まじっく★すぱーく (草賀魔裟斗)
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♠A

昔書いていた小説です

読者様 てかまた新規かてめぇも飽きねぇな

全く持ってそうなんですけどこれに関してはどうしても文に起こし、投稿したかったのでしました


異能力者を知っているだろうか

曰く魔王を退ける勇者

曰く疫病から人々を救う救世主

曰く人々を魑魅魍魎から守る退魔師

 

物語での彼らは力強く

または儚く、美しく書かれる場合が多い

だが人々の自由を脅かす魔王も大規模な疫病の流行も魑魅魍魎もいない現代においては彼らの役割は…

化け物だ

異端者…人ならざる者…と呼ばれ

火に炙られ首を切られ命を落とす

わかりやすい例が魔女狩りだ

魔女という異端にして異様な彼女らはおろか

魔女と思われるというだけで殺される少女もいた

人間という生き物は違いを恐れ

"違い"を嫌い、"違い"を受け入れない

そして"違い"を徹底的に排除しようとする

それでも全員の魔女が世界に害をなすわけではないだろう

人の心を持った魔女だっていたはずだ

魔女の魔は魔法の魔だ

けして悪魔の魔ではない

それでも人間は魔法を科学で否定し

魔女の存在を"違い"で否定した

 

話を戻そう…

現代において異能力者は…

化け物は

牙を剥かず、息を潜め、世界に溶け込み普通に暮らしているかもしれない

貴方はそんな彼…または彼女らを

"違い"を盾に否定しますか…?

 

真っ暗な場所に少女の叫び声が響く

「違う…違うの!私は…人間なの…」

黒い人影が少女の周りに近づいてくる

「化け物なんかじゃないよ…なんで…そんなこというの…?」

少女は黒い人影に牢に閉じ込められた

「出して…出して…」

少女の声が弱々しくなっていく…

 

「出して!」

夢から覚め朝日に目を細める

「…夢…か…」

女性はそう呟くと立ち上がった

「霊夢」

ドアが開く

「どうしたの?妖夢、覗き?」

「魘されていたようだったから…気になった…どうした?」

霊夢は俯く

「昔の夢をね」

「…そうか…仕事だ、支度しろ」

霊夢の顔に笑顔が戻る

「わかりましたよー、全く人使いが荒いなー」

妖夢は安堵したようにため息をついた

「あぁ…それはお偉いさんに言え…私は先に行っておく」

妖夢は部屋から出ていった

「…私は…私だから」

霊夢はさっさと身支度を済ませ部屋を出た

 

「チルノは起きたの?」

霊夢は職場の階段を降りながら妖夢に問いかけた

「びくともしない…切りつけそうになった」

「ありゃりゃ…寝坊助さんね」

霊夢が少し大人びた笑顔を妖夢に見せた

「あれは寝坊助なんて生易しいもんじゃない、三年寝太郎だ、あれが隊長だと思うと頭が痛くなる」

妖夢が頭を抱える

「うふふ…良いじゃない、平和なのはいいことよ」

「平和なのか…?」

そんなことを言っているとチルノの部屋に着いた

すぐに霊夢がチルノの部屋に入った

「チルノー」

「ふにゅ…なにー」

チルノは寝癖がまるで実験に失敗した博士のように逆立っていた

「ふふ…お寝坊隊長を起こしに来たのよ」

相変わらず、どこか大人びた笑顔をし続ける霊夢

「今、何時…?」

「16:00よ」

「ふえ!?」

チルノが慌てて飛び起きた

「うふふ…可愛い」

「ご、ごめん…あたい…」

「大丈夫よ、まだ朝の10:00だから」

チルノが胸を撫で下ろす

「でもお寝坊助隊長さんを起こす事はできたわよ」

「流石、霊夢だ…助かる」

妖夢がゆっくり入ってきた

「で妖夢、寝坊助隊長さんと私に仕事の説明をしてちょうだい」

「うむ…異能力者の解放戦線って知ってるか?」

霊夢の顔から笑顔が消えた

「…解放軍がどうしたの?妖夢」

「なぁに…それに感化された一部の異能力者が襲撃してるから止めてくれとのことだ…今日の12:09より国会議事堂を襲撃するんだとよ…あー過激派人権保証団体だっけか…過激な行動をとる輩を拘束すればいいだとよ」

霊夢は深く深呼吸した

そのあとはいつものニコニコした霊夢に戻る

「了解…」

「今回は力仕事だ…私と霊夢が行くからチルノは…」

「留守番?」

チルノの顔に行きたいとかいてある

霊夢はクスクスと笑った

「正直ね…顔に書いてあるわよ、あたいも連れてけ!ってね」

「なっ!よ、妖夢!あたいの顔に落書きしたな!?」

「してねぇよ!するわけないだろ!」

「だって霊夢が…」

「そう言う慣用句なんだ」

「か、かんようく?また、意味の分からない事ばっか言って…妖夢!あたいの事バカにしてるのか!?」

「バカにはしてないがバカだろ」

「なにをー!」

チルノが妖夢に飛び付いた

「イテテテ!やめろ!引っ張るな!」

二人はもみ合いになった

そんな二人を霊夢はニコニコと笑ったまま見詰めていた

その様子を妖夢もみかえす

霊夢は自分の過去を話したがらない

けど、たまに霊夢の大人びた笑顔には

どこか闇を帯びていた

「ところで行かないの?別にいいんじゃない?拘束ならチルノの能力も使えるしさ…それに一人は可哀想だよ」

霊夢の口癖である

一人は可哀想…それが彼女の過去の象徴なのかもしれない

それにこれを言われると妖夢は反対できない

「…わかった、隊長不在もおかしいもんな…一緒に行こう」

「わーい、やったー!」

霊夢はニコニコしたままチルノに言った

「良かったね、チルノ」

「うん!」

妖夢は肩を竦めた

「それじゃ行こう」

 

国会議事堂前

警備員と同流した

二人の警備員が立っていた

若手の警備員が問いかけた

「…あなた方は」

霊夢が応えた

「国家秘密治安維持警察隊です、とある国家からの要請で貴方たちと合流します」

「ありがたい…我々も暴力は極力避けたいのですよ…では配置の確認を…」

「私たちは国会議事堂前を…あなた方は裏をお願いしてもよろしいでしょうか…頭数から見ても、私たちがこっちを担当したほうがいいです」

若手の警備員が目を鋭くする

「我々の腕が信用できない…と?」

「そういう事ではありませんが…」

ベテランの方の警備員が若手の警備員を静止する

「ここはお任せします」

「先輩!」

「…」

霊夢は少し複雑そうな表情になった

「すみま…」

「貴方が謝ることではありません…お互い、守るべきものの為に精一杯頑張りましょうじゃないですか」

ベテランの警備員は若手を連れて裏側に回り込んでいった

「なんで異能力者が来るから…と言わないんだ?」

妖夢が問いかけた

霊夢は首を横に振った

「分からない…」

「…」

霊夢は真っ直ぐ霊夢を見つめる妖夢から目をそらした

「信じてくれないよ…だれも」

「…かもな」

霊夢が深呼吸をした

「…頑張ろう」

奥から数十人の人間が見えた

「…やりにくいな」

「思ってる事は皆同じさ…拘束でいい…そう思えば良心的だろ」

「…仰るとーりです」

すると銃声が響く

「この政府の犬がぁぁぁぁ!」

チルノの頬を掠めた

「チルノ!大丈夫!?」

「うん…もうお昼寝もできないな…」

「銃持ちがいるな…異能力者の集まりではないのか?」

チルノの後ろの国会議事堂の壁に練り込んだ銃弾は生き物のように動き始める

霊夢を狙って銃弾は飛んでいく

がまたもや霊夢には当たらず掠めるだけ

「!?」

「異能力者はいるな」

「だね…」

「カトンボは落としてくれ」

「わかった」

銃弾は今度は妖夢に向かい飛んでいく

妖夢の直撃ゾーンだったが

霊夢が銃弾を受け止める

通常であれば手を貫通する所だが血液の一滴も落ちる事はなかった

襲撃部隊もざわめく

「あら皆さんお探しものですか?…あら落とし物でしたら私が預かってますよ」

霊夢は手に落ちた弾を襲撃部隊にみせる

異能力者が動かさそうとしたのだろうピクピクと動いている

「…あらせっかちさんは嫌われますよ」

霊夢が上空に弾幕を投げる

「チェーンダンス!」

弾幕は鎖状に変化する

また、質量保存の法則を無視し鎖は伸びて銃を撃った異能力者を捕らえる

「…異能力者一人でよく、異能力者の人権保証を認めさせる団体を名乗れたものだ…」

襲撃部隊は一斉に射撃してきた

「チルノ」

「ほいほーい」

チルノが手をつきだすと巨大な氷の分厚い壁ができ弾丸を通さなくなる

「ヒィ…彼奴ら…」

「俺達の手に追えないぞ」

「仕方ない、撤退するぞ!」

襲撃部隊は一目散に逃げて行った

「…生粋のバカだな…さてと」

妖夢は異能力者の鎖を指で絶つ

「あんたも不運だな…あのバカ達に雇われたのも…私らが相手だったのも」

「…あ、あんたらは一体…」

「私らか?…国家秘密治安維持警察隊…spadeと呼べば分かるか?」

異能力者は首を横に振った

「?…私達のことも知らないなんて…今回の事は魔が差しただけ?」

男は頷いた

「どうする?」

「拷問すれば何か吐くかも」

チルノが手をつきだす

「ヒィ」

「あのな…」

「チルノ、ふざけてもそんな事言わないで」

霊夢の真面目なトーンでの言葉に空気が凍りつく

「ご…ごめんなさい」

「…あ、いや…その…私こそ…ごめんなさい…」

「ともかく、拷問はなしだ…それに」

男が泡を吹いて倒れている

「チルノの脅しで伸びた…こんなやつが解放軍なわけねぇだろ…適当に放っとこうぜ」

「そうね」

「ヘタレなんだね」

「チルノ、もうちょいオブラートに包んでだね…」

「うふふ…」

霊夢が何かに気づいたような仕草を見せるとチルノ達を見た

「あ、ちょっと用事があるから…行ってくるね」

「あぁ」

霊夢だけが離脱する

 

霊夢は電車に揺られる

「…」

となりに金髪の女性が座った

「…霊夢」

「何?」

「…怪盗手伝ってくんねぇか?」

「私が?」

金髪の女性が手を合わせる

「なぁー頼むよー」

「魔理沙、あのね、私…」

「無理は承知さ…お願いだぜ…」

魔理沙と霊夢は随分長い付き合いの友人だ

「…うん…」

「ありがとよ!大好きだぜ!霊夢!」

「うふふ、こちらこそ」

「ありがとよ!んじゃな!」

魔理沙は途中下車していった

「まぁ…いいわ…」

 

霊夢は山奥に建つ孤児院を訪れた

「あー!霊夢のおばさんだー!」

「こら!霊夢さんに失礼でしょ!」

霊夢は相変わらず大人びた笑顔を向ける

笑顔の先には孤児院を経営している緑色の髪の女性が苦笑いを浮かべていた

「もう、おばさんで良いよ、元気で良いじゃない」

「あはは…霊夢さん…お帰りなさい」

 

女性は霊夢を自室に招いた

「いつもありがとうございます」

「良いのよ…早苗」

早苗はまた、奥ゆかしい笑顔を霊夢に向けた

「…早苗、ここにくる途中に魔理沙に会ったわ…」

「相変わらず、怪盗してるんですか?」

霊夢は頷いた

「魔理沙のたのみは…断れなくてね」

「いいんですか?」

「なんとかする」

早苗が少し肩を竦めた

「ダメですよ、霊夢さんは魔理沙さんとクラウドさんに甘いんですよ、昔からたまにはガツンと言わなきゃ」

「あはは…でもいつか…四人が揃える日が来ると良いね」

「…そうですね…」

暫く沈黙が二人を包んだ

「そういえば、霊夢さんは最近、なに食べているんですか?」

「最近…冷凍とかで済ませてるかな…」

早苗が身を乗り出す

「ダメですよ!ちゃんと野菜を取らないと!三食ちゃんと食べてますよね?」

霊夢が目をそらした

「霊夢さん?」

「朝…取れて無い日が多い…かな」

「ダメじゃないですか!今度、ランチの時に私の所に来て下さい!」

「早苗の手料理食べれるの!?」

霊夢の表情が輝く

予想外の反応に早苗も驚く

「は、はい」

「うわぁ…楽しみだな」

霊夢の笑顔が一変、子供らしい無邪気な笑顔になった

「…霊夢さんは変わりませんね…」

「…私に言わせてみれば皆、昔のままだよ…時間だけが…過ぎていく」

「…そうですね」

時計の針がチクチクと時を刻む

それは止める事のできない波

二人はその波を感じながら感傷に浸っていた




また、用語集を作ろうと思います
原作設定は完全に無視ですが
これだけはどうしても投稿したかったんです…
なんでかは分かりませんが

原文からこの小説の霊夢は悟りでも開いてんのか
と思うくらい聖人です
それも彼女の過去からくるものなんですが…
それに関してはおいおい…ですね


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♠2

イライラしたらとにかく霊夢と誰かがイチャイチャするストーリーを書きたくなりました…
今回、クラウドと霊夢はバカップルです
そりゃ…もうね…寂しくなるくらい(´・ω・`)


妖夢が事務所でイライラしながら新聞を読んでいた

見出しに大きく"ハート大怪盗団、またも不可能犯罪を成功"と書かれていた

霊夢がその様子を見てため息をつく

「…」

「妖夢?どうしたの?怖い顔して…」

「どうしたもこうしたも、またこいつはやりがった!いつだってこいつはそうだ!私はなにもできない!」

「まぁまぁ…意外に怪盗も怪盗なりに悩んでるかもよ?」

霊夢がへらへらと笑う

「まさか…良いか?霊夢、人の物を盗むやつにな…ろくなやつがいない!」

「豪語したね…まぁいいよ、妖夢の考えを否定する訳ではないし…」

霊夢がニコッと笑った

「でも私はハート怪盗団は悪いやつでは無いと思うなぁ」

「どうして!?」

霊夢が資料の束を投げた

「私も昔、ハート怪盗団を探ってた時期があってね…それでターゲットを洗いざらい調べてみたんだ、真っ黒だよ…闇金のリーダー、覚醒剤の密輸業者の社長…今回のは金に汚い国家権力の犬…どう?」

妖夢が資料に一通り目を遠しため息をつく

「…たしかに…しかし…正義では無い…"盗む"は犯罪で、彼らは一般人だ」

霊夢がため息をついた

「断罪とか、正義とか…多分、そんな難しいこと、考えてないよ…純粋なんだ、誰よりも…そして楽しんでるんだと思う…盗みを」

「…」

「そして、誰よりもエンタテイナーだよ…きっとね」

妖夢が霊夢に疑いの目を向ける

「随分、ハート怪盗団を庇うんだな」「…心臓、ダイアモンド、幸福と死…すべては千切れてまた…繋がる」

霊夢がボソッと言った

妖夢は上手く聞き取れず首をかしげる

「なんでもないよ、ただ本当に悪いやつに思えないだけ…」

「そうか…ま、怪盗なんざただの目立ちたがりやか、純粋なバカかどっちかだろうぜ…」

妖夢が立ち上がりそっぽを向いて歩いて行った

「…誤魔化すのも大変ね…」

霊夢は、はぁとため息をついた

そのあと、霊夢は妖夢の残した新聞を手に取る

ハート怪盗団には目もくれず二面目をみた

「…」

霊夢は鋭い視線をその紙面に当てた

記事は中東で行われている内部紛争のことだ

そっと新聞を置くと霊夢は虚空を見上げた

「I can not do anything...I'm just looking ...Why... Why…」

その時、事務所の呼び鈴が鳴らされた

中にいる全員がびくっとはねあがる

「…お客さん?」

チルノが起きてきた

「みたいだね…数は50」

「だな…ドア越しにも分かる…かなりの手練れ集団だ…異能力で一気に攻めるぞ」

妖夢の作戦に了承したように二人は頷く

こういった襲撃はよくあること

裏社会においてspadeのことを知らない物は恐らくいない

邪魔物は早めに消しておきたいのが心情だろう

よく異能力集団や反社会的勢力の軍団に襲われる

その度に彼女たちは無傷で撃退している

妖夢がドアをあけた

外にいたのは外国の兵士だった

トランプのダイアを象ったマークの鎧を着ている

「…ッ!」

霊夢が50人を掻き分けて進む

奥にいるリーダー各の青年に蹴りをいれる

「リーダー!」

「貴様!リーダーに何をする!?」

兵士は霊夢に一気に銃口を向けた

「霊夢!?チルノ援護しろ!」

「りょーかい!」

チルノは兵士の足元を凍らせ身動きを取れなくする

妖夢は人差し指と中指を揃え銃に触れる

すると銃は真っ二つになり銃口だった部分が路面に乾いた音を鳴らす

そして両者ピリピリムードになっていった

「バカ!」

沈黙を破ったのは霊夢だった

「今まで何処にいたのよ…中東の戦争に言ったのかと思ったじゃない…バカ!バカクラウド!」

霊夢らしからぬ子供じみた罵声と感情的な叫び声に妖夢とチルノは言葉を失う

「すまない…暫く、世界を廻っていたんだ…気づけば1年か…早いもんだ」

「人の心配も知らないで~ッ!」

「分かってるさ…霊夢がいる限り…俺は死なないよ」

霊夢の目に涙が溜まる

「クラ」

霊夢がクラウドの胸に踞る

「早苗や魔理沙は元気か?」

「二人共、相変わらずだよ」

「そうか…」

クラウドと霊夢が立ち上がる

クラウドは妖夢とチルノに近づいてきた

「俺の部下が迷惑を掛けたな…すまない…何分、血の気の多い連中ばかりでな…俺はクラウド・ストライフ…霊夢からはクラと呼ばれている…こんなナリでも一応、最大の私立傭兵集団、ダイアモンド・クロウスのリーダーだ」

ダイアモンド・クロウスは世界最大の私立傭兵集団であり、傭兵や派遣兵商売市場をほぼ牛耳っていると言っても過言ではない

作戦の成功率は90%越えであり

スニーキングから敵の殲滅、駆逐まで、幅広い作戦に対応できる兵士を派遣してくれる

その分、値は張るがダイアモンド・クロウスを見るだけで逃げ出す兵士も少なくない

それほどの傭兵集団だ

彼らのリーダーであるクラウド・ストライフは元ならず者の隊員を統率している

隊員は全員、クラウドを慕っている

「ダイアモンド・クロウス…そんなことのお偉いさんが何の用だよ?」

妖夢がやや怯え気味にきいた

「依頼半分、霊夢に会いたかった半分だ…依頼については直ぐに話そう…」

クラウドは振り返った

「一班は西!二班は北!三班は俺に着いてこい!きっちり見張れ!鼠一匹入れるな!」

はっ!と大勢の声がすると兵士が散らばっていった

「さぁ…入ろうか」

 

ソファーと事務机を挟んで四人は向かい合っていた

「で、依頼の件だが…まさか、国がらみのことじゃねぇだろうな?」

「そこは安心してもらいたい、我々の秘密保持は完璧だ、国がらみのことなら俺らだけでなんとかする、そして形跡も残さない」

クラウドの右手はずっと霊夢の頭を撫でていた

霊夢はまるで尻尾をふる犬のように表情を緩める

チルノと妖夢はペースを狂わされる

「…具体的な内容を教えてくれ」

「あぁ…俺たちがイギリスのとあるマフィアの運送護衛任務をしていたとき…赤ずくめの集団に取り囲まれたんだ…雑兵は簡単に無力化できたが…リーダー恪の奴ら二人は異能力者だった…仲間が四人殺られた…悔しい限りだ…その集団を見つけ出し弔合戦がしたい…そのために力を貸してほしいんだ」

霊夢がピクリと反応する

「大体は理解した…で、その異能力者はどんな異能力なんだ?」

「片方はパイロキネシス…つまり自然発火だ」

「なるほどな…明瞭かつ、分かりやすい能力だ…助かる…で?もう一つは?」

クラウドが暗い視線を落とす

「…物質を鎖に変化する能力だ」

「!?」

妖夢とチルノが席を立つ

「バカな!同じ異能力があるだと!?そんなこと…」

「あるわけない…な普通は」

「そうだよ!あたいでだって分かるもん!」

「…」

霊夢がぼそりと呟いた

「…全て私の子供計画…」

「なにいってんの!?霊夢!あの計画は…もう」

チルノがあからさまに動揺した

妖夢は冷静に聞き返す

「なんだ?」

「…もしその計画で、そのドッペルゲンガーが産まれたのだとしたら…その時、話すよ」

霊夢が立ち上がる

「クラウド、話があるの…来てくれる?」

「あぁ…」

クラウドと霊夢が部屋の外へ出て行った

「全て私の子供計画…」

妖夢が下を俯く

「なぁチルノ…お前は…その計画の事を知ってるのか?」

「…うん…」

「言えないんだな…?」

チルノは力無く頷いた

「…異能力者が発見されて100年…今まで、全く同じ異能力者は居なかった」

「うん」

「異能力が一緒ということは脳細胞の構造が殆んど一緒ということだ…そんなことは…」

「ごめん…あたいには…何も言えない」

妖夢は短くそうかと言うと沈黙が産まれた

 

霊夢の自室に二人の姿があった

「…リリーは…なんて?」

「…さぁな…まぁお前以外を娘と呼ぶわけ無いだろ」

霊夢がうつむいた

「そうだね」

「…彼らは満足に死んでいった…そんな奴らの墓を掘り起こすようなことは俺がさせない…」

クラウドは暗い視線を落とす

「…ありがとう…クラは…変わらないな」

「変わったさ…俺もお前も皆も…」

「そうなのかな…私は変わらないよ…少なくともね…」

霊夢がうつむいた

「そうか…」

クラウドは 霊夢を抱き寄せた

「クラ…」

「でもな…そんな悲しそうな顔をしないでくれ…お前の悲しみは…俺の悲しみでもある…こうすれば…薄れるか?」

霊夢は顔を紅葉させニコリと笑った

クラウドはそれをみてほっと微笑んだ

「…ごめんね…心配かけて」

「大丈夫だ…お前を心配するのは慣れてる」

「もう…バカ…お帰り…」

「ただいま…」

沈黙が流れた

その沈黙はピリピリとはりつめた空気ではなく

まるで見守るようなまたは包み込むような静かな空気であった

 

「…」

「…」

居ても立っても居られずに覗き見にきた二人は後悔していた

「まさか…クラウドと霊夢が付き合っているとは」

「え?誰でも分かるよ?」

「え?」

妖夢がきょとんとチルノを見た

「妖夢って鈍いって言われない?」

「にぶっ!………言われる」

「…言われてるんだ…がんばれよーむ」

「チルノに慰められた…ムカつく…まぁこれ以上の覗きは野暮ってもんだな」

チルノと妖夢がドアから離れた

「で、チルノはどう思う?今回の件」

「…あたいは…あの件の確認がしたい…行こうか」

妖夢とチルノがにやりと笑った

「了解した…リーダーさん」




今回は用語を多めに入れてみました
詰め込み過ぎたかなと後悔なうです
用語集も平行して作ってたので投稿はかなり遅れました
用語集は………
データを保存していなくて…亡きデータになってしまいました
のでもう少しさきになりそうです


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♥A

今回の話は♠Aと♠2の間です
分かりにくい書き方で申し訳ありません
♠は主にspadeを軸に話を書きますが
♥はハート怪盗団を中心に書いていきます


世の中にはHEROと呼ばれる人々が少なからずいる

それに憧れる人も多い

そして彼女もまた、HEROに憧れる少女である

 

先日の23:50

ビルの周りを警察が包囲していた

ここの警察は我々の知る警察ではない

異能力者の逮捕または射殺…

後者のほうが圧倒的に多いが

それを目的とした機関であり

他国の軍にも勝るとも劣らない力を有している

エリート集団だ

しかし非異能力者が圧倒的に多く

殉職者が多いのも実情である

しかし、その脅威の軍事力と強行手段も辞さない冷徹さから

マッドポリス…MPの略で呼ばれる場合が多い

そんなMPの隊員の視線がビルの屋上に向けられる

そこにいたのは四人の少女だ

そのうちの一人が古びた本を手にしていた

MPの一人が叫ぶ

「ハート怪盗団だ!一斉に撃て!」

ハート怪盗団も説明しなければなるまい

彼女たちはハート怪盗団を名乗り

汚職を行っている政治家等の書斎から古い小説を盗むという奇っ怪な怪盗団である

「ほら霊夢、防御してくれ」

霊夢はハート怪盗団にいるときは素顔が表に出るのを防ぐため狐の仮面で素顔を隠しているので魔理沙は霊夢に小声で告げた

「ったく…すぐこうなる」

霊夢は鎖に変化する能力を応用し

弾丸の速度を殺した

原理は弾丸を鎖に一時期に変化させ

進行方向と反対に伸ばす

弾丸は目視では伸びている風に見えるが実際に伸びているわけではなく

弾丸を鎖型にするそして質量のある残像が重ならせ鎖状にしている

例えるなら鎖の存在をコピー&ペーストしているのだ

そのため、弾丸自体の質量とは別のまた大きな質量を持ったものが逆方向へと強大な力で弾丸を引っ張るため勢いが消える

あとは鎖をもう一度、弾丸に戻し

キャッチする

その際、質量のある残像は消える

驚くのはそれを一瞬にしかも複数個、こなしてしまうことだ

霊夢を初めspadeの面々は異能力者の中でも指折りの精密性を誇るだろう

「え…」

MPもさすがに狐に摘ままれたような顔をして呆然と立ち尽くした

「んじゃな、MPの諸君、お勤めご苦労様であります!」

そういうと魔理沙達の周りを光が包んだ

刹那の閃光に皆、目を閉じる

次の瞬間には魔理沙達の姿は何処にもなかった

 

「いやーいい仕事したなーまさか、赤外線センサーがあんなに張り巡らしていたとはなー」

都内某所

魔理沙達三人はそこにいた

「仮面の子はどうしたの?」

紫色の気弱そうな少女が魔理沙に問いかけた

「いつもどーりさ、素顔を見られないように仮面取ってもいい場所に飛ばした」

「本当便利よね、あんたのピカピカ能力」

金髪の少女が嫌みげにいった

「そりゃねーだろアリスー…ピカピカ能力て…ま、便利なのは認めるぜ、凡庸性の高さが売りだからな」

「凡庸性の高さなら…鎖の子のほうが高いと思う…あの鎖で縛るだけでなくて貫く、銃弾の相殺、金庫、精密機械の破壊に鍵の解除…なんでもできるわよ」

魔理沙が苦笑いをした

「パチェ…あいつに比べちゃダメだぜ…あいつは私の知る異能力者の中でも指折りに強い奴だ…お前らも気を付けろよ?あいつがまじになったらここにいる全員、瞬きする間もなく死ぬぜ」

パチェとこパチュリー・ノーレッジが反応した

「へえ…そんなに強いんだ」

「異能力の鉄則よ…なんでもなさそうな能力ほど、強いの」

アリスが肩を竦めた

魔理沙は何かに気づいたように二人を止めた

「そこまで殺気が漏れるんだったら…わざわざ隠れなくてもいいだろ」

赤ずくめの集団に取り囲まれてしまった

「…うそ」

パチュリーが呟いた

「…めんどくさそうな奴らだな…」

「街灯はここからでも届くでしょ?なら行けるじゃない?」

「あぁ…さっさと終わらせて夕飯食おうか」

魔理沙が短剣を持つように構えた

すると街灯の光の一部が魔理沙の手の中で反射し剣の形を形成していく

その剣で赤ずくめの集団に斬りかかる

斬られた集団の団員の拳銃はまるで溶かされたチョコレートみたいにドロドロになる

「この剣には触らない方がいいぜ…私の特性だ、出力はどっかのアニメのロボットのビームサーベルくらいはあるぜ、人間とかしてもお釣が来るな」

赤ずくめの集団は距離をとり一斉に発砲しだした

魔理沙は光剣を槍に変えて弾丸を弾き飛ばす

「結構居るし…さっさと終わらせたいからあれするぜ」

「はぁ?光量は足りるの?」

魔理沙が懐中電灯を取り出した

「こんだけありゃ十二分だぜ」

「もう、あんたは人使いが荒いわね」

アリスがパチュリーに触れる

二人が消えたように周囲に溶け込む

それを見計らい魔理沙は自分の体に懐中電灯を押し当てた

「死にたくねぇやつは伏せな、…マスタースパーク!」

魔理沙の手に光球が出来上がり回転しながら出力をあげる

光球が魔理沙の身長くらい大きくなると魔理沙の手から離れる

光球はターゲットである赤ずくめの集団に一直線に飛ぶと段々、解放されたように膨らみそして爆発を起こした

赤ずくめの集団は蒸発するように消滅した

魔理沙とパチュリーとアリスを残し赤ずくめの集団は全滅した

「もう…マスタースパーク使うなら本当、先に云いなさい」

パチュリーとアリスが急に現れた

「魔理沙…殺したの?」

「いいや…パチェは見るの初めてか?爆発したわりには周囲の建物が壊れてねぇだろ?」

パチュリーは周りを見渡した

建物の損壊はなかった

「確かに…」

「まぁ殺そうと思えば焼き殺せるが…それをしたらHEROじゃねぇだろ?だからその辺のビルの屋上に転送した」

パチュリーはほっとしたように胸を撫で下ろす

「私は大怪盗ではなくてだな…HEROになりてぇんだ…人殺しはしねぇよ」

「HEROならMPに入れば良いんじゃない?」

アリスの一言に魔理沙は肩を竦めた

「暴力による正義は独裁だよ、それは純粋な正義ではない…純粋な正義は全員がHEROだと認めるやつのことさ…悪党も一般人も全員がHEROと呼べば…それは本当のHEROであり純粋な正義なんだ…」

パチュリーが首を傾げた

「簡単にいうと悪を殴り殺すのが正義ではねぇってこった!んじゃ飯食おうぜ、腹減ったよ」

魔理沙が後頭部で手を組み先を歩いた

「アリスは魔理沙の正義論は初めて聞いたの?」

「出会った時に聞いたわ、だから私はここにいるのよ…どう?惚れ直したでしょ?」

パチュリーは優艶に微笑んだ

「いえ…魔理沙はアリスの物だから…ただ…悪くはないわね」

パチュリーはアリスに向かった

「先に行っててくれる?…私は野暮用があって」

アリスはガラケーをワンタッチで開く

そしてポチポチと弄りだす

パチュリーは何かに気づく素振りを見せた

淡い紫の髪が宙を舞う

「そう…早くしなさい、愛しの魔理沙があんたの晩御飯を所望よ」

アリスは携帯を開いてメールを見せる

その画面を見るとパチュリーはふっと微笑んだ

「分かったわ」

「じゃ」

アリスが魔理沙のあとを追う

「何の真似かしら」

「ごほ…ごほ…」

絞り出すように辛そうな咳が聞こえる

「パチュリーさん…お久しぶりです」

「コア…変わったわね…殺気が冷たくなった…さしずめ、あんたの差し金でしょう…レミィは今更、私に執着はしないだろうし」

コアはにやりと笑った

「あなたに認められないと…ごほ…小生は…本当の意味で小悪魔にはなれません」

小悪魔は銃をパチュリーに向けた

「無駄よ…誰があんたの育成係だったと思っているのよ…」

「無論、小生はパチュリーさんに育てられました…だからこそ、小生はパチュリーさんを越えて…必ず彼のお方を越えねば成らない…構えてください、パチュリーさん、小生が彼のお方を越えるために」

パチュリーがため息をついた

「小生は主に男が使う一人称よ?いい加減直しなさいな」

「小生は小生です、変える気は毛頭ありません」

「そう…なら越えてみなさい」

パチュリーの腕が紫に濁った液体が包む

その液体は路面に落ちるとジューと煙をあげ溶け始めた

「あら…怖いかしら?」

「怖くなどありません…小生は…」

小悪魔とパチュリーの間を黒龍が食らう

「そこまでよ小悪魔、戻りなさい」

ビルの上に幾つかの人影が見えた

「待ってください!お嬢様!小生は!」

「…パチュリー…戻ってきてくれるかしら」

「何で今更…私はもう組は抜けたのよ悪いけどね」

「そう…残念ね…何で今更かを説明しましょう…私たちは今から全面戦争をするのよ」

パチュリーは顔をしかめた

「組が全面戦争?…どこのバカよ」

「ダイヤモンド・クロウスと言ったかしら」

「最強の傭兵集団じゃない…なんで…」

「私達はよくある、秘密文書を強奪しにわざわざ、英国まで兵と幹部を行かせたわ…でもね作戦は失敗、雇われ軍隊、ダイヤモンド・クロウスのせいでね…お陰さまで敵さんには警戒されるわ、散々よ…何より奴ら、誰も殺さなかったの…お陰さまでこっちの面子は丸つぶれ…だから殺しにきたの」

「相も変わらず、プライドなんかで動いているのね…私は違うわ…あんたらとは違うのよ…ごめんだけど、組には戻れない、あいつとの約束を果たすまでは…」

パチュリーの瞳に朽ちた剣が見えた

「そう…残念、他を当たることにするわ…じゃねパチェ」

人影は次々と消えていったが小悪魔だけ悔しそうに…いや、希うようにパチュリーを見た

「この街に住むならいずれ決着はつく…次は真剣に相手をしてもらいます、デザートサーペント…パチュリー・ノーレッジさん」

「ハイハイ…わかってるわよ」

パチュリーが魔理沙を追う

「この街に住むならいずれ決着はつく…か…近くに決着を着けなきゃいけなくなる気がする…貴方はこんな未来を望んだのかしら…ならどうして…私に…」

パチュリーは紙切れを見た

小説の切れ端だろう

「私は貴方の言ったようにこれにあう小説を探すだけ…そのために殺しをやめた…それが…私の望んだ未来だから…」

パチュリーが立ち止まり夜空を見上げた

そこに彼の人の影を思い浮かべ微笑んだ

そしてこう力強くいった

「私はここにいる…!」

パチュリーは闇に消えていった




MPは即興で立てた設定ですが
なんか警察だけ世紀末なんですよね…
ちなみに警察には今のところ、異能力者はいません

そう今のところ…はね…


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♣A

今度は♠2のあとです
ここでやっと早苗の異能力がわかります
説明口調なナレーションが多いのは致し方ないと分かってください(´・ω・`)


ハート怪盗団の盗みが公になった次の日

早苗のいる孤児院に来客がいた

「おや?珍しいですね、魔理沙さん」

魔理沙は帽子の柄をもち持ち上げ笑顔を見せた

「相も変わらず元気そうで良かったぜ早苗」

「私も有名人と会えて嬉しいです、世に名高い怪盗団のリーダーにして国際指名手配犯、星の怪盗こと、霧雨魔理沙さん」

魔理沙は苦笑いをした

「やめてくれよ…私の目的とは違う方向にいってんだよ…」

魔理沙がため息をつく

その様子を見て早苗はクスクスと微笑んだ

「HEROでしたっけ?怪盗からHEROなんて繋がらないと思うんですけど」

「そうか…まぁ、別の理由もあるんだけどよ」

魔理沙の顔から笑顔が消えた

「そうですか…深くは追及はしませんよ、お茶を淹れてきますね」

「助かるよ」

早苗が立ち上がる

すると大きな鴉が彼女の肩に止まった

「?…どうしたんです?」

鴉は無言で早苗を見つめる

「…そうですか…分かりました、孤児を頼みます」

鴉は大きな声で鳴き声をあげ飛び去る

「どうした?」

「…侵入者です、相も変わらず魔理沙さんはトラブルメーカーですね」

「ほっとけ…でどんなやつなんだ?」

「赤ずくめの連中らしいです…異能力者がいます」

彼女、早苗が切り盛りするクローバー孤児院は山奥にあり

来客といえば魔理沙と霊夢とクラウドの旧友くらいである

また、早苗の異能力は人外のすべての生物と対話できる能力であり

早苗は山の動物と仲が良く、山の動物は早苗に協力的だ

その為、霊夢達以外の侵入者には鴉や鳩と言った鳥が早苗に確認しにくる

非常事態の場合は鴉達総出で孤児を守り

侵入者には猪が突進したり

蜂が射したり

最悪、熊に襲われ食われる

ある意味、傭兵集団なんかより質の悪い集団である

「赤ずくめ…昨晩の奴等か」

「やっぱり貴方への来客ではないですか…トラブルメーカーは相変わらずですね」

「うるへー!応戦するぜ」

「分かってます」

外の世界と繋ぐ階段から上がってきた集団は一斉に銃を構えた

「…あーあーこらこらそんなに銃を向けなさんな…」

赤い髪をした長身の女性が歩いてきた

「貴方が東風谷早苗さんかな?」

「はい…そうですが」

女性は頭を下げた

「お嬢様からの令で貴方をお連れしろとの事なので同行して貰いにきました…元spadeの早苗さん」

「その言いぐさ…元spadeを狙っているんですか?」

「はい、ダイアモンド・クロウスを探っていたらspadeへとたどり着きました、我々はダイアモンド・クロウスと交戦状態にあります…彼の軍隊のことに関しては聞き出したい情報が山ほどあります…だからまず、非戦闘員である貴方を捕まえて情報を得ようとしているわけですね」

「なるほど…」

早苗は魔理沙に合図を送った

魔理沙は孤児院に走っていった

「なら…2つ、貴方はしくじりを犯しました…一つ目は私を狙った事です…もう一つは…」

魔理沙が孤児院の二回の窓から拳銃を四挺投げた

「魔理沙を見逃した事です」

「いえ、それはしくじりではありません…私はなにも頭を下げて同行してもらおうとは思ってません」

「ほう…なるほど」

早苗は靴下の上から特殊なホルダーの付いたベルトを着けて拳銃を両足に装着した

そして両手に拳銃を持った

「名を聞きましょう」

「紅美鈴です」

早苗に美鈴は殴りかかった

「早苗!」

「…」

早苗は素早い動きで交わしきった

「スイッチ入りやがった…本格的に不味いぜぇ」

「速い…なるほど、貴方の異能力は動物との対話と聞いておりましたが…異能力とは別の部分が秀でていらっしゃるようだ」

早苗は美鈴の前に現れた

「…」

早苗の鋭い蹴りが入った

ゴスッ!という鈍い音が響く

「!」

音が立ったのは蹴った方の早苗の足だった

早苗は足から出血しながら倒れる

確認するまでもなく骨は砕けている

「私の異能力は身体の変質です、さっきは防御した腕を鉄筋コンクリートに変えました…しかし…」

美鈴の腕がだらりと落ちる

出血は凄いが骨もバラバラで動かせそうもない

「まさか…砕かれるとは…」

「…コンクリートも砕けなくなりましたか…流石に鈍りすぎですね…運動しなければ…」

早苗が立ち上がる

「強がりはよろしくないですよ…」

「強がりではありません」

早苗が軽く構え直した

「孤児院を初めてから守る戦闘が癖になりましてね…spadeの時より退きぎみだったのは確かです…だから非戦闘員なんて不名誉極まりない称号をいただく羽目になった…そしてさっきの蹴りで確信しました…貴女には私の全てをぶつけてもいい…こんなに血がたぎる相手は霊夢さん以来です」

早苗は負傷した足でもう一度美鈴を蹴りの体勢にはいる

美鈴は腕を鉄に変異させ防御体勢に移る

しかし早苗は防御された腕を踏み台に飛び上がる

そして足の拳銃と手に持った拳銃で弾幕の雨を美鈴に浴びせる

美鈴は全身を鉄に変異させ防御した

「強い…貴方を非戦闘員と言ったこと…深く謝罪します…貴方は全てを私にぶつけてくれる…なら私も全てを貴女にぶつけましょう」

美鈴が拳法の構えを取る

「そう来なくては…血がたぎります」

早苗も構えを取る

その刹那、二人の拳がぶつかった

ほぼ均等にして最大の重量の2つの力は互いにぶつかり合う事を諦め

地面にクレーターを作る方へと働いた

異能力の波動が互いから漏れだし青白い閃光が走る

その後、互いの蹴りが炸裂する

異能力の波動が解き放たれ木々をなぎ倒し、鴉が身の危険を察知し飛び去る

孤児院も軋み始める、孤児には外の様子を見せてはいないが怖がり悲鳴をあげる

魔理沙は屋上に上がり驚愕した

「異能力の波動が剥き出しに!?…まてまてまて…そんな本気だしたらここらいったいがぶっ飛ぶぜ…このままじゃ不味い…」

魔理沙は光剣を作り出した

「霧雨魔理沙琉、戦意喪失術」

魔理沙は屋上から軽くジャンプして二人の間に着地

着地の際の衝撃を足に出した光のクッションで殺す

そして光剣を変形させ、長い棒のような物にする

「突然の閃光!」

長い棒のような物は二人の目に近づけると突然、発光し始める

「うわ!」

「眩しッ!」

二人が目を押さえる

「どんだけ脳筋でも目玉までは鍛えれねぇだろ、そんくらいにしときな…然るべき時に決着は着くさ…ここら辺一体をぶっ飛ばすよりはましだろ?」

目の痛みに耐えながら美鈴は立ち上がる

「そんな事をしたらまた、お嬢様に叱られますね…分かりました…ここは一旦退きましょう…今度はどちらかが戦闘不能になるまで…手合わせ願いますね…」

「こちらこそ…久しぶりに血がたぎる手合わせでした…今度は決着をつけます」

美鈴は微笑みそれではと軽く挨拶をすると怖がり倒れている部下に渇をいれ、たてらせ孤児院から去ろうとした

「おい、最後に聞かせてくれ、お前らの組の名前はなんだ!?パチュリーと何の関係がある!?」

「後者にはお答えできませんが…前者にはお答えできます…Red ghostです」

「そうか…すまない。じゃあな」

美鈴は会釈すると去っていった

「ったく早苗…なにやってんだよ…足折るまで続けるなんて今のお前らしくもない」

「何ででしょうね…やっぱり非戦闘員がカチンと来たのでしょうか…いえ…恐らくは本当に血がたぎる勝負だったんです…久方ぶりに忘れかけた感情でした…霊夢さんとの手合わせ以来です」

魔理沙がため息をついた

「ったくよ…霊夢の時もそうだが…お前のスイッチが入ると恐ろしいんだぜ…いつも温厚な分よ…」

「ご心配をおかけしました…少し休みます…皆を…」

早苗が倒れるが魔理沙に受け止められたので地面に激突することはなかった

「どうしたんだよ…本当によ…」

スースーと寝息を立てる早苗に魔理沙は少しほっとしたように微笑むとうってかわって鋭い視線を空に向ける

「赤の…幽霊…」

 

美鈴も山を降りたすぐの所で倒れた

「美鈴さん!大丈夫ですか!?」

「大丈夫な訳がない…動物と対話するだけの気弱な少女を想像していたのだが…綺麗な薔薇には刺があるということか…いや…あの人は薔薇ではないな、彼岸花だ…」

鎖の影が美鈴に迫った

「貴方は…」

「だらしないですね…ほら」

鎖の手が美鈴に差しのべられた

「すみません…だらしないのは生まれつきでしてね」

美鈴は鎖を掴み立ち上がった

「…帰りましょう、歩けますか?」

「勿論ですよ…私は紅美鈴です」

美鈴と鎖の影は共に町に消えた




霊夢は鎖に変える能力
早苗は動物と対話する能力
魔理沙は光を反射させ高出力の武器をつくる能力
次はクラウドの異能力ですね
さぁて混沌としてきました(--;)


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♦A

皆さんお察しの通り
♦はダイヤモンド・クロウスのリーダーこと
クラウドを中心に描きます
彼の霊夢への熟愛具合は病気の域ですw


早苗がRed ghostの異能力者と接触したとの情報を得て霊夢とクラウドはクローバー孤児院を訪れていた

早苗はベッドの上で安静にしていた

「心配をおかけしました…もう大丈夫ですよ」

「よかった…しかし体術だけで早苗に深手を負わせるなんて…余程の使い手だったのね」

「そうですね…異能力は体の変質でした…どれも物質だったので生物には変形できなさそうです」

クラウドが早苗に近づいた

「…あいつらは確かに交戦状態と言ったのか?」

「えぇ」

クラウドは俯いた

「…宣戦布告も受けてないが…もしかしたらこれが宣戦布告…spadeまで巻き込んでなにがしたい…」

クラウドが歯を食い縛る

「クラ?」

霊夢が心配そうにクラウドを覗き込んだ

「いや…大丈夫だ…相手が分かった…元マフィアだ…日本の主に横浜を縄張りとしているマフィアから切り捨てられた者達が集まり紅の幽霊を名乗り活動していたらしい…が…三年前、紅の幽霊がそのマフィアを潰したと聞いた…おそらく復讐だろう…そのあとは活発になり今は…元々マフィアが統治していた場所を統治する集団になっている…」

「そんな集団に喧嘩売られるなんてクラも大概、ヤンチャよねぇ」

霊夢がニコニコと笑った

「なにが可笑しいんだ…俺はお前らを…元spadeの面々を襲いだした時点で絶賛後悔中だ…」

クラウドは苦笑いを浮かべた

「気にしないでクラのせいじゃないよ…私はクラと会えたし嬉しいよ?それに、今更、マフィアごときに絡まれた位で死ぬほど柔な人生送ってないわよ?」

霊夢がにこりと笑った

「…それもそうだな…」

クラウドが霊夢の頭を撫でた

霊夢はなついた猫の様に砕けた笑顔をクラウドに向ける

「そうですよ、霊夢さんがそうそうに危ない目に遭うことなんてないですよ、私じゃないんですから」

霊夢が困惑を顔に浮かべる

「早苗も大概よ?だって骨折を寝て直すなんて…もうほぼ異能力みたいなものだね…どんな骨の構造になっているの…?」

「それは昔から疑問だった…どんだけ大きな怪我してもお前は翌日には直っている…何なんだ?お前の骨は」

「そんな事、私に聞かれてもですね…生まれつきといいますか…正直、異能力なんじゃないのかなって自分でも思うんですけどね」

早苗が苦笑いを浮かべた

「一度、然るべき施設で然るべき検査を受けるべきだな」

「それには私も賛成するわ…何か凄い成分が含まれてそうだもの」

「止めてくださいよ~病院は嫌いなんです…白って怖いじゃないですか」

三人を沈黙が包む

「あなたって…まぁいいや…」

クラウドが孤児院を出て行こうとした

「クラ!どこにいくの?」

「…野暮用だ…すぐ戻る」

 

クラウドは郊外の倉庫にいた

「小悪魔…出てこい」

闇からコツコツとハイヒールの音が響く

「小生に…ごほ…何か用か?敵軍の大将殿」

「大有りだ…がそれはお前だけではねぇだろ…spadeを狙うのは止めろ…どちらにしてもてめえの差し金だろ?」

小悪魔は蔑むような視線をクラウドに送る

「いかにも…小生がお嬢様にspadeを狙うように提案しました…それは本当に情報入手が目的でした…でもお嬢様はお考えを変えられました…spadeは危険だ…我々の目的の邪魔になる…故に我々、紅の幽霊が潰します…ダイヤモンド・クロウスを潰した後でね」

小悪魔の周囲空気が蠢きだした

高温になったことにより陽炎ができている

「小生の異能力はパイロキネシス…単純明快、対象を燃やす異能力也…しかし単純ながら強力だ」

小悪魔は手をつきだす

するとクラウドは物理的に燃えだした

「さぁ貴様の異能力を見せてみろ!」

クラウドの包んでいた炎は彼の一振りで消された

彼は身の丈程の大剣を握っていた

「良いだろう…見せてやる…これが俺の異能力だ」

クラウドは倉庫の壁に剣を突き立てる

するとその壁は何もなかったかのように消えた

「!?」

小悪魔が恐怖を感じバックステップで距離を取る

「俺の異能力は生き物以外の物がこの剣に触れると無条件で分解する能力だ」

「貴様…やはり貴様の異能力は脅威だ…小生が刈り取る…そうすればパチュリーさんも認めてくれる…小生は彼の人を越えられる」

「彼の人…?誰だ?」

「貴様に語る義理はない…ここで死ね」

小悪魔は一気に距離を詰めクラウドの剣を蹴り飛ばす

クラウドは手を押さえ距離を置く

「貴様の異能力は確認した…その剣が無ければ赤子当然」

言い切る前にクラウドの鋭い蹴りが小悪魔の顔面に突き刺さる

数メートル吹き飛ぶとクラウドに威嚇するように唸る

「俺が女の顔を蹴れない程の優男に見えたか?」

「クラウド・ストライフ!」

小悪魔は沸き上がる咳を圧し殺しクラウドに火をつける

「そんな柔な炎で俺が焼けるか!」

続いてクラウドの拳が小悪魔に突き刺さる

堪えきれず小悪魔は激しく噎せる

「今度はどこがいい?」

「…」

「異能力だけで俺が元spadeを名乗っていると思っているのか?ならその目は節穴だ」

「なんだ…!、ごほ!ごほ!」

クラウドは剣を拾ってきた

「…殺せ」

「わかっている…死ね」

クラウドの剣は何かに止められる

鎖だ、鎖に変形した倉庫の壁がクラウドの剣を止めた

クラウドの異能力によって分解されることのない鎖は剣の勢いを殺すには十分過ぎた

「クラ!」

霊夢の甲高い声が倉庫に響く

「…命拾いしたな

Fille de l'asthme<喘息のお嬢さん>」

「ふざけるな…殺せ!その剣を小生の喉に突き立てろ!それが貴様の…」

クラウドは腕をプラプラさせた

「悪いな、俺は霊夢の前で人は殺さない…どこかで…今度はコジャレたバーで会えたら嬉しいな、あんたみたいな人、嫌いじゃない」

クラウドと霊夢は倉庫を出ていった

「くっ…ふざけるなぁ!」

小悪魔は霊夢にパイロキネシスをかけた

霊夢の体に火がつく

「…小生の…小生は…!」

火が鎖状に変形していく

「なに…異能力干渉の異能力だと…」

異能力者は別の異能力者が作った物には通常は干渉できない

例えば氷を作る異能力と熱を生み出す異能力がぶつかっても前者の氷は溶けない

パイロキネシスと氷を作る異能力がぶつかると燃える氷ができるだけで

氷事態は無くならない

そういう異能力は非干渉の異能力という

だが特例で異能力で完成した物に干渉できる異能力者がいる

例えば今回のそれである

クラウドは霊夢の作った鎖は分解できないが

霊夢は小悪魔のパイロキネシスで作られた炎を鎖状に変形できる

霊夢はこの際、異能力干渉型の異能力という分類に入る

その分類に入るのは一握りくらいだ

そう考えると霊夢という異能力者がどれだけの希少種かが解る

「…どこまで…似ているんだ」

小悪魔が歯を食い縛る

霊夢はどこか蔑むような目で小悪魔を見下ろした

「小生は…貴様らの…」

「哀れね…Chien de fantôme<亡霊の飼い犬>…所詮は飼い犬ってこと…」

小悪魔が表情を歪めた

「小生を愚弄する気か!」

「忠誠心より虚しくなにも残らないものはないよ…忠誠は表では二人でも心のなかでは一人なの…一人ぼっちは淋しいよ…」

「知った口を聞く…しかし性格は似ていないな…やつは忠誠心の塊だからな」

小悪魔が立ち上がった

「いつかここで小生を殺さなかった事を後悔させてやる…」

小悪魔は咳を響かせながら去っていった

「クラ…あいつの事を殺そうとしたの?」

クラウドは頷いた

「敵に情けを掛けられ生き残るのがどんだけ不名誉で…苦しい事か…解るか?…俺は解る…傭兵時代によく見かけた、死ぬより辛い…」

「そうなんだ…傭兵って辛いんだね…マフィアも…きっと」

クラウドか間髪いれずに言った

「傭兵とマフィアは違う…が…同類の悲しみを背負っている事は…確かだな…」

小悪魔の声が響いた

「彼の人…あいつをあそこまで執着させる者…誰だというんだ…それにパチュリーさん…パチュリー…」

「ん?パチュリーがどうかしたの?」

霊夢が反応した

「霊夢、知り合いか?」

「魔理沙んとこの怪盗団の一人よ、静かで博識なの…自身の体を毒に変化させる異能力だったはずよ」

「まさかな…」

「どうしたの?」

クラウドが鋭く空を睨む

「…考えすぎ…か…」

「変だよ?クラウド…」

クラウドが微笑して霊夢の頭を撫でた

「何でもないよ…心配させて悪いな」

「…うん…」

霊夢の砕けた笑顔を見ているとクラウドは落ち着いて思考できなくなる

だから

(まっいいか)と内心で決着を着けた

がクラウドの懸念が真実になるときも近い




彼の懸念はいつ、真実になるのか
そして本格的になり始めたダイヤモンド・クロウスと紅の幽霊の抗争
そして巻き込まれる形になるハート怪盗団とspade
東京の町を巻き込んだ抗争は大きく肥大化していく

そして霊夢に似た彼の人とは…?

作者もこれどうなるんだろって思ってたりします(´・ω・`)


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♦番外編 雲の切れ間から

クラウドと霊夢の馴れ初めです
本編とはかなりかけ離れているので番外編にしました


クラウドはある日、行きつけの喫茶店にいた

横に見慣れた人影が見えた

「命狙われているのに悠々とランチ後のティータイムか?余裕だな」

妖夢だった

「あぁ…日課でな」

「そうか…横、いいか?」

クラウドは軽く頷いた

「んじゃ遠慮なく」

妖夢は椅子に深く腰掛けると店員に珈琲を頼んだ

「ここの珈琲は旨いだろ、私もとても好きなんだ…何より店主が無口なのがいい…」

「同感だ…静かな空間でゆっくりと茶が飲める…いい場所だよ、ここは」

妖夢が前のめりになった

「前からゆっくり話す機会が欲しいと思ってたんだ…お前とはな」

妖夢がクラウドに微笑みかける

クラウドも答えるように微笑んだ

「どうせ、霊夢との馴れ初めだろ」

妖夢は驚いた様子だった

「お前の異能力は人の内面を探る能力か?」

「違う…そんな能力があれば苦労はしないさ…」

クラウドは珈琲杯≪コーヒーカップ≫の中の液体を飲んだ

「馴れ初めは話そう」

「なんだ、意外にあっさり教えてくれるんだな」

クラウドが天井を見上げた

「別に隠す必要性が無いからな…ただ馴れ初めを語る前に少し、昔話に付き合ってくれ」

クラウドはそのまま昔話を語り始めた

 

争いに意味があるのか…

自問自答を繰り返していた時期があった

頼るべき存在も依存すべき相手も居ない、目の前に広がるのは空虚な現実のみだった

夢なんか見れなかった

暗闇の中で手探りで希望を探している気がしてた

自問自答と絶望の叫びが体から軋みをあげる

そのうち、それらすらも聞こえなく…空虚に飲み込まれていく

 

異能力を持つが故に戦場に駆り立てられ、人を殺し

紅の花を咲かせてはそこに混ざれなかったことを後悔する

戦場とは戦争とは争いとはそう言うもんだ

 

一度、殺した兵士が家族の写真を握っていたことがあった

家族がいることがうらやましかったが

その男が死んだという事実に後頭部を殴られた

家族はこの事をいつ知るのだろうか…

そう思い剣を構え直し

立ち向かってくる奴等を切り捨てていった

 

俺はその時、色んな軍隊や組織で雇われ兵士をしていた

俺と彼女…霊夢が会ったのは約9年前だから欧州で大きな戦争があった頃だ…今から5年前に終戦したが…

終戦宣言の時に異能力の自由宣言がされてな…その前である

大戦中は異能力者への迫害は酷くてな

どこに行ってもひどい職場状況だった

特に酷かったのはフランス軍にいた頃だ、異能力部隊つぅ部隊に配属になったのだがその分類はな

軍の中でも捨て駒に近い部隊で

ほぼ10代前半の少年少女であった

その殆どが死んだ

名誉の戦死…聞こえはいいが捨て駒同然に切り捨てられるように殺された彼らはどんな気持ちだったか…

今では想像すらできない

昔は想像できたのかというとそうでもない

所詮、他人は他人なのか…

俺はその時、誰も信用せずにただひたすら人間を切り裂き

その度に俺の心は擦りきれ縮んでいった、その事実に目はくすんでいった

 

フランス軍は生還すると解雇された

正直、願ったり叶ったりだった

俺は次の組織にすぐに雇われた

異能力解放戦線…最高の職場状況だった…周りに同じ待遇の奴等が多いからだろう

そして異能力者解放戦線に入ってある日俺は輝く光を見つけた

あれは異能力者隔離施設の攻撃をした時だった

 

地下牢

当時、多くの異能力者が捕まり隔離されていた施設だ

当時の異能力者は悪魔だった

なにかは解らないが兎に角、人外で人権なんてなかった

特にフランスのドがつく田舎だ

違いをいやがった住人は違いを徹底に排除したんだ

それによって地下牢に異能力者は…違いの塊は捕まり拘束されていた

そこを襲ったんだ

異能力者解放戦線は異能力者の人権の保証を求めてさまざまな軍から独立した兵士が集まった軍隊だ

当時、便利な駒でしかなかった異能力者の裏切りは欧州での戦争で戦況をひっくり返した

それどころか間接的ながら終戦の立役者となったんだ

解放戦線自体はとある作戦で全滅してしまうんだがな…その作戦がこの

異能力隔離施設夜襲作戦だった

その時、俺は彼女と出会うんだ

…その時の年齢は…たしか…

10歳か1つ上くらいだった

しかし未だに覚えている

逃げ惑う大人たちの中で何をすべきか分からず、オロオロと泣きそうな少女に出会った事を

彼女は大きな赤いリボンを頭に着けていた、今と同じだな

「おい、君」

俺の呼び声に気づくと一気に明るい顔になり俺に抱きついた

年頃の俺はたじたじだったのを覚えている

「い、行くぞ」

彼女は大きなクリクリとした目で俺を見て首を傾げた

「お前は自由だ…外に出るぞ」

「じ…ゆう?」

彼女は目測俺と三才位下だった

でもそれにしては言葉が不自由過ぎる

まさか、こいつは一回も…

と思ったが兎に角、俺は彼女と一緒に外に出ることを優先することにした

 

外は密林であり

抜ける途中にほぼ全員の異能力者は銃殺された

表沙汰にはなっていないが小規模な部隊ながら三桁は人が死んだ

俺と彼女は無事に荷台の荷物に紛れ込むことができ安全地帯まで到着し

協力者に運んでもらっていた

「なぁ…お前、これから行くとこあるか?」

俺は何気なしに聞いた

彼女はそのクリクリとした大きな目で俺を見て首を傾げるだけだ

「無いよな…俺もだ…」

俺は空を見上げた

夜襲のため、夜空だったが星は見えなかった

「…どうすっかな…」

命を守るために連れてきたはいいが

俺も俺一人守るのに精一杯だ

とても彼女まで気は配れそうにもない

ただ放って置くこともできなかった

頼るべき異能力者解放戦線は恐らく全滅したことは幼心にもわかっていた

 

「…すぺ…ど…お姉さ…ん」

彼女が意味のある言葉を発した

「すぺーど?…トランプでもしたいのか?」

「あーあんちゃん、多分嬢ちゃんが言いたいのは日本の組織の事だよ」

協力者がトラックを運転しながら話しかけた

「すぺーどがか?」

「あぁ国家秘密治安維持警察隊つーのが正式名称らしいが長いんでspadeと呼んでいるらしい…そこのリーダーが徳のある人物でねぇ、あっしとも交流があるんでさ…その人物のとこまで運んであげよう」

「おいおい、極東までトラックで行くのか?そいつは無茶な話だろ」

「そうじゃねぇよ、その人が今、フランスのパリに居るんだ、パリまで運ぶからそこからは見つけてくれ」

「パリか…広いな…」

そう言いながら彼女の顔を見た

何も考えて無さそうな目でただ、俺のあげたパンを貪り食べていた

俺は彼女の頭を撫でてみた

なんか落ち着くような、そんな気がした

「この子のためだ…わかった、なんとかしよう」

そのあとは沈黙のみ生まれるだけだった

しかしはじめに異変に気づいたのは俺だった

周囲に殺気の塊が五ついることに気付いた

更に漂うは服にこびりついた火薬の匂い

「…囲まれている…どうする?」

そんな思考をする間もなく銃は発射された

その音に驚いたのか彼女は耳を塞いだ

「!?」

驚いた…銃弾が全部、鎖に変わり銃を撃った奴等の腹部を貫いたのだ

「…お前の異能力なのか…?」

彼女は銃声を怖がりガタガタ細かく震えていたが、その異能力によって襲撃軍隊は次から次へと倒れていく

「…」

俺はもう一度、彼女の顔を撫でた

すると落ち着いたように砕けた笑顔を見せてくれた

異能力は止まり奴等の残党は命からがら…いや命惜しさに逃げていった

「…凄いな…お前の能力…」

協力者がぼそりと呟いた

「あんちゃん、結構ヤバい能力者を解放させちまったみたいだが…?」

「こいつにそんな邪気があるとは思えないが…?」

協力者は彼女の顔を見るとバカらしくなったらしく肩を竦めて笑った

「確かにその顔は…異能力を悪用しようとしても出来なさそうな顔だ」

 

トラックはそのままパリへ向かったらしい

俺もそして彼女も疲れはてて寝ていた

気づけば昼でパリのとある小屋の屋根裏部屋にいた

俺は気は引けたがぐっすり眠る彼女を一人残してspadeの大将を探す事にした

…今考えてみればどうやって見つけようとしたのか

とても大変だったのを覚えている

雨のパリを走り回り大人に聞いて回った

その時のパリは皆自分の事で精一杯…

誰も何もしてはくれなかった

途方に暮れた俺はエッフェル塔の膝元に座りこんだ

すると出会ったんだ

「…ここがエッフェル塔…驚いたかなり大きいな」

「…貴方は?」

珍しい外套に身を包んだ東洋風の女が近づいてきた

「む?孤児かい?…しかも異能力者とみた…」

俺は思わず身構えた

女は手を大袈裟に降る

「まてまて、私は異能力者を迫害するような分からず屋ではない…今は君達の居場所を作っているんだ」

「居場所…?」

「あぁ、戦場以外の居場所さ、君達がバカみたいに笑って暮らせるような明るくて暖かい居場所」

女は傘を畳んで俺の横に座った

「…私は春音だ、君は?」

「…クラウド…名字はない」

「雲…か…良い名だ、ただ名字は無いなは戴けないな」

霊音がニヤリと笑った

「ストライフという姓は要らないか?」

「姓?…なぜそんなものがいる?」

「つれねないねぇ、そんな堅物では結婚できないぞ、少年」

「…しなくても生きていける」

「はっはー恋人を妬むタイプの人間だなー?少年…リア充爆破かい?」

「そんなのでもない、何故、妬む必要がある?俺はな!」

俺の視野に彼女が映った

半分涙目になりながら立っていた

「…君…」

「一人…に…しない…で…」

はっきりと言った

彼女が彼女の意思を自分の口で言葉で

ホッと安堵をしたのを覚えている

そしてじとーと笑顔で見つめる春音の視線も鮮明に覚えている

「ほっほーすでに彼女持ちでしたか…その年で…隅におけませんなぁー色男」

「なっ!ばっ!そんなんじゃ!」

「春ねぇ…さん…?」

そしてここで俺は口を開けたのを覚えている

「ねぇさん!?」

「おや?君は…道理で見た顔だと思った…クラウドくんだっけ」

今まで少年とか色男とかふざけた呼称ばかりしていた春音が普通に聞いてきた

「なんだよ」

「彼女を救ってくれたんだね…お礼を言うよ…ありがとう…私の力や地位では彼女を救えなかったんだ…誰よりも真っ直ぐで輝く目をした少女…私は彼女に会うためにここまで来たんだ」

春音が彼女の頭を撫でた

「名は何て言うんだい?」

「名前…」

俺は口ごもってしまった

そういえば、俺は彼女の名前さえも知らない

「無…い…必要無い…って…おじさんが…」

「わかった…それ以上は思い出さなくてもいいよ」

春音は彼女の言葉を切った

「…にしても名前がないのは不便だ…よし霊夢なんてどうだろう博麗霊夢だ!博は広く麗は麗しい…そして君の鋭い勘や純粋に世の中を見れる目から霊夢!我ながら完璧なネーミングセンス!私は自分で自分を誉めてあげたいよ!」

最後の自画自賛は退けても

霊夢は良い名前だと思った

「霊夢…私の…名前…」

霊夢も気に入った様子だった

「…これからよろしく、クラウドくん、霊夢くん」

「なんで俺まで、行くことになってんだ…俺はいい、霊夢だけ連れていけ、俺は霊夢が生きてるだけで十分だ」

俺はその場を去ろうとした

が誰かが俺の袖を掴んだ

春音なら払いのけていただろう

が引き留めたのは霊夢だった

「…ここ…まで…一緒に…きて…一人に…しないで…」

「お前はもう一人じゃない…それに俺の手は汚れすぎてる…今更バカらしく笑えないさ…」

「笑えなくても良いじゃないか」

春音の声だ

「誰かが生きていて欲しいと願ってくれるのは素晴らしい事だよ?…しかもそれが年下の少女と来ている、君には彼女の要望を叶える義務がある…違うかい?」

春音は俺に手を差し出した

俺はまだ、渋っていた

「…ふん」

霊夢が俺と春音の手を無理やり握らせた

「…なら…作ってくれ、俺と霊夢が笑える世界を」

「あぁ約束しよう…From the New World…新世界を作るさ」

春音を追いかけたのだろう女性が二人エッフェル塔前に来た

「あんたねぇ…急にエッフェル塔がみたいな、とかいってどっか行くんじゃないわよ!結構探したのよ!?」

金髪で紫の服を着た女性と

「あらら…可愛子ちゃんがお二人さん…うふふ…本当にあなたってショタコンよね」

ピンクの髪の女性が一人

「ロリコンよりはましだよ…あ、紫、拾った」

春音は俺と霊夢の腕を上げた

「あ、拾ったじゃないわよ!お陰様で私の計画は全て台無しよ!これ以上、厄介事を増やさないでよ…」

「あらあら良いじゃない」

「…もういいわ…」

紫はため息をついた

「と言うことだ、よろしくね家族」

春音の一言に驚いた

俺にも家族と呼べる存在ができたんだと思った

しばらく呆然としていると霊夢が手を握ってきた

「…」

霊夢はただ黙ってにこりと笑った

俺も微笑んだのを覚えている

そこから、俺は新たな世界へと踏み出したんだ

 

「それが俺と霊夢の馴れ初めだ」

妖夢は珈琲杯の中の液体を飲み干した

「そうか…大変だったんだな」

「その分、俺と霊夢の絆は深いぞ…そう簡単には揺らぎはしない」

妖夢が人差し指を立てた

「もう一つ聞いて良いか?クラウドは霊夢と喧嘩したこと、あるのか?」

「変なこと聞くんだな…一度もないぞ」

妖夢は口を半開きにして驚いた

「産まれてこのかた、霊夢と喧嘩したことは一度もない…?」

クラウドの携帯に着信があった

「紅の幽霊が動きをみせたらしい、俺は行くぞ」

クラウドが席を立って出ていった

「…一度も…ない…嘘だろ、そこにびっくりしたぞ…」

妖夢は少し微笑んだ

霊夢がクラウドを好きな理由を少しだけ理解した

「本当に仲かが良いな…あいつらは」

妖夢は立って喫茶店を出た




5308文字もつらつらと書けましたね…
これも結構書きたかったストーリーなんですね
他にも書きたいストーリーが多くて困ります

次回、ついに紅の幽霊の首領と鎖の少女が動き出す!?


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♣2

今回の話は後々、大切になってきます
"全て私の子供計画"の全容がわかり次第
それらをいれた単語集を書きますね


早苗は紅の幽霊を自分なりに調べていた

自分の血をあれほどたぎらせる者は久しぶりで、興味があった

ただ早苗は孤児院を経営している

そう長くは空けられない

そこで久しぶりにとある友人に情報収集を依頼した

 

その友人から連絡が届き早苗は急いで待ち合わせ場所である酒場を訪れた

 

酒場

店主がカップを念入りに拭いている

他の常連客もベロベロに酔って暴れたりする客はおらず

誰もが沈黙の中でゆったりと時間を過ごしていた

その中で一際目立つ女性がいた

彼女の手前からは煙が上がっていた

恐らくタバコの物だろう

彼女は白紙の手帳を前に悶々と何か考えて事をしていた

そこへ早苗がやってくる

「文、久しぶり」

文と呼ばれた彼女は早苗の方を見て

タバコの火を灰皿で消す

「半年も連絡をくれないで…一瞬、どっかで野垂れ死んだんじゃないか、と思いましたよ…まぁその線はありませんか、貴方、異様にタフネスですし」

「急に毒舌だな…まぁ変わらなくて安心しましたよ」

「貴方こそ、あの頃のまま縦に伸ばしたみたいですね」

早苗が嫌そうな顔をした

「そうですか?成長してないみたいで嫌なんですが…」

「私なりに誉めたつもりだったんですけど…まぁいいです、ともかく、久しぶりに貴方と飲めて嬉しいです」

「私もです」

早苗と文は静かに乾杯する

グラス通しがぶつかり合い透明な音を店内に響かせる

「で?例の件はどうなりました?」

「紅の幽霊ですか…見つかりましたよ、少し掘ればもう山ほど…出てきたものの殆どが血と闇のリストでしたがね」

早苗の表情が曇る

「そんなにヤバい組織なんですか?」

「本部はどうか知りませんが、本部から枝分かれした支部が凶徒と化しています、麻薬、人身売買に臓器売買、そして武器の違法輸入…闇社会といえばこれ、というものは全て揃っています」

「…今回も支部が関わっていると?」

文が眼鏡をかけた

「いえ、おかしいのはここからです、確かに凶徒と化した支部は暴走し、本部は見てみぬふりをしていました…が二人の異能力者が幹部に昇格したとたんに全ての支部が断罪の名目で処分されました…支部の基地は燃やされ証拠も生存者も資料も全部、灰になりました…本部もそれを黙認しています…す…家族のしたいことをさせてあげるとね」

「そんな事が…新しい幹部が二人…」

「えぇ、その幹部は保守派の幹部を蹴落とし上にあがりました…保守派が居なくなった今、恐らく暴徒と化するでしょうね…その瀬戸際が今なのかもしれません」

文は新たなタバコに火をつけた

「タバコには200種類の毒の塊ですよ?寿命を縮めるだけです、そして主流煙にはフィルターが着きますが副流煙にはフィルターがついてなくて200種類の毒を周りにばら蒔いているんです」

「…化学式を理解しても社会論を語っても…タバコの良さは分かりませんよ…お子ちゃまにはね」

文がニヤリと笑ってタバコの煙を吐いた

「酷いですね…お子ちゃまは…もう二十歳は越えてるんですよ?」

「貴方の心は少女ですよ…だからタバコは吸わないでください、早苗なら未成年喫煙法に触れそうだ」

早苗が頬を膨らませた

「言い過ぎました、謝ります」

「貴方は学生時代からそうですね…非を認めるのが遅いです」

文がタバコをくわえたまま手帳のページを開く

「非を認めるのが遅いのはご愛嬌です…最後の情報ですが…紅の幽霊の幹部と首領の異能力と名前だけですね」

それを話そうとしたとたんに酒場のドアが蹴り破られた

「射命丸文という情報屋は居るか!?」

紅の集団がバーを囲う

数は十数人

落ち着いたようすで早苗は告げる

「お客さんですよ文」

「あやや…私の異能力はこういうやつら向きじゃないんですよ…任せますね」

「無責任な…」

早苗は紅の集団の発砲を蹴りで止めた

その間、バー自体は不気味な位静かだった

紅の集団には目をくれず酒を飲み続ける常連客と慣れたように紅の集団を見つめるマスター

そして早苗が口を開く

「無粋…この静かな空間に音の出るような兵器を持ってくるとは…そのようなお洒落のおの字もないような人達には不向きですよ…ここは」

早苗は軽やかなフットワークで蹴りだけで紅の集団を次々と無力化していく

「立ち去りなさい…今なら殴り殺さなくて…済む…」

早苗の鋭い目線に紅の集団は後退りする

文と早苗のコンビの場合、後退りしたあとの自棄になった接近からの打撃は避けた方がいい

理由は後程…

が未熟な紅の集団の団員は早苗に殴りかかる

「…射程距離」

文はタバコの煙を吐く

早苗はその煙を避けるように文の後に下がる

「おぉ怖い、文の異能力は射程距離が分かりにくいですよね」

文が立ち上がる

そして紅の集団と向き合った

紅の集団は勿論、銃口を文に向ける

「そうですか?…まぁいいや、無粋な連中には退場願いましょう」

文は人差し指を上に上げた

すると紅の集団も宙に浮いた

「私の異能力は相手に恐怖や怒り等の負の感情の感情がある状態でタバコの煙を吸わせると相手の重力をコントロールできると言うものです…本当に使えない異能力ですよ、まずは怒らせたり怖がらせないと使えない…が皆さま方は実にシンプルでしたよ、強い早苗に恐怖してましたからね」

紅の集団の一人が呟いた

「うそ…だろ」

「それでは皆さんに為になる教訓を一つ」

文が煙を吐いた

「タバコは百害あって一利無しですよ…それではごきげんよう、皆さま方、またのご利用をお待ちしております♪」

そのまま、紅の集団はバーの外へ吹き飛ばされた

「…で話の続きですがね」

「何もなかったかのように続けるんですね…まぁいいや続けてください」

文は頷いて続けた

「幹部の名前は、リスト順に小悪魔、能力はパイロキネシス、相手の体をプラズマにして発火させる…紅美鈴、能力は体の変質化、コンクリートから木材まで変質することができます、ここまではあなた方、spadeやダイアモンド・クロウスが仕入れた情報ですよね?」

「はい、クラウドからそのように聞いています」

文が煙を吐いた

「ここからが私独自の情報です…と言ったって異能力に関しては一人しかわかりませんでしたが…紅の幽霊の首領の名前はレミリア・スカーレットそして彼女の実の妹、フランドール・スカーレット…この姉妹が組織を統率しています…そして私の仕入れた異能力の情報は彼女の従者、十六夜咲夜のものです…彼女は…"全て私の子供計画”の産物です…能力は彼の最強異能力者のリリーホワイトと同じ、物質を鎖に変化させる能力です」

早苗が驚いた

目が飛び出る勢いで目を見開く

「嘘…鎖…!?」

「えぇ、知りませんか?リリーホワイト…有名人ですよ?」

「…私の友人に鎖に変化させる能力を持つ人がいます…」

文がピクリと反応した

「次の依頼は決まりましたね」

文が立ち上がり酒場を出ようとする

「良いんですか?…貴方にも仕事が…」

文は振り替えってクスクスと笑った

「仕事より何より友達の頼みの方が大切ですよ」

早苗は安心したように微笑んだ

「なら頼みます

"全て私の子供計画"を調べてください」

「お安いご用です」

文が会計を済ませ酒場を出ていった

「…」

早苗はしばらくうつむき机を鋭く睨む

そして残っていた酒を口に運ぶ

「…"全て私の子供計画"…」

不穏で恐ろしいその単語をぼそりと口にした

「…霊夢…」

友の存在が危うい物になることを危惧して早苗は考え込む

酒も時間も彼女にとっては余るほどあった

一杯の酒と一時間に満たない時間が早苗にとって必要な物だった

じっくりと思考した後に早苗も立ち上がった

「時間はまだあります…今は文の情報を待ちましょう…そして目の前の問題に集中しなければ…」

早苗はそういうと会計を簡単に済ませ

酒場を出ていった



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♠3

大変長らくお待たせしました(T0T)
途中、熱で倒れたり発作(新作作りたい症候群)
が出たりと踏んだり蹴ったりでしたが
なんとか出来上がりました

文字数はまさかの8000文字w
書きたいこと書きまくってたらこんなことに
(´・ω・`)


東京から少し離れた海の臨めるとある墓地

そこに際立つ洋風な墓が一つ白く輝いていた

対照的に墓には真っ赤なマフラーがかけられていた

その赤い輝きは悲しく儚い印象を受ける

そこに青い少女が白い花をもって現れた

チルノだった

「ごめんね、遅くなっちゃった」

チルノは墓に花束を置くとしゃがみこんだ

「あいつらは来た?…多分来てないな…ごめん、寂しくなかった?」

墓が返事するわけでもなく

ただ海風にマフラーが揺れた

「…君がいなくなって…早くも2年…もう傷はとっくに癒えたと思ってた…でもあそこに行くとやっぱり古傷が痛む…君のせいじゃ無いんだけど…君に聞いてもらったら…楽になると思って…」

チルノが視線を下げた

「そういえば君に似た人がいたんだ…小悪魔って言ってね…今は敵だけど…いざこざがなくなったら君みたいにスカウトしたいと思ってるんだ…分かってるよ、どんなに君に似てても君の代わりになるわけではないし…あたいの傷が癒える訳でもない…だけど…」

チルノが立ち上がった

「今度はいつ来れるかわからないけど…近い内に必ず来るよ…その時は旨いお酒でも持ってくる」

チルノが去ろうとすると海風に煽られてかまたは墓の持ち主の思念か

マフラーが飛んで来た

マフラーはチルノの足に絡まりついた

「いいの?これは君に…」

チルノは墓を驚きの視線で見つめた

しばらくしてからチルノはフッと微笑んだ

「分かった…一緒に行こ」

チルノはマフラーを首に巻かずに墓場を去った

するとすぐに携帯が鳴った

「はい……!?」

チルノの瞳が鋭く鈍い光を放つ

「本当に?…うん…ダイアモンド・クロウスは?…あたい達も動くよ…あたいは直接、敵ん所にいくね」

短く告げるとチルノは電話を切った

「…紅の幽霊…君たちは暴走してる…止めなくちゃ…あたいが…」

チルノは覚悟の眼差しで空を見上げた

 

チルノの元にやってきた情報は

ジョークには聞こえないような内容だった

紅の幽霊が正式にダイアモンド・クロウスに宣戦布告

ダイアモンド・クロウスはリーダー、クラウドの指示を仰がずに宣戦布告を受領

これで本格的に二つの武装組織が日本で衝突するという最悪の事態に陥った

事態を重く見たspadeは独自行動権、所謂ライセンスを施行

紅の幽霊かダイアモンド・クロウスかどちらかを無力化するために行動を開始した

だが両者とも聞く耳を持たず

遂に紅の幽霊の日本に構えた本拠地にダイアモンド・クロウスが攻め混む様に侵入し、抗争は本格化の一途を辿った

その情報をいち早く予見していたとある組織が紅の幽霊の本拠地

地元では幽霊屋敷と呼ばれ、誰も近づかないような廃屋に人知れず侵入していた

 

「ひゅー」

魔理沙の下手な口笛が小さく響く

「本当に日本でドンパチやるとはな…こりゃめんどくせぇ事になりやがったぜ」

魔理沙は苦笑いを浮かべながら周囲を見渡していた

「アリス…パチェはまだしもお前は着いてこなくても良かったんだぜ?」

アリスは頬を膨らませた

「あら、私は足手まといだとでも?」

「違うんだ…これは紅の幽霊とspadeとDC(ダイアモンド・クロウス)の問題だ、それに準ずる奴が解決しなくちゃなんねぇ…だよな?パチェ」

パチュリーは小さく頷いた

「なら、これはどう?私はー!元spade、霧雨魔理沙のガールフレンドだー!…どう?準ずる奴でしょ?」

「…くす…うふふ…あはは」

パチュリーが小さく笑い始めた

「パチェ?」

「ほんと…アリスはあいつに似てるんだから…魔理沙、無駄よ、この手の人間はこうなったら梃子でも動かないわ」

「…ったく…変なこと頑固だよ…二人とも…」

魔理沙は後頭部を掻きながら苦笑った

「梃子でも動かねぇならしょうがない…行こうか、今回は"某二組織の和平による民衆の平和"って宝を戴くぜ」

魔理沙達がこれより行動を開始した

 

同時刻、最前線

spadeの二人(霊夢と妖夢)が様子を伺っていた

正確にいうと妖夢が様子を伺って

霊夢は携帯端末の釦を必死に押しては耳に当てていた

「やべぇな…本格的にドンパチやるぞ…霊夢、クラウドには連絡ついたか?」

「え…と…なんか変なとこ飛んじゃって…」

役割を交代する事にした

妖夢は携帯端末を受けとると画面はとあるネット通販サイトのホームページだった

「何をどうした?お前」

「白いアイコンを押して一番、始めに文字が出てそれを押したらなんやかんやあって…3000円がどうとかって出て…もう何がなんやら…」

「お前はお前でパニクってんな…ほら、彼氏の声でも聞いて落ち着け」

霊夢は携帯端末を握りしめて話し始めた

「もしもし…クラ?」

(あぁ…霊夢か?今何処だ?)

「件の幽霊屋敷の庭よ…クラは?」

(…今、彼の場所に向かっている…俺のバカどもが済まん…)

クラウドの暗い声に驚き霊夢は一瞬、会話を止めたがすぐに明るい声で言った

「良いって良いって!元気で素敵じゃない!それに彼らの宣戦布告はクラや私達をこれ以上巻き込まないようにするために自分達なりの決着をしようとした結果の物だったらしいわよ…バカどなんてとんでもない、寧ろ上司思いのいい部下じゃない」

(…済まん、嫌味にしか聞こえない…)

「嫌味なんかじゃないわ、私がクラに嫌味なんて言ったことある?」

(それどころかジョークすら聞いたことはないな)

霊夢の眼前に肩を竦めるクラウドが見えた

(今からどう急いでも一時間位は掛かる…済まないがバカどもを頼む)

「分かったわ…大丈夫よ、二組織の和平を手土産に待ってる」

(分かった極力急ごう)

通話は切れた

霊夢は深呼吸すると近くに落ちていた空の弾倉を握りしめる

それは鎖に変化し紅の幽霊、DC関わらず拘束し、無力化していく

「…行くわよ、妖夢」

「…覚悟は決まったのか?」

「えぇ…私とクラの約束は…鋼より硬く…何より最優先よ」

妖夢の前腕から刃が飛び出した

骨が変化したものだろう白く虚ろく光っていた

しかし次の瞬間、件の刃は鋼のような重々しい黒に変わる

「行くぞ」

「えぇ」

短いやり取りを済ませるとニヤリと笑った

「どっちを無力化する?」

「決まってるじゃない、紅の幽霊よ」

「なら幽霊屋敷に乗り込むぞ」

「分かってる」

霊夢たちが行動を開始すると

すぐに紅の幽霊の団員が銃を武器に迫ってきた

「邪魔なやつは切り捨てる!」

妖夢の前腕から生えた刃は団員を切り裂く

「切り裂きジャック再び降臨だ」

霊夢も鎖で拘束する

しかし、流石は訓練されたマフィアの犬

鋼鉄の鎖を引きちぎる

「あらら…んじゃ仕方ないわね」

鎖は団員の体を這い上がり首を締め上げた

流石の戦闘員も昏倒する

「命は奪わないわ…大切になさい、命あっての物種よ」

そして邪魔者を退けながら本拠地であろう幽霊屋敷へ向かった

 

その頃、チルノはというと

幽霊屋敷近くの海岸でいた

さざ波の音を聞きながら目を閉じていた

マフラーはつけられておらず手に持っていた

海岸の砂浜を踏む音が聞こえた

チルノはゆっくり目を開ける

「待っていたよ…小生くん」

小悪魔が困惑したように立っていた

「小生に…何用だ?spadeのリーダー殿」

「なぁに…あんたんとこのリーダーとあたいは旧友でね…出てきなよ、レミィさん」

彼女は闇より音もなく飛来した

蝙蝠のような翼が目を引く

ネット用語で言うところの「ロリ」というような容貌であった

「ボス」

小悪魔はさらに困惑を顔に浮かべる

「何故、今、ここに?」

「今、説明する暇はない…すまないねぇコア」

レミリアはその見た目から反してかなり大人びた対応をした

「チルノ…云年ぶりか…相も変わらず大妖精の事を引きずっているみたいだが?」

レミリアがチルノの手に持つマフラーを見た

レミリアの外套が風に揺れる

「…引きずっているのではない…忘れないだけさ…否…忘れれないだけ…か…あんたこそ、外套、脱いでないみたいじゃないか?、忘れれないのはお互い様って事だ」

「私のこれは忘れれないからじゃない忘れないためさ…私は心底忘れっぽくてね」

チルノが氷の刃を精製し斬りかかった

レミリアの周りに黒い粒子が飛び回り氷を受け止める

ぶつかり合いはすぐに異能力波動となり蒼白い振動と光を放つ

その勢いは小悪魔を軽く仰け反らせた

「…!!なん…だ…この波動は…!」

当の二人はまるで立ち話するみたいに話始めた

「年が回ったかい?」

「それはないよ」

黒い粒子は集まり鉄に変化した

その鉄は集まり細剣に変化した

「なら死ぬほどの忘れっぽさだね」

「過去に囚われないと言ってくれたまえ」

チルノが肩を竦めた

「あんたんとこのフルンティングは元気かい?」

「フルンティングとは言うねぇ…確かに物理的にそうかもね…元気だよ、危ういほどにね…」

両者、武装を解く

「…」

小悪魔の頬を汗が伝う

その目は驚愕を光にし具現化する

「-そうか…まぁ姉妹仲良くね」

「仲はいいよ、もともとあの子は純粋なの…喧嘩はしないわ…怒らせると私でも命に関わるし…」

しばらくの沈黙が三人を包んだ

「小生は…何故、呼ばれたのです?」

小悪魔の一言に二人が我に帰る

「説明してなかったね、君は和平の鍵なのさ、平和の白い鳩さん」

チルノが軽快に語る

レミリアが一つ咳き込みチルノを引かせる

「小悪魔、君に頼みがあるんだ…君には新しい世界を見てほしいんだ…マフィアでも元マフィアの亡霊でもない、もっと健全な新しい世界を」

「ボス…申し訳ありません…小生にはその権利はありません…小生は…破壊の権化です…ボス」

「皆までいうな…コアの言い分はわかる…どうしてもというならそこの唐変木と闘ってみろ」

「良いんですか?…確かに彼の人はお強いです…しかし、小生の得意な異能力なのですが…」

普遍な能力であるパイロキネシスと氷結能力、大体は前者は後者より強いというのが定説であり、この世界でも受け継がれている

例え、能力同士は影響しないとはいえ本人の耐久性は異能力に一切を依存するのである

例えば氷の能力者は炎にめっぽう弱く

地面や岩の能力者は雷の能力の攻撃でダメージは受けない

「…よし、ならやってみろ」

小悪魔が身構えた

「いいね、小生ちゃん」

チルノは不敵に笑いながら氷の刃を構えた

レミリアは頭を抱えた

「ったく…こっちとらただの仇討ちなのに…面倒な奴等まで釣り上げちゃったなぁ…日本怖いなぁ…」

 

幽霊屋敷

警察が到着し銃撃戦を開始

戦況はかなり泥沼であった

幽霊屋敷の二階の長い廊下にはハート怪盗団の姿があった

「…静かね」

幽霊屋敷は本当に幽霊でも出そうなくらい暗く静かであった

「…」

魔理沙は何やら真剣そうな見幕で進む

「魔理沙?」

「!!」

魔理沙が光剣を構えた

「おや…貴方でしたか…緑の彼女かと思ったのですが…」

美鈴がそこに立っていた

孤児院に姿を見せたときよりも鋭い殺気を振り撒く

「早苗は残念ながら居ないぜ…あいつは時間にはルーズなのさ」

「そうですか…三対一でも構いませんよ?…それでウォーミングアップでしょうがね」

美鈴の両手が黒い鋼に変化する

それを見た魔理沙の頬を冷や汗が伝う

「いってくれるじゃない、唐変木」

アリスが魔理沙の前にたつ

「アリス!下がれ!こいつの体術は本物だ!…早苗に手負いを負わせる位には強い!」

「魔理沙、行きなさい」

「さっきの話聞いてなかったのかよ!いいから下がれ!私が早苗が来るまでの時間稼ぎをするから!」

「大富豪において…最も強いカードは最後まで取っておく物よ…私とパチェと魔理沙、誰が切り札かよーく考えなさい?、そしてこいつに割くべき人員も…」

アリスが身構えた

両手に旧式のリボルバーを握る

かなり年季が入っている骨董品だ

「さぁ!行きなさい!」

渋る魔理沙をパチュリーが首根っこを強引に掴む

「パチェ!」

「アリス…あんた、誤解してるよ…私らん中でもこいつらん中でも二人はジョーカーよ…これじゃ大富豪は成り立たないわ」

「ジョーカー二枚の大富豪もあるのよ、それに私はせいぜいハートの3くらいがお似合いよ」

パチュリーがニヤリと笑う

「死なないでよ」

「それだけは勘弁ね…死に場所なら魔理沙の腕の中って決めてるから」

パチュリーが魔理沙を連れていく

「パチェ!離せ!アリスが!」

「あいつは死なないわよ…もしもの事があっても相手は美鈴よ…あいつは何があっても人は殺さない…不殺ノ誓なのよ」

二人を見届けると美鈴が構えた

「私の能力は見ての通り体の変質です…貴方の能力をお聞きしても良いですか?」

「あー、何て言えばいいのかな…ルイス・キャロルって知ってる?」

美鈴が首を傾げた

「不思議の国のアリスなら知ってるでしょう、あれを書いた人よ」

美鈴が納得したようにうなずく

「私の異能力は、ルイス・キャロルが書いたアリスが関わる3作品に…ん?三作品かな?…ま、これ以上の説明はややこしくするだけね、それに関する能力を使える能力なのよ…つまり、全く異なる能力を3つ保有する能力ね、ややこしいんだけど」

「3つも!?」

「そう…その能力についてはすぐ解るわよ…痛いほど刻み付けてやるからね」

「怖いですね…」

美鈴とアリスが互いに床を蹴った

 

spadeの面々はやっと幽霊屋敷の大広間に侵入した

シャンデリアが朽ちて落下している

「妖夢、ごめん」

「…銃撃戦の最中、携帯落として取りに行くバカがこの世に何人いるか…明日、数えてきてやろうか、きっと一人だろうから…」

「だからごめんってぇ…これ、クラウドからの借り物だからさ…無くしたくなくてぇー」

霊夢がシャンデリアの上を見上げた

「誰?」

「鋭いですね」

タバコの煙が上がっている

「流石は”霊夢”名には恥じない実力と見える」

霊夢が目を鋭く、鈍く光らせる

「あんた…何者?」

「私めは十六夜咲夜…

彼のAll my child plansの産物である化け物」

咲夜はお辞儀した

「お客様方を丁重にもてなすようにとのご命令を戴いておりますので…スカーレット家のメイドたるおもてなしをいたしましょう」

霊夢が妖夢の前に出る

「なら、タバコを吸うの止めたら?不快に思う人もいるわよ?お姉さま」

咲夜は手に持った銀食器を鎖に変える

霊夢は飛んできた鎖を握り床を鎖にする

「覚えているとは流石ですね」

「All my child plans…全て私の子供計画…その産物なのでしょ?」

妖夢の頭に電撃が走る如く霊夢の声が響く

(…もしその計画で、そのドッペルゲンガーが産まれたのだとしたら…その時、話すよ)

「霊夢、終わったら説明してくれよ?全部」

「…私は約束だけは守るわ」

妖夢は頷くと走って階段をかけ上がった

「おや?おかしいですね」

「何が?」

「テンプレートなら、先に行け!って台詞があるものでしょう…それが無かったので」

「そんだけお互い信頼してるのよ」

咲夜が大人げを含んで微笑んだ

「そう…」

咲夜が攻撃を止めた

「…私は…貴方に姉と呼ばれる権利はないと思ってた…会う権利も…」

「そんな事ないよ、私にとって貴方は…たった一人の姉よ…それが普通の姉妹の形ではなくても血の繋がった姉妹なのよ」

霊夢の言うことを聞いて咲夜が一言

「このような形で無ければな…」

「…お姉ちゃんは…私と戦うの?」

「致し方ないでしょ…」

咲夜が床を蹴った

 

二階、廊下

アリスが膝を付く

「また…ですか…」

美鈴の頬を汗が伝う

「あーあ…まさか…私の苦手なタイプだとは思いませんでしたよ」

「そう?誉めてもなにもでないわよ」

美鈴が鋼鉄の拳をアリスにぶつける

がアリスはまるで水面のようにアリスの存在が揺れる

「第一の能力、私や私の触れた人間の存在のスクリーン化…”鏡の国の能力”…しようとすれば存在を相手から隠蔽することもできる」

「…そういうタイプ苦手です…正々堂々タイマンしませんか?」

アリスが現れた

「そういう能力もあるのよ?ただ、タイマンではあんたには勝てない…そう思っただけよ」

「ですが…」

アリスがため息をついた

「私の場合、死ななきゃどっちでも良いのよ、銃撃戦もしてるし怪我の覚悟は出来てるし…殺さないと約束してくれるなら」

「してくれるんですか!?タイマン!…私は人は殺しませんよ、あくまで決闘にしか興味はありませんし」

アリスが明後日の方向に視線をやった

「良いでしょう…見せてあげしょう二つ目の能力…ジャバウォックの詩」

アリスの腕が巨大な獣のように変化する

「ジャバウォック…伝説上の獣ですね…うふふ…楽しみです」

鋭く巨大な爪が鈍く黒い光る

「行くわよ、もう、姑息な手は無しよ!」

「血がたぎります…ね!」

また、互いに床を蹴り爪と拳が火花を散らす

 

海岸

「…嘘だろ」

小悪魔は押されぎみであった

「これが…世界…」

レミリアがにたにたと笑う

「気持ち悪いな…自分の部下の敗北がそんなに嬉しいか?」

「違う…あの頃の自分みたいだなと思って…」

レミリアが膝をついた小悪魔に近づいた

「小悪魔、新しい世界を…見てこい」

「…チルノ殿…頼みます、私を…spadeにいれてください!」

チルノはしばらく小悪魔の瞳を見つめた

吟味するように瞳に宿る覚悟を探るように

そして目を閉じて一言

「良いでしょう…」

「ハナからそのつもりだったくせに…素直じゃないねぇ…」

レミリアが急に口調を変えた

「小悪魔にもしもの事があれば殺す」

「分かってるよ…任せなさいな」

チルノがレミリアの肩をトンと叩く

その時、レミリアの携帯が鳴った

「もしもし、私だ…何?…何してんのよ!見張りは?!このままじゃ…血の海になる!」

レミリアが携帯をしまう

「何が?」

「フランが逃げた…大分、イライラしてたし…このままじゃ」

「!!」

チルノが携帯を開く

「…くそっ!出ない…もし、あいつらがもう本拠地に侵入してたら…」

「最悪だ…今から向かっても…」

夕日が傾きつつあった

「全て託してみるか…霊夢のやつみたいに」

チルノは携帯を再度取り出す

「もしもし、クラウドか?…今何処だ?…真っ先に霊夢の元へ迎え、そこで奴等のボスの妹を迎撃しろ、殺すなよ…じゃ武運を」

チルノが電話を切った

「誰に連絡したんだ?」

「なぁに…ただの偏愛者だ、いい男だが…ただあいつは霊夢を溺愛しすぎている、それに外国人の異能力者だ」

 

幽霊屋敷、地下図書館

「パチェ…ここは?」

パチュリーと魔理沙の姿があった

「地下図書館よ…紅の幽霊の頭脳であり、私の家」

「やっぱりパチュリーは…」

パチュリーが儚しげに微笑んだ

「そう、私は元マフィア…今、やってることは…」

「皆までいうな…私だっておんなじ経験があるんだよ…」

魔理沙の目の前に景色がフラッシュバックする

自分の持った拳銃と仲間の無残な死体

そしてどこかからこだます悲鳴

そこまで見たあとで魔理沙は振り払うように頭を振った

「魔理沙?」

「んでもねぇよ…でさっさと終わらせよう」

「あら?パチェじゃない久しぶり」

巨大な本棚の上に小さな影があった

小さな宝石のようなカラフルな装飾がカラカラと透明な音を立てる

「フラン!?なんで!」

「みんな外に行っちゃったからさ、暇でさぁ…ねぇ遊んでくれる?」

フランは無邪気な笑顔を見せる

「良いぜ、遊んでやろう」

「魔理沙!フランは…」

「良いじゃねぇか…悪いやつでなければなんとかなる」

魔理沙が光剣を展開した

「貴方は壊れない人?」

「おいおい、誰に聞いてんだ?まさか天下に名高いこの大怪盗、霧雨魔理沙様…にいってんじゃねぇよな?」

「怪盗?泥棒さん?…いいや、遊んでくれるのなら」

フランはレースのリボンを取り出した

「リボン?」

「魔理沙!離れて!」

床にレースのリボンが突き刺さる

床のタイルは砕け宙に舞う

「え…」

魔理沙は呆然としていた

「フランの能力はレースのリボンを刃物のようにして物を切る事ができる異能力よ!その鋭さは1mのリボンでこの屋敷を簡単に真っ二つにできるわ!それどころか三枚に下して刺身にできるわよ!」

「幽霊屋敷の刺身か、不味そうだ」

魔理沙が苦笑した

「ジョークを言ってる場合じゃないわ!逃げるわよ!」

「誰が逃げるといったよ?約束は守る…遊んでやるさ」

魔理沙は光剣を構える

「おいおい、もう遊びは終わりか?」

「ううん。寧ろ、これから!」

レースのリボンが宙を舞い魔理沙に襲いかかる

 

その頃、幽霊屋敷に男女が入り込んだ

「バカ共が…ったく…誰が巻き込まないっだ、誰に似た…?」

「十中八九、クラウドでしょうね」

「…霊夢を探すぞ 」

「分かりました!」

二人は銃撃戦の中を進んでいった




流石に全部、終わらせるのは気が引けたのでここで切りました
文字が多いだけ密度は高いとは思います
すっからかんではない…と信じたいですね(;・ω・)


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♥2

なんやかんやこれを書くの楽しいです
今回で全て私の子供計画とか色々、解ります
それが"真実"だとは断言しませんがね(。-∀-)ニヤリ


大広間

そこは鎖が飛び交っていた

文字にするとこんなにも不思議な文字列もないだろう

だがそうしか表現ができない空間だった

天井や床は鎖に変化したまま放置され

鎖を作り出した当の二人は命を賭けた鎖のワルツを躍り続けた

「こんな…こんな事して何になるの?、忠誠心の為?…忠誠心は虚しいよ…表では二人でも…心の中ではいつまでも一人なの…ひとりぼっちは寂しいよ…」

霊夢のふいの言葉に一瞬、咲夜の動きは止まる

そしてまじまじと霊夢の瞳を見つめて答えた

「私はそうは思わないわ…」

咲夜は煙を吐いた

「…忠誠のために生きてたらさ…悲しいとか寂しいとか…無くなるのよ」

「…」

霊夢が攻撃の手を止める

「霊夢…?」

「なにしてんだろうなって思ってさ…お姉ちゃんなのに…家族なのに…」

「家族?」

霊夢はうなずいた

「お姉ちゃんだもん…家族だよ…私、クラウドとも喧嘩したことないのよ…なのに家族と殺し合いするなんて…おかしいよ」

咲夜が驚いたように霊夢を見つめた

「貴方って…変わらないわね」

「変わらない人なんていないよ…私だって変わってる…もう立派なレディなんだから」

霊夢の話を聞くと咲夜がクスクスと笑う

「霊夢がレディねぇ…可笑し…こんな話、霊夢とできるとは思わなかったな…嬉しい…」

咲夜が鎖を引っ込めた

「私は…本当に何してるんだろ…霊夢は家族なのに…」

「お姉ちゃん…」

咲夜はタバコを携帯用灰皿に納めた

「…こんな私でも姉と言ってくれる霊夢がいる…こんな私を信頼して仕事を任せてくれるお嬢様がいる…幸せ者ね、私って」

「…そうだね…私も幸せ者だよ、お姉ちゃんがいるし、クラウドもいるし」

霊夢の笑顔が小さな頃の霊夢の笑顔と重なる

「…フフ…ところで霊夢、クラウドくんとはどうなったの?」

「あ…」

霊夢の顔が一気に真っ赤になる

「さっき、喧嘩もしたことないって言ってたけど…まだ、喧嘩もしたことない位仲良しみたいだけどね♪」

「あぅ…それは…えっと…」

咲夜が肘を霊夢にトントンと当てた

「…隅に置けないな…霊夢も」

「ち、違うよ!?そ、そう言うのじゃなくて…私はクラウドの事は…確かに好き…"なのかもしれない"」

咲夜が首を傾げた

「"なのかもしれない"?」

「分からないの…クラウドとは正直、お姉ちゃんよりも付き合いが長いし…誰よりも特別で…誰よりもお互いを理解してる…ただこれが恋愛であるかどうかと聞かれると…分からない…友達のままで居たいような気もするし…その…れ、恋愛対象として…見て欲しいとも思ったりも…したりしなかったり…」

「どっちよ…」

「……」

霊夢は赤面して黙りこんでしまった

咲夜はため息をついた

「あんだけバカップルやられて恋愛対象じゃないと言われてもバカにしてんの?って感じだし、それに恋愛か恋愛じゃないかなんて関係ないじゃない…相手を思い思われる事が大切なんだと思うわよ?」

「…でも」

「一回、腹割って話してみなさいな…きっとクラウドもおんなじようなこと考えていると思うからさ」

咲夜の子供を諭すような笑顔に霊夢はまた、赤面する

「…私、何年経ってもお姉ちゃんに勝てる気がしないよ」

「そう?うふふ」

その時、屋敷の扉が砕け散った

二人は同時に鎖を扉に向ける

「霊夢!」

「クラウド!?」

クラウドと早苗が屋敷内に侵入した

クラウドと早苗は合図を送り合い

早苗は階段を駆け上がっていった

「どうして」

「飛ばしてきたんだ…急にお前の顔が見たくなってな…馬鹿野郎共の説教も済ませて来た」

クラウドが霊夢の頭を撫でる

昔からこの行為は彼を落ち着かせる

焦りで染まった頭脳が正常に動き出す

霊夢は無事だったのだ

「…嬉しいこと言ってくれるわね…」

霊夢の赤面を見て彼の頭脳は笑顔を見れるほど落ち着く

「クラウドくん、随分、焦ってたみたいだけど?」

「そうだ、咲夜、お前の主から伝言だ、妹が逃げた…だそうだ」

咲夜の表情が凍る

「…お姉ちゃん?」

「いつ…その話を?」

「数分前だ」

咲夜は霊夢の肩を持った

「霊夢…」

「その妹さんが恐ろしいのよね?…手伝うよ」

「巻き込む訳にはいけない…と言っても無駄よね…殺されないでよ」

「お姉ちゃんこそ」

霊夢と咲夜は階段を駆け降りた

クラウドも後を追う

 

地下図書館

「くっ!」

魔理沙は飛んで来る鋭利なリボンを避けつつ逆襲の算段を立てていた

「ねぇ…逃げてばっかでつまんないーもっと攻撃してきてよ」

フランはつまらなさそうに本棚の上に座り足をぶらぶらさせる

(こっちとしては…パチェ待ちなんだがな…あれさえ…見つかれば…)

当の本人であるパチュリーは本を探していた

本屋をゆっくりと吟味するようにでは無く、まるで何かから逃げるようにとも見えるくらい焦りを見せていた

「…遊びたいのか?ならお望み通り!」

魔理沙は懐中電灯を自分に押し当てた

「マスター…スパーク!!」

巨大な光球はフランに直撃した

砂煙と瓦礫が落ちるパラパラとした不安を煽る音が図書館を支配する

「終わったか…?」

「何が?」

魔理沙の表情が凍り付く

「私はここにいるよ」

フランは微動だにせず元の本棚の上に座っていた

「んな…全力のマスパだったんだぜ?どうやって…」

「フフッ…私のリボンは何でも切っちゃうのよ…それが光みたいに実態が無いものでもさ」

フランの背後からレースのリボンが魔理沙に襲いかかる

魔理沙は咄嗟に光剣を展開し、身を守ろうとした

しかしリボンは光剣を切り裂き魔理沙の肩を貫いた

激痛に視界が染まる

「お前も…能力干渉型…霊夢と同じか…」

「そういうこと…さぁ続けようか」

再度、レースのリボンは魔理沙に襲いかかる

「!!」

魔理沙は今度は回避行動に成功

レースのリボンは床に突き刺さった「おぉー、避けれた避けれた!すごいー、じゃ、次は首!」

リボンは魔理沙の首を狙い進行した

魔理沙はリボンに貫かれた

首が飛び鮮血が飛び散った

パチュリーの悲痛な叫び声が響く

「魔理沙!」

フランはそんなパチュリーを他所に首を傾げる

「ん…変だな…高揚感が無いと言うか…手応えが全く無い…まるで」

「光を切ったみたい…か?」

魔理沙はフランの背後に立っていた

光剣を横に振り抜きフランを吹き飛ばす

「ライト・マリオネット…お前が切ったのは私の姿をした、光人形ってこった、あのリボンは避けれそうに無かったんでな、一瞬だが、自身を光にした…お陰で服が焦げちまった、どう責任取ってくれるんだよ、一張羅なんだぞ?これ」

「…ふふ…あはは…」

不気味にも思える笑い声が響いた

「…あれで死んだとは思わなかったけどな…いくらなんでも元気過ぎねぇか?」

「そう?…私としてはまだ、ウォーミングアップも終わってないよ?」

刹那、パチュリーの声が響いた

「見つけた!」

「でかしたぜ!パチェ!…フランだっけか…残念ながら遊びの時間は終わりだ」

魔理沙とパチュリーの全身が光出す

フランは目をふさいだ

「アリスを迎えにいかないと…怒るからな」

そう言い残しパチュリーと魔理沙は消えた

その代わりに霊夢達が入ってきた

「発作が出てるわね…」

「発作?」

咲夜がタバコの煙を吐く

「彼女の異能力の波動は強すぎるの…しかも破壊の能力だから、能力自体の破壊衝動に飲まれてしまわれるのよ…結果、暴走してしまう」

「暴走…懐かしいわね」

霊夢が床を鎖に変化させる

咲夜も同様の事をする

「妹様は能力干渉型よ…鎖は全て斬られるわ」

「能力干渉と能力干渉がぶつかったらどうなるかしらね」

咲夜と霊夢がニヤリと笑った

「試してみる?」

「楽しそうね」

鎖とリボンが火花を散らす

霊夢のとは違い、咲夜の鎖はナイフでしか生成されない

しかし刃の部分は鎖にならず残るため霊夢の鎖よりも殺傷力は高い

そんな鎖をフランのリボンはことごく貫き切り裂き撃ち落とす

やがてフランの周りに鎖が集まっていた

その霊夢と咲夜の鎖がフランを拘束する

「咲夜…これはなに?」

フランが殺意を持った視線を咲夜に向ける

「妹様…申し訳ありません」

「妹様…だっけ?もう落ち着きなよ闘いは終わったよ?、これじゃ抗争とは言えないだろうけどね」

フランのリボンが鎖を切り裂く

リボンはそのまま、二人に向かう

「っ!」

「妹様!」

咲夜と霊夢にリボンが突き刺さる

霊夢は右腕を咲夜は左足を貫かれた

向こう側が見えそうな位、大きな怪我だ

「五月蝿い奴等は嫌いだよ…ピーチクパーチク喋るなら…その口、削ぎ落としてやる」

フランのリボンが二人に進行する

霊夢が床に手を置く、すると大量の鎖が二人を包み壁となる

その壁は絶えず左へ動きゆっくりと回っている

「ふん!そんな鎖、バラバラにしてやるもん」

レースのリボンは鎖を貫き霊夢と咲夜に手負いを負わせる

鎖に阻まれてはいるが鎖を突破した時点でフランは勝利を確信し、微笑した

「…遅かったわね妖夢」

勝利を運ぶはずだったリボンは撃ち落とされていた

「なっ!」

鎖の中から日本刀らしきものを握った人影が現れる

「悪かった…迷ってね、この屋敷広いからさ」

妖夢の持っていた剣が黒く変色する

やがてそれは消えてなくなった

「異能力で私のリボンを撃ち落とした…?あんた一体…」

妖夢はフランを見つめた

暫くすると語りだした

「spadeには…異能力者のなかでも異端児が集まる…その傾向が強いのが今の代だ…方や六賢者の一人、方やなんやら計画の産物…そして私は"異能力者斬りのジャック"<ジャックザリッパー>だ、私はあらゆる異能力を納める事ができる、あくまで納めるだ、無効化はできん…がリボンの勢いを殺す事くらいはできる」

「反異能力者…」

妖夢はジリジリとフランに近づく

「私は異能力の働きだけを抑制するだけだ…波動自体を止めることはできん」

フランはリボンを妖夢に飛ばす

が軌道がずれたり落とされたりして全て無効化される

「くっ…なんで!なんで!なんでなんでなんで!!」

フランは半ば自棄になりながらひたすらにリボンを飛ばす

「彼の人の体は鉄で出来ていた、骨は鎖、心は氷…血液はきっと刃で出来ていた…」

妖夢がぼそぼそと喋り出す

フランのリボンは次々と斬られ落ちていく

「こ、こないで!」

「彼の人は死を名乗った…愛でも幸運でもはたまた金でもない…」

フランは初めて恐怖した

異能力が通用しない相手…未知の相手であった

「彼の人は死を望んだ…だから死を名乗った…」

「やだ…こないで…い…やだ」

妖夢はフランの頭を撫でる

するとフランを包んでいた波動が消え

フランは気を失い倒れた

「彼の人は我が師…我が全て」

妖夢は倒れたフランを抱えて咲夜に渡した

「良いとこ取りみたいになって悪かったな…抗争は終わった…フランの戦闘不能でな」

「…抗争と呼べるかしらね…一時的な衝突でしょ…これくらいだったら」

「そうかもな…と、私よりも遅刻した奴がご到着だぞ、」

クラウドが地下図書館のドアを開けた

そして霊夢の腕をみて頭が真っ白になる

「霊夢!大丈夫か!?」

「大丈夫よ…これくらいだったら」

「…本当にか!?すまない…本当は…巻き込みたくなかったんだが…フランは?」

霊夢が指差す先には咲夜がフランを抱えていた

「おわったのか…全部」

「一時はどうなるかと思ったけど…結果オーライね…さっ帰ろっか」

霊夢と咲夜が地下図書館を出る

「大丈夫なわけねぇだろ」

クラウドがボソリと呟いた

「…?」

「俺には分かる…霊夢がどれだけ無茶してるか…元来、あいつは痛みには弱いんだ…目を見れば全部お見通しさ…今の霊夢の腕は限界だろうな…腕にチェーンソー差し込まれたような物だぞ」

「…そうか…なぁクラウド、全て私の子供計画ってなんだ?」

クラウドは口をへの字に曲げた

「…隠してたってしょうがないだろ…お前はリリーホワイトは知ってるか?」

「あぁ…世界最強の異能力者だっけか…」

クラウドは天井を見上げた

「あぁ…そうだ、そのリリーホワイトの遺伝子を埋め込まれた人造なる異能力者…それがThe strongest gene…

TSGと呼ばれる人造人間…それが霊夢達なんだ」

「霊夢は人造人間なのか?」

「いや…それは語弊があったな…改造人間の方があってる…異能力者では無かった霊夢達に最強の遺伝子を埋め込み、無理矢理、異能力者にする…それが全て私の子供計画なんだ…皮肉な事に成功例は全て、死んで霊夢と咲夜…失敗作として蔑まれ、拘束された二人だけが生き残った…」

妖夢は黙り込んでしまった

「この話は霊夢には俺から話したとは言わないでくれ…あと、」

クラウドは白いハンカチを出した

「涙は拭いとけ」

妖夢の目には涙が溜まっていた

「な…嘘だろ…」

「…ありがとう…あいつの為に泣いてくれて…」

妖夢の頭にクラウドがポンと手を置いてそのままの形で霊夢を追いかけた

「…霊夢がなんでお前に惚れたのか…解ったよ…ったく、眩しいったらありゃしない」

 

クラウドは霊夢に追い付いた

霊夢は壁に凭れかかり患部である腕を押さえて呻いていた

「クラ…」

「嘘が下手なのに強がるな…バレバレだった」

霊夢は苦笑いして見せた

「駄目だったか…今回は自信あったのにな…」

「…」

クラウドは霊夢をそっと抱き寄せた

「…霊夢…」

「私を…心配するのは…慣れたんじゃないの?」

「掌返しのようで済まないが…やっぱり慣れない…何時になっても何歳になってもお前が笑顔でないと…俺は安眠すらできない」

クラウドが霊夢に顔を近づけた

霊夢の顔が一気に赤くなる

「なっ!ク、クラ!何を…」

「悪いな…今日は22:00~6:00までしっかり安眠する予定なんだ」

クラウドと霊夢の影が重なる

暫くするとクラウドから影は離れていった

「なっなななななななな!!?」

「痛み、和らいだか?」

霊夢は今、痛み所の騒ぎでは無かった

羞恥心と疑問符と歓喜が心で円を描き

グルグル回っていた

これ以上無い混乱だった

「くぁwせdrftgyふじこlp!」

絞り出した声だった

「どうしたんだよ…動揺し過ぎだろ、昔はなんか、お前から良くしてきたじゃないか」

「ど、動揺もするわよ!…3歳の子のき、キス…と、とは!…は、話が違うと…いうか…と、年相応になったからさ?…私もその…レディ…だからさ…そ、そういうのは…心の準備がいるというか…不意にやられると…その…」

配慮が足りなかったな…と後悔中のクラウドと

喜びと羞恥心が頭で廻り続け呂律が回っていない霊夢

「…まぁいこうか」

「そ、そうね…うん」

霊夢は白昼夢でも見ているかのように頭がふわふわと浮いていた

(クラがキスしてくれた!クラがキスしてくれた!いつもは頭を撫でるだけなのに…!、これってあれかな!?進展ありかな!?脈ありかな!?)

(やっぱり配慮が足りなかったか…まぁその分良いものが見れたから結果オーライか…動揺する霊夢も可愛かったし)

クラウドは霊夢の頭を撫でる

霊夢もずっと蕩けた笑顔でえへへと笑い続けている

やっぱりこれが一番、落ち着く

「帰ろうか」

「うん!」

 

霊夢や妖夢の読み通りダイヤモンド・クロウスと紅の幽霊の抗争は

異能力同士の戦争になる前に終息した

表向きには裏組織の一時的な衝突で

警察の迅速かつ適切な処置によって本格的な抗争になる前に終息したと発表された

実際、警察の活躍はというと

永遠、あわふたしてただひたすらに殉職者を増やしただけであった

spadeやハート怪盗団の活躍は表沙汰になることはない

が、裏社会では語り継がれるのだろう

"フランと遊んで生きて帰った団体"として…




これで紅の幽霊との抗争も一段落ですね
…あれ?何か忘れているような…
…あ、(-_-;)

冗談はさておき美鈴とアリスは次の番外編に関係してくるので今は気にしないで置いてくださいね


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♥番外編 風吹く場所で

今回の番外編はアリスと魔理沙の馴れ初めとハート怪盗団の結成のお話です
実はこれが書きたいが為に美鈴とアリスの戦闘は書きませんでした( ̄∇ ̄*)ゞ


屋敷二階廊下

美鈴は満身創痍で膝を付いていた

アリスは大の字になり倒れていた

「お強いんですね…」

美鈴が息を切らしながらニヤリと笑った

「…怪物ね…貴方も私も…」

アリスが半分、獣になった手を見つめ

苦笑いを浮かべた

「…怪物…か…」

美鈴が立ち上がりアリスに手をさしのべた

「ありがとう」

アリスは美鈴に助け起こされる

「お連れさん遅いですね」

「そうね…まぁ待ってたら来るわよ」

暫く二人を沈黙が包む

「それにしても暇ね…あ、そうだ、なんかお話しましょ?このまま突っ立ってても暇でしょう」

「なら!アリスさんと魔理沙さんの関係が知りたいです!」

美鈴は目を輝かせて言った

アリスは暫く渋るが諦めたように笑うと話し始めた

「そうね…じゃ…これは二年前かな…私がまだ、一人だった頃の話」

 

あのときの私は本当に性格が悪かった…

そんな事、自分で言うのもあれだけど…

私としては一人で居たかったし、誰とも関わりたくは無かった

その時の私は怪盗しててね…まぁ怪盗とは名乗れど皆からの認識はコソドロ程度…その日、食べるパンとか食べ物とかを盗んで食べてた

まぁ孤児なんてそんなもんよ

その時はみんな、冷たくてね

誰も手を差しのべてはくれない

それが普通だった…

私は英国生まれなんだけど

当時の英国は異能力者への風当たりが強くてね

異能力者は産まれるとすぐに母親が泣き叫ぼうが喚こうがとある施設に移送されるのよ

異能力者隔離及び観察施設…

通称、孤児院と呼ばれていたわ

私はそこに20まで居たわ

成人まで養うという決まりがあったのよ、正確には成人まで実験し続けるの間違いだけど

成人になった瞬間、捨てられるように野に放たれるわけだし

そこでは異能力者を使って

非人道的な実験を繰り返してたのよ

私はワンダーランド計画という実験のせいで今の3つの異能力があるわ

有名な異能力孤児は孤児院の違法な異能力者への待遇とその後のアフターケアの欠如の為に産まれた言葉ね

異能力孤児は私のように盗みで食い繋ぐ生活が関の山…

ひどい人なら一週間と持たずに死んでしまうわ…

私もきっと彼奴に会えなかったらその例に零れない結果になってたかもね

でも私は彼奴に会った

その時はパンを盗んで路地裏で食べてた時だったと思う

 

路地裏

暗闇が包み水滴が落ちる音がひたすらに響く

虫がそこらじゅうを飛び交い

昼間なのに薄暗かったと思う

空腹は限界に達してて視界がまるでピントのあわないカメラを覗き混んだようにぼんやりと踊る

私はパンを一心不乱に食べて空腹を満たすと沈黙に身を包んだ

その沈黙に私は落ち着き…私を安息へと導いた

目を閉じてみる

私はその時、目を閉じてみる事が好きだった

静かな場所で目を閉じると暗闇に包まれているような気がして何も感じなくなって

少し、安心する

その時も暗闇が包み、一人だと思わせてくれた

それが私の心の安地だった

複数個の足音が私の前で止まった

私は目を開く、大きな男が三人、私の前に立っていた

私がパンを盗んだパンの主人が見えた

警察を呼んだのだろうがその男達は私が異能力者だと分かると罵倒と共に暴力を奮ってきた

私としてはもう聴力もおかしくなってて罵倒も聞こえないし、そのような事は何度も経験していたので慣れてたこともあってあの程度の暴力ではどうにも思わなくなっていた

ただその時いつもと違うことがあった、警察らしき男が手にもっていたのは拳銃だった

ニヤニヤ笑いながら拳銃を私の頭に押し当てる警察らしき男

私は目を閉じてみた

いつも通り暗闇が私を包んでくれた

死んだらこの暗闇がずっと私を包んでくれるのかな?

そう思うと寧ろ死にたくなった

引き金が引かれようとした刹那

「おいおい、警察がか弱い少女を虐めてんのか?」

声に惹かれ目を開けると

私より年下と見える少女が不穏な笑みを含みこっちに近づいてきた

「Who are you!」

「あぁ?なんだって?こっちとら生粋のジャパニーズなんだよ、もう少しゆっくり話せよな、もあすろーりーぷりーず」

魔理沙だった

彼女の手入れされてない金髪が暗闇を照らす

そして魔理沙は懐中電灯を付ける

「とまぁ、HEROになる第一歩として助けてやんよ、美人さん」

「…」

魔理沙は光剣を展開した

「Is this a mutant! Is it?」

「あぁ?ミュータント?お前らAM論者かよ、はっ!ふりぃ考え方だな、異能力先進国なんじゃねぇのかよ、ここは」

魔理沙は嘲笑するように嗤った

「Licking Ya wants!」

男達は一斉に魔理沙に発砲した

魔理沙は光剣を横に振ると銃弾は溶けて消える

「鉄ごとき、溶かすなんて訳ねぇぜ…もちろん、人間もな…さぁ続けるかい?」

魔理沙の異能力にビビった男達は逃げていった

魔理沙は呆れたように肩を竦めると光剣を消した

「あらら…ったく…どこも一緒だな…あいつの理想とした国家なんて何処にもねぇのかもな」

魔理沙は一瞬の闇を含んだ表情を見せたあと、砕けた笑みを浮かべた

「怪我ぁないかい?美人さん、顔を傷つけられなくて本当に良かった」

会話したいけど、私は日本語を喋れなかった

「…日本語じゃなくてもいいぜ?さっきのはほんのジョークだったんだからさ」

「…」

私は英語で話しかけてみた

「貴方は…何者…なの?」

「私かい?私は…元HEROさ」

元という言葉に疑問を持つ

「元?」

「あぁ大切な人、一人も守れねぇ哀れなHEROの成れの果て…日本では治安維持をする組織の一員でな…一応、HEROだったんだぜ…ただ」

魔理沙は空を眺めた

「暴力での正義の実行は恨みしか産まねぇ、恨みの先にあるのは不幸なんだ…そんな事、大切な奴に言われてよ…解んなくなったんだぜ、正義つぅーのは…幸福つぅーのはなんなのかってことがな…私にとっての幸福は悪を倒すこと…でも悪は何をなして悪なのか…パン盗んで路地裏でひっそりと食べている奴が悪なのか、そいつを正義を捌け口にストレス解消するのが正義なのか…盗みはいけねぇことだがひっそりと生きることの何が悪いのか…やっぱ私にはわかんねぇ…わかんねぇ間は私はHEROじゃねぇ」

魔理沙は私に手を差しのべた

今の貴方みたいにね

「ただ、お前を助けた事は…そんだけは間違いだとは思いたくねぇ…私はお前にとってのHEROでありてぇ」

一瞬、新しい風が吹いたような気がした

その風は私と魔理沙…孤児と元HEROを包み、踊る

手入れの行き届いていない金髪は風に乗りキラキラと光を放ってたわ

「新手のナンパかしら」

「ジョーク言える程度には元気で助かったぜ」

私は魔理沙の手を取り立ち上がる

「HERO…か…ねぇ、貴方にとって誰がHERO?」

何気なく聞いてみた

魔理沙は空を見上げにこりと笑った

「この青い空を飛び回る自由な風…かな…」

「風がHEROなの?…変な人」

「あぁ…変だな、でもよ…あながち間違いでもねぇんだよ」

「どういうこと?」

魔理沙は私をみて微笑んだ

「風に言われてここまで来たらお前がいた」

その顔は今でも鮮明に覚えてる

儚く…いや、世界の先まで見透かした後の…まるで悟りを開いたような笑顔

また、新しい風が吹いたような気がした

今度は強く魔理沙の帽子が吹き飛ぶ

「あっ…」

私は気付くと帽子に手を伸ばしていた

本人よりも早くほぼ反射的に

「!…な、HEROだろ?」

手には収まらず何らかの力が働いたように魔理沙の帽子は私の頭に乗った

奇跡が起こった

そして目の前で笑う人物にさっき出会った事も名前も知らない事も忘れて

微笑みかけたような気がする

…生まれて初めて心から笑った

心から嬉しいと思えた

この人と出会えて良かったと思えた

「ねぇ、貴方の名前を教えて」

「魔理沙だ、霧雨魔理沙、お前は?」

「私、アリス、アリス・マーガトロイド…貴方をHEROと呼ぶ人間、第一号よ」

それを聞いた魔理沙は暫く驚いたように目を見開いて

そのあと、微笑んだ

「そうか…ありがとよ、アリス」

「…私も手伝いたい…貴方の正義と幸福探し」

「有難いんだが…その前に日本に行こうか、会わせたい奴が居るんだ」

魔理沙の言葉に私は首をかしげた

「それからさ…手伝ってもらうぜ」

それから私は魔理沙と一緒に暮らすことになった

 

三日後に私達は日本に行った

英国から出たことなかった私にはいろんな事が新鮮だった

飛行機を見たときは度肝抜かれたわね

だってあんな鉄の塊が空を飛ぶのよ

それに空を飛ぶってのは気持ちいいものでね…

魔理沙のHEROを近くに感じれるのよ

風は何も変わらないなと思った

 

日本に着くまで魔理沙は随分と暗い顔をしていた

飄々とした笑顔が無くなって少し焦ったけど

私が話しかけるといつもの魔理沙に戻るんだ

ズルいよね…ずっとそうやって私に隠して…

って言ったってこの頃、私達は三日の付き合いなんだけどね

 

日本に着くと東京をから少し離れた海辺の墓地に連れてこられたわ

そこのひとつの墓の前に魔理沙が立ち止まる

「ここだぜ」

「誰のお墓?」

「私の…大切な奴だぜ」

私は魔理沙に何かを言おうとしたけど何も言葉がでなかった

「…魔理沙?」

男の声が響いた

「クラウドか?」

魔理沙が立ち上がった

「今までどこにいた…霊夢が大変な時期にどっかいきやがって」

「…忘れたかったのさ…きっとな」

魔理沙は自嘲ぎみに笑った

クラウドはため息をつく

「本当はもっとキレたかったんだが…変わってないようだから良いさ」

「霊夢に何が?」

クラウドの表情が暗くなった

「いちごが死んでから…誰とも話さなくなった…俺とも…例外じゃなくな」

「…あいつ、いちごの事、めちゃくちゃ好きだったからな…仕方ねぇのかもな」

クラウドは私に気付くと近づいてきた

「魔理沙の連れか?…てか日本語大丈夫かな?」

「アリスだぜ、イギリス出身だからよ英語で頼むよ」

クラウドが頷くと英語で話しかけてきた

「俺はあいつの友人のクラウドだ…あいつ、いいやつだから末永く一緒にいてやってくれや…多分、お前が思っている以上に淋しがり屋だ」

「余計な事を言うな」

魔理沙の鋭いツッコミが入りクラウドが苦笑いを浮かべた

私は気になった事を聞いてみた

「霊夢さん…かな…大丈夫なんですか?」

クラウドは深くため息をついた

そのあと、自嘲気味に笑った

「初対面の人に気を遣われるとはな…大丈夫だよ、あいつは大丈夫だ…復活するまで俺が命に変えても守る…それが今の俺にできるあいつへの愛情だと思うからな」

「愛情…」

「あぁ…アリスだっけか?魔理沙を頼むよ…あいつも傷心ぎみだしな」

当たり前だ、魔理沙は私を救ってくれたHEROなんだから

そんな魔理沙が辛い思いをしてるなら…

詳しい事は解んないけどとにかく力になりたい

そう思いながら私は頷いた

するとクラウドはホッとしたように表情を微妙に緩めた

「クラウド、私のアリスを口説くなよな」

魔理沙がいつもの笑顔で帰って来た

なぜだかホッとした

「口説いてはいない、俺には霊夢がいるしな」

「…変わらんねぇお前は」

「お前だけには言われたくない」

クラウドは花束を墓の前に置いてきすびをかえした

「おい、もういくのか?」

「あぁ駅前のトイレに携帯を忘れたもんでな」

クラウドは手をぶらぶらさせながら去っていった

「携帯ねえ…」

魔理沙がニコニコ笑う

私は思わず手を握った

「どうした?」

「魔理沙…隠さないで」

魔理沙は首をかしげた

「辛いなら…苦しいなら言ってよ、私は…私だって!魔理沙のHEROになりたい!」

本音が零れ落ちていった

魔理沙はずっと黙っている

「私は…正直さ…もうHEROにはなれないと思ってた…そんな資格ないと思ってた…いちごは…私の大切な人は…私のせいで死んだ…初めは苦しくて考えれば考えるほど、死にたくなった…いちごは死に際、私に暴力からは恨みしか産まない…それは正義じゃないって言った…でも本当にわかんねぇんだ…暴力での制裁しかしたことのねぇ私には…それ以外の正義が…」

まるで仕切りを取ったように魔理沙の流れ出す本音

魔理沙の表情も段々、不安げになっていく

私はひとつひとつ、丁寧に聞いた

「なぁ…アリス、教えてくれ…私は…どうすればいい?私はどうすれば正義のHEROになれるんだ?」

「…怪盗…」

「へ?」

「私にはよく解んないけど…正義とは真逆の方向に行けばいいと思うの…見方を180°変えてみる…そしたら何か…いちごさんの事も分かるんじゃないかなって…ただ殺人だと暴力になっちゃうし…怪盗で誰も傷つかないように物を盗むのはどう?」

自分でも笑っちゃうくらい支離滅裂な事を言っているけど意外にも魔理沙の反応は上々だった

「180°見方を変えてみる…か…なるほど…いい考えかもしんねぇな…怪盗か…」

魔理沙はニヤリと笑った

本音を言っていた時の不安げな表情は消えてなくなっていた

いつものどこか謎の自信に満ちた表情へと変わる

「ありがとう、アリス…お前も私に取ってのHEROだな」

「…!」

その言葉がすごく嬉しかった

「うし!なら…これからも手伝って貰うぜ、アリス!」

「無論よ」

それから程なくして日本中に名を轟かすハート怪盗団が産まれたわ

 

アリスが語り終わると階段を駆け上がる音が聞こえた

早苗が美鈴達に近づく

「早苗さん?どうしたんですか?…すみませんこの体では決闘は無理っぽいです」

息を切らしながら早苗は首を横に振ると

「美鈴さん!妹さんが逃げ出したらしいです!」

「なんですって!…本当ですか!?どっちですか!?」

美鈴はアリスの方を向いた

「ありがとうございます!アリスさんの話、面白かったです!いずれ続きを聞かせてもらってもいいですか?」

「もちろんよ」

早苗に連れられ美鈴は去っていった

「…!」

光と共に魔理沙とパチュリーが現れた

魔理沙は肩に大きな穴が空いていた

「大丈夫!?」

「あぁ大した事はねぇ…それよりずらかるぜ、お目当てのもんは戴いた」

「?…あ、パチュリーの…」

パチュリーが頷いた

「そう…それじゃ帰って夕飯でも作ろうかしら…魔理沙お願いね」

「あいよ」

魔理沙達は光と共に姿を消した




5550文字でした
おしい!あと5文字多ければ!
アリスと魔理沙の馴れ初めはなんかはっきりとしない話でしたね
でも今回の話には後々大切になってくる用語とかもあったりなかったりしますよ(  ̄▽ ̄)


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♦2

今回の話は所謂、繋ぎです
でも結構大切な話なので後々、大切にry


紅の幽霊との衝突の後

ダイヤモンド・クロウスはイギリスへと帰っていった

がリーダーであるクラウドだけは日本に残りspadeと行動するようになった

霊夢はほくほく顔であったがチルノはまだクラウドを信用しきってはいなかった

 

そんなある日、都内

夜の中の町を歩く一人のサラリーマンがいた

彼はどこにでもいる普通のサラリーマンだ

が彼の運命を変える出来事が起こる

フードを深く被った少年とすれ違う

するとサラリーマンは急に苦しみだした

皮膚の表面から岩のような突起物がサラリーマンの体を包んでいく

そのまま、サラリーマンは絶命した

 

都内では謎の異能力による連続通り魔事件が起こっていた

被害者は全員に共通点はなく

老若男女色んな人間が殺された

被害者の中には10歳にも満たない少年までいた

警察は行動を開始したが手がかりをつかめずにいた

それはspadeも同じであった

 

spade本部

「う~ん…」

霊夢は件の通り魔事件の資料に目を通しうなり声をあげる

「どうした?霊夢、難しい顔をして」

クラウドがひょっこりやって来た

「あ、クラ…都内で起こってる通り魔事件の資料を見てたの」

「あぁ…ニュースで見たな」

「そんな、他人事みたいに…」

霊夢は苦笑いを浮かべた

その肩には未だに包帯が巻かれていた

フランとの戦闘で貫かれた肩にはまだ、痛々しい傷痕が残っていた

「…その事件だが…俺に調べさせてくれないか?」

「うん?クラが?」

クラウドは頷いた

「あぁ…お前には休んでて欲しいからな」

クラウドが霊夢の頭を撫でる

「なら、あたいも同行する」

チルノが歩いてきた

「なんだ?まだ、信用してくれてないのか?」

「当たり前…いくら霊夢の友人だからって…あたいが海外出身の異能力者を信用すると思わないでよ」

「チルノ」

霊夢の殺意の籠った視線を受けてチルノは一回、咳き込んだ

「霊夢、止めてくれ…チルノ、信用できないのを信用しろとは言わん…着いてきたかったら着いてこい…信用させてやる」

クラウドが本部の外へ歩いて行った

「…チルノ」

「聞きたくない…行ってくる」

チルノも後を追って走っていった

「…」

霊夢の目線が下に落ちた

「信用してあげてよ…どうして…」

 

クラウドは市街地へはいかずにとあるバーに入った

「…椛、待たせたな」

そこには白髪の少女がグラスで透明な音を立てて待っていた

「遅かったね…お先してるよ」

「酒は飲む気はない」

椛が膨れっ面になった

「つれないなぁ…まぁクラウドはそれでいいと思うよ」

「…で、情報を貰いに来たんだが」

遅れてチルノがバーに入ってきた

「そうだね、今回の事件、難しい問題でも無さそうだよ」

「どういう事だ?」

椛がグラスを持ち上げた

「詳しい事は解んなかった」

「お前がつかめない情報があるとはな」

クラウドが嘲笑ぎみに言った

「悪かったね…警察はダメだね、融通が効かない奴らばっか…警察は諦めて独自ルートを辿ってもフードを被ってるってことしか解んなかった…そしてその融通の効かない奴ら曰く、今回の事件で一番、恐ろしいところは」

「無差別かつ、殺傷能力の高い異能力の存在…か?」

椛が人差し指をクラウドに向けた

「ビンゴ♪一つだけ付け加えるなら相手の狙いが解らないところもだね…何より今、町を歩いていると知らず知らずの内に異能力範囲に入り一瞬で殺される…東京がそんな町であっていい筈がない」

椛がグラスの中の液体に写った自分を見つめた

「昔からお前はそうだ…どうしてそこまで東京に固執する?」

椛はクラウドの質問に答えることはなかった

「…別に構わないが」

「あいつが…愛した町なんだよ」

暫く黙ったあとクラウドが立ち上がった

「チルノ行くぞ」

「え?…うん」

クラウドとチルノが出口に向かった

「情報…ありがとう…あと…失礼な詮索だった…謝らせてくれ、すまなかった」

「気にしないで…また、必要な情報があれば連絡を頂戴」

「あぁそうさせてもらう」

クラウドとチルノが店外に出た

「あんたの方が苦しい過去持ってるだろうに…ったく、彼女持ちなのに他の女にも優しいとは…どういうことだい」

 

都内にでると被害者が歩いていた道を歩いた

がクラウドにもチルノにも異変はなかった

例のフード男も居なかった

それは同時に調査の行き詰まりを意味した

夕焼けが途方に暮れた二人を照らしていた

ふとチルノは話しかけた

「昼のあいつとはどんな関係?」

「椛か?…腐れ縁だ」

クラウドが軽く肩をすくめた

「手がかり、どこにもなかったね」

「かもな…でもあいつ…難しくはないと言っていた」

クラウドが歯を食い縛る

「何か…あるはずだ…」

チルノは必死のクラウドを不思議そうに眺めた

「なんだ?」

目線に気づいたクラウドの反応にチルノが目をそらす

「別に…ただ、なんでお前はそんなに必死なんだ?…霊夢に無茶をさせたくないから…?」

クラウドは夕焼けを見上げた

「それもある…が俺は霊夢のすむ町にそんな輩がいることが許せないのかもしれない…女子供も容赦なく殺すような輩が…」

クラウドはチルノのほうを向いた

「すまない、仕事に私情を…」

「いい…けど、その犯人がこのままじゃ野放しになっちゃうよ?」

クラウドは目を下にそらす

「分かってる…どうするかな…」

「クラ」

霊夢の声が聞こえた

「霊夢?」

「行き詰まってるようだったからさ」

「…聞いてたのか?」

霊夢は盗聴機をプラプラさせた

「うん」

クラウドはポケットを探る

すると機械が光を点滅させていた

「いつの間に…」

「また、どこかに行かないように首輪は着けないといけないでしょ?」

霊夢がウインクした

クラウドは呆れたようにため息をついた

「…そうだな」

「で、やっぱ行き詰まってんの?」

「あぁ…面目ないんだが」

霊夢は得意げに英語の論文を出した

そこにはミュータントストーンという見出しが大きく書かれていた

「ミュータントストーン…?」

「そう!異能力の波動を持つ天然石の事よ!異能力先進国である英国で見つかってね、同国の研究施設で正式に存在が認められたわ!でもね、このミュータントストーンの波動はとても微弱でね…人間の異能力者の波動を吸収して初めて異能力を発動する不思議石になるのよ!…でももしその石が任意で波動を送る異能力者が持っていたとしたら…」

クラウドは論文を一通り読んで話し出した

「しかし…それなら神出鬼没性は理解できる…が無差別性の説明ができないぞ」

「フッフッフッ…私がそんな重要な事を失念すると思うのかい?ワトソン君」

霊夢がニヤニヤと笑いながら言った

「誰がワトソン君だ…」

「実はこのミュータントストーン…質量による効能の違いがないのよ!つまり!」

「岩石級の大きさでも砂程度の大きさでも異能力は発動するってことか…!」

クラウドに台詞を横取りされ言葉の端が宙にうく

「ま…そういうこと」

「…なら無差別性にも説明がつくな…」

クラウドはちらりと霊夢をみた

霊夢は誉めてと言わんばかりに目を輝かせ尻尾を振るようにこっちを見ていた

「…ありがとう霊夢…助かった」

「どういたしまして」

霊夢がニコリと笑った

「私はいつも通りに待ってくから…帰ってくるよね」

クラウドはふと霊夢の首筋に光る物を見つけた

クラウドがバッと振り替えるとフードの男がいた

「霊夢!」

霊夢の首筋の光る物をクラウドは平手を横に振り抜き弾き飛ばした

半透明の宝石は地面に到着した

「!?」

「ミュータントストーン!」

ミュータントストーンは地面に着地後、しばらくしてから地面から鋭く尖った岩を突起させる

「…いつの間に…」

「クラウド!奴だ!黒いフード!」

クラウドは全力疾走で男を追う

相手は悠々と歩いていた為、簡単に追い付いた

クラウドが声をかける

「おい、貴様」

男は振り返りざまにミュータントストーンをばらまいてきた

クラウドは鞄に仕舞っていた大剣を手際よく取りだしミュータントストーンを分解した

が、ミュータントストーンを目眩ましに男は消えていた

「ちくしょう!どこに…!」

チルノが追い付いてきた

「クラウド、落ち着いて」

「霊夢がねらわれたんだ!落ち着いてられっかよ!」

「クラ!」

霊夢も後から走ってくる

霊夢の顔をみて少しクラウドは冷静になるとチルノの方をみた

「奴はどこへ」

「あのビル…」

チルノが指差したのは雑貨ビルであった

「…あれだな…よし、チルノ、霊夢と帰ってくれ」

「え?」

クラウドはチルノに小さく告げた

「ここからは汚れ仕事になる…俺は霊夢の前ではそんな事はできない…からお前と霊夢は帰っていろ、いいな?」

「分かった…」

「…頼む」

クラウドが雑貨ビルに走っていった

 

雑貨ビル、一時間後

「…」

服と顔を真っ赤に染めたクラウドが立っていた

雑貨ビルはテロリストの隠れ家になっていたらしく

クラウドの侵入後、全員が一気に襲いかかる

しかし、クラウドは彼らを容赦なく虐殺していった

半分以上のテロリストは首を飛ばされたり向こう側が見えそうなほどの穴を開けられたりして死んでいた

床が血で赤く染まり地獄と化す

そして犯人までたどり着いた

あの不条理かつ、無差別な残虐殺人はこのテロリストの工作員の仕業だった

テロリストの工作員は異能力者だ

その工作員はというとクラウドにミュータントストーンを構えていた

「仲間は全員殺した」

クラウドが不意に喋りだす

「あとは…貴様だけだ」

「ハンッ!俺に喧嘩を売るのか…!?」

工作員はミュータントストーンをクラウドに投げつける

クラウドは避けることなくミュータントストーンを身に受ける

「俺の異能力は任意の能力の波動をもつミュータントストーンを作り出すこと、波動を任意で自分の作り出す石に送ることができる!今のミュータントストーンは今までの奴と同じ、岩の突起を出す異能力だ…そのまま死ね!」

男はミュータントストーンに波動を送る

がクラウドから岩の突起は出ない

「な、何故だ!」

「一つ良いことを教えてやろう…spadeには異能力とは違う、特殊体質を持った奴らが多い、俺もそのうちの一人だ」

クラウドは大剣を床に突き刺す

すると床は分解されたように溶けてなくなる

「き、貴様の異能力は…」

「一つ、嘘をついた、俺の異能力は物質を分解するじゃねぇ…俺の異能力はミュータントストーンの波動を押さえる異能力だ…」

「なっ!」

クラウドの深く鋭い蹴りが工作員の鳩尾に突き刺さる

工作員は倒れ伏す

「貴様の敗因は二つ、ひとつは俺が相手だったこと…ひとつは」

クラウドは工作員の頭を踏みつけた

クラウドが何をしようとしているか察した工作員は命乞いをする

「や、やめ…ッ!」

命乞い空しく工作員は近くの壁に脳漿の模様を作ることになった

その模様はクラウドを巻き込んだがクラウドは何くわく顔で言葉の続きを紡いだ

「霊夢を狙ったことだ」

 

翌日、テロリストの基地が襲撃されたとのニュースが全面的に報じられる

spadeにも勿論、その情報は届く

「テロリスト基地襲撃…何者かに惨殺か…世の中物騒ねぇ」

霊夢がため息混じりにいった

「そうだな…世の中物騒だし、霊夢も気を付けろよ」

「そうね…今回の事もあるし」

霊夢が苦笑いで手をプラプラさせた

「…だな」

クラウドは寝転がった

(俺は影…霊夢は光…俺は霊夢が光の中で生きれるように影で邪魔者を消すだけだ…それが何者でもな…)

クラウドは拳を天井に向けた




近々、新作を書いてみようかなと思います
まじっく★すぱーくもまだまだ書くつもりなので
まぁ期待しないで待っててくれたら幸いです(;・ω・)


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♥3

今回の話は短めの上に疲れが取れてない状態で書いたので誤字脱字のオンパレードかつ分かりにくいと思われます
最低限の確認はしていますがご了承下さい


ビルの屋上

摩天楼を見下ろすその場所に

魔理沙とパチュリーがたそがれていた

「また、外れだったな」

「うん…今度は当たりかと思ったんだけど…宛が外れたみたいね」

パチュリーが俯き手に取った本に視線を落とす

「まぁ、そう、気を落とすなよ…いつも通りだぜ、また探せばいいさ」

「…うん」

気まずい沈黙が二人を包む

すると魔理沙が何かに気づく

「パチェ、帰っててくれないか?客人だ」

「?…解ったわ」

パチュリーがビルから階段を使い下りて行く

「随分、久方ぶりにてめえの顔見た気がするぜ…蓮子」

魔理沙の後ろで銃を向ける音がした

後ろではリボルバーを持ち特徴的な帽子を被った少女がたっていた

「聞いたよ、UNオーエンと戦って来たらしいじゃない…裏世界ではこの話題で持ちきりよ」

「UNオーエン?知らん名だが」

「フランドールの事よ…彼女の愛読書がアガサ・クリスティの"そして誰もいなくなった"なのよ、そして能力の危険性から誰も知らないのよ、彼女を素顔をね…まさにUnknownって訳」

「あいつが読書ね…」

魔理沙がフッと笑いリボルバーを蹴り飛ばした

蓮子はすかさず懐から自動拳銃を魔理沙の胸に押し当てた

魔理沙も光剣を展開し蓮子の首もとにつきだした

ほどなく魔理沙の足元にハートの形の光が現れた

「…!お前…」

「これくらい当たり前だ、てめえと殺り合う時はいつもマジだからな…じゃねぇと死人が出るぜ」

「ふん…」

蓮子が銃を降ろす

「んあ?」

魔理沙の足元の光りも消えきょとんとした魔理沙が蓮子を見つめる

「…今は殺り合う気分じゃない」

「はぁ?明日は嵐か槍でも降ってくんのか?」

「かもね…面倒な事になった…」

蓮子の言葉に魔理沙が首をかしげた

「お前の面倒な事は…命に関わるからな…聞かせてくれ」

「…お前、異能力者解放戦線って知ってるか?」

魔理沙が頷いた

「あぁ…クラウドが幼い頃、所属して…その戦線の作戦の途中で霊夢と出会ったと聞いた」

「…それは昔の話だな…今では異能力者保護戦線っていう名前になって活動を続けているのだが…何かときな臭い連中なんだ…クーデターとかテロとかそういった噂が断たん」

「へぇ…で?そいつらがどうしたんだよ?」

「あぁ、その連中の総領の娘と従者が日本に来ている…spadeを潰す為に」

魔理沙の顔に戦慄が走る

「待てよ…まさか…」

「いや、まだ、被害は確認されていない…反政府組織である異保戦からすれば政府の犬であるspadeは邪魔なのだろう」

 

都内の鉄柱の近く

「パチュリー?」

ボーッと呆けていたパチュリーに霊夢が近づいた

「あんたは…霊夢?」

「奇遇ね」

「そうね…買い出し?」

霊夢の手にはビニール袋があった

「うん…麦茶をね、最近暑いし…ジュースとかでもいいんだけど、家のうっかり侍は茶しか飲めなくてね」

「美味しいものね日本の茶…紅茶の方が好きだけど」

霊夢がはぁとため息をついた

「家のうっかり侍もそんだけ、おしゃれな物を飲めたら良いのにね」

「仕方ないわよ、うっかり侍なんでしょ?」

「確かに」

パチュリーと霊夢が歩き出そうとすると目の前に長身の女性が立ちはだかっているのが見えた

「?誰かしら?」

「…spadeの霊夢様とお見受け致しました」

長身の女性が深々とお辞儀した

「そうよ、だからどうしたの?」

「いえ、総領娘様のご命令で…貴方のお命頂戴します」

長身の女性の体を電撃が這う

「異能力者…」

「手伝うわ、霊夢」

パチュリーと霊夢が身構えた

「確かに私を狙ったのは正解ね…他の二人だったら殺されてるわよ、あんた」

霊夢が鎖を展開する

二人を鎖が包み込む

「参ります」

 

「…!」

魔理沙がビルの下をみた

「なにか?」

「いや、何か稲光が見えたような気がした」

「稲光?…こんなに晴れているのに?」

蓮子の言うとおり空は晴れ渡っていた

「私の勘違いなら…良いんだが」

「…雨の予兆かもね…早めに引き上げよう」

魔理沙の携帯の着信音が響いた

「おう、なんだ?アリス」

[随分、遅いじゃない?パチュリーがいるのに]

「あはは…ん?パチュリー?パチェならかえらせた筈だぞ?」

魔理沙の思考が急速に始まった

帰らないパチュリー

日本に来た危険組織

「まさか!」

魔理沙がビルの階段をかけ下りる

「おい!どうしたの!? 」

蓮子も後を追う

 

長身の女性が霊夢の持っていた麦茶を地面に置く

「恨まないでくださいよ…私は命令に従っただけなのですから」

霊夢は近くの塀に練り込み気を失っていた体には絶えず電撃が走り続ける

パチュリーは道路に膝をついていた

パチュリーも変わらず絶えず電撃が走り続ける

「あんた…何者…」

「旧異能力者解放戦線の長の娘の犬…衣玖でございます…以後お見知りおきを」

衣玖はまたお辞儀をしたあと一瞬の閃光と共に消えた

「…衣玖ね…覚えておくわ…」

「パチェ!…!!霊夢!?」

魔理沙が走ってきた

「霊夢をお願い…」

パチュリーが立ち上がった

「私のプライドはズタズタよ…Ms衣玖…マフィアは誰よりも根にもつのよ」

パチュリーがニヤリと笑ってどこかへ歩いていった

「…これは…雷の能力か…」

魔理沙が霊夢を立ち上がらせた

「こりゃ…クラウドが怒り狂うなぁ…はぁ…何者か知らんが…お疲れさん」

魔理沙がもうすっかり夜空になった空を見上げた

霊夢をあんずる気持ちが大きく落ちついては見られなかったが

すこし冷静になった

「…霊夢…待ってろ」

魔理沙は霊夢を抱え歩を進めた

 

魔理沙はspadeの事務所に霊夢を運んだ

二人はかなり驚いたようすだったがすぐにベッドに寝かせ安静にした

慣れているのかもしれない

幸いにも件の霊夢は外傷は少ないように感じられる

「霊夢が…闇討ちか…」

チルノがため息まじりに呟いた

「よりにもよってこのタイミングで霊夢…か…」

妖夢もチルノと同じ反応であった

組織内で最も驚いて動揺していたのはクラウドだった

霊夢を寝かせたベッドから離れようとはせずずっと霊夢の寝顔を見ている

ただクラウドから放たれる凄まじい怒りが空気を震わせている

「…やつらパチェも怒らせてる…多分、もう終わりだぜ…生きて帰れることはねぇよ…少なくとも、この日本においてもっとも怒らせてはいけない人間を怒らせたのだから」

クラウドが立ち上がった

「聞いたぞ、パチュリーは相手を知ってるのか?」

「あぁ…」

「…」

クラウドがspade事務所の出口へ歩を進めた

「おい、どこへ」

「犯人を殺す…霊夢を殺そうとするもの、傷つけるもの、汚すものは何人たりとも俺が殺す…俺はあいつだ、あいつの苦しみや無念は俺の物でもある…」

クラウドは外に出る

「霊夢を頼む」




分かりにくい事この上ない話でしたね
情報がない
今回、説明しなかったところは次の話の大切な所なので次回でもやもやはスッキリするかと思われます(´・ω・`)


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♦3

久々のまじ★すぱの投稿です

そういえば、この小説の霊夢とクラウドといえばバカップルを通り越してサイコップル(今命名)ですが
とある貴方の闇診断アプリによると僕もサイコップルの気があるようです
ナンテコッタ\(^o^)/


クラウドは夜の町を駆け抜ける

怒りの発散方法がそれしか思い付かなかったからだ

叫びそうな気持ちを必死に押さえ込み走り抜けた

不思議と衣玖への怒りはない

不甲斐ない自分への怒りで頭がおかしくなりそうだった

守り抜くと決めた者さえも守れない

自分への怒りが心で放火する

「…くそが!」

クラウドは壁に拳をぶつける

「俺は…大切な物…一つも守れないのか…ッ!」

そんなクラウドに近づく影がひとつ

「…なんでだ…俺は…なんで着いていかなかった…」

クラウドは数分前の回想をしていた

買い出しに行こうとする霊夢に

「着いていこうか?」

と聞いた

すると彼女は

「いいよ、買い出しくらい一人でできるもん、クラウドは休んでて、今日は料理がんばるから、期待しててね」

と自分に笑顔を見せてくれた

その時はそれもそうかとクラウドも自己完結して彼女を送り出した

それどころか全く別の事を考えていた

今となっては何を考えていたのかさえ、クラウドの脳内から削除されているが…そんなクラウドの行為が結果として霊夢の重症として帰って来たとクラウドは考えている

「…俺は…」

「ワッ!」

「!!」

クラウドは剣に手をかけた

そこには咲夜が立っていた

咲夜は両手を上げていった

「ごめんなさい!ほんの悪戯のつもりだったの!」

「なんだ…あんたか…」

クラウドは剣を下げて呟いた

「何のようだ?」

「用って訳じゃないんだけどね…てか姉として妹の彼氏と話すのは普通じゃない?もしかしたらそのうち、義弟になるかもなんだし」

「…そうかもな…」

咲夜が首を傾げた

「どうしたの?」

「色々あってな…」

クラウドは背後に殺気を感じた

彼は剣先を背後に向けるしかし誰も居ない

後頭部で拳銃を構えるカチャッという音がした

「残念、私はこっちだ」

蓮子がニヤリと笑った

「ッ!!」

「あんた!?いつから…」

咲夜がナイフを取り出して構えた

「待て待て、敵対の意思はないよ…少し、試してみたかっただけ、貴方の力量をね」

「…」

クラウドと咲夜が武器を下げる

蓮子も拳銃をしまう

「悪かったね、私は蓮子、君たちの味方だよ」

「…蓮子?…お前…霊夢に似てるな…何者だ?」

「答えを急ぐんじゃないよ、ただひとつ言えることがある…彼女は私、私は彼女…今はそれだけ」

蓮子が拳銃をくるくると回す

「君たちに情報を授けに来たのよ、魔理沙には伝えたのだけど…私も彼女が襲われたのは予想外にして…予定外だ」

「予定外?…お前何を知っている?」

「クラはこうだからダメだね…あの子の事になるとすぐに突っ走るんだから」

クラウドが剣を振り落とす

蓮子はバックステップで剣をかわす

クラウドの剣は道路のアスファルトを粉砕し分解する

「俺の事をクラと呼んでいいのは霊夢だけだ」

「癇に障ったかな?なら謝るよ」

「クラウドくん、落ち着いて!」

咲夜の言葉にクラウドは剣をしまう

「…で?なんだ」

「そうだね…霊夢…君の大切な人を襲い重症を負わせたのは異能力者保護戦線…旧異能力者解放戦線だ」

「異能力者解放戦線が…何故霊夢を…」

「…spadeが邪魔になった…とある計画のね」

「また…"計画"か?」

蓮子が人差し指を左右にふった

「旧政府の"計画"ではないさ、異能力の人権保護が叫ばれてるこのご時世で流石に非人道的な人体実験は行えないよ」

「なら…構わんが」

蓮子がクスクスと笑いながら言った

「頑張れクラウド…きっと彼女はこんなことは望んで無いだろうけどね」

「構わん…俺の自己満足だ」

クスクスと言う笑い声を残し蓮子は闇夜に消えていった

「…と言うことだ、俺は霊夢の仇を取る…お前は霊夢んとこに居てやってくれ…あいつ、きっと一人だと泣いてしまう」

「クラウドくん」

「俺は犯人を殺す覚悟も出来てる、それで捕まってもかまわない…なんなら死んでも刺し違える」

「なんでそこまで…」

「あたりめぇだ!」

クラウドは咲夜の肩を掴んだ

「俺にとって霊夢は何よりもかけがないものだ…俺の人生において一点の光だ!…それを傷つけられて…許せるものか!」

その言葉の半分は自分に当てられたものだった

咲夜は否定も肯定もせず優しげな微笑みをクラウドに向けるだけだった

「ありがとうね…あの子を愛してくれて…でも帰るわけには行かないわ、姉として…それにあの子を愛してくれている、クラウドくんを一人で危険に晒さしたとあればそれこそ、姉失格ですもの」

「小生も手伝おう 、雲殿、咲夜さん」

不意に声がした

両者とも声のほうを向く

そこには月夜に照らされた赤い絹糸のような髪を持つ少女が一人

「コア…」

小悪魔はクラウドの横に立った

「パチュリーさんがお怒りだ、小生には分かる…あの方の怒りを抑えるのは元来、小生の役目であっただろう」

咲夜が真実かどうか確かめるようにクラウドをみた

「あぁ…奴…衣玖という女は霊夢だけでなくパチュリーも攻撃した…結果としてパチュリーのプライドをズタズタにする結果になったらしい…魔理沙によるとパチュリーはどこかへ行ったらしいがな…」

小悪魔がクラウドに背を向ける

「パチュリーさんの毒は体内精製ではない」

「はぁ?」

「パチュリーさんの能力は体内に取り込んだ毒を貯蔵する能力…恐らく毒の充填をしにいったのだろう…一度、ある組織がパチュリーさんの書庫を燃やした事があった…パチュリーさんは我を忘れられる程、ご乱心になった…あのお方でさえ止めかねる程だ」

あのお方にクラウドは引っ掛かるも続きを聞く

「その際に大量のヒ素と王水を蓄えられたパチュリーさんはその組織を壊滅させて、ビルを一つ、溶かした」

「なっ!?」

ビルを一つ!?

クラウドは世界の広さを実感した

「ビルを一つとはな…世界は広いな」

「異能力者通しの戦闘はほぼ、核戦争に等しい…比喩的にも物理的にも…小生は核融合を操る異能力こそ、知らぬが同じ異能力は知っているからな」

小悪魔が咲夜のほうをみた

「そうね…私と霊夢…そして私の根源こと、リリーホワイトは鎖に変化させる能力…もしかしたら本当に敵国同士に核融合を操る異能力者がいたら…それは核戦争の始まりだからね」

「ここで我々がパチュリーさんを止められねば…この和の国で核戦争にも等しい戦争が起きる…それも国通しではなく、個人の…特にパチュリー様は…」

クラウドが咲夜に耳打ちをした

「小悪魔って人の話し聞かないのか?」

「えぇ…元からよ、パチュリー様の事になると自分の世界を造ってしまうのよ、こうなると暫くはこのままね」

「余程、好きなんだなパチュリーの事が…」

クラウドは尚も語り続ける小悪魔に近づいた

「パチュリーの事は良くわかった早く行動に移そう…このままではパチュリーに霊夢の仇を殺されてしまいそうだ」

「霊夢殿の仇討ち?…雲殿は病的愛情異依存の典型だな…霊夢殿がそのような事を望まぬ人格であることはわかっている筈だが?雲殿」

クラウドが夜空を見上げた

「あぁ、俺は雲だ…名の通りな…雲は誰よりも自己中心的で自由だとは思わないか?…俺達の気持ちには関係なく天気を操り…人間の心を手玉にとって玩ぶ……雲がそうなら俺は誰が望んでなかろうが自己満足で霊夢の仇を取らなきゃいけない…それは自分に課した十字架であり俺の自己満足でもあるんだ…俺がクラウドであるかぎり…俺は雲で居続けねばならない…自由で自己中心的な雲でな」

小悪魔が首を傾げた

「自分を必要としてくれる人物は宝物であり、自身を縛る鎖でもある…ただ俺は」

クラウドが歩きだした

「こんなに心地いい鎖なら切ることはしない…縛られたままで…いい」

クラウドの後を追って小悪魔と咲夜も動きだした

「やはり雲殿は…病的だ…本来ならそこまでの期待を…鎖に縛られてはいずれ精神が壊れてしまう…なのに雲殿はその鎖を楽しんで…いや鎖や鎖による痛みでさえも愛している…」

「おかしいか?」

小悪魔が申し訳なさそうに頷いた

「…俺は霊夢を病的に愛している…それは自覚済みだ、二度も言われる筋合いは毛頭ない…が霊夢はそんな俺にも真摯に接してくれる…通常なら重いと言われても仕方がない愛を押し付けてもだ…気持ち悪がりもせず…ただ俺を愛してくれる…だけど、それが霊夢の負担に…荷物に成ってないかが心配なんだ…俺は愛が重い…それも自覚している…がこの重い愛しか…俺は持ち合わせていない…霊夢を愛する方法を俺はこれしか知らない…」

クラウドが深刻そうに告げた

最後まで聞くと咲夜が頭を抱えてため息をついた

「…全く、類は友を呼ぶとは良く言ったものよね…大体、貴方たちは両方とも愛が重いわよ…でもだからいいじゃない、貴方たちは似た者同士だからこそお互いの重い愛を受け止められる…貴方が重い愛しか持ち合わせていないのなら霊夢もまた、重い愛しか持ち合わせていないのよ…本当にお似合いのカップルね」

クラウドは少し、ほっとしたように表情を崩した

「咲夜にそう言って貰えると安心する」

「それじゃ、クラウドくんは急いで仇を探さないと!…行くわよコア」

「御意に咲夜さん」

クラウド達は夜の町に消えた

 

都内、廃ビル

薄暗い部屋を月明かりがうすらぼんやり照らす

そこには人影は2つ

一つは衣玖と名乗った人物

そして玉座のような椅子に足を組んで座っている人物が一つ

座っている人物が衣玖に話しかける

「ねぇ衣玖、お嬢様は見つかったの?」

「いえ…確認しておりません」

座っている人物がだらりと座る

「弱ったわねぇ…よりにもよって日本の東京から元spadeの人物を探せとか言われても…砂漠から一粒の砂粒を見つけるような物よ…まぁ名前が分かるからなんとかなる…か…ところで衣玖、spadeはどんな調子?」

「リリーホワイトの娘は戦闘不能です…大分念入りに電撃を流し込んだので暫くは目覚めないかと…大変心苦しいのですが…任務達成のための致し方ない犠牲とカウントしてあります」

「…そうね…これ以上、お嬢様を傷つけるような事はしたくないな…spadeにはもう手を出さないようにしようかしら…」

「…そうとも行かないらしいですね」

足音が迫ってくる

「貴方はspadeかしら?」

「いいえ、私はハート怪盗団のパチュリー・ノーレッジ…異名はデザート・サーペント」

衣玖が興味を示す

「デザート・サーペント?欧州の暗殺集団のボスが同じ異名でしたね…もしや?」

「そうよ、欧州の暗殺集団…デス・サーペントのボスがこの私…もう引退して久しいんだけどね」

座っている人物がクスクスと笑う

「何が可笑しいの?」

「失礼…でもあのムサムサ集団のボスがこんなに華奢な少女だと知ると面白くて…」

座っている人物が立ち上がった

「衣玖はお嬢様を探しなさい…砂漠の危険な毒蠍は私が駆逐しましょう」

「御意に」

衣玖がその場を去った

「…本当はミス衣玖を倒しに来たのだけれど…貴方でも構わないか…」

「ふふ…私の名前は比那名居天子…旧異能力解放戦線のリーダーの娘よ…ところで蠍さん暑くはないの?そんな露出の少ない服を着て」

「…直に分かるわ」

パチュリーはダボッとした袖を捲りあげて自分の腕にナイフを突き立てる

赤い血液は流れず透明に近い液体が流れ出した

「なっ!?何してんのよ!?…血じゃない…?」

天子は驚愕したように言った

「河豚毒と知られるテトロドトキシン…煙草に含まれるニコチン…毒の代名詞、青酸カリ…この世にはありとあらゆる毒が存在するわ…」

パチュリーから流れた血液は廃ビルの床に落ちて煙をあげて床を溶かす

「私は…この世の毒では死ねない…河豚を釣り上げてそのまま食べても…青酸カリを飲ませられても…その代わりに異能力が強化されていくだけ」

天子が苦笑いを浮かべた

「…なるほど、何故、貴方がデザート・サーペントなのか…何故、貴方の服には異常とも言えるほど露出がないのか…全て解ったわ…恐ろしい能力ね…」

パチュリーは続ける

その間も腕からは透明な液体が垂れ続けている

「ところで貴方はスズメバチを知っているかしら?…いえ、知らない方が変よね…様々な成分の毒をもつ、彼らは毒のカクテルと呼ばれているのよ…主成分は炎症を引き起こすヒスタミン…神経毒のセロトニン、アセチルコリン…アナフィラキシーショックの原因のペプチド、ホスホリパーゼ・プロテアーゼ…確かに大量の成分だと思う…カクテルなのも頷けるわね…でも彼らがカクテルなら私は…」

パチュリーは透明な液体を相手にかけるように飛ばした

飛ばされた相手は反射的に避けた

飛ばされた液体はパチュリーとは反対側の壁に付着し壁が悲鳴と煙をあげる

「さしずめ、毒をスパイスとしたカレー…って所かしら…スズメバチの比じゃない…私の体液の殆どはこの毒のカレーで作られているわ…この20年の人生の中で…蓄積された毒でね」

「…なるほど…それが貴方の異能力か…なら私も能力をみせないと失礼にあたるわね」

天子の周囲の壁が剣に変化した

「…」

「私の能力は周囲の物を剣に変化させるのよ…彼のリリーホワイトよりも殺傷力の高い能力よ…最強の異能力者は彼の人じゃない…この私よ」

パチュリーに一斉に剣が襲いくる

パチュリーはバックステップで避けた

辺り一面が砂煙で包まれた

 

spade、事務所

「う…」

霊夢がゆっくりと目を覚ました

「気がついたか?」

「妖夢…ここは…」

「事務所だ…魔理沙が届けてくれた…」

霊夢が起き上がると魔理沙とチルノがトランプをしていた

「ちょっとくらい心配してくれてもいいのになぁ…クラは?」

「そのうち戻ってくるだろう…で?何があった?お前程の人間が…」

「あぁ…買い物帰りに襲撃されてね…そうそう思い出した…衣玖って奴が天子って人のためにやったっぽいよ」

「天子!?」

魔理沙が立ち上がった

「どうしたの?魔理沙」

「霊夢!天子つっーのは本当に言っていたのか?」

「えぇ…天子と衣玖という名前が出てたから間違いないと思うわよ」

魔理沙は驚愕した様子で数歩後ろに下がると走り出した

「魔理沙!…ところで妖夢…クラは仇討ちかな?」

妖夢は目を見開いた

「何故…」

「クラ…今、泣いた気がしたから…」

霊夢が立ち上がった

「大丈夫なのか?」

「大丈夫…クラは私の涙を拭ってくれた…今度は私の番」

霊夢は魔理沙の後を追っていった

(クラ…泣かないで…悲しいよ)




クラウドにはクラウドの覚悟があって霊夢を愛しているという回でしたね
パチュリーもかなり危険な能力ということが判明しましたし…大きくイメージ変化した回だったのじゃないでしょうか…いい意味でも悪い意味でも


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♦4

シンゴジラも地上波放送されましたねぇー
その前にDVDで見てたんですけど…
ほぼ覚えてなかったです…いやぁもう、ほぼ初見w

まじ★すぱ久々の更新です
アプリが変わってから書きにくくて作業がなかなか進みませんでした(´・ω・`)




街中を…クラウド達が走った雑踏を魔理沙は息を切らしながら走っていた

その目は真剣そのものでいつものヘラヘラとしたオーラはなかった

「魔理沙!」

霊夢の声で我に帰ったように表情が若干緩む

「どうした?霊夢」

「どこにいくの?」

霊夢の軽く息切れをしていた

「天子のところだ…更にいうなら永江衣玖の所だな」

「衣玖って…私に電流を流した?」

「あぁ、天子よりは話が解るやつだ」

「…知り合いなの?あの二人と」

霊夢の目をしばらく見たあと、魔理沙は目をそらした

「八坂財閥って知ってるか? 」

「異能力奴隷で栄えた企業よね、巨大になりすぎ、財閥になった…でも今は解体されたと聞いてるわ。日本で奴隷産業なんて…流行るわけなかったのよ…で?それがどうしたの?」

「そうだ、八坂財閥の解散後は二つに別れたんだ、一つは今まで通り奴隷産業を生業とする父親が経営する、八坂人材派遣株式会社、もう一つは異能力による再生可能エネルギー産業を生業とする娘が経営する八坂新エネルギー電力株式会社…まぁ霊夢もいった通り日本で奴隷産業は流行らなかった…しかも父親側はAM論者だったんだ」

AM論者…アンチミュータント論者

異能力者は人間にあらずという考え方の持ち主

異能力者の存在は日本に溶け込もうとしてはいるがこのAM論者が居なくなることはなかった

AM論者の特徴として異能力者を徹底的に排除しようと活動する人が多い

人間としても見ておらずただの異形の物としか見ていないため

殺しもする…彼らにとっては異能力者は物質なのだ

邪魔ならば消すし利用価値があるなら無くなるまで搾り取ろうとする

だが大抵は強い抵抗にあうか能力で逆に殺されるかどちらかである

「それでその旦那の元にとある子供が産まれた…異能力つーのは遺伝物質は関係ない…親に異能力者がいなくても突然、異能力者が生まれる事がある…その緑色の髪をした小さな女の子は…」

魔理沙が何かを耐えるように空を見上げた

「動物と対話する異能力を持っていた…そう…捨てられる前の早苗だ」

「う…そ…」

霊夢はショックを受けたようだった

「霊夢も知っての通り異能力者の誕生には3つ種類がある、一つは私のように血縁者全員が異能力者になる、ウィザード型、この場合、虐待の心配はないが、一家心中などの危険性がある…一つは霊夢のように人工的に作られるゴーレム型…ゴーレム型は心中や虐待のリスクは少ないがその実験が非人道的な場合が多く倫理的な問題がある、また、実験を行った会社や団体を恨み、大量殺人…なんて笑えないことになる場合もある…だがここまでは私らの心の問題だ、実験に関しては当てはまらないが、他はすべて異能力者が強い意思を持ち、現実と向き合えば解決するものが多い…が早苗の型…フランケン型は心中や怨恨のリスクがない代わりに虐待や育児放棄のリスクが高くなるんだ…早苗は…どちらも経験してる…それは親の都合だ、子供に罪はなく…どうすることもできない、問題だ」

霊夢がうつむいて聞いた

「しかもその親は…早苗を自分の子であることを隠し、世間には(身寄りのない異能力者の子供を預り大切に育てている)っていう体を装い、裏で虐待をしてやがったんだ、早苗の腕にはその当時付けられた火傷の痕がある…根性焼きぽかった…その後、十分過ぎるほどの義援金と同情だけすいとり早苗を殺そうとした…早苗は周囲の一部の職員の助けもあり間一髪逃げたらしいがな…そのまま山をさ迷っている内に春音に出会い今に至るんだ…その事実が露天して、八坂人材派遣社は経営難に陥った…でも八坂は八坂の名字と今まで早苗を利用して得た義援金を利用して違う巨大な財閥とくっつきほとぼりが冷めるまで姿をくらまそうとした…それに早苗を利用しようと思った!八坂は!早苗を探し出すと虐待の事実を隠蔽して!早苗を無理矢理連れ戻し、その財閥の息子と結婚させようとした!許嫁だと嘘までついてな!私がその場にいなきゃ…早苗はまた!虐待される所だった!」

魔理沙がそれだけ言うと霊夢の顔を見た

霊夢が怒りと悲しみが混ざったような複雑な表情をしていた

「早苗はあんなんだから…騙されやすいと思う…だからこそ…私がきちんとしてやんねぇといけねぇんだ…」

「話は…解った…」

霊夢がフラフラとどこかに行こうときずびを返した

「どこへ…」

魔理沙は霊夢から発せられる異常な殺気に気づいた

「霊夢!…全員は殺すなよ、早苗を逃がした職員も居ることを忘れるな」

霊夢はゆらりとうなずくと怪しげに闇に消えていった

「クラウドのやつ…ショックで倒れねぇと良いんだが…あの話をしたのは間違いかな…」

魔理沙は呟くと思い出したようにクラウドたちを追った

「…霊夢…」

影で誰かが呟いた

 

一方。spade事務所では

「…さてと、あたいは少し出るよ」

チルノが急に言い出した

「ん?用事か?」

「ちょっと晩酌しに」

「は?あのな…今の状況分かってんのか?」

「元spadeの問題にいちいち首を突っ込んでられないよ、あたいは自由にやらせてもらうよ」

チルノは手をぷらぷらさせながら事務所をでた

「あいつ…」

 

ジャズが流れるようなbar

言い争う声が聞こえた

「…神奈子…どうして私の言うことが解らんのだ?」

「分からない…異能力だって人間だ、それを平気で道具として使っていい訳がない」

言い争うをしている

片方はガタイのいい、黒いスーツの男に囲まれたスーツの男

ひょろりとしていてまるで骸骨だ

片方は身長の高い女

男とは違ってボディーガードのような人間はいない

「異能力者が人間だと?ふざけるな、あれは人間なんかではない…単なる物質だ、奴隷としてでも利用価値を見いださせてやっってるんだ、それ私が奴隷としてあれらを管理すれば治安が保たれ、私は儲かるウィンウィンじゃないか」

「その考えを改めない限り、私の会社は貴方の会社と合併はしないし結婚もしない、早苗にも手は出させんぞ、ゲスめ」

女ははっきりと意思を感じられるような口調でいい放った

「どうしてだ!お前は異能力者<バケモノ>ではないだろう!」

「バケモノって言うな!」

神奈子が怒鳴った

「バケモノ…か…八坂君…君にそれを言う資格はないよ」

グラスが透明な音を鳴らす

その音と挑発的な言葉に男女は振り向く

そこにはカウンターに座りグラスをゆっくりと振るチルノがいた

「あなたは…?」

「…」

チルノはspadeの証、♠のトランプを見せた

「spade!?」

「異能力者!」

八坂は立ち上がり警戒した

「…奴隷企業をいつまでも黙認するわけには行かなくてね…でも、あたいらとしては穏便に事を進めたいのさ…」

「何が穏便だ!貴様らなんて信用しないぞ!殺せ!撃ち殺せ!」

ボディーガードが機関銃を構えた

「やめて!父さん!」

「殺れ!今すぐに殺れ!!」

ボディーガードが機関銃のトリガーを引く

激しい閃光と銃声が店内に響く

神奈子は耳をふさいだ

しばらく鉄の雨は続いた、雨が止むと八坂がニヤリと笑った

「マスター…店を凍らせちゃった…ごめんね…」

「いえいえ…銃弾で穴が空くよりかは幾分かましですよ」

八坂の目の先には何食わぬ顔でマスターと会話するチルノと

彼女と自分らを遮っている氷壁だった

「まぁ後でお湯かけたら解けるさ…」

「貴様…!」

「ん…どうしたんだい?狐に摘ままれたみたいな顔して…何も珍しくないただの異能力による銃弾回避じゃないか」

「…!思い出した…お前は…」

チルノの半身に霜が降りる

「さて、交渉も決裂したし、機関銃で撃たれたんだ…正当防衛も働くだろ…マスター、八坂神奈子さんをカウンターの下へ」

マスターはうなずくと神奈子をカウンター下に誘導した

「…八坂君、まずは君に謝らなければならない事がある…君、天子と衣玖って奴雇って早苗を探させているらしいな…天子天子と衣玖と早苗はグルでお前を嵌めようとした…結果、異能力と殺気のコントロールが一時的に効かなくなる電撃波をspadeの霊夢って奴に流したらしい…そして魔理沙から霊夢は早苗の過去を知った…まぁ、結論を言おう、今、君の会社は霊夢に襲撃されているよ」

八坂はハンっと鼻で笑った

「一人で私の会社を壊滅させる気か?元々、私の職業は裏向けだ、本社ビルは要塞、社員も常時武装をしている…そんなところに一人で出向くなんぞ、自殺行為…」

「ちなみに霊夢はリリーホワイトの娘だ、能力を受け継いだな」

八坂から血の気が引いていった

 

「クラウドくん」

咲夜と小悪魔が立ち止まった

それを見てクラウドも立ち止まる

「あれが…衣玖…」

「そうだ…間違いない」

クラウドは殺気の籠った視線を衣玖に向けた

「おや…貴方は…そうか…君達は作戦の事を…」

クラウドが剣を構えた

「一つ聞こう…なぜ霊夢を攻撃した」

衣玖は考えるように顎に手を当てた

「ふむ…それを説明する前に私の異能について…私の異能は周知の通り稲妻を起こす能力です…しかしそれに加え」

衣玖がポケットからミュータントストーンを取り出した

ネックレスのような形になっている

「このミュータントストーンがあります…この石の能力が人間の感情の抑制を無くす能力です…まぁ無くすではなく弱めるの方が近いかもですが…その弱める感情も任意です…私は稲妻にのせてこの異能を霊夢さんに掛けました…計画どおりにね」

「計画…?なんの計画だ?」

 

廃屋、ビル

「計画?」

パチュリーも天子から同じような説明を受けていた

パチュリーの頬には切り傷が

天子の皮膚の一部は爛れている

「えぇ…異能力者の私たちがAM論者の味方をするわけがないでしょ」

「それも…そうね…貴方ら旧異能力者解放戦線が早苗を八坂ん家に連れ戻す…なんて事考えにくいわ」

「そうね…だからリリーホワイトの娘…あー霊夢?だっけ?を利用して八坂を潰そうと画策したわけ…本来であれば理性を失わせたspadeの隊員を八坂に捕まえさせそれを助けにきたspadeが奴隷産業の証拠と早苗に関する資料を掴み、それを世間に公開し八坂の企業を潰そう…と思ってたんだけど…spadeにはリリーホワイトの娘がいるっていうじゃない?…もう、その娘をけしかければすべて終わると思ったのよ」

パチュリーがため息をつく

「あんたね…間違ったわ人選…なぜ霊夢なのよ…」

「はぁ?」

パチュリーがうつむきぎみに何かを案ずるように言った

「いい?霊夢のバックには…ダイヤモンド・クロウスがいるのよ…そのリーダーと霊夢は恋人関係よ」

「は…はぁ!?」

 

「そう、総領娘様がお考えになったので私はそれを執行したまでです、致し方ありませんでした…これも異能力者解放の一手なのです」

クラウドが怒りに任せ衣玖を掴みあげた

「貴様!霊夢を人殺しにする気か!」

「致し方ありませんでした、と申した筈です、私どもだって異能力者を駒のようには使いたくはありませんでした」

「…待てよ…お前の話が正しければ…霊夢は…」

クラウドを激しい立ちくらみが襲った

「今頃本社ビルで殺戮の限りを尽くしていますよ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ガタイのいい男が叫びながら銃を射つ

しかし銃弾はすべて鎖に変わり鎖は男を貫く

「…」

闇にうっすらと霊夢の顔が見える

その瞳はうつらでスモークがかかっているようだ

 

「…」

クラウドが体勢を崩した

「クラウドくん!」

「雲殿!」

小悪魔と咲夜が駆け寄ってクラウドを支えた

「…重ねてお詫びを申し上げます…」

衣玖は深く頭を下げた

「霊夢さんに危害が加わる事や、霊夢さんの犯行を露天させるような事は致しません…このような作戦に二度と関わるような事もありません…ので今回だけは多目に見ください…」

「あ…ぁ…」

クラウドの目の焦点が合っていなかった

まるで魂だけ抜けたようなそんな目だ

「失礼いたします…」

衣玖はそうだけいうと去っていった

「…クラウドくん、たてる?」

「…あぁ…」

クラウドが立ち上がった

「すまない…俺は八坂社ビル方へ行く…霊夢は俺が守る」

クラウドが本社ビルの方へ走っていった

「…大丈夫かしら…」

「雲殿なら平気だ…あの目はまだ腐ってない…それより咲夜さん…パチュリーさんは…」

向こう側から二人の人間が走ってきた

「パチュリーさん!!」

小悪魔の目の色が変わった

「あら?咲夜に小悪魔じゃない、久しぶりね」

「パチュリーさん!小生は…ずっと…」

「心配してくれたのね、ありがと…咲夜も裏切り者の私のために…」

咲夜がにこりと笑った

「いえ、私はパチュリーさんの事を裏切り者なんて思った事はありませんよ」

「そう…ならありがと」

咲夜が頭を下げた

「パチュリーさん!怒りのほうは…」

小悪魔が心配そうにパチュリーを見た

「あぁ…バカらしくなった…喧嘩してる相手があれよ」

パチュリーが指差した先には天子が涙目になりながら

「衣玖ぅ~どこよ~衣玖ぅ~!」

と衣玖を探している

霊夢のバックにダイヤモンドクロウスがいると言ってからこの調子だ

「これでよく、リリーホワイトなんかより私のほうが優れてるなんて言えたわね」

「あはは…」

咲夜は愛想笑いを浮かべながら空を見上げた

 

「霊夢!」

本社ビル前で霊夢はへたりと座り込んでいた

「大丈夫か!?霊夢!」

「クラ…?どうしてここに…ここはどこ?」

霊夢は虚ろ虚ろになりながら答えた

「…大丈夫だ、心配は要らない…これは悪い夢だ」

まるで自分にも言い聞かせるようにクラウドは言った

本社ビルは炎に包まれていた

これでは証拠も残るまい

「…夢?」

クラウドは霊夢を立ち上がらせて抱き締めた

「そうだ…夢だ…だからきっと覚めて元の世界に帰れる…帰れるんだ…!」

クラウドはきつく霊夢を抱き締めた

「クラ…いたいよ…」

「わ、悪い…」

霊夢は自分の手を見た

手にはベッタリと血がついていた

はじめは何が起きているか分からなかったが火で包まれているビルをみて察し始めた

すると激しい吐き気に襲われたらしく口を押さえた

「考えるな!」

クラウドの制止もむなしく霊夢の思考は止まらなかった

すると風のように霊夢に接近する影が一つ

影は手慣れた手つきで霊夢を気絶させた

「早苗…」

「何してるんですか…クラウド!!」

早苗はクラウドを掴みあげた

そうクラウドは衣玖にしたように

「ッ」

「これは、なんですか…霊夢さんは…霊夢に何をさせたんですか!?」

「俺を疑っているのか…俺が霊夢にこんなことをさせたというのか!?」

クラウドが早苗の胸ぐらを掴む

「…貴方でなければ一体、誰が!」

「落ち着け、二人とも」

魔理沙の声が響いた

「魔理沙さん!」

「クラウドは関係ねぇよ…こいつはただ霊夢を助けに来ただけだ…天子がやった…理由は解らんがな…クラウドも激昂するな…霊夢は無事だったんだ、幸いにもな」

「幸い…幸いだと!どこが幸いだ!霊夢は…霊夢は…!」

「人殺しになった…か?お前が思っているより霊夢はずっと大人だし、裏側の人間だ…そんな過保護になることはねぇよ」

魔理沙の冷静な口調に二人も落ち着きを取り戻していく

「霊夢を運ぶ…大丈夫だ、皆で口裏合わせて夢だったと、思わせる…この重みは霊夢には背負わせねぇよ」

「…あ…あぁ」

「んじゃ、こーど開始だ、ワゴン車を取ってくるから待ってろ」

 

翌日

霊夢が目を覚ますとクラウドの部屋だった

「クラの…部屋…」

霊夢が起き上がるとクラウドが部屋の隅で寝ているのが見えた

クラウドの頬には涙の跡があった

「泣いてたの?…私が人を殺したから…?」

霊夢がため息をついた

「どうしよう…つい熱くなっちゃった…クラを泣かせたんじゃ彼女失格じゃん…」

霊夢は音をたてずに去っていった




約6000文字…これが妥当な数字ってやつですね(白目)


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