Roar! (渋川 武志)
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SCENE-1 誰しもが一度はあること

”青春”
それは人生の中で最も自由で、希望に溢れ、元気に満ち、一度しか巡ってこない季節。

だからこそ!全てにおいて全身全霊!寝ている暇なんてない!!
悩んで泣いて喧嘩して!遊んで無茶して恋して振られる!!


最初で最後の”青春”を思いっきり謳歌せよ!少年少女たちよ!!


安央「(聞こえる・・・・高らかな天使の歌声が・・・

    澄んだ森の細流《せせらぎ》が・・・

    感じる・・・広大な際限なき宇宙を・・・・

    終わりのない・・・・・終わりのない・・・・・終わりがない・・・・?)」

 

安央「(・・・・・やべぇ心臓がバクバクしてきた)」

 

安央「(くぅ・・・・あぁ・・・入っちまった。無限が怖い怖いスイッチ入っちゃった・・)」

 

安央「(ああああああああああああああ)」

 

安央「(ってな感じで大声で叫びたーい・・・。そして少しでもこの恐怖を緩和したーい・・。

    だが今それをすればもれなく2人の妹と弟に殴られるぅ・・・)」

 

安央「(くそ・・・・死にたくねぇ・・・。でも死んでもこの世は終わらねぇ・・・。

    終わりはどこにある?終わったとしてどうなるその後は?えぇ、俺らって何?

    生きるって何?てか宇宙って何?なんでできたの?つかその前の無ってどんな状況?

    くそおおおおお、思ってること勢いよく羅列しても恐怖消えねー・・・・)」

 

安央「(このままじゃ、酸欠で死んでしまう・・・。

    しかし・・コレの厄介なところは答えがないところだ。

    それにわかったとしても恐怖が消えるわけではないことがわかりきっているところだ。

    チクショウなんで人間になんか生まれちまったんだ・・・。

    てか人間じゃなかったら何に・・。

    つかなぜ俺は俺なんだ・・・。今思えば生まれた時から俺は俺だった。

    いや・・・当たり前だけど不思議だ。

    俺は安央。でもそれは親がつけた名前なわけであって

    俺は本当は安央じゃなくて・・・名前のない人間。というか有機物。

    そうだよな・・・、俺って何者なんだ?

    俺は名前に騙されていたのかもしれない・・・。

    みんな名前を取っちまえばただの生き物だ。

    みんな人間という生き物。猫とか犬と同じなんだ。

    ならなぜ人間はここまで進化できた?

    言語能力というほかの生物にないものを発達させた。

    猫とか犬ではそれはできなかったのか?

    というかあいつらどうやって意思を疎通してるんだ

    あいつらにだって意識はあるはずだ・・・・。あるよな・・・。

    そうだよ、なければ動くことだってできないじゃないか。

    あ、でもそれは体内の化学反応と電気信号で起きてるから・・・。

    でもその根源はなんだ?意識だよな?俺たちは脳から信号を送って・・・・。

    でも脳も有機物であって、原子の塊じゃん?

    じゃあ今俺が考えてるような意識ってなに?

    これも原子の働きなのか?じゃあ俺は原子に操られ・・じゃあ原子を操ってるのは?

    もしかして俺らを操作している奴がどこかにいるんじゃ・・・。

    じゃあ俺の意識ってただの電気信号であって俺のものじゃないのか・・・。

    じゃあ俺ってなんだ?

    てか・・・・なんだ?なんなんだよおおおおおおおおおおおおおお!!)」

 

安央「(・・・・・なんか大事なことを忘れてる気がするけど、

    なんかすべてがどうでもよくなっってきた!!寝よ!!)」



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SCENE-2  お泊まり会

-安央の部屋 PM21:30

 

安央「なぁ、なにする?」

 

成明「んー?寝る」

 

安央「お前グラサンしてるから寝てるか起きてるかわかんねーよ。

   つか夜くらい外せよ!」

 

成明「別にいいじゃないか。

   グラサンはもはや俺の体の一部なんだぞ」

 

安央「吉森は?」

 

成明「お前そこで無視するか・・・」

 

吉森「映画でも見る?それとも・・・・」

 

成明「はしゃいじゃうか?」

 

安央「お前に聞いてねぇよ!!」

 

 

 

 

吉森「はしゃぐって何するんだよ?」

 

成明「まぁいつもみたく即興劇やったりとか?」

 

安央「最近はマンネリ感あるけどな」

 

吉森「ゲームやる?」

 

安央「今、陸がもってっちゃっててねーんだよ。あいつは泊まりに行ってる」

 

成明「ならアナログといくのはどうだ?」

 

吉森「トランプとか?」

 

安央「トランプは七海がもってっちゃっててねーんだよ。あいつも泊まりに行ってる」

 

吉森「じゃあUNOは?」

 

安央「UNOは風花が持ってっちゃててねーんだよ。あいつは今修学旅行に行ってる」

 

吉森「何にもねーじゃねーかよ!逆に何ならあるんだよ!」

 

成明「どうりで今日は静かだと思ったよ」

 

安央「うーん・・あ、すごろくならあったな」

 

吉森「もうそれでいいよ」

 

 

 

 

安央「これ風花が学校で作ったすごろくらしい」

 

成明「なんかすごろくというより・・人生ゲームっぽいな」

 

吉森「なんで妹が作ったやつなんだよ!市販のはないの?」

 

安央「それは元から持ってない。だってやんねーだろすごろくとか」

 

吉森「確かにそうだけどさ!ああ、もう!!」

 

成明「まぁいいじゃないか、とりあえずやろう」

 

安央「俺からだな、ほい」

 

 

”3”

 

 

安央「3か」

 

安央「ん?自転車に乗る練習をしている最中にトラックにひかれて死亡。

   振り出しに戻どる」

 

吉森「いきなり!?いきなり死亡!?」

 

成明「なるほど、転生しろということだな。

   また別人として人生をやり直すチャンスがあるみたいだな」

 

吉森「あるみたいだなってこれすごろくだろ?」

 

成明「吉森、このマスを見ろ」

 

吉森「友達に連帯保証人になってもらいそのまま借金1000万を擦り付けた。

    借金は消えたが、友達も同時に消えた。気づいたら家族にも勘当されていた。

    兄が私名義で金を1億借りていたことが発覚し、ヤ○ザに追われ

    逃走中にヤ○ザに捕まって体をばらされて死亡。

    ゲームオーバー。もう振出には戻れないよ」

 

安央「なげーよ!!つかナニコレ!?あいつどんなすごろく作ってんだよ!?

   小6だぞ!?まだ小学生なんだぞ!?俺は悲しいよ!

   俺よりも世の中悟ってんじゃん!!」

 

成明「ここでの兄は恐らく安央のことだろう・・・・。つまりそういうことだ」

 

安央「え、どーいうこと!?あいつには結構優しく接してるつもりだよ!?

   つか、あいつからのあたりの方が強いんだけど!?」

 

吉森「だから、嫌われてんだろ」

 

安央「へぇえええ!?」

 

成明「妹その2の中ではお前はかなりの屑として認識されているようだな。

   その証拠としてこれを見ろ」

 

 

「兄がトモダチと火遊びして家を燃やした。あたしは死んだ。

 ふりだしに戻る」

 

 

安央「また振り出しかよ!!つかこれお前らも入ってんじゃねーかよ!!」 

 

吉森「いつも騒がしい俺らのことも嫌いだったんだな・・・」

 

成明「あたしは死んだと書いてるあたり俺たちに罪悪感を感じさせようとしているな・・・。

   かなりねじ曲がった性格をしていると見える」

 

安央「なんかごめん。ごめんな風花、お兄ちゃんが悪かったよ・・・。

   こんなバカな兄貴を許してくれ」

 

成明「・・?おい、2人共これを見ろ!」

 

吉森「これゴールじゃないか」

 

 

「ゴール。悔いなくいい人生を歩むことができた。

私は私として生まれることができてよかった。」

 

 

成明「ちなみにこのすごろく、ゴールまでたどり着くには決まった数字のさいころを

   決まった升目で出さなければゴールにはたどり着けない仕組みになっている。

   つまり、ゴールまでの道は一つしか存在しない」

 

吉森「本当だ。それ以外全部振り出しに戻る出しな」

 

成明「その道を見てみろ」

 

 

 

「兄が宿題を手伝ってくれた。

おかげで夏休みの宿題を1日で終わらせることができた。4マスススム」

 

 

「姉が結婚した。兄2人と私とでサプライズプレゼントをした。

姉はすごく喜んだ。6マスススム」

 

 

「兄が借金を肩代わりしてくれた。

大学に行くお金を全部払ってくれた。5マスススム」

 

 

 

安央「風花・・・・」

 

成明「このすごろく、あの子なりに考えた人生そのものなんだろう。

   多くの失敗が待ち受けている人生の中で

   幸せな道だけを享受して生きていける確率は極僅か。

   多くの人間は本来あるべき幸せをほとんど知らずに死んでいく。

   そしてまた別の人生が始まる、それを未来永劫繰り返していく。

   それが人生なんだと」

 

吉森「・・・何回転生したら小6でこんなすごろく作れるんだろうな・・・」

 

安央「・・なんか別の意味で心配になってきた」

 

結局朝までやったが誰もゴールできずに終わった。

 



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SCENE-3 兄妹喧嘩

安央「・・・・・・」

 

この日安央はリビングでテレビを見ていた。

 

安央「・・・・」

 

陸「おい!七海てめぇふざけんなよ!」

 

七海「あ?うち何もしてないじゃん」

 

 

2階の七海の部屋で2人は喧嘩しているみたいだ。

 

 

陸「てめぇ、俺の赤のパーカーどこにやった!」

 

七海「は?知らねーし」

 

陸「この前彼氏をうちに泊めた時にでも着せたんだろ!

  前も勝手に着せてたよな!」

 

七海「そのことは前に謝ったじゃん」

 

陸「てめぇ家族のもんが全部自分のものみてーな思考回路いい加減直せよ!

  うぜーんだよ!!」

 

七海「だからやってないっていってんでしょ!?

   それにうち別にそんな風に思ってないんですけど?

   勝手に決めつけんのやめてくれる?大体あんた最近生意気すぎない?

   中3になってからさーちょっと調子乗りすぎじゃない?

   その態度こそうざいんですけど?」

 

陸「てめぇ歳が上だからって調子こいてんじゃねーぞ。力じゃおめーにはぜってー負けねーし」

 

七海「暴力振るうしか能がないからあんたは行ける高校限られてんのよ。

   こんなどーでもいいことでグダグダ言ってないで勉強でもしたら」

 

陸「ざっけんな!あれは俺が誕生日にトモダチからもらった大事なパーカーなんだよ!!!」

 

七海「それが?うち知らないって言ってるでしょ?日本語わかる?」

 

陸「てめぇぶっとばすぞマジで」

 

安央「おいおい、喧嘩すんなよ。テレビの音量マックスでも聞こえないぜ」

 

七海「嘘つくなよ。それに喧嘩じゃないからコレ。こいつと同レベルにしないでくれる?」

 

安央「お前マジで海の様に冷徹な女だな」

 

陸「安!こいつマジでうぜーんだけど!!」

 

安央「なぁ、パーカーならさっき風花がこれ誰のっつって干してたよ」

 

陸「あぁ、マジか」

 

七海「ほら、だから知らないって言ったじゃん。謝れよ」

 

陸「それに関しては謝るけどよ・・・

  てめぇも少しは謝るとこあるんじゃねーか」

 

七海「は?どこに?」

 

陸「さっきから俺の関係ないところまで侮辱しただろ!」

 

七海「あれはね、事実を羅列しただけかな。

   むしろあんたにそれを気づかせてあげるための

   気の利いたアドバイスみたいな?むしろ感謝してほしいんだけど?」

 

陸「安、俺こいつ殴るけど親父には黙っといてな」

 

安央「おい待て待て、殴んなって、殴るなら俺にしとけ」

 

陸「いやそれはちょっと意味わかんないから」

 

安央「七海、お前マジで言い過ぎ。お前相手の気持ちくらいわかるだろ?

   むしろわかってて煽ってんだろ?それ本当にやめておけよ。

   いつか痛い目見るぞ」

 

七海「なんでわかんの?兄ちゃん未来知ってるの?

   憶測で物を語らないでくれる?」

 

安央「なぁ亀の甲より年の功っていう故事成語があってだな・・・・」

 

七海「まだ年の功っていうほど経験も年も積んでないでしょ?

   兄ちゃんうちと2つ違いなんだからさ」

 

安央「だからね、それをやめろっつってんの。ね、もっとさ、人に優しくなろうぜ?」

 

七海「優しくしてさ、うちに何のメリットがあるわけ?」

 

陸「てめぇいい加減にしとけよ!お前の言ってること全部屁理屈だぞ!」

 

七海「十分筋は通ってると思うんですけど?

   あんたの頭じゃあたしが1分前に言ったことも覚えてないんじゃない?

   話理解できないバカはさ、ちょっと黙っててくれる?」

 

陸「あ?」

 

安央「え、もうなんなの!?喧嘩したいの七海?!」

 

七海「別に、もう出てって」

 

安央「いや、ちょっと待てって」

 

陸「そんな奴ほっとけよ」

 

安央「お前なぁもしかしてさ・・・・」

 

安央「生理来てんのか?」

 

 

 

陸「・・・・・」

 

七海「・・・・・・」

 

 

 

 

七海「死ね!!!!」

 

七海のアッパーカットが入った。

 

安央「あぐあああああああああ!!!」

陸「安!!!」

 

安央「あがが・・・・・」

 

七海「なんでお前みたいのが兄なんだろ、ほんと鬱陶しい」

 

 

バタンッ

 

 

 

安央「なぁ・・・・俺本当は気づいてんだ」

 

陸「あいつの生理周期に?」

 

安央「お前この雰囲気でよくボケかませるな、ちげーよ」

 

安央「あいつきっと、彼氏に振られたんだよ」

 

陸「それでヒスってんのか」

 

安央「そっとしといてやろうぜ」

 



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SCENE-4 朝の電車

安央「・・・・・・・」

 

杏奈「・・・・・・・」

 

安央のすぐ横に杏奈は立っていた。非常にぎゅうぎゅうの満員電車である。

 

杏奈「(痴漢しろ・・・・!触れ・・・ほら触れ男よ)」

 

杏奈「(最近は痴漢免罪が増えすぎて男どもは痴漢をしなくなってきている。

   ブッ細工な自意識過剰ババア共のせいであたしの一日の楽しみが奪われているのだ・・。

   そう、あたしは触られたいのだ。痴漢してほしいのだ。

   自分でいうのもなんだが渋谷や原宿歩いたら

   芸能事務所からスカウトされるくらいのビジュアルは持っている。

   それに結構肉付きもいいほう。これはあんまり自慢できないけど。

   こんな女がすぐそばに居てなおかつ胸を体に当てていたら

   どんな馬鹿な男でも本能で感じる。

   この女は求めている、性を求めていると。

   だからほら、触れ、男子高校生よ。

   触るがいい、存分に、飽きるまで・・・」

 

安央「・・・・・・」

 

杏奈「(嘘だろ・・!?この男まったく反応しないぞ!?つかどこ見てんだ!こっち見ろや!

    胸見ろや!!!EだぞE!!EXTREAMのE!!!)」

 

安央「・・・・・・」

 

杏奈「(嘘だ・・・こんな男がこの世にいるわけない・・・。

   どんな男でも・・・東大生でも、真面目そうなサラリーマンでも

   あたしのグランドキャニオンまで手を伸ばしてきたというのに!!

   80の爺でも尻を揉んできたというのに!!

   この男は!!血気盛んな男子高校生であるはずのこの男は!!

   反応すらしないのか!?)」

 

 

杏奈「(こうなっては・・・)」

 

杏奈「(さらに攻める!!くらえ・・・腕パイばさみ!!)」

 

杏奈「(さすがに谷間に腕を挟まれたら・・・こっちに視線を)」

 

安央「ん・・・ふん・・」

 

 

安央は左腕を胸で挟まれたが・・・

何かが当たってるなー、なんだろう、なんだ胸か。

そんな感じで一瞬だけ胸を見て顔を前に戻した。

 

 

杏奈「(ひえええええええええええ!?なんだこの男は!?

   今触ったし!?触ったのに!?何あの顔。

   なんだ胸かと言わんばかりのあの顔は!?

   まさかコイツ凄い女たらしで

   もはや胸では満足できない境地に達しているのではないか・??)」

 

杏奈「(どうすればいいんだ・・・・今の私には答えを出せない・・・)」

 

安央「・・・・!」

 

アナウンス「次は~神楽坂~、神楽坂ですっ」

 

杏奈「(降りて行ってしまった・・・。

    完全に無力だった・・。なすすべもなく、敗北を喫してしまった。  

    だが明日は・・・明日こそは・・・

    必ず振り向かせてみせる!)」

 

安央「(あの女の人妙に距離近かったな・・・まさか・・・いやそれはないな・・・

   生まれてこの方異性として見られてない男ランキング

   ぶっちぎり1位のこの俺のことを

   毎日同じ電車に乗っているからという理由で好きになる人間がこの世にいるわけ・・・

   ないとも言い切れん!!)」

 

 

ここに壮大なずれが生じていた。

 

このずれがいずれ、巨大な地殻変動を起こすことになるとは

 

この時、まだ誰も知らなかった・・・・。

 



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SCENE-5 昼休み① 知らなかったよそんなこと

-教室

 

安央「ふぅ・・・・・」

 

安央「・・・・」

 

おもむろに机の中から本を取り出す。

 

辻本「なに読んでんだ?」

 

安央「ん?トモダチが書いた小説」

 

辻本「へー、どんなの?」

 

安央「暴力組織に支配された街で滅茶苦茶な高校生たちが街を取り戻すため

   暴力組織と戦っていく話」

 

辻本「へー、面白そうじゃん。読み終わったら借りてもいい?」

 

安央「うん、いいよ」

 

安央「・・・・」

 

小説を読むのに秒速で飽きた安央。

 

安央「暇だな・・この時間」

 

叶野「おい、やすひこ。暇そうだな」

 

安央「ひこじゃねーよ、ひろだよ」

 

叶野「どっちでもいいじゃんかよ。さっきからずっと女子の方見てたの黙っておいてやるからさ」

 

安央「この教室のどこ観ても今は女子しかいねーだろ」

 

叶野「なぁ?お前なんでいつも一人でご飯食べてんの?まさかぼっち?」

 

安央「別に一人で飯食っててもいいじゃんかよ。そういうお前だっていつも

   恩田としかごはん食べてねーじゃんかよ。恩田しか友達いねーのかよ」

 

叶野「0のお前よりはましじゃね?」

 

安央「認めたと同時にディスんのやめろ!」

 

叶野「あたしさー、なんつーの?女子高生のノリって苦手なんだよねー。

   なんかさ、どーでもいいことではしゃいで、面食いばっかで、

   金とかそういうとこしか見てなくて

   見栄張ることしか考えてなくて、つまんねー恋バナして、

   すぐに悪口大会開催してさー」

 

安央「おいおいなんだお前・・・、なんか溜まってんのかよ」

 

叶野「お前女子高生の面倒くささ、知らねーだろ?」

 

安央「そりゃあまぁ男だしな」

 

叶野「常に周りの目に気を配ってなきゃすぐに仲間はずれ。空気読めない発言したらすぐに

   陰口の的になるし、一度そうなったらもうおしまい。

   ひたすら自分を良く見せるために

   他の子を見下して、変な噂立てていじめたりしてさ・・・・・」

 

安央「わかった、わかったからもうな!わかった。聞いてて苦しい!

   とりあえず、女子高生がすごくどす黒い生き物だということはわかった」

 

叶野「なら良し。あ、あとね、あいつらは彼氏がいて、股の赤壁突き破ってることが

   ステータスらしいから、変なのに捕まらないように気を付けてね。

   今3年でみんな必死だからさ」

 

安央「赤壁ってお前ら三国志かよ。つかそこんところは男となんら変わんねーだな」

 

叶野「中には男よりたちの悪いやつもいるけどね」

 

安央「?」

 

叶野「トライアングルクリエーター」

 

安央「え、何それ」

 

叶野「これあたしが名付けたの。意図的に三角関係を作って

   自分が悲劇のヒロインになっているというシチュエーションを味わう女」

 

安央「そんなやついるのかよ!?ちょっと理解できねーぞ」

 

叶野「いるんだよ・・・このクラスにも」

 

安央「このクラス!?え!嘘!?マジ!」

 

叶野「お前声でけーよ!!ピュアかお前は。これ結構有名だろ!」

 

叶野「ねえなかじ」

 

中島「ん?」

 

叶野「神崎がトライアングルクリエーターで夜の一騎当千なの知ってるでしょ?」

 

中島「当たり前だろ。みんな知ってるし」

 

安央「ええ!?つかその言葉通じるの!?トライアングルクリエーター通じるの!?

   え!もしかして知らなかったの俺だけ!?」

 

中島「じゃね」

 

叶野「お前ピュアだな」

 

安央「え・・・えぇ・・・。まぁそうだよな。

   俺そういう話するやついないし・・・、なんか・・・」

 

安央「ぼっちでよかった・・・」

 

叶野「それとこれとは関係なくね?」



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SCENE-6 昼休み② JKだって・・・

-教室 

永井と篠田は机を合わせて向かい合って弁当を食べていた。

 

永井「ねぇ・・なんで女子ってくだらない話しか、しないのかな?」

 

篠田「いや、いきなりどうしたの?」

 

永井「ずっと疑問に思ってたんだよね。男子ってさ、バカなことしても許されてる感あるじゃん?」

 

篠田「あーね」

 

永井「でもそれを横目にいつまでも子供なんだからって

   なんだか上から目線の言葉を投げかけなければいけないのが女子じゃん?

   おかしくない?」

 

篠田「いや、まぁ全体的にあなたの発言おかしいけどね?

   別にそんな言葉投げかけなくてもいいでしょ?」

 

永井「つまりね・・私はバカになりたいの!!」

 

篠田「もうすでになってるけどね?」

 

永井「違うの!男子見たく子供みたいなバカなことしてはしゃぎたいの!!!!

    もうJKとかいって大人ぶった素振りすんの飽きたのー!!!」

 

篠田「は・・はぁ・・」

 

篠田「じゃあすればいいんじゃない?」

 

永井「そう、で、今日の放課後なんかしようと思うんだけど、何する?」

 

篠田「ねぇナチュラルにうちが入ってるのはなんで?」

 

永井「当たり前でしょ!恵と私は一心同体でしょ!?入学式の日に約束したじゃない!?」

 

篠田「いや、してない。したのはとりあえず卒業までぼっちにならないために

   一緒に行動しようっていう約束ね」

 

永井「ええ!?あの約束そういう意味だったの!?」

 

篠田「いや、言葉のまんまだけど。よくあの言葉から一心同体なんて解釈できたね」

 

永井「そんな悲しいこと言わないでよ・・・・恵・・」

 

篠田「楓・・・・」

 

永井「もう私たちれっきとした友達じゃない!!!

   入学してから2年間、奇跡的にクラスが一緒で

   ずっと一緒に行動してきたじゃない!!」

 

 

篠田「学校ではね」

 

 

永井「はっ・・・!?」

 

篠田「気づいた・・・みたいね」

 

永井「よくよく思い返してみれば・・・学校にいる間はずっと一緒にいたけど

   休日はおろか、一緒に帰ったことすらなかった!!!」

 

篠田「私はあくまでも約束の範囲内でかえでと一緒にいたまでなのよ」

 

永井「がくっ・・・そんな・・・・嘘だ・・・・・」

 

篠田「だからあなたとの関係も・・・卒業までってこと・・・」

 

永井「わたしは諦めないわ・・・」

 

篠田「え?」

 

永井「私は卒業までに恵の真の友達になって見せる!!」

 

 

 

食堂から教室に戻る途中、中島は廊下からこの一部始終を目撃してしまった。

 

中島「・・・なんの茶番だ?」

 

飯島「寸劇やってんだろ?十分バカだぜあいつら。いつもは3人でやってんだ」

 

中島「高校3年間で知り合える同級生って結構少ないのかもな」

 

飯島「いまだにこんなやついたのかってなるしな」

 

中島「しかしあれに今まで気付かなかったのはびっくりだな」

 

飯島「ただなあの寸劇の内容の冗談と本当はフィフティフィフティなんだぜ」

 

中島「ガチの変人じゃねーか」



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SCENE-7  昼休み③ そういうの好きだったりする

-教室

 

吉森「はぁ・・・なぁ彰、昼持ってきてる?」

 

彰「いや、学食行くつもりだけど」

 

吉森「んじゃ一緒に行こうぜ」

 

彰「ああ」

 

二人が学食に入ろうとしたその刹那

 

 

十文字「おおおおおらあああああああああああああああ」

 

吉森「!?」

 

彰「伏せろ!吉森!」

 

 

吉森と彰は瞬時に身を伏せた。

 

 

十文字はしゃがんだ2人の上を飛び越えた。

 

 

十文字「ジャンボホットドッグ5つ!!」

 

おばちゃん「はいよ」

 

彰「またあの女か」

 

吉森「十文字 ラッキー。幸福と書いてラッキーと読む難読名前所持者の一人」

 

彰「あいつ、いっつもチャイムと同時に全速力で走ってここに来るんだ」

 

吉森「なんで?」

 

彰「森吉はあんまり学食こねーから知らねーのか。

  毎日10食しか作られないジャンボホットドッグを5つ手に入れ

  一日1食の巨大ラーメンを食べるためだ」

 

吉森「うぇ!!食いすぎだろ・・・つか食えんのか!?」

 

彰「ああ、毎日食べてる。残しているところを俺は見たことがない」

 

 

吉森「うお・・すげぇな。聞いただけで吐きそうだ・・・。

   って、俺さっきから量にばっか目がいってたけど

   ジャンボホットドッグて一個300円じゃねーか。

   それに巨大ラーメン一個800円!?」

 

彰「そうだ、彼女は毎日2300円の昼食をとっている」

 

吉森「あいつんち金持ちなのか?見た目完全ヤンキーだけど」

 

彰「まぁそれなりの金持ちらしいが、主に彼氏からの貢ぎ金で生活しているらしい。

  目撃情報によると50代くらいの社長と付き合ってるとか」

 

吉森「援交!?」

 

彰「ま、そーだろうな」

 

吉森「まぁ・・・顔は結構可愛いしな・・・意外と」

 

彰「そういってあいつに告白した男子は俺らの学年だけでも100人近くいる」

 

吉森「おいマジか、つか男子そんなにいたのか」

 

彰「もっとすごいのは、それのすべてにOKを出していることだ」

 

吉森「公開不倫!?」

 

彰「だからあいつ、彩南の公衆便所って言われてんだぜ」

 

吉森「何だろう、遠回しなんだろうけどストレートだな・・・」

 

吉森「・・・・・・」

 

吉森「なぁ、俺もイケるかな?」

 

彰「は?何言ってんのお前?今の俺の話聞いてた?」

 

吉森「いや、聞いてたさ。・・でもなんかその・・」

 

彰「お前この前雑食は嫌いだって言ってたじゃないか!」

 

吉森「いや・・食わず嫌いはよくないかなぁって」

 

彰「そういう問題じゃねぇだろ!?つか、食う気満々かよ!?」

 

吉森「うーん・・・」

 

彰「なぁ、いいからとりあえず飯食おうぜ・・?」

 

吉森「ああ」

 

飯を食っている最中もずっと十文字のことを見ていた吉森だった。

 

 



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SCENE-8 放課後① 戦隊ごっこ

-放課後の教室

 

永井は教卓に立っていた。

 

 

永井「てなわけで」

 

篠田「あ、ランランも来たのね」

 

愛川「うん、楽しそうだし、何より男子の誘いを断るのに持ってこいな理由だし」

 

篠田「ランランのそういうところ怖いけど好きだわ」

 

永井「戦隊ごっこしようか」

 

 

 

篠田「・・・・・」

 

愛川「・・・・・」

 

 

永井「え、何どうしたの?」

 

篠田「こっちのセリフなんだけど・・・。えなに?戦隊ごっこ?

   幼稚園児か!それにうちら女子!!」

 

永井「性別なんて関係ない!昼休みに言ったでしょ!

   私たち男子よりもバカになるの!」

 

篠田「だからもうすでにバカだっつの!」

 

愛川「そうだよ。うちらの中間考査の点数全部足しても徳河の合計点数にかなわないんだよ」

 

永井「それは比較対象がおかしいだけだって!頭いい奴と私たちの頭脳を比べるな!」

 

篠田「で、話戻すけど、仮に男子よりバカになるとしても

   男子がするようなことしなくてもいいんじゃない?

   例えば女子らしいバカなこととかすればいいじゃん」

 

すると永井は急に真顔になった。

 

永井「女子ってバカじゃないですよって感じだしてるけど

   実際男子がしてることよりもよっぽどバカなことしかしてないよね」

 

篠田「おい急にマジトーンになるなっつーの」

 

永井「ぶっちゃけさ、今言った戦隊ごっこの方がくだらない恋バナなんかよりもずっと高度な遊びだよね」

 

愛川「具体的にどの辺が?」

 

永井「一種のロールプレイングじゃない?みんなにそれぞれの役割が与えられていてさ、

   みんなその役に適した言動とか行動とかして話を進めていくわけじゃん?

   他人の好きな人とか自分の好きな人とかのことずっと話してるより

   ずっと感受性や想像力を豊かにすると思わない?道徳的な面でも

   役ごとの人物の気持ちとかがよくわかっていいと思うし」

 

篠田「おお・・・語るな・・・語るね。え、どうしたの?」

 

愛川「楓のシリアスモードが起動しちゃったっぽい」

 

 

永井「だからさ・・・やろう?」

 

篠田「う・・うん。もうこれやるしかないな」

 

 

 

 

永井「じゃあわたし戦闘員役ね」

 

篠田「おい待て待て、なんでこの人数でその役チョイスした?」

 

永井「え、だって戦闘員って大事な役じゃない?」

 

篠田「うん、大事よ。戦闘員がボスの指示によって悪事を働くことで

   レンジャーが動きを起こすからね。

   物語の起点だからね。うん、やっぱ大事だわ」 

 

愛川「意外とわかってる恵であった」

 

篠田「えー、じゃあうちどうしよう」

 

愛川「めぐみは腹黒いから悪の総統でいいと思うよ」

 

篠田「天使のような笑みでそんなこと言わないで!!?」

 

永井「うん、私もそれがいいと思うよ」

 

篠田「え。ちょ・・え?そんな風に思われてるの?腹黒い面見せたことあった?」

 

永井「女ってさ・・・そういうの敏感なんだよ」

 

篠田「お前いい加減シリアスモードやめろ!」

 

愛川「まぁ私たち3国同盟的なところあるしね。本当の意味で友達なわけじゃないから

   そういうところ普通に見えちゃうんだよ。恵は性格悪いと思うよ」

 

篠田「もういいよ!!そこまでストレートに言われたらあきらめもつくわ!」

 

愛川「じゃあ私は夜道端を歩いていたら悪の秘密結社に捕まって怪人に改造された

   一般人役ね」

 

篠田「ウェーイト!!ウェイト!!戦隊ごっこでしょコレ!?戦隊役は?!」

 

永井「なんてこった・・・やっちまった・・・戦隊がいないとごっこが成立しない・・?!」

 

愛川「うん、わかってるから。同じこと2回繰り返さなくていいよ」

 

永井「どうしよう・・・人を増やさないと・・」

 

篠田「いや誰かが役を変えればいいでしょ?!」

 

永井・愛川「それは違うお!!」

 

篠田「違うおってなんだ!?つかランランまで・・」

 

愛川「自分に与えられた重要な役割をもっと大切にしようよ、恵!」

 

永井「その役はオンリーワンなんだよ!!」

 

篠田「自分たちで決めた役だよね?!」

 

そうこうしているときに永井たちがいる教室の横を不運な男:中島は通りかかってしまった。

 

 

永井「あ、ちょっと中島君!待って!」

 

中島「うわ、昼休みの2人+αだ・・・つかなんで俺の名前知ってんだよ」

 

永井「ねぇ今暇?」

 

中島「あぁ、暇だけど」

 

愛川「一緒に戦隊ごっこしない?」

 

中島「はぁ?!戦隊ごっこ?」

 

篠田「あー、お願いだから引かないでね、うちは無理やりやらされてるだけだから」

 

中島「君たち本当に面白いな・・やる!」

 

篠田「ええええええええええ!?」

 

続く-

 



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SCENE-9 放課後② お前ん家行ってもいい?

安央と辻本は教室を出て帰ろうとしていた。

 

安央「あん・・・鶏肉ね・・・あーい、わーった、んじゃ」

 

辻本「誰?」

 

安央「妹、2番目のね」

 

辻本「そういえばさ、安の家族構成ってどんなの?」

 

安央「ん?まず一番上に俺がいる。そして妹1人目、弟1人目、妹2人目」

 

辻本「4人兄妹なのか」

 

安央「そう」

 

辻本「家賑やかでしょ?なんか楽しそう」

 

安央「いやうるせぇだけだよ。二個下の妹は彼氏に振られてバーサーカーモードはいりっぱだし

   3つ下の弟は彼女作ろうと必死すぎて最近迷走してるし

   6つ下の妹はなんかゲームばっかしてイカれてるし・・・」

 

辻本「まぁ、ある意味楽しそうだね」

 

安央「まぁな・・・」

 

辻本「そういえばさ、俺って安の家遊びに行ったことなかったよな」

 

安央「ああ、そうだね」

辻本「よかったら今度行ってもいい?」

 

安央「ああ、いいよ・・」

 

辻本「いつも友達と遊ぶ時何してる?」

 

安央「うーん・・・・・」

 

 

永井「はぁぁぁ・・・・・・悪の神拳奥義!点穴貫通突き!!!」

 

愛川「ぎゃああああああ」

 

戦隊ごっこしてる永井たちの教室の横を通り過ぎる。

 

 

 

安央「あんな感じ」

 

辻本「へぇ・・・楽しそうだね・・・」

 

安央「ああ、あれは楽しい。くだらない恋バナしてるよりかはよっぽど生産的だ」

 

辻本「ゲームとかしないの?」

 

安央「するよ。さっき言ったけど一番下の妹がゲーム好きなんだよ。

   で、いつも一緒にやってる」

 

辻本「何やってるの?」

 

安央「んー、普通に格ゲーとか音ゲーとかFPSとか?」

 

辻本「ん?ん?え、妹って小6だよね、6つ下だから」

 

安央「うん、そうだけど」

 

辻本「FPS?小6女子がFPS?」

 

安央「ああ、しかもあいつ強いんだよな・・・キルレ9だぞあいつ」

 

辻本「ん?ん?9?キルレ9?もう世界レベルじゃんそれ!?」

 

安央「そうなんだよ・・・あいつゲームめっちゃくそ強いんだよ。

   だって俺一回も勝ったことねぇんだぜ!?」

 

辻本「それってさ、安が単純にゲーム下手糞とかそういう訳じゃなくて?」

 

安央「まぁそれもあるかもしれないけど・・・いや、そういう次元じゃないからあいつ」

 

辻本「マジか・・・じゃあその妹に刈られるな・・・」

 

安央「いや、上のほうの妹に刈られるな」

 

辻本「え?上もゲームすんの?」

 

安央「いやゲームじゃない、リアルでだ」

 

辻本「なんで!?」

 

安央「あいつは典型的なJKだ。彼氏彼女のいないカースト下位の奴等のことは

   人間として見ていない。現に俺の古くからの親友たちも何度もあの妹に刈られてきた」

 

辻本「戦場かお前の家は!?」

 

安央「それでも・・・来るか?」

 

辻本「・・・・行かない!!」



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SCENE-10 放課後③ プライベートで友達とばったり会うのは本当に嫌だ

成明「さーてと、行くか。ゲーセン」

 

成明は今日一人でゲーセンに向かっていた。

ということは普段は友達とゲーセンに来ている。

 

 

成明「うーん、今日は5プレイまでにしとくか・・・」

 

 

成明「あ・・・・」

相神「あ・・・・・・」

 

成明「相神・・・・・」

伊集院「豊福・・・・・」

 

成明「久しぶりだな・・・いつ振りだろうな」

 

相神「去年安央の家に行ったとき以来・・・かな」

 

成明「そうだったな・・・・・」

 

成明「(うわーめんどくせー・・・なんでこんな時に居るんだよお前・・・)」

 

成明「(ぶっちぎりで今一番会いたくない人ランキング一位のこいつに

    なんで会っちまうんだ!)」

 

 

成明「(こいつと昔は仲が良かった・・。でも最近は・・・・もうただただうざい)」

成明「(なんというか高校デビュー?したらしく妙に調子に乗っていた・・・。

    どうせ入学したての一か月でこいつの天下は終わるだろう。そう思っていた・・・。

    いや、実際は終わっていた。こいつは同級生のからかいの対象にされていたんだ。

    こいつはそれに気づかなかった!!

    それゆえに自分が人気者であると勘違いしている!高校3年の今でもなお!!

    他校の俺にまで話が入ってくるほどだ・・・かなりのドアホだぞこいつ)」

 

生徒「お、相神!取れた?」

 

相神「あぁ、もう少し」

 

 

 

※相神はUFOキャッチャーをやっています。

 

 

生徒「早くしてくれなー!早く取らないとその金全部返してもらうからなー」

 

相神「はいよー!」

 

相神「てなわけで俺忙しいからまたね」

 

成明「(なんだこいつ!?今のどう見てもパシリ扱いだったろ!?

    なんでそんな俺人気者過ぎて忙しいからみたいな顔してくんの!?

    プラシーボ効果すげー!!)」

 

成明「ああ、じゃあな」

 

相神「つか・・・ぼっちなんだね」

 

成明「(わりいいいかあああああああああああよおおおおああああああああ!!!!)」

 

成明「(完全に俺を見下しやがったなこいつ・・・。

    誰がどう見てもそんな顔としゃべり方・・

    つか顔ウザすぎだろ!?なんでそんな顔すんの?!

    おめーも中学の時は俺と同じ部類の人間だっただろーがああああ)」

 

成明「まぁ・・・・そんな・・とこだな・・・。じゃあな」

 

相神「ふふ・・・」

 

成明「(待て待て俺の拳よ。今はその時ではなかろう・・。

    せめて震えるだけにしておきなさい。

    とはいえ、今のはマジで腹が立った・・・。

     こんなに沸点が低かったの久々だ。あの野郎・・・・)」

 

そんな怒りの鉄拳を震わせながら台に向かおうとした。

すると見覚えのある人物がいた。

 

 

 

十文字「ついてくんな!この変態!!!」

 

吉森「へぶあん!!」

 

 

成明「・・・・・・」

 

吉森が殴られているところを見て、

さっきまでの怒りはきれいさっぱり消え去った成明であった。

 




SCENE-10 BEHIND 相神主観での放課後③


生徒「じゃあ1000円渡しておくから、それ以内でフィギュア取ってくれよな!」

相神「おーけー」

生徒「じゃ、俺らDDDRやってくるから」

相神「はいよー」


相神「まぁ、ダメだったら自費で何とか取ろう」

相神「というか俺友達とゲーセン来てんのに
なんでひとりでUFOキャッチャーやってるんだろう・・」

相神「まぁ早く取って俺もみんなとあそぼ」

相神「・・・・」



成明「あ・・・・・」
相神「あ・・・・・」

成明「相神・・・・・」

伊集院「豊福・・・・・」

成明「久しぶりだな・・・いつ振りだろうな」

相神「去年安央の家に行ったとき以来・・・かな」

成明「そうだったな・・・・・」

相神「(あれ?ひとりなのか豊福・・・。寂しい奴だな。どうせまた格ゲーかな?)」

相神「(豊福とは特に話すこともないんだよな・・・
    つか話すのが面倒くさい、何言ってるかわかんねーし。
    だから高校でも話す相手がいないのかな?
    かわいそうに。いつになったら気づくんだろうな。まぁどうでもいいや)」
相神「(早く格ゲーやりにいってくれないかな・・。
    こっちはフィギュア取ってんだからさ)」


生徒「お、相神!取れた?」
相神「あぁ、もう少し」


生徒「早くしてくれなー!早く取らないとその金全部返してもらうからなー」

相神「はいよー!」

相神「てなわけで俺忙しいからまたね」

相神「(悪いな豊福。俺はお前と違って友達がいる。こんな充実した高校生活を
    送れないなんて君は実にかわいそうだ。ああ、友達って素晴らしい。
     君にも友達分けてあげたいくらい。
    あぁ、でも豊福って一匹オオカミタイプなのかな・・
     どうなんだろう。確認してみるか)」


成明「ああ、じゃあな」

相神「つか・・・ぼっちなんだね」

成明「まぁ・・・・そんな・・とこだな・・・。じゃあな」

相神「(はい、一匹狼でした。やっぱり君はそっちの方だったか。
   あぁ・・・それなら一生味わえないな・・・友達の良さってやつを・・・)」

相神「ふふ・・・」

相神「・・・・・あ、やべ。もう金ねぇ」

※ちなみに相神と成明には安央という共通の友人がいます。


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SCENE-11 放課後④ 純粋な汚さ

教室にて

 

吉森「なぁ・・彰今日放課後暇?」

 

彰「え?いや圭司たちとゲーセン行くんだけど」

 

吉森「そうか・・・いやならいいんだ」

 

彰「ん?なんだよ、なんかあったの?」

 

吉森「ああ・・・やっぱ十文字のことが気になってしょうがないからさ・・・

   ちょっと誘ってみよっかなって思ってさ」

 

彰「お前マジか」

 

吉森「ああ、マジだ」

 

彰「昼にも言っただろ。あいつ雑食なんだぞ?100人の告白OKして

  現在進行形で全員とやってるとか正気の沙汰じゃないぜ。

  そんなやつと・・・・まさかお前やりたいのか!?」

 

吉森「いや、そういうんじゃない、純粋に・・・・・・

   ごめん嘘、やりたい」

 

彰「否定するの速すぎだろ・・かっこ悪いぞ」

 

彰「まぁだったら簡単だ。あいつのいる教室に行って告白して正直にヤリたいっていえばいい」

 

吉森「なぁそんなストレートに言って大丈夫か?」

 

彰「ああ、なんせ学校一ブサイクと有名な無州君もこの手法であいつとやった」

 

吉森「マジかよ・・ちょっと待て、無州とホールブラザーになるのは嫌だな・・・」

 

彰「あぁ、俺もそれはちょっと思う」

 

吉森「まぁ関係ないか。あいつは死んだことにしとこう」

 

彰「お前ってたまに心失った発言するよな」

 

吉森「よし、行くぞ!!」

 

彰「あそこまで欲を前面に出したイケメンって世の中にあんまりいないだろうな。

あいつが付き合っても長続きしない理由がわかった気がする」

 

 

 

十文字は駐輪所に居た。

 

 

吉森「十文字?」

 

十文字「ん?誰・・・?はっ!?」

 

吉森「(え!?何何!?びっくりしたー)」

 

十文字「吉森・・君・・であってるよね?」

 

吉森「うん・・そうだよ。俺吉森」

 

十文字「あ・・・私に何か・・用?」

 

吉森「(なんかおかしいぞ・・・。昼と様子が全く違うんだが。

   なんで?え?あれ昼限定の人格とか?そういうやつなのか?)」

 

吉森「あの、さ・・今暇?」

 

十文字「うん」

 

吉森「じゃあさ・・・」

 

吉森「(し・・しまったぁ・・・・、どこに行くのか考えてなかったぁ!!!

    どーしよ・・・。どっか・・デート・・・どっか・・・・

    あぁ彰助けてくれぇぇぇ・・あ・・彰?彰!!)」

 

吉森「一緒にゲーセン行かない!?」

 

吉森「(あ・・・・言っちゃった。デートでゲーセンはねーだろ俺。

    マジでやっちまった!!死ねよ彰)」

 

十文字「いいよ!!!イこ!!」

 

吉森「え!?あ、うん!行こう!!」

 

吉森「(もうわかんね!女ってわかんね!!)」

 

 

 

ゲーセンに行く途中、自転車を転がしながら―

 

 

 

吉森「ねぇ十文字さんってさ・・・」

 

十文字「ん?」

 

吉森「(聞いてしまっていいのだろうか・・・いいよな?別にみんな知ってることだしね?

    事実確認みたいなもんだしね?)」

 

吉森「やり○んって本当?」

 

吉森「(しまったあああああ!100人と付き合ってるって本当って聞きたかったのにぃぃぃ!!

    うっかり本音が出てしまったあああああ)」

 

十文字「・・・・・・」

 

吉森「(まぁそりゃ黙りこむよな・・)」

 

十文字「まぁ有名だしね・・みんな知ってるんだよね・・・・。

    本当だよ。吉森君はそんな女・・・嫌い?」

 

 

吉森「(え・・・なんだこの質問返し!?)」

 

吉森「・・・嫌い・・かな」

 

十文字「やっぱりそうだよね・・・。普通はそうだよね・・・」

 

吉森「・・・」

 

重い空気のままゲーセンに入っていく。

 

 

十文字「本当はこんな風になりたかったわけじゃ・・ないの」

 

吉森「それって、どういう意味?」

 

十文字「うちってね、親が仲悪くてさ・・・。昔からずっと親に相手にされてこなくって・・。

    それで・・・・寂しくて・・一人でいるのが嫌で・・・。

    だから・・・愛がほしかっただけなの・・。

    ただ本当にそれだけ!噂では100人と今でも付き合ってるって言われてるけど

    全部一回やったッきりの関係なの!!だから・・私のこと嫌いにならないで・・・」

 

 

吉森「・・・・嘘だよ」

 

十文字「え?」

 

音ゲーの台の前で、吉森が・・口を開く。

 

吉森「さっきの・・嘘だよ。本当は気になってるんだ、だから誘ったんだ。

   昼に君が俺の背中を飛び越えた時、見えたパンツは今でも忘れられない。

   あの少ししみた薄いピンク色の御パンツ。

   あれが朝の電車の中で君が小汚いサラリーマンの爺に愛撫されて汚したシミなんだなとか

   想像するだけで興奮する・・。

   それにヒョウタンのようなボンキュッボンッなスタイル。日本人とは思えない抜群な尻。脚。

   そしてパイ・・・。君は性のシンボルのようだ・・・そんな子のこと・・・

   気にならないわけがないじゃないか!!」

 

 

 

 

十文字「・・・・・・・・」

吉森「・・・・・・」

 

 

 

 

吉森「(あ・・・・・・)」

 

 

十文字「この・・・・・・変態があああああああああ」

 

強烈なビンタを喰らう吉森。

 

吉森「ひでぶっ!!!」

 

十文字「お前・・さすがにキモ過ぎるぞ・・・。学校一ブサイクな無州ですらそこまでキモくはなかったぞ・・・

    お前どんな性癖してんだ!!!」

 

吉森「ごめん!!ちょい待って!さすがに今のは言い過ぎたっつか言い間違えた!!」

 

十文字「ついてくんな!!変態!!」

 

吉森「へぶあん!」

 

成明がそっと近寄る。

 

吉森「成明・・・・」

 

成明「吉森・・・いくらイケメンだからってそれは許されん」

 

吉森「・・・・違うんだよ。心の中の言葉と逆の言葉が出ちゃっただけなんだ・・・・」

 

成明「なんか今日はお前に救われた気がする」



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SCENE-12 放課後⑤ 戦隊ごっこだったはず・・

戦隊ごっこをするにあたって戦隊役がいないという重大な欠陥に気づいてしまった永井。

 

たまたま廊下を横切ってしまった不運な男:中島は

この不毛で生産性のない戦隊ごっこに巻き込まれてしまうのであった・・・。

 

 

 

教室の真ん中に4人は集まっている。

午後4時半のこと。

 

 

永井「じゃあ私は戦闘員」

 

愛川「私は夜道端を・・」

 

篠田「はいはい、怪人ね。で、うちが悪の総統?」

 

中島「で、俺がレッドね」

 

永井「よし、じゃあ始めよう!」

 

この状況を疑問に思った中島、颯爽と挙手!

 

中島「ちょい待ち!え?俺戦隊一人?一人戦隊?」

 

すると急に永井は真顔になった。

 

永井「そうだよ、なんか文句ある?」

 

中島「誘っておいてなんだよそれ・・。この人急に態度豹変しすぎじゃね?」

 

篠田「いつものことなの」

 

中島「大変だな」

 

真顔から急転、永井は焦った顔になった。

 

永井「あ!!ナレーションがいない!?」

 

篠田「必要なのそれ!?」

 

愛川「語り部は重要だよ。ナレーションがいるといないとでは

   ロールプレイへの入り具合が段違いだよ」

 

中島「そういうもんなのか?」

 

篠田「しらなーい」

 

永井は教室の扉から廊下を覗いた。

 

永井「誰か来ないかなー・・・・」

 

篠田「もうこれ以上犠牲者を出さないでよ・・・」

 

愛川「じゃあ私がナレーションもやる」

 

永井「じゃ、始めよ!!」

 

愛川「昔昔あるところに・・・」

 

篠田「これって昔話なの?」

 

愛川「悪の秘密結社とたった一人で戦う勇敢なる男がいました。

   彼はこう呼ばれていた。DKと!」

 

篠田「DKって何!?」

 

中島「男子高校生じゃねーの?」

 

永井「え、違うでしょ、ダークカイザーじゃないの?」

 

中島「それ思いっきり悪役の名前じゃんか。えーっと・・」

 

篠田「この子楓って名前」

 

中島「楓ちゃんって・・・中2病?」

 

また永井は真顔になった。

 

永井「それはない」

 

篠田「厳密にいうとBHP病ね」

 

中島「何それ」

 

篠田「ブラックヒストリープロダクション、黒歴史量産病。

   まぁあれね、わかりやすく言うと痛い子」

 

中島「あーそういうことね、納得した」

永井「私は痛い子ではありませんけど・・・・」

 

篠田「ちなみに変わってるねって言ってあげると喜ぶよ」

 

中島「ガチな人じゃん!!」

 

 

 

愛川「話進めていい?」

 

永井「で、結局DKって何なの?」

 

愛川「ダルそうな高校生」

 

篠田「どんな世界だよそれ!なんでダルそうな高校生が悪の秘密結社と戦うんだよ!」

 

愛川「ナレーションは私。つまりこの世界の設定を生み出すのも私。

   この世界の創造神は私」

 

中島「この子も痛い子なの?」

 

篠田「いや、この子はいい子。ちゃんと楓に乗ってあげてるの・・・たぶん」

 

中島「あ、そういえばフィフティフィフティって言ってたな・・・飯島が」

 

篠田「ちなみにあの子はランラン、うちは恵ね」

 

愛川「ある日、悪の総統はこういいました」

 

愛川がどうぞのジェスチャーを出す。

 

 

篠田「え!?この世界の創造神が仕事を放棄した!?」

 

愛川「違う、ここからはめぐみのセリフだから。役には干渉しないの」

 

篠田「神の手の及ぶ範囲狭っ!!」

 

篠田「えぇ・・・ふふ・・・ははははは・・・。

   この頃の高校生は何と愚かなことか・・。

   人間の三大欲求を満たすためだけに

   日々を生きているような愚者ばかりよ!

   食欲!性欲!睡眠欲!!

   今こそ!綱紀を正す時が来たではないか!

   悪の秘密結社の総員よ!

   全国の高校生の性根を叩き直せ!どんな手を使っても構わん!」

 

中島「うわー結構入ってんなぁ・・・」

 

愛川「悪の秘密結社は文科省だった・・?!」

 

永井「ははーっ!!!」

 

中島「(さぁ・・・どう出る・・・。

   ここから先の展開を決めるのはお前だぞ痛娘!)」

 

 

 

永井「そこの女子高生!!ちょっとこっちに来い」

 

愛川「知らない人には付いて行っちゃだめってママから言われてるから行かない!」

 

篠田「おいおい何歳児だ、高校生っつってんだろ」

 

永井「そうか・・なら少々手荒な方法に及ぶとするかな・・・」

 

中島「しゃべり方が明らかに戦闘員とは一線を画すレベルだぞ・・・

   こいつ実は幹部だろ」

 

永井「相手の秘孔を突き、身動きを取れなくする・・・・」

 

篠田「それなんていう神拳奥義だー?」

 

愛川「あたしをただのJKとでも思ってるわけ・・?

   そんなんだからあんたは戦闘員どまりなのよ・・」

 

永井「何を?」

 

中島「おいおいどういう展開だよ?お前夜道を歩いてる一般人役じゃねーの?

   そんなしゃべり方して戦闘員煽るのがあなたの中の一般人像なの!?」

 

愛川「あたしはJK・・そう”ジョーカー”。あたしとあったが運の尽き。

   あんたはここで私の腕の中で息絶える・・・。この先の運命はそれ一筋」

 

永井「ほう・・・。威勢のいいJKね・・・。でも

   所詮は膜も破れていない青いガキよ。大人の恐怖を刻み込んでやるわ・・・・。

   その体にな」

 

篠田「ちょっと待ってレベルが高すぎる!?下位の戦いのレベルが高すぎる!」

 

愛川「切り刻んでやる・・・ザクザクキリング!!」

 

中島「なんか鋏の商品名みたいだな・・もうちょっと捻れよ」

 

永井「はぁぁぁ・・・・・・悪の神拳奥義!点穴貫通突き!!!」

 

 

愛川「ぎゃああああああ」

 

篠田「ただの浣腸じゃん!!!!」

 

中島「え?これマジで当てていくの?今の完全に入ってたよ!?

   ぜってー痛い奴だよアレ!?」

 

 

愛川「ぐああぁぁ・・・・・」

 

※本当に悶絶中

 

永井「くくく・・・大人を甘く見るからこうなるのだ・・・・。

   だが安心しなさい。

   大人の私たちがあなたたちを正しい方向へ導いてあげる」

 

篠田「言ってることは間違ってないのがまたなぁ・・・・」

 

永井「総統!一人捕まえました!改造手術の準備を」

 

篠田「うん、わかった・・・」

 

篠田「ねぇ・・・トイレ行く?」

 

愛川「・・・ヴ…ん」

 

 

篠田は愛川を抱えてトイレに行った。

 

 

中島「俺今日無事に帰れるかな・・・・」

 

永井「は・・・・・・わたし大事なこと忘れてた!!」

 

中島「それは・・・役でのセリフ?それともマジ?」

 

永井「マジな方!今日早く帰って家の洗濯物取り込まなきゃいけないんだった!!

   今親2人とも出張中でいないんだー!!ごめん帰るね!続きはまた今度!!」

 

 

中島「・・・・超急展開だな」

 

篠田「あれ?楓は?」

 

 

中島「家の用事があるって帰った」

 

篠田「ええ!?あいつマジでなんなんだよ!」

 

中島「どうする?続ける?

   ぶっちゃけ戦闘員とかいなくてもできちゃうけど・・・」

 

篠田「いや帰る」

 

中島「やっぱりそう来るか・・・・」

 

篠田「じゃね」

 

中島「あの地雷3姉妹はマジで約束だけの関係なんだな・・・」

 

中島「俺も帰るか・・・・・」

 

 

 

数十分後

教室に戻ってきた愛川

 

 

愛川「あれ・・・・・・・」

 

愛川「・・・・・・・・・」

 

愛川「あいつら覚えとけよマジで・・・・っち・・・」

 



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SCENE-13 姉妹・兄弟

戦隊ごっこを止むおえず中断して急いで帰宅してきた永井。

 

永井「ただいまー!」

 

永井妹「おかえり」

 

妹はリビングのソファに寝っ転がってスマホをいじってた。

 

永井「洗濯物・・・取り込んで・・ないのか!?」

 

永井妹「その仕事を負かされたのってさ、楓じゃん?」

 

永井「ちょっとは気を利かせてもいいんじゃない?あんた先に家にいたんだからさ」

 

永井妹「・・・・・・」

 

永井「無視・・・都合が悪くなるとすぐそうやって黙りこむ・・・・」

 

永井「ふん・・・・」

 

黙って洗濯物を取り込む永井。

 

永井「・・・・・・・」

 

永井妹「・・・・・・」

 

そして黙ったまま洗濯物を畳む永井。

 

永井「・・・・・・」

 

永井妹「・・・・・・・・」

 

永井「夕飯何にする?」

 

永井妹「なんでもいい」

 

永井「ねぇそれ辞めて。作った後にこれ嫌だとか文句言われるのいっちばんうざいから」

 

永井妹「そんなこと言われてもね・・・すぐには浮かばないんだよ。

    大体その質問が悪いよね。今この段階で楓が作れるものなんて限られてるじゃん。

    だから私がレアのステーキ食べたいって言っても楓レア作れないじゃん?」

 

永井「はいはいわかりました、あんたの夕飯そこの納豆とご飯で決まりね」

 

永井妹「ふん・・・・・・」

 

永井「・・・・・・・」

 

黙って夕飯の支度を始める永井。

 

 

 

永井「ご飯できたよ」

 

永井妹「結局作るんじゃん」

 

永井「ステーキじゃないけどね」

 

永井妹「ふん・・・・・」

 

 

永井妹がハンバーグを食べた瞬間・・・

 

 

 

永井妹「んぐっ!?」

 

永井「ニヤ・・・・」

 

永井妹「これ・・・何入れた!?」

 

永井「知らない方がいいよぉ・・・お姉ちゃんに口答えした・・罰ね」

 

永井妹「うぷっ・・・・」

 

トイレにダッシュして駆け込む永井妹。

 

永井「ははははははははははははは」

 

 

永井の邪悪な笑い声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

成明「ただいまー」

 

秀明「おかえり」

 

秀明は成明の哀れな兄だ。

 

成明「おい何してんだ」

 

秀明「これからあいりんのライブに向かうのだ・・・くはっ」

 

 

 

※あいりんとはこの世界の声優アイドル:南沢 愛奈の愛称です。

 

 

 

秀明は身長182cmの長身。

 

しかしそれを上回る荷物のリュックを背負っている。

 

 

成明「お前それ全部持ってく気かよ、無理だから。レンジャー部隊でもそんなに持たねーよ」

 

秀明「く・・俺としたことが・・。まだあいりんへの愛が・・足りていないのか・・・。

   それが故・・これしきの荷物すら持つことができないのか・・・!!」

 

成明「愛の力だけでなんでも出来ると思うなよ」

 

秀明「いや、俺は世界で一番あいりんを愛していると断言できる!!

   俺はあいりんの生まれた病院や、全身のホクロの数、

   生理周期やあいりんの家の家系図も知っているのだ!!」

 

成明「キモイ。ひたすらキモイ、つかなんで知ってんだ、お前一回捕まれよ」

 

秀明「そこまでできた俺に・・これが持てないはずが・・・ぬああああああいいい!!!!!」

 

成明「あ、持ち上げた」

 

秀明「じゃあな、成明。俺明日まで帰らないから母さんによろしく!」

 

成明「おう、帰ってこなくていいからな」

 

秀明「さらば、弟よ!また会う時まで!!」

 

成明「はい、もう会うことはございません。土にお帰りください」

 

 

家を出た秀明。

 

 

 

-道端

 

 

 

秀明「く・・・しかしやはり重い・・・」

 

瑞樹「うわ、何・・・って秀明!?」

 

※この瑞樹は吉森の姉です。秀明と同い年で同学年です。

 

秀明「あ・・・・瑞樹」

 

瑞樹「あんた何してんの?てか・・何ついに家追い出された?」

 

秀明「いや違うって。これからライブ行くんだって。なんでそういう捉え方になるの?」

 

瑞樹「いやそんなに荷物いらないでしょ、ライブなら。てかまだこの街に居たんだ」」

 

秀明「え、何その言い方!?ひどくない!?」

 

瑞樹「高校時代に散々やらかしておいて近所からは精神異常者扱いされてるのにまだいるとは・・。

   あんたメンタル強いね」

 

秀明「いや初耳だよ?そんな風に言われてんの俺!?」

 

瑞樹「あんたそれにフリーターなんでしょ?」

 

秀明「いや、今は・・・・・無職です」

 

瑞樹「お前の家族は仏か!普通なら追い出されてるぞそれ!?つか殺してもいいくらいだぞ!?」

 

秀明「あああ、もう!ほっといてくれって!!さらばじゃ!!」

 

瑞樹「はぁ?」

 

瑞樹は秀明のリュックにぶら下がっていたキーホルダーを見た。

 

瑞樹「ん・・・?」

 

 

 

 

秀明はライブ会場についについた。

 

秀明「着いたぞ・・・・!!!」

秀明「はぁ・・・・はぁ・・・・がはっ」

 

しかし酸欠と筋肉痙攣で倒れた。

 

「おい、大丈夫か!?救急車呼んでくれ!」

 

 

 

秀明「ん・・・?ここは」

 

秀明「見知らぬ天井・・!?」

 

成明「何してんだこの穀潰しがああああああああああ」

 

秀明「ぐへあっ!!」

 

成明は全力のパンチを鳩尾にくらわした。

 



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SCENE-14 吉森の恋愛履歴

吉森の家に安央と成明が遊びに来ていた。

 

吉森「・・・・・・」

 

吉森はスマホをポチポチいじっている。

 

成明「・・・・・・」

 

成明は音楽を聴いている。

 

安央「・・・・・・」

 

安央はこの場の状況にイライラしている。

 

 

安央「お前らあああ!部屋で3人人がいるのに何やってんだあああああああ」

 

成明「なんだ、安央」

 

吉森「うるせぇな」

 

 

安央「え?何お前ら?人が3人もいるのにスマホと仲良くにらめっこしちゃってさぁ!?

なんかしよーぜ?なぁ!!」

 

吉森「何すんだよ?」

 

成明「なんかやることでもあんのかよ?あん?」

 

安央「なんで今日はそんなにガラ悪いんだ成明」

 

吉森「とりあえず、寸劇はやめような。あれは安央の家限定の遊びだから」

 

安央「そうなの?俺知らなかったわ」

 

成明「ゲームもなしにしようぜ?吉森はHなゲームしか持ってないだろうから」

 

吉森「それはお前だろ」

 

成明「そうだが?何か問題でも?」

 

安央「とりあえずお前らちゃんと考えろ!

・・・あ、そうだ。たまにはなんか話そうぜ!」

 

吉森「話すって?」

 

安央「ほら、俺ら3人共高校違うじゃん?日頃の学校生活の面白い話とかさー」

 

成明「互いにその学校での人物と面識がないから

話をしても面白味を感じるとは限らんぞ」

 

安央「じゃあ、何話そうか・・」

 

吉森「好きな人とか?まぁそっちの方の」

 

成明「俺は特にそういうネタ持ってないぞ」

 

安央「あ、それだ!それ話そう」

 

 

 

 

 

 

 

ということで3人で恋バナすることに。

 

安央「そういえばさ、吉森って今彼女いねーんだろ?」

 

吉森「うん」

 

成明「でもお前今まで彼女6人くらいいたよな?」

 

吉森「うん」

 

安央「すげぇな・・・まだ17だろお前・・先走ってんなぁ」

 

吉森「うるせぇよ。別にいいだろ」

 

安央「でもいつも俺らには仲のいい話しかしてなかっただろ?

なんで別れたの?」

 

吉森「・・・まぁ色々あってね」

 

安央「いろいろってなんだよ」

 

成明「あれ、安央は知らないのか」

 

安央「え?逆にお前知ってんの?」

 

成明「ああ、うちの学校でも話を聞くくらい有名だぞ」

 

安央「ああ、そういえば吉森の最初の彼女って成明と同じ高校の人だったっけ」

 

吉森「おい、やめろ。成明、言うなよ!」

 

成明「振りだろ?」

 

吉森「んなわけねーだろ!!」

 

成明「実はなぁ・・・・」

 

成明が話始めようとした途端、吉森は床下からガスガンを取り出した。

 

吉森「言わせるもんかあああああああ」

 

安央「うわこいつマジか!?」

 

成明「逃げるぞ!安央!スーパーバーガーに行こう!」

 

安央と成明は吉森の追跡を振り切り、スーパーバーガーで落ち合った。

 

2人は窓際の席についた。

 

安央「どうしたんだあいつ・・・。そんなに知られたくないのか・・・」

 

成明「まぁ、確かに人に知られたくはない振られ方をしているからな」

 

安央「なぁ教えてくれよ」

 

成明「まぁ知ったところでお前の吉森への評価は実際あんまり変わらないと思う。

   単刀直入に言ってしまえば、あいつらしさが全面的に出てしまった結果

   振られたってことだ」

 

安央「どういうことだ?」

 

成明「じゃあ初代から話そうか・・・・」

 

 

 

吉森の初代彼女

 

成明「吉森は彼女と某テーマパークにデートに行く約束をしたらしい。

   そして現地集合ってことで吉森は電車で向かったそうだ」

 

成明「そしてその時吉森は・・・その夜に家に彼女を泊める約束までしてたらしい。

   まぁ、あいつがしようとしていたことはわかるだろう」

 

安央「うん、スマブラ?」

 

成明「お前のピュアさには時々腹が立つがまぁ今はいい。

   単純に彼女を抱きたかったんだと」

 

安央「マジ!?あいつじゃあ・・・」

 

成明「まぁ聞けって。彼女を抱くため、初めてを成功させるため、あいつは禁欲していたらしい。

   約束した1か月前から」

 

安央「マジか!?」

 

成明「それであいつ・・・相当来てたらしい・・・」

 

安央「うん・・・・・」

 

成明「そのせいであいつ、行きの電車が満員だったのをいいことに

   斜め前に居た女性に痴漢したらしい」

 

安央「ええええええ!?つか普通に犯罪じゃん!?あいつ犯罪者じゃん?

   え?なんでさっき部屋にいたの?」

 

成明「理由は簡単だ。その痴漢した相手が吉森の彼女だったからだ」

 

安央「なんつーミラクルだよ!?助かってるけど助かってねーじゃん!?

   そりゃ振られるわ!!」

 

成明「電車の中で目が合った時はマジで死を覚悟したらしい」

 

安央「死んどけばよかったのに」

 

 

成明「しかしまだ終わらない。

   2代目は初代と別れてからすぐにできた。

   そしてあいつは2代目とはやることができたらしい」

 

安央「え、マジ?あいつ・・・大人だったのか俺よりも・・・」

 

成明「そうだ、そしてある日、あいつはその行為の一部始終を録画したらしい」

 

安央「あいつ留まることをしらねーなぁ」

 

成明「それでもってあいつはそれを見てマスタームーブをしているところを

   彼女に見られて振られたらしい」

 

安央「とんだ間抜けだな」

 

成明「3代目!3代目の彼女はなかなか吉森に心を開いてくれなかったらしい」

 

安央「ほうほう」

 

成明「だから心を開いてもらうためにストーカーしたらしい」

 

安央「木に縁りて魚を求めてんなぁ」

 

成明「4代目は吉森に自分のパンツを食べられたことが理由で振ったらしい」

 

安央「あいつもうただの犯罪者じゃん、イケメンでも許されないぞ」

 

成明「5代目、海水浴場に遊びに行った帰りに吉森がほかの女性から盗んだ水着を見て

   絶望して振られた」

 

安央「もう何も言えねぇ」

 

成明「そして6代目。行為の最中吉森は彼女のグランドキャニオンの中に頭を突っ込もうとしたらしい」

 

安央は飲んでいた烏龍茶を盛大に吹いた。

 

 

成明「まぁそういう話だ。あいつは・・・そういう人間だ」

 

安央「・・・・・お前の言った通りだよ成明。

   話を聞く前後であいつに対する全く評価が変わらなかった」

 

安央「ただ一つ思ったことは・・・・」

 

安央「あいつ一回捕まったほうがいいな」

 

成明「同感だ」

 

 

その時、店に吉森が入ってきた。

 

 

吉森「おい、成明、お前話してねーだろうな・・・

   ってなんだお前ら2人揃ってその顔!?」

 

2人共吉森を憐れむ顔で見た。

 

 

吉森「なんだよお前ら!!!」

 

安央「お前、やっぱ吉森なんだな」

 

吉森「は!?」

 

成明「すまないが全部彼に話させてもらったよ」

 

吉森「クソ・・・間に合わなかったか!!」

 

安央「安心しろ、特にお前に対する評価は変わってないから」

 

吉森「そうか・・・・え?聞く前から俺は変態だと思われてたのか?」

 

成明「お前は変態以外の何者でもないだろう?」

 

安央「なぁ、家に戻ろうぜ。新時代の恋愛開拓者さんよ」

 

成明「俺は尊敬の意を込めてこう呼ばせてもらう。

   ”イケメンの皮を被った精子”とな」

 

吉森はガスガンで成明のサングラスを破壊した。

 

成明「ぎゃあああああああああ」

 

安央「成明ー!!!!お前成明から明るさを奪う気か!!成にする気か!!!」

 

吉森「意味わかんねーよ!!!」

 

安央「あれ・・・おい、吉森!!」

 

吉森「はぁ?」

 

店員が電話している。

 

成明「やべぇたぶん警察に電話してるぞ!!」

 

吉森「マジか!逃げようぜ!!」

 

安央「なんで俺らまで巻き込まれてんだよ!!

   銃持って店に入ってきたのお前だろ!!」

 

吉森「は?元々恋バナ初めてこの事態招いたのは安央だろうが!!」

 

成明「おい、マジでパトカーのサイレン聞こえてきたぞ」

 

安央「てかお前は余罪が多すぎるから一回ここで捕まっておけよ」

 

吉森「この状況でよくそんなこと言えるな!!」

 

成明「お前ら速く逃げるぞ!!!」

 

安央・吉森「わかってるよ!!」

 

 

警察「そこの3人止まりなさい!!」

 

安央「うわ!!俺らも入ってる!?」

 

成明「あの秘密ルートで振り切るぞ!」

 

吉森「オーケー!」

 

3人はダッシュで街を駆け抜け何とか逃げ切ったそう。

 



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SCENE-15 すれ違った人

休み時間

 

永井「もぞもぞ」

 

篠田「おい、どうした楓。今日はやけに静かじゃん」

 

永井「恵・・・私、恋しちゃったみたい」

 

篠田「ぶふっ」

 

篠田は吹いた。

 

永井「え!?ひどい!?そんな!?」

 

篠田「あ、え?あ、ごめんね。ちょっと今の面白かったから」

 

永井「もう!だから恵は性格悪いんだよ!!

   魚の骨がのどに刺さって苦しめ!!」

 

そういって永井は教室を出てった。(次は移動教室)

 

 

篠田「あいつ暴言かわいいいな」

 

 

 

永井「ああもう・・・胸がチクチクする・・・。これってマジだったんだ・・・」

 

永井「うわ!」

 

永井は廊下の曲がり角で誰かにぶつかった。

 

永井「ごめんなさい!!」

 

安央「え、ああ。大丈夫?」

 

永井「あ・・・・・・」

 

永井は安央の顔をじーっと見つめる。

 

安央「・・・?」

 

永井「徳河君だよね?」

 

安央「うん・・・そうだけど。何?」

 

※永井と徳河は一回クラスが同じだったけどあんまし話すことはなかった。

  だから面識は一応ある。

 

永井「ちょっと相談があるの!!昼休み屋上に来て!!」

 

そういって永井は行ってしまった。

 

安央「屋上って、入れねぇだろ・・・・・」

 

 

 

昼休み

 

 

 

安央「あ、来た」

 

永井「ああ、来てくれたんだ」

 

安央「で、相談って何?」

 

永井「その、昨日私見ちゃったのよ・・・、街中で徳河君のこと」

 

安央「昨日?・・・ああ、もしかしてスーパーバーガーの近くにいたの?」

 

永井「いや、店の中にいたの」

 

安央「マジ!?」

 

永井「まぁ奥の方の席にいたからね・・・。

   あ、それでねぇ・・・・」

 

安央「ん?」

 

永井「店に銃を持って入ってきた人・・・いたでしょ?

   あの警察呼ばれてた人」

 

安央「ああ、吉森?」

 

永井「吉森君っていうの?」

 

安央「あいつがどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

永井「私・・・一目ぼれしちゃったの」

 

 

 

 

 

 

 

安央「えええええええええええええええええええええええええ」

 

 

今世紀最大の衝撃が安央を襲った。

 

と同時に吉森に嫉妬した。

 

 

安央「え?え?マジで?」

 

永井「マジだってば・・」

 

安央「うわー・・・」

 

永井「だからね・・その、会わせてほしいの」

 

安央「ええ!?」

 

永井「お願い!!!!」

 

安央「それ言われると・・・でもなぁ・・・・」

 

安央「(どっちにするのがこの子にとって助けになるか・・・。

    あんな性欲全開ド変態野郎にこの子を壊されたくないしな・・・・。

    でも俺にこの子の純愛を邪魔することが許されるのだろうか・・・。

    いや、あいつが絡んだ時点でどんなに澄んだものも汚れるんだ・・・。

    よし、止めよう)」

 

安央「なぁ、やめておいた方がいいぜ?」

 

永井「え!?まさか彼女がいるとか?」

 

安央「いや、まぁ・・・いないけど今は」

 

永井「ええ、じゃあなんで?」

 

安央「というのもさ、ちょっと人格に問題があるっつーか・・・

   色々とやばい奴なんだよ・・」

 

永井「・・・・・・」

 

永井が目を細めて安央を見つめる。

 

安央「え・・・?どうしたの?」

 

永井「まさか・・・徳河君ってさ、私のこと好きなの?」

 

 

永井、シリアスモード起動。

 

 

安央「はい!?」

 

永井「だから吉森君に取られたくないから会わせてくれないんじゃないの?」

 

妙に静かで強い口調で話し始めた。

 

安央「なんでそうなるの?!違う違う!!あ、別に嫌いじゃないけど!!

   そういうことじゃなくて、これマジで!!マジなの!!!

   あいつちょっとおかしいんだってば!!」

 

永井「ねぇ、嘘つかないで本当のこと言ってよ」

 

安央「なんで誘導尋問みたくなってんんだ!?」

 

永井「その気がないならそんなこと言わないでしょ?」

 

安央「あああ・・・もう!!わかった!

   今日の放課後、学校の裏のファミレスに来てくれ!」

 

永井「吉森君紹介してくれるの?」

 

安央「ああ」

 

永井「ありがとうね!!」

 

安央「・・・」

 

 

永井は笑顔で帰っていった。

 

 

安央「あの子やばいな・・・・・・」

 

安央の意思は決まっていた。

 



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SCENE-16 気になる

昼休み

 

 

篠田「ああ、なんだか楓に悪いことしたな・・・・」

 

篠田「謝ろう。形式上の仲とは言えども礼儀はありだ!」

 

篠田は永井を探していた。

 

篠田「楓!・・・かえ・・・ん!?」

 

屋上付近で永井が誰かと話しているのを目撃。

 

篠田「え・・・嘘でしょ?」

 

篠田「誰と話してるんだ・・・」

 

 

徳河だった。

 

※徳河は1年次に永井と篠田と同じクラスでした。

 

 

篠田「徳河!?え?何の話してるの?」

 

篠田、屋上の陰から盗み聞き開始。

 

 

 

 

永井「私・・・一目ぼれしちゃったの」

 

 

 

 

 

 

安央「えええええええええええええええええええええええええ」

 

 

 

篠田「嘘おおおおおお!?マジマジ?楓が・・・

   徳河のこと・・・えええ!?

今年史上最大の衝撃だわ!!まだ4月だけど今年史上最大だわ!!

   えええ、マジで!?」

 

篠田「ちょっと今日はご飯食べられないわぁ・・・・・」

 

そっと篠田はその場を離れた。

 

そして篠田が来たと同じ頃。

 

別の位置で盗み聞きしている女がいた。

 

 

 

 

叶野だ。

 

 

 

 

 

叶野「(今日は恩田がいないから一緒に弁当食べようっていおうと思ったら・・

   なんだあいつ!?

    女に呼び出されてるだって!?こんなの聞くしかないじゃないのよ!)」

 

永井「私・・・一目ぼれしちゃったの」 

 

安央「えええええええええええええええええええええええええ」

 

 

 

叶野「(ええええええええええ!?あの安央のことを好きな女がこの世にいただと・・・!?

ていうかお前驚きすぎだろ‼シチュエーション考えろよ!)」

 

安央「え?え?マジで?」

 

永井「マジだってば・・」

 

安央「うわー・・・」

 

叶野「(お前告られてうわーはないだろ!?

    デリカシーってもんがないのかお前は!?)」

 

永井「だからね・・その、会わせてほしいの」

 

安央「ええ!?」

 

叶野「(え!?会わせてほしいって誰に!?まさか親?!

    付き合ってもないのに親に挨拶する気かあの女!?

    一体なに考えてるんだよ!!

    あー、あれだけ変な女に引っかかるなって言ったのに安央・・・・)」

 

安央「なぁ、やめておいた方がいいぜ?」

 

叶野「(よし!ちゃんとあたしの教育は行き届いていたみたいだ!)」

 

グッと腕を握る叶野さん。

 

 

永井「え!?まさか彼女がいるとか?」

 

叶野「(え・・・?いるの?いないよね?)」

 

安央「いや、まぁ・・・いないけど今は」

 

叶野「(何その言い方?え?あたしには今までいたことないって言ってたじゃん。

    何あいつ?あたしに嘘ついてたの?あれなんかイライラしてきたぞ)」

 

永井「ええ、じゃあなんで?」

 

安央「というのもさ、ちょっと人格に問題があるっつーか・・・

   色々とやばい奴なんだよ・・」

 

叶野「(自分の親をやばい奴呼ばわりかよお前!親くらいリスペクトしようぜ?)」

 

永井「まさか・・・徳河君ってさ、私のこと好きなの?」

 

叶野「(はい!?何言ってんのこの女!?

    相思相愛を強制してくるの?こいつ結構やばい女だぞ)」

 

永井「だから吉森君に取られたくないから会わせてくれないんじゃないの?」

 

叶野「(え?何言ってんのこの女?吉森って誰?

    あんたが安央の親に会ったら吉森君に親を取られちゃうの?

  

    ん?待って、もしかして私話途中から聞いてるのかな?

    そうすると重大な冒頭部分を聞いていなかったことに・・・

    だとすると今までの話を私は誤解して聞いていた可能性が・・・

    あれなんで安心してるんだろう)」

 

 

安央「あああ・・・もう!!わかった!

   今日の放課後、学校の裏のファミレスに来てくれ!」

 

叶野「(よし!行こう!そこで真実を知ろう!)」

 

叶野「撤収!!」

 

叶野は颯爽と教室へ帰った。

 



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SCENE-17 吉森の歴代彼女全員集合

放課後-ファミレス

 

 

永井「おまたせ・・・ってええ!?」

 

 

 

安央「待ってたぞ!」

 

 

安央の他に6人の女が座っていた。

 

 

永井「あれ、吉森君は?」

 

安央「まずはそこに座ってくれ!」

 

永井「え・・・あの、吉森君は?」

 

安央「・・ここにいる6人は・・歴代の吉森の彼女たちだ」

 

永井「ええ!?」

 

※永井は色んな意味で引いています。

 

仁美「この子がそうなの?」

 

安央「うん、この子が吉森に一目ぼれしちゃった子だ」

 

6人「うわ・・・・マジか」

 

永井「(ハモりながらそんなこと言わないでよ・・・)」

 

 

安央「なぜこの6人を俺が呼んだのか。

   永井さん、君にはこの6人と同じ目に遭ってほしくはないからだ!」

 

永井「え、ちょっとどういうこと!?」

 

安央「じゃあ、みんなよろしく!」

 

仁美「じゃあ、うちから話すね?たぶん・・・うちが最初の彼女かな?」

 

七菜香「そうじゃない?」

 

里実「うん」

 

永井「(なんだこの空間・・・)」

 

仁美「マジで、吉森はやめておきな。あいつマジで最低だからね?」

 

永井「あの、私まだ彼のことよく知らないんですよ」

 

里実「ならなおさらやめておいた方がいい」

志保「あいつ顔だけだからね」

真理亜「ほんとそれな」

安央「すげー言われようだな・・・。なんかかわいそうになってきた」

 

仁美「うちね、あいつの家に泊まりに行ったときね?

   お風呂借りたのよ。んで上がるじゃん?パンツ履くじゃん?

   なんかついてるのよパンツに・・。で、よく見るとさ・・・・。

   白いカルピスがついてんの」

 

里実「それうちもあったわ」

 

真理亜「うちも」

 

有紗「うちなんかブラジャーにも出されてたわ」

 

安央「あいつはなんで学習しねーんだろうな・・・。

   理性ってもんが抜け落ちてるんだよなぁ」

 

 

永井「(カルピス好きなのかな?吉森君。

    というかそれ問題あるのかな?)」

 

 

安央「(なんだその顔は!?おいまさか普通のカルピスのことだと思ってねーよなぁ!?)」

 

七菜香「あたしはさ、遊園地に行ったときね、お化け屋敷入ってさ

    まぁ怖いじゃん、ていうか、私怖がりなのよ。

    でさ、森も怖がりなのよ。

    なのにあいつ妙にほほえましい顔だったのその時。

    で、森の腕にくっついてたらさ、

    あいつ他の女性客の尻もんでたのよ」

 

永井「うわぁ・・・・・」

 

安央「(これはさすがに引いてるな・・)」

 

真理亜「最低だわ」

 

里実「あいつ海水浴場で他の女性からビキニ10個盗んできたことあったからね?」

 

永井「はっ!?」

 

仁美「私なんてT○L行くときの電車であいつに痴漢されたから」

 

永井「ひっ!?」

 

七菜香「え?それどういう意味?」

 

志保「あたしなんてパンツ食べられたよ」

 

永井「ふっ・・・」

 

真理亜「あいつやってるときに股に頭つっこもうとしてきたしね!正直笑ったけど」

 

永井「へぇええっ!?」

 

 

歴代彼女の吉森トークで盛り上がる最中・・・

 

 

 

永井「・・・・・」

 

かなり青い顔になっている永井。

 

安央「なぁ、わかっただろ?」

 

永井「うん・・・なんか、ありがとうね。そしてごめんね」

 

安央「別にいいさ・・・なんか・・・こっちこそごめんね」

 

永井「謝らなくていいよ・・・パフェおごってくれたら許す」

 

安央「どっちなんだよ!?」

 



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SCENE-18 真実

叶野「ふぅ・・・なんだこの背徳感・・・」

 

本当にファミレスに来ていた。

 

叶野「あ、安央が来た」

 

 

安央は6人の女を連れて来ていた。

 

 

叶野「何んだあいつ!?嘘でしょ!?」

 

叶野「あいつ?まさかさっきの吉森君って人のことか?」

 

叶野「被害者ってどういうことだよ。・・・ああ、なんかわかってきた。

   さっき話してた女がその吉森君に一目ぼれしたんだ!

   安央じゃなくて吉森君だったんだ!

   で、その吉森君って安央の友達なんだな。たぶん。

   会わせてって言ってたのは吉森君に会わせてって意味だったんだな。

   で、安央が人格に問題があるって言ってたのも吉森君のことだ。

 

   吉森君ってどんな奴なんだよ。

 

   まぁいいや。で、安央はその人格に問題がある吉森君にあの女を会わせたくないんだな。

   で、何か策を考えてあの女を説得しようとファミレスに呼んだんだな。

 

   うん、この状況に全く繋がらないぞ。

 

   まずあの6人の女は何者なんだ?

   安央、お前女トモダチいないって言ってたじゃん。

   あいつ本当にあたしにウソツキまくりじゃんか!!」

 

叶野「あ、あの女が来た」

 

永井「おまたせ・・・ってええ!?」

 

叶野「まぁそりゃ驚くよな」

 

永井「あれ、吉森君は?」

 

安央「まずはそこに座ってくれ!」

 

叶野「やっぱりあの女は吉森君に一目ぼれしたんだな。

   てかあのあとまだ話続いてたのかな?

   吉森君が来るからファミレスに来たみたいな発言だ」

 

永井「え・・・あの、吉森君は?」

 

安央「・・ここにいる6人は・・歴代の吉森の彼女たちだ」

 

 

叶野「そう来たかー!!てかえ!?あれ全部その吉森君の彼女なの!?

   吉森君6人も彼女いたの!?マジで吉森君何者だし!?」

 

 

仁美「この子がそうなの?」

 

安央「うん、この子が吉森に一目ぼれしちゃった子だ」

 

叶野「やっぱしか」

 

6人「うわ・・・・マジか」

 

 

 

叶野「・・・・なんだか話の結末より、吉森君がどんな奴なのか気になってきた」

 

安央「なぜこの6人を俺が呼んだのか。

   永井さん、君にはこの6人と同じ目に遭ってほしくはないからだ!」

 

叶野「あの女永井っていうんだ・・・。てか・・・安央結構いいやつなのかな」

 

仁美「じゃあ、うちから話すね?」

 

仁美「うちね、あいつの家に泊まりに行ったときね?

   お風呂借りたのよ。んで上がるじゃん?パンツ履くじゃん?

   なんかついてるのよパンツに・・。で、よく見るとさ・・・・。

   白いカルピスがついてんの」

 

叶野「最低か。男の風上にも置けないド変態だな吉森君。

   エロ漫画に出てきそう」

 

永井「?」

 

叶野「あれ?永井さんもしかしてモノホンのカルピス想像しちゃってる?」

 

 

七菜香「あたしはさ、遊園地に行ったときね、お化け屋敷入ってさ

    まぁ怖いじゃん、ていうか、私怖がりなのよ。

    で、森の腕にくっついてたらさ、

    あいつ他の女性客のお尻もんでたのよ」

 

叶野「それ普通に犯罪じゃん!?なんで捕まらないの?

   あったことないけど吉森君死んだほうがいいんじゃないかな」

 

里実「あいつ海水浴場で他の女性からビキニ10個盗んできたことあったからね?」

 

叶野「だから犯罪じゃん。吉森君思いっきり犯罪者じゃん。

   余罪まだたくさんあるんじゃない?

   本当に死んだ方が世のためなんじゃ・・・」

 

志保「あたしなんてパンツ食べられたよ」

 

叶野「どうしたらそんな発想になるんだよ吉森君!!!

   エロ漫画にすら出てこねーよそんな変態」

 

 

安央が青ざめた顔の永井を連れて店を後にした。

 

叶野「あ・・・2人共出ていった」

 

叶野「ついていこう」

 

 

叶野「しかし吉森君ってやつはただのド変態屑だな・・・。

   ある意味男の中の男なのかもしれないけど。

   てかそんな友達いたのかよ安央・・・

   あんな話聞いたらそりゃ顔も青くなるわ」

 

 

安央は永井と一緒に近所のショッピングモールに向かって歩いている。

 

その後ろを叶野が追跡している。電柱に隠れながら。

 

 

 

叶野「一体どこへくんだ・・・。実際真実確認という意味では

   もうあたしの任務は完了している。

   しかし!安央が女と2人でどこかに行くなんてちょっと気になるじゃない!!」

 

安央「・・・永井さん」

 

永井「ん?」

 

安央「ちょっとここで待ってて」

 

永井「どうしたの?」

 

安央は履いていたローファーを蹴り飛ばした。

それは電柱から覗いていた叶野の顔に当たった。

 

叶野「がはっ!!!」

 

安央「さっきっからバレバレだかんなお前ー!!!!」

 

 

叶野「いってぇな・・。お前女子の顔は命だぞ!!何してくれんだよ!!」

 

安央「人のプライバシー侵害しておいてよく言うわ!!お前ファミレスにもいただろ!!

   もっと遡れば屋上で永井さんと話してる時もいただろ!!!」

 

 

叶野「ずっと気づいてたのかよ!!」

 

 

安央「ああそうだよ!!!なんのつもりだよ!!」

 

叶野「気になっただけじゃ!!」

 

安央「たく・・・見損なったぜ」

 

叶野「ごめん・・・。でもお前靴飛ばしはねぇよな?」

 

安央「それについては勢いでやっちゃいました。すみません」

 

叶野「お前パフェおごれ」

 

安央「お前もパフェかよ!!!」



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SCENE-19 パフェのソースはブラッディテイスト

3人はショッピングモール4階のパフェ専門店”スイートアイランド”に来ていた。

 

 

安央「はぁ・・女2人にパフェをおごる日が来るとは・・・」

 

永井「はぁ・・・なんか疲れちゃったな・・・」

 

叶野「あたしも・・・・・・」

 

3人共色々と疲れ切っていた。

 

安央「おい、お前らパフェ食わねーのかよ」

 

永井「あんなにかっこいい人が・・・

   まさかあんなただの変態だったなんて・・・

   正直3日くらいへこむ」

 

安央「3日で済むなら安いもんだろ。

   あいつと付き合ったら3年でも済まねーぜ」

 

叶野「さっき聞いてたけどあれマジ?その吉森って人」

 

安央「ああ、そうだよ。俺の親友だけどな」

 

永井「徳河君そんなド変態と親友なんだ・・・。じゃあ徳河君も」

 

安央「ちょっと待て、それはない。俺はあいつ程変態じゃない。

   というかあそこまで行くのは無理がある」

 

叶野「あんなことしてる人作り話でも聞いたことないわ・・・」

 

永井「なんか・・・女としてああいうこと平気でする人、許せないわ」

 

叶野「わかる」

 

安央「やっぱりなぁ。男の俺でも引くもん、さすがに」

 

永井「ああ、なんかそう考えたらむかついてきた。

   そんな人間に一目ぼれした自分にもそうだし、吉森にも」

 

安央「いつの間にか呼び捨てになってるし」

 

叶野「あたしもあんまり関係ないけど最低な男だと思う。

   一度でも許せないけどそれを6人の彼女にもやってるってところに

   殺意が湧くわ」

 

安央「なぁ、まあパフェ食って落ち着けって」

 

 

すると、誰かがこっちの席に近付いてくる。

 

 

 

 

成明「あれ、安央。お前が女子といるなんて今日雪でも降るのか?」

 

安央「失礼だな!!」

 

叶野「まさか吉森ってこいつか?」

 

成明「なぜに俺が吉森?」

 

永井「違うよ、この人は・・・でもあの日一緒にいた人」

 

安央「そう、こいつは成明。まぁ成明も親友だ」

 

成明「一体どういうことだ安央」

 

安央「まぁかくかくしかじかで」

 

成明「なるほど、それは非常にまずいな」

 

安央「なんで?」

 

成明「今俺吉森と一緒に来てるんだよ。

   あいつは今トイレに行ってるけどすぐにここに来るぞ」

 

安央「ええええええええ。それはやべーよ。あいつの命があぶねーって」

 

成明「俺らで別人に仕立て上げるか?」

 

安央「ダメだ!永井さんには顔が割れてるんだぞ!」

 

成明「ああ、そうだった・・・。どうするか・・・」

 

安央「いや、あいつだけ帰せよ!なんならお前も帰れよ!」

 

成明「ええ!?せっかくバイト代入ったから来たのに?!それは嫌だよ!

   なんで吉森のためなんかにパフェを我慢しなきゃならんのだ!」

 

安央「・・・それもそうだな。

   あいつ一回くらい制裁受けたほうがいいよな」

 

成明「そうだ。このままでいい」

 

安央「了解」

 

 

 

 

数分後-

 

吉森「ごめんごめん、成明」

 

永井「!!?」

 

吉森「あれ、安央じゃん。お前がかわいい女子といるとか今日雪でも降るんじゃね?」

 

安央「残念ながら降るのは雪じゃねえ、お前の血だ」

 

吉森「は?」

 

永井「このド変態野郎・・・・」

 

叶野「覚悟しろよ」

 

吉森「え?何、何!?

   ちょっとうあああああああああああああああああああ」

 

吉森は肉片と化した。

 

 

 

安央「・・・・・・」

 

 

成明「こういう日があってもいいよな」

 

安央「な」

 

安央と成明は吉森がボコられているすぐそばでパフェを頬張った。

 

吉森「お前ら!!ちょ!!助けろよおおおおおおおおおお!!」

 

永井「誰もお前を助けやしねええええんんだよおお!!」

 

叶野「孤立無援のままくたばれ!!!」

 

吉森「ひゃあああああああああああああああああ」

 

吉森の悲鳴は店の外まで響いていた。

 

 

辻本「なんだあの店めっちゃ騒がしいな」

 



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SCENE-20 ストレス発散方法

PM-19:00 帰宅

 

水嶋「はぁ・・・・・だる」

 

水嶋 才加。28歳 職業:高校教師

 

彩珠東高等学校の3年8組を担任している。

そう!徳河たちのクラスの担任である!

 

水嶋はささっと風呂に入って上がる。

 

水嶋「はぁ・・・・・・」

 

そしてご飯を作って食べて洗う。

 

一人暮らしの生活で家に帰ってからやることなんてこんなもん。

 

会話は当然ない。

 

家に帰ってから家族に愚痴も言えない。

 

そういう時どうするか。

 

 

 

 

この女の場合は”ゲーム”だ。

 

 

 

 

 

水嶋「ふぅ・・・・」

 

 

 

狭いアパートのリビングのソファに座って、いつもの定位置。

 

夜はヘッドホンをつけて、プレイ。基本ボイスチャットはしない。

 

なぜならひたすら撃つ、殺す、撃つ、殺すを繰り返しているからだ。

 

そこに感情はない。ただ、人を撃ち殺す。

 

そして撃たれた側のプレイヤーの様子を想像して満足する。

 

ちょっとよくわからないけどわかる人は

どっかにいるんじゃないかってレベルのストレス解消法。

 

しかし今日はいつもと・・・何かが違った。

 

 

この日は土曜日であった。

 

 

PM-21:00

 

徳河家

 

安央「おーい、七海、風呂入った?」

 

七海「まだ。スイッチ切らないでー」

 

安央「じゃあ、お前上がるときちゃんっと切れよ?」

 

七海「ふーい」

 

 

安央は飲み物や食べ物を持って部屋に戻る。

 

はい、またお泊り会です。

 

安央「戻ったぞー!」

 

辻本「おう」

 

石田「あ、お菓子ありがとうな」

 

安央「いいっていいって!」

 

五十嵐「サンキュー!」

 

※初登場の石田君と五十嵐君の紹介。

 

石田 賢司 

安央と同じクラスのスポーツマン。

運動神経万能の学校内美少年ランキング第3位。

 

 

五十嵐 創

安央と同じクラスのイケメン君。

学校内美少年ランキング第2位。普通のノリのいいやつ。

 

 

安央「今日はマルチじゃなくてオンラインやるか!」

 

石田「ああ、1プレイ交代でいいよな?」

 

五十嵐「いいよそれで。このルームでいいよな?」

 

辻本「初心者部屋とかなんか地雷っぽいルーム名だな・・・。刈られないかね?」

 

 

 

-水嶋の部屋

 

水嶋「今日も刈るぞ・・・・・初心者共よ、私のストレス解消の屍となるがいい

ふふ・・・・くふふふふ・・・ははははは!!」

 

 

 

※まだプレイしてません。

 

 

 

 

-安央の部屋

 

安央「最初は俺でいい?」

 

石田「いいよ」

 

五十嵐「かませ!やっす!!」

 

辻本「負けても泣くなよ。お前FPS下手糞なんだから」

 

安央「泣くわけねーだろ!!17歳だぞ!」

 

 

 

そして戦いが始まった。

 

 

安央「おーし・・・・まずはグレネードと行くかな・・・」

 

五十嵐「お前馬鹿だろ!!」

 

 

 

 

水嶋「さーて、どいつを狙うかな・・・」

 

水嶋「・・なんかいきなりグレネード投げてるやついるな・・

   あいつにするか」

 

 

 

 

石田「おい撃たれてるぞ!」

 

安央「え・・ああ・・・」

 

辻本「ゲームを所有している本人のレベルだとは思えないな」

 

安央「ちくしょおおおみんなああああ、ぶっ殺してやるああああああああああ」

 

 

 

 

 

水嶋「こいつマジか!!避け方も知らないのか!?

   これはいいかもだな!!はははっ」

 

 

 

安央、誰も殺せない。

 

 

 

安央「くそ・・・・弾が当たらないだと・・!?」

 

五十嵐「お前エイム使わねーからだろ!!」

 

安央「エイムってなんだ!?日本語で話せよ!」

 

石田「自信の表れじゃなくて単に知らなかっただけなのか・・・」

 

辻本「お前このゲーム買ってから何回プレイしたんだ?」

 

安央「これ買ったの俺だけどやってるの一番下の妹だし!!!!」

 

石田「マジかよ」

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「面白いくらい簡単に死ぬな・・・。

   イライラしてんだろうなぁ・・・ははっ」

 

 

 

 

 

安央「っち・・・・・」

 

五十嵐「なんかやっすさっきから同じ奴から狙われてね?」

 

安央「ああ・・・こいつさっきっから・・

   んああああああなんで当たらねーんだよ!!!」

 

 

 

 

 

水嶋「どーこ狙ってるのかなー?お嬢ちゃん・・ぶはははっ」

 

 

 

 

 

 

 

安央「くそおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 

ゲーム終了。

 

 

安央のスコア 堂々最下位。

 

安央「なんだってんだよおおおおおおおおお」

 

リモコンを叩き付けるも、自分のつま先に直撃する。

 

 

安央「ぎゃああああああああああああああああああああああ」

 

石田「あーあー、物を大切に扱わないからだ」

 

 

 

 

 

 

水嶋「今頃発狂してるんだろうなぁ・・・。いいゲームでしたありがとうございます。

   次もいたら狙お。

   しっかしいまだかつて見たことのないくらい下手だったなこいつ。小学生か?」

 

 

 

 

安央「だって・・・・あああああいてぇ・・ちょっと足冷やしてくる・・・ぐすん」

 

 

辻本「やっぱ泣いてんじゃねーか」

 

石田「ついでに頭と心も冷やして来い」

 

五十嵐「俺に任せておきなさいって!こーゆーのは!!」

 

石田「お前はこのゲーム持ってるんだっけか?」

 

辻本「ちょっと期待できそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「あ、またいる。今日はとことんこいつをいじめよう。そうしようふふっ」

 

 

 

 

 

 

五十嵐「おい、またさっきのやついるぜ?」

 

石田「こいつこの部屋のホストだな」

 

辻本「部屋主が初心者刈りなのかよ・・・ストレスでも溜まってんのかこの人」

 

五十嵐「俺はやっすとは違・・・」

 

石田「死んだ」

 

辻本「ヘッドショット・・・・」

 

 

五十嵐「まぁまぁ・・こういうこともあるよね戦場では」

 

石田「次はないけどな現実だと」

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「さっきより動きがよくなってるな・・・まだクソだけど。

   プレイヤー変わったなこれ。

   お泊まり会でもして回してるのか?なら徹底的にいじめてやるよ。

   そこにいるやつらみんな私の餌なのさ・・・ふふっ」

 

 

 

 

五十嵐「あーダメだ、こいつ強い!!!」

 

石田「全部ヘッドショットじゃねーか」

 

辻本「しかもめっちゃ煽ってくる!」

 

五十嵐「あーうぜーなコイツ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「わかる・・わかるぞ。画面の向こうでイライラしている顔が。

   動きが乱れてる。射撃精度も落ちているし。

   戦場で感情的になったって意味はないのよ」

 

 

 

五十嵐が初めて水嶋を捕らえる。

 

 

 

五十嵐「よっしゃ、当たった!!このまま・・・」

 

 

 

 

しかし、五十嵐の足元には地雷が・・あった・・。

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「きゃははははははははは!!!!ざまーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

※28歳の女性です。

 

 

 

 

 

 

五十嵐「うわっ!!!!!・・・うわぁ・・・・・・」

 

石田「もう声にもなってねーな」

 

辻本「これはうざい!!」

 

 

五十嵐「ぐすん・・・ちょっとトイレ行ってくる」

 

石田「なんでみんな泣くんだよ」

 

辻本「次は石田君か」

 

石田「ああ・・」

 

安央が戻ってきた。

 

安央「なんか五十嵐君泣いてトイレ入っていったけどなんか言ったのお前ら」

 

石田「お前と同じだよ」

 

安央「マジ!?あいつも負けたの?またあいつ!?」

 

辻本「その通り」

 

安央「あいつまだいんのかよ!!」

 

石田「つかこの部屋のホストだ」

 

安央「くそ・・・・」

 

辻本「もうこの部屋出れば?」

 

石田「いや、ここまで仲間が無残にやられているんだ。仇は俺がとる」

 

安央「おお!!頼んだぞ石田!!」

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「次はどんなやつが動かしてくるかな・・・・。

   しかしさっきの地雷は最高だったわー。

   ビール5杯分くらいあったねマジで」

 

 

石田「俺はさっきまで奴の動きを見ている。

   癖をある程度把握したからな、行けるぜ」

 

安央「期末テスト9教科200点台のやつの言うセリフだとは思えねぇぜ・・・」

 

石田「戦場では生きていることこそが勝利だ」

 

 

水嶋「・・・ん?こいつはさっきまでわたしのプレイを見てんだな。

   それなりに私のパターン把握してる動きだな・・・。

   でもそれ、意味ないよーーーー!!!はははっははは!」

 

 

 

石田「よし、行ける!!」

 

 

 

水嶋「ふん」

 

 

石田「なっ!?消えた!?」

 

 

 

 

水嶋「まだまだプレイしたりてないんじゃないか?」

 

 

 

辻本「隠しルートだ!!!」

 

石田「はっ!」

 

石田はナイフキルされた。

 

石田「くそ!!!!」

 

安央「お前結構熱くなってんな・・・」

 

石田「チクショウ・・・仲間の屍を背負ってるんだ俺はああああああああ」

 

辻本「真面目か!」

 

石田「あれ?あいつどこ行った・・・?」

 

安央「・・・・・嫌な予感が」

 

 

 

 

すると突如上空から空爆された。

 

 

 

 

 

石田「うわあああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

 

水嶋「はははははははははははははははははは!!!」

 

 

 

 

安央「ぜってーあいつじゃん!!あいつだよ今の爆撃機!!!」

 

辻本「ここまで画面越しから性格の悪さがにじみ出てる人っていないと思うわ。

   絶対画面越しに笑ってる」

 

 

 

 

水嶋「ふふ・・はhっはsgbd」

※笑い転げてます。

 

 

 

 

石田「くそ・・・・俺は・・・すまん!!!」

 

安央「いや、まぁ謝らなくていいよ」

 

石田「俺は仲間の仇も打てない情けない男だ・・・・。

   ちょっと今日はかえって反省しなければ・・」

 

安央「いや、真面目か?!これゲームだからそこまでマジにならんでいいよ!!?」

 

石田「くそおおおおおおお、俺はなんて無力なんだ!!!」

 

五十嵐「はぁ・・・終わった?」

 

辻本「またあいつにやられた」

 

五十嵐「マジあいつ性格悪くね?プレイにそれがにじみ出てるし・・・。

    そのくせ強いとかマジたち悪い・・・・」

 

安央「このまま負けたままじゃ後味悪いしな・・・俺はもう一回行くぜ」

 

辻本「安央・・・お前・・・また泣いても知らないぜ?」

 

安央「ナミダの先には・・・勝利が待ってるさ」

 

五十嵐「行こうぜ賢司、やっす、辻本」

 

石田「ああ、まだ俺は戦える・・」

 

 

 

 

 

安央「うおおおおおおおお」

 

負。

 

 

五十嵐「うああああああ」

 

負。

 

 

石田「はあああああああ」

 

 

負。

 

 

 

 

そんなことを1時間繰り返した。

 

 

 

安央「はぁはぁ・・・」

 

五十嵐「勝てねぇ・・・」

 

石田「もう・・・手はないのか・・・・」

 

辻本「・・・いや待て・・・あるぞ」

 

安央「なんだよ?」

 

辻本「お前の妹、一番下の」

 

安央「・・・・・あぁ!!!その手があったか!!!」

 

五十嵐「どういう意味?」

 

安央「俺の一番下の妹はまぁFPSめちゃちゃくちゃ強いんだよ!!

   あいつならこのくそ野郎に勝てるかもしれない!!!」

 

石田「正直もう誰でもいいからあいつを倒してくれ。それで俺は満足だ」

 

 

辻本「そうだな」

 

 

 

安央「みんなで頭下げよう!!」

 

 

 

 

 

風花の部屋に行く4人。

 

 

 

 

 

安央「風花‼起きてるか?」

 

風花「何?」

 

安央たち4人は土下座した。

 

4人「お願いします!!あのくそ野郎を倒してください!!!」

 

 

 

高校生4人が小6に土下座をしている。

 

 

 

 

風花「・・なんだ、そういうことか。初心者刈りね。

   そういうやつわたし嫌いだから任せて。

   二度とそんなことできないようにしてあげる」

 

 

五十嵐「お、おう。たくましいけど将来が心配だな」

 

安央「それなんだよなぁ・・・」

 

石田「しかし本当にFPSできるのか?この子」

 

風花「見た目で判断しないで」

 

石田「すみません・・・・・」

 

 

 

 

 

水嶋「まだいんのかコイツ。ドMか!!まぁやられたいんならやってあげるわ」

 

 

風花「・・・」

 

 

ゲーム開始

 

 

 

 

 

水嶋「・・・?!なんだ?動きが・・」

 

 

 

 

五十嵐「うわ!すげぇ上手いじゃん!」

 

 

 

水嶋「なっ・・え!?」

 

 

 

 

 

石田「やったぞ!!ワンキルしたぞ!!あいつを殺した!!」

 

安央「よくやったぞ風花!!!」

 

辻本「なんだろうこの達成感!俺最初から一回もプレイしてないのに!」

 

 

 

 

水嶋「っち・・・あいつらの中に一人だけ上手いやつがいたんだな・・・・。

   くそ・・煽る暇がない・・。私を本気にさせたな・・・」

 

 

 

風花「その手は食わん」

 

水嶋「トラップにも引っかかんねー!!!

   ああああああああああああああああああ」

 

 

風花「どこ見てんの?」

 

 

水嶋「どっから撃ってきた!?今!?」

 

 

 

風花「あー、遅い遅い」

 

 

 

水嶋「うぐあああああああああああああああああああ」

 

 

 

辻本「なんか、あいつさっきの俺らみたいになってんな」

 

 

石田「食物連鎖ってこういうことなのかな」

 

風花「初心者を煽ってるレベルで満足しているような兵士は戦場で生き残れやしない」

 

 

五十嵐「この子人生何回目?」

 

安央「たぶん7週目くらいか?」

 

水嶋「あああ・・・あああああああああああああああああああああ

   弾が当たらねぇー!!!!」

 

 

水嶋「最後に空爆してやる・・・うううううう」

 

 

しかし、爆撃機のそばには・・地雷があった。

 

 

 

 

 

ボン。

 

 

 

 

 

 

風花「因果応報」

 

 

 

 

 

水嶋「ぐあああああああああああああああああああああ

   ああああああああああああああああああああああ

   ああああああああああああああああああああああ

   ああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

安央「やったああああああああああああああああ!!!」

 

石田「勝ったぞ!!!!!」

 

五十嵐「やったぜ!!!すごいぜ風花ちゃん!!!」

 

風花「これくらい余裕よ」

 

辻本「しかも寝起きでこれだからな・・・その実力は計り知れん」

 

 

 

すると部屋のドアが開いた共に何かだ飛んできた。

 

 

 

 

 

七海「うるせぇんだよ!!!」

 

七海の飛び蹴り。

 

安央「ぐへぁっ!!」

 

こうかはばつぐんのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「あああああああああああああああ・・・ああああああああ」

水嶋「なんでこうなるんあだああああああああああああああああ」

 

 

 

大家「うるさいよ!!!!」

 

 

水嶋「ぐあああああっ!!!」

 

水嶋も大家に飛び蹴りされてた。

 

 

 



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SCENE-21 アレクサンドロス

 

 

永井「ただいまー」

 

永井は部屋に戻る。

 

永井「はぁ・・・疲れたァ」

 

永井「・・・・」

 

 

 

永井はペットを飼っていた。

ハムスターである。

 

 

 

永井「ただいまー、アレクサンドロス」

 

ハムスターの名前はアレクサンドロス。マケドニアの王からとったわけではない。

単に語感が気に入っただけらしい。

 

 

アレク「・・・・へっ」

 

にやけたような面をするアレク。

 

永井「お前は本当にかわいくないよなぁ・・・。

   ハムスターってもっとかわいいと思ってたのに」

 

永井「もっとかわいい顔できないの?」

 

永井が種をあげる。

 

永井「ほら、かわいく食べてみな」

 

アレク「ぺっ」

 

 

 

種を永井の顔に投げつける。

 

 

 

 

 

 

永井「・・・・・・・・」

 

永井「あんたね・・私があんたの飼い主なのよ?

   飼い主に逆らうとどうなるか・・わかってる?」

 

 

アレク「へへへっ」

 

 

 

アレクは中指を立てた感じの素振りをした。

 

 

 

永井「・・・・・・」

 

その時、永井の心の中の何かがはち切れた。

 

 

永井「うあああああああああああ!!

   今日という今日は許さんぞアレクサンドロス!!!」

 

 

アレクはかごから放り出された。

 

 

アレク「へーい」

アレクはマッチョポーズをとった。

 

 

永井「人間様を舐めるなよあああああ」

 

アレク「へいっ」

 

アレクは永井の腕を伝って顔に到達。

 

 

 

 

そして・・・みだれひっかき!!

 

 

永井「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」

 

 

アレク「へへへっへへへ」

 

 

永井はアレクを顔から話すため、つかんでベッドに投げ飛ばした。

 

 

アレク「へーい!!」

 

アレクは落ちていた紙にこう書いた。

 

『昨晩はおたのしみでしたね♪』

 

永井「なっ!!?」

 

 

ハムスターアレク。飼い主のすべてを知っている。

 

 

 

 

永井「お前マジで殺す!!!まじで殺す!!」

 

 

 

永井はアレクを潰そうとベッドにフライングダイビング。

 

 

しかしアレク、賢い。

 

普通にベッドから降りて、逃げる。

 

 

永井「逃がすもんか・・・」

 

永井がアレクを追いかける。

 

 

そして玄関先にまで追い詰めた。

 

 

永井「残念だったわね・・・アレク。あんたの世界はここでおしまいよ」

 

アレク「・・・・・・へっ」

 

アレク、にやけた顔をした。

 

 

アレクは手を上に上げた。

 

永井「無駄な抵抗を・・・あんたは小動物。所詮人間様には勝てないのよ」

 

アレクはメモ帳に書いた。

 

アレク『一人では勝てない。だから仲間と一緒に戦うのさ』

 

永井「仲間?あんたに仲間なんて・・・・」

 

その刹那!!”茶色いあの人間の天敵”たちが永井の足元を囲んだ。

 

 

 

 

 

永井「ひぇっ・・・・・・・・・」

 

 

 

アレク「にぃ!!」

 

アレクは手を振り下した。

 

 

永井「いやあああああああああああああああああああ」

 

永井の体にGが昇ってきた。

 

 

永井「あああああああああ-」ガタンッ

 

 

そして永井は気絶した。

 

 

アレクはまたメモ帳に書く。

 

 

アレク『楽しかったぜ、お嬢ちゃん』

 

 

アレク「へっ」

 

 

アレクは気絶して泡を吹いている永井を背に、かごの中に帰っていった・・・。

 



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SCENE-22 バイトってきついけど

成明「・・・」

 

成明はバイトをしている。スーパーでのバイトだ。

 

しかしこのスーパーいかんせん変な客が多い。

 

 

成明「いらっしゃいませー」

 

おばさん「ふぅ・・・・」

 

成明「(このばばあはいつもこの閉店間際の時間帯にやってきて特売品をかっさらっていく。

まぁ別にそれに関しては俺は何とも思ってない。つかむしろ感謝してる。

でも問題は・・・)」

 

 

 

おばさん「じゃあ、今日もよろしくね!」

 

 

成明「くぅ・・・・ふんおおおおおおおああああああああ」

 

 

大量の買ったものを家まで運ばされることだ。

 

 

成明「(うちにこんなサービスねーからあああああああ)」

 

成明「(最初これを始めたのは腰の悪いおばあさんの時だった。

まぁあれは必要だったからしょうがない。

でもその光景を見たばばあ共が

あたしもあたしもって言ってきやがった。

厚顔無恥かこのクソばばああああああああ。

てめぇはまだ腰フル元気だってあんだろうが!!

しかも店長は店を出たこの時間分の給料を出してくれねーし!!

このばばあの家はスーパーから結構遠いし!!!!

はあああああああああやってらんねええええええええ)」

 

 

おばさん「じゃ、またよろしくね」

 

成明「・・・それじゃあ」

 

 

 

 

成明、全力疾走。

 

 

 

成明「くあああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

店に着いた。

 

 

店長「お、おかえり。じゃあ掃除と、品下げよろしく」

 

成明「(こいつは店長。一か月に2回ほどしか店に来ない。

家でゲームをやっているらしい。

不労所得と化しているこの状況を労基に訴えようか

店員みんなで相談中だ。正直この店といっしょに潰したい)」

 

 

篠田「あぁ・・お疲れ」

 

 

成明「お疲れ」

 

 

成明「(この店で唯一の女性バイト、篠田さん。下の名前は知らない。

制服が安央の高校と同じだから彩珠東高校の人なんだろう。

面識があるかは知らん。興味ない)」

 

篠田「あーっ・・・あぁ・・・いくら伸びしても伸びた気がしねぇなぁ・・・・」

 

成明「(この人はそれなりに仕事をしている方だ。

しかし体型が少しポチャっとしているところもあり動きが遅い。

まぁ別にそれにどうこう言うつもりはない)」

 

 

成明「あの、この品物あっちに持ってってくれる?」

 

篠田「お疲れっしたー」

 

成明「(無視するのだけはやめてええええええ)」

 

成明「(今完全に目があってたのに!?

つかまだ仕事終わってねーのに帰っちゃうの!?)」

 

 

成明「(あの人は俺のことがマジで嫌いなのか、それとも見えていないのか・・

真相は定かではない)」

 

彰「なぁ・・篠田さんってさ、結構いい身体してるよな?」

 

成明「(こいつは西野 彰。吉森の友達らしい。

一番働いてくれて一番有能なバイトだ。店のみんなから厚い信頼を得ている。

    実際いい奴だと思う)」

 

彰「なんかさー、今日寒くね?」

 

成明「(しかしずっと話掛けてくるのはやめてほしい。

    ありがたいとは思うよ?でもずっとはきついんだよ。

    それに話の内容の中身がすごくどうでもいい。

    はっきり言っちゃうよ?面白くないのよ。

    なに返していいのかわかんないのよ。

    無視されんのも嫌だけど、ずっと話掛けられるのも嫌だ!)」

 

 

彰「ツベルクリン反応って知ってる?」

 

 

 

成明「(知ってるけどもっとましな話題あんだろ!)」

 

 

バイトリーダー「うし!終わったな!じゃあ店閉めるよ」

 

成明「はい」

 

 

バイトリーダー「店長今日珍しく来たけど、お腹やべぇな。

        あれでトランポリンできるだろマジで」

 

 

成明「(この人はバイトリーダーの田中さん。この店で一番の聖人。

    まともな人はこの人しかいない。

    大学に行っているらしいがサボりまくりでバイトに来ている。

    奨学金を払うためらしい。しかし俺には本末転倒にも思える)」

 

 

 

バイトリーダー「あ、なぁ豊福君?明日学校あるんだっけ?」

 

成明「はい」

 

バイトリーダー「そっかぁ・・・じゃあもう帰った方がいいかな?

        今日頑張ってたからパフェおごってあげよう・・

成明「行きます」

 

 

 

 

 

バイトリーダー「そっか!じゃあ下痢になるまでパフェ食おうぜ!!」

 

 

成明「(これがあるからバイトはやめらんない)」

 



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SCENE-23  七十転八百倒

水嶋「はい、さようならー」

 

水嶋「・・・・・・・・」

 

 

 

そして職員室に戻る。

 

 

 

 

水嶋「ふぅ・・・・」

 

 

自分のデスクに腰を掛ける。

 

水嶋「・・・・・」

 

 

 

高原「水嶋先生?」

 

水嶋「なんですか?」

 

 

ちょっと鋭い目でにらまれる。

 

 

高原「あ・・・えっと・・コーヒー・・飲みますか?」

 

水嶋「結構です」

 

高原「あ・・そうですか・・・・」

 

 

 

※高原 清隆は新人教師。体育科の先生。

 

 

 

高原「今川先生・・なんで水嶋先生って・・

   あんなに怖いんですか?男性不信なんですか?」

 

 

今川(女性の年配の先生)「いや、そういうわけでもないと思うけど・・・。

   なんか、ここに来た時からあんまり他の先生と話したりしないのよ・・・。

   仕事とか業務の話はするんだけどね・・プライベートは本当に謎だわ」

 

高原「そうなんですか・・・・。ちなみに水嶋先生おいくつか知ってますか?」

 

今川「女にそういうこと聞いちゃダメ」

 

高原「すみません」

 

 

 

水嶋「(あぁ・・・早く帰って人撃ちてぇ・・・。

    ああもうなんか人の頭の上に照準が見える・・)」

 

 

水嶋「・・・・・・・・・」

 

 

天野「水嶋先生、今日は金曜日ですし!みんなでどっか呑みに・・・」

 

 

水嶋「結構です。お気遣いありがとうございます」

 

 

天野「あぁ・・・・そうなっちゃう?」

 

 

※天野はおじさんの先生。日本史の先生。

ちなみに安央のクラスの副担である。

 

 

 

水嶋「よっしゃ!仕事終わり!じゃ、帰ります!!お疲れ様でした!!!」

 

 

 

 

颯爽と帰宅する。

 

 

高原「ターミネーターみたいな走り方するんだなぁ・・・・」

 

 

水嶋は自転車通勤である。

 

 

 

 

水嶋「さっさと帰るぞ!!」

 

 

 

自転車に乗った瞬間。

 

 

 

 

 

 

ぷしゅー・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「・・・嘘だろおおおお!!」

 

水嶋「な・・パンク・・・パンクしやがった・・・」

 

水嶋「ああ・・自転車屋は今から行ったら帰宅が11時・・・夕飯、お風呂を入れたら

   ゲーム開始時刻は0時を過ぎる!!それはヤバイ!!

   さすがに睡眠時間を削るのはダメだ!」

 

 

 

 

水嶋、午後10時03分、決断の時。

 

 

 

 

 

水嶋「走って帰る!!!」

 

 

 

 

 

水嶋「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 

 

水嶋「動け!!動け私の足いいいいいいい!!」

 

 

 

 

水嶋は坂道も、下り坂もすべて走る・・・。

 

 

 

 

しかし、下り坂ではスピードを落とすべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「きゃっ」

 

 

水嶋は足を滑らせてしまった。

 

 

 

水嶋「うああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

ドンがらがっしゃん!!!!・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

水嶋「う・・・・あ・・・腕折れたかも・・・

   つか・・たて・・・・ない・・」

 

 

 

※高低差10m程の下り坂でこけました。

 

 

 

 

 

水嶋「・・・誰か・・リトライ・・押して・・・・」ガクッ

 

 

 

 

 

 

-翌日

 

 

 

安央「おはようございうぇえええええ!?」

 

 

水嶋「おはよう・・・徳河」

 

 

安央「え・・何があったんすか!?フルアーマーじゃないっすか!?」

 

水嶋は全身プロテクターのようなアーマーのような

包帯で巻かれた矯正器具を付けていた。

 

 

水嶋「ちょっとな・・・こけただけ」

 

 

安央「こけてそんなんなりますか!?

 

 

 

水嶋「とにかく・・これにはあんまり触れないでね」

 

 

 

安央「いや、みんな触れるでしょ」

 

 

水嶋「あ、そういう意味じゃなくて、物理的に触れるな。

   痛いから」

 

 

安央「先生なんで休まなかったんですか?」

 

 

 

 

 

水嶋「・・・教師だから!!」

 

 

 

水嶋はそういって保健室に入っていった。

 

 

 

水嶋「いてて・・・ダメだ・・立ってられない・・」

 

 

 

 

安央「身体は大事にした方がいいぜ・・・先生。嫁入り前なんだから・・・」



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SCENE-24 姉弟

瑞樹「ただいまー」

 

吉森「御帰り」

 

瑞樹「あんたまだ風呂は入ってないの?」

 

吉森「うーん」

 

吉森はリビングのソファに寝っ転がってスマホをポチポチ。

 

瑞樹「・・・じゃ先に入るよ」

 

 

吉森「ああ・・・」

 

 

瑞樹「・・・・・」

 

瑞樹は警戒していた。

 

吉森「・・・・・いったな」

 

 

 

吉森は計画していた。

 

 

 

そう、姉のパンツを盗む計画を!!!!

 

 

 

吉森「ふん・・・」

 

吉森は風呂場に静かーに近付いていく。

 

吉森「・・・・・」

 

すり足で移動する。

 

そして風呂場に到着。

 

風呂場の扉を開ける。それもそーっと・・・そーっと・・・・。

 

吉森「・・・・・・」

 

 

そして洗面台のある部屋に到達。

 

吉森「今日こそいただくぜ・・・」

 

姉の脱いだ服の中からパンツを探し出す・・・・・・。

 

 

吉森「ん・・・これか?妙に暖かいな・・・」

 

吉森「ふん!!今日のおかずは!!君に決めた!!!!」

 

吉森が服の塊から取り出したのは使用済みのナプキンだった。

 

それもちみどろの・・・・。

 

吉森「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

瑞樹「引っかかったわねーーーーー!!!」

 

するとなぜか洗濯機の中から姉登場。

 

吉森「何!?姉ちゃんそこにいたのかああああ?!」

 

瑞樹「自分の弟がこんなことをしているなんてすごく悲しいわ!

 

そんなに女に飢えてるのかお前は!?それとも理性ってもんがないのかお前は!?」

 

吉森「どっちもさ!!女のあんたには一生わかるわけないさ!!」

 

瑞樹「知りたくもないわ!!」

 

吉森「トラップ仕掛けるにしてもこれはひどすぎるだろ!!」

 

瑞樹「因果応報だ!!人のパンツを盗もうとした報いだ」

 

吉森「未遂じゃねーかこれ!!」

 

瑞樹「うるさい!!!お前の変態さにはもううんざりなのだ!!」

 

吉森「あんたも人のこと言えねーだろうが!!」

 

瑞樹「は?あたし何かしましたか?あんたのパンツなんてとったことありませんけど?」

 

吉森「俺は知ってるんだぜ・・・。あんたが隣に住んでるイケメンの佐藤さんの靴下とパンツ盗んでるのをな」

 

瑞樹「!!!?」

 

吉森「ここに証拠写真もある!!!」

 

 

瑞樹「な!?いつの間に・・・」

 

吉森「血は争えないな!!所詮俺とあんたは同じ血が流れてるんだよ!!」

 

瑞樹「っく・・・・」

 

吉森「まぁ、今回は俺の負けってことにしておくさ・・・」

 

瑞樹「それは・・・どうかな?」

 

吉森「は?どういう意味だよ」

 

瑞樹「あんた今昨日盗んだ私のパンツ履いてるつもりでしょ?」

 

吉森「な・・・なんで知ってるんだよ・・」

 

瑞樹「そのパンツ私のじゃなくて・・・・ママのよ」

 

 

 

 

吉森の顔から一気に血の気が引いた。

 

 

 

 

吉森「うええええああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

瑞樹「はははははは!!!ざまぁないわね」

 

吉森「あんたやっていいこととやっちゃいけないことがあるぞ!!

あああああああああああ」

 

 

瑞樹「ははははははははは」

 

吉森「そんなああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

吉森は基本的にかわいくてきれいな女の子が好きです。

 

 

 

しかし・・この世で唯一嫌いな女性がいます。

 

 

 

ママです。

 

 

 

 

 

 

光林「・・・またやってるよ、あの2人」

 

 

 



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