 

蛙吹さんと常闇くんに落ち着かされてなんとか平静に戻る。とにかく次はこちらの番だ。

 

「うおっ、何だコレ⁉︎球筋が読めねぇ‼︎」

 

麗日さんの個性によってボールが無重力状態となり、球筋の読めない魔球と化したのだ。

このまま誰も打てず、チェンジ。そして打たれ再びチェンジという流れが続いた。

 

 

 

すると業を煮やした爆豪はバットを振り回す。すると振り回した影響により、風圧でボールが別の方向へ飛んでしまい、キャッチャーである飯田くんがキャッチし損ねたのだ。

 

振り逃げだ。

 

爆豪くんは爆破によるターボで一塁に走る。だが、ファーストの轟くんが地面を凍らせ、足元を滑らせた爆豪くんはそのまま壁に激突した。

 

・・・・・・あれ?コレもしかして完封されるんじゃね?

 

と言うか次はいよいよ俺の番だった。やべぇ、物凄くプレッシャーがかかってくるんだけど、爆豪くんがジャ○アンのように打てなかったら承知しねぇぞ!という感じで睨んでくるんだけど。

 

とにかく麗日さんのボールを打つ為に振りかぶる。しかし、ストライク。

無理じゃね?と思っていると麗日さんのチームの何人かが挑発してきた。

 

 

「ザマァねぇな!天倉ァ所詮お前はこの程度よ!」

 

「その程度か?天倉。」

 

「どうしたの?本気を出してみなさい・・。」

 

 

挑発って・・・・しかも最後の麗日さん?なのか?目が別人なんですが・・・・・。

仕方ない。トーナメントの時までに温存するつもりだったが・・・。

 

 

 

「ちょっとタイム。」

 

 

 

俺はそう言い、服を脱ぐ。女子の何人かは面白そうにキャーと言っていたが、俺が服の下に着込んでいたサポーターを外すと

ズンッ!という音と共に地面に落ちた。

 

 

瞬間、周りから声が全て途絶えた。そして俺以外の全員は心の中でこう思っているだろう。

 

 

『『(こ、これはもしかして。着けていた重りを外してからのパワーアップというアレか⁉︎)』』

 

と。

 

俺はバットを振り回しながらストレッチを行う。

そして、麗日さんは個性を使った魔球を投げる。たが、俺はバットをバントの位置に固定する。

そしてバットがボールに触れた瞬間。個性を使用し、思いっきりバットをスイングする。

 

 

 

ガギンッ!!

 

 

 

という音が響く。

・・・・・・・・あれ?ボールどこ行った?打った俺が言うのもあれだけどボールを見失った。

そしてやっとの思いでボールが見つかった。ボールはなんと会場の壁にめり込んでいた。

 

とりあえず「どうした?本気を出してやったぞ。」という顔をしておいた。

 

「(・・・流石ね、天倉くん。あなたには驚かされたわ。あなたと私はやっぱり戦う運命なのね・・・・・。)」

 

麗日さんどうしたんだ?なんかコッチをじっと見ているけど?・・・・・・まぁいいか。

 

 

 

 

 

だけど・・・、さっきのパワーなんか強すぎるっていうか、一瞬だけ"個性が制御できなかった"ような・・・・・。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

その後完封されたように見えたこちらのチームは徐々に爆豪の豪速球の球速が上がり、誰も打てなくなる。

そして、葉隠の透明(全裸状態)を生かした盗塁により、じわじわと追い上げ、遂に一点差にまで詰め寄った。

 

そして、9回裏 7-6

アウト2 ストライク2 ボール0

 

しかも麗日の個性の限界・・・容量超過。

すなわちこの一球で勝負が決まる。

 

ピッチャー麗日とバッター天倉2人はしばらく睨み合う。

 

 

「「「「麗日ァ!!頑張れえええええ!!!」」」」

 

「「「「天倉ァ!!!ファイトォ!!!」」」」

 

 

両者を応援する歓声がアリーナ内に響く。しかも、熱い勝負なのか2、3年まで来ている始末だ。

 

「(あと、一球・・・・。天倉くんはきっとホームランを狙ってくる。轟くん《ファースト》の小細工もきっと天倉くんには通用しない・・・・。同点にされたら守りきれない。)」

 

「(息切れを起こしている・・・・・。体力の限界か・・・・・ならばここで全身全霊をかけて打つ!)」

 

麗日は口端が吊り上げる、いや自然と表情が緩んだのだ。泣いても笑ってもこれが最後の一球となる。

 

「(どうやら私の負けね・・・・・。だったら最後くらい個性《小細工》なしで。)」

 

 

麗日の手からボールが投げられる。そしてそのボールは吸い込まれるようにバットの中心へと行き

 

 

 

キィン!!!

 

 

 

ボールは青空高く飛んだ。

どこまでも、高く高く鳥のように飛んで行った。麗日は全力を尽くした。天倉もそうだ。

 

 

「(いい音だ・・。いつの間にか見失っていた"個性"を使った化かし合いじゃなくて、私が好きだったのはこういう野球だったんだよな・・・・・・・・。)」

 

 

麗日の表情には先程の真剣な顔が嘘のように、あの青空のように澄んだような笑顔が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーーーーッ!パシッ!

↑テープの音。

 

「ナイス麗日!最後打たせるたァ考えたな‼︎」

 

と、瀬呂があっさりとボールを個性を使いキャッチした。

 

結果

 

7-6 麗日チーム WIN

 

 

麗日チームのメンバーは麗日を胴上げし始める。

 

「さすが麗日監督‼︎全員の個性を生かし切るとは‼︎」

 

「策士!!!」

 

「1-Aの魔女‼︎」

 

麗日チームは勝利に喜び、麗日を褒め称える。そして爆豪チームはというと、天倉を囲み激励していた。

 

「惜しかったなー!!!」

 

「あのパワーどっから出たんだよ⁉︎」

 

「次やるときはぜってーに勝て。」

 

しかも、このプレーに感動したのか爆豪も天倉を励ましている。そして天倉は胴上げされている麗日を見ている。

 

「(麗日さん、今回は負けたよ。だけどトーナメントでは絶対に負けない!次こそ、絶対に勝つ!)」

 

当の麗日本人はというと。

 

「(えっ・・・・えっ⁉︎何これ!すっごいモヤモヤするぅーーーっ!!)」

 

何故か納得しない終わり方にモヤモヤしていた。

 

それと同時にレクリエーション《前座》が終わり、最終種目を迎える。

これから始まるのは己の意思に従いぶつかり合う者達の争い。

 

 

 

Wake up 戦う者達

 

 




よーし、ギャグでやりたい事やり終わったんで
次からガチで行きますか・・・・。
あと、番外編もやってみたいなぁ。

アドバイス、感想等がありましたらください。
評価の方もよろしくおねがいします。


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第19話 戦わなければ生き残れない

最近の仮面ライダーがヤバイ。エグゼイドは映画がめちゃくちゃ楽しみだし、アマゾンズでは千翼のオリジナル態がやばかった。

オリジナル態すげぇ怖い。
今更ですがアマゾンズを見る際にグロに耐性の無い方の視聴はオススメできません。



会場内通路に1人全身を包帯に包まれた男が歩いていた。

彼の名は相澤消太。1年A組の担任教師であり、抹消ヒーロー【イレイザーヘッド】だ。そんなイレイザーヘッドの後ろに1人の男が現れる。その男はイレイザーヘッドに声をかける。

 

「よぉ、イレイザー。久しぶりだな。」

 

するとイレイザーヘッドもとい相澤の表情は包帯グルグル巻きでわからないが、不機嫌そうなのが理解できる。

 

「なんすか、大河さん。ココは学校関係者以外立ち入り禁止ですよ。」

 

「まぁまぁ、細かいことは気にすんなって。見ないうちにヒーローからミイラ男にでもなっちまったのか?」

 

話しかけてきたのは天倉大河、天倉孫治郎の実の父親である。イレイザーヘッドは一時期、ヒーロー時代の天倉大河の相棒《サイドキック》として活躍した事がある。

 

しかしイレイザーヘッドにとって天倉大河は苦手な人である。ヒーロー活動中に飯を買いに行かせられる、作戦通りに行動しない。

イレイザーヘッドのように効率的に全然動かない。むしろ非効率的だ。

 

「で、何の用ですか?これから1回戦が始まるんでさっさと行かないと行けないんですけど・・・・・・息子さんのことですか?」

 

「そうそう!わかってんじゃんイレイザー。孫治郎はぶっちゃけどうだ?やっぱ俺と似てて優秀でモテたりしてる?」

 

イレイザーヘッドは更に不機嫌になる。

マジでどうやったらこの馬鹿《天倉大河》からアレ《天倉孫治郎》ができるんだ?と。

天倉孫治郎は大河と比べて真面目な部分がある。しかし父親譲りなのか面倒ごとを持ち込んでくる所もある。

 

「まっ、あなたと違って真面目ですよ。モテてるかどうかは知りませんが。」

 

とりあえず天倉大河に対して皮肉を言う。こうでもしないとストレスが溜まる。

本当に何しに来た。頼むから早く帰ってくれ。というか家に帰って奥さんに顔でも見せに行け。

とイレイザーヘッドは言いたかった。

 

「でも、まぁ。敵連合が襲撃して来た時、あいつが助けてくれましたね。あなたと同じく。」

 

そして、ムカつくと同時にこの人は憎めないのだ。

矛盾しているが、わからない。きっとソレがこの人の才能、人を惹きつける才能なのだろう。

 

 

「そっか・・・・・・・・・・イレイザー、悪いが孫治郎のこと頼んで良いか?俺がココ《日本》に戻ったのはある情報を掴んだからだ。」

 

「・・・・ある情報?」

 

天倉大河の先程までヘラヘラしていた面構えが変わった。その顔は人を、世を守る為の顔。ヒーローとしての顔だ。

大河は話を続ける。

 

「ああ、敵連合と何か関係があるかも知れねぇ。もしかするとヤツら《敵連合》のバックの正体もだ。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「それでだ。孫治郎は精神としてはまだまだって所だ。そんな孫治郎がこの雄英体育祭に出ている。アイツにはとんでもないプレッシャーがかかっている筈だ。

・・・・もしかしたらこのトーナメントでヤバイ事が起きるかも知れない。」

 

天倉大河は孫治郎の、息子の側にいつもいる事が出来ないことに悔やんでいる。だが、そんな表情は出さない。出しても何か出来る訳でもない。

そして、天倉大河はイレイザーヘッドに・・・相澤消太に親として頼んだ。

 

「頼む孫治郎を支えてやってくれ。アイツの自身の力の危険性によって人を傷付ける恐怖が、精神的外傷《トラウマ》が再発すればあいつは確実に壊れるかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

『ヘイガイズ!アゥユゥレディ⁉︎色々やってきましたが‼︎結局これだぜガチンコ勝負‼︎頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな‼︎』

 

プレゼントマイクはいつも以上にテンションを上げる。それもそのはず、これが最終種目であると同時にその第一回戦第一試合であるからだ。

観客も楽しみにしている。ならばこちらも全力で応えよう。それがプレゼントマイクのやるべき事だからだ。

 

『心技体に知恵知識!!!総動員して駆け上がれ!!1回戦!!!』

 

対をなす様に2人の生徒がステージに上がってくる。

1人は緑色で癖のついた髪をし、緊張しているのがすぐわかる様な顔をしている生徒、緑谷出久。

 

『成績の割に何だその顔。ヒーロー科 緑谷出久!!』

 

『対《バーサス》!!!』

 

もう1人は紫色の逆立った髪型で、目の下に隈があるのが特徴的な生徒、心操人使。

 

『ごめん、まだ目立つ活躍なし!普通科 心操人使!!』

 

お互いはそれぞれの思いを胸に秘める。

 

1人は憧れた人物の様になる為。

1人は憧れた人物の横に並ぶ為。

 

2人は激突する。さぁ、戦いだ。

 

このトーナメントでのルールは相手を場外に落とす。行動不能にする。相手を降参させる。などが勝利条件となる。

この戦いではある程度の怪我はリカバリーガールが治癒してくれる為道徳理論は捨てておく。

だが、あくまでヒーローは敵の戦意喪失が目的である為殺すのは御法度だ。

 

『そんじゃ、早速始めよか!』

 

すると、急に心操が口を開いた。

 

「成る程な・・・・。わかりやすくて良いじゃないか。だがな緑谷出久わかるか?これは心の強さを問われる戦いだ。強く思う将来《ビジョン》があるならなり振り構ってちゃダメなんだ。」

 

緑谷を誘導する様に、自分自身に言い聞かせる様に呟く。

 

「あの猿はプライドかどうとか言っていたけど。」

 

『レデイイィィィィィィィィィィ!!!』

 

心操は罠《挑発》を仕掛ける。上に上がる為、どんな手を使っても勝たせてもらう。

 

「チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?」

 

「・・・・・・っ!!!」

 

緑谷はこの言葉に勿論反応する。いや、反応してしまった。そして緑谷の足は心操に向かって動き出す。

 

『START《スタート》!!!』

 

「なんてことを言うんだ!!」

 

緑谷は答えてしまった。心操の問いに・・・。

心操は不敵な笑みを浮かべる。緑谷は心操の罠にまんまと掛かってしまったのだ。

 

「俺の勝ちだ。」

 

 

『オイオイどうした大事な初戦だ!盛り上げてくれよ⁉︎緑谷開始早々ーー完全停止⁉︎』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「デクくん・・・!」

 

「何だアレは⁉︎いったい緑谷くんに何が起こった⁉︎」

 

A組の生徒は戸惑うばかりだった。あの緑谷がいきなり完全停止するなんて普通ではないからだ。

 

「(デクの野郎・・・・あいつの個性は拘束系か・・・・いや、何か動く素振りを見せなかった。だとすると考えられるのは。)」

 

爆豪も勿論、緑谷と相手を1:9の割合で分析していた。仮にもあの緑谷が普通科の生徒を相手にああなるのは個性によるものだろうと考えていた。

 

「(あいつ、デクに話しかけてやがったな・・・・そしてデクが返事した瞬間に・・・・・洗脳か?)」

 

爆豪はすぐに心操の個性を推測する。勿論、緑谷を心配していると言う訳では無い。あらゆる生徒の個性を把握しておいた方が、もし戦う際に有利に事を進められるようにする為だ。

決して緑谷が心配している訳では無い。

 

すると天倉が口を開く。

 

「心操くんの個性は洗脳。呼びかけに応じることによってスイッチが入り、相手を洗脳することができる。いわゆる初見殺し、対策を取ることができればなんとかなるけど、緑谷くんは・・・・・。」

 

「なっ⁉︎洗脳だと!それでは緑谷くんはもう何も出来ないじゃないか!!!」

 

そう。緑谷は心操の問いに応え、そして洗脳されてしまった。今の緑谷に出来ることはないだろう。

せめて奇跡でも起これば洗脳が解けるかもしれない。しかし、そう都合良く奇跡は起こりはしない。

 

 

「緑谷くん!こうなったら自身を呼びかけるんだ!こうやって!・・・・・・ウハ、ウハハハ・・・やめてくれ、照れるじゃないか・・・。」

 

「「「(うわっ・・・・・。)」」」

 

飯田の案に耳郎は勿論周りのA組の生徒はドン引きする。それが効くのは飯田だけだろう・・・いや八百万も、もしかしたら・・・。

 

と麗日は気付く。天倉が先程の発言をしてから試合を観たまま黙っているのだ。

 

「(あれ・・・・?いつもの天倉くんならこう・・『何やってんの⁉︎』ってツッコミを入れる筈なのに・・・。)」

 

天倉は既にクラスの全員から基本的にツッコミに回る便利なキャラと認知されているのだが、天倉は飯田の発言をスルーして試合を観続けているのだ。

 

「・・・・・・・。」

 

天倉はいったいこの試合をどう思っているのか。その思いをクラスの皆は知る由も無い。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「(ダメだ!体が勝手に‼︎頭が・・モヤがかかったみたいに・・ダメだ・・・。)」

 

緑谷は心操の個性によって「場外まで歩いていけ」という命令をされ、緑谷の意思と関係無く足が勝手に動く。

 

このままだと緑谷敗北は時間の問題だろう。

 

「(ちくしょう!止まれ‼︎止まれって‼︎折角・・・折角、尾白くんが忠告してくれたのに!くそう!!)」

 

緑谷は後悔した。こんな呆気なく、こんな簡単に負けるなんて、尾白や麗日、発目、常闇、から託された筈なのに。

もっと冷静になっていればコレ《洗脳》に掛からなかった筈なのに。

 

「(ぐ・・衝撃さえ加われば・・!ちくしょう!こんな‼︎呆気なく‼︎皆‼︎託してくれたのに‼︎こんな・・・ところでーーーー)」

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァーーーーーーーーー

 

 

 

 

「!?」

 

 

何かが見えた

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

心操は困惑していた。自身の個性は洗脳した相手にちょっとの衝撃さえ加わればすぐに解けてしまう。しかし、衝撃さえ加わらなければ相手は絶対服従、相手がその命令を無視することは無い。

 

「お前・・・・何をした・・・・。」

 

こんなことは初めてだった。洗脳されている筈の緑谷が今、動けているのだ。

 

緑谷は先程、自身の個性を暴発させ自身にダメージを与えることによって洗脳を無理矢理解いたのだ。

 

「(何だったんだ、さっきのは。人・・・この力を紡いてきた人の・・・・気配・・!?)」

 

緑谷もまた困惑していた。自身の体が動いたこと、そして先程見えた謎の人の影の様なもの、それが何なのかわからなかった。

 

そして、いち早く正気に戻った心操はもう一度口を開かせるために緑谷を挑発する。

 

緑谷も心操が挑発して来ると同時に心操に歩み寄る。

 

 

「指を動かすだけでそんな威力か、羨ましいよ!」

 

「(僕もソレ、昔思ってた。)」

 

「俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。恵まれた人間にはわかんないだろ。」

 

「(わかるよ、でも・・・そうだ。僕は恵まれた。)」

 

「誂え向きの個性に生まれて望む場所へ行ける奴らにはよ!!」

 

「(人に恵まれた!!!)」

 

 

心操は無意識の内に自身の秘められた思いをぶちまける。緑谷もその言葉に共感するが、緑谷は退く気配がない。

お互いの夢は同じ。その為には相手を蹴落とさなければならない時もあるのだ。

 

「(だからこそ!僕だって!)」

 

「っ!なんか言えよ!!!」

 

お互い、相手に組みつく。そして僅かだが、緑谷の方が押している。緑谷と心操を比べると身体能力的に緑谷の方が上だ。

 

「ざけんな!負けられるか!!」

 

だが、心操は緑谷の左手を掴み押し出す。

 

「〜〜〜〜〜っ!!!」

 

緑谷の左指に激痛が走る。痛みのせいで緑谷から一瞬力が抜ける。心操はそれを見逃さない。

 

「俺は勝ってあいつと並ぶ!!!」

 

心操は叫びながら緑谷を押し出す。そして、ステージの端までに押していく。

しかし緑谷は足を軸にし、体を回転させるように避ける。

 

「こっちだって・・・!」

 

「(!しまった、個性が!)」

 

緑谷が口を開きながら心操の腕を掴む。心操は先程まで集中し過ぎた所為か個性を使うのを忘れていたのだ。

 

緑谷はカウンターの要領で心操をステージ外に投げ飛ばす。

 

「負けられないんだ!!!」

 

心操はステージ外の床に叩きつけられる。心操の身体に強い衝撃が伝わる。

 

「がっ・・・・く・・・・そ・・・。」

 

 

心操の敗因は最後の場面で個性を使わず、ステージ外に押し出そうとしたからだ。

もし最後の方で個性を使っていれば勝てた可能性もあった。

 

心操はA組の観客生を見つめ、自分の友人の姿を見つけようとする。

だが、そこには探している友人の姿は無かった。

 

 

「(ははは・・・・あいつ・・・見てないのかよ・・・・・。)」

 

 

『心操くん場外!!緑谷くん二回戦進出!!』

 

 

「(まぁ、いいか・・・こんな無様なところ・・・・・見られたくもないし。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

トーナメント1回戦第1試合である緑谷と心操の戦いは評価された。特に普通科でありながら強力な個性を持つ心操はプロのヒーロー達にも評価されている。

注目度で言うならば緑谷以上だった。心操はクラスメイト達にも評価された。

 

心操は嬉しかった。こんな自分でもヒーローになれる素質があると言うことを。

心操が会場内に戻るとそこには見知った顔の人物がいた。

 

「お疲れ、心操くん。」

 

「!天倉・・・・いつからそこに・・・。」

 

天倉は心操を待つように立っていた。しかし、普通ならば緑谷の方を応援する筈なのに何故この場にいるのだろうか。と心操は不思議に思った。

 

「まぁ、なんて言うか・・・・・観客席からじゃなくて友達の試合はさもっと近くで見たかったから・・・・あーーー駄目だった?」

 

「 」

 

心操は言葉を失った。こいつは本当に馬鹿だ。だが、何故だろう不思議と笑みがこぼれる。

 

「・・・駄目に決まってんだろ。次からちゃんと観客席で見ろよ。」

 

「あちゃぁ、駄目かー。・・・・・・?心操くん、もしかして笑っている?」

 

「別に。・・・天倉、言っておく。俺はまだヒーロー科にはならない。だがな、しっかり実力をつけて、お前ら《ヒーロー科》を倒せるようになってからだ。そんでもって!俺はお前を超える!必ず、お前以上のヒーローになってみせる!!!」

 

心操は天倉に向かって言った。その気迫に天倉は後ずさりする。

 

「あーーーーーー・・・・・うん!楽しみにしている!!」

 

「・・・・相変わらずかよ。」

 

心操は天倉の返事を聞いて安心する。心操は天倉の横を通り過ぎ、普通科の観客席に戻る。

 

そして

 

「(もし、お前と会うのがちょっと早ければヒーロー科になれたのかな・・・・・・。)」

 

心の中でひっそりと思った。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「天倉くん!何処へ行っていたんだ⁉︎もうすぐ始まるぞ!」

 

「ごめん、ちょっと色々あってさ!」

 

天倉は飯田に言われながら空いている席に座る。

 

「緑谷くん、おめでとう!ところで次は誰と誰だっけ?」

 

「ありがとう。次は轟くんと瀬呂くんだよ。」

 

天倉と緑谷が会話しているとちょうど、ステージに轟と瀬呂が上がってくる。

観客は優勝候補である轟に興奮する。瀬呂は・・・・・まぁ、うん。

観客は盛り上がり、会場は熱気に包まれる。

 

しかし

 

「・・・・何だ?」

 

天倉は嫌な気分になっていた。何故かはわからない。ただ、あの2人・・・・いや、轟を見ていると嫌な感じが伝わってくるのだ。

 

 

「(轟くん・・・・どうしたんだ?なんて言うか、嫌な気配がビンビン伝わってくる?・・・・・・え?何これ俺ニュータイプに目覚めちゃったの?)」

 

と天倉が考えているとすぐに試合が始まる。

 

 

『 S T A R T !!! 』

 

 

瞬間、瀬呂はテープを伸ばし一瞬で轟を捕縛する。不意打ちによる場外狙いだ。

 

 

『場外狙いの早技!この選択はコレ最善じゃねぇか⁉︎正直やっちまえ瀬呂ーーーーーー!!!』

 

「おい、実況。真面目にやれよ!」

 

と天倉がツッコミを入れる。このツッコミにその場の全員は

 

「「「(あ・・なんか落ち着く。)」」」

 

と何故か安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪りぃな。」

 

 

瞬間、会場に巨大な氷の壁が生まれた。天倉達の目の前にはただ氷の壁しか見えない程に大きなものだった。

 

『ど・・・どんまい。』

 

『どんまーーい。』

 

『どーーんまい。』

 

あまりにも強すぎる轟と当たってしまった不憫な瀬呂に対して観客からどんまいコールが送られる。

 

「寒っ⁉︎強すぎんだろ⁉︎」

 

「同じ推薦枠でここまでの・・・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「戦闘訓練で天倉がこんなヤツと張り合ったのか・・・。」

 

A組の生徒達がそれぞれ感想を述べる。しかし天倉は緑谷と心操の時と同じく黙ったままだった。

 

「アレ?・・・・・天倉がまた黙っている?」

 

「・・・・・・いや、なんかおかしくないか?」

 

A組の面々は天倉の様子をおかしく思う。すると何人かが気付いた。

 

 

あ、コレさっきの氷結の巻き添え食らって顔面が凍ってやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬかと思った・・・・・・。」

 

天倉は凍ってしまった顔面を無理矢理爆豪の爆破によって溶かすことに成功する。

しかし今度は爆破による火傷で悲惨な目に遭っていた。

 

ちなみに現在は第6試合まで進んでしまっている。

 

 

今までの結果は

 

第3試合上条VS上鳴

 

上鳴が最初から無差別放電を全開で攻撃するが、上条の右手によって電撃が消される。

脳がショートしている間に上条の容赦の無い右ストレートがモロに入り、1発KOで上条が2回戦に進出する。

 

 

第4試合 飯田VS発目

 

飯田が上手いこと発目に乗せられてしまい自身の発明品をサポート会社に宣伝することになってしまった。

その後発目は思い残すことが無いかのように自分から場外へ行き飯田の勝利となった。

 

 

第5試合 爆豪VS芦戸

 

芦戸の酸による攻撃は爆豪の爆破によって掻き消され、芦戸は爆豪に背後を取られ降参。

爆豪が封殺に近い形で勝利を収めた。

 

 

そして、現在の第6試合・・。

 

 

「うおっりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!」

 

「ぬおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

切島VS鉄哲

単純な殴り合いが続く。何発も何発もお互いの拳がぶつかる。

そして、勝利したのは

 

「だあああああああああっしゃああぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁ!!!」

 

『勝者!切島くん!!』

 

切島のクロスカウンターにより勝敗は決した。まるでひと昔の熱血漫画のような展開になっており

 

「いい戦いだった。」

 

「ふっ・・・・負けたぜ・・。」

 

似た個性同士拳を交えて友情が芽生えていた。ミッドナイトはこの様子にご満悦。

ちなみにミッドナイトは熱血フェチであり、戦闘訓練の日の緑谷と爆豪のやり取りを録画していたりする。

 

 

「・・・そろそろ私、控え室に行ってくる。」

 

と麗日が観客席を後にする。天倉はこの後始まる霧雨と塩崎の戦いを見ることにするようだ。

天倉は麗日が行くのを見て

 

「・・・そっか、麗日さんとか・・・・。」

 

これから友人と戦う事を改めて実感した。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

選手控え室 2

 

そこには麗日お茶子が自身を落ち着かせていた。即ち精神統一だ。そこに一人の生徒がやってくる。麗日の友人の一人でもある飯田だ。

 

「お、うらら・・・・かじゃないな!?シワシワだぞ眉間‼︎」

 

「あーーちょっとね。緊張がね眉間に来てたね。」

 

麗日はこれから天倉と戦うことに緊張していたのだ。大勢の観客が見ている中で戦う。それはとてつもないプレッシャーが掛かるだろう。

 

「天倉くんは強敵だな。個性を使った状態での身体能力はA組の中でもトップクラスだ。しかも敵連合の時もとてつもない実力を発揮した。」

 

「うん、それもそうだけど飯田くんのアレを見ててね・・・。」

 

と麗日が言いかけた時、控え室の扉が開き

 

「麗日さん!!」

 

と緑谷が入ってくる。片手には常にヒーローを分析する為のノートを持っている。

 

「デクくん!アレ?皆の試合は見なくていいの?大体短期決戦で試合が終わっててこれから常闇くんと八百万さんが始まるところだよ。」

 

と緑谷はもうすぐで麗日の出番が来る事を伝えに来たのだ。そして今までの試合の結果を言う。

 

「第7試合では普通科の人の霧雨さんがB組の塩崎さんに星型の弾幕で目眩し、怯んだところを一気に場外へ押し出し!

そしてB組の拳藤さんと青山くんの戦いでは、距離を詰められてからの巨大な手からくりだされる張り手で1発KOだったよ。」

 

「それじゃあ、もうすぐで・・・。」

 

もうすぐで麗日と天倉の戦いが始まる。この場の3人は複雑な心境だろう。

 

「しかし天倉くんは個性の有無関係無しに強敵だ。下手をすれば爆豪くん以上に厄介だぞ⁉︎」

 

「うん、その通りだ。天倉くんもヒーローになる為にここまで来たんだ。きっと手加減なんて考えていない。僕は麗日さんにたくさん助けられた、だから。」

 

と緑谷は持って来たノートを麗日に差し出し、とあるページを開く。

 

「少しでも助けになればと思って麗日さんの個性で天倉くんに対抗する策、付け焼き刃だけど・・・考えて来た!」

 

「・・・・ありがとうデクくん。・・・でも、いい。」

 

「「え?」」

 

 

麗日は緑谷と飯田の姿を見て自身の実力でここまで来た事を実感していた。そして騎馬戦のとき、麗日は緑谷に頼ろうとしてしまい、飯田の挑戦する姿を見て恥ずかしくなってしまったのだ。

 

そして学んだ。この場にいる全員はライバルなのだと。爆豪が天倉に対して、轟が緑谷に対して宣戦布告していたように。全員が挑戦しているのだと。思い知ったのだ。

 

だからこそ麗日は感謝の意を込めて2人にこう言うのだ。

 

 

「決勝で会おうぜ!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

第9試合は常闇の完封に近い勝利に終わった。そしていよいよ一回戦最後の試合でもある第10試合が始まろうとしている。

 

二つの足音がステージに近づく。

 

『第1回戦最後の第10試合!!癒し系女子、俺こっち応援したい!ヒーロー科麗日お茶子!』

 

『VS!!』

 

『ヒーロー科のご意見番にしてツッコミ担当!情け無用の男!地獄からの使者!ヒーロー科天倉孫治郎!』

 

 

「おいっ!!その紹介完全に俺をツッコミさせたいだけじゃねーか!!ダーマッじゃないんだよ!もっとまともな紹介しろよ!!!」

 

天倉はプレゼントマイクにおもちゃのように遊ばれている。そんな様子を見てA組は

 

「「「「(ものすごく落ち着く。)」」」」

 

いつもと変わらない様子の天倉で安心していた。

天倉はプレゼントマイクにいじられ要員として認識されている為、場を和ませる為に利用されているらしい。

 

「・・・・・。」

 

しかし麗日はそんな天倉の様子をよく見るとわかる。

今、天倉は極限状態なのだ。

膝がガクガクと震えている。きっと天倉はこの場からすぐに逃げ出したい程のプレッシャーを感じているのだろうと麗日は理解する。

 

「天倉くん。」

 

「・・・・・何?」

 

「・・・・負けないよ!」

 

『第10試合 S T A R T !!! 』

 

麗日は走り出す。そして、天倉は麗日を迎え撃つような形で構える。2人は友達だが、雄英体育祭はお互い敵同士。

 

複雑な心境の中、お互いの夢の為に。ヒーローになる為に戦うのだ。

 

ヒーローになる為には例え友人だとしても蹴落とさなければならない時もある。

もう、戦いは始まっている。

 

 

 

 

戦わなければ生き残れない。

 




どうすれば良いんだろうか?アマゾンズで千翼のオリジナル態に感化されたので
この小説にも天倉くん用にオリジナルフォームを出したい。
でも出して良いのか悪いのか・・・・・。

どうすれば良いのでしょうか?

アドバイス、感想等があればください。
評価の方もよろしくお願いします。


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第20話 目覚めよ内なる力

天倉 孫治郎は野生的直感、感受性が強い。その為周囲の感情を読み取ってしまい、ダイレクトに感情が伝わってしまう。

もし、短時間で大量の負の感情を受けてしまったら・・・・・。



 

観客たちの声援が響き渡る。

対峙するのは麗日お茶子と天倉孫治郎同じクラスメイトであるA組の皆はこれから始まる戦いに息を飲む。麗日はおっとりした雰囲気は無く、天倉はやや緊張しているのか深呼吸をしている。

 

 

「いよいよね。良くも悪くもドキドキする戦いが起きそうだわ。」

 

「私あんまり見たく無い・・・・。」

 

蛙吹と耳郎は麗日があの天倉にやられるのではないかと思っている。それもそのはず、天倉は敵との戦闘経験もあり、個性を使った時の天倉はまさに野獣と言っていいほどの凶暴さを持っているからだ。

 

すると峰田は天倉を応援し始めた。騎馬戦の時恨んでいたのに何故だろうとA組の全員が思っていると

 

 

「天倉ァやっちまえ!!格闘ゲームみたいに服が破れる感じでいけえええええええ!!!」

 

「クソかよ。」

 

この始末。

やはり峰田は峰田だった。いや、峰田らしいので安心はした。

すると飯田が緑谷に控え室の時に関する事を話し始めた。

 

「緑谷くん。先程言っていた天倉くん対策とは何だったんだい?」

 

そう、緑谷が麗日の為に立てた策の事だ。付け焼き刃と言っていたが緑谷のような着眼点の強い人間が立てた策に飯田は興味が湧いたのだ。

 

 

「・・・・・・・・・。」スス・・・

↑こっそりと緑谷の立てた策を盗み聞きしようとしているかっちゃん

 

 

「ん!たいした事じゃないんだけどさ。」

 

飯田の質問に緑谷は答え、その内容を伝える。

 

 

「天倉くんの戦い方は速攻で相手の弱点を突く一撃必殺の戦い方なんだ。だけど、天倉くんにはもう一つ戦闘スタイルがあるんだ。」

 

「(成る程な。)」

 

緑谷は 今日までの天倉をヒーローノート【将来の為のヒーロー分析no.13】に纏めていたのだ。

 

ちなみに今日追加されたのは

 

・天倉くんのアームロックやばい。

 

である。

緑谷は天倉について分析した事を話し続ける。

そして爆豪もこっそりと聞き続ける。

 

 

「カウンター、天倉くんは燃費の悪い個性を使わずに体術で戦う守りの戦法も持っているんだ。自身からは仕掛けずに相手を無力化させる。

言っちゃうと、かっちゃんよりも厄介な相手だ。」

 

緑谷は纏めた事を飯田に言う。すると爆豪はいきなり席を立つ。

 

 

 

「んなわけねーわ!俺の方が強いわボケ!!カス!!!」

 

 

「「!?」」

 

 

「・・・・・なんでもねぇ。」

 

 

爆豪は再び座り始める。

 

 

「と、とにかく。麗日さんの個性で天倉くんを浮かせることができれば戦いを有利に進めることが出来る!」

 

「成る程、確かに天倉くんは個性も含めて強敵だが、それはあくまで地上戦限定だ。空中戦に持っていけば麗日くんの勝率が上がるということか!」

 

2人は先程の事をなかったかのようにして話を続ける。

しかし緑谷が考えた策には一つ問題があったのだ。その問題はこれから分かる。

 

そして、

 

 

『 S T A R T !!! 』

 

 

戦いのゴングが鳴る。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

最初に動いたのは麗日だった。

麗日は低姿勢で腕を突き出すような独特な走り方を見せる。

 

逆に天倉は右手を突き出し左手を胸の前に置く。手に力を入れず麗日を迎え撃つ様な構えをしている。

 

「(個性で浮かせないと有利に戦えない。速攻で触れないと)ここで!」

 

麗日は無防備であろう腹部に触れようとする。

が、

 

「!?」

 

『おぉーーーーーっとこれは!!!』

 

天倉は突き出してきた麗日の手首を片方の手で掴み、もう片方の手を相手の肘の下に通す。

天倉が得意とする、難易度の高い関節技

 

『アームロックだーーーーーっ‼︎いきなり伝家の宝刀って最初からクライマックスじゃねぇか!!!』

 

『どう言う意味だよそれ。』

 

天倉は麗日にアームロックをかけギブアップをさせようとしているのだろう。

天倉はそのまま麗日の腕を捻ろうと・・・・

 

「!!」

 

『あ、あれ?オイ!』

 

しなかった。

天倉は急に掴んでいた手を離したのだ。

 

これは観客だけで無く生徒たちも困惑していた。もちろんA組の皆もだ。

 

「緑谷くん?天倉くんはどうして関節技を?」

 

「・・・予想があっているのなら・・・・・・・。」

 

緑谷は何かブツブツ呟いているが観客達の声によって飯田は聞き取ることができなかった。

 

 

「もういっちょ!」

 

「っ!」

 

麗日はまた天倉を触れようと手を突き出すが、天倉は突き出された手をギリギリでかわす。

そして麗日の背後に回るすると

 

ガシィッ!

 

「え?・・・・えぇーーー⁉︎」

 

『いきなりどうした天倉ァ!!腰に組みついたぞ!しかも女子の!』

 

 

すると天倉は麗日の腰に手を回したのだ。さすがの麗日もこれには驚いた。

 

「あ、天倉!?」

 

「まさか峰田と同じ思考に・・・!」

 

生徒の中に天倉の行動に誤解する者達が出てくる。そしてそれを見た峰田は

 

 

「(天倉のヤツ!けしかr羨ましい!!あ、そうだ。後でなんか技を教えてもらおう。)」

 

 

相変わらずだった。

しかし、その後の行動によって天倉が何をしようとしているか理解したのだ。

 

天倉は麗日を持ち上げブリッジの様に背を反り始めたのだ。

 

『こ、これはまさか!ジャーマンスープクレッス⁉︎いや、確かに道徳理論は捨てて置けって言ったけどそこまでするか⁉︎』

 

ジャーマンスープクレッス

 

それは相手の背後から腰に腕をまわしクラッチ(手と手を組むこと)をしてからブリッジの要領で相手を真後ろに反り投げる技である。

全身の筋力もさることながら肉体の柔軟性も必要な高難易度の技である。

 

しかしこの投げ技は、頭骨や首、頚椎、肩に背中と、体の多くの部位に大きな衝撃を与える危険な技であり、しかも床はコンクリートで出来ている為、麗日がこの技を食らってしまったら確実に不味い。

 

天倉は1発で決める気なのだろう。

 

「っ!」

 

『あっ、ちょっと!オイ!』

 

しかしまた天倉は途中で技を中断した。天倉はバックステップで麗日と距離を取る。

麗日は距離を取った天倉に再び接近する。

 

今度は連続で両手を交互に突き出す。天倉は距離を保ちつつその攻撃を回避する。

 

そして天倉は麗日の突き出された両手首を掴み、そのまま手首を締め上げる。

 

「ぐうっ!!」

 

「貰った!」

 

『おおっ!!地味だけどやっと反撃したよ!中途半端はやめてくれよな!!』

 

天倉は麗日の個性の元である手を無力化させようと カウンターで手首を狙ったのだ。

天倉は更に力を入れ、麗日の顔に苦痛の表情が浮かぶ。

 

 

 

「ちょ、ちょっと⁉︎天倉やり過ぎじゃない?麗日やばいって!」

 

「天倉・・・まさかそっちの趣味が・・・⁉︎」

 

「そうね、天倉ちゃんって個性把握テストの握力で∞《測定不能》をだしているのよね。

確かこの前、本人に素の握力を聞いたら【76kg】って言ってたけど・・・・。」

 

「「「76kg!!??」」」

 

 

その場の全員は天倉の個性無しの握力の結果を聞き、驚く。爆豪も少しだけ動揺した。

 

「なんでそんな鍛えてんだよ⁉︎」

 

「リンゴを握り潰したいからだそうよ。」

 

「「「理由がしょうもない!!??」」」

 

A組はしょうもない理由で鍛えた握力に呆れながらもその凶悪さを知る。

そしてその握力から繰り出される締め上げの威力は麗日の苦痛の表情で分かる。

 

天倉はそのまま麗日を場外へ投げ飛ばそうとする。

 

 

「っ!負けるかああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

麗日は天倉の顔面に頭突きをかます。天倉は不意な攻撃によって怯む。

更に追い打ちと言わんばかりに腹部に蹴りを入れる。すると天倉は掴んでいた麗日の両手首を離してしまう。

 

「っ!?っぐうっ⁉︎〜〜〜〜〜〜っ!!??」

 

「痛たた・・・っ!まだまだ!」

 

麗日は怯んでいる天倉に向かって再び触れようと手を突き出す。しかし、天倉も再びカウンターで迎え撃つ。

そしてまた途中で中断する。それを何度も何度も何度も繰り返される。

 

 

「ハァッ・・・ハァッ・・・どうしたの天倉くん・・・・個性は・・・使わないの・・・・・?」

 

 

「っ!・・・・・・狙っているのか?俺が"個性を使う"のを。」

 

 

麗日は天倉に挑発するように言葉をかける。麗日の体力は消耗しており、肩で息をしている状態だ。一方、天倉は徐々に焦りを見せ始めている。

 

何故だろうか。一見すると麗日が不利のように見えるが、天倉の方が押されている雰囲気が漂っている。

 

 

「緑谷くん、アレは・・・・。」

 

「うん。麗日さんは天倉くんの切り札であり、弱点でもある個性を狙っているんだ。」

 

緑谷は麗日と天倉の戦いを見て確信を得たのだ。麗日が何をしようとしているのかを。

 

「麗日さんが狙っているのは天倉くんの個性の時間切れ。

つまり麗日さんは持久戦に持ち込んでから弱ったところを浮かばせる戦法なんだ。」

 

天倉が先程から関節技を途中で中断するのも麗日の個性を恐れているからだ。

関節技はどれも相手の関節可動部を封じる技だが、体全体を使った技が多い。その為、関節技を仕掛けている途中に麗日が天倉に触れてしまえば天倉は一気に不利になるだろう。

 

「成る程な。天倉くんは麗日さんに警戒して技をかけられないのか。それは分かったが、何故天倉くんは個性を使わないんだ?天倉くんの個性ならば戦いを有利に進められる筈だが・・・・。」

 

疑問が解決されたと思うと飯田はまた新たな疑問に悩む。天倉の個性ならば直ぐに麗日を倒す事も可能かもしれない。

 

すると隣から爆豪が話に割り込んできた。

 

「アホか。少しは考えろメガネ。」

 

「なっ⁉︎アホだと!君は何故いつもいつも相手に失礼な事を・・」

 

「あのヤローはこの戦いだけじゃなくてこれからの戦いも考えていやがる。

ヤツの個性は考え無しに使うと直ぐに負けちまう程扱いにくい。もしこの試合で勝ったとならばこれから当たる奴らのことも考慮して個性の使いどころを見極めなきゃなんねぇ。

そうなると今使っちまえば次の試合に響いちまうからな。」

 

 

爆豪は天倉の個性についてある程度わかる事がある。天倉の個性は電池のように使えばバッテリーが減っていく。

しかもリカバリーガールが行うのはあくまでも治癒だ。リカバリーガールは怪我を直せてもバッテリーの容量を回復することはできない。

 

爆豪が天倉のしていることに推測した結果を言うと周りから同意の声や爆豪を見直す声が上がる。

 

「す、凄いやかっちゃん!こんな短時間で天倉くんを分析するなんて!!」

 

「確かに、天倉のこと結構気に掛けていたからな。」

 

「意外と天倉のこと心配してんだな。」

 

「爆豪ってもしかしてソッチの趣味が・・・・。」

 

 

 

「うるせぇぞ!!テメェら!!!殺すぞ!!!」

 

 

 

しかし爆豪にとってはただ鬱陶しいだけだった。そもそも天倉のことを心配していると決め付けられるのは彼にとって侮辱でしかない。

あと途中、変な方向に話が進みそうになった為声を張り上げたとも言っていいかもしれない。

 

一方で麗日と天倉は睨み合っている。

が、天倉の方がやや押されているように見える。段々と麗日のペースに入ってきているのだ。

 

天倉が麗日に先程言われた言葉。

 

個性は・・・使わないの?

 

天倉はこの試合だけでなく、もし勝利した場合の事も考え個性の使用を考慮しなければならないのだ。

 

 

━━━本当にそれでいいのか?

 

 

なのだが、天倉の心の中では幾多もの感情が渦巻く。その中でとびきり大きくなってくる感情がある。

 

罪悪感

 

麗日はこの試合で全力で戦っている。それは目の前の麗日の姿を見れば直ぐにわかる事だろう。

天倉は自身の個性の凶悪さを知っている。だからこそ、友達である麗日には使いたくないのだ。

 

いや、それを建前に天倉は逃げているのかもしれない。

 

「麗日さん・・・・なんでそこまでして・・・戦おうと・・・。」

 

「私はデクくんや飯田くん、爆豪くんと比べて弱いよ。ハッキリ言って個性を使っていない天倉くんに勝てるかどうかもわからない。だけど・・・・・!」

 

麗日は自分と天倉の実力差を知っている。今まで緑谷や飯田、天倉にも頼ろうとしてきた。

だからこそ、麗日は挑戦する。入学式初日の時、担任の相澤先生が言っていた。

 

━━全力で君たちに苦難を与え続ける

 

乗り越えるには自身の力で、皆の足を引っ張らないように。

 

 

「私も!ヒーローになるんだ!デクくんみたいに!!私だって負けられないんだ!!!」

 

彼女は叫ぶ、心の奥底から。

 

「・・・・・っ!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 

天倉はそれに応えるように、個性を発動した。

喉、腹の奥底から声を上げ身体に変化が起きる。

それはまるで自身の情けない行為に悔しい想いをぶちまける様に、自身の情けない姿を早く隠したいと天倉は変身する。

 

掴んだものを引き裂くであろう手、蜥蜴とは思えないような強靭な脚、外敵の攻撃から身を守る為に羽織ったような外骨格、そしてギラギラと麗日を睨む赤い瞳。

 

ここからだ。ここから彼と彼女の戦いは始まる。

 

 

『おぉーーーーーっと!!天倉がいよいよ個性を使ったーーー!女に対してソレ大丈夫なのかぁ!!!??』

 

 

「遂に個性を使った!」

 

「天倉くん、本気だな。いや、麗日くんが本気にさせたのか?」

 

観客達や実況そして生徒達がざわつき始める。

すると段々と会場が熱気に包まれ

 

ワアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!

 

と言う声が辺りから会場内に響き渡り、観客達はヒートアップする。

 

 

そして天倉が動き出す。

 

「⁉︎」

 

麗日は咄嗟にその場から飛び退く。

 

 

ズガアァ!!

 

 

するとコンクリート製の床が、麗日が先程までいた場所の床が大きく抉れていた。

もし、

麗日の体から血の気が引く。

 

「っ⁉︎一撃でコレ・・・・・!」

 

天倉は先程いた場所から一気に距離を詰め、刃状のヒレが目立つ腕を床に叩きつけたのだ。たった二つの行動で天倉の個性がどれ程のものか、麗日は天倉の強さを再確認した。

 

 

「(天倉くんは敵を相手にした時、こんなに怖い思いをすることを承知して立ち向かっていたの⁉︎・・・・・だけど、当たり前だよね。ヒーローになるんだったらこれぐらい普通だよね。)」

 

麗日は改めてヒーローがどの様な思いで敵と対峙するのか、圧倒的な力の前に立ち向かうことの恐怖を知る。

だが、麗日にまとわりつく恐怖は直ぐに追い払われた。

 

「(でも、デクくんだって、爆豪に恐れず立ち向かったんだ。私だって、デクくんのように・・・・・!)」

 

 

覚悟完了

 

 

麗日は攻めるのを止め、天倉の次の攻撃に備える。

 

そして天倉がこちらへ跳んで右腕を振りかぶる。麗日は天倉の攻撃をギリギリまで引き付ける。

 

まだ、まだだ、あと少し。

そして前へ飛び退く。先程いた場所に小さなクレーターが生まれた。瓦礫が飛び散り麗日の頰を掠め、血が少し流れる。

 

体勢を立て直し、天倉の方へ向き直る。

 

が、その場に天倉の姿は無かった。

 

「っ⁉︎何処!!」

 

麗日は辺りを見渡す。

 

正面、右、左、背後

 

 

何処にもいない。

 

いや、見ていない所が一箇所だけある。しかし、見る時間も無いだろう。

麗日はまたその場から飛び退く。

 

 

すると真上から天倉が上から落ち、脚を地面に叩きつけ地面に亀裂が走る。

 

『天倉攻め続ける!!さすがの麗日も攻撃から転じて回避に専念!って言うかコレ、ヤバいんじゃねぇの⁉︎麗日ヤバくないか⁉︎』

 

実況は天倉の怒涛の攻撃に驚くが、それを無視するかのように天倉は麗日を攻め続ける。

 

地面に爪を立てながら麗日の元へ走り、地面を刈り上げるように麗日のいた場所を削り取る。

体勢が整っていない麗日は転がるように攻撃を回避する。

だが、まだ天倉の攻撃は続く。

 

 

叩きつけ

 

引っ掻き

 

蹴り

 

殴り

 

踵落とし

 

ボディプレス

 

ハンマーナックル

 

力任せによる体当たり

 

 

一つ一つが洒落にならない程の威力を持ち、どの攻撃もつぎへ繋げるスピードも予想以上の速さだ。

麗日が触れる余裕すら無い。

 

「(速すぎる!あらかじめ避けていないと直ぐにやられる!!)」

 

 

麗日も徐々に追い詰められていく。

 

次第にコンクリート製のステージは削られ、抉られ、刈り取られ、破壊され、瓦礫が飛び散る。

そして、ステージの表面はすでに無くなっている状態となり、足場も不安定で凸凹の形となっている。

 

天倉と麗日が立っている場所は異様な形と成した。

 

 

 

『あーーー・・・え?アレってステージ・・・だよな。え?マジで?お前のクラスってマジでどうなったんだよ。人外魔境?』

 

『そんなこと俺が知るか。』

 

 

圧倒的な力による一方的な暴力。 傍から見ればタダのリンチ。

(ヴィラン)が、か弱い女の子を一方的に痛めつけている光景にしか見えない。

 

観客達は天倉と言う生徒の個性がどれ程の力を持っているのか理解しその行為に引いている。

 

 

それは学校側もそうだ。気絶する者も出てくる始末だ。

教師はこの試合を中止させようとする者も出てくるが、それは出来なかった。

 

「(どう見ても麗日が追い込まれている・・・・・が、残念ながら天倉の"個性による攻撃は1発も当たっていない"、寧ろ天倉は焦りと戸惑いがさっきから見える。逆に天倉の方が追い込まれている。)」

 

イレイザーヘッドもとい相澤消太は生徒達のことを見てきたが、その中でも気になったのが天倉孫治郎だ。

 

天倉孫治郎はA組の中で強い部類に入るだろう。しかしそれはあくまで戦闘においてだ。

天倉はクラスの中で圧倒的に精神が未熟だ。

 

観客、全生徒、教師、プロヒーロー、全国の視聴者

 

極限状態の中、相手のペースに飲み込まれ苛立ちと戸惑い、恐怖、不安、責任感

 

あらゆる感情が天倉の中で渦巻いているだろう。

恐らく、この試合で天倉が勝てる確率は約4割。個性同士の相性もあるが、精神的に天倉はそろそろ限界が近づいていることだろう。

 

それは天倉自身も感じていた。

 

麗日のペースに飲み込まれてきたと言う【焦り】

 

攻撃したくても友達に加減してしまい、当てることが出来ないと言う【戸惑い】

 

約束の為に勝たなくてはと言う【苛立ち】

 

沢山の人が見ている中で情けない所を見せたく無いと言う【責任感】

 

負けたらどうしようと言う【恐怖】

 

そして本当に自分が勝ってしまって良いのか?と言う【罪悪感】

 

幾つもの感情が彼を縛り付ける。

そして、目の前の麗日に対して勝利のイメージが遠くなる。彼の戦闘意欲が徐々に薄れていく。

 

 

 

A組はそんな様子に不思議な感覚を覚える

 

「なぁ?なんか見覚えないか?」

 

「あーー、分かる分かる。なんて言うか既視感?デジャヴを感じるよな。」

 

「どこで見たんだっけ?」

 

A組はこの光景を見た事があるのだ。それも雄英高校に入学してから直ぐにだ。

そして、思い出した。

 

「あっ!そうだよ!屋内訓練の時の緑谷と爆豪じゃね⁉︎」

 

「あーーーー、確かに。あん時の緑谷凄かったよな。」

 

屋内訓練。初めてのヒーロー基礎学で行った授業だ。その時の緑谷と爆豪が戦った時と似ていたのだ。

そのことを思い出し

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

↑物凄い形相になっている。

 

約1名、爆豪がこれ以上にない程ムカついていた。それもそのはず、あの戦いは今まで見下していた緑谷に負け、挙げ句の果てには励まされると言う爆豪にとって屈辱でしか無い出来事だったのだ。

 

それを今正に見せられていると言うことに爆豪は怒りは徐々に有頂天に上り詰めていく。

 

「(あの野郎・・・!!何苦戦してんだ!俺が叩き潰す筈なのになんてザマ見せてんだ・・・・・!!!)」

 

爆豪は自身が必ず倒すと決めた相手の情けない姿を見て苛立ちを見せていた。

その光景はまるで自身の過去を見せられているかのように爆豪はいつも以上の怒りを見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あ?」

 

 

爆豪だけではない、他の生徒、観客達もその声に反応する。

 

 

「お前!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差があるならさっさと放り出して場外にしろ!」

 

「そうだ!!女の子をいたぶってそんなに楽しいか⁉︎」

 

「俺たちはそんなの見たくてココに来たんじゃねぇぞ!!」

 

「お前みたいなのがヒーローであってたまるか!!」

 

「やる気がねぇならさっさと帰っちまえ!!」

 

「そうだ!帰れ!」

 

一部の観客から天倉に対しての罵倒、ブーイングが飛び交う。天倉へのアンチ・ヘイトだ。

天倉はそれに対して微動だにしない。

・・・・・・・いや、動けないのだ。天倉に周りからあらゆる感情が伝わってくる。

 

 

嫌悪 苛立ち 怒り 理不尽 愉悦

 

観客の中にはブーイングに乗じて遊び半分で天倉に罵倒を浴びせる者も出てきた。

 

 

━━━やめてくれ

 

天倉の頭に周りの感情が流れ込んでくる。さらなる負の感情が天倉に渦巻いていく。

抜け出せない。彼は徐々にその感情の渦に飲み込まれる。

 

━━━俺は頑張っているのに

 

周りからさらにブーイングが増え続ける。声を聞きたくなくても聞こえてしまう。感情を感じたくないが感じてしまう。

吐き出したい全てを投げ出しまいたいそんな感情が芽生える。

 

━━━何故だ。俺が何をした?

 

 

帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ

 

 

 

 

━━━俺が今やっていることになんの価値がある?

 

━━━俺は何のためにたたかっている?

 

 

━━━俺は本当にヒーローになりたいノか?

 

 

 

━━━オレはナゼ、ココにいる

 

 

 

 

━━━おレにソんざイするカチはあるノか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うるせぇぞ!!!テメェら!!!』

 

 

 

 

 

 

声が会場内に響き渡る。すると先程までのブーイングは一気に静かになった。

天倉はその声に聞き覚えがあった。

 

 

『おい、何やっt『さっきから帰れって言っている奴ら!テメェらこそ帰れ!試合の邪魔だ!

それとさっき遊んでいるって言ったのプロか?何年目だ?シラフで言っているなら見ている意味ねぇからテメェらも帰れ!』

 

 

「あい・・・ざわ・・先 生。」

 

天倉の口からその声の主の名前をやっとの思いで出すように言う。相澤の声によって天倉は少しだけ心に余裕が生まれるような感覚を感じる。

 

 

『天倉はここまで勝ち進んで来た相手の力を認め警戒してんだろう。例え、

周りからのプレッシャーに押しつぶされそうになっても天倉は麗日ばかりを見ていた。

例え麗日が勝つイメージが頭の中にあったとしても負けるイメージまではしていない。

本気で勝つ気があるからこそ。油断もできないんだろうが。』

 

 

 

その言葉はまるで教師である相澤が天倉に対して応援しているような、そんな意図が天倉には感じられた。

天倉はその言葉を聞き、心の奥から込み上げてくる感情をグッと我慢し、麗日へと向き直る。

 

麗日の目には光が宿っている。麗日の闘志はまだ消えていない。天倉の圧倒的な力を前に麗日は怯んでいない。

寧ろ、この圧倒的な壁を乗り越えようとしているのだ。

 

天倉は麗日の心に宿る覚悟、黄金の精神が眩しく思えた。

自身にはまだ無い、諦めない意志そして精神の強さが天倉にとって羨ましいと感じた。

 

 

「羨ましいよ・・・麗日さん・・・・。」

 

「そんな事ないよ・・・・私はただデクくんみたいに強くなりたかっただけだよ。」

 

2人はお互いに言葉を投げかける。

そして麗日はおそらく最後の行動に移す。

 

「そしてありがとう・・・・最後まで警戒してくれて・・・・・!」

 

麗日は自身の指と指をくっ付ける。麗日の個性を使う際の動作だ。

天倉は麗日の先程の台詞、行動、そして周りに違和感を覚える。

 

 

「(警戒?・・どう言う事だ?俺は麗日さんを見ていた。つまり麗日さんはわざと自分に視線を集中させた?それに何故この距離で個性を?・・・・・・・・・周囲?・・・・・・まさか!!??)」

 

 

天倉はとっさに自分の周囲を見渡す。

周りにあるのは無残にボロボロとなったステージだ。しかしその場にある筈の物が無いのだ。

 

そして天倉は何かを察したように上を向く。

 

 

そこには大量の瓦礫が宙を舞っていたのだ。それは天倉が今まで破壊してきたステージの破片だった。

麗日はコレを狙っていたのだ。天倉が個性によってステージに多大な被害を出すことを読んでいたのだ。

 

 

「これで━━━━終わりだ!!」

 

麗日は全ての瓦礫に仕掛けた個性を解除しようとする。

 

「━━させるか!!!」

 

それと同時に天倉は麗日に攻撃を仕掛ける。

 

天倉は麗日の横腹部に蹴りを入れる。麗日は天倉の蹴りをモロに食う。

麗日の表情が苦痛に歪む。

 

『は、入ったーーーーー⁉︎横っ腹に蹴りがモロに入った!!これは痛い!!たまらず麗日も・・・・・・・!?』

 

 

「━━━━━どうして・・・・何故・・・分かったの・・・・?」

 

 

麗日は天倉の蹴りを完全に"受け止めていた"。まるで来ることを予測していたかのように。

麗日は痛みで体を震わせながらも天倉に言う。

 

 

「ケホッ!・・・・・・・・天倉くんだったら・・・・・絶対に解除する前に攻撃して来るって・・・・・信じていたから・・・・・・!」

 

 

麗日は笑いながら天倉に向けて言う。その表情はまるで友達に対して送るような笑顔だった。

 

そして、やっと麗日は"天倉に触れた"のだ。

 

 

 

 

「まさか⁉︎」

 

「麗日のヤツ⁉︎」

 

「コレを待っていたのか⁉︎」

 

 

 

 

【個性 無重力《ゼログラビティ》】発動

 

 

 

「おっりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

麗日は無重力状態となった天倉を上空は投げ飛ばす。

投げ飛ばした方向には浮かせていたステージの瓦礫、破片がある。

 

 

「うっぷ・・・・・・・・・天倉くんの個性の機動力じゃあまず通用しないと思った。

だけど、足場のない空中じゃあ避けれないよね!!」

 

 

天倉は徐々に上へ上へと上がっていく。

そして、その先には瓦礫、破片が空中で待機している。

 

 

「しまっ・・・⁉︎」

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!

かああああああああああああああああああああああああつっ!!!!!!!!!」

 

 

 

【個性 無重力《ゼログラビティ》】 解除

 

 

空中に滞在していた瓦礫、破片が重力に沿って下へと落ちていく。

そして浮かんでいた天倉も下へと落ちていく。

 

天倉の目の前には瓦礫、破片の雨が迫って来る。

 

天倉の脳裏には今まで頑張ってきた記憶。頼られてきた記憶。そして約束した記憶が巡っている。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ・・・・クソ・・・負けちゃダメなのに・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガン!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にはコンクリート製の瓦礫の山が積もっていた。

天倉の姿は見えない。おそらく瓦礫の山に埋もれているのだろう。

 

そして、瓦礫の山の前に大きく疲労をしている麗日の姿がある。おそらく許容値限界《キャパシティオーバー》によるものだろう。

 

 

 

「ハァーッ・・・ハァーッ・・・・ハァーッ・・・・・・もしかして・・・・・本当に・・・・・私・・・・・・勝った・・・・・・?」

 

 

 

麗日の疑問に答える者はいなかった。いや、答えられる者は直ぐに現れなかったのだ。

 

 

 

『・・・・・・・・ハッ!!??・・・・・・や、やりやがったーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!??マジで⁉︎本当に・・・・・?マジか⁉︎う、麗日お茶子まさかの逆転勝利いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!???』

 

 

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

先程まで静まっていた会場が一気に騒がしくなる。そしてまた一段とヒートアップし、再び会場は熱気に包まれる。

 

 

「麗日さんが勝った!!しかもあんな方法で⁉︎確かに、天倉くんの個性はスタミナが長くは続かないけど、そもそも天倉くんの個性を使った戦い方は相手の死角からのヒットアンドアウェイによる戦法。正面からの堂々とした攻撃はやや単調になってしまう。対して麗日さんの個性なら触れただけでも・・・・・」ブツブツブツブツブツブツ

 

「もはやお約束だな⁉︎だが、麗日くんがあんな手を使って来るなんて!天倉くんには悪いが、麗日くんが勝てて本当に良かった。」

 

 

A組の皆も麗日の勝利を喜ぶ者がいればそして天倉の敗北に残念に思う者もいる。

 

「(・・・・クソッ!!あの野郎負けやがって・・・・あの丸顔女、麗日つったか?アイツ全然弱くねぇ・・・。)」

 

爆豪は密かに天倉の敗北に対して無意識に残念な気持ちになっていた。

 

 

「しかし、凄かったな最後のアレ。」

 

「あぁ、触れたものを浮かせる個性。ありゃ中々使えるな。」

 

「最後まで粘ったのも凄かったな。」

 

「作戦を組んだのも良かったしな。あの子是非スカウトしたいよ。」

 

「ガッツもあるし、救助活動とかで活躍しそうだな。」

 

「あぁ。しかも女子だし事務所内の雰囲気も良くなるな。」

 

「あっちの方はお前どう思う?」

 

「強いと思うが、ありゃダメだな。周りの被害を気にせず戦っていたからな。」

 

「強いと思ったんだが、勝ってくれないのか?」

 

「個性使っていた時の姿もありゃ受けないな。」

 

「強かったのに、負けやがって。もうちょい粘ってくれても良かったんじゃねぇのって思うよ。」

 

 

先程までの試合を見届けたプロヒーロー達も早速スカウトについての会話が始まりだした。

中には天倉にもう少し頑張って欲しかったという声もチラホラ聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前ら。何か勘違いしていると思うがまだ天倉が負けた訳じゃねぇからな。』

 

 

『『『!!!』』』

 

 

相澤の一言によって会場内が静まり返る。

しばらくすると色々なところで騒つき始める。

 

 

『あくまで天倉は瓦礫の山に埋もれているだけだ。まだミッドナイトは判定をしていない。』

 

 

審判であるミッドナイトが前に出ると声を張り上げ判断を下す。

 

「これから30秒以内に天倉くんが瓦礫から脱出しなければその時点で麗日さんの勝ちとします!!脱出した場合、そのまま試合続行となります!!!」

 

 

会場内はさらに騒つく。

まだやるのか?これ以上彼女は戦えるのか?という声が上がる。

 

が、当の本人は深呼吸をし、いつでも再開していいように準備をしている。

 

 

「では、カウントダウンを━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!!」」」」

 

 

ミッドナイトがカウントダウンを始めようとした時、瓦礫の山が僅かに動いた。

 

天倉はまだ動けるのだ。

 

そして、麗日は瓦礫の山に向かって走り出す。

 

 

「(次こそ絶対に!瓦礫の山から出てきた時に浮かせて場外に投げる!!!これで決める!!)」

 

 

麗日は瓦礫の山に接近する。およそ距離は50メートル麗日は手を伸ばし天倉に触れようと近づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━━━え?」

 

 

 

瞬間、瓦礫の山は"無数の棘"によって破壊される。その棘は麗日の頰を掠める。麗日はあまりの出来事に尻餅をついてしまう。

 

「━━━な、何・・・・コレ。」

 

 

『な、何だぁーーーーーーーーーー!!??瓦礫の山がいきなり針の山になっちまったぞ!!??何だこれは!!??』

 

 

あまりの事態に観客達は戸惑う。

しかし、コレを、この光景を彼らは見たことがある。

 

「これって・・・・まさか⁉︎」

 

「あの時《敵連合》と同じ⁉︎」

 

 

そして教師側もいきなりのことに驚きを隠せない。

 

『・・・・・これは・・・・。』

 

「What⁉︎何だこれは⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━ 何 だ と 思 う ?

 

 

 

 

 

 

瓦礫が破壊され土煙が舞う。そして、その中心には彼が立っていた。

 

 

━━━勝ってくれないのか?

 

━━━粘って欲しかった?

 

━━━望みどおりにしてやる

 

 

 

その場には天倉 孫治郎がヤツが立っていた。

ヤツはギチギチと口を鳴らし、威嚇するように刃状のヒレを動かす。そして目の前にいる獲物《麗日 お茶子》に狙いを定める。

 

 

さぁ、第2ラウンド始めよう。

 

 

 

 

 

目覚めよ 内なる(狂気)

 

 




闇落ちor暴走ってなんか燃えるよね。

近々番外編も投稿してみようと思っているのですがその際に活動報告の方に他作品のキャラを募集しました。

是非皆様のアイデアをいただけるとありがたいです。


誤字報告をして下さった読者の皆様
誠にありがとうございます。こんな僕の小説を見て下さっている方もありがとうございます。

アドバイス、感想等があれば下さると助かります。
そして評価の方もよろしくお願いします。


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第21話 俺の中の俺


最初に言っておく。


麗日ファンの皆様 ごめんなさい




 

何なんだ、アレは?

突如として現れたソレはその場にいた人々を困惑させた。ソレは先程と同じ姿だった。

だが、違う。ソイツは先程までとは違う。

 

アレは何なんだ?

 

ソイツは伸ばしていた無数の棘を体内にしまっていく。そして、目の前にいる人間である麗日お茶子を見据える。

 

麗日は先程とは何か違ったヤツを認識すると、少々フラつきながら尻餅をついていた体勢から立つ。

 

「(何なの?アレって・・・・・天倉くん・・・・・だよね・・・・?)」

 

麗日が疑問に思ったのも無理はない。ヤツは天倉が個性を発動し変身した姿だ。

しかし、麗日にはヤツが到底あの天倉だとは思えなかった。

 

そして、あまりの出来事に呆然としていたミッドナイトは我に返る。

 

 

「あ、天倉くん。復活の為、試合を続行としまs「アあアああああああああああ阿あ亞あああああああああああああああああああああああああああああああああアああアアあああああああああああああああああああああああアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァああああああああァァァァァァアアアアアアアアアアああああアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァああああああ亜あああああああああああああああアあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ阿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!??」

 

 

ミッドナイト、麗日お茶子、観客達は唐突な大声、いや絶叫に耳を塞ぐ。

会場内はあまりの騒音にピリピリとし、口から泡を吹いて気絶する者がチラホラ出て、更には窓ガラスにもヒビが入る始末だ。

 

 

「なんっ・・・・・・だッ⁉︎・・・コレッ!!??」

 

「耳が・・・・・!うるせぇ!・・・何も聞こえねぇ!!」

 

「ナニコレ!?・・下手したら・・・・っウチ以上の・・・・音量!」

 

「いっ・・・・・⁉︎耳がいてぇ!!」

 

 

A組の何人かにも被害が出てくる。

一体どのようにしてあの体からあそこまでの声を出すことができるのか。

そして、次第に声は小さくなっていく。その原因であるソレは腕を四足歩行の動物の前脚のように地面につける。

 

ソレ《天倉》は四足歩行の体勢で麗日を見据える。

 

 

『うるせぇ!!??何だ!!何が起こった⁉︎突如として天倉が復活し、その声の大きさでアピールか⁉︎だとしても大きすぎやしないか!!!』

 

プレゼントマイクをはじめ、教師側にも被害が出ているようだ。しかし、明らかに異常だ。

教師側は天倉の異常さに頭の中で疑問符が乱舞する。

 

「こ、これは・・・・?天倉少年に一体何が・・・・・⁉︎(どうしたんだ天倉少年は⁉︎さすがに怒りが爆発という訳ではなさそうだが・・・・・・。)」

 

オールマイトでさえこの事態に困惑していた。

オールマイト自身は緑谷だけでなく、他の生徒達も気に掛けていたがまさかこの様な事が起きるとは思わなかった。

 

 

 

「グアアアァァァァァぁぁ・・!」

 

天倉はまるでチーターの様に四足歩行の状態で麗日を見据えている。彼は常に襲いかかる準備が出来ている

 

麗日は再び戦闘体勢に入る。

 

「(ヤバイ・・・・・、確実にヤバイ。今の天倉くんはさっきまでとは絶対に違う・・・・。)・・・・・でも。」

 

 

麗日には負ける気がなかった。この状況下でも麗日は勝つ気でいる。例え相手が友達でもだ。

この場にいる全員はライバルであると同時にヒーローを志す者達なのだ。

 

 

「負ける気は・・・・・無い!」

 

 

麗日は立ち向かう。例え相手が友達だとしても、自分より格上だとしてもだ。

麗日はヤツに向かって走り出す。先程と同じ戦法はきっと通用しない。ならば残る手は攻撃を掻い潜り、個性で浮かし場外狙い。

つまりは接近戦を持ち込む気だ。

 

 

「(接近戦は絶対に天倉くんの方が強い・・・・何としてでも、不意をつかなきゃ・・・!)」

 

 

麗日はとにかく考える。どうすれば触れられるか?どう動けばいいか?どうやって不意をつくか?

頭の中で勝利への方程式を組み立てようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュッ!!

 

 

 

 

 

 

 

自分の首が宙に舞う・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イメージを見た。

 

 

 

「⁉︎」

 

 

気付くと、麗日は無意識の内にしゃがんでいた。

 

自分でも分からない。何故こんな事をしているのかどうか。だが、これだけは理解できる。

 

【助かった】と麗日は思った。

首が飛ぶ と言うのは言い過ぎかも知れないが、天倉はいつの間にか麗日の背後にいる。

 

 

「(天倉くんいつの間に⁉︎いや、そもそも"見えなかった"!)」

 

 

天倉はすれ違いざまに首を狙った。いや、そもそもいつ移動したのかも分からなかった。

麗日の頭の中であらゆる疑問符が乱舞するが、そんな事をしている暇はない。

麗日は体勢を戻そうとする。

 

 

 

 

 

ズンッ!!!

 

 

 

 

「ぐっ⁉︎・・・がっ・・・・・⁉︎」

 

 

 

背中に強い衝撃を受けた。

 

天倉は既に攻撃を始めていた。麗日の首を狙って攻撃したのはあくまで避けられる事を前提にした攻撃。

避ける為に体勢を崩した瞬間を狙って麗日の背中に蹴りを入れたのだ。

 

麗日は突然の衝撃によって肺から全ての空気が吐き出され、呼吸が止まる。

 

 

「ッ!・・・・ゴボッ・・ガホッ!・・ぐっ・・・ゴボッゴボッ!・・・うっ・・・げぇ・・・・・。」

 

 

あまりの衝撃で胃の中にある物も吐き出してしまいそうになったが、何とかグッと堪え、呼吸も落ち着いてくる。

 

しかし、相手は休ませてくれる時間は寄越さない。こちらへ跳んでくる。

麗日はその場から急いで離れる。

 

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

ズガァッ!!!

 

 

 

 

 

 

相手は声を上げながら刃のようなヒレを使ってチョップのように腕を振り下ろす。

叩きつけられた場所は切り傷がバックリ開いたかのようにクレーターと亀裂が走っている。

先程よりも威力が増している。まるで確実に獲物を仕留めるかのように麗日はそう感じた。

 

 

「グゥ・・・・オオオオオオオォォォォォォォッ!!!」

 

 

ズンッ!!!

 

 

そう考えているのも束の間、今までの攻撃が通らないのを悟ったのか、相手は急に行動を変えてきた。亀裂が走った地面に腕を突っ込む。

 

 

 

『あ?何やってんだ?まさか落ち込んでいる⁉︎メンタルの弱さはそのまんま?』

 

「えっと・・・・・・・天倉くん?」

 

 

さすがの麗日も相手が何をしたいのかはさっぱりだった。観客達も天倉の不審な行動を疑問に思うばかりだった。

A組も何が何だかさっぱりだった。

 

「あいつ、どうしたんだ?急に大声上げて、麗日を蹴って、地面に腕を突っ込んで。」

 

「うぅ、ウチもう見たくない・・・・。っていうか天倉があんな事をするヤツだって事にかなりショックなんだけど・・・・。」

 

「うむ、まさしく猛獣・・・、獅子奮迅・・・いや、疾風怒濤の如くの攻めだ。しかし、今のヤツは何をしている?」

 

 

A組の過半数が困惑していると隣から声が聞こえる。

 

「ハハハハハハハハハハ!おかしいよね、A組なのにさっきから変な行動してさ、ハハハハハ本当におかしッ━━〈ドゴォッ!!〉

「はいはい、変な事言っていない!・・・ごめんね、そっちも頑張りなよ。」

 

B組の生徒がこちらに嫌味を言ってきたと思えばもう1人の生徒に気絶させられ、連れて行かれる。まるで嵐のように去っていき

 

「「「(何ださっきの・・・・・。)」」」

 

A組はただ困惑するばかりだった。

先程の嫌味を言っていたB組生徒である物間を気絶させたB組学級委員長の拳藤は天倉の様子を見て、違和感を感じていた。

 

 

「(うーーーーん、なんか可笑しいんだよな。天倉ってあんな事するヤツだっけ?)」

 

拳藤はそう思いながら物間を引きずりながらB組の観客席に戻る。

 

 

 

 

バキ・・・・ミシ・・・・・・

 

 

 

しかし、拳藤の足は途中で止まった。何やら変な音が聞こえるのだ。まるで何かが剥がれるような、壊れるような音が。

拳藤は再びステージを見る。

 

 

 

バキ・・・バキ・・・・ミシミシ・・・!

 

 

観客、生徒、教師もその音が次第に大きくなっていくことに気付き、その原因を探ろうとする。

 

そして、すぐにその原因は分かった。

天倉だ。ヤツが地面に腕を突っ込んだ場所から聞こえたのだ。

 

 

『えっと・・・?アレってマジ何やってんだ⁉︎』

 

 

ビキビキ・・バキ・・ミシミシミシ・・・・!!

 

 

音は天倉を中心に大きくなっていく。

そして、天倉はさらにもう片方の手を亀裂に差し込む。

 

 

「ま、まさか⁉︎」

 

 

麗日は察した。ヤツが何をしようとしているのかを。

 

 

 

 

ボゴォッ!!!

 

 

 

 

そしてヤツは実行した。

ヤツは亀裂の入った地面に腕を突っ込みそのまま約5メートル程のコンクリートの塊を持ち上げた。

 

 

「」

 

 

麗日はその光景に絶句した。

目の前にいる相手はこちらを見据えながら大きな物体を持ち上げているのだ。

 

 

『は?・・・・ハァッ⁉︎アイツ《天倉》コンクリートの床を引き剥がすっていうか、コンクリートの塊を引き抜いた!!??』

 

『おい・・・・まさかとは思うが、アイツ・・・。』

 

実況もさすがの事に驚きを隠せない。

そもそもステージの一部を武器として使うのはコイツ《天倉》が初めてなのでは?と思っている。

 

そして

 

 

 

「グガアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

 

ヤツは力任せにコンクリートの塊を麗日目掛けて投げつけた。麗日はあまりの事に動けずにいた。

そして、遅れるように麗日は正気に戻るが

 

 

「やっ・・・!!」

 

 

 

 

ドゴォッ!!!!!!!

 

 

 

 

コンクリートの塊はボロボロのコンクリート製の地面に激突し、投げられたコンクリートの塊はその衝撃で粉砕された。

そのせいか、ステージの一部は粉塵が舞い視界が悪くなる。

 

 

『えええええええええええええ!!??天倉!まさかの無慈悲の投石いや、投コンクリート!!麗日大丈夫かーーーー⁉︎』

 

 

実況を担当するプレゼント・マイクはこの事態に焦りを見せる。

一方麗日は粉塵のせいでどうなったかは分からなくなってしまっている。

 

 

「・・・・・・ググゥ・・・。」

 

天倉は視界が悪くなった事により麗日を見失い、何処にいるか探している。

 

すると右前方に影が現れ、こちらに迫ってくるのが見える。その影をを見つけると同時に鋭利な爪を持った手でその影に向けて攻撃をする。

 

 

 

 

ズドォッ!!!

 

 

腕を地面に叩きつけるような形で攻撃をしたが、何かがおかしかった。

攻撃した張本人も違和感を感じた。

次第に粉塵は収まっていき、視界が晴れていく。観客、生徒達もその光景を目にし驚く。

 

 

そこには麗日の姿は無く、代わりにあったのは麗日が着ていた雄英高校用の体育着の上着だったのだ。

麗日の体育上着は地面ごと天倉の手によって貫かれており無残な姿になっている。

 

ならば麗日本人は何処にいるのだろうか?

天倉は周りを見渡す。右 左 背後 前方 何処にもいない。

 

 

しかしとある事に気付く。地面に自分の影と重なるようにもう一つ別の影が通り過ぎた。

そしてすぐさま理解すると、天倉は上を向く。

 

麗日は天倉の上にいたのだ。

 

 

 

「うっ・・・・ぷっ・・・超必・・・・!ギリギリ・・・!」

 

 

麗日は先程のコンクリートの塊を自身を浮かせる事によって回避したのだ。

そして自分の体育着を囮にする事によって完璧に不意をつく事に成功したのだ。

 

 

「すっ、すごい!天倉くんの視覚だけで無く、聴覚を悟らせないようにしたのか!体育着は嗅覚を利用させてわざと隙を作らせるために!」

 

 

緑谷は麗日の策に驚きつつも関心する。

これから麗日のする行動は簡単だ。麗日は自身に使った個性を解除すると同時に天倉の後方に着地する。そして天倉に向かって走り出す。

 

 

「うぷっ・・・許容値もそろそろ限界・・・!あと、一回・・・これで!終わりだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

麗日が叫びながら天倉に向かって走る。

 

それに対し天倉はそれを回避しようとするが、先程の攻撃によって腕が地面に突き刺さってしまい、抜けない状態になってしまっている。

 

 

 

 

「(天倉くん・・・・・!本当に強かった・・・・・だけど、私も負けていられない・・・・ごめんね・・だけど、私だって・・・・。)」

 

━━━ヒーローになりたい

 

 

麗日は天倉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。本来なら天倉の方が上に行くべきだ。そう考えた時もある。

 

しかし天倉や緑谷、他の皆が頑張ってヒーローを目指している姿を見てそんな情け無い事を考えてはいけないと思った。

だからこそ、これは天倉への感謝でもある。

 

 

「私は━━━上へ行く!」

 

 

 

 

麗日は自分に言い聞かせるように、天倉に言うようにし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が反転した。

 

 

 

 

「・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

ドガッ!!!!!!!!!

 

 

 

麗日は全身を床に叩きつけられたような痛みを感じる。

観客、生徒、教師、そして何より麗日は何が起こったか分からなかった。

 

 

「いっ・・・・たい・・・・・な・・にが・・・・・?」

 

 

麗日は口から声を絞り出すように言うが、その答えはすぐに分かった。

 

自分の腰辺りに何かが巻き付いている感触がしたのだ。

 

 

 

シュルルルル・・・・・・

 

 

それはまるで触手のような、節足動物の足のような、鞭のようなものが麗日に巻き付いており、それを辿っていくと天倉の背中上部辺りから出ていることがわかる。

 

 

 

「なっ・・・・・嘘・・でしょ・・・・。」

 

 

『なんとーーーーーー!!!天倉がまさかの触手状の鞭を出現させたーーーーーー!!!まさかの奥の手だとーーー⁉︎どう見てもR指定のヤツじゃねえかコレ!!!』

 

 

天倉が触手状の鞭を出現させた事により会場内は再び騒つき始める。

 

 

「あ、天倉のヤツそんなエロい物を隠しm〈バチンッ!!!〉

「いい加減にしなさい。峰田ちゃん。」

 

「み、緑谷くん、アレは・・・・!」

 

「分からない・・・・けど、もしかして天倉くんの奥の手・・・・?いや、あの鞭みたいなものは近、中距離で使える代物だ。もしそんなものがあったなら騎馬戦で既に使っている筈だよ!!」

 

「(アイツ・・・まさか敵連合の時のようにパワーアップが始まってんのか⁉︎くそがっ!!ふざけやがって・・・・!)」

 

 

A組も想定外の事態に驚きつつも観戦を続ける。天倉から出現した触手状の鞭は麗日の全身に巻き付き、ギリギリと締め上げていく。

 

「ぐっ・・・・ぐぅっ・・・・・!」

 

麗日は徐々に強くなっていく締め上げに苦痛の表情を浮かべる。どう足掻いてもこの拘束からは逃れられない。麗日はまるで大蛇に巻き付かれたような感覚に陥っている。

 

「(ぐっ・・・脱出は無理・・・だけど、私を締め上げているこれも天倉くんから出ているなら、コレも天倉くんの一部ってことになる!!)」

 

 

麗日は咄嗟に自身を締め上げている触手状の鞭をしっかりと触れる。

 

 

「私ごと浮かせるっ!これで・・・どうだ!!!」

 

触手状の鞭に触れた後、麗日は個性を発動させる。

許容値限界となり吐き気を無理矢理抑える。

 

 

『おぉっ!麗日の個性発動!!!コレは逆転なるか!!!』

 

 

天倉は腕を地面から抜き、触手で締め上げている麗日に歩み寄っていく。

個性を発動した筈なのにだ。

 

「えっ⁉︎・・なんで⁉︎」

 

 

『あれっ⁉︎どうなってんの⁉︎個性もしかして・・発動していない?どうなってんのイレイザー?』

 

『麗日の個性は勿論発動している。だが、天倉はソレをゴリ押しで打ち消しているだけだ。見ろ、アイツ《天倉》の足元を』

 

 

相澤はこの場の全員に天倉の足元を観察するようにと施す。

 

 

ズンッ!! ミシミシ・・・・

 

ズンッ!! ミシミシ・・・・

 

 

天倉の足は地面にめり込んでいるのだ。そう、天倉は麗日の個性に影響が無いようになり自身の足をめり込ませる事によって自分が浮かないようにしているのだ。

一歩一歩、徐々に麗日に近付いていく。その姿はまるで一刻一刻と死神がこちらに死を与えるような光景だった。

 

天倉は麗日の目の前まで歩いていく。

 

 

「・・・・・・。」

 

ジャキッ!

 

 

天倉の手首から鎌のような物が生える。それはまるでカマキリのような、相手を殺す為に作られたような形をしている。

 

その鎌は麗日の首に目掛けて振り下ろされ━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「天倉(くん/さん)!!」」」」」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

━━━なかった。

 

 

 

麗日の首に当たる直前に鎌は止まった。

 

天倉の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。それはA組生徒だけで無く、B組、普通科、観客席からも聞こえてきた。

 

 

シュルルルル・・・・・・・

 

 

すると麗日を締め上げていた触手状の鞭は次第に力が抜けていき、天倉の体内へと戻っていく。

 

 

ドサッ

 

 

麗日は力が抜けたように地に伏せ、天倉の姿は緑色のトカゲのような姿から元の人間のような姿へと戻っていった。

 

「・・・・・・・え?・・・・あれ?・・・俺さっき何を・・・しようと・・・・・・・⁉︎」

 

 

天倉が困惑していると、審判であるミッドナイトが麗日の元へと駆け寄る。

そして、ミッドナイトは麗日の容態を見ると高らかに宣言した。

 

 

『麗日さん戦闘不能。天倉くん二回戦進出!!』

 

 

 

その宣言は天倉にとって、いきなり過ぎる事であると同時に理解出来ない事だった。

 

いや、そもそも二回戦に進出したという言葉が頭の中に入ってきていなかった。

今現在、天倉の頭の中にあるのは

 

 

 

先程まで麗日にしてしまった事と

 

━━━人としての一線を越えてしまいそうになった事だ。

 

 

 

そして、天倉は思い出す。

 

 

内に秘められ危険に満ちた力である

 

 

 

俺の中の俺

 





天倉はあくまでアマゾンオメガの形をした何かに変身する個性です。なので別のライダーの能力を取り入れてみました。

誰の能力か分かったかな?

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第22話 不吉な前兆

今週のエグゼイドは凄かったですね。
貴利矢さんの裏切り、最強フォーム登場、次回での飛彩さんの決意怒涛の展開でヤバいですよ。
と言うかエグゼイドの最強フォームのスペックがクウガアルティメットフォームを超えたと言うことが物凄くビックリしました。




 

頭がボーッとする意識もハッキリとしない。だが、声だけは聞こえる。

自分の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。それも1人や2人ではない、ざっと30人程だ。

 

しかしそんな声に混じって一つだけ鮮明に聞こえてくる。

 

 

━━━弱い

 

目の前に一つの影が立っていた。誰かがいる、それは分かるのだが、どんな姿なのか分からない。どんな声なのかも分からない。鮮明に声が聞こえる筈なのに頭の中にノイズがかかったような感覚に陥る。

 

━━━他の力を借りてやっと己を制御するとはな

 

━━━力以上にお前自身が弱すぎる

 

誰だ?俺に呼びかけるのは・・・・一体誰なんだ?

 

分からない、目の前にいる影は徐々に離れていく。何なんだこれは、一体何が起きている?

すると離れていく影はこちらに声をかけてくる。

 

━━━覚えておけ

 

━━━真の強者とは揺るがない信念を持つ者だ

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・えぇーーーー。」

 

 

天倉孫治郎は気付くと保健所のベットに寝ていた。

天倉は何故、自分がベットにいるのか、試合はどうなったのかと言う疑問よりも先程見た夢のようなものについて頭がいっぱいだった。

 

 

「うっわぁ・・・・・・最悪だよ・・・高校生にもなって、あんな厨二展開の夢みたいなもの見るなんて、うっっっわぁぁああ・・・・・・・て言うか、何アレ?強さ〜とか信念〜とかマジで意味がわからないんだけど・・・・・。」

 

頭がいっぱいと言うよりもある意味、後悔の念で頭の中がいっぱいだった。天倉が色々と後悔をしているとリカバリーガールが天倉が起きた事に気付く。

 

「ありゃ、思ったより早く起きたね。はい、ドロップお食べ。」

 

「あ、どうも。頂きます・・・・・ハッカ味・・・・・・・あ!そう言えば何で俺、こんな所に?試合はどうなったんですか?」

 

天倉はリカバリーガールに自分の現状と試合の結果を問いかける。リカバリーガールはやれやれと呆れながら天倉の質問に答える。

 

「覚えてないのかい?あんた試合には勝利したけどその後、過度のストレスとプレッシャーで倒れちまったんだよ。試合じゃあ後半ほぼ一方的になっていたのにね。」

 

「一方的?・・・・・・あ。」

 

天倉はようやく思い出した。一体自分に何があったのか、試合で何が起こったのか。

 

そして後少しで人としての一線を越えようと━━━

 

 

「・・・・・そうか、ギリギリの所で・・・・。」

 

「ビビったよアレは、女子相手に容赦が無かったね。」

 

天倉は口籠る。彼自身何故あんな事をしようとしたのか理解できなかった。

そもそも試合の途中から記憶が曖昧だ。ハッキリと覚えているのは最後に麗日にとどめを刺そうとしていた事だ。

 

「(・・・・・だけど、何だったんだアレは?)」

 

だが、それと同時に天倉は麗日と戦っている途中の事を思い出し、微かに覚えている事を疑問に思ったのだ?

 

「(あの、触手のような物と鎌のような物は一体何だったんだ?)」

 

自身が一番知っている筈の"個性"それに変化が起きた。天倉自身あんな物を持っていることは知らなかった。

今まで存在した事を知らなかったのか、もしくは戦っている途中に生み出したものなのか、天倉は思考を重ねる。

 

しかしそんな天倉をリカバリーガールは注意を施す。

 

「とりあえず、目が覚めたんならさっさと観客席に戻ったらどうだい?あんたがステージを派手にぶっ壊した所為で次の試合の開始時間が先延ばしになっちゃったんだよ。」

 

「あ、そうですね・・・・ありがとうございました。」

 

天倉はリカバリーガールにお礼を言い、保健所を後にする。しかし天倉はまだ本調子ではないのか、少しフラつきながら通路の壁を沿って歩いていく。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「いやぁ〜、流石でしたよ天倉さん。特に後半の巻き返しは凄かったですね!やはり私の目に狂いはありませんでした!いやぁ、わざわざ予約席のチケットを取っておいて良かったですよ。」

 

「あ、いや、別にそこまで言わなくても・・・・・。」

 

天倉は先程までA組の観客席に戻ろうとしていたが、ばったりと射命丸 文と会ってしまい、取材を無理矢理されている。

天倉自身、取材を早く終わらせて欲しかったのだが、そうは問屋が卸さない。

また後日取材をさせてもらう。と言う約束(一方的に)をしていたので断れない状況下に天倉はいた。

 

「イヤイヤそこまで言うほど天倉さんは相当の実力を持っているんですよ。そう謙虚にしなくても大丈夫ですよ。(ククク・・・天倉さんは基本的にはお人好しですからねぇ、一方的に約束でもしていれば好き勝手に取材し放題ですよ。さてと、たっぷりと搾り取らせてもらいますよ。私の新聞の為に・・ね。

おぉ、ゲスいゲスい。)」

 

それに対して射命丸は天倉の事を褒めてはいるが、思考は悪人そのものだ。自己紹介の時の清く正しい〜は何処へ行ったのだろうか

顔も一目見ればムカつくような顔になっている事だろう。

 

「それでは、次の試合も期待してますよ〜。」

 

「あ、はい・・・・・・射命丸さん、ちょっといいですか?」

 

「ハイ!何でしょうか!インタビューですか?それとも取材ですか?取材ですよね?取材なんでしょう?分かりました!取材ですね!!」

 

天倉が何かを思いついたように射命丸に声を掛けると、物凄い勢いでこちらに迫ってくる。

半強制的に取材をしようとしてくるのは新聞記者としての意地汚い執念だろうか、天倉はそんな様子の射命丸に引き気味になる。

 

「い、いやそうじゃなくて・・・・・・・・射命丸さんから見て俺はヒーローに見えますか?」

 

 

「・・・・・ふむ?どう言う意味でしょうか?外見から見ればヒーローでは無いことは確かかも知れませんが。」

 

射命丸は少し間を空けてから天倉の質問の意図を聞き出そうとする。射命丸は腐っても新聞記者だ。

彼女は常に相手の顔色を伺い、上手に出ることもあれば下手に出て相手の靴を舐めることもしばしば。

だからこそ射命丸は天倉が何か思い詰めている顔をしている事に気付く。

彼女はこう言った何かを思い詰めている人の相手をするのは苦手だ取材をする際、相手を同情してしまえば取材どころではないからだ。

 

「確かにそれもそうですけど、俺はヒーローになる為にココ《雄英高校》に来たんです。

だけど、麗日さんとの試合で俺はヒーローに見えましたか?俺はヒーローらしい行動をしましたか?」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 

天倉は麗日との試合で罪悪感を感じたのだ。

麗日は懸命に戦った。それにひきかえ自分はどうだ、気が付いたら麗日を圧倒し人としての一線を越えるところだった。

 

「本当は俺じゃなくて麗日さんが勝つべきじゃないのかって思ったんです。観客の言う通り俺はヒーロー志望の筈なのに・・・・俺にヒーローになる資格なんて・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「それ以上、やめなさい。」

 

 

射命丸の口から一言。

今まで敬語を使って来た射命丸からは考えられないような台詞が出てきた。

その言葉に天倉は呆気に取られる。射命丸はそんな天倉の様子を無視するかのように話を続ける。

 

「えぇ、確かにあなたにはヒーローになる資格なんて無いかも知れない。

だけど、それは私や観客達が決める事じゃ無い。あなたがヒーローに相応しいのかどうか自信を持って決める事なの。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

天倉はまるで別人のような射命丸に驚きつつも射命丸の言葉に核心を突かれる。

そして、自分が保健所で見た変な夢

 

━━━真の強者とは揺るがない信念を持つ者だ

 

正に自分とは正反対だ。自分は真の強者でも無いし揺るがない信念も持っていない。

ヒーローになりたいと言う気持ちはあるが、それは本当なのか自身でも疑問に思ってしまう時もある。

 

「私だって自信を持って新聞記者をやっている。例え記者としての才能が無くても私は新聞記者をやり続ける。少なくとも私はそう思っているわ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

「・・・・・・なーーんて、私らしく無いですね。

大丈夫ですよ、少なくとも私は天倉さんはヒーローに相応しいと思います。それじゃ、私はこの辺で失礼しますよ。次の試合も期待しています!」

 

すると射命丸は一変し、先程の真面目《シリアス》な雰囲気が嘘のように元の調子に戻る。そして嵐のように天倉の前を過ぎ去って行く。

天倉は先程までの射命丸が本来の性格なのでは?と思う。

 

「・・・・凄いな、射命丸さんは・・・・俺とは違ってあんな立派な信念を持っているんだな・・・・・。それにひきかえ俺は・・・・。」

 

普段は社交的だがいつもと違う彼女の姿を、彼女の信念を知り自分との格の違いを見せられ自己嫌悪に陥る。

 

天倉には彼女の激励は届かなかった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・あ、ここって控え室・・。」

 

天倉は観客席に戻る為に通路を歩いている途中、【選手控え室2】の前を通り過ぎる。

しかし天倉は何を思ったのか控え室の方向へと戻り、扉正面に立つ。

 

「・・・・・麗日さんは・・・・居るのかな?」

 

と天倉がドアに耳をつけ、部屋の様子を探る。次にそっとドアノブを回し、中の様子をじっくりと眺める。すると天倉は懐から何かを取り出す。

 

「麗日さん・・・やっぱり居ないのかな?・・・・一応、たこ焼き持ってきたけど・・・・・。」

 

片手にたこ焼きを持って、控え室の様子をじっくりと探っている天倉はどう見ても不審者にしか見えないのは気のせいでは無いだろう。

 

「・・・・・やっぱり居n「おい、何やっt」ギャァアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!??」

 

突如背後から声を掛けられ、天倉は驚き飛び退く。声を掛けた人物も天倉の声量にビクッとなる。

それもその筈、声を掛けてきた人物は全身を包帯でグルグル巻きにされていたからだ。ミイラが急に背後から現れたら普通に驚くだろう。

そして、声を掛けた人物は天倉に再度声を掛ける。

 

「うるせぇぞ、こんなとこ《控え室前》で何やってんだ。」

 

「え⁉︎え⁉︎あ、相澤先生⁉︎びっくりしたーーーーっ!急に声を掛けるのやめてくれませんか!」

 

天倉に声を掛けてきた人物の正体は担任の相澤だった。知り合いだと分かり、しばらくして落ち着くと天倉は相澤にとある疑問を投げかけた。

 

「あれ?相澤先生、実況はどうしたんですか?プレゼントマイク先生だけ実況だと滑りそうだからちょっと心配なんですけど。」

 

「お前がステージを派手にぶっ壊したからな、次の試合が始まるまで時間もあるからトイレに行ってきた。お前こそ何で片手にたこ焼きを持ちながら控え室を覗いてんだよ。」

 

教師である相澤は天倉の不審者同様の行動に呆れると同時に注意をする。

そもそもこんな怪しい行動している人物がいれば普通だろう。

 

「で、どうだ?」

 

「・・・・・・・・・?」

 

「いや、だからどうなんだ?」

 

「・・・・・・何がです?」

 

急に話を変えてきた相澤に天倉は頭の整理が追いつかない。

いきなり相手から「どうなんだ?」と聞かれてもどう答えれば良いか分からないだろう。

すると相澤は業を煮やしたのか別の事を質問してきた。

 

「・・・・気分は悪く無いか?体に異変は無いか?」

 

「」

 

天倉は絶句した。何故なら相澤が天倉を気遣っているからだ。

第三者から見れば何がおかしいのか分からないだろう。しかし相澤と言う人間は相手を気遣うと言う行動を滅多に起こさないからだ。

それは教師としてどうなのだろうか、しばらくしてから天倉は我に返る。

 

「・・・・・・・とりあえず相澤先生に異常がある以外は特に問題は無いと思いますけど・・・・・。」

 

「そうか・・・・って、そりゃどう言う事だ。」

 

天倉は今の所、相澤に心配されるような異変は無い。

もしかすると相澤は麗日との試合の際、天倉が暴走してしまった時の事を心配しているのだろうか?それとも単純に天倉個人を心配しているのだろうか。

 

「あ、いや・・・・それじゃあ先生俺、観客席に戻ります。試合の時はありがとうございました。」

 

天倉は相澤に礼を告げ、観客席に戻っていく。しかし何故だろうか相澤には天倉がここから逃げ出す様にも見えた。

 

「(今の所は問題無し・・・・・・いや、問題が起きるのはこれからか?)」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

一体、相澤先生はどうしたんだろうか?

いつもの相澤先生なら「そうか、次の試合はちゃんと戦え。」とか注意を施してくると思ったけど、なんか気持ち悪かったな。

 

「まぁ、いいや。次の試合って確か・・・・緑谷くんと轟くんか・・・・・。」

 

何かなー、さっきからバッタリと色々な人に会っているから轟くんにも遭遇しそうな気がするなぁ。

・・・・・なんてコミックやアニメじゃあるまいし。そう何度も誰かとバッタリ会うなんてある訳ないか。

 

と俺がそう思っていると曲がり角から丁度白と赤の髪の毛が目立つクラスメイトである轟くんが出てきた。

 

「え?」

 

「ん?」

 

・・・・・・・・・え、まじで?さっきのでフラグ立ったの?

本当に轟くんと遭遇しちゃったよ。

轟くんは俺に気付くと声を掛けてきた。

 

「天倉・・・・倒れた筈だが、もう大丈夫なのか?」

 

「ん、大丈夫。流石にあの試合は負けるかと思ったよ。」

 

轟くんは心配してくれるんだな・・・・・。

でもやっぱり麗日さんには悪かったな。俺なんかが勝ち上がって本当に良かったのかな・・・。

・・・・謝りに行こう。今すぐにでも、それに轟くんの邪魔しちゃ悪いしね。

 

「そう言えば轟くんはこれから試合なんだよね。緑谷くんは強敵だから頑張ってね。それじゃ。」

 

「・・・・・・・天倉、ちょっといいか?」

 

どうしたのだろうか?轟くんが何やらモヤモヤした様な表情で俺を呼び止めた。

 

「俺は雄英体育祭では左《親父の力》は使わないと決めている。だけどなお前の試合を見て思った。はっきり言って左の力無しだとお前に勝てる気がしない。 」

 

・・・・・えっと?何を言っているかさっぱりなのですが・・・。それに左は使わないって言っているけど?どう言う意味かよく分からないし。

 

「俺はこの大会で右《お母さんの力》だけで勝利するつもりだ。だが天倉。お前はどう思う?俺はお前の実力を知って初めて勝てない相手だと思った。」

 

「・・・・・・・。」

 

勝てない相手・・・・・・

やめてくれ轟くん。俺はそんな人間じゃない。俺は臆病だし、何かを建前にすぐにでも逃げ出そうとする弱虫だ。

 

「もし、お前と当たるなら決勝だろうな。お前と戦えば負けるかもしれない。それでも俺は右の力だけでもお前を越える。」

 

・・・・・・・・右の力だけで俺を。

 

「最初の方で言っておきたかったが、お前にも、緑谷にも負けない・・・・それだけだ。」

 

轟はそう言った後、そのまま歩き始める。

 

轟くんは言った。右の力だけで俺を越えると

つまり実力の半分で俺を倒すと言いたいのだろう。今、轟くんから嫌な気配が感じる。まるで何かを恨んでいる様な憎しみだ。そんなものが轟くんから出ている。

 

「轟くん、これはただのお節介かもしれないけどさ。俺は轟くんの様に半分の力で相手に勝つ事は出来ない。

だけど相手は常に全力で、100%の力で戦っているんだ。それを半分の力で挑むのって俺だったら後悔する。」

 

「・・・・・・・。」

 

「轟くんが今、何を思っているのか分からない。だけど常に何かをするとき全力でやらないときっと後悔する!だから・・・・なんて言えばいいんだろ、その・・・・・頑張って。」

 

「・・・・・そうか。」

 

俺は轟くんに言いたい事を言い観客席に戻る。

 

俺は麗日さんとの試合で後悔した。だから轟くんには後悔しない様な試合をして欲しい。

俺みたいなヤツより轟くんの様な人が勝ち上がった方が良いのだ。勿論緑谷くんの様なヒーローに相応しい人も勝ち上がって欲しい。

 

・・・・本当に勝って良かったのかな。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

天倉が観客席に戻ると一番に声を掛けてきた人物がいた。それはクラスの中でも比較的常識人の切島であった。

 

「おっ、天倉!倒れたって聞いてビックリしたぞ。」

 

切島が声をかけると他のクラスメイトも天倉に気付き声をかけてくる。

天倉はそんな様子に少々戸惑い気味だ。

 

「いやぁ、凄かったな!天倉あんな隠し玉持っていたのかよ!」

 

「凄かったけど、ちょっとは優しくしてあげてよね。」

 

「あ、いや、その、ごめん。」

 

「気にすんなって。あの瓦礫の量でよく生きていたなー!」

 

「天倉!俺になんかエロい技を教えてk〈グシャッ!!!

 

「峰田ちゃん、ダメよ。凄かったわね。天倉ちゃん。」

 

天倉は褒められ慣れていないのか、それともどうしたら良いのか分からないのだろうか?

先程から戸惑ってばかりだ。

 

すると天倉の方に先程までの試合で戦った麗日がこちらにやってくる。

天倉は麗日に気付くと、複雑な気分になる。それもそのはず彼は麗日を徹底的に痛めつけてしまった。それは意志の有無関係無しにだ。

天倉はどんな事を言われるのだろうか怯えながら麗日の言葉を待つ。

 

「天倉くん・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・いやぁ、凄かったねぇ〜〜〜〜。」

 

麗日の口から発せられたのは天倉が思っていたものと違った。

思っていた以上に麗らかな言葉だった。

天倉がそんな麗日の様子に戸惑ってしまう。

 

「えっ?思っていたのとなんか違う・・・・てっきり罵声を浴びせられるかと思ったけど・・・・大丈夫?頭打っていない?」

 

「ははは、大丈夫だよ。・・・・・あれ?なんか別の意味で心配されている様な・・・・。」

 

天倉はいつもの調子の麗日だと分かり安堵する。試合での怪我は全てリカバリーガールの治癒によって回復しているらしい。

どうやら俺がした事はあまり気にしていないようだ。

 

「あー良かった。てっきり『嘘だッ!!!』って言いながら鉈を振り回してきたり、背後に不動明王を出現させて襲い掛かってくるのを覚悟していたけど・・・本当に安心したよ。」

 

「うん。・・・・・・うん?いや⁉︎流石にそれは無いと思うけど⁉︎って言うか鉈⁉︎不動明王⁉︎」

 

天倉と麗日はいつもの調子に戻り、まるで試合自体が無かったかのように会話している。

会話の内容は色々とおかしい箇所があるが気にしない。

 

「いやいや、結構ありそうだけどなぁ。麗日さんって意外とアグレッシブな所もあr・・・・・・・・・・・。」

 

 

「・・・・・・?天倉くんどうしたの?」

 

 

会話が途切れる。天倉が急に口を閉じ麗日のとある場所を注目する。

麗日の目元、正確には目の周り。うっすらとだが涙痕が残っていた。

 

天倉は歯をギリッと噛み締め顔を下に向ける。すると無意識にだが拳に力が入る。

 

「(・・・くそっ・・何が安心しただ。麗日さんの優しさに甘えて・・・麗日さんに気遣ってもらって・・・・ッ!)」

 

 

天倉の心の奥底から再び様々な感情が渦巻いていく。

罪悪感、哀しみ、苦しみ まるで蛇のように天倉は巻き付き締め上げられていくような感覚に見舞われる。

まるで周りが自分を嘲笑っているかのような、世界が自分を拒んでいるような感覚だ。

 

 

「(やっぱり、俺なんかが勝たなかった方が良かったんだ・・・・。

どうして俺はこんな所にいるんだ・・・。やっぱり俺がヒーローになる資格なんて・・・・・・・・ッ⁉︎)」

 

 

すると天倉の頭の中で何かが響く。まるで何かを削るような、鉄と鉄が擦れ合うような鈍い音が長く続く。

徐々に鳴り止んでいくと思うと次に激しい頭痛が襲い掛かってきた。まるで脳そのものをシェイクされるような、掻き乱されるような痛みに見舞われる。

 

「(がっ・・・・⁉︎ぐっ・・・・⁉︎なん・・・だ・・・コレ・・・・!頭がっ・・・・!うぐっ・・がぁっ・・・・!)」

 

「むっ⁉︎天倉くんどうした⁉︎ひどい汗だ!頭が痛いのかい?」

 

頭痛に見舞われた天倉をすぐ近くにいた飯田が心配する。学級委員長としての責任だろうか、こういったトラブルを冷静に対処しようとしている。

 

「あ・・・いや・・・・大丈夫・・・・。」

 

天倉は飯田や他の皆に心配をかけまいと大丈夫と言いながら額の汗をタオルで拭き取る。

とにかくまずは落ち着いてクールダウンしようと精神統一の要領で目を閉じ、深呼吸をし始める。

 

すると麗日も心配しているのだろうか天倉に声をかける。

 

「ねぇ、天倉くん。大丈夫?やっぱり保《どうして殺したの?》いんじゃないの?」

 

「・・・・・・え?」

 

天倉が目を開けるとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗日の首がバックリと引き裂かれ、血が多量に噴き出ている光景だった。

 

噴き出ている血によって麗日の首から下は、赤黒く染まっており、天倉はそんな様子の見て何も考えられなかった。いや、何を考えれば良いか分からなかった。

 

しかし、麗日はそんな様子を気にも留めない。いや、そもそも自分に何が起こっているのか気付いていないのだろうか。天倉の様子を不思議そうにして見ている。

 

そして、麗日の口が微かに動き始める。

 

 

「どうしたの?」

 

「・・・・・・え?」

 

気が付くとそこは先程まで違った、いや、いつも通りの光景だった。麗日の首も何事もなかったかのように怪我も無かった。

 

天倉が先程見たものは一体なんだったんだろうか、そして先程聞いた声はなんだったんだろう。

おそらく天倉自身はきっと疲れているのだろうと思った。

いや、思おうとしたのだ。

 

先程の光景は思い出したくない。あんな光景はきっと夢だ幻だそうに違いない。

 

 

天倉はそんな思いを無理矢理押さえつけ次の試合を見守る。

 

もうさっきのことは二度と起きないだろうと叶わぬ希望を胸に秘める。

 

 

 

不吉な前兆

 





ホラー要素注意(今更)


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評価の方もよろしくお願いします。


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第23話 前が見えねェ

仮面ライダーアマゾンズシーズン2がいよいよ最終回を迎えました。私的に一番カッコよかったのは仁さんだと思います。救いは無いんですか?
一度でいいから仁さん、七羽さん、千翼の三人家族の団欒を見てみたい。


 

ステージ上で二つの力がぶつかり合う。

一つは氷、まるで津波のように相手に襲い掛かる。もはや氷山と言っても良いだろう。

それに対するは強力な衝撃。その衝撃は観客席にいる人達を吹き飛ばしてしまうかもしれない程の威力だ。しかし強すぎるが故に個性を使用した人物の身体の一部を破壊してしまう諸刃の剣だ。

 

緑谷と轟の"個性"がぶつかり合う。

 

轟が氷結によって氷の波を出現させては、緑谷がその氷を全て超パワーで砕く。その際緑谷の指の骨も砕ける。

氷が現れては超パワーで砕く、それが何度も何度も繰り返される。

 

「すげぇな、爆豪もだけどよ轟も強烈な範囲攻撃ポンポン出してやがる」

 

「ほんとほんと。ありゃ、ずりーよな」

 

切島と瀬呂が強力な個性持ちである爆豪と轟を羨む。

 

「うーん、でも気のせいかな?轟くんの氷なんかどんどん小さくなってるような?」

 

「あぁ?何言ってんだ天倉?小さくって?」

 

しかし天倉が轟の"個性"による攻撃に違和感を感じる。それは轟の氷結の規模が徐々に小さくなってることだ。

天倉は轟と戦闘訓練をした経験からなのか、その事に誰よりも早く気付くことが出来た。

 

(成る程な、使えば使うほど奴の"個性"の威力が落ちていくとすれば何かしら奴は必ずリスクを負っている筈だ。一体なんだ?あいつの弱点は?)

 

爆豪は先程の発言から轟の突破口を探そうと緑谷と轟の戦いを注意深く見る。

 

どう見ても不利なのは"個性"を使うたび身体の部位を破壊してしまう緑谷だろう。

だが緑谷は今まで短期決戦で勝利してきた轟の"個性"の限度を見極める為にわざわざ耐久戦を仕掛けているのだ。

 

しかし緑谷は次第に追い詰められていく。緑谷の"個性"は確かに強力だが、轟はそれを自身の"個性"だけでなく判断力、応用力、機動力、全ての能力を駆使し緑谷を上回っている。

その圧倒的な実力はそこらのプロヒーローを超えているだろう。観客達も轟の実力に驚き、騒つく。

 

それはA組の方も同じだった。しかしその中でも天倉は轟の実力に驚きもせず、別の点を注目していた。

 

━━━何故、右側の力だけにこだわるのか

 

もしかしたら左側の個性は何かしら事情があるのかも知れない、何かコンプレックスがあるのかもしれない。だが、天倉は感じていた。

轟は緑谷を、試合の相手を最初から見ていない。

 

詳しくはわからないが、轟からは怒りを感じる。誰かに対する憎しみを感じるのだ。

轟は自分に右の力だけでも天倉を越えると言った。

彼にとってこの大会はその程度のものに過ぎないということなのだろうか?

 

━━━彼は一体何を見ているのだろうか?

 

天倉は轟のことを心の底から心配する。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

緑谷との戦いも、すぐに決着がつく。

緑谷は俺の氷結を何度も"個性"による超パワーで打ち消してきたがもう終わりだ。自身の"個性"によって右手の指と左腕が使い物にならなくなった今、奴にできることは何も無い。

 

━━━全力でやらないときっと後悔する!

 

……悪いな、天倉。

俺は脳裏に横切った天倉の言葉を振り払う。何故天倉の言葉が出てきたのかはわからないが、俺は後悔なんてしない。俺がやるべきことは奴《クソ親父》を全否定する為に右の力だけで勝つことだ!

 

「終わりにしよう」

 

『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結を━━━』

 

俺は氷結で緑谷にとどめを刺す。氷結によって現れた氷の波は緑谷を

飲み込む……

 

これで俺の勝ちだ━━━━

 

 

 

「どこを見ているんだ……!!!」

 

「⁉︎」

 

瞬間、氷の波は砕け強力な衝撃波が発生した。

不意を突かれ俺は後方へ大きく吹き飛ばされる。それを防ぐために何重もの氷の壁を背後に作りなんとか場外を免れることが出来た。

一体何が起きた⁉︎あいつの両手はもう使い物にならない筈⁉︎

左腕はもうボロボロ、右手の指の骨も全て折れている筈……!

 

まさか!!こいつ!!!

 

「てめぇ……壊れた指で!何でそこまで……!」

 

緑谷は壊れた指で個性を使った。今まで赤く腫れていた指は紫に変色して、どう見ても酷い傷だ。アレは骨がバキバキどころか粉砕骨折はしているだろう。

何故、ここまでして緑谷を突き動かすのか俺には理解できなかった。

 

「震えているよ轟くん。"個性"だって身体機能の一つだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう?」

 

こいつ……!俺の個性の弱点を……。

 

━━━全力でやらないと後悔する!

 

……ッ!どうしてあいつの言葉が!

天倉の言葉が俺の脳裏に何度も横切る。何回も振り払ってもまるで呪いのようにしつこく俺に付き纏う。

何故、今になって天倉の言葉が出てきたのかは全く分からない。

 

「それって左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか?」

 

緑谷は俺に挑発するように言ってくる。その目はまだ、死んでいない。むしろ闘志が伝わってくる程の力を感じる。だが、分からない。

緑谷は何を言っているんだ?俺に何を伝えようとしている?

 

「みんな本気でやってる。勝って目標に近づくために……一番になる為に……半分の力で勝つ⁉︎まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

どうしてだ……どうしてお前は俺の積み上げてきたものを壊しにくる……!

何を考えているんだ……"お前等"は!!!

 

緑谷は俺に向かって全身全霊で叫んでくる。

 

「全力でかかって来い!!!」

━━━全力でやらないと後悔する!

 

すると俺の頭の中に緑谷の声に重なって天倉の声も響いてきた気がした。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「……ん?轟くんが……」

 

「どうした天倉くん?まさか、また気分が悪くなったのか⁉︎」

 

試合を見ている途中、天倉は轟から何かしらの違和感を感じたのだが、その事に声が出てしまい飯田が過剰に反応してしまう。

勿論、天倉自身もうあんな事は起きて欲しくないと思っている。

 

「いや、大丈夫だよ。別に気にしなくても平気だよ」

 

「無理しないでよ天倉くん」

 

すると麗日も天倉の様子を気にかけ心配する。天倉の周りには心配してくれる友人がおり、その事にも天倉は自分は恵まれているなと感じる。

天倉がそんな事を思っていると、少々肌寒いと感じてきた。今の季節は春であり、先程まで暖かいどころか観客達の熱気に包まれ暑いくらいだった筈なのにだ。

 

(寒い……それに轟くんの動きが鈍く?)

 

その原因はステージにあった。正確にはステージの上にいる轟だった。

轟は緑谷に接近戦を仕掛け、氷結を攻撃、防御、場外を防ぐなどに多用し徐々に会場内の気温が下がってきているのだ。

しかも轟の動きは氷結を使えば使うほど次第に鈍くなっていく。

 

人の平均体温は36.5度であり、それは最もバランスのとれたコストパフォーマンスを披露できる体温だ。

しかし轟の場合右側の個性【氷結】によって自身の右半身にも影響を与えてしまい、自身の氷結によって筋肉の柔軟性は落ち、関節の可動域も狭くなる為、接近戦では轟の方が不利だろう。

しかし緑谷の方も同じく既にボロボロになった指を更に悪化させ、不利になっていく。

 

 

それでも彼らは戦いをやめない。

 

天倉が先程から轟に感じるのは怒りでも憎しみでもない。複数の感情が混ざり合った"迷い"を感じる。

緑谷の口から出た「全力でかかって来い!」と言う言葉と天倉の「全力でやらないと後悔する!」の二つの言葉が復讐に燃えていた轟の目を、冷えきっていた心を元に戻そうとしていた。

 

そして轟は緑谷の一撃を受け大きく吹っ飛ぶ。

 

瞬間、轟の脳裏には彼自身の青春が!

今までの父を否定する為に死に物狂いで頑張ってきた記憶が横切る。それと同時に記憶の奥底に今まで忘れていたとある思い出が蘇ってくる。

それは母との思い出、今まで忘れていた轟にとって幸せな時間。

 

━━━いいのよお前は

 

━━━血に囚われる事なんかないなりたい自分に

 

「君の!力じゃないか!」

 

━━━なっていいんだよ。

 

ステージの中央から巨大な炎が出現する。それと同時に氷結によって冷え切っていた会場内に熱風が吹き荒れる。

急な温度変化に観客、生徒、教師達は驚き顔を腕で覆う。

緑谷は目の前の光景に驚きながらも笑みを浮かべていた。

 

ステージ上に立っているのは先程までの轟ではない。

立っているのは過去に囚われず純粋にヒーローに憧れる者の1人。

今の轟焦凍は自身の力を受け入れ100%《全力》の実力を発揮できる状態だ。

緑谷の両手はどう見てもまともに戦える様には見えない。それでも尚彼は笑うまるで平和の象徴の様に。そんな様子の緑谷に轟も不思議と笑みを浮かべていた。

 

緑谷と天倉の言葉は少しずつ、少しずつだが轟の心の氷を溶かしていたのだ。

 

 

2人はしばらく睨み合いが続き、構える。

 

轟は巨大な氷の波を作り出し、緑谷を飲み込もうとする。緑谷はそれを察知したかの様に大きな跳躍を見せるが脚に"個性"を使った影響なのか緑谷の左脚は赤く、ボロボロになっている。そんな事を御構い無しに緑谷は右腕を大きく振りかぶる。それに対し轟は炎を纏った左手を前に突き出す。

これ以上は危険と判断したのか、ミッドナイトとセメントスはそれぞれ自身の"個性"を発動する。

 

すると天倉は轟は何かを呟いているのに気付いた。

 

「ありがとな緑谷、そして━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、ステージの中央から爆発と暴風が起こる。氷結によって冷やされた空気が炎によって熱され膨張し暴風が吹き荒れたのだ。

2つの力がぶつかり合いステージは爆風に包まれ、天倉と麗日の試合以上に原型を留めていないだろう。

 

『それでこの爆風ってどんだけ高熱だよ!ったく何も見えねぇー!オイこれ勝負はどうなって……』

 

爆風による煙幕は次第に晴れていく。そこには無残なステージが広がっており、ステージ中央に佇む人影も見えてくる。

更に、ステージ外で壁に背をもたせる人物の姿もはっきりとしてきた。

 

勝利を収めたのは━━━━

 

 

『み、緑谷くん……場外!轟くん━━━3回戦進出‼︎』

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

結論から言って緑谷出久は重症だ。自身の憧れの為に自らの肉体を犠牲にしたのだ。そして緑谷はあの時、轟焦凍も救いたいと思っていた。他人の事情に首を突っ込むのは普通に考えてみれば余計なお世話なのだろう。これでは馬鹿な事をしたと言われても言い返せない。

しかし、余計なお世話はヒーローとしての本質だ。

 

緑谷出久には余計なお世話を考える力、ヒーローとしての才能があるのだろう。

平和の象徴と呼ばれるオールマイトは緑谷の誰かを助けようとする姿勢、そしてヒーローに相応しい心を自身の個性【ワン・フォー・オール】を継ぐ人間として将来、自分に次ぐ平和の象徴と呼ばれるヒーローになる事を期待し、緑谷を側で育てていくと決めたのだ。

 

(緑谷少年は頑張った。だが、これ以上無茶はさせたくない。)

 

今は駄目でも、ゆっくりで良い。歩くような速さで自分に合った個性の扱い方を、オールマイトのとは違った彼だけのヒーローになる為にも側で育てていかなければならないのだ。

 

 

「あ、緑谷くん。手術成功したの⁉︎」

 

 

「あ、天倉くん……え、何それ?」

 

すると後ろ側から緑谷とオールマイトの知り合いが駆け寄ってくる。天倉孫治郎だ。

何やら両手に大量のカ○リーメイトを抱えているがどう突っ込めばいいのか緑谷には分からなかった。

 

「うん?カ○リーメイトだよ。……ところで━━━」

 

しかし緑谷はとある事に気付いてしまった。それは自分を含めた少人数しか知らない秘密に関する事であり、世間に知れ渡れば超人社会におけるバランスが一気に崩れてしまうかもしれないのだ。

 

 

「━━そこにいる人って緑谷くんの知り合い?」

 

そう。オールマイトは後ろから迫って来る脅威《天倉孫治郎》に気付かなかったのだ。

オールマイトの姿は普段通りのマッスルフォームではなくトゥルーフォームのままだったのだ。

 

(SHITーーーーッ⁉︎しまった!今なら試合中で誰にも目が付かないと思ったがまさかの天倉少年ーーーッ⁉︎事前にマッスルフォームになっておけばよかった‼︎)

 

オールマイトは急な事態に慌て始める。天倉は何だろうこの人?と言った感じにジッと見つめ続ける。

緑谷は天倉の気を晒そうと弁解しようとする。

 

「え、えぇええそ、そうだだよ!この人はなんて言うかどう言えばいいか、僕が中学生の時にそそそその!ヒーローになる為の特訓を手伝ってくれたと言うかアドバイザーと言うかととととにかくけけけ決して怪しい人物ではないわけで、はははは話は変わるるけど天倉くんはどっどどんなヒーローが好きななななのかな⁉︎ぼっぼぼ僕は勿論お、オールマイトだけどね!もももしかしてアレかな!バックドラフトかな⁉︎そっそそそう言えばヒーローオフ会でバックドラフトの肘の位置について熱弁していたひひ人がいて━━━━━━━」

 

「……えぇ」

 

緑谷は何とかフォローしようとするが緊張しているせいかどう見ても怪しさ満点である。

逆に怪しまれないとおかしいぐらいだろう。天倉は緑谷に対してうわぁ……•と言う顔をされながら若干引かれている。

 

オールマイトはどうすればこの場を乗り切れるかを考えているが、一つ気が付いた事がある。

 

━━あれ、天倉少年?自分がオールマイトだと気付いていない?

 

そもそもマッスルフォームのオールマイトとトゥルーフォームのオールマイトは似ても似つかないだろう。

逆にコソコソしていれば怪しまれるだけだ。ならば堂々としていれば気付かないんじゃね?

オールマイトはそう結論に至った。

 

「HAHAHA、失礼。初めましてかな?私は緑谷しょ……くんの知り合いで……」

 

「あれ?もしかしてオールマイト?」

 

「ゴフォッ!!??(何で⁉︎バレた!!??)」

 

駄目だった。と言うかいきなり核心を突かれるどころかを秘密のど真ん中Jackpotだった。

オールマイトは的確すぎる言葉に驚きのあまり吐血してしまう。天倉はいきなり目の前で吐血され、SAN値チェック……は無い。普通に驚きました。

 

「え、い、いや、天倉くん。ななな何を言っているの?どどどこからどう見てもオールマイトじゃなくてただのガイコツでしょ?」

 

(ただのガイコツ⁉︎)

 

緑谷の見苦しい言い訳にオールマイトは少なからずショックを受けてしまう。緑谷自身も憧れのオールマイトにただのガイコツと言うのは流石に後悔したのか表情が苦痛(精神的)に歪む。

 

「あ、いや━━オールマイトが痩せたらこんな感じかなーーーって思ったし、なんかオールマイトが着ていた服だし、なんかサイズも大きすぎるし、笑い方もオールマイトそのものだったし。」

 

(バレてる⁉︎確実にバレてる⁉︎)

 

緑谷とオールマイトは一段と焦る。天倉の才能でもある直感、感受性がまさかこんなところで裏目に出て来るとは思わなかっただろう。2人に天倉の魔の手?が徐々に詰め寄る。

 

もう、このままバラしちゃって良いんじゃね?コイツ誰にも喋らなそうだし。と2人が諦めかけたとき

 

 

「━━━あーーソイツな、俺の知り合い」

 

 

そこに1人の男が声をかけて来た。

その男は片手に袋を提げ、こちらにリズミカルに歩いて来る。外見はパッと見てワイルドな男性というのが一般的だろう。

少なくとも緑谷出久には見覚えのない人物だった。会ったこともなければ喋ったこともない。だが、不思議とその男は胡散臭いように見えてどこか人を惹きつけるようなそんなものを緑谷は感じた。

 

そんな中オールマイトと天倉はその男を知っている!オールマイトは一瞬誰だか分からなかったが、声、仕草によって記憶からとある人物の記憶が蘇ったのだ。

 

「まさか……大河か⁉︎」

 

この男、動物学者で元ヒーロー。

 

「父さん……?」

 

「よぉ。大体3ヶ月ぶり?」

 

そして彼の血縁関係者、天倉の父親の天倉大河は3人の顔を眺め、天倉をジッと見つめると片手を上げ笑みを浮かべる。天倉も父親である大河の顔を眺めている。

緑谷はいきなりの展開にあまりついてこられずにいた。しかしオールマイトは好機だと確信した。

この流れなら自分の正体を誤魔化すことができるとそう思った。

 

今の天倉大河の姿がまるで自分にチャンスを与えてくれた神のように見えた。

 

 

「父さん……何で顔がボコボコになってんの?」

 

 

顔が試合後のボクサーのように、いや顔面没落していなければの話だが。

そしてそんな天倉大河は一言3人に向かって呟く。

 

 

━━━前が見えねェ

 

 





短編━━顔面没落の理由

とある観客席2人の親父がいた。

「焦凍ォ‼︎流石だ!お前は俺を超えた‼︎焦凍〜〜〜〜〜‼︎」

「まぁ、確かにお前のとこの息子はすげぇな。だがうちの息子も負けてねぇぞ。」

「ふん、まぁ少なくともお前より優秀なヒーローになるのだけは確かだな!」

「おっ、そうなるとアイツ《轟焦凍》は万年オールマイトに負けっぱなしの息子にも振り向いてもらえない燃焼系No.2ヒーロー(笑)の上位互換ってことk」

瞬間、天倉大河の顔面にエンデヴァーの怒りの鉄拳がめり込んだ。



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第24話 彼は再び戦う


僕のヒーローアカデミアのopが変わりましたね。opの内容から試験もやるのかな?と思いました。それにしてもグラントリノかっけぇ!



 

「ら"あぁッ!!」

 

「グボォアッ!!」

 

「「ええっ⁉︎」」

 

親子の再会早々、息子である天倉孫治郎が親父である天倉大河の顔面に上段蹴りをぶちかます。

不意打ちの為、大河は反応できず後ろへと大きく吹っ飛ぶ。そんな光景にその場に居たオールマイトと緑谷は唖然とする。

 

「……あ、やべ」

 

すると何故か天倉(※これから息子の方は苗字とする)が今頃になって父親に手を、もとい足を出していたことに気付いた。父を蹴り飛ばして「あ、やべ」はないんじゃないだろうか。そもそもどうして蹴り飛ばしたのだろうか?何か天倉の逆鱗に触れるような事でもしたのだろうかと緑谷は疑問に思う。

 

 

「天倉くん⁉︎一体何を⁉︎」

 

「ああ...いや...顔面を元に戻そうと.........」

 

「いや⁉︎更に凹ませるだけだよ⁉︎って言うか大丈夫ですk……⁉︎」

 

天倉の妙に気の抜けた言い訳に緑谷は思わずツッコミを入れてしまう。そして緑谷が蹴飛ばされたであろう天倉の父である大河を介抱しようと駆け寄ると大河はムクリと起き上がり、顔面没落も見事に治っていた。

まるでギャグ漫画のような展開に緑谷は絶句してしまう。そんな緑谷を放っておくかのように親子の会話は再開する。

 

「痛ってぇな〜、再開早々蹴るなんて酷くね?一応俺、お前の親父だぞ?」

 

「あぁ、いや……うちに連絡をせず、クラスメイトの目の前で変な顔して出てきた父さんに殺意を覚えて……」

 

「物騒だな⁉︎もしかして俺のこと嫌い⁉︎」

 

「うん。どっちか言うとかなり嫌いな部類」

 

「orz」

 

大河は息子からの慈悲のない一言で項垂れてしまう。息子本人はその項垂れている親に冷たい瞳を向けている。

緑谷は本当に2人は親子なのだろうか?と心配してしまう。だが、それ以上にこの冷たい空気に早く逃げたいと思っていた。

 

緑谷はとにかくこの場から逃げるようにオールマイトに視線を向けるが、既にその場にはオールマイトは存在しなかった。

 

(逃げた⁉︎)

 

と緑谷が内心ショックを受けているとすぐ後ろから聞き覚えのある声が、いや先程までここにいた者の声が耳に届いてくる。

 

「わーーーーたーーーーしーーーーがーーーー!偶然通りかかって来た!!」

 

「あ、オールマイト!!(良かった!逃げてなかった!)」

 

「あれ?オールマイト?(さっきの人どこ行ったんだろ?)」

 

先程までオールマイトは天倉の注意が父親に向いている隙にマッスルフォームへすぐに変身し、たまたま通りかかって来たことを装っているのだ。オールマイトと項垂れている大河は天倉にバレないようお互いにサムズアップをする。

 

「いやぁ、緑谷少年に天倉少年!偶然だな。おっと?もしかして君は大河か?久しぶりだなぁ!(彼の名は天倉大河。私の正体を知っている内の1人だよ)」

 

(この人が?って言うか天倉くんと同じ苗字って事は!)

 

オールマイトはあたかも偶然出会った様に挨拶をしてくると同時に緑谷に耳打ちをする。今までファンやメディアへの対策はしている為、この程度の演技はオールマイトにとってキーボードを打つよりも簡単な事だろう。

 

「おぉ、そうだな。何年ぶりだったか?まぁ、いいや。そんな事より孫治郎よぉ〜、機嫌なおしてくれって〜。お前の為にわざわざお土産持って来たんだぜ?」

 

と言いながら大河は先程から手提げていた袋を天倉に手渡す。天倉は袋の中を覗いた瞬間、何故か硬直してしまう。

だが、そんな天倉を放っておくかの様に緑谷はとある事を思い出し大河に質問する。

 

「あ、あの!天倉くんからヒーローをやっていたと聞いたんですけど!」

 

「お?確かお前はみ、み……「緑谷です!」そうそう緑谷か。俺の名前は天倉大河で孫治郎の父親だ。一応、昔は【フィッシュタイガー】って名前のヒーローをやってて今は動物学者をやらせてもらっている。まっ、よろしくな」

 

大河が緑谷に自己紹介を終えると緑谷はワナワナと震えだす。

 

「ま、間違いない……!新人時代ではプロ並の活躍を見せ、一時期ではオールマイト以上の実力を持つと噂されたにも関わらずヒーローとしての活動期間は10年にも満たない幻のヒーロー!!ここここんなところで会えるなんて……!本当に生きてて良かった……!!!」

 

緑谷は感動のあまり両目から涙と言う名の滝が溢れ出る。その涙はこの場が水没させてしまいそうなほどの量だ。さすがの大河もその涙の量に少々驚いてしまう。

 

(あれー?何だろう?なんか釈然としない……)

 

それに対してオールマイトは自分と緑谷が初めて会った時以上に感動している事に何やらモヤモヤした気分に陥っていた。と言うかぶっちゃけ悔しかった。

 

そんな中先程から天倉が黙ったままと言う事に緑谷は気付く。未だに袋の中を覗き硬直している。一体袋の中身は何だろうと緑谷も覗くと天倉と似た様に緑谷も硬直してしまう。

そして天倉がやっと袋の中に手を突っ込みソレを取り出す。

 

━━ぬちゃり

 

そんな音を立てて袋の中から取り出したのは細長く流線型の形をしており、白と青のコントラストが美しく光に照らされているのかキラリと光っている。

つまりは基本的に一生の間水中生活を営み、えら呼吸を行い、ひれを用いて移動し、体表はうろこで覆われほとんどの種は外界の温度によって体温を変化させる変温動物である"魚"だった。

 

「……ハマチだ」

 

天倉はボソリと呟く。

気の所為か天倉の周りにオーラ的なものが見える。

とにかく天倉は今物凄く怒っていることが目に見えて分かる。そもそも息子へのお土産が生魚と言うのはどう考えてもおかしいだろう。

 

「気に入ってくれたか?お前の為に釣ってきたんだぞ?美味そうなサバだろ?」

 

「……サバじゃねぇ!!!」

 

天倉の魂の一言が飛び出る。

まずい。どう見てもまずい。このまま天倉が煽られると「イライラするんだよ」と言いながら父親に襲いかかってしまうのではないかと思う。

 

「そっ、そう言えばさ!今試合はどうなっているの⁉︎手術を受けてたから分からないんだけど!いっ、今すぐ知りたいんだけど良いかな!」

 

「そ、そう言えば緑谷少年は知らないんだったな!わ、私も色々都合が重なって見てなかったんだ!HA、HAHAHAも、もし良かったら教えてくれないか?」

 

とにかく天倉の気を紛らわす為に緑谷は試合の状況を天倉に聞こうとする。オールマイトは緑谷の発言に助け舟を出しこの場を乗り切ろうとする。この質問はあながち嘘では無いので焦る必要はないが、天倉がどう見ても不機嫌な為、緑谷はビビってしまう。オールマイトまでビビることは無いと思うが。

 

「……飯田くんと上条くんとの試合は飯田くんがレシブロで一気に場外に押し出して飯田くんの勝ち。上条くんの個性だと触れなきゃ発動しないからね、短期決戦で終わったよ。」

 

「成る程、飯田くんの機動力なら上条くんの個性を封殺できるかもしれない。だけど上条くんの個性は触れた者の個性を打ち消すから一瞬でも触れられるとアウトなんだよなだったらそこは足払いとかの蹴り技で怯ませて隙を作れば」ブツブツブツブツ

 

「あのーちょっと?」

 

緑谷は話を聞いた途端にブツブツと呟く。天倉が呼びかけるが反応は無い。大体4回辺り呼び掛けた後、緑谷は我に返ってやっと反応した。

 

「あっ、ああゴメン。続きお願いしても良い?」

 

「別に良いけど……次の爆豪くんと切島くんの試合は前半切島くんの硬化で爆豪くんの爆破が、後半からカウンターの爆破で一転。怒涛の爆破で爆豪くんの逆転勝ちだったよ」

 

「かっちゃんが……成る程、切島くんの個性はシンプルだけどそれゆえ強い。だけど、かっちゃんの個性は汗を掻けば掻くほど爆破の威力が増していく」ブツブツブツブツブツブツ

 

と再び緑谷は考えに没頭してしまう。天倉は声を掛けようとしたが同じ事を繰り返すのだろうと察し諦めた。

そんな様子を見て、大河は腹を抱えながら大笑いしている。

 

「あッはっはっはっはっ!!!おもしれぇなアイツ!緑谷だっけ?なんて言うかちょっと抜けているところお前に似ているな!」

 

「まぁな!だが抜けているところはお前だけには言われたくないな!」

 

天倉は後ろの大人2人の会話に頭を痛める。天倉はオールマイトと父親が知り合いと言う事に驚いたが、先程の様子を見ると何故か納得してしまう。

「ダメだこいつら早くなんとかしないと」と言う考えが脳裏を横切る。

 

すると大河が気になる発言をする。

 

 

 

「いやぁ、お前の"個性を継承した"のがこんな面白いヤツだとは思わなかったわ。こりゃ将来すげぇヒーローになるな!」

 

 

 

「……?父さん"個性を継承した"ってどう言う事?」

 

 

 

 

━━━ピシリ

 

 

 

とそんな音がしたように思えた。天倉はいきなり自分以外の全員が気まずそうにしている事が分かる。

緑谷は視線を自分から晒し、オールマイトはゲフンゲフンと咳払いをし、この気まずい雰囲気を作った張本人である大河は「あ、やべ」と言った感じに手で口を押さえていた。

 

「……父s「あ、あーーーーーーー!!!そう言えば!今、試合はどんな感じなんだっけ⁉︎もうすぐで天倉くんの番じゃ無いの⁉︎」え?まぁ確かにs「そ、そうだな!!!ほら、カ○リーメイトを食べると良い!」いや、ソレ元々緑谷くんの為に持ってきた物なんですk「それじゃあぼ、僕は観客席に戻っているからね!!!」

 

緑谷とオールマイトは必死にはぐらかすようにその場から離れようとする。

すると緑谷が何かを思い出したようにこちらへ駆け寄ってくる。

 

「次の試合、応援しているから!!!」

 

緑谷はそう言ってA組の観客席に戻ろうと

 

「ちょっと待って。」

 

したが天倉に引き止められた。緑谷の身体中にドッと汗が噴き出る。

まずい。確実にまずい。緑谷の頭の中はこの場をどう乗り切るかでいっぱいだった。

たとえ相手が仲の良いクラスメイトだとしてもオールマイトとの秘密、自身の個性の事は知られてはならない。そんな事を思いながらこれから天倉の口から出てくるであろう言葉に対して心臓がバクバク鳴る。

 

 

「緑谷くんはさ、試合で負けたのになんでそんなに明るくできるの?悔しくはないの?」

 

「え?」

 

天倉の口から出てきたのは予想外の言葉だった。てっきりオールマイトの事や自分の個性について聞いてくるものかと緑谷は思っていた。

 

しかし緑谷は不思議と呆気に取られず天倉に言葉を返す。

 

「……そんな事ない、僕だって本当は悔しいよ。……だけど僕は憧れのヒーローになる為に、一生懸命に戦ったんだ。僕だけじゃない他の皆だってそうだよ。……だから今は前を向いて歩くべきなんだ。」

 

「…………」

 

「え、えっと……そっ、それじゃあ僕!観客席に戻るから!」

 

緑谷は逃げ出すように観客席へと走る。それを見届けるように天倉は緑谷の背中を見つめ続ける。

オールマイトはそんな彼の肩にポンと手を置く。

 

「確かに緑谷少年の言う通りだな。君も何か試合で感じるものがあったんだろう。天倉少年、これから始まる試合を楽しみにしてるぞ」

 

オールマイトは天倉に元気付ける言葉を贈りそのまま緑谷とは反対方向へ歩き始める。

この場に残ったのは親子2人だけだった。今まで大河は息子と接する機会が少なかった為どう話せば良いのか少し考えていた。

だが、大河の予想を裏切るように天倉の方から話しかけてきた。

 

「緑谷くんは凄いよねまるで太陽みたいに俺を照らしてさ……俺とは正反対だよ」

 

「……次の試合頑張れよ」

 

大河は天倉の頭を慣れない手つきで撫でる。その光景はまさしく父と子だった。

天倉はそのまま歩き出し、控え室へと向かう。大河は息子の背中が悲しそうに見えた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「良いんですか?放っておいて仮にも親なんでしょう」

 

まるで待ち伏せするかの様に大河の目の前に相澤が現れる。大河はフッとまるで自身をあざ笑うかのように言う。

 

「今までアイツを放っておいた俺が今更、父親面できねぇよ。」

 

大河は相澤の横を通り過ぎようとするが相澤は大河の肩を掴み逃さないようにする。

 

「悪いんですけど身内の問題も俺に押し付けるのは御免こうむります。……息子の面倒くらい自分で見てください。」

 

「言ったろ?アイツ《孫治郎》を支えてやってくれってさ」

 

大河は相澤の掴んできた手を取り払う。

先程までのヘラヘラとした大河とは違う。空気がピリピリするのを相澤は感じる。

 

「……クソ親ですね」

 

「……知ってるよ」

 

大河は再び歩き始める。彼の目には哀しみを感じさせる。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「「あ」」

 

 

天倉が控え室の扉を開けるとそこには見知った人物がいた。金の長髪でいつも被っている(今は被っていない)黒の三角帽子がトレードマークの霧雨魔理沙だ。

そして天倉は先程まで拳藤と魔理沙の試合だったという事を思い出した。

 

「あ、そうかさっきまで試合だっけ」

 

「あ、そうかってお前な。……でお前はなんで片手に生魚を持っているんだよ」

 

魔理沙に指摘された天倉は気まずそうにして視線を逸らす。わざわざ捨てる訳にもいかず本人も困っており、改めて父親に殺意が湧いてしまう。

 

「全く、私への慰めのプレゼントにしては冗談きついぜ」

 

「……あ……そうか試合に負けて」

 

天倉は魔理沙の台詞から先程の試合に負けてしまった事を察した。天倉は直ぐに魔理沙に謝罪する。

 

「んだよ、別に気にしてなんかないぜ。そもそも私の目的はヒーローになる以前に個性を極める事だからな体育祭なんてあくまで通過点に過ぎないから負けても悔しくないぜ」

 

魔理沙は先程の試合で負けたにも関わらず、笑みを浮かべていた。天倉はそんな様子に安堵するも彼女からとあるものを感じ取ってしまう。

 

「本当に悔しくないの?」

 

「……なんだよいきなり」

 

彼女は強がりを見せて他の感情を蓋をするように抑えてる。本当は悔しくてたまらない筈なのに無理して笑顔を作り平静を装っている。そう天倉は感じたのだ。

 

「さっきも言ったろ、別に悔しくなんかないって。……ただなぁ、香霖の目の前で負けたのはちょっと嫌だったなぁー」

 

明るい表情を見せていた彼女は徐々に笑顔を見せなくなり俯いていく。気のせいだろうか拳に力が入っているように思えた。

 

「約束したんだよな……絶対に親父を見返すような凄い活躍を……見せてやるって……最初の競技じゃあ微妙な順位だったし•••騎馬戦じゃあ目立った活躍もできなかった。そんで持ってトーナメントじゃあ1位になれなかった……なんだよ……私……駄目じゃんか……」

 

彼女は天倉から表情が見えないように視線を逸らすが体が震えているのが目に見えて分かる。

すると彼女は天倉に頼み事をしてきた。

 

「なぁ、お前の試合までにちょっと時間あるだろ……ちょっと部屋を貸してくれよ。大丈夫、直ぐに済むからさ。」

 

「……」

 

天倉は何も言わずに控え室から出る。

そして部屋の中から感情に任せ絞り出すような途切れ途切れの言葉に嗚咽が混じって掠れて、聞き取るに堪えない声が漏れ出す。

天倉はそんな声を聞きながら天井をただ見つめている。

 

 

「俺って何でヒーローになりたいんだっけ……俺にヒーローになる資格も無ければ、戦う資格なんて━━━━

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

『第2回戦最後の試合だ!!勝つのは一体どっちだ⁉︎』

 

プレゼント・マイクの声が会場に響き渡る。その声に応えるように観客達もヒートアップしていく。

 

『それじゃあいくぜ!これまでほぼ完封で勝利!実力は文句なし!!だけど口調古臭くね?ヒーロー科 常闇踏陰!VS!!』

 

『相手は倒すべし慈悲はない。ヒーロー科 天倉孫治郎!!』

 

「もう突っ込まんぞ。」

 

天倉はプレゼント・マイクへのツッコミはこれ以上無駄だと悟ったのかツッコミの気力を既に無くしていた。

天倉は深呼吸をし、改めてこれから戦うべき相手を見据える。常闇と天倉の2人はお互いに対峙する。そして試合のゴングが鳴る

 

『 S T A R T !! 』

 

 

天倉はこの戦いで一体何を掴むのか分からない。それでも尚

 

━━彼は再び戦う

 





いい加減更新ペースを早めないといけない気がする•••••。

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第25話 覚悟はいいか?俺はできてる

あぁ、雄英体育祭編が長く感じる・・・・。




「黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『アイヨ!!』

 

「いきなりか⁉︎」

 

常闇は"個性"を発動させ天倉に攻撃を仕掛ける。黒影の伸びた手は天倉へと向かっていくが初手は回避される。

 

「まだだ!攻撃の手を休めるな!」

 

だが、常闇の攻撃は終わらない。黒影の手は伸縮自在であり、天倉をしつこく何度も追いかける。

天倉は黒影の連続攻撃を避け続ける。

 

「そこだ!黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『アイヨ!!』

 

黒影の天倉の足を払うように攻撃する。すると天倉の体勢が崩れてしまう。

常闇はまるで待っていたと言わんばかりに黒影に指示を出す。

 

「決めろ!ヤツを場外へ押し出せ!!」

 

『ッシャア!』

 

バランスを崩した天倉へと手が伸びる。このまま黒影の攻撃を食らってしまえば場外へ押し出されてしまうだろう。

あと数十㎝で天倉に手が届く━━━

 

「うおっっと!」

 

かと思いきや天倉は身体を捻りながら後方へと宙返りをし見事に黒影の攻撃を躱す。

あの状態から攻撃を避けたからなのか観客達がおおっと騒つく。

常闇は顔をしかめながら距離を取る。

 

「やはりそう簡単にはいかないか・・・」

 

『おいおい、すげぇ勢いで攻撃すんな⁉︎それを全部避ける天倉もすげぇけどな!!』

 

『天倉の個性無しでの身体能力はクラスの中でも1、2を争うほどの実力者だ。あれくらい造作もないことだ』

 

「黒影《ダークシャドウ》深追いはするな。ヤツは近距離では強敵だが俺たちが得意とする距離ならばヤツを倒すことが可能だ。」

 

『マッタクシャーネーナ』

 

常闇は黒影に指示を出し天倉への攻撃を一旦中止させる。常闇は天倉の個性を警戒している。麗日との試合で見せたアレは己の個性と同じく闇《暴走》の危険性があるのだ。

自身と同じピーキーな個性を持つ者だからこそ分かる。天倉が個性を使った時初めて激戦が始まるのだと。

 

その試合を見守るA組は勝つのは常闇と天倉のどちらになるのか話題になっていた。

 

「なぁ、どっち勝つと思う?」

 

「天倉じゃね?麗日のときヤバかったからなぁ」

 

「いやいや常闇だろ、中距離じゃあ無敵だぜ近づくことすらできねーよ。」

 

クラスメイト同士どちらが勝つか気になりA組の観客席は少々騒つき始める。B組もつられるかのように生徒同士で話し合う者達もチラホラ出てくる。

 

「全く、A組はこれくらい黙って見ること出来ないのかな?」

 

「でもあいつらの内片方は拳藤と当たるんだろ。気になるだろ」

 

「ふーん、そう言われてるけど本人はどうなの?」

 

物間は拳藤へと問いかける。拳藤はうーんとしばらく考える素振りを見せた後

 

「それはやっぱり━━━━

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「黒影《ダークシャドウ》!!近づけさせるな!」

 

『コレデナンドメダヨ!』

 

天倉と常闇の戦いは常闇が優勢となっている。天倉は先程から黒影の攻撃を避け続け、ステージの端に追い詰められ、距離を取られの繰り返しだった。

かれこれ約5分はやり続けている。

 

「ねぇ、デクくん。これって天倉くん不利だよね」

 

麗日が緑谷に問いかける。天倉と戦った麗日だからこそ分かる。天倉は近接戦に特化しており勝てる者はそうはいない。だが、あくまで近接戦においてだ。常闇の"個性"は中距離において無敵の性能を発揮する。

 

「うん、麗日さんの言う通りだ。天倉くんはカウンターを中心としてそこから派生技に繋げるコンボを得意としている。けど常闇くんの黒影にはカウンター技は勿論、ほとんどの物理攻撃も効かないと思う」

 

黒影の弱点である光を生み出せるのは爆豪、上鳴、轟辺りだろうだが天倉には光を生み出す術は無い。

天倉が勝てる確率はおそらく半分にも満たないだろう。

 

(・・・・駄目だ。黒影には関節技とか絶対効かないだろうし、だからと言って個性を使っても耐久戦持ち込まれるだろうな)

 

天倉自身もこのままでは常闇に勝つ事が出来ないと感じ始めている。

 

━━私/俺は上に上がる‼︎

 

だが突如として天倉の脳裏にとある台詞が横切る。体育祭がまだ始まっていなかった時の台詞、とある人との約束。何故このタイミングで思い出したのかは分からなかった。天倉はこの体育祭でヒーローに何故なりたいと思ったのか分からなかった。

だが、もしかするとこの体育祭でヒーローになりたかった理由を見つける事ができるのではないのか?と戦っていく内にそう思ってきたのだ。

ならば、やる事は決まっている。

 

(戦って、勝って、見つけてやる。俺の原点《オリジン》を!)

 

天倉はそう心の中で言い聞かせると常闇へと向き直り、構える。

 

「あれは⁉︎」

 

「構えが変わった⁉︎」

 

だが天倉が見せたのは麗日との試合で見せた構えと違った、また別の構えだった。

左手の拳を目より少し高い位置にし、肩でアゴを隠すようにしており右腕は肘を右脇腹にくっつけ、拳でつねに顔面をガードするように軽く前かがみになり両膝は軽く曲がって、リズムを刻むようにステップを踏むようにしている。

 

「ボクシングのフォームか⁉︎」

 

天倉が見せているのはボクシングのフォームであり、シュッシュと口から擬音のような声を出しながら手足を動かしシャドーボクシングを行なっている。

 

(なんだアレは・・・・だが警戒するに越した事は無い)

 

常闇は麗日との試合で見せなかった構えだったのか黒影を出し警戒しているが、無意識なのかジリジリとその場から引きずるように下がってしまう。

その時、待っていましたと言わんばかりに天倉は構えたまま常闇に向かって走り出す。

 

「向かってくるか・・・・黒影《ダークシャドウ》ッ!!」

 

『アイヨッ!!』

 

それに対し常闇はやや焦りながらも黒影に指示を出しながら攻撃を命じる。

黒影の伸縮自在の手が天倉へと伸びていく。

 

━━フッ

 

「なっ⁉︎」

 

がその攻撃は天倉には当たらなかった。いや、避けていたのだ。天倉は黒影の伸びた手のすぐ横へと移動していたのだ。

天倉は攻撃に当たりそうになった瞬間自身の重心をずらしつつ短い距離だが、すぐ横へと素早く移動したのだ。

 

 

【スウェイ(スウェー)】

 

ボクシングで相手の攻撃を避ける防御方法の一つ。顔面を狙ってきた攻撃を上体を逸らすことによってかわすものである。

 

本来スウェイは上体を後ろへ逸らし回避するものであり左右などの側方への回避には使わないが、そこは天倉が独自にアレンジ、もしくはそう教わったものなのだろうか本人自身気づいていないようだが。

 

「くっ!間合いを詰めさせるな!」

 

『アイヨッ!!!』

 

黒影は天倉へ向かって突進を仕掛ける。が、天倉は上半身を後ろへと傾けながら身体を地面に擦り付けながら滑り込みながら黒影の攻撃避ける。要はスライディングによって攻撃を回避したのだ。

 

『アアッ⁉︎』

 

「不覚ッ‼︎」

 

そして天倉は黒影の攻撃を掻い潜り、常闇に接近する。天倉の前には障害物は何も無い。

 

『おおっと‼︎天倉、常闇の猛攻を掻い潜り懐に入ったーーーー‼︎』

 

「くっ・・・!(天倉の構えから察するにボクシング系の攻撃をしてくる、黒影《ダークシャドウ》を今から戻すのは間に合わない。ならば前方からの攻撃を防ぐ為に防御を!)」

 

常闇は黒影を戻すのは無駄だと分かったのか目の前で両腕を交差させ防御の体勢をとる。

それに対し天倉は体勢を低くし、地面を蹴るようにし駆け腕を後ろへと持っていく。

 

そして━━━

 

バアンッ!!!

 

常闇の顎に掌底が決まった。

 

「・・・・うん?」

 

A組の誰かの声が口から漏れた。天倉はそんな事を気にせず攻め続ける。

掌底によって怯んだ常闇の頰に張り手、もう片方の頰にも張り手。そしてトドメの張り手━━常闇は顔からきた多数の衝撃によってよろめいてしまう。

 

 

【張り手尽くしの極み】

 

距離を取った相手に対し高速で接近した後、掌底で相手を浮かばせ追撃で連続の張り手を行う技だ。

しかし天倉の場合、距離が近すぎたのか完全には決まる事はなかった。

そんな攻撃を受け、よろめく常闇は思った。

 

(・・・・思ってたのと違う)

 

そう、先程から天倉が見せていたのはボクシングのフォームだった。しかし出てきた技はまさかの張り手である。勿論、張り手を使うボクシングなんて聞いたこともない。

 

『お、おーーーーっと!!!常闇よろめいたぁーーーー!っていうかなんでボクシングのフォームから張り手っておかしいだろ!!!』

 

『あいつ・・・・まさか・・・』

 

「(やられた・・・・だが、既に呼び戻しておいた!)黒影《ダークシャドウ》!!!」

 

『オウヨッ!』

 

常闇は先程、攻撃を食らっていた最中に黒影を体の中へと戻しておき、いつでも仕切り直しをできるように準備をしていたのだ。

常闇と黒影は改めて天倉へと向き直る。

 

「何ッ!!!」

 

『イッ、イネェ!!!ヤツガイネェ‼︎』

 

が、常闇達の目の前には天倉は既に消えていた。天倉の姿は影も形も無い。が常闇は感じる、天倉から放たれる威圧感を、プレッシャーを感じるのだ。

そのプレッシャーを放つ元の位置は

 

「ッッッ!!!まさか⁉︎」

 

自分の背後、間合いは20㎝も満たないほどの距離だった。天倉は自分に気付かれない内に背後に移動していた。

だが、そんな天倉は謎の構えをしていた。グググと上半身を捻るように斜め後ろへ向け、右腕を大きく上へと突き出している。

 

常闇は天倉の謎の行動により驚異の念を抱かせてしまう。常闇はしばらく動かなかった、いや正しくは"動けなかった"。

 

(な、なんだ天倉は何をしようとしている⁉︎動けない、俺は天倉の威圧感に支配されているのか⁉︎)

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

 

常闇はまるで何かに縛られたかのように動くことすら叶わなかった。そして天倉の変化が訪れる。

 

「・・・右前腕部限定"個性"発動」

 

天倉の右腕に緑色の装甲が纏わる。更に天倉の右手からギリギリという音が聞こえる。

常闇の身体中にどっと汗が噴き出る。天倉の動きは不気味なほどに動かない。今の自身は隙だらけの筈なのに何故攻撃を仕掛けてこない?いや、自分も何故攻撃をしない?そんな疑問符が頭の中で飛び交う。

 

「俺の・・・必殺技・・・・part・・・・4・・・!」

 

お互い動かず何十秒たっただろうか、天倉は構えを解かずまだ溜める。

常闇は動かない。彼は完全に天倉のペースに飲まれている。もはや洗脳された緑谷のように外部からなんらかの力が加わらなければ動けないだろう。

 

『ナニヤッテンダ!!シッカリシロ!!』

 

「!!!」

 

だが、彼には頼もしい相棒《黒影》がいた。常闇はやっと正気に戻った。黒影に呼びかけられ先程までとは違い、一気に冷静な思考に戻る。

 

ところで話は変わるが拳の破壊力はどう変化するのだろうか?ただ単純に筋力が高ければ破壊力もアップするだろう。特に握力とそれ以外にも脱力によって筋肉をリラックスさせスピードを出させる方法もある。後は拳に全体重を乗せる力任せな方法もある。

ならば全部を組み合わせたならどうなるだろうか。

 

━━━握力× 体重×スピード=

 

刹那、常闇の顔前には拳が迫ってきていた。いつの間に天倉が殴ってきたのかはわからない。ただ、分かるのは不思議と周りがゆっくり見え、思考が速く動く。

 

「強・・・!速・・避・・・無理!受け止める・・・無事で!?できる!?否・・・・・・!!!」

 

━━━破壊力

 

常闇は1秒も満たない時間でただ、一つの行動に移る。

 

「黒影ォォォォォォオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

ズドンッッッ!!!!!!

 

 

 

轟音が鳴る。

その音の発生源はステージ上の2人の高校生からだ。1人は殴り終えた姿勢を維持している生徒、そしてもう1人は

 

「がっ・・・ぐっ・・・・・おおおぉぉぉ・・・」

 

天倉の直線上、彼からやや離れた位置にいた。だが、膝をつきながら悶絶して腹部を抑えているのが分かる。

 

(ぐっ・・・・・黒影《ダークシャドウ》が盾になったおかげでダメージは無いが、衝撃がそのまま貫通してきたみたいだ・・・・!)

 

あの一瞬で常闇は黒影を盾にすることによってダメージを大きく軽減することが出来た。しかし、天倉の一撃は黒影ごと常闇を吹っ飛ばしたのだ。

 

『ま、マジかあああああ!!!?ほぼ無敵だった常闇、まさかのダウーーーン!!天倉すげぇな!ほぼ個性使わないでアレって、天才かあいつ⁉︎』

 

プレゼント・マイクは天倉を絶賛する。天倉は右腕に個性を使っただけでそれ以外は素の力であるためだろう。先程と比べてハイテンションになっている、いやハイテンションなのはいつもの事だろう。

 

「す、すごい。まさか弱点の光を突かず、常闇くんを追い詰めるなんて!天倉くんの強さの秘訣は個性じゃなくて身体能力つまり基礎となる部分に直結しているのか、だとすれば練習メニューを見直した方が良いのか天倉くんに直接聞いた方が良いのか、そもそも練習メニューは個人差もあるから」ブツブツブツブツブツブツ

 

「か、カッケェ!!!天倉すげぇ!漢らしいじゃねぇか!くぅ〜痺れるぜ!」

 

「天倉って、個性を使う以前に化物じゃんか・・・・」

 

観客の一部がざわつき始める。がそれを鎮めるかのように声が響く。

 

『天才じゃあないな。むしろその逆だ。』

 

『え?何どういう事?』

 

その声の正体は相澤であった。相澤は天才というのを否定した後淡々と話を続ける。

 

『さっきまでの天倉の戦い方を見たか?ボクシングのフォームをしていたのにも関わらず出してきた技はどれも統一性の無いもの、バラバラだった。おそらく天倉は格闘術に関してど素人だ。』

 

『えっ⁉︎そうなの⁉︎』

 

『そうだよ。天倉のさっきの攻撃は溜めも長すぎるし、威力があり過ぎて負担がかかる。おおよそ自身の個性で腕をグローブのようにガードしたんだろうが力加減がダメだな。麗日との試合で出さなかったのは個性での相性もあっただろうが一番の理由はそこからだろうな。』

 

相澤は説明を終えると眠るかのように静かになる。それを天倉は聞き取ると溜息をつく。

 

「・・・相澤先生なんで分かっちゃうかな・・・あぁ腕が痺れる・・・」

 

天倉は反動で麻痺している右腕を抑える。だが天倉の表情からまだ余裕だと言うことがわかる。

 

(・・・・どうやら甘く見ていたようだな。俺は最低限の力で勝とうとしていたが、そう言う訳にはいかないようだ。)

 

常闇はなんとか立ち上がりながら1人静かにそう思う。

 

(ヤツからこの戦いは絶対に負けられないという覚悟を感じる!ヤツにはやると言ったらやる・・・・【凄味】があるッ!!!)

 

『おおっと⁉︎常闇立ち上がった!!!まだまだ勝負は続くぜ!!!』

 

常闇は黒影を出現させ再び天倉と対峙する。常闇の目には先程までとは違う、闘志が感じられる。

 

「黒影《ダークシャドウ》、俺たちは飢えなければならない。もっと貪欲に、自分自身を高める為に"飢えなければ"勝てない。ただし、天倉よりもだ。ヤツよりもずっと"飢え"なくてはならないッ!!」

 

 

すると黒影が常闇の全身に纏わりつく。黒影の顔は兜のように常闇の頭に被さり、黒影の腕は鉤爪のように常闇の腕にぴったりと付く。その姿はまるで翼を失った鴉の化物だ。

 

 

 

「ヒーローショーでお前にやられた時、弱点である近接戦を克服する為、お前と渡り合う為に開発した技だ。俺自身に黒影《ダークシャドウ》を纏わせることによって近接戦をカバーすることが可能になった。まだ、未完成だがな。名を付けるとするなら

━━━━"深き闇ヨリ出デシ鎧殻 "」

 

「長っ⁉︎ネーミングセンスおかしくない⁉︎」

 

「フッ、お前だけには言われたく無いな・・・・・個性を使って来い。それも全身にだ」

 

常闇は天倉を睨みつけ挑発するように個性を使うように促す。天倉は常闇の挑発について考える。常闇の自信からくるものなのだろうか、または罠なのだろうか、あるいは━━━

 

「使わなければ━━━待つのは敗北のみだ!!」

 

「!」

 

常闇は黒影を纏った状態でこちらに接近してくる。天倉はやや遅れて反応し距離を取る。

が常闇の方が一枚上手だった。常闇が纏う黒影の手が天倉へ伸びる。天倉はそれをガードしようとするが右腕の痺れがまだ取れていない為、片手だけでガードするしかなかった。天倉は徐々にステージの端へ追い詰められていく。

 

『おぉーーーーーーっと!!常闇の新技で天倉ピンチか⁉︎』

 

「ぐっ・・・まだだ!!!」

 

天倉は先程見せたボクシングのフォームを構える。そして常闇の猛攻をバク転、スウェイ、スライディング等のあらゆる方法で回避する。

 

「接近戦でくるか!だが片腕は使用不可だ。まともに戦う事は困難の筈だ。」

 

「元より片腕だけで戦おうとは思っていない!」

 

そう言うと天倉は低姿勢で常闇に接近した後、相手に向かって膝を突き出すように蹴りを浴びせる。が常闇はそれをあっさりと防御する。

 

「まだだ」

 

そう言いながらもう一方の脚で常闇を蹴る、防がれる。片方の脚で再び蹴る、防がれる、蹴る、防がれる。それを何度も何度も繰り返す。天倉の攻撃は徐々に激しさを増していく。

 

「首肉《コリエ》!」

 

首に狙いを定め蹴りを放つ

 

「肩肉《エポール》!」「背肉《コートレット》!」「鞍下肉《セル》!」「胸肉《ポワトリーヌ》!」「もも肉《ジゴー》!」

 

肩に、背中に、心臓部に、腿部に次々と蹴りが絶え間無く連続で放たれる。

そして天倉は右脚に力を溜めるように構えた後、一気に

 

「━━━羊肉《ムートン》ショット!!!」

 

ズドドドドド!!

 

常闇の身体に強力な後ろ蹴り《ソバット》を連続で叩き込む。常闇の体は連続蹴りの衝撃によって後退する。

 

「・・・・やるな」

 

が常闇は全ての蹴りを防御していた為ノーダメージであった。だが天倉はそんな様子の常闇を気にせず再び接近する。

 

「性懲りもなく仕掛けてくるか!」

 

常闇は再び腕を伸ばし攻撃を仕掛け、天倉は左腕を身体の前に出すようにガードの構えをする。しかし常闇の攻撃は予想以上だったのか天倉の左腕の防御を破り、体制が崩れてしまう。

 

「・・・・足元がガラ空きだ」

 

瞬間、天倉は右手を軸にし円を描くように常闇に足払いをかける。

 

「な・・・⁉︎」

 

「首肉《コリエ》フリット!」

 

天倉は低姿勢のまま脚を真上、常闇の首元を狙うように蹴る。偶然か必然か天倉が蹴りを入れた場所は丁度、黒影を纏っていない部分でもあった。

すると常闇の身体に纏わりついていた黒影は常闇の身体の中に戻っていくように消えてしまった。

 

「ぐっ・・・やはり改善すべき部分があるか!」

 

「っしゃあ!」

 

天倉は打ち上げた常闇に追い打ちをかけるようにその場で身体を捻りながら跳躍、そして身体を縦回転させ常闇の背中に浴びせ蹴りを叩き込む。そして常闇は地面へと叩きつけられる。

 

【アルファドライブ】

 

空中に打ち上げた後、敵に対して強烈な一撃を浴びせて地面に叩きつける技

 

「ぐおっ!!」

 

「まだまだぁ!!」

 

だが天倉は更に追い打ちをかけるように右脚で常闇の蹴り上げ、更にもう一方の脚で上へと蹴り上げる。

 

【ベータドライブ】

 

アルファドライブから繫がるさらなる一撃、叩き落とした敵を再び蹴り上げ空中へ打ち上げる技

 

「がっ・・ぐあっ⁉︎」

 

「これでっ!!!」

 

天倉の攻撃は止まらない。空中に打ち上げられ身動きのできない常闇に対し更に追い打ちを仕掛ける。

天倉はその場で反時計周りに回転しながら跳躍、そして常闇と同じ高さになった瞬間両脚を突き出すように蹴りが放たれ━━━━

 

「ッ黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『アブネェナ!!』

 

たと思われたが黒影が天倉の両脚を掴み、追い打ちを防いだ。そしてそのまま地面へと落とすかのように黒影は天倉を床へ叩きつける。

 

『オラァ!』

 

「がっ・・・・!」

 

天倉は叩きつけられた衝撃が背中に伝わり肺の中にある空気が一気に外へ出る。痛みと息苦しさからくる苦しみに悶絶しながら天倉は立ち上がる。

遅れるように常闇は体制を整えながら着地をし、天倉の行動を見据えながら呼びかける。

 

「なぜ、個性を使ってこない。お前も俺を相手に余裕では無いだろう・・・・・天倉、何を恐れている?」

 

「!それは・・・・・・」

 

天倉は常闇の言葉にハッとする。彼の言葉は天倉の核心を突いていた。

天倉は麗日との試合からトラブルが発生し一度、挫折しかけてしまった。だが、この体育祭で自分自身のヒーローとしての原点を探すことが目標になった為立ち直ることができた。

しかしそれはあくまで一時凌ぎだろう。天倉は試合中、興奮状態である為現状は平気なのだろうが、本来ならストレスやプレッシャーで倒れてもおかしくない。

天倉の頭の中では麗日の時みたく個性が暴走し、あれ以上の惨事を起こすのではという恐怖が天倉を縛り付ける。

 

『おおっーーーーーと!!天倉どうした⁉︎いきなり硬直ーーーー!!俺たちにもっと素晴らしい活躍見せてくれよ!!』

 

この観客達の声援がこれから罵倒に変わるのではないかという恐怖、やめてくれ自分は期待に応えられない。自分はそんな器では無い。そんな思い天倉を縛り付ける。

 

「緘黙を貫くか・・・・さっきも言った筈だ。待つのは敗北のみだとな。押し出せ!黒影《ダークシャドウ》」

 

『オラァ!トドメイクゾォ!!』

 

黒影の口が徐々に悪くなるのは気にしないでおくとして、黒影が天倉へ突進を仕掛けていくく。

そして、命中。動かない天倉は直線上にステージから押し出されようとしている。

 

「ちょっと!どうして避けないの⁉︎」

 

「天倉くん⁉︎」

 

「命中した⁉︎」

 

「え⁉︎動かない⁉︎何で!」

 

「アァ⁉︎何やってんだコラ!!!」

 

『あああぁぁぁぁぁぁぁ!!天倉モロに食らったーーーーー⁉︎このまま場外負けかーーーーー⁉︎』

 

 

 

 

不思議と今の天倉は冷静だった。

 

(これで何度目の挫折だろうか。これまで何回、何十回諦めかけたのだろうか?どうしてこの程度で俺は折れてしまうのだろうか。俺にとってのヒーローになる目的も見つからない。・・・ダメだな俺。拳藤さんとの約束守れないな。

・・・・・最低だな俺)

 

 

 

 

瞬間、天倉の動きが止まる。

正確にはステージ端、場外へ押し出されようとした直前で彼は踏みとどまったのだ。

 

すると天倉の全身から蒸気が発生し、指先から徐々に変化していく。足が、腿が、腕が、肩が、背中が、胴体が、そして天倉は黒影の顔面に牙を立てる。

 

『グオオオオオオオ⁉︎クッテモウマカァネェゾ!!』

 

次第に天倉の眼が牙が口が皮膚が変化していく。追い打ちをするかのように膝蹴りを浴びせた後、噛み付くのを止めアッパーで黒影を仰け反らせた。

 

『ギャンッ!!!!』

 

「黒影《ダークシャドウ》‼︎・・・遂に解き放ったか・・・」

 

 

 

天倉の赤い瞳がギラギラと常闇を睨みつける。まるで演出のように天倉の身体中から蒸気が出続けている。

だが不思議と天倉の意識はハッキリとしていた。

 

(何だ今の・・・・俺の意思じゃない。個性が勝手に発動した⁉︎)

 

天倉は頭を悩ませるがすぐに考えるのはやめた。最早考えても意味が無い。

考えるのは動いてからにしてからだ。天倉は相手いつが攻撃してきても良いように戦闘態勢をとる。

 

「フッ、恐怖を乗り越えたか?まぁ良い、いくぞ天倉。」

 

常闇は天倉にメッセージを送る。その言葉はまるでこれからの天倉との戦いを楽しむかのようにも聞こえる。

 

 

 

━━━覚悟はいいか?俺はできてる

 





〜〜〜〜〜天倉の新技まとめてみた。

天倉が得意とするのは関節技。挌闘系の技は苦手らしい。


【張り手尽くしの極み】

元ヤクザのタクシードライバーの人が使っていた技。
【スウェイ】もこの人が使っていた。よく町中で喧嘩を売られたりするが日常茶飯事。石像をワンパンで破壊し、虎を二頭を素手で倒し、ロケットランチャーを回避したり、ヤクザ100人を相手に勝利したりと人間をやめている。たまに青いオーラとか赤いオーラが体から出てくる。(ちなみに無個性)
天倉はこの技を見様見真似でやった為なのか、完全に決まる事はなかった。
何故かこの技を使うと△や□のコマンドが現れる。


【アルファドライブ】→【ベータドライブ】

人外共が蔓延る魔境"神室町"にて無利息無担保で融資する金融会社を経営する元ホームレスの社長が使用している技。
上記の元ヤクザのタクシードライバーとは知り合い。この人も【スウェイ】を使用する。無個性だが人間をサッカーボールのように扱ったり、空中を浮かんだりする為、人外じみている。
この技は本来、アルファ→ベータ→最後にトドメとしてガンマドライブという技構成になっているが、途中邪魔が入った為に決まる事はなかった。この技も見様見真似。これも○や△などのコマンドが何故か現れる。


【羊肉《ムートン》ショット】

とある海上レストランの副料理長の技。
グルグル眉毛が特徴でいつも煙草をくわえている。大変な女好きで美女を見かければすかさずナンパをし、女性には絶対に手を上げないことをモットーにしている。ただし頭の中はピンク一色。天倉はその海上レストランの常連でもある。
肩肉《エポール》、背肉《コートレット》、鞍下肉《セル》、胸肉《ポワトリーヌ》、もも肉《ジゴー》の順の部位に蹴りを入れトドメに後ろ蹴り《ソバット》を叩き込む技。
これも見様見真似なのか、最後の後ろ蹴りで一瞬の内にあらやる部位に蹴りを入れることができない。


【俺の必殺技part4】

握力× 体重×スピード=破壊力
すごいパンチ。反動がヤバい。

以上



常闇くんとジョジョの台詞の相性が良すぎて逆にびっくりしました。これからもどんどんジョジョの名言を言わせたい。


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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☆第26話 曇天が広がっていた 

なんというか・・・・はい。
黒影《ダークシャドウ》が好きな皆様
本当にごめんなさい。


空には太陽と分厚い雲チラチラと見える。眩しい日差しに照らされ観客達の熱気に包まれた会場内で2人の生徒が対峙している。先に動いたのは天倉の方だった。獲物に飛びかかるかのように跳躍する。その際に右腕を大きく振りかぶり手は握らず引き裂くような形で攻撃するつもりなのだろう。

 

「黒影《ダークシャドウ》防御しろ」

 

『アイヨ!』

 

ガギィ!!

 

しかしそれを黒影は難なくガード。汎用性に優れている中、最も防御面が特化している黒影に対して物理攻撃はほぼ無意味に近いだろう。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

だが、そんな事御構い無しに天倉は攻撃し続ける。何度も何度も何度も鋭い爪が、ヒレが黒影を襲う。僅かだが黒影の防御が崩れてきていることがわかる。

 

『イッ、イデェ!ヤ、ヤメテェ!!スッゴクイテェ!!』

 

「くっ、これ以上防ぎ続けるのは困難か。一旦退け!」

 

常闇は個性《黒影》を解除するが、天倉はソレを見計らっていたかのように自身の爪を床に立て、ガリガリと床を削り火花を散らしながら接近してくる。

 

「くっ、うおっ!!」

 

常闇はその攻撃が当たるギリギリ寸前で飛び退き回避する。すぐさま体勢を立て直そうとするがそう簡単に天倉が許してくれる筈がなく、攻撃を仕掛けてくる。

 

(ぐ、速い・・・・麗日との試合を見ていて知ってはいたがスピード共に攻撃速度、次の攻撃へ移るタイミングが速すぎる・・・!)

 

常闇は天倉の攻撃を避け、そして避け、さらに避け、再び避けるといった繰り返しだった。個性を使用する天倉に対して持久戦という選択肢は間違っていないだろうが、問題は個性を使用する天倉の攻撃にどこまで耐えられるかだ。

今のところ、全ての攻撃はなんとか避けられる。しかしあくまで"なんとか"だ。気を抜けばすぐにやられてしまう。それに加え常闇の体力がどこまで持つかわからない。

常闇は現状を打開すべく攻撃に転じる。

 

「黒影《ダークシャドウ》!天倉を拘束しろ!」

 

『ア、アイヨ』

 

速く駆け回る天倉の機動力を潰す為には動きそのものを止めてしまおうと常闇は天倉を捕まえる作戦に出る。

しかし天倉はこちらに迫ってきた黒影に対してヒレの刃で切り裂く黒影は勿論ガードをする。

 

「ハァッ!!」

 

『ウギャアアァ!!』

 

が、たった1発の攻撃で大きく仰け反ってしまう。

 

「何っ⁉︎(しまった!酷使し過ぎたか⁉︎黒影《ダークシャドウ》の闇が残り僅かしかないのか!)」

 

常闇の"個性"である黒影《ダークシャドウ》は個性使用者とは別の意思を持ち、攻・守共に優れ、凡用性が高く中距離戦では無敵の性能を持つ"個性"だ。

しかし弱点もある。

 

【光】

 

それは闇と対を成す存在であり、神話においても自然的な対照を超え深い繋がりを持つ。

 

旧約聖書 『創世記』第1章にこのようなことが記されている。

 

〈はじめに神は天と地を創造された。地は混沌としており、闇が淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをうごいていた。神は言われた。「光あれ」。かくして光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ。〉

 

黒影《ダークシャドウ》はこの試合で太陽の光を浴び続けている。常闇の"個性"【黒影《ダークシャドウ》】は天敵である光が射し続けている昼の間は弱体化のみならず次第に弱まってしまうのだ。その為常闇はコスチュームに光を遮断するマントを要望していたのだ。

 

『ヤ、ヤメロォ!オレノカラダハボドボドダァ!』

 

「く、後もう少しだ・・・・その刻が来るまでの辛抱だ。」

 

弱体化してしまった黒影はこのように戦闘の意欲も失い、もはや盾にするしか出来ない程の力になってしまう。

今の常闇は極力回避に専念するしかなかった。

 

 

 

「天倉くんの動き・・・・・麗日さんの時と似ている?」

 

緑谷は天倉の動き冷静に分析する。麗日との試合に比べて全く違う動きを見せた天倉に関心を持ったのか、いつも以上にブツブツと呟いている。

そんな様子の緑谷にクラスメイトは呆れながらも感心してしまう。

 

「み、緑谷くん。相変わらずだね」

 

「よく飽きないよな。癖なんだっけ?」

 

「えっ?あ、ああ、ゴ、ゴメン。邪魔だったかな?」

 

「いえ、緑谷さんの分析力はこちらも学ばせてもらっていますわ。ですが、少し静かにした方が良いかと・・・」

 

と八百万がチラリととある一点を見つめる。そこには苛立ちを見せ、全身から謎のオーラ的なものを出している爆豪がいる。イライラしている所為なのか目が大変な事になっている。

 

「え、あ!かっちゃん⁉︎ご、ごめん!!」

 

「うっせぇ、黙ってろクソナード」

 

爆豪はそれだけを言うとすぐに黙り込んでしまう。しかし緑谷はそんな様子の爆豪に違和感を覚える。

いつもの爆豪ならば緑谷に罵倒する際、言葉に嫌悪の念が込めてあり小さい頃からの付き合いであり、幼馴染でもあるの緑谷にはすぐに分かったのだ。

 

「・・・ん・・・・クくん・・・・・・・デクくん?」

 

「え、あ⁉︎な、何⁉︎麗日さん⁉︎」

 

緑谷は麗日に先程から呼びかけられていたの気付かなかったらしい。

 

「いや、さっき私の名前呟いていたけど?どうしたんだろうなーって」

 

「あ、あぁそれの事?・・・・天倉くんの動きを見てて思ったんだ。麗日さんとの試合のときもそうだったけど、"個性"を使っているときの天倉くんの動きが個性を使っていないときと比べて雑に見えるんだ」

 

「雑・・・・・・?」

 

緑谷にはオールマイトから授かった個性を持っている。がその個性の扱い方は自分でも自覚する程の雑さだ。自分が個性を使うのではなく逆に個性に使われているような、制御しきれず振り回されているような感じが天倉からも伝わって来る。

 

「これは僕の推測なんだけど・・あの"個性"は恐らく出力が高すぎるんだと思う。天倉くんの戦闘のスタイルが変わるのはパワーが強すぎて制御しきれていないと思うんだ」

 

そもそも天倉が得意とするのは関節技や蹴りによる連撃など複雑な技がほとんどだ。だが個性を使用している間はパワー寄りの戦い方になりゴリ押しに近い戦法になってしまう。出力も高い為コントロールも難しくなると同時に感情が昂り興奮状態になってしまう。

 

「現に常闇くんは攻撃を回避することができている。出力が高い分、動きや攻撃パターンが単調になっているんだ」

 

つまり天倉の個性は逆に天倉自身の持ち味を殺してしまっているのだ。

 

爆豪もその事には気付いていた。天倉が個性に振り回されている事は麗日の試合、そして今現在の常闇との試合で確信したのだ。

天倉の"個性"ではなく彼自身の身体能力から編み出される技の数々、自身の手の内を読ませず、何をして来るか分からない突発性が脅威に思えるだろう。

しかしそれ以上に脅威と思える事があった。

 

━━爆発力

 

麗日との試合終盤で見せた勝利への執念、土壇場で生み出された圧倒的な爆発力、言うなれば火事場の馬鹿力だろう。

それが個性の力を無理矢理引き出しているように爆豪は思えた。

 

「見てぇ・・・」

 

爆豪は無意識に口の端を吊り上げる。その脅威に思える爆発力の限界を爆豪は見てみたかった。普段の彼《天倉》からは考えられないような、麗日との試合以上の実力を見てみたいと爆豪は思ったのだ。

 

 

『天倉攻めて攻めて、攻め続けるーーーーー!!!序盤は攻め続けていた常闇も今では防戦一方!打つ手なしなのかーーーーー⁉︎』

 

「ぐ、黒影《ダークシャドウ》・・・・!受け止めるな!攻撃の軌道を逸らせ!」

 

『ボウリョクハンタイ!!』

 

常闇は天倉の怒涛の攻撃を防ぐと同時に回避するしかなかった。今の黒影では天倉の動きに着いてこれず攻撃を与えることが出来ない。そもそも弱体化している為ダメージを与えるのも怪しいところだ。

 

すると天倉の攻撃が止む。すると天倉は常闇からかなり離れた距離に佇む。

 

『おっと⁉︎急に攻撃の手止めたぞ!!どうした天倉流石に無駄だと分かって諦めたか⁉︎』

 

「・・・・いや、違うな。次で決める気か・・・・・」

 

常闇は思考する。

天倉がこれから何をしようとして来るのか、なぜ次で決めて来るのかなど、どんどん考えが浮かび上がる。

 

恐らく天倉は"個性"のタイムリミットが近づいて来ている為、これ以上時間をかける事が出来ないのだろう。その為、確実に自分を倒す事ができる程の一撃を決めに来るに違いないと常闇は思った。

 

だとすると自分が取る選択肢はその一撃を防ぐことだろう。今の黒影はもはや脆い盾としか使う事が出来ない。常闇自身次の攻撃に反応し回避できるかも分からない。

 

(ならば黒影《ダークシャドウ》を盾、いや壁として使い防御その隙に奴の視界から外れ再び距離を取る!ヤツも限界に近いならこのまま距離を保ちつつエネルギー切れを狙うのが最善の策だな。問題はヤツがどのような手段で俺を狙って来るかだな。)

 

常闇は天倉を見据えいつでも黒影に指示を与えられるようにイメージする。

相手が一体どう来るのか予測する。緑谷がいつも行なっている事がここまで精神を削るような業だとは思わないだろう。

常闇の頰に汗が伝う。

 

右からか?

 

左からか?

 

上からか?

 

スライディングで下からか?

 

フェイントを仕掛け背後からか?

 

もしかしたら意表をついて地中から来るかもしれない。そんなイメージが常闇の頭の中を飛び交う。

 

そして

 

『おーーーーーーーっと!!!!天倉!!正面から仕掛けた!!』

 

「黒影《ダークシャドウ》ッッッ!!!!!正面だッッッ!!!!」

 

『カカッテコイヤーーーー!!!!』

 

天倉は駆け出し一気にこちらへ迫って来る。

その速さは個性把握テストで見せた50m走の記録を越えているだろう。

 

流石に速い。

 

 

━━━だが対応圏内だ。

 

「伸ばせ!!!」

 

黒影は手をガードレールの様に大きく伸ばし一直線の道を作り出す。左右へフェイントを仕掛ける事が出来ない様にする為だ。

 

残りの距離10m

 

そして黒影の伸ばした腕は次第に天倉を挟み込む様に迫っていく。

 

残りの距離5、4、3、2、1・・・・

 

「捕まえろ!!!!」

 

そして黒影の伸ばされた腕は天倉を鎖で縛る様に巻きつ━━━━━

 

 

 

 

スカッ

 

 

『アリャ?』

 

「なっ⁉︎」

 

かれる事はなかった。

突如として天倉の姿は消え、黒影の腕はただ空気を切るだけだった。常闇は何が起きたのか理解できなかった。

そしてすぐに我に返り姿を消した天倉を見つける為に辺りを見渡す。

 

右、左、背後、下・・・・・

 

「・・・・・・!!」

 

この展開、常闇は麗日の試合で見た事がある。

相手の視界から消え一気に相手の死角から攻撃を仕掛けて来るパターンだ。

 

となると天倉がいるのは━━━━━

 

突如として自分の影に別の影が重なった。見なくても分かる。天倉は今自分の真上にいる。

正面から仕掛けてきたのはあくまで視線を正面へと集中させるのが目的。

真の狙いはその強靭な脚力から生み出される跳躍で一気に視界から外れ意表を突いた上からの落下攻撃。

 

常闇は上を向くと太陽を背後に踵落としを仕掛けて来る天倉が視界に入る。

 

(くっ・・・・回避の暇を与えずそれで尚、黒影《ダークシャドウ》で防御をしたとしても落下によるスピード+衝撃で黒影《ダークシャドウ》ごと俺を押し潰す様に攻撃する気か!!)

 

次第に天倉の一撃が常闇へと迫る。

常闇は不思議と時間がゆっくりと流れている様に感じているだろう。一刻一刻と時間と共に天倉との距離が狭まる。

 

残りの距離7m

 

お互いの影が重なっていき

 

6、5m

 

分厚い雲が太陽へと重なり始める

 

4、3、2m

 

そして床に伸びた影は次第と薄くなっていき

 

1m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コッチヲミロ』

 

 

ズガアァン!!!

 

激しい音が響いた。そこには先程まで攻撃を仕掛けていた筈の天倉が床に叩きつけられていた。

天倉は一体何が起きたのか理解出来なかった。何だ?今何が起こった⁉︎そしてさっきの言葉は誰が━━━

 

『オイ、コッチヲミロ』

 

天倉の背後に再び声が聞こえてた。直後天倉はすぐにその場を飛び退く。すると天倉が先程までいた場所は大きな黒い手によって叩きつけられていた。

 

『な、何だありゃーーーーーーー!!!大きな黒い影が天倉を襲ったーーーーーー!!?』

 

『成る程な常闇がギリギリまで防御していたのはこれが狙いか』

 

天倉の目の前には全長3m程の黒い怪物がいた。しかしソレには見覚えがあった。

常闇の個性である黒影《ダークシャドウ》だ。しかし先程のものと比べ明らかに大きさが違う。

 

『ヤットコッチヲミタカ・・・・クソガ』

 

口調も先程までと比べ荒くなっている。勿論パワーも上がっている。すると常闇が天倉に向かって話し出す。

 

「真っ向で闘争するのならお前の方が強いだろう。だが、今の実力ならば確実に勝利するのは俺達だ」

 

そして背後から黒い手が黒影の手が伸びて来る。天倉はそれを察知すると跳躍し躱す。

 

『ニゲルナ!!』

 

「ぐっ⁉︎」

 

しかし黒影はもう一方の手で空中で身動きが取れない天倉を捕まえる。勿論天倉は脱出しようとするが

 

(・・・・・ッ!力が・・・湧かない・・・!)

 

タイムリミットが近づいている為なのか先程までの戦いで残りのエネルギーが少なくなり力が充分に発揮出来ないのだ。天倉自身このタイミングでデメリットが襲って来るとは思わなかっただろう。

 

『ナマッチョロイゾオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

黒影は天倉を押し潰すかの様に床に叩きつける。天倉は成す術なくモロにダメージを受けてしまう。

 

「ぐっ!黒影《ダークシャドウ》勝手に行動するな!!」

 

『ウルセェ!メイレイスンナ!!』

 

今まで命令通りに動いていた黒影が主である筈の常闇に反抗してしまう。

黒影は何故ここまで強くなったのかには理由がある。それは天候だ。厚い雲が太陽を覆い光を遮断したことにより黒影の闇が増幅し天倉を上回る程にパワーアップを果たしたのだ。

しかしパワーアップをする際に黒影の制御は難しくなる為、主である常闇の言うことを聞かない事もあるのだ。

 

「ぐっ・・・・ガァアアアアッ!!」

 

天倉は喧嘩をし、隙を見せた黒影の顔部分に飛びかかり自身の鋭い爪、牙を突き立てる。が効いている様子は見られない。

 

『ジャマダ!!』

 

黒影は自身の顔面にいる天倉をハンマーで叩き落とすかの様に両手を組み、そのまま天倉に向かって振り下ろす。

しかし攻撃にあたる直前で飛び退き回避する。

 

「あぶ・・・・なっ⁉︎」

 

しかし天倉の目の前に再び黒影の腕が振り下ろされていた。その振り下ろされた腕はまるでハンマーの様な拳は天倉に命中した。

 

『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!』

 

さらに何度も何度も拳が天倉へ振り下ろされ周りの床も破壊されていく。遅れる様にガードをするが黒影の連撃に追いつかない。

これ以上の防御は無理だと判断し大きく後ろへ跳躍した後、再び黒影へと飛びかかり腕のヒレの刃で切り裂こうとする。

 

『貧弱貧弱ゥウウウウウウウ!!!!!』

 

 

 

ドゴォッッッッ!!!!!

 

 

しかし闇の増幅によって強化された黒影の前にはヒレの刃どころか返り討ちに遭うだけで無駄であった。

天倉は黒影の拳を受けそのままステージの端ギリギリまで転がっていく。

 

「すまないな天倉。手加減はしておいた・・・・もはやその身体では抗う事すらままならないだろう。降参しろ、次は手加減出来るか分からないからな」

 

ボロボロになって倒れている天倉の前には常闇の背後に漆黒の化け鴉が佇んでいる。その光景はこれから天倉に不吉が降り注ぐ様に思えた。次第に天倉の意識は薄れていく。

それはまるで深く暗い底の見えない海に沈んでいく様に・・・・・・・・。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

彼の瞳に映っているのは底の見えぬ絶望。彼は大きな力にただ潰されるだけだった。

今の彼に出来ることは何もない。彼は思い知った。所詮自分はヒーローに相応しくない。自分はヒーローになる存在では無いから負ける。この戦いに勝って原点を探し出すなんて言っていたが所詮口先だけだった。

 

これで良いんだ。

 

これで正しいんだ。

 

これで当たり前なんだ。

 

 

ただ

 

贅沢を言うかもしれないけど・・・・・

 

 

━━━━彼女との約束は守りたかったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時不思議なことが起こった

 

 

 

天倉の体内にある個性因子が彼自身の強い意思に反応した!

彼に僅かに残る勝ちたいと言う強い思いが細胞ひとつひとつがエネルギーを作成する!

 

個性因子は、宿主である彼自身の細胞は天倉を一つの結果へ!勝利という名の結果へ導く為に彼を動き回ることができるまでに回復させた!

 

しかしまだ足りない!

 

ヤツを倒すにはまだ足りない!

 

 

 

 

『お、おーーーーーーーーっと!!!!!天倉が立ったーーーーーっ!!!まだアレで立ち上がることができるのかーーーーーっ!!!』

 

「天倉・・・・・⁉︎」

 

 

 

彼の中の細胞はさらなる答えを求めた。どうやればアレ《黒影》を倒すことが可能なのか?

ならば宿主である天倉自身をさらに強く成長を!進化をさせれば良いと言う解答に辿り着いた!

 

 

 

 

天倉はフラフラしながら立ち上がる。その様子は誰がどう見ても満身創痍なのだろう。

しかし天倉は腹の底から叫び声を上げる。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 

まるで喉から血を出さんとばかりの声量だ。

直後彼の身体に異変が起きる。

 

彼の胸の中心に小さな細長い結晶の様な物が出現しそこから背中にかけて節足動物の脚のような鞭のようなものが巻き付く形で形成される。さらに全身からミシミシと音を上げながら肩からは三つの刃の様な突起物が生え、さらに両腕のヒレ状の刃は肥大化し、これでも言わんばかりに刃が形成される。

額の1本角の様な触覚は分裂し、まるでカミキリムシの様な2つの触覚へと変態していき、瞳は鋭い眼差しに変わり、口元はガバリと開きその中から歯牙状の器官が露出する。

 

 

「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オッッッッ!!!!!」

 

 

そして現れたのは身体の所々から蒸気が発生しながら憤怒のような表情を浮かべている化け物であった。

 

 

『』

 

 

さすがの事態にプレゼント・マイクや相澤も絶句している。

そして天倉は背中から触手状の鞭を出現させ頭上でウネウネとくねらせ両手を地面へと付け四足歩行の動物のような体勢をとる。

 

 

「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」」

 

 

そして遅れるように観客席の半数が悲鳴を上げる。

ステージ上に現れたのは全身刃物+触手+顔面凶器の化け物なのだから仕方ないのだろう。

それに加え第一回戦で見せたあの凶暴性がどこからどう見ても増している様にしか思えないのだ。

そして何人かがバタバタと倒れていく。

 

 

勿論その被害はA組にも及んでいた。

 

「お、おい!芦戸!口田!しっかりしろ!!ダメだ気絶している!」

 

「や、八百万さんまで!葉隠さんは・・・・・き、気絶しているのかどうか分からない・・・・・⁉︎」

 

「あ、あれ・・・デクくん?梅雨ちゃんは大丈夫みたいだよ?」

 

「あ、良かった!流石あすっ・・・つ、梅雨・・ちゃんだね!・・・・・・あ、あれ?」

 

「・・・・・・・」シーン

↑気絶している

 

 

(((((座ったまま気絶・・・・だと⁉︎)))))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがお前の真なる力なのか?」

 

「グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ・・・・・」

 

常闇は大きく変貌を遂げた天倉を見据えていた。常闇は先程までとは違い雰囲気だけでなく実力も段違いだと理解できる。

 

「やはり俺とお前は似た者同士なのかもしれないな」

 

常闇はボソリと呟く。

彼らの個性はどちらも強力になればなるほどその凶暴性が増す個性だ。常闇は無意識に天倉と自分を重ねていたのだ。

そして天倉を見ていく内に分かった。ヤツは自分自身の力に恐れていることを。

 

 

「グアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

天倉は跳躍し手首から鎌を出現させ振り下ろす形で攻撃してくる。

 

「迎え撃て!黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『ブッコロシテヤンヨオオオオオオオォォォォォォォ!!!』

 

しかし黒影は天倉の正面に出現し壁のように立ち塞がり捕まえようとする。

が、天倉は背中の鞭を黒影の斜め後ろへ伸ばした後床へ突き刺し、まるでワイヤーアクションのように黒影の手から逃れ後方へ移動する。それだけでは終わらない。

黒影の背後から前へとすれ違うように腕の一回りも二回りも大きくなったヒレ状の刃で切り裂く。

 

『グアアァァァァァァァァッッ!!?』

 

そして顔面へ蹴りを入れ怯ませた後、爪で何度も黒影の身体中を引っ掻く。

振りほどくかのように黒影は攻撃を仕掛けるが天倉の移動速度が格段に上がっているのが分かる。全く攻撃が当たらないのだ。

 

「くっ・・・・・黒影《ダークシャドウ》、お前に身を委ねる!全力でヤツを叩きに行け!!!」

 

『!!・・・・アイヨ!!!』

 

黒影は一瞬黙った後、全身に力を溜めるような動作を行う。そして、天倉に目掛けて両拳を交互に連続で叩き込んだ。

 

 

『ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララッッッッッッッ!!!!!』

 

 

黒影のラッシュが天倉へと炸裂する。あまりの速さに黒影の腕が数十本にも見える。

 

『・・・・・ハッ⁉︎、き、気づかない内にすげぇことになったんぞ!!常闇凄い反撃だ!!!つーかまじすげぇ!!?床がバッキバキになったんぞ!!?』

 

プレゼント・マイクの言う通り黒影のラッシュにより床は小さなクレーターが重なり1つの巨大なクレーターと一体化していく。

がさらに驚くべき事態が起きる。それは

 

 

『・・・・え?マジで!!?黒影《ダークシャドウ》のラッシュを全部避けてんぞ!!?どうなったんだ!!つーか目が追いつかねェェ!!』

 

天倉は黒影のラッシュを上回る機動力で前へ、横へ、後方へと全ての攻撃を回避しているのだ。

そのスピードは飯田までとはいかないが、瞬発力に関しては飯田の個性【エンジン】を超えているだろう。

 

そして天倉は全ての攻撃を潜り抜け、まるでチーターのごとく四足歩行でステージを駆け回る。

 

『サッサトアノ世ヘイキヤガレエエエエエエエエエエエエ!!』

 

黒影が伸ばした腕は虚しくも全てジャンプ、ステップ、スライディング等で回避される。

そして数分が経過した後常闇はある事に気付く。

 

(何故だ・・・・何故ヤツの個性は解除されない⁉︎もう既にタイムリミットは過ぎた筈だ!)

 

天倉の個性がいつまで経っても解除されない事に常闇は疑問を抱く。が突如として天倉は黒影に接近を仕掛ける。

黒影は天倉を叩き潰すように両手を叩きつけるが全て躱される。そして背後に回ると背中から鞭を出現させ黒影を拘束する。

 

『グッ⁉︎』

 

 

そして天倉は自身の右手をまるで槍のような手刀の形にすると、そのまま黒影の目の前で右腕を後方へと引く。

 

そして━━━━━━

 

 

 

ドシュッッッッッ!!!

 

 

 

『ナ・・・・・・!!?』

 

「黒影《ダークシャドウ》!!??」

 

 

 

━━━━黒影の腹部に手刀を突き刺した。

 

天倉の右腕は見事に黒影のボディを貫通していた。観客達はそのあまりの光景に絶句するしかなかった。

 

 

『ニガサ・・・・ネェヨ・・・・』

 

しかし黒影は体を貫かれたまま逃さないように天倉を拘束する。あまりのホールドに天倉は身動きが取れないようだ。

 

『コノママテメェモミチズレニシテヤンヨオオオオオォォォォォォォ』

 

と黒影は天倉を拘束したまま押し出していく。黒影の狙いは自分ごとステージ場外へ出る事なのだろう。

黒影自身は常闇の個性であり宿主の常闇ではない為場外へ出たとしても常闇の負けにはならないだろう。

 

これは黒影《ダークシャドウ》自身が選択した解答━━━

 

あくまで黒影自身は個性だが、黒影は信念を持っている。それはなんとしてでも宿主であること常闇を勝たせてあげたいと言う信念だ。

 

 

その勇気ある行動に観客達の声援が送られる。

 

「負けるなああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」「頑張れえええええええええ」「かっこいいぞおおおおおおおおおおお!!」「ファイトオオオオオオオオオオオオ!!!」「お願い勝ってえええええええええええ!!!!」「黒影《ダークシャドォ》ォォォォォォォォォォォォォォ!」

 

それは全て黒影への声援だった。個性の一部でしかない黒影は声援に驚く。

これら全てが黒影への応援なのだから。そんな様子に常闇は目を閉じフッと口元が緩む。

 

(黒影・・・・お前はやはり俺の最高の相棒だな・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチ・・・・チチ・・・・・・

 

 

「?」

 

突如として常闇の耳に謎の音が聞こえる。まるで物体同士が擦れ合い、静電気を発するような音だ。

常闇はその音の発生源を見つけようと辺りを見渡す。

 

 

バチチ・・・チチ・・チ

 

 

なんだこの音は?と常闇は頰に汗が伝う。嫌な予感がする。確実に嫌な予感が・・・・。

 

 

バチバチチチチチチチチチチチ

 

 

徐々にその音は激しくなっていく。常闇はとにかく見渡す。右でもない左でもない。背後でもなければ上、下でもない。ならば一体どこからなのか。

すると常闇は気付く。何故天倉は何も抵抗をしないのだろうか?ヤツは何かを狙っているのではないのか?

常闇は黒影に指示をする

 

「離れろ!黒影《ダークシャドウ》!!」

 

『ア?ドウシt

 

 

 

バチチチチバチチチバチチチチチチチチチチチチバチチチチチ!!!!

 

 

 

突如天倉の身体中から電流が迸る。そしてその電流は一気に天倉のとある部位に集まる。

その部位とは黒影を貫いている右腕だった。

 

そして

 

 

 

 

 

バチイィィィンッッッ!!!!!!

 

 

 

 

まるで何かが破裂するような、音が響き渡った。そしてその音の発生源には無惨にもボロボロに弱っている黒影とその黒影の顔面を掴み持ち上げている天倉が立っていた。

 

「黒影《ダークシャd」

 

 

 

ザシュッ!!!!

 

 

「━━━━━━━━」

 

そしてトドメと言わんばかりに天倉は黒影の首元をヒレ状の刃で引き裂いた。

そして黒影は徐々に小さくなっていき

 

『ワリィ・・ナ・・・・・・マケチ・・・マッテ・・・・ヨ』

 

黒影は常闇の身体の中へと戻っていった。

 

「・・・・・・黒影《ダークシャドウ》お前は・・・」

 

常闇は自身の胸を抑える。自身の相棒が懸命に戦ってくれたことを褒めるように、誇らしく思うように、彼はただ黒影に感謝する。

 

 

そしてそこへ一歩ずつ近づいて来る天倉。

彼は手首から鎌を形成し構える。2人はしばらくお互いに睨み合った後、常闇は天倉に向けメッセージを送る。

 

「天倉、我を見失うな。お前の中の答えは既に見つけている筈だ」

 

「・・・・・・・・」

 

2人はまだ睨み合ったままだ。

そして、一歩天倉が踏み出すと━━━━━━

 

「・・・・・zzZ」

 

「!!??」

 

彼は立ったまま気絶━━ではなく深い眠りに落ちていた。そして彼の体は次第に元の人間態へ戻っていく。

常闇はあまりの展開に混乱していたが、すぐに天倉が寝ている理由を察した。この場ではソレに関する個性を持つプロヒーローが審判をしているのだ。

 

「━━━驚いたわね。極薄タイツを破った直後に効いたんだから。彼って鼻が良いのかしら?」

 

審判であるミッドナイトがこちらへやって来る。ミッドナイトは常闇と天倉を交互に見た後、常闇へ質問する。

 

「どうする?まだ彼と戦う?」

 

「いえ・・・・降参です。それにこいつ《ダークシャドウ》にはしばらく休んでもらいます」

 

 

 

 

『常闇くん降参!!天倉くんの勝利!!!!』

 

 

彼は勝利した・・・がそれにしても勝者に相応しい天気とは言えず頭上にはただ

 

 

曇天が広がっていた。

 




なんか途中からどう見ても常闇くんが主人公にしか見えないのは何故だろう・・・
それに対して天倉がどう見ても悪役・・・・

ちなみに黒影は死んでいません。ちゃんと生きています。


【天倉くんエクシードフォーム(仮)】

本来はフォームチェンジは考えていなかったのですが勢いのままやっちゃいました。

一応、全身凶器というコンセプトです。
容姿はアマゾンオメガオリジンにエクシードギルスのパーツ、口元はジョーカーアンデッド(※分からない人はアナザーアギトのクラッシャー展開時を想像してください)と言う感じです。
そしてどう見ても怪人ですありがとうございます。

装甲は薄く、機動力重視+殺傷特化型と言うアサシンっぽい感じ

触覚は2つに分け、仮面ライダーっぽくしたと同時に周りから受け取る情報を2倍にすると言うあやふやな設定。

体内には発電器官が備わっており、自身のエネルギーを変換して電撃を発生させることが可能。

これは元々コメント欄で鞭に関する返信をしていたら
エクシードギルス→ガタキリバ→オーズ→シャウタのウナギ利用できね?と言う感じになりました。本来はスティンガーから電流を流す予定でしたがなんかサスケェの千鳥みたいになりました。
とりあえず黒影には電光バイオレントパニッシュの犠牲になってもらいました。

とりあえず読者の皆様にどの様な感じか分かってもらえるように描いてみたので見てもらえるとありがたいです。


【挿絵表示】



アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。

後ついでに挿絵が邪魔もしくは不快と感じ、挿絵なん描くな死ねカスと思ったらすぐに削除するのでいつでも言ってください。
と言うかマジでお願いします。下手したら黒歴史になるかもしれないのでお願いします!


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第27話 理由を失った


〜〜いつかこんな仮面ライダーが出てくると良いなーという願望

「Blackさん!!」

『ゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

「RXさん!!」

『ゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

「2つの太陽の力、お借りします!!」

結果 絶対に勝てない



気がつくと、辺り一面が真っ白な空間が目の前に広がっていた。この場所には見覚えがあった。

敵連合が攻めて来た後、夢に出てきた空間だ。あの時では何故か目の前に肉料理が出てきた事を覚えている。

しかし、何故今になってこの空間が出てきたのだろうか?と疑問に思っていると、あの時と同様に肉料理が出現する。

 

・・・・・・そう言えば腹が減った。ものすごく減った。食いたい。夢なんだから早く食ってしまおう。そうだ今すぐに食ってしまおう。

 

・・・・・・本能が目の前の血肉を求めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・アレ?まてよ。

 

コレって食べたらまずい展開じゃね?よくある闇堕ちのテンプレじゃね?ト◯コでありそうなヤツじゃねコレ?

 

 

 

 

━━━ほう、少なくともあの時よりはだいぶ成長したようだな

 

背後から聞き覚えのある声が耳に入る。あの時の謎の声だ・・・・。

声の正体は分からない。姿も見えない。誰なんだ一体?そして成長ってどう言う事なのだろうか?

 

━━━フン・・・・あの戦いでだいぶ疲労していると思ったが、随分と呑気だな

 

呑気?・・・・・そう言えば常闇くんとの試合は・・・・・!

思い出した。気が付くと身体中から力が溢れて、そして抑えられなくなって・・・・・・・・。

まさかお前がやったのか?流れ的に目の前のお前が原因な気がするけど。

 

━━━つくづく呑気なヤツだ。自身の力を制御しきれなかった事を他人に転嫁するとはな

 

それはどう言う事なのだろうか?制御しきれなかった力とは試合中に見せた"アレ"だろうか?

・・・・"アレ"は一体なんだ?お前は何か知っているのか?

 

 

━━━"アレ"だと?お前も分かっている筈だ

 

━━━"アレ"はお前だ。"アレ"はお前の中に眠る本性の一部だ

 

 

本性・・・・・・?

"アレ"が・・・・あの化物が自分自身だと言うのか?

 

 

━━━その通りだ。お前の本性は力をただ求め血肉を喰らい自身の糧とする。獣の体現したような存在だ

 

━━━そしてあの肉はお前が本能で欲し、生み出された幻だ

 

あの肉って幻だったのか。道理で無味だった筈だ・・・・・・。

しかし自分の本性があんな化物だなんて・・・・・違う。

自分は人間だ。"アレ"は・・・・あんな化物は自分ではない。

 

━━━何を言っている。"アレ"はお前だ。お前以外の何者でもない

 

違う、違う違う!"アレ"は自分でもなければ人間でもない。

 

━━━はっ・・・おかしな事を言う。"アレ"はまさしく弱肉強食。人としての正しい姿だ

 

━━━お前は勝利の為に"アレ"の力を欲した。何を否定する必要がある?

 

何をしたいんだ?自分を少年誌でよくある暗黒面《ダークサイド》にでも引き込もうとしているのか?・・そんな力欲しくない。"アレ"はもう御免だ。

 

━━━フン・・・・信念も何も持たず、力を振るう今のお前は弱者以下だな

 

━━━これではあの女との約束も守るどころでは無いな

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

・・・・・・嫌な夢を見た。

なんと言う厨二全開の夢だろうか。常闇くんが食いつきそうな話題になるだろう。ぶっちゃけ誰にも話したく無いが。

 

ここは・・・・・また保健所だ。しかも、またベットの上に俺はいた。

まぁいいか。さっさと起き上がって・・・・・・・?おかしい、何故か身体に力が入らない。起き上がりたいが全身に力が入らない。

相澤先生のように包帯で全身がグルグル巻きにされているわけでも無い。

 

「まったく。やっと目覚めたのかい」

 

聞き覚えのある声だ。俺が声が聞こえてきた方向に顔を向けるとそこにはリカバリーガールがいた。呆れたようにため息をついているがソコはあまり気にしないようにしておこう。

 

「ほら、ハリ◯ーグミだよ。たくさん用意しておいたから食べな」

 

リカバリーガールがそう言うと俺の口の中に大量のグミを押し込んでくる。

・・・・・グミうめぇ。

 

「まったくあんた、よくその状態で平気だね。まさか治癒しきれないほどエネルギーの消費が激しいとはね」

 

「どう言う事ですか?あとまだ何かありませんか?腹減ってるんですよ」

 

「ハァ・・・・まったく。あんたの体のエネルギーだけど既にゼロに近い状態だよ」

 

ゼロ?どう言う事だ?と言うかそのせいで力が入らないと言うことなのだろうか。

もう腹が減るどころじゃ無いんだけど。

 

「多分空腹を感じてもいないんだろうね。ほら、コレあんたの父親からの差し入れだよ。

まったく、なんでこんなもの保健所に持ってくるんだか」

 

とリカバリーガールは俺に袋を差し出してきた。

 

「父さんから?・・・・・・・まぁいいか。ありがt・・・・・」

 

しかし俺は袋の中を覗いた瞬間思い出した。あの父親《バカ》がまともな差し入れなんかくれる筈もなかった。袋の中には大量の生魚が詰め込まれていた。そして大量の生魚の中に一枚の手紙があった。

生魚によって濡れた手紙を嫌々開封するとそこには

 

『差し入れの鯖だ。有り難く食えよ。by父さんより』

 

もう俺にはツッコむ気力すらなくなっていた。

ただ、クソな父への殺意が沸々と湧いてくるだけだった。

 

「もういいや。さっさとコレ《ハマチ》食べよう」

 

「食べるのは良いけどちょっとアンタに言う事があるよ」

 

俺は生魚を頬ばりながらリカバリーガールの話を聞くことにした。久々に生魚を食べるが悪くはない。骨は邪魔だがよく噛んでしまえば問題無い。

 

「あんた、身体に負担がかかり過ぎているよ。特に脳への負担が凄まじいね。無茶苦茶な戦い方で体が個性に追いつけてないんだろうね」

 

「ムグ・・・・・・追いついていけてない・・・・・」

 

「あぁ、それにストレスの溜まり具合が常人に比べて異常。・・・・・・・あんた過去になんか"個性"絡みで精神的外傷《トラウマ》持ってんだろ」

 

俺は途端に食べるのをやめた。リカバリーガールの口から出てきた言葉は俺の核心を的確に突いていた。

・・・・どう答えれば良いか分からなかった。

 

「別に答えたくなければ答えなくていいよ。あんたには辛い事なんだろうから。

とにかく、さっきまでの試合で見せた見るからにヤバそうなアレはつかうのはやめるんだよ。いいね?」

 

「・・・・・・・・はい」

 

リカバリーガールの言葉に俺はただ返事をするしかなかった。

 

━━━"アレ"はお前だ

 

俺の脳裏に夢で出てきた言葉が横切る。あれはただの夢の筈なのにどうしてだろうか、苛ついてしまう。俺は気分転換をする為に保健所を出る。

いつもの自分らしくない事は自覚している。ただ俺は━━━あの言葉を受け入れたくないのだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

コーヒーというのは皆さんはご存知だろう。

珈琲《コーヒー》とはコーヒー豆(コーヒーノキの種子)を焙煎し挽いた粉末から、湯または水で成分を抽出した飲料であり、歴史への登場は酒や茶には遅れるが、世界で最も多くの国で飲用されている嗜好飲料だ。

コーヒーの主成分であるカフェインは脳の活性化、集中力の向上、記憶力の向上、やる気アップ、運動能力の向上、うつ病予防、リラックス効果などがある。

 

 

簡潔に言えば天倉は今、コーヒーを飲みたい気分であった。

 

 

「えっとブラックは売り切れか・・・。なんでどの自販機もブラックだけ売り切れているんだ?まぁ、いいやエ◯マンにしよっと」

 

天倉は自販機の缶コーヒーを買う為、ポケットから財布を取り出し中身を確認する。

 

「・・・・・あ、諭吉×3と小銭(34円)しか無い」

 

しかし天倉は今の財布の中身では買う事ができないと分かり、ガクリと項垂れ、ブツブツと「なんで一万円札対応できないんだよ」と呟いている。

 

「そんな所にいると邪魔になるからどいた方が良いよ」

 

すると後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。その声の持ち主は拳藤一佳であった。拳藤は天倉に向かって何かを投げ渡し、ソレを天倉は難なくキャッチする。

ソレの正体は缶コーヒーであった。

 

「ソレ、私からの奢りだよ」

 

「あ、ありがとう・・・・・・ジョー◯アか、エ◯マンの方が良かったな」

 

「うん。天倉ってさ時々図々しいよね」

 

拳藤は苦笑いを見せながら缶コーヒーを開けるとグイッと一気に中身を飲み干す。

それに対し天倉はコーヒーを食べる前に保健所から持ってきた差し入れの生魚を食べる。コーヒー以前にコレを食べておかなければ腐ってしまうのでこちらを優先して食べる事にしたのだ。

 

拳藤は天倉に色々とツッコミを入れたい気分であったが敢えてスルーする事にした。と言うよりも、彼に色々言ったとしても無駄ではないかと思ってしまっているのだ。

 

「ふぅ・・・・・いやぁ、なんと言うかさマジで約束守ってくるとは思わなかったよ。結構男らしい所あるんだね」

 

「え?・・・・うーん、別にそう言うのじゃなくて、ただ約束を守りたいなーっていう一心で此処まで勝ち上がってきたからなぁ」

 

天倉の言葉には嘘偽りはなかった。天倉は今までの試合彼女との約束の為に勝ち上がって来た。

しかし悪く言ってしまえばそれ以外に勝つ為の理由が見つからなかった。今までの試合ではひとりひとりは違えどヒーローになる為に勝利を目指していた。

 

結局、彼はソレ《夢》を見つける事が出来なかった。散々ヒーローになると言っておいてこのザマだ。

 

━━━信念も何も持たず、力を振るう今のお前は弱者以下だな

 

夢に出てきた言葉が再び脳裏を過ぎる。

天倉は悔しいと思っていた。あの夢がまるで本当の事を言っているようで自身が見透かされているようだったから、そして本当に自分にはヒーローとしての夢がないと確信してしまうからだ。

 

「そういや天倉は轟と飯田の試合は見た?」

 

「いや、見てないけど。その口ぶりからだともう終わったの?」

 

「うん。最初は飯田が轟をスピードで圧倒したんだけど最後に氷結で動きを封じられた感じ」

 

それでもなお彼は彼女との話を楽しむ事にした。彼女を自分の都合に巻き込んではいけないと思ったからだ。それに、こうしているとさっきまでの自分を忘れる事が出来るからだ。

 

だが、それは長くは続かない。これから彼と彼女は戦うのだ。彼女は戦う事を望んでいるのだろう。天倉自身も約束を果たしたいと思っていると同時に罪悪感が襲ってくる。

麗日や常闇の時のように信念の無い者は勝利すべきでは無い。と考えてしまう。彼は分からなかったのだ。結局、勝ちたいのか負けたいのか迷いに迷い、次第に自分は何をしたいのか分からなくなってきた。

 

「・・・天倉?どうした」

 

天倉は拳藤に声を掛けられハッとする。どうやらしばらく考えに没頭していたのだろう彼女に心配されてしまった。天倉はその問いに大丈夫と返す。

 

「まぁ、仕方ないか。これから私たちの試合が始まるんだからね。そもそもこんなところで駄弁っているのがおかしいのかな?」

 

ハハハと彼女は天倉に向けて愛想笑いを見せる。

・・・・・やはり眩しい。天倉は彼女を見てそう思った。自分はこれから彼女と戦う。だが今までの戦いは彼女との約束を果たす為に勝利を収めてきた。ならば今回はどう言った理由で戦うのか?自問自答を繰り返すが答えは見つからない。

 

「それじゃあ、私は控え室に行くからさ・・・手加減はしないよ」

 

「うん・・・・楽しみにしているよ」

 

彼は苦し紛れに返事をすると彼女は控え室へと向かって行く。

・・・・・・何が楽しみだ。楽しくなんか無い筈なのに何故笑っていられる?何故皆は笑える?

天倉は理解できなかった。彼女と戦えば何か分かるのだろうか?彼女に勝てば何か得られるのだろうか?

 

彼女《拳藤》を倒せば・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━パァン!!!!!

 

 

 

 

突如として天倉の耳に何が破裂するような音が入った。

それと同時に液体状の何かが飛び散るのが分かった。冷たく、濁った黒い水。ソレは彼の手の平から飛び散っていた。

天倉はソレを覗き込む。そこには無残に握り潰されていた缶コーヒーが存在し中からコーヒーが飛び散ったのだろう。

 

しかし注目すべき点はそこではなかった。その缶コーヒーを握り潰していた手、いや上腕部全体。ソレが緑色を基準とし黒い禍々しいヒレのような刃をギラつかせ、手首と手の甲の間部分に鎌のような物が生えている腕に変化していた。

 

「!!?」

 

彼は理解できなかった。何故、なんで、何が起こった?

無意識に個性が発動していたのか?いや違う。身体が彼女《拳藤》を敵と認識し自動的に"個性"が発動されたのだ。

 

片腕からまるで意識を持つかのように拳藤が向かった方向へ引っ張るように大きな力が入る。天倉は必死に抵抗するがパワーが強過ぎる。

 

「ぐ・・・・・!」

 

まるで主導権が別の何かに奪われるような感覚だ。このままでは不味いだろう。

だが、天倉も腕をそのままにしておくほど馬鹿では無い。

天倉は近くにあった自動販売機に目掛けて片腕を挟むように体当たりをする。

そして

 

 

ズガン!!

 

 

 

トドメに片腕を自動販売機に貫かせた。そして自動販売機は不快な音を出し、中身のジュースやお茶等の飲料缶、ペットボトルを撒き散らす。

天倉は腕が自分の意思で動かせることを確認すると腕を引き抜き、その場でへたり込む。

 

彼が感じたのは恐怖。自身の"個性"の危険性だった。

 

(・・・・・なんなんだよ)

 

天倉はそう心の中で呟くと夢の中の出来事を思い出す。

 

━━━お前の本性は力をただ求め血肉を喰らい自身の糧とする。獣の体現したような存在だ

 

━━━"アレ"はお前だ。お前以外の何者でもない

 

あの夢の通りだった。片腕は間違いなく自身の本性が動かしていた。自分の本性が拳藤を狙っていた。

・・・・・・戦いたくない。怖い。何でこうなった?彼の頭の中は色々な出来事によってグチャグチャになり、全身から汗が噴き出る。

 

「俺は・・・・やっぱり・・・・・」

 

彼の視界は次第に薄れ、思考も次第に停止していくような感覚を感じる。でもこれで良い。

━━自分はヒーローになんか相応しい存在ではない。

 

天倉はそう心の中で呟くと全身の力を抜く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君、大丈夫?」

 

 

すると天倉に声をかけてくる人物が現れた。

その人物は呑気そうで優しそうな、分かりやすく言うと"笑顔"が似合う青年だった。

その人は周りの惨状を見ると驚いたような顔をするとすぐに天倉の腕を自分の首にかけ、肩で支えるように近くにあるベンチに座らせる。

 

「気分はどう?水飲む?」

 

「あ・・・・はい、大丈夫です。だいぶ落ち着きました」

 

「そう?それは良かった」

 

そう言うとその青年は眩しい笑顔を見せてくる。

相変わらず他人の笑顔は自分の心を締め付けてくる。締め付けてくる筈なのに何故だろうか心なしか安心してくる。

 

「えっと・・・・とりあえずありがとうございます助かりました。ところで・・・・どちら様ですか?」

 

青年は天倉の問いに対し、ハッとするとすぐさまポケットから小さな紙を取り出す。小さな紙には文字が書いてあり、大きい文字が4つあり、真ん中に間隔を開けて書いてある。どうやら名刺のようだ。他にも名前らしき文字以外にも一回り小さな文字で何か書いてあるのが分かる。

 

名刺には『夢を追うおt━━━

 

 

「・・・・あ!!すみません。俺、もう行かないと!」

 

「え?ちょっと⁉︎コレ《自動販売機》どうすんの⁉︎」

 

天倉は何かを思い出すように走り出す。その際、名刺はポケットの中にしまう。青年は天倉を呼び止めようとするが無意味だった。天倉はこれから自分と拳藤との試合があると言うことを思い出し全力で通路を駆け抜けて行った。

 

そしてその場に残っているのは無残に壊された自動販売機と立ち尽くし、困ったように頭を掻いている青年だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『よっしゃあ!!いよいよ雄英体育祭も終盤に差し掛かってキタァ!!!これから始まる準々決勝!詳しい解説は頼むぜイレイザー!』

 

『全く・・・・今回のトーナメントは通常よりも人数が多く試合の数を調整させてもらった。その為、爆豪はシード枠となりこの試合で勝利した方は辛いかもしれんがしばらく時間を空けてから準決勝とさせてもらう』

 

解説役である相澤(イレイザーヘッド)が説明を終えると観客達の声援がまた一段と騒がしくなる。

 

『んじゃさっさと紹介済ませるか!ぶっちゃけこれがトーナメント最後のA組対B組だ!ヒーロー科拳藤一佳!VS!ヒーロー科天倉孫治郎!!』

 

プレゼント・マイクがこれから戦う2人を紹介する。

お互いこれから戦う相手を見つめ合っている。しかし天倉は心境はそれどころではなかった。焦り、不安が彼に襲いかかってきている。今にも押し潰されそうな感覚だ。少しでも紛らわそうと拳藤と会話をしようとする。

 

「拳藤さん・・・その・・・・」

 

「?・・・・・あぁ、いや言わなくても大丈夫だよ」

 

天倉はどう言うことかさっぱりわからなかった。何が大丈夫なのか理解できなかった。

 

「もう、私と戦う準備はできてるって事は分かっているよ!」

 

と拳藤は構える。

どう言う事なのだろう。戦う準備も何も今の自分は戦う気が無いに等しい状態なのだ。だが彼女が言っている事を理解するのには時間はかからなかった。

 

片腕に違和感があった。

まただ。また自分の中の自分《本性》が勝手に"個性"を発動させたのだ。

そして次々と全身の力がみなぎる事が分かる。それと同時に分かってしまった。

 

━━━これではあの女との約束も守るどころでは無いな

 

夢に出てきた謎の声が最後に言った台詞の意味がようやく理解できた。

正にあの台詞はこの事を暗示していたのだ。

 

「・・・・拳藤さん、悪い事は言わない。降参してくれ」

 

「成る程。自信大アリって感じ?」

 

違う、そうでは無い。このままだと確実に不味い事が起きる。駄目だ。身体のコントロールが効かない、自由に動かせない。

 

やめてくれ

 

『んじゃ、2人とも準備はいいな!!』

 

違う、違う、やめてくれ

 

『 R E A D Y ! 』

 

やめろ、やめろ、やめろ

 

『 S T A R T !!! 』

 

 

━━━ヤ メ ロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━決まったぁあああああああああああ!!!』

 

気がつくと彼は立ち尽くしていた。周りからは観客達の声援が響き渡り騒がしい。

 

そして彼の目に飛び込んできたのは

 

『ヒーロー科天倉孫治郎!準決勝進出ーーーーーーーーッ!!!』

 

 

頭から血を流し仰向けに倒れている拳藤の姿だった。

 

 

 

彼は勝利を手にした。それは喜ばしい事なのだろう。

 

しかし代わりに彼は戦う為の

 

 

━━理由を失った

 





今回は投稿が遅れてすみません。
試験が近づいている為、次の投稿も遅れる場合があります。そこら辺をご了承ください。

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第28話 笑顔

更新遅れて申し訳ありません!
試験期間に加え、都合が重なってしまい執筆活動がががががが
本当に申し訳ありませんでした!



「・・・・・・・・・」

 

天倉の気分は最低と言っても過言ではなかった。

 

準々決勝での試合の結果は天倉のカウンターの回し蹴りによって1発KOだった。その際、拳藤は頭を少し切ってしまい出血してしまったが、それ以外は特に大事にはならなかった。

 

その後、彼はクラスメイト達に「凄かった」「準決勝も頑張れ」「おめでとう」と言われたが、彼が言ったのは少し1人にしてほしいと言う言葉だけであった。

今の彼には賞賛の声や喝采は何の意味も無かった。

 

「・・・・・・・・」

 

彼はとにかく1人になりたかった。周りに誰もいて欲しくなかった。こんな情けない姿を誰にも見られたくなかった。

 

彼は先程までの会話を再び思い出す。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「どうした?そんな顔をして、不満でもあったか?」

 

天倉が壁に背を預け俯いていると声をかけられる。声の持ち主は自身の担当の先生である相澤だとすぐに分かった。

だが彼は自身の先生をチラリと見ると再び視線を下へと向ける。まるで子供が部屋に閉じこもるかのように黙ったままだ。

 

(想定内・・・いや、それ以上に落ち込んでるなコリャ)

 

相澤はまるでこうなる事が分かっていたかのような反応だ。

天倉は抜けている部分はあるだろうが爆豪や轟に比べれば良識人の部類だ。その天倉が自分の担任に対してシカトを決め込むのは驚くべき事だろう。

しかし相澤にとっては分かっていた事だった。天倉は精神的に限界が近づいており、いつ挫折してもおかしくない状態だった。そこにとあるキッカケによりダムが崩壊するように彼の心は折れてしまった。

 

「・・・・なぁ、お前h「俺って何の為にヒーローになったんでしょうか?」

 

相澤が質問しようとした時その言葉を遮るかのように天倉の口が開く。相澤は彼が何を言っているのかよく分からなかった。いや、彼自身も自分で何を言っているのか分かっていないのだろう。

ヒーローになりたい者は基本的に有名なプロヒーローに憧れてなる者が多いだろう。この場合緑谷出久が良い例だろう

オールマイトに憧れ彼の期待に応える為最高のヒーローとなると言うシンプルさだ。他にも親族のようになる為、収入目的等によってヒーローを目指す者もいる。

 

だが天倉孫治郎は自分自身がヒーローになりたい理由が見当たらなかった。

彼はプロヒーローに憧れた訳でもなければ、何らかの特定の目的の為にヒーローになりたいと思った訳でもないしそもそもヒーローそのものに興味が無いに等しかった。彼は"偶然"ヒーローと関わり、"偶然"ヒーローの道を勧められ雄英高校を受けた。

 

悪く言ってしまえば彼はその場の雰囲気に流されヒーローを目指したと言っても過言ではない。

 

 

「あの時、校長先生に褒めてもらったのが嬉しかった。でも俺は調子に乗っていたんだと思います。調子に乗って、俺なんかの個性が誰かの役に立てると思って、ヒーローを目指して・・・・・」

 

「・・・・そうか」

 

今の所、相澤ができる事は彼の話を聞くことだけだろう。

無理に何か話そうとしてもおそらく火に油を注ぐような行為だろう。今現在の彼の精神状態はそれほど危ういのだ。

 

 

「でも、違った。俺はヒーローなんかじゃ無い。ただの怪物だ。ただ力を闇雲に払うだけの化物だったんだ!そんな俺が!ヒーローになんて!なる資格も無いんだ!」

 

 

彼の口調が徐々に激しくなっていく。

彼の全身がガクガクと震え、お互いの両腕を抑えるようにな体勢になる。するとあまりの力なのか両手の指の爪を立ててしまい血が流れている。

 

今、天倉を支配しているのはたった一つの感情【恐怖】だ。自身が別の何かに変貌してしまうというか恐怖、また誰かを傷つけてしまうのではないか?と言う恐怖。

彼は次第に恐怖と言う黒に塗りつぶされていく。

 

 

 

「そうか、それじゃあお前は自分自身ヒーローとしての見込みがゼロと言いたいんだな」

 

相澤が言った一言が天倉に突き刺さる。ヒーローとしての見込みが無い。

その通りだ、自分はヒーロー相応しくない。当たり前だ。USJでの個性を人助けに活用すると言う事を13号から習った。習ったのに自分は人を傷つけているばかりだ。こんな個性で人を救えることなんてできない。

すると相澤は天倉に追撃するかのように口を開く。

 

 

「そして、何の為にヒーローになったのかも俺が決めるんじゃなくて自分で決める事だ。他人に聞いたとしても意味が無い。それくらい自分で決めるんだな。勿論見込みがゼロかどうかもな」

 

「・・・・・・・」

 

「まぁ、試合も連続して疲れてるんだろ。頭冷やしてこい」

 

相澤がそう言うと天倉はフラリと立ち上がりその場を後にするように歩いていく。その後ろ姿は誰から見ても哀しく見えるだろう。すると相澤は自身の後ろ側、通路の角に声をかける。

 

「盗み聞きとは良い趣味とは言えませんね」

 

相澤はそう言うとため息をつくと、その人物が現れる。

 

「あなたが出てくるとは思いませんでした。ミッドナイトさん」

 

その人物はミッドナイト。審判を担当する筈の彼女は先程まで2人の会話を聞いていた。

実はミッドナイトは負い目を感じていた。元々天倉をヒーローの道へと誘った原因の1人が自分であると分かっており彼をあそこまで追い込んでいる事に責任を感じていた。

 

「そんな事より、あんな事言って良かったの?どう見ても傷口を抉っていたようにしか見えなかったけど」

 

「良いんですよ。要は最後に天倉が決める事です。俺がなんか言っても意味はありません」

 

そんな彼女は相澤に教師としてそれで良いのか?と思ったが相澤と言う男は生徒がヒーローとしての見込みが無い場合容赦無く除籍するような教師だ。恐らく何を言っても無意味なのだろう。ミッドナイトは思わず呆れてしまう。

 

「はぁ、全く・・・・・・」

 

 

「良いですか?夢ってのは呪いと同じなんですよ。呪いを解くには夢を叶えなければ。でも、途中で挫折した人間は、ずっと呪われたままなんですよ。

俺にできるのは夢を見ないうちに諦めさせる事です」

 

ミッドナイトと相澤はポツポツと歩いていく天倉の後ろ姿をただ見守るだけだった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

彼はとある事に気付く。後、十数分で試合が始まる。これから戦うであろう相手は爆豪勝己。色々な意味で戦いたく無い相手だった。

 

何故、自分はヒーローを目指そうとしたのか全く分からない。試合を始める前まで深く考えた事がなかった。

そもそも体育祭にて一番を目指そうとした理由は彼女《拳藤》との約束を守る為だった。それを果たした、それを無駄にしてしまった彼は何を理由に、何を建前にして戦えば良いか分からなかった。

 

沸々と【恐怖】の感情が湧き出てくる。

ヒーローに相応しく無い自分がこれ以上戦えばどうなるか分からない。今の自分が全く別のモノへ変貌してしまう。怖い。

まるで自分は閉鎖された空間、暗闇の中でただ1人だけしかいないような孤独感、じわじわと全身が蝕まれていくような感覚だ。

 

━━━心が息苦しい

 

こんなにも心が無かったらどれほど楽になれるだろうと思った事は初めてだ。

彼はそんな感覚に見舞われながら口を開く。それは誰に対しての言葉なのか分からないが一言、一言だけ振り絞るように声を出す。

 

 

「━━━ごめん━━」

 

 

無意識だろうか手を強く握り血が滲む。恐怖の他に別の感情が芽生えてくる。約束を守れなかった【悔しさ】自分に対する【怒り】

頭の中がぐちゃぐちゃする━━━

 

まともに思考する事ができない。1人で考えるのは難しい。これなら誰かに相談に乗ってもらった方が良かった。・・・・やめておこう。皆に迷惑を掛けられない。

━━いや、既に迷惑を掛けていた

 

「俺は・・・どうすれば良いんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、俺に相談するって言うのはどう?」

 

 

突如として自分の目の前に現れたのは見たことのある人だ。

確か━━ついさっき━━そう、自動販売機を破壊してしまった時に自分を心配してくれた。見ていると不思議と落ち着く青年だ。

 

しかし━━何故自分に構うのだろうか?分からない。自分に構って何か得をするのだろうか?

自分はその人に疑問を投げかける。

 

「そりゃあさ、心配だったからだよ。あんな苦しそうにしていたからさ」

 

 

それだけなのか?それだけの理由で自分を心配してくれたのか?まるでヒーローのようだ。

━━━だけど駄目だ。

 

「やめてください・・・・コレは俺の問題なんです」

 

拒む。他人を巻き込みたくはない。コレは自分で解決すべき問題なのだ。だが、こうやっていても答えなんて簡単に出る筈無いだろう。こうやって意味もない自問自答を何度も繰り返していく。俺はどうすれば良いんだ?

ここで悩んでいれば答えは出るのだろうか・・・・・

 

「えっとさ、お節介になると思うけど・・・・納得いかないときはとことん悩んでいいんだよ」

 

「え?」

 

青年は頭をかきながら自分の側に寄ってくる。

 

「多分、君が悩んでいる事は簡単に答えが出たら悩む事じゃない。みんな悩んで大きくなるんだから」

 

そして、笑顔を見せながら自分に話してくる。

この人の言葉の一つ一つは誰からの口からも言えるようなモノばかりだ。しかし何故だろうか

 

「君の場所はなくならないんだし。君が生きてる限りずっと、そのときいるそこが、君の場所だよ。……その場所でさ、自分が本当に好きだと思える自分を目指せばいいんじゃない」

 

その一つ一つには大切な思いが、それ以上のモノが詰め込まれているような感じだ。

━━━だけど

 

「━━━━そんなの・・・・無理だ。悩んだって答えが出る訳じゃあない。俺はヒーローにもなれない。周りが、自分自身なる事を認めようとしない」

 

分かりきったことだ。今の自分自身にどんな事を言ったとしても無駄だと言う事を、どれだけの言葉を並べたとしても自分の心に届きはしない。

だから

 

「無理なものは無理なんだ。俺がそれをよく知っているんだ!あなたが言っていることは全て綺麗事なんだ!」

 

 

━━━頼むから俺に希望を持たせようとしないでくれ

 

 

 

「━━そうだよ」

 

━━━え?

 

「だからこそ、現実にしたいんじゃない」

 

━━━この人は

 

「本当は綺麗事が一番いいんだもん」

 

━━━本気で自分を

 

 

「・・・・・・・」

 

自分の中にあったモヤモヤしたどす黒い何かが消えていく。心地よい気分だ。まるで激しい雨が止み、綺麗な青空が広がっていくような感覚だった。

 

「・・・・れ・・・・す・・か」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・俺は・・・・ヒーローに・・・・なれますか?」

 

 

 

青年は笑顔を浮かべると右腕を出し親指を立てる。彼はサムズアップをすると口を開く。

 

 

「なれるよ!君がそう思うなら!」

 

 

━━━あぁ、そうか。そう言う事だったんだ。

 

俺は何かに憧れてヒーローになったわけじゃなくて、コレを。

誰かの笑顔を見たかったんだ。

 

俺のような個性を持って悲しんでいる人、不幸な人を、皆を笑顔をにしたくてヒーローに━━━━━

 

不思議と俺の目から熱いモノが溢れ出ていた。なんだよ・・・・目の前がよく見えないじゃあないか。

やっと・・・・やっと、俺の進む道が見えたのに

 

 

「駄目だよ。ヒーローなら、誰かを笑顔をにするなら自分も笑顔をにならないと」

 

青年は自分に笑顔を向けてくる。

 

━━━あぁ、クソ。俺って馬鹿だ。こんな簡単な事に、こんなに近くにあったのにどうして気付かなかったんだ。

どうして・・・・俺は

 

目からボタボタと熱いモノが溢れる。だけど何故だろうか、俺は泣いている筈なのに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・アレ?」

 

1人の少女が、拳藤一佳が目を覚ます。何故自分はベッドの上に居るのか、何故自分は頭に包帯を巻いているのか、思い出せなかった。

覚えているのは自分と彼が対峙し、その後━━━━

 

「そっか・・・・負けたんだった」

 

彼とした約束、彼はその約束通り勝ち抜き自分を負かした。彼女には未練がないと言えば嘘になってしまうだろう。

彼との戦いは一分いや、十数秒も満たないだろう。彼に負けたのは悔しいがこれが彼との力の差なのだと思いしらさせれた。

 

「全く・・・・・完敗だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと━━━━すぐ終わりますから━━━━」

 

「ここで騒ぐんじゃないよ!」

 

と、思っていると雰囲気をぶち壊すかのようにリカバリーガールと先程まで戦っていた筈の彼の声が聞こえてきた。

最初は幻聴か?と思ったが、視線を扉の方へ向けると幻聴ではない事が分かった。と言うより本物がそこにいた。

すると彼はこちらを見ると安心したような表情を見せた後

 

「俺、あの試合は認めませんから!次は必ず正々堂々勝ちます!だから━━━━」

 

彼はサムズアップをし、笑顔を見せる。

 

「見ててください。俺の変身!」

 

「・・・・・・」

 

彼女はあまりの出来事に何を言えば良いのか分からず、ただ唖然するしかなかった。

 

「それじゃ俺、早く試合に行かないと!」

 

「それじゃあさっさと出て行っておくれ!試合に間に合わなくても知らないよ!」

 

彼はそのまま走り出して行った。まるで嵐のように過ぎ去るかのようにだ。

 

「・・・・ハハハッ」

 

不思議だ。思わず笑いが込み上げてくる。彼女は先程まで雰囲気が嘘のように笑っていた。

 

「全く、あんな事いわれちゃ、陰気臭い気持ちが吹っ飛ぶよ・・・・」

 

彼は約束を守る事ができなかった。だが、笑顔を守る事はできた。

 

彼が目指すのはヒーロー。誰かに憧れた訳でも、家族がヒーローだった訳でも、何かが欲しかった訳でもない。

 

皆、誰もができる事。誰でも人を幸せにできる技を彼は知っている。知っているからこそ、"それ"に救われてきたからこそ、"それ"を守る為に彼はヒーローになる。

 

空想のようで綺麗事でコミックのような夢だろう。だからこそ彼は現実にしたかった。

 

彼が求めてきたものそれは━━━

 

 

━━━笑顔

 




綺麗事だからこそ現実にしたいんだ。


笑顔が似合うサムズアップの青年
一体何者なんだ・・・・・・


やっと書きたい場面ができてホッとしました。

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第29話 変身

今思えば、エグゼイドを最初見た時本当に人気出るのかな?と心配でしたがまさか今では物凄い事になっている上にもうすぐで最終回だとは思いもよらなかったです。
仮面ライダービルドも通り魔として叩かれているようですが、自分はそこから何か次の映画などに繋がっていくのではないかと思っています。

そして今更ながら小説を見返して思った。
・・・・アレ?ライダー要素少なくね?



「飯田くん・・・大丈夫かな?」

 

緑谷出久は友人である飯田天哉を心配する。飯田は家の都合により早退する事になってしまった。

緑谷はこれから始まる天倉と爆豪の試合を飯田抜きで見る事に寂しさを感じていた。

 

「飯田くんならきっと大丈夫だよ」

 

隣にいる彼女、麗日が緑谷を励ます。緑谷はその通りだと自分自身に言い聞かせ、試合を見る事に集中する。

だがそれと同時に再び心配してしまう。先程までの天倉の様子が誰からの目から見ても悲しく見えた。

 

とても不安だ。とても不安の筈なのに、彼《天倉》は笑っていた。まるで先程まで雰囲気が嘘のように彼の表情は変わっていたのだ。

 

 

『準決勝第2試合!この組み合わせは個人的に楽しみだ!』

 

『ヒーロー科爆豪勝己! VS ヒーロー科天倉孫治郎!』

 

プレゼント・マイクはいつも通りにテンションを上げて実況を開始する。それに合わせ観客達も一斉に盛り上がっていく。

 

それに対してステージの上で対峙する2人はお互いにこれから始まる戦いの為に準備運動や精神統一をしている。

天倉も勿論、自身の心を落ち着かせる為に精神統一をしている。

 

「おい」

 

すると対戦相手である爆豪が話しかけてくる。天倉はいきなり話しかけられた為にビクッと驚く。そもそも爆豪のような性格をしている者に話しかけられれば誰だって驚くだろう。

 

「吹っ切れたんか」

 

「え?」

 

天倉は爆豪がしてきた質問の意図が読めなかった。心理戦でこちらを惑わす為の作戦だろうか?いや、爆豪がそのような事をする人間ではない事は知っているだろう。

爆豪がそんな事する訳・・・・・・・ないと思いたい。

爆豪は続けて話してくる。

 

「別にお前が何悩んでいても俺には関係ねェ

けどな・・・・」

 

『 R E A D Y━━━』

 

爆豪はこちらに手を向けると凶悪な笑顔を覗かせる。そして掌がボボボと火花が飛び散ったと思うと

 

 

 

 

『━━━━━S T A R T !!!』

 

「手加減するつもりはねェぞ!!!!!!」

 

 

 

 

BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!

 

 

 

 

 

巨大な爆発が天倉を襲った。

 

 

 

 

『え?・・・・・ええええぇぇーーーーーっ⁉︎爆豪いきなりの大火力つーか、超火力ーーーーー⁉︎天倉手も足も出ずに終わったのかーーーー⁉︎』

 

『・・・・・いや、まだだな』

 

(だろうな、あいつがこの程度で終わる筈がねぇからな。あいつがこの後する行動と言えば━━━)

 

大爆発によりできた煙幕からひとつの緑色の影が飛び出てくる。天倉が個性を発動した事は誰の目から見てもわかる。

爆豪はそれを見るとニヤリと笑う。

 

「そう来ると思ったわ!!!」

BOOOOOOM

 

爆豪は正面から来た天倉に対して爆破━━━ではなく自身の正面の床に対して爆破を行い、爆破による壁が発生する。

天倉はやや怯み、勢いが落ちたがそのまま煙幕の壁の向こうにいる爆豪に対して蹴りを喰らわす。

 

「⁉︎」

 

が、蹴りは無意味に終わった。煙幕の向こうにいた筈の爆豪は姿を消していた。その為蹴りも空振りに終わってしまった。

それでは爆豪本人は何処にいるのだろうか?

 

「ハズレだバーカ」

 

上だ。天倉のすぐ上に、爆豪はいた。そして"個性"爆破により自身の軌道を変え天倉の背後へ回ると天倉の背中に掌を置く。

 

「死ねェ!!!!」

 

BOOOOOOOOM!!!

 

自身の脚力による勢いと爆豪の爆破がプラスされ、天倉は前方へ大きく吹っ飛ばされる。

天倉は場外を避ける為、床に両手両足の爪を立てギイイイイイイイイと床を削りながら減速していきステージの端ギリギリで止まった。

 

「ぐっ・・・・」

 

天倉は背中にダメージを負いながらもその痛みを堪えるように爆豪に向かって走り出し、拳を繰り出す。

が、爆豪はソレを難なく躱すとあまくの腹部に掌を添える。

 

「動きが単調なんだよ・・・・隙だらけだボケ!!!!」

 

BOOOOOOM!!!!

 

天倉の腹部に爆破が起きる。爆豪はカウンターの要領で天倉に攻撃を加えているのだ。

だが、それだけでは終わらなかった。

 

顎、胸、肩、脚、首、腹、腕、腿

 

次々とラッシュを繰り出すかのように爆発が起きる。そして、トドメを言わんばかりにアッパーを喰らわすように爆豪は腕を振り上げる。

 

 

「死ねェ!!!!!!」

 

BOOOOOOOOOOOM!!!!!!

 

 

巨大な爆破により、天倉は大きく後方へ吹き飛ばされる。

一方的だった。今までの天倉の強さが嘘のように爆豪は天倉を圧倒していた。

観客達はその様子に呆気にとられていた。

 

『ま、マジで?爆豪強ええぇぇぇぇ!!!あの天倉を一方的にって・・・・・嘘だろ⁉︎』

 

『そうだな・・・・爆豪の強さもあるが、それ以上に天倉は今までの戦いによる疲労が出てんだろ。天倉の"個性"は長期戦になればなるほど不利になる。

この体育祭じゃあ特にな。全く、合理性に欠けるよ』

 

爆豪は煙幕が立ち上っている場所、天倉が倒れているであろう場所を注目し、常に爆破できるように構える。

 

 

(さて、こっからだ。あいつは何をして来る?また真正面からか?上から襲って来るか?それとも━━━━)

 

煙幕が徐々に薄れ、完全に消えて無くなるとそこには

 

何も無かった。

 

そう。何も、誰も無かった。そこにいる筈の天倉孫治郎の姿が無かったのだ。

爆豪は焦るが、すぐに落ち着き、思考する。

 

姿を消した?透明化?いや違う。もしそうなら煙幕が多少揺れるなどの動きがある筈だ。

観察しろ。そこには何がある?目を凝らしよく見ろ。

天倉がいた筈の場所を詳しく見る。するとそこには不自然な穴が一つ存在していたのだ。

 

爆豪は一つの結論に辿り着くと同時に行動に移す。自身の両腕を地面に叩きつけ床を爆発させる。

 

 

「地雷暴発《マイン・バースト》!!!」

 

床を爆破させるとそれに伴いステージの所々にヒビが入り、そして何かが床から飛び出て来た。

 

「グアアァァァァァァァァッ!!!」

 

天倉孫治郎だ。彼は爆豪の死角、真下から攻撃を仕掛けようとしていたのだ。

だが、その身体は先程まで天倉とは違っていた。所々が鋭利になっており、ヒレ状の刃は肥大化しており背中から触手状の鞭が形成されていた。

常闇との試合で見せた形態へと天倉は変化していた。おそらく先程まで状態では爆豪に勝てないと分かったのだろう。

 

地面から出てきた勢いで空中へと飛び上がった天倉は触手を突き刺すように爆豪へ伸ばす。

が、爆豪はソレを回避すると片方の触手を掴む。

 

「邪魔だ!ッラァ!!!」

 

爆豪はそのまま掴んだ手で爆破を起こし、もう片方の手で触手をちぎるかのように追撃で爆破を起こす。

すると爆破の影響で触手が焼け切られる。

 

「ッガアアァァァァァ!!!」

 

天倉は触手を焼け切られ生じた痛みによって怯んでしまい、着地すると同時に動きが止まってしまう。

爆豪は待っていましたと言わんばかりに天倉へ接近すると両手を天倉の眼前に添える。

 

 

「閃光弾《スタングレネード》!!!」

 

すると天倉の目の前に強力な閃光が発生する。天倉はモロに目に光を浴びてしまい、その場で目を抑え悶絶する。

 

「ッガアアァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!???」

 

「ハッ!視力が何倍も良くなってんだろ?瞼も存在しねぇそのデケェ眼には良く効くだろうな!!」

 

更に爆豪は両手を振りかぶり天倉の頭をガッシリと掴む。爆豪は再びニヤリと笑みを浮かべると

 

「オラァ!!おかわりだ!!!」

 

両方の掌から爆破を起こす。天倉は呻きながら耳が存在するであろう両方の側頭部を抑える。

天倉はあまりのダメージにフラフラとよろめいてしまう。

 

「やっぱりな。レースの時、地雷の光と音に凄ぇ苦しんでいたもんなぁ。それがテメェの長所であり短所ってところか」

 

爆豪は淡々と天倉の弱点について説明していく。今の天倉は誰からどう見ても勝ち目があるようには見えない。

天倉は目と耳を抑えながら次第に元の姿へと戻っていく。恐らく無意識のうちに"個性"を解除したのだろう。

 

天倉はゼェゼェと肩で息をしている状態だ。ここに来て一気に今までの戦いの疲労が襲って来たのだろう。それに対し爆豪は汗を掻いてはいるが、目立った外傷などは無く1発も攻撃を喰らっていない為に無傷だった。

 

 

「天倉くん大丈夫なんですか、アレ?目も耳もやられた。しかも疲労と自身の"個性"でかなり弱っている状態ですよ。リカバリーガールに傷を直してもらう事は出来ると思いますが、確実に疲労によって次の試合をする事はできませんよ」

 

セメントスは審判であるミッドナイトに試合を止めるべきか連絡する。はっきり言えばこれ以上緑谷のように生徒を重症にしたくないとセメントスの教師として思っている。

 

「・・・・いいえ、このまま続行します」

 

「・・・・・分かりました」

 

しかし審判であるミッドナイトは試合を止めることを拒む。セメントスはミッドナイトの声に何か感じたのか、それ以上は何も言わなかった。

ミッドナイトの判断は教師としては恐らく間違っているだろう。しかしミッドナイトは今、1人のヒーローとして天倉孫治郎を見ている。

 

彼の目はまだ死んではいない。寧ろその逆だ。彼の目には熱い闘志が意志が思いが詰まっている。

 

(初めて会ったときとは全く違う目を・・・・本当にキミには驚かされるわね)

 

ミッドナイトは彼を見ていると不思議と笑みが溢れてくる。ヒーローとして、教師として生徒がこうやって成長していくのは嬉しい事だからだ。

 

それに加え

 

 

「オーーーイ、何やってんだ!」「それでもヒーローなの⁉︎」「立ってくれよ!」「お前はまだ戦えるだろ!」「あん時の強さはどうした⁉︎」「お前には期待してんだぞ!」「お前の強さを見せてくれよ!!」「立ってよ天倉ーーーー!」「2人とも頑張れーー!!」「満足させてくれよ!」「立てえええええええ天倉アアアアアア!」「爆豪もがんばれーーーー!」「心が躍るなァ!!」「天倉ァ!!!」

 

 

麗日との試合でのアンチが嘘のように応援してくれている観客達が現れてくる。爆豪はその声援に自分があまり含まれていない事に少々ご立腹の様だが。

 

「テメェ・・・・まだやるんか?」

 

「もちろんだよ」

 

天倉は爆豪の質問を受けながらヨロヨロと立ち上がる。どう見ても満身創痍これ以上戦える様には見えない。だが、そんな彼を突き動かすものが存在している。

それは、自身が変わると言う覚悟だ。

 

 

「俺はこれから・・・・・変わるんだ」

 

 

 

天倉は両脚で床をしっかりと踏みしめ、やっとの思いで立ち上がると構える。

両足は肩幅に開き、右腕を左斜め上に伸ばし左手を丹田、下腹部に添える。そして、右腕を左から右へと移動をさせ左手もそれに合わせて滑らせる様に左腰に平行に添える

 

 

天倉の目にはまるで炎が灯っているかのような気迫を感じる。

爆豪は天倉が行なっている行動に疑問を持つが、直ぐにこれから何をしようとしてくるか理解できた。

 

(これは・・・・ルーティーンか)

 

 

 

【プリショットルーティーン】

 

ゴルフ用語として使われており構えに入るまでの一連の動きと心の準備を行うプロセス。この場合、技を繰り出す前にある一定の動作を行うことで、集中力を高めて技の成功するイメージを高める技術として使う。

 

 

「何をしようとしてるか分かんねェが、隙だらけなんだよ!!!」

 

爆豪は技を出させまいと両手を後ろへ向け爆破をし、天倉へ接近する。しかし、天倉は少しも動こうとしない。

 

残りの距離10、9、8、7、6、5、4m

 

天倉は避けるそぶりを見せなければ瞬きもしない。

残り3m、2m、1m

 

 

そして突如として右手を左手の上に素早く乗せた後、身体を開き両腕を広げながら叫ぶ━━━━

 

 

「━━━━変身ッ!!!」

 

「死ねェェェ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

━━━大爆発

 

 

 

爆豪の大爆破は天倉の胸に確実に触れた後爆発を起こした。それもとてつもない威力の爆発だ。

一般人ならば確実に気絶する程のだ。

 

 

「あ、天倉くん⁉︎」

 

「コレ、やり過ぎじゃ⁉︎」

 

「天倉まさか死んだんじゃ・・・・・・⁉︎」

 

 

『ちょっ、直撃ィィーーーーーーー!!!!天倉モロに喰らったァーーーーーーー!!!!もうコレヤベェよ!爆豪マジやばくね⁉︎強えぇよ爆豪!!!天倉流石にコレはひとたまりもない━━━━━━━━』

 

『・・・・・・・・・』

 

 

爆煙が立ち上る中、爆豪はただ立ち尽くしていた。彼は今、喪失感と怒りによって何を考えれば良いか分からなかった。

 

━━━まさかこの程度でアイツはやられたのか。期待した俺は何なんだ。

 

爆豪が作り出した爆煙をただ見つめガッカリとした思いを怒りに変えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━ボウ

 

 

突如、爆煙の勢いが増す。その勢いは煙の大きさに比例し熱量も多くなる。

そして

 

 

━━━ボウウウウウッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

巨大な熱風が爆豪に襲いかかった。あまりの熱量に爆豪は顔を腕で覆い隠し、目を瞑る。

観客達も爆煙が大きくなった事に驚くと同時に襲いかかってきた熱量に慌てふためく。

 

『なっ、なんだぁーーーー!!!いきなり爆煙が大きく、熱く!!!っつーか、アチィーーーーー⁉︎ガラス越しに熱が伝わってくるんだけど⁉︎』

 

『・・・・・ほう』

 

プレゼント・マイクが慌てふためく中、相澤消太はその熱風の発生源に注目すると感心するような声を漏らす。

 

そして熱風が止み、爆豪は目を開ける。

するとそこには緑色の炎を纏った人間がいた。熱風を発生させ爆煙を払った原因が目の前にいた。

そして、その炎は徐々に勢いを失っていき、隠していた本来の姿を露わにする。

 

その姿は蜥蜴《トカゲ》のようだったが違う。メタリックな緑色の体表面をし、額には一対の触覚を、赤い釣り目状の複眼を持つトカゲ━━━━しかし、爆豪の知っている姿とは異なっている点がある。胸にはオレンジ色の装甲が形成され、全身もシャープな無機質な鎧をイメージさせられる。

そして側頭部、肩、腿には傷のような赤い模様があり、四肢の末端にはそれぞれ肘から先を膝から先を覆うグローブ、ブーツのような黒い外殻が形成されている。

最後に口元には噛みつく事を拒否するかのように平坦なマスクが存在する。

 

 

「テメェ・・・・・・」

 

爆豪はこの状況下に対して不思議と笑みを浮かべていた。それに対し天倉は爆豪を見据え構える。新たな姿で

 

 

 

 

━━やっと見つけることができた。俺のやりたい事、やるべき事を。

 

爆豪くん、緑谷くん、麗日さん、飯田くん、常闇くん、心操くん、魔理沙さん、上条くん、射命丸さん、相澤先生、ミッドナイト先生、オールマイト先生、拳藤さん

 

そして、俺に大事なことを気付かせてくれた・・・・

 

 

━━だから見ててください。俺の

 

 

━━━━━━━変身ッ!!!

 




やっと変身と言わせる事ができました。そしていよいよ体育祭編もクライマックスになりました。
早くヒーロー殺し編もやりたいと思っております。


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第30話 天倉オリジン

今までありがとうエグゼイド!

これからよろしくビルド!



彼は小さい頃から才能を持っていた。誰から見ても彼は優秀だった。誰から見ても彼は1番だった。誰から見ても強い個性だった。誰から見ても彼は凄かった。

そしてそのうち彼は自分自身が超越した存在だと、周りとは違うのだと思い込んでしまい、自尊心の塊へと変わり周囲の人々を見下していった。

 

そんな彼にはいつも駄目で無個性でトロくて自分の足元には及ばない幼馴染がいました。

彼は幼馴染の事だけは気に入りませんでした。自分の足元に及ばない雑魚の癖に張り合おうとし、更には個性を発現させ、自分を負かしました。彼は決意しました。何が何でも幼馴染よりも上になってやると。自分が幼馴染よりも凄い事を証明する為に頑張る事にしました。

 

そしてとある日気になるクラスメイトが出来ました。そのクラスメイトは容姿は普通で喋り方も普通、体格も普通、髪型も髪の色も普通。ぶっちゃけて言うとここまでモブと体現したような人物に会ったのは初めてでした。

が、そんなクラスメイトは容姿とは裏腹に凄かった。最初は敵の様な姿に変化させる雑魚個性のモブと思っていましたが、次第に彼は自分以上の実力を持っているのではないか?と思ってしまいます。

 

そして、そんな奴に幼馴染にも負けたくないと高校の大きな行事に向けて特訓をし始めました。

特訓に特訓を重ね、思考を重ね、更には鍛錬を重ね、満足し始めた頃、彼は見ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か〜〜〜〜○〜〜〜〜は〜〜〜〜め〜〜〜〜はぁっ!!」

 

 

 

<イヤ、ナンカチガウナ・・・・

 

 

 

クラスメイトが◯めはめ波の特訓をしているところです。

 

 

 

<ソウカ!アクセントノモンダイカ⁉︎

 

 

 

「きゃ〜〜〜〜めぇ〜〜〜〜○〜〜〜〜めぇ〜〜・・・・・」

 

 

 

するとクラスメイトは自分の存在に気付きました。しかしそんな事は重要な事ではなかった。偶々、自分とクラスメイトが同じ場所で特訓していた事でも無かったし、クラスメイトがかめは◯波の特訓をしている事でも無かった。

 

 

<ア、イヤコレハチガウンダヨ。ア、アレナンダヨ、アレ

 

 

クラスメイトの身体には物凄い傷が、絆創膏、包帯が巻いてあり更には身体の所々には重りの様な物を装着していた。

 

 

<アレ?ネェ、チョットキイテル⁉︎

 

 

彼はすぐに理解できた。クラスメイトは自分の予想以上の特訓をしており、自分の特訓と比べれば月とスッポンだ。

それから彼はクラスメイトに対抗心を燃やし始めました。自分は1番なのだと、自分が幼馴染よりも上だと証明する為に彼は更に強くなりたいと思いました。

 

 

すると彼は彼を超えたいと思うたびに不思議と笑うようになりました。

もしかしたら彼はそんなライバルが欲しかったのかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白れぇじゃあねぇかぁあああああああああ!!!!!!」

 

爆豪は両手から爆破を起こしながら天倉に向かって勢いをつけながら跳び、腕を構える。

彼が戦う相手である天倉は今までの試合であらゆる戦法を見せてきた。天倉の変幻自在な戦法に対策などできないだろう。

 

天倉に対して姑息な作戦は通じない。ならば自分のやる事は本気で叩き潰すのみだ。

デクの様に作戦は立ててから戦ったりはしない。何故ならば自分は作戦を立てなくても強いからだ。

 

 

爆豪は天倉に接近すると腕を振りかぶり━━━━天倉の目の前で縦回転をする。そして、そのまま自身の足を相手の頭上へと叩きつける。

爆破で攻撃すると見せかけ、本命は踵落としによるノックダウン攻撃。今まで爆豪は"個性"による攻撃ばかりをしていた為、フェイントからの踵落としで天倉を怯ませてから一気に畳み掛けるのが爆豪が今、思い付いた算段だ。

 

何?作戦を立てなくても強いって言っていたのは何だったんだ?

・・・・・気にするな!

 

フェイントによる踵落としは見事成功。爆豪の踵落としは天倉の頭を捉えた。

 

『おおっーーーーーと!!!爆豪フェイントによる攻撃!これは決まったかァーーーーーーーーーーっ!!!!』

 

天倉はそのまま倒れるかの様に前のめりになる。

 

そのまま━━━━━前転宙返りを決める。

 

すると、前転宙返りと共に右足を爆豪の頭上へ伸ばし、その勢いのまま爆豪の頭へ足を振り下ろす。

 

「ぁぶねぇっっ!」

 

爆豪は頭上に天倉の足が迫っている事に気付くと両手を前に突き出し両方の掌から爆破を起こし、その反動で後方へと飛ぶと同時に回避を行う。

 

がそれを許すほど天倉は甘くなかった。

 

「ぜぇぁああああああっ!!!」

 

天倉は体制を立て直しつつ両腕を広げた後、爆豪に向かってすぐさま駆け出す。

爆豪は得意の爆破で迎え撃とうとするが天倉の行動が爆豪を上回る。

天倉は爆豪の胸倉を掴みながらも尚走り続ける。

2人が数メートル進んだ後、急停止すると爆豪は滞空している所を無理矢理押し出される形でバランスを崩してしまう。

 

(しまっっ⁉︎回避ができn━━)

 

「おおおおおおっ!!!」

 

そこへ天倉は無防備な爆豪のボディに恨みを晴らすかのように

 

1発、2発、3発、4発━━━

 

パンチのラッシュを浴びせる。

強力なパンチを何度も受け、爆豪は怯んでしまう。そして天倉は爆豪の懐に入り込み、潜り込むように身体を沈め相手を背負い、自分の釣り手の肘を相手の脇の下に入れる。

 

『コレは━━━背負い投げか!天倉怒涛のラッシュをしても尚その怒りは収まらないのk『違うな』・・・ホワッツ?』

 

『あれは背負い投げじゃ無いな。もっと高度な━━━』

 

実況を他所に天倉は爆豪に対し背負い投げの体勢に入るが、通常の背負い投げとは違う箇所が存在した。

それは、"跳んでいる"のだ。天倉は背負い投げをすると同時に自分も跳躍したのだ。

 

 

 

【無心】

 

両腕を大きく広げて構えを取った後、タックルを仕掛ける打撃投げ。

この技は壁などが存在する屋内や壁面がある場所で本来の威力を発揮する事が出来る。相手にタックルを仕掛けた後も急停止するのでは無く、相手を壁面へ叩きつけそのままラッシュを仕掛ける為、壁面が存在しないフィールドでは威力が半減してしまう。

しかし天倉は身動きが取れない時、滞空時を狙いバランスを崩し回避を取れないようにしたのだ。

最後にこの技の特徴はトドメに背負い投げをするのでは無く、背負い投げを応用した技、スカイフォールを使用し相手にのしかかるように地面へ叩きつけるのだ。

 

 

 

『飛んだ⁉︎いくつ技を隠し持ってんだよ⁉︎凄げぇなオイ!!』

 

『天倉は関節技や投げ技等の柔術を主体とした技を得意としてるからな。アレくらい造作も無い事なんだろ。

だが、爆豪に対して空中戦は分が悪いな』

 

相澤がそう呟くと

爆豪は天倉の顔面を掴み掌から爆破を起こす。すると予想できなかったのか、爆豪の攻撃に驚くと同時に顔面にダメージを喰らい拘束が緩んでしまう。拘束から抜け出した爆豪は天倉に攻撃を仕掛けようと、天倉も負けじと爆豪に対し蹴りを仕掛けようとする。

 

「ンなもん当たるかぁっ!!!」

 

爆豪はもう片方の掌から爆破を起こし、軸回転するように身体を逸らす事によって蹴りを回避する。

そして両掌を天倉へ向ける。爆豪はこのまま無防備な腹部を爆破する気だろう。

すると天倉は先程、蹴りを繰り出した足の踵部分を爆豪の首に引っ掛ける。

 

(俺の首に・・・・・!)

 

回避された天倉の蹴りは爆豪に直接攻撃を仕掛けるものでは無く、これから行うであろう攻撃の予備動作だったのだ。

 

 

 

「死ねぇッッ!!!!」

「受付《レセプション》ッ!!!」

 

 

お互いの技がほぼ同時に決まる。

天倉は爆破される瞬間、爆豪を地面に叩きつけるように足を振り下ろし、それに対して爆豪は首に掛かった足が振り下ろされる瞬間に爆破をする。

 

それぞれの技は決まり地面に叩きつけられる。

 

が2人はその程度では止まらない。寧ろ激しくなっていく。

 

爆豪は爆破の勢いで回転し、車輪のように天倉へと突き進んでいく。天倉はそれを避ける為、その場で大きく跳躍しする事により回避する。だが爆豪はそれを見越して天倉の眼前で急停止し追いかけるように両掌から爆破を起こしその勢いで大きく跳躍する。

 

(真下からの攻撃━━━躱せるもんなら躱してみやがれっ!)

 

天倉は地上での戦いにおいて右に出る者はそうはいない。しかし相澤が言った通り空中戦では爆破による加速により飛行する事が可能な爆豪が有利であり、天倉は空中戦において攻撃を躱す術を持ち合わせていない。

麗日も弱点の一つである空中戦を狙った戦法を取っていた。爆豪は天倉と麗日との試合だけでなく他の試合も観察していた為、天倉の戦闘パターンを見極める事はできなかったが、可能な限り天倉の弱点を知る事はできたのだ。

その弱点の内の1つが天倉は空中戦を苦手とする事なのだ。

 

 

━━━対策をしていなければの話だが

 

 

グンッ

 

「⁉︎」

 

爆豪は謎の感覚に見舞われた。自身の身体が急なスピードで天倉へと引き寄せられている。

元々爆破をする為近付く事には問題なかったのだが、爆破をするタイミングがズレ、攻撃が決まらないのだ。そもそも自分は何故引き寄せられているのか?その答えはすぐに理解できた。

 

天倉の手にとあるモノが握られていた。見覚えのあるソレは天倉自身の身体の一部、いや個性によって形成した触手状の鞭だった。

いや、正確に言うと

 

(俺の爆破で焼き切った鞭を・・・・!)

 

天倉は千切られた伸縮自在の鞭を爆豪の腕に巻き付け、引き寄せたと言う事になる。そして個性と自前の鍛えられた腕力によって引き寄せるとそのまま強力な拳を喰らわせる。

 

「ぐっ!」

 

「まだだッ!!」

 

天倉は再び自身の鞭を爆豪の身体に巻き付けると床に叩きつけるように振り下ろし、背中を上からプレスするように爆豪を踏みつける。

上から、下からの挟まれるような形で衝撃が襲ってくる。天倉は怯んだ瞬間の隙を見逃さず、爆豪の片腕を後ろにし拘束する。

 

 

一連の動作がスルリと決まり、一部の観客席からおおっと声が上がる。

その中でAクラスや教師陣の何人かが何かに気付く。先程見せた天倉の動きがとある人物の動作と一致しているのだ。

 

 

「アレって、相澤先・・・・イレイザーヘッドの戦闘スタイル⁉︎」

 

「え?相澤先生の・・・・・あ、確かに似とる!」

 

緑谷は持ち前の観察力、分析力で直ぐにどのような動きをしているのか理解する。そして、天倉の動きを観察してもう1つ分かった事があった。

 

「動きにキレが戻っている?」

 

天倉の動きが今までと比べ良くなっている。

正確には今までの"個性"を使用している状態と比べて繊細な動きが可能となっているのだ。

 

コレには秘密がある。

天倉の現在の姿は今までと違い出力を大分下げた状態なのだ。出力を下げた分、破壊力は通常の"個性"使用時の状態と比べ劣るが、それと引き換えにエネルギーの消費を抑え長時間の使用、パワーを制御する事が可能となり、天倉が得意とする戦法が可能となったのだ。

 

言わば、天倉自身の正当な強化形態なのだ。

 

 

『おおおおお⁉︎天倉が遂に爆豪を押さえつける事に成功!てか、アレを教えたのお前だろぉ!自慢の生徒が可愛くて、ついつい教えちゃったって感じか?そうなんだろ!んん⁉︎』

 

『(うぜぇ・・・・)ま、教えた事に関しては否定はしないが、コレは驚かされたな。自身の身体の一部を武器として扱い、爆豪の動きを封じるとはな』

 

 

天倉は麗日との試合で自身の弱点を見つける事ができた。しかし、体育祭の途中で弱点を克服する事は至難の業だ。それに自身の弱点をすぐに失くす事が出来る人間などそうはいないだろう。

だからこそ天倉はその弱点を利用したのだ。爆豪の性格上、弱点を的確に突いてくるのでは無いか?と天倉は思っており、試合で爆豪との試合の中で、直接爆豪の攻撃を受ける事によって確信する事ができたのだ。

そこで自身の弱点である空中戦を餌として使い、見事カウンターをとる事に成功したのだ。

 

 

(まさか、たった3日で捕縛術を会得するとはな・・・・・)

 

すると相澤の包帯によって見る事が出来ないが、ニヤリと笑う。まるで自身の予想以上の結果が出たような、そんな表情だ。

 

(それで良い。どんどん周囲の技術を取り込め。そして、高みを目指して行け)

 

相澤の中で天倉の今後の成長が楽しみとなっており、久々に心を躍らせているのだ。

 

 

 

 

「ふぅ・・・・なんとか押さえ込む事はできたけど・・・・・・降参する気は━━━」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」

 

「ま、無いよねー。爆豪くんの性格上あり得ないか」

 

天倉はホッと一息つく。タダでさえ試合の連続でエネルギーが消耗、疲労が溜まっており立っているだけで一苦労な状態だ。

そこで偶然か、はたまた奇跡かエネルギーの消費を抑えた形態に変身する事に成功し、さらに天倉の得意とする戦法が可能となっており、爆豪と渡り合う事が出来ているのだ。

しかし、あくまで消費を抑えているだけであり、エネルギーの限界も近付いているのだ。

天倉が思考していると爆豪が口を開く。

 

「余所見してんな、クソが」

 

「⁉︎」

 

爆豪は掌を天倉へ向けるとバチバチと火花を散らせる。

 

「閃光弾《スタングレネード》ッッ!!!」

 

 

カッ!!!

 

 

「ッ!!」

 

爆豪は掌から爆破と共に強力な閃光を生じさせる。急な光によって天倉は腕で眼を覆い隠すが、怯んでしまう。

爆豪は緩んだ拘束から抜け出すとそのまま天倉の片腕を掴み、もう一方の手を天倉の胸に当てる。

 

 

「この距離なら回避は出来ねぇなっ!!!!」

 

 

 

BBBBBBBBBBBBBBBBBBOOOOOM!!!!!!

 

 

『ゼロ距離爆破ーーーーーーー!!!?爆豪、天倉を逃すまいとしっかりと掴み、無慈悲の連続爆破ーーーーー!!流石の天倉もコレにはひとたまりも無いだろォーーー!!』

 

プレゼント・マイクの言う通り、不意をつかれた強力な連続爆破によって天倉は大ダメージを受けてしまい膝をついてしまう。連続爆破の影響なのか胸部装甲が焦げてしまっている。

 

それでも尚、爆豪は攻撃の手を止めない━━━

 

「これで━━━━━死ねやッッッ!!!」

 

『トドメの一撃ーーーーー!!!やったか⁉︎』

 

爆豪が最後の一撃を加えようと腕を大きく振りかぶり、天倉へ突き出す。しかし、爆豪は攻撃の途中に天倉を逃さないように掴んでいた手をいつの間にか離していた事に気付いていなかった。

 

失念していたのだ。天倉の爆発力を

 

 

 

 

 

━━━━ズドンッッ!!!!!!

 

 

 

気付くと爆豪は大きく後方に飛んでいた。

 

何をされたのか理解出来なかった。そもそも見えもしなかった。

爆豪の頭の中は一瞬だけ真っ白になるが、後から来るように自身の腹部に大きな痛みが走り、爆豪は我に返る。

 

「━━━ッ!!ハァッ!!!」

 

BOOM!!

 

爆豪は場外ギリギリで両掌を後方に向け爆破を起こし、勢いを殺しなんとか踏みとどまる事に成功する。

 

「━━━━っ忘れてたわ。お前が追い込まれる程強くなる事」

 

爆豪は深く腰を下ろし、右手を突き出している天倉を見据える。

 

 

「なんとか・・出来たな・・・【虎落とし】」

 

 

 

【虎落とし】

 

相手の攻撃と同時に強力な一撃を見舞う技。

とある流派の技の中で最強と言われ、単体での攻撃力は研ぎ澄まされた必殺の一撃とも言えるカウンター技。

タイミングがとてもシビアでり、今の天倉では10回中成功するのが3、4回と40%以下の確率で成功する。

脱力し、動きを見極め、必殺の一撃を叩き込む事が虎落としの要点である。

 

 

 

お互い体力と共に肉体も限界に近づいていた。

観客達は相変わらず、いや、ますますヒートアップしていく。それに比例するかのように2人の闘志もますます滾っていた。

 

━━━━だが、次の一撃で勝負が決まる。

 

2人はお互いに感じ取っていた。だからこそ後悔の無いよう最後まで戦い抜くのだ。

 

 

「━━━━認めてやるよ」

 

 

爆豪はそう呟くと同時に爆破を起こしながら飛ぶ。そして空中で腕を交差させると再び爆破を起こす。

何度も、何度も、何度も爆破を起こしていく内に爆豪の体は錐揉み回転しながら飛び、ソレはまるで弾丸のように天倉へと突き進んでいく。

 

「━━━━━今のお前は俺よりも強い」

 

それに対し天倉は両腕を開き腰を落とした構えを取る。そして自身の意識を右足に集中させると迎え撃つ様に爆豪に向かって走り出す。

そしてタイミングを見計らい、ジャンプすると空中で回転を行い、右足を突き出す。

 

 

 

 

 

「━━━━━だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━今、この場でテメェに勝ってやるよォ!!!!"天倉"ァァ!!!!!!」

 

 

「うぉりゃぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

俺がヒーローに憧れたのは、初めてこんな"個性"でも誰かを笑顔にする事が出来るって知ったからなんだよな。

 

こんな俺でも誰かの笑顔を守りたいって思ったんだよな。

 

 

灯台下暗しだな。

こんな近くに答えがあったのに。

 

 

 

━━━やっと、やっとだ

 

 

━━━やっと俺のやりたい事が見つかった

 

 

━━━本当に、本当に、なんて遠い廻り道

 

 

 

 

 

 

 

『天倉くん場外!!!

 

 

━━━━━爆豪くんの勝利!!!!!!』

 

 

 

 

 

━━━ここが俺の原点なんだ

 

 

 

:天倉オリジン

 




原作の爆豪の戦歴って
・vs緑谷 戦いに勝ったが結果的には負けとなる。
・vs雑魚敵 余裕で勝利
・vs麗日 途中で麗日の容量限界で勝利
・vs切島 ゴリ押しの爆破で勝利
・vs常闇 相性が良く勝利
・vs轟 轟が本気を出せなかった為呆気なく勝利

と言った感じなんですよね。
もっと強敵と真っ向勝負して欲しいなーと思い。天倉と戦わせてみた所、意外と爆豪が善戦していて逆に天倉が途中で死なないか不安になった。


〜〜〜〜〜天倉の新技まとめてみた。NEW


【無心】

ストファーのアベルが使用するスーパーコンボ。
天倉は柔術を得意としている設定の為、使わせてみました。
格ゲーを見て天倉はコレだ!と思い、格ゲーの技を習得する為の特訓をし、比較的早く覚えたのがこの技。



【受付《レセプション》】

とある海上レストランの副料理長の技。
相手の首に踵を引っ掛け、そのまま地面に叩きつける様に足を振り下ろす技。天倉の中で比較的簡単に使用できる技であり、今回は空中から地面へと叩きつける様に工夫した。
ちなみに他の技もそうだが、どんな理由であれ女には使うなと言われている。


【虎落とし】

人外魔境の神室町にいる謎の老人から教えてもらった技。
相手の攻撃と同時に強力な一撃を見舞うカウンター技であり今の天倉が持つ技の中で単体での攻撃力では1番の威力を持つ。しかしタイミングがとてもシビアでよく失敗する。
コツを覚えると、とても楽に出せる為、雑魚敵を倒すのにとてもお世話になりました。
マジで強いから困る・・・・。


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第31話 この素晴らしい体育祭に終わりを


仮面ライダービルド1話がとても楽しめました!
所々昭和ライダーや平成一期を連想させますね!
僕のヒーローアカデミアも期末試験が原作とは違い、1組ずつ焦点を当てるように変えている所がとても良いと思いました!

ヒロアカ3期あるといいなー



━━━孤独

 

 

そう感じたのは久しぶりかもしれない。

 

 

高校生になってからは良くも悪くも自分の周りに騒がしいクラスメイト達が居てくれた。

 

 

居てくれたからこそ、居なくなった時。

 

 

初めて大切なクラスメイトだと理解できたのだ。

 

 

 

 

(ここは━━━何処だ?)

 

 

自分の周りには何も無い。いや、何も無い訳ではないが、殺風景だ。視界に映るのは

ただ、ただ、何も無い地平線。

 

だが、こんなにも美しいと思ったのは初めてかもしれない。

 

自分が知っている美しくも怪しげな雰囲気を出す街並みや、地球が作り出した生命によって生み出された美しき自然とは全く違った景色。

 

 

 

━━━━あぁ、なんて美しいんだろう

 

 

 

不思議と眼から頬にかけ熱いものを感じる。

 

 

普通、こんな全く知らない場所で景色を絶賛している場合では無いと言うのに

 

 

悔しいくらい美しい景色に自分は見とれていた。

 

 

 

 

 

 

「━━━ようこそ」

 

 

 

振り向くとそこに居たのは水のよう青く澄んだ美しい髪をたなびかせ、透き通った淡い桃色をした羽衣を身に付けた━━━━

 

 

まさに女神と言っても過言でも無い女性が目の前にいた。

その女性は大理石で作られた椅子に座っており、まるで待っていましたと言わんばかりに笑みを浮かべている。

 

 

 

「━━━私はあなたに新たな道を案内する女神です」

 

 

 

その女性は自分自身を女神と名乗った。

 

信じられない。

 

そのような存在が本当に実現するのか?そもそもコレ自体自分が生み出した夢や妄想と言う可能性もある。

しかし、最近そんなことが何回も続いた為なのか、目の前の風景が夢の類では無い事がすぐに理解できた。

 

そして、新たな道と言う意味も。

 

 

 

「不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

 

 

 

・・・・・・死後の世界

 

 

 

そう聞いた瞬間、改めて自分が死んでしまったという事実に直面される。

 

 

 

多少の出来事ならば受け入れる事が出来ただろう。しかし自分が死んだと言う事実を肯定する事なんてできる筈が無い。

 

 

 

だが、それと同時に納得してしまう自分がいる。

 

 

 

こんなにも美しい景色に美しい女神。この様な光景は現世で見れるものでは無いのだろう。

 

 

 

 

そもそも自分は何故、亡くなってしまったのだろう。記憶がおぼろげで思い出せない。

 

 

 

 

「あなたはとある自尊心の塊でまるで悪魔の様な人物と激闘を繰り広げ・・・・最後にあなたは・・・・クッ・・・・・敗北してしまい・・・・・〜〜ッッ!」

 

 

 

・・・・・そうか、自分はその様な事を体験していたのか。

 

 

 

今更そんな事を知ったところで意味は無いのだろう。

 

 

 

その事を知ってなのか、女神も言葉が次第に途切れ途切れになり、身体が震えている。

 

 

 

此処は現世では無い。自分はいつの間にか死んだ事を受け入れようと素直に思っていた。

 

 

だが、もしも未練があるとするなら

 

 

 

 

 

━━━最高のヒーローに、皆の笑顔を守れるようなヒーローになりたかったな・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ━━━━感傷に浸っているところ悪いけど・・・・・正確にはあんたの死因は"ショック死"よ」

 

 

 

 

・・・・・・・え?

 

 

 

「あぁ、なんて言うか?最後あんたと人相が悪いヤツがぶつかった瞬間に起こった大爆発の音であんたビックリして、そのショックで心臓止まっちゃったのよ」

 

 

 

 

・・・・・・・え?

 

 

 

「・・・・・ぷっ!!??あははははははははははははハハハハハハははははははははははははwwww⁉︎

ご、ごめん!もう無理!我慢出来ない!って言うかなにアレ⁉︎カッコ良く戦っていたのにww最後がアレって!最後にショック死て⁉︎ブハハハハハハハハハハwwwwヤバイ!ヤバイ!ちょーウケるんですけど⁉︎」

 

 

 

ドスッ!!!

 

女神からの容赦無い言葉が天倉を襲う!!!

 

 

天倉に753のダメージ!!!

 

 

残りHP

2247/3000

 

 

 

「って言うかww生放送www全国に中継してるのにww全国生放送なのにww結末がアレってwwwちょーダサいんですけどーーーーwww

エリスもドン引きするレベルって⁉︎

あーーーーーーーお腹痛いww!」

 

 

『CRITICAL STRIKE!!』

 

 

 

女神からの容赦の無い追撃!!!!!!

 

 

天倉に5103のダメージ!!!!!!

 

 

残りHP

1/3000

 

天倉は踏ん張った!!!

 

 

 

 

やめて!女神からの容赦無いイジメの如き言葉で硝子のハートを砕かれたら、天倉の精神まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないで天倉!あんたが今ここで倒れたら、これからの展開はどうなっちゃうの?

ライフはまだ残ってる。ここを耐えればまだ物語《小説》は続けられるんだから!!

 

 

 

 

「ぷーーーくすくす

自分がカッコ良く死んだと思い込んで、地の文までカッコ良くしていたの物凄く恥ずかしいんですけど!逆に引くレベルなんですけど!」

 

 

 

 

『MAXIMUM CRITICAL BREAK !!!』

 

『会心の1発ッ!!!!!!』

 

 

天倉に9999のダメージ!!!

 

 

━━━━ゴフッ!!??

 

 

天倉は吐血した

 

 

 

「あっ⁉︎ちょ、ちょっと⁉︎いきなり吐血ってどうしたのよ⁉︎わ、私が言い過ぎだからなの⁉︎い、いや、違うから!わ、私の所為じゃないんだからね!」

 

「・・・・こ、殺してくれぇ・・・・・優しく殺してぇ・・・・優しく殺してぇ・・・・・キリングミーソフトリィィィ〜〜〜〜〜・・・・・」

 

「いや、あなた既に死んでるから!て言うか女神に殺しをさせないでくれないかしら⁉︎」

 

 

天倉はここまで毒舌、と言うよりも鬼畜な女神がいるとは思わなかった。

そもそも女神があんなクソな言い方をするとは思わなかった。

 

 

「じゃ、じゃあ生き返らせて下さい。俺、まだ現世でやり残した事が幾多もあるんです。主に食事関連で」

 

「いや、あなたさっきまで最高のヒーローになりたいって言っていなかったかしら?」

 

先程までヒーローになりたいと言っていた人物とは思えない台詞を吐いていた。

人は死に直面すると正直になると言うがまさかここまで意地汚いとは、女神も引くレベルだった。

 

 

「て言うか無理無理。私はあくまで死んだ後を処理する側だから。

そもそも死んだのに意地汚く生き返ろうとするのって凄くダサいんですけど〜〜〜ぷーーくすくす」

 

 

天倉は生まれて初めて「グーで殴りたい」と思った。

 

 

こめかみに青筋を立てながら天倉は真剣に悩む。このまま死ぬのは洒落にならない。

どうにかして生き返る方法は無いのだろうか?と考える。ドラゴ◯ボールを集めて生き返らせて貰う、ザオリクをかけて貰う。

 

・・・・・どう考えても無理っぽいので却下。

 

 

 

 

「ねぇーーーーーーー、考えるのはもういいですかーーーー?コッチはちゃっちゃと済ませたいんだけど〜〜〜〜〜」

 

と女神は寝そべりながら片手にポテチ、片手に漫画と言ったどう見ても女神には見えない体たらくだった。

 

何故だろうか、このどう見ても駄目な女神を見ていると無性に腹が立ってくる。

先程まで美しい女神と思い込んでいた自分を殴りたい気持ちだ。

 

 

 

 

 

 

瞬間、天倉に電流が走る━━━

 

天倉の頭の中に迸るかのように沢山の言葉が溢れる

 

 

 

 

 

 

━━『ゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

 

━━『お前をゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

━━『貴様をゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

 

━━『断じてゆ゛る゛さ゛ん゛!!』

 

 

 

 

よくわからないが、満場一致で殴っても良いそうです。

 

 

 

「そうか━━━貴様、ゴルゴムの手先か!」

 

 

「えぇ、そうよ。私こそ水を司る女神アk━━━━何ですって?」

 

 

「俺は貴様を断じてゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 

天倉は何かに憑依されたように叫ぶと何やらバイタルチャージと言いながら右拳を顔の前に、左拳を胸の前に移動させポーズを取る。

そのポーズを見て駄女神は冷や汗を掻き始め、これからの自分の身に起きる事を想像する。

 

 

「え?ちょ、ちょーーーっと待って。それってアレよね。処刑用bgmが流れてくるヤバイ奴よね。

私、女神なのよ!ちゃんとした女神だしゴルゴムの手先でも無いから!いや、ポーズを取りながらジリジリと詰め寄るのやめて貰えます⁉︎

いや、流石に真っ赤に燃え上がる拳はやめて!それってバズーカ砲以上の威力だった筈なんですけど、本人じゃ無いとはいえ流石に全力のグーパンはヤメt」

 

 

 

━━━・・・ィダアアァァァァッッパアァァァンチィィィッッ!!!

 

 

 

━━━いいぃぃぃぃやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

・・・・・・・・酷い夢を見た。

 

 

 

な ん だ っ た ん だ ア レ ?

 

いつもの展開なら真っ白な部屋で声だけが聞こえてきて自分をなんか・・・・こう悪い道へと唆してくるようなコミックの様になるんだけど。

 

もう一度言おう。

 

な ん だ っ た ん だ ア レ ?

 

 

俺がそう思っていると、誰かが扉を開けてくる。その正体はオールマイトだった。

取り敢えず痛む身体を無理矢理起こしながらオールマイトに挨拶すると物凄く驚かれた。

 

 

「あ、ああああ天倉少年が生きてるーーーーーーーッ!!??」

 

「残念だったなぁ、トリックだよ」

 

 

と言うか死んだと思われていたのか。解せぬ。

するとオールマイトは一瞬で距離を詰めると肩を掴んできた。

 

「リカバリーガールに天倉少年の心肺が停止したと聞いていても立ってもいられなくなったので来た!!のだが、本当に大丈夫か!もしかしてお腹空いている⁉︎

む⁉︎顔色が悪いが大丈夫か!!!?」

 

「い、いや・・・・さっきから両肩を・・掴まれて物・・凄く・・・・揺らされているからだと・・・・・」

 

俺がそう言うとオールマイトは「あ、ごめん」と申し訳なさそうに肩から手を話してくれる。

オールマイトの力は真面目にヤバイので後、数秒揺らされていたら死ぬ自信がある。

 

「あーーー、そう言えば試合ってどうなりました?最後ら辺の記憶が薄れていて思い出せないんですけど」

 

「うん?あぁ、そうか。

 

結果的には天倉少年、君の負けだ。今までの疲労の所為なんだろう。頑張ったが、最後の最後で押し負けてしまった」

 

成る程なぁ、負けちゃったのか・・・・・。

・・・・・まぁ、仕方ないか。

 

「結果的に爆豪くんの方が強かったって事で。まぁ仕方ないですよね」

 

「え?あ、あぁ。うん。」

 

するとオールマイトは驚いたように頷く。一体どうしたのだろうか?さっきから驚いてばかりだから逆にこちらが心配してしまうのだが。

するとオールマイトは再び口を開く。

 

「(驚いたな・・・・・・。試合の後いつも悲しそうにしていた彼が・・・・)天倉少年、見違えたな」

 

「え、そうですか?」

 

なんだろう?よくわからないけど物凄く嬉しい気がする。

あ、そう言えばオールマイトに褒められる事って凄い事じゃね?実感が無いけど。

 

「さ、早くクラスメイト達に元気な姿を見せてくると良い。心配させてはいけないだろう

大丈夫!リカバリーガールには私から説明しておこう!」

 

「あ、はい。分かりました」

 

俺はオールマイトにそう言われるとそのままベットから出る。

身体の所々が痛むが、なんとか我慢しながらA組の観客席へと向かう事にした。

 

決勝戦は多分、終わっているだろうけど皆に元気な姿を見せておかないとなぁ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「一時はどうなるかと思ったが・・・」

 

天倉少年の精神面を心配したが、どうやら大丈夫のようだ。

と言うよりも天倉少年、よく生きていたな・・・。マジで心肺が停止したと聞いた時は寿命が縮んだと思ったぞ。

 

 

「だが・・・・流石は大河の息子だな。

こりゃ、後で大河本人に何を言われるかわからないな」

 

 

さて、リカバリーガールにはどう説明すれば良いのやら・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・あれ?何か忘れているような・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

<ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!天倉(くん)が生きているーーーーーーーーーー!!??

 

<何で死んだ事になってんだよおおおおおおおおおおおおお!!??

 

 

 

 

 

あ、ヤベェ。みんなに天倉少年の心肺が止まったって言ったんだっけか。

 

・・・・・天倉少年、そっちはそっちで頑張ってくれ!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

かれこれあって

 

THE 表彰式━━━━━━━

 

空高くには沢山の花火が打ち上げられ、まるで優勝者を褒め称えているように鮮やかだった。

 

『それではこれより!!表彰式に移ります!!』

 

ミッドナイトが生徒達に、観客達に向けて声を上げると、地面から上位3名が乗っている式台が出現する。

観客達はその3名を絶賛するかのように大きな拍手、歓声を送るが生徒達は送らなかった。いや、送ろうとは思わなかった。

 

何故なら━━━━━

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜ん"ん"〜〜〜〜ん"〜〜〜ッッッ!!!」

↑全身に拘束具を付けられても尚、暴れようとしている1位

 

 

「・・・・・・・・」

↑その暴れている1位を無視するかのように俯いている2位

 

 

「」

↑何でこんな奴らと一緒に表彰されてしまったのかと言う後悔と観客達の羨望の眼差しによる極度のストレス、そして1位の矛先が自分に向いてしまうかもしれないと言う恐怖によって、その内考えるのを止めた状態になっている3位

 

 

 

 

 

この光景を見た生徒達は思った。

 

 

 

こ れ は ひ ど い

 

 

 

「何ですの・・・アレ」

 

「爆豪のやつ起きてからあの調子なんだってよ」

 

「もはや悪鬼羅刹。それを無視し続けている轟も凄いが━━━━」

 

A組が1位になっても暴れようとしている爆豪と黙ったままである轟を見た後、チラリと3位を見ると

 

 

 

 

「」

↑お前はもう死んでいる状態

 

 

(((((あ、天倉ェ・・・・・・)))))

 

 

どうしてこうなるまで放っておいたのだろうか。A組の皆は天倉が物凄く不憫でならなかった。

誰だってあんな状態の2人と同じく表彰されればストレスでヤバイだろう。

いや、天倉の場合、精神的にアレなので更にヤバイのだが。

 

仮に3位が飯田であれば、2人を注意するのだろうが、そもそも肝心の飯田本人が家の都合により不在の為叶う事はなかった。

 

ミッドナイトはそんな事をお構いなしに表彰式を進行させる。

 

 

『それではメダル授与よ!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!!』

 

とミッドナイトはマイクを片手にもう一方の片手を大空に向け声を上げる。

すると、アリーナ上方に謎の影が現れる。

 

 

 

 

━━━あれは何だ?

 

 

━━━鳥か?飛行機か?

 

 

━━━それはまぎれもなくヤツさ

 

 

 

「もちろん!私が!メダr『我らがヒーロー!!オールマイトォ!!!!!!』t来たぁ!!!」

 

 

 

すると、何故だろうか先程までMAXハイテンションだった観客達と生徒達が静まり返ってしまった。

 

そしてしばらく気不味い雰囲気の中、オールマイトは3位である天倉の元へメダルを持っていく。

 

「天倉少年おめでとう!惜しかったな!」

 

「コブ・・・・ラ・・じゃ・・・ねぇ・・・・か・・・・・・・・・ハッ⁉︎あ、ありがとうございます!!??」

 

「(何があった⁉︎天倉少年⁉︎)と、とにかく。戦いの中で何かを掴めたらしいがソレをしっかりと物にするようにな!」

 

オールマイトはそう言うと、天倉の首にメダルを掛け、すぐに2位である轟の元へメダルを届ける。

と言うよりも天倉がヤバイ状態なので、早く終わらせようと思った。

 

 

「轟少年、おめでとう。左側を収めてしまったのにはワケがあるのかな?」

 

「緑谷戦でキッカケもらって・・・・・・わからなくなってしまいました。あなたがヤツを気にかけるのも少し分かった気がします」

 

オールマイトの問いに轟は答えると、再び口を開く。

 

「俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目だと思った。清算しなきゃならないモノがまだある。

それに━━━━━━━━」

 

轟は視線をチラリと天倉へと向ける。

 

「あいつにお礼言わなきゃなんねぇ」

 

オールマイトはそんな轟に対し笑みを浮かべ、抱きしめる。

 

「顔が以前と違うな。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと清算できる」

 

さて、と言いながらオールマイトは1位に与えられるメダルを手に、拘束されている爆豪へと向き直る。

 

「さて、爆豪少年!!・・・・っとこれはあんまりだ。伏線回収見事だったな」

 

と言いながらオールマイトは爆豪に取り付けられていた拘束具のマスクを外した。マスクだけを外したのは暴れないようにする為の措置なのだろう。

 

しかしオールマイトが先程言った言葉は逆効果、爆豪の逆鱗に触れてしまった。

 

「オールマイトォ!!!こんな1番、何の価値もねぇんだよ。世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!!」

 

(顔すげぇ・・・)

 

オールマイトは爆豪の顔芸にやや引きながらも、彼の為になるように(無意味だろうが)助言を送る。

 

「うむ!相対評価に晒せ続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くはない(顔すげぇ・・・)」

 

オールマイトがそう言うとメダルを抵抗している爆豪の首へと掛けようとする。

 

「受けとっとけよ!"傷"として!忘れぬよう!」

 

「要らねっつってんだろうが!!!」

 

しばらく格闘した後、結果的にメダルを授与する事に成功?しオールマイトは観客達、生徒達へと締めの言葉を送る。

 

 

「さァ!!今回は彼らだった!!!しかし皆さん!!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!!」

 

オールマイトは叫ぶ。

この場にいる少年少女達はヒーローとしての可能性を秘めている事を。

 

「ご覧頂いた通りだ!

競い、高め合い、更に先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」

 

そしてその可能性は無限大であると言う事をオールマイトは伝えるのだ。

 

 

「てな感じで最後に一言!!」

 

 

この場にいる生徒達はこの体育祭に感謝する。

そして、その体育祭もこれで終わる。

 

 

 

 

「皆さんご唱和ください!!!

せーーーーーーーーーの!!!!!!!!!」

 

 

 

そして、彼らは言うのだ。

 

 

 

「お疲れ様でしたーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「プルス━━━」「プルス━━━」「プ・・・え?」「プルス!ウルト━━━」「プル・・・・ん?」「ルス!♪ウルt・・・」「プルスウルトラーー・・・・え?」「プル・・・」「p━━━はい?」「プルス!ウルt━━━」

 

 

「「「そこはプルスウルトラでしょーーーーーーーーーー!!!オールマイト!!!」」」

 

 

「あぁ、いや・・・・・・疲れただろうなと思って・・・・・」

 

 

 

 

 

 

この素晴らしい体育祭に終わりを!

 

 




















某所とある一室━━━━━━━━

そこには1人の男が作業をしていた。




金属製のボウルの中にグチャグチャとナニカをかき混ぜている。かき混ぜるのをいったん止めると、男は側に置いてある液体をドボドボとボウルの中に注ぐ。
再びナニカと共に液体をかき混ぜる。

━━━━べちゃり


時折、かき混ぜている物体が飛び散るが男はそれを気にしない。

男はしばらくナニカをかき混ぜた後、ベタリベタリと物体にナニカを塗りつけていく。
その短い円柱型の物体は次第にそのナニカの色へと塗り潰されていく・・・・・・。そして完璧に塗り潰されると


「〜〜〜〜〜〜♪」


男は鼻歌交じりに塗り潰された物体に真っ赤なモノを一つ一つ丁寧に乗せていく。
その物体は徐々に美しくなり、まるでアート、芸術品のようなモノへと変化を遂げていく━━━━━


━━━ブヂュリ


そして、かき混ぜていたナニカを袋に詰め、絞るようにソレが出てくる。それは一つ一つ、物体の上に乗せられ真っ赤なモノの隙間、物体の側面に綺麗に飾られていく。
すると男は物体の中央部分に何か文字のようなものを刻んでいく。
男の目は真剣の様に見え、楽しそうにも見える。

そして男は作業を終えると

テレビに視線を移す。そこには緑色の鎧を身に付けた戦士が戦っている様子が映し出されていた。



そして男は全身全霊をかけ、大きな声を上げる。

それはまるで何かを祝う様に・・・・・。




「 Happy birthday!!!!!!

Masked Rider 《仮面ライダー》!!!! 」







──────────────────────





読者の皆さん、ここまで読んでくれてありがとうございます。
ぶっちゃけ体育祭編がこんなに長くなるとは思いませんでした。ですが、体育祭編は次回を持って終わりとさせていただきます。


それとお忘れの方もいるかもしれませんが
次回で仮面ライダーを出しても良いかというアンケートも締め切りにさせていただきますので、活動報告の方でアンケートを募集してますのでご協力してくださるとありがたいです。

体育祭編が終わった後は番外編でも投稿しようかな?と思っております。

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第32話 俺にとっての最高のヒーロー

更新遅れてしまった申し訳ありません。

こうなったのも仮面ライダービルドって奴の所為なんだ!
2話から物凄く飛ばしてきやがって!これじゃあこの先の展開が楽しみじゃないか!
僕のヒーローアカデミア3期希望です。


━━・・・きろ・・・・

 

声が聞こえてくる。

遠くから、ずっと遠くから聞こえてくる。

 

聞いたことのある声だ。

・・・・・・だけど、眠い。意識が次第に遠のいていく。

 

━━・・・・様・・・加減に・・・・・ろ・・・・

 

 

何か言っているようだが、聞き取れない。

 

まぁ、良いか。

 

もう眠いんだ・・・・・・もう・・・・・・

 

 

おやすみ・・・・・パトr・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━貴様!!!良い加減に起きろと言っている!!!

 

 

「ウェッ!!??(0w0)ダリナンダアンダイッタイ!!!」

 

 

急に声が鮮明に聞こえてきた。

思わず俺は驚いてしまい、滑舌もおかしくなっている。

 

だが、聞き覚えのある声だった。

体育祭の時、いつも夢に出てくる謎の人物の声。

 

姿は見せずいつも声しか聞こえない・・・・・?

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・いや、最終的に誰!!??

 

 

 

「イガダナンダヨナァ?ヲレト、イッショニタタカッチクレルンデェ

「いつまで寝ぼけている!!!」ウェッ⁉︎」

 

 

怒られた⁉︎

なんかいつもと比べてかなり怖いんですけど⁉︎コレだったらいつものミステリアスな雰囲気を漂わせている方がマシなんですけど!

そもそもなんでこんなに怒ってんの?この人(?)いや声だけしか聞こえないけど・・・・・。

 

 

「と言うか、なんで今更になって俺の夢に出てくるんですか?なんと言うか自分の力に関してはある程度吹っ切れましたし・・・・・・・・」

 

 

 

 

━━━甘ったれるなぁッッ!!!!!!

 

 

 

ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑっ!!??

また怒られた⁉︎ナンデ!!??

俺、なんか間違った事を言ったっけ⁉︎

アレか?この声の事を厨二病って言った事なのか?常闇くんが食いつきそうな話題って言った事なのか⁉︎

 

 

 

━━━あの体育祭の結果はなんだ!!力を物にしたのに敗北するとは!貴様!!!本当に強くなる気はあるのか!!!

 

 

 

あ、そっちなんですね。

 

 

「いや、そう言われてましてもその時ってかなり消耗してましたし、体力も限界に近づいていましたし、何より爆豪くんがメッチャ強かったですし」

 

て言うか強くなるも何もヒーローとしての実力がつけば、別に強くなったりするつもりh

 

 

━━━口答えするなッッ!!!!

 

 

 

えええええええええええええええええええ!!??

また怒られた!!?(2回目)

 

 

━━━良いだろう!!ならばこの俺が直々に貴様を鍛え直してくれる!!!

 

 

すると急に目の前が光り出し、あまりの眩しさに腕で顔を隠してしまう。なんの光ィ!!?

と言うか、何だこの急展開は!!?

 

次第に光は弱まり、やっと目を開けられる程に落ち着く。そして先程まで謎の光に満ちていた場所に目を向ける。

 

 

 

━━━貴様に真の強さと言うものを教えてやる・・・!!

 

 

 

すると、そこには片手に白と黄色を基準とした槍を持ち、身体は赤を基準とし、鎖帷子を着込んだような姿をしている。

 

そして、何より目立つのが頭部であり、三日月の如く湾曲し、熱帯域で大規模に栽培されている黄色の果実をモチーフにしたような大きな被り物をしていた。

 

・・・・即ち頭がバナナだった。

 

 

 

 

・・・・・・え?・・・バナナ・・・・・?

 

 

 

「え!?・・・・バナナ!?バナ・・・バナナ!?」

 

 

 

━━━バロンだッ!!!

 

 

 

 

知 ら ね ぇ よ

 

 

 

 

と言うか、なんでジリジリ寄ってくんの?怖いわ!!頭にバナナを被ってジリジリ寄ってくんな!!!

て言うか、なんで槍を構えてんの?え?ちょっと洒落にならないんですけど!ちょ、おま、ヤメロォ!!!と言うか何なんだよ!この展開!どうすれば良いんだよ!え、ちょっと、マジで勘弁して下さい!やめて、怖い怖い怖い怖い怖い!威圧感がヤバイ!頭がバナナだから尚更怖い!

お、オレのそばに近寄るなぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

<バナナスカッシュッ!!!

 

 

「ぎゃぁあああああああああああ!!?」

 

 

 

 

謎の音声と共に巨大なバナナが自身の腹部を貫くとそのまま意識が暗くなっていく。

 

 

 

なんでバナナ・・・・・・・?

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

カーテンの隙間から陽の光が差し込んでくる。眼が覚めると、そこは見知った自分の部屋だった。

 

「・・・・・酷い夢だった」

 

天倉がそう言うのも無理は無い。

謎の声の人物が正体を現したかと思えば、その姿がバナナを被った謎の人物であり、そのまま自身に巨大なバナナを突き刺してきたと言う始末だ。

 

酷いを通り越して呆れる位だった。

そして、天倉は二度とこんな夢を見たく無いと思いながら、自身の部屋のカーテンを全開にする。

すると、暖かな太陽の光が天倉を包み込み身体中がポカポカしてくる。

 

天倉は先程の夢をさっさと忘れる為に気分を切り替えようとする。

 

「あ」

 

すると天倉は何かを思い出したかのように、ふと声を漏らす。そして自分の部屋の隅に視線を向ける。

 

そこには巨大な大砲のような、男を象徴するような形をしたオブジェがどっしりと置かれていた。

 

 

「・・・・・・・・・どうしようコレ」

 

 

天倉孫治郎は悩んだ。

雄英体育祭が終わり生徒はたった2日間だが、代休日で疲れを癒す事になっていた。

しかし、天倉は自分の部屋にあるソレを見て困っていた。

 

「マジでどうしよう。この【ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲】すっげぇいらないんだけど」

 

そう天倉は目の前にある卑猥な形をした大砲【ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲】の扱いに困っていた。

※18話参照

 

 

元々借り物競争のお題に何故か混ざっていたもので八百万に創造してもらったモノなのだ。凄くいらない。

色々な人は何故かコレを見るたび「完成度たけーなオイ」と言ってしまうのだ。

天倉はコレをどのように処分、もとい活用すれば良いか考えていた。

 

すると、天倉の部屋の扉を開けてくる者がいた。

 

 

「孫治郎〜〜〜〜朝飯だっt「フンッ!!!」タコスッ!!??」

 

 

が、天倉は声を聞いた瞬間ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を掴み、その人物に叩きつけた。

意外と武器として使える。

 

天倉はその人物をまるで豚を見るかの様な目で見下す。

 

 

「おい、なんでお前が此処にいる。今朝から変な夢を見た所為なのか、今の俺は物凄く機嫌が悪い。

さっきは鈍器で済んだが、事と場合によってはアトミックバスターを喰らわすぞ。

それともアレか?キン肉三大奥義でも喰らうか?」

 

「ねぇ、酷くね?ウチの息子酷くね?

炎司《エンデヴァー》のところの息子よりもヤバイんだけど」

 

 

息子からの先制攻撃を喰らった親父、もとい天倉大河はよっこらせと立ち上がると天倉に改めて向き合う。

 

 

「やれやれ・・・・・ただいま孫治郎」

 

 

「全く・・・・・・・おかえり父さん」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

AM 9:00

 

 

 

「で?(動物学者の)仕事の都合でしばらく家に居るって事で良いの?」

 

「そうそう。いやぁ、理解が早くて嬉しいねぇ」

 

天倉と、父親、母親が食卓を囲む。親である2人は久々に家族全員で食事をしているからなのか、幸せそうにしている。

それに対し天倉は少々気怠そうにしている。

 

「と言うか、母さんも知っているなら話して教えてくれないかなぁ」

 

「ん〜?いや、だってねぇ。聞かれなかったから」

 

「あぁ・・・・・畜生。どうしてウチの親はこう・・・・・」

 

天倉は両親の性格に頭を悩ませる。

いつもながら、どうしてこの2人から自分が生まれたのだろう?なんらかの化学反応でも起こったのだろうか?と疑問に思ってしまう。

 

 

『次のニュースです。

最近話題となっている、謎のUSBメモリを使用し無個性の人物を中心に怪人へと変貌を遂げる事件ですが、謎のヒーローが怪人を退治すると言う出来事が起きています。

これについて取材陣は風都警察署・超常犯罪捜査課のトップである照井警視にインタビューすると「俺に質問するな」と一点張り。

謎のヒーローに関しての情報は未だ掴めておりません。

 

続いて、今日の天気でs━━━━』

 

 

(最近、こんなニュースばっかりだな・・・・)

 

天倉は気晴らしにテレビを見たが、一般人が怪人に変貌を遂げると言った事件を天倉は何回もニュースで見た事がある。

天倉はいい加減うんざりしてきたなぁと思い、チャンネルを変える為に手元にあるリモコンを弄ろうとする。

 

 

ピロン♪

 

 

 

すると天倉のズボンのポケットから、正確には天倉のスマートフォンからメッセージが着信してきた時に鳴るメロディが流れてきたのだ。

天倉は自身のスマホを手に取り、届いたであろうメッセージを確認する。

 

 

『差出人 通りすがりの清く正しい新聞記者

 

件名:あなただけに特別な

 

あややや、どうもおはようございます。いつもニコニコあなたの隣に清く正しい射命丸文ですよ。

体育祭ではお疲れ様でした。しかし、とても良い活躍でしたねぇ。

やはり私の目に狂いは無かったようですね!新聞の見出しはズバリ!『雄英高校ヒーロー科に潜む影⁉︎』に決まりです!

おや?おやおやおやおやおやおやおやおや?どうしてでしょうか?天倉さんが何を言いたいのかが頭に浮かんできますよ?

いや、言わなくても分かりますよ!!ん?どうして分かるのかだって?なんででしょうか?おお、怖い怖い。

ズバリ!あなたは私が書いた新聞に興味を、いや是非とも読んでみたいと思っているのでしょう!

いやぁ、まさかそこまで興味を持ってもらえるとは思いませんでしたよ!見たいのでしょう!読みたいのでしょう!!え?今すぐに読みたい?

仕方ありませんね。特別に出来立ての新聞を届けてあげましょう!

 

あ、できればベランダの窓を開けてもらってもよろしいでしょうか?』

 

 

「」

 

「お?何だ?彼女か?彼女なのか?」

 

「えぇー?彼女?マジで⁉︎赤飯用意した方が良い?」

 

天倉はどんな顔をすれば良いか分からなかった。携帯の画面にはこれでもかと言った具合に文字が並べられ最終的に新聞という結果になり、親子は呑気に騒ぎ、色々な意味で収拾がつかない状態となっている。

 

(というか、俺あの人にアドレス教えてないんだけど、どうやって知ったんだ?)

 

天倉は彼女の情報網にやや恐怖を覚えながらベランダの窓を恐る恐る開けてみる。

 

 

━━ヒュン!!

 

 

すると天倉のすぐ横に何かが通り過ぎた。その正体を見て見ると、そこには新聞紙が落ちており、ご丁寧にビニール袋に包まれている。

新聞紙が飛んできた方向に視線を移すと、そこには黒い翼を広げ、こちらに手を振っている見知った少女が飛んでいた。

 

「後で感想聞かせてくださいねー」

 

と自称清く正しい、射命丸文は目にも留まらぬ速さで何処かへと飛んで行ってしまった。

天倉は新聞紙をビニール袋から取り出しざっと読んで見るとそこには『まさに鬼畜の所業』『敵よりも敵らしい』『なぜ暗黒進化したのだろうか』『主食は人肉』等が書かれていた。そして遂に

 

 

━━ビリィッ!!!

 

 

 

「コロス」

 

 

天倉はキレた。新聞を一瞬で破いた彼はこの世のモノとは思えない程の恐ろしい形相をしており、ドス黒いオーラを撒き散らしながら射命丸を追いかけようとベランダから飛び降りようとしている。

 

しかし流石に不味いと判断したのか父親である大河は天倉を止めようとする。

 

「どいて父さん、あの女殺せない」

 

「おい、やめろ!流石にヤバイ!よく分からんが殺意の波動に目覚めてんぞお前⁉︎」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 

殺意の波動に目覚めた天倉とその父親である大河が対峙する。2人はそれぞれ自身の"個性"を発動する。

すると、お互いの身体から蒸気が発生し、身体が変化していく。そしてその場には赤と緑の、トカゲのような戦士が立っていた。

 

緑の戦士はまるで、ヒョウやネコのように四足歩行をイメージとした構えをし、赤の戦士は空から獲物を狙うかのような猛禽類のような構えだ。

 

2人はジリジリと距離を図りながら互いを睨みつける。

 

そして2人は満を持して飛びかk━━━━━

 

 

「2人共ーーーー、ご飯よーーー」

 

「はーーい」

↑一瞬で元の姿に戻る天倉

 

 

 

大丈夫だった。

やはりいつの時代も母は強しという事だろう。そして、飯の事になるとすっかり機嫌を良くする息子であった。

 

「(飯の事になると物凄くチョロいなウチの息子)ところで、さっきの嬢ちゃんは彼女か?」

 

 

「━━━あ?(殺意)」

 

 

「さ、さてと美味そうな飯だなー、朝食はちゃんと食べないとダメだよな!」

 

身の危険を感じ取った父親を他所に息子本人は先程までの暴走っぷりが嘘のように淡々と朝食にがっついていた。

そんな一連の出来事を見て母親は「いやー、平和ダナー♪」とお前の目は節穴か?と問いたいような能天気さを見せていた。

 

 

━━ピロン♪

 

 

が、再び天倉のスマホに着信音が鳴ると同時に天倉の全身からも再びドス黒いオーラが噴き出てくる。

母親は「おー、ドラゴ◯ボールみたいね」と相変わらずの能天気さを見せ、一方の父親は「もう知らね」と既に匙を投げた状態であった。

 

天倉はまるで般若のような顔をしながらメッセージを確認するとすぐにいつも通りの普通の顔に戻る。

 

「あれ?コレって・・・・・」

 

と様子が変わった息子が気になったのか、親子はすぐさま天倉のスマホの画面を見る。

 

「あーーーー、成る程。行ってみたらどうだ?」

 

「そうね!なんかコミックの展開みたいだし」

 

息子本人を他所に親子は2人は勝手にそのような雰囲気を作っていく。

天倉はそんな2人の行動に呆れつつ、スマホをポケットの中に仕舞うと再び遅めの朝食に手を出す。

 

(一体、なんの用事だろ?)

 

天倉はそう疑問に思いながら盛った白米を掃除機のように口の中へと入れていく。

先程のメッセージの内容は

 

『差出人 轟焦凍

 

件名:今すぐ来れるか?

 

雄英に近いから場所は分かると思うが

一時間後に○○公園に来れるか?相談に乗ってくれ。』

 

常にクールな彼《轟》からは予想できない事だった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

AM 10:00

 

 

 

ギコッ・・・ギッ・・・・キーコ・・・・

 

 

天倉が乗るブランコから金属のきしむ音が鳴り響く。

子供サイズに作られたブランコに天倉のような高校生が乗っている光景は浮いており、「ママ何あれー?」「見ちゃダメよ」と言われても反論できないだろう。

しかし、この日は代休の為子供の数も少なく今なら乗っても大丈夫だろうと判断したのだ。

 

 

(懐かしいな・・・・子供の頃良く1人でブランコに乗って・・・・・・1人で・・・・・1人で・・・・)

 

天倉は彼自身の思い出に浸りながらブランコを漕ぐが、漕げば漕ぐ程友達が全くいなかったと言う事実を改めて思い知らされ自身の傷を抉っていく。

次第に彼は暗い雰囲気に包まれていく。

 

 

「・・・・!待たせたな天k━━━━」

 

 

丁度轟が約束の為に公園に到着し、天倉を発見すると声を掛けようと近づくが、その天倉本人が物凄く近寄り難い雰囲気を放ち、話しかけたくても出来ない状態になっている。

すると到着した轟に気付くと暗い雰囲気を漂わせたまま声を掛ける。

 

 

「あぁ、来たんだね・・・・で相談って何?」

 

「あぁ(・・・ヤベェ色々と言いにくい感じだ)」

 

轟は天倉の隣に空いているブランコに座るとそのまま俯く。

天倉は轟が何かを言い出すのを待つ。だが轟は黙ったままだ。

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る待つ黙る

 

 

 

(何か言い出せよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!相談したいって言ったのそっちだろぉ!!!こっちは朝から変な夢見て変な新聞記者の所為で精神的に削られてるんだよおおォォォォォォォ!!!頼むから黙ったままはやめて!怖いから!!!)

 

 

(ヤベェ・・・・天倉のヤツ物凄い形相になってやがる・・・・・何か気に障る事でもやったか・・・・?)

 

 

お互いはとても気不味い雰囲気の中、相手が何かを言うまで何も言わないつもりらしい。

そしてその状況はしばらく続き・・・・

 

 

PM11:00

 

 

((最終的に1時間も経過してしまった━━━━))

 

 

お互い何も言い出せずに時間が経過してしまい、高校生2人がただ無言でブランコを漕ぎ続けると言うシュールな絵が完成してしまったのだ。すると2人は意を決したかのように口を開く。

やっとか、このヘタレ共め・・・・。

 

 

「「ちょっとい・・・・・」」

 

「「・・・・・・」」

 

すると偶然なのかお互いの言葉が同タイミングでハモり、更に気不味い雰囲気になってしまった。

その光景は告白間近のカップルのソレであり、誰得なのだろうか。

 

 

「・・・・轟くんからで良いよ」

 

「あ、あぁ・・・・なんか悪いな呼び出しちまって。こう言う事相談できるのってお前位しか思い付かなかったから・・・・」

 

「・・・俺しか?」

 

轟は「あぁ」と頷き間を開けた後、再び口を開く。

今の轟はどうしても必要だったのだ。

彼自身の理解者が、彼と向き合ってくれる良き友がどうしても。

 

「これから━━━お母さんに会いに行くんだ」

 

「へぇ〜それはそれは。会いに行くって事は・・・・病院?入院中って事?」

 

「!・・・・お前って時々エスパーじゃねぇのかって思う位鋭いな」

 

「そうかなぁ?」

 

轟は天倉の予想が大体当たっており少々戸惑いはしたが、すぐに冷静さを取り戻し、話を続ける。

 

「けどさ、元々お母さんが入院したのって俺の所為でもあるんだ。

今更お前に話すのはおかしいけどな。

・・・・・もしお前だったらどうする?もしもお前だったらお袋とどう接するんだ?」

 

その光景はまるで子供が教師に分からない物事を質問するような、はたまたヒーローを待つ一般市民のようなだが、天倉はすぐに分かった。

 

━━自分と似ている。

 

自分がどうすれば良いか分からず誰かに助けを求めたくても1人で抱え込もうとしている。

天倉はそんな前までの自分と目の前の轟をいつの間にか重ねていたのだ。

 

「・・・・・さぁ、俺の母さんは元気の塊みたいなものだから。俺には分からないよ」

 

「・・・・・そうか。

悪いなこんな事に付き合わせちまって・・・・それじゃあ俺はそろそろ」

 

「だけどさ」

 

轟が公園を後にしようとブランコを降りようとした時、天倉が止めるかのように口を開く。

 

「俺が答えて簡単に解決するもんじゃ無いでしょ。そんな簡単に答えが出たら悩む事じゃ無い」

 

「・・・・・天倉」

 

彼は笑う。その笑顔は友の為に、友の手助けの為に向ける。

 

「何年掛かったっていいんだよ。皆悩んで大きくなるんだから。君の場所は無くならないんだし。君が生きている限りずっと、その時いるそこが轟くんの場所だと思う。

・・・・・その場所でさ、自分が本当に好きだと思える自分を目指せばいいんじゃない」

 

ニコリと天倉孫治郎は笑う。

 

笑顔それは誰にでも出来る、人を幸せにする力。

"個性"では無いその力は"個性"には無い力を持っている。

 

「どうして・・・・どうしてそんな事が・・・・言えるんだ?」

 

轟の声が僅かに震える。彼の言葉は心に響くが不安が募る。

確証も無いのにどうしてそのような事が言えるのか分からない。

 

━━どうして

 

━━どうしてお前は

 

 

「だってさ

 

 

 

轟くんを信じているから。轟くんなら絶対に!」

 

 

「・・・・・は・・・はは・・」

 

 

轟は心の奥から熱いモノを感じた。

まるで冷え切った氷がメラメラと燃え盛る炎によって溶かされていくような、そんな感覚だった。

 

「・・・畜生・・・・どうして緑谷やお前は・・・・人の積んできたもんをぶち壊して・・・・」

 

「と、轟くん?」

 

次第に轟の眼から熱いモノが溢れてくる。それを隠すかのように轟は片腕で目元を覆い隠す。

天倉は急な事にアタフタと慌てている。

 

「なんでもねぇ、気に・・・スンナ。俺、そろそろ行くから。」

 

「う、うん・・・・お母さんと仲良くね!」

 

轟はその場から立ち去るように足を進める。

一歩、二歩、三歩と歩いたと思ったら急に止まってしまう。

そして、振り向く。

 

「天倉!!!」

 

「?」

 

 

 

 

 

「━━━━ありがとな!」

 

 

「・・・・・うん!」

 

 

天倉は轟に対して片腕を突き出しグッと親指を立て、サムズアップをする。

 

「・・・・フッ」

 

 

轟は再び歩みながら返すようにサムズアップをする。

 

 

天倉は轟を見送ると空を見上げる。

目の前にはまるで2人を祝うような一面に広がる青空だった。

そして無意識なのか独り言を呟き始める。

 

 

「あの人にお礼を言わないとな・・・・・・・」

 

 

そう呟くとポケットから一枚の名刺を取り出す。

そこに記してあるのは大きく書かれた名前と紹介文だった。

 

 

『 夢を追う男

【五代雄介】

2000の技を持つ男 』

 

 

 

ありがとう。

 

━━俺にとっての最高のヒーロー

 





何気に天倉と轟のサムズアップの場面、実は五代さんと一条さんのサムズアップシーンを思わせるようにやってみました。

あと、轟と天倉の場面を書いていると、もう天倉がヒロインで良くね?と薄々思ったり・・・・・。


そして、お待ちかね仮面ライダーのアンケートですが今回で締切とさせていただきました。

結果は・・・・・1番の"仮面ライダーを出しても構わない"に決定しました!!!

と言うか2番が無い事に読者様方の仮面ライダー愛が伝わりました。
ありがとうございます!

しばらくは番外編でも投稿しようかなと思っております。



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第33話 ヒーロー名も決めるのには苦労する


前回までの3つの出来事!


1つ! 天倉孫治郎 体育祭で3位に入賞を果たす!

2つ!天倉の夢の中に謎のバナナ⁉︎

3つ!轟と友情を深め、改めて決意する!


・・・・オーズ風にあらすじをやって見た━━━



ザァーと雨が降り出す梅雨の季節。

道路には大きな水溜りがあちこちにでき、長靴を履いた子供達は傘をさしピチャピチャと遊ぶ。

雨粒は路面に激しく弾かれ、人の心を誘うように寂しく降っている。

そんな雨のシャワーの中、天倉は傘をさし1人寂しく通学路を余裕もって歩いている。

 

「フーフーフーフーフ〜でーあーえーたフーフ〜フフ〜フフー♪我ら思ーう故にーーフフーフフーフ」

(うろ覚え)

 

彼は雨が刻むリズムにのりながら歌う。

例え天気が雨だとしても彼の心の中は快晴なのだろう。天倉はそんな明るさを見せていた。

 

「フフフフーフーだーれーもーみーなー・・・っと着いた着いた」

 

雄英高校門前。

彼はいつもより早く家を出発した為いつもより到着する時間が早かった。

自前の傘を傘立てに置き、自身の教室へと向かう。

 

何故彼がいつもより早く雄英に登校したのか、それは今朝・・いや夢の中へと遡る。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

The 夢の中

 

 

「ギャアアアアァァァァァァ!!?バナナっぽい槍を振り回してこないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

━━逃げるな!!それで強くなれると思うのか!!

 

彼はとにかく逃げる。バナナの人・・・とりあえずバナナの精霊とでも言っておこう。

彼はバナナの精霊が繰り出す槍の攻撃から逃げ続ける。

 

「ヤメロォ!!俺の体はボドボドだぁ!!!かれこれ一時間は戦いっぱなし、つーか逃げっぱなしなんですけどぉ!!!」

 

━━つべこべ言うな!!!貴様のその精神鍛え直してやるッ!!

 

<バナナスパーキング!!!

 

「え"ちょっ⁉︎足元にバナナ畑ってコレは流石にヤバ━━」

 

 

━━アッーーーーーー!!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ケツはアカンて、ケツは・・・・」

 

と言いながら天倉は何故かヒリヒリする自身の尻をさする。

そんな夢の所為か早起きしてしまった彼はいつもより早く登校する事にしたのだ。

彼は「おのれバナナの精霊め」と呟きながら教室の扉を開く。

すると見慣れた教室には既に何人かの生徒が居た。

 

「おっ、三位の到着!」

 

「三位おめでとう!いやー色んな人に声かけられて本当大変だったよ」

 

と声をかけてくる。来て早々一番に褒められ彼は顔を赤くする。天倉は褒められるのに慣れていない。

特に女性から褒められるのは苦手なのだ。

 

「いやー、滅茶苦茶声かけられてマジで有名人になった感じだよなー。天倉もどんな感じだった?」

 

「なんか慣れない感じだったなぁ。

・・・・・あれ、でもそんなに声をかけられたっけな?」

 

上鳴に声をかけられ、しっかり答えるが不思議と彼は違和感を覚える。そんな事を知らず上鳴は天倉の首に腕を回す。

 

「何だよ謙虚な奴だなー!なぁなぁ、お前イチオシのアイドルグループとかいんの?」

 

「え、あ、いや?アイドルはあんまり詳しくないっていうか・・・」

 

「知ってるか?こういう奴が一番オタクなんだぜ?」

 

「峰田くんどっから現れた⁉︎」

 

急に現れた峰田に驚く天倉だがスケベ二人組に囲まれ質問攻めにされる。周りのクラスメイトはそれを微笑ましく見る者、呆れる者、興味の無い者に分けられる。

 

「あれか?やっぱ765プロか?それともμ’sとかか?」

 

「美希にあずささんに四条ヤベェだろぉぉ!!でもこっちも負けてないのんたんにエリーチカァァァァアアアアア!!」

 

「え?え?え?え?」

 

「あ、まてよ!ワルキューレもあるな!346プロか⁉︎いやザ・スターリー・ヘヴンズだろ!」

 

二人のテンションの高さについて行けず天倉は改めてボッチ特有の話題のついていけなさを思い知らされる。

天倉は次第に頭の中がぐちゃぐちゃになっていき、どう答えれば良いかわからなくなってくる。

結果・・・・・

 

「T・S・Hサイコオオオオォォォォォォォ!!!??」

 

「「天倉がぶっ壊れた⁉︎」」

 

奴は・・・・弾けた。

天倉は彼らの好意に応えたいがアイドルの事も全く分からずどうすれば良いかも分からない為彼はその内考えるのをやめた。

が、そこに先程から傍観していた常闇がフォローを入れてくる。

 

「落ち着け。混沌に身を任せれば待つのは破滅のみだぞ」

 

「ハァー、ハァー・・・・ご、ごめん。なんて言うか体育祭でもかなり迷惑かけちゃったし・・・・」

 

常闇は天倉のセリフに対し目を見開くが「フ・・」と微笑むように呟いた後、口を開く。

 

「迷惑と思っているならばそれは見当違いだ。俺自身、弱点である接近戦を経験した上に新しい技の改善の余地も見つける事ができた。

逆にこちらが感謝したい、礼を言うぞ天倉」

 

『マァ、ソウイウコッタ!コレカラモ仲良クシヨウヤ』

 

と常闇の体から黒影が出現しこちらにサムズアップを送る。彼なりの感謝表現なのだろう。

天倉はハハハと笑った後、黒影と常闇に手を差し出す。

 

「これからもよろしく。常闇くんに黒影くん」

 

「・・・・これは驚いたな。

黒影《ダークシャドウ》にも握手を求める者などそうはいないぞ。・・・フ、お前と言い、緑谷と言い雄英には変わった奴らばかりだな」

 

(・・・それはひょっとしてギャグで言っているのか⁉︎)

 

天倉は思わず心の中で常闇に対しツッコミを入れてしまう。だが口に出さなかっただけでもマシなのだろう。天倉と常闇は改めて握手を交わす。

そして黒影にも握手しようとすると、黒影は一気に天倉から距離を取る。

 

「・・・・えーと?黒影・・・くん?」

 

『ベ、ベツニ、オ前ヲ怖ガッテイルワケジャナインダカラネッ!』

 

と黒影はツンデレ口調で常闇の背後に隠れながら天倉に向かって叫ぶ。天倉は「・・・え?」と固まったままだ。常闇はやれやれと溜息をつきながら事情を話す。

 

「どうやら天倉との戦いがトラウマになったらしい。俺としては扱いやすくなったんだがな・・・・全く。本当に此処は変わった奴らばかりいるな」

 

(何度も言うがそれはひょっとしてギャグで言っているのか!!?)

 

天倉は再び心の中でツッコミを入れる。相変わらずこのクラスにはツッコミ所があり過ぎる生徒ばかりだなぁと天倉は溜息をつきながら思う。

 

「でも天倉の戦いってスゲェよな!動画でも再生数10万超えてんだぜ!」

 

「あー!確かに凄かったよねー!私も昨日見たよ!」

 

と上鳴と葉隠はワイワイと談笑する。が天倉は再び「・・・え?」と固まってしまう。

天倉はすぐに我に返ると二人にその話を詳しく聞く。

 

「え?それどう言う事?」

 

「知らねぇの?MeTubeで結構有名になってんぞ?つーかスマホで見れんだろ?」

 

「え?有名なの?てかスマホで見れんの⁉︎」

 

「そもそもそっから!!?」

 

天倉は自身が動画サイトで有名になっている事に驚愕するが葉隠はそもそも天倉自身そう言った電子機器に疎い事に驚愕してしまう。

葉隠は天倉に動画サイトの見方を教えるとすぐにその動画を見せてくる。

 

「・・・・うわぁ」

 

天倉自身、自分の行なった事にドン引きしている様子だった。彼は自分の行為に少なからずショックを受けてしまう。

クラスメイト達は「教えなかった方が良かったかな?」と少しばかり後悔している

しかし天倉は初めて使う動画サイトに少しワクワクしていた。

 

 

「お、おぉ〜〜こう使うのかへぇー。

・・・・・ん?何だコレ?ヒーロー都市伝説?」

 

天倉はピッピと指を動かし、気になったであろうその動画を再生してみる。

 

 

 

そこには仮面をつけた謎のヒーローが謎の化け物と戦っている様子を映した映像が流れ始める。

動画には色々と書き込まれており

『チョー強い仮面のヒーロー登場?』『謎のヒーロー見参?』『いるんだ・・・』『ただのコスプレだろww』『すっごーい』『悪の組織?』『化け物リアルwww』等がコメントされていた。

 

天倉はこの映像のヒーロー達をじっと眺めていると奇妙な感覚を覚える。あくまでも都市伝説。信じる人は然程いないだろうが天倉は不思議とこのヒーローは存在すると確信する。

なんの根拠も無いが彼は仮面のヒーロー【仮面ライダー】がいると信じてしまう。

 

 

(・・・何でだろう?仮面ライダー・・・何で俺はこのヒーローが存在すると・・・・)

 

 

 

「おーい天倉。そろそろ機嫌直せよー」

 

と上鳴に声をかけられ天倉はハッとする。気付けば殆どの生徒達が教室に来ていた。

すると教室に二人の生徒、緑谷と飯田が入ってくる。天倉は二人に挨拶しようと駆け寄る。

 

「緑谷くんおはよう」

 

「うん。天倉くんもおはよう」

 

天倉も飯田に駆け寄る。と言っても天倉の席は飯田の前なので自分の席に座り、挨拶する。

 

「飯田くん。おはよう」

 

「・・・・あぁ、天倉くんおはよう。いつもと比べて早いな」

 

「・・・・?うん。まぁね」

 

天倉は飯田から何か変な違和感を感じた。いつもと比べて彼の言葉には覇気が感じられないのだ。

いや、そもそも彼の目が不思議と曇っているように見えたのだ。

天倉が考えていると扉がガララと開く。入って来たのは相澤先生だ。先程まで騒いでいたクラスの皆も急に黙った。流石相澤先生のクラスの皆は適応が早い。

すると前の席に座っている蛙吹梅雨が相澤先生の変化に気付く。

 

「相澤先生包帯取れたのね。良かったわ」

 

相澤先生がUSJの時に受けていた傷がやっと治り包帯が取れ久しぶりの素顔を生徒達に見せていたのだ。

相澤先生はバアさんの処置が大ゲサなんだよとあまり気にしていない様子だ。天倉も先生の怪我が治ってホッと一安心している。

 

「んなもんより今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だぞ」

 

そう言った瞬間クラスの一部が固まる。恐らく何人かは小テストなどと思っているのだろう。

天倉もヒーロー情報学はあまり得意という訳でもなければ不得意でも無い。普通といった感じだ。

そして相澤先生はそんな生徒達を見据えながら口を開く。

 

 

「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

 

 

瞬間、クラス内にほぼ全員の声が響き渡る。

 

「「「「「「胸膨らむヤツきたああああぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

「あ?」

↑生徒全員を睨む

 

「「「「「「・・・・」」」」」」

↑生徒全員黙る

 

「と言うのも先日話した「プロからのドラフト指名」に関係してくる」

 

流れるような一連の動作に天倉は驚愕する。相澤先生は何事も無かったように話を進める。

天倉は改めて一睨みで皆を黙らす凄さに感心する。

 

「指名が本格化してくるのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から・・・つまり今回来た"指名"は将来性に対する"興味"に近い。

卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんて事はよくある」

 

天倉は改めてヒーロー界の、大人の残酷性を知る。峰田が皆の代弁するかのように「大人は勝手だ!」と言っているが天倉は体育祭に来ていたプロヒーロー達からどれ程の指名をもらえるかドキドキしていた。

最大で50、最低でも10辺りがいいなぁと天倉は考える。

 

「で、その指名集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが今回は二人に偏った」

 

 

 

轟 4121票

 

爆豪 4072票

 

常闇 658票

 

麗日 521票

 

飯田 294票

 

上鳴 271票

 

八百万 112票

 

切島 42票

 

瀬呂 18票

 

 

 

「うおおおおおおお!!?轟と爆豪、超接戦じゃん!」

 

「つーか、滅茶苦茶白黒ついたー」

 

「見る目無いよねプロ」

 

「1位と2位逆転してんじゃん」

 

「表彰台で拘束されてるヤツとかビビるもんな」

 

「ビビってんじゃねぇーよ!プロが!!」

 

クラスの全員はそれぞれ異なった反応を見せる。自身の指名に喜ぶ者、指名されず落ち込む者、あまり興味の無い者。

そして

 

「・・・あれ?」

 

違和感を感じる者。

緑谷は指名票に違和感を感じる。上位になった者は沢山の指名がくる、それは当たり前なのだろう。

しかしおかしい箇所があったのだ。それを気付く者が着々と現れる。

 

「あれ?なんかおかしくね?」

 

「うん。コレってどう言う事?」

 

「相澤先生、何で天倉の名前が無いんですか?」

 

集計結果に天倉の名前は載っていなかった。最初は何かミスをして書き忘れたのでは無いか?と思っていたクラスだったが相澤先生は口を開き

 

「いや、コレが集計結果だ。天倉の指名は0だ」

 

言ってしまった。

天倉は何度も。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も確認する。

 

 

が天倉の名前は書いていなかった。

 

「え、あ?え?え?え?え?え?ウェッ!?」

 

天倉はこんらんしている!

 

「やべぇ、天倉がとんでもない事になったんぞ」

 

「って言うかアレだよな。麗日と常闇、爆豪に票を吸われたんじゃねぇか?」

 

天倉は今もなお混乱しており、しばらくするとこの世に対して絶望したような顔で相澤先生に視線を向ける。

ちなみにその票を吸ったであろう三人は気まずそうに天倉から視線を逸らしている。

 

「まぁ、体育祭であんな誰もがみても怖がるような戦い見せたんだ。一応、こちらも天倉についての評判は聞いてみたんだが『プロにも届くその実力!来年に期待』『かなり危険だが心強い味方になる。来年に期待』『すみません、扱いこなす自信がありません。来年に期待』『ごめんなさい。まだ死にたくないです来年に期待』と言ったような感じだ」

 

クラス全員は哀しそうな目で天倉を見る。相澤先生はこの気まずい雰囲気の中口を開く。

 

「あーいや、まー・・・・2年では頑張れよ」

 

天倉はあまりの残酷な現実に直面する。

 

 

━━━━ゴフッ!!!

 

 

<あ、天倉ーーーーーーッ⁉︎

 

<ギャアアアアまた吐血⁉︎

 

<あ、でも何だろこの安心感

 

<相変わらず硝子のハートかよ!

 

 

そして彼は思った。

 

 

その優しさが逆に辛い━━━━━

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ま、と言う訳で天倉も立ち直った事なので話を戻すぞ」

 

と相澤先生は口を開く。相澤先生は天倉が立ち直ったと言ったがそうとは思えない。

心配した蛙吹梅雨は天倉に声をかける。

 

「天倉ちゃん大丈夫?」

 

「気にしないで。ただの致命傷だから」

 

どうやらまだ立ち直れていないらしい。そんな天倉を放っておいて相澤先生は話を続ける。

要約すると

『先程のを踏まえてこれから職場体験に行く事になり、指名の有無関係無しにヒーローの仕事を体験する為、ヒーロー名を決める事になった』

と言う事だ。そう言った理由でクラスの皆のテンションは上がりヒーロー名を考える者、既に決まっている者などがいる。

天倉も勿論ヒーロー名を考えるのは楽しみだ。

 

「まぁ、仮ではあるが適当なもんは・・「付けたら地獄を見ちゃうよ!!!」

 

すると扉が開き別の教師、否ヒーローであるミッドナイトが入ってくる。何人かの生徒はその姿を凝視、また顔を赤くし視線を逸らし、また興味がなさそうにしている。

今回のヒーロー情報学で副担当として来たのだろう。

 

「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知されそのままプロ名になっている人多いからね!」

 

「まぁ、そう言う事だ。その辺ミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそう言うのはできん」

 

相澤先生はそう言いながら何かを取り出す。天倉はそれを寝袋だと分かったが何故寝袋を取り出したんだ?と疑問に思ったが話はそのまま話は続く。

 

「将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近づけていく。それが『名が体を表す』ってことだ。

例えばオールマイトとかな」

 

相澤先生は生徒全員にヒーロー名がどれほど大切なものなのかを教えてくれた。

名前には様々なモノが詰まっている。その人に生きて欲しいと言う願い。人生において名前は最も大切なモノなのだ。

 

(相澤先生・・・・・)

 

「・・・・・・・zzZZZ」

 

(そんな状態じゃなければ物凄くいいこと言ったのにーーーーーーッ!!!)

 

天倉は物凄くツッコミを入れたいと言う激しい気持ちを抑えながらヒーロー名を考える。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

15分後

 

 

ヒーロー名はなんと発表形式となり一部の人にはある意味では公開処刑とも言える状態になってしまった。

一番手は青山優雅。

 

「行くよ、輝きヒーロー

 

【 I cannot stop twinkling. (訳 キラキラが止められないよ☆) 】」

 

 

「ちょっと待てええええええええええ!!!??」

 

と天倉が叫ぶ。叫ぶのも仕方ないのだろう。何せいきなりのヒーロー名がとんでもない事になっているからだ。

 

「なんだい僕に何か用?☆」

 

「いやいや、そもそもヒーロー名なのになんで短文⁉︎なんで英語⁉︎どう考えても呼びにくいしおかしいだろぉぉ!!!」

 

「確かに天倉くんの言う通りね。青山くん、そこはIを取ってcan'tに省略した方が呼びやすい」

 

「それねマドモアゼル☆」

 

「違ううううううう!!そうじゃないよ!あと使うなら英語とフランス語のどっちかにしろよ!!?」

 

((((天倉(くん/さん)のツッコミが冴え渡っている・・・))))

 

 

クラス全員は天倉の鋭いツッコミに逆に感心を覚えてしまう。そして何故だろうか皆の心の声を代弁してくれたのか全員の心は不思議とスッキリしていた。

そして二番手は芦戸三奈が行くことになった。

 

「じゃあ次アタシね!【エイリアンクイーン】!」

 

「こっちも待てえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!なんでその名前をチョイスしたーーーー!!??」

 

「2《ツー》!?血が強酸性のアレを目指してんの⁉︎やめときな!」

 

「えーーー、いい感じだと思ったにー。天倉的にこの名前セーフでしょ!」

 

「いや、アウトだよッッ!!!!どう考えても悪役のソレだよ!!?」

 

 

(((((ツッコミがキレッキレだ・・・・)))))

 

 

すると何故だろうか、大半のクラスメイトの魂に火がついた。芦戸の発表が終わった途端殆どの生徒達の手が上がる。

おそらくどんなヒーロー名でも天倉がツッコミを入れてくれるお陰で心置き無く言えると思ったのだろう。すると蛙吹梅雨が口を開く。

 

「それじゃあ次、私いいかしら」

 

三番手は蛙吹梅雨に決まった。

 

「小学生の時から決めてたの【FROPPY《フロッピー》】」

 

「カワイイ!親しみやすくて良いわ!」

 

蛙吹がマトモで可愛いヒーロー名を出してくれたお陰でクラスの空気は変わり絶賛するようにクラス内ではフロッピーコールが響き渡る。

天倉はそんな様子を見ながらほっこりする。

 

(てか腹減ったな。学食は何にしようかなぁ・・・・ってヒーロー名考えておかないと・・・・)

 

天倉が腹を空かせながらヒーロー名を考えていると続々と他のヒーロー名が発表されていく。

かっこいい名前もあれば可愛い名前、面白い名前。それぞれ全員の特徴を表した名前ばかりだ。

 

「【爆殺王】!!」

 

「いや、なんか違う」

 

天倉はそんな中爆豪のヒーロー名にツッコミを入れてしまう。爆殺王と言うのはなんだ。

確かに爆豪の特徴を表しているがなんかおかしいだろう。

 

「んだとコラッッ!!!何処がおかしいんだ!!」

 

「なんて言うか・・・・発想が子供っぽいし、そもそも名前に殺とかつけちゃダメでしょ。もっと万人受けがいい感じにしないと」

 

「うん・・・天倉くんの言う通りね。そういうのやめといた方か良いわね」

 

「テメェら・・・・ッッ!!」

 

天倉からの怒涛の発言+ミッドナイトの追撃により爆豪はぐうの音も出ない様子だった。

入れ替わるように麗日も【ウラビティ】と言ったこれも彼女の特徴を表したヒーロー名となった。

 

「思ったよりずっとスムーズ!残ってるのは再考の爆豪くんと・・・・・飯田くん、天倉くんそして緑谷くんね」

 

残ってるのは4人。

すると飯田が全員の前へと出る。飯田は自身のヒーロー名が書かれているであろうボードを全員に見せる。

 

【飯田天哉】

 

そこに書いてあったのは轟と同じく自身の名前だった。しかし天倉は飯田の表情を見て分かることがあった。

 

(・・・元気が無い?それどころか心の奥底から引っかかっているところがあるような・・・・)

 

天倉は飯田から読み取れるだろう心情について心配になるが、緑谷が前に出てきた為、慌てて前へと向き直る。

そして緑谷は自身のヒーロー名が書いてあるボードを全員に見えるように向ける。

するとクラス全体が騒つき始める。その原因は彼のヒーロー名にあったのだ。

 

緑谷出久 ヒーロー名【デク】

 

彼は誇らしげにそのヒーロー名にしたのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「それじゃあ天倉くん。お願いね」

 

「あ、はい。わかりました」

 

天倉はミッドナイトに言われ全員の前へと出る。そして教卓の上に自身のヒーロー名が書いてあるボードを出す。

 

「大体最後なんだからバッチし決めろよー!」

 

「大丈夫!こう見えて自信があるんだ」

 

と切島に激励の言葉で後押しされるが天倉はフフンと自信満々の様子だ。どうやらそれほど自分のネーミングセンスに自信を持っているらしい。

 

「それじゃあ聞かせてもらおうかしら天倉くんのヒーロー名!」

 

「はい!それじゃあ言います!

 

爬虫類ヒーロー【緑ドラゴン丸】!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

 

「・・・・・・・ん?」

 

 

((((((((ん?じゃねーーーよ!!!))))))))

 

 

 

クラスのほとんど全員は思わず心の中でツッコミを入れてしまった。それと同時にクラスの空気がまるで氷河期が訪れたように冷えてしまった。

そしてその原因である天倉は

 

「〜〜〜♪(キラキラした目)」

 

ワクワクとした様子で全員を見ていた。

こんな様子の天倉を見ていると何故だろうか、酷いネーミングセンスについて指摘する事ができない。

が、そこに偉大なる挑戦者が現れた。

 

「・・・なぁ、天倉。ちょっといいか?」

 

「え、何?轟くん」

 

その者の名前は轟焦凍。彼はたとえクラス内の雰囲気がアレでも言う時は言う人物だ。

全員はその時の轟の姿がまるで救世主のように見えただろう。

 

「お前のヒーロー名だけど・・・さすがに・・ッッ!!?」

 

しかし轟の発言が途絶える。全員はどうしたのだろう?と思ったが、すぐに原因が分かった。

原因は天倉にあった。正確には天倉の表情だ。

 

 

(´・ω・`)

 

 

なんかものすごく悲しそうな表情をしている。どう表現すれば良いか分からないがものすごく言いにくいオーラを放っているのだ。

 

「いや、あのな・・・その・・・俺からするとおかしいような・・・」

 

 

(´・ω・`)

 

 

「あ、いや・・・・その・・・」

 

 

(´・ω・`)

 

(´;ω;`)ブワッ

 

 

「・・・いい名前だと思うぞ」

 

 

(((((((( 轟(くん/さん)が折れたぁ!!?))))))))

 

轟の優しさか、はたまた数少ない理解者である天倉に対する慈悲なのか何も言い出せなくなってしまい、轟は「止められなかった」と自己嫌悪に陥てしまう。

 

(何この空気!めっちゃ気まずいんだけど!)

 

(なんだよ!アレか⁉︎俺たちへの仕返しのつもりか⁉︎)

 

「天倉くん。もっと・・・別の名前は無いの?」

 

ミッドナイトはあえてヒーロー名には触れず哀れんだ目を天倉に向けながら質問をする。

しかし生徒全員にはどう聞いても遠回しに「別のにしなさい」としか聞こえない。

 

 

「えっと・・【リザードン】とか」

 

((((((((いや、それ炎・ひこうタイプのやつじゃねーーーか!!))))))))

 

「あとは・・・・・【グリーン紅蓮氷輪丸】【サラマンダー天治】とかですかね」

 

「・・・・・うん、分かったわ。とりあえず・・・色々と」

 

天倉のネーミングセンスがわざとではなく、素だった為かミッドナイトは頭を痛める。

おそらく彼に名前を考えさせると酷い事になるのだろうと理解した。

今思えば必殺技も「俺の必殺技〜」とか何とか言っていたので今更ながらどうにもならなかった。

 

「天倉ちゃん、ちょっと良いかしら?」

 

すると蛙吹梅雨が天倉に話しかけてきたのだ。蛙吹はそのまま話を続ける。

 

「ヒーロー名は皆からも親しみを持ってもらえるのが良いと思うわ。

だからそう言うのじゃなくてもっと中学の時に呼ばれていた・・・愛称のような感じで良いと思うわ」

 

((((((((フ、フロッピー!!!))))))))

 

すると先程まで冷え切っていた空気が嘘のようにクラス内で再びフロッピーコールが起きる。天倉もフムフムと納得したように頷くと自身の席へと戻り、ボードに新たなヒーロー名を書き込む。

 

「ありがとう、蛙吹さん。おかげで目が覚めたよ!」

 

「梅雨ちゃんで良いわ。ケロケロ♪」

 

彼女は天倉が熱心に書き込む姿を見てニコリと笑う。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ヒーロー名【ツカイッパ】!!!」

 

((((((((フ、フロッピーーーー!!??))))))))

 

 

 

フロッピーこと蛙吹梅雨のアドバイスが無駄に終わってしまった。こんなヒーロー名になってしまった理由は中学の時はよく『つかいっぱ』と呼ばれていた為だからだ。

 

「他にも【クソムシ】や【全身凶器の獣】などと呼ばれていました」

 

 

((((((((もういい…!もう…休めっ…!休めっ…!))))))))

 

 

大半の生徒は天倉の触れてはいけない中学の思い出に対し、涙を流していた。

もうこれ以上天倉に負担をかけてはいけないと思った。

 

 

「ンなもんヒーロー名になるわきゃねぇだろうが!!!」

 

すると先程まで黙っていた爆豪が叫び始めた。まるで噴火した火山の如く天倉に言い放つ。

 

「ヒーロー名ならもっと工夫してつけやがれ!あだ名そんままつけても意味ねぇだろが!!」

 

((((((((ば、爆豪ォォォォォォォ!!!))))))))

 

この時、天倉を除く全員にはまるで彼が究極の救世主のように思えた。

この雰囲気をぶち壊してくれた彼こそ本当の救世主だったのだ。

 

「なるほど・・・・じゃあ【ツカイッパRX】とかで」

 

((((((((いや、そうじゃないだろ!!))))))))

 

天倉がどうやってもネーミングセンスは変わらず生徒達は半端諦め掛けていた。勿論、爆豪も救いようのない天倉のネーミングセンスに対し呆れていた。

 

「じゃ、じゃあさ!苗字と名前を合わせたような感じでいいんじゃないかな?」

 

今度は緑谷出久だ。

彼はいつも通りの的確なフォローによって助け舟を出す。と言うかいっその事、天倉にヒーロー名を考えさせるのではなく、自分たちでヒーロー名を考えてあげた方が良いのではと思いかけている部分もある。

 

「成る程、成る程・・・・・あ、なんかよく分からないけどイケそう!なんかイケそう!!」

 

天倉はそう言うと再び席へと戻り、すごい勢いでボードにまた新しいヒーロー名を書いていく。

皆は心の奥底からマジでさっきよりもマシなヤツにしてくれた願う。ちなみに願ったからと言ってリトルスターは譲渡されない。

 

「【爆殺卿】!!!」

 

「違う。そうじゃない」

 

しかし何故だろうか。天倉の酷いネーミングセンスに比べて爆豪のヒーロー名がかなりマトモに見えてしまう。

もういっその事それで良いんじゃね?と思ってしまう。

 

「で、できました!!」

 

━━あぁ、ついに来てしまった。

 

皆はそう心の中で思った。

頼むからこの空気をブラスティングフリーザで更に凍らせる事はやめてくれと願う。

そんな皆の様子を無視するかのように天倉は再び教卓にボードを置く。

 

 

「いきます!

 

wildヒーロー【アマソン】!!」

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

 

((((((((ま、まとも?だけど何か力が抜ける・・・))))))))

 

 

天倉が出した新たなヒーロー名は今までのモノと比べてかなりマシな部類だろう(思考能力低下)だが、惜しい。あと、もう一押しだった。

あともう一押しで何かイケる感じだった。

 

 

「あー・・・そうね。あとは濁点をつけてみた方がいいわね」

 

「濁点・・・濁点ですかぁ・・・・」

 

 

天倉はミッドナイトに言われた通りその場で濁点を付け足してみる。するとアレンジされたヒーロー名を見てミッドナイトは絶賛する。

 

「いいじゃない!名前から荒々しい感じが出て、まさにワイルドって感じよ!」

 

「うーん・・・・何か納得いかない気がするようn「いいからそれにしなさい」アッ、ハイ」

 

天倉とミッドナイトのやり取りに皆は何やっているんだ?と訳が分からない状態だったが、天倉のアレンジされた名前で合点がいく。

彼のヒーロー名は幾多の困難を乗り越え作られたもの。選び抜かれ、最後の最後に鍛え上げられ出来上がった。

 

 

そのヒーロー名は

 

 

「えっと・・・・・ヒーロー名は

wildヒーロー 【アマゾン】 です」

 

 

 

瞬間、今までにない歓声がクラス内に響いた。

清々しい顔をした者、笑う者、そして遂には泣く者まで現れた。ミッドナイトはそんな様子を見ながら涙をツーと流していた。

 

少年少女達はやっと解放されたのだ。そして打ち勝ったのだ。この空気に、この果てしない運命と戦い、勝利を手にしたのだった。

 

 

 

「・・・・・何これェ」

 

 

そして、そんな様子を冷ややかな目で見ながら天倉はそう呟いたのだった。

自身がこの有様を作り出した原因だとも知らず。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「【爆殺皇】!!!」

 

「いや、だから違う!」

 

そう言えばコイツ《爆豪》を忘れてた・・・・・・・。

と再び生徒の大半が心をシンクロさせた。

どうやらまだまだヒーロー名を決めるのは長くなりそうだと全員は思った。

 

 

この事からA組は学んだ。

 

ヒーロー名も決めるのには苦労する

 




天倉はネーミングセンスがとにかく酷いです。もしも彼がライダーキックに技名をつけるとしたら『天空スーパージャンプ飛び蹴り』なんて技名になるかもしれない。


とりあえずヒロアカ次回予告をやってみる(唐突)

緑谷「次回予告!いよいよ職場体験に向けて皆は準備を始める!天倉くん!何処にするか決めた?」

天倉「ズッズズーーズズズーー・・ん、何?なんか言った?」

緑谷「いや、何でラーメン食べてるの⁉︎次回予告中なんだよ⁉︎」

天倉「お腹が空いて仕方ないんだよ!!・・・あ、おかわりお願いします」

緑谷「ちょ、天倉くん⁉︎」

天倉「あ、そう言えば今更1件だけ指名が来たんだっけ?」

緑谷「う、うん!とにかく指名が来たからには頑張るよ!」

天倉「・・・・いいよなぁ、お前は。どうせ俺なんか・・・」

緑谷「あ、天倉くん?どうしたの?元気出して!」

天倉「今、俺を笑ったなぁ・・・・」

緑谷「あ、天倉くん!!?じ、次回!・・・ってまだサブタイトル決まってないの⁉︎」

天倉「次回はひねくれた俺に弟妹達ができるぞ・・・」

緑谷「えっ?ええぇぇぇぇぇぇ⁉︎さ、更に向こうへ!」

緑&天「「Puls Ultra!!!」」


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第34話 神のみぞ知る


前々からタイトルがおかしかったのでそれっぽく変えました。
というか自分のネーミングセンスェ・・・・・。



現在の時間は4時近くの放課後

 

ヒーロー科の少年少女達は一週間の職場体験をする事になった。指名の無かった者達は予め教師陣がオファーしておいた受け入れ可能の事務所を選ぶ事になっている。

 

だがこの職場体験は今後の事を考えるとなると慎重に選択しなければならない。

A組の生徒達もどの職場にしようか悩んでいた。ちなみに職場体験先を決めるのは今週末までだ。

今日の日付は水曜日、つまり残り2日で職場体験先を決めなければならないのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ハァ〜〜〜〜〜〜。選ぶ先が結構あるから選ぶの大変だなぁ。つーか上と白黒ついたーー!」

 

指名が多かった為か上鳴電気は大きな溜息をつく。しかしその発言に対して少なからずショックを受ける者が次々と現れる。その中でも耳郎がかなりのショックを受けている。

 

(上鳴《この馬鹿》が271で私が0・・・・・⁉︎)

 

彼女は信じられなかった。と言うよりもバカに負けた事に悔しさを覚えていた。

 

「なぁ耳郎、俺どこ行きゃイイと思う?」

 

「地獄」

 

「何でだよ⁉︎」

 

とりあえず半ば八つ当たり気味に耳郎は返事をした。

何故こんなにも理不尽な現実に直面してしまうのだろうか。これも全て神の仕業だ。フルーツの戦国武将の神に対して「絶対に許さねぇ・・・」と耳郎は呟く。

しかしそんな様子に耐え切れなかったのか緑谷は指名数0の生徒達に対してフォローを入れる。

 

「だ、大丈夫だよ皆!周りが何倍にもすごく見えたって自分が0なら相手も0!0は無敵なんだ!」

 

「・・・いや、意味分かんないから」

 

「だな」

 

「誰だそんな事言ったのは?」

 

しかし緑谷の謎理論は生徒達には通用しなかった。むしろ彼等に精神的なダメージを与えるだけだった。

 

「と言うか0はいくら積んでも0だから永遠に追いつけないって事だろ」

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

尾白の言葉でその場は凍りつく。

彼等の心を抉るようにさらに精神的なダメージを与えてしまったのだ。指名数0の者達はズーンとした暗い雰囲気に包まれる。

すると緑谷はアタフタしながらとある事に気付く。

 

「あ、あれ?天倉くんはどうしたの?」

 

先程から姿を見せていない天倉に気付く緑谷。すると尾白達は教室の隅を指す。

そこには暗い雰囲気を漂わせ、格好は先程まで着ていた学生服ではなく片方の袖が破れた黒の革ジャンを羽織り、ヤンキー座りをしながらカップラーメンを食べている天倉がいた。

 

 

 

「どうしてこうなるまで放っておいたの━━━━━━━━!!?」

 

 

緑谷はやさぐれてしまった天倉を見て思わずツッコミを入れてしまう。するとツッコミにピクリと反応した天倉が緑谷にガンを飛ばす。睨みつけられた緑谷はすぐに目線を合わせないように顔を晒す。

 

「・・・飯の時ぐらい黙ってくれよ・・・・」

 

「す、ススススススミマセンデシタァ!!(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いィィィィィィ!!?何あれ!!?かっちゃんよりも怖いんだけど!)」

 

緑谷は天倉?に対して恐怖感を抱いてしまう。と言うかあれは本当に天倉なのだろうか?緑谷が知っている天倉はもっとこう・・・ツッコミ役に徹している感じだった筈なのだ。

 

なのに、どうしてああなってしまったのか。それはおそらく体育祭の成績が3位にも関わらず指名数が0と言うとんでもない結果を迎え、ストレスやその他諸々により頭の中のアレがアレしてしまったのだろう。

その結果がアレだ。

 

「なぁ、お前ら・・・俺の弟になれ」

 

「え・・・お、弟・・・?」

 

「ど、どうしたんだ天倉?」

 

不良と言っても過言ではない格好で天倉は尾白と障子に謎の勧誘をしている。いや勧誘なのかは分からないが。

するとそんな様子を見ている八百万はとある事を考えてしまう。

 

「(あんなに活躍している天倉さんが・・・・・なんかすごく親近感・・・・!)心ほど不安定で邪魔な存在ってないですよね!!」

 

「・・・・・・何言ってんだ、アホか?」

 

「!!??」ガーーーン!

 

しかし天倉はそんな八百万の問いに対してマジレスし、八百万はその場で項垂れてしまう。

今の天倉は前の天倉とは性格が全然違う為なのか精神的にキツイ言葉で返されてしまう。

 

「どうした?八百万・・・笑えよ」

 

「笑えませんわ・・・・」

 

この言葉は果たして彼なりの励ましなのか、それとも煽りなのか分からいがとりあえず今の天倉はとにかく面倒くさいという事が分かった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

(グラントリノ・・・一体どんな人なんだろう・・・)

 

緑谷はオールマイトに呼ばれ遅れて指名された事を告げられた。

グラントリノとは雄英高校で1年間だけ教師をしておりオールマイトの師のような存在だった。現在は隠居しているらしくオールマイトはカウントし忘れていたらしい。

 

オールマイトはグラントリノに対してガチ震えしていたが緑谷はその人に会うのが楽しみだった。

指名が来たからではなく、1人のヒーローとして、オールマイトの師としての方と会うのが楽しみなのだ。

緑谷は楽しみでウズウズすると共に緊張しながら廊下を歩く。

 

 

「待ちなァ緑谷ァ。抜け駆けたァごあいさつじゃねぇか」

 

 

しかしそんな彼に阻む者達が現れる。その人物達は緑谷がよく知っている人達、というよりクラスメイト達だった。

 

その場に居たのは峰田、尾白、障子、耳郎の4人だった。しかしいつもと違うのは学校の制服ではなく、改造学ラン、黒スーツ等のヤンキースタイルの格好をしていた。

 

「退会料・・・払ってもらうぜェ・・・・」

 

「た、退会ってなんの?」

 

「指名0の会に決まってんだろ!!」

 

どうしてこんな事になってしまったのだろうか?緑谷は考える。いくら何でもコレは酷い。一体誰の仕業なのだろうかと考えていると峰田が声を上げる。

 

「どうします!兄貴ィ?」

 

「あ、兄貴?」

 

すると峰田達の後ろから1人の男が。

緑谷も知っている人物であるクラスメイトの天倉孫治郎がこちらにやって来た。

 

「えええええええええ!!?天倉くん何やってんの⁉︎」

 

「ウルセェぞ緑谷ァ!!どうします兄貴ィこいつミンチにしちまいましょうか?」

 

「ケッ・・・私達の気持ちなんか分かりっこないんだ。いっその事ボコった方がいいっしょ」

 

「いや、ここは裏に連れ込んでタコ殴りに」

 

「確かに。それじゃあ全員で殴るか」

 

結果的にボコボコにされるようだ。緑谷はこんな身近に不良グループが誕生してしまうとは思わなかった。

しかもクラスの良心でもある天倉がそのグループのリーダーと来た。

緑谷は身構えるが

 

「・・・やめろお前等」

 

するとリーダーである天倉が制止する。緑谷は何故?と思いながら天倉を見る。

すると天井を眺めながら彼は口を開く。

 

「俺たちみたいなロクデナシが少しでも光を掴もうなんて思うと痛いしっぺ返しを食うぞ。

皆・・・・俺達はずっと一緒だ。真っ暗な無限地獄でずっともがき苦しもう」

 

「「「「兄貴ィ!!!」」」」

 

(よ、良かった。表面的にはアレだけど根本的なところは天倉くんのままだ!)

 

何が良かったのだろうか?緑谷の思考が微妙にズレている。

しかし天倉の心の奥底に良心が残っているという事実に気付き緑谷はホッと安心する。

すると背後から何やら笑い声が聞こえて来る。

 

「ハハハハハ。そこにいるのはもしかしてA組かい?

僕達よりも優秀な筈なのにそんな格好をしていたから不審者の集まりかと思ったよ」

 

「物間やめなって。そういう態度さ」

 

「君達はえーと・・・物間くんに・・拳藤さん!」

 

そこに居たのはヒーロー科B組の2人。物間寧人と拳藤一佳であった。緑谷は2人をおぼろげな記憶を頼りに思い出す。

すると物間は再び口を開くと皮肉めいた言葉を並べる。

 

「それにしてもさ、職場体験も色々と疲れるもんだよね指名も来たりしてさ。僕達のクラスにも勿論、指名は入っていたよ?

あれれー?もしかして君達の所に指名来てないのぉー?指名数0が許されるのって小学生までだよねーーハハハハハ!」

 

「も、物凄い煽りだ・・・・!!」

 

「ご、ごめん。コイツ心がアレでさ」

 

A組に対する物間の煽りに緑谷はやや引いてしまう。拳藤はやれやれといった感じだ。

すると拳藤はとある事に気付く。

 

「・・・あれ?・・・あのさ。そこにいるリーダー格っぽいのってもしかして・・・・」

 

「うん。天倉くん」

 

「何やってんの!!?」

 

拳藤は今更ながら天倉がリーダーを務めている事に気付き驚愕する。そもそもあの天倉がこんな事になるとは思わないだろう。

 

すると天倉はブツブツと何かを呟き始める。

 

「・・・え・・・ったか」

 

「ん?」

 

物間は何だ?と思いながら天倉の方へと向き直る。

 

「お前、今笑ったか?」

 

「え?」

 

 

瞬間、天倉は物間との距離を詰め、彼は跳躍し脚を振り上げていた。

 

 

「今、弟妹達を笑ったなァァァァァァ!!!!」

 

 

「え?何を言っtがグフォッッ!!??」

 

 

そして物間はドゴォッという擬音と共に飛び蹴りをされ、数メートル程吹っ飛ばされる。

 

「蹴ったー!!??」

 

「物間ーーー!!??」

 

2人はその行動に思わず叫んでしまう。緑谷は後悔した。根本的には変わっていないと思っていたがそんな事はなかった。

一刻も早くこの地獄チームのリーダーをこちら側(マトモな方)へ引き戻さなければ、いずれ雄英はとんでもない事になると確信した緑谷は天倉を元に戻す為に考える。

 

「・・・・ッ!これしかないのか・・・」

 

緑谷は何か打開策を思いついたのか物間に向かって「笑えよ・・笑えよ・・・」と呟いている天倉の方へと向き直り、声をかける。

 

「あ、天倉くん!」

 

「あぁ?」

 

 

「━━━なんか食べ物奢るから元に戻って!!」

 

 

「よし、もう帰るかな」

 

「早ッ!!??」

 

天倉が元に戻った時間僅か1.03秒。食い意地に関して彼の右に出る者はいないだろう。

雄英の中では。

天倉は倒れている物間に近寄り謝罪の言葉を送る。

 

「物間くん、なんかごめんね色々と」

 

「フ・・フフこの程度、拳藤の比べれば大した事無いね」

 

(それにしては、ガッツリ瀕死状態なんだけど・・・)

 

拳藤は物間の襟首をおもむろに掴み、そのまま引きずっていく。見慣れた光景に天倉は何も言えなかった。

すると拳藤は「あ」と何かを思い出したように言葉を漏らす。

 

「今更だけどさ、メルアド交換するか。なんかあんたとは結構仲良くできそうだし」

 

「え?・・・あ、はい。いいですよ」

 

天倉は言われるがままに拳藤のメールアドレスを交換する。

交換し終わると拳藤は「じゃ、またね」と言い物間を引きずって行く。

天倉と緑谷はそんな様子を目を無言で見送る。すると天倉はとある事実に気付く。

 

「じょ、女子とメルアド交換・・・だと・・・⁉︎」

 

「!!」

 

緑谷も遅れて気付く。彼等は同類だ。緑谷と天倉、2人はお互いに気付いたのだ。

『あぁ、この気持ち君も分かってくれるのか・・・』とお互いに目配せすると2人は微笑むとグッと握手を交わす。

 

2人は改めて友情を深めた。1人は同類が近くにいた事に対して喜び、1人は元に戻ってくれた事に喜ぶ。

 

彼等は友達から親友へとLevel UPを果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「兄貴・・・・・」」」」

 

 

 

弟妹達をそっちのけで・・・・・・

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「へぇ、やっとコスチュームが修繕されたんだね」

 

「うん。やっぱりコスチュームはヒーローにとって正装だから、職場体験までに直ってて良かったよ」

 

天倉と緑谷は雑談しながら廊下を歩く。天倉は緑谷の言葉に対して口を開く。

 

「・・・じゃあ俺のコスチュームはどうなるのかな?もしかしてコスチューム無しで職場体験に・・・・⁉︎」

 

天倉は次第に顔を真っ青にしていくが、緑谷がそこにフォローを入れる。

 

「だ、大丈夫だと思うよ!!ほ、ほら天倉くんのコスチュームって結構簡素な作りだったし!」

 

「それは緑谷くんのも同じだけど・・・」

 

天倉は全身に冷や汗を掻き、慌てふためく。「やべぇよ・・・・やべぇよ・・・」と呟いていると2人の背後から誰かが声をかけてくる。

 

 

「おいおい、そんな所にいると下校の邪魔になるぜ」

 

その人物は天倉がよく知っている人物であり、金髪で箒にまたがっている女子生徒だ。

彼女は霧雨魔理沙、普通科であり天倉の友人でもある。

 

「確かえーと・・・・そうだ!体育祭で天倉くんと一緒にチームを組んでいた霧雨さん!」

 

「お!よく知ってんな!地味目の・・・・み・・・み・・・そう!緑沼!」

 

「緑谷です!!」

 

天倉の目の前で2人は漫才めいた会話を広げる。すると天倉はとある事に気付く。

 

「・・・あれ?魔理沙さん。その箒なんか前持っていたヤツと変わってない?」

 

「お、気付いたか?さすが私が見込んだヤツだな。見る目が違うぜ」

 

(何故か勝手に見込まれているんだけど・・・・)

 

霧雨魔理沙はその場で箒の説明をする。緑谷はその箒について興味津々の様だ。

天倉はやれやれといった感じに霧雨魔理沙の話を聞く事にした。

 

 

「〜〜〜〜〜とまぁそんな感じで私専用に改良された箒って訳だ」

 

「凄い!!そんな風に改造されていたなんて!!僕のコスチュームもそんな感じに改良してもらうべきか?するとしたならやはり腕だよなぁ僕はいつも腕に負担をかけるからそこら辺をなんとかしないと。いや待てよそれ以上に機動力の要となる脚部もなんとかした方がいいよな。だとすると改良すべき箇所はブーツになるのか?だけど個性を使うとするなら脚全体に使うから膝下も色々と」ブツブツブツブツブツブツ

 

天倉はやっぱり始まったよ・・・と半ば諦めた様子でやれやれと溜息をつく。

すると霧雨魔理沙は再び口を開く。

 

「もし、コスチュームで困っているならサポート科の所へ行ってみればどうだ?私の知り合いもいるし折角だから案内してやるよ」

 

「え!いいの⁉︎」

 

「成る程な・・・・確かに良いかもしれない」

 

緑谷と天倉は霧雨魔理沙の案内を頼むと、とある場所へと連れられて行く。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

校舎1階 開発工房〜〜〜〜

 

 

2人は1人の女子に重厚な扉がある場所に連れられて来た。天倉は「なんじゃこりゃ」と呟く。

それも仕方ないだろう。どう見ても学校にありそうな扉ではないからだ。

 

「此処がサポート科の開発工房だ。うちの知り合いもよくここに入り浸ってな、箒もここで改良してもらったんだ」

 

「へぇ〜〜〜そうなんだ。よし、んじゃ入ってみようか」

 

と天倉は重厚な扉にゴンゴンと鈍い音をノックするとそのまま開けようとする。

 

 

「失礼しま━━━━━━━」

 

 

BONB!!!!!!

 

 

瞬間、天倉が謎の爆発に飲まれた。

 

 

「「天倉(くん)ーーーーーーー!!??」」

 

その光景に思わず2人は叫ぶ。

次第に黒煙は晴れていき天倉の姿が露わになる。そこには謎のクレーターの中心で無残な姿で横たわっている天倉がいた。

 

俗に言う"ヤ無茶しやがって・・・"状態だ。

 

 

「「天倉(くん)ーーーーーーー!!??」」

 

2度目の叫びがその場で響き渡る。すると工房から生徒が現れる。緑谷はその生徒に見覚えがあった。

 

「何だ?一体・・・って緑谷か?」

 

「と、轟くん!!?」

 

彼は轟焦凍。緑谷、天倉のクラスメイトというのは言うまでもないだろう。

そんな彼が何故こんな所にいるのかはどうでも良い。

問題なのは

 

「一体何が・・・・天倉ーーーーーー!!??」

 

 

瀕死の彼《天倉》をどうにしなければいけないと言う事だ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「いやぁ、突然の爆発失礼しました!私【発目 明《はつめ めい》】と申します」

 

「いやいや、大丈夫ですよ。あれ以上のヤツ《爆発》受けた事あるから、っと俺の名前は【天倉 孫治郎《あまくら そんじろう》】です。よろしくお願いします」

 

天倉は無事復活しサポート科の発目と向き合う。彼女の事は体育祭で知っており凄いインパクトを残した為か今でもしっかりと覚えている。

後ろでは掘削ヒーロー【パワーローダー】が轟と緑谷の2人と会話している。

 

「ほら、これが緑谷くんのコスチュームだ。前のと比べて色々と変わっているから気を付けて」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「それと、轟くん。君のコスチュームは丸々取り替えで申請やらで色々あるけど職場体験までには間に合うから安心して欲しいんだよ」

 

「はい。助かります」

 

 

「はぁー・・・俺のコスチュームも色々改良してみた方がいいのかなぁ?」

 

天倉がふと言葉を漏らすと発目明が目をキラキラと光らせこちらにズイッと近寄ってくる

 

「コスチューム改良ですか⁉︎興味あります!」

 

「発目・・・さっきの爆発忘れた訳じゃないだろうなぁ・・・」

 

「ご心配なく!!ではこちらに来てください!!」

 

「え、あの、ちょ、え?えぇー」

 

天倉は言われるがまま発目に連れられる。轟、緑谷、霧雨、パワーローダーはその様子を呆れたように見守る。

そして、天倉は謎のゴテゴテした白いアーマーを装着させられた。

 

「どうですか!!とっておきのベイビー!"パワードスーツ"!!筋肉の収縮を感知して動きを補助するハイテクっ子です!」

 

「おお⁉︎よく分かんないけど、何かカッコイイ!!まるで機動戦士だ!」

 

装着させられた天倉は意外とノリノリだった。そんな様子に呆れながらも霧雨は辺りを見渡す。

 

「ありゃ?今日アイツはいないのか?」

 

「ん?さっきまで工房に居たんだけどなぁ?」

 

パワーローダーも辺りを見渡す。が、自分達以外誰も見当たらない。そんな中、天倉は口を開く。

 

「ん?もしかして、魔理沙さんが言っているアイツって・・・・って痛だだだだだ⁉︎腰が!止まんないんだけど!!?いだだだだだだ⁉︎

あぁっもうッ!!!このポンコツベイビー!!!!!」

 

天倉の上半身がパワードスーツによってねじ切られそうになる。すると天倉は「フンッ!!」と力を込め無理矢理、元の姿勢に戻した。

 

しかしパワードスーツの腰部分がバギャッ!!!と嫌な音を立てる。その音を聞き発目は急いでパワードスーツの腰部分を見ると驚愕の表情を露わにする。

 

「ベイビィィィィイイイイイイイイイ!!!??可動域と耐久性に問題がぁ⁉︎耐久性は特に自信があったのに!」

 

「イタタ・・・ところでさっきからそこでコッチを見ている君は誰?」

 

と天倉は何も無い場所へと声をかける。全員(発目を除いた)は何を言っているんだコイツ?と言った表情だったが天倉が声をかけた場所から「ひゅいっ⁉︎」と怯えるような声が聞こえた。

 

 

「姿は見えないけどさ、匂いと"個性"のピット器官で丸わかりだよ」

 

「ぐぐぐ・・・まさか私の光学迷彩スーツが破られるとは・・・!」

 

するとその場にウェーブのかかった外ハネが特徴的な青髪を、赤い珠がいくつも付いた数珠のようなアクセサリーでツーサイドアップにして緑色のキャスケットを被り、上下青の服で身を包んだ女の子が現れた。

 

「んだよ、にとり。いるなら返事くらいしてくれよ」

 

「悪いね魔理沙。こんな大勢で来るとは思わなくて、それに・・・天倉だっけ・・・そいつ何か怖いし・・・」

 

と、にとりと呼ばれた少女は天倉を警戒するように見据える。魔理沙はやれやれと呆れながら溜息をつく。

 

「全く・・・心配すんな確かに体育祭じゃあアレだったが天倉は━━━━」

 

「青髪・・・・女・・・ウッ頭が・・・」

 

「・・・・まぁ、悪い奴じゃないから安心してくれ」

 

と魔理沙はやや汗を掻きながらにとりに言う。彼女が怯えているのは恐らく体育祭で相手に対して容赦の無い勝ち方をして来たからだろう。普通は怯えるのが当たり前だ。

彼女の反応は当たり前なのだ。

 

「ま、まぁいいか。魔理沙がそんな事言うんだし。それに私自身ソイツ《天倉》に興味があるし」

 

「俺?」

 

「そうさ、発目のパワードスーツを軽々と壊したんだ。それに魔理沙の友人だから丁度良い実験d・・・テストプレイヤーが欲しかったんだよ」

 

「つまり実験台になれと」

 

にとりはまぁまぁと言いながらガサゴソとガラクタ(発明品)の山からとある物を取り出す。

 

「ふふふ、君の試合を見て来たけど近接戦闘メインで戦っている事は分かっている。ならば、遠距離の攻撃手段も必要だろう!」

 

と謎の物体を取り出す。それはブルーメタリック色の瓢箪のような形をしており、先には銀色に輝くマズルブレーキが眩しく光る。それを見た天倉は目を大きく見開くとそれに食いつく。

 

「そ、それは!!最強の宇宙海賊の左手に装備されている魂で撃つ的なガン━━━━━!!!!」

 

「ヒューー!!分かってるじゃないか!盟友!!早速着けてみるかい?」

 

「おぉーーーーっと!それなら私のベイビーも試してはいかがでしょう!!」

 

3人はワイワイと盛り上がっていく。

そして残された緑谷、轟、霧雨、パワーローダーの4人は1度工房から出る事にした。

自分達がとてもアウェーな感じだった為居づらかったのだ。

 

 

「天倉くんって結構ああいうの好きなんだね」

 

「男って全員あんな感じなのか?全く話についていけなかったんだぜ」

 

「俺もだ。ま、楽しそうだったから良かったんじゃねぇのか?」

 

とこちらも楽しそうに談笑しあう。霧雨自身も彼女に新しい友達が出来たのか嬉しそうだ。

するとパワーローダーがとある事を思い出す。

 

「そう言えば天倉くん宛にコスチュームとその事務所の親会社からメッセージが届いているんだった」

 

 

「親会社から?一体どうして?」

 

「よく分かんないけど丁度良いじゃんか天倉もいるんだしこのまま渡しちまおうぜ」

 

と霧雨は言う。全員は肯定すると工房の扉を開く。

 

 

するとそこには両肩にキャノン砲、両腕はガトリング砲、下半身は戦車のようなキャタピラを装着した戦車に人を乗っけたようなロボットが存在した。

と言うよりそれはまさしく

 

 

「「「ガ◯タンク!!??」」」

 

 

そうガ◯タンクだった。何故、こんなところにガ◯タンクがあるのかは分からない。

しかしよく見てみるとその場には発目とにとりがワイワイと盛り上がり、天倉の姿が見えない。

となると導き出される答えは1つしかなかった。

 

「お、お前・・・・天倉なのか・・・?」

 

霧雨魔理沙は人間サイズのガ◯タンクにそう問いただした。するとガ◯タンクから声が聞こえてくる。

 

「うん。・・・・イケる!!」

 

 

「「「何が!!??」」」

 

天倉の謎の自信に3人は混乱する。まさかコイツはガ◯タンクで職場体験するつもりなのか?と思ってしまう。いや、流石にそれは無いだろう。天倉に限ってそんな

 

「職場でもイケる!!」

 

駄目だった。

今日の天倉は色々と駄目だった。取り敢えず3人はガ◯タンクから天倉を取り出す作業に移る。しかしサポート科の2人が必死に抵抗しドッタンバッタン大騒ぎ。

するとパワーローダーが「ハァ・・・」と溜息をつきガ◯タンク(天倉)に声をかける。

 

「取り敢えず天倉君。君のコスチュームが届いているんだよ」

 

「え?マジですか!」

 

「そ、しかもそのコスチュームの作っている親会社からメッセージも届いているんだよ」

 

とパワーローダーは天倉に告げる。天倉は何故会社からメッセージが届いたのだろう?と疑問に思い首を傾げる。

とりあえず天倉はガ◯タンクスーツを脱いでからコスチュームを受け取る事にした。

 

「そう言えばその会社ってどんなとこ何ですか?」

 

天倉は興味本位でパワーローダーに問う。するとふぅーむとパワーローダーがしばらく唸る。

 

「まぁいいか。いずれ分かる事なんだから」

 

と吹っ切れたようにパワーローダーは言い、口を開く。

 

 

「まぁ、会社というよりは大企業なんだよ。

『鴻上ファウンデーション』

名前くらいは聞いたことはあるだろう?」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

某所とある高級そうな一室

此処に2人の人間が居た━━━━━━

 

 

「会長ー。コスチューム会社の一部の仕事を下請けするのって本当ですか?」

 

1人は女性だ。

その女性は無愛想で高級そうな派手な服を見に纏い、ケーキを淡々と食べている。

ホールサイズのケーキを丸々1個食べ終わったかと思うと、そばに置いてあったホールケーキに手を付ける。

 

そしてその女性と向かい合うのは強面の男性。強面の男性は無愛想な女性に対し満面な笑みを浮かべている。

さらにはエプロンを装着し片手にボウル、もう一方には泡立て器といった外見に似合わない格好をしていた。

 

「里中くん!!この超人社会は今もなお飽和し伸び悩んでいる!!

そして!今ではヒーローを志す若者も欲望を抑圧されてしまっているが!!その中でも彼は!!私に純粋な欲望を見せてくれた!!あの時彼はただ強くなりたい!新たな力が欲しい!そんな欲望を持つ者はそうはいない!!!」

 

強面の男はさらに大きく叫ぶ。

 

 

「欲望は世界を救う!!!」

 

 

この男は一陣の風を巻き起こす。

その風は果たして追い風が逆風か神のみぞ知る。

 





"要約" この男はトラブルを引き起こします。

ヒロアカ3期早く始まって欲しいなぁ・・・・。それまでに出来るだけ小説も進めておかないと・・・。



とりあえずまた次回予告っぽいヤツ

緑谷「次回予告!!いよいよ職場体験に向けて準備も大詰め!頑張ろうね!天倉くん!麗日さん!」

天倉「今回もこれやるんだね。てか麗日さんもなんだ」

麗日「うん!これの方がキャラ同士を絡めやすいって言ってたし!」

天倉「うん。その発言は危ないからやめようか」

麗日「大丈夫だってー。後書きなんだからさ」

天倉「だからヤメロォ!!!」

緑谷「えぇっと・・・・次回からなんか特別編に入る感じだよ?サブタイトルもいつもと違うし」

天倉「え?そうなの⁉︎てか俺聞いてない!!」

緑谷「と、とりあえず次回!『Aの体験/風が吹く街』!!」

麗日「天倉くんが色々あって悶絶するよ!」

天倉「悶絶⁉︎」

緑谷「更に向こうへ!」

緑&麗「「Puls Ultra !!!」」

天倉「・・・・えぇー」

アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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風都編
第35話 Aの体験/風が吹く街


平成ジェネレーションズfinalのキャストが豪華すぎて言葉が出ない。




「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ落としたりするなよ。」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな『はい』だ芦戸」

 

「はい・・・・」

 

「くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」

 

職場体験当日。

A組の面々は自分専用のコスチュームが収まっているケースを抱えながら職場へと、ヒーロー事務所へと向かう。

シュンとしている芦戸を慰めながら天倉は緊張感を覚える。雄英体育祭に続いての行事だ。天倉は周囲の楽しそうな雰囲気に改めてクラスメイトのガッツさとその生徒達を担当する相澤先生のプレッシャーの凄さを思い知らされる。

 

「アレ?なにそのオシャレな腕輪!いいなーどこで買ったのー?」

 

「え?あ、あぁコレのこと?」

 

と天倉の左上腕部に装着している銀色に輝く腕輪《リング》に対して芦戸はキラキラした子供のような目で見る。

天倉は今現在何故か、学生服の左袖を肩まで捲っている状態でこれ見よがしに銀色の腕輪が目立つ。

 

「それはコスチュームと一緒に送られてきた"個性"の補助アイテムだ。青山のベルトのようなモンだが、いちいち付け替えするのが面倒だからそのまま付けたんだよ」

 

そんな芦戸の様子に見兼ねたのか天倉の腕輪について軽い説明する。そもそも彼自身何故このような腕輪を付けているのかは、数日前に遡る。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

the 天倉の部屋

 

 

『happy birthday!!!!!!ご機嫌よう!天倉 孫治郎くん!!!!』

 

「・・・・・は、はい」

 

 

天倉はコスチュームと共に送られてきたメッセージと言う名の封筒を受け取り、自宅でソレを確認する事になったのだが封筒の中身である投影機《プロジェクター》には謎の男性が映し出され、無駄にハイテンションな挨拶に天倉は困惑してしまう。

 

と言うよりドアップいきなりハッピーバースデーと言われても普通の人ならばどうリアクションすれば良いか分からないだろう。

そもそも天倉の誕生日はまだ先だ。

 

「えっと・・・・『おっと!自己紹介がまだだったね‼︎私の名前は【鴻上光生】鴻上ファウンデーションの会長を務めている。

・・・・と前置きはここまでにして、君は疑問に思っているのだろう?何故、親会社である鴻上ファウンデーションがコスチュームの改良を務めたのかを‼︎』

 

「やべぇ、この鴻上さんって人色々と吹っ飛んでいるよ・・・・」

 

天倉は鴻上ファウンデーションと言う名前に聞き覚えがあった。とある記事をザッと読んだ程度だが、鴻上ファウンデーションは"3大何やっているかわからない大企業"と言われており噂では

 

・謎のシステムを開発している

・研究所所長が謎の人形を腕に乗せている

・欲望に関する研究を行なっている

 

などとおかしな噂ばかりだ。

ハッキリ言って天倉は物凄く怪しんでいた。と言うか全体的に怪しかった。鴻上光生と言う男性からはそれ程の物凄い胡散臭さが溢れ出ていた。

 

『私はね"欲望"こそが人の本質だと思うのだよ。

"欲望"は誰しもが持つモノ、いや‼︎欲望があるからこそ!人は生きている!欲望無くして人間は成り立たない!!天倉くん!君は体育祭の中でどのような"欲望"を示してきた?おそらく君はただ単純に"強くなりたい"と言う願望であのような力を発揮したのだろう』

 

困惑している天倉を余所に投影機に映し出されている鴻上光生はしばらく間を置いてから大きな声で叫ぶ。

 

『素晴らしいッ!!!!!!

実に素晴らしい欲望だよ!天倉くん‼︎"欲望"と言うのは単純になればなるほど難しいものだ‼︎

私はね‼︎君のその"欲望"に惹かれたのだよ!!』

 

「・・・・は、はぁ」

 

『そこでだ!君のコスチュームと共に個性の補助アイテムを送っておいた。

私のささやかなプレゼントだ』

 

「補助アイテムって・・・・・・」

 

と天倉はガサゴソと投影機が入っていた封筒の中身を漁る。すると何かが手に触れたのを感じ、ソレを手に取ってみる。

ソレは銀色に輝く腕輪であり、鳥の顔を模したよな形をしている。

 

『その腕輪は【レジスター】‼︎君の個性の事はすでに調べてあってね、レジスターは君専用に作られたアイテム!個性を長時間使用する事が可能になる所謂、予備バッテリーのようなものだ‼︎』

 

「え⁉︎それって滅茶苦茶すごいモンじゃないですか‼︎」

 

『しかぁっしッ!!!

君のコスチュームの一つであるベルト‼︎とあるシステムの導入の為に開発が遅れている‼︎ハッキリ言ってこのままでは完璧なコスチュームとは言えないだが‼︎‼︎その為にレジスターにもういくつかの機能が備わっている‼︎』

 

鴻上は映像の向こう側で一息溜めるとニヤリと笑い、口を開く。

 

 

『何だと思う?』

 

「いや、知りませんよ」

 

『だろうね!!!!だが、君は今どのような機能を持っているか知りたいという欲を出した‼︎それはとても喜ばしい事だよ‼︎』

 

天倉のリアクションをまるで知っていたかの如く鴻上光生は天倉の疑問に対して無駄に大きな声で答える。

 

『君のコスチュームの核になるベルト!我々が開発している新システムを導入しているのだが行き詰まっていてだね。とあるモノが必要なのだ』

 

「とあるモノ?ってかさっきサラッと凄いこと言わなかったこの人?」

 

新システムの導入。気前が良すぎる会長に対してもしかして何か企んでいるのでは?と思ってしまう天倉を余所に鴻上は話を続ける。

 

『give and take!!これからも君へのバックアップをする代わりに君のデータを取らせて欲しい!!』

 

「・・・・・え?それだけ?」

 

天倉はてっきり金や【自主規制】や【自主規制】などのモノを寄越せと言われるのではないかと思っていた為、呆気にとられてしまう。

 

『もしも良いならば今すぐにレジスターを左上腕部に装着して欲しい!いや、君ならばそうするだろう!!』

 

何故、装着する本人の事では無いのにそこまで断言できるのだろうか。側から見ても胡散臭く、そこらの宗教勧誘よりも怪しい言動を信じる者などいないだろう。

 

 

「まぁ、いいや。左腕だっけか」

 

 

━━訂正、此処にいた。

 

天倉は腕輪をガチャリと左腕に装着すると「おおッ」と感激した声を漏らす。

実はこうやってアクセサリーをつけるのは初めてだったりするので内心滅茶苦茶ウキウキしている。

 

「はぁー、意外とイカスなぁ。うん、いい感じ!」

 

『そう!装着する際に注意して欲しい事がある!!レジスターを通して君の身体データを取る為"激痛を伴う"が君ならば心配ないだろう!!』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「え?激痛ってどういうk━━━

 

 

グササササササササササササッッ

↑腕輪《レジスター》の裏から無数の針が飛び出る音

 

 

ドクシュッ‼︎

↑無数の針が左腕の肉に突き刺さる音

 

 

 

━━イ゛ェアアアアアアアアアアアアアアア

 

 

 

 

その後、天倉は約7時間の間悶絶し続けたという

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

天倉は顔を真っ青にし、左腕をさする。

 

「いいなー!私にもつけさせてよ!」

 

 

「やめといた方がいいよ━━━死ぬほど痛いから」

 

「・・・・・うん」

 

彼は低いトーンの声+真顔で答える。その様子に色々と察したのか芦戸はそれ以上何も聞かなかった。寧ろ聞く気になれなかった。天倉の全身からこれについては触れるなオーラを放出し、もし聞いたのならば何をしてくるか分からないので彼女は敢えてスルーを決め込む事にした。

天倉は職場先に近いであろう最寄りの駅までの時間を確認する為、駅に備え付けられてある時刻表を探す。

 

するとキョロキョロと時刻表を探している天倉の目の前をガタイが良く相変わらずキッチリとしている飯田天哉が横切る。

 

「あ、飯田くん!職場体験お互いに頑張ろうね」

 

「・・・・あぁ、そうだな。天倉くんも頑張ってくれ!」

 

「うん!・・・・そういえば、飯田くんの職場体験先って何処なんだっけ?」

 

天倉はお互い頑張ろうと飯田を励ますように応援した後、興味本位で飯田職場体験先を聞く。

いや、正確には聞いてしまったの方が正しかった。

 

「・・・俺は保須市へ行くそこで・・・・とそろそろ時間だな。それじゃあ天倉くん!お互い職場先のヒーロー方に失礼の無いようにな!」

 

飯田はそういうといつものように腕をビシッビシッとロボットのように動かし、駅の改札へと振り向く。天倉はそんな様子に相変わらずだなと思った。

が、それと同時に天倉は飯田が無理しているように感じた。何故そう思ったのかは分からない。おそらく天倉特有の第六感《直感》から来るものなのだろう。

天倉が感じたのは体育祭の時の轟と同じ、何かに対する激しい憎悪。いつもの飯田からは信じられないものだった。

 

天倉が飯田を見送っていると緑谷と麗日の2人が近寄ってくる。おそらく2人も飯田の事を心配しているのだろう。

 

「飯田くん・・・いつもと比べて様子がおかしいよね・・」

 

「多分、お兄さん関連だと思う」

 

「?どういう事?」

 

天倉は2人から飯田天哉の兄に関する事を、ターボヒーロー【インゲニウム】が"ヒーロー殺し"に襲われた事を聞いた。

 

 

ヒーロー殺し【ステイン】

 

これまでに17人のヒーロー殺害、23人のヒーローを再起不能へと陥れ、オールマイトが現れた後の犯罪者としての殺人数は1、2を争うほどである。

恐らく犯罪史上その名を残すであろう敵《ヴィラン》

 

天倉もその名は何度か聞いており、そのヒーロー殺しに飯田の兄である【インゲニウム】が被害に遭っているとは思ってもいなかった。

いや、正確には狙われるとは思わなかったの方が正しいだろう。

 

「・・・しばらくそっとしておいた方がいいのかな?」

 

天倉は無闇に飯田の兄に関する事に干渉してはいけないと思い、呟く。

さらには、励ましておくべきだったのだろうか?と自己嫌悪に陥ってしまい、暗い雰囲気に包まれてしまう。

 

「ンなとこ突っ立てないでお前もさっさと行ったらどうだ?」

 

「相澤先生・・・そうですよね。すみませんでした」

 

天倉は相澤に声をかけられ我に返ると、慌てて駅の改札へ駆け足で向かう。

そんな様子の天倉を見て相澤はやれやれと溜息をつく。

 

「ったく、緊張感くらい持って欲しいんだがな・・・・にしても、本当に大丈夫か?"アイツの指名先"は」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

金曜日 職員室にて

 

 

 

「天倉くんの指名が今更来たのって本当?」

 

「えぇ、そうらしいですよミッドナイトさん。緑谷とこならともかく、最終日の前日に指名ってのはどうかと思いますがね」

 

相澤の元にネットから天倉への指名が一件だけ来ていた。緑谷出久ならばオールマイトの件で合点がいくが何故、ギリギリになって天倉の指名が来るのか不可解であった。

 

「どうしたもんか・・・・」

 

相澤は教師として、生徒をこんな怪しい職場へと赴けてよいのかと悩んでいた。

一瞬、天倉のバカ親の仕業かと浮かんだが、そもそもそのバカ親がこんな回りくどい真似をする訳が無いと考えを改める。

 

すると周りの何人から声が上がる。

 

「あら、指名が来たなら別に深く考えなくてもいいんじゃないかしら?」

 

「と言ってもですね・・・・」

 

「hey hey hey〜〜!もしかして天倉の事心配なんか?怖い顔して1人の生徒を心配するなんて放っておけないネェ〜〜♪」

 

「黙れクソグラサン」

 

プレゼントマイクは自分だけ辛辣な態度を取られ「why⁉︎」とリアクションを見せるが相澤は勿論それを無視。

3年生の講師を務め、ヒーローでもある【スナイプ】もミッドナイトの意見に賛成するような態度を見せる。

 

「まぁ、今になっても後悔している3年生がいるんだ。受けてもいいんじゃないか?噂じゃあ天倉くん、指名が一件も来なくて不良チームを結成したらしいぞ?」

 

「んだそりゃ。あくまで噂だろ」

 

「まぁ確かにな。だが、天倉くんは"ビッグ3"にも注目されている程の人材だ。指名を受ける事には越した事は無いと思うぞ」

 

ビッグ3その言葉を聞いた瞬間、相澤の眉がピクリと動く。

 

 

 

━━【ビッグ3】

 

現雄英高校のトップの3人と言われている3年生。それぞれ相澤が担任を務めているA組にも負けない程の個性的な性格をしており、もし天倉と出会ったならばツッコミが絶えないだろう。

しかしその実力はプロヒーローを押しのけるかのような強さを持ち、

その3人の中でも【ルミリオン】はオールマイトを除いて最もNo. 1に近い男だと相澤は思っている。

 

 

 

あの3人に天倉が注目されているという事を知ると相澤は溜息をつく。

 

「(こりゃ、天倉《アイツ》の苦労も絶えないだろうな)・・・まぁ、決めるのはアイツだからな。俺には知ったこっちゃ無いな」

 

「 hey hey hey!そう言って実は心配なんだろぅ〜〜〜?一緒について行ってやればいいんじゃねぇの〜〜〜〜〜?」

 

「黙ってろ。マダオ《"ま"るで"ダ"メな"お"気楽な教師》」

 

プレゼント・マイクが再び辛辣な態度を取られ「what⁉︎」と言っているが相澤は勿論それを無視する。相澤は意を決したように自身のデスクから離れ、天倉に指名について話す事を決意する。

が、職員室の扉に手を掛けようとした瞬間相澤はふと、とある事を思い出す。

 

「ミッドナイトさん、ちょっとイイですか?」

 

「あら何かしら?」

 

「えぇ、まぁ大した事ないんですけど」

 

 

別に後でも良かったのだが、忘れない内に早めにとある事を聞いておこうと相澤は思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「体育祭のあの時・・・天倉と俺が話し込んでいた所になんでアナタが居たんですか?」

※28話参照

 

 

相澤は目を細め、ミッドナイトに尋ねる。ソレはまるで敵と対峙するヒーロー。所謂、仕事をする際の顔。相手の表情、筋肉の動き、汗、僅かな変化を見逃さない眼だ。

 

 

「どうなんですか?答えてください」

 

 

相澤のボサボサとしただらしのない髪の毛がブワリと逆立つ。相澤が"個性"を発動する際の特徴だ。

ミッドナイトはそんな相澤の様子を見て、「ハァ」と観念したかのように溜息をつく。

 

 

「そんなの当たり前じゃない・・・・・」

 

 

ミッドナイトはそう呟くと答える。

 

 

「そんなの・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の趣味以外なにがあると思ってるの?」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「趣味?」

 

「えぇ趣味よ」

 

 

相澤の言葉にミッドナイト《熱血フェチ》は頷く。するとミッドナイトは身悶えるかのように身体をクネクネさせながら口を開く。

 

 

 

「だって!!教師と生徒の青春よ!!!!!しかもドライな対応をする教師が弱気になっている生徒に向けて厳しいながらも優しさが見え隠れしている言葉を送り、しかもその言葉は教師の照れ隠しと思うと"興奮する"!!!!!!それに最近生徒達の絡みばっかりだったから新鮮な感じがしたのよ!!!分かる⁉︎生徒同士の絡みもいいけど、生徒と教師なんて今のご時世そう見れるモノじゃないわ!!!!!!緑谷くんとオールマイトの絡みもいいけど!!!こういったのも"嫌いじゃないわ"!!!!!!ハッァーーーーーーーッ!!!良いわ‼︎あの時出会ったあの子がこんなにも私好みの青臭い展開を見せてくれるとは!!だから教師はやめられないのよぉ!!!!」

 

 

「━━━━━」

 

 

相澤は声が出なかった。いや、声を出すことができなかった。

あんなシリアスな場面にこんなふざけた理由があるとは思わなかった。というか思いたくもなかった。

 

「いやぁーーー!!!天倉はやっぱり普通の生徒とは一味も二味も違うネェ!!こりゃあ楽しみが増えてきたって感じだな‼︎」

 

すると変態《ミッドナイト》の言葉にマダオ《プレゼント・マイク》が釣られ、ノリノリで乗っかってくる。

相澤はこの時どんな顔をすればいいか分からなかった。自分の周りにこんな奴等がいたとは思わなかった。

 

 

とりあえずそこから逃げるかのように相澤は天倉の元へと向かったのだった。

 

 

 

そして何故か相澤は天倉に対して少しだけ優しくなったという・・・

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

(あの後、天倉は指名が来たのが余程嬉しかったのか狂喜乱舞していたな・・・・)

 

 

相澤は天倉を見送りながらつい先日の事を思い出していた。しかしあまり良い記憶ではなかった為、物凄く暗い雰囲気に包まれていた。

とにかく、重い足取りで物凄く行きたくない職場《雄英高校》へと足を運ぶ。

 

 

(・・・・にしても指名が来たという【鳴海探偵事務所】だったか・・・・んなヒーロー事務所聞いたこと無いぞ・・・・)

 

 

相澤は頭から離れない靄に悩みながらもいつも通りのやる気のなさそうな顔をしながら駅を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

the 夢の中

 

 

「(0M0)ウワアアァァァァァァァァァァ」

 

「いつまで逃げる気だ!!立ち向かって来い!!!」

 

 

ドーモ。読者の皆=サン。久しぶりの一人称視点の天倉孫治郎です。

今現在、居心地の良い新幹線の中で寝てしまい夢の中でバナナ師匠に精神的な特訓と言う名の地獄のシゴキを受けています。

 

とにかく俺は逃げて逃げまくる。

いや、仕方ないじゃん?だってあのバナナの人バイクに乗りながら槍をブンブン振り回してくるんだよ?

立ち向かって来いって言っている方がおかしいと思う。

 

 

「立ち向かって来いって!!どう考えても轢かれるのがオチじゃないですかーー!!!それ以前にどう戦えっていうんですかーー!!!」

 

俺は逃げながらも必死に叫ぶ。

 

「そんなの自分で決めろ!!それに"個性"やらなんやらを使えば良いだろ!」

 

あ、"個性"の事すっかり忘れてた。ていうか夢の中で"個性"が使える事自体知らなかった。俺はバイクでこちらに突っ込んでくるバナナの人を迎え撃つ為に全身に力を込める。

 

すると俺の身体は瞬く間に全身緑色、赤い双眼を持ったトカゲのような姿へと変貌を遂げた。

そのまま俺はバイクを受け止めるとギャリギャリとタイヤが擦れる音を響かせながらバイクの速度が落ちていく。

 

「やるな、だが!」

 

とバナナの人はバイクからジャンプしてこちらの背後へと着地。そのまま俺の背中に槍を突き立てようとする。

 

「うおおおっ!!!」ブォン!!!

 

「!」

 

しかし俺は受け止めたバイクの勢いを受け流すように背後に向けてスイングする。バナナの人の武器である槍はバイクによって弾かれる。

 

「ッやるな」

 

「よし!」

 

俺は内心でガッツポーズを取るが、あまり良い気分ではなかった。その理由は俺の姿にあった。俺の姿は全身緑色の垂れたような赤い双眼をしている。

体育祭以前からの姿。

そう、爆豪くんとの戦いで身に付けた筈の"燃費の良いモード《基本形態》"では無いのだ。

 

 

(どうして?どうしてあの姿じゃ・・・)

 

「何処を見ている!!!」

<ファイトオブハンマー

 

「は?・・・マンゴー?」

 

と俺が唖然しているとバナナ師匠・・・もとい姿を変えたマンゴーの人は物凄く重そうで美味しそうなぶつけられると滅茶苦茶痛そうなハンマーをこちらに振りかぶって来た。

 

 

「え、ちょ、ちょっとm━━イ゛ェアアアアアアアアアアアアアア!!!??」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

━━━ppp・・・ppp・・・ppp

 

 

「ッは⁉︎・・・ゆ、夢か・・・・」

 

やはり俺は新幹線の中でグッスリ寝ていたらしい。

というか5分の4の確率で夢の中でバナナの人が現れるのでオチオチ寝る事もままならない。

 

「全く・・・バナナと来て次はマンゴーの世紀末覇者か・・・」

 

俺は自分のスマホから鳴り響くアラームを止め、気分転換の為に窓の外に視線を向ける。先程まで見えていた街並みが一瞬にして見知らぬ街へと変わっていく光景をただ眺めていると不思議と心が落ち着いてくる。

それと同時に旅に出ている感じがしてワクワクしているところもあった。

 

「っと・・・そろそろ降りないとか」

 

俺はそう呟くとコスチュームの入ったケースを片手に、足元に置いてあったバックを背負い降りる為の準備をする。

止まる新幹線が揺れ、少しバランスを崩すが直ぐに体勢を整え、新幹線から降りる。

 

「・・・・ん」

 

風だ。

新幹線から降りた瞬間、まるで俺を出迎えるかのように心地よい風が吹いて来た。俺はホームを降り、改札口を通り、駅から出る。

すると俺の目に飛び込んで来るかのようにとある建物に俺の視線は釘付けになった。

 

「でっかい風車・・・・・」

 

第一印象は巨大な風車のついたタワーだった。よく見てみるとあらゆる建物に風車や風見鶏があちこちに設置され心地よい風によってまるで生き物のように動いている。

 

 

 

━━━【風都】

 

天倉を指名してくれた事務所があるという街の至る所で確認できる巨大な風車のついた風都タワーがシンボルの街だ。

風都タワー以外にも街のあちこちに大小問わず風車や風見鶏があり、街の電力はそうした光景の一端をなす風車による風力発電がかなりのウエイトを占めている。

 

 

「・・・っとそんな事よりも、風都風花町一丁目二番地二号目だったよな・・・」

 

俺は手に持ったメモを確認しながらその場所を探す。というか本当に風車や風見鶏ばっかりだな・・・・なんかサンタのコスチュームをしたおっさんに胡散臭い風貌のおっさんが屋台でラーメン食べてるんだけど・・・・・・・後で食べに行きたいなぁ。

 

「お、ここだな」

 

俺はメモに書いてある場所に辿り着いた。

そこにはかもめビリヤード場と書かれた少し寂れたレトロな雰囲気を醸し出した建物だ。ポツンとこの建物には似つかわしくない黒と緑のバイクが置いてあるのがとても気になってしまう。

 

 

・・いや、俺が探しているのは【鳴海探偵事務所】であってビリヤード場じゃないんだけどなぁ。本当にここで合ってるのかなぁ・・・。

 

「やっぱり他の人に聞いた方がいいのk・・・・」

 

すると俺はとある事に気付く。黒と緑のバイクのすぐ隣にピンクの文字で【鳴海探偵事務所】と書かれた水玉模様の看板が立て掛けてあった事に・・・・。

物凄く合わない。レトロな雰囲気を醸し出しているこの場所にバイク以上に似つかわしくない看板だった。

 

「・・・・あ、二階にあるのか」

 

俺は看板の隅に事務所が二階あるという文字を見つけるとそのまま二階へ続く扉の先へと進んでいく。階段を少し上った先には一つだけ扉があった。

おそらく此処が事務所の入り口なんだろう。物凄く緊張して来たのか冷汗まで掻いてしまう。とにかく服装を整え、深呼吸をして息を整える。

 

「・・・よしっ!」

 

と俺は意を決して扉を開ける。

例え何があったとしても俺はこの扉を閉める事はないだろう。俺はヒーローになる為に、笑顔を守れるようなそんなヒーローになる為に此処に来た。

俺は開けたと同時に声を張り上げて挨拶する。

 

 

「ゆ、雄英から来た天k「ちょっと!!!別にいいでしょ!ペット探しくらい!!何度もやってんだから慣れたもんでしょ!!」

 

「雄英からk「よくねぇよ!!!いいか!俺の求める探偵ってのはな!!そんなペット探しとかじゃねぇんだよ!浮気調査や人探しならまだしも、最近ソレばっかじゃねぇか!!!」

 

「あのーすみm「別にいいでしょ!!!そのおかげでしっかりとお金も入って来てるんだから!!翔太郎くんがそんなんだから赤字続きだったじゃないの!!!なーにがハードボイルドよ!!翔太郎くんからはそんなモノ微塵も伝わってこないわ!!」

 

「えーt「亜樹子ォ!!!!!!今言っちゃいけねぇ事言ったな!!!!!!」

 

 

キキィ・・・・・バタン

↑扉を閉める音

 

 

どうやら俺にはまだ早かったらしい。なんか緑色のスリッパを持った女子とハネ毛の茶髪でソフト帽を被った黒のベストにスラックスを穿いた男性が口喧嘩していたような気がするけど・・おそらく見間違いだろう。

出直すとすっか!

 

天倉孫治郎はクールに去るぜ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ちょっと待てぇぇ!!!」」

 

 

 

すると普通に呼び止められた。

空気読んで去ろうと思ったのに・・・・解せぬ。

 




短編 【煩悩の数だけ】

此処は東京都陸堂市瞳ヶ丘5-3-10に存在する【大天空寺】

そこに八百万が居た。
何故此処にいるのか、ソレは指名に関する事に原因があった。八百万への指名がほとんどセクハラ紛いのモノばかりであり、ぶっちゃけもう自暴自棄になっていた。
八百万は自身の"個性"を使用し、ハサミを創造するとおもむろに自身の髪の毛を切ろうとする。

すると偶々、境内を掃除をしていた僧侶が八百万を止めに入る。

「なっ、何をしているのですか⁉︎髪を切るのはやめるのですぞ!!」

「嫌なんです‼︎自分が・・・世の中が‼︎」

「わ、分かったから落ち着いてほしいですぞおおお!!!タ、タケル殿ォ〜〜〜〜〜〜!!!大変ですぞ〜〜〜!!!」

その後、八百万は何故か英雄に関する武具を創造するのにハマったらしい・・・・。




次回から本格的に特別篇に入ります。

じつはこの特別篇は読者の皆様に協力させていただいた仮面ライダーのアンケートの結果によってやるかやらないかを決める事になっていました。
もしも特別篇をやらなかった場合はエンデヴァー事務所、もしくは逢魔ヶ刻動物園に関する所に行かせようかなー?と考えていました。

ぶっちゃけ僕の文才でどこまでいけるか分かりませんが気長に次の話をお楽しみにして下さい。
あと評価の方もポチッとよろしくお願いします。


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第36話 Aの体験/2人で1人の探偵

最近忙しくて小説を書く時間が・・・・・



風都━━━━━━

 

此処にはあらゆる風が流れ込んでくる。小さな幸せも大きな不幸も、そして新たな出会いをも常に風が運んでくる。

・・・・・と言ってもこの街とはもう長い付き合いだ。風都は俺にとって庭も同然だ。これくらいの事はもう慣れちまったな・・・・。

 

探偵である俺の仕事はその風に耳を傾け、小さな幸せを守ってやる事だ。

 

俺の名は【左 翔太郎(ひだり しょうたろう)

 

極めて"ハードボイルド"な私立探偵だ。しかしそんな探偵である俺の裏の顔は【鳴海探偵事務所】を拠点とし、一癖も二癖もある仲間達と共にこの街の平和を守る戦士だ。

 

今日もまた俺の元に依頼者がやって来る。

 

「見たところ学生のようだが・・・・と、自己紹介が遅れたな。俺の名は左翔太郎。極めてハ〜〜〜〜〜ドッ・・・ボイルドな探偵だ」

 

勿論、依頼者に自己紹介は欠かさない。

これはとても大事なことだ。特にハードボイルドという点は譲れない。

ん?依頼者である少年が混乱してるみたいだな。まぁ、俺のような探偵に疑われるような事を言われたんだ。無理もないだろう。

 

俺の元にくる依頼者はこの街の"負の象徴"である【アレ】に関わってくる者も少なくは無い。

 

「っと・・・安心してくれ。例え相手がどんな人間でも俺は依頼を必ず解決する。自分の信念は絶対に曲げずに貫き通す」

 

俺はその場を立ち、窓から外を覗き込む・・・・・どうやら少年は俺のハードボイルドな姿に憧れちまったようだな。

やれやれ、好かれるのは女性だけ充分なんだがな。だが、少年の気持ちも分からなくも無い。こういうのも・・・・悪くは無いな。

 

「俺は必ず依頼を受け、必ず依頼をこなす。それがどんな難事件でもだ。フッ・・・・それこそがハードボイr」

 

 

━━パコーン!!!

 

 

 

「っでぇ!?」

 

痛っ⁉︎

後頭部に何か柔らかい物がぶつかりやがった⁉︎・・・・・俺がカッコよく決めてる最中に邪魔してくるのはこの場にヤツしかいねぇ・・・!いや、ヤツ以外ありえなぇ!!!

 

「亜樹子ォ!!!何しやがる!」

 

「なーに、学生くんの前でカッコつけてんのよ!さっきまでの事を無かったかのようにしても無駄なのよ!!」

 

「べ、別にカッコつけてた訳じゃ・・・」

 

「ていうか、さっきからずっと ( ゚д゚)ポカーンって顔して翔太郎くんの話なんか耳に入ってきてないと思うけど?」

 

「んなっ⁉︎マジかよ!」

 

んじゃあ、俺はさっきからベラベラと独り言を呟きながらカッコつけたような振る舞いを見せてただけになるじゃねぇか!

俺と亜樹子が言い争っていると、目の前にいる少年はハッと我に返り俺達の顔を交互に見ると

 

「えっと・・・・・外で待っていましょうか?」

 

引きつった笑顔をしながら事務所の外へ繋がる扉へと向かおうとする。俺と亜樹子はそれを逃すまいと引き止める。

 

「あーあー!だ、大丈夫!大丈夫だからね!」

 

「そ、そうだ!さっきのはえーと、アレだ!そう、雰囲気を和まそうとしてだな!」

 

 

 

そして、俺達は依頼者の少年を引き止める為に5分を費やした。

 

 

 

「それじゃ、改めて俺の名は左翔太郎。こっちは所長の【鳴海亜樹子(なるみ あきこ)】だ」

 

「人探しからペット探しまで!護衛も調査もなんでもござれ!で?どんな依頼なの?」

 

すると少年はうーんと唸りながら答えるのを渋る。なにか後ろめたい事でもあるのか、なかなか口を開かない。

・・・・こりゃ、なんか理由《ワケ》がありそうだな。もしかすると【アレ】絡みの事件を持ってきたのかもしれないな。

 

「さっきも言ったが、俺は必ず依頼を受け、必ず依頼をこなす。だから安心してくれ」

 

「・・・・・その、天倉孫治郎です」

 

「それがお前の名前か・・・・」

 

天倉孫治郎か・・・どこかで聞いた名前だな。確かテレビで見た事あったと思うんだがな。

すると亜樹子は俺を急に押し退け天倉に近寄る。

 

「天倉くん⁉︎天倉くんって雄英体育祭で3位取ったあの⁉︎」

 

「えっ⁉︎あ、は、はい。そ、そうです・・・」

 

亜樹子のヤツ・・・急に押し退けやがって・・・。

まぁいいか。体育祭・・・・雄英・・・・3位・・・・天倉孫治郎・・・・あ!

 

「お前!テレビに出ていた怪人に変身する学生か!!!」

 

相棒のやり方を真似て記憶を探ってみるとすぐに思い出した。亜樹子がやけに熱中し、一緒にテレビ番組を見たが俺も俺でやけに熱中して見ちまった。

今じゃオリンピックの代わりとなっているからな。

・・・・ん?

 

「ありゃ?どこに行きやがった?」

 

急に姿を消しやがった・・・・。まさかこれがヤツの個性か?・・・・いや、まさか⁉︎考えたく無いが【アレ】に関わってるのか⁉︎

 

「翔太郎くん、翔太郎くん」

 

「んだ、亜樹子邪魔すんな。今からあいつを探して・・・」

 

「あそこ、あそこ」

 

と亜樹子が事務所の一点を指す。するとそこには暗い雰囲気を放ちながら項垂れている天倉がいた。

見たらすぐ分かる程に落ち込んでいる。

 

「怪人・・・・か・・・・そう認知されてんのか・・・・」

 

ヤベェ・・・物凄く近寄り難い雰囲気を出してやがる。この雰囲気こそがコイツの個性・・・な訳な無いか・・・

 

 

━━ッパーン!!!

 

 

「ッだあ⁉︎亜樹子!またやりやがったな!!」

 

亜樹子は眉間にシワを寄せながら"アホかお前は!"と書かれた緑色のスリッパでこちらを睨みつけてくる。

まるで猫がこちらを威嚇してくるような感じで全く怖くねぇ。

 

「ちょっとーーー!なにサラッと酷い事言ってんのよ。翔太郎くんだって半分こ怪人でしょーが!!!」

 

「俺は怪人じゃねーよ!むしろソレを倒すヒーロー側の立場だろうが!!!」

 

「あ、あの!」

 

俺達が再び言い争っているとソレを止めるかのように天倉はこちらに話しかけて来た。どうやら話す気になってくれたらしいな。

・・・さて、どんな依頼なのか・・・。

 

「改めて!雄英高校から来ました天倉孫治郎です!指名ありがとうございます!ここでヒーローの事を学ばせてもらいます!よろしくお願いします!もうホント足でもなんでも気が済むまで舐めますから!!!」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「指名・・・何のことだ?」

 

「え?鳴海探偵事務所ですよね?職場体験で俺を指名してくれたの」

 

「いや、だから何のことだ?」

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「おい、亜樹子なんか知ら・・・・って、なんで顔を逸してんだよ」

 

「えっと・・・・・ほら、ちょっとアルバイトの子が欲しいなって思って・・・・・それでパソコンをチャチャっと弄っていたらなんか、指名・・・・だっけ?それっぽいのができてね」

 

 

「・・・・・それで?」

 

 

「多分、私が原因かなーって・・・とりあえずゴメンね?」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「亜樹子ォ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

『・・・・つまりアレか。ヒーロー事務所じゃなくて全く別の事務所から指名が来たってことか・・・・・んだそりゃ?』

 

「はい・・・・本当にすみません」

 

天倉は相澤先生に電話をかけていた。用件は勿論、今現在の状況についてである。

まさかの別の事務所から指名が来るという前代未聞の事態に天倉は勿論、相澤も半ば呆れていた。

 

天倉がチラリと後ろへ視線を向けると探偵と所長の2人が気不味そうにしている。天倉は気不味いのはコッチの方だコンチクショーと思いつつも相澤先生に電話越しだが、相談を持ちかけていた。

 

『まぁ、こっちもこっちで何とかしてみるが・・・・』

 

「いや・・・本当にすみません」

 

天倉は物凄い自己嫌悪に陥っていた。下手をすると泣きそうになっていた。大事な職場体験でこんな事態になってしまうとは思ってもいなかった。

 

「だけど今更受け入れてくれる事務所なんてあるんでしょうか?」

 

『まぁ、それだよな。今更一週間生徒を預けさせるなんて事をしてくれる事務所は早々無いからな』

 

「ですよね・・・・・マジですみません・・・」

 

天倉はマジでどうしようと悩んでいた。このまま自分だけ何もしないと言うのは情けない。

そして4回目のすみませんを迎えようとしたその時、所長が天倉のスマホを奪い取った。

 

「それならしばらくウチの事務所に預けるのはどうですか?」

 

 

「「・・・・・え?」」

 

 

『そっちの・・・・?』

 

天倉と翔太郎の声がハモる。と言うよりかは唖然して偶々同じ言葉が出てしまった感じだ。

そんな2人を無視するかのように所長とスマホの向こうにいる相澤先生は淡々と話を進めていく。

 

「・・・はい・・・はい・・・・バリバリokって言ってますよ!・・・・分かりました!天倉くん!一週間は職場体験って事で此処に居て大丈夫みたいだよ!」

 

「え⁉︎俺と翔太郎さんが唖然としてる間にかなり話が進んだ⁉︎」

 

天倉はスマホをすぐに返してもらうと異常なまでも会話の進み方に少しビクビクしながら相澤先生との会話を再開する。

 

「ど、どう言う事ですか?」

 

『まぁ、簡単に言えば職場体験の一週間はそっちにいろって事だ。どこから自信が湧いてくるのか分からないがヒーローの仕事なら任せろだってよ』

 

所長すげぇ!!!と思いつつも所長である鳴海亜樹子に感謝しながら相澤先生と会話を進めていく。

 

「あ、ありがとうございます。こっちも色々と頑張ります!」

 

『そうか。まぁ補習もツライだろうが今はそっちの方に集中しろ』

 

「はい!ありg・・・・・補習?」

 

天倉は聞き慣れない単語に一瞬、聞き間違いか?と思いつつも相澤先生にどう言う事か尋ねる。

 

『何って・・・そりゃあ後日、改めて補習として職場体験に行ってもらう。ちなみに行ってもらう場所はかなり厳し目の職場にするつもりだ』

 

「・・・・え?」

 

『まぁ、そっちの所長が大丈夫って言っていたから大丈夫だろうしな。んじゃ切るぞ』

 

「え?あの・・⁉︎」

 

 

━━━ブツッ! ツーツー

 

 

 

「おい、亜樹子。勝手に決めんなよ!」

 

「別にいいでしょ?ちょうどそう言ったアルバイト欲しかったし。それに"翔太郎くん達"はある意味ヒーローでしょ」

 

「・・・ったく、しょうがねぇ。ただしヒヨッコにはそう仕事は任せられねぇ。やるのは地味な作業ばかりだ」

 

翔太郎はそう言いながら過去の事を思い出す。

まだ自分が駆け出しの頃、自分が憧れたある男の背中を追っていた時の頃を。

 

ならば次は自分の番だ。ヒヨッコを危険な目に遭わせない為にも自分にできる事をやるだけだ。

 

「これから一週間よろしく頼むぜヒヨッコ(天倉)

 

 

翔太郎はそう呟きながら帽子(一人前の証)を深くかぶる。

 

 

 

そして当の本人(天倉)は深く項垂れる。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「えっと・・・・・よろしくお願いします」

 

気を取り直した天倉はモップを片手にお辞儀をする。何故モップなのかは雑用=掃除というイメージから来たものであり、特に深い意味は無い。

とにかくヒーロー事務所への職場体験(仮)として自分に出来ることをしようと天倉は気合を入れているのだ。

 

「あぁ、よろしく頼むぜ」

 

そして彼の目の前には無駄にカッコつけている左翔太郎が帽子を深くかぶり、大物オーラ(笑)を溢れ出している。

 

━━スッパーン!!!

 

そして流れるようにスリッパがカッコつけのナルシスト探偵の頭に気持ち良い音を出しながら叩きつけられる。

 

「っで⁉︎亜樹子!また!」

 

「まーたカッコつけて!人前だからって調子に乗んな!!!」

 

「んだと!」

 

2人は再び仲良くしっちゃかめっちゃか口喧嘩を始める。

止めてもまたやるんだろうなぁと思いながら掃除を始めようと事務所の出入口へと向かう。

 

 

ガチャ

 

 

「あ」

 

「あ」

 

 

突如として開かれる事務所の出入口。

そこには見知らぬ桃色の髪をした見知らぬ少女。ぱっと見でわかる容姿はは身長が低く、フリルの多くが付いたゆったりとした服を見に纏い、どのような考えも見透かされるような瞳のアクセサリーを胸に付けている。

 

全く赤の他人であるお互いがバッタリと出くわし、少女はやや困惑している様子だ。そもそも何故女の子がこのような場所に来ているのだろうか?

そう考えると天倉はすぐに1つの結論に達した。

 

 

 

━━━あ、この子依頼人じゃね?

 

 

 

チラリと背後へと視線を移すと所長とその部下である探偵が未だに喧嘩をしている。天倉は「ちょっと待って」と女の子に告げると出入口の扉をバタンと閉める。

 

 

━━1〜2分が経過。

 

 

「失礼しました。どうぞー」

 

 

天倉は扉を開き、女の子を事務所へと招き入れる。

そこには先ほどの喧嘩が嘘のように切り替えている探偵達の姿があった為か女の子はさらに困惑している様子だった。

 

「ようこそ、鳴海探偵事務所へ。俺は━━」

 

「左翔太郎さんですよね。知っています」

 

「あ?知っているのか?それじゃ、こっちは」

 

「はい、鳴海探偵事務所所長の鳴海亜樹子さんですよね?」

 

「え?あ、あぁ・・・・よ、よく調べてきているな」

 

翔太郎は冷汗を掻きながら落ち着く為にテーブルの上に置いてあったコーヒーを一口飲む。

いつも通り、至福の一杯で心を落ち着かせる。それがハードボイルドだと自分自身に言い聞かせながらコーヒーの苦味を味わう。

 

 

「いや、コーヒーを飲んだくらいでハードボイルドとは言えないと思いますよ?」

 

「ブッーーーーーー!!??」

 

いつも通りコーヒーを吹き出す。翔太郎は心の中を読まれ、驚きのあまりコーヒーを吹き出してしまったのだ。

いや、それ以上に自分の考えていることが読まれた事実に一種の恐怖を覚えた。

 

「お、おまっ⁉︎」

 

「ちょ、ちょっと翔太郎くん!依頼人の前で何吹き出してんのよ!!」

 

亜樹子は翔太郎の行動に驚き、天倉は流れるように吹き出してしまったコーヒーを雑巾で拭き取る。しかし女の子は喋り続ける。

 

「いえ、鳴海亜樹子さん不意を突かれるとコーヒーを吹き出してしまうクセを持つ探偵さんには落ち度はありません。それに、新人の方が来ているからといってあまり緊張なされてはいけないと思いますよ?」

 

「え?アレ?え⁉︎どういう事⁉︎」

 

亜樹子は翔太郎と同様に慌て始める。自分の思考が読まれていると分かり、「私聞いてない!!」と焦ってしまう。

 

「フフフ・・・失礼しました。安心した下さい。別に取って食うつもりなんてありません」

 

(・・・・・何やってんだこの子?)

 

女の子はフフフとなにやら黒幕オーラを出しながら胸を張っている。別に張る胸もないが・・・。そんな様子を天倉はまるで悪戯している子供を見るような眼をし、やれやれと溜息をつく。

 

 

「その通りだ翔太郎。彼女は少なくとも悪人では無い」

 

 

聞き覚えのない声が耳に入る。天倉はその声が聞こえた方へと振り向く。そこには片手に本を持ち、縞模様のシャツ上からノースリーブのパーカーを着た知的な少年がいた。

 

「な、フィリップ!いつの間に⁉︎」

 

「彼女の名前は【古明地さとり(こめいじ さとり)】"個性"は【読心】文字通り相手の考えていることを読むことが可能な個性だゾクゾクするねぇ・・・。趣味はペットとの戯れに読書。特に心理描写が豊富な本が好きであり自ら本を執筆する事もあるらしい」

 

「ど、どうしてその事を?」

 

すると先程まで自信ありげだった女の子。さとりは驚愕の表情を露わにする。天倉はいきなり登場して来た人物に戸惑いを隠せなかった。なんというかA組にも劣らない性格の持ち主なのだなと感じた。

 

「天倉孫治郎。君のことも検索済みだ。天倉孫治郎 15歳 雄英高校1年。大好物は食べられるもの全般。小学生時代から友達が少ないことに対しコンプレックスを覚えている。"個性"は【蜥蜴変身】」

 

「え?なんでそこまで知ってるんですか?もの凄く怖いんですけど」

 

天倉はドン引きしながらその少年から少し後ずさりする。すると翔太郎がフォローを入れてくる。

 

「あー、こいつの名前はフィリップ。俺の相棒で、まぁ・・・検索バカってところだ」

 

(検索バカって・・・⁉︎)

 

「えっと・・・とりあえず依頼よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

古明地さとり彼女の依頼は至極簡単。ペット探しだという。彼女が飼っているであろう猫を探して欲しいというのだ。

 

「名前は燐《りん》と言うのですが・・・・特徴は黒と赤色の毛並みをしているので見つけやすいと思うのですが・・・」

 

「黒と赤・・・・成る程。流行りのポケ◯ンのニ◯ビーとその進化形態が良い例だね」

 

「いや、フィリップさん合っていますけど色々違っていますから」

 

この事務所ではよくあるであろうペット探しの依頼。左翔太郎は天倉の前でカッコつけたのが無駄になったと落胆しつつも探偵の仕事と割り切りながら気合を入れて直す。

 

 

━━━ピピピピピピ

 

 

すると翔太郎のポケットから携帯電話?の着信音が鳴り響く。

 

「ん?あぁ。俺だ・・・・・・ん?そうか」

 

(なんだあの携帯。すっげぇ形だ・・・・)

 

天倉は翔太郎が使う無駄に凝ったデザインの携帯電話に関心を持ったのかジッと見つめる。

 

「・・・・あぁ、そうか分かった」

 

と言いながら携帯を懐にしまうと翔太郎は掛けてあった帽子を手に取り事務所から出て行こうとする。

亜樹子は何も言わず出て行こうとする翔太郎に食いつく。

 

「ちょっと!依頼人ほったらかしてどこ行くのよ!!!」

 

「悪いな亜樹子、照井からだ。どうしても来てくれって言っている」

 

「竜くんが?」

 

「何というか・・・・俺たちにちょっとしたアウェー感が・・・」

 

「それを言うのはやめてください・・・・自分自身悲しくなりますから・・・・」

 

何故か疎外感の感じる天倉と古明地は敢えて何も言わないことにした。すると翔太郎は亜樹子に色々話したと思うと出入口の扉に手をかける。

 

「ペット探しの方はお前達に頼む。それじゃあな」

 

 

ガチャ バタン!

 

 

「ちょっと!!!・・・・私聞いてない・・・」

 

「ふむ、猫探しか。僕たちだけと言うのも珍しい・・・・」

 

力が抜けたようにその場でヘタリ込む所長の亜樹子、現在の状態を興味深く分析する謎の相棒。そしてそれを茫然と立ちながら見守る新人アルバイトと依頼人。

一歩間違えればこのカオスな空間の中で所長の亜樹子はフラフラと立ち上がるかと思えばズンガズンガと天倉の方へと詰め寄る。

 

「天倉くん。準備」

 

「・・・・え?な、なんのですか?」

 

「猫を探す準備」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「猫探すぞーーーーー!!!」

 

「お、おぉー・・・」

 

「なんで私まで・・・・?」

 

所長の猫探しに付き合わされることとなった三人《フィリップ・天倉ァ・小五ロリ》は街へと赴く。

その中で古明地は依頼人である自分までもが猫探しに付き合わされるとは思わなかったのか、どう見ても困っている顔をしている。

 

そして何故か亜樹子はタコ焼きの被り物をしている為、通行人から変な物を見る目で見られる。

いや、変なモノというのは反論できない。

 

 

「て言うか亜樹子さん、そのタコ焼きの被り物には何の意味が・・・⁉︎」

 

「特にないわ!!!」

 

「何で!!??」

 

「翔太郎くんったら!!勝手にどっか行っちゃうし!それに竜くんも最近忙しそうだし!!!」

 

今の亜樹子のご機嫌は斜めらしく、猫探しどころではなさそうだ。とにかく天倉は自分とフィリップさんだけでも猫を探そうとフィリップに声を掛けるが、その場にフィリップはいなかった。

 

「あ、あれ?フィリップさん?何処行ったんですか?」

 

と天倉がキョロキョロと辺りを見回していると少し遠い離れた場所にフィリップの姿を見つけた。

しかしフィリップはとある物を興味津々に注目している。

天倉はもしや猫に関する何かを見つけたのではないかと期待して近くに寄る。

 

 

「カブ◯ボーグ・・・興味深いね・・・・・」

 

 

 

な に や っ て ん だ コ イ ツ は

 

 

曲がりにも自分より年上、しかも今は猫を探しているというのにマジでなにやってんだコイツは。

なに玩具を興味津々に眺めているんだよコイツは。天倉はこめかみに青筋を立てながら頭を抱える。

 

 

「ありがとうございます。見ず知らずの私の為に」

 

「ん?あぁ気にしないで下さい」

 

天倉は急に話しかけられたのか古明地に対して少し遠慮するような態度だ。そんな様子に古明地はフフフと微笑みを見せてくる。

 

「いえ、優しいんですね。勝手ながら心を読ませてもらいましたが天倉さんの心は純粋です」

 

「そ、そうですか・・・?」

 

天倉は顔を赤くしながら頭を掻く。相変わらず褒められることには慣れないようだ。

 

「と、とりあえず猫を誘き出すためのエサを設置しに行きましょう!」

 

天倉はその場から逃げるかのように走っていく。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜少年少女エサ設置中

 

 

 

 

「ふぅ、あらかた全部終わった感じですかね?」

 

「そうみたいですね」

 

2人は街中の至る場所にエサを設置し終わり、喫茶店で休憩を挟んでいた。亜樹子とフィリップの2人は猫の情報を色々な人から聞いているらしい。

 

「そういえば、燐って言いましたっけ?猫の名前」

 

「はい、そうですよ。とても可愛らしい名前で彼女も気に入っているんですよ」

 

「へぇ、そうなんですか。確か心を読む"個性"でしたっけ?結構便利なんですね」

 

「いえ、そんなに便利ではないですよ」

 

古明地は首を左右に振ると再び口を開く。

 

「私自身、隠し事ができない性格なので相手の考えていることや秘密にしていることを思わず口に出してしまうんですよ」

 

フフフとにこやかに笑う古明地さとり。サラッと、とんでもない発言をした古明地に対し天倉は「そ、そうなんですか」とやや引いたように返事をする。

 

「幻滅しましたか?」

 

「い、いやそんなことないですよ」

 

「それは良かった。天倉さんは女の子相手でも容赦なく痛めつける人だと思っていたので」

 

「ゴフッ━━━━(吐血)」

 

不意打ちのトラウマ抉りに対し天倉はとてつもない精神的ダメージを受けた!

 

効果はばつぐんだ!!!

 

「す、すみません・・・・マジですみません・・・・」

 

「え?え!こ、こちらこそすみません。まさかそこまで精神的ダメージを負うとは・・・・」

 

古明地はダウンした天倉を懸命に応急処置《カウンセリング》を施す。古明地は天倉のガラスのハートに逆に関心しつつも話題を晒す。

 

「そ、そうです!とにかく亜樹子さんやフィリップさんのところへ行ってみましょう!何か情報を掴めているかもしれません!」

 

「そ、そうでずッ━━⁉︎」

 

そう言いながら古明地は天倉の襟首を掴んでそのまま引きずっていく。何故、小さな体格からは想像できないパワー出たのかは敢えてスルーしてもらおう。

 

「ちょ・・・・じ・・・ぬ・・・・」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

天倉 HP 1/1000

 

「し、死にそう・・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってて下さい。もうすぐで亜樹子さんが来ると思いますから」

 

襟首を引っ張られ瀕死に陥っている天倉に申し訳無さそうなしている古明地。あと一撃でも加えればゲームオーバー必然の状態に困惑しているのだ。

とにかくこの2人は亜樹子との待ち合わせ場所へと赴いており、亜樹子の到着を待っている。

 

するとこちらへタコ焼きの被り物をした人物が駆け寄ってくる。どう見てもあの不審者紛いは亜樹子だと理解する。

 

「おまたせー・・・って天倉くんどうしたの?もうバテたの?」

 

「い、いやそうじゃないんですけど・・・・というより猫の情報はどうですか?何か分かりました?」

 

心配してくる亜樹子に迷惑をかけないよう元気なフリをする天倉は依頼である猫の情報を亜樹子に聞く。亜樹子は「そうそう」と頷くと口を開く。

 

「最近、燐ちゃんみたいな黒と赤の猫をここら辺で見かけたって情報をゲットしました〜!!!」

 

亜樹子はイェーイと嬉しそうにはしゃいでいる。天倉と古明地の2人はその様子を元気だなと呆れつつも感心するように見ている。

 

「ハハハ、すごいですね(タコ焼きの被り物で台無しだけど・・・)」

 

「ハイ、流石です亜樹子さん(歳相応というのを知らないんでしょうか・・・・・)」

 

内心ではあまり感心しているように見えないが・・・・。

 

「と、とにかく丁度この辺にもエサを設置しているのでそこに行きましょう。何匹かはエサに食いついていると思います」

 

 

天倉の言葉に古明地と亜樹子は頷く。エサを設置したのはビルとビルの境に存在する路地裏だ。

道中、路地裏同盟と名乗る3人組がいたがスルーしてエサの設置場所へと進む。

 

天倉達が進んだ先で見かけたものは━━━

 

 

 

 

「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」

「ニャー」「ニャー」「ギャオオオ」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」

 

 

「「「⁉︎」」」

 

 

大量発生した猫だった。

多い。とにかく多い。凄く多い。めっちゃ多い。30は軽く超えているであろうその数に3人は圧倒される。

というかこの中に本当に目当ての猫を探さなくてはならないことに3人は少々落胆する。

 

「天倉くん。これって・・・・?」

 

「やばい・・・・知り合いに猫が集まりやすい方法を聞いたんですけど・・・間違ってたかなぁ・・・」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

Qずばり猫が集まりやすくなる秘訣とは?

 

 

M・I「あ?猫の集め方・・・・・別に知らないよ。そんなの」

↑本名は伏せる為イニシャルで表している。

 

M・I「そもそもさ、六つ子ニート童貞の最低辺中の最低辺にそんな質問する?おかしくね?」

 

M・I「て言うか最低辺のクズのゴミですみません。俺達六つ子は死ぬしかないです。特に次男は真っ先に死ぬべき」

 

Qわかりました。と言うかなんか、すみませんでした。

 

M・I「あ、そうだ。レシピだけど猫が滅茶苦茶寄ってくるエサの作り方教えてやるよ」

 

Qえ?マジですか?

 

M・I「いいよ、だけど気をつけて。この前バカな兄どもが食って大変な事になったから。お互い辺な家族を持つと大変だな」

 

Qごもっともです。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「(あ、ヤバイ。この場所のエサの量、多過ぎたわ)と、とにかく街中を探すのが省けたって事で、1匹ずつ探しましょう」

 

(あぁ、成る程。エサの量が多すぎたんですね)

 

天倉は気を取り直して猫を探す作業を行う。そんな中古明地は天倉がエサの分量を間違えたことに気付くが、それはそっと心の中にしまっておくことにした。しかしパッと見ると最低でも3時間は作業するのだろう。どう見ても見つけられる気がしない。

 

「て言うか、どんどん猫が増えてくるんだけど〜〜〜」

 

亜樹子の言う通り改めて見るとどんどん猫が増えているのが一目瞭然だ。中には犬やら鳥やらも混ざっている。

 

「うわぁ、マジか。て言うか関係のない動物もいるし・・・・」

 

「このままではタヌキやら熊なども来るんじゃないんでしょうか」

 

「ハハハ、流石にそれはナイナイ」

 

古明地は冗談混じりの発言を天倉は流す。

 

 

しかし、この世の中には因果、法則、運命など、あらゆるモノが存在する。

 

 

それは人を殺し力を持ち

 

それは人を生かし力を持ち

 

それは人を幸せにする力を持つ。

 

 

あらやる物事の発生条件が確定した時に使う言葉

 

 

人それを【フラグ】と言う

 

 

 

「・・・・・ん?」

 

天倉はふと大きな影が横切ったのに気づく。なんだろうと天倉が上を見上げるとこちらに何かがビルの上から降りて来るのがわかる。

重力に逆らわずこちらへ自由落下してくるソレは巨体で、熊と錯覚する程の大きな腕、足を持っている。

 

しかしソレは異常だった。身体の色は青く、毛皮のようなモノを被っているようにも思える。

 

その姿はまさに野獣だった。

 

 

 

「「「・・・・・・・」」」

 

 

 

3人は突如として現れたソレを目撃したのか身体が固まってしまった。それもそのはず、化け物が上から降りてくれば普通はそうなるだろう。

 

「グルルル・・・・」

 

そしてソレはがっつり敵意剥き出しである。

 

 

 

「熊どころか、凄い化け物呼び寄せてんだけどおおおおおおおおおおおお!!!!!!????」

 

「ドッドドドドド、ドーパントッ!!??」

 

 

天倉と亜樹子はそれぞれ叫ぶ。すると2人の大声で刺激してしまったのかその化け物はこちらに、いや古明地さとりに襲って来た。

 

「ヒッ・・・⁉︎」

 

古明地はあまりの恐怖に動けずにいた。その姿は蛇に睨まれた蛙のようにだった。彼女は腰が抜けてしまったのだろう、それに避けることも恐怖のあまり考えられなかった。

化け物の左手にある鋭利な爪が古明地さとりに向けて振り下ろされた。

 

 

「うおおおおっ!!!」

 

 

しかし爪が振り下ろされる瞬間、天倉は化け物にタックルを食らわせることによって化け物の攻撃がズレる。

不意からの攻撃だったのか化け物は大きく怯んでしまう。

 

「古明地さん!早く!」

 

「は、はい!」

 

天倉は体格の小さい古明地を背負い、亜樹子と共に路地裏を駆け抜ける。

そして、3人は一通りの多い大通りに出る。すると丁度良いタイミングに沢山の袋を持っているフィリップと出くわした。

 

「どうしたんだい?そんなに急いで」

 

「じ、実は・・・・ってなんですか?その袋」

 

「ん?あぁ。さっき買ったばかりのカブト◯ーグとオプションパーツ全種さ。これは実に興味深い。翔太郎はきっと知らないだろう」

 

とホクホクした顔でフィリップはウキウキしていた。そんな様子に天倉はポカーンとした顔をした後

 

 

「この人、依頼放っておいて玩具漁りしていやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!????」

 

 

心の奥底からのシャウトが街中に響き渡った。

 

 

「あ、天倉さん!上です!」

 

「え?・・・・!」

 

天倉が上を向こうとした瞬間、悪寒を感じた。このままではまずい。このままだとやられる。

天倉はその場からすぐに飛び退いた。

 

瞬間、上から先程の化け物が落ちて来たのだ。

天倉がその場いたらどうなっていたかは本人でも分かることだ。

 

すると化け物の出現によって大通りにいた沢山の人々はパニックになり急いで逃げていく。

 

 

「ビースト・ドーパント⁉︎何故こんなところに⁉︎」

 

 

「ど、ドーパント?(ヴィラン)じゃなくて?」

 

 

"ドーパント"

聞きなれない単語に天倉は困惑するがすぐに目の前の物事に集中する。

 

 

「(まずい、ヒーローへの連絡は別の人がやってくれるとして、あの化け物の狙いはおそらく古明地さんだ。だけど、路地裏の時、距離が近かった俺や亜樹子さんを無視して古明地さんを狙った。コイツの目的は何だ?)お前!何が目的だ!古明地さんを狙っているのか!!」

 

 

天倉が化け物に向けて叫ぶ。知能があるかどうか疑わしいが、念の為いつでも"個性"を発動出来るように身構える。

 

すると化け物は唸るように低い声で何かを喋り出す。

 

 

「グウゥゥゥゥ・・・・メモリィ・・・・メモリィヲォォ・・・ヨコセェェェェェ!!!!!!」

 

「!!」

 

するとその化け物、いや"ビースト・ドーパント"は天倉に向かって、天倉が背負っている古明地に向かって突進してくる。

天倉の推測通りやはりドーパントの狙いは古明地さとりだ。

 

「ッ!!」

 

「天倉くん!」

 

亜樹子が天倉と古明地に危険を知らせるが、背負いながら避ける事は不可能。せめて古明地だけは助けようと天倉は自分を盾にする。おそらくあの身体に突進されれば無事では済まないだろう。その事を知った上で天倉は1人の女の子を助けようとしているのだ。

 

もはや、彼は助からないだろう。

 

 

 

 

━━━━ォォォォオオオオオオオオオオオオ

 

 

"この街のヒーローが居なければの話だが"

 

 

 

━━━ガッ!!!

 

 

「グォォッ⁉︎」

 

そこには、この街の平和を守るヒーローがいた。

常に風が吹くこの街を幾多の脅威から守り続けて来た仮面を被った戦士。

 

「待たせたな。無事か?お前ら」

 

「しょ、翔太郎さん!」

 

この街の【切り札】が現れたのだ。

 

「何の騒ぎがと来てみればドーパントかよ。フィリップ!半分チカラ貸せ!」

 

「あぁ、もちろんだよ。翔太郎」

 

翔太郎とフィリップの2人は懐から赤い物体を取り出す。

赤い物体をそのまま下腹部に装着した瞬間、腰回りにグルリとベルトが巻かれ赤い物体はバックルへと変わる。

 

 

そして2人はそれぞれ黒と緑の小さな長方形の物体を取り出す。

 

 

Joker(ジョーカー)

 

Cyclone(サイクロン)

 

 

「「変身!!」」

 

 

2人がそれぞれのメモリをバックルに挿入するとフィリップはまるで魂が抜けるかのように倒れる。

そしていつのまにかフィリップが持っていたメモリは翔太郎のバックルに挿入されていた。

 

 

Cyclone Joker(サイクロン ジョーカー)!!』

 

 

2つのメモリが斜めに倒れ、メモリが挿入されたバックルはまるでWの英単語のような形となる。

瞬間、この街そのものが"その存在"に歓迎するように風が吹き荒れ風車が激しく回る。

 

そして緑と黒の仮面の戦士《ヒーロー》は現れる。天倉はその姿を見ると言葉が漏れる。

 

 

「都市伝説の・・・仮面・・・ライダー」

 

 

 

「俺は・・・・いや"俺達"は【仮面ライダーW】」

 

 

風が吹く街にマフラーをたなびかせ、そのヒーローはドーパントに手を向け、言い放つ。

 

 

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ」』

 

 




何だが、話が進むにつれて文字が多くなっている気がする・・・・・・・・


〜〜〜〜前回やらなかった分含めて次回予告


緑谷「次回予告!!!」

轟「・・・・・・・」

爆豪「・・・・・・・」

天倉「おい、コラアアァァァァァ!!!なんでこの人選にした⁉︎なんで前回やんなかった⁉︎なんでまとめることにしたぁぁぁ!!!」

緑谷「あ、天倉くん、落ち着いて・・・」

爆豪「うっせぇぞ!!!クソ共!!!ブチ殺すぞ!!!」

轟「うるさいのはお前だろ」

爆豪「あ゛ぁ゛?んだとこの野郎!!!やんのかゴラァ‼︎言っておくがテメェとはちゃんと決着ついてねぇからな!!!今すぐにでもブチ殺したろか!!!」

轟「別にあれはお前の勝ちでいいだろ、いちいちこだわってんじゃねぇよ」

天倉「もうやめてくれぇ・・・・コイツらといると胃に穴が開きそう・・・・・」

緑谷「と、とにかく次回!!『Aの体験/読心の少女』!!!」

轟「天倉が空高くから落ちるぞ」

天倉「え?・・・・・・・ゴフッ━━(吐血)」

緑谷「更に向こうへ!」

緑、爆、轟「「「Puls Ultra !!!」」」

天倉「」返事が無いただの屍のようだ


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第37話 Aの体験/読心の少女

投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
というか今更何しに来たの?といった反応かもしれませんが、2話連続で投稿をしに来ました。

こちらも読者の皆様に楽しんでもらえるように頑張りたいと思っております。


「ハァッ!!」

 

緑と黒の戦士(仮面ライダーW)は走り出し、ビースト・ドーパントへ殴りかかる。

 

「オラッ!ハッ!ドリャッア!」

 

さらに連続の打撃によりビースト・ドーパントはよろめき、態勢を崩す。そこに仮面ライダーは風の纏った緑色の回し蹴りをおみまいする。

 

「グオオオオッ⁉︎」

 

パンチによる衝撃に加え、強力な風がビースト・ドーパントを軽々と後退させる。黒と緑の戦士は目の前の敵を圧倒している。窮地に陥っていた3人にはそのヒーローは頼もしく思えたのだ。

 

「ったく、目を離していれば何があったんだよ! 」

 

『翔太郎、今はとにかく目の前のビースト・ドーパントに集中しよう。攻撃の隙を作るな』

 

「言われなくてもわーってるよ。オラァッ!!」

 

黒と緑の戦士からそれぞれ2つの声が聞こえてくる。1つは先程バイクに乗りビ 駆けつけてきた【左翔太郎】もう1人は先程、共に行動していた【フィリップ】だ。

 

しかし天倉はおかしく思った。何故ならフィリップ本人は今、目の前でグッタリと倒れているからだ。天倉は呑気に寝ているであろうフィリップを起こす為に肩を掴んでグワングワンと激しく揺らす。

 

「ちょと何呑気に寝ているんですか!起きて下さいよ!てか風邪ひきますよ!ちょっと⁉︎おーい!おーきーろー!!!」

 

「ま、待って!天倉くん!」

 

「いや、待つって言われても⁉︎」

 

「今、フィリップくんは翔太郎くんと合体してるの!」

 

「え?合体?」

 

「そう!翔太郎くんとフィリップくんが合体して仮面ライダーになって戦ってるの!」

 

亜樹子に止められた天倉は再び仮面ライダーの方へと視線を移す。探偵の2人が合体してあのような姿になっている事実を天倉はにわかに信じられなかった。

そんなものどうやったら合体出来るのだろうか。先程ベルトを使っていたが、それを使って合体したのだろうか?と天倉の頭の中に疑問がいくつも生まれてくる。

 

「オラァッ!!天倉!古明地を守ってやれ!」

 

「…分かりました!」

 

天倉は頭の中の疑問を取り払い古明地さとりに被害が及ばないようにさとりの前に立ち、仮面ライダーの戦いを見守る。

 

「グ、アアアァァァァァ!!」

 

するとビースト・ドーパントは目の前の戦士に恐れをなしたのかその場から逃げるようにその場で跳躍し、ビルとビルの間をジグザグに蹴り続ける。

 

「逃すかよ!」

 

Luna(ルナ)

 

すると仮面ライダーは緑色のメモリをバックルから抜き、代わりに取り出した金色のメモリをセットする。

 

Luna Joker(ルナ ジョーカー)

 

すると緑色の右半身は一瞬のうちに金色に塗り替えられる。そして仮面ライダーが右腕を突き出したかと思うとまるでゴムのように長く伸びた。

そしてビースト・ドーパントの左脚に伸びた腕が巻きつき、そのまま地面に向かって叩きつける。

 

「グウッ!!」

『畳み掛けるぞ翔太郎』

 

「おう!」

 

Heat(ヒート)

 

Heat Joker(ヒートジョーカー)

 

すると今度は金色のメモリを赤のメモリと入れ替え、黒と金色の戦士から黒と赤の戦士へと変わった。

そして、炎を纏った拳を連続でビースト・ドーパントに叩き込む。殴るたびに爆炎がダメージを加速させ、相手は既にフラフラの状態だ。

 

「よっし!フィリップ、メモリブレイクだ!」

 

『分かったよ翔太郎』

 

Cyclone Joker(サイクロンジョーカー)

 

仮面ライダーは再び最初の黒と緑の姿に変わる。

そして黒のメモリを右側にあるスロットにそのままセットする。

 

Joker MAXIMUM DRIVE(ジョーカーマキシマムドライブ)‼︎』

 

瞬間、仮面ライダーを中心に風が吹き荒れる。風は次第に塔を作るかのように竜巻を形成し、仮面ライダーの身体が浮かび上がる。

そして、高く浮き上がるとそのまま両脚をビースト・ドーパントに向けて突き出すと同時に右側のスロットを叩く。

 

 

『「ジョーカーエクストリーム!!!」』

 

 

さらに一段と風が吹き荒れ、仮面ライダーはビースト・ドーパントの方向へ弾丸が射出されるように加速する。

そして最高速度に達した瞬間、仮面ライダーは

 

 

━━真っ二つになった。

 

 

「「割れたァ⁉︎」」

 

そんな驚くべき光景を見た天倉と古明地は呆気に取られながらも仮面ライダーの分割された体はドーパントに向かってキックを放つ。

そして放たれたキックは命中したものの少々後退りしただけトドメを刺すには至らなかった。

 

しかし、放たれたキックは1つだけではない。もう1つの分割された体のキックがドーパントに命中。

隙を生じぬ二段構えの必殺のキックが更にダメージを加速させる。

 

「グ、グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

仮面ライダーの必殺の蹴りが炸裂しドーパントは爆発を起こす。天倉は亜樹子と古明地を爆風から守るように己の体を盾にする。

爆煙が収まるとそこには見知らぬ人が倒れており、メモリがパキリと音を立てながら壊れる光景が広がっていた。

 

「ふぅ……終わった」

 

「えっと、翔太郎さんですよね……」

 

天倉は仮面ライダーに向けて呼びかける。すると仮面ライダーは「あー」と言いながら頭を掻く仕草を見せる。この反応はどうやら翔太郎で間違い無いだろう。

 

一方、仮面ライダーもとい翔太郎本人はこの事をどう説明すれば良いか少々悩んでいる様子だ。翔太郎本人もこの後やらなければならない事があり、後のことは相棒に任せようかと思ったがこの2人に任せると何が起こるか分からない為、ものすごく不安なのだ。

 

「……仕方ねぇな、俺から話すしか━━」

 

 

刹那、仮面ライダーの横を何かが通り過ぎる。急な事であった為か誰も反応できなかった。

ソレはまるで鳥のような人間のような化物だった。緑色の体毛を持ち翼を羽ばたかせてピンク髪の少女をあっという間に連れ去るように飛び去る。

 

「あ━━━━━━」

 

天倉の目には古明地の絶望した顔が映る。その場に居た者たちは何も出来ず、か弱い少女が連れ去られるのを見ているしかなかった。

 

「しまっ━━━━⁉︎」

 

だが1人だけ、近くにいた天倉孫治郎だけが動いた。古明地さとりを助ける為に天倉はその鳥人間の化け物、バード・ドーパントの脚にしがみついた。

 

「天倉!古明地!」

 

『しまった!もう一体伏兵がいる可能性を想定していなかった!古明地さとりを狙ってくるなら複数犯の可能性も考慮できた筈━━』

 

「呑気に分析してる場合じゃねぇだろ!!」

 

ドーパントは次第に高度を上げていく。だが、天倉は決して振り落とされないように脚にしがみついている。

ドーパントは邪魔者を落とそうと天倉を片方の足で蹴り続ける。

 

「放せ……っ!古明地さんを……っ!放せ!!」

 

だが、蹴られ続け口から血が流れようとも天倉は手を離さない。今の天倉には死んでも手を離さない3つの理由があるのだ。

 

1つ、人助けはヒーローとして当たり前だからだ。

 

2つ、探偵事務所の一員として依頼人は絶対に傷つけてはいけないからだ。

 

そして3つ目は彼女が助けを求める顔をしていたからだ。

 

 

「うお゛お゛お゛おおあお゛お゛お゛おおおおおッ!!!」

 

天倉の姿が変貌する。赤い瞳をした緑色のトカゲのような姿のアマゾン素体状態だ。ドーパントの脚から背中へと移動し、天倉は鋭い牙を翼に突き立てる。

 

━━━バキバキッ!

 

「グオオオオッ⁉︎」

 

天倉はその強靭な顎の力で翼を噛み砕き、バランスを崩させる。片方の翼で飛ぼうにも重過ぎで徐々に高度が下がっていく。

 

「グアアアアアアアアアっ!!!」

 

するとドーパントは古明地さとりの拘束を解除し、さとりが空中に身を投げ出される。

 

「キャッ━━━━━⁉︎」

 

「さとりさん⁉︎」

 

天倉はドーパントを踏み台にしてさとりの元へ跳躍する。そして空中に投げ出されたさとりを無事にキャッチすることが出来た。

 

「良かった!さとりさん無事ですk「天倉さん!駄目ですコレは相手の罠です!」

 

 

ババババババババババッ!!!!!

 

 

「ッ‼︎ぐあああっ!!!??」

 

しかし突如として鋭利なモノが無数に飛んでくる。身動きのできない天倉は古明地を守るように盾となり、攻撃を受けてしまう。

そして無数に飛んできた鋭利なモノが天倉に炸裂すると激しい痛みと衝撃によって古明地を掴んでいた手を離し、そのまま落下してしまう。

そこに、ドーパントが再びさとりを捕まえバランスを少々乱しながら飛んで行こうとする。

 

先程、さとりへの拘束を緩めたのは偶然では無く必然。

ドーパント自身がわざとさとりを手放す事によって必ず助けに行くであろう天倉に攻撃を与える為の策だったのだ。

 

邪魔者である天倉と仮面ライダーが居ない今、ドーパントはそのままさとりを連れ去ろうとする。

 

 

━━━グイッ

 

「?」

 

 

すると自身の片足が何かに引っ張られるような感覚を覚える。

違和感を感じたドーパントが視線を下の方に向けると、そこには手首から触手状の鞭をこちらへ伸ばし足に巻きつけいた天倉がいた。

 

「古明地さんを……放せって言ってるだろ!!」

 

天倉は鞭を全力で引っ張ると、ドーパントはこちらに天倉自身はドーパントの方へとお互いに引き寄せ合う形となる。

 

『━━ev━━tion━━ga━』

 

「必殺……!俺の必殺技part6…………!」

 

そう呟くと同時に天倉の身体に変化が起こる。手足に黒い甲殻が形成され先程までの姿と比べてヒロイックな容姿となる。

天倉は体育祭の時で見せた形態を再び発現させたのだ。そして鞭が伸びていない、もう片方の手を振りかぶる。

 

「手羽先……斬りぃ!!!」

 

(ダサい!天倉さんのネーミングセンスダサい!)

 

━━キン!!

 

 

すれ違いざまの一瞬、天倉は腕の刃でドーパントの翼を切り裂いた。

翼は噛み砕かれ脆くなっていた所為か、元々存在しなかったかのように綺麗に切断された。

 

すると、完全に片方の翼を切断されたドーパントはさとりを手放し離脱を図る。そして天倉はそんなドーパントを尻目にさとりの手を掴むとこちらに引き寄せる。

 

「よかった……もう大丈夫だから!」

 

「天倉さん……すみません。私の所為で……」

 

「大丈夫ですよ。これでも鍛えてますから!シュッ」

 

負い目を感じているさとりに対し、天倉は全然平気な姿を見せる。

そして心配させないように敬礼のようなポーズをとる。

すると身体の至る所から蒸気が噴き出し、みるみる内に元の人間態の姿へと戻っていく。

天倉はひとまずさとりを助けられたことに安堵を覚え、ホッと一息つく。

 

「あのー……ところでこれからどうするんですか?分かっていると思いますが、現在落下中ですよ?」

 

そう言われ、天倉はチラリと下の方へ視線を向ける。すぐ下には先程まで、自分達がいた風都が見える。一瞬、「綺麗だなー」と天倉は呑気に思ったが、1秒ごとに地面に近づいていることがわかると全身から汗がどっと噴き出る。

 

「あ、天倉さん?」

 

「思ったより高ーーーーーーい!!!」

 

「天倉さん⁉︎」

 

死を覚悟した天倉だったが、せめてさとりだけは助かるように自身がクッション代わりになるようさとりを抱きしめる。

地面激突まで残り僅か。目を瞑り衝撃に備えようとする。

 

 

「ったく、無茶してんじゃねぇよ」

 

 

聞き覚えのある声が耳に入って来たと思うと突如として身体に浮遊感と同時に優しくキャッチされるのを感じた。

目を開くとそこには黒と緑の戦士、仮面ライダーWが自分達を抱えていたのだ。

 

『しかし、バード・ドーパントをあそこまで追い詰めるとは、改めて君に興味が湧いて来たよ』

 

「おい、フィリップ!!何、呑気な事言ってんだよ!」

 

「え、独り言?何これ怖い」

 

天倉は仮面ライダーから翔太郎とフィリップの声が聞こえたが、しかし側から見ると独り言を言っているようにしか見えない為、天倉は軽く引いていた。

 

そして、よくよく見ると翔太郎が乗っていたバイクにウイングとブースターが取り付けられており、空中に浮かんでいた事に天倉は気づく。

 

「うおおおおおおおおっ!!!何これ!すっげぇ!滅茶苦茶かっこいい!このバイクって飛べるの!?」

 

天倉は目をキラキラさせ、バイクをペタペタと触り始める。

 

「おい!天倉!暴れんじゃねぇよ!」

 

『これはマシンハードボイルダーの車体後部をタービュラーユニットに換装した飛行形態のハードタービュラーだ。他にも水上形態やブースターユニットを取り付けた形態も存在する』

 

「何説明してんだよこの検索バカ!!!」

 

「すごいでしょ!最高でしょ!!天才でしょ!!!」

 

「あ、駄目です翔太郎さん。天倉の頭の中が色々な意味で読めなくなっています」

 

「あぁもう!!!どうしてこうなった!!!!??」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「っと……ほら着いたぞ。いい加減降りろ」

 

「はああぁぁぁぁぁーーーー……俺もあんな変形機能の持った乗り物欲しいなぁ……発明さんと河城さんに頼んでみようかなぁ……」

 

「ったくコイツは……」

 

無事に地上に降りると仮面ライダーである翔太郎はWの形をしたバックルを元の状態へ戻しメモリを引き抜く。

すると身体の表面が風化して外装が剥がれるように仮面ライダーから探偵である翔太郎本来の姿へと戻った。

それと同時にすぐ側に倒れていたフィリップは目を覚まし起き上がってくる。ちなみに心配するように亜樹子がしっかりと見守っていた。

 

「バード・ドーパントは逃したが無事で良かった。しかし、何故ドーパント達は古明地さとりを狙った?」

 

「さぁな。それはあそこで倒れているヤツ本人に聞けば分かるさ」

 

「…………あそこって…………何処?」

 

と天倉が口に出すと、翔太郎は指をさした方向へ顔を向ける。そこには先程倒したドーパントに変身していた者が居た場所の筈だが、その人物らしき人影はどこにもいなかった。

 

「え?ええええええええ⁉︎ちょ、あ、あ、亜樹子ォォォォォオオオ!!!あそこにいたヤツはどうした⁉︎」

 

「ちょっ⁉︎落ち着いてってば翔太郎くん!」

 

翔太郎はドーパントの変身者を逃してしまった焦りで慌ただしく亜樹子に詰め寄る。そんな様子をフィリップはやれやれといった感じで見守り、天倉とさとりは揃って微妙な表情をしている。

しばらくして翔太郎は携帯電話と先程とはまた違ったメモリを取り出す。

 

「くそっ、すぐにでも探さねぇと」

 

「その必要は無いぞ左」

 

突如として翔太郎の苗字を呼ぶ声が聞こえてくる。全員が声が聞こえた方へ視線を向けるとそこには赤い革のジャンパーに赤いズボンそして黒いシャツといった全体的に赤く、クールそうな男性が立って居た。

 

(あれ?この人確かテレビで見たような…………)

 

「奴の身柄は警察が確保した。念の為にヒーローにも救援を送っておいたが…………」

 

「竜くん!どうしたのこんな所で⁉︎」

 

「竜くん?亜樹子さんの知り合いですか?」

 

天倉がそう尋ねると亜樹子はニカッと笑顔を浮かべ、竜くんと呼ばれた人物の隣に立ち腕に抱きつく。

 

「照井竜くん。警察の偉い人で"私の旦那さん"です!イェーイ」

 

「…………え?」

 

 

 

しばらくの静寂。そして

 

 

 

 

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!????」

 

 

天倉の絶叫が響き渡る。

目の前にいる亜樹子と初めて会った時の印象は自分より年上だが未成年といった感じであり、まさか既婚者だとは思わなかっただろう。そもそも成人だとは思ってもいなかった。

 

だが、天倉があたふたとしていると照井竜の後ろから少数の警察官、そしてコスチュームを身につけたヒーローがやって来る。

 

「改めて【超常犯罪捜査課】の照井竜(てるい りゅう)だ。失礼だが、先程のドーパントについて話を聞かせてほしい」

 

「え?は、はい。いいですよ…………って古明地さん?」

 

どうしたのだろうか、古明地さとりが照井竜に対し怯えるように天倉の背中に隠れた。

天倉の服をぎゅっと握りしめ、震えている様子だ。その様子に気づいた照井は隠れているさとりの元へ歩んで来る。

 

「悪いが腕を拝見させてもらう」

 

「ッ!」

 

照井が言うと、さとりは照井から逃げ出すようにその場を離れようとする。

だが逃げ出すことに対して想定内だったのか、慣れた手つきで照井はさとりを拘束し、強引な形となるがさとりの袖をまくる。

すると、さとりの腕には謎の"紋様"が存在しており照井はそれを確認すると拘束を解く。

 

「古明地さとり、お前をガイアメモリ不法所持容疑並びに連続放火事件の容疑者として署に来てもらう」




どうせ見ている人なんてもういないんだろうなぁ・・・と思いながら寂しいクリスマスを迎えました。

ちなみに平成ジェネレーションズfinalを観に行来ました。万丈が主人公しててとても満足しました。
そしてその後バイクを盗まれましたゴランドです。くそう。


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第38話 罪のB/真実を探せ

投稿2話目です。もうすぐで戌年ですねぇ。皆さんはどのように30、31日を過ごしますか?
僕ですか?僕はいつも通り家族と共に過ごそうと思います。

今年最後の投稿となりますが、とりあえず

"来年もよろしくお願いします!"



天倉達は照井竜からにわかに信じられない事を告げられた。古明地さとりが連続放火事件の容疑者という事実に本人も困惑している様子だ。

そもそも放火事件を知らない天倉は照井に詰め寄る。

 

「ちょ、ちょっと待ってください⁉︎どうして古明地さんが容疑者って事になるんですか!!!」

 

「俺に質問するな!!!」

 

「⁉︎」

 

天倉は照井の返事に少なからずショックを受ける。というか理不尽な返事に呆気に取られてしまったのだ。

 

(え?何なんですかフィリップさん⁉︎この人色々とおかしいですよ⁉︎)ヒソヒソ

 

(彼の名前は照井竜。超常犯罪捜査課の警視でありアキちゃんの旦那でもある)ヒソヒソ

 

(ハァッ⁉︎警視⁉︎滅茶苦茶偉い人じゃないですかやだー⁉︎)ヒソヒソ

 

天倉とフィリップはヒソヒソと照井に聞こえないように喋っているつもりだろうが普通に丸聞こえである。照井はそれを無視するかのように再び口を開く。

 

「先日からそこにいる古明地さとりの周囲で謎の発火現象が起こっているのが何件も確認されている」

 

「待ってください。それだけですか⁉︎古明地さんの"個性"は発火を起こすような力はありませんよ⁉︎どうしてそんな……」

 

「我々も"個性"に関する事件だと考えていたが、古明地さとりが【ガイアメモリ】を所持していたという目撃情報を手に入れた。さらに先程古明地さとりの腕に生体コネクタが刻まれているのを確認した」

 

すると古明地さとりはそれを隠すかのように片方の手で反対側の腕を抑える。その表情は精神的に追い込まれているように焦っているように見える。

 

「もしも、古明地さとりが炎に関係するガイアメモリを所持しているならその事件に何か関わって来るだろう。そして今のところその容疑者としての可能性が高い。そうだろ?左」

 

「そんな……私聞いてない!どういう事翔太郎くん!!」

 

「…………俺だって聞きてぇよ!!どうしてこうなった!」

亜樹子は取り乱し、翔太郎は苛立ちを見せる。目の前の依頼人である少女がその事件に関与、ましてやその事件の容疑者とされている。

翔太郎は事件について何か知っているのに加えてこれまでの経験上でガイアメモリに関わっている人物が依頼人というケースも珍しくなかった。だからこそ彼女が犯人だという事を否定しきれないのだろう。

 

 

「……待ってください。やっぱり納得いきません」

 

「お前は…………」

 

しかし天倉孫治郎はそうは思っていなかった。彼女が事件の犯人ではない。

事件の詳しい内容も知らない天倉がそう信じるのは、ただの勘と彼女と過ごした少しの時間。それだけが古明地さとりを信じる根拠だった。

 

「雄英高校一年の天倉孫治郎です。訳あって職場体験で所長さんに指名されてヒーロー事務所では無く探偵事務所に来てしまいました」

 

「何を言ってるんだお前は?」

 

「ヒュ、ヒュ〜〜〜♪」

 

天倉が自己紹介+αに照井は何言ってるんだコイツ?と言った顔をする。その隣にいる所長(鳴海亜樹子)は下手な口笛をわざとらしく吹き、知らんぷりを決めている。

 

「とにかく、古明地さんは事件の犯人じゃないです!……多分。

そもそも古明地さんはそんなことをする人間じゃないです!…………多分………その……勝手に決めるのはいいことじゃないと……思います……」

 

「言った割には随分と自信なさげだな………」

 

天倉は力強く説得しているように見えるが、その様子はまさに竜頭蛇尾。徐々に声の力強さが失われているのがわかる。

それもそうだろう。天倉自身は事件のことを何も知らない。そんな彼がすぐに古明地さとりの無実を証明する事は出来るわけがない。

 

「んーーー……その子の言う事も一理あると思いますよ?」

 

と、照井の後ろ側からコスチュームに身を包んだ女性が口を開く。格好から見るとおそらくヒーローの一人なのだろう。続けて彼女は口を開く。

 

「確かに一番容疑者の可能性が高いのはその可愛い子なんですけど、決定的な証拠であるガイアメモリがまだ見つかってないんですよねぇ」

 

「……確かにな」

 

照井はそのヒーローの言うことに渋々と納得したような様子を見せる。彼女のほんわかとした雰囲気に影響されたのか、それとも彼女自身のスキルなのか、頭の固いであろう照井を納得させたそのヒーローに対して翔太郎は驚いている様子だ。

 

 

「と言う訳で彼らに真犯人を探してもらいましょー」

 

「「ハァ⁉︎」」

 

「アレェー?いきなり話がぶっ飛んだぞぉ⁉︎何故かサラッと重要な事を任されたんですけどー⁉︎」

 

翔太郎と亜樹子はいきなり過ぎる展開に驚き、偶然にも声が重なる。そしてフィリップも「ほぅ……」と興味深そうにそのヒーローである女性を観察している。

天倉はご察しの通りいつも通りにツッコミを担当する。そしてヒーローの女性は再び口を開く。

 

「こちらも連続放火事件の処理を任せられていることに加えて、ヒーローの人手が足りないんですよねぇ。警察の方々に協力は頂いているんですけど、ドーパントの調査などもありますし、それに"凄腕の探偵"ならばこちらとしてもとても助かるんですよー」

 

ほんわかとした女性のヒーローがニッコリと笑みを浮かべ、探偵である翔太郎達に視線を向ける。

すると翔太郎は服装を整え、そのヒーローの手を取り身体が密着するんじゃ無いかと言うほど近づく。

 

「おっと……そこまで言われちゃあ何もしないでいるのは酷だ。 任せてくれよ、俺はどんな時でも依頼を受けようじゃあないか」

 

「相変わらずギザでナルシストなハードボイルドとは程遠い決め台詞ねぇ」

 

「やはり半熟探偵はこうでなくっちゃだね」

 

「あぁ、だからハーフボイルド……」

 

「お前らなぁ……」

 

翔太郎のいかにもキザな台詞に亜樹子、フィリップ、天倉の順にそれぞれの感想を口に出す。

さとりに至ってはジト目でノーコメントと言う翔太郎に最も精神的なダメージを与える反応だった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

戻って此処は、鳴海探偵事務所のガレージ。

ここに天倉と犯人として疑いを持たれている古明地さとりを含めた探偵事務所メンバー達が集まっていた。

 

「さぁ、検索を始めよう」

 

そしてフィリップはそう呟くと持っていた本を閉じ、両手を広げ目を瞑る。

第三者から見れば何をしているか分からない光景だろう。

 

「それじゃあ、事件のおさらいだ。事件の発端は約一週間前から、そこで謎の発火現象が起き、標的は建物、人問わず無差別に起きている。これに共通するものは全て古明地さとりの周りで起きている事だ」

 

「そうだフィリップ。警察やヒーローの調べでは、発火の原因に繋がるような物質は見つからなかった。犯人がその原因となる物質を隠滅した可能性もあるが、監視カメラではそのような怪しい様子は見られなかった」

 

「そこで火に関わる"個性"によって起こされた事件と推測されたが、古明地さとりの"個性"は火に関する"個性"どころか心の中を読む"個性"どう考えても火を起こせるような力を持ってはいない。だからこそ唯一考えられるのが【ガイアメモリ】による発火という事だね」

 

「その通りだ。それで俺はその事件に関する調査を照井に頼まれたって事だ」

 

2人のやり取りはまさにプロの仕事をビシビシと伝わらせてくるのを天倉は感じる。ヒーローを目指す天倉にとってこのやり取りは裏舞台で起きている仕事だ。

事件をここまで的確に短時間で理解するフィリップもそうだが、風都の市民の1人1人に聞き回り、調査を行った翔太郎に対して天倉は感心しながら2人の様子を見守る。

 

「あ、そういえば気になったんですけど【ガイアメモリ】って一体なんですk━━━あだだだだだだだだだ!!??」

 

「ジッとしてってば!どうしてこんな怪我を黙ってたの⁉︎」

 

現在、天倉は上半身裸で亜樹子に包帯を巻いてもらっている状態だ。

バード・ドーパントとの戦闘の時、背中に受けたダメージが残っていたのだ。

 

天倉の"個性"は仮面ライダーWのような全身をベルトによる外部からの力によって強化させた【変身】ではなく、身体そのものを変化させるタイプの【変身】だ。彼自身の身体能力が高まったとしても、それは生身でドーパントの攻撃を受けた事には変わりない。

ましてや彼はまだ15歳の高校生だ。ハッキリ言ってしまえば無茶のし過ぎである。

 

「大丈夫ですって、これぐr━━━だだだだだだだだだだだだだだ!!!????」

 

どう見ても大丈夫では無い。少しでも背中を触れる度に天倉は苦痛が全身に走り、声を上げてしまう。

目に涙を浮かべながら天倉は質問の続きを話す。

 

「聞くところによると【ガイアメモリ】と【ドーパント】って何か関係があるみたいですし」

 

「……仕方ねぇかフィリップ。検索の途中だが、説明頼めるか?」

 

「しょうがないな……【ガイアメモリ】というのは地球上に存在するデータがプログラミングされたUSBメモリ型のアイテムだ」

 

と、フィリップは目を開き懐から緑色のガイアメモリを取り出す。

 

「基本的にメモリを使用するにはそのメモリに応じた専用のコネクタ手術が必要だ。そのコネクタというのは古明地さとりの腕にあるものだ。近くにいた君ならば既に知っている筈だろうけどね」

 

「……まぁ、そうですけど。と言うか、聞いた感じよく分からないんですけど……」

 

「ふむ、そうだね『強力な"個性"を手にする事ができる』アイテムと言えば分かるかな?」

 

「あ、滅茶苦茶分かりやすいです!」

 

「そうか、ならば話を続けよう。先程も言った通り強力な力を手にする事ができるが、厳密に言えば『その力を扱えるように身体を怪人化』させてしまうんだ」

 

フィリップが説明した通り"個性"を使う多くの人物にはカラクリが存在する。

【爆豪勝己】の個性を例に挙げるとしよう。

彼の"個性"は掌から爆発を起こす爆破となっているが、厳密には手の汗腺からニトログリセリンのような物質を作り汗を爆破させている。

 

このようにドーパントへ変身する事によって身体をその固有の能力を扱う事が可能な構造へ変えられるのだ。

 

「使い方によっては便利そうに見えるが違う。【ガイアメモリ】には精神を侵す毒素が含まれてあり、その毒素は変身者のエゴを増幅させ、自らを制御できなくなる」

 

「毒素って……麻薬じゃあ……」

 

「いやメモリは麻薬よりも厄介な物だ。特に厄介なのはその【ガイアメモリ】による依存性だ。今まで僕達はメモリによって狂って来た人達を見てきたが、ほとんどの人がそのメモリの力に呑まれていた。【ガイアメモリ】は既に販売を停止しているが、大量のメモリの複製品がまだこの風都に存在している」

 

「そうだ。だからこそ俺が……いや、俺達仮面ライダーがその【ガイアメモリ】を1つ残らず処分しなきゃなんねぇ」

 

「……アレ?それじゃあ翔太郎さん達が使っているメモリは……てか、2人が合体して仮面ライダーって…………?」

 

ひと通りの説明を受けた天倉だったが次々と新たな疑問が浮かび上がる。

何故、街を守る為に戦っている翔太郎達がガイアメモリを使っているのか。

何故、翔太郎とフィリップが合体して変身するのか。

何故、変身後に頭が痛むのくわァ!!

(これは関係無い)

 

 

「俺達の持っているメモリは特別製でな、毒素を出来るだけ無くしてドライバーで力を引き出してんだ」

 

「そして、このドライバーは翔太郎の肉体と僕の精神を合体させ2人で1人の【仮面ライダーW】に変身する事が出来るんだ」

 

「仮面ライダー……都市伝説は本当だったんだなぁ……」

 

天倉の目の前には都市伝説として噂されていたヒーローが存在していた。伝説というにはあまり実感できないが、彼等は幾多の戦いを潜り抜けてきたのだろう。頼もしさが伝わってくる。

 

「そういえばさっきからフィリップさんは何をしようとしてるんですか?」

 

「ん?あぁ。検索だ」

 

「検索?Webで事件についてでも調べるんですか?」

 

「違げぇよ。フィリップの"個性"だ。キーワードを入れる事によって犯人やガイアメモリについて特定する事ができんだよ」

 

「え?何その歩くWiki○edia」

 

天倉がフィリップの高性能すぎる個性に驚きつつも亜樹子が資料を翔太郎の元へ運んでいるのを目にする。

おそらくフィリップの"個性"に使う為のキーワードを揃えようとしているのだろう。

 

「あの……俺にも何か手伝える事ってありますか?」

 

「……あーーーそれじゃあ悪いが古明地の様子を見てもらえるか?歳が近いのってお前だけなんだ」

 

「……はい。分かりました」

 

天倉は察した。おそらく自分がここに居ても邪魔なだけなのだろう。翔太郎は天倉に悟られないように気を遣っていたのだろうが天倉には理解していたのだ。

自分にはどうすることもできない。自分は無力なのだと天倉は痛感した。だが、翔太郎の不器用な優しさは確かに天倉に届いていた。

 

だからこそ天倉は何も言わずに自分が今出来ることをやる為に事務所 で待っている古明地さとりの元へと向かうのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「おぉー、お邪魔してますよー」

 

「えっと…………すみません」

 

「…………」

 

現在、天倉の目の前には照井達警察と共に行動していた筈のヒーローがいた。しかし服装はコスチュームでは無い事が分かる。よく街中で見かけそうな服を見に包んでいる為、私服なのだろうと天倉は考える。隣にいる古明地さとりは申し訳なさそうに謝ってくるが、天倉はどうリアクションすれば良いか分からなかった。

 

「さっきぶりですね。どうですか?さとりちゃんの容疑は晴れそうですかー?」

 

「い、いやぁ、どうでしょうか…………まだ情報が少ない感じなのでなんとも言えないんですよ」

 

「成る程。そうなんですかー……あ、私【寧々音根 見値子(ねねねね みねね)】って言いますー」

 

「……あれ?本名なんですか?てっきりヒーローネームを名乗って来ると思っていたんですけど(すっげぇ名前……)」

 

すると、見値子は「あー」と声を漏らすとそのまま話を続ける。

 

「それじゃあ、さっきのはナシで。マキでお願いします」

 

「うん?まき?」

 

「ハイ、マキです。ヒーロー名は【マキ】って言います。可愛いって評判なんですよー」

 

「……あーーーー…………ハイ。わかりました」

 

あぁ、成る程。この人って俺の母さんと同じなんだな・・・と思った天倉であった。そして、これ以上は名前とか性格について、天倉は考えるのをやめた。

 

「それじゃあ、さとりちゃんの事をよろしく頼みましたよー」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ亜アあああああああああああああああああああああああああああああああああああああなんでこの人は話題を飛ばすんだよおおおおおおおおお頼むからなんでそうなったのか教えて欲しいんだけどなああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」

キリキリキリキリ

 

目の前の女性の発言によって天倉の胃がそろそろ限界を迎えようとしている。

そもそもこの世界にまともな性格をしている人物なんている訳が無いだろう。いるとしたらそれは人が生み出したただの妄想だ。

 

「えーっとですね。私もさとりちゃんが犯人とは思っていないんですよ」

 

「え?そうなんd━━━ゴh……そうなんですか?(危ねぇ……吐血するかと思った……)」

 

「ハイ。実は私って昔からさとりちゃんと知り合いで最近になってから風都でパトロールする事になったんですよ。風都ってヒーローの数がかなり少ないんですよね。その分、ガイアメモリの事件が多いですけどそこら辺は照井さん達が全部やっちゃっていますけどね」

 

天倉は見値子からその話を聞くと不思議と納得する。彼自身が初めて風都に来て、ヒーローの姿は1人も見かけなかったからだ。

通常では街中には1人か2人のヒーローが事件抑制の為のパトロールをしている筈だが、風都ではパトロールを行なっているヒーローは見かけなかった。

 

「でも、助かりましたよ。このままじゃさとりちゃんが本当に犯人扱いされるところでしたよ」

 

「い、いやぁ、俺は大したことなんてやってませんよ。というか見値子さんの方も良かったんですか?なんか調査とか探偵の方に任せちゃって?」

 

「いいんですよ。私ってそこまで何でもやれるわけじゃ無いですし。協力は惜しみませんよ。それにさとりちゃんの為なら何だってやっちゃいますよ!」

 

と見値子はさとりの小さな身体をギュッと抱きしめる。子供のような扱いをされ、さとりは顔を赤らめているのが分かる。見値子の場合はそんなのお構い無しに抱きしめ続けている。

 

「……天倉さん!」

 

「あっ、いや……お構い無くー(可愛いな……)」

 

「〜〜〜〜〜!」

 

良くも悪くも正直な天倉の心の声にさとりの顔は一層赤くなっていく。

 

「あ、そうそう。そこで、天倉くんにはさとりちゃんのボディガードを頼みたいんですよ」

 

 

「ゴフッ━━━━(吐血⁉︎」

 

「天倉さんーーーッ⁉︎」

 

いきなり過ぎる発言に天倉の胃が逆流し、とんでもない事になった。目の前で血を吐かれたそりゃあ驚くだろう。さとりはそんな光景に対してものすごく驚いた。

 

「ゴフォ━━━━き、気にしないで。ぶっちゃけるといつもの事だがrゴフッ━━━(吐血2回目」

 

「いつもの事なんですか⁉︎病院に行った方がいいですよ⁉︎」

 

「そ、そんな事より、ボディガードってどう言う事ですか?」

 

血を吐きながら天倉は見値子に質問する。何故さとりの身を守る重要な役割を自分がやらなければいけないのか、不思議に思ったのだ。

 

「んーーー、やっぱり【信頼】……ですかね?」

 

「信頼?」

 

「ハイ。天倉くんは誰よりもさとりちゃんが犯人では無い事を信じた。数少ない情報の中、絶望的な状況で天倉くんはさとりちゃんを信じた。だからこそ君をボディガードを頼みたいんですよ」

 

「い、いやいやいやいやいやいや、俺なんかがそんな……」

 

「それに雄英体育祭では3位って言う実力は充分ですしね」

 

すると天倉はピクリと反応する。

 

「知ってたんですか……?」

 

「それはもう知ってましたよ。あんな印象に残るような戦い方をしていれば」

 

 

印象的な戦い方。天倉はそう言われ思い当たるものを頭の中に浮かべる。

 

 

その1.女の子を痛めつける。

 

その2."個性"だがトドメに首を引き裂く。

 

その3.女の子を蹴り一発で沈める。

 

 

「ゴボッ━━━━(吐血」

 

 

「天倉さんのトラウマがーーーーー⁉︎」

 

天倉のトラウマが蘇り再び吐血。バタリとその場で倒れた天倉は白目を剥いている。

さとりはその天倉を肩を揺さぶり正気に戻そうとしている。

 

「天倉さん!しっかりしてください!大丈夫ですよ!その人達も気にしてませんって!」

 

「こ、殺して……優しく殺して……キリングミーソフトリー……」

 

「天倉さーーーーーーん⁉︎」

 

そのままスヤァと眠り(永遠)につこうとしている天倉の側で見値子は相変わらずの表情で話しかける。

 

 

「いやーとてもかっこよかったですよ?最後の戦いなんてもの凄い迫力で妹が大絶賛していたんですよー。あ、サインって頂けますか?」

 

 

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

「あ、俺のでよければ」

 

「復活した⁉︎」

 

褒められただけでケロッと蘇る天倉に再び驚くさとり。先程までの瀕死の状態が嘘のように天倉は元気になっている。チョロすぎやしないか?この主人公。

 

「あ、そうそう。それでなんですけど、私の妹に話とか聞くのもいいかもしれませんよ?」

 

「妹さんですか?」

 

「はい。さとりちゃんと知り合いですし、何か話を聞けるかもしれませんよ?」

 

「成る程……確かにそれなら、いいかもしれませんけど……」

 

天倉はチラリとさとりへ視線を向ける。

さとりは何故かドーパントに狙われた。となるとまたドーパントが襲撃してくる可能性が高いだろう。

ならばさとりはこのまま事務所に置いて行った方が良いだろうと天倉は考える。

 

「……私も行きますよ」

 

「え?」

 

だが、彼女は人の考えている事を読むことができる。そして天倉がさとりの身を案じている事も含めてだ。

 

「それに私も一緒にいればしっかりとした証言も手に入ると思います」

 

「……うーん……でもなぁ」

 

「いや、一緒に行くぜ」

 

と、後ろのガレージへと続く扉がガチャリと音を立てて開く。そこに帽子を片手にした翔太郎が出てくる。さらに後ろから亜樹子が続いて出てくる。

 

「立ち聞きするつもりは無かったが、天倉だけじゃあ心配だ。それn「それに依頼はまだ終わってない事だし!」おいっ!勝手に……ったく、まぁそう言う事だ」

 

「……フフ、ありがとうございます。探偵さん達」

 

騒がしく頼もしい探偵達の登場でなお一層笑顔を浮かべる見値子。各々は再び外へ行く準備を進めていく。

 

「……変身……できたと思ったんだけどなぁ……」

 

その中で天倉はドーパントとの戦いを思い返していた。無我夢中でさとりを助けようとしたあの戦い。あの時、天倉は体育祭で見せた変身をした。

しかし、一瞬だけ。すぐに元の状態へと戻ってしまった。何か足りないのだろうか?と疑問に思う。

 

「……まぁ、悩んでも仕方ない……か」

 

天倉はそう一言呟くと吹っ切れたように考えるのをやめた。前までの彼ならば深刻に考えていたのだろう。

だが、今の彼は違う。"対策なら後で立てればいい"そう考えるように彼はなった。

 

今はただ、古明地さとりを守る。そう考え動くだけだ。




今までの小説をサラッと読んでみてリメイクしようかなぁーと思いました。
ぶっちゃけ色々といらない台詞や文、誤字も多く「あぁ、こりゃダメだなぁ」と思いました。
これってリメイクした方が良いのでしょうか?というかこの作品って続けてもなんらかのメリットはあるのでしょうか?

と言うかなんで僕はアマゾンズなんていうヤバい作品とヒロアカを混ぜてしまったのだろうか。

何故良作と良作をかき混ぜて得体の知れない作品を作ってしまったのだろうか?

もうこれはリメイクして書き直すしか、いや、新しく別の作品を投稿するしかないのだろうか・・・・。


〜〜〜〜気晴らしに次回予告

緑谷「次回予告!!」

天倉「もう・・休んでいいかな・・・?」

緑谷「天倉くん⁉︎いきなり瀕死の状態でどうしたの⁉︎」

常闇「奴は幾多の争いにより激しい消耗をして来た。その代償が今になって襲いかかって来たのだろう」

天倉「いや、マジでそろそろ胃に穴が空きそうなんだよ。てかヤバい。死ぬ」

緑谷「死ぬの⁉︎かっちゃんとは別ベクトルのヤバさなんだけど!」

常闇「全く、騒がしい奴等だ。だがお前達だからこそ、その騒がしさは静寂よりも心が安らぐ場を作っていくのd」

天倉「あ、ごめん。そういうの良いから終わらせてもらってもいい?」

常闇「・・・・」

緑谷「次回!!『罪のB/疾走の赤』!!!」

天倉「頭がアレなカラスが出てくるよ」

黒影『頭ガ アレナンダッテヨ』

常闇「・・・黙れ」

緑谷「更に向こうへ!」

緑、天「「Puls Ultra!!」」

常闇「・・・クッ」

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第39話 罪のB/疾走の赤

ある日、僕は考えた。
なんでオリジナル編なんて作ってしまったのか、果たして自分の能力でどこまでいけるのか、見てくれる人なんてどうせいないだろうと。

ちゃんと小説は内容を構成して設定にあまり矛盾が無いように書かなきゃいけないってのに、何故こうなってしまったのだろうか。


そんな事を心の中で思いながら2週間前に兄に相談した。


兄『いや、自分の自由にすればいいじゃん』



……………

……………

……………



やべぇ!そう言えばこの作品(コレ)、僕の自由に書いていいんだっけか!!




と言うわけで、こんなクソ小説を見てくれてる人なんて居ないだろうと思いながら連続投稿。



「あぁー!なんで居ないんだよ!ここに居るはずだろ!!」

 

 

翔太郎さんの声が響き渡る。

現在、俺達探偵+αは寧々さんの妹さんと会いに寧々さんの自宅に来たのだが、妹さんの姿は見当たらない。

 

 

「ねぇー、フィリップ君〜。寧々音根さんの妹さんの場所調べて〜」

 

「そうなると、彼女についての詳しい情報が必要だ。その為には古明地さとり。君から彼女の詳しい情報を聞くしか━━」

 

 

「娘がどうかしたのかね?」

 

 

俺達の後ろに見知らぬ男性が立っていた。

その男性はパッと見は50代辺りの年齢で顔の左半分にヒビのような傷跡があり、ハッキリ言って凄い威圧感を出している。

 

 

「快青さん!」

 

 

すると、古明地さんがその男性に話しかける。

あれ?もしかすると知り合いですか?

 

 

「さとり君?何故君が……それに学校は?」

 

「そ、それは……その……」

 

 

学校?………あ、そう言えば俺、職場体験ですっかり忘れていたけど、今日は平日で普通なら学校にいる時間帯なんだっけか……。

 

あれ?だとすると古明地さん……まさかのサボり⁉︎

ウチの不良(爆豪くん)でも学校をサボったりしないんだけどなぁ……。

 

 

「とにかく、詳しい話は中でするとしようか」

 

 

そして俺達は快青さんに家の中に連れられ、古明地さんの事情を説明する事となった。

 

 

「成る程…そんな事があったのか……」

 

「はい……そこで探偵さんの力を借りる事となりました」

 

「そうか。……改めて自己紹介をさせていただきます。私の名前は茂加味 快青(しげかみ かいせい)。寧々音根は幼い頃、両親を亡くしてしまい、私が義理の父親となっています」

 

 

快青さんか。寧々音根さんと全く性格違うと思ったら義理の父親なのか……。何処かの父親と違ってしっかししているなぁ…。

 

……あれ?快青さんって何処かで聞いた事があるような……。

 

 

「ふむ、興味深い」

 

 

フィリップさんが呟く。

『すしざ◯まい』ポーズをしているのでおそらく検索したのだろう。

それにしてもとんでもないチート個性だな…。

 

 

「茂加味快青。彼は無個性ながら"個性"の解明を進めている研究者の1人であり同時に科学者でもある。現在は大学の教授として日々研究に没頭している……ほう、ますます興味が湧いてきたよ」

 

「ほう、そこまで知ってるとは……いや、調べたと言うべきか。君の"個性"は実に素晴らしいモノだ」

 

 

そうか。おそらく雄英の授業で聞いた事があるのだろう。通りで名前に聞き覚えがあるはずだ。

 

と言うか、フィリップさんと茂加味さんが意気投合してるんだけど。

なんか面倒臭そうな雰囲気になってきt

 

 

ピタッ

 

 

「失礼、ふむ中々いい体つきをしていr

 

 

「わぁーーーーーーーーッ!!??」

 

 

ドゴォッ!!!

(思い切り腹パンする音)

 

 

「「「快青(さん)ーーーーー⁉︎」」」

 

 

あ、やべ⁉︎いきなりボディタッチして来たから身の危険を感じて反射的に腹パンしてしまった!大丈夫⁉︎内臓潰れていない?

と言うかなんでこの人は身体を触ってきたんだよ!!アレか⁉︎そっちの趣味か⁉︎男色家なのかよ⁉︎

 

 

「ぐふっ…い、いい拳だ。よく鍛錬されている…」

 

 

あ、大丈夫っぽい。

いや、大丈夫じゃないな。確実に大ダメージを食らってるよコレ。

 

 

「流石だよ天倉くん。そして雄英体育祭では実に見事な活躍だった。」

 

 

え?体育祭?

 

見事?

 

活躍?

 

 

…………

 

 

…………

 

 

…………

 

 

 

「ゴポッアッァ━━━━(吐血」

 

 

「「「あ、天倉(さん)ーーーーーーーーーッ⁉︎」」」

 

 

こ、殺してくれぇ………こんなゴミクズを殺してくださいぃ……。

俺みたいな女性に平気で暴力振るう奴なんて生きてる価値なんて無いんです……。

 

 

「だ、大丈夫ですよ天倉さん!ほ、ほら天倉さんにも良い所は……その……や、優しい所とか?」

 

「フォロー下手か!!それ良い所が特に思いつかないヤツの台詞だぞ!」

 

「そ、その、すみませんでした…」

 

「まぁ、天倉くん落ち着きたまえ。そこまで気に病んでも仕方ない事だ。それに私自身、君の"個性"に興味があるんだ」

 

 

コヒュー…コヒュー…き、興味?一体何だろう?

 

 

「"個性"とは先天性の超常能力。そして君の"個性"は三系統の内、「変異型」該当されるだろう」

 

 

快青さんの言う通り"個性"は大きく分けて「発動型」「変形型」「異形型」の三系統に分けらている。

 

爆豪くんと上鳴くんの"個性"は数多くある“個性”の中で一番スタンダードな系統の「発動型」。

多種多様で自身の意思で能力を発動させる。またその種類の多さから、発動する“個性”によって「増強系」や「拘束系」などに細分化されている。

この「増強系」は緑谷くんに該当される。

 

次に「変形型」

通常の人間の体から、自身の意思で肉体を変化させる"個性"。

コレは切島くんの"硬化"が当てはまる。一応、俺の"個性"にも該当される。

 

そして生まれた時から常時“個性”が発現している系統である「異形型」。

コレは蛙吹さんと障子くんが当てはまる。

元から人間離れしている容姿だから一目瞭然だ。

 

だがコレらの系統を二つ以上の特徴を持つ「複合型」の個性が存在する。

コレには轟くんが該当される。

 

 

だが、それらの系統に属さない「突然変異《ミューテーション》」が存在するらしい。

それは両親のどちらの家系にも全く類似しない“個性”が発現する現象。事例はほとんど存在しない模様だが、ごく稀にこの現象が起こることがあるという。

 

 

おっと、話が逸れてしまった。快青さんの話をしっかり聞いておかないと。

 

 

「確かに僕の"個性"は変形型だと思いますけど…」

 

「あぁ、そして体育祭での出来事は覚えているだろうか?」

 

「体育祭での出来g━━━━……ハイ。大丈夫です覚えています」

 

 

危ない危ない。うっかり吐血する所だった……。

体育祭での出来事と言っても何の事だろう、一応覚えていますって言っちゃったけど。

 

 

「私は君がトーナメントで見せた2つの形態について不思議に思うんだ」

 

2つの形態って………あの、【燃費が良いモード】と【ギザギザモード】の事かな?

 

 

「最初の方で君が見せた禍々しい形態。アレを"超越形態《エクシードフォーム》"と称しよう、アレは君への多大なストレスが【個性因子】に何らかの作用を及ぼしたと考えられる」

 

 

エクシードフォームか……なんかカッコイイな。よし採用。

でもストレスか……確かにあのブーイングの嵐は辛かったなぁ。

 

 

「まぁ、でもそのエクシードフォームがどうかしたんですか?」

 

「うむ、君の個性だが、もしかすると「複合型」かもしれない」

 

 

え?複合型?

……………マジで⁉︎

 

 

「無意識かもしれんが君はエクシードフォームの状態で、身体から電撃を放った。「変形型」の"個性"が「発動型」の"個性"を使えるとは思えない。トーナメントで使えるようになったのか、最初から使えたのかは分からないが……」

 

 

遺伝か……確か轟くんは父の炎と母の氷の"個性"を引き継いでいるんだっけか……。

 

だとすると僕は誰の"個性"を継いd━━━━

 

あ、待てよ?確か母さんの"個性"って『エネルギーを別のエネルギーへと変換させる』ものだった筈だよな。

つまり、俺は母さんの『エネルギー変換』を継いでるって事なのか⁉︎

 

うわぁ、だとするとタダでさえ燃費が悪い"個性"に、エネルギーを消費させる"個性"が合わさって、結果的に燃費が悪いって事じゃないですかやだー!!

 

 

「うわぁ……マジか……マイナスとマイナスがかけ合わさって更にマイナスになってるよ……」

 

「いや、話はここからだ天倉くん。私は"個性"についての研究をしている事は既に知っている筈だ。長年の研究で"個性"はソレを使う人物の心的要因によって作用する事が分かった」

 

「ほう、心的要因……」

 

 

フィリップさんが興味津々に聞いている。古明地さんも真剣に話を聞いている感じだ。

あ、だけど亜樹子さんと翔太郎さん眠そうにしている…。

 

それにしても心的要因か……。

 

「つまり、心の強さって事ですか?」

 

「簡単に言えばそうなるだろう。君が体育祭で発現させた二つの形態のエクシードフォームともう片方の形態。君が発現した力だが全く違うフォルムとなっている。この二つはその時の君がどのような状態なのかをうまく表現できている」

 

あ、確かに。

【エクシードフォーム】は多大なストレスによって発現させたのに対して、【燃費が良いモード】は爆豪くんとの試合の直前に気持ちが整った時に発現したんだよな……でも、それがどうかしたのかな?

 

「エクシードフォームだが…私の推測通りなら()()()()()()

 

「不完全……ですか?」

 

古明地さんが首を傾げる。俺もさっぱり分からん。

 

「つまり……エクシードフォームは何らかの心的要因によって完全な形態になれていない。と言う事でしょうか?」

 

「あぁ、察しが良くて助かるよフィリップ君」

 

あぁ、成る程。何らかの心的要因ね………。

 

 

……え?ちょっと待って。エクシードフォームってまだ強くなるの⁉︎

あの背中から触手が生えたクリーチャーが進化して更に凶暴なクリーチャーに変貌するって事⁉︎

 

それってどんなbow⁉︎

 

「すみません…それはちょっと勘弁してください。いや、本当に」

 

「………うわぁ……」

 

古明地さん心を読むのやめてくれないかな。

お願いだからそんな可哀想なものを見るような目はやめて!!

 

 

「ふむ、それは残念だ。とまぁ、長い話は置いておいて君達が探している娘なら今、風花第一中学校に居るはずだ。今日は確か午前授業だったからすぐに会う事が出来ると思う」

 

「協力感謝します。茂加味さん………って翔太郎さん!亜樹子さん!いつまで寝てるんですか!」

 

「っと⁉︎わ、悪りぃすげぇ難しい話だったもんでつい……」

 

「ご、ごめんね……と、とにかく……何処に行くんだっけ?」

 

……あぁ、どうしよう。凄く頼り無くなって来た…。

本当に大丈夫なのだろうか。

いや、職場体験を間違えてアルバイトの採用とした時点でダメだけどさ……。

 

「とにかく、風花第一中学校ですね。分かりました!それじゃあ行きますよ!」

 

「だだだッ⁉︎襟を引っ張るんじゃねぇ!」

 

こうでもしないと茂加味さんに迷惑がかかる気がするので翔太郎さん達には悪いが今すぐに中学へ向かうとしよう。

 

……あれ?古明地さんどうしたんだろう。

 

「あ、あの……茂加味さん………」

 

「うん、どうした?さとり君」

 

「い、妹は……どんな具合でしょうか……」

 

「ん、あぁ。問題無い。もうすぐで完治する」

 

その言葉に古明地さんがホッとしたような表情を見せる。

 

……妹?へぇ、古明地さんって姉なんだ。どっちか言うと妹って感じがしたけど……。

て言うか、これ以上に小さなロリータなんているのか?それとも妹の方が姉よりも体型が優れているとk━━

 

 

「天倉さん聞こえてますよ(殺しますよ)

 

 

━━すみませんでした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

風花第一中学校 校門前

 

時刻13:00

 

探偵達は今、張り込みをしていた━━━

 

 

「さて、古明地。寧々音根さんの妹って言うのはどんな感じの奴か分かるか?」

 

「そうですね。と言っても『絶対中学生じゃねぇだろ』って感じの容姿なんですぐに分かると思います」

 

「どう言う事だ?……まぁでも、人間離れした容姿の奴なんかそこら辺にいるからな」

 

 

翔太郎がそう言うと、校門から出てくる生徒達の中に首が長い者、肌が変色している者、三つ目の者、顔のみが獅子の者。

 

 

「………人の事言えないけど改めて見るとすっごいシュールな気がする。てか、中学生じゃない容姿って一体どう言う事なんd……」

 

「ん、天倉どうしt………」

 

「どうしたんだい?2人共、固まっt……」

 

 

天倉と翔太郎、フィリップの3人は1人の女子生徒を見て固まった。

いや固まらざるを得なかった。

 

その女子生徒は緑色のリボンを付け、背中から巨大な黒い翼を生やしていた。

他の生徒と比べて確かに人間離れしている容姿だが、天倉達が注目したのはソコではなかった。

 

 

━━ボイン

 

 

そのバストは豊満であった。彼等が見ている生徒は確か、女子中学生であった筈だ。

その筈なのだが、彼女のスタイルは中学生離れしていた。

 

そして男3人の心の中は

 

(((コイツ絶対中学生じゃねぇだろ⁉︎)))

 

シンクロしたのだった。

 

━━パァン‼︎×3

 

 

「何、鼻の下伸ばしてんのよ!!」

 

「っでぇ‼︎亜樹子……!」

 

「す、すまないアキちゃん。信じられない……女子中学生の身体があそこまで発達しているなんて……ゾクゾクするねぇ」

 

「あのフィリップさん、アウトな発言なのでしばらく黙っててください」

 

「馬鹿な……中学生なのにあの身体……八百万さんと同等……いや、将来性を考えればそれ以上……だと………⁉︎」

 

━━パァン!(無言のスリッパ)

 

 

駄目な男共にツッコミを入れるマトモな女性達。

そんな漫才を繰り広げていると、その女子生徒がこちらへ走って来る。

 

 

「さーとーりー様ーー!!」

 

「いや…だけど……峰田くんが言っていた……おっぱいは宇宙であり、真理であるt━━━タコスッ⁉︎」

 

━━ドゴッ!!

 

 

天倉が吹っ飛ばされたがその女子生徒は古明地さとりに抱き着く。

 

 

「ちょ、ちょっと…(うつほ)…苦しいから…」

 

「えぇー」

 

「さ、様だぁ?」

 

「もしかして彼女が……?」

 

 

翔太郎達は急にやって来た彼女に戸惑う中、彼女に吹っ飛ばされた天倉が目を覚ます。

 

 

「………ヴェッ⁉︎ダリナンダアンタイッタイ!!」

 

「ま、待ってください天倉さん。彼女に悪気は無いんです」

 

 

復活(コンテニュー)を果たした天倉はその女子生徒に疑問を投げかけるがさとりは彼女と天倉の間に割って入る。

 

 

「うにゅ?どちら様?」

 

「はぁ……えっと、こちらが皆さんの探していた寧々寝根さんの妹。霊烏路空《れいうじ うつほ》です」

 

「コイツがか⁉︎てか苗字……」

 

「おそらく、彼女も茂加味快青の義理の娘なのだろう。更に、寧々音根見値子の親族でも無い……まさか全員が血の繋がっていない家族とは……」

 

 

複雑な家族構成にその場に微妙な空気が流れる。

探偵達がそんな事を考えているのを知らず空は翔太郎に話しかける。

 

 

「ねーねー、そこの変な帽子の人って誰?」

 

「変なッ⁉︎」

 

「プッ!」

 

 

変な帽子と呼ばれた翔太郎は驚き、すぐ隣にいた亜樹子は思わず吹き出してしまう。

 

 

「そこの本を持っているのは……」

 

「霊烏路空。君の事は既に検索し終えた。君は━━━」

 

「分かった!オタクでしょ!知ってるよ!オタクって言うんでしょ!」

 

「ブフッ!」

 

「お、オタク…って……プッ……フィリップくんがオタク…ププッ!」

 

「オタク……ほう………」

 

 

フィリップ=オタクと認識され、翔太郎と亜樹子は笑いを必死に抑えている様子だ。

そう言うフィリップは満更でもない様子だった。

続いて空はジッと天倉の顔を見つめる。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

しばらくの静寂。

そして

 

 

「ごめん、知らない」

 

「それはそれで傷付くッ!!!」

 

 

謎の精神的なダメージによりその場で膝から崩れ落ちる天倉。

orz と言う感じに四つん這いの状態となる。

 

 

(何なのこの子……おかしいな、俺の知っているカラスって頭のおかしい奴等ばかりなの⁉︎)

 

 

『新聞……新聞……』

 

『混沌……晦冥……』

 

『うにゅ……うにゅ……』

 

 

天倉の頭の中に頭のおかしいカラス達が湧き出て来る。

 

 

「(0M0;)ウワァァァァァァァァァァッ!!」

 

「天倉ーーーーーッ⁉︎」

 

「そろそろ天倉くんを休ませてあげた方が良いかもしれないわね」

 

(いや、そう言う問題じゃ無いと思うんですが…)

 

 

「……で、さとり様。どうしたの?学校は休み?」

 

「えっと……その……」

 

「まぁ、まぁ、待て待て。ちょっとお前さんに聞きたい事があるんだ」

 

 

複雑な表情を見せるさとりを庇うようにカッコつけた翔太郎がさとりの前へと出る。

 

 

「俺達は探偵でな、ちょっと聞きたい事があるんだが良いか?」

 

「うにゅ?」

 

「実は、さとりのすぐ近くで火が発生したって言うんだが……お前さん、何か知ってるか?」

 

「うん。知ってるよ!」

 

 

翔太郎の問いに空は明るく返事をする。手がかりを見つけた事に対して亜樹子はガッツポーズを決める。

 

 

「んじゃ、何でもいい。教えてくれて」

 

「うん!あのね。さとり様の目の前で火が出たんだよ!」

 

「それは本当か⁉︎」

 

「……うにゅ?なんか変な事言った?」

 

「……いや、何でもねぇ。他には何か知ってるか?」

 

「うーんと……分かんない」

 

「そっか……ありがとな」

 

 

そう言うと翔太郎は帽子を深く被り直す。

 

結果としてはあまり良い情報を引き出せなかったら。

いや、逆に悪い情報かもしれない。

 

先程の証言は念の為、フィリップに記録してもらったが彼女の発言は「火がさとりの目の前に出て来た」だ。

翔太郎自身、さとりに対して不利益な証言を引き出してしまったので申し訳ない気持ちで一杯だろう。

彼は帽子を深く被ることによってその表情を隠しているのだ。

 

 

「そう言えばお空。寧々音根さんに聞いたんだけど、今日は家にいるんじゃなかったの?」

 

「うにゅ?あぁ、それの事?なんか朝から気分が悪くて休もうと思ったんだけどね。なんかスッキリしたから途中から学校に来ちゃった」

 

「そうなの?でも、寧々音根さんにちゃんと言わなきゃ駄目よ」

 

「はーい…」

 

 

さとりに注意された空はションボリと落ち込む。どう見ても小学生くらいの身長しかない子が大きな子に注意している光景はどう見ても違和感バリバリだった。

 

 

(……本来は逆の立場なんだろうなぁ)

 

「天倉さん(聞こえてますからね)」

 

「あ、ごめんなさい……(直接脳内に……⁉︎)」

 

「もう……ところでお空、その怪我はどうしたの?」

 

 

さとりはお空の背中から生えている翼の片方を指摘する。空の翼の片方にはグルグルと包帯が巻かれてあるのが分かり、怪我をしている事が一目瞭然だった。

 

 

「うーん……分かんない!気付いたら怪我してた!」

 

「……なぁ、コイツ頭がおかしいんじゃないのか?」

 

「翔太郎さん、事実ですけどハッキリ言うのは失礼ですよ」

 

「天倉くーん、君も失礼な事言ってるからね」

(スリッパを構えながら)

 

 

そんな漫才を繰り広げるが、ここは中学校の校門前。

周りの生徒達から変な目で見られている事に気が付いた翔太郎達は咳払いをした後

 

 

「と、とにかくサンキューな。もう大丈夫だぜ」

 

「お空。寄り道せずにちゃんと家に帰ってね」

 

「えー、お燐も居ないから退屈なのにー……分かりました」

 

 

空はそう言うとトボトボと帰路を歩いて行く。

 

 

「……有益な情報は手に入らなかったなぁ」

 

「無実を証明するどころかますます…」

 

「き、気にしないでください」

 

 

亜樹子と天倉はションボリと落ち込んでしまうが、古明地はそんな2人を懸命に慰めようとしている。

 

 

「くそ、どうすんだよ……仕方ねぇ、照井の所に行って何か聞いてみるしかないか」

 

「あっ、はーい!はーい!私も!私も竜くんの所に行きたーい!」

 

「ふふふ、皆さん。途端に元気になりましたね」

 

「うん。いつまでも落ち込んでいるんじゃなくて、地道にでも依頼者の為に前向きにか……」

 

 

天倉は翔太郎、亜樹子、フィリップの探偵の仕事を見てヒーローに関わるものを感じた。

ヒーローとしての仕事は探偵のように個人だけを助けるのでは無く、全てを助ける仕事だ。

 

端的に言えばそれぞれは全く異なるものだが、こうして見ると自分達が1人の少女を助ける為に頑張るヒーロー達に見えてくるのだ。

 

 

「探偵か………あ、そう言えば古明地さん。聞きたい事があるんだけど良いかな?」

 

「はい?何でしょうか」

 

「大した事じゃないんだけど、古明地さんと快青さんが言っていた妹って言うのh━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、お前等。何、そんな所で喋ってんだよ」

 

 

すると、天倉の言葉を遮るように後ろから声を掛けられる。

そこには学生服を着崩し髪を逆立て赤のバンダナを巻いた威勢の良さそうな男、青のベレー帽を被り老けた顔をした男、ニット帽を被った無邪気そうな少年の3人組がそこに居た。

 

 

「あん?お前等誰だ」

 

 

翔太郎がそう尋ねると真ん中の赤いバンダナを巻いた男が名乗り出る。

 

 

「おっ?俺達か?俺達は【風都 三羽烏(ふうと さんばがらす)】だ‼︎言っとくがそう簡単に正体は明かさねぇ!」

 

「っておーい!もう明かしちゃってるし!」

 

「……何これ漫才?」

 

 

【風都三羽烏】と名乗った3人組のやり取りに困惑する亜樹子。

すると翔太郎はポンと手を叩く。

 

 

「あ、お前等さては……馬鹿だな!!」

 

「初対面の相手に失礼じゃないですか!翔太郎さん!」

 

 

あまりにもストレートな発言に天倉は声を上げる。

 

 

「初対面の相手に失礼じゃねぇかよ!」

 

「つーか、そこにいるのは古明地の先輩じゃねぇかよ」

 

「ッ!」

 

 

すると、古明地は天倉の後ろに隠れるように移動する。天倉はいきなりの事に「え?え?」と声を漏らすしか無かった。

 

 

「こんな所でサボりとはなぁ……流石は優秀な【個性】持ちだなオイ!」

 

「ま、まぁまぁ落ち着いて落ち着いて。ステイステイ」

 

「だとよ、赤羽」

 

「ワン!……って俺は犬じゃねぇよ青羽!」

 

「また始まってるし……」

 

 

再び漫才を始める3人組に亜樹子は呆れ、天倉は心の中で「帰りたい」と呟いていた。

しかし、天倉は先程の赤羽と言う男がさとりに嫌悪感を示している事を理解する。だがその矛先は天倉にも向く。

 

 

「あ、ねぇねぇ赤ちゃん!青ちゃん!コイツ雄英体育祭の三位だよ!」

 

「マジかよ黄羽!」

 

「言われてみりゃあ……!」

 

「……ども、三位の天倉ですハイ」

 

「ヘッ!雄英高校の優秀な【個性】持ちがわざわざこんな所までご苦労なこった」

 

「あ、ハイ……なんかすみません」

 

「天倉くん本当にごめんね」

 

 

嫌味を言われた天倉はとりあえず謝る事にした。

そして連れられて亜樹子も天倉に申し訳ない気持ちで一杯になった。

だが、三羽烏の口調は更に荒くなっていく。

 

 

「なぁ先輩よぉ、お前も無個性のヤツなんか馬鹿にしてんだろ?あん?」

 

「え?何が?よく分からないけど、別に馬鹿にした事は無いよ。寧ろ羨ましいと思ってるし……」

 

 

この言葉は天倉の本心だが、その言葉を悪いように受け止めたのか赤羽は眉間にシワを寄せ血相を変え怒りをぶちまけて来た。

 

 

「馬鹿にすんのも…いい加減にしろよテメェッ!!!」

 

「天倉さん⁉︎」

 

 

突如として赤羽は拳を振り上げ天倉に対して殴りかかって来たのだ。

急な事にその場のほぼ全員は反応できず、その中で古明地だけは叫ぶ事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なっ」

 

 

━━ガッ!バッ!ギュゥゥ

 

 

「がああああぁぁぁぁ!!??」

 

「赤羽ーーーーーーッ⁉︎」

 

「それ以上いけない!」

 

 

だが、幾多もの修羅場(USJ、体育祭、etc)を潜り抜けてきた天倉は咄嗟に殴りかかって来た赤羽に反射的にアームロックを掛けた。いや、掛けてしまったのだ。

 

 

「あ、ごめん。いきなり殴りかかって来たから……で、古明地さんどうしたの?」

 

パッ(アームロック解除)

 

「………いえ、何でもありません」

 

「ッ〜〜〜〜〜!よくもやりやがったなぁ!」

 

「いや、先に仕掛けて来たのソッチだけど」

 

「うるせぇ!!……こういう奴はな、体で教えてやらねぇとな」

 

 

赤羽がそう呟くとズボンのポケットから手の平サイズの長方形の物体を取り出す。

それを見た翔太郎達は目を見開き驚愕を露わにする。

 

 

「なっ⁉︎【ガイアメモリ】!!」

 

「どうして中学生が…!!」

 

 

翔太郎達の言葉を無視するかのように赤羽をガイアメモリのスイッチを押し、自身の腕に挿入する。

 

Castle(キャッスル)

 

そして赤羽の姿はみるみる内に赤い2つの盾を兼ね備えた重厚な姿へと変貌を遂げた。

 

 

「そんなに珍しいか?ガイアメモリがよッ!!」

 

「ッ!不味い皆!避けるんだ!」

 

 

━━バシュウウウウウウッ!!

 

 

フィリップがそう叫んだ瞬間、赤羽もとい《キャッスル・ドーパント》の額から緑色の閃光が放たれる。

天倉はさとりを、翔太郎は亜樹子を庇う形でそれぞれ回避行動をする。

 

すると先程まで天倉達が立っていた場所が焦げており、まるでレーザーによって焼かれたような跡が残っていた。

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ば、化け物だ!」

 

「助けてぇぇぇぇぇぇッ!」

 

「逃げろ!みんな早く逃げろ!!!」

 

 

その光景に周囲にいた生徒を含めた街の住人が逃げ惑う。

 

 

『ハッハッハッーーー!!どうだこの力!』

 

「チッ、フィリップ!半分力を貸せ!」

 

「わかった!」

 

 

翔太郎がそう言うとフィリップが応じるように2人はダブルドライバーを下腹部に装着し、ガイアメモリを取り出す。

 

 

Cyclone(サイクロン)

 

Joker(ジョーカー)

 

「「変身ッ!!」」

 

 

Cyclone Joker(サイクロン ジョーカー)!!』

 

「おっと、フィリップくんセーフ!」

 

「サンキュー、亜樹子」

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ‼︎」』

 

『よりによって仮面ライダーかよ。こいつは都合がいい!』

 

 

仮面ライダーWへ変身を終えた翔太郎とフィリップは走り出し、キャッスル・ドーパントにパンチ、キックと言った攻撃を加えて行く。

その間、天倉はフィリップを背負い亜樹子、さとりと共に避難しようとする。

 

だが、そんな3人の前に青羽、黄羽が立ち塞がる。

 

 

「っと、行かせないよ!」

 

Owl(オウル)

 

「メモリを渡して貰おうか!」

 

Stag(スタッグ)

 

 

青羽と黄羽もそれぞれガイアメモリを自身の腕に挿入し青羽は青い2つのツノを持った《スタッグ・ドーパント》、黄羽は黄色いズングリムックリとした《オウル・ドーパント》へと変貌を遂げた。

 

 

「ふふふ、2人もーーーーッ⁉︎」

 

「そんな……」

 

「最悪だ……!」

 

 

そう言うと天倉達は2人から逃げ出そうとするが、相手は身体能力が強化されているドーパント、すぐに回り込まれてしまう。

 

 

『んじゃ、お楽しみタイムと行くか』

 

『行っくよーーー!』

 

「うわわっ!!」

 

「くっ!(フィリップさんを抱えているから……上手く動けないッ!)」

 

「しまった!」

 

『余所見したんじゃねぇよ!!』

 

 

残り2人が天倉達を狙っている事に気付く仮面ライダーWだが、防御力の高いキャッスル・ドーパントに有効打を与えられず苦戦を強いられていた。

 

 

『翔太郎!あの重厚な盾に肉弾戦は不利だ』

 

「くそっ!ならカチ割ってやる!!」

 

Metal(メタル)

 

Cyclone Metal(サイクロン メタル)‼︎』

 

 

ドライバーのメモリを入れ替えるとWは緑と銀の姿へと変化し、背中に出現した棒状の武器『メタルシャフト』を手に攻撃を仕掛ける。

 

「オラオラッ!!」

 

━━キィン!キィン!カンッ!!

 

『あぁ?んだよそのチンケな攻撃は!!』

 

「ぐっ!何だこいつ!硬すぎんだろ!」

 

『ダメだ翔太郎!サイクロンメタルではパワー不足だ!』

 

「んじゃ、ヒートメモリに……!」

 

 

全くダメージを与える事が出来ず、メモリチェンジを試みる翔太郎。

 

 

『よっと!残念でしたーー!』

 

「あっ!俺のメモリ!!」

 

 

だが、飛行を可能とするオウル・ドーパントが翔太郎の手元にあったヒートメモリを奪う。

 

 

『オラオラオラオラッ!!!』

 

━━ギィン!ギィン!ギィィン!!

 

「ぐぁぁぁあああああッ!!」

 

 

そこへスタッグ・ドーパントが双剣を手に連撃をWに喰らわせる。

 

 

『更に、もう一丁!』

 

━━ドゴオッ!!

 

「グッ⁉︎」

 

 

Wがスタッグ・ドーパント連続攻撃を喰らいよろめいた所をキャッスル・ドーパントがシールドバッシュによる追撃を加える。

 

 

『それーーーッ!!』

 

━━ガアンッ!!!

 

「うおぁぁぁぁッ!!!」

 

 

吹っ飛んだWをオウル・ドーパントが空中から地面へと叩きつける。三羽烏のコンビネーション攻撃により大ダメージを与えたのだった。

 

 

『イェーイ!俺の勝ちだーーー!』

 

『何言ってんだ。お・れ・た・ちだろうが!』

 

『でも、僕だってメモリ奪ったんだよ?』

 

「クソッ……馬鹿の癖に……強えぇ……』

 

『何と言うコンビネーションだ。僕等1人で勝つのは至難の業だ!』

 

 

その場で地に伏せるW。翔太郎が油断してしたとは言え三羽烏の実力が普通のドーパントよりも高い事が分かる。

 

 

『……って、オイ違えよ黄羽。俺達の探しているメモリはそれじゃねぇよ』

 

『えぇーー!火のメモリだから合っていたと思ったんだけどなぁ……』

 

『まぁ、いいか。オイ、古明地の先輩。さっさとメモリを渡して貰おうか。それとも……』

 

「……ッ」

 

 

さとりが亜樹子にしがみ付く。

彼女が恐怖を感じている事が目に見えてわかる。無理もないだろう、まだ10代の少女がこんな化け物に狙われて耐えられる筈が無いだろう。

 

しかも頼りにしていたヒーローもボロボロにされ窮地に陥ってしまった。

最早、彼女を守れるのは【自称:ナニワの美少女】しか居ないだろう。

 

 

 

「………」

 

『あ?んだよ邪魔すんな』

 

 

(天倉 孫治郎)を除いての話だが。

 

 

「あ、天倉さん⁉︎」

 

「ちょっと!危ないよ天倉くん!」

 

『やる気かよお前……生意気だな』

 

『それじゃあ痛めつけちゃおっか!』

 

「何やってんだ!逃げろ!」

 

『その通りだ!いくら君の"個性"が強力なものだとしても勝つ事は不可能に近い!』

 

 

天倉は彼等の言葉を聞き流し、とある事を思い浮かべる。

 

 

『"個性"はソレを使う人物の心的要因によって作用する事が分かった』

 

(快青さんが言っていた事が本当なら俺の"個性"も心の強さによって呼応する筈だ)

 

 

天倉は左手を左腰に当て右腕を右肩へと引き寄せる。

 

 

(なら、今俺がすべき事は一つ……たった一つの単純《シンプル》な事だ……)

 

「ハァ──────ッ」

 

 

息を吐きながら右手をゆっくりと前方へ伸ばす。

 

 

(俺は……彼女(古明地さん)を守るッ!)

 

 

両手を腰に当て、天倉は叫ぶ。

 

 

「変身ッ!!!」

 

『Ω━━evolution』

 

 

━━ゴオッ!!!

 

 

瞬間、天倉の左腕に装着されているレジスターが発光したと同時に天倉を中心に翠色の熱波が放たれる。

 

 

『ぐぁっ⁉︎』

 

『うぉぉお⁉︎』

 

『わぁぁッ⁉︎』

 

「熱ッ⁉︎」

 

「ッ──!」

 

 

ドーパント達は熱波により吹き飛ばされ、翔太郎はあまりの熱さに声を漏らす。

そして亜樹子とさとりの2人は顔を覆い隠した後、目を開けるとそこには今までの天倉が変身していたトカゲの様な姿ではなく、無機質な甲冑を連想させる緑色の戦士が立っていた。

 

 

「天倉、お前まさか……」

 

『仮面…ライダー……なのかい?』

 

「仮面ライダー……成る程……仮面ライダーか……」

 

 

天倉はブツブツと呟くとドーパント達の方へと向き直り喋り始める。

 

 

「俺の名前はアマゾン……【仮面ライダーアマゾン】だッ!!」

 

『何がアマゾンだ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!』

 

 

『うおおおおおおおッ!!』と叫びながら三羽烏のドーパント達は天倉に襲いかかる。

対する天倉も叫びながら走り出す。

 

 

「ハアッ!!ウラァッ!!セイヤァッ!!」

 

 

━━ドンッ!ガッ!ドゴッ!!

 

 

『ぐっ……コイツ!』

 

『どこ見てんだよ!』

 

 

キャッスル・ドーパントの装甲に何度も何度も殴りつけ、その衝撃よりキャッスル・ドーパントはフラつく。

そこに背後から斬りかかるスタッグ・ドーパント。

 

 

━━ガギィン‼︎

 

 

『何ッ⁉︎』

 

 

だが、スタッグ・ドーパントの2本の刀『ラプチャーシザース』は天倉の『アームカッター』によって防がれる。

 

 

「おらぁッ!!」

 

 

━━ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ドゴォッ!!

 

『ぐぁっ⁉︎』

 

 

そして天倉はスタッグ・ドーパントの頭部に何度も何度も頭突きをした後、トドメにチョップを喰らわせ地に伏せさせる。

 

 

『お前ーーーーッ!!』

 

 

するとオウル・ドーパントが飛行しながら突進を仕掛けてくる。

 

 

「はぁッ!!!」

 

『がっ!!?』

 

 

しかし、天倉の蹴り上げにより難無くオウル・ドーパントは吹き飛ばされてしまう。

 

『馬鹿な……天倉孫治郎が押している?しかもあの強さ、《ファングジョーカー》にも匹敵するかもしれない!』

 

「それは言い過ぎだろ……ぐっ」

 

「翔太郎くん!フィリップくん!」

 

 

天倉の実力に驚きを隠せないWは何とか立とうとするが先程のダメージの影響で動けずにいた。

 

 

『テメェッ!!』

 

━━バシュウウウウウウッ!!

 

「ぐううううううううぅぅぅぅぅッ!!!」

 

 

そこにキャッスル・ドーパントが額からレーザーを放ち天倉は両腕をクロスさせ防ぐ。

 

 

『ハッハッハーーーッ!!!どこまで防げるかな!』

 

「ううううぅぅぅぅぅ………アアアァァァァァァッ!!!」

 

 

しかし、天倉は両腕をクロスさせたレーザーを防いでいるのにも関わらずキャッスル・ドーパントへと突進して行く。

その行動にキャッスル・ドーパントも驚きを隠せなかった。

 

 

『何ッ!!??』

 

「ガァァッ!!!」

 

━━ガッ

 

 

そして天倉はキャッスル・ドーパントの正面に辿り着くと顔面をおもむろに掴むと手に力を入れる。

 

 

━━ギリギリ…ミシ…メキ……

 

『ぐっ……あぁ……あッ…ああ……!』

 

「ハァッ!!!」

 

━━ドゴォッ!!!

 

『グオッ!!』

 

 

そしてドーパントをそのまま地面へと投げつけ、馬乗りした状態で拳を振り下ろす。

 

 

「ハァァッ━━━⁉︎」

 

『それ以上……させるか!』

 

『捕まえた!今だよ、赤ちゃん!』

 

『ぐっ…サンキュー!青羽!黄羽!』

 

「ッガッロォォォッ!!!」

 

 

天倉がキャッスル・ドーパントに夢中になっている間にオウル・ドーパントとスタッグ・ドーパントに拘束されてしまう。

 

 

『さっきのお返しだ!!』

 

━━ガッ!ガッ!ドゴッ!

 

 

すると先程と打って変わって天倉は手も足も出ずキャッスル・ドーパントに殴られ、蹴られのやられ放題となってしまっている。

 

 

「クソッ…天倉……ッ!ぐっ……」

 

『ダメだ翔太郎!今の君はダメージを受け過ぎている!今の君では逆に足手纏いになってしまう!』

 

「でもよ……クソッタレ!」

 

 

翔太郎は自身の不甲斐無さに拳を握り締める。

 

 

『オラァッ!オラァッ!さっきまでの威勢の良さはどうしたぁ!?優秀な個性持ちの勝ち組さんよぉ!なんか言ってみろよぉ!オイ!』

 

「……ろ…」

 

『あぁ?聞こえねぇなぁ』

 

『どうした?くたばっちまったのか?』

 

『もう一回言ってみなよ』

 

 

━━シュルルルルル

 

 

『『『ッ⁉︎』』』

 

 

すると、スタッグ、オウルドーパントの身体に赤い触手状の鞭が巻き付き、2体を投げ飛ばす。

 

 

「逃げルォ!!古明地さん!」

 

「!」

 

『テメェッ!』

 

「おおおおおおッ!!」

 

 

━━ガッ!ドゴッ!ガンッ!ゴッ‼︎

 

 

キャッスル・ドーパントと天倉は互いに殴り合う。だが、天倉にとってこの戦いはあくまでも時間稼ぎ。

さとりが逃げる時間を作れれば問題無いのだ。

 

 

「……さとりちゃん、早く!」

 

「亜樹子さん……ごめんなさい天倉さん」

 

『ッ!青羽!黄羽!』

 

『逃すかッ!』

 

『メモリを寄越せッ!』

 

逃げ出す2人にドーパントが襲いかかる。後、数十センチで届く距離に達した瞬間

 

 

 

Luna Trigger(ルナ トリガー)

 

Trigger MAXIMUMDRIVE(トリガー マキシマムドライブ)‼︎』

 

『「トリガーフルバースト‼︎」』

 

 

━━ドドドドドドドッ!!!

 

 

『うわあっ!?』

 

『グオッ‼︎』

 

 

複数の黄色と青色に輝く光弾が2体のドーパントに命中する。

光弾が放たれた所には膝をつきながらも青色の銃『トリガーマグナム』を構えていた。

 

 

「行かせねぇよ」

 

『やろぉ……これでどうだッ!!』

 

するとキャッスル・ドーパントの額に緑色の輝きを帯び始め、亜樹子とさとりが走っている方向へと向く。

 

 

「ッ⁉︎やめろッ!!」

 

『もう遅ぇよ!!オラァッ!!』

 

 

━━バシュウウウウウウッ!!

 

 

「古明地さッ━━━」

 

 

天倉の声は虚しくも届かず緑色の閃光は2人を包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Electric(エレクトリック)

 

 

━━バチバチバチバチッッ!!!

 

 

『何ッ⁉︎』

 

 

 

包み込む筈だった。2人に命中すると思った瞬間、謎の音声と共にレーザーが掻き消される。

緑色の光が消えた後、2人の前に赤い服装で身を包んだ男が剣を構え立っていた。

 

 

「俺の妻に手を出すな」

 

「竜くん!!!」

 

「照井さん⁉︎」

 

 

そう、この男こそ超常犯罪捜査課のトップであり警視でもあり鳴海亜樹子の夫でもある【照井竜(てるい りゅう)】。

彼はバイクのハンドルを模したドライバーを腰に巻き付け、赤のガイアメモリを取り出す。

 

 

『テメェ!何もんだ!』

 

「俺に質問するな」

 

Accel(アクセル)

 

 

「変ッ……身ッ!!!」

 

 

━━ブォォォンッッ!!!

 

 

Accel(アクセル)

 

 

青の複眼状のモノアイを持つAの形をした角を持つメタリックレッドの戦士がその姿を現わす。

 

この街(風都)には仮面ライダー(ヒーロー)が存在する。

 

だが、この街の仮面ライダーは決して1人では無い。

剣を携え2人で1人の仮面ライダーと共に戦う、熱き魂を持つもう1人の仮面ライダー。

 

 

「待たせたな、左」

 

「遅ぇんだよ照井」

 

 

この男、刑事で仮面ライダー!!

 

 

「さぁ……振り切るぜ!!!」

 

 

今、仮面ライダーアクセル(赤の戦士)が風の吹く街を疾走する━━━!!

 




〜〜久しぶりの後書き〜〜

《キャラ紹介》

【茂加味 快青《しげかみ かいせい》】
年齢 53歳

顔の左半分にヒビのような傷跡を持つ男性。
現在、大学の教授として"個性"に関する研究をしており、科学者でもある男。

見値子と空とは義理の父親に当たる。知的な仲間同士、フィリップとは気が合う感じ。
天倉に変身のキッカケを与える為にこういった人物が必要かなー?と思い登場させた。

発目と鉢合わせたらヤバい事になりそう……。



【霊烏路 空《れいうじ うつほ》】
年齢 15歳

でかぁぁぁぁい!とにかく身体の部分的にでかい。
多分ヤオモモと同等……もしくはそれ以上。しかし鳥頭であり、ガチで物忘れが激しい頭のおかしいアホの子。
……と言っても単に物忘れが激しいだけであり学力に関しては良い部類。
古明地さとりを様する理由は………多分後々に説明すると思う。

"個性"は【鴉《からす》】
カラスっぽい事が出来る……と言っても翼が生えたいる位で低空飛行しかできない。

元ネタは『東方project』から霊烏路空。

キャラに困った時は大体、東方で乗り切る。
だけど、圧倒的に女キャラが多い……。


赤城 勝(せきじょう まさる)
年齢 15歳

周りから赤羽と呼ばれており、不良グループの風都三羽烏の自称リーダー。
"個性"持ちを敵視しており、特に有名なヒーロー(オールマイト等)や体育祭で目立っている人物が嫌い。

多分、馬鹿の原因はコイツの所為。
キャッスルメモリを腕に挿入する事によって『キャッスル・ドーパント』へ変身を行う。
赤いバンダナがトレードマーク。

久々の天倉のアームロックの餌食となる。



青鋏 修也(あおばさみ しゅうや)
年齢 15歳

周りから青羽と呼ばれ、赤羽とは良くぶつかり合う仲。仲が良いのか悪いのか……。
老け顔なのは多分、本編忠実。髭は生えてない。
分かりやすく色分け出来るように青いベレー帽を被らせている。

スタッグメモリを腕に挿入する事により『スタッグ・ドーパント』へ変身を行う。

本編ではガタガタゴットンズッタンズタンされウンメイノー(時戻し不可)された。

この小説では生き残る………と良いなぁ。



黄梟 聖吉(ききょう しょうきち)
年齢 15歳

周りから黄羽と呼ばれており、ホースオルフェノクでも無ければファンガイアの王でも無い。
黄色のニットキャップを被っており赤羽、青羽の事はそれぞれ『赤ちゃん』『青ちゃん』と呼んでいる。

腕にオウルメモリを挿入する事によって『オウル・ドーパント』へ変身を行う。



彼等のモチーフは勿論、『仮面ライダービルド』から北都三羽烏の赤羽、青羽、黄羽の3人組。本編では亡き者となってしまったが個人的に小説では出来れば幸せになって欲しい所。

彼等のドーパントとしての強さは通常のドーパントと比べて少し強い程度。
しかしコンビネーション力は凄まじく、油断していたとは言えWを追い詰める程の実力。




天倉の変身について補足。

天倉は変身動作を行う事によって集中力を高め、アマゾンオメガへと変身を行う。

しかし、この小説では決して変身中に攻撃してはいけないと言うお約束は無いので変身中は無防備となる為、天倉の最大の欠点とも言える。

その為、平成ライダー恒例の走りながら変身はまだ不可能。
徐々に変身動作を短くして行き、最終的に「アマゾンッ!」だけで済ませる予定。
でももしかしたら最後まで変身と言わせる可能性も……。




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第40話 罪のB/鳥人間に気をつけろ


そう言えば劇場版仮面ライダーアマゾンズが決定しましたね。
脚本の方がエグゼイドを担当している為、滅茶苦茶楽しみ。

………だけど、どれくらい過激な描写になっているんだろうか。
個人的にグロいのは苦手なので、せめてseason1とseason2の中間辺りにして欲しい所です。




「さぁ……振り切るぜ!!!」

 

『何が振り切る……だッ!!』

 

 

━━ガギィン!!

 

 

赤の重厚な盾と赤の豪快な剣が激しくぶつかり合い、火花を散らす。

 

 

「ハァッ!!」

 

『でぇあ!!』

 

 

━━ギィン!ギィン!ガギィン!

 

 

赤と赤、(パワー)(パワー)がぶつかり合う。

どちらも一歩も譲る事のない戦いだ。

 

 

『俺達も忘れんじゃねぇ!』

 

『隙ありィーーー!!』

 

 

だが、仮面ライダーアクセル《照井竜》の背後からスタッグ、オウル・ドーパントがが攻撃を仕掛けてくる。

 

 

『Cyclone Trigger《サイクロン トリガー》』

 

 

━━ババババババッ!!

 

 

『うわぁっ⁉︎』

 

『ぐっ⁉︎』

 

 

だが復活したWは緑と青の姿へ変化し、風の弾丸をマシンガンのように放ち2体を吹き飛ばす。

 

 

「悪いな照井」

 

「あぁ、とにかく今は……この4体を倒すぞッ!!」

 

「あぁ!ん?………4()()?」

 

 

そう言葉を確かめるように翔太郎が疑問に思った頃には時既にに遅し。

照井は大型の剣『エンジンブレード』で翠の戦士であるアマゾン(天倉 孫治郎)に斬りかかっていた。

 

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

━━ブォンッ!!!

 

 

「ヴェッ⁉︎アンダッテオレハ、アカマジャナカッタンデェ…ウェ⁉︎」

 

「俺に質問するな!!」

 

「ドウシテドンドコド!オンドゥルルラギッタンデスカー!!?」

 

「分かりにくい言葉で俺に質問するな!!」

 

「ラデデブザガギ!ジャレデ!!!」

 

「訳の分からない言葉で俺に質問するなッ!!」

 

 

なんと、照井竜は天倉をドーパントの仲間と勘違いしてしまい、攻撃を仕掛けているのだ。これだけを見ると警察が勘違いで高校生を襲っているというトンデモナイ事態だ。

 

だが、想像してほしい。

台詞に濁点がつく位のボイスを出しながら暴れ気味に戦い、触手を生やしている緑色のクリーチャー。

仮面ライダーかドーパントかと問われれば半数以上が声を揃えて『ドーパント(それ以上にヤバイ奴)』と言うだろう。

 

 

「って、おい!何やってんだ照井!そっちは味方だ!」

 

「何……そうなのか?」

 

「はい、そうです(危ない……残り数センチで頭が割れる所だった)」

 

 

『仲間割れか?』

 

『まぁ、いい。さっさと片付けてやるか』

 

『って、おい!俺の前に立つんじゃねぇよ!』

 

『ちょっとー、喧嘩しないでよ』

 

「なんだ……?あっちも仲間割れかよ……」

 

 

すると敵であるドーパントまでもが仲間割れをし始める。

コンビネーションが良いのか悪いのか分からないが仮面ライダーsは好機と判断する。

 

 

『チャンスだ翔太郎』

 

「わーってるよ、一気にメモリブレイクだ行くぞ照井!」

 

Trigger MAXIMUM DRIVE(トリガー マキシマムドライブ)‼︎』

 

「言われなくともッ!」

 

Accel MAXIMUM DRIVE(アクセル マキシマム ドライブ)‼︎』

 

 

2人のライダーの力が高まっていく。

Wは『トリガーマグナム』を構え、アクセルは『エンジンブレード』を銃のように構える。

 

 

「いくぜ……」

 

『「ライダーツインマキシマム!!」』

 

 

2人のライダーが手にするそれぞれ武器の引き金を引き

緑と青と赤の銃弾が発射される。

 

 

 

━━━ババババババッ!!!

 

 

 

「ぐぁっ⁉︎」

 

『何ッ⁉︎』

 

「この攻撃はッ⁉︎」

 

 

しかし2人のライダーが引き金を引く直前に上空から謎の弾丸が降り注ぎ、放たれる事は無かった。

そして空高くから更に1体の緑色の鳥を模したドーパントが現れる。

 

 

『バード・ドーパント!何故こんな時に!』

 

「くそっ…鳥野郎め邪魔しやがって……」

 

 

Wであるフィリップと翔太郎はそれぞれ悪態をつくが、三羽烏であるドーパント達はバード・ドーパントの姿を見て叫ぶ。

 

 

『カシラァ!助けに来てくれたんすね!』

 

「カシラ……成る程。どうやらお前が一連の事件に関わっているらしいな」

 

 

アクセルはエンジンブレードを杖代わりにして立ち上がると、再び構え直しバード・ドーパントに向かって斬りかかる。

 

 

「ハァッ!」

 

『………』

 

 

アクセルは何度も何度も攻撃を与えようとするが、バード・ドーパントはそれを軽々しく躱す。

しかし反撃もせずそのドーパントはとある場所に向かって進んでいる。

 

 

「え?私達⁉︎」

 

「まさか……!」

 

 

そう、バード・ドーパントの狙いは亜樹子とさとりの2人だ。

アクセルとWはそれに気付き、バード・ドーパントを止めに入る。

 

 

『おっと、そうはいかねぇ』

 

『俺達を忘れんなよ』

 

 

しかし、そんな2人の前に3体のドーパントが立ち塞がりバード・ドーパントを行かせてしまう。

だが、バード・ドーパントの前に緑の戦士が立ち塞がる。

 

 

「ダァッ!!!」

 

『……!』

 

 

━━ガギィン!!!

 

 

バード・ドーパントは鉤爪を使い、天倉孫治郎の腕にある刃状のヒレ、『アームカッター』による攻撃を防ぐ。

お互いにジリジリと鍔迫り合いを始め、一歩も引かない状況となっている。

 

 

「お前の翼……()()()()()()かッ!!!」

 

 

天倉はこのドーパントが前に古明地さとりを攫おうとした個体だと理解する。

 

 

「答えろ!何故だ!何故、古明地さんを狙う!」

 

「……」

 

「答えr━━ッ!」

 

━━バシュウウウウウウ!

 

 

瞬間、天倉はその場から飛び退く。

すると先程まで彼が立っていた場所に緑色のレーザーが通る。

 

 

『おっと、悪いがここまで━━だッ!!!』

 

━バシュウウウウウウ!!

 

「ッ…!」

 

 

キャッスル・ドーパントがレーザーを薙ぎ払うように放つとその場に煙が立ち込める。しばらくして、煙は次第に晴れていくが、その頃には既にドーパント達の姿はどこにも見当たらなかった。

 

 

「……逃げられたか」

 

「そのようだな……」

 

「……ふぅ」

 

 

翔太郎、照井、天倉の順にそれぞれの変身を解除して行く。

天倉は変身を成功させる事に対してガッツポーズを取りつつもさとりの方へと駆け寄る。

 

 

「大丈夫?怪我は無い?」

 

「はい。私は特に……」

 

「良かった……ところで何で照井さんが?」

 

「寧々音根…いや、ヒーロー【マキ】にお前達がドーパントに襲われていると言う報告を受けた」

 

「え?報告……?」

 

「成る程…そう言う事か」

 

 

疑問を覚える天倉だが、先程まで倒れていたフィリップがムクリと起き上がる。

 

 

「【寧々音根 見値子(ねねねね みねね)】年齢22歳、血液型はA型、体重は46g、彼女の"個性"は【千里眼】自分の目の前から半径20km先まで見渡す事ができる。彼女なら僕達の状況を把握することが可能と言う事か」

 

「あぁ、成る程」

 

 

ポンと手を置き、納得する天倉。

すると照井は翔太郎の元へ歩み寄り、とあるものが入った袋を取り出す。

その袋の中に入っているものを見るとその場にいる全員が驚く。

 

 

「それは……ガイアメモリか!」

 

「……メモリブレイク(破壊)されている。これを何処で?」

 

「これはビーストメモリ。古明地達を最初に襲って来たドーパントのものだ」

 

「そうなんですか!……あ、そう言えばドーパントに変身していた人は?」

 

「あぁ、それなんだ」

 

「?」

 

 

天倉が尋ねると、照井は難しい顔をしながらフィリップの方へと視線を向ける。

 

 

「ドーパントに変身していた人物だが、()()()()()()()()らしい」

 

「覚えていない……?メモリ使用の後遺症か?」

 

「いや、違う。残念ながらメモリの作用によるものでは無いらしい」

 

「どう言う事だい照井竜。メモリによる作用なら記憶障害と言う線は充分に考えられるが……」

 

「そうだろうな……このメモリに毒素が一切入って無ければの話だが」

 

「何⁉︎」

 

「え……どう言う事ですか?」

 

 

天倉は照井の言っている事があまり理解出来ずにいた。

するとフィリップがフォローを入れるように口を開く。

 

 

「メモリを使う者は大概、副作用により身体、精神になんらかの異常をきたしてしまう。だが、僕達のメモリは毒素を一切無くし、ドライバーを介して副作用が無いように戦えるよう調整されている」

 

「はい、それは説明されましたけど……」

 

「このメモリもそれと同じく、毒素が一切無い。ならば何故、変身者はメモリの副作用も無いのに記憶障害となっているのか?」

 

「あ………確かに。それじゃあ、一体なんで記憶を……?」

 

「…話によると変身者は知らずのうちにあぁなっていたらしい。まるで"無意識の内"に……」

 

「無意識………」

 

 

照井の言葉にさとりは繰り返すように呟く。その表情は複雑そうに見えるが、何処かなにかを否定しようとするような、そんな意図を読み取る事ができる。

 

 

「……んじゃ、そろそろ全部吐いて貰うぜ古明地」

 

 

翔太郎の言葉に全員の視線がさとりへと注がれる。

 

 

「アイツらはしつこく古明地を狙って攻撃を仕掛けて来た。しかも揃いも揃って「メモリを寄越せ」ってな」

 

「観念して貰うぞ古明地さとり。全てを話せ」

 

「……」

 

「古明地さん………」

 

「……分かりました」

 

 

皆の視線を受けるさとりは意を決し、全てを話す。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ここは屋台 風麺。

 

ドーパントによる処理を済ませた後、昼食とタイミングを合わせ此処で話す事となったのだ。

そしてさとりがカウンター席に座りながら喋り始める。

 

 

「まず最初にドーパント達が狙っていた【ガイアメモリ】はおそらくコレの事だと思います…」

 

 

さとりは懐から赤いメモリを取り出す。

 

 

「ッ!Blaze(ブレイズ)のガイアメモリ!」

 

「やはりお前が……!」

 

 

フィリップと照井がその場から立ち上がり構える。

 

 

「待ってください2人とも!」

 

━━バゴンッ!!×2

 

「「ぐぁっ⁉︎」」

 

 

しかし天倉が2人の背後に立ち「753は315です!」と言う謎の言葉が書かれたスリッパで叩く。とてもスリッパが出して良い音では無いが2人を大人しくさせる事に成功した。

 

 

「全くこの人達は……あ、どうぞ続けて」

 

「は、はい……それでこのメモリですが、コレは私が自らの意思で手に入れたのでは無く、とある人物から貰った物なんです」

 

「とある人物?」

 

「はい。名前は【火焔猫 燐(かえんびょう りん)】先程、会ったお空の同級生の友達です」

 

「え?何で空ちゃんの友達がガイアメモリを?」

 

 

亜樹子の問いにさとりは首を横に振る。

どうやらさとりも分からないらしい。

 

 

「ですが、お燐は私にメモリを渡した後、こう言いました」

 

 

━━『お願いします!コレを誰にも渡さないでください!』

 

 

「その後、お燐は姿を見せなくなりました……そこで私は鳴海探偵事務所の人達と協力して探そうとしました……」

 

「燐?………あ!もしかして探していた猫って……!」

 

「はい。お燐は猫に変化する"個性"を持っています。おそらく、今も何処かにいると思ったので猫探しとして探偵さんに……」

 

「成る程……でも、どうして素直に人探しって言わなかったんですか?」

 

 

俯きながらそう言うさとりに対して天倉は疑問を投げる。

すると翔太郎が帽子を手に取り口を開く。

 

 

「簡単だ、俺達を信じてなかったからだ。自分で言うのもなんだが…俺達は風都ではガイアメモリに関する事件を解決して来てるのが有名でな、素直に言ったら自分がガイアメモリに関する事に関わってしまうからだ」

 

「確かに……あれ?それじゃあ、古明地さんの腕にあるコネクタは……?」

 

「ごめんなさい、本当に分からないんです。気が付いたらいつの間にか……」

 

「いつの間にねぇ………」

 

 

翔太郎は手を顎に置きジッとさとりを見つめる。

するとフィリップはさとりの持つブレイズメモリをまじまじと見る。

 

 

「ふむ……コレも照井竜が持ってきた毒素の無いガイアメモリと同じ形状だ……」

 

「繋がって来たな………」

 

 

照井がそう呟くと照井はその場から立ち上がりその場を後にしようとする。

 

 

「おい、照井!」

 

「俺は火焔猫を探す。お前達はあのドーパント達を探せ」

 

 

そう言うと彼はその場に停めてあった照井の愛用バイク『ディアブロッサ』に跨る。

すると何かを思い出したようにこちらに顔を向ける。

 

 

「古明地さとり」

 

「は、はい⁉︎」

 

「……済まなかった」

 

「え?」

 

 

照井はそれだけを言うとバイクを走らせ、そのまま行ってしまった。

 

 

「ちょっと!竜く〜〜〜〜ん!!!」

 

「……」

 

 

亜樹子は自分が声を掛けられずガッカリしている様子だった。

それに対してさとりは不器用ながらも謝ってくれた照井に少し好感を持つ事ができた。

 

 

「よし……!それじゃあ俺達も探しに行きましょうか!」

 

「おう、そうだな!んじゃマスター勘定を」

 

「あいよー」

 

「………ん?」

 

「どうしたの翔太郎くん?」

 

 

翔太郎は風麺のマスターに渡されたレシートをまじまじと見つめる。

そして不思議に思った亜樹子も翔太郎の横からレシートに書かれている金額を見つめる。

 

 

 

合計金額━━━25620円

 

 

 

「「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁッ!!??」」

 

 

翔太郎と亜樹子は息を揃えて叫ぶ。

とてもこの場の全員で食べたとは思えない金額だった。

 

 

「な、ななな何だよコレ⁉︎俺達こんなに食ってねぇぞ⁉︎」

 

「そーよ!ぼったくりよ!!」

 

「え?でもそこの学生さん沢山食べてるよ?」

 

「「………え?」」

 

 

「ズズッ………ん?」

 

(隣に沢山のラーメンの器)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天倉ァ!!!」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「痛〜〜〜〜ッ……何も殴らなくても……」

 

「アホか!お前の胃袋どうなってんだよ!10杯は越えていたぞ⁉︎」

 

「ほら、まぁ……成長期?ですし」

 

「ったく…お前は………怪我は大丈夫なのか?」

 

「はい大丈夫ですよ?」

 

「そうか(コイツ…本当に人間か?あんだけ派手にやったってのに……)」

 

 

翔太郎達は街の中を聞き込みを兼ねてドーパントの探索を行う事となった。

彼等の目的はさとりを狙ったドーパント達を探し出す事だ。

三羽烏と名乗った3人組のドーパントと、彼等から『カシラ』と呼ばれたバード・ドーパント。

彼等の目的は不明だが、確実に今までの事に関与している事は確かだろう。

 

 

『─────!』

 

 

すると、彼等の元にクモ、クワガタ、カエル等の幾多のも小型動物を模したメカがやって来る。

天倉は目を輝かせながら翔太郎に問いかける。

 

 

「おぉ!コレって何ですか!」

 

「フィリップ特製のサポートメカさ。どうだフィリップ見つかったか?」

 

「あぁ勿論だとも。フロッグポッドに丁度、記録が残っている。後は彼等がいる場所に行き直接聞き出せばいいだけだ」

 

「良し………亜樹子。天倉達と一緒に待ってな」

 

「えぇーー!何でよ!」

 

 

翔太郎の言葉に対して亜樹子は不満を漏らす。おそらく天倉達の身を案じての事だろう。

 

 

「ですけど……」

 

「天倉孫治郎、君の気持ちは有難い。だが君は学生でありヒーローでは無い。ここは僕達に任せて欲しい」

 

「………はい」

 

 

━━ヒーローでは無い。

 

天倉はフィリップの言葉に黙ってしまう。

否定したい……が事実だ。彼はヒーローを目指す者であってヒーローそのものでは無い。

天倉孫治郎は悔しさで拳を握り締めながらも首を縦に振る。

 

 

「……それじゃあせめて……せめて私だけでも連れて行ってくれませんか?」

 

「古明地さん?」

 

 

天倉はさとりの発言に目を見開く。翔太郎はその発言に眉をひそめる。

 

 

「あの人達は私に敵意を持っていました。知りたいんですあの人達の真意を……」

 

「……それじゃあ約束してくれ」

 

 

翔太郎はそう呟くと姿勢を低くし、さとりの目線に合わせる。

 

 

()()()()()()()()

 

「!」

 

「俺達を信用しきれていないと言うのは分かっている。けどな、お前を最後まで信じようとしている奴だっているんだ」

 

「……?」

 

 

翔太郎がそう言うと天倉の方へと視線をチラリと向ける。

 

 

「お前の事はフィリップに詳しく調べてもらった。だけどな、安心してくれアイツ(天倉)はお前を最後まで信じてくれる。絶対にな…」

 

「……ありがとうございます……!」

 

「………それじゃあ亜樹子さん、僕達は照井さんの所で待ってましょう」

 

「うん……ってさとりちゃん行かせてもいいの⁉︎」

 

「まぁまぁ亜樹子さん……それに翔太郎さん達なら大丈夫だと思いますし」

 

 

天倉はそのまま亜樹子を押すように警察署へと赴むこうとする。

そして天倉はさとりの方に視線をチラリと向け

 

 

「気をつけて」

 

 

そう一言だけ呟いた。

 




グロンギ語答え合わせ

ラデデブザガギ!ジャレデ!!!
↓ ↓
待ってください!やめて!!!


「ここではリントの言葉で話せ」
↓ ↓
「日本語でおk」

つまりこう言う事。



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第41話 Cが吹き荒れる街/ヒーローとして

今回の連続投稿はこれで最後になります。
こんなクソな小説を読んでくれている読者の皆様の為にも引き続き投稿を頑張っていきたいと思います。




とある廃工場。

そこに複数の人影が立っていた。彼等は風都三羽烏と名乗る赤羽、青羽、黄羽の3人組だ。

 

 

「さて……次はどこを狙うか?」

 

「とにかく俺は暴れてぇんだ。何処でもいい」

 

「それじゃあさ!『アマゾン』って奴を狙わない?」

 

「あぁ、仮面ライダーを名乗っていた奴か?……優秀な"個性"持ちは気に入らねぇ……ヒーロー気取りの偽善者は特にな」

 

 

そう言うと彼等は懐からガイアメモリを取り出し不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「そうか、なら本物のヒーローはどうだ?」

 

 

だが、彼等の元に左翔太郎、フィリップ、古明地さとりの3人が姿を現わす。

赤羽は彼等の登場に舌打ちをする。

 

 

「お前等……ッ!」

 

「何故………何故そんなに"個性"を敵視するんですか?……どうして……」

 

「ンなもんお前の得意な"個性"で心の中読めば良いじゃねぇかよ!わかんだろ俺が、俺達がどう思っているのかよ!」

 

「……それは君達自身が"無個性"だからそうだろう?」

 

「フィリップさん……」

 

 

━━無個性

 

人口のうち約8割が何らかの特異体質である"個性"を持つ超人社会となった今では珍しい無個性。

 

そう呼ばれた3人は青筋を立て感情を露わにする。

 

 

「テメェ等に……テメェ等に何が分かるんだよ!」

 

Castle(キャッスル)

 

「最初から"個性"を持ってる奴と持ってない奴とでその生き様が決まっちまうんだよ」

 

Stag(スタッグ)

 

「お前達にそれが分かるか!」

 

Owl(オウル)

 

 

3人はガイアメモリを腕に挿入しドーパントへ姿を変える。

 

 

『だが!俺達は変わった!このガイアメモリのお陰でな!』

 

『コレくれたカシラの為にも』

 

『お前達を倒してやる!』

 

「上等だ!……いくぜフィリップ」

 

「あぁ、天倉孫治郎のお陰で彼等の弱点を見つける事が出来た。ファングジョーカーでいこう」

 

『━━━━━━ッ!!』

 

 

するとフィリップの手元に白い恐竜のような形をしたナニカがやって来る。

それはフィリップの慣れた手つきにより変形して行き、あっという間にメモリ型へと変わった。

 

 

「悪いが、さとり。身体を頼む」

 

Joker(ジョーカー)

 

Fang(ファング)

 

「えっ⁉︎さっきのと違う⁉︎」

 

 

「「変身ッ!!」」

 

 

Fang Joker(ファング ジョーカー)!!』

 

 

フィリップの身体が白と黒の姿へと変わっていく。

だがその姿は先程さとりが見たWとは形状が少し異なっていた。

身体の所々がギザギザとした鋭利なフォルムとなっており、まるで"個性"を使っている時の天倉を連想させる雰囲気を纏っていた。

 

そして━━

 

 

ゴッ

 

 

「あ」

 

『あ』

 

 

翔太郎が変身した時のフィリップのようにバタリと倒れ込む。

しかも後方に倒れ頭を強く打ち付けたのか鈍い音が工場内に響き渡る。

 

 

『お、おいいいいいい!!!』

 

「すっ、すみません!!と言うか倒れるのこっちなんですか⁉︎」

 

『あーーっ、たくッ!おいフィリップ。久々のファングジョーカーだ。落ち着いて行けよ?』

 

「勿論そのつもりだ」

 

『馬鹿にしやがって……俺達相手に随分と余裕なもんだ……!』

 

 

ドーパント達と仮面ライダーは対峙する。

そしてさとりは翔太郎の身体を引きずり工場の物陰へ避難する。

 

それを確認した仮面ライダーは右手を銃のように見立て一言放つ。

 

 

『「さぁ、お前等の罪を数えろ」』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

風都警察署

 

通称【風都署】と呼ばれるそこでは風都で発生しているガイアメモリに関する事件はいわば一般の事件のように一般に公表できるような事件ではない。

捜査は一応行われるが警察組織内では特殊な部類の事件として扱われておりガイアメモリに絡んだ事件の被害者の扱いが悪く風都での評判はあまり良くないと言われている。

 

更に、風都の人口の約3割が"個性"を持っている為なのかヒーローの数も圧倒的に少ない。

その為"個性"関係の事件は他所と比べヒーローと警察の連携を上手く取らなければならない事になっている。

 

 

………なのだが

 

 

「なんか元気が無い?」

 

「……確かに。殆どの職員の目が死んでいるって言うか……精気が無い感じですね」

 

 

風都署内では職員達が元気が無いような、まるで疲れ果てたような動きだ。

どこの課も職員達もノロノロ動き、虚ろな目で仕事をしている。

 

 

「えっと、すみません。照井刑事は………って聞いてないし……」

 

 

天倉は何度も何度も色々な職員に話を聞こうとするが、無視をされる。

天倉が項垂れていると、見覚えのある赤い服装の刑事がやって来る。

 

 

「あ、照井さん!」

 

「所長に……君か」

 

 

照井は相変わらずの仏頂面でこちらの存在に気付き近づいて来る。天倉は照井について来るように2人の刑事の姿にも気付く。

 

 

「ん?お前か探偵所の新人って言うのは……」

 

「あ、もしかして翔太郎さんの言っていた超常犯罪捜査課の……刃野刑事?」

 

 

天倉は照井の部下である2人の刑事の内、先輩風な顔をしたこの人物は【刃野 幹夫(じんの みきお)】と言う翔太郎とは昔馴染みの刑事らしい。

 

 

「そして………」

 

「………………」

 

「真倉刑事………翔太郎さんが三下刑事って言ってた………」

 

「あの探偵ィィィィィッ!!!変な事吹き込みやがって!!!」

 

「別に、事実でしょ?」

 

 

天倉の言葉に真倉刑事はこの場に居ない翔太郎に憤怒するが、そんな刑事を亜樹子は一言で一蹴する。

 

 

「そうですか?結構可愛い響きで良いと思いますよぉ?」

 

 

すると、ほのぼのとしたスーツ姿の女性がやって来る。天倉は一瞬誰だが分からなかったが口調と無駄に鋭い嗅覚で誰だか理解した。

 

 

「あれ?もしかして見値子さんですか?」

 

「うわぁ、服装変わるだけで雰囲気違う〜」

 

「あっ、そうですか?可愛い響きですか〜〜ははは、照れちゃうなぁ」

 

「(あ、なんか真倉刑事の事分かってきたかも)」

 

 

天倉は見値子の登場に驚きつつも真倉刑事の言動に少々呆れる。

そうしながら天倉と亜樹子はこれまでの事を説明する。

 

 

「そうか。あとは火焔猫に何か詳しく聞ければ良いんだがな」

 

「ふぅん……あ、それじゃあ空ちゃんに何か聞くのはどう?」

 

 

照井の言葉に亜樹子は手を挙げながら提案する。

 

 

「うーん、そうしたいのは山々なんですけどね。今、空は何処かに行っているらしくて……」

 

「えぇ……空ちゃんになら何か詳しく聞けたんだどなぁ」

 

「まぁ、仕方ねぇさ彼女もまだ子供なんだ。中学生最後の1年くらい好きにやらせてやるといいさ」

 

「残念だな………あ、そう言えば」

 

 

天倉は何かを思いついたように見値子に向き直る。

 

 

「見値子さん……空さんは自宅じゃ無くて学校にいましたよ?」

 

「あ!そう言えばそうよ!どうして嘘なんて教えたのよ!」

 

「うわ、グイグイ来るなこの所長さん」

 

 

天倉の言葉に便乗し、亜樹子は見値子に文句を言う。急な事だったのか見値子は困った表情を露わにする。

 

 

「……え?どう言う事ですか?空は調子が悪いから家で休んで居たはずですけど……?」

 

「でも、調子が良くなったから途中から授業に参加したって……」

 

「うーん?おかしいですねぇ。一応私の千里眼で自宅に居た事は確認したんですけど……」

 

 

見値子は額を抑えながらウンウンと唸る。天倉は不思議に思いながら彼女に疑問を投げる。

 

 

「調子が悪いって……もしかして怪我の事ですか?」

 

「怪我……?」

 

「ほら、翼の怪我ですよ。なんか片方だけグルグルと包帯巻いていましたよ?その所為じゃないですか?」

 

「………え?翼?何の事ですか?少なくとも空は朝には怪我なんて負っていませんでしたよ?」

 

「「あれ?」」

 

 

天倉と亜樹子の声が重なる。そのまま天倉と亜樹子はヒソヒソとお互いに小さな声で話し合う。

 

 

「ねぇ、なんかこの人怪しく無い?嘘とかついてんじゃ無いの?」

 

「い、いや少なくとも見値子さんはヒーローだからそんな事しないと思いますし……そうなって来ると空さんがその朝と学校の間にある時間帯で怪我をしたんだと…………………あれ?」

 

 

天倉はふと声を漏らす。

そしてその場で体育座りをするように手で足を抱え込んで親指の爪を噛み始めブツブツと何かを呟き始めた。

 

 

「待てよ?おかしく無いか?あの怪我はちょっとやそっとじゃ簡単にできる怪我じゃ無い。アレは切創だ。しかも包帯の大きさから推測するにかなり大きい傷…ブツブツブツブツブツ………」

 

「おい、どうした天倉」

 

「あの位置…あの傷の大きさ………クソッ考えがまとまらない……」

 

「ちょ、ちょっと?天倉くん?」

 

 

天倉の頭の中に最悪な考えが浮かび上がって来る。

そして何度も何度も考え、遂には……。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!考えるのはやめたッ!!もう直感で動くッ!!」

 

「ひゃあッ⁉︎どうしたの‼︎」

 

 

そう叫びながら天倉は立ち上がる。その拍子に亜樹子は驚きの表情を顔に出すが、天倉はそれを尻目に見値子に声を掛ける。

 

 

「見値子さん!空さんが今いる場所って分かりますか⁉︎」

 

「え?ちょっと待ってください………あ、あれ?」

 

 

すると見値子はふと声を漏らす。その表情には焦りが見える。

 

 

「見えないッ⁉︎空の姿が風都の何処にも見つからない⁉︎」

 

「どう言う事だ?寧々音根さんの千里眼は建物を透視できる筈だ」

 

「で、でも見つからない……天倉くん。空が一体どうしたの?」

 

「まだ確証は無いです……だけど彼女は重要参考人に違いありません。多分ですけど彼女は………」

 

 

 

 

 

Arms(アームズ)

 

 

 

 

 

「……ん?照井さん。ガイアメモリの音声が漏れてますよ?」

 

「何の事だ?俺はあんな音声のガイアメモリを所持していない」

 

「え?じゃあ一体誰が………」

 

 

 

 

 

Jewel(ジュエル)

 

Hopper(ホッパー)

 

Energy(エナジー)

 

Violence(バイオレンス)

 

『『『『『Masquerade(マスカレイド)』』』』』

 

 

 

「いやコレは……ッ!!」

 

 

照井がそう言うと、全員は周りを見る。

そこにはガイアメモリを持つ()()()()()()が天倉達を囲んでいたのだ。

 

 

「な、なんのつもりだお前等⁉︎」

 

 

刃野刑事がそう叫ぶが職員達は聞く耳を持たず、それぞれガイアメモリを身体の腕や足、首といった箇所に挿入する。

 

すると職員達はみるみる内に宝石、バッタといった怪物、ドーパントへと姿を変えていく。

そしてそのまま照井達や他の職員達、警察署に来ていた一般市民に襲いかかる。

 

 

「うぉっ⁉︎どうしてっ⁉︎警察署にィっ⁉︎ドーパントがァッ⁉︎」

 

「くっ……おそらく、古明地さとりを最初に襲ったビーストメモリの使用者と同じだ。別のドーパントの力によって操られている!」

 

 

ドーパントの攻撃を躱しながら天倉と照井は反撃に移る。

今までのドーパントとの戦いを経験して来た照井はその身のこなしで的確に攻撃を加えつつも妻の亜樹子を守っている。

 

 

「照井さん!このロープお借りします!」

 

 

天倉はその場に偶然あったロープを掴むと複数のドーパントの身体に巻き付けると遠心力を利用した投げやお互いをぶつけるといった戦い方を見せる。

 

 

(あの時に習った相澤先生の技術がここで通用するとは……!)

 

 

その技術は正に抹消ヒーロー【イレイザーヘッド】のものであり1対多数ので本領を発揮する戦法だ。

 

一方、照井の部下である刑事2人はドーパント達から逃げ回っていた。

 

 

「お、おい!真倉!見値子さんにいい所見せるチャンスだぞ!」

 

「よ、よぉし!俺の風斗芯拳《ふうとしんけん》の力見せt」

 

━━ズンッ!

(ドーパントによる無言の腹パン)

 

 

真倉、いい所どころか成す術無く倒れる。

 

 

「真倉ッ⁉︎クソォ……こうなったら俺の必殺カンフーを見せる時が来たようだな!うぉぉぉおおお!」

 

 

刃野刑事はそのままドーパントに殴りかかる。

 

 

━━カンッ

 

 

だが無意味だ。

 

 

「ッたぁ⁉︎硬ッ⁉︎」

 

 

刃野刑事のパンチはドーパントに命中したが、ダメージを与えるどころか刃野刑事自身がダメージを負ってしまう。

それもそのはず刃野刑事が殴ったドーパントは鉄壁の防御力を誇るジュエル・ドーパント。普通の人間の攻撃では傷一つも付かない。

 

 

「………」

 

 

━━バンッ

 

 

「ぐおっ⁉︎」

 

「刃野さん⁉︎(真倉さんよりはマシだけど弱ッ⁉︎)」

 

 

刃野刑事はそのままジュエル・ドーパントの腕の薙ぎ払いにより吹っ飛ばされ地に伏してしまう。

(大体、いつもの事)

 

すると、ジュエル・ドーパントは近くに居た見値子に標的を変え襲いかかる。

 

 

「しまった!見値子さn━━」

 

「ハッ!!!」

 

 

━━ガッ!

 

「⁉︎」

 

「嘿《ハイ》!呀《ヤ》!哈《ハ》ッ‼︎」

 

 

天倉が呼びかけたと同時に見値子はジュエル・ドーパントの膝裏を蹴り体勢を崩させた後、頭部に次々と蹴り、掌底といった技を決めていき

 

 

「チェストォッ!!!」

 

 

━━ズドンッ!!!

 

 

 

見値子はトドメの蹴りを頭部にぶち込み、ジュエル・ドーパントはそのまま警察署の外へと吹っ飛んで行く。

その光景を見た天倉は驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。

 

 

「え?………見値子さん………え?」

 

「天倉!何をしている!戦え!」

 

 

Accel(アクセル)

 

 

「変ッ…身……ッ!!!」

 

 

━━ブォォォンッッ!!!

 

『Accelアクセル』

 

 

照井竜はアクセルドライバーのエンジン音を響かせながら仮面ライダーアクセルへと変身する。

そして、エンジンブレードを片手に持ちドーパントと交戦する。

 

 

「ハァッ!」

 

━━ジャキンッ!!!

 

 

アクセルはホッパー・ドーパント、アームズ・ドーパントを相手に戦いながら被害が出ないように警察署の外へと移動する。

 

 

「おっと!危なっ⁉︎」

 

 

それに対して天倉は10人以上のマスカレイド・ドーパント相手にロープを駆使しながら戦う。

それを見た照井は天倉に向かって叫ぶ。

 

 

「どうした天倉!変身しろ!」

 

「いや、あの!今更なんですけど"個性"使っていいんですか⁉︎資格とか免許とかそういうの持ってないのに!」

 

「俺に質問するな!」

 

「えええぇぇぇぇぇっ⁉︎この状況でもそれ言います⁉︎」

 

 

天倉がショックを受けていると、見値子が天倉を呼び掛けてくる。

 

 

「天倉くん!私がヒーロー『マキ』の名において職場体験における暴徒鎮圧という名目で"個性"の使用許可を認めます!今はとにかくドーパントを倒す事を優先してください!」

 

「ッ!!分かりました!」

 

 

 

見値子の言葉に天倉は頷くとその場でルーティーン《変身動作》を行う。

 

右手を前に出し、左足に重心を置く。

そしてそのまま重心を右足に移動させ、左手を右側へ振りかぶり正面に視線を向け、拳を握りしめる。

 

━━ギリギリギリッ……

 

そして右手を左下へ振り下ろした後、間髪入れず左手を右側へ移動させ、右拳を右腰に置く。

そのまま左手を弧を描くように2時の方向へとグルリと腕を回し

 

 

「変…………ッ」

 

 

身体をスライドさせながら両手を右側に構える。

 

 

「身……………ッ!!!」

 

 

『Ω━━evolution』

 

 

天倉の姿は緑色の炎に包まれ緑色の戦士へと変化を遂げると共にマスカレイド・ドーパントを踏み台にする。

 

 

「俺の必殺技……part6………!」

 

 

天倉はそのままバイオレンス・ドーパント目掛けて腕の『アームカッター』を振り下ろす。

 

 

「でぇぁぁぁぁあああああああッ!!!」

 

 

━━ジャギィンッ!!!

 

 

「グァァァアアア!!」

 

 

━━ドゴォォォォオオンッ!!!

 

 

『アームカッター』はバイオレンス・ドーパントを捉え、そのまま身体を引き裂き爆散させる。

すると爆煙が晴れるとそこにはメモリが破壊され、元の人間の姿へ戻った職員の姿があった。

そしてメモリブレイクを確認した天倉は一言呟く。

 

 

「改名して…………ダイナミック・チョップ」

 

「後で言うんだ……技名」

 

 

天倉の一言に隠れていた亜樹子は少々呆れながらもツッコミを入れる。

その隣でエナジー・ドーパントの相手をしている見値子は腕挫手固によって肘を極め、優位に立っている。

 

 

「やるな……俺も振り切るぜ」

 

Engine MAXIMUM DRIVE(エンジン マキシマム ドライブ)‼︎』

 

「ハァーーーーーーッ!!!」

 

 

━━ジャギギギギィンッ!!!

 

 

「絶望がお前等のゴールだ」

 

 

━━ドドォォォオオオオン!

 

 

エンジンメモリを大型の剣『エンジンブレード』にセットし、トリガーを引く。そしてアクセルはその場で回転し、ホッパー・ドーパント、アームズ・ドーパントに回転斬りをお見舞いする。

 

そして、2体のドーパントはアクセルの必殺技を受け爆散。爆煙が晴れた後は元の姿に戻りメモリも無事に破壊されていた。

 

「残るはエナジーとマスカレイドのみだ!」

 

「よっしゃ!」

 

 

照井の言葉に応えるように天倉は見値子にやられていたエナジー・ドーパントを持ち上げ、そのまま力任せに振り回す。

 

 

━━グルン…グルン……グルグルグルグル……

 

 

「俺の必殺技……part3」

 

 

そう呟きながらも天倉はドーパントに更なる回転を加え、まるで独楽のように振り回していく。

 

 

「ライダァーー……きりもみシューーートッ!!」

 

 

━━ブォンッ!!!

 

 

「まだまだァッ!!」

 

 

天倉はドーパントを上空へ投げ飛ばした後、その場で跳躍しエナジー・ドーパントをガッシリと掴む。

そのまま更なる回転を加えつつ降下し始める。

 

 

「ライダァーーーきりもみクラッシャーーッ!!」

 

 

そのまま天倉はドーパントと共に落下して行き地面と激突!

 

 

━━ズドォォォオオンッ!!

 

 

そのままドーパントは爆発四散!

天倉は無事に着地する事によって難を逃れる。

 

 

「後はあの覆面スーツの奴等か……なら」

 

 

天倉はその場で再びルーティーンを始める為に頭の中に言葉を浮かび上がらせる。

 

 

(ストレス…ストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスストレスッ!!……あ、なんか違う。えっと……なんか精神的にキツイやつ〜〜精神的にキツイやつ〜〜〜)

 

 

天倉は心の奥底からそれっぽい言葉を拾い集める。

 

 

━━除籍処分

 

━━うっせぇぞ!モブが!

 

━━いゃぁぁああっ!妖怪飯食わせろだぁぁぁ!

 

━━すっごーい!君は人肉が好きなフレンズなんだね

 

 

「ゴフッ━━━(吐血)……あ、なんか行けそうな気がする!」

 

 

天倉は何か大事なものと引き換えにして、更なる変身動作を行う。

両手をグルグルと回転させつつそれを声に出して叫ぶ。

 

 

「だーーーーいッ変ッ…身ッ!!!」

 

 

『Standing by━━━Xceed』

 

 

「お゛あ、あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!」

 

 

メキメキと天倉の身体が変貌を遂げて行く。

『アームカッター』や『フットカッター』が肥大化して行き、筋肉量も増加する。

更に額から2本の触覚が生え、口元もヒビ割れ牙が剥き出しになり首元から赤い触手か生え、天倉はエクシードフォームへと変貌を遂げる事に成功したのだ。

 

 

「ハァ……ハァ……変身完了………ッ!(身体がツライ……精神的にも色々と…)」

 

 

天倉はそのまま「ジャアッ‼︎」と言う掛け声と共に両手を地面に突き刺す。

そしてバチバチと身体から電気が発生する。

 

 

「上鳴くん技を借りるぞ……必殺……」

 

「よせっ!天倉!マスカレイド・ドーパントのメモリには自爆装置が━━」

 

 

 

無差別放電ッ!200万ボルトォッ!!!」

 

 

 

━━BZZZZZZZZZZZZZZZ!!!

 

 

━━ドガガガガガガガァンッ!!!

 

 

 

仮面ライダーアクセル、照井の声は虚しく電撃と爆音によって掻き消されてしまう。

そして、爆煙が晴れる頃には

 

 

━━パキリ

 

 

マスカレイド・ドーパントに()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……何?」

 

 

その光景に照井は仮面の下で眉をひそめる。

それもその筈、マスカレイド・ドーパントはメモリに自爆機能が付いており倒されるとメモリブレイクされず爆発して死亡してしまうのだ。

 

その筈なのにメモリ使用者は五体満足。気絶しているだけであり外傷などは見当たらない。

 

 

(……このメモリ、やはり通常のものとは違う。出所を詳しく調べる必要があるな)

 

 

「アババババババbbbbbbbbbbbbbbbbbbb」

 

『reset━━』

 

 

「天倉くん大丈夫ですか?」

 

「の、脳ががががが痺れれれれれれれれれ」

 

 

そう考えている照井の横で天倉は通常状態の姿で痙攣しながら地に伏しており、見値子が介抱を行なっていた。

 

 

「そそそそそんなこととととよりもももはははやくくくくしょ翔太郎ささんんんの所に行かないとととととtttt」

 

「天倉くん、無理はいけませんよ?」

 

「でも……ふぅ、痺れが取れて来た。行かないと……行って確かめないと……」

 

「だけど………」

 

 

ボロボロになっても尚、立とうとするその姿に見値子は困惑してしまう。

それは正しくヒーローとしての精神。自己犠牲を躊躇せず誰かを救おうとする姿勢。

 

彼女はヒーローであろうとする天倉の行動を止めるか止めまいか迷ってしまう。

 

 

「なら、急いだ方が良いな」

 

「照井さん……だけど彼はまだ学生……」

 

「確かにそうだろうな。だが、今は一刻を争う事態だ。警察署の職員達を操る力を持つであろうドーパントがいる場合、市民達にも被害が及ぶ。早期解決の為には彼の力も必要だ……天倉、手伝ってくれるか?」

 

「勿論ですよ、急ぎましょう」

 

「……分かりました。ですが天倉くん……決して無理はしないように」

 

「……了解です!」

 

 

見値子の言葉に天倉は頷く。

天倉は彼女の言葉には期待以外にも心配、懸念、恐れと言ったものを感じ取ることができる。

 

 

「よし、天倉乗れ!」

 

「はい!………ハイ?」

 

 

照井がそう言うとドライバーを取り外すと、その場で跳躍し空中で後方回転を行う。

すると背中のパーツ、脚のタイヤが変形し始める。

着地を終えた頃には仮面ライダーアクセルはバイク形態(フォーム)へと姿を変えていた。

 

 

 

 

( ゚д゚)

 

 

 

「……乗れ!」

 

 

 

 

( ゚д゚)

 

 

 

 

天倉はあまりの光景に思考が停止していた。

目の前には人間バイクが自分の搭乗を急かすと言う異常な光景。

しかもヒーローである見値子は見て見ぬフリと言う無責任さ。

 

天倉は考えに考えを重ねた結果

 

 

 

 

「……すみません、バイクの免許持って無いんですけど大丈夫なんですか?」

 

 

「俺に…質問するなぁぁぁッ!!!」

 

 

━━考えるのを止めた。

 

 

 

この後、無茶苦茶振り切る事にした。

 




悲報、見値子さんがバーロー系ヒロインだった件。


寧々音根 見値子(ねねねね みねね)
年齢 22歳
ヒーロー名『マキ』

"個性"【千里眼】
自分のすぐ目の前から半径20km先まで見渡す事ができる。

茂加味快青の義理の娘。
性格は基本的におっとりしており周囲の人物をホッコリさせる人格の持ち主。

"個性"がサポート系の為、総合格闘技で戦闘を補っている。

相澤先生の台詞に一芸だけじゃヒーローは務まらないと言うものがあり、彼女もそれに該当するヒーローとなっている。



刃野 幹夫(じんの みきお)

風都警察署の刑事であり、部下の真倉俊刑事と共にドーパント関連の事件を担当している。
【超常犯罪捜査課】で照井の部下として働いている。

翔太郎とは昔馴染みであり、不良の翔太郎を更生させるべくよく追いかけ回していたらしい。

小説内では良い所も無くすぐ気絶してしまったが、実はVシネマ仮面ライダーアクセルにおいてドーパントに生み出された尖兵十人近くを相手取り最終的に勝つと言う、意外な実力を持っている。

………けど、気絶するのはいつも通りだったりする。



真倉 俊(まくら しゅん)

刃野幹夫の部下であり、照井竜の部下。
翔太郎からは「三下刑事」「なまくらさん」「マッキー」などと呼ばれており、初めて会った人にまで雑魚と言われてしまう始末。
個人的にコメディキャラは好きなので見値子と絡ませてみました。



〜〜天倉s必殺技の紹介〜〜


俺の必殺技part6
《ダイナミックチョップ》

跳躍からの敵に向かってチョップを繰り出す技。
バード・ドーパント戦に出した手羽先切り(仮)を改名した。

ちなみに必殺技名は後に出す。

これを生身の人間にやったら確実に放送事故レベル。
人に向けて出来ないので今回はドーパントに喰らってもらった。



俺の必殺技part3
《ライダーきりもみシュート》

敵の身体を掴み、一気に振り回し独楽のように回転させながら投げ飛ばす技。
高速回転によって真空状態が作り出されているらしい。
本来は共に飛ぶ必要があるが、今回はそのまま別の必殺技に繋げる為、地上で行った。

きりもみシュートは上空へ投げ飛ばす技なので、追撃を行う必殺技が複数存在する。


《ライダーきりもみクラッシャー》

きりもみシュートから繋げる必殺技の1つ。
きりもみシュートで敵を上空に投げ飛ばした後、自身も跳躍し上空で敵を掴み、更なる錐揉み回転を加えそのまま敵を地面にぶつける必殺技。


元ネタは仮面ライダーフォーゼのロケットステイツから『ライダーきりもみクラッシャー』




久々の『エクシードフォーム』への変身。
いや、変身というよりは変貌。

敵を一掃する為に上鳴の技を模倣。
威力に関しては天倉の方が上。しかし持続時間は短く、反動が大きいと言う総合的に見れば上鳴の方が優秀。

ぶっちゃけ、もっとエクシードフォームで暴れさせたい気持ちもありましたが、通常フォームのアマゾンオメガがあまりに役に立っていない感があったのでエクシードフォームの出番が少なくなってしまいました(笑)


次回も頑張って執筆したいと思います。


アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第42話 Cが吹き荒れる街/自己犠牲

これで風都編は後編となります。
次回は風都編は後編最後のエピソードとなります。
あぁッ!!長かった!マジで長かったよ!!

オリジナル編を書くの辛ッ!!!




『アームファング』

 

音声と共に白と黒の戦士、仮面ライダーW『ファングジョーカー』の右前腕から白く輝く刃が形成される。

 

 

「うぉぉぉぉッ!!」

 

━━ギィンッ!ギィンッ!ギィィンッ!

 

 

白い刃がキャッスル・ドーパントの盾と激しくぶつかり合い、火花を散らす。

キャッスル・ドーパント自身にダメージは入っていないがファングジョーカーの勢いに押されている。

 

 

『ぐっ!コイツ……!』

 

『野郎ッ!』

 

 

すると背後からスタッグ・ドーパントが双剣を振り下ろす。

だが、Wは双剣を受け止めるとスタッグ・ドーパントを掴み、オウル・ドーパントの方へと投げる。

 

 

『何ッ!』

 

「ウオァァァァッ!!」

 

『うわぁぁ⁉︎』

 

『黄羽⁉︎』

 

 

三羽烏から見て、今の仮面ライダーは先程のと比べて全く異なるのを理解する。

目の前にいるのはまさに獣。さしずめ彼等はその餌と言う立場なのだろう。

 

 

「フーーッ!フーーッ!フーーッ!」

 

『落ち着けフィリップ。ちょっと荒々しすぎるぞ』

 

 

興奮しているフィリップを翔太郎が鎮めようと呼びかける。するとフィリップは先程とは打って変わって冷静に応じる。

 

 

「いや、これで問題ないさ翔太郎。天倉孫治郎との戦いも彼等のコンビネーションは充分に発揮されていなかった。つまり彼等、三羽烏の弱点はコンビネーションが崩される程の獣のような荒々しさだ」

 

『成る程。単純明快ってな』

 

『何が単純明快だ!これでどうだッ!』

 

━━バシュウウウウウウッ!!

 

 

キャッスル・ドーパントはお返しと言わんばかりに額から緑色のレーザーを放つ。

それに対してWは冷静に獣の横顔を模したファングメモリの角部分のレバーを操作する。

 

 

『ショルダーファング』

 

━━ギィィィィィィイイイン!!

 

 

すると右肩から形成された白い刃が盾代わりとなりレーザーによる攻撃を防ぐが、Wはジリジリと押されてしまう。

威力の高い厄介な技に翔太郎は舌打ちをする。

 

 

『チッ…この技か!』

 

『オラッ!隙ありだ!』

 

『覚悟しろ!」

 

 

すると再び背後から攻撃を仕掛けて来るスタッグ・ドーパントとオウル・ドーパント。

絶体絶命と思われたがフィリップは一言呟く。

 

 

「既に予測済みさ」

 

━━ガガガガガガガガッ!!

 

 

Wはその場で屈む事によってレーザーを回避。その後肩に形成されている『ショルダーセイバー』をブーメランのように投げると、ソレは獣のようにその場で不規則な軌道を描きドーパント達に襲いかかる。

 

 

『うおっ⁉︎』

 

『ど、どうなってなるの⁉︎』

 

 

邪魔者を退けたWはそのまま『ショルダーセイバー』を手に持つとキャッスル・ドーパントに斬りかかる。

 

 

「ハァッ!」

 

『グッ……⁉︎』

 

『コレでトドメだ!』

 

「ダァッ!!!」

 

 

キャッスル・ドーパントを捉えた。

そう思われた瞬間、2つの影が飛び込んでくる。

 

 

『チッ……何やってんだ赤羽!』

 

『危ない赤ちゃん!」

 

 

━━ギィィンッ!!!

 

『『ぐぁぁぁぁぁああああッ!!』』

 

 

「何ッ!?」

 

『自ら盾になりやがった⁉︎』

 

 

オウル・ドーパントとスタッグ・ドーパントがキャッスル・ドーパントを守る行動に対してフィリップと翔太郎が驚愕を露わにする。

 

そして攻撃を受けた2人はドーパントから人間態へと元に戻る。

 

 

『青羽……黄羽……なんで』

 

「全く……テメェは……危なっかしいんだよ」

 

「負けちゃ……駄目だよ……赤ちゃん」

 

 

『クソ……クソォォォォォォオオオッ!!仮面ライダー!テメェは許さねぇ!!テメェ……だけはッ!!!うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!』

 

 

『なんだ?色が変わって……⁉︎』

 

「いや、色だけじゃない。先程と比べて力も大きく増している!」

 

 

キャッスル・ドーパントの色が赤から黒へと変質していく。

そのオーラに押されたのかWは後退りをする。

 

 

『2人の仇ィィィィィイイイイイイイッ!!!』

 

━━ガァンッ!!!

 

 

「グッ⁉︎ファングジョーカーのパワーを上回った⁉︎」

 

『テメェ等には分からねぇだろうな!!!"無個性"の気持ちなんてよぉ!!』

 

 

キャッスル・ドーパント改めて、ハードキャッスル・ドーパントは叫びながらWに攻撃を仕掛ける。

 

 

『見下され、蔑ろにされた事はあるか⁉︎』

 

 

━━ガッ!

 

「ぐっ!!」

 

『どんなに努力しても結局"個性"の優劣で価値が決まり!無価値のレッテルを貼られ!』

 

 

━━ドッ!!

 

「ぐあっ!!」

 

『将来も否定された俺達の気持ちが分かるのかぁぁぁぁああああああああああッ!!!』

 

 

━━バシュウウウウウウウウッ!!!

 

 

「ぐ……う、ぁぁぁぁああああああああああああああッ!!!??」

 

 

ハードキャッスル・ドーパントの猛攻にWは吹っ飛ばされてしまう。

 

 

「フィリップさん!翔太郎さん!」

 

『古明地!特にテメェは気に入らねぇ!!』

 

「ッ⁉︎」

 

『テメェは良いよなぁ……勝手に心の中を読み、優越感に浸ってんだろ?』

 

━━ドッ

 

 

ドーパントはさとりの腹を殴り蹲らせ、顔を踏み付ける。

 

 

「うぐっ!」

 

「古明地さとり!」

 

『どうだ?無個性の奴に見下される気分はよ?』

 

 

━━ギリギリギリ

 

 

ドーパントが足にさらなる力を込めると踏みつけられているさとりは苦痛の声を漏らす。

 

 

「う……あぁ………ああ…」

 

『俺はな許せねぇんだよ。"個性"の有無だけで優劣が決まる世の中によ……!』

 

 

━━ガッ!

 

「かはっ…げほっ…⁉︎」

 

 

ドーパントに蹴り飛ばされ、さとりの肺にから全ての酸素が吐き出される。

腹を抑えその場から動く事も出来ないさとりにドーパントが近く。

 

 

『だから俺は無個性の奴等を代表して!お前等に鉄槌を下すのさ!テメェの次はヒーロー気取りのあの野郎だ!先に逝ってるといいさ!』

 

 

キャッスル・ドーパントは振り上げた腕をさとりに向け腕を振り下ろす。

 

 

 

━━ガシッ

 

 

『そうかよ……』

 

 

だが、振り下ろされる直前に仮面ライダーWはドーパントの横に立ち腕を掴んでいた。

 

 

『テメェ⁉︎』

 

『奇遇だな……俺もお前と同じ()()()()

 

━━ドゴッ!!

 

『ぐおッ⁉︎』

 

 

Wはそのままドーパントを殴り飛ばす。

翔太郎は殴り飛ばしたドーパントに向けて喋りかける。

 

 

『確かにな。どうしても無個性ってのは周りと比べりゃ劣って見えるさ……けどな!』

 

 

先程まで追い詰められていたWの攻撃は更に激しさを増し、翔太郎は叫ぶ。

 

 

『"個性"なんて関係ねぇ!お前のやっている事はただの八つ当たりだ!ソレ(ガイアメモリ)に手を染めちまったお前は……力に振り回されているだけの……ただのガキだ!!』

 

 

『うるせぇ屁理屈言ってんじゃねぇぞ!!!』

 

 

Wとドーパントは互いに殴り合い、戦いは激しさを増す。

そして

 

 

『これで……どうだッ!!』

 

『グォッ!!?』

 

 

殴り合いを制したのは仮面ライダーだった。肩で息をしながら彼等は互いに話し合う。

 

 

「翔太郎…あまり激しい動きをするのはやめてくれ……負担がかかるのは僕の方なんだ……」

 

『悪いなフィリップ……さとり!大丈夫か⁉︎』

 

「は、はい……何とか……ッ⁉︎」

 

 

すると、廃工場の穴の空いた天井から一体の黒いドーパントが落ちてくる。

そのドーパントは綺麗に着地し、こちらを見据える。

 

 

『新手かよッ!』

 

「いやコイツはバード・ドーパントだ!だが、形状が異なっている……!」

 

『か、カシラッ!!!』

 

『━━━ッ!!!』

 

 

━━ドッ!

 

 

黒いドーパントはWに迫ると蹴りを放つ。

Wは攻撃を防ぎ反撃に転じるが

 

 

「速いッ!それに蹴りの力も高くなっている⁉︎」

 

『野郎ッ!!!』

 

 

━━フワッ

 

 

「ッ⁉︎これは……!」

 

 

━━ドッ!!!

 

 

Wの攻撃はいとも容易く避けられる。

まるで蝶の如くに空中で舞い逆に蹴りを喰らってしまう。

 

 

『うおっ⁉︎なんだよあの動き……!』

 

「アレはパルクールだ!走る・跳ぶ・登る等の主に“移動”という動作を基本にしたフランス発祥の運動方法。何故あんな高度な技術を……!」

 

 

アクロバティックな動きに翻弄されながらも仮面ライダーWは応戦する。

 

 

「馬鹿な…バード・ドーパントでは考えられない程に強くなっているだと⁉︎」

 

「フィリップさん!後ろ!」

 

 

━━バシュウウウウウウ!!

 

「くっ!」

 

『形勢逆転……って所だな!』

 

 

背後から来るキャッスル・ドーパントのレーザーによる攻撃をギリギリの所で回避する。

 

 

『クソッ……一か八かツインマキシマムで……』

 

「いや、駄目だ翔太郎。通常のものならまだしも暴走の危険性が高いファングジョーカーでは大きな被害が……!」

 

『いつまで話し込んでいるつもりだ……!!!』

 

 

━━キュイイイイイイィィィィン………

 

 

するとキャッスル・ドーパントは額に緑色の光を溜め始める。

その光景にフィリップはマスクの下で冷や汗を掻く。

 

 

「不味い、あのレーザーは先程とは比べ物にならない威力を放とうとしている!」

 

『クソッ…!アレに当たると流石に不味いぞ!」

 

 

『へぇ……ソレはいい事を聞いたなぁ……!』

 

 

そう呟いた直後、キャッスル・ドーパントはクルリと回転し、()()()()()へ向く。

 

 

「え………⁉︎」

 

『ッ!!テメェッ!!』

 

『ハハハッーーーー!!古明地!お前が悪いんだぜ!お前が来なければこんな事にならなかったのになぁ!この攻撃を生身の人間が喰らえば大火傷の重体、運が悪けりゃ跡形も無く消し飛ぶだろうなぁ!』

 

「くっ……!翔太郎!」

 

『やるしかねぇ……!ツインマキシマムだ!!』

 

『━━━!!』

 

 

だが、そこに黒のバード・ドーパントが攻撃を仕掛ける。

 

 

「くっ!不味い!このままでは!」

 

『やめろッ!このままじゃあ……!やめろォ!!』

 

『ハッハッハッーーー!!!消し飛べぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 

巨大な緑色の閃光が周囲を包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Accel MAXIMUM DRIVE(アクセル マキシマム ドライブ)

 

 

「セイハァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

━━ジャキィィィンッ!!!

 

 

『ぐぉぉおおおおっ!!??』

 

 

━━ドシュウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!

 

 

瞬間、赤と緑の影がキャッスル・ドーパントの脚を斬りつけた。

するとキャッスル・ドーパントは体勢を崩し、明後日の方向へレーザーを放ったのだ。

 

 

━━ブォォォオオオンッ!!

 

 

「待たせたな左、フィリップ」

 

「照井竜!」

 

『遅ぇよ!何やってたんだよ!』

 

「途中、大量のドーパントに襲われてな、だが間に合ったようだな」

 

 

そこには仮面ライダーアクセル(バイク形態)とエンジンブレードを構えた天倉が居たのだ。

 

そう、先程の赤と緑の影の正体は照井竜こと仮面ライダーアクセルと天倉の2人だったのだ。

アクセルはバイク形態から人型形態へと元に戻る。

 

 

すると、天倉は口元を押さえながらフラフラと壁に手をつく。

そして

 

 

 

 

「あ、ヤバい。吐きsおろろrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr

 

 

 

 

見事なリバース。

 

ちなみに今の天倉は"個性"を使用していない人間の状態の為、仮面ライダーが嘔吐すると言うシュールな絵になる事は無かった。

 

 

『ったく……しまらねぇな天倉』

 

「ハァ…ハァ…無茶言わないで下さいよ翔太郎さん……この人、バイクに変身したと思ったらアレですよ。ビルを垂直で駆け上がったんですよ⁉︎頭おかしいですよ!あ、ヤバい。また吐きそう」

 

 

再び手で口を押さえる天倉。

そして、ある程度スッキリしたのかドーパントに向き直る。

 

 

「ハァ…ハァ……いい加減正体を現したらどうなんだ」

 

「正体だと?」

 

 

天倉の言葉に照井は疑問を持つ。

 

 

「最初は単なる偶然だと思った。まさか君がこんな事をする人だと考えられなかったからだ」

 

『………』

 

「………その翼には俺がつけた傷跡が残っている。偶然にもそこに同じ箇所を怪我している奴が居たよ。ソイツの居た時間帯とアンタの居た時間帯がまるで入れ違うかのようにピッタリと当てはまって居た」

 

 

 

「なんでだ……どうして古明地さんを裏切るような真似をするんだ……【霊烏路空】!!」

 

 

「………え?」

 

 

 

天倉がそう叫ぶとバード・ドーパントの変身が解除される。

 

 

「………」

 

 

そこには見覚えのある緑色のリボンをつけた黒い翼を生やす女の子が居たのだ。

 

 

「まさかお前が『カシラ』⁉︎バード・ドーパントの正体だったのか!」

 

『クソッ…!完全にノーマークだった!……だが、なんでアイツがこんな事を……!』

 

 

『……ハッ!決まってんだろ!!』

 

 

 

照井と翔太郎の言葉にキャッスル・ドーパントが答える。

 

 

カシラ(霊烏路空)はな……古明地さとりを最初から友達なんか思ってねぇんだよ!!!』

 

「………お空?………そう……なの?」

 

「…………」

 

 

キャッスル・ドーパントの言葉にさとりはショックを受ける。さとりは空に疑問を投げかけるが、彼女は表情1つ変えない。

 

 

「ね、ねぇ……答えて……お空……。お願いだから………ねぇ、嘘………よね………嘘と……言ってよ……」

 

「…………」

 

『ハッハッハッーー!!ざまぁねぇな!アンタは最初から友情ごっこをしていただけなんだよ!アンタを信じる奴なんて!!最初から居ないんだよ!!』

 

 

 

「あ、あ……う……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………あ、ぁぁぁぁ」

 

「しっかりしろ!古明地!」

 

 

キャッスル・ドーパントの言葉にさとりはその場で泣き崩れる。

信じていた人に裏切られ、心が折れた彼女の元に照井が駆けつけるが、彼女は泣き崩れたまま動かない。

 

 

『どうだ!"個性"持ちが!これがお前等に相応しいエンディングだ!ハハハハハハハハハハッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙れよ

 

 

「「「!」」」

 

 

天倉の口からトーンの低いドスの効いた声が漏れる。

 

 

「何が"個性"だ……何がエンディングだ………お前、分かってないよ」

 

 

「お前、化け物と罵られた事はあるか?」

 

 

「信じていた奴等に裏切られた事はあるか?」

 

 

「助けたのに……見捨てられた事はあるか?」

 

 

「天倉……さん………」

 

 

天倉の声が徐々に強みが増していく。

その言葉に彼女は顔を上げる。

 

 

「誰も手を差し伸べてくれない辛さ。お前には分からないだろうな」

 

 

そう一言呟くと照井に向き直る。

 

 

「照井さん……翔太郎さん……コイツは俺が相手をします」

 

「天倉……お前」

 

「多少の痛みは怒りでどうとでもなります。お願いします……」

 

 

天倉の言葉に照井はしばらく考える。

そして、照井はWの隣に立つ。

 

 

「いいのかい?照井竜」

 

「構わない。俺もヤツの気持ちが分かるからな……天倉!負けるなよ」

 

「少なくとも……コイツに負ける事はありません」

 

 

天倉はそう呟くとキャッスル・ドーパントへと歩を進める。

 

 

『フフフ…ハハハハハッ!!何が負ける事はありませんだ!パワーアップした俺に勝てるワケねぇだろうがッ!!!』

 

 

━━━━キュイイイイイイィィィィン………

 

 

「………」

 

『ハハハハハ!怖くて声も出せねぇか⁉︎なら怯えながらあの世に逝っちまいなぁ!!!』

 

 

天倉はパワーを溜めているキャッスル・ドーパントを前に冷静に左腕のレジスターのスイッチを入れ呟く。

 

 

「……アマゾン(変身)

 

『Ω━━evolution』

 

 

瞬間、天倉は緑色の炎に包まれ緑色の戦士(アマゾン)へと変身する。だが彼は何か特別な事をするわけでもなく、ただ歩みを進めるだけだった。

 

 

『今更、変身したところで!!勝てるわけねぇだろォ!!!』

 

 

━━バシュウウウウウウウウウウウ!!!!

 

 

緑色の閃光が天倉を飲み込む。

とてつもない熱量が天倉を襲い、身を焦がし、肉が焼ける音が響き、不快な臭いを放ち、身体の所々から血が噴き出て来る。

 

そして、光が収まった頃には天倉の身体は無残な姿となって居た。

 

 

『ハハハハハ!なんだよ!格好つけてた割に大した事ねぇな!!』

 

「………」

 

 

最早、歩く事もままならない天倉。絶体絶命の窮地に陥ってしまった。

 

 

━━コツ……コツ……

 

 

『な⁉︎』

 

 

だが、彼は歩みを止めなかった!

彼は肉を焼かれ、多量の血を流し、あまりの熱量によって外皮がドロドロに溶け、所々の筋肉が剥き出しになっている。

 

重症の筈だった。だが、彼は歩みを止めない。

 

 

 

━━怒り

 

 

 

 

天倉孫治郎の心の奥底から沸いてきた感情だ。

一体、いつ以来となるのだろう。こんな腹の奥底から怒りが沸々と湧いて来たのは。

 

 

『くっ!さっさとくたばりやがれ!!』

 

━━バシュウウウウウ!!バシュウウウウウウ!!バシュウウウウウウ!!!

 

 

━━グチャッ、ブチャッ!、ジュウゥ……

 

 

 

何度も何度も天倉に向けレーザーを放つ。

そのレーザーは天倉の肉を抉り、内臓を貫通し、確実に大ダメージを与えていた。

 

だが、天倉はそんなもの気にしていなかった。

彼にとっては「丁度、良かった。肉を焼いてくれたお陰でわざわざ止血せずに済んだ」という位の認識なのだろう。

 

 

『な、何でお前……!』

 

 

気付いた頃にはドーパントのすぐ目の前に天倉が立っていた。

ドーパントはすぐさま、シールドを前面に装備する。

 

 

「邪魔」

 

 

━━ボギャッ!!!

 

 

『ぐぉぉおおおおッ!!?』

 

 

天倉はキャッスル・ドーパントの重厚な盾を毟り取る。

彼はそのまま取った盾を持ち、ドーパントに叩きつける。

 

 

━━ガァンッ!!!

 

『ぐっ!』

 

 

「硬いな……」

 

━━ガァンッ!

 

━━ガァンッ!

 

 

天倉は何度も何度も叩きつける。

 

 

━━ガァンッ!

 

 

何度も

 

 

━━ガァンッ!

 

 

何度も

 

 

━━ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!ガァンッ!

 

 

『ぐぅおおおおお……』

 

 

何度も叩きつける。

そして天倉は突如として叩きつけるのをやめると腕の『アームカッター』でドーパントを斬りつける。

 

 

『くっ!!!』

 

 

━━ガギィィッ!!!

 

 

だが、キャッスル・ドーパントは天倉の刃を盾で受け止める。

天倉は『アームカッター』を無理矢理抜こうとするが、微動だにしなかった。

 

 

『は……ハハハハハ!ざ、ざまぁ見ろ!』

 

 

「……めんどい」

 

 

━━ジャギンッ!!!

 

 

『は?』

 

 

天倉は無理矢理アームカッターの刃を伸ばし、そのまま重厚な盾を斬り裂いた。

 

 

『な、う、嘘……だr⁉︎』

 

 

━━ガッ

 

━━バガバキバキ……

 

 

『ぐぁぁぁぁぁああああ!!?』

 

 

瞬間、天倉はキャッスル・ドーパントの頭を鷲掴みにし、持ち上げる。そしてあまりの握力にバキバキとキャッスル・ドーパントの外装がビビ割れる。

そんな様子を見ながら天倉はポツリと呟く。

 

 

最後(フィニッシュ)は……必殺技で決まりだ………』

 

 

天倉がそう言うとレジスターのスイッチを再び押す。

 

 

『Over Flow━━Danger‼︎』

 

 

レジスターが謎の音声と共に青から赤色へと発光する。

すると天倉の右腕の筋肉量が増加し、バチバチとエネルギーのようなものが右腕に装填(チャージ)される。

 

 

『や、やめろ!俺に…な、何をする気だ!!』

 

「敗者に相応しいエンディングを見せてやる」

 

 

天倉は救いを求める赤羽の声に耳を傾けず、右腕を振りかぶる。

 

 

『Max Hazard━━Ω』

 

 

『あっ、ぁぁぁぁあああああああ!!』

 

 

 

 

ライダーパンチ

 

 

 

 

 

━━ドゴォォオオッッッ!!!

 

 

『がぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!???』

 

 

━━ドガガァァァァァァァァアッ!!!

 

 

天倉の拳を受けたキャッスル・ドーパントはそのまま大きく吹っ飛び、壁に叩きつけられ、爆散する。

 

 

━━パキン

 

 

そして爆炎が消える頃にはキャッスル・ドーパントは元の人間態へと戻っていた。

そして天倉はドーパントだった赤羽、赤城勝の元へ歩み寄る。

 

 

「くそっ……たれ…………どう……して」

 

「……君は、俺と違って化け物じゃない……彼等(友達)を大切にしておけ………」

 

 

天倉がそう言うと赤羽はそのまま意識を失った。

 

 

━━ブシャリ

 

 

天倉が自身の右手を見ると指がグシャグシャに潰れ、血が多量に噴き出ており、所々に骨が突き出ていた。

 

 

「無理し過ぎた……」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

『さて……悪い事は言わねぇ。さっさとメモリを渡して貰おうか』

 

「………」

 

『だんまりかよ』

 

「ふむ、様子が変だ。僕達が知っている彼女とはまるで違う……」

 

 

仮面ライダーWことフィリップと翔太郎が顔色1つ変えない空に違和感を感じるが、照井こと、仮面ライダーアクセルが前に出る。

 

 

「俺達のやる事はいつも同じだ」

 

「………!」

 

Bird(バード)……』

 

『来るか!』

 

「…?いや、待て翔太郎。何か様子が変だ」

 

 

Bird(バード)……b、bbird…bーb…d…』

 

 

すると、空の持つメモリが変化していく。先程まで緑色だったバード・メモリはドス黒く変色していく。

 

 

『……Crow(クロウ)

 

「何?メモリが変化しただと?」

 

 

空はクロウ・メモリを掌に挿入する。

すると、先程のバード・ドーパントと比べスタイリッシュな身体となり、黒い羽の様な外装が装着されている。

 

 

『━━━!!』

 

 

「ッ⁉︎速い!」

 

━━ガッ!!

 

「ぐっ!」

 

 

アクセルはエンジンブレードを振るうが、クロウ・ドーパントはソレを跳躍する事で回避。

そのままアクセルの顔面に蹴りを叩き込む。

 

 

『アームファング』

 

「はぁ!」

 

━━ブォンッ!!

 

 

そこに、右腕に白のアームドセイバーを形成させたWが斬りかかる。

 

 

━━トッ

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

だが、クロウ・ドーパントはソレを再び跳躍で回避。見事、アームドセイバーの上に立ち余裕を見せる。

 

そのような芸当を見たフィリップは驚愕し一瞬、動きが止まってしまう。そんな隙を見逃さなかったクロウ・ドーパントはWを吹っ飛ばすように蹴りつける。

 

 

『おいおい、なんだよアイツ。さっきと比べて動きが全く違う!』

 

「まるで別人のような動きだ……!」

 

 

翔太郎と照井はクロウ・ドーパントの動きを分析するが、相手はそんな時間を与えず攻撃を絶え間無くし仕掛けて来る。

 

すると、フィリップが突如として叫ぶ。

 

 

「間違いない!彼女は『過剰適合者』だ!それも江草 茜(えぐさ あかね)とは比べ物にならない程だ!」

 

「どう言う事だ、フィリップ!」

 

 

フィリップの発言に照井は問いを求める。Wはアームドセイバーでクロウ・ドーパントの攻撃を防ぎながら照井の問いに答える。

 

 

「おそらく、彼女の"個性"(からす)とバード・メモリがなんらかの突然変異を起こしたと推測できる。このままでは……」

 

『どうなるんだフィリップ!』

 

 

翔太郎が声を荒げる。躊躇うようにフィリップは口を開く。

 

 

「このまま放っておけば……ガイアメモリの影響で死に至る……」

 

「何………⁉︎」

 

 

ガイアメモリの毒素は精神だけではなく身体までにも影響を及ぼす。

しかもガイアメモリとの適合率が高ければ尚更だ。

 

それを阻止するにはメモリブレイクをする必要があるが、クロウ・ドーパントはとにかく素早い。

おそらくマキシマムドライブが命中する確率は低い。その為には彼女の動きを止める必要があるだろう。

 

 

「………え?お空……死ぬ……どう言う事………」

 

「古明地……!」

 

「………ねぇ、お空」

 

 

さとりはおぼつかない足取りで歩く。彼女の頬にツーと涙が流れる。

 

 

「例え、私の事を嫌っててもいい。私を殺したい程憎いならそれで良い……けど………」

 

『………』

 

「私は……初めて、私の"個性"を知ってでも友達になってくれた貴方が………大好きなの……』

 

『………ッ⁉︎』

 

 

すると、クロウ・ドーパントが頭を抑え暴れ始める。

その様子にさとり達は驚愕を露わにする。

 

 

『これは……どうなってやがる!』

 

「分からない……が、古明地さとりの言葉でクロウ・ドーパント、いや霊烏路空の精神に何かが起きたのだろう」

 

 

『━━━◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!!』

 

 

クロウ・ドーパントは言葉にならない声を上げながらその場で暴れ始める。

おそらく、ガイアメモリの制御が効かなくなっているのだろう。

このままでは危険という事が目に見えて分かる。

 

 

「お空ーーーー!!」

 

「くっ……照井!僕達が抑える!その間に……!」

 

「待てフィリップ!それではお前が巻き添えに……!」

 

『馬鹿野郎!フィリップ!他の方法を……!』

 

『━━⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!!!⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!━━━━━⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!!!』

 

「お空!気をしっかり持って!」

 

「時間が無い!このままでは彼女は!!」

 

「くっ……やるしか無いのか……!」

 

 

アクセルはそう呟きながら手元にストップウォッチを模したデバイスを取り出す。

彼はそれをドライバーに差し込み━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が抑えるッ!!!」

 

 

━━ガッ!!

 

 

突如として変身した状態の天倉がクロウ・ドーパントの背後から組み付き動きを封じたのだ。

 

 

「天倉さん⁉︎」

 

「獲ったァ!!!今の内に早くッ!メモリブレイクをッ!」

 

「何を考えている!それではお前が!」

 

 

照井が天倉に向かって叫ぶが、天倉は更に力を込めてドーパントを拘束する。

 

 

「今の俺はこの中でも純粋な(パワー)1番ですッ!早く!このままじゃ空さんが!」

 

 

『━━⬛️⬛️ッ!!!⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!!!』

 

 

 

瞬間、クロウ・ドーパントは一瞬だけ緩んでしまった天倉の拘束を解くと、手を手刀のような形にする。

 

そして

 

 

 

 

━━ドグシャァッ!!!

 

 

 

 

「━━ガフッ!アガッ、ゴポッ!!??」

 

「いやッーーー⁉︎」

 

 

クロウ・ドーパントの手が天倉の腹を貫通する。

天倉は変化した口の隙間から血がゴポリと溢れ出る。

あまりの光景にさとりは目を覆う。

 

 

 

「……はは、ハハハ……ハハハハハ!捕まえたァッ!!!」

 

 

━━シュルルルルルルルルルルルッ!!

 

 

『━━!!??』

 

 

すると天倉の身体中から赤い触手が伸び、腹に腕が突き刺さったまま自分ごとドーパントに触手を巻き付ける。

 

 

「今だ!空さんを早くッ……!」

 

「………フィリップ、左。メモリブレイクの準備だ」

 

『あぁ、天倉が……いや、仮面ライダーがそう言ってんだ。やるぞフィリップ!』

 

「あぁ!」

 

 

アクセルは手に持ったデバイス、トライアルメモリをアクセルメモリの代わりにドライバーへ挿入する。

 

 

「全て…振り切るぜ!」

 

Trial(トライアル)

 

 

━━ヴォォォォオオオオオンッ!!!

 

 

Trial(トライアル)

 

 

すると、仮面ライダーアクセルの姿がランプと共に赤い姿から黄色い姿。

そして先程までの重厚な感じから一転、青くシャープでスタイリッシュな姿。高速形態アクセルトライアルへ変身を果たした。

 

そして、再びトライアルメモリを抜くとそれは空中へ放り投げる。

 

 

━━ヴォンッ!

 

 

刹那、アクセルトライアルは目にも留まらぬ速さでクロウ・ドーパントを蹴りつける。

 

 

ppppppppppp………

 

 

━━ドドドドドドドドッ!!

 

 

トライアルメモリがタイマーが鳴り響きながら彼は何度も何度も蹴りつける。

 

それに対して仮面ライダーWはファングメモリの角を模したレバーを3回押す。

すると音声と共にWの右足に白の刃『マキシマムセイバー』が形成され、その場で跳躍する。

 

 

Fang MAXIMUM DRIVE(ファング マキシマムドライブ)‼︎』

 

 

『「ファングストライザー!!」』

 

 

━━ズギャァアンッ!!!

 

 

Wは回転しながらクロウ・ドーパントへ回転蹴りを恐竜の頭部のようなオーラと共に喰らわせるとクロウドーパントの身体にFの残光が刻まれる。

 

 

━━ブチブチッ!!

 

 

それと同時に天倉とクロウ・ドーパントに巻き付いていた触手がファングストライザーの影響で千切れる。

 

 

「天倉ッ!!」

 

 

アクセルのトドメの蹴りと共に天倉をクロウ・ドーパントから引き剥がす。

すると、ドーパントの身体にF以外のTの蹴り跡が刻まれていた。

そして、落ちて来たトライアルメモリを掴みアクセルは呟く。

 

 

Trial MAXIMUM DRIVE(トライアル マキシマム ドライブ)

 

 

「9.8秒…それがお前の絶望までのタイムだ」

 

 

『━━━━⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!!??』

 

 

 

 

 

━━ドゴォォォォンッ!!!

 

 

クロウ・ドーパントの叫びと共に彼女はマキシマムドライブによって爆散する。

 

 

━━パキリ

 

 

そして爆炎が晴れる頃にはクロウ・ドーパントの姿は無く、元の姿である霊烏路空へと戻っていた。

 

 

「お空ッ!」

 

 

そして、さとりが元に戻った空の元に駆け寄る。彼女は必死に名前を何度も何度も呼びかける。

 

そして━━

 

 

「……さと…り……様」

 

「お空っ!」

 

「ごめん……ね……迷惑を…掛けちゃっ……て」

 

 

空はそう言うとパタリと意識を失う。どうやら無事にメモリブレイクを終える事が出来たようだ。

 

 

「良かった……本当に……!」

 

「………あぁ」

 

 

さとりの隣で仮面ライダーWは変身を解き元の姿へと戻る。それと同時に少し離れた場所で頭を抑えながら翔太郎も起き上がる。

 

 

「どうやら、彼女は無事みたいだな…」

 

「あぁ、本当に良かった」

 

 

 

 

 

「しっかりしろ!!天倉ッ!!!」

 

 

瞬間、照井竜の声が廃工場内に響き渡る。

そこには身体の所々から多量の血を流している天倉と必死に腹部を手で押さえる照井の姿があった。

 

 

「天倉ッ!酷ぇ怪我だ……!急いで救急車を!」

 

「天倉さん!天倉さんッ!」

 

「右手の原型を留めていない、更にほぼ全身の皮膚が爛れ、呼吸も困難になっている……!急いで止血を!特に腹部からの出血が酷すぎる!」

 

 

「ゴフォッ!ガハッ!コヒュー……ハァ…ハァ…グガッ!……グ、ゴポアッ…ハァ……ハァ……」

 

 

その場の全員は必死に天倉に処置を施すが、血が更に溢れ出る。

 

 

「ハァ……ハァ……みな…さん……グアッ⁉︎ッ、がポッ…!」

 

「それ以上喋らないで下さい!傷が……!」

 

「グ、…空……さんは……?」

 

「無事だ!お前のお陰でなッ!だから喋るのはやめろッ!」

 

 

さとりと翔太郎が叫ぶ。すると天倉の口から微かだが、笑うような声が漏れる。

 

 

「良かった……本当に……良かった……」

 

 

そう呟くと天倉の意識はプツンと電源が消されるように深い闇の底へ落ちるように途切れた。

 

 

 





なぁ、知ってるか?
これでまだ1日も経っていないんだぜ?


《今日1日で天倉くんが体験した怪我》

バード・ドーパントによる背後からの攻撃。

キャッスル・ドーパントのレーザー直撃。

三羽烏によるリンチ。

バードキャッスル・ドーパントの強化レーザー直撃。(火傷、裂傷、その他諸々)

必殺技の反動。(右手ミンチ)

クロウ・ドーパントによる手刀(腹に風穴開く)



…………

…………

…………


誰かぁぁぁぁぁぁッ!!お客様の中にお医者はいませんか!!
副業で仮面ライダーやってる人でもいいんで誰かぁぁぁぁぁぁッ!!




アマゾンズのグロ要素を主人公に注いだ結果がコレだよ!



《ドーパント紹介》

【ハードキャッスル・ドーパント】

キャッスル・ドーパントが進化した姿。青羽と黄羽の思いを背負ってパワーアップして黒くなったドーパント。
精神もガイアメモリによって汚染され、やや外道な性格へと変化してしまった。
ちなみにやられても消滅はしない。

しかし、キレた天倉くんによるハイパー無慈悲+ブラックハザードで一方的にボコボコにされた。


モチーフは勿論キャッスルハードスマッシュ。



【クロウ・ドーパント】

バードメモリと霊烏路空が過剰適合してしまい、バード《鳥》からクロウ《烏》へと進化した姿。
容姿はアマゾンズseason2のイユが変身するカラスアマゾンそのままであり、パルクールを取り入れた戦闘を行う。




この三羽烏達は原作主人公である緑谷のような無個性が他にいたら?
そしてその無個性の人物が個性に憧れガイアメモリに手を出してしまったら?と考えながら出しました。

それにしても……天倉、すっげぇ重症だな……。
緑谷、オールマイトもがっつり引くレベルの怪我なんだけど。



アドバイス、感想等がありましたら下さると助かります。
評価の方もよろしくお願いします。


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第43話 長かったD/この後無茶苦茶

あ、ありのまま起こった事を話すぜ……!
おれは4月中に次話を投稿しようとしていたらいつの間にか6月になっていた。
な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされ(ry



ハイ、言い訳はもういいので読者の皆さん投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。

なんか評価と一緒に付いていたコメントに「ヒロアカじゃなくて仮面ライダーじゃねぇか」とか「ギャグがパクリでつまらん」と書かれ、モチベーションがただ下がりして執筆が遅れてしまいました。


……うん、僕もそう思った(開き直り)






真っ白な空間。

だだっ広く、何もないようなその場所に天倉ともう1人、別の人影が居た。

 

「………」

 

「……あ、お久しぶりです。バナナ師匠」

 

 

前回、とんでもない目にあった天倉の前には懐かしい。金色の甲冑を身に纏い、バナナを模した槍を手にした騎士が立っていた。

 

そして「さてと……」と呟きながらその場でファイティングポーズを構え始める。

 

 

「と言うわけでサッサとやりましょうか。どうせ俺が死ぬまで目が覚めないんでしょうし」

 

「ほう、威勢がいいな。……だが、その身体でやれるのか?」

 

「はぁ?なに言って───」

 

 

すると、自分の身体に違和感を感じた天倉はチラリと視線を自分の身体に向ける。

 

するとは右手はぐちゃぐちゃに潰れ、身体の所々には皮が爛れ、肉が抉れ、挙げ句の果てには腹にポッカリと穴が開いていた。

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああッッ!!??俺の身体が子供には見せられない状態にィィィィィィッ!!??」

 

 

気がつくと、そこはいつものバナナ道場(夢の中)ではなく、見覚えの無い病院だった。

 

病院?何故に?

………確か、頭に血が上って無我夢中でレジスターの養分供給作動スイッチを入れてパンチしたら、なんか自分の手がミンチになったんだっけ?

 

で、その後は空さんに腹パン……と言うか貫かれてそのまま翔太郎さん達が……あれ?もしかして俺、死んでる?

 

するとガララッと音を立てながら扉が開き、そこから見値子さんが果物が沢山盛られている籠を持って入ってくる。しかもヒーロースーツでは無く私服だ。

どうやらあの世では無い事は確かなようだ。

 

 

「──⁉︎ あ、天倉くん⁉︎生きてたの⁉︎」

 

「すみません。泣いていいですか?心にグサっと突き刺さったんですけど」

 

 

なんで死んだ事にされてるの?体育祭の時だってみんなに死人扱いされたし……というか俺に対する一言酷くないですか?

そう簡単に死ぬわけないだろ!

 

 

「え、いや……天倉くん、本当に大丈夫ですか?複数の内臓や骨が酷く抉れて皮が焼け爛れて大火傷の上に右手が複雑骨折+限界が留まってない状態だったんですけど………」

 

 

前言撤回、よく死ななかったな俺。

……あ、そうだ。古明地さんはどうしたんだろう?ちょっと聞いてみようか?

 

 

「あ、そういえば古明地さんは───」

 

「あー、いや……隣。隣」

 

「え?何が───って、うわっ⁉︎」

 

 

見値子さんに指を指された方向に顔を向けると目を開けた状態でブツブツと何かを呟いている古明地さんがいた。

って言うか怖ッ⁉︎目は血走ってるし、瞳孔はガン開きだし⁉︎

 

 

「こ、古明地さーん⁉︎しっかりして!いや、マジで!って言うか目怖っ⁉︎」

 

「───あ……あ、あ……あ」

 

 

次第に目から光が宿っていく。なんか「あ」って言いながらワナワナしているけど一体どうしt━━━

 

 

「天倉さ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛」

 

「イ゛ェ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!??」

 

 

古明地さんは急に俺の身体に抱きついてくる。なんかもう。小さな女の子だから良い匂いとか柔らかな肌が服越しに感じるとか色々と危ない感じだが、それ以上に身体中の傷が悲鳴を上げている。

 

 

「よかったぁッ!本当に!生きててッ!!」

 

 

ていうかマジで痛いんだけど⁉︎痛い!本気で痛い!ちょっと、マジでシャレになってないんだけど古明地さん⁉︎

女の子が出しちゃダメな力なんだけど⁉︎

 

すみません!一回離してもらって━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━GAMEOVER

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ヒエッ⁉︎貴方また来たの⁉︎ちょっとエリス!コイツ戻して!例え神が相手でも容赦無く殴って来るから!……え?規則を破る?いいからさっさと生き返らせて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<テッテレテッテッテー♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ハッ!!??やばい!一瞬、あの世に逝ってた⁉︎青髪の女神にまた会った⁉︎アレって夢じゃなかったの⁉︎

紫色の土管が見えたのは恐らく気の所為だろう。うん、そうに違いない。

 

 

「天倉さん大丈夫ですか⁉︎もしかして気分が悪いんですか?一瞬、泡を吹きながら白目剥いてましたよ⁉︎今から水を持って来ますね!」

 

「ありがと(……古明地さんは悪くない。うん、きっとそうだ。そうに違いない)」

 

 

多分俺が心配だからその場の勢いで抱きついて来たんだろう。

故に、ラブコメのような「よかった無事でギュー」みたいな口から砂糖が出るような場面では無い。

 

……なんだろう。自分で言ってて悲しくなって来た……。

 

 

「ところで天倉くん、怪我は大丈夫ですか?気分が悪いとか大丈夫ですか?いや、マジで」

 

「え……?いや特に大丈夫ですよ?なんならこの場で腕立て伏せ150回しましょうか?」

 

「もうこんなに元気に……⁉︎」

 

 

あの、見値子さん。そんな化け物を見るような目はやめてくれません?本気で傷つくんで。

泣きますよ?本当に泣きますよ⁉︎

 

 

「駄目ですよ天倉さん。例え元気になっても後遺症が残る可能性もあります。これからは私が看病するので安心してください」

 

「えっ?あ、いや……大丈夫だよ?特にそんn──」

 

「駄目です」

 

「ほ、ほら背中から触手生やせるからそんな事しなくt──」

 

「駄目です」

 

「い、いや古明地さんには悪いk──」

 

「駄目です」

 

 

こ、この娘……壊れたステカセのように……⁉︎断固として退かないだとッ⁉︎何故だッ⁉︎何故、こんなバイオハザードに出てくるハンターみたいな奴の看護をしようとするんだ⁉︎

 

………ハッ⁉︎そ、そうかッ!!!

彼女は例えバイオハザードに出てくるようなクリーチャー相手でも助けて貰った恩義を感じて無理をして振舞ってると言う訳かッ!

あり得る……!彼女は精神的に追い詰められている状態だ!その精神的な拠り所が今、俺にしか無い状況となっている。

 

そうでも無ければ、こんな俺の面倒を見ようだなんて思わない筈だッ!そうに違いない!!!

 

 

「古明地さんッ!見値子さんって頼れるヒーローだよねッ!」

 

「え?あ、天倉くん?急にどうしたんですか?嬉しいけど……」

 

「はい。天倉さんも立派なヒーローですよ。私にとって特別な……」

 

 

くっ!!何故だッ!違うんだよ古明地さん!君にとって特別なヒーローはもっとこう……………アレだ。凄いヒーローなんだよ!(語源力皆無)

 

 

「と言うわけで見値子さん。天倉さんは私がお世話するのでヒーローの仕事に戻って大丈夫ですよ」

 

「いや、でも警察の事情聴取が……」

 

「合間を縫ってお世話します」

 

 

……なんだろう。見値子さんって初めて会った時はもっとこう、フワフワした感じのうちの母さんと麗日さんを足したようなキャラだったのに今じゃ全然違うな。

これが俗に言うキャラを守るみたいな感じなのかな?

 

見値子さんはしばらく考えた後「分かった」と呟き果物が盛られた籠を俺の側に置く。

 

 

「それじゃあ、さとりちゃん無理しないでね。それと多分後で警察が来るから天倉くんに迷惑をかけないでね」

 

「もちろんですよ。それに天倉さんに迷惑をかけるだなんて万が一にもありませんよ」

 

 

なんかトントン拍子で話が進んでいってる気が……。

あ、そうだ。聞きそびれていた事があった。

 

 

「見値子さん、事件はどうなったんですか?」

 

「あ、その話ですか?実は─────

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「どうだフィリップ。なにか分かったか?」

 

「うむ……複雑な構造だ……いや、それ以前に僕達の知るものと違う」

 

 

探偵事務所のガレージにウンウンと唸るフィリップと書類の束を手に持つ翔太郎が居た。現在、彼等は警察の協力の元にガイアメモリの売買ルートを探っており製造場所や製作方法を調べており、これ以上自分達の愛する町を汚すまいと奮起しているところだ。

 

 

「しかし、照井竜が言っていたのは本当だった。コレはガイアメモリメモリでは無い」

 

「模造品……いや、偽物ってところか?」

 

「その通りだ翔太郎。これは形状そのものはガイアメモリに極似しているが内部構造は全くの別物だ」

 

 

「ふぅ」と一息つくと作業を止めたフィリップはカメラを手に取りカシャリと写真を撮る。

 

 

「見てくれ翔太郎。コレは『マスカレイドメモリ』だ……が、自爆装置が取り付けられていない。それどころか中毒性の毒素自体が無い。極めて人体に無害なものだよ」

 

「成る程な……つまり考えられるのは、園咲や財団とも関わりがない第三者の仕業か………」

 

 

ポケットからいくつかのメモを取り出し、翔太郎はフィリップに訊ねる。

 

 

「フィリップ新しいキーワードだ。『警察職員』『個性』コレでどうだ?」

 

「よし、やってみよう」

 

 

そう言うとフィリップは真っ白な本を手に両手を広げ意識を集中させる。深い意識の中でキーワードに該当するものを見つけようとする。

 

 

「………駄目だ。他にもキーワードを試してみたが該当する結果が見つからない」

 

「そうか……訳が分からねぇ。どうして警察の職員達がガイアメモリ……の偽モンなんかを持ってたんだ?」

 

「その通りだ。十中八九、洗脳系のガイアメモリ……いや"個性"によるものだと思う……だが何の為だ?照井竜、警察関係者への妨害か?それとも………?」

 

 

フィリップは頭の中であらゆる可能性を模索するが中々答えが見つからない。

 

 

「………はぁ、しょうがねぇ照井の所行くか。まだ霊烏路も目が覚めてないがジッとしているよりはマシか」

 

 

翔太郎は足で、フィリップは頭で各々のいつものやり方で捜索を始める。

これ以上、依頼者とその依頼者を信じ切ったヒーローの為にも2人で1人の探偵は犯人探しに躍り出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

(……進展は無しか)

 

 

ベッドの上に寝転がりながら俺は見値子さんの話を聞いた。

未だに古明地さんの放火の容疑は晴れず、現在、警察署の職員の何人かがガイアメモリによる影響で慌ただしくなっているらしい。

 

何というか、死ぬ思いで助けたと言うのに釈然としない結果だ。

 

俺は怪我をしたがそんなもの放っておけば治るからいい。

問題は彼女だ。友達に裏切られた事がどれ程のショックだったかは俺自身、身に染みて知っている。

 

 

「天倉さんリンゴ食べますか?」

 

「あ、食べます」

 

 

ごほん、古明地さんはその優しい性格故に確実に無理して笑っている。

俺はそう確信している。

上辺は笑顔を見繕って現実と向き合う事が怖いのだ。

 

 

「それじゃあリンゴ磨り下ろしますね」

 

「あ、いやそのままでm「駄目です」

 

 

……ごほん。彼女は俺と似ている。

だからこそ

 

 

「はい、口を開けてください」

 

「えっ………い、嫌です」

 

「開けてください」

 

「あの、だがr「あーんですよ?」

 

 

 

クッソ締まらない!

俺が難しいような言葉遣いで古明地さんの心情を述べようとしているのになんでかなぁ!

 

………ってアレ?今、『あーん』って言った?『庵』でも『餡』でも『啞ーン』でもなく?あのバカップルが行う口から砂糖inゼリー的なモノが潰れる流れる溢れ出るのアレ?

 

 

 

………ゴフッ───!

 

なんて、いつも吐血すると思うな!吐きそうになったがギリギリで留まったぞ───あ、やばい。傷口から血が溢れ出てきた。

 

 

━━pppp

 

 

「……電話?」

 

 

側に置いてあったスマホを掴み画面を見ると『拳藤一佳』という名前が表示されていた。

 

………けけけけけけ拳藤さんーーーーーーッ!!?

 

じょじょじょ女子から電話だとーーーーッ⁉︎

コレは罠か⁉︎罠なのか⁉︎アレか⁉︎女神の悪戯か⁉︎

 

い、いや……しかし、よくよく考えてみたら友達と電話するのは当たり前だよな?うん。当たり前に決まってる。

……よし、出よう!思い立ったが吉日!よーし出るぞ!今すぐ出るぞー!

 

 

………クッ!鎮まれ俺の右手!簡単な事だろ!ただ画面にある通話ボタンを押せばいいだけなんだぞ⁉︎

 

くそっ!ボッチ生活の反動で女子と電話するという事実に拒否反応を起こしていると言うのか⁉︎早く出ないと拳藤さんの好感度が下がって──────

 

 

 

 

「────出ないんですか?」

 

 

 

 

俺が視線をすぐ側に移すとハイライトの失った瞳をギラつかせながらスマホの画面を除く古明地さんがいた。

 

………えっと……?

 

 

 

「どうしました?私など気にせずに早く出てはいかがですか?それにしても拳藤一佳さんですか……素敵な名前ですね」

 

 

 

彼女はニッコリと笑みを浮かべているが、目は全く笑っていない。

ブルリと謎の悪寒に身体を震わせる。

 

え?何、怖いんだけど。

そしてさっきまでの震えが嘘のように止まり古明地さんの突き刺さるような視線を気にしながら通話ボタンを押す。

ちなみに別の意味での震えが発生し始めたのは言うまでもない。

 

 

「……もしもし?」

 

『あ、もしもし天倉?あのさ、ちょっと八百万について聞きたいんだけど……』

 

 

八百万さん?八百万さんと言えば体育祭ではアームストロング砲を渡して来たのがとても印象的だけど……いやそれは関係ないか。

彼女がどうかしたのだろうか?

 

 

「八百万さんがどうかしたの?」

 

『あのさ、八百万って変な宗教にハマったりしてない?』

 

「変な宗教?体育祭では精神統一の為に変な仏像を創造しているのは知ってるけど……?」

 

『あ、いやなんかね?体育祭の時と比べて明るいと言うか……無駄にハキハキしていると言うか……たまに「命燃やしますわ」とか呟いてて………』

 

「何それ怖い」

 

 

いや、別に明るくなった事は精神的成長を示しているからいいと思うんだけどさ、急すぎません?

 

 

『うん、職場体験自体は問題無いけどさ。あ、いやヒーロー活動かどうか微妙なところだけど……って八百万⁉︎何変な儀式始めてんの⁉︎』

 

 

え、儀式?どう言う事?

 

 

『ちょっと⁉︎なんか浮いてない?いや「命燃やしますわ」って言われても……って今度は変な紋章が浮かび上がって来た⁉︎』

 

 

えっ⁉︎何⁉︎そっちで何が起きてるの⁉︎滅茶苦茶気になるんだけど⁉︎

 

 

『あぁ!もう!すまん天倉!収拾つける為にちょっと電話切るねそれじゃ!』

 

 

………えぇ……なんだろう。

俺の知らない所でこう……とんでもない事が起きていると、ハブられている感が凄まじいな。

 

でも、あれだ。耳元で女子の声が聞こえてくるって言うのは……なんか良いな……。

 

 

 

「────へぇ、そうなんですか……」

 

 

 

耳に古明地さんの声が入ってくると同時にゾクリと背筋に冷たいものが走る。

振り向くとそこには首がグキリと傾き笑みを浮かべているが目が全然笑ってない彼女がいた。

 

………あ、成る程。確か古明地さんって心の中を読めるんだっけ?

 

 

「古明地さん」

 

「なんですか?」

 

 

ここは正直に心のままに話すしか無い。そう思った俺は彼女の目をジッと見て一言放った。

 

 

「正直、女子と電話するの興奮した」

 

 

この後、無茶苦茶顔面にグーパンされた。解せぬ。

 

 

 

 







と言うわけで僕の文才がコレ以上、上がらないのでそこら辺を了承してこの小説を読んでくださると幸いです(今更)

まぁ、安心してください。
次回が後半なのでこのギャグのタグを入れてる癖にギャグが入ってこないクソ作者が執筆するオリジナル編(笑)は終了になると思います。



ちなみに『古明地さとり』の性格が色々と歪んでいるのはドーパントに命を狙われ、難癖つけられ殺されかけ、終いには友達と思ってた人物が主犯だったと言う。


ぶっちゃけ、こんな事体験したら精神が崩壊してもおかしくないと思います(クソ作者の考え)
そんな中、最後まで自分を信じて身を呈して自分を救ってくれたヒーローが現れたらそりゃ………ヤンデレになっても仕方ないよね(小並感)


早くオリジナル編を終わらせてヒロアカ本編を書きたいなぁ……。



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第44話 長かったD/別れは唐突に


気がついたらビルドの方は幻徳さん仲間になってるし、地球外生命体が完全体になってるし、ブロス兄弟死んだし、万丈覚醒したし、内海さんがぶっ壊れたし、戦兎と葛城がフュージョンライズしてボトルヤローに変身して…………時間が流れるのって速いんだなぁと思いました。



これにてオリジナル編の後半に当たる章は終わりとなります。




 

 

何故か古明地さんが襲って来たが事なきを得た。

いやービックリしたよ。

急にハイライトの失った目で淡々と殴りに来たんだから。

 

え?怖く無いのかって?いや、崩壊とか爆破とか色々経験して来た俺にとってそう言うのは今更なんだよね。

 

殴られるのには慣れてますから(白目)

 

 

なんやかんやしていると古明地さんは警察の方と事情聴取する為、これから署の方へ向かうらしい。

すると去り際に古明地さんが「いつでも見守っていますね」と言われた。

…なんだろう。途轍もなく面倒な事に巻き込まれている気がしてならない。(※既に面倒に巻き込まれています)

 

 

 

「……………」

 

 

 

そんな俺ですが困っている事が一つあります。

 

 

 

「……………」

 

 

 

なんかコッチを見ている不審者がいる………。

左腕に不気味な人形を乗せてこちらをジッと見つめているんですけど。

これは警察に連絡した方がいいのだろうか?それともそっとしておいた方がいいのだろうか?

 

あ、ヤバイ。とんでもない緊張感とストレスで吐血しそう……。

 

 

「………驚くべき生命力ですね。あれほどの重症を僅か半日でほぼ完治させるとは」

 

 

キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!??

 

あれ?なんだろう。この凄いデジャヴは……相澤先生の時もやった気がする。

 

 

「異常なまでの再生能力、驚異の身体能力。それに加えてただのトカゲに変身する"個性"と言う訳でもない。そもそもトカゲと言うには考えられないパワーにスピード、そして何より逆境立たされた時の爆発力………"個性"は強力に複雑に深化していき最終的には誰にもコントロールできない。個性特異点と言う終末論の一つです。貴方はどうも思いますか?」

 

 

えっと………どう言う意味だってばよ。

この人、急に話しかけて来たと思ったら難しそうな単語をペラペラと口から出してくるんですけど?

 

 

「貴方の"個性"はその終末の一片に過ぎませんが、とても興味深いものです。暴走の危険があるにも関わらずそれを使いこなしているとは……」

 

 

……うん。ツッコミたいところが山程あるけど、なんでこの人は人形に話かけているんだろうか?

 

 

「すみません、こっちを見て話してくれませんか?」

 

「いえ、このままで結構。ところで会長から贈り物です」

 

 

会長?会長って……誰だっけ?

そう思っていると人形の不審者(仮)はタブレットを取り出しこちらに渡してくる。

 

何だろうと思っていると画面に何かが映し出される。

 

 

『Happy birthday!!Amazon!!』

 

「人違いです」

 

 

そう一言呟くとタブレットの電源を切る。

よし、俺は何も見ていないぞー。なんか見たことのある胡散臭い人が写っていた気がするけど気のせいだったぞー。

 

 

『───酷いじゃないか天倉くん!!人の話は最後まで聞くものだぞ?』

 

「うわっ……」

 

『ハハハハハ!そんな顔をしないでくれたまえ。とりあえず一言だけ言っておこうじゃないか。昨日の活躍見事だった!』

 

「アッハイ」

 

 

やっぱり見た事あると思ったら鴻上ファウンデーションの会長さんじゃないか。

この人凄い胡散臭いから苦手なんだよなぁ。

 

 

「と言うか今日は俺の誕生日じゃないですよ?7月ですよ誕生日は」

 

『成る程7月か!里中くん!記録しておきたまえ!』

 

「しまった!墓穴掘った⁉︎俺の誕生日を何に悪用するつもりですか!」

 

『落ち着きたまえ天倉くん。それに今日はヒーローとしての君の誕生日なのだよ?昨日は本当に良く頑張ってくれた。画面越しで見させてもらったが、ドーパントとの闘い……実に見事だったッ!!!』

 

 

えっ?なんでこの人はそんな事知ってるの⁉︎怖っ⁉︎もしかしてずっと監視されていたってわけ?鴻上ファウンデーションの権力ってすげー!……いや、関心している場合じゃないよね。と言うかそれって盗撮じゃないですかヤダー!

 

……うん。考えるのを破棄しよう。

 

 

「………すみません。言っている意味が分からないのですが」

 

『ハッハッハッ……天倉くん!……君には色々と迷惑を掛けたようだね』

 

「はい全くですね。どうしてくれんだこの野r……いえ、なんでもありません」

 

 

まだだ……まだ怒ってはいけない……今怒ると確実に面倒臭い事になる……気がする。

くっそ、画面越しから胡散臭いオーラがプンプンと放たれている所為か、すぐにでもこのタブレットを破壊したい……!

 

あぁ……この職場体験が終わっても、相澤先生に補習確定宣言されてるんだよなぁ……鬱だ死にたい。

 

 

『ハハハ、元気でよろしい!……だが自己犠牲はよろしいとは言えない。レジスターを弄ったらしいが…覚えているかね』

 

 

レジスター……?あぁ!昨日の謎パワーパンチの事か。

俺の左上腕に装着されている腕輪(レジスター)は俺にとって予備充電のようなもので長時間の個性使用を可能としてくれる便利アイテムの認識で良いんだよね?

昨日はほぼ一日中"個性"を使ったけど、いやぁデメリット無しで"個性"を使えるのって本当に素晴らしいね。

 

で、そのレジスターがどうしたんだろう。弄ったと言ってたけど……昨日適当に勘で操作したら凄いパワー発揮したんだよな。

 

その結果が右手がミンチよりも酷い状態というね(白目)

 

 

『レジスターは君にとって予備バッテリーの認識で間違っていない。しかしレジスターを通して君の身体能力や諸々を研究させてもらっているが……君の"個性"はねカロリーを燃料に自身の骨格や肉体を変形させる事も可能だ。つまりッ!!!』

 

「………つまり?」

 

『……一時的なパワーアップ可能と言うだよ』

 

 

ニッコリと微笑みながら言う。

うん、と後回しに言ってるけどつまり"ドーピング"って事ですよね。

ヤバイな。そんな物使ってアレ(右手ミンチ)か……なんだろう、俺って人間だよね?ただの"個性"を持った人間だよね。

 

時々、理性を失って暴走するけど人間に分類されているよね(震え声)

 

 

『職場体験1日目……どうだったかな⁉︎』

 

「それはもう濃い一日でした」

 

 

なんかドーパントと言う怪物と遭遇して、背中怪我してまたドーパントと遭遇して戦って怪我してそんでもってドーパントと戦って怪我して死にかけて………いや、本当に良く死ななかったなぁ。

 

 

『そうかそれは良かった!こちらも頑張った甲斐があるものだよ』

 

「ああ、いえそんな………はい?」

 

 

頑張った甲斐?……なんだろう嫌な予感がするんだけど。

 

 

「聞きたくないんですけど…それってどう言う……?」

 

『いやぁ君には是非、この風都で色々な事を学んでもらいたくてね。ハッキングして君をそちら(風都)に行かせた訳だよ。里中くんには色々と頑張って貰ったよハハハッ!!!』

 

 

……はい?pardon?言っている意味がちょっと理解出来ませんね。どうやら俺の頭では理解する自体、不可能なようだ。

 

つまり?所長さんが実際にこちらに応募したと見せかけて実は鴻上コーポレーションが一枚噛んでいたと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━ボギンッ!

 

 

俺は無言でタブレットを折るとそのまま窓を開けて天空の彼方へとスパーキングッ!!

 

 

「あんたのせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!俺の職場体験どうしてくれるんだよぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

「何という美しく流れるような一連の作業。見事です」

 

「褒められても嬉しくない!そんでもって何故あなたは人形に目を向けたんだ!コッチを見ろッ!!!」

 

 

どうせアンタもなんだろ!!!アンタも俺を馬鹿にしてんだろこの野郎ーーーーーーッ!!!

そう思いながら俺はその人に組み付く。

 

 

「離しなさい。離しなさい」

 

「うっせぇ!そんな人形持って友達いないアピールかこの野郎!」

 

「離しなさい!離して!あっ、やめろお゛おおおお!駄目だから!これは駄目だからッ!」

 

 

そんなこんなで俺と人形の不審者(仮)が病室内で取っ組み合い争っていると左腕の人形がポーンと空中へ投げ出される。

 

 

「「あっ」」

 

 

そのまま人形は窓の外へ放り出され病院の前にある池に落ち、何故か人形はアイルビーバック的なポーズをしながら沈んでいった。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!?ダメだから!捨てちゃダメだからぁぁッ!!!」

 

 

謎の奇声を発しながら不審者(仮)はそのまま窓の外へ────ファッ⁉︎

 

 

「ちょっと⁉︎何やって────」

 

 

━━バシャンッ!!

 

 

 

ま、窓の外に飛び出してそのまま池にダイブしやがった……何やってるのあの人。と言うか生きてるよね?

 

 

<ナイヨ!ドコニモナイヨ⁉︎…ア、メガネモナイヨ!

 

 

あ、生きてる。

池でバシャバシャと人形探しているみたいだけど……。あれ以上関わりたくないな……。

 

……そっとしておこう。

と言うか、あの人何の為に来ていたんだっけ?

 

 

………まぁ、いっか。

それよりも短時間で色々あった所為か眠くなって来た。ちょっとだけ寝てもいい…よ……ね……zzZZ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、寝てる…ど、どうしよう?日を改めて来た方が良かったかなぁ?」

 

 

……うん、足音?……女の子の声……誰だ?

 

 

「これ…起こさない方が良いよね……?と言うか死んでる……?」

 

 

いや、死んでないよ。

 

 

「身体中包帯だらけだし……点滴が沢山つけられているし……え、本当に死んでる?」

 

 

いや、だから死んでないって。

……あぁ、眠いから勘弁して欲しいんだけどなぁ。

 

 

「えっと……取り敢えず、手紙だけは残しておいた方が良いのかな──ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!??」

 

 

パチリと目を開けるとそこには罠にかかった兎の如く片脚が触手に縛られ吊るされた状態のゴスロリの衣装で身を包んだ赤髪の少女が居た。

 

 

「え?何⁉︎何が起こってるの⁉︎と言うかどんな状況⁉︎」

 

「触手に捕まってる」

 

「いや、それは分かるけど!」

 

 

目の前の女の子は色々困惑しているみたいだがそれもそうだろう。俺の背中から触手が生えていればそりゃねぇ…。

ちなみに俺は最近になって"個性"の発動箇所を調節することによって触手のみを生やし操る事も可能となった。

 

……ヒーロー志望なのに徐々に敵みたく見た目が凶悪になって来ているのは気にしないようにしておこう。

 

それにしても……うーん。昨日色々な事を体験したのか、無駄に警戒し過ぎちゃってるな。目の前で吊るされている女の子も別に敵って訳でも無いしなぁ……。

 

 

「……えっと……そろそろ降ろしてくれませんか……?あ、頭に血が………」

 

 

あ、確かに。

赤髪の少女の言う通り触手を操作し丁寧に少女を降ろす。

 

それにしてもゴスロリを着ている女の子なんて初めて見たな。……え?吊るされてるならスカートが捲れてるんじゃないかって?

安心してください。ちゃんと触手でスカートの端を抑えていたのでセーフです。

それにしても昨日色々あった所為か、無意識に警戒しちゃってるなぁ……なんか悪い事しちゃった気がする。

 

 

「で、君は誰?」

 

「え、えっと……」

 

 

あ、あれ?なんか怯えてる?

まぁ、仕方ないよね。初対面の人に触手で捕まったんだからそりゃ警戒もするよね。

………あ、うん。別に気にしてないよ。雄英に入る前は日常茶飯事のようなものだったからネ。

 

あれ?目から何か熱いものが……涙かな?

 

 

「ヒッ……⁉︎め、めめめめ目から血が流れてるんですけど大丈夫ですか⁉︎」

 

 

あーーーー………成る程。

今回は口からではなく目からね、そう言うパターンね。

うんOK把握した。

 

 

「口から血が出るんなら目から血が出てもおかしくないよ。いいね?」

 

「……アッハイ」

 

 

よし、なんか無理矢理な気もするけど後で結膜下出血って誤魔化せばいいか。

……だけどこの娘。誰だ?

 

とりあえず俺のファン……は絶対に無いな。体育祭で黒歴史を晒した上にスカウト数0のヒーロー(限りなく敵の様相に近い)を好む奴なんているだろうか?

否、いる筈もない。そんな事あったら天変地異、オールマイトが体力の限界を迎えヒーローを引退すると同じくらいだ。

 

 

「で、本当にどちら様ですか?俺が知ってる限り君みたいな知り合いはいないんだけど……」

 

「え、………その……」

 

 

むぅ……これは困ったぞ。何というかこの娘は引っ込み思案なのかな?

……よし、ここはこちら側から積極的に声を掛けてみよう。オールマイトのようにジョークを交えてトークをしていけば自ずと心を開いてくれる筈だ───多分ッ!!!

 

 

「は──HAHAHA!何のようかなお嬢さん?見ての通り分かると思うが俺は怪我をしてしまってね。今、ものすごく腹が減っているところなんだ」

 

「え……?あ、ハイ……」

 

 

よし、掴みはOKだ。

ここでオールマイトのようにジョークを交え警戒心を無くさせる!

 

 

「それにしてもお嬢さん。とても美味そうな体をしてるじゃないか……ちょっとだけ……ちょっとだけでいいから左腕を食べさせてもらっても───」

 

 

「──────」

 ↑

ガタガタと体を震わせ血の気が引いていくお嬢さん

 

 

 

あ、あれ?おかしいな。ちゃんと(ブラック)ジョークを交えてトークをしたのに更に警戒されているような気がする。

 ↑

ジョークの意味を履き違えているアホの図

 

 

「……う」

 

「う?」

 

「……うぅ……あ、うふぇ……ぇぇぇぇええ…うぅ、ぐすっ……ご、ごべんばざい……ばだじのぜいでずぅぅぅぅ……」

 

 

な、なにィィィィィィィィイイイッ!!?

泣いただとぉぉおおおおッ!!?

 

俺にどこか落ち度があったと言うのかッ⁉︎馬鹿な!ちゃんとジョークを交えてトークした筈なのに!何故………!

 

 

「あ、あのー?」

 

「ぴぃっ⁉︎た、食べないでください!」

 

「食べないよ⁉︎」

 

 

酷くね?俺、大食漢と言うのは自覚してるけど、人肉なんか食べるわけ無いでしょ⁉︎俺は人肉嗜好なんて性癖はありません。

むしろ勘弁して欲しいところです。

 

 

「ほら、落ち着いて」

 

「いやぁぁぁぁぁあああっ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

「いや、ほんと落ち着いて⁉︎なんかコッチが悪いように見え……いや、悪いけどさ!本当にもう落ち着いてくださいお願いします!」

 

 

俺は何とか落ち着いて貰うためにジャンピング土下座ならぬジャンピング五体投地を行う。

しかし目の前の女の子は怯えてばかりで全く事態は変わらない。

 

お願いですから落ち着いてください。おおブッタよ、寝ているのですか?

 

 

と言うかこんな状況を誰かに見られたら色々と誤解されそうな────

 

 

「天倉起きてるk──────」

 

「あっ」

 

「あっ」

 

 

そこには扉を開けこちらを見たまま硬直している照井さんの姿があった。

 

……よし、神様。

あんた絶対俺の事を見放すどころかm9(^Д^)って感じに楽しんでるだろチクショウ。

 

 

「照井さ「俺に質問するな」……え?」

 

「俺はお前に質問しない。だからお前も俺に質問するな。分かったら一緒に署に来て貰おうか」

 

「すみません、本当に誤解なんです。だから逮捕だけは勘弁して下さい」

 

 

本日2度目のジャンピング五体投地。

 

相澤先生。貴方のクラスに犯罪者が出る事をどうか許して下さい。

……あ、ダメだ。頭の中で何度もシュミレーションしても許されるイメージが湧いて来ない。

 

 

「……何か勘違いしてないか?俺はあくまで君から事件について詳しい事を聞きたいだけだ」

 

「………え……本当に?」

 

「本当だ」

 

「マジですか?」

 

「マジだ」

 

「れありぃ?」

 

「警察をなんだと思ってるんだ」

 

 

よ、よかったぁぁぁぁぁぁああああああああッ!

何がよかったかはさて置いてマジでビックリした。本当にもう社会的に死ぬかと思った。

 

 

「………彼女は……?」

 

「え?あぁ、なんか寝ている間に忍び込んで来た……そういえば誰なんだこの娘」

 

 

そういえば何も聞けなかったんだっけ。寝る前にも不審者(仮)もいたけどあの人どうしたのかな?人形が池ポチャしたのは俺の所為だけど本気で関わりたくないんだよなぁ。

 

 

「………! 火焔猫燐⁉︎」

 

「え?火焔猫燐って………」

 

 

確か、古明地さんが探していた子じゃないか。でもなんで俺の所に来てるんだ?

すると照井さんはしばらく何かを考えたような動きを見せると俺に声をかけて来た。

 

 

「………天倉、すまないが古明地について聞きたい事がある」

 

「え?」

 

 

聞きたい事って……何故に今?

もしかしてまだ古明地さんの事を疑っているのか?

 

 

「……君の言いたい事は分かる。だが頼む。些細な事でも良いんだ古明地さとりについて何か違和感を感じた事はないか?」

 

 

違和感……?

いや、違和感って言われてもそんな簡単に……いや、あるな。

 

 

「なんか俺に付きっ切りで看病するとかいつでも見守っているとか言い出してました」

 

「いや、彼女のソレについてはコチラも充分に把握している……その、色々と災難だな」

 

 

照井さんは俺の肩にポンと手を乗せる。

………え、何?

何故に、やれやれって感じの顔をしてるの?何故にお前も苦労してるんだなって顔してるのこの人?

 

 

「……っと話が逸れた。精神的な方ではなく身体的な方がで何か違和感はあったか?」

 

 

身体的かぁ………と言われても、古明地さんの身体的な違和感なんてありまくりだと思う。

 

小学生くらいの容姿で色々と悟ったような発言に霊烏路空さんに様づけされる。

それに加えて俺が天に召されかける程の女の子が出しちゃいけないパワー……………あれ?

 

 

「どうした天倉?」

 

「あ、あぁ、いえ……古明地さんって腕力強めでしたっけ?」

 

「どう言う事だ?」

 

「いやですね、あんな小学生に満たないような容姿と言う事は筋肉量も然程多くはない事になりますよね?フィリップさん達と一緒に猫を探してた時に俺、古明地さんに引きずられたんですよね」

 

 

確か古明地さんの"個性"は心を読むものであり、決して増強系の個性では無かった筈だ。

それなのに怪我をした俺をものすごい力で締め上げたり、俺を引きずる形で運んだりする事は可能なのだろうか……?

 

と言うか何故、照井さんはそんな事を今になって聞いて来たんだ?

 

 

………ええい、まどろっこしい!

 

 

「照井さん教えてください!古明地さんに何があったんですか!俺だって事件に関わったんです。そんな遠回しにじゃなくて、ハッキリと言ってくれなきゃ分かりません!」

 

「………そうか、すまない……君もヒーローを目指す1人だったな…」

 

 

照井さんは目を伏せながらそう言うとコチラの目に見てハッキリと答えた。

照井さんのその一言は───

 

 

 

「先程、古明地さとりを取り調べしていた警官2名が重度の火傷を負い、古明地さとり本人が行方をくらました」

 

 

 

俺にショックを与えるには充分だった。

 

そしてブツブツと呟く火焔猫さんの謝罪の言葉は

 

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい…」

 

 

何かに酷く怯えているように思えた。

 

 

 







後半はコレにて終わりになります。





















────まだ終編が残ってるがなぁッ!!



まだまだ主人公を苦しめたい!

まだまだ主人公をいじめ足りない!

まだまだ主人公を絶望に落としたい!

そして絶望にまみれた逆境を血塗れになって乗り越えさせたい!


主人公虐メルノ楽シイ!楽シイ!楽シイ!
ボロボロニナッテル主人公ハ、カワイソウ!カワイソウ!カワイソウ!
血マミレノ主人公ハ滑稽デ面白イ!面白イ!面白イ!

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ











……やべぇ、絶対アマゾンズの救いの無いストーリーに感化されてるわ……。

そして一瞬だけ別の何かが乗り移った気がする。




ちなみにギャグ成分が足りてねーじゃねぇかカス!と思った読者は同時に投稿した番外編をどうぞ。


次回も頑張って投稿したいと思います。



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第45話 これでE/君も最初から

 なんでかずみん死んでまうん?なんで幻さん死んでまうん?なんで万丈逝ってしまうん?

おのれエボルト。と言うかエボルト強過ぎませんか?RX先輩が真っ向勝負で挑んでも『その時不思議な事が起こった』補正すらも効かない気がする……。


と言う訳で久しぶりの投稿になります。

あと、活動報告の方でアンケートを取っているので気軽に参加をして下さい。


「─────────」

 

 

 

 気が付いたら俺は医者の目の前に座っていた。いや、気が付くと言うよりは多分記憶がすっ飛んで、覚えていないんだと思う。

 

 

「うーん……いやね?本当ッッッッッに心配なんだけどね?君、信じられないスピードで傷が完治しちゃったのよ。いや、後遺症も全く無い感じだからもう退院OKって事で………聞いてる?」

 

「はい」

 

「うん。なら良いんだけど、はいコレ薬。食後に2錠ずつしっかり飲んでね」

 

 

 医者がコチラをゾンビでも見るような目を向けてくる。どうやら俺は退院できるようだ。何と言うか狭い病室、味の薄い食事、満足に行動できない事から解放され、喜ぶべきなのだろう。

 

………でも、何というかスッキリしない。

 

 

「この驚きの回復力!とても興味深い!」

 

「天倉くん!もう傷は平気なの?」

 

 

 この声は………あぁ、亜樹子さんとフィリップさんか。わざわざ待ってくれたんだ。しっかり挨拶しておかないと。

 

 

「────お気遣いなく、大丈夫です」

 

「……ね、ねぇ。ところで火焔猫ちゃん見たかったんだよね」

 

「そうですね。あとは警察の方々と見値根さんに任せましょう」

 

「………天倉くん?」

 

 

 それにしても疲れた………それにしても翔太郎さん達は何をしてるのだろうか?やっぱり事件解決に集中してるのだろうか?

それならば俺は邪魔にならないようにしないといけないな。

 

 

「ねぇ、酷い顔だよ。大丈夫なの?」

 

 

 亜樹子さんにそう言われポケットの中に入れておいたスマホの画面を鏡の代わりにして自分の顔を覗き込む。目の下には隈が出来ており、心なしか生気が無いようにも見える。

 

 

「────大丈夫ですよ、これくらいヘッチャラっす」

 

 

 とりあえず強がる。迷惑をかけちゃダメだ。少し身体がフラフラするがすぐに治るだろう。

 

 

「嘘………絶対に無理してる」

 

 

……………

 

 

「いやいや、大丈夫ですよこれくらい。大したことは───

 

 

スパァンッ!!!

 

 

「痛ッ」

 

「いい加減にしなさい!」

 

え?殴られた?解せぬ。父に殴られた事もないのに……殴った事はあるけど。

いや、正しくはスリッパで叩かれた。何時もながら亜樹子さんは何処にスリッパを隠し持っているのだろうか?

 

 

「いい加減って……、自分で言うのもなんですが少し疲れてますがもう体はピンピンしてますよ?どこも心配する所なんてないですよ?」

 

「私が言いたいのはそうじゃないの!どうして()()()()()()()()()()()()⁉︎」

 

 

…………そう言われてもなぁ。

 

 

「………天倉くん、君については既に検索済みだ」

 

「……それ、前に聞きましたね」

 

「あぁ、プロフィールも、好きな食べ物も、苦手な事も、過去の事も全部だ」

 

 

「────過去の事ですか?」

 

 

「その通りだ。単刀直入に言おう、君は何故、()()()()()()()()?」

 

 

信用していない?

 

………………ハハ、やだなぁ。

 

 

「そんな事ないですよ。俺はちゃんと亜樹子さんやフィリップさん、翔太郎さん達の事を信用してますよ?」

 

「…………話を進めよう。君は過去に起こった事、それによって人格が歪んでしまった。"行き過ぎた自己犠牲"や"低過ぎる自己評価"、"被害妄想"。ソレらについて聞いておかないといけない」

 

「………なんで今、そんな事を聞くんですか?そんな事、どうでもいいじゃないですか」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「(どうでもいいか……)それはダメだ。これは君の為にもなる」

 

 

 フィリップは彼の事について既に調べ終わっている。しかし実際の天倉孫治郎という少年を前にして、直感した。

 

 

────このままでは壊れてしまう。

 

 

身体的な意味でも精神的な意味でもだ。

彼は近いうちに破滅する。己が身を犠牲にしてヒーローらしく……無残にだ。

フィリップは先の戦いで彼の狂気を垣間見た。いや、アレはもはやヒーローでは無い。

 

 兵器、いや確か別の言葉では鉄砲玉と言うべきだろうか?彼は自身の身を案じていない。いや、理解できていない。彼は昔の自分と似ている─────

 

 

「俺の事なんかどうでも────」

 

 

ここで言っておかなければ彼は止まらない。一刻も早く彼を止めなければいけない。その為にはどう言葉をかければいい?相棒ならどう言葉を掛ける?

フィリップはしばらく考えた後、口を開く。

 

 

「僕は──「ふざけないでよ!!自分の事どうでもいいって一端のヒーローにでもなったつもりなの!?」亜樹子ちゃん⁉︎」

 

「さっきから聞いていれば!何なのよ!どうでもいいって?どうでもいいワケないに決まってるでしょ!!!」

 

 

 フィリップは自分の言葉を遮るように叫ぶ亜樹子に驚きつつも彼女の言葉に耳を傾ける。

彼女なら─────

 

 

「………すみません、ちょっと頭を冷やしてきます」

 

「ちょ、ちょっと!まだ話は終わってな────」

 

 

 

「放っておいてください!俺なんかと話しても時間の無駄になるだけです!役に立たない俺の事なんかよりも事件を優先にしてください!」

 

 

 無理矢理、亜樹子の話を遮るように…いや、避けるかのように天倉は病院の外へ出て行ってしまう。後を追おうとしている彼女をフィリップは止める。

 

 言い過ぎてしまったのだろうか。

 自分自身でも何かを知りたいと言う衝動を抑えられず暴走してしまう。自覚しているつもりだが、またやってしまった。

彼はそう考える。今の彼には時間が必要なのかもしれない。

 

 

 もしも相棒がこの場に居てくれれば自分達よりも適切な言葉を掛けてあげられたのではないか?と思いながら逃げ出すように走っていく天倉の後ろ姿を見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

「………違う、違う違う違う違う違う違う違う違うッ俺はそんな事考えていない」

 

 

 そう呟きながら走る。

否定し続けながら逃げるように走る……それなのに頭の中に言葉が聞こえる。

 

 

『やっぱりそうだ。コイツが全部悪いんだ』

『全部ヤツの所為だ』

『近づくな襲われるぞ!』

 

 

「違う。俺は………俺は………!」

 

 

 

────近付かないでよ、この化け物ッ!!

 

 

 

 

 

………どうして、皆俺を嫌うんだろう?俺は皆を助けようとしてるのに?

 

 少年は現実を知った。否、思い知らされた。世の中はテレビや漫画などの空想のヒーローを求めていない。

 

 

 

 真に求めているのは都合の良いヒーロー(マシーン)だ。何も言わず考えず、感じず、ただ民衆に被害が及ばないような都合の良いヒーローを彼等は求める。初めから分かってた事だ。自分の存在意義とはこの力を使い、誰かを救う事。

 

 

 喝采や讃頌なんて必要無い。ただ自身と引き換えに他人の命を救う事を考えていれば良いのだ。その障害は何であろうとも取り除かなければならない。

 なのに何故だろうか?何かを見失っている気がしてならない。

 

 

……本当にコレで良かったのだろうか?

 

 

「……探さないと」

 

 

だが彼はすぐさまそんな事をよりも彼女を探す事を優先する。

 

 

「早く古明地さんを救わないと……」

 

 

 優先するのは彼女を助ける事だ。そう自分に言い聞かせながら彼は走る。どうすれば良いのかは動いてから考えれば良い。

当てのないまま、彼は走る。

 

早く救わなければ。

 

早く助けなければ。

 

 

「………そういえばあの娘……」

 

 

 天倉は火焔猫燐の事を思い出した。彼女は何かしら事件に関わっていた。もしかしたら彼女ならば何か知っているかもしれない。

 

そう考えた彼は警察署の方へ足を進めようとする。

 

 

「……?」

 

 

 だが、天倉の目の前に一匹の猫が居た。金色の目を輝かせコチラを見つめているように思える。体型は少し太り気味だろうか?この体型から察するに誰かが飼っている猫なのだろう。

天倉はその猫を無視して警察署へ行こうとするが

 

 

「ナァ……」

 

 

 "猫が自分に何かを訴えかけている"。天倉の第六感がそう告げている。しかし、あくまで第六感。あてになると問われれば答えるのは難しいだろう。

だが、この猫はまるで『自分について来い』と言わんばかりにコチラに対して目で訴えかけてると天倉は直感した。

 

 

 こんな事をしている場合では無い。その筈なのだが………。

 

 

「………ナァ!」『オラ、さっさと来いって言ってんだよ』

 

 

「…………」

 

 

 物凄く偉そうな言葉が頭の中に浮かび上がって来た。改めてこんな猫について行くのはどうだろうか?としばらく考えた結果、天倉は自分の第六感と猫の"言葉"を信じる事にした。

 

 

「ナァ!」

 

「はいはい、わかったよ。ついて行きますよ」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 しばらく歩いて十数分は経っただろうか。未だにこの猫の目的は分からないままだ。こんな事をしている場合では無い筈なのに、何故自分はこんな事をしているのだろう?

 

 そう言った疑問が頭の中に浮かび上がってくる中、猫はまだ歩き続ける。

 

 

「あのさぁ、一体いつまで歩き続ければ良いの?」

 

「………」

 

 

 何の反応も見せない猫に対して天倉は額を抑えながら「あぁ、こんなんになるんだったら素直に警察署の方に行っておけばよかった」と心の中で後悔する。

 

 

(いやいや落ち着け、たかが猫じゃないか。こんな事でいちいち怒るな。えーっとこんな時は……なんだっけ?素数を数えればいいんだっけ?)

 

 

 そんな事をしばらく考え、ふと意識を猫の方に戻すと……そこには何も居なかった。

 

 

「─────え」

 

 

 まるで最初から何も無かったかのように目の前で歩いていた猫は姿を消し、その場には影も形も無かった。まるで狐につつまれたかのように天倉はその場で呆然と立ち尽くし頭の中が真っ白になる。

 

 

「………あの猫ォ……」

 

 

 イライラするんだよォと言わんばかりに青筋を立てる天倉だが、時間を無駄に使ってしまった事に対し、すぐにガックリと項垂れてしまう。

 

 

「あぁ、クソ。こんな事をしてる暇無いのに……」

 

 

 焦りと後悔が同時に襲って来るが本来の目的を果たすために、どうすればいいかを思考する。

まずは古明地さとりの知人から当たってみるか?と考えていると

 

 

「おや……?天倉くんじゃないか」

 

 

 道の角から見覚えのある人物。『茂加味 快青』と鉢合わせた。

この人は"個性"について研究をしている科学者にして古明地さとりとも関係性のある人物だ。

 

グッドタイミングと言わんばかりに天倉は茂加味に声を掛ける。

 

 

「茂加味さん!」

 

「やはり天倉くんか。丁度良かった、私も君に話があったんだ」

 

「話……ですか?」

 

「まぁ、立ち話もなんだ。私の家に上がりなさい」

 

 

 そう言われて天倉は気がつく。天倉は茂加味の自宅前の道に佇んでいたのだ。どうやら知らない内に此処へ来てしまっていたらしい。

 

 

(………もしかして、あの猫は……)

 

 

此処に連れて来たかったのか?と一瞬考えたが、流石にそんな事あるわけないだろうとその考えを一蹴する。

 

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて………?」

 

「…ん、どうかしたかね」

 

「あ、いえ。別になんでも」

 

 

天倉は何もなかったかのように再び歩みを進める。だが何故、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()考えてしまったのだろうか?

 

………やめておこう。

こんな事を考えるなんて失礼じゃないか。と自分に言い聞かせながら天倉は歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

………目が醒める。何だろう、頭が少しクラクラする。

何処だろう此処は?

私は確か………?軽く見渡すと全身を赤いコーデに身を包んだ男性が腕を組んでコチラを見ていた。

 

………私自身、赤の色は好きだが全身を赤で身を包むのは如何だろうか?そう思っているとその人はコチラに近づいて来る。

 

 

「気が付いたか?」

 

「……えっと、誰?」

 

「照井竜。ただの警察だ」

 

「へぇー、けいさつ………警察ゥ⁉︎」

 

 

ななななな、何で!!?何で警察が私の目の前にいるの⁉︎ナンデ!?

パニックになる私だが、逆に目の前の男性は冷静だ。

 

 

「質問を続けよう。自分の名前は言えるか?」

 

「えっ、名前?」

 

名前?私の名前は…………。

 

火焔猫 燐(かえんびょう りん)。そうだ、コレが私の名前だ。と言うか自分の名前を忘れるなんて記憶喪失じゃあるまいし、この人、照井さんは一体私に何を聞きたいのだろうか?

 

一応、照井さんに私の名前を伝える。

 

 

「どうやら意識はハッキリしているようだな。それでは本題に入ろう、古明地さとりについて知ってるか?」

 

 

え?古明地さとりって………。さとり様の事かな?どうしてさとり様の名前がここで出て来るんだろう?

 

 

「えっと、さとり様がどうかしたんですか?」

 

「(様付け………?)あぁ、君は彼女に何かを渡した筈なんだが……覚えているか?」

 

「渡した……?」

 

 

うーん?なんだろう。さとり様に……何か渡したっけ?全く覚えてないと言うか、全く記憶に無いんだけどなぁ?

 

 

「そうか……、それじゃあコレに見覚えは?」

 

 

すると照井さんは私の前に長方形の……USBメモリ?を見せてくる。

 

 

「………?えっと、何ですかコレ」

 

「知らないのか?」

 

「知らないと言うか、こんなモノ見た事も無いですよ?」

 

 

すると照井さんはしばらく何かを考えるような動作を見せる。

……だけどなぁ、このメモリ……見た事無い筈なのに何か記憶に引っかかるんだよねぇ。

 

 

「……本当に知らないのか?」

 

「えぇっと、……分からないです。でも……」

 

 

うーん?何だろう。まるでフタをされたような感覚で物凄く引っかかるんだよね。

 

何だったっけ?えーと確か私、誰かと約束していた筈なんだけどなぁ……。

 

 

「えっとさ、照井さん。さっきまで私って誰かと話していなかった?」

 

「誰かと?天倉孫治郎の事か」

 

「あま……くら?」

 

 

違う。私が約束していた人はそんな名前じゃ無かった。

その人の名前は………あれ?忘れちゃいけない大切な……大切な誰かだった筈なのに。

 

何でその人の名前が思い出せないの?

 

 

「えっ?どうして?……どうして⁉︎何で思い出せないの⁉︎」

 

「落ち着け!一体どうしたんだ?」

 

「分からない。大切な……そう、友達。友達の名前が分からない。何で?何で思い出せないの⁉︎どうして⁉︎」

 

 

どうして⁉︎何で思い出せないの⁉︎何で大切な友達の名前が出てこないの?

 

 

うにゅ?どうしたのお燐。何で悲しそうな顔をしてるの?

ねぇねぇ、コレさお義父さんが作ったモノなんだけどさ!使ってみてよ!

 

お空……⁉︎どうして、知っているのに……名前が出ないの?

 

 

「うっ……くぅ………」

 

「どうした⁉︎しっかりしろ!」

 

「あ……()()()を……!早く止めないと……!」

 

 

思い出した。いや、思い出してしまった……ごめんなさい……照井さん、さとり様。私、取り返しのつかない事をしちゃった……。

 

 

「あの人……?誰なんだソイツは!」

 

「照井さん!」

 

「見値子さんか、どうしたんだ。そんなに慌てて」

 

「実は警察病院から───────

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

「さとり君にはね、一つ下の妹。古明地こいしが居るんだよ」

 

「こいし……?古明地さんの妹の?」

 

 

 天倉は茂加味に出された飲み物を口に含みながら話に耳を傾ける。古明地さとりが居そうな場所を特定するにはまず、彼女について知らなければならない。

こう言った情報はフィリップから話を聞けば良いのだろうが、

 

──君はヒーローじゃない。

 

そう言われるのがオチだろうと考え自分の目と耳で確かめる事にしたのだ。

 

 

「彼女は何というか天真爛漫でね、空と同じくらい元気な子なんだよ」

 

「へぇー、そんな子がいるんですね」

 

「あぁ、色々あって今は隣の部屋で寝ているがね」

 

 

 隣の部屋にいるのか……と少し驚きつつ、出された飲み物をグッと飲み干す。すると、天倉は古明地さとりと茂加味が妹について会話していた事を思いだしながら会話の続きを聞く。

 

 

「彼女はね、"個性"が異常なまでに強力なんだよ」

 

「強力?」

 

「あぁ、と言ってもオールマイトや君のような身体を強化するものではなく、精神的に大きく作用するものなんだ」

 

 

 精神的に作用するものと聞き、普通科の心操の"個性"【洗脳】を連想させる。古明地さとりの"個性"【読心】も一応、それに分類されるのだろうかと考える。

 

 

「"無意識"と言うのは知ってるかね?」

 

「無意識って言うと……意識が無い状態の事ですよね?」

 

「そうだね、無意識は「意識がない状態」と「心のなかの意識でない或る領域」の二つの意味があるが君が言ったのは前者の方だ」

 

「意識でない或る領域?」

 

「難しい話になるが…人は一生の内に経験した膨大な量の記憶を脳に刻み込む。そんな膨大な量の一部の記憶をフッと思い出す事を想起と言うが……そんな中で思い出せない記憶も存在する」

 

 

 物凄く難しそうな話に天倉の表情は強張る。こんな話ならばフィリップや八百万辺りならば喜んで聞きそうだがまだ高校1年の生徒には理解出来そうにない内容だ。

 

 

「では、生涯において二度と思い出せない記憶は何処にあるのか?そこで先程の「心のなかの意識でない或る領域」だ。インターネットと同じく、あくまで私達が意識しているのは記憶の表層部分に過ぎない。意識外の領域、インターネットで言う深層ウェブ。無意識にこそ人の本質、"個性"についても関わって来るんだと私は思うのだ!そうなって来ると───」

 

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ、もう大丈夫です!分かりました!分かりましたから、迫りながら言うのはやめて下さい!」

 

「……と、済まなかったね。それでさっきの続きだが」

 

 

 まだ話すのか……と天倉は頭を抱える。自分はあくまで古明地こいしではなく、古明地さとりの話を聞きに来たのだが何故こうなってしまったのだろうか?

 

 

「まだ続きますか?俺はあくまで古明地さとりさんの話を「もしも、古明地こいし君が"無意識"を操れたら?」……え?」

 

「無意識を操ると言うのは、恐ろしいと思わないかね?」

 

 

 一瞬、何を言ってるか天倉は理解出来なかったが、不思議と心では何処か分かりきったような感覚を覚えた。

 

 

「古明地こいし君の"個性"はね【無意識】なんだよ。自分を意識の対象から外し相手から無意識の存在として気付かれる事なく動き回る事ができ、相手の意識を無意識に変える事も可能なんだ」

 

「それって……⁉︎」

 

「あぁ、洗脳よりも凄まじいものだよ。無意識で行動した者はあくまで意識して動いたわけじゃ無いんだ。無意識で動いた本人は自分が何をしているか覚えている事も無く、理解すら出来ない」

 

 

 本来の使い方とは違うが天倉は敢えてこの言葉を選んだ。

何なんだそのチートじみた"個性"は……⁉︎

 

そんな"個性"があれば容易に人を操る事も可能であり、ヒーローとしても敵としてもとてつもない力を発揮するだろう。もしも、そんな"個性"がテロなどに使われたらと考えてしまうがその考えを遮るように茂加味は再び口を開く。

 

 

「しかも、その"個性"の対象は相手だけに留まらず自分にまで影響を与えてしまってるんだ」

 

「……! まさか"個性"の暴走⁉︎」

 

「そうだ。さとり君に相談された時は驚愕したものだよ……。なんせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね。"個性"の影響で記憶が全て「意識外の領域」に落ちてしまったんだろう。両親どころか実姉の事すら覚えていないのだから───

 

 

 

━━━ゴッ!!

 

 

 天倉は自分の顔を殴った。

 

 

「くそっ……なんだよ全く古明地さんの事を知らないんだよ俺は……!」

 

 

口の中を切った所為か、タラリと口端から血が流れる。

彼はただ悔しかった。

ヒーローを目指すものとして知らない事が多過ぎた。

ヒーローとして行動するには若かった。

 

1人の人間として、あんな女の子の事を理解できていなかった。

 

どうして、自分はその娘を守り抜く事が出来なかったのだろう。

 

 

「………安心してくれ天倉くん。さとり君の居場所なら見当がつく」

 

「……!本当ですかッ!」

 

「正確にはさとり君が必ず来るであろう所だ」

 

「ありがとうございます!それで、その────

 

 

 

 場所は?と問おうとした瞬間、天倉のポケットからヴヴヴと言う振動を感じた。おそらく誰かからの連絡だろう。茂加味の断りを入れた後、天倉は古明地の元に急ぐ為に手早く済ませようと電話に出る。

 

 

『天倉くん!聴こえる?』

 

「あれ、見値子さん。どうしたんですか?そんなに慌てて」

 

 

 初めて会った時とはイメージが全く違う事に慣れつつある天倉だったが古明地さとりの居る場所に見当がついた為、ソレを伝えおこうと口を開くが電話越しに、見値子の声が絶えず伝わって来る。

 

 

『落ち着いて聞いて。さっき警察病院から赤城、青鋏、黄梟の3人が脱走したの!』

 

「え?だ、脱走⁉︎」

 

『えぇ、しかも3人はドーパントへ姿を変えたの!』

 

「えっ⁉︎ガイアメモリはどうしたんですか!なんで管理を怠って──」

 

『違うの!あの3人は()()()()()()()()()()()()()のよ!』

 

「─────うん?」

 

 

 天倉は自分の耳を疑った。ガイアメモリ無しで変身した?どう言う事だ?確かその3人は無個性だった筈だ。それなのにどうして?

 

 

『驚くのも無理は無いわ!だけど気を付けて、もしかしたら3人は貴方を狙っている可能性もあるの!気を付け───

 

 

 電話越しにそう聴こえた瞬間、そこから声が途切れた。スマホの充電切れだろうか?それとも故障だろうか?

否、自分の身体が地に伏せていたのだ。それと同時に背中に熱と重さを感じた。後からやって来た鈍い痛みによってようやくその状況を理解できた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 何故こんな所にドーパントが⁉︎そんな事を疑問に思いながら天倉は拘束を抜け出す為に身体を動かす。

 

 

「ッ!!!」

 

 

━━ゴッ!

 

 

 天倉は体を反るように自身の後頭部をドーパントの顔面にぶつけ、拘束から抜け出すと追い討ちをかけるように顔面にハイキックを叩き込む。

 

 

「茂加味さん!警察に連絡して!俺がコイツの気を引いておきます!」

 

 

 茂加味の前に立つように目の前のドーパントと対峙する。

無個性である茂加味を危険に巻き込まないように別の部屋に避難させると天倉はその場で構えを取る。

 

 

「変…sちょッ?」

 

 

 しかし、変身のルーティンを行なっている最中にドーパントさ攻撃を仕掛けて来る。目の前の敵はロボットアニメでよくある合体中に待ってくれるような都合の良い相手では無い。

 

 

「……ッ!あ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」

 

 

 変身する暇が無いと判断した天倉は"個性"そのまま使用する事にした。天倉の姿はみるみる内に緑色の肌、突起、棘のある手脚、赤い双眸の蜥蜴のような生物へ変貌する。

現在の天倉は基本形態を習得する以前に使っていた"オリジン体"へと姿を変えたのだ。

 

 しかし、オリジン体は基本形態と比べて出力は高いが、無駄に消費するカロリー、体力が凄まじいのだ。だからこそ好んでこの形態に変身する事は無いのだが……贅沢を言っていられない状況だ。

 

 

「ウォォォァァアアアアアアアアアッ!!!」

 

「!」

 

 

 ドーパントに体当たりを仕掛け、ガシャンッ!と家具を巻き込みながら廊下に2体は飛び出して行く。その際、天倉は馬乗りの状態で拳を何度も何度もドーパントに叩きつける。

 そして4回目の拳を叩き込もうとした瞬間、天倉はその場から飛び退いた。ドーパントの前身から炎が噴き出したのだ。

 

 

(炎を使う力か……っ!)

 

 

 このまま戦いを長引かせてしまえば、家に着火し全焼。最悪、他の建物にも被害が及んでしまう。さらに外へ移動してしまえば市民も狙われてしまう可能性がある為、短期決戦でこの家の中で決めるしかないと天倉は考える。

 

 

「ハァァッ!!!」

 

 

 その場を跳躍すると左右の家の壁を連続して蹴りつけ、ドーパントの顔面に膝蹴りを打ち込む。そして倒れたドーパントに踵落としを叩き込むがドーパントは腕をクロスさせ、攻撃を防ぐ。

 

 すると、ブワッ!と炎が一段と激しくなりドーパントはこちらに突進を仕掛けてくる。単純な攻撃でこの程度ならば避けるのは容易いだろう。しかし、避けてしまえば家にも被害が出てしまう。

 

 

「……来い!」

 

「────!」

 

 

 両手を広げ受け止める体勢へと構える。瞬間、凄まじい衝撃と熱量を天倉を襲う。

 

 

「ぎ……っ!」

 

 

 何とかその場で踏み止まるが、ジュウゥと肉が焦げる音が響く。鋭い痛みがズキズキと前身を襲う。天倉はパワー任せにドーパントを押し倒すとそのままドーパントの上腕を両脚で挟むように固定させ、手首を掴み自分の体に密着させる。

 

 

(腕挫十字固(うでひしぎじゅうじかため)ッ!応用性が高いから尾白くんに教えて貰った技!)

 

 

 ギリギリとドーパントの肘関節を極める中、天倉はこの敵と戦い感じていた。

 

このドーパントは弱い。

 

 それが彼の感想だった。

 炎を操るならばそのまま攻撃に応用すれば良いし、部屋の中に炎を撒き散らし逃げ場を無くし、自分を酸欠にさせるなどの選択もあった筈だ。それなのに何故、このドーパントはわざわざ接近戦なんて挑んで来たのだろうか?轟焦凍のように能力をフルに使い、単純な威力でゴリ押す戦闘でも良かった筈だ。

 

 何かがおかしい。そう考える中、ドーパントと密着している体の部分かジュッと焼ける感覚が襲って来る。

 

 

「ッ!」

 

 

 すると、再び凄まじい炎を前身から噴き出したドーパントはこちらから距離を取る。やはり、何かがおかしい。コイツの目的は一体……。

 

………いや、そんな事どうでも良い。

 

天倉は頭の中をよぎる疑問を振り払うと、次で最後の一撃すると言わんばかりに腕の刃に力を込め、肥大化させる。

 

 

「トドメだ……!」

 

━━ドンッ!!!

 

 

 脚に力を込め、床を蹴りつける。その際、何かが破裂するような音が天倉が先程まで立っていた場所に響く。狙うは顎と肩の間、首元だ。厳密には人体で言う頸動脈が存在する場所。

 天倉は肥大化した腕の刃で急所を狙い付け、そのまますれ違うように首元を切り裂く───────

 

 

「ッ!!?」

 

 

────事はなかった。

 

 

「どうして……!」

 

 否、する事が出来なかった方が正しいだろうか。

 彼の目の前には自分よりも背が低く、桃色の髪をたなびかせた見覚えのある少女がいたのだから。

 

 

「どうして君が……⁉︎なんで……!」

 

 

 彼女の手の中には『B(ブレイズ)』ガイアメモリが収められ、先程までのドーパントの正体が()()()()()()だと言うことを物語っている。

 

 

「さ、最初から……!最初から………騙していたのか……!」

 

 

 ガクガクと脚が震え、腰を抜かしその場に崩れてしまう。目の前の少女にすがろうとするその姿は醜く、哀しいものだ。

 

 

「信じていたのに……!なんで……!」

 

 

 

 裏切られた。裏切られた。裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた裏切られた。

 

 

「……も……か……」

 

 

 ショックの所為か、不思議と身体が熱く感じる。身体の自由が利かない。全身の筋肉も何故か痺れるように動かなくなって来た。

ツーッと目から熱い何かが溢れるのを感じると同時に目の前が次第に暗くなって来た。

 

 

()()俺を信じていなかったのか………」

 

 

その一言を呟くと同時に彼の意識は深い闇へと落ちていった。

 

 




アーッハッハッハッハ!!!

苦しめェ!葛藤しろォ!絶望によって打ちひしがれろォ!他人の不幸を見ながら飲む乳酸菌飲料は格別だなァ!!

天倉ァ!お前はオレにとっての新たな光だ!

なんかエボルトが憑依している気がするけど、これからも楽しませてくれェ!!





【勝ちフラグ】<よし、出番か








茶番が終わった所で活動報告の方で新しい小説のアンケートを取っています。
選択肢としては『おっぱい』か『中二病』です。


………こいつぁひでぇや!(選択肢を見ながら)



【注意】
 アンケートは活動報告欄で行なっております。感想欄にアンケートの答えを書くのはやめて下さい。



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☆第46話 これでE/血潮が迸る

 明日を創ってくれたビルドに感謝を。そして新たな時代が始まる。次代の王の誕生に祝福を。


現在、活動報告の方でアンケートを取っております。興味のある方は気軽に参加して下さい。


「ねぇ、フィリップくん。さっきからずっと何を調べているの?」

 

 亜樹子は無言でキーボードを叩くフィリップに尋ねる。天倉と別れてからフィリップはずっとパソコンの画面と向き合ってばかりだ。

 そんな彼は亜樹子の質問に答えず、いや正確には質問そのものが耳に入っておらず、先程からパソコンの操作に集中してばかり。

 

 

「……やっぱり、天倉くんの事に自分に非があるって思ってるんでしょ?」

 

 

 すると、ピクリと一瞬だがフィリップの動きが止まった。それを見た亜樹子は意地悪そうな表情になる。

 

 

「やっぱりねぇ〜〜。フィリップくんって、天倉くんと自分を重ねているんでしょ?」

 

「……まぁ、それは否定しないよ」

 

 

 ぶっきらぼうにフィリップは答える。

 

 

「でもおかしな話だよねー、フィリップくんと天倉くんって全く似てないんだもん」

 

「ハッキリ言うと、昔の僕に。他人を信用できていない部分にソックリなのさ」

 

「へぇー、そうなんだ……」

 

 

 亜樹子の質問が終わると今度はフィリップがお返しと言わんばかりに質問を投げかける。

 

 

「天倉くんと口論していたけど、そう言うアキちゃんはどうなんだい?」

 

「私は……天倉くんの事が納得できない」

 

 

 口を尖らせながら彼女は答える。

 

 

「私達は同じ探偵なのに……天倉くんはどうして自分だけで抱え込んじゃうんだろ」

 

 

 天倉孫治郎の事を亜樹子は理解しているつもりでいた。だがらこそ彼と張り合ってしまった。亜樹子自身、自分に非が無いとは思っていない。

 だが自分のプライドが許さないのだ。鳴海探偵社の所長として彼が自分達に頼ってくれない事にガツンと言わなければならない。

そして、この事件が解決したら天倉に盛大なお祝いをして仲直りをしよう。

 そう考えながら天倉の事を心配する亜樹子にフィリップはフッと笑う。

 

 

「アキちゃん……やっぱり君は……」

 

 

 その次を言おうとした瞬間、作業の手が止まった。フィリップは身を乗り出すような体勢でパソコンの画面、とある一点を凝視する。

 

 

「これは……!」

 

「どうしたのフィリップくん?」

 

 

 急に様子が変わったフィリップに亜樹子は疑問を投げかけるが、それを尻目にフィリップの作業の手が先程とは比べ物にならない程のスピードとなる。

 

 

「そう言う事か……!」

 

 

 カタンとキーボードを叩いた後、フィリップは黒の二つ折り式の携帯電話を取り出し、連絡を入れようと操作を始める。しばらくプルルルル…という呼出音が鳴り続く。

 

 

「……! 翔太郎っ!犯人が分かった!」

 

『フィリップか…!こっちも照井と協力してやっと突き止めた所だ』

 

「犯人は必ず古明地さとり、霊烏路空と関係する人物だという事なのは分かっていた」

 

『そうだな、検索にはヒットしなかったのか?』

 

「あぁ、本棚にその人物の名前は出てこなかった……いや、恐らく高度な技術で情報を書き換えられていたんだ!」

 

『フィリップの本棚の情報を上書きすんのかよ……ソイツのバックにとんでもねぇバケモンが潜んでいるな……!』

 

「それはとてもゾクゾクする……いや、そんな事を言っている場合じゃないね」

 

 

 携帯電話を耳に当てながらフィリップは亜樹子とともに外に停めてあるバイクに跨り、後ろに乗るよう亜樹子に手招きする。

 

 

「あとは犯人の居場所だが……!」

 

 

 タイミング良く、フィリップと亜樹子の周りに蛙、蜘蛛といった動物を模したガジェットが集まる。その中で蝙蝠を模したガジェットがフィリップの手に収まる。

 

 

「コレは………翔太郎。大変な事になった」

 

 

 蝙蝠の目に写っていたモノにフィリップは一瞬驚愕するが、すぐに冷静になると電話の向こうにいる相棒へソレを伝える。

 

 

「数分前に天倉くんが犯人と接触した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は……優しかった。

 

少年はとても臆病だった。

 

少年は見放されるのが怖かった。

 

 

少年は昔からその"個性"故にイジメられていた。

見た目だけならば異形の容姿を持つ者が周りにごまんといる。

 

少年が持つ力。

 

少年のその(個性)は人を殺すモノでも人を死なせるモノでもない。ただ、相手を傷付ける単純な力だった。

 

相手を殺さず死なさず、ただ傷付けるのに特化した力に少年は葛藤していたのだ。

 

 

 そんなだったが彼は人を助ける時、顔を()()()()。誰かを助けた時、顔をくしゃっとさせてしまうのだ。

少年は人を助ける事に対して生きる実感を、自分の価値を見出していた。

 

 

 そんなある日。少年以外のクラスメイトがイジメられている所を見てしまった。イジメられているのは少年のイジメに加担せずに傍観し周りと共に笑うようなタイプの子だ。

 

 少年は真っ先に喧嘩を止めるべくイジメっ子達に立ち向かった。理由なんて無い。ただ、その子が助けを求める顔をしていたから。それだけの為に少年はその子を守ったのだ。

 

 

結果的に少年はイジメっ子達に勝った。

 

 

少年は大丈夫?とその子に声を掛ける。

 

 

 

 

「来ないでよ!この化け物!!」

 

 

────え?

 

 

少年の手は血に染まっていた。

 

少年はイジメっ子達に勝ったが、イジメっ子達の顔面は腫れ血が滲み出ており、過剰なまでの暴力を少年は振るったのだ。

 

そこに運悪く先生が来てしまった。

少年は悪くない。だが、目の前の光景はその真実を捻じ曲げてしまうのには容易い事だった。

 

 

『やっぱりそうだ。コイツが全部悪いんだ』

 

──違う。自分の所為じゃない。

 

『全部ヤツの所為だ』

 

──でも、俺は助けただけで……!

 

『近づくな襲われるぞ!』

 

──待ってよ皆……俺は……!

 

 

 

『近付かないでよ!この化け物!!』

 

 

 

───俺は……何なんだ?

 

 

 

それ以来、少年は心の底から他人を信じられなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う………あ………?」

 

 

懐かしいモノを見た気がする。

いつから眠ってしまったのだろうか?意識が朦朧とする中、身体を動かそうとする。

 

 

(………?アレ、身体が動かない)

 

 

 まるで金縛りにあったかのように身体の自由が利かない。先程まで何があったが記憶が曖昧だ。目をキョロキョロと動かし周りに何があるかを確認する。

 

 

「………!」

 

 

 彼の視線の先には視線の先に壁に寄りかかった状態で眠っている古明地さとりが居たのだ。そして、天倉は先程まで何が起こっていたのかを思い出す。

 

 

「こ…め…じぃ…さっ……⁉︎」

 

 

 舌が上手く回らない。両腕両脚に全く力が入らない。おかしい。おかしすぎる。

意識はしっかりしているし、目もさっぱりしている。それなのに力が入らないのはどう考えても不自然だ。

 

 

「ほう、目が醒めるのが早いじゃないか」

 

「あ……あ…た……わ……(貴方は……⁉︎)」

 

 

 古明地さとりの隣に茂加味快青が現れる。何故こんなところにいるのか?避難さた筈なのに何故、此処に居るのだろうか?そう考えていると心の中を見通すようにコチラの疑問に答える。

 

 

「それなら予想はつくだろう?動けない君に、失踪した筈の古明地さとり君、そしてその場にいる私……こんな在り来たりな状況、既に答えは出ている筈だろう?」

 

「ま……さか……(まさか…貴方が……!)」

 

「私が全ての元凶……と言う事だよ」

 

 

 茂加味快青(黒幕)は悪びれた様子も取らずに淡々と答える。

 

 

「どう……して…こんな事を……!」

 

「こんな事?それはどういう意味かな?」

 

 

 目の前の男は天倉の言葉の意味が分からない様子だった。力が入らない身体を無理矢理動かそうとするがバタリと天倉は地に伏せてしまう。

 

 

「なんの……なんの為に……古明地さんを巻き込んだ……!」

 

「ほう、驚いた。飲み物に強力な神経毒を混ぜておいたが……こうも喋れるとは……!」

 

「答えて…ください……!どうして……!」

 

 

 ギリリと歯を食いしばりながら天倉は叫ぶ。動く事はない身体を何度も動けと自身に言い聞かせるが全く意味が無い。そんな彼を見て茂加味はむぅ…と呟く。

 

 

「そうは言われてもな……仕方無い事だからね」

 

「仕方無い……?」

 

「君は……科学が発達するのに大切な事は分かるかな?前に進むには実験が必要なんだよ」

 

 

 その場に転がっている椅子を茂加味は立ち上げ、座り、話を続ける。

 

 

「どんな実験にも土台……代償が必要だ。彼女はその(生贄)になって貰ったに過ぎない」

 

「何を……言ってるん…ですか……⁉︎」

 

「む、分からないのか?」

 

「あな…たは……子供を……人体実験の材料に……したんだぞ……!なんとも……思わないのか……⁉︎」

 

 

 天倉の問いに対してしばらく考える素ぶりを見せる茂加味。しかし、そこから天倉の求める答えが来る事はなかった。

 

 

「いや……特に何も思わないな」

 

「………ッ!!」

 

 

 天倉は唖然した。この男は何故、そんな考えが出来るんだ?理解出来なかった。否、理解出来る筈が無い。

 

 

「さとり君は素晴らしいデータを出してくれたよ。それについては感謝しているつもりだ。私は科学者として彼女に最大の敬意をはr「どうでも…良いんだよ……」うん?」

 

 

「そんな事……俺にはどうでも良い……!あんたは……空さんを…娘もその下らない実験に巻き込んでも……悪びれないつもりなのか……ッ!!」

 

「悪びれない………?すまない。私では君の言っている事が理解できないみたいだ」

 

 

───狂ってる。

 

 そう天倉は確信してしまった。この人は自分の"個性"についてアドバイスして貰った恩がある。

だが、この茂加味快青という男の本性はおぞましいものだった。

 

 敵連合のような自他ともに認める悪意ではなく、この人物は己が悪意を悪意として認識、認めてすらないのだ。

 

 

「それにしても空も中々良いデータを出してくれたのは確かだ。しかし実に惜しかった。相性が良過ぎたのか過剰に適合して身体が追いつかなかった。これで『ハイドープ』に覚醒したのはさとり君1人だけとなる……」

 

「ぐ……っ!」

 

 

 また性懲りも無く……!自分の前で自慢気に話す茂加味に悔しさを覚えながら天倉は歯を噛み締める。

 

 

「だが、そこに君が来てくれたんだよ!!」

 

「⁉︎」

 

 

 急にテンションが変わった茂加味に驚き、天倉は一瞬だけ頭の中が真っ白になってしまう。

そして天倉の両肩を掴み興奮したように喋り始める。

 

 

「君のその個性()は素晴らしい!使用者の感情でダイナマイトが爆発するかの如く、"個性"に影響が現れ姿形までも変えると来た!さらに風都に居る短期間で君は凄まじい成長を遂げ、あれ程の重症もすぐに治している!君のような素晴らしい人間(データ)はこれ以上いないと私は確信している!!」

 

「ッ⁉︎(この人は……人を実験のデータとしか見ていないのか…?)」

 

「君は最高の人材(モルモット)だ!あぁ、もう我慢できない。早く君の力を見せてくれ!この状況だって君の力ならば打開出来る筈だ!」

 

「あなた…は……一体何を言って……?」

 

 

 まさか茂加味はわざわざ"個性"を使ってくれと言っているのだろうか?仮にここで自分が"個性"を使えるならば真っ先に自分が狙われる可能性を危惧しないのか?

 まさかソレを含めて、この男は実験していると言うのだろうか?

 

 

「ふざ……ける……な……!」

 

 

 翔太郎、フィリップ、亜樹子、照井、見値子、霊烏路、そして古明地。皆と解決しようとしていた事件は全て、茂加味快青が行なっていた実験と言う事に天倉は怒りを覚え始める。

 

 

「いいぞ……!君には充分なストレスを与えた!早く君の新たな超越形態(フォーム)を見せてくれ!」

 

「う…あ、あ…あ…あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」

 

 

 力を振り絞りながら立ち上がり、己が怒りを更なる力に変え目の前いる外道を倒すべく天倉は一歩を踏み出す─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───事はなかった。

 

 

 フッと力が抜け、壊れた人形のようにその場で再びバタリと天倉は倒れる。倒れた本人でさえ何が起こったのか理解出来ていない様子だった。

 

 

「───⁉︎(な、なんで……⁉︎なんで急に……⁉︎)」

 

 

 するとジワリと腹部が生温かく、ヌチャリと湿ったような感覚か彼を襲う。視線をそこに移すと服の一部が赤く染まっていた事にやっと気付いた。

 

 

━━ポタ……ポタ……

 

 

「………ゴブッ」

 

 

 呼吸ができない。いや、肺と共に胃から赤黒い液体が逆流し始め、空気が体外へ排出されたのだ。そしてバシャリと血反吐が床にぶちまけられた。

 

 

「───ッ!ハァ……ハァ……う゛ッゔぉぇぇえぇ……!あ゛っがぁ……ッ……!」

 

 

 ガクガクと身体が痙攣し、目の前が霞み始め、身体中から脂汗が大量に噴き出し、血反吐と共に天倉を中心に小さな赤い水溜りを作り出す。

 

 無理も無い。彼は怪我は治ったと医者に言われたが、今までのダメージ、疲労が蓄積され限界を迎えてしまった。先日の腹部の傷が開いた挙句、神経毒が身体を蝕んでいる。

 

 

「何をしているんだ?たかが血を吐いただけだ。たかが身体が痺れて動けないだけだ。その程度の症状で君が止まる筈が無い。さぁ早く!君の力を見せてくれ!」

 

「ぐっ……ぅぅうッ、……ッ!ハァ…!ハァ…!うっ……お゛ぇぇ゛ぇ……、ハァ……へん……っ、がっっあ……ぁ」

 

 

 変身と口を動かし、ルーティンを行おうとするが天倉の身体は言う事を聞かない。いや正確には聞くはずもないだろう。

 

 苦しい。ダメだ早く戦わないと。もう駄目だ。うるさいまだ戦える。逃げないと。死ぬ気でやればイケる。こんな事をしている意味なんて無い。

 

こんな事をする意味なんて───

 

 

………な…い

 

「ッ!」

 

 

 毒の所為か、思考が纏まらない天倉だが息をなんとか整えつつ、とある一点を見つめる。

 

 

「ん、さとり君を未だに心配しているのか?」

 

「──ぐぅッ!」

 

 

 口内が鉄の味で広がり、鈍痛が身体中をジワジワと浸食するように襲って来る。体の芯が灼けるように熱い。それでも手を伸ばし少女の手を取ろうとする。

 

──何をしているんだ?

──もういいだろう?

──やめておけ諦めろ。

──どうせまた裏切られるに決まってる。

──見捨てて早く逃げよう。

 

 

「おぉ!その状態で動けるか!」

 

 

 頭の中に自分の声が聞こえるがズルズルともう動かない筈の身体を前へ前へと進ませる。

 

 

(俺の───原点(オリジン)を────)

 

 

俺がヒーローに憧れたのは、初めてこんな"個性"でも誰かを笑顔にする事が出来るって知ったからなんだよな。

 

こんな俺でも誰かの笑顔を守りたいって思ったんだよな。

 

 

(俺の原点を思い出せ──天倉孫治郎ッ!)

 

 

 例え裏切られたとしても、例えその身がボロボロになろうとも、目の前に助けを求めていたのなら……ヒーローとして当然の事だ。

 

それも目の前で女の子が泣いているなら尚更だ。

 

 

(手を──手を伸ばせ……!)

 

 

 あと少し、あと少しで手と手が触れる距離まで体を動かし、手を伸ばす。

 

──なんで手を伸ばそうとするんだ?

──あの娘だって最終的には裏切るに決まっている。

──やめとけ!やめとけ!

──なんでだ天倉孫治郎。何故そこまで助けようとする?

 

 

そんなの簡単だ。

手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬ程後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。

 

 

「更に──向こうへ……!(Plus Ultra(プルス ウルトラ)!)

 

 

 そして辿り着いた彼はやっと少女の手を掴む。

 

 

「確かに……聴こえた……!『ごめんなさい』って。古明地さん、聴こえてるかどうか分からないけど俺、古明地さんの事を疑っていた。だから……今度こそは……絶対に信じるから……!」

 

「ほーぅ……立ち上がるか……!つくづく君は私に素晴らしい力を見せてくれるよ!」

 

 

 おぼつかない脚で立ち上がり、古明地さとりを守るように茂加味と対峙する。

 

 

「……クク、やはり君は私と一緒に来てもらう事にしよう。そうした方が私的にも都合が良い」

 

 

 すると茂加味はポケットからメモリを取り出すとソレを天倉に見せつけ、余裕があると言わんばかりにペラペラと説明し始める。

 

 

コレ(ガイアメモリ)はね本物じゃあないんだよ。私が本物を模して作った"トリガー"に似たような物……いや違うな。誰でも本物の力を手に入れる事が出来るツールさ。

素晴らしいだろう?最近になってやっと他人の"個性"を自分でも使えるように調整出来たんだ。まぁ他人の血や細胞を自身に取り込むなんて簡単に出来るわけ無いからね」

 

「……まさか……ソレは……!」

 

 

 Rのメモリから漂う微かな血の匂いが天倉の鼻を刺激する。

 

 

「そう、『リモートコントロール』のメモリ。私風に古明地こいし君の力を調節させて貰ったよ」

 

「お前……ッ!」

 

 

 天倉は激怒した。この男は古明地さとりのみならず娘までにてをかけ、事もあろうか古明地さとりの妹の身体を削り、実験の成果と称して目の前に見せびらかされているのだ。

 

 

「そしてこのメモリの力の真髄は、私が制作したメモリを所持する者を無意識化させ支配下に置く事にある」

 

「……つまりソレは……」

 

「そうだね、さとり君も空も君を襲ったメモリ使用者も全て私がやった事になるな」

 

「─────ハハ」

 

 

 乾いた笑いが部屋に広がる。天倉の口から発せられたものだ。狂ったように笑い始める天倉を茂加味は疑問を浮かべる。

 

 

「どうした急に笑い始めて……私の研究に心を打たれて一緒に来てくれる決心がついたのかな?」

 

「───あぁ、いや違いますよ……ただ」

 

 

 そう言うと、天倉はスッと今度はお返しと言わんばかりに手元に収められた"Bのメモリ"を見せつける。

 

 

「ただ、あんたを心置きなく殴れる理由が出来て安心しただけですよ」

 

「……! それは」

 

「確か……なんだったけな、クラスメイトの言葉を借りるなら………」

 

 

 

━━パキパキ……バキンッ!!

 

 

「テメェのクソな研究成果なんざぶっ壊してやるよ……死ね!カスッ!!

 

 

 クソを下水で煮込んだような声を発した後、バタンと後ろへ倒れる。そして遅れるように古明地さとりの目に光が戻る。

 

 

「───!天倉さッ」

 

「……あ、良かった。メモリ壊したら正気に戻るんだね」

 

 

 正気を取り戻した事に対してホッとしたような顔をしながら天倉は安堵するが古明地は天倉の胸ぐら掴むと今にも泣きそうな口を開く。

 

 

「なんで私を助けたんですか!!私は……私はあなたを襲ったんですよ!敵同然の私をなんでッ!!」

 

 

 目から大粒の涙を溢れさせながら彼女は

 

 

「私なんて……どうでも……どうでも良いじゃないですかッ!!」

 

「この馬鹿!!!」

 

「あいた⁉︎」

 

 

 脳天にチョップを受ける。だが比較的優しかったのか(?)古明地さとりは脳が軽く揺らされただけで済む。

 

 

「どうでも良いなんて言うな!俺は古明地さんを助けたかったから助けた!異論は認めない!ハイ、QED!」

 

「えぇ⁉︎」

 

 

 無理やり議論を終了させる天倉に古明地は驚愕を露わにする。そんな中、天倉はとある事を考えていた。

 

 

──さっきから聞いていれば!何なのよ!どうでもいいって?どうでもいいワケないに決まってるでしょ!!

 

 

(あー………そうか……やっとフィリップさんと亜樹子さんの気持ちが良く分かった……)

 

 

 今になって、理解できた。亜樹子さん達もまたヒーローだったのだ。きっと誰もが誰かのヒーローなのだ。

 

 

(なんか……本当に心配されていたんだな……ハハ、俺って馬鹿だなぁ。そんな事に今頃気がつくなんて)

 

「さて……茶番劇は終わったかい?私はあまりそう言うのは好まないからね」

 

(ヤバいなぁ……ぶっ壊すって意気込んだものの、全く身体が動かない)

 

 

 カツンカツンとコチラに歩み寄ってくる茂加味。古明地さとりは必死に自分よりも身体が大きい天倉の腕を自分の肩に回し担ぐ。

 

 

「ぐ……ごめん古明地さん」

 

「無理はやめてください。今は逃げましょう、あの人の思考はあなたを実験動物にする事しか考えてません」

 

「それはさっきまで散々思い知らされたよ」

 

「良く分かってるじゃないか……それじゃあ君達に良いものを見せてあげよう」

 

 

 そう言うと茂加味は懐からGが描かれた黒のメモリを取り出す。更にスーツの前裾を捲るとそこには鈍い銀色で輝くベルトが巻かれていた。

 

 

「コレが私の成果の1つだ」

 

GEAR(ギア)

 

 

 メモリをベルトの中心に挿すと茂加味の姿はみるみる内に変貌を遂げていく。

そ黒光りした外皮に鋼のように鈍く輝く胴体。そしてコチラを睨みつける紅の双眸を

 

 

「ハハ───ギア・ドーパントといった所か」

 

 

 乾いた笑いが響く。

 

 

「なに、大人しくしていれば痛い目に合わずに済む……と言って従う君達じゃないのは分かり切ってる事だ。だから─────」

 

 

紫色を基準に金の装飾を施された銃を取り出すと銃口を二人へ向ける。

 

 

「───天倉くんだけは死なないように加減はしておく」

 

 

 

 そう言うと躊躇いも無く引金を引き、弾丸を撃ち出した。

 

 

 

 

 

 

━━カンッ!!

 

 

「む」

 

 

 刹那、謎の影が放たれた銃弾を防いだのだ

甲高い音が響く中、天倉の元に黒のクワガタを模した機械が寄って来る。

 

 

「コレって………!」

 

「ったく……あれ程、俺達を頼ってくれって言ったのによ、そんなに信用無いか?」

 

 

 そこには帽子を片手に携えた男が居た。無個性で力を持たない男が居た。風が吹く街を愛するヒーローがそこに居た。

 

 

「さて……随分と姿が変わったな茂加味 快青」

 

「左翔太郎……いや、仮面ライダーか」

 

 

 ヒーローは黒幕と対峙する。

 

 

「色々と調べさせてもらったぜ茂加味快青、いや裏での名前は『最上魁星』だったか?」

 

「あぁ、その名前でも構わないよ。だが何が何でも彼は連れて行かせてもらう」

 

「悪いが天倉はウチの一員だ。お前なんかに渡さねぇよ」

 

 

 「下がってろ」と2人に言い聞かせると翔太郎は黒のメモリを懐から取り出しながら帽子を深く被り直す。

 

 

「後は俺達の仕事だ。さとり!お前は天倉を病院に連れてけ!」

 

「翔太郎さんは……!」

 

「言っただろ?後は()()の仕事だってな」

 

 

Joker(ジョーカー)

 

「変身」

 

Cyclone Joker(サイクロン ジョーカー)

 

 

 腰に巻かれたベルトに黒と緑のメモリが挿入され、翔太郎の姿も風が吹き荒れると同時に変化し、緑と黒の戦士へと変身を遂げると怪物(最上魁星)に指を向け決め台詞を述べる。

 

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ」』

 

「フ、罪を数えるような事をした覚えは無い」

 

 

 そう言うとギア・ドーパントは紫色の銃に、赤のバルブが取り付けられたナイフを手に持ち仮面ライダーを迎え撃つ。

 ドーパントは銃で牽制しながらナイフを振るい、仮面ライダーは銃弾を軽い身のこなしで躱しながら徒手空拳で応戦する。

 

 

「おら、場所変えるぞ!」

 

Metal(メタル)

 

Cyclone Metal(サイクロン メタル)

 

 

 仮面ライダーがギア・ドーパントの腹部に『メタルシャフト』を突き立てると、先端から放たれる凄まじい風圧がガシャン!と家具を撒き散らしながらドーパントを外へ吹き飛ばす。

 

 

『翔太郎、天倉くんは古明地さとりに任せて僕達は』

 

「あぁ、アイツをブッ飛ばす!」

 

 

 仮面ライダーも『メタルシャフト』を片手に外へ飛び出すとドーパントは再び銃弾を放つがそれを己の得物で器用に弾いていく。

ガガガンッ!と甲高い音が響き、ナイフと鉄棍がぶつかり合いお互いに一歩も譲らない戦いが拮抗する。

 

 

「さて、フィリップの検索を欺く程の情報操作。アンタ……バックに誰が居る?」

 

「フフ、教える訳にはいかない。……と、言いたいところだが君達には実験に協力してくれた恩があるからなぁ。とりあえず【万人は1人の為に】……とでも言っておこう」

 

「はぁ?お前、何言ってんだ?」

 

『……! 馬鹿な。あり得ない!それは都市伝説の、架空の存在だ!』

 

「クク、都市伝説の代名詞とも言える『仮面ライダー』が存在するんだ。居てもおかしくあるまい」

 

 

 戸惑った様子のフィリップに翔太郎が困惑するが、得物であるメタルシャフトを巧みに操り攻撃を加えた後、数歩ドーパントから距離を取る。それに対してドーパントは紫色の銃を仮面ライダーに向け引金を引こうとする。

 

 

「最上魁星!そこまでにしてもらおうか!!」

 

 

 が、突如として響いて来た声にドーパントの動きが止まる。視線の先にはヒーローを筆頭に武装した警察官達がコチラに向けて銃を構えていた。

 

 そして武装警官達の前にヒーロー【マキ】が出ると銃口を己が義父、否、ギア・ドーパントに向ける。

 

 

「最上魁星!貴方には略取・誘拐の容疑に加え、その他の容疑がかかっている!今すぐ武装を解除し投降しなければ(ヴィラン)と認定し身柄を拘束させてもらう!!」

 

「………」

 

 

 その言葉に対して最上はゆっくりと両手を上げる。

 

 

「……最上魁星、あんたは何故─────」

 

 

──パァンッ!

 

 

 こんな事を?と翔太郎が口にしようとした瞬間、鮮血が舞った。

最上が放った銃弾が見値子の肩を撃ち抜いたのだ。

 

 

「あ……ぐ……ッ」

 

「ッ!テメッ!何してやが────」

 

Zebra(ゼブラ)

 

 

 新たなガイアメモリを紫色の銃に挿し込むと銃口を1人の警官に向け躊躇いも無く引金を引く。

 

 

「あっ……あ、あ゛あ゛ぁぁぁあああ!!」

 

「なっ……⁉︎」

 

 

 弾丸を撃ち込まれた警官の姿はみるみる内に白と黒のシマ模様をした異形の怪物へ変貌を遂げていく。

 

 

Octopus(オクトパス)』『Hawk(ホーク)』『Hedgehog(ヘッジホッグ)

 

 

 新たなメモリを銃に挿し込んでは警官達に躊躇せずに撃ち込む。そしてあっという間に異形の怪物であるドーパントへと変貌を遂げていってしまう。ドーパントに姿が変わってしまった警察官達は周りにいる同胞に襲いかかっていく。

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

『馬鹿な!人を強制的にドーパントに変える装置なんて!』

 

「フフ、驚いたかい?」

 

 

 ギア・ドーパントである最上は不敵に笑いながら自慢気に紫色の銃を見せつける。

 

 

「コレの名称は【駆鱗煙銃】。私が製作したものでね、私が作ったメモリをスロットに挿し込む事でその力を弾丸として撃ち込む事が可能となる。まぁ簡単な話、相手をドーパントにする装置……という訳だ」

 

『そんな装置を作るなんて貴方は………』

 

「おい、そんな事はどうでもいいんだよ!あんた何やったか分かってんのか!」

 

 

 フィリップの言葉を遮るように、荒々しい口調で翔太郎は最上に向かって叫ぶ。仮面で表情を読み取る事は出来ないが声の力強さから激怒している事が分かる。

 

 

「アンタは娘に手を掛けたんだぞ!ソレを分かってんのか!!」

 

「ん……あぁ、ソレについては申し訳無いと思っている」

 

 

 そう言うと最上はナイフを上下に割ると、ソレ等を銃の前後側に取り付ける。

 

 

「まぁ、過ぎた話だ。水に流してくれ」

 

「ッ!!お前!!」

 

『落ち着くんだ翔太郎!』

 

 

 娘の事すら実験材料の一つとして見ていない男に翔太郎はメタルシャフトを振るう。しかしその単調な攻撃は見事に躱され、横腹に合体した小銃を突きつけられる。

 

 

「ッ!」

 

「さ、終わらせようじゃないか」

 

 

 そう言うとドーパントである最上は引金に指をかけ、銃口から弾丸が放たれた。

 

 

「らあッ!!」

 

──ガァンッ!!

 

 

 だが回転させるようにメタルシャフトで小銃の銃口を上方へ向けるように抑え、メモリをメタルシャフトに挿し込む。

 

 

Metal MAXIMUM DRIVE(メタル マキシマムドライブ)‼︎』

 

『「メタルツイスター!!」』

 

 

 ガラ空きになった腹部に向け、風を纏わせた鉄棍を叩き込む。ギア・ドーパントは凄まじい風圧に後方へ吹き飛ばされる。

 

 

「ハッ、一丁上が───うおっ!」

 

 

 瞬間、仮面ライダーの背後から警察官が変貌したドーパントが襲いかかる。必殺技を放った後、油断してしまったのか反応に遅れるが何とか攻撃を回避する事は出来た。

 

 

「あぁー、くそっ!面倒臭せぇ!」

 

『翔太郎、ここは早期決着でエクストリームをつか───』

 

 

 

 

 

「あぁ、先程のは中々効いたよ」

 

「なっ⁉︎」

 

 

 そこにはマキシマムドライブで倒した筈のドーパントである最上が平然と立ち上がっている光景が2人の視界に映っていた。

 

 

『馬鹿な、マキシマムドライブが効いていないのか?』

 

「そんな事を考えていて随分と余裕だね」

 

「っとォ!!クソッ、こんな数のドーパント用意しやがって!」

 

 

 メタルシャフトを巧みに操りながら同時に複数のドーパントを相手にするが、ギア・ドーパントは再びコチラに小銃を向けると

 

 

──ドォン!!!

 

 

「がっ⁉︎」

 

 

 無防備な仮面ライダーの背に銃弾が放たれる。不意による攻撃により隙が生まれ、他のドーパントの攻撃を何度も受けてしまう。

 

 攻撃を避けようとしても、ギア・ドーパントの援護射撃により隙が生まれてしまう。逆にギア・ドーパントの攻撃を避けようとすると他のドーパントの攻撃を受けてしまう。

 

 

「あっ……くそっ、メモリチェンジすらやらせねぇのかよ」

 

『流石に数が多いか……』

 

 

 舌打ちしながら鉄棍を杖代わりにして立ち上がる。するとギア・ドーパントである最上は小銃の銃口を明後日の方向へ向ける。

 

 

「赤の仮面ライダーはどうしたんだい?」

 

「あぁ?」

 

「私としては彼も呼んでくれると嬉しいのだがね」

 

『どうやらアクセルもお望みみたいだね』

 

「クソッ、余裕見せやがって」

 

 

 攻撃をわざと受けてやろうと言わんばかりに両手を広げる最上に翔太郎が苛立ってしまう。メモリチェンジを行おうとドライバーに手を掛けようとする

 

 

 

「───おい」

 

「ん?」

 

 

 が、突如として響いて来た声の方向へ最上が視線を向けると、緑色の閃光が頬を掠める。シュゥゥと掠めると言うよりは焼くの方が正しいだろうか?

 

ギア・ドーパントである最上は自身の頬を撫でた後、視線の先にいた者達へ再び視線を向ける。

 

 

「そう言えば君達も居たね。すっかり忘れていた」

 

 

 視線の先には赤と黒の重厚な城塞、青を基調とした流線的なラインをしたクワガタ、ずんぐりとした黄の梟。それらを模したドーパントがそこに立っていた。

 

 

「アイツら⁉︎」

 

『まさか、本当にガイアメモリ無しでドーパントに?』

 

「ハハ、素晴らしいだろう?私の研究成果は」

 

「あ、どう言う意味だ?」

 

 

 笑う最上に翔太郎は疑問を抱く。

 

 

「私の作成したメモリはね、人体に無害なモノだ。しかし、それだけでは無い。メモリ内の細胞、血液に存在する微量な個性因子が使用者の体に残留し、馴染む事によってメモリの力を己が"個性"として発現させる事が可能となる!」

 

「は、はぁ?どう言う意味だそりゃ?」

 

『マズイぞ翔太郎!最上魁星は予想以上の発明をしてしまった!そんなモノ……!世に放てば混乱どころの騒ぎじゃ収まらない。それが量産されれば"個性"を持った兵隊を造る事も可能だ!』

 

「フィリップ君、それは仕方がないと言うモノだよ。いつの時代も科学の発展には犠牲が出てしまうが結果的に私は素晴らしい成果を残した!コレこそ、私の求めたモノの一つに────」

 

 

「うるせぇよ」

 

 

 その言葉と共に、赤と黒の重厚な装甲を持つハードキャッスル・ドーパントは最上に殴りかかるが、それを難なく受け止められる。

 

 

「……何のつもりかな?」

 

「それはコッチの台詞だテメェ!カシラを利用しやがって……!」

 

 

 キャッスルドーパントである赤城がそう言うと、後方で待機していたスタッグ・ドーパント、オウル・ドーパントもギア・ドーパントである最上に襲い掛かる。

 

 

「……どうなってんだアリャ」

 

 

「さてな、俺も聞きたいところだ」

 

 

 翔太郎の呟きに答える者が居た。振り返るとそこには赤い服で身を包んだ照井竜がこちらに歩んで来ていた。

 

 

「照井か。お前今まで何していたんだ?」

 

「お前が変身した際にな、所長に『フィリップ君が倒れたからバイクの運転が出来ない』と言われてな……」

 

「そぉぉゆぅぅうう事よッ!!」

 

 

───パァン!!

 

 

「っだぁ!!?」

 

 

 すると背後からスリッパで仮面ライダーの頭を引っ叩く者が現れる。まぁそんな事をする者は1人しかいない為、翔太郎はすぐに誰の仕業か理解できた。

 

 

「亜樹子てめぇ……」

 

『やぁ、アキちゃん。怪我は無いみたいだね』

 

「フィリップくん!バイクを運転している時に変身はやめてよね!あの時、本当に焦ったんだから!おかげで私はフィリップくんの体のお守りで置いてけぼり……ま、竜くんに来て貰ったから良かったけど!」

 

「と、言う事だ。左、俺の力が必要みたいだな」

 

「あぁ、そうだな。おい、亜樹子。アソコの家にさとりとその妹、そしてまた怪我を負ってる天倉がいる。様子を見に行ってくれねぇか?」

 

「え、私が行くの⁉︎と言うかまた怪我したの⁉︎」

 

 

「あぁ、俺達はアッチの相手をしないといけないからな」

 

 

 亜樹子の問いに対して翔太郎が指を指しながら答える。指した方向には複数のドーパントがコチラに歩み寄って来る光景が映っていた。

 

 

「と、言うわけだ。所長、下がっていてくれ」

 

Accel(アクセル)

 

「変……身ッ!」

 

 

 バイクのハンドルを模したベルトに赤のメモリを挿し込み、凄まじい熱が発せられると共に姿が赤の戦士へと変わっていく。

 

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

「んじゃ、俺達も行くか!」

 

 

 赤の仮面ライダーは大剣を、銀と緑の仮面ライダーは鉄棍を手にドーパント達へ立ち向かう。

 

 

『彼等が最上魁星の相手をしてくれるのは予想外だったが、コチラとしては有り難い!今の内に』

 

「あぁ、コイツらを倒してさっさと、最上の相手をするぞ!」

 

Heat Metal(ヒート メタル)

 

 

 仮面ライダーWは赤と銀の姿へ変わると、炎を纏った鉄棍を振るいドーパント達を薙ぎ払うかのように先程とは比べ物にならないパワーで圧倒する。

 仮面ライダーアクセルは凄まじい馬力により相手の防御を無視するように切り裂く。

 

 

Electric(エレクトリック)

 

「ハァッ!!」

 

 

 迸る電光がオクトパス・ドーパントを貫くと、動きが止まり照井はドライバーのグリップを捻り出す。

 

 

Accel MAXIMUM DRIVE(アクセル マキシマムドライブ)

 

「ハァァッ!!」

 

 

 膨大な熱エネルギーが脚に集中、アクセルの回し蹴りがオクトパス・ドーパントの首を捉える。そのままエネルギーと共にドーパントは吹き飛ばされて行き爆散する。そして爆散した後には元の警官がその場で倒れていた。

 

 

「どうやら多少荒っぽくしても問題無いみてぇだな」

 

『まとめて行こう翔太郎』

 

 

 ドーパントが元の姿に戻った事を確認するとコチラに飛んで来るクワガタのガジェットをメタルシャフトに装着させる。

 

 

Stag(スタッグ)

 

Metal MAXIMUM DRIVE(メタル マキシマムドライブ)

 

 

 メタルシャフトをヘッジホッグ・ドーパントとホーク・ドーパントの2体に向けると、クワガタのハサミを模した赤いエネルギーが形成され2体のドーパントをギリギリと万力で固定するかの如く挟み込む。

 

 

『「メタルスタッグブレイカー」』

 

 

 その言葉と共にエネルギーの圧に耐えられず、2体のドーパントは爆散。その場には2体のドーパントの代わりに2人の警察官が倒れる事となった。その光景を見てフゥと翔太郎とフィリップは少し安心したような態度を見せる。

 

 

「……っと!そういやあの三馬鹿はどうした?」

 

「三馬鹿……?あぁ、あの3人の事か?」

 

 

 翔太郎の言葉に照井が反応する。三馬鹿=赤羽、青羽、黄羽の3人と認識されている事に誰もツッコミを入れてない事に関しては追求しないでおこう。

 そんな事をしていると後方からズガン!と激しい戦闘の音が聞こえて来る。

 

 そこにはキャッスル・ドーパント達とギア・ドーパントである最上が戦っている光景が映っていた。

 

 

「オラァ!!」

 

「ほーう、中々の攻撃だ。ハイドープ一歩手前と言うところか?」

 

「ごちゃごちゃとウルセェ!」

 

 

 キャッスル・ドーパントの重厚な装甲によりギア・ドーパントの攻撃を受け止めると左右からスタッグ・ドーパントとオウル・ドーパントの2体が同時に攻撃を行う。

 

 

「フン」

 

 

 しかし、2体の攻撃は難なく受け止められてしまう。

 

 

「赤羽!」

 

「赤ちゃん今だよ!」

 

「む」

 

 

 その言葉に最上は2体のドーパントの攻撃は自分に隙を作る為の囮だと言う事に気付くが、キャッスル・ドーパントの額には既に緑色の光がギラリと輝いていた。

 

 

「ゼロ距離だ!!!」

 

──ズギュゥウウンッ!!

 

 

 緑の閃光が最上を呑み込む。レーザーによって吹き飛ばされた最上は肩で息をしながら立ち上がる。

 

 

「ハハ……中々やるじゃないか」

 

 

 最上の言葉に赤城はハッと鼻で笑う。

 

 

「ハンッ!俺達を何だと思ってやがる」

 

「いつまでも舐めてるんじゃねぇぞ」

 

「僕達はアンタの実験動物なんかじゃない!」

 

 

「おぉ、中々やんじゃねぇかアイツら」

 

 

 3人は片膝をついている最上を囲むようにして構える。翔太郎達は敵ながら頼もしいなと思うがフィリップが通る事を思い出す。

 

 

『待つんだ翔太郎、最上魁星の洗脳のトリックだが…』

 

「ん?それはヤツが作ったメモリを持っている奴に効くんだろ?」

 

「あぁ、先日の手口は職員に危険物としてメモリを提出していた。警察署の監視カメラにしっかりと映っていたからな」

 

『……ならば何故、彼等は……?』

 

 

 フィリップの呟きは誰にも届かず、風のように消えて無くなる。三羽烏はそのままトドメを刺そうと各々は技の準備に入る。

 

 

「さぁ……覚悟はいいか?」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 赤城の言葉に最上は答える。

 

 

「君達への()()()()()()

 

 

 そう言うと最上はRのメモリを取り出し、紫色の銃のスロットへ挿し込む。

 

 

「ッ!また誰かをドーパントに変えるつもりか!」

 

「あぁ、いや。コレはそう使うモノでは無い」

 

 

 その言葉と共に最上は()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お前、何を───!」

 

「君達に見せよう……『カイザー』の力を」

 

 

 そのまま最上は銃の引き金を引くと、火薬の炸裂する音が空へ響き渡り、ギア・ドーパントの身体に変化が訪れる。

 

 ギア・ドーパントの胴体左側、左腕そして顔面の左側全体に青い歯車を模したパーツが追加されていた。

 

 

Remote Control Gear(リモート コントロール ギア)

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 その頃、少し離れた場所に2つの影があった。古明地さとりと天倉孫治郎の2人だ。

 

毒を受けた天倉を病院へ連れて行く筈の古明地さとりだったが、容態が急変したのだ。簡易だが上着を脱がせ、自分の服の一部を包帯代わりにして傷を塞ぎ顔色を伺う。

 

 

「……ハァ……ハァ……ッ!」

 

「天倉さん、しっかり意識を保って!」

 

「あ、……ッぐ……分かった……ッ」

 

(どうしよう……毒が徐々に強くなってきている)

 

 

 古明地さとりに医療に関する専門的な知識は無い。が、先程までと比べて容態が悪化している事は目に見えて分かる。毒の回りが早くなって来ているのだ。

 

 

「このままじゃ呼吸器官も麻痺、それどころか心臓の麻痺だって……!」

 

 

 病院に連れて行くには時間がかかりすぎる。せめてこの場で毒を何とかする事が出来れば彼を救う事が出来る。

 

 だが、自分にそんな"個性"は無い。今、目の前で苦しんでいる彼の心をの中を覗くしか能が無い自分を恨めしく思う。自分は無力だ。

そう思う彼女だったが必死に彼を助ける手立てを考える。

 

 

どうすればいい?どうすればこの状況を覆す事が出来る?

どうすれば─────

 

 

「方法ならありますよ」

 

「え?」

 

 

 そこには腕に不気味な人形を乗せた謎の男性が居た。その人物はコチラに近づいて来ると手に持っているアタッシュケースを地面に置き、その中からとある物を取り出した。

 

 

「それは?」

 

「彼のスポンサーが用意した物ですよ。やっと完成しましたが、訳あって渡すタイミングが遅れてしまいました」

 

 

 そう言うと重厚な赤の双眸のようなコアが組み込まれた黒いベルトを見せて来る。

 

 

「このベルトはコアから発せられる特殊パルスによって"個性因子"を刺激させ、彼の"個性"を発動、強化をさせる事が出来ます。このベルトを使えば体内にある毒を打ち消す事も可能でしょう」

 

「そ、それを使えば天倉さんは────」

 

「ただし」

 

 

 助けられるんですか?と言おうとした瞬間、男性の言葉によって遮られる。男性は古明地をジッと見つめながらベルトを渡して来る。

 

 

「ただし、あくまで無理矢理、体内にある毒を細胞の活性化で打ち消すだけです。ハッキリ言って身体に掛かる負担は凄まじいものです。最悪、彼はその負担に耐えきれずショック死と言う可能性もあります」

 

「────ッ!」

 

「さて………貴方はどうしますか?」

 

 

 と、男性は人形に向かって語りかける。彼の向いている方向は全く違うが、恐らく天倉に対しての言葉なのだろう。

 その問いに対して横になっている天倉は、何も答えずベルトに手を伸ばす。

 

 

「天倉さん何をッ⁉︎」

 

「あぁ、全く……鴻上さん、こんな物を用意してたなら早めに言って欲しかったな!」

 

 

 そのまま天倉はベルトを腰に巻くとバイクのハンドルのようなグリップを力強く捻る。

 

 

「ぐッ……あっ……がぁああ゛あああ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ッ!!」

 

「ほう……躊躇なく作動させるとは」

 

「何をしているんですか!」

 

 

 天倉の苦痛な絶叫が響き古明地は止めようとベルトに手を伸ばすが、その古明地の手を天倉が掴む。

 

 

「ぐ……が……だ、……だいじょぅ……ぶ…だからッ……!」

 

「でも……!」

 

 

 苦痛によって歪む天倉の表情に涙目となる古明地。だが天倉はそれを無理矢理、笑って心配させまいと親指を立て、サムズアップを見せる。

 

 

「ッ………!俺さ……、くしゃっとするんだよ……!」

 

「………え?」

 

「助けた人の笑顔を見るとき……物凄く嬉しくてさ……顔がくしゃっとなるんだよ」

 

 

 激しい痛みが天倉を襲っている。その筈なのだが、彼はフッと顔をくしゃっとさせる。

 

 

「俺は、誰かの笑顔を見る時、生きている実感を得る事が出来るんだ。俺は皆を笑顔にしたい。俺は皆の笑顔を守りたい。だから………」

 

 

「俺は戦う───ヒーローとして」

 

 

 覚悟を決めた少年の目には静かに燃ゆる炎が確かに揺らめいていた。

その覚悟を見届けず男性は一言だけ添えるとその場から立ち去って行った。

 

 

「貴方に良き終末を……」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「コレが『カイザー』って言う奴の力かよ……」

 

 

 翔太郎の目の前に三羽烏のドーパント達が成す術も無くギア・ドーパント改め、『カイザー』にやられている光景だった。カイザーは目の前で地に伏しているスタッグ・ドーパントに【命令】した。

 

 

「……立て」

 

「ッ⁉︎」

 

 

 地に伏していたスタッグ・ドーパントはその場に立ち上がりカイザーの前に直立不動の姿勢となる。

 

 

「ソイツを抑えろ」

 

「え、お、おい!赤羽、黄羽!何してんだよ!」

 

「わ、分からねぇ!身体が勝手に動くんだ」

 

 

 【命令】されたキャッスル・ドーパントとオウル・ドーパントは仲間であるスタッグ・ドーパントの腕を掴み動かないように固定させる。

 

 

「よし………そのまま動くな」

 

 

 そう言うと駆鱗煙銃の銃口をスタッグ・ドーパントに向け、引き金に指を掛ける。

 

 

「終わりだ」

 

 

 そのまま銃弾が放たれ、スタッグドーパントの頭が撃ち抜かれる───

 

 

──ドォン!!!

 

 

───ことはなかった。

 突如としてカイザーとドーパント達の間に爆発が発生する。爆風によって三羽烏のドーパント達は吹き飛ばされ、カイザーは腕をクロスさせるように咄嗟に防御の体勢を取っていた。

 

 

「……邪魔をしないで欲しいんだが」

 

「悪いな、みすみす放っておく訳にはいかないんだよ」

 

 

 赤と青の戦士と化した仮面ライダーは銃をクルクルと回し銃口をカイザーへ向け、カイザーもまた銃口を仮面ライダーへ向ける。

 

そして、お互いの銃から弾丸が放たれる。

 

 

 一発、一発。互いの弾丸は激しくぶつかり合い相殺され、一歩も譲らぬ銃撃戦。だが、弾丸の威力は仮面ライダーの方に分がある。

 

 しばらくして1、2発の炎の弾丸が相手の弾丸を飲み込み、カイザーに向かって直線上に放たれる。

 

 

「盾」

 

「何っ───がっ⁉︎」

 

 

 だが、キャッスル・ドーパントがカイザーの前に出て仮面ライダーの放った弾丸をその身で防いでしまう。

 

 

「おい、邪魔すんな!」

 

「知らねぇよ!俺だってこんな事したくてやってる訳じゃねぇんだよ」

 

『やはり先程、最上が自身に使用したメモリ……アレが他のドーパントを操る力の源となっているのか』

 

「なんだ、つまりアイツらは都合の良い盾にされてるって訳か」

 

『あぁ、恐らくは僕達との戦闘を視野に入れての事だろう』

 

「じゃ、どうすればヤツの能力を封じる事が出来る?」

 

 

 周囲のドーパントを操る事が可能ならば、決着を付けるのは難しくなってくる。翔太郎は冷静に分析を行うフィリップの知識でカイザーの攻略方法を訪ねる。

 

 

『簡単だ翔太郎。カイザーの力の元は"個性"だ。"個性"には必ず何かしらの発動の仕組みが存在する。操ると言う力も、カイザーの身体の何処かに発生機構が見られる筈だよ』

 

「そうか……おい、照井聞こえたか!」

 

「あぁ、勿論だ」

 

 

 少し離れた所で片膝をついていた照井こと、仮面ライダーアクセルは翔太郎の言葉に頷く。

 

 

『翔太郎、連続でマキシマムドライブを撃ち続けているが身体の負担は大丈夫かい?』

 

「あぁ、問題ねぇよ。フィリップ!気にしねぇでやるぞ」

 

『……分かった』

 

 

 その言葉と共にフィリップは相棒の言葉を信じる事にした。

 

 

「行け」

 

「───!」

 

 

 最上ことカイザーの言葉に3人は戦うべきではない者に牙を剥く。それに対して仮面ライダーWは冷静に『トリガーマグナム』にとあるモノを取り付ける。

 

 

「どうだフィリップ見つけたか?」

 

『いや、もう少しだ……もう少し引きつけてくれ』

 

 

 3体のドーパントがこちらに迫ってくる。その距離およそ7メートル、6、5、4、3、2、1────

 

 

『見つけた……!翔太郎!』

 

「あぁ!」

 

 

 フィリップの言葉を待っていましたと言わんばかりに翔太郎は青のメモリをトリガーマグナムにセット。

 

 

Spider(スパイダー)

 

Trigger MAXIMUM DRIVE(トリガー マキシマムドライブ)

 

 

『「トリガースパイダーブラスト」』

 

 

 銃口から網目状の弾丸が放たれ、3体のドーパントが包み込まれる。

 

 

「うおっ!な、何だコリャ!」

 

「あ、だだだっ⁉︎押すな黄羽!」

 

「だって狭いんだもん!」

 

 

「悪いな、3人共。そこでしばらくジッとしていてくれ……照井!」

 

「ハァァッ!!」

 

 

 翔太郎の言葉と共に照井は叫びながら大型剣エンジンブレードをカイザーに突き立てようとする。

 

 

「単調だな」

 

 

 しかし、カイザーの手にあるナイフによってアクセルの大型剣を受け止める。

 

 

「フン、そんな大声で叫ばれてはな……簡単に防げるものだな」

 

 

 嘲笑うかのようにカイザーは剣戟に持ち込むが、アクセルは仮面の下でフッと笑う。

 

 

「あぁ、そうだな……だが単調なのはお前の方だったようだ」

 

「何─────ッ!」

 

 

 背後から凄まじい熱を感じる。振り向くと、そこにはマキシマムドライブ発動の準備を終えた仮面ライダーWが立っていた。

 

 

「馬鹿な……先程までの銃撃の威力を察するに身体にかかる負担は凄まじい筈────ッ⁉︎」

 

 

 分析している最上の背後からアクセルが羽交い締めで拘束する。

 

 

「何をしている!貴様まで巻き込まれる可能性が───!」

 

「やれ!!左ッ!フィリップ!」

 

 

『既に準備は終えている。翔太郎!」

 

「あぁ、()()()()()

 

 

 仮面ライダーWはコウモリを模したガジェットを取り付けたトリガーマグナムの照準をカイザーの左胸に合わせる。

 

 

『「トリガーバットシューティング」』

 

 

 凄まじい熱量を持つ弾丸が銃口から放たれる。瞬間、アクセルはその場から飛び退き炎の弾丸はカイザーの左胸、歯車を模した装甲に命中し大きく吹き飛ばされる。

 

 

「ぐぅぅうッ─────!」

 

 

 しかし、空中に投げ飛ばされたカイザーは姿勢を直し、ガリガリと地面を削りながら着地を成功させる。

 

 

「お前の能力封じさせて貰ったぜ最上」

 

 

 翔太郎はそう言いながらカイザーの融解しかけた歯車の装甲に指を指す。

 

 

『カイザーの力は中々のものだが……、分は僕達の方が上のようだ』

 

「くっ、今すぐに網から抜け出せ!」

 

 

 その一言でカイザーの歯車の装甲が回転し始めるが、左胸の装甲のみギリギリと言う擦れる音が響き動く事はなかった。

 

 

『やっぱり、歯車の装甲が能力発動のメカニズムになっていたか……』

 

「成る程な……やっとお前は1人になった訳だ」

 

 

「──────いや」

 

 

 ユラリとカイザーである最上は立ち上がる。

 

 

「まだだ────まだ私は───終わる訳にはいかない」

 

「この期に及んでまだ───!」

 

「私はまだ……終わる訳にはいかなのだよ!!!」

 

 

 その一言と共に新たなメモリを取り出し、銃のスロットに挿し込むと再び己に向けて引き金に指を掛ける。

 

 

『ッ!待つんだ最上魁星!それ以上メモリの力を身体に取り込めば────』

 

「あぁ、どうなるか分からないな………が、何度も言った筈だ!私はここで終わる訳にはいかないとなぁ!!!」

 

『Engine《エンジン》』

 

「これが……潤動だ……ッ!」

 

 

───ドォン!!!

 

 

 

最上魁星に向かって銃弾が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わりよお義父さん」

 

 

 見値子が放った弾丸により駆鱗煙銃が宙を舞う。そして、続け様に弾丸が放たれ、一発、二発と最上に命中すると、撃たれた最上はそのまま膝から崩れるように倒れる。

 

 

「……見値子さんアンタ」

 

「……すみません、皆さん。お義父さんが迷惑をかけてしまって」

 

 

 コスチュームを着た見値子が頭を下げる。目の前にいるこの男は犯罪者なのには変わらないだろう。だが、それと同時に自分の育ての親である。

 

 

この人(お義父さん)の所為でさとりちゃん、天倉くんに被害が及びました。……少なからず私にも責任があります」

 

「……アンタ、どうするつもりだ?」

 

「……この事件が終わったらヒーローを辞職しようと思います」

 

 

 見値子は作り笑いを浮かべる。心の中ではあらゆる感情が渦巻いている筈だ、それなのにこの人は決断したのだ。犯罪者である育ての親を自らの手で捕まえると

 

 

「……それで良いのか?」

 

「良いんです。……天倉くんだって、犯罪者が身内にいるようなヒーローが居たら……失望しちゃいますからね」

 

 

 ハハハと強がりながら彼女は笑う。その様子見て照井は否定する。

 

 

「見値子ソレは違う……彼ならきっと───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Funky Match』

 

 

「「「!」」」

 

 

『Fever!!』

 

 

 謎の音声と共にギャラギャリギャリと機械が作動する音がそこら中に響く。その音の発生源はすぐ近くに有った。

 

 

「待て!まだ最上魁星は終わっていない!!」

 

「何ッ────!」

 

 

 

 カガリガリと言う音を鳴らす。身体中に火花を散らしながらそこには先程とは全く違う青と赤の歯車の装甲を持つ怪人が立っていた。

 

 

『──Perfect』

 

「バイカイザー………ソレがコレの名前だ」

 

 

「メモリ3本分の力を取り込んだのか……!」

 

 

 ガリガリと歯車の噛み合う鳴り響かせ、バイカイザーはグッと手を握り締める。

 

 

「………本調子が出ない内に叩く!」

 

「おい、待て照井!」

 

「ハァァァアアアアッ!!!」

 

 

 叫びながらエンジンブレードを振るうアクセル。バイカイザーはアクセルの振るう剣を受け止めた。

 

 

「何ッ!」

 

「………」

 

 

 それに対してバイカイザーは歯車を回転させながら、アクセルを殴った。

 

 

「グッ────がっ!」

 

 

 エンジンブレードを盾にするがそれでも衝撃は受け止めきれず後方へ大きく吹き飛ばされてしまう。

 

 

『馬鹿な……カイザーの時とは比べ物にならないパワーだ!』

 

「そうかよ……だったらもう一回、歯車を溶かして大人しくさせてやるよ!」

 

 

 翔太郎はそう言いながら炎の弾丸をバイカイザーに向け、連続で撃ち放つ。が、バイカイザーはソレを直立した姿勢で高速移動で回避し続ける。

 

 

「何だ気持ち悪い動きしやがって!」

 

『おそらく、エンジンの断続的なエネルギーを歯車の伝達力によってあのような動きを生み出しているんだろう』

 

「だからって、あんな動き出来んのかよ───!」

 

 

 気付いた時には既に時遅し、Wの前にバイカイザーが立っており、トリガーマグナム弾くと流さないようにWの首を鷲掴みにした後、何度も何度も力任せに殴りつける。

 

 

「ぐっ、このッ!」

 

Heat Joker(ヒート ジョーカー)

 

 

 肉弾戦に特化した赤と黒の形態に変化し、お返しと言わんばかりに炎を纏った殴りや蹴りを放つ。だがバイカイザーに効いている様子は見受けられない。

 

 

「コイツ……効いてないのか!」

 

『メモリ3本の力とは言え、ここまでの物なのか⁉︎』

 

 

 翔太郎とフィリップが驚愕する中、バイカイザーは不敵に笑う。

 

 

「フ……コレが私の集大成だ。コレがバイカイザーの力だ」

 

 

 その言葉と共に歯車の形をしたエネルギーが形成され、まるでチェーンソーのように回転したエネルギーはWの体に火花を散らしながらダメージを与えていく。

 

 

「ぐ……強ぇ……!」

 

「フフ、仮面ライダーも手も足も出ないか……私の成果はお前達を超えた。私の作った力は"個性"をも遥かに凌駕する!私の力は世界を変える───」

 

 

──ガァン!

 

 

「……折角の良い気分を台無しにするのはやめてくれないか?見値子」

 

「……黙りなさい!貴方の作った力は世界を変える物じゃない!貴方の力は別の人から奪った"個性"で出来ている!力に溺れて過信するのは良くないわね……!」

 

 

 不敵な笑みを浮かべながら銃口をバイカイザーに向ける見値子。

 

 

『見値子!何をやっている!貴女ではバイカイザーに勝てる要素は……!』

 

「その通りだ」

 

 

 バイカイザーは娘である見値子の首を鷲掴みにする。そのまま持ち上げるとギリギリと手の力を強めていく。

 

 

「───ッ!」

 

「どうした?もう終わりか?」

 

『やめろ!その人は貴方の娘だぞ!』

 

「あぁ、そう言えばそうだったな………ところでヒーローにとって名誉ある死と言うのは何だと思う?」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、フィリップは激昂する。

 

 

『自分の子に死ねって言うのかッ!!』

 

「あぁ、その通りだ。良かったな見値子、君は敵との戦闘によって殉職してしまうが君の名前は広く伝わる事になるだろう」

 

「ぐッ……やめろ最上……!」

 

 

 バイカイザーは空いている片方の手を握り締め、拳を振るう。

 

 

「さらばだ。我が娘よお前との思い出は──────」

 

 

 

「でぇぁぁああああッ!!!」

 

 

瞬間、バイカイザーの見値子を掴んでいた腕に衝撃が走る。死角からの不意打ちにより体勢を崩してしまう。

 

 

「お前は──────!」

 

 

「……天倉君、何故君がここにいるのかな?」

 

 

 ゼェゼェと肩で息をしながら、バイカイザーの腕に蹴りを入れ見値子を助けた者の正体。それは毒によってもはや動く事すら出来ない筈の天倉孫治郎本人だった。

 

 

「君には強力な毒によって苦しんでいる筈だが……どうやって治した?」

 

「そんな事……俺が知るか」

 

 

 鋭い目付きでコチラを見据える天倉にバイカイザーはクク、と笑みを漏らす。

 

 

「まさか……その状態で私とやり合うつもりかな?」

 

「やめろ天倉!お前が出る幕じゃ───」

 

「今の俺はまだ、戦闘許可が解けていない」

 

 

 そう言うと、天倉は赤い目のような装飾が存在する黒のベルトを腰に回す。

 

 

(あぁ、毒の所為かやっと目が覚めた)

 

 

 そしてベルトに付けられている赤いグリップを握り締める。

 

 

(俺は常に皆の笑顔を守るヒーローで在りたい。昔からそれは変わらない)

 

 

 心の中で鎮められていた炎が再点火する。

 

笑顔が好きだ。誰を助けた時に見せるホッとしたような笑顔が大好きだ。戦う理由はそれだけでいい。

 

 

──俺は何なんだ?

 

 

「(そんなの決まっている………)覚悟しろ茂加味快青……いや最上魁星。アンタの研究成果を、アンタの下らない考えごとぶっ潰す」

 

 

「ほぉ…いい表情(かお)だ……。君の目的とヒーローネームは?」

 

 

「『笑顔』。俺は───」

 

『──Ω──』

 

 

 グリップを力強く捻り、己の名前(ヒーローネーム)を口にする。

 

 

 

「────アマゾン

 

 

 緑の爆炎が周り空気を燃やすかのように広がる。そこにあるのは赤い傷のような模様を持つ緑色の戦士。

 

 

『Evolu・E・Evolution』

 

「心の火……心火(しんか)だ」

 

 

 拳と手の平を打ち合わせた戦士は赤の双眸をギラリと輝かせる。

 

 

 

「心火を燃やして……ぶっ潰す……ッ!」

 

 

 そう言った直後、バイカイザーはアマゾンの眼前に接近すると、拳を顔面に向かって振るう。

 

 

──ガッ!!!

 

 

「ほぅ……」

 

「その程度かテメェ……」

 

 

 そう言うと空いている手を握り締め、バイカイザーの顔面に拳を叩き込む。そこから蹴りを拳を、蹴り、蹴り、拳を何度も何度もバイカイザーに打ち込んでいく。

 

 

「オラァ!!!」

 

「フン」

 

 

 だが、アマゾンの拳を受け止めたバイカイザーは腕の歯車を回転させるとそのままチェーンソーの要領でアマゾンの胸を切り裂く。

 ダラダラと裂けた胸から血を流すアマゾンに勝ち誇ったような笑みを漏らすバイカイザー。

 

 

「フ、どうしたもう終わr「ラァァァアアアッ!!!」──ッ!」

 

 

 しかし、アマゾンの攻撃は再開される。傷が元から無かったかのようにアマゾンはバイカイザーに攻撃を何度も叩き込んでいく。その様子を見た照井は剣を杖の代わりにして立ち上がる。

 

 

「……不味いぞ天倉……」

 

『あぁ、痛覚が完全に麻痺されている』

 

 

 人は闘争、もしくは逃走と言った極限状態に陥るとアドレナリンが分泌される。アドレナリンの分泌によって痛覚を麻痺させ、判断を鈍らせないような仕組みとなっている。

 

 本来、飢餓、生命の危機によって生き物は生き残る為にアドレナリンが分泌されるものだ。

しかし、天倉孫治郎の受けたストレスは尋常じゃない量のものだ。その為、脳内のリミッターが外され、いつも以上に身体の限界以上を負担が天倉にかかっている。

 

 

『このままでは天倉の身体は壊れる』

 

 

 だと言うのに、それを理解している筈の本人は

 

 

「オラァッ!!死ねぇッ!!」

 

「クク、どうした。その程度なのか!」

 

 

 戦っている。

 彼の戦うその姿は正に自分達と同じ仮面ライダーではないか。

 

 

「ドルァッ!!!」

 

「ぐ……いい加減にしてもらおうか!」

 

 

 蹴りがバイカイザーの首を捉える。が、凄まじいパワーで無理矢理、アマゾンの蹴りを弾くと腕の歯車を高速で回転させ、アマゾンに向かって振り下ろす。

 

 

「───ッ!!」

 

 

 高速回転する歯車をアマゾンは受け止めるが、ガリガリ歯車が手の平を削っていき、バイカイザーの歯車に鮮血が付着する。

 

 

「……っ天倉くん……!それ以上は!」

 

 

 見値子が止めるように呼びかける。それ以上受け止めようとすれば手が抉れ、最悪の場合、肘から先が無くなるだろう。

 

 

「────ッウォォォォオオオオオオオオッ!!」

 

「止めようとしているのか?無駄だ!バイカイザーの力は君の"個性"を遥かに上回る!君では私に勝つ事など不可能だ!」

 

 

 歯車の回転スピードを更にあげる。それと同時に手の平の出血量が多くなる。

このままでは、見値子が考える通り天倉の手が使い物にならないものとなってしまうだろう。

 

 

「不可能だと────」

 

 

 だが天倉は、その考えを打ち砕く。

 

 

「不可能だと───誰が決めたァ!!ウォォォアァァアァァァァァアアアアアッッッッ!!!」

 

 

 

 天倉、いやアマゾンは高速回転する歯車を両手で受け止める。声にならない程の叫び。

そして絶叫が止む瞬間、ピタリと回転していた筈の歯車が止まった。

 

 

「な───────」

 

「キツイの行くぞゴルァァァァアアアアアアアアッッ!!」

 

 

 瞬間、アマゾンの拳が爆ぜる。

いや、爆ぜるように炎が噴き出たと言った方が正しいだろうか?血に塗れた拳がバイカイザーの顎を捉え、大きく後方へ殴り飛ばした。

 

 

「ッ───何⁉︎」

 

「まだ終わりじゃねぇぞ………ッ!!」

 

 

 その一言と共に天倉は再びグリップを握り、更なる力を求め叫ぶ。

 

 

「超……変身……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

──その時、不思議な事が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 その場に居た者達は天倉の、その姿に目を疑う。

 

 

 

 ごう、と天倉の身体中から炎が燃え盛る。

 比喩でもイメージによるものでもない。天倉孫治郎の身体から爆炎が溢れ出しているのだ。

 

 

 身体の一部は黒い岩石の如く、皮膚は燃ゆる炎の如く、身体の中に流れる血はマグマの如く。

 極限状態の中、天倉は新たな力を手に入れたのだ。

 

 

「力が溢れる……」

 

 

「魂が燃える……!」

 

 

 

俺の血潮(マグマ)が迸るッ!!

 

 

 

 




 天倉にドルオタと筋肉バカがログインしました。


胸糞展開、鬱展開を好むのは読者の勝手だ。けどそうなった場合、誰が鬱フラグクラッシャーになると思う?

万丈だ(やりたかっただけ)




天倉新フォーム

アマゾン極熱筋肉形態(マグマエクシード)

 多大なストレスに天倉の爆発力がプラスされ不思議な事が起こって誕生した超物理特化型形態。
身体の筋肉が肥大化し、筋力が大きく強化されている。更に、身体から噴き出る炎によって攻撃に応用する事も可能となっており


 だが実際は、血液が極限まで熱され沸騰している為、全身が赤くなり、纏わりついている炎は体外に出た血液、皮膚が発火した物。
皮膚の一部は黒く炭化し、他の皮膚は溶けてしまい熱を帯びた皮下組織が剥き出しになっている。
暑そう(小並感)



 挿絵に関しては、アプリで絵を描けるようなヤツをインストールしたので本格的に色を塗ってみました。

めっさ暑そう(小並感)





今回の黒幕が作成メモリですが、人の体の一部(細胞等)を埋め込む事によって擬似的にその個性に見合った身体へ変化させると言ったものになります。

原作版ヒロアカを見ている人なら分かると思いますが"エリちゃん"の個性破壊弾と同じようなものですね。





the誰得な情報

茂加味(しげかみ) 快青(かいせい)】という名前、これを平仮名に戻してもう一度漢字に直します。

茂→しげ→も→最

加味→かみ→上

快→かい→魁

青→せい→星


これら並べるとあーら不思議。
最上(もがみ) 魁星(かいせい)】になります。皆分かったかな?




 ちなみに今回出したオクトパス・ドーパント、ホーク・ドーパント、ヘッジホッグ・ドーパントは仮面ライダービルドの序盤に出てきたスマッシュをモチーフにしています。

 そう言えば、ミラージュ・スマッシュを覚えている人いますかねぇ。
個人的にあのデザイン好きなんですが……何故に黒くなって出てこなかったのかコレガワカラナイ。





前回の後書きを見ていない人用にここでもお知らせ。

 新しい小説を書くに至って、小説のアイデアが2つあります。そのどちらが良いか活動報告でアンケートを取っています。
選択肢としては『おっぱい』と『中二病』になります。

こ れ は ひ ど い


【注意】
 アンケートを取るのは活動報告欄なので感想欄にアンケートの答えは書かないで下さい。



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第47話 これでE/燃えよアマゾン

 新フォームが出たので皆さんお待ちかね恒例の暴走(初回確定)タイムが始まります。
え?待ちかねて無い?(´・ω・`)そんなー
さて、今回の新フォームの被害者は果たして何人出るかなー?wktk

 ちなみに戦闘中は好きな挿入歌を流して読んでください。クソ小説のクソ描写が少しでも和らぐと思います。




「亜樹子さん!」

 

「あっ、さとりちゃん!無事だったの?」

 

「はい……っ!見値子さん、その傷……!」

 

「あ、ははは……ちょっと油断しちゃってね」

 

 

「今、警察の人達がこいしちゃんの捜索をしているからすぐに見つかると思うよ」

 

「えっと…天倉さんは?天倉さんはどこに!」

 

「天倉くんなら────

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

「うぉらッ!!!」

 

「ッ────!」

 

 

 腕をクロスさせガードの体勢を取り、防御に成功するが、全身に凄まじい熱量と共に衝撃が伝わる。まるで真正面からトラックが衝突して来たような感覚がバイカイザーを襲ったのだ。

 

 

「オラオラオラァッ!!」

 

 

 それを何発も身体の至る箇所に命中させていく。拳のラッシュがバイカイザーを襲い、その身体を浮かせる。

 

 

「オルァッ!!!」

 

 

 フルパワーのスイングが浮かせたバイカイザーを大きく吹き飛ばされ、今までの攻撃と比べ物にならないパワーに戸惑いを隠し切れない。

 

 

「ぐ、なんだこの力………!」

 

「その程度かァ!!」

 

 

 吹き飛ばされ倒れているバイカイザーを思い切り蹴り上げ、背を壁に打ち付けた後、追い討ちをかけるように拳を叩き込む。

 

 

「ぐ……舐めるな!!」

 

 

 先程から何度も攻撃されているバイカイザーだが、腕の歯車を高速で回転。チェーンソーの要領で天倉の拳を躱し、回転する歯車が天倉の腕を切り裂く。

 ブシャリと天倉の腕の肉を抉る音が響き、鮮血が宙に舞う。バイカイザーの歯車はギャリギャリと音を立てながら血の色に染まる。

 

 

「────⁉︎」

 

 

が、バイカイザーの動きが止まる。それもそのはず、彼の視界に飛び込んで来たのは()()()()()()()()光景だからだ。

 

 

「コレは……ッ!」

 

「余所見してんじゃねぇッ!!らぁッ!!」

 

 

 再び、丸太のような筋肉に覆われた脚でバイカイザーを蹴り上げ、そのまま目の前で浮いた敵に向かって拳を握り締め振りかぶる。

 

 

「ぐ……、装甲が融解している……!」

 

「ハァ……!ハァ……!どうしたァ…!その程度かァ!」

 

(……既に息が上がっているだと?)

 

 

 バイカイザーは目の前の天倉孫治郎の爆発力に驚くと共にその力が引き起こす副作用に関心をもたらす。

 

 

(成る程。コレは……単純な筋肉量の増加と体温の上昇か!)

 

 

 天倉孫治郎の"個性"は父から受け継がれたモノだが、僅かに彼の"個性"には母の【エネルギー変換】の力も受け継がれていた。

 

体内のカロリーを筋肉量の増加に加え、熱エネルギーへ変換する事によって体温の上昇を図り、パフォーマンスを限界まで引き上げる事に成功。ポテンシャルをフルに引き出しているのだ。

 天倉の身体から発せられている炎は極限まで熱された血液が体外に排出され発火したモノであり、あくまで二次的なモノだと理解できる。

 

 バイカイザー、いや最上魁星は天倉の新たな力に───

 

 

「ハ、ハハ……!遂にエクシードフォームの先へ行ったか!」

 

 

───歓喜した。

 

 単純に最上魁星は嬉しかった。目の前の少年は自分の予想を遥かにに上回って来た。

……彼ならば自分の野望だって叶えてくれるかもしれない。そう考えてしまう。

 

 

「いいぞ天倉!君の本気見せてみろ!」

 

「上等だァッ!!!」

 

 

 天倉、いやアマゾンは燃え盛る炎を纏い拳をバイカイザーに叩き込む。殴れば殴るほどバイカイザーの装甲は融解し、アマゾンの手の甲からは()が噴き出る。自分への攻撃を気にする様子もなく、ただ攻め続ける。

 

 

「アレが、天倉なのか…?」

 

 

 その凄まじい様子に押されてしまう翔太郎。目の前に居るソレは自分が知っている天倉とはかけ離れていた。文字通りマグマの如く侵食する勢いで一方的な戦いを見せるソレにただ、圧倒されてしまう。

 

そんな翔太郎に相棒が声を掛けてくる。

 

 

『……不味いぞ翔太郎。一見すると天倉くんの優勢に見えるが実際は違う』

 

「どう言う事だ?」

 

『彼の体温は更に上昇し、体内のタンパク質は水素結合が切断され立体構造を崩してしまう。その結果、体内のタンパク質同士が凝固して彼の身体は変性し───』

 

「あぁ、もっと簡単に言え!」

 

『つまりだ、彼の身体は己の力で熱され自分の首を絞めているのと同じ状況だ。このままでは───』

 

 

 熱されたフライパンに肉や魚、卵を入れればどうなるだろう?表面は焼け焦げ内部まで火が通り柔らかな質感が固いモノへ変質する。

"ステーキ肉"が"元の生肉"へ戻る事は無いようにこのまま天倉の体温が上昇し続けるのは危険なのである。

 

 

 天倉の使う"個性"には形態が存在する。

現在、彼が好んで使用する消費カロリーを抑えた『基本形態(スタンダードフォーム)』。それ以前に使用していた出力、消費カロリーを全く考慮していなかった『グローイングフォーム』。生体電気を放出させる器官を持ち、スピード、殺傷力に特化した『エクシードフォーム』。

 

 そして現在進行形で発現させている『エクシードフォーム』を更に超えた『エクシードマグマ』は筋肉量を増加させ、体温を上昇させたものだ。『エクシードフォーム』と比べて、触手や刃などは使えない代わりに肉弾戦を特化させており、単純なパワーでは群を抜く形態だ。

 

 しかし、強力な分デメリットも存在する。『エクシードフォーム』も走力等が特化されているが、凄まじいスピードを出す為に電気信号の伝達スピードを"無理矢理上昇させている"のに加え全身の負荷も凄まじいものになる。

『エクシードマグマ』の場合は上記以上の全身への凄まじい負担に、急激な体温上昇によって後半は身体機能の低下を招いてしまう。雄英体育祭においてリカバリーガールに使用するのを控えろと言われたのはこれが原因だ。

 

 

 

 それを理解している筈なのに、(アマゾン)は止まらない。

時折、手から炎が噴き出ると同時にゴキャリと不快な音が響くがその手を止める様子は無い。

 

 ボギリと言う音と共に一段と炎が荒れ、雄叫びと共にアッパーが炸裂する。大きく吹き飛ばされたバイカイザーは肩で息をしながら燃え盛るアマゾンを見据える。

 

 

「面白い!君の執念は恐ろしいな!自分が死ぬ可能性を考慮しても戦い続けるか!」

 

「当たり前だ!!」

 

「何をッ──⁉︎」

 

 

 その一言と共にアマゾンはバイカイザーに抱き着いた。

 バイカイザーの問いに即答する天倉。彼の中で既に答えは決まっていた。自分は他人の笑顔の為に戦えればそれで良い。だからこそ、この瞬間が自分の最期になっても構わない。

 

 

「まさか……自爆するつもりか!!」

 

「こうでもしないと、お前を倒せないと思ったからな!!」

 

 

 アマゾンの全身の炎がまた一段と噴き上がり、周囲の温度も劇的に上昇する。バイカイザーは拘束から投げ出そうとするがアマゾンは拘束する力を一切緩めない。それどころか更に力を込め、抜け出せないようにする。

 

 

(これで良い……これで全部……!)

 

 

 自分自身にそう何度も言い聞かせる。自分を犠牲にして他を救う。それがヒーローとして当たり前の事だ。例え自分がどうなろうと、他人の笑顔を守れればどうでも良い。昔からそう誓っていた。

 だからこそ躊躇なくこれ(自爆)選択する事が出来たのだ。天倉は自身の体温を限界まで上昇させパワーを暴発させようと───

 

 

 

──天倉さん

 

「………」

 

 

 ふと彼女の言葉が頭をよぎる。

 

 

(あぁ、もう少し気の利いた別れの言葉とか送っておいた方が良かったのか────)

 

 

 瞬間、横から衝撃が走る。しばらく頭の中が真っ白になっていた天倉だったが気が付くと彼は地面とキスをしていた。振り向くとそこには自分に蹴りを放っていたのだろうコチラに"右脚"を突き出していたWが立っていた。

 

 

「……え?翔太郎……さん?」

 

「……あ、いや…俺じゃない相棒の方だ」

 

 

 翔太郎も驚いたように呟くが、そのままWは彼の胸倉を掴み引き寄せる。

 

 

『何故、あんな事をしようとした?君は完璧なヒーローになったつもりなのかい?』

 

 

 フィリップの言葉に天倉は押し黙ってしまう。図星だ、完璧に見抜かれてしまっている。天倉はなんとかして言い訳をしようと考える。

 

 

『……Nobody's Perfect』

 

「え?」

 

『僕の恩人の言葉さ。完璧な人間なんて存在しない。無論、ヒーローだって同じさ』

 

 

 胸倉から手を離すと、フィリップは天倉に向かって手を差し伸べる。

 

 

『君の目指すヒーローは笑顔を守るヒーローなんだろう?だとするなら彼女を悲しませてはダメだろう?』

 

 

 その言葉を聞いて、天倉は辺りを見渡す。

すると、少し遠い場所に約束した彼女が佇んでいた。亜樹子と見値子も側におり、ホッと安心すると同時にチクリと胸が痛む。

 

何故、こんな時に胸が痛むのだろうか?

 

 

「───あ、そうか」

 

 

 不思議で堪らない天倉だったがすぐに答えは見つかった。彼女は笑顔ではなかった。今にも泣き出しそうな顔だったのだ。

 

 

『君は昔、その"個性"と君自身の優しさ故にイジメに遭ったそれ以来、君は周りの人を信じられなくなり、どうせ裏切られてしまうと怯えてしまった』

 

「……そうだ、俺に価値なんて無い。だから笑顔を守るヒーローとしての存在価値がある俺を作り出したかった」

 

 

 彼の中でのヒーローとは民衆の都合の良いマシーンと言った認識だった。喝采など要らないマシーン。だが本当は笑顔を守り、皆に受け入れる存在になりたかった。

その為に強く在りたいと願っていた。

 

 

『強いだけのヒーローに価値は無い。君の優しさが必要だ。それがもし弱さだとしても"僕達"はそれを受け入れる』

 

 

 差し出されている手をマジマジと見つめると恐る恐る手を伸ばし、掴む。

最初から手は伸ばされていた。だが、自分はその手を見るどころか勝手に怯えて皆が伸ばす手に気付いていなかった。

 

 

「あぁ、クソ。緑谷くん達も伸ばしていたじゃないか……」

 

『目は覚めたかい?……ふぅ、一体誰に影響されてしまったんだろうね』

 

 

 フィリップは自分自身に呼び掛けるように呟く。仮面で表情が読み取る事は叶わない。だが、その声色は嬉しそうな、懐かしそうに感じられる。

 

 

「どうやら落ち着いたようだな。どうだ気分は?」

 

「えぇ、まぁ……。なんかスッキリした気分ですね」

 

「フッ、そうかよ」

 

 

 天倉の答えに仮面越しに不敵な笑みを浮かべる翔太郎。そんな彼にアクセルである照井は声を掛ける。

 

 

「随分とご機嫌だな。弟子を取った気分にでもなったか?」

 

「弟子?………あぁ、成る程な」

 

 

 翔太郎も気が付かない内に自分と天倉を重ねていた。未熟だった頃の自分と、その自分の世話を焼いていた"あの人"。いつからだったのだろう、自分が世話を焼く側になっていたのは。

相棒は、その事をとっくに気が付いていたのだろう。

 

「ったく……、さっさとケリつけるぞフィリップ」

 

『あぁ、分かった。……と、言いたい所だけど今回はかなり特殊だ』

 

「どういう事だフィリップ」

 

 

 フィリップの言葉に照井は疑問を投げかける。

 

 

『バイカイザーは《ギア》の力を軸に《リモートコントロール》《エンジン》の力を纏っている。彼の体内にはメモリ3つ分のエネルギーが蓄積されている。このまま放っておけば最上魁星はタダでは済まないだろう』

 

「方法はあんのか?」

 

『簡単だ。ならばコチラもメモリ3つ分の力を与えエネルギーを相殺すれば良い……が、僕達と照井竜は戦闘のダメージが残っている。片方がツインマキシマムを行うと言うのも危険だ。となると最善の方法として………』

 

「?」

 

 

 Wは天倉の方にチラリ視線を向け、言葉を投げかける。

 

 

『天倉君、君の力を貸して欲しい』

 

「正気かフィリップ!」

 

 

 フィリップの言葉に照井は食いつく。天倉孫治郎はこれまで事件解決に貢献してくれた人物だ。しかし、一歩間違えれば相手を殺してしまうかもしれない手段に彼を巻き込んでしまう。

彼は警察として、1人の人間としても見過ごす訳にはいかなかった。

 

 

「方法は?」

 

「天倉……!」

 

 

 だが、彼は躊躇なくフィリップの言葉に応える。

照井は止められない事に悔やむ。こんな事に巻き込んでしまった事に、こんな危険な目に遭わせてしまった事にだ。

 

 

「照井さん、ありがとうございます」

 

 

突如として天倉の言葉が照井の耳に入る。

 

 

「だけど俺は覚悟は出来ているんです。俺はあの人を許せない……だけど、それでも助けたい。ここで死なさせないその為に俺は戦います」

 

「…………」

 

 

 既に覚悟はできている……か。そう考えながら照井は己の獲物を地面に突き刺す。

 

 

「天倉、これを使え。その形態なら簡単に使う事が出来るだろう」

 

「え?わ、分かりました……!」

 

 

 突き刺さったエンジンブレードを掴み、地面から抜く天倉。全身に伝わってくる重量はこれから起こる出来事に警告しているようにも感じられた。

 

 

『トリプルメモリブレイクだ。まず僕達のマキシマムドライブでバイカイザーの《リモートコントロール》、《エンジン》の装甲を剥がす。その後、この中で最もパワーの高い天倉くんが《ギアメモリ》をブレイクするんだ。天倉くん、その形態はいつまで維持できる?』

 

「え?うーん……残り20秒くらいですね」

 

『そうか、なら君はエンジンブレードのマキシマムドライブでバイカイザーの体内、胸部中心に存在するメモリを直接破壊するんだ』

 

 

 フィリップの説明を聞くと天倉は無言で頷く。

 

 

「んじゃ、さっさと決めるぞ。せっかくだからな、技名は………」

 

 

 ウンウンと考える翔太郎の横から天倉が手を挙げ、意気揚々と答える。

 

 

「あ、ハイ!『真空切り裂きストライク』で!」

 

「だっさ⁉︎ネーミングセンスねぇなお前!あーったく……『ライダースラッシュ』とかで良いだろ」

 

「安直過ぎませんか………ん?何でライダー?免許持ってないんですけど」

 

「……お前、前に自分で仮面ライダーって名乗ったじゃねぇか」

 

「……あぁ、成る程。そう言う事か」

 

 

 先日の戦いで自分は『仮面ライダー』と呼ばれ、ついその場のノリで便乗する形で名乗ってしまった事を思い出す。

あの時は流れるままに名乗ってしまう事になってしまったが、今この瞬間、自分はヒーローとして、"仮面ライダー"として戦っているのだと実感する。

 

 

「……しゃあッ!」

 

 

 深呼吸をした後、拳を口元に運び自身に喝を入れる。

今ここに3人の仮面ライダー(正義の味方)が揃いバイカイザー(黒幕)の前に立ちはだかる。

 

 

「……いよいよ幕開けと言う事か?」

 

 

 バイカイザーが不敵な笑みを浮かべながら呟く。その言葉に対して天倉は何も言わずに剣を構える。

 

 

「都市伝説とされる誰にも理解されずに孤独に戦い続けるヒーロー『仮面ライダー』が2人……いや、君も含めると3人か?」

 

「……」

 

「私は既に満身創痍。どう足掻いたとしても君達に勝てる未来(ヴィジョン)が見えない」

 

「………」

 

「それでも君は無抵抗な相手を集団で倒すと言うのかな?」

 

 

 自然と剣を握る手の力が強くなるのを感じ、天倉は口を開く。

 

 

「貴方はそれ相応の事をして来た。霊烏路さんに、見値子さんに、三羽烏の人達に、古明地さんとその妹さんに、身勝手な研究に巻き込んで悲しませた」

 

 

 己も、彼女達の事を理解出来なかった。もっと自分に出来る事があった。周りの皆を信頼出来ていなかった。自分の罪は既に数えた、ならば次は相手が罪を数える番だ。

 天倉は人差し指を向け、言い放つ。

 

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

 

 

 その言葉と共にWとアクセルは駆け出す。Wは瞬時にメモリをチェンジさせ、緑と黒の姿に変わる。

そして、2人のライダーは各々のドライバーを操作し、その場で跳躍を行う。

 

 

Joke(ジョーカー) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

Accel(アクセル) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

 

 2人のライダーは空中で回転を加え、バイカイザーに蹴りを叩き込む。

 

 

『「ライダーツインマキシマム!!」』

 

「ッ!!」

 

 

 対するバイカイザーは自身の正面に歯車の形をしたエネルギーを形成し盾として攻撃を防ぐ。

 

 

「おおおおおおおおッ!!!」

 

「『「ハァァァァアアアアアッッッ!!」』」

 

 

 2人のライダーとバイカイザーの力がぶつかり合う。両方のパワーとパワーが火花を散らし、拮抗の末打ち勝ったのは───

 

 

「『「ハァアアッ!!」』」

 

「ぐぁッ───!」

 

 

 仮面ライダー達だ。ライダー達は歯車のエネルギーを打ち破り、見事バイカイザーの胸部にマキシマムドライブを決めたのだ。そこへ、天倉が剣を手に駆け出す。

 

 

「決めろ!天倉ァ!」

 

 

 翔太郎の言葉と共に、照井から預かった『エンジンメモリ』をエンジンブレードのスロットに挿し込む─────

 

 

「させると思うかッ!」

 

──ガギィン!

 

「ッ⁉︎」

 

 

───事は出来ず、天倉の手に収められていたメモリはバイカイザーが放った歯車型のエネルギーによって弾き飛ばされてしまう。

 

 

「しまっ「天倉ッ!」──!」

 

 

 翔太郎の呼び掛けに反応した天倉はエンジンブレードのスロットに飛んで来た()()()()を挿し込む。

 

 

「切り札は最後まで取って置くもんだぜ…決めろ!」

 

Joke(ジョーカー) MAXIMUM DRIVE(マキシマムドライブ)

 

 

 その音声と共に黒のエネルギーが形成されたエンジンブレードを手に風を切るかのように駆け抜ける。

 

 

「ライダー……スラッシュ!!はぁぁあああああああッッ!」

 

 

 天倉の雄叫びと共にバイカイザーの胸にエンジンブレードの鋒を突き立てる。瞬間、バチバチと激しいスパークが発生しながらも天倉はエンジンブレードを押し込んで行く。

 

 

「ぐ……ぁ……さ…せるかぁッ!」

 

「ッ!」

 

 

 だが、突き立てられたブレードをバイカイザーは両手で掴むと、その持ち前のパワーで無理矢理引き抜こうとする。この土壇場でエクシードマグマ以上のパワーを出し始めた事に天倉は心の中で舌打ちをする。

 

 

『ぐ、マキシマムドライブが体内のメモリまで達していない!』

 

「クソ失敗だったか!」

 

 

 

 最後のバイカイザーの足掻きに翔太郎達は嘆く。コレが最上の信念だと言うのだろうか?自分の命にも関わると言うのに、何故そこまでやるのか?それ程までの執念を最上は持っているのだろうか。

 

 

 

「──いや、まだだッ!!!」

 

 

 だが、それは彼も同じだった。天倉はエンジンブレードから()()()()、その場からバックステップを行う。その行動にバイカイザーは驚愕を露わにし動きが止まってしまう。

 

 

「何ッ⁉︎」

 

「俺の必殺技……Part1……!」

 

『Violent Strike』

 

 

 ベルトのグリップを力強く握り、捻るとドクンと右脚が熱くなるのを感じる。右脚の筋肉がブチブチと悲鳴を上げる。

 

 一歩、一歩、踏み抜いた地面を焦がしながら駆け出した後、大きく跳躍を行う。その動きは雄英体育祭トーナメントで爆豪との戦いで見せた飛び蹴りと似ているが、前のものと比べ違う点が1つあった。

 

"爆豪対策用特訓強化型キック"

 

又の名を

 

 

「ライダァァァアアアアッ!キィィィイイックッ!!」

 

 

──ズドン!!

 

 

 体を空中で前転させ回転を加えた蹴りをバイカイザーの胸に突き立てられたエンジンブレードに叩き込むと、大砲が擊ち出された様な音が響き刀身が更にバイカイザーの胸に突き刺さる。

 

そして、

 

 

──パキン

 

 

 何かが割れる音がバイカイザーの胸の奥底から響く。

 

 

「達した!胸のメモリまでマキシマムドライブが達したぞ!」

 

「ハァ……ッハァ……ッ」

 

 

 蹴りを放った後、膝をつきながらも反動を殺し着地に成功する。手応えはあった。メモリの破壊する音が身体に伝わって来た天倉はバイカイザーを倒したと言う事を確信していた。

 

 

「ク、……クク。残念だったなぁ、君の力、私の物にできれば娘だって……いや、それどころか世界中の人間も救う事が出来るのになぁ……」

 

 

 だが、バイカイザーは尚も立っている───いや、恐ろしいまでの執念だ。最早、立っている事すらやっとなのに、まだそんな事を言う余裕があると言うのだろうか。

 

 

「……貴方は良い人だ。だけど、貴方程の力なら誰かを犠牲にしないで成果を出す事だってできた筈だ」

 

 

 だからこそ、天倉は最後の最上魁星の会話を交わす事にした。それは彼なりの慈悲、いや同情なのだろうか?

 

 

「綺麗事を……そんな理想できる筈もないだろう」

 

「綺麗事で良いじゃないか。俺は色んな人達の笑顔を守れる……貴方のような敵の笑顔も守れるようなヒーローになりたいんだ」

 

 

 それは純粋無垢な子供の我儘の如く。天倉の理想は、夢を見る子供の様な、とても愚かな綺麗事だ。

 

 

「……ククク、君はまるで水晶だな。子供のように純粋無垢な欲望を持ち、少しの衝撃を与えただけでも壊れそうな水晶だ……」

 

 

 そんな綺麗事を口に出すヒーローに対して、彼は彼なりの皮肉を込めた言葉を天倉(ヒーロー)に送る。

 

………だが、そんな彼だったが、少し嬉しかった。天倉の言葉に救われた様な気がした。

 

 

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️………に気を付けろ」

 

「えっ?」

 

 

 瞬間、バイカイザーの身体は爆散する。その場に居たのは倒れた憎き敵の最上魁星と割れたギア・メモリだけだった。

天倉はそんな彼を見た後、後ろから近付いて来る見値子に向けて声を掛ける。

 

 

「………見値子さん。後はお願いします」

 

「……最上魁星、現行の容疑で身柄を拘束します」

 

 

 

 終わった。やっと終わった。

……だがコレで本当に終わったのだろうか?と天倉はピンと来なかった。

 

 呆気なかった。最後はとても呆気なかったのだ。コレが罪を犯した者の最後だと言うのだろうか?

 

 

「……俺は……」

 

「天倉さん────!」

 

 

 突如として掛けられた声にビクッと驚く天倉。振り向くと、そこには守ると約束した者が立っていた。

……何故だろうか。彼女を見た直後、全身から力が抜けガクガクと身体が震える。

 

「………良かった」

 

 

──あぁ、そうか、怖かったんだ。

 

 そう思うと、涙が溢れて来る気がした。今まで自分の気持ちを押し殺して来た。殺されかけ、死の淵を彷徨い、その果に自分は彼女を助ける事が出来た。

 

ならば───彼女の前でこんな姿を見せる訳にはいかない。

天倉は彼女に向けて笑顔を見せ───

 

 

「……ッい…」

 

 

笑顔を見せ────

 

 

「……?天倉さ────」

 

 

「アッツゥイッッッ!!!??」

 

 

「『「「「!?」」」』」

 

 

 

───られる状態ではなかった。

 

 

 

「熱ッ熱熱!暑ッ⁉︎熱ッ!!熱ーーーーッ!!?アッツいんですけどォ!!」

 

 

 天倉の身体中から炎が溢れて出る。するとフィリップが『あぁ』と納得するような声を出す。

 

 

『どうやらその形態の限界を迎えたようだね。コミックのような描写を現実で見るのは初めてだ、とても興味深い。』

 

「い、いや呑気に観察してないで⁉︎だ、誰か水水水水水水水ッ!いや、氷!誰か氷持ってきて⁉︎焼ける──────ッ⁉︎シヌゥッ!!轟くん助けてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ! 今、天倉に呼ばれた気がした!」

 

「焦凍ォ!パトロール中だ!俺の声に反応しろォ!」

保須に来ている轟親子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソァ!!!そういや職場体験中だったよチクショウッ!ってかアツッ!!?誰かヘルプ!ヘルプミィィィイイイッ!ヘッ─────」

 

 

突如として途切れる天倉の声。

 

 

「あ、あれ?天倉?おい、天倉?」

 

「」

 

「天倉さん?」

 

 

へんじがない ただの焼死体のようだ

 

 

 

「「天倉ァ(さん)ーーーーーッ!!?」」

 

 

 




皆ー、応援ありがとー!(チャー研風)


 と言うわけで天倉君が死んだので次回からは『Re:この素晴らしい二度目の人生は人肉大好きフレンズ(言い掛かり)と災厄の戦乙女から始まる異世界狂想曲生活はスマートフォンを持って来るそうですよ』が始まります。

ゴランド先生の次回作にご期待ください。


作者「流行るかな?」

兄「絶対に流行らんわ、オルガ混ぜとけ」

作者「あ゛?」

兄「は?」

この後、無茶苦茶殴り合った。





 さっきまでのは冗談で次回はエピローグになります。読み返すと1年間、風都編やってたんだなぁと改めて認識しました。と言うわけで今後はオリジナル編を書くのは控えようと思います。

 風都編に否定的な読者さん喜んで下さい。もうすぐで終わりますよ。



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第48話 さらば風都よ明日もまた風が吹く

【注意!!】
風都編において天倉君は重症を負った為ステイン編は飛ばされました!!
あーんステ様の出番が無くなった!

本当にすまないと思ってる。

ぜってぇ許さねぇ!
ゆ゛る゛さ゛ん゛!!


【結論】色々と申し訳ありませんでした。


カタカタ……カタン…

 

 タイプライターを打つ音が響く。左翔太郎と言う探偵は事件が終結した際に報告書を作り事件を振り返るのがお決まりとなっている。

 

そんな彼の報告書を覗いてみよう……。

 

 

『こうしてガイアメモリ……いや、ガイアメモリを模したD(ダミー)・ガイアメモリ事件は幕を閉じた。

見値子は義理の父親である最上魁星を逮捕した後、ヒーロー活動は休止する事にしたそうだ。しばらく心の整理をしたいだそうだ。

 

 一方、逮捕された最上魁星はあの厳重監獄であるタルタロスに収容される事となった。それもその筈、奴は無関係な人々を利用し実験体として扱った。

 

……妥当な判断だと俺は思う。

 

 救出された古明地さとりの妹、古明地こいしはしばらくして目が覚めたが今まで何があったかは知らないらしい。だが彼女にとってそれが一番だ。何も知っていなくて幸いと言ったところだろう。

 警察関係者は重要参考人として、さとりと天倉にまた事情聴取をする事となった。取り調べの担当はジンさんらしいが……まぁ、大丈夫だろう。

 

問題なのは────』

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。前回、マグマエクシード(仮)の限界を迎え自滅オチを迎えました天倉孫治郎です。ハイハイ、いつも通りいつも通り。

 どうせこの後、謎のバナナKと対話(物理)したり、謎の自称女神の所に行って追い出されたりするパターンなんでしょ?

 最近、死の淵を彷徨う事に慣れてきている自分がいるけど、そこら辺は気にしないで行こうと思う。

 

……で、いつも通りなら謎空間に立っている筈なんだけれど。

 

 

「さぁ、もっと力を入れて回さんかーーっ!」

 

「手を休めるな!もっと掘れーーっ!」

 

「現世で戦いに破れ殺され死人となった超人にはこの終わりなき労働が続くんだーーーっ!もっと根性入れてやれーっ!」

 

「うっす!分かりました!」

 

「働くぞ♪働くぞ♪毎日毎日ドラマティック♪」

 

 

 目の前には鬼(?)達にしごかれながら屈強な者達が謎の石臼を回す、採掘、砂利等を運ぶなどの労働を強いられている光景が広がっていた。

 

 

「……いや、待って。ここ何処?」

 

 

 俺が唖然としながら呟くと、それを偶々聞いていたのか一体の鬼がこちらに怒鳴りながら寄ってくる。

 

 

「ここは超人墓場だーっ!分からんのか!」

 

「いや、知らないんですけど」

 

「貴様ーーっ!それでも超人か!」

 

「いや、違う…ってイッタァイッ⁉︎」

 

 

 何で⁉︎何で金棒で殴ってくるの⁉︎おかしくない?俺、超人じゃなくてヒーロー志望なんだけど。

何で俺、超人カテゴリに分類されてんの?

 

 

「さっさと働けーっ!」

 

「分かった!分かりましたから!金棒はヤメロォ!」

 

 

 ちくせう……、何で俺がこんな事を……。俺って、何か悪い事でもしたの?なんか地獄に行くような大罪でも犯したっけ?いやいや、そんな訳でない。あったとしても傷害罪とかそんなくらいで……。

 

……ちょっと待って?今思うと俺って免許も無しに敵と交戦したよね?え、駄目じゃね?それってどう考えてもアウトだよね?て言うか絶対それだ。それしか心当たりが無い。うわぁ、最悪だ。

 

って言うかさっさと戻れないかな?そろそろ現実に戻っていい頃なんだけど。照井さん達に土下座…いやジャンピング五体投地して謝ると言う使命があるんだけど。

……これってどうすれば目が覚めるの?

 

 

──ポン

 

 

 そんな事を考えていると背後から肩を叩かれる。後ろを向くとそこには謎の黒いマスクとヘルメットを付けた不審な筋肉モリモリマッチョマンの変態が謎の玉を差し出して来ると言う謎の光景が視界に飛び込んで来たのだ。

 

「オレの生命の玉をやろう。あいにくここには3つしかないがコレで超人墓場の出口の扉の半分ぐらいは開くだろう」

 

「……いや、誰だよッッ!?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…………」

 

 

 目が覚めると、そこは見覚えのある部屋だった。「まただよ(笑)」と呟きながら身体を起こそうとするが天倉はドッと来る空腹と疲労に溜息をつく。

 

 

「最悪だ……」

 

「そんな事を言ってられるのは余裕である証拠だよ」

 

 

 突如として聞こえて来た声の方向に顔を向けると、医者だろうか?白衣を着た高齢の男性が立っていた。天倉は人が居た事に気が付かず少し驚いた表情を見せる。

 

 

「……すみません。親族の方で蛙吹梅雨って女の子が居ませんか?」

 

「君は何を言っているんだい?」

 

「あ、すみません。気にしないでください」

 

 

 カエルのような顔をした医者に尋ねる天倉だったが、「気の所為か」と呟きながら二度目の溜息をつく。

 

 

「三日」

 

「はい?」

 

「三日間。君は悶絶と気絶を繰り返しながら寝ていたよ」

 

「マジか」

 

「それはコッチの台詞だよ。君は本当に人間かい?」

 

「少なくとも心はそのつもりなんですけど……本当に人間離れしてます?」

 

「してるね」

 

「マジか……」

 

 

 受け入れられない現実に遠い目をする天倉。ヒーローを目指す身として人間離れした力を手に入れる事は悪い事では無い。ただ、彼にとって人間離れ=ゾンビのような公式が頭の中で出来上がってしまっているのだ。「本格的にゾンビにならないとダメなのかなぁ」と呟いている天倉にカエル顔の医者は声をかける。

 

 

「そうそう、お見舞いを希望している人が来ているから私は失礼するよ」

 

 

 そう言い残しカエル顔の医者は病室から出て行く。天倉自身、どうせ照井さん辺りかなぁと考えていると、廊下から聞こえる足音が大きくなって来るのを感じる。ガララと景気良く開かれる扉から現れたのは

 

 

 

 

「わーたーしーがーーッ!天倉少年のお見舞いに来たァ!!!」

 

「うるさッ⁉︎静かにして貰えません⁉︎」

 

「あ、ごめんね……」

 

 

 

 病室にやって来たのは金髪のVサインのようなヘアースタイルと筋骨隆々な肉体で今にもスーツが弾けそうなNo.1ヒーロー『オールマイト』であった。天倉から注意されショボンとしているが、そのオーラは凄まじいものだ。

 

 

「所で何でオールマイト?ここは……その、相澤先生辺りが来る流れじゃ……」

 

「あぁ、いや、あのね。相澤君、ベストジーニストに補修の申し込みをして忙しいそうだから…その、めっさ怒っていて……」

 

「ガッデムッ!!どうせ俺も問題児の1人ですよ!」

 

 

 天倉は両手の拳をベッドに叩きつけながら叫ぶ。その様子を眺めるオールマイトはフフと笑った後、口を開く。

 

 

「いや、だけど君はヒーローとして良く頑張ったそうじゃないか。照井君そう言っていたよ?」

 

「照井さんが?」

 

「あぁ、この事件については色々と聞かせて貰ったけど……良くやったじゃないか」

 

 

 オールマイトの言葉に天倉はやや驚いた表情を見せるが、ふぅと息を吐き目を伏せながら応える。

 

 

「……でもオールマイト、俺がやったのは敵と変わりない事ですよ?そんな俺を褒めるのはNo.1ヒーローとしてやっちゃダメなヤツですよ」

 

 

 その目には哀愁が漂う。彼にとって、その言葉は自身への慈悲。ヒーローとしてでは無く、学生として、子供として…自分はヒーローでは無い。この経験で彼はそう感じたのだ。

 

 

「オイオイ、天倉少年。相変わらず後ろ向きな発言だな。もう一つ、ピンク髪の少女から伝言だ」

 

「伝言って……古明地さんから?」

 

 

 笑い飛ばすオールマイトは天倉の肩に彼の頭程の大きさもする手を置く。

 

 

「『家族を救ってくれてありがとう』だってさ。確かに、君のした事は敵と変わらないかもしれない。けどな、君は1人。たった1人……、彼女をヒーローとして救う事が出来たんだ。少しくらいは誇っても良いんじゃないか?」

 

「俺が……?」

 

 

 天倉に対する確かな感謝の言葉。誰かのヒーローになれたという事実に彼は、実感を持てずにいた。

 

本当にそうなのだろうか?自分は本当にヒーローだったのだろうか?

 

 そんな自問自答がしばらく続いた後、天倉はオールマイトに問う。

 

 

「オールマイトは……"個性"を持ってて後悔しませんでしたか?」

 

 

 彼はこの風吹く町で色々な人間を見たが、それは自分の考えを否定するものも多かった。

自分にとって"個性"は呪いであり、人を救う力である。しかし、他人から見ると"個性"はどう見えるのだろうか?

 

 三羽烏。彼等にとって"個性"は憧れの力だった。周りに有って自分達には無いもの。個性の無い人間は周囲の人物から無個性と罵られる人種……だが、

本来、無個性とは人間の在り方として正しい存在であり"個性"は人間に+αされた所謂おまけのようなモノだ。

 

 そう考えると、自分の考えは正しかったのだろうか?

……分からない。"個性"は人々の希望を与えるモノなのか?それとも絶望を与えるモノなのか?

 

 だからこそ。

 

 

「……あぁ、勿論───」

 

「本当にですか?」

 

 

 オールマイトの答えを聞きたい。自分には出さなかった解答を彼は知りたかったのだ。

 

 

「………私は」

 

 

 

 オールマイトの頭の中にヴィジョンが映し出される。

 それは、何十年も前の事。

 

 

────────

 

 

 

『お師匠──お師匠!!』

 

 

『オールマイト……後、頼んだ!』

 

 

 

────────

 

 

 敬愛する師との別れ。彼にとってのトラウマにして平和の象徴誕生のきっかけ。

この事を経験したオールマイトだからこそ、言える解答。

 

 

「───私はこの力を持ってしても救えなかった人が居る」

 

「オールマイト……」

 

「手を伸ばしても届かなかった。怖くなって、怖くなって…悲しい時もあった」

 

『どんだけ怖くても「自分は大丈夫だ」っつって笑うんだ』

 

 

 激しい後悔、怒り、悲しみ。少しでも奴の名前を聞いたら爆発してしまいそうな時、師の言葉を思い出す。

その言葉は彼にとって師の形見であり、自分(オールマイト)としての魂でもある。

 

 

『世の中笑ってる奴が一番強いからな』

 

「だからこそ、私は後悔しない為にも全てを(オール)救う力(マイト)で人々を笑顔にするんだ。世の中、 笑ってる奴が強いからな!」

 

 

 オールマイトは天倉の口端を大きな指で上げる。

 

 

「それがヒーローってもんだろッ!天倉少年!」

 

「ッ────はいッ!!」

 

 

 天倉の表情が笑みで溢れる。自分の理想が間違っていなかったから?いや、違う。ただ純粋に嬉しかった。認められた事が、こんな自分でもヒーローとして誰かを救えたのだと確信できた。

 

 

「やっぱり、No.1には敵わないな……」

 

 

 周りの人々を笑顔にしていくオールマイトの力に天倉は頭を掻きながら愛想笑いを見せる。自分とNo.1との間にある巨大な壁、いや崖と言った方が良いだろうか?改めてそれを認識させられる。

 

 そんな天倉だが、ふと思い出す。前回の最上との戦いの最後の瞬間、どうしても頭に残っている最上が呟いた一言。

 

 

「そう言えば最後に最上魁星が言ってたんです」

 

「ん、何かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、『全は一の為に…巨悪は近くに迫って来ている』って「他にはッ!?」うぉっ!!?」

 

 

「他に最上魁星は何て言っていたッ!!?」

 

 

 オールマイトは天倉に掴みかかる。その鬼のような形相は常に周囲にスマイルを送るオールマイトとは思えない表情だ。

まるで、USJ事件の時のオールマイト。敵を前にした時の憤怒の表情…否、憎悪の篭る表情だった。

 

 

「い、いや……分かりません。って言うかどうしたんですがオールマイト。怖いんですけど!」

 

 

 そう、天倉はこのオールマイトに怯えたのだ。人の闇の面を垣間見た瞬間、凄まじい悪寒を天倉は感じてしまったのだ。しばらくしてオールマイトの表情は次第にいつもの笑顔へ戻っていく。

 

 

「………HAHAHAHA!なんてジョークさ。天倉少年にはユーモアが足りないからね。もう少し肩の力を抜くと良いさ、いいね?」

 

「……アッハイ」

 

「それでだ天倉少年。仮にも敵の言葉。惑わされてはいけないからね。その会話は他言無用で頼むよ」

 

 

 天倉は病室を出て行くオールマイトの背中を見て、ホッと一息つく。どうやら、杞憂に終わったらしいと思いながら天倉は再びベットに潜り込む。

 とにかく今は疲れた。早く体力を回復させる為に寝よう。そう考えながら彼は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、彼は知る由も無い。これは、ただの序章(プロローグ)だと言う事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……裏で奴が動いていたかッ!」

 

 

 平和の象徴の脳裏に【巨悪】の姿が過ぎる。

 

 

『君の嫌がる事は全て行う…もし、君の生徒が敵の手によって害されたら君はどんな顔をするかなぁ……?』

 

 

 頭の中でニタリと笑う奴の姿にオールマイトの握り拳から血が垂れる。

 

 

「これ以上、私の生徒に手を出させるものかッ『オール・フォー・ワン』!」

 

 

 

 

 

平和の象徴と巨悪の激突は近い───

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

──風都最寄りの駅

 

 そこに天倉と翔太郎がいた。そんな2人はベンチに腰を掛けて何か話している様子だ。

 

 

「お別れの挨拶くらい告げて来なくて良かったのか?」

 

「大丈夫ですよ、そう言う翔太郎さんも良いんですか?事件の後始末とか」

 

「ひと段落したからな……とんでもない職場体験になっちまったな」

 

 

 今日が職場体験最終日。風都に別れを告げる瞬間(とき)が訪れたのだ。コスチュームの入ったケースとバックを手に天倉は翔太郎に声を掛ける。

 

 

「わざわざすみません」

 

「良いんだよ、何だかんだでお前にも助けてもらったしな。亜樹子も行ってたが……たまには事務所に顔を出せよ?」

 

「……はい」

 

「なんだよ、まだ照井の言葉を気にしてんのか?」

 

 

『今までの事件については一切口外しないように。お前はヒーローとしては素晴らしいものだが……、免許も無し個性を使った人物としては良い行いとは言えない』

 

 照井の言う言葉は天倉の事を公表代わりに違反行為を見逃すというものだった。翔太郎の言葉が図星だったのか、バックを握る力が一段と強くなる。

 

 

「それもあります……」

 

「"も"……って事は他にもなんかあんのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、分からないんです。……本当に俺は正しいのかって」

 

「まだ成人でも無いんだ。個性を使った事ぐらいは大目に……」

 

「最上魁星の事件の発端……娘さんが他界したから…ですよね?」

 

 

翔太郎の言葉が詰まる。

 

 

「お前……」

 

「すみません。フィリップさんに無理言ってお願いしたんです」

 

 

「確かに今でも最上さんがやった事は許せない……けど、最上さんも被害者だったんだ。…それなのに俺がやった事は本当に正しいか分からないんです」

 

 

 今回の事件、人を助ける事が出来た……が、それと同時に人を不幸にさせた。もしかしたらもっと別の手段もあったかもしれない。

 

 

「俺は、一体何のために戦って……!」

 

 

 何度考えても分からない。自分はヒーローとして正しかったのか?そんな自問自答が頭の中で何度も繰り返される。

 

 

 

 

 

 

「お前な……、本当に馬鹿だな」

 

「え?」

 

 

 呆れたように額を抑える翔太郎に天倉は声を漏らす。すると、翔太郎は彼の胸倉を掴み顔を近づける。

 

 

「お前の戦っている理由は()()と同じだろうが。『誰かを助ける為に戦う』それが俺達の理由だろうが。アイツ等の為にお前は戦ったんだろ?」

 

 

「人を助ける事に理由を一々付けなきゃ駄目なのかよ!古明地を助けたいと思って行動に移したお前はあの時、確実にヒーローだった!お前はあの時は仮面ライダーだった!」

 

 

 そう言うと天倉は先程まで向いていた逆側に無理矢理向かされる。

 

 

「受け入れろよ。お前はヒーローとして立派なんだってな」

 

 

 そこには助けたいと思った少女が立っていた。

 

 

「天倉さん……」

 

「……」

 

 

 何を言えばいいか分からなかった。

いや、そもそも自分が何かを言う資格は無い。そう思った。

人当たりが良く苦労人に見えるのは、表面上そう振る舞っていれば嫌われる事は無いからだ。

だから今まで己の内側を見せる(信用する)事が出来なかった。

 

君の思う程、自分は聖人君子では無い。

 

 

「あの時、天倉さんは私を信じてくれた」

 

 

違う、アレは自分の境遇に似た人への同情に過ぎない。

 

 

「本当は心の奥底では怖がっていた。」

 

 

その通りだ。皆、俺の事を嫌うに決まってるから。

 

 

「裏切られる事の怖さを天倉さんは知っている」

 

 

裏切られるのは当たり前だ。

 

 

「自分は周りと違うと言う疎外感を知っている」

 

 

自分は周りに比べて異質だ。

 

 

「貴方は私と同じだった」

 

 

だから君を心の底から助けたいと思ってしまった。

 

 

「この(個性)は本当に嫌だった。人の醜さを知ってしまう呪いが何故、自分が持っているのか分からなかった……それでも、信じ続けていれば報われるんですね……」

 

 

……どうして君は……。

 

 

「ありがとう、私のヒーロー」

 

 

俺をヒーローと呼んでくれるんだ?

 

 

「例え、それが同情だったとしても貴方は私を救ってくれた」

 

 

……そうか、そうだった。

 

 

「だからこそ、この気持ちは本物なんですね」

 

 

こんな笑顔を見れると期待したからヒーローになりたいと思ったんだ。

 

 

「私、古明地さとりは……天倉孫治郎さん。貴方の事が──「カシラァッ!!!」……あれ?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『問題なのは───天倉のヤツ、赤城、青鋏、黄梟の3人が"操られ利用されており彼等に非は無い"と証言してしまったのだ。それが嘘か真なのか……あぁ、いや嘘だな。最上魁星とマトモに会話をしたのが『彼』と『古明地さとり』である為、確かめようが無いに加えて最上魁星の事情聴取も後日行われるが、"操られて利用された"のは確かな事実だ。

ヒーローにとって割り切りも大事な要素の1つであり、アイツはそれを理解した上でそう証言したのだ……だからこそ、アイツの今後が楽しみと同時に不安にもなる。

 

もし彼に、これ以上の困難が降りかかって来れば────』

 

 

 

 

 

「待ってくれぇ!カシラァ!」

 

「いや、カシラは霊烏路さんの事でしょ!なんで俺なの⁉︎」

 

「いや、カシラは大カシラになってパワーアップした!そして新しいカシラはアンタに決まったんだ!」

 

「俺達、これからちゃんと授業を受ける事にするからさ!」

 

「だから俺達もカシラん所の学校に入る!」

 

「分かったからついて来ないで!これ以上厄介事持ち込めば除籍処分されるから!ホントマジでお願いだからぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

「……ねぇ、さとり様。今どんな気持ち?」

 

「は?キレそう(別に、特に何も)」

 

「煽るなお空!あと、本音と建前が逆になってますよ!?」

 

 

 

 

 目の前の光景に翔太郎はフッと笑みをこぼすと手に持っていた自作の報告書を潰す。これ以上の困難が降りかかって来れば彼は身体的に、精神的に再起不能となると翔太郎は思った。

 

……だがそんな事は杞憂に終わるだろう。彼の周りにはあんなにも笑顔が溢れている。彼の周りには支えてくれる人達が居る。

 

 彼にも自分達のように助け合い、大切な事を気付かせてくれる仲間が居るのだと理解できる。帽子を深く被り直した翔太郎はそんな彼に別れを告げずに背を向ける。

 

 

「いや、アイツなら大丈夫か……と?」

 

 

ふと、足元に視線を向けると()()()()と目が合った。そんな猫の視線の高さに合わさるように翔太郎は屈むと言葉が通じるか定かでは無い猫に話しかける。

 

 

「よぉ、『ミック』。今回、お前の出番は無かったようだ……痛でででっ⁉︎おい、なんで爪を立ててくんだよ!」

 

 まるで「お前らがしっかりしていないから自分が出る羽目になった」と文句を言っているが如く不機嫌そうに猫は翔太郎の顔に爪を立てた。

 

 

 ビルが溶け、人が死ぬ。

それは、この街ではありふれた出来事。

だが、この街には探偵がいる

 

そして街の外には彼等と同じ信念を持つヒーロー達が在る。

 

──今日もまた風が吹く。

 

 




【最上魁星の家族について】

『最上見値子』
14歳という若さで逝去。
当時"個性"は発現していなかった【無個性】の中学生。12年前、下校時に"個性"を持った集団グループからの暴行、陵辱を受けその後自殺を図り死亡する。

『最上雪菜』
最上魁星の妻であり最上見値子の【無個性】の母親。
娘が亡くなったショックで衰弱。娘の後を追い自殺を図り彼女もこの世を去る。

その後、科学者であった父親の最上魁星は『i・アイランド』へ移住を行うが、数年後に彼が開発した『トランスチームシステム別名(カイザーシステム)』と共に行方不明となる。





〜〜〜専門用語解説。



D(ダミー)・ガイアメモリ』

 元々風都で販売されていたモノを最上魁星が真似して製作した模造品。他人の細胞に含まれる"個性因子"を更に他者の身体に取り込ませる事によって"個性"が一時的に発現される。その際に"個性"に合わせた身体を作る為に身体は怪人化される。

※例として『マグマ身体から噴出させる』を扱うにはマグマを噴出する為の器官、マグマの熱に耐えうる身体等が必要。その為、身体が自動的に怪人化する。

種類としては『ビースト』『バード』『キャッスル』『スタッグ』『オウル』『ブレイズ』『クロウ』『ギア』等が存在する。

『リモートコントロールメモリ』はD・ガイアメモリの中でマザーコンピューターのような存在であり、『リモートコントロール』をラジコンの操作機器とするならば『ギア』と『エンジン』を除く『他のメモリ』は遠隔操作される玩具である。


 ちなみに『D・ガイアメモリ』の他者の"個性"を利用した技術はとある極道組織に伝わったと言う……。



『駆鱗煙銃』

別名『トランスチームシステム』、『カイザーシステム』

 "個性因子"を弾丸として他者に撃ち込む事によって"個性"の発現が可能となるシステム。"個性"が持続する時間は3〜5時間。
最上魁星が製作した拳銃型デバイスであり、本来の使い方は自身に"個性因子"を二重に撃ち込む事である。
 すると自身の外見が大きく変わり【無個性】の者でも使えるシステムである。最上魁星はギアとリモートコントロールを使用する事によって『カイザー』へ変身を遂げた。
 更に三重にして"個性因子"を自身に撃ち込むと『バイカイザー』と言う名称へ変化し、身体中の細胞の破壊を引き換えにパワーアップを遂げる事に成功した。







【事件の流れ】


娘と妻を失い"個性"による力を求めた彼はオール・フォー・ワンと接触する。彼の力によって『最上魁星』は『茂加味快青』と新しい戸籍を手に入れる。

風都に移住した最上魁星は"偶然"娘の名前と同じだった女の子を養子として迎え、彼女と仲の良い女の子も養子に迎えた。

↓↓↓

 オール・フォー・ワンは【とある人物】からの情報でオールマイトの生徒が風都に来る情報を手に入れ、その生徒が来るタイミングと、茂加味快青が事件を起こすタイミングが重なるように調節を行う。

↓↓↓

 風都の中でも『古明地こいし』の"個性"に目を付けた茂加味快青は彼女の姉に「妹の"個性"を私の力で上手く扱えるようにしよう」と嘘偽りの無い言葉で交渉する。

その後、偶然『古明地こいし』の細胞から模造のガイアメモリを作り出す瞬間を目撃した火焔猫燐は第1実験対象として扱われる。
火焔猫は【Bのガイアメモリを古明地さとりに渡す】と言う命令を無意識に行い、無意識中の行動は蓋をされたように記憶の奥底に封じられてしまう。

そして火焔猫燐は無意識の中、古明地さとりにガイアメモリを渡してしまう。

↓↓↓

 古明地さとりはガイアメモリを持つ人間は【特定の無意識の行動を取る】と言う力により無意識に自らの腕に生体コネクタを取り付ける。その後も無意識にドーパントへ変身を行い、彼女の意思関係無しに無差別放火が彼女自身の手で行われる。

↓↓↓

 そして最上魁星は天倉孫治郎の"個性"である『カロリーを消費し骨格筋、骨、細胞を急激に成長、増強させる』仕組みに目を付ける。

↓↓↓

その後、D・ガイアメモリ事件は本格的に始まる事となった。













 風都編のテーマは『"個性"の有無について』でした。


"個性"は本当に人々の希望となるのか?それとも絶望になるのか?普段"個性"はカッコイイ特殊能力的に描写されてますが、別の視点から"個性"見ると違う意味として捉える事も出来ると思います。

"無個性"は"個性"持ちへの嫉妬、羨望。"個性持ち"特有の悩みについて上手く描写出来たのかな?と思います。


 スパイダーマンの『大いなる力には、大いなる責任が伴う』仮面ライダービルドの『力を手に入れるってのは、それ相応の覚悟が必要なんだよ』はヒロアカにおける"個性"に対しても言える事なのでは?と思いました。
USJ編でも13号先生は"個性"は人を殺める事ができると言っていましたが、13号先生は本当に良い人格者だと思います。


 ちなみに作者は緑谷君が『"個性"を手にした幸福者』なら天倉君は『"個性"を手にしてしまった不幸者』と考えております。


 まぁ、元々風都編はこんな長編にするつもりではありませんでした。平成ジェネレーションズで万丈が先輩ライダーから戦う理由を学ぶシーンがカッコよかったのでそれに便乗して風都編を書き始めたのですが………何故、こうも壮大になったし。



最後の最後はシリアス……と思った?残念、シリアルでしたー!

ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?天倉にヒロインができると思った奴等、今どんな気持t(無言の紅蓮炎迅脚





【おまけ(見たい人だけどうぞ)】



『告白成功ルート』


「私、古明地さとりは……天倉孫治郎さん。貴方の事が好きです。異性として、恋愛対象として大好きです」

「?何だって?ススキ?」

「好き」

「ごめん、耳が壊れたみたい。何だって?」

「好き!(本気)」

「は?─────


瞬間、天倉の首から上が爆発した。許容量以上の衝撃に耐えられず核の炎が上がったのだ。

勝った!風都編 完!




『ヒロインとしての敗北者』


「人生空虚じゃありゃせんか?」

「ハァ…ハァ…敗北者?」

「煽るなお空!」




『ヤンデレ三銃士』


「私は展開的に天倉さんに恋するキャラになりました。ですが、この後の展開を考えると私は使い捨てヒロインにされる運命…どうすれば……!」

「私に任せてよお姉ちゃん!」

「あなたは!風都編で存在をほのめかしたは良いけど台詞は一言も無かった私の妹のこいし!」

「キレそう。…だけどそんなお姉ちゃんの為に」

愛が深い系ヒロイン(ヤンデレ)三銃士を連れて来たよ」

「愛が深い系ヒロイン三銃士?」

「嘘吐き焼き殺すガール『清姫』」

「嘘吐きは絶許」

「ヤンデレクイーン『我妻由乃』」

「ユッキーヲコロスモノハァァァァ!!!スベテシネバインダー!!!」

「Nice boat. 『桂言葉』」

「中に誰もいませんよ」

「コレで使い捨てヒロインにならずに済むよ!やったねお姉ちゃん!」

(やべぇ…天倉さん強く生きて)

燐はただ天倉の生存を願う事しか出来なかった。







 これにて風都編は一旦終了になります。

 一 旦 終 了 に な り ま す


ちなみにアンケートの結果は活動報告の方で発表させていただきました。
それを見た感想として………。

 な ん で こ う な っ た


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やっぱり学校は落ち着く編
第49話 表と裏


遅れて申し訳ありませんでした、諸事情により投降が遅れてしまいました。
とどのつまり、試験は悪い文明(責任転嫁)。ただし、グリッドマンは許す。グリッドマンの影響で太ももに目覚めかけた作者ですが、その部分のご了承お願いします。

太ももは良い文明(挨拶)



 

 雄英高校1-Aクラス。

ここに久しぶりの顔触れが集まっていた。

 

 

「よぉ、久しぶり。なんか1年くらい会ってない気がすんな!」

 

「そうか?気の所為じゃないか?」

 

 

 上鳴が障子に話しかける。職場体験には1週間しか行ってないと言うのに約1年ぶりの再会だ。これも全て作者って奴の所為なんだ

 

 

「「ギャッハハハハッ!!マジか爆豪!」」

 

「クセついちまって洗っても直んねぇんだ……おい笑うなぶっ殺すぞ!」

 

 

 そんな2人の耳に突如として切島と瀬呂の笑い声が入ってくる。それもそのはず、あの爆豪が髪型を7:3の割合でピッチリ分けて来たからである。常にボサボサの髪の毛である爆豪を知っている彼等にとってその光景はとてもシュール。障子も思わず吹き出しそうになる始末である。

 

 そんな彼等だけでなく、女性陣も色々と職場体験について話し合ったり麗日が格闘の戦士に目覚めた感じになっているが、いつも通りである。

 

 

「女ってのは元々悪魔みたいな本性を隠し持ってんのさ」

 

「Mt.レディのとこで何を見た!?」

 

「常闇、お前はどうだった?」

 

「不服。伝書鳩の如く扱いだった」

 

 

 しかし、中には職場先で子供扱い、雑用等と言った自分への対応に不満を持つ者もいる。

 

 

「まぁ、1番変化と言うか大変だったのはお前ら3人だったよな」

 

「そうそう『ヒーロー殺し』!」

 

 

【ヒーロー殺し】

独自の倫理観・思想に基づいて「偽物の粛清」として各地でヒーローを襲撃し、これまでにヒーロー17人を殺害・23人を再起不能に追い込んだ凶悪犯。マスメディアによって明かされた『ヒーローとは見返りを求めてはならない 自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない』という彼の思想。

 

ヒーロー殺し逮捕の事件に緑谷、飯田、轟の3人は巻き込まれ、現場に遭遇したエンデヴァーによってヒーロー殺し『ステイン』の身柄は拘束されたと言う。

 

そんな彼等にクラスメイト達は色々な言葉を投げかけるが、その中で上鳴は地雷とも言える発言を放ってしまう。

 

 

「でもさー、確かに怖ぇけど動画見た?アレ見ると、一本気っつーか、執念っつーか…かっこよくね?とか思っちゃわね?」

 

「上鳴君!」

 

「えっ!飯…悪いッ!」

 

 

 緑谷の言葉に上鳴はハッと気が付かされる。ヒーロー殺し『ステイン』の思想は素晴らしいものであるが、彼は飯田天哉の兄である飯田天晴『インゲニウム』を再起不能に追いやったのだ。

その兄を再起不能にした敵を自分は褒め称えたのだ。

 

 

「……いや、いいさ。確かに信念の男だった。クールだと思う人がいる事も分かる」

 

 

 だが飯田は上鳴を咎める事なく、その発言を受け入れる。いや、寧ろ仕方の無い事だ。彼等はまだ高校生だ。発展途上である彼等がヒーロー殺しの発言に影響されるのは何らおかしくない事である。

 

 

「ただ奴は信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ。俺のような者をこれ以上出さぬ為にも!改めてヒーローへの道を俺は歩む!」

 

 

 だからこそ、ヒーロー達は自分の目指す道を見据えなければならない。飯田天哉は『インゲニウム』としての一歩を踏み出したのだった。

 

 

『……………』

 

 

 しかし生徒達にとって朝から重い話はキツかったのか、それ以上なにかを言える雰囲気ではなかった。緑谷はこの空気を変えようと無理矢理だが話題を変える事にした。

 

 

「そっ、そう言えばさ!まだ来ていないのって天倉君だけだよね!天倉君、どんな成長を遂げているかな?」

 

 

 ハッキリ言って緑谷の話題転換はかなりキツいものだった。そんな事を気にする生徒なんかいるだろうか?

 

 

「あー、確かに興味あんな」

 

「アイツどこだっけ?」

 

「んじゃさ、どんな感じに成長してるか予想しようぜ!予想!」

 

 

 いた。瞬くに間に先程までのどんよりとした雰囲気が嘘のようにクラスは天倉の話題で盛り上がる。

 

 

「やっぱ、アレだろ。殺意の波動に目覚めた的な?」

 

「いや界王拳を習得して来たとか?」

 

「オールマイトみたく筋骨隆々になったとか」

 

「職場体験先で北斗神拳を伝承したんじゃね?」

 

「いや、南斗の可能性が……」

 

「つまり職場先は世紀末だった?」

 

 

言いたい放題のクラスメイト達。そんな彼等が期待している事をいざ知らず天倉はいつも通り、教室に入って来る。

 

 

「おはよう皆ー」

 

『……思ったよりフツー』

 

「え?」

 

 

 本人は気付いていないが、重くなったクラスの空気を変えた事を何名かは知ってる。だから、泣くな天倉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所────

 

 そこには2人の男性が居た。1人は派手なスーツを羽織った巨大財団【鴻上ファウンデーション】の会長である鴻上光生。もう1人は片腕に不気味な人形を乗せた鴻上生体研究所所長である真木清人である。

 

 

「素晴らしいィ!素晴らしいじゃないか!天倉孫治郎君ンン!君は新しい力を手に入れた!しかしィ!それだけではダメだ!更なる高みを目指す為にはもっと力を欲する強い願望が必要だ!!」

 

 

 鴻上光生の独り言レベルでは無い発言が室内に響き渡る。

 

 

「会長……例の物を渡して来ましたよ」

 

「ありがとうドクター真木ィ!!新型の『ドライバーtypeΩ』はきっと彼の役に立つ筈だろう!……で、だ。レジスターからの彼の情報。君から見てどんな感じだい?」

 

「えぇ、今はまだ成長途中の壁を壊したばかり。彼はまだまだ成長を遂げていくでしょう」

 

 

 天倉孫治郎が職場体験中に装着し続けていた腕輪兼予備バッテリーの役割を持つサポートアイテムと言うのが表向きのレジスターの役割。

実際は天倉の戦闘、日常生活、個性と言ったあらやるデータを解析、送信する為のアイテムとなっている。

 

 

「……素晴らしいィ!!!計画の第1号として申し分無いよ天倉君は!!!」

 

「『Project Masked Rider(マスクドライダー) Re:boot(リ・ブート)』過去に埋められし栄光のヒーローを再び現世に蘇らせる計画……」

 

「私は平和の象徴が存在する社会も素晴らしいと思う……しかし!闇に葬られた仮面ライダー。彼等もまた素晴らしい!私はね……天倉孫治郎と言うヒーローの姿に仮面ライダーの面影を見たのだよ!」

 

 

 過去にとある組織を壊滅させた異端の存在が居た。肉体を改造され、復讐に囚われ、陰謀に巻き込まれ、周囲から拒絶され、大切な人を殺された。

平和の為に戦った存在(正義の味方)の誕生は歓迎され、祝福された。そしていつしかその存在は危険視された。

 

 超人黎明期に生まれた仮面ライダーという存在はあまりにも強過ぎたのだ。人類にはまだ早過ぎたのだ。その異能の存在であると同時に英雄だった栄光の7人。

彼等の辿った末路は────当然、破滅。

 

 そんな彼等が忘れられた超人社会に1人、彼等と似た存在がヒーローとして現れたのだ。仮面ライダーと言う存在に憧れてしまった男は考えた。

 

──この少年ならば仮面ライダーになってくれるに違いない

 

 

「その為にわざわざ、雄英のシステムにハッキングを行い天倉孫治郎の行先を仕組んだと?……まぁ、私には関係の無い事ですが」

 

 

 そもそも可笑しな話だ。何をどうすれば探偵事務所からスカウトがヒーロー専門校に来るのだろう。鴻上と言う男は欲望の為なら罪を犯す事すら気にしないだろう。

 

真木清人はそのまま部屋から出て行くと、タイミングを見計らったように受話器から音が鳴り響く。

 

 

「やぁ、そろそろ連絡を入れてくる頃だと思っていたよ」

 

 

受話器を手に取ると「もしもし」と言った挨拶も無しに告げる。

 

 

『酷いじゃあないか。お陰で技術提供をしてくれる人物が減ってしまったよ』

 

「それは残念だったね。予想外だったろう? 天倉孫治郎君の爆発力は」

 

『フフ、そっちは想定していたんじゃないのか?最上魁星が彼に敗れる事が』

 

「いいや、違うよ。ただ私は天倉孫治郎君は、私の想定以上の力を出してくると想定していた。それだけさ!!!」

 

『フフフ、やはり君は危険な男だ。僕以上に狂っているよ』

 

 

 その声の主は何者か。ただ分かるのは受話器越しから伝わってくる純粋な悪意。

 

 

『僕は【魔王】に憧れ、彼は【英雄】に憧れた。そして君は仮面ライダーと言う名の【偶像】に憧れた!違うか?いや違くない!君は私以上の野心家だ!』

 

 

その声は次第に圧を増して行く。

 

 

『君は!天倉孫治郎と言う人間を神に等しい存在にするつもりだろう?違うか?いいや!君は必ずそうする!』

 

 

人を神にする。受話器の向こうから告げられた馬鹿げた話。それを鴻上光生と言う男は

 

 

「その通りさ!!」

 

 

肯定の意を見せる。

 

 

『フフフ、僕以上の欲望。おぉ怖い怖い…』

 

「ハハハ、私はあくまで自分の欲望に忠実なだけだよ。……だが!彼は私以上に大きな欲望を持っている!」

 

『ほう?』

 

「いいかい!この世で簡単に強くなる方法は1つ!【欲望】さ!愛されたい!金が欲しい!認めてもらいたい!欲求を満たしたい!失望されたくない!見下したい!復讐を果たしたい!全ての行動は【欲望】と言う餌に釣られて引き起こされるものだッ!!そして!天倉孫治郎と言う人間が持つのは『強くなりたい』と言う純粋な欲望!!それが最上魁星の欲望を上回ったッッ!!彼はこの世で仮面ライダーとして生を受けた者に違いないのだよッッ!!!………と、私は信じたい」

 

 

皮肉な事に夢は言い換えれば欲望の塊でもある。平和の象徴がいる世界を壊したい事が欲望なら平和の象徴に憧れヒーローとなる事もまた欲望。

人々は欲望という餌を前に涎を垂らしながら動いているに過ぎないのだ。

 

 

『欲望……欲望かぁ!面白い。面白い事を教えてもらったよ!ならば僕も教え子に彼なりの欲望を大きくさせなければならないね』

 

「素晴らしいィッ!!!素晴らしいよ!欲望を受け継ぐのも素晴らしいが!君の欲望を後世に伝えようとする姿勢!それもまた素晴らしいぃッッ!!」

 

『よしてくれよ……で、だ。その際に仮面ライダーが偶像と昇華される前に不慮な事故で死んでしまうかもしれないけど……欲望の為だ。構わないだろう?』

 

「………ほう? 君は自身の手によって天倉孫治郎を害すると言いたいのかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きにしたまえッッ!! 君の欲望のままにねぇッ!!!」

 

 

その言葉の直後に笑い声が受話器から響き渡る。

 

 

『ハハハ!やはり君は面白い!面白い……が、これで君と話すのは最後にしよう。それじゃあね鴻上光生』

 

 

それを最後に声は途切れる。カチャリと受話器を置くと作りかけであろうケーキの材料に視線を落とす。

 

 

「だが、分かっていない。分かっていないよオール・フォー・ワン。その程度の欲望で天倉孫治郎君は死なない。殺せないのさ」

 

 

 ケーキの下地が白いクリームによって塗りつぶされ沢山の果実によって彩られて行く。完成に近づくにつれ鴻上の口端を吊り上がり、最後のデコレーションが終わる瞬間、爆発するが如く声が響く。

 

 

「ハッピバァァァァァスデェェェェェエエエエエッッ!!!仮面ライダーッッ!!!」

 

 

 ケーキを持ちながらハイテンションで笑う男の姿は異常でしかないだろう。

仮に、この光景を見たここの社員達は口を揃えて言うだろう。

 

 

──なんだいつも通りの鴻上会長か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんにちわ。なんか皆から期待外れの声が上がりましたがそれでもめげない天倉です──ゴフッ(軽い吐血

あ、大丈夫。期待外れらしい声のダメージがまだ残っているだけで大した事じゃないです。

 

 

「天倉さん……私、今の今まで何をしていたんでしょうか?」

 

 

 そう言いながら俺に寄って来たのは何故か、メイクした状態で法衣を羽織っている八百万さんだった。

……どう言う事?確か拳藤さんが言うには謎の紋章を背に変な儀式を行っていたらしいが……。

 

 

「とりあえず、元の制服着たら?」

 

「……そうさせていただきす」

 

 

 とにかく相澤先生が来る前に正装はしておこうや。八百万さんってマジで優秀な人だからこれ以上のキャラ崩壊は危険だと思う。

 

 

「天倉ちゃん、ちょっと良いかしら」

 

「天倉ですよ……で、どしたの蛙吹さん」

 

「梅雨ちゃんって呼んで欲しいのだけれど……私ってそんなに表情ないかしら」

 

「いや、そうでもないよ。今めちゃくちゃ悲しそうだし」

 

「……なんだか自信が無いの」

 

 

 本当にどうしたんだろう。あの蛙さんがあんなネガティブになるなんて……。

 

 

「ねぇ、蛙吹さんどうしたの?なんか元気無さそうだけど」

 

「なんか職場先で表情が固いって言われたみたいで……」

 

「……ちなみにどんな所選んだか分かる?」

 

「海難事件を担当しているプロヒーローのセルキー事務所なんだけど……天倉君分かる?」

 

「うんっと………あぁ!キモアザラシの!」

 

「覚え方ァ!」

 

 

 頭がアザラシだけど首から下が筋肉モリモリマッチョマンだからめちゃくちゃ印象に残っている。

……俺もあの謎ポーズをすれば少しは好感持たれるのかなぁ。

 

※後日、鏡の前で謎ポーズをやったら思いの外気持ち悪かったのですぐにやめた。

 

 

「……でもそれで蛙吹さんの表情と何が関係して来るんだろ」

 

「あ、そう言えばカニプソ事務所とチームアップしてたっけ」

 

「え? か、かにみそ?」

 

「カ・ニ・プ・ソ。魚介ヒーローのカニプソだよ!ちょっと待って……ほら!コレがカニプソだよ!」

 

 

 そう言いながら緑谷君はスマホを見せてくる。そこには首から上が見たまま蟹になっている人物が写っていた。……これ、コラ画像とかじゃないよね?いや何これ。殆ど表情が読み取れないんだけ──

……あ、なんか蛙吹さんが悲しそうにしている理由が分かった気がする。

 

 

「なんか凄いね職場体験」

 

「そうだね……っと、どしたの麗日さん。こっちに拳向けられても困るんだけど……」

 

 

 どうしたんだろう。俺、なんか迷惑な事でもしたのかな?……ぐふっ、体育祭の思い出ががががが

 

「いやね、私思ったんだ。体育祭で天倉君に負けて……やっぱ悔しかった」

 

「ゴフッ──⁉︎ほ、本当にすみませんでした。俺が全て悪かったです。本当にすみませんでした!」

 

 

 何度も何度も土下座を行う。いや本当にすみませんでした!アレは色々と不可抗力だったんです!くそッ!タイムマシンがあったら過去の出来事を抹消したい……!

 

 

「あ、いや、だからね!このまま天倉君に負けっぱなしはアカン!そう思った!」

 

「……えっとつまり?」

 

「……次は今度は正々堂々、私が絶対に勝つ!」

 

 

……凄いな麗日さん俺じゃ、そんな事言えそうにないよ。そんなの俺が爆豪君にリベンジするのと同義でしょ?

……やっぱすげぇよ麗日さんは……。

 

 

「お見それしました……! 貴女はそこら辺にいる男よりも男らしい……!」

 

「え? なんか有難いけどあんま嬉しくない」

 

「………」

 

 

 あれ? なんか後ろから視線を感じる……って、あれ? 轟君? こっちなんかを見てどうしたんだろう。

 

 

「天倉」

 

「はい?」

 

「俺も負けねぇ」

 

 

 轟君はそう呟くとそのまま自分の席に戻って行く………。

 

 

「……何が?」

 

 

……轟君はマジで何が言いたかったのだろうか?今の僕には理解出来ないらしい。五飛、教えてくれ俺は何を理解すれば良いんだ。

……いや五飛って誰だ?

 

 

「青春してるね天倉君!」

 

「あ、うん? よく分からないけど、ありがとう」

 

「……良かったね天倉君」

 

「…どうしたのさ皆。今日はやけに話しかけてくるけど」

 

 

 本当に不思議だ。何と言うか……とても新鮮な感じで……、泣けてくる。あー、ヤバイ。本当に泣きそう。何でだろう? 目にゴミでも入ったのかな?

 

 

「いや……最初と比べて、前向きになったって言うかさ」

 

「入学したてん頃って色々必死な感じだったよね。今は皆と出会えて変わった感じ!」

 

「 (´;ω;`)ブワッ」

 

「どうしたの⁉︎ 急に泣いてさ⁉︎」

 

「い、いや。こんなに良い友達が出来て……もう今日で死んでも良い」

 

「でも、しょっちゅう死にかけとるやん」

 

「言われてみると確かに…でも、ありがとうっ……!」

 

「どうしよう…2人の会話が第三者視点からだと狂気の沙汰にしか聞こえない……!」

 

 

感謝っ……!圧倒的感謝っ……!

先生が来るまで僕は麗日さんと緑谷君にひれ伏すのだった。

 

 





今回は比較的、すまっしゅ!ネタ豊富かな?と思います。
やっと本編でヒロアカのキャラ達が動かせるので嬉しく思っていると同時にどんな性格、口調をしているかたまに忘れてしまう時がありますが、頑張って行こうと思います。

平成ジェネレーションズ観に行きたいなぁ……。




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第50話 勇学園前編 ゾンビランドUA

 
問題!投稿が遅れた理由は3つの内どれ?

1.ビルダーズ2
2.KH3
3.ジャッジアイズ


答えは………




全部だ(ドヤ顔
あ、ちょっと待って。銃を構えないで。
すみません。しっかり投稿するので許してください。



 

 

「ふんぬっ!!……コレが職場先?で新たに身につけた形態。名前を……熱々筋肉(あつあつきんにく)と名付けた」

 

「「「却下」」」

 

「そんなっ⁉︎」

 

「熱々は無いだろアツアツは……」

 

 

 朝のホームルームが始まる前、炎を纏う異形の姿を見せる天倉の言葉に男子達が否定の意を見せる。

 

 

「しっかし天倉。更に凶悪な形態作っちまったなぁ」

 

「確かに強力だけどピーキーだよね」

 

「そうなんだよね……熱っ!!」

 

 

 天倉孫治郎の見せる熱々筋肉(仮)は、強力なのだが長時間使用すると自分が火傷してしまう欠点を持つ形態だ。

流石に限界が来たのか、すぐに"個性"を解除しいつも通りの人間態の姿に戻る。

 

 

「熱つつつ……それじゃ熱々筋肉に変わる名前はどんなのが良いかな?」

 

「おっ、なら!俺!俺良い案があるぜ!」

 

「はい切島君」

 

「名付けて…出怒飛威斗(デッドヒート)!どうよコレ!いい感じでしょ!」

 

「おぉ!カッコいいな!」

 

 切島の案はどうやら好評価らしい。「おぉっ」と声を漏らす者もいれば、自分も便乗しようと名前を考える者もいる。その中で、常闇が二つ目の名前を告げた。

 

 

「……『緋炎ノ煉獄』」

 

「お、常闇君!……それってどう言う意味?」

 

 

 響きは悪くないだろう。しかし天倉本人は意味が良く分かっておらず評価としては微妙なようだ。

 

 

「安直っぽいけど『エクシードマグマ』でどうかな?」

 

「お、緑谷!良い案だすなぁ……」

 

「そんなに技名って大事か?」

 

「勿論だろ。オールマイトの技名だって『こんにゃくッ!』って叫びながら殴ると力抜けんだろ?」

 

「こんにゃく⁉︎」

 

 

 憧れのオールマイトの必殺技がプルプルとした食品の名前にされている事に緑谷はショックを受けているようだ。

……しかし、そんなハイテンションで技名決めをしている男子達の中で轟がむすっとした様子で呟く。

 

 

「…ンなもん極熱形態で良くねぇか?」

 

「あれ?轟君乗り気じゃ無いの?」

 

「いや、まぁ……クソ野郎(親父)に似ててな……」

 

「「「……あぁ、成る程」」」

 

 

 轟は天倉の新形態がエンデヴァーに似ている事が気にくわないのだろう。無論、天倉自身は彼の父親に似せたワケではなく偶然こんな姿になっただけである。

 

 

「別に天倉に罪はねぇ。あっち(クソ野郎)が似ているだけた」

 

「うん。父さん(クソ野郎)なら仕方ないね」

 

 

バシッ バシッ グッ!

(無言の腕組み

 

 

「2人の父親に対する闇が……!」

 

「つーかさ、結局どうすんの名前?いっその事複数の奴を合わせてみる?」

 

 

 うーんと顎に手を当てる天倉。しばらくして、彼は意を決したように口を開く。

 

 

「それじゃ…極熱筋肉で!」

 

「「「敢えてそれにするか⁉︎」」」

 

「いやいやいや、天倉よぉ。もう少し考えようぜ?」

 

「えー、良いじゃん極熱筋肉」

 

 

 技名を決めるのに疲れたのか、自分の机に突っ伏す天倉。壊滅的なネーミングセンスの彼にしては比較的良い方なのだろう。

 

 

「……緋炎六天慟練雅魔獄」

 

「いや、もう常闇君の命名はいいや」

 

「!?」

 

 

敗因『技名か喋りにくい。あと、読みが分からないから。』

 

 

 その後、何度も案を出す常闇を無視しながら時間は過ぎていった……。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 そんなこんなでヒーロー実習の時間がやって来た。そろそろ新しい装備(ベルト)の性能を試したい所だけど、今回はいつもと違い見慣れない制服を着た4人の生徒が教室に居た。

 

 

「いきなりだが今回のヒーロー実習に勇学園ヒーロー科の生徒5名が特別に参加する事となった」

 

「「「「「「のっけから新キャラ来たぁぁぁぁあああああッ!!!」」」」」」

 

 

 相澤先生は相変わらずサプライズが好きですねェ!あと、耳がヤバイ!耳を塞ぎながらも上鳴君と峰田君(煩悩丸出し2人組)のリアクションが目立つ。

 

 

「眼鏡女子だぜ女子ィィィィィイイイイイイッ!!」

 

「なぁなぁ彼女、ライン交換しy──だぁぁぁぁぁぁあああああッ!?」

 

「ったく、馬鹿を晒すなっての」

 

 

……なんだかんだであの2人は良いコンビだと思う。今回はいきなりナンパする上鳴君に非があるけどね。

新キャラの登場によってクラスの中が一気に騒がしくなる中、俺は勇学園の人達をじっくり観察している。

 

観察する理由?………出来れば友達になれるといいなと思っているだけであって他意は無い。

 

えーっと、汗を掻いている少し太っている男子に素行が悪そうな男子。そして眼鏡を掛けた女子に………あれ?なんか首から上がまんま蛇の……女子?が居る。

 

 

「…………」

 

 

 刹那、騒がしかったクラスがしんと静まる。それはまるで激しく燃え上がる炎が一気に鎮火されるが如く。先生の鋭い目から「これ以上騒がしくすると除籍処分にするぞ」と容易に読み取れる。

 

合理的主義な先生が俺達を黙らせるのには数秒もいらなかった。

 

 

「自己紹介を」

 

 

 相変わらず怖いよ相澤先生……勇学園の人達もすっかり怯えてるじゃん。すると自己紹介の途中にヘビ頭の女の子と蛙吹さんか互いの視線が交わる。

 

……目と目が合う〜瞬間……ごめんなさい、言ってみたかっただけです。ハイ。

 

 

「友達かな……?」

 

「なんかハラハラするぞネイチャー(食物連鎖)的に……!」

 

「ハハハ、何をバカな緑谷君。別に人肉を食べるワケじゃないから大丈夫でしょ」

 

「えっ、あ、うん(どうしよう、天倉君がいつも人肉食べてるイメージが……)」

 

 

 んん〜?なんで緑谷君は視線を逸らしているんだ?俺について言いたい事があるならハッキリ聞こうじゃないか。

 

 

「万偶数!雄英の奴なんかと仲良くしてんじゃねーよ!」

 

「オイ、今なんっつった!雄英以下のクソ学生があッ!」

 

「ほらほら、落ちついてよ爆豪君」

 

 

 まぁ、初めてあった頃のイキってた爆豪君と比べたらかなりマシになったけどさ。

 

 

「黙ってろや天倉!テメェからぶっ殺すぞコラ!」

 

「ほら爆豪落ち着けっての」

 

「るせぇぞ!切島ァ!」

 

「うるさいのはお前だよ爆豪。静かにしてろ」

 

「ぐっ!」

 

 

 さすが先生。問題児を抑えるのは慣れてるって感じだなぁ。対して爆豪君は相変わらずって感じだな。職場体験が終わった後なら少しは落ち着いていると思ったんだけど……。

 

 

「それじゃ、全員コスチュームに着替えてグラウンドΩに集合。飯田、勇学園の生徒を案内してやれ」

 

「分かりました!」

 

 

 飯田君は高らかに声を上げ、皆を更衣室へ誘導する。……爆豪君と勇学園の藤見君は睨み合ったままだけど。

 

………目と目が合う〜瞬間〜〜〜

 

 

「「あ゛?」」

 

「なんでもありません」

 

 

 なんで2人共俺の心の内を読めたのかはさて置き、もう2度やらないでおこう。やっぱり不良っぽい人は苦手だ。俺は急いでで更衣室に駆け足で向かおうとする。

 

……が、誰かが背後から俺の肩を掴む。

 

 

「フフフ、怖────だぁぁぁぁぁぁあああああッ!?」

 

 

……あ、ついアームロックが。

 

 

「それ以上いけない!?」

 

「いや天倉お前!何初っ端からアームロックをかましてんだよ!」

 

 

「あ……いや……背後に立たれた上に脅されると、アームロックを掛けないと心配で……」

 

「デュー◯東郷かよお前!」

 

 

いや、だって……職場体験先があまりにも厳しかったから、無意識に自己防衛しようと身体が勝手に……。

 

 

「あ…その、別に故意があった訳じゃなくてね……」

 

「がああああああああああああ」

 

「いや、離してあげてよ!ホントに!」

 

 

 そう言われて俺はすぐさまアームロックを解く。と言うか、この頭に猫耳っぽいもの着けて眼帯を装着してる人、どっかで見たことあるような……?

 

 

「……あぁッ!!もしかすると天龍ちゃん!」

 

「え?天龍さんって……!」

 

「そうだよ!番外編に出てた!」

 

「そこまでにしとけよ麗日さん!」

 

 

 なんか最近、麗日さんヤバくなってない⁉︎色々な意味で壁を超えて来てるんだけど!そう言う意味でのPuls ultraはしなくていいよ!

 て言うか天龍さんって、俺の小学校以来の数少ない希少な友達じゃないか!

 

 

「いやぁ、久しぶりだね天龍さん。と言うか勇学園だったの⁉︎」

 

「痛……あぁ、久しぶりだな……」

 

 

 そう言いながら彼女は俺の背後に回り込み、コメカミに拳を当てて来た。……え?いだだだだだ⁉︎いきなり何⁉︎

 

 

「なにシレっと技を掛けてきたのを無かった事にしたんだお前!つうか!なんで!俺の顔を忘れてんだよ!お前は!」

 

「あだだだだ!こめかみをグリグリすんのはやめて!だって!どうせ俺なんかの顔を覚えている人なんて居ないって思ってたから!」

 

「本気でぶっとばすぞテメェ!」

 

 

 

 いだだだだだ!誰かこの人を止めて⁉︎こう言うのって第三者からの介入が無いと止まらない奴だから!

視線によるSOSメッセージをクラスメイトに送る。

 

 

 

「なぁ、アイツって意外と女子との絡みが多くねぇか?」

 

「そうだな、世の中不公平だよな」

 

「ファッキン天倉」

 

 

なんかアソコで悪口言われてるーーー!堂々と敵意の視線が突き刺さってるんだけどなんで⁉︎

 

……あ、そうだ。意外と良識のある轟君と八百万さんに助けてもらおう。助けて2人共ーーーー!(視線によるSOS

 

 

 

「……あら、轟さん?どうしました?」

 

「チッ……あそこのポジション(親友枠)は俺の場所なのに…あの女!」

 

「轟さん!?」

 

 

 

なんか違う意味で敵意持たれてる⁉︎

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「なぁなぁ、天倉!あの天龍ってデカ乳眼帯属性モリモリの女子を紹介してくれよォォ!」

 

「頼む!後生だ天倉!」

 

「ん?良いけど」

 

「いや!良いのかよ!」

 

「なんか余裕があって腹立つ……!」

 

「なんで!?」

 

 

 こめかみをグリグリされる地獄から解放された俺は上鳴君と峰田君から天龍さんを紹介して欲しいと懇願され、了承したのだが何故か敵意を持たれた。コレガワカラナイ。

 

 そんな会話をしながら俺はライダースーツ(コスチューム)を羽織り、その上からグローブ、ブーツ、ベルトと言ったアイテムを装着する。

 

……それにしてもなんでベルト以外は"個性"を使うと一瞬で無くなるんだろうか。"個性"を使った前は服を着ている筈なのに"個性"の使用後は一瞬で服が無くなっているって……ホントどう言うことなの…(ガチ困惑

 

 

「天倉君、その腕につけてるアクセサリーはなんだ!常に着けているのは関心しないぞ!」

 

 

 自身の個性の仕様に困惑していると飯田君がズンズンと迫って来る。……お願いだから服を着てからにしてくれないかな。迫力があって怖いんだけど。

 

と言うか腕のアクセサリーって……あ、レジスターの事か。

 

 

「あぁ、コレね。実はコスチュームアイテムでさ。青山君のベルトみたいな扱いなんだよ」

 

「む、そうなのか!俺の確認不足だった!すまない!……いつも身につけている気がするのんだが、不便じゃ無いのか?」

 

 

不便、不便か……いやまぁ。最初こそは着替えるとかで不便だったけどね、すぐに慣れたからなぁ。

 

 

「いや、もう慣れたから大丈夫だよ。それに…骨まで食い込んでいる感じだから無理に外すと大量出血するだろうからなぁ……」

 

「そうか、それは良かっt……ん?骨までってどう言う⁉︎」

 

「気にしない気にしない」

 

「いや、しかしだな……」

 

「そんな事よりもさ、アレをどうにか出来ないかな……」

 

 

俺が指を指す方向にはバチバチとメンチを切り、闘争心を剥き出しにした2人が居た。

 

 

「気に入らねぇんだよぉ……雄英に入ったってだけで、お前みたいなのが世間にちやほやされてんのはぁ……」

 

「喧嘩売ってんなら、言い値で買ってやんよぉ!!」

 

「この実習でぇ…俺達の方が優れてるって事を証明してやるぅ……!」

 

 

 今にも殴り合いに発展しそうな爆豪君と藤見君。どうにかしてもらおうと良識を持つ(例外有り)緑谷君に目配せをする。

……あ、目を逸らされた。おい幼馴染だろ何とかしろよ。

 

 

「いい加減にしないか、爆豪君ッ!」

 

「ごめんなさい!藤見君は口が悪いけど、決して悪い人ではないんです……」

 

「こちらこそ済まない。もっともコチラは悪い人間じゃないと言えないのが何とも……」

 

「んだとッ!」

 

「まぁ、待って!爆豪君にだって良いところが……あ、ごめん。今の無しで」

 

「本気でブチ殺してやろうかテメェ……」

 

 

 突如として怒りの矛先が俺に向けられる。いや、本当にごめんね。今までの出来事を思い出しても良いところが出てこなかったんだ。

 

 

(……ナチュラルに人を煽る天才なのかなぁ……?)

 

 

 何故か緑谷君から呆れたような目を向けらるのが気になるが、俺達はコスチュームに着替えたAクラス+勇学園ヒーロー科はグラウンドΩに行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

──グラウンドΩ

 

 

 そこにA組と勇学園生徒達がコスチュームに身に付け集合していた。しかし、全員揃っているにも関わらず訓練は開始されず皆は頭の上に疑問符を浮かべていた。

 

すると、出入口から見覚えのある人物がやって来る。下顎から突き出た牙と左頬に十字傷があるのが特徴の男性。

B組を担当するブラッドヒーロー【ブラドキング】だ。

 

 

「待たせたなイレイザー」

 

「B組担当のブラドキング?なんでここに?」

 

「それは勿論───」

 

「僕達も参加するに決まってるからだよ!」

 

 

 ブラドキングの後ろから声が聞こえる。グラウンドの出入口からゾロゾロとコスチュームで身を包んだ者達がやって来る。

 

 

「げぇーーっ!B組……とついでに物間!」

 

「今回は丁度、B組と合同で訓練を行うつもりだったからな。勇学園も加えてでの混戦を想定してでのサバイバル訓練を行う」

 

「合計46人かぁ……」

 

「さぁ、決着をつけようじゃないかぁ!」

 

 

 B組のメンバーを加えた大掛かりな訓練に関心の声を漏らすAクラス。それに対して1人だけ挑発をしてくる物間はとてもシュールな絵面だろう。勇学園の生徒達も「なんだコイツ…」と呆れた者を見るような目をしている。

そんな中、天倉は物間をジッと見つめた後にポンと手を叩く。

 

 

「……あぁっ!思い出した!いっつも拳藤さんに殴られてる人!」

 

「んーっ!流石はA組!僕達とは違って面白い覚え方をするね!僕達B組じゃ真似出来ない芸当だよ!」

 

「ん?あぁ、いやそれ程でも無いよ」

 

「いやいや、流石だと言っておくよ。僕達じゃあ成し遂げれなかった体育祭の3位。さぞや良い眺めだっただろうね」

 

 

((((……高度な挑発合戦を繰り広げている⁉︎))))

 

 

 勇学園の生徒達は雄英の舌戦に冷汗を掻く。

そう、訓練は既に始まっていたッ!彼等は互いの間合いを図り、言葉という名の武器で殴り合いを始めているのだッ!

それはラッシュの速さ比べとでも言おうか。近づけば途端に巻き込まれる災害の如く何者も寄せ付けないプレッシャーを放ち、その空間だけを刈り取ったように戦場へと変質させていたッ‼︎

 

 

((((これが……雄英か……!))))

 

 

そして、そんな彼等に対して言葉を贈ろう。

 

 

 

 

 

──いえ、片方だけが馬鹿なだけです。

 

 

 

 馬鹿(天倉)が単に物間の回りくどすぎる言い回しが挑発だと気付いていないだけであり、天倉本人は「B組の人って謙虚だけど良い人だなー」としか思っていないのだ。

 

 

「…さすが天倉。成長してやがんな……」

 

 

──そして何故、この厨二眼帯少女(天龍)は「天倉は私が育てた(キリッ」とした感じに格好つけているんだ。

 

 

 

 

 

「ほら、やめとけ物間」

 

 

そこに1人の少女が物間の背後に回る。

 

 

「う゛っ」

 

 

 手刀によって一瞬で意識を刈り取る。まるで少年漫画の如く見た者を魅了する程の美しくも恐ろし早い手刀。

ちなみに俺でなきゃ見逃しちゃうねと呟く人は出なかった模様。

 

 

「いやー悪かったな天倉……って、なんか遠くね?」

 

「いや、気にしないで…ください」

 

 

 緑谷の背後に隠れるように拳藤と会話を交える天倉。

どうしてこんなに怯えているのか不思議でならない拳藤だが、そこに天龍が寄って来る。

 

 

「えっと?拳藤って言ったか?天倉の奴さ、体育祭でお前を蹴り飛ばした事、まだ引きずってんだよ」

 

 

 小学校で知り合っていたお陰か、天倉がどう考えているか容易に想像できると天龍は言う。

 

 

「あー、アレの事。別にもう気にしてないんだけどな……」

 

「アイツの性格上、飯奢って貰うとかしねぇと気が済まないんだよ」

 

「そんじゃ、あとで昼奢ってもらうかな?」

 

「おう、そうしとけそうしとけ」

 

 

 

 

 

「やべぇ…きっとあの2人で俺を袋叩きにしようとしてるんだ……もう駄目だぁお終いだぁ……」

 

「おい天倉、良い加減立ち直らねぇと除籍にするぞ」

 

「すみませんでした」

 

 

 ガクガクと震えていた天倉だが相澤先生の激励一言(と言う名の脅し)によって元に戻るのに数秒も要らなかった。

そんな天倉が立ち直った直後に再び訓練の説明が入る。

 

 

「よし、今日のヒーロー実習を担当するのは、俺とブラド。そしてもう一人───

 

 

 するとグラウンド天高くから1人の巨漢が現れる。雄英高校においてヒーロー基礎学を担当する先生であると同時にNo.1ヒーローでもある人物【オールマイト】の登場だ。

 

 

「私がーーーー! スペシャルゲストの様な感じでーーーー!来たッ!!」

 

「オ、オールマイトォ!!」

 

「本物ッ!!」

 

「マジかよ!」

 

「凄い迫力ッ!!」

 

「雄英が羨ましい……!!」

 

 

 オールマイトの派手な登場に勇学園の5人は目を輝かせる。緑谷達は改めて自分達が如何に恵まれた環境で勉学を学んでいるのか、No.1ヒーローが身近に居ると言うのがどれ程凄いものなのか認識した。

 

 

「さて…今回の実習だが、さっき聞いたと通り全員参加でサバイバル訓練に挑戦して貰う!」

 

 

 天倉はサバイバルと聞いて一瞬、森の中で命を賭けた生き残り、自然の脅威などが頭に浮かび上がってきたが、すぐにオールマイトの話に意識を戻す。

 

 

「状況を説明しよう…生徒達は4~5人で1組。全6チームに別れ、こちらが指定した任意ポイントから訓練を始めてもらう。訓練の目的はただ一つ……"生き残る事"だ。他チームと連携しようが戦おうが構わない!とにかく最後まで生き残ったチームの勝利となる!」

 

「他チームとの戦闘に突入した際、この確保テープを相手に巻きつければ『戦闘不能状態』と見なす事となる。雄英生にはお馴染みのアイテムだな」

 

「早速チーム分けだが…、いきなりごちゃ混ぜした感じだとやりにくいだろうから、それぞれA組、B組、勇学園でチームを組むと良い!」

 

 

 説明を受けた生徒達は己の"個性"に合ったチームを作ろうと動きだ───

 

 

「ここで追加ルールを発表しよう!」

 

 

「ッ!?」

 

 

 刹那、天倉に悪寒が走る。

まるで実家のような安心感のような、行きつけの居酒屋で"いつもの"を注文するかのような。そんな()()()()()()()()()()が天倉は感じたのだ。

 

 

「今回、サバイバル訓練に【鬼】を追加する」

 

(ッ!!お、鬼だと〜〜〜〜〜ッッ!)

 

 

 ダラダラと冷汗を掻く天倉を尻目に飯田は手を挙げ、追加ルールについて質問を投げかけた。

 

 

「質問ですッ!サバイバル訓練における"鬼"とは一体なんなのでしょうかッ!」

 

「良い質問だ。ヒーロー活動において決して、倒せない存在が居る可能性もある事忘れるな。自分達では敵わない相手。挑む事も大切かもしれないが、最もいけない事は自身と相手との実力の差を見誤る事だ」

 

 

その言葉と共に相澤先生はチラリと緑谷、飯田、轟に視線を移す。

 

 

「"鬼"はこの訓練中において決して『戦闘不能状態』にならない者となる。挑むだけで非合理的だな」

 

「成る程!ありがとうございますッ!」

 

「ちなみに鬼の人数は1人。まぁ、戦闘不能状態にならないハンデとしてはこれくらいが充分だろう」

 

「つまり…トーソーチューのハンターって事ですか?」

 

「ん……まぁ、そんな認識で良いだろう」

 

 

「楽しそー!」

 

「結構楽そうじゃね?」

 

「けど1人だろ。メチャクチャきついぞ」

 

 

 

(間違いないッ!!予感的中ッ!悪寒の正体ッ!)

 

 

 大人数によるレクリエーション(訓練)において、高確率にハブられる人物。そのハブられる人を幾多も経験した彼はこうなる事が容易に想像出来ていた筈だった。

 

だが彼は浮かれていたのだ。小学生の頃の友達との再会、職場体験学習の終了、ヒーロー実習の三拍子にッ!

 

 

「ハイ、と言うわけでこのBoxの中から皆の名前が書かれた用紙が入っている。その中から1枚。選ばれた人は鬼の役目をやってもらうぞ!」

 

 

 取り出したのは1つの箱。天倉にとっては新たな黒歴史の1つになるか、ならないかの分岐点(ターニングポイント)。そんな彼は箱に向かってブツブツと呟く。

 

 

 

「(い、いや…カカカカ確率的には1/21×1/41で861分の1だから簡単に当たるわけ無いダダダイジョウビ俺はやれる、こんなの簡単に残りの860を引けるに決まってる…大丈夫俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれる……!)当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな当たるな……!」

 

 

 

「う、うーん……誰が当たったかな?(天倉少年、凄い気迫だ……)」

 

 

【天倉】

 

 

「アーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

あぁ、やっぱり今回も駄目だったよ。アイツは運が悪いからな。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 グラウンドΩに生い茂る森の中、数人1組のチームが木々の間を駆け抜けて行く。

 

 

「頑張ろうねデク君!」

 

「うん!」

 

 

ある者は訓練を楽しみ、

 

 

「負けないわ羽生子ちゃん」

 

「こっちだって!」

 

 

ある者は再会を楽しみ、

 

 

「首洗って待っとけや!」

 

「こっちの台詞だぁ…!」

 

 

ある者は啀み牽制し合い、

 

 

「次こそは勝たせてもらうぜ!」

 

「上等!次も俺が勝つッ!」

 

 

ある者は正々堂々と対決する約束を交わし、

 

 

 

 

 

 【鬼】

  ↓

  ( 'A`)

  (oヘヘo

  

 

 

 

そしてある者は1人になった状況に涙する。

 

 

 そんな各々のチームは決められた定位置に移動し、これからどう行動するか話し合う。

 

 

 

【爆豪、切島、八百万、障子チーム】

 

 

「天倉は1人だけどリタイアにはならないんか……」

 

「不利に見えるが考えられてるな……」

 

「えぇ、それに。1人になった分、行動も自由になると考えて良いでしょう。少数になる分見つかる可能性も低くなります……と、なると天倉さんが使ってくる戦法は奇襲が主体になってくると思いますわ」

 

「関係無ェわンな事!アイツは俺が直々にブチのめしてやるッ!!」

 

「いやいや!天倉は倒せねぇって!(訓練中のみ)」

 

「そうですわ!相手にしても意味がありません!」

 

「だったら適度にボコして動けなくしてやるわ!邪魔な障害物なら先に潰しておいた方が楽だろが!」

 

「理にかなっているけど言い方ァ!」

 

 

 

【緑谷、麗日、芦戸、蛙吹チーム】

 

 

「こんな事もあろうかと、ジャーン!お菓子を持ってきました!」

 

「わーい!」

 

「なんでお菓子なの芦戸さん⁉︎」

 

「これでね!天倉を罠に掛けるの!」

 

「いや!流石にそれで引っかかるわけ!……いや、待てよ?そもそも天倉君の嗅覚は強くなってる訳だから森の中において良い戦法なのか?先生も言ってたけどコレはサバイバル訓練だから、こう言ったものも……」ブツブツブツ

 

「皆、変わらないわね」

 

 

 

 

 殆どのチームがどう行動する方針を立てた直後、タイミングを見計らったように合同サバイバル訓練は開始された。

 

それと同時に鬼の役割を担う天倉はどこへぶつけたら良いか分からない怒りと悲しみを抑え込み、森の中に足を運んで行った。

 

 

「ォォォォォオオオッ!!変身(アマゾン)ッ!(半ギレ」

 

 

 緑色の炎に包まれ姿を変えた天倉は木々を飛び移りながら移動する。多少ドスの効いた声で叫んでいたが、気のせいだろう。

 

それはさておき、この鬼と言う役割だがハッキリ言って天倉は適任とも言える。森の中では邪魔になる木が多く、整備されてない道で走り難い等、障害は幾つも挙がる。

 その点、天倉はトカゲや蛇が持つ『ピット器官』と言う赤外線感知器官を持ち他チームの居場所の特定が可能で、俊敏な身のこなしによって木と木の間を飛び移り高速で移動。そして緑の体色によって周囲の景色に溶け込む事も可能な為、彼は森の中の戦闘において有利と言えるのだ。

 

 

 

「よし、先ずは───」

 

 

 

 彼もその事を理解しているのか、敵の位置を確認する為ピット器官を使おうと移動のスピードを落とす。

 

 

「高速溶接ッ!」

 

「えっ」

 

 

が、考えてみて欲しい。

そんな鬼の役割を持つ彼を他の者達は放っておくだろうか?否、彼等が取るべき行動は───

 

 

「よっしゃ拘束完了!」

 

「えっ」

 

 

──先手を取り、鬼を封じる事だ。

困惑する天倉を尻目に泡瀬を始めとした拳藤、角取、小大が木の陰から現れる。

 

 

「悪いけどさ天倉……コレさサバイバルだから」

 

「えっ」

 

「ゴメンナサイ天倉サン、エート…ネェ、ドンナ気持チ?成ス術ナク無効化サレルノッテドンナ気持チ?」

 

「えっ」

 

「……と、言うわけでさ……ホンットごめんな!」

 

「えっ」

 

「………」(無言でお辞儀)

 

「……えっ?」

 

 

【拳藤、泡瀬、角取、小大チーム】天倉の動きを封じる事に成功。

鉄骨と地面に溶接され、動けなくなった鬼である天倉はそんな彼女達の走り去って行く後ろ姿を見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

「…………!?」

 ↑

やっと状況を理解した鬼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<初見殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハ!どうだイレイザー、俺のクラスは!この日の為、A組を対策するように課題を出していた!確かにお前等の方の個々の実力は凄まじいものだ!それは認める!だがB組の連携はA組を上回る!」

 

「……ったく、油断しやがって……」

 

 

 天倉の悲痛な叫びを耳にした教師陣。片方は生徒達の活躍に高笑いし、もう片方は開始数秒で動けなくなった情けない生徒に頭を抱える。

 

 

 

 

天倉孫治郎(鬼)、初見殺しにより戦闘不能(リタイア)

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬッ!!クソ、鉄骨と周りの木で身体がガッツリ固定されて動けんッ⁉︎」

 

 

 全身に力を込める(天倉)。しかし、自由が利かない体制で固定された所為なのか身体に溶接された鉄骨はピクリと動かない。

 

 

「やべぇよ……やべぇよコレ……下手したら何も出来ずに訓練終わるぞ……!」

 

 

 天倉の脳裏に映し出されるのは周囲からクスクスと笑われる自分自身の姿だった。

 

 

『プークスクス、何も出来なかったった(マジ)?』

『わー、引くわー、雄英生の癖して何も出来ないの引くわー』

『失望しました。天倉君の友達やめます』

『えーマジ?初見殺し⁉︎キモーイ』『初見殺しが許されるのは小学生までだよね』『『キャハハハハハハ』』

 

 

「どやんす⁉︎どうする俺!どやんすッ⁉︎」

 

 

 何故佐賀弁なのかはさておき、被害妄想も甚だしい。ネガティブ思考の天倉はこのままでは言葉責めに合うと想像し身体を無理矢理動かそうとする。

 

しばらくして、これ以上動いても無駄だと思ったのか暴れるのをやめる天倉。

 

 

「……いや、先ずは冷静に考えよう」

 

 

 深呼吸をした後、自分の脳をフル稼働させ緑谷のようにブツブツと呟く。

 

 

「えーと……まず、俺のアドバンテージは……1人だと言う事。チームでの連携とかが無い分、自由性が増してる。…けど問題なのは真っ向勝負が不利って事。それでも一対一、もしくは不意打ちなら戦闘不向きな個性持ちを倒せる……はず」

 

 

 先程まで水の外でビチャビチャと跳ねる魚のように暴れていたのが嘘のように落ち着いてくる。

 

 

「拳藤さんとの戦いだって、ほぼ不意打ち?的な感じで倒しちゃったし……」

 

 

 

「……………」

 

 

 

「……ゴポォ!(吐血」

 

 

 いつもの。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…なんで自爆してんだろ俺」

 

 

 全くである。今、自分のできる事を見つける事が先決だと言うのに何故、無駄に体力を消耗した上、ダメージを負っているのだろうか。

 

 しかしそんな彼の目に再び炎が宿る。口元から血を垂らしながらも彼は諦める事は無かった。

 

 

「まぁ、取り敢えずはだ。周りが森林って言うのが厄介だな……ッ!」

 

 

そう呟いた直後、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、【飯田、砂藤、常闇、瀬呂チーム】は自分達の周囲に瀬呂のテープによる結界を張り、敵チームを足止めしている間に捕縛する方針を立てたのだが

 

 

「グハハハハッ!何処に居るのかバレバレでしてなァァァアアアッ!」

 

「うぉぉぉぉぉおおおおッ!」

 

「アイツ!蒸気機関車かよ!正面から向かってくるかフツー⁉︎」

 

 

 Bクラスの生徒、【宍田獣郎太】が小細工も無しにテープの結界を破りながら突進して来たのだ。それに対抗し砂藤の"個性"シュガードープによって取っ組み合いにもつれ込み、互いの力が拮抗した状態となった。

そこに常闇が援護を行おうと闇影(ダークシャドウ)を操る。

 

 

「闇影!」

 

『アイ───ヨッ!!』

 

「がっ⁉︎」

 

 

 が、闇影は宍田ではなく常闇に攻撃を喰らわせた。

不意による攻撃により吹き飛ばされる常闇だが地面を転がりつつ、すぐに態勢を立て直す。

彼が睨む場所(ダークシャドウ)の中からぬるりとソレは現れる。

 

 

「此処は最早、俺の舞台(ステージ)と化した」

 

「……ッ!闇影を操るかッ!」

 

「あぁ……!その通りだ常闇踏影。貴様と俺は同じにして異端。覚えておけ。闇を覗く時、闇もまたこちらを覗いているのだ……!」

 

「……面白い。俺が闇の存在が無ければ何もできない者だと思ったら大間違いだ。俺の覚悟は貴様の信念をも穿つッ!」

 

 

 黒い物に溶け込む"個性"を持つ【黒色支配】は闇影を巧みに操り常闇と戦う。

彼等の世界を割く事は出来ず(黒歴史確定の言動をしております)最早誰にも止める事は叶わないだろう(そっとしておいてあげて下さい)

 

 

 

 

「砂藤君ッ!頭を下げるんだ!」

 

 

 飯田の脚のマフラー部分から炎が噴き上がる。直後、"個性"エンジンによる蹴りが宍田の頭を襲う。

 

 

「解除ッ!」

 

「ッ!」

 

 

 しかし"個性"を解除する事によって宍田の身長は大きく縮んだ事によって飯田の蹴りは虚しく空を切る事となる。

 

 

「……まだだッ!砂藤君!俺を投げてくれ!」

 

「おう!」

 

 

 そこに砂藤は蹴りを外した飯田の脚を鷲掴みに、宍田に向けて全力で投げる。それと同時にエンジンのギアを1段階上げ蹴りの威力を上げようと試みる。

 

 

「ッ!」

 

 

 が、飯田は側面から飛んできた複数の弾丸らしき物を蹴りで弾く。声の方向に注目すると、中国の長袍(チャンパオ)のようなコスチュームを纏った男子生徒がこちらに手を向けているのに気付く。

 

 

「突っ込んでいくな黙示録!少しは冷静になれって!」

 

「"個性"を使ってしまうとハイになってしまうので!あと、その呼び名はやめてくださいますかなァァァアアア!!」

 

「伏兵か───ッ⁉︎なんだッ⁉︎」

 

 

 足元の違和感を覚えた飯田は自身の脚部に視線を移す。白濁の液体が付着しているのに気が付いた。そして、みるみる内にその液体は固まっていき脚が地面から離れない程に強固に接着されてしまう。

 

 

「ナイスだ凡戸!アイツの機動力は厄介だからな!」

 

「先に飯田を潰すかよ!」

 

 

 【凡戸固次郎】の"個性"によって動きを封じられてしまう飯田。そこに【鱗飛竜】は手から弾丸のように鱗を飛ばそうと構えるが瀬呂はテープを彼の腕に括り付け、別の方向へ向けさせ誤射させる事に成功する。

 

 

「くっ、回原!今の内に飯田を頼んだ!」

 

「やばっ!まだ隠れてやがんのかよ!」

 

 

 鱗の言葉に瀬呂は内心舌打ちをしながら味方全員に警戒を呼びかける。そこに鱗が呼んだ【回原旋】は飯田に向かって飛んで来る。

 

 

 

 

 

───ボロボロになりテープで縛られた状態で

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 

 

「隙を見せ過ぎなんだよ雑魚共ォォォォォォオオオオオッ!!」

 

 

 

BOOOOOOM!!!

 

 

 

 回原に続いて現れたのは、もはや敵サイドのキャラクターにしか見えない形相の爆豪本人だった。飛んで来た回原は彼にやられたのだと周りはすぐに理解した。

 

 

「テメェ等全員、死んどけやァァ!!」

 

「くそ!」

 

 

 そこに鱗が爆豪に向け無数の鱗を撃つが、爆破の反動によって空中を自在に舞い難無く回避する。

 

 

「鱗飛ばすだけかよ!凡度!爆豪の動きを止め───」

 

「そっちかよ!爆速ターボ‼︎」

 

 

 鱗がチラリと視線を向けた方向に隠れた生徒の存在に気付いた爆豪は一瞬で距離を詰め胸倉を掴む。

 

 

「ちょ、何───」

 

爆破(エクス)カタパルト!」

 

「うお───!?」

 

 

 爆破による遠心力を利用し鱗を勢いよく投げ飛ばす。投げた先には"個性"を発動しかけている凡戸の姿があった。

 

 

ブチャッ!!!

 

 

 2人が激突し合うと共になにかがブチまけられる音が響く。そこには鱗と凡戸が白い液体によって身動きが取れない状態になってしまう。

ニヤリと(凶悪な)笑みを浮かべる爆豪だが、背後から宍田は腕を振りかぶる。

 

 

「爆豪殿!背後がガラ空き───

 

「ワザとだわ!ボケ!!!スタングレネード!!」

 

 

 森の一角が閃光と爆音で覆われる。光と煙が晴れる頃には個性によって視覚、聴覚が強くなっていた為か宍田は爆破によって目と耳を抑えながらその場で悶絶していた。

 

 

「グォォォオオオオッ!?耳と目がぁぁぁぁ!!」

 

「ハッ!目と耳が良すぎる奴にはよぉく効くよなァ!天倉と同じタイプでつまんねぇわボケ!」

 

 

 爆豪の登場により先程まで窮地に立たされていた飯田達は優勢となる。そんな爆豪の元に瀬呂が駆け寄る。

 

 

「わり、爆豪助かった───BOOM‼︎

 

 

 刹那、瀬呂の顔面に無慈悲な爆破攻撃。忘れてはならない、これはあくまで訓練である事を。悲しいけどコレ、サバイバルなのよね。

 

 

 

「全員、ぶっ潰したらぁ……!!」

 

 

 

この後、無茶苦茶抵抗したが負けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、さすがと言いたいよ。一対多を物ともせずに勝っちゃうんだからさ」

 

「でもさ、彼にとっては自分以外の人間をただの脇役としか見ていない。それは僕だってそう思うさ。なんせ、誰もが他人の人生の脇役であり 自分の人生の主役なんだ」

 

「それは仕方ない事さ。あぁ、仕方ない。だからホント嫌になるよね1人でなんでも出来るって奴はさぁ!」

 

 

 

「……物間、お前……誰に向けて言ってんだ?」

 

 

 

 森林の中、物間達と拳藤のチームが合流を果たす。爆豪の戦いを見ていた物間の独り言に拳藤達は距離を置く。彼と同じチームの鉄徹、柳、吹出も若干引き気味だ。

 

 

「さて、拳藤。いくつかのチーム、特にA組は何も考えずに動き、数を減らしてきている頃だ。そろそろ僕達も動き出す頃じゃないか?」

 

「……確かにな。んじゃ、私達も本格的にやるとするか」

 

 

 そう呟いた直後、拳藤は片目をつぶりばつが悪そうに口を開く。

 

 

「ホント、ごめんな」

 

「ん?何を言っt「SMASH!!

 

 

刹那、木の上から現れた緑谷が放つ拳が物間の顔面を捉える。

 

 

「物間──「悪いわね、先手必勝よ!」──って、うぉぉぉおおおお!?」

 

 

 さらに、蛙吹の舌が鉄徹を掴み遠くを放り投げ、綺麗な放物線が描かれる。

 

 

「ま、A組とB組が同盟を結んじゃ駄目って言われてないからな」

 

「フ、フフフフ。成る程、A組の考えそうな事だ。緑谷君、だったかな?いつの間に力をセーブする事が出来るようになったんだい?」

 

 

 拳藤の言葉に応えるように物間は右腕を"鉄に変化させ"立ち上がる。事前に奇襲を警戒し鉄徹の"個性"をコピーしたと緑谷は分析する。

 

 

「成る程、防御力の高い鉄徹を最初に無効化するなんてね……!」

 

「そう言う事!緑谷!」

 

「分かってる!"触れられないように"だよね!」

 

 

 そう言うと緑谷は全身に力を込め跳躍を行うと、物間との距離を瞬時に詰める。

 

 

「(ワン・フォー・オール・フルカウル!)SMASH!」

 

「ッと……!安心しなよ。君の諸刃の剣みたいな"個性"は厄介だからコピーする気になんてならないよ」

 

 

【ボヨヨヨ〜〜ン】

 

「うぉ!?」

 

 

 緑谷の拳は突如として現れた巨大な漫画の擬音のような物に命中ふる。すると凄まじい反発力で拳は弾かれてしまう。

 

 

「ダメだ…弾かれ……⁉︎」

 

 

 あまりの反発力に緑谷自身も飛ばされるが、拳藤の巨大な手によってキャッチ。そこに芦戸が擬音に溶解度を高めた酸を当て、みるみる内に溶かしていく。

 

 

「何、あの"個性"!?」

 

「確か……拳藤さんが言ってた吹出君の個性!」

 

「結構厄介だそアレ……って、うぉッ!?」

 

 

 そこに石や砂利の雨霰が緑谷達を襲う。拳藤は両手を組み巨大化させ即興の盾を作り出した。

 

 

「私の後ろに回って!」

 

「次は柳さんのポルターガイスト!」

 

「こんなの動くの難しいよ!」

 

「ハハハハハ、組んだとしても連携がなってないんじゃあ勝てるものも勝てないよ。……さて、そろそろ鉄徹も戻ってくる頃か───

 

 

 そこから先、物間の言葉は続かなかった。何故ならば急に現れた巨大な赤い何かに轢かれたからである。

 

 全身から炎を噴き出し、筋肉は極限まで増強されオールマイトと同じくらいの大きさに変貌を遂げ、片手に武器という名の鉄徹を構えた天倉がそこに居たのだ。

 

 

「悪い子はいねがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「出たーーー!?鬼だーーーーー!!」

 

「いや台詞的にはナマハゲだけど鬼だーーーー!」

 

 

 本物の鬼とさほど大差の無い迫力にその場の全員は逃げ出す。しかし遊戯において鬼の役割は勿論。

 

 

「に゛か゛さ゛ん゛ッ!!」

 

 

地の果てまで逃げる側を追いかける事である。

 

 

「いや!いやいやいや!アレ天倉か!?何がどうしてあんな化け物になった!?」

 

「強化されたと言うか凶化されてる!」

 

「くそっ!小大、泡瀬!」

 

「…うん」

 

 

 拳藤の言葉に小大は個性で小さくした鉄骨をばら撒く。

 

 

「そこへ高速溶接!」

 

 

 そこに泡瀬の個性で鉄骨同士と地面を溶接させる事によって簡易的な柵を作成する事に成功する。

 

 

「ふんっ!」

 

「ぶげっ───!?」

 

 

 しかし、柵に向かって手に持った鉄徹を全力で投げ飛ばし柵を破壊する。投げられたと同時に鉄徹自身は身を守る為に個性を使用しガードを行なったが全身に伝わる衝撃によってそのまま気絶してしまう。

 

 

「て、鉄徹ーーーー!?」

 

「なんだよアイツ!人の心持ってねぇのかよ!」

 

「今は鬼だよ」

 

「いや、上手いこと言ってる場合じゃ───

 

 

そう言いかけた泡瀬だったが、足元に疎かになっていた所為なのかその場で転んでしまう。

 

 

「あ………ああああああああああああああああああああああああッ!!??」

 

「泡瀬ーーーーー!?」

 

「振り向いちゃ駄目だよ拳藤さん!」

 

「彼の犠牲を無駄にしちゃ駄目!」

 

 

 何か壮大な話になっているがただ、泡瀬は捕縛されただけであって喰われたワケでは無いので無事である。そこに蛙吹が何か思い出したようにポツリと呟く。

 

 

「そう言えば……天倉ちゃん。よく山籠りしてるって言ってたけど……森に慣れてるのかしら」

 

「え?森に慣れるって───おわっ!?」

 

 

 そう言いかける麗日が泡瀬と同じように転んでしまう。すると足元に違和感を感じ視線をつま先に向けると彼女は目を見開く。

そこら中に結ばれた草が複数設置されているのに気付いたのだ。

 

 

「梅雨ちゃんが言ってたのってそう言う──って、来た!?」

 

「来いよォォォォォォッ!!こっち来いよォォォォォォ!!」

 

 

 気付いた頃には(天倉)はすぐそこまでに迫って来ていた。その迫力に気圧された麗日は思わず目をつぶり、捕まるのを待つしかなかった。

 

 

SMASH‼︎

 

「ッ!」

 

「デク君⁉︎」

 

「早く逃げて!!!」

 

 

 だが、そこに緑谷は天倉目掛けて拳を打ち込んだ。あの時もそうだった。例えコレがサバイバル訓練だとしても彼はヒーローとしての行動を選択する。緑谷は一定の距離を保ちつつ構える。

 

 

「……天倉君、こうやって一対一でやるのって初めてだよね」

 

「あ、確かに」

 

「やっと、マトモに戦えるようになったんだ……でも、まだ慣れてないからさ。ちょっとだけ付き合ってくれないかな?」

 

 

 緑谷の言葉に天倉は「はぁ」と呟き項垂れる。するといつも見る緑色の姿に戻ったかと思うと今度はベルトのポーチから捕縛用テープを取り出し、無造作に地面へ落とした。その行動に緑谷は思わず目を見開いてしまう。

 

 

「あのさ……俺が友達の頼みを断れないで言ってる?」

 

「……ありがとう!」

 

「どういたしまして……その代わり俺もコレ(ベルト)の使い方を完璧にさせる為に付き合ってもらうからね」

 

 

 各々は独自のフォームを取る。緑谷は爆豪のように腕を後方に構えつつ体勢を低くし、天倉はネコ科のように片手を地につけ身体を落とすように構える。

 

 

 

 

 

 

「ォォォォォオオッ‼︎『Violent(バイオレント)』」

 

「(最初は様子見で5%フルカウル!)デトロイト…!」

 

 

互いの拳は振りかぶられ、溜めた力と共に放たれる。

 

 

STRIKE(ストライク)‼︎/SMASH(スマッシュ)‼︎』

 

 

2人の拳がぶつかり合う。最初の一撃、力で勝ったのは……

 

 

「おぉぉぉぉおおおおおおおッ!!」

 

「〜〜〜〜っ!ぐぁ!」

 

 

天倉だ。

 

 

(…ッ!あのベルトを弄った時、天倉君の腕の筋肉量が外見はあまり変わらないけど増加してる‼︎)

 

「ウァァァァァアアアッ!!」

 

 

 そこへ踵落としの要領で蹴りが飛んでくるのに対し緑谷は腕を組み防御を固める。

 

 

「ッ!ァァァァァアアアッ!!」

 

 

 しかし防御した所に更に力を込め防御を崩そうとする。所謂ゴリ押しと言う奴だろう、そのまま緑谷は地面に叩きつけられる。

 

だが、彼の攻撃はまだ止まない。叩きつけられ跳ねた瞬間、上に突き上げるように蹴り上げ、空中で身動きのできない所を捻りを加えたドロップキックを打ち込む。

アルファ→ベータ→ガンマドライブと体育祭で見せた技だ。

 

それを緑谷は痛そうな表情を見せつつもすぐに体制を立て直し向かってくる。

 

 

(そりゃ、骨折した上で更に骨折するくらいのタフネス持ってるからなぁ……!)

 

 

 正面から輝きを身に纏いながら緑谷は駆ける。天倉はそれに対し脚を振りかぶる。振り払われた脚が緑谷の顔を捉える────と思いきや、天倉の蹴りは緑谷の眼前で空を虚しく切って終わる。

 

 

「なッ⁉︎」

 

「SMASH!!」

 

 

 緑谷の拳が攻撃のタイミングがズレた彼の顔面を捉える。いや、正確には緑谷がタイミングをズラしたのだ。蹴りを放って来た直後、"個性"を解除する事によってスピードを低下させ攻撃を不発させる事に成功したのだ。

 

 

「(まだ!ここで!)SMASH!」

 

 

 さらに、腹部に拳を打ち込み追撃を加える。そのまま天倉は後方に吹き飛ばされ木に激突する。

 

 

「…ハァ……ハァ……、天倉君は……腕のソレ滅多に使わないよね……!」

 

「……?」

 

 

 腹部を抑えながら天倉は緑谷に視線を向ける。

 

 

「それは僕の事を考えてくれてるから?それとも、君自身が嫌だから?」

 

「……それは……」

 

 

 天倉にとって答えは両者である。人を傷つけてしまう力だから嫌なのだ。深々と突き刺さり、肉を裂き、抉る刃と爪はどうしても使うのを躊躇ってしまう。

 

 

「俺は───「僕はヒーローになる!!」──!?」

 

「君もヒーローになるんだったら!自分の力を認めるんだ!"個性"を奥の手とかじゃなくて、自分の身体の一部だって!USJの時だって、君はその力で先生や僕を助けてくれた!」

 

 

 

──助けたいと思って行動に移したお前はあの時、確実にヒーローだった!

 

──ありがとう、私のヒーロー

 

 

 脳裏にそんな言葉が浮かび上がって来る。

あぁ、君は何て真っ直ぐなんだろう。人を信用するのを怖がる自分とは大違いだ。

……だけど……俺もそろそろ、変わらないといけないと駄目なんだな。

 

 

「君は──「俺だって!」

 

「俺だって、ヒーローになりたい!君みたいに!誰かのヒーローになる!」

 

 

 

 

 

 

「ォォォォォオオッ!!!」

 

 

 グリップを握り締め勢い良く引くと液体をビチャビチャと飛び散り、彼の手には一本の槍が握られていた。一瞬、緑谷は何が起きたのか理解出来なかったが、彼の"個性"によって()()()()()()()()()()()()()()()と考えれば合点が行く。

 

 

(成る程、どうなってるのか全然分からん)

 

 

 ただし、本人はあまり理解していないらしい。そんなのもつかの間、天倉は槍を逆手に持ちこちらに向けて投げの構えを取る。

 

 

『ViolentBreak』

 

「おおおおおおおおッ!!」

 

「ッ!」

 

 

 咄嗟に緑谷は横に飛び退く。すると投げつけた槍は木に深々と突き刺さる。そして再び天倉はネコのように腰を落とした体勢となる。

 

 

「ここからは俺は……一切手加減しないつもりだ!」

 

「……ッ!」

 

「アアアアァァァァァアアアッッ!!!」

 

 

 叫びながら天倉は四足歩行の状態で駆けてくる。肉食動物が獲物を仕留めるが如く飛び込んでくる天倉に緑谷はスライディングの要領で天倉の真下を通り回避する。

 

しかし、予測していたのか天倉はすぐさま身体を捻りつつ脚に力を込め緑谷に襲い掛かる。

 

 

「ッ!SMASH!!」

 

 

 咄嗟に緑谷は拳を突き出すが、それを空中で身体を捻り回避を行い、同時に緑谷の肩に爪を立てながら投げ飛ばされる。そのまま投げ出されると背中を木に打ち付けられ肺の中の空気が一気に吐き出される。

 

 

「がっ!?」

 

「う゛ッゥゥゥゥぅぅ……ァァァァァアアアッ!!」

 

(防御……いや、回避!)

 

 

 天倉が腕を振りかぶる瞬間を見た緑谷は防御ではなく回避を選択。木を背後にした状態で屈み、その場から飛び退く。

すると、バキャリと音を立てながら天倉の腕にある刃状のヒレが深々と木に食い込んでいた。

 

 

「威力やばッ──!」

 

「まだだッ!」

 

 

 そのまま腕に力を込め、木の幹を裂きながら緑谷に向けて刃を振り抜いた。緑谷は咄嗟にグローブでガードを行うと同時に凄まじい衝撃が襲い掛かった。

 

 

「〜〜〜〜〜ッ!腕は……大丈b……⁉︎」

 

 

 結果として手は痺れたものの怪我はなかった。しかしコスチュームのグローブは手の甲に該当する部分が大きく抉れ、無残な姿と変わり果ててしまった。

 

 しかし、そんなショックを受けた緑谷を見逃す程天倉は優しくはなかった。再び天倉は腕を振りかぶり攻撃を行ってくる。それを跳躍して回避を行う。

すると彼の後ろにあった木はメキリと嫌な音を立てながら倒れる。あまりの威力に緑谷は冷や汗を掻く。

 

 

(信じられないけど、これが天倉君本来の戦い方なのか!)

 

(僕やかっちゃんとは違う。本能のままに暴れるように闘うファイティングスタイル!それに加えて!)

 

 

「おおおおおおおッ!!!」

 

 

(彼の触手による攻撃で懐に入れない!捕まれば威力の高い技を決められる!)

 

 

「そこだッ!!」

 

 

手から生える触手を掴み思い切り引っ張る。

 

 

「うぁッ───!?」

 

 

緑谷が天倉に向かって引き寄せられる。

 

 

「後ろにあった木が!?」

 

 

 先程、刃状のヒレが突き刺さり脆くなった木を触手で掴み引き寄せる事によって天倉と木の間に位置する緑谷は木に巻き込まれる形で引き寄せられたのだ。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

当たる寸前の所で身を翻す事によってラリアットを躱す。

 

(イレイザーヘッドの技を使うのか!)

 

 

「今のはラリアットじゃない……バッファ◯ーハンマーだ」

 

(やっぱり5%ぐらいじゃ駄目だ……なら、ギリギリ片腕だけでも20…いや30%で……!)

 

「……バッファ◯ーハンマー知らないのかなぁ

 

 

 

 すると緑谷は周囲の木々を高速で飛び移り錯乱を行いつつ、正面から拳を振りかぶる。しかし視覚、聴覚が優れる天倉にとって正面からの攻撃を防ぐのは容易だろう。すぐさま腕をクロスしガードの体勢に入る。

 

 

「SMASH!」

 

「!?」

 

 

 しかし緑谷は拳を天倉ではなく、地面を殴りつけ砂塵を巻き上げ視界を遮る事に成功すると瞬時に後方へ移動を行う。正面からではマトモに回避される。それならば、不意を付き一撃を喰らわすしかないだろう。

 

 

「そこd「後ろからだよねッ!」

 

「ッ!?」

 

 

 瞬間、天倉は身を屈め拳を躱すと同時に緑谷の脚をおもむろに掴んだのだ。

 

 

「緑谷君って頭脳派だから背後を狙うと思ってたよ!!」

 

「読んでたのか!?」

 

 

 驚愕する緑谷に一撃を与えようと天倉はとある技の体勢に入る。緑谷の両脚を自分の首を挟み込むように持ち上げ、そのまま軽く後側に身体を反らし始める。

 

 

「とりあえず……首は抑えておいた方がいいよ」

 

「えっ……えっ?」

 

 

 困惑する緑谷を差し置いてそのまま天倉は重力に従い上半身を前方へ落とした。

 

 

「セイハァァァァァァァァアアアアアッッ!!!」

 

「ちょっ待っ────ぶ」

 

 

 【パワーボム】

 

背中を大きく反らした反動により相手を持ち上げた後、地面に叩きつける技であり多くの場合そのまま抑え込みに派生するが、今回天倉が使ったのはホイップ式と言われ、派生せずにそのまま投げっぱなしにするものだ。

 

 しかしパワーボムと言うよりは思い切り地面に叩きつけたと言った方が正しいだろう。そんは緑谷は背中を叩きつけられた衝撃により動けなくなってしまう。

 

 

「よし……あれ?」

 

「う、ぐぐぐぐ……ッ!」

 

 

……が、まだ諦める事は無かった。三角絞めの要領で脚を組み首を絞め始める。

 

 

「(脚の力を強めて……!このまま落とすつもりか!)超変身ッ!」

 

 

 それに対し天倉はパワータイプである極熱筋肉形態に変身を行い、緑谷を引き剥がそうと試みる。痛みの所為か極熱筋肉のパワーにより次第に脚が首元を離れていく。

 

 

(駄目だ……ッ!引き剥がされる!捕らえなきゃ……このまま捕らえないと………!()()()()()()()()!!!)

 

「無駄な事を、今楽にしてやる!」

 

 

 そう言いながら天倉は更に力を込めると、緑谷の脚は完全に首元から引き剥がす事に成功した。後はすぐ側に置いておいた捕縛用テープで緑谷を確保すれば彼の勝ちとなる。

 

 

「これで────ッ!!?」

 

 

刹那、緑谷の腕から"黒いモノ"が伸びる。

 

 

「首に黒いのが巻き付いて……ッ⁉︎おおおおおおおおおおおおおおおッ⁉︎なんだ……ッ!この力……ッ⁉︎極熱筋肉のパワーでも千切る事が出来ないのか……ッ⁉︎」

 

 

 万力のように徐々に()()()()()()()()()は天倉の首を絞め上げていく。それに加えて極熱筋肉形態の時間制限によって元のフォームに戻ってしまう。

 

 

「う……ぐ………ッッ!?緑谷……君ッ!」

 

「───ッ」

 

(聴こえてない……⁉︎まさか、個性の暴走か!)

 

 

 天倉は首元の黒いナニカを片手で千切ろうとしつつ、もう片方の手でレジスターのスイッチを入れる。

 

 

『Over Flow━━Danger‼︎』

 

 

瞬間、音声と共に所々の血管が浮き上がり筋肉が膨張し始める。

 

 

「ウォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 本来レジスターは予備バッテリーとしての役割を果たす……が、天倉が扱っているのはあくまで間違った使い方(ドーピング)である。レジスターから多量の栄養が身体に送られ、一時的に脳機能が麻痺。その際にリミッターが外され結果的に身体能力が向上する。

 

だがそれは同時に身体に多大な負荷をかける事になり必要以上の出力を放ち、自身の細胞を破壊してしまう事になる。

 

 

「ぎ………ッ!!おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 

雄叫びと共に首元の黒いナニカは天倉によって引き千切られた。

 

 

「ハァ…ハァ……なんだ……あれ……」

 

 

「……っと、緑谷君!」

 

「───えっ⁉︎あ、天倉君?」

 

「大丈夫?なんか、腕からヒジキみたいなサムシングが生えてたよ?」

 

「ヒジキみたいなサムシング!?」

 

 

 天倉のダサいボキャブラリーに唖然としながらも緑谷は先程の現象について思考に没頭し始める。

 

 

(……さっき天倉君を捕まえるって強く思ったら……でも、一体なんなんださっきのアレって?)

 

 

 緑谷の"個性"は彼が知る限りではあくまで身体能力を強化する憧れの人から受け継いだ力であり、その憧れの人も黒いナニカを使う事は無かった筈だろう。

 

 

(……駄目だ、さっきまでの記憶が曖昧だ)

 

 

 深く考えようとするが先程まで無意識だったのか、どう使用したのか検討もつかない上、戦闘による衝撃で頭が混乱しあまり覚えてない事に苛立ちを覚える。これについてはオールマイトに聞いてみようと考えていると背後から声をかけられる。

 

 

「と、言うわけで捕縛させてもらうね」

 

「え?って、わぁッ!!?」

 

 

 すると片脚に触手が巻き付き宙吊りにされてしまう。彼の目の前にはテープを持った天倉が一歩ずつ近付いて来ると言う、どう見ても悪役のソレにしか見えないシチュエーションにしか見えない。

 

 

「ごめんね、これサバイバルだから───!?」

 

 

 天倉は何かを察知し、その場から飛び退くと先程まで自分がいた場所が凍結したのだ。

 

 

「この"個性"は……!」

 

「デクくーん!」

 

 

 天倉が視線を向けた先には麗日達に加え轟率いる尾白、葉隠、口田のチームが居た。

 

 

「やば」

 

「悪いな、天倉。お前は強ェが……遠距離飽和攻撃には対処しきれねぇだろ」

 

 

 そう呟くと轟は右手を向け、氷結を使おうとする。それに対抗し天倉は炎で相殺しようと形態を変化させようとする。

 

 

「天倉、疲れ切ってる今の状態じゃ極熱筋肉は数秒も持たないだろ」

 

「う」

 

「それにな、どっちみち緑谷もろとも凍らすつもりだ。後で炎を使って戻せばいいしな」

 

「「そんなっ⁉︎」」

 

 

 無慈悲な宣告にショックを受ける2人。そんな天倉は如何にしてこの窮地を抜け出そうとするか思考に没頭する。

……すると、葉隠が「あ」と呟き空に向かって指を指す。

 

 

「ねーねー、なんかミサイルが落ちてくるよ」

 

「は?」

 

 

──カッ

 

 

 瞬間、緑谷達の目の前に落ちて来たミサイルによって辺りが眩い光と凄まじい音によって支配される。

 

 

「緑谷君ーーーーッ!?」

 

「天倉ーーーーッ!?」

 

 

 麗日と拳藤の悲痛の叫びがミサイルの轟音によって掻き消される中、緑谷は一瞬の不意を付き皆の元に駆け出した。

 

 

「うぅ……!大丈夫⁉︎」

 

「うん大丈夫。目がチカチカするだけ……」

 

「皆……大丈夫みたいね」

 

 

 しばらくして視力と聴力が回復していく中、拳藤が耳を抑えつつもとある箇所について指摘する。

 

 

「そう言えば……アレどうするの?」

 

 

 彼女が指をさした方向には口から(口が何処にあるか良く分からない)泡を吹きながらビクンビクンと痙攣する見るからにやばい状態の天倉が横たわっていた。

 

 

「「「天倉ァ!?」」」

 

「強力な光と音にやられたんだ」

 

「うわぁ…あれはやばい」

 

「……ともかく、コイツはどうする?」

 

(……アレ?思った以上にA組って冷静に対処してるなぁ)

 

 

 皆のリアクションに拳藤は内心驚きを隠せずにいたが、コレはあくまで吐血するのが芸となりつつある天倉なら大丈夫なんだろうなぁと皆が思っているだけである。

 

そんな彼等を関心している拳藤は遠くに見える異様な景色に疑問を持ち始める。

 

 

「あれ……なんだろう?あの煙……」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 目を覚ますと先程とは違った岩場のフィールドに俺達は居た。目と耳が少し痛むが、まぁ問題無いだろう。何故こんな事になったのか話を聞くと、謎の煙が森を包んでいる為一時的に避難をしているらしい。よく見るとB組の何人かが居る。

 

そんな俺達の元に見覚えのある2人がこちらに向かって駆けて来た。障子君と天龍さんだ。

 

 

「大丈夫か!緑谷!」

 

「障子君!……と、天龍さん⁉︎」

 

 

 緑谷はやや驚いたように声を出す。勇学園の生徒が居た所為なのだろうか、いや違う。驚いた理由としては障子君が天龍さんの口元を押さえてながら連れて来たからだろう。その光景はどう見ても犯罪のソレにしか見えなかった。

……うん、アウト。

 

 

「障子君。何か弁明は?」

 

「誤解だ!」

 

「楽になりなよ……分かってるさ、そんな見た目で蔑まれるのは軽いもんだからさ……」

 

「違えよ!お前は何考えてんだ!」

 

 

 障子君と天龍さんが否定の意思を見せる。どうやら障子君にはその気が無かったようなので俺は安堵する。

このクラスに犯罪者が現れなくて良かった……。

 

 

「ナイス障子!」

 

「オッパイ要員の補充お疲れ!」

 

 

あ、駄目だ。犯罪者予備軍がこのクラスに1人いるぞ。

 

 

「つーか、ヤバイな……藤見のやつ、個性を使いやがった!」

 

「藤見君って、爆豪君と仲が悪かった…」

 

 

 爆豪君みたいな不良キャラが印象に残っている為、すぐに誰だか分かった。すると森の中から何人かがこちらに向かって歩いて来る。

皆、無事のようで安心していたが、次の光景ですぐに希望は絶望によって染め上げられた。

 

 青白い肌に、ノロノロとした動き。そして「あ〜〜〜」と言う叫びコレはまさしく……!

 

 

 

「スクリーm「「ゾンビだーーー!?」」……あれ?」

 

 

 どうやらスクリームじゃなかったようだ。後で聞いた話だがスクリームはお化けでは無くジェイソンみたく殺人鬼と言うのが衝撃的だった。

 

 

「やっぱりゾンビウイルスを使いやがった!」

 

「フハハハハハ!!!どうだ俺の“個性”は!」

 

 

 驚愕に満ちた俺達の前にこの光景の元凶である藤見君が現れる。そんな彼に天龍さんが食いつく。

 

 

「おい!流石に危ねーぞ!俺達まで巻き添え食らったらどうすんだよ!」

 

「何言ってんだコレはサバイバル訓練だ。最終的に生き残りゃ勝ちなんだ!雄英なんぞ大した事────

 

 

 そんな彼だが、背後から何者かが近づいて来るのに気付いてない様子だった。そんな光景に俺は思わず叫んでしまう。

 

 

「志村ーー…じゃなかった、藤見ー!後ろ後ろ!」

 

「あ?何言って……ギャァッ!?」

 

 

 そう、藤見君はゾンビ化した爆豪君の謎の執念によって噛み付かれそのままダウンしてしまったのだった。その光景に俺を含めた皆は唖然とする。

 

しばらくして藤見君は起き上がり───

 

 

「あ〜〜〜〜〜〜……」

 

 

ゾンビが一体出来上がった。

 

 

「すげえな雄英、あんな執念見た事ねぇぞ」

 

「あー、いや爆豪君だから仕方ないと言うか……あれ?」

 

 

 待てよ、そう言えば藤見君のゾンビウイルスってどうやれば解除されるんだ?……とりあえず天龍さんなら何か知ってるかな?

 

 

「ところで、ゾンビ化っていつになったら元に戻るの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あ、いや……いつもは藤見の奴が個性解除してたからなぁ……さっぱりわかんねぇ」

 

 

そんな彼女の言葉と共に

 

 

「ギャァァアアアア」

 

「助け……ヒィィィィイイイイイっ!」

 

「ケローーーー!!」

 

「梅雨ちゃ……キャーーーー!?」

 

「やめて!助けて!おねg……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

阿鼻叫喚と共にゾンビの数は増えて行く。

結論、絶対絶命大ピンチ。

 

 

「とりあえず、ここを離れよう!」

 

「うん!……って、囲まれてる!?」

 

 

 気が付けば周りにはゾンビの群れで囲まれていた。轟君は氷結で足止めを行おうとするが、ゾンビウイルスによってパワーアップした皆の力は氷を簡単に砕くほど力を増していた。

 

 

「映画と同じだ……!力が増している!」

 

「ゾンビって力増すんだ」

 

「どうしよう!皆なお肉を食べられちゃうよ!」

 

「ここでカニバリズムの危機が!?」

 

 

何人かがパニックに陥る中、天龍さんが前に出る。

 

 

「全員離れてろ!ここを吹っ飛ばす!」

 

 

 すると彼女の背中に砲台を積んだバックパックが現れる。砲台はゾンビ達の足元に狙いを定め、弾が放たれる。

すると轟音と共にゾンビ達の岩で出来た足場が崩れて行き、道が切り開かれる。

 

 

「戦艦⁉︎」

 

「応とも!俺の"個性"【軽巡洋艦】の火力を甘く見んなよ!」

 

 

 そう言いながら彼女はこちらに向かってムフーとドヤ顔を決める。

……コレって褒めると絶対調子に乗り、後々足元を掬われそうな展開が待ち受けていると思っているのは俺だけだろうか?

そんな事を考えながら崩れた岩場を跳びながら渡って行き、逃げ始める。

 

 

「えっ、ちょっと!わぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

「葉隠さん!?」

 

「蛙吹さんの舌か!」

 

 

 リッカーに襲われるプレイヤーの如く葉隠さんはズルズルとゾンビの群れに引き寄せられる。そんな事させるか!

 

 

「葉隠さん!この触手に掴まって!」

 

「でかした!」

 

 

 触手で葉隠さんの体掴むと、蛙吹さんに負けないようにこちら側に引っ張る。

 

 

「待ってて!今助けるから!」

 

「うん、ありがt──いだだだだだだだ!?待って!千切れる!体が真っ二つに千切れる!?」

 

「天倉君!流石にそれはダメ!」

 

「いだだだだだ!本気でホラー映画のグロいワンシーンになるから離してェ!」

 

「えっ、でも葉隠さんはそれで良いの⁉︎」

 

「うん……もう、楽になりたいから……ごめんね皆……天倉君、触手の力を緩めて。できれば……早めに(懇願」

 

「……分かった」

 

 

 俺がそう言うと表情は分からないが、不思議と彼女の安堵の様子だけは伝わった。そのまま触手の力を緩めると、彼女はゾンビの群れに向かって姿を消してしまった。

 

 

「葉隠さん………」

 

「嫌な……事件だったね」

 

「…………」

 

 

 その場の全員が歯を食いしばり、自分達の無力さを実感する。

……だが、彼女の言葉で俺は覚悟を決めた。

 

 

──守護(まも)らねば。

 

──緑谷君も天龍さんも轟君でさえも……

 

──否、オールマイトでさえも俺が守護(まも)らねばならぬ。

 

 

 

俺は皆の前に出るとゾンビ達に向かって構える。

 

 

「俺が時間を稼ぐ!今の内に皆は逃げ──「天倉は駄目だ!」

 

 

瞬間、轟君が食い気味に叫ぶ。

………今、なんと?

 

 

「え?なんで?」

 

「天倉がゾンビ化したらどうなる?」

 

「えっ……あっ(察し)」

 

「タイラント級のクリーチャーが生まれる!?」

 

「えっ」

 

「それどころか、G的なウイルスを作る可能性も…!」

 

「えっ」

 

「そうなったら本格的にパンデミックが……⁉︎」

 

 

 すると、皆は俺を囲むようにして陣を張り始める。そして俺に向かって皆はサムズアップをする。

 

 

「大丈夫、お前()()()絶対にゾンビにさせねぇよ」

 

「そうそう、アンタは()()()()()()()だからね」

 

「絶対に天倉だけは死守するぞ!天倉が攻撃されたら死ぬと思え!」

 

「「「「「「「応っ!!」」」」」」

 

 

 俺と天龍さんを除く全員の心が一致した瞬間であった。その異様な光景に天龍さんは俺の肩に手を乗せる。

 

 

「なぁ、元気だせよ」

 

「やめて天龍さん。逆に泣きたくなるからソレ」

 

 

皆は『俺への心配<自分達に向けられる危険性』と言う構図で俺を守る形になっている為、とても複雑な気分だった。

 

 

そんな俺だったが途端に身体に力が入らなくなり、その場で崩れてしまう。

 

 

「あれ?」

 

「あ」

 

「あ」

 

「え」

 

 

 すると、俺の脚に蛙吹さんの舌が絡みつき俺の身体がズルズルと引き摺られていくのが分かる。

 

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!? なんで俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!?」

 

「天倉!さっきのは万偶数の【弛緩】か! つーかピンポイントで弛緩出来んのかよ!?」

 

「ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!! させてたまるかぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

 近くにあった木に爪を立て、その場に何とか留まる。その様子を驚いたように皆が見る。

 

 

「アイツ何で全身の筋肉が弛緩されてんのに流暢に喋ったり動いたりしてんだよ⁉︎」

 

「うるせー!! こちとら職場先で神経毒とか盛られたりしたから多分そう言うのには慣れたんだよ!!(半ギレ」

 

「「「「お前の職場先はどうなってんだよ!!」」」」

 

 

 だが、不思議パワーで何とか木に爪を立てたもののあくまで弛緩が進行するのを遅くしてるらしく指先の力も次第に抜けていくのを感じる。意地でもゾンビにならない為に俺は触手を近くの人に目掛けて伸ばした。

 

 

「うおおおおおおお! 助けて耳郎さぁん!!!」

 

「何で私!? って、触手を絡みつかせるなぁぁぁぁあああああ!!!」

 

「うぉぉぉおおおおおっ!!! 天倉ァ! ナイスだ! だけど何で麗日や天龍、拳藤にしなかったんだ!」

 

「それは遠回しに私の胸が小さいって言いたいのか峰田ァ!!!」

 

 

 耳郎さんはそう言いながら俺の触手を引き剥がそうと力を入れ始めた!? やめて! ただでさえ弛緩で力が入り難いってのに!

 

 

「待って耳郎さん! シニタクナイ! シニタクナイ! シニタクナーイ!!」

 

「分かった! 分かったから! 一旦落ち着いて触手を離してェ!」

 

「それじゃあ死ぬじゃん!!」

 

「大丈夫! 死なない! 死なないから!」

 

「う、うん。分かった!」パッ

 

「えっ」

 

「あっ」

 

 

 

 時が止まったような感覚が辺りを支配する。俺もパニックに陥っていた為か耳郎さんに絡み付かせていた触手を離してしまった。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

しばしの無言。耳郎さんはそのまま俺に背を向けて走り出した

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!? ちょっとぉぉぉぉおお! 見捨てないでえええええええええ!!」

 

「天倉! 今すぐ助けn「駄目だよ轟君! ミイラ取りがミイラになるよ! 轟君までゾンビにされちゃうよ!」うるせぇッ! 親友の危機に黙っていられるか!」

 

「轟君!? そんなキャラだったっけ!?」

 

「ごめん天倉! お前の意思は無駄にしないから!」

 

「皆ーーーーー!!!」

 

 

 

 ズルズルと引き摺られ、視線を後方に向けるとゾンビの大群が料理を楽しみにしているかの如く迫って来る。

すると、あまりの恐怖に俺の精神は色々とヤバイ状態に陥っていたのか、様々な感情が爆発するかのように口が開く。

 

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええッ! ふざけるな! ふざけるな馬鹿野郎ッ! 許さん……断じて貴様らを許さんッ! 生存に憑かれ、ヒーローの誇りを貶めた亡者ども……その夢を我が血で穢すがいい! 訓練に呪いあれ! その願望に災いあれ! いつか地獄の釜に落ちながら、この天倉孫治郎の怒りを思い出せェェェェェエエエエエッ!」

 

 

 

 

 直後、俺の意識は深い闇へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「耳郎ちゃん」

 

「耳郎」

 

「耳郎さん…」

 

「耳郎、お前なぁ………」

 

「いや、ホント、その……すみませんでした……コレが終わった後、天倉に謝ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 しばらくして辿り着いたのは洞窟のある岩場だった。道中、何人かが梅雨ちゃんと万偶数の弛緩からの舌による捕縛コンボによって生存者が減り、「私が来たァ」と吐血しながら叫ぶガリガリゾンビ(オールマイト)の登場もあったが、轟の氷結によって洞窟の出入り口を即興の氷壁で塞ぐ事によって一時の安息を得る。

 

 

「今、生き残ってんのは誰だ?」

 

「えーと、天龍さんに、僕(緑谷)、麗日さん、芦戸さん、轟君、障子君、峰田君、耳郎さん、上鳴君。そしてB組の拳藤さんに角取さん、小大さんに…吹出君だね」

 

「結構、生き残ったな。探索能力の高い個性持ちが3人も居て助かった」

 

「疲れたー!」

 

「一息つける……」

 

「でもなぁ…此処がいつまで保つか分かんねぇぞ?」

 

「とにかく他の連中のゾンビ化が解けるまで、ゾンビにならずに逃げ続けるしかないって事か」

 

「少なくともガスは晴れてたから、僕達がゾンビになるとすればゾンビに噛まれた時だけだけど……問題は何時まで続くかって事だよね」

 

「でも、本当に危なくなったら、先生たちが止めてくれるよね?」

 

「うんうんうん!」

 

 

 緑谷達の考察に先生が助けてくれると言う希望を持つが、頼りになる先生の1人であるオールマイトは現在、動けない状態にある事を緑谷は知っている為、とても複雑だ。

 

 

「そう言えば、デク君。ゾンビ映画の主人公は、どんなやり方でピンチを切り抜けてきたん?」

 

「それが、ゾンビ映画って大体がバッドエンドで……」

 

「そんな!?」

 

「ハッ、くだらないな」

 

 

 緑谷のゾンビ映画の結末に天龍は一蹴する。ニヤリと笑みを浮かべ彼女は自慢気に話す。

 

 

「そんな映画如きで怯えてんじゃねーよ。いざとなりゃ弾をぶち込んででもゾンビ共をぶっ飛ばしてやるよ」

 

「てんりゅー!」

 

「頼もしいよ!」

 

 

 フフンと満足気に笑う天龍。男らしさを見せる彼女に女性陣はキャッキャと盛り上がるが、轟がとある発言を行う。

 

 

「ゾンビって、大抵は弾を喰らっても平気じゃねぇのか」

 

 

ピタリと天龍の動きが止まる。

 

 

「な、何言ってんだよ。い、いざとなりゃオレのコレ(刀)でぶっ飛ばして……」

 

「何でわざわざ近距離に持ち込むんだ?それだったら遠距離攻撃をした方だ良いだろ」

 

「った、たりめーだろ! オレならゾンビ共を蹴散らして……」

 

「そもそも、弾数考えずにバカスカ撃つなよ。タダでさえ音がうるさいんだ、ゾンビ共が集まるだろうが。それにこんな岩場で使えば相手の足場どころか俺達まで被害を受けるだろ、それくらい考えろよ」

 

 

 轟によるダメ出しラッシュにより精神的にズタボロにされていく天龍。だが轟には故意があってダメ出ししているワケではないのだろう………多分。

 

 

「う、うるせぇよぉ……お、オレにそんな事言われても……しょうがねぇだろぉ………」

 

「お、おい幾ら何でも泣く事は……」

 

「あー! 轟泣かせやがった!」

 

「いっけねーんだ! 女子泣かしちゃ駄目なんだぜ!」

 

「せんせーに言いつけたろ!」

 

「ほら、てんりゅー。泣かないで?お菓子あるけど食べる?」

 

「うん……食べる」

 

「あー! 静かにして! 今、外の状況を探ってるから!」

 

 

(やばい、ツッコミ役の天倉君が居なくなった途端に無法地帯に……!)

 

 

 今になって天倉の重要性に気付く緑谷。ストッパーにもなるツッコミ役が居ないとこうも混沌とした状況になるとは思わないだろう。大切なモノは失って気付くとはこう言った状態を言うのだろうか。

 

そんな彼等だったが、外の様子を探っている耳郎が反応を示した。

 

 

「待って! コッチに誰か来てる! 数は……1人!」

 

「チッ、仲間を呼ばれると厄介だ。外に出て捕まえて置くか?」

 

「いや待って! 天龍! 泣いてる所悪いけど、アンタの個性で外の様子って探れたよね!」

 

「ぐすっ……あぁ、レーダーやソナーでいける……」

 

「悪いんだけどさ、外の奴がどうしても様子がおかしいから索敵お願いできない?」

 

「……あぁ」

 

 

 涙を拭い目を瞑る天龍。彼女はレーダーにより氷壁越しに電波を送り反射波を感知し相手の居場所、様子を探ることが可能だ。

目を瞑ったまま彼女は口を開く。

 

 

「確かに外に誰か居るが……それがどうした?」

 

「そっちから見て、移動速度はどんな感じ?」

 

「どんな感じって……あれ? なんかゾンビ共と比べて少し速いなコイツ」

 

「うん、きっと生存者がコッチに来ている」

 

「お! それならさっさと氷の壁を溶かしちまえよ轟!」

 

「別に構わねぇが、念の為に用心しておけ」

 

 

 そう呟きながら轟は左手を氷壁につけ、炎を発動。手を付けた箇所からみるみる内に氷壁は薄くなっていき外の様子が明らかになって行く。

 

 

「………っ!?」

 

 

 轟は外の様子を見て驚愕を露わにする。遅れた様子で洞窟内の全員も外を見ると轟と同じ反応を示す。

それも仕方のない事だろう。何故なら、ゾンビになっていた筈の天倉が目の前に立っていたからだ。

 

 

「天倉君!?」

 

「い、いや! ゾンビか!」

 

「落ち着け、よく見ろ。個性を使ってない状態だが顔色の様子を見るとゾンビ化していない」

 

 

 そう言われて観察すると目の前の天倉は肌の色はゾンビのように蒼白いワケでは無く、健康的な明るい色でありゾンビ特有?の「あ〜〜〜〜〜〜」という声も発していない。

 

 

「無事で良かった天倉君!」

 

「そうだな!……ほら、耳郎謝れって」

 

「う、うん……その、ごめんなさい」

 

 

 頭を下げる彼女に天倉はニッコリと微笑む。どうやら気にしていないようだ。そんな彼を轟は洞窟内に招きこむ。

 

 

「とにかく、無事で何よりだ。お前も早く洞窟ん中に────

 

 

頭が高い

 

 

「……は?」

 

 

 

 瞬間、轟の頭は掴まれ地面へと叩きつけられる。

 

 

「がっ……!?」

 

「轟!?」

 

 

 そのまま地に伏した轟を天倉は頭を踏み付ける。今までの天倉を知っている皆にとってその光景は異質としか呼べないモノだった。

 

 

「あ、天倉君!? 一体、なにを!」

 

 

緑谷の言葉に天倉はニィと口端を吊り上げる。

 

 

「随分楽しそうじゃないか轟ィ……。支配者(ゲームマスター)である私を差し置いてェ!」

 

 

「お、おい! 様子が明らかにおかしいぞアレ!」

 

「て、テメェ! 天倉の偽モンか!?」

 

「偽者……? 私は私だ。それ以外の何者でも無い」

 

 

 彼の言動は彼等の知る天倉とは大きくかけ離れたモノだ。しかし、姿形は何処からどう見ても天倉本人である。その場の全員が困惑する中、緑谷は戦闘態勢を取る。

 

 

「どうしたの天倉君! 君は本当に天倉君なのか!」

 

 

 そんな彼の悲痛の叫びに先程まで笑っていた天倉の表情が一変。凡ゆるモノを見下すような冷たい眼差しへと変わる。

 

 

「違う、違うなぁ……! 天倉孫治郎と言う名はもう捨てた……」

 

 

 

 

 

「今の私はァ……

 

 

 

 

 

 

 

 

シン・天倉孫治郎だァ!

 

 

 






 ヒロアカ最新話で緑谷が凄い事になってたのでサービスで出してみた。緑谷君の腕から出てきたヒジキみたいなサムシング。一体何なのだろうか……(すっとぼけ)

 何か色々と叩かれてる気がするけど、終盤チートのインフレが当たり前のジャンプ漫画なら仕方ないと思う。
そう考えると天倉が緑谷を越えられそうに無いんだよぁ。


すげぇよデクは……。



〜〜キャラ紹介〜〜


【天龍】

"個性"『軽巡洋艦』
軽巡洋艦っぽい事が出来る。魚雷を撃つ(投げる)事が出来るし、レーダーで探知も可能。
意外に汎用性が高く強い"個性"である。

眼帯の可愛い方。実は番外編にも登場したキャラクター。 フフ怖。
小学校では天倉と知り合い。もっと天龍イジメをしたかったが本編なので流石に自重。番外編は楽しみだなぁ(ゲス顔)

天龍可愛いよ天龍。




次回、ゾンビのやべーやつが暴れます。


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51話 勇学園後編 五等分のアマゾン


〜〜前回の天倉君の体内〜〜


ゾンビウイルス「ぐへへ、この身体を乗っ取ってやるぅ!」

天倉細胞A「抗原発見!死ねぇ雑菌がァ!!」

天倉細胞B〜Z『死ねぇ!雑菌共ォ!』

ゾンビウイルス×全員「ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

天倉細胞C「この死骸どうするよ」

天倉細胞F「食ってみるか」

天倉細胞M「あ、以外とうめぇ」



〜〜数分後〜〜




『バイオハザード状態!』



((((;゚Д゚)))))))
 ↑
通りすがりの赤血球


ゾンビウイルスには勝てなかったよ……



 

 突如として変貌を遂げた天倉孫治郎は自らを『シン・天倉孫治郎』と名乗り、その場の全員に向け謎のポーズを見せる。

 

 

「し、『新』天倉孫治郎?」

 

「シン・天倉孫治郎だァ!」

 

「『真』天倉孫治郎?」

 

「シン・天倉孫治郎だ!二度と間違えるなクソがァ!!」

 

 

 苛立ちを見せた天倉は足元で地に伏した轟を蹴りつけ、緑谷達の方向へ吹き飛ばす。

 

 

「がぁっ!?」

 

「うわぁっ!轟君!」

 

「……もしかして!ゾンビウイルスの所為⁉︎」

 

「フゥン!ゾンビウイルスなどぉ!所詮私の栄養素に過ぎない……ゾンビウイルスは寧ろ、私が取り込んでやったのさァ!」

 

 

 麗日は先程から様子のおかしい天倉がウイルスによるものだと推測する。いや、推測と言うよりは心当たりがソレしか無い方が正確だ。

いつもどおり、不思議なことが起こった案件なのだろう。

いつもと違う様子の天倉はそれについて丁寧に説明し始める。

 

 

「ヴェーハハハハハハハハハッ!!もはや今の私は天倉孫治郎ではなァい!高濃度のゾンビウイルスによって脳が活性化し、人格が変貌した真なる天倉孫治郎なのだからなァ!!」

 

「いや、それ脳までウイルスで犯されてんじゃん!?」

 

「どう見てもヤバいじゃんかやだー!」

 

「感謝するぞ耳郎響香ァ……!」

 

「……えっ、私?」

 

 

突如として話を振られた耳郎は困惑の意を見せる。

 

 

「貴様に対する怒りによって、今まで抑えられていた傲慢な(プライドの高い)私を放つ事が出来たのだァ!」

 

「自分で傲慢って言う⁉︎」

 

「神である私は傲慢するだけの価値があると言う事だァ…!」

 

 

 ヤバい。何がヤバいかと言うと天倉がである。今までまともだった筈の彼が明確に敵意を示し、支離滅裂な発言を行う。

 

 

「君達は最高のモルモットだァ! 君達の人生はすべて、私の、この手の上でっ…転がされているんだよォ! だぁ―――ははははははっはーはははは! 」

 

 

ただ分かるのは───こちらを()()()だと言う事だ。

 

 

「ブゥン!!」

 

 

いつの間にか手に納めていたベルト(コスチュームアイテム)を構え、謎の掛け声と共に腰に巻くと緑から紫へノイズがかかったように結晶部分が変化する。

 

 

「変ェン身ィィィン……!」

 

 

『evol─u──━━si、Σ』

 

 

 一瞬ノイズがかかったと思うと、聞き慣れない音声と共に紫の炎がブワリと身体を覆った。あまりの熱量にその場の全員は思わず腕を前にする。

 

……そして、熱波が収まった頃には天倉の姿は入学した頃の姿を鈍い銀色で塗りつぶしたような異形の怪物へと変貌を遂げていたのだ。

 

 

「ヴァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!支配者(ゲームマスター)の前に屈服するが良いィッ!!」

 

 

 両腕を広げながら一歩ずつ向かって来る天倉。それに対しほぼ全員が戦闘体勢を取る中、1人が駆け出し巨大な拳を振り抜いた。

大砲が撃ち込まれたような音を響かせながら拳藤の個性によって巨大化した拳が天倉を洞窟の外へ大きく吹き飛ばした。

 

 

「───ハァ……ッ!面白い女だァ…臆せず神である私に手を出すかァ……」

 

「お前、ホントに天倉か?て言うか結構本気で殴っけど……無傷かよ」

 

「フン!年増女ごときのパンチに私がやられるかと思ったk───

 

 

瞬間、再び拳藤の巨拳が天倉を襲う。

 

 

「拳藤さん……って、アレ?天倉君は?」

 

「ぶっ飛ばした」

 

「吹っ飛ば……え⁉︎」

 

 

 笑顔のまま青筋を立てる拳藤に緑谷は少し恐怖を覚える。その場にいなかった緑谷は天倉が何を言ったか少し気になって仕方ない気持ちになる。

そこに轟が声を掛けてくる。

 

 

「……いや、まだみてぇだ」

 

「───言った筈だァ…!年増女ごときのパンチに私がやられるかと思うなァ!!!」

 

「絶許」

 

「拳藤さん落ち着いて!」

 

「どいて麗日!アイツ殴れない!」

 

「て言うか女子にそんな事言うなんて最低ー!」

 

「そーだ!そーだ!この女の敵!腐った死体!人で無し!」

 

「アァン?聞こえんなァ………!ハエ共の羽音が聞こえるぞ?」

 

 

 女性陣の罵倒に天倉は煽るように応える。

 

 

「なぁ、緑谷って言ったよな。お前に聞きたい事がある」

 

「えっ、あっ、ハイ!?て、天龍…さん」

 

「天倉ってよ、高校入ってから……性格ってどんな感じだったか分かるか?」

 

「それって……」

 

 

 天倉の性格の変化は異常だ。今まで体育祭やUSJで暴走する形で様子が変化した事は多々あったが、今回はそれ以上だ。

現在の彼はまるで別の人間が中に入っているような感じだ。

 

 

「俺ん時が小学生の頃な、アイツはメンタルは弱えー方だった。信じらんねー程に傲慢さとか、そういうもんは見当たんなかった。中学ん時がどうなってたか分かんないないけどな」

 

「成る程、分からん」

 

「少し黙ってろブドウ頭。俺の推測だけどな、ウイルスで脳の一部がやられちまった所為で今まで抑えてきたもんが人格を成して今、現れたんじゃねーかと俺は思うんだ」

 

「多重人格……!」

 

 

 小さい頃イジメに遭ってたと言う天倉だが恐らく、それによって人格が分裂してしまったのだろう。専門的な事は分からないが脳の一部は感情の抑制を司るモノが存在し、ウイルスによって機能しなくなってしまったのではないかと考える。

 

 

「取り敢えず、凍っておけ!」

 

「そんな氷で私を止められると思うかァ!!」

 

 

少なくとも緑谷に分かるのは今の彼は危険だと言う事だ。

妖しく不気味に輝く青紫と赤紫の瞳をギラつかせ氷に覆われた天倉は氷壁をバキバキと破壊しながら進む。

 

 

「やっぱりウイルスでパワーアップしてるんだ!」

 

「チッ……なら、炎を───!?」

 

「おい轟どうした!?」

 

 

炎を使おうとした轟はその場で膝をつく。そんな様子のおかしい彼の元に上鳴が駆けつける。

 

 

「クソ、なんだ……?目眩が……!」

 

「何を言って───う?」

 

「な……んだ?コレ……ッ」

 

「頭クラクラする……」

 

「おい!何言って────」

 

 

すると轟だけでなく、何人かが急に体調不良を訴え始めたのだ。どう見ても様子がおかしい。 少なくとも自然的なモノでは無く、人為的に引き起こされたモノだと見て分かる。

 

 

「あ……やばい。これ、本格的にヤバい」

 

「耐えて麗日!?」

 

「ここで出しちゃったらヒロインとして駄目だよ!」

 

「良い眺めだなァ……?」

 

「クソッ、コレは……幻覚作用か!」

 

 妖しく光る瞳を見ていると自然と頭が回らなくなり、視界がぼやける。身をもってソレを知った轟は相手の眼を見る事もままならない事に内心で舌打ちをする。

 

……が直後、轟は目を見開く。

いつの間にか天倉の背後に緑谷が拳を振りかぶり迫っていたのだ。

 

 

「緑谷いつの間に!?」

 

「(10%……いや!20%!レンジで卵が爆発しないよう───!)SMASH!」

 

「ぐ─────!?」

 

 

 緑谷の奇襲は見事、成功を収めた。振り抜いた拳は顔面を捉え殴られた本人も苦痛の声を上げた。緑谷自身、腕への負荷と痛みに苦痛の表情を見せるがグッと堪える。

 

 

「やっ──『ボギン!!』……た?」

 

 

 確かに緑谷の放った拳は確かに天倉の顔面を捉えた。

だが、その直後の事だ。天倉の首があらぬ方向へと折れ曲ったのだ。

そのまま後方へ転がり、止まった頃には首がブランと垂れ下がっていた。

 

 

「あ、あ、あああ!天倉ァ!?」

 

「緑谷!おま!お、おまお前ェ!?」

 

「い!いやいやいや僕だって!あぁなるとは思わなかったよ!?て言うか!早く!早くリカバリーガールに診てもらわないと!?」

 

 

 混乱に陥るクラスメイト達。クソを下水で煮込んだ性格の爆豪ならまだしも良識溢れる緑谷が大惨事を引き起こす事態はその場の全員にショックを与えるのに十分すぎる事だった。

 

……が、忘れてはならない。天倉は例え燃やされ、腹部に風穴が開こうとも余裕で復活するギャグ補正入ってんじゃないのかコイツ。と言われても仕方ないと思えるほどの不死身性を持ち、ゾンビとしての特性をも兼ね備えたシン・天倉孫治郎だと言う事を。

 

 

「その必要は無ァ……い……」

 

 

 その一言と共に、首があらぬ方向へ曲がった天倉はその場から起き上がる。そのまま自分の首を抑え『ボギン』と耳を押さえたくなるような不快な音を響かせながら天倉は首を元の位置に戻した。

 

 

「ふぅん、今の私は……不滅だぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああッッ!!!」

 

 

 触手を緑谷に向けて伸ばす。その場から離脱しようと試みるが脚を掴まれ引き寄せられてしまう。そこへ天倉の背後に麗日が駆けて来る。緑谷を助けようと手を伸ばすがそれに気付かない天倉では無かった。

 

 

「馬鹿が!背後から来るなど予想できるわ!」

 

「知ってるよ!」

 

 

 裏拳を放つが、麗日はそれに対し脚を軸に回転するように拳をいなし背後へ回るとそのまま腕を掴む。

 

 

(G(ガンヘッド)M(マーシャル)A(アーツ)!)

 

 

麗日は腕を押さえたまま地面へ叩きつけ、天倉を地に伏せ抑える事に成功する。

 

 

「───ッ!神である私の顔に……泥をつけるとはァァァァァアアアアア!「無駄だよ!」ッ!?」

 

「この技は教えてもらった中で拘束する力が強い奴!下手に動くと折れるよ!」

 

 

 そう言うと麗日は一段と腕に力を込め、警告の意を示す。例え相手がゾンビだろうとも人は関節の可動域が存在し、痛みを知る者ならば可動域以上に動かす事は不可能となっている。

 

 

「……折れてどうなる?」

 

「折れてって!そりゃ──『グギリ』───ッ!!」

 

 

 手から伝わる肉が潰れると同時に堅いものがへし折れる音。その様子に麗日は一瞬

 

 

「折れるとどうなると聴いたのだァ…私はァ……!」

 

 

ギラリと妖しく光る赤・青紫の眼に麗日は吐気を覚え、思わずブチまけそうになる。

 

 

(痛覚が───無いん!?)

 

「まずはお前からだァァァァアアアアアアアアッ!!!」

 

 

無理矢理身体を動かす天倉のパワーに麗日は対応しきれずマウントを取られてしまう。そのまま天倉の鋸の如く並ぶ鋭い歯を麗日に突き立てようと顎を大きく開ける。

 

 

「やめやがれッ!!!」

 

「天龍さッ!?」

 

 

 そこに天龍が割って入り刀で口元を抑えつつ、麗日に逃げるよう伝える。しかし天倉の顎の力は予想以上のものだったのか徐々に天龍は押されていき、地面に押し倒される形となる。

 

 

「……ッ!そんなに腹減ってんなら!コレでも食ってやがれ!!」

 

 

 天龍は背中のバックパックから細長い形状の物体を無理矢理、天倉の口の中にソレ押し込み『つっかえ棒』の要領で顎が閉じなくなる。

 

 

「全員!離れとけぇ!!!」

 

 

砲台の照準を天倉の顔面に合わせた瞬間、何をするか察知したのか近くにいた者達は天龍の言う通りに従い、その場から急いで離れる。

 

 

「爆ぜやがれ!!!」

 

 

 ズドンと言う音と共に天倉の首から上が爆発した。焦げ付く匂いと共に顔面のありとあらゆる穴から黒煙を撒き散らす。

しかし焼けた皮膚は瞬く間に治癒し始め、元の鈍い銀の体色となる。

 

 

「はぁ……、無駄だと言うのがまだ分からないかァ?」

 

「コイツ……!」

 

「配下共ォ!奴等を捕らえろ!!!!!!

 

 

 驚異の治癒能力に冷汗を流していると、彼の呼び掛けに応えるようにゾンビ達がワラワラと群がって来る。

 

 

「皆⁉︎どうして天倉君の言う事を!」

 

「あ〜〜〜〜〜〜」

 

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「……………」

 

 

 ゾンビとなった見覚えのあるクラスメイト達が蒼白な面をこちらに向け囲み始める。

 

 

「は、葉隠?本当に感染してるのかな?実は感染したフリをしてるワケじゃないよね!」

 

「口田君……!ゾンビになっても無口だ!」

 

「うわっ!?ヤオモモの身体中から大量のマトリョーシカが!?」

 

 

 彼等の変貌ぶりに戸惑いが生じ、混乱が巻き起こる。その中で上鳴が突如として喉を抑えながらその場に蹲る。

 

 

「……っ⁉︎ごほッ!うぐぇ⁉︎喉に何か入っ──ゴボッ!やばっ!息が────」

 

「うっ!これって───!?(小森の"個性"か!肺の中に胞子が……ッ!)」

 

 

 拳藤を始め、次々と体調の不良を訴え始める者が続出。ゾンビであるクラスメイト達の"個性"の影響なのだろう。すると天龍がボソリと呟く。

 

 

「………アイツ、どうやってゾンビ達を操ってるか分かるか?」

 

「……え?」

 

「静かに。……アイツは額の角から俺のレーダーみたいに電波が飛んでる」

 

 

 口元に指を立てながら小声で話し始める。天倉の掛け声と共にゾンビ達が群がる様子から、彼がゾンビを統率していると考えられる。

 

 

「つまり?」

 

「角を斬り落とせば、ひとまずゾンビ達が襲って来る事は無いだろうな」

 

「でも、どうやってやるん?」

 

 

麗日の言葉に天龍はしばらく考え込む素ぶりを見せる。

 

 

「……誰かがアイツの気を逸らすんだ。その間に俺の刀で角をぶった斬る」

 

「隙を作るって事?でも誰がそんな事を……」

 

 

 相手はゾンビウイルスをキメた頭がイッてる状態の天倉だ。そんな彼にどうコミュニケーションを取れば良いのだろうか?そんな疑問に頭を悩ませていると、彼が立ち上がった。

 

「み、峰田君…⁉︎」

 

 

 なんと、あの峰田実が隙を作る役割に志願したのだ。あの、思考の8割が煩悩で出来ていると言っても過言ではない峰田がだ。

 

 

「まぁ、見ときな……」

 

「峰田君…(大丈夫かなぁ?)」

 

「峰田……(アイツ失敗しそう)」

 

「峰田……(さて、アイツが失敗した時に作戦立てておかなきゃな……)」

 

 

 格好付ける峰田だが、過半数以上の者が失敗するんだろうなぁと予想しており期待はほぼ皆無となっている為、格好付けている彼の姿はゾンビ映画の序盤で調子に乗っている若者(最初の被害者)の如く。おお、なんと哀れな。

 

 

「おい!天倉!」

 

「シン・天倉孫治郎だァ!!!」

 

「し、シン・天倉孫治郎様ァ!どうか我々に神である貴方の慈悲を与えてはくれないでしょうか!」

 

「……ほう、慈悲とな?」

 

「は、はい!もう俺達では神である貴方に太刀打ちできません!なのでこれ以上争う事は無いと思います!」

 

「ふむ、確かに言われてみればそうだろうな……」

 

「はい!(ククク、馬鹿め天倉。お前が隙を見せた瞬間、木の棒の先にオイラのモギモギをくっつけた峰田実専用の必殺武器をお前の顔面に喰らわせてやる……!)」

 

 

 峰田の考えとしてはとにかく褒めて褒めまくって煽てる事により隙を見せた瞬間、顔面にモギモギをぶつけると言う作戦である。ハッキリ言ってこの作戦、天倉に対して有効だ。

 

 モギモギを顔面にぶつけると言うのは相手を窒息させる事になる。不死身の再生能力を持つ天倉に対し物理的な攻撃はほぼ無意味と成すが呼吸機能を停止させる峰田の考えは素晴らしいものと言えるだろう。

 

 

「成る程な……良いだろう、神である私は許してやろうではないか「隙ありッ!窒息して死ねぇ!」

 

 

 峰田専用必殺武器(自称)を天倉の顔面に目掛けて突き出す……が、寸前の所でソレは受け止められてしまう。

……彼の敗因。それは、隙があるのにわざわざ『隙ありッ!』と叫ぶ事にあった。

なんでわざわざ隙がある事を伝えてしまうのか……コレガワカラナイ。

 

 

「ただし、このゾンビ達は許すかな?」

 

 

 その一言にチラリと天倉の背後にいる無数のゾンビ達に視線を移す。この後、自分がどうなるのかはすぐに予想がついた。

……せめて自分に出来る事と言えば、ゾンビ化した後でも女の胸に飛び込む事ぐらいだ。そう考える峰田だったが、天倉からとある提案を持ち掛けられる。

 

 

「さて……峰田実。お前はどうする?神である私に忠誠を誓うか?それともこの場でゾンビの仲間入りを果たすか?ちなみにィ……今ならゾンビ共の()()()()()()()()ァ!」

 

 

刹那、峰田の脳内に電流が走る───ッ!!

 

 

「……いや、ちょっと?峰田君⁉︎」

 

「嘘だよな!オイ!嘘だよな!」

 

「いくらなんでもお前はゾンビに対して劣情を抱かないよな⁉︎」

 

 

 皆の声に対し峰田は俯いたままだ。だが、それも無意味な事だ。変態の先進国である日本の人々の性癖はもはや人外の向こう側へ行っている。

ましてや2018年秋においてゾンビを主題としたアイドルのアニメなんかも放送されてしまう始末。怖いわー、日本人怖いわー。

 

 

「……ハッハッハッ!!ならば 答えは1つ!」

 

 

モギモギ付き木の棒をへし折り、峰田は狂ったように笑う。

 

 

「あなたにィ……忠誠を誓おうぅぅぅううう!!」

 

「フッハッハッハッハァ!!今日から貴様の名前はポチだァ……!」

 

「裏切ったなァ峰田!」

 

「最低ーーー!!!」

 

「うるせーーーー!俺はまだゾンビになりたくないんだよォォ!!!」

 

(切実だ!?)

 

 

 峰田の悲痛なシャウトに驚いていると、そのまま全員はゾンビ達に組み付かれ拘束されてしまう。噛み付き仲間を増やす事を優先する筈のゾンビ達がこんな事をすると言う事は、天龍の言う通り天倉が操っているのは本当らしい。

 

 

「さて……膝まづいて命ごいをしろォ……!女ァ、今なら私のモノにしてやってもいいぞ?」

 

 

 すると、天倉は拳藤の目の前に立ち見下ろしながら上記の発言をする。どうやら最初に攻撃をした彼女の度胸を気に入ったのか、小馬鹿にしたような態度を見せる。

 

 

「──ッ誰がアンタ何かの女になってやるもんか!一生御免だよ!」

 

「そうか……ならばゾンビの一員になるがいィ!!!」

 

 そう言うと指先に力を込め始める。恐らく爪にウイルスを溜め込んでいるのだろう。確実にゾンビ化させるように徹底している事が分かる。

ウイルスを溜め終わったのか、そのまま腕を振りかぶる天倉であったが………。

 

 

「……天倉様!」

 

「シン・天倉孫治r「今だ!!!」

 

 

 瞬間、天倉の顔面に紫色の球体がへばり付いた。峰田の声に反応し振り向いた際にタイミング良く峰田が自身のモギモギを顔面に投げつけたのだ。

 

 

「峰田…お前……!?」

 

「俺さ……やっぱり触るんなら血色の良い奴が良いッッ!!」

 

「峰田ァ!やっぱりお前は峰田だなコンチクショウ!」

 

 

 それは嬉しいのか嬉しくないのかよく分からないが、そのまま上鳴と峰田は謎のサムズアップを行う。

直後、天龍は力の緩んだゾンビ達の拘束から抜け出し刀を抜く。

 

 

「ナイスだ!ブドウ頭!」

 

「ぐぅ!神の眼前を遮るとはァ!」

 

「往生しろやァ!!!」

 

 

触手を前方でクロスさせ防御の体勢に入る。

が、一閃。天龍の持つ刀は触手ごと彼の額にある角を斬り落とした。

 

すると、ゾンビ達の動きに統制が無くなりそれぞれバラバラに動き、中には明後日の方向へ足を進めるゾンビも居た。

 

 

「やった!ゾンビ達が!」

 

「……のれ」

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおのおおおおおおおおおおれえええええええええええええええええええッッッ!!!」

 

 

ブチブチと峰田の個性である球体を顔面の皮ごと剝ぐ天倉。血飛沫が舞う。顔面を手で押さえるが指の間から大量の血がボタボタと流れていく。

 

 

「ひぇぇぇええええええええ!!!スプラッタァァァァァア!!!」

 

「ハァァァァァ……ッ!お前達ィ!もうこれ以上お遊びはお終いだァ!!!」

 

 

 顔を元の状態へ再生させると、声色から分かるように憤怒の状態である天倉は両手を広げる。

 

 

「我が細胞よォ!!!自らの体積を増やし!身体を成すのだァ!!!」

 

 

 そう叫ぶと先程斬られた触手がグツグツと沸騰するかのように水泡を作る。

 

 

「ゾンビにはァ……増殖が付き物だろう?」

 

 

 そう呟くと斬り落とされた触手は形を成し、見覚えのある姿へと変貌を遂げる。

 

 

「いや……⁉︎、これ、増殖じゃなくて……!」

 

「実体のある分身っ……!」

 

 

 彼等の目の前には触手から姿を変えた天倉が5体。文字通り彼は増殖をしたのだ。

 

 

「私のスペックには及ばないが……!それなりの戦力にはなるだろう……!」

 

「ッ!炎で……!」

 

 

 何かされる前にこちらから仕掛けようと左手を前に構える轟。

だが、自身の足が誰かに掴まれた感触を覚える。嫌な予感を感じた彼は視線を足元に移すと1体の天倉が自身の足を掴んでいたのだ。

 

 

「ア、ァァアァアアア………」

 

「なっ!離せ……!」

 

 

 それに連なり、他の増殖した天倉達が轟の周りを囲むと一斉に彼を拘束し始めたのだ。

 

 

「轟君!?」

 

「そのまま爆ぜろ」

 

 

 本体である天倉の呟きと共に増殖した天倉達はブクブクと身体が膨張し始める。直後、パンパンに膨れ上がった風船が割られるかの如く増殖した天倉達が文字通り一斉に爆ぜた。

……しかし紫色の体液をぶち撒け破裂した彼等の中心に居た轟は不思議な程に無傷だった。

 

 

 

「オイ轟!無事か⁉︎」

 

「あ、あぁ……。俺の周りを凍らせて壁代わりにしてな……爆破だけは防いだ」

 

 

 組み付かれた天倉達を凍らせる事により簡易的な障壁を作る事に成功した轟。彼の無事を安堵するが、様子の異変に気付き始める。

 

 

「なぁ、轟?どうしたんだお前」

 

「悪ィ……やられた」

 

 

 目元を抑える轟。更に首元を掻き始めその場で膝から崩れ落ちる。

 

 

「くそっ!目が……!身体中も痒い。それに……地面が揺れて……!」

 

「ウイルス……いや!毒ガスを……ばら撒いた⁉︎」

 

 

 増殖した彼等は文字通り爆弾の役割だった。爆破によるダメージでは無く、爆破により生じる毒の影響で状態異常に陥らせるのが天倉の目的だと言う事に気付く。

 

 

「それだけでは無ァい……貴様らには更なる絶望を味わってもらおうかぁ……!」

 

 

 更に分身を増殖し、彼等の前に計4体の天倉が生まれた。

すると本体である天倉が分身達に近づくと彼等の身体に指を深々と突き刺した。

 

 

「ウイルスの除去は……これで良いだろう」

 

 

残りの3体にも同じような事を行った直後、彼は叫ぶ。

 

 

「さぁ……!偽物(レプリカ)共ォ!貴様等の力を見せるがいいッ!!」

 

「ァ、アア……、…アアアアアアアアッッ!!」

 

「ウェイ!ヘシン!」

 

「……オ、ァ……チョウ、……へ……ンシン」

 

「ア、……ま、…ぞん……!」

 

 

 それぞれの分身達から聴き覚えのある声がしたかと思うと4体の身体から熱波が発せられた。

 

 

 

「ぜ、全形態(フォーム)集合って!そんなのアリかよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」

 

 

 

 峰田の叫びと共に目の前には見覚えのある姿(オメガ形態)体育祭で見せた姿(エクシード形態)炎を纏う筋骨隆々の姿(極熱筋肉形態)初期に見せた懐かしい姿(アマゾンΩ素体)が肩を並べていた光景が広がっていた。

 

 

「ッ!」

 

 

 ほぼ全員は戦闘体勢に移る。目の前には1人でも厄介だと言うのに4体にも増えた天倉がいるのだ。合計5体の天倉に対して自分達は果たしてどこまで通用するか……。そんな疑惑を胸に彼等は構える。

 

 

「行けぇ!下僕共ォ!奴等をゾンビにしてしまェェ!」

 

「は?やだよ」

 

 

 その声に辺りの雰囲気が寒くなった気がした。すると、その声に続いて他の声も響く。

 

 

「何言ってんだあのオリジナル。馬鹿か?」

 

「流石にあの態度は無いわー……」

 

「神になったつもりかよ。あーヤダヤダ」

 

「オレ、アイツ、キライ」

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

 一気に不満をぶち撒ける分身達。そんな彼等に麗日は思い切って声を掛ける事にした。

 

 

「えっと……天倉君?」

 

「「「「何?/ドウシタ?」」」」

 

 

 受け応えはハッキリしている。『シン・天倉孫治郎だァ!』と言わない辺りいつも通りの天倉だと言うのが分かる。

 

 

「正気に戻ってる!?」

 

「馬鹿なァ!私の支配下から逃れるなどとォォ……どうやった!レプリカ共ォォ!」

 

「え?何言ってんのアイツ。自分でウイルスを除去しやがった癖に」

 

「あれは駄目だな。頭がイッちゃってる」

 

「オレ、アイツ、キライ」

 

「コレってまさか……!悪の怪人が正義の心に目覚めるって言う!特撮の感動回必須の定番のアレ!?」

 

 

 緑谷が熱く解説するように叫んでいると、分身達は本体である天倉に向き直る。

 

 

「んじゃ、やるか」

 

「あー、なんで自分で自分を殴らなきゃ駄目なのかなぁ」

 

「えっと、天倉君は良いの?自分の本体だよ?」

 

「「「「だから?/アイツキライ」」」」

 

「ええっ⁉︎」

 

 

 天倉の返答である本体に対する躊躇の無さに緑谷は驚愕の声を漏らす。

 

 

「だってさ、自分の癖して皆を襲ってるんでしょ?はい、ギルティ」

 

「こんな迷惑かけてさ……もう死ぬしかないよね」

 

「よっしゃ、アイツ殺すべ」

 

「オレ、アイツ、キライ」

 

「自分に厳しすぎる……ッ」

 

 

 自分に厳しいと言う意味が色々と違う気がするが、分身達がブツブツと文句を言っている中、本体である天倉が苛立ちを見せる。

 

 

「使えないレプリカ共がァ……!」

 

「その偽物を作ったのはお前だ」

 

 

 エクシード形態である天倉とΣ形態の天倉がぶつかり合う。互いの腕に生える刃で鍔迫り合いの要領で力と力が拮抗する。

 

 

「ハッ!いつもの力が出ていないぞこのクズゥ!」

 

「お前がその程度の力しか出ないように作ったんだろ!手抜きゾンビが!」

 

「ゴフォッ(吐血────やめろ!それは俺に効く!」

 

 

 分身の内1体(オメガ形態)が血反吐を吐き出すのを境に戦いが本格的に変わる。刃と刃がぶつかり合い火花を散らし、互いに殴打する音が響く。

 

「轟、タテル?」

 

「あぁ、何とか……あと何で片言……」

 

「俺タチノ、タタカイ、マワリ、ヒガイ、出ル。ハナレタホウガ、アンゼン」

 

 

 そう言いながら分身の1体(Ω素体)が周りに避難するよう呼びかける。そこに分身が耳郎に視線へ向け話しかける。

 

 

「耳郎、オレ、トモダチ?」

 

「えっ?う、うん。多分友達」

 

「ナラ、オレ、友達ノ耳郎、マモル。耳郎ノ友達モ、マモル」

 

「あっ、ありがとう……(終わったら、本当に謝っておこう)」

 

 

 天倉(分身)の心遣いに良心の呵責に苛まれる耳郎は心の中で謝ろうと考える。そんな彼女の背後から炎を纏った分身の1体が戦っている2体に飛びかかる。

 

 

「おるァッ!」

 

「次は無駄に暑苦しいゴリラか!」

 

「ああっ!?誰が無駄に暑苦しいだ!」

 

「貴様の事だ脳筋の馬鹿め!」

 

「誰が馬鹿だ!せめて筋肉を付けろよ!この馬鹿!」

 

「あ、ちょっと!邪魔すんなよ!俺が戦ってる所でしょーが!」

 

「……なぁ、天倉」

 

「言わないで!俺が集まるとあんな事になるとは思わなかったんだよ!」

 

 

 複数の天倉が集まり、戦いの場まさにカオスな空間と化している。

まさか客観的に自分を見るとは思わなんだろう。分身である彼は少なからずショックを受けているようだ。

 

 

「とにかく、さっさと片付けておかないと……拳藤さんはもしもの時の為に先生を呼んで来て」

 

「ちょっと待てよ、片付けるって…不死身のアイツをどうやって倒す気だよ」

 

 

 拳藤の疑問は当然である。骨折や爆破の怪我を十数秒の内に再生させるに加え、痛覚が無い本体をどうやって倒すのか?

 

 

「いや、アイツ(本体)は不死身じゃないよ。単に怪我を再生させてるだけで、それにはエネルギーが必要なんだ」

 

「……!エネルギー切れを狙うって事か⁉︎」

 

「そう言う事。つまり、倒せるまで殴り続ければ良いだけだよ」

 

「成る程、そうか……」

 

 

 天倉の不死身性のトリックを解く事は出来た。……が、拳藤は心の中で納得できていない所があった。

 

 

「ぐっ───!?」

 

「ほーう、腹を貫かれてもまだ原型を留めるか……!」

 

「抑えてろッ!」

 

 

 エクシード形態の腹部を貫く本体の天倉。しかし、腹部を突き刺した腕を分身が掴んでいる所に極熱筋肉形態の分身が本体に攻撃を仕掛ける。

 

 

「俺の必殺技……!」

 

「ぐっ──!分身如きがッ!」

 

「ライダーチョップッ!」

 

「ぐぉぉぉぉおおおおおおッッ!!」

 

 

 炎を纏った手刀が本体の肩から腹部にかけての肉を抉る。直後、貫いた手に力を込め、炎を纏った分身目掛けてもう片方の分身を投げつける。

 

そんな光景に対し拳藤は戦闘に参加しようとする目の前の分身の肩を掴む。

 

 

「おい、待てよ天倉」

 

「? どうしたの拳藤さん」

 

「お前が本体じゃない事は分かってる。これから言う事がアイツ(本体)に伝わらないって事は分かる。……けどな、これだけは言わせてもらう」

 

 

天倉の両肩を掴み、身体を引き寄せ彼女は叫ぶ。

 

 

「自己犠牲もいい加減にしとけよお前!」

 

「ッ!?」

 

「お前な!自分が犠牲になりゃ、何でも解決できると思うなよ!」

 

 

 拳藤が納得出来てなかった所はここだ。彼は自分の事を考えていない。彼は自己犠牲のヒーローとしての姿として存在している。

……が、彼女は納得しない。

 

 

「聞けよ天倉!お前は自分がどうなっても良いと思ってるけどな!少なくとも!私はそうは思わない!」

 

「なっ、何を言って───!」

 

「私達はな!そんな事求めてないんだよ!」

 

「ッ⁉︎」

 

「自己犠牲なら何でも良いのか?良い訳無いだろ!」

 

 

 彼女の叫びが彼に突き刺さる。すると、彼女の拳がトン……と胸に突きつけられた。

 

 

「敵を倒して、救けて、ちゃんと戻る。それがヒーロー……だろ?」

 

「……拳藤さん……」

 

「私はお前が傷ついて欲しくないと思ってるんだ。勿論、()()()()()()()()()

 

 

 彼女の言葉に分身である彼の目元から水滴が流れた──気がした。彼は分身である前に、天倉としての記憶、感情、魂が宿っている。

彼女に何とか、この思いを伝えたい。そう考えながら必死に喉の奥から声を絞り出そうとする。

 

 

「………好き‼︎(本心)」

 

「ん?」

 

「ん゛ん゛ッ!寿司!寿司食いねぇ!終わったら奢ってあげるから寿司食いねぇ!」

 

 

 と、彼は誤魔化すと振り向き歩を進める。その言葉は果たして、言い間違いか、それとも心の底からの言葉なのか。

 

 

「とにかく!先生呼んで来て!それじゃ!」

 

「お、おい!」

 

 

 彼は彼女の言葉に何か思ったのか思考する。しばらくして、意を決したように近くにいた緑谷に話しかける。

 

 

「……よし!緑谷君、ちょっと良い?」

 

「えっ、どうしたの?」

 

「ごめん!話は途中で伝えるから手伝って!」

 

「───あ、うん!分かった!」

 

 

緑谷は少し遅れながら返事を行う。

……初めてかもしれない、彼が友人に手伝って欲しいと頼むのは。

戸惑いつつも緑谷は天倉と並走しながらその話を耳にする。

 

 

「───って、訳だからお願いね!」

 

「分かった!やってみる!」

 

「ハァ……ッ!次は2体の緑か!」

 

 

 気怠るさを見せる声色の本体に対し、天倉は緑谷の前を走り直列の状態になる。

 

 

「小細工をした所でェ!」

 

 

 腕を振りかぶる本体だが緑谷は跳躍を、分身体の天倉はスライディングの要領で回避を行う。

その際に天倉は本体の両足を引っ掛け、転ばす事に成功する。

 

 

「しゃっ!」

 

「この──「SMASH!」──ぐッ!」

 

 

 転ばせた本体の顔を蹴り上げる緑谷。そこに天倉の分身は本体に逆さ羽交い締めを行う。更に回転を加え、徐々にスピードが増していく。

 

 

「スピンダブルアームソルトだッ!」

 

 

そのまま遠心力に乗った状態で本体を地面に叩きつける。

 

 

「ッ!この程度の技d「まだだッ!」

 

 

 そこへ本体の身体を持ち上げると、膝を折り畳むように掴み思い切り自身の膝に目掛けて振り下ろす。

 

 

「ダブルニークラッシャーッ!!」

 

「ッ!忘れたか!私に痛みなど無いと!」

 

 

 その言葉の直後、分身の天倉は技を解きバックステップで距離を取る。

 

 

「フン、無駄だと言うのが分からんか?」

 

「良いや!無駄かどうかは今から分かるね!」

 

 

 その言葉と共に走り出し、それに応じるように本体も戦闘体勢を取ろうとする。

………が、彼の身体が動く事は無かった。

 

 

「ッ!?動かんだとッ!」

 

「これで決まりだ!」

 

 

 相手の首の後ろに左足を引っ掛けて、持ち上げた相手の右腕を左脇に抱え込み、全体重をかけ始める。

 

 

グレイプヴァイン・ストレッチ(卍固め)ッ!」

 

「ッ!?何故だ!何故、腕と脚が……!」

 

「今の俺は知らないだろうが!痛みは体が脳に伝える緊急信号だ!その信号が途絶えた俺は今、身体がどうなってるのか気付いて居ないんだよ!」

 

「……ッ!あの2つの技か!」

 

 

 思い出したように本体は声を漏らす。『スピンダブルアームソルト』と『ダブルニークラッシャー』。この2つの技は父親から教わった技の中で特殊な部類に入る。

この技は肉体にダメージを与えるのでは無く、神経自体にダメージを与えるのだ。それにより部位毎に感覚は無くなり、まともに動かす事が出来なくなるのだ。

 

 

「緑谷君!今だ!」

 

「よし……!」

 

 

天倉の呼び声に応じるように緑谷は脚を振りかぶる。狙いは、本体の腕だ。

 

 

「(5%フルカウル…!)SMASHッ!」

 

 

 脚が鞭のようにしなり、バシンと言う音と共に()()は本体の腕から剥がされた。

 

 

「まさか!それを狙ってたのか⁉︎」

 

「あぁ!ご存知、"レジスター"だ!」

 

 

 カランと蹴飛ばされたレジスターは地に転がる。内側に取り付けられた無数の血濡れの針がしっかりと固定されていたのを物語っている。

 

 

「最初は首から下が無くなっても殺す勢いで止めようと思ったけどさ……俺を大切に思ってくれてる人が居るからさ。自己犠牲は程々にしておこうと思ってさ……」

 

「天倉君……」

 

「……何を言って…!」

 

「さて!ここまでだ。レジスターが無くなった今!お前は再生に使うエネルギーを供給する事が出来ない。先生が来るまで卍固めのまま拘束させて貰う!」

 

 

 それ以上の答えは言わないように彼は一段と力を込め、逃がさないようにする。さらに神経にダメージを与え、再生されたとしてもガッチリと固められているので本体が抜け出す事はないだろう。

 

 

「……ククッ、馬鹿め。私はお前だと言う事を忘れているのか?」

 

「何?緑谷君!警戒して!コイツまだ何か企んd「違うなァ!もはや私に出来る事は何も無い」

 

 

 分身の言葉を被せるように叫ぶ本体はニヤリと口端を吊り上げ呟く。その際、怪しく思ったのか緑谷は分身体の天倉に注意を呼びかける。

 

 

「……が、偽物である貴様にささやかな抵抗をしてやろう」

 

「天倉君!」

 

「大丈夫。……何かあるなら聞いておこうじゃないか」

 

「ククク……、良い覚悟だ……!」

 

 

 分身体の天倉は本体である自分自身への拘速を解き『ささやかな抵抗』を受け入れる。

 

 

「天倉孫治郎ォ!!何故君が自己犠牲の選択を取らなかったのか、何故緑谷と協力したのか、何故変身後に頭が痛むのかァ! 」

 

「………(いや、別に変身後は頭痛まないけど…)」

 

 

 内心でツッコミを入れるが、口に出さないようにグッと堪える。わざわざ空気を読まない発言をする程、愚かでは無いと言う事だ。

 

 

「その答えはただ一つ……ハァ…天倉孫治郎ォ!君が、あの女に初めて!!」

 

「………!??!!?」

 

 

 その言葉にブワリと大量の冷汗が溢れ出る。

何だ、この嫌な予感は……?彼の第六感が『それ以上言うなぁ!』と告げている。

 

 

「心の底からァ……惚r────

 

 

 瞬間、バキィ!!と言う音を響かせながらオメガ形態の拳は本体の顔面を捉え振り抜かれた。

恐ろしく速い拳、オールマイトでも見逃しちゃうね。

 

 

「………え?……えええええええええええ天倉君!?」

 

「おおおおおおおおおおおおおおっ!!アンタって奴はぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

「フ、フゥーハハハハハッ!!どうしたァ?図星を突かれた上にあまりの恥ずかしさに手が出てしまったか?ヴェーハハハハハハハハッ!!」

 

 

 直後、分身の天く……最早分身や本体などどうでも良いだろう。オメガ形態の彼は両腕を前に構えると上半身を8の字の軌道で振り始める。

アメリカのボクサーであるジャック・デンプシーが開発した『デンプシー・ロール』の構えだ。

 

 

「君がッ!泣くまでッ!殴るのをッ!やめないッ!」

 

「ゔぇはがぶっ⁉︎…はは、図星を突かれただけでぶごォっ!…ここまで怒りを露わにするとゔぁっ⁉︎…想定外の爆発力だわばっ!…おい!人が話してる最中だやめごぼっ!…いや、待て、それ以上はいけなたばっ!」

 

「君がッ!倒れるまでッ!殴るのをッ!やめないッ!」

 

「それ以上駄目だよ天倉君!?」

 

 

 8の字を描く軌道の反動を利用して左右から重い連打が本体のΣ形態に襲い掛かるッ!そんな一方的な暴力を味わう本体の側には他の形態よ姿をした分身達が。

 

 

「おーおー、面白くなってきたなぁ」

 

「マックノウチ!マックノウチ!マックノウチ!マックノウチ!マックノウチ!マックノウチ!」

 

「いや……何で、俺は放っておかれてんの?腹に風穴が開いてんのに、何で……?」

 

「本体が一方的にやられてるのにアッチは何で楽しそうなの⁉︎」

 

 

 異様な光景に思わず叫ぶ緑谷。背後ではオメガ形態が繰り出すデンプシーロールの重みと速さが増していき、それに合わせて響いて来る音が『バギィ!』から『ゴチャア!』へと人体から鳴ってはいけない音へと変わっていく。

更に!事態は思わぬ方向へ進んで行く!

 

 

「おいデクゥ!見つけたぞコラァ!」

 

「!?かか、かっちゃん!?元に戻ったの!?」

 

「何訳わかんねぇ事言ってんだボケ!殺すぞ!」

 

 

 そこに顔面がボコボコにされて状態の藤見を引きずりながら爆豪が登場する。緑谷は辺りを見渡すと今までゾンビ化して来た者達が元の血色の良い肌の状態に戻っている事に気付いた。

どうやらゾンビウイルスは時間制限があり、自然と元の状態に戻るものらしい。

 

ひとまず皆が元に戻った事実に安堵する緑谷だったが、同時にとある事に気付く。

 

──あれ?それじゃあ天倉君はどうなったんだ?

 

そんな事を思いながら一方的な暴力が繰り広げられているであろう場面に再び視線を戻す。

 

 

「君が!死ぬまで!殴るのを!やめない!」

 

「もうやめて!オリジナルのライフはもうゼロよ!」

 

「これが人間のやる事かよォ!」

 

「ヤメタゲテヨォ!」

 

 

 緑谷の視界に元の人間状態に戻った天倉(オリジナル)が今も尚、分身に殴られ続けらる光景が飛び込んで来たのだ。

 

 

…オリジナルの天倉は気がつくと殴られていた。自分が覚えているのはゾンビ達に襲われる直前までの事であり、目が醒めると自分が自分自身に殴られると言う謎のシチュエーションを味わっていた。

 

そして天倉は動きたくても()()()腕と脚の感覚が無い為、一方的に殴られるしかなかったので

 

 

──そのうち、天倉(オリジナル)は考えるのをやめた。

 

 

 意識がブラックアウトする直前、彼の耳に入って来たのは『拳藤さんに寿司奢れ』と言う言葉だった。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 俺が相澤先生から聞いた話では『ゾンビ化して皆に襲い掛かった』と言う事らしい。先生本人も詳しくは知らないようだが、流石に今回は除籍処分されるんじゃないのかとビクビクしていたが

 

 

「お前、疲れているのか?今度、雄英にカウンセラーが導入されるから、真っ先に受けて来い」

 

 

と、逆に憐れみの目を向けられた。

何で?いつもの合理的な先生はどこ言ったんですか?俺って普通の部類(自称)に入りますよ?と言ったら、『二重人格で不死身で文字通り増殖する奴が普通か?』と返された。

 

……あるぇー?もしかして俺、認識してなかっただけで、実はそっち(非普通)側?

 

 そんな俺だが現在、雄英の校門にて勇学園の生徒達を見送る事になっている。本当は保健室で安静にした方が良いのだろうが今回は俺の所為で皆に迷惑を掛けたので、その謝罪も兼ねて彼等の前に居る。

 

 

「と、言うわけで……申し訳ありませんでしたッ!」

 

「うん、いや……別に良いんだけどさ……?これって何?」

 

「俺のベルトから作ったナイフです。貴女の指示であれば今この場で切腹を……」

 

「ええい!やめないか天倉君!彼等に一生の傷を負わせるつもりかッ!」

 

「そうですわ。私達は何も出来ませんでしたが、天倉さんの"個性"のお陰で解決できました。……そう、私は何も出来ず……」

 

 

 何で俺を元気付けようとした八百万さんが逆に暗くなってるんだろうか。そんな俺達に勇学園の赤外さんがイヤイヤと手を振りながら話し掛けてくる。

 

 

「そもそもの原因はコッチにありますから……ほら!謝って藤見」

 

「……ケッ」

 

「あ゛ぁ゛?」

 

 

 藤見君と爆豪君は互いにメンチを切り、頑固として謝る気はゼロだった。

……まぁこの2人は謝らないだろうと分かっていたけど。

 

 

「羽生子ちゃん。今日は会えて嬉しかったわ」

 

「私もよ梅雨ちゃん」

 

「ゾンビになったり、痛かったりしたけど……」

 

「うん、楽しかったわ!」

 

「一緒に居られて楽しかったわ!」

 

 

 それに対して蛙吹さんと、万偶数さんは互いに抱き締め合う。

……あぁ、なんかね。もう、これが【尊さ】って奴なんだね。心が浄化される感じがする。

コレを見ると、俺もこんな友人が欲しいなって……おっと、心は硝子だぞ?そんな事を考えていると突如として首に腕を回される。

 

 

「シケた顔したんじゃねぇよ。俺だってお前の口ん中に魚雷をぶち込んだから、お相子って奴だ」

 

「そ、そうかな……ちょっと待って、今何と?」

 

 

 俺の口の中に何だって?天龍さんはそんな危険物を俺に食わせたのか⁉︎よく無事だったな、俺!!

 

 

「……ところで、お前さ……」

 

「え?何、どうしたの?」

 

「いい女作りやがって!このこの〜っ!」

 

「は?妄想も程々にしておきなよ?」

※分身体の天倉が拳藤に呟いた言葉をオリジナルは覚えていない。

 

「!?」

 

 

 天龍さん、嫌味かそれはッ!!童貞の俺に彼女を作る事なんて出来るワケ無いだろ!すると、天龍さんは『あぁ、そういや分身の方だったな』と頭を掻きながら何やら呟いている。

しばらくして溜息をついたかと思うと彼女は俺に向かって口を開く。

 

 

「まどろっこしい事はヤメにするか…、今回は一悶着あったけどな。次会ったら、お前よりも凄げぇヒーローになってやるよ」

 

「……、うん。楽しみだ!」

 

「ハッ、当たり前だろ?なんせ俺は『世界水準超え』だからな」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………」

 

「いやぁ!A組の金で食べる寿司は格別だねハハハハハ!」

 

「美味え!マグロ美味え!」

 

「………」

 

「ゴメンな、天倉。皆が寿司食べたいって言うからさ」

 

 

 俺の目の前にあった寿司が凄まじいスピードで減っていく…。それも仕方ない事だろう。なんせ俺が寿司を奢っているのは拳藤さんだけでなく、B組の生徒全員に奢る羽目になったのだから。

……嗚呼、寿司が減ると共に財布も軽くなっていく……。

 

 

「……なぁ、天倉。何で無理してでも寿司を奢ろうとしたんだ?」

 

「え?」

 

「だって、さっきも言ったろ?約束したのはあくまで分身体でお前自身と約束したワケじゃないって。それなのに何で全員にまで?」

 

「何故って……それは」

 

 

 勿論、訓練で迷惑を掛けたB組へのお詫びでもある。そもそもゾンビ化された俺の落ち度で皆を危険な目に遭わせたんだ、お詫びをするのは当たり前の事だろう。

それに……。

 

 

「分身と言っても俺自身なんだ。まぁ、分かるのは分身()が拳藤さんに感謝していたって事だけどね。俺は分身()の言う事を信じるってだけだよ」

 

「………」

 

 

 すると、拳藤さんは豆鉄砲を食らったような顔をしながらこちらを覗き込む。

……え、何?俺なんか変な事言った?

 

 

「あ、いや……天倉ってさ。一見すると頭脳派みたいだけどさ。根は鉄哲みたいな一直線のタイプなんだな」

 

「うん、どう言う事ソレ?」

 

 

 俺の言葉に「うーん」と拳藤さんが唸る。しばらくして、彼女は笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「まっ、お前は良い奴って事だよ」

 

「…………」

 

 

……今なら言える、あの言葉が。彼女にどうしても伝えたかった心の奥底からの本音が……。

俺は息を整え、彼女の姿をシッカリと視界に捉える。

 

 

 

 

「拳藤さん」

 

「ん、どうした?」

 

 

自分の心臓の音が大きく聴こえる。B組の人達の騒がしい声が響き、自然と耳に入って来る。

……が、不思議と

 

 

 

「俺と────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────友達になって下さい」

 

 

 

 

「は、何言ってんだ?」

 

 

「」

 

 

「もう友達だろ?」

 

 

「───!」

 

 

 

 

 

 その後、俺の頭の中は混濁してよく覚えてない…が、鮮明に記憶に残っているのは友達になれた感動と財布が軽い事実だった。

 

俺はバイト募集の張り紙を手にして、上機嫌で帰路に着くのだった。

 







友達が増えるよ!やったね天倉君!


【アマゾンΣ形態】

シン・天倉孫治郎だ。
にどどまちがえるなくそが。


デンジャラスゾンビな自称"神"の元社長的な性格。
分身のデンプシーロールで最後を迎えた。果たして再登場するのだろうか……。


 驚異の再生能力に加え、平衡感覚を狂わせる複眼。パワー、瞬発力、その為諸々が強化された形態。その分エネルギーの消費が激しい為、レジスターの供給が無ければマトモに機能しない。
しかしその再生能力は例え骨折、裂傷、切断などの重傷でさえも某ナメック星人の如く回復する。

コレを応用する事により、自分の細胞片から分身体を作り出せる事が出来、彼等の体内のガスを膨張、破裂させる事によって文字通り毒の爆弾として扱う事ができる。

更に、分身体のウイルスを除去する事によって全フォーム集合(劇場版的なアレ)の再現が可能となる。
ちなみに分身達は本人が元の状態に戻っても、しばらくそのままの状態を保つ事が可能。

ハッキリ言って全形態の中で、現最強となっている。


………が、この形態には欠点が多く存在する。


1.エネルギー効率の悪さ。
とにかく、レジスターを着用している事が前提。

2.人望の少なさ。
周囲の人間は愚か、分身達までも彼の命令に従いたくない。

3.そもそも天倉本人が変身したがらない。
誰が好きで自分を神だと思い込んでいる精神異常者になりたがるのだろうか?


ちなみにこの形態になる度、天倉君の体内では白血球さんや赤血球がバイオハザードに巻き込まれてます。
多分、血小板ちゃんはシェリーポジション。


………うん?天倉君は拳藤さんの事をどう思ってるだって?

陰キャの申し子である彼にとって女子のお友達を作る事自体が、装備無しで歴戦王に挑むくらい困難な事なのです。

だけど天倉君は自分の事を大切に思ってくれる人に惚れやすいタイプです。要するにチョロインですね分かります。




【てんりゅー(天龍)】


フフ怖の人。
彼女はヒロインじゃありません、天倉の友達です。

おっぱいのついたイケメン。

ホントはメチャクチャ好きなキャラ。
こう……彼女が泣き顔を見せるまでの過程として、メンタルをボロボロにして自信満々な彼女の表面を崩すわけですよ…、そこに頭を撫でる、抱きしめるとか…慰める事によって素直な彼女の顔もみたい訳なんですよね……。更には乙女らしい赤面とかも見たら……あぁ、尊い。

ヒロインにしたいけどこの物語は彼女はヒーロー志望者であり主人公のライバルの1人として徹してもらう事にしています。


……何?ハーレムだと……?
そんなの天倉君のメンタルが耐えられるワケないだろ!いい加減にしろ!


再登場するかは前向きに検討中。



今回、勇学園のキャラ達の影が薄かったのは私の責任だ。
だが私は謝らn(無言の腹パン



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52話 補習と七夕祭とロリコン


 最近、常に小説のクオリティを高くしなければ批判の声が上がって叩かれるとビクビクしてしまい投稿スピードが重加速現象並になっております。
と言うわけで久しぶりの投稿になります。



 男子更衣室にて。雄英生達はヒーローコスチュームから制服に着替えていた。

 

 

「久々の訓練、汗かいちゃった☆」

 

「俺、機動力課題だわ」

「情報収集で補うしかないな」

 

「それだと後手に回んだよな。常闇とか瀬呂が羨ましいぜ」

 

「まー、でも。最終的に鍛えれば何とか……」

 

「にしても……」

 

 

 数人の視線が天倉の首から下に注がれる。コスチュームから解放されし肉体は自然界いや、世紀末を生き延びたとも過言では無いだろう。

言うなれば、その男は筋肉(マッスル)だった。

 

 

「お前、首から下がヤバイな。1人だけ魁!◯塾とか北◯の拳みてーになってるぞ」

 

「カタギの鍛え方じゃねぇよ」

 

「多分、俺の"個性"が傷付いた箇所はより強くする為に働いたとか?」

 

「な、成る程…!天倉君の"個性"による回復は細胞の増殖だけじゃなく、強固なプロテクトを行う為に無意識に働く。それならコスチュームで爪や牙を武器に見立てて形成する事も可能かもしr「うっせぇ!黙って着替えろや!」

 

 

いつも通りだな……あれ?いつも通りってなんだっけ?と思いながら制服を羽織る天倉。

そんな彼に隣で着替えていた筈の峰田が呼びかけて来る。

 

 

「オイオイオイ!天倉!オイ!天倉!ちょっとこっち来いや!」

 

「どしたのさ峰田君」

 

「見ろよこの穴!恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!隣は?そうさ!分かるだろう?」

「?」

 

 

 天倉は理解してないだろうが、この隣には女子更衣室が存在する。

つまりは壁に空いたであろう穴は峰田と同じ変態紳士なのだろう。

そんな彼の言葉に反応したのか飯田がすかさず注意しに寄って来た。

 

 

「やめたまえ!ノゾキは立派なハンザイ行為だ!」

 

「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ‼︎」

 

 

そう言うと峰田はビリィッ!と穴を隠してあった張り紙を剥がし穴に片目を添える。

 

 

「八百万のヤオヨロッパイ‼︎芦戸の腰つき‼︎葉隠の浮かぶ下着‼︎麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアアアッ───あああああ!!!!!!!!!」

 

 

しかし、峰田は片目を抑えその場で蹲る結果となった。そんな最低な行為をしていた事を知らず彼の元に天倉が駆け寄る。

 

 

「峰田君ッ!?まさか新手のヴィランによる攻撃かッ!?」

 

「いや違うと思うぞ」

 

(……天倉君…あまり気にしてないみたいだけど)

 

 

 目の前の光景にクスリと笑いを漏らしながら緑谷は昨日の出来事に浸かっていた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

事はつい先日。

応接室。そこには緑谷と本来の姿に戻ったオールマイトが席に座っていた。

 

 

「それは本当かい?」

 

「はい……僕自身、天倉君を絶対に逃がさない。捕まえるって事だけを考えたら、いつの間にか……」

 

「フム……」

 

 

 事の始まりは勇学園との合同訓練で緑谷と天倉が戦った時である。

訓練中、緑谷の腕から()()()()が飛び出して来たと天倉は証言しており終わった後、心配されたが『言われて困るなら秘密にしておこうか?』と有難い提案を持ち出してくれた為、事なきを得た。

 

そして現在、自身に起こった出来事について何か知っているのではないかとオールマイトに尋ねる事となったのだ。

 

 

「すまない、緑谷少年。こればかりは私にもサッパリだ」

 

「オールマイトにも?」

 

「いや、だが、もしかしたら…オール・フォー・ワン。彼と関係しているやもしれん」

 

「……先日、オールマイトから聞いた巨悪」

 

「うん。それに……天倉少年は彼と少なからず関わってしまった」

 

 

痩せ細った手に力が入るのが見て分かる。

それは巨悪に向けたものでは無く、不甲斐ない自分自身への怒りによるものだった。

 

 

「風都。ステイン事件のように隠蔽はされたが、裏では奴が繋がっているに違いない」

 

「それって……!」

 

「幸い、天倉少年には気にするなと言っておいたが……、考えたくもないが彼は巨悪の事を知る可能性がある。……それだけじゃない、私と緑谷少年の秘密も知られてしまうかもしれないんだ」

 

 

オールマイトの眼光が一層強くなる。

 

 

「天倉少年は体育祭での轟少年みたく、悪い意味での執着心を持っているワケでは無いが───充分、注意して欲しい。これは君の友人を守る為でもあるからな」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

(天倉君に知られないように注意しなきゃ……)

 

 

オールマイトに注意するよう施された緑谷は次の授業に向けて気を引き締める。

 

 

「この穴に何が……アッーーーー!?イッタイメガァァァアアアアアアッ!!」

 

「………」

 

 

……一瞬、天倉君なら知られないんじゃないかなと思う緑谷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後のホームルーム。

担任である相澤先生がいつものように生徒達に真っ直ぐ帰るように施した後、「それと…」と呟く。

 

 

 

「えー、そろそろ夏休みが近いが…もちろん君らが30日間一ヶ月休める道理はない」

 

「まさか……ッ!」

 

「夏休み林間合宿やるぞ」

 

「知ってたよーーーー!やったーーーーー!」

 

 

 先程までシンと静まっていたクラスが一気に騒がしくなる。林間合宿、それはクラスの皆とコミュニケーションを取ることが可能なレクリエーションでもあり皆が楽しみにしている学校行事の内の1つである。

 

 

「肝試そーーー!」

 

「風呂!」

 

「花火」

 

「風呂!!」

 

「カレーだな……!」

 

「行水!」

 

「自然環境ですとまた活動条件が変わってきますわね」

 

「いかなる環境でも正しい選択を……か面白い」

 

「湯呑み!」

 

「寝食皆と!ワクワクしてきたァ!」

 

(皆、スッゴイハイテンションだなぁ。…峰田君の謎の風呂推しは一体……)

 

 

 冷めた感じにクラスの皆を見る天倉だが、実は本人が1番ワクワクしており、机の下に隠れた足はソワソワと動いている。

 

 

「…と、その前に。雄英は七夕祭りを行う事になっている。クラス毎に出店をやるので考えておくように」

 

「「「「いきなりのサプライズ来たァァーーーーーーーーッッ!!!?」」」」

 

 

 なんと、隙を生じぬ二段構え。クラスのテンションは更にヒートアップしMAX大興奮な状態となる。

 

 

「ちなみにセンセー。それっていつやるんですか」

 

「明後日だ」

 

「「「「「そう言うとこだぞ先生ェ!!」」」」」

 

「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は……学校で補習地獄だ」

 

「皆頑張ろーぜッッ!!!」

 

 

 悲しいかな。楽しんでいる矢先、先生は羽目を外し過ぎないよう釘を刺して来る。生徒だけでなく、先生もまたこのクラスに適応して来たのだろう。皆の扱いが上手くなっているのが分かる。

ふと、何かを思い出したように相澤先生は口を開く。

 

 

「そう、それと。緑谷、爆豪、天倉。3人は放課後職員室に来るように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、補習⁉︎」

 

「あぁ、実は職場体験の単位が足りてない」

 

「ハァッ!?」

 

「えぇっ!?」

 

「マジで!?(1人じゃなくて良かったッッ!)」

 

 

職員室。そこに問題児3人組が単位が足りていないと言う事実を告げられる。

 

 

「コイツらはともかくなんで俺が‼︎」

 

「えっ」

 

「いや、爆豪は普通に赤点。先方から追加研修の要請が来てる。緑谷の方は書類の不備だが先方と連絡がつかなくてな。このままでは単位が受理されず留年してしまう」

 

「そんなッ!?」

 

「マジですか…緑谷君、ドンマイ(やったー!仲間外れじゃなくて良かったーーー!)」

 

 

この(天倉)、内心は人の不幸を物凄く嬉しがると言う何クソ野郎であろうか。そんな内心クソ野郎は「あ」と思い出したように声を漏らす。

 

 

「すると、俺達は七夕祭りに出れないと言う事ですか?」

 

「いや、七夕祭りなら午後から参加出来るから安心しておけ。……補修する奴がそう出れると思うな」

 

「あぁ、いやそうじゃ無くて………招待するのは別に構わないんですよね?」

 

「?…まぁ、良い。校長の計らいで緑谷と天倉も参加出来るようになったので3人で行って来るように。以上だ」

 

「分かりました、ありがとうございます!」

 

「「………」」

 

 

元気良く挨拶と感謝を忘れない天倉とショックに打ち拉がれる2人は追加研修を受ける為、とあるヒーローの元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「改めて自己紹介させてもらう。コレから君達の補修を担当するベストジーニストだ。……正直二人増えるとウンザリしていた。私は身嗜みに注意を払わぬ人間が嫌いだ」

 

 

スッとベストジーニストは3人を見渡し、1人に視線が止まる。

 

 

「だが、緑谷出久。心を入れ替えたようだな」

 

「はい!!」

 

 

 No.4ヒーローに見てもらえるのでハイテンションな緑谷出久はコスチュームではなく正装で身を包み髪型は七三分けと、どう見ても狙っているようにしか見えない。

 

 

(緑谷君…露骨すぎる……)

 

「ああ!テメェ!媚びてんじゃねぇぞ!」

 

「うわちっ!?」

 

「いや爆豪君!ヒーローの前だから!」

 

「その通り、組織に迎合するのなら"個性社会"においてとても重要な事だ」

 

 

 刹那、爆豪は椅子に縛られいつの間にかベストジーニストによって髪をセットされていた。

 

 

「お前は歩調を合わせる事を学べ。『協力』それが今回、爆豪に課す課題だ」

 

(え……?いつの間に……!?)

 

「続いて、天倉孫治郎。私は君を最も嫌っている」

 

「ゴブッ────控え目に言って死にt「そう、それだ。君は場をすぐに乱す」え?」

 

「体育祭の活躍はなんだ?ロクに"個性"をコントロール出来ず、見せたのは粗末な勝ち方。そんなのでは指名数も指で数えられる…いやゼロだったのではないか?」

 

 

ズタボロに言われる天倉。そのままガクリと膝から崩れ落ち、どんよりとしたオーラを放ちつつその場で項垂れる。

 

 

「ごおぉぉぉ……ッッ……コロシテ……今すぐコロシテ……」

 

「…質問しよう。君が学ぶべき事は何だと思う?」

 

「……えっ、そんな事言われ───!?(か、下半身がギュゥっと締められてる⁉︎なんか……気持ち悪いッ!)」

 

 

 ベストジーニストの"個性"によりスボンがパッツンパッツンになり、変な感覚に襲われる天倉。

繊維を自由自在に操る事の出来るヒーローだからこその実力なのだろう。拘束と同時に相手に不快感を与える方法も知っていると言う訳だろう。

 

 

「狼狽えるな。そしてへこたれるな。君か学ぶべき事は崩れぬ『鋼の精神』」

 

「鋼の精神?」

 

「簡単に言えば心の問題だ。プロは信念の元に軸が真っ直ぐ立っている。……が、お前の軸は直線ではない。私の指導を受け、自分の意思を貫く事。どんな逆境にも自身の決めた通りの理想を押し通す事。お前にはそれが足りてない」

 

「な、成る程。参考になります」

 

「分かったのなら、私は(爆豪)の髪を直す。その間にお前は自分に出来る事をして貰おう」

 

「俺に…ですか?」

 

「勿論、自分で考えろ」

 

 

 そう言うとクシ、ドライヤー、ワックス等を取り出し爆豪の頭に集中し始める。それに対して天倉は困惑していた。

 

 

「じ、自分に出来る事と言っても……!」

 

「天倉君!ここは僕に任せて!」

 

「え?そ、それじゃあお言葉に甘えて……」

 

 

 緑谷の助け舟に乗る天倉。

しばらくして、爆豪の髪型は七三分けへ変化しベストジーニストはやや満足そうな足取りでやって来る。

 

 

「さて、天倉孫治郎。衣服、髪型の乱れとは心の乱れだ。規律が崩れればそこから敵発生へ繋がる」

 

「はい」

 

 

 何と言う事でしょう。髪型や服装に無頓着だった天倉孫治郎の髪は七三分けへ変化し黒のサングラス、黒のスーツ、黒い靴、黒のネクタイとまるでカ◯ジに出てくる帝愛の黒服の容姿へ変わっていた。

 

 

「……天倉孫治郎。君を認めたワケでは無いが……身嗜みをしっかりさせたのは良しとしよう。君はどうやら心を入れ替えたようだ」

 

「はい、あり難き幸せ(ええーーーッ!?服装を変えただけでこんなに態度違うのって色んな意味でチョロいぞベストジーニスト!)」

 

「天倉テメェ!猫被ってんじゃ───キャッ!」

 

(キャッ⁉︎今、爆豪君、キャッて言ったのか⁉︎)

 

「さて……私の研修について来れるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、A組はと言うと…。

3人の不在により悲しみに包まれて───

 

 

「おもち屋さん!」

「腕相撲屋!」

「「メイドカフェ‼︎」」

「おっばけやーしき!」

 

 

 いる訳なかった。クラスメイトの不在以上に七夕祭りへの楽しみが優っていた為、あまり気にしていなかった。

 

 

「ここは奇をてらわず、下半期の抱負を短冊に書き寄付を募る店はどうだろう!」

 

「「「絶対ダメ‼︎」」」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 一方、場は戻り老犬の散歩、ベビーシッター、二人羽織と謎の訓練を終えた3人だが爆豪は凄まじい結果を残す事となった。

 

 

「さて、訓練した結果…だいぶエゴを抑えられるようになったようだな」

 

 

(°◡°)

 ↑

※爆豪

 

 

「…誰!?」

 

「そ、そうか……!かっちゃんの心はほとんどエゴでできてるからエゴを取ったら何も残らなくなっちゃったんだ!」

 

「どう言うこと!?」

 

 

 七三分けで純粋な瞳ともはや別キャラと化した爆豪。エゴの塊である彼はベストジーニストの訓練により考えるのをやめたどころか放棄した状態となったのだ。

 

 

「さて、エゴも抑えられたところで模擬の救出訓練を行おう」

 

「よし、やろう天倉君!かっちゃん!」

 

「了解!……あれ?爆豪君……?」

 

 

 しかし爆豪はマネキン人形の如く。緑谷や天倉の呼び掛けに応えず、ただその場でジッと留まるだけだった。

 

 

「だ、駄目だ……人助けの気力すらも無くして……」

 

((エゴで人助けしてたのか……!?))

 

 

果たしてどうなる職場体験のTHE・補習!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、A組の様子はと言うと……。

 

 

 

「いやいや……そこは肝試しだろ……!」

 

「カフェを譲れよな……」

 

「なんか変じゃね?」

 

「あぁ、全然まとまらねぇ」

 

「確かに……いつもはこんなギスギスしてないのに」

 

 

 

ギスギスしていた……ッ!

主要人物達が居ないA組はすっごいイライラしていた!

理由としては最終的に纏める役である緑谷達が居ない為、全員はスランプに陥っていたのだった。

 

果たしてこんな事で七夕祭りを成功させる事が出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

雄英七夕祭当日。

その日は多くの外来客で賑わっていた。

 

あちこちにある笹には短冊が飾られており、どれもヒーローになると言う生徒達の抱負が書かれている。

 

 

「……(人がこんなに……風都と比べて密集率が段違い)」

 

 

 そんな雄英高校にとある来客が足を踏み入れていた。見た所、娘と母親と言った親子の客に見えるが、彼女達は血の繋がっていない同士の知り合いである。

 

 

「あの、見値子さん。ホントに大丈夫ですか?」

 

「いいのいいの。さとりちゃんだってこういうお祭りってあんまり行かないでしょ?…それに、密集地帯に慣れておくのも良い訓練になるって言ってたじゃない?」

 

「……それなら良いんですけど……」

 

「さて、それじゃあグルっと回ってみましょう。…いやぁ、天倉君も粋な計らいをしてくれるとはね……」

 

 

 彼女達は古明地さとり、見値子。天倉孫治郎と関わりのある人物だ。風都に住む彼女達だが、つい先日七夕祭へ来ないかと天倉に誘われた為、この雄英高校にやって来たのである。

 

 

「エリちゃあぁぁぁんんんんんんッッ!!!」

 

「「「エーリちゃーーーーーんッッ!!!」」」

 

 

 そして、そのすぐ近くで叫んでいるのは霊烏路(ドルオタ状態)と取り巻きの三羽烏である。この4人もまた、天倉の職場体験先であった風都にて出会った人達である。

 

 

あの子(お空)があれ以上に暴走しないよう見張っておいてください」

 

「あー、お空ちゃんって真性のドルオタなんだっけ……」

 

 

……何やら一名、全くキャラを保っていない者がいるがあまり気にしないようにして欲しい。この七夕祭にはサプライズゲストとして、有名なアイドル『エリザベート』がやって来るのだ。ドルオタである彼女が天倉の誘いに食い付かないわけもなく、先程からこのような状態になっているのである。

 

 

「そう言えば、お燐ちゃんは?」

 

「あー、その。猫の本能なのか、此処に来る途中で"ネズミっぽい生き物"を真っしぐらに追い掛けていって……多分、回っている途中に会えると思いますが……」

 

(……一番、良識のある子だったのに……)

 

 

 追い掛けられる羽目となった謎のネズミっぽい生き物を哀れに思っていると「いたいた…」と背後から声が聞こえて来る。

 

 

「すみませーん……少々取材のお時間をとらせてもよろしいでしょうか?ヒーローネーム『マキ』さん?」

 

「あなたは?」

 

「いえ、しがない記者の卵ですよ。私の趣味と思ってください」

 

 

 黒い翼をはためかせた彼女がそう言うと何処から出したのかメモ用紙とペンを手にグイッと近く。

困った人に会ってしまったと見値子が思っていると、側にいた古明地がボソリと呟く。

 

 

「……天倉さんが狙いですか?」

 

「ッ!?……ほう、それは"個性"ですか?」

 

 

一瞬、驚愕の意を見せるがすぐに平静を装い標的を変えた。

 

 

「……射命丸文、16歳。此処から数kmにある森諏訪谷高校、2年生」

 

「…ほう、よくご存知で……」

 

「天倉さんとは入学して数週間に接触。その後、体育祭にて様々な方法を使用し、彼の活躍を記録に収める事に成功」

 

「成る程。あなたの個性なかなか馬鹿に出来ないようd「あぁ、そんな事は良いんですよ。どうでも良いんですよ。私が聞きたいのは天倉さんをどう思っているのかなんですよ」

 

「えっ」

 

 

「ほら、言ってください。ええ、私は何を言っても構いませんよ?……ただ、あの"素敵な人"を狙っているとするなら……わたし、正気を保てなくなって………あぁ、何でもありません。さぁ早く聞かせてください、さぁ!さぁ!早く!あなたは彼を好か嫌か!さぁ!!」

 

 

 何故だろう、彼女の背後に『嘘つきは燃やせ』『邪魔者は排除しろ』などの声が聴こえてくる。そんな彼女の迫力に押されたのか、射命丸はブワリと大量の冷や汗を流す。

 

 

「(ヤ、ヤンデレだとォォォォォオオオッッ!空想上の生物であると言われるヤンデレが私の前に!?アレって漫画やアニメの住人じゃなかったんですか!?と言うか天倉さんものすっっっごく厄を引き寄せてませんか!?スクールデイズendは洒落になりませんよ!?)いっ!いえいえいえいえいえッ!私は天倉さんの事を性的に見てるつもりはありません!ただ私は彼の事をネタが自然と集まって来るだけの餌場としか見ていません!だから安心してください!私はそう言うつもりで天倉さんと接触を図るつもりじゃありませんから!」

 

 

 

 

 

「成る程言いたいことは分かりました」

 

「あ、はい。ようやく分かって───

 

「アナタが人を人として見ていないと言う事が分カリマシタ……!悪イ虫ドコロノ話デハ無イヨウデスネ……!!」

 

 

射命丸、油に火を注ぐ。

 

 

「八方塞がりーーーーッ!?(やべぇ!逆に悪く言い過ぎましたか!?)」

 

「あ、あなた!とにかく今は逃げて!落ち着いて古明地ちゃん!それは考えすぎだから!」

 

「見値子さんどいて、その女殺せない!」

 

「すみません!死にたくないのでお言葉に甘えてさせてもらいます!」

 

 

 すると脱兎の如く彼女は猛スピードでその場から逃げ出す。そんな彼女を見送った見値子は「ハァ」と一息つく。

 

 

(さとりちゃんが治る気配は未だに無し……か)

 

 

簡潔に言おう、古明地さとりは精神疾患者である。

風都の事件以来、ショックにより彼女は天倉孫治郎に依存し暴走を起こしてしまうようになったのだ。

現在、休止中ではあるがヒーローである見値子はそんな彼女のメンタルケアとして天倉と会う手法を取ったのである。

 

 

「逃げましたか……まぁ、いいです。そんな事よりも、早く行きましょうか」

 

「……そう、ね」

 

 

 一抹の不安を拭いきれない彼女は、今は少しでも改善できるように願うばかりだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達が歩く事数分、ドルオタとその取り巻きはアイドルがいるであろうステージへ真っ直ぐ行ってしまった為、現在は古明地と見値子2人で行動している。

そんな彼女達の視界にふと、クレープを売っている出店が入った。

 

 

「あの、すみません。A組の出し物が何処にあるか知りませんか?」

 

「ん?A組ならそこにあるけど……(うーん、やっぱり注目度は依然としてA組が上か……やっぱ悔しいな)」

 

「……その前にこちらにも寄りましょう。良いですよね根寝さん」

 

「いいよー」

 

 

 B組の出店の前に居た彼女、拳藤の心を読み取った古明地は少し罪悪感を覚えたのか、クレープを買う事になった。

 

 

「へぇ!天倉のトコでお世話んなったのか!」

 

「はい。そうなんですよ(……ふむ、好感度としてはまだ友人レベルか……警戒するのに越した事は無いみたいですね)」

 

「いやー、是非彼をサイドキックにしたい所ですよ(あーこりゃ、さとりちゃん警戒してるなぁ。と言うか半分の目的が釘を刺しておく事だからなぁ)」

 

 

 しばらくして、クレープを食べ終わり拳藤は売り上げの嫌味を言いに行こうとしていた物間を手刀でねじ伏せ古明地達をA組の出店て案内する事になる……が、到着した3人はその出店の外観に唖然する。

 

 

「えっと、此処みたい……?」

 

((え……此処?))

 

 

 目の前にあったのは餅、お化け、金魚掬い、腕相撲、etc、etc…挙げ句の果てには『もう何でもやります』と書いてあった謎の店だった。そんな店の前で死んだ目をした麗日が、古明地達の存在に気付く。

 

 

「あの……もしかしてお客さん?」

 

「そ、そーですよー?えっと、此処はA組の出店でいいんですよね?」

 

「どうしたの?何かテンションダダ下がりしてるけど」

 

「実はお店が大滑りしててさ。今、皆かなり弱ってるから冷やかすのはちょっと……」

 

「成る程。そんな事より天倉さんって居ますか?」

 

「あ、ごめんなさい。天倉君なら今日は居なくて」

 

「それなら此処には用は無いです。ありがとうごz「あー!あー!あー!でもー!此処で待って居れば彼も来るかもですしー!待ちがてら入りましょうか!」…確かにそうですね」

 

(この子…冷やかしNGと言った途端に早速冷やかした……⁉︎)

 

 

 店の中はお化け屋敷をモチーフにした喫茶店らしく、周囲にはお化けの被り物、すこし暗めの照明、餅と書かれた張り紙に、もうしませんと言う看板を首からかけた謎の小さいサイズの生徒が磔にされたモノと不思議なオブジェが並んである。

 

 

「3名様入りまーす」

 

(結構凝ってんじゃん……何が失敗したんだろ)

 

 

 そう思ったのも束の間、テーブルに置いてあるメニュー表を広げた3人は呆気に取られ、失敗した原因を知る事になる。

 

メニュー表記がもうヤバイのだ。全てが厨二チックなノムリッシュ的なアレなのだ。困惑しながらも拳藤は飲み物であろうメニューを口に出す。

 

「じゃあ、この……えー、『汗まみれのジレンマが織りなす冥界からの涙』」

 

「はい!それですね」

 

 

 店の奥から赤髪がトレードマークの切島が巨大な桶を運び、彼女の目の前に立つ。

 

 

「注文ありがとな!でも女だからって容赦しねェぜ!?」

 

(くぅ〜〜腕相撲だったかぁ〜〜…)

 

 

 拳藤が失敗したと悟っていると見値子も同じように別のメニューを恥ずかしならが口に出す。

 

 

「そ、それじゃあ私は…こ、この『水槽に浮かぶ小さき者達の戯れ』を」

 

「水槽のやつでーす!」

 

(復唱ォ…)

 

 

 麗日の適当な復唱に内心ツッコミを入れていると、水いっぱいの桶を持った蛙吹が現れる。

 

 

「3回までチャレンジできるわ」

 

「……金魚すくいで来ましたか〜〜……」

 

「あの、すみません。3人分の飲み物を頼みたいんですが……」

 

「分かりました!グイッといくやつ頼みます!」

 

 

 さすがに不憫に思ったのか、古明地が助け舟を出した。しばらくして目の前に出されたのはアツアツの餡子に餅が浮かぶ料理だった。

 

 

「え…お、お汁粉……?」

 

「す、すみません。アイスティーとかコーヒーとかって……」

 

「いえ!当店ではお餅一本で勝負してます!」

 

(勇気ありすぎでしょ‼︎)

 

 

 勇気と無謀を履き違えた酷さに古明地は麗日に聞こえないよう拳藤に疑問を投げかけた。

 

 

「す、すみません…あの、天倉さんのクラスっていつもこうなのですか?正直言って嘘と言って欲しいんですが……」

 

「あ、いや…いつもはこうじゃないんだ。でも、今日は妙な一体感と惹きつける何かが無い気がするんだ。こう、いつもと何かが……ッ!」

 

 

瞬間、カチリとピースが揃う感覚が拳藤の頭の中に響いた。

 

 

「そう言えば、爆豪と緑谷は?」

 

「え?ああ。補習があっていないけど……」

 

「(そ、それだッッ‼︎)ちょっと、2人のモノマネとか見たいなー……なんて」

 

「へ、なんで?」

 

「は、払うからさ!」

 

「あ、それなら。少々お待ちくださーい」

 

 

すると、髪の毛をボサボサにした麗日が憤怒の表情を露わにする。

 

 

「デクァ!俺の前に立つなつってんだろ!……ごっ、ごめんかっちゃん!」

 

(あ、麗日がやってくれるんだ)

 

「つか、何なんだよこのメニュー!全然意味分かんねんだよ!……って!確かにッッ!!」

 

 

 そんな彼女のシャウトにA組の生徒達がゾロゾロと現れる。驚愕と希望に満ちた顔をした彼等の視線は自然と麗日に集まる。

 

 

「お、おい…今なんか…なんでだろ?」

 

「あぁ!今何かに気付きかけた気がしたぜ!」

 

「麗日続けろ!」

 

「お、おう…せっかく皆で考えたんだし生かす方法があるよ。横に絵とか解説を載せるとかすれば」

 

「「「そっ、それだッ‼︎」」」

 

「せめて茶くらい用意しろや!窒息させる気か‼︎」

 

「夏だし轟君、かき氷作れたりしないかな」

 

「すげぇ!違和感が次々と解決していくぜ!」

 

「そっか、昨日今日とあいつら居なかったもんな」

 

(えぇ…あの2人重要すぎでしょ)

 

 

 麗日のモノマネによって活力を取り戻していく光景に拳藤は思わず唖然してしまう。

着々と緑谷(のモノマネをした麗日)と爆豪(のモノマネをした麗日)が案を出しクラスは活気のあるいつも通りのA組へ戻っていく……が、それも長くは持たなかった。

 

突如として麗日はその場で膝をつき、気怠そうな様子を見せる。

 

 

「くっ、……ごめんもうMP(気力)が……」

 

「くう!あと少しなのに!」

 

 

 限界を迎えた麗日。もはやこれまでかと思ったクラスに聴き覚えのある声が響いて来た。

 

 

「わぁ〜〜凄い!七夕祭りだ!僕も最初から出たかったなぁ……A組はお化けカフェにしたんだね」

 

「本物だ!本物が帰って来たぞ!」

 

「うぉぉぉおおお!俺達の欠けたピースが戻って来たぞ!」

 

(……え?何、あの人。心の内が読めない……と言うか考えを放棄してる⁉︎)

 

 

 なんと、ここに来て緑谷達が合流したのである。……若干一名(爆豪)、様子がおかしいのが居るがこれも売り上げの為。あえて触れる者は特に居なかった。

しばらくして客足は増え、1年の中でトップクラスの売り上げにまで伸びていた。

 

 

「いやぁ、一気に抜かれちゃったね。コレだから華のある奴らがいる組は……」

 

「華なんていずれ枯れる運命だよ」

 ↑

冷やかしに来た物間。

 

「そこの追い上げ…確かに見るべきモノがありますが。拳藤さんのおかげじゃないですか」

 

「別にいいんだよ。正直ちょっと悔しいけどライバルがパッとしないとさ。こっちもやる気が出ないんだよ」

 

 

 

「俺達A組は絶好調!」

 

「私達なら売り上げ1位で間違い無しだね!」

 

「今の俺達こそ真のA組!誰も欠けてないからこその実力だーーー!」

 

「やっぱり誰も欠けてないA組はいいもんだなぁ」

 

 

 

 

「あ!いたいた!さとり様ー」

 

「あら、お空。アイドルステージは終わったの?」

 

「ううん、これから第2ステージが始まるとこだよ。それに限定グッズもコンプリート!……あ、でね?さっきからそこで覗いている人がいるんだけど」

 

「あらそう?入り難い人でも居るのかしr……」

 

 

 

 

 

|/|-|\

| 0M0 )

|⊂ /

|  /

 

※天倉

 

 

 

「え?」

 

「「「「「「「………あ」」」」」」」

 

 

そこでA組は気付く。

 

 

『今の俺達こそ真のA組!誰も欠けてないからこその実力だーーー!』

 

『やっぱり誰も欠けてないA組はいいもんだなぁ』

 

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

「……ナゼ、ミテルンデス」

 

 

欠けていたッッ!もう1つのピースの存在ッッ!!

 

 

「えっ、…あ、いや。違うんだよ?決して天倉君の事を忘れてたワケじゃないからね!?」

 

「そ、そうだよ!だから…さ?機嫌を直してくれないかなーって」

 

「ハハハハハ!?あれあれあれーーー?A組って誰も欠けてないから真の実力を出せる筈なのに1人忘れてるよー?あるぇー?おっかしぃな?あr──「ふん」───かひゅ」

 

 

刹那、天倉は物間の背後に回ったと思うと、一瞬のうちに彼の首に手刀を当てていた。

 

 

「……オンドゥルルラギッタンデスカァァァァアアアアッッ!!」

 

「天倉ーーーッ!?」

 

 

A組の 天倉は にげだした!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ありがとーッ!ステージの豚共ーーーー!アンコールに応えてもう1曲行くわ!」

 

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ」」」」」」

 

 

 ステージを飲み込むは爆音、騒音、悲鳴、とてもアイドルが発してはいけない声量が彼女の喉奥から出される。

舞台の上ではピンクを基調とした派手な衣装で身に纏ったアイドルらしき人物が立っている。

 

 

「オイオイオイ、死ぬわアイツ等。なんで人気なんだ?あのアイドルは」

 

「ご存知、無いのですか⁉︎彼女こそ、バラエティや代役などからチャンスを掴み、アイドルの座を駆け上がっている貴族令嬢色物シンデレラ。エリザベートちゃんです!」

 

「なんでもいいけどよォ、良くまぁ暴徒が出ないよなぁ」

 

「それについては、パトロール兼ボディガードのヒーローがついてるからだよ。ほら、あそこに番犬がいる」

 

 

 指をさした方向には雄英にて生活指導担当するヒーロー【ハウンドドック】が警備を務めていた。

 

 

「バウッ!バウバウバゥッ!」

 

「アマッ!アマアマアママッ!」

 

 

「なんか変な奴が居───いや!増えてる!?」

 

 

 面食らったのも無理はない。先程まで居なかった筈であるハウンドドックの隣に赤目の緑色の何かが同じように警備を務めていたのだ。

 

 

「……良いのか、一生に一度の思い出だぞ」

 

「…すみません。変な事喚きながら飛び出してしまったんで戻り辛いんです」

 

「確かに戻り辛いのは分かる。……が、そんなつまらないプライドよりも素直に謝った方がグルルルッ!!」

 

「確かにそうかもしれませア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!」

 

 

 隙を見て舞台に乗り込もうとする悪質なファンを威嚇しつつもハウンドドックは教師として天倉の相談に乗っていた。

 

 

「君の事は良く知っている。……環境の違いというヤツ…なんだろうな」

 

「違いですか……」

 

「君、A組の空気は慣れてない……と、言うよりかは苦手なんだろう?」

 

「………」

 

「図星…か。確かベストジーニストの所で補習を受けて来たそうじゃないか。そこで何か掴めたのか?」

 

「…ジーニストが言うには、俺は心の問題と言ってました。理想を押し通す……我が足りてないんだと思います」

 

 

 

「皆は我が強くて…自分に自信を持っている人がほとんどで……皆、高みにいる存在に見えて……俺、やっぱり怖いんです。皆は俺の事を失望、軽蔑してるかもしれない、そう頭の中に思い浮かんで来て……心の底から信じるって言うのが出来ないんです」

 

「……グルルル……ッ!」

 

「あ、いや。職場体験で皆の事をもっと信じようって思ってますよ!ただ、頭で分かっていても……」

 

「それは傲慢だ。寧ろ、何故自分が特別だと思っている?君のような生徒はゴロゴロと居る。今もなお、精神的にツライと言う三年生も存在する。逆にプロにだってそう言う人物が居るのも珍しくない」

 

 

ハウンドドッグの指先が天倉の胸元にトンと置かれる。

 

 

「認識を変えろ。君は異常でも何でもないんだとな」

 

「ハウンドドッグ………」

 

 

 いつからだったのだろうか?自分が皆と違うと思ってしまったのは。自分が強いから?自分の姿が人を大きく離れているから?

 

違う、最初からだ。

自分が周りと違うと認識していれば"嫌われても仕方ない"と思えるからだ。

 

 

(自分は異常じゃない……か)

 

 

 簡単そうだが一筋縄では行かなそうだ。周りと馴染むには自分から変わるのが大事だと言うのは分かる。

……しかし、本当にやれるのだろうかと言う不安が彼の中で渦巻く。

 

 

(……いいや、やるんだ)

 

 

 不安を押し退け彼は決意する。簡単じゃないか、周りと自分は同じだと思い込むなら逆立ちしながら飯を食べる事よりも容易い事だと自分に言い聞かせる。

 

 

「ハウンドドッグ、ありがとうござ────」

 

 

 感謝の言葉を言いかけた所で、天倉の口は途中で止まる事となった。

 

 

「? どうした」

 

「?」

 

「……あ、いや」

 

 

 一瞬、ハウンドドッグの頭の上に何か居たような気がしたが気の所為と思った天倉は目を擦り、もう一度彼の頭上に視線を向け───

 

 

ヘ○ヘ

  |∧    

 /

 

 

「なんか居る!?」

 

 

 ハウンドドッグの頭上にグ◯コめいた荒ぶる鷹のポーズを決める女の子が立っていた。

 

 

「え?は、ハウンドドッグ?」

 

「…未だに心配する気持ちは膨れ上がるか……」

 

 

ハウンドは天倉の肩に大きく毛深い手をポンと置く。

 

 

「周りと違う事を恐れるな。お前はこれから特別を目指せ。例えお前が異常と思い込んでも、俺はお前を拒む事は無い」

 

「ハウンドドッグ!(やばい、話が頭の中に入ってこない!?)」

 

 

 何なのだコレは、一体どうすれば良いのだ。ツッコミ待ちなのだろうか?と天倉の頭の中がグルグルと困惑の意で満ちる。

 

 

「あの、…その頭の上に居る緑髪の女の子は…娘さんでしょうか?」

 

「……何を言っている?」

 

「いや、そのままの意味なんですが……お、おーい、君?そんな所にいちゃ危ないから降りなさーい?」

 

「……そうか、お前、そこまで疲労して……いや、イレイザーヘッドから聴いていたが、幻覚が視える程にまで……」

 

 

 俯きながら額を抑えるハウンドドッグ。目の前の生徒に君は異常じゃないと施していたら、本当に異常だった自体に困惑しているのだろうか。グルルと喉を鳴らし天倉を不憫に思う。

 

 

(……あれ、どう言う事?本当に見えていないのか?……いや、そもそも()()()()()()()()()?)

 

 

 頭の上に乗っている女の子にジッと視線を送る天倉。ウンウンと唸っているハウンドドッグを尻目にそっと指を近づける。20cm、10cmと次第に距離は縮まっていき、天倉の指はツンと女の子の頰に吸い込まれるように触れた。

 

 

「ッ!?」

 

(やっぱり、幽霊とか、幻覚とかじゃない!本当に居る!)

 

 

 驚愕する女の子と天倉。しばらくして、ポツリと緑色の髪をした女の子は呟く。

 

 

「…視えて…いるの?」

 

「はい?」

 

「視えているのかと聞いているッッ!」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハウンドドッグ…俺、疲れてるみたいです……ちょっと、休んできます」

 

「……そうか」

 

 

 しばらくして天倉は今年で何度目か覚えていないであろう思考停止(考えるのをやめた)を行うのだった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「どうですか!そこの黒い翼を持ったお方!私渾身ベイビーの『マキシマムマイティver.0』!!最大級のパワフルボディでダリラガン!ダゴズバンとパワーアップできますよ!」

 

「ほほう!コレは凄いですね!記念に一枚!」

 

 

 相変わらず雄英高校は面白いと思う。良くも悪くもキャラが濃い人達ばかりだ。目の前にいるサポート科の人なんて、自分の発明を売り出す為に実験台にしようとしたり、私のような記者らしき人達に向け露骨にアピールしようとする魂胆が見え見えである。

 

 

「所で……この人が何処にいるか知りませんか?」

 

 

 そんな私がここに来た主な目的である人物の写真を目の前の人物に見せる。すると、目の前の…発目と言うヤバい人は「ああ!」と頷く。

 

 

「早速、彼に私のベイビーをアピールしてもらう為に実験台になって貰わなくては!」

 

「堂々と言いますか!?」

 

 

 この人、予想していた以上にヤバかった。将来、とんでもない発明を残しそうな気がしてならない私は自身の『絶対にインタビューリスト』に名前を残す。ちなみに堂々たる一位は目的の天倉孫治郎だ。

 

……ん、待てよ?今、早速と言いませんでしたか?

 

 

「もしかして……来てるんですか?今、此処に?」

 

「?居ますよ」

 

「居るんですか!」

 

 

 来た!メイン目的来た!これで勝つる!やはり、今の私はついている!なんか校門前でヤバい人に会ったが、そんな不幸も吹き飛ぶ出来事が私を待ち受けていたのね!

 

そう思いながら数々の発明品の陰から現れ─────

 

 

「………」

 

「………」

 

「それでは、天倉さん!私のベイビーに搭乗をお願いします!」

 

 

 なんか、ものすごくやさぐれた上に死んだ目をした天倉孫治郎だったのです。

 

 

「……あ、ああ!天倉さん奇遇ですね!お久しぶりです!」

 

「……あ、確か…射命丸さんですよね……どうも」

 

 

 テンション低ッッ!?いや、元々テンションの高い人物じゃない事は知ってたけど、そこまでテンションの低い人物でもないでしょアナタ!

 

 

「そ、それじゃあ再会の記念に一枚!」

 

「あ、すいません…そう言うのやめてもらえます?」

 

「え、あ、はい……」

 

 

……やりにくッッ!?

私の営業スマイルもペースも乱されるし、何この全てに絶望した感じの人は!?いや、確かに体育祭でもこんな感じの場面あったけど!

 

 

「それでは!マキシマムパワーエエェェッックスッ!!!でお願いします!」

 

「はい、分かりました」

 

 

 うわ……それに加えて発目さんブレやしねぇ。天倉の方も断れば良いのに……いや、根が優しく、押しに物凄く弱い所を付け込もうとしている私が言える立場じゃないのは分かっているけど…。

 

そんな事を考えている間、天倉は巨大なパワードスーツを身に纏う。

確かに、凄まじい威圧感を与えると言うか……うん、ハッキリ言って発目と言う人物が制作する発明品は凄い。

 

 

「……あー、凄いですね……あ、君。頭の上乗ったら危ないから」

 

 

 時折、天倉が何も無い筈の空間に話し掛けているのが気掛かりだ。

これが、雄英高校の実態だとすると面白そうな記事を書けそうな気がする……と思ったが、ピンク髪の女の子が凄い形相でこちらを睨んで来る未来が容易に想像出来た為、断念する事にした。

 

 

「いやぁ、ありがとうございました!」

 

 

 と、いつの間にか実験は終わっていたらしい。見るのを忘れていたのが若干悔しい気もするが、こちらとしては本命の相手に取材する事を優先する事にする為、仕事モードに切り替える。

 

 

「いやぁ!天倉さん実に素晴らしい実験でしたね!私見ていてワクワクしてしまいましたよ!」

 

「あ、そうですか?」

 

「それにしてもどうしたんですか?どうやら疲れているみたいですが……?疲れているなら…、私みたいなお姉さんと一緒にデーt「あーーーー、いや、違います」

 

 

 何が違うのだろうか?と言うか、私の色仕掛けに全く意を示さないのは女として結構ショックを受ける。すると、彼は死んだ目をしたまま口を開く。

 

 

「なんか俺、疲れてるんじゃなくて、"憑かれてる"みたいで。……さっきから緑色の髪をした女の子が『私、古明地こいし!』『お兄ちゃんってすっごーい!』とか耳元で囁いて来るんです……ヤバくないですか?」

 

 

ハッキリ言おう。ヤバいわソレ。

え、何?少しはネタとして成長したかと思ったらなんで思い切りオカルト系に走ってんのコイツ!?

 

 

「あ、ダメだから。その人のカメラ触っちゃダメだから。……え?無意識だから許せる?何言ってんの?」

 

 

 アンタが1番、何言ってんの!?ヤベェ……予想以上にヤバいわねコレ。こんなのじゃ有意義な取材になりそうにないし、さっさと撤退させてもらおうかしら?

そう思い、側に置いておいたカメラを手に取ろうとしたが気付く。

 

"目の前で私のカメラが宙に浮いていた事に"

 

 

「!?」

 

「ほら、サッサと返して───あ」

 

 

瞬間、浮いていたカメラは重力に沿って落下しコンクリートの床へと叩き付けられガシャンと言う音と共に粉砕したのだ。

 

……あ

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!?私のカメラがァァァァァァアアああああああああああああああああああああああああああああッッ!?」

 

「あーーー!?すみません!すみません!?ちょっと、君、何やって……って!逃げるなァ!!!」

 

 

 そう叫びながら彼は人混みの中を掻き分け姿を消してしまった。こんなの…残酷過ぎる……ッ!私の血と汗と涙の結晶とも言っていいカメラが……ッッ!

 

 

「いやぁ、見事に粉砕されていますね……、そんなアナタにオススメの発明品がこちら!」

 

「いや、こんな時に売り込もうとするなし」

 

 

うううううう、最悪……、変な女の子には絡まれるし、天倉はテンション低いし、カメラは壊れるし……て言うか、何が憑かれてるよ!古明地こいしとか無意識とか意味分からないっての!

 

 

……ん?……無意識?

 

 

頭の中で何かが引っかかる。

何かそんな事をニュースとか、新聞とかで見た気がする……。

 

 

「んっ、んんんんんんんんんんんんん?いつ?何処で?んんんんんんんんんん?」

 

「……私の妹について何か?」

 

「妹ですか?あー、確か姉妹とか聴いたような……ん?」

 

 

振り返ると、そこには校門前で会ったピンク髪をした女の子が……。

 

 

「あやややややややややややややややややッッ!?妖怪ヤンデレ天倉置いてけェ!?」

 

「なんですかその名前は!?……後半は悪い気がしないけど」

 

 

 げぇっ、私の見立てでは心を読む事が出来る"個性"を持っているに違いない。

……って、こんな事考えても全部見抜かれている…か。

 

 

「正解です。……で、私の妹の名前を何故アナタが?」

 

「そんなの……アナタの"個性"で見れば早いでしょう?」

 

「………! 天倉さんが?」

 

「そ。どうしたの?と言うかアナタの妹が関与してるなら、サッサとなんとかしてくれない?今の彼じゃ取材しようにも全く良い記事が書けないから」

 

「……失礼します!」

 

 

そう言うと彼女は駆け出して行ってしまった。

……姉妹に無意識か……、まぁ、今の私には関係ありませんし放っておきましょうかね。

 

 

 

……無意識、姉妹…事件…あれ?なんかどんどん思い出して来たような……!?え?このタイミングで!?ちょっと、私はあくまで記者であって巻き込まれて危機に瀕するのだけは、

……あ、ああーーーーーー!!!完璧に"思い出してしまった"!?

 

 

 

「そうよ……!ちょっと、コレ不味くない!?」

 

 

数年前、事件が起こった。

とある姉妹の両親についてだ。その両親はどうやら姉妹に対して虐待を行なっていたらしく、特に姉に対して酷く当たっていたらしい。

ある日、その両親は突如として互いを殺し合うように死亡したと言う不可解な事件だったのだ。

 

しかもその日の翌日、無個性だった筈の少女は"個性"を発現させたらしい。しかも例を見ない"個性"だった為、馬鹿な誰かが面白半分にSNSに投稿していたのを覚えている。

 

確か、"個性"は【無意識】。

 

そうだった、思い出した。彼女が姉、そして古明地こいし=妹、と推測するなら、古明地こいしと言う人物は

 

 

その事件で亡くなった両親を殺害してしまった"容疑者として有力視されていた者"だ。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「あーあ、捕まっちゃった」

 

 

 この子は一体何なのだろうか。バナナ師匠とか、変な類の輩だと思っていたが、どうやら違うらしい。

 

 

「お兄ちゃんとの鬼ごっこは楽しかったけどもう、終わりかぁ」

 

「お兄ちゃんって……俺?」

 

「そうだよ〜。酷いなぁ、"唯一無二の血の繋がった妹の事忘れるなんて"!」

 

「……あー!そう言えば居たな!ごめんごめん!それじゃあ出店を見て回ろうか!」

 

「わーい!ありがとうお兄ちゃん!」

 

「そうか、それは良かっ────ッ!?」

 

 

……え?待て、え?なんで、俺、この子を自分の妹だって、認識していたんだ!?

 

 

「……あーあ、もう切れちゃったの?お兄ちゃん、少しは空気読んでよね〜」

 

 

 俺は一歩、その場から後退する。……おかしい。おかしいぞコレ。

なんで、この娘からは何も感じない?

この子からは悪意とか善意とかそう言うヤツが全く感じ取れないッ!?

 

 

「……あー、大丈夫だよ。ただ"無意識にそう思い込ませた"だけだよ」

 

「君は……⁉︎」

 

「はじめまして、私は古明地こいし。改めて助けてくれてありがとねお兄ちゃん」

 

 

古明地こいし、自分の妄想とかそう言うのでは無く、彼女はやはり……【古明地さとり】さんの妹…!

 

 

「……さとりさんは…一緒じゃ無いの?」

 

「ううん、お姉ちゃんったら私を置いて行くんだから酷いよねー。まぁ、仕方ないのかもしれないけど」

 

「……君は、何がしたいんだ?」

 

「別にー?私はただお兄ちゃんと一緒に回りたいだけだよ……あ!そうそう!後ね!」

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんを私の家族にする為!」

 

「……家族に?」

 

 

 どう言う事だってばよ……、いや、全く意味が分からんぞ!意味不明!そんな事を思っている俺を気に留めず彼女は口を開く。

 

 

「私の父さんと母さんはねー。どうしようもない人達だったんだよ?お姉ちゃんや私の事を毎日虐めてさ?もう嫌になっちゃうの」

 

「どいつもこいつも、お姉ちゃんの事をよく思わない人達ばかり。要らないんだよね、お姉ちゃんの事を好きにならない人は……」

 

「だけどね!お兄ちゃんは違うの!お姉ちゃんはお兄ちゃんの事好きだし!私はアナタと同じだし!」

 

 

……何を言っているんだこの子は……?かなり重い事を言ってるのは分かるけど……つまり、何をしたいんだ?

と言うか、同じってどう言う……。

 

 

 

「……分からない?……うーんとね、私はお兄ちゃんの中のお兄ちゃんに惹かれてたんだよ」

 

「俺の中の……俺?」

 

「そう!私、知ってるよ。たいいくさい…だっけ?アレで見たの!本当のお兄ちゃんの姿!圧倒的で、素敵なお兄ちゃんの姿!」

 

 

ニコリと彼女は不気味な笑みを見せる。

 

 

「す、素敵って……いや、アレは「アレがお兄ちゃんの本来の姿なんだよ?」……え?」

 

「深層心理とか防衛反応とか、意識で簡単には変えられない部分。それが無意識。あの時のアナタは無意識が浮き出た本当の姿」

 

 

 

 

 

「何者も傷つけて、全部壊して壊しても満足する事の無い絶対的な暴力の塊。ソレが兄ちゃんの本当の姿なんだよ〜」

 

「そんな訳……「違うと言い切れる?」ッ!」

 

 

目の前にいた少女はいつの間にか距離を縮めていた。

すると、彼女の瞳が鏡のように俺の中の俺を映し出していた。

 

 

自覚してよね、アナタの中のアナタはドロドロしたものでいーっぱいなんだもん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「意識外の存在《もう1人の自分》に嘘はつけない。お兄ちゃん自身が自分を抑える必要は無いの。わざわざ知らない他人の為にヒーローを演じる事をしなくていいんだよ」

 

「でも、私はお兄ちゃんの事を軽蔑なんてしないよ?お兄ちゃんは私と同じ同類(異常)なんだから嬉しいの!」

 

「だからね……私達はアナタを歓迎するよ」

 

 

意識が堕ちる。

 

総てが呑み込まれるように

 

全てが消え去るように

 

委ねたい、自分の居場所が欲しい

 

彼女は……俺の味方だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鋼の意思』

 

『自分の意思を貫く事』

 

『どんな逆境にも自身の決めた通りの理想を押し通す事』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

俺は、彼女を抱きしめていた。

困惑している彼女に俺はポツリと呟いた。

 

 

「ありがとう」

 

 

そう一言言うと、俺は彼女と向き合う。

 

 

「どんなに苦しくたって、どんなに苦難が待ち受けても、それは皆だって同じなんだ」

 

「それでも、俺はヒーローだから。俺は全部に向き合うよ。敵にも、俺自身(俺の中の俺)にも」

 

「皆が心の底から笑えるように、俺は皆の笑顔を守れる希望の支え(ヒーロー)になる」

 

 

俺は指を使い彼女の頰を無理矢理、押し上げた。

 

 

「むぐっ」

 

「俺が最後の希望だ」

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

 

(お姉ちゃんの気持ち、分かったかも。この人って、底抜けの馬鹿なんだ)

 

(無理だよ?この世界はそんな綺麗事で通れるような所じゃないって私は知っている)

 

 

 彼は自分と同じだと思っていた。全てを悟り、救われるのを諦めた側なのだと、感じていた。自分の姉の為に総てを諦めた彼女は困惑の意を示す。

 

 

(だから、全部無意識で行動すれば痛くも何ともない。それなのに、わざわざ叶いっこない夢を叶えようとするの?)

 

 

 訳が分からない。彼は何の為に自分に笑って欲しいのか、希望だとほざくのか。

……だからなのだろうか。

訳も分からないから?それとも自分自身が壊れているから?

 

いや違う。彼が馬鹿なのだ。

 

 

(馬鹿だから、そんな事を言えるんだ。……そんな馬鹿な事を正直に言われちゃうと、私、私────)

 

 

 

 

 

「ぷっ、……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!?馬鹿なのお兄ちゃん!ブフッ!そんなの今時の子供だって言わないよ!アハハハハハハハハハあー、お腹痛い!」

 

 

───心の底から笑っちゃうよ!

 

 

「笑われた!?」

 

 

 

 いつ以来だろうか?心の奥底から笑ったのは。常に姉の為に行動して来た自分自身にも訳が分からない込み上げる笑いの感情。

 

怖い。

 

怖い筈なのに……不思議と悪い気はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ステージの豚共ーーーー!ラストスパート行くわよッ!」

 

「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」」」」」」」」」

 

「お兄ちゃん!ホラ!見て!エリちゃんV(ファイブ)だよ!」

 

「あれ?なんかロボットが混ざってない?なんで?」

 

 

熱狂する観客席に混ざる1人の男子生徒と女子。

……そんな彼等を見守る二つの視線が遠くに在った。

 

 

「………」

 

「どうやら、心配して損みたいでしたね。あーあ、もっと面白いネタとしての映えを期待していたんですがねぇ」

 

 

 アイドルの声量がギリギリ届くか、届かないかの距離を置いた古明地さとりと射命丸の2人。全く返答が来ない彼女のリアクションがつまらないと感じたのか、煽るように語りかける。

 

 

「……いいんですか?会いに行かなくて?愛しの英雄(ヒーロー)様ですよ?」

 

「………私はあの事件からこいしにどう接すれば分からなかった。……天倉さんなら何とかしてくれると逃げていた。水晶のような輝きは心の底から笑わせてくれる。天倉さんは……私の憧れでした」

 

「おやぁ?アナタの大好きな人が妹さんに取られてますよ?姉妹との愛憎劇…うん!良いですねェ!」

 

「……ハァ、そう言うのじゃ無いですよ…。あとしばらく色恋沙汰には手を引く事にします」

 

「……おや、いいんですか?恋との出会いは一期一会。ここで逃したら後から後悔するんじゃ?」

 

「……その前に、やる事があります」

 

 

笑みを浮かべ、彼女は呟く。

 

 

「一度、こいしと……しっかり向き合ってみようと思います。恋は後からにしますよ」

 

「………」

 

「……ありがとう私のヒーロー。アナタは妹を救ってくれた」

 

「……あーあ、メディアはそう言うの求めてないってのに」

 

 

不貞腐れた記者はパシャリとカメラのレンズをコンサート会場の一部を捉える。

 

 

「ヒーロー…ね。まぁ、私は記事にするぐらいしかやらない訳だけど……期待してるから精々頑張ってよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっさ!?声でっかいし、なんか掠れてる所あるし!……でも、なんか楽しい気がする!」

 

「凄いよお兄ちゃん!こんなに楽しいなんて知らなかった!」

 

 

 

カメラのレンズに映る少女の顔。

そこには満面の笑みで溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかった?皆」

 

「はーい!」

 

「ハァ…ハァ…、あ、あれ?私、何やってたんだっけ?…何故かネズミを追いかけていたような……」

 

「カシラァ!何処にいるんですかカシラァ!」

 

「あー、結局カシラとは会えなかったなぁ……まっ、来年に会えるだろうから良いか!」

 

「そうだな、よっしゃあ!風都三羽烏!目標は雄英高校ヒーロー科合格だ!」

 

「「「オオォッ!」」」

 

「そう言えばさ、こいしちゃんっていつの間に居たの?お家で留守番してたんじゃ?」

 

「何言ってるの?"私も一緒に来ていたよ"」

 

「うん……?そう、それなら仕方がないか……」

 

 

 "個性"を使った事に気付いたさとりはジッとこいしに視線を向ける。すると、苦虫を噛み潰したような表情をしながら"個性"を解除する。

 

 

「…ごめんなさい。本当は黙って付いて来ました……」

 

「……うん、謝れたね。偉い偉い」

 

「あっ……うん」

 

 

 照れ隠しなのか、帽子を深く被りバツが悪そうに俯いてしまう。その様子をさとりは嬉しそうに眺める。

すると、こいしは「あ」と何かを思い出したように呟く。

 

 

「私、お姉ちゃんの好きな人をNTRしたよー」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

無意識だから仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。Aクラスの全員は天倉の元に詰め寄っていた。

 

 

「天倉君。僕達が悪かったよ……」

 

「本当にごめんッッ!」

 

「俺達は…共に切磋琢磨し合う仲間だと言うのに……ッ!すまん!」

 

「……いや、良いんだよ皆」

 

「だからさ……お願いだからロリコンに目覚めたって言うのは嘘って言ってくれよぉぉおおおおおお!」

 

「嘘だよな!第二の峰田なんかにならないよな!」

 

「俺達、信じているぜ」

 

「でも、何人かが緑髪の女の子を連れ回していたって言う証言が……」

 

なんでさ!!!

 

 

 

 いつの間にかロリコンとして噂が広まっていた事実に天倉はただその場で叫ぶ事しか出来なかった。

 

 

 

 

「ピュウ!」

 

「………」

 

 

後日、峰田から同類を見るような視線と仕草をされた天倉は大変不服だったと言う。

 






【古明地さとり】

 負けヒロイン→ヤンデレ系ヒロイン→妹と向き合う系ヒロインと強化されていったヒロイン。今回、天倉の事は一旦諦めると言ったが、妹としっかり仲良くなった後はどうするのだろうか?


【古明地こいし】

上記の妹。
ヤンデレ化とか風都での事件は全部、古明地こいしって奴の仕業なんだ!なんだって!それは本当かい?と言うのは冗談。天倉に精神的な揺さぶりを掛け、家族の一員と化すように唆した。

しかし天倉の攻守交替によりコロッと堕ちた。
意外とチョロい。


【エリザベート】

令嬢色物系シンデレラ。バラエティと代役などから勝ち取ったスターの座で瞬く間で人気に。よくパンチラするのはご愛嬌。
ハロウィンエリザ、ブレイブエリザ、メカエリチャン、メカエリチャン2号機と言うように原因不明の増殖を果たしているが本人は気にしてない模様。

色物系って良いよね……!

原作『Fateシリーズ』より


【射命丸文】

情報収集担当。
ヒーロー漫画でありがちな情報屋ポジションのマスコミ自称記者。
天倉=ネタの宝庫として認識しているが強ち間違ってない。

表面上、人とは敬語を使い丁寧に接しているが本来はドライな性格であり自身に危険が及ぶ場合は素直に引く。天倉に喝を入れた事もあるが、あくまでネタとして潰れないようする為である。

実は同級生ではなく天倉達よりも年上の17歳(高校2年生)。







【悲報】古明地さとりヒロイン枠から外れる。

……と、言う冗談はさておき今回、古明地さとりは天倉君と同じ境遇だった人物として描写させてもらいました。
天倉君と同じ立場であり、彼に助けて貰った。

彼だけは私に味方してくれる本当の理解者!
好き!抱いて!そして一生私だけを見て!私の事を見捨てないで!
他はどうでも良いの!
と言う感じに作者としてはヒロインでは無く、天倉に依存してしまった悲しき人として表現しました。


その妹である古明地こいしの場合、お姉ちゃんの為ならなんでもやる。え?自分が不幸になる?それがどうかしました?姉の為なら自分は死んでも良いの!私はどうなっても姉の為に何でも行動する!そう!何でも!

ん?今、何でもって言った?


と言う感じに姉妹揃って精神的にヤバイ事になっているキャラに変貌を遂げています。虐待や"個性"により肉親の命を奪ってしまうと言うように作者的にヒロアカの世界は

『誰でもヒーローになれるのなら、誰でも敵になれる可能性が大いにあり得る』

と言った感じになっております。
そんな姉妹ですが姉の方は吹っ切れ、妹と向き合うように。妹は本当の意味での"楽しむ"事を知りました。


この姉妹の人生に祝福があらん事を。



ちなみにこいしから天倉への感情は同族又はお兄ちゃん的な感情なので恋愛はありません。

姉妹丼(古明地Wヒロイン)を期待したアナタ。悔しいでしょうねぇ…!
フッハハハハハハハh(無言の腹パン




ビデオパスで仮面ライダー龍騎を見てきました。
ネタバレは控えますが最後まで龍騎らしいストーリーでした。



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53話 いあ!いあ!


久方ぶりの日常パート。
サブタイトルから不穏な気配がするがコレは日常パートだ。誰が何を言おうとも日常パートなんだ。




 

 

「期末テストまで残すところ一週間だが…お前等ちゃんと勉強してるだろうな?テストは筆記だけでなく演習もある。頭と体を同時に鍛えておけ。以上だ」

 

 

 先生がそう言い残し放課後の時間へと差し掛かる。先生が教室から出て行った直後、芦戸さんと上鳴君の悲痛な叫びが響く。

 

 

「「勉強してなーーーーいっ!」」

※上鳴21位、芦戸20位

 

「確かに行事続きではあったが……」

※常闇14位

 

「中間はまあ入学したてで範囲せまいし特に苦労なかったんだけどな。行事が重なったのもあるけどやっぱ期末は中間と違って…」

※砂藤12位

 

「演習試験もあるのがつれぇとこだよなぁ〜〜〜~」

※峰田9位

 

「そう言えば峰田君って中間9位なんだっけ」

 

「「きゅーい!?」」

 

「あんたは同族だと思ってたのに!」

 

「オマエみたいなヤツはバカではじめて愛嬌が出るんだろうが!どこに需要あんだよ!」

 

「世界…かな」

 

 

若干、峰田君が偉そうにしているが普通に頭が良いんだよなぁ。

……いや、このクラスでは平均的な順位だけども。

 

 

「天倉はどうだった?」

※尾白8位

 

「……13位」

 

 

13位ッッ!不吉の番号にして忌み数として有名ッ!

唯一失敗したアポロ13号、イエス・キリストの処刑日である13日、タロットにおける死神のカード番号は13!

 

 

「俺、明日死ぬかも……」

 

「考え過ぎだぞ天倉!」

 

「底辺の俺達に対する嫌味かッッ!」

 

「そーだ!そーだ!学力主義反対!」

 

「良いよな、2人は……少し勉強できれば良い点数を取れるものを……。俺の場合、ベストを尽くした結果がコレだよ。補習者で問題児の俺にお似合いだろ…なぁ、笑えよ」

 

(((笑えねぇ……)))

 

「あれって貶してんのか?それとも遠回しに褒めてんのか?」

※切島16位

 

「遠回しに自分を貶してんでしょ」

※耳郎7位

 

 

 そんな俺の呟きに反応したのか委員長である飯田君がこちらへ歩み寄って来た。死にたい。

 

 

「何を言うか!ベストを尽くしたと言う天倉君はとても立派だ!」

※飯田2位

 

「飯田の言う通り俺も天倉は立派だと思う」

※轟5位

 

「そうだよ、元気だして天倉君!」

※緑谷4位

 

 

 続いて、轟君と緑谷君も良かれと思ってなのか俺を励ましてくれる。ありがとう皆、だけど順位が低い人から見ると嫌味になるから逆効果なんだよな。

 

 

「上位陣は人のココロがワカラナイ」

 

「ま、そう言うことになるな……主人公やぶれたり!」

 

 

 峰田君はしてやったらと言う顔で口を開く。……あ、そうだ。

 

 

「八百万さん太めの縄を出して。ちょっと首絞めて来る」

 

「はい……はいッ!?」

 

「ヤオモモを巻き込もうとするな!つうか、今すぐにアイツを止めろ!」

 

 

 放せ!!知ってるんだからな!どうせこの後、勉強したって赤点取った挙句にアクシデントが発生して俺だけ合宿に参加できなくなるってオチなんだろ!

 

 

「仕方ねぇなぁ……、なぁ天倉。これはオイラの秘蔵DVD。これ観ながら勉強すりゃあ1発で覚えられるぜ」

 

「……えっ!いいの⁉︎こんなチートアイテムをヒョイと渡して⁉︎」

 

「せめての情けさ。これで少しはオツムを良くする事だな」

 

「わーーーい!」

 

 

 峰田君サイコーじゃ無いですかやだー!やっぱり持つべきものは友達だよネ!

 

 

「早速再生しつつ勉強して来るよ!」

 

「あっ!天倉テメずりぃぞ!」

 

「独占反対!」

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

俺は駆け足で学校に向かい、教室に着くと同時に峰田君の元へ詰め寄る。

 

 

「峰田君貴様裏切ったなァ!」

 

「うぉぉぉおおおおおッ!どうしたんだ天倉!」

 

「何が観ながら勉強すればだよッ!あんなモノ観ながらやったら色々な意味で洗脳されるわッ!」

 

「な、何を観たんだよお前……」

 

「や、やばいよアレ……感度3000倍とか穴と言う穴とかブロック化とか……うぷっ……やばい。勉強した内容と一緒に朝食が外に出そう……」

 

「ホントに何観たんだよお前!」

 

 とにかく、人が踏み込んではいけない領域だった事は分かる。……記憶を消せる術があったら誰か教えて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

「……と、言うわけでさ心操君。一緒に勉強しない?」

 

 

昼休み

食堂でお手頃価格の鮭の塩焼き対象を口にする俺の言葉に心操君はしばらく考える素ぶりを見せる。

 

 

「……無理」

 

「ゴフォッ!(吐血」

 

「っと、飯ん時はやめないかソレ」

 

 

 そう言われ、俺が視線を下に移すとバシャリと光に照らされ光っていた白飯に調味料の如く吐き出された血が思い切りかかっていた。

……善処はする。

 

「じゃあせめてオブラートに包んで断ってくれないかなぁ……。最近付き合い悪いけど、どうかしたの?」

 

「あー、いや……(ヒーロー科編入の為にイレイザーから訓練受けさせてもらってるって言うのは気恥ずかしいな)」

 

「……?」

 

「本当に悪い」

 

「いいよいいよ、もしもヒーロー科に入る為に先生から指導受けてる〜〜とかだったら恥ずかしくて言えないだろうし、俺そこら辺は詮索はしないよ……って、どうしたのさ頭を抱えて」

 

「お前…、ワザとか?」

 

「?」

 

 

 

 最近どうも俺は恵まれていないようだ。色んな人と勉強したくてもタイミングを逃したり、断られたりと……。気が付けば放課後の時間となり家への帰路に着いていた。

 

 

「……どうしよ」

 

 

 俺がそう呟き期末試験の対策について思考していると、ふとファミリーレストランが視界に飛び込んで来た。

 

 

「ファミレスか……」

 

 

 すると、見計らったように腹からくぅと音が鳴り食への欲求が強まる。……こう言う所で勉強するのもアリかもしれない。

 

 

「……しゃっ!頑張るか!」

 

 

 俺がそう意気込み、入口の方へ歩いて行くと向かい側から見覚えのある2人組がやって来た。

 

 

「「「あ」」」

 

 

 切島君と爆豪君の2人である。しばらくお互い無言の状態が続きプルプルと震えながら爆豪君が怒りを抑えきれない様子で呟く。

 

 

「……んで、テメェが居るんだコラ、殺すぞ……!」

 

「あ、す、すみまs「おう!天倉も来てたんか!こっち来いよ!」

 

「「⁉︎」」

 

 

切島君、おま……えぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご注文がお決まりでしたらベルを鳴らしてくださーい」

 

「……」

 

「………」

 

「よーし!んじゃ勉強すっか!」

 

 

 勉強すっか!じゃないんだよ切島君コラァッ!なんで無理矢理、俺を混ぜたの!?切島君は良い友達って事は知ってるけどコレ、色々とヤバイからね!

 

 

「誰が教えるつった……!」

 

「んだよー!1人くらい増えたって変わりゃしねーって!」

 

 

 切島君の言葉に爆豪は益々機嫌を悪くしていく。クソッ!ヤバいぞコレはッ!このままでは高校生活初の林間学校がパァになってしまう!考えろ……脳味噌を回転させて考えるんだ俺ッッ!

 

 

「(ハッ!そ、そうだ!ここは緑谷君から教えてもらった『馬鹿でも分かるかっちゃん取り扱いマニュアル』の4ページを思い出すんだ!えっと、確か……)そ、そうだよね。流石の爆豪君にも1人で2人に勉強を教える事は無理だよね……」

 

「出来るわ!舐めんなコラ!教え殺したる!」

 

(嘘だろ爆豪君!?)

 

 

 こうして、爆豪君のぱーふぇくと試験勉強が始まったのだった。

とりあえず驚いた事があった。俺の中で爆豪君はマジモノの天才マンで勉強とかはフィーリングで正解しているモノだと思っていた。

 

 

「えっと、…ここはどうすれば良いんだっけ……」

 

「テメェ!そこはこうやって〜〜こうだ!脳に刻んでおけコラ!」

 

「えっ、あ、ありがとう(嘘ォ⁉︎怖いのにめっちゃ分かりやすい!?)」

 

 

 しかし、爆豪君怖いのはアレだが物凄く分かりやすいのだ。もうそこら辺の塾講師のバイトをしたら凄い事になりそうなくらいである。

コレなら、平均点以上取れるんじゃないのだろうか。

そう思っていた瞬間、鼻の奥にツンとしたような刺激が襲い掛かってきた。

 

 

「う゛ッなんだこの臭い……?」

 

 

悪臭の原因を探ろうと店内を見渡すと、ファミレスの入口に3人組の黒尽くめの人物達が入って来たのだ。

 

 

「えっ、黒尽くめ……?」

 

「んだ、アイツ等……」

 

「ホントだ……つーかよ天倉、鼻押さえて何やってんだ」

 

「なんか…ツンとするような…、そんでもって何か燃えた後のような……変な臭いがあの人達から……」

 

「ッ!」

 

 

 強張った表情で爆豪がその場から立とうとした瞬間である。パァンッ!と何かが炸裂したような強烈な音が店内に響き渡った。

 

 

「動くな!金を詰めろ!」

 

「チッ」

 

「強盗!?」

 

 

 そうか!さっきから気になってた悪臭は硝煙か!爆豪君は自身の"個性"による爆破で発生する硝煙の臭いとかそう言うのを知っていたのか!

 

 

「どうする?」

 

「決まってる!」

 

「ブッ潰す!」

 

「なんか想像はしてた!」

 

 

 そう言いながら俺達は"個性"を発動しようと動くが、複数いる黒尽くめの内の1人が店員を無理矢理引き寄せこめかみに拳銃を突きつけたのだ。

しまった!先手を取られた!?

 

 

「動くんじゃあねぇッ!」

 

「ッ!」

 

「テメェ等…雄英生だよな。体育祭知ったんだよ」

 

 

 ニィと不敵な笑みを浮かべる男。まさか俺達の顔を知っているとは思わなかった。ジリジリと隙を伺う爆豪君だが犯人は隙を見せる瞬間すらも与えないように叫ぶ。

 

 

「少しでも動いたらそこに居る奴等に鉛玉ブチ込んで………」

 

「「「?」」」

 

「てっ、テメェはぁぁぁぁぁぁああああああああああああッッ!?」

 

 

 男の声が途切れたと思うとこちらに指を指し腹の底から声を上げ始めた。

……あーーー、ハイハイ。そういう事ね。

 

「爆豪君取り敢えず謝っておこう……?」

 

「なんで俺なんだよ!」

 

「落ち着けって爆豪!まずは心当たりがないか良く思い出すんだ」

 

「オメェも俺が悪い事した前提で話進めんなや!」

 

「ちげぇよ!そこの2人と比べて地味な方のガキだよ!なんでこんなトコに居やがんだ!」

 

 

……えっ、俺なの?

そう思っていると切島君が声を掛けてくる。

 

 

「天倉知り合いか?」

 

「いや、全く」

 

「馬鹿にしやがって……ッ!俺の"個性"見れば分かるだろうがぁ!」

 

 

すると男の身体の至る所から金属製の刃が生えたのだ。

……あっ、ああ!

 

 

「あっ、あなたはッッ!?第1話辺りで主人公()のインパクトを出す為に噛ませにされた量産型(ヴィラン)!?」

 

「覚えてるじゃねぇかクソッッ!」

 

 

 悔しそうに爆豪君みたいな汚い言葉を発した後、敵は俺に向かって叫んだ。

 

 

「テメェはレジからこのバックに金を詰めろ!早くしねぇと人質をブッ殺す!」

 

「えっ」

 

「早くしねぇとコイツの脳梁をブチまけるぞ!」

 

「わぁぁぁぁぁあああッッ!」

 

 

 あー!もう!分かりましたよ!クソッ!えーっと?レジってどう開けるんだ?と言うかこれ完璧に敵の行為の一部を担がされてるじゃん。

……とにかく、状況はマズイ。敵は複数人。見た所3人くらいで1人は他にも隠れている奴が居ないかトイレに向かっている。とりあえず、隙をついて何とかしないと……。

 

そう思いながらレジを適当に弄っているとファミレスから緑色の何かが現れる。

 

 

「旧支配者だ、信仰しろ」

 

「何か来た!?」

 

「早くしろ!さもないと"1D100のSAN値チェック"を強制的にやらせるぞ」

 

「わぁぁぁぁぁあああッッ!」

 

 

コイツも仲間なのか!?

と言うか、信仰ってどう言う事だよ!旧支配者ってなんなんだよーーーーーーッ!

 

 

「金を詰めろ!」

 

「わぁぁぁぁぁあああッッ!」

 

「信仰しろ!」

 

「ふんぐる!ふんぐる!」

 

「金を詰めろ!」

 

「わぁぁぁぁぁあああッッ!」

 

「信仰しろ!」

 

「ふんぐる!ふんぐる!」

 

「金を詰めろ!」

 

「わぁぁぁぁぁあああッッ!」

 

「信仰しろ!」

 

「ふんぐる!ふんぐる!」

 

 

 

ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん──ハッ⁉︎

一瞬、意識があらぬ方向へ飛んでた気がした俺が視線を元に戻すと

 

 

 

「おい、オッサン!俺が先だ邪魔すんな!」

 

「何言ってんだボケ、俺が先だ」

 

「んだとコラテメスッゾオラッ!」

 

「んだとテメスッゾオラボケオッラー!」

 

 

なんか言い争っていた。

……うん、よく分からないけど、緑の方は何か害は無さそうな気がする。

今の内に倒すって言う手もあるけど、まだ見張りもいるし……まだ動く時じゃ無い……よな。

 

 

「すみませーん、取り敢えずお金詰めたんで…、人質を解放してもらっても……」

 

「うるせぇ!引っ込んでろ!」

 

「信仰しろー」

 

「邪魔すんなやオッサン!」

 

「テメこそ邪魔すんなボケ」

 

 

……………。

 

 

「サッサとすっこんでろ!いい加減にしねぇと撃t──ボグォッ!」

 

 

 俺は敵に対してシャイニングウィザードをかましていた。

理由?ムシャクシャしてやった。

どうやら話している最中に攻撃してくると思っていなかったのか、敵は1発でノックダウンしてしまった。

 

 

「テメ──「死ねやァッ!」

 

 

 敵の1人が銃口を向ける直前、爆豪君が待ってましたと言わんばかりに爆破をお見舞いする。俺の行動で呆気にとられていたのか反応しきれず、そのまま爆豪君の爆破連打で床とキスする事となった。

 

 

「切島君!避難誘導!早く早く!」

 

「おう!……ってか、俺の活躍地味だな!」

 

「残るは1人……天倉ァ!ピット器官で伏兵いねぇか調べとけ!」

 

「う、うん。トイレに2人だね」

 

「あ?"トイレに2人"だぁ……、ま、全員ブチのめしたらァ」

 

 

 

 

 

 

「チッ、クソ。油断しちまった…!」

 

「!」

 

「ぶっ潰───」

 

 

 この声は……さっき蹴り飛ばした筈の敵!ピンピンしている!?浅かったか!そんな敵の姿を見た爆豪君が爆破によるターボで接近する素振りを見せたが途中でピタリと止まってしまった。

 

 

「どうしたの爆豪く────」

 

「チッ、こうなったら金だけでも……あ?なんだこの感触」

 

 

 俺と爆豪君が呆気に取られたのも無理はなかった。何故なら今現在、敵がバックと思って掴んだモノ。

それは──────

 

 

「それは、私のおいなりさんだ」

 

「うわぁぁぁあああああああああぁぁあああ!!?!?」

 

「「⁉︎」」

 

 

変態だった。

ブリーフと網タイツを身に付け、女性用の下着を仮面のように付けた変質者だが現れたのだ。さらに厄介な事にブリーフのゴムを交差させ肩にかけるレスリングのコスチュームの彷彿とさせ、エグさが増しており、見ているだけでヤバいと直感できる。

 

 

「だぁぁあああああああああああああああああああッッ!」

 

「どうした!何があった!」

 

「と、とととととととトイレ!トイレにィッ!」

 

 

 すると、敵の1人が出てきたのであろうトイレの扉がギィと音を立てながら開かれる。俺達は再び唖然とする事となった。理由は単純明快である。

 

 

「バビロン!」

 

「トイレからピンクのグルグルがァーーーーーーッ!」

 

「「!?」」

 

 

変態を超えた下ネタが登場を果たしたからである。

頭がとぐろを巻いたソレを彷彿させる形状をしており、下ネタが大好物な小学生辺りの子供達に見せたら確実にNGワードが飛び出す事間違いないだろう。

と言うかピット器官で見た熱源の1つってコレか……。

……い、いやまだイチゴ味のソフトクリームと言う可能性が……!

 

 

「さぁ哀れな子羊達よ、魂の宴を始めよう」

 

(うっわ、台詞!)

 

 

 常闇君辺りが反応しそうな台詞と裏腹に外観がアレなギャップに引いていると、そこからは圧倒的な蹂躙と言う光景が広がっていた。

 

 

「フォォォォォオオオオオオオオオオッッ!」

 

「がぎゃぁぁぁああああ!?」

 

「砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕砕ッ」

 

「ぐ、が、ぶ、げ、ご、がっ、ぎっ、ぐ、お、ごっ、あっ、ぶッッ」

 

「バビロン真拳奥義【ジャマイカの情熱】」

 

 

 片や股間を押し付けられ、片や凄まじいラッシュにより再起不能。ソレを目撃した俺は気がつくと体を動かしポケットからスマホを取り出していた。

 

 

「もしもし!警察ですか!?へ、変態とピンクのグルグル頭がーーーーッ!人を襲ってます!至急!至急!助けてェーーーーーーッ!」

 

 

 

 

 

 

結論から言って、あの変態と下ネタはヒーローだったと言う。

嘘だと言ってくれよバーニィ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 天倉の通報により敵は全員捕らえ、何とか無事に終わった。途中、緑色のナニカは信仰を求めフラッと居なくなったと言う。そんな天倉達は事件に関する事情聴取を受けていた。

 

 

「……久しぶりだな」

 

「敵連合の時以来ですね、泊さん」

 

「今回は…まぁ、事故だな。いや、あんなヒーローを前にしたらしょうがないな」

 

 

 親しそうに話す天倉と聴取を担当する刑事。彼の名は【泊進之介】。彼等はUSJ事件で関わりがあるが、そこら辺については割愛させてもらう。

 

 

「それにしても…世も末と言う事ですか」

 

「変態仮面にソフトンか………」

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えるのはやめるか!」

 

「そうですね!」

 

 

 そんな彼等はヒーロー社会の触れてはならない部分に踏み込むのをやめる事にした。

しばらくして、開放された天倉。

すると警察署入口前には爆豪と切島が立っている事に気付く。

 

 

「おう、お疲れ!シャバの空気はどうよ!」

 

「いやぁ、良いねぇ……って、切島君はともかく何で爆豪が居るの?」

 

「ともかくって何だッ‼︎居て悪いかコラ!!ぶっこr──キュッとしめんぞコラッ!」

 

 

 警察署の前なのか、みみっちい器の爆豪はコロスに代わる謎のワードを使う彼の姿に切島が笑いを堪える。

 

 

「んだ切島テメ!笑ってんじゃねぇぞコラ!」

 

「ぶっ、くくっ、キュッと!キュッとて!」

 

「うっせぇぇッ!ぶっこr──コロッとするぞコラ!」

 

「ぶぼぉッ!!」

 

 

 更なる謎ワードについに爆発した切島。

もはや漫才と化した絡みに天倉は腹を抱えたくなるほどの笑いをグッと堪えていると謎ワードを連発している彼が天倉の方へ視線を向ける。

 

 

「そっちも笑ってんじゃねぇ!さっさと続きやんぞ!」

 

「え?」

 

「え?じゃねぇよ!勉強に決まってんだろうがッ!やるなら徹底的にだ!赤点取ったらこr……許さねーからな!」

 

「……爆豪君まさか……」

 

 

 その為だけにわざわざ待ってくれていたのか?と天倉は言いかけるが、フッと笑いが込み上げて来た。

 

 

「……ぶっ、ご、ごめん…無理…しなくて…ぶふっ、いいから……んぐおっ、ごめん。腹痛い……!」

 

「ダーハッハハハッ!?すまん!爆豪無理だわ!」

 

「テメェ等ァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アイツ、友達居たんだな」

 

『ほう、随分と仲が良さそうじゃないか』

 

「そうだな前と違って、1人じゃないみたいだ」

 

 

 彼等の目に映るのは数ヶ月前の彼とは違い、1人では無く楽しそうにしている学生達の姿だった。

 

 

 

 

 

 






 爆豪君は無意識に天倉を一方的にライバル視し、素直になれないながらもついつい手を貸してしまうその姿…嫌いじゃないわッ!

つまり爆豪君はツンデレ。はっきりわかんだn(ここから先の台詞は爆破により消炭にされました)




人物紹介


【変態仮面】

パンティを被る事で変身を行うヒーロー。
下着を被り異形の姿へ変貌する様はまさに仮面ライダーと言っても過言ではないだろう。
決して己が欲望の為に力を振るうのでは無く、正義の為に戦う姿に心を打たれたファンは少なくない。

こんなヒーローを採用するとは世界も世も末だな。



【ソフトン】

 バビロン真拳の使い手であり、アイスクリーム屋を副業として経営。ちなみにピンクのグルグル自体はファミレスでは聖域で修行中に敵と偶然出くわした模様。
実は妹がいるが、妹は普通なので安心して欲しい。

イケボで台詞がカッコ良く人柄も良い紳士なヒーロー。勿論人気もあるが、ピンクのグルグルである。




【泊進之介】

警視庁刑事課巡査部長。
USJ事件の後、天倉と会った事のある刑事。

天倉視点での彼への印象は派手なスポーツカー?に乗り、変なベルトをつけた『こ◯亀』の中川みたいなヤバイ人。
話してみると意外と良い人だった為、打ち解けている模様。

最近、左の薬指に指輪を着けているらしいが……?





【旧支配者】

Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn

太古の地球に君臨した者達の総称。
彼の者の名は【グレート・オールド・ワン】

大いなるクトゥルーの縁者なるも漠々として旧支配者を窺うにとどまりたり。この星に飛来した宇宙的恐怖を象徴するソレはかつてムー大陸を支配し海底に封印された。

この世界において彼等は複数存在し、夢を介し顕現している。
あっ、あぁッ!窓に窓に─────


────居る筈も無く、ただ信仰を集めている緑色のタコのみたいな生物。
ポプテピピックTVスペシャルに出てきた時はポカーンと口が開いた。

最近の彼等はお栄さんと言う少女を筆頭に「鉄棒ぬらぬら」と言う同人誌サークルで信仰を集めていると言う。









おまけ
峰田の秘蔵DVD



『はっ、ぐぅっ、ぐっ……ぐぅぅっ…… こ、この程度でっ……対魔忍を舐めるなぁっ!』

( ゚д゚)

『アハハハハハあああああっ☆いやあああっ!!気持ちいい!気持ちいいっ☆気持ちいいぃっ☆』

((;゚Д゚))ガクガク

『お、お礼ぃ……言うがらぁ……【自主規制】れぇえっ! んごっ!?ンブブブッ』

(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル

『【自主規制】あ【自主規制】んほ【自主規制】【自主規制】ッッ!!』

( ´゚Д゚)・;'. ゴハッ


出演ゲスト『井河アサギ』
※ヒーローとしても有名。


「峰田君貴様裏切ったなァ!」


天倉君には刺激が強すぎた模様。










おまけその2
後日談。きゅーしはいしゃ達と天倉のバイト


『天倉の部屋から見つかった日記より』


X月◯日

 緑色のナニカが再び俺の前に現れた。しかも、ソレは一体では無く複数居たのだ。そいつ等はお前のおかげで信仰が集まった。お前がよければ力を借りると言い、姿を消してしまった。



%月@日


 再び緑色のナニカが現れた。今日はこいつ等の信仰を集める為の手伝いをする事となった。
べ、別に報酬のお金につられたワケじゃないんだからねっ!

……自分で書いてて悲しくなって来た。


※月#日


俺は今日も今日とて白紙を塗り潰す作業を行っている。
お栄さんと言う作家さんの絵に黒で塗り潰す作業だ。

時折、緑色のナニカ達が銃を突きつけて信仰(作業)を止めるな!と言ってくるので滅茶苦茶ツライ。


*月&日


 そう言えば。バイトをしてて気付いたが俺は何を書かされてるのだろうか?緑色のナニカの仲間らしき人である栄さんが「気にしなさんナ」と言っていたが気になる。


〆月◯日


俺の前にあるのは真っ白な紙。俺は今日も今日とて黒く塗り潰す為、この人達に協力しなければならない。
やめておけば良かった。

ただ、ただ俺はコレを塗り潰す作業を延々と続けなければならない。

ああ、クソ、駄目だ、まだ白紙がのこってる

あたまがましっしろに

こんな じごく おれ はしらな



栄さ ん でーた けしやが た





#月〒日





ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるうるるいえ うがふなぐる ふたぐん
ふんぐる!ふんぐる!ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるうるるいえ うがふなぐる ふたぐん!
いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん! いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!

あは、

ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!

いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!くとぅるふ ふたぐん!ふんぐる!ふんぐる!ふんぐる!ふんぐる!

ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!
たーのしーーーーっ!







ここから先は白紙になっている。















「でっ、出来ました栄さんッ!ベタ塗りやっておきましたッッ!」

「応よッ!コイツはありがてぇ!次のヤツ頼むサ」

「うっわ、まだ残ってる!だーっくそッ!金の為だ最後までやっt「あ」……栄さん?」

「あ、いや、なんかな?パソコンの画面が青く───」

「だぁぁあああッッッ!!?クラッシュしてるぅぅぅぅううううッッ!データが消し飛びやがったよ畜生ッ!」

「お、おれはなんもやってねぇかんな!なんもしてねぇってのにぶっ壊れちまったんだよ!」

「な訳無いでしょうがッッ!」


この後、無茶苦茶、発狂しながら頑張った。





同人誌アシスタントのバイト。
時給1400円。

夏コミで信仰ゲットの為、今日も今日とてベタ塗りだ!
ちなみに作者の栄さんは機械オンチの為、出来る限りパソコンに触れさせないようにしているぞ!

頑張れ天倉!全てはお金の為に!
全国の男性達の下半身の為に!










 最近、クオリティを高くしなければ読者は飽きてしまうと心配してしまう。ジョジョの露伴先生の気持ちがよく分かる瞬間でした。

それにしてもアギト編が『デンジャラスゾンビィ』『警察vs怪人』『アマゾンズ的増殖』『変身シーン再現』『強い(確信)』『覚醒フラグ』と僕の好きなものが詰め込まれていた為、何度も見直しました。

やっぱ、アギトって良いよね…!



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54話 音響兵器のヤベーやつ

今更ながらけもフレに嵌ったので更新が遅くなりました。
2に関しては内容以前にツイッターの荒れ具合でやばい(確信)と思った。
頼むからもう争うのはやめてクレメンス。「たーのしー」「すっごーい」とかのコメントが恋しい……。とりあえず新しいけもフレ(仮)に期待するばかりです。次は優しく世界が待っていると良いなぁ。


とりあえず……かばんちゃんを返して(懇願)



「出来たーーーーッ!」

 

「手応え有りッッッ!!!」

 

 

 筆記試験終了と共に生徒達は解放感を噛み締める。後列にいる天倉もグッと背伸びを行いつつも、その表情はやり切ったと言う喜びで溢れていた。

そんな喜びを隠せない彼の元に飯田達が歩み寄って来る。

 

 

「どうやら天倉君も心配なさそうだな!」

 

「いやぁ、これも全部。隅から隅までみっちりと勉強を教えてくれた爆豪君のおかg──「オマエヲコロス……!」──ヒェッ」

 

 

背後に回って来た爆豪の殺気に天倉は思わず声を漏らす。

そんな彼等を無視して緑谷達は話を続ける。

 

 

「問題は実技なんだよね」

 

「いやいや…、入試みたいなロボット相手みたいだからな」

 

「それならラクショー!」

 

「え?違うと思うケド」

 

 

すると爆豪から解放されたのか、もしくはボコられた後すぐに復活したのか天倉が話の途中から割り込んで来る。

 

 

「え、いや……だってBクラスの人がそう言ってて……」

 

「えっ、イヤイヤ。それはBクラスであって相澤先生相手に限ってそんな簡単な実技試験はナイナイ」

 

「いやそんな事───

 

 

「先生がする筈が無い」と言いかけたクラスメイト達だったが、瞬間脳裏に映ったのは彼等の青春の日々(数ヶ月間)だった!

 

 

『残念、それは嘘だ』

 

『合理的虚偽だ』

 

『突然だが───』

 

 

((((…うん、あり得そう……!))))

 

 

 今までの事を思い返すとあら不思議。相澤先生がギリギリになって実技試験を変更する筈が無いと言おうとした過半数の生徒達が口を閉じる結果となる。現在に至るまで、あの人が内容が分かっているであろう試験をマトモに行う筈が無い。

 

数ヶ月の付き合いだが、先生の性格を知っているクラスメイト達は最悪の未来を予想してしまう。

 

 

「ちなみにだが、天倉君的に何が来ると思う?」

 

「それは────『突然だが君達には……殺し合いをしてもらう。最後の1人になるまで戦え……脱落した者は内容関係無く赤点だ。タタカエ…タタカエ……』───まぁ、こんな感じにはなると思う」

 

((((((お前は先生を何だと思っているんだ……⁉︎))))))

 

 

 天倉のネガティブ寄りの考えに先生への評価が気になるところだが、そんな事をしでかしそうな先生だと言うことも事実である。

 

 

「ば、バトルロイヤル……!成る程、厳しいかもしれないがヒーローになる為には他より優れる事を証明しなければならない……ッ!」

 

((((((飯田、お前……!))))))

 

 

 どこに関心を示したのだろうか、委員長である飯田の前向きさにツッコミを入れている事は言わずもがな。

その後、実技試験が始まるまで各々、イメージトレーニングや談話などで時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は午後へ差し掛かり、各々はコスチュームに身を包み実技試験を行う会場へ集合する。

そこにはプロヒーローである教師と、その下で授業を受けるヒーローの卵達と言う圧巻な景色が広がっていた。

 

遅れた生徒が1人も居ない事を確認すると教師の1人である相澤先生(イレイザーヘッド)が口を開く。

 

 

「揃ったな。それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でも勿論、赤点はある。林間学校行きたけりゃ、みっともねぇヘマはするなよ。もっとも、諸君なら事前に情報仕入れて、何するか薄々分かっているとは思うが……」

 

「諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!!」

 

((((((((((やっぱりか……))))))))))

 

 

 ヒョコッとマフラーの様に首に巻かれたイレイザーヘッドの武器である捕縛布から雄英高校のトップである根津校長が顔を覗かせる。

しかし事前に天倉の発言から察していたのか、それとも予想が当たって欲しく無かったのか、リアクションが薄い上にテンションも低い。

 

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ!」

 

「というわけで諸君らにはこれから2人1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

 

「先生方と!?」

 

「そうだ。尚、ペアの組と対戦するヒーローは既に決定済み。ペアに関しては動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で組ませて貰ったから発表していくぞ」

 

「知ってるよ。どうせ俺、3人1組のペアになるんでしょ?花京院の魂も賭ける」

 

 

 遠い目をしながら天倉が呟く言葉を尻目に次々とペアと対戦する教師であるヒーローが発表される。

 

 

「……で、轟と八百万がチームで俺とだ。そして緑谷と爆豪がチーム。で、相手は……」

 

「私がする! 協力して勝ちに来いよ、お二人さん!!」

 

 

 緑谷と爆豪のペアに加え相手がオールマイトと言う隙を生じぬ二段構え。そんな彼等に天倉は思わず肩に手を置く事となった。

 

 

「2人の事は決して忘れないよ………」

 

「負けた事にしてんじゃねぇぞコラ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 各々組み合わせが決定し、自分の番が来るまでペア同士で作戦を練る、鍛錬を行う等と言った様に時間を潰す事となる。

尚、実技試験の内容だが根津校長先生が言うには、

 

『試験の制限時間は30分!君達の目的はこのハンドカフスを教師にかける or どちらか1人がステージから脱出することさ!』

 

との事。

ちなみに俺の場合、耳郎さん、口田君の3人組でプレゼントマイク先生と対戦する事になっている。

ほーらね、だから3人組になったよ(投げやり)

 

 

「こん中で1番ヤベーのはオールマイトだろ」

 

「確かになー」

 

「それに二対一に加えて逃げるor捕まえるで合格だろ?」

 

「ラクショーでしょ!」

 

 

 そんな中、皆の声が俺の耳に入って来る。確かに試験内容を見ると俺達(生徒)側が有利だろう。片方が囮になっている間にステージの外へ、又はハンドカフスを嵌めるだけなのだから。

すると皆の発言に便乗して耳郎さんがコチラに話し掛けて来る。

 

 

「その分、ウチらは楽そうだけどね」

 

「えっ、そうなの?てっきり1番難しいヤツだと思ってたけど……」

 

「考えすぎだって!お前の方が何万倍もツエーだろ。何つーかさ、蹴りを1発喰らっただけで倒せる感じがするからさ」

 

「えー、でもさ。プレゼントマイク先生の"個性"はさ、多分先生達の中でもかーなーり、強いよ?と言うか一二を争う」

 

「いやいや、そんな事……」

 

「とんでもない爆音に加えて、複数の敵を失神させる程のボリュームと衝撃。あれってどうやって防げばいいの?」

 

 

 俺の発言にその場の皆が押し黙る。と言うか、雄英高校の教師を任されている以上、問題児とか生徒指導とか高レベルで可能な人材を選び抜いている筈だからそこら辺のヒーローと比べちゃダメだよね?

そう思っていると隣の耳郎さんが目を見開きながら口を開く。

 

 

「……あれ?なんかそう言われると強そうに思えて来たんだけど……マジ?」

 

「先生達は格上(プロヒーロー)でしょ?……え、いやいや簡単に勝てる訳ないでしょ?」

 

 

相手はえっと……ほぼ無限に壁を作り出せる人(セメントス先生)ブラックホール製造機(13号先生)百発百中の超ガンマン(スナイプ先生)問答無用で睡眠導入のヤベー人(ミッドナイト先生)。……あれ?過半数の教師、ハンデの意味を成してない気がするんだけど……?

 

………あれ?これって詰んでね?

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

しばしの沈黙が周囲の空気を重くする。

……いや、誰か喋ってよ。せめて茶化してくれない?怖いんだけど!ねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、ここまでが走馬灯である。

 

 

 

「もういいですかァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

「───「天倉しっかり!」──ッはぁっ!?」

 

 

 気が遠のき意識がブラックアウトする直前、全身にドクン!と言った音響がビリビリと伝わり意識は無理矢理現実に引き戻される。現在、俺と耳郎さん口田君の3人組でプレゼントマイクとの実技試験を受けていた。

 

 一筋縄ではいかないとは思っていたけど、プレゼントマイクの実力は予想以上だった。接近戦に持ち込もうと勢いよく突っ込んでみたものの、"個性"により俺は吹き飛ばされ聴力が強化された変身後の所為なのか何度も頭の中が真っ白になりかけている。

この凄まじい音量により近づくどころか動く事すら出来ない状況だ。

 

と言うかさっきまで見ていたのって走馬灯だったのか。

すごいなぁ。人間、限界ギリギリまで凄まじい音を聴き続けていると走馬灯が見えるんだね(遠い目)

 

 

「ハンデの意味ぜんっぜんっ無いよねッ!プレゼントマイクの個性は謂わば固定砲台。捕まえる逃げる以前の問題だよ!」

 

「完全にウチの上位互換…!とにかく……相殺ッ!」

 

 

すると耳郎さんの脚に装備されたスピーカーから音波が発生され、先程よりは楽に感じた。……しかしあくまで楽に感じるだけであって状況がマズイ事に変わりは無い。

 

 

「……ッ、ありがとう耳郎さん……。口田君、鳥とかを操って妨害はできる?」

 

「……!」

 

「えっ、何?ごめん耳郎さん。口田君の翻訳お願い」

 

「あまりの声量で命令が掻き消されるって!」

 

「え、何だって?ごめん。もう一回言って!……あぁ、クソ。耳がおかしくなった!」

 

 

 とりあえず、2人には申し訳ないけど今の俺は本当に役に立てない。"個性"を使えば強化された聴覚により耳へのダメージが倍増され、生身のままだと近づく事すら出来ない。

 

更にあまりの音量……いや声量により2人の個性も掻き消されてしまう。……コレもしかしなくても詰んでるよね。

 

 

「こ、こうなったら…相討ち覚悟で猪突猛進作戦を発動するしか……」

 

「要するに行き当たりばったりの特攻だろ!無理だからな!と言うかコレ試験だから確実にアウト!」

 

「だよね……」

 

 

 こんな事になるなら遠距離攻撃が出来るようになるまで特訓しておけば良かった。俺と耳郎さんが駄目なら、せめて口田君の"個性"で何とか出来れば……あ。

 

 

「ねぇ、ほらダンゴムシ!」

 

「……腹減ったなら終わってからにしときなよ」

 

「食料的な意味で見せたワケじゃないよ!虫!口田君の個性なら虫操れるんじゃない?」

 

「あー、成る程ね!そこんとこどうな……の…」

 

 

俺と耳郎さんが振り向くと、そこには木の陰で震える口田君の姿が……。え、これって俺?それともこっち()に怯えてるの?

 

 

「ねぇ耳郎さん。俺と虫ってどっちが怖い?」

 

「とりあえず、アンタがものすっごくショック受けてる事は分かった」

 

「うん、久しぶりに怯えられると思ったから吐血しそうになったよ」

 

 

流石に体育祭とかで俺の姿が変貌するのを見慣れたからなのかな?

……見慣れたから怖くないって、それはそれで何か複雑。

 

 

「ほっ、ほら!ダンゴムシだよ!今は丸まってるから全く動かn「イヤァァァァァァッッ!」………」

 

「あー、駄目みたい……」

 

「……口田君。俺と虫のどっちが怖い?」

 

「ソレ、怪奇現象と不審者のどっちが怖い?って言ってるのと同じだから意味無いよ」

 

 

「そこかああああああああああああああああああ!!!」

 

 

「ぐっ、ヤバイよ…時間も無い……!」

 

「……ッ!それじゃあ!もう、選んでいられないな……変身(アマゾン)ッ!」

 

 

 ドライバーを起動させ変身を完了させた俺はクラウチングスタートの体勢に入ると共にエクシード形態へ身体を変化を行う。そして断続的に森の中に響くプレゼント・マイクの声が耳から脳内へビリビリと響き、頭の中がグチャグチャに掻き回されるような感覚が俺を襲う。

ちょっとでも気を抜いたら気絶しそうだ。

 

 

「あっ、ぐ……ぅう……ッ!」

 

「ちょっと!何やってんの天倉!」

 

「耳塞いで正面突破行く!」

 

「そんなんでやれるわけ無いだろ!「Yeeeeeeeeeeeeeah」───ッ!耳がぶっ壊れる!」

 

「ッ〜〜〜〜〜!このままだと時間切れで俺達は不合格。せめて突破口を切り開くしか無い!」

 

 

 そんな俺の姿を見てアタフタと戸惑う口田君。俺の事が心配だろうが、問題は無い。俺は脚に力を込めたまま彼に声を掛ける。

 

 

「口田君が虫が苦手ならしょうがない。…だけど、それはいつか乗り越えなきゃダメな壁なんだ。……もし俺が先生へ突っ込んで行く途中にダウンしたら………耳郎さんと一緒に絶対に合格して欲しいんだ」

 

「……!」

 

 

 俺が溜めに溜めたパワーを解放しようとする直前、口田君の手が俺の肩にポンと置かれた。振り向くと、そこには酷く怯えながらも目の奥に光を宿した口田君が居た。

 

 

「口田君?……"できるの"?」

 

「………」

 

「……分かった」

 

 

 口田君の覚悟を見届けた俺はすぐそばにあった岩をひっくり返した。そこにはミミズ、ムカデ、アリ、etc、etc……虫の大群がうじゃうじゃと集まっていた。

それを見て、思わずビクッと身体が動いてしまうのは仕方の無い事だろう。予想以上にアレな光景だったので俺も耳郎さんもビクッとしてしまった。

 

口田君はブルブルと震えながらも、虫達に近づき膝をつくと無理矢理吐き出すように口を開いた。

 

 

「お行きなさい小さき者どもよ騒音の元凶となるその男討ち取るは今ですいいですか…」

 

「「超喋るじゃん!」」

 

 

 普段無口な分、口数が多く素早く喋るその姿がシュールに見える。

そんな俺達の耳に先生の悲鳴が森全体に響き渡った。

これ、見えないけど絶対に悍ましいヤツだと言う事は分かる。

 

 

「……音が消えた……」

 

「よ、よし!早くゲートを通ろう!」

 

「……あ、ごめん2人共。先行ってて」

 

 

 2人はその場で全く動けない俺に視線を向ける。それも仕方ない事だろう。聴力が増強された上にプレゼントマイクの凄まじい声量が脳にダメージを与えたのだ。寧ろ、さっきまで動けていた事に自分自身ビックリしている。

 

そんな俺を放っておいて2人は……あれ?

 

 

「……何やってんの、ほら行くよ」

 

「え?いやいや、もう時間無いよ?早くしないと……」

 

「………」

 

「2人で肩貸すから問題無い…って、口田も言ってるよ」

 

 

 耳郎さんはそう言いながら口田君と一緒に引きずるような形でゲートへ向かって行く。予想と違った展開に困惑する俺に耳郎さんは苦い顔をしながら口を開く。

 

 

「あぁ、もう重いなぁ……天倉、体重いくつ?少しは運ぶ側を考えろよな……」

 

「あ、ごめん……」

 

「いや、そこは"ごめん"じゃないだろ」

 

 

 一瞬、耳郎さんの言う事を理解出来なかった俺だが、耳郎さんと口田君の表情を見て俺はこの後、言うべき言葉がすぐに見つかる。

 

 

「……ありがとう2人共」

 

「そ、ネガティブな所は直しなよ天倉」

 

 

『天倉・口田・耳郎チーム条件達成‼︎』

 

 

 そしてゲートから鳴り響く音声に、合格したと言う喜びが心の底から湧き上がる瞬間だった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 所変わって教室。そこには意気消沈したクラスメイト4名が居た…ッ!試験に合格して今すぐでも飛び出したい気分だった俺も自重し、着席している。

緑谷君が慰めているが、放っておいた方が心へのダメージが少なくて済むんだよなぁ……あ、目潰しされた。

 

 

「分かんねぇのは俺もさ峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ」

 

「あ、……そう言われると俺もほとんど役に立ってなかったような……。 と言うか完璧に足手纏いだったよ? アレ?俺もしかして赤点じゃね?」

 

「同情するならなんかもう色々くれ!!」

 

「………はいコレ。俺の秘蔵の一品」

 

「レーション渡されても困るんだよォ!!」

 

 

 渡されたレーションを八つ当たりと言わんばかりに上鳴君は床へ叩きつける。

ああ!食べ物を無下に扱っちゃ駄目って学校で習ったでしょ!!

 

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

 

 そんな事をしている俺達の元に相澤先生がやって来る。1秒も掛からない内に静かとなる教室内に先生の声が響く。

 

 

「残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は全員行きます」

 

 

「「「「どんでんがえしだぁ!!!」」」」

 

 

「筆記の方はゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤あと瀬呂が赤点だ」

 

 

 怒涛の展開にクラス内が一気に騒がしくなる。かと言う俺も心の内ではものすっっっごく騒がしくなっている。

 

この場で踊っても良い程だ。もう何も怖くない。なんなら相澤先生の目の前で裸一貫でブレイクダンスを披露しても……あ、やっぱりやめておこう。相澤先生は怖いわ。

 

それと先生が言うには今回の試験は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るように動いていたらしい。林間合宿も赤点を取った生徒に力をつけて欲しいらしく、要するにいつもの"合理的虚偽"と言うやつである。

 

 

 

 よく考えてみると俺の場合、試験に出された課題は……多分、だけど…。仲間と協力する事だったのかもしれない。

 

プレゼントマイク先生の前で俺は手も足も出なかったが、口田君に任せる事によって試験に合格できた。そう考えると、まだまだ俺は見直す点がボロボロと出てくる。ヒーローになる為にも、林間合宿でも気張る必要があると俺は再確認した。

 

そんな俺の元に葉隠さんが声を掛けて来る。

 

 

「天倉はどーする?明日、A組のみんなで買い物しに出掛けるんだけど?」

 

「……えっ?お、俺!?」

 

 

 葉隠さんの言葉に俺は動揺を隠す事が出来なかった。

マジで!?クラスメイト達と共に買い物!?おっ、おおお落ち着け!こ、コレはあくまで林間合宿用の用品を購入するだけだから別に疚しい気持ちなんて無いッ!

 

 

「い、行きます!行かせてください!と言うか見捨てないでくださいッッ!」

 

「重ッ!?めちゃくちゃ重いよ天倉君!」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

県内最多店舗数を誇る木椰区ショッピングモール。

ここではA組の生徒達が買い物に来ていた……!

 

 

「体育祭ウェーーーーイ」

「燃えてるかーーい!雄英高校ーーー!!」

「サイン!サインくれ!」

「おいデュエルしろよ」

 

 

 それにしても、騒がしい。テンションが高い人達が沢山に加え雄英高校の生徒である俺達は顔を知られている。凡ゆる方向から突き刺さる視線でプレッシャーが凄まじく俺の胃はデッドゾーンに突入しつつある。

 

 

(し、心の臓がはち切れそうだ……ッ)

 

「とりあえずウチ、大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

 

「俺、アウトドア系の靴ねぇから買いてぇんだけど」

 

 

 さすがは耳郎さんと上鳴君。こう言ったナウでヤングな最先端ショッピングモールには慣れているのだろうか。臆する事もなく目的の物を買おうとしている。控えめに言ってすげぇ。

 

 

「ピッキング用品と小型ドリルってどこ売ってんだ?」

 

(ピッキング?ドリル?)

 

 

 それに対して峰田君は合宿先で何をするのだろうか。そんな不安が募る中、タイムセールにより大勢の客がドッと押し寄せ、俺達を離れ離れにさせてしまう。

 

そんな中、切島君が放った言葉がクラスメイト全員を駆り立てた。

 

 

「まずは生き延びろッ!タイムセールが終わった時に必ずこの場所で会おう‼︎」

 

 

うーん、何故か嵐で散り散りになる海賊団が見えるぞ?

特に船長は体がゴムみたく伸びるかつ泳げない感じに思えるのは気のせいだろうか?

 

 

とりあえず、賑わった場所から落ち着いた場所へ移動した俺はピット器官を使い念の為、皆の居場所を把握する事にした。

 

えっと……緑谷君と麗日さんペアに切島君、耳郎さんペア。八百万さんと上鳴君のペアと……ん?

 

 

(これって……デート的なやつでは……⁉︎)

 

 

 

 誰とも組めず一人寂しく買い物って……。

あ、いや別に羨ましくなんてないからねッ!(強がり)別に女子男子関係無く皆と買い物したいワケじゃないんだからねッ!

………控えめに言って死にたくなって来た。

 

そんな俺の願いを叶えるかのように背後から俺に話しかける人物が現れる。

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

「…………」

 

 

……誰だこの人。

そんな考えが過ぎる中、この人の眼差しには緑谷君と同等、いやそれ以上の熱い光を感じた。

 

 

「「………」」

 

 

 この勝負……いや、決闘を受けなければデュエリストとして失格だ!手元にあったディスクと拾ったカードを構え俺と相手は高々に叫ぶ。

 

 

「「決闘(デュエル)ッ!」」

 

 

さぁ!俺達の満足はこれからだ!

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

「……おい、着いてくんな」

 

「何でですかー?」

 

「チッ、コイツ……」

 

 

 敵連合での顔合わせ。それからこの"トガ"と名乗る女が金魚のフンみたくついて来るようになった。

人混みに紛れ何度も振り切ろうとするが

 

 

『来ちゃいました♪』

 

『』

 

 

 なんだコイツ。気配を消しつつ足が速い上にナイフをチラつかせて来る。もういっそのこと人気の無い場所で燃やしてしまおうか?

 

そう考えていると、俺のすぐ目の前を赤いバイクが通り過ぎ……。

……ん?ショッピングモールで赤いバイク?

 

 

「何故、バイクと合体しないんだ……?」

 

「バイク持ってないんだよ」

 

「何故、バイクを買わないんだ……?」

 

「そもそも免許を持ってないんだよ!クソ、普通二輪ならまだしも原付免許を早く取らなきゃ……!(使命感)」

 

「そうか……ならば、ランニングデュエル!アクセラレーション!」

 

 

 

「………!?」

 

 

なんだアイツ……⁉︎

いや、妙に噛み合わない会話のキャッチボールが不思議と成り立っている事じゃなく、あのガキ……。

 

"雄英高校の変身する奴"か!

 

体育祭じゃ変身した後の姿がインパクトが強い所為なのか変身前の姿が覚えてない奴等ばかりだ。しかし、俺はシッカリとアイツの顔を知っている。

 

 

「……離れるぞ」

 

 

 "挨拶"するのも良いが、ソレは連合に入った後でもできる。

今関わるのは得策ではないと判断し女を連れて此処から──いや、待て。あの女、どこに行っt……

 

 

「天倉クンですよね!血が凄いボロボロの天倉クンですよね!」

 

「え、あ、……誰?」

 

 

………あ、あのクソ女ァァァァァァァアアアッッ!!

連合に加入する前だってのに、なに接触しているんだ!?

 

クソ、頭のおかしい奴はこれだから……!とにかくこの場から離れる事に専念しよう。あの女は放っておく。どうせ気が済んだら戻って来るだろう。戻ってこなかったら、それはそれで気が晴れる。

 

そう言い聞かせながら足を運ぼうとした時だ。俺の肩をあの雄英生が掴んできやがった。

 

 

「えーと、……お連れの方ですか?」

 

「……いや、赤のt「えー?知り合いですよ」……」

 

 

この女ァ……、燃やしてやろうか……!

そんな考えが頭の中を過ぎるが、自身を無理矢理落ち着かせ、なんとかこの状況を穏便に解決させようと決める。

 

癪だが、このヒーロー生は見た感じは常識ありそうだ。ここは

 

 

「カップルですか?」

 

「えぇ〜〜〜?そう見えますかァ?」

 

「………」

 

 

be cool……be cool……be cool……be cool……!

落ち着け…、落ち着け俺……!

ここは外側だけでもカップルとして振る舞うんだ……!

 

 

「そ、その通りだ……実はデートでな……「えぇーー!荼毘君!そう思ってたんですか!?」……ッ!」

 

 

……よし、分かった。コイツ色々終わったら燃やす…ッ!絶対に燃やす!

 

 

「天倉クン!私、トガです!体育祭見て、ファンです!好きです!天倉君になりたいです!」

 

「えっ、あっ、ど、どうも……なりたいってどう言う?」

 

「おい、もう良いだろ。さっさt「血です!天倉君の血が見たいです!」おい!」

 

 

クソ、コイツ……!

もう雄英生ごと女を燃やして済ませるか…?

 

 

「え?血?……なんで?」

 

「血が好きです!私、血が好きなんです!」

 

「い、いや……所構わず血を出すってワケにもいかないし……」

 

「そう言っているんだ。さっさと行くぞ」

 

 

そう言いながら女の襟首を掴みこの場から去ろうとする。

 

 

『ファンサービスは僕のモットーですからね』

『熱いファンサービスだ。受け取れ』

『俺のファンサービスだ受け取れ!』

『さぁ、俺のファンサービスの始まりだ!』

『俺がたっぷりファンサービスしてやる!』

『俺のファンサービスは終わらないぜ!』

 

「……ファン……サー…ビス?」

 

 

……おい、なんだ?一瞬、コイツの頭ん中に変な電波が入っていかなかったか?そう思っていると目の前の雄英生はニコリと笑う。

 

 

「ファンサービスですね分かります……ゴフォッ!(吐血)」

 

「うおッ!?(こ、こいつ…いきなり血を吐き出しやがった!?)」

 

「……し、しゅごぉぉぉいいいいいいいいいいいいいいッッ!!血ィ!血がこんなにぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいッッッ!!」

 

「!!?!??」

 

(クッ……なんなんだコイツら……ッ!……待てよ……まさかッ!)

 

 

 周囲を見渡すとそこにはザワザワと騒がしくなっていく人混み。

俺らに奇異なモノを見るような視線が突き刺さる。

 

まさかこの天倉って奴は……最初から俺達が敵だと知ってて接触を!?周囲を一般市民で囲み、例え襲われても市民を人質にしようとも対処できる範囲まで近づいたのか!?

 

 

「あ、すみません。驚かせてしまいました……」

 

「……いや、気にするな」

 

 

 どうやら油断していたのは俺の方だったらしい。この天倉って奴は普通のヤツとは一味違う。……だが運は俺に傾いているらしい。

この場一帯を炎を撒き散らせば確実に他の奴らはパニックになる。その隙に離れれば良いだろう。

 

そう思い俺は手に炎を「楽しそうな事してんなぁ」───!?

 

 

「今の俺は機嫌が良いんだ。ここはお互い無かった事にしておこうじゃないか」

 

「……?え、あ、ハイ」

 

 

 死柄木……。いかれたコイツが此処に居るとは思わなかった。

黒いフードの下から見せる今まで見た事の無い不気味な程の無邪気な笑みをアイツは覗かせる。

 

 

「なぁ、お前等を歓迎するよ……。やっと見つけたんだ。俺なりの"信念"ってヤツをさ……!」

 

 

……コイツ、前と会った時と大違いだ。何があったかは知らないが好都合。こちらもこちらで収穫はあった。

 

天倉孫治郎。コイツは要注意だと言う事。他の雄英の生徒とは何が違う事を。

 

 

「それじゃあな、天倉孫治郎。また近いうちに顔を合わせよう……!」

 

 

 死柄木の宣戦布告とも言える言葉。それに対して天倉はどう応えるのか……。

 

 

 

「えっと……すみません。どちら様でしょうか」

 

「「「………」」」

 

「…………」

 

 

 その後、俺は死柄木と共に血をガンギマリさせた女を引きずりアジトへ戻って行った。何者か覚えられてなかった時の死柄木の複雑な表情は俺はいつまでも忘れる事は無いだろう。

 

控えめに言って良くやったと褒め称えたい。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

 緑谷君が敵連合のリーダーである死柄木と接触したらしい。俺が見ない間に一体何があったと言うのだろうか。と言うかうちのクラス敵とのエンカウント率高くない?

そんな事もありショッピングモールは封鎖。すぐに解放はされたものの、結局クラスの皆との買い物は無しとなってしまった。

 

おのれ敵連合許さん。

 

それにしても、買い物途中で会った血に飢えた女子高生(深い意味は無い)と肌がヤベー人やパーカーの知り合い面して来た人や謎の決闘者は無事なのだろうか。

 

………そう言えば謎の決闘者って誰だよ。

 

 

「……と、まあ。そんな事があって、ヴィランの動きを警戒し、例年使わせて頂いてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

 

「「「「「「「「「「えーーーーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」

 

「もう親に言っちゃってるよ……」

 

「故にですわね。話が誰にどう伝わっているのか、学校側が把握できませんもの」

 

「むしろ、合宿自体をキャンセルしないの、英断過ぎんだろ!」

 

 

 そんな出来事があったのにも関わらず、雄英側は合宿を続行すると言う神仕様。

もしも合宿も中止と言う流れだったら、自分の"謎人脈"を行使して、存在するだけでも不審者な一般市民達を敵連合に嗾け、突撃させていた所だった。

 

 

そう考えると、波瀾万丈な1学期だったと自分でも思う。

 

えーっとまず雄英が襲撃されて?お父さんと言う名のドクズが帰って来て?雄英体育祭で悪名が広がって?補修確定の職場体験先でヤベー事件に遭遇して?サバイバルで1人だけになって?

 

…………。

 

 

「俺、何やってんだろ………」

 

 

この時、改めて俺が常識の向こう側の住人と化している事を再認識させられた。

 

ホント、何やってんだろ。

 

 

 

 




1学期終了。



『天倉孫治郎』
主人公(笑)。最近、原付免許を取得する為、こっそり勉強中。
仲間との協力が意外と苦手。大体ソロでやって来たから仕方ないね。期末試験での結果は赤点が40点だとして、50点代。

相性の悪い相手と判断した時、仲間に頼るよりも前に自滅覚悟の特攻を仕掛けようとしたのが減点対象となった。最終的に口田のお陰で乗り越えた為、今後どのように成長するのだろうか。

今回、決闘者になったり謎の電波が届いたりと下手したらそこらの敵よりもヤバイ精神異常者に見えるが大体いつもこんな感じやろ(投げやり)




『皮膚がヤバイ人』
苦労人ポジション。原作とすまっしゅ!時空の間を彷徨っているキャラクター。敵側にもちょっと真面目な人が居ても良いと思うの。


『血大好きJK』
吐血がお決まりの芸と化している主人公に好意を寄せている?女の子。彼のファンサービスにより絶頂(深い意味は無い)に至ったと言う。

意外に主人公(笑)と良い相性なのかもしれない。


『黒パーカーの人物(たぶん初対面)』
このガキぜってーにぶっ殺すと誓った被害者(多分)。と言うか手のようなアクセサリー的なヤツで顔が分からないから仕方ないと思う。



『名も無きデュエリスト』
Dホイールを持ち出し天倉と対戦しようとするが、天倉自身バイクを持ってない為、ランニングデュエルで勝負をつける事に。

しかし彼は気づかないだろう。天倉がとうにデュエルの事を忘れている事など……!

彼はその事実に気がつくまで今も尚、走り続ける。
俺達の満足はこれからだ!




最近、スランプに陥りました。
え、次の更新?

そんなことよりおうどんたべたい。


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劇場版 令和ライダージェネレーション
第55話 人工島 Ready Go


 仮面ライダージオウのカブト編見てスランプ脱出しました。
カブトファンへのサービスがヤバかったので『笹食ってる場合じゃねぇ!』と執筆速度が一時的にクロックアップしました。
我ながらチョロいなぁ……と思う。

と言うわけで劇場版編始まります(唐突)



「はぁ……!はぁ……!」

 

 

走る。走る。走る……。

足を無理矢理動かし背後から迫り来る脅威から追いつかれまいと前へと進む。裏路地へ回り込み、この場から、奴の視界から逃れる事だけを第一に走る。

 

 

「アイツは……!アイツは……!」

 

 

化け物だ。

そう心の中で自身に言い聞かせ、とにかく逃げ延びようとする。そうしなければ、助けてくれると少しでも希望を抱いてしまうからだ。あの、暴力……いや暴虐の化身はそんな慈悲など持ち合わせていない。

 

アレは罪を犯した者の前に現れる。敵にとっての死神の役割を果たすヒーローとは名ばかりの存在だ。

 

とにかく、ヤツを撒くためにもここから早く逃げださなければ

 

 

 

「 見 つ け た 」

 

 

 

 その声が耳に届いた瞬間。……いや、届く直前に自分の足は前へ出されていた。

それは紛れも無い恐怖。一歩一歩、近づいて来るのを感じる。

 

 

なんなんだ、アイツは。

ヒーローなのに、なんで、なんで、なんで、なn

 

 

 

「うるせぇな。黙ってろ」

 

 

 

 脚が鋭利なモノにより貫かれる。服の上からジワリと熱を感じ、直後激しい痛みにより悶え、腹の底から呻き声が上がる。

 

 

「黙ってろって言ったろ」

 

 

 直後、顔面に衝撃が伝わる。コンクリの壁に頭を叩きつけられたと理解するには多少時間が掛かった。辛うじて意識が向こう側へ行く事は無かった……いや、向こう側へ行く事を許さなかったが正しいだろう。

奴は自分の首を掴み殴り、蹴り、地面に叩きつける等で無理矢理、俺を目醒めさせた。

 

 

「さて、……つくづく思うが、(ヴィラン)ってのは馬鹿なのか?悪い事すりゃ捕まるってのに………」

 

 

胸倉を掴まれた状態で自分の首に冷たいモノを感じた。手刀を己の首に当てた目の前の赤は悍ましい口を開く。

 

 

「安心しろよ。最近の医療技術ってのは偉大でな。後遺症は残らずに済むってよ」

 

 

 そう呟くと、少しずつ首に刃が食い込んで行くのを感じる。赤い液体が溢れて肉が裂けていく……。恐怖で頭が回らない。何も言えない。自身が震えながら死んでいくのを感じ、目の前の存在に逆らうと言う選択肢が無くなりかけた瞬間、何か布のようなモノが赤い奴の腕に巻き付いた。

 

 

「……()()()()()、アナタは……何度同じ事を繰り返せば気が済む」

 

「……あーあ、いつもの合理的思考ってヤツだろ。ハイハイ」

 

 

 そんな事を口にするとヤツは掴んでいた手の力を緩め、自分は重力に乗って地へ落とされた。あまりの恐怖でその場から逃げだそうと脚を動かした瞬間、ヤツの腕から刃が伸び自身の首元を掠る。

 

 

「……いいか?敵はな、圧倒的な個性()の味を覚えたら、決して忘れる事は無い。また同じ事を、圧倒的な蹂躙を心の奥底からまた欲してしまう。個性は呪いだ。麻薬と同じくな……」

 

「………」

 

「大事なのは痛みを覚えさせる事だ。今後、こんな事をしたら同じ目に遭う。だから、黙っておけ……ってな」

 

 

 赤い獣が腕から剣を伸ばす。それを振るえば首が容易に飛ぶであろう全身が凶器に包まれた存在から逃げなければ、いや、殺さなければならない。

 

殺らなければ殺られる。

 

そんな考えが自身の中で決定づけられた。

 

 

「それはアナタの考えでしょう……、アンタのやってる事はヒーローの枠を超えt「あ、ああああああああああああああああああああッッ!」ッ!」

 

 

隠しておいたナイフを赤の体に突き立て─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、正解だよ。分かってんじゃねぇか。サイドキックなんてやめちまえ。お前はお前のやり方で正しいヒーローを目指すんだな」

 

「大河さん……」

 

「現場じゃヒーローネームで呼べよイレイザー……じゃ、後のこと頼んだわ」

 

 

目が霞む。全身が痛む。

ただ、分かるのは目の前に居る異形の赤。

 

 

 

アレに畏怖を覚えたと言う事だけ───

 

 

 

「身体が赤くて助かった……血の色誤魔化せる」

 

 

アレは自分の頭からその存在が刻まれ消える事は未来永劫無いと言う事だ。

 

 

 部屋の隅で震え、ソレが表舞台から消えた事に安堵してしばらく経った頃の事だ。()()()()から連絡が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、彼はファーストクラスプライベート用旅客機で寛いでいた。

ワイ○ァイが飛び、スマホの使用、充電可能と言う現代っ子にとっては夢のようなジェットである。

 

 そんな彼のスマホにはピロンとクラスメイト達が空港での集合写真かデカデカと写っており、これから楽しみにしている表情が印象に残る。フカフカのチェアに身を任せ目を瞑るとポツリと呟く。

 

 

 

「………どうしてこうなったんだっけ?」

 

 

 

 

事が起こるのは数日前に遡る。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「遂に……ッ!遂に……ッ!原付免許を取ったァーーーー!」

 

 

 彼の名は天倉孫治郎。言うまでもなくこの物語の主人公。

クソ雑魚メンタル兼即オチ血反吐2コマが特徴の普通の高校生である(普通とはうごごご)。

 

そんな彼だが密かに漫画(同人サークル)アシスタントのアルバイトを行い金を貯め、免許を取得したのである。

 

 

「ハーーーーッ、この時まで勉強しておいて良かったァ……」

 

 

天倉は免許を取得した達成感と安心感に浸りながら帰路に着く。

その時である(唐突)!

 

 

キキーーッ!(車のブレーキ音)

 

ガラッ!(ドアが開く音)

 

ガガガッ!(ハイエースに押し込めらる音)

 

「ヤベーぞレイプだ!」(現場を目撃した人の叫び)

 

 

 

第三者の目からはどう見ても誘拐の現場だが、そこに通りかかった謎の人物510の手により何も無かった事にされた(賄賂ですね分かります)

 

 

「……あ、あのー」

 

「着きました。降りてください」

 

「あっ、はい」

 

 

 女性を先頭に黒服に囲まれ、ビルへ入る天倉。ちなみに内心、彼は物凄くビビっていた。社会の裏側に足を突っ込んでいると言うか、どう見てもこれからヤバイ感じの実験されるモルモットの如く、又は死刑を宣告された囚人の如く、頭の血が一気に失せるのを感じる。

 

 エレベーターに乗り込み、現世での生活を走馬灯のように思い耽りながら生にしがみつく事を諦めた菩薩のような顔をした彼だったが、エレベーターの扉が開いた瞬間、驚愕を露わにした。

 

 

 

「ハッピィバァースデェイッッ!」

 

 

「………あの、誕生日はもう数日前に過ぎたんですが……」

 

「そうか、それは済まなかったね!これはお詫びの品だ、受け取りたまえッ!」

 

「どうぞ、少し遅れましたが誕生日用のケーキとなります」

 

「あ、これはどうも……」

 

「まぁ、そんなかしこまらなくても良いさ、先に座りたまえ」

 

 

 目の前にいる人物、鴻上光生はそう促し、天倉をフカフカの最高級であろうソファに座らせる。黒服に囲まれ極度の緊張状態だった彼にとってとても有り難い提案だったのか二つ返事で了承した。

 

 

「えっと……初めまして?じゃなくてお久しぶりで良いんですよね鴻上さん」

 

「そうだね、こうして正面で話すのは初めてだがね」

 

「そ、そうですね……」

 

「さぁ、ケーキを切り分けてあげようじゃないか」

 

「ありがとうございます」

 

 

 大きめに切り分けられたケーキに目を奪われながらも天倉は鴻上に疑問を投げかける。それは何故、自分が此処に連れて来られたのかと言う事である。

天倉孫治郎は自他共に認める"色々とヤベーやつ"だか、そんなに目をつけられるような事はした覚えがないと断言……できると良いなぁ。

 

とりあえず天倉自身、何か問題を起こした覚えは無いと会長に向かって呟く。するとケーキを小皿に盛りながら会長は胡散臭い笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「なぁに、特にこれと言って大した要件では無いよ。ただ、お祝いをする。ケーキを共に食べる。それを私は望んだだけなのだよ!」

 

「……そ、そうですか?……あ、いただきます」

 

 

若干、怪しみながらもケーキを口の中に入れる天倉。

口内で広がる甘味の素晴らしさにウットリしていると「ははは」と笑いながら目の前の男性はどこから取り出したのか、新たなケーキをテーブルの上にドンと置く。

 

 

「君は…、欲望をどう捉えるかな?」

 

「むぐむぐm……欲望ですか?」

 

「その通り、人間必ずしも持つモノ。君はそれを聞いて最初にどう思った?」

 

「どうって……別に、あって良かったなってくらいですかね?欲望って言い換えれば『夢』とか『情熱』とかそーゆーモンですから」

 

「ほう……、では君はヒーローになるとして……何を求めるかな?」

 

「え、何ですか藪から棒に……。そりゃ、『力』じゃないですかね。オールマイトみたいな皆を守れる『力』」

 

 

 そう答えると鴻上光生は「ほう」と嬉しそうに呟く。その様子を見て天倉はますます怪しく思えて来る。何かを企んで……と言うか絶対に何か企んでいると勘付いたのか、この場を切り抜けようと天倉は「それじゃそろそろ家に……」とその場を立とうとする。

 

 

「里中君ッ!」

 

 

 瞬間、会長の声が響き別のソファでケーキを淡々と口にしていた女性がスーツケースから何かを取り出し天倉の側へ歩み寄ってくる。

 

 

「えっ、何?何しt「動かないでください」えっ、だから何をしtッッ痛ッたァァァァッ!?」

 

 

バチンと天倉の腕から無理矢理、レジスターが取り外される。

するとスーツケースから取り出した"何か"を痛みで悶える天倉の二の腕にグルリと回し、取り付けた。

 

 

「それは、ドクターァマキィ!からのプレゼントだよ!【ネオレジスター】!使いこなしたまえッッ!」

 

「〜〜〜〜ッ!ネ、ネオレジスター?確かに色々と違いますね」

 

 

 涙目になりながらも腕に新たに取り付けられたレジスターは、前のモノとは違い鳥の横顔を模しており内側に針が飛び出る仕組みになっていない事に天倉は安堵の表情を浮かべる。

 

 

「ところで、君にとっても有難い提案があるんだが……」

 

「え?」

 

 

 ニヤリと口端を吊り上げる男の姿を見て、ハッと気付く。先程、口にしたケーキや腕に新たに取り付けられた装置。そしてこれから出されるであろう提案。

 

 

(賄賂だこれーーーーーッッ!?)

 

 

 胡散臭さの原因がコレである。どう見てもこの流れはプレゼントと言う名の一方通行の道。

 

 

「クソッ!退路を断たれたッッ!おのれ会長めぇ……!これを見越して……!それが人間のやる事かァ!」

 

「ハハハハハッッ!ハッピィバァスデェイッッ!!!」

 

(あー、うるさ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……ッッ!こー言うんなら断っておけば良かったァァーー!」

 

 

 天倉はプライベートジェット内のチェアに何度も顔面を打ち付ける。衝撃が吸収され全く痛くは無いが、精神的には物凄く痛かった。

 

 夏休み中、轟や上鳴、緑谷達と遊ぶ約束をキャンセルした挙句「そうだよな……忙しいもんな」と轟の悲痛な声が耳に入った時は全身の穴と言う穴から凡ゆる液体がブチまかれる寸前にまで致命的なダメージが叩き出される結果となった。

加えて追撃のクラス内のL○NEアプリにて自分以外のクラスメイト達が楽しそうに会話しているのを見て心へのダメージが加速する。

 

 

「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ」

 

 

 そして仕組みは謎だが天倉はこの悔しさと切なさと心強さを何処に向ければ良いか分からず宙に浮いた状態で身体が大車輪の如く回転し湧き上がる負の感情を紛らわす事となった。

 

 

 

『私は求めるモノ……それはこの世を動かす程の強い欲望ッ!君は仮面ライダーとして、更なる力を手に入れる必要があるッッ!【I・アイランド】!そこで君は専用サポートマシンに強化されたコスチュームを調整するが良いだろう、安心してくれたまえ。旅費、免許の更新についてはコチラで全額負担しようじゃないかッッ!』

 

『専用の……サポートマシン……(ゴクリ』

 

 

 

「タイムマシンーーーッ!時空を超える力さえあればあの時の俺を殴ってでも止めていたのにーーーーーッ!」

 

 

 数日前のターニングポイント(あの時)。戻る事のない過去に縋る少年の姿は哀れ。旅客機の中で孤独な(自動操縦なので操縦士は居ない)彼の言葉は誰に届く事は無かった。

 

ちなみに両親は後日、コッソリと息子の様子を見に行くと言うのは言うまでも無いだろう。

 

 

すると彼の視界の端にチラリと目的地である人工島【(アイ)・アイランド】

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

『天倉孫治郎様。誘導に従ってください』

 

「分かりました。なので、その物騒な鉄の塊を下ろしてください」

 

 

 空港にて、俺は謎の集団に遭遇し四方八方から銃口を向けられていた。何を言っているが分からねーと思うが(ry

 

え?何、どう言う事?俺、本格的に厄を払ってきた方が良いの?

と言うか何なの?この連続して不運が続くのって。俺この後、死ぬの?

 

そう心の中でボヤいていると「フッフッフゥーーッ↑」と謎の汚い高音らしき声が空港内に響く。

今度は何だろうか。と思っていると隣で銃を構えていた謎の人物が爆発四散して………ん?爆発四散!?

 

すると、空港内に現れたのはバイクに跨りコチラに向けて銃?らしきものを構えた男だった。引き金を引くたびに謎の集団は1人2人と爆発四散。

しばらくして空港内がネジや焦げた鉄の残骸だらけになる頃には男はバイクから降りコチラに手を差し伸ばして来る。

 

 

「ヒーローの登場。ショーは如何だったかな?」

 

「───」

 

「なんだ?これくらいでビビるなって、……こっちにしばらく滞在するんだろ?さっさと乗りなよ」

 

 

拝啓。日本に居るお父さん、お母さん。

もしかしたら俺は近いうちに死ぬかもしれません。なので、どうか、どうか………この後どう言葉を繋げれば良いのだろうか。

 

遺書をどう書けば良いか考えているうちに目的の場所らしき所に到着する。会長が言うには、この施設で俺はサポートマシンの取り扱い、運転の実技と筆記を並行しておかない超短期コースで免許を取得するらしい。

 

 

「会長さんから聞いてるよ。アンタのその"異能"……いや"個性"か。それに見合った装備の調整をちゃんとしてやるさ」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

 

 ただ、まぁ。会長は"I・アイランド"にいる天才科学者の元で免許の取得をするのが条件になると言うのだ。この人は俺の装備の調整とか言っていたけど、勝手に自爆装置とか取り付けたりしないよな……?

 

 そんな一抹の不安を拭えない俺と科学者の男性は施設のエレベーターへ乗り込み19階に位置する研究室へ辿り着く。そこは……なんと言えば良いのだろうか?

 

まるで、"ぼくがかんがえたひみつのじっけんしつ"のような部屋だった。

所々には家電製品らしき物体が点在し謎の煙を発してるフラスコや、回転式の穿孔機、etc、etc……。

 

不覚にも心にキュンと来るモノばかりだ。……触りたい。

そんな俺の考えを見抜いたのか、男性は自慢気な表情を向けながら口を開く。

 

 

「ようこそ、てぇんさぁい物理学者【葛城巧】の秘密ラボへ!」

 

「うわ……」

 

「初対面の人に向かってうわってなんだよ」

 

 

 思わず声が出てしまった事に俺は咄嗟に口を手で押さえる。いや、まぁ失礼なのは承知だけど……いきなり目の前で謎のショー(過激)を見せられた人が天才を自称している。

俺の知識(アニメ、漫画限定)からは真の天才に嫉妬して名前を騙り人を実験体として扱うヤブ医者のイメージが……。

 

 

「だぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 

 そう思っている矢先、奥から誰かの声が響いて来ると同時に何か結晶のようなモノが辺り一面にばら撒かれる。

 

まさか本当に実験体が!?

 

多少の恐怖を覚えながらも奥の方から身体中に宝石のような綺麗なモノを鬱陶しそうに払う男性が現れたのだ。

 

 

「っ痛ェな!なんだよコレ!キラキラしたもんがゴロゴロと出てきやがったぞ!……あ?誰だお前」

 

「彼の名前は天倉孫治郎。お前の後輩と同時に被験者第2号さ」

 

「やっぱり実験体⁉︎」

 

「いいや違う、君達は俺こと、てぇんッ!さぁいッ!物理学者である葛城巧の世紀の発明品を扱うに相応しいと選び抜かれたのだッ!」

 

「要は実験体だろ」

 

「何も変わって無いじゃないですかやだー」

 

「ハイハイ、静粛に。第2号君こと天倉君には俺の世紀のだぁい!はつ!めい!を見せてあげよう!……ついでにそこの筋肉にも見せてやるよ」

 

「ついでって、なんだよ」

 

 

 良い歳して口喧嘩をしている光景に少し呆れていると、床が開き奥底から赤のカラーリングのバイクが姿を現したのだ。

 

 

「バイク……ですよね?」

 

「んだ、このデザイン」

 

「その名も『ジャングレイダー』!搭乗者の細胞を読み取る事によってバイクの搭乗経験がない人でもイメージ通りに走行させることが可能なシステムを基本に外装は形状記憶合金の"BT鋼"を使用。さらにコンソールユニットに内蔵された生体コンピューター"ブレインボックス"により特殊な脳波を受け無人走行ができる以外にも後部ブースターのダッシュブーストユニットで爆発的な加速を得る事が出来るのだっ!」

 

「…あ?な、なんだよ…その『じゃんなんとか』とか『ぶれんなんとか』って…!」

 

「……馬鹿には分からないか」

 

「誰が馬鹿だ!せめて筋肉付けろよ!つーかこんなの分かる奴なんて「すっごーい!」いたーーッ!?」

 

「凄ッ!何これッ!え?乗れるの!?マジで!!こんな特殊なカウル見た事無い!しかも、この翼の造形をしたブースター!なんて素晴らしいデザインなんだッ!……全体のカラーリングを除いて」

 

 

 色が何か癪に触るが、それ以外のギミックが搭載されたこの機体には浪漫とありったけ夢が詰め込められているのが分かる。変形!人型形態への変形機構は備わっているのか!?

 

 

「最高ッでしょ?天才ッでしょ?やっぱ分かる奴には分かっちゃうかなぁーーー!……あれれ〜?こんな所に仲間外れが居るぞ?」

 

「うっせぇ!」

 

 

 筋肉の人(仮名称)は不貞腐れたようにその場で腕立て伏せを始めた。

なんで筋トレをするんだろうか……、とりあえず慰めるように俺がその場でスクワットを始めると何か通じたのかプロテインを貰った。

 

 

「なんだよ、結構俺達似たような所あんじゃねぇか。……あー!こんな所に仲間外れが居るぞ〜〜〜⁉︎」

 

「大声で一々叫ぶんじゃないよこの筋肉馬鹿!」

 

「誰が馬鹿だこのナルシスト!」

 

 

 犬猿の仲なんだなぁと察した俺はとりあえず2人を落ち着かせると葛城さんに連れられる。バイクに乗らなくて良いのだろうか?と疑問に思っていると、奥にあるカプセルのような装置に案内される。

 

 

「それじゃ、入ってくれ」

 

「いきなり人体実験⁉︎」

 

「失敬な、未来の為に研究の協力してもらうだけだ。そんなに怖がらなくて良いさ」

 

「えー、あー……それなら……」

 

 

 俺は流されるように装置の中へ入ると、そのままガラス製の蓋が閉じられる。ちょっと不安だが葛城さんに言われたとおり、あくまで研究に協力するだけだから………あれ?それ要は人体実験と変わってなくない?

 

 

「すみません、やっぱりここから出しt「それじゃ、実験開始!」えっ?いや、ちょっと怖いんd「結構、キツイけど頑張れよ」えっ?」

 

 

「あの、ちょっと⁉︎やっぱりやめてもらっても……あ、蓋が開かない⁉︎待って⁉︎なんかガスみたいなのが出てきたんですけど⁉︎ちょっと待って!やめて!助けて⁉︎いやだァッ!!出してくれぇぇ!出してぇぇぇぇええええええ!!

 

 

 

 




やめて!ガス実験でハザードレベルを上げたらただでさえ吐血しやすい天倉の身体が消滅しちゃう!
お願い、死なないで天倉!アンタが今ここで死んだら物語の主役は誰が務めるの?精神的にはまだ余裕があるからここを耐えればハザードレベルを上昇させて新たな強化形態フラグを立てられるんだから!

次回「天倉死す」。デュエルスタンバイ!



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第56話 新・姿・変・身


「ヒーロー予備軍である仮面ライダーアマゾンこと天倉孫治郎は謎の天才科学者、葛城巧が行う未来へ繋がる輝ける科学実験にその身を投じたのであった!」

「何が投じてだよ、ほぼ騙して人体実験させたんじゃねーか。あと、謎のって言ってんのに名乗っちゃ意味ねーだろ」

「うるさいよ馬鹿。細かい事は気にしないの。……と、そんな事よりもハザードレベル、2…3…4……まだまだ上昇しているぞ……!」

<出してぇぇぇぇええええッッ!

「悲鳴上げてるけどいいのかよ。俺達どう見ても悪役じゃねぇか」

「大丈夫、そう言う時は『おのれディケィド!』とか『乾巧って奴の仕業』って言っとけば大抵は許されるんだよ」

「赤の他人の仕業にしてんじゃねぇよ!」

「とにかく、どうなる第56話!」






【I・エキスポ】

最新のアイテム実演、サイン会、展示会等のヒーロー関係の催し物が一通り存在するソレはヒーローを志す者にとっては夢のような場所である。

 

エキスポが開催されている人工島I・アイランドにてオールマイトの付き添いとしてやって来た緑谷もソレに含まれ、目を輝かすばかりである。

そんな彼はオールマイトの旧友兼個性研究トップランナーの天才発明家【デイヴィット・シールド】の娘である【メリッサ・シールド】と共にエキスポを回っていた。

 

すると予定調和の出来事のように緑谷のクラスメイト達も招待チケットやヒーロー関係により合流する形で続々と姿を現したのである。

 

 

「まさか、こうして皆で会えるとは思わなかったよー!」

 

「そうそう、なんやかんやでヒーロー関係者多いからね」

 

「ウチら付き添いだけど……」

 

 

 オールマイトと秘密の関係にある緑谷出久。スポンサー関係の八百万、ヒーロー"一家"である飯田天哉。と言ったように雄英にはI・エキスポの招待状を貰える者がかなりの数で存在する。

 

現時点では一般公開前の為、少人数だが翌日になればホテルに滞在している他のクラスメイト達も合流する事となるだろう。

 

 

「付き添いの形か。そう言えば切島君が爆豪君に付き添うとか言っていたが……」

 

「もしかして、コッチに来てるとか?」

 

「まっさかー、ここまで皆が揃うのは流石に無くない?」

 

「あーあ、これなら天倉に声掛けとけば良かったな」

 

「あー、でもよ?アイツの親って元ヒーローだろ?だったらエキスポの招待状でも貰っていてもおかしくねぇだろ?」

 

 

 天倉の父である天倉大河。何らかの理由でヒーローを引退されたと言われているオールマイトやエンデヴァーと同時期に活躍されたヒーローだが、オールマイトのインパクトが凄まじいのか、大河こと【フィッシュタイガー】については謎が多い。

 

 

(天倉君に聞きたいけど絶対嫌がるよなぁ……)

 

 

 親子関係が上手くいってないであろう天倉を刺激しない為にも何も聞かないようにしている緑谷は複雑な表情を浮かべる。

 

前日に何か忙しそうだった為、コッチに来るのは難しいだろうなと緑谷は天倉に対して同情する事となった。

 

 

「あ、そう言えばさ。昨日、天倉君から連絡来てたの知ってた?」

 

「マジで?俺ら飛行機ん中居たからなー……ほら、飛んでる時にスマホ弄っちゃダメだろ?」

 

「うん、でも内容が『ボケステ』の一言なんだよね」

 

「「「ボスケテ?」」」

 

「ボスケテ、ボスケテ……うーん、ボクをたすけて?」

 

「何かの誤字なのかな?」

 

「コラそこーーーッ!ちゃんと仕事をしたまえ!」

 

「わ、悪ぃ……」

 

「それに見てみろ!あそこにもお客さんが居るじゃあないか!」

 

 

 まるでいつも通りの教室内のノリで会話して盛り上がる上鳴達に飯田が呼びかける。

彼の指をさす方向にはサングラスを掛け、帽子を深く被りやや不機嫌そうにも見える男性客の姿がおり、迷惑になってしまったのだろうと上鳴達は黙ってしまう。

 

 

(この人………)

 

 

 緑谷は、この人から発せられる得体の知れない何かを感じる。こちらを見ていない。もっと別の何かを見て────

 

 

「………」

 

「す、すみませんでした……」

 

「気にするな。子供が騒がしいのは何処も変わらない」

 

 

 サングラスから透けて見える瞳が合わさった気がした。一般公開前である今日この日に来る人は限られるが、もしかしたら凄まじいVIP待遇を受けている人なのかも知れないと思いやや気不味くなった緑谷は委縮してしまう。

 

 そんな彼等の元にキンキンに冷え、3、4個の氷が心地良い音を奏でるジュースが置かれた。上鳴達と同じ格好をしたウェイターらしき人物は笑みを浮かべながら口を開いた。

 

 

「こちら、冷たいお飲み物になります。ゆっくりして行ってくださいね」

 

「あ、すみません……って、飲み物多くないですか?」

 

「上鳴君と峰田君の分も含めてだよ。友達が来てるならちょっとくらい休憩挟んでも大丈夫だよ」

 

「「恩に着りまーーすッ!」」

 

「あ、どうも。上鳴君達がお世話になっています。此処の助っ人で来ました沢木哲也って言います」

 

 

 行儀良くお辞儀するウェイターに戸惑いながら緑谷達も返すようにペコリとお辞儀を行う。

 

 

「いやぁ、この人の賄い飯が美味くてさ!」

 

「ランチラッシュの飯も美味いけど、この世には上が居るもんだなぁ……」

 

「ははは、俺これでも料理には自信があるんですよ!夕食のディナーでは俺が一から育てた野菜で作った料理を出すんで楽しみにしていてください」

 

「自家製!ディナー!」

 

「麗日さん!垂れてます垂れてます!」

 

「だから静かにしないか君達!!」

 

 

 麗日の涎を口端からダラダラと垂らす様子に八百万はハンカチを創造すると彼女の口元を拭く。そこに独特な動きをしながら委員長らしく叫ぶ飯田。雄英と変わり様の無い光景に緑谷は思わず「ハハ……」と苦笑いを見せる。

 

そんな彼等だが、ズンッ!と近くの建物から大きな破壊音と衝撃を感じ、視線の先には爆煙が天高く上がっていく光景が広がっていた。

 

 我々はこの聞き慣れた爆音と力強さを知っている!いや、この爆音と衝撃の原因を知っている!

嫌な予感がしたAクラスの全員はその会場へ足を運んでいったのだった。

 

 

「行っちゃったか……っと、すみません御注文をお伺い……あれ?さっきまでここに誰か居たはずなんだけどなぁ……?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 結果的に、爆煙の原因は爆豪だった。アトラクションの1つであるヴィラン・アタックに挑戦した彼はクリアタイム15秒とトップの成績を叩き出したのだ。

 

幼馴染である緑谷は相変わらずの凶暴さに引き攣った笑顔を見せるが、狂犬の如く噛み付いてくる彼のストッパーの役割として切島が着いて来てくれたのは正直助かったと思っている。

 

 

「いやぁ、体育祭で優勝した爆豪の付き添いとして着いて来たけど、すげぇなココ。なに?これから皆でアレ、挑戦すんの?」

 

「やるだけ無駄だ!俺の方が上に決まってんだからな!」

 

「うん、そうだね、うん!」

 

「でも、やってみなきゃ分からないんじゃないかな」

 

「うん、そうだねっ……って麗日さん⁉︎」

 

「だったら、早よ出てミジメな結果出してこいやクソナードが!」

 

「は、はいっ!」

 

 

 

「なんか、いつも通りって感じだな」

 

「おう、此処で天倉が『はい、爆豪君落ち着いてどうどう』って言って逆上した爆豪から逃げる形でアトラクションに参加する流れだろ?」

 

「でも、アイツ居ないんだよな。どうしたんだろ?」

 

「あぁ、せめて俺になんか連絡残してくれば良かったのに……」

 

 

 轟は少し悲しそうな表情を浮かべ呟く。ウンウンと同情の意を見せるように切島は頷くが、直後とある違和感に気がつく。

……あれ、轟って俺達と居たっけ?

 

 

「って、轟お前、シレッと入って来たなオイ!」

 

「テメェ!半分野郎!いきなり出てきて俺すげーアピールするつもりか!」

 

「……何のことだ?」

 

「おまたせ……って、轟君!?」

 

「彼もクラスメイト?」

 

「はい、そうです!轟君もアトラクションに?」

 

「いや、俺は出ねーぞ」

 

「マジか!」

 

「なら、こんな所に来てんじゃねぇよ!だいたいテメーどうやって来やがったッッ!」

 

「招待を受けた親父の代理で。天倉も誘おうと思ったんだが断られてな………」

 

((((うわっ、めちゃくちゃテンション低くなってる⁉︎))))

 

 

「ところで、緑谷の記録は2位か…凄いな」

 

「えっ、ありがとう轟k「俺が上だがなッッ!」かっちゃん⁉︎」

 

「爆豪は……緑谷の記録より()()()()1()()早かったのか」

 

「────」

 

 

瞬間、爆豪の頭に一気に血が流れ込んだ。

幼馴染である緑谷出久。今まで底辺と見てきた彼と自分の差がギリギリ1秒と言う事実に彼は我慢ならなかった。

デクが速い?いや、そんな筈は無い。アイツはノロマだ。

それじゃあ俺が遅い?スロウリィ?

 

圧倒的な差を見せつけ、1番となる彼にとって轟が口にした言葉は屈辱と同等、或いはそれ以上のモノとなったのだ。

 

 

「もう一回だ……!デクとの差を見せてやらぁ……ッッ!」

 

「あのー、アトラクションの時間はそろそろ終了になりますので……」

 

「うっせぇッ!次は俺だッッ!!」

 

 

 アトラクションのMCと揉め事を起こし始める爆豪に向かって飯田を筆頭にクラスメイト達は駆け出した。

 

 

「皆!止めるんだ!雄英の恥部が世間に晒されてしまうぞ!」

 

「う、うん!」

 

「お、おう!」

 

「なんだてめぇら、放せ!燃やすぞ!」

 

「あっ!クソッ!力強ェ!天倉はいつも1人でこうやってんのか!」

 

「かっちゃん、落ち着いて!」

 

「これ以上、恥を晒すのはやめたまえ!」

 

「誰が恥だ!」

 

「ここは語ろうぜ、爆豪!」

 

 

耳郎はチラリと横に居る八百万と麗日を見る。

 

 

「見て!アレが男と男の因縁!燃えるシーンってヤツだよ!」

 

「男と男の因縁……そういうのもあるのですね」

 

「天倉ーーー!早く来てくれーーーーッ!そしてコイツ等を止めてくれーーーーーッ!」

 

 

 耳郎は何処に居るか不明の天倉に向かって叫ぶ。ただ願うのはコイツらを黙らせて欲しい。それだけであった。頼むから私ばかりに負担をかけないでほしいと

そんな彼女の隣でメリッサは「あっ」と何かを思い出したように呟く。

 

 

「あ、皆!そろそろ()()が始まるわ」

 

「あ、()()ですか?」

 

 

 アレとは何なのか、全員の頭の上に疑問符が浮かぶ。すると、先程までアトラクションとして存在していた山岳地帯を模したステージは沈む形で舞台から消えると、入れ替わる形で1人の男性と複数のロボットがステージ上に現れたのだ。

 

 

「それでは皆さん!お待たせしました!世紀のてぇんさぁい物理学者葛城巧が送るガジェットの数々をお送りします!」

 

「えーと、あの人は?」

 

「あの人は葛城巧さん。史上最高のIQの持ち主で警備セキュリティから個性強化用のコスチューム、サポートマシン。その他にも凡ゆる分野で幅広く活躍している人なの」

 

「へぇー、とても凄い人なんだ!」

 

「それに、とっても面白い性格をしているし」

 

「あ、なんかソレは分かります」

 

「アレだね、天才は頭のネジが何本か飛んでるってヤツ」

 

 

 

 

 

「市民の防衛、敵の撃退を大容量のCPUにより自動で行う【ガーディアンシリーズ】に加え災害発生時における市民の救出、ヒーローの支援を送る大型ビークル!【パワーダイザー】となりまーすッ!最高でしょ!天才でしょ!」

 

 

 マイクを手にする葛城。そしてその後ろで隊列を組むガーディアン部隊と巨大なパワーダイザーの姿に観客席の人々は「おおっ」と声を上げる。

 

 

 

「うむむ、アピールとしては正しいのだろうが……こう、脳裏に俺を騙した彼女の姿が……ッ!」

 

「あー、なんかサポート科に通じるものがあるよね」

 

 

「で・す・が!こう、あなた方はこうは思いませんか?もしも市民を守る為の発明品が我々に牙を剥いたとしたら?」

 

 

 ロボットの兵隊であるガーディアンの目に該当する部分がギラリと輝いたと思うと、兵達が銃口を葛城を囲む形で構えたのだ。

急な事態に緑谷達は機械の暴走か⁉︎と思い咄嗟に前に出ようとするがメリッサが「いつもの事だから大丈夫」と言う。

いつもの事とは?も疑問に思う皆を尻目に葛城は手を天に向け伸ばす。

 

 

「ご心配無く!そんな我々を守るヒーローは立ち上がる!俺達科学者はそんなヒーロー達を強くする為に日々、進歩を遂げている!ここに、希望の1つとなりうる星がまた生まれました!」

 

 

 余裕の笑みを見せ、パチンッ!と指を鳴らすとスピーカーから謎の音楽が流れ始める。

直後、会場のとある場所から声が響く。

 

 

「待ていッッ!」

 

『『『『!?』』』』

 

 

 その者は太陽を背にスピーカーが設置されてある鉄柱の上に立っており、かろうじてシルエットが見えるそれは機械相手に口を開き始めた。

 

 

 

「戦いの虚しさを知らぬ愚かな者達よ……戦いは愛する者達を助けるためにのみ許される。その勝利のために、我が身を捨てる勇気を持つ者……人それを英雄(ヒーロー)と言う

 

 

『だ、誰だ!』

 

 

 お前喋るの⁉︎とガーディアンの一体が流暢に言葉を発した事に驚くが、それ以上に露わになったシルエットの正体に緑谷達は驚愕する事となった。

 

 

「貴様等に名乗る名前は無いッ!」

 

 

「「「「何やってんの天倉(君)⁉︎」」」」

 

 

 

「とぁッ‼︎」と建物5階分は相当する高さから落下しながら、腰に巻いた見慣れない装備に注射器のようなツールを射し込むと彼は叫ぶ。

 

 

アマゾン(変身)ッ!」

 

ν(ニュー)・OMEGA』

 

 

 緑色の炎と共に、幾何学模様のオーラが出現。電光を纏いながらステージ中央に着地すると同時にその姿は先程とは全く別の姿へ変化していた。

 

 緑色と血の色の傷跡を模した模様に額に伸びた触覚。ここまでは彼等の知る天倉の姿だろう。しかし爆炎の中心には陽の光を反射させた銀のプロテクターを装着し、透明のバイザーから赤の複眼を覗かせる。

 

電光をバチバチと残しながら、天倉孫治郎ことアマゾンの新たな姿。

アマゾンver.【ν・Ω】がこの地に降り立った瞬間だった。

 

 

「それでは、新たな希望の実力。とくとご覧あれ!」

 

 

 指を鳴らすと共にガーディアン部隊の銃口から無数の弾丸が放たれる。天倉は宙を舞うように身体を捻ると、放たれた弾丸を悉く回避してみせた。

視覚情報から弾丸は効かないと判断したのか数体のガーディアンが近距離戦闘を仕掛ける為、天倉に向かって駆け出す。

 

 

「はぁッ!」

 

 

 しかしそれを物ともせず正拳突き、蹴り、チョップ、関節技。

凡ゆる方法でガーディアン部隊の無効化を行う。

 

 

『対象の危険レベルを確認。確実に排除する』

 

 

 後方のガーディアン達は一定の距離を保ちつつ銃器による遠距離射撃。近接で格闘を行うガーディアン達と連携を行いヒーローを徐々に追い詰めていく。

 

 

「確か……こうやって!」

 

『BLADE・LOADING』

 

 

 が、ベルトに備わった注射器のように見えるツールを操作した直後、熱量を持つ刃が腕に装着された。真っ直ぐに伸び形成された剣を携えた天倉はガーディアンの首、肩、胸を貫き次々と兵達を薙ぎ倒していく。

切り刻まれた残骸を踏み潰し、威嚇行動を行う荒々しい獣の如くアマゾンは剣を振るいつつ、再びベルトの操作を行う。

 

 

『CLAW・LOADING』

 

 

 装着された剣から鉤爪へ変形し足元に落ちているガーディアンの頭部を爪に引っ掛けると腕を大きく円を描くように振り回す。すると鉤爪はモーニングスターのように周囲の機械仕掛けの兵隊達を薙ぎ払っていった。

その光景を緑谷出久は常に持ち歩いてるノートを持ち出し目を輝かせていた。

 

 

「すごい!やっぱりアレは天倉君の"個性"で武器を形成してるんだ!サバイバル訓練の時に槍を作り出したのと同じ要領でサポートアイテムの強化で凡ゆる武器を形にしてるのかぁ〜〜〜!I・アイランドに来て良かったぁぁ〜〜〜〜!」

 

 

 天倉について書かれたページに新たな文を追加されていく。ブツブツと呟きながら筆を執る緑谷の姿に「フフッ」とメリッサは笑みを浮かべた。

 

 

「あっ、いえ!コレはその、僕の癖と言うか……!」

 

「大丈夫。その気持ち分かるかも。……実はね私、無個性なの」

 

「えっ、無個性って……!」

 

「うん。最初はヒーローになれなくて残念だったけど、ヒーローの支えになれればって、この道に進む事にしたの。けどやっぱりヒーローはどうしても諦めきれなくて色々と悩んだりもするの。当たり前のように持っているものが無いって言われて……」

 

 

 メリッサの言葉に緑谷は複雑な気持ちになる。元は無個性である自分は周りにあるものが無いと言うコンプレックスが痛いほど分かる。

そんな自分がワン・フォー・オールを継承し、雄英高校で勉学に励んでいる。

恵まれている自分が彼女に何を言ったとしても皮肉になる。自分を責める気持ちが大きくなる一方でメリッサは「でも……」と呟く。

 

 

「葛城さん。あの人だって私と同じ無個性なの」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「うん、いつも楽しそうに発明品を作ってるんだけど、あの人は個性の有無について気にした事なんて無いと思うわ」

 

 

 マイクを握り、天倉の戦いをまるで自分の事のように嬉しそうに解説している葛城に視線を送りメリッサは笑みを浮かべる。

 

 

「あの人はね、私にこう言ったの。『ヒーローと科学者も根は変わらない。愛と平和を胸に人々を導く存在だ』……って。だからこそ、私は身近な目標の憧れのパパのように。ヒーローを助ける存在になりたいって思ったの。それが私が目指すヒーローなの」

 

「ヒーローを助けるヒーロー……」

 

「……ねぇ、デク君。今夜、付き合ってくれない?」

 

「えっ」

 

 

 緑谷は思わず固まってしまう。童貞である彼は色々と勘違いされそうな言葉を囁かれ、脳のキャパシティがオーバーフローしたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

(どう言う事ーーーーッ!?えっ?、何デク君て、え?メリッサさんも何言っとるん!?そう言う……え?そう言う事なの⁉︎べ、別に気にはしてないけど、まだ一日も経ってないのにそう言う仲って……⁉︎えっ、えっ?えっ!えっ⁉︎デク君!?どう言う事なのデク君ーーーーーーーーッ!?)

 

 

 ちなみに、その様子をちゃっかり覗いていた麗日も顔を真っ赤にして慌て脳のキャパシティがオーバーフローしたのも言うまでも無いだろう。

 

そんな2人はさておき、

 

 

「さぁ!最後の大仕上げ!果たして我々の希望の星であるヒーロー『アマゾン ニュー・オメガ』は暴走した巨大ロボ、パワーダイザーを止められるのかッ!」

 

「最後はコレか……ぶっつけ本番だけどやるしかないか……!」

 

 

 殆どのガーディアンを破壊した天倉は形成した武器に付着した兵隊の破片を払うとドライバーを操作し、右腕を前へ突き出す。

 

 

『ROCKET・LOADING』

 

 

 音声と共に右腕に巨大なブースターが形成。後方の噴射口(ノズル)から炎が吹き荒れ、グン!と前へ引っ張られる感覚を残し天倉はパワーダイザーに向かって突進を仕掛けた。

 

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおッッ!!」

 

 

 雄叫びと共に上空へ持ち上げると、そのまま地に叩きつける形で勝負は決した。そして勝利を祝福するように天倉は再び上空を駆け抜け宙を舞い上がっていく。

 

 

「これにて、天才科学者こと葛城巧の世紀の大・発・明のショーを終了とさせていただきまーーーす!」

 

 

 パチパチと観客席から拍手の嵐が巻き起こる。高度なアクション、熱い解説、ヒーローファンに嬉しいサービスも充分な葛城の『大・発・明・ショー』は大成功を収める事となった。

 

 

「凄かったねデク君!」

 

「はい!天倉君の"個性"があそこまで昇華されるなんて思いませんでしたッ!」

 

「うん!うん!葛城さんの技術力の高さにはつくづく驚かされるわ!私も負けられない!時間になったら私の部屋にね!」

 

「はい、分かりました!」

 

「デクく〜〜〜ん、楽しそうやったね」

 

 

 緑谷とメリッサが楽しそうに話している空間に麗日が割り込む形で話しかける。彼女から威圧感が滲み出ている気がするが恐らく気の所為だろう。

 

 

「勿論!はぁ〜〜〜っ!メリッサさんがあそこまで話の分かる人だなんて……!それに天倉君のショーもテンション上がったぁ〜〜〜!最後の上空遥か彼方へ消える演出なんて圧巻の一言だよ……!」

 

「そ、そうやね……(どうしよ、最後の方、デク君に気ィ取られて見てなかった!くそぉ……見たかったなぁ……!)」

 

 

 よそ見していた事を悔やみながら麗日は緑谷の言葉に頷く。しばらくして、耳郎がジッと上空を見上げてるかと思っていると首を傾げながら口を開いた。

 

 

「アイツ、いつまで飛んでるの?」

 

 

 上空にはロケットブースターで空を飛び続ける天倉の姿が在った。しかもコントロール出来ていないのか宙で縦横無尽に振り回される形で飛行している。

 

 

「ちょっと!葛城さん!これどうやって止めるの!?」

 

「ノズルの噴射を止めるんだ!」

 

「どうやって止めるんですか!」

 

「知らないよ!やってる本人にしか分からない感覚なんだから自分でやれ!」

 

 

 宙にいる天倉のスピードは先程よりも増していき飛ぶ方向を急転換させたと思うと緑谷達が居る観客席に向かって落ちていった。

 

 

「なんかコッチ来てない!?」

 

「えっ、ちょっとやめてよ!」

 

「うわぁぁぁぁぁああッ!天倉が隕石として降ってくるぅぅぅううううッッ!」

 

 

「ああああああああ我が魂はゼクトと共にありぃぃぃぃぃいいいいいいッッ─────お゛ごぉッ!!!

 

 

 

 ゴシャッと天倉の腹部に観客席に設置された落下防止用の鉄柵へと引っかかる形で強打する。あまりの衝撃に死にかけの芋虫のように悶えるとそのまま意識を失ったのかその場でダラリと気絶してしまう。

 

 

「うわぁ、柵が腹へダイレクト当たった……」

 

「あれ、ぜってー痛い……むしろ痛い以外見つかんねぇ……!」

 

「内臓が……確実に内臓が潰れてるよアレ……!」

 

 

 ビクンビクンと柵の上で干された布団のように力無く垂れている天倉の姿を見てドン引きするクラスメイト達。しばらくして天倉は意識を取り戻したのか、ハッと緑谷達の姿にようやく気付く。

 

 

「み、皆どうして此処に!?まさか、俺の隕石特攻(ケタロスアタック)で皆は命を落として……!?」

 

「勝手に死んだ事にしないでくれる⁉︎五体満足だから!フツーに生きてるから!」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ヒーローの卵………」

 

 

 帽子とサングラスを外し、露わとなった瞳は空を舞っていた彼の姿を捉えていた。ヒーロー、今の社会に影響を与えるソレは自分にとってどうでも良い存在である。

 

 

「太陽の下で空を飛ぶのは実に楽しいだろうな」

 

 

そう言い残し、カツン…カツン…と足音を響かせた後、男は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.前書きの会話ウザくない?
A.劇場版という事で許してクレメンス

Q.沢木哲也って?
A.あぁ!

Q.ロケットを形成して飛ぶのは無理があるだろ。
A.バルファルクと言うモンスターがいてだな……




『天倉孫治郎』

 主人公枠に収まったヤベーやつ。御都合主義展開でパワーアップする人の皮を被った何か。インチキ効果も大概にしろ!
ロム兄さんの口上を使ったが別にケンリュウ枠でタイムマジーンとかを呼び出したりはしない。

ちなみに葛城によってショー前日に徹夜で台詞や動きなどを仕込まれた。



《コスチュームver.【ν・オメガ】》

天倉が変身するΩ形態と比べて変身後の安定性が優れる。
装備に頼る面が多くなるが人命救助、敵との交戦をバランス良く行う事が可能な形態。

しかし新たに追加されたプロテクターは暴走による危険性を防拘束具(リミッター)の役割も果たす為、リスクの高い別形態への変身が不可能、また窮地に陥った際に生じる爆発力も抑えられてしまうとデメリットが存在する。

ちなみに何の為か不明だが宇宙空間での活動も可能。


 アマゾンズseason2での初登場では心が踊ったが、めぼしい活躍が全く無い可哀想な形態。なんでや!ニューオメガカッコいいやろ!
葛城の手によってフォーゼとバースのギミック要素をふんだんにブチ込み、超強化を図る(作者の願望)


《装備一覧》

【BLADE・LOADING】(ブレード)

 熱量を持った刃を形成。武器として扱えるが、本来の用途は災害時における救助口を作り出す、又は乗用車に閉じ込められた際に変形してしまった扉の破壊等のハンマー、バール、斧のような役割を果たす。


【CLAW・LOADING】(クロー)

 敵遠距離の敵を捕らえる、鉤爪として攻撃が可能な装備。
救助用としては運搬、引っ張り作業などのウインチとしての役割を果たす。


【ROCKET・LOADING】(ロケット)

 長距離飛行を可能とする装備。しかし反動や噴射する際の出力が強すぎる為、扱うのにかなりの時間を費やす。


【SHOVEL・LOADING】(ショベル)

 万力のように締め付け、敵を拘束するのにも有効。地面を掘り上げ、土砂、雪、瓦礫等を持ち上げ撤去を行う事を目的とした作業用の装備。


【SHIELD・LOADING】(盾)

 防御、打撃武器と言ったように敵の鎮圧として扱いやすい装備。左腕に形成されるので他の装備と併用する事も可能。


【DRILL・LOADING】(ドリル)

 回転式穿孔機による瓦礫撤去、地下に閉じ込められた市民の救出を目的として作られた装備。
ちなみに左脚に形成される。

「何で腕にドリルを取り付けないんですか⁉︎」
「腕より脚の力の方が何倍も強いからだよ!それに本来戦闘用じゃなくて災害での瓦礫撤去を想定したものだから脚で良いんだよ!」
「はっ、クソだわ。腕につけるのが1番だろJK(常識的に考えて)」
「は?」
「は?」

この後、無茶苦茶殴り合った。


《ネオレジスター》

 天倉が過剰にオーバーフロー状態にするもんだからアカン事に。
このままアイアンマン2のトニースタークの如く頭がハイになってヤベーイ事になるのを阻止する為、急遽改良型を無理矢理装着された。ちなみに内側にある針は一本に減らされ身体への負担も極力低くする事に成功。真木博士が一晩でやってくれました。

ちなみに相変わらずドーピング(オーバーフロー)は可能らしい。




『葛城巧』

 史上最高のIQを誇るてぇんさぁい物理学者。天才だが時々バカになる。ラブ&ピースを胸に日々研究を重ね、人体実験を容赦なく行ったりするマッドな面も……。
ガワは佐藤太郎。中身は桐生戦兎で名前が葛城巧。
または葛城巧と思い込んでる桐生戦兎(精神異常者)の可能性が……。


『被験者1号』

読者からは『プロテインの貴公子』や『歩く溶岩性単細胞』と呼ばれており正体はバレバレである。
意図して名前を出してないのにどうして分かったんだ……。

此処では葛城巧の人体実験のアルバイトとして住込みしている。ちなみにアルバイトの理由は彼女との生活費を稼いでいると言う。
筋肉馬鹿に彼女が居るのに俺らと来たら……。


『沢木哲也』

 とあるレストランのオーナー。その人柄の良さでレセプションパーティーの厨房の助っ人としてもやって来る。別に記憶喪失でもないので安心したください。

ところで、仮面ライダージオウのスタッフに絶対
アギトファン居るだろ……。


『謎の男』

サングラスに帽子と怪しい人物。
イメージ的にはグラサン掛けた
鬼舞辻無惨(パワハラの化身)じゃないっすかね?
何考えてるか分からない怪しい人。



『ガーディアン』

空気を読むようにインプットされている為、天倉の口上を最後まで待ってくれる。と言うかロム兄さんの口上でエヴァ量産型すら空気読むのって凄い(小並感)





新形態お披露目なのに、腹を打って気絶と言う微妙なオチ。
でもseason2の初登場時も大体こんな扱いだったなんて口にできない。

ニュー・オメガ初登場シーンをリスペクトした結果がこれだよ。


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第57話 爆走独走激走暴走バイク(なお仮免許)

ン我が魔王が遂に最強形態を至った。

しかし、目の前にあったのは戦闘でもなければ因縁のある敵との決着でもない。ただただ一方的な蹂躙、ブラックが増えた案件以上にヤバい能力を手にしてしまった事に震えが止まらない。
ねぇ我が魔王強すぎない?公式で時間操作て……ライダー召喚し放題て……。

ゼロノスもとい桜井侑t……って誰?
ともかくゼロノスとゲイツ君が魔王の誕生を阻止しようとする理由が言葉では無く心で理解できた。


作者としての感想は昭和ライダーの力を継承していなくてよかった……。ただそれだけである。

「次は…コレだ!」

『ライダーパァッンチ!』
『RXキィィックッ!』
『ボルティックシューター!』
『スパークカッタァァア!』

「時間よ戻れ!」

『ライダーパァッンチ!』
『RXキィィックッ!』
『ボルティックシューター!』
『スパークカッタァァア!』

「時間よ戻れ!」

『ライダーパァッンチ!』
『RXキィィックッ!』
『ボルティックシューター!』
『スパークカッタァァア!』

「時間よ戻(ry


継承していなくて本当に良かった(安堵)





 

 

 

 エキスポのメイン通りから外れた埠頭近くの倉庫。そこに帽子にサングラスをかけた男が入って行くと顔に傷のある男が待っていましたと言わんばかりに言葉を投げかけて来た。

 

 

「そちらはどうだった?」

 

「手筈通り。見て回って来た」

 

「おい、帽子や眼鏡を着けていたとしてもバレちゃ意味がねぇんだぞ」

 

「堂々とすればバレる事は無いだろう。逆にコソコソしていれば怪しまれる……それに、オールマイトの教え子らしき奴らも見て来た」

 

「……ほう?」

 

 

 傷の男が"オールマイト"と言う言葉に反応する。それに対して帽子とサングラスの男は興味がなさそうに「フン」と鼻を鳴らすような音を出す。

 

 

「そちらはブツを受け取ったんだろう。作戦中盤では確実にアレを手に入れる」

 

「……勿論だ」

 

 

 帽子を深く被り直し、記憶に刻まれたあの赤の存在を思い浮かべる。……思い返す度に手が震え汗が噴き出てしまう。

その存在が今日この日、最後となる。

 

 

「俺は……恐怖を乗り越える」

 

 

男の瞳の奥にはその覚悟が確かにあった。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

拝啓、お父さん、お母さん。

現在俺は会長のススメでバイク(サポートマシン)の免許を取得すべくI・アイランドに来ています。

 

しかし、何故でしょうか。俺はバイクの免許の勉強、実技を習いに来たはずなのに変な実験に付き合わされています。

 

つい先日では謎のガス実験やボトル実験。挙げ句の果てには喋るところてんと悪魔合体させられ「ゴルゴムめ許さんッ」と呟いていたらしいです。

 

我ながら良く五体満足で済んだなと思いました。

そんな俺ですが、

 

 

 

「次はブースターを搭載した状態で走らせるぞ!」

 

「やめてやめてやめtアッ──────」

 

 

 

速さの向こう側へ逝きかけてます。

────っと、失礼。本日何回目か数え切れないが一瞬、気絶していたらしい。現在、俺は空港近くに設置された演習場にやって来ている。

 

理由はもちろんお分かりですね?葛城さんが俺を連れて、ジャングレイダーに無理矢理搭乗させたからです!(ワザップジョルノ感)

 

 そんな俺も最初こそ乗り気でジャングレイダーに跨り、グリップを握りギアを入れアクセルを開けたのだが、思えばそれが地獄へ向かう為のアクセルだったのだろう。

 

 気がつくと俺はバイクと共に地に伏しており今日の夕飯の前に土を口にする事となったのだ。口の中が土まみれになりながらも葛城さんに転倒した理由を聞くとどうやら、ジャングレイダーの馬力が強すぎて俺自身が使いこなせてないと言うのが理由だと言うのだ。

 

成る程。

 

何故に高校生をそんなマシンに乗せるの(真顔)

 

しかも、原付免許取って間もないんですが(真顔)

 

 

 そんな俺の疑問に対して葛城さんは「そもそも"個性"使用後を前提として制作したマシンだぞ?生身ですぐに乗ったお前が悪いだろ」と反論の余地も無い言葉に俺はぐぬぬと唸るしかできなかった。

 

 と、まぁ前書きは置くとして俺はこのサポートマシン(じゃじゃ馬)を乗りこなす為に演習場にてバイクを走らせているのだ。

 

 ちなみにだが、このバイクはギア1の状態で10秒満たずで時速80kmに到達するらしく正確にコントロールする為には俺の脳波とジャングレイダーに搭載されてあるブレインボックスを同調させる必要があると言うのだ。

 

とにかく運転→投げ出される→ブレインボックスの調整→運転→投げ出されるのループを繰り返し、たまに気分を変えてブースターユニットを積んだまま走らせると言う頭のおかしい所業で俺のカラダハボドボドダァ!

 

 

(あぁ、この実技が終わったら俺、高級ビュッフェを楽しむんだ……)

 

 

そんな俺の願いも虚しくジャングレイダーから投げ出された俺はキラキラと星が瞬く夜空を視界に入れながら何度目か分からない土の感触を味わうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、同時刻のセントラルタワー内にて緑谷と麗日の2人はパーティー会場の下見に来ていた。

 

 

「まだパーティー開始前なのにこんなにヒーローが!」

 

「カニがあんなに……あれが成功者の特権……」

 

 片やヒーローへサインをねだる為に、片や己が食欲を満たす為に天倉から託された得物(タッパー)を手に会場へ足を運ぼうとする。

 

 

「すみません、タッパーの持ち込みは……」

 

「違います胃袋ですよ外付けの」

 

「"個性"ですか?」

 

(麗日さん……)

 

 

 麗日の必死の形相に緑谷は同情してしまう。貧相な暮らしを余儀なくされ、飯を抜く事すら当たり前と化して来ている麗日にとって目の前にあるのは金銀財宝の山と同義なのだろう。

 

しかし、それを決して許す事のない門番であるレセプションパーティーのスタッフは麗日の侵入を懸命に防いでいる。

そんな光景に緑谷の目から熱いものが溢れて来たのは言うまでもないだろう。

 

 

「何をしているんだ2人共!会場内への私物の持ち込みは慎みたまえ!」

 

「違うよ飯田君!これは胃袋の一つだよ!」

 

「どう見てもタッパーじゃないか!それと緑谷君!君もサイン用の色紙の持ち込みはやめるんだ!」

 

「そんなっ!?」

 

 

 ショックを受ける2人の元に続々と見知った面々が揃っていく。後来ていないのは爆豪、切島、天倉、メリッサの四人……正確には天倉は来ない為、三人である。

 

 そんな正装に身を包んだ皆の元に大胆なドレス姿をしたメリッサが自動ドアの向こうからやって来る。ちなみに彼女から頂いた招待状で参加した峰田と上鳴の2人は「ひょー!」と歓喜の声を上げた。

 

 

「デク君達、まだ此処にいたの?パーティー始まってるわよ」

 

「タッパーが……ごめん天倉君約束をマモレナカッタ……」

 

「え、タッパー?」

 

 

 ドレス姿のメリッサに目を奪われながらも、彼女から受け取った右腕に装着された"コレ"に片方の手で触れる。自分と同じく目標()に向かって己を信じる姿に共感した緑谷は彼女に負けないよう、一刻も早くオールマイトと同じ最高のヒーローになれるように願う。

 

……ただ、今回ばかりは少し羽目を外しても良いんではなかろうか?と思いながらサイン用の色紙を懐にこっそりと隠した。

 

残るは緑谷の幼馴染である爆豪と切島の二人だが、全く来る様子も無く飯田がスマホを取り出し連絡しようとしたその時。

 

 

『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました。今から10分以降の外出者は警告無く身柄を拘束されます。くれぐれも外出は控えてください。また、主な重要施設は警備システムによって()()()()()()()()()

 

 

セントラルタワーは脱出不可の牢獄と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁー、思った以上にごった返しになってるよ」

 

「と言うか爆弾ってマジ?」

 

 

 ホテルにて蛙吹と葉隠、芦戸の三人が島内放送に困惑の意を見せていた。すると、一般公開される明日に備えて宿泊施設に居た三人の元に常闇、障子の二人がやって来た。

 

 

「お前達も此処に来ていたのか」

 

「あ、障子君に常闇君!二人もこのホテルだったんだ!」

 

「然り、こちらへ来る途中にて他の者達と連絡を取ったが、商業施設、観光施設といった殆どのエリアから客が避難しているそうだ」

 

「おかしな話ね。此処はタルタロスに匹敵する警備システムの筈なのに、なんで爆弾が……」

 

「ともかく、部屋に戻るとしよう」

 

 

 蛙吹の疑問も最もだが、今は警備を務めているガーディアン部隊の警告に従い己の部屋へ移動を行う五人。

そんな彼等の前にジャージを着た自分達と同じくらいの歳をした団体が通る。

 

 

「アレは……どこの学校だろ」

 

「あー!私知ってる!天校でしょ!」

 

 

 芦戸の疑問に答えるように葉隠がジェスチャーを取りながら答える。「あー、それね」と思い出したように呟く芦戸。

 

 

「個性を伸ばし尊重する校風で有名な!」

 

「宇宙開発における……人材育成の為に設立されたと言う学校だった筈……」

 

「何かおもしろそー!」

 

「修学旅行ってとこか……こんな時期に?」

 

「宇宙開発の最先端技術の見学と言う訳か……」

 

 

 こんな時期、よりにもよって修学旅行の楽しんでいる最中に避難誘導と言う生徒達の不満が募る中、それを掻き分けるようにサスペンダーが特徴的で……言ってしまえば悪いが風貌がやや見窄らしい男性が「どこだー!」と叫びながらやって来る。

すると、こちらに気付き声を掛けてくる。

 

 

「な、なぁ。ちょっと聞きたいんだが〜……ここら辺で……こう、特徴的な頭をした奴を見かけなかったか?」

 

 

全員は互いの顔を見合わせると即座に常闇を指した。

 

 

「……不服ッ!!」

 

「あーいや違う違う!髪型の意味で!特徴的な奴だ!このご時世でリーゼントをした奴を探してるんだよ!」

 

「リーゼントって……そんな昭和じゃあるまいし……」

 

「実はウチの高校の引率の教師なんだが……俺に生徒達を任せっきりにして何処に行ったんだアイツ〜〜〜!」

 

 

 その男性の声と共にサスペンダーのパァン!と言う甲高い音はホテル内に響き渡るワケもなく客達の騒がしさにかき消されていったのだった……。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 事は20分前に遡ると同時に、場面は演習場へ戻る。被験者1号(仮名称)はコンビニ袋を下げ、雇い主である葛城巧の元へ行っていた。

彼は近くにあるコンビニエンスストアへと「何か夕飯買って来てくれよ」とパシリ……いや、買い出しに出されており不満もあったが腹も減っていた為仕方なく了承する事にしたのだ。

 

そんな彼が戻っていた頃には、身体のありとあらゆるパーツがあらぬ方向に曲がっていた天倉の姿があった。

 

 

「俺が居ない内に何があったんだよッ!?」

 

「こんな夜中に大声出すんじゃないよ。人様の迷惑も考えろっての」

 

「誰がうるさいって!?」

 

「お前だよ。そんな事より夕飯はちゃんと買って来たのか?」

 

「たりめーだ。つーかアレ(天倉)は大丈夫なのかよ」

 

「あぁ、それなら……おーい!ご飯の時間よー」

 

 

 葛城の言葉が彼の耳に届いた瞬間。天倉の身体はボキィ!バキィ!と人体から発してはいけないような音を出しながら即座に復活する。

 

 

「ご飯!?ビュッフェ!高級ビュッフェはどこだッ!」

 

「うっわ、なんだアイツ!?人間技じゃねぇぞ!」

 

「飯前なのにスッゲェ気持ち悪い再生の仕方をしたなぁ……残念だけどビュッフェはお預けだ……だからそんなに落ち込むなって。ほら、さっさと食べたら続きをするぞ。で、今夜の夕食は〜〜〜……」

 

 

 葛城がコンビニ袋を漁り片っ端から中身を取り出していくが、しばらくして葛城の手は止まる。疑問を感じた被験者1号(仮)は「おい」と呼びかける。

 

 

「どうしたんだよ。カップ麺好きなモノを選べよ」

 

「なぁ、お前。お湯はどうするつもりだ?」

 

「………あ」

 

「"あ"じゃないよ、この馬鹿。いやホント馬鹿ッ!馬鹿の中のキングオブ馬鹿!」

 

「誰が馬鹿だよ!!あと、馬鹿は馬鹿でも筋肉付k(ry」

 

 

「いや、もう、どうでも良いです……」

 

 

 

 天倉の掃き溜めの如く声に2人は視線を彼に向ける。地面の上で屍にも等しい状態の彼の目からは光が感じられず「あぁ、世の中クソだな」と言う底の見えない闇オーラを放っていたのだ。

 

 

「すみませんベストジーニスト……鋼の意思なんて無理です……調子に乗って良い気になってた俺がこんな凄まじいマシンを使いこなすなんて無理です……」

 

「あーあ、お前の所為だからな」

 

「俺じゃねぇだろ!どう見てもお前が実験で酷使し過ぎたからだろ」

 

 

「まぁ、こんな俺もホントは乗り気でいながら全くマシンを操れてない俺が最も滑稽だよ……」

 

「あ?」

 

「皆、俺の為に力を貸してくれたと言うのに俺はなんの成果も出せてない……滑稽を通り越してただの愚か者ですよ……笑えよ……誰か俺を笑ってくれよ……」

 

 

「あのな、別に何回も失敗したからって、自分を責める事じゃないぞ。それに、これはお前とマシンを調整するためであって……って、聞こえてないか」

 

「おい、どうする?コイツどう見ても続きをできる感じじゃねぇぞ」

 

「……仕方ない、こうなったら明日に持ち越すしか──

 

 

「そんな事はねぇ!!」

 

 

──ッ!この声は!?」

 

 

 天倉の前には、ひと昔に流行ったらしいヘアースタイルであるリーゼントを決め、それに似合わないスーツで身を包んだ男性がそこに立っていた。

 

 

「さっきまでのお前の姿!確かと胸に響いたぜ!」

 

「……え、誰?」

 

「なぁに、ただの通りすがりの先生だ!」

 

「……は?」

 

「アンタは……!」

 

「俺にも手伝わせてくれ。こんな青春謳歌中の生徒を立ち直らせるのも先生の役目だ!」

 

「……え?(困惑)」

 

 

 そう一言呟いた先生を自称する男は地で寝そべる俺を尻目にバイクに跨り、ハンドルを握る。エンジンがかかった直後、天倉は我に返るとすぐに男の元へ駆け寄り必死に止めようと車体を掴む。

 

 

「ばっ、ちょっ、馬鹿!貴方なにやってるんですか!」

 

「何って、これからお前に手本を見せてやるだけだ!心配すんな」

 

「さっきまでの俺の運転見てたでしょ!こんなじゃじゃ馬を制御できないですよ!」

 

「そんなのやってみなきゃ分かんねぇだろ!」

 

「はーーーーーー!!?」

 

 

 天倉を振り解いた男はバイクを走らせる一歩手前であり、止めても無駄だと察し頭の中が混乱と焦りで真っ白になってしまう。

そんな硬直する天倉の耳に葛城の言葉が届く。

 

 

「天倉!ブレインボックスだ!お前の脳波でジャングレイダーの出力を低下させるんだ!」

 

「そんなの……!」

 

 

 「無理だ」と言いかけた天倉だがそれ以外に選択肢が無い事を彼自身は分かっていた。だからこそ本当にやれるのか心配だった。何十もの失敗を積み重ねた天倉に凄まじいプレッシャーがのしかかり「また失敗してしまうのではないか?」と言う疑問が頭の中でこびりついてしまい全身から多量の汗が噴き出て来る。

 

 

(でも、……もし俺がやらないとあの人は……!)

 

 

 容易に想像できる未来のヴィジョンに天倉の覚悟は固まった

()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな意思が鋼のようにガッチリと固定されたような感覚が天倉の中で起こった───

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ハァッ……ハァッ……!」

 

 

 結果としてあの人は大事には至る事はなかった。あのマシンはスピードこそは速かったが俺が強く願った通り、あの人は一切傷付く事無く無事に運転する事となった。

 

……しかし、あまりの出来事に俺は無駄に疲れてしまったのか肩で息をする羽目になった。

 

 

「あぁ、……もう」

 

「なんだよ、思ったよりできるじゃねぇか」

 

「何ができるじゃねぇかですか!?今までの運転を見ていたなら分かると思いますけど、もし何かあったら!」

 

「その"何か"は起こらなかっただろ?」

 

 

 悪びれも無くニッと笑う男性に俺は呆れる事しか出来なかった。

いや、自分の命すら惜しくないその様子は呆れを通り越して感心してしまう程だろう。

 

 

「お前なら絶対にできる!そう信じていたから心配する事なんて無いだろ」

 

「俺なら絶対に……できる……」

 

 

 どんな後向きな事を言っても何度も目を背けても無理矢理、俺の真正面に立とうとする太陽のような輝きを持ったこの人。

……この人には絶対に敵わない。そんな確信めいたものがそこにあったのだ。

 

 

「……ありがとうございます。今の俺なら…いける気がします」

 

「おう!そうでなくちゃな!」

 

 

 そう呟くと男性は俺の前に拳を突き出して来る。

……これは何なのだろうか。俺の困惑の意を察したのか男性は無理矢理俺の手を掴むとトントンッとリズム良く拳同士をぶつけ合い、最後に友好の印である握手で終わる。

 

 

「……これは?」

 

「俺とお前。ダチの印だ!」

 

「先生と生徒なのに?」

 

(ダチ)にそんなのは関係ねぇ。俺とお前は心が通じ合った仲だ!」

 

 

 心が通じ合ったと言うのは無理があるのでは無いのだろうか?そんな俺の疑問も「気にするな!」で無意味となんだろうなぁ思った。

 

……けど、とても良い気分だ。

 

終わり良ければ全て良し。そう思わせる力がこの人にはあるんだ。

 

 

「それじゃ!俺はこれから生徒達のトコ行かなきゃならないからな。次会う時はちゃんと乗れるのを楽しみにしてるぜ!」

 

「あ、あの!?」

 

「それじゃあな!」

 

 

 そう一言だけ残し、その人は自分の名前を名乗らずに去ってしまう。ただ分かるのはあの人が本気で俺がやれると信じていた。

そんな嵐のように過ぎ去った人に対し唖然となっていた自分に葛城さんは声を掛けて来る。

 

 

「あの人は見ず知らずのお前を信じてくれた。その期待に応えられるようにしないとな」

 

「……葛城さん。1つ良いでしょうか?」

 

 

 俺はどうしてもこの人に確かめたい事があった。その事をどうしてもこの人の口から聴きたい。

 

 

「どうした?」

 

 

「葛城さん………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………さっきまでの完全に仕込みですよね

 

「……えっ」

 

 

 うん、ちょっと勢いに流されていたけどさ、おかしいよね?急に現れて俺に助言するって時刻とか場所とか色々とおかしいよね?

 

 

「登場したタイミングにやや強引な展開。そしてチラチラとですが葛城さん目配せしてたのをちゃんと見てましたからね……」

 

「……マジで?」

 

「あぁ、してたな」

 

 

 葛城さんは側に居た被験者1号(仮)さんに話しかける。いや、別に仕込み自体に文句は無い。そのおかげで大分やる気も出たし、そもそも先生を自称していたあの人自身、カンペを読んでいたような感じではなく、心の底から俺と(ダチ)になりたいって気持ちが本気で伝わって来た。

 

……ただ俺は、ドッキリ感覚で無理矢理実験される事に不満を抱いているだけだ。なんか、こう相澤先生に似通ったモノを感じざるを得ない。

 

 

「……怒ってる?」

 

「まさかハハハそんなまさかハハハ。ただ、不慮の事故でバイクが突っ込んで来てもそれは仕方ない事ですよね

 

「完璧に怒ってらっしゃる⁉︎」

 

 

 ハハハさてと、それじゃあ運転の続きと行きましょうか。運転の仕方もコツを覚えて来たので次で最後にしてみせよう(事故を装って轢いてもよいだろう)

 

 

「分かった、とりあえず落ち着け」

 

「落ち着いてますよ。……少なくとも今なら正確に葛城さんに対してライダーブレイクをお見舞いできると断言できます」

 

「よし分かった、とりあえず本気で落ち着け、な?」

 

「……すげぇ、まるでチベットスナギツネのような冷めた表情を浮かべてやがる」

 

 

そんな事を言い合っている俺達だが、後方からガシャンガシャンと聞き覚えのある駆動音と足音が耳に入る。後方へ振り返ると複数のガーディアンが立っており、音を響かせながら銃を構えていた。

 

 

 

 

「……まーたなんかの演出ですか、良いですか葛城さん。天丼ネタは飽きられるんですよ。それに加えてナルシストで自意識過剰な葛城さんに至ってはただ痛いだけですからね?自覚してください!」

 

「いや、おい!天倉!?」

 

「で?銃弾の嵐を避けた次は実践練習でもやる気ですか?あらかじめ言っておきますけど、やるなら事前に言ってくださいよ!?」

 

「お、おい!天倉!」

 

「なんですか?一応、言っておきますけど、俺は知らないと言っても通用しm『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました。今から10分以降の外出者は警告無く身柄を拘束されます。くれぐれも外出は控えてください。また、主な重要施設は警備システムによって強制的に封鎖します。繰り返しお伝えします……』

 

 

俺の言葉を遮る形で島内アナウンスが流れ、アラーム音が島中に響き渡る。ギギギと俺は2人の顔を交互に見合わせると佇んでいたガーディアン部隊の一体から音声が流れた。

 

 

『銃火器及び、危険物の所持を確認』

 

「……えっ、危険物って?え?」

 

「いや、それお前(天倉)の事だろ全身凶器に加えて装甲もつけられてんだから」

 

『危険人物と判断。登録ID【天倉孫治郎】及び残りの2名の拘束に移行します』

 

「「「えっ?」」」

 

 

腑抜けた俺達の声を搔き消すようにガーディアン達が構えた銃から無数の弾丸が放たれた────

 

 

 

 






〜〜用語解説〜〜



『謎の熱血教師』

 リーゼントヘアーの先生を自称する男。天倉の第一印象としては切島君と仲良くなれそうだなと言った感じ。あと、眩し過ぎて浄化されそうなくらい良い人?

多分、葛城さんと知り合い。



『ライダーブレイク』

かいじんがあらわれると とまれない ふりをして ひきころすわざのことだ。またやった! でもかいじんだし まあいいか。


バイク(愛車)による突進により怪人を撃破する大技(と言う名の玉突き事故)。
初登場は仮面ライダー1号の11話で登場した必殺技『サイクロンクラッシャー』であるが、正式にライダー技として出たのがスカイライダーから『ライダーブレイク』。

読者にとってはクウガの『トライゴウラムアタック』、龍騎にて登場した『ドラゴンファイヤーストーム』『疾風断』あたりが印象に残っていると思いますが、それ以上にエグゼイドからレーザーの必殺技『自転車を着たバイクがバイクで突進』する絵面は凄まじい迫力がある。

ちなみに作者が印象に残っているのはアマゾンオメガによるスタイリッシュ(ミンチより酷ぇ)玉突き事故となっております。初めて見た時の(ショッキングな意味での)衝撃的な光景は今も忘れる事はない。






〜〜おまけ〜〜


『とある実験風景』


天倉は悪魔の天才科学者と呼ばれ(悪い意味でも)有名な葛城の実験に身を投じていた。そんな彼の目の前に檻に入れられた謎のプルプルした水色の物体があった。



「ここに、とある実験ナマモノTがある」

「出してぇぇぇぇぇええええッッ!」

「………」


 天倉は必死に目を合わせないようにしていた。確実にどこかで見た事のある……具体的に番外編あたりで登場していた売れ残りの賞味期限が過ぎた食品とは決して知人と言う事を悟らせないようにそっぽを向いていた。


「いやぁ、最近のところてんって凄いな。喋ったりするんだからな。……ところで、コイツとは知り合い?」

「────いや、初めて見ました」

「見捨てやがったなテメーーーっ!」


 檻をガシャンガシャンと激しく鳴らす謎生物に天倉は赤の他人を見るような冷めた表情を浮かべる。
コイツと関わったらシャレにならない(ヒロアカがギャグ時空に引き込まれる)と察し、この場から去ろうと出口に歩んでいく。


「どこに行くのかな?」

「!!?」


すると天倉の床から無駄にハイテク機能を搭載した鉄格子が現れ瞬く間に檻に閉じ込められてしまった。


「な、なにをするだァーーーッ!」

「有機物と無機物の融合……。俺はその行く末を見届けたい……!」

「何を考えてるんだあなたは!?」


 瞬間、バチバチと【ところてんらしき物体】と【即落ち血反吐2コマ主人公】が閉じ込めている檻同士に火花が生じATL○S辺りのゲームで登場する悪魔合体らしき光景が広がる。


「一緒に地獄に堕ちようぜ兄弟ィィィ!!」

「あああああああッ!こんなジョグレス進化は勘弁してぇぇぇッ!」


──その時、不思議なことが起こった。
室内は光に満たされ2人の力は融合を果たし新たな戦士が誕生したのだ。


「俺はアマゾンッ!バイオッ!ライダーッッ!今後ともよろしく!」


「合体成功ッ!気分はどうだ?」

「ゴルゴムめ ゆ゛る゛さ゛ん゛っ!」

「おい、これ絶対に失敗してんだろ!」


その後、無事に融合は解除されたが何故か天倉の新形態として変身可能となった。




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