サヨが斬る! (ウィワクシア)
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プロローグ

皆さん初めまして、以前からこのサイトに興味が
あって投稿しようと思ってました、
文章ははっきり言ってど下手くそです、
それでも少しでもいいので見てください。
               
                       



3月20日帝都

帝都はすごく賑わっていた。その中に二人の若者がいた。

 

「うわぁーすげえぜすげえ賑わっているぜ、なあおい」

 

「もうあんまりキョロキョロしないでよイエヤスみっともない」

 

「だってしょうがないだろサヨ、帝都は思っていたよりもすげえんだから」

少年はとても興奮していた。

 

「(でも仕方ないわね、帝都がこんなにすごいところだったなんて、私もドキドキが止まらないわ)」

だが少年は少しテンションが落ちた。

 

「タツミもいたら最高だったのにな」

 

「仕方ないわよあんなことがあったんだから」

回想

3人の少年少女が多数の盗賊に襲われている。

 

「くそっなんて数だ50人はいるぞ」

 

「どうするタツミ」

 

「こうなったら正面突破するか」

 

「バカ言わないで無茶よ」

 

 

「じゃあ逃げるしかないな」

 

「バラバラに逃げたほうが逃げ切れると思うわ」

 

「じゃあ早く逃げようぜ」

 

「うん帝都で会おうね」

 

三人はバラバラに逃げた。

サヨは思い出していた。

すると表情が険しくなった。

 

「バラバラに逃げたんだけど、全ての盗賊が私を追いかけてきたのよね・・・」

サヨは必死に逃げた、捕まればレイプされ殺されてしまうから。

数日間不眠不休でなんとかサヨは逃げきった。

サヨは息を切らしながら周りを見渡した。

見覚えのある景色だった、ここは盗賊に襲われた所であった。

 

「まいったわね逆戻りしちゃったわ、ん、あれは?」

見覚えのある頭を見た、イエヤスだった。

 

「ちょっとイエヤスあなたなんでこんなところにいるの」

 

「おおサヨ無事だったかよかった、こんなところってどうゆうこと」

 

「だってここ盗賊に襲われた所よ」

 

「そうなのか?どうりで見覚えがあると思った」

イエヤスは方向音痴のスキルを発動した。

 

「あきれた・・・よく盗賊に見つからなかったわね」

 

「とにかくお前がいればもう道に迷うことはない行こうぜ」

 

 

「待ってこの街道の先に盗賊がいるはずよ、危険だわ」

 

「じゃあどうすんだよ」

 

「この街道を行きましょう」

 

「おいすげえ遠回りだぞ」

 

「しょうがないでしょう、盗賊に捕まったら終わりなんだから」

 

「仕方ないな」

 

二人は遠回りして帝都を目指した。

 

現在

 

「馬車に乗ったらもっとはやく着いたのにな」

 

イエヤスはぼやいた。

 

するとサヨは

 

「あなた何を言っているの」

 

明らかに怒りがこもっていた。

 

「忘れたとは言わせないわよ、あなたが朝寝坊したせいで帝都行きの馬車に乗れなくなってしまったことを」

 

サヨは怒りを爆発させた

 

「ワリィ・・・」

 

「高かったのよあの馬車の切符、それをふいにして」

 

「ホントワリィ」

 

「もういいわよ無事に帝都に着いたんだし」

 

「タツミはもう着いているよな」

 

「そりゃ着いているでしょう、タツミは私達のなかで一番強いんだから」

 

「そうなんだよなあしゃくだけど」

 

イエヤスは悔しがっている。

 

「だがいつかタツミを超えてやるぜ」

 

「あなたじゃ百年たってもむりよ」

 

「んだと、てめぇ」

 

サヨはクスッと笑った

 

「とにかく兵舎へ行きましょう、タツミのこと何かわかるかも」

 

「そうだな早く行こうぜ」

 

二人は兵舎へ向かった。

 

「私達が、私達三人で故郷の村を救うわよ」

 

サヨは心に誓ったのであった。

 

 

 

 

 



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第一話

   帝都を斬る

 

「出てけー!!」

 

兵舎に入隊届けを申し込みするために訪れた二人はたたき出された。

 

「ちょっとなんてことしてくれたのよ」

 

「ちょっと待て俺は俺の力を見てくれと言っただけだぜ、それだけで追い出すなんてあんまりだろ」

 

「確かに・・・、最近同じことを言った人がいた?まさかタツミ?ありえるわね」

 

サヨが推理しているとイエヤスは。

 

「どうするこれから」

 

「そうね・・・」

 

二人が困っていると、後ろから。

 

「困っているならお姉さんが助けてやろうか」

 

振り向くと露出の高い衣装を着た巨乳の女がいた。

 

「これがてい・・・」

 

イエヤスが見とれていると。

 

ボガン!!

 

サヨはイエヤスの頭を殴った。

 

「痛えななにすんだよ」

 

「何ジロジロ見てるのよいやらしい」

 

「しょうがないだろ、俺らの村にあんなグラマーな姉ちゃんいなかったんだから

お前と違ってすげえグ・・・」

 

ボガン!!

 

再び殴った。

 

「いい度胸ね・・・」

 

サヨは激怒していた。

 

「たくっボカボカ殴りやがって、そういやお前タツミのこと殴ったことなかったな、まさかタツミのこと・・・」

 

「な、何言ってるの、ぶつわよ」

 

サヨは真っ赤になっていた。

 

二人は激しく言い争いになった。

 

「・・・何やってんだお前ら」

 

女はキョトンとした。

 

「まあいいや、お前ら帝都に夢見て田舎から来たんだろ」

 

「何故わかった」

 

イエヤスは驚いた。

 

「私は帝都で生まれ育ったんだそれぐらい簡単にわかるさ、で、とっておきの裏技があるんだけど」

 

「なあ頼む教えくれよ」

 

イエヤスは即効で頼んだ。

 

「じゃあご飯おごって」

 

女はニコッと言った。

 

「なあいいだろ」

 

「うんそれぐらいなら」

 

サヨは承諾した。

 

「・・・それにしてもこのベルト、私の趣味じゃないわね」

 

サヨは女のベルトを見て思った。

 

三人は酒場に着いた。

 

「じゃあ早速酒を・・・」

 

「パンとシチュー三人前」

 

サヨは店員に注文した。

 

「えっ?!」

 

女は驚いた。

 

「それで十分でしょ」

 

「おいおい酒場来て酒なしはないだろ」

 

女は眉をひそめた。

 

「お昼からお酒なんてダメでしょ」

 

「そんなこと言うと帰っちゃうよー(このカタブツ)」

 

女は不満たらたらだった。

 

「じゃあこの話はなしということで」

 

「いっ!?」

 

女はすごく驚いた。

 

「・・・いいよそれで」

 

女はため息をついた。

 

三人は食事を終えた。

 

「なあそろそろ裏技教えてくれよ」

 

「そうだな・・・(お冷やじゃ盛り上がらないな)」

 

女は気を取り直した。

 

「ぶっちゃけ金だな」

 

「金?」

 

「私のダチに軍人がいてなそいつに金やればすぐだよ」

 

「そうか、じゃこれでいけるかな」

 

イエヤスは大きな袋をテーブルにのせた」

 

「おおーすんごいもってんじゃん」

 

女は感激している。

 

「帝都に来る途中危険種狩って褒美もらってたからな」

 

イエヤスは自慢げだった。

 

「へえーお前らつよ・・・」

 

「調子に乗らない!」

 

女が言い終える前にサヨが叫んだ。

 

「忘れたの?おだてられて調子に乗って依頼安請け合いしまくったこと」

 

サヨは激怒した。

 

「そのおかげでますます到着が遅れちゃたんじゃない」

 

サヨはイエヤスに説教を始めた。

 

「あの、話進めていいかな・・・」

 

女はキョトンとしている。

 

「あ、はいどうぞ」

 

「まあとにかくこれだけあれば大丈夫だよ、じゃ早速・・・」

 

女は金袋に手を伸ばした、するとサヨは手で遮った。

 

「その人に会わせて、私が直接渡すから」

 

サヨの言葉に女は動揺した。

 

「えっとそれは・・・」

 

「その人の名前は、歳は、階級は?」

 

「・・・」

 

女はサヨの質問に言葉がつまった。

 

「そうだ私マッサージの仕事があったんだ、こうしちゃおれん、じゃあねー」

 

女は逃げた。

 

「おいせっかくチャンスを・・・」

 

イエヤスは慌てた。

 

「ばかねあれは詐欺よ詐欺」

 

サヨは冷静に言った。

 

「そうなのか?」

 

「そんなおいしい話あるわけないでしょ、それに行商の人言ってたじゃない」

 

「帝都にはバケモノがいるんだ」

 

サヨは行商の話を思い出していた。

 

「そうか?あの姉ちゃんそんな悪い奴には見えなかったけど、胸はバケモノだったけど」

 

「とにかく用心しましょう」

 

サヨは気を引き締めた。

 

女は逃げた後ぼやいていた。

 

「あーあ、女の方しっかりしてたな稼ぎそこねちゃった」

 

女は微笑みだした。

 

「それにしてもこないだの少年ちょろかったな、それに私好みのかわいいヤツだったし、また会えるといいな」

 

女は機嫌を取り戻した。

 

夕方になった、二人は橋の近くにいた。

 

「あれから別の兵舎で入隊届けだしたけど」

 

「帝都すげえ不景気なんだな、入隊希望者すげえ数だったな」

 

「くじ引きで入隊を決めるそうよ」

 

「ああ、もうだめだお前くじ運ねえもん」

 

「わかってるわよそれぐらい」

 

「これからどうする」

 

「ひとまず宿に戻りましょう」

 

「宿?あのぼろ小屋が?」

 

「節約よ節約」

 

二人が話をしていると。

 

「ねえ、泊まるとこないならうちこない?」

 

後ろから少女の声がした、振り向くと身分の高そうなお嬢様がいた。

 

「あの、宿はとってあるんですけど」

 

サヨはとっさにそう答えた。

 

「あらそうなの・・・ところであなた達お名前は?」

 

「サヨ」

 

「イエヤス」

 

「ふうん、ところであなた達二人だけ?」

 

「いえ、もう一人いるんですけどはぐれちゃって」

 

「じゃあ、なおさらうちへおいでよ、うちのパパ軍の偉い人と友達ですぐ彼見つけることができるわよ」

 

「(本当かな?でも話がうますぎるわね)」

 

サヨは疑っている。

 

「帝都は広いわよ、二人だけじゃ彼見つけることができないわよ」

 

「マジ?」

 

「そうよどうする?」

 

それを聞いてイエヤスは。

 

「なあサヨ、お言葉に甘えようぜ」

 

「うん、それがいいかな・・・」

 

「決まり」

 

二人は少女の誘いを受けた、馬車に乗り彼女の屋敷に向かった、だがサヨは不安を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二話

   夜襲を斬る

 

サヨ達は街で出会った少女アリアの誘いで彼女の屋敷に訪れている。

 

「本当にすごい屋敷ね、まさに大金持ちね」

 

サヨはとても驚いている。

 

「本当によかったぜ、タツミを探してくれるんだから」

 

イエヤスは喜んでいる、だが。サヨは浮かない顔をしていた。

 

「どうしたんだよ」

 

「うん・・・、アリアさんが彼と言ったのが気になって、私、タツミと言っていないんだけど」

 

「そりゃ帝都に出稼ぎに来る奴はだいたい男だろ」

 

「そうだけど・・・」

 

「なんだよあの娘も俺達を騙そうってのか?何のために、すげえ金持ちなのに?」

 

「うん、考えすぎね、私疲れているのよね、今日はもう寝ましょう、明日からアリアさんの付き人で忙しいから」

 

「そうだな」

 

二人は寝室に入った。

 

「俺寝るわ」

 

「うんお休み」

 

サヨは帝都の夜景を見ながら思った。

 

「タツミ、あなたもこの帝都のどこかにいるのよね、早く会いたいな」

 

サヨは想いながらベッドに入った。

 

3月21日

サヨ達はアリアの買い物の付き添いをしていた、だがサヨは激怒していた。

 

「許せない・・・、皇帝陛下を補佐すべき大臣がこの国を喰いものにしているなんて、そのせいで私の村が重税に苦しんでいるなんて」

 

「どうしたのサヨ」

 

アリアが声をかけてきた。

 

「いえなんでもないです」

 

サヨは慌てて返答した。

 

「このことを私が考えてもしょうがないわね、今は仕事に集中しないと、あ、この服かわいい」

 

サヨは服を見ているとおぞましい視線を感じた。

 

「何!?」

 

振り向くとアリアがいた。

 

「べ、別になんでもないです、(な、何、今の?)」

 

サヨはわけがわからなかった。

 

夜になりサヨはベッドに横になっていたが。

 

「眠れない・・・、昼間のことが気になって」

 

サヨはイエヤスからアリアがサヨのサラサラの髪の毛をねたんで睨んでいたことを聞いた。

 

「髪の毛のことであんなおぞましい視線送るかな」

 

サヨは他にも気になることがあった。

 

「おい、ここから先は立入禁止だぞ」

 

衛兵がサヨをとめた。

 

「すみません、ところでこの先に何があるんです?」

 

「倉庫だ」

 

「なんて゛倉庫が立入禁止なんです?」

 

「そのうちわかる」

 

「そのうちって何?それに・・・」

 

夕食前

 

「あれ、アリアさんお風呂入ったんですか?」

 

「ええ、趣味が盛り上がって」

 

「趣味?」

 

「ええ、明日教えてあげるわね」

 

「明日って何?何なのこの嫌な予感は」

 

サヨはますます不安になった。

 

「どうせ眠れないんだし倉庫へ行ってみよう」

 

サヨは倉庫へ行くことにした。

 

アリアの母親が廊下を笑顔で歩いている。

 

「ふふ、明日からの日記楽しみね」

 

すると後ろに人影が。

 

ゴキン!!

 

アリアの母親の首が180度後ろに曲がり、そのまま倒れた、すぐそばに獣のような女が立っていた。

 

「!?」

 

サヨは殺気を感じた。

 

「殺気!?まさか」

 

サヨは心当たりがあった。

 

「ナイトレイド?」

 

「ああ、去年から帝都で暴れている殺し屋集団だ、主に金持ちやお偉方が殺されている、お前達も覚悟はしておけよ。」

 

衛兵の話を思い出していた。

 

「まさか」

 

サヨは廊下を走っていると、気配を感じ振り向くと、窓の外に複数の人間が浮いていた。

 

「あれが・・・ナイトレイド!?」

 

サヨは驚愕した。

 

「空中に浮いて・・・、違う、糸のようなもので支えている?それにしても連中の大半若いわね私と歳ほとんど違わないわね」

 

「おいサヨ!」

 

イエヤスが駆けつけた。

 

「寝坊魔のあなたが起きてくるなんて」

 

サヨは不思議そうに見つめていた。

 

「当たり前だろ、あんな殺気感じたら」

 

屋敷から衛兵が出てきた。

 

「おい、俺達も加勢に行こうぜ」

 

イエヤスは勇ましく言った。

 

「待って、私達が行っても邪魔になるだけよ、それよりもここから弓で援護したほうがいいわ」

 

「そうだな、頼む」

 

二人が作戦をたてていると、ナイトレイドにも動きがあった。

 

「護衛三人、標的だぜアカメちゃん」

 

「葬る」

 

「手伝おうか」

 

「いや、ひとりで大丈夫だ」

 

黒髪の少女一人が地面に降りてきた。

 

「お前ら一斉にかか・・・」

 

衛兵が言い終える前に切りかかってきた。

 

ブッ!! パン!!

 

一人は首を切りつけ、もう一人は首を切り飛ばした。

 

「・・・これも当然の・・・ぐはっ!!」

 

そのまま息絶えた。

 

「ひっ、こ、この女バケモノだ、逃げろー!!」

 

衛兵は逃げ出した。

 

「逃がさない」

 

ザグ!!

 

後ろから胸を貫いた。

 

「お、おい一瞬で全滅してしまったぜ」

 

「うん、凄すぎる」

 

二人は呆然としていた。

 

「ちょっとアカメー!!何、人の獲物横取りしてるのよ」

 

ピンク色のツインテールの少女が激怒した。

 

「すまん、うっかり」

 

「うっかりじゃないわよ!!」

 

「まあまあ、マインちゃんだってこの前アカメちゃんの獲物横取りしたでしょ」

 

緑色の髪の少年がフォローにはいった。

 

「そんなの関係ないわよ」

 

「(ワガママだなぁー)」

 

少年がア然としていると、少年の右手からキュルキュルと音が鳴った

 

「!?」

 

少年は驚くと。

 

「二人向こうへ逃げた!」

 

少年は叫んだ。

 

「応援を連れて来る気だな、追って仕留めるぞ!」

 

鎧姿の大男が叫んだ。

 

「そっちはまかせた、残りは私が葬る」

 

「ちょっとアカメ独り占めする気?許さないわよ」

 

「早くしないと逃げられちゃうよ」

 

「チッ、高くつくわよ覚えてなさい」

 

「早くしろ」

 

「わかってるわよ!」

 

黒髪の少女以外はこの場を去っていった。

 

「なあ・・・」

 

「うん、すごいわね、いろんな意味で・・・」

 

二人は呆然としていた。

 

「なあ、アリアさんを探しに行こうぜ」

 

「うん、もしかしたら倉庫へ行ったのかも」

 

「倉庫?」

 

「あそこなら立て篭もるのにもってこいだし」

 

「そうだな、倉庫に行こうぜ」

 

「うん、行こう」

 

二人は倉庫へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三話

ジャコッ!!

 

アリアの父親が両断され真っ二つになった、近くに紫色の髪の女がいる。

 

「・・・アリア・・・」

 

「心配しなくてもすぐに会えますよ」

 

「・・・」

 

間もなくいきたえた。

 

「すいません」

 

その頃屋敷から離れた倉庫では。

 

ズバッ!!

 

「ガッ!!」

 

衛兵が女殺し屋に斬られた。

 

「標的、確認」

 

倉庫の前にアリアと衛兵二人がいる。

 

「くそっ、あいつもう着いてやがる」

 

「でもアリアさん無事よ」

 

二人が駆けつけた。

 

「よくも」

 

槍を装備した衛兵が女殺し屋に向かっていった。

 

「葬る」

 

ズバッ!!

 

衛兵は真っ二つになった。

 

「嘘っ、真っ二つ?あんな細腕でなんて威力」

 

サヨは驚愕した。

 

「くそっ!!」

 

もう一人の衛兵は銃を連射した。

 

「葬る」

 

女殺し屋は銃撃を正面から避けた。

 

「銃撃を正面から避けている?なんて身のこなし、人間業じゃない」

 

サヨは再び驚愕した。

 

「なんでこんなに強いのに殺し屋なんてやってるの?仕官すれば出世できるのに」

 

サヨは不思議に思った。

 

「それにしても彼女が手にしてるあの刀・・・すごくキレイ、あんなキレイな刀があるなんて」

 

サヨは女殺し屋の刀にメロメロになった。

 

「手に取ってじっくり眺めてみたいな」

 

サヨはうっとりしている。

 

「おい、何呆けてるんだよ!」

 

イエヤスは怒鳴った。

 

「いけない、あまりにキレイな刀だったんで見とれちゃった、集中しないと」

 

サヨは頬を叩いて気合いをいれた。

 

「それに彼女を倒せばあのキレイな刀を私の物にできる」

 

サヨは女殺し屋に矢を放った、だがあっさり矢を切り払った。

 

「邪魔するなら、葬る」

 

女殺し屋がサヨ達に向かってきた。

 

「まずい」

 

サヨは焦っていると、衛兵の剣を見つけ拾ってかまえた。

 

「ここは私が足止めするからアリアさんを倉庫へ」

 

「け、けどよ」

 

その瞬間女殺し屋が切り付けた、サヨは剣で防いだ。

 

「早く、時間がないから」

 

「わ、わかった、すぐ戻ってくるからな」

 

イエヤスは急いで倉庫へ向かった。

 

「おい早く倉庫へ」

 

「え、そ、倉庫は、それよりもここから離れたほうが・・・」

 

「ダメだ、他にも奴の仲間がいる、倉庫のほうがいい」

 

アリアは倉庫に入りたがらなさそうに見えた。

 

イエヤスは鍵を壊そうとするが壊れない。

 

「くそっ、なんで倉庫の鍵がこんなに固いんだ」

 

一方サヨは女殺し屋の攻撃をかろうじて防いでいた。

 

「な、なんて剣の威力なの、防ぐので精一杯、それにしても彼女の動きさっきよりも・・・いや、気のせいね」

 

女殺し屋の方も。

 

「くっ、思ったよりもできるな、それにしてもさっきから・・・いや、気のせいだ。

 

女殺し屋は一旦距離を置いた。

 

女殺し屋は深呼吸をして集中している。

 

すると、その場に獣の女が現れた。

 

「さて、アカメの奴もう仕事終わらせたかな」

 

その様子を見て。

 

「あれ、まだ終わらせてないのか、珍しいな」

 

女殺し屋は気合いをいれて全力をだした。

 

「アカメの奴、全身全霊でやる気だ久しぶりに見た、そんな使い手ここにいるのか?」

 

獣の女はサヨを見つけた。

 

「あいつ、あの時のカタブツ女、そんなに強いのか、お手並み拝見といくか」

 

様子を見ることにした。

 

「すごい、静かだけど威圧感のある殺気、だけど、私は村を救わないといけないの、こんなところで死ぬ訳にはいかない」

 

サヨは剣の持ち手を替えた。

 

「うまくいくかな、でも、持ちこたえるにはこれしかない」

 

女殺し屋は切り込んできた。

 

「このタイミングで?だけど耐えぬくしかない」

 

サヨは剣を全身全霊で振った。

 

ガキィィン!!

 

刃が交差した。

 

「な、なんて威力、だけど負ける訳にはいかない!」

 

サヨは左手に全ての力をいれた。

 

すると、押されていたがなんとか耐え抜いた。

 

「耐え抜いた、左手はなんともない、戻った私の左手」

 

サヨは感激した。

 

女殺し屋は間合いを取るため後ろへ下がった。

 

「まさか耐え抜くとは、だが勝負はついた」

 

すると、剣はバキッと音を出し、真っ二つに折れた。

 

「そ、そんな!?」

 

女殺し屋はとどめを入れに来た。

 

「せっかく左手が戻ったのにこんなところで私終わるの?私はまだ・・・」

 

サヨは絶望に屈しそうになったその時、サヨは何かを踏ん付けた。

 

「何!?」

 

サヨはバランスを崩して転んだ。

 

「きゃっ」

 

だがそのおかげで女殺し屋の攻撃を交わすことができた。

 

「た、助かった、でも何を踏ん付けたの」

 

そう思った時、女殺し屋は追い打ちをかけようとしている。

 

「今度こそ葬る」

 

「もうダメ!!」

 

サヨは観念したとき、獣の女が女殺し屋を止めた。

 

「何をするレオーネ」

 

無表情に言った。

 

「そういうなアカメ、こいつには少々借りがあるんだよ」

 

笑顔で言った。

 

「た、助かった、でもこの声どこかで聞き覚えが・・・」

 

サヨは思い出そうとした、そして一人心当たりがあった。

 

「あ、あなた、もしかして昨日の詐欺師!?」

 

「そうだよ美人のお姉さんだよ」

 

「あなた、詐欺師だけじゃなく殺し屋までやってるの!?」

 

「まあ、それについては今教えてやるよ、ついて来な」

 

サヨは足周りを見てみた、すると一つの像が落ちていた。

 

「これはタツミが村長にもらった神像?なんでここに?」

 

「おい早く来い」

 

「う、うん(一体どういうこと?)」

 

サヨはわけがわからないまま倉庫に着いた。

 

「サヨ、どうしたんだよ」

 

「うん、色々あって」

 

「おい、どいてな」

 

レオーネは拳をかまえた。

 

「おい、その扉の鍵すげえがん・・・」

 

イエヤスが言い終える前にレオーネは扉をぶっ飛ばした。

 

「すげえばか力・・・」

 

呆然としていると、レオーネは。

 

「よく見な、これが帝都の裏の姿だ」

 

二人は倉庫の中を見てみると、絶句した。

 

「・・・な、何これ?」

 

倉庫の中には無数の死体があった。

 

ある死体は両足を切り落とされ、肩に縫い付けられている。

 

ある死体は首を切り落とされ、腹をくり抜かれ首を埋め込められている。

 

ある死体は人間の首に蛇の胴体を結合されている。

 

ある死体は右側が男性で左側が女性で一つのに結合されている。

 

他の死体も人の原型をとどめていなかった。

 

「こ、これは・・・」

 

二人が呆然としていると、レオーネが。

 

「田舎から来た人間を甘い言葉で誘い込み、己の趣味で死ぬまで弄ぶ、それがこいつらの正体だよ」

 

「こ、こんな、こんな」

 

サヨは行商の言葉を思い出していた。

 

「あんたら帝都に行くのはやめたほうがいい、あそこには人の姿をしたバケモノがウヨウヨいるんだ」

 

「て、てっきりたちの悪い犯罪者のことだと・・・」

 

サヨは混乱のなか、思いついた。

 

「タツミ?まさかタツミがここに?そんなわけない、あれは何かの間違いよ」

 

サヨは心の中で否定しているなか、イエヤスが

 

「おいサヨ・・・」

 

その表情は絶望そのものだった。

 

「なに?」

 

サヨはイエヤスの視線の方を向いた、そこには。

 

「!!?」

 

そこにはタツミがいた、はりつけにされ、下半身を切り落とされ、左胸に槍が突き刺さった変わり果てたタツミの姿が。

 

「そ、そんな、タツミ、タツミー!!」

 

サヨは号泣し絶叫した。

 

「嘘、嘘よ、タツミがこんな・・・夢よ、これは悪い夢よ、今すぐ覚めて」

 

サヨは激しく取り乱した。

 

「これは・・・夢じゃねえよ・・・」

 

「こ、こんなのってあんまりよ・・・」

 

「お前らの知り合いもいたのか」

 

レオーネはそう言いながらタツミを見た。

 

「!?」

 

レオーネはすごく驚いた。

 

「あの少年・・・そうか、あの後こいつに・・・また会いたかっのに、残念だよ」

 

レオーネは歯ぎしりをした。

 

「てめぇ、最初から知ってたんだろ、おかしいと思ってたんだ、倉庫に入りたがらなかったからな、なんとか言いやがれ!」

 

イエヤスはアリアを怒鳴りつけた。

 

「ええ、そうよ、私がタツミを殺したのよ、でも、それがどうしたっていうの」

 

アリアは開き直った。

 

「てめぇ、自分が何したのかわかったてるのか!」

 

「何って、今言ったじゃない、私がタツミを殺したって、ホントイナカモノは頭が悪いわね」

 

「てめぇ!!」

 

イエヤスは激怒し。

 

「なんでよ・・・なんでこんなひどいことを・・・タツミがあなたに何をしたっていうのよ!!」

 

サヨは絶叫した。

 

「何もしてないわよ、でも、私はタツミを殺していいのよ、だってここ、私の屋敷の敷地内よ、なにしたって私の自由じゃない」

 

「何考えているの!?何も悪いことしてないタツミを殺していいわけないでしょう」

 

「あなた帝都のこと何も知らないのね、いい?帝都じゃイナカモノは家畜なのよカチク、剥製を作る時動物を殺すでしょう、それと同じよ」

 

「馬鹿言わないで、タツミは動物じゃない人間よ、なのに、こんな、こんな・・・」

 

あまりの理不尽にサヨは涙が止まらなかった。

 

「そいつに何を言っても無駄だよ、そいつにお前らの言葉は届かない、有無を言わさず殺すしかないんだよ、そういうことだからお前も死んでもらうよ」

 

レオーネの言葉を聞いてアリアは。

 

「・・・タツミの最後の言葉聞きたくない?」

 

「!?」

 

二人はその言葉に反応した。

 

「早く言え」

 

レオーネも反応した。

 

「レオーネ、何を!?」

 

アカメは驚いている。

 

「悪い、少し時間をくれ」

 

レオーネは申し訳なさそうに言った。

 

「じゃあ」

 

アリアは語り始めた。

 

夕方

 

バズン!!

 

「ギャアアア!!」

 

アリアはタツミの舌を切り落とした、舌の周りには切り落とした耳と指が落ちている。

 

「ううううう」

 

タツミは苦痛のうめき声をあげた。

 

「舌の次はアソコね、タツミのアソコかわいいわね」

 

アリアはニコニコしている。

 

「や、やめ・・・」

 

「だーめ」

 

バズン!!

 

「あああああああ!!」

 

タツミのアソコが切り落とされた。

 

「あああああああ!!」

 

タツミは苦痛の悲鳴をあげた。

 

「ふふ、切り落としはやめられないわね」

 

アリアはご満悦だった。

 

「お嬢様、そろそろ夕食のお時間です」

 

衛兵が知らせに来た。

 

「あら、もうそんな時間?せっかく気分がのってきたのにここで終わらせるのは興ざめね」

 

アリアは不満だった。

 

「よし、少し早いけど仕上げに取り掛かろう」

 

アリアは決心した。

 

「ガウリさん、タツミの下半身切り落としちゃって」

 

「はっ」

 

ガウリはタツミのそばに行った。

 

「・・・やべべぶべ」

 

タツミは懇願した。

 

「・・・悪く思うな、タツミ」

 

ガウリは苦悩の色を浮かべ剣を抜いた。

 

ザグ!!!

 

ガウリはタツミの腹に剣を突き刺さした。

 

「ああああああ!!」

 

ザグ!!ザグ!!ザグ!!

 

ガウリは何回も突き刺さした、そして。

 

ザグ!!!

 

ドザッ!!!

 

タツミの下半身が切り落とさた。

 

「・・・ザヨ゛・・・」

 

タツミは虫の息である。

 

「へえ、まだ生きてるんだ、すごい生命力ね」

 

アリアは感心した。

 

「・・・惜しいわね、あなたが軍人の家の生まれなら将軍になれたかもしれないのに」

 

アリアは惜しんだ。

 

「でも、イナカモノなんかに生まれたのがあなたの不幸よ、諦めなさい」

 

アリアは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「今日届いた槍を」

 

「はっ」

 

「あら、重たいわね、軽めに作らせたのに、ま、いいわ」

 

アリアは槍をかまえた。

 

「・・・・・・」

 

タツミは何か言っているが、声が小さすぎて誰にも聞こえなかった。

 

「さあ、感謝なさい、あなたは私の手によって傑作になれるのよ」

 

アリアは興奮している。

 

「たあっ!!」

 

「あああああああ!!」

 

アリアはタツミの左胸を突き刺した。

 

「がはっ!!」

 

タツミは大量の吐血をした、アリアはその血を浴びた。

 

タツミはいきたえた。

 

「お見事です」

 

「ふふ、ありがと」

 

アリアはご満悦だった。

 

「ありがとうタツミ、あなたは最高の素材だったわ、おかげで傑作が誕生したわ、サヨとイエヤスもすぐあなたの元へ送ってあげるから待っててね」

 

アリアはタツミに笑顔を送った。

 

アリアの話が終わった。

 

「夕方の話よ」

 

アリアはニィッと笑った。

 

「・・・酷すぎる、人間のやることじゃない」

 

サヨは涙をボロボロ流した。

 

「ヘドが出るぜ」

 

レオーネは不快をあらわにした。

 

「あなた、こんな残酷なことをして楽しいの?」

 

「楽しいわよ、だって私の趣味はイナカモノを素材にしてオブジェを作ることなんだから」

 

アリアは堂々と言った。

 

「どう?タツミを素材にして作ったこのオブジェ、カッコイイでしょ」

 

アリアは誇らしげだった。

 

「ふざけないで!!何がオブジェよ、あなた、タツミの命をなんだと思っているの、こんな、こんなヒドイことを、タツミはこんなところでこんな死にかたをするために生まれてきたんじゃない」

 

サヨは烈火の如く激怒した。

 

「フン、イナカモノには芸術がわからないのね、私がこんなに手をかけてタツミをかっこよくしてあげたのに感謝の言葉もないなんて」

 

「狂ってる、人間ここまで狂ってしまうものなの・・・」

 

サヨは絶望した。

 

「・・・泣きたいのはこっちよ、パパもママもみんな殺されちゃったんだから、明日はみんなで一緒にあなたを素材にしてのオブジェ作り楽しみにしていたのに」

 

アリアは涙目になった。

 

「な、なぜ私を?まさか、髪の毛で?」

 

「そうよ、見る度にいらついてしょうがなかったのよ」

 

「ち、ちょっと待ってよ、そんなの逆恨みもいいところ・・・」

 

サヨは困惑した。

 

「うるさい!カチクなんかに私の気持ちわからないわよ」

 

「そ、そんな、無茶苦茶な・・・」

 

サヨは呆然となった。

 

「いまさらだけど、明日の予定教えてあげるわね」

 

アリアは語り始めた。

 

「手始めにあなたのその服をビリビリに破いてあなたを全裸にする、

次に衛兵さんたちのねぎらいもかねてあなたを徹底的に犯す、

そして楽しんだ後はあなたの目をくり抜き、歯を抜き、耳と舌と鼻を切り落とす、

最後にむかついてならないあなたのそのサラサラで綺麗な髪を一本残らず引っこ抜く」

 

「髪の毛ひとつでそんな残酷なことを私に、狂ってる・・・」

 

アリアの言葉を聞いてサヨは真っ青になった。

 

「完成したオブジェを衛兵さん達のトイレとしてプレゼントするつもりだったの、衛兵さん達の喜ぶ顔とても楽しみにしていたのに・・・」

 

アリアは心から残念がった。

 

「それもこれも・・・」

 

アリアはレオーネを睨んだ。

 

「あなた達のおかげで全て台なしよ!」

 

アリアは鬼の形相で叫んだ。

 

「勝手なこと言うな、このクソガキ」

 

レオーネはゴミをみるようであった。

 

「フン、殺し屋ふぜいが偉そうにしないでよ、私はあなたなんかとは生まれも育ちも違うのよ!」

 

「おい、てめぇ、自分のおかれた状況わかってないだろ、ああ」

 

レオーネはアリアを睨みつけた。

 

「レオーネ、真に受けるな、それにもう時間が・・・」

 

アカメがレオーネに言おうとすると。

 

「アカメか、あなた以前、暗殺部隊にいたんでしょ、サイキュウのおじ様から聞いたわよ」

 

「サイキュウだと!?」

 

アカメは驚いた。

 

「ええ、おじ様はパパの友達なのよ、この前、遊びに来たとき酔って嘆いていたわよ、最高の暗殺者だったのに脱走してしまったって」

 

「・・・」

 

アカメは無言のままだった。

 

「おじ様も一目置いていて、それだけの強さならいずれ暗殺部隊の幹部になれて贅沢し放題できたのにそれを捨てるなんて愚かの極みよ」

 

「ふざけるな、アカメはそんなもの望んでなんかいない、アカメはなあ、アカメはなあ・・・」

 

レオーネは反論した。

 

「あら、あなた、アカメなんかかばうの?もしかして、あなた達いやらしい関係なの?不潔だわ」

 

アリアは軽蔑の眼差しで言った。

 

「・・・もういい、お前のその不愉快な面を見るのはもうたくさんだ、あの少年が受けた苦しみを百倍にしてお前に味わらせてやる、覚悟しろ!」

 

レオーネは激怒した。

 

「待ってくれ、俺にやらせてくれ!そいつはタツミの敵だ」

 

イエヤスが叫んだ。

 

「やってみなさいよ、でも、貴族の私を殺したら、あなた一生お尋ね者よ、あなたにそんな度胸ないでしょ」

 

アリアは挑発した。

 

「ダチを殺させて尻込みするほど俺は腑抜けじゃねえ、俺をなめ・・・」

 

イエヤスが言い終える前にサヨは剣を取り上げた。

 

「!?」

 

イエヤスは驚いた。

 

サヨは駆け出した。

 

「よくもタツミをあんな目に・・・絶対許せない・・・だから、あなたを・・・斬る!!」

 

サヨはアリアの首を切り飛ばした。

 

胴体から血が噴きだし、地面に倒れた。

 

「・・・敵はとった、でも、もう、あの楽しかった時間は戻ってこない」

 

サヨは泣き崩れた。

 

「もう、何がなんだかわからないよ、一体どうなっているのよ帝都は・・・」

 

「・・・とにかく、任務完了だ、帰還するぞ」

 

アカメはクールに言った。

 

「なあ、これも何かの縁だ、私達のアジトに来ないか」

 

レオーネはサヨ達に問いかけた。

 

「アジト?」

 

「ああ、お前らをボスに紹介しようと思ってな」

 

「ボス?」

 

「ああ、うちのボス、元将軍でナジェンダっていうんだけどさ」

 

「とりあえず行ってみるわ」

 

「へえ、積極的じゃん」

 

「どうせ、断っても、無理矢理連れていくんでしょ」

 

「わかってんじゃん」

 

「おいおい、タツミはどうするんだよ」

 

「心配するな、私がアジトまで運んでいってやるよ」

 

ちょうどその時。

 

「ちょっと、レオーネ、遅すぎるわよー!」

 

「悪い、先に行ってて、すぐ行くから」

 

「急げよ」

 

レオーネの仲間達だ。

 

「では、行くぞ」

 

アカメはサヨ達に言った。

 

「うん・・・」

 

サヨは力なく言った。

 

アカメの後に歩いていくサヨは。

 

「私達、これからどうなるのかな・・・」

 

月の光が寂しく輝いていた。

 

第三話

 

   裏を斬る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったよりも話が長くなってしまいました。
これからも少しずつこつこつ書いていきますので
この下手くそな小説を見てください。


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第四話

第四話

 

  ナイトレイドを斬る

 

4月21日

 

帝都から北に10キロの位置にあるナイトレイドのアジトがある、少し離れた崖に人影がある、その人影のすぐそばにお墓があった。

 

「あれから一月か、早いものね、今でもひょっこりあなたが現れるような気がするのよ」

 

サヨは幼なじみであるタツミの墓参りをしていた。

 

「本当にこの一ヶ月色々なことがあったわ」

 

3月30日

 

「全く、来る日も来る日も雑用かよ」

 

イエヤスはぼやいていた。

 

「ぼやかない、どこの世界も新入りはこんなものよ」

 

「まあな、にしても、いてて」

 

イエヤスの頭はこぶだらけであった。

 

「本当こぶだらけね」

 

「寝坊したら頭に石が落ちて来る仕掛けをするなんて容赦ないぜ」

 

「首が落ちるよりはましでしょう」

 

「まあな、でもあれからけっこう日が過ぎたな」

 

「うん」

 

二人は最初にアジトに来た頃を思い出していた。

 

3月22日

 

サヨ達はレオーネの誘いでナイトレイドのアジトに来ていた。

 

「話はレオーネから聞いている、災難だったな」

 

彼女がナイトレイドのボスナジェンダである。

 

「災難?」

 

サヨはムッとした。

 

「おい!あんた、そんな言葉で片付けないでほしいな!」

 

イエヤスは怒鳴った。

 

「そうだったな、お前達にとってはそれで片付けられる問題ではなかったな、それについては詫びを言っておく、だが、今の帝都ではあのようなことは日常茶飯事なのだよ」

 

「な、なんでそんなことに・・・」

 

「賄賂だよ」

 

「わ、賄賂!?あんなひどいことが賄賂なんかで・・・」

 

サヨは納得できなかった。

 

「今の帝都ではまかり通るのだよ」

 

「・・・」

 

帝都の腐敗ぶりにサヨは絶句した。

 

「気持ちはわかるが落ち込んでいても何も始まらんぞ」

 

ナジェンダはビシッと言った。

 

「あの、いくつか質問してもいいですか?」

 

サヨは質問した。

 

「かまわんぞ」

 

「殺し屋ってどれだけ稼げるんですか?」

 

サヨはハッキリ言った。

 

「そうだな、きっちり仕事をしていれば故郷の村くらい救えるだろう、(いきなり金の話か、まあ、ストレートでいいがな)」

 

ナジェンダは少し笑みを浮かべた。

 

「元将軍のあなたがなぜ殺し屋集団のボスを?」

 

「それについては少し長い話になるぞ」

 

「はい、構いません」

 

「では・・・」

 

ナジェンダは語り始めた、そして。

 

「民を救う革命軍、そしてその要がナイトレイド・・・すげえぜ、ナイトレイドの殺しは帝都のゴミを始末する正義ってことだな」

 

イエヤスは浮かれて叫んでいると、ナイトレイドの一同は大笑いした。

 

「な、なんだよ」

 

「私達が正義なわけないじゃないですか」

 

紫の髪の女性は微笑みながら言った、彼女の名前はシェーレである。

 

「そうよ、ナイトレイドに正義はないわよ、だってナイトレイドのやってることって所詮殺しなんだし」

 

サヨは淡々と言った。

 

「え、だってよ・・・」

 

イエヤスはうろたえているが、サヨはお構いなしに。

 

「今年の税は去年よりも上がるでしょうか?」

 

「ああ、間違いなく上がるな」

 

「そうですか・・・私、ナイトレイドに入ります」

 

その返答を聞いてサヨは即決した。

 

「おい、何言ってるんだよ?ナイトレイドは正義じゃないってお前も言っただろ」

 

イエヤスは慌てて言った。

 

「帝都はすごく不景気なのよ、まともにやっていたらもっと多くの村人が飢え死にしてしまうわ」

 

サヨはスバッと言った。

 

「けどよお」

 

イエヤスは迷っている。

 

「ねえ、私達何しに帝都へやってきたの?」

 

「そりゃあ、兵士になって出世して稼ぐために」

 

「どうやって出世するの?」

 

「そりゃあ、敵の大将の首をとるとか・・・!?」

 

イエヤスはハッと気づいた。

 

「そうよ、私達人殺しをしに帝都にやってきたのよ」

 

「けどよ、殺し屋だぜ?」

 

「なによ、兵士の殺しは良くて殺し屋の殺しはダメっておかしいでしょう、どっちの殺しも悪よ」

 

「・・・」

 

イエヤスは無言だった。

 

「私、村の人と約束したの、絶対救うって、救えるのなら私は千人だって殺してみせるわ」

 

サヨから凄みがてでいた。

 

「気が乗らないのなら、私一人がなるから、別にいいですよね?」

 

「ああ、かまわんぞ」

 

「・・・ああ!!わかったよ、俺もなるよ、尻込みしていたらタツミに笑われちまう」

 

イエヤスは腹をくくった。

 

「話は決まったか?」

 

「はい、私達ナイトレイドに入ります」

 

「言っておくが革命が成功しても大手を振って村に帰れんかもしれんぞ」

 

「構いません」

 

サヨは力強く言った。

 

「共に歩むか、修羅の道を」

 

ナジェンダはフッと笑った。

 

「だが、新入りのお前達にいきなり殺しの仕事を任せるわけにはいかないからな、しばらくは雑用をやってもらうぞ」

 

「わかりました」

 

「この話はこれぐらいにしておこう、皆休んでいいぞ」

 

「了解」

 

「ところで、レオーネ」

 

「?」

 

レオーネは何、と思った。

 

「お前、今回の仕事で作戦時間オーバーしたそうだな」

 

「ヤバ!!そーだった」

 

レオーネはそのことを思い出し、全力で逃げだした。

 

ドウ!!

 

ナジェンダは義手を飛ばしてレオーネの首を掴んだ。

 

「にゃあああ!!」

 

「お前は何か興味を持つとすぐ時間を忘れる、悪い癖だぞレオーネ」

 

「ゴメン、ボス、次は気をつける」

 

レオーネは必死に謝ったが。

 

「そのセリフ前も聞いたな、よし、私が気合いを入れてやろう」

 

「ひいい!!アカメ、助けて」

 

レオーネはアカメに助けを求めたが。

 

「諦めろ、ボスはとめられん」

 

アカメはそっけなかった。

 

「そんなあ!!」

 

レオーネは大泣きした。

 

「じゃあ、ボスお休み」

 

マインはさっさと自分の部屋に行った。

 

「薄情者ー!!」

 

「ナジェンダさんが姐さんにお仕置きか・・・ニシシシシシシ」

 

緑色の髪の少年はニヤニヤしている。

 

「ラバ、てめぇ!!」

 

レオーネは激怒した。

 

「心配するな、じきにすむ」

 

「ひいい!!そのキリキリ怖いー!!」

 

レオーネは泣きながら引きずられていく。

 

「・・・なあ、さっきまでのシリアスどこ行ったんだ」

 

「うん、私達、ここでやっていけるのかな?」

 

二人はかなり不安になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五話

  殺し屋を斬る(前編)

 

ラバック

 

3月22日

 

ナジェンダの仕置きの後すぐ。

 

「よっ、サヨちゃんだっけか?歓迎するよ、後、お前もついでにな」

 

「ついで?」

 

イエヤスは不満だった。

 

「ええと、ラバックさん?」

 

「ラバでいいよ」

 

「じゃあラバ、聞きたいことがあるんだけど」

 

「なんだい?」

 

「さっき、ボスのことナジェンダさんって言ってなかった?」

 

「へえ、よく気づいたね、そうだよ」

 

「え?それって」

 

「ナジェンダさんとは将軍の頃からの知り合いなんだよ」

 

それから、しばらくラバの話が続いた。

 

「・・・自慢話まだ続くの」

 

サヨはうんざりした。

 

「そう急くなって、ここからが本筋さ」

 

ラバはナジェンダに一目惚れしたことを熱弁した。

 

「そのことボスは知らないのよね?」

 

「まあね・・・」

 

「ようし!それなら俺様が一肌ぬ・・・」

 

イエヤスが意気込んでいると、首に糸が巻き付いた。

 

「てめぇ、余計なこと言ったらぶっ殺すからな」

 

ラバの目に殺気があった。

 

「おいおい、マジになるなって!」

 

イエヤスは慌てた。

 

「もう、余計なお節介はしない」

 

サヨはあきれている。

 

「そういうことだからサヨちゃんも黙っててくれよな」

 

「わかった」

 

返事をするとすぐ。

 

「・・・ねえ、ラバ、後悔したことないの?」

 

「後悔?」

 

「だって、故郷に残れば裕福な生活送れたんだし」

 

「・・・したことないよ後悔なんて」

 

ラバは力強く言った。

 

「むしろ追わなかったら絶対後悔してた、なぜ追わなかったんだと一生自分を許せなかったと思う」

 

「へえ、以外と男気あるんだ」

 

サヨは感心した。

 

「あれ?ラバ、さっきレオーネの入浴どうやって覗こうかとつぶやいていなかったっけ?」

 

「そうだよ」

 

ラバはあっさり言った。

 

「な、なんで、だってラバは・・・」

 

サヨはわけが分からなかった。

 

「それはそれ、これはこれだよ」

 

「何それ?」

 

ラバはどうやって覗こうかとつぶやき始めた。

 

「・・・見直して損した」

 

サヨは呆れはてていた。

 

アカメ

 

3月22日夕方

 

アカメはアジトから離れた河原で食事をしていた。

 

「・・・これエビルバードよね」

 

「ああ」

 

二人は驚いていると、アカメは。

 

「お前達は仲間だからこの肉食っていいぞ」

 

アカメは二人に肉を渡した。

 

「ありがと、ところでその肉どうやって持って帰るの?」

 

「持って帰る?」

 

「だって置いていくのももったいないし」

 

「心配ない、全部食う」

 

アカメはあっさり言った。

 

「食うって、すごい量よ、こん・・・」

 

サヨが言い終える前にアカメは肉をたいらげ、骨だけが残った。

 

「おい、あれだけの肉どこへ消えたんだ?」

 

「うん、すごすぎる」

 

二人はとても驚いた、サヨはアカメの刀に視線を向いた。

 

「その刀・・・」

 

「ああ、これは帝具村雨だ」

 

アカメは刀を抜いた。

 

「ていぐ?」

 

サヨはその言葉よりも刀に集中した。

 

「いつ見てもすごくキレイねこの刀、惚れ惚れしちゃう」

 

アカメは帝具の説明をしているがサヨは聞いていない。

 

「一度だけでいいから使わせてくれないかなこの刀、でも、アカメの愛刀だし、無理よね」

 

サヨは少ししょんぼりした。

 

「おい、聞いているのか?」

 

「う、うん、聞いているよ、(どうしよう、刀に見とれてて全然聞いていなかった、そうだ、後でブラートに教えてもらおう)」

 

サヨはなんとかきりぬけた。

 

「ところでサイキュウって誰?」

 

「なんだ、いきなり?」

 

「アカメ、その名前を聞いて驚いていたから」

 

「ああ、そいつは暗殺部隊の設立者で、同時に国を貪る奸臣だ」

 

「つまり大臣と共に仕留める標的ね」

 

「そうだ、それが私達の任務だ」

 

「私も任務を達成できるように強くならないと」

 

サヨは気合いをいれた。

 

「さて、夕食の獲物を捕るぞ」

 

「え?あの肉は?」

 

「あれはオヤツだ」

 

「オヤツ!?あれが・・・さすがアカメね」

 

サヨは心から思った。

 

レオーネ

 

3月23日

 

「よ、サヨ、少しはここに慣れたか」

 

レオーネが話かけた。

 

「うん」

 

「ところで金貸してくれない」

 

唐突だった。

 

「お金、今ないけど」

 

「嘘つくなよ、あんなにたくさんあったじゃん」

 

「だから今はないわよ」

 

「どゆこと?」

 

レオーネはポカンとした。

 

「あのお金はボスに頼んで村へ送ってもらったから」

 

「にゃに?」

 

「それに皆から聞いたけど、レオーネお金貸りても全然返してないでしょ」

 

「それは・・・」

 

レオーネは言葉がつまった。

 

「私、そんな人にお金貸さないから」

 

レオーネはムッとした、そして。

 

もにゅ

 

レオーネは後ろからサヨの胸を揉んだ。

 

「な、何するのよいきなり!!」

 

サヨは真っ赤になって叫んだ。

 

「金貸さなかったバツだよ」

 

「何それ!!ちょっ、やめ・・・」

 

レオーネは揉み続ける。

 

「お前、胸、でかくないな」

 

「な?そりゃあ、レオーネよりは小さいけど普通よ普通」

 

「普通ねえ、まあ、マインよりはあるけど」

 

「えっ!?マインのも揉んだの?」

 

「うん、この前ベロベロに酔った時にマインの胸を揉んだんだ、そしたらー」

 

「そしたら?」

 

「帝具で殺されかけた」

 

「何やってんの!?」

 

サヨは呆れはてた。

 

「あれはビックリした、おかげで酔いが醒めちゃったよ」

 

レオーネは笑顔で言った。

 

「な、何で脳天気に話せるの?殺されかけたんでしょう」

 

サヨは釈然としていなかった。

 

「なんでって、私達は殺し殺されの世界にいるんだよ、そんなんで気にしていたらやっていけないよ」

 

笑顔で言った。

 

「そうよね、普段の皆を見ていたらつい忘れがちだけど、ここいつ死んでもおかしくない殺し屋集団なのよね、私、今まで以上に気合いをいれて鍛練しないと」

 

サヨは気合いを入れ直した、すると。

 

もにもに

 

「てっ!!いつまで私の胸揉んでるのよ!!」

 

レオーネはまだ揉んでいた。

 

「金貸すまで」

 

「だからないってば」

 

「またまたー」

 

二人が騒いでいると。

 

「アンタ達何やってんの?」

 

マインが現れた。

 

「アンタ達そんな趣味があったの?」

 

マインは軽蔑の眼差しで見ている。

 

「ち、違う、これは・・・」

 

サヨは訂正しようとしたが。

 

「ああ、お前とサヨ、どっちが胸小さいか調べてたんだ、残念ながらサヨの方が少し大きいよ」

 

ブチッ!!

 

何かの音がした。

 

「残念だったね、せっかく胸がでかくない女の新入りが入ったのに、まあ、気を落とさず・・・」

 

マインの様子が明らかに変わった。

 

「あれ?マインの様子が・・・」

 

「あ、ヤバ」

 

その瞬間マインは銃を構えた。

 

「どこから出したの、それ!?」

 

銃から光線が発射した。

 

ドウ!!

 

壁をあっさり貫通した。

 

「あわわ・・・」

 

サヨは間一髪かわした。

 

「何するのよ、私、悪くないでしょ!」

 

サヨは激怒した。

 

「今のマインに何を言っても無駄だよ、逃げるよ」

 

「あっ、待って」

 

二人は逃げだした。

 

マインはなお撃ち続けている。

 

「どうだい、ここ、スリリングだろ」

 

レオーネはニヤニヤしている。

 

「何を言って・・・元はといえばレオーネが!!」

 

サヨは必死に逃げている。

 

「あ、そうだ、言い忘れていたけど」

 

「何!?」

 

「ナイトレイドに就職おめでとう」

 

レオーネはニッコリ微笑んだ。

 

「な、今はそれどころじゃ・・・」

 

「そら、逃げろや、逃げろー」

 

レオーネは大はしゃぎである。

 

「無茶苦茶よー!!」

 

サヨは絶叫した。

 

しばらくアジトに銃声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六話

   殺し屋を斬る(後編)

 

マイン

 

3月24日

 

サヨはマインの荷物運びで帝都に来ていた。

 

「どういう神経してるのかな、この人、昨日私をレオーネごと殺そうとしておいて荷物運びをしろだなんて」

 

サヨは不満の極みであった。

 

「何?文句あるの」

 

マインが睨みつけた。

 

「べ、別にないけど」

 

サヨは慌ててごまかした。

 

「そう、ちなみにアタシ、アンタのこと嫌いだから」

 

「荷物運びさせておいていうことがそれ?」

 

サヨは腹が立ったが表情に出さないように堪えた。

 

「後、アンタ、殺し屋にむいていないから」

 

サヨはさらにムッとしたが。

 

「そ、そりゃあ、私はまだまだ未熟だし・・・」

 

「それ以前の問題なのよ、まあ、今のアンタにはわからないわね」

 

「何なの、ハッキリ言いなさいよ」

 

サヨは腹が立っているが、自分の立場をわきまえて文句を言えなかった。

 

「全く、なんてムカつく人なの」

 

サヨはその時そう思ったが、後日それを覆すことになった。

 

数日後

 

サヨはマインの護衛の任務についていた。

 

マインは長距離の標的をあっさり撃ち抜いた。

 

「す、すごい、あんな遠くの標的を・・・」

 

サヨはたまげている。

 

「どう、アタシは射撃の天才なのよ」

 

マインは鼻高々だった。

 

「確かに天才と自慢するだけのことはある」

 

サヨはマインの銃に視線を向けた。

 

「その銃、帝具なのよね?」

 

「そうよ、これは帝具パンプキンよ、ピンチで威力が上がるのよ、まあ、アタシはピンチにならないけど」

 

「えっ?それじゃあ、威力が上がらないんじゃ」

 

「何言ってるの、上がるわよ」

 

「そ、それってパンプキンがピンチと判断するの?」

 

「知らないわよ、アンタ細かいわね、いいじゃない、威力が上がるんだから」

 

「・・・なんていい加減な、すごい威力だけど、ちょっと私には」

 

サヨはポカンとした。

 

「さあ、アタシを敬いなさい、アハハハハハ」

 

マインは高笑いした。

 

「(この人とはやっぱり仲良くなれそうにないわね)」

 

サヨは心の中で思った。

 

シェーレ

 

3月28日

 

サヨは鍛練で鎧泳ぎを行っている。

 

「鎧泳ぎお疲れ様でした」

 

「うん、すごくキツイわね、でも、力がついていくのを感じる」

 

「はい、鎧泳ぎは基礎体力をつけるのにピッタリですから」

 

「鍛練の間、服預かってくれてありがとう」

 

「どういたしまして」

 

サヨは体を拭いて服を着た。

 

「ところで昨日アジトにいなかったけど、どこ行ってたの」

 

「帝都へ買い出しです」

 

「買い出し?シェーレ手配されているのに、よく見つからなかったわね」

 

「警備隊の人とすれ違いましたけど何事もありませんでした」

 

「まあ、まさかお尋ね者が白昼堂々街を歩いているなんて思わないわよね」

 

サヨは苦笑いした。

 

「でも、私、買い物間違えました、砂糖を買わなければならないのに・・・」

 

「まさか塩を?」

 

「いえ、小麦粉を買ってしまいました」

 

「なんで砂糖と小麦粉を間違えるの?」

 

「すいません」

 

サヨは不思議に思った、よくあのマインとコンビ組めるなと。

 

「ねえ、マインのことなんだけど」

 

「マインにキツイこと言われましたか?」

 

図星だった。

 

「マインは口は悪いですけど、とても優しいですよ」

 

「そうなの?」

 

「私も最初はグズとかウスノロとか散々言われました」

 

「ほ、本当にシェーレ、マインとよくコンビ組めるわね・・・」

 

「事実ですから」

 

「それにしても、シェーレはなんで殺し屋になったの?」

 

「それはですね・・・」

 

シェーレがその話をしようとしたその時。

 

ブラート

 

突然川の中からブラートが現れた。

 

「はははははは、頑張っているかサヨ」

 

「う、うん、頑張っているよ」

 

サヨは驚きながらも答えた。

 

「そうか、結構、結構」

 

ブラートはご満悦だった。

 

「この前帝具の説明ありがとう」

 

「ああ、だいたい理解したか?」

 

「うん」

 

「まあ、一回の説明ではなかなか理解はできないだろう」

 

「帝具って第一印象をどう思うかで適正が決まるのよね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「ブラートもそうなのよね」

 

「ああ、初めて見たとき、すげえカッコイイと思ったぜ」

 

ブラートは興奮している。

 

「帝具をキレイと思うのはどうなのかな」

 

「それもバッチリだぜ」

 

「そう・・・」

 

サヨは言葉少なめだった。

 

「どうした?」

 

「な、なんでもないわよ、それにしてもこの前帝都で見たブラートの手配書、まるで別人だったんだけど」

 

「ああ、あれは数年前のやつだからな、ある事件がきっかけで軍を抜けて数年間徹底的に鍛練し直したからな」

 

「そ、そうなの」

 

「ああ、あの手配書よりもハンサムになっただろ」

 

ブラートはポーズをキメた。

 

「(数年前の方がハンサムなのに・・・まあ、本人が満足してるのならいいかな)」

 

サヨは心の中に留めた。

 

「それにしてもイエヤスのやつどうした?」

 

「うん、ラストの一回のとき調子に乗って流木にぶつかって下流に流されたけど」

 

「全くしょうがないな、よし、俺が直々にしごいてやるか」

 

そう言うと、ブラートは川に飛び込み下流へと泳いでいった。

 

「そういえばブラート・・・」

 

サヨはレオーネからブラートがゲイだと聞かされていた、本人はネタと言っていたが真相はわからない。

 

「まあ、私には関係ないからいいかな」

 

サヨは青空を眺めていた。

 

ナジェンダ

 

3月30日夕方

 

サヨはアジトで一週間ぶりにナジェンダに会った。

 

「あ、ボス、お帰りなさい」

 

「ああ」

 

「本部との連絡、お疲れ様です」

 

「それが私の役割だからな」

 

「前から気になっていたんですが」

 

「なんだ」

 

「ボスは暗殺の仕事をしないんですね」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、なんでボスの手配書があるのかなと思って、それにあんなに用心深いのにアカメ達も手配されてるのもおかしいと思いまして」

 

サヨは不思議に思っていた。

 

「それはな、いわゆるでっちあげだ」

 

「でっちあげ!?」

 

「帝国にとってナイトレイドの手配書がいつまでもないのは面子にかかわるのでな、そこで元々脱走兵として手配されていた私達に白羽の矢が立ったのだ」

 

「し、証拠も無しにですか?」

 

サヨは驚いた。

 

「今の帝国ではよくあることだ、まあ、今回はたまたま的中したがな」

 

ナジェンダは笑いながら言った。

 

「本当に帝国はおかしいのね、だからこそ私達が帝国を打倒しないと」

 

サヨがそう思っているとナジェンダはタバコを吸い出した。

 

「ボスのタバコ、普通のとかなり違いますよね」

 

「ああ、これは特別製だからな、本部に煙に詳しい者がいてな、作ってもらったんだ」

 

「特別製ですか、そういえばボスの義手もすごいですね」

 

「ああ、革命軍一の技術者が作った、まあ、縁があったら二人に会うこともあるだろう」

 

「そうですね、私、夕食の準備があるのでこれで失礼します」

 

「ああ」

 

サヨはキッチンに行きながら思っていた。

 

「それにしてもラバ、女の子大好きなのにボスにぞっこんなんて、まあ、恋愛は人それぞれだし」

 

この時のサヨはナジェンダが30代だと思っていた。

 

サヨ

 

3月31日深夜

 

いよいよサヨは初任務を行うことになった、標的は警備隊隊長オーガ、権力を悪用して非道を行っている輩である。

 

サヨはオーガに弓矢で攻撃を仕掛けた、だが、オーガはあっさり切り払った。

 

「そんなヘナチョコ矢が俺に効くか」

 

「やはり強いわね、でも、想定内よ」

 

サヨは弓を捨てて剣に切り替えた。

 

「弓矢がだめなら剣か、剣はそんなに甘くないぞ」

 

オーガはすっかり油断していた。

 

サヨは全速で駆け出した。

 

「速!?」

 

オーガは虚をつかれた。

 

サヨは全力で剣をふりぬいた。

 

ズバッ!!

 

オーガの首を切り裂き、大量の血が噴き出した。

 

「て、てめぇ、剣の方が強えじゃ・・・ねぇ・・・か・・・」

 

ズウン!!

 

オーガは轟音とともに地に倒れた。

 

サヨの呼吸は荒かった。

 

「や、やった、うまく油断を誘えて倒せた、い、急いで帰還しないと」

 

サヨは全速力でその場を離れた。

 

サヨはアジトに帰還した、メンバー全員がアジトにいた。

 

アカメとマイン以外のメンバーは称賛した。

 

「一回だけじゃあだめなのかな・・・」

 

サヨはアカメが何も言ってくれないのを気にしている、すると、アカメはサヨに近づいていき、サヨの服をつかんだ。

 

「何?」

 

サヨはそう思った瞬間、アカメはサヨの服を勢いよく脱がした、サヨの胸がまるだしになった。

 

ラバとイエヤスは見とれている、マインはア然としている、レオーネは面白そうに見ている、シェーレはぼーとしている、ナジェンダとブラートはクールにしている。

 

「え?」

 

サヨは自分に何が起こったのか分からなかった、そしてすぐに恥じらいが爆発した。

 

「キャアアアア!!な、何するのアカメー!?」

 

サヨは大混乱になった。

 

「騒ぐな、じきにすむ」

 

アカメはクールだった。

 

「じきにって何がー!?」

 

アカメはお構いなしにサヨの服を脱がしていく。

 

「いやー!!やめてー!!」

 

サヨは必死に抵抗するも。

 

「こら、暴れるな、レオーネ、おさえててくれ」

 

「あいよ」

 

レオーネはサヨの腕をつかんで取り押さえた。

 

「え?ちょっと!?」

 

サヨは万歳のポーズでレオーネに腕を掴まれ胸がまるだしのままおさえられていた、サヨの顔は真っ赤になった。

 

「(落ち度があったのならちゃんと口で言ってよ、こんな辱めしなくても・・・)」

 

サヨは悲しみの涙を流した。

 

「よかった、どこも怪我はない、もし、標的が武器に毒を塗っていたら一大事だからな」

 

アカメは安堵の表情をした。

 

「そ、そういうことだったの?」

 

「これからも怪我をせず無事に帰還してくれ」

 

「うん、私、これからも頑張るから」

 

サヨは喜びの涙を流した。

 

「パンツ一枚で何を頑張るのかな?」

 

レオーネはニヤニヤした。

 

「ちょっ、だったら腕離してよ服着れないでしょ」

 

サヨは慌てている。

 

「離して欲しかったら金貸しな」

 

レオーネがそう言うと、サヨは鬼の形相になりレオーネを睨みつけた。

 

「ウソ、ジョーダン」

 

レオーネはびびって、腕を離した。

 

「全くレオーネたらっ!!」

 

サヨは怒りながら服を着込んだ。

 

「ところで、あなたたち、私の裸見たよね?」

 

サヨはイエヤス達に問いかけた。

 

「え?まあ、見たというか見えたというか」

 

「へえ、そうなんだ、じゃあ、きっちり殴って記憶消しておかないとね」

 

サヨは指鳴らしをした。

 

「ちょっと待て、俺達は何も悪くないぞ、なあラバ、ってあれ、あいついねえ!?」

 

イエヤスが振り向くとラバの姿はどこにもなかった。

 

その瞬間、サヨの鉄拳が炸裂した。

 

「あぎゃー!!」

 

イエヤスはボコ殴りになった、その翌日ラバはレオーネの入浴を覗こうとしてボコボコになった。

 

4月21日

 

「この話前もしたけど何回聞いてもすごいでしょ」

 

サヨはタツミの墓標に話しかけている。

 

「この後、もっとすごいことが起こったのよ、今から話すわね、タツミ」

 

サヨは再び語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第七話

   夢物語を斬る

 

4月10日

 

「今日はボスから帝国最強の将軍のことを聞いた、名前はエスデスといい帝国最年少の女将軍でボスの右目と右手を奪った張本人である、エスデスの帝具はデモンズエキスで氷を生み出すことができる、いったいどれだけの威力なのだろう、想像できない、エスデスは今は北の異民族の討伐に行っており帝都にはいない、鎮圧には今年いっぱいかかるとラバは言っていた、正直に言ってホッとしている、ボスが全く太刀打ちできなかった相手に私なんかが敵うわけないから、今は鍛練に集中しないと」

 

その頃北の大地では・・・

 

猛吹雪の中二人の戦士が戦っていた、ひとりはそのエスデスでもうひとりは北の異民族の王子ヌマ・セイカである。

 

ヌマ・セイカは槍を大きくふりぬく、だがエスデスはあっさり防いだ、エスデスは氷の矢を彼に浴びせた、胸板を貫いた、地面に倒れ勝負はついたと思いきや、彼の傷がみるみるふさがっていった。

 

「ほう、北の異民族に伝わる傷を瞬時に治す秘伝の秘薬何度見ても面白いな」

 

彼の傷はあっという間に完治した。

 

「だが、一度口にしたら24時間で必ず死ぬ、そうまでして生き残った民を逃がす時間稼ぎをするか」

 

「俺が始めたことだからな、これは落とし前だ、貴様を倒せば俺が死んでも国家再建は夢物語ではない、共に地獄に落ちようぞエスデス!!」

 

「地獄へは貴様ひとりで行け」

 

「つれないことを言うなエスデス」

 

「御託はいいかかってこい」

 

「ならば行くぞエスデス」

 

ヌマ・セイカは突撃していく、エスデスは無数の氷の矢を生み出し攻撃した、決着は間もなくついた。

 

4月20日

 

一週間前から帝都に現れた首斬りザンク、数十人の人間の首がその首斬りに切り落とされた、ナイトレイドはザンクの抹殺に乗り出した、ザンク捜索の最中にイエヤスは死んだはずのタツミと出会った、イエヤスはタツミを追って広場まで来た。

 

「お前、タツミか?」

 

イエヤスはタツミに問いかけた、だが、返事がない。

 

「やっぱりお前タツミじゃねえな、あいつは下半身を切り落とされたんだ、生きてるわけねぇんだよ、誰だてめぇ!」

 

イエヤスは怒鳴りつけると、タツミの姿が大男に変わった。

 

「てめぇ、まさかザンクか?」

 

「全くこんなガキに見破られるなんて不愉快、不愉快」

 

この男こそ悪名高い首斬りザンクである。

 

「さて、早速首をもらおうか」

 

「簡単にはやらねえぜ」

 

イエヤスは剣を構えると、頭上から人が降りてきた、アカメがやってきた。

 

「お前がザンクだな、直ちに葬る」

 

アカメは剣を構えた。

 

「こいつがあのアカメか、まともにやりあうのは危険だな、ならば」

 

ザンクは念じると額の玉が反応した、すると、アカメの動きが止まった。

 

「どうした、アカメ」

 

イエヤスが呼びかけても反応がない。

 

「帝具スペクテッドの能力のひとつ幻視、今アカメは最も愛しい者が見えている、動揺しているはず今のうちに首を落とす」

 

ザンクが斬りかかろうとしたその時、アカメはダッシュしてザンクの左胸を突き刺した。

 

「ば、ばかな愛しい人間の姿が見えていた・・・はずだ・・・」

 

ザンクは釈然としないまま倒れた。

 

「愛しいからこそ早くころしてあげたいんだ」

 

「アカメ、今、なんて言ったんだ?」

 

「そのうち話す」

 

イエヤスはア然としていた、アカメは月を見上げていた。

 

4月21日

 

ナイトレイドの一同は会議室にいた。

 

「さて、ザンクから回収した帝具、試しにお前達装着してみるか?」

 

ナジェンダはサヨ達に言った。

 

「私はいいわ、イエヤス、あなた試したら」

 

「そうか?じゃ早速」

 

イエヤスは装着した。

 

「何が起こるかな、とりあえず気合いをいれて」

 

イエヤスは念じると帝具が発動した、すると、アカメ達の服が透けて下着が見えた。

 

「おお、これはすげえぜ、帝具ってすげえぜ」

 

イエヤスは大興奮している。

 

「さらに気合いをいれたらさらに透けるかな?ぬん!!」

 

さらに気合いをいれた。

 

「まあ、さすがにそんな都合よく・・・」

 

すると、下着も透けて全裸が見えた。

 

「マ、マジか?やってみるもんだぜ」

 

イエヤスはさらに興奮した。

 

「ねぇイエヤスどう?」

 

サヨの問いかけにイエヤスは後ろを振り向いた、すると、サヨの全裸も見えた。

 

「こ、こっちもか?」

 

イエヤスがうろたえていると。

 

「おい、どうだ?」

 

ラバとブラートの方を見ると二人の全裸が見えた。

 

「・・・そうだよな、女だけってわけにはいかないよな」

 

イエヤスは気力ががた落ちした。

 

「おーい、イエヤスどうだ?」

 

レオーネが聞いてきたので振り向くとレオーネとナジェンダの全裸が見えた。

 

「さ、さすが大人の女だぜ」

 

イエヤスの気力が上がった。

 

「それにしても凄すぎるぜこれ、にしても全裸が見えたなんて言ったら殺されちまうな、どう言ったらいいかな」

 

イエヤスは答に困っていた。

 

「そうだ、がいこつが見えたと言えばいいな、ナイスアイデアだぜ」

 

イエヤスはニヤニヤしていると、マインが問いかけた。

 

「何ニヤニヤしているの・・・ま、まさか透けて見えているの!?」

 

マインはかんずいた。

 

「(やばい、なんとかごまかさないと)す、透けてない下着は透けてない」

 

「下着って・・・ま、まさか下着も透けてるの!?」

 

イエヤスは墓穴を掘った、一同は大騒ぎになった。

 

「イエヤス、あなた、なんてことしてくれるのよ、後でぶっ飛ばすから」

 

サヨは真っ赤になりながら叫んだ。

 

「すべて見られちまったわけだな」

 

ブラートは赤くなった。

 

「てめぇ、ナジェンダさんのヌードを・・・なんてうらやましい、てめぇは死刑だ」

 

ラバは血の涙を流した。

 

「ボス」

 

「好きにしろ」

 

レオーネとナジェンダは激怒している。

 

「ま、待ってくれ、透けているのは服だけだ」

 

なんとかごまかそうと必死である。

 

「本当、じゃあ、シェーレの下着は何色?」

 

「(た、確か紫だったはず)紫だ」

 

「違います」

 

シェーレはキッパリと言った。

 

「そ、そんなはずは?確か紫だったはずだ!?」

 

イエヤスは慌てている。

 

「だったはず?やっぱり全部透けてるんじゃない!!」

 

「ヤ、ヤバい」

 

万事休すである。

 

「思い出しました、紫でした」

 

「いまさらおせえよ!!」

 

イエヤスが絶叫すると、マインは帝具を構えていた。

 

「このど変態、覚悟はいいわね」

 

「ま、待っ・・・」

 

マインは言い終える前に帝具をぶっ放した。

 

「ウギヤアアアアア!!」

 

イエヤスの悲鳴が鳴り響いた。

 

「つまり、念じたら全部透けたと?」

 

「・・・はい」

 

イエヤスは黒焦げだった。

 

「どうやらお前はこの帝具と適合できたようだな、正直に言って全く適合できるとは思ってなかったぞ」

 

「ちょっとボス、まさか」

 

マインは慌てて問いかけた。

 

「適合したしな、預けるつもりだ」

 

「冗談じゃないわよ!!こんな変態にそんな帝具預けるのなら、アタシ今すぐナイトレイド脱退するから!!」

 

マインは激怒している。

 

「気持ちは分かるが落ち着け、この件は私に任せてくれ、責任は私が取る」

 

「わかったわよ・・・」

 

マインは渋々了解した。

 

「にしても本当に帝具はすげえな、もしかしたら、生き返りの帝具もあるんじゃないか」

 

イエヤスがはしゃいでいると一同は静まりかえった。

 

「どうしたんだよ?」

 

イエヤスは皆の様子にキョトンとしている。

 

「・・・ねぇよ、そんな帝具は、命はひとつだけだ」

 

ブラートは険しい表情で言った、サヨとイエヤスは深刻な表情になった。

 

「けどよ、探してみたらあるかも・・・」

 

「そんな帝具があるのなら始皇帝は生きながらえている」

 

アカメは否定した。

 

「でも、それは寿命だったから適応しなかったわけでそれ以外なら・・」

 

サヨは諦めきれなかった。

 

「ないな、断言していい」

 

ナジェンダは断言した。

 

「なぜです!?」

 

「もしそんな帝具があるのなら最優先で確保するはずだ、現時点でないということは最初からなかったということだ」

 

「・・・」

 

ナジェンダの説明に二人は呆然としている。

 

「あきらめろ、敵に付け込まれるぞ」

 

アカメの言葉に二人は何も言えなかった。

 

しばらくしてサヨ達はタツミの墓標に来ていた。

 

「ねぇ、その帝具よく適合できたわね、カッコイイと思ったの?」

 

「いや、カッコイイとは思わなかった」

 

「だったらなんで?」

 

サヨは不思議そうにしている。

 

「幻でももう一回タツミに会わしてくれてありがとなと思ったら適合できたんだよ」

 

「そ、そんなんで適合できたの?」

 

サヨは帝具は奥が深いと思った。

 

「じゃあ、俺、戻るぜ」

 

「うん、私はもうちょっとここにいるから」

 

「わかった」

 

イエヤスは戻っていった。

 

しばらくサヨはタツミの墓標に語っていると、後ろから。

 

「サヨ・・・」

 

シェーレが話しかけてきた。

 

「サヨ、大丈夫ですか」

 

シェーレは心配している。

 

「うん・・・」

 

サヨの言葉に力はなかった。

 

「生き返りの帝具がないとわかったのはショックだったけど、そんな都合のいい帝具がそうそうあるわけがないし」

 

「残念ですが、帝具でもそこまでは」

 

「私が気にしてるのは、帝都に来る途中で夜盗に襲われたことなの、タツミは正面突破しようと言ったんだけど、私はバラバラに逃げようって言ったの、もしタツミの言うとおりにしていればタツミは死なずにすんだんじゃないかなと思っているの・・・」

 

サヨの目から涙がボロボロこぼれだした、すると、シェーレは後ろからサヨを抱きしめた。

 

「今は好きなだけ泣いていいですよ」

 

「いいの?殺し屋がそんな甘くて」

 

「今はいいんじゃないでしょうか」

 

その言葉を聞くとサヨはさらに泣きだした。

 

「・・・今でも思うの、タツミの判断が正しかったんじゃなかったって」

 

「でも、三人共死んでしまう可能性もありましたよ」

 

「そうよね、わかってる、けど、今は・・・」

 

「今はいっぱい泣いてください」

 

「うん、うっ、うっ、うっ、」

 

サヨは泣き続けている、シェーレは優しく抱きしめている。

 

「ありがとう、シェーレ」

 

「こちらこそ、サヨ、(おかげで、役に立てることをもうひとつ見つけました)」

 

夜空に星が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結構話を書きましたが文才のなさを改めて痛感します、それでも、ぽつぽつ書いていくので読んでください。


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第八話

  邂逅を斬る

 

4月22日

 

今日はレオーネと共にコボレ兄弟を暗殺するため帝都に来ていたが、レオーネを追いかけている借金取りに遭遇して、レオーネとはぐれてしまった。

 

「まいったわね、ここどこかしら、急がないと時間に間に合わない」

 

サヨが困っていると。

 

「ややっ!!私の正義センサーに反応が、そこのあなた、何かお困りですか?」

 

警備隊の制服を着た女性が声をかけてきた。

 

「お困りなら私がお手伝いします」

 

「(どうしよう、でも、下手に断ると怪しまれるし)ちょっと道に迷って、串焼き屋に行きたいんですけど」

 

串焼き屋は借金取りに追われる直前にいた所である。

 

「そうですか、では、私が案内します、ついてきてください」

 

「は、はい」

 

サヨは女性についていき、間もなく着いた。

 

「はい、着きました」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

女性はニッコリ微笑んだ。

 

「失礼ですが、あなたは地方の人ですよね、なぜ帝都へ?」

 

「ええ、故郷の村のために出稼ぎに」

 

「それは立派です、仕事は見つかりましたか」

 

「まあ、一応」

 

「もしよかったら、警備隊に入りませんか」

 

「いい話だけど連れと相談しないと」

 

「わかりました、返事はいつでもいいですので待っています」

 

「ありがとう」

 

「私はセリュー・ユビキタスです、あなたは」

 

「私はサ・・・(本名はまずい)、サチ、私はサチよ」

 

「サチですか、いいお名前ですね」

 

「ありがとう、ところでさっきから気になっていたんだけどあなたの足元の・・・」

 

サヨはセリューの足元にいる犬のような生物が気になっていた。

 

「はい、この子はコロです」

 

「コロ?」

 

「はい、コロは生物型帝具なのです、誰も動かせなかったのですが、私の正義の心に反応してくれたんです」

 

「(やっぱりね、文献に書いてあったのとそっくりだったからもしやと思ったけど)」

 

サヨは表情にださないようにした。

 

「では、これで失礼します」

 

「うん、ありがとう」

 

セリューは走り去っていった。

 

「セリューか、いい人だったわね、でも、次に会ったら敵になるかも、もう会うことがなければいいんだけど」

 

サヨが考えこんでいると。

 

「おーい、サヨ」

 

レオーネが声をかけてきた。

 

「ふう、やっと、借金取りをまいたよ」

 

「なにを言ってるの、そもそもレオーネが・・・」

 

「ぐずぐずしてる暇はないよ仕事、仕事」

 

サヨにお構いなしにレオーネは走り出した。

 

「あっ、待ってレオーネ」

 

サヨは釈然としないまま走り出した。

 

その後、二人は何事もなく暗殺任務をこなした、サヨはナジェンダにセリューと生物型帝具のことを報告した。

 

4月23日

 

サヨは帝具を手入れしているアカメと共にいた。

 

「刀の手入れ、大変ね」

 

「ああ、かすっただけでもあの世行きだからな」

 

「うん、そうね」

 

サヨは村雨を眺めている。

 

「(村雨か、世間では呪われた妖刀と噂されているけど、こんなキレイな刀が呪われた妖刀なのかな、噂なんて全然あてにならないし、ナイトレイドがいい例だし、きっと間違われて伝わっているのよね)」

 

サヨは噂を全否定していた。

 

「(それにしても、見る度に好きになっていくわねこの刀)」

 

サヨは村雨にメロメロになっていた。

 

「(アカメが仕事がない時に村雨を貸してくれないかな、でも、アカメの大切な帝具だし、でも、何もせずにあきらめるのも・・・)」

 

サヨは葛藤している。

 

「それにしても本当にキレイ・・・」

 

「今、なんて言った?」

 

アカメは振り向き、サヨに言った。

 

「(しまった、つい口に出ちゃた!)」

 

サヨは慌ててごまかそうとした矢先に。

 

「アカメの唇がキレイって言ったんだよ」

 

レオーネが突然現れた。

 

「な、何を言っている?」

 

アカメは慌てている。

 

「そのままの意味だよ、サヨはお前の唇にメロメロなんだよ」

 

レオーネはニヤニヤしている。

 

「本当か?」

 

アカメはサヨを問い詰めている。

 

「そ、それは・・・(どうしよう、本当のことを言うには)」

 

サヨは返答に困っている。

 

「どうなんだ?」

 

「そ、その・・・ゴメン、私、アジトの掃除があるから」

 

サヨは慌ててその場を走り去った。

 

「・・・」

 

アカメは無言で見ている。

 

「お前の唇はキレイだからね、私もいただいちゃいそうだよ」

 

「レオーネ!冗談にもほどがあるぞ」

 

アカメは怒ってその場を去った。

 

「まったく、アカメは真面目だねえ、そこがかわいいんだけど」

 

レオーネがニヤニヤしていると、ラバが現れた、ラバの表情はシリアスだった。

 

「なあ、サヨちゃんが見とれてたのって村雨じゃないかな」

 

「村雨?そうだとしても村雨はアカメの帝具なんだし、別に・・・」

 

ラバの表情は一層重々しくなった。

 

「俺、村雨の不吉な噂を聞いたことあるんだ」

 

「噂?」

 

「ああ、村雨は所有者でもずさんに扱えば死に導くらしいんだよ」

 

「おいおい、そんなわけが・・・あっ!」

 

レオーネは以前アカメが標的の護衛に村雨を手渡したことがあった。

 

「確かに、腕利きの護衛で村雨をおぞましいと言っていたからそいつに村雨を手渡して怯ませて仕留めたって言ってたな」

 

「うん、それが呪われし妖刀の由縁だという噂だよ」

 

「でもなあ、とても信じられないよ」

 

「だから、あくまで噂だよ」

 

「まあ、アカメにはそれとなく言っておくか、あいにく私はもうじき仕事で帝都に行かないといけないから」

 

「たしか姐さんイエヤスの奴と組むんだっけ」

 

「そうだよ、じゃ、そろそろ行くわ」

 

「ああ、気をつけて」

 

レオーネは駆け足でその場を去った、二人はその後に起こることを想像すらしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九話

   内通者を斬る

 

レオーネとイエヤスは麻薬密売組織の暗殺のため帝都に来ていた。

 

「どうだ見えるか」

 

「ああ、バッチリ見えるぜ」

 

イエヤスは帝具を使って偵察している。

 

「女の子が大勢薬づけにされちまっているぜ」

 

「・・・そうか、ならさっさと行って仕事を終わらせるぞ」

 

レオーネは怒りをあらわにした。

 

「がってんだ」

 

「にしてもその帝具たいしたもんだな、獣化している私でもこの距離では見えないんだからな」

 

「へへ、そうだろ」

 

イエヤスは調子に乗り始めている。

 

「にしても、その帝具、遠視と透視以外他にないのか」

 

「今のところこれだけなんだよ」

 

「ふうん、他にも何かあるかもな」

 

「ああ、いつの日か全ての能力を使いこなしてみせるぜ」

 

イエヤスは有頂天だった。

 

「いつまでもつぶやいてな、遅れたら酒おごりな」

 

レオーネはイエヤスをおいてダッシュした。

 

「あっ、姐さんズリイぞ、おーい、待ってくれよー!」

 

イエヤスの叫び声がむなしく響いた。

 

その後、二人は密売組織を壊滅させた、レオーネは一人で帰還している。

 

「さて、アジトに帰って一杯やるかな」

 

するとどこからともなく声がしたようなしないような。

 

「おい!俺一人で女の子全員運んでおけってあんまりだろ!」

 

イエヤスのツッコミだったかもしれない。

 

「さて、別働隊のマインとシェーレ、無事かな?」

 

レオーネは月を見ながらつぶやいた。

 

数時間前

 

マインとシェーレは別働隊として出発しようとしていた。

 

「じゃあボス、別働隊として出発するわね」

 

するとナジェンダは。

 

「待て、お前達には別の仕事をやってもらう」

 

「別の?」

 

二人は何と思った。

 

「たった今、本部から緊急の依頼が入った」

 

「何ですか?」

 

「内通者の始末だ」

 

「内通者!?」

 

二人は驚いた。

 

「未確認だが、そいつらの内通で地方のチームが全滅したらしい」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、おそらくな」

 

「ちょっと待ってよ、じゃあ次は」

 

「間違いなくここだろう、一刻を争う、行け」

 

「了解」

 

二人は駆け足で出発した。

 

「さて、別働隊を誰を代わりにするか・・・」

 

ナジェンダはアカメとサヨを呼びだし説明した。

 

「説明は以上だ、急だがやれるか」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「はい、大丈夫です」

 

「では、直ちに出発してくれ」

 

「了解」

 

二人は会議室を後にした。

 

「それにしても急に仕事が入るなんて」

 

「緊急の仕事はよくあることだ」

 

「あの、準備するからちょっと待ってて」

 

「急げよ」

 

サヨがその場を離れると、ラバが話しかけてきた。

 

「・・・アカメちゃん行くのか」

 

「ああ」

 

ラバは不安そうな顔で。

 

「なあ、サヨちゃんと一緒にいくのは控えたほうが・・・」

 

「何を言っている」

 

「ええと、その、村雨の噂なんだが」

 

「なんだそのことか、私も知っているぞ」

 

「だったら、この噂も知ってるんだろ、村雨が自身に愛情を注いでくれそうな人間が現れたら今の所有者を切り捨てるということも」

 

「ああ、だが、そんなものはただの噂だ」

 

「でも・・・」

 

「帝具は所詮ただの道具だ」

 

「だからそういうのがヤバいんだって、俺、ナジェンダさんに事情を・・・」

 

「余計なことはするな、いいな」

 

「わかった・・・」

 

二人の会話が終わるころにサヨが戻ってきた。

 

「お待たせ、アカメ」

 

「では、行くぞ」

 

二人は出発した、ラバはそれを不安の眼差しで見ていた。

 

街の外れに一軒の小屋がある、そこは全く人が通らない所である、そこは革命軍の密偵のアジトのひとつである、そこにシェーレが赴いていた。

 

「すいません」

 

シェーレはノックをした、すると、男二人が出てきた。

 

「こ、これはシェーレさん、何か用ですか」

 

二人は慌てている。

 

「差し入れを持ってきました」

 

「それで差し入れは?」

 

「・・・忘れてきました」

 

「・・・まあ、気にしないで」

 

二人は苦笑いした。

 

「まさかばれたのか?」

 

「いや、まだわからんぞ」

 

二人は小声で話している。

 

「どうする、もうすぐ帝国の者が来るぞ」

 

「ああ、せっかくの大金を手にするチャンスがふいになる、いつ死ぬかわからない密偵なんかもうまっぴらだからな」

 

「だが、下手はふめんぞ」

 

二人が話しているとシェーレは転んで眼鏡を落としてしまった。

 

「め、眼鏡、眼鏡、どこですか?」

 

「おい、これはチャンスだぞ」

 

「待て、もう少し様子を」

 

「ぐずぐずしてる暇はない、先手必勝だ」

 

男の一人がシェーレに斬りかかった。

 

ドウ!!

 

男の頭が撃ち抜かれた。

 

「そうはさせないわよ、裏切り者」

 

マインが男を射殺した。

 

「・・・」

 

もう一人の男は呆然としていると、シェーレは眼鏡を拾ってかけ直した。

 

「なぜこのようなことを」

 

「・・・金が必要だったんだ、妹の病気を治すために」

 

「え?」

 

「薬がすげえ高いんだよ」

 

「お気持ちはわかりますが・・・」

 

「わかってるさ、許されることではないことも」

 

「他にも方法が・・・」

 

「無理だ、奴がぼんくらな密偵である俺の妹を助けるわけがない!」

 

「・・・」

 

シェーレは何も語りかけることができなかった。

 

「だが事が露見してしまった以上もう終わりだな」

 

密偵は観念した。

 

「申し訳ありませんが」

 

「いいさ、さっさとあんたの仕事を済ませな」

 

「わかりました」

 

シェーレはエクスタスを振った、密偵の首は斬り飛ばされた、残った胴体から血が噴き出した。

 

「すいません」

 

シェーレは密偵の死体に頭を下げた。

 

「シェーレ、終わった?」

 

マインが声をかけた。

 

「はい、マイン、あの・・・」

 

「しっ、静かに」

 

マインが何かの気配を感じ身構えた。

 

「あれは帝国兵、取り引きに来たのね、多分まだアジトの場所は知られてないわね」

 

「どうします?」

 

「決まってるでしょう、始末する」

 

「わかりました」

 

二人は帝具を構え迎えうつ準備をした。

 

アカメとサヨは別働隊としてチブルの暗殺を終えて、アジトへ帰還中だった。

 

「チブルという男用心深かったわね」

 

「ああ、思ったよりも時間がかかった急ぐぞ」

 

二人はさらに足を速めた。

 

「村雨のことアカメにいうべきよね、もしこの案がだめなら村雨のこと諦める」

 

サヨは決心した。

 

「ねえ、アカメ、話がある・・・」

 

サヨが声をかけたその時、二人は殺気を感じ、とっさに身をかわした。

 

「顔が手配書と一致、ナイトレイド、アカメと断定、共にいることから連れの女も・・・サチ?なんでサチがここに?」

 

聞き覚えのある声だった、それは昨日会った警備隊のセリューだった。

 

「お、お前、まさか、ナイトレイドだったのか?」

 

セリューは困惑している、そして。

 

「お前、心の中で私を馬鹿にしていたんだろう、何も知らない私を!」

 

サヨは違うと言おうとしたが、何を言っても信じてもらえないと思い、何も言えなかった。

 

「・・・私はお前が警備隊に入るのを楽しみにしていたんだぞ、お前とはいい友達になれると、それを踏みにじって・・・」

 

セリューは大粒の涙を流した。

 

「・・・絶対許さないぞ、アカメ共々この場で断罪してやるぞ」

 

セリューは鬼の形相で叫んだ。

 

「コロ、戦闘用意!腕!」

 

コロは瞬時に巨大化し、巨大な腕が生えた。

 

「こうなったら仕留めるしかないわね、(いつかこうなってしまう覚悟はしてたけどこんなに早くくるなんて)」

 

サヨにためらいの思いがあった。

 

「サヨ、ためらうな、ためらうと死ぬぞ」

 

アカメはサヨに忠告した。

 

「・・・そうか、お前、サヨっていうのか・・・よくも騙してくれたなこのウソツキめ!!」

 

セリューはさらに激怒した、昨日の一時が全て偽りだとわかって。

 

「もう、腹をくくるしかない」

 

サヨはセリューを殺す決心をした。

 

これより激しい死闘が開始されることになる。

 

・・・この帝具戦で生き残った帝具使いは・・・一人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十話

時計の音がカチコチ鳴り響いている、周りにはアカメ達以外人がいない、だが、静寂な時間はすぐに終わった。

 

「コロ、お前はアカメの相手をしろ」

 

「キュ!」

 

セリューの指示でアカメに向かう。

 

「サヨ、お前は私が断罪してやる」

 

セリューはトンファーガンを撃った、サヨは身をかわした。

 

「迂闊に近づけない、なんとかしないと」

 

サヨは隙を探している。

 

一方、アカメはコロと戦っている、アカメはコロに斬りつけた、だが、何ともなかった。

 

「やはり、生物型には呪毒は効かないか、ならば」

 

アカメはコロの腕を斬り飛ばした、だが、瞬時に再生した。

 

「呪毒も効かず、切り刻んでもすぐ再生してしまう、相性最悪だ・・・」

 

アカメに焦りがでてきた。

 

数時間前

 

アジトでナジェンダとブラートが話をしている。

 

「ブラート、宮殿の偵察ご苦労だった」

 

「ああ、宮殿の入口付近までが精一杯だった、とても奥までは無理だ」

 

「いや、それだけで十分だ」

 

「それにしても、アジトがずいぶん人が少ないな」

 

「ああ、緊急の依頼が入ってな」

 

「アカメもか?」

 

「ああ、別働隊の代理を頼んだ、サヨと共にな」

 

「そうか、大丈夫かな」

 

「アカメがいるから大丈夫だろう」

 

「いや、俺が心配しているのはアカメの方だ、昨日あいつの稽古を見たらキレがいまひとつなような気がした」

 

「そうなのか、まあ、あいつもプロだ、調子が悪くてもうまくこなすだろう」

 

「少し気になるな・・・俺、応援に行ってこようか?」

 

「お前、まだ完全に回復していないだろ?」

 

「ああ、だが無理はしないさ」

 

「そうか、すぐに行ってくれ」

 

「わかった」

 

ブラートはすぐ出発した、ナジェンダはすっきりしない様子だった。

 

「何か不安を感じる、何か見落としているのか?」

 

しばらくしてレオーネが戻ってきた。

 

「さて、仕事も終わったし一杯やるか、アカメはどこかな?」

 

レオーネがアカメを探していると、ラバが現れた。

 

「アカメちゃんはサヨちゃんと別働隊の仕事に行ったよ」

 

それを聞いてレオーネは驚いた。

 

「その担当はマインとシェーレだっただろう」

 

「姐さんが行った後すぐ緊急の依頼があってさ、二人はその仕事に行ったんだよ」

 

「な!?」

 

それを聞いてレオーネは胸騒ぎがした、そして、すぐに駆け出した。

 

「私、帝都へ戻ってみる」

 

「ちょっ・・・」

 

ラバが言い終える前にレオーネは走り去った、そして、すぐにナジェンダに報告した、村雨の噂のことも。

 

「その噂は私も聞いた事がある、だが、所詮噂だろう」

 

「俺が気にしているのは他にもあるんですよ、生物型の帝具のことも」

 

「生物型?」

 

ナジェンダは一瞬何のことかわからなかったがすぐに思いだした。

 

「(しまった!内通者の始末に気をとられて生物型のことを完全に失念していた)」

 

ナジェンダは蒼白していた。

 

「(まずい、村雨と生物型は相性最悪だ、いくらアカメでも苦戦は免れない、頼むブラート急いでくれ)」

 

ナジェンダは懸命に願った。

 

その頃、アカメ達の戦いは芳しくなかった、アカメの攻撃はコロには有効にならず膠着状態が続いている、しかも。

 

「体がさっきから重い・・・このままでは」

 

アカメは焦りを感じていた、サヨとセリューの攻防も続いている。

 

「このままじゃ新手が来てしまう、こうなったら」

 

サヨは懐から袋を取り出した、そして、セリューに投げつけた。

 

「なんだ?こんなもの」

 

セリューは袋を撃ち落とした、すると、白煙がまき散らされた、サヨが投げた袋には小麦粉が入っていた。

 

「なんだ?煙幕か」

 

セリューに一瞬隙ができた、サヨはすかさず駆け出した。

 

「は、早い!?」

 

サヨは全速でセリューの首筋に剣を振った。

 

「ま、まずい」

 

セリューはとっさに左腕を盾にした。

 

ザン!!

 

セリューの左腕は斬り飛ばされた。

 

「うわあああああ!!」

 

セリューは苦痛の悲鳴を上げた。

 

「よ、よくも私の左腕を、それにしてもとっさに左腕を犠牲にしなければ危なかっ・・・左?」

 

セリューはオーガが殺された日を思い出していた。

 

 

 

 

「た、隊長が、・・・まさかアカメが?」

 

「いや、隊長は左の首筋を斬られている、アカメは右利きだからその可能性は低い、隊長を殺した賊は左利きだからな」

 

「絶対、絶対許さないぞ!!」

 

セリューは号泣しながら叫んだ。

 

 

 

 

「・・・お前だったのか、お前が隊長を殺したんだな!!」

 

セリューの目は血走っている。

 

「な、何を言って・・・」

 

「ごまかすな!隊長を殺した賊は左利きなんだ、その剣の構え、お前、左利きなんだろ」

 

「ひ、左利きの人は他にも・・・」

 

「隊長を殺すほどの左利きの賊はそうはいない、だから、お前なんだ!」

 

「な、なんてめちゃくちゃな推理、でも、当たってるから恐ろしい」

 

サヨは戦慄した。

 

「絶対、許さないぞ」

 

セリューは怒りと悲しみで号泣している。

 

「(コロの奥の手を使えば数ヶ月の間ろくに動けなくなる、だけど、私はこいつを許せない)」

 

セリューは腹をくくった。

 

「コロ、奥の手、狂化!!」

 

セリューが叫んだ瞬間、コロの体の色が変わり、筋肉が盛り上がった、そして身の毛もよだつ咆哮が起こった。

 

「オオオオオオオ!!」

 

「な、なに?こんな奥の手が・・・」

 

サヨは予想外の事に混乱している。

 

「どうだ!コロの奥の手は」

 

セリューはしてやったりの顔をしていたが、アカメを見て、顔色を変えた。

 

「こいつ、この一瞬で最善の対処を・・・ちっ、帝都最凶の殺し屋の悪名は伊達ではないな」

 

アカメは両手で耳をふさいで冷静に様子を見ている。

 

「だが、こいつには効果てきめんだな」

 

サヨは咆哮に戸惑っている。

 

「今ならこいつを殺せる、簡単に隊長の敵をとれる・・・だが、そうなれば、アカメは全速で逃げるな、さすがにスピードではアカメには敵わない、コロの奥の手には時間に限りがある、時間が切れれば私はアカメにやられる・・・ひとつ手はあるが危険な賭けだ、だが、やるしかない!」

 

コロの咆哮が終えるとセリューはコロに命じた。

 

「コロ、こいつを、サヨを殺せ!」

 

コロはサヨに突進した。

 

「こっちに来る!?か、体が動かない、やられる」

 

サヨは死を覚悟した、だが、すんでのところでアカメは駆けつけコロの足を切り落とした。

 

「サヨ、大丈夫か」

 

「アカメ、あり・・・」

 

サヨがお礼を言おうとした瞬間、銃声がした、そしてアカメの左肩を撃ち抜いた。

 

ドウ!!

 

「・・・・・・!?」

 

アカメは身動きできなかった、そして、コロはアカメに襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

アカメはなんとかかわした。

 

「アカメ・・・!?」

 

サヨはアカメの姿を見て呆然としていた、アカメの左腕が肩ごと食いちぎられていたから。

 

「・・・」

 

アカメの顔は苦痛で歪んでいた。

 

「(あ、あれ、アカメの左腕どこいったの、早くくっつけないと・・・)」

 

サヨは混乱している。

 

「ははは、やった、やったぞ、私は賭けに勝ったぞ、やはり運は正義に傾くのだ」

 

セリューは高笑いである。

 

アカメの傷口から血が噴き出している。

 

「血が止まらない・・・アジトまでもたないか」

 

アカメは死を覚悟した、そしてサヨに言った。

 

「この村雨をボスに届けてくれ」

 

「な、何を言っているの?」

 

「私はこの傷では助からん、私は奴と刺し違える」

 

「そ、そんな・・・」

 

「早く行け」

 

「わ、私が足止めをするから、アカメが逃げて」

 

サヨの目から大粒の涙がこぼれている。

 

「お前ではまともな足止めはできん」

 

「だけど・・・」

 

「私の最後の頼みだ、村雨を帝国に奪われるわけにはいかない、頼む」

 

「・・・ゴメン、アカメ」

 

そう言われるとサヨは引き受けないわけにはいかなかった、サヨはアカメから村雨を受けとると全速で逃げ出した。

 

「ま、待て、逃がさないぞサヨ、コロ!」

 

コロはサヨを追いかけるも、アカメは交換したサヨの剣でコロの目を切り刻んだ。

 

「グウウウ!!」

 

コロは目を潰されて立ち止まっている、その間にサヨは走り去っていた。

 

「悪あがきを、アカメ、お前は私が直接断罪してやるぞ、コロ、お前は手を出すなよ、帝具がないアカメなど私の敵ではないからな」

 

セリューは歪んだ笑みを浮かべた。

 

サヨは涙をこぼしながら逃げている。

 

「(な、なんでこんな・・・私、また足を引っ張って・・・)」

 

サヨは断腸の思いで走り去っていった。

 

 

その頃、アカメとセリューは死闘を繰り広げていた。

 

「こいつ、こんな深手でこれだけの動きを?」

 

アカメの粘りにうろたえている。

 

一方、アカメも出血多量で限界が近づいていた。

 

「・・・目がかすんできた、早く仕留めなければ」

 

アカメは捨て身の特攻にでた。

 

セリューは虚をつかれた、その隙にアカメの剣はセリューの脇腹を切り裂いた。

 

「ああああ!!」

 

セリューは苦痛のうめき声をあげた、かろうじて致命傷ではなかった。

 

「くそ、深手を受けてしまった、このままでは」

 

セリューは膝をついてしまった。

 

「よし、次で仕留める」

 

アカメは剣を振り上げた。

 

「わ、私はここで死ぬのか?隊長の敵もとれずに」

 

セリューは走馬灯のようにいろいろな思い出を思い出している。

 

「私は絶対に死なない」

 

セリューは己を奮い立たせた。

 

「私と共に死ね!!」

 

アカメは気迫と共に剣を振り落とした、その瞬間、セリューは右腕を盾にした。

 

ズバッ!!

 

セリューの右腕が切り落とされた、セリューは激痛に耐えている。

 

「今こそ隊長から授かった切り札を使う!!」

 

セリューの両腕の傷口から銃が飛び出した。

 

「正義執行!!」

 

トドウ!!

 

セリューの銃撃はアカメの左脇腹を撃ち抜いた、大量の血しぶきがあがった。

 

「がはっ!!」

 

アカメは血を吐いた、すかさずセリューは。

 

「銃殺刑だあああああ!!」

 

トドウ!!

 

第二射が発砲された、アカメの右胸が撃ち抜かれた。

 

「がっ!!」

 

アカメはフラッとよろめいた。

 

「止めだ!!」

 

第三射が発砲された、アカメの腹が撃ち抜かれた。

 

「がはっ!!」

 

アカメは大量の血を吐き、背中から地面に倒れた。

 

「やった、やったぞ、アカメを仕留めたぞ!!」

 

セリューは大喜びである。

 

アカメは血まみれで横たわっている。

 

「・・・(体が動かない、私は死ぬんだな)」

 

もうろうとしている意識のなかで初任務の事を思い出していた。

 

 

「腐った帝国を打倒するために俺達に力を貸してくれないか?」

 

この男の名はコウガ、サバティーニ一座のメンバーである、アカメは彼らと一月一緒にいた。

 

不穏分子としてアカメは仲間と共に一座全員を抹殺した。

 

 

「・・・彼らの誘いをはねのけ、殺してしまった、あの時からこうなるのは決まっていたんだな・・・」

 

アカメはこれは報いと受け取った。

 

「(・・・ナイトレイド、私にとってまさに家族みたいな存在だったな、本当に居心地がよかった、

・・・皆、すまない、革命を起こせずに死んでいくこの私を許してくれ)」

 

アカメは薄れゆく意識のなか、アカメは目の前に一人の少女の姿を見た。

 

「(クロメ!?クロメに会うまでは・・・死ねない、死にたくない!!・・・せめてクロメの手で・・・)」

 

アカメは涙を流しながら必死に少女の幻をつかもうとする、すると、セリューは。

 

「ええい!!往生際が悪いぞ、このくたばりぞこないの賊めが、お前のおかげで何人の人が死んだ、

この期におよんで命ごいとはみっともないぞ」

 

セリューはアカメが命ごいをしていると思った。

 

「潔く死ね!!」

 

セリューは発砲した。

 

ドウ!!

 

アカメの額を撃ち抜いた、大量の血が飛び散った。

 

「・・・」

 

アカメは言葉を言うことができなかった、消えゆく意識のなかでアカメは。

 

「・・・クロメ、お前は私のさい・・・」

 

アカメの思考が停止した、アカメの命が消えた。

 

第十話

 

   アカメを斬る

 

 

アカメ(死亡)

 

ナイトレイド 残り8人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにナイトレイドに最初の殉職者がでてしまいました(自分で書いておいてなんですが)
これから先どういう展開になるか次回をお楽しみに


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第十一話

   後悔を斬る(前編)

 

ブラートはアカメ達の応援に駆けつけるため全速力で走っていた。

 

「アカメ、サヨ、無事でいてくれよ」

 

すると、突然銃声が鳴り響いた。

 

「銃声!?」

 

ブラートは銃声がなった方へ向かうとそこに仰向けに倒れているアカメの姿があった。

 

「アカメ!?」

 

ブラートはアカメはすでに死んでいることに気づいた。

 

「・・・間に合わなかったか、すまねえ」

 

ブラートは極めて無念であった、するとセリューは。

 

「コロ、食っていいぞ、ただし、首は残せ」

 

「キュッ」

 

コロはアカメの頭をつかんで口を大きく開けた、そしてガブリとかぶりついた、アカメの首から下は何もなくなった、コロはアカメの頭をポイッと投げ捨てた、アカメの頭が地面に落ち、ゴロゴロ転がっている。

 

「な、なんてことしやがる・・・」

 

ブラートは放心状態であった、コロはアカメの体をバリボリむさぼっている。

 

「どうだ、美味いか?」

 

「キュキュキュー!」

 

コロはアカメの肉に舌鼓であった、ブラートはこの光景を見て怒りが爆発した。

 

「・・・許さねえ、絶対許さねえぞ」

 

ブラートから凄まじい殺気があふれた、セリューはそれに感ずいた。

 

「殺気!?」

 

セリューはブラートがいる方へ振り向き、戦闘態勢をとった。

 

「しまった、俺としたことが・・・どうする切り込むか」

 

ブラートが思案していると、大勢の警備隊員が駆けつけた。

 

「セリュー、大丈夫か?」

 

警備隊員の一人がセリューに話しかけるとセリューは応答した。

 

「大丈夫です、それよりも向こうに賊がいます」

 

「何?おい、もっと応援を呼んでこい」

 

「わかった」

 

懐から笛を取り出し力強く鳴り響かせた。

 

「くっ、どうする、無茶を承知で切り込むか・・・だめだ、生物型帝具と数十人の警備隊員相手では」

 

ブラートは現状を把握し退去を余儀なくされた。

 

「本当にすまねえ、アカメ・・・」

 

ブラートは断腸の思いでこの場を去っていった。

 

 

サヨはアジトにたどり着き皆に一部始終を話した。

 

「ま、マジかよ、サヨ」

 

イエヤスはサヨに問うと、サヨは無言でうなずいた。

 

「そんな・・・アカメが」

 

シェーレは涙目になっている、すると、マインは無言で近づいていく、ナジェンダは胸騒ぎを感じマインの肩をつかんだ、その瞬間、マインはサヨに帝具を突きつけていた。

 

「お前、サヨを殺すつもりだったのか?」

 

「・・・そうよ、そのつもりだったけど」

 

マインの答えに絶句するナジェンダ。

 

「なぜ?まさかお前・・・」

 

ナジェンダはマインの思考を察した。

 

「さすがパンプキンの前任者、アタシの考えはお見通しってわけね」

 

「お前、サヨが私達を裏切りアカメを帝国に売ったと思っているのか?」

 

ラバ、イエヤス、シェーレはどよめいた。

 

「だって、タイミングが良すぎるじゃない、サヨはその生物型の帝具使いと知り合って間もなくこんな事態になったんだから」

 

マインはサヨを裏切り者と決めつけている。

 

「それは違うよ、そもそも別働隊はマインちゃん達が行う予定だったんだ、それが直前で変更されてアカメちゃん達が別働隊を行うことになったんだ、サヨちゃんが帝国に通告できるわけないんだよ」

 

 

ラバは必死にマインを説得しようとしている。

 

「そうね、ラバの言う通りね・・・だけどアカメの足を引っ張ったのは事実よ」

 

サヨは顔面蒼白になった。

 

「サヨ、その村雨でアンタ自身を傷つけなさい」

 

ナジェンダ達はざわめいた。

 

「マ、マイン何を言って・・・」

 

シェーレはマインの言葉にうろたえている。

 

「お前、寝ぼけてんのかそれで傷をつければ死ぬんだぞ」

 

イエヤスは激怒したが、マインはお構いなしに。

 

「サヨなら大丈夫でしょう、村雨にメロメロなんだし」

 

「そんなわけねえだろ!!」

 

マインは無言のままサヨを睨みつけて。

 

「・・・アンタさえいなければ、アンタさえナイトレイドに入らなければアカメはあんなことにはならなかった!!」

 

マインの糾弾にサヨは顔面蒼白になった。

 

「アンタが死ねばアンタの村、アタシが救ってあげてもいいわよ」

 

サヨは混乱する頭でマインの言葉に思考を巡らした、何の役に立たない自分が頑張るよりもマインに託したほうが村が救えるのではないかと。

 

「さあ、村はアタシが救ってあげるからアンタはその村雨で自害なさい!!」

 

マインの目は真っ赤に血走っていた。

 

「てめぇ!!」

 

「やる気?イエヤスのくせに生意気よ」

 

「てめえええ」

 

イエヤスは怒りでわなわなふるわせている。

 

「おい、仲間割れしてる時じゃないだろ」

 

ラバが止めにはいるも。

 

「アタシはまだ認めた覚えはないわよ」

 

「・・・」

 

ラバは絶句しているとサヨは村雨を抜こうとしていた。

 

「おい、やめろ!!」

 

ナジェンダは慌てて止めに入る、すると。

 

「もうやめて!!」

 

シェーレは大声で叫び。

 

「こんなのアカメが見たらすごく悲しみます・・・」

 

大粒の涙を流し、必死に止めようとした、皆、呆然と立ちすくんでいる。

 

「・・・」

 

そこにブラートが戻ってきた。

 

「ブラート、アカメはどうなった?」

 

ナジェンダは問うと、ブラートは一言告げた。

 

アカメは死んだ

 

その瞬間全員絶望に突き落とされた。

 

 

一方、その頃レオーネは帝都に到着していた、必死にアカメを探している。

 

「どこだ、どこにいるアカメ・・・」

 

辺りを見回しアカメを探していると、アカメの臭いを感じた。

 

「あっちだな、よし」

 

レオーネはがむしゃらにアカメの臭いがする方へ駆け出した、レオーネはある光景を目の当たりにした。

 

ザッ!!

 

レオーネは力無く膝をついた。

 

そこには長い棒に突き刺さったアカメの首があった、その棒を帝国兵が持って行進している、その周りには武装した帝国兵が周りに配置され行進していた。

 

「・・・」

 

レオーネは放心状態である、帝国兵の行進はさらに盛り上がっている。

 

「う、嘘だ、アカメがこんな、こんな・・・」

 

レオーネは目の前の光景を受け止められないでいる。

 

「わ、私がもっと早く駆けつけていれば・・・アカメ、ゴメンよ」

 

レオーネの目から涙があふれている、そして、レオーネの体から殺気があふれだした。

 

「アカメの敵討ちだ!!」

 

レオーネの怒りが爆発した。

 

「アカメを殺ったのは奴しか、生物型の帝具使いセリューしかいない」

 

レオーネはコボレ兄弟暗殺の日にサヨからセリューのことを聞いていた。

 

「悪い、ナジェンダ、敵討ちがタブーなのはわかってる、だけど、だけど私のこの怒りは収まりそうにない」

 

レオーネはナイトレイドとしてではなくアカメの友として敵を取りたかった。

 

「奴は徹底的に残酷に殺してやる、まずはアカメを辱めているあの連中を皆殺しにしてやる、行くぞ!」

 

レオーネは突撃しようとしたまさにその時。

 

「レオーネ」

 

レオーネはアカメとの会話を思い出した。

 

 

「レオーネ、もし私が誰かに殺されても敵討ちなどというばかなまねはするなよ」

 

「何を突然言うんだ、アカメ」

 

「この稼業はいつ死んでもおかしくないからな」

 

「まあ、確かに」

 

「だからくれぐれも自分を見失しなうなよ」

 

「わかった、ところでもし私が殺されたら敵討ちをしてくれるのかな?」

 

「いかない」

 

アカメはキッパリと言った。

 

「ち、ちょっとは悩んでくれよ」

 

レオーネは慌ててツッコミを言った。

 

「レオーネは簡単には死なないだろう」

 

「当然」

 

二人はにこやかに微笑んでいた。

 

 

レオーネはそのことを思い出すと、突然、自分の拳で自分の顔をぶん殴った。

 

「・・・そうだったな、アカメ」

 

レオーネは頭を冷やすと後ろを向き、そのままその場を走り去った。

 

「これでいいんだろ、アカメ・・・」

 

レオーネは涙を流しながら退散した、そしてしばらくして朝日が昇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のような仲間割れのストーリーは原作にはなかったのでぜひ書いてみたかったです。
ナイトレイドに亀裂が入ってしまいました、さてどうなるか次回お楽しみに。


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第十二話

   後悔を斬る(後編)

 

4月24日朝

 

アジトの食堂にブラートとラバとイエヤスがいた、三人とも表情が暗かった、アカメが殉職してしまい、なおかつマインの言動で皆、意気消沈していた。

 

「おい、早く食っておけ」

 

ラバは用意されていた食事をイエヤスにすすめた。

 

「今は食いたくねえ」

 

明らかにだるそうであった。

 

「無理してでも食っておけ、いつ依頼があるかわからんからな」

 

ブラートは頬張りながら言った。

 

「そうなんだが・・・食欲がねえ」

 

「俺もそうだが無理して食ったさ」

 

「二人ともすげえな、あんなことがあったすぐなのに」

 

「どんなことが起こっても依頼は待ってくれんぞ」

 

ブラートは食事を全部平らげた。

 

「改めてこの稼業が過酷だと思い知らされたよ」

 

「正直俺も偉そうにできないさ」

 

ラバはアカメの死を知らされた時涙を流していた。

 

「以前、兄貴がいつ誰が死んでもおかしくないと言っていたけどあの時はそんなに深刻に考えてなかった」

 

イエヤスは自分の甘さを恥じていた。

 

「俺もアカメちゃんは大丈夫だと思っていた」

 

「だがその緩みが今の現実を招いた」

 

ブラートの言葉はとても耳に痛かった。

 

「ところでサヨはどうした」

 

「サヨちゃんは食事を作った後鍛練にいったよ」

 

「あいつ全然寝てねえだろう」

 

「鍛練していれば何も考えずにすむのだろう」

 

「それに俺達と顔を会わせずにすむし」

 

「なんで」

 

「サヨちゃんは俺達がサヨちゃんを恨んでいるんじゃないかと恐れていると思う」

 

「な、なんでそうなるんだよ」

 

「サヨちゃんは自分が足を引っ張ったせいでアカメちゃんが死んだと思っている、そして俺達がサヨちゃんを恨んでいると思っている」

 

「お前、まさか」

 

「そんなこと思ってないよ、俺達もアカメちゃんも任務で命を落とす覚悟はしていたさ」

 

「じゃあ・・・」

 

「だが、簡単にはいかないさ、あいつの気持ちは良くわかるからな、俺も新兵の頃俺を助けようとした先輩が敵に殺されてしまったからな」

 

「兄貴が?」

 

「俺も新兵の頃は弱かったさ」

 

「その後どうなったんだよ?」

 

「仲間は俺を恨んでいた、恨んでいると思っているような気がした、実際恨んでいただろう」

 

「大丈夫だったのかよ」

 

「どんなに悔やんでも時は戻らんからな、俺はがむしゃらに鍛練に励んだ、足手まといにならないように」

 

「兄貴にそんな過去があったなんて」

 

「誰だって最初は弱いんだ、必死に強くなっていくしかねえ」

 

三人が話し込んでいると、シェーレが食堂に入ってきた。

 

「おはようございます」

 

「ああ、シェーレはあれから眠れたのか」

 

 イエヤスはシェーレに尋ねた、ちなみにイエヤスはほとんど寝ていない。

 

「いえ、ほとんど」

 

よく見るとシェーレの目が赤かった。

 

「ところでマインの奴は」

 

「私が起こしに行きましたけど何も言ってきませんでした」

 

「あいつ、まだ寝てるのか?」

 

「わかりません」

 

「まったく図太い奴だよ、サヨにあんなこと言っておいて」

 

イエヤスが怒りをあらわにしていると、ブラートは。

 

「その辺で勘弁してくれないか」

 

「何言ってんだよ、あいつサヨに死ねって言ったんだぜ」

 

「怒るのはもっともだ、だが、あいつも裏切り者がでていらついていたんだ」

 

「けどよお・・・」

 

釈然としない様を見て、ブラートは。

 

「このギクシャクをいつまでも引きずっていたら命取りになるぞ」

 

ブラートの顔に危機感が満ちているのを見てイエヤスは渋々了解した、するとナジェンダが現れた。

 

「お前達に言っておきたい事がある」

 

ナジェンダの顔になにか危機感みたいなものを感じた。

 

「たった今本部にアカメの死を報告した」

 

ナジェンダは連絡用の鳥の危険種を飛ばした。

 

「間違いなく本部は混乱するだろう、私にも何かの処分が下るかもしれん」

 

「処分って?」

 

イエヤスがナジェンダに聞くと。

 

「最悪、私の首が飛ぶかもしれん」

 

「く、首が飛ぶって?」

 

イエヤスは突然のことにうろたえていると、ナジェンダは冷静に。

 

「そのままの意味だ、私はうち首になるかもしれん」

 

「そ、そんなこと・・・」

 

皆、それを聞いて騒然としている、特にラバは非常に取り乱している。

 

「あいつならその可能性はゼロではない、覚悟はしておかなくてはならないだろう」

 

ナジェンダは腹をくくっていた、するとブラートは。

 

「それはないだろう、そんなことをしても無意味だからな、あの人はそんな馬鹿ではないさ」

 

「だが、万一のことも覚悟しておかなくてはならん、その時はブラート、お前が指揮をとれ」

 

「ナイトレイドのボスはナジェンダ、あんただ、これから先もな」

 

「そうですよ、私達のボスはナジェンダさんあなたしかいません」

 

「手柄をたてれば本部も黙らせられるよ」

 

「・・・わかった、可能な限りナイトレイドのボスであり続けよう」

 

ラバだけが深刻な顔をして無言のまま考え込んでいた。

 

「(あの人ならナジェンダさんの処刑やりかねないんだよな・・・もしそうなったらナジェンダさんを連れて革命軍を抜けるか、だが、ナジェンダさんは絶対認めないな、俺はどうすれば・・・)」

 

ラバはただそうならないよう願っていた。

 

 

アジトから離れた山岳部でサヨは鍛練に励んでいた、やがて日も暮れはじめた、サヨはへとへとになって大の字になって倒れていた。

 

「日が暮れはじめた、そろそろアジトに戻らないと、だけど・・・」

 

サヨは皆からアカメを死なせてしまったことを糾弾されるのを恐れていた、皆の糾弾の声を想像して苦しんでいる。

 

「ごめん、私のせいでアカメを死なせてしまって・・・」

 

サヨはひたすらアカメに謝っていた。

 

 

「・・・ここは?」

 

いつの間にかサヨは草原にいた、辺り一面草原しかなかった。

 

サヨは後ろを振り向くとアカメとタツミがいた。

 

「な、なんで二人が?」

 

サヨはわけが分からなかった、二人は何も言わない。

 

「ねえ、何か言ってよ、恨み言でもいいから」

 

だが二人は何も言わなかった、すると二人はサヨから段々離れていった。

 

「待って、二人とも待ってよ」

 

サヨは必死に追いかけるがやがて二人は見えなくなった。

 

「私をおいていかないで」

 

 

その瞬間サヨはハッと目を覚ました。

 

「夢?私寝ちゃったの」

 

辺りはすっかり暗くなっていた。

 

「アジトに戻らなきゃ、皆にこれ以上迷惑をかけられない。

 

サヨは気落ちしたままアジトに戻った。

 

「アジトに着いた、早く入らないと・・・」

 

サヨは皆に会わせる顔がなく入りずらかった、それでも決心をして入っていった。

 

「皆、寝ちゃったのかな」

 

すると厨房から悲鳴が聞こえた、サヨは駆け足で厨房に向かった、そこにはコゲコゲになったシェーレがいた。

 

「シ、シェーレ?何やってるの」

 

「アカメの供え物を作ろうとしたんですが、焦がしちゃいました」

 

シェーレの傍に真っ黒焦げの肉があった。

 

「でも大事でなくてよかった」

 

「サヨこそ大丈夫ですか」

 

「うん・・・正直に言って大丈夫じゃないけど」

 

「そうですよね」

 

「でもシェーレはいつもどうりね、さすがプロね、私も何事にも動じない冷徹なプロにならないと」

 

「・・・」

 

シェーレは無言のままうつむいている。

 

「どうしたのシェーレ」

 

「・・・じゃないですか」

 

「!?」

 

「大好きな仲間が死んじゃったんです、平然なわけないじゃないですか!」

 

シェーレは大粒の涙を流して叫んだ。

 

「でも、取り乱してもアカメは還ってきません、だからできるだけ平然を装っていたんです」

 

「ごめん、シェーレの方がアカメと付き合いが長いんだから平気なわけないんだし」

 

「いえ、私こそ」

 

二人は呼吸を整え落ち着きはじめた。

 

「私、皆と顔を合わすのが怖かった、アカメのこと責められるんじゃないかなって」

 

「そんなことはありません、私達ナイトレイドは常に死と隣り合わせなんですから、責めたりはしません」

 

「うん」

 

サヨはシェーレの言葉に安堵した。

 

「皆はどうしてるの」

 

「会議室にいますよ」

 

「そう、じゃすぐいかないと」

 

サヨが歩きはじめた時、後ろから声がした。

 

「サヨ、戻ってたんだ」

 

「レオーネ?いままで何してたの」

 

「ひたすら走り回っていた、吹っ切れるために」

 

「意外ね、レオーネならやけ酒しそうなのに」

 

「私はそんな酒は飲まないさ、酒は楽しく飲むものだ」

 

「そうね・・・あの、レオーネ」

 

「アカメのことで自分を責めるな、あいつもそれをよしとしない」

 

「うん、でもマインが・・・」

 

「マインは良くも悪くもああいう奴だ、私も逆上して特攻しかけたから」

 

「うん」

 

「とにかく私は足を止めず前へ進む」

 

レオーネを見てサヨは。

 

「・・・私も前へ進まなきゃ」

 

「前へ?」

 

シェーレはキョトンとしている。

 

「うん、私、腹をくくるわ」

 

「おい、まさか」

 

レオーネはサヨの考えを察し驚いた、サヨは会議室へ向かった。

 

 

「今なんて言った?」

 

ナジェンダは驚き問い返した。

 

「私に村雨を託してもらえないでしょうか」

 

一同は驚きざわめいた、サヨはそれに動じず。

 

「今のままでは私は役立たずです、だから」

 

「アンタ、何言っているの?アンタごときが帝具をもてると思っているの?」

 

マインはサヨを睨みつけた。

 

「わかってる、私なんかじゃ力不足だって、でも、何もせずに後悔はしたくないの」

 

「村雨は呪われた妖刀よ、アンタじゃ死ぬかもしれないわよ」

 

「その時はマイン、あなたが村を救って」

 

マインはサヨの覚悟を察した。

 

「まあ、考えてもいいわよ」

 

「ありがとう」

 

サヨはマインに礼を言うと、ナジェンダは。

 

「勝手に話を進めるな、私は許可してないぞ」

 

「ボス、お願いします」

 

「・・・」

 

ナジェンダは悩んでいた、サヨに村雨を渡すのを、あの呪われた妖刀を。

 

「このままじゃまた私は皆の足を引っ張ってしまいます、もうそんなのはいやなんです」

 

サヨの決心を見てナジェンダの心は揺れていた、するとシェーレは。

 

「ボス、私からもお願いします、サヨの決心を受け止めてください」

 

シェーレの懇願を見て、ナジェンダは決心した。

 

「わかった、試してみよう、ただし、命の保障はないぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ナジェンダはサヨに村雨を渡した、サヨは村雨を抜いた、村雨の刃が輝いている。

 

「私が村雨を手に取る・・・確かに私は村雨を手に取りたいと思っていた、でもこんな形で・・・アカメが死ぬ事態なんて望んでなかった、でも泣き言を言ってもアカメは還ってこない・・・なら、私がアカメの分まで戦う、村雨、こんな私に力を貸して、私の力に、私の帝具になって」

 

サヨは村雨に想いを念じていた、その様子をラバとイエヤスは見て不安になっていた。

 

「なあ、あれ、大丈夫なのか?」

 

「わからないよ俺にも、ただやばい何かを感じる」

 

二人には村雨からおぞましい気配を感じている、他のみんなも不安になっていた。

 

「サヨ・・・」

 

シェーレは何事もなく終えるよう願っている。

 

「・・・」

 

サヨは一心不乱に念じている、すると、ナジェンダはサヨに語りかけた。

 

「どうだ、体に異変を感じるか?」

 

「いえ、何ともありませんけど」

 

サヨはまったく疲弊していなかった。

 

「どうやら適合できたようだな」

 

「えっ!?こんなにあっさりと・・・激しい苦痛を覚悟していたんですけど」

 

サヨはあまりにあっさりと村雨と適合できたことを驚いていた。

 

「大丈夫かサヨ、村雨からやばい気配感じまくっていたぞ」

 

イエヤスはサヨに駆け寄った。

 

「そう、私は全然感じなかったけど」

 

サヨはキョトンとしていると。

 

「本当によかったです」

 

シェーレは感激のあまりサヨに抱き着いた。

 

「シェーレ、ありがとう」

 

皆もサヨの元へ駆け寄っている、ただ、ナジェンダは不安を感じていた。

 

「本当にこれでよかったのだろうか、だが、アカメの穴を埋めなくてはならんのも事実、今はこの時を喜ぶべきか、アカメ、私はお前が夢見た平和な世界を実現するために命を懸けるぞ」

 

ナジェンダは亡きアカメに誓った、そしてサヨは村雨を見つめて思った。

 

「たとえ世界中の人が村雨を呪われた妖刀と思っても私はそうは思わないから、こんなにきれいな刀なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにサヨが帝具使いになりました、ここからが本当のスタートです、自分はサヨは村雨が似合うと思います、サヨの衣装はミニスカ和服なので、日本刀には和服が良く似合います、何がともあれ次回作をお楽しみに。


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第十三話

   三匹を斬る(前編)

 

5月3日

 

「ここはどこでしょうか?」

 

「ええと、地図ではもうすぐアスターテ街道よ」

 

「そうですか、それにしてもずいぶんとばしましたね」

 

「ぐずぐずしていたら護衛対象が殺されるから、そうなればボスの立場がますます悪くなるから」

 

「本部からは何も報告がありませんでしたけど」

 

「だからといって安心できないわ」

 

「そうですね、急ぎましょう」

 

「うん」

 

こうしてサヨとシェーレは全速力で駆けていった、二人は元大臣のチョウリの護衛に向かう途中である。

 

 

 

数日前

 

「それは確かなのですか!?」

 

サヨはナジェンダに質問した、するとナジェンダは。

 

「ああ、最近文官が続けて殺害されている、現場にはナイトレイドの犯行声明のビラがまかれていた」

 

「それってもしかして・・・」

 

「ああ、そうだ、ナイトレイドをおびきよせる罠だ」

 

「けどナイトレイドを倒せる奴なんてそうそうい・・・」

 

イエヤスが話終える前にナジェンダは語った。

 

「おそらく敵は我々と同じ帝具使いだろう」

 

全員がざわめいた、サヨはナジェンダに質問した。

 

「その帝具使いに心当たりありませんか?」

 

「ああ、一応な、おそらくエスデスの配下である三獣士の仕業だろう」

 

「三獣士?」

 

「全員凄腕の帝具使いだ、こいつらの可能性が一番高い」

 

「三獣士の帝具の能力知ってますか?」

 

「ああ、ただし私が知っているのは二人だけだがな、一人は笛の帝具使いでもう一人は斧の帝具使いだ、もう一人はわからん、そいつは主に兵の指揮をとっていたからな」

 

 

「笛と斧・・・その帝具に奥の手はあるんですか?」

 

「それは私にもわからん、奥の手はあるものと考えてくれ」

 

「情報があっても苦戦は免れないわね」

 

サヨは帝具使いになって初めての帝具戦に緊張していた。

 

「我々はこれ以上優秀な文官を殺されるわけにはいかん、よって今からお前達には護衛に行ってもらう、まずは元大臣のチョウリの護衛にサヨとシェーレに行ってもらう」

 

 

再びざわめいた。

 

「シェーレとか、意外ね、てっきり・・・」

 

その瞬間、後ろから強い視線を感じた、サヨは後ろを振り返るとマインはサヨを睨みつけていた。

 

「マイン、すごい形相ね、気持ちわかるけど、このままだともめるわね、よし」

 

サヨはある決心をした。

 

「ではボス私達早速出発します、急がないと手遅れになりますので」

 

「そうだな、行け」

 

「じゃあ行くわよシェーレ」

 

サヨは全速で駆け出した。

 

「あっ、待ちなさいサヨ」

 

「マイン、呼んでますけど」

 

「いいから無視して」

 

サヨはマインを無視して全速力で出発した。

 

「こら待てー!」

 

マインの怒鳴り声が鳴り響いた。

 

 

 

「・・・後が思いやられるけど、それも生き残れたらの話ね」

 

サヨは出発の時を思い出していた。

 

「どうしました、不安ですか」

 

「う、うん、私なんかが帝具使いに勝てるのかなあって思って」

 

「私も帝具使いと戦ったことありませんよ」

 

「そうなの、意外ね」

 

「帝具使い同士の戦い自体滅多にありませんから」

 

「そうよね、帝具の数自体少ないんだから」

 

「そうです」

 

シェーレはニッコリ微笑んだ。

 

「ところで前から聞こうと思ってたんだけど」

 

「なんです」

 

「シェーレのエクスタスどうやって手にいれたの」

 

「はい、アジトへの帰還中にゴミ捨て場でみつけたんです」

 

「ゴミ捨て場!?」

 

「はい、かわいそうと思いアジトへ持ち帰ったんです、アジトでそれが帝具だと判明したんです」

 

「・・・捨て犬を拾うみたいに、まあ、波長が合わなかったら邪魔なお荷物だし、シェーレらしいわね」

 

「ありがとうございます」

 

「・・・とにかくもっと急いだほうがいいわ」

 

「はい」

 

二人はさらに足を速めた。

 

 

 

その頃、アスターテ街道で悲鳴が鳴り響いていた、戦闘が行っており、無数の死体も転がっている。

 

「・・・あれだけの護衛をあっという間に」

 

一人の少女は顔面蒼白になっている、彼女の名前はスピア、チョウリの娘である。

 

護衛はあっという間に一人の少年によって全滅してしまった、見た目は小柄な少年の手によって。

 

「全然たいしたことなかったね、まあ、僕が強すぎるんだけど」

 

この少年の名はニャウ、三獣士の一人である。

 

「残りは君達二人だね」

 

ニャウはニッコリと微笑むと、スピアは槍を構え。

 

「父上に指一本触れさせない」

 

スピアは闘志を燃やしていると、チョウリは。

 

「スピア、お前だけでも逃げろ」

 

「な、何を言うんです、父上!?」

 

「お前にもわかってるはずだ奴には絶対勝てないと」

 

「・・・それでも父上を見捨てることはできません」

 

「スピア、お前はまだ若い、こんなところで無駄死してはいかん」

 

「嫌です、私にはそんなことできません」

 

「スピア・・・」

 

ニャウはニヤリと笑っている。

 

「二人とも逃がさないよ」

 

ニャウは笛を取りだし吹きはじめた。

 

「!?」

 

二人は音色を聞くと力が抜けたように倒れた、この笛は帝具スクリーム、音色を聴いた人間の感情を操る帝具である。

 

「これで逃げられないよ」

 

ニャウは邪悪な笑みを浮かべ、スピアに近づいていく。

 

「さて、コレクションの収集に取りかかるかな」

 

「!?」

 

「君の顔の皮を剥がせてもらうよ」

 

「!?」

 

スピアの顔は絶望に染まった、ニャウはその様を見てニヤニヤしている。

 

「剥いでる途中でショック死しないでよ、つまらないから」

 

スピアの目から大粒の涙がこぼれだした、チョウリはやめろと叫ぼうとしてるが声がでない。

 

「(や、やだ、こんな・・・)」

 

「いいねえ、その目ゾクゾクしちゃうよ」

 

ニャウはナイフを取りだした。

 

「(私、まだ、やりたいことがたくさん・・・)」

 

ニャウはスピアの顔にナイフの切っ先を突き刺した、その瞬間、ニャウは殺気を感じ後ろへ跳んだ。

 

「・・・まったくいいところだったのに」

 

サヨは村雨でニャウを切りつけようとした、シェーレもかけつけている。

 

「現れて欲しかったけど後5分待って欲しかっね、空気読んでよね」

 

「女の子の顔の皮を剥ぐなんて悪趣味にも程があるわよ」

 

サヨは嫌悪感をあらわにした、ニャウはまったく気にせず。

 

「これは芸術なんだよ、まあ凡人にはわからないけどね」

 

サヨは思った、アリアといい帝都にはろくな人間がいないことに不快になった。

 

「あなた三獣士の一人でしょ」

 

「僕達のこと知ってるんだ、ナジェンダから聞いたんだよね」

 

「ええ、小柄な少年風の男は最も残虐だということも」

 

「ナジェンダの奴言いたい放題だね、まあ、人間キャンドルやったときナジェンダすごい剣幕だったし」

 

「人間キャンドル?」

 

「うん、バン族の反乱の鎮圧の締めくくりにやったんだ、すごく盛り上がったよ、詳しく聞きたい?」

 

「結構よ、本当にろくでもないわね」

 

「じゃあ、早速やろうか」

 

「ところで残りの三獣士は?」

 

「僕一人だよ、アカメがいないナイトレイドなんて僕一人で十分だよ」

 

ニャウの表情は余裕に満ちていた。

 

「完全になめてるわね、でもその分隙も生まれやすい」

 

サヨは全速で駆け出しニャウに斬りつけた、だが、ニャウはあっさりかわした。

 

「速い!でも、まだまだ」

 

サヨは連続で斬りつけている、だが、ニャウにかすりもしなかった。

 

「な、なんて身のこなし」

 

サヨは驚愕していると、今度はニャウがサヨに斬りつけた。

 

「危ない!」

 

サヨは村雨でニャウのナイフを防いだ、ニャウは連続で斬りつけていく、サヨは防戦一方になった。

 

「だめ、防ぐので精一杯、とにかく間合いをおかないと」

 

サヨは後ろへ跳んで距離をとった、サヨの息は荒かった。

 

「つ、強さの桁が違う、わかってたはずなのに」

 

ニャウの強さにサヨは呆然としている。

 

「君の剣は完全に見切ったよ、絶対当たらないよ」

 

ニャウは完全に余裕であった。

 

「その刀村雨だろ、一斬必殺と呼ばれているけど傷を受けなければ全然恐くないよ、村雨なんて最弱帝具だよ、アカメも全然たいしたことなかったんじゃないかな」

 

 

サヨはそれを聞いて悔しがった。

 

「・・・悔しい、私のことはいくら馬鹿にしても構わない、けど、村雨やアカメまで馬鹿にされるなんて」

 

サヨが歯ぎしりをしているとシェーレが。

 

「私にまかせてください」

 

「シェーレ?それなら二人がかりで」

 

「サヨは呼吸を整えてください」

 

「わかった」

 

サヨは乱れた呼吸を整えるのに専念した。

 

「行きます」

 

シェーレが身構えるのを見てニャウは。

 

「次はこいつか、まあ、たいしたことは・・・」

 

その瞬間シェーレは全速で切りかかった。

 

「はや・・・」

 

ニャウは予想外のスピードに意表をつかれた、素早く身をかわすとシェーレは連続で突きを繰り出した。

 

「こいつ、できる」

 

シェーレの高速の突きにニャウは驚いている、すかさずニャウはナイフで反撃した。

 

ガキィン!!

 

シェーレは瞬時にエクスタスを盾にして防いだ、ニャウは連続攻撃するもびくともしない、逆にナイフが折れた。

 

「なんて固さだこのハサミ、業物のナイフが・・・」

 

サヨはシェーレの戦いぶりにア然としている。

 

「すごい、シェーレあんなに強かったの、鍛練をそれほどやってないのに、シェーレみたいなのを稀有の天才というのよね」

 

サヨが呆然としている間にシェーレの突きがニャウの右肩辺りの衣服を切り裂いた。

 

「今のは危なかった、こいつ相手に接近戦はキツイ、距離をとらないと」

 

ニャウは後ろへ跳んだ、そしてスクリームを構えた。

 

「スクリームなら間合いをとって戦える、僕の勝ちだ」

 

ニャウはスクリームを使用した、音色が鳴り響いた、サヨは音色を聞いて異変を感じた。

 

「地面がぐにゃぐにゃに歪んでいく、これじゃあまともに歩けない」

 

サヨの目にはそう見えていた、これが帝具スクリームである。

 

「どうだい、まともに歩けないだろ、この音色を聞いたら地面が歪んで見えるんだ、これで僕の・・・」

 

ニャウが勝ち名乗りをあげようとした瞬間、シェーレが切り込んできた。

 

「何!?」

 

ニャウはすごく驚いていた、お構いないにシェーレは突きを繰り出した。

 

「な、なんでこの音色を聞いて動けるんだ、訳がわからない」

 

ニャウはすっかり混乱していた、シェーレの猛攻をかわすため距離をかなりとった。

 

「な、なんで動けるんだ?この音色を聞いたら普通に歩いただけで転ぶのに」

 

「そんなのいつものことです」

 

「は!?」

 

「私は普通に歩いていると必ず転ぶのです」

 

それを聞いてニャウは絶句した。

 

「ふ、普通に歩いただけで転ぶ?なんでそんな奴がナイトレイドに・・・」

 

ニャウの顔が怒りで赤くなっていく。

 

 

「ふざけるな、こんなところでぐずぐずしていられないんだ、ナイトレイドの首を持って一番手で戻りエスデス様に褒めてもらうんだ、セリューなんかに遅れをとるわけにはいかないんだ」

 

 

ニャウがいらいらしていると、シェーレは。

 

「あなたは今誰と戦っているのですか」

 

ニャウはシェーレの問いにキョトンとした。

 

「何をとぼけたことを、君達に決まっているだろ」

 

「そうでしょうか、あなたの敵意は別の誰かに向けられているような、そんな気がしてならないのです、あなたにとって敵は誰なのですか」

 

 

ニャウはシェーレの指摘に絶句した、ニャウはすっかり図星をつかれた、そしてニャウはスクリームを吹きはじめた、するとニャウの体が筋骨隆々になっていった、スクリームの奥の手「鬼人招来」である。

 

 

「もうコレクションなんてどうでもいい、生きたままミンチにしてやるよ」

 

ニャウは完全にぶちギレていた、ニャウは突撃しシェーレにパンチの雨を繰り出した。

 

「お、重い」

 

ニャウの猛攻をシェーレはエクスタスを盾にしてなんとか防いでいる。

 

「シェーレ」

 

サヨは援護をすべくニャウに切りかかった、だが、あっさりかわされた。

 

「こんな巨体でなんて素早さなの」

 

サヨは焦りを感じた、するとシェーレはサヨに視線を送っている。

 

「もしかしてあの戦法を使うの」

 

移動途中でシェーレと打ち合わせたある戦法を使う決心をした。

 

シェーレはエクスタスを前方に構えた、ニャウは臆することなく突っ込んでいく。

 

「エクスタス!!」

 

エクスタスはシェーレの掛け声によって激しく光り輝いた、これこそエクスタスの奥の手である。

 

「なんだ?眩しい!」

 

ニャウは光に目が眩んだ、その隙にサヨは村雨でニャウの首を切りつけようとしている。

 

「これを逃せばもうチャンスはない」

 

サヨの脳裏にタツミとの鍛練の日々が浮かんだ。

 

 

 

「ふう、今日もきつかったぜ」

 

「ええ、でも手ごたえを感じるわ」

 

「ああ、軍で武術指南をやってたんだからな」

 

「うん、ハイドさんにはすごく感謝してる」

 

「イエヤスの奴朝寝坊してしごかれてるんだろ」

 

「ほんと軍でやっていけるのかな、打ち首にならなきゃいいけど」

 

「まあ、なんとかなるさ」

 

「うん、そうね」

 

「どうした、サヨ?」

 

「私、軍でやっていけるのかな、弓矢じゃ銃には敵わないし」

 

「そんなことないさ、お前の腕なかなかだし」

 

「私も剣使えたらいいんだけど、左手が・・・」

 

「お前ガキの頃ケガしたもんな、ケガする前すげえ強かったもんな」

 

「剣が使えないから弓を選んだんだけど・・・」

 

「でも、お前剣そこそこ使えるだろ」

 

「うん、でもここ一番の時に痺れるの」

 

「そりゃ気持ちの問題さ」

 

「そうだけど・・・」

 

「結局気合いがものを言うんだよ」

 

「タツミってほんと単純ね、でもそれがタツミらしさね」

 

「俺のこと馬鹿にしてないか」

 

「そんなことないわよ」

 

二人は大笑いしている。

 

 

 

 

サヨは左手に力をいれ、村雨を振り抜いた。

 

「これがタツミと鍛えあげた剣技よ!」

 

だが、ニャウは素早く身をかわした。

 

「これでも届かないの・・・」

 

サヨは無念であった、それを見てニャウは。

 

「言っただろう、剣は見切ったと・・・」

 

 

何かの音がした、ニャウは右肩をみた、すると肩に数ミリの傷があった。

 

「バ、バカな完全にかわしたはずなのに、まさかこの短時間で剣速が上がった?」

 

ニャウが驚愕していると傷口から呪毒が浮かんだ。

 

「呪毒!?」

 

呪毒はニャウの心臓に向かっていく。

 

「う、嘘だ、嘘だ、嘘だ、僕がこんな・・・」

 

ドクン

 

呪毒が心臓に届き、ニャウの心臓をとめた。

 

「・・・」

 

ニャウはうつぶせに地面に倒れた。

 

「エ、エスデス様・・・」

 

ニャウは死の間際にエスデスの幻を見た、そしてその隣にはセリューがいた。

 

「そんな奴を見ないでよ、僕だけを見てよ、エスデスさ・・・」

 

ニャウの命が消えた。

 

「・・・」

 

サヨは呆然としていた。

 

「すごい、あんな強敵を一撃で、きれいなだけの刀じゃないと思っていたけど、ここまでとは」

 

サヨは村雨の呪毒の脅威を改めて認識した。

 

「以前アカメが帝具を過信しないように戒めていると言ったけどまさにその通りね呪毒に慢心したらあっという間にに堕落してしまう、今まで以上に鍛練しないと」

 

 

サヨは心に誓った。

 

「お疲れ様です」

 

シェーレはニッコリ微笑んだ。

 

「ううん、私なんてほとんど何もできなかった、シェーレのほうが全然すごいよ」

 

「私の技は所詮人殺しの技でしかありません、何の自慢にもなりません」

 

シェーレの返答にサヨは何も言えなかった、するとスクリームの効果がきれたスピアとチョウリは。

 

「ありがとうございます、助かりました」

 

スピアが礼を言うと、サヨは。

 

「気にしないでください、ええと、このことはどうか内密にお願いします」

 

「・・・わかりました」

 

スピアはあえて事情を聞かなかった、訳ありだと察知したから。

 

「それにしても帝国兵がワシを殺しに来るとは・・・」

 

チョウリは呆然としていると、サヨは。

 

「すでに数人の文官が殺害されています」

 

「なに!?オネストめ、ここまでするとは、帝国の腐敗ぶりは噂以上だ」

 

チョウリが憤慨していると、サヨは。

 

「怒りはごもっともですが、帝都に行くのは・・・」

 

「ああ、今のワシではあまりにも無力だ、よって故郷に戻り力を蓄える、そして陛下をオネストの元から救い出す」

 

「救い出す!?」

 

サヨとシェーレは驚いた、スピアは感激している。

 

「父上、私も・・・」

 

「いや、お前はだめだ」

 

「なぜです、父上」

 

「ワシのやろうとしていることは反逆だ、お前まで罪に問われることになる」

 

「いえ、こればかりは聞けません、ここで逃げたら私は一生自分を許せなくなります」

 

「反逆者の汚名を背負うことになるぞ」

 

「望むところです」

 

「頑固者が」

 

「父上譲りです」

 

二人は微笑んでいる。

 

「では、ワシらは故郷に戻る、二人には世話になった、この礼は必ず」

 

「気にしないでください」

 

「あの、今度会ったらお名前教えてくれませんか」

 

スピアはサヨとシェーレに尋ねた。

 

「はい、再会を楽しみにしています」

 

そう言うとスピアは微笑んだ、そして二人は去って行った。

 

「終わりましたね」

 

「うん」

 

サヨはうなずいたが歓喜しているわけではなかった、今回勝てたのも敵が分散してくれたのが大きかった、もし、三人全員が相手なら、サヨは戦慄を感じずにはいられなかった。

 

「どうしました」

 

「な、なんでもないよ」

 

「そうですか」

 

サヨは今回はこれでよしと思うことにした。

 

「それにしてもどうしよう」

 

「何がです」

 

「この死体なんだけど」

 

サヨはニャウの死体を指を指した。

 

「呪毒ってずっと残るのかな」

 

「わかりません」

 

「もしすぐ消えるのならこのままにしておくのは、村雨の使い手はいないと帝国に思わせたほうが都合がいいし」

 

サヨが思案していると、シェーレは。

 

「私にまかせてください」

 

ジャコッ!!

 

シェーレはニャウの死体を一刀両断した。

 

「これで大丈夫です」

 

「シェーレ、大胆ね、でもこれでごまかせるかな」

 

サヨはとりあえず一安心した。

 

「シェーレと組むの今回だけかもしれないけど、できたらこれからもずっとシェーレと組めたらいいな」

 

サヨは心の中でそう思った、二人は他の仲間の無事を願いながら帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったよりも字数がかかりました、それにしてもバトルシーンを小説で書くのはすごく難しいです、皆さんはどのようにして書いているのでしょうか、これからもよろしくお願いします。


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第十四話

   三匹を斬る(中編)

 

5月5日

 

文官の護衛のためにブラートとイエヤスは竜船に乗り込んでいた。

 

「どうだ、いたか」

 

ブラートは帝具で透明化している。

 

「いや、それらしい奴は見かけない」

 

「そうか、注意して監視しろ」

 

「ところで、なんで俺船員の格好、しかも一番下っ端・・・」

 

イエヤスは釈然としなかった。

 

「お前にはそれが一番しっくりくるからな」

 

「わかった・・・」

 

イエヤスはまだ納得していなかった。

 

「にしても・・・」

 

 

 

 

「これが三獣士の人相画だ覚えておけ」

 

ナジェンダはラバに描かせた人相画をみせた。

 

「!?」

 

ブラートは人相画を見て驚愕した。

 

「どうした」

 

「い、いやなんでもない・・・(マジか)」

 

ブラートは額の汗を拭った。

 

 

 

 

 

 

「まさかリヴァ将軍がエスデスの手下になっていたとはな、ここで鉢合わせするような気がするぜ」

 

ブラートは再び監視に徹した。

 

竜船には大勢の人が乗船している、その中のひとりにそのリヴァがいた、フードで顔を隠している。

 

「・・・」

 

リヴァは三人目の文官を始末した時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

ズバッ!!

 

リヴァは文官の首を切り飛ばした。

 

「これで三人目だ、次は元大臣のチョウリだな」

 

「ねえ、そいつをいれて後何人?」

 

ニャウが質問してきた。

 

「後三人だ」

 

「ふうん、そう」

 

「?」

 

リヴァは首をかしげた。

 

「ねえ、ここからは三手に分かれない」

 

「何を言い出すんだ!?」

 

さすがにリヴァは驚いた。

 

「だってその方が早く片がつくでしょ」

 

「何を言っている、そろそろナイトレイドが行動にうつってもおかしくないぞ」

 

「だからだよ」

 

「だめだ、危険すぎる」

 

「大丈夫だってアカメがいなくなったナイトレイドなんて雑魚の集まりだよ」

 

「しかし・・・」

 

二人の言い合いに大男が参加した。

 

「いいねえ、そっちの方が経験値ガッポリ稼げそうだ、俺ものったぜ」

 

この大男はダイダラ、三獣士のメンバーである。

 

「ダイダラ、お前まで・・・」

 

リヴァは絶句した。

 

「いいじゃねえか、そっちのほうが面白れえし」

 

「アカメがいなくてもまだ腕の立つ者はいる」

 

リヴァはなんとか二人を思い止めようとしているとニャウは。

 

「あの出来事覚えているよね」

 

リヴァはその時のことを振り返っている。

 

 

 

「以上だ、早速お前達に働いてもらう」

 

エスデスが三人に文官抹殺を命じている。

 

「はっ」

 

三人が返事をするとエスデスは。

 

「ところでお前達もアカメの首を見たか?」

 

「はい」

 

「帝都最凶の殺し屋と言われていたが、まあ、弱かったから死んだ、そういうことだ」

 

エスデスは以前アカメと戦ってみたいと言っていたが残念そうなそぶりは全くなかった。

 

「アカメを仕留めたのは確か警備隊員のセリューという者です」

 

「ああ、興味がわいたので会いに行った、なかなか見どころのある奴だったぞ、そうだな、アカメを仕留めたほうびにアイスでもご馳走してやるか」

 

「・・・とても喜ぶことでしょう」

 

リヴァは平静に返答した。

 

「ではお前達任務に移れ」

 

「はっ」

 

 

三人は宮殿を後にした、するとダイダラは。

 

「まったくエスデス様にご馳走してもらえるなんてうらやましい限りだぜ」

 

ダイダラがぼやいているとリヴァが。

 

「それだけの戦果をあげたんだ、やむを得な・・・」

 

リヴァが言い終える前に背後からおぞましい殺気を感じた。

 

「・・・アカメを仕留めたぐらいでいい気になるなよ、僕のスクリームならアカメなんか一ひねりだよ」

 

ニャウはセリューに怒り心頭である。

 

「落ち着け、アカメはもういないんだ今は任務に集中しろ」

 

「・・・わかったよ」

 

ニャウは殺気をおさめた。

 

「ふう、ビックリしたぜ」

 

「まあ、気持ちはわかるがな」

 

三人は気を取り直して帝都を後にした。

 

 

 

 

 

「お前あの事をまだ気にしていたのか」

 

「そりゃそうだよ、エスデス様にご馳走してもらえるのは僕達にしか許されないんだよ」

 

「気持ちはわかる、だがこれは話は別だ」

 

「別じゃないよ、ここでナイトレイドの首をとれば僕達がセリューよりも上だと証明できる」

 

「それなら三手に分けなくても」

 

「セリューは一人でアカメを仕留めたんだ、僕達も一人でやらないと」

 

「セリューは生物型の帝具使いだ一人ではないぞ」

 

二人の口論にダイダラが割って入った。

 

「いいじゃねえか、俺達三獣士に敵はいねえよ」

 

「そうだよダイダラの言う通りだよ心配のしすぎだよ」

 

「だが・・・」

 

「このチャンスを逃せばセリューの奴にエスデス様を取られちゃうよ」

 

「いい加減にしろ、お前何様だ」

 

さすがのリヴァも激怒した、だがニャウは怯むことなく。

 

「・・・リヴァはセリューの後ろを歩くことになってもいいの」

 

「!?」

 

リヴァはその状況を頭で想像した、みるみる顔が青ざめていく。

 

「どう、屈辱だろ、今動けばこの未来を防げるんだよ」

 

リヴァはしばらく考え込んだ、すると。

 

「・・・仕方あるまい、だが指示にはしたがってもらうぞ」

 

リヴァはついに折れ、三手に分かれる案を受け入れた、二人に決して油断しないよう釘をさした。

 

 

 

 

そして今に至る、リヴァは三手に分けたことを後悔していた、気を取り直して任務に集中することにした。

 

そして深夜になりリヴァは文官の部屋の前に立っている。

 

「さて、始末にかかるか」

 

その時、気配を感じ回避に移った、目に見えないが確かに何かがいた。

 

「この感じ、透明化したインクルシオか、ブラート、お前がいるな」

 

すると透明化が解けていき姿を現した。

 

「さすがだな気づくとは将軍は伊達ではないな」

 

「今は将軍ではない、エスデス様のしもべリヴァだ」

 

「こういう状況じゃなければ酒の一杯でも飲みたい所だがな」

 

「今は任務優先だ」

 

「そうだな」

 

「表へ出ろ、ブラート」

 

「おう」

 

二人は船外へ出て臨戦態勢を整えている。

 

「何となくアンタと戦うことになるような気がしてたぜ」

 

「私もだ」

 

二人は集中している、そして。

 

「お前には小技など効かないからな一気に決めさせてもらうぞ」

 

リヴァは指輪の帝具を使用した、この帝具はブラックマリン、水を操る帝具である、川から水が舞い上がり巨大な蛇が造りだされていく。

 

「指輪の帝具か、アンタが兵の指揮をとっていた奴か納得だぜ」

 

「いくぞ、ブラート」

 

 

   深淵の蛇!!

 

水の蛇が船ごとブラートを押し潰そうとしている、だが、ブラートは高く飛び上がりそのまま蛇を真っ二つにした。

 

「さすがだな、だが、想定内だ」

 

リヴァは帝具に念じ、無数の水の槍が造られていく。

 

   濁流槍!!

 

無数の槍が宙に浮いたブラートを直撃した、衝撃で仮面が壊れ素顔が見えた。

 

「これしきの水をぶっかけられたぐらいで俺の情熱は消えねえよ!」

 

ブラートの闘志は衰えていなかった。

 

「それも想定内だ、これならどうだ」

 

リヴァが念じると、無数の竜が造られていった。

 

「私の最強の技をくらえ!」

 

   水龍天征!!

 

水の竜が次々ブラートに直撃していく。

 

「ぐわあああああ!!」

 

さすがのブラートも大ダメージであった。

 

「やったか?」

 

するとブラートはリヴァに切り込んでいく。

 

「まだまだ!!」

 

「耐え抜いたか、だが、こっちもまだまだだ」

 

リヴァは床に落ちた水を帝具でかき集めてブラートにぶつけた、無論それでブラートを仕留めることはできなかったが勢いを削ぐには十分だった。

 

「まったく、抜け目ないぜ」

 

「お前を相手にするのだ、2手、3手読んでおくのは当然だ」

 

すると突然鎧化が解けた、ブラートの体は傷だらけであった。

 

「どうやら限界に達したようだな」

 

「それはお互い様だろ」

 

ブラートは指を指した、リヴァの耳から血が流れていた。

 

「よく見抜いたな、交渉を有利にしたかったのだがな」

 

「交渉?」

 

「単刀直入に言う、エスデス様に仕えないか?」

 

「冗談じゃないよな」

 

「当然だ」

 

「あいにくろくでもない軍に戻る気はねえ」

 

「軍ではないあのお方に仕えるのだ、そうすれば大きな力が手に入るぞ」

 

「断る、俺の力は昔から民のためにと決めてるんだ、大臣と組んでるエスデスの元じゃあ、ソイツは気取れねぇなあ」

 

ブラートはくしを取りだし髪をリーゼントに整えてビシッと決めた。

 

「お前がどれほど命を張ろうとも認めてはくれんぞ」

 

「そんなのは求めてはいないさ」

 

「そんな愚民共助けてやる価値などないぞ」

 

「・・・俺が知っているアンタならそんなセリフ言うはずないんだがな」

 

ブラートは少し寂しげであった。

 

「愚民共にはただ力を見せつければいいのだ、真実を見分ける頭などないのだからな」

 

「アンタもかつては民のために命を賭けて戦ってきたんじゃないのか」

 

「ああ、だがそれは間違いだった」

 

リヴァは更迭されて帝都の街中を通って連行される際民衆に石をぶつけられたことを思い出していた。

 

「愚民など力で支配するものだ、優しくすればつけあがる」

 

「もう俺が知っている将軍リヴァはどこにもいないんだな・・・」

 

ブラートは目の前の事実を受け止めた。

 

「力こそこの世の理だ、私はエスデス様に仕えその真実を悟ったのだ」

 

「・・・今の俺にアンタを全否定する資格はねえ、今の俺は殺し屋だからな」

 

「殺し屋が愚民を守る、滑稽だと思わんか」

 

「笑いたきゃ笑うがいいさ、俺は俺の道を進むだけだ」

 

「交渉決裂だな」

 

「ああ、ケリをつけようぜ」

 

二人の戦いは最終局面を迎えようとしていた、二人の戦いを遠くから見ている者がいた、それはイエヤスである。

 

「・・・俺も加勢してえがレベルが違いすぎる、兄貴の足を引っ張ってしまう」

 

イエヤスは悔しさで顔がひきつっている。

 

「俺の帝具戦闘タイプじゃねえし、だが、何もしない訳にはいかねえ」

 

イエヤスは帝具を使う決心をした。

 

「俺が知らない他の能力、何でもいい、発動しろ」

 

イエヤスが念じると帝具の目が開いた、だが、何も起きなかった。

 

「不発か、くそ」

 

悔しがっているとどこからか声が聞こえてくる。

 

 

「(・・・さすがブラートだ数年前よりも腕をあげたな)」

 

「もしかして、あいつの心の声か?」

 

「(だが私とてただでやられはせん、この毒入りドーピングを体内に打ち込み奥の手血刀殺をブラートにくらわせる、そうすれば毒に免疫のないブラートを確実に仕留められる)」

 

イエヤスはリヴァの心の声に驚愕した、そして。

 

「兄貴、気をつけろ、そいつ毒入りドーピングを使う気だ!!」

 

「!!?」

 

イエヤスの言葉に二人は絶句した。

 

「な、何故わかった、いかん早く打たねば」

 

リヴァは慌ててポケットからドーピングを取りだし首に打ち込もうとした。

 

ザン!!

 

ブラートは一瞬早く首に打ち込む前にリヴァの右腕を切り飛ばした。

 

「しまっ・・・」

 

リヴァは切り飛ばされた右腕を見て絶望した。

 

ズバッ!!

 

ブラートは続けてリヴァを切りつけた、リヴァはあおむけに倒れた。

 

「・・・」

 

リヴァは無言のまま倒れ込んでいる。

 

「焦ったな、一瞬動きが遅かった、アンタらしくねえ」

 

「・・・」

 

「らしくねえといえば何故他の三獣士と行動しなかったんだ、おそらく他の奴らは他の文官の所に行ったんだろうが、理にかなってるとは思えねえ、無意味な兵力分散は命取りだとアンタは俺に言っていたはずだ」

 

ブラートは最初から思っていた疑念を言った。

 

「・・・確かにそうだな」

 

「俺の想像が正しければ・・・」

 

「そうだ、セリューを超える武勲が欲しかったのだ」

 

「だが、三獣士として十分武勲をあげてるだろ」

 

「あの方はつねに新鮮な刺激を求めている、過去の実績などあまり意味はない」

 

「確かに奴ならな」

 

「エスデス様はアカメを仕留めたセリューを気に入ってな、危険とわかっていても一人でお前達の首を取らなければならなかったのだ」

 

「そこまでの価値があるのか?」

 

「お前にはわからんだろう、罪人に成り果てた私に手を差し伸べてくれたのはエスデス様だけだった、その時私は私の命はあの方に尽くそうと決めたのだ」

 

「・・・」

 

リヴァの迫力にブラートは何も言えなかった。

 

「私に勝ったとしてもお前の命運は長くないぞ」

 

「何?」

 

「以前、エスデス様がおっしゃっていた、自分を倒せる可能性があるとすれば大将軍ブドー、そしてアカメだと、だがアカメはもうこの世にはいない、つまり、お前達では絶対勝てないということだ」

 

 

「やってみないとわからないぜ」

 

「・・・せいぜい足掻くといい、地獄で酒宴を開いて待っているぞブラート・・・」

 

リヴァは事切れた、その時雨が降ってきた。

 

「兄貴・・・」

 

「とりあえず終わったな」

 

ブラートはかつてリヴァとともに敵の工作兵128人倒した頃を思い出していた。

 

 

 

「さすがだなブラート」

 

「将軍こそさすがだぜ」

 

「お前ならいつか私を超えるかもしれないな」

 

「よしてください、俺なんてまだまだです」

 

「謙遜するな、お前ならいずれ将軍にもなれるだろう」

 

「将軍?俺がですか」

 

「その時が来たら盛大に祝ってやろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「まずはこの戦いを勝ちぬかねばな」

 

「はい!」

 

 

 

雨はさらに激しく降ってきた、二人はずぶ濡れになっている。

 

「俺はアカメの分まで戦い抜いてみせる」

 

ブラートのずぶ濡れの背中はイエヤスには泣いているように見えた、竜船は港に着こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あいからわずバトルシーンはうまく書けません、頭ではイメージ出来てるんですけど、文章として書くのは本当に難しいです、これからもよろしくお願いします。


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第十五話

   三匹を斬る(後編)

 

5月6日

 

マインとラバは寒村を救済しようとしている文官の護衛に来ていた、マイン達は村の外にある林に待機している。

 

「さすが良識派、これで当分はしのげるだろう」

 

ラバは文官が村民に米を配給しているのを見て感心している。

 

「・・・」

 

マインは仏頂面で無言であった。

 

「なあ、いらいらするのよしなよ」

 

「いらいらしてないわよ!!」

 

マインはラバを怒鳴り散らしている。

 

「(全然いらいらしてるんだけど、まあ、無理ないか)」

 

ラバは出発する前のことを思い出していた。

 

 

 

 

ナジェンダの部屋でマインがナジェンダと口論している。

 

「だからって、ボス!!」

 

マインはナジェンダに噛み付いている、シェーレと別々にされたことに不満であったから。

 

「今説明した通りだ」

 

ナジェンダの説明はサヨとシェーレを組ませたのはエクスタスの奥の手で敵の目をくらませている間に村雨で切り付ける作戦を試すためということである。

 

「仕方ないだろ村雨の戦略の幅を広めなくてはならんからな」

 

「でも・・・」

 

マインは納得できないでいる。

 

「とにかく、これは命令だ従ってもらうぞ」

 

「・・・それはボスとしての命令? ナジェンダ」

 

マインは不満そうにナジェンダを睨みつけている。

 

「ああ、そうだ、ナイトレイドのボスとしての命令だ」

 

ナジェンダはマインが呼び捨てにしたことを無視している。

 

「わかったわよ・・・」

 

マインは渋々承諾して、部屋から出ていった、するとすぐにラバは入ってきた。

 

「・・・マインちゃんすごい剣幕でしたよ」

 

「まあ、そうだろうな」

 

「村雨とエクスタスの組み合わせ面白いと思いますけど・・・」

 

ラバはいまひとつすっきりしないようであった。

 

「お前も反対か」

 

「いえ、そんなことは」

 

ラバは慌てて否定した。

 

「まあ、そう思うのも無理はないな、サヨとシェーレを組ませたのはそれだけが目的ではないからな」

 

「どういうことです?」

 

「今からいうことはマインに知らせるなよ」

 

「は、はい」

 

「マインは爆発力はあるがその反面隙も多い、だからこそパンプキンの所有者に適任だがな」

 

「確かに」

 

「今あいつはこないだの一件を気にして不調だからな、あいつは否定してるが」

 

「それがマインちゃんですよ」

 

「そこで支援に適したお前と組ませることにしたのだ、ストレートに言ってもあいつはますますむきになるからな」

 

「マインちゃんは負けず嫌いですからね」

 

「そこでサヨのフォローにシェーレをつければ、自然な流れでお前とマインを組ませることができるからな」

 

「ナイスアイデアですね」

 

「マインのフォローを頼んだぞ、お前の柔軟な思考に期待する」

 

「まかせてください、期待に応えてみせます!」

 

ラバは力強く返答した。

 

 

 

 

 

いらいらしているマインを見てラバは。

 

「・・・今のマインちゃんじゃシェーレさんの命が1ダースあっても足りやしないな、ナジェンダさんの判断は大正解だったってわけだな」

 

すると突然ラバの帝具に動きがあった。

 

「反応あり、近くまで来ている」

 

「待ってたわよ、かかって来なさい」

 

マインは意気込んでいる、だがラバは首を傾げている。

 

「どうしたの」

 

「うん、糸の反応が一人だけなんだ」

 

「一人?敵は三獣士でしょ、つまり三人に決まってるじゃない」

 

「そのはずなんだが、もうすぐ目視できる所まで来る」

 

「ラバがびびって勘違いしたんでしょ」

 

「(反応だと確かに一人なんだよな、どうなってんだ?)」

 

二人が話をしている間に一人の大男が姿を見せた。

 

「やっぱり一人だ」

 

「一体どうなっているの?」

 

マインは想定外のことに目を点にしている。

 

「おそらくアカメちゃんがいなくなったナイトレイドなら一人で十分だと思ったんだろう」

 

「!?」

 

「だけどチャンスだ一人だけなら俺達二人で・・・」

 

「・・・ふざけるんじゃないわよ!!」

 

 

マインは激怒して帝具を構えた、ラバは止めようとするもそれを振りきって帝具を発砲した、射撃は大男に向かっていく、だが大男は素早く身をかわした。

 

 

「外れた!?」

 

マインはさらに連射するも、ことごとくかわされた。

 

「なんで当たらないのよ」

 

 

マインはますますいらついている、すると大男は背中に背負っていた斧をマイン達がいる林へ投げつけた、斧は次々と木を切り倒していく、ついにマイン達が登っていた木も切り倒された、二人は空中で態勢を立て直し着地した。

 

 

「なんて馬鹿力だ、林が・・・」

 

周りは切り倒された木で一杯だった、すると、大男が現れた。

 

 

「生きていたか、まあ、これで終わったら経験値が稼げねえからな、俺は三獣士のダイダラだ、まあ、お前らはじき死ぬが一応紹介しておくぜ」

 

 

「なんですって」

 

マインはダイダラの態度に激怒した。

 

「今日の俺は絶好調だぜ、なにしろお前の気をビンビンに感じたからな」

 

「何をわけのわから・・・」

 

マインは自分のいらいらが敵に悟られたことを気づいた。

 

「なんてことなのアタシとしたことがこんな失態を・・・」

 

マインは歯ぎしりをして悔しがっている、するとラバは。

 

 

「他の二人はどうした、まさかお前一人ってことはないだろ」

 

ラバはおおかたの状況を推測しているが確実な裏を取りたかった、こいつならポロッとしゃべりそうと思った。

 

「ああ、それはな・・・・・・・・・・・・・忘れちまったぜ」

 

ダイダラはすっかり忘れてしまっていた。

 

「はあ、なんだよそれ」

 

ラバは思わずツッコミをいれた。

 

「しょうがねえだろ、忘れちまったんだから、モメたのは少し覚えているんだがよ」

 

「(モメた?つまり、三手に分けようとした奴と反対した奴がいるということだ、こいつはどっちでもないな)」

 

ラバは冷静に分析している、するとダイダラは斧を二つに分けた。

 

「さっさと始めようぜ」

 

ダイダラはダッシュして突撃してくる。

 

「くっ、今は考えている場合じゃないな」

 

ラバは迎撃態勢を整えた、するとダイダラは二つに分けた斧の一つを投げつけた。

 

「危ねえ!」

 

ラバはなんとか回避した、ダイダラはもう一つの斧でラバを切りつけようとしていた、ラバは糸を束ねて網を造りだし動きを封じようとした。

 

 

ドッ!!

 

 

ラバが突然前へ倒れ込んだ、ラバの背中には最初に投げつけた斧が刺さっていた、この帝具はベルヴァーク、投げると勢いが続く限り敵を追尾することができるのである。

 

 

「!?」

 

マインは何が起こったのかわからなかった、目の前には背中に斧が刺さってピクリとも動かないラバが・・・

 

「ラバ・・・?」

 

マインは目の前の出来事を理解し始めた。

 

「う、嘘でしょ、ラバ」

 

ラバの返事はなかった、ダイダラはラバの背中に刺さった斧を持ち上げた、斧には血がべっとり付いていた。

 

「へへ、この経験値がさらに俺を強くするぜ」

 

ダイダラは大きく笑みを浮かべた。

 

「よくもラバを・・・」

 

マインはパンプキンを連射した、だが、怒りにまかせて連射しているのでことごとくかわされていく。

 

「面白くなってきたぜ」

 

ダイダラは巨体とは思えぬほどの身のこなしである。

 

「この、この、この!!」

 

マインはますます冷静さを失っていった、するとダイダラは帝具を投げようと大きく振りかぶった。

 

「来なさい、打ち落としてやる」

 

ダイダラは投げつけた、マインはパンプキンを構える、しかし、斧は真上に舞い上がっている。

 

「!?」

 

マインはふわりと舞い上がった斧を見て一瞬思考が停止した、その瞬間ダイダラは猛ダッシュした。

 

「しまった、フェイント!?」

 

マインが判断したときダイダラの蹴りがマインの左腕に直撃した。

 

 

ボギィ!!

 

 

「あああああ!!」

 

骨が折れる鈍い音とともにマインは吹っ飛んだ、マインの顔は激痛で歪んでいる、ダイダラは大笑いしている。

 

「このフェイントでさらに経験値アップだぜ」

 

倒れたマインは自分自身の醜態に怒り心頭している。

 

「なんてザマなの、勝手にいらついて敵を仕留められず、あげくにラバを・・」

 

マインはアカメが死んだ日のことも思い出していた。

 

「・・・わかってるわよ、アタシのしたことが殺し屋として言語道断だということも、殺し屋である以上いつかアタシ達の誰かが死ぬということも」

 

マインはあの日のことを引きずってしまい、今の窮地を招いてしまった、それでも心は折れずにいた。

 

「さて、あいつを竹のように真っ二つにぶった切って締めくくるか」

 

ダイダラは勝ちを確信している、それを見てマインは激怒した。

 

「ざけんじゃないわよ、まだアタシは負けてないわよ」

 

マインはパンプキンに意識を集中する、パンプキンの出力が上がっていく。

 

「こりゃすげえぜ、もろに食らったら死ぬな、だが、だからこそ経験値ががっぽりはいるぜ」

 

ダイダラは突撃していく、マインは撃てなかった、撃ってもかわされると判断したから。

 

「一瞬でいい、一瞬でも動きが止まれば・・・」

 

マインが躊躇している間にダイダラは大きく斧を振りかぶった、その時、ダイダラの動きが止まった、何かに動きが封じられたようにも見えた。

 

 

「いっけえええええ!!」

 

パンプキンから高出力の光線が放出された、ダイダラの体が真っ二つになった。

 

 

「な、なにが起こった・・・」

 

ダイダラは自分に何が起こったのかわからないまま絶命した。

 

 

「ハア、ハア、ハア・・・」

 

マインは体力を絞りだして疲労困ぱいである。

 

「勝った、でも、アタシのせいでラバが・・・」

 

マインが落ち込んでいるとどこからか声が聞こえてくる。

 

「おーい」

 

「アカメに続いてラバが」

 

「ちょっとー」

 

マインは声のする方に向いた、するとラバがいた。

 

「わあああああ!!!化けてでたわねラバあああ!!!」

 

マインは大泣きして叫んだ。

 

「死んでない、死んでない、ちゃんと生きてるよ」

 

ラバはピンピンしていた。

 

「な、なんで生きてるの、アンタ斧が背中に刺さったじゃない」

 

「体に糸巻いていたから」

 

「でも、あの斧を糸で耐えられるの?」

 

「通常の糸じゃだめだったよ、界断糸の糸を巻いていたから」

 

「かいだんし?」

 

「ああ、クローステールの素材となった超級危険種の急所を守る体毛でできてるんだよ、段違いに頑丈なんだよ」

 

ラバの説明が終わるとマインは怒りで真っ赤になっていく。

 

「生きてるんなら、さっさと助けなさいよ、腕折れちゃったじゃない!」

 

マインの怒りにラバはうろたえている。

 

「しょうがないだろ、あいつ、頭悪そうなのに全然隙なかったんだから、ワンチャンスに賭けたんだよ」

 

「確かにね・・・」

 

「にしても三獣士、一人だけでもすげえ強かったな、三人揃っていたらマジでやばかったな」

 

「そうね・・・」

 

マインにいつもの強気がない、この状況を招いたことにへこんでいる。

 

「にしてもナジェンダさんの不安的中だな」

 

ラバはついポロッとこぼした。

 

「何?」

 

「え、別に・・・」

 

ラバはごまかそうとするがマインの迫力に白状してしまった。

 

「・・・ナジェンダの奴」

 

マインはムッとしたが予想が的中したので怒りをあらわにしなかった。

 

「ナジェンダさんはマインちゃんに配慮したんだよ」

 

「まあ、今回は大目に見てあげるわ」

 

いつものマインに戻った。

 

「まあ、とにかく任務完了よ、ラバ、アンタはその帝具を運んで」

 

「え、俺一人で?」

 

「当然でしょ、アタシ腕折れてんだから」

 

「こ、この斧すごく重そうなんだけど」

 

ラバは突然の言い付けに慌てている。

 

「じゃあ、まかせたわよ」

 

マインはさっさと歩きだした。

 

「ちょっとー!!」

 

ラバの叫び声が周囲に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか三獣士編を書き終えました、バトルシーンを小説に書くのは本当に難しいです、次回はあのキャラが登場します、お楽しみに。


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第十六話

   名所を斬る

 

 

帝都のある広場に名所が最近造られていた、それは数メートルの氷山である、無論ただの氷山ではない、氷山の中にアカメの首が埋め込まれている、アカメは帝都最凶の殺し屋と恐れられた女である、この前警備隊員のセリューが討ち取ったのである、そのアカメの首をエスデス将軍が帝都の民に見せやすくするため氷山に組み込んだのである、アカメの首と氷山の組み合わせが絶妙な美しさを造りだしている、今ではその広場はその氷山を見るために大勢の人で賑わっていた、その中の一人に黒髪の少女がいた、彼女は他の見物人と違い絶望の表情をしている。

 

 

 

「ウソ・・・」

 

この少女の名前はクロメ、アカメの妹である。

 

「お姉ちゃんが死んだなんてデマだと思ってたのに・・・」

 

クロメはわなわな震えている、そして刀を抜き氷山に飛びかかり、氷山を切り刻んだ。

 

ザン!!

 

 

氷山は木っ端みじんに砕かれアカメの首が宙に浮いた、すかさずクロメは首をキャッチした。

 

 

「お前、何を!?」

 

氷山を警備していた兵がクロメに詰め寄る、クロメは兵を強く睨みつけた。

 

「ひっ!!」

 

兵は思わず怯んだ、クロメは兵のことなど気にせずアカメの首をじっと見つめている。

 

 

「・・・すごく、すごく、会いたかっのに、こんなのって、こんなのってあんまりだよお姉ちゃん!!」

 

クロメはアカメの首を抱き抱えて号泣した。

 

 

「うわあああああああ!!」

 

あまりの号泣にクロメの鼻が垂れてきている、大粒の涙が止まらない。

 

「あああああああああ!!」

 

周りの大衆はクロメの号泣に戸惑っている。

 

 

「うっ、うっ、うっ・・・」

 

しばらくしてクロメは静かになった、クロメはアカメとの最後の会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

「クロメ、今すぐ私と一緒に帝国を抜けるんだ」

 

アカメはクロメの手を握り連れ出そうとしている。

 

 

「ち、ちょっと待ってよ、何言ってるの」

 

クロメは訳がわからなかった、アカメはさらに。

 

 

「帝国は民のことは全く考えていない、私達は利用されたんだ」

 

「お姉ちゃん落ち着いてよ、ナジェンダに何を吹き込まれたの」

 

「今は時間がない頼むから一緒に来てくれ」

 

「そんなことできるわけないよ、仲間を置いてなんて」

 

「私だって辛い、だが・・・」

 

 

クロメはアカメの手を振り払い睨みつけた。

 

「いい加減にしてよ、私達は帝国に尽くさないといけないんだよ、死んだ仲間の分まで」

 

「クロメ、気持ちはよくわかる、だがこのままではお前の体が・・・」

 

アカメは涙目で訴えるもクロメは聞く耳を持たない、するとクロメは刀を抜いた。

 

「帝国を裏切るならお姉ちゃんでも容赦しないよ」

 

「クロメ・・・」

 

 

アカメはクロメの説得は不可能だと悟った、すると無数の足音が聞こえてきた。

 

「これまでか・・・」

 

アカメは断腸の思いで逃げだした。

 

 

「お姉ちゃん、待って、待ってー!!」

 

クロメは涙をこぼしながら叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・ナジェンダのせいだ、ナジェンダがお姉ちゃんによけいなことを吹き込んだから、こんなことに・・・」

クロメは姉を止められなかったことを悔いていた。

 

 

 

 

「私達は何があってもずっと一緒だぞ」

 

今となってはもうそれは決してかなわない、クロメの目からさらに大粒の涙がこぼれた、そして、ナジェンダへの憎悪が溢れ出た。

 

 

 

 

 

 

「・・・私が必ずナジェンダを切り刻んでやる」

 

クロメからまがまがしい気があふれている、周囲の大衆は後ずさりしている。

 

「いや、切り刻むのはナジェンダだけじゃない他のナイトレイドも徹底的に切り刻んでやる!!」

 

クロメは最愛の姉を奪ったナイトレイドに復讐を誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにアカメの妹クロメが登場しました、これから先どうなるのかお楽しみ。


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第十七話

   召集を斬る

 

6月6日

 

エスデスは軍人墓地にいた、三獣士の墓参りをするためである。

 

「全く、お前達は弱い上に愚かだな」

 

エスデスは全てを察していた。

 

「しょうがない部下共め、仕方ないから私が敵を討ってやろう」

 

エスデスは墓標に花を供えて後にした。

 

「さて、そろそろ時間だな」

 

エスデスは宮殿に向かった。

 

 

 

 

 

宮殿のとある一室、そこには男女六人が座っている、気まずそうに無言である、だが。

 

「・・・あの、ウェイブ君、その・・・」

 

覆面の大男が青年に話しかけた、この大男はボルス、元焼却部隊である。

 

「わかってますよ、ボルスさんが何を言いたいのか、あの二人でしょ」

 

 

この青年はウェイブ、海軍所属の軍人である、ウェイブの視線にはクロメとセリューがいる。

 

「そりゃ実の姉を殺した奴が近くにいたら気まずくなりますよ」

 

 

二人はいつクロメがセリューに斬りかかるのではないかとヒヤヒヤしている。

 

「でも、これから同じ部隊になるわけだし、仲良くできないでしょうか」

 

「そりゃ俺もなんとかしたいですけど・・・」

 

 

二人は妙案が思いつかなかった、セリューの隣に座っている金髪の青年は一同の様子を見ていた。

 

「それにしても大胆なことをなさいますね、この二人を同じ部隊に所属させるとは、下手をすれば一触即発ですよ、まあ、あの人らしいですけど」

 

この青年はラン、冷静沈着な性格である。

 

 

「・・・困りました、まさかあのアカメに妹がいてしかも私と同じ部隊に配属されるとは」

 

セリューは無言でお菓子を食べ続けるクロメにたじたじしている。

 

「(そうだ、ドクターに助けてもらいましょう)」

 

セリューは視線を向けるとセリューがドクターと慕う男はぷいとした。

 

「(自分でなんとかなさい)」

 

この男はスタイリッシュ、いわゆるオカマである。

 

「(確かに、でもいったいどうすれば・・・)」

 

セリューが困惑していると突然ドアがバアンと開いた、そこには仮面を被った女がいた。

 

 

「!!?」

 

一同は何が起こったのかわからず呆然としている、すると女は仮面を外し。

 

 

「・・・全くノリが悪いなお前達、せっかく用意したのに無駄になってしまったではないか」

 

ため息をついて不満げであった。

 

 

「エスデス将軍!?」

 

予想もしない出来事の連続で呆気にとられている。

 

「これはいったい?」

 

ウェイブがエスデスに質問すると。

 

「ああ、変わった趣向をしようと思ってな」

 

「申し訳ありません、ご期待に背くことになりまして」

 

ランが深々と頭を下げると。

 

 

「気にするな、それよりもお前達の雰囲気のことだが、私が察するにそこのセリューがクロメの姉であるアカメを仕留めたことで微妙な雰囲気になっているのではないか?」

 

 

「まったくその通り!!」

 

ウェイブはエスデスの洞察力に度肝を抜かれた。

 

 

「いいか、セリューは警備隊員として己の責務を全うしたのだ、称賛されこそすれ咎められる要素は微塵もないぞ」

 

 

エスデスが語り終えるととクロメは。

 

 

「・・・セリューに非はないよ、セリューは自分の任務を遂行したんだから」

 

 

エスデスとランはクロメのわずかな表情の変化に気がついたが何も言わなかった。

 

 

「そ、そうです、私は正義を行ったのです、悪いのはアカメをそそのかしたナジェンダです」

 

セリューはコロッと明るくなった。

 

「そうだ、俺達がいがみ合うことはないんだ」

 

「同じ帝具使いこれから仲良くしましょう」

 

一同の雰囲気は一気に和んだ。

 

「(さすがですね、この場の微妙な雰囲気を即座に解決しました、強いだけの武人ではなさそうですね)」

 

ランはエスデスの統率力を心の中で高く評価した。

 

 

「では、早速皇帝陛下との謁見だ、その後はパーティーを開くぞ」

 

「ずいぶん飛ばしますね」

 

「こういうのはパパッと済ませるのが一番だ」

 

一同はエスデスのハイペースに戸惑っていると。

 

「だが、その前に一つ言っておきたいことがある」

 

「なんです?」

 

 

「私の配下だった三獣士のことは知っているな」

 

「はい」

 

「その中の一人ニャウについてだ、ニャウは胴体を両断されて死んでいた」

 

「えげつないですね・・・」

 

ウェイブは想像して冷や汗をかいている。

 

「私はその死体を見てピンときて解剖してみた、すると心臓が停止してから両断されたことがわかった」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、私の分析は並の医者よりも優れていると断言できるぞ」

 

「いったい何のために」

 

ボルスは首を傾げている。

 

「他にもニャウの右肩に数ミリの傷があった」

 

「それってまさか・・・」

 

「ああ、村雨だろう」

 

「でも、アカメちゃんはもう・・・」

 

「新たな村雨の使い手が現れたのだろう」

 

一同は衝撃の展開に唖然としていると、セリューが。

 

 

「もしかしたら奴が・・・」

 

「心当たりがあるのか?」

 

「は、はい、断言はできませんが、そいつはサヨかもしれません」

 

「サヨ?」

 

「はい、アカメと共に行動していた女です、そいつは村雨を持って逃走しました」

 

「強いのか?」

 

「私の左腕を斬り飛ばした奴です」

 

「お前の左腕をか、弱くはなさそうだな、皆もそのサヨが新たな村雨の使い手と認識するように」

 

「はっ!!」

 

 

皆が応答するなかでクロメは何かぶつぶつつぶやいている。

 

「おい、クロメどうした」

 

ウェイブはクロメに声をかけた、すると。

 

「そいつがお姉ちゃんの村雨を・・・絶対、私がそいつを切り刻んで村雨を取り戻す」

 

クロメの表情は悍ましいものになっていた、それを見てウェイブはびびった。

 

「お前達何をしている早く来い」

 

「は、はい」

 

二人はエスデスの後に続いた、クロメの表情は元に戻っていた。

 

「俺、ここでやっていけるのかな・・・」

 

ウェイブは少なからず不安を感じていた。

 

 

 

この日帝都に新たな部隊が結成された、七人の帝具使いで編成された特殊警察イェーガーズである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにイェーガーズが登場しました、物語も新たな展開になりました、にしても相変わらず文章がうまくかけません、それはさておき、次回は名前のあるオリジナルキャラが登場します、お楽しみ。


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第十八話

   戦闘狂を斬る

 

6月8日

 

帝都の街中に一つの貸本屋がある、貸本の種類の豊富さで評判の貸本屋である、その店はラバの店であり、その店の地下室はナイトレイドの隠れ家になっている、その地下室にラバとレオーネとイエヤスがいる。

 

 

 

「案の定サヨちゃんの手配書が出ちまってたな、しかも帝具もばれてる」

 

ラバはサヨの手配書を手に持ち眉をひそめている。

 

「あいつ、いろいろ手を打ったんだけどな」

 

「帝国はそう甘くはないということさ」

 

ラバとイエヤスの話の最中、レオーネは酒を飲んで上機嫌だった。

 

 

 

「いやあー、昼間から飲む酒は最高だね」

 

すっかり酔っ払ってるレオーネを見てイエヤスは。

 

「姐さんくつろぎすぎ・・・」

 

ア然としているイエヤスをよそにラバは。

 

「にしても特殊警察イェーガーズか・・・」

 

ラバの表情が一気に険しくなった。

 

「エスデスだけでも脅威なのに、さらに六人の帝具使いか・・・」

 

 

ラバはこれ以上なくうんざりしている。

 

「にしても帝国にはそんなに帝具があるのか、三獣士のもいれたら9つだろ、エスデス一人にそんなにたくさんまわしてくれるのか?」

 

 

「エスデスは特別なんだよ、強さもそうだが奴は政治には全く興味はないから大臣もエスデスに大盤振る舞いしてくれるんだよ」

 

 

「持ちつ持たれつってやつか」

 

「ああ、最悪のな」

 

二人はうんざりしているとレオーネが。

 

「何辛気臭い面してんだよ、飲んだ、飲んだ」

 

レオーネはさらに酔っ払っていた。

 

 

「話は変わるが、明日、そのエスデスが武術大会を開催するらしいぞ」

 

「本当か」

 

「ああ、優勝者には賞金が出るらしいぞ」

 

「マジ!?」

 

「ああ、村への仕送り増やせるんじゃないのか」

 

「よっしゃー!!賞金いただきだぜ」

 

イエヤスはテンションが一気に上がった。

 

 

 

6月9日

 

 

「・・・ここは?」

 

エスデスは自分がどこにいるのか一瞬わからなかった。

 

「お目覚めですね、隊長」

 

ランはにっこり微笑んで答えた。

 

「そうか、武術大会の最中だったな、あまりのつまらなさに居眠りをしてしまったんだったな、今はどのあたりだ」

 

「はい、今決勝戦の最中です」

 

 

「ほう、片方はまだ少年だな」

 

その少年はイエヤスである、イエヤスが圧倒している。

 

「彼、なかなかの逸材ですよ」

 

「そうだな・・・」

 

エスデスはそっけなかった。

 

 

「おや、興味がわきませんか?」

 

「ああ、けっこう強いんだがな、全く興味がわかん」

 

エスデスは大きなあくびをした、本当に興味がないようだ。

 

「一応彼のことは調べておきますか」

 

ランはイエヤスに何かを感じた、そうしているうちにイエヤスが勝った。

 

 

「終わったな、奴に賞金を渡してさっさと帰るぞ」

 

「はい」

 

二人が試合場に向かおうとすると突然乱入者が現れた。

 

 

「おい、飛び入り参加いいか?」

 

突然の乱入者に観客はざわついている、その乱入者は18ぐらいの黒髪の女である。

 

 

「おい、何言ってるんだよ、そんな勝手・・・」

 

 

イエヤスが女に文句を言おうとしたとき。

 

「いいだろう、許可する、つまらない大会もこれで少しは面白くなるだろう」

 

エスデスは笑顔で許可した。

 

「はあ!?そんな理不尽な・・・」

 

イエヤスは抗議するも。

 

 

「こいつに勝てば賞金を倍にしてやる、それなら文句ないだろう」

 

「・・・わかった」

 

 

完全に納得していないが賞金倍でとりあえず承諾した。

 

「とにかくこいつに勝てば賞金倍だ」

 

イエヤスは気を取り直して構えた、女は隙だらけであった。

 

「なんだこいつ隙だらけだよくでかい口たたけたな」

 

イエヤスがむっとしていると女が口を開いた。

 

「一発打たせてやる、来な」

 

女の挑発にイエヤスは頭に血が上り、力いっぱい女の顔面に鉄拳を食らわした。

 

「どうだ!」

 

手応えを感じイエヤスは勝ちを確信した、だが、女は堂々と立っている。

 

「なかなかやるじゃないか」

 

女はケロッとしている、それを見てイエヤスは驚愕した。

 

「ば、ばかな、手応えはあったのに・・・」

 

「じゃあ、次は俺の番だ」

 

動揺しているイエヤスの腹に掌底を打ち込んだ、イエヤスは観客席まで吹っ飛び気絶した、観客はシーンとなった。

 

「姐さん・・・」

 

試合を見ていたラバとレオーネも呆然としている。

 

 

「ああ、あいつに落ち度はなかった、あれを食らってなんともない奴なんてそうはいない」

 

レオーネは何とか冷静に分析した、それでも女の強さに多少は動揺していた。

 

 

「やるじゃないか、お前名は?」

 

「カーラだ」

 

「ではカーラ、お前に賞金をやろう」

 

「金はいらん、その代わり一つ望みがある」

 

「なんだ?」

 

「あんたと闘いたい」

 

 

カーラの言葉に観客は騒然となっている、ラバとレオーネは青ざめている。

 

「な、何考えてやがるんだあいつ、死にたいのか?」

 

ラバは動揺を隠せない。

 

「少なくとも奴はそのつもりは全くない」

 

レオーネはカーラの強さをかなり高く見ている。

 

 

「あなた本気ですか、冗談だったじゃ済まされませんよ」

 

普段は冷静なランも今は多少動揺している。

 

「ああ、十倍本気だ」

 

カーラには微塵も迷いはない。

 

「では相手をしてやるぞ」

 

エスデスはすでに臨戦態勢を整えている。

 

「今やるのもいいが、今はやめとく、戦う日程は後日俺から知らせる」

 

カーラの言葉にエスデスは肩透かしをくらい顔が引きつっている。

 

「・・・貴様、それで済まされると思っているのか」

 

「どうせやるなら大々的に帝都中に宣伝したほうがいいだろ」

 

カーラの不敵な態度に観客はさらに青ざめている。

 

「じゃあそういうことだ、またな」

 

カーラが立ち去ろうとしたその時、エスデスはパチンと指を鳴らした、その瞬間、カーラの頭上に巨大な氷が現れた、そのまま落下した。

 

 

ガシャ!!

 

 

誰もがカーラが押し潰されたと思った、だが、氷はひび割れて粉々に砕け散った、カーラはアッパーで氷を砕いた。

 

「・・・」

 

エスデス以外の人間は驚きのあまり言葉を失った。

 

「焦るなよ、そう遠くない日にやれるさ」

 

カーラは余裕しゃくしゃくだった。

 

「いいだろう、その日を楽しみにしてるぞ」

 

カーラはそのまま闘技場を後にした。

 

 

エスデスの表情はまさに狂喜であった、まがまがしい気がエスデスからあふれている、ラバとレオーネはそれを感じ身動きできなかった。

 

「・・・絶対動くなよ」

 

「わかってるよ、動きたくても動けねえ」

 

二人から大量の汗があふれている。

 

「にしてもあの女何者だ?」

 

「さあね、なんにせよ俺達では手に余るよ」

 

「とにかくエスデスがここからいなくなったらイエヤスを救助して退散だ」

 

「ああ、長居は無用だ」

 

二人はイエヤスを救助して目立たないように退散した。

 

ランはこの衝撃の光景を目の当たりにしてイエヤスのことはすっかり忘れてしまっていた。

 

 

 

 

夜の帝都の郊外、その周囲には誰もいない、そこにカーラは歩いていた。

 

「いい加減出てこいよ、いるんだろ」

 

カーラが振り向くと、一人の人間が現れた。

 

 

「やっぱり気づいていたわね」

 

イェーガーズの一人、スタイリッシュである。

 

「アナタを見てビビッときたのよ、最高の素材だってね」

 

「素材?」

 

「ええ、隊長に全く臆さず、その強さ、まさに究極の素材よ」

 

「冗談は顔だけにしておけ」

 

「まあ、失礼ね、でもそのふてぶてしさ悪くないわよ」

 

「で、俺にどうしろと?」

 

「だから、アタシの研究素材になってほしいのよ」

 

「断る」

 

「でしょうね、だから力ずくでいくわよ」

 

スタイリッシュが指を鳴らすと、奇抜な格好をした集団が現れた。

 

 

「なんだこいつら?」

 

「チームスタイリッシュ、アタシの帝具で強化した兵隊よ」

 

「・・・本当にお前趣味悪いな」

 

カーラは顔を引きつっている。

 

「大きな口を言えるのも今だけよ、チームスタイリッシュの皆さん熱く激しく突撃よ」

 

スタイリッシュの号令で一斉にカーラに突撃した。

 

 

 

 

数分後、チームスタイリッシュはスタイリッシュと数人の兵を残して全滅した、辺りには強化兵の死体がゴロゴロ転がっている、その中には特殊兵であるカクサンとトビーもいた、トローマはたった今カーラに首を絞められ首の骨をへし折られた、スタイリッシュは青ざめて呆然としている、呆然としているのは兵隊が全滅させられただけではなかった。

 

 

「・・・なんでアンタなんともないの、アタシが作った麻痺毒辺り一面にばらまいたのに」

 

スタイリッシュは悪夢を見ているようであった。

 

「生物である以上効かないわけが、まさか帝具?」

 

「いや、おもいっきり効いたぜ」

 

「それってどういう・・・」

 

スタイリッシュはなにかをひらめいた。

 

「カーラ・・・その名前どこかで見覚えがあると思ってたのよね、そういえばアンタ彼に面影が・・・」

 

「それ以上言うな、ぶっ殺すぞ!」

 

カーラの表情は突然険しくなった。

 

「・・・とにかく今日のところはアタシの負けね、でもいつかアンタを素材にしてあげるわ」

 

「いつでも来な、返り討ちにしてやる」

 

スタイリッシュに勝ち誇るとカーラの姿は闇夜に消えて行った。

 

「ウフフフフ、見てなさい、次はもっとスタイリッシュにするから」

 

その夜、スタイリッシュの高笑いがいつまでも続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はオリジナルキャラをメインに出しましたが、今までで一番自信がありません、オリキャラは出すのに勇気がいります、カーラの声は沢城みゆきさんをイメージして見てください。


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第十九話

   侵入者を斬る(前編)

 

6月11日

 

深夜のナイトレイドのアジト、そこにマインが水を飲みに起きていた、マインは左手を強く握りしめた。

 

ズキ!!

 

「ダメ、まだ少し痛む・・・こんなことでぐずぐずしていられないのに、アカメの分まで働かないといけないのに」

 

マインは殉職したアカメの穴を埋めたくて仕方がなかった。

 

「それに・・・」

 

 

 

 

数日前

 

「ボス、いつまでサヨとシェーレのコンビ続けているの!?」

 

マインは二人のコンビ継続をとても不満だった。

 

「そうは言ってもお前、ケガ治ってないだろ」

 

マインはナジェンダにいたいところをつかれて言葉に詰まった。

 

「それにあの二人は思った以上に活躍している、当分あのままでいくつもりだ」

 

「そ、そんな・・・」

 

「とにかくお前のケガが治ってからゆっくり考えるさ」

 

「わかったわよ」

 

マインは不満でいっぱいだが反論できなかった。

 

 

 

 

 

「まあ、実際アタシがケガしているのも事実だし・・・でもアタシのケガが治ればこっちのものよ、見てなさいサヨ!!」

 

マインが大きく口を開けて高笑いしている、その瞬間。

 

 

「ほう、美少女の臭いをたどって来てみればとびきりの美少女がいたぞ」

 

「!?」

 

突然後ろから聞き覚えのない声がした、マインは後ろを振り向いた、すると誰もいない。

 

「今の声何?」

 

その瞬間何かに髪の毛を触られた、再び後ろを振り向くと見知らぬ男が自分の髪の毛をくんくん嗅いでいた。

 

「なかなか香しいな」

 

男は匂いにうっとりしている、マインは全身に鳥肌が立った、そして絶叫した。

 

「いやあああああああ!!!」

 

マインはパニックになりつつも状況を分析している。

 

「何、こいつ、どうやってここに!?」

 

男は全身黒ずくめの服を着ている、歳は18ぐらいであろう(この男は「アララギコヨミ」をイメージしてください)

 

「アンタ何者!?」

 

男は返答しなかった、そして突然マインのスカートをめくりあげた、マインのピンクのパンツが丸出しになった。

 

「!!?、キャアアアア!!」

 

マインは真っ赤になり絶叫した、そしてすぐさまスカートを押さえた。

 

「な、何するのよ!!」

 

激怒しているマインをよそに男は正面からマインの胸を揉んだ。

 

 

もにゅ!!

 

 

「ひっ!!」

 

マインは思わず悲鳴を上げた。

 

 

 

もにもにもにもに

 

 

男は懸命にマインの胸を揉み続けている。

 

 

「おおおお、このちっぱい最高の揉みごこちだー!!」

 

男は歓喜に湧いている、すると何処かブチッと音がした。

 

 

「死ね!!」

 

マインは怒りの鉄拳を男の顔面に食らわした、もろに入った、だが。

 

「今、何かしたかな?」

 

男は全くこたえていなかった。

 

「この!!死ね、死ね、死ね!!」

 

 

マインは鉄拳のラッシュをした、男の顔面に次々に鉄拳が炸裂していく、だが男は平然としている。

 

「いいぞ、もっと殴れ、これこそ最高のご褒美だー!!」

 

男は大喜びしている、これにはマインはぞっとした。

 

「この変態!!」

 

マインはさらに殴り続けた、やはり効果はない、マインは不審を抱いていった。

 

 

「どうなっているの、アタシのパンチが効かないなんて、それに殴った跡が全然ない、一体どうなっているの?」

 

そうしている内にサヨとシェーレが帝具を持って駆けつけた、二人とも寝巻きのままである、サヨは真っ白の浴衣でシェーレは薄紫のネグリジェである。

 

 

 

「大丈夫ですか、マイン」

 

「見ての通り全然大丈夫じゃないわよ、早く助けなさい!!」

 

シェーレの心配を無視し助けを要求するマインを見てサヨはぶれないわねと思った。

 

「ほう、今度は黒髪の美少女と眼鏡のお姉さんか、まさにここは桃源郷だな」

 

男はご満悦であった、それを見てサヨは不愉快になった。

 

 

 

「あなた、ここでこんなハレンチなことをしてただで済むと思っているの?」

 

「まあな」

 

「忠告するわ、今すぐやめないと死んでもらうわよ」

 

サヨは村雨を抜いた。

 

「お前にできるかな?」

 

男はマインを持ち上げてマインの胸に顔をうずめた。

 

「いやあああああ!!」

 

マインは涙目で絶叫した。

 

男の態度にさらにサヨは不愉快になった。

 

 

 

「ちょっと早く助けなさい、サヨ!!」

 

「言われなくても」

 

サヨは駆け出した、上半身は斬れないマインに当たっちゃう、そうサヨは判断した、ならば、サヨは男の足首を狙いに定めた。

 

 

ズバッ!!

 

 

サヨは男の左足首を斬りつけた、仕留めた、サヨは思った、だが。

 

 

「今、何かしたか?」

 

男は平然としている、村雨で斬りつけたのに。

 

「何ともない!?確かに斬りつけたのにまさか義足なの?」

 

サヨは困惑していた、斬った感触は確かに肉そのものだったから、つまり肉でできた義足ということになる。

 

 

 

「何してんのよ!!」

 

マインはサヨに激怒した。

 

「ちょっと待って、そいつおかしい」

 

「そうよこいつは変態よ」

 

「だからそういう意味じゃあ・・・」

 

サヨは男に不気味さを感じた、村雨が効かないなんておかしい、こいつの謎を解かないと、サヨは焦っていると。

 

 

「サヨ、私にまかせてください」

 

シェーレがエクスタスを構えて前にでた。

 

「シェーレ、大丈夫?」

 

「できるだけやってみます」

 

サヨは思った、シェーレのほうが有利に戦えると。

 

「わかった、気をつけて」

 

「はい」

 

シェーレは笑顔で答えた。

 

 

 

「お前達では僕は倒せないよ」

 

男は完全にナメていた、だが、そこに付け入れる隙が生まれるかもしれない。

 

「行きます」

 

 

 

シェーレはダッシュした、男はいまだにマインの胸に顔をうずめている。

 

「さて、どんな手でくるか」

 

男はシェーレのほうを向いた、シェーレはその瞬間を見逃さなかった。

 

「エクスタス!!」

 

シェーレは奥の手を使った、まばゆい閃光がおこった。

 

 

 

「うおおおお!!目が、目があああ!!」

 

男は閃光をまともに見て目がくらんだ、男に隙ができた。

 

「マイン、逃げて」

 

マインは男の腕を振りほどいた、そしてその場にうつぶせた。

 

 

ジャコッ!!

 

 

シェーレは男を一刀両断した、上半身と下半身が見事に分かれ床に落ちた。

 

 

「マインにいやらしいことをしたのでごめんなさいは言いませんよ」

 

温厚なシェーレもさすがに怒っている。

 

 

男は見事に上半身と下半身に分けられた。

 

「それにしてもこいつ何者だったのかな」

 

男の死体を見てサヨはつぶやいた、マインは自分の手で男を殺せなかったことを悔しがっている。

 

 

「まあ、とにかくこれで・・・」

 

するとその瞬間、男の下半身に変化がおこった。

 

 

 

 

バチッ!!バチッ!!バチッ!!シュュュゥゥゥ!!

 

 

 

突然、男の下半身が再生を始めた、サヨはこれに見覚えがあった、セリューの帝具コロと同じである。

 

「・・・」

 

サヨは青ざめていた、あの日の記憶が、アカメが死んだあの日のことが脳裏に浮かんだから。

 

 

シュュュゥゥゥ!!

 

 

 

男は完全に元通りに再生した、何事もなかったかのようにケロッとしている。

 

 

「・・・あなた、もしかして生物型帝具?」

 

サヨはおそるおそる質問した、それ以外にありえないから、だが、男の答えはサヨの予想とは違った。

 

 

 

「違う、僕は帝具ではない、僕は生物型臣具、臣具人間だ」

 

 

 

「・・・臣具人間?」

 

サヨは臣具という言葉に聞き覚えがあった、以前、アカメから聞いたことがあった。

 

 

 

 

 

臣具、それは今から600年前時の皇帝が帝具を超える兵器を目指し製造した兵器である、だが、作られた兵器は余りにもひどいものであった、だが、皇帝は諦めなかった、さらなる研究をし、次々と兵器を作りだした、だが、作られた兵器は期待ハズレであった、研究しては作り、そして失敗する、その繰り返しであった、やがて、時の皇帝は亡くなった、その息子が新たな皇帝になった、皇帝は兵器の研究の強化をした、父の果たせなかった悲願を自分の手でが果たしたかったのである、長い月日が流れた、多くの失敗を繰り返しついに帝具に匹敵する兵器の開発に成功したのである、しかし、すでに国庫は底を尽きかけ、国力は低下し新たな兵器の製造は不可能であった、皇帝はひどく嘆き悲しんだ、そのショックで急病をおこした、治療もむなしく皇帝は亡くなった、しかも皇帝は後継者を決めておらず、激しい後継者争いがおこった、そしてついにはあの帝国最大の大内乱が起こってしまうのであった、内乱の際には作られた兵器の一部が使用された、帝具ほど強力ではないが数が帝具よりも多いので以外と重宝された、帝具と同様多くの兵器は行方不明になった、アカメも暗殺部隊時代に臣具を使用した、その臣具は上位に部類されるものであった、今でも多くの臣具が帝国各所に眠っている。

 

 

 

 

「臣具のことはアカメから聞いていたけどまさか生物型もあるなんて・・・」

 

生物型である以上村雨の呪毒は効かない、しかもどんな能力を持っているかわからない、サヨは戦慄した。

 

「とにかく核を見つけないと」

 

 

生物型を倒すには核を砕くしか方法はない、でも簡単には見つけることはできないだろう。

 

「さて、第2ラウンドといこうか」

 

臣具人間は余裕の表情を見せている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は原作とは違う設定を作りました、生物型帝具があるのなら生物型臣具もあってもいいんじゃないかと思い作りました、あららぎこよみをモデルにしたのは彼もすごい再生能力を持っているからです、次回はあのキャラが登場しますお楽しみに。


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第二十話

   侵入者を斬る(後編)

 

突然現れた侵入者は600年前に作られた兵器「臣具人間」であった、生物型帝具に引けをとらない再生力をもちサヨ達は苦戦を強いられていた。

 

 

 

「あなたのマスター近くにいるんでしょ、どこ?」

 

むろん、あっさり言うとは思えない、何かの反応はすると思っていた、だが。

 

「マスター?なんだそれはそんなもの知らん!」

 

「知らんって、それでも生物型!?」

 

生物型ってマスターに忠実じゃなかったの、臣具だからそういう欠陥があるのかな、サヨはそう受けとることにした。

 

 

サヨとシェーレ、そして臣具人間は互いに構えている、するとラバが駆けつけてきた。

 

「突然糸の反応があったから駆けつけてみれば、奴は一体?」

 

「気をつけて、あいつは臣具人間よ」

 

「臣具人間?マジか、本当にいたのかよ」

 

「ラバ、知ってるの!?」

 

「ああ、噂でだけど」

 

さすが帝都で貸本屋やってるだけあってそういう噂に詳しい。

 

 

「あいつ以外に誰かいる?」

 

「いや、周りにあいつ以外いないよ」

 

 

「そう、じゃあラバの糸であいつを捕らえて」

 

「わかった」

 

ラバの加入で臣具人間から余裕が消えていた。

 

「さすがに三対一はきついな、ならば」

 

臣具人間は深呼吸をしてシェーのポーズをとった。

 

 

 

「奥の手発動!!」

 

 

 

「奥の手!?臣具なのに、マスターがいないのに使えるの!?」

 

サヨ達は臣具人間の奥の手に警戒している、その瞬間臣具人間はマインに飛びかかり、マインを拘束し窓から飛び降りた。

 

「しまった、ハッタリ!!」

 

 

自分達が一杯食わされたことに苛立った。

 

 

臣具人間はマインを捕まえ逃走している、いずれは追いつかれる、そう思った臣具人間はある行動にでた。

 

 

「ちょっ・・・」

 

 

いきなり臣具人間はマインの胸ぐらをつかんだ、そしてそのままマインの衣服を引きちぎった。

 

 

ビリビリビリ

 

 

 

「いやああああ!!」

 

 

マインの胸があらわになった、臣具人間は大興奮している。

 

「おおおお!!これこそ最高のちっぱいだー!!」

 

 

「み、見るなあー!!」

 

 

マインはあわてて胸を隠すも。

 

 

「よし、このちっぱいにベロチューをしておひらきとするか」

 

「や、やめろー!!」

 

「どうしてやめなければならないんだ、そのちっぱいとのベロチューを」

 

 

 

臣具人間はいやらしい顔つきでマインの腕をつかんで胸を再びあらわにした、そのまま臣具人間はマインの胸にしゃぶりついた。

 

 

「やああああああ!!」

 

 

マインの目から涙があふれだした、悔しさと恥ずかしさでいっぱいだった。

 

「こ、こんな奴にこんな辱め・・・やだ、パンプキンさえあればこんな奴・・・」

 

 

臣具人間はマインのちっぱいにベロチューをしてご満悦であった、だが、その時。

 

 

ズウウウウン!!!

 

 

後ろに何かが轟音とともに落下してきた、臣具人間が後ろを振り向いたその時。

 

 

 

グシャッ!!

 

 

 

突然臣具人間の頭部が木っ端みじんに砕かれた、そのまま地に倒れた。

 

 

「・・・」

 

マインは呆然としていた、目の前に見たことがない大男が立っていたから。

 

 

「・・・逃げろ」

 

 

男はマインに無表情で告げた、マインは胸を隠して逃げ出した。

 

「誰?味方なの?」

 

マインにはわからなかった、だが今はこの場を離れることしかマインにはできなかった。

 

 

バチッバチッバチッ シュュュゥゥゥ

 

 

 

臣具人間は砕かれた頭部の再生が終わった。

 

 

「まったく、愛のひと時を邪魔をするとは無粋な奴だな」

 

 

臣具人間はぼやきながら男を睨んだ、男はまったく動じず。

 

「変態に無粋呼ばわれされる言われはない」

 

 

「確かに僕は変態だ、だが・・・」

 

 

臣具人間は男にダッシュをした、臣具人間の手の平から刃が飛び出した。

 

 

「強い変態だよ」

 

 

ズバッ!!

 

 

臣具人間は男の左腕を斬り飛ばした、そのありさまを駆けつけたサヨ達は目の当たりにした。

 

「腕が・・・」

 

宙に斬り飛ばされた腕を見て絶句したが、その瞬間。

 

 

 

バチッバチッバチッ シュュュゥゥゥ

 

 

 

男の腕が突然再生を始めた、そして一瞬で元通りに腕が再生した。

 

「再生した!?まさかこの人も臣具人間?」

 

 

「それは違うぞ、サヨ」

 

頭上から声が聞こえた、サヨもよく知っている人物、ナイトレイドのボスナジェンダの声が、ナジェンダは空中から降りてきた、フードを被った一人の人間とともに。

 

「ボ、ボス?」

 

「スサノオは臣具などではない、スサノオは生物型帝具、帝具人間だ」

 

「帝具人間?」

 

突然のナジェンダの登場にサヨは呆然としている。

 

 

「臣具人間か、噂に聞いていたが実在したとはな」

 

ナジェンダは臣具人間を見ても取り乱していなかった。

 

 

「生物型相手ではお前の出番はなさそうだ、後ろに下がっていろチェルシー」

 

「了解」

 

すぐさまフードの人は後ろに下がって行った、声を聞く限り女性のようである。

 

 

「さて、さっそく奴を片付けるぞ」

 

「あの、帝具ということは奥の手あるんですか?」

 

サヨはナジェンダに質問するとナジェンダは。

 

「当然ある、だがこんな奴に使うのはもったいないからな」

 

いったいどんな奥の手なんだろう、とサヨは思った。

 

 

「あっ、ボス、気をつけてください、そいつ女性にいやらしいことをしてきます」

 

「何だと?」

 

 

「そんな真似はさせん、断じてな」

 

ラバは臣具人間の魔の手からナジェンダを命を懸けて守る決意を固めている、だが。

 

 

 

「安心しろ、僕は年増などに興味はない、僕が愛するのは美少女だけだ、

 そんな年増こっちから願い下げだ、ひっこめ年増!」

 

臣具人間はおもいっきり言い放った。

 

な、なんてことを・・・サヨはこれから起きるであろう出来事を想像し青ざめている、だが、ナジェンダは静かだった。

だがサヨには嵐の前の静けさに感じた。

 

 

ズズズズズズ

 

 

ナジェンダから何かがあふれてきている。

 

 

「・・・スサノオ、マスターとして命ずる、 その不愉快極まりない臣具人間をチリ一つ残さず殲滅しろ!!!」

 

 

ナジェンダの顔はまさに鬼神そのものだった。

 

 

「了解」

 

スサノオは冷静に返答した。

 

 

「うわあ、ナジェンダさんぶちギレている・・・」

 

「そりゃそうよ、あんなこと言われたら・・・」

 

サヨとラバはナジェンダを見て萎縮している。

 

「・・・」

 

サヨはあることを考えていた。

 

「ねえ、ラバ」

 

「何だい?」

 

「ボスっていくつなの?」

 

サヨは前にもナジェンダの歳は少し気になったが聞かずじまいになったが今回は聞かずにいられなかった。

 

 

「言ってなかったっけ? 25だよ、来年の3月で26」

 

「25!!? (思ってたよりも全然若い)」

 

サヨ本日最大の驚きであった。

 

「何だよその反応、もっと年上と思っていたのかよ?」

 

ラバは眉をひそめてサヨを睨んでいる。

 

「(まずい、そうだ) 違うわよボスは数年前に軍を抜けた時にはすでに将軍だったんでしょ、

  つまりもっと年少の時に将軍になったってことじゃ」

 

サヨは話題をそらしてきりぬけようとした。

 

 

「そういうことか、ナジェンダさんは二十歳の時に将軍になった」

 

「二十歳!?そんな若さでなれるものなの将軍って」

 

再びサヨは驚いた。

 

「驚くのも無理ないよ、なにしろ二十歳の女将軍は150年ぶりだったからさ、その当時は盛り上がったんだぜ」

 

ラバの顔はなにげに自慢げである。

 

 

「・・・しかし、しばらくしてもっとすごい奴が現れてしまう」

 

「それってもしかして」

 

サヨの心当たりはあの人物しかいなかった。

 

 

「そう、エスデスだよ、奴は18で将軍の地位に就いた、帝国軍史上初の十代女将軍の誕生さ」

 

ラバの顔に戦慄が走っている。

 

 

「18って、私よりたった二つ上なだけじゃない、それで将軍だなんて信じられない、ううん、

 ボスの二十歳も充分凄すぎる」

 

サヨはナジェンダをみつめて思った。

 

 

「(すごいわね、ナジェンダさん)」

 

サヨはナジェンダを一人の女性として尊敬した。

 

 

「何をしている二人とも集中しろ!!」

 

ナジェンダは二人に叱責した。

 

「おっと、いけねえ、集中、集中」

 

ラバは気合いを入れなおした。

 

「でも村雨の呪毒は生物型には効かないし」

 

「俺の糸もきついな、せめて核の位置がわかれば」

 

サヨはふと思い出した。

 

「そういえばあいつ下半身から再生したわ」

 

「本当か」

 

スサノオはサヨに確認をする。

 

「うん、あと私あいつの左足首斬りつけたけど」

 

「そうか」

 

スサノオは臣具人間を観察し始めた、すると臣具人間はスサノオに斬りかかった、スサノオも攻撃を防いだ。

 

 

 

「僕は臣具だから奥の手はない、だが、基本能力は圧倒的な差はないぞ、お前の核はその胸の勾玉だろ、だが僕の核の位置はわからないだろ、その分僕が有利だ」

 

 

臣具人間はほくそ笑んでいるがスサノオはまったく動じていない。

 

「いや、お前の核の位置はだいたい見当がついた」

 

「ハッタリだ!」

 

 

臣具人間はスサノオの言葉をハッタリととらえ無防備にスサノオに突っ込んで行く、スサノオは臣具人間の攻撃を受け流し臣具人間の右足を斬り飛ばした、切断された右足が宙を舞った、その瞬間、臣具人間の表情は一気に青ざめた。

 

 

「やはりお前の核は斬り飛ばした右足か」

 

「な、なぜだ、なぜわかった」

 

臣具人間はまったく理解できなかった。

 

「お前、つねに左足を前にだしていたからな、妙だと思った」

 

「たったそれだけで・・・」

 

「注意深く観察していれば難しいことではない」

 

「くっ、だがすぐにくっつければ」

 

臣具人間は飛ばされた足を拾おうとするも。

 

「させん!」

 

スサノオは臣具人間を力いっぱいぶっ飛ばした。

 

「よし、あとは奴の核を潰すだけだ」

 

スサノオは核がある右足のところへ向かおうとした。

 

 

「待って、それはアタシにやらせて!!」

 

スサノオは声がしたほうに向いた、そこには着替えなおしたマインとシェーレがいた。

 

「そいつにはさんざんいやらしいことをされたからね、その恨み晴らしてやる」

 

マインは復讐の炎を燃やしていた、スサノオはマインにまかすことにした。

 

 

「や、やめろ、ちっぱい!!」

 

臣具人間の顔は恐怖で引きつっていた。

 

 

「誰かちっぱいだー!!」

 

マインの怒りの銃撃が右足に炸裂した、内部にあった核が銃撃で木っ端みじんになった、その瞬間、臣具人間の体が白煙をあげボロボロと崩れていく。

 

 

「ぐわああああああ!!」

 

 

臣具人間は崩れ落ちる体を支えられず膝を屈した。

 

「く、くそ、最後にその股間にベ・・・」

 

その瞬間、臣具人間の頭が銃撃で木っ端みじんになった、臣具人間の体は完全に崩れ落ちて塵となった。

 

「ふざけるなー!!」

 

マインは顔を真っ赤にして激怒した、臣具人間との戦いは幕を閉じた。

 

 

「終わったな」

 

ナジェンダの怒りは消えていた。

 

「はい、圧勝でしたね」

 

サヨはスサノオの強さに感情が高ぶっている。

 

「当然だ、帝具が臣具に遅れをとるわけないだろう」

 

ナジェンダはクールであった。

 

「スサノオって人すごく強いし分析力も高い、これからすごく頼りになりそう」

 

サヨが感激しているとナジェンダが。

 

「ところでサヨ」

 

「?」

 

なんだろうとサヨが思っていると。

 

「お前、私の歳を聞いた時えらく驚いていたな、そんなに私は25に見えないか・・・」

 

ナジェンダは笑顔だが明らかに怒のオーラがあふれ出ていた。

 

 

「(こ、これはやばい、そうだ)」

 

サヨは妙案を思いついた。

 

「ところでボス、二十歳で将軍になられたんですね、ほんとすごいですね」

 

サヨは話題をそらして乗り切ろうとした。

 

 

「若くして出世することはそういいものではないぞ、それは激戦が絶えなかったということだ

 現に上官、同僚、部下が大勢死んでいった」

 

ナジェンダは寂しそうに語った。

 

そうか、その通りね、サヨは自分の配慮のなさを後悔した。

 

「す、すいません」

 

「別に謝る必要はない、私達は戦いのない世界を目指して戦っているのだからな」

 

「はい、その通りです」

 

サヨは笑顔で返答すると、ナジェンダはアジトを見て。

 

「帝国にここを発見されてしまった以上このアジトは放棄だな」

 

「あの、あの臣具人間は単独行動だったんで帝国には知られていないんじゃ」

 

「いや、万が一のことがあるかもしれん、やはり放棄だ」

 

「そうですね、でも、もったいないですね」

 

サヨはアジトの放棄に寂しさを感じた。

 

「ああ、このアジトにはいろいろ思い入れがあるからな」

 

 

ナジェンダはアジトが完成した日を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アジトが完成した日、ナジェンダはアジトを眺めている、その隣にアカメがいた。

 

 

「いよいよ私達のアジトが完成したな、ナジェンダ」

 

アカメは完成したアジトを見て感激している。

 

「ああ、ここから私達の戦いが始まるんだ」

 

ナジェンダも興奮せずにいられなかった。

 

「腐敗した帝国を打倒して民が安らかに暮らせる国を造るため私は戦うぞ」

 

「ああ、共に戦おう」

 

「これからもよろしく頼むぞナジェンダ・・・ボス」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

二人は笑顔で左の拳を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダがアジト完成の日のことを思い出していると、仕事で帝都に赴いていたレオーネ、ブラート、イエヤスが帰ってきた。

 

 

「あれ、ボス、戻ってたんだ、てかその人誰?」

 

レオーネ達はイマイチ状況が把握していない。

 

「レオーネ達がいない間大変だったんですよ、特にマインが・・・」

 

シェーレはレオーネ達にいきさつを説明しようとすると。

 

「わー!!ちょっとシェーレ、余計なこと言わないで!!」

 

 

マインがあわてて止めようとするも。

 

 

「なになに?じっくり聞かせてよ」

 

レオーネは興味津々である。

 

「あんまりしつこいと撃ち抜くわよ」

 

マインの脅しにレオーネはまったく怯んでいない。

 

「ねえねえ、そこのあんた教えてよ」

 

レオーネはスサノオに質問した。

 

「ああ、それは・・・」

 

「ダメ!!」

 

マインはあわててスサノオの口を手でふさいだ、その光景を見てナジェンダは。

 

 

「私達はなんとか激戦を戦いぬいてきた、これからも激戦が続くだろう、新しい国を造る日まで私達を見守ってくれ

アカメ・・・」

 

 

東の空から朝日が昇った、いままでで一番眩しい朝日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに帝具人間スサノオが登場しました、ナイトレイドの戦力が増加しました、物語がさらに盛り上がります、それにしても自分の文章全然うまくなりません、他の皆さんはどうやって上達しているのでしょう、とにかくこれからもよろしくお願いします。


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第二十一話

   新入りを斬る(前編)

 

6月12日

 

ナイトレイド一同は新しいアジトが完成するまでの間マーグ高地で潜伏もかねて鍛練に励むことになった。

 

「エアマンタの乗り心地、最高に気持ちよかったです」

 

シェーレはエアマンタの乗り心地にとても感激している、だが後ろのサヨとイエヤスはぐったりしている、それはシェーレがうっかり足を滑らせてエアマンタから落ちそうになったのを二人が必死に助けたからである。

 

 

「さて、アジトが完成するまでの間鍛練にはげむぞ」

 

ナジェンダが告げると皆は気合いが入った、ナジェンダの側にはスサノオがいる、マインは不信の目でスサノオを見つめている。

 

「帝具人間か、あの臣具人間とは全然印象が違うけど似たようなものよね、まさか、この帝具人間もアタシにいやらしいことをしてこないわよね・・・」

 

マインはスサノオに警戒している、その気配を察してスサノオは。

 

「どうした?」

 

「ベ、別に・・・」

 

マインは突然声をかけられてあわてた。

 

「もしかして、俺があの臣具人間のようにお前にいやらしいことをしてこないかと警戒しているのか?」

 

「それは・・・」

 

マインは図星をつかれて言葉がつまった。

 

「心配するな、俺は女に興味はない」

 

スサノオは無表情で告げた。

 

 

「「えっ!!?」」

 

 

ラバとイエヤスは青ざめて絶句した。

 

「そういうことか」

 

ブラートは頬を赤くしている。

 

「「何で赤くなるの!!?」」

 

ラバとイエヤスのツッコミが見事にハモった。

 

 

「俺は帝具だ、恋愛機能はない」

 

「そういうことか、びびったぜ」

 

ラバは心から安堵している。

 

「そうか・・・」

 

「なぜがっかりするの?」

 

イエヤスはブラートにつっこんだ。

 

「へえ、そうなんだ、以外ね」

 

サヨが以外そうにしているとレオーネが後ろからサヨを取り押さえた。

 

 

「な、何?」

 

突然のことにサヨは呆然としている。

 

「ねえねえ、サヨの胸、揉んじゃってよ」

 

レオーネはスサノオにサヨの胸を揉むように指示した。

 

「はあ!?何言い出すのよ!」

 

サヨはレオーネに抗議をすると。

 

「いいじゃん、女に興味ないんだし」

 

「そういう問題じゃ・・・」

 

サヨがうろたえているとレオーネはすかさず。

 

「これ、入団儀式だからやらなきゃだめだよ」

 

「わかった」

 

スサノオはサヨの胸を揉むために歩きだした。

 

「ちょっ、騙されないで、嘘よ、でたらめよ、信じちゃだめ!」

 

「そう言っているが確かか?」

 

スサノオはサヨの様子を見てレオーネに確認をする。

 

「これ、盛り上げる演出だから気にしないで」

 

「そうか、では」

 

スサノオはサヨの胸を揉むために腕を伸ばした。

 

「お願い、やめてー!!」

 

サヨは涙目で絶叫した。

 

 

ボガン!!

 

 

「私の帝具にいかがわしいマネをさせるな」

 

「冗談だよ・・・」

 

ナジェンダの鉄拳が炸裂し、レオーネの頭に大きなたんこぶができた。

 

 

 

「まったくろくなことしないわねレオーネ!」

 

サヨはレオーネにおかんむりになっているとスサノオが。

 

「なぜそんなに必死になる?」

 

スサノオは釈然としていなかった。

 

「だってあなたは男性だし、そりゃあ・・・」

 

サヨは顔を赤くして説明するも。

 

「それは所詮外見に過ぎん、俺は帝具という道具だ、俺を人間と認識する必要ないんだぞ」

 

「だってあなたにはちゃんと感情があるし、そんなこと・・・」

 

予想外の返答にサヨは戸惑っている。

 

「お前の好きにするといい」

 

そういうとスサノオはサヨから離れた。

 

「少し人間と思考が違うわね・・・外見はほとんど人間と変わらないのに、帝具は奥が深いわね」

 

サヨが帝具の奥の深さに驚いていると。

 

 

もにもに

 

 

突然胸を揉まれる感触を感じた。

 

「って、何勝手に私の胸揉んでるのよ!」

 

チェルシーがサヨの胸を揉んでいた。

 

「いいじゃない女の子同士なんだから」

 

 

もにもに

 

 

「良くない!」

 

サヨはチェルシーを睨みつけるも。

 

「まあまあ、飴あげるから」

 

 

もにもに

 

 

 

「いらないわよ、そんなの」

 

「飴を悪く言う悪いコにはおしおきよ♥」

 

「ちょっ、ひゃああああ!!」

 

 

もにもにもにもにもにもに

 

 

チェルシーはサヨの胸を揉みまくっている。

 

 

 

「今から住居の建築に取り掛かる」

 

「頼んだぞ」

 

「マイペースだな・・・」

 

サヨがチェルシーに胸を揉まれまくっているのをまったく気にしていないナジェンダとスサノオを見てイエヤスは苦笑いしている。

 

 

 

 

一方その頃帝都では。

 

 

イェーガーズの本部、そこにエスデスとセリューが話をしている。

 

「どうだった?」

 

「はい、ドクターは当分研究に没頭するの一点張りで・・・いかがいたしましょう?」

 

セリューは困惑顔で報告した。

 

「かまわん、奴の好きにさせておけ、今は帝都内の賊の掃討に専念しろ」

 

「はい、隊長の寛大なお心に頭が下がります」

 

セリューはエスデスに敬礼すると部屋を後にした、エスデスは部屋に一人になると。

 

「ナジェンダ、今の内に余生を楽しんでおけ、他の賊を蹂躙したら次はお前の番だ、首を洗って待っていろ」

 

エスデスは凶悪な笑みを浮かべていた、まがまがしいオーラを全身から放ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十二話

   新入りを斬る(中編)

 

7月12日

 

ナイトレイド一同がマーグ高地に潜伏して一月がたった、一ヶ月の鍛練でナイトレイドのメンバーの力量があがっていた、その夕方、マインとラバとイエヤスがたき火を囲んで複雑な顔をしている。

 

「いい、チェルシーをギャフンと言わせるのよ」

 

「そうは言っても・・・」

 

「簡単じゃないぜ」

 

ラバとイエヤスはマインと違い乗り気ではない。

 

「何言ってるの、昼間のこと忘れたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、何て言ったの!?」

 

マインがチェルシーを睨みつけている。

 

「アカメちゃんみたいになりたくなかったら甘いところをどうにかしたらって言ったんだけど」

 

「なっ!?」

 

マインはアカメをばかにされて激怒している。

 

「確かに皆この一月で強くなったけど、強くても生き残れるわけじゃないわよ、あんなに強かったアカメちゃんでも死んじゃったんだし」

 

チェルシーは淡々と語っている、それを見てマインはさらに激怒した。

 

「アンタにアカメをとやかく言う筋合いはないわよ」

 

マインは鋭くチェルシーを睨みつける、チェルシーは臆さず。

 

「まあ、そうだけどね、でも、的外れじゃないでしょ」

 

「うっ・・・」

 

マインは何も言い返せなかった、一理あったからである。

 

「とにかく、アカメちゃんはもう死んでこの世にいないのよ、死んだ人にこだわってたら次の殉職者はあなたになるわよ」

 

その瞬間、マインはチェルシーに飛び掛かかろうとした、だが、シェーレがマインを取り押さえた。

 

 

「ちょっ、離しなさいよシェーレ!!」

 

「落ち着いてください、マイン」

 

マインはシェーレを振りほどこうとした、シェーレも必死で押さえている。

 

「アカメのことバカにされて平気なの!?」

 

「・・・私も何も感じないというわけありません、でも、私達がいがみ合っても意味がありません」

 

シェーレは悲しみの眼差しでマインを見つめている、するとチェルシーはいつのまにかその場を去っていた。

 

 

「・・・あいつ、本当にムカツク・・・」

 

マインは怒り心頭であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでも何もしないって言うの?」

 

マインに言われて二人は渋々了解した。

 

「で、どんな作戦なんだよ」

 

イエヤスがマインに問いかけると。

 

 

「これからアンタ達が考えるのよ」

 

マインがさらりと言うと二人は驚愕した。

 

 

「はあ、なんだよそれ、俺達にまるなげかよ」

 

イエヤスはマインのノープランに呆れるもマインは気にしていない。

 

「とにかくアンタ達でプラン考えなさい、いいわね」

 

そう告げると、マインは小屋に戻っていった、ラバとイエヤスがぽつんと残された。

 

「なんだよあいつ、勝手にも程があるぞ」

 

怒り心頭のイエヤスにラバは。

 

「まあ、マインちゃんはああいう娘だからな」

 

ラバはマインのことを熟知しているのであきらめ気味である。

 

「けど、どうするんだよ」

 

「そうだな、チェルシーちゃんに弱みがあればいいんだけど、簡単には見せないだろう」

 

「何もなかったじゃすまねえぞ、あいつ怒り狂うぞ」

 

 

「そうだな、チェルシーちゃんの体に恥ずかしいアザとかあれば・・・そうだ」

 

「どうした?」

 

「お前、帝具でチェルシーちゃんの入浴覗いてアザがないか調べろ」

 

「・・・言っておくがお前見れねえぞ、いいのか」

 

イエヤスがそう告げるとラバは。

 

「・・・いいわけねえだろ、お前だけにそんなオイシイ思いさせるなんて、でも、マインちゃんの怒りを爆発させる訳にはいかねえんだよ」

 

ラバの表情は悔しさでいっぱいである。

 

「確かにな、わかった、俺やってみる」

 

イエヤスはラバの悔しさを受け止め決意した。

 

 

「(よし、もしコイツがしくじってもコイツの独断専行ってことにできる、ほとぼりが冷めたらチェルシーちゃんの入浴覗いてやるぜ)」

 

ラバの企みを予想もしてないイエヤスは帝具を取りだし気合いをいれた、その時、後ろから何者かの手が帝具を取り上げた。

 

「何だ!?」

 

イエヤスが後ろを振り向くとチェルシーがいた。

 

「私が入浴している間、これ預かるわね」

 

「え!?」

 

「入浴覗かれないためよ」

 

チェルシーはニッコリ微笑んだ。

 

「そ、そんなマネしねえよ」

 

イエヤスは慌ててごまかすも。

 

「じゃあ、預かってても問題ないわね」

 

チェルシーの言葉の前にイエヤスは無言でいるしかなかった、そして、チェルシーは浴場に行った、二人は呆然としている。

 

「・・・お前、とっととクソして寝ろ」

 

ラバはイエヤスにシッシッと手を振った。

 

「はあ、てめえ、なんだそれ!!」

 

「うるせえ、てめえ、あの目玉ないと何も取り柄ないだろ!!」

 

「てめえこそボスに告白できねえチキンだろ!!」

 

「何だと、てめえ、ぶっ殺すぞ!!」

 

「やってみろよ!!」

 

ラバとイエヤスは鋭く睨みあっている、だが、すぐに、ため息をついて肩を落とした。

 

 

「で、どうすんだよ」

 

「そうは言ってもな、覗きに行こうにもチェルシーちゃん警戒してるはずだ」

 

「だが、マインの奴それで納得しないだろ」

 

「ああ、怒りの矛先は俺達に向けられるな」

 

「何か手ないのかよ」

 

「堂々と入れたら問題ないんだがな」

 

「んなの無理だろ!!」

 

「ああ・・・」

 

二人はまさに崖っぷちであった、その時、誰かが近づいてきた。

 

「あなた達こんなところで何やっているの?」

 

サヨがちょうど鍛練から戻ってきたとこであった。

 

 

「「堂々と入れる奴がここにいたー!!」」

 

 

二人の叫びが見事にハモった。

 

「何?」

 

サヨは訳がわからず戸惑っている。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何で私が」

 

サヨはラバ達に頼まれて浴場に来ていた、手ぬぐい一枚で体を隠している。

 

 

 

 

「サヨ、頼む、チェルシーと一緒に風呂に入ってアザがないか調べてくれ」

 

「ちょっと待ってよイエヤス、何で私が?」

 

いきなりとんちんかんな頼み事をされてサヨは困っている。

 

「つまりだ・・・」

 

 

 

「そういう訳ね」

 

ラバの説明でサヨは理解した。

 

「でも、私にそんな義務ないわよ」

 

サヨは断ろうと思っている。

 

「お前だって先月チェルシーに胸揉まれただろう」

 

「その話はしないで・・・」

 

サヨは思い出して赤面した。

 

「それにアカメのことコケにされたままでいいのかよ」

 

「それは・・・」

 

サヨもアカメのことをきつく言われたことを気にしている。

 

「じゃあ、やるしかないだろ」

 

イエヤスはすかさず畳み掛けた。

 

「わかったわよ・・・」

 

サヨは乗り気ではなかったがアカメのことを思うと引き受けざるをえなかった。

 

 

「とにかくさっさとチェルシーの体を見て終わらせよう」

 

サヨは浴場を見渡した、そこに湯煙にまかれたチェルシーがいた。

 

「さて、さっさとアザの確認をして・・・」

 

サヨが近づくとそこにいたのはスサノオだった。

 

「えっ?何でスーさんが・・・もしかしたらチェルシーの変化?」

 

サヨがそう思ったのはチェルシーが変化ができる帝具使いだからである。

 

「誰だ?」

 

スサノオがサヨの気配を察して振り向いた。

 

 

「わ、私だけど」

 

サヨは思わず返事をした。

 

「お前か」

 

このスーさん、チェルシーなのかな、そう思うも確証は持てなかった、そこでサヨは。

 

 

「ボスは?」

 

「夕食からずっとタバコを吹かしていたぞ」

 

「ブラートは?」

 

「夕食の後鍛練に行ったぞ」

 

「シェーレは?」

 

「天然ボケを治す本を読んでたぞ」

 

「チェルシーは?」

 

「新しいヨガの開発をしていたぞ」

 

 

このスーさん不自然な所全然ない、本物なのかな、そうサヨが思い始めているとスサノオが。

 

「お前、疲労が溜まっているなマッサージしてやろう」

 

突然のスサノオの行動にサヨは驚いた。

 

「え、ど、どうしよう」

 

サヨが戸惑っていると。

 

 

「嫌なら断ってもいいんだぞ」

 

ど、どうしよう、せっかくのスーさんの好意を・・・サヨの慌てた顔を見てスサノオは。

 

「実戦ではわずかの戸惑いが命取りになるぞ」

 

スサノオの忠告にサヨは目から鱗が落ちた。

 

 

「その通りね、殺し屋の世界はわずかの戸惑いが命取りになってしまう」

 

サヨが自分の甘さを痛感していると。

 

 

「スキあり」

 

突然スサノオがチョップをしかけてきた、サヨはますます混乱した、すると、チェルシーの姿が現れた。

 

「あはははは、実は私でしたー」

 

サヨはあんぐりした。

 

「や、やっぱり、チェルシーだった」

 

「どう、ビックリしたでしょ」

 

「う、うん、その帝具やっぱりすごいわね」

 

チェルシーはこれ以上ないどや顔をしている。

 

「それにしても皆の行動よく知ってたわね」

 

「知らないわよ」

 

「えっ、だってあんなに自然にすらすらと・・・」

 

「ああいうのは少しでも戸惑うと怪しまれるのよ、でまかせでも堂々と言わないと」

 

「なるほど」

 

さすがアカメと同じくらい仕事をこなしてきた凄腕、度胸もすごい。

 

 

 

「ボサッと立ってないであなたも温泉入ったら」

 

「えっ?いいの」

 

「女同士なんだから問題ないわよ、男なら切り落としているとこだけど」

 

 

どこを?サヨは思ったがあえて聞かないことにした。

 

 

サヨとチェルシーは温泉に浸かりリラックスしている、チェルシーはサヨを見つめている。

 

 

「何?」

 

「サヨちゃんの胸、小振りだけどかわいいわね♥」

 

サヨは慌てて胸を隠した。

 

「ど、どこを見てるの!?」

 

サヨは顔を真っ赤にしている。

 

「あなたホントかわいいわね」

 

チェルシーの笑みは小悪魔的であった。

 

「・・・」

 

サヨはしばらく考えこんで。

 

 

「それにしてもチェルシー、何で殺し屋になったの、あなた裏稼業の人間って感じしないんだけど」

 

「それはね・・・」

 

 

 

 

 

チェルシーはサヨにいきさつを話した。

 

「非道な太守に我慢できず殺したのがきっかけだったのね」

 

「うん、上の腐敗ぶりは思ってた以上だったわ」

 

「どこも上は腐敗してるわね」

 

サヨは改めて深刻さを思い知った。

 

 

「それでチェルシーは革命軍に入ったのよね」

 

「ううん、しばらくしてオールベルグに入ったの」

 

「オールベルグ?」

 

「歴史のある暗殺結社よ、そこで殺し屋として腕を上げたの」

 

「大変だった?」

 

「大変だったなんてものじゃなかったわよ、まさに地獄よ」

 

チェルシーの顔が青ざめている、相当すごい所だったんだろう。

 

「それから革命軍に入ったのよね」

 

「うん、そうよ・・・」

 

 

チェルシーの顔が少し浮かないような気がする。

 

 

「どうしたの?」

 

「どんなお題目を言っても私のやってきたことは殺しだし」

 

チェルシーの表情は沈んだままである。

 

 

「後悔してるの」

 

「後悔はしてないわよ」

 

「私はチェルシーが間違いとは思わないわよ、あの太守が生きていたらもっと人が殺されたんだし、それに」

 

「それに?」

 

「チェルシーが殺さなかったらその太守にチェルシーが殺されたかもしれないし」

 

「どういうこと?」

 

 

「いつかチェルシーが獲物にされて殺されたかもしれないし」

 

 

それを聞いてチェルシーは。

 

「そういえば殺す前日あいつ私を変な目でじろじろ見てたのよね、本物にそうだったのかも・・・」

 

チェルシーは自分が危うい状況だったことを思い知った。

 

 

「それならチェルシーに非はないわよ、殺さなきゃ殺されてたんだし」

 

「そうね、そういうことにしておく」

 

チェルシーの表情がにこやかになった。

 

 

「他にも聞きたいことあるんだけど」

 

「何?」

 

「あなた、そんなに飴なめめて虫歯大丈夫なの?」

 

サヨの問いにチェルシーは一瞬キョトンとした、そして。

 

 

「あははははははは、真面目な顔をして聞くことそれ?」

 

チェルシーは大爆笑した。

 

「な、何よ悪い」

 

サヨは笑われてムッとした。

 

「ゴメン、ゴメン、虫歯は心配いらないわちゃんとケアしてるから」

 

「そうなの」

 

まあ、この人ならしっかりしてるから問題ないわね。

 

 

「もう一つ聞きたいことあるんだけど」

 

「何?」

 

「コンパクト何に使うの?」

 

「え?」

 

予想外の問いにチェルシーは言葉を詰まらせた。

 

「この前、あなたの帝具見た時に思ったのよ、何に使うのかなあって」

 

「それは・・・わからないわ」

 

「そうなの?」

 

「うん、コンパクトだけ使い方わからないのよ」

 

「そうなんだ、以外ね・・・ねえ、そのコンパクトを使って自分以外の対象を変化できたら面白いと思うんだけど」

 

「えっ?」

 

その瞬間チェルシーの脳裏に。

 

 

 

 

 

 

   ねぇ、チェル、そのコンパクトを使って別の誰かを変化できたら面白いんじゃない

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

チェルシーはそのまま黙り込んでいる。

 

「どうしたの?」

 

「ううん、何でもない」

 

「そう」

 

「まあ、コンパクトは後々調べておくから」

 

「わかった」

 

二人は再び温泉にゆったりした、そして。

 

 

 

「ねえ、ラバ達に頼まれてここにきたんでしょ」

 

「そうよ」

 

「おそらくその背後にマインが関わっていると思うわ」

 

「そうね」

 

「・・・私面白いこと思いついたんだけど」

 

 

チェルシーの顔が悪巧みの顔になってきた。

 

「あなたも協力してくれない」

 

「・・・別にいいけど」

 

チェルシーは以外そうな顔をしている。

 

「誘っておいてなんだけど、あなたこういうのノリノリでやるタイプじゃないと思うんだけど」

 

「まあ、そうだけど、私、マインから嫌われてるから別にいいかなって思ったの」

 

「まあ、あの娘、あの性格だしね・・・」

 

チェルシーは二人の関係を理解した。

 

 

「まあ、とにかく二人でマインをギャフンと言わせましょう」

 

チェルシーは最高の笑顔で微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十三話

   新入りを斬る(後編)

 

小屋にはサヨとチェルシー以外のメンバーが揃っていた。

 

「うふふふふふ」

 

マインはラバ達からチェルシーの弱点を聞いて上機嫌である。

 

「見てなさい、チェルシー、ギャフンと言わせてあげるわ」

 

マインの様子をラバ達は不安そうに見ている。

 

 

「大丈夫かな?」

 

「にしてもサヨから聞いたって言わなくてよかったのか」

 

「言わない方が良いだろ、マインちゃんとサヨちゃんの仲を考えたら」

 

「そうだな」

 

二人の仲が悪いのは誰もが知っていた。

 

 

「まあ、多分うまくいくだろ」

 

「そうだな、にしてもチェルシーが胸を揉まれると腰を抜かしてしまうなんて以外だな」

 

「ああ、とにかく見守るだけだ」

 

そうしているうちにサヨとチェルシーが戻ってきた。

 

 

「来たわね、飛んで火に入る夏の虫よ」

 

マインは後ろからチェルシーの胸をおもいっきり揉み始めた。

 

 

もにもにもにもにもにもに

 

 

「さあ、腰を抜かして醜態を晒しなさい」

 

マインはしてやったりと確信している、だが。

 

 

「ああああああん!!」

 

 

チェルシーはすごく色っぽい悲鳴を上げた、マインにとって予想外である。

 

 

「な、なんて声あげるのよ」

 

マインは顔を赤くして慌てている、チェルシーはすかさず。

 

 

「もう、せっかちね、皆が見ている前で・・・でも、あなたが望むのならここでもいいわ」

 

チェルシーはブラウスのボタンを外して素肌の肩を見せ始めた。

 

「な、何やってるのよ」

 

マインは完全に動揺している。

 

「あなたが望んだんでしょう、じらさないでよ」

 

チェルシーの瞳はとてもなまめかしい。

 

「やめなさい、アタシにそんなシュミは・・・」

 

 

マインは顔を真っ赤にしてうろたえている、その様子を見ていたナジェンダ達は。

 

 

「お前、いつの間にそんな趣味を・・・」

 

ナジェンダは顔を引きつらせている。

 

「お二人が仲良くなってよかったです」

 

シェーレは心から嬉しそうである。

 

「ち、ちょっと、勘違いしないでよ、アタシは・・・」

 

ラバとイエヤスはその様子を見てそおっと小屋から抜けだそうとしている、マインは二人の行動に気づき。

 

 

「待ちなさい、アンタ達、よくもガセつかませてくれたわね、おかげで大恥かいちゃったじゃない!!」

 

「待て、これはサヨが教えたんだぞ」

 

イエヤスが慌てて訂正するも。

 

「アンタ達バカ!?サヨがアタシに協力するわけないでしょ」

 

 

マインはわかっていた、サヨとは相容れないと、あの日、アカメが死んで逆上してしまいサヨに死んで落とし前を付けろと言ってしまった時から。

 

 

「そもそもお前が俺達にまるなげしたんだろ」

 

イエヤスはマインに抗議するも。

 

「うるさい、アタシに恥かかせた報い受けてもらうわよ」

 

マインはパンプキンをどこからか取り出した、二人は全速力で小屋を飛び出した、マインも二人を追って飛び出した、マインの行動を見てチェルシーは。

 

 

「あはははは、マイン、ホントあの娘面白いわね」

 

チェルシーが大笑いしていると、サヨは苦笑いしながら思った、あの二人には悪いことしちゃったわね、大丈夫かな、そう心配していると。

 

 

 

ドォォォン!!

 

 

パンプキンの砲撃が鳴り響いた、同時にラバとイエヤスの悲鳴も聞こえた、マインの報復は終わった。

 

 

 

 

 

しばらくして小屋の一室にメンバー全員が集まっていた、ラバとイエヤスは髪がチリチリになってアフロになっている。

 

 

「この一月の鍛練で皆強くなったな」

 

皆もそれぞれ力がついたと実感している。

 

「だが、エスデス達も鍛練しているはずだ、奴は決して油断はしないからな」

 

「本当にあの女は頭痛の種だよ」

 

ラバが深刻そうに語ると。

 

「その頭で言われてもな」

 

レオーネはラバのアフロを見て笑い出した、レオーネに笑われてラバはすねている。

 

「おそらく今後の即戦力はあまり期待できないだろう」

 

 

「あの、ボス」

 

「なんだ、サヨ」

 

「革命軍が保有している帝具はいくつあるんですか」

 

 

「ああ、三獣士の帝具をいれると17だ」

 

「そんなにですか!?」

 

「即戦力は期待できないって、全然そんなことないじゃないスかこんなに帝具があるのに」

 

イエヤスが脳天気に語ると、ナジェンダはシビアな顔で。

 

「革命軍の帝具が全て戦闘タイプというわけではない、サポートタイプも多い、それに・・・私と反目している帝具使いもいるからな」

 

「そうなんですか?」

 

「革命軍も一枚岩という訳ではない」

 

サヨはナジェンダの様子を見て革命軍本部も大変だなと思った。

 

 

「じゃあ、臣具は?」

 

「臣具か・・・数は結構あるが、帝具と対抗するにはきついな」

 

「そうですか」

 

「とにかく、メンバーを補充したばかりだからな、さらに要請するわけにはいかない、今後の人材補充はあまり期待しないでくれ」

 

一同は今後の戦いに気合いをいれるのであった。

 

 

 

 

ナイトレイド  現在10人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやくUAが一万に達しました、23話目で一万に達するのはアカメが斬る小説では最も遅いペースだと思います、それだけ自分に文才がないということです、なんとか根気で書き上げました、これからもこの下手くそな小説を見てください。


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第二十四話

この回からショートストーリーが続きます。


   新築を斬る

 

 

7月14日

 

ナイトレイド一同はマーグ高地から新しいアジトに帰還していた。

 

「さあ、これが新しいアジトだ」

 

ナジェンダは嬉しそうに新しいアジトを見上げている。

 

 

「これが新しいアジトですか、前のアジトとは全然違いますね」

 

シェーレは感激していた、前のアジトとうり二つ変わらないアジトに。

 

 

「・・・ねえ、シェーレ、前のアジト覚えてる?」

 

サヨは苦笑いしながら質問した。

 

「・・・忘れました」

 

「まあ、気にしないで・・」

 

サヨはあまり気にしないことにした、いつものことだから。

 

 

「温泉があるのは嬉しいわね」

 

マインはとても上機嫌である。

 

「よく言うよ、温泉は絶対に造れって言ってあったくせに」

 

レオーネはやや呆れているがマインは気にしていない。

 

「温泉は必要よ、決まってるじゃない」

 

「アジト造った人達ぼやいてたわよ、温泉見つけだすの大変だったって」

 

チェルシーはマインにそう告げるも。

 

 

「そんなの関係ないわよ」

 

「・・・あなたって本当にワガママよね」

 

チェルシーはマインの筋金入りのワガママにア然としている。

 

 

「私は自分に正直なのよ」

 

「はいはい、自分の欲望に正直に生きているマインちゃん」

 

「・・・ケンカ売っているの?」

 

マインは鋭い眼光で睨んだ。

 

「まさか、からかってるだけよ」

 

チェルシーはにっこりと微笑んだ。

 

 

「仲間をからかうとは何事か!!」

 

マインはチェルシーを追いかけ始めた。

 

「待てー!!」

 

「あはははは」

 

チェルシーは笑いながら逃げている、マインは鬼の形相で追いかける。

 

 

「本当にお二人仲良しですね」

 

シェーレは二人を見て微笑んでいる、サヨはずっとアジトを見上げている。

 

「本当にすごいですね、でも・・・」

 

サヨは何か不安そうである、それを見てナジェンダは。

 

 

「どうした、サヨ?」

 

「はい、少し気になることが」

 

「なんだ?」

 

「このアジト、造るのにいくらかかったんですか、そのせいで報酬減っちゃったりしませんよね?」

 

サヨは大まじめな顔で質問した。

 

 

「心配するな、全部革命軍がだしてくれる」

 

「よかった、報酬減ったら村への仕送り減っちゃうから」

 

サヨは心から安堵した。

 

 

「全く、金、金ってみみっちいねえ」

 

レオーネが呆れているとサヨは。

 

「そんなにのんきにしてていいの?」

 

「何が?」

 

レオーネにはサヨの言っている意味がわからなかった。

 

「この一ヶ月でレオーネの借金利息がついて増えているはずよ、いい加減借金返す計画たてたほ・・・」

 

サヨが言い終える前にレオーネはサヨの胸を後ろから揉んだ。

 

もにゅ

 

突然のことにサヨは取り乱した。

 

「な、何をするのよ!!」

 

 

サヨは真っ赤になって抗議するもレオーネは。

 

「うるさい、せっかくアジトが新しくなっていい気分だったのに余計なこと言ってぶち壊しやがって、許せん!!」

 

見事な逆ギレである。

 

「まさか踏み倒す気なの、ホントいつかレオーネの殺しの依頼来ちゃうよ」

 

サヨの心配をよそにレオーネは。

 

「そん時はそん時だー!!」

 

我が道を行くレオーネであった。

 

 

「ナジェンダさーん、結界張り終えましたー!!」

 

ラバが戻ってきた、ラバは二人を無視して通りすぎさった。

 

 

「ちょっとラバ、スルーしないで」

 

ラバに抗議していると今度はスサノオが戻ってきた。

 

「抜け穴掘り終えたぞ」

 

「あっ、スーさん助けて」

 

サヨはスサノオに助けを求めるも。

 

「気にすることないよ、これは女同士のスキンシップってやつだ」

 

「そうなのか?」

 

スサノオはレオーネに確かめた。

 

「そんなわけな・・・あっ、やっ!!」

 

 

レオーネはサヨの胸を揉んで黙らせた。

 

「落とし前つけてもらうよ」

 

レオーネは悪い顔をしていた。

 

「な、何でこんな目に、理不尽よ・・・」

 

サヨは涙目になってレオーネを睨んだ、レオーネは全く気にしていない。

 

 

「うりゃ、うりゃ、うりゃ」

 

 

もにもにもにもにもにもに

 

 

レオーネはサヨの胸を揉みまくっている、他のメンバーはアジトに向かっている。

 

「仕事が終わったら一杯やるか」

 

ブラートのスマイルはビシッと決まった。

 

 

「いいですね」

 

シェーレは笑顔で答えた。

 

 

ラバはサヨとレオーネを見物してニヤニヤしている。

 

 

 

マインはまだチェルシーを追いかけている。

 

 

 

「ちょっと、皆、置いていかないで!!」

 

サヨは必死に助けを求めている、それを見てスサノオは。

 

「いいのか、放っておいて」

 

「これも試練さ」

 

ナジェンダはクールであった。

 

 

皆の様子を見てイエヤスは。

 

「チームワーク、不安だなー」

 

イエヤスは心からそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アカメがいないナイトレイド、あんまり違和感がないような気がします、皆さんはどう思いますか


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第二十五話

   こんにゃくを斬る

 

 

7月15日朝

 

ナイトレイド一同は朝食を食べていた、レオーネはこんにゃくの田楽を指さして。

 

「おい、サヨ、知っているか、村雨はこんにゃくを切れないことを」

 

「嘘っ!」

 

サヨはとてもレオーネの言うことを信じられなかった。

 

「嘘だと思うのなら試してみな」

 

本当かな、とても信じられないけど、でも、私、村雨のこと全然知らないのよね、そう思いサヨは決心した。

 

 

 

「そこまで言うのなら試そうかな」

 

その瞬間スサノオの顔が一変した。

 

 

「待て、何をする気だ」

 

「うん、村雨でこんにゃくを切ろうと思って」

 

「駄目だ」

 

「ほんの小さな切れ端でいいんだけど」

 

「切れ端でも駄目だ」

 

「いいじゃん、切れ端ぐらい」

 

レオーネが軽いノリで言った瞬間、スサノオは鬼神の如き形相になった。

 

 

「食材を粗末にする奴は誰であろうともこの俺が許さんぞ」

 

 

ゴゴゴゴ

 

 

スサノオから凄まじいオーラが溢れ出ている。

 

 

「ご、ごめん・・・」

 

「わ、悪かったよ・・・」

 

 

サヨとレオーネはスサノオの迫力にたじたじしている。

 

「どうせさっきのことは嘘なんだし」

 

「やっぱり嘘だったんじゃない」

 

サヨはおもいっきりレオーネにつっこんだ。

 

「まさか、真に受けるとは思わなかったよ」

 

「うん、実際私、村雨のことほとんど知らないから」

 

「まあ、アカメも村雨のこと全て把握していたかわからないって言ってたし」

 

「そうなの!?」

 

「ああ、そもそも帝具自体わからないことも多いからな」

 

 

「そうね」

 

千年前に造られた超兵器「帝具」、私達って帝具のことよく知らずに使っているのよね・・・

 

 

 

「ところでボス、話が変わりますが」

 

「なんだ?」

 

「革命軍って食糧大丈夫なのですか、数万人の兵士を食べさせないといけないんだし」

 

 

ナイトレイドと違って狩りとかで食糧を調達するというわけにはいかないだろう。

 

 

「心配するな、ある危険種を食材にしているからな」

 

「そうなんですか」

 

「ああ、とても繁殖力が強い危険種だ、革命軍で養殖している」

 

「どんな危険種なんですか」

 

「・・・それは極秘事項だ」

 

「そうですか」

 

サヨはそれ以上追求しなかった、食糧に困ってないのなら別によかったからである。

 

 

「さて、食事が終わったら鍛練するわよ」

 

「おい、少し休もうぜ」

 

イエヤスはまだ朝食を食べていた。

 

「何言ってるの、私達はまだまだなんだから鍛練にはげまないと」

 

するとブラートは立ち上がり。

 

「じゃあ、俺がお前らをビシバシしごいてやるぜ」

 

イエヤスは苦笑いしながら思った、サヨの奴、余計なことを・・・

 

 

「よし、二人とも駆け足」

 

ブラートはそう告げると、イエヤスは朝食を急いでたいらげてサヨと一緒に食堂を後にした。

 

 

 

「昼食はボリュームのあるものにするか」

 

「ああ」

 

ナジェンダはスサノオに返事をしつつ思っていた、サヨには言えんな、革命軍が食材にしている危険種が巨大なミミズだということを。

 

 

 

 

 

 




帝国の惨状を考えたら革命軍の食糧事情大変だと思うんです、これも仕方ないことです。


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第二十六話

   悪戯を斬る

 

 

7月15日昼

 

「わっ!!」

 

マインは今日もチェルシーの悪戯に驚かされていた。

 

 

「いいわね、その驚きっぷり、悪戯しがいあるわよ」

 

チェルシーは至福の極みであった。

 

 

「いい加減にしなさいよ、他の人にもやったらいいでしょ」

 

マインは顔を真っ赤にして激怒しているとチェルシーは困った顔で。

 

「うーん、実は他の人にもやったんだけど」

 

「そうなの!?」

 

「うん、昨日、シェーレにやったんだけど」

 

 

 

 

「はーい、実は私でした」

 

チェルシーはシェーレの目の前で猫から人に変わる悪戯をした。

 

 

「・・・」

 

シェーレはぼーとしている。

 

「・・・あの、シェーレ?」

 

「はい?」

 

「どうだった?」

 

「何がです?」

 

「私、今、シェーレに悪戯したんだけど・・・」

 

「そうだったんですか、すいません」

 

シェーレはペコリと頭を下げた。

 

「いや、謝られても・・・」

 

さすがのチェルシーも悪戯した相手に謝られて困った顔をしている。

 

「とにかく、気にしないで・・・」

 

「はい」

 

シェーレはにっこり微笑んだ。

 

 

 

 

 

「さすがの私も苦笑いするしかなかったわね」

 

やれやれ気味のチェルシーにマインは。

 

 

「だったら別の人にしたらいいでしょ」

 

 

「その後ブラートにもしたんだけど・・・」

 

チェルシーは再び困った顔をした。

 

 

 

 

 

 

チェルシーはシェーレと同じ悪戯をブラートにもした。

 

 

「おっ、相変わらずお前の帝具すごいな」

 

ブラートはそれほど驚いていなかった。

 

 

「それだけ?驚かなかったの」

 

チェルシーはやや不満げである。

 

「驚いたぜ」

 

チェルシーから見ればブラートはあまり驚いていないようにしか見えなかった。

 

「そう、じゃあね」

 

チェルシーが立ち去ろうとするとブラートは止めた。

 

「今から筋トレしないか?」

 

「え?」

 

チェルシーは突然のことに目を点にしている。

 

 

「帝具使いは体力が基本だからな、ぜひやるべきだ」

 

「ま、また今度に・・・」

 

チェルシーは慌てて逃げだそうとした。

 

「遠慮はいらんぞ」

 

ブラートはチェルシーの手を引っ張って訓練所に連れていった、チェルシーは腕立て伏せ200回するはめになった。

 

 

 

「・・・おかげで腕、今も筋肉痛よ」

 

チェルシーは不機嫌そうに腕をさすっている。

 

 

「自業自得よ」

 

マインはざまあみろの顔をしていた。

 

 

「イエヤスはどう、あいつ隙だらけだから簡単にひっかかるわよ」

 

 

「イエヤスか・・・あいつ隙だらけっていうか・・・隙しかないのよ、逆に面白くない」

 

チェルシーにとってスリルのない悪戯はやる価値などなかった。

 

 

「じゃあ、サヨは」

 

「サヨか・・・あの娘結構鋭いのよね、そこそこやり甲斐あると思うのよね、でも・・・」

 

「でもって何?」

 

マインはチェルシーがサヨに悪戯するのを気が引けるように見えた。

 

「レオーネにいじられてるのに私までいじったらかわいそうじゃない」

 

 

サヨはレオーネからの借金の要求を断るたびに胸を揉まれていた。

 

 

「アタシはかわいそうじゃないのか!!」

 

マインは理不尽さに激怒した、チェルシーは全く動じていない。

 

 

「じゃあ、ラバは?」

 

その瞬間、チェルシーの顔は微妙になっていった。

 

「ラバか・・・あいつに悪戯したら逆に喜びそうなのよね」

 

「・・・有り得るわね」

 

マインもそれについては同感した。

 

 

「じゃあ、ボスは?」

 

するとチェルシーの顔が一気に青ざめた。

 

「バカ言わないで、あなた私を亡き者にしたいの!」

 

チェルシーはナジェンダに悪戯したその後の展開を想像した。

 

「言ってみただけよ、アンタ意外とチキンね」

 

「ボスに悪戯するなんて自殺行為よチキンでも何でもないわよ」

 

チェルシーは息を荒げて弁解した。

 

 

 

「スーさんは・・・悪戯されても驚かないわね」

 

「その通り」

 

チェルシーは以前スサノオに悪戯して帝具の無駄遣いするなと説教されたのであった。

 

 

「じゃあ、レオーネは?」

 

マインが言ったその瞬間チェルシーはひどく落ち込んだ。

 

「レオーネにさっき悪戯したわよ・・・」

 

 

 

 

 

「わっ!!」

 

「あはははは、私でした」

 

レオーネはチェルシーの悪戯に驚いている。

 

「じゃあね、レオーネ」

 

 

「待て、こら」

 

 

立ち去ろうとしているチェルシーの肩をレオーネはつかんだ。

 

「人様驚かせておいてただで済むと思っているのか、ああ!!」

 

レオーネは指をボキボキ鳴らしている。

 

「ちょっと待って、顔、怖いんだけど」

 

 

チェルシーはレオーネの凄みに怯えている。

 

「さあ、だすもんだしてもらおうか!!」

 

 

チェルシーはレオーネにあり金全部まきあげられた。

 

 

 

「・・・金輪際レオーネに悪戯しないって誓ったわ」

 

「それはご愁傷様ね・・・」

 

さすがにマインはチェルシーに少し同情した。

 

 

「まあ、そういうことだからあなたが悪戯に適任なのよ」

 

「はあ、ふざけるんじゃないわよ!!」

 

マインは激怒してチェルシーを追いかけ始めた。

 

「待てー!!」

 

「あはははは」

 

チェルシーはこの上なく楽しそうである、その様子をサヨとシェーレは見ている。

 

 

「本当にお二人は仲良しですね」

 

シェーレは二人を見てニコニコしている。

 

「そうかな・・・」

 

サヨはマインがおもちゃにされているようにしか見えなかった。

 

 

今日も毎度おなじみの光景が繰り返している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作ではチェルシーはマインとタツミにしか悪戯していないんですよね、もしチェルシーがアカメに悪戯するとしたらどんな悪戯するでしょうか


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第二十七話

   ろくでなしを斬る

 

 

 

 

ナイトレイドと三獣士が各地で死闘を繰り広げていた頃、レオーネは帝都でエスデスの偵察をしていた。

 

 

「・・・」

 

レオーネの顔がこわばっている、今にも逆上してエスデスに飛び掛かりそうであった。

 

 

「・・・!!」

 

レオーネはあるものを見て汗だくであった、エスデスは椅子に座ってソフトクリームを食べていた、あるものを踏み付けにしながら、そのあるものとはアカメの首であった。

 

 

「・・・落ち着け、これは挑発だ」

 

レオーネはそう自分に言い聞かせている、だが、亡き親友を弄ばされて何も思わないはずはなかった。

 

「・・・落ち着け、私はプロだ、奴の思惑にのるな、頭を冷やすんだ」

 

 

レオーネは深呼吸をしてひとまず落ち着いた。

 

 

「・・・私は自分の野生の本能を・・・信じる!!」

 

レオーネはその場を全速力で立ち去った。

 

 

「気配が消えた・・・仕掛けてくると思ったが、冷静な判断だな」

 

エスデスは少し残念そうである。

 

「さて、この首をどうするか・・・たまには芸術をたしなむのもいいか」

 

エスデスはアカメの首をつかんで微笑んでいた、面白いことを思いついたからである。

 

 

 

レオーネは走った、がむしゃらに走った、レオーネの目から大粒の涙が溢れていた。

 

「ゴメン、アカメ、私では・・・」

 

 

レオーネは悔しかった、親友を置き去りにした情けない自分に、いつかエスデスを殺せるほどの強さを手にいれる、そう、レオーネは決意したのであった。

 

 

 

 

 

7月15日夜

 

 

「・・・?」

 

レオーネは一瞬ここがどこなのかわからなかった、だが、ここがアジトだとすぐに理解できた。

 

 

「・・・そうか、私、酔って寝てしまったんだな」

 

 

悪夢もいいとこだあの光景をもう一度見てしまうとは・・・

 

 

レオーネはおもいっきり背伸びをした、そしてアカメとの最初の出会いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

「へえ、お前がアカメか」

 

「ああ」

 

アカメは無愛想に返事した。

 

 

「お前、帝国の暗殺部隊にいたんだっけ」

 

「ああ」

 

またしても無愛想に返事した。

 

「お前も帝具使いなんだっけ」

 

 

「ああ」

 

 

「・・・なあ、お前、ああしか言えないのか」

 

「・・・」

 

 

アカメは無言のままである、そしてそのまま振り向き立ち去ろうとしていた。

 

 

無愛想な奴だな、ようし・・・

 

 

レオーネはニヤリと笑いアカメに近寄った、そして。

 

 

もにゅ

 

 

レオーネは後ろからアカメの胸を揉んだ。

 

 

「!!?」

 

 

突然のことにアカメは立ち尽くした。

 

 

もにもにもにもにもにもに

 

 

レオーネはアカメの胸を揉み続けた。

 

 

「やめろ!!」

 

 

アカメは怒りにまかせてレオーネの手を振り払った。

 

「お前、何のつもりだ!?」

 

アカメは顔を真っ赤にしてレオーネを睨みつけた。

 

 

「へえ、お前、そんな顔できたんだ、全然表情なかったからさ、安心したよ」

 

「お前、私をなんだと思っている」

 

アカメの怒りにレオーネは全然臆していない。

 

「まあ、親睦も深まったことで飲みにいこうぜ、もち、お前のおごりで」

 

「ふざけるな、私にあんなことをしておいて」

 

アカメの怒りはさらに高まった。

 

 

「まあまあ、細かいことは気にするな、いこうぜ」

 

レオーネはお構いなしに歩きだした。

 

 

全く、なんて図々しい奴だ、でも、なんか憎めない奴だな、とアカメは思った。

 

「言っておくが割り勘だぞ」

 

「おいおい、けちくさいこと言うなよ」

 

「私は酒はあまり飲まん、肉ならおごってやってもいい」

 

「んじゃそれでいい」

 

「お前、本当に図々しい奴だな」

 

「それが私の取り柄だからな」

 

「褒めてないぞ」

 

 

アカメは呆れつつもどこか楽しげであった。

 

 

 

 

 

 

 

レオーネは思い出した後しばらく天井を見つめていた、そして。

 

 

「さて、ひとっ風呂浴びてくるか」

 

 

レオーネは立ち上がり浴場へ向かうのであった。

 

 

 

アカメ、お前と再会するのはまだまだ先になりそうだ、それまで待っててくれよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十八話

   朝寝坊を斬る

 

 

7月16日朝

 

 

ナイトレイド一同は朝食を食べていた、ただしマインはまだ起きていない。

 

 

「今日もスーさんの朝食はうまいねぇ」

 

レオーネは笑顔で頬張っている。

 

「そう言われるのは嬉しいことだ」

 

スサノオも微笑んでいる、しかし。

 

「・・・だがレオーネ、いつも米を一粒だけ残すな!いつも気になる!」

 

スサノオはビシッと指さして注意した。

 

「・・・相変わらず細かいな」

 

レオーネはやや苦笑いしている。

 

 

「いてて・・・」

 

イエヤスは頭のこぶをさすっている、イエヤスにだけ朝寝坊すると頭に石がおちてくる仕掛けをしているのである。

 

「あなた、また、朝寝坊したの?」

 

サヨはやや呆れている、すると。

 

 

「またじゃねえよ、5日ぶりだよ」

 

「5日って・・・最近じゃない」

 

「俺にとってはすげえことだろ」

 

「せめて五ヶ月は朝寝坊無しを続けなさい」

 

「そんなの無理に決まってるだろ」

 

イエヤスは堂々と言いきった。

 

「・・・まあ、そうだけど」

 

サヨはそれ以上追求しなかった、人間無理なこともあるのだから。

 

 

「にしてもシェーレ最近寝坊ないな」

 

「サヨが起こしに来てくれますから」

 

シェーレは微笑んで語った。

 

「なんだよ、俺も起こしてくれよ」

 

イエヤスはサヨに抗議した、するとサヨの顔が赤くなっていく。

 

 

「あなた忘れたの!以前私があなたを起こしていると寝ぼけて私の胸を揉んだことを!!」

 

 

「あ、あの時は目の前に大福があると思ったんだよ」

 

「だ、大福!?」

 

大福ですって、私の胸そんなに小さくないわよ、とサヨが憤慨していると。

 

 

「その後俺ボコボコにされたんだぞ」

 

イエヤスは反論するも。

 

 

「当然の報いでしょ」

 

サヨとイエヤスが言い争いしているとラバが。

 

 

「マインちゃんは起こさなかったのかい」

 

ラバの質問にサヨは複雑そうな顔で。

 

 

「うん・・・だいぶ前にマインを起こそうとしたんだけど、マイン寝ぼけてパンプキン撃ったのよ、幸い素早く避けたからよかったけど、それからマインを起こしにいってないわ」

 

 

「まあ、マインちゃんらしいね・・・」

 

 

ラバが苦笑いしているとチェルシーが何かニヤニヤしている、何だろうとサヨが思っていると激しい足音が近づいてきた。

 

 

「チェルシー!!」

 

マインが激怒して起きてきた、マインの顔に落書きが描かれている。

 

「よくもやってくれたわね!!」

 

「あなたの寝顔がかわいいからつい、てへっ」

 

チェルシーはウインクしながら舌を出した。

 

 

「てへっ、じゃない!!」

 

マインはさらに激怒した。

 

「じゃあ、スーさんごちそうさま」

 

チェルシーはすでに朝食を食べ終えていた、立ち上がりダッシュして逃げだした。

 

 

「こら待てー!!」

 

 

マインはチェルシーを追いかけ始めた、このやり取りは日常茶飯事の出来事である。

 

「今日もにぎやかですね」

 

シェーレはにっこり微笑んでいる、他の皆は気にしていない、こうしてナイトレイドの一日が始まるのである。

 

 

 

 

 

 

 



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第二十九話

   化粧を斬る

 

 

7月16日昼

 

 

アジトでチェルシーがシェーレに話かけている。

 

「シェーレってお化粧しないの?」

 

「はい」

 

「何で?シェーレかわいいのに」

 

チェルシーは不思議に感じている、するとシェーレは。

 

 

「化粧をしてもすぐ化粧したこと忘れてしまうんで」

 

なるほど、チェルシーは納得した。

 

「いいじゃない、忘れても化粧をしたことは変わらないんだし」

 

「そうですが・・・」

 

シェーレはあまり化粧自体に興味なさそうである。

 

 

「じゃあ、私が化粧してあげるわ」

 

「え?私なんかにもったいないですよ」

 

「いいの、いいの、私が好きでやるんだから」

 

チェルシーはシェーレを自室に連れていった。

 

 

しばらくして化粧が終わった。

 

「これは・・・綺麗です」

 

シェーレは化粧した自分の顔にうっとりしている。

 

「でしょ、私の化粧のテクすごいでしょ」

 

チェルシーは鼻高々である。

 

「私じゃこんな上手に化粧できません」

 

「そんなことないわよ、コツを覚えば難しくないわよ」

 

「私の場合忘れないかどうかが問題ですけど・・・」

 

シェーレは少しシュンとしていた。

 

「・・・そうね、まあ、少しずつ覚えていったら」

 

「はい、努力します」

 

 

シェーレ、大丈夫かな、真面目に努力すると思うけど・・・チェルシーは不安を顔にださず笑顔で対応した。

 

 

「ところでサヨも化粧全くしていないのよね」

 

「はい、お金がもったいないからですけど」

 

「せっかくかわいいのにもったいない・・・」

 

 

チェルシーは眉をひそめている。

 

 

「でも、村へ仕送りしなくてはならないので仕方ないです」

 

「安い化粧品でも最高のできにできるわよ」

 

 

「そうなんですか?」

 

「高ければいいってもんじゃないわよ」

 

「ぜひサヨにも教えてください」

 

まあ、あの娘今は強くなることに一生懸命だし、あまり興味持たないかも・・・そうチェルシーは思った。

 

 

「ところでサヨから聞きましたが、使い方のわからないコンパクトがあると」

 

「うん、まあね」

 

「試しに使ってみたらどうですか」

 

「え?」

 

「何事もやってみることが大事だと思います」

 

「うん、わかった」

 

チェルシーはコンパクトを取り出してシェーレに使ってみた、だが、何も起きない。

 

 

「やっぱり何も起きないわね」

 

チェルシーもこれを予想しており残念そうでない、むしろシェーレの方が残念がっている。

 

 

「残念ですね・・」

 

シュンとしているシェーレを見てチェルシーはフォローをいれる。

 

「あなたが残念がることはないわよ、もともとそんな能力ないかもしれないんだし」

 

 

「そうですね、すいません」

 

シェーレはペコリを頭を下げた。

 

「そうだ、スーさんにおやつ作ってもらおうよ、気分転換に」

 

「いいですね」

 

二人は笑顔で食堂に足を運んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十話

   おやつを斬る

 

 

シェーレとチェルシーは食堂に足を運んだ、すると食堂にはマインがパフェを食べていた。

 

「・・・」

 

マインは上機嫌で食べていたが、すぐ不機嫌になった。

 

「どうしたんですか」

 

シェーレがマインに尋ねるとマインは何でもないと言う、するとチェルシーは。

 

 

「私が来たからでしょ」

 

チェルシーはすぐ察しがついた。

 

「・・・ええ、そうよ、パフェ食べて朝の落書きのことせっかく忘れてたのに、また思い出しちゃったじゃない」

 

マインのいらいらが目に見えそうであった。

 

 

「だいたい何でシェーレ、チェルシーと一緒にいるの」

 

マインは睨みつけるように尋ねた。

 

「それは・・・チェルシーが私に化粧をしてくれたんです、そして一緒におやつを食べることに・・・」

 

シェーレはマインに申し訳なさそうなそぶりをしている。

 

 

「私がシェーレを誘ったのよ、文句ある」

 

チェルシーはずいっと前へ出た。

 

「別に・・・」

 

 

マインの表情は明らかに不満があった。

 

 

「あなた表情でまるわかりよ、気に入らないのならそう言えば」

 

チェルシーに図星をつかれてマインはムカッとした。

 

 

「その通りよ、アンタとシェーレがつるんでいるのが面白くないのよ、仕事でもシェーレ、サヨと組んでばっかりだし・・・」

 

マインは不満を爆発させた、チェルシーはさらに。

 

「サヨとシェーレを組ませたのはボスよ、あなたのそれは完全に筋違いよ」

 

チェルシーの鋭い指摘にマインは反論できなかった。

 

 

「そもそもあなた、サヨといまだにギクシャクしてるでしょ、あなた、あの出来事今も引きずってるよね」

 

 

その瞬間マインの表情がこわばった、アカメの生存が絶望になり逆上してサヨに死んで詫びろといってしまったことを思い出したからである。

 

 

「気持ちはわからなくはないけどあれはダメよチームが崩壊してしまうわよ」

 

 

マインは無言のままであったチェルシーが正しいからである。

 

「アカメちゃんが死んで悲しかったのはあなただけじゃないわよ、その場にいた全員よ、でも、この稼業についた以上誰かが死ぬことはあなたも覚悟していたはずよ」

 

 

チェルシーは容赦がなかった。

 

「あの、そのへんで・・・」

 

二人を見かねたシェーレはなだめようとした。

 

「シェーレは黙ってて」

 

マインは再びシェーレを睨みつけた。

 

 

「それぐらいのことで頭に血が上るなんて、あなた本当にガキね」

 

チェルシーの辛辣な言葉にマインは爆発寸前であった。

 

 

「食堂で騒動をおこすな」

 

キッチンからスサノオが手厳しく注意した。

 

「騒動起こすつもりないから心配しないで」

 

チェルシーはスサノオに返答するとスサノオはキッチンの奥へ戻った。

 

 

「そういうことだからあなたもわきまえてよね」

 

「わかったわよ・・・」

 

マインは渋々了解した。

 

 

「さて、気を取り直しておやつ食べるとしますか」

 

チェルシーとシェーレは椅子に腰をかけた、スサノオはクッキーと紅茶を持ってきた。

 

「足りなければキッチンから持っていけ、俺はこれで失礼する」

 

スサノオはエプロンを棚にしまっていた。

 

「どこか行くの?」

 

「ああ、ブラートから組み手を頼まれていてな」

 

「そう、わかった」

 

スサノオはそのまま食堂を後にした。

 

「さて、召し上がるとしますか」

 

チェルシーはクッキーを頬張っている、至福の一時である。

 

「やっぱり、嫌なことがあった後はおやつに限るわね」

 

「それはアタシのセリフよ!!」

 

マインはチェルシーにツッコミを入れた、チェルシーは全然気にしていない。

 

「聞こえなーい」

 

マインはムカッとした、その腹いせにクッキーをむさぼり始めた。

 

「こうなったらやけ食いよ!!」

 

「いいの、チビでオデブは最悪よ」

 

チェルシーの毒舌にマインはさらにむさぼった。

 

「よかった、二人が仲直りして」

 

シェーレは安堵して紅茶を飲みはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十一話

   妖刀を斬る

 

 

アジト内、サヨは自室で村雨の手入れをしている最中である。

 

「ちゃんと帝具の手入れをしないとね、それにしても千年前に作られた刀とは思えないわね・・・すごく綺麗」

 

サヨはご機嫌であった、今日も村雨が綺麗に輝いているからである。

 

 

 

「それにしても・・・みんな村雨のことを呪われた妖刀と怖がるなんて・・・こんなに綺麗なのに」

 

サヨはほおをふくらませてムッとしている。

 

 

 

「そもそも村雨が呪われた妖刀だなんてあいまいな言い伝えでしかないのに・・・村雨の性能を思えばそう考えてしまうのも仕方ないけど・・・」

 

サヨはある帝具のことを思い出していた。

 

「そもそも村雨よりもエスデスの帝具がよほど呪われているじゃない」

 

サヨは以前ナジェンダからエスデスの帝具、デモンズエキスのことを聞いていた。

 

 

 

 

「氷を操る帝具!?」

 

「ああ、無から氷を作り出すことができるんだ」

 

「ボス、実際見たことあるんですね」

 

「ああ、奴は大きな川を一瞬で凍りつかせた・・・」

 

ナジェンダは今でも脳裏に焼き付いている。

 

「反則にもほどがありますよ」

 

「そうだな、攻撃にも防御にも使えるからな万能に近い、奥の手がないのは幸いだがな」

 

「奥の手なんかあったら無敵ですよ」

 

「そうだな」

 

「ところでその帝具どんな形をしてるんですか?」

 

「いや、武器とかではない・・・いわゆる生き血だ」

 

「生き血!?」

 

ナジェンダはデモンズエキスについて説明した。

 

 

「つまり、超級危険種の生き血を帝具にしたんですか」

 

「そうだ」

 

「その生き血、危険種の魂入ってるんですか?」

 

「かもしれんな」

 

ナジェンダは否定しなかった、そう思わずにはいられないから。

 

「それにしてもエスデス、生き血を全部飲み干すなんて・・・どうかしてますね」

 

「ああ、だがその狂気が奴の強みだ」

 

ナジェンダの顔に陰りがさした、それを見てサヨは。

 

 

「ボスの右目と右腕、もしかして・・・」

 

「ああ、エスデスにやられた、完敗だった」

 

「ボ、ボスも将軍でしたよね、そんなに差があるのですか」

 

ナジェンダの強さはサヨもわかっている、将軍の頃ならもっと強かったはず、それなのに・・・

 

 

「そうだ、思いっきり痛感した、だが私はこのまま終わるつもりはない、策を練って奴を仕留めてみせる」

 

ナジェンダの目は闘志に満ちていた、さすがボス、そうでないと。

 

「今は奴のことを気にする必要はない、奴は現在北の異民族討伐に行っているからな」

 

サヨは心からホッとした、今の自分では瞬殺されるに決まってるから。

 

 

 

 

 

「エスデスか・・・そういえばアカメ言っていたわね、エスデスは自分が葬るって、確かにアカメならエスデスがどんなに強くてもかすり傷くらいつけることはできるはず・・・・」

 

サヨには全く自信がなかった、ボスが全く歯が立たなかったエスデスにかすり傷をつけるなんて・・・

 

 

「とにかく今は鍛練あるのみよ、強くならないと何もできないわ・・・こんな私だけどこれからもよろしくね、村雨」

 

サヨは村雨に笑みを浮かべた、だが、その光景をイエヤスは後ろから見ていた。

 

 

「・・・あいつ、村雨見てなにニヤニヤしてるんだ、あのおぞましい刀に・・・」

 

イエヤスは顔をひきつらせて心から引いていた。

 

 

 

 

 



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第三十二話

   鍛練を斬る(前編)

 

 

訓練所ではブラートとスサノオが組み手を行っていた、組み手とは思えないほどに激しいものであった。

 

「おりゃあああ!!」

 

「ぬううううん!!」

 

拳と蹴りが激しく繰り広げられている、少しでも気を抜けば命取りになるかもしれない。

 

「「おおおお!!!」」

 

ブラートとスサノオのこんしんの拳がぶつかった、辺りに衝撃波がおこった、二人はそのまま動かなかった。

 

 

「さすがだぜ、熱い拳だった」

 

「お前もな」

 

二人は実力を認め合い笑みを浮かべた。

 

 

「スーさんがいてくれて助かったぜ、俺と同じ体格の奴がいなくて組み手も一苦労だったからな」

 

「お安いご用だ」

 

 

ブラートの体から汗が滝のように流れている。

 

「確かにラバやイエヤスでは体格が合わんからな」

 

「かつてはアカメで組み手していたからな」

 

ブラートは少し寂しそうに語った。

 

 

「アカメか・・・俺が入る前に殉職した奴だな、凄腕だったと聞く」

 

「ああ、アカメは強かったぜ、特にスピードでは俺でもかなわねえ」

 

「そうなのか」

 

「あいつの先読みはまさに天性だからな、さらにスピードを加えたら敵なしだった・・・」

 

ブラートの言葉の最後のほうはやや力に欠けた。

 

 

「確かアカメを殺したのは俺と同じ生物型だったな」

 

「ああ、村雨にとって相性最悪だった」

 

 

ブラートは今でも覚えている、アカメが目の前でコロに食われてしまったところを、ブラートは今でも悔いることがある、もう少し早く駆けつけていればと・・・決して口にしてはならないが。

 

 

「・・・」

 

スサノオは少し微妙な表情になった、自分と同じ生物型がアカメを殺してしまっていたので、それを見てブラートは。

 

 

「スーさんが気に病むことはないよ、アカメはこうなることを覚悟でナイトレイドに入ったんだ、俺達の世界は常に死と隣り合わせなのさ」

 

「気を使わせてすまん」

 

「いいってことよ、もう一本組み手いこうか」

 

「ああ」

 

 

二人は再び組み手を開始した、先程よりもさらに激しい組み手だった、その最中ブラートはアカメとの最初の出会いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「お前さんがアカメか」

 

「ああ、お前が百人斬りのブラートか・・・手配書とずいぶん感じが違うが」

 

「それは以前のやつだ、今の俺は前のよりグンとハンサムになっているだろう」

 

「・・・まあな」

 

正直に言ってハンサムかどうかはわからない、だが、ブラートから感じる強さは本物である。

 

「これからもよろしく頼む」

 

「ああ、こちらもな」

 

二人はガッチリ握手をした、打倒帝国を志して。

 

 

 

 

 

 

 

 

アカメ、お前の分まで戦うぜ、この熱い魂と共に、ブラートは心の中で誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十三話

   鍛練を斬る(後編)

 

 

 

訓練所ではラバとイエヤスが腕立て伏せに励んでいる。

 

 

「どうした、イエヤス、差が広がる一方だぞ!!」

 

ラバはどや顔で腕立て伏せに励んでいる、するとイエヤスは不満げにラバを睨みつける。

 

 

「・・・お前なあ、こんなの差が広がるに決まってるだろ!!」

 

ラバの背中にレオーネが座りイエヤスの背中にブラートが座っている。

 

 

「それでもリードしていることには変わりねえ」

 

 

よくどや顔できるわね、サヨは苦笑いしつつ思った、その時シェーレが。

 

 

「それにしてもお二人の差、それほど大差ついていないんですよね、それってつまり・・・」

 

 

ボガン!!

 

 

レオーネの鉄拳が炸裂した、シェーレの頭にたんこぶができた。

 

 

「単にラバが非力なだけだ」

 

あくまでレオーネは自分の体重は無関係だと無言のアピールをしている。

 

 

「そういや以前、似たようなことあったな・・・」

 

 

イエヤスは寂しそうな表情をした、ある鍛練のことを思い出したからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日同じように鍛練をしていた、ただ、ラバの背中にはレオーネが座り、イエヤスの背中にはアカメが座っている。

 

 

ボガン!!

 

 

アカメはレオーネに殴られた、アカメの頭にたんこぶができた。

 

 

「何をする、私は本当のことを言っただけだぞ、現にレオーネの体重は・・・」

 

 

ボガン!!

 

 

再びアカメはレオーネに殴られた。

 

 

「何をする、私はレオーネの体重を言おうとしただけだぞ」

 

アカメは涙目で訴えるも。

 

「それ、言っちゃダメだろ!!」

 

 

レオーネが激しく怒るもアカメは何故殴られたのか理解していない。

 

「いいじゃん、体重ぐらい知られたって」

 

イエヤスが考えなしに言ってしまった、レオーネの怒りがイエヤスにむけられた。

 

 

「てめえ、乙女の体重を何だと思ってる!!」

 

レオーネは指折りしながらイエヤスに近づいていく、イエヤスはダッシュして逃げるもレオーネにすぐ捕まった。

 

 

「てめえ、覚悟できてるな!!」

 

訓練所にイエヤスの悲鳴が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「俺、あの時アカメが死ぬなんて夢にも思わなかったな・・・」

 

イエヤスがしんみりしていると、ブラートが。

 

「俺達ナイトレイドはいつ誰が死んでもおかしくないからな、だからこそつねに鍛練しなくてはならないんだ」

 

ブラートの言葉には重みがあった、それを聞いてイエヤスは気合いが入った。

 

 

「俺、もっと鍛練に励むよ」

 

イエヤスは腕立て伏せを再開した。

 

「じゃあ、今度は私がイエヤスに座って、ブラートがラバに座りなよ、そうすれば私の体重は関係ないってわかるから」

 

ラバは明らかに顔色が変わった、するとイエヤスが。

 

 

「やめとけよラバ、力ないのばれるぜ」

 

イエヤスはラバを鼻で笑うと、ラバは激怒した。

 

 

「ふざけるな、お前なんかに負けるかよ、見てろ!!」

 

ラバはブラートを背中に座らせて腕立て伏せを再開した、凄まじい気迫だった、最初のうちは・・・

 

 

しばらくしてラバは燃え尽きうつぶせに横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十四話

   覗きを斬る

 

 

鍛練を終えたラバがニヤニヤしながら何か考えている、それを見てイエヤスは。

 

 

「どうした?」

 

ラバは聞こえていないようだ、イエヤスはラバに近づいていくと。

 

 

この前はAルートを通ろうとして気付かれた、次はBルートを通るか・・・

 

 

「お前、覗きの計画たててんのか?」

 

「わっ!!驚かすなよ」

 

「声かけたのにお前気付かないから」

 

「そうか」

 

「お前、鍛練であれだけへとへとになったのにどこにそんな体力あるんだよ」

 

 

イエヤスがややあきれていると。

 

 

「覗きは別なんだよ」

 

ラバはついさっきまでへばっていたが覗きの計画を始めた途端に体力が全快した。

 

 

「全くお前はいいよな、その帝具があれば覗きし放題なんだからな」

 

ラバはイエヤスに心底妬ましかった、だが、イエヤスは沈んだ表情で。

 

「帝具で覗きなんかしてねえよ・・・」

 

「またまた、うそつくなよ」

 

イエヤスの表情に笑みはなかった。

 

「・・・もしかしてマジ?お前何やってんのその帝具持ってて覗きしないなんて、お前、ホモなのか!?」

 

「違えよ!!以前ボスに釘刺されたんだよ・・・」

 

イエヤスはその時のことを語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「イエヤス、一応お前にこの帝具を渡しておこう」

 

ナジェンダはスペクテッドをイエヤスに渡した。

 

「マインはその帝具をお前が持つのは反対しているのだが、ナイトレイドの今後の活動にその帝具は役に立つだろう、私はお前が覗きをしないと信じているぞ」

 

ナジェンダはイエヤスの肩をポンと右手を置いた、だが、その右手はイエヤスの肩をすごい力で握り始めた、ナジェンダの目も標的を仕留める時の目をしていた、イエヤスは心底恐怖した。

 

 

 

 

「あの時のボスの目を思い出したら怖くて覗きなんかできねえよ・・・」

 

 

まさに蛇の生殺しである、それを聞いてラバは憤慨した。

 

 

「お前それでもタマついてんのかよ、このチキンヤロー!!」

 

ラバの言葉にイエヤスはカチンとした。

 

 

「お前、あの時のボスの目見てないからそんなこと言えるんだよ!!」

 

「俺はビビらねえぜ」

 

「どうだか」

 

今度はラバがカチンとした。

 

 

「だったら証明してやるよ、幸い今はナジェンダさんの入浴の時間だ、俺の生き様見せてやる!!」

 

ラバはダッシュで浴場へ向かって行った。

 

 

「・・・大丈夫かな」

 

イエヤスはやや心配顔をしていた。

 

 

 

10分後、ラバは顔をボコボコにして帰って来た、見事な大失敗だった。

 

 

「・・・見たか、俺の生き様を」

 

ラバは親指を立てて誇らしげに振る舞った。

 

「お前、すげえな・・・」

 

イエヤスは苦笑いしながらもラバの男の生き様を見届けたのであった。

 

 

 

そういやアカメちゃんと初めて会った日もこんなんだったな・・・

 

 

 

 

 

「全く、お前どういうつもりだ?」

 

 

アカメは入浴を覗こうとしたラバをボコボコにした。

 

「へへ、挨拶みたいなものだよ」

 

ラバは全く反省していなかった。

 

「今日初めて会った女の入浴を覗くなどあきれてものが言えんぞ」

 

アカメは心底あきれている。

 

 

「覗きこそ俺の生きがいだからな」

 

「次、やったら葬るからな」

 

「それでビビる俺じゃねえぜ」

 

アカメの脅しにもラバは全く臆していない。

 

 

「お前は肝が据わっているのか、大バカなのか・・・」

 

アカメは複雑な顔をしているとラバは。

 

 

「まあ、とにかくこれからもよろしく頼むぜ」

 

「・・・ああ、よろしく頼む」

 

アカメは毒気を抜かれたようであった。

 

 

「今後も入浴を覗くのか?」

 

「もちろん」

 

ラバは清々しい笑顔で返答した。

 

「・・・やっぱり、今葬る」

 

その瞬間ラバは目にも止まらぬ速さで逃げていった。

 

 

「逃げたか・・・あいつ、ガイに似てるな」

 

ガイとはアカメの暗殺部隊の仲間であり、女に目がなかった、とある任務で殉職した。

 

 

 

「あんな奴でも仲間だ死んでほしくないな・・・」

 

 

アカメは仲間を失う悲しみはもうたくさんであった。

 

 

ラバはアカメがそう考えているとは全く想像しておらず、次の覗きの計画をたてていた。

 

 

 

 

 

俺、アカメちゃんの分まで戦うからよ、見ててくれよな、ラバはボコボコの顔で心に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十五話

   負けず嫌いを斬る

 

 

アジト内、マインは自室で帝具の手入れをしていた。

 

「さて、これぐらいでいいわね」

 

手入れを終えようとしていた時、マインはあるものが目にとまった、それは創作に失敗した船の模型である。

 

 

「・・・」

 

 

マインは思い出していた、アカメと一緒に模型を作った時を・・・

 

 

 

 

 

 

「ああ、もう、うまくいかないわね!!」

 

マインは模型作りがうまくいかずいらいらしている。

 

「マイン、落ち着け、いらいらしているとうまく作れんぞ」

 

アカメの模型は上手にできている。

 

 

「アタシ不器用じゃないのになんでうまくいかないの!?」

 

 

「一番大事なのは平常心だ、うまくいかなくてもいらいらせずゆっくり作ればいい」

 

「わかってるわよ」

 

そういいつつもマインの言葉は荒い。

 

 

「お前、こういうの苦手そうだしな」

 

いつのまにかレオーネが後ろにいた、マインはムッとしている。

 

 

「アンタだってそうでしょ」

 

レオーネはマインのツッコミに全く気にしていない。

 

「もち、私はそんな面倒な趣味ないから、やっぱり酒が一番だよ」

 

レオーネの顔が赤い、すでに飲んだ後だった。

 

 

「酔っ払いは引っ込んでて」

 

マインはうっとうしそうにレオーネを手で追い払った。

 

「お前、そんなにむきになるなよ、模型作りそんなに好きじゃないだろ」

 

「アタシはただ負けたくないだけよ」

 

「お前の負けず嫌い筋金入りだな、そういやあの時もそうだったな」

 

 

レオーネはアカメとマインが初めて会った日のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

アカメとマインは組み手の勝負をしていた、アカメが断然優勢だった。

 

 

「・・・まだよ、まだまだよ」

 

マインは顔に付いた土をぬぐいながらアカメを睨みつけた。

 

 

「もういいだろ、お前では私に勝てんぞ」

 

アカメもマインのしつこさにうんざりしている、するとマインはますますむきになった。

 

「いいえ、勝負はこれからよ」

 

マインの闘志は衰えていない。

 

 

「お前の意気込みは認めるがお前の体格は格闘に向いていない、お前も気づいているだろ」

 

アカメの指摘は適切だった、マインは格闘をするには小柄なのだ、だがマインは知ったことではなかった。

 

 

「向いているかはアタシが決めることよ、アタシはまだまだやれるわ!!」

 

 

 

マインはくじけるわけにはいかなかった、マインは異民族のハーフとして虐げられてきた人生を送ってきた、もし、何事でもあきらめたら心が折れてしまう、だからマインはあきらめないのだ。

 

 

「・・・わかった、お前の覚悟は本物だ、一切手を抜かないぞ」

 

「当たり前よ!!」

 

二人は再び組み手を再開した、先程とは比べものにならないほど激しいものであった。

 

 

しばらくして組み手は終わった、マインは大の字で地面に横たわっていた、マインはボロボロだが表情は清々しいものであった。

 

 

「・・・何発か入れてやったわよ、何が暗殺部隊の精鋭よ、アタシだってやればできるのよ、アタシはもっともっと強くなる、そして必ず勝ち組になってやるわ!!」

 

 

マインは夕日に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

マインは模型をしばらく見つめていたがすぐ振り返った。

 

 

アタシはどんな困難にも決して負けない、アンタの分まで戦うわ、見ててなさいアカメ・・・

 

 

マインは心の中でアカメに誓ったのであった。

 



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第三十六話

   うたた寝を斬る

 

 

 

今日もいい朝だ、クロメは朝日を浴びながら一日が始まることに喜んでいる。

 

 

クロメは朝食を食べるために食堂へ向かった。

 

 

食堂にはすでに数人が座っている、左端の席に座っているのはギンだ、今日も相変わらずキツそうだ、隣の席に座っているのはナタラだ、今日もギンに振り回されなければいいけど、その隣に座っているのはグリーンだ・・・私、こいつ嫌い、お姉ちゃんをいやらしい目でいつもじろじろ見ているから、お姉ちゃんに手をだしたらぶった斬ってやるんだから、そう思っているといつのまにかツクシとポニィが食堂に入ってきた、ツクシは皆のなかで一番優しくお菓子もくれるから私好き、ポニィは元気で明るいけどちょっとおバカなところが玉にきずかな、すると後ろから。

 

 

 

皆、朝食だ、いっぱい食え

 

 

 

お姉ちゃんだ、お姉ちゃんが朝食を持ってきてくれた。

 

 

 

お姉ちゃん!!

 

 

 

こら、いきなり抱き着くな、朝食落としてしまうところだったぞ。

 

 

ゴメン、でも、うれしかったからつい。

 

 

 

全くしょうがないな、早く席に座れ、朝食を食べるぞ。

 

 

うん、お姉ちゃん、大好き!!

 

 

 

クロメは本当に甘えん坊だな。

 

 

 

お姉ちゃん、私達、ずっと一緒だよ。

 

 

ああ、もちろんだ。

 

 

 

うん、お姉ちゃん。

 

 

 

 

どんな過酷な任務でも、お姉ちゃんと一緒なら絶対乗り越えることができる、大好きなお姉ちゃんと一緒なら・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!?」

 

クロメは一瞬ここがどこかわからなかった、クロメはキョロキョロしている。

 

「お目覚めになりましたか、クロメさん」

 

ランがクロメに声をかけた、クロメはここがイェーガーズの詰め所だと認識した。

 

 

そっか、私、居眠りしていたんだ・・・さっきのは夢、お姉ちゃんはもういないんだ・・・

 

 

クロメは楽しい夢から覚めて現実を認識してしょんぼりしている、それを見てセリューは。

 

 

クロメさん、しょんぼりしています、元気づけたいですけど・・・

 

 

 

セリューはクロメを元気づけたがったが、クロメの姉であるアカメを殺した張本人ということもあってなかなか乗り出せなかった。

 

 

「クロメちゃん、どうぞ」

 

ボルスが暖かいお茶を持ってきてくれた。

 

「・・・ありがとう」

 

クロメは笑顔でお礼を言った、少しぎこちなかった。

 

 

 

「・・・なあ、やっぱりクロメ、アカメのことふっ切れてないんだな」

 

ウェイブもクロメの様子を見て心配している。

 

「仕方ありません、愛しい人間を失った悲しみは簡単には消えませんから・・・」

 

 

ウェイブはランに何かを感じたような気がした、何かとは何かはこの時ウェイブはわからなかった。

 

 

「でも、このままじゃ・・・そうだ!!」

 

ウェイブは何かひらめいてウェイブの道具袋から何かを取り出しクロメの傍へ近寄った。

 

「おい、クロメ」

 

「何?」

 

「この突撃魚のくさや食べてみろよ、絶対元気でるぜ」

 

ウェイブはくさやを取り出した、猛烈にくさい臭いがたちこめた。

 

「く、くさい・・・」

 

クロメは即座に鼻を押さえた。

 

「まあ、ちょっとくさいがすっげえうまいんだぜ」

 

ウェイブは自信満々だがランは眉をひそめている。

 

 

「ウェイブ、これはちょっとどころでは・・・」

 

「そんなに臭うか?」

 

ウェイブは全く自覚していない。

 

「なんてことするんですか、ウェイブさん、神聖な職場を汚さないでください!!」

 

セリューは激怒して猛抗議した、これにウェイブはうろたえた。

 

「おいおい、おおげさな・・・」

 

「おおげさじゃありません、コロを見てください!!」

 

コロはあまりの臭さに食欲を失っていた。

 

「クゥゥ・・・」

 

 

「ま、マジかよ・・・」

 

ウェイブはさすがにへこんでいた。

 

「まあまあ、臭いものは美味いっていうじゃありませんか」

 

ボルスはさりげなくフォローを入れた、しかし、クロメは。

 

 

「くさいからいらない・・・」

 

ウェイブはその一言に絶句した、するとその瞬間ドアが開き、エスデスが現れた。

 

 

「皆いるか・・・なんだこの臭いは?」

 

エスデスも思わず鼻を手で覆った。

 

「あっ、隊長、ウェイブさんがくさい食べ物を出してしまって・・・」

 

 

セリューがエスデスに報告した。

 

 

「全くしょうがない奴だな・・・後で水責めだな」

 

 

「えっ!?」

 

 

ウェイブは目を点にしてあんぐりしている。

 

 

「ところで隊長、新たな任務ですか?」

 

ランがエスデスに確認をする。

 

 

「ああ、そうだった、北の街道に強盗団がたむろしていてな、その討伐だ」

 

「隊長、直ちに行きましょう、悪をのさばらさせてはなりません!!」

 

「もちろんだ、では、皆、行くぞ」

 

 

「「了解」」

 

 

イェーガーズは直ちに出動した、特にクロメは意気込んでいる。

 

 

今は任務に集中だ、その間はお姉ちゃんの事を忘れられる・・・クロメは真っすぐ前を見つめている。

 

 

「さて、その前に、水責めをしないとな」

 

ウェイブは真っ青になった、それを見てエスデスは。

 

 

「心配するな、遊びみたいなものだ」

 

 

その後ウェイブは水責めの仕置きを受けた、ウェイブは危うく溺れ死ぬところであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりにイェーガーズの面々をだしました、どうでしたか、この作品のアカメの印象は皆さんはどう感じますか。


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第三十七話

    裏切り者を斬る

 

 

 

 

深夜のナイトレイドのアジト、ナジェンダは自室で酒を飲んでいた、いい具合にほろ酔いである、ナジェンダは思い出していた、アカメと最初に会った時の事を・・・

 

 

 

 

 

 

辺境の山奥、そこに一人のマントで全身を覆った人間がいる、ナジェンダである。

 

 

「さて、このあたりだな」

 

このあたりで帝具が発見されたと噂が流れて革命軍幹部の命令でナジェンダが赴いていた、むろん、罠を考慮して。

 

 

 

「鬼がでるか蛇がでるか・・」

 

 

ナジェンダは用心深く辺りを見回している、人の気配は感じなかった。

 

 

「人の気配を感じんな、襲撃を予想してい・・・」

 

その瞬間、ナジェンダは何かを感じた、殺気ではない、だが、危険な感じがした。

 

 

ナジェンダはとっさに右腕を上へ伸ばした。

 

 

ガキイイイイイン!!

 

 

金属音が鳴り響いた、何者かが斬りつけたのだ、そこには刀を振りかざした黒髪の女がいた。

 

 

 

こいつは?なんて奴だ、全く殺気を感じなかった、できる!!

 

 

女はすぐ後ろに下がった、すぐに戦闘体勢を整えた。

 

 

「やはり罠だったな、お前、帝国の暗殺部隊の者だな」

 

 

女はナジェンダの問いを無視している。

 

 

「何も語らんか、暗殺者なら当然だな」

 

 

ナジェンダは持参したパンプキンを構えた。

 

 

撃てるか?今の私に、だが、やるしかない!!

 

 

ナジェンダはパンプキンを撃った、女は間一髪かわした、凄まじい衝撃がナジェンダを襲った。

 

 

くっ、やはり、今の私ではもうパンプキンはろくに使えないか・・・

 

 

ナジェンダは口惜しかった、自分が衰えてしまったことを。

 

 

女はすかさずナジェンダに斬りかかった、ナジェンダは義手でなんとか防いだ、そして、ナジェンダはあることに気づいた。

 

 

・・・あれは、まさか、村雨か!?

 

 

ナジェンダは女の刀を見て驚愕した、文献で見たことがある、帝具村雨、かすり傷でも呪毒で標的を仕留めることができるという・・・まさか自分の前に敵として現れるとは・・・

 

 

女はさらに斬りつけてくる、義手でなんとか防いでいるが長くは持たないだろう。

 

 

 

このままでは・・・逃げるか・・・いや、じき追いつかれる、ナジェンダは焦りを感じ始めた、その瞬間ナジェンダは自分に言い聞かせた、落ち着け、焦らず冷静に考えるんだ。

 

 

 

ナジェンダは女を観察した、すると、女から何か迷いのようなものを感じた。

 

 

 

こいつ、何か迷いがあるのか?そうでなくては最初の一撃で私はやられていたからな、ナジェンダは自信があるわけではなかったが、このままではやられてしまう、一か八かに賭けることにした。

 

 

「・・・お前、何か帝国に疑念があるんだろ!!」

 

 

「!?」

 

 

ナジェンダの問いかけに女の表情に微かに変化があった。

 

 

「何を言っている?」

 

女は冷静さを装うとした、すかさずナジェンダは。

 

 

「何度でも言おう、お前、今の帝国をどう思っているんだ!?」

 

 

「・・・」

 

 

女は明らかに動揺している。

 

 

「お前も帝国の狂気を目の当たりにしたのだろう」

 

女から殺気が消えた、むろん油断はできないが。

 

 

 

「お前もそうなのか?」

 

 

ナジェンダは女に語り始めた、バン族の惨劇について。

 

 

「なるほどな・・・やはりそうだったのか・・・」

 

 

女は落ち込んでいるようだった、自分が信じてきたことが偽りだったのだから。

 

 

「ところでお前の名前を教えてもらってもいいか?」

 

「ああ、私はアカメだ」

 

アカメは自分のいきさつを語った、自分は暗殺部隊の一員で帝国の裏仕事を行ってきたことを。

 

 

「暗殺部隊か・・・帝国のやりそうなことだな」

 

 

幼子を暗殺者として育成して不穏分子を消していく、ナジェンダは不快をあらわにした。

 

 

 

「私はそれが民の幸せになると信じていた・・・だが」

 

 

アカメは自分の想いが踏みにじられて怒りをあらわににしている。

 

 

「民を想うのであれは革命軍にこないか?」

 

 

「反乱・・・革命軍にか? だが、いいのか、私はお前の仲間も殺してしまったかもしれないんだぞ」

 

 

「それも民を想ってこそだろ、確かにお前をいれるのは骨が折れるだろう、だが、私はお前の民を想う気持ちを信じて見ようと思う」

 

 

「すまない」

 

 

アカメはナジェンダに頭を下げた。

 

 

「だが、一つ言っておく、今後お前は裏切り者と罵られる人生を強いられるかもしれん」

 

 

ナジェンダの表情は厳しかった、アカメは驚いていなかった。

 

 

「そうだな、私のやろうとしていることは裏切り以外のものではないからな」

 

 

「お前の仲間も裏切り者として殺しにくるだろう、返り討ちにできるか?」

 

 

「ああ、斬る覚悟はできている、だが、一つ頼みがある」

 

「なんだ?」

 

 

アカメはナジェンダにクロメのことを説明した。

 

 

「わかった、だが、お前の妹を説得するのは難しいと思うが」

 

 

「ああ、その時は私がクロメを斬る、だから妹に関する事はできる限り私の要望はかなえて欲しい」

 

 

「ああ、私もできる限りの事をする」

 

 

「すまない」

 

 

「気にするな」

 

 

「では、私はクロメを説得しに行く、もし、うまくいったら・・・」

 

 

「妹も受け入れよう」

 

 

「すまない」

 

アカメは頭を下げた、そしてアカメは手を差し出した。

 

 

「これからもよろしく頼む、ナジェンダ」

 

「ああ」

 

二人はガッチリと握手した、そしてアカメは走り去った。

 

 

「・・・お前にはいばらの道を歩ませることになるだろうな」

 

ナジェンダは申し訳なさそうな顔をしている。

 

 

「だが、民のために腐敗した帝国を打倒するためにはお前の力が必要なのだ」

 

 

ナジェンダは覚悟を決め、天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダは酒の入ったグラスを見つめている、亡き友を想いながら。

 

 

「私がお前を誘った事でお前を死なせてしまった・・・アカメ、私を恨んでくれても構わない・・・だが、革命を成功するまでは私は死ぬわけにはいかない・・・その時までは・・・」

 

 

 

ナジェンダはアカメに願わずにはいられなかった、ナジェンダはグラスの酒を一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はアカメとナジェンダの出会いを書きました、近い内にアカメが斬る零で二人の出会いが描かれるでしょう、この話よりもずっと面白く、零はいよいよクライマックスだと思います、この話はまだ続きます、これからもよろしくお願いします。


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第三十八話

   墓参りを斬る

 

 

7月17日早朝

 

ナイトレイドのアジトから少し離れたところに丘がある、そこに小さな石が置かれている、その石は墓標である、サヨの幼なじみのタツミの、前のアジトから墓標だけ持ってきたのである、サヨはタツミの墓参りをしていた。

 

 

「・・・」

 

 

サヨはしゃがみこんで手を合わせて黙祷している、サヨは村から出て間もない頃を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

サヨ、タツミ、イエヤス、三人は意気揚々と帝都へ向かっている。

 

 

「帝都か、俺達田舎者の憧れの地、ロマンを感じるぜ」

 

 

タツミは笑顔で大はしゃぎしている。

 

「ああ、帝都で大儲けしようぜ」

 

イエヤスも興奮せずにはいられなかった。

 

 

「二人とも、あんまりはしゃがない、旅は始まったばかりよ」

 

サヨは二人に注意する、幼いころから続いてきた光景である。

 

 

「けど楽しみだぜ、帝都にはあかぬけた姉ちゃんがいっぱいいるんだろうなあ・・・」

 

 

ボガン!!

 

 

イエヤスはサヨに殴られた、それを見てタツミは笑っている。

 

 

「痛えな、何すんだよ」

 

「あなた下品よ、私達は帝都へ遊びに行くんじゃないんだから」

 

「わかってるよ・・・」

 

 

イエヤスは頭をさすりながらつぶやいた。

 

 

「帝都へ着いたら兵舎へ行かないとな、俺達の腕を見せつければいきなり隊長ってことも・・・」

 

タツミは脳天気に語っているとサヨは難しい顔で。

 

 

 

「何言ってるのそんな都合良くうまくいくわけないでしょう」

 

 

「けどよ時間ないんだぜ、次の冬まで金送らないとまた村人が飢えで死んでしまうぜ」

 

 

タツミの言葉にサヨは言葉が詰まった、確かに時間ないのも事実よね・・・

 

 

「だったら急いで帝都へ向かおうぜ」

 

 

イエヤスは意気込んで駆けだした。

 

 

「ちょっと、一人で先走らないで、あなた方向オンチなんだから」

 

「俺達も行こうぜ」

 

「うん」

 

タツミとサヨも駆けだした。

 

 

「俺達三人いればどんな困難も乗り越えられるさ!!」

 

 

この時のタツミの笑顔はとても輝いていた・・・

 

 

 

 

 

 

・・・しばらくして夜盗に襲われて散り散りになっちゃったのよね、そして帝都に到着して・・・

 

 

タツミはアリアの手でオブジェにされて殺された・・・

 

 

サヨの目から涙が浮かんだ、サヨはすぐ涙を拭った。

 

 

泣いちゃダメ、泣いてもタツミは戻って来ないんだから・・・

 

 

その時誰かが近づいてきた、サヨは後ろを振り向いた、そこにはシェーレがいた。

 

 

「シェーレ、どうしたの?」

 

「はい、お花を供えようと思いまして」

 

シェーレはタツミの墓標に花を供えた、そしてもう一つの墓標に、アカメの墓標にも。

 

 

「ありがとう、タツミの花も用意してくれて」

 

「どういたしまして」

 

 

二人はあらためて二人の墓標に手を合わせた。

 

 

「・・・」

 

 

シェーレは何か考えている、何?とサヨが聞くとシェーレは。

 

 

「タツミと会いたかったなあ、と思いまして」

 

「そうね、シェーレ、タツミのこと気にいったと思う」

 

「本当に残念ですね・・・」

 

 

「もしタツミがナイトレイドに入ったら絶対戦力になったと思う」

 

「サヨがそこまで言うんですからすごく強かったんですね」

 

 

「うん、ハイドさんが言っていたけどタツミは鍛えれば鍛えるほど強くなる伸びしろの塊だって」

 

 

「そうですか・・・ブラートなら彼のこと気に入ったと思います、そしてブラートの指導の元ならとても強い戦士になれたでしょう」

 

「うん、そうね・・・」

 

サヨとシェーレもタツミが生きていればと強く想うのであった。

 

 

サヨはアカメの墓標にも視線がいった、私がもっと強かったらアカメの足を引っ張ることがなく死なずにすんだのに・・・でもアカメの分まで仕事をこなさないと、サヨは心のなかでつぶやいた。

 

 

シェーレはアカメの墓標を見てアカメに出会ってしばらくしてからの事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・アカシタさん?」

 

 

「私はアカシタじゃない、アカメだ!!」

 

何度も名前を間違うシェーレにアカメは少しムッとした。

 

 

「あわわ・・・すいません」

 

シェーレは慌て謝った。

 

 

「お前、物忘れ激しすぎるぞ」

 

「本当にすいません」

 

シェーレはひたすら平謝りしている。

 

 

「お前、殺しの仕事の時は冷静沈着なのにな」

 

「はい、仕事の時は頭がクリアになるんです」

 

「まあ、仕事の時に取り乱すよりはマシだが」

 

「すいません」

 

 

再度シェーレは謝った。

 

 

「なんとか治そうと努力はしているのですが・・・」

 

シェーレは天然ボケを直す100の方法の本をアカメに見せた。

 

 

「こんなものおもしろ半分で書かれた本だぞ、あてにはならん」

 

「そうなのですか?」

 

「だいたいお前、本の内容覚えられるのか?」

 

「それは・・・覚えていません・・・すいません」

 

 

シェーレは申し訳なさそうに謝った。

 

 

「こんなもの必死で覚えるよりもお前は今のお前であり続けるべきだろ」

 

「今の私?」

 

 

シェーレはアカメのいうことがわからなかった。

 

 

「お前はナイトレイドのなかで誰よりも優しいんだから、その優しさを大事にしろ」

 

「優しさですか?」

 

「今苦しんでいる人達を救いたい、その気持ちがあるから過酷な殺し屋稼業をつとめることができるのだろう」

 

 

「ええと、私、難しいことはよくわからないんですけど・・・」

 

「とにかくお前は今のお前のままでいろ」

 

 

「は、はい、わかりました、アカアシ」

 

シェーレは笑顔で答えた、再び名前を間違えたことに気づいていないが。

 

 

「・・・まあ、お前のペースで頑張れ」

 

アカメは顔を引きつりながらもこれもシェーレの個性だと自分に言い聞かせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか人の名前は間違えずに覚えることができました、これもアカメのおかげです、私、これからも頑張りますから安らかに眠ってくださいアカメ・・・」

 

 

シェーレはアカメの墓標に誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりにタツミを出しました、やっぱり、皆さんはタツミがいないナイトレイドは違和感あるでしょうか、この話の主役はサヨなのでタツミがいると目立たないので、これからも応援よろしくお願いします。


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第三十九話

   ヨガを斬る

 

 

7月17日昼

 

 

サヨはチェルシーにヨガをしないと誘われてチェルシーの自室に来ていた。

 

 

「じゃあ、早速始めましょうか」

 

「う、うん」

 

サヨはヨガをやるのは始めてである、名前だけは知っていたが。

 

 

「あなたは初心者だから簡単なのをやるわよ」

 

チェルシーはヨガを開始した、サヨもチェルシーの真似をして開始した。

 

 

「これは・・・結構キツイわね・・・」

 

普段からやらない姿勢なのでややぎこちなかった。

 

 

「最初はそんなものよ、じきになれるから」

 

だんだんやっている内にキツクなくなってきた。

 

「あなた、なかなか筋がいいわよ、じゃあ、次は・・・」

 

 

チェルシーは両足を左右に開いて左右交代で足を高くあげている、この構えは見たことある、相撲取りが準備運動に行っている四股である。

 

 

「あの・・・チェルシー、これって・・・」

 

「あなたも知っているでしょう、いわゆる四股よ」

 

チェルシーは笑顔で答えた、そりゃ四股くらい知ってるけど・・・

 

 

チェルシーはサヨの様子を見てサヨの心情を察した。

 

「女の子が四股を踏むの恥ずかしい?」

 

「そ、それは・・・」

 

確かにそうだけど・・・そうって言うのもちょっと言いずらい。

 

 

「まあ、気持ちわかるけど、私も最初は戸惑ったし、でも、下半身を鍛えるのにピッタリなのよ」

 

「そうなの?」

 

チェルシーは嘘を言っているようには見えない、試しにやってみよう・・・

 

 

「わかった、やってみる」

 

「じゃあ、やってみよう」

 

サヨとチェルシーは四股を踏み始めた。

 

 

思ったよりキツイ、確かにいいトレーニングになる、サヨは手応えを感じていた。

 

「どう、なかなかキツイでしょ、これ美容にもいいのよ」

 

確かに・・・下半身を鍛えられたら体のキレもでる、そうすれば任務も達成しやすくなる。

 

 

サヨの四股に熱がこもっていく、サヨが励んでいるのを見てチェルシーは。

 

 

この娘を見ていたらオールベルグにいた時のころを思い出すわね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、痛い、痛い、これ以上無理・・・」

 

 

「あら、チェルシー、思ってたよりも体固いわね」

 

 

「別に体固くても私には帝具があるし・・・」

 

 

「ダメよ、帝具にばかり頼っていたら、いざという時のために体を鍛えておかないと」

 

 

「それはそうですが・・・」

 

 

「それにヨガは美容にもいいのよ、美しさを保つためにも努力は必要よ」

 

 

「は、はい・・・」

 

 

「だらしないな、よしアタシが手伝ってやるよ」

 

 

「ちょっ、力任せにやったら・・・」

 

 

ゴキン!!

 

 

「痛ーい!!痛い、痛い、か、関節が・・・」

 

 

「おっと悪い、待ってなじきくっつける」

 

 

「ま、待って・・・」

 

 

ゴキン!!

 

 

「痛ーい!!む、無茶しないでよ、私、あなたのように頑丈じゃないんだから」

 

 

「全く、お前、本当にやわだな、そんなんじゃあっさり死んじまうぜ、チェル公」

 

 

「ひ弱な分頭でカバーするから大丈夫よ」

 

 

「・・・お前、遠回しにアタシのこと馬鹿って言ってないか?」

 

 

「そ、そんなことないわよ」

 

 

 

「いいや、その目はそう言ってる、ようし、アタシがヤキいれてやろう」

 

 

 

「ぬ、濡れ衣よ!!」

 

 

 

「覚悟しろ!!」

 

 

 

「ひゃあああ!!お助けー!!」

 

 

 

「ふふ、あなた達仲良しね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・なんだかんだであそこ結構居心地よかったのよね

 

 

 

チェルシーの様子を見てサヨは。

 

 

「どうしたの?」

 

「べ、別になんでもないわよ、さあ、ヨガ再開するわよ」

 

「うん」

 

 

二人はヨガを再開した、さらにヒートアップしていった。

 

 

オールベルグ、地方チームは壊滅しちゃったけど、このナイトレイドは絶対潰れるマネはさせないから、チェルシーは心に誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四十話

   武勇伝を斬る

 

 

7月17日晩

 

 

帝都にあるとあるレストラン、あまり有名ではないが味に定評がある店である、そこに二人の女子がやってきた、その二人の客はエスデスとセリューである、今日二人は非番であった。

 

 

「そこの席に座るか」

 

「は、はい」

 

セリューは少し緊張している、二人は席に座ると。

 

「メニューは私のオススメでいいか?」

 

「は、はい」

 

「お前、酒飲めるか?」

 

「は、はい、少しなら大丈夫です」

 

「そうか、では注文するか」

 

 

エスデスはウェイターに注文をした、しばらくして料理がだされて二人は食事を始めた。

 

 

「どうだ?」

 

「はい、とても美味しいです」

 

セリューは満面の笑みを浮かべた。

 

「そうだろ、私が見込んだ店だ、ちやほやされているだけの店とは違う」

 

自信満々のエスデスを見てセリューは思った、隊長は強いだけの人ではない、なんでもできる人だと。

 

「もっと早く馳走してやるつもりだったが、いろいろごたごたがあって遅れたがな」

 

「いえ、滅相もありません、ご馳走していただいただけで私は・・・」

 

「まあ、今は堅苦しいのはなしだ、お前ももっと力を抜け」

 

「はい」

 

セリューの足元ではコロが肉をむさぼっている。

 

 

「コロも嬉しそうです」

 

「そうだな」

 

店に入った時店員からペットは遠慮してほしいと言われたが、これは帝具だとエスデスは睨みつけてまとめたのであった。

 

 

 

二人は食事を食べ終えて会話を始めた。

 

 

「隊長は18歳で将軍になられたんですよね」

 

「そうだ」

 

「隊長の初陣はいくつの時だったんですか?」

 

「12になって間もない頃だ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、危険種をあらかた狩りつくしてすることがなかったな、それで兵になろうと思い帝都へ赴いたのだ」

 

「それから士官したんですね」

 

「ああ、だが兵舎へ行ったら子供だから軽んじられた、少しムカついたので兵舎にいた兵を全員たたきのめしてやった」

 

エスデスは誇らしげに語った。

 

 

 

「えっ、そんなことしたら・・・」

 

「ああ、その後捕まり牢にぶち込まれた」

 

エスデスは嬉しそうに語った、セリューはこの人はやっぱりすごいと思った。

 

「その後、その一件の事を軍が知ってなんとか帝国兵になれたのだ」

 

「そこから隊長は大活躍するのですね」

 

「まあな、その後武勲をたてて小隊長に昇格した、そして小隊を率いて戦場に行き・・・」

 

 

「大活躍ですね」

 

「いや、ボロ負けだった」

 

「えっ、それは意外です」

 

セリューもさすがに驚いた、てっきり大勝利と思っていたけど。

 

 

「私は無傷だったが、小隊は大打撃を受けた、采配をおろそかにしてな、一兵卒と小隊長とでは戦い方が異なるからな」

 

「それでどうなったのです?」

 

「その後酷評された、強いだけの馬鹿なガキとな、まあ、その通りだったから甘んじて受け入れた、その後私は用兵の本を読み、私に合った用兵を練った、しばらくして再び小隊を率いて戦場に出た」

 

「どうなったのですか?」

 

 

「敵の一個中隊を蹂躙してやったぞ」

 

「さすが隊長です」

 

セリューは大はしゃぎで喜んでいる、エスデスも酒が進んで気分がよかった、その後もエスデスの戦場の話で盛り上がった。

 

「隊長は帝国一勇猛な軍人です、一度も臆したことはないです」

 

酒を飲んでセリューも上機嫌だった、だがエスデスは少し表情が曇った。

 

 

「いや・・・一度だけ人間をおぞましいと感じたことがあったぞ」

 

「本当ですか!?意外です」

 

セリューはエスデスが臆したことがあったとは信じられなかった。

 

「私が子供の頃にある女に口説かれてな」

 

「口説かれた!?」

 

「ああ、あきらかに欲情を抱いていたな」

 

「それって・・・」

 

セリューは思った、その女はいわゆるレズだと。

 

「ああ、お前の想像の通りだ、私をものにしようとしていた」

 

「それで・・・」

 

まさかと思うが隊長、その女に・・・

 

 

「私は危険を察して必死に逃げたぞ」

 

「それはよかったです」

 

セリューは心から安堵した。

 

「だが私にとっては屈辱以外なんでもない」

 

エスデスは心底悔しそうである。

 

「その女何者なのでしょう?」

 

「ああ、その女はメラルドと名乗っていた、ただ者ではなかった」

 

「隊長がただ者ではないと言うなんて・・・」

 

その女恐ろしく強いですね、でも、隊長には及びません。

 

「そいつとは是非とも戦ってみたいな、面白い戦いができそうだ」

 

メラルド・・・私に屈辱を与えた女・・・蹂躙しがいがあるな。

 

 

エスデスの笑顔は狂喜そのものだった、セリューはその顔を見てうっとりしている。

 

 

「ところで話は変わるがアカメは強かったか?」

 

エスデスの突然の質問にセリューは。

 

「はい、私が倒してきた悪のなかで一番強かったです、あの時は死を覚悟しました」

 

「だろうな、私も戦いたいと本気で思っていたからな」

 

「あの、ええと・・・」

 

「落ち着け、お前を責めるつもりはない、お前の方が強かったから勝った、それだけだ」

 

「はい」

 

エスデスはグラスの酒を飲み干した、その時セリューはアカメとの死闘を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!!」

 

セリューはアカメの斬撃を腹部にくらった、血があふれ出ている。

 

 

「しまった・・・これはまずい」

 

セリューの顔が苦痛に歪んでいる、アカメは止めの一撃を繰り出そうとしていた。

 

 

 

私は死ぬのか?この世の悪を滅ぼさないまま、いやだ!!私はまだ死ぬわけには・・・オーガ隊長の敵を取るまで・・・そうだ、私には隊長から授かった切り札が・・・

 

 

セリューは右腕を楯にしてアカメの攻撃を防いだ、そして・・・

 

 

 

「正義執行!!!」

 

 

セリューは切り落とされた両腕から隠し銃を出した、そして、アカメの全身に銃弾を浴びせた。

 

 

ドドドドウ!!

 

 

 

アカメは銃撃を全身に浴び、地に倒れた、さすがに仕留めただろう、だが・・・

 

 

アカメは涙をながしながら右腕を上に伸ばした、命ごいか、なんて醜い・・・

 

 

 

この期におよんで命ごいとはみっともないぞ!!  

 

潔く死ね!!

 

ドウ!!

 

 

止めの銃撃はアカメの頭を撃ち抜いた、これでアカメの最後だろう・・・

 

 

 

 

 

 

「どうした、セリュー」

 

「は、はい、アカメとの戦いを思い出していたんです」

 

「そうか」

 

「アカメは仕留めましたが、オーガ隊長の敵であるサヨは逃してしまいました」

 

セリューは心底から悔しがっている。

 

 

「奴とも戦う機会はあるだろう」

 

「はい、その機会は逃しません」

 

「さて、そろそろ店をでるぞ」

 

「はい、隊長」

 

セリューはコロを抱き上げてエスデスとともに店を出た。

 

 

「隊長、今日はとても楽しかったです」

 

「明日からは再び忙しくなるぞ、心しておけ」

 

「はい、隊長!!」

 

セリューは力強く敬礼をした、明日から悪を撲滅するために気合いを入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アカメとセリューの戦いを再度書きました、ところでアカメを倒せそうなキャラクターはセリュー以外に誰が思いつきますか。


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第四十一話

   借金を斬る

 

 

7月17日深夜

 

 

帝都のとある建物、そこには複数の男がいた、そのうちの一人は用を足しに部屋を離れた。

 

「へへへ、明日は借金のカタにあの家の娘をゲットできるぜ、その前につまみ食いを・・・」

 

いやらしい顔をしながら歩いている、すると・・・

 

 

ジャコッ!!

 

 

突然男は真っ二つになった、あたり一面血まみれになった。

 

 

「どうした?」

 

 

別の男が異変に気づき部屋から出てきた、男が事態を把握する前に・・・

 

 

ズバッ!!

 

 

男の喉が突然斬りつけられた、喉から血があふれ出した、すると、傷口から文字が浮かびだした、そして男は苦しみながら死んだ。

 

 

「なんだ!?」

 

 

残りの男達が武器を手に飛び出した、そのうちの一人は突然ぶっ飛ばされた、顔面はぐしゃぐしゃに潰れていた。

 

「なんだテメエは!?」

 

目の前に現れたのは胸のでかい女だった、その風貌は人間と少し違っていた。

 

 

「ろくでなしだよ」

 

女は指折りしながら不敵に笑っている。

 

「殺せ!!」

 

男達は一斉に飛び掛かった、だが、女はあっさり男達を返り討ちにした。

 

「ふう、片付いたな」

 

女は一息入れると、少年が現れた。

 

「逃げた奴はいない、全員仕留めたよ」

 

少年が報告すると女は笑みを浮かべた。

 

 

「仕事も終わったし一杯やるか」

 

女が陽気にしていると。

 

「何言ってるの、ここからが本題でしょ」

 

少女が女に注意した。

 

「わかってるよ、冗談だよ」

 

「案外本気だったんじゃ・・・」

 

少女は眉をひそめている、だがすぐに気を取り直して、もう一つの仕事に取り掛かった。

 

 

 

数時間前

 

ナイトレイドのアジトの会議室で今回の任務の打ち合わせをしている。

 

 

「今回の標的は悪徳高利貸しと人身売買組織だ」

 

ナジェンダは一同に説明している、皆の表情も真剣そのものである。

 

「多くの人間が法外な利息で増大した借金で脅され人身売買組織につけ込まれ、されるがままになっている」

 

「・・・」

 

サヨ達は非道なやり方に怒り心頭している。

 

「罪のない人間を弄んでいる奴らだ、情けはいらんぞ」

 

一同の想いは同じである。

 

「高利貸しの方にはサヨ、シェーレ、レオーネ、ラバ、人身売買組織の方にはマイン、ブラート、イエヤス、チェルシーに行ってもらう」

 

 

一同はナジェンダに指示を受け気合いを入れている、だが、ナジェンダの表情は困惑していた。

 

「・・・その前に一つ言っておくことがある」

 

何だろう、とサヨが思っていると。

 

 

「レオーネがその高利貸しに保証人のサインをしてしまったのだ・・・」

 

一同は騒然とした。

 

「なんでそんなことに!?」

 

サヨが驚いているとレオーネは気まずそうに頭をポリポリかいている。

 

 

「いやあ・・・酔っ払っているところに金貸しの奴が紙にサインしたら酒おごってやると言ってきて、つい・・・てへっ」

 

レオーネは舌をペロッと出した、その行為がナジェンダの逆鱗に触れた。

 

「てへっ、じゃないだろ!!」

 

 

ボガン!!

 

 

ナジェンダの怒りの鉄拳が炸裂した、レオーネの頭に大きなたんこぶができた。

 

「とにかく、レオーネの証文を回収しなければレオーネに容疑がかかる恐れがある、面倒だが頼んだぞ」

 

「了解」

 

とはいうもののサヨは内心面倒臭いと思っている、だが、レオーネも手配されたらまずいことになるので仕方ないと切り替えることにした。

 

「では、任務開始だ」

 

「了解」

 

一同は持ち場に全速力で移動した。

 

 

 

 

 

 

そして今に至る

 

 

サヨとレオーネとラバはレオーネの証文を探しているがなかなか見つからない。

 

「どう?」

 

「こっちにはないな、姐さんはどう?」

 

「ないな」

 

あまり時間はかけられなかった、いつ人がくるかわからないから。

 

 

「あの・・・私も手伝いましょうか?」

 

シェーレも手伝いをしたがっている、するとラバは。

 

「シェーレさんは外を見張ってて、俺達でなんとかなるから」

 

・・・シェーレさんには悪いがシェーレさんが手伝うと余計見つかりにくくなるからな・・・

 

ラバはそう思いつつ作業に取り掛かる、すると、ラバの帝具に反応があった。

 

 

「誰が来る、しかも・・・これは素人じゃない、手練れだ」

 

「どうするの、このままじゃ・・・」

 

サヨ達は焦った、証文を回収せずに引く訳にはいかないから。

 

 

「私がなんとかする、お前らは作業を続けろ」

 

「わかった、気をつけて」

 

レオーネは部屋を後にした、サヨ達は作業を続けた。

 

 

「さて、次はこの区域だな」

 

やってきたのはウェイブだった、パトロールの途中であった。

 

「なんだ?」

 

ウェイブは目を凝らした、すると、誰かが近づいてきた、それは獣人化を解いたレオーネだった。

 

 

「ういー、ヒック」

 

「おい、大丈夫か、相当酔ってるな」

 

レオーネは金貸しの所から酒を飲み、酔っ払いのふりをしてウェイブを追い払うつもりだった。

 

そんなこととはつゆ知らず、ウェイブはレオーネに近づいて介抱した。

 

「酔ってないよ~ん!!」

 

「おもいっきり酔ってるだろ!!」

 

「酔ってな・・・うぷっ!!」

 

レオーネは口を手で覆った。

 

「大丈夫か」

 

「・・・なあ、その袋くれよ」

 

レオーネはウェイブのズボンを指さした。

 

「これは袋じゃねえぞ」

 

「ケチケチするなよ、よこせよ」

 

レオーネはウェイブからズボンを分捕った、そしてズボンに吐き出した。

 

 

「あああああ!!」

 

ウェイブは悲痛の絶叫をした、自分のズボンがとんでもないことになってしまったから。

 

「俺のズボンが・・・」

 

ウェイブはズボンを手に涙目になって呆然としている。

 

「ふう、スッキリ・・・あれ、お前なんでパンツ姿なんだ、もしかして私に欲情したのか?」

 

レオーネはニヤニヤしながらウェイブに言うと。

 

 

「お前が脱がせたんだろうが!!」

 

ウェイブは涙目で怒り心頭している。

 

「悪かったな、お詫びにパフパフしてやるよ」

 

レオーネは巨乳を見せつけた、するとウェイブは顔を真っ赤にしてうろたえた。

 

「よ、よせ・・・お前、まっすぐ家帰れよ、いいな!!」

 

ウェイブは汚れたズボンを拾い上げ走り去って行った。

 

 

「ウブな奴だな」

 

レオーネはニヤニヤしているとサヨ達が建物から出てきた。

 

「レオーネ、やっと見つけたわよ」

 

サヨは証文をレオーネに渡した。

 

 

「よし、これで任務完了と」

 

「よし、じゃないわよ、もとはと言えばレオーネが・・・」

 

脳天気にしているレオーネにサヨは文句を言った。

 

「まあまあ、固いことはなし、アジトに戻ろうぜ」

 

「全く・・・」

 

これ以上何を言っても無駄だとサヨは悟った、そしてサヨ達はこの場を離れた、途中でブラート達と合流してアジトへ帰還した。

 

 

 

その後ウェイブはパンツ姿の所を警備隊に見つかり拘束され、エスデスにろうそく責めの仕置きを受けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四十二話

   馬鹿騒ぎを斬る

 

 

7月18日昼

 

 

ナイトレイドのアジトの食堂でちょっとした騒ぎが起こっていた。

 

 

「・・・」

 

サヨは顔を真っ赤にしている、なぜならレオーネに胸を揉まれているからである。

 

「ちょっと・・・やめてよ」

 

レオーネは聞き入れることなく胸を揉み続けている。

 

 

もにもにもに

 

 

「ところで金貸してくれない」

 

レオーネがサヨに借金のさいそくをするとサヨは激怒した。

 

「はあ!?私にこんなことしておいて貸すわけないでしょう」

 

レオーネは全く怯むことなく揉み続ける。

 

 

「いいじゃないか女同士なんだし」

 

「ふざけないで、やっていいことと悪いことが・・・」

 

サヨとレオーネのやりとりをイエヤスはじっと見ている、レオーネはそれに気づいて。

 

「お前も揉んでみるか?」

 

「いいのか!?」

 

イエヤスは予想外の申し出に嬉しそうである。

 

 

「いいわけないでしょ!!そんなことしたら村雨で斬るから」

 

サヨは激怒してイエヤスを睨みつけた。

 

「冗談に決まってるだろ、真に受けるなよ」

 

 

レオーネはそう言いながらサヨの胸を揉んだ。

 

「ちょっと、私、レオーネに揉んでいいなんて一度も言ったことないわよ」

 

サヨは激怒で抗議するもレオーネは聞く耳もたない。

 

「ケチケチするなよ減るもんじゃなし」

 

 

もにもにもに

 

 

レオーネはお構いないに揉み続けている、マインは呆れたようにながめている。

 

「レオーネ・・・ますます親父臭くなったわね・・・以前からそう思ってたけど」

 

スサノオもながめていたが、気にすることもなく食堂を出てナジェンダの部屋へ行った。

 

 

「入るぞ」

 

「ああ」

 

スサノオはナジェンダの部屋に入った。

 

「変わったことなかったか?」

 

「レオーネがサヨの胸を揉んでいる以外は特に」

 

「またか・・・まあ、いつものことだな」

 

ナジェンダがつぶやくとスサノオはナジェンダに質問した。

 

 

「女の胸を揉むのは楽しいものなのか?」

 

ナジェンダは思わず吹き出した。

 

「な、何をいきなり・・・」

 

「レオーネが飽きずに揉んでいるからふと思ってな」

 

スサノオは真面目に質問している、質問の内容を見れば滑稽だが。

 

 

「まあ・・・人それぞれだな」

 

ナジェンダは返事に困った。

 

「ナジェンダも胸を揉まれたことあるのか?」

 

スサノオの質問にナジェンダは思わず赤面した。

 

「・・・まあ、軍学校の頃に女子の先輩や同級生にな・・・」

 

「男にはないのか?」

 

「それはないぞ!!」

 

ナジェンダは思わず声が上がった。

 

「・・・男に揉まれるのと女に揉まれるとでは天地ほどの差があるんだな、俺には恋愛感情がないからいまひとつわからんな」

 

スサノオは真剣に考えている、周りが見たら爆笑ものだが。

 

 

「まあ、大昔からその類いの問題は絶えないからな」

 

「そうか」

 

ナジェンダはあることを閃いた。

 

 

「お前、恋愛感情に興味あるのか?」

 

「ああ、少しでも認識できればと思っている」

 

「そうか、じゃあ・・・」

 

ナジェンダはスサノオにあることを指示した。

 

 

 

食堂ではいまだにレオーネはサヨの胸を揉んでいた、その場にスサノオが現れた。

 

「どうしたの、スーさん?」

 

スサノオは無言で二人を見ている。

 

「どう、スーさんも揉んでみる?」

 

「ちょっ・・・何言い出すのよ」

 

「言ってみただけだよ、第一スーさんは・・・」

 

「ああ、揉んでみよう」

 

!!?

 

全くの予想外の展開である、食堂にいる全員が驚いている。

 

 

「では・・・」

 

スサノオは腕を伸ばした、サヨは動揺していた、まさかスーさんが胸を揉もうとするなんて・・・

 

 

「ちょっと待って、それは困る・・・」

 

恋愛感情がない帝具と言っても外見は男である、胸を揉まれるのは・・・

 

 

もにゅ

 

 

スサノオは胸を揉んだ、レオーネの胸を。

 

 

「!!?」

 

 

さすがのレオーネも予想しておらず混乱している。

 

「ちょっ・・・スーさん、何を?」

 

「ナジェンダがお前の胸を揉めと指示した」

 

「ボ、ボスが!?」

 

 

なんで私の胸を?仕返しか?心当たりがありすぎて絞れない。

 

 

もにもにもにもに

 

 

スサノオの胸揉みにレオーネはとても感じていた。

 

 

な、なんだこれ!?私よりもうまい、力強さと繊細さが見事にマッチしてなんとも言えない快感が生まれた。

 

 

 

しばらくしてレオーネは胸揉みにすっかり腰が抜けていた、レオーネは汗だくである。

 

 

「どうだ、スサノオ」

 

ナジェンダが食堂に現れた。

 

 

「ああ、女の胸を揉めば恋愛感情を少しは認識できるかもしれないと思ったが、何も感じなかった」

 

 

「ちょっと、私の胸揉んどいて何も感じないなんてあんまりだろ!!」

 

レオーネは涙目でスサノオに文句を言った。

 

「本当にすまん」

 

スサノオは深く頭を下げた。

 

「謝らないで、余計ミジメになるから」

 

レオーネは女のプライドを砕かれてへこんでいた。

 

 

「スマンな、どうせなら一番でかい胸を揉ませた方がいいと思ってな」

 

レオーネはなぜか少し安堵している。

 

「いやあ、私はてっきりボスのとっておきの酒の・・・」

 

レオーネはあわてて口を手で覆った、ナジェンダはそれを見逃さなかった。

 

「私の酒をなんだって?」

 

ナジェンダはレオーネを睨みつけている、レオーネは冷や汗まみれである。

 

「べ、別に・・・」

 

レオーネは視線をそらそうとしている。

 

「私のとっておきの酒を飲んだんだろ」

 

「・・・うん」

 

「他にもあるな」

 

「ええと・・・」

 

レオーネの様子でナジェンダは全てを察した。

 

「お前、覚悟はできてるな」

 

「ゴ、ゴメン、ボス、許して」

 

「ダメだ」

 

「そんなあ・・・」

 

レオーネは涙目になってシュンとしてしまっている、それを見てサヨは。

 

 

「ぷぷぷ・・・あははははははは、何やってるのレオーネ、勝手に墓穴掘っちゃって、あはははははは」

 

サヨは腹を抱えて大笑いしている、だがその瞬間、レオーネの雰囲気が変わった、肉食獣のような目でサヨを見ている。

 

サヨはその気配を感じ、まずい、早く逃げないと・・・

 

 

サヨはその場から逃げ出した、だが、レオーネは一瞬早くサヨに飛び掛かり、サヨを取り押さえた。

 

 

「何をするの、レオーネ」

 

サヨはレオーネに文句を言ったがレオーネは怒りの形相でサヨをにらんだ。

 

 

「私はなあ、人を笑うのは大好きだが、笑われるのは大嫌いなんだよ、お前、覚悟できてるな!!」

 

レオーネはサヨの服を掴んだ、そして勢いよくサヨの服を脱がした、サヨの胸が丸出しになった。

 

「おおおお!!」

 

ラバとイエヤスはサヨの胸に釘付けになっている。

 

「!!?」

 

サヨは一瞬何が起こったのかわからなかった、だが、すぐ自分に何が起こったのか理解できた。

 

「きゃあああ!! な、なんてことするのよ!!」

 

サヨは恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっている。

 

「うるさい、私を笑った報いを受けろ!!」

 

 

もにゅ

 

 

レオーネは丸出しになった胸を揉んだ。

 

 

「いやああああ!!」

 

サヨは恥ずかしさのあまり絶叫した。

 

 

もにもにもにもに

 

 

「やめて、やめてよ!!」

 

 

サヨは必死に叫ぶもおさまる気配はない、すると、シェーレは寂しそうに眺めている。

 

「どうした、シェーレ?」

 

「はい、以前チュニに胸を揉まれていたなあ、と思い出しまして・・・」

 

 

チュニ・・・その名前に聞き覚えがある、確かシェーレの友達でシェーレが殺し屋になるきっかけになった事件に関わっていた・・・それ以上は羞恥心で考えることができない。

 

 

「だったらお前も揉んでみるか?」

 

「いいんですか?」

 

 

「な、何を言い出すのよ!?」

 

「お前、寂しそうにしている仲間を知らんぷりするのか、お前、いつからそんな薄情な奴になった!!」

 

 

「だったら、レオーネの胸揉ませればいいでしょ!!」

 

「私の胸よりもお前のささやかな胸の方がいいんだよ」

 

「何よそれ・・・」

 

サヨが抗議しているとシェーレが。

 

「失礼します」

 

 

もにゅ

 

 

シェーレは腕を伸ばしてサヨの胸を揉んだ。

 

 

「ちょっと、シェーレ・・・」

 

サヨの顔はさらに真っ赤になっている。

 

 

もにもにもにもに

 

 

シェーレは優しく胸を揉み続けている。

 

 

「どうだ、シェーレ」

 

レオーネはニヤニヤしている、面白い流れになったから。

 

「はい、ふかふかで気持ちいいです、チュニもこんな気持ちだったんですね」

 

 

シェーレは楽しかった日々を思い出して幸せそうである、サヨはそれどころではないが。

 

 

「・・・」

 

スサノオはサヨ達を無言で眺めている。

 

「どうした」

 

「かつての俺のマスターも戦の前にはこのように馬鹿騒ぎをしたものだった」

 

「そうか」

 

「俺は馬鹿騒ぎに意味はあるのか、と尋ねたことがあった、その時マスターは意味がないからいいのだと答えた」

 

「まあ、その通りだな、私達は死と隣り合わせの世界にいる、生きている内に馬鹿をやっておきたいものなのだよ」

 

「そんなものか」

 

「ああ、そんなものだ」

 

「・・・こういうのもたまにはいいものだな」

 

 

スサノオは感銘していた、ナイトレイドの雰囲気は今までに体験したことのないものだったから。

 

 

「なんで私だけー!!」

 

サヨの叫び声が鳴り響いた、今回最も割に合わない目にあったのはサヨだろう。

 

 

馬鹿騒ぎはもうしばらく続いた・・・その時は誰も想像できなかった、今夜の任務であのような事態が起こることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四十三話

   同僚を斬る

 

 

 

7月18日晩

 

 

ナジェンダは自室でタバコをふかせていた、今夜革命軍の命令による任務が行われることになっている、その前にミーティングが行われる、その前にナジェンダは一息ついていた。

 

 

「・・・」

 

ナジェンダはふと思い出していた、数年前のことを・・・

 

 

 

 

「ナジェンダ、ここにいたのか」

 

「あ、はい、ロクゴウ将軍」

 

ナジェンダは風にあたりに屋外へ出ていた、ある考え事をするために。

 

 

「お前、明日バン族の地へ援軍として出陣するのだろう」

 

「はい・・・」

 

ナジェンダは憂鬱そうな表情をしていた。

 

「お前、気が乗らないのか?」

 

「いえ、そんなことは・・・」

 

「隠す必要はない、気持ちはわかるからな」

 

ロクゴウにはお見通しであった。

 

 

「もとはと言えば帝国が彼らに圧政を強いるから乱が起こったわけで・・・」

 

「そうだな、この数年地方に対する圧政は増すばかりだ」

 

二人もそのことに懸念していた。

 

「ですが、命令である以上は・・・」

 

「そうだな」

 

軍人である以上、上からの命令は絶対である、二人にはわかりきっていることであった。

 

「ところでお前の他にもう一人将軍が同行することになっていたな、確か・・・」

 

「はい、エスデス将軍です」

 

「やはりそうか」

 

「私はよく知らないのですが、ロクゴウ将軍は前の戦いで同行したんですよね、どういう人物なのですか?」

 

その瞬間ロクゴウの表情は曇った。

 

「エスデスか・・・まあ、俺の口から聞くよりも実際見た方が早いだろう」

 

 

ロクゴウ将軍の様子がおかしい、彼女に何かあるのか? ナジェンダは首をかしげた。

 

 

「確かにそうですね、私の目で確かめます」

 

ナジェンダはそう返事しつつもエスデスに対する不安は拭われなかった。

 

 

 

「ところでお前、他にも俺に言いたいことあるだろ」

 

「そ、それは・・・」

 

言っていいものだろうか、とナジェンダは思った。

 

「今のうちに言っておいた方がいいぞ、お前、明日出陣なのだからな」

 

「はい・・・将軍に配備されるはずであった鞭の帝具についてですが・・・その帝具を大臣のおいが強奪したことに私は怒りを覚えます」

 

ロクゴウは落ち着いている、予想していたからである。

 

 

「いくら大臣のおいでもそんな勝手が・・・」

 

「大臣の親族による振る舞いは今に始まったことではない」

 

「ですがこのままでは大臣によって帝国が食いつぶ・・・」

 

「ナジェンダ、その辺にしておけ、思うのはかまわんが大声で叫ぶのは控えろ」

 

「すいません・・・」

 

ナジェンダは赤面して自分を諌めた。

 

「それに俺はそのことを気にしていない、俺はその帝具を一度見たことあるがピンとこなかった、相性は合わなかったんだ、どのみち他の奴に渡っただろう」

 

「将軍が気にしていないのであれば・・・」

 

ロクゴウの落ち着きに自分はまだまだだなとナジェンダは思った。

 

 

「それでは私は部隊の編成があるのでこれで・・・」

 

ナジェンダが立ち去ろうとするとロクゴウが呼び止めた。

 

 

「ナジェンダ、なにが起ころうともお前は自分が信じた道を進め」

 

「はい」

 

ナジェンダはロクゴウの言葉の意味をいまひとつ理解できなかった、その時は・・・

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダは改めてロクゴウの言葉の意味を認識していた。

 

「ロクゴウ将軍は私がエスデスの所業を見て帝国を抜ける決心をするとわかっていたんだな・・・」

 

 

ナジェンダは席を立ち、会議室へ足を運ぶ。

 

 

今回の標的は大臣のおいか・・・妙な巡り合わせだな・・・ナジェンダはそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はロクゴウを出してみました、原作ではほとんどセリフはなかったのでいろいろ書きました、そしてこの作品初となるオリジナル帝具を出してみました、能力は近い内に判明します、今後もよろしくお願いします。


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第四十四話

   権力を斬る(前編)

 

 

7月18日深夜

 

 

ナイトレイド一同は今回の標的である大臣のおいであるラセツの屋敷の近くまで来ていた、ラセツという男は女性をさらってきて非道な調教をして死ぬまで弄ぶ外道である、ラセツの護衛もそのおこぼれで欲望を満たしており標的になっている、そして何よりそのラセツは帝具使いであり、その帝具も回収しろとの命令が下った。

 

 

ナイトレイド一同がラセツの屋敷の近辺に到着すると、ブラートが一同を待機させた。

 

「さて、屋敷に到着したぜ、もう一度作戦を確認するぞ」

 

 

ミーティングで立てた作戦はまずラセツの護衛をラセツから引き離し、護衛を仕留める、そして、手薄になったラセツを仕留めるというものである、ただし、この作戦にはリスクがある、ラセツが護衛を仕留めている間に逃げられるということである、それでもこの作戦を選んだ理由はラセツが帝具使いということである、ラセツの帝具が謎であるためラセツと護衛を一緒にしておくほうがリスクが高いと判断したのである。

 

 

 

「じゃあ、行こうぜ」

 

イエヤスが勇ましく向かおうとするが、レオーネが止めた。

 

「待て、護衛の人数が調査した時よりも多い、どうやら護衛を増やしたようだ」

 

「どれくらい?」

 

「ああ、二十人はいるな」

 

一同は驚いた、報告の倍以上の人数だったから。

 

「だが、引くわけにはいかない、行くぞ」

 

 

ブラートの檄に一同は腹をくくり行動に移った、調査によれば護衛は主に戦場から逃走した兵隊くずれである、大臣のおいの護衛なら逃走の罪から逃れると思い駆け込む者も多いのである。

 

 

 

ナイトレイドは各自に護衛を仕留めるべく行動に動く、そして熾烈な死闘が開始した、シェーレと護衛四人との死闘が・・・

 

 

 

「なかなかいい体してるじゃねえか」

 

護衛の一人がいやらしい目でシェーレを見つめている。

 

「死体でも楽しみそう・・・」

 

その護衛は最後まで言い切ることができなかった、その護衛の首は斬り飛ばされ、胴体から噴水のように血が吹き出している。

 

 

「!?」

 

 

シェーレは目にも止まらぬ速さで護衛の首を斬り飛ばした。

 

「てめえ!!」

 

護衛達は状況を判断し身構える、だがシェーレはすでに次の一手をうっていた。

 

「エクスタス!!」

 

 

シェーレは奥の手を使い護衛の目を眩ませた。

 

 

「うおおおお!!」

 

 

護衛達は目を眩ませて立ち往生している、その隙にシェーレは護衛の胸を貫いた。

 

 

「ぐおおお!!」

 

 

護衛の胸が赤く染まっていく、そしてすかさずシェーレは隣の護衛を一刀両断した。

 

 

ジャコッ!!

 

 

真っ二つになった護衛の体が地面に落ち、あたりを血の海にした、残りの一人はその光景を目の当たりにして腰を抜かし命ごいをする。

 

「い、命だけは助けてくれ!!」

 

それを見てシェーレは普段と変わらないように見えるが。

 

「そのように命ごいをした女性にあなたは何をしたのですか?」

 

その瞬間、護衛は命ごいをする女性をなぶり殺しにしたことを思い出した。

 

「そ、それは・・・その、あれだ・・・」

 

その瞬間護衛の首がズバッと斬り飛ばされた。

 

「すいません」

 

 

シェーレは護衛の死体に頭を下げた。

 

 

 

一方、その頃・・・

 

 

サヨは護衛三人を斬り捨てて片をつけたところだった。

 

 

「さて、片付いたわね、後は・・・」

 

その瞬間、サヨは悪寒を感じた。

 

 

何?この感じ・・・これはあの時と同じ・・・タツミの時と同じ・・・

 

 

サヨは屋敷の方を見つめている、胸騒ぎはいっこうに収まらなかった。

 

 

その頃チェルシーは屋敷の中にいた、護衛の一人に変化してラセツに近づき仕留める作戦である、ラセツの帝具の能力がわからない以上帝具戦は避けたかったからのである。

 

 

「さて、ここがラセツの部屋ね」

 

チェルシーは扉の前に到着した、ノックをしてラセツの所在の確認をする。

 

「なんだ?」

 

「ご報告です」

 

「そうか、入れ」

 

入室の許可が出てチェルシーは入室した。

 

 

部屋にはラセツが椅子に深々と座っている、チェルシーはすぐに報告する。

 

 

「侵入者の件ですが・・・」

 

ラセツは報告を聞き終える前に立ち上がりチェルシーの側へ近づいていく、チェルシーは不信を感じつつも報告を続けようとしたその瞬間。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

ラセツは突然護衛に変化したチェルシーにボディブローを繰り出した。

 

 

チェルシーはもうろうとする意識の中で何故ばれたの・・・下手は踏んでないのに・・・みるみる内に変化が解けていく。

 

 

「なんだ!?てめえ、誰だ?」

 

 

どういうこと?変化を見抜いたわけじゃなかったの? チェルシーは理解できないまま床にうずくまった。

 

 

「どういうネタかはしらねえが俺に仕掛けようとするとはいい度胸だな」

 

ラセツはチェルシーをニヤニヤしながら見下している。

 

 

「な、何故・・・」

 

「何故ぶん殴ったか知りてえか、お前を見たときぶん殴りてえと思ったんだよ」

 

 

どういうこと?訳わかんない・・・チェルシーには理解できなかった。

 

「俺はな女を見ると殴らずにはいられないんだよ、男を見たとき同じ感じを感じたから妙だと思ったが納得だぜ」

 

 

な、なんで勝手なヤツ・・・大臣のおいだけあってとんだゲスね。

 

 

チェルシーは軽蔑をこめてラセツを睨んだ。

 

「いいねえ、その目、ゾクゾクするぜ」

 

ラセツはいやらしい目つきでチェルシーを見つめている、そしてラセツはチェルシーの胸をおもいっきり揉んだ。

 

 

ぐにゅううう

 

 

!!?

 

 

チェルシーの顔が一瞬で赤面したが悲鳴はあげなかった、ラセツは不満げに睨む。

 

 

 

「悲鳴をあげねえか・・・なら、これはどうだ」

 

 

ラセツはチェルシーのブラウスをおもいっきり引き裂いた、チェルシーの胸が丸出しになった、それでもチェルシーは悲鳴を上げない。

 

 

くっ、こんなヤツの思惑通りになってたまるか・・・

 

 

女の意地にかけてチェルシーは屈しなかった、その様子を見てラセツは。

 

 

「面白い、こうなったら根競べといくか、徹底的になぶってやるよ、そしてお前を俺のメスドレイにしてやるよ」

 

ラセツの笑みは下劣そのものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジナルキャラクターに大臣のおいを出しました、オリジナルキャラクターを創作するのは難しいですね、下手なりにかんばりますのでよろしくお願いします。


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第四十五話

   権力を斬る(後編)

 

 

 

チェルシーは後悔していた、大臣のおいであるラセツをもっと危険視すべきだったと。

 

 

「これならどうだ」

 

ラセツは腕を伸ばしてチェルシーのスカートを掴んだ、そのままスカートを引きちぎった、チェルシーの赤のパンツがあらわになった。

 

 

「・・・」

 

チェルシーは赤面しつつも悲鳴はあげなかった。

 

「まあ、予想してたがな、これはどうだ」

 

ラセツはさらにチェルシーのパンツを掴んで引きちぎった、チェルシーの下半身があらわになった。

 

 

チェルシーは悲鳴をあげなかったが恥ずかしさのあまり涙がこぼれた。

 

 

・・・こんなヤツに・・・恥ずかしい・・・でも、こんなヤツに負けてたまるか!!

 

 

チェルシーはキッとラセツを睨みかえした、ラセツも少しいらついた。

 

 

「ここまで耐えるとはな・・・いい加減に面倒になってきたな、早いとこ終わらせてやるか」

 

ラセツは突然ズボンを降ろした、ラセツの下半身もあらわになった、その瞬間チェルシーの表情が青ざめた。

 

 

「どうだ、俺のすげえだろう」

 

ラセツはいやらしい顔つきでチェルシーの両足を掴んでおもいっきり広げた。

 

「さて、お楽しみといくか」

 

 

「・・・や、やだ・・・」

 

今まで必死で耐えてきたがとうとうチェルシーは涙をボロボロこぼし出した。

 

 

「やっとだぜ、ようやく見れたぜその絶望まみれのそのツラを、ヒャハハハハハ!!」

 

 

ラセツはゲス丸出しで高笑いした、そして目標へまっしぐらである。

 

 

チェルシーはラセツを振りほどこうとしたがボディブローの一撃で体が動かない。

 

 

私、こんなところで終わるの?・・・地方のチームが全滅してナイトレイドに入ったばかりなのに・・・こんなヤツに初めてを奪われて・・・

 

 

チェルシーはいろいろなことを思い出していた、太守を殺したこと、オールベルグにいたこと、そして地方のチームのこと。

 

 

 

地方のチームが全滅する数時間前

 

 

「じゃあ、仕事に行ってくるわね」

 

地方のチームの女子メンバーがチェルシーを見送っている。

 

「気をつけてね、チェル」

 

「大丈夫よ、私にはガイアファンデーションがあるから」

 

「それもそうね」

 

「そうよ、心配ないわよ」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

女子メンバーは笑顔で手を振って送った、これが二人の最後の会話になるとは想像もしていなかった。

 

 

 

 

 

殺し屋になった時からいい死にかたできるとは思ってなかったけど・・・

 

 

チェルシーはまさに乙女としての死を迎えようとしていた。

 

 

「さて、いかせてやるよ、そして俺のメスドレイになりな」

 

 

ラセツはチェルシーに挿入するために前へのりだした。

 

 

こ、こんなの・・・やだ・・・誰か助けて・・・

 

 

チェルシーは大粒の涙をこぼしながら願った。

 

 

その時ラセツはなにか殺気のようなものを感じ素早く横へ跳んだ。

 

 

するとそこには駆けつけたサヨがいた、サヨは村雨でラセツを斬りつけようとしたがかわされた。

 

 

「ふう、危ねえ」

 

 

ラセツは安堵の表情をした、一方、サヨの表情は激怒そのものだった。

 

 

「・・・チェルシーに何するつもりだったの?」

 

聞くまでもなくラセツはチェルシーを犯そうとしていたにしか見えなかった。

 

 

「そいつは俺を殺すつもりだったんだぜ、その俺がそいつを犯して何が悪い?」

 

 

確かに・・・自分を殺しに来た殺し屋を返り討ちにして殺したとしても文句は言えない、だけど女としてこいつの所業は許せない。

 

 

「あなたは今まで大勢の女性を好き勝手にして殺してきた、私があなたを殺す理由としては十分でしょ」

 

 

今殺しておかないと多くの女性がコイツの餌食になる・・・サヨはラセツに村雨を向けた。

 

 

「口は達者だな、だがお前に俺を殺れるのか?」

 

ラセツは下半身丸出しでサヨを挑発している。

 

 

「そんな粗末なものなんてことないわよ」

 

 

「・・・」

 

サヨの買い言葉にラセツはワナワナしている、昔のことを思い出したからである。

 

 

 

 

 

 

バギッ!!

 

 

 

ぐわっ!!

 

 

 

ラセツは殴られ吹っ飛ばされた。

 

 

 

て、てめえ!!何しやがる!?

 

 

 

フン、弱いくせに調子に乗るな

 

 

 

なんだと!?

 

 

 

 

 

親父の兄貴の息子だからって調子に乗るなって言ったんだよ

 

 

 

てめえ・・・

 

 

 

やるか!?容赦しねえぞ

 

 

 

ぐっ・・・

 

 

 

 

来ないか・・・粗チンヤローが

 

 

 

 

ラセツは歯ぎしりしながら思った・・・しゃくだがコイツには敵わない、だが帝具を持てばコイツにだって勝てる・・・ラセツは復讐を心の中で誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・俺は・・・粗チンじゃねえ!!」

 

 

何、突然、サヨはラセツの豹変に戸惑っている、するとラセツは懐から鞭を取り出した。

 

 

その鞭はけばけばしい色をしていた、サヨはあまり好感を持てなかった。

 

 

「うけてみな、帝具エキドナ、お前には見切れねえよ!!」

 

 

ラセツは鞭の帝具を振った、だが、鞭のスピードは高速とは言えなかった、これなら余裕でかわせる、とサヨは思っていると、後ろの首筋にゾクリと気配を感じた、サヨは反射的に回避した、すると突然鞭の攻撃が来た、何もないところから・・・

 

 

何、今の!?

 

 

サヨはなんとか回避できた、だが、帝具の能力がわからない、なんとかしないと・・・ラセツは再び鞭を振った、これもスピードはない。

 

 

これもおそらく違う・・・気配を探らないと・・・サヨは鞭の気配を探った、今度は真上から。

 

 

この攻撃もなんとかかわした、だが、気配を探って紙一重での回避は体力を消耗する、長引けば不利、サヨはそう判断した。

 

 

「素早いヤツだ!!」

 

ラセツは立て続けて鞭を振るった、サヨはかろうじて回避している、ラセツは次第にいらついてきた。

 

 

サヨはラセツは帝具使いとしては三獣士より弱いと確信した、身のこなしもたいしたことがなく、攻撃の際も微かに気配が出てしまっているから、もし、凄腕なら気配を出すこともなくとっくに仕留められていたから。

 

 

それでもこの帝具の能力やっかい・・・何しろ目に見えている鞭が幻だから・・・サヨは少し焦りを感じていた。

 

 

一方、ラセツもサヨに攻撃をかわされ続けて焦りを感じていた。

 

 

ちっ、らちがあかねえな・・・こうなったら奥の手を使うか。

 

 

ラセツは再度鞭を振るった、サヨは気配を感じて回避に徹する、だが、その時。

 

 

「奥の手発動!!」

 

 

その瞬間鞭が八本に分かれた、八本の鞭がサヨに襲い掛かった、一本の時よりスピードは落ちるが広範囲で回避が困難だった、サヨは必死に回避するがそのうちの一本がサヨのふくらはぎをかすめた。

 

 

しまった、かわしきれなかった、でもかすり・・・その瞬間サヨの体に異変が起こった。

 

 

これは・・・毒?・・・まずい、このままでは・・・だんだんサヨの動きがにぶくなっていく。

 

 

ラセツはサヨの表情を見てしてやったりの顔であった。

 

 

 

「どうだ、エキドナの毒は、八本に分けたから毒は弱まったが、動けなくするには十分だ」

 

 

エキドナは八本から一本に戻った、ラセツはサヨに止めをさそうとしている。

 

 

 

チェルシーはサヨの苦戦を見て自分のふがいなさが許せなかった。

 

 

・・・私の失敗のせいでサヨまで・・・なんとかしないと・・・でも、ガイアファンデーションは戦いの帝具じゃないから・・・どうすれば・・・その時チェルシーは昔のことを頭に浮かんだ。

 

 

 

 

 

ねえ、チェル、ガイアファンデーションって自分以外の対象を変化できないの?

 

 

うん、そうなの

 

 

そのコンパクトを使って変化できないかな?

 

 

どうかな?

 

 

今度試してみない?

 

 

 

うん、わかった、仕事から帰ったら試してみるわ

 

 

うん

 

 

 

 

 

チェルシーは迷っていた、本当に自分以外のものを変化させることができるのか・・・だけど他に手はない、やるしかない、チェルシーは腹をくくりコンパクトを取り出した。

 

 

チェルシーはコンパクトを広げて鏡をあらわにした。

 

 

コンパクトの普通の使い方は鏡を自分自身に使うのだが今回は自分を変化させるのではないから、チェルシーはラセツの方に鏡を向けた、だが何も起こらない。

 

 

やっぱりこれだけじゃダメね・・・ヤツに化粧をしないと・・・幸いヤツは今勝利を確信して油断している、やるしかない。

 

 

 

「さて、これで止めだ」

 

ラセツは大きく鞭を振りかぶった、後ろは隙だらけである、チェルシーはラセツに向けて駆け出した、コンパクトをラセツに向けて化粧をラセツにかけた。

 

 

チェルシーはあるものをイメージしていた、それは・・・

 

 

 

ドロン!!

 

 

ラセツは枯れ木に変化した、ラセツは突然のことに混乱した。

 

 

「な、なんだ、何が起こった!?」

 

 

枯れ木に変化したラセツは動けなかった。

 

 

「今よ、それを斬って!!」

 

 

「わ、わかった」

 

 

サヨも何が起こったのかわからなかった、だが、千載一遇の好機だった、これを逃したら勝機はなかった、毒で力が入らないが全身の力を振り絞って枯れ木となったラセツを斬りつけた。

 

 

ズバッ!!

 

 

斬りつけた瞬間ラセツの変化が解けた、そして傷口から呪毒が心臓に向かっていく、そして呪毒が心臓に達し鼓動が止まった、消え行く意識の中でラセツは。

 

 

 

嘘だろ?俺はこんなところで・・・ヤツに復讐を・・・

 

 

ラセツの息の根は止まった、悪逆の報いである。

 

 

サヨは乱れた呼吸を整えながら・・・なんとか勝てた・・・でも、チェルシーの援護がなかったら危なかった、帝具はやはりすごいわね・・・サヨはチェルシーの元へ駆け寄った。

 

 

「チェルシー、すごいじゃない、敵を変化させて動きを止めるなんて・・・」

 

「うん、出来るかどうかは一か八かだったけど」

 

「とにかくありがとう」

 

「私もありがとう、おかげで乙女を失わずにすんだわ」

 

「えっと・・・その格好なんとかしないと・・・」

 

チェルシーは服を破かれてほとんど全裸だった。

 

「大丈夫よ、えい」

 

チェルシーは変化してハムスターになった、そしてサヨの肩に乗った。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

 

サヨは毒で弱っているが力を振り絞って歩きだした、そしてチェルシーは地方のチームの仲間を思っていた。

 

 

私、これからも頑張るからみんな見守っててね

 

 

 

「ねえ、お願いがあるんだけど」

 

「何?」

 

「これからは私のことをチェルって呼んで欲しいんだけど」

 

「チェル?」

 

「こっちの方が親しみあるでしょう」

 

「わかった、これからもよろしくね、チェル」

 

「うん」

 

二人の絆はより深まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジナル帝具を初めて出しました、今までで一番文章の制作が難しかったです、文章も一番出来が悪いでしょう、相変わらず自分には文才ありませんね、とにかくこれからもよろしくお願いします。


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第四十六話

    初陣を斬る

 

 

7月21日午前

 

 

大臣のおいを仕留めてから二日がたった、鞭の帝具は革命軍本部に送られることになった、ナイトレイドのアジトは相変わらず賑やかである。

 

 

「待ちなさい、チェル、よくもアタシをタヌキに変化させてくれたわね」

 

「いいじゃない、タヌキ可愛いんだし」

 

マインがチェルシーを追いかけている、いつもの光景である、チェルシーの名称はあっというまに馴染んでいった。

 

 

 

ガイアファンデーションの新たに発見した能力、コンパクトを使うことで自分以外にも変化させることが出来る能力、ただし、欠点もある、その能力で変化させたら声は変わらないこと、もう一つはいつ変化が解けるかわからないことである。

 

 

 

「なんだ、また、やり合っているのか」

 

 

ナジェンダがタバコをくわえたままやってきた、そしてそのまま椅子に座った。

 

 

「今日は仕事の依頼はないな」

 

 

ナジェンダはタバコをふかしながらくつろいでいる。

 

 

「・・・」

 

サヨは無言でナジェンダを見つめている。

 

「どうした?」

 

「は、はい、ボスって二十歳で将軍になられたのですよね」

 

 

「ああ、正確には二十歳と10ヶ月だ」

 

 

「ボスの初陣はいくつだったのかなあって思いまして」

 

「15になって間もない頃だ・・・いい機会だ話してやろう」

 

 

サヨは楽しみになってきた、ボスの初陣どんなんだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダが軍学校を卒業して前線に配属されることになった、ナジェンダと新兵達は配属先の隊長と顔合わせすることになった。

 

 

「新兵諸君、俺はこの大隊を指揮するロクゴウだ、以後よろしく頼む」

 

「了解!!」

 

 

新兵は力一杯応答した。

 

 

 

そのあと新兵は武器の手入れをしたり、雑談したり、緊張して震えたり、いろいろだった。

 

ロクゴウはその新兵を観察している、新兵の力量を見極めるためである、その中の一人にロクゴウは注目した。

 

 

「たしかあれは・・・」

 

 

その新兵の名はナジェンダであった、ナジェンダは首席で軍学校を卒業した逸材であると聞かされている。

 

ナジェンダは鍛練していた、なかなかのキレである、キレは・・・

 

ナジェンダはロクゴウの視線に気づき敬礼した。

 

「こ、これはロクゴウ隊長」

 

「そう固くなるな、続けろ」

 

「は、はい」

 

ナジェンダは鍛練を再開した、ロクゴウはナジェンダの鍛練の感想を言った。

 

 

「なかなか筋はいいな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

隊長が褒めてくれた、ナジェンダは喜んでいるとロクゴウは。

 

「だが、型がきれい過ぎるな、それでは敵に読まれてしまうぞ」

 

 

型がきれい過ぎる?ナジェンダはロクゴウの言葉の意味をイマイチ理解できなかった。

 

 

 

それから数日後、敵の部隊が進行しているとの報告を受けたロクゴウは大隊に臨戦態勢を整えさせた。

 

 

ナジェンダ達新兵も準備は終わっていた、ナジェンダは緊張していた、訓練は多く行ってきたが実戦は初めてである、本物の殺し合いが始まるのである、ナジェンダは自分自身に檄をいれた、しっかりしろ、私、と。

 

 

「敵部隊が来るぞ!!」

 

ロクゴウの号令で帝国部隊は前進した、そして、両軍は激突した。

 

 

 

当たり一面に血しぶきと断末魔の悲鳴が上がった、それにともない死体が量産されていった、まさに地獄絵図である。

 

 

ナジェンダも敵兵と刃を交えていた、ナジェンダはキレのある動きで敵を追い詰めていった。

 

 

「いける!!」

 

ナジェンダは斬りこんで行った、だが敵兵はあっさり防御し反撃に転じた、ナジェンダはあっという間に追い詰められた、ついには吹っ飛ばされて地面に倒れた。

 

 

ナジェンダはロクゴウの言葉を思い出していた、 型がきれい過ぎるな、敵に読まれてしまうぞ  

 

・・・私は馬鹿だ、ロクゴウ隊長の言葉の意味を理解できなかったなんて・・・ナジェンダは悔しさのあまり歯ぎしりをした。

 

敵兵はナジェンダに止めを指すべく駆け出した。

 

 

・・・私はここで死ぬのか?初陣で・・・ナジェンダは諦めかけていた、だが・・・いや、私はここで死ぬ訳にはいかない。

 

 

ナジェンダは地面を握りしめた、そして掴んだ土を敵兵の顔面に投げつけた、土が敵兵の目に入り敵兵は立ち往生している、ナジェンダは剣を握りしめて敵兵に向かって行った。

 

 

ザグ!!

 

 

ナジェンダの剣は敵兵の胸を貫いた、大量の血が吹き出した、そしてそのまま敵兵は息絶えた。

 

 

・・・

 

 

ナジェンダは放心状態であった。

 

 

・・・私は人を殺し・・・

 

 

ナジェンダは血まみれの自分の手をただ見てることしかできなかった、すると別の敵兵がナジェンダに斬りかかってきた。

 

 

しまっ・・・

 

 

ナジェンダは死を覚悟した、その時敵兵が激しく飛ばされた、ナジェンダは訳がわからなかった。

 

 

「大丈夫か、ナジェンダ!!」

 

ロクゴウが鞭で敵兵を仕留めてナジェンダの元へ駆け寄った。

 

 

「は、はい・・・」

 

ナジェンダは必死に返答した。

 

「ボサッとするな、敵は待ってはくれないぞ」

 

「す、すいません・・・」

 

ナジェンダはロクゴウに醜態を見せてしまって肩を落とした、ロクゴウは敵兵の死体を見て。

 

 

「敵を仕留めたか」

 

「・・・はい」

 

「恐いか、初めて人を殺して」

 

「・・・はい」

 

ナジェンダはつい本音を漏らした、ナジェンダはその瞬間しまったと思った。

 

「そうだな、そうだろう、俺も初めて敵を殺した時は震えたぞ」

 

 

ロクゴウ隊長が震えた!?ナジェンダはとても信じられなかった。

 

 

「戦にかっこよさなどない、殺す奴と殺される奴がいる、そういう狂気の世界だ」

 

ロクゴウの言葉には重みがあった、数々の修羅場をくぐり抜けた兵士の言葉である。

 

 

「それでも戦場に来た以上、死に物狂いで戦い生き残らなければならん、ナジェンダ、戦えるな?」

 

「はい!!」

 

「いい気迫だ、来い」

 

「はい!!」

 

ナジェンダはその後も必死に戦った、さらに5人の敵兵を倒したのであった。

 

 

戦の勝敗は帝国の勝ちだった、ロクゴウが敵の指揮官を倒し、一気に勝敗を決したのである。

 

 

 

「・・・」

 

ナジェンダは辺りを見回した、大勢の味方の死体が転がっていた、その中にはナジェンダの知り合いもいた。

 

これが戦・・・戦いが始まる前私はかっこよく戦おうと浮かれていた・・・だが、それは愚かな戯言だった・・・

 

ナジェンダは現実を目の当たりにして自分の愚かさを恥じていた。

 

 

「なんとか生き残ったなナジェンダ」

 

ロクゴウが話しかけてきた、ナジェンダは慌てて敬礼をした。

 

「は、はい」

 

「初陣は死亡率が高い、よく生き残った」

 

「ありがとうございます」

 

「少しはマシな顔になったな、だが、まだまだだ」

 

「はい、鍛練に励んで強くなります」

 

「よし、俺がしごいてやる、覚悟しておけ」

 

「よろしくお願いします」

 

 

私は弱い・・・だが、私は強くなる・・・帝国のために戦う、ナジェンダは心の中で誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボスも最初は弱かったんですね」

 

「当然だ、最初から強い者などいない」

 

「そしてそれから強くなっていずれは将軍になるんですね」

 

「その道のりは非常に険しいものだったが」

 

 

「ところで、ロクゴウ隊長はそれからどうなったのです」

 

「ああ、間もなく将軍に昇格した」

 

やっぱり・・・ボスがその人を語る時、熱がこもっていたからすごい人だと思ってたけど。

 

「ねえ、ボスはそのロクゴウって人好きだったの?」

 

チェルシーが突然話に割って入ってきた、その瞬間ラバの顔が真っ青になった。

 

「いや、尊敬はしていたがそういう感情はなかった」

 

それを聞いてラバは心から安堵した。

 

 

「現在も帝国にいるのですか?」

 

「・・・いや、ロクゴウ将軍は帝国を抜けて革命軍に合流することになっていた」

 

「なっていた?」

 

「その後ロクゴウ将軍は消息を絶ってしまった、おそらく帝国の追っ手に討たれたのであろう」

 

「残念ですね、心強い味方になったはずですのに・・・」

 

「ああ、本物に残念だ」

 

ナジェンダは心の底からロクゴウを惜しんでいた。

 

 

 

お前は自分が信じた道を進め

 

 

 

ナジェンダはロクゴウの言葉を思い出していた。

 

 

ロクゴウ将軍、私は私の道を歩みます、どれだけ困難な道だとしても・・・

 

 

ナジェンダは改めて革命の達成を決意するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はナジェンダの初陣を書きました、15歳のナジェンダはどのような顔つきなのでしょうか、きっと可愛いでしょう。


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第四十七話

   記憶を斬る(前編)

 

 

ナイトレイド一同はナジェンダの昔話で盛り上がっていた、そんな中ラバはふと思っていた。

 

 

 

そういやナイトレイドが活動を開始してもう10ヶ月か・・・あんなこともあったな・・・

 

 

 

 

これはナイトレイドが開始して間もない頃の話である。

 

 

 

 

 

帝歴1023年9月

 

 

 

帝都は連日すごい賑わいである、いろいろな人が行き交っている、そのなかで目を輝かせキョロキョロしている少女達がいる。

 

 

「ふええええ・・・これが帝都・・・大都会だなぁ・・・」

 

「ほんとすごいよ、宿屋と道具屋しかない私達の村とは大違いだよ」

 

「ファル、冒険者に武器屋もないと言われたのトラウマになっていましたから」

 

「うっさい、ルナ」

 

この少女達は田舎から帝都に出稼ぎにやってきたのである、ピンクの髪の毛の少女はエア、青の髪の毛の少女はルナ、黄色の髪の毛の少女はファルである。

 

 

「はしゃぐ気持ちわかるけどそろそろ行こうか」

 

「は、はい」

 

この青年の名はバック、少女達の主人である、バックは繁華街へと案内した。

 

 

「じゃあ予算あげるから服買っておいで、働くためのいい経験になるから」

 

「はいっ、ありがとうございます」

 

 

バックはエア達に予算を渡した、そして、エア達は繁華街に足を運んだ。

 

 

「どこから廻ろうかな」

 

「店が多すぎて迷っちゃうよ」

 

「とりあえず目の前の店へ参りましょう」

 

 

エア達はいろいろな店でいろいろな服を試着した、見たこともないきれいな服ばかりである、三人は時間を忘れるほど楽しかった、その時は・・・

 

 

 

「すごく楽しかったね」

 

「うん、いっぱい買っちゃた」

 

エアとファルは買い物をすっかり満喫していた、そのなかでルナは。

 

「でも、ただ普通に買い物しただけです・・・」

 

ルナは何か思うところがあった。

 

 

「えっ?だってバックさんは好きに買い物しておいでって言ってたじゃない」

 

「それはそうですが・・・この買い物はテストかも知れません」

 

「テスト?」

 

エアとファルは訳がわからずキョトンとしている。

 

 

「つまり、この買い物はどれだけ上手に買い物が出来るか見極めるのが目的かもしれないのです」

 

その瞬間、二人から笑みが消えた。

 

「ありえるかも・・・」

 

「どうしよう・・・考えなしで買っちゃた・・・」

 

慌てる二人を見てルナは。

 

 

「落ち着いてください、そうとは限りません」

 

「でも、そうかもしれないし・・・いまさら返品とか出来ないよね・・・」

 

「たとえそうだとしてもバックさん怒ることないんじゃないかな?」

 

エアの言葉に二人はなるほどと思ったが。

 

「だけどやっぱりイナカモノだなって思われるのもしゃくだな」

 

「そうですね・・・」

 

 

ファルとルナが困っているとエアが。

 

「ねえ、骨董屋さんに行ってみない?」

 

「骨董屋?」

 

 

「バックさん言ってたじゃない、この帝都では昨日までのがらくたが今日ではお宝になるって」

 

「いいじゃん、行こうよ」

 

ファルは乗り気であるがルナは。

 

「でも、素人の私達では見分けがつきません」

 

「いいじゃん、行ってみるだけでも」

 

「それにもし掘り出し物を見つけることが出来たらバックさん褒めてくれるかも」

 

行く気満々の二人を見てルナは。

 

「そうですね、駄目元で行ってみましょう」

 

「じゃあ、レッツゴー!!」

 

「骨董屋さん楽しみね」

 

三人は骨董屋へ足を運んだ、そして骨董屋へ到着した。

 

 

 

「骨董屋さんにしては大きい・・・」

 

「さすが帝都」

 

「二人とも急ぎますよ」

 

三人は骨董屋へ入って行った、中はいろいろなものであふれていた。

 

 

「すごい・・・見たことないものばかり」

 

「私にはがらくたにしか見えないけど」

 

「丁寧に調べてください、壊したら弁償させられますよ」

 

「う、うん」

 

三人は掘り出し物がないか調べ始めた、だが、これといってめぼしいものはなかった。

 

 

「見つからないね」

 

「掘り出し物なんて簡単には見つかりませんよ」

 

エアとルナが調べているとファルは。

 

 

「こっちに地下室あるよ、ここも調べようよ」

 

「でも勝手に入って大丈夫でしょうか?」

 

「でも、店のおじさん居眠りしてるよ」

 

「ちょっとくらい大丈夫だよ」

 

「行って見ようよルナ」

 

「そうですね」

 

 

 

三人は地下室に降りていった、地下室は埃まみれであった。

 

「すごいね、ここ」

 

「でも、お宝ありそう」

 

「二人とも早く調べますよ」

 

三人は地下室をくまなく調べた、それでもめぼしいものはなかった。

 

 

「見つからないね・・・」

 

「やっぱりそう甘くないです」

 

「チェッ、骨折り損のくたびれもうけかよ」

 

ファルは壁にもたれた、すると壁が突然崩れ落ち、ファルはあおむけに倒れた。

 

 

「大丈夫?ファル」

 

「いてて、大丈夫、大丈夫」

 

「これは・・・隠し部屋ですね」

 

穴が空いた向こう側には部屋が続いていた。

 

 

「ねえ、行って見ようよ」

 

「うん、行こう、行こう」

 

「仕方ありません、とことん付き合います」

 

 

三人は隠し部屋の奥へ足を運んだ、中はさらに埃まみれであった、いろいろなものがあったが掘り出し物とは思えなかった。

 

「ないなあ・・・」

 

「もう、諦めましょう、これ以上遅くなるとバックさんに怒られます」

 

「待って、もう少し・・・」

 

エアは一生懸命辺りを調べた、するとエアは古びた箱を見つけた。

 

 

「ねえ、この箱どうかな?」

 

「埃まみれだな、この箱・・・」

 

「とにかく開けてみましょう」

 

三人は箱を開けた、すると中からとてもきれいな三つの腕輪が入っていた。

 

「うわあ・・・とてもきれい」

 

「こりゃすごいよ、お宝だよ」

 

「はい、私もドキドキが止まりません」

 

 

三人は腕輪をとても気に入ったのであった、それぞれ赤、青、黄色の腕輪で構成されており、大きな宝玉が埋め込まれている、安物などではなかった。

 

 

「ねえ、どの腕輪気に入ったの?私は一目見て気に入ったけど」

 

「へえ、私もそうだけど」

 

「私もです」

 

「じゃあ、気に入った腕輪を指そうよ」

 

「いいよ」

 

「それでは・・・」

 

三人は一斉に指を指した、エアは赤、ルナは青、ファルは黄色の腕輪を指した。

 

 

「三人別々になった」

 

「うまい具合にバラけた」

 

「喧嘩にならずにすみました」

 

 

三人はちょうどうまい具合に好みが分かれて安堵した、早速三人は腕輪を腕に身につけた、腕輪のサイズは少し大きくブカブカしている、それでも三人はとても喜んだ。

 

「すごくきれい・・・」

 

エアは腕輪を見てうっとりしている。

 

「かっこいい!!」

 

ファルは大はしゃぎでポーズを決めている。

 

「私はオシャレにあまり興味はありませんが、この腕輪は本当にきれいです」

 

ルナは腕輪に見とれていた、三人は腕輪を心から気に入った。

 

 

 

「ねえ、この腕輪買おうよ」

 

「うん、これ以外ないよ」

 

エアとファルは大はしゃぎしているが、ルナは心配そうにしている。

 

 

「でも、これだけの一品、残りのお金で買えるのでしょうか?」

 

「・・・そうね」

 

「絶対高いよ・・・」

 

 

エアとファルは肝心なことに気づいて意気消沈している。

 

「でも絶対諦めたくない!!」

 

「私もだよ!!」

 

二人は声を荒げた、腕輪を諦めたくない気持ちがひしひしと現れていた。

 

「私も同じ気持ちです・・・私に店主の人との交渉任せてくれませんでしょうか?」

 

 

「一人で大丈夫?」

 

「私達も一緒に行った方がいいんじゃないの?」

 

二人は心配そうにルナを見つめている。

 

 

「いえ、三人で行けば収拾がつかなくなるかもしれません、まず私が交渉します」

 

 

二人は三人の中で一番冷静なルナが交渉した方がいいかもしれないと思った。

 

「うん、わかった、ルナに任せる」

 

「頼んだよ」

 

 

二人はルナに激励をして送った、そしてルナは店主と交渉した・・・

 

 

「ダメだ、話にならねえ」

 

「ですがお金はこれだけしか・・・」

 

「これっぽっちじゃな」

 

交渉は難航していた、ルナに焦りの色が出てきた。

 

 

どうしましょう・・・このままじゃ腕輪を諦めることに・・・そんなの絶対嫌です・・・なんとかしないと・・・

 

ルナは全身全霊で今一度お願いした、腕輪に念を込めて・・・

 

 

「このお金で売ってください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は骨董屋を後にしていた、腕に腕輪を身につけたまま。

 

「いやあ、本当によかった、あのお金で買えて」

 

「本当だね、ルナに任せてよかった」

 

二人は大喜びである、だが。

 

 

「・・・それはどういたしましてです」

 

ルナは疲労困憊であった。

 

「大丈夫?」

 

「いくら全身全霊で交渉したからって・・・ルナ、体力なさすぎだよ」

 

「すいません・・・」

 

ルナは歩くので精一杯だった。

 

「でも、ルナのおかげで腕輪買えたんだし」

 

「そうだね、ルナ、本当にありがとう」

 

「いえいえ・・・あれ!?」

 

ルナは何か異変に気づいた。

 

「どうしたの?」

 

「私の腕輪の宝玉が・・・」

 

ルナの腕輪の宝玉が真っ黒になっていた、きれいな青であったが。

 

「な、なんで・・・」

 

ルナは悲しさで涙目になっている。

 

「どうなってるの!?」

 

「最初は青だったはずだけど」

 

二人にもまったくわからなかった、ルナは涙をボロボロこぼした。

 

「せっかく私の物にできたのに・・・」

 

悲しむルナを二人は励まそうとした。

 

「だ、大丈夫だよ、ルナ」

 

「そうだよ、そのうち元に戻るよ」

 

二人の励ましを聞いてルナは。

 

「・・・とにかく今はバックさんのところに戻りましょう」

 

「そうだね・・・」

 

「もうすぐ夕方だし・・・」

 

二人はルナを心配していたが急いでバックの元へ戻らなくてはならなかった。

 

 

「・・・明日から大忙しね」

 

「そうだね」

 

「・・・」

 

三人はこの時これから自分達に何が起こるのか想像もしてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は三人娘が主役のストーリーです、ナイトレイドが活動開始して間もないという設定にしました、次回も応援お願いします。


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第四十八話

   記憶を斬る(中編)

 

 

バックのところへ戻ったエア達はバックの案内でとあるレストランに赴いた、その店で食事をすることになった。

 

 

「帝都の食事か、楽しみだね」

 

ファルはウキウキしている、その隣のエアは落ち込んでいるルナを心配そうに見ている。

 

「ねえ、ルナ、大丈夫?」

 

「は、はい・・・」

 

「ルナの気持ちわかるけど・・・」

 

「すみません、ご心配をかけて」

 

 

ルナは気持ちを切り替えることにした。

 

 

いつまでも落ち込んでる訳にはいきません、バックさんがご馳走してくださるのに・・・あれ?

 

 

ルナは腕輪を見つめた、すると、いつのまにか腕輪の宝玉が元に戻っていた。

 

 

「腕輪の宝玉が元に戻ってます」

 

ルナは心から喜んだ、それを見てエアとファルも喜んだ。

 

「よかったじゃん、元に戻って」

 

「本当によかった、心配したよ」

 

「はい、ご心配かけました」

 

「それにしてもなんで黒くなったのかな?」

 

「それはわかりません・・・」

 

「いいじゃない、元に戻ったんだし」

 

 

三人を見ていたバックが話しかけてきた。

 

 

「本当に嬉しそうだね」

 

「あっ、はい、すみません、騒がしくて」

 

「それは別にいいけど、その腕輪を見たときは驚いたよ、僕が渡したお金で買える代物じゃないから」

 

「すごいでしょ、骨董屋で見つけたんだから」

 

ファルは鼻高々であった。

 

「僕もいろいろ高価な装飾品見てきたけど、その腕輪かなりの値打ちつくんじゃないかな」

 

「本当ですか?」

 

「詳しくわからないけど」

 

「やっぱりすごいものだったんだ」

 

エアは腕輪を見て微笑んだ、三人は腕輪を見ていたため気づかなかった、その時のバックの表情は陰湿そのものだったことを。

 

 

しばらくして料理が運ばれた、その料理は三人が見たことがないものだった。

 

 

「あの・・・本当に食べていいんですか?」

 

「もちろん」

 

「すごく高そうです」

 

エアとルナはすごいご馳走に戸惑っていたが、ファルはすでに食べ始めていた。

 

 

「これ、すごくおいしい」

 

「ファル・・・」

 

ルナはファルの短絡さに呆れている。

 

「君達も食べて、食べて」

 

「は、はい」

 

バックのすすめでエアとルナも食べ始めた。

 

「おいしい」

 

「はい、とても」

 

三人は料理に舌鼓であった、後ろから物音がしたことに気がつかない程に・・・

 

 

「はは、満足してくれてなりよりだよ・・・」

 

バックの雰囲気は先程と変わっていた、三人はそのことに気づいていない。

 

 

「ありがとうございます!」

 

エアは笑顔で感謝の言葉を伝えた、だが、その瞬間・・・

 

 

「じゃあ、メインディッシュといこうか!」

 

突然無数の男が現れた、三人は身動きができなかった、後ろから男に取り押さえられたから。

 

 

「えっ、えっ!?」

 

エアは何が何やらわからなかった、ルナとファルも同じであった。

 

「こ、これは・・・」

 

 

「な、なんだよこれ・・・」

 

 

バックを含むすべての男達はニヤニヤしている。

 

「バックさん、これってどっきりですか?」

 

エアは恐る恐る質問した、エア自身もどっきりとは思えなかった。

 

「どっきりじゃないよ」

 

 

どっきりじゃない!?エアが恐怖にかられているとバックの後ろから不気味な中年の男達が現れた。

 

 

誰!?と三人が思った瞬間、バックは男達の紹介をした。

 

 

彼らはバックの常連客で落札した品物を受け取りに来たと。

 

 

「落札!?ふざけるな、私達は物じゃないぞ!!」

 

ファルは憤慨するもバック達は動じない、するとバックは三人に説明する。

 

 

「いいかい、君達イナカモノはこの帝都では家畜又は物なんだよ」

 

三人はア然とした、いい人だと思っていたバックが悪党だったのだから。

 

 

「こ、こんなこと警察が・・・」

 

ルナの叫びもバックの無情の言葉にかき消される。

 

「心配ないよ、ちゃんと根回ししてるから、結構かかったけど」

 

 

それって賄賂!?警察が!?三人はあまりのことに呆然としている。

 

 

「おい、無駄話してないで早くとりかかれ」

 

男の一人がバックに命じた。

 

 

「そうですね、では早速」

 

バックは手下に合図をするとファルを持ち上げた。

 

「わ、私をどうする気だ!?」

 

「前のと同じでいいですか?」

 

バックはファルを無視して質問した。

 

 

「ああ、今回はゆっくりへし折ってくれ、どの辺りで折れるか確かめたい」

 

ファルの顔は一瞬であおざた、そしてファルは必死に抵抗した、だが無意味だった、男はファルの足を折りにかかった、ファルは苦痛の悲鳴を上げた。

 

 

 

「あああああ!!」

 

店内にファルの悲鳴が鳴り響いた、男達はニヤニヤ笑っている。

 

「や、やめて・・・わ、私が何をしたってんだ・・・」

 

ファルは大粒の涙を流しバックを睨みつけた、するとバックは少しムッとした。

 

「僕のお金使ったじゃない、これは当然の対価だよ」

 

「何を言って・・・そっちが勝手にくれたんじゃ・・・」

 

「盛り上げるためだよ、君達を喜ばせておいて絶望に突き落とす、そのギャップにゾクゾクするのがたまらなく快感なんだよこの人達は」

 

「ふん、お前も好きなくちだろ」

 

 

 

・・・だ、だめだ・・・こいつら私の話通じてない・・・

 

 

ファルはまさに絶望していた、そして、今も絶望は続いている、ファルの足は今にも折れそうである。

 

 

・・・こ、こんなのうそだ・・・なんで私がこんな目に・・・

 

ファルは激痛と悔しさで大粒の涙をボロボロこぼしている。

 

 

「やめてください、こんなこと許されるわけが・・・」

 

ルナはバックに懇願するも、バックは鼻で笑った。

 

 

「許されるわけが?まさか神様が許さないとでもいうつもりなのかな・・・この世に神様なんているわけないんだよ!」

 

 

バックは先程と違いいらついているように感じる。

 

 

・・・そうさ、神様なんていないんだよ・・・僕が奴隷として売り飛ばされた時、神様に必死で祈ったのに僕を助けてくれなかったんだから・・・

 

 

「この世の中は金がすべてなんだ、金さえあれば幸せになれるんだ、だから君達をくいものにして金を稼ぐんだ!」

 

 

「そんな・・・私達は・・・」

 

エアは涙目でバックに抵抗するも。

 

「金は君達なんかよりも尊いんだよ!だから僕のために君達には犠牲になってもらうよ」

 

バックの迫力にエアはたじたじするしかなかった。

 

 

・・・ダメ、この人達に何を言っても・・・このままじゃファルが・・・

 

 

エアは絶望を感じるなか左腕の腕輪に何かを感じた。

 

 

 

何?この感じ・・・腕輪が私に語ってくるような・・・自分を使ってこの危機を乗り越えろと・・・

 

 

エアはこの腕輪を信じることにした、普通ならとても信じられないが今は賭けるしかなかった。

 

 

何・・・私・・・この腕輪の使い方何となくわかる・・・腕輪が教えてくれるみたい・・・

 

 

「やめて、ファルにひどいことしないで」

 

エアはファルの足を折ろうとしている男に大声で叫んだ。

 

 

「うるさいぞ、黙ってろ!」

 

男はエアの方に振り向いて怒鳴った、エアの狙いはそれであった。

 

エアは腕輪を男に向けて、大声で叫んだ。

 

「眠って!!」

 

 

その瞬間腕輪の宝玉が光り輝いた、男はその光を見た、すると男は崩れるように倒れた、男はいびきをかきながら眠り落ちた、男だけでなくバックとその後ろの男達も眠り落ちた。

 

 

「てめえ、何しやがった!?」

 

エアを取り押さえていた男がエアの首を絞めはじめた、首を絞められエアは苦しんでいる。

 

 

「ファル、あなたにも使えるはず、腕輪を構えて!」

 

男が眠ったことで解放されたファルはわけがわからなかった、そしてすぐさま男達がファルに襲い掛かっていく。

 

 

ファルは考えるよりも早く腕輪を構えた、ファルは腕輪がそうさせたのではないかと思った。

 

 

何となくだがこの腕輪の使い方わかるような気がする!

 

 

「眠れ!!」

 

 

ファルの腕輪の宝玉も光り輝き、残りの男達を眠らせた。

 

 

「やった・・・」

 

ファルは全身の力が抜けてしゃがみこんだ、エアも同様である。

 

 

「二人共大丈夫ですか!?」

 

ルナが心配して二人に駆け寄った。

 

 

「う、うん・・・何とか・・・」

 

「力が抜けた・・・」

 

二人共疲労困憊であった、やはりこの腕輪の影響だろう。

 

「とにかくここから逃げましょう、走れますか?」

 

 

「うん・・・やってみる」

 

「やるしかないよ」

 

二人は強引に立ち上がり、走り出した、あてはなかったがとにかくがむしゃらに走った、そして公園の茂みに入りこんだ。

 

 

「とりあえずここなら一安心だね・・・」

 

「うん・・・」

 

エアとファルは息を激しく切らしている、もう一歩も歩けなかった。

 

 

「それにしても帝都がこんな恐ろしいところだったとは・・・」

 

ルナは恐怖で体が震えていた。

 

 

「うん・・・」

 

「何が夢の都だよ、地獄じゃないか!」

 

エアとファルも大ショックである、まさに天国から地獄であったから。

 

 

「二人共まだ安心できません、彼らが目を覚ましたらすぐ追ってきます」

 

「うん、そうだね・・・早く警察へ・・・」

 

「それはダメです」

 

「なんでだよ!?」

 

「根回ししてあるって言ってました、おそらく警察もグルです」

 

「そっか・・・確かにそう言ってたし・・・」

 

「じゃあ、私達であいつらやっつけよう、この腕輪があれば・・・」

 

ファルは勇ましくふるまうもルナは反対した。

 

「それもダメです、銃で撃たれたら終わりです」

 

「そっか、そうだよね・・・」

 

「じゃあ、どうするんだよ!?」

 

 

三人は必死に知恵を絞った、そこでルナは。

 

 

「ナイトレイドに頼むのはどうでしょうか?」

 

「ナイトレイド!?」

 

 

ナイトレイド・・・バックが帝都に来る途中で語っていた、最近帝都を震えあがらせている殺し屋集団・・・

 

 

「ちょっと待って、いくらなんでも殺すのは・・・」

 

「何言ってんだよエア、あいつら私達を殺すつもりだったんだぞ!!」

 

「気持ちはわかりますが今動かないと手遅れになります」

 

「そうだね・・・」

 

 

三人は体力が回復したら早速行動に移った、腕輪の力でナイトレイドと依頼の交渉する状況を作りだせたのである。

 

 

 

深夜の墓場、そこがナイトレイドの依頼の交渉の場であった、ここなら誰も人が来ないからうってつけである。

 

 

「怖いね・・・」

 

「はい、不気味です」

 

「何言ってんの!?お化けよりもあいつらの方が恐ろしいよ!」

 

三人が話をしていると人が近づいてきた。

 

 

「来ました」

 

「緊張するね・・・」

 

「どんとこいだ!」

 

 

その人はあまり大柄ではない、むしろ少年といってよかった、フードを被っていて顔は見えない。

 

 

「あなたがナイトレイドですか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

声は少年そのものだった、やはり少年なのだ、それでも自分達よりは年上のはずである。

 

 

「ナイトレイドに依頼したいんですけど」

 

「話を聞こうか」

 

ルナは一部始終を少年に話した、少年によるとあの連中は危険な噂が絶えないそうだ。

 

 

「じゃあ、依頼受けてくれますか?」

 

「その前に依頼料渡してもらいたい」

 

「・・・今はお金ありません、ですが必ず払います」

 

エアは必死に懇願した、すると少年は。

 

 

「悪いが前払い鉄則なんだ」

 

 

やっぱりそうか・・・こんな稼業だから仕方ないよね・・・だけど、引き下がる訳にはいかない!!

 

 

「お願いします、私達の命がかかってるんです」

 

エアは涙目で懇願するも少年の答えは同じであった。

 

 

 

・・・かわいそうだけどこればっかりはな・・・少年は気が滅入っていた。

 

 

姐さんが泥酔して俺が代わりに来たけど・・・後味が悪いことになったな・・・

 

 

少年がそう思っていることなどエア達は梅雨知らず、エア達はある作戦を実行しようとしていた。

 

 

お金がないから依頼を断られることは予想していた、だから作戦を考えた、うまくいくかはわからないけど・・・

 

 

ファルは少年に近づいていく、少年は警戒して構えた、ファルは腕輪を少年の方に向けて。

 

 

「あんたが依頼料立て替えろ!」

 

その瞬間、腕輪の宝玉が光り輝き少年を照らした、少年はしばらく呆然としていた、そして。

 

 

「・・・わかった、君達の依頼料、俺が立て替えるよ」

 

 

大成功である、ここまでうまくいくとは・・・

 

 

「ありがとうございます!」

 

エアは心から感謝した、申し訳ないという気持ちもあるが・・・

 

 

「じゃあ早速依頼を・・・」

 

「その前に裏をとらないといけないな」

 

確かにその通りである、しかし・・・

 

「私達に任せてください」

 

今度はルナが腕輪を使った、同じく腕輪が光り輝き少年を照らした。

 

 

「・・・わかった、君達に任せるよ」

 

「ありがとうございます・・・ええとあなたの名前は?」

 

「ラバックだよ」

 

「はい、ラバックさん」

 

エア達はラバックと共に裏を取るべく行動を開始した、腕輪を使いあっという間に裏を取ることができた、そして、ナイトレイドはバック達の抹殺に取り掛かった、バック達はナイトレイドによって始末された。

 

 

エア達はこの知らせを知って心から安堵した、その時は・・・まさかその後あのようなことことになるとは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作を見てかわいそうだと思いこのストーリーを思いつきました、ナイトレイドは事件が起こらないと行動に移れないので、三人が自力で何とかするしかありませんでした、そういう訳で次回もお楽しみに。


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第四十九話

   記憶を斬る(後編)

 

 

エア達はバック達の死を確認して心から安堵していた、もう自分達は狙われることはないと思っていたから、その時は・・・

 

 

「これからどうしよう」

 

「それが問題です」

 

「とにかく腹ごしらえしてから考えようよ」

 

三人はパンが入った袋を抱えて歩き出した、このパンは腕輪でパン屋に暗示をかけて捨てるパンをもらったのである、売り物のパンは気が引けたから。

 

 

三人は公園でパンを食べている、公園には三人以外誰もいない。

 

「それにしてもこのパンおいしいのに捨てるなんてもったいない」

 

「帝都だからですね」

 

「切ないね・・・」

 

 

三人は故郷の村を思い出した、食べ物がなく飢えに苦しむことは珍しいことではなかったから。

 

 

「どうにかならないのかな・・・」

 

「私達の腕輪だけでは・・・」

 

「きっと私達にもできることはあるよ」

 

三人が話をしていると後ろから人が近づいてきた。

 

 

「やあ」

 

三人が振り向くとそこにはラバックがいた。

 

「ラ、ラバックさん・・・」

 

エアは思わず慌てた、こんなに早く会うことになるとは思っていなかったから。

 

「すいません、お金はまだ・・・」

 

ナイトレイドの依頼料は立て替えてもらっただけでお金を貯めて払わないといけないのであった。

 

 

「いや、金のことはいいんだ」

 

エア達はその言葉を意味をいまひとつ理解できなかった、お金を払わなくてもいいのは助かるけど何故私達に会いにきたのだろう?

 

 

「単刀直入に聞く・・・俺に何をした?」

 

 

三人は絶句した、まさか腕輪を使って操ったなんて言えるわけないから・・・

 

 

「はっきり言わせてもらう、君達、帝具を使って俺を操ったんだろう」

 

帝具?もしかしてこの腕輪のこと?

 

 

「君達の腕輪帝具なんだろう?」

 

 

まずい、ラバックさん怒ってる、それは当然よね・・・

 

 

「何のことかわかりません」

 

「いいや、その腕輪は帝具だ、間違いない」

 

ルナは何とかごまかそうとしたがラバックには通じなかった。

 

「何であんたにそんなことわかるんだよ?」

 

「俺も帝具使いだからさ」

 

 

ラバックは手の甲を三人にみせた、何か糸のような物が見える。

 

「それが帝具ですか?」

 

「ああ、クローステールっていうんだ」

 

どんな能力なんだろう、三人は気になったが今はそれどころではない。

 

 

「とにかく俺と一緒にアジトまで来てもらう」

 

「そ、それは・・・困ります」

 

「そうはいかない俺にも都合がある」

 

 

 

・・・そうはいかないんだよな、依頼料立て替えのことがナジェンダさんに気づかれてこの娘達を連れていかないと粛清されてしまうかもしれないんだ、悪いが無理矢理連れていく。

 

 

「力ずくでいかせてもらう」

 

ラバックは帝具を構えて臨戦態勢をとった、ラバックは本気である。

 

 

どうしよう・・・このままじゃ、捕まっちゃう、そうだ腕輪で眠らせて・・・ダメ、私達が逃げたらこの人どうなるか・・・

そうだこれなら・・・

 

エアはある暗示を思いつき実行に移った。

 

 

「私達と一緒に帝都から逃げて!」

 

その瞬間、ラバックは目をつぶった、腕輪から光が輝き、ラバックを照らした。

 

「・・・」

 

ラバックは無言で立ち尽くしている、そしてラバックは口を開いた。

 

 

「・・・わかった、君達と一緒に帝都から逃げるよ」

 

ラバックは笑顔で返答した、正直うまくいくかは微妙だったけど。

 

 

「じゃあ、急いで逃げましょう」

 

「ちょっと待った!」

 

三人が逃げようとした矢先どこからか声がした、振り向くと一人の女性がいた、その人はとても露出の高い衣装を着ていた、そしてとても胸が大きく、それに何より頭に動物の耳がついていて、しっぽも付いていた。

 

 

「だ、誰ですか?」

 

「そいつの仲間だよ」

 

 

やっぱり・・・この人も殺し屋、この人強そう、今、腕輪はファルのしか使えないし、どうしよう・・・

 

 

「ボスの予想通りやっぱり帝具が絡んでいたか、でなきゃこんなことになってないからな」

 

女は指を鳴らしながらゆっくり近づいて来る、やる気満々であった。

 

 

「お前ら好き勝手やってくれたな、私はガキでも容赦しないぞ」

 

女の迫力に三人はたじたじだった、まさに絶体絶命である、だがその時。

 

 

「待った姐さん、俺はその娘達と一緒に帝都から逃げなきゃならないんだ、それを阻むのなら姐さんでもガチでやらせてもらうぜ!」

 

ラバックが女の前に立ち塞がった、女の表情は一瞬で険しくなった。

 

 

「・・・お前、本気か?」

 

「うん、倍本気」

 

ラバのこの表情・・・本気だ・・・だが・・・

 

 

 

 

レオーネ、お前も帝都に行け

 

 

私も!?

 

 

帝具が関わっているのなら何が起こるかわからんからな

 

 

わかった

 

 

おそらく操作能力を持った帝具だ用心しろ

 

 

ああ、わかった

 

 

勝手なマネをしたらどうなるか・・・殺し屋の掟を教えてやれ!

 

 

了解!

 

 

 

・・・任務を投げ出すわけにはいかない・・・死んでも恨むなよ、ラバ!!

 

 

女は拳を構えて臨戦態勢をとった、ラバックも同じく構えた、今まさにナイトレイド同士の帝具戦が開始されようとしていた。

 

 

 

 

ラバックは両手を前にかざした。

 

 

「来るか!」

 

 

女に緊張が走る、ラバックの力を熟知しているから。

 

 

ババババババババ!!

 

 

ラバックは糸を編み上げて長い棒を造り出した。

 

 

 

「束なれ俺の糸!!そしてっ!!」

 

 

 

ラバックは棒を頭上に持ち上げてぐるぐる回転させた。

 

 

「高まれ遠心力っ!!」

 

 

女はラバックを注意深く観察している、そして女は口を開いた。

 

 

「隙だらけだぞラバ」

 

「そんなことねえさ」

 

女はキョトンとした、腑に落ちなかったから。

 

 

おかしい・・・ラバがそのことに気づかないわけがない・・・あんな派手で目立つだけの技・・・ん、目立つ!?

 

 

女はラバックの後ろを方を見た、するとエア達の姿はなかった。

 

 

あっ、いない、いつの間に・・・そうか、ラバが私の目を引き付けている間にあいつらを逃がす気か・・・

 

 

女はラバックに一杯食わされて歯ぎしりをした。

 

 

まずい、人混みの中に紛れたら捕まえられなくなる・・・女の顔に焦りの色が浮かんだ。

 

 

「どけ、ラバ、お前に構っている暇はない!!」

 

女はエア達を追うべく駆け出した、すると後ろからラバックが女を取り押さえた、そしてラバックは女の胸を揉みはじめた。

 

 

もにもにもにもに

 

「な、何をする!?」

 

「行かせないよ、姐さん」

 

「てめっ、どこ触ってる!!」

 

女は顔を赤くしてラバックを睨みつけるもラバックは動じない、そしてもみ合っている内に女の衣装がズレ落ちて巨乳が丸出しになった。

 

 

「い、いい加減にしろ!!」

 

 

女のアッパーがラバックを空高く吹っ飛ばした、そして地面に落ちていった。

 

 

「いけねっ、本気で殴っちゃった・・・生きてるかな?」

 

女が駆け寄るとラバックは気絶してるが生きていた。

 

 

「ラバはしぶといから大丈夫だろう・・・にしても」

 

女の表情がみるみる内に険しくなっていく。

 

 

「あのガキども・・・獅子を怒らせるとどうなるか・・・みせてやる!!」

 

 

女の目は怒れる獣そのものであった。

 

 

 

 

一方、エア達は全速力で走っていた、ファルは疲労しているエアを支えながら必死に走っている。

 

 

「大丈夫かな?ラバックさん」

 

「わかりません・・・でもラバックさんは逃げるように私達に合図しましたから」

 

「とにかく遠くへ逃げよう」

 

 

必死に走る三人の前に突然人影が現れた、あの女である、女はエア達に向かって駆け出した。

 

 

あの女の人が向かって来る・・・どうしよう・・・エアが戸惑っているとファルが前へ出た、そして腕輪を構えて。

 

 

「眠れ!」

 

 

腕輪が光り輝き、女を照らした、ファルはしてやったりの顔である。

 

 

どんな殺し屋でも眠らせればどうってことは・・・だが女はファルの思惑に反して眠らなかった。

 

何で?と思った瞬間、ルナとファルは女に首を掴まれた。

 

 

「・・・」

 

首を絞められ二人はしゃべることができない、エアはただうろたえるしかなかった。

 

 

一体どうして・・・ファルが疑念に思う中、女の耳から血が出ているのを見た、まさかこいつ耳を潰して・・・

 

 

「そうだよ、帝具を防ぐためにあらかじめ鼓膜を潰しておいたんだ、お前らの帝具、声で操るんだろう」

 

それだけのために鼓膜を・・・こいつ頭おかしいんじゃないか・・・ファルはそう思わずにはいられなかった、その瞬間、耳の中からシュウウウという音がした。

 

 

「今のは!?」

 

「私の鼓膜が治癒されたんだよ」

 

女はご丁寧に説明した。

 

 

「痛くないんですか?」

 

「痛いに決まってるんだろ」

 

「何でそこまで・・・」

 

「任務を果たすためだよ」

 

エアは女の迫力に圧倒されている。

 

「ナメたマネをされたままじゃ示しがつかないからな、私達の稼業は一度ナメられたら終わりだからな」

 

「・・・」

 

「それにラバの粛清もかかってるからな」

 

「た、立て替えで?」

 

「そうだ、このことが帝都に知れ渡れば殺し屋稼業は廃業になりかねん」

 

「は、廃業!?」

 

「依頼人全てが後払い要求してくるだろう、そうなれば依頼料の踏み倒しし放題だ」

 

呆然としているエアの後ろから人がやってきた。

 

 

「姐さん・・・その娘達を放すんだ・・・一緒に帝都から逃げなきゃならないんだ・・・」

 

ラバックがフラフラになりながらも駆けつけた。

 

・・・おもいっきり殴ったのにまだ解けないのか・・・あらためてこの帝具のすごさを思い知ったのであった。

 

 

「今すぐラバの洗脳を解け」

 

「えっ!?そんなこと言われても・・・」

 

「やらないとこの二人を殺す!!」

 

エアは必死に考えた、だが、解き方なんて知らない、だけど二人を助けるためになにかをしなくてはならなかった。

 

 

「あの・・・もういいんです・・・逃げなくていいんです」

 

エアにはそれしかできなかった、その瞬間ラバックの様子が変わった。

 

「そうか、わかった」

 

ラバックはあっさり承諾した、それを見て女は・・・こんな簡単に解けるのか?ただあっけにとられていた。

 

「とにかくお前ら私達と共に来てもらうぞ」

 

エア達は同意するしかなかった。

 

 

 

 

エア達は帝都にあるナイトレイドの地下アジトにいた、女に今までのいきさつを説明した。

 

「ふうん・・・骨董屋で見つけたのか、私のと似てるな」

 

「レオーネさんのもですか?」

 

この女の名前はレオーネ、ベルトの帝具を所有している殺し屋である。

 

「ああ、私のは闇市で買ったんだよ、波長が合わなければただのベルトだからな」

 

「すごい偶然ですね」

 

「お前らの帝具も相当変わってるぞ、何しろ一種の帝具で三人同時に適合するんだからな」

 

「俺もまさか君達が帝具の所有者だとは思わなかったよ」

 

「まあ、依頼の交渉する際も油断は禁物ってことだ、ラバ、お前、この帝具を持って先にアジトへ戻れ」

 

「えっ?姐さんは戻らないの?」

 

「私は少し休んでからいくよ」

 

「この娘達は?」

 

「私と一緒の方が都合いいだろ」

 

「わかった、先に行ってるよ」

 

 

 

ラバは一人でアジトに帰還した、そしてナジェンダに事の一部始終を報告した。

 

「こんな帝具があるとはな・・・まあ、帝国が所有していなかったのは幸いだ、もし帝国に使用されていたら我々は窮地に陥っていた」

 

この腕輪を使えばアジトの位置を簡単に自白され、大軍で包囲されていただろう。

 

「ラバ、お前、レオーネとその少女達を連れて来い」

 

「わかった」

 

ラバは再び帝都へ向かった、そしてレオーネとエア達を連れてアジトに帰還したのは16時間後だった。

 

 

「・・・ずいぶん早い帰還だな」

 

「いやあ、それほどでも」

 

ナジェンダは皮肉を言ったつもりだった、レオーネは動じていない。

 

「姐さん泥酔しててさ、俺が起こそうとしたらボディブロー繰り出してきたんだよ、それで失神しちゃってさ」

 

「・・・とにかくその話は後だ」

 

 

 

ナジェンダはエア達の方を向き鋭い眼光を放った。

 

「ずいぶん好き勝手やってくれたな、子供でも容赦しないぞ」

 

ナジェンダの迫力にエアとルナは怯んだがファルは怯まなかった。

 

「あんた達人々を救おうとしている革命軍なんだろ!?」

 

「な、なぜそれを・・・レオーネから聞いたんだな」

 

「はい、酔って色々教えてくれました」

 

エアは少し気まずそうであった。

 

 

「・・・まさか、私達の帝具のこともか?」

 

「・・・はい」

 

「・・・お前今後酒禁止だ」

 

ナジェンダは心底あきれていた、レオーネはその瞬間血相を変えた。

 

「お願いだからそれだけは勘弁して!!」

 

「ダメだ」

 

「私の生きがいを取らないで、どんなお仕置きでも受けるから!!」

 

「ダメだ」

 

「酒がなくなったら私は抜け殻になっちゃうよ、ナイトレイドにとっても痛手だよ!!」

 

「ダメだ」

 

「アカメ、一生のお願いだからとりなして!!」

 

「お前の一生のお願いは何度目だ?」

 

「今回が本当に一生のお願いだから、お願い!!」

 

「・・・わかった」

 

そう言っているがまた同じことを繰り返すんだろうな・・・そう思いつつアカメはナジェンダをとりなした。

 

 

「ボス、なんとか大目に見てくれないか」

 

「・・・全くしょうがないな、アカメに免じて今回は大目に見てやる」

 

「ボス、アカメ、ありがとう!!」

 

レオーネは大はしゃぎで喜んでいる、その光景を見てエア達はナイトレイドが凶悪な殺し屋集団というイメージはなかった、そしてエア達はある決意をしていた。

 

 

「あの・・・私達を革命軍に入れてくれませんか!?」

 

「何だと!?」

 

ナジェンダ達はエア達の行動を全く予想していなかった。

 

「私達の帝具なら少しはお手伝いできるかもしれないと思いまして」

 

「これは遊びじゃないぞ」

 

「わかってます、私達の村もひどいことになっていますから、なんとかしたいんです」

 

「下手をすれば死ぬぞ」

 

「わかってます」

 

「覚悟の上だよ」

 

ルナとファルも同じ気持ちだった、ナジェンダは三人の決意は本物と見た。

 

「・・・とにかく一度本部に報告しなければならん、私の一存では決められんからな」

 

「はい」

 

「最後に言っておく、一度入れば後戻りできんぞ」

 

「はい!」

 

三人の目は覚悟に満ちていた、ナジェンダはそれを察した。

 

「本部に報告書を出す、お前達のことも書いておく」

 

「ありがとうございます」

 

 

するとラバックがエア達の元へ詰め寄ってきた。

 

「ラバックさん、あの・・・色々すいませんでした」

 

「それはいい、俺がヘマしたんだからな、けど・・・」

 

ラバはエアの顔面へ寸止めのパンチを繰り出した。

 

「・・・」

 

エアはビックリして放心状態である。

 

「俺を帝都から逃がそうとしたことは許せねえな」

 

「で、でも、そうしないとラバックさん粛清されちゃうから・・・」

 

「そうなったら甘んじて受けるさ、その覚悟でここにいるんだからな」

 

ラバはエアをキッと睨みつけた、その瞬間エアの鼓動が早くなった。

 

 

・・・な、何?ラバックさんの顔を見た瞬間ドキドキしてきた、これって何?

 

 

エアはこの気持ちが何なのかその時はわからなかった。

 

 

「ラバ、かっこつけてるけど私にしたこと覚えてるよな」

 

今度はレオーネがラバに詰め寄ってきた、ラバは気まずそうである。

 

 

「ボスに黙っててやるから有り金よこせ」

 

「そ、そんな!?」

 

「いいのかな、あのことボスに知られても」

 

「わかったよ、わかった!」

 

ラバは泣く泣く有り金を渡すことになってしまった、その後レオーネはその金をばくちで全部すったのであった。

 

 

 

 

 

現在

 

 

そういやあの娘達あの後本部に行ったけどどうなったのかな・・・その瞬間、ラバの帝具に反応があった。

 

「糸に反応あり」

 

一同に緊張が走った。

 

「敵襲か!?」

 

「いや・・・この糸の反応は味方だ、あの糸は侵入者では反応できない位置にあるから」

 

 

味方、つまり革命軍の人ってことよね・・・一体誰なんだろう、サヨはそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で五十話に達しました、初投稿から半年ちょっと経ちました、あいからわず下手くそな文章ですが、次は百話を目指して頑張ります、いつになるかわかりませんが、これからもよろしくお願いします。


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革命軍編
第五十話


   誤算を斬る(前編)

 

 

 

突然の味方の訪問・・・一体なんだろう、ただ事ではないような気がする・・・とにかくその人に会えばわかるわね。

 

 

私達は会議室に移動した、しばらくして味方の人がアジトに到着し、会議室に入室した、味方の人は細身の中年の男性だった、一目見てその人が場数をこなしてきた手だれだとわかった、そしてその後ろに三人の女の子がいた、正直に言って強いとは思えなかった、どちらかと言えば素人に近い。

 

 

「久しぶりだな、ナジェンダ」

 

「・・・ジャド・・・まさかあなたが来るとは」

 

ボスを呼び捨て・・・ボスよりも上の人なのかな?

 

「あの、ボス、どなたですか?」

 

「ああ、彼の名はジャド、密偵チームの隊長だ」

 

密偵チームの隊長?何でここに?それに後ろの女の子も気になる・・・

 

 

「エアちゃん達久しぶりだね」

 

ラバが笑顔で女の子達に挨拶した。

 

「ラ、ラバックさん、お久しぶりです」

 

帽子をかぶった女の子が返事した、顔が少し赤いのは気のせいだろうか。

 

「皆さんお久しぶりです」

 

青い髪の毛の女の子は三人の中で一番落ち着いた雰囲気を感じる。

 

「ヤッホー、ラバックさん、あれからナジェンダさんとの・・・」

 

「わー!!わー!!」

 

ラバが取り乱している、ひょっとしてこの娘達ラバの気持ち知ってるのかな?

 

「あれ、ラバックさんひょっとしてまだなの?」

 

「何のことだ、ラバ?」

 

「な、何でもありません!」

 

ラバ・・・汗まみれだ、気持ちわかるけど・・・それにしても黄色の髪の毛の娘大胆ね。

 

「あの、この娘達は?」

 

「ああ、私が説明しよう」

 

ボスがこの娘達の説明をした、依頼料立て替え事件・・・操作系の帝具・・・ナイトレイドの活動開始の頃にそんなことがあったなんて。

 

 

「にしても依頼料立て替えは御法度なのか」

 

イエヤスがつぶやくとラバが。

 

「当たり前だろ、プロは甘くないんだよ」

 

「でもお前やっちまったんだろ」

 

 

「!!」

 

ラバは痛いところをつかれて顔が引きつっている。

 

「なあ、お前らのその衣装、密偵チームの制服か?」

 

イエヤスはエア達の衣装が気になったようだ、三人共ミニスカートでかわいかった。

 

 

「いいでしょこの服、密偵チームのお姉さんが着てたのを真似たんだけど」

 

エアは赤、ルナは青、ファルは黄色のミニスカートである。

 

「へえ、いいじゃんよく似合ってるよ」

 

イエヤスは衣装を褒めた、三人はとても喜んだがジャドはなぜか落ち込んでいる。

 

 

「・・・ちっともよかねえよ・・・そいつらの衣装代、俺が自腹切るはめになったんだぞ」

 

心からへこんでいる、かなりかかったようである。

 

「ところで三人とも背が伸びたね、特にファルちゃんが」

 

「でしょ、ラバックさん、私見違えたでしょ」

 

「でも、胸は大きくなりませんでしたけど」

 

「ルナ、うっさい!」

 

ルナの一言にファルはツッコミをいれた、結構気にしているようだ。

 

 

「いいじゃない、胸の大きさなんて・・・」

 

エアがファルをなだめるがファルはさらに怒った。

 

「その胸が言うかー!!」

 

ファルは怒りに任せてエアの胸を揉んだ。

 

「ひゃあ!?何するの!?」

 

「あんたは前から胸けっこうあるなと思っていたけどますます大きくなって!!」

 

「わ、私が望んだんじゃないよ・・・勝手に大きくなっただけだよ・・・」

 

「ますます許さん!!」

 

もにもにもにもに

 

ファルはエアの胸を揉み続けている、それを見てジャドは呆れたようにつぶやいた。

 

 

「・・・こいつら、いつもこうなんだよ、やってられねえよ・・・」

 

「ジャドさん、ぼやいてばかりだとハゲますよ」

 

「これは剃ってんだ、ハゲじゃねえ!」

 

「でも、薄いから剃ってるんですよね」

 

「うっ・・・」

 

ルナの指摘にジャドは言葉が詰まった。

 

「はあ・・・何が悲しくてガキどものおもりしなくちゃならねえんだ・・・俺におもりを命じたあいつが恨めしいぜ」

 

 

今のこの人を見ると哀愁漂う中年にしか見えない、悪いけど密偵チームの隊長には見えない・・・

 

 

「ところであなたが直々にやって来たということはただ事ではないことが起きたのか?」

 

「そうだ」

 

一瞬でこの人の雰囲気が変わった、密偵チームの隊長は伊達ではない。

 

 

「いいニュースと悪いニュース、どっちから先に聞きたい?」

 

「ではいいニュースから頼む」

 

「わかった、では言うぞ」

 

 

 

ジャドはいいニュースの説明をした、それは北方で反帝国の勢力が大きくなってきているそうだ、その中心人物は以前私とシェーレが助けたチョウリであった、元大臣だけあって短期間でまとめあげた手腕はすごかった、秋頃には帝都へ進軍できるそうだ、ただ、目的は幼い皇帝を利用している奸臣を討ち皇帝を救いだすということである、革命軍としては大臣を討つという目的が共通しているのでひとまず協力体制をとるつもりである。

 

 

 

「まさにうれしい誤算だな、北が動くことで包囲網が強固になる」

 

ナジェンダは心から喜んだ、革命の成功に一歩近づいたから。

 

 

「じゃあ、悪いニュースを言うぞ、ちなみに悪いニュースは3つだ」

 

3つ!?一体なんだろう・・・緊張するわね・・・

 

 

「・・・西の異民族との交渉が決裂した」

 

その瞬間、サヨとイエヤス以外のメンバーの表情がこわばった、やはりただ事ではなかった。

 

「それは本当か?」

 

「ああ」

 

「なんてことだ・・・」

 

ボスの顔から笑顔が消えた、特にマインがショックを受けている。

 

「そんなにやばいのか?」

 

 

イエヤスの質問にボスは・・・

 

「やばいなんてものじゃない、革命そのものが消滅しかねない!」

 

ボスが動揺している、大ピンチなんだ・・・

 

 

「なぜこうなった・・・大筋で合意していたはずだ」

 

「・・・イシミ銀山知ってるか?」

 

「ああ、この帝国内で最大の銀山だろう、西の異民族に返還予定されて・・・まさか!?」

 

「ああ、交渉に向かったパスターとムールが勝手に銀山を返還予定地域から除外したんだよ、うまく交渉できると踏んだんだろうがものの10秒で決裂だ」

 

「勝手なマネを・・・本部は何も手を打たなかったわけないだろう」

 

「あれから使者を送ったが返事はない」

 

「そうか・・・」

 

ボスが頭を抱えている、しかもまだ悪いニュースは二つもあるのよね・・・

 

 

「・・・二つ目は・・総大将が倒れた」

 

再び騒然となった、イエヤスもさすがに驚いている、革命軍の指導者が倒れたのだ当然である。

 

 

「・・・交渉決裂がよほどショックだったんだろう」

 

「それで総大将の容態は!?」

 

「一命を取り留めたが意識が戻らない、最悪総大将抜きで帝国と決戦することになるかもしれない・・・」

 

 

「そうか・・・」

 

ボスがますます落ち込んだ・・・もう一つは何なの!?

 

 

「三つ目は・・・カプリコーンの連中が三獣士の帝具を持ち出して逃走した」

 

再び騒然した・・・私達が命懸けで確保した帝具を持ち出して逃走だなんて許せない!!

 

 

「カプリコーンってなんだ?」

 

確かに・・・一体何者なのかな・・・

 

 

「カプリコーンは地方の殺し屋のチームだ」

 

「えっ?確か地方のチームは全滅したはずじゃ・・・」

 

 

「それは北部のチームだ、地方のチームには北と南の二つがあるんだ」

 

 

なるほど・・・帝国は広いからね・・・一つじゃ大変だからか・・・

 

 

「そのカプリコーンは大きな失態を招いたため解散が決定されていた、おそらくあいつらは解散を撤回させるために手柄を立てようとしている」

 

「それってまさか・・・」

 

「ああ、あいつらはイェーガーズの首を手土産にするつもりだろう」

 

「あいつらの首を!?簡単にできるわけないだろう」

 

「ああ、だがあいつらはそのために囚人兵も連れ出して逃走した」

 

「囚人兵!?」

 

「革命軍の軍律を破って略奪を行った奴らだ、近日中に処刑が決まっていた」

 

「処刑!?」

 

「そうだ、示しをつけないといけないからな、お前らも気をつけろよ、軍律破ったら厳罰だからな」

 

「いっ!?」

 

厳罰のことばにイエヤスはびびった。

 

「そう臆すな、ようは一般人に危害を加えなければいいんだ」

 

ナジェンダの言葉にイエヤスはあることに気づいた。

 

「・・それって姐さんやばいんじゃ」

 

「何で?」

 

「だって姐さん俺達の金騙しとろうとしただろ」

 

「そんなことあったっけ?」

 

「姐さん・・・」

 

大丈夫なのかな・・・殉職する前に処刑されなければいいけど・・・イエヤスは心から思った。

 

 

「それはともかく今からあいつらの似顔絵見せるぞ」

 

 

カプリコーンのメンバーの似顔絵を見せられた、メンバーは三人である。

 

 

「あの・・・この人」

 

「ああ、こいつはリーダーのピエールだ」

 

「この人・・」

 

「こいつヤギによく似ているだろう」

 

よく似ている?これはヤギそのものと言った方が・・・

 

 

「このオッサン変な仮面かぶってるな」

 

「ああ、こいつはダン、仮面の帝具バルザックの使い手だ」

 

バルザック・・・確か文献にあった帝具・・・潜在能力を100%発揮できることができる帝具・・・

 

「そいつは革命軍の中でも指折りのガタイを持つ奴だ、強いぞ」

 

「この眼鏡をかけた女性は?」

 

「そいつはローグ、元焼却部隊の一員だった奴だ」

 

焼却部隊・・・確かボルスが所属していた部隊ね・・・大勢の人を殺してきた部隊と聞いているけど・・・

 

 

「三人とも帝具使いだ、特にダンとローグはかなり強いぞ、ナイトレイドと同じくらいの強さだろう」

 

「それほどですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 

ナイトレイドと同じくらいの強さ・・・革命軍にはそんな腕利きがいるのね。

 

 

「とにかく時間がない、詳しいことは移動しながら説明する」

 

「時間がない?」

 

「いつあいつらが帝都に到着するかわからんからな」

 

「みんな、聞いての通りだ急いで帝都に向かうぞ」

 

「了解!」

 

ナイトレイドのメンバー全員が駆け足でアジトを後にした、不安を抱いて・・・

 

 

 

 

その頃、帝都でも騒動が起こっていた、イェーガーズのクロメとウェイブが何者かに襲撃されその襲撃者を追跡していたのである、城壁の外側まで追跡が続いていた。

 

「あいつ、なかなか足が速いな、追いつけない」

 

「うん」

 

「一瞬しか見てないがあいつヤギに似ていたな」

 

「と言うよりヤギそのものだったような・・・」

 

「とにかく捕まえればわかる」

 

「うん」

 

二人は襲撃者の追跡を続けた、すると突然頭上から岩が降ってきた。

 

「危ねえ!」

 

二人は間一髪かわした、そして瞬時に臨戦態勢をとった。

 

「待ち伏せか」

 

二人は周りを見回した、すると丘から人影が現れた、全部で六人である、その中にはあのヤギもいた。

 

 

「こいつらは?」

 

「あの衣服・・・反乱軍のだよ」

 

「反乱軍!?」

 

反乱軍・・・帝都から遥か南に拠点を持つ反帝国集団・・・なぜここに・・・

 

 

「・・・クロメにウェイブ、イェーガーズの中でもお前達は標的だ、覚悟してもらうぞ!」

 

・・・なんてな、最初に見つけたのがこいつらだっただけなのなが、まあ、実際、クロメは標的になっているわけだし、好都合じゃわい・・・

 

 

などとヤギが思っていることなどウェイブ達は想像もしない。

 

「俺達は簡単にはやられたりしないぜ!」

 

「うん、そうだよ」

 

二人は自信満々で相づちを打った、この時はヤギが帝具使いだとは思いもしなかった。

 

「じゃあ、これでも喰らいな!!」

 

突然長身の赤髪の女が攻撃してきた、見る限り爆弾に見えた。

 

「避けたらクロメが危ないな、よし!」

 

ウェイブはジャンプして爆弾に突っ込んで行った。

 

 

ドォオオオン!!

 

 

轟音とともに爆発が起こった、辺りに黒い煙がたちこめている、その中からウェイブが飛び出した、無傷であった。

 

 

・・・あらかじめ帝具を装着していてよかったぜ・・・この攻撃、帝具だな・・・あの女の帝具・・・ボルスさんの帝具に似てるな・・・何者なんだ?

 

この女が元焼却部隊だとはこの時知るよしもなかった。

 

 

この女・・・やっかいだな、早めに仕留める!

 

 

ウェイブはこのまま急降下して女に蹴りを食らわそうとした、だが、仮面の大男がそれを阻止した。

 

 

・・・こいつ・・・かなり強え・・・すげえ力だ・・・

 

 

ウェイブは態勢を立て直して着地した、クロメがウェイブの元へ駆け寄った。

 

「大丈夫!?」

 

「ああ、それにしてもあいつら強ええな」

 

「うん、特に女と大男はすごく強いよ」

 

「ああ、俺達と同じくらいの強さだな」

 

二人は女と大男の強さを認めた。

 

 

「援軍が来るまで粘るか?」

 

「ううん、その必要はないよ」

 

クロメは刀を抜いて構えた、ヤギ達はそれが帝具八房であることを知っていた。

 

 

八房を使うか・・・死体を操る帝具か・・・だが、ダンやローグには敵わないじゃろう・・・

 

 

ヤギは余裕だった、この時までは・・・

 

 

「その帝具、確か死体を操る能力だったな」

 

「うん、きっとウェイブビックリするよ」

 

 

クロメは楽しそうであった、ウェイブの驚く顔が目に浮かんだからであった、そしてクロメは八房を発動した、その瞬間大地が大きく揺れた。

 

 

「地震か?」

 

地震ではなかった、地面から複数の影が現れた、そして巨大な手が現れた。

 

 

「・・・」

 

ヤギはア然としていた、それは巨大な危険種のガイコツだった、その足元には人や危険種の姿もあった、いずれも強そうな死体だった。

 

 

「マジか!?」

 

「こ、これは?」

 

ローグとダンもその迫力に開いた口がふさがらなかった。

 

 

八体の人形を見てウェイブも呆然としていた。

 

「どう、ビックリしたでしょ」

 

「・・・これはたまげたぜ」

 

ここまですげえとは・・・改めて帝具って奴はすげえと思うぜ・・・

 

 

一方、ヤギ達はビックリしたじゃ済まされなかった、この人形全部と戦うことになるのだから。

 

 

なんてことだ・・・完全に予定が狂ったわい・・・こんなことになるとは・・・

 

ヤギは歯ぎしりをした、形勢が逆転したからである。

 

 

「ピエールさんどうしますか?」

 

ダンが問いかけた、戦うか逃げるかだが・・・

 

「決まっておろう、我等には後がないのだぞ!」

 

「わかりました」

 

ダンも腹をくくって戦う決意をした。

 

「そうこなくっちゃな」

 

ローグは戦う気満々であった。

 

 

イェーガーズの首を手土産にしなければ我輩は終わりだ、やるしかない!

 

 

一方、クロメは準備を終えて気合い十分だった。

 

「さあ、帝具戦の始まりだ、何人死ぬかなあ?」

 

今まさに帝国軍と革命軍の帝具戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回から革命軍編が始まります、この話で革命軍の権力争いを少し書きました、オリジナルキャラクターも登場させました、今回も文章が下手でわかりにくいかもしれませんがよろしくお願いします。


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第五十一話

カプリコーンとイェーガーズの帝具戦が始まりました、この戦いの結末はどうなるのか、ぜひご覧ください。


   誤算を斬る(後編)

 

 

手柄を立てて解散を撤回させるべく行動したカプリコーンはクロメとウェイブを帝都外に誘いだすことに成功したが、クロメの八房により窮地に追い詰められた、この状況を覆すべく次の一手を打とうとしていた。

 

 

「お前達、渡した帝具で戦え!!」

 

ピエールは囚人兵に命令を下した、だが彼らは消極的であった。

 

 

「し、しかし、いざという時まで戦わなくてもいいって・・・」

 

「バカモン!!今がその時だろう!!」

 

囚人兵はあわてて帝具を使用しようとした、それを見てウェイブは囚人兵に突撃を開始した。

 

 

「そうはさせん!」

 

ウェイブは十分帝具に警戒していた、だがこの帝具には警戒は無意味だった。

 

囚人兵Aは笛を吹いた、すると音色を聞いたウェイブの動きが鈍った。

 

「な、なんだ?意識がもうろうと・・・」

 

ウェイブの足元がふらついた、かろうじて倒れなかったがこの隙を囚人兵Bは見逃さなかった。

 

「おおりゃああ!!」

 

斧を大きく振りかぶりウェイブに叩き込んだ、ウェイブは吹っ飛ばされたが鎧にはさほどダメージはなかった。

 

 

くっ、あの斧すげえ威力だ・・・使い手が凄腕だったらヤバかったな・・・

 

 

ウェイブの苦戦を見てクロメは眉をひそめている。

 

・・・ウェイブ、だらしない・・・仕方ないから助けてあげるか

 

 

その瞬間頭上から槍のようなものがクロメ目掛けて落ちてきた。

 

「当たらないよ、こんなの」

 

クロメは余裕でかわしていく、すると今度は津波が襲い掛かった、これはさすがにクロメも避け切れず津波に流されていった。

 

「よし、今の内に!」

 

ピエールは背中に背負っている紙のロールを引き延ばしてウェイブにぐるぐるに巻きつかせた。

 

 

「こんなものすぐに引きちぎって・・・なんだ引きちぎれねえ!?」

 

ウェイブは紙を引きちぎろうとしたがちぎれなかった。

 

 

「ただの紙じゃねえ、まさか!?」

 

「そのとうり、これは紙の帝具バフィマートじゃ、簡単にはちぎれんぞ!」

 

ピエールは高笑いで自慢していた、だが突然三人の囚人兵が苦しみだした。

 

 

「これは、まさか・・・拒絶反応か!?」

 

 

 

 

一方、その頃ナジェンダ達は全速力で帝都に向かっていた、その際にイエヤスは帝具の能力遠視を使って帝都の方を偵察していた。

 

 

「なんだ、突然苦しみ出したぞ」

 

イエヤスは囚人兵達が帝具を使用して苦しみだしたのを目撃していた。

 

「拒絶反応だな」

 

「拒絶反応!?」

 

サヨとイエヤスは拒絶反応という言葉に聞き覚えがあった、拒絶反応とは帝具と相性が合わなかったら起こる現象である。

 

「確か拒絶反応って最悪死ぬこともあるのよね・・・」

 

「ああ、そうだよ、拒絶反応で死んだ奴は少なくない」

 

ラバの表情は緊張に満ちている、拒絶反応で死んだ人を目の当たりにしたのかもしれない。

 

「ねえ、拒絶反応が出ても帝具使えるの?」

 

「まあ、使えなくはないけどマジで死んじまうな」

 

「あの人達それでも使うのかな?」

 

「そうかもしれんな、連中には後がないからな」

 

 

ナジェンダは淡々と語った、連中のことよりも帝具の方が大事だからである。

 

 

「急ぐぞ、エスデスが出てきたら手遅れになる」

 

ナジェンダが号令すると一同は再び走りだした。

 

 

 

拒絶反応が出た囚人兵を見てピエールは歯ぎしりをした。

 

「ちいっ、ダメか・・・一人くらいいけると思ったが・・・所詮クズはクズか・・・」

 

苦しんでいる囚人兵の近くにローグは近寄った。

 

 

「何をしている、拒絶反応が出ても帝具は使えるだろう」

 

ローグの冷酷な言葉に囚人兵はア然とした。

 

「何言ってるんだ死ぬほど苦しいんだぞ!!」

 

必死に訴えるもローグは意に介さなかった。

 

「知るか、戦え、それともアタシの手にかかって死ぬか?」

 

ローグは銃口を囚人兵に向けた、彼らの顔は真っ青になった。

 

「わ、わかった、戦う、戦うから!」

 

三人は慌てて帝具を構えた、拒絶反応が彼らを襲う、けれど必死に耐えていた。

 

「よし、お前達、ウェイブに総攻撃だ、今なら容易に仕留められるぞ!」

 

その時津波で流したはずのクロメがピエール達の前に現れた、クロメの全身はびしょ濡れだった。

 

 

 

ちいっ、もう戻ってきたか、ならば・・・

 

「おぬし、全身びしょ濡れでみだらになっておるぞ、そんないやらしい格好でよいのか!?」

 

ピエールはいやらしい目つきでクロメをジロジロ見ている、これはクロメを動揺させて隙を作る作戦だったがクロメには効果がなかった。

 

「私を動揺させようとしてるんでしょ、その手には乗らないよ」

 

クロメも恥じらいはなくはなかったが任務を遂行する意思の方が強かった。

 

「ちっ、効果なしか・・・ならば力で仕留める!」

 

「私は簡単にはやられないよ、みんなかかって!」

 

クロメは人形達にピエール達に攻撃を命じた、人形達は一斉に襲い掛かった。

 

 

金髪の女は銃で、赤髪の男は鞭で攻撃してきた、二人とも凄腕だった、ピエールは回避で精一杯だった。

 

「ピエールさん!」

 

ダンは救援に向かったが猿とガイコツの怪獣に阻まれた。

 

 

「これはキツイですね・・・ローグさん、頼みます!」

 

「ちっ、わかったよ」

 

ローグはピエールを救援すべく向かったが、ローグも仮面のマント男とスキンヘッドの男に阻まれた。

 

 

「しゃらくさい!」

 

ローグは帝具で爆弾を打ち出した。

 

ドォオオオン!!

 

爆弾はスキンヘッドに直撃した、ローグは爆砕したと確信した、だが・・・

 

「何!?」

 

スキンヘッドは盾でガードしていた、スキンヘッドは無傷だった。

 

「ちっ、なんて固い盾だ、だが何度も防げないだろう」

 

ローグは銃口を構え攻撃をしようとしたがマント男がぬらりと攻撃してきた、ローグはなんとか回避した。

 

 

「やばいな、こいつ動きが読みずらい」

 

マント男のトリッキーな攻撃にてこずっている、ピエールは囚人兵にクロメに攻撃するよう指示した。

 

「接近戦は不利だ、離れて攻撃しろ!」

 

「わかった」

 

三人はそれぞれ遠距離攻撃を開始した、クロメは難なくかわしていく、ピエールもそれで倒せるとは思っていなかった、足止めができればよしと思っている。

 

 

「今のうちにあの人形達を・・・何!?」

 

突然ピエールは何かに捕まった、それは舌であった、巨大なカエルがピエールを舌で捕らえた。

 

「そのカエルはお腹の中にある溶解液で何でも溶かすよ、バイバイだね」

 

クロメはニッコリ微笑んだ、残酷な微笑みであった。

 

 

「わ、我輩はこんなところで死なんぞ!!見てろ・・」

 

 

カエルはあっという間にピエールを飲み込んだ。

 

「さて、あと二人か」

 

 

クロメは囚人兵は数に入れてなかった。

 

 

「ピエールさん!?」

 

後ろを振り向いた瞬間、ガイコツの怪獣はダンを踏み潰しにかかった。

 

 

ズウン!!

 

 

ダンは踏み潰された、そう思われたがダンは帝具を発動してガイコツの足の裏を両腕で支えていた、ダンの足回りの地面は亀裂が入っている。

 

 

「ふううん!!」

 

 

ダンはおもいっきり両腕を振り上げた、ガイコツはバランスを崩して轟音とともに地面に倒れた。

 

 

「はあ、はあ、はあ・・・」

 

ダンは大きく息を切らしていた、その瞬間、猿が突撃を仕掛けた、猿の剛腕がダンを仕留めたかに見えた、しかしダンのラリアットが猿の頭を木っ端みじんにした。

 

 

 

一方、ローグはマント男のトリッキーな攻撃にてこずっていた、スキンヘッドの蹴りも凄まじかった、ローグはじわじわと追い詰められていった、マント男はローグの額をナイフで貫こうとした。

 

 

「調子に乗るな!!」

 

ローグは一瞬早くマント男の頭を爆弾で吹っ飛ばした、頭を失ったマント男はそのまま地に伏した。

 

 

「へえ、エイプマンに続いてヘンターまで・・・あなた達やるわね・・・」

 

 

その時側にいたカエルの体内から鋭利な刃物が突き出した。

 

 

「何?まさかあのヤギが?強力な溶解液で溶けてないの?損壊部分は確かきちんと埋めたはずなのに・・・」

 

 

ポカンとしているクロメにお構いなく刃物はカエルをずたずたに切り割いている、そしてカエルはバラバラに飛び散った、中からピエールが現れた、無傷だった。

 

 

「ふう、危なかったわい・・・紙で舟を作らなければおだぶつだったわい」

 

ピエールは手で汗を拭った、ローグはピエールに悪態をついた。

 

 

「そんなカエルにてこずるとはだらし無いぞ・・・」

 

その瞬間、ローグは背後に鋭いものを感じた、それは首を失ったヘンターだった、ヘンターはローグの首を狙っている、ローグは振り返り帝具でガードした。

 

 

 

「こいつ・・・頭なしでも動けるのか!?」

 

「人形だから心臓貫いても頭失っても動き続けるよ」

 

 

クロメはクスッと笑っている、それを見てローグはムカッとした。

 

「じゃあ、これならどうだ!」

 

ローグは胴体に狙いをつけて爆弾を発射した、ヘンターは胴体が木っ端みじんになった、今度こそ動きが止まった。

 

 

「へえ、やるじゃない・・・でもまだまだ負けないよ」

 

 

クロメが刀を構えたとき何者かがやってきた、それはセリューとボルスだった。

 

 

「大丈夫ですか、ウェイブ君、クロメちゃん!?」

 

「ウェイブさんは・・・見ての通りです、何やってるんですか?」

 

セリューはウェイブを見て呆れている、そしてボルスはローグを見て驚いた。

 

「ローグさん!?」

 

「久しぶりだな、ボルス」

 

ボルスの様子を見てセリューが質問した。

 

「知ってるんですか?あの賊を」

 

「・・・はい、彼女はかつての私の上官でした」

 

「そうなんですか、でも、今はただの賊です、私が成敗します!」

 

セリューは即座に突撃した、猪突猛進そのものであった。

 

「いけません!考えなしに突っ込んでは・・・」

 

ボルスの制止も聞かずセリューは突っ込んでいく、その時何かがセリューに襲いかかった。

 

 

「!?」

 

セリューはわけが分からないでいる、セリューを襲ったそれはスライム型の生物型臣具だった、スライムはセリューを包み込むように捕らえた、セリューは抜けだそうともがくが効果はなかった。

 

「やっと動きだしたな、これでセリューはおしまいだな」

 

 

この臣具は本部の倉庫に放置されていたものである、それをピエールが戦力として組み込んだのである、このスライムは取り込んだ標的を体内で溶かすことができるのである、ただし、美少女限定であるが・・・

 

 

「ふ、服が・・・」

 

セリューの服がみるみる溶け始めていた、やがて肉体も溶かすであろう。

 

「それにしても何故クロメを襲わなかったのでしょうか?」

 

「クロメはドーピングをしているんだろう、それでだろ」

 

首を傾げるダンにローグはぶっきらぼうに答えた、二人はそれで納得した、他にも理由があることを想像せずに。

 

 

 

コロはセリューを助けようとスライムを引きちぎろうとした、だが、スライムであるため伸びて引きちぎれない。

 

 

「ルビカンテで焼きますか・・・いや、セリューさんも巻き込んでしまう、どうすれば・・・」

 

ボルスはセリューを助けようと思案していたがまとまらなかった、その時殺気を感じた。

 

 

「危ない!」

 

飛んできた爆弾を察知してかろうじて爆発から逃れた、そしてボルスの前にローグが現れた。

 

 

「久しぶりだなボルス、早速戦るか」

 

「ローグさん・・・」

 

 

ボルスは戸惑っていた、ボルスはローグと戦いたくなかった、それは・・・

 

 

「お前、まだあのことを気にしてるののか?」

 

「それは・・・」

 

 

 

 

 

7年前・・・

 

 

「ぐわっ!!」

 

ボルスは危険種に胸を爪で切り裂かれた。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「む、胸をやられました・・・」

 

「ああ、ザックリやられてるな」

 

「ち、血が止まりません・・・」

 

傷から血がドクドク出ていた。

 

「この危険種の爪には出血毒がべったりついているからな」

 

「・・・どうやら私はここまでですね、報いを受ける時が来ましたか」

 

観念したボルスを尻目にローグは銃口から火薬を傷口にまいた、そしてボワッと火が上がった。

 

 

「あああああ!!」

 

ボルスは激痛で悲鳴を上げた。

 

 

「この毒は熱に弱い、これであらかた消えただろう」

 

胸に火傷ができたが、それで出血は止まった。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

「勘違いするな、お前が死んだらそのデカブツ、アタシが運ばないといけないだろ」

 

「そうですね・・・でも感謝しています」

 

「好きにしろ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「あの時も言ったがあれはアタシのためにやったんだ、お前が気にすることはない」

 

むろんそのとうりだが、ボルスにとってはローグは命の恩人である。

 

「アタシは勝手にやらせてもらうぞ」

 

ローグは銃口をボルスに向けた、だがボルスはまだ吹っ切れていなかった、その時。

 

「ちょっと待った!!」

 

右側からウェイブが駆けつけた、動きを封じていた紙をようやく引きちぎったのである。

 

 

「お前の相手は俺だ!」

 

ウェイブは勇ましく叫んだ、だが、ローグは全く動じていない、その表情は余裕に満ちていた。

 

 

「お前じゃ、アタシの相手はつとまらないよ」

 

「そんなことはねえ、この鎧には爆弾は有効じゃねえぞ」

 

「試して見るか?」

 

「ああ、上等だ!」

 

ウェイブはローグに突っ込んで行った、ローグはウェイブにあるものを発射した、それは・・・

 

 

ベチャ!!

 

 

ウェイブの顔にガムみたいなものが張り付いた、ボルスはそれを見て絶句した。

 

「なんだこれ?」

 

「いけない、ウェイブ君、今すぐそれを剥がして!!」

 

ウェイブがそれを剥がす前に突然ガムが激しく燃え上がった。

 

「こんな炎、この鎧にはどうってことは・・・」

 

突然ウェイブは苦しみだした、ウェイブは呼吸が全くできなかった。

 

 

 

「な、なんだ?」

 

ウェイブは何が何だかわからなかった、今もウェイブの頭を炎が包んでいる。

 

「その鎧には炎が効かないが、周りの酸素は燃やすことはできる、お前がどれだけ強くても息ができなければ死ぬだろ」

 

 

ローグはしてやったりの顔をしていた、ボルスはローグの企みをもっと早く気付かなかったことを後悔していた。

 

「ウェイブ君・・・」

 

ボルスはルビカンテの炎で火薬を焼き払おうと思ったが、今度はルビカンテの炎でウェイブが焼かれてしまうのでできなかった。

 

 

「どうだ、アタシの火薬を司る帝具バハムートはすごいだろ!」

 

ローグは勝ちを確信していた、その間もウェイブは呼吸ができず苦しんでいる。

 

 

お、俺、こんなところで死んじまうのか!?

 

 

ウェイブの意識は少しずつ薄れていった、ウェイブを包んでいる炎はさらに激しく燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり小説でバトルシーンを造るのは難しいですね、つくづく自分の文才のなさを嘆きます、とにかく、次回をお楽しみに。


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第五十二話

帝具戦も激しくなってきました、続きをご覧ください。


 恩人を斬る(前編)

      

 

ウェイブは頭に粘着性のあるガム状の火薬を張り付かされ、頭を炎上されて呼吸を封じられていた。

 

「あああああ!!」

 

ウェイブは呼吸ができず窒息寸前だった、ボルスはてをこまねいているわけにはいかなかった。

 

 

こうなったら直接手で引きはがします!

 

 

ボルスの体は火耐性をあげる儀式を受けており多少火に強かった、ボルスはウェイブの元へ駆け寄ろうとすると。

 

 

「させないぞ!」

 

ローグはボルスに爆弾を発射した、ボルスは炎を発射して空中で爆発させた、砂ぼこりが辺りに撒き散った、ボルスは目に砂が入らないように手で覆った、その瞬間、ローグはボルスの懐へ移動していた。

 

「しまっ・・・」

 

ボルスが防御をする前にローグは地獄突きでボルスの喉をついた。

 

 

「がはっ!!」

 

ボルスは吐血をして膝を地についた、ボルスも呼吸が思うようにできなかった。

 

「前にも言ったが、そのデカブツは連射ができない、懐に入られたら終わりだと、お前はあいからわず戦いのセンスがないな」

 

 

・・・確かに、私にはセンスがありません・・・私の取り柄はタフなことだけです・・・

 

 

ボルスは力を振り絞り立ち上がった、ローグはさほど驚いていない。

 

 

「タフさだけはたいしたものだ、次でけりを付ける」

 

ローグは銃口をボルスに向けた、一方、ウェイブは呼吸ができず窒息寸前だった。

 

 

・・・俺はここで終わっちまうのか・・・母ちゃん・・じいちゃん・・・みんな、すまねえ・・・

 

 

ウェイブが観念したその瞬間、突然ウェイブの頭が氷に包まれた。

 

 

何だ!?これはまさか・・・ウェイブは確信した、あの人がやってきたんだと・・・

 

 

セリューを取り込んでいたスライムも一瞬で凍り付いていた、セリューの生死はわからない、多分生きているだろう、ウェイブは氷を拳で砕いて深呼吸をした、空気がとてもうまかった。

 

 

「全く、ふがいないぞ」

 

 

その場にいた全員が声がした方角を向いた、そこには帝国最強の将軍エスデスがいた、ただ立っているだけで圧倒的な威圧感があふれていた。

 

「隊長、すいません、助かりました」

 

「礼はいい、後で鞭打ちだからな」

 

「えっ!?」

 

ウェイブにとっては一難去ってまた一難である、一方、エスデスを見たピエールはすっかり青ざめていた。

 

「な、なんてことだ・・・エスデスが来てしまうとは・・・」

 

手柄が欲しいピエールもさすがにエスデスと戦うのは絶対避けたかったのであった、エスデスが来る前にイェーガーズの首をとって退散するつもりだったのであった、だが、ローグはエスデスの姿を見て笑みを浮かべていた。

 

 

「エスデスか、帝国最強の女か・・・相手にとって不足はないぜ!!」

 

 

 

ローグはエスデスに向けて爆弾を発射した、爆弾はエスデスに向かって飛んでいく、だが突然爆発した。

 

 

「何だ!?」

 

ローグが辺りを見渡すと空中に人影があった、翼を大きく広げた人がいた、それはまるで天使のようであった。

 

 

「空を飛んでいる・・・あれも帝具か?」

 

文献で見たことがある、帝具マスティマ・・・空を飛ぶことができる能力である、イェーガーズにそんな奴もいるとは・・・面白い!!

 

 

「アタシが叩き落としてやるよ!」

 

ローグは爆弾を無数打ち出した、翼の男目掛けて爆弾だ飛んでいく、その時、翼から大量の羽が舞い上がり爆弾に目掛けて飛び出した、羽は爆弾を貫き爆発が起こった、辺りに黒煙が舞い上がった。

 

「ちっ、やるじゃないか、エスデスの前にお前を血祭りに上げてやる!!」

 

ローグの標的は翼の男になった、ローグは爆弾をさらに打ち出した、翼の男も迎撃する、空が爆発で埋め尽くされていく、壮絶な花火大会が開始された。

 

「ラン、そいつは任せたぞ」

 

「了解しました」

 

エスデスはランに命令を下し周囲を見回した。

 

・・・さて、どいつから蹂躙してやるか、久しぶりの帝具戦だ、思う存分楽しもう・・・

 

 

エスデスから凄まじい殺気があふれていた、周囲の森から動物や鳥が逃げ出している。

 

「化け物だ・・・」

 

「やってられるか!」

 

「逃げるぞ!」

 

 

三人の囚人兵はエスデスの殺気に怖じけづいた、そして一目散に逃げ出した。

 

「逃がさん!」

 

エスデスは目にも止まらぬ速さで三人の前を阻んだ、三人の表情には絶望しかなかった。

 

「こ、降参する、帝具も渡す、だから・・・」

 

三人は恥も外聞もなく命ごいをした、だがエスデスは聞く耳を持たなかった。

 

「降参は弱者の行為、そして弱者は淘汰されるものだ!」

 

弱肉強食こそエスデスの絶対の信念であった。

 

 

 

降参を跳ね退けられた三人の囚人兵は絶望した、だが、戦わなければ死あるのみだったから・・・

 

 

「こうなったらヤケクソだ!!」

 

 

囚人兵Bは斧を二つに分けてその一つをエスデスに投げつけた、エスデスはほとんど体を動かさずにかわした、そしてもう一つの斧を投げつけた、最初に投げた斧は180度曲がってエスデスの頭部に向かっている。

 

 

前後からの同時攻撃・・・避けられまい・・・

 

 

囚人兵Bの笑みを見て思惑を察したエスデスは鼻で笑った。

 

 

この程度の攻撃・・・避けるまでもない、エスデスは両手を使って向かって来る斧をパシッと受け止めた。

 

 

「バ、バカな・・・」

 

囚人兵Bは開いた口が塞がらなかった、人間技ではなかったから。

 

 

エスデスは斧を見つめていたが斧を手にしておもいっきり振り上げた。

 

「まさか、その帝具を使う気か!?一人で二つの帝具は使えないはずだ!!」

 

「確かに・・・私はこの帝具を使うことはできん、だが・・・」

 

エスデスは斧を力まかせに投げつけた、そしてそのまま囚人兵の胸に直撃した、ただし刃の部分ではなく柄の部分であるが・・・

 

「物としてぶつけることは可能だ」

 

 

囚人兵Bは吐血をしてそのまま動かなくなった、死体を見て残りの二人は呆然としていた。

 

 

「・・・」

 

エスデスは斧の帝具ベルヴァークを見て思い出していた。

 

 

 

 

 

 

「鍛練に精が出るな、ダイダラ」

 

 

「俺は最強になる夢をまだあきらめていませんぜ」

 

 

「ふっ、お前らしいな」

 

 

「いつの日か武人として手合わせをお願いしますぜ!」

 

 

「手は抜かんぞ」

 

 

「もちろんでさあ!」

 

 

 

 

 

 

「・・・あいつとの約束結局果たせなかったな」

 

 

エスデスはすぐに気持ちを切り替えて構えをとった、その有様を見てダンは今すぐエスデスに向かおうとした、その瞬間クロメが後ろから切りつけた、ダンはとっさに装備していたナックルで防御した。

 

 

「隊長の邪魔はさせない」

 

 

クロメ、アカメの妹だけあって強い・・・ダンは戦慄を感じていると右側から刃が向かってきた、ダンは後ろに下がって回避した、刃の向こう側にはマスクをした青年がいた、青年の武器はなぎなただった、ただそのなぎなたはただのなぎなたではない、柄が長い伸びていたのだ。

 

 

「あれは帝具?それとも臣具?どっちにしてもやっかいですね」

 

その間にもクロメの猛攻が続いた、防御だけで手一杯だった。

 

 

 

その頃、囚人兵Aはエスデスに向かって笛の帝具スクリームを使用した、音色が鳴り響いている、エスデスは無言で立ち尽くしていた。

 

 

「効いてる、このままエスデスを・・・」

 

 

突然囚人兵Aの首が胴体から切り飛ばされた、首があったところから血があふれ出ている。

 

 

「・・・ひどい音色だ、聞くに耐えん」

 

 

エスデスはひどい音色に不快をあらわにしていた、そしてスクリームを見つめている。

 

 

 

 

 

「どうですか、エスデス様?」

 

 

 

「何度聞いてもよくわからんな」

 

 

 

「まあ、急ぐ必要ありませんよ、少しずつゆっくり音色のよさをわかってください、時間はいっぱいあるんだから」

 

 

 

「私の気が向いたらまた聞かせてもらうぞ」

 

 

 

「はい、喜んで!」

 

 

 

 

 

「・・・あいつの音色、もっと真剣に聞いてやればよかったな」

 

 

そう思いつつもエスデスは残りの囚人兵に狙いを定めた、ピエールは二人やられて焦っていた。

 

 

「まずい、このままでは・・・」

 

 

ピエールがエスデスに不意打ちをかけようとした、するとウェイブがそれを阻んだ。

 

 

「させねえよ!!」

 

ウェイブはピエールに拳のラッシュを繰り出した、ピエールはのらりくらりと回避した、ピエールはウェイブにとても卑猥な言葉で挑発した、ウェイブは逆上して突っ込んで行った。

 

 

「全く単純な奴じゃわい」

 

 

ピエールはウェイブの口元に狙いを定めて紙を飛ばした、口元に紙が張り付いていく、ウェイブはたちまち息苦しくなった。

 

 

やべえ・・・また・・・だが隊長が今度も助けてくれるとは限らねえし、自力で切り抜ける!

 

 

ウェイブはピエールに仕掛けて行った、ピエールの身体能力が他の二人よりも劣ると判断して息があるうちに仕留めようとした、ピエールもこれは予想しておらず戸惑っていた。

 

 

「ちっ、攻撃に転ずるとは・・・こいつ思った程バカじゃないのか・・・ならば!」

 

 

ピエールはウェイブが息切れるまで粘る戦術を選んだ、ウェイブの攻撃を紙一重で回避している。

 

 

 

一方、最後の囚人兵は水を操る帝具ブラックマリンを使用した、無数の水の槍が造りだされていく、そしてエスデスに向かって行った、エスデスに次々と槍が直撃していった。

 

 

「やったぞ、エスデスを仕留めたぞ!」

 

そう叫んだ瞬間、エスデスに刺さった槍は瞬時に凍りついた、囚人兵は驚く間もなく一瞬で凍りついた、指輪をはめた右手を残して、そしてエスデスが指をパチンと鳴らすとコナゴナに砕け散った。

 

 

「くだらん・・・子供の水遊びの方がよほど興があるぞ」

 

 

エスデスは指にはめられたブラックマリンを見て思い出していた。

 

 

 

 

 

「いかがですか?」

 

 

 

「・・・」

 

 

 

「エスデス様?」

 

 

 

 

「・・・ああ、今回もなかなか強烈だったぞ」

 

 

 

「ありがとうございます、今回の料理に隠し味としてエビルバードのよだれを入れました」

 

 

 

 

「・・・そうか」

 

 

 

 

「次の料理はトリケプスのフルコースを予定しております」

 

 

 

 

「・・・そうか、楽しみにしているぞ」

 

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「・・・あいつの料理、あれはあれで趣があったな」

 

 

 

 

エスデスが囚人兵全員を仕留めてローグは決断をした。

 

 

「これはやばいな・・・早いとこあいつを仕留めるか」

 

 

ローグはランを仕留めるため、奥の手を使うことにした、銃口をランに向けた、だが、何も発射されない。

 

 

「!?」

 

 

ランは首を傾げた、何故攻撃をしてこないのか?帝具の故障か?下降して一気に猛攻をかけるべきか・・・そう判断しかけた瞬間、ランはゾクリとするものを感じた、この空域にとどまるのはまずい、ランは反射的に上昇した、すると、ランがいた空域に大爆発が起こった、ランは直撃は免れたものの体のあちこちにやけどを負った。

 

 

「一体何が・・・彼女は何も撃っていなかったはず・・・」

 

 

これこそバハムートの奥の手である、無色無臭の火薬を粒子にしてランの元まで飛ばしたのである。

 

 

ランはやけどの痛みで顔が歪んでいた、ランも決断すべきか迷っていた。

 

 

・・・奥の手を使いますか・・・いえ、今はまだその時ではありません。

 

 

 

ランは通常技で何とか持ちこたえる戦術を選んだ、すると・・・

 

 

 

「ランさん、私に任せて下がってください」

 

 

地獄突きから回復したボルスが立ち上がった、ランもこれに同意してボルスに託すことにした。

 

 

「いい度胸だな、いいぜ、相手になってやる!」

 

 

ローグはボルスに銃口を向けた、ボルスとの決着をつけるために。

 

 

 

まともに戦っては不利・・・ならば奥の手を!

 

 

ローグは爆弾を発射した、ボルスに向かってまっすぐ飛んでいく、ボルスも銃口から炎を発射した、だが、その炎は球体だった、ルビカンテの奥の手、マグマドライブ、長距離の敵を攻撃できるのである。

 

 

マグマドライブは爆弾を貫通した、それを見てボルスはおかしいと思った、何故、爆発しないのか?

 

 

ボルスがそう思った瞬間、ローグはマグマドライブをかわして突撃してきた。

 

「そうくると思ってたぞ!」

 

ボルスは愕然とした、まさか読まれていたとは・・・やはり自分ではあの人に敵わなかった・・・

 

 

ローグはボルスを仕留めるべく銃口を向けた、そして引き金を引いた・・・

 

 

バキャ!!

 

 

突然何かが壊れた音がした、それはバハムートが壊れた音だった。

 

 

「なっ!?」

 

 

何故壊れたのだ・・・ローグが思い返していると一つ心当たりがあった、首を失ったヘンターの攻撃をバハムートで防いだ時であった。

 

 

「あの時に亀裂が・・・帝具を使い続けて亀裂が大きくなったのか・・・」

 

 

ローグは壊れたバハムートを呆然と見ていた、そして自分は終わったと確信した。

 

 

「ローグさん・・・」

 

「何をしている、さっさとかたつけろ」

 

「・・・」

 

「教えたはすだ敵は殺せる内に殺せとな」

 

 

「わかりました・・・」

 

ボルスは銃口をローグに向けた、ボルスには喜びはなかった、ボルスにとっては命の恩人であるから、だが、帝国軍人として反乱軍を見逃すわけにはいかない、ボルスは引き金を引く決心をした。

 

 

「最後に言っておく、焼却部隊の人間はろくな死にかたをしないぞ!」

 

 

「わかってます!」

 

 

ボルスは引き金を引いた、ローグに火炎が襲い掛かる、その瞬間あることを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

お前またフラれたのか

 

 

 

はい、これで身を引こうと思います

 

 

 

 

はあ!?お前、そいつに一目惚れじゃなかったのか?

 

 

 

 

確かにそうですが、これ以上は迷惑をかけます・・・

 

 

 

ドガッ!!

 

 

 

痛っ!!ローグさん、何を!?

 

 

 

 

お前何いい人ぶってるんだ、焼却部隊のろくでなしがいい人ぶるな!!

 

 

 

 

でも・・・

 

 

 

お前、それは本心か!?

 

 

 

 

・・・いえ、

 

 

 

 

だったら図々しくしろ!!

 

 

 

 

・・・わかりました、もう一度アタックしてみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローグさん、彼女がお付き合いをOKしてくれました!!

 

 

 

そうか、せいぜい尻に敷かれな!

 

 

はい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローグさん、私に子供ができました!!

 

 

 

そうか、お前に似ないことを祈るんだな

 

 

 

・・・はい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた、女の子ですよ

 

 

 

この子が私の子供・・・

 

 

 

あなたが名前をつけてくれませんか?

 

 

 

私が!?

 

 

 

 

はい

 

 

 

 

(どうしましょう・・・女の子の名前を私なんかが考えつくことができるでしょうか?・・・ダメです、名前は思いつきますがピンときません・・・ええと・・・頭がこんがらがってきました・・・)

 

 

 

あなた?

 

 

 

 

・・・ローグ

 

 

 

 

ローグ?

 

 

 

 

あっ、いえ、今のは頭に浮かび上がった名前をつぶやいてしまったんです。

 

 

 

 

ローグって確か以前あなたの命を救ってくださった人・・・

 

 

 

 

はい

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

(怒らせてしまいましたか・・・当然ですね)

 

 

 

 

ローグ、いいんじゃないですか?

 

 

 

えっ、でも・・・知り合いの女性の名前を・・・他の名前を・・・

 

 

 

その人がいなければあなたは命を失っていたんです・・・それに私達が結ばれたのもその人があなたの背中を押してくれたから・・・私達が結ばれなかったらこの子も生まれてくることができなかった・・・

 

 

 

 

・・・私にとってもこの名前は特別な思い入れがあるのです

 

 

 

 

それでは・・・

 

 

 

 

あなたがよければこの名前で

 

 

 

 

はい、あなたの名前はローグ、ローグよ

 

 

 

 

 

ふつつかな父親ですがよろしくお願いします、ローグ

 

 

 

 

 

 

 

ルビカンテの炎がローグを包みこんだ、その瞬間、大爆発が起こった、轟音が鳴り響き黒煙が立ち込めた、小石がパラパラ降ってきている、そしてバハムートの残骸が地面に落ちてきた。

 

 

 

ボルスは残骸を無言で見つめている。

 

 

とうとう命の恩人まで手にかけてしまいました・・・けれどもこれが私のお仕事です。

 

 

 

ボルスのマスクの目の辺りに光り輝くものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もバトルシーンが多かったですが、今回も上手に書けなかったです、やっぱりバトルシーンが特に難しいです、これからも応援お願いします。


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第五十三話

エスデスの参戦で一気に流れがイェーガーズに傾きました、この戦いがどうなるかご覧ください。


   恩人を斬る(後編)

 

 

「ロ、ローグが・・・」

 

ピエールはローグがやられて呆然としていた、囚人兵がやられるのは想定していたがローグがやられてしまうのは全く想定していなかった、ボルスはローグよりも弱かったはずであった、それがボルスがローグを倒してしまった、ピエールの戦術は完全に崩壊してしまったのであった。

 

 

「ピエールさん!!」

 

 

ダンは急いでピエールの元へ駆け寄ろうとした、もう勝敗は決しており、ピエールを連れてこの場から逃げなくてはならなかった、だが、ダンの行く手をエスデスが阻んだ。

 

 

「逃がさんぞ!」

 

 

エスデス・・・革命軍において最強、最悪として認知されており、ダンもエスデスの強さは認知していたはずだった、だが、今目の前にいるエスデスは最強すら生温かった、これは人間なのか?そう思えるほどエスデスの強さは段違いだった。

 

「突破させてもらいます!」

 

 

エスデスを突破しなければピエールさんの元に駆けつけない、ダンは腹をくくった。

 

 

「何故あんな俗物に尽くす?」

 

 

エスデスから見ればピエールという男はとても英傑とは言えなかった、少なくともこの男の方が強かった。

 

 

「確かに、そう見られても仕方ありません」

 

 

ダンはピエールとの最初の出会いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

ピエールはとある山奥に来ていた、噂で屈強で醜い顔の山男がいると噂になっていたから、すると突然森から大男が現れた。

 

 

 

おぬしが噂の山男か?

 

 

 

 

はい・・・

 

 

 

 

噂通り強そうじゃわい

 

 

 

 

どうも・・・

 

 

 

 

どうした元気がないな?

 

 

 

 

私が怖くないのですか?

 

 

 

 

怖い?

 

 

 

 

私の顔がです・・・

 

 

 

 

そうかの?

 

 

 

 

 

 

 

みんなが私の顔を見て怖がるんです・・・

 

 

 

 

 

顔がそんなに気になるか?わがはいなどヤギそのものだぞ

 

 

 

 

ヤギの方が全然いいです・・・

 

 

 

 

ハッキリと言うな、でも気にいったぞい、おぬし、わがはいと来ないか?

 

 

 

そう言ってくれてうれしいです、でも、あなたに迷惑が・・・

 

 

 

 

わがはいはそんなもの気にしないのじゃが・・・ならばこれをやろう

 

 

 

 

何ですか、これ?

 

 

 

 

これは帝具バルザックじゃ

 

 

 

 

帝具?

 

 

 

 

 

まあ、要するにすごいものというわけだ、仮面の帝具じゃし、おぬしには好都合じゃろう

 

 

 

 

こんなすごいものを私に・・・

 

 

 

 

 

とりあえずかぶってみろ

 

 

 

 

 

私はこの人と歩んで行きたい

 

 

 

 

 

 

かぶったな、どうじゃ?

 

 

 

 

はい、力がみなぎります

 

 

 

 

うまく適合できたな

 

 

 

 

はい、これからもよろしくお願いします!

 

 

 

 

 

おう、よろしく頼む

 

 

 

 

 

 

 

「醜い私をあの人は受け入れてくれた、たとえすべての人があの人を忌み嫌おうとも私はあの人の側にいます!!」

 

 

ダンの嘘偽りのないまことの叫びだった。

 

 

「まさに愚直そのものだな」

 

 

そう言ったがエスデスはこういうのを嫌いではなかった。

 

 

「お前、名は?」

 

「ダンです」

 

「そうか・・・戦士としてその名を覚えておいてやろう」

 

「どうも」

 

ダンは軽く礼を言うと猛ダッシュでエスデスに向かって行った。

 

 

「来い!」

 

エスデスはあえて氷の矢を使わなかった、ダンと力勝負をしたかったのである。

 

 

「うおおお!!」

 

ダンは左の拳でエスデスを粉砕しようとした、だが、エスデスはあっさり受け止めた、そして、左手を凍りつかせてコナゴナに砕いた、だが、ダンは激痛に臆することなく右の拳を繰り出した。

 

 

「まだまだぁ!!」

 

エスデスは氷の壁を作り出した、ダンの拳は勢いよく氷の壁を砕いていく、だが、氷の壁も次々再生していった、それでもダンの拳は勢いが衰えなかった、そしてついにエスデスの顔面に届いたかと思ったが、あと数ミリのところで拳は止まった。

 

 

「なかなかだったぞ」

 

 

「・・・どうも」

 

 

その瞬間、エスデスの足元から氷の槍が現れ、ダンの腹を貫いた、大量の血が飛び散っていく、薄れゆく意識の中でダンは・・・

 

 

 

ピエールさん、あなたと出会えて本当によかった・・・

 

 

ダンの死の瞬間、仮面の帝具バルザックもコナゴナに砕け散った、ダンは轟音とともに地に倒れた、エスデスはダンの顔を見てつぶやいた。

 

 

「どれだけ醜い顔かと思えば・・・たいしたことないではないか」

 

 

エスデスにとっては上辺などどうでもよかったのである。

 

 

 

「ダン・・・」

 

ピエールはダンの死にア然としていたが・・・

 

 

 

「どうせ死ぬならエスデスと相打ちになればよかったのに、この役立たずが!」

 

 

 

「てめえ、命を懸けて戦った仲間になんて言いぐさだ!!」

 

 

ウェイブは敵とはいえ命を懸けて戦った人間が侮辱されるのを我慢できなかったのである。

 

「わがはいが醜い化け物でしかなかったあやつに役割を与えたのだ、むしろ感謝すべきじゃろう」

 

「このクズが!!」

 

 

あいつには悪いがついていく人間を間違えた、ウェイブはそう思わずにはいられなかった、だがピエールは鼻で笑った。

 

 

「フン、お前も醜いものは目を背けるクチじゃろう」

 

「!?」

 

その瞬間、ウェイブの脳裏に自分がボルスの異形の姿を見て思わずドアを閉めてしまった過去が浮かんだ。

 

 

違う、俺は・・・ウェイブに罪悪感がのしかかり動揺が生まれた、ピエールはその隙を見逃さなかった、ウェイブの顔に紙吹雪を浴びせた、ウェイブの顔に紙が張り付いていく、ウェイブは視界を閉ざされて動きが鈍った、ピエールはその隙に紙飛行機を折って飛び去った。

 

「ま、待て!」

 

むろんピエールは待たなかった、 くそ、俺は何をやってるんだ・・・ウェイブは自分の間抜けさを悔いた。

 

 

「このまま逃げきってやる、そして捲土重来の機会をまつ!」

 

 

ピエールは逃げきったと確信したまさにその時。

 

 

バキ!!

 

 

突然鈍い音が鳴り響いた、それは凍りづけになったスライムに亀裂がはいった、そしてそのまま崩れ落ちた、その中から全裸のセリューが現れた。

 

 

「逃がさんぞ、ハレンチ極まりない悪め、コロ、六番!!」

 

 

「キュ!!」

 

 

コロはセリューの義手にかぶりついた、そして、その中から巨大な爆弾みたいな物が現れた、これは変成弾道弾、スタイリッシュが作った武装兵器十王の裁きの一つである。

 

 

どうやってあんなデカイ物中に入れたんだ!?ウェイブはそう思ったがツッコミを入れなかった。

 

 

「私を恥ずかしめたその罪、爆炎と共に悔い改めろ!!」

 

 

六番は勢いよく発射された、飛び去ったピエール目掛けて、ピエールは一気に絶望に突き落とされた。

 

 

わ、わがはいはまだ終わるわけには・・・権力をこの手に・・・

 

 

 

ドオオオン!!

 

 

 

ピエールに六番が直撃し大爆発が起こった、ピエールは紙の帝具とともに木っ端みじんになった、消し炭がパラパラ落ちてきている。

 

 

 

「見たか、正義の力を!!」

 

 

セリューはガッツポーズを勇ましく行った、そして誇らしげにウェイブ達の方を向いた、するとウェイブは背を向き、ボルスは手で目を覆い隠し、ランは目をつむっている。

 

 

 

「どうしたんですか皆さん、悪を成敗した私の勇姿をよく見てください」

 

 

セリューは両手を上げてアピールしている。

 

 

「んなこと言われてもよ・・・」

 

 

「セリューさん・・・」

 

 

「今のあなたのその姿を見ろと言うのですか?」

 

 

三人は気まずそうにしている、セリューはその意味がわからなかった、セリューは自分の姿を確認するとセリューは自分が今全裸だということを思い出した。

 

 

「わ、私、裸でした、すっかり忘れてました、見ないでくださーい!!」

 

 

セリューは慌てて胸と股間を手で隠した、セリューの顔は見事に真っ赤だった。

 

 

「どっちなんだよ・・・」

 

 

「セリューさん・・・」

 

 

「もっと恥じらいを・・・」

 

 

三人は対応に困っていた、ついさっきまで死闘を繰り広げていた雰囲気は完全に消えていた。

 

 

「コロ、スペアの服を早く!!」

 

「キュキュキュー!!」

 

コロは慌ててスペアの服を取り出した、エスデスは何事もなかったように落ち着いている。

 

 

「お前達、ご苦労だった、この戦いで反乱軍は多くの帝具を失った、これからの戦いは有利になるだろう」

 

 

三つの帝具を破壊し、三つの帝具を奪取した、まさに大勝利であった。

 

 

「あと、ウェイブ、お前は帝都に戻ったら鞭打ちと毒草の全身パックだ」

 

仕置きが増えてる!ウェイブは心の中で叫んだがこの戦いの自分の失態を考えたら当然だった。

 

 

「では、引き上げるぞ」

 

「了解!」

 

エスデスの号令とともにイェーガーズ一同は帝都に引き上げていく、ウェイブはへこんでいた、仕置きが憂鬱というのもあるが見た目で人を判断した自分自身に嫌悪していた、するとボルスはウェイブに声をかけてきた。

 

 

「気にしないでください、私は慣れっこですから」

 

ボルスはウェイブを励ました、ウェイブはボルスはなんて心の広い人だと、自分は心の狭い人間だと落ち込みかけたが落ち込んだらまた気を使わせてしまうと思い胸を張ることにした。

 

 

次は下手を踏まねえ!

 

 

ウェイブは心の中で誓った、その後エスデスの仕置きでウェイブはそのことをすっかり消えてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジナルキャラクターを混ぜての戦いを書きましたが自分のイメージ通りになかなか書けませんでした、やはり戦闘シーンは書くのは難しいです、革命軍編はまだまだ続きますので応援お願いします。


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第五十四話

   巻き返しを斬る

 

 

ナイトレイド一同はアジトに帰還していた、全員の表情は重かった、チームカプリコーンの確保を行う前にエスデス率いるイェーガーズに全滅させられ貴重な帝具を六つ失い、しかもそのうち三つを強奪された、帝具の所有数は完全に帝国の方が上回ったであろう、しかも、西の異民族との交渉が決裂し、総大将も意識不明のままである、革命軍の戦略は完全に白紙状態になってしまった。

 

 

 

「これからどうすんだよ」

 

「どうするって?」

 

「かなりやばいんだろ?」

 

「お前に言われなくてもわかってるよ」

 

 

イエヤスの質問にラバもなんて答えたらわからなかった、それだけ深刻な状態なのだ。

 

 

「アンタ達男のくせにうろたえるんじゃないわよ」

 

マインはいつも通り強気である、だが、西の異民族との交渉が決裂して心境が穏やかなはずがなかった。

 

 

「でもマイン、お二人が不安になるのも無理は・・・」

 

「何言ってるのシェーレ、アタシ達がうろたえてもしょうがないでしょう」

 

「そうですね、マインの言う通りです、あの娘達も頑張っているのですから」

 

 

 

 

 

 

 

ナイトレイド一同はカプリコーンが全滅したのを確認するとエスデスに気付かれる前に全速力で退却した。

 

 

「こんなに早く全滅してしまうなんて・・・」

 

「いくらカプリコーンの連中が予想よりも早く帝都に到着したとはいえ・・・」

 

 

サヨとラバはイェーガーズの強さを改めて思い知ったのであった、イェーガーズよりも早くカプリコーンに遭遇していればエア達の帝具で眠らせてすんなり確保できたのだが、現実はそううまくいくものではなかった、森の中へ入ったところで一時待機した。

 

 

「しくじっちまったな・・・」

 

「イェーガーズの強さは予想以上だな・・・」

 

 

ジャドもナジェンダも事態の深刻さに頭を抱えている、帝具を六つ失い、しかも三獣士の帝具を奪取されてしまったのだから・・・

 

 

「とにかく俺達は一度本部に戻る」

 

「そうだな」

 

「お前達は本部の指示があるまで今までどうり暗殺任務に徹しろ」

 

「わかった」

 

 

ジャドとナジェンダは落ち着いていた、できる限り落ち着こうとしていた、自分達まで取り乱したら動揺が広まるから。

 

 

 

「ねえ、ジャドさん一晩アジトに泊まっていこうよ、みんなといろいろ話したいし」

 

「ダメだ、一刻も早く本部に知らせないといかんからな」

 

「それなら鳥を使えばいいのではないでしょうか」

 

「鳥はもちろん使う、だが俺達がのんびりしていい理由にはならない」

 

「ファル、ルナ、仕方ないよ、こういう事態だし・・・」

 

ファルとルナはエアの耳元に近づき小声で話しかけた。

 

 

「何言ってんの、エア、久しぶりにラバさんに会ったんだよ」

 

「そうです、いろいろ話があるんでしょう」

 

その瞬間エアは頬が赤くなった、チェルシー以外はそのことに気付かなかった。

 

 

「もう、いい加減にしてよ!」

 

 

エアは思わず声を荒げた、ラバがどうしたのと声をかけるとエアは何でもないです、と大きく手を振ってごまかした、それを見てチェルシーはニヤニヤしている。

 

 

「とにかく今すぐ本部に帰還する」

 

 

「ふう、再びキツイ任務の日々か」

 

 

ファルがやれやれのポーズをしているとジャドは苦虫をかみつぶしたような表情になった。

 

「・・・何がキツイだ、お前らはただ帝具を使っているだけだろ・・・作戦や帝具を使うときのキーワードは全て俺が考えているんだぞ」

 

 

「でも、私達の疲労も相当なものですよ」

 

「だからお前達にはご馳走食わせているんだろ、俺なんか常に麦飯だぞ・・・」

 

 

ジャドの姿に哀愁が漂っていた、とても密偵チームの隊長には見えなかった。

 

 

「もう、二人ともジャドさんに悪いよ、持ち合わせが少ない財布でご馳走してくれるのに」

 

「・・・お前が一番ひどくないか?」

 

 

三人の相手でジャドはすっかりげんなりしていた、密偵チームの隊長は別の意味で過酷であった。

 

 

 

「とにかく俺達は本部へ帰還する、帝都は任せたぞ」

 

「わかった・・・一つ聞くが地方の暗殺チームは全滅してしまったがそれはどうなるのだ?」

 

「それは本部から人員を派遣して対処する、お前達のアジトにやっかいになるかもしれんぞ」

 

「それは構わない」

 

「そうか、その時は頼む、じゃあな」

 

ジャド達は南の方角へ去って行った、本部は南にあるのであった。

 

 

「では、私達もアジトへ帰還するぞ」

 

「了解!」

 

ナジェンダ達はアジトへ駆け足で引き上げて行った、そして今に至る。

 

 

 

 

 

 

「とにかく今は任務の遂行に集中しろ、今後の戦略は本部に任せるしかない」

 

 

ボス・・・さすが落ち着いているわね、さすが百戦錬磨、私達も見習わないと・・・

 

 

サヨはナジェンダを見てさすがと思った、無論ナジェンダも動揺していないことはないが表情には決して出すことはなかった。

 

 

確かに形勢は不利だがくじけたりはしない・・・瀕死の重傷から立ち直った私だ、ここから巻き返す!

 

 

「レオーネ、帝都へ情報収集に行ってくれ」

 

「了解!」

 

「他の者は鍛練に励め」

 

「了解!」

 

ナジェンダの号令で一同は気合いを入れ直した、ここからナイトレイドの巻き返しが始まるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十五話

   軍医を斬る

 

 

7月26日

 

 

カプリコーンの全滅から数日がたった、その間暗殺の依頼もなく、鍛練の日々が続いていた、今日も鍛練かと思いきや予想もしていないことが起ころうとしていた。

 

 

「健康診断!?」

 

「ああ、本部から軍医が来ることになっている、それが今日だ」

 

「別にどこも悪くないけど」

 

イエヤスが脳天気にしているとナジェンダが活を入れた。

 

 

「楽観視するな、絶対大丈夫という保障はないのだ、殺し屋は体が資本だ、いざという時病になったらどうする!」

 

「は、はい」

 

ナジェンダの迫力にイエヤスはたじたじしている、確かに体に異常があったら任務もできないのだからちゃんと健康診断しておくべきである。

 

 

「その軍医の人どんな人ですか?」

 

「まあ、見てのお楽しみだ」

 

 

どんな人だろう・・・あれ?マインの様子が・・・どこかおかしいのかな?

 

 

「ナジェンダさん、糸に反応が!」

 

「そうか、もうじき会えるぞ」

 

 

いよいよか・・・楽しみね、サヨがワクワクしていると会議室のドアが開いた、そしてその軍医が入ってきた。

 

 

 

「やあ、皆の衆、元気にしとったか、ウチが来たからにはどんな病気も治したるで!」

 

 

サヨの予想に反してその軍医は女の子だった、背丈はマインと同じくらいで紫色の髪でツインテール、衣装は白のノースリーブシャツで青のミニスカート、黒のネクタイ、黒のニーソックス、はっきり言って年頃の女の子にしか見えない、しかも変わったなまりであった。

 

 

「あんたらが新しく入ったサヨとイエヤスか?」

 

「は、はい」

 

「そうか、ウチの名はシヴァや、よろしゅうたのむわ」(シヴァの声は植田佳奈さんをイメージしてください)

 

 

イメージしていた軍医とは全然違うわね・・・特にこのなまりは。

 

 

「ウチのなまり気になるか?まあ、この辺にはないなまりやからな、遥か西の地方のなまりやからな」

 

「西?」

 

「ああ、ウチは西の異民族とのハーフやからな」

 

異民族とのハーフ?それってマインと同じ?

 

「ウチとマインは幼なじみやからな」

 

「そうなの?じゃああなたも迫害を・・・」

 

 

マインは異民族とのハーフというだけで酷いいじめを受けてきた、シヴァもきっと・・・サヨの予想に反して。

 

「ウチは大丈夫やったで、とっさに危険を察知して回避してきたからな、マインは鈍臭かったから回避でけへんかったけど」

 

「う、うるさいわね、余計なこと言わなくていいわよ!!」

 

マインは真っ赤になってシヴァに文句を言っている、付き合いは長いのだろう。

 

「マインは相変わらずどこか抜けとるな」

 

マインは今にもシヴァにかみ付きそうな雰囲気であった、シヴァはこの状況を楽しんでいるようである。

 

 

この人本当に軍医なのかな・・・サヨはシヴァを見て不安を感じていた、シヴァはサヨを見てサヨの心中を察した。

 

 

 

「あんた、ウチがホンマモンの軍医かどうか疑っとるやろ?」

 

「そ、そんなことは・・・」

 

サヨは図星をつかれて慌てた、だがシヴァは怒ったそぶりを見せなかった。

 

 

「まあ、しゃあないな、どれ、少しウチの力みせたるわ」

 

 

シヴァは手に持っていたカバンから手袋を取り出しそのまま手にはめた、そしてサヨの背中をマッサージし始めた。

 

 

「な、何!?すごく気持ちいい・・・そんなに力をいれてるようには見えないのに・・・」

 

 

サヨはあまりの気持ちよさに床に座りこんだ、サヨの息が荒かった。

 

 

「あんた、がむしゃらに鍛練しすぎやで、たまには休まんと伸べへんで」

 

 

・・・確かに少しでもアカメに近づこうとがむしゃらに鍛練してきたけど、この娘の言う通りなのかな?

 

 

「休むのも鍛練の一つやで」

 

 

サヨは休息の大切さを改めて認識したのであった。

 

 

「それにしてもその手袋、普通の手袋じゃないような・・・」

 

 

「そうや、この手袋は手先を数十倍器用にするんや」

 

「それってまさか?」

 

「そのまさかや、これは医療器具の帝具ユグドラシルや」

 

 

シヴァはカバンの中からいろいろな医療器具を取り出した、見たことがない道具もたくさんあった、これが全部帝具であることは驚きであった。

 

 

「医療器具の帝具か、そんなのまであるんだな」

 

イエヤスはシヴァの帝具に心から驚いていた、するとシヴァはどや顔で。

 

 

「そりゃそうやろ、戦にはケガや病気はつきものやで、あって当然やろ」

 

 

確かに・・・医療専門の帝具はあって当然よね・・・あれ!?他にも医療専門の帝具ってあるのかな、もしイェーガーズにそういう帝具使いがいたらまずいんじゃ・・・

 

 

「どうした、サヨ」

 

 

「ううん、何でもない・・(そういう帝具使いがイェーガーズにいなければいいけど)」

 

 

サヨは心から医療専門の帝具使いがイェーガーズにいないことを祈ったのであった。

 

 

 

「じゃあ、早速診察始めるで」

 

 

シヴァの健康診断が開始された、サヨとイエヤス以外は以前に診察を受けたことがありスムーズに進んでいた、二人にとっては健康診断自体生まれて初めての体験だった、数時間の診察が終わろうとしていた。

 

 

 

「さて、診断の結果皆特に目立ったケガや病気はなかったで」

 

 

皆悪い結果がなくてよかった・・・サヨは笑顔で安堵した。

 

「ただ、数人虫歯の治療せんとあかんけどな・・・まずはマインや」

 

「うそ!?」

 

「うそやない、奥歯に一本あったで」

 

マインは信じられないという顔をしている、そういえばマイン甘い物を食べた後歯を磨かなかったっけ。

 

「ちなみにチェルシーは虫歯なかったで」

 

 

マインはさらに信じられないという顔をした、チェルシーはいっつも飴を舐めていたのに。

 

「私はマインと違ってちゃんとしていたわよ」

 

チェルシーはマインを鼻で笑っている、見事などや顔である、マインの悔し顔も相当なものである。

 

 

 

「次にイエヤス、あんたは二本あったで」

 

「マジ!?」

 

「まあ、あんたは歯磨き真面目にするタイプやないな」

 

イエヤスは何も言えなかった、まさにそのとうりだから。

 

 

 

「ぷぷぷ、二人ともだっさ」

 

レオーネは二人の様を見て吹き出していた、だがシヴァはあきれた表情でレオーネを見ている。

 

 

「・・・レオーネ、笑っとる場合ちゃうで、あんたが一番酷いんやで」

 

「うそ!?」

 

「うそやない、あんたしょっちゅう酒飲んで歯磨かずに寝とるやろ」

 

「ま、まあ・・・」

 

レオーネは言葉が詰まった、心当たりがありすぎたから。

 

「このままほっといたら歯槽膿漏になるで」

 

 

「うそー!!?」

 

レオーネは大ショックだった、この若さで歯槽膿漏だなんて・・・ちなみにこれはシヴァのうそだがこのくらい言わないとレオーネは危機感を持たないとシヴァは思ったからである。

 

 

「レオーネ、この際だ徹底的に治療しておけ、シヴァ遠慮はいらんぞ」

 

「もちろんや」

 

 

それからすぐに三人の歯の治療が行われた、マインとイエヤスの治療はすぐ終わったが、レオーネの治療は少々てこずった、レオーネが逃げだそうとしたからである、スサノオがレオーネを取り押さえて治療が行われた、凄まじい治療にレオーネは悲鳴を上げて失神した。

 

 

 

「これで健康診断は完了や、皆、お疲れさん」

 

シヴァの顔には達成感があった、診察した者に病気がないのは医者として喜ばしいからである。

 

 

「遠路はるばるすまなかったな」

 

「別にたいしたことあらへん、それよりも・・・アカメ、残念やったな」

 

「気にするな、いつか誰かが死ぬことは覚悟していた、あいつもその覚悟はしていた」

 

「そうやな・・・」

 

シヴァはアカメのことを思い出していた、アカメからあることを頼まれていたからである。

 

 

 

 

 

 

この薬を分析してくれ

 

 

ああ、わかった

 

 

もし、薬を無効化できたらクロメはこれ以上体を蝕まれることはないだろう・・・

 

 

けどええか、無効化できてもクロメは元の体に戻すことはでけへんで

 

 

わかってる

 

 

それにクロメはあんたを受け入れるともかぎらんで

 

 

ああ、それもわかってる、その時は私がクロメを・・・

 

 

そうか・・・わかった、ウチもできる限りのことはするわ

 

 

感謝する

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・無効化のめどつきかけとったけど無意味になってもうたかな・・・

 

 

シヴァは心の中でつぶやいた、アカメが聞いたら喜んだだろう・・・

 

 

「じゃあ、ウチは本部に戻るで、健康には気いつけなあかんで、そや、マイン、チチおっきくするマッサージ教えとくわ」

 

「結構よ!!余計なお世話よ!!」

 

 

「はは、じゃあ、さいなら」

 

シヴァはマインをからかって本部へ戻って行った、シヴァがいなくなったらアジトが静かになった。

 

 

「にぎやかな人でしたね」

 

「ああ、あれでも腕は確かだ」

 

「これからは人一倍健康に気をつけます」

 

「その意気だ殺し屋は体が資本だからな、特にレオーネ、お前は10倍気をつけろ」

 

「ど、努力します・・・」

 

 

正直レオーネが規則正しい生活送れるとは思えない、今夜も大酒飲んで夜更かししそう・・・

 

 

サヨの予想どうりレオーネは大酒飲んで酔い潰れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は医療器具のオリジナル帝具を出しました、パーフェクターは医療に詳しくない人間が適合したら医療が使えない事態になるので医療専門の帝具があると自分なりに思いました、あと、異民族のハーフがマイン一人だけとは思えないので登場させました、これからも応援お願いします。


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第五十六話

   技術者を斬る

 

 

7月28日

 

 

ナイトレイドのアジトでちょっとした騒動が起こっていた、レオーネが作戦時間をオーバーしてナジェンダに叱責されていたのである。

 

 

 

「レオーネ!お前、また作戦時間オーバーしたな!」

 

「ゴメン、ボス!!」

 

ナジェンダは逃げるレオーネを捕まえるべく義手を飛ばした、だが義手はレオーネの後頭部を直撃した。

 

 

「ヒドイ!!殴ることないじゃないか!!」

 

レオーネは涙目でナジェンダを睨みつけた、ナジェンダは気まずそうにしている。

 

 

「すまん、すまん、どうも最近義手の調子が悪くてな・・・」

 

ナジェンダが義手を動かそうとするとギイギイと鈍い音がした、本当に調子が悪そうだ。

 

 

「前も思いましたけどその義手本当にすごいですね・・・すごく重たそうな斧の帝具も軽々と持ち上げていましたし」

 

 

「ああ、革命軍一の技術者が制作したからな」

 

「どんな人なんです?」

 

「その技術者とはじきに会えるぞ、数日前に修理を依頼したからな」

 

一体どんな人なんだろう・・・サヨがワクワクしているとラバがアジト周辺まで技術者が来ていると報告した。

 

 

いよいよね・・・しばらくして会議室のドアが開いた、技術者のお出ましである。

 

 

「やあ、ナジェンダ君久しぶりだね、元気にしとったかね?」

 

 

 

 

その技術者は作業着を着たフルフェイスヘルメットを被った中年の男性だった。 (このヘルメットはホイルジャックをイメージしてください)

 

 

「ああ、まあまあだ」

 

サヨは技術者の風貌にややア然としている。

 

「この人が技術者ですか?」

 

「そうだ、彼の名はホーラー、見た目はあれだが腕は確かだ」

 

「あれとはなんじゃの、ままいい」

 

ホーラーは少しムッとしたようである、ヘルメットなので表情は見えないけれど何となくわかった。

 

「早速修理を頼む」

 

 

「ところで義手を新型に取り替えないかね、指に銃を仕込んでいるんだが」

 

「いや、結構だ」

 

「そうか・・・」

 

ホーラーは少し残念そうである、それにしても銃を仕込んだ義手か・・・一体どんなんだろう・・・

 

 

「じゃあ、始めるとするかの」

 

ホーラーは義手の修理を開始した、義手が次第に分解されていき無数のパーツに分かれていく。

 

 

「この部品が欠けておったぞ、これならすぐに修理できるぞ」

 

「そうか、それはよかった」

 

 

ボスは安堵の表情をした、この義手をとても気に入っているのだろう。

 

 

部品を取り替えて義手を組み立てるだけであった、次第に見慣れた義手になっていく。

 

 

「シヴァも言っておったが体には気をつけるのじゃぞ、義手は替えは効くが体は替えがきかんのじゃぞ」

 

 

「わかってる・・・」

 

「・・・アカメ君残念じゃったな」

 

「アカメも覚悟はしていた、気に病まないでくれ」

 

「わかった」

 

ホーラーはそれ以上アカメのことを口にしなかった、無粋になるからである。

 

 

 

「完了したぞ、どうかな、調子は?」

 

ナジェンダは義手の手を開き、握りしめを繰り返した、きわめてスムーズだった。

 

 

「異常はない、修理は完璧だ」

 

「わしが修理したのだから当然じゃわい」

 

 

ホーラーは鼻高々であった、鼻は見えないが・・・

 

 

「それにしてもこれほどの義手を作れるなんてすごいですね」

 

サヨは心からそう思った、五本の指をスムーズに動かし、なおかつ手首を飛ばすことができるのだから、革命軍の技術はそうとうのものである。

 

 

「普通じゃ無理じゃろうな、だが、この発明の臣具なら可能なのだ!!」

 

 

その瞬間ヘルメットの真上に付いているランプが光り輝いた、テンションがあがると光るらしい。

 

 

「そのヘルメット、臣具なのですか?」

 

「そのとうり、このヘルメットを被っていると発明のアイデアがひらめくのじゃよ!!」

 

 

「そうですよね、普通の人間にこれだけの義手を作ることはできませんよね」

 

「まあ、わしのもの作りの腕があってことじゃがの、ワッハッハッ!!」

 

テンションが上がり大笑いしているホーラーを見てサヨは苦笑いしている。

 

 

「すごいですね・・・」

 

 

「そうじゃろう・・・ややっ!?」

 

突然ランプが光り出した、今回のは連続して光っている。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「今、発明のひらめきがきた、今すぐ製造に取り掛かる、スサノオ君手伝ってくれ」

 

「俺はかまわんが、ナジェンダ、どうする?」

 

「かまわん、手伝ってやれ」

 

「わかった」

 

まさかの急展開である、いったい何が出来上がるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

数時間後、発明品は完成した、かなりの大掛かりのしろものである。

 

 

(この発明品はアカ斬る劇場13話に出てきたカタパルトをイメージしてください)

 

 

「完成じゃわい!!」

 

「あの・・・これなんなんです?」

 

サヨはおそるおそる質問した、するとホーラーは威風堂々と説明を始めた。

 

 

この発明品は要塞攻略の際、兵士を飛ばして要塞内に突入させるというものである・・・はっきり言ってどうかしている、まともじゃない。

 

 

「無論今のままでは使いものにはならない、そこでだ、テストをしてデータをとりたいのじゃが、サヨ君、引き受けてくれんかね?」

 

 

「・・・はあ!!?」

 

な、なんで私が・・・こんないかれた実験を・・・冗談じゃない、命がいくつあっても足りないわ・・・

 

 

「この実験は革命軍の命運がかかっとるんじゃよ!」

 

ホーラーはサヨを説得しようと熱がこもっている、無論サヨは引き受けるつもりはない。

 

 

やだって言っても引き下がるとは思えない・・・そうだ!!

 

 

「ねえ、イエヤス、あなたが実験体になってよ」

 

サヨはイエヤスを身代わりにしようとした、無論イエヤスは猛反対した。

 

 

「ふざけるな!!誰がそんなのやるか!!」

 

 

もちろんサヨも引き下がるつもりはない、最終手段を使う決意をした。

 

 

「お願いだから引き受けてよ♥」

 

 

サヨは村雨を抜こうとした、それを見てイエヤスは驚愕した。

 

「き、汚ねえぞ、村雨でおどすなんて!!」

 

「引き受けてくれるの、くれないの?」

 

サヨはさらに村雨を抜こうとしている、村雨を見てイエヤスはついに観念した。

 

 

「・・・わかったよ、やればいいんだろうが」

 

 

「ありがとう」

 

サヨの笑顔はとても爽やかなものであった、サヨとイエヤスの力関係は明らかであった。

 

 

 

 

イエヤスは足場に足をのせてしっかりと固定した、イエヤスは不安しか感じなかった。

 

 

「ではテストを開始するぞ」

 

「・・・ああ」

 

何事もなく終わって欲しい・・・心から祈らずにはいられなかった。

 

 

「では、ポチッとな」

 

ホーラーはボタンを押した、するとイエヤスを載せた足場はすごい勢いで加速すし始めた。

 

 

 

「ひゃあああああ!!」

 

すごい風圧でイエヤスの顔は涙と鼻水まみれになった、そして、イエヤスを遥か彼方へ飛ばしたのであった。

 

 

「・・・まだまだ改良の余地があるな、次はもっと出力を上げんとな!」

 

ホーラーはイエヤスの心配をよそに発明品の改良を心に誓ったのであった、他のメンバーも次々とアジトに戻っていった、次の日イエヤスはボロボロになりながらもアジトに帰還したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はナジェンダの義手をメインにしました、ナジェンダの義手ははっきり言ってオーバーテクノロジーだと思うんです、現代の技術でもナジェンダの義手は作れないと思います、そういう疑問からこの話を書きました、これからも応援お願いします。


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第五十七話

   異邦人を斬る

 

 

7月31日

 

 

サヨとシェーレは帝都の郊外にいた、任務を終えてアジトに帰還の途中であった、ただ、二人は全速力で逃げていた、イェーガーズのウェイブに追われていたからである、ウェイブとの戦いはできることなら避けたかった、戦っている間に他のイェーガーズがかけつける恐れがあったからである。

 

 

 

「振り切れません」

 

「うん、でも戦いはできたら避けたいし、とにかく逃げるわよ」

 

「はい」

 

 

二人は見晴らしのいい高台にたどりついた、ウェイブをまくのに無我夢中で走ってきたからである、サヨはまずいと思った、隠れる場所がないからである、だが、その時。

 

 

「おーい、サヨちゃん、シェーレさん!」

 

頭上から声がした聞き覚えのある声であった。

 

 

「その声は・・・カグラ!?なんでここに!?」

 

二人の頭上に巨大な鳥が飛んでいた、ただし生物ではなく造られた鳥の、その鳥の胸部にそのカグラが搭載している。(カグラの声は東山奈央さんをイメージしてください)

 

 

「お仕事の途中でちょっと寄り道を」

 

「またなの・・・しょうがないわね」

 

サヨはあきれている、カグラは全く気にしていない。

 

 

 

「ところで急いでいるみたいだけどどうしたの?」

 

「はい、イェーガーズに追われているのです」

 

「ふうん・・・じゃあ、乗ってく?」

 

「いいの!?」

 

「いいよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えます」

 

サヨとシェーレはジャンプして鳥の背中に乗った、そして背中に付いている手すりを握った。

 

「じゃあ、飛ばすよ!」

 

鳥は轟音とともに空へ飛び去った、ウェイブはその光景を目の当たりにしていた。

 

 

「な、何なんだ、あれは・・・」

 

ウェイブはただ飛び去って行くのを見ることしかできなかった。

 

 

 

飛行中の最中ウェイブの追跡から逃れてサヨとシェーレはホッとしていた、あのままでは戦うしかなかったから。

 

 

「このままアジトに行くよ」

 

「うん、ありがとう」

 

「カグラ、ありがとうございます」

 

サヨとシェーレがお礼を言うとカグラは脳天気に鼻歌を歌いはじめた、カグラのお気楽にサヨは苦笑いしている。

 

 

カグラと出会ってからけっこう日にちたったわね・・・サヨは初めてカグラと出会った日のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

7月14日深夜

 

サヨ、シェーレ、マイン、レオーネ、ラバの五人は帝都で一月ぶりのナイトレイドの依頼を遂行していた、任務は無事完了し、アジトへ帰還の途中にある出来事が起こった、帝都の外にある森林地帯で何者かが一同を呼び止めたのである。

 

「ねえ、あなた達ナイトレイドじゃないの?」

 

 

皆は一斉に声がした方を向いた、すると木の枝に人が座っていた、それは15,6の少女だった、殺し屋集団であるナイトレイドを目の当たりにしても臆した様子はなかった。

 

 

「それを聞いてどうするの?」

 

「あなた達って賞金首なんだよね、死体でも持っていったらいっぱいお金もらえるんだよね」

 

「まあね・・・」

 

 

この娘何考えてるんだろう・・・私達を殺し屋集団だと知って死体にするだなんて・・・殺してくれと言わんばかりじゃない・・・サヨは目の前の少女の常軌を逸した行動は理解できなかった。

 

 

ドウ!!

 

 

マインは有無を言わず発砲した、だが、少女は素早く身をかわした、そしてそのまま地面に着地した。

 

「はは、いきなり撃ってくるなんてせっかちだね」

 

少女は殺されかけたにもかかわらず笑顔を見せた、それは無邪気そのものであった。

 

 

「アタシの銃撃をあっさり避けるなんて・・・」

 

マインは舌打ちした、あっさり避けられたことが不愉快だったのだろう。

 

 

 

その少女はマインよりも背が低かった、黒のおかっぱ頭に赤のTシャツに青の短パンを履いていた、見た感じ何か妙なものを感じた。

 

 

「その銃すごいね、まともに当たったら死んでたよ、じゃあ、私も・・・」

 

少女は全速力で林に走っていった、かなりの速さであった。

 

「逃がさないわよ!!」

 

マインは少女を追っていった、かなりむきになっている、私達もマインに続いて走りだした。

 

 

「あいつ、いったいどこへ・・・」

 

マインは少女を見失ってしまった、こう暗くては思うようには見つからない、マインは苛立ちを感じ始めたその時。

 

 

ボシュッ!!

 

 

突然白い煙がマインの周りににたちこめた、煙幕?そうマインが思った瞬間、周りからベキベキと木が倒れる音が鳴り響いた、だんだんその音がマインに近づいていく、マインは気配を感じ銃を構えようとした、その瞬間、マインは何かに捕われてしまった、巨大な何かに。

 

「きゃあああ!!」

 

サヨ達はマインの悲鳴の方へ駆けつけようとした、その時サヨ達の頭上を轟音とともに何かが通った、サヨ達は頭上を見上げるとそこには信じられないものがあった、それは巨大な鳥だった、その鳥の脚はマインを掴んでいた、サヨ達が驚いたのはそれだけではなかった、その鳥は生物ではなく明らかに人工物であったから。

 

 

「何あれ・・・」

 

サヨは開いた口が塞がらなかった、作り物の巨大な鳥が目の前にいるのだから、しかも、その鳥の胸部にはあの少女が埋め込まれていた。

 

 

「あはは、びっくりしてるね、どう、私のハヤテ丸すごいでしょ?」

 

 

サヨは大はしゃぎしている少女のことよりもハヤテ丸と呼ばれた鳥のことで頭がいっぱいだった、この鳥はいったい・・・もしかして帝具!?サヨは頭をまとめるのに手一杯だった。

 

 

「調子に乗るな!!」

 

マインは掴まれた状態から少女を狙撃しようとした、だが、少女はそれを察知しマインを空高く放り上げた。

 

 

 

「きゃあああ!!!」

 

マインはすごい勢いで空に上がっていく、そしてハヤテ丸と呼ばれる鳥も上昇し再びマインを脚で掴んだ、その時の衝撃でマインはパンプキンを手から離してしまった。

 

 

「しまった!!」

 

 

マインは歯ぎしりせずにはいられなかった、悔しさで顔が歪んでいる、マインのその顔を見て少女は心からほほ笑んだ。

 

 

「じゃあ、あなた達のアジトへ行こうか」

 

「な、何を?」

 

アジトってまさかこいつアジトの位置知ってるの?そう思考した瞬間ハヤテ丸はアジトの方角へ飛び去った、サヨ達は飛び去った方角へ全速力で追いかけた。

 

 

 

 

「確かこの辺だったけど・・・」

 

少女はアジトを探していた、マインは口にしなかったがアジトはこの近くにあるのである。

 

「ねえ、アジトどこ?」

 

「言うわけないでしょ!」

 

 

「そう、じゃあ、協力してもらうよ」

 

少女はマインを再び上空へ放り上げた、マインは絶叫した、落下する際にも絶叫した。

 

 

「ねえ、あなたもしかして高い所苦手?」

 

「そ、そんなことはないわよ!!」

 

そのとうりだがマインは悟られないように気丈に奮った。

 

「そう、じゃあ、大丈夫だね」

 

「や、やめ・・・」

 

少女は何度も放り上げた、マインは繰り返すうちにぐったりしてしまった。

 

「あちゃー、やり過ぎちゃった、どうしようかな・・・」

 

少女はマインが目を覚ますまで待つことにした、しばらくするとサヨ達が表れた、少女はサヨ達の近くに降下した。

 

 

「ねえねえ、この娘返すから話聞いてくれない?」

 

「話?話って何を?」

 

「私を仲間にしてくれない」

 

「はあ!?」

 

サヨは呆れ果てていた、ついさっきまで私達を狙っていたのに仲間になりたいだなんて・・・でも断ったらマインがどうなるか・・・とりあえずまの身柄を要求することにした。

 

 

 

「とりあえずマインを解放して」

 

「いいよ」

 

少女はマインをポイッと投げ捨てた、レオーネがマインを受け止めた。

 

 

「こんなに簡単に返していいの!?」

 

「気にしない、気にしない」

 

 

この娘、ばかなの・・・脳天気過ぎる・・・サヨはすっかり呆れ果てていた。

 

 

「じゃあ、私を仲間にしてよ」

 

サヨとしても簡単に仲間にするわけにはいかなかった、とりあえずボスに知らせることにした、レオーネが一人でアジトに向かいボスに事情を説明した。

 

 

 

「そんな怪しい奴仲間にするわけにはいかん」

 

「まあ、普通はそうですよね」

 

「だが、そいつが乗っている鳥が気になるな」

 

「もしかしたら帝具かも」

 

 

サヨもそれが気になったからナジェンダに判断を任せたのであった、ナジェンダはしばらく思考を巡らし、ナジェンダは直接その少女に会ってみようと思った。

 

 

「案内しろ」

 

「はい」

 

サヨはナジェンダをカグラの所へ案内した、そしてナジェンダはカグラと対面した。

 

 

「お前がカグラか?」

 

「そうだよ」

 

 

ナジェンダはカグラの第一印象を脳天気な奴だと思った、だが、多数の殺し屋に囲まれて全く臆していないのも妙だと思った、よほど自分は死なないと自信があるのか、ナジェンダはいまひとつ確信がなかった。

 

 

「ところでその鳥は帝具か?」

 

「帝具、何それ?」

 

「お前、帝具を知らないのか?」

 

「うん、ハヤテ丸が何かは詳しく知らないけど」

 

 

ナジェンダはカグラに帝具について説明した、カグラはさほど驚いた様子はなかった。

 

 

「へえ、この国にそんなのがあるんだ」

 

「お前、それをどこで手に入れた?」

 

「私の国に祭られてたんだよ」

 

「お前の国?」

 

「うん、海を渡って遥か東の島国だよ」

 

 

「その鳥はいつ頃作られたのだ」

 

「言い伝えだと500年前かな」

 

 

500年前・・・その頃は帝国で大内乱が起こった頃だ、もしかしたらその時に国外へ流出したのか?

 

 

「そんなことどうでもいいじゃん、私を仲間にしてよ」

 

「ひとつ聞く、お前の動機はなんだ?」

 

「それは・・・面白そうだから」

 

一同はその理由に呆れた、やはり何も考えてなかったのであった。

 

「お前、ふざけてるのか?」

 

「ふざけてないよ、倍本気だよ」

 

ナジェンダの眼光にもカグラは全く怯んでいない。

 

 

「殺し屋は面白半分で勤まるものではないぞ」

 

「面白半分じゃないよ、面白全部だよ!!」

 

 

カグラはノリノリで言いきった、ナジェンダは呆れて返す言葉もなかった、こいつに何を言っても無駄だと確信したからである。

 

 

「とにかくお前を仲間にするわけにはいかん、お前を拘束させてもらう」

 

ナジェンダ達はカグラを取り囲んだ、カグラに逃げ場はなかった、だがカグラは平然としていた。

 

 

「しょうがないな、じゃあ、革命軍の本部に行ってみようかな」

 

一同に衝撃が走った、なぜここで革命軍が出てくる、もしかしてナイトレイドと革命軍の関係を知っているのか?

 

 

カグラはその隙に猛ダッシュした、ナジェンダ達はカグラを取り押さえようとするもハヤテ丸の翼から突風が吹き荒れた、カグラはこの事態を予想してハヤテ丸に細工をしていたようである、ナジェンダ達は吹き飛ばされなかったが身動きが取れなかった、その間にカグラはハヤテ丸に乗り込み上昇していった。

 

 

「ま、待て!」

 

「じゃあ、またね、バイバイ」

 

 

ナジェンダの制止を無視してハヤテ丸は飛び去って行った、数日後、革命軍の本部からカグラが革命軍の輸送員になったという知らせが入った、革命軍の幹部の数人がカグラに興味を持ったからである、そして今に至る・・・

 

 

「もうすぐアジトだよ」

 

「うん、ありがとう」

 

「少し休んでいきませんか?」

 

「やめとく、ナジェンダさんに小言言われそうだから」

 

「そう」

 

 

ハヤテ丸はアジトの近くの草原に着地した、サヨとシェーレが草原に降りるとハヤテ丸は飛び去っていった。

 

 

「カグラ、真面目にやってるのかな・・・」

 

「それはどうかはわかりませんが・・・元気でなりよりです」

 

 

その時サヨは予想していなかった、カグラがある人間と因縁を持ってしまうことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回登場したカグラはかなりぶっ飛んだクレイジーキャラクターです、原作では主人公サイドには異国の人間はいなかったので登場させました、後、飛行タイプもいなかったので併用させました、今回の文章は特にわかりにくかったのではないでしょうか、相変わらず文章が下手くそですいません、こんな小説ですが応援お願いします。


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第五十八話

   軍人を斬る

 

 

8月1日夜

 

 

帝都の城壁の外で二人の人影がある、それはウェイブとセリューであった、二人はナイトレイドの捜索をしていた、手がかりは全く見つからなかった。

 

 

「全然あいつら見つからないな」

 

「一刻も早く奴らを断罪しなくてはなりません」

 

「それにしても昨日は惜しかったな」

 

「ウェイブさんだらし無いですよ」

 

「しょうがねえだろ、奴ら空飛んでいったんだから!」

 

「言い訳しないでください!」

 

 

ウェイブは何も言い返すことはできなかった、理由がどうあれ捕まえることができなかったのは事実であるから。

 

 

「しかも、よりによってあのサヨを逃がしてしまうなんて・・・」

 

セリューは悔しさで歯ぎしりをした、サヨはセリューの師匠であったオーガを殺した敵であるから。

 

 

「悪かったよ、だからこうして捜索してるんだろ」

 

「口よりも足を動かしてください」

 

 

ウェイブは少しムッとしたが気を取り直して捜索を再開した、捜索範囲を広げたが人の気配はない。

 

 

「どうする、帝都へ戻るか?」

 

「そうですね・・・」

 

 

その時、東の空から轟音とともに何かが近づいてきた、二人は上を見上げると鳥が飛んできたのであった。

 

「あれは・・・」

 

ウェイブはその鳥に見覚えがあった、ナイトレイドを逃がした鳥そのものであった、あっという間に二人の頭上を通り去って行った。

 

 

「・・・なんですか、あれ?」

 

さすがのセリューもハヤテ丸を見てたまげていた、生物でないものが空を飛んでいたのだから。

 

 

「わからん、だが、見逃すわけにはいかねえ、俺があれを追う、お前はランを連れて来てくれ」

 

 

ウェイブはセリューに指示をした、だが、セリューは露骨に不安そうな顔をした。

 

 

「ウェイブさんがですか・・・一人で大丈夫ですか?」

 

「なんだよ俺一人だと不安なのか!?」

 

セリューの態度にウェイブはムッとしている。

 

 

 

「はい、なんか安心しきれないというか・・・」

 

「いいから早くランを呼んでこい!」

 

「・・・わかりました、頼みましたよ」

 

 

セリューは渋々指示に従い帝都へ戻った、ウェイブはやれやれの顔をしている。

 

「さて、急いであれを追いかけないとな」

 

 

ウェイブは剣を抜き地に突き刺し咆哮した。

 

 

「グランシャリオオオオ!!!」

 

ウェイブの後ろに危険種が降臨した、そしてウェイブの体に鎧として装着していく。

 

 

「よし、行くぜ!!」

 

ウェイブはハヤテ丸の追跡を開始した、凄まじいスピードであった。

 

 

 

一方、カグラは夜の飛行を楽しんでいた、ハヤテ丸は今グライダーモードでスピードは落ちていた。

 

 

「さてと、そろそろ帰ろうかな・・・」

 

そう思った矢先ハヤテ丸がガクンとした、何かが後ろに乗っかかったようである、カグラが後ろを見ると何者かが脚にぶら下がっている。

 

「捕まえたぜ!」

 

それはウェイブであった、ダッシュして追いついたのであった。

 

 

「あなた誰?」

 

「俺はイェーガーズだ!!」

 

「へえ、あなたがイェーガーズなんだ」

 

 

・・・彼強そうだけどどこかぬけてそう・・・面白いことになりそう・・・カグラは面白そうなおもちゃを見つけた子供のような顔をしている。

 

 

「あなた名前は!?」

 

「ウェイブだ!」

 

「あなたがあの有名な間抜けのウェイブなんだ」

 

むろんそんな通り名はない、カグラが勝手につけたのである。

 

「誰が間抜けだ!!」

 

 

怒ってる、怒ってる・・・やっぱ面白い・・・予想通りのリアクションでカグラは満足だった。

 

 

「何笑ってやがる!」

 

「面白いから笑っているんだよ」

 

 

・・・ふざけた奴だ・・・ナメやがって・・・ウェイブは怒り心頭だった。

 

 

「お前、名は?」

 

「名乗る名前はないよ、私はカグラだよ」

 

「名乗ってるじゃねえか!!」

 

 

ウェイブのいらいらがたまってきているのが手に取るようにわかった、本当に面白いおもちゃだとカグラは思った。

 

 

「ところでお前ナイトレイドとどういう関係だ?」

 

「みだらな関係だよ」

 

「・・・ふざけるな」

 

「そんなに怒らないでよジョークだよ」

 

からかいにぶちギレ寸前のウェイブにカグラは内心笑いが止まらなかった、もっと面白くしようとカグラは思った。

 

 

「ナイトレイドは友達だよ」

 

「お前・・・あいつらが何者か知ってるのか!?」

 

「殺し屋」

 

 

ウェイブはア然とした、殺し屋と友達とあっさり言ってのけるこいつの神経どうなってるんだ・・・

 

 

「いいか、あいつらは帝都の治安を乱す大悪党だぞ、金で人殺しをする最低最悪の連中なんだぞ!!」

 

 

ウェイブの熱弁にもカグラはへえー、そうなのと言わんばかりの表情であった。

 

「そんなに殺し屋って嫌い?」

 

「当たり前だろ、あいつらは存在自体許されない連中なんだぞ!!」

 

「そんなことないよ、あの人達面白いし」

 

「なっ、そんな理由で・・・」

 

「何言ってんの、この世に面白いこと以上に大事なことはないんだよ!」

 

こいつ・・・ついていけねえ・・・ウェイブは呆れ果てている、カグラはお構いなく話を続ける。

 

 

 

「それに殺し屋は儲かるんだよ」

 

「何を言って・・・」

 

「だって、人殺しただけで大金稼げるんだよ、こんなおいしい商売ないよ」

 

 

人の命をなんだと・・・こいつ、いかれてるぜ・・・ウェイブは戦慄を感じずにはいられなかった、するとカグラは。

 

 

「軍人って給料もらってるよね」

 

「ああ、そうだ」

 

「軍人って人殺すことあるよね」

 

「まあ、任務によればな」

 

 

こいつ、何が言いたいんだ・・・ウェイブが眉をひそめているとカグラはすかさず。

 

 

「お金もらって人を殺す・・・軍人って殺し屋と同じじゃん」

 

「はあ!?ふざけるな、同じなわけないだろう!!」

 

 

ウェイブは軍人のプライドを著しく傷つけられ激怒した。

 

「なんで?うり二つじゃん」

 

「いいか、軍人は人を殺すこともあるがそれは軍の命令に基づいて執行されるんだ、殺し屋なんかと一緒にするんじゃねえ!!」

 

 

激怒したウェイブに怯むことなくカグラはさらに問いかけた。

 

 

「・・・軍人って上の命令には絶対なんだよね?」

 

「ああ、それがどうした?」

 

こいつ何が言いたいんだ?ウェイブが首を傾げていると。

 

 

「じゃあ、女の子レイプしろと命令されたらレイプするんだ?」

 

「はあ!?んなまねするわけねえだろ!!」

 

「なんで?命令されたらちゃんとレイプしないと」

 

 

カグラの支離滅裂な問いにウェイブは混乱し始めた、それでもなんとか冷静を保とうとした。

 

 

「ふざけるな、上がそんな命令するわけねえだろ!!」

 

「じゃあ、もし命令されたらどうするの?」

 

 

 

ウェイブはその状況を想像した、ウェイブの目の前に拘束された全裸の女性が横たわっている。

 

 

「ウェイブ、この女を蹂躙しろ!」

 

 

 

 

「そ、そんなまねできるわけねえじゃねえか・・・」

 

今までの威勢が完全に消えてウェイブは意気消沈している。

 

 

「えっ!?そんなことしたら命令無視になっちゃうよ」

 

「ち、ちが・・・」

 

「命令無視する軍人なんて殺し屋以下だよ」

 

「てめえ!!!」

 

 

殺し屋以下・・・その一言でウェイブは完全に逆上し我を忘れた、カグラはハヤテ丸の脚を揺らした、するとその拍子に脚を掴んでいたウェイブの手がズルッと滑った、そしてそのままウェイブの体は落下していく。

 

 

「バイバーイ!!」

 

「てめええええ!!!」

 

 

ウェイブは飛び去っていくカグラをただ見ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上か?」

 

「はい・・・」

 

「つまり・・・目の前でまんまと逃げられた、ということだな?」

 

「本当に申し訳ありません」

 

 

ウェイブはパンツ一枚で石抱きの仕置きを受けていた、痛みで大粒の涙をこぼしている。

 

 

「・・・全く、お前は腕は立つのにツメが甘いな」

 

エスデスはウェイブの情けなさに呆れている。

 

「はい、全くそのとうりでございます・・・」

 

ウェイブも情けなさで心がいっぱいだった。

 

 

「次も失敗すれば私自らお前に罰を与えるぞ、いいな!?」

 

 

「肝に銘じます・・・」

 

 

ウェイブはエスデスの冷たく鋭い眼光に心からゾッとした、本当にやばい、次しくじれば終わりだと。

 

「ところでラン、お前はどう思う?」

 

「はい、おそらくそのハヤテ丸は内乱の際に国外へ流出した帝具の可能性が高いと思います」

 

「やはりそう思うか」

 

「私の帝具と違って複数の人間を載せて飛行できるのです、やっかいですね」

 

「ああ」

 

 

ナイトレイドに高速飛行ができる使い手が加わった、それがどれだけやっかいなのか二人にはわかっていた。

 

「・・・」

 

 

ウェイブはカグラの言葉を思い出していた。

 

 

 

軍人って殺し屋と同じじゃん

 

 

 

命令されたら女の子レイプするんだ

 

 

 

命令無視する軍人なんて殺し屋以下だよ

 

 

 

 

・・・違う、軍人は殺し屋なんかと同じじゃねえし、そんなゲスな真似はしねえ・・・ましてや殺し屋以下などと・・・次は必ず!! ウェイブはカグラにリベンジを誓うのであった。

 

 

「反省してください!!」

 

 

ガゴッ!!

 

 

 

セリューは石を上乗せした。

 

 

「ぐおおおおお!!!」

 

 

ウェイブの苦痛の悲鳴が部屋一面に鳴り響いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話はウェイブがへこまされたという話でした、もしエスデスに命令されたらウェイブは実行するのでしょうか、それとも命令無視するのでしょうか、どっちに転んでも地獄ですね、これからも応援お願いします。


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第五十九話

   異民族を斬る

 

 

8月2日昼

 

 

ナイトレイドのアジト内でサヨは一枚の紙をじっと見つめている。

 

 

「・・・カグラ、手配されちゃたわね、しかもナイトレイドとして」

 

エスデスはカグラをナイトレイドの新メンバーと判断して手配書を帝都に貼ったのであった、実のところカグラはナイトレイドではないのだが。

 

 

「まあ、カグラはナイトレイドに入りたかったんだし、別にいいかな」

 

 

サヨは手配書をしまって会議室に移動した、もうじき本部から隊員がアジトにやって来るからである、地方のチームが壊滅したために本部から地方へ隊員を派遣して処理をするためである。

 

 

「本部の隊員か・・・どんな人だろう」

 

サヨは少し楽しみであった、本部の人と関わることはそうないからである、そうしているうちにドアが開いた。

 

 

「皆さん、初めまして、私は本部から派遣されたカーコリッテと申します、以後よろしくお願いします」

 

 

現れたのは浅黒い肌の女の子だった、歳はサヨと同じくらいであろう、そして何より目立ったのがぐるぐるメガネであった。

 

(カーコリッテの声は小松未可子さんをイメージしてください)

 

 

 

これが革命軍の軍服か・・・なかなかビシッとしてるわね、にしてもこの娘の肌、南部の人かな?

 

 

サヨがカーコリッテを観察しているとラバが彼女の元に近づいた。

 

 

「ねえ、君、どこかで会ったことない?」

 

「え?・・・会ったことありませんよ・・・」

 

 

ラバの奴早速ナンパなの?それにしても彼女の様子が・・・

 

 

「ラバ、早速ナンパ?」

 

「そんなんじゃないよ」

 

ラバの顔が真剣だった、少なくともナンパじゃない。

 

 

「ねえ、そのメガネ取って顔を見せてよ」

 

「そ、それはちょっと・・・」

 

明らかに彼女は動揺していた、何故だろう?

 

 

「いいから見せてよ」

 

ラバは強引にメガネを取ろうとしている、彼女も必死に抵抗している。

 

「困ります、やめてください・・・ああ!!」

 

ラバは一瞬の隙をついてメガネを奪い取った、メガネを取られた彼女は必死に顔を隠そうとしている。

 

 

「やっぱり君どこかで・・・」

 

ラバはどこで彼女に会ったのか思い出そうとした、すると、ラバはそれを思い出した。

 

 

「あー!!あの時のアジトに侵入しようとしていた女アサシン!!」

 

一同に緊張が走った、アジトに侵入しようしていた人間がここにいるのだから。

 

 

「ちょっと待ってよ、私、本当に革命軍の一員なんだから!!」

 

カーコリッテは必死に訴えている、もちろん簡単に信じるわけにはいかない。

 

 

「嘘つくならもっとマシな嘘つきなよ」

 

「本当だってば!!」

 

カーコリッテはどうやって信じてもらおうか必死に頭を巡らせている、そして考えはまとまったようである。

 

 

「レオーネ、この前のシヴァの往診の時に歯の治療で失神したでしょ!?」

 

「何故それを・・・」

 

「イエヤス、あなたこの前、ホーラーさんの新発明で遥か彼方に吹っ飛ばされたでしょ!?」

 

「まあな・・・」

 

二人にとってはあまり思い出したくない出来事なので眉をひそめている。

 

 

 

「どうやら本物のようだな」

 

ナジェンダはカーコリッテが本物だと判断した、偽物がそのことを知っているわけがないからである。

 

「よかった、やっと信じてもらえた・・・」

 

カーコリッテは胸を撫で下ろした、殺されずにすんだからである、ただナジェンダは何か腑に落ちない様子を見せていた。

 

 

「ひとつ聞くがお前、なんで生きているんだ?」

 

それを聞いたイエヤスとラバはとても動揺した。

 

 

そういやそうだ、なんで生きているんだこいつ・・・

 

 

 

さすがナジェンダさん、やはり気がついたか・・・

 

 

 

 

二人には心当たりがあるようである、とてもまずい心当たりが・・・

 

 

 

「ああ、それはですね・・・」

 

 

カーコリッテはその理由の説明を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月3日

 

 

ナイトレイドのアジトに侵入者が近づいてきているとラバからの報告に一同は臨戦態勢をとった。

 

「人数は?」

 

「はい、8・・・いや、16です」

 

「16か・・・多いな、皆聞いての通りだ、全員出動だ、一人も生かして還すな、全員殺せ!」

 

「了解!!」

 

ナジェンダの号令で一同は出動し侵入者を始末していった、そんな中洞窟内を三人の侵入者が駆けている、その中にカーコリッテもいた。

 

 

「この洞窟を抜ければナイトレイドのアジトは近いはずだ」

 

「それだけでも貴重な情報だぜ」

 

「そういうことだ急ぐぜ!」

 

男達は全速で走り抜けようとした、だが、カーコリッテは何か不安を感じた。

 

 

「ねえ、何かおかしくない?誰も洞窟にいないなんて」

 

カーコリッテの杞憂に男達は鼻で笑った。

 

「まさか洞窟を通るなんて奴ら予想もしていないんだろ」

 

「腰抜けは引っ込んでろ」

 

男達はカーコリッテに構わず洞窟を全速力で抜けようとした。

 

「ま、待ってよ!」

 

すると突然男達の悲鳴が洞窟内に鳴り響いた、男達は血まみれで空中に浮かんでいた。

 

 

「こ、これは?」

 

カーコリッテは恐る恐る凝視すると、男達は細い糸で捕われていた、すると洞窟の奥から誰かが近づいてきた。

 

 

「二人かかったな、男の悲鳴を聞く趣味はないんで早速仕留めさせてもらうぜ」

 

 

ラバが糸を巻き戻すと男に巻きついている糸が男達を締め付けてずたずたに切り裂いた、男達はそのままいきたえた、カーコリッテはその様を見て恐怖に捕われて一目散に逃げ出した。

 

 

「何あれ・・・あんなの相手にしたら命がいくつあっても足りない!!」

 

逃げ出したカーコリッテを見てラバは即座に帝具を構えた。

 

 

「逃がしは・・・」

 

「逃がしはしねえぜ!!」

 

イエヤスがカーコリッテの追撃を開始したのであった、ラバはそれを見て。

 

 

まあ、あいつ一人でも大丈夫だろ・・・それに可愛い女の子を殺すのも死ぬのを見るのも後味が悪いしな・・・

 

 

ラバはそのまますたすたとその場を離れていった。

 

 

一方、カーコリッテは必死に逃げ、それをイエヤスは追撃する、カーコリッテは洞窟を抜けて見晴らしのいい崖にたどり着き逃げきったと思った瞬間右脇腹に激痛が走った、イエヤスがナイフを投げて突き刺さったのであった、カーコリッテは激痛でよろめいた。

 

「は、早く逃げないと・・・」

 

カーコリッテはよろめく足で必死に逃げようとした、すると足元が崩れて崖から滑り落ちた、そしてそのまま川へ落下した、その川には魚の大型危険種が待ち構えており、カーコリッテを丸呑みした。

 

 

「よし、片付いたぞ、次だ次!」

 

イエヤスはカーコリッテが丸呑みされるのを確認するとその場を離れて残りのアサシンを片付けに向かった。

 

 

「な、何!?」

 

 

カーコリッテは自分に何が起こっているのか一瞬分からなかった、だが、目の前の危険種の食道を見て丸呑みされたことを察した。

 

「私は・・・こんなところで・・・死んでたまるか!!」

 

カーコリッテは腰のナイフを食道にグサグサ刺し始めた、すると危険種はたまらず彼女を吐き出した、川に投げ出された彼女はそのまま気を失い流されていったのであった。

 

 

 

 

 

 

「そして気がついたら下流に流されていたんです」

 

「そんなアンビリーバボーな!!」

 

 

イエヤスはカーコリッテの説明を聞いてビックリ仰天した、すると説明を聞いたナジェンダは・・・

 

 

「・・・つまり、お前達みすみす逃がしてしまったということだな?」

 

 

ラバとイエヤスはナジェンダの怒りのこもった問いに心底からギクッとした、その瞬間、ナジェンダはラバとイエヤスにアイアンクローをかけた、二人はあまりの痛さに悶えている。

 

 

「イエヤスは論外だがラバお前もだ、大方女を殺すのも死ぬのを見るのも気が引けたのでさっさとその場を離れたんだろ?」

 

「は、はい・・・」

 

ラバは即答した、さらにアイアンクローの力が強まっていく。

 

 

「下手したらどうなっていたかわかるな?」

 

「は、はい・・・」

 

「ほ、ほんと面目ないッス!!」

 

「ナジェンダさん、このラバック深く深ーく反省しております!!」

 

 

二人はアイアンクローの痛みに耐えながら必死に陳謝した。

 

 

「・・・今回は大目に見てやろう」

 

「どうもッス!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

アイアンクローから解放された二人は心から安堵した。

 

 

「全くあなたはほんとズボラなんだから!」

 

「ホント女が絡むとアンタダメダメね!」

 

 

サヨとマインの手厳しい言葉に二人は返す言葉がなかった。

 

 

「それにしてもあなたなんでアジトの情報を持って帝国へ行かなかったの?」

 

 

サヨは腑に落ちなかった、アジトの情報だけでも手柄になるはずだから。

 

 

「・・・私はそれだけではダメなのよ、あなた達の首を持って帰らないと・・・そうしないと私売春婦として売られちゃうのよ」

 

カーコリッテは悲痛の思いで語った、彼女の思いが伝わってくる、だがイエヤスは考え無しに尋ねた。

 

 

「アサシンよりは売春婦の方が死なずにすむんじゃないのか?」

 

「馬鹿ね、売春婦は死亡率高いのよ、性病にかかったらほぼ命を落とすわ、私の知り合いで売春婦になった娘はほとんど生きていないわよ、第一ゲスな男に弄ばれるなんて死んでもいやよ!!」

 

 

彼女は呼吸が荒くなり興奮していた、同じ女の子として彼女の気持ちはよくわかる。

 

「ワリイ・・・」

 

イエヤスは自分の軽はずみさを恥じて詫びをいれた、するとイエヤスはカーコリッテの衣装に目がいった。

 

 

「その服革命軍の軍服なんだよな?」

 

「そうだけど」

 

「結構スカート短いな」

 

イエヤスはミニスカートをじろじろ見つめている、カーコリッテはその視線に気づき頬を赤めた。

 

「ちょっとじろじろ見ないでよ、嫌らしいわね!!」

 

カーコリッテはイエヤスを鋭く睨みつけたその瞬間サヨはイエヤスをぶん殴った。

 

 

「下品!!」

 

「いってえ・・・けどお前、侵入した時露出の高い衣装着てたじゃないか?」

 

イエヤスに突っ込まれてカーコリッテは再び頬を赤くした。

 

 

「・・・団長に命令されたのよ、目の保養になるからって」

 

 

この娘ずいぶん苦労したのね・・・サヨはそう思わずにいられなかった。

 

 

「でもこの衣装はとても気にいってるけどね」

 

 

そういえば革命軍の軍服って結構しゃれてるわね・・・この娘が気に入るのもわかる。

 

 

「ところで話は変わるけどあなた一人で任務大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ、私には取っておきの武器があるから」

 

「それって臣具?」

 

「そうよ、今見せるから」

 

カーコリッテは袋から臣具を取り出した、見た目は魚の模型であった、魚の背中にファンがついている、一体どんな性能何だろう?

 

 

「どんな性能か気になる?」

 

「うん」

 

「じゃあ見せてあげる」

 

 

カーコリッテとナイトレイド一同は野外に出た、彼女は左腕にその臣具を装着した、左腕を適当な木に向けた。

 

 

「じゃあ、いくわよ」

 

 

ファンが勢いよく回転し空気を取り込んでいる、そして魚の口から三連装の銃口が飛びだし発砲した。(この銃口はドライセンのビーム・ガンをイメージしてください)

 

 

ダダダダダダダダ!!

 

 

 

凄まじい射撃だった、あっという間に枝が撃ち落とされていく、弾切れする気配はなかった。

 

 

「どう、私の臣具バラクーダなかなかのものでしょう」

 

確かにすごい・・・これなら一人でも多数の敵と戦える。

 

「でも、一つ大きな弱点があるの・・・雨の日だと使えないのよ」

 

 

なるほど・・・臣具は何か欠点があることが多いしね、仕方ないか。

 

 

「長所は弾切れがないことよ、空気を圧縮して弾丸のように打ち出しているから」

 

 

天気さえ気をつけていればこの臣具かなり強いわね、本部には他にもこのような臣具あるのかな?

 

 

「このくらいでいいわね」

 

カーコリッテは射撃を停止した、銃口が口の中に収まりファンも停止した。

 

「悪いけど何か食べさせてくれないかな?」

 

「構わんぞ、今から作る」

 

スサノオがアジトに戻っていった、他のメンバーもアジトに戻っていく、昼食がまだであったから。

 

 

「ねえ、カーコリッテ、あなたの今までのこと教えてくれない?」

 

「いいけど、そうだ、私のことカーコでいいわよ」

 

「わかった、カーコ」

 

その後サヨはカーコリッテから南の異民族のことをいろいろ教えてもらったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はアニメ第三話で登場した美少女アサシンを登場させました、なかなか可愛いかったので死なすのは惜しいので生存させました、これからもどんどんキャラが登場しますので応援お願いします。


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第六十話

   狙撃手を斬る

 

 

8月4日

 

 

ナイトレイドのアジトで一同はのんびりしていた、今日は休日だからである、と言っても最近は以前ほど暗殺の依頼はないのであった、イェーガーズの設立によって帝都の治安は良くなっているのである、治安がいいのはいいことだが、依頼が減ると仕送りも減ってしまうので複雑な気分である。

 

 

 

「最近依頼が減っちゃったわね、勘が鈍っちゃうわよ」

 

マインがぼやきながら食堂に入ってきた、マインの気持ちよくわかる、だが突然思いがけない出来事が起こった。

 

 

「!!?」

 

突然マインのスカートがおもいっきりめくれ上がりマインのピンクのパンツが丸だしになった。

 

 

「きゃあ!!?」

 

マインは慌ててスカートを手で押さえてパンツを隠した、するとイエヤスが食堂に入ってきた。

 

 

「どうしたんだ・・・ぶべっ!?」

 

マインはイエヤスに右ストレートをくらわした、イエヤスは派手に吹っ飛んだ。

 

 

「てめえ、何しやがる!?」

 

「それはこっちのセリフよ、よくもアタシのスカートをめくってくれたわね!!」

 

「お前ばかか、俺は今食堂に入ってきたんだぞ、そんなまねできるか!!」

 

「じゃあ誰がめくったのよ!?」

 

 

確かにおかしいわね・・・スカートが勝手にめくれたように見えた・・・屋内だから風が吹くわけないし、どうなっているの?

 

 

「俺達以外にも誰かいるぞ」

 

スサノオが何かの気配を感じたようである、私とマインとイエヤスとスーさんしかいないはずだけど・・・

 

 

「手配を消しているが俺にはわかる、そこだ!」

 

 

スサノオは誰もいないところに指を指した、するとマインは何かピンときたようである。

 

「アンタの仕業でしょ、姿を現しなさい!!」

 

 

一体マインは何を言って?すると突然女性の姿が現れた、背丈はマインとほぼ同じくらいだけど胸はレオーネと同じくらいの大きさであった、彼女も本部の人なのだろうか?彼女はカーコリッテのように革命軍の軍服を着ていない。

 

 

(彼女の衣装は上着がレオーネと同じで下はスパッツである、彼女の声は堀江由衣さんをイメージしてください)

 

 

 

 

「ねえ、これって臣具の力なの!?」

 

「そうよ、私の臣具は透明になれるマントなの、ただし水に濡れると透明になれないけど」

 

「それでも十分すごいと思うけど」

 

「透明になっても気配は消せないのよ、スサノオさんには見抜かれたけどね、さすが噂に聞いていただけあってすごい観察力ね」

 

 

さすがスーさんね、透明になっている人でも見抜くことができるなんて・・・サヨが感心しているとマインは激怒している。

 

 

「ごまかすんじゃないわよ、よくもアタシのスカートめくってくれたわね!」

 

「ゴメンゴメン、ちょっとしたあいさつよ」

 

「全く、アンタは相変わらずね」

 

二人が会話している後ろでイエヤスは不満そうに眺めている。

 

 

「おいマイン、よくも俺を濡れ衣でぶん殴ってくれたな」

 

「ああ、そうだったわね」

 

「はあ!?言うことそれかよ!!」

 

「別にいいじゃない、アンタはそういうキャラなんだから」

 

「ふざけるな、っておい無視するな!!」

 

イエヤスはマインに無視されて怒りまくっている、それを見て女性は突然イエヤスにぱふぱふした。

 

 

「まあまあ、これで怒りおさめてよ」

 

「おっふ・・・」

 

イエヤスの顔が巨乳の谷間に埋もれている、イエヤスは息苦しかったが至福の息苦しさであった、イエヤスの表情が一瞬でにやけ顔になった、マインとサヨは突然のことにア然としている。

 

 

「な、何やってるの!?」

 

「私のいたずらでいたい目にあったんだし、そのお詫び」

 

「だ、だからって・・・」

 

サヨはただうろたえるしかなかった、その間にもぱふぱふは続いている。

 

 

「最低・・・」

 

「下品・・・」

 

「ちくしょお・・・なんてうらやましい・・・」

 

いつのまにかラバが隣にいた、心の底から悔しそうであった。

 

 

「俺もあの巨乳に埋もれたい・・・たとえどんな痛みに襲われようとも!!」

 

「じゃあ、指二本もらおうか?」

 

ボキ!!

 

 

「ああああ!!」

 

突然レオーネが現れてラバの指を折った、心なしかラバの顔がまんざらでないような気がする・・・

 

 

「ミラの奴が来てたとはな」

 

「ミラ?」

 

「ああ、あいつの名前はミラージェン、本部の人間だよ」

 

「でも軍服着てないけど?」

 

「あいつは諜報が役割だからな、軍服は着ないんだ」

 

そっか、軍服だと都合悪いからね、でもあの衣装目立つような・・・

 

 

そうこうしているうちにぱふぱふが終わっていた、イエヤスは鼻の下を伸ばして下品極まりなかった。

 

 

「機嫌直った?」

 

「おお、俺は頑丈だからな、あれくらいへでもないさ!!」

 

 

減らず口を・・・マインにぶっ飛ばされて怒っていたのはどこの誰なのよ・・・サヨは心底呆れていた。

 

 

「まあ、ぱふぱふしたのもお詫び目的だけじゃないんだけど」

 

「どうゆうこと?」

 

「君に聞きたいことあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

「この前帝具でクロメの人形見たんでしょ?」

 

「ああ」

 

「その中に金髪の若い女いなかった?」

 

 

・・・そういやそんな奴いたような気が、知り合いなのかな?

 

 

「多分いたと思うぜ、銃を使っていたと思うが」

 

「・・・そっか、やっぱりね」

 

ミラージェンは何か寂しそうな様子だった、サヨは踏み込んで聞くことにした。

 

 

「ねえ、その人と知り合いなの?」

 

 

「うん、彼女の名前はドーヤ、私の相棒だったのよ、私達はかつて北の異民族の依頼で暗殺部隊を暗殺しようとしてたのよ」

 

「暗殺部隊を!?」

 

「そうよ、私達はクロメを暗殺しようとした・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日、ドーヤとミラージェンは北の異民族の依頼を引き受けることになった、ドーヤは前金をもらって上機嫌だった、前祝いに酒場で酒盛りをしてすでにドーヤはできあがっていた。(ドーヤの声は豊口めぐみさんをイメージしてください)

 

 

「あははは、にしても前金でこれだけくれるなんて北の異民族大盤振る舞いだね」

 

「それだけ手ごわい相手ってことよ、大仕事になるわよ」

 

「わかってるよ、けど引くわけにはいかない、アタシ達が金持ちになるには命張らないといけないからな」

 

「それならいいけど」

 

「だからこうして英気を養っているんじゃあないか」

 

 

ドーヤは浴びるように酒を飲み干している、その光景を見てミラージェンはやれやれと思った、この酒盛りは仕事前の儀式みたいなものであった。

 

 

「ねえ、ドーヤ、飲み過ぎじゃない?」

 

「へーき、へーき、どうってことないよ」

 

そう言っているが相当酔っていた、いつものことねと思うことにした、ミラージェンは今回の仕事が今までで一番危険なものになると予感していた、万全な態勢で臨まないと・・・そう思っているとドーヤが抱き着いてきた、全裸で。

 

 

「何辛気臭い顔してるんだよ」

 

「あなたまた全裸になって・・・泥酔するといつも全裸になるんだから」

 

「暑いんだからしょうがないだろ、お前も脱げ!」

 

 

ドーヤはミラージェンの上着を脱がした、巨乳が丸だしになった。

 

 

「ちょっと・・・」

 

「お前、チビなのになんでこんな巨乳なんだ、生意気だ!!」

 

ドーヤは胸を揉みまくっている、そしてミラージェンに濃厚なディープ・キスをした、ドーヤの目は完全にいっていた。

 

 

「大仕事の成功の前祝いだ、今夜はらんちき騒ぎだ、パーといこう!!」

 

「しょうがないわね・・・」

 

ドーヤとミラージェンのらんちき騒ぎが朝まで続いた。(詳しい内容はR-18になってしまうので書けません)

 

 

 

 

数日後二人は指定された街道へ到着した、そこには北の異民族に雇われた殺し屋が数人いた。

 

 

「なんだ、雇われたのアタシ達だけじゃなかったのかよ?」

 

「そりゃそうでしょ相手が相手なんだし」

 

ミラージェンは不満を見せるドーヤをなだめて殺し屋達にあいさつしようとした、だがドーヤがそれを止めた。

 

 

「そんな連中にあいさつなんていらないよ」

 

「なんだと!?」

 

ドーヤの態度に殺し屋の一行は激怒した。

 

「アタシとミラだけで十分だお前らはすっこんでろ」

 

「てめえ!!」

 

鋭い目つきで睨みつけるもドーヤは全く気にしていない。

 

 

「やるか!?」

 

ドーヤの不遜な態度に一触即発であった、ミラージェンは慌ててとりなした。

 

「もう、私達が揉めてどうするの、みんな落ち着いて」

 

「わかったよ・・・」

 

一同はなんとか落ち着いて一触即発を免れた、そして作戦会議を開始した。

 

 

「私が遠方から標的を狙撃して仕留めるのはどう?」

 

「それじゃお前が総取りになっちまうだろ!?」

 

「皆にも分配するから」

 

「ちょっと待て、ミラ、そんなことしたらアタシ達の取り分減るだろ!」

 

「相手は帝国の暗殺部隊よ、リスクはできるだけ避けるべきよ」

 

「だけどよ・・・」

 

「標的の首を持っていけば報酬の上乗せの交渉も可能よ」

 

「わかったよ・・・」

 

ドーヤは渋々ながらも了承した、他の殺し屋もそれに同意した、標的が街道に現れる前に一同は身を隠した、ミラージェンは高い丘に待機した、そこは狙撃には持ってこいの場所であった、うまくいけば標的に気付かれることなく仕留めることができるであろう。

 

「そろそろ時間ね・・・」

 

北の異民族が偽情報を流して暗殺部隊をおびき出す手はずを整えていたのである、すると街道の向こうから人影が見えた、ミラージェンは銃を構える、精神を集中してタイミングを待った、その人影はまだ少女のようである、だがこの世界では見た目は全く当てにならない、わずかな気の緩みが死を招くからである、ミラージェンは念には念をいれてあるタイミングを待った、そのタイミングとは・・・

 

 

ギャアアアア!!

 

 

突然近くの森から鳥の大群が一斉に泣き声とともに飛び立った、その瞬間少女に狙いをつけて発砲した、銃声を鳥の泣き声に紛れさせたのである、銃弾が少女の頭に目掛けて飛んでいく、そして直撃したと思いきやありえない反応速度で回避したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・以上よ」

 

一同はミラージェンの話を聞いてしんと静まりかえっている。

 

 

「そのあとどうなったの?」

 

「それからクロメは人形を何体か出したわ、そのうちの一体がこっちに向かって来たから全速力で逃げたわ」

 

「ドーヤ達を置き去りにして!?」

 

「ドーヤ達には不測の事態が起こったら即撤退するよう指示していたんだけど・・・」

 

 

おそらくドーヤ達は危険を覚悟でクロメにしかけたのね、そして返り討ちに・・・

 

 

「ええと、その・・・」

 

「気遣いは無用よ、私達はいつ死んでもおかしくない世界にいるんだから」

 

 

サヨはミラージェンの覚悟をすごいと思った、自分はまだまだだと痛感した。

 

 

「そのあとクロメはドーピングをしていることを知ったけど、あの反応はそれだけじゃ説明つかない、他にも秘密があると思うわ」

 

 

一体どんな秘密が・・・きっとろくでもない秘密があるに違いない。

 

「いずれあなた達はクロメと戦うことになると思うけど今話したこと忘れないでね」

 

 

いずれか・・・正直今の私では太刀打ちできないだろう、それでも戦うことになるはず、その時まで強くなっておかないと・・・サヨは今まで以上に鍛練に励む決心をしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はドーヤのエピソードを少し書いてみました、ドーヤの性格は勝ち気としかなかったので自分なりに考えて書きました、相変わらず文章が下手ですいません、これからも応援お願いします。


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第六十一話

    復讐を斬る

 

 

8月7日

 

 

サヨは食堂の椅子に座り何か考え事をしていた、レオーネがサヨに声をかける。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「うん、ちょっとね・・・ナイトレイドの殺しって依頼がないと実行しないのよね?」

 

「そうだよ、いまさら何言ってんの?」

 

「ふと思ったんだけど、アリア達を殺す依頼をしたのって誰だったのかなあって思って」

 

「ああ、それはな・・・」

 

 

その時ナジェンダから会議室へ集合するようにとの号令がかかった、サヨ達も会議室へ行った、すると会議室に見覚えのない男二人がいた、一人は革命軍の軍服を着ており両腕が義手であった、もう一人はマントで体を覆った男であった、おそらくこのアジトで一息つけるために訪れたのであろう。

 

 

「なあ、さっきの話の続きなんだけどな・・・」

 

「続き?」

 

「あいつだよ、あの義手の男が暗殺の依頼をしたんだよ」

 

「あの人が!?」

 

サヨは思わず大声で叫んでしまった、皆サヨの方を振り向いた。

 

 

「どうしたサヨ?」

 

「す、すいません・・・その人がアリア達の暗殺依頼をしたことを知ってびっくりして」

 

サヨは心の底から驚いていた、まさか自分の目の前に現れるなんて思ってもみなかったから。

 

 

「まあ、無理はないな、普通依頼後に依頼主に会うことなどないからな」

 

 

確かに・・・恨みを晴らしてくれたとはいえ殺し屋と再開したいとは普通は思わない。

 

 

「あいつの名前はグレイグ、あいつらにダチを殺されてあいつ自身も両腕を失ったんだ、一瞬の隙をついて命からがら逃げ出すことに成功したんだ、力つきて倒れているところを密偵チームに助けられたんだ」

 

 

友達を殺された・・・その悲しみよくわかる、私達もタツミを殺されたから・・・

 

 

「あの・・・ありがとうございます、あなたが依頼をしてくれなかったら私達は・・・」

 

「礼はいい、お前達のためにやったわけではないからな」

 

 

確かにそのとうりね・・・でもそのおかげで助かったのは事実だから。

 

 

「ところでお金はどうしたんですか?」

 

「とある新薬の実験台を務めることで稼いだ、詳しくはいえんがな」

 

新薬・・・一体どんな実験何だろう・・・サヨは聞かないことにした。

 

 

「ところでその義手はどんな性能なの?」

 

 

グレイグの義手は左右異なっていた、当然性能も異なるであろう、サヨは興味があった。

 

 

「ここではお披露目できないな、特に左腕はな」

 

左腕は?気になるけど無理強いできない、機会があれば見ることもあるだろう、隣にいるマントの男も気になった、見た感じこの地域の人間ではなさそうである、南部の人間だろうか。

 

 

「あの・・・」

 

サヨが声をかけると鋭い目つきで睨みつけてきた、何?睨みつけることないじゃない・・・サヨが不満げにしているとレオーネが声をかけてきた。

 

 

「あんまりあいつには声かけない方がいいぞ」

 

馴れ合いが嫌いなのかな、それにしてもあの態度は・・・

 

 

「まあ、あいつの気持ちもわかるからな」

 

「それってどういうこと?」

 

「あいつの名前はガザム、バン族の生き残りだよ」

 

 

バン族・・・たしか数年前に帝国に反乱を起こして壊滅された民族・・・その生き残りが革命軍に・・・帝国に復讐するためなんだろう。

 

「それにしてもあの人軍服着てないけど」

 

「ああ、あいつは革命軍に入ったわけじゃないからな、敵が共通してるから共に行動してるだけだよ」

 

 

まあ、戦う理由は人それぞれだし、私も村へ仕送りするためにナイトレイドになったんだし。

 

 

「まあ、他にも理由あるんだけど」

 

サヨがレオーネにその理由を聞いてみようとしたその時、鳥の危険種が会議室に入ってきた、脚には手紙がつけられている、ナジェンダはその手紙を読んでみた、その手紙の内容は本部からの指令であった、帝国のパトロール部隊の殲滅であった、そのパトロール部隊は帝都に向かう商人を盗賊を装い襲って殺して金品を強奪しているらしい、なお、その任務はたった今到着した二人にやらせるようにということだ。

 

 

「やれやれ、あの人も人使いが荒いな」

 

グレイグはぼやきながらも準備に取り掛かる、ガザムは小声でぽつりとつぶやいた。

 

 

・・・帝国軍の奴らを殺せる・・・

 

 

ガザムは陰気な笑みを浮かべクククと笑っている、サヨはこの光景を見てゾッとしたが同情もした、故郷を帝国に滅ぼされたのだからその気持ちわからなくはなかった。

 

 

 

帝都から南へ15キロ離れた街道、そこに例の部隊が現れるそうだ、本部がニセの情報を流しておびき寄せるのである。

 

 

「そろそろ時間だな」

 

グレイグが時計を確認する、すると、北の方から帝国軍の集団が現れた、ニセの情報にまんまと釣られたのであった。

 

 

「じゃあ、行くか」

 

グレイグは武器を構えた、彼の武器はナギナタに似た臣具であった、刃は突撃真っ赤になった、ナギナタから高熱が発したのであった、これなら鉄の鎧も簡単に切り裂くことができるだろう、義手でなかったら手で持つことはできないであろう。                                              (この臣具はビームナギナタをイメージしてください)

 

 

「ぶった切ってやるぜ!!」

 

 

ナギナタを握った義手が激しく回転し始めた、グレイグは単身で切り込んだ、そして帝国兵を片っ端からバラバラに切り刻む、帝国兵の肉片が次々と地面に落ちていった。

 

 

「な、なんだコイツ・・・お前ら囲んでコイツを殺せ!!」

 

 

おそるおそる隊長が号令を出してグレイグを取り囲もうとしている、グレイグはこれに動じることもなく左腕を突き出した、すると左手首が外れ義手に仕込んだ大砲が轟音とともに火を吹いた。

 

 

ドオオン!!

 

 

木っ端みじんに吹き飛ばされた帝国兵の肉片がボロボロ落ちていく、その光景を見て隊長は戦意を失い逃げ出した。

 

 

「冗談じゃない、やってられるか!!」

 

他の帝国兵も隊長とともに逃げ出していく、その先にはガザムが待ち構えていた、ガザムはマントを脱ぎ捨てた、するとガザムの異様な体があらわになった、彼の体は筋肉が盛り上がり、所々に穴が空いていた。

 

 

「逃がさねえぞ、喰らえ!!」

 

 

ガザムの体の穴から無数の虫が飛び出した、虫は次々と帝国兵を貫いていく、その光景を見てサヨは度肝を抜かれた。

 

 

 

「な、何ですかあれ・・・」

 

「ああ、彼の体内には鉄の甲殻を持つ虫を生み出す臣具が埋め込まれているんだ、自分の体をエサにしているようなものだ」

 

「自分の体を!?」

 

「彼自身が決めたことだ」

 

 

サヨはナジェンダの説明にア然としていた、復讐のために自分の体を虫のエサに・・・でも彼の怒りと憎しみはそれほどのものなのだと、自分には彼の行動を否定する権利はない、サヨはそう思わずにはいられなかった。

 

 

その間にもガザムは帝国兵を殲滅していく、そして隊長を残し帝国兵は全滅した、残った隊長は必死に命ごいをしている。

 

「た、助けてくれ・・・金ならいくらでも・・・」

 

ガザムは言い終える前に隊長の頭を撃ち抜き隊長の顔に唾を飛ばした、ガザムにとっては帝国兵はゴミ以外のものではなかった。

 

 

・・・

 

 

ガザムは襲いかかる激痛に耐えていた、臣具の代償であった、けれでもガザムにとっては何でもなかった、あの時の屈辱に比べれば・・・

 

 

 

数年前、ガザムの故郷であるバン族の街は帝国軍によって焼き払われていた、同胞も次々と殺されていく、ガザム自身もエスデスに頭を踏み付けにされていた。

 

 

 

「悔しいか?覚えておけ、弱者はこうなって当然なのだ、悔しければ強くなってみろ、そして私を殺しに来い、いつでも相手にしてやるぞ」

 

 

 

ガザムは涙した、自分自身の無力さに悔しくてたまらなかった・・・ガザムはその時より力を求めた、そして強力だが命を削る臣具もためらいなく体内に取り込んだ、すべてはエスデスに復讐するためである、差し違えてでも。

 

 

エスデス・・・あの時俺を殺さなかったことを後悔させてやる!!

 

 

 

ガザムの目は復讐の炎で満ちあふれていた、その炎が自身を焼き尽くすことになってもガザムはかまわなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はバン族の生き残りを登場させました、バン族は主人公サイドでは登場しなかったので出してみました、今後ももっとキャラを登場させます、これからも応援お願いします。


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第六十二話

  地方都市を斬る(前編)

 

 

8月10日

 

 

私達は今帝都から南方にある都市にいた、なぜ南方の都市にいるのかというと私達ナイトレイドが本部から召集されたからである、何故召集されたのか心当たりがあった、先月チームカプコーンの暴走を阻止するという任務を果たせなかったからである、だけどそれはボスに責任はないはずである、彼らが勝手に暴走してエスデス達にやられたんだから、とにかく本部に到着しなくては始まらない。

 

 

 

「ここには私達の手配書回ってないのよね」

 

「ああ、この都市は革命軍の息がかかっているからね」

 

「よく帝国に潰されずにいるわね」

 

「この都市が潰されると南方の交易に支障が出るからね、それに革命軍との関係は表沙汰にはなってないからね」

 

「でも帝国ならそんなの関係ないんじゃないの?」

 

「そこは金でなんとかなるんだよ、地獄の沙汰もってやつさ」

 

 

ラバは指でお金のしるしをした、なるほど・・・お金は天下の回りものとは言ったものだ。

 

「お前達、あんまりはしゃぐなよ、この都市にも帝国兵はいるんだからな」

 

 

確かに・・・時々帝国兵を見かける、けどあまりやる気がないように見える。

 

 

「帝都から離れているからね、まあ、地方軍のていたらくは今に始まったわけじゃない」

 

 

上が腐ると下も腐っていくのも当然ね・・・これじゃあ盗賊がのさばるのも当然だ・・・

 

 

「まあ、ここはまだマシな方だよ、盗賊の被害はかなり少ないから」

 

「えっ?ラバ今地方軍がだらし無いって言わなかったっけ?」

 

地方軍がだらし無いのになんで盗賊の被害が少ないの?どういうこと・・・

 

 

「盗賊を退治してるのは地方軍じゃないよ、革命軍の兵士だよ、むろん秘密裏にだけど」

 

「そうなんだ」

 

「それも密約に入ってるんだよ」

 

どうりで・・・帝都に比べて少し活気があると思った、少しだけだけど・・・

 

 

私達はこの都市にあるアジトに向かっている途中である、ここは帝都ではないが帝国兵がいる以上気は抜けない、繁華街の裏道を歩いていると前方に三人の人影が見えた、一瞬帝国兵かと思ったけどその三人は革命軍の軍服を着ていた、味方である。

 

 

「お久しぶりです、隊長」

 

三人の内の一人が話かけてきた、隊長?どういうことだろう?

 

 

「私はもうお前達の隊長ではないぞ」

 

「いえ、俺達にとってはナジェンダ隊長は俺達の隊長です」

 

ボスの知り合い?隊長ってもしかして・・・

 

 

「あのボス、この人達はもしかして・・・」

 

「ああ、この二人は私が将軍だった頃の部下だ」

 

やっぱり、ボスは帝国を抜ける時ボスの部隊も一緒に帝国を抜けたのであったから。

 

 

 

「紹介しておこう、隻眼の男がレッド、隣にいる大男はトレイルだ」

 

「レッドだよろしく頼む」

 

「・・・」

 

トレイルは無言で頭を下げて礼をした。

 

「すまないな、こいつはノドに傷を受けたせいでしゃべれないんだ、まあ、もともと無口な奴だったがな」

 

 

傷?そういえばボスとボスの部隊はエスデスの追撃によって甚大な被害を受けたんだっけ・・・

 

 

 

「あの時からずいぶん時が経ったな・・・」

 

「はい・・・」

 

「・・・」

 

三人は昔を思い出している・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダはバン族の反乱を鎮圧してからずっと思い詰めていた、レッドとトレイルもそれを気にしていた。

 

 

「隊長、帝都に帰還してからずっとああだな」

 

トレイルは無言で頷いた、二人にはナジェンダの気持ちがわかったからである。

 

「まあ、あんな惨状見せつけられたら当然だな」

 

彼らもエスデス軍の非道を目の当たりにしたのである、憤りを感じずにはいられなかった、だが軽はずみな行動はできなかった、隊長であるナジェンダに迷惑がかかるから、それから月日が経ってナジェンダの部隊に山賊の討伐の命令が下された、二人はやきもきした気持ちを抑えて任務に集中することにした。

 

 

「もうすぐファーム山だな」

 

トレイルは無言で頷く。

 

「確かこの山は反乱軍の前線基地だったな」

 

 

反乱軍・・・最初は小さな抵抗集団だったがこの数年で大きく勢力を伸ばしているのだ、反乱軍は帝国の統治に反感を抱き決起したのだが、正直少し気持ちは理解できる、バン族の惨劇を見てしまった後では・・・

 

 

 

「いかん、いかん、今は任務に集中しないと・・・」

 

俺は帝国軍人でナジェンダ隊長の部下なのだ、俺が勝手なマネをすると隊長に迷惑がかかる・・・レッドは気を引き締めることにした、しばらくしてナジェンダがファーム山の前に布陣し終えた、ナジェンダの顔に覚悟が満ちていた。

 

 

「おい、隊長の様子おかしくないか?」

 

「?」

 

トレイルは無言で首を傾げた、レッドも同じ気持ちである、ナジェンダは深呼吸をして自分の決心を宣言した。

 

 

 

「真に討つべき敵は悪政で民を苦しめる奸臣達だ!!私はこれより革命軍に身を投じ民が安らかに暮らせる国を作る!!激しい戦いになるだろう、だから私は強制はしない、去る者も追わない!!それでも私についてきてくれる者がいたら力を貸してほしい!!」

 

 

ナジェンダが宣言し終えた瞬間、全員が賛同の咆哮をした。

 

 

「オオオオオ!!」

 

普段から無口のトレイルもこの時は腹のそこから雄叫びをあげた。

 

「隊長、俺達はどこまでもあなたについて行きますぜ!!」

 

レッドも今の帝国に嫌気がさしていたのである、隊長とともに国を作る、レッドの心はその思いに高揚していた。

 

 

「では出発するぞ!!」

 

ナジェンダはファーム山にいた兵と合流し革命軍本部に向けて進軍を開始した、すぐにでも帝国の追撃部隊が来るであろうから。

 

 

 

「隊長、後ろから何者かが追って来ます!!」

 

「来たか、思ったより早かったな」

 

ナジェンダは部隊に戦闘態勢をとらせた、だが、追っ手は一人だった、ナジェンダは目を凝らして見るとその者に見覚えがあった、それは・・・

 

 

「ナジェンダさん!!」

 

「ラバ!?なぜここに・・・ロクゴウ将軍に手紙を渡すよう指示していたはずだぞ!?」

 

 

ナジェンダはとても驚いた、ラバが北方にいるロクゴウの元へ向かったのを見届けたのであるから。

 

「すいません、けど最近のナジェンダさん様子がおかしかったから・・・でもこの手紙ではっきりしました」

 

 

その手紙の内容はラバが自分の帝国の離脱とは関係がないということとラバをロクゴウの部下として仕えさせてほしいというものであった。

 

 

「今すぐ戻れ!!」

 

「それだけは聞けません、俺もついて行きます!!」

 

「わかっているのか!?私達は反逆者だぞ、私達と共にいればお前も罪に問われるのだぞ!」

 

「心配ご無用です、出発する前に公文書を改ざんして俺は死んだことにしておきました」

 

「な、なんてことを・・・もうお前は家族に会うことはできなくなったのだぞ!!」

 

「・・・俺も帝国にはうんざりしたんです、もう潮時だと」

 

「・・・言っておくが命の保障はないぞ」

 

「覚悟の上です!!」

 

「・・・好きにしろ」

 

ナジェンダはそっけない態度をとったが口元は微かに笑みが浮かんでいた、ナジェンダは部隊に進軍を命じ前進した、途中で地方軍が現れたがあっさりとあしらってさらに前進した。

 

 

「隊長、そろそろ誰かを革命軍の本部へ使者を送ってみては?」

 

「そうだな、ラバ、お前が行ってくれ」

 

「わかりました」

 

ラバは単身で早馬に乗って本部へ走り抜けて行った、ナジェンダはもうすぐ本部に到着できると安堵し進軍を開始した、ナジェンダに心の緩みがなかったわけではなかった、実際この一帯には名だたる将軍は駐留していなかったから、だがナジェンダは後悔することになる、エスデス軍が常識外れの速度で進軍してナジェンダの目の前に現れたからである。

 

 

まずい・・・備えもなくエスデスにぶつかるのは・・・

 

 

動揺するナジェンダに副官は交戦を意見具申した、だがエスデスによって首を飛ばされてしまったのである。

 

 

エスデスは無数の氷の矢を放った、ナジェンダもパンプキンで迎撃する、だがあまりの苛烈な攻撃にナジェンダは右目を潰された。

 

 

「隊長!!」

 

レッドとトレイルは他の兵と共にナジェンダの救援に向かった、だがエスデスの放った氷の矢にレッドは左目を潰され、トレイルは咽を貫かれ、他の兵も身体を撃ち抜かれた。

 

「隊長・・・」

 

レッドは力を振り絞りナジェンダの救援に向かおうとした、だがナジェンダがエスデスに右腕を砕かれるのをただ目の当たりにすることしかできなかった。

 

 

その瞬間南方から部隊が進軍してきた、革命軍の部隊が駆けつけてくれたのであった。

 

 

エスデスは革命軍の部隊を見るとすぐさま口笛を吹いて撤退していった、エスデス軍は強行して進軍したため疲弊して連戦はキツイと判断したと思われる、もっとも後日の戦いを楽しむためにわざととどめを刺さなかった可能性もあったのである。

 

 

「隊長・・・」

 

レッドは深手を負ったナジェンダの元へ駆け寄った、ナジェンダは虫の息であった。

 

「被害は・・・」

 

「詳細はわかりません・・・かなりやられたでしょう」

 

「・・・すまん、私の責任だ・・・」

 

「死んでいった連中はこうなるのを覚悟で隊長について来たんです、誰も隊長を恨んでいませんよ・・・」

 

「・・・」

 

ナジェンダの意識は出血によりもうろうとしていた、その後革命軍の衛生兵の治療でなんとか一命を取り留めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボス、どうしたんですか?」

 

「いや、別に何でもない」

 

サヨの言葉でナジェンダ達は回想から現実に戻された、三人にとっても忘れなれない過去である。

 

 

「ひとまずこの都市のアジトへ向かうぞ、そこで休息をとる」

 

 

一同はアジトへ足を運んだ、その中でナジェンダは・・・

 

 

 

・・・どうあれ私は生き残った・・・最後の最後で私は勝ってみせる!!

 

 

ナジェンダは心の中で雪辱を誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はナジェンダの過去を少し書きました、ナジェンダの元部下も革命軍にいると思い登場させました、次回はあるキャラの過去を書いてみるつもりです、これからも応援お願いします。


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第六十三話

もう今年も終わります、今年最後の作品ご覧ください。


   地方都市を斬る(後編)

 

 

ナイトレイド一行はアジトに到着してくつろいでいた、ブラートはある人と酒を酌み交わしていた、その人物はブラートがよく知っている人物であった。

 

 

「あんたと酒を飲むのは久しぶりだな」

 

「ええ、本当に久しぶりね」

 

彼の名前はインファン、かつては帝国軍人でリヴァが将軍だった頃の副官であった、筋骨隆々な体格に似合わず柔軟な思考ができ広い視野を持っている戦士である。

 

 

「あれからずいぶん年月がたったな」

 

「ええ、昨日のことのように感じるわ・・・」

 

 

二人は帝国を抜けるきっかけになった南部戦線を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リヴァ将軍率いる帝国軍は南の異民族と交戦を繰り返していた、戦況は帝国が優勢であった、だがある日・・・

 

 

「後悔するぞ!!」

 

リヴァの天幕からすごい剣幕の男が飛び出してきた、服装をみるに使者と思われる、ブラートは何事かと気になり天幕へ入った。

 

 

「将軍、今のは・・・」

 

「ああ、彼は大臣の使者で賄賂を要求しにここまで赴いたのだ」

 

「賄賂!?」

 

「別に今のご時世では珍しいことではないわよ、でも将軍は断ったわよ」

 

「当然だろ、将軍がそんなマネするわけねえよ」

 

ブラートは帝国の腐敗に憤慨しているがインファンは深刻な表情をしている。

 

 

「そうよ、将軍は間違ったことはしてないわ・・・でも向こうには道理は通用しないわ、何も起こらなければいいけど・・・」

 

 

しばらくしてインファンの不安が的中してしまうのであった。

 

 

リヴァが大臣の怒りを買い拘束されてしまったのであった、リヴァは檻に入れられ帝都へ連行されつつあった。

 

 

「ふざけるな!!なんで将軍が・・・」

 

ブラートが激昂する様子を見て大臣の息がかかった兵士はほくそ笑んでいた。

 

 

「・・・私が甘かったのだ、大臣の要求を断ればこうなることは想像できたのだからな」

 

「将軍は間違ったことはしていません!!」

 

 

確かに将軍は間違っていない・・・でも、それが道理として通らないのが今の帝国・・・インファンは自分も甘かったと悔やまずにはいられなかった、リヴァが閉じ込められた檻が帝都に向けて移動を開始した。

 

 

「インファン、指揮は任せたぞ」

 

「わかったわ、将軍・・・」

 

自分にどこまで務まるだろう・・・それでもベストを尽くさなくてはならなかったのである。

 

 

「もう我慢できねえ、こんな檻ぶっ壊してやる!!」

 

ブラートはリヴァを閉じ込めた檻に突っ込もうとした、だがインファンはブラートの肩を掴んで制止させた、インファンのブラートの肩を掴む力が凄まじくブラートの顔が痛みで歪んだ。

 

 

「やめなさい!!そんなことをしたら将軍の立場がますます悪くなるわ、それにあなたまで拘束されたらこの部隊はどうなるの!?」

 

「す、すまねえ・・・」

 

 

ブラートは自分の軽率な行動に恥じて赤くなった、自分はまだまだ未熟だと痛感した。

 

 

「なあ、インさん、これからどうするんだ?」

 

「ベストを尽くすしかないわ・・・」

 

 

正直どうするかはこっちが聞きたかった、将軍がいなくなることで士気は間違いなく落ちる、それに自分は将軍ほどの采配能力はない、間違いなく苦戦になるだろう、それでもやるべきことをやるしかなかった。

 

 

 

 

 

数日後・・・帝国軍は南の異民族の総攻撃で壊滅状態に陥っていた、ブラート達も必死に戦っているものの・・・

 

 

「くっ、ダメだ、敵が多すぎる!!」

 

「味方は総崩れよ、この戦いの勝敗は決したわ・・・」

 

「くそっ、将軍がいればこんなことには・・・」

 

 

将軍がいればこんなことにはならなかった、これまで戦況はこっちが優勢だった、なのに将軍を拘束するなんて上は何を考えている!!ブラートは憤りを感じずにはいられなかった。

 

 

「おそらく敵さん将軍がいないことを知ってるみたい」

 

「それってどういう・・・」

 

まさか上が敵に知らせたのか!?何のために・・・

 

 

「将軍の部隊を敗北させることでさらに罪状の上乗せを狙ったのよ・・・」

 

「そ、そんなことのために・・・」

 

 

ブラートは茫然とした、そんなことのために前線の兵士はいくら死んでもかまわないっていうのか・・・

 

 

 

「ふざけるなああ!!」

 

 

 

ブラートは咆哮した、怒りと悲しみに満ちた咆哮であった、この戦いで死んでいった兵士はこんなばかな理由で死んだのか、ブラートはやりきれない思いでいっぱいだった、だが立ち止まっているわけにはいかなかった、生き残った兵を逃がすため戦わなければならなかった、ブラートは帝具を装着して敵を片っ端からなぎ払っていった、味方の兵が全て撤退したのを確認するとブラートとインファンも撤退を開始した。

 

 

「さすがね、あれだけの敵を倒すなんて」

 

「けど、大勢死んじまった・・・」

 

二人の表情は重かった、つい数日前まで勝っていたのだから、だが二人にとってはまだ終わりではなかった。

 

 

「おそらく上はアタシ達にも大敗の罪を押し付けてくるはずよ」

 

「そうだろうな・・・」

 

将軍をさらに陥れるためにこんなマネをする奴らだ間違いないくそうするだろう・・・ブラートはある決心をした。

 

 

 

「こんな腐りきった帝国に愛想がつきた、俺は今帝国を抜ける!!」

 

「そう、あなたならそう言うと思ったわ、アタシも抜けるわ」

 

「インさん、これからどうするんだ?」

 

「そうね・・・アタシはしばらく地下に潜るわ、そしてそのあと反乱・・・革命軍に行こうと思うわ」

 

「革命軍か・・・帝国に反旗を翻している勢力だな、今の帝国よりはいいだろう」

 

「あなたも一緒にどう?」

 

「いや、俺は自分がどれだけ無力か思い知った、一から鍛え直そうと思う」

 

「そう、あなたらしいわね、生まれ変わったあなたを見るのを楽しみにしてるわ」

 

二人が走っている道が二つに別れている、二人は別々の道を選んだ。

 

 

「じゃあなインさん!!」

 

「また会いましょう!!」

 

二人は別々の道を走り抜けて行った、二人には悲壮感はなかったいつか必ず再会できることを信じていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いろいろなことがあったな・・・」

 

「ええ、まさかリヴァ将軍が敵としてあなたの前に現れるなんて・・・」

 

 

帝国に陥れられた両者が敵同士になって殺しあったことをインファンはいまだにショックであった。

 

 

「お互い信念を持って戦ったんだ悔いはない」

 

「そうね・・・」

 

インファンはそれ以上聞かなかった、それ以上は野暮になるからである、二人は再び酒を飲み始めほろ酔いになっていった。

 

 

「それにしてもあなた鍛え直してますますハンサムになったわね」

 

「おう、インさんならわかってくれると思ってたよ、他のみんなからは不評だがよ・・・」

 

ブラートは自分の鍛えられた肉体を称賛してくれる人間がやっと現れて感激している。

 

 

「ところで話は変わるけどあなたエスデスと戦って勝てる自信ある?」

 

「エスデスとか・・・」

 

なぜこの話に切り替わったのかブラートには心当たりがあった。

 

「エスデスを倒せる可能性がもっとも高かったアカメちゃんが死んじゃったからね、あなたにかかる期待が高まっているのよ」

 

「それは光栄だな」

 

ブラートは胸を張ったが正直エスデスと戦って勝てるかどうかは五分はないと思っている、エスデスの帝具は攻守において非常に優れており自分の攻撃も100%の威力で当てることは非常に困難だろう、と思っている。

 

 

「エスデスと戦う時がきたら俺の熱い魂がこもった一撃をくらわせてやるよ」

 

「あなたならそう言うと思ったわ」

 

インファンは微笑みながらブラートのグラスに酒を注いだ、彼ならエスデスに強烈な一撃をくらわすことができるかも。

 

 

「インさんもググっといこうぜ」

 

ブラートもインファンのグラスに酒を注いだ、互いに酒を飲み干した。

 

「今夜は飲み明かそうぜ!!」

 

「あなた明日早いんでしょ?」

 

「俺はそんなにヤワじゃねえぜ」

 

「そうね、今夜は飲み明かしましょう」

 

二人はその後酒を飲み明かした、その日二人は一日中二日酔いになったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はブラートがメインの話でした、オリジナルの展開をいくつか付け足しました、今年の4月から書き始めて64話書きましたが全然文章がうまくなりませんでした、来年はもう少しうまく書ければと思います、来年もサヨが斬るを応援お願いします、皆さん、良いお年を。


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第六十四話

あけましておめでとうございます、ついにUAが二万に達しました、頑張って書いてきたのでうれしいです、これも下手な自分の小説を見てくれた皆さんのおかげです、これからも投稿しますので応援お願いします。


   憂いを斬る

 

 

8月15日

 

 

私達ナイトレイドはカカチチ湖に到着しようとしていた、この湖を越えれば革命軍本部に到着できるのである、本部の拠点はどのようなものなのか興味があった、けどひとつ気になることがある、本部に近づいているのに見張りの人が全然見かけないのである。

 

 

「ねえ、なんで見張りの人いないの?」

 

「ちゃんといるよ、今もこの辺りを見張っている」

 

「見張っている?」

 

 

サヨは辺りを見渡した、けれども誰もいない、すると白い煙みたいなものが集まり人の形になっていく。

 

 

「これは・・・まさか帝具?」

 

サヨがポカンとしていると煙の人みたいなものは歩きだした。

 

「みんな行くぞ、サヨ、イエヤス、あれが歩いた道を逸れるなよ」

 

 

それはその道以外が危険ってことね・・・さすが本部に近づいているだけあって警戒が厳重ね・・・ナジェンダ達はしばらく歩行した、すると煙の人は音もなく消え去った。

 

 

つまりもうこれから先に罠とかないってことなのかな?サヨがそう思っていると人影が近づいて来た。

 

 

「久しぶりだな、ナジェンダ」

 

現れたのは長身の男性だった、歳は30前半ぐらいだろう、右手には杖を手にしている、杖で地面を探っているように見えた。

 

「もしかして目が?」

 

「そうだ、俺は生まれつき目が見えん」

 

そうだったんだ、余計なこと聞いちゃたかな・・・

 

 

「気にするな、目が見えなくても不自由はない、俺は鼻が利くからな」

 

そうなんだ、よかった・・・サヨはホッとした。

 

 

「ところであなたは?」

 

「俺の名はストリークだ、ここで見張りをしている」

 

「見張りを?さっきの煙の人はあなたが?」

 

「そうだ、俺の帝具で造りだした」

 

「あなたの帝具でですか?」

 

ストリークは自分の帝具を見せた、それは緑色の龍神香炉であった、香炉から煙がうっすらあふれだしている、これこそ帝具ジンフィアである。

 

 

「口で説明するよりも実際見た方が早い」

 

 

ストリークは帝具を使用した、すると香炉から煙が上がり辺り一面に広がっていった、広がるにつれて煙が薄くなっていく、ついにはまったく目で見えなくなった、これなら誰にも気づかれることなく見張りができる。

 

「この帝具は煙を造りだすことができる帝具なのですか?」

 

「いや、他にも香りを生み出すことがてきる、一時的だが身体能力をあげることがてきる」

 

 

そうなんだ、この帝具応用が利きそうね、直接戦闘には不向きだけど。

 

 

「ナジェンダ、今の内に渡しておこう」

 

ストリークはナジェンダに手荷物を渡した、ナジェンダは心なしかうれしそうである。

 

「ボス、それ何ですか?」

 

「これは彼の手製のタバコだ」

 

そっか、ボスのタバコ、彼が作っていたんだ・・・彼なら上質のタバコを作れるわね。

 

 

「あまり吸いすぎるなよ、シヴァの奴がうるさいからな」

 

 

シヴァか・・・彼女本部にいるのかな?サヨがそう思っているとナジェンダはストリークに質問した。

 

 

「話は変わるが総大将の容態は変わらないのか?」

 

「残念ながらな・・・」

 

ストリークの表情は沈んでいる、総大将が目覚めないのだから当然だろう。

 

 

「あの人は昔からこの国の行く末を憂いていた、地方を蔑ろにする中央に未来はないと・・・だからあの人は・・・プライム殿は帝国に抵抗するために決起したのだ」

 

「昔からって・・・あなたは総大将とは長いつき合いなのですか?」

 

「ああ、俺は革命軍の創設メンバーだからな」

 

 

そうなんだ!?でもなんで見張りを?もっと高い地位になれるんじゃ・・・ストリークはサヨの考えを察して語った。

 

 

「正直今の本部は居心地がよくないんでな」

 

「どういうことですか?」

 

「革命軍は大きな組織になった、だが人が集まれば集まるほど組織は変わっていくものだ、革命軍に集まった者が全て民のことを考えているわけではないからな、プライム殿の元には新国家で権力を手にしようと目論む者もいるからな」

 

「本当ですか!?」

 

・・・それが本当なら革命軍は民が安らかに暮らせる国を作ってくれるか怪しくなってしまう・・・

 

 

「心配するな、幹部にもプライム殿の理想を実現しようと命を懸けている者もいる」

 

 

「そうですよね、それを聞いて安心しました」

 

「だが、数人は私欲に走っているのも事実だ」

 

「そうなんだ・・・」

 

 

まさに安心したも束の間であった、そんな人達がいたら民を虐げる帝国と同じになってしまうんじゃ・・・不安になっているサヨを見てナジェンダはあることを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「パスター殿、ムール殿、いい加減にあのようなマネはおやめください!!」

 

「何のことだ?」

 

「とぼけないでください、お二人が村を賊から守る見返りに女性を村から差し出させていることを」

 

「俺達は差し出せとは一言も言ってないぞ、村の好意だ」

 

「それは女性を差し出さないと護衛を派遣してくれないと恐れて、仕方なく」

 

「そう思うのは向こうの勝手だろ」

 

「それでは帝国と変わらない・・・」

 

「黙れ、ナジェンダ、お前ごときが口をはさむな」

 

「お前は自分の勤めに専念していればよいのだ」

 

「・・・失礼します (くっ、私にもっと発言力があれば・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は革命軍において発言力は高い方ではないからな、他の幹部の愚行を止められないこともある」

 

「ボス・・・」

 

 

ボスは歯がゆい思いいっぱいしてきたんだろうな・・・私達が頑張って手柄を立ててボスの立場を強化しないと・・・

 

 

「お前は自分の村を救うことに専念しろ、余計なことは気にするな」

 

 

ナジェンダはサヨの思っていることを察して注意した、革命軍のいざこざに巻き込まないように。

 

 

「とにかくお前達は本部に向かえ、あまり遅れるとあいつがいらつくからな」

 

「ああ、見張り頑張ってくれ」

 

 

私達は本部に向かって歩きだした、あの山を越えたらいよいよ革命軍の本部である、今私は不安な気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は革命軍の内部の状況を少し書いてみました、原作ではまったく語られることはないので自分なりに書きました、今年も応援お願いします。


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第六十五話

   工兵を斬る

 

 

 

「すごい・・・」

 

サヨは岩山を利用して造られた砦を見て驚いていた、岩山をくり抜いただけの単純な砦だがちゃんと人が生活できるのである、その砦は複数存在した。

 

 

「これってすごくない、岩山をくり抜いて砦を造るなんて・・・なんて安上がりな!!」

 

「驚くのそこかよ・・・」

 

イエヤスはあきれつつも岩山でできた砦に興味を持っていた。

 

 

「それにしても誰がこの砦造ったのかな?」

 

「ああ、それなら向こうの岩山にいるよ」

 

ラバが指さした方向に岩山で工事をしている集団がいた、新たな砦を建設中であった、サヨとイエヤスはそこに向かっていった、すると見たことがない道具で岩山を掘っていた。

 

 

ドドドドドドドド!!

 

 

あっという間に岩山が掘られていった、それはツルハシでもスコップでもなかった、(この工具は大きなドリルです)

 

 

「すごいですね、あっという間に・・・」

 

「おう、すごいだろ、俺にかかればこんなもんだ!!」

 

「ちょっと浮かれないで、こないだみたいに調子に乗って岩山崩したらやり直しなんだから」

 

「大丈夫だって心配するな、サン」

 

「もう・・・」

 

サンという女性があきれていると三人の男が現れた、三人も見たことがない道具を持っている、特に真ん中の人は左腕が義手であった。

 

 

「サイードに何言っても無駄だぞ、そいつは馬鹿だからな」

 

「本当にそうだ、リーダーの俺の指示をろくに聞かないんだからな」

 

「とにかくさっさと片付けてメシにするか、あらよっと」

 

 

スキンヘッドの男は大型の磁石を構えた、すると鉄の鎖が巻き付いた石材が空中に浮かんだ、そしてそのまま山頂に搬送された。

 

 

「この工具は臣具なんですよね?」

 

帝具ではないことは明らかだった、そこまでのものではないから。

 

「ああ、そうだ、俺の臣具も見せてやろう」

 

自分をリーダーだと言った男が義手を真上に構えた、すると突然義手から火柱が上がった。(これはガスバーナーをイメージしてください)

 

 

「びっくりした!!」

 

「そうだろう、これは鉄だって切断できるんだぜ」

 

リーダーの男は鼻高々であった、だが周りの仲間はひややかであった。

 

 

「そんなんでいい気になるなんておめでたいな」

 

「まあ、グラールはそういう奴だからな」

 

「それはどういう意味だ!?」

 

「お前がちっちゃい奴だってことだよ」

 

 

突然上から中年の男が降りてきた、サヨ達は驚いた、突然降りてきたことに驚いたのではなく彼の足に驚いたのである、彼の足は太ももの部分から切断され代わりに大きなバネが付いていたのである。

 

「ちっちゃいとはどういう意味だ!?」

 

「言葉どうりの意味だよお前はちっちゃい男なんだよ」

 

「喧嘩売ってんのか!?」

 

「やるか!?」

 

 

グラール達はサヨ達をほっぽらかして喧嘩を開始した、サヨはア然としている。

 

「ほっといていいのかな・・・」

 

「構わないわよ、いつものことだし、それにもうすぐ終わるから」

 

すると突然どこからともなくロープが投げ込まれ瞬く間にグラール達を縛り上げた。

 

「おい、マクレーン、何しやがる」

 

「それはこっちのセリフだ仕事は山ほどあるんだぞ」

 

そう言われると何も言い返せずにだんまりした、正直大人気なかった、よくこの人がリーダーを務められていると思う。

 

「アンタ、あいからわずヘッポコね」

 

「なんだと!?」

 

マインの言葉にグラールは怒り心頭している。

 

「お前、誰が新しいアジト造ったと思っている!?」

 

「アンタ一人で造ったんじゃないでしょ、偉そうにしないでよ」

 

「ぐっ・・・」

 

完全にマインにおされている、マインに口で勝てる人なんてそういないけど。

 

「そもそも誰のおかげで温泉に入れると思っているんだ、温泉見つけるの大変だったんだぞ!!」

 

「ちょっと、温泉は私が発見したんだけど」

 

サンが間に入ってきた、グラールが自分の功績を横取りしてムッとしている。

 

「工兵チームの一員の功績はリーダーである俺の功績でもあるだろ」

 

「何馬鹿言ってるの?」

 

サンはグラールを睨みつけた、するとグラールは怯んだ、でも彼は虚栄をまだ張り続けている。

 

 

「まったく・・・」

 

サンはグラールの幼稚さに呆れている、いつものことではあるが・・・

 

「大変ですね」

 

「まだいい方よもうすぐもっとめんどくさくなるから」

 

「それってどういう意味・・・」

 

すると突然別の方向から誰かが叫びながらこっちに近づいて来る。

 

 

「ナジェンダさーん、お久しぶりです!!」

 

 

かなりテンションが高い人ね・・・めんどくさくなるってどういうことだろう。

 

 

「私はナジェンダさんに会えるのを楽しみにしておりました」

 

「それはどうも・・・」

 

 

ボスが困惑している・・・ボスとどういう関係なのかな?

 

「あのボス、この人は・・・」

 

 

サヨはナジェンダに聞いてみた、すると男の方が説明し始めた、とんでもないことを。

 

「私は以前ナジェンダさんにプロポーズをしたことがあるのです」

 

 

一瞬時が止まった、そして時が動き出す。

 

「えええええ!!?」

 

私とイエヤス、レオーネ、マイン、チェル、シェーレは驚いた、ブラートは少し驚いている、スーさんはまったく驚いていない、そしてラバはあまりの衝撃に開いた口がふさがらなかった。

 

 

「どういうことですかボス!?」

 

「それはな・・・」

 

ボスの説明によると彼の名前はハウル、帝国の王族だった人でボスが将軍だった頃彼にプロポーズされたのである、ボスはきっぱり断ったのだが彼は諦められなかったのである、ボスが帝国を抜けて革命軍に加入したことを知ると王族の身分を捨てて革命軍にやって来たのである。

 

 

 

「思いきったことしますね・・・」

 

「別にたいしたことありませんよ、ナジェンダさんと共にいられるのなら」

 

 

この人本当にボスのこと好きなんだ・・・ラバも裕福な生活を捨ててボスの後をついてきたんだし、二人共すごいわね。

 

 

「でもあなた兵隊なんて勤まるの?」

 

「いいえ、私は武芸はまったくダメです、けれど工芸の才に秀でていましたから工兵になりました」

 

「そうなんですか?」

 

「はい、会議室のナジェンダの椅子は魂を込めて造りました」

 

 

なるほど・・・どうりでボスの椅子すごく豪華だと思ったらそういうことだったのね、アジトの装飾もこの人が造ったのね、ボスの気を少しでも引くために・・・ラバさっきからすごい形相でハウルさんを睨んでる、まあ、気持ちわかるけど・・・

 

 

「ところで皆さん本部に行くのですね?」

 

「ああ、召集がかかったからな」

 

「お気をつけてください、あの方の機嫌ずっと悪いですから」

 

「あいつはたいていそんなものだ」

 

 

あの方?いったい誰なんだろう・・・その時のサヨはあまり深く考えていなかった、その時は・・・私達は本部に向けて再び歩きだそうとした、その時ハウルさんが。

 

 

「ナジェンダさん、この戦いが終わったら私と結婚してください」

 

再び私達は絶叫した、このタイミングで言うかな・・・まあ、いまだにボスに告白していないラバよりはいいかな・・・

 

「前も言ったが私にはやるべきことがある、受けるわけにはいかない」

 

「わかっています、返事はいつでも構いません、待っていますから」

 

「失礼する・・・」

 

ボスは後ろを振り向かずそのまま前に進んだ、どんな心境何だろう・・・ラバの心境も穏やかではないだろう・・・

 

 

ちくしょう・・・あの野郎、なんて図々しい・・・俺が言いたくても言えないことを・・・ぐずぐずしてるひまはないな、けどなかなか踏ん切りがつかないんだよな・・・

 

 

そうラバが思っていることなどナジェンダはつゆしらずであった。

 

 

「もうすぐ本部に到着するぞ」

 

いよいよ本部か・・・どんな人がいるのかな・・・サヨは複雑な気持ちで足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はアジトを造った工兵チームが登場しました、全員が臣具使いで8人います、この8人のうちオリジナルキャラはリーダーの一人だけです、後は原作でモブとかで登場しています、どこで登場したかはいずれ説明します、次回は本部が舞台となります、お楽しみにしてください。


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第六十六話

今回から舞台は本部に移ります、下手くそな文ですがご覧ください。


   本部を斬る(前編)

 

 

私達は革命軍の本部に到着した、とはいってもまだ建物は見えない、ここは訓練所であろう、大勢の兵士が鍛練しているのを見かける、川の方でも兵士達が鎧泳ぎの鍛練に励んでいた、帝国との戦いに備えて・・・

 

 

「それにしてもすごい人数だなあ」

 

イエヤスは数百人規模の鍛練を見て驚いている。

 

「これで驚いていたらキリがないぞ、これから先にはもっと兵士がいるのだからな」

 

確か革命軍には数万規模の兵力がいるって聞いていたけど、実際見てみると圧巻ね。

 

 

「先を急ぐぞ」

 

私達は再び歩みを開始した、すると見覚えのある人がいた、それは技術者のホーラーさんである。

 

 

「おお、皆の衆、しばらくだったな」

 

「何をしてるんですか?」

 

「ああ、新兵器のテストを開始するとこだったのじゃよ」

 

 

ホーラーが指指した先には人形が立っていた、その人形の肩には何かが装着していた。

 

 

「これはなんです?」

 

「ああ、これは爆弾を遠方へ飛ばすための装置じゃよ」

 

なるほど、そういう兵器があれば帝国との戦いが有利になるけど・・・

 

 

「なんでこういう形なんです?」

 

こんな位置から爆弾を発射したら顔や頭が火傷するのでは・・・

 

 

「そりゃこの形がカッコイイからじゃよ」

 

カッコイイ!?これが!?とてもカッコイイとは・・・

 

 

「とにかく今からテストを開始するからご覧あれ」

 

 

ホーラーはスイッチを入れた、するとその瞬間爆弾は発射することなく爆発した、人形は木っ端みじんに吹き飛んだ、皆その光景にただア然とするだけであった。

 

「・・・よし、次いってみよう」

 

ホーラーは今の惨劇をなかったことにして次の実験に移ろうとしていた。

 

「ちょっと待て、おっさん!!」

 

「何かね?」

 

「何かね、じゃねえだろ、今の見ただろ!!」

 

「まあ、たまにそういうこともあるさ」

 

「たまにあってたまるか!!」

 

イエヤスのツッコミにもホーラーは全く気にしていない。

 

「あれ以外に別の兵器はないのか?」

 

「まあ・・・あるにはあるが」

 

ホーラーは以前造った兵器をナジェンダに見せた。(この兵器はロケットランチャーに似たものと思ってください)

 

「・・・これはイマイチなんじゃよ」

 

「貸してみろ、私がテストしてみる」

 

ナジェンダは試作品を構えた、狙うは百メートル離れた岩である、ナジェンダは兵器の引き金を弾いた、勢いよく爆弾が発射され岩目掛けて飛んでいく。

 

 

ドオオオン!!

 

 

見事に直撃して岩を木っ端みじんにした。

 

 

「すごい」

 

これがイマイチだなんて、どういうことなの?

 

 

ナジェンダは威力を見定めると近くにいた兵士にこの兵器を正式採用するよう命じた。

 

 

「ちょっと待った!」

 

「何故待つ必要がある?申し分ない威力だろ」

 

「それは・・・これがイマイチかっこよくないからじゃよ」

 

「はあ!?」

 

「肩から爆弾が発射するのはかっこよいと思わんか?」

 

「ふざけるな、兵器にかっこよさなど必要ない、有効かどうかが全てだ」

 

「しかし・・・」

 

「問答無用!!」

 

「・・・わかった」

 

こうしてホーラーはナジェンダの迫力に押されて承諾したのであった、ナジェンダ達はその場を後にして先に進むことにした。

 

 

「あいからわずですね、あの人・・・」

 

「技術者としての腕はいいのだがどうもアレでな・・・」

 

 

サヨもナジェンダもバカと天才は紙一重だとつくづく思うのであった、一同はさらに歩き続けていく。

 

 

「ずいぶん歩きましたけど本部はまだですか?」

 

「もうすぐだ」

 

 

もうすぐか・・・本部ってどんなんだろう、そうサヨが考えていると誰かが声をかけてきた。

 

 

「雑魚ががんくび揃えて何しに来た?」

 

声がした方に視線を向けると二人の男がいた、一人は革命軍の軍服をきているが左腕は義手であった、ナジェンダの義手と同じ形である、もう一人は軍服を着ておらず独特の衣装を着ていた。

 

 

「おい、今なんて言った!?」

 

「雑魚と言ったのだ、お前頭も耳も悪いな」

 

「てめぇ!!」

 

イエヤスは怒って義手の人に詰め寄ろうとした、するともう一人の男が口を開いた。

 

「すいませんね、彼は口が悪くて」

 

「俺は本当のことを言っただけだぞ雑魚主人」

 

「・・・ご覧の通りです、皆にも同じなので」

 

男はやれやれの表情をしている、口が悪い人の対応は大変である、それにしてもこの人誰かに雰囲気が似てるような・・・

 

 

「どうしました?」

 

「いえ、あなたが誰かに雰囲気が似てるような・・・」

 

その瞬間サヨはそれが誰かなのか思い出した、その人は・・・

 

 

「そうだ、ガザムさんに雰囲気が似てるんだ!!」

 

以前会ったバン族の生き残りであるガザムに雰囲気が似ているのである、顔は全然似ていないが。

 

 

「ガザムにですか・・・確かに彼も私と同じく故郷を滅ぼされた者ですから似たような雰囲気を感じてもおかしくないですね」

 

「えっ、あなたもですか?」

 

「はい、私の名はムディ、かつてはプトラの墓守りだった者です、私を除き一族は全滅しました、帝国によって」

 

「プトラの墓守り?」

 

「はい、帝国北西に位置する渓谷地帯に存在する王家の遺跡を護る一族でした、ですが数年前、宝に目がくらんだ帝国の襲撃を受けて全滅してしまいました」

 

「あなたはなんで無事だったの?」

 

「私はたまたま任務で不在でしたので・・・」

 

大切なものを失う悲しみはよくわかる・・・これ以上聞くのは失礼ね。

 

 

「ところでこの人は?」

 

「はい、彼のことはナックルと呼んでください」

 

「呼んでください?」

 

「彼は全ての記憶を失っているのです、もちろん自分の名前も、ナックルという名はある人がつけたのです」

 

「そうなんですか・・・あなたも大変だったのですね」

 

「別に大変ではないぞ、俺は雑魚ではないからな」

 

・・・記憶を失っても口の悪さは失わなかったんだ・・・サヨはやや苦笑いした。

 

 

「その左腕は記憶を失ったことと関係があるのですか?」

 

「ええ、まあ・・・」

 

ムディの顔が険しいものになった、サヨは聞いてはならないものだったんだと思った、実際似たようなものであったから。

 

 

 

・・・この左腕の件がなかったらあの時復讐を果たせたであろうに・・・

 

 

 

 

 

ムディは任務から帰ると一族は全滅しており、その復讐を果たすため行動に移った、帝国に恨みのある人間を集めてチームを作り帝国の情報を得て復讐を果たせると思っていた、だが、秘術で操ったナックルに異変が起こったのである、左腕が黒ずんで高熱を出したのである、初めて会った時にも左腕はケガしていたがここまで悪くなかったのである、医者にみせたが手の施しようがなかったのである、途方に暮れていたら同志の一人が知り合いの医者なら治せるかも知れないと言い、ある場所へ赴くことにした、そこは革命軍の本部であった。

 

 

 

 

同志の女が誘拐同然にその医者を連れてきた、その医者は当然激怒していた。

 

 

「何すんねん、誘拐同然にさらって!!」

 

「すまんシヴァ、いろいろと訳ありでな」

 

「全く、本部を離れたと思ったら突然戻ってきてウチをさらうとは・・・」

 

「すまんが早くこの男を見てくれ、時間がない」

 

「しゃあないな、どれ・・・これは!?」

 

 

シヴァはナックルの左腕を見て絶句した。

 

「すみませんが早く治してください、本当に時間がないのです」

 

「・・・これはすぐに治らんで、それどころかホンマに命が危ないで」

 

「冗談はやめてください、あなたは医療専門の帝具使いじゃないですか、帝具を使えばすぐ治せるはずでしょう」

 

「あほう、帝具ならなんでも治せると思うのは大間違いや、このケガは普通ならとっくに死んどるで」

 

「た、確かに黒ずんでいますが見た目は大きなケガは・・・」

 

「見た目はな、だが中身は手の施しようがないほど悪化しとるんや、これはもう左腕切り落とすしかないで」

 

「・・・そうですか、仕方ありません、さっさと切り落としてください、そしてすぐに縫合してください、それで十分ですから」

 

「アンタ何言っとるん、しばらく絶対安静やで」

 

 

「そ、それは困ります、私には大事な使命が・・・」

 

ムディは絶対安静の言葉に取り乱した、復讐が果たせなくなってしますからである。

 

「今無理させたら死んでしまうで」

 

「・・・構いません、復讐さえ果たせれば彼の命など」

 

「あかん、絶対あかんで、ウチの目が黒い内は勝手なまねさせへんで!!」

 

「あなたに何がわかるのです、この男は私の故郷を・・・一族を滅ぼした奴らの一人なんですよ!!」

 

「それについては同情するわ、でも医者として彼を無理させるわけにはいかんで!!」

 

「これだけ言ってもわかりませんか・・・ならば・・・」

 

「力ずくでくるんか?相手になるで」

 

シヴァは身を構えて臨戦態勢をとった、それを見たムディは戸惑った。

 

 

・・・彼女は戦闘タイプではないとはいえ帝具使い・・・私に勝てますか?

 

 

「言っておくが私達は加勢しないぞ」

 

それを聞いてムディは絶句した、自分自身の戦闘力に自信がなかったからである。

 

 

「・・・お願いします、なんでもしますから私に復讐の機会を・・」

 

「あきらめい、医療は万能やないんやで」

 

その瞬間ムディは膝をガックリと地面につけて嘆き悲しんだ。

 

 

「・・・もう少しで、後一息で復讐が果たせるところまできたのに・・・こんな・・・こんな・・・」

 

大粒の涙を流すムディに誰も声をかけることができなかった、その後ナックルは左腕を切断し完治するまで長い月日がかかるのであった。

 

 

 

 

 

・・・結局、そのあと帝国の暗殺部隊は壊滅して復讐の対象を失ってしまったのです・・・こうなったら片っ端から帝国の手のものを血祭りにしてあげます・・・そしてこのナックルをボロぞうきんのように捨ててあげます。

 

 

「どうしました?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

サヨの言葉にムディは慌てて返答した。

 

 

「ところで皆さん何故ここに?」

 

「本部に召集されて」

 

「それはきっとエヴァさんが召集したんですね、ご苦労なことです」

 

「誰ですかその人?」

 

 

サヨがエヴァについて質問しようとするとナジェンダが。

 

 

「サヨ、早く来い」

 

「は、はい」

 

サヨは慌ててナジェンダ達の後を追った、それを二人は眺めている。

 

 

「さて、どうなりますかね?」

 

「別に俺の知ったことではない」

 

「まあ、そうですね」

 

連中、大変なことになるかも知れないが自分達には知ったことではないのである、そう思いながらナジェンダ達を見送った。

 

 

 

 

「ボス、エヴァって誰なんですか?」

 

「エヴァはナイトレイド結成の発案者で私の直属の上官だ」

 

「ボスが発案者じゃないんですか!?」

 

「私はそこまでの権限は持っていない」

 

 

そうだったんだ・・・ボスが発案者じゃないんだ、以外ね・・・それにしてもエヴァってどんな人なんだろう・・・ナイトレイドの最高責任者、どんな人なんだろう・・・サヨは興味と不安が混じった複雑な気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




技術者ホーラーが再登場しました、多分皆さん忘れていると思いますが、他に零からキャラクターを登場させました、皆さんはどう感じましたか、中編も新キャラクターが登場します、これからも応援お願いします。


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第六十七話

今回も新キャラが登場します、さらに衝撃の展開になります。


   本部を斬る(中編)

 

 

「・・・すごい」

 

私達は革命軍の本拠地に到着していた、壮大な古城がそびえ立っていた、所々崩れているものの私の想像を上回っていたのである。

 

「この古城は数百年使われていなかったが総大将達が改築して使えるようにしたのだ」

 

 

並大抵の苦労じゃなかったはず・・・それも帝国を打倒して民が安らかに暮らせる国を造るという熱意があってのことね・・・

 

 

「私、初めて見ましたが本当にすごいですね」

 

シェーレが本拠地の古城に感激している、するとマインは困った顔をしている。

 

「・・・シェーレ、アタシ達ここに来たことあったでしょ?」

 

「そうでしたか?」

 

「そうよ」

 

 

シェーレ・・・あいからわず忘れっぽいわね・・・そうサヨが考えていると誰かが私達に話かけてきた。

 

 

「あなた達ここに来たんだ」

 

話かけてきたのは異民族の少女であるカーコリッテであった。

 

「あっ、カーコ、本部にいたんだ」

 

「うん、でもすぐ仕事で遠出するけどね」

 

「そうなんだ、一つカーコに聞きたいことあるんだけど」

 

「何?」

 

「ここに来る途中南の異民族の人何人も見かけたんだけど」

 

「まあ、私達の国は帝国に奴隷扱いされてるから帝国に恨み持っている人も少なくないのよ、食い扶持稼げるなら恨みがある帝国よりも革命軍の方がましって考えている人もいるわ」

 

 

「それなら南の異民族と革命軍が同盟を組むってできないのかな?」

 

「それは無理ね、私達の国のお偉いさんは帝国のおこぼれにすっかり満足してしまっているから」

 

「そう・・・」

 

 

残念ね・・・南と同盟を組むことができたら少しは有利にできたかもしれないのに。

 

 

「まあ、私も食べるために仕事に励まないといけないけどね」

 

「そう、がんばって」

 

「ありがとう、ところであなた達もしかしてエヴァさんに呼ばれたの?」

 

「そうだけど」

 

「そう・・・一つ言っておくけどあの人を人間と思わない方がいいわよ」

 

「それってどういう・・・」

 

「実際会って見た方がわかるわよ」

 

 

カーコは意味深な言葉を残して去って行った・・・どういう意味なのかな、まあ会って見ればわかるわね・・・

 

 

ナジェンダ達は古城に入り通路を歩いていく、本拠地だけあって人が多かった、しばらく歩いていくと食堂らしき部屋が見えた、すると誰かが私達を呼び止めた。

 

 

「久しぶりだな、ナジェンダ」

 

ボスを呼んだのは金髪の男性だった、歳は30前であろう、一目見ただけでもかなり強いとわかった、この人は何者なんだろう?

 

「お久しぶりです、ヘミ将軍」

 

ボスは頭を下げて礼をした、この人将軍だったんだどうりで強いと思った。

 

 

「俺はもう将軍じゃないぞ、そうかしこまることないぞ」

 

「・・・それではヘミ殿」

 

「まあいいや、ところでメンバー全員で本部へ何しに来た?」

 

「エヴァに呼ばれまして」

 

「なるほど・・・まあ、めんどくさいことにならなければいいがな」

 

 

めんどくさい?なんか不安しか感じないけど・・・

 

 

「ところでナカキド殿は?」

 

「ああ、ナカキドさんは長期の軍事演習に出かけてるよ、俺はその間留守番というわけさ」

 

「戦上手のナカキド殿の指南なら兵の練度も上がるだろう」

 

 

ナジェンダとヘミを見て帝国軍の将軍にも大臣に反抗する人がいてサヨはうれしかった、そうしているうちに二人に話かける人が現れた。

 

 

「ここであなたと会うなんて奇遇だね」

 

その人は温和そうな黒髪の男性で30ぐらいだろうか、失礼だがあまり強そうに見えない。

 

 

「これはウォーロック殿、お久しぶりです」

 

ボスが頭を下げた、つまりこの人は革命軍の幹部かな?

 

 

「ウォーロックさん、やっとお目覚めですかい」

 

「ゆうべは飲み過ぎちゃってね、二日酔いで起きられなかったよ」

 

「あいからわず戦場から離れるとだらし無いですね」

 

「わかってはいるんだけどね・・・」

 

 

ウォーロックは頭をかいてごまかそうとした、それを見てサヨはこの人大丈夫かなと思った、ナジェンダはその様子を見てサヨに語った。

 

「彼を軽んじるなよ、彼は用兵術に関しては私を上回るのだ、見た目で断定するな」

 

「は、はい、すいません」

 

サヨは頬を赤くして謝罪した、だらし無いだけの人が幹部が勤まるわけがないから。

 

 

「別に褒められたことではないよ、所詮用兵術は人殺しの手段でしかないからね」

 

 

・・・この人は戦争そのものを嫌悪しているんだ・・・エスデスとは正反対の人間ね。

 

 

「それでも多くの人を救うためには帝国と戦わなければならないからね、ジレンマってやつだよ」

 

「そうだな、俺達ができることは戦うことだ、勝たなきゃ全て終わるからな」

 

「エヴァの口癖だったな、勝てば英雄、負ければ罪人だと」

 

「まあ、彼女の言ってることは的外れではない、所詮戦に正義はない、勝った者が主導権を握れるから」

 

 

ヘミとウォーロックの会話を聞いてサヨは不思議そうに見ている、その様子に二人は気づいた。

 

 

 

「どうした?」

 

「あ、はい、革命軍の幹部の人が正義を否定しているのが以外だなあと思いまして」

 

「まあ、私が正義を否定するのは少々まずいんだけどね、けど私は自分自身が正義と思うのは嫌悪感を感じるのだよ」

 

「そうなんですか?」

 

 

「安全な所から部下に危険な任務を与える時には特にね、君達ナイトレイドに至っては死と隣り合わせの危険な任務につかせておきながら悪名を背負わせて大衆から忌み嫌われているのを見るとね」

 

ウォーロックが気が滅入っているのを見てナジェンダは。

 

「ウォーロック殿が落ち込むことありません、私達は自分の意思で汚れ仕事に就いたのです、どれだけ人々から忌み嫌われようとも新国家の設立のためならなんてことありません」

 

 

「・・・そう言ってくれると心が安らぐよ」

 

ウォーロックはナジェンダの言葉に微笑んだ、ウォーロック自身も正々堂々戦って殺せば称賛され卑怯な手で殺せば罵倒されるという戦争の不可解さにうんざりしていたからである。

 

 

「ウォーロックさん、気持ちはわかる、戦ほど理不尽なものはない、だが帝国に勝たなきゃ全てが終わるからな」

 

「そうだな、私もいつまでもぼんやりしているわけにいかないな」

 

ヘミの激励でウォーロックは気合いが入ったようである、すると後ろから女性の声がした。

 

 

「提督、やっと起きたんですか、溜め込んだ仕事は山ほどあるんですよ」

 

後ろに革命軍の軍服を着た女性がムッとした顔で立っていた、普段から真面目に仕事をやっていないようである。

 

「この人が真面目に仕事を励んだら嵐が来るよ」

 

「そんなんじゃまたエヴァさんに無駄飯食いと罵られますよ」

 

「それは一大事だね」

 

 

ウォーロックは緊張感のない返事をした、女性はますます飽きれ顔になった。

 

 

「あの、彼女は誰ですか?」

 

「ああ、彼女はユリリ、私の部下だよ」

 

そうなんだ、でも彼女なんか妙な雰囲気が・・・サヨが不思議に思っているとイエヤスがユリリをじろじろ見始めた、サヨがイエヤスをとっちめようとする前にユリリがイエヤスの視線に気づき一気に不機嫌になった。

 

 

 

「やめてください・・・私男大嫌いなんで・・・」

 

ユリリのイエヤスを見る目は汚物を見るようであった。

 

「・・・それでよくウォーロックさんの部下勤まりますね」

 

「まあ、この人は昼寝と紅茶にしか興味ないんでギリ大丈夫です」

 

 

ギリなんだ・・・かなり失礼な女性ね・・・よくこの人怒らないわね・・・

 

 

「まあ、彼女は狙撃の腕は立つからね、なにせユリリはかつてオールベルグに所属してたんだから」

 

「オールベルグ?」

 

 

「ああ、オールベルグは歴史のある暗殺結社だったんだ、革命軍も以前オールベルグに依頼をしたことがあった」

 

「だった?」

 

「かつて帝国の暗殺部隊の抹殺をオールベルグに依頼したんだよ」

 

「それってまさかアカメも狙われたんですか?」

 

「まあね、結局アカメが首領のメラルド・オールベルグを倒したことでオールベルグは壊滅してしまったんだ」

 

 

アカメが・・・そんな大物を倒すなんてさすがアカメね・・・するとユリリの顔が急に険しくなった。

 

 

「・・・アカメがメラルドさんを殺したせいでオールベルグは壊滅してしまったのよ、同性愛者としてつまはじきにされていた私を受け入れてくれた唯一の安らぎの場所だったのに・・・」

 

ユリリの身体から殺気があふれだしていた、その光景を見てサヨはゾッとした、そして心情も察した・・・首領を殺されたんだからアカメを恨むのもわかるけど・・・

 

「いつか私がアカメを殺したかったのに・・・」

 

 

アカメが言ってたっけ自分は多くの人を殺してきたからいつか恨みある者に殺されるだろうと・・・アカメは人々のために任務を行ってきたのにやるせないわね・・・

 

 

「その辺にしときな、アカメはもう死んだんだ、死んだやつに恨みを積もらせてもしょうがないぞ」

 

「・・・わかってますよ」

 

ユリリはヘミの戒めに渋々従った、革命軍には他にアカメに恨みのある人いるのかな・・・

 

 

「それでは私達はこれで失礼します」

 

「ああ、健闘を祈るよ」

 

 

健闘を祈る・・・まるで戦場に向かうような言い方ね、エヴァってどんな人なのかな?

 

 

ナジェンダ達は食堂を出てエヴァの部屋へ向かって行った、その様子をユリリはじっと眺めていた。

 

 

「どうした?」

 

「いえ、ちょっと・・・」

 

ユリリの視線の先はスサノオであった。

 

「お前、とうとう男に興味をもったのか?」

 

「そんなわけないでしょ、私は女子にしか興味ないんです、スサノオさんを見て女性型の帝具人間ってないのかなあと思いまして」

 

「今のところ女性型は発見されてないけど実在するのかな?」

 

「きっとあります、私は信じてます、そしていつかマスターになってあんなことやこんなことや・・・」

 

ユリリは妄想してよだれがあふれていた、それを見て二人は苦笑いしている。

 

「・・・まあがんばって」

 

突っ込んでも面倒になるだけだな、二人はそう思い何も言わなかった。

 

 

 

「そろそろエヴァの部屋に着くぞ」

 

いよいよか・・・一体どんな人なんだろうエヴァって人・・・皆の声を聞く限りかなり面倒なことになるような気が・・・

 

「エヴァさんか・・・正直会いたくないな」

 

ラバが女性に会いたくない!?そんなことあるの!?

 

 

「おい、その人そんなにブスなのか?」

 

イエヤスは小声でラバに聞いた、イエヤス・・・そんなこといちいち確認しない、その人一応革命軍の幹部なのよ。

 

「いや、エヴァさんは美人だよ、とびきりの、はっきり言ってすげえおっかないんだ」

 

美人なのにラバが会いたくないなんて、どんな人なの・・・サヨの不安はさらに増したのであった。

 

 

「エヴァの部屋に着いたぞ」

 

ナジェンダはノックをした、入れと言う声がしたので部屋に入って行った、部屋の中には背の高い金髪の女性が座っていた、歳は20代半ばだろう、この人から感じる威圧感は半端ではなかった。

 

「しばらくだなナジェンダ」

 

「何を言っている、お前が私達を呼んだのだろう」

 

タメ口!?ボスとこの人とはどういう関係何だろう?ナジェンダはサヨの表情を見て心情を察した。

 

 

「私とエヴァは帝国の軍学校の同期だ、卒業後も数々の戦場を共に戦ってきたのだ」

 

「よく言うな、お前私に何度も助けられただろ」

 

「私もお前を何度も助けたはずだが」

 

 

この二人堂々と口げんかができる関係なんだ、数年来の戦友って関係なんだ。

 

 

「ところで私達を召集した理由はなんだ?」

 

「それはな・・・一度ナイトレイドが一同に揃ったところを見ておこうと思ったのだ、どうせそのうち誰か死ぬだろうからな」

 

 

そんな理由で召集したの!?ふざけているにも程があるわよ!!

 

 

「冗談はよせ、本当のことを言え」

 

 

冗談なの!?さすがボス、長年の付き合いは伊達ではないわね・・・

 

 

「そうだな、では・・・」

 

すると突然ノックがした、皆は思わずドアの方を向いた、エヴァはさっきと同じく入れと告げる、ドアが開き人が二人入ってきた、サヨはその二人に驚いたのである、無理もなかった、その二人はメイドの衣装を着ていたからであったから、しかも背の低い方の女の子は四本腕だった、さらにその二人は強いとサヨは察したのである。

 

「あの、この人は?」

 

サヨの問いにエヴァは無表情に答えた。

 

 

「気にするな、こいつらはエキストラだ」

 

「ちょっと待て、誰がエキストラだ!?」

 

「ギル、エヴァさんの言うことをいちいち気にしないでください」

 

「そうなんだけどつい・・・」

 

背の高い方の女の子は悔しさのあまりじたんだを踏んだ、床を踏む力が強いため結構響いている。

 

 

「説明するのが面倒だからお前達で自己紹介しろ」

 

エヴァに指示されて二人は自己紹介し始めた。

 

 

「・・・アタシはギルベルダだ」

 

「私はカサンドラです、以後お見知りおきを」

 

 

ギルベルダ、カサンドラ・・・初めて見たときからこの二人から普通の人にはない何かを感じているのよね・・・

 

「あの、もしかしてあなた達オールベルグの・・・」

 

サヨは恐る恐る聞いてみた、根拠はないがそんな気がしてならないのである。

 

 

「ああ、そうだよ、アタシ達はオールベルグ・・・だったんだ」

 

明らかに返答にいらつきがあった、まあ、当然だろう。

 

 

「何故革命軍に?」

 

おそらくアカメと暗殺部隊を殺すために革命軍に入ったのであろうがアカメが死んだ今何故革命軍に残っているのだろうか、むしろそっちの方が気になった。

 

 

「言っておきますが私達は革命軍に入ったわけではありません、理由は・・・答えたくありません」

 

「こ、答えたくないなら答えなくても構いません」

 

 

そうよね、首領が死んでオールベルグが壊滅したんだから答えなくないのは当然よね・・・

 

 

「お前達、仕事の報告をしろ」

 

「はい、北東部の依頼はほぼ完了しました、北西部の依頼はあの娘達に任せています」

 

 

エヴァの指示でカサンドラ無表情で報告した。

 

 

「そうか、ではお前達には南西部に行ってもらう」

 

「わかりました」

 

カサンドラは承諾して部屋を出ようとする、だがギルベルダはサヨの方をじっと見ている。

 

 

「な、何?」

 

「お前がアカメの帝具を引き継いだサヨだな」

 

「そうだけど・・・」

 

「よかったじゃないか、アカメが死んだおかげで帝具使いになれたんだから、アカメが死んで万々歳だよな」

 

「!?」

 

明らかにギルベルダはアカメを侮蔑していた、サヨはさすがに腹を立てて文句を言おうとした、だがその時。

 

 

「・・・おいてめえ、なんて言った?」

 

レオーネが先に口を開いた、レオーネは怒り心頭であった。

 

「アカメが死んでめでたしめでたしって言ったんだよ、アタシの手で殺せなかったのはとても残念だがな!!」

 

「てめえ・・・死にたいのか!?」

 

「死ぬのはどっちかな!?」

 

その瞬間二人の間にある空気が弾けたように感じた、二人は構えて一戦交えようとしていたその時。

 

 

「お前達、私の部屋を目茶苦茶にする気か!?殺し会うなら外でやれ!!」

 

エヴァから凄まじい殺気が溢れ出た、その殺気を浴び二人はあっという間に意気消沈した。

 

 

な、なんて殺気・・・この人恐ろしく強い・・・

 

 

「レオーネ、やめろ!!」

 

「ギル、落ち着いてください」

 

 

「・・・わかった」

 

「わかったよ・・・」

 

レオーネとギルベルダはそれぞれたしなめられ構えを解いた、そしてギルベルダとカサンドラは退出した。

 

 

 

「騒がせてしまったな」

 

「まあいい、それよりもさっきの話の続きだ、お前の処分についてだ」

 

「処分?」

 

「ああ、カプコーンの連中を止められず帝具を大量損失させた不始末の処分だ・・・ナジェンダ、お前は打ち首だ」

 

 

その瞬間ナジェンダ以外のナイトレイドのメンバーは衝撃の事態に青ざめ絶句したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回初登場したカサンドラとギルベルダどうでしたか、自分なりにとらえて書きましたが違和感ないでしょうか、カサンドラの声はご注文はうさぎですか?のチノ、レクリエイターズのメテオラを、ギルベルダの声はのんのんびよりの越谷夏海、ラーメン大好き小泉さんのおおさわ ゆうをイメージしてください、次回も新キャラが登場しますので応援お願いします。


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第六十八話

革命軍幹部から処刑宣告されてしまったナジェンダ、どうなってしまうのかご覧あれ。


   本部を斬る(後編)

 

 

ナジェンダが処刑を言い渡されて皆ア然としていた、サヨも頭が真っ白になっている。

 

 

そ、そんな・・・ボスが打ち首・・・全くのお咎めなしになるとは思ってなかったけど・・・こんなのって・・・

 

 

「待ってください、ナジェンダさんの処刑考え直してください!!」

 

ラバが真っ先に弁護した、さすがラバ、私なんか混乱してうろたえるだけだったのに。

 

 

「待てだと?私を誰だと思っている、私はお前達の最高指揮官で革命軍の幹部だぞ」

 

「わかっています、だけどあえて申し上げます、あの一件はナジェンダさんに落ち度はありませんでした、俺達が駆けつける前にエスデスが現れた時点でもうどうにもなりませんでした!!」

 

ラバは額に汗を流しながら弁護している、ナジェンダを処刑させないよう必死であった。

 

「つまり、我々本部に責任があると?」

 

「・・・はい、恐れながら」

 

この時ラバは死を覚悟していた、エヴァを激怒させればラバも処刑されてしまうからである、むろん覚悟の上である。

 

 

「いい度胸だな・・・まあ、帝具を持ち出された時私は本部にいなかったからな、責任はないわけではない」

 

「では・・・」

 

ラバは処刑を取り消してくれると少し期待した、だが・・・

 

 

「だからといって帝具6つの損失の失態を帳消しにしろというのは虫が良すぎるぞ」

 

「それは・・・」

 

ラバは言葉が詰まった、痛いところをつかれたからである。

 

 

・・・どうする、このままじゃナジェンダさんが処刑されてしまう・・・どうすれば・・・

 

 

「だったら私達が新しい帝具を持ってきますよ!!」

 

サヨはこの状況を見かねて思わず叫んでしまった、だがもう後に引けない。

 

「帝具を補充すればボスの罪状も帳消しになりますよね」

 

「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

 

 

わかっているわよ・・・それがどれだけ難しいのか・・・でもボスをみすみす処刑させるわけにはいかない。

 

「わかっています、でも他に私達ができることはそれしかないから」

 

「サヨ、控えろ」

 

ナジェンダはキッとサヨを睨みつけて下がらせようとした、だがサヨは下がるつもりはなかった。

 

 

・・・ボスはなんで落ち着いているの?このままじゃ処刑されてしまうのに・・・

 

 

「落ち着け、私を即座に処刑するつもりなら全員を本部に呼びださないだろう」

 

 

それってどういうこと?それってまさか!?

 

 

「気づいたか私のもくろみに」

 

「ああ、私がどう動くか観察していたんだろう?」

 

「そうだ、もしお前が取り乱して命ごいをしていたらこの場で私がお前の首を切り落としていたぞ」

 

 

そうだったの!?じゃあボスの処刑も冗談・・・サヨの安心した顔を見てエヴァはニヤリと笑った。

 

「いや、処刑は本当だぞ」

 

「そんな!!」

 

何よそれ・・・それじゃあ事態はたいして好転してないじゃない・・・

 

 

「猶予はどれくらいある?」

 

ナジェンダは落ち着いてエヴァに質問した、この事態を予想していたようである。

 

 

「西の異民族との同盟が再度結成するまでだな」

 

 

西の異民族との同盟を組めるまで?同盟は組んでほしいけどそうなったらボスの命が・・・

 

 

「同盟を組めるめどは立っているのか?」

 

「あいにくまったくない、お前にとってはいいニュースだがな」

 

・・・そうなんだ、本来喜んではいけないんだけど・・・複雑な気分ね・・・

 

 

「いいニュースなわけないだろ、一刻も早く同盟を組まないと手遅れになってしまうぞ」

 

「お前の命を奪うことになってもか?」

 

「革命軍に入った時から覚悟はできている、私の命は二の次だ」

 

 

ボス・・・本当にすごい・・・何がなんでもボスの命を助けないと・・・

 

 

「いい覚悟だ、これからも命を懸けて戦い続けろ、役立たずのアカメのようになりたくなかったらな」

 

 

役立たず!?この人アカメのことを役立たずって言ったの!?

 

 

「なんだ?文句があるのか?」

 

 

「役立たずってそんな言い方ないでしょ・・アカメだって・・・」

 

アカメは民の幸せのために戦って死んだのにあんまりよ・・・

 

 

「それがどうした、あいつは死んでもう戦えないのだぞ、役立たずそのものではないか」

 

薄情な物言いにサヨはさらに頭に血が昇った。

 

 

「あなたにアカメの何がわかるの!!」

 

アカメを侮辱されてサヨは黙ってることはできなかった、相手が幹部でも。

 

 

「知るか、あんな役立たずのクズのことなど」

 

クズ!?そりゃあ私達は人々から忌み嫌われている殺し屋だけど・・・言ってはならないことだけど私達はあなたの命令で汚れ仕事をしてきたのよ!

 

 

「私の替わりに汚れ仕事をしてあげたって言いたいのか?」

 

「・・・」

 

サヨは図星をつかれて言葉が詰まった。

 

「笑わせるな、その程度でいい気になるなよ、私はお前よりも遥かに多くの汚れ仕事をしてきたのだぞ」

 

 

多くの?どういうこと?

 

「革命軍がこの数年で飛躍的に大きくなったのは知っているな」

 

「ええ」

 

「どうやって大きくしていったと思う」

 

「それは・・・」

 

それは多くの支援してくれる人が集まったから・・・

 

 

「金だよ、組織を大きくするには膨大な金がいるのだよ」

 

・・・それはそうだけどこの人何が言いたいの?

 

 

「私がその膨大な金を集めてやったのだ、帝国の役人や貴族から金を奪ったり金の密輸とかしてな」

 

この人そんなことを・・・確かに軍隊には金がかかるけど・・・

 

 

「強盗する際には盗賊を装ってそいつらの家族を皆殺しにする必要があったがな足がつかないように」

 

「皆殺し!?そこまですることは・・」

 

せせら笑っているエヴァを見てサヨはひどい嫌悪感を感じた、なんでこんな人が幹部を?

 

 

「・・・お前プライムと同じ事を言うのだな、何を甘えたことを言っている、私達は帝国と戦争をするのだぞ、そうなれば何千、何万の人間を殺すことになるのだぞ」

 

 

「でもそれは・・・」

 

サヨは戦争だからと言おうとしたがエヴァの言っている事も否定できなかったのである。

 

「いいかよく聞け戦場での殺しも強盗での殺しも暗殺での殺しも同じだ、同じ悪なのだよ、しょせん我々革命軍は殺しという悪を行う集団でしかないのだよ、革命は達成してこそ革命なのだよ、失敗すればただの犯罪でしかないのだよ、どんな汚い事をしてでも勝たなくてはならないのだ」

 

 

サヨはエヴァの迫力に何も言い返す事ができなかった、戦争はきれいごとだけでは勝てない、確かにその通りなのだが何か釈然としないものがあった。

 

 

「ところでお前は村を救うために殺し屋になったのだったな」

 

「は、はい」

 

「ならばこれからもバンバン殺してしっかり稼げ、救うことは救ったという結果がすべてだ、きれいごとにこだわって救えなかったなどは論外だからな」

 

 

・・・そうね、私も村を救うために殺し屋になることにためらいはなかった・・・タツミの分までがんばるときめたんだから・・・

 

 

「言われなくてもわかってます」

 

「ならば良い、もうお前達には用はない、下がれ」

 

エヴァに指示されて一同は次々と退出していった、そんななかサヨは。

 

 

「あなたは何故革命軍に?」

 

正直この人が民のために戦うとは思えなかったのである。

 

 

「それはな・・・帝国に復讐するためだよ、それ以外は二の次だ」

 

やっぱり・・・だと思った。

 

「私はな帝国の名のある軍人の家の者なのだよ、5,6年程前政敵の謀によって家は取りつぶされてな、その報復のために革命軍に入ったのだよ」

 

 

「民を救う気持ちはないのですか?」

 

「まあ、結果を出した奴は相応に報いるがな、失敗した奴は容赦なく切り捨てるぞ、その行動を薄情と思うなよ、成功した者だけを報いるのは当然のことだろ?それが健全というものだ」

 

 

 

この人から健全なんて言葉が出るなんてはっきり言って意外・・・

 

「ちなみにきれいごとばかり言ってろくな結果を出さなかった奴はほとんど生きてはいないがな」

 

 

 

この人もしかして・・・まあこの人に慈悲を求めるなんて無理があるわね、文句を言うだけ無駄ね・・・

 

 

「それでは失礼します」

 

「ああ・・・そうだナジェンダお前に言っておく事がある」

 

「なんだ?」

 

「スサノオの奥の手出し惜しみするなよ」

 

「わかってるさ」

 

 

奥の手?そういえばスーさんの奥の手って聞いてなかったような・・・

 

 

ナイトレイドのメンバーは全員退出してそのまま兵舎に向かって行ったのであった。

 

 

 

 

「今頃皆さんエヴァさんにしぼられているんでしょうね」

 

「そうだな」

 

 

ムディとナックルは任務のため本部を後にしていた、周りは人っ子一人もいなかった。

 

 

「今でもあの時の事を思い出すとゾッとしますね」

 

「ああ、俺もあの女とはあまり関わりたくないな」

 

「あなたにしては弱気ですね、気持ちはわかりますが」

 

「弱気ではないぞ雑魚主人と一緒にするな」

 

「・・・まあとにかく先を急ぎましょう」

 

「俺が急いだらあっという間に雑魚主人など置いてけぼりにしてしまうぞ」

 

 

・・・いつもながらこの男口が悪いですね・・・まあ、慣れましたが・・・それにしてもあの女はなかなか興がありますね、あの女なら帝都に屍の山を築いてくれるかもしれません。

 

 

ムディの暗い笑い声が辺り一面に鳴り響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




革命軍の暗部を自分なりに考えて書いてみました、どうでしたか、後、最後に少しムディとナックルを登場させました、今月号では二人共えらいことになっていました、来月号が楽しみです、あとムディの声は封神演義の申公豹を、ナックルの声はハイキューの影山をイメージしてください。


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第六十九話

   参謀を斬る

 

 

「にしてもエヴァって人美人だけどすっげえおっかなかったな、俺びびって何も言えなかったよ」

 

「無理ないさ、あの人は革命軍一の武闘派だからな、とにかくおっかない人だよ」

 

「お前あの人の入浴覗こうと思ったことあるか?」

 

「さすがの俺もそれは無理だ、殺されるだけではすまない、全身の皮を生きたまま剥がされてしまう」

 

「マジか!?」

 

「多分あの人ならやると思う」

 

 

イエヤスとラバのくだらない話をサヨは聞き流していた、普段なら注意するところだがいろいろありすぎてそこまで頭が回らないのである、するとシェーレが話かけてきた。

 

「どうしました?」

 

「うん、これからのこと考えていたの、ボスの処刑どうやって回避すれば・・・」

 

「お気持ちはわかります、でも今日はゆっくり休んだ方がいいです」

 

「・・・そうね、疲れた頭で考えてもしょうがないし、明日考えることにする」

 

「はい」

 

 

サヨ達は休むために兵舎へ急ぐことにした、しばらく歩いているとシェーレの目の前のドアが突然開いてシェーレは飛び出した人とぶつかった。

 

 

「わっ!!」

 

シェーレは転んでしりもちをついた、飛び出した人も同様である。

 

「いたた・・・」

 

「ゴメン、急いでたからケガはない・・・あっ!?シェーレ!?」

 

「チュニ・・・あなたがなんでここに?」

 

「それは・・・」

 

 

チュニ?どっかで聞いたことがあるような・・・あっ!!

 

「おーい、チュニ、何してんの?」

 

「ゴメン、キャスカ、今行く・・・悪いけどシェーレ、私急ぐから」

 

「は、はい・・・」

 

 

チュニはそのまま走ってその場を去って行った、シェーレはポカンとただ眺めていた。

 

 

「シェーレ、チュニって確か・・・」

 

「はい、私の友達だった人です」

 

 

チュニ・・・天然ボケだったため友達ができなかったシェーレの唯一の友達であった、だがある日チュニに振られた元彼氏に殺されそうになりシェーレがチュニを助けるためにその男を殺したのである、そして後日その男の仲間が報復のためにシェーレを殺そうとしたのである、シェーレはその危機に殺しの才能を開花させて難を逃れたのである。

 

 

「彼女とはそれから会っていないのよね?」

 

「はい、彼女はそのあとすぐ帝都から出て行ったのです」

 

「革命軍にいるってことも知らなかったのよね?」

 

「はい、私も驚いています、ここで彼女に会うなんて・・・」

 

なんでチュニが革命軍に・・・まあ、こんな世の中だし、ありえなくはないかな・・・

 

 

「シェーレ、チュニを追わなくていいの?」

 

「はい、そのうち会う機会もあるでしょう」

 

 

・・・まあ、革命軍にいるってわかったんだからゆっくり話す機会もあるわね。

 

 

「お前達、急ぐぞ」

 

「はい」

 

サヨ達は再び兵舎へ足を運ぶ、すると今度は二人の男性に出会った、一人は仮面を被った男性でもう一人は白髪の男であった、ナジェンダはその二人に頭を下げて挨拶をした。

 

 

「お久しぶりです、ハクロウ殿、キョウジ殿」

 

「ああ、久しぶりだね」

 

「ナジェンダも変わらんな」

 

ボスの様子を見るとこの人達は革命軍の幹部であろう。

 

 

「君達エヴァに会ったんだろう、おそらく面倒ごとになっていると思うが」

 

ナジェンダは二人にいきさつを説明した、二人とも驚愕というところまで驚いてはいなかった。

 

 

「大変なことになってもうたけどすぐに処刑にならんかっただけよしと思いや」

 

キョウジはニヤニヤしながらなぐさめている、その様子にイエヤスはムッとした。

 

 

「よしじゃないよ、なんとかボスの処刑を二人の力でなんとか取り消しにならないですか?」

 

「残念ながらそれは難しいな」

 

「なんで?、あの失敗はボスは悪くないでしょ?」

 

 

 

ハクロウは事情を説明した、あの帝具大量損失の元凶であったチームカプコーンは全員死亡し、責任をとらせることができなくなり、革命軍内で責任のなすりつけ合いが起こり内部分裂の危機を回避するためにその一件に無関係でないナジェンダに責任を押し付けて鎮静化を謀ったのである。

 

 

「はあ、そんなのありなんすか!?ボス悪くないでしょ!?」

 

「ああ、その通りだ、だが総大将が健在でないから皆をまとめられる者がいないのだ」

 

「けど・・・」

 

「イエヤス落ち着け、そうしなければ最悪革命軍は分裂していたかもしれんのだ」

 

ナジェンダは不満をぶちまけたイエヤスをなだめた、イエヤスも渋々従った。

 

 

「もちろんナジェンダは革命軍に必要な人員だ、だから執行猶予付きの処刑にしたのだ」

 

「それなら別の処分でも・・・」

 

「・・・いや、このまま事態が好転しなければ我々革命軍は全員帝国によって打ち首になってしまうだろう」

 

「マジっすか!?」

 

「あの戦いで革命軍の帝具は6つ失った、しかも3つは帝国に奪われた、実質9の帝具を失ったに等しいのだ」

 

 

現実がどれだけ深刻なのか全員理解していたはずだったが、帝具の大量損失は革命軍の戦略を根底から覆すものだと思い知ったのである。

 

 

「つまりナジェンダだけが危機的状況ではないのだよ」

 

「君達には何がなんでも帝具集めてもらわんとあかんのや」

 

もちろんこのままでいいわけがなかった、何がなんでも帝具を集めないと・・・

 

 

「帝具確保したら特別ボーナス出すで」

 

特別ボーナス・・・その一言はサヨの心を貫いた。

 

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、未知やったらさらに上乗せするで」

 

特別ボーナス・・・上乗せ・・・絶対達成しないと・・・村を豊かにするためにも・・・

 

「はい、必ず果たします!!」

 

サヨの頭は特別ボーナスと上乗せの言葉でいっぱいだった、それを見てイエヤスはやや引いていた。

 

 

「ところで聞いていいすか?」

 

「なんだい?」

 

「総大将が倒れたのってあの人が・・・」

 

イエヤスが言いたいのはエヴァの存在が負担になって急病を引き起こしたんじゃないかということだった。

 

 

「・・・それは全くないとは言えないな」

 

「マジっすか!?」

 

「革命軍の軍略は主にエヴァが仕切っているからね、総大将も思うところもあっただろう」

 

「このままあの人に牛耳られていいんすか!?」

 

「それを言われると耳が痛いね・・・でも僕達はエヴァが加入する前まで帝国に押されていたからね、偉そうなことは言えないんだよ」

 

「・・・」

 

「確かにエヴァは善ではない、だが帝国と戦うためにはエヴァの冷酷な手腕が必要だったんだよ、有効な作戦は思いついても非情になりきれなくて実行できなかったこともあったからね、だがエヴァは勝つためには手段を選ばない非情さがある、僕とエヴァの決定的な差はそこなんだ」

 

 

イエヤスは呆然としていたがサヨは多少は理解していた、強大な帝国相手に正々堂々と戦ったら必ず負けるからである、戦は勝利が全て、その言葉に一理あると思っている、しゃくではあるが・・・

 

 

「ナジェンダには悪いが自力で手柄を立てて処罰を帳消しするしかない、そうしなければ他の者を黙らせることができない」

 

「わかっています」

 

 

・・・処刑までどれだけ猶予があるかわからないのにこの落ち着きよう、さすがボス。

 

 

「ところで西の異民族との交渉は?」

 

「あれから使者を送っているがさっぱりだ、おそらく返還される領土の上乗せを狙っているのだろう、むろん簡単には上乗せはできない、別の手を考えなくてはならないだろう」

 

 

そうなんだ・・・喜ぶのは不謹慎だけどボスの命は当分大丈夫ね。

 

 

「君達ナイトレイドにも一仕事してもらうことになるかもしれん、その時は頼む」

 

「はい、全力で務めます」

 

 

一仕事か・・・一体どんな仕事になるんだろう、私達にできる仕事なのかな?

 

 

「ところでラバ、帝具の調子はどうや?」

 

「はい、キョウジさんバッチリです」

 

「そうか、やったかいあるわ」

 

キョウジがラバに話しかけた内容にサヨは気になった、やったとはどういうこと?

 

 

「ラバ、どういうこと?」

 

「ああ、このクローステールはキョウジさんが発見して使用していたんだよ、ナイトレイド結成の際に譲渡してくれたんだよ」

 

「つまり彼はクローステールの前任者なんだ」

 

この人がクローステールを発見したんだ・・・元帝具使いか・・・強いんでしょうね。

 

 

「言っとくけど僕はそんなに強ないで」

 

そうなんだ・・・まあラバも見た目はそんなに強そうに見えないから本当の実力はわからないけど。

 

「クローステールか・・・決起した頃は本当に頼りになったね」

 

「決起?」

 

「ああ、僕とキョウジは革命軍結成メンバーなんだ」

 

「あの頃の面子はだいぶいなくなってもうたけどな」

 

そうなんだ・・・様々な困難を乗り越えてきたんでしょうね・・・

 

 

「僕はなんとしても総大将の・・・プライムさんの悲願を達成させたいんだ、民が安らかに暮らせる国を造るという・・・皆も命を懸けて戦って欲しい、頼む」

 

ハクロウは頭を下げた、革命軍の幹部が私達に頭を下げる?予想もしていなかった。

 

 

「頭を上げてくださいハクロウ殿、私達も新国家設立を夢見ていますから」

 

「君達は常に死と隣り合わせの場にいるんだ、頭を下げることなどどうってことはないよ」

 

「ハクロウ殿にはハクロウ殿にしかできないことがあります、適材適所ってやつです」

 

「そうだね、僕は僕の務めを全力で果たすよ」

 

「はい」

 

革命軍の幹部が直々に頭を下げてくれたんだから私達もがんばらないと・・・そしてボスの処刑を帳消しにしないと・・・

 

 

「長話してしまってすまないね」

 

「いえ、気になさらないでください、私達はこれで失礼します」

 

「ほな、帝具頼むで」

 

私達は再び兵舎へと足を運んだ、そのあと思いがけない出来事が起こるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つくづく思うのですが自分の文章書くたびに下手になってきているような気がします、別の人の作品を見て勉強しているのですが・・・とにかくこれからも応援お願いします。


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第七十話

   恥じらいを斬る(前編)

 

 

ナジェンダ達は革命軍の兵舎に到着していた、地下洞窟を利用して作られた簡易的なものであったが休息をとるには十分であった、サヨ達は女子の兵舎に泊まることになった。

 

 

「なかなかの設備ね、地下洞窟の中とは思えない」

 

「はい、私、初めてここに来ました」

 

「・・・シェーレ、アンタは以前ここに来たことあるでしょう」

 

「そうでしたか?」

 

「忘れているだけよ」

 

シェーレ、あいからわず物忘れが激しいわね、でもシェーレがいつもどうりで少しホッとしてる、ここに来ていろいろなことがあったから。

 

 

「あーあ、ここって酒あんまりないんだよね、つまんないの」

 

 

レオーネもいつもどうりね・・・まあいいかな。

 

「ねえ、みんな温泉行かない」

 

「ここ温泉あるんだ」

 

「そりゃあるわよ、女子も結構いるんだし」

 

それもそうよね、温泉とかなかったら女子が暴動起こしそうだし、あの人が強引に造らせたのかも・・・

 

 

「じゃあ行こうか」

 

その瞬間ドアをノックする音がした、了解の返事をすると一人の黒髪のポニーテールの少女が入ってきた。

 

「あなたは?」

 

「私の名前はメロディ、あなたがサヨね」

 

「うん、そうだけど」

 

この娘も革命軍の人なのかな?  革命軍の軍服着ていないけど・・・

 

彼女の衣装はミニスカの青いセーラーワンピースであった、革命軍に所属していても軍服を着なくてもいいんだろう、シヴァやミラージェンのように軍服を着ていないケースもあるのだから。

 

 

「ちょっと私の部屋に来てくれない、あなたに話があるのだけれど」

 

「わかった」

 

 

サヨはメロディとともに彼女の部屋に行った、サヨは何だろうと思いながら。

 

 

「話って何?」

 

「慌てないで、私の部屋で話すから」

 

何を話すのか気になったがとりあえず彼女の部屋に急ぐことにした、そして彼女の部屋に到着して入っていった。

 

「話を聞かせてくれない?」

 

「わかったわ、一つ聞くけどあなたナイトレイドに入ってどれくらい経つの?」

 

「そうね・・・4ヶ月ちょっとかな」

 

「そうなんだ・・・あなた手応えとか感じてる?」

 

「それは・・・」

 

 

それは正直に言ってわからない、それなりに場数を踏んだけどまだまだだと思う。

 

 

「あまり自信なさそうね」

 

「えッ、わかるの!?」

 

「まあね、結構場数ふんできたし」

 

そうなんだ、見た目は小柄な女の子なのに人は見た目ではないわね。 (メロディの身長は145です)

 

 

「まあ、気にすることないわよアカメも最初は弱かったんだし」

 

「そりゃそうでしょう」

 

「言っておくけど私が言っている最初は帝国に買われた頃なんだけど」

 

「どういうこと?」

 

「私もアカメやクロメと同じく暗殺者にするために帝国に買われた買われた子供だったのよ」

 

「そうなの!?」

 

 

驚いた、アカメの話では大半の子供は訓練か任務で命を落としたって言ってたから・・・

 

 

「私は最終選抜試験の際に深手を負って試験場に置き去りにされたのよ」

 

 

「置き去りって・・・誰も捜索に来なかったの?」

 

「試験に落ちる者なんて助ける価値なんてないのよ、それが帝国よ」

 

 

そうよね・・・帝国にそんな情けあるわけないよね。

 

「傷が癒えてから私は各地を旅したわ、旅の途中でムディ達と知り合ったのよ」

 

「そうなんだ」

 

一体どういう形で知り会ったのかな、気になるわね。

 

 

「その話はまた今度ね、今はべつ話よ」

 

 

そうよね、今はもっと大事な話を聞かないと・・・

 

「あなたアカメのように強くなりたい?」

 

「も、もちろん・・・」

 

もちろん強くなりたいわよ、でも簡単に強くなれるわけが・・・

 

「むろん簡単にはいかないわよ、あなた強くなるためならなんでもする覚悟ある?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、取っておきの方法いうわね」

 

 

一体どんな方法なんだろう、きっと過酷なものに違いない、どんと来なさい!!

 

「じゃあ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パンツ見せて」

 

その瞬間サヨの時間が数秒停止した。

 

「・・・今なんて言ったの?」

 

私の耳おかしくなったのかな、パンツ見せてだなんて・・・

 

 

「だからパンツ見せてって言ったのよ」

 

「そんなことできるわけないでしょ!!」

 

やっぱり聞き間違いじゃなかった、何考えているのこの娘は!?

 

「なんで?着物をめくり上げるだけでしょ、簡単でしょ」

 

「全然簡単じゃないわよ!!」

 

「どうしてもできない?」

 

「どうしてもよ!!」

 

サヨは恥ずかしさと怒りで興奮していた、そんななかメロディはまゆをひそめて。

 

 

「・・・もしかしてあなたノーパンなの?」

 

「そんなわけないでしょ、ちゃんと穿いてるわよ清潔な白のパンツを・・・」

 

サヨは思わずカッとなってパンツの色を言ってしまった、すぐにサヨは後悔することなる。

 

「な、なんてこと言わせるのあなた・・・」

 

「あなたが勝手に言ったんでしょ」

 

 

確かにその通りね、私の馬鹿!!

 

「パンツ穿いてるのなら見せてよ」

 

「だからできないって言ってるでしょ!!」

 

「覚悟はあるって言ったでしょ、あれ嘘だったの?」

 

「確かに言ったけど、それとこれは別よ!!」

 

「つべこべ言わないで早く見せてよ」

 

「いい加減にしてよ!!あなた下品よ、下品にもほどがあるわよ!!」

 

サヨの怒りは頂点に達しようとしていた、だがメロディは平然とした様子である。

 

 

「下品?上等じゃない、望むところよ」

 

「えッ?あなた何を言って・・・」

 

下品上等?どういうことなの?

 

 

「あなたこそ何を言ってるの?まさか殺し屋がお上品な稼業だなんて思っているんじゃないわよね?」

 

「そんなこと・・・」

 

そんなことあるわけない、私達の仕事は汚れ仕事であることは百も承知よ。

 

 

「いいえ思ってないわね、だってパンツ見せてくれないんだし」

 

「パンツは関係ないでしょ?」

 

「大ありよ、殺し屋はどんな手を使ってでも標的を仕留めないといけないんだから」

 

「それはそうだけど・・・」

 

パンツとどう関係があるの?わけわかんない・・・

 

 

「全裸をさらしてでも隙を作らないといけないのよ」

 

「全裸!?」

 

いくらなんでも全裸は恥ずかしすぎる、はっきり言って無理よ!!

 

「アカメなら街中でも平気で全裸になれるわよ」

 

「嘘!?」

 

「何言っているの?アカメはプロ中のプロよ、女の恥じらいなんかあるわけないでしょ全裸くらいへっちゃらよ」

 

た、確かにアカメならいざとなったら全裸になれるかも・・・

 

 

「あなたはいきなり全裸は無理だと思うからまずはパンツをさらすところから始めるのよ」

 

「そうなのかな・・・」

 

サヨにはこれが正しいのかわからなかった、普通に考えたら正しいわけがないのだが裏の世界は何が起こってもおかしくないからである。

 

 

「あなたアカメに近づきたいんでしょ?」

 

「それはもちろん!」

 

「だったらさっさとパンツさらしなさい、それが出来なければアカメに近づくなんて夢のまた夢よ」

 

「で、でも・・・」

 

「殺し屋に女の恥じらいは不要よ」

 

恥ずかしがっているサヨにメロディは一喝を入れるのであった、サヨはその迫力にたじたじするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話どうでした、サヨが殺し屋として高みにいけるかどころかの分かれ道になります、次回もお楽しみにしてください、ちなみにメロディの声はガールズ&パンツァーのかどたにあんずをイメージしてください。


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第七十一話

サヨは女の子としての恥じらいを捨てて殺し屋として高みに行けるのか、ぜひご覧ください。


  恥じらいを斬る(後編)

 

 

サヨは着物を掴んでパンツをさらそうとしている、女の恥じらいを捨てて殺し屋として高みへいくためである、しかし・・・

 

 

「パンツをさらすなんてやだなあ・・・恥ずかしい」

 

サヨは恥ずかしくてなかなかパンツをさらせないでいる、それを見てメロディは。

 

 

「早くパンツさらしてよ、ぐずぐずしてるともっと恥ずかしいわよ」

 

「わかってるわよ!!」

 

簡単に言わないでよ、すごく恥ずかしいんだから・・・そうしているうちにメロディはサヨの股間の前に顔を近づけてきた。

 

「な、何!?」

 

「間近で見せてもわうわよ」

 

「ちょっとそんなのやめてよ恥ずかしい!!」

 

「何言っているの?だからいいんじゃない」

 

 

確かに中途半端にやるよりは効果あるかも・・・でもすごく恥ずかしい!!

 

「ラバとイエヤスにも同じようにさらしてもらうから」

 

「はあ!?馬鹿言わないでそんなことできるわけないでしょう!!」

 

男の前でパンツをさらす・・・しかも間近で冗談じゃないわよ!!

 

 

「何言っているの?男の前でさらせないと意味ないでしょ?」

 

・・・確かにそうだけどいくらなんでもそんなまねできるわけないじゃない!!

 

 

「あなたアカメのようになりたいんでしょ、殺し屋たるものパンツくらいさらせなくてどうするの?」

 

殺し屋たるもの・・・確かにパンツくらいさらせないとこの先やっていけないわね。

 

 

サヨはパンツをさらす決心をした、着物を掴む手に力がはいる、豪快にパンツをさらそうとしていた、だがこの瞬間サヨの脳裏に微かな疑念が浮かんだ。

 

 

私これでいいのかな?これやったら女の子として終わってしまうような・・・でも私はアカメのようにならないといけないんだから、私のせいで死んでしまったアカメの分まで戦わないといけないんだから・・・

 

 

少しでも迷えば死ぬぞ!!

 

 

サヨは以前スサノオに言われた事を思いだしていた、迷い?私迷っているんだ・・・これは私のしたいことなのかな?ううん、こんなこと私のしたいことじゃない、私のしたいことは・・・

 

 

着物をめくり上げるサヨの手が止まった、パンツはぎりぎりのところで見えていない。

 

 

「どうしたの?」

 

「私こんなことやらない」

 

「何を言っているの、あなたアカメのようになりたいんでしょ?」

 

「そうよ、でもこんな下品なことしたくない!!」

 

「何虫のいいこと言ってるの?あなたにそんなこと言う資格があると思っているの?」

 

「わかっているわ勝手だって、だけど私は人の道を外れても女の恥じらいだけは捨てたくない!!」

 

 

メロディ絶対怒るわね・・・そうサヨは覚悟していたが当の本人はいたって冷静だった。

 

 

「意外ね、パンツさらすと思っていたんだけど・・・」

 

「意外ってどういう意味?」

 

「ナイトレイドのみんな呼んできて」

 

「なんで?」

 

「答え合わせするのよ」

 

 

サヨはイマイチ理解できていなかった、とりあえずサヨはナジェンダ達を呼びにいくことにした。

 

 

 

しばらくしてサヨはナイトレイド全員を連れてきた、全員何事かという顔をしている。

 

「呼んできたけど答え合わせって何するの?」

 

「見ていればわかるわよ」

 

 

そう言われてサヨはメロディに任せることにした、この後何が起こるのかこの時点では予想もしていない・・・

 

 

「チェルシー」

 

「何?」

 

「スカートめくり上げてパンツ見せて」

 

「・・・何ふざけたこと言ってるの?怒るわよ私」

 

チェルシーは顔は笑顔だがこめかみに怒りの青筋が浮かび上がっていた、だがメロディは全く臆していない。

 

 

「そんなこと言わずにさ、サヨに殺し屋としての心得を教えるためなんだから」

 

「は?何それ、意味わかんないんだけど」

 

チェルシーは目を点にしてポカンとしている、チェルシーでも状況を理解できなかったのである。

 

 

「いいから見せてよ減るもんじゃなし」

 

「・・・いい加減にしてよね本気で怒るわよ」

 

あまりのしつこさにチェルシーはブチ切れ寸前だった。

 

 

「答え出たでしょ?」

 

「うん・・・」

 

サヨは自分が間違っていたことを痛感したからである、恥ずかしさで顔が真っ赤であった。

 

「一体どういうこと!?ちゃんと説明して!!」

 

「えっとね・・・」

 

「あっダメ!!言わないで!!」

 

メロディはサヨの制止を無視して今までのいきさつを説明した、すると・・・

 

 

 

「プププ・・・アハハハハハハ!!何それ、殺し屋として高みへいくために自分でパンツをさらすって、アハハハハ!!」

 

チェルシーは腹を抱えて大笑いした、あまりのおもしろさに涙が出ていた。

 

「だから言わないでって言ったのに・・・」

 

サヨは自分の馬鹿さにただ後悔するしかなかったのであった。

 

「ギャハハハハハ!!」

 

レオーネは大笑いして床を転げ回っている。

 

「まあ、そうなるわね」

 

サヨはレオーネが大笑いするのを見るしかできなかった。

 

 

「なんで最初に声をかけてくれなかったんだ!!」

 

ラバとイエヤスは堂々と女の子のパンツを見るチャンスを逃して心から悔しがっている。

 

「・・・さすがに怒れない」

 

自分のおバカな行動が関わっているので二人を責めることはできなかった。

 

 

「アンタ本当に馬鹿ね」

 

「うう・・・私は本当に馬鹿よ」

 

マインの言葉にサヨは何も言い返すことができなかった、全くその通りなのだから。

 

 

なんでこうなっちゃったのかな、普通に考えればわかることなのに・・・

 

 

「マインもパンツ見られたらやっぱり恥ずかしいの?」

 

「何言っているの当たり前でしょ」

 

「そうよね、その通りよね・・・」

 

サヨは念のために確認をしてみた、当然予想どうりの答えが返ってきた、すると後ろから誰かがサヨの着物を掴んだ、そしてそのままおもいっきりめくり上げた、サヨの白のパンツが丸だしになった。

 

「!!?」

 

「出血大サービス」

 

その人物はチェルシーだった、チェルシーは清々しい笑顔であった。

 

「ななな・・・」

 

サヨは突然自分のパンツが丸だしになってわなわなと振るえだした、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。

 

「何するのよ!?」

 

「捨てるんじゃなかったの?」

 

「捨てるって何をよ!?」

 

「女の子の恥じらいを」

 

「あ・・・」

 

サヨはついさっきまで恥じらいを捨てようとしていたことをすっかり忘れてしまっていた、パンツをあらわにされて冷静さを失ったのである。

 

「これでわかったでしょう、女の子の恥じらいを捨てることはできないということを」

 

「だからってめくり上げることは・・・」

 

「実際体験しないとわからないものよ」

 

 

確かに口で言われただけじゃあ完全に納得できなかった、恥じらいを捨てるなんて絶対無理ね・・・

 

 

「確かに恥ずかしい思いをしなければ納得できなかった、チェルの言う通りよ」

 

「でしょう」

 

「でも・・・」

 

「何?」

 

「いつまでめくり上げているのよ!!」

 

 

チェルシーは今もサヨのパンツを丸出しにしているのであった。

 

 

ボガン!!

 

 

サヨはチェルシーをぶん殴った、チェルシーの頭にこぶができた。

 

「あたた・・・でもわかったでしょう、恥じらいを捨てることはできないって」

 

「うん、その通りね、パンツ見られるのすごく恥ずかしい・・・」

 

サヨはパンツが丸出しにされたことを思い出して再び赤面した。

 

「そりゃそうよ、アカメちゃんだって女の子よ、パンツ見られたら恥ずかしいに決まってるでしょ」

 

チェルシーは以前オールベルグでアカメを遠目で見たことがあった、その時は普通の女の子に見えたのであった。

 

 

「それは、何と言ったらいいのか・・・」

 

メロディは説明に困っていた、説明が容易でないからであった。

 

 

 

 

 

 

メロディの回想

 

 

バッ!!

 

メロディはアカメのスカートをおもいっきりめくり上げた、白のパンツを穿いたアカメのお尻が丸出しになった。

 

「やっぱ白か」

 

メロディはアカメのパンツを見てボソッとつぶやいた、アカメは突然のことに顔を真っ赤にして呆然としている、すぐさまアカメはメロディをキッと睨みつけてチョップを繰り出した。

 

「おっと」

 

メロディは素早く身をかわした。

 

 

「何をする!!いきなり!!」

 

アカメはスカートをめくられてこれ以上なく激怒している。

 

「意外ね、あなたに女の子としての恥じらいがあったなんて・・・全裸をさらしてもへっちゃらだと思ってたんだけど」

 

 

メロディは衝撃の事実に心から驚いた、それを見てアカメはムカッとした。

 

「失礼だぞ!!私は一般常識はすべて教わっているんだぞ!!」

 

「・・・その受け答えどうなのかな?」

 

 

堂々と言い放ったアカメにメロディはただア然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

「まあ、こんなところよ」

 

「何それ!?」

 

メロディの説明を聞いてサヨは驚いた、アカメはどこかズレたところがあったけど改めてアカメのズレは半端ないと思うのであった。

 

 

「プププ・・・アハハハハハハ!!何それアカメちゃんおもしろすぎる、アハハハハハハ!!」

 

チェルシーはさっき以上に腹を抱えて爆笑した、だがしばらくして笑い声が止まった。

 

 

「そんな面白い娘なら仲良くなりたかったなあ・・・」

 

チェルシーの寂しそうな声を聞いた瞬間この場にいた全員に悲しげな気持ちが襲った、アカメは死んでもういない・・そのことを改めて思い知らされたのであった。

 

 

「そうだったな、アカメは死んでいないんだ・・・」

 

「ああ、アカメちゃんがどれだけかけがえのない存在だったのか改めて思い知らされたよ」

 

「そうですね、アカメはつねに私達の中心にいましたから・・・」

 

「今でもひょっこり私達の前に現れるような感じがするんだよな」

 

レオーネのそれは決してかなわない願望である、レオーネ自身もわかっている、だがつぶやかずにはいられなかった、重苦しい空気が漂い始めた、するとナジェンダは皆に活を入れた。

 

 

「しっかりしろ!!どれだけ悲しもうともアカメが死んだという事実は覆らない、私達がすべきはアカメの悲願を成就を果たすことだ!!」

 

アカメが望んでいた民が安らかに暮らせる新国家の建国・・・ナジェンダの活で落ち込んだ雰囲気は消し飛んだ、皆の士気が一気に上がっていく。

 

 

「そうだな、落ち込んでていてもしゃあないな」

 

「ああ、俺達が頑張らないとな」

 

「それがアカメの供養になります」

 

「ああ、全くその通りだ私達が頑張らないとな」

 

「アタシがアカメの十倍働いて見せるわ」

 

「あいつの熱い想い俺達が引き受けるぜ」

 

「どれだけの困難が阻もうとも使命を果たす」

 

「アカメちゃんが安心して眠れるように私達が頑張らないとね」

 

「そうよね、私達は立ち止まっているひまはない、アカメが夢見た世界を実現するために」

 

ナイトレイド一同はアカメの分まで戦う、その想いに盛り上がっている、ナジェンダの活は見事に決まったのであった。

 

 

「皆気合いを入れろよ、今の状況を覆すのは容易ではないからな」

 

ボスの言う通りである、帝具を大量に損失し、総大将は倒れて今も意識が戻らない、西の異民族との同盟は目処が立たない、だけどそれでも私達はくじけるわけにはいかない、村を豊かにして腐敗した帝国を打倒してアカメが夢見た世界を造るために私達は戦う、どんな困難が阻もうとも。

 

 

 

 

 

 

 




今回の話いかがでしたか、実際アカメはパンツを見られると恥ずかしいと感じるのでしょうか、皆さんはどう思いますか?さて、今回で革命軍編は終了します、次回より新章が始まります、ぜひお楽しみください。


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国交回復編
第七十二話


今回から国交回復編が始まりました、お楽しみください。


   土産を斬る

 

8月22日

 

私達は本部から指令を受けてあるミッションを行うことになった、だが今回のミッションは革命軍のメンバーとの共同で行うことになっている、今回のミッションは革命軍の最大の出資者からの依頼である、出資者の息子が誘拐団にさらわれてしまい誘拐団から救出することである、このミッションに成功すれば出資者から倍の資金援助が約束されている、もし失敗すれば援助は打ち切りである、もしそうなれば革命軍の戦略に影を落としてしまう、さらにこの出資者は西の異民族とパイプを持っており関係を絶つわけにはいかないのである、偶然であるが子供をさらわれた人からナイトレイドに誘拐団の暗殺依頼が出ていたのである、今回のミッションに参加するメンバーはアジト前に集結していた、一人を除いて・・・

 

 

「遅い!カグラの奴どこを飛び回っているのだ!!」

 

予定時間になっても戻って来ないカグラにナジェンダはいらいらしていた、カグラは退屈だから空の散歩に出かけたのだ。

 

「全く、あいつは自分が革命軍だという自覚がないな」

 

「あいつにそれ求めるの無理なんじゃないの」

 

レオーネはニヤニヤしている、ナジェンダがいらいらしているのが面白いからである。

 

「それでも持ってくれないと困る」

 

そうしているうちに上空から大きな物体が近づいてた、それはカグラが操るハヤテ丸であった、ハヤテ丸とはカグラが操る大きな模型の鳥である、帝具の可能性もあるが実際のところ定かではない。

 

 

「お前何をしていた、時間はとっくにオーバーしているぞ!!」

 

ナジェンダはすごい剣幕でカグラに詰め寄った、だがカグラは全く臆していない。

 

「ゴメン、ゴメン、いろいろあってさ、お詫びにお土産持ってきたから」

 

「お土産?」

 

「うん、これ」

 

ハヤテ丸の脚からそのお土産が放り投げられた、その時女性の悲鳴が聞こえた。

 

 

「・・・誰?」

 

カグラのお土産、それは縛られた女性であった。

 

 

「お前どういうつもりだ?勝手に部外者を連れてきていいと思っているのか?」

 

ナジェンダは鋭くカグラを睨みつけた、だが当の本人は全く臆していない。

 

 

「部外者じゃないよ、セリューに殺されかけてたんだから」

 

「どういうことだ?」

 

「面白い話が聞けると思うよ」

 

一方縛られた女性は状況を把握できていなかった、見知らぬ場所で大勢の人に囲まれて戸惑っていた。

 

 

「ねえ、ちょっとここはどこ?それに・・・」

 

何人かは見覚えがあった、どこなのかははっきりしないが。

 

「ナイトレイドのアジト」

 

「ナイトレイドって、あの殺し屋集団の!?」

 

見覚えがあるはずだった、手配書に出ているのだから。

 

 

「手短に話してもらうぞ」

 

「は、はい・・・」

 

女性は自分に起こったことを話し始めた、はっきり言って時間はなかったがセリューの名前が出てきたことで無視するわけにはいかなかった、アカメの命を奪った元凶なのだから・・・

 

 

 

その頃帝都近郊の森に二人の人影があった、それはウェイブとセリューだった、二人は帝都に戻る途中である。

 

 

「悔しいです!!私としたことがあんな失態を!!」

 

 

セリューはじたんだを踏んで悔しがっている、ウェイブはその様子を無言で見つめていた、ついさっきのことを思いだしながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

「コロ補食!!」

 

ガブッ!!

 

セリューはついさっき捕らえた盗賊の二人の補食をコロに命じた、盗賊達は上半身を食われて下半身だけ残されていた、その惨状を見てもう一人の盗賊は慌てて弁明した。

 

 

「待って!!私はこの二人に脅されて無理矢理手伝わされていたの、だから・・・」

 

「だから許してくれだと?ふざけるなそんな虫のいい話があるか」

 

「あ、あなたの上司に・・・」

 

「お前のような小物に隊長の手を煩わせるわけにいかん、私が対処する」

 

「あなた何様なの・・・」

 

「私達イェーガーズは迅速に対処できるよう特権を与えられているのだ、問題はない」

 

 

・・・ダメだ、コイツ、私の話全然聞く気がない・・・女はセリューの話のわからなさに絶望せずにはいられなかった。

 

 

「私がこの手で悪を裁く、殴殺刑だ!!」

 

セリューは鋼鉄の義手を構えた、セリューにためらいはみじんもない。

 

「ひっ!!」

 

女は悲鳴を上げて大粒の涙をこぼし始めた、なんで盗みで殺されなければならないのか、理不尽さに嘆くしかなかった。

 

「正義執行!!」

 

セリューは悪を裁くべく拳を振り上げた、その時突然セリュー達の周りに白いモヤが立ち込めた。

 

「なんだ?何が起こった?」

 

セリューは突然のことにあっけにとられているとセリューの前方に何か巨大な物が通り過ぎて行った。

 

「一体何が・・・あっいない、どこへ行った?」

 

 

いつのまにか女の姿が消えていた、辺りを見回しても女性はいなかった、セリューは上空を見上げてみた、すると上空に女を掴んで飛行する鳥がいた、しかもセリューにはその鳥に見覚えがあった。

 

 

「あれは・・・カグラ!!おのれ、また賊に手を貸すか!!」

 

カグラはナイトレイドと友人関係らしい、悪同志グルというわけだ、おのれ!!

 

 

「コロ、七番!!」

 

コロはセリューの命令に従いセリューの腕に噛み付いた、すると噛み付いた腕に巨大な大砲が装着された、一体どうやって巨大な大砲を保管していたのであろうか。

 

 

「逃がさんぞカグラ!!」

 

セリューは大砲を上空へ狙いをつけた、だが重量のある大砲を真上に上げるのは容易ではない。

 

「コロ支えてくれ、狙いがつかない」

 

コロはセリューの体を支えて狙いをつけやすくした、そして大砲はカグラに狙いをつけることができた。

 

「正義執行!!」

 

セリューは真上に大砲をぶっ放した、大砲の弾はカグラめがけて飛んでいく、そのまま着弾するかと思いきやハヤテ丸の尾羽から強烈な風が吹き出された、弾は風に吹き付けられ真下へ落下していった。

 

「そ、そんな・・・」

 

セリューは信じられなかった、十王の裁きがあっさり吹き飛ばされたことが、ショックで動けないセリューめがけて大砲の弾は落下していった。

 

 

 

「セリューの奴どこ行った?」

 

 

ウェイブはセリューを探していた、セリューが盗賊を捕らえて郊外に連れていったことを知ったからである。

 

 

ドカーン!!

 

 

「なんだ、爆発!?」

 

突然爆音が鳴り響いた、ウェイブはこの爆発にセリューが関わっているのではないかと直感した、すぐさまウェイブは爆発が起こった場所に駆けつけた、すると地面に大穴が空いていた、その周りにセリューとコロが倒れていた。

 

 

「セリュー、大丈夫か!?何があった!?」

 

「あっ、ウェイブさん・・・」

 

ウェイブはセリューのもとに駆けつけ介抱した、セリューもコロも爆発で焦げていた。

 

「大変です、カグラが突然現れて賊を連れ去ったんです!!」

 

「カグラが!?」

 

カグラの名前を聞いた瞬間ウェイブの表情が曇った、カグラには因縁があったからである。

 

「幸い他の賊はあらかじめコロが補食していたからよかったものの・・・」

 

「おい、お前今なんつった!?」

 

コイツ賊を補食したって言ったような・・・聞き間違いだといいが。

 

 

「だからカグラが賊を・・・」

 

「そっちじゃねえ!!お前今賊を補食したって言ったよな!?」

 

「はい、言いましたけどそれが何か?」

 

セリューは爽やかな笑顔で答えた、だがウェイブは衝撃の返答に怒りがこみあげている。

 

 

「何勝手なことを、いくら俺達に特権が与えられているとはいえ勝手に殺していいと思っているのか!?」

 

ウェイブは激怒した、いくら賊とはいえ簡単に殺したのではカグラの言った通りになってしまうではないか、軍人は殺し屋と同じなどと・・・

 

 

「お言葉ですが奴らは殺していないから大目に見てくれと言ったのですよ、そんな虫のいい話があるわけありませんよ、断罪して当然です」

 

「・・・」

 

ウェイブは言葉に詰まってしまった、セリューの言うことは的外れではなかったから、だが人としてセリューの行いは許せるものではなかった、何と言えばいいのかウェイブにはわからなかった。

 

 

「とにかく一度帝都に戻りましょう」

 

「あっ、ちょっと待て」

 

「・・・まだ何か?」

 

セリューは不機嫌そうにウェイブの方を振り向いた、説教の続きなのだとセリューは思ったが実際は違った。

 

「いや、その・・・胸、言いそびれちまったけどよ」

 

ウェイブは顔を赤くして指を指した、するとセリューの服が爆発で破けて胸が丸出しになってしまっていた。

 

「ふわっ!?」

 

 

セリューは慌てて腕で胸を隠した、セリューの顔があっという間に真っ赤になっていく。

 

「ウェイブさんやらしいです、黙ってるなんて・・・」

 

「なんでだよ!?」

 

 

気持ちはわかるが胸が丸出しになったのは俺のせいではないだろう、そう思わずにはいられないウェイブであった。

 

 

 

 

 

 

一方その頃ナイトレイド一同は女盗賊からいきさつを聞いたのであった、私達は驚きを隠せなかった。

 

 

「ろくに調査せず捕らえるのはまああるがその場で処刑はないな、手柄にならないからな」

 

ブラートは腐敗した軍を良く知っていたがセリューの所業には驚いていた。

 

 

「あいつはそんなのどうだっていいんだよ、悪さえ殺せれば満足なんだから」

 

おそらくラバの推測は正しいだろう、セリューの正義に対する執着は尋常ではないから。

 

 

「どう、なかなかおもしろかったでしょう」

 

「ああ、セリューの動向を少し知ることができたからな、だが今後は勝手は許さんぞ」

 

「うんわかった (ヤバ、目がマジだ)」

 

ナジェンダの鋭い眼光にカグラは少しびびり冷や汗が一つ流れた。

 

 

「ねえ、知ってること全部話したんだから解放してよ」

 

「悪いがそうはいかない、アジトの位置を知ってしまったのだからな」

 

「そ、そんな・・・」

 

そんなのあんまりよ、知ってること全部話したのに、そう文句を言いたかったが怖くてできなかった。

 

 

「ナイトレイドに入ればいいじゃん」

 

「何言ってるの!?」

 

「どうせ食べるあてないんだしちょうどいいじゃん」

 

「それはそうだけどいくらなんでも・・・」

 

 

いくらなんでもナイトレイドはないわよ、この娘には助けてもらったけどさすがに殺し屋集団は・・・

 

 

「お気持ちはわかりますが、このままじゃあなた殺されちゃいますよ、よく考えた方がいいですよ?」

 

シェーレは女を気遣かったつもりだったのではあるが女はすっかり恐怖で萎縮してしまっていた。

 

「その娘が連れてきたのに・・・ひどいあんまりよ・・・」

 

 

女はすっかり涙目になっていた、するとカーコリッテが女の肩を優しく叩いて慰めた。

 

 

「気持ちはわかるけど命があっただけでもよしと思おうよ、生きていればそのうちいいことあるよ」

 

「うん・・・」

 

カーコリッテの慰めに女は感動していた、その様子を見てサヨ達は。

 

 

「カーコすごく嬉しそうね」

 

「似たような境遇の仲間ができたと思ったんじゃないの?」

 

「こういうのを同じ穴のムジナって言うんでしたっけ?」

 

「たぶん違うぞ」

 

 

サヨ達が微妙な雰囲気を感じているとナジェンダが一喝して吹き飛ばした。

 

 

「お前達気持ちを切り替えろ、これから重要なミッションを開始するのだからな」

 

 

ナジェンダの一喝に皆気が引き締まった、サヨも体に緊張感が走る。

 

 

「これから大事な任務が始まるのだから気を引き締めないと」

 

一同は誘拐団のアジトがある西方20キロの山岳部へ出発していった、この時はまだあのようなことが起きるとは誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

今回の参加メンバー

 

ナジェンダ ブラート レオーネ マイン ラバック シェーレ サヨ イエヤス スサノオ チェルシー

 

ジャド カグラ カーコリッテ ミラージェン グレイグ トレイル インファン グラール マクレーン

 

ガルス ギジェ ケビン ライドウ   

 

 

 

 

 

 




久しぶりにイェーガーズのウェイブとセリューが登場しました、他のメンバーも登場しますので楽しみにしてください、これからも国交回復編を楽しみにしてください。


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第七十三話

   家族を斬る

 

 

私達は誘拐団のアジトへ向かう最中であった、予定よりも遅れたため多少早足で進んでいる、今回の参加メンバー23人ともう一人が・・・もう一人はカグラが連れてきた女盗賊である、アジトに置いていくわけにもいかないので連れてきたのであった。

 

 

「えッ、それじゃああなたが主犯になっちゃうじゃないの!?」

 

「人聞きの悪いこと言わないで、私だって好きでやったんじゃないんだから!」

 

サヨは女盗賊から今までのいきさつを聞いたのであった、彼女の名前はチホシ、彼女の話では盗みに入る家、逃走ルート、盗みを行う所用時間をすべて彼女が調べたのである、殺された二人があまりにずさんで彼女が一人で計画するしかなかったのであった。

 

 

「でも、それだけ計画的だったのになんで捕まったの?」

 

「それは・・・あの二人が欲かいて時間オーバーしちゃったのよ」

 

 

チホシが落ち込んでいるとカーコが話に割り込んできた。

 

「どこにでもいるのよね足を引っ張る馬鹿は」

 

「あなたも足を引っ張られたことあるの?」

 

南の異民族のアサシン・・・決して弱くなかったと思うけど帝具を持ってなかった私達でも対抗できたけど。

 

「そうなのよ、敵の偽情報にひっかかって危うく巻き添えをくらうところだったわ」

 

「それは危なかったわね」

 

 

やっぱりレベルの低い使い手もいるのよね、まあ当然か。

 

「まあ今もなんとか生き残っているし最後まで生き残りたいわね」

 

最後までか・・・今革命軍の状況かなりまずいことになっているし、目の前のミッションをこなすことに集中しないと。

 

 

しばらく歩いているとチホシがサヨに話かけてきた。

 

 

「ねえあなた殺し屋として手配されてる割には威圧感がないというか・・・」

 

「うん、私殺し屋になってまだ五ヶ月くらいしか経ってないから」

 

「そうなんだ、そういえばあなたの手配書が貼られる前別の手配書が一斉に剥がされていた・・・あっ!!」

 

 

チホシはあることを思いついて会話を止めた、剥がされた手配書がアカメだったということを思いだしたからである、アカメは警備隊に葬られたことで手配書が不用になり剥がされたのである、そのことに気がつかなかった自分自身に舌打ちした。

 

 

「ゴメン」

 

「謝ることないわよ、あなたが悪いんじゃないんだし」

 

「そう、これからは気をつける」

 

チホシは悪いことを言ってしまったと申し訳ないという顔をしている、サヨはアカメが死んでしまったのは自分に責任があると思っているのである、チホシを責めるつもりは全くなかった。

 

 

「・・・」

 

サヨはラバがある人物を複雑な表情で見ていることに気づいた、その人物はグラールである。

 

「ラバどうしたの?」

 

ラバが男をじっと見つめているなんてありえなかったのである。

 

「いや、ちょっと・・・」

 

そういえば本部でも彼を見ていたような、彼ラバの知り合いなのかな?

 

「ラバ彼と知り合いなの?」

 

「知り合いというか・・・」

 

ラバはいいたくない様子であった、無理矢理聞くのも悪いからそっとしておこう。

 

「気にしないでラバ」

 

「別に内緒にする話じゃないよ、彼は、グラールは俺の兄貴なんだ」

 

 

「えッ!?そうだったの!?」

 

「ああ、グラールの兄貴は次男なんだよ」

 

 

そうだったんだ、でもふに落ちないことがある。

 

「でもあの人ラバに会った時全然反応なかったけど」

 

ラバは死んだことになっている、もしラバと会えばすごく驚くはずである、なのに全く驚いた様子はなかったのである、ありえないことである。

 

「兄貴は数年前賊に襲われて左腕を失い頭に深い傷を負って大半の記憶を失ったんだ」

 

「そうだったの、どうりで・・・」

 

どうりで何の反応がなかったと思った、でもなんで革命軍にいるのかな?

 

 

「療養も兼ねて革命軍にいるんだよ、でもその条件として親父が革命軍の出資者になっているんだよ」

 

 

その瞬間サヨはある推測が頭に浮かんだ、かなりえげつない推測が・・・

 

 

「もしかしてサヨちゃんエヴァさんが親父を出資者にさせるために兄貴を襲ったのではないのかと思ってないか?」

 

 

サヨはラバにずばり推測を的中させられて驚いた、ラバはいたって平然としている。

 

「確かにあの人ならやりかねないね、目的のためなら手段を選ばない人だから」

 

「な、なんでラバはそんなに落ち着いているの、あの人がお兄さんを襲ったのかもしれないのに」

 

 

「俺にあの人を責める資格はないよ、俺はナジェンダさんと共にいるために家族を捨てたんだから」

 

 

「でもそれとこれは話が違うんじゃ・・・」

 

「違わないよ、俺は自分自身の死を偽装した、それは家族と永遠の別れを意味するからな」

 

 

サヨは何も言えなかった、理由はどうあれ家族を悲しませたことは事実だから。

 

 

「ねえラバ今のお兄さんを見てやっぱりつらい?」

 

「どうかな?今の兄貴は俺の知っている兄貴じゃないからな」

 

 

そういいつつもラバの気持ちは複雑だった、記憶が大半ないとはいえ雰囲気は自分が知っている兄貴のものであったから。

 

 

「あれからずいぶん経ったな・・・」

 

ラバはグラールとの思い出を思い出していた、ナジェンダと初めて会った日のことを・・・

 

 

 

 

 

 

ラバの回想

 

 

 

 

ラバは屋敷のリビングで父親とグラールと一緒にくつろいでいた。

 

 

「なあ兄貴、建築の本なんか読んで楽しいか?」

 

「ああ、なかなか奥深いぜ」

 

「ふうん・・・」

 

さっぱりわからねえな、まあどうでもいいけど

 

 

 

「それよりもお前は何か夢中になるものはないのか?」

 

「別に、俺はなんでもそつなくこなせるから物足りないというか」

 

「そうか、まあそのうち夢中になれるものが見つかるだろうさ」

 

 

そうかな、俺を夢中にさせてくれるものなんてそう・・・あーあ退屈だぜ。

 

するとラバの父親が時計を見て慌てだした。

 

「おっ、もうこんな時間か、こりゃいかん!」

 

「どうした親父?」

 

「今日この町に帝都から将軍が派遣なされるのだ、出迎えをせねば、グラール、ラバ、お前達も来い」

 

「わかった」

 

「はーい」

 

二人は父親と共に屋敷を出て出迎えの準備をした、ラバとグラールは将軍と会うのは初めてであった。

 

 

「なあ、将軍はどんな人なんだ?」

 

「ああ、お越しになられる将軍の名前はナジェンダ、彼女は二十歳で将軍になられたお方だ、美人だという話だ」

 

「美人か、それは楽しみだなラバ」

 

グラールはワクワクしているがラバは冷めた表情だった。

 

 

美人ねえ、二十歳で将軍になった女が美人なわけないだろ、どうせ尾ひれが付いたんだろう、きっとゴリラみたいなマッチョな女だろうさ。

 

そうラバは心の中でつぶやいた、すると一台の馬車がやってきた。

 

 

「お見えになったぞ失礼のないようにな」

 

「ああ」

 

「はーい」

 

馬車はゆっくりと止まり中から人が現れた、その人は美人ではなかった。

 

 

「・・・な、なんだ、美人なんてもんじゃねえぞ、すっげえ美人だ」

 

その将軍はとびきりの美人であった、ラバはカミナリが落ちたような衝撃を感じた。

 

「おい、すっげえ美人だな、おいラバどうした?」

 

「・・・」

 

ラバはナジェンダを見て放心状態であった。

 

「もしかしてほれたか?」

 

「な、な、何言ってるんだよ!?」

 

ラバは顔を真っ赤にして否定したが説得力がなかった。

 

「隠すなって、おい麗しの将軍様がお越しに来るぞ」

 

 

ナジェンダは三人の元に近づき挨拶した。

 

「私がこの街に派遣されたナジェンダだよろしく頼む」

 

「遠路はるばるようこそいらっしゃいました、こちらこそよろしくお願いします」

 

「ところでそこの二人は?」

 

「はい、私の息子です」

 

「そうか、よろしく頼むぞ」

 

 

「俺はグラール、今後ともよろしく」

 

「・・・」

 

ラバはナジェンダに見とれていて話しかけることができなかった。

 

 

「こらラバ、挨拶せんか!!」

 

父親に叱られ慌ててラバは挨拶した。

 

「は、はい、お、ぼ、ぼ、僕はラバックです、よ、よろしくお願いします!!」

 

ラバは緊張でかみかみしまくっていた。

 

 

「そう緊張するな、よろしく頼むぞラバック」

 

「はい!!」

 

ラバは力一杯返事をした、ナジェンダはその仕草に微笑んだ、そしてナジェンダはラバックに握手をした、するとラバの頭から湯気が一気に噴き出しラバは再び放心状態となった。

 

「では屋敷にどうぞ小さいですがパーティーを用意しています」

 

「お心遣い感謝する」

 

ラバの父親はナジェンダを屋敷へ案内していった、ラバとグラールがその場に残された。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ラバの耳はグラールの言葉を完全にスルーしていた、相変わらずラバの頭から湯気が噴き出していた。

 

 

・・・あの人の手すっげえ柔らかい、そしてすっげえいいにおいだ・・・ラバはナジェンダと握手した手をくんくん嗅いでいる。

 

 

「お前ここまでめろめろになるとはな、あの人はすげえ美人だからわからんでもないけど」

 

「・・・ああ、これが一目惚れって奴だな」

 

「お前これからどうする、告白でもするか?」

 

「いや、俺はあの人にとってはただの子供でしかない、だからまずあの人の近くに居場所を作る」

 

「作るって?」

 

「そうだな、まずは兵士になってあの人の傍に仕えたい、そしてあの人の信頼を得たい」

 

「おいおい簡単にはいかないぞ」

 

「百も承知さ、だけど俺はもう決めたんだ」

 

 

ラバも自分がここまで情熱的に行動するとは思わなかった、だがもうこころが止まらないのだ。

 

「そうか、なら徹底的にやりな、そしてドンと告白しておもいっきり砕けてこい!!」

 

「砕けたらダメだろ!!」

 

「そうだったな、はははは!!」

 

「兄貴見てろよいつかあの人を落としてやるからな」

 

ラバは自分の人生はようやく始まったような気がしていた、どんな困難が待っていても乗り越える自信に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

・・・兄貴、今でも俺の恋を応援してくれたこと感謝してるんだぜ、たとえ記憶を失っているとしても、兄貴は自分の道を歩んでくれ、俺は俺の道を歩むからさ。

 

 

もう昔には戻れない、だからこそ自分が熱望する未来を勝ち取らなければならないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はラバとナジェンダの初対面の場面を書きました、話に深みをつけるためラバの次男を設定しました、原作ではラバの兄弟は登場しなかったので登場させました、グラールの声はウェイブの声をイメージしてください、これからも応援お願いします。


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第七十四話

  誘拐団を斬る(前編)

 

 

私達は誘拐団のアジトである古城の近くまで着ていた、だがまだ攻め込むわけにはいかなかった、最優先の任務は誘拐された子供の救出である、それゆえ子供達が監禁されている場所を見つけなくてはならなかった。

 

 

「さて、子供が監禁されている場所を突き止めなければならないな」

 

ジャドはアジトを見てつぶやいた。

 

「場所わかっていないのですか?」

 

「連中はこまめに部屋を替えているからな」

 

「じゃあどうするんですか?」

 

「一つ試したい手があるんだがな、イエヤスお前の帝具透視できるんだったな?」

 

「ああ、一応な」

 

 

そうか、アジトを透視できれば子供が監禁されている部屋を簡単に見つけることができるけど・・・

 

 

「けど建物までは透視できないぜ」

 

「そうか、そう都合よくできんか」

 

まあ、そこまで便利にはいかないか・・・けどジャドさんそんなに落胆していないけど。

 

 

「お前、ミラージェンを透視してみろ」

 

 

「えっ!?」

 

イエヤスはあっけにとられた、女性に透視が使える状況を予想していなかったからである。

 

 

「ミラージェンの全裸を見て気合いを入れてからアジトを透視してみろ」

 

 

「いいのかよ?」

 

巨乳のお姉さんの全裸を堂々と覗けるなどまさに夢の展開であった。

 

 

 

「ちょっと何言ってるの!?そんなこと・・・」

 

そんな下品なこと見逃せるわけがない、サヨはジャドに反論しようとしたが。

 

「以前コイツは女の全裸を見たいという欲望で透視能力が上がっただろ」

 

 

確かにそうだった、私としては思い出したくない過去である。

 

「だけどこんなことを許せるわけが・・・」

 

 

「しくじりは許されねえんだ、成功のためならなんでもするぞ」

 

 

ジャドの冷徹な睨みつけにサヨは何も言えなかった、自分とは比べられないほどの場数を踏んできた者の差を感じた、それでも一人の女の子として何も言わずにはいられなかった。

 

 

「あなたはそれでいいの!?」

 

 

「まあ、私は革命軍に拾われた身だしね、仕方ないんじゃない」

 

本人がいいと言っている以上どうにもならないのはサヨにもわかっている、でもサヨは女として納得したくなかったのである。

 

 

「誰かアジトに潜入させるとか・・・」

 

 

「それはとっくにやった、だが潜入した奴らは全滅した」

 

 

そうか、だからこんな手を打つしかなかったんだ、サヨもようやくあきらめがついたのである。

 

 

 

「あっさりボロを出す連中じゃないはずだったはずだが、仕方ない」

 

サヨはジャドに冷たくないと言いかけたが密偵は死と隣り合わせだとわかっているので言わなかった。

 

 

 

 

「さっそく始めるぞ時間が惜しい」

 

ミラージェンはイエヤスの正面に移動した、イエヤスは帝具を装着して帝具に念を入れた。

 

 

「帝具発動!!」

 

帝具の目が開いて透視の能力が発動しイエヤスはミラージェンの全裸

 

 

 

「おおおお!!こりゃすげえぜ!!」

 

大興奮するイエヤスを見てカグラとシェーレを除く女性達はイエヤスを汚物のごとくにらんでいた、ラバはすごく悔しそうにイエヤスをにらんでいる。

 

ちくしょう、なんてうらやましい・・・後で制裁してやる。

 

 

イエヤスはラバがそう思っていることなどつゆしらず、いやらしい顔でミラージェンの全裸を堪能している。

 

 

 

「サイテー・・・」

 

マインはイエヤスを軽蔑の眼差しで見ている、するとチホシは複雑そうなまなざしで。

 

 

 

「ねえ、ナイトレイドって冷酷非情な殺し屋集団ってイメージだったけど、結構マヌケなのね・・・」

 

チホシの言いたいことはわかる、はっきり言ってマヌケにしか見えなかった。

 

「冗談じゃないわよ!!あんなヘンタイと一緒にしないで!!」

 

 

「ゴ、ゴメン」

 

マインの怒鳴り声にチホシはすっかりびびってしまっていた、すると今度はカーコが私に話しかけてきた。

 

 

「ねえサヨ、あなたあいつと一緒に力を合わせて村を救うつもりだったの?」

 

 

カーコの疑念もわかる、今のあいつはヘンタイにしか見えないから。

 

 

「まあ、あいつ結構タフだし、あいつとタツミと力を合わせて村を救うつもりだったから」

 

 

「タツミってそんなに強いの!?」

 

「うん、私達よりも強かったわよ」

 

「そうなの!?あなたも十分強いでしょう、一体どれだけ強かったのよ!?」

 

・・・そうねタツミがもしナイトレイドに入っていればグンと強くなってナイトレイドの要になれたかも。

 

「もしナイトレイドに入っていればタツミどんな帝具と適合できたのかな?」

 

 

帝具か、タツミはどんな帝具と適合できたのかな・・・私が知っている帝具と照らし合わせたらインクルシオなんかがタツミと合いそうな気がするわね・・・サヨはタツミのもしもの未来を想像していた、すると突然ジャドの声でかき消された。

 

 

 

「もういいだろ、アジトを透視しろ」

 

ジャドとしてもイエヤスを楽しませるために透視させたわけではないのである、イエヤスも百も承知であった。

 

 

 

もしこれでしくじったら俺袋だたきにされるな、姐さん指をボキボキ鳴らしながら俺をにらんでるし気合いを入れないとな!!

 

 

「帝具発動!!」

 

再び帝具の目が開き透視能力が発動した、すると古城の壁がみるみる透けていった。

 

「なんだ?遠視も使えてる」

 

ただ壁が透けただけではない、透視と遠視が同時に使用ができたのであった。

 

 

へへ、驚いたぜ二つの能力を同時に使えるとは、俺のドスケベパワーたいしたものだぜ・・・けどこれすげえ疲れる、早く子供見つけないと・・・

 

 

イエヤスは神経を研ぎ澄まして古城をくまなく見た、すると大勢の子供が監禁されている部屋を見つけた。

 

 

 

「いた!!最上階に集められている」

 

「他の部屋にいないか?」

 

「ああ、他の部屋にいない」

 

 

イエヤスは報告を終えると体力を使い果たし座り込んでしまった。

 

 

「ご苦労だったな、後は任せろ」

 

 

疲れはてて座り込んだイエヤスはどこか誇らしげであった、ほとんどミラージェンの全裸を見ていただけなのだが・・・

 

 

 

 

「よし子供達の救出に向かうぞ」

 

 

ジャドはカグラのハヤテ丸の背中に乗って古城の最上階に到着した、子供達を閉じ込めている部屋の前には見張りが立っているがジャドは針を飛ばす暗器を使い首を貫いて仕留めた、ドアを開けると20人ほどの子供が監禁されていた、その中に出資者の息子もいた、ジャドはその子供の元へ駆け寄った。

 

 

 

「おじさん誰!?」

 

子供はジャドの顔を見て怖がった、ジャドは少し落ち込んだが気を取り直した。

 

「・・・俺はお前達を助けに来た者だ」

 

「本当?早くここからだして!!」

 

子供達は泣き叫んだ、ジャドは子供達をなぐさめることをせず精神を集中している、するとジャドの足元の影が広がっていく、ジャドの臣具は影を媒介にして異空間を造り出すことができるブーツの臣具である。

 

 

 

「早くこの中に入れ」

 

 

「ねえ、ここに入って大丈夫?」

 

子供達は影の中に入ることにとても不安がってなかなか入ろうとしない。

 

「大丈夫だ早く入れ時間がない!!」

 

子供達は覚悟を決めて影の中に入っていく、全員が入り終わったら屋上目掛けて全速力で駆け抜けていく、屋上に到達すると上空に待機していたカグラと合流した。

 

 

 

「よし、全力で飛ばせ」

 

「りょーかーい!!」

 

 

ハヤテ丸はジャドを載せて飛び去っていく、ナジェンダはジャドが脱出したのを確認すると作戦の第二段階へ移行した。

 

 

 

 

「子供達は救出できた、これより誘拐団の奴らを殲滅する、一人も逃がすな、皆殺しにしろ!!」

 

 

子供を食い物にする外道達に報いを与えるべくナイトレイドは行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も文章がかなり稚拙になってしまいました、他の作品を読んで勉強しているのですが全然うまくなりません、こんな作品ですがこれからも応援お願いします。


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第七十五話

   誘拐団を斬る(後編)

 

 

古城のアジトから少し離れたところに見張りの男が立っている、その男に何かが近づいていく、男がそれに気がついた瞬間男の首がねじ曲げられていた。

 

 

「一丁上がり」

 

 

レオーネが力任せに首をねじ曲げたのである。

 

 

 

別のところでは二人の男が見張りをしていた、二人とも真面目に見張りをせず居眠りをしていた、そのうちの一人が目を覚まそうとしていた、だがその瞬間二人の首が何かに斬りつけられ血しぶきが飛び散った。

 

 

 

「片付いたわ」

 

サヨが村雨で斬りつけたのである。

 

 

見張りを片付けて古城を包囲することができた、そしてナジェンダは皆に突撃を命じた。

 

 

「誘拐団の奴らを一人も逃がすな、全員殺せ!!」

 

 

ナジェンダの命令により古城に突入し誘拐団を次々と仕留めていく、寝込みをつかれてパニックになりバラバラに逃げ出す誘拐団、ナジェンダは冷静に次の手を打っていた。

 

 

 

「ケビン、どうだ?」

 

「はい、三人北に、四人南に、五人西に逃げました」

 

ケビンは空中から監視をしている、ケビンの臣具は空を飛行できる能力を持っている(形状は飛行ドローンをイメージしてください)

 

 

「そうか、だが手は打ってある」

 

ナジェンダは人員を配置していたのである。

 

 

 

北へ逃げ出した三人は必死に逃げている、すると三人の前にグレイグが現れた。

 

 

「クソッ!!」

 

 

三人は武器を手にしグレイグに向かって行った、グレイグはなぎなたの臣具でぶった切った、真っ二つになり地面に伏した、残りの二人は恐れをなして命ごいをした。

 

 

「助けてくれ!!俺達はこないだ入ったばかりなんだ、だから・・・」

 

「こないだ?そんなの関係ないな、てめえらはここで死ね」

 

グレイグは虫のいい命ごいを無視して二人をぶった切ったのであった。

 

 

 

 

 

 

その頃南に逃げた四人の前にライドウが阻んでいた、ライドウはなぎなたを振りかざしまず一人をぶった切った、続いてもう一人を貫いた、残った二人は血相を変えて逃げ出した。

 

 

「逃がさん!!」

 

ライドウはなぎなたを構えて念じた、するとなぎなたの刃が伸びて逃げ出した二人を貫いた、ライドウの臣具は刃が伸縮自在にできるなぎなたである。(トリシュラの試作型と思ってください)

 

 

 

 

さらに西ではすでに戦いが開始されていた、インファンが鎖がまの臣具を使用し一人を捕獲していた。

 

 

「逃がさないわよ」

 

「た、助けてくれ!!」

 

「それはダメよ、アナタもこうなる覚悟で誘拐団に入ったんでしょ?」

 

「そんな覚悟ねえよ、楽に金が稼げると聞いて入ったんだからな!!」

 

インファンは見苦しい言い訳を言った男の首を無言で切り裂いた。

 

 

「本当にダメ男ね」

 

インファンはやれやれのポーズをして鎖を外した。

 

 

残りの四人は全力で走り抜けようとしていた、すると突然大木が四人の行く手をふさいだ。

 

 

「なんだ!?なぜ大木が!?」

 

 

大木を倒したのは工兵チームのガルスであった、ガルスの臣具は丸ノコの臣具で三つのパーツを状況に応じて換装することができるのである。

 

 

「くそ、やられてたまるか!!」

 

男達は武器を構えた、だが突然男達は空中に浮かび上がった、正確には持っている武器が浮かんだのである。

 

「なんだ!?どうなっている!?」

 

 

パニックを起こしてうろたえる男達、あわてて武器を手から離し地面に落ちていく、武器はそのまま空中に浮かんでいる、これは工兵チームのギジェの大型の磁石の臣具の能力である。

 

 

落ちた男達は別の方角へ逃げだそうとした、だが逃げ道にロープが張られて逃げられない、これはマクレーンのロープの臣具である、男達は別の逃げ道を探そうとした、だがその時男達目掛けて火炎が放出された、火だるまになり苦しむ男達、やがて力尽き倒れていった、グラールのガスバーナーの臣具の力である。

 

 

 

 

一方その頃上空ではカグラがハヤテ丸の脚で男を掴んでいた、男は必死に命ごいをしている。

 

 

「た、助けてくれ!!」

 

「だーめ、そんなことしたら面白くないし」

 

 

カグラはニッコリ微笑んで男を鋭くとがった木に目掛けて投げつけた、男は木に背中から串刺しになった、まさにモズのはやにえそのものだった、血を吐き苦しみながら男はいきたえた。

 

 

「やっぱり串刺しは何度やっても面白い!」

 

カグラは無邪気で残酷な笑みを浮かべた。

 

 

 

一方その頃古城の方では誘拐団は形勢逆転を狙うべく大砲を出してきた。

 

 

「撃て!!」

 

轟音とともに大砲の弾が打ち出された、飛んで来る弾の前にトレイルが前に出た、トレイルは両手を前に構える、するとトレイルが装備しているこてから電気が放出されバリアが展開された、バリアに弾が直撃し爆発が起こった、トレイルには傷一つなかった、トレイルの臣具はバリアを発生させることができるこてである。

 

 

ミラージェンは呆然としている誘拐団達を次々と狙撃して仕留めていった。

 

 

「大方始末できたな」

 

「はい、逃げた連中も始末できたようです、おや!?ちょっと待ってください西から別の集団がやって来ます」

 

 

「誘拐団の別働隊かもしれん、皆警戒しろ」

 

 

ナジェンダの指示で警戒体制に入った、するとラバが報告した集団が現れた。

 

「!?」

 

ラバはその中の一人を見て驚愕した、その男に見覚えがあったからである。

 

「お前俺の顔を見て驚いたな、俺の顔に見覚えがあるようだな?」

 

 

見覚えがあるも何もかつてラバが仕留めた異民族の男にそっくりだからである。

 

 

かつて帝都で女性の誘拐事件があった、ナイトレイドにその誘拐犯の始末をしてくれという依頼があったのである、その犯人は帝国に恨みのある異民族の仕業であった、ナイトレイドはその異民族を全員始末したのであった。

 

 

「俺の兄貴を殺したのはてめえか!?」

 

男は憎悪に満ちた目でラバを睨んだ。 

 

 

・・・兄貴か、道理でうり二つだと思った、歪んだ性格もうり二つだろうな。

 

 

 

「それよりもお前ら誘拐団の一味か?」

 

「一味じゃねえよ、あいつらはただの道具だ」

 

 

道具か、誘拐団の奴らも似たようなこと考えていたんだろうな、まあ言う必要ねえな・・・

 

 

「とにかく子供をさらったことには変わりねえんだ、ここで死んでもらうぜ」

 

「てめえにできるかな?やれるものならやってみろ!!」

 

 

異民族は自信満々であった、それほど強いとは思えないが・・・

 

 

「目に物を見せてやるぜ!!」

 

男が叫ぶと異民族の連中の体がみるみるうちに変色していった、そして鈍い音を鳴らしながら変身していった、その姿は昆虫そのものであった。

 

 

「な、なんだこりゃあ!?」

 

その場にいたラバ達全員が驚いた、人間が昆虫に変身するなんてまるで・・・

 

 

「まるでレオーネみたいですね」

 

シェーレは誰もが思ったことをあっさり言った。

 

「おい!!私をあんなのと一緒にするな!!」

 

レオーネにとっては不愉快の極みであった、あんなのと一緒にされたのだから・・・

 

 

「一体どういうネタなんだ?」

 

帝具を使ってるわけでもないのになぜ変身できたのであろう・・・

 

 

「ミセテヤルヨ」

 

男が手を上げると後ろから巨大な危険種が現れた、それはいかにも硬そうな甲殻で覆われていた、見たこともないおぞましい姿の危険種であった(この危険種はエイリアンクイーンの姿をイメージしてください)

 

 

「コノコダイキケンシュ「ニーグヘグ」ノチカラデオレタチハオオキナチカラヲテニイレタンダ」

 

誇らしげな異民族を見てラバはため息をついてあきれはてた。

 

 

「そのために人間を捨てるだなんていかれてるぜ」

 

 

「ダマレ!!テイコクヲホロボセルノナラヨロコンデヒトヲヤメルゾ!!」

 

 

「まあ、お前達がどんな姿になろうとも始末することには変わらねえがな」

 

 

「ヤッテミロ、オレタチノチカラミセツケテヤル」

 

 

異民族だった連中は殺気をみなぎらせ戦闘体制をとった、ナジェンダもそれを見て全員に指示を出す。

 

 

「皆最後の仕上げだ、この連中を始末して任務を完了させるぞ!!」

 

 

「了解!!」

 

ナイトレイドと昆虫人間の激闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は革命軍のメンバーの臣具がたくさん出てきました、みなさんはインファンとかグレイグ覚えていますか?多分覚えていないと思いますが、これからも応援お願いします。


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第七十六話

ナイトレイドvs昆虫人間のバトルです、ご覧あれ。


  古代危険種を斬る

 

 

「イクゼ!!」

 

サソリ男がスサノオに突撃していく、スサノオも槍を構えて迎え撃つ。

 

「来い!!」

 

サソリ男のハサミによる猛攻が行われた、スサノオは難なく全て防いだ。

 

 

「ヤルナ、ダガコレハドウダ?」

 

猛攻のさいの一瞬の隙をついてスサノオのノドにしっぽの毒バリを突き刺した。

 

「ドウダ、コノモウドクニハタエラレンダロ!?」

 

サソリ男はすっかりいい気になっていたが平然としているスサノオに焦りを出しはじめた。

 

 

「ナゼダ?ナゼナントモナイ!?」

 

「あいにくだったな、俺には毒はきかん」

 

「ハア!?ソンナバカナコトガ・・・」

 

サソリ男は目の前にいるスサノオが毒がきかない帝具人間であることなど想像もつかなかった。

 

 

「おおお!!」

 

スサノオは槍を振り上げてサソリ男の首を吹っ飛ばした、首がなくなった胴体から血が大量に吹き出している。

 

 

 

 

サヨはカブトムシ男と刃を交えていた、硬い外骨格の前にサヨの攻撃は全て防がれていた。

 

「硬いわね、カブトムシの姿は伊達ではないわね」

 

「ノンナヘナチョコナコウゲキオレニハキカンゾ!!」

 

 

カブトムシ男は自身の防御力に絶対の自信があった、現にサヨの攻撃は全く効いていない。

 

 

「・・・アカメなら切り裂くことができるかも知れないけど私じゃ無理ね、なら」

 

サヨはある箇所に狙いを定めて切りつけた、その箇所は腕の関節だった、関節の柔らかい部分になんとか傷をつけることができた。

 

 

「ソンナカスリキズナンテコトハ・・・ナンダ?」

 

傷口から呪毒が浮かび上がり心臓へ向かい出した、そして心臓へ到着すると呪毒は心臓の鼓動を止め息の根を止めた。

 

 

「ガハッ!!」

 

カブトムシ男は力尽き倒れた、だがサヨに笑顔はなかった。

 

「私にもっと力があれば、でも今は目の前の敵に集中しないと」

 

 

 

一方その頃カーコリッテはクワガタ男に臣具で攻撃を加えるも全然効いていなかった。

 

「ダメ、全然効いていない!!」

 

臣具バラクーダは連射に優れているが破壊力にかけるのである、するとそこにマインが加勢した。

 

 

「何てこずってるのよ、だらしないわね!」

 

「しょうがないでしょ、あいつすごく硬いんだから!」

 

「アタシがやるから下がってて」

 

 

そう言われてカーコはマインに任せて下がった、クワガタ男ニヤリと笑っている。

 

 

「ツギハチビチャンカ?オレニジュウハキカナイゼ!!」

 

 

「アンタ程度がいい気にならないでよ、かかって来なさい!」

 

 

「ヨユウブッテンジャネェ!!」

 

クワガタ男は高くジャンプして飛び掛かりマインを一刀両断するつもりでいた、自分自身の硬さに自信を持ちすっかりマインをナメていた、パンプキンにエネルギーがチャージしていく、そして強力な攻撃が放たれた。

 

 

 

ドウッ!!!

 

 

「ナッ!?コンナノフセ・・・ギャアアアア!!!」

 

予想をはるかに上回る威力にクワガタ男はなすすべなく蒸発していった。

 

 

「ピンチの時ほどアタシは強い、パンプキンを甘く見たわね」

 

 

「・・・やっぱり帝具はすごいわね、私のバラクーダじゃあんな真似できない」

 

「そうじゃないでしょ、アタシとパンプキンがすごいのよ」

 

マインの態度に苦笑いしつつもカーコは帝具をすごさを認識させられたのであった。

 

 

 

 

「チッ、ナンテカテエハサミダ」

 

カミキリムシ男は鉤爪でシェーレに猛攻を繰り出していた、シェーレはなんとかエクスタスで防御している、シェーレは猛攻が止まる一瞬の時を待っていた、そしてカミキリムシ男が疲れて一瞬攻撃が止まった。

 

 

 

「エクスタス!!」

 

シェーレはこの瞬間を待っていた、エクスタスの奥の手を使用し閃光で目をくらませた、目がくらんでいるうちにシェーレはカミキリムシ男を一刀両断した、身体は真っ二つになり地面に転がった。

 

 

 

「すいません」

 

シェーレは礼儀正しく深々と頭を下げた。

 

 

 

 

レオーネはフンコロガシ男と対峙していた。

 

 

「オレノカイリキデヒネリツブシテヤルヨ」

 

「たいした自信だな、かかってきな!!」

 

「アノヨデコウカイシナ!!」

 

フンコロガシ男は渾身の力でレオーネの顔面を殴った、フンコロガシ男はしてやったりの表情をしている、だが。

 

「このていどか?」

 

 

「バ、バカナ!!」

 

レオーネは顔面にまともにパンチをくらったがケロッとしている、フンコロガシ男は信じられなかった、自分の怪力が全く通用しないなんてありえなかったから。

 

「じゃあ次は私の番だ!!」

 

レオーネも渾身の力でフンコロガシ男をぶん殴った、フンコロガシ男の頭が木っ端みじんに粉砕された。

 

「虫けらごときが獅子に勝てると思ったか!!」

 

 

レオーネは勇ましく勝ち名乗りをあげた、その頃ブラートは古代危険種ニーグヘグと交戦していた、ブラートはノインテーターを振りかざし頭部にきりかかった、だが硬すぎて切り裂くことができなかった。

 

 

 

「こいつは硬えな、だが手はある」

 

ブラートは再度きりかかった、だが切り裂くことができない、ニーグヘグは口から溶解液を吐き出した、ブラートは素早くかわした、側にあった岩に溶解液が浴びせられた、たちまちに岩はどろどろに溶かされた。

 

 

 

 

「こいつはまともにくらえばやばいな、だがもう見切ったぜ!!」

 

 

ニーグヘグは溶解液を連射して吐き出した、ブラートは難なくかわしていく、そして再度ニーグヘグに切りつけた。

 

 

ズバッ!!

 

 

今度は脳天から真っ二つに切り裂くことができた、ブラートは同じ箇所を寸分狂わず切りつけていたのである。

 

 

ギャオオオオオ!!!

 

 

ニーグヘグは断末魔の雄叫びを叫びながら絶命していった。

 

 

 

「バ、バカナ、ニーグヘグガコンナニアッサリト・・・」

 

カマキリ男は呆然としていた、古代危険種ニーグヘグがこんなにあっさりやられるなんて夢にも思っていなかったから。

 

 

 

「残りはお前だけだぜ」

 

 

「ヨクモオレタチノヒガンヲ!!」

 

カマキリ男は憎悪の眼差しでラバを睨みつけた、恨みのある帝国を叩き潰す、それは兄や同胞の悲願であった、それが今潰えてしまった、その悔しさは言葉で現せなかった。

 

 

「帝国を恨む気持ちはわかるがお前らはやっちゃいけないことをやっちまった!!」

 

「ダマレ!!」

 

 

もう帝国に復讐することはかなわない、せめて兄の敵であるこいつだけは殺す、渾身の力で鎌をラバの胸に切り付けた。

 

 

 

「ドウダ!!」

 

カマキリ男はラバを仕留めたと思った、だがいつのまにかラバの胸に糸のようなものが巻付けられていた、それで鎌を防いだ。

 

 

「糸にはこんな使い方があるんだよ!」

 

「ナラバソノクビキリオトシテヤル!!」

 

ラバは即座に糸で槍を紡ぎカマキリ男の胸に投げつけ槍が直撃した。

 

 

「コ、コノテイドノキズ・・・」

 

「いいやもう終わっている、クローステールが胸に刺さった時点でお前の心臓へ糸は向かっている」

 

 

胸に刺さった槍は体内でほどけ心臓へ向かって行った、糸は心臓を包み込みバラバラに切り刻んだ。

 

「ガハッ!!」

 

カマキリ男は大量の吐血をしてそのままいきたえた、その表情は憎悪と無念で満ちあふれていた。

 

 

 

「俺達が帝国を打倒してやるから安心して地獄に行きな」

 

 

悪党の供養をするつもりはないがラバなりの後始末であった、こうして誘拐団は壊滅したのであった。

 

 

 

 

 

古城から離れた所に子供を抱えて逃げている男がいた、ナイトレイドがアジトを襲撃しているときにちょうど子供をさらいに行っていたのである、アジトが襲われているのを確認すると反転して逃げ出したのである。

 

 

「なんてことだアジトが潰されるとは・・・これからどうすれば」

 

男が苦慮していると上空から翼を持った男性が降りてきた、それはランであった、男は突然のことに思考が停止した。

 

 

 

「誘拐団の一味ですね?」

 

男はその男性に見覚えがあった、確かイエーガーズの一員だったはずである、男は恐怖に駆られ取り乱してしまった。

 

 

 

「なあ、金やるから見逃してくれ!!」

 

「は?」

 

「ガキ一人くらいいいじゃねえか、それで金手に入るんなら・・・ぐはっ!!」

 

 

ランは男の顔面を力いっぱい殴りつけていた、男の口から折れた歯が飛び散った、男は痛みのあまりのたうちまわっている。

 

 

「そんな申し出私が受けると思っているのですか?」

 

 

この時のランはいつもの冷静さはなかった、怒りで我を忘れているようにも見えた。

 

 

「た、たひゅけ・・・」

 

男の命ごいを聞いてランは我に返り冷静さを取り戻した。

 

 

「私としたことが・・・いけませんね冷静にならないと」

 

 

ランは自分を戒め男を逮捕して子供を保護して帝都へ戻ったのであった。

 

 

 

 

数時間後誘拐団の古城のアジトに数人の人影があった、それはイエーガーズの一員スタイリッシュであった。

 

 

「夜の散歩に出かけてみるものね、おかげで面白いものを見つけることができたわ」

 

スタイリッシュはニーグヘグの死骸を見てご満悦であった。

 

 

 

「さすがのアタシもこの危険種は見たことないわ、じっくり研究してあげるわ」

 

スタイリッシュは強化兵に死骸を持っていくよう指示を与えた。

 

 

「さてどんな発見が見つかるかしらね、楽しみだわ」

 

 

辺り一面にスタイリッシュの高笑いが鳴り響いた、後にあのような発明が世に現れるとは誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




スタイリッシュが久々に登場しました、十八話以来ですから八ヶ月ぶりです、ずいぶん月日が経ちました、これからも応援お願いします。


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第七十七話

今回は久しぶりにあのキャラが登場します。


   秘境を斬る(前編)

 

 

 

8月28日

 

 

私達は今西南にある密林地帯に来ている、なぜ密林にいるかというと総大将を目覚めさせる秘薬を確保するためである、その秘薬とは百年に一度に生えるキノコである、あらゆる病に効くとの伝説があるキノコである、革命軍のメンバーも多数参加している、革命軍の今後のためにも失敗は許されないのである。

 

 

 

「それにしてもすごい密林ね」

 

「そりゃそうやろ、この帝国内で最大のジャングル地帯やからな」

 

「そんなところに来てシヴァ大丈夫?」

 

「危険があってもそのキノコウチでないと回収でけへんのやからしゃあないで」

 

 

伝説のキノコ・・・扱いがとってもデリケートなのね、私達がきっちり護衛しないと。

 

 

「・・・」

 

サヨの後ろにいる革命軍の軍服を着た女性が何かを言いたそうである、サヨ達はその女性を知っていた、彼女の名前は・・・

 

 

 

 

「なんで私こんなところにいるの!?」

 

 

彼女は涙目で絶叫した、彼女はチホシ、セリューに殺されそうになっていたところをカグラが助けたのである。

 

 

「今更何言っとるんや?」

 

「だって私雑用として革命軍に入ったのになんでこんなところに来なくちゃいけないの!?」

 

 

雑用は比較的安全と聞いたから入ったのに話が違う。

 

「しゃあないやろ、あんた臣具使いになったんやから」

 

「そ、それはそうだけど・・・」

 

「こっちの方が稼ぎええで」

 

「あああ!!わかったわよ、こうなったら開き直ってやってやるわよ!!」

 

「そうや、人生開き直りが肝心やで」

 

チホシ・・・ほとんどやけになってるわね、気持ちわかるけど。

 

 

「ところであなたの臣具って何?」

 

「うん、これだけど」

 

 

チホシが見せたものは人間の腕くらいの大きさのある魚であった、ただしとてもグロテスクな魚であった、その魚は全身真っ黒でうろこはなくしたあごは空洞であった。(この魚はオオクチホシエソをイメージしてください)

 

 

「うわっ!何このグロテスクな魚!?」

 

「・・・はっきり言わないでよ」

 

 

デリカシーのないイエヤスの言葉にチホシはへこんでいた。

 

「イエヤス少しは気を配りなさい、はっきりとグロテスクと言ったら悪いでしょう」

 

「お前も人のこと言えないだろ」

 

「・・・気にしないで本当のことだから」

 

サヨは気まずい雰囲気を変えるべく話題を変えようとした。

 

 

「ところでその臣具どんな性能なの?」

 

「うん、今見せるから」

 

チホシは臣具の魚のお尻の穴に左腕を突っ込ませた、そのまま左腕に魚を装着させたのであった。

 

 

「・・・」

 

サヨ達は微妙な表情で何も語ることができなかった、けっこうシュールだったから。

 

 

「格好悪いとはっきり言ったら」

 

「そ、そんなことないわよ、ねぇイエヤス」

 

「お、おう、なかなかシュールだぜ」

 

「イエヤスそれ褒めてないから!」

 

「無理して合わせることないから」

 

 

チホシはそう言ってくれたけど内心気にしてるわね、悪いことしちゃった。

 

 

「それどんな能力持ってんだ?見せてくれよ」

 

「わかった」

 

 

チホシが念じると口の上にある白い部分からまばゆい閃光が発した、それは強力な照明だった。

 

 

「それ照明の能力持ってんだ」

 

「うん、だけどもう一つ能力あるのよ」

 

チホシは再び念じた、だが何も起こらない。

 

「何も起こらなかったけど」

 

「ちょっと待って」

 

 

チホシは突然魚の目をくり抜きくり抜いた目をサヨに渡した。

 

 

「ち、ちょっと・・・」

 

 

突然目を渡されてサヨは困惑した、だがチホシは真面目な顔で。

 

 

「その目を通して見て」

 

サヨはわけがわからず言う通りにした、するとその目を通した光景には魚が赤い光を発していたのである、サヨは目を通さずに見てみると赤い光は見えなかった。

 

 

「これどうなっているの?」

 

「赤い光見えたでしょう?」

 

 

「うん」

 

「この赤い光人間には見えないのよ、ガウシアの目を通せば見えるのよ」

 

「ガウシア?」

 

「この臣具の名前なの」

 

「へえーなかなか面白い能力だな」

 

 

イエヤスが面白がっているとガウシアのくり抜いた目が一瞬で再生して元に戻った。

 

 

「こ、これって?」

 

この再生能力まさか・・・

 

 

「このガウシアは生物型臣具なの」

 

生物型!?スーさんやコロやアジトを襲った変態と同じ、でも・・・

 

 

「この臣具は腕に装着しないと動かないのよ」

 

 

自動じゃないんだ、臣具って思ったよりも深いわね。

 

 

「ねえチホシガウシアお披露目してるの?」

 

「そうだけど」

 

「ボクのもお披露目したいんだけど」

 

「好きにしたら」

 

 

突然ショートカットの女の子が割り込んできた、彼女はどこかで会ったことがあるような・・・

 

 

「あなたどこかで会ったっけ」

 

「さあ」

 

「あなたの名前は?」

 

「ボクの名前はキャスカだよ」(キャスカはアカメが斬る零第4話でガイに殺されたモブ娘です)

 

 

「キャスカ・・・そうだ!確か本部でチホシがキャスカって呼んでたわね」

 

「まあその話は後にしてボクの臣具見せてあげるよ」

 

 

この人結構せっかちね、まあいいかな、それにしてもこの人の臣具どんなんだろう。

 

 

「これ」

 

「これってもしかして生物型?」

 

「当たり」

 

 

当たりって言ったけどこの人の臣具も魚だし、チホシには悪いけどグロテスクではないわね、ただはらびれがすごく長いわね、目はものすごく小さいし。(この魚はナガヅエエノをイメージしてください)

 

 

「この子の名前はテロイス、この長いはらびれで数キロ先の生き物の察知できるんだよ」

 

「察知?」

 

「うん、見てて」

 

キャスカはチホシと同じように左腕に魚を装着した、すると無数のはらびれがゆらゆら揺れ始めた。

 

 

「かなり距離があるけどかなりの人数がこっちに近づいてきてるよ」

 

「えっ!?」

 

 

一体何者なのかな?まあ目的は何となく予想できるけど・・・きっと例のキノコに違いない。

 

 

「少し急ごうか?」

 

「そうね」

 

 

私達は少し急ぐことにした、しばらくすると同行していた女の子が息切れをし始めた。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい」

 

見た限りではかなりきつそうに見えるが足を引っ張りたくないので必死なのであろう、それにしてもこの子初めて見るわね、革命軍の軍服とか着ていないから不思議に思ってなかったけど。

 

 

(この少女はアカメが斬るアニメ第三話に出てきた難民の少女です)

 

 

「どうしました?」

 

「あなたの着ている服が気になって」

 

「私の服変ですか?」

 

「そういう意味じゃないわ、革命軍の軍服じゃなかった気になったということだから、あなたの服とてもオシャレよ」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

服を褒められて照れて赤くなっている、かわいいわね、まあ実際この子の服は濃い青紫のミニスカート、同じ色の半袖のえり付きのシャツ、えり元には水色のリボン、私から見たらすごくオシャレに見える。

 

 

「ねえ、この子なんでこんな秘境に連れて来たの?危ないでしょ」

 

 

どう見ても強いとは思えない、11、12歳くらいの普通の女の子である、この子にどんな秘密が?

 

 

「この水飲んでみい」

 

「この水は?」

 

「とりあえず飲んだらわかる」

 

シヴァに言われて私達は差し出された水を飲んでみた、すると・・・

 

 

「この水すごくおいしい」

 

「本当だ、すげえうめえ!」

 

こんなにおいしい水飲んだことがない、でもこの子と何の関係が?

 

 

「この水そこのジェリーが造り出したんやで、ジェリーは無から水を造り出せる臣具使いなんやで」

 

 

「そうなの!?まあ無から氷を造り出せる帝具があるんだから水を造り出せる臣具があっても不思議じゃないわね」

 

「そういうことや」

 

「なあ、もっとくれよ」

 

「は、はい」

 

イエヤスはジェリーにコップを渡した、ジェリーはコップに意識を集中させている、そしてジェリーは口から水を出したのであった、イエヤスはその光景を見て吹き出した。

 

「きたねえじゃねえか!!なんてもん飲ませんだ!!」

 

イエヤスの憤慨にジェリーは怖がり目をウルウルさせた。

 

 

「何泣かせとるんやひどい奴やな」

 

「だけどよ・・・」

 

 

ボガン!!

 

 

「何やってるのよ!!本当あなたデリカシーないわね!!」

 

「ワリイ・・・」

 

サヨの鉄拳が炸裂してイエヤスは謝った、ジェリーはまだ目をウルウルさせている。

 

 

「ゴメンね、このばかがデリカシーのないこと言って」

 

「いいえ気にしないでください、本当のことですから」

 

 

涙目のままニッコリ微笑んでくれた、すごくいい子だ・・・私も心の中で少しだけ汚いと思ってしまった、心が痛い!!

 

 

 

「けどよなんでこの子をここに連れて来たんだ?」

 

「それはジャングルの水は地元の人間以外が飲むと水当たりすることがあるんや、だから連れて来たんや」

 

「確かに、水はすごく大事だからね、それを考えればこの子の能力すごく大事ね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

ジェリーはサヨに褒められて照れて赤くなっている、サヨはジェリーをかわいいと思った。

 

 

 

「サヨさん達盛り上がっているね」

 

「ジェリーの能力を目の当たりにしてビックリしたんでしょう」

 

「ジェリーのお水美味しいんだけどね・・・」

 

 

サヨ達の少し後ろにファル、ルナ、エアが歩いている、ラバとスサノオがエア達を守るように歩いている。

 

 

「エアちゃん達大丈夫?」

 

「は、はい」

 

「あまり無理するなよ、俺達のペースに無理して合わせることはないのだからな」

 

「大丈夫だよスーさん、私達これでも少したくましくなったんだから」

 

「エアはずいぶん張り切っていました、久しぶりにラバさんに会えるので」

 

「何か言った?」

 

「な、何でもありません!!ルナ余計なこと言わないで!!」

 

「とにかく私達はまだ大丈夫ですから」

 

「わかった無理するなよ」

 

 

赤くなったエアを見てファルとルナはかわいいと心の中で思ったのである、そのエア達を後ろから見ている者達がいる、その二人はメイド服を着ていた、ジャングルにメイド服の女子とは何ともシュールであった。

 

 

「まったくあいつらのんきだね」

 

「まあ今はいいんじゃないですか、じきにここは修羅場になるんですから」

 

 

このメイド服の女子達はギルベルダとカサンドラである、かつて二人は暗殺結社オールベルグの殺し屋だったがオールベルグが壊滅して帝国に一矢報いるために革命軍にいるのである、ちなみに二人は革命軍の理念にまったく賛同していない。

 

 

 

「それにしてもなんでアタシ達こんなところに来てるんだ?」

 

「それはエヴァさんの命令ですから」

 

「それはわかってるよ、なんでアタシ達があいつの命令に従わないといけないんだ?」

 

「気持ちはわかります、だけど今の私達は・・・」

 

「みなまで言うなわかってるよ、今のアタシ達じゃ帝国に一泡吹かせることはできないんだからな」

 

「ではさっさと仕事を終わらせましょう」

 

「ああ」

 

 

二人はミジメでならなかった、オールベルグにいた頃は命の危険は日常茶飯事であったがやり甲斐はあった、あの頃はメラルド・オールベルグが健在だった、彼女のためならどんな過酷な任務もこなすことができた、だが彼女がいない今はとにかく虚しさを感じずにはいられなかった、それでも帝国に一矢を報いるべく革命軍の仕事をこなさなくてはならないのであった、こうして様々な想いを抱いて一行は進むのであった。

 

 

 

今回の参加メンバー

 

 

ブラート レオーネ ラバック シェーレ サヨ イエヤス スサノオ エア ルナ ファル 

 

シヴァ カーコリッテ ガザム レッド サン サイード ギルベルダ カサンドラ

 

キャスカ チホシ ジェリー バァド マムシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりに三人娘が登場しました、この三人の帝具の能力覚えていますか?次回で少し活躍します、これからも応援お願いします。


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第七十八話

   秘境を斬る(中編)

 

 

サヨ達が秘境にいる頃帝都では賊の活動が再度活発になりつつあった、それを阻止すべくイェーガーズのセリューが奮戦していたのであった。

 

 

「正義執行!!」

 

 

セリューはドリルで賊を次々とミンチにしていった、そしてコロがそのミンチを次々とたいらげていく、セリューの前に賊はなすすべがなかった、その光景を不機嫌に見つめている者がいる、それはスタイリッシュである。

 

 

 

「・・・セリュー一人で片がついたわね・・・アタシ必要なかったじゃない、こんなことならさっさと出発したらよかった」

 

 

 

 

 

数日前

 

 

スタイリッシュは手下の強化兵数人とともにある場所へ出発しようとしていた、それは・・・

 

 

「百年に一度だけ生える幻のキノコ全部アタシ達がいただくわよ!」

 

「はい、スタイリッシュ様!!」

 

「じゃあ出発!!」

 

勇ましく出発しようとしているスタイリッシュの肩を何者かが掴んだ、それはセリューであった。

 

 

「どこへ行くつもりですか?ドクター」

 

「え?ちょっと西南の秘境へキノコ狩りに」

 

「何のんきなことを言ってるんですか!!今賊の活動が活発になっているのですよ!!」

 

セリューはスタイリッシュの背広の後ろの襟首を掴んで賊討伐へ出発しようとしていた。

 

 

「ま、待ってよ、そのキノコ百年に一度しか生えないのよ、これを逃したら・・・」

 

「百年も千年も関係ありません、たまにはイェーガーズとして仕事してください!!」

 

「あああ!!アタシのキノコー!!」

 

 

 

 

 

「まあとにかくこれでキノコ狩りに出発できるわね、急がないと」

 

すると再びセリューはスタイリッシュの肩を掴んで止めたのであった。

 

「な、何?」

 

「どこへ行くつもりですかドクター?」

 

「だって討伐終わったんだしキノコ狩りへ・・・」

 

「何言ってるんですか、事後処理の書類のまとめとか山ほどあるんですよ、ドクターはそっちの方が専門でしょ!?」

 

「キ、キノコ狩りから帰ったらいくらでもやるわよ・・・」

 

「今やらずしていつやるのですか!?」

 

「あああー!!アタシのキノコー!!」

 

 

スタイリッシュはこの娘はばかで素直だけど融通がまったくきかない堅物だったことを心の底から思い知ったのであった。

 

 

 

 

 

その頃サヨ達はキノコを目指して歩いていた、周りは似たような景色ばかりで方向オンチでなくても迷いかねない。

 

 

「キノコの場所まだ?」

 

「そろそろのはずやけど、バァド頼むわ」

 

「ああ」

 

バァドは懐からホイッスルを取り出し辺り一面に鳴り響かせた、すると大量の鳥がバァドに集まってきた、バァドの臣具は鳥を操る臣具である、バァドは鳥の声に耳を傾けている、すると。

 

 

「こっちの方角に洞窟みたいなのがある」

 

「それや、みんな行くで」

 

「なんで分かるの?」

 

「バァドは鳥の声を理解できるんや、いっとくけどこれはバァド自身の能力やで」

 

「鳥と会話できるなんてすごいわね」

 

「そやな」

 

一行はバァドが指さした方角へ向かった。

 

(バァドはアカメが斬るアニメ第四話に出てきたアジトの近くにやってきた密偵です)

 

 

サヨ達がしばらく歩いているとキャスカの臣具に大きな反応があった。

 

「こっちに大きな生物が複数近づいて来ているよ、どうするのシヴァ」

 

「そやな・・・ギルベルダ、カサンドラ頼むわ」

 

「なんでアタシ達が?」

 

「この時のために連れて来たんや、あんたらもキノコ狩りよりも危険種狩りの方がええやろ」

 

「そりゃそうだけど・・・」

 

「じゃあ頼むで」

 

 

一行は二人を残して先を進んで行った、ギルベルダはムッとしている。

 

「まったくなんでアタシが・・・」

 

「でもギルにキノコ狩り無理だと思いますよ」

 

「それってアタシがガサツって言いたいのか?」

 

「違うんですか?」

 

「まあ、違わなくはないけど・・・」

 

「無駄話はここまでです、来ましたよ」

 

 

特級危険種トリケプスの群れが二人に突っ込んできた、ギルベルダは慌てることなく右腕をブンブン振り回している、そして先頭のトリケプスに殴りにかかった。

 

 

ボンッ!!

 

 

殴られたトリケプスの頭部は木っ端みじんに砕かれた、だがギルベルダは浮かない顔をしている。

 

 

「チッ、こんなものに頼らないといけないとは・・・」

 

ギルベルダの右手にはナックルが装備されていた、これはナックルの臣具で腕を回せば回すほど威力が上がるのである。

 

 

「ギル油断大敵ですよ」

 

二匹目のトリケプスがギルベルダに向かって突進していく、カサンドラは懐から何かを取り出した、何を取り出したのかは見えていない、そして見えない何かをトリケプスに投げつけた、トリケプスは一瞬でずたずたに切り裂かれた、カサンドラが投げつけたのは透明のチャクラムの臣具であった、扱うには優れた聴覚が必須である。

 

 

「やはりお前も前ほどのキレないな」

 

「仕方ありません私達には以前のような力はないんですから」

 

「わかってるよ、蘇生の代償だからな」

 

 

二人は思い出していたあの時を・・・

 

 

 

回想

 

 

「蘇生虫?」

 

「ええ、虫を交配させていたら偶然誕生したの」

 

「それは命を落としても生き返れるということなのですか?」

 

「ええ」

 

「すごいじゃないですか、それがあれば無敵ですよ!!」

 

「そう都合よくいかないわ、この蘇生虫による蘇生の確率はすごく低いの、仮に蘇生できても大幅に力が落ちてしまうわ」

 

「そうなんですか・・・」

 

「現にババラとタエコにもこの蘇生虫持たせたんだけど蘇生できなかったわ」

 

「世の中甘くないということです」

 

「でも一応みんなにこの虫渡しておくわ、今回の仕事過酷なものになると思うから」

 

「帝国の暗殺部隊ですね」

 

「お二人でも倒せなかった暗殺部隊・・・容易に倒せる相手ではありませんね」

 

「それでも引き下がるわけにはいかないわ、オールベルグの信用問題に関わるから」

 

「大丈夫ですよアタシ達とメラ様なら敵はいません」

 

「ふふ、頼もしいわね」

 

「任務を果たしてまたお茶会開きましょう」

 

 

 

 

 

「・・・あの時は絶対大丈夫だと思っていた、けど、けど・・・」

 

「はい、まさかあんなことになるとは・・・」

 

 

 

 

回想2

 

 

 

「メラ様!?メラ様ー!!」

 

「メラ様?ひどい傷、このままでは」

 

「くそ!!メラ様を死なせてたまるか!!」

 

「待ってください、手当は私が」

 

「早くしてくれ!!」

 

 

「・・・」

 

「おい、どうした?大丈夫何だろ!?」

 

「血が止まりません、ダニエルさんと同じです」

 

「どういうことだよ!?」

 

「これは未知の毒です、私ではどうにも・・・」

 

「そんな・・・何とかしろよ!!」

 

「すみません・・・」

 

「てめえ!!」

 

 

「・・・やめなさい」

 

「メラ様!?」

 

「メラ様、あの・・・」

 

「あなた達が無事でよかった・・・」

 

「いえ、アタシ達も一度死にました、けどメラ様から譲り受けた蘇生虫のおかげで・・・」

 

「そう、私も致命傷を受けて絶命したはずだけど蘇生したのね、でも私はすぐに死ぬわ」

 

「そ、そんなことは・・・」

 

「わかってるはずよこの傷は治癒できないわ」

 

「・・・」

 

「ごめんなさいメラ様、アタシが余計なことを言ったばかりにメラ様やみんなが・・・」

 

「気にしないで最終的な決断をしたのは私よ、だからこの事態を招いたのは私の責任よ」

 

「そ、そんな、そんなことは・・・」

 

「ギルそのくらいにしてください、メラ様の時間をこれ以上無駄にはできません」

 

「な、何言ってるんだよ?」

 

「メラ様の残された時間を無駄にするわけにはいけないんです」

 

「そ、そんなわけ、そんなわけが・・・メラ様が死ぬなんて」

 

「私だって受け入れたくありません、でも・・・」

 

「アタシはあきらめないぞ!!きっと何か手が・・・」

 

「無理よ、こればかりはどうにもならないわ」

 

 

「い、嫌だメラ様とお別れなんて!!」

 

「本当にごめんなさい」

 

「うわああああ!!」

 

 

「ドラ、後のことはあらかじめ言っておいた通りに」

 

「はい」

 

「後アカメちゃんのことだけど・・・」

 

「アカメの野郎をぶっ殺すんですね、あいつはアタシがひき肉にしてやります」

 

「そうじゃないの、アカメちゃんのこと恨まないで欲しいの」

 

「な、なんで!?あいつはメラ様を!!」

 

「私達の世界は殺し殺されで成り立っているでしょ、アカメちゃんは自分の意思を貫いただけだから」

 

「そ、それはそうですが・・・」

 

「納得してとは言わないわ、でも理解はしてちょうだい」

 

「は、はい (いくらメラ様のお願いでもこればかりは・・・)」

 

「後生き残った娘を見つけたら速やかに保護して」

 

「わかりました・・・」

 

「・・・もう時間がないみたいね、名残惜しいけど仕方ないわ」

 

「い、嫌です、アタシメラ様とさよならなんて嫌です!!」

 

「ギル!!これ以上メラ様を困らせないでください!!」

 

「何だと!?お前メラ様とさよならになってもいいのかよ!!」

 

「そんなわけあるわけありません!!そんなわけ・・・」

 

「わ、わりい、お前も悲しいに決まってるんだからな・・・」

 

「いえ・・・」

 

「ありがとうギル、ドラ、最後にあなた達に会えて本当によかった・・・」

 

「メラ様・・・」

 

「メラ様・・・」

 

「最後にお別れの口づけをして・・・」

 

「はい・・・」

 

「喜んで」

 

 

 

 

「ありがとう、あなた達私の分まで生き抜いてね、どれだけ過酷な道でも」

 

「はい!!」

 

「ありがとうございました!!」

 

 

 

さようなら、私の愛おしい娘達・・・

 

 

 

 

「メラ様!?メラ様!!うわああああ!!」

 

「うっ、うっ、うっ・・・」

 

 

 

「・・・これからどうする?」

 

「メラ様を弔った後は・・・まず生き残った人達を探します、それからは・・・わかりません」

 

「そうだな、わからないな」

 

「アカメはどうするのです?」

 

「アタシだってアカメを殺したいさ、けどメラ様の最後のお願いもあるし、わからないよ!!」

 

「そうですね、とりあえず失った力を少しずつ蓄えていきましょう、無力なままでは何もできません」

 

「そうだな、まずはそうしょうか・・・」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから必死に力を蓄えていったけどまだまだだな」

 

「仕方ありません、ベストを尽くすしかありません」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

正直自分達の選択が正しいのかわからない、ただメラ様とオールベルグを奪った帝国だけは許さない、ただ帝国を潰してもこの心の渇きは消えることはないだろう、それでも今はがむしゃらに戦うしかないのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 




今回はギルベルダとカサンドラが主役の回でした、大半がセリフの文になってしまいました、小説の文がとても下手なので試しにセリフのみにしてみました、どっちの方がましでしょうか、ちなみにメラルドの声はアニメHOLICのいちはらゆうこをイメージしてください、これからも応援お願いします。


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第七十九話

今回はエアとカーコが活躍します、ご覧ください。


   秘境を斬る(後編)

 

 

私達は幻のキノコが生えている洞窟へ急いでいた、先頭を走るのはガザムさんである、彼はバン族の生き残りである、確かバン族の街はここからそう遠くに離れていなかったような。

 

 

「急げ、キノコが生えている洞窟はもうすぐだ」

 

「やっぱり知っているんですね」

 

「ああ、かつてはこの辺りまで狩りに来たものだ」

 

 

口には出さないがやはり寂しそうな雰囲気を感じる、無理もない滅んだ故郷のことを考えれば・・・

 

 

そうしている間に後ろから殺気を感じた、後ろを振り向くとそこには特級危険種デスジャッカルの群れがいた、この危険種は群れで連携して獲物を襲うのである。

 

「かなりの数ねまともに戦えばてこずりそうね」

 

ざっと見たところ40を超えていた、決して楽に勝てないだろう、するとその時。

 

 

「先に行ってください、私達が何とかします」

 

 

名乗り出たのはエアであった、正直驚いたこの娘は積極的に名乗り出るタイプと思っていなかったから。

 

 

「大丈夫なの?」

 

「はい、あの危険種なら多分大丈夫です、それにラバさんとスサノオさんもいますから」

 

「じゃあ先に行くね、ラバ、スーさん三人を守ってね」

 

「ああ」

 

「わかった」

 

私達はエア達をそこに残して先を急ぐことにした、とても心配だけどエアの真剣な目を見て反対するわけにはいかないと思ったからである。

 

 

「大丈夫かい?」

 

「はい、あの危険種は私達の帝具で操れます、確認済みですから」

 

「その帝具危険種も操れるんだ」

 

「操れるといっても13種類だけです」

 

ルナはかばんからノートを取り出し操れる危険種を確認した。

 

「それでもすごいよ人間と危険種両方操れるんだから」

 

ラバはこの腕輪の帝具リフレクターの脅威を誰よりも知っていた、ラバ自身もかつて操られて痛い目にあったからである。

 

 

「そうでしょそうでしょ、ふふん」

 

「ファル何自慢げにしているのですか?結局私達ナイトレイドの皆さんに捕まったのですよ」

 

「それはまあそうだけど・・・」

 

ファルが苦笑いしているとデスジャッカルの群れは今にもエア達に飛びかかりそうであった。

 

「じゃあ頼むよエア」

 

「うん」

 

 

エアは腕輪に精神を集中している、タイミングがずれると全部に暗示をかけられないからである。

 

 

・・・大丈夫、大丈夫、落ち着いて私、エアは深呼吸をして落ち着こうとした、その瞬間デスジャッカルの群れは一斉に襲い掛かった。

 

 

「眠って!!」

 

エアの腕輪の宝玉が光り輝きデスジャッカルの群れに光が浴びせられた、するとデスジャッカルの群れは全て眠りに落ちいびきをかき始めている。

 

 

「ひゅーあれだけの数の危険種をすごいね」

 

「い、いえ私がすごいんじゃなく帝具がすごいんです」

 

エアは謙遜したがラバはたいしたものだと思っている、敵を必ず眠らせる能力は必勝に匹敵すると言っても過言ではない、眠っている敵を仕留めるのは赤子の手をひねるようなものであるから。

 

 

「二人とも次が来たぞ」

 

スサノオが指さした先には別の危険種の群れがいた、それはダチョウの危険種デッドペカーであった、瞬く間に襲い掛かってきた。

 

 

「あの危険種は操れません、ラバさん、スーさんお願いします」

 

「ああ」

 

「任せろ」

 

ラバとスサノオはデッドペカーの群れに突っ込んで行った、そして次々と仕留めていく、仕留めた数は明らかにスサノオの方が多かった。

 

 

「さすがだぜ、だが俺も負けてられないぜ!」

 

ラバはスサノオに対抗意識を多少なり持っていた、スサノオには恋愛感情はないことは知っている、だがいつ目覚めるかわかったものではなかった、そうなれば強大な恋のライバルになりかねないのである。

 

 

ラバ達が奮戦している頃サヨ達は別の敵に遭遇していた、それは人間であった、それも見覚えのある衣装の人間である、目の前にいる連中は南の異民族であった、でもなんでこんなところに?まあだいたい検討つくけど。

 

「あのキノコいくら出しても欲しがっとる奴らぎょうさんおるからな」

 

やっぱりか、まあそうでなければこんな秘境に来るわけないか。

 

 

「・・・」

 

カーコは連中を見て驚いている、無理はないカーコは南の異民族なのだから。

 

「ねえ、カーコ」

 

「何を言いたいのかわかるよ、同じ民族同士なのだから戦えないんじゃないのってことでしょ?」

 

「まあ・・・そうだけど」

 

「大丈夫よ、それぞれ別の依頼で雇われて同族同士で殺しあったことはあったから」

 

 

同族同士で殺しあい!?南の異民族はそこまで困窮しているんだ・・・

 

 

そうしている内に隊長格の男がカーコに罵声をあびせてきた。

 

 

「カーコ!!てめえが任務に失敗したおかげで俺達は帝国から切り捨てられたんだぞ!!」

 

「私だけのせいじゃないでしょ、そもそもナイトレイドを私達だけで仕留めること事態無茶だったのよ」

 

「俺に生意気な口を叩くとはいい度胸してるじゃねえか!!」

 

「もうあなたは私にとって隊長じゃないわよ!!」

 

「言ってくれたな、てめえは俺直々になぶり殺しにしてやる!!」

 

「こうなったら仕方ないわね、腹をくくるか」

 

 

カーコが真っ向勝負に挑むなんて、ちょっと意外、あの隊長に相当恨みがあるのね・・・

 

 

「じゃあウチらは洞窟に行くわ、ここは頼むで」

 

まあシヴァ達がいても足手まといになりかねないし、ここは戦える者が残るべきね。

 

 

「わかった、気をつけて」

 

「ああ」

 

シヴァ達は全速力でキノコがある洞窟へ駆けて行った、連中はシヴァ達を阻止しようとしたがガザムの虫の弾丸の一斉射撃であっという間に蜂の巣にされた。

 

 

「俺達を無視するな」

 

「くっ・・・ならば先にこいつらを片付ける、かかれ!!」

 

隊長の号令で南の異民族のアサシン達は一斉に仕掛けてきた、私達も迎撃態勢をとる、その最中レッドさんは仮面のようなものを被りはじめた、するとレッドさんはけたたましい雄叫びをあげて突っ込んで行った、彼は手にした長い棒で力まかせに片っ端から殴り殺していく、この前に本人から聞いていたが彼の臣具は力を二倍にする仮面の臣具なのである、ただしこの仮面を身につけると敵味方の区別がつかなくなるらしい、まさに今の彼はバーサーカーである、そうしているうちに数人の男が私を取り囲んできた。

 

 

「俺達が相手だぜ」

 

「なかなか可愛いじゃねえか、殺った後に・・・」

 

 

男達の一瞬の隙をついて私は喉元を切り付けた、傷口から大量の血があふれ出して男達は息絶えていった。

 

「油断大敵よ」

 

サヨは自身の剣の速さが増した実感はあったがアカメにはまだまだ遠く及ばないこともわかっていた。

 

「もっと鍛練しないと、アカメに少しでも近づかないと・・・」

 

自分ではアカメのような働きはできない、それでもやるしかない、サヨは心から痛感していた。

 

 

その時カーコはかつての隊長と戦っていた、形勢はカーコがおしはじめている、カーコ自身も予想していなかったことであった。

 

 

「隊長ってこんなに動き遅かったっけ、それに攻撃も十分かわせる、私の記憶にある隊長はもっと強かったはずなんだけど・・・」

 

 

カーコはいつの間にかかつての隊長を凌駕するほど強くなっていたのである。

 

 

「くそっ、どうなってやがる!?あのカーコが俺より強いだと、そんな馬鹿なことが・・・」

 

 

隊長は認めるわけにはいかなかった、顔が可愛いだけの小娘が自分よりも強いなどと・・・

 

 

「くそおおおお!!!」

 

隊長は捨て身の特攻を仕掛けてきた、カーコも尋常ならない気迫を感じた、まともに受けたらまずい、そう直感し回避に専念した、特攻を紙一重でかわし無防備になった背中に臣具バラクーダの射撃を浴びせたのであった。

 

 

「ぐおおおおお!!!」

 

 

隊長の体は蜂の巣になり地面に倒れ息絶えたのであった、カーコはかつての隊長を飛び道具で倒したことに少し思うところもなくはなかったが自分達がいる世界は勝利が全ての世界であるとカーコは自分自身に言い聞かせたのであった。

 

 

「正直あなたのこと嫌いだったけど一応世話になったわ、さようなら」

 

 

カーコは隊長の屍にお別れの言葉を言った、彼女にとっては一応同族なのだから。

 

 

「他のみんなも片がつきそうね、ん?」

 

 

カーコは隊長の屍に蛇がまさぐっているのを見た、カーコはその蛇に見覚えがあったのである。

 

 

「マムシ何やってるのよ?」

 

カーコが声をかけると突然蛇が返事したのであった。

 

 

「金目のもんないか調べてたんだよ」

 

 

その蛇は実はマムシの左腕であった、マムシの左腕は生物型臣具なのである、ただしチホシやキャスカのと違って装着型ではなく腕に結合しているのである。

 

 

「死体をまさぐるなんて悪趣味よ」

 

「うるせえ」

 

「第一あなた今まで隠れてたの?」

 

「ふん、俺達のの仕事はキノコの回収だ、戦いなんかまっぴらごめんだ」

 

 

相変わらずねこの人、偉そうな割には臆病なのよね・・・まあよけいなこと言う必要ないわね。

 

 

「さてシヴァ達キノコ回収できてるといいけど・・・」

 

 

もし失敗したらあの女に何を言われるか・・・考えたくもないわ。

 

 

カーコは心から回収の成功を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今日でサヨが斬るを書き始めてちょうど一年が経ちました、一年ってあっという間に経つものですね、一年も経つのに文章が全然うまくならないのは少しへこみます、とにかくこれからもサヨが斬る応援お願いします。


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第八十話

今回登場するサン、サイードはアニメ第四話でザンクに首を切り落とされたモブのカップルで、キャスカはアカメが斬る零第四話に出てくるガイに殺されたモブ娘で、チホシはアニメ第15話に出てくるセリューに殺されたモブ娘です。


   キノコを斬る

 

 

レオーネ、シェーレ、イエヤス、シヴァ、サイード、サン、チホシ、キャスカの八人は伝説のキノコが生息している洞窟の前に到着していた。

 

「じゃあみんな洞窟に入るで、おっと、その前にこれ渡しとかんと」

 

 

シヴァはシェーレ、サイード、サン、キャスカにこびんを渡した、こびんの中には水が入っている、そして水以外に目玉が入っていた、この目玉が何かはすぐにわかった。

 

 

「もしかしてこの目玉・・・」

 

「察しの通りや、この目玉はチホシの臣具の目玉や」

 

「なんでそんなものを?」

 

 

シヴァはみんなに説明を開始した、洞窟の中は真っ暗なので見えるようにするためである、チホシの臣具ガウシアは暗闇の中でも赤い光を照らすことで見えることができるのである、ただしそのためにはガウシアの目玉を通して見なくてはならないのである。

 

 

「でも俺の帝具も暗闇の中でも見ることはできるぜ」

 

「あんたは見ることはできても説明下手くそやろ」

 

「うっ・・・」

 

イエヤスは絶句した、以前イエヤスは帝具を使って遠視を用いて偵察をしたのだが下手くそな説明をしてナジェンダに怒られてしまったことがあったのである。

 

 

「そやからチホシの臣具を使うんや」

 

イエヤスは何も言えなかった、説明が下手くそなのはわかっているから。

 

 

「じゃあ行くで」

 

一同は洞窟の奥へと進んでいく、次第に薄暗くなってきた、その際にイエヤスはサンに話かけた、少し気になることがあったからである。

 

 

「なあ、一つ聞いていいか?」

 

「何?」

 

「あんた本部で会った工兵チームの一員だろ?」

 

「そうだけど」

 

「なんであんただけ革命軍の軍服着てるんだ?」

 

「決まってるでしょ、こっちの方がずっとオシャレだからよ」

 

「なるほど」

 

作業着とミニスカートの軍服、どっちがオシャレかは一目瞭然である、イエヤスはウンウンとうなずいた。

 

 

「そうか?この作業着もカッコイイじゃねえか」

 

サイードが後ろを振り返って話に入ってきた、イエヤスは正直カッコイイとは思えない。

 

 

「そんなことないわよ、こっちの方が全然オシャレよ」

 

「そんなことないぞこの無骨さがカッコイイんだ」

 

「あなたって子供の頃からそういうのが好きなのよね」

 

「子供の頃から?あんたらその頃からの知り合いか?」

 

「まあね」

 

 

イエヤスは一つある可能性を思いついた、あまり考えたくないことだが・・・

 

 

「なあ、もしかしてあんたら・・・」

 

「一応私達付き合っているけど」

 

 

やっぱりか!!こんな美人と付き合っているなんてうらやましい!!なんで俺には彼女ができないんだ、タツミの奴は年上のお姉さんにモテモテだったのに・・・モテモテか・・・

 

 

イエヤスはタツミが年上のお姉さんにモテていた頃を懐かしんでいた、あの頃はただむかついていた、その後タツミが死んでしまうなんてあの頃は夢にも思ってなかった。

 

 

あれからいろいろなことがあったな、タツミの分まで頑張って村を救わないとな!!

 

 

 

イエヤスは気合いを入れて前進した、周りはほとんど暗闇に包まれていた。

 

 

「チホシ、そろそろ頼むで」

 

「わかった」

 

チホシは生物型臣具ガウシアを使い暗闇でも物をはっきり見ることができる赤い光を照らした、こびんに入れた目玉を通して見ることで暗闇の中でもはっきりと周りを見ることができた。

 

 

「なあ、こんなめんどくさいことしなくてもたいまつを使えばいいんじゃないのか?」

 

「もっともな質問やな、ちょっと上を見てみい」

 

 

イエヤスは上を見上げた、すると天井には蛾の危険種がウヨウヨいた。

 

「これが答えや、あかりをつけたら一斉に襲い掛かってくるで」

 

「なるほど・・・」

 

あんなのに襲い掛かってこられたらたまったものではない・・・ようやくイエヤスは納得したのであった。

 

 

一同はしばらく暗闇の中を進んで行った、ある地点に達すると足を止めた。

 

 

「さて、サン頼むで」

 

「わかった」

 

 

サンは身につけていた青い水晶のペンダントを右手に持ち替えた、すると突然ペンダントがクルクル揺れ動いた。

 

 

「ここよ」

 

「よっしゃ見つけたで」

 

大喜びするシヴァをイエヤスはわけがわからずキョトンと見ていた。

 

 

「おい、どうなってるんだよ?」

 

「ついにキノコが生えとるところ見つけたんやで」

 

「なんでそんなことわかるんだよ?」

 

「それはなサンの臣具がダウジングの臣具やからや、的中率は高いで、ちなみに新しいアジトの温泉はサンのダウジングで見つけたんやで」

 

 

「そうなのか?」

 

「本当に苦労したわよ温泉見つけるの、マイン本当にわがままな娘ね」

 

「本当にすまない・・・」

 

 

普段からマインのわがままに手を焼いているからサン達の苦労が目に浮かんだイエヤスであった。

 

 

「じゃあサイード後はお願い」

 

「おう!!任せろ!!」

 

サイードは大きなドリルを取り出し地面を掘り始めた、あっという間に地面が掘削されていく、サイードの臣具はドリルの臣具である。

 

 

サイードが掘削を続けていくとやがて地面の色が変わっていった、するとシヴァは掘削の停止を指示した。

 

 

「停止やサイード」

 

「わかった」

 

 

シヴァは掘削した穴に入り何かを調べている、すると何かを見つけたようだ。

 

 

「見つけた、見つけたで!!」

 

 

シヴァが見つけたのは50cmくらいの大きさの岩だった、普通の岩とは明らかに色が違った。

 

 

「レオーネ、この岩を怪力で引っこ抜いてくれ」

 

「私がか?」

 

「そのためにあんたを連れてきたんや、はよしてえな」

 

「わかった」

 

 

レオーネはライオネルを発動し獣人化した、そして力を込めて岩を引っこ抜くことができた。

 

 

「ごくろうさん、さてイエヤスこの岩を透視してや」

 

「なんで?」

 

「キノコはこの岩の中に生息しとるんや」

 

「岩の中!?」

 

「そや、岩の養分を吸収して成長するんや」

 

「変わってるな」

 

「ええからはよしてえな」

 

「わかったわかった」

 

 

イエヤスは岩を透視した、すると岩の中にまいたけのようなキノコが生えていた。

 

 

「あったぜ」

 

「そらよかった、じゃあシェーレ頼むわ」

 

「私は何をすればいいのですか?」

 

「帝具で岩を両断してほしいんや、イエヤス、キノコを両断せえへんように指示してや」

 

「わかった」

 

 

イエヤスは透視を使いキノコが両断されないようにシェーレに指示を与えた、そして岩だけ両断してキノコがあらわになった。

 

「次はウチの番やな」

 

シヴァは丁寧にキノコを摘み取っていった、摘み取ったキノコは光が入らない箱に収納した、このキノコは光に当たるとしぼんでしまうのである。

 

 

「じゃあこの調子でキノコ回収するで」

 

シヴァ達はこの作業を繰り返し次々とキノコを回収していった、キノコの摘み取り作業にキャスカも加わった。

 

「ウチの見込んだ通りあんた器用やな」

 

「うん、ボクは器用さには自信あるんだ」

 

「さあもうひとふんばりやできばっていくで」

 

 

テンポ良く作業が進み予定以上のキノコを回収することに成功したのであった。

 

 

「これだけ回収すれば十分やろ」

 

回収したキノコを見てシヴァはこれ以上ない笑顔を見せた。

 

 

「これで総大将回復できるんだろ?」

 

「まあすぐには無理やろうな、でも大きく前進したのは間違いないで」

 

「心から回復して欲しいです」

 

「ああ、帝国との決戦に総大将がいないのは痛すぎるからな」

 

「心配するなウチがこのキノコを使って回復させるわ」

 

 

一同は総大将の回復を祈りながら洞窟を脱出した、そして異民族と戦っていた別働隊と合流して秘境を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

その後・・・スタイリッシュは事後処理を全力で処理して急いでこの秘境にやって来たのであったが・・・

 

 

「・・・あああ、やっぱり手遅れだった、あああ、アタシのキノコ・・・」

 

 

すでにキノコを取り尽くされた洞窟を見てスタイリッシュは地面にひざを着きひたすら嘆き悲しむことしかできなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前から気になっていたのですが自分が書く小説は小説の文章になっているのでしょうか、文章が上手な小説を見て勉強しているのですが上手くなっているとは思えないのです、こんな小説ですがこれからもよろしくお願いします。


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第八十一話

今回はあるキャラが初登場します。


   助っ人を斬る

 

 

8月29日

 

 

サヨ達が秘境から帰還した翌日にちょっとした騒動が起こっていた・・・

 

 

 

サヨはお風呂上がりに複雑な表情で自分の胸を見つめている。

 

 

「間違いない・・・私の胸、大きくなってる!!」

 

以前から自分の胸に違和感を感じていたが大きくなっていることを確信したのであった。

 

 

「原因は・・・あれしかないわね」

 

それはレオーネにしょっちゅう胸を揉まれていたからである、だがサヨはもう一つの原因には気づかなかった、それはナイトレイドに入ってから栄養のある危険種を食していたということを。

 

 

「私の胸、アカメと同じくらいに大きくなっちゃてる・・・」

 

 

サヨは正直胸が大きくなったことをそれほどうれしくなかったのであった。

 

 

「実際胸が大きくなってもそれほどいいものではないわね、結構肩が凝っちゃうし・・・」

 

 

サヨはかつてアカメの胸をうらやましいと思ったことがあったのであったが・・・

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

「アカメの胸大きくてうらやましいな」

 

 

「そうか?大きい胸など暗殺には不要だぞ、動きにくくなるからな」

 

 

「でもレオーネはすごく大きいわよ」

 

 

「レオーネはパワーでねじ伏せるタイプだからな、だが私のは緻密さが命だからな少しでも動きが鈍ると命取りだからな、全くお前のささやかな胸がうらやましいぞ」

 

 

(・・・怒っちゃダメ、アカメに悪気はないんだから)

 

 

 

「今ならアカメの気持ちよくわかる・・・なんでこんな時に大きくなっちゃうのよ私の胸!!」

 

サヨは気づいていなかった、後ろにある人がいることに・・・

 

「どうしたの?」

 

「うん、胸が大きくなっちゃって困ってるの」

 

「へえ、そうなの?」

 

サヨは後ろに殺気のような気配を感じ振り向いた、するとそこにいたのはマインだった。

 

 

「それって私への当てつけ?」

 

(マイン!?しまった!!)

 

マインは完全に殺し屋モードになっていた、サヨはどうやってこの状況を切り抜けるか思案した。

 

 

「ねえ、私達がキノコ狩りに行っている間仕事どうだったの?」

 

「!!?」

 

サヨの質問にマインはさらに機嫌が悪くなった。

 

 

あれ!?不愉快なことがあったのかな?どうしよう・・・サヨが困っているとチェルシーが間に入ってきた。

 

 

「私が説明してあげるよ」

 

「ちょっと、よけいなことしないでよ!!」

 

「別にいいじゃない、ボスも知ってるんだから、ボスから聞けばわかることよ」

 

「勝手にすれば・・・」

 

「じゃあそうする」

 

 

チェルシーはサヨ達がいない間に起こった出来事を語り始めた・・・

 

 

 

 

マインとチェルシーは民からの依頼で帝都に来ていた、ある標的を暗殺するためである、その標的とは・・・

 

 

 

「今夜決行ね」

 

「ええ、標的は大臣の遠縁の男イヲカルとその護衛達よ」

 

「大臣の親戚であることをいいことにやりたい放題か、アタシそういう奴すごくムカつくのよね!!」

 

「まあそれも今日までだけどね」

 

「でも、それにしても・・・」

 

「それにしても?」

 

「なんでキノコ狩りなんかにメンバーの大半を割いたりしちゃうのよ!!」

 

 

上からの命令でナイトレイドのメンバーの大半をキノコ狩りに向かわせたのがマインには不満いっぱいであった。

 

 

「しょうがないでしょう、総大将の回復にそのキノコが必要なんだから」

 

マインにも総大将の回復が必須なのはわかっているが暗殺の任務を二の次にしたことには納得していないのであった、二人だけで任務をこなさなくてはならないからである、しかもよりによってチェルシーと・・・

 

 

「アンタは暗殺の達人だけど戦闘ダメでしょ!?護衛結構強いらしいわよ」

 

 

「確かにそうだけど今回の任務に助っ人が派遣されるって言ってたわよ」

 

「助っ人ねえ・・・」

 

 

マインはイマイチ喜べなかった、中途半端な助っ人なんか迷惑でしかないから。

 

 

「ところでその助っ人ってどこにいるの?」

 

「確か公園にいるらしいわよ」

 

「とりあえず行ってみるわよ」

 

「そうね」

 

 

二人は公園に向かうことにした、助っ人が使える人間であることを祈って。

 

 

「公園に着いたけどどこにいるのかしら助っ人?」

 

「そうね」

 

その時後ろから声が響いた。

 

 

「お久しぶりですわねチェルシー!!」

 

「私達が来たからにはもう安心ですわよ!!」

 

 

その声は少女のものだった、その声を聞いた瞬間チェルシーは青ざめた、チェルシーには心当たりがあったからである。

 

 

こ、この声、まさかあの二人じゃ・・・

 

 

チェルシーはおそるおそる振り返ってみた、するとそこには二人の少女がいた、その少女は歳は12,3歳くらいで衣装は藍色のミニスカートと同じ藍色の半袖の衿着きのシャツを着ている、髪型はポニーテールとツインテールであった、顔は二人とも同じである、おそらく双子だろう、マインはチェルシーの様子を見てただ事ではないと判断した。

 

 

「ねえもしかして知り合い?」

 

「・・・うん」

 

知り合いも何もこの二人はかつてオールベルグだったのだから・・・

 

 

 

「私はミーラですわ」

 

「私はロリスですわ」

 

 

ポニーテールの少女がミーラでツインテールの少女がロリスである、チェルシーは二人を見て青ざめたままであった、過去に何があったのだろう?

 

 

・・・よりによってこの二人が来るとは・・・ギルベルダが来た方がまだマシだった・・・

 

 

「どうしたのです?」

 

「私達では不満ですの?」

 

「そ、そんなことないわよ、あなた達の力頼りにしてるから」

 

 

「もちろんですわよ」

 

「大船に乗ったつもりでいてください!!」

 

 

・・・相変わらず自信満々ね、そうだ!!

 

 

 

「あなた達のその藍色の衣服すごく素敵ね」

 

 

「当然ですわ!!」

 

「私達は何を着ても可愛いんですわ!!」

 

 

双子はチェルシーに衣服を褒められてすっかり上機嫌になった、チェルシーの狙いどうりである。

 

 

 

ホントガキンチョね、チョロいわ・・・心の中でつぶやくチェルシーであった。

 

 

 

「そうかしらアタシは素敵とは思わないけど」

 

 

マ、マイン!!よけいなことを言わない!!せっかく機嫌良くなったのに!!

 

 

「大体藍色づくめの衣服ってオシャレって言えるのかしら?」

 

 

マイン!!確かにその通りだけどここは見て見ぬ振りして!!

 

 

 

チェルシーは双子が怒るのではないかとハラハラしている、だが予想に反して双子はおとなしかった。

 

 

「確かに一理ありますわね・・・」

 

「私達もできればピンクとかにしたかったですわ・・・でも・・・」

 

 

双子の説明によると藍色の布が大量に余ってるから藍色の衣装になってしまったということである。

 

 

「でもどうしても嫌なら断ればいいでしょう?」

 

「そうなればオヤツなしになっちゃうんです!!」

 

「それだけは絶対嫌ですわ!!」

 

 

そんな理由なんだ・・・ホントにガキンチョね・・・チェルシーはただ苦笑いをするしかなかった。

 

 

「まあアンタ達が戦力になるなら別に構わないわよ」

 

「それは心配ご無用ですわ!!」

 

「私達の力ご覧になるといいですわ!!」

 

 

こうして双子と合流したマインとチェルシーは公園を後にした、だがこの後に起こる出来事を誰も予想だにしていなかった。

 

 

 

 

 




今回はミーラ、ロリスの双子が初登場しました、皆さんのこの双子の認識度はどれくらいなのでしょうか?ちなみにこの双子の声はデュラララに登場する双子くるり、まいるをイメージしてください。


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第八十二話

   劇団を斬る(前編)

 

 

マイン達は夜になるまでウインドウショッピングをして時間をつぶしていた、ミーラとロリスは数年ぶりの帝都ではしゃいでいた。

 

 

「姉様、あのドレス可愛いですわよ」

 

「あのアクセサリーもすごく綺麗ですわ」

 

チェルシーははしゃいでいる双子を見てしみじみ思った。

 

 

こうして見るとあの娘達も年ごろの女の子なのよね、あの娘達が殺し屋だなんて普通の人は思わないわよね・・・

 

 

チェルシーは双子がどのようないきさつでオールベルグに入ったのかはメラルドから聞いていた、チェルシーはそれほどショックと感じなかった、こんなご時世であるから珍しいことではないのである。

 

 

「ちょっとチェルシー何私達をじろじろ見てるんですか?」

 

「えっ!?いや別に・・・」

 

ミーラに問われてチェルシーは思わずあわてた、すると・・・

 

「私達の可愛いミニスカ姿を見て欲情したんでしょう?」

 

「はあ!?ちょっと待ってよ私は・・・」

 

 

冗談じゃないわよ・・・なんで私があなた達のミニスカに欲情しなくちゃならないのよ、エロオヤジじゃあるまいし。

 

 

「あなたもやっと正しい愛に目覚めたんですね」

 

「メラ様も喜んでいますわよ」

 

 

こら、ガキンチョども、勝手に話を進めるな、私にそんな趣味ないんだから・・・

 

 

「ちょっとアンタ達遊ばないで、さっさと行くわよ」

 

ナイスマイン!!  チェルシーは心の中でマインに感謝した。

 

 

「あっ、待ちなさい!」

 

「これは遊びじゃありませんわよ」

 

マインは双子の抗議を無視して進んで行った、双子も渋々ついて行った。

 

 

マイン達は帝都の街中を歩いていく、相変わらず人でにぎわっていた。

 

「相変わらず帝都は人が多いわね、多いだけだけど」

 

通り過ぎていく人の多くは暗い表情だった、むろん原因はわかっている。

 

 

「恐怖政治のせいだからね」

 

 

潤っているのは一部だけでどん底で苦しんでいる人は少なくないのであった。

 

 

「だからこそアタシ達が頑張らないといけないのよ」

 

マインは今夜の任務に向けて気合いを入れていた、するとミーラが質問してきた。

 

 

「確か今回の標的は女性を暴行して殺害しているんですよね?」

 

「そうよ」

 

「それは許せません、ぜひ私達の手で徹底的に酷く殺してやりましょう」

 

 

双子は惨殺の妄想をして残酷な笑みを浮かべている、それを見てチェルシーは慌てて諌めた。

 

 

「ちょっと待って、イヲカルはマインの狙撃で仕留めるのよ、あなた達は護衛の傭兵を仕留めるのよ」

 

 

「なーんだつまらない」

 

「私達の腕の見せ所でしたのに」

 

「まあまあ他のところであなた達の腕見せてよ」

 

「仕方ありませんわね」

 

「私達の強さ見せてあげますわよ」

 

「そうね、楽しみにしてるわ(・・・ホント手間がかかるガキンチョどもね)」

 

 

チェルシーは内心でやれやれと思いつつ双子を巧にコントロールするのであった。

 

 

マイン達は時間つぶしに街中を歩いていく、案外時間つぶしの時間は速く進まないものである。

 

 

「ウインドウショッピングにも飽きましたわ」

 

「そうですわね姉様・・・ってチェルシー何私達をじろじろ見てるんですか?」

 

「やっぱり私達に欲情してるんでしょ?」

 

「そうじゃないわよ、あなた達昔はずいぶんチビだったのにずいぶん背が伸びたなあって思って」

 

 

オールベルグにいた頃に比べてグンと双子の背は伸びていたのである、来年にはマインを抜いているかもしれない。

 

 

「そうでしょ、そうでしょ」

 

「私達すっかりレディになったでしょ」

 

 

中身はガキンチョのままだけどね・・・

 

 

鼻高々の双子を見てチェルシーは心の中でつぶやいた。

 

 

「・・・メラ様に今の私達の姿を見て欲しかった」

 

「・・・メラ様と一緒にオシャレしたかった」

 

 

双子の表情がみるみるうちに暗くなっていった、双子にとってメラルドはかけがえのない人間だったから。

 

 

チェルシーは内心で舌打ちした、下手を打ってしまったと、慌ててチェルシーは手を打った。

 

 

「まあまあ二人ともこの仕事が終わったら美味しいもの食べ歩きしようか」

 

「食べ歩き?」

 

「帝都にはいろんな店があるから盛り上がるわよ」

 

「そうですわね、たまにはチェルシーもいいこと言いますわね」

 

「そうでしょ  (たまにはは余計よガキンチョ!!)」

 

みるみるうちに双子の機嫌が良くなっていった、ちなみにチェルシー自身はおごる気は全くない。

 

 

「じゃあひとまずラバの店で休もうか」

 

散々歩いてチェルシーの足は限界に近づいていた、すぐにでも休みたかったのである、だがその時。

 

 

「あのお、ちょっといいですか?」

 

突然後ろから声がした、後ろを振り向くと小柄で眼鏡をかけた女性が立っていた。

 

「アンタ誰?」

 

「は、はい、私ウマトラ劇団の者です」

 

ウマトラ劇団、この帝都で評判の劇団である、一体何の用だろう?

 

 

「単刀直入に言います、皆さんにエキストラとして出演して欲しいのです」

 

「なんでアタシ達が?」

 

「皆さん可愛いので」

 

可愛いと言われて双子は上機嫌になった、だがマインとチェルシーは浮かれていなかった。

 

「エキストラって一般人から募集するものなの?」

 

「普段はやりません、今回は多くの劇団員の方々が食中毒になってしまったもので・・・」

 

「なるほどそういう事情か、でも悪いけどお断りさせてもらうわ」

 

「えっ!?」

 

 

この人には悪いけど私達は殺し屋、目立つわけにはいかないのよね・・・

 

「もう少し考えてくれませんか?」

 

「お断りよ、大体エキストラなんてしょぼい役アタシにふさわしくないわよ」

 

 

マイン、演技なのかな、それとも本音なのかな?  チェルシーにはどっちかはわからなかった。

 

 

「とにかくアタシ達は先を急ぐから」

 

「ま、待って・・・」

 

 

マインは懇願を振り払いその場を立ち去ろうとしている、劇団員の女性は突き放されて戸惑っている。

 

 

「あのそちらの双子ちゃんは?」

 

「主演なら考えてもいいですわよ」

 

「そ、それは・・・」

 

「ならお断りしますわ」

 

双子も立ち去ろうとしていることに女性はオロオロした、このままエキストラを誰もスカウトできず劇場に帰ることはできなかった、懸命に知恵を絞って一つの妙案を思いついた。

 

 

「双子ちゃんなら主演よりも目立つエキストラになりますよ!!」

 

その言葉に耳をピクリとさせ双子は足を止めた。

 

 

「本当ですか?」

 

「ええ、双子ちゃんすごく可愛いので十分ありえますよ」

 

「まあ、私達なら当然ですわ」

 

「それに双子ちゃんが着ている藍色の衣装すごくステキですよ」

 

双子は衣装を褒められてますます浮かれたのである。

 

「あなた見る目ありますわね」

 

「そこまで言うのであれば行ってあげてもよろしいですわよ」

 

「ありがとうございます!!」

 

「ちょっと何勝手に決めてるのよ!?」

 

マインは双子の勝手な行動に文句を言うも。

 

「あなた達は来る必要ありませんわよ」

 

「私達だけで行きますから」

 

そう言うと双子は女性と一緒に劇場へ歩き始めた。

 

「アンタ達待ちなさい!!」

 

 

マインは制止するも双子は無視して歩いて行った。

 

 

「あの娘達腕は立つけどそんなに賢くないのよね・・・」

 

「全く何が助っ人よ、とんだお荷物じゃない!!」

 

「こうなったら私達も行くしかないわね、あの娘達だけじゃどうなるかわからないし」

 

「全く、とんだ寄り道になったわ!!本当にめんどくさい!!」

 

 

マインはぶつぶつ言いながら双子を追いかけて行った、この時マインはこの後すぐめんどくさいどころではないことが起こってしまうことなど夢にも思ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話いかがでしたか?比較的セリフが多かったです、セリフ以外の文章がろくに書けないんですが、次回もこんな調子ですがよろしくお願いします。


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第八十三話

   劇団を斬る(中編)

 

 

場所は変わってイェーガーズの本部、ここではイェーガーズのメンバーは日々の任務に勤しんでいた。

 

 

「隊長、書類の整理終わりました」

 

「早いな、さすがランだな」

 

「それほどでも」

 

するとウェイブが入室してきた。

 

「ただいま戻りました」

 

「どうでした?」

 

「それが、その・・・」

 

 

ウェイブは現在帝都で頻繁に起こっている女性の失踪事件の調査をしていた、ウェイブの聞き込みの成果ははいまひとつであった、その理由は聞き込みをした人の大半が知らないの一点張りをしたからである。

 

 

「ここまで目撃者がいないとは思ってなかったぜ」

 

「そうですね」

 

ランはそう言いつつも原因は察していた、おそらく後が怖くて言いたくなかったのであろう、つまり犯人は身分の高い者の犯行である、それも普通の貴族ではないだろう、もしかしたら大臣の親族の可能性がある、そうなれば聞き込みで情報を得るのはほぼ不可能であろう、だが手をこまねくわけにはいかない、早急に手を打たなくてはとランは思考した、するとセリューとクロメがパトロールから帰って来た。

 

 

「隊長、帝都のパトロール完了しました」

 

「ご苦労、確かお前達明日の晩まで非番だったな」

 

「はい」

 

「では明日までゆっくり休め」

 

「でもいいんでしょうか?隊長達忙しいはずですのに・・・」

 

「気にするな、休める時に休むのも重要だぞ」

 

「ではお言葉に甘えます、隊長失礼します」

 

セリューとクロメは敬礼して退室した、エスデスも書類の整理をして退室しようとしていた。

 

 

「では私も失礼するぞ」

 

「軍議ですか?」

 

「そうだ、最近反乱軍に異変があったからな」

 

「確か反乱軍と同盟を結んでいる西の異民族が反乱軍とギクシャクしているとの話ですよね?」

 

「ああ」

 

「しかしなんでギクシャクしたのかな?」

 

「両者は固い絆で結ばれてはいません、利害が一致してるから同盟を組んだにすぎません」

 

 

ランはこのまま両者がギクシャクした関係を続けるとは思えなかった、帝国と戦うためには組むしかないからであるから。

 

 

「ではそろそろ時間だ、行ってくる」

 

「はい」

 

エスデスも退室して行った、部屋にはランとウェイブの二人だけになった。

 

「じゃあ書類のチェックでもするか」

 

「書類は丁寧に扱ってください、書類に何かあったらまた隊長に仕置きされますよ」

 

「わ、わかってるよ」

 

ウェイブは今まで受けた仕置きを思い出して身震いした、もうあんな目に遭うのはまっぴらである。

 

 

「それにしても・・・」

 

帝都の歪みは増していくばかりである、そのためには手柄を立てて権限を手に入れないと何もできない、あの惨劇を繰り返さないためにも・・・

 

「ラン、夕食は簡単なものでいいか?」

 

 

ランが心の中でそう思っているとはウェイブは梅雨知らずであった。

 

「はい、まかせます」

 

ウェイブは相変わらずですね、ランはクスッと微笑むのであった。

 

 

 

一方その頃セリューとクロメは街中を歩いていた。

 

 

「ねえセリュー、ケーキご馳走してくれるって本当?」

 

「はい、この先に美味しいケーキ屋さんがあるんです」

 

 

クロメはケーキをイメージしてよだれを出していた、セリューはそれを見て順調に計画が進んでいることに喜んだ。

 

 

その計画とはクロメと親交を深めるためである、今まで何度も親交を深めようとしたがクロメは必要以上にセリューと関わらないようにしたのである、その理由はわかっていた、それはセリューがクロメの姉であるアカメを殺したからである、賊に成り果てたからといってたった一人の肉親であるからクロメの気持ちも少しはわかるのであった。

 

 

これを機にクロメさんと親睦が深まればいいのですが・・・そうセリューが思案していると後ろから声がした。

 

 

「ねえ君達ちょっといいかな?」

 

後ろを振り向くと20代前半の男性がいた、見るからに一般人だったので二人は武器を構えることはなかった。

 

 

「あなたは誰ですか?」

 

男性の話によると男性はウマトラ劇団の一員で二人をエキストラとしてスカウトしたいということである。

 

 

「申し訳ありませんがお断りさせてもらいます」

 

「そんなこと言わずにさ劇場に来てくれるだけでもいいからさ」

 

「私達は大事な用があるのです」

 

「ちょっとだけでいいからさ、お菓子ご馳走するからさ」

 

お菓子ご馳走・・・その一言にクロメの耳は反応した。

 

 

「本当にちょっとだけだよ」

 

「ありがとう、じゃ行こうか」

 

「ち、ちょっとクロメさん!?私との約束は!?」

 

「大丈夫だよパパッとすませてケーキ屋に行くから」

 

あっさり承諾したクロメにセリューはア然としている。

 

・・・いくらお菓子好きだからといってあっさりしすぎです、私が言うのもなんですが・・・

 

 

クロメのお菓子好きは半端じゃない、セリューは改めて思い知ったのであった。

 

 

「セリュー来ないの?」

 

「待ってください!!」

 

セリューは慌ててクロメの後を追って行った、こうなったら手短にすませよう、この時セリューはこう考えていたがこの後それどころではない事態になったのである。

 

 

 

 

「ここが私達の劇場ですよ」

 

劇団の女性に案内されてマイン達はウマトラ劇団の劇場に到着していた。

 

 

「改めて間近で見ると壮大な建物ね」

 

 

マインとチェルシーは劇場のことは以前から知っていたが遠目でしか見たことがなかったのである。

 

「皆さんこちらへ」

 

女性の案内で劇場の中へ入っていく、すると劇場の舞台では団員が劇の稽古をしていた、その中の一人がマイン達に近づいてきた。

 

 

「その娘達はもしかしてエキストラか?」

 

「はい、私がお願いして来てくれました」

 

「そうか、助かる」

 

 

心なしか稽古している団員の数が少ないような・・・思ってたよりも食中毒で切迫しているようである。

 

 

「ちょっとまさか本気でエキストラ受ける気じゃないわよね?」

 

「もちろんその気はないわよ、ただあの双子がね・・・」

 

 

ここへ来るはめになった原因の双子ミーラとロリスは舞台を見ていた、ただどこか寂しそうであった。

 

 

「どうしたの?」

 

「・・・ちょっと思い出していましたの」

 

「数年前にメラ様とこの劇場へ来たことを」

 

 

かつて双子は仕事でメラルドと帝都へ赴き、仕事をこなしたご褒美に劇場へ連れていってくれたのである、その時の舞台は役者全員が女性であった、双子は生まれて初めて見る芝居に心から感激した、双子はこの幸せな日々がいつまでも続くと思っていた、その時は・・・

 

 

 

「・・・あの幸せな日々をアカメが壊した」

 

「私達の手でアカメを殺したかったのに・・・」

 

 

双子からアカメに対する憎悪があふれ出していた、その憎悪をマインは見逃さなかった。

 

 

「アンタ達自分達だけが不幸だと振る舞うのやめなさい」

 

 

「あなたなんかにに私達の苦しみわかりませんわよ」

 

「余計な口だししないでください」

 

 

双子の言動にマインはイラッとした、これだからガキは嫌いなのよ・・・

 

 

「全くアンタ達を教育した奴全然ダメダメね、甘やかされてバカなガキにしちゃったんだから」

 

 

その瞬間双子の雰囲気が明らかに変わった、マインに対する殺気が満ちていた。

 

 

「・・・それメラ様のこと言っているんじゃないでしょうね?」

 

 

「だとしたら?」

 

「あなた死にたいんですか?」

 

「アンタ達なんかにやられるアタシじゃないわよ」

 

「・・・言ってくれますわね、あなたこそ勘違いしていませんか?」

 

「あなたが強いんじゃなくて帝具が強いだけでしょ?」

 

「・・・言ってくれるじゃないガキ共、アタシをナメるんじゃないわよ!!」

 

 

まさに一触即発とはこのことである、両者が激突しようとしていたまさにその時。

 

 

「ちょっとあなた達何やってるのよ!?」

 

チェルシーが見かねて間に入ってきた、チェルシーがマインをなだめようとするも。

 

 

「アンタは黙ってて、このバカガキに礼儀を教えてあげるんだから!!」

 

「あなたは引っ込んでてください、メラ様を侮辱したこの女に目にもの見せてやります」

 

 

その瞬間チェルシーの雰囲気が変わった、チェルシーは三人を冷たく鋭い眼光で睨みつけた。

 

 

「・・・いい加減にして、さもないと私にも考えがあるから」

 

 

「・・・わかったわよ」

 

「仕方ありませんわね・・・」

 

 

マインと双子はとりあえずいさかいをおさめた、少なからずチェルシーの迫力に圧されたからである。

 

 

「このアタシを怯ませるなんて・・・やるじゃない」

 

普段チェルシーにからかわれているマインは殺し屋チェルシーを初めて目の当たりにして戦慄を感じずにはいられなかったのである。

 

 

「オールベルグで見習いだった頃とは別人ですわね・・・」

 

「全くチェルシーのくせに生意気ですわよ・・・」

 

双子はチェルシーがオールベルグの頃にはなかった凄みを持つようになって軽視できなくなっていた。

 

 

「ふう、全くマインったらガキンチョと同レベルでどうするのよ」

 

チェルシーは呆れつついさかいを回避できたことを安堵した。

 

 

 

「皆さんもうしばらく見物していてください」

 

 

 

団員に勧められてマイン達はしばらく観客席の辺りで舞台を見ていた、無論いつまでも見物しているわけにはいかない。

 

 

「さて、頃合いを見て適当な理由をつけて退散するとしますか」

 

 

そうチェルシーが思案していると後ろのドアが開き三人の人間が入ってきた、マインとチェルシーはその姿を見て絶句した、なぜならその人間はイェーガーズのクロメとセリューだったからであったから。

 

 

この後まさかあのような大騒動が起こるとは誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 




今まで何度も書き加えてきましたが自分の小説は小説の文章になっているのでしょうか?いろいろな小説を参考にして書いているのですが、これからもこの小説をよろしくお願いします。


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第八十四話

  劇団を斬る(後編)

 

 

マインとチェルシーは表情には出していないが内心では動揺していた。

 

 

なんでこの二人がここに!?

 

 

目の前に現れたのはイェーガーズのクロメとセリューであった、特にセリューは仲間であったアカメを殺した敵でもあるのだ。

 

 

心情としてはアカメの敵を取りたい気持ちがなかったわけではなかったが今手元には帝具がなく丸腰なのである、勝ち目などゼロであった、かといって今逃げ出せば怪しまれてしまうだけである、そう思案していると双子が話しかけてきた。

 

 

「あの黒髪の奴クロメですわよね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「あの時よりも腕上がってますわよね」

 

 

かつて双子はオールベルグのアジトで捕らえられたクロメを見たことがあるのである。

 

 

「ねえあなた達、アジトでクロメと対面とかしてないわよね?」

 

 

もし双子がクロメと対面していたらそれこそ一巻の終わりである。

 

 

「心配ないですわよ、クロメの世話は主にユリリさんが行っていましたから」

 

それって単にめんどくさいからやらなかっただけでは・・・とチェルシーは思ったがあえて言わなかった。

 

 

「とにかくクロメと対面してもとりあえず大丈夫ね、言っておくけど余計なこと言わないでね」

 

 

「心配ありませんわよ」

 

「私達をなんだと思っているんですの?」

 

 

・・・はっきり言ってあなた達の頭そんなに賢くないでしょう、チェルシーはそれを双子に言うつもりはなかった。

 

 

クロメとセリューを連れてきた劇団員が話しかけてきた。

 

「お前よく四人も連れてくることができたな」

 

「私だってやるときはやるんですよ」

 

「まあ俺がスカウトした娘達の方がかわいいだろ?」

 

 

その一言に双子は食いついてしまった、むきになり男の劇団員に詰め寄る。

 

 

「それは聞き捨てできませんわね」

 

「私達の方がかわいいですわよ!!」

 

勝手な行動をした双子を止めるべくマインは両者の間に入って行った。

 

 

「アンタ達そんなのどうだっていいでしょ!!」

 

「どうでもよくありませんわよ!!」

 

「女の子として無視できませんわよ!!あなたはたいしたことないからどうでもいいですけど」

 

「はぁ!?アタシがたいしたことない!!アンタ達ごときが調子にのらないで!!」

 

「何言ってますの!?私達の可愛さがわからないなんてあなたこそどうかしてますわよ!!」

 

 

チェルシーは苦笑いしながら思った、マインと双子精神レベル同じだわ・・・どうやってこの三人をなだめよう、下手を打てばさらに大騒ぎになる、するとそこにセリューが入ってきた。

 

 

「けんかはいけませんよ」

 

セリューは親切で止めようとしたのであるがはっきり言って迷惑である。

 

 

「あなたは!?」

 

「私はセリューです」

 

 

セリュー・・・双子はその名前を知っていた、親愛なるメラルドを殺した憎きアカメを殺した相手、自分達で殺すはずだったアカメを奪った人間、直接恨みはないが複雑な遺恨を感じずにはいられなかった、双子は無意識にセリューを睨みつけていた。

 

 

「どうしたのですか?怖い顔をして・・・」

 

 

まずい!!マインはどうにかこの場を切り抜ける策を思案したがとっさには思いつかない、するとチェルシーが助け舟を出したのであった。

 

 

 

「ゴメンなさいね、この娘達虫歯で機嫌悪いのよ」

 

「そうだったのですか?」

 

「何を言ってますの!?」

 

 

空気が読めない双子にチェルシーは内心で舌打ちした、それでも怪しまれないようにさらに畳み掛けた。

 

 

「この娘達甘いもの食べても歯磨きしないから困っているのよね」

 

「だから私達は・・・」

 

「いいからこっちへ来なさい!!」

 

マインは双子の腕を掴みセリュー達の側から離れた、側にいれば双子がボロを出しそうだからである。

 

 

全く・・・とんだお荷物寄越してくれたわね、マインはいらつかずにはいられなかった。

 

 

「虫歯ですか大変ですね、クロメさんも気をつけないと」

 

「大丈夫だよ、ちゃんと手入れしてるから」

 

「さすがですね」

 

クロメはそのことよりも彼女達のことが気になっていた、彼女達の動きは一般人と比べて明らかに無駄がなかったのである、クロメは一つ試してみることにした。

 

「ねえ、あなた達名前は何?」

 

「えッ!?アタシ達の名前?」

 

 

マインは偽名をとっさに思いつこうとしたがいざとなったらなかなか思いつかないものである、ぐずぐずしていたら怪しまる、マインが焦り出したその時。

 

 

「私の名前はリネットよ、ピンクの髪の娘はナノハ、双子の娘達はネイとメイよ」

 

 

 

クロメは注意深く観察したがリネットに不自然な様子は全く見られなかった。

 

 

「そうなんだ(・・・私の気のせいだったかな)」

 

 

クロメは首を傾げてそのままお菓子を口にした。

 

 

一方マインはチェルシーの機転の良さに関心しつつも複雑な気持ちであった、よくとっさに自然に嘘をつけるものだと。

 

 

セリューも別のことで悩んでいた。

 

 

「それにしてもクロメさんエキストラの一件どうするのですか?隊長の断りがなく引き受けるわけにはいきませんし」

 

 

「大丈夫だよ私劇場に来るとは言ったけどエキストラ引き受けるとは言ってないし」

 

 

「えッ!?じゃあなんで来たのですか?」

 

 

「お菓子ご馳走してくれると言ったから」

 

 

「クロメさん・・・」

 

 

クロメにその気がないのはよかったがクロメの食い意地にはセリューはやや呆れていた。

 

 

「まあ頃合いを見て丁寧にお断りしましょう」

 

 

するとその瞬間セリューの背中に何かぶつかった、セリューが後ろを振り向くと女性がいた。

 

 

「す、すいません!!」

 

「気にしないでください大丈夫ですから」

 

 

女性は深々と頭を下げるとその場を去って行った、セリュー達は女性に違和感を感じていた。

 

「今の人殴られた跡がありましたね」

 

「うん」

 

セリューは劇団員に尋ねてみた、すると今の女性は劇団員ではないのである、夕べ劇場の前で倒れていたのである、ケガの手当てをしたあと警備隊に連絡しようとしたら女性は慌てて拒んだのである、それでしばらく劇場においておくことになったのである。

 

 

「クロメさんどう思いますか?」

 

「彼氏に暴行されたけどおおごとにはしたくないってところじゃないかな」

 

 

 

このような悪行見逃しては正義の名が廃る、セリューは絶対に助けると意気込むのであった。

 

 

 

マイン達とセリュー達はしばらく劇団の稽古を見学していた、両者はエキストラの件を断るつもりだがなかなかタイミングをつかめずにいた、そんな中チェルシーはクロメに近づいて行った、狙いはクロメではなくクロメが食べてるお菓子であった、以前クロメがオールベルグに捕まった時にドーピング入りのお菓子の存在をメラルドから聞いたのである。

 

 

このお菓子もドーピングが入っているはず、これを確保できればシヴァに渡してドーピングの成分を分析できるかも・・・

 

 

チェルシーは隙を見てこっそり袋からお菓子をくすねようとした、お菓子をつまんだ瞬間腕に激痛が走った、クロメがチェルシーの腕をすごい力で握りしめていたからである、チェルシーの顔は激痛で歪んでいた。

 

 

「何してるの?」

 

 

クロメはすごい形相でチェルシーを睨みつけている、チェルシーは心底からゾッとした。

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

セリューが慌てて駆けつけて来た。

 

 

「この人が私のお菓子くすねようとしたのよ」

 

「本当ですか?」

 

「う、うん、おいしそうだったから一口もらおうと」

 

「くすねようとしたのはいけませんがクロメさんも少し行き過ぎでは?」

 

「このお菓子は普通の人は食べたらダメなの、何故ダメなのかは言えないけど」

 

 

ダメとはどういうことだろう?セリューは疑問に思ったが問いただすのは控えることにした。

 

 

「とにかく今後は軽はずみなまねはやめてください」

 

 

「うん、ゴメンねもうしないから」

 

「ううん、私もやりすぎた」

 

 

互いに謝罪してこの騒ぎは収まった、チェルシーはマイン達のところに戻った。

 

 

「アンタ大胆なまねするわね、大事になったらどうするのよ」

 

「うん、我ながら大胆だと思う」

 

いくらクロメのドーピングの秘密を掴むチャンスとはいえ以前の自分ならこんな大胆なことはしなかっただろう、ナイトレイドに入って変わってしまったのだろうか?

 

 

「さて、頃合いを見てこの場を去るわ・・・」

 

 

突然入口のドアが激しい音を鳴らして開き複数の男達が入って来た、チェルシーとマインはその男達を見てとても驚いた、なぜならその男達の中にある男がいたからである、その男とは今夜の仕事の標的となっているイヲカルだったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し更新が遅れてしまいました、上手に文章を創ろうとしたのですが全然だめでした、これからも下手な文章になってしまうと思いますがよろしくお願いします。


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第八十五話

七ヶ月ぶりの投稿です、肩と首の痛みがひどくなってなかなか投稿できませんでした、他にも自分の下手くそな小説はなくてもいいんではないかという思いもあり投稿しませんでした、でも、今年も残り少ないと思い投稿してみました、相変わらずの下手くそですがよろしくお願いします。


   遠縁を斬る(前編)

 

 

劇場内の人間は突然現れた男に皆驚いていた、その男は悪名高い大臣の親戚であるイヲカルだったからである。

 

 

「・・・あのお、ここへ何用ですか?」

 

 

団長は恐る恐る質問した、下手をすれば身の破滅であるから。

 

 

「その女を探していたのだ」

 

 

イヲカルは指を指した、その先には昨夜保護された女性がいた。

 

 

「その女は俺の屋敷にあるツボを割って逃げたのだ」

 

 

「そうなのですか?」

 

「そうだ、その女は俺が連れていく、文句ないな?」

 

「は、はい・・・」

 

正直団長は本当とは思えなかったが相手が大臣の親戚であるので拒否できなかった。

 

 

イヲカルは女性に近づいていく、女性の顔は恐怖に満ちていく。

 

 

「お、お願いします!!助けてください!!このまま連れて行かれたら私は殺されてしまいます!!」

 

「どういうことですか!?聞き捨てなりません!!」

 

セリューはイヲカルに問いただした、するとイヲカルは笑みを浮かべて答えた。

 

「気にするな真っ赤な嘘だ、この場を逃れるためのな」

 

「そうなのですか?」

 

「違います!!私はこの男に誘拐されたのです!!暴行されて隙を見てやっと逃げ出して来たのです!!」

 

 

「本当ですか!?本当なら・・・」

 

「嘘だと言ってるだろ、それとも俺の言うことを信じられないか?」

 

「それは・・・」

 

「俺に逆らえば叔父上が黙ってないぞ」

 

「・・・」

 

セリューは動けずにいた、自分の行動で隊長達に迷惑がかかってしまうことを恐れたからである。

 

 

 

 

「こいつは連れていく、文句ないよな?」

 

「は、はい・・・」

 

 

 

「さあ来い!!」

 

イヲカルは女性の腕を掴み強引に連れ出した、女性は必死に抵抗するも力及ばず引っ張られていく。

 

 

 

「あの人連れて行かれますわよ、姉様」

 

「当然助けますわよ、ロリス」

 

双子は女性を助けようと行動にとりかかった、これが男ならあっさり見捨てているところであるが。

 

 

「待ちなさい、二人共」

 

 

チェルシーが双子を制止した、双子はそれにムッとした。

 

 

「なんで止めますの!?」

 

「それはこっちのセリフよ、今飛び出したら終わりよ」

 

 

周りにはイヲカルの護衛が複数いる、何よりクロメとセリューがいるのだ飛び出すのは自殺行為である。

 

「じゃああの人を見殺しにするんですの!?」

 

「男ならいいですけど女性を見殺しにするのは許せませんわ!!」

 

聞き分けのない双子にチェルシーは鋭く双子を睨みつけた。

 

 

「いい加減にしなさい、これは命令よ」

 

チェルシーの冷たい眼光に双子は怯んだ。

 

「・・・わかりましたわよ」

 

「チェルシーのくせに生意気ですわよ」

 

双子は不満を抱きながら驚いてもいた、オールベルグ時代になかったチェルシーの冷徹さに、あの頃は帝具頼りの見習いにすぎなかったのに。

 

 

・・・ふぅ、おとなしく下がってくれて助かったわ、力ずくでこられたら私じゃ手に負えないから。

 

 

チェルシーは無表情で安堵している、双子はチェルシーがそう思っているとはつゆしらずである。

 

引き下がった双子を見てマインは複雑な思いだった、見殺しにするのは有効な手段であるがそうせざるをえない自分にスッキリしない思いを感じている自分に。

 

 

何もしない、これが正しい判断よ、アタシは間違っていないわ・・・

 

 

マインは自分に言い聞かせている、言い訳と百も承知で。

 

 

 

セリューは泣き叫ぶ女性を見て葛藤していた、助けたいが隊長達に迷惑がかかることを恐れて動けずにいた。

 

 

私はどうすれば・・・

 

 

その瞬間、父に言われた言葉が脳裏に浮かび上がっていた、今は亡き父の言葉を。

 

 

 

正義の道を歩んでいれば悩む時が必ず来るだろう、その時は自分の心に正直になれ

 

 

 

・・・そうでした、私としたことが一瞬とはいえ臆して正義の本分を見失ってしまうとは・・・まだまだ未熟です、

もう私は迷いません!!

 

 

 

「待ってください!!」

 

「なんだ?」

 

「その人は私達イェーガーズで保護します」

 

「何だと!?」

 

「その人が嘘を言っているとは思えません、調査が必要です」

 

「俺の言うことが信じられないのか!?」

 

イヲカルは顔を真っ赤にしてセリューを睨みつけた、セリューは臆することなく。

 

 

「あなたに非がないのなら調査しても問題ないのでは?」

 

「うぐ・・・」

 

 

問題大ありだった、屋敷には誘拐した女性が多数おり、暴行死させた遺体もあるのであるから。

 

 

「俺は大臣の親戚だぞ、そんなまねをしてただですむと思っているのか!?」

 

「私達イェーガーズには特権があります、そんな脅しに屈しません!!」

 

「ぐぎぎ・・・」

 

 

イヲカルは怒りで言葉を発することもできなかった、しばらくしてイヲカルある決意をした。

 

 

「お前達かかれ!!」

 

イヲカルは連れて来た護衛に命令を下した。

 

 

「いいんですか!?あいつ、エスデス将軍の部下ですよ!?」

 

 

護衛全員が恐怖で青ざめた、エスデスの怒りを買えば殺されるだけではすまない、どんな惨い目に遭うかわからないからである。

 

 

 

「心配するな、俺が後で叔父上にとりなしておく」

 

「そういうことなら・・・臣具使っていいですよね?」

 

「かまわん」

 

護衛達は安堵して臣具を装備していった、完全な臨戦態勢であった。

 

 

「仕方ありません、コロ!!」

 

「キュッ!!」

 

 

コロはセリューの命令で一瞬で巨大化した、こっちも準備完了である。

 

 

「まだ容疑の段階です、殺しちゃダメですよ!!」

 

「キュッ」

 

コロはわずかに不満だったがマスターの命令には従うことにした。

 

 

「エスデス将軍の後ろ盾があるからと言っていい気になるなよ、後悔させてやる、かかれ!!」

 

 

イヲカルは護衛達に命令を下した、護衛達は一斉にセリュー達に飛びかかる、帝具と臣具の激闘が開始された。

 

 

 

 




久しぶりの小説いかがでしたか、文章の出来には自信がありませんが更新してみました、今までのペースで更新はできませんが少しずつ投稿してみます、これからもよろしくお願いします。


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第八十六話

今日から令和が始まりました、これからもこの小説をお願いします


   遠縁を斬る(後編)

 

 

 

「お前達三人はそのデカブツと戦え、俺達二人でこの女と闘る」

 

「わかった」

 

イヲカルの護衛達は二手に分かれてセリューとコロに向かって行った、妥当な作戦である、普通なら。

 

 

「コロ、もう一度言うけど殺しちゃダメですよ、隊長達に迷惑かけるわけにはいきませんから!」

 

「キュッ!」

 

 

コロは少し不満であったがセリューの命令を受け入れた。

 

 

「クロメさんは手を出さないでください、これは私の責任ですから」

 

「わかった」

 

 

クロメはその場から少し離れてお菓子を食べだした、クロメはそれほど心配していない様子である。

 

 

 

セリューと護衛二人は交戦にはいった、お互い小手調べといったところである。

 

 

「エスデス将軍の後ろ盾があると思うなよ」

 

「最初からそのつもりはありません」

 

「その威勢いつまで続くかな?」

 

 

 

護衛の男はセリューを殴りにかかった、セリューは左腕でガードした、すると突然殴ったところが爆発した。

 

 

「!!?」

 

 

セリューは何が起こったのかわからず戸惑っている、男が使用した臣具は殴ったところを爆発することができる手甲である。

 

 

「なかなか面白いだろ、これで殴れば派手に肉が飛び散るんだぜ」

 

「くっ」

 

 

セリューは後ろに下がり態勢を立て直した、そして自分の腕が義手だったのが幸いした、これこそ皮肉だとセリューは思った、サヨとアカメに腕を切り落とされたために義手になったのだから。

 

 

「驚きましたけど、当たらなければ問題ありません」

 

「確かにな・・・だがこれはどうかな、やれ!」

 

「おう!」

 

 

もう一人の男が手にしていた棒をセリューの方に向けた、すると突然棒が猛スピードで伸びてセリューの腹に直撃した。

 

「ぐっ」

 

結構な効いたらしくセリューはうめき声をあげた、不意をつかれて防御がおろそかになったのである。

 

 

 

「伸びる棒の臣具・・・大臣の親戚となると護衛の装備も普通じゃないですね」

 

 

「まあな、(そのおかげでいろいろおこぼれにありつけるがな)」

 

 

思わぬ痛手を受けたセリューであったがすぐに切り替えて反撃に移った、セリューは棒使いに向かってダッシュした。

 

 

「何!?」

 

 

予想外の展開に慌てて棒を伸ばして攻撃した、セリューは正面から紙一重で回避してパンチでぶっ飛ばした。

 

 

「スピードはありますが直線的で避けるのは難しくありません」

 

 

 

「ちっ!」

 

男は舌打ちしてセリューに向かって行った、激しい攻防が繰り広げられた。

 

 

「やりますね」

 

 

「これでも俺は皇拳寺の師範代だったからな」

 

 

「それが何故彼の護衛を?」

 

「まあ、いろいろあってな」

 

 

「・・・悪事を働いて破門されたのでしょう」

 

「よくわかったな」

 

「あなたの人となりを見たら何となく」

 

「まあ、そんなのどうでもいいがな」

 

 

男は一気に勝負をつけるべくセリューの頭に狙いを定め拳を繰り出した、セリューの顔をグシャグシャにしたいのもあったが・・・

 

 

ボォオン!!

 

 

 

轟音とともに爆発が起こった、だがセリューは左手で拳を受け止めていた。

 

 

 

「やはり顔を狙ってきましたか、女子の顔を狙うとはゲスの極み!」

 

「くっ・・・」

 

男はセリューの眼光に怯み動けなかった、その隙をついてセリューの鉄拳が男をぶちのめした。

 

「ぐわー!!」

 

男は派手にぶっ飛んだ、ぶちのめされた男は完全に失神している、男の頬に鉄拳の後がくっきりと残っていた。

 

 

一方コロの方も片がついていた、三人がどれだけ殴ってもコロにはびくともしなかった生物型帝具であるコロには並の打撃はほとんど効果がなかっのである。

 

 

 

 

「・・・」

 

 

イヲカルは目の前の光景に呆然としていた、相手はあの悪名高いアカメを倒した帝具使い、元皇拳寺の腕利きでも苦戦することは覚悟していたがこんなにあっさりたたきのめされるとは思っていなかったのである、するとセリューはイヲカルに近づき。

 

 

 

「あなたを公務執行妨害で拘束します」

 

 

「ふ、ふざけるな!!俺はオネスト大臣の親族だぞ、この俺を拘束するだと!?」

 

「私達イェーガーズには特権があります、そんな脅しには怯みません」

 

「ぐぎぎ・・・」

 

 

イヲカルはワナワナふるえていた、怒りもあるが恐怖の方がはるかに強かった。

 

 

 

このまま拘束されれば叔父上は俺を助けてくれるだろうか・・・否!!エスデス将軍ともめるリスクを冒してまで俺を助けてくれるわけがない!!こうなったら・・・

 

 

 

 

「うわああ!!」

 

 

イヲカルは懐に納めた拳銃を取りだしセリューに向けて発砲した、だが恐怖で震えた手で撃ったため狙いが定まらず大きくそれてしまった。

 

 

「ああああ!!」

 

 

外れた弾丸はイヲカルから逃げ出した女性の胸に当たってしまった。

 

 

 

「な、なんてことを・・・」

 

セリューは倒れた女性を見て呆然とした、そしてセリューの怒りは頂点に達した。

 

 

 

「私を撃つならまだしも彼女を撃つとは・・・許さん!!」

 

「ち、違う、お前を狙ったんだ、狙いが外れてしまったんだ・・・」

 

 

「見苦しい言い訳をするな!!正義の名の元にお前を断罪してやる!!」

 

「や、やめろ!!大臣の親族であるこの俺を殺してたたですむと思っているのか!?」

 

「黙れ!!かよわき女性を手に掛ける悪の脅しになど私は屈しない!!」

 

「ひいいい!!」

 

 

イヲカルは涙ボロボロ鼻水を垂らしながら必死に出口に向かって走り出した。

 

 

「逃がさんぞ!!コロ、7番!!」

 

 

コロはセリューの腕に噛み付き大砲を装着させた、セリューは狙いをイヲカルに定めて準備が完了した。

 

 

 

「お前のその罪、爆炎とともに悔い改めろ!!」

 

 

ドオオオン!!

 

 

轟音とともに大砲がぶっ放された、イヲカルは木っ端みじんに吹き飛ばされ肉片もまともに残っていなかった。

 

 

 

「見たか、正義の力を!!」

 

 

セリューは鼻高々であったが周りにいた劇団員達の呆然とした様を見て辺りを見回して見ると劇場の観客席も木っ端みじんに吹き飛んでいたのである。

 

 

 

「やってしまいました・・・」

 

 

「セリュー一人で責任取ってよね」

 

「はい・・・」

 

 

悪を断罪するためとはいえ劇場を破壊してしまったことにセリューはおおいにへこんだ、そしてエスデスから大目玉を食らうことを考えるとさらにへこむセリューであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




四ヶ月ぶりに投稿しました、文章のできどうでしたか?以前よりも落ちているかもしれません、それでもがんばりますのでよろしくお願いします。


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第八十七話

久しぶりに更新します、文章は前よりも下手くそになっていると思いますがよろしくお願いします。


   拷問官を斬る

 

 

8月30日

 

 

イェーガーズの詰め所の事務室、そこには書類の処理をしているランの姿があった、するとそこにエスデスが入室してきた。

 

 

「いかがでしたか?」

 

「ああ、セリューの処分は私が一任することになった」

 

「そうですか」

 

 

セリューが大臣の親族を殺してしまい大臣がセリューを処刑する可能性もあったので最悪の事態はまぬがれたのである、穏便にはすまないだろうが。

 

 

 

遠縁の者なんかのために隊長との関係をギクシャクしたくないということですね・・・

 

 

ランの推測通り大臣はイヲカルの死など全く怒っておらず、むしろエスデスとの関係に影響しかけたことに激怒し、拘束した護衛達を腹いせに八つ裂きにしたのであった。

 

 

「あと、ウェイブとクロメさんをイヲカルの屋敷に向かわせました」

 

「どうだった?」

 

「はい、イヲカルの屋敷を調査したところ、誘拐され監禁されていた女性を多数発見し、保護しました」

 

「そうか」

 

 

エスデスは別に驚いていなかった、大臣の親族ならありえたからである。

 

 

 

「ところでセリューさんは?」

 

 

隊長のことだからおとがめなしにはしないだろう、とランは思い何気に聞いてみた。

 

 

「ああ、セリューなら・・・」

 

 

 

 

1時間前

 

 

 

セリューは拷問室にいた、この部屋には多数の罪人が拷問を受け悲鳴を上げていた。

 

 

 

「よく来たな、覚悟はできているな」

 

「はい」

 

 

セリューの顔には緊張が見られた、普段ならあまり見ることがない表情である、そしてセリューの格好も普段見られないものであった。

 

 

「あの、隊長・・・」

 

 

セリューは顔を赤くしてもじもじしていた、セリューはエスデスの指示で水着を着ていたのである、緑色のビキニである。

 

 

「何故この格好を?」

 

 

「すぐわかる」

 

 

エスデスはついて来いとセリューに命じある場所に案内した、そこにはエスデスが用意したあるものがあった。

 

 

「これは?」

 

 

そこには巨大な釜があった、釜の中には熱湯がグツグツと煮え返っていた。

 

 

「お前のために私が直々に用意した、思う存分に味わえ」

 

「はい!」

 

 

セリューは元気よく返事し釜の中にドボンと入った。

 

 

 

「どうだ?」

 

「て、帝都っ子はこの程度のお湯はへっちゃらです」

 

 

セリューは強がっているものの顔を真っ赤にして汗だくであった、その様子を拷問官達はジーと見ていた、エスデスは突然拷問官の方に振り向いた。

 

 

 

「何をしている、お前達もさっさと入らんか」

 

「ええええええ!!?」

 

 

拷問官達はエスデスの言葉の意味を理解できなかった、あたふた慌てていると。

 

 

「お前達は拷問の極意を知りたいのだろう、ならその身で体験するのが一番だ」

 

 

「し、しかし・・・」

 

 

ぐずぐずしている拷問官達を見てエスデスは次第にいらいらし始めた。

 

 

 

「私が造った拷問に不服か?」

 

 

ゾクゥゥ!!!

 

 

拷問官達は全員凍てつく恐怖を感じた、このままでは命が危ない、そう直感し行動に移った。

 

 

「は、入らせていただきます!」

 

「行くぞ!」

 

「うおおおお!」

 

 

拷問官達は次々と釜に飛び込んで行った、そして地獄絵図が始まる。

 

 

「ぎゃあああ!!」

 

「あ、熱い、熱いー!!」

 

「ああああ!!」

 

 

拷問官達は恥も外聞もなくみっともない悲鳴を上げている、エスデスはそれを見てご満悦だった。

 

 

「こうでなくてはな、この悲鳴がなくては拷問を造ったかいがないからな」

 

 

エスデスはご機嫌で連中の苦しむ様を見物したのであった。

 

 

 

 

「というわけだ」

 

「それは、それは・・・」

 

 

それはたいそうな地獄絵図だったでしょうね、ランは心の中でつぶやくのであった。

 

 

「どうだ、ラン、この機会にお前も体験しないか?」

 

「せっかくのお誘いですが、セリューさんの一件に関する書類が山積みになっていますので」

 

「確かに、これだけの書類を処理できるのはお前だけだな、またの機会にするか」

 

「はい」

 

 

ランは普段の表情で返事した、心のなかでは大喜びであったが。

 

 

「ではあとは任せたぞ、私は釜の湯を調整しに行ってくる」

 

「はい」

 

 

エスデスは部屋を後にした、事務室にはラン一人だけになった。

 

 

「拷問官の人達大変ですね、まあ、セリューさんは大丈夫でしょうが」

 

 

ランの予想通りセリューはのぼせただけだったが、拷問官達は瀕死の状態まで追い込まれたのであった。

 

 

 




この五ヶ月の間に面白い新作が次々出てきました、正直自分の小説はなくてもいいんじゃないかと思いつつ再度投稿しました、これからも投稿しようと思います、よろしくお願いします。


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第八十八話

UAが30000に達しました、うれしい限りです、うまくない小説ですがこれからも応援よろしくお願いします。


   八つ当たりを斬る(前編)

 

 

 

「そんな大変な事になってたんだ・・・」

 

 

サヨはマインから帝都で起こった事のいきさつを聞いて驚いていた、まさかナイトレイドの標的をセリューが仕留めてしまうなんて夢にも思わなかったからである。

 

 

「ええ、セリュー自身も強かったし、生物型帝具も強かったわ、そしてなりより奴の武装・・・帝具でもないのにかなりの威力よ」

 

 

「・・・」

 

サヨは黙り込んでしまった、いずれセリューと戦うことになるかもしれない、はたして自分に勝てるのか?はっきり言ってあまり自信がなかった、それでもいつかその時がくる、それまでにもっと強くならないと・・・サヨは心の中で決意した。

 

 

 

「・・・劇場が木っ端みじんになったどさくさに紛れて逃げ出せたのよね」

 

「そうよ、シャクにさわるけど丸腰じゃ仕方なかったわ」

 

「無事逃げ出すことができてよかったじゃない」

 

「・・・」

 

 

マインはさらに不機嫌になっていった、サヨは理由を聞こうと思ったが面倒なことになると思い聞かないことにしようとしたが。

 

 

「問題はこの先よ・・・」

 

 

マインは勝手に話し始めた、サヨはここから立ち去りたかったがさらに面倒になると思い仕方なく聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイン達は劇場から全力で逃げだしていた、事情聴取なんてされたら正体に気付かれる危険がある、無我夢中で走り抜けていった。

 

 

「ここまで来れば大丈夫ね」

 

「ええ」

 

マインとチェルシーは汗だくになりながら周りを見回した、クロメ達は追って来なかったのが確認できた。

 

 

「マイン、ラバの店へ行かない、あそこなら隠れるのにうってつけだから」

 

「そうね・・・ところであの双子は?」

 

「そういえば」

 

 

マインとチェルシーはミーラとロリスがいないのに気付いた、確かにさっきまで後ろにいたはずだが。

 

 

「あっ、あの店の中にいるわ」

 

 

チェルシーはとある店を指を指した、その店は帝都でも有名なスウィーツの店である、何故あの店にいるのか、マインは次第にいらいらしてきた。

 

「とにかく行くわよ」

 

「ええ」

 

 

二人は店に入り双子の元に駆け寄った、双子のテーブルには色とりどりのスウィーツでいっぱいだった。

 

 

「アンタ達何やってるの!?」

 

「見てわかりませんか?ケーキを食べてるんですわ」

 

 

ミーラの返事を聞いてマインはムカッとした、二人は全く気にせず食べ続けている。

 

 

「そんなの見ればわかるわよ、なんで勝手に食べてるのよ!?」

 

 

マインの怒号に二人は全く気にしていない、それどころかマインに余計なことを言ってしまう。

 

 

「そんなの食べたかったからに決まってますわ」

 

「そんなこともわからないなんて頭悪いですわね」

 

 

ブチッ

 

 

双子の遠慮のないセリフにマインはこめかみに怒りの青筋を浮かび上がらせた、爆発寸前のマインにチェルシーはなだめようとした。

 

 

「まあまあ、マイン落ち着いて」

 

「落ち着けるわけないでしょ!」

 

「そりゃそうだけど・・・この双子にむきになっても仕方ないわよ」

 

「じゃあ、どうするのよ!?」

 

「私に任せて」

 

 

チェルシーには秘策があった、二人に言うことを聞かせるとっておきが・・・

 

 

 

「あなた達、そろそろ帰るわよ」

 

 

「私達まだ食べたりませんわ」

 

「そうですわ、まだまだ食べたいですわ」

 

 

双子の生意気さにチェルシーはムカッとしたが怒りを抑えてとっておきを使うことにした。

 

 

「マシロに言い付けるわよ」

 

その瞬間双子の顔色が変わった、明らかにびびった表情であった。

 

 

「き、汚いですわ!」

 

「マシロさんの名前を使うなんて!」

 

「なんとでも言って、現実はケーキ見たいに甘くないのよ、さあ、帰るわよ」

 

「・・・わかりましたわ」

 

 

双子はチェルシーにしてやられてとても悔しがっている、マインはいまひとつ釈然としないがこれで双子をおとなしくできるならいいかと思うことにした。

 

「さあ、早く店をでるわよ」

 

 

「・・・仕方ないですわ」

 

「・・・もっと食べたかったですわ」

 

 

双子は不満でいっぱいであった、渋々店を出ようとしている双子を見てやれやれの表情をしたマインであった、だがそれを阻もうとする者が現れた。

 

 

「お客様お帰りですか?」

 

突然筋骨隆々の大男が現れた、この男はこの店のオーナーシェフであった。

 

 

「ええ、そうよ」

 

「では、お会計を」

 

「そう、じゃあアンタ達払って」

 

「私達お金持ってませんわ」

 

「あなたが払ってください」

 

「はあ!?なんでアタシが!?」

 

 

双子の身勝手さにマインは激怒した、無論双子は臆していないが。

 

 

「そうは言っても持ってないんだから仕方ないですわ」

 

「だからあなたが払ってください」

 

 

「ふざけんじゃないわよ!!アタシは絶対払わないから!!」

 

 

「お客様、まさかお代を払わないおつもりで?」

 

 

「そ、それは・・・」

 

コワモテ顔でせめられてマインは思わず怯んでしまった、無論それだけではないが・・・

 

 

「そうなると警備隊に通報しなくてはなりません」

 

「ちょっと待って!」

 

 

マインは焦った、こんなマヌケな一件で捕まるなんてばかな話はない、そうなると手段は一つしかない。

 

 

「ああ、わかったわよ、払えばいいんでしょ、払えば!!」

 

マインは不本意の極みで渋々代金を店長に支払った。

 

「ありがとうございます」

 

 

店長はマインから代金を受け取り上機嫌であったがマインはこれ以上なく不機嫌だった、支払った代金は本来マインが帝都でショッピングを楽しむためのお金であったのだ、それが双子のせいで台なしになってしまったのだから。

 

 

「・・・なんでこんな・・・」

 

マインは怒りの眼差しで双子を睨みつけた、双子は全く怯んでいなかったが。

 

 

 

「アンタ達のせいでショッピングが台なしになったじゃない、どうしてくれるのよ!!」

 

「だって私達お金なかったのですから仕方ないですわ」

 

「ふざけるな!!」

 

「まあまあ、私達のきれいな足を見て機嫌を直してください」

 

 

ミーラとロリスは藍色のミニスカートをひらつかせて太ももを見せつけた、その行動がさらにマインを激怒させた。

 

 

「ふざけんじゃないわよ、アンタ達の貧相な足なんか見てうれしくなるわけないでしょ!!」

 

 

「あらあら、自分が大根足だからひがんでいるんでしょ」

 

「身長も心も小さいですわ」

 

 

ブチッ

 

 

 

マインの中で何かが切れた音がした、そして思わずマインはある行動に移った。

 

 

「大根足かどうかとくと見なさい!」

 

 

マインは自分のスカートをつかんでめくり上げた、双子に自分の美脚を見せつけるためである。

 

 

「これは・・・」

 

「なんて見事な美脚・・・」

 

 

双子はマインの美脚に見とれてしまっていた、マインはすっかり勝ち誇っていたがマインは自分の行動にひどく後悔することになる。

 

 

「・・・マイン、上機嫌なところ悪いんだけど」

 

「何?」

 

 

チェルシーは困った顔である場所を指さしていた、マインはその指さした場所を見た、そこはスカートをめくり過ぎて丸だしになったパンツの姿があった。

 

 

「きゃああああ!!?」

 

 

マインはとっさにスカートを押さえてパンツを隠した、だがすでに店内の多くの人間にパンツを見られていたのであった、店内は大騒ぎになっていた。

 

 

「うううう」

 

マインは顔を真っ赤にしてべそをかいていた、これ以上ない赤っ恥をかいてしまったからである。

 

 

「・・・見事な不意打ちパンツでしたわ」

 

「・・・私達の完敗ですわ」

 

「よ、よかったじゃないマイン、この娘達に一泡吹かせることができて・・・」

 

 

 

チェルシーはなんとかマインをなぐさめようとした、なぐさめにもならないことはチェルシーにもわかってはいるが女としてほっとくわけにはいかないのであった。

 

 

 

 

マインは不意打ちパンツを習得した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのばか双子のせいでアタシは散々だったのよ!」

 

「・・・そうね」

 

 

マインには悪いけど正直自分には関係ないと思うサヨであった、サヨとしてはとばっちりをくらう前に退散したいのであった。

 

 

「じゃあ私行くね」

 

「ちょっと待って、さっきの胸の話の続きなんだけど・・・」

 

 

 

出遅れた!!そうサヨが思った瞬間マインは次の行動に移っていた。

 

 

ぐにゅうううう

 

 

マインはサヨの胸をおもいっきり握りにかかった、このまま握り潰しそうな勢いであった。

 

 

「い、痛い、痛い、やめてよ!!」

 

あまりの痛さに思わず涙が出た、それでもマインは握りしめるのをやめない。

 

 

「アタシが揉んでもっと胸を大きくしてあげるわ、感謝なさい!!」

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

「痛いって言ってるでしょ、この!!」

 

 

ぐにゅうううう

 

 

サヨもお返しにマインの胸を握りしめた、マインの目にも涙が出た。

 

 

「やったわねえ!!」

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

「このお!!」

 

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

 

 

「アンタずいぶん生意気になったじゃない、この機会に上下関係教えて上げるわ!」

 

 

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

「最初の頃ならいざ知らず、今の私達に大きな差はないでしょ!」

 

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

「言ってくれるじゃない、調子に乗ってるんじゃあないわよ!」

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

「そもそもさっきのぼやきだってマインに言ったんじゃないのに、自意識過剰よ!」

 

 

 

ぐにゅうううう

 

 

 

二人の不毛な戦いは果てしなく続いた、だが突然終焉を向かえる。

 

 

 

「・・・何やってんだお前ら?」

 

 

風呂場に入ってきたナジェンダは目の前の光景にア然としていた、その瞬間二人の手は止まった。

 

 

「あっ、ボス!」

 

サヨは慌てて手を放した、そしてまたたく間に赤面していく、みっともないとこを見られたからである。

 

 

「サヨが生意気だからしめてやってたのよ」

 

「だから誤解だって言ってるでしょ!?」

 

 

「・・・とにかく二人とも落ち着け」

 

 

ナジェンダは再び揉めそうになった二人を落ち着かせてこれまでのいきさつを説明させた、説明を聞いて

ナジェンダはおもいっきりあきれた。

 

 

 

「とにかく胸のことなどでつまらん騒ぎを起こすな、わかったな」

 

「・・・わかったわよ」

 

 

渋々マインは従ったが本音としてはそんなでかい胸を持っているアンタに言われたくない、そう叫びたかったが面倒臭いことになりそうなので叫ばなかった、するとそこにある乱入者が現れた。

 

 

「何々、何の騒ぎ!?何か始まるの!?」

 

「来たかレオーネ」

 

 

レオーネが現れた・・・余計な面倒ごとが増えるような気がしてならないナジェンダであった。

 

 

「ねえサヨ何があったのか教えてよ」

 

「べ、別に何もないわよ」

 

「教えないと胸揉んじゃうよ」

 

「わ、わかったわよ」

 

 

サヨはこれまでのいきさつをレオーネに説明した、するとレオーネはとてもがっかりした。

 

 

「そんな面白いことになってたんだ、私もその場にいたかったな」

 

 

サヨはつくづくレオーネがその場にいなくてよかったと思った、もしレオーネがいたら一方的にセクハラを受けていたであろう。

 

 

 

「それにしてもマイン、お前がそんなに胸のことで悩んでいたなんて・・・もしよかったら私が・・」

 

 

レオーネが言い終える前にマインはパンプキンの銃口をレオーネに向けた、レオーネの頬に汗が流れた。

 

 

「余計なことしたら撃つわよ」

 

「・・・わかった」

 

 

レオーネは顔を青ざめて面白いを断念するしかなかった、さすがのレオーネもパンプキンの前ではかたなしであった。

 

 

「にしてもこのまま何もなしっていうのも面白くないな・・・そうだ!」

 

 

レオーネが何か思いついたようである、きっとろくでもないことに違いない・・・

 

 

 

「今度ファルに会ったら胸揉んでやるか、あいつ胸ないって嘆いてたし」

 

 

「やめろ、余計な騒動の種を蒔こうとするな!」

 

 

 

ナジェンダがレオーネに注意をするもレオーネは全く聞くつもりはないようである、サヨは近い将来面倒ごとが起こりそうな予感がしてならないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今年も残り少なくなりました、体調に注意して過ごしてください、それではまた。


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第八十九話

もう今年もわずかです、今年最後の話をご覧ください


  八つ当たりを斬る(後編)

 

 

9月6日

 

 

ナイトレイド一行は帝都から遥か西方にあるニアメーク地方に赴いていた、この地域は西の異民族に返還が予定されている領土である、一行はある任務を命じられていた・・・

 

 

 

「私達の任務はこの地域の賊の討伐なんですよね?」

 

「ああ、賊の討伐を行うことで西の異民族に誠意を見せるというのが名目だ」

 

「賊の討伐を行うことで誠意を見せることができるのですか?」

 

「正直微妙だな」

 

「じゃあ何のために?」

 

 

 

サヨは首を傾げているとナジェンダはそれについての説明を始めた、現在革命軍、西の異民族はメンツを気にして動きづらい状況である、だがこのまま何もしなければただ時間が無駄に過ぎていくだけである、そこで革命軍が何か行動することで西の異民族が動きやすい状況になるかもしれないということである。

 

 

 

 

「でも、そんなに都合よく動いてくれるのですか?」

 

「絶対とは言えんが何もしないよりはましだろう」

 

「・・・そうですね」

 

 

サヨはそう返事したものの何かスッキリしないものを感じた、だが外交問題となると自分には何もできない、ボスも似たような気持ちだろう、ボスの発言権は決して高いものではないのだろう、ならば自分にできることを精一杯勤めるだけである、でも一つ気掛かりなことがある。

 

 

「・・・もし西の異民族との関係が修復されたら、ボスの身が危ないんじゃ」

 

「確かにな」

 

 

 

ナジェンダは帝具損失の責任を押し付けられて、執行猶予つきの打ち首を命じられているのである、手柄をたてれば帳消しになるが。

 

 

「手柄をたてる前に修復したらあの人ならためらいなくボスを打ち首にしてしまうんじゃ・・・」

 

 

「そうだな、だが、帝国打倒するためには西の異民族との同盟は不可欠だ、私一人の命のためにもたつくわけにはいかない」

 

 

「でも・・・」

 

「まだ西の異民族との関係が修復したわけではない、今は目の前の任務に集中だ」

 

「そうですね、この任務で手柄をたてればいいんですから」

 

「そうだ」

 

 

手柄をたててばボスの打ち首が取り消しになる、今はそのことに集中すべきである、サヨはそう決意した。

 

 

「それにしても結構人多いですね」

 

 

周りを見回すとサヨが知っている顔が多かった、全員ではないが。

 

 

「ああ、範囲が広いからな、私達だけじゃ時間がかかり過ぎる」

 

 

「確かに、この一帯かなり広いですから」

 

 

帝都から離れた辺境だから大きな街はない、その分草原や森林が多い、当然であるが。

 

 

 

「サヨさん、おひさ~」

 

 

聞き覚えのある声がして後ろを振り向くとそこにファルがいた、当然エアとルナもいるはずである。

 

 

 

「ファル、久しぶり」

 

「お互いこんな遠くまで行かされて大変だね」

 

「仕方ないわよ、革命軍も土壇場なんだから」

 

「そりゃそう・・・ひゃっ!?」

 

 

突然ファルの言葉が止まった、そうさせた者がファルの後ろにいる、それはレオーネである。

 

 

 

「久しぶりだなファル」

 

 

 

もにもにもにもに

 

 

「な、なんで私の胸を揉むんだよ!?」

 

 

もにもにもにもに

 

 

「お前以前胸ないってぼやいてただろ、だから私が揉んで大きくしてやるんだよ」

 

 

もにもにもにもに

 

 

「余計なお世話だ!!」

 

 

もにもにもにもに

 

 

「遠慮するなって」

 

 

 

もにもにもにもに

 

 

「やめろ!!やめないと帝具を使ってレオーネに禁酒させるぞ」

 

 

「忘れたのか?前に私に使っただろう」

 

「そっちこそ忘れてないか?あの時私のしか使ってないだろ、エアとルナのを使ってレオーネを禁酒にさせることが

できるんだぞ」

 

 

「・・・そんな脅しに私が屈すると思ったか?」

 

「な、なんだよ・・・」

 

 

ファルはア然とした、レオーネが禁酒に動じないなんてありえないから、だが次の瞬間それは覆される。

 

 

「ごめんなさい!!禁酒だけはマジ勘弁!!」

 

 

レオーネは目にも止まらぬ速さで土下座した、完璧な土下座だった。

 

 

「ホント酒好きだなあ・・・」

 

 

ファルはあきれつつも惨めにも感じた、こんな大人にはなりたくないものだとつくづく思うのであった。

 

 

 

 

「ちょっといい」

 

「何?サヨさん」

 

「あなた達の帝具っていつまでも効果続くの?」

 

「いつまでもじゃないよ、長くても半月くらいだよ」

 

「ふうん、そうなの・・・」

 

「どうしたの?」

 

 

一体何を考えているのだろう、ファルは興味津々であった。

 

 

「ねえ、二人のどちらかに頼んでレオーネを半月だけ禁酒にしてくれない」

 

「なんで?」

 

「レオーネの借金増え続けるばかりだから、この際禁酒にさせて酒代浮かそうと思って」

 

 

この時サヨは大きな過ちを犯したことに気がついていなかった、そしてサヨに災いが降りかかる。

 

 

 

もにゅ

 

 

「ひゃっ!?」

 

 

 

レオーネはものすごい剣幕で後ろからサヨの胸を掴みにかかった、そして力強く揉みはじめる。

 

 

もにもにもにもに

 

 

「サヨ、てめぇ、よりにもよってなんてこと言いやがる、ふざけるな!!」

 

「だって、レオーネの借金増える一方じゃない、だから酒代を浮かそうと思って・・」

 

もにもにもにもに

 

 

 

「だからと言って私を禁酒にさせるとか、お前には血も涙もないのか!?」

 

「じゃあ借金どうするのよ?」

 

「だったらお前が私の借金立て替えろ!」

 

「はあ!?ばか言わないでなんで私が・・・」

 

 

 

なんで私がレオーネの借金を立て替えなければいけないのよ、そんなばかな話ないわよ!!

 

 

「立て替えないならこうしてやる!!」

 

「ちょっ・・・ひゃああああ!!」

 

 

レオーネはさらにサヨの胸を力強く揉みはじめた、サヨは抵抗するもレオーネの前には無意味であった。

 

 

 

「・・・ナジェンダ」

 

「・・・気にするな!!」

 

 

スサノオの呼びかけをナジェンダは強引に無視した、レオーネがファルの胸を揉むと言った時からこうなる予感はしていたのだ、だから取り乱すな!!ナジェンダは自分自身に強く心の中で言い聞かせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか今年中に更新することができました、あいからわず文章は下手くそです、うまい人の小説を見て勉強しているのですが、とにかく今年も明日で終わりです、来年もよろしくお願いします。


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第九十話

いろいろありまして投稿が遅れて今年最初の作品になりました、久しぶりなので文章がさらに下手になっていると思います、どうかよろしくお願いします。


話は変わりますが今回に出てくるキャラクタージャドの声は郷田ほづみさんをイメージしてください。ジャドは50話で初登場した密偵チームの隊長です。


  政略を斬る

 

 

 

 

 

 

ナジェンダとジャドから今回の任務の内容を説明された、その内容はこの地域にたむろしている賊の掃除である、賊の強さはたいしたことはないが広範囲で数が多く困難ではないが面倒ではあるということである、ナイトレイドの面々は任務に対して気合いを入れていた、一人を除いて・・・

 

 

 

「・・・ううう、私はレオーネの借金を心配して言ったのになんでこんな目に・・・」

 

 

サヨはレオーネに胸を揉まれてシクシク泣いていた、それでも任務に向けて強引に気持ちを切り替えることにした。

 

 

 

「あいからわずお前らお笑いが好きだな、だが今は任務に集中しろ」

 

「わ、私だって好きでこんなこと・・・」

 

 

 

サヨはジャドに懸命に弁解した、だがジャド本人にはたいして聞く気はなかった。

 

 

「とにかくだ、お前らはこの地域の賊を片っ端から駆除しろ」

 

「は、はい」

 

サヨは返事したがしばらく考えこんだ、西の異民族の事もあるが他にも気になっている事もあったのである。

 

 

 

「どうした?」

 

「あ、いえ、これで西の異民族との関係が良くなるのかなあと思って」

 

「正直なんとも言えんが、俺達革命軍が動く事に意義があるんだ」

 

 

サヨはそうですねと言いつつ苦笑いした、はっきりいってうまくいくかは博打みたいなものであるから、だが他に妙案がないので仕方ないのであった。

 

 

「ところで交渉を台なしにしてしまった幹部はどうなったんですか?」

 

「ああ、今だ行方がわからん、まあ、今はあいつらに構っている暇はないからな」

 

「え?ほっといていいんですか?そもそもあの二人が原因なのに」

 

「あいつらの首を西に差し出して丸く収まると思うか?」

 

「・・・正直微妙ですね」

 

「そうだろう、西が一番欲しいのは領土だ、首なんか送っても喜ばんさ」

 

 

 

もし自分が西の立場なら首なんか送ってこられても迷惑である、サヨは心の中でつぶやいた。

 

 

 

「とにかく今は賊の討伐に専念ですね」

 

「そういうことだ」

 

「・・・頑張ります」

 

 

サヨは一瞬返事が遅れた、もう一つ聞きたいことがあるのだがそれはまた今度にしようと思った、だがジャドはそれを見逃さなかった。

 

 

「どうした、まだ聞きたいことがあるのか?」

 

「・・・はい、実は」

 

 

「言ってみろ、任務に支障がでると面倒だぞ」

 

 

サヨは思い切って質問してみた、革命軍は皇帝をどうするつもりなのかと、するとジャドの返答は非情なものだった。

 

 

「皇帝には死んでもらうことになるだろうな」

 

「・・・そうですか」

 

 

サヨはある程度その答えは予想していた、新しい国作りになれば重荷になりかねないからである。

 

 

「何故お前が皇帝のことを気にする?」

 

 

サヨはそれについての説明をした、以前助けたチョウリが皇帝を救出すべく行動すると言っていたからである。

 

 

「なるほどな、それでお前が皇帝を気にしているのか」

 

「はい」

 

「実はな皇帝の処遇について革命軍の首脳で意見が割れているんだ」

 

「どういうことです?」

 

 

ジャドの説明によると余計な火だねを即効で消しておきたいと思っているエヴァと皇帝を消すのをためらっているハクロウで意見が割れいるのだ。

 

 

「ハクロウさんが?」

 

サヨはハクロウには温厚なイメージがあった、するとジャドはサヨの考えを察してそれを否定した。

 

 

「ハクロウが単なる温厚な奴だと思ったら間違いだぞ、有効なら冷酷な手段も決断できる奴だからな」

 

「じゃあ、なんでためらっているんですか?」

 

 

「それはな、チョウリがブドーと手を組む事態になってしまう恐れがあるからだ」

 

「どういうことです!?」

 

ジャドの説明によるとチョウリもブドーも皇帝に忠義を誓っており、皇帝を護るためなら手を組む可能性は高いのである。

 

 

「確かに、十分ありえますわね・・・」

 

 

あの二人が組めば革命軍にとってもかなりまずいことになる、サヨが戦慄を感じているとジャドはさらに説明を始めた。

 

 

「それだけじゃない、西の異民族もそいつらにくら替えするかもしれないんだ」

 

「えっ、どういうことです!?」

 

 

西の異民族が出てきてサヨはわけが分からなくなった、ジャドの説明によると・・・

 

 

 

皇帝側についたら獲得できる領土が増えるとチョウリが西の異民族に話を持ちかけるかもしれないのである。

 

 

 

「西の異民族が裏切ると!?」

 

「十分ありえる、あいつらは帝国の敵ではあるが革命軍と一蓮托生ってわけではないからな」

 

「じゃあ皇帝は生かしたままに?」

 

「そうもいかないんだ、さっきも言ったが皇帝は確実に余計な火だねになる、何もしないわけにはいかん」

 

「じゃあどうするんですか?」

 

「そこが頭が痛いところなんだ、どっちに転んでもまずいからな、まあ、今はそれを気にしてもしょうがねえ、今は西の異民族との再交渉にこぎつけないとな」

 

「確かにそうですね」

 

「気を切り替えろ、後1時間で任務開始だ準備を万端にしておけ」

 

「はい」

 

 

サヨは今はありもしないスケールの大きい事態を忘れることにした、目の前の任務に集中するために。

 

 

 

 

 

 

 

 




世間の状況が少し落ち着いたので再び投稿したいと思います、これからも応援お願いします。


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第九十一話

旧友を斬る

 

 

 

サヨは任務開始までの間にある人に声をかけようとした、この地域に到着した時にチラリと見かけたのである、その人は以前革命軍の本部で見かけたが全く話をすることができず今日まで会うこともなかったのである、任務前に話しかけていいのかと考えたが今の内に話をしてすっきりしておこうと思いその人に話かけた。

 

 

「ちょっといい?」

 

「何?」

 

 

サヨは革命軍の軍服を着た女子に話しかけた、彼女の名前はチュニ、かつてシェーレの友達だった人である。

 

 

「あなた以前シェーレの友達だったんでしょう?」

 

「・・・まぁね」

 

 

チュニは気まずいそぶりをしている、彼女は自分がふった彼氏に殺されそうになったところをシェーレに助けてくれたにもかかわらず何も言わず離れていったのだから。

 

 

「・・・シェーレ今どうしてる?」

 

「それはだいたいのことなら知ってるでしょう」

 

「そうだけどね・・・」

 

 

革命軍に所属していたらシェーレのことは多少なり知っているはず、おそらく彼女はシェーレと関わりたくないんじゃあ、気持ちは分からなくないけど・・・

 

 

「別にシェーレと元通りの関係になれと私は言うつもりはないわ、ただ私はあなたに一度でいいからシェーレと話をしてほしいのよ、話をした後シェーレと一切関わらなくても構わない、このまま何もしないのはいいとは思わない」

 

 

「それであなたに何か得があるの?」

 

「別に、ただ私がすっきりしたいだけよ」

 

「・・・わかった、シェーレを呼んできて、話を付けるから」

 

 

 

サヨはチュニの元へシェーレを連れて来た、サヨとしては二人が仲直りしてほしいところだが簡単にはいかないだろう・・・

 

 

 

「シェーレ、悪かったわね、助けてくれたのに一方的に無視して」

 

「いいんです、私のしたことは人殺しなんですから、怖いのは当たり前です」

 

「私のこと薄情な恩知らずと思わないの?」

 

「いいえ、全然、だからチュニも気にしないでください」

 

 

サヨはシェーレの様子を見てシェーレは全く恨んでいない、これなら仲直りできそう、そうサヨが思っていると。

 

 

 

「そうよねー、もうすんだことなんだし、気にすることないわね」

 

 

サヨはあれっと思った、チュニの態度が軽いような・・・

 

 

 

「ねえ、シェーレ、彼女・・・なんか軽すぎない?」

 

「そんなことありませんよ、チュニは昔から切り替えが速いんです、あの時も・・・」

 

「あの時?」

 

 

 

 

シェーレの回想

 

 

 

ガシャン!!

 

 

 

シェーレはチュニのカップを落として割ってしまった。

 

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「気にしないで、どうせ安物なんだし」

 

「でも・・・」

 

「そうだ、気分転換に買い物に行かない?」

 

「いいんですか?」

 

「いいの、いいの、さあ、行くわよ」

 

 

 

二人はお店に出かけ、チュニは店に着くなり商品を片っ端から手に取った。

 

 

「シェーレ」

 

「なんですか?」

 

「悪いんだけど、私財布忘れちゃて、シェーレ立て替えてくれない?」

 

「いいですよ」

 

「ありがとう、私達、いつまでも友達でいようね」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「私がどんなドジをしてもチュニはお買い物に連れて行ってくれたんです」

 

「それ絶対たかられてるよ!!」

 

 

なにこの人・・・シェーレのこと金づるとして利用してただけだったんだ・・・

 

 

「そんなことありませんよ、チュニがおごってくれたことありましたし」

 

「何を?」

 

「ジュースとかお茶とか・・・」

 

「安いものばっかりじゃない!!」

 

「高い安いは私は気にしませんよ」

 

 

散々たかられたのに・・・本当にシェーレっていい人ね・・・だからシェーレがふびんでならない・・・なんとかしないと!!

 

 

「チュニ、シェーレと本当に仲直りしたいと思っている?」

 

「うん」

 

「じゃあ、シェーレが立て替えたお金を全部シェーレに返してよ」

 

 

サヨの予想ではチュニは金を払うのを渋ると思う、でも、このままじゃシェーレがかわいそうすぎる・・・

 

 

「いいよ」

 

「えっ、本当!?」

 

「本当よ」

 

「結構な額になっているはずでしょ?」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

 

チュニはお気楽そうにあるものを取り出した、それは魚、魚らしい物体だった、それは魚に見えるが全身真っ白で細長く何より目の部分が特に特徴的であった、その形は双眼鏡そのものだったからである。

 

 

(この物体は深海魚ボウエンギョをイメージしてください)

 

 

 

「・・・それ生物型臣具だよね?」

 

「そうよ、よくわかったわね」

 

「そりゃ分かるわよ、チホシとマムシのを見てきたんだから」

 

「そりゃそうか、じゃあ改めてこれの紹介をするわね、これは生物型臣具キプリス、私のご機嫌な臣具よ」

 

 

チュニはキプリスを左腕にはめて決めポーズを決めた、なんともシュールな姿である。

 

 

「それでどうやってシェーレにお金を返すの?」

 

「こうするの」

 

 

チュニはキプリスをはめた左腕をボスの方に向けた、すると妙な音が鳴り響いた。

 

 

カシャ  カシャ  カシャ

 

 

するとキプリスの口から紙が出てきた、その紙はボスの絵であった、だが絵にしてはあまりに鮮明すぎた、まるで空間を切り取ったと思うほど鮮明だったからである。

 

 

「これは?」

 

「これがキプリスの能力よ、さらにこの絵を大量に出すこともできるわよ」

 

「すごいわね・・・でもこれをどうするの?」

 

「それわね・・・」

 

 

チュニはラバにここに来るように呼び出した、もしかしてラバに・・・

 

 

「ねえラバ、これ欲しくない?」

 

「こ、これは・・・」

 

 

ラバはボスの絵を見て興奮した、恋するボスの鮮明すぎる絵を見れば当然だろう。

 

 

「この値で買わない?」

 

チュニは指で値段を示した、それは相当法外な値であった。

 

 

「そ、それはいくらなんでも高すぎる・・・」

 

「いいの?もう二度と手に入らないよ?」

 

 

ラバは悩んだ、懸命に悩んだ、そしてラバは結論を出した・・・

 

 

「持ってけ泥棒!!」

 

「まいどあり」

 

 

ラバはチュニに大金を渡し、チュニは絵を渡した、ラバはボスの絵を手にして大喜びしている。

 

 

「はい、シェーレ」

 

「ありがとうございます」

 

チュニはシェーレに借りてきたお金を返した、正直に言ってこれでいいのだろうか・・・

 

 

「シェーレ・・・」

 

「チュニがお金を返してくれました」

 

「よかったわね・・・」

 

まあ、シェーレが喜んでいるからいいかな・・・

 

 

 

「一つ聞くけど、まさかそれを使って味方の失敗を絵にしてゆすりのネタなんかに使ってないわよね?」

 

 

「・・・そんなことないよ」

 

「なんで目をそらすの!?」

 

やってるんだ、ゆすりを!!なんて人なの!!サヨは文句を言おうとしたがすんでのところでやめた。

 

 

殺し屋の私が偉そうなことは言えない、サヨは自分を諌めチュニに何も言わなかった。

 

 

「じゃあ私行くね、任務頑張ってね」

 

「はい」

 

チュニはそう言ってこの場を去って行った、サヨはチュニのやり取りに少し疲れを感じた、サヨは任務開始までに気持ちを切り替えることにした。

 

 

 

 

 

 




チュニの臣具いかがでしたか?わかりやすく言えばカラーインスタントカメラです、アカメが斬るの世界にカメラはないのでカメラがあったら面白いと思い載せました、ちなみにチュニの声は田村ゆかりさんでイメージしてください。


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第九十二話

3ヶ月ぶりの投稿です、文章は相変わらず下手ですがお楽しみください、今回登場するチホシはアニメ15話でセリューに殺された盗賊の女性です、さらに初登場のキャラが出ます、ではご覧あれ。


  凶虫を斬る

 

 

 

サヨはチュニの人間性を目の当たりにして呆れ返っていた、その場を離れてしばらく歩いていると見覚えのある人に出会った。

 

 

「チホシ、久しぶり」

 

「久しぶりね」

 

 

革命軍の女性の軍服を着た女性、かつてセリューに捕まって処刑されかけたがカグラに助けられて九死に一生を得たのである。

 

 

「あなたも参加してたんだ」

 

「うん、私の臣具夜に便利だから」

 

 

チホシの臣具ガウシアは二種類の光を放つことができる生物型なのである。

 

 

「ところでチュニと何かあった?」

 

「なんで?」

 

「さっきあなたとチュニ言い合いしてたでしょ」

 

 

サヨはさっきのいきさつをチホシに話した、するとチホシはなるほどと納得した。

 

 

「チュニがろくでなしだってわかってがっかりした?」

 

「多少はね・・・」

 

「シェーレを散々金づるにしてきたんだからね、無理ないけど」

 

「いくらお金を全額返したとはいえ釈然としないけど」

 

「チュニのことであまり気にしない方がいいよ」

 

「うん、そうする」

 

 

サヨはチュニが本部でもろくでもないことをしているかチホシに聞いてみようとしたがやめた、きっとそうにちがいないからと思ったからである、実際そうなのだが・・・

 

 

「それにしてもここ虫多いわね」

 

「うん、今呼び寄せたから」

 

「呼び寄せた?」

 

チホシの説明によるとガウシアの赤い光には虫を引き寄せる性質があるらしい、光を調整することで特定の虫を呼び寄せることもできるのだ。

 

 

 

「そうなんだ」

 

「あまり役に立たない能力と思ったでしょ」

 

「そ、そんなことはないよ」

 

 

実際サヨはこの能力を微妙だなと思ったのである、でも実際そうでもなかった。

 

 

 

「普通の虫なら微妙だけど」

 

「普通の?」

 

 

どういうこととサヨは質問しとうとした、すると誰かがチホシを呼ぶ声がした。

 

 

「おーい、チホシ」

 

 

声がした方に振り向くと複数の人影があった、サヨはその人影の二人に見覚えがあった、メイド衣装の二人に。

 

 

「ギルベルダ、カサンドラ、あなた達も参加していたんだ」

 

 

「おお、サヨか、久しぶりだな」

 

「お久しぶりです、サヨさん」

 

 

 

この二人は暗殺結社オールベルグの殺し屋だった、オールベルグは数年前に壊滅したが。

 

 

「全く人使い荒いよな」

 

「仕方ありません」

 

 

ぼやくギルベルダをカサンドラがなだめている、サヨはその光景を見てこの二人本当に仲がいいなと思うのであった

、そして二人の後ろにいる双子の少女を見た、サヨはこの双子と初見である、だがこの双子に心当たりがあった。

 

 

「あなた達は・・・ミーラとロリスね」

 

「何故私達の名前を?」

 

「あなたとは初対面のはず」

 

「チェルから聞いていたのよ」

 

 

 

実際聞いていたのはマインからだけどチェルから聞いたことにした方が面倒にならないと思ったのである。

 

 

「なるほど」

 

 

二人はあっさり納得した、聞いていた通りこの双子は単純な女の子であった、そしてサヨは次の手を打つ。

 

 

「あなた達の服素敵ね」

 

「もちろんですわ」

 

「特にその藍色のミニスカート、最高に可愛いわよ」

 

「当然ですわ」

 

 

サヨが双子の服を褒めたことで二人はすっかり上機嫌になった、チェルシーはサヨに双子にあったらとりあえず着ている服を褒めるようにあらかじめ言っていたのである、サヨは実際双子の服はとても可愛いと思ったのだが。

 

 

「なあ、アタシの用事先に済ませたいんだが」

 

「どうぞ」

 

 

ギルベルダは盛り上がっている私達にお構いなしに割って入ってきた、双子は少し不服そうである。

 

 

「チホシ、キラービートル呼んでくれ」

 

「キラービートル!?何言ってるの!?」

 

「ちょっとした肩慣らしだよ」

 

「でもあれは特級危険種よ?」

 

「心配すんな、すぐ片付けるから」

 

「でも」

 

「いいからやれ」

 

「わかったわよ」

 

 

チホシはギルベルダに半ば脅迫され渋々赤い光を頭上に照らした、特級危険種を呼び出す・・・物騒極まりない、大丈夫なのだろうか。

 

 

間もなくどこからか羽音が聞こえてきた、それもとても大きな羽音が、そしてその主が姿を現した。

 

 

ブウウウン

 

 

それは体長8mを超えるクワガタ虫であった、漆黒の外装に覆われたその姿はまさに脅威であった。

 

 

「ひいいい!」

 

「来た来た」

 

 

怯えるチホシに全く目もくれず、現れたキラービートルに喜ぶギルベルダ、それを平然と見ているカサンドラと双子達、なんともシュールな光景であった。

 

 

「どうするのよ、来ちゃたじゃない!!」

 

「いいんだよ、それで今から片付けるから」

 

「・・・わかった、ちゃんと片付けてね」

 

 

そう言ってチホシは一目散にその場を去って行った、その間にも虫は私達に迫って来る、ギルベルダ達は全く慌てていない。

 

 

「大丈夫なの?」

 

「ああ、それよりお前は逃げなくていいのか?」

 

「大丈夫だと思う」

 

「じゃ、見物してな」

 

 

あの虫はそれなりに脅威と感じるが、この前の古代危険種に比べたらそれほどでもない。

 

 

 

「それじゃあ・・・」

 

 

ギルベルダは右腕をぐるぐる回し始めた、ギルベルダの臣具は腕を回せば回すほど威力が上がるのである。

 

 

 

「それじゃあ、行くぜ!!」

 

 

準備を終えたギルベルダは意気揚々とキラービートルに向かって行った、キラービートルもギルベルダを目視し食らい付こうと襲いかかった。

 

 

「食らいな!!」

 

 

グシャ!!

 

 

 

ギルベルダの拳はキラービートルの顔面に炸裂した、キラービートルの頭部は木っ端みじんになり目やあごとかが飛び散っている、危険種とはいえ無残な光景である。

 

 

「すごいわね・・・」

 

「いや、まだまだだな、アタシの力はこんなもんじゃなかった」

 

「どういうこと?」

 

 

ギルベルダの説明によるとかつて一命を落とした際、今は亡きメラルド・オールベルグの秘術によって蘇生した際に大幅に力が衰えてしまったのだ。

 

 

「ある程度戻ったが全力とは程遠い」

 

 

ギルベルダの無念そうな顔を見てサヨは思った、力が戻らないのが悔しいのかメラルドの力になれなかったのが悔しいのかあるいは両方なのか、質問しようかと思ったがしないことにした。

 

 

 

「まあ、地方の賊程度ならこれで十分だな」

 

 

引きずらずにあっさりと切り替えたギルベルダを見て単純も時には必要だと思うサヨであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サヨ達が西方へやってくる数日前、さらに遠方の西の地、そこは特級危険種がウヨウヨしている地域、当然人間は住んでおらず人間はいないはずなのだが、古びた祠から二人の男が現れた、その二人は見るからに一般人ではない、人間離れした雰囲気を出していた、一人は長身でもう一人は髭面の巨漢の男であった。

 

 

「二つ目回収だな」

 

「うむ」

 

 

現れた男達の名は長身の男がイバラ、髭面の男はシュテンである、二人は羅刹四鬼と呼ばれる大臣お抱えの処刑人であった、二人は帝具を回収するためにこの地へ赴いていたのである。

 

 

「鏡の帝具か、どんな能力なんだろうな」

 

「わからん、未知の帝具だからな、検討もつかん」

 

 

この古びた祠には伝説があった、はるか昔から魔鏡を祭る祠として伝えられていたのである、それを確認するためにこの二人が派遣されたのである。

 

「にしても鏡か、お前に全く似合わねえな」

 

「ぬかせ、お前もだろ」

 

「とにかくさっさと帝都へ帰ろうぜ」

 

「少し待て」

 

シュテンは懐から布を取り出し鏡を包んでいく、ごつい体格に似合わない丁寧な作業であった。

 

 

「面倒くせえなあ」

 

「そういうな、もし傷でもつけたらワシら打ち首だぞ」

 

「そいつはおっかねえな・・・」

 

イバラは身震いした、大臣ならやりかねないからである。

 

 

 

「とにかく俺達は帝具を二個回収したわけだ」

 

 

イバラは手にしていた槍を見てニヤニヤしている、この槍は祠に赴く前にとある武芸者から強奪したものであった。

 

 

 

「あの武芸者、少しはできたが所詮生身の人間だ、俺達羅刹四鬼の敵じゃねえ」

 

「ああ」

 

「この槍なかなか面白い能力だったな」

 

「ああ」

 

 

シュテンは頷いたが、作業に集中するためにイバラの話をたいして聞いていなかった。

 

 

「にしても・・・くくっ」

 

「どうした?」

 

「ああ、誰かここへ行くかくじ引きで決めただろう」

 

「そうだが」

 

「その時ハズレくじを引いたメズの悔しがる様を思い出したら笑いが・・・くくく」

 

「お前がメズをからかったからだろう、その後メズが暴れて大変だったがな」

 

「全くあれくらいで暴れるとは、ガキだな」

 

「人のこと言えんだろう」

 

「へいへい、ところで終わったか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、行くか」

 

「うむ」

 

イバラとシュテンは駆け出した、まさに目にも止まらぬ速さであった、大臣に帝具を渡すために全速力で走り抜けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チホシの臣具の赤い光、なかなか面白かったでしょう、次回はとあるキャラが登場します、お楽しみください。


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第九十三話

七ヶ月ぶりの投稿です、その間文章の勉強を少ししましたがさっぱり上がりません、ではご覧ください。


信用を斬る

 

 

ギルベルダの一撃によって危険種の身体が木っ端みじんに砕かれて肉片が辺りに降り注いだ、凄まじい力であるが本人にとってはまだまだである、するとそこへ血相を変えたジャドが駆け込んで来た。

 

 

「おい、何をやっている!?」

 

「何って、肩慣らしだよ」

 

「何が肩慣らしだ、こんな騒動を起こして任務に支障が出たらどうするんだ!?」

 

「大丈夫だよ、心配するな」

 

「お前・・・」

 

 

ギルベルダはキレる寸前のジャドを前にしても全く平然としていた、チホシの方はあたふたしていたが、するとそこへミーラとロリスがやってきた、さらに面倒なことになる予感しかしない・・・

 

 

「よう、お前ら、しばらくだな」

 

「一年と三ヶ月ぶりですわ」

 

「そうか、にしてもお前ら背がずいふん伸びたな、入団した時はあんなにチビだったのによ」

 

「もっと伸びますわよ、いずれギルベルダさんより高くなりますわよ」

 

「なれるものならなってみな、そうなったらお前らに何でもおごってやるよ」

 

「約束ですわよ」

 

「ああ」

 

「話は変わりますが、変顔勝負しませんか?」

 

「は?変顔勝負?」

 

「ただ賊を仕留めるだけじゃつまらないから仕留めた賊の顔を使って変顔勝負しようって言ってるんです」

 

「そういうことか、それもいいがどっちが多く殺せるかの方が面白くないか?」

 

「確かに、そっちの方が面白そうですね」

 

「乗りましたわ」

 

 

三人が盛り上がっているのと裏腹にジャドの表情がますます険しくなってきた、そしてついに爆発した。

 

 

 

「いい加減にしろ!!おとなしく聞いていれば勝手なこと抜かしやがって、任務を何だと思ってやがる!!」

 

 

顔を真っ赤にして激怒したジャドを三人は平然とながめていた。

 

 

「さっきから言ってるだろ、ちゃんとやるって」

 

「そのふざけた態度が信用できないんだ」

 

「アタシ達にはアタシ達のやり方があるんだ、口出しするな」

 

「てめぇ・・・」

 

 

一気に辺りの空気がピリピリと張り詰めたものに変わった、一触即発とはこのことである。

 

 

「忘れてないか?アタシ達に革命軍に協力する義理はあっても義務はないんだぞ」

 

「・・・そうだったな、お前らにそんな義務はなかったな、俺達の共通点は敵が帝国、ただ、それだけだ」

 

 

ジャドは頭を冷やして冷静になりこいつらとは信用関係などなくお互い利用しあっている関係だと認識したのであった。

 

 

 

 

・・・信用できないのはこいつらだけじゃねえ、チュニも信用できねえし、ムディやガザムもしかり、カグラにいたっては論外だし、何より一番信用できないのはエヴァの奴だ、全く頭が痛えぜ・・・

 

 

 

革命軍の人間は世のため人のための志を持った人間ばかりではない、帝国への怒りと憎しみを持ち復讐するために革命軍に入った人間も多いのである、・・・さらに食うために革命軍に入った者も多い、カーコやチホシのように。

 

 

「とにかく任務は必ず成功しろ、失敗は許さんからな」

 

「アタシが失敗するかよ、こいつらはともかく」

 

「聞き捨てならないですわね」

 

「私達を侮っては困りますわ」

 

「だったら証明してみな」

 

「もちろんですわ」

 

「・・・お前ら、勝手にしろ」

 

 

 

 

 

こいつらにいちいち怒るのもバカバカしくなったな、まあ、革命軍の勝利のためにこいつらをとことん利用してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九十四話

久しぶりの投稿です、相変わらず小説の文章になってませんがお楽しみください


道案内を斬る

 

 

とある闇夜の平原、本来誰もいるはずのない平原なのだがそこに二人の人影があった。

 

 

「来ませんね」

 

「そうね」

 

 

 

その人影はサヨとシェーレであった、二人は賊のアジトまで案内してくれる密偵を待っているのであった。

 

 

「密偵の人も大変ですね」

 

「うん」

 

 

密偵は常に死と隣り合わせの立場にいる、それだけ密偵の役割は重要なのである。

 

 

「それにしてもカサンドラさんすごかったですね、ジャドさんに全く臆してなかったですから」

 

「あれは度胸と言うより怖いものしらずっていうか・・・」

 

 

大事に至らなかったとはいえ一触即発だったのは間違いない、まあ彼女達は元オールベルク、革命軍の理想には全く興味が無いのであろう、はっきり言えば利害が一致した時だけ組む関係である。

 

 

「今回の任務達成で西の異民族との関係が良くなるといいのですが」

 

「それはあまり期待しない方がいいと思うよ、とりあえず何か行動して西が動いてくれたら儲けたものだってジャドさんが言ってたから」

 

「そうですか、私達は私達で頑張りましょう」

 

「そうね」

 

 

そうしてしばらく静かな時が過ぎて行った、周りには獣の声が全く聞こえて来なかった、その時は全く気にしなかったけど、その場がかなり危険な状態だったのである。

 

 

「案内の密偵さん遅いですね」

 

「うん、そうね」

 

「迷子になっているのでしょうか?」

 

「まさか、イエヤスじゃあるまいし」

 

 

確かに遅い、何かあったのだろうか、そう思った瞬間、目の前に何か丸い物体が転がってきた、一瞬何かわからなかったが、それが何かはっきり認識することができた、それは人間の首であった。

 

 

「!!?」

 

二人はこの首が誰かなのかすぐに察することができた、二人を案内することになっていた密偵である。

 

 

 

「こんな辺境にでかいネズミがうろついているとは驚いだぜ」

 

 

二人は声がした方向へすぐさま向いてみた、するとそこに二人の男が立っていた、だがその男達は明らかに一般人ではないまがまがしい気を出していた。

 

 

「サヨ、この二人・・・」

 

「わかってる、この二人、すごく強い」

 

 

一目見ただけで武道家であることはわかる、だが武道家にしては尋常ならぬ殺気を感じる、間違いなく自分達と同じ裏の世界の人間である、その瞬間サヨはあることを思い出した、アカメからある集団のことを聞いたことがある、その名は・・・

 

 

「羅刹四鬼」

 

「羅刹四鬼ってあの・・・」

 

 

 

羅刹四鬼、大臣のお抱えの処刑人である主な任務は大臣の護衛であり、時には帝国の裏仕事を行うこともある、その中には帝具の回収もふくまれている。

 

 

 

「あの二人が持っている包み、回収した帝具だと思う」

 

「布で大切に包んでいるのですからそうだと思います」

 

「それで危険だけど逃げずに戦おうと思うの」

 

「逃げないのですか?」

 

「うん、逃げ切れる保障もないし、何より帝具を回収できればボスの打ち首取り消しにできると思うから、悪いけど付き合ってくれる?」

 

「気にしないでください、私もお付き合いします」

 

「ありがとう」

 

 

二人は帝具を手にし臨戦態勢をとった、覚悟を決めた殺気に満ちあふれている、その様子を見て羅刹四鬼の長身の男がニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「あいつら逃げずに俺達を殺る気だぜ、まあ、逃がしはしないがな」

 

「気を抜くなよ」

 

「へっ、誰に言っている」

 

「そうだな、言う必要なかったな」

 

 

長身の男の名はイバラで羅刹四鬼最強の実力者であり、もう一人の髭面の中年の大男の名はシュテンでイバラの次に強い実力者である。

 

 

「行き掛けの駄賃だ、あいつらの帝具もいただくとしようぜ」

 

「うむ」

 

 

西の辺境の地で予想もしなかった死闘が開始されようとしていた、誰が生き、誰が死ぬか、帝具戦の開始である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




自分に小説の文章が書けないことが改めてわかりましたのでこれからの話はセリフばっかりの小説になるかもしれません、今後もよろしくお願いします。


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第九十五話

今年最初の投稿ですよろしくお願いします。


ヘタレを斬る

 

 

サヨ達が羅刹四鬼と戦いを開始したとき、別の場所である男に苦難が迫ろうとしていた。

 

 

 

深夜の山岳部で複数の集団がいた、そのうちの一人は縛られて身動きが取れないでいる、その男は賊の一味である、縛っているのはラバックでその後ろにいるのはエア達である。

 

 

 

「知っていることはもうないな?」

 

「ああ、ない」

 

「じゃあ、こいつにもう用は無いな」

 

「・・・ラバさんこの人どうするんですか?」

 

「さすがに君達の前で殺すのは気が引けるからな、このまま放っておく」

 

「そうですか」

 

 

エアはホッとしたのを表情に出さないようにしたつもりであったが思いっきり表情に出ていた、ラバはそのことに気づいたが口にしなかった。

 

 

「それにしてもラバさん知っていることを嘘をつかず全部話せって暗示かけることよく思いついたね」

 

「たいしたことじゃないさ」

 

ファルに感心されてラバはまんざらでなかった、鼻高々である。

 

 

「それにしてもこの領地の太守と賊が組んでいたことに驚きました」

 

「このご時世だ、何があってもおかしくないさ」

 

「太守の人どうなるんでしょうか?」

 

「さあな、それはジャドのおっさんに任せるとしよう」

 

 

ルナにそう言ったがその太守は後日始末することになるだろう、そのことをあえて言うつもりはなかった。

 

 

「ラバさん、私達と一緒に来てくれてありがとうございます」

 

「気にすることないよ、ジャドのおっさんは密偵チームの指揮をとらないといけないんだから」

 

 

そう言ったラバにある思惑があった、(辺境の賊なんてちまちま倒したところでたかがしれてるからな、それよりこういう情報を手に入れた方がおいしいぜ、さらにでかい情報を手に入れれば・・・)

 

 

ラバはナジェンダの姿を思い浮かべていた、ただし、想像のナジェンダの姿は全裸である一言を言っている。

 

 

よくやったぞラバ

 

 

 

情報ゲットしてナジェンダのポイントアップだぜ!!

 

 

とてもしまりの顔になっていることにラバ本人は全く気づいていないのであった。

 

 

 

「・・・ラバさん、本音が顔にでてますよ」

 

「おっといけねえ」

 

ルナの一言に慌ててヨダレをふくラバを見てある程度の差のあるものの三人は呆れるのであった。

 

 

「ところでラバさん告白まだなんだよね?」

 

「ま、まあね」

 

ファルの質問に慌ててラバは返答した、以前ラバは帝具で操作された時に殺し屋になった理由を三人に話してしまったのである。

 

 

「早いとこ告白しちゃえば?」

 

「そ、そうは言っても・・・もしダメだったら、いままでの関係が壊れてしまいそうで・・・」

 

「男のくせにウジウジしないでさっさと告白して砕けちゃいなよ」

 

「砕けるの前提にしないでくれる!?」

 

「だってラチがあかないし」

 

「長年にわたる温めに温めてきた恋なんだよ!?人事で済まさないでよ!?」

 

 

「だって人事だし」

 

「それはそうだが・・・」

 

「それにラバさん、忘れてませんか?」

 

「ルナちゃん、何を?」

 

「ハウルさんの事を」

 

「あいつか・・・」

 

 

ハウル・・・ナジェンダさんにプロポーズした王族、そのあと王族の身分を捨ててナジェンダさんを追っかけて革命軍に入った、フラれてもめげずに追っかける根性はちょっぴり認めてやってもいい、ちょっぴりだけだがな・・・

 

 

 

「ハウルさんすごいよな、王族の身分捨ててナジェンダさん追っかけてくるんだから」

 

「お、俺だって商人の身分を・・・」

 

「王族と商人とじゃ違いすぎるじゃない?」

 

「そ、そんなことはないさ」

 

 

身分の違いなんて問題じゃない、大事なのはどれだけナジェンダさんを想っているかだ!!

 

 

「ハウルさん改めてナジェンダさんにプロポーズすると言ってました」

 

「何!?」

 

「その際にハウルさんが造ったナジェンダさんの象牙細工の像をプレゼントするつもりです」

 

「あの野郎・・・」

 

 

手作りのプレゼントとは王族らしくねえじゃねえか・・・まずい、ナジェンダさん、こういうの好きそうだ・・・

 

 

「ラバさんはどうするのですか?」

 

「お、俺は・・・」

 

 

どうする、手作りのプレゼントならいいのを造れる自信があるが、あいつの真似っていうのは気に入らねえな・・・

 

 

 

「ところで話は変わるけどラバさん貸し本屋やってるんだよね?」

 

「そ、そうだけど・・・」

 

 

・・・ファルちゃんいきなり話を変えてどういうつもりだ?何か嫌な予感が・・・

 

 

 

「またまた話変わるけど、私からナジェンダさんにラバさんの想いなりげなく言ってあげようか?」

 

「はあ!?」

 

「だってラバさんいつまでたっても告白できなさそうだし」

 

「そ、そんなことは・・・」

 

「確かにファルの言う通りですね」

 

「ルナちゃんまで・・・」

 

「じゃあそれでいくね」

 

「まっ、待ってくれ!!」

 

「遠慮することないよ」

 

「そんなんじゃない!!」

 

「まあまあ、ラバさん、ファルに任せてみればどうです?」

 

「冗談じゃない!!」

 

 

 

・・・もしかして突然貸し本屋の話が出てきたのは・・・くそ、手を打たないとまずい・・・

 

 

「俺の貸し本屋の本いくらでも貸してあげるからそれだけはやめてくれ!!」

 

「何の話?」

 

「だから俺の想いをナジェンダさんに言うのをやめてくれって言ってんだ!!」

 

「でも私達お金あんまり持ってないし」

 

「ただでいいから」

 

「でもラバさんに悪いし」

 

「そんなの気にしなくていいから、とにかくナジェンダさんに言うのだけはやめてくれ!!」

 

「ファル、せっかくラバさんが貸してくれるのです、ご好意に甘えましょう」

 

「そうだね」

 

 

本を借りる気満々の二人をよそにエアは心配そうにしている。

 

 

「二人ともよそうよ、ラバさんに悪いよ」

 

「私は貸してって言ってないよ、ラバさんが言ってきたんだから」

 

「でも・・・」

 

「・・・いいんだよ、エアちゃん、いつまでも告白できないヘタレの俺が悪いんだから・・・」

 

「ラバさん・・・」

 

「そういうこと、それにエア、あんただって人のこと言えないよ」

 

「ファル!!」

 

「エアちゃん、何?」

 

「な、何でもないです!!」

 

 

 

その時ラバは慌てるエアを見て何も感じなかった、全く余裕がなかったためであるが、後日あのような事態が起こるとは予想もしなかったのである、ちなみにこの任務が終わってから本を借りに行くのだが、そのことをギルベルダ、ミーラ、ロリスの耳に入ることになり、彼女達にも本を貸すことになり最終的に店の本の半分を持って行かれることになるのである、この時のラバは知るよしもないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小説の文章が書けないのでセリフの文章中心になりました、これからもこういう文面になります、応援お願いします。


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第九十六話

今回もセリフの文章が中心です


  継承を斬る(前編)

 

 

ラバはへこんでいた、店の本をただで持っていかれることにへこんでいるのだが、それ以上にナジェンダに告白できないヘタレな自分にへこんでいたのである。

 

 

「ラバさん、元気出してください」

 

「・・・ありがとう、エアちゃん、俺は大丈夫だから」

 

「そうそう、気にすることないよ」

 

「もう、元はといえばファルが」

 

「そもそも私本貸してって言ってないよ」

 

「それはそうだけど・・_」

 

 

ナジェンダさんに告白してあげるなんて言えばラバさんこうするしかないじゃない、ファル、本当に困った娘ね!

 

 

 

「・・・この話はこのくらいにして今は仕事に専念しよう」

 

「わかりました、ラバさん」

 

 

自分がへこんでいるのに私達に気遣いをしてくれるラバさんはやっぱりすごい人だと感心するエアであった。

 

 

「じゃあ、周囲を確認してと・・・」

 

 

ラバの右手のグローブがキュルキュルと音を出しながら動きだした、その様子をルナはジーと見ている。

 

 

「なんだい?」

 

「ラバさんの帝具いつ見ても面白いと思いまして」

 

「そうだろう、そうだろう、こいつはなかなか興の深い代物なんだぜ」

 

 

へこんでいたのに、コロッと機嫌を直す、案外単純だなと思うルナであった。

 

 

「前から気になっていたのですが、どういういきさつで手に入れたのですか?」

 

「いきさつ?」

 

「私達の帝具は骨董屋で手に入れましたけど、ラバさんはどういういきさつだったのですか?」

 

「ああ、これは譲り受けたんだ」

 

「誰からです?」

 

「キョウジさんから」

 

「キョウジさんですか?」

 

 

キョウジ、白髪の細身の男性で独特の話し方をする革命軍の情報部長である。

 

 

「キョウジさんがどうやって手に入れたのかは知らないけど、遥か西の地からやってきてプライム総大将のところへ訪れた時にはすでに所有してたんだ」

 

「いつ頃ですか?」

 

「それも詳しくは知らないけど、レジスタンスを結成するだいぶ前のことだけは確かだよ」

 

「そうなんですか」

 

「ちなみにハクロウさんとジャドのおっさんも同じ時期に出会ったんだよ」

 

「ジャドさんも?」

 

「ああ、どういういきさつかは本人から聞いてくれ」

 

 

ジャドさんってそんな昔からいたんだ、興味あるけど教えてくれるかな・・・

 

 

「ラバさん、譲り受けの話・・・」

 

「ああ、そうだった、キョウジさんが任務で重傷を負って帝具を継承させることになったんだ」

 

「そこでラバさんが受け継いだのですね」

 

「いや、選抜することになった」

 

「その選抜をラバさんが勝ち抜いたんですね」

 

「まあね」

 

 

 

ラバはその選抜戦のいきさつを語り始めた・・・

 

 

 

 

 

ラバは走っていた、息が上がり汗まみれになって必死に走っていた、この走り込みが第一の試練であった。

 

 

 

「それじゃあ、僕がええと言うまで皆に走ってもらうで」

 

 

 

そうして数時間が経過した、最初には数百人いた志願者もどんどん脱落して百をきっていた、辺りには体力が尽きて倒れ込んでいる男だらけである。

 

 

 

・・・いつまで走るんだ?このままじゃやばい・・・

 

 

 

走っているラバの前にへばって倒れている数人の男がいた、彼らは開始前にラバを馬鹿にしていた男達であった。

 

 

・・・だらしねえな、大口叩きやがって、俺はこいつらみたいにならねえ・・・

 

 

ラバは力を振り絞り走った、いつ終わるのかという不安を感じながら・・・

 

 

 

さらに数時間が経過した、脱落者も増え続けて走っているのは20人に満たない、その中にラバは残っていた

 

 

 

や、やべえ・・・息が・・・足も、うご・・・

 

 

フラフラになりながらも走ってきたラバであったが限界に達しようとしていた。

 

 

 

もう、リタイアしても、いいかな・・・俺にしては頑張ったかな・・・

 

 

 

リタイアを決意しかけた瞬間、ある人物の顔が脳裏に浮かんだ、それはラバが

想い続けてきた女性、ナジェンダの顔であった。

 

 

 

ダメだ、リタイアするわけにはいかねえ!!ナジェンダさんの力になるって決めたんだ、そのためには帝具がいるんだ、何が何でも手に入れるんだ!!

 

 

ラバは汗まみれのシャツを脱ぎ捨ててがむしゃらに走りだした、今までにない速度で

 

 

 

なりふり構わなきゃまだまだいけるぜ、いざとなったらフルチンになってでも走ってやる!!

 

 

 

第一の試練は終わりの気配を見せることなくさらに続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九十七話

継承を斬る(後編)

 

 

さらに数時間が経過した、残った人数は6人だけになっていた、その中にラバは残っていた。

 

 

「・・・」

 

 

ラバは意識がもうろうとした中で走っていた、呼吸は乱れ汗まみれで鼻水やヨダレが垂れまくっている、何よりラバは全裸であった、ラバ自身いつ全裸になったのか全く記憶がなく、自覚も全くなかった。

 

 

「そろそろええかな」

 

 

キョウジが止めの合図をすると走っていた男達はフラフラになりながら足を止めた、一人を除いて。

 

 

「・・・」

 

ラバは止まれの合図が耳に入らず走り続けていた、兵士がラバの元に駆けより止まるよう指示した。

 

 

「おい、止まれ」

 

「な、なにを・・・」

 

「キョウジさんが止まれと言ったんだ、だから早く止まれ」

 

「・・・だいい・・おわり?」

 

「そうだ、だからキョウジさんの元に行け」

 

「・・・わ・・・」

 

 

ラバは言葉もろくに話せないままキョウジの元へフラフラしながら駆けつけた、他の参加者も似たようなものだった。

 

 

 

「お疲れさん、今から第二の試練に入るで」

 

 

参加者達全員息を切らしたまま驚いた、こんなに早く開始されるとは思ってなかったからである。

 

 

「お、俺達走りまくってへとへと・・・」

 

「何言うてんのや、君達がどれだけへばってても関係あらへん、敵さんは君達の都合に合わせてくれへんで」

 

 

参加者達は何も反論できなかった、キョウジの言うことは完全に正しかったからである。

 

 

「せやけどその前に、そこの緑色の髪の少年」

 

「な、なんで・・・すか?」

 

「せめてパンツぐらい履こうか」

 

「パンツ?・・・うおお!?なんだこりゃ!?」

 

 

ラバはようやく自分がフルチンであることに気づいた、慌てて股間を手で隠した。

 

 

「ひょっとして君、体力回復の時間稼ぎのためにパンツ脱いだんかな?」

 

「い、いえ、違います!」

 

「まあ、ええわ、早うパンツ履いてな」

 

「は、はい!」

 

 

ラバは兵士から渡されたパンツを素早く履いて参加者達の列に入った。

 

 

「じゃあ、君達にひとつ質問するで」

 

「質問?」

 

「そうや」

 

「し、しかし、自分達は体力を消耗して・・・」

 

「それがどうしたんや?」

 

「い、いえ、何でも・・・」

 

 

これ以上何を言っても無駄だと全員が理解した、疲労しきった状態でも頭を働かせることができるかの試練だと。

 

 

「じゃあ、言うで、今君達はクローステールの使い手で目の前に自分より遥かに格上の敵がおる、振りきって逃げるのは不可能や、さて、君達はこの窮地どう乗り切る?」

 

 

 

全員が困惑した、格上の敵相手に逃げることが不可能、残った選択は多くない、それぞれ思考を巡らせ考えをまとめた。

 

 

「自分は剣を造ります」

 

「俺は槍を造ります」

 

「俺は網を造って動きを封じます」

 

 

次々と答えていくのを見てラバは焦りを感じていた、俺も速く答えないと、そう思った瞬間キョウジの表情を見て何かピーンと感じた、キョウジの表情はいたって普通だが何かを感じたのである。

 

 

なんだ?何か違和感を感じる、キョウジさんの表情はいたって普通だ、だが、何か妙だ、もしかして俺達勘違いしているのか?何を・・・

 

 

どうやって乗り切る?

 

 

そうだ、キョウジさんは敵を倒せとは言ってない、乗り切れと言ったんだ、だったら発想を根本的に変えないと・・・

 

 

「そこの君」

 

「は、はい!」

 

「君だけやで答えてへんの」

 

「すいません!」

 

 

やべえ、速く答えないと、だが、どう答えたら・・・

 

 

「答えられないんか?」

 

「い、いえ、そんなことは!!」

 

 

 

くそ!!もう時間が・・・こうなったら一か八かだ!!

 

 

「死んだふりをします!!」

 

「死んだふり?」

 

 

その瞬間キョウジ以外の人間は大笑いした、あまりにも格好悪い答えであったから。

 

 

「死んだふり?格好悪いぜ、はははは!」

 

「ヘタレそのものだ、ヒャハハハ!!」

 

 

大笑いされながらもラバは頭をさらに回転させた、次につなげるために。

 

 

「詳しい説明してくれへんか?」

 

「はい、ただの死んだふりではすぐにばれます、そこでクローステールを使って血管を縛って脈を止めて

死んだと思わせるのです、これなら敵が油断する確率は小さくないと思います」

 

「ほう」

 

 

キョウジ以外の男達は大笑いしながらラバをバカにしていた、それでもラバは全く後悔していなかった。

 

 

バカにしたいのならいくらでもしやがれ、俺は自分のひらめきを貫いたんだ、後悔はねえ!

 

 

キョウジは何も語らずにラバをしばらく見つめていた、そして次の一言は・・・

 

 

「君、正解や」

 

 

その瞬間周りがしんと静まりかえった、そしてすぐさま騒動が起こる。

 

 

「な、何を!?」

 

「どういうことですか!?」

 

「そんなバカな!?」

 

 

全く納得できずに参加者達はキョウジに詰め寄った、キョウジはすぐに説明を始める。

 

 

 

「僕は実際彼のやり方で死んだふりをして窮地を逃れたんや」

 

「し、しかし・・・」

 

キョウジの説明でもまだ納得ができずにいた。

 

 

「そもそも死んだふりがあかんって誰が決めたんや?」

 

「そ、それは・・・」

 

「クローステールに一番重要なのは発想力や、これはできんと思ったらそこまでや」

 

「はあ・・・」

 

「いずれ革命軍は帝国と戦争することになる、僕らは弱者や、弱者が手段を選んだらあかん、どんな手段を使っても勝つ覚悟をせなあかんのや」

 

 

キョウジの説明に一同は何も言えなかった、帝国との戦いは正々堂々と戦って勝てるほど甘くないものであるから。

 

 

 

 

「話が少しそれてもうたが君が・・・ええと君名前は?」

 

「ラバックです」

 

「ラバック、君だけが正解した、第二の試練通過や」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「じゃあ僕についてきて」

 

「はい」

 

 

ラバとキョウジと数人の兵士はある場所へ向かっていた、人っ子一人いないまったいらな高原である、だがそこにある物体があった、それは大きな檻で中に危険種の群れが入っている。

 

 

「あのー?」

 

「なんや?」

 

「あれは?」

 

「ああ、あれは特級危険種の・・・」

 

「いえ、そういうことでは、なんであそこに特級危険種が?」

 

「決まってるやろ、あれが最後の試練やからや」

 

「・・・」

 

 

ラバは薄々気づいていた、あの危険種が試練に関係していることに、だがあの危険種に勝てる自信はなかった、だが正直に言えば失格になってしまうかもしれないと思い何も言えなかった。

 

 

 

「このクローステールを使って乗り切る、それが最後の試練や」

 

「はい!」

 

 

ラバはキョウジからクローステールを受け取った、ラバはクローステールを見るのはこれが始めてではない、以前キョウジが装備している状態のクローステールを見たことがあるのだ、その時クローステールを見てとてもイカス手袋だと思ったのである。

 

 

「さて、最後の試練いきますか!!」

 

 

檻が開けられて危険種の群れがラバに向かっていく、かなり飢えていたからである。

 

 

「これはこれは・・・」

 

 

正直不安で一杯だが、ここまできた以上やらないわけにはいかない、それにこのクローステールならなんとかなるかもしれない、そう感じるものがあった。

 

 

 

「いくぜ、相棒!!お前の力見せてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこで発動したのがクローステールの奥の手だったんだよ」

 

「すごいですね、初めての帝具でいきなり奥の手発動なんて」

 

「いやあ、そんなことあるよ」

 

 

ラバは昔話をしてすっかり有頂天になっていた。

 

 

「その奥の手私達にも見せてよ」

 

「まあ、機会があったらね」

 

「ラバさんはただのスケベな人じゃないって改めて実感しました」

 

「スケベって・・・」

 

 

確かに俺はスケベだがまともな男はスケベなのは普通だろう。

 

 

「とにかく俺はこの相棒とともに修羅場をくぐりぬけてきたんだよ」

 

「修羅場はくぐりぬけてきたのにナジェンダさんへの告白はできないのは不思議ですね」

 

「うっ・・・」

 

 

 

痛いところをつかれてラバは言葉がつまった、本当に我ながら情けないと思うラバである。

 

 

「と、とにかく、いつかナジェンダさんをおとしてやるから」

 

「頑張ってくださいラバさん」

 

「ありがとよ、エアちゃん」

 

 

そう言ったエアであったが微かに胸の奥にもやもやを感じている自分がいるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九十八話

今回はえぐいダークな展開にしました、なお今回の主役であるミーラとロリスの声は松田姉妹をイメージしてください。


復讐を斬る(前編)

 

 

ラバが昔話を語っている頃、別の場所で戦いが行われていた、戦いといっても人数の差はかなりのものがあった、大勢の男達が二人の少女を取り囲んでいるのである、だが形勢は少女達が圧倒していた。

 

 

「たあっ!」

 

 

少女の斬撃が男の頭部を切り飛ばした、残された下顎の部分から噴水のように血が噴き出している。

 

 

「さすが姉様、私も!」

 

 

もう一人の少女も別の男を切りつけた、脳天から真っ二つに切られ大量の血しぶきが上がった。

 

 

「やりますわね、ロリス」

 

「姉様こそ」

 

 

少女達の強さを前にして男達は怯んだ、だが怒りが恐怖を上回っていた。

 

 

「このガキ!!」

 

「ブッ殺す!!」

 

「殺す前に犯してやるぜ!!」

 

 

男達が一斉に少女達に襲いかかった、だが少女達は全く動じず逆に男達を次々に切り倒していく。

 

 

「私達の敵ではありませんわ」

 

「所詮雑魚だよ」

 

「変顔にしたいけど今回はできませんわ」

 

「うん、どっちが多く殺せるかの競争だから」

 

「張り切ってもっと殺しますわよ、ロリス!」

 

「うん、姉様!」

 

 

この二人の少女の名前はミーラとロリスでかつては暗殺結社オールベルグのメンバーでオールベルグ壊滅後はいろいろないきさつがあり、不本意ながら革命軍に協力しているのである。

 

 

「ガキが!!」

 

「ぶっ殺す!!」

 

 

数人の男達、盗賊たちがロリスに一斉に襲いかかった、だが、ロリスは一瞬で首筋を切りつけ首筋から血しぶきが勢いよく噴き出した、苦痛の悲鳴を上げそのまま絶命した。

 

 

「腕を上げましたわねロリス」

 

「うん、でも奴にはまだまだ及ばない」

 

「そうですわね、あの女を殺すにはまだまだ」

 

「いつか奴をこの手で切り刻む!」

 

「ええ」

 

 

二人は思い出していた、あの屈辱の日のことを・・・

 

 

 

 

数年前、ミーラとロリスはオールベルグを壊滅させた暗殺部隊に復讐するために暗殺部隊に恨みを持つマシロ、ムディらと手を組み行動していた、だが、ムディの護衛のナックルの治療をするために革命軍本部の近くまで寄り、マシロが軍医を勤めるシヴァを強引に連れて来て診察したところ絶対安静と判断されたのである、それを聞いてムディは心底落ち込んでいた。

 

 

「な、なんとかしてください」

 

「どうにもならん」

 

「腐った左腕を切り落とせばなんとかなるでしょう!?」

 

「腕を切り落としたら大丈夫といかないんや、輸血せなあかんし、片腕なくなっただけでも相当身体のバランスが崩れるんや、リハビリに最低でも数ヶ月かかるんや」

 

「復讐を果たせる間だけ持てばいいんです、そのあとはいつ死んでもかまわない」

 

「・・・あんたの事情はとやかく言うつもりはない、けど医者としてこいつをみすみす死なせるわけにはいかん」

 

「ならば・・・」

 

「力ずくでいくんか?なら相手になるで」

 

 

シヴァはメスを取りだし身構えた、ムディは何も言わずただ立ち尽くしていた、シヴァの方が自分より強いと判断したからである、ムディは頭には自信があったがうでっぷしには全く自信がなかったのである。

 

 

「ここまで来たのに、こんな・・・」

 

 

歎き悲しむムディを見てマシロや双子は気の毒と感じた、だがこのままここにとどまるわけにはいかなかった。

 

 

「・・・じゃあ、ムディさん、私達は行きますから」

 

 

この場を離れようとする双子達を見てムディの表情は一瞬で険しいものになった。

 

 

「あなた達、私を置き去りにするつもりですか!?」

 

「置き去りも何も仕方ないですわ」

 

「ふざけないでください、ここまでどれだけ私が苦労をしたと思ってるんですか!?」

 

「そりゃあ、あなたには感謝しているけど」

 

「あなた達だけ復讐を果たすだなんて私は許しませんよ!!」

 

「じゃあ、あなただけついて来ればいいでしょう」

 

「あなた達も知っての通り私は戦闘は全くできないんですよ、ただ見てるだけの復讐なんて何の意味があるのですか!?」

 

「それはあなただけの問題ですよ、とにかく私達の邪魔をするならあなたでも殺すよ」

 

「ぐっ・・・」

 

 

シヴァはこの一同を見てなんとも無様でかつ哀れにも感じた、所詮復讐のためだけに組んだだけの集団である、絆など微塵もないのである。

 

 

「とにかく悪いと思う、だが私達の邪魔をしないでくれ」

 

「くっ・・・」

 

 

ムディはマシロに言われて何もできずにいた、マシロの強さはムディ自身よく知っており太刀打ちすらできないのはあきらかであったから。

 

 

「無念だ・・・」

 

 

歎き悲しむムディを見てマシロは何も言えなかった、何か言ったところで傷口に塩を塗り込むようなものであるから。

 

 

「ではシヴァ後は頼む」

 

「ああ」

 

そうマシロは言い残しその場を去ろうとしていた、だが思わぬ人物がそれを阻んだのである。

 

 

「ちょっと待て」

 

 

その瞬間マシロは足を止めた、足を止めたのは待てと言われたからではない、その声に聞き覚えがあるからではある、思い違いでなければその声の人間は・・・

 

 

マシロは声の方に振り向いた、そこには二人の人間がいた、一人は男の兵士でもう一人は女であった、マシロがよく知っている女である。

 

 

「エヴァ・・・」

 

マシロは明らかに動揺していた、双子もマシロの動揺しきった顔を見てただ事でないと察した。

 

 

「誰です?」

 

「・・・彼女の名はエヴァ、革命軍の幹部だ」

 

「幹部!?」

 

双子もさすが驚いた、まさか革命軍の幹部が目の前に現れるとは思わなかったからではある。

 

 

「しばらくだな」

 

「・・・ああ」

 

「復讐は果たしたのか?」

 

「いや、今から復讐を果たしにいくところだ」

 

「そうか、だが、お前の自由行動はここまでだ」

 

「何を言って・・・あの時は止めなかったではないか!?」

 

「あの時はな、お前のこれまでの功績が大きかったから大目に見たが、シヴァを連れ出したことで打ち止めだ」

 

「いまさら・・・」

 

「なら、私とやり合うか?」

 

 

マシロは悩んでいた、正直エヴァと戦って勝てる自信はなかったからである、だからといって復讐をあきらめるわけにはいかなかった、マシロが思考を巡り合わせているうちに双子はその場を離れようとしていた。

 

 

「マシロさん、私達行きますわね」

 

「私達がみんなの復讐果たしますから」

 

「お前ら・・・」

 

 

マシロは双子を睨みつけるも何も言うことができなかった、自分自身もムディを置き去りにして立ち去ろうとしたのであるから。

 

 

「お前ら、待て」

 

「何ですか?」

 

「お前らも待てに入っているのだぞ」

 

「な、何で!?私達は関係ないじゃない!」

 

 

双子達はわけがわからなかった、何で自分達も入るのかを。

 

 

「関係大ありだ、私はオールベルグに暗殺部隊を殺すように依頼したのだぞ」

 

「そ、それは・・_」

 

「お前らの腕を見込んで任せたのにあっさり返り討ちに遭って壊滅しおって、おかげで私はいい笑い者だ」

 

 

エヴァの表情が険しいものに変わっていった、ただならぬ気配があふれだしている。

 

 

「メ、メラ様達は一生懸命・・・」

 

「一生懸命?それがどうした、お前らは殺しのプロだろう、プロは成功という結果がすべてだ、お前らのボスは何も言って来なかったのか?」

 

 

双子は何も言い返せなかった、エヴァの言う通りメラルドは以前双子に結果を残せなかったらすべて無意味になってしまうと聞かされていたのである。

 

 

「所詮無能の手下は無能か」

 

「・・・今、何て言った?」

 

「奴は無能だと言ったのだ、お前ら耳まで無能か?」

 

「ふざけるな!!メラ様は無能なんかじゃない!!」

 

「奴を無能でなくてなんだというのだ、奴は仕事に失敗した、まさに無能の極みだ」

 

 

双子は怒りで我を忘れかけ寸前まできていた、ここまで最愛の人を侮辱されたのだから。

 

 

 

「取り消せ!!さもないと殺す!!」

 

「殺す?お前らごときにできるとでも?」

 

「殺して見せる!!」

 

 

双子は双剣を持ち出し身構えた、二人から凄まじい殺気があふれている。

 

 

「お前ら、止せ!!」

 

「止めないでください!!」

 

 

マシロは双子をなんとか止めようとしたが聞く耳持たないとあきらめた、双子がエヴァに勝てるとは到底思わなかった、自分でも勝てる自信がほとんどなかったからである。

 

 

「私を殺る気か面白い、サービスだ右手だけで片をつけてやる」

 

「こ、こいつ、どこまでバカに・・・」

 

 

こいつはすぐに殺さない、メラ様を侮辱したことを後悔させながらなぶり殺してやる!!

 

 

 

双子は全速でエヴァに向かっていった、二人は両足の腱を切断して身動きを取れなくしてからなぶり殺しにしてやろうと決めた、回りくどい撹乱は一切せずにエヴァに切りかかった。

 

 

「くらえ!!」

 

 

ボギィ

 

 

その瞬間、何かが砕ける鈍い音が響いた、双子の剣がすべて真っ二つに折られ地面に落ちたのである。

 

 

「バ、バカな・・・」

 

 

二人はただ呆然とした、四本の剣を右手だけですべてへし折るなんてありえなかったからである。

 

 

 

「そんな薄い剣などへし折るのはわけない」

 

 

エヴァはまさにしてやったりの表情をしていた、双子をこれ以上なく見下している。

 

 

「片はついた、まだやるか?」

 

「当然だ、まだまだこれからだ!!」

 

「では、第二戦開始だ!」

 

 

エヴァは右足でミーラの腹を思いっきり蹴飛ばした、吹っ飛ばされたミーラは苦痛のうめき声を上げてうずくまっている。

 

 

「姉様!?お前、右手しか使わないんじゃ!?」

 

「第二戦と言っただろう、それは無効だ、そもそも敵である私の言うことを鵜呑みにしていたのか?本当にバカだな」

 

 

ロリスは何も言い返せなかった、全くその通りだったのであるから、ロリスが悔しさで歯ぎしりしている間にエヴァは左手でロリスの襟首を掴み持ち上げた。

 

 

「は、離せ!」

 

 

当然エヴァはロリスを離すことなく右手でロリスのこめかみに張り手をかました。

 

 

「うえっ!」

 

 

強烈な脳しんとうをおこされ強い吐き気に襲われロリスは嘔吐した、吐いたものはエヴァの腕にかかった。

 

 

「汚いな、この分も上乗せしておくぞ」

 

 

エヴァは兵士の方に思いっきりロリスを投げつけた、仰向けに倒れたロリスの目の前に兵士が立っている。

 

 

「好きにしていいぞ」

 

 

エヴァの許可がでると兵士はロリスのスカートを思いっきりめくり上げた、ロリスの黄色のパンツが丸見えになった。

 

 

 

「な、何をする!?」

 

 

 

ロリスは脳しんとうがまだ治っておらず手を動かせないのでスカートを直すことが出来ない。

 

 

「何って、パンツ丸だしにしたんだよ」

 

「ふざけるな!!ブっ殺してやる!!」

 

 

ロリスの殺気に全く臆することなく兵士はロリスのパンツを掴み膝までずりおろした、ロリスの下半身が丸だしになった。

 

 

「いやあああ!!」

 

 

恥辱に満ちた悲鳴が上がった、恥ずかしさのあまりロリスの目から大粒の涙がボロボロこぼれ落ちた。

 

 

「へへへ、ちんこはないな、まあ、あったらあったらで別の楽しみをするだけさ」

 

 

 

いやらしい顔つきの兵士をロリスはこれ以上ない憎しみの目で睨みつけた。

 

 

「当たり前だろ!!私は美少女だぞ、そんなものあるわけないだろ!!」

 

 

「自分で美少女と言うか?まあいいや、俺は俺で楽しむからな」

 

「な、何をする・・・」

 

ロリスは嫌な予感がした、自分が何をされるのかを、果てしない恐怖が彼女を襲う。

 

「ペロペロするんだよ」

 

「や、やめ・・・いやあああ!!!」

 

 

 

ロリスの絶望に満ちた悲鳴が再び上がった、さらなる絶望が彼女を襲うことをまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




えぐい展開にしてみましたが、文章が下手でそう感じないかもしれません、次回もえぐい展開になります。


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第九十九話

9ヶ月ぶりの投稿です、この話で連載100話になりました、ようやく100の大台に乗りました、あいからわず文章は下手ですが・・・ぜひご覧ください。


復讐を斬る(中編)

 

 

 

「やめろー!!」

 

 

ロリスは男に辱めを受け続けていた、今すぐ反撃して殺したいところだが今だ脳しんとうが回復しておらず、男にされるがままになっていた。

 

 

「このケダモノ、ロリスから離れろ!!」

 

 

ミーラは蹴りのダメージが回復して起き上がりロリスを助けようとしたがエヴァがミーラの背中を踏み付けて阻止した。

 

 

 

「何をしますの!?」

 

「邪魔をするな」

 

「妹が辱めを受けているのを黙って見ているわけないですわ!」

 

「お前の都合など知るか」

 

 

ミーラはロリスを助けに行こうと振りほどこうとしたがエヴァの足はびくともしなかった、その間もロリスは辱めを受け続けている。

 

 

「お、女としてこんなマネをして恥ずかしくないんですか!?」

 

「恥ずかしい?その言葉そっくり返すぞ、お前らの腕を見込んで依頼したのにあっさり返り討ちにされ壊滅しおって、プロとして恥ずかしくないのか?」

 

「だ、だけど・・・」

 

「さっきも言ったがプロは結果がすべてだ、お前らが失敗したことで私は笑い者になったのだ、その腹いせにお前らを辱めるのだ、文句あるか」

 

「文句ありますわ、ロリスが辱めるなんて納得できませんわ!」

 

「私がやりたいからやるのだ、文句あるか」

 

「大ありですわ」

 

「だったらお前の力で阻止してみせろ」

 

「言われなくても!」

 

 

ミーラは懸命に立ち上がろうとするも踏み付けにされたまま身動きがとれなかった、その間にもロリスは辱めを受け続けていた。

 

 

「こ、殺してやる、殺してやる!!」

 

「やれるものならやってみな、ほれ」

 

 

ズボ!!

 

 

「ああ!!」

 

「どうした、どうした、さっきまでの威勢はどうした?」

 

「うっ、うっ、ひぐ・・・」

 

「指入れたぐらいでべそ泣きか、ガキだな」

 

「・・・う、うるさい、うるさい」

 

 

 

体さえ動ければこんな奴一瞬で殺せるのに・・・なんで動かないんだ、私の体・・・

 

 

 

恥ずかしさと同じくらい自分の体のやわさに悔しさを感じて涙を流すロリスであった。

 

 

 

妹の窮地にミーラはある覚悟をした、それも命懸けの覚悟を・・・

 

 

「今すぐやめさせろ!」

 

「そんな言葉で私がやめるとでも思っているのか?」

 

 

そんな言葉でやめると思っていない、だが私にはとっておきがある!

 

 

 

「今すぐやめさせろ、さもないと・・・」

 

「さもないと?」

 

「私の体の中にある爆弾を爆発させる!」

 

「爆弾だと?」

 

「そうだ、やめさせないと自爆してお前も道連れに・・・」

 

「やってみろ」

 

「!?」

 

 

ミーラはわけが分からなかった、爆弾を爆発させると言ってるのにやってみろと言うなんて、信じていないのか?

 

 

 

「嘘じゃないぞ、本当に爆弾が・・・」

 

「そうだろうな」

 

「そうだろうなって・・・爆弾が爆発したらお前は死ぬんだぞ!」

 

「そうだな、だが今知ったから回避は造作もない」

 

「造作もないって・・・」

 

「試してみるか、ガキ」

 

 

全く恐れることがないエヴァを見てミーラはハッタリではないと痛感するしかなかった、さらにエヴァは畳み掛けた。

 

「さあ、自爆してみろ、私を殺せるかもしれんぞ」

 

自信満々のエヴァを見て自爆しても確実に回避される、そうミーラは直感せざるをえなかった、その瞬間ミーラの中の何かが切れた。

 

 

「うわあああ!!」

 

 

ミーラは泣いた、大声で泣きわめいた、妹を助ける術をすべて失い、ただ泣くことしか出来なかったのである、その光景を見てエヴァは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「いいな、負け犬の泣き声は実に耳に心地好いな、ハハハハハ!!」

 

 

 

「・・・」

 

エヴァの非道な様を見てシヴァは不快を感じずにはいられなかった、すぐにでも止めに入りたかったのだが出来ない事情があったのである。

 

 

 

今ウチが止めにいっても素直に聞く奴やない、それに・・・

 

 

 

シヴァは帝具使いになる見返りに自分と同じ異民族のハーフの子供達の食い扶持を提供するようエヴァと取り引きをしていたのである、下手をすれば子供達が身代わりにされるかもしれない、それゆえただ見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

されるがままのロリスを目の当たりにしてマシロはいても立ってもいられなかった、自分も女だこのような

マネ見過ごすわけにはいかん。

 

 

 

 

 

 

マシロはロリスを助ける決意をし駆けつけようとした、だがエヴァの言葉がマシロの足を止めた。

 

 

「別に構わんだろ、あんなガキがどうなろうとも」

 

「だが・・・」

 

「あいつらは所詮お前の復讐を果たすための使い捨ての道具だろ」

 

「・・・」

 

 

マシロは反論出来なかった、全くの図星だったからである、最初は。

 

 

「はっきり言ってあいつらがいない方が果たしやすいのではないか?」

 

「それは・・・」

 

 

マシロはそれも否定出来なかった、的確な分析をすればそれは正しかったからである。

 

 

「だが・・・」

 

女として目の前で起こっていることを見逃すわけにはいかなかった。

 

 

「あのガキが犯されるのを黙って見ていればもう一度自由行動与えてやるぞ」

 

 

そのひとことを聞いてマシロの心は揺らいだ、何の邪魔もなく復讐に専念できるからである。

 

 

 

 

・・・私はどうすればいい、どうすれば・・・

 

 

 

 

マシロが苦悩している間男はロリスを犯さずただロリスの顔を眺めていた、男は女子を犯す前に恐怖に満ちた表情を眺める趣向があったのである。

 

 

「どうした、俺は無防備だぞ、俺を殺さないのか?」

 

「・・・ちくしょお、ちくしょお」

 

 

ロリスは大粒の涙をこぼしながら必死に体を動かそうとした、だが全く動けなかった、まだ脳しんとうが回復していなかったのである。

 

 

「その悔しさいっぱいの顔たまらんな」

 

「この変態野郎!」

 

「そうさ、俺は変態さ、だからお前を犯すのさ」

 

 

 

ロリスは悔しくてたまらなかった、こんな男に好き勝手されることに。

 

 

 

ちくしょう、だから男は嫌いなんだ、下品で野蛮で醜く、あの時だってそうだった、あの時も・・・

 

 

 

 

 

 

数年前

 

 

双子は奴隷商人にとある貴族に売り飛ばされて屋敷に連れて行かれたのである。

 

 

「今回の奴隷です」

 

「ふむ、まあまあだな、よし、買うことにしよう」

 

「ありがとうございます」

 

奴隷商人は代金をもらうと一礼をして去って行った、その場に双子と貴族の男だけが残った。

 

 

「さて・・・」

 

 

いやらしい目つきでじろじろ見つめる貴族に双子は強い嫌悪感を感じずにはいられなかった、ただでさえ不細工な顔なのにますます不細工になったのだから。

 

 

「まずはお前からだ」

 

 

男はロリスの右腕を掴みロリスの頬を舐め回した、ロリスはあまりの悍ましさに全身に鳥肌がたった。

 

 

「いやあああ!!」

 

「いい声だ」

 

「ロリスを離せ、このケダモノ!!」

 

泣き叫ぶ妹を助けようとミーラは男に飛びかかるが腹に蹴りを入れられて思いっきり吹っ飛ばされた。

 

 

 

「うえっ・・_」

 

 

もろに腹に蹴りを入れられミーラはその場で嘔吐し動けずにいた。

 

 

「姉様!!」

 

「お前の相手は後だ、しばらく待ってろ」

 

 

男はロリスの胸ぐらを掴んでそのまま服を引きちぎった、ロリスの左上半身があらわになり左胸が丸見えになった。

 

 

「やああああ!!」

 

「もっと泣き叫びな、さらにそそるからな」

 

 

ロリスは大粒の涙を流しながら目の前の男を心底憎んだ、そして何も出来ない自分自身にも・・・

 

 

 

ちくしょお、これからだら男は嫌いなんだ、下品で醜く汚くて、こんな奴にされるがままの私も・・・

 

 

 

「さて、俺のイチモツ入れさせてもらうぜ」

 

 

男はスボンを脱ぎ汚いイチモツを丸だしにしてさらに興奮した、そのせいで後ろから近づいてくるある者に全く気付くことが出来なかった。

 

 

「まったく本当に男って下品ね」

 

「誰だ!?」

 

男が振り向くとそこには一人の女性が立っていた変わった衣装を着ているが極上の美人であった。

 

 

「お、お前は?」

 

「もうすぐ死ぬあなたにはどうでもいいことでしょう」

 

「は?」

 

 

シュッ!!

 

 

女が腕を目にも止まらぬ速さで動かした瞬間男の首が胴体からポロっと落ち、落ちた首がゴロゴロ転がり胴体から噴水のように血が噴きだし地に倒れた。

 

 

「・・・」

 

 

双子はただ呆然とそれを眺めていた、殺したいほど憎かった男ではあったがいざ目の前で死体に成り果てると何も考えられないのである。

 

 

 

「あなた達大丈夫?」

 

「う、うん、なんとか」

 

「そう、よかった」

 

 

双子はさらに驚いた、今目の前で人を殺した人間とは思えないほど優しい表情をしているから。

 

 

「・・・あなたは?」

 

「私?私は殺し屋よ」

 

「う、うん・・・」

 

 

目の前で人を殺したのだからそうなのだろう、だが、聞きたいのはそんなことではない。

 

「あなたの名前は?」

 

「そっちね、私の名前は・・・」

 

「メラ様、こっちは終わりました」

 

 

突然後ろから別の女が現れた、勇ましくいかにも気が強そうな女である。

 

 

「ご苦労様」

 

「ところでそのチビ達は?」

 

「おそらく・・・」

 

「そういうことですか、まったくこの男は最低のゲスですね」

 

「本当ね」

 

 

 

双子は二人のやりとりを見てると不思議な感じがした、この人は部下だと思うのだがそれにしては二人の間にはかなりの親しみを感じるのである。

 

 

「メラ様、引き上げましょう」

 

「ええ」

 

 

この人が去ってしまう、双子は何か言わなければならないと思ったが何を言えばいいのかわからなかった。

 

 

「どうかしたの、あなた達?」

 

「ええと・・・」

 

「私達と一緒に行きたいの?」

 

「それは・・・」

 

 

はっきり言ってそうである、だが今一歩踏ん切りが着かなかったのである。

 

 

「・・・」

 

 

彼女が何も言わず無言で双子を見つめている、双子はなぜ何も言わないのか不思議だった。

 

 

「私の方から誘わないわよ、あなた達が決断しなさい」

 

「えっ!?」

 

戸惑う双子に女性はさらに手厳しい言葉を言い付けた。

 

 

「私達と一緒に行くということは殺し屋の世界に踏み込むということ、いつ死んでもおかしくない世界よ、

相当な覚悟で決断しないと」

 

 

 

いつ死んでもおかしくない・・・双子はその言葉に恐怖を感じたが、今までの人生だってろくな人生ではなかった。

 

 

親からろくな扱いをされず売り飛ばされ、挙げ句の果てにはゲスな変態の玩具にされそうになった、これからの人生だってろくなものにはならないはず、だけどこの人の元なら殺し屋として死んだとしても・・・悔いはない!!

 

 

 

ミーラとロリスは相づちを打った、二人の想いは一緒だからである。

 

 

「私達、殺し屋になります、だから一緒に連れて行ってください!」

 

「想像している以上に辛い最後になるかもしれないわよ?」

 

「覚悟の上です、だから鍛えてください!」

 

「殺し屋の修業は厳しいわよ?」

 

「それでもあなたと一緒にいたいんです、私達は強くなります!」

 

 

覚悟を決めた双子を女性はじっと見つめていた、そして優しい笑みを浮かべた。

 

 

「あなた達ならそう言うと信じていたわ、いらっしゃっい」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

双子は大喜びで女性に駆け寄った、だが大事な事をまだ一つ知らなかった、それはこの女性の名前である、双子の様子を見てそのことを察した。

 

 

「まだ私の自己紹介していなかったわね、私の名前はメラルド、メラルド・オールベルクよ、私のことはメラって呼んでね」

 

「お前らちゃんと様をつけろよ」

 

もう一人の女性がやや不機嫌そうに言ってきた、あまり歓迎していないのだろうか・・・

 

 

「もう、ギル、別にいいじゃない」

 

「いえ、こういうのはきっちりつけないと」

 

「もしかして妬いてる?」

 

「そ、そんなことは!」

 

 

顔を真っ赤にしてうろたえて否定するもバレバレである、意外にかわいいところがある。

 

 

「紹介するわね、彼女の名前はギルベルダ、あなた達の先輩よ」

 

「ギルベルダだ、一応よろしくな」

 

「は、はい」

 

「言っておくがメラ様の愛を簡単にもらえると思うなよ」

 

「えっ?」

 

 

この人は何を言っているのだろう、双子は一瞬思ったがすぐに理解することになる。

 

 

「心配しないで、あなたを蔑ろになんてしないから」

 

「は、はい!」

 

 

やや不機嫌だった彼女の表情が一瞬で満面の笑みに変わった、構ってもらえなくなるかもしれないと不安だったのだろう。

 

 

「この子達の修業お願いしていいかしら?」

 

「もちろんです、任せてください」

 

 

この人はいいところを見せたいのだろう、これ以上なくわかりやすかった。

 

 

「お前らビシビシいくからな覚悟しとけよ」

 

「は、はい」

 

 

キツイ修業の日々が来ることになる、だが今までと違い絶望感は全くない、ここから本当の人生が始まる、ワクワクを感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

「ほうけてるんじゃねぇよ」

 

 

男の一言でロリスの回想は中断した、そして絶望的な現実を痛感することになる。

 

 

 

私がこうなったのも元はといえばアイツのせいだ・・・アイツさえ私達の仲間になっていればメラ様達は死なずに今も私達は幸せの中にいたのに・・・

 

 

ロリスの目から大粒の涙がボロボロと流れ落ちた。

 

 

「大泣きするか、まあそうだろうな」

 

 

男は勘違いしているが、これはどうでもいいことである。

 

 

「じゃあ、入れるぜ」

 

「や、やだ・・・」

 

「痛いのは最初だけだ、そのうち気持ち良くなるぜ」

 

 

 

まあ、このガキなんかどうでもいい、俺が気持ち良かったらいいんだ、天にも昇るような気持ち良さがな

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

その瞬間、男は天に昇った、気持ちではなく男の体が空中に昇ったのである、豪快に・・・男をそうさせた人間がそばに立っていた、それはマシロであった、マシロは男をアッパーでぶっ飛ばしたのである。

 

 

「・・・マシロさん?」

 

 

ロリスは理解できなかった、何故彼女を置き去りにして立ち去ろうとした自分達を助けるのかを。

 

 

 

 




何とか年内に書き終えました、やはり文章を書くのは難しいです、来年も投稿するのでよろしくお願いします。


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第百話

今年最初の投稿です、今年もよろしくお願いします。


復讐を斬る(後編)

 

 

「ああああ!!」

 

 

マシロに殴られあごを粉砕された男がのたうちまわり苦しんでいた、エヴァはそれを全く気にもしていない。

 

 

「どういうつもりだ?」

 

「どうもこうもない、コイツをぶっ飛ばした、見ての通りだ」

 

「そういう意味ではない、お前、復讐をあきらめるつもりか?」

 

「そのつもりは一切ない」

 

「まあいい、その話は後だ」

 

 

エヴァの視線の先にはあごを粉砕された男が必死に助けを求めている。

 

 

「た、たひゅけ・・・」

 

あごを砕かれまともにしゃべれないがそれでも助けを求めた、エヴァはどうでもいいという感じである。

 

 

「私はお前を助けないぞ」

 

「な、なぜ?」

 

「お前、勝手に村の娘に手を出しただろう」

 

「!!?」

 

 

男の表情が一気に青ざめた、紛れもない事実だったからである。

 

 

「そのことを知ってプライムの奴激怒してたぞ、打ち首は確実だな」

 

 

男は絶望で意気消沈していた、自分の死が避けられないものになってしまったからである。

 

 

「まあ、お前は腕っ節だけは少しはましだからな、とりなしてやってもいいぞ」

 

「ほ、本当でふか!?」

 

「ただしマシロとタイマンで勝負して勝ったらの話だ」

 

 

男は再び絶望した、マシロと戦って勝つなど不可能に近かったからである、だが無理だと言ってもエヴァはでは死ねと言うに決まっている、男には戦うしか道はなかった。

 

 

「やらせてくれ!」

 

「そうでなくては、命懸けでやれ」

 

 

男は必死に考えた、マシロの強さはよく知っており、普通に戦えば勝ち目はない、唯一の勝機は・・・

 

 

「うおおお!!」

 

男はマシロに全身全霊で突っ込んだ、マシロにつかみかかり力でねじ伏せる、それしか勝機はなかったのである。

 

 

「浅はかな」

 

 

マシロは男の考えをあっさり読み取り侮蔑した、つかみかかろうとする男の腕を素早く掴み、そのまま一本背負いで地面にたたき付けたのである、たたき付けられた際に骨が何本も折れる鈍い音がした。

 

 

「ああああ!!」

 

 

余りの痛さに男はただ悲鳴を上げるしかなかった、男の苦しむ様を見てもマシロは微塵も哀れと思わず止めを入れようとしていた。

 

 

「死ね、ゲスが」

 

 

マシロの拳は男の頭部を完全に粉砕し、血、脳、骨、肉片が辺りに飛び散り地面に落ちていった。

 

 

「さすがだな、そいつはクズだが兵士の腕だけはたったのだがな」

 

 

男が無残な有様になってもエヴァは全く気にしておらず、マシロの強さをほめていた。

 

 

「こうなるのがわかっていてしかけたな」

 

「お前もそれがわかっていて潰しただろう」

 

「否定はしない」

 

「まあ、そんなことはどうでもいい、さっきの話の続きだ、お前、復讐をあきらめたのか?」

 

「そのつもりは微塵もない」

 

「ではどうするのだ?私はお前の自由行動を認めんぞ」

 

「そんなもの必要ない、力ずくで押し通る」

 

「なるほど、その手もあったな」

 

「白々しいな、こうなることは予想していたのではないのか」

 

「さあな」

 

 

 

こいつはしらばっくれているがこうなることを確信していたに違いない、こいつは面白ければ他は二の次なのだ、

あの時もそうだった、私が革命軍を脱走したあの時も・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百一話

今回はマシロが主役の話です


  脱走兵を斬る(前編)

 

 

帝国の最南の地、そこには革命軍の本拠地があった、そこから一人の女性が現れた、彼女の名はマシロ、

 

 

 

 

 

 

「ここまでは誰にも見つからずにすんだ、だがもうすぐストリークの監視網に入る、どうやって乗り切るか・・・」

 

 

帝具による煙を使った監視網はマシロもよく知っていた、高性能で知られており味方の時は頼りになったがいざ相手にするとなると危機感を感じずにはいられなかった。

 

 

「それでも引くわけにはいかない」

 

 

監視網から逃げ切る絶対の自信はなかった、だがコウガの敵をとるためには引くわけにはいかなかったのである。

 

 

「死に物狂いで全力疾走しかないな」

 

覚悟を決めたマシロの後ろに一人の人間が近づいてきた、マシロはそれに気づき後ろを振り返った、そこにはマシロがよく知る人物であった。

 

 

「エヴァ殿!?」

 

 

そこにいたのは革命軍の最高幹部であるエヴァであった、マシロは驚きの余り一瞬我を失った。

 

 

「すきだらけだぞ、お前らしくないな」

 

 

マシロは懸命に思考を巡らした、なぜ彼女がここに?私を追って来たのか?だがそのような感じでもない、どういうつもりだ?とにかくここはごまかさなくては・・・

 

 

「コウガの敵討ちに行くのか?」

 

 

完全に先手を取られてマシロは言葉が詰まってしまった、完全にマシロの心を見抜かれていた。

 

 

「・・・そうだ」

 

 

下手なごまかしは無意味と判断し腹をくくって本当のことを言った、最悪一戦交えるかもしれない、そうマシロは覚悟した、だが事態はマシロの予想とは全く異なるものとなった、エヴァは無言であるものをマシロに投げ渡した。

 

 

「これは!?」

 

マシロが受けとったものは強い臭いを放つ臭い袋であった、むろんただの臭い袋ではない。

 

 

「それがあればストリークの監視網を難なく通れるぞ」

 

 

この臭い袋は革命軍において通行手形の役割をはたしているのである。

 

 

「どういうつもりだ!?」

 

 

てっきり脱走を阻むと思っていたのだが、まさか手助けをするとは・・・

 

 

 

「お前は手柄を多く立てたからな、その対価だ」

 

「いいのか?総大将が良しと言うとは思えんが」

 

「軍略は私が握っている、プライムの奴も私に何もいえんさ」

 

 

プライムの奴か・・・あいからわず無礼な態度だな、実際彼女の軍略で5年足らずで革命軍を帝国も無視できない勢力

に仕上げたのだからな。

 

 

 

「それでも私を行かせる理由があるのか?」

 

「理由か、あえて言うなら面白いと思ったからだ」

 

「面白い?」

 

「そうだ、世のため人のためなどありきたりでつまらんだろう、私怨で戦う方が面白いだろう、私怨、多いに結構だ」

 

 

マシロは思った、以前から思っていたことだがコイツはいかれてる、頭のネジがぶっ飛んでいる、この乱世でなければ狂人の烙印を押されて果てていただろう。

 

 

「いくら軍略の権限を握っているとはいえ総大将が納得するとは思えんが」

 

「そんなものはどうにでもなる、お前に人材集めの命を与えたと言えばいいんだ」

 

「私がその命を果たすとでも思っているのか?」

 

「果たすつもりがなくても集まる時は集まるものだ、その逆もしかりだ」

 

 

マシロはあきれた、こんなずさんなやり方を平気でやろうとするエヴァに、しかもこのやり方で今までうまくいっている悪運の強さに戦慄を感じずにはいられない、まさに結果が良ければ全て良しである。

 

 

 

「・・・とにかく私は行くぞ、いつ気が変わるかわからんからな」

 

「せいぜい励むがいい」

 

 

マシロはその場を後にした、正直に言ってここに戻ってくるつもりはさらさらなかったのである、もちろん人材集めも果たす気はない、今はコウガの敵討ちしか頭にない、もう私は革命軍ではないのだから。

 

 

 

「エヴァはああ言ったが他の奴は私を見逃すつもりはないだろう、急ぐとするか」

 

 

マシロは極力村や街を避けて移動した、エヴァと関係ないとこで追っ手を差し向けているかもしれなかったからである、このあたりの地形は熟知していて一般人が通らないがけとかを通り移動して行ったのである。

 

 

「あの街は確か革命軍の息がかかっていなかったな、一息つけるな、完全に気はぬけんがな」

 

 

マシロは革命軍の息がかかっていない街に到着していた、エヴァはああ言ったものの他の革命軍の幹部が追っ手を差し向けないという保障がなかったからである。

 

「とりあえずここまで何事もなかったな、それにしても・・・」

 

 

辺りを見回して見るとほとんどの人間の表情が辛気臭さかった、不景気そのものである。

 

「帝国の圧政の影響だな、まあどの街も似たようなものだがな・・・」

 

 

かつてはコウガと共に圧政をしく帝国を打倒して新国家を築くと志したのだが、今はもうコウガはいない、ただ復讐を果たせれば他はどうでもいいのだ。

 

 

「さて、宿を探すか、できるだけ安いところがいいな」

 

 

路銀は決して多いとはいえない、できるだけ節約しないとな、マシロは場末の宿を求めて裏道へと入った、

裏道には胡散臭い輩がウヨウヨしていた。

 

 

「ネーチャン、美人だな」

 

「俺達といいことしないか?」

 

 

マシロはそれらの声を全て無視して早足で歩いた、いちいち相手するのも面倒であった。

 

 

「無視すんなよ、あまり調子・・・」

 

 

マシロは殺気を込めて睨みつけた、男達はびびって一目散に逃げ出した。

 

 

「やれやれ、早いとこ宿を・・・」

 

 

突然、男達の怒号が鳴り響いた、それはマシロにむけられたものではない別の者にむけられたものであった。

 

 

「あれは?」

 

 

マシロの視線には怒った複数の男達がいた、そしてもう一組は双子の少女であった。

 

 

 

本気で少女につっかかるとは大人気ない、それだけ人心が荒んでいるのだな、まあ、私には関係のないことだが、

さっさと立ち去るか・・・

 

 

その瞬間、男の一人が吹っ飛ばされた、少女の一人に蹴り飛ばされたのである。

 

 

「何だと!?」

 

 

少女の素早さは並大抵のものではなかった、マシロでもどうにかついてこれた程であったから。

 

 

「ふん、たいしたことないね」

 

 

少女の一人が倒れた男にさらに追い撃ちをしかけた、少女の蹴りは男のみぞうちにもろに決まった。

 

 

「まあまあの変顔かな、さらに痛めつけたらもっと面白くなるかな」

 

 

さらに蹴りを男にくらわし、泡を吹いてそのまま失神した、少女はその様子を見て笑みを浮かべた。

 

 

 

「もう失神しちゃった、つまんないの」

 

 

男の仲間達は怒りに顔を真っ赤にして懐からナイフを取り出し、殺気を込めて少女を睨んだ、明らかに殺す気である。

 

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 

男達は少女に向かって行った、だがもう一人の少女に男の一人があしばらいをかけられた、男はその場に転び他の男達も巻き添えで転んでしまった。

 

 

「くそ、どけ!」

 

「お前こそどけ!」

 

 

いらついている男達を双子の少女達は見下した笑みを浮かべている。

 

 

「おまぬけですわね」

 

「姉様、こいつらどうしようか?」

 

「決まってますわ」

 

「そうだね、フルボッコだね」

 

少女達は容赦なく男達を袋だたきにした、苦痛の悲鳴が鳴り響いたが少女達は満面の笑みで痛めつけた、

やがて男達は全員気を失い悲鳴が止んだのである。

 

 

 

この二人何者だ・・・この身のこなし、素人などではない、それにこの容赦のない攻撃、私の勘では殺しの心得があるな、さて、どうするか・・・

 

 

双子は男達の懐から財布を抜き取りその場を素早く立ち去った、マシロも双子の後を追うようにその場を去った。

 

 

 

双子は人気のないところへ移動し財布を調べだした、そこそこのお金が入っていた。

 

 

 

「まあまあ持ってましたわね」

 

「夕ごはんふんぱつできるね」

 

「それもいいですが」

 

「うん、わかってる」

 

 

二人は同時にある一点に視線を向けた、そこには誰もいないように見えた。

 

 

「そこにいるんでしょう」

 

「気配消してもわかるよ」

 

 

返事は一切なくシーンと静まり返っていた、その反応を見て双子はいらつきだした。

 

 

「さっさと出てきなさい」

 

「痛い目見る前に出てきなよ」

 

またも辺りはシーンと静まり返った、双子の顔は怒りで赤くなってきた。

 

 

「・・・いい加減にしたらどうです」

 

「・・・今すぐ出て来ないと本当に殺すよ」

 

 

「私を殺すか、ずいぶん威勢がいいな」

 

 

 

真後ろから突然の声に思わず後ろを振り返った、そこにはマシロが立っていた、双子は心底驚いた。

 

 

「何で後ろに!?」

 

「確かあそこに気配を感じたのに!?」

 

「あれはわざとだお前達の意識をあそこに釘つけさせるために」

 

 

双子はア然とした、そんなマネができるなんてこの女ただ者じゃない、うかつに仕掛けたらただじゃ済まない、双子は身動きができないでいた。

 

 

マシロの方も双子がただ者でないと判断していた、男達をぶちのめした動きは素人のではなく、訓練された動きであった。

 

 

 

「お前ら、落ち着いた場所で話をしないか?」

 

「話を?」

 

「お前らはただの子供ではないだろう、少し興味を持ってな」

 

 

双子は後ろに向いてひそひそと二人で相談した、マシロには全て筒抜けであったが。

 

 

「どうします、ロリス」

 

「うん、ここはあの女に乗ってもいいんじゃないかな」

 

「そうですね、あの女ただ者じゃありませんし」

 

「じゃ、決まり」

 

 

双子は振り返り、申し出を受けることにした、すでにわかっていたが。

 

 

「じゃあ、適当な食堂に行きましょう」

 

「ああ」

 

「あなたのおごりでね」

 

「・・・別に構わん」

 

 

マシロは少し不満を感じたが、時間がもったいないので渋々受けることにしたのである、三人は場末の酒場に赴き適当に食事を注文した、食事できるまでそれぞれ自己紹介した。

 

 

 

「私はマシロだ」

 

「私はミーラですわ」

 

「私はロリスだよ」

 

 

三人は名前の次に所属を明らかにした、お互い所属を聞くと大層驚いた。

 

 

 

「マシロさん、革命軍の兵士でしたの?」

 

「元だがな」

 

「納得だよ、帝国の地方軍の兵士じゃ強すぎるから」

 

「私も驚いたぞ、まさかお前らがあのオールベルグの一員とはな」

 

 

 

オールベルグ・・・歴史の裏で数々の暗殺を行ってきた暗殺結社である、構成員も凄腕ぞろいで裏世界の勢力では最強の一角である。

 

 

 

「それにしてもあのオールベルグが壊滅したとはな・・・」

 

 

暗殺部隊が強いのはわかっていた、だが、まさかあのオールベルグを壊滅させるほどとは・・・

 

 

「言っておきますがメラ様は奴らより弱かったではありませんわ」

 

「実際、メラ様は奴らの何人かは捕らえたんだ」

 

双子は無念の思いで語った、死ぬほどの悔しさをひしひしと感じる。

 

 

「・・・分からんな、なぜそれだけ有利な状況なのに壊滅したんだ?」

 

 

マシロは首を傾げた、最も解せないのは何故殺さずに捕らえたのか、不思議でならなかった。

 

 

「・・・それは」

 

「言いたくないのなら言わなくていい、今の私にはそれは問題ではないからな」

 

「じゃあ、言わない、言いたくないから」

 

「構わない」

 

「ところでマシロさんは何故革命軍を抜けたのです?」

 

「一言で言えば敵討ちだ」

 

「敵討ち?」

 

「そうだ、恋人の敵討ちだ」

 

「恋人は男なの?」

 

「そうだが?」

 

 

マシロは再び首を傾げた、女の恋人は普通男のはず何故そんな質問をするのかわからなかった。

 

 

「いけませんわ!」

 

「はあ?」

 

「恋人が男なんてダメだよ!」

 

「お前ら何を言って・・・」

 

 

意味不明なことを言う双子に戸惑うマシロであったがあることを思い出した、オールベルグは同性愛、女性同士の恋愛を重んじることを。

 

 

「とにかくお前ら落ち着け、今はその話をするためにここにきたのではない」

 

「確かに・・・」

 

「今は後回しにするよ」

 

 

マシロはやれやれの表情をした、後回しということは後で再びもめるということだから。

 

 

 

「単刀直入に言う、お前ら、私と組まないか?」

 

「え?」

 

「どういうこと?」

 

 

 

二人は予想外の事を言われてキョトンとしている、無理ないことである。

 

 

「そのままの意味だ、組まないかと言ったのだ」

 

「そうは言われましても・・・」

 

「簡単に決められないよ・・・」

 

 

まあ、気持ちはわからんでもない、私でも同じ立場なら同じ反応をしただろう。

 

 

「正直敵討ちは私一人でやりたい、だがあのメラルド・オールベルグすらも返り討ちにする連中だ、私一人では

極めて困難になるだろう、無論お前達もだ」

 

 

「だけどメラ様の敵討ちは私達でやりたいですわ」

 

「そうでないと意味がないよ!」

 

 

組むという提案に双子は明らかに不満であった、それもマシロは予想していた。

 

 

「お前達、メラルドよりも強いのか?」

 

「そんなわけありませんわ!」

 

「私達がメラ様に及ぶわけないよ!」

 

「ならお前達だけでは不可能だろう」

 

 

双子はマシロの指摘に反論できなかった、全くそのとうりであったから。

 

 

「別に一蓮托生というわけではない、一時的な共同戦線ということだ、目的のために互いを利用しあう

納得できないなら解消して構わない、そういう関係だ」

 

「・・・それなら」

 

「組んであげてもいいよ」

 

 

双子は完全に納得したわけではない、だが自分達だけで復讐を果たすのは極めて困難というのも事実である、

ここはこの女を利用して復讐の可能性をあげるのが得策である、そう判断した。

 

 

「では、あらためてよろしく頼む」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「私達がいれば鬼に金棒だよ」

 

 

三人はあらためてお互いにあいさつした、だがお互い完全に信用していない、一時的な関係だと理解していた、

復讐を果たすためならあっさりと切り捨てる程度の関係であると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百二話

今年は花粉が多くて大変です


 脱走兵を斬る(中編)

 

 

 

双子の姉妹ミーラとロリスを加えたマシロは暗殺部隊への復讐を果たすべく各地を転々としていた、だが、その足取りは掴めずにいた。

 

 

 

「ふう、今日もむだ足でしたわ」

 

「全く嫌になっちゃうね」

 

 

双子は不満顔でぼやいているがマシロの顔はさらに不機嫌であった。

 

 

「足を棒にして情報収集したのは私だ、お前達は暴れていただけだろう」

 

 

はっきり言って双子に情報収集は無理なのでマシロが一人で行っていたのである、それだけならまだマシなのだが

双子は余計な騒動を頻繁におこしていたのである。

 

 

「仕方ありませんわ」

 

「だってあいつらがケンカを売ってくるんだから」

 

「無視しろ、いちいち買う奴があるか!」

 

 

マシロは少し後悔していた、双子がなかなか腕が立つので組んだが、これだけ騒動をおこすとは思っていなかった、

しかし、いまさら後の祭りである、この面子でやるしかないのである。

 

 

「少し出かける」

 

「どこへ行くのです?」

 

「酒場だ」

 

 

酒を飲んで気分転換しないとやってられない、心の中でぼやくマシロであった。

 

 

「じゃあ私達も行く」

 

「・・・好きにしろ」

 

 

正直邪魔なのだが、ついて来るなと言ってもついて来るだろう、ならあきらめて同行を認めた方がいい。

 

 

「余計な騒動はおこすなよ」

 

「わかりました」

 

「はーい」

 

 

若干の不安を感じながら酒場へ行くことにした、何事もなければいいが・・・

 

 

 

三人は適当な酒場へ赴いた、いわゆる場末の酒場である、柄の悪い連中がウロウロしている、その何人かにマシロは

声をかけられたが睨みつけて追い払った、空いているカウンター席に座りマシロは酒、双子はジュースを注文した。

 

 

「これからどうするか・・・」

 

 

帝国の暗殺部隊の足取りを掴むのは容易ではない、連中がそんなマヌケならやすやすコウガがやられるわけがない、

私がもっと裏に精通していればいいのだが、これは性格にも左右されるからな、私では適任とは言い難いな、謀に詳しい奴がいれば少しは楽なのだが・・・いかんな、無い物ねだりをしては・・・

 

 

マシロが思案していると別のテーブル席の方で騒ぎが起こった、何事かと見たらポーカーの勝負が行われていた。

 

 

「またコイツの勝ちかよ」

 

「イカサマじゃねえのか?」

 

「そんなそぶり見せてないな」

 

 

男達の話を聞く辺りかなり勝ちまくっているらしい、マシロは少し興味がわいた、             

気分転換もかねてマシロはそのテーブル席に向かった、双子も後をついていく。

 

 

 

テーブル席には二人の男が座っている、一人は少し柄の悪い男でもう一人は明らかに風変わりの衣装を着ていた、あの衣装は見覚えがあるような気がするのだがマシロは思い出せないでいる、それは後回しにしてテーブルを見ることにした、表情を見ると勝っているのは風変わりの衣装の男である。

 

 

 

「エースのツーペア」

 

「2のスリーカード」

 

 

またあの男が勝ったようである、負けた男はさらに不機嫌になっていた。

 

 

「へえ、あの男賭け事強いんですね」

 

「まあな・・・」

 

「どうしたの?マシロさん」

 

「ああ、ちょっとな」

 

「ちょっと?」

 

 

マシロ達が話をしている間にさらにポーカー勝負が進んだ。

 

 

「キングのスリーカード!」

 

「ハートのフラッシュ」

 

 

またまたあの男が勝ってさらに盛り上がった、負けた男は爆発寸前である。

 

 

「またまた勝ちましたわ」

 

「うん、姉様」

 

 

驚いている双子と裏腹にマシロは冷めた様子で見ている、ある予想があったからである。

 

 

「イカサマしているな」

 

「イカサマ?」

 

「ありえないくらい勝っているから?」

 

「そうじゃない、あいつの表情には自分が負けるという可能性を一切感じない」

 

「可能性?」

 

「絶対勝てる賭け事などない、だがあいつは自分が負けるとみじん思っていない、つまりイカサマをしているから

絶対負けないと確信しているんだ、だが・・・」

 

「だが?」

 

「どんなイカサマをしているかわからん」

 

「なんですか、それ?」

 

「そんなので大きな顔しないでよ」

 

 

マシロは何も言えなかった、イカサマがわからないのであればイカサマといえない、だがマシロの目をもってしてもイカサマがわからないのである、あの男の手に妙なそぶりは一切ない、普通にポーカーをしているのである。

 

 

 

 

「・・・」

 

「どうしました?」

 

 

負け続きでいらいらしているのをわかっていて言ったのであった、その一言で男はぶちギレた。

 

 

「てめえ、イカサマしただろ!」

 

「何をおっしゃるのです?」

 

「ふざけるな、こんなに勝ち続けるなんてありえないだろう!!」

 

「たまたまですよ」

 

「そんなわけないだろ!」

 

「じゃあ、どんなイカサマを私がしたのです?」

 

「そ、それは・・・」

 

「説明できないのであれば言い掛かりでしかありません」

 

 

男は何も言い返せなかった、どんなイカサマなのか説明できなければイカサマにならないからである。

 

 

「うるせえ!!」

 

 

男は怒りのままに殴りかかろうとした、だがとある男が腕を掴んで阻止した。

 

 

 

「何しやがる!?」

 

「そいつを殴るのはかまわんが、一応これが俺の役割だからな」

 

「訳のわからんこと言うんじゃねえ!」

 

 

男は力まかせに振りほどこうとした、だが逆に男は投げ飛ばされおもいっきり地面に叩きつけられそのまま失神した。

 

 

「あの男やるな」

 

「ええ、ただ者ではありませんわ」

 

「あいつ、かなり強いよ」

 

 

双子でさえも認めるその男は見た目は10代半ばのようである、だがその身のこなしは素人ではない、訓練されかなりの場数を踏んだ人間のものであった。

 

 

 

「ご苦労様です」

 

「調子にのりすぎだ雑魚主人」

 

「否定はしません、だがあなたが路銀を稼いでくれれば私はこのようなやり方をしなくてよかったのですよ」

 

「主人なら従者の食い扶持をどうにかするべきだろ」

 

「・・・まあ、十分稼ぎましたし、よしとしましょう」

 

 

 

明らかに苦虫をかみつぶしたような表情をした、だが同時にあきらめの表情もした、何を言っても無駄だと悟ったのであろう、いろいろと訳ありのようである。

 

 

「さっさと引き上げるぞ、雑魚主人」

 

「わかってますよ」

 

 

二人はさっさとその場を立ち去ろうとした、だが主人の方の男は従者に比べて拡大に動きが遅かった、従者の男も遅いと言われている、主人は不満な表情をしつつも全速力で立ち去って行った、辺りの人間はわけがわからずキョトンとしている。

 

 

「マシロさん、いろいろすごかったですね」

 

「ああ」

 

「絶対立場逆だね」

 

「そうだな」

 

 

マシロは解せなかった、なぜあれだけの腕の男があの者についているのか、不遜な態度をとってもなぜ怒らないのか、不思議に思っていたがふととあることを思い出した。

 

 

 

「そうだ、あの衣装!」

 

「それがどうしたの?」

 

「あの衣装、プトラの墓守のものだ」

 

「プトラの墓守って、あの?」

 

「そうだ、帝国北西に位置する渓谷地帯プトラに存在する王家の遺跡を護る部族だ、革命軍は以前連中に使者を送ったのだが門前払いされた」

 

「まあ、そうなりますわね、あの人たち誰かと組むことは余程のことでもないですから」

 

「革命軍もダメもとで送ったからな、だが今回は違う」

 

「まさかあの連中と組むの?できると思えないけど」

 

「普通なら無理だな、だが今なら別だ」

 

「どういうこと?」

 

「未確認情報だが、プトラの墓守は滅んだらしい」

 

「本当!?連中かなり強いって評判だったのに」

 

「それが本当なら滅ぼしたのって・・・」

 

「帝国の暗殺部隊だろうな」

 

 

双子は思った、暗殺部隊の連中手当たり次第に仕掛けている、奴らが通った道はまさに血まみれであると。

 

 

「連中の狙いが暗殺部隊なら組める可能性はゼロじゃない、とにかくあいつらを追うぞ」

 

「うん」

 

 

三人は彼らの後を追った、胡散臭い連中ではあるが復讐を果たせるのであればたいした問題ではなかった。

 

 

一方、その胡散臭い連中は酒場から離れた裏道で足を止めていた、とある用事を済ませるためである。

 

 

「おい、雑魚主人」

 

「わかってますよ、あなたが何を言いたいのか」

 

 

主人と呼ばれた男はじーっと一点を見つめていた、そこには誰もいない。

 

 

「そこにいるのでしょう、気配を消してもわかります」

 

 

男の呼びかけに応じてマシロ達は現れた、さほど驚いてはいなかった。

 

 

 

「やはり気づいていたか」

 

「私はそんなに鈍くはありませんよ」

 

 

 

男は自慢げに振る舞った、自分は鋭いとアピールしたいのであろう、だが現実はそうではなかった、

マシロ達は完全に気配を消していなかったのである、気づくようほんのわずかに気配を残していたのである。

 

 

「勘違いするな雑魚主人、こいつらは雑魚主人が気づくようわざとわずかに気配を残していたんだ」

 

「・・・わかっていますよ」

 

 

男は少しムッとした、少しくらい花を持たせてもよいではないかという表情をした。

 

 

 

「早速だがお前らと話がしたい、いいか?」

 

「構いませんよ」

 

 

マシロ達はそれぞれ自己紹介した、自分達が元革命軍とオールベルグの者だと告げた。

 

 

「なるほど、元革命軍の兵士とオールベルグの一員の組み合わせですか、面白いですね」

 

「お前、その衣装、プトラの墓守の人間だろう」

 

「そのとうりです、よくご存知で」

 

「任務の過程でいろいろ知ったのだ、単刀直入に聞く、プトラの墓守は帝国の暗殺部隊に滅ぼされたのであろう?」

 

「・・・そのとうりです」

 

 

男の表情が一気に曇った、無念の極みであろうことがひとめでわかる、それゆえマシロは組み込める可能性が高いと思ったのである。

 

 

「単刀直入に聞く・・・」

 

「私達と組まないかということですね」

 

「ほう、察していたか」

 

「そう難しくありませんよ、あなた達の立場を考えれば」

 

「そうか、ならば話は早い、手を組まないか?」

 

「そうですね」

 

「言っておくが一蓮托生の関係ではない、お互いを利用しあう関係だ」

 

「つまり、同盟というわけですか」

 

「そんなところだ」

 

 

男は納得した、正直一蓮托生の関係なんて面倒で復讐を果たすのに不都合の方が多そうだからである、その点同盟となればいざとなったら解消してしまえばいいのである。

 

 

「いいでしょう、その提案受けましょう」

 

「そうか、ところでお前の・・・」

 

「私の名はムディです」

 

「そうか、そっちの奴は」

 

「名はありません」

 

「どういうことだ?」

 

「正確に言えばわからないのです、彼記憶喪失なので」

 

「記憶喪失!?」

 

 

 

さすがのマシロも驚いた、まさか記憶喪失だとは予想もしていなかったからである。

 

 

「最初はナということは覚えているのですが」

 

「そうか・・・」

 

「あなたが名前をつけてくれませんか?」

 

「私が?」

 

「名前がないとあなた達が不便でしょう、いいですよね?」

 

「別にかまわん」

 

「それでは・・・」

 

「私達がつけましょう」

 

「いいよね、マシロさん」

 

「まあ、別にいいが」

 

 

双子はいろいろ思いついた名前をつけたが彼は全く気にいらなかった、双子は不満を爆発させた。

 

 

「どこが気にいらないんですの?」

 

「カッコイイのに!」

 

「どこがいいんだ、センスの欠片もないな」

 

 

マシロは怒った双子をなだめて自分が考えることにした、凝りすぎた名前もどうかと思いシンプルな名前を考えることにした。

 

 

「ナックルというのはどうだ?」

 

「なんですか、それ?」

 

「パッといない」

 

 

文句を言う双子とは対象的に男はこれといって不満はなさそうに見える。

 

 

「これでいい」

 

「なんでこれでいいんですか!?」

 

「私達の方がカッコイイのに!!」

 

 

怒りが爆発している双子を見て男はいかにもめんどくさい表情をした。

 

 

 

「お前達が考えた名は長すぎるし、センスがなさすぎる、ナックルの方が短い分だけまだマシだ」

 

 

短さで選んだのか、マシロは口には言わず心の中でつぶやいた、口に出さなかったのはゴタゴタするのを避けたかったからである。

 

 

 

「ではこれからはお前のことをナックルと呼ばせてもらう」

 

「ああ」

 

 

マシロにはそれ以上に気になることがあった、ムディが教えてくれるかどうかは微妙ではあるが。

 

 

「お前、さっきのポーカーでイカサマしていただろう?」

 

「そうですよ」

 

「どんな手を使ったんだ、イカサマの手が全くわからないのだが」

 

「これです」

 

 

その瞬間ムディの腹部から針金のような細長い何かが現れた、クネクネと動き回っている。

 

 

「何ですか、それ!?」

 

「気持ち悪い!」

 

 

双子はあからさまに気持ち悪いそぶりを見せた、マシロも口には出さなかったが気持ちのいいものではなかった。

 

 

「気持ち悪いと失敬ですね、こんなに愛らしいのに」

 

 

コイツとは趣味が合わないな、マシロは確信した、それでも何かの役に立つかもしれない、我慢しておこう、心の中でマシロは誓った。

 

 

「それを使ってイカサマを成功させたんだな」

 

「そうです、私の意のままに緻密に動いてくれます、イカサマなんて造作もありません」

 

「たいしたものだな」

 

「いえいえ」

 

 

ムディは謙虚に振る舞ったが能力の一部しか披露していなかった、虫を寄生させてナックルを操っていることは他言するつもりはなかったのである。

 

「もう一つ別に話がある」

 

「話とは何です?」

 

「この集団を誰がまとめるかだ」

 

「それはあなたがいいのでは?」

 

「少なくとも計略に関しては私よりもお前のほうが詳しいだろう、それに私は考えるよりも体を動かすほうが合っている」

 

「そういうことでしたら引き受けましょう」

 

「お前達もそれでいいな」

 

「別に構いません」

 

「いいよ」

 

「ではムディ、お前がまとめ役をやってくれ」

 

「わかりました」

 

 

ムディは快く引き受けた、だがマシロ達に情は一切なく便利な手駒感覚である、マシロもそれを予想している。

 

 

「早速ですがあるところへ赴きます」

 

「どこだ?」

 

「ハクバ山です」

 

「ハクバ山?」

 

「ある筋の情報で暗殺部隊の次の標的の可能性があるのですよ」

 

「そうか、なら行くことにしよう」

 

「では明日の早朝に」

 

「ところで一つ気になることがある」

 

「何です?」

 

「ナックルの顔色があまり良くないように見えるのだが、ケガでもしてるのか?」

 

「はい、ですがたいしたケガではありません」

 

「そうか、ならいい」

 

 

ムディはそう言ったがナックルのケガはかなりの重傷だった、だがムディはナックルの治療はしたくなかったのである、自分の故郷を滅ぼした連中の人間を治療するのは抵抗があったのである、どうせ復讐がすんだら始末するつもりだから。

 

 

「明日に備えて休みましょう」

 

「ああ」

 

「はい、ですわ」

 

「わかった」

 

 

後にマシロはムディの言葉を鵜呑みにしたことを後悔した、あの場でナックルのケガの状態を知っておけばその時に適切な治療をして最悪の状況になることもなく、革命軍本部にいるシヴァを連れて来る事態になることにならなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百三話

花粉が控えめになり過ごしやすくなっています。


 脱走兵を斬る(後編)

 

 

 

マシロはエヴァと対峙していた、わずかな隙を見つけるためである、エヴァをどうにかしなければこの場を離れることはかなわないからである。

 

 

コイツには全く隙がない、倒すのは至難だ、やはりあの時強引にでもナックルのケガの治療をしておけば・・・

過ぎたことを悔やんでも仕方ない、今はコイツをどうにかしなければ・・・

 

 

 

マシロの目の前にいるのは元帝国軍人で将軍になれるほどの功績をたてた人間なのである、まともに戦えば勝ち目はほとんどない、それでもなんとかしなくてはならないのである。

 

 

「私の隙を探しているんだろう?」

 

「さあな」

 

 

実際そのとうりなのだがマシロはごまかした、それでもエヴァに通用しないのはわかっていた。

 

 

「一発殴らせてやる」

 

「何だと!?」

 

 

左の頬を左の指で指している仕草を見てマシロはア然とした、とても信じられなかったからである。

 

 

「いつまでもらちがあかないからな、手っ取り早くすまそうと思ってな」

 

「・・・ナメてるな」

 

 

正直ナメられて腹が立ったがチャンスでもあった、この一発でエヴァをぶちのめすことができればここを立ち去り復讐に向かうことができるからである、ただ・・・

 

 

「それを信じろと?」

 

 

それをあっさり信じるのは馬鹿である、疑うのは当たり前のことである。

 

 

「好きにしろ」

 

 

危険ではある、だが絶好の好機でもある、一発でぶちのめすことができれば勝ちである、マシロは腹をくくることにした。

 

 

「くらえ!」

 

マシロは間髪入れずにエヴァの左の頬に全力の一撃をくらわせた、時間をかければ不利になるだけであるから。

 

 

とった、と思った瞬間腹に熱いものを感じ、何かが込み上げてきた、それは自分自身の血であった、エヴァは殴られた瞬間にカウンターでマシロの腹に一撃をくらわせたのである。

 

 

ばかな・・・マシロはその言葉にすることができずに地面に伏した、そのまま一切身動きできずにいた。

 

 

「なかなかの一撃だったぞ」

 

 

エヴァはマシロの一撃で折れた奥歯を吐き出した、その奥歯は虫歯であった。

 

 

「うっとうしかったからな、ちょうどよかった」

 

 

この化け物が・・・マシロはしゃべることができず心の中で罵った、私の一撃などコイツにとってその程度でしかなかったのだ。

 

 

マシロの心中を察したかのようにエヴァは見下した笑みをマシロに向けた。

 

 

「なぜお前が及ばなかったかわかるか、憎しみが足りなかっんだよ、人の身を捨ててでも復讐を果たす、お前にはその覚悟が足りなかっのだ、あのガキ共を見捨てなかったのが全てだ」

 

 

もちろんマシロにも自分は甘いという自覚はある、だが女として見過ごすことができなかったのである。

 

 

「どのみち今のお前では復讐を果たすことはできんだろう、一人くらい仕留めることはできるかもしれんが」

 

 

マシロは何も言えなかった、しゃべれる状態ではなかったこともあるがしゃべることができても反論はできなかっただろう。

 

 

「さて、そこのプトラの奴、どうする?」

 

 

「どうするも何も、今の私にどうしろと?」

 

 

マシロでも敵わない相手に自分がどうしろと?ナックルが動けない今何もできないのは明らかである。

 

 

「だろうな、おまえの戦闘力はゼロに等しいからな」

 

「そうですよ、ですがそれ以外のことに関してはそれなりに自信があります」

 

「ならば取引しないか、私の役に立てば復讐の機会を与えてやるぞ」

 

「それはどの程度ですか?」

 

「将軍の首か帝具一個だな」

 

「・・・それはそれは」

 

 

ムディにはそれがどれだけ困難なことかわかっていた、この女は最初から機会を与えるつもりはないのか

それともそれだけの対価が必要と思っているのかムディにはわからなかった、だが選択の余地はなかった。

 

 

「・・・わかりました、取引に応じます」

 

 

たとえどれだけ時間がかかろうとも復讐を諦めるつもりはない、この女を利用して機会を得るまでだ、そうムディは決心するのであった。

 

 

「ところで一つ相談が・・・」

 

「わかっている、そいつの腕のことだろう、腕を切り落とした後は試作品の義手をくれてやる、せいぜいこき使ってやるんだな」

 

「もちろん」

 

 

 

言われるまでもない・・・コイツは復讐すべき連中の一人なのだから、徹底的に利用してやりますとも、無論あなたもですがね、私を利用するつもりでしょうがそれ以上に利用してやりますとも・・・

 

 

エヴァは強い視線を感じ振り向いた、そこには憎しみを込めて睨みつけているミーラとロリスであった。

 

 

「私を憎むのは筋違いだぞ、お前達が弱いから痛い目にあったのだ、裏の世界では当たり前のことだ」

 

 

もちろんそのことも恨んでいるのだがそれ以上に許せないことがあったのである。

 

 

「私達が一番許せないのはメラ様を侮辱したことだ!」

 

「メラ様が無能だということを取り消せ!」

 

 

怒りに満ちた双子をよそにエヴァは涼しげな顔をしている。

 

「何を言っているお前達、奴は依頼を失敗したのだ、それを無能と言わず何という」

 

「それは・・・」

 

「メラ様は命をかけて・・・」

 

「過程などどうでもいい、成功という結果が全てだ」

 

 

双子は何も言い返せなかった、プロは結果が全て、彼女もよく言っていたことである。

 

 

「とにかく、お前達には無能なボスの尻拭いをしてもらうぞ」

 

「な、何を言って!?」

 

「ふざけるな、そんなの誰がするか!」

 

 

断固拒否する双子を見てエヴァは平然としていた、こうなることを予測していたからである。

 

 

 

「やりたくないのならかまわんぞ、そのかわりこの大陸中にメラルド・オールベルグは無能低能だと広めるまでだ」

 

 

その瞬間双子の表情がこわばった、大好きなメラ様が無能の烙印を押されてしまうからである。

 

 

「やめろ!」

 

「そんなマネしてみろ、ぶっ殺すぞ!!」

 

「それはお前達次第だ」

 

 

双子に選択の余地はなかった、実力ではエヴァに敵わない、メラ様の名誉を守るためには一つしかなかった。

 

 

「・・・何をすればいい?」

 

「決まっているだろう、私の手駒となり私の役にたてばいい」

 

「・・・革命軍じゃないの?」

 

「私の役に立つということが大事なのだ」

 

 

双子は理解した、目の前にいる人間がどういうものか、改めて痛感したのである。

 

 

「言っておくがメラ様の名誉を守るためであって、お前のためじゃないぞ!」

 

「別にかまわん」

 

「全てが終わったその時にはお前を殺してやる、徹底的に酷くにだ!」

 

「楽しみにしているぞ」

 

 

こうして双子のもうひとつの復讐劇が開始したのである、それぞれの思惑を抱えて。

 

 

 

後日

 

 

 

マシロは復讐の機会を得るために過酷な任務に挑む日々を過ごしていた、そんなある日・・・

 

 

 

「今、なんて言った!?」

 

「もう一度言ってやる、そいつは革命軍の新たな一員、元暗殺部隊の一員、名はアカメだ」

 

 

マシロは混乱していた、目の前にいるのは10代半ばの長い黒髪の少女、それが復讐の標的、暗殺部隊の一員、

頭を整理するのに一時の時間が必要としたのである。

 

 



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第百四話

ゴールデンウイークの真っ最中です、暇つぶしにご覧ください。


敵討ちを斬る

 

 

その場にはマシロとエヴァ、アカメと言う名前の少女の他にもう二人いた、一人は20代前半の女性で右目に眼帯をしており、右腕は義手である、彼女の名はナジェンダ、帝国の元将軍で帝国を抜け革命軍に合流する途中で帝国の襲撃にあい、右目と右腕を失い瀕死の重傷を負い、長期のリハビリを行っていたのである、もう一人は知らない、露出の高い衣装を着た二十歳前後の金髪の女性である、新たなメンバーなのだろう、今はそんなことはどうでもいい、アカメという名の少女の方が問題である。

 

 

 

「暗殺部隊と言ったか!?」

 

「ああ」

 

 

 

マシロは動揺していた、さらに力をつけて復讐をすることを誓っていた暗殺部隊の奴が目の前にいる、冷静でいる方が無理である。

 

 

一方、二人の女性も首を傾げていた、突然エヴァに呼ばれ今の状況に至るのだから。

 

 

「なあ、エヴァ、どういうつもりだ?」

 

「しばらく黙って見ていろ」

 

 

金髪の女性は面白くない表情をした、暗殺部隊という言葉が出た瞬間ただならぬ気配を出したからである、それは怨恨の気配である、アカメは暗殺部隊として多くの人間を殺してきた、当然恨んでいる人間も多い、この女もその一人であろう、なぜアカメと対面させたのか理解できなかった。

 

 

もう一人の女性ナジェンダもエヴァの考えがわからなかった、だが質問はしなかった、質問しても返答はないとわかっていたからである。

 

 

「おい、アカメ」

 

「心配するなレオーネ」

 

 

金髪の女性の名はレオーネということがわかった、今は本当にどうでもいいことである。

 

 

 

「アカメと言ったな」

 

「ああ」

 

「お前、暗殺部隊の一員だったのか?」

 

「ああ」

 

「・・・サバティーニ一座を知ってるか?」

 

「ああ」

 

「コウガという男を知ってるか?」

 

「ああ、私が殺した」

 

「間違いないのか?」

 

「ああ」

 

 

アカメの返答の後沈黙が続いた、ほんの数秒にすぎなかったがものすごく長く感じた、そして突然その沈黙が破られる。

 

 

 

バキィ!!

 

 

 

マシロは有無を言わせずアカメの顔面を殴りつけおもいっきり吹っ飛ばされ地に伏した。

 

 

「てめぇ、何しやがる!!」

 

 

 

アカメが突然殴られレオーネは烈火の如く激怒した、全身から殺気があふれ出している、今にもマシロを殺す雰囲気である。

 

 

「黙って見ていろ、邪魔するなら殺す」

 

「やってみろよ、逆にお前を殺してやるよ」

 

 

互いに殺気に満ちた目で睨みつけた、一触即発寸前である。

 

 

「よせ、レオーネ!!」

 

「なぜ止める!?アカメ!」

 

「いいんだ、これは当然の報いだ」

 

 

アカメの迫力にレオーネは何も言うことができなかった、アカメの覚悟は相当なものであったから。

 

 

「いい度胸だ、手加減はしないぞ」

 

「ああ」

 

 

 

マシロはアカメを徹底的に殴りつけ続けた、アカメの血が飛び散り地面に落ちていく、その様をレオーネは歯ぎしりしながら見ていることしかできなかった。

 

 

「どういうつもりだエヴァ?」

 

 

ナジェンダはエヴァに問いかけた、一見冷静そうに見えるが内心苛立っていたのである。

 

 

「黙って見ていろ」

 

「だがこのままではアカメが・・・」

 

「アカメはこれくらいで潰れるタマではないだろ」

 

「それはそうだが・・・」

 

「今は動くな、これは命令だ」

 

 

命令と言われてナジェンダは動くことが出来なくなってしまった、エヴァはナジェンダの直属の上官であるから。

 

 

その間にもアカメはマシロに殴られていた、アカメはフラフラで虫の息寸前であった。

 

 

 

「まだくたばるなよ、コウガの恨みはこんなものでは晴れんからな」

 

 

マシロはさらにアカメを殴りつけようとした、すると突然エヴァの一言がそれを止めた。

 

 

「そこまでだ」

 

「な、何を言っている?」

 

 

マシロはア然とした、なぜ突然止めたのか、全く意味がわからなかったからである。

 

 

「お前の手柄の分殴らせてやった、ここで打ち止めだ」

 

「何を言っている、コウガの敵が目の前にいるんだぞ!」

 

「そいつにはやってもらう仕事がたくさんあるからな、今くたばるのは困るのだよ」

 

「そんなこと知ったことか!私はコウガの敵を討てれば後の事はどうでもいいのだ、コイツを殺した後私を殺せばいい」

 

「馬鹿を言え、お前の命とアカメの命とでは全く釣り合いが取れん、どうしても拒否するのなら今すぐお前を殺すまでだ」

 

 

マシロはこれが脅しでないと瞬時に理解した、現にナジェンダとレオーネは殺気を込めて身構えており、いつでも仕留めることができるのである、マシロはそれでも簡単には引かなかった。

 

「ミーラやロリス、ムディはこのこと知っているのか?」

 

「いや、知らん」

 

「あいつらがアカメのことを知ったらすぐにでも殺しにくるぞ」

 

「その時はあいつらも殺すまでだ」

 

 

コイツは本気だ、マシロはすぐに確信した、だが引くわけには絶対にいかない、マシロは無理を承知で問いかけた。

 

 

「アカメの首、何と引き換えならいい?」

 

「エスデスか大臣の首ならいいぞ」

 

 

やはりそうきたか、マシロの予想は的中した、取り引きをするつもりはないことを改めて確信した。

 

 

 

「おいおい、まさかエスデスと大臣の首を引き換えにアカメを売るつもりじゃないだろうな?」

 

 

レオーネが不安そうに問いかけた、実際コイツならやりかねないからである。

 

 

「もしそうなればアカメを首を褒美にするだけだ」

 

 

レオーネはたいして驚かなかった、コイツならそう答えると予想していたからである。

 

 

「今はそんなことどうでもいいだろう、今の問題は目の前のマシロをどうするかだ」

 

 

それの手っ取り早い解決策はマシロを即刻で殺せばいい、だがアカメはそれを望まないだろう、他にいい手は・・・

 

 

レオーネが思案している最中に倒れていたアカメは起き上がり折れた奥歯を吐き出した。

 

 

 

「私を殺そうとするのはいい、それだけのことをしてきたからな、だが、今は待って欲しい」

 

「虫のいいことをぬかすな、お前が最初からコウガの提案を受けていればよかったのだ」

 

 

全くそのとうりだ、だがあの時はそれが正しいと信じて疑わなかった、だから受け入れることはできなかった、

だが、仕方がなかったなどと言って納得するわけがない、どうすれば・・・

 

 

 

「こういうのはどうだ?」

 

 

エヴァが突然提案をした、ろくでもない提案であろうが皆それを聞くことにした。

 

 

「アカメを殺すのは帝国を打倒するまで保留とする、そのあとはアカメとの殺しあいの場を設けてやる」

 

 

アカメ以外の人間は何を言っているんだコイツという表情をしている、特にマシロは、目の前に敵がいるのに見逃すなどと受け入れるわけがないのだ。

 

 

 

「言っておくがこれは頼みではない、命令だ」

 

 

 

そんなことはわかっている、コイツが頼み事をする奴などではないことは。

 

 

「それを信じろと?」

 

「それはお前の勝手だ」

 

マシロとしては実に馬鹿馬鹿しい提案であるがこのままアカメを殺そうとすればエヴァ、ナジェンダ、レオーネの三人を相手にすることになる、確実に仕留められる、そうなれば敵討ちを果たせなくなる、それよりは・・・

 

 

 

「・・・仕方あるまい」

 

 

マシロとしては不本意極まりないが敵討ちの可能性を残せるのであれば受け入れるしかなかったのである、さらに不本意なのはレオーネとナジェンダである。

 

「勝手に話を進めるな、私達は全く納得してないぞ」

 

「そのとうりだ、お前の独断で決めていいことではない」

 

「ならばお前達も参加すればよい」

 

「はあ!?」

 

「別に助っ人を禁じたわけではない、お前達の好きにすればいい、無論マシロもだ」

 

「つまり私もミーラ達を加えていいんだな」

 

「かまわん」

 

 

マシロとしては多少の不満があるもののアカメを堂々と殺せる機会を得ることになるのである、まあ良しとすべきだろう。

 

 

「今はアカメの命預けてやる、だが時が来れば必ずアカメを殺す」

 

「ああ」

 

 

マシロは言い放ちその場を後にした、そしてエヴァとアカメ達が残った。

 

 

「大丈夫か、アカメ?」

 

「ああ」

 

「こっぴどくやられたな」

 

「・・・仕方ない」

 

 

アカメはマシロに憎しみを全く抱いていなかった、自分を恨んでいる人間は星の数ほどいる、これからもこういう状況はいくらでも起こるのだ。

 

 

「エヴァ、お前本気でアカメを見殺しにするつもりか?」

 

「見殺しとは聞き捨てならんな、生きるも死ぬのもアカメ次第だ」

 

「しかし・・・」

 

「他に妙案があるのか?」

 

「・・・ないな」

 

ナジェンダは表情には出さなかったが内心腹が立った、アカメが生き残るためにマシロを殺すかどうかはかなり微妙である、恨みを晴らさせるためにあえて殺される道を選ぶ可能性も少なくないのだ。

 

 

「心配するなよナジェンダ、アカメは絶対殺させない、あいつらを皆殺しにしてもだ」

 

「レオーネ!?」

 

「言いたいことはわかる、私はお前に非はないというつもりはない、私はお前が好きなんだ、みすみすお前を見殺しにするわけにはいかない」

 

「だが・・・」

 

「私は正義なんかじゃない、だから私は私の好きにやらせてもらう」

 

 

こうなったらレオーネは聞かない、知り合って日は浅いがレオーネの人となりはわかっているつもりだ。

 

 

「とにかく今は何とかなった、あいつらのことは帝国打倒した後に考えようぜ」

 

 

アカメはわずかに笑みを浮かべた、レオーネの前向きな所に感心しつつ短絡的な所に呆れつつもあるのであるから。

 

 

「・・・そうだな、まずは帝国の打倒を最優先に考えるべきだろう」

 

「そうこなくっちゃ」

 

 

初めてレオーネと会った時はいい加減な奴だと思ったが、今はとても頼もしく感じるのであった、どれだけ困難が阻もうともレオーネがいれば乗り越えられる、そうアカメは強く思うのであった。

 

 

 

 

 



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第百五話

本日は五月にしては暑いです。


  結成を斬る

 

 

 

「大丈夫か?」

 

レオーネはマシロに殴られたアカメの元に駆けつけていた、無数の殴られた跡が痛々しかった。

 

「・・・大丈夫だ」

 

「シヴァに診てもらった方がいいんじゃないか?」

 

「大丈夫だと言ってるだろ!!」

 

 

突然の大声にレオーネは驚いた、だが一番驚いたのはアカメ本人である。

 

 

「・・・すまない」

 

「気にするな」

 

 

アカメは心底へこんでいた、気遣かってくれたレオーネにきつく当たってしまったから。

 

 

「私はそんな小さな女じゃない、だから気にするな」

 

「わかった」

 

 

アカメはささやかに微笑んだ、落ち込んでいるとレオーネに悪いから。

 

 

 

「ところでエヴァ、本気でアカメを奴に差し出すのか?」

 

 

ナジェンダには確信があった、エヴァは事が終われば本気でアカメを差し出すつもりだと。

 

 

「差し出すとは人聞きが悪いな、決闘の場を設けるだけだ」

 

「だがアカメの気持ちを察しているのだろう」

 

 

アカメは今まで殺してきた人間への罪滅ぼしにあえて自分を殺させる、そう選択する可能性は高い、そう思いつかないエヴァではないはずだ。

 

 

 

「アカメが討たれる選択をするなら好きにすればいいだろう、そいつの人生だ好きにすればいい」

 

 

ナジェンダは呆れつつもコイツらしいとも思った、コイツにとってアカメは駒なのだ、自分やレオーネ、総大将達もそうなのだろう。

 

 

「そうなれば私はアカメに助太刀する、文句はないな?」

 

「別にない」

 

「ちょっと待ったナジェンダ、私を忘れるなよ」

 

「ああ、そうだったな」

 

「そういうわけだ、私も助太刀するぜ」

 

「ナジェンダ、レオーネ!」

 

 

アカメは二人を巻き込みたくなかった、元はといえば自分が蒔いた種である、二人まで危険に巻き込むわけにはいかなかったのである。

 

 

「さっきも言ったが私はお前が好きだ、たとえお前に非があってもそんなものは知ったことではない」

 

「だが・・・」

 

「私は正義なんかじゃない、筋金入りのロクデナシだ、私は私の好きなようにやる、いいな」

 

「全く、しょうがないな・・・」

 

 

正直アカメはやれやれと呆れつつも自分に正直なレオーネをうらやましいとも思った、レオーネの生き方は気苦労とは無縁だろう、トラブルは絶えないだろうが・・・

 

 

「アカメ、気にするなとは言わん、その問題は帝国を打倒してから考えるべきだろう」

 

「そうだな・・・」

 

 

 

一応帝国打倒するまでは手を出さないと言ったので当面は大丈夫だろう、今は帝国打倒を優先すべきである。

 

 

 

「エヴァよ、以前私が提案した案件の事だが」

 

「ああ、特殊工作部隊の設立の件だな」

 

 

特殊工作部隊・・・革命軍の決起の際に大臣を始めとする帝国の重臣を一掃するための部隊である、帝国が暗殺部隊を設立したのと同じように革命軍も重要性を認知したのである。

 

 

「ああ、何とか可決したぞ」

 

「本当か?」

 

「ああ、最初はプライムの奴は気が進まないふしはあったがハクロウとキョウジが戦略的に有効だと説いて最終的に

首を縦に振ったのだ」

 

「そうか」

 

 

何はともわれ帝国の打倒の一歩を踏み出したのだナジェンダは胸の高まりを感じた。

 

 

「メンバーはお前とアカメ、レオーネ、この場にいないラバックとブラート、全部で5人だったな」

 

「ああ」

 

「五人では少なくないか、後10人くらいなら増員してもいいぞ」

 

「いや、あまりに人数が多すぎても支障がきたすからな、増員は1,2人くらいでいい」

 

「そうか」

 

「できることならパンプキンを加えたい」

 

「パンプキンか」

 

「今の私では十分に性能を発揮できないからな、別の人間に引き継ぎたい、できそうな奴いないか?」

 

「一人面白そうな奴がいる」

 

「面白い?」

 

「西の異民族のハーフのガキでな、銃の腕はまあまあだが根性と執念がなかなかの奴だ」

 

「ほう、お前がなかなかと言うとはかなりの奴だな」

 

「ではお前自ら見定めてみるか?」

 

「ぜひそうさせてもらう」

 

ここでレオーネが手を挙げた。

 

「ちょっといいかな」

 

「なんだ」

 

「帝都の下町で変わった奴がいるんだ」

 

「変わった奴?」

 

「最近活動的に動いている殺し屋なんだが、かなり抜けている奴なんだ、でも殺しの時にはものすごく俊敏になるんだ」

 

「そいつを加えろと?」

 

「もちろんそいつの調査はするつもりだ、それで面白いと思ったら加えたいと思う、どうかな?」

 

「まあ、私はかまわんぞ、ナジェンダ、お前は?」

 

「調査の結果次第で加入を考えてもいい」

 

「そういうことだ」

 

「じゃあ、帝都に戻ったら早速調査してみる」

 

「人員は集まっても活動は当分先になるだろう、やることは山ほどある、まず拠点を築かんとな」

 

「それに情報網の構築も必要だ」

 

「もっと大事なことあるでしょ?」

 

「なんだ?」

 

「金だよ金」

 

「金か・・・そうだな、金は確かに重要だハハハ」

 

 

大笑いするエヴァと対照的にナジェンダはやや呆れた顔をしている。

 

 

 

「心配するな、金に糸目はつけん」

 

「そうこなくっちゃ」

 

脳天気なレオーネに対してアカメは真面目な表情で質問した。

 

 

 

「大臣達の暗殺までの期間私達何をすればいい?」

 

質問したアカメには返答がどのようなものか明確な予想があった、ただ確認するためである。

 

「決まっているだろう、お前が今までしてきたことを行うのだ、暗殺だ」

 

 

エヴァは説明した、部隊は帝都内で殺し屋として活動していくことになる、帝国の重臣や富豪を主に殺していくことになるだろう、時には民の依頼で殺すことにもなるだろう。

 

 

「わかった」

 

「あっさりしているな」

 

「私にはこれしかできないからな」

 

「わかっているならいい」

 

「一つ言いたい事がある」

 

「何だ?」

 

「クロメの事だ」

 

「ああ、お前の妹だったな」

 

「知っての通り、私が革命軍に加わる際の条件としてクロメの事に関してわがままを許してほしい、そうナジェンダに伝えて同意を得た」

 

「ナジェンダの同意は得たのだろう」

 

「ああ、だがエヴァの同意があれば誰も文句は言わないだろう、ナジェンダには悪いが」

 

 

ナジェンダは信用できる、だが革命軍の中では新参者であり絶対の発言力があるわけではないのだ。

 

 

「気にするなアカメ、お前の判断は正しい、新参者もあるが将軍だった頃の力を失っているから発言力は高いとは言えないのだ」

 

「ナジェンダ・・・」

 

 

アカメとしては心苦しかった、自分一人ならこういうことはしなかった、だがクロメの事が関係しているので万全を期したいのだ。

 

 

「話はすんだか?」

 

「ああ」

 

「では、お前が出した条件のことだが・・・いいだろう、同意しよう」

 

「本当か?」

 

「そのかわりお前には相当の結果を出してもらうぞ」

 

「もちろんだ」

 

 

アカメはとりあえず安堵した、幹部の同意が得たことで簡単にはほごにはならないだろう。

 

 

「よかったな、アカメ」

 

「ああ」

 

表面的には笑顔であるがクロメの説得がうまくいくかは別問題である、むしろ失敗する可能性は高い、レオーネもそのことはわかっている、アカメへの配慮であった。

 

 

「ところでナジェンダ、部隊の名称はどうする?」

 

「名称?」

 

「特殊工作部隊では様にならんからな、特にないなら私がつけるが」

 

「いや、名称は考えている」

 

「ほう、それは?」

 

「ナイトレイドだ」

 

「ナイトレイドか」

 

 

 

ナイトレイド、夜襲を意味する言葉である、それを聞いたエヴァは面白そうな表情をしている。

 

 

「お前にしては洒落た名称だな」

 

「お前に任せたら滑稽な名称をつけられそうと思ったからな」

 

「言ってくれるな、いいだろう、これより特殊工作部隊ナイトレイドの結成を宣言する」

 

 

エヴァの結成宣言を聞いてアカメ達は胸の高まりを感じた、帝国打倒の一歩を歩んだからである。

 

 

「ナジェンダ、お前が前線の指揮をとれ、私が本部の決定を指示する」

 

「了解だ」

 

「一応言っておくが・・・」

 

「わかっている、任務の途中で死んでも一切記録には残らないのだろう」

 

「ああ、私はどっちでもいいんだが、気にする輩が多くてな」

 

「そういうわけにはいかんだろう、私達がやろうとしていることは暗殺だからな、記録に残すわけにはいかんだろ」

 

「ふん、私達は帝国と戦争をするのだぞ、そうなれば数万の人間は一瞬で死ぬ、暗殺に引け目を感じてどうする」

 

「お前のように図太い人間は稀だ、ほとんどの人間はそういうのを気にするのだ」

 

「くだらんな、帝国に負ければ我々は全て罪人として滅びるというのに」

 

「負けはせんさ、そのための我々ナイトレイドだ」

 

「なかなかの意気込みだな、だがどれだけ意気込んでも任務をこなしていけばお前達の誰かがいつか必ず死ぬだろう、その覚悟はあるか?」

 

「当然だ」

 

「覚悟ならとうにできている」

 

「私達はそんなものにビビったりしないよ」

 

「そうか、ならば歩むがいい修羅の道を」

 

 

ナジェンダ達は覚悟を決めていた、それは確かである、だが、心底ではここにいる面子が誰も死なずにすむという期待をわずかに抱いていたのであった。

 

 

 

 




今回はナイトレイド結成の瞬間を書いてみました、かなり微妙な文章になってしまいました。


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第百六話

最近蒸し暑くなって結構こたえます。


磁力を斬る

 

 

 

アカメが死んだ・・・数ヶ月前に知らされた時はガク然とした、いずれは自分達の手で殺してやろうと思っていたからだ、困難な任務をこなしてきたのも全てはアカメを殺すための力をつけるためであり、革命軍のことなどはっきり言ってどうだっていいんだ、こんなことならアカメが革命軍に入った時に殺しておけばよかったと思う、だがもう手遅れである、アカメを殺せないのなら革命軍を抜けてもよかったのだがメラ様の名誉のために抜けるわけにはいかなかったのである、こうなったら開き直って任務の際の殺しを楽しむだけである。

 

 

 

 

今回の任務は賊の討伐で思う存分殺しを楽しめる、そう意気込んでいると賊が現れた、数は数十人で結構多い、でも多い方がより楽しめて都合いい。

 

 

あっという間に二人は囲まれてしまった、だが二人に怖がっている様子は微塵もない。

 

 

「結構いますわね」

 

「うん、でも私達の敵じゃないよ」

 

「さっさと蹴散らしますわよ」

 

「うん、今はどっちが多く殺せるかの競争だから」

 

「今回は変顔はほどほどに」

 

「わかった、姉様」

 

 

一方、賊達は突然現れた少女達にテンションが上がっていた、こんなへんぴなところに現れるとは思っていなかったからである。

 

 

「なかなか可愛いじゃないか」

 

「ああ」

 

「特にあの太股が・・・」

 

 

双子の藍色のミニスカートから伸びた太股に興奮している様を見て周りの賊は結構引いていた、その当人はそれがどうしたと言わんばかりである。

 

 

「俺が変態だと言いたいのか、それがどうした、俺達にまともな奴などいないだろう」

 

「そりゃそうだ」

 

 

賊になった時点でまともな人間を捨てている、それを改めて連中は認識したのであった。

 

 

「こんな稼業だ長生きはできん、ならば太く短く面白おかしく生きるまでだ」

 

「そうだな」

 

「じゃあ、とっととおっぱじめるとするか」

 

「顔は傷つけるなよ、殺した後も楽しみたいからな」

 

「お前もいい趣味してるじゃねえか」

 

「そうだな」

 

 

賊達はいやらしい顔つきで雑談を楽しんでいる、その様子を二人はしっかり見ていた。

 

 

「全く男は本当に下品ですわね」

 

「そうだね、さっさと殺しちゃおうよ」

 

「では、行きますわよ」

 

 

 

突然二人の少女が消えた、何だ!?と思った瞬間、男の首が空中に飛んでいる、それは二、三、と増え続けていた。

 

 

「なっ!?」

 

 

その首が仲間の首だと認識するのに数秒時間がかかった、それを行ったのが二人の少女だとさらに数秒かかった。

 

 

その間に仲間の数人の首が飛んだ、弄ぶはずだった少女達に逆に弄ばれてしまったのである。

 

 

 

こんなはずではなかった、全くこんなはずではなかった、あのガキ共の服を破り捨てて悲痛の泣き声を肴にして犯して楽しむはずだった、だが今は・・・

 

 

さらに数人が切り倒されてしまった、その強さは自分達よりはるかに上であった。

 

 

「何だ、あのガキどもバケモノか!?」

 

「ずらかるか!?」

 

 

ずらかる?あんなガキどもに恐れをなして逃げ出したらとことんナメられてしまう・・・

 

 

「バカ言うな、あのガキどもすげえ速さだが数は圧倒的に俺達が上だ、全員で一人に一斉にかかって殺すんだ、それしかねえ!」

 

「そうだな、やるぞ!」

 

 

残った賊は一人に狙いをつけて取り囲んだ、囲まれたのはミーラであった。

 

 

「全員で私に狙いをつけて潰すつもりですか・・・」

 

 

 

セコいやり方であるが知恵なしの賊共にしては知恵を絞った方であろう、確かにこれだけの数を一人で相手をするのは多少骨である。

 

 

「ですが私には無意味ですわ」

 

 

ミーラは刀を握った右腕を頭上に上げた、その動作を見たロリスはジャンプして左手で握った刀をミーラに向けて刀に念じた、するとミーラの体がロリスの方に引っ張られたのである。

 

 

その様を見た賊達は混乱し騒ぎ出した。

 

 

「何が起こった!?」

 

「空中移動しやがった!」

 

 

賊達はミーラが移動したかのように見えるが実際はそうではない、お互いの刀が引き寄せたのである。

 

 

 

臣具 「磁生双刀」  

 

 

二本の刀で構成される臣具である、性能は強力な磁力を発生するもので念じることでS極、N極両方に変えることができ引き寄せたり反発させたりすることができるのである、磁力の対象はそれぞれの刀に限定される。

 

 

現在ミーラの刀はS極、ロリスの刀はN極である、それゆえ引き寄せられたのである。

 

 

「ロリス!」

 

「うん、姉様!」

 

ロリスは刀に念じS極に変えた、その瞬間反発力が生まれミーラは賊の集団へ突っ込んで行った。

 

 

「お覚悟!」

 

 

勢いのままミーラは次々と賊を切り捨てて行った、賊は何が起こったのか全くわからず完全に混乱してしまった。

 

 

「何なんだ!?」

 

「知るか!」

 

「俺は逃げるぞ、やってられるか!」

 

 

賊達は一目散に逃げだそうとした、もちろん双子は見逃すつもりはない。

 

 

「姉様!」

 

「ええ!」

 

 

今度はミーラが刀をS極に変えてロリスを引っ張り上げた、引っ張り上げられたロリスは逃げだそうとする賊を片っ端から切り倒していった。

 

 

「一気にかたずけますわよ」

 

「うん、姉様」

 

 

二人は一人、また一人と賊を切り倒していく、何人か命ごいする者もいたが無視して次々と切り倒していった。

 

 

 

賊を切り倒していく様の中二人はこの刀をもらった日のことを思い出していた。

 

 

 

 

「それをやろう」

 

「・・・刀?」

 

「それは最強臣具と呼ばれた物の一つだ」

 

「何故私達に?」

 

「先日困難な任務を達成したからな、その見返りだ」

 

「別にお前のためにやったんじゃない、メラ様の名誉のためにやったんだ」

 

「思惑などどうでもいい、結果が第一だ」

 

「私達に渡していいんですか、いずれはこの刀でその首落とされることになりますわよ」

 

「お前達が弱すぎるから張り合いがないのだよ、これで少しは面白くなる」

 

「・・・いつか後悔させてやるよ」

 

「楽しみにしてるぞ」

 

 

 

 

本当にむかつくが奴との実力差はまだかなりある、今は絶対敵わない、だからもっと場数をこなさないと・・・

 

 

いつの間にか賊は残り一人だけになっていた、はっきり言って物足りなかった、だがこれで終わりではない、次の地点へ行き再び狩りを行うのだ。

 

 

「同時に切りつけますわよ」

 

「うん、姉様」

 

 

二人の斬撃は賊の両腕と首を切り飛ばした、目にも止まらぬ早業であった。

 

 

「とりあえずここは片付きましたわね」

 

「早く次行こうよ、全然物足りないよ」

 

「そうですわね」

 

 

二人は休憩もとらず次に向かうことにした、さらに強くなるためである、アカメの首を討ち取ることがかなわなくなった今となってはエヴァを殺し、メラルドの名誉を守ることが二人の目標なのである。

 

 




新しい臣具を載せました、文章が下手で性能がわかりづらいかもしれません、ようするに双子のコンビネーション技が強化されたと思ってください。


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第百七話

今回の話はギルベルダが主役です。


 サーカスを斬る(前編)

 

 

ミーラとロリスが大暴れしていた頃、とある場所にギルベルダとカサンドラがいた。

 

 

 

「ドラ、水筒くれ」

 

「はい」

 

「全く、こんな雑魚相手にしてノドが渇くとはな」

 

 

ギルベルダは受けとった水筒の水を飲み干した、二人の周りには賊の死体であふれていた。

 

 

「以前のアタシ達ならノドが渇くなんてなかったんだがな・・・」

 

「仕方ありません、それだけ私達は弱体しているんです」

 

「ちっ・・・」

 

 

 

かつてアカメ達暗殺部隊と戦い命を落としたのだが、メラルドが生み出した蘇生虫により九死に一生を得たのだが、その代償に多くの力を失ったのである。

 

 

「わかっているがもどかしいな」

 

「はい」

 

「・・・お前の表情からもどかしいが感じとれないぞ」

 

「では、大声で泣き叫びましょうか?」

 

「・・・いい、アタシが悪かった」

 

「はい」

 

 

相変わらずだなコイツ、最初に会った時から変わんないな・・・

 

 

 

「今日は半月だな」

 

「そうですね」

 

「半月って中途半端だな、今のアタシ達と同じだ」

 

「そうですね」

 

「アタシ達が最初に出会った時も半月の夜だったな」

 

「・・・そうですね、あの時もこんな半月の夜でした」

 

 

 

 

 

 

 

とあるサーカス場、そこに一人の少女が連れて来られた、その少女は薄汚れおり、なりより鎖で繋がれていたのである、その少女の近くに団長らしき男が近づいて行く。

 

 

 

「よお」

 

「・・・」

 

「団長の俺があいさつしているのにだんまりか?」

 

「・・・鎖に繋がれてあいさつする気になるとでも?」

 

「そりゃそうだ、だがお前の怪力を目の当たりにすれば仕方ないだろう」

 

「・・・」

 

「とにかく俺はお前を金で買ったんだ、俺の言うことを聞け、いいな」

 

 

少女は無言で頷いた、全く納得していないが今暴れても無意味なので渋々であった。

 

 

 

「こっちへ来い」

 

 

団長に言われるまま少女は歩いた、テントから離れしばらく歩いていくと目の前に二つの檻が見えた。

 

 

「あれがお前の部屋だ」

 

「あれが!?ただの檻じゃねえか、ふざけるな!!」

 

「お似合いじゃねえか、怪物の部屋にはピッタリだろ」

 

「てめぇ!!」

 

 

少女は怒りにまかせて殴りかかろうとした、だがその時金属音がした、少女が振り向くと猟銃を向けた男が立っていた、飛び掛かれば撃つつもりである。

 

 

「怪物でもそれくらいのことはわかるな」

 

 

少女は歯ぎしりをした、頑丈さには多少自信がある、だが猟銃にはさすがに自信がなかった。

 

 

「鎖は外してやる、さっさと入れ」

 

 

少女は言われるままに檻に入った、一か八かで殴りかかってもよかったがどこにも行く当てがなかったのでそうしなかった。

 

 

 

「今日はゆっくり休みな、明日からみっちり働いてもらう」

 

 

そう告げると団長達は去って行き、少女一人がポツンと残された。

 

 

「何が休めだ、こんな檻で休めるか」

 

 

文句を言いつつ少女は横になった、はっきり言って寝心地は最悪である。

 

 

「しかしなんで檻が二つあるんだ・・・ん?」

 

 

少女は隣の檻をじーっと見つめた、すると中に人が入っていた。

 

 

「わっ!?」

 

 

少女は驚いた、中に人が入っていたのもあるがそれ以上の理由があったのである。

 

 

「・・・うるさいですね」

 

 

その声は少女、幼い少女の声だった、どうやら眠っていたようである。

 

 

「お前・・・」

 

「新入りの方ですか?どうも」

 

 

ご丁寧にあいさつした、だが少女は全く聞こえていない。

 

 

「・・・お前、その腕」

 

 

少女の腕がなかったわけではない、むしろ逆である、その少女の腕は四本あったのである。

 

 

「驚かせてしまいましたか、見ての通りです、私手が四本あるのです」

 

「・・・」

 

 

少女は言葉が出なかった、腕が四本ある人間など実現しているとは思わなかったからである。

 

 

「生まれつきなんです」

 

 

生まれつき、その言葉に人事ではないものを感じた、自分も生まれつきの怪力を持ってしまっているからである、そのため親から恐れられここに売られてしまったのである。

 

 

「そうか、生まれつきか・・・」

 

 

コイツもこの生まれつきのせいでひどい目にあってきたんだな、よし一つ励ましてやるか。

 

 

「まあ、いろいろ大変だったが、アタシが力に・・・」

 

「何を言っているのです?」

 

「だからアタシが力に・・・」

 

「あなた、自分の状況、わかってます?」

 

「うっ・・・」

 

 

檻に入れられどこにも行く当てがない、それで力になるなどまさに滑稽であった。

 

 

「あなた、バカですね」

 

「何だと、この野郎!!」

 

「本当のことじゃないですか」

 

「確かにアタシはバカだ、だが言われるのはむかつくんだよ」

 

「じゃあ、お利口さんと言えばいいですか?」

 

「やめろ!嫌みみたいで腹が立つ!」

 

「じゃあ、どうすればいいんです?」

 

「そんなの知るか!!」

 

 

 

それからしばらく二人の言い合いが続いた、そして二人は疲れ果ててだんまりになったのである。

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・おい」

 

「なんです?」

 

「ええと・・・」

 

「何を話すか決めてないんですね」

 

「しょうがないだろ」

 

「無駄に話をするとお腹が減りますよ」

 

「わかってる、だけど、だんまりは嫌なんだよ」

 

 

二人は空腹だった、今日は水しか口にしていなかったからである。

 

 

「明日から営業です、何か食べさせてくれるでしょう」

 

「どうせろくなものしか食わせてくれないだろう」

 

「それでも水よりはマシです」

 

「ちっ・・・」

 

 

 

自分達だけがなんでこんな目にとは思わなかった、今のこの国で豊かで幸せに暮らしている人間の方が珍しいのだ、この数年で税が重くなり口減らしとして子供が売られることも珍しくないのだ。

 

 

「とにかく今の私達には選択の余地はありません」

 

「飯を食いたきゃ働けか・・・」

 

「そういうことです、まあ、楽な仕事には絶対なりませんが」

 

「そうだな」

 

 

あの嫌な奴がアタシ達を楽させてくれるわけがない、きっとこき使うに決まっている。

 

 

「とにかく今日はもう寝ましょう、少しでも体を休めないと」

 

「そうだな、ええとお前、名前は?」

 

「私に名前はありませんよ」

 

「・・・そうか」

 

「驚かないのですね、意外です」

 

「・・・アタシも名前がないんだ」

 

 

名前がない・・・全く愛情がなかったからつけられなかった、少しでもあれば売られることもなくここにいることもないのである、まともな生まれをしてないからやむを得ないが・・・

 

 

「余計なことを聞いたな」

 

「別に気にしてません」

 

「・・・まあ、とにかく明日からがんばろうな」

 

「はい」

 

「それにしても今夜は半月か・・・」

 

「半月が嫌いなのですか?」

 

「ああ、なんか中途半端でな、はっきり言って嫌いだ」

 

「奇遇ですね、私もです」

 

「そうか?」

 

 

たいしたことじゃないけど嫌いが共通するのって悪い気分じゃないな、案外コイツとは気が合うかも・・・

 

 

「やっぱ、一番は三日月だよな、カッコイイし」

 

「そうですか?一番は満月ですよ可愛いですし」

 

 

前言撤回だ、やっぱりコイツとは気が合わねえ!!

 

 

「じゃあ、私は寝ます、おやすみなさい」

 

「お、おい!」

 

 

呼びかけるも返事がなかった、眠ったようである。

 

 

「ちっ、アタシも寝るかな」

 

 

少女は横になるもなかなか寝付けなかった、自分は明日からどうなるのだろう、いい予感が全くしない、でも何とかするしかないのだ、誰も自分なんかを助けてくれるわけがないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百八話

相変わらず文章がうまく書けません。


サーカスを斬る(中編)

 

 

 

「痛てて・・・」

 

「だから言ったじゃないですか、こうなるって」

 

「けどよ・・・」

 

 

少女の右目に殴られた跡がくっきりでていた、少女は食事に不満があり文句を団長に言ったら殴られたのである。

 

 

「飯が水とふやけた黒パンだけだなんて納得できるわけがないだろ」

 

「そうですが、あの人が受け入れてくれるとは思えません」

 

「やってみないとわからんだろ」

 

「その結果が今のあなたです」

 

「・・・とにかくだ、あれっぽっちの飯じゃあ足りないんだ!」

 

「確かにあなたの芸は体力を使いますから」

 

 

殴られた少女の芸は怪力で大岩を持ち上げる芸である、もう一人の芸は四本の腕でナイフを使ったジャグリングで観客のウケは後者のほうがいいのである。

 

「だろ、だから体力つけるためにもメシをたらふく食いたいんだ」

 

「ですが、それを決める権限があるのはあの人です」

 

「わかってるよ、だからムカついているんだ」

 

団長だからって何でもありだなんてありか?神じゃないんだから。

 

 

「とにかく今夜はもう寝ましょう、明日も興行がありますから」

 

「ちっ、わかったよ」

 

 

どれだけ腹を立ててもメシは食えない、ならばさっさと寝て明日のメシにありつけたほうがいい、少女は寝ることにした、そしてものの五秒で眠りについたのである。

 

 

その後も少女は食事に不満を言った、その度に団長からぶん殴られる、その繰り返しで日々が過ぎて行った、そしてある日突然その日々に終止符が打たれることになる。

 

 

 

「な、なんだよ、今日はアタシヘマしなかっただろう」

 

 

団長が険しい顔で二人のもとにやって来た、だがいつもと様子が違う、団長の手には猟銃が握られていたのである。

 

 

「それともアタシがメシよこせってうざいから脅そうってのか?」

 

 

団長は何も語らなかった、ただ不愉快な表情で二人を見ていたのである。

 

 

「一体どうしたのです?何か言ってください」

 

 

団長はようやく語り始めた、そしてその内容はあまりにも衝撃的なものであった。

 

 

「今何て言った?」

 

「お前らをぶっ殺すって言ったんだよ」

 

「な、何で突然、私達に何か落ち度があったのですか?」

 

 

その瞬間団長はさらに険しい顔つきになった、この行動に不本意があるような。

 

 

「噂になってるんだよ、お前らのせいで病気が流行りだしたって」

 

「はあ!?」

 

「一体どういうことですか?」

 

団長は説明した、この地域で最近病気が流行りだしてその原因がこのとサーカスの得体のしれない少女かもしれないという噂が広まっているのである。

 

 

「ふざけんな!完全にでっち上げじゃないか!」

 

「全くその通りです、私達は全く関係ありません」

 

 

「そんなもんどうでもいいんだよ!そんな噂が流れていることが問題なんだよ」

 

 

団長は噂を信じていない、じゃあなぜ殺そうとするのか?

 

 

「このままじゃあ俺も巻き添えで元凶になりかねないんだよ」

 

 

そんなの知ったことか、アタシ達は好き好んでこんなとこにいるわけじゃあないんだ、と少女は言ってやるつもりだった、だがその前にもう一人の少女が口を開いた。

 

 

「そうであれば私達を追い出してください、このサーカスから私達がいなくなればいいんですから」

 

 

少女も勝手な団長に腹は立っていたが文句を言ったところでさらに怒るのは明らかである、ならば最もマシな展開にしたほうがいいのである。

 

 

「それも手だがな、だが俺はゴメンだ」

 

「な、なぜです?もとは充分とれているのでは?」

 

「ああ、そうだ、だがバケモノの指図を受けるのは癪に触るんだよ」

 

「バケモノ!?」

 

「何を驚いている、お前らのようなガキバケモノでなくて何だと言うのだ」

 

「確かにアタシは怪力を持ち、こいつは4本腕だ、だが人間だ!」

 

「いいか、お前らがどれだけほざいても世間の奴らにとってはお前らはバケモノなんだよ」

 

 

 

ちくしょう、悔しいがアタシ達は周りから見れば普通じゃあない、だから親はアタシ達を捨てたんだ。

 

 

少女が落胆している間に団長は猟銃を少女に向けて発砲しようとしていた。

 

「じゃあな、バケモノ、人間に生まれてこれなかった自分を恨むんだな」

 

 

人間に···少女はそう思ったことは無数にあった、普通に生まれていれば親に捨てられることなく平穏に暮らせていたかもしれない、今ここで死んだほうが苦しい人生を送らずにすむかもしれない、その気持ちが足掻く力を少女からなくしてしまったのである。



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第百九話

サーカスを斬る(後編)

 

 

バッ‼

 

 

大量の血しぶきが舞い上がった、撃たれての出血と断定した、彼女が死んでしまう、四本腕の少女が絶望していると悲鳴が鳴り響いた。

 

 

「ぎゃあああ‼」

 

 

その悲鳴は男のものであった、つまり悲鳴を上げたのは団長であった。

 

 

「うおおお‼」

 

 

団長の右手が切断されて激痛のあまり地面に倒れもだえ苦しんでいる、少女はわけがわからないままただ立ちつくしているとどこからともなく声が聞こえた。

 

 

「男の悲鳴って心地悪いわね」

 

 

そこには一人の女性が立っていた、自分達よりも年上で10代半ばってとこだろう。

 

 

団長は激痛をこらえながらその女性に怒りをこめてにらみつけた。

 

 

「てめぇ、なにしやがる、てめぇは何もんだ!?」

 

 

腕を切り落とした以上敵には違いない、だがなぜこんなまねをするのかわからなかった。

 

 

「私は殺し屋よ、そしてあなたを殺しに来たのよ」

 

「殺し屋?」

 

「そうよ、あなたを殺して欲しいという依頼が来たのよ」

 

「何故俺が殺されなくてはならねぇんだ!?」

 

「あなた裏の稼業で人身売買のブローカーをしてるでしょ」

 

 

そういう稼業をしていれば少なからず恨みを買うことがある、いずれは命の危機が訪れる可能性がある、口には出さなかったが彼女はそう言いたそうであった。

 

 

「ああ、そうだ、だが俺はさらったりしてないぜ、金で買い取ったんだ、非は売った奴らにあるだろ!」

 

「別に私は人身売買がいけないと言うつもりはないわ、ただ一つ見逃せないとしたら女の子を売買したことよ」

 

「はぁ!?」

 

「男ならいくらでも売買してかまわないわ、ただし女の子は絶対に許さないわ、天が許しても私は絶対に許さないから」

 

「お前、何を言って···」

 

こいつは何を言っているのだ、全くわからねぇ···

 

 

「じゃあ、死んでもらうわよ」

 

 

団長は頭の整理は全然すんでいないがみすみす殺されるわけにはいかない、返り討ちにするため地面に落ちた猟銃を拾おうとしたが、その瞬間団長の首がスパンときり飛ばされたのである、残された胴体から勢いよく血が吹き出している。

 

 

「···」

 

二人は呆然とこの光景を眺めていた、はっきり言って団長には恨みがあり、団長が死んでも悲しくはなかった、だが、ざまあみろと喜びもなかったのである、それよりも自分達の命の方が心配である。

 

 

「···なあ、どうする?」

 

「どうするも何も逃げるしか···でもとても逃げられるとは思えません」

 

 

かなわなかった団長をあっさり殺した、次は私達の番だ、目撃者である私達を見逃すとは思えない、だが逃げようにもとても逃げられるとは思えない、そう思案していると彼女は少女に話しかけてきた。

 

 

「ねぇ、あなた達」

 

「···何ですか?」

 

少女は恐る恐る返答した、いつ殺しにくるかわからないからである。

 

 

「あなた達この男に買われてきたのよね?」

 

「はい」

 

「どこにもいくあてないのよね?」

 

「はい」

 

「いきなりだけど私のところへ来ない?」

 

「えっ!?」

 

 

少女はすごく驚いた、てっきり殺されると思ってたので全く予想していなかったのである。

 

 

「私、あなた達みたいな境遇の女の子を保護しているのよ、先月もタエコって名前の女の子を保護したわ」

 

「それってつまり···」

 

 

つまり、殺し屋の一味にならないか、ということである、行くあては全くないが、さすがにいきなり殺し屋になるという選択は即決できなかったのである。

 

 

 

「殺し屋になれって言うつもりはないわ、家事手伝いでもいいわ、でも私の見たところ資質はあると思うわ」

 

 

再び少女は戸惑った、いきなり殺し屋の資質があると言われても困るのである、そしてもう一人の少女は···

 

 

「どうせうまい事を言ってアタシ達を殺すか売り飛ばすつもりだろ!」

 

「そんなことはしないわ」

 

「どうだか」

 

 

少女はとても信じられなかった、サーカスに売られた時も親から都合のいい事を言われたからである。

 

 

 

「お前もアタシ達を利用しようと思っているんだろ!」

 

「···可哀想に、今までとてもつらい思いをしてきたのね、でも、私は違うわよ」

 

 

女性は両腕を広げて優しい表情で少女の元へ歩きだした、少女はさらに困惑した。

 

 

「近づくな!」

 

「怖がらないで」

 

「アタシは人間離れした怪力を持ってるんだ、近づくと危ないぞ!」

 

「大丈夫よ」

 

「死ぬかもしれないぞ!」

 

「大丈夫よ、私鍛えてあるから」

 

「く、来るなー!!」

 

 

少女は近づいてきた女性を思いっきり突き飛ばした、その際に鈍い音がした、おそらく骨が折れたのであろう、女性はそのまま動かなくなった。

 

 

「···だから言ったじゃないか」

 

 

少女は無我夢中でその場を走り去った、少女は改めて自分が普通の人間じゃないことを思い知ったのである。

 

 

 

···まただ、またやってしまった、カッとなるとふっ飛ばして怪我をさせてしまう、その度に白い目で見られバケモノと呼ばれてきた、やっぱりアタシはバケモノなんだ···

 

 

 

少女は走った、ただ闇雲に走った、どこを目指すのでもなくただ走ったのである。

 

 

 

アタシみたいなバケモノどこにも居場所なんてないんだ、だったら···

 

 

 

その瞬間、少女の動きが止まった、少女には何が起こったのかわからなかった、一つわかるのはなにかに捕まったからである、それが何か全くわからなかった。

 

 

「捕まえた」

 

 

その声に聞き覚えがあった、自分が突き飛ばした殺し屋の女性の声だったのである。

 

 

「···仕返しするのか?いいよ、好きにしろよ」

 

 

少女は完全にヤケになっていた、ここで殺されてもかまわないと本気で思っていたからである。

 

 

「仕返し?」

 

「そうだろ、アタシはあんたに痛い目にあわせたんだ、当然だろ」

 

「私は全然怒っていないわよ、子供のおいたに怒ったりしないわ」

 

 

おいたって、そんなもんじゃない、間違いなく骨が折れているはずだ。

 

 

 

「じゃあ、何なんだよ」

 

「さっきも言ったでしょう、あなたを救いたいのよ」

 

「アタシを?だってアタシはバケモノだぞ」

 

「あなたはバケモノなんかじゃないわ、他の女の子よりも力持ちな可愛い女の子よ」

 

 

可愛い?生まれて初めて言われた···生まれた時から怪力を持っており、気味悪がれ名前すらつけてもらえなかったんだ、そんなアタシが可愛い···

 

 

 

「···信じていいのか?」

 

「無理強いはしないわ、でも私としては信じて欲しいわ」

 

 

優しく微笑むその女性に生まれて初めて人間を信じたいと思った、たとえどんな末路になってもこの人だけは信じたいと思ったのである。

 

 

 

「わあああああああ!!!」

 

 

少女は泣いた、ただ思いっきり泣いた、これほど大泣きしたのは生まれて初めてであった、泣けば弱みを見せることになると思い人前で泣いたことはほとんどなかったのである、でもこの人ならいいと心から思ったのである。

 

 

 

「うぐ···ひっく」

 

「あらあら、泣き虫ね」

 

「このざまを見せるのはあなただけだよ」

 

「それは光栄ね」

 

「···ところであなたの名前は?」

 

「言ってなかったかしら?私はメラルド、メラルド·オールベルグよ」

 

「メラルド、綺麗な名前だな」

 

「ふふ、ありがと、あなたの名前は?」

 

「···アタシに名前はないよ」

 

「え?」

 

「こんななりだからな、親に名前をつけてもらえなかったんだ」

 

「それは気の毒ね、じゃあ、私がつけてあげましょうか?」

 

「えっ!?」

 

「嫌?」

 

「ううん!全然、むしろあなたに名前をつけて欲しい」

 

「ちょっと待ってね」

 

 

メラルドは考えた、彼女にお似合いの名前を一生懸命考えた、そして一つの名前が思いついた。

 

 

「ギルベルダってのはどう?」

 

「ギルベルダ?」

 

「気に入らないのなら別の名前を考えるけど」

 

「ううん、そんなことない、全然そんなことない、ギルベルダ、すごく気にいったよ」

 

「ふふ、ありがと」

 

「こっちこそ名前ありがとう」

 

 

 

ギルベルダは心からうれしかった、自分に名前がつくなんて夢にも思ってなかったから、今までいい事をは全くなかったがそれを全てチャラにしてもいいくらい感激していた。

 

 

「感動してくれてうれしいんだけど、私そろそろ引き上げないといけないの、私、殺し屋だから」

 

「そっか、そうだよね」

 

 

団長は最低の人間だが殺した以上確実に大騒ぎになる、一刻も早く立ち去るのは当然である。

 

 

「私もあなたと行くからね、絶対行くからね」

 

「もちろんよ」

 

「···一つ頼みがあるんだ」

 

「あの娘のこと?」

 

「うん、あいつも一緒に連れて行って欲しい、だめかな?」

 

「ううん、全然そんなことはないわよ、大歓迎よ、あら、噂をすれば」

 

 

サーカスのテントがある方角から走ってくる人影が見えた、それは四本腕の少女である、ギルベルダを心配して追いかけてきたのである。

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「よかった···」

 

 

少女は息を切らしながら安堵した、心から心配していたのである。

 

 

 

「話は変わるけどアタシ、ギルベルダって名前になったからよろしくな」

 

「は?」

 

 

少女はポカンとした、何を言っているのか全く理解できなかったからである。

 

 

「そうだ、お前も名付けしてもらえよ」

 

「名付け?」

 

「こいつも名前がないんだ、だからあなたに名付けして欲しいんだ、いいかな?」

 

「もちろんよ、喜んで」

 

 

少女はますます混乱した、自分に名付けって···いったい自分が知らない間に何があったのだろうか···

 

 

 

「カサンドラってどうかしら?」

 

「いいじゃないか、それ、お前もそう思うよな?」

 

「はぁ···」

 

 

少女はわけがわからないままうなずいた、ただこの流れで拒否するのは得策ではないと判断したのである。

 

 

 

「じゃあ、行きましょう、ギルベルダ、カサンドラ」

 

「うん」

 

「は、はい」

 

 

ギルベルダはノリノリだったがカサンドラは今ひとつ釈然としないままであった、一つ確かなことは自分達は今生きている、それだけでも良しとすべきである。

 

 

「アジトについたらまずお着替えしないとね、女の子がそんなボロボロの服を着ていたらだめよ」

 

「服ですか?」

 

「ええ、おしゃれな服がいっぱいあるわよ」

 

「服もいいけど、アタシはまず腹いっぱい食べたいな」

 

「ふふ、いいわ、いっぱいご馳走してあげる」

 

「やったぁ!!」

 

 

大喜びするギルベルダを見て単純だなとカサンドラは思った、だがその単純さが羨ましく思った。

 

 

「···あの」

 

「どうしたの?」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「こちらもよろしくね」

 

 

カサンドラはメラルドの優しいほほえみを見てこの人の元なら幸せになれるかもしれない、そう思いたかったのかもしれない、今から本当の自分の人生が始まる、カサンドラは胸がドキドキしてきたのであった。

 

 

 

 

 

 



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第百十話

久しぶりにサヨが登場します、一応この小説の主人公で間隔が二年近くあいてしまいました、自分で書いておいてなんですが、何はともあれご覧ください。


羅刹四鬼を斬る(前編)

 

 

 

サヨがイバラと交戦に入って一時の時間が経ったがサヨが完全に劣勢になっていた、サヨの衣服はボロボロになり、体も致命傷ではないがあちこちに傷を負っていた、一方、イバラは全くの無傷であった。

 

 

「ヘイヘイヘイヘイ!!」

 

 

 

イバラは手刀を繰り出して攻撃していた、ただ、その手刀は普通の手刀ではない、腕が何倍の長さに伸びてほとんどその場から動かずにサヨに攻撃を繰り出しているのである。

 

 

 

 

「くっ」

 

 

サヨは紙一重でイバラの攻撃を回避しようとした、だが、それでも腕や脇腹に傷を負ってしまったのである。

 

 

 

サヨは以前アカメから羅刹四鬼について聞いていた、それは羅刹四鬼の面々は壮絶な修業とレイククラーケンの煮汁を食べてきたことにより常識ではありえない人体変化ができるということである。

 

 

このまま距離をおいて攻撃され続けられたらいずれ体力が尽きて負ける、なら···

 

 

サヨは腹をくくって突撃に転じた、イバラの手刀をギリギリのところでかわしつつ、イバラを斬りつける間合いに近づけたのである。

 

 

いけるか!?

 

 

サヨは村雨でイバラに斬りかかった、かすり傷でも村雨なら確実に仕留められる、そう思ったその瞬間。

 

 

ぐにっ!!

 

 

 

イバラの体がエビのように折れ曲がり、村雨の一撃を回避したのであった、そしてイバラの体からフツフツと何かが浮かび上がってきた。

 

 

 

危ない!!

 

 

 

サヨは直感的に危険を察して後ろに跳んだ、その瞬間、イバラの体から鋼のように固くした体毛が勢いよく伸びたのであった、直撃していれば即死であった。

 

 

 

かろうじて難を逃れたサヨは心から戦慄していた、羅刹四鬼の人間離れした技にただ絶句するしかなかった。

 

 

 

···あんなこともできるんだ、これじゃうかつに近づけない、どうすれば。

 

 

 

打つ手がなくなりつつあるサヨを見てイバラは退屈を感じていた。

 

 

 

コイツ、たいしたことねぇな、村雨持ってるからしびれる戦いを期待したんだが···かつての村雨使いだったゴスキとは雲泥の差だぜ、にしても、もしアカメが生きていれば面白い戦いになっただろうにな···

 

 

張り合いのない戦いで不満のイバラであった、そしてイバラは戦いを楽しむことを諦め、当初の目的を果たすことにした。

 

 

「ヘイヘイ」

 

 

イバラは再び腕を伸ばし手刀でサヨを攻撃しようとした、だが、その手刀は先程のような速さはなかった。

 

 

いける!!

 

 

サヨは村雨でイバラの手刀の先めがけて斬りかかった、なぜ先程の速さでないのか、サヨは疑問に思ったが千載一遇の好機には違いなかった、これを逃したら勝機はない、そう思った瞬間。

 

 

パシィ!!

 

 

 

イバラは村雨を真横の真剣白刃取りで受け止めた、そして受け止めた村雨を放り投げて右手でパシッと受け止めたのであった、イバラはサヨが仕掛けやすくするためわざと速さを落としたのである。

 

 

「はーい、帝具没収ー!!」

 

 

 

イバラは手にした村雨を見てふと思った···全く、あっさり引っかかりやがって、アカメなら引っかからなかっただろうな、にしても相変わらず禍々しい刀だぜ。

 

 

 

イバラは村雨を見たのは今回が初めてではない、ゴスキが所有者だった時にも一度見ているのだ。

 

 

 

イバラが村雨を眺めていると突然異変が起きた。

 

 

ゾゾゾゾゾゾ

 

 

手にした村雨から得体のしれない気配があふれてきたのであった、その瞬間、イバラの表情が凍りついた。

 

 

「な、なんだ、何が起こっていやがるんだ!?」

 

 

予想もしていなかった事態にイバラは心から恐怖し、完全に無防備をさらしていた、そして次の瞬間。

 

 

 

ゴキィ!!

 

「ぐえっ!」

 

 

サヨは恐怖し隙だらけのイバラの首に渾身の飛び蹴りをくらわし骨が折れる鈍い音がした、首がありえないほど曲がり普通の人間なら即死しているはずだがイバラは死なずに立ちつくしていた、それでもかなりの深手である。

 

 

「···まさか、これを狙って、わざと帝具を手放したのか?」

 

 

 

帝具の拒絶反応を利用した巧妙な作戦、そうだとすれば完全にしてやられた、たいしたことないと見下した自分が大間抜けだと心の中で落胆していると。

 

 

 

「そんなわけないでしょう!大事な村雨をあんたなんかに手渡すわけないでしょうが!!」

 

 

村雨を敵に手渡すなんて普通はありえない、そんなまねができるのは大馬鹿か天才のどちらかしかない。

 

 

 

「···するってぇと、たまたまなのか?」

 

 

 

そんな偶然あるのか、そんな都合のいいことが起こるものなのか?イバラの中に怒りが込み上げやがて爆発した。

 

 

「ふざけるなあ!!」

 

 

 

怒りに我を忘れたイバラはサヨに向かって突撃をしかけた、だが首に大きなダメージを受けて先程の速さはない。

 

 

 

「動きが格段に遅くなってる、いける」

 

 

サヨはイバラの右手の手刀を紙一重でかわしつつ、イバラの右脇腹に村雨で斬りつけた、傷口から呪毒が現れ心臓へ向かっていきイバラの心臓を停止させた。

 

 

 

「がはっ」

 

 

イバラはそのまま地面にうつ伏せに倒れた、心臓が停止したことによりもう立ち上がることはできない。

 

 

 

「···なんて悪運の強い女だ、その悪運好きに···」

 

 

イバラの口からそれ以上語られることはなかった、完全に事切れたからである。

 

 

 

「···勝ったの?」

 

 

 

サヨには勝った実感が全くなかった、圧倒的な実力差があり、村雨を取られてもうだめかと思ったら拒絶反応で取り乱し、その隙をついて首にダメージを与えたが致命傷にならず、再び敵が優勢になるかと思いきやなぜか敵は逆上して隙だらけで突撃をしてきてその隙をついて村雨で斬りつけてギリギリ勝ったのである。

 

 

 

「···全然力不足ね」

 

 

 

アカメならもっと楽に勝っていただろう、ほとんど傷を負うことなく勝っていただろう、自分とアカメを比べるのは

おこがましいということはわかっている、だが、そう思わずにはいられないのだ。

 

 

 

「···とにかく今はシェーレの応援に急いで向かわないと」

 

 

後悔も反省も今は後回しだ、今頃シェーレも苦戦しているはず、今は急いで駆けつけないと手遅れになる、サヨはイバラが持っていた包みを拾ってシェーレの元へ急ぐのであった。

 

 

 

 

 

 



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第百十一話

羅刹四鬼を斬る(後編)

 

 

 

サヨがイバラとの戦いで苦戦しているさなか、シェーレも苦戦の中にいた、その相手は同じく羅刹四鬼のシュテンである、シュテンは巨体の中年の男で武芸の達人であった。

 

 

 

「お前の魂、解放してやろう、皇拳寺百裂拳!!」

 

 

 

シュテンは無数の拳打をシェーレに向けて繰り出した、一発一発の威力もさることながら速さもずば抜けていた。

 

 

シェーレは拳打を回避するのは不可能と判断し、エクスタスを前に出して防御に徹することにした、無数の拳打がエクスタスに直撃しその際の衝撃がシェーレの身体に襲いかかった。

 

 

 

な、なんて威力、それにすごく速い、少しでも気を抜けば命を落としてしまう···

 

 

 

シェーレはなんとか反撃をと思ったが、シュテンに全く隙がなく、ただ防御に徹するしかなかったのである。

 

 

一方のシュテンも一方的に攻めてはいるもののエクスタスの防御力に驚くしかなかった。

 

 

ワシの拳打を受け続けているにもかかわらず全くの無傷とは、なんという強度だ、もしやこのハサミは···

 

 

シュテンは一度後ろに跳んで間合いを取ることにした、このまま攻撃を続けても無駄に拳を痛めるだけであったから。

 

 

シェーレはシュテンの猛攻をエクスタスでなんとかしのいだ、だがエクスタスで防ぎきってもその衝撃はシェーレの身体に確実に消耗を強いていたのである。

 

 

 

「頑丈なハサミだ、やはり帝具か」

 

 

シュテンは自身の力に絶対の自信を持っており、全くハサミに凹みが見られなかったのでそう決断せざるをえなかった。

 

 

 

「だが使い手はそうではないな」

 

 

シュテンが見た所使い手の女は明らかに消耗しつつあった、帝具で拳打を防ぎきっても使い手の体力は確実に消耗していく、明らかに有利な立場に立っているのである。

 

 

「このまま焦らず攻めていけば勝てるのだがな···」

 

 

シュテンに一つ気になることがあった、それはイバラのことである、無論イバラが負けるとは思っていない、別のことが気になっていた。

 

 

 

イバラがもう一人の使い手を片づけて意気揚々でこの場に現れて、まだ片づけてないのかとふんぞり返る様を見せられるのは面白くなかったのである。

 

 

「小細工を使うか」

 

 

シュテンは再び拳打を繰り出した、無数の拳打を繰り出すもエクスタスの前では傷一つつかない、無論、シュテンも百も承知である、シュテンの狙いは別にあった。

 

 

「喰らえ!」

 

 

突然シュテンのあごひげが刃物のように鋭くなり、シェーレの顔面へ高速で伸びたのである。

 

 

 

バキ!!

 

 

 

シェーレは反射的に紙一重でそれをかわした、だが、その際にメガネが粉砕されてしまったのである。

 

 

「かわしたか、勘のいい奴だ」

 

 

···今ので仕留めたと思ったが、伊達にナイトレイドの殺し屋をやってないな。

 

 

シュテンは今ので仕留められなかったことをやや残念に思った、だがシェーレにとってはメガネを壊されたことはとてもまずかったのである。

 

 

 

···ほとんど見えない、このままじゃやられる、なんとかしないと···

 

 

 

だがメガネを失ったシェーレにはシュテンの姿はほとんど見えずわずかにぼんやりとしか見えなかった、それでも何かをしなければやられるのを待つのみであった、シェーレに残された手は···

 

 

 

「エクスタス!!」

 

 

 

シェーレはエクスタスの奥の手閃光を放った、周囲にまばゆい光が一面に広がった。

 

 

 

「目くらましか、小賢しい!」

 

 

シュテンもエクスタスの閃光の眩しさに手で防ぐしかなかった、それだけ閃光が強かったのである。

 

 

 

「悪あがきをしおって」

 

 

シュテンは目をつむり精神を集中した、そしてシェーレの気配をとらえると全力で駆け出した。

 

 

「この一撃で終いだ」

 

 

シュテンの右腕に気が練り込まれていく、これこそトドメの一撃である。

 

 

一方のシェーレは再び閃光を繰り出した、ほとんど目くらましにならないことはシェーレにもわかっている、それでも何もしないわけにはいかなかった、すると思わぬ事態が起こったのである。

 

 

 

 

大きな影が、見える

 

 

 

それは迫ってくるシュテンであった、エクスタスの閃光によって影が生まれシェーレの目でも視ることができたのである。

 

 

うまくいくかわからない、でも、やらないと!

 

 

 

シェーレは迫ってくる影にエクスタスを広げて身構えた。シュテンがシェーレを仕留めようと目前まで迫ってきていた。

 

 

落ち着いて、私

 

 

この窮地の状況でもシェーレの頭はクリアになっていた、わずかに見える影に合わせてエクスタスを広げ、そして一気にエクスタスを閉じた。

 

 

 

ジャコッ!!

 

 

 

エクスタスの両断によってシュテンの巨体は上半身と下半身に分断された、それぞれの傷口からおびただしい量の血があふれている。

 

 

 

「ば、馬鹿な···鍛えて抜かれたこの鋼の肉体をこうもやすやすと···」

 

 

 

シュテンは地面に落ち、そのまま何も語ることなく事切れた、シュテンの表情は驚愕そのものであった。

 

 

 

 

シェーレはシュテンが死んだことを察した、ほとんど見えないので視覚で確認できなかったがシュテンの気配が消えたこと、エクスタスの手応えでシュテンを仕留められたのを確信したのである。

 

 

「···すごく強かったです、ほとんど運でした」

 

 

 

実際メガネを失った時点でほぼ負けが確定していた、じっくり攻めて手傷を負わせる戦いをされたらどうにもできなかった、一撃で仕留める手で攻めてきたからこそ反撃のチャンスが生まれたのである。

 

 

 

「サヨは大丈夫でしょうか?」

 

 

サヨも間違いなく苦戦しているはずである、応援に行きたいがほとんど見えないので動くことができない、サヨが無事なことを祈るシェーレであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百十二話

一気に寒くなりました、後二週間で今年も終わりです、体調に気をつけたいです。


守銭奴を斬る

 

 

 

シュテンを倒したシェーレは今すぐにでもサヨの元へ駆けつけたいのであったがメガネを失いほとんど見えない状態だったので動けないでいた、どうにかできないかと考えているうちに誰かが近づいてくる気配を感じた。

 

 

 

誰!?

 

 

 

もし新たな敵ならまずい展開になる、たまたま奇策がうまくいって倒すことができたが次はうまくいくとは限らない、そう不安を感じていると聞き慣れた声が聞こえた。

 

 

 

「シェーレ!?」

 

 

 

その声はサヨの声であった、近づいてきた人物はサヨだったのである、シェーレは心から安堵した。

 

 

 

「サヨ、無事でよかったです」

 

「多少傷は受けたけど、なんとか大丈夫よ」

 

「傷?大丈夫ですか?」

 

 

傷を受けたと聞いてシェーレは慌ててサヨの元へ駆けつけようとした、するとシェーレは足がもつれてサヨを巻き込んで地に倒れてしまったのである。

 

 

 

「す、すいません」

 

「だ、大丈夫よ」

 

「本当にすいません」

 

 

もにゅ

 

 

 

「きゃっ!」

 

 

 

シェーレは倒れた際にサヨの胸の触れており、思わず胸をもんでしまったのである。

 

 

「す、すいません!」

 

「き、気にしないで」

 

 

シェーレはなんとかしょうと動こうとした、だがシェーレは慌ててしまいさらに騒動になってしまうのである。

 

 

 

もにゅもにゅもにゅもにゅ

 

 

 

「ちょっと、シェーレ、胸、揉まないで!」

 

「あわわ、すいません、本当にすいません!」

 

 

 

もにゅもにゅもにゅもにゅもにゅ

 

 

 

 

シェーレは完全に取り乱しさらにサヨの胸を揉んだのである、シェーレを制止するのはほぼ不可能であった、それでもサヨはみすみす胸を揉み続けられるわけにはいかなかった。

 

 

 

「シェーレ、とにかく落ち着いて、深呼吸をして落ち着いて!」

 

 

「は、はい、ヒッヒッフーしてみます」

 

「それ違う!」

 

 

どうしよう、何て説明したらいいのかな···とにかくどうにかして落ち着かせないと···

 

 

 

何か妙案がないかと考えようとするも胸を揉まれまくったことで頭が十分に働かなかったのである。

 

 

 

何も思い浮かばない、それに何か妙な気分になってきた、何なのこの気分···

 

 

 

突然浮き上がってきた気分に戸惑うサヨ、いつまでも続くかと思われたこの営みは突然終わることになる。

 

 

 

「···何やっているんだ、お前達?」

 

 

その場に現れたのはナジェンダであった、目の前の光景にさすがのナジェンダも首を傾げている。

 

 

 

「ボ、ボス、これは、その···」

 

 

 

 

サヨは慌ててナジェンダにこれまでのいきさつを説明した、案内役の密偵が殺されたこと、殺した者が羅刹四鬼であったこと、その羅刹四鬼をなんとか倒したことをナジェンダに説明した。

 

 

 

「···まさか羅刹四鬼と交戦していたとはな」

 

 

 

ナジェンダはいきさつを聞いて驚いていた、羅刹四鬼は大臣の強力な手駒、こんな辺境で遭遇するとは思っていなかったのである。

 

 

「奴らと戦うのは大臣の暗殺の時と思っていたのだがな」

 

「はい、私達も驚きました」

 

 

てっきり宮殿で大臣の護衛をしていると思っていたからである。

 

 

 

「連中、もしかしたら帝具を回収していたのかもしれません」

 

「帝具を?」

 

 

奴らの仕事の一つに帝具回収も含まれている、ありえない話ではない。

 

 

「まだ確認していないので断定はできませんが」

 

「わかった、解析班に調べるよう通達しておく」

 

「···はい」

 

「どうした?」

 

 

ナジェンダは落ち込んでいるサヨを見て妙だと思った、羅刹四鬼を倒し、帝具を回収できたかもしれない、見事な手柄を立てたのになぜ落ち込んでいるのであろうかと。

 

 

 

「実は···」

 

 

サヨはナジェンダに説明した、羅刹四鬼を倒せたのは全くの偶然で実力的には全く歯が立たなかったのである。

 

 

 

「アカメならここまで苦戦することなく倒せたんじゃないかと思いまして」

 

 

アカメなら自分が思いつかない戦法であっさり倒せたのではないかと思わざるをえないサヨであった。

 

 

「気に病むな、お前が戦った相手は話を聞く限りイバラだろう、奴は羅刹四鬼の中で最強の使い手だ、アカメでも苦戦は避けられなかっただろう」

 

 

「そうですね」

 

 

サヨはできるだけ普通に返事した、内心はふがいない戦いをしてしまったことに落ち込んでいたのであるが、強敵を倒して盛りあがっている雰囲気を壊したくなかったからである。

 

 

「そうだ、敵が持っていた包みを回収しないと」

 

 

羅刹四鬼を倒せても帝具を回収仕損なってしまえば手柄も半減してしまうのである。

 

 

「これのことか?」

 

 

ジャドがイバラが持っていた槍らしきものを持って現れた、どうやら回収してくれたようである。

 

 

「はい、そうです」

 

 

回収してくれたことでサヨは安堵した、回収がされなかったら一大事であったから。

 

 

 

「それにしてもまさか羅刹四鬼と遭遇するとはな···」

 

 

こんな西方の辺境で大臣の最強の駒の一つである羅刹四鬼と遭遇するとは全くの予想外であった。

 

 

「とにかく羅刹四鬼の二人を仕留めて帝具を回収したのだ、大きな戦果と言っていいだろう」

 

 

戦果、その言葉に響くものを感じた、最近の革命軍は右肩下がりが続いており、流れを変える一手になるかもしれないのである。

 

 

 

「サヨ、帝具を回収した報酬楽しみにしておけよ」

 

 

ナジェンダが言った一言がサヨの全身を駆け巡った、それは落ち込んだ気持ちを吹き飛ばすには十分であった。

 

 

「報酬ですか!?」

 

 

ナジェンダが放った報酬の一言にサヨの目は $ ¥に変わっていた、それは見事なものであった。

 

 

「ああ、しかも未知の帝具だからな、さらに上乗せされるかもな」

 

 

「やったぁ!!」

 

 

サヨは喜んだ、周りの目を気にすることなく大はしゃぎしていた、大金が手に入る、故郷の仕送りが増える、これ以上に嬉しいことはなかった。

 

 

「現金な奴だ」

 

 

ナジェンダは苦笑いした、ついさっきまで落ち込んでいたのに報酬の一言で一変したものだから、ちなみにサヨが落ち込んでいるのを隠していたことを見抜いていた。

 

 

 

「何はともあれこれで帝国との差は大きく縮まったな」

 

「ああ」

 

 

前の戦いで多くの帝具を損失してしまい、革命そのものが危ぶまれるところだったのである、今回の一件で帝国が回収するはずであった帝具を奪い取り、なおかつ羅刹四鬼の二人を仕留めたのである、かなり大きいのである。

 

 

 

「後は西の異民族だな」

 

「やはり連中に動きはないか?」

 

「ああ、だが連中も何もしないわけにはいかなくなるだろう、奴らを動かすための今回の任務だからな」

 

「連中が動いたとしてもすんなりとことは運ばないかもな」

 

「その時はお前達に骨を折ってもらうことになるだろうな」

 

「やれやれだな」

 

「不満か?」

 

「いや、望むところだ」

 

 

帝国との戦力の差はある程度縮まった、だが西の異民族との国交回復はまだ成功していない、革命の達成には必要不可欠である、決して容易でない、それでも果たさなくてはならないのである。

 

 

 

 

 



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第百十三話

もう少しで今年は終わります、今年最後の作品ご覧ください。


顔なじみを斬る

 

 

9月16日

 

 

 

西方の辺境の任務以降これといった依頼もなく鍛錬の日々が続いていた、そんなとある日。

 

 

 

「うふふ」

 

 

サヨは笑みを浮かべて笑っている、最近とてもいいことがあったのである。

 

 

「···お前、また目が銭になってるぞ」

 

 

イエヤスに指摘されるもサヨは全く気にしておらずさらに笑みを浮かべて言った。

 

 

「この前の任務で帝具回収の報酬だけでなく羅刹四鬼を倒した褒美ももらってホクホクなんだから顔も緩むわよ」

 

「いや、もはやそんな話じゃ···」

 

 

目が銭になるのは緩むどころの話じゃないと思うのだが···

 

 

 

「故郷の仕送りもさらに増えたんだからいいじゃない」

 

「そりゃそうだが···」

 

 

イエヤスは知らないことだがサヨは服を新調する際に生地を上質なものにしていたのである、見た目は以前と同じだが。

 

 

「なんとでも言ってよ、私は気にしないから」

 

 

 

だめだこりゃ、今のサヨに何を言っても馬の耳に念仏である、イエヤスは何も言わずその場を離れることにした、サヨがポツンと残されることになった。

 

 

 

「それにしても最近依頼全然ないわね、もっと仕送りしたいのに」

 

 

依頼がないのにも理由があった、イェーガーズの取り締まりが一層厳しくなり、依頼を受け取るのも容易でないからである。

 

 

 

「とりあえず鍛錬をしよう、さらに実力を上げないと」

 

 

羅刹四鬼は運良くまぐれで倒せたがまぐれはそう続かない、実力だけで倒せるようにならないと···

 

 

 

サヨが鍛錬の準備を始めようとしたその時にレオーネが突然現れた。

 

 

「いたいた」

 

「どうしたの?」

 

「ボスが呼んでる、会議室に集合だ」

 

「集合?わかったすぐ行く」

 

 

集合、もしかしたら新しい任務かな、そうだったらさらに仕送りができる、サヨは期待を抱きながら会議室に向かった、会議室に入るとすでに全員が揃っていた。

 

 

「集まったな、さっそくだが要点を言おう、本部からの指令でムスリーの街に赴くことになった」

 

「ムスリー?」

 

 

ナジェンダの説明によるとムスリーの街は西の異民族の国の国境と目と鼻の先にある北西に位置する都市である、信頼の証を示せと西の異民族からある依頼をしてきたのである。

 

 

 

「どのような依頼ですか?」

 

「ある人物の抹殺だ」

 

「それは誰ですか?」

 

「詳しい話は現地で聞くことになっている」

 

「ずいぶんずさんですね」

 

「私もそう思うが選択の余地がないからな」

 

 

ナジェンダも不満はあるがようやく訪れた国交回復の好機である、これを逃すわけにはいかなかったのである。

 

 

「本部はこの依頼受けたのですね」

 

「そうだ、手間をかけるがお前達に行ってもらう」

 

「出発はいつですか?」

 

「明日だ、エアマンタで行ってもらう」

 

「本部の人も同行するのですか?」

 

「ああ、誰が来るかまではわからんがな」

 

「わかりました、ところで一つ気がかりなことが」

 

「なんだ?」

 

「依頼料、西の異民族が出してくれるのですか?」

 

「···心配するな、本部が出してくれる」

 

 

こういう場面でも金の心配するとはコイツらしいな、と心の中で思ったナジェンダであった。

 

 

 

翌日、本部からエアマンタが到着して今回の任務に参加するメンバーが乗り込みムスリーの街に出発した、なお、ナジェンダ、スサノオ、レオーネの三人はアジトに残ったのである、緊急の事態に備えてナジェンダはアジトに待機した、スサノオはナジェンダの護衛である、レオーネは帝都に赴いてイェーガーズの監視及び偵察を担うことになった。

 

 

エアマンタの背中でサヨは今回参加しているメンバーを見回した、前の任務に参加した者も何人か参加している、今までの任務に参加していない者も多かった、すると以前の任務に参加していたシヴァが話かけてきた。

 

 

 

「久しぶりやな、サヨ」

 

「久しぶり」

 

 

幻のキノコ回収以来の再会である。

 

 

 

「あのキノコで薬作れた?」

 

「作れたで」

 

「総大将の容体はどう?」

 

「まだ意識は戻らんけど徐々に良くなってるで」

 

「そう」

 

 

もし総大将が亡くなる事態になれば革命軍にとっては一大事である、なんとか回復してほしいところである。

 

 

「ところでさっきから気になっているんだけど···」

 

「なんや?」

 

「そこで泣いている娘、誰?」

 

 

シヴァの後ろで泣いている娘にサヨは全く覚えがなかった、本部では確かに見なかったのである、するとイエヤスが首を傾げて考え込んだ。

 

 

「どうしたの?イエヤス」

 

「うーん、その人どっかで見たことあるんだよなあ」

 

「···もしかしてナンパで?」

 

「そんなんじゃない、そんなんじゃ···ああ‼」

 

 

イエヤスは何か思い出して大声を上げた、周りもなんだと注目した。

 

 

「確かあんた、レオーネ姐さんの顔なじみだよな‼」

 

「どういうこと?」

 

 

イエヤスは説明した、数ヶ月前にレオーネと共に麻薬組織の暗殺に向かった、その際に薬漬けにされた女性を多数発見し、治療のためにレオーネの知り合いの医者に預けたのである。

 

 

「そんなことがあったんだ」

 

「ああ、しかし、まさかこんなところで会うとはな」

 

 

 

イエヤスもその時は彼女達のことは気になっていた、だが、その直後アカメが死んでしまい、完全に忘れてしまっていたのである。

 

 

 

「それでなんでここにいるの?」

 

「それはウチが話すわ」

 

 

 

シヴァは説明した、レオーネの知り合いの医者によって多くの女性は回復したのだが、彼女はなかなか回復せず、代わりにシヴァが治療を引き受けたのである、シヴァとその医者は知り合いであった。

 

 

「そこであのキノコを原料とした薬の試作も兼ねて投薬したら回復したんや」

 

「そうだったんだ」

 

 

イエヤスはホッとした、あのまま廃人として死んだら後味が悪かったからである、ところがサヨは疑問に思った。

 

 

「その人がここにいる説明がつかないんだけど」

 

「そういやそうだな」

 

 

イエヤスもサヨの一言でおかしいと思った、回復したのならなぜここにいるのだろうか、不思議でならなかった。

 

 

「ああ、その後、ウチの助手にしたんや」

 

「助手?」

 

「ウチ個人の助手が欲しかったからちょうどよかったんや」

 

 

二人は驚いた、まさかそんないきさつがあったなんて、それでもスッキリしないものがあった。

 

 

「よくこいつの助手になったもんだな」

 

「···全然同意していないんだけど」

 

「そうなのか!?じゃあ、なんで?」

 

「治療費払えって言われて、でも私、全然お金ないから···」

 

「マジか!?」

 

 

なんだそりゃ、それじゃあ、脅迫じゃないか、完全な悪徳医者だ。

 

 

「文句があるって顔しとるな、言いたいことはわかる、けど、本来金があっても簡単に治せるモンやないで」

 

 

イエヤスは文句を言えなかった、彼女の状態は最もひどく、完全な廃人状態だったからである、普通の治療では治らなかったであろう、二人は納得するしかなかった。

 

 

「俺達は納得しても姐さんが納得するかどうか···」

 

「その心配はいらんで」

 

「どういうこと?」

 

 

 

回想

 

 

 

 

シヴァは彼女の治療して治療費の代わりに彼女を助手にするとレオーネに通達した、するとレオーネは猛反対した。

 

 

 

「ふざけるな、そんなマネ、この私が許さんぞ!」

 

「どうしてもアカンか?」

 

「許さん!」

 

「じゃあ、アンタが治療費払うて」

 

 

 

その一言にレオーネは言葉が詰まった、しばらく考え込むとある決断をした。

 

 

「アイツのこと、頼んだぞ!」

 

レオーネは治療費を払えないので阻止を断念したのであった。

 

 

 

 

 

「そりゃないぜ、姐さん」

 

「···ある意味レオーネらしいけど」

 

 

お金のために顔なじみを見捨てる、まさにロクでなしにふさわしい所業である。

 

 

「···レオーネの裏切り者、絶交よ」

 

 

恨めしそうにブツブツつぶやいている、まあ、当然であろう、見捨てられたようなものであるから。

 

 

「まあ、ええやないか、食い扶持分はは稼げるんやから」

 

「そりゃそうだけど···」

 

 

 

実際、スラムにいた頃より全然稼げているのは事実である、それを考えたら全く悪い話じゃない。

 

 

 

「でも、本部であなたの助手をするならともかく、北西の端まで連れてこられるのは別よ」

 

「しゃあないやろ、これから行くムスリーの街、アンタの臣具役に立つから」

 

「どういうこと?」

 

 

彼女の臣具が役に立つ?そもそも彼女、臣具使えたの?サヨはさっぱりわからないでいた。

 

 

 

「とりあえず臣具見せた方がええな」

 

 

シヴァは彼女に臣具を見せるように言った、後ろにあった荷物入れから臣具を取り出しサヨ達に見せた。

 

 

 

「なにこれ!?」

 

 

その臣具は一目で生物型の臣具だとわかった、ただ、その大きさはチホシやチュニのとは明らかに大きく、何よりもその形状が異形であった。

 

 

「バケモノかよ···」

 

 

イエヤスはあ然とした、その臣具は全身緑色で両側にはヒレみたいなものがびっしりついており、口はホースのような長く伸びた管の先にあり、まるでマスクのようなかたちをしている、なりより頭部にある目がなんと五つもあるのである、こんなの見たことがない。(この形状は昔の生物オパビニアをイメージしてください)

 

 

 

 

「どうや?」

 

 

どうや、って言われてもなんてリアクションしたらいいか。

 

 

 

「どんな能力なの?」

 

 

サヨは形のことは一切聞かないことにした、キリがないに決まっているからである。

 

 

 

「これは酸素を造り出すんや」

 

「酸素?」

 

「ムスリーの街は高い山にある山岳都市なんや、高い山に慣れてないモンが行ったら高山病になる恐れがある、そこでこの臣具の出番や」

 

 

 

確か小さい頃高い山に登った時に頭が痛くなったり気持ち悪くなったりした、その対策ならわからなくもない。

 

 

 

「このマスクみたいなとこへ口をつけるのよね」

 

「そや」

 

 

正直この部分に口をつけるのは気が引けるんだけど、体調を整えるためには仕方ないかな。

 

 

「あなたよくこの臣具の所有者になろうとしたわね」

 

 

はっきり言ってこの臣具グロテスクなのよね、人の感性はそれぞれだけど。

 

 

「それがいつの間にか所有者になっちゃってたのよ」

 

「どういうこと!?」

 

「それは、意識がまだもうろうとしていた時にこれはキモカワイイってシヴァに刷り込まされていたのよ、そしたら意識が戻った時にはすでに所有者になってたのよ」

 

「ええ!?」

 

 

なにそれ、そんなんで適合しちゃうの?すごくいい加減···

 

 

「それであなたはいいの?」

 

「最初はかなり戸惑ったけど、段々と愛着が湧いてきて結構気に入ってるわよ」

 

 

本人が気に入っているのなら別にいいかな、村雨もすごくキレイな刀なのにみんなは怖がっている、それと似たようなものよね。

 

 

「あなたが良いのなら私は何もいうつもりはないわ、ええと、あなたの名前は?」

 

「アキ、私の名前はアキよ」

 

「よろしくね、アキ」

 

 

サヨがあいさつする中イエヤスはアキの姿をジロジロ見ている。

 

 

「それにしてもあんたの衣装、あの時の色街に着ていたものだよな」

 

「うん、この服はすごく気にいっているの」(アキの衣装はアカメが斬るアニメ第6話で着ていた衣装と同じです)

 

「そうだな、すごくいいぜ」

 

サヨは妙だと思った、イエヤスがこんな気が利いたことをいうなんて、するとその理由が明らかになる。

 

 

「ちょっとアキ、パンツ見えてる!」

 

「え?きゃっ!」

 

 

おかしいと思った、コイツが気の利いたこと言うなんて、こういうことだったのか。

 

 

「成敗!」

 

サヨの鉄拳がイエヤスに直撃し吹っ飛んだ、勢い余ってエアマンタから落ちそうになった、なんとかエアマンタのしっぽを掴むことができ落下を防いだ。

 

 

 

「お、落ちるー!!」

 

イエヤスは死にものぐるいでしっぽを掴んでいる、その形相はブサイクそのものであった。

 

 

「いいの?」

 

「いいのよ」

 

 

いいのかな?パンツ見られたの恥ずかしかったけどあのまま死んじゃったらさすがに寝覚めが悪い···

 

 

「大丈夫よ、アイツしぶといから」

 

「そうなの?」

 

 

大丈夫よね、一応帝具使いだし、なんとかなるよね。

 

 

「二人共そろそろムスリーの街に着くで」

 

 

前方を見ると大きな街が見えてきた、あれが今回の任務の場ムスリーである、革命軍にとって重大な任務である、失敗は許されないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 




あっという間に一年が過ぎました、来年もよろしくお願いします。


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第百十四話

今年最初の投稿です今年もサヨを斬るをよろしくお願いします。


忠告を斬る

 

 

 

「あれがムスリーの街ね」

 

 

ムスリーの街から離れた場所にエアマンタを着陸させてしばらく歩きムスリーの街が一望できる丘に到着した、ムスリーの街は辺境の街にしては大きな街で前線基地の役割も担っている。

 

 

「ムスリーの街の向こう側は西の異民族の国土なのよね」

 

 

ムスリーの街からはるか離れたところに大きな山が見える、そこは西の異民族の領土であった。

 

 

「山岳地帯だから気温が低いわね、肌寒い」

 

 

明らかに帝都とは気温が違った、冷たい風が吹き荒れている。

 

 

「おしりが特に···えっ!?」

 

 

サヨがおかしいと思い後ろを振り向くとメロディがサヨの着物をめくり上げてサヨのパンツを見つめていた。

 

 

 

(メロディは第七十、七十一話で登場しています)

 

 

「きゃあ!?」

 

 

サヨは着物を押さえてパンツを隠した、サヨは顔を赤くしてメロディをにらみつけた、そのメロディは平然としている。

 

 

「何するの!?」

 

「パンツの確認」

 

「は?」

 

 

パンツの確認って何、何理由のわからないことを···

 

 

 

「あなたが自分を見失って不相応なパンツを履いてないかと思って」

 

「何言ってるの!?」

 

 

なんで私が自分を見失って不相応なパンツを履いていると思っているの、わけわかんない···

 

 

 

「この前の任務で羅刹四鬼のイバラを仕留めたよね」

 

「う、うん」

 

「それが全くの偶然で運良く倒せたんだけど自分の実力不足を痛感したよね」

 

「うん···」

 

「手始めに似合わないエッチなパンツを履いて心機一転を図ろうとしてるんじゃないかと思ってパンツ確認したのよ」

 

 

「はぁ!?」

 

 

なんで私が心機一転するためにエッチなパンツを履くんじゃないかと思うのよ、本当にわけわかんない。

 

 

「簡単に言えばらしくないことをするなってことよ」

 

「らしくない?」

 

「どう頑張ってもあなたはあなたにしかなれないんだから自分を見失わず、何があってもうろたえずに冷静沈着でということよ」

 

 

···パンツのことは今ひとつわからないけど冷静沈着であれって言うのは理解できる、彼女なりに私に忠告してくれているんだ。

 

 

「ところで話は変わるけどお願い聞いてくれる?」

 

「お願い?」

 

 

···なんだろう、メロディのお願いって、いい予感がしないんだけど。

 

 

 

「ちくび見せて」

 

 

そのお願いを聞いた瞬間サヨの顔はこれ以上なく真っ赤になり胸を両手で覆って身構えた。

 

 

「な、な、な、何言い出すの!?そんなことできるわけないじゃない!」

 

 

うろたえて憤慨するサヨを見てメロディはやれやれといった表情でため息をついた。

 

 

「···あなたねぇ、たった今うろたえるなと言ったばかりなのにさっそくうろたえてどうするのよ」

 

「うろたえてるに決まってるでしょ!!」

 

 

いきなり乳首を見せてって言われたら取り乱すに決まってるでしょ、それでうろたえなかったらそれこそ痴女よ。

 

 

「まあ、普通はそうだけど、あなたのいる世界は普通じゃないでしょ」

 

「そ、それは···」

 

 

殺し殺されが当たり前の裏の世界、そんな世界にいるあなたが普通にこだわるの?そうメロディは言いたいのであろう、それでもこれはやはり受け入れられない。

 

 

「甘いと言われてもさすがにこれは受け入れられないわ!」

 

 

メロディはやれやれと呆れるかもしれない、それでもこれが私の譲れない意思だから。

 

 

「まあ、いいんじゃないかな」

 

「えっ?」

 

 

甘いって言われるかと思ったけど意外···

 

 

「今はうろたえてもいいけど、いつか絶対うろたえてはならない時は必ず来るから」

 

 

必ず来る、その通りね、まさかありえないが突然来るのが私のいる世界なんだから···

 

 

 

「隙あり」

 

 

メロディはサヨの左側の襟を掴み思いっきりめくり上げた、その瞬間サヨの左の胸があらわになった。

 

「!!?」

 

サヨは突然のことに頭が真っ白になって動くことができなかった、顔はこれ以上なく真っ赤になっている。

 

 

「へえ、なかなか可愛い乳首じゃない、それに大きさもアカメと同じくらいあるわよ」

 

「きゃあ!!」

 

サヨは慌てて襟を掴んで胸を隠したが後の祭りである。

 

 

···油断した、完全に油断した、メロディがそのまま何もしないなんてありえないのに。

 

 

サヨは顔を真っ赤にしてメロディをにらみつけたがその本人は平然としている。

 

 

 

···怒鳴りつけたいけどメロディはその程度のことでうろたえるなんてまだまだねって言うに決まってる、このままじゃ腹の虫がおさまらない、何かないかな、そうだ!

 

 

「ラバ、見た?」

 

「見たって何を?」

 

 

サヨはラバに胸を見たか確認をしたかった、もし見たらぶっ飛ばすつもりだったのだが、ラバは慌てることなく平静に返事した。

 

 

ラバ、全然慌ててない、もしかして見てないのかな、そうだとしたら問い詰めるのは悪いわね。

 

 

サヨはラバは胸を見てないと判断し、次に移ることにした。

 

 

「イエヤス、見た?」

 

「み、見てない、全然見てないぞ、胸なんてぜ···」

 

 

ボガン!!

 

 

 

イエヤスの言い分を言い終える前にサヨの怒りの鉄拳がイエヤスの顔面に直撃した、イエヤスは思いっきり吹っ飛ばされノックダウンした、ラバはその様子を見てほくそ笑んだ。

 

 

バカな奴、バレバレだぜ。

 

 

ラバもしっかりとサヨの胸を見ていたのだが今の展開になると予想しており瞬時に切り替えたのである。

 

 

 

イエヤスに八つ当たりして多少は怒りが収まったサヨであったがそこにメロディが話かける。

 

 

「イエヤスお気の毒に」

 

「何言ってるの?もとはと言えばあなたが···」

 

 

元凶であるあなたがそれを言う?あなたがあんなマネしたからこうなったのよ。

 

 

 

「確かにおふざけが過ぎたわね、でも取り乱してはいけない場面はいつか必ず来るわよ」

 

「それは···」

 

 

裏の世界は非情な世界、常に冷静沈着でなければならない、サヨもそれはわかっているつもりである、だが常にそうあり続けられるかどうかは自信がない。

 

 

「今は取り乱してもいいけど取り乱してはいけない場面は必ず来るわよ」

 

「う、うん」

 

 

 

メロディの忠告にサヨはただうなずくしかなかった、取り乱したら命取りになる自分がいる裏の世界、サヨは改めて危機感を高めるのであった、そしていつの間にか胸をあらわにされたこと怒りが薄れてしまっていたのである。

 

 

 

 

 



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第百十五話

音楽を斬る

 

 

 

「ねぇ、メロディ」

 

「何?」

 

 

サヨはメロディに聞きたいことがあった、エアマンタに搭乗した時から気になっていたのである、さっきのドタバタのこともあり聞かないでおこうかとも思ったが、やっぱり気になって聞いてしまったのである。

 

 

 

「背中に背負っているの臣具だよね?」

 

 

 

サヨが質問したのはメロディが背中に背負っているものであった、それは見たことがない代物であった、一見リュックサックに見えるが材質は布でも石でも鉄でもなく何でできているのかわからないものである、そしてもっとわからないのがメロディの左肩の上に見えるゆりの花に似たものであった、トランペットに少し似ているが何か違和感を感じる、とにかく異質なものに違いなかった。

 

 

(形状は蓄音機をイメージしてください)

 

 

 

「そうよ」

 

「それってどんな能力なの?」

 

「知りたい?」

 

 

メロディはしょうがないか教えてあげようかって雰囲気を出しながら聞いてきた、そこにツンとした態度のマインが口を出してきた。

 

 

「別にいいわよ、どうせたいしたことないに決まってるんだから」

 

「聞き捨てならないわね、いいわ、この臣具のすごさ見せてあげる」

 

 

マインの言葉に少しムッとしてメロディは性能を披露することにした。

 

 

「思いっきり驚いてね」

 

 

メロディは臣具に装着していた装置を取り出し何か操作し始めた、その装置は黒いロープみたいなもので繋がっている。

 

 

メロディが操作を終えるとゆりの花みたいなものから音楽が流れてきた、このあと予想もできないことが起こると予想していた、だが、その後もただ音楽が流れるだけであった。

 

 

「ねぇ、メロディ」

 

「何?」

 

「音楽が流れているだけなんだけど」

 

 

まさか音楽が流れるだけってことはないよね、メロディのことだからとんでもないことが起こるのでは···

 

 

「その通りよ!」

 

「え?」

 

「この臣具は異空間に保管したレコードを瞬時に転送して最高の音楽を奏でるのよ、保管しているレコードのレパートリーは千種類にも及ぶわよ!」

 

 

 

なにそれ、音楽を奏でるだけって、異空間からレコードを転送って無駄にすごい能力なんだけど。

 

 

「全然戦いに役に立たないでしょうが!!」

 

 

あまりのバカバカしさにマインは思わずツッコミを入れてしまった、気持ちはよくわかる。

 

「何言ってるの?こんなすごい能力そうないわよ」

 

 

確かに転送能力はすごいんだけど、使い方が完全にブレてる、これを作った人何を考えて作ったのかな?

 

 

 

「もしも戦闘になっても腕っぷしに自信があるからなんとかなるわよ」

 

 

 

自信があるって、確かにメロディは結構強いと思うけど、帝具も臣具もなしで戦えるのかな、まあ、メロディが最前線で戦うことはそうないと思うけど。

 

 

 

メロディはサヨが戦えるのかなと疑問に思っていることを察していた、でもあえて何も言わなかった、口だけならなんとでも言えるからである、メロディ自身も強敵と戦うことはそうそうないと思っていたからである。

 

 

 

そう言えばあのときも腕っぷしに自信があるって言ったっけ

 

 

 

 

メロディはアカメと最初に会った頃のことを思い出していた、それは妹を必死に守るアカメであった、その時はアカメがあのようなことになるとは夢にも思っていなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百十六話

おせっかいを斬る

 

 

「とんでもないところね、ここ」

 

 

 

 

小さい時に時に親に捨てられて施設に送られて、その施設もろくでもないところでとても苦労して突然帝国の組織と名乗る連中に売られて有無を言わさず連行されてたどりついたのがこの大秘境なのよね、ホント私の人生ろくでもないわね。

 

 

 

 

「指示されたところまで行けって言ってたけど···」

 

 

 

簡単に行ってくれるわね、ここは右も左もわからない大秘境、凶暴な危険種がウヨウヨしている、大人でもあっさり死んでしまう危険地帯、まして子供ならなおさらよ、アイツらまともじゃないわね。

 

 

 

「とにかく今は動かないと」

 

 

 

このまま何もしなければ危険種のエサになってしまう、ゴールへただ進むのみ。

 

 

 

 

全速力で走った、ただ走るだけでなく注意深く辺りを観察して大丈夫だとわかったら全速力で駆け抜けた、途中で何人もの歳が近い子供と遭遇した、間違いなく連中に買われた子供達である、だがその子供達は次々と危険種に襲われて命を落としていった、その光景を見て憤りを感じたが自分の身を守ることで手一杯でただ見てるだけしかできなかった。

 

 

 

「全く、いつまで続くのやら」

 

 

 

見殺しにして全速力で逃げる、最初は後ろめたさを感じた、だが何回かそれを繰り返すうちに次第に薄れていったのである。

 

 

 

「ゴールまであとどれくらいかな」

 

 

進んでいくうちにまた別の子供を見かけた、それは二人の少女であった、この二人は顔が似ている、おそらく姉妹だろう、彼女達はたった今多数の危険種に襲われている最中であった。

 

 

「私から離れるな!!」

 

「うん、お姉ちゃん!!」

 

 

姉と思われる少女が妹をかばって危険種から守っている、多数の危険種に迫られても全く怯むことなく一体、また一体と仕留めていく、彼女はかなり強いことは一目瞭然であった。

 

 

 

「強いわね、でも···」

 

 

いくら強いといってもまだ子供である、体力も多いわけがない、徐々ではあるが動きが鈍くなってきている、このままでは力尽きるのも時間の問題である。

 

 

 

「そろそろ離れないと私も危ないわね」

 

 

あの姉妹がやられたら次は自分が襲われるであろう、その前に立ち去ろう、これまでに何人もの子供を見殺しにしてきたのである、今回も自分が生き残るために誰かを見殺しにする、それは間違いではない、ここはそういうところなのである、そのはずである。

 

 

「···」

 

 

 

なぜか足が動かない、なぜ足が動かないのかわからない、もしかして自分はあの姉妹を見殺しにしたくないのであろうか、さんざん何人も見殺しにしておいてあの姉妹を見殺しにしたくないというのはまさに偽善である、それでもあの姉妹を見殺しにするのは何かスッキリしないのである。

 

 

 

「···仕方ないわね」

 

 

腹をくくって姉妹の元へ駆け出した、姉の背後を襲おうとした危険種に飛び蹴りをくらわしてぶっ飛ばしたのであった。

 

 

 

「お前は!?」

 

 

とても驚いた様子であった、まさか誰かが助けてくれるなんて思っていなかったのであったから。

 

 

「質問はあと、こいつらを蹴散らすよ」

 

「わかった」

 

 

 

そう答えた姉であったが正直不安はあった、だがこのままでは体力が尽きて確実にやられてしまう、そうなったら妹も守ることができない、覚悟を決めて彼女を信じることにしたのである。

 

 

 

彼女が乱入したことで形勢は完全に逆転した、二人から三人になったことで負担は大幅に減ったのである、あっという間に数を減らした危険種の群れはおそれをなして逃げ去ったのであった。

 

 

 

 

「なんとかなったわね」

 

「···ああ」

 

 

姉は肩で息をしながらなんとか返事をした、妹の方はそんな余裕はなく力尽き寝そべってただ荒く呼吸するしかなかったのである。

 

 

「助かった、感謝する」

 

 

「気にすることないよ、ただの趣味、おせっかいみたいなものだから」

 

「それでも構わない、本当に助かった」

 

 

理由がどうあれ本当に危なかったのである、もし助けがなかったら確実に二人共死んでいたはずであるから。

 

 

 

「···あの、ありがとう」

 

 

 

姉の後ろから怖がりながら妹がお礼を言った、なんか可愛いなと思った。

 

 

「こら、礼を言うならはっきり礼を言うんだ」

 

「ご、ごめん、お姉ちゃん」

 

 

姉に叱られて妹が前へ出て背すじを伸ばして大声でお礼を言った。

 

 

「助けてくれてありがとう」

 

「どうも」

 

 

殺伐とした血なまぐさい密林であるのだが一瞬ほのぼのとした雰囲気を感じた、だがいつまでものんびりとしているわけにはいかなかった。

 

 

「とりあえずここから離れない?他の危険種がやってくるかもしれないから」

 

「そうだな」

 

 

危険種との戦いで辺りには血が飛び散っていた、その血を嗅ぎつけて別の危険種がやってくる危険性は十分にありえたからである。

 

 

「離れる前に自己紹介しておこう、私はアカメだ、こっちは妹のクロメだ」

 

「私は···」

 

 

お互いの自己紹介を終えるとすぐに走り出してその場を去った、そして適度に高い木に登り太めの枝に腰を掛けて休息することにしたのである。

 

 

 

「とりあえず休めるわね」

 

「ああ」

 

「一応聞くけどあなた達も売られたクチ?」

 

「ああ、父親に売られて今に至る」

 

「···あんなヤツ父親じゃないよ」

 

 

クロメは嫌悪感をあらわにして言い放った、まあ、実の娘を売るヤツなんてろくでもないものであるから。

 

 

「酒ばかり飲んで酔うと私やお姉ちゃんを殴りにくるんだ」

 

「まさにクズね、ところで母親は?」

 

「私が物心がつく前にいなくなった、あのクズに嫌気が差して逃げたんだと思う」

 

「あり得るわね」

 

 

別にこの姉妹が特別じゃない、この国ではよくあることなのである、それだけこの国はダメになっているのである。

 

 

 

 

「アカメ、あなた、相当苦労したのでしょう?」

 

 

このアカメが母親代わりとして妹の面倒を見てきたのであろう、大変という言葉で済まされないはずである。

 

 

「たいしたことはない」

 

「そんなことないよ、クズから私を守るためにどれだけお姉ちゃんが痛い思いをしたか···」

 

 

 

話を聞くだけで相当のクズね、金欲しさに娘を売っても不思議じゃない。

 

 

 

「大変な人生だったわね」

 

「ああ、だが私達はまだ生きている、生きていれば希望はある」

 

「うん、お姉ちゃんとならどんな苦しいことだって乗り越えられるよ」

 

 

この姉妹、揺るぎない絆で結ばれているのね、少し羨ましいかな···

 

 

 

「そろそろ寝ましょう、明日はもっと大変になるだろうし」

 

「そうだな」

 

「おやすみ、お姉ちゃん」

 

 

三人はあっという間に泥のように眠りに落ちた、ただ生き残ることを夢見て。

 

 

 

 

朝になって目が覚め最初に告げた言葉は···

 

 

 

「今なんて言った?」

 

「最後まで付き合うって言ったのよ」

 

「何でそこまでしてくれる?お前とは昨日知り合ったばかりで···」

 

「何を今更、言ったでしょ趣味みたいなものだって、あなたが負い目を感じることはないわよ」

 

「それは確かに···」

 

「あなたは強いけど妹を庇いながらでは限界がくるわよ」

 

「···」

 

「私が危なくなったらあなたが助ける、持ちつ持たれつよ」

 

「そうだな、わかった」

 

「じゃあ、行くわよ」

 

 

三人は終着地に向けて走り出した、途中で危険種の襲撃にもたびたび遭った、だが三人は巧みな連携で退け、たいした怪我もなく着実に距離をつめていた。

 

 

「だいぶ進んだわね」

 

「ああ」

 

「あと少しで終わりなんだね」

 

 

終わり、この馬鹿げた試験がやっと終わる、でもさらなる過酷が待ち受けているのは予想できる、クロメはそこまで考えてないと思う、そこまで考えが及ばないのよね、とにかく今は乗り切ることだけ考えないと。

 

 

「お姉ちゃん、水飲んでいい?」

 

クロメは近くの川に指を指してアカメに聞いた、アカメは許可をしてクロメは川に向かって行った。

 

 

「もうすぐね」

 

「ああ、お前の助けのおかげでここまでこれた」

 

「そんなことないわよ」

 

「いや、私一人ではどうなったかわからん」

 

「まあ、それはさておき、これからのあなた達だけど···」

 

「私達がどうした?」

 

「これからもあなた達がずっと一緒にいられたらいいな、と思って」

 

「どういうことだ?」

 

 

···言いにくいんだけど、連中姉妹を一緒にしてくれるのかな、もしかしたら離れ離れにさせる恐れがあるのよね。

 

 

「きゃあああ!!」

 

 

突然クロメの悲鳴が鳴り響いた、二人はすぐさま川の方に振り向いた、そこには川から大蛇が現れていた、大蛇はクロメに噛みつこうとした、クロメは紙一重で交わすも尻尾による攻撃でクロメは思いっきり吹っ飛ばされてしまったのである。

 

 

「クロメ!!」

 

アカメは危険を顧みず大蛇に向かって行った、アカメはナイフで斬りつけるも硬いウロコの前にほとんど傷をつけることができなかった。

 

 

「倒すのは無理、クロメを助けることに専念した方がいい」

 

「ああ」

 

「私が引き付けるからあなたがクロメを助けなさい」

 

「すまない」

 

 

 

指示に従ってアカメはクロメの救出に向かった、その間大蛇の注意を向けるため積極的に攻撃を仕掛けたのである。

 

 

「硬いわね」

 

 

力には自信があったがウロコがものすごく硬くほとんど傷をつけることができなかった、やはり倒すのは不可能であろう、残された手は一つである。

 

 

「気を失っているがクロメは大丈夫だ」

 

アカメはクロメを救い出し背中に背負っている、少し怪我をしているが命に異常はない。

 

 

「先に行って」

 

「しかし···」

 

「あなたが妹を守らずに誰が守るの?」

 

「すまない」

 

「そういうのは後よ」

 

「死ぬなよ」

 

「もちろん」

 

 

アカメはクロメを連れて全速力でその場を去って行った、残されたのは少女と大蛇のみであった。

 

 

「さて、ある程度時間を稼いだら逃げるとしますか」

 

 

大蛇の攻撃は速く激しかった、だが、回避に専念していたため紙一重でこらえられていたのである。

 

 

「もう少し···」

 

 

ガシッ!!

 

 

突然何かに捕まってしまった、そして大蛇も捕まってしまったのである、両者を捕られたのは···

 

 

 

「エビルバード!?」

 

 

 

特級危険種エビルバード、ひとたび村が襲われたらあっという間に滅ぼされてしまうという獰猛な鳥である、眼の前のエビルバードは以前目撃したエビルバードよりもふたまわりも大きかった、おそらく希少種だろう、より大きいと聞いていたがこれ程とは···

 

 

 

エビルバードは瞬時に上空へ舞い上がり、あっという間にその場を飛び去ったのである、あまりの速さに呼吸もままならない。

 

 

 

「今すぐ逃げないと!」

 

 

今すぐ逃げたかったが数百メートルの上空では逃げることはできない、確実に命を落としてしまう、低くなったところを見極めて逃げるしかないのである、そう考えている間にもどんどんあの森から離れていく、自分の命はもちろん心配だが、アカメとクロメのことも心配である、無事にゴールできればいいのだが、それにしてもこの鳥いったいどこまで飛ぶつもりなのだろう?

 

 

 

 



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第百十七話

再会を斬る(前編)

 

 

 

「あれから八年か···」

 

 

 

八年前にエビルバードに捕まり何千キロも離れた巣まで運ばれてしまった、逃げ出そうともしたが降りられる高さの場面が全くなく、結局巣まで何もできなかったのである、幸い巣に到着したらすぐ逃げることができた、大蛇という大きな獲物がそばにあったのですんなり逃げることができたのである。

 

 

 

「アカメとクロメ、どうなったのかな?」

 

 

 

巣から逃げ出した後二人が気になって戻ろうとした、だが全く知らない場所であの秘境がどこにあるのか検討もつかなかったのである、それに万が一戻れたとしても試験の途中で逃げ出したとみなされ抹殺されるおそれもあったのである。

 

 

「アカメがそばにいれば大丈夫だと思うけど」

 

 

 

二人が無事にゴールしたとしても二人一緒にいられるとは限らない、姉妹別々にされる可能性もあるのだ、この予想が外れてくれればいいのだが。

 

 

 

「この八年色々訪れたわね」

 

 

 

この八年色々なところへ巡りまわったものだ、帝国の辺境、南の異民族、西の異民族の領土、北の異民族の領土はまだ訪れていないが一度くらいは行ってみようと思う。

 

 

「さて、野宿に適したところを探さないと」

 

 

まだ日は暮れていないが明るいうちに野宿に適したところを見つけておかないといろいろ面倒になるのである、闇夜になってからでは格段に手間がかかるからである、洞窟が見つかれば楽なのだが。

 

 

「今夜も木の上かな」

 

 

しばらく歩いてみたがやはり都合よく洞窟なんて見つからない、諦めかけていた時に予想外のものを発見したのである。

 

 

「あれは···もしかして村?」

 

 

正直信じられなかった、こんな人里離れた辺境に村があるなんて、とにかくこれは渡りに船である、村に行ってみるとしよう。

 

 

 

「へぇ、ちゃんとした村じゃない」

 

 

廃村寸前の村かと思っていたが建物は新しく村が作られて年月はそうたっていないようである、最近できた開拓村なのだろうか、とにかく野宿を回避できそうである。

 

 

「とりあえず食堂に行ってみようかな」

 

 

食堂に行けば人が集まる、そこでいろいろ聞いてみようと思う、こんな辺境になぜ村があるのか興味があるから。

 

 

 

「いらっしゃい!!」

 

 

食堂に入ると女性が笑顔で迎えてくれた、歳は二十前半くらいだろうか、愛想のいい美人である。

 

 

「注文は何にする?」

 

「とりあえず定食を」

 

「あいよ、ちょっと待っててね」

 

「わかった」

 

 

しばらく待っていると定食が出来上がった、思ったよりもずっと早い、さっそく定食をたいらげた、なかなかの味である、食べ終わりお茶を飲んでいると人が入ってきた。

 

 

 

「魚を持って来たぞ」

 

 

その声に聞き覚えがあった、勘違いではなく確かにその声に聞き覚えがあるのだ、振り向いて確認すると···

 

 

 

「アカメ?」

 

 

目の前に一人の少女に面影があった、アカメが成長したらこうなるだろう、それに雰囲気があの頃のアカメと同じなのである。

 

 

 

「お前は?」

 

 

アカメも目の前にいる少女を見て思い出そうとしていた、そしてそれは確信に至る。

 

 

 

「生きていたのか!?」

 

 

8年前にアカメとクロメを助けようとして消息不明になってしまった少女が目の前にいる、アカメも冷静でいられなかったのだ。

 

 

「あなたも生きていたのね」

 

「ああ」

 

「よかった」

 

思わぬ再会であった、感激のあまり抱きつくというのはありふれた話だが今回はそうではなかった。

 

 

もにゅ

 

 

 

「大きくなったわね」

 

 

抱きつくことはせずかわりにアカメの胸を思いっきり揉んだ、そしてそのまま揉み続けるのであった。

 

 

「ななな」

 

 

いきなり胸を揉まれてアカメは顔を真っ赤にしてあ然としていた、そしてそれは怒りに代わった。

 

 

「何をする!!」

 

 

 

アカメは振りほどいてキッとにらみつけた、本気で怒っているようである。

 

 

 

「何って、これは都会で流行っている女子同士のスキンシップよ」

 

「スキンシップ!?」

 

「そうよ」

 

「とても信じられん」

 

「あなた最近都会に行ってないでしょう?」

 

「確かに」

 

「じゃあ、嘘だって断定できないでしょう」

 

 

アカメは反論できなかった、都会の流行など全く知らない、だから嘘だと断定できないのである。

 

 

「本当に流行っているのか?」

 

「信じる信じないはあなたの自由よ」

 

 

そう言われてアカメはそういうのが流行っているんだなと思うことにした、何が流行るかわからないからである。

 

 

「じゃあ、さっそく続きを···」

 

「やめろ!!」

 

「なぜ止めるの?」

 

「···恥ずかしいからだ」

 

「これはスキンシップよ、別に恥ずかしくないわよ」

 

「しかし」

 

「あなたって堅いとこあるわね、8年前から変わっていない」

 

「そうか?それなりに社交性が身についていると思うが」

 

「まだまだね、もう少し上を目指してもいいと思うよ」

 

 

そうなのか?私は堅いのか?もう少し柔らかくなった方がいいのか?

 

 

アカメが頭を悩ませていると食堂に誰かが入ってきた、それはアカメと同年代の少女であった。

 

 

「アカメちゃん」

 

「ああ、ツクシか」

 

「ツクシ?」

 

「ああ、私の仲間だ」

 

 

仲間か、この娘も8年前の試験に参加していたということよね、一見気弱そうに見えるけどあの試験から生き残ったのだから弱いということはないはず。

 

 

「ふぅん」

 

 

それにしてもこの娘胸大きいわね、アカメよりも大きい、ぜひ揉んでみたいわね。

 

 

心の中でそう思っているとアカメは予想外の行動をしたのである。

 

 

もにゅ

 

 

 

「ア、アカメちゃん!?」

 

 

アカメは突然ツクシと呼んだ少女の胸を揉んだのであった、彼女は突然のことに真っ赤になってうろたえた。

 

 

「な、何するの!?」

 

 

なぜいきなりアカメが自分の胸を揉んだのかツクシはわけがわからなかった。

 

 

「これは都会で流行っているスキンシップだそうだ」

 

「スキンシップ!?」

 

「ああ」

 

「と、とても信じられないよ」

 

「確かにな、だが流行っているんだ」

 

 

「そ、そうなんだ」

 

 

 

ツクシは自信を持って答えたアカメを見てそうなんだと信じることにした、普通に考えたらおかしいと思うものだがアカメがそうだと言ったらあっさり信じるアカメのことをとても信じているんだろう。

 

 

「あのー」

 

 

さすがにこのまま放っておくのはまずいかな、早くあれは嘘だと訂正しないと。

 

 

「お前も私の胸を揉め」

 

「ええ!?」

 

「都会のスキンシップを経験しておく必要がある」

 

「で、でも」

 

「遠慮はいらんぞ」

 

「···恥ずかしいよ」

 

 

周りに人が大勢いる中で胸を揉みあうなんて恥ずかしすぎる、ツクシはどうしても決断できなかった。

 

 

「私はお前ともっと親交を深めたいんだ」

 

「私もだよ、でも···」

 

「大丈夫だ、すぐ馴染む」

 

「わかった、えい!」

 

ツクシもアカメの胸を揉んだ、さすがにアカメのように思いっきりは揉めないがそれでもアカメの顔を赤面させるには十分であった。

 

 

「いいぞ」

 

「えい、えい」

 

 

ツクシは死ぬほど恥ずかしかったがアカメともっと仲良くなりたいという思いでアカメの胸を揉み続けた、アカメも負けじとツクシの胸を揉んでいる、その様を見て店の客は大盛りあがりした。

 

 

「いいぞ、もっとやれ!」

 

「ヒュー、ヒュー!」

 

「いっそのこと胸を出せ!」

 

 

興奮して悪乗りが進んでいく男達、それを見てさすがに不安を感じ始めた。

 

 

 

···まずいわね、ちょっとした冗談だったのに、大事になってきた、このまま一線超えなければいいんだけど。

 

 

 

今さら冗談だったと言える雰囲気ではない、こうなったらなるようになるしかない、うまくいったら乗り切れるかもしれない、そう期待しつつただ傍観することにしたのである。

 

 

 

 



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第百十八話

再会を斬る(後編)

 

 

 

「アカメちゃん、もう、やめようよ」

 

「いや、まただ」

 

 

都会で流行っているスキンシップだと信じてアカメはツクシの胸を揉み続けていた、ツクシはもうやめたがっている、恥ずかしさのあまりツクシは半泣き状態であった。

 

 

「恥ずかしいよぉ」

 

 

これが流行りのスキンシップだとツクシは思えなかった、それでもアカメは大真面目だったため否定できないのであった。

 

 

 

この状況を作った張本人はどうしようかと様子を見ていた、嘘だったと言えばアカメは激怒するだろうし、このまま何もしなければずっと揉み続けてしまうであろう、なんとかもっともらしい理由をつけて終わらせようと思案していたら別の者が動きだした。

 

 

「ねぇ、アカメちゃん」

 

「なんだ、マーサ」

 

「言いにくいんだけど」

 

「だからなんだ?」

 

「それ、嘘だと思うよ」

 

「嘘だと!?」

 

「先月大きな街に行ったけどそんなスキンシップ全然流行ってなかったよ」

 

 

アカメは数秒固まっていた、自分がとんでもないことをしてしまったことに頭がついてこなかったからである、そしてようやく追いつき···

 

 

「お前!!」

 

 

アカメは顔を真っ赤にして鬼の形相でにらみつけた、とんでもない恥をさらしてしまったからである。

 

 

「まさか別の誰かにやるとは思ってなかったのよ」

 

「言い訳するな!!」

 

「それよりもその娘、なぐさめたほうががいいよ」

 

 

そう言われてアカメはツクシの方に振り向いた、するとツクシは顔を真っ赤になってべそをかいていたのである。

 

 

「ツクシ、本当にすまない!!」

 

 

必死に謝るアカメを見て心からこの娘を想っているのだなぁと思った、それにしてもクロメはどうしたのだろう、ここにいないのだろうか?

 

 

「アカメちゃん、もう大丈夫だよ」

 

「だが」

 

「悪気があったわけじゃないんだから」

 

「···わかった」

 

 

あんな目にあってあっさり許すなんてこの娘かなりいい娘ね、それでも気を抜くわけにはいかないけど。

 

 

「悪かったわね、私が余計なことをして」

 

「ええと、あなたは?」

 

「私の名はメラミよ、アカメとは半年前に近くの森で知り合ったの」

 

「そうなんだ」

 

 

名前を言った瞬間アカメが眉をひそめたのを察した、その理由は想像できるなぜ偽名を使っているのか、でも本名を言うわけにはいかないのである。

 

 

「奢るから何か食べたら?」

 

「いいの?」

 

「さっきのお詫びも兼ねてるから」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

こうして三人での食事が行なわれた、アカメの料理は凄まじく多くこの体でよくたいらげられるものだとつくづく思う、8年前も十分大食いだったがさらに増したのである。

 

 

 

食事が終わり一息ついているとツクシが席を立ち上がりこう告げた。

 

 

「ちょっとお手洗い」

 

「ああ」

 

 

ツクシはお手洗いをするために席を離れた、このタイミングを待っていたのである。

 

 

 

「アカメ、さっき私が偽名使ったことなんだけど」

 

「私もそれを聞きたかったんだ」

 

 

アカメは偽名を使った瞬間に聞きたかったのであるが視線を送ってそれを控えさせたので。

 

 

 

「それは帝国に私が生きていることを知られたくないのよ」

 

「なぜだ?」

 

「帝国は8年前のあれを脱走と判断して私を抹殺するかもしれないから」

 

「それは···」

 

「私の存在はあなたを面倒事に巻き込むことになると思うから」

 

「面倒など言うな、お前がいなかったらクロメはどうなっていたか」

 

 

正直私一人ではクロメを守りきれたかわからない、その恩は決して小さくないのだ。

 

 

「···さっきから気になっていたんだけどクロメどうしたの?」

 

 

 

あれだけアカメにベッタリしていたクロメが見かけないことに妙だと思っていた、それに心当たりがないわけではない、ハズレであればいいんだが。

 

 

「クロメはここにいない」

 

「やはり姉妹だから離れ離れにされたの?」

 

「ああ」

 

 

決してありえないと思ってなかった、子供を使い捨て同然に扱う帝国が温情などあるわけがない、姉妹は一緒にしたら都合が悪い、だから離れ離れにさせた、予想は的中してしまったのである。

 

 

「クロメがどこにいるかわからないの?」

 

「わからない」

 

 

アカメがクロメのことを探さないとは思えない、アカメもできる限りのことはしたのだろう、あまりに踏み込んだまねをしたらクロメの身が危ないと思い今に至るのだろう。

 

 

「いつかクロメと再会できるといいね」

 

「ああ、クロメといつか再会できると信じている」

 

 

この姉妹ならいつか再会できる、そんな気がするのよね、そう思いたいだけかもしれないけど···

 

「とにかく私のことはメラミで通してね」

 

「わかった」

 

 

クロメのことはひとまずおいておこう、今はアカメだ、あまり踏み込んだことを聞くわけにはいかないけど。

 

 

 

 

「アカメ、今あなた何してるの?」

 

「今は鍛錬に励んでいる」

 

 

鍛錬か、何の鍛錬か聞きたいけど少し危険かな···

 

 

 

「あなたはこの先何をしたいの?」

 

「私は弱き者の力になりたいと思う」

 

 

···アカメらしいわね、8年前もそうだった、だけど帝国がそんなまねするのかな?

 

 

 

「世を乱す者を討つために今鍛錬しているんだ」

 

 

 

世を乱すか、今この帝国がどうなっているのか知らないみたいね、重税によって多くの人々が苦しみ、役人は腐敗と不正まみれ、このことを知っても帝国に尽くすのかな、否、アカメはそれを良しとしない。

 

 

「ねぇ、アカメ···」

 

 

その瞬間、何か妙な視線を背後に感じた、すぐに振り向くとそこにはツクシが立っていた。

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

ツクシはにっこり微笑んでいる、だが何か妙な感じがした、それが何かわからない、だが取り乱すわけにはいかなかったのである。

 

 

「ねぇ···」

 

 

あなた今の帝国どう思う?そうツクシに聞こうとした、だがその瞬間危険を感じた、ツクシはいい娘だ、それは間違いない、だが何か危険がある、そう勘が働いたのである。

 

 

「何?」

 

 

 

なんでもない、そう言ったらまずい気がした、だから別の答えを言うことにした。

 

 

 

「あなたの胸揉ませて」

 

「えええ!?」

 

「あなたの胸大きくて柔らかそうで揉んだら気持ちよさそうだから」

 

「だ、だめだよ!!」

 

「なんで?」

 

「恥ずかしいから」

 

「絶対にだめ?」

 

「絶対ダメ!」

 

「···仕方ないわね、あきらめるわ」

 

「ごめんね、でもやっぱり揉まれるの嫌だから」

 

 

まあ、女の子なら普通の対応よね、こうして見るとどこにでもいる女の子なんだけど。

 

 

「悪ふざけが過ぎたわね、大きいおっぱいだったからつい我を忘れて」

 

「ううん、気にしないで」

 

 

 

胸を揉もうとしたのに怒ったりしない、やっぱりこのツクシって娘いい娘ね、でもこの娘に何か不安を感じるのよね···

 

 

 

このあと食事をたいらげてしばらく休息してメラミは立ち上がり食堂を出ようとした。

 

 

「お先に」

 

「これからどうするんだ?」

 

「しばらく村をブラブラするわ」

 

「そうか、私達はしばらくしたら戻るつもりだ」

 

「そう、またね」

 

 

メラミは食堂を後にしてしばらく村を歩いていた、最初に村に入った時にも思ったのだがこんなところに村をよく作ったものだと思った、西の異民族の国境のすぐそばに村を作って利点があるのだろうか、そう思っていると妙な気配を感じた。

 

 

 

見られてる?でもこの視線は素人のそれじゃない。

 

 

 

よそ者を警戒するのは自然だ、だけどこれは訓練された者の視線だ、やはりこの村ただの村じゃない。

 

 

 

メラミは慌てずにゆっくりと歩きそのまま村を出ることにした、例の視線はまだ感じる。

 

 

 

まだ感じるわね、一体何者?

 

 

 

メラミは村が小さく見えるところまで歩き続けたところで足を止めた、そして一気に全速力で走り出した、しばらく走り高い木を見つけると思いっきりジャンプして枝に飛び移った。

 

 

 

さて、やってくるかな?

 

 

 

しばらくすると二人の男がやってきてあたりを見回した、この男がメラミを監視していた者であり完全に彼女を見失ったようである。

 

 

「あのガキどこ行った?」

 

「なんて速さだ完全に見失った」

 

「ただ者じゃないな」

 

「もしかして反乱軍の密偵か?」

 

「とにかく探すんだ」

 

「ああ」

 

 

 

男達が去ったあともメラミは降りずに考え事をしている。

 

 

 

今反乱軍って言ってたわね、反乱軍は確かはるか南に拠点をおく帝国と敵対している組織、私をその密偵と疑っていた、あの二人は間違いなく帝国の手の者、おそらくあの村は帝国の息がかかっている、もしかしてアカメ達のためにあの村が作られたの?

 

 

「もう一度アカメと話したいわね」

 

 

だが再びあの村に入るのは危険である、次は問答無用で捕えにくるだろう、となれば村以外でアカメと会わなければならない、だがアカメが一人の時を狙わなれけばならない、ツクシや他の者が一緒の時はダメである、そんな機会があるのだろうか、それでももう一度アカメと話をしたいのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百十九話

糸を斬る(前編)

 

 

 

 

気配を消して潜伏し続けて一週間、アカメと二人きりで話をする機会を狙っていたが常に誰かがそばにいて接触できなかった、ある時は年上の女子でまたある時はメガネの少年だった、特に気になったのはメガネの少年である、アカメが腕を上げて脇の下が見えるとキッと目を凝らしていたのである、そういう趣向の持ち主なのだろうか、とにかく未だにアカメと接触できずに今に至る。

 

 

 

「今日こそ機会があればいいんだけど」

 

 

そう思わずいられないが実際アカメは毎日あの村に来るわけではない、毎日来たとしてもあの村に行くわけにはいかない、村にあの男達が監視しているはずであるから。

 

 

 

「とにかく腹ごしらえしないとね」

 

 

 

メラミは食料を調達するために森の奥に入って行った、だが明らかに今日はおかしかった、今まで見かけなかった人間がいたのである、それも複数で腕の立つのも結構おり、全員殺気だっている。

 

 

 

「こいつら何なの?」

 

 

明らかにカタギではない、凶暴な気配がプンプンする、おそらく帝国が連れてきたのであろう、今日何かが起こるのであろう、確認したいがこいつらと話をするのは気が乗らない、面倒事になるのは明らかである。

 

 

 

「どうしたものかな」

 

 

 

気配を消しつつ移動していくなかさらに何人か見かけたが穏便に済みそうな気が全くしないので無視して進んだ、しばらくして辺り一辺の雰囲気が変わったような気がした、なんとなくだがよろしくない気がした。

 

 

 

「下手に動きまわるのよそうかな」

 

 

 

おそらく何かが起こったのであろう、そうなれば動き回って巻き込まれたら下の子もない、どこかに隠れてやり過ごしたほうがいいだろう。

 

 

「いい隠れ場所ないかな」

 

 

しばらく探し回っていると洞窟のようなものが見えた、それほど大きな洞窟ではないが身を潜めるには手頃である、問題は危険種が巣を作っているかもしれないかである、だがのんびりしているわけにいかない、腹をくくって洞窟に入ることにした。

 

 

 

「何がでるやら···」

 

 

 

メラミがそうつぶやきながら洞窟に入ろうとした、すると足元に何かを見つけた。

 

 

 

「これは、糸?」

 

 

洞窟の入口の地面に糸がびっしりと張り巡らせていた、この糸は新しい、つい最新作られたものだ、それはつまり。

 

 

 

「この奥に間違いなく誰かいるわね」

 

 

 

ここを離れて別のところ探そうかな、でも今何が行われてるか知りたいし···

 

 

 

メラミは少し悩んだ、できたら誰とも関わりを持たずにやり過ごしたい、でも何の情報もないのも不便である。

 

 

 

「決めた」

 

 

 

メラミは洞窟の奥へ進むことにした、誰かと遭遇するのはリスクがある、でも現状を確認するメリットもあるのである、まずは情報を得ることである。

 

 

 

メラミは糸が張り巡らしてある地面を避けて壁から壁へ飛び移ることにした、洞窟自体大きなものではなかったのでそう難しくなかった。

 

 

 

 

その洞窟の奥に一人の人影があった、それは女子で見た目は10代半ばであった、手頃な石に座りじっとしている。

 

 

 

「この洞窟ギリギリ指定されたエリア内だよね···」

 

 

少女は少し不安を感じながら大丈夫と自分に言い聞かせている、そうしないと落ち着かないからである。

 

 

「入口に罠を仕掛けたから誰か入って来てもすぐわかる」

 

 

簡単に見つからない位置に仕掛けたからそうそう見つからないはず。

 

 

 

「明日まで隠れていれば無罪放免···」

 

 

明日まで見つからなければ晴れて自由の身、死に怯えることもない日々が待っている、人生をやり直すんだ。

 

 

「故郷に帰れます」

 

 

 

故郷に帰って真っ当に生きよう、今度は道を外れることはしない、今度こそ幸せになるんだ。

 

 

 

少女は心の中で夢中でつぶやいていて後ろから近づいてくる者に全く気づいていなかった。

 

 

 

「ねぇ、あなた」

 

 

「ぎゃあああ!!?」

 

 

突然の声に少女は絶叫した、辺り一面に叫び声が鳴り響きその声量は凄まじいものだった。

 

 

 

 

「い、いきなり大声ださないでよ」

 

メラミは耳を塞いで文句を言った、だが少女はわけがわからずうろたえまくっている。

 

 

「な、な、な!?」

 

 

なぜここに?どうして仕掛けに何も反応がないの!?一体彼女は!?混乱しまくる頭をできる限り回転させて一つの可能性を考えだした。

 

 

「も、もしかしてあなた追っ手!?」

 

「追っ手?」

 

 

メラミはわけがわからずポカンとした、涙目で顔面蒼白になっている彼女を見て容易な状況ではないと察した。

 

 

「追っ手って何?」

 

「だ、だから、そ、そ···」

 

「とりあえず落ち着こうか、私はあなたに何かするつもりはないけど」

 

 

メラミの言葉を完全に信じたわけではなかったが彼女が追っ手なら真っ先に殺しにくるはずであるから。

 

 

 

「···本当に追っ手じゃないの?」

 

「そうよ、私はただの旅人よ」

 

「旅人!?」

 

 

彼女はそんなのありえないという表情をした、こんなところに旅人なんているはずないメラミは彼女の表情を見てそう察した。

 

 

「ここで何が行われているか教えてよ」

 

「う、うん」

 

 

彼女はメラミに説明した、現在この一帯で兵士の実戦訓練が行われておりその訓練相手に多数の死刑囚が集められた、一定時間生き残れたら無罪放免の条件をだしたのである。

 

 

「へぇ、そうなんだ、どうりでヤバそうな連中がウヨウヨしてると思った」

 

「···あなた本当に追っ手じゃないんだ」

 

「だからそう言ってるじゃない」

 

「···よかった、本当によかった」

 

 

彼女は嬉し涙をボロボロ流した本当に恐怖したのであろう、その気持ちよくわかる。

 

 

 

「ところであなた名前は?」

 

「私?私の名前はキャスカよ、あなたは?」

 

「私は···」

 

 

 

お互いの自己紹介をし終えて落ちついた雰囲気が出てきた、すぐさまメラミはキャスカに質問した。

 

 

「一つ聞いていいかな?」

 

「何?」

 

「あなたも死刑囚?」

 

「う、うん」

 

「正直あなたは死刑になるほどの非道をやらかす人間に見えないんだけど」

 

「···私スリの罪で死刑になっちゃたのよ」

 

「スリで!?」

 

 

メラミはとても驚いた、スリは犯罪だがそれで死刑になるなんてあまりにもバカげていた。

 

 

「スリをした相手は大貴族だったの」

 

「なるほどねぇ···」

 

 

一般人ならありえないが大貴族なら権力を使って強引に死刑にしてしまうのはありえないということはなかった。

 

 

 

「やっちゃったわね」

 

「うん、全くその通り」

 

 

今の帝国で大貴族に異議を唱えられる者はいないだろう、大きな権力の前ではまともな裁きは期待できない。

 

 

 

「それにしてもあなたよく大貴族からスリできたわね」

 

「うん、その貴族のポケットから財布がまるだしになってたから」

 

「まるだし?」

 

「うん、一文無しになってしまって空腹のあまり我を忘れてつい···」

 

「妙ね」

 

「妙?」

 

「財布がまるだしになってたのがおかしいと思ってね、もしかしたらわざとじゃないかな?」

 

「わざと!?」

 

「その貴族、わざと財布をすらせてその場で捕まえて死刑に追い込もうとしたんじゃないかな?」

 

「な、なんで!?」

 

「ゲームみたいなものよ」

 

「な、な、な···」

 

 

キャスカは怒りがこみ上げてきた、ゲーム感覚で人を死刑に追い込もうとした貴族に心から怒った。

 

 

「でも実際にスリをやってしまったあなたにも落ち度はあるわよ」

 

「···全くその通りね」

 

 

どんな思惑があろうともスリをやってしまったことには違いない、完全に自分が悪いのである。

 

 

「とにかくあなたは最後まで誰にも見つからずにやり過ごしたらいいのよ」

 

「そ、そうだね」

 

「それにあの糸の罠を上手に使えばそうそう捕まらないよ」

 

「でもあなたは罠にかからずここまで来たでしょう」

 

「あれはたまたま見つけただけよ、普通に進んだら回避は難しいよ」

 

「まあ、あの糸の罠は少し自信があるんだ」

 

「神経を研ぎ澄ませて警戒し続けていたら十分逃げ切れるよ」

 

「そ、そうだね」

 

そう言ったもののキャスカが時間内逃げ切ったとしても正直帝国が約束を守るのか疑問だった、帝国にとっては恥であり、約束をほごにする可能性は十分にあるのだ、とはいえ彼女には選択の余地がないのである、余計なことを言って落ち込ませるわけにはいかなかったのである。

 

 

 

「ところであなたはなんでここに?」

 

 

メラミはキャスカに説明した、会いたい人がいるのだがなかなか機会に恵まれず今に至るということを。

 

 

「そうなんだ」

 

「二人きりで会いたいんだけど」

 

 

 

はっきり言って今アカメと二人きりで会うのは困難だろう、アカメも実戦訓練に参加しているはずだから、今頃誰かと殺し合いになっているかもしれない。

 

 

 

「その人と会えるといいね」

 

「ありがと、じゃ私そろそろ行くね」

 

「え?もう行くの?」

 

「だってずっとこの洞窟にいるわけにはいかないでしょ、この洞窟そんなに広くないし私がいたら空気が足りなくなるかもしれないし」

 

 

「そうかなあ」

 

「そうそうそんなことにならないと思うけど万が一もありうるから」

 

 

確かに絶対ないと言えないし、それにこれは私の問題、彼女を巻き込むわけにはいかない。

 

 

「そうだね」

 

「じゃあ、行くね、もちろんここを出る時に誰にも見つからないよう気をつけるから」

 

「うん、あなたも···」

 

 

キャスカはあなたも気をつけてねと最後まで言うことができなかった、メラミの後ろにありえないものを見たからである。

 

 

 

メラミの後ろに一人の人間が立っていた、見た目は間違いなく男でかなりガッチリした体格で変わったスーツを着ていた、そしてその男はメラミに殴りかかろうとしていた。

 

 

危ないとキャスカは叫ぼうとした、だが男の拳はものすごく速く叫ぶ間がなかったのである。

 

 

ドガッ!!

 

 

 

メラミはとっさに回し蹴りで男の拳を弾き返したのであった、メラミは男の存在を確認したわけではない、まさに反射的に体が動いて防いだのであった。

 

 

 

メラミはすぐさま体勢を整えて身構えた、だがメラミの顔から汗が激しく吹き出しており、心臓も激しくドキドキ鼓動を打っている、あまり取り乱すことがないメラミも今は動揺していた。

 

 

 

な、何コイツ、いったいどこから現れたの?洞窟の入口とは完全な正反対の位置から突然現れた、他に入口なんてない、わけがわからない!!

 

 

拳を弾かれた男は慌てず笑みを浮かべながら手をブラブラ振り回している。

 

 

「やるじゃねぇか、ちっこいのにいい蹴りだったぜ (にしても一人ってメモに書いてあったんだがな、試しってわけか、面白い!)」

 

 

 

男は完全に余裕に満ちていた、別に油断しているわけではない、メラミもそれが慢心でないとわかっている。

 

 

 

コイツ、私よりも強い

 

 

メラミは一回の攻防で男の方が強いと断定するしかなかった、つまらない負け惜しみは命取りである、何か手を打たなければならない、それも早急に、必死に頭を巡らせるメラミであった。

 

 

 

 

 

 



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第百二十話

糸を斬る(中編)

 

 

 

メラミは目の前のスーツの男を分析していた、間違いなく今までに戦ってきた者達よりもはるかに強い、おそらく自分よりも強い、逃げるのが得策だが簡単には逃げられそうにないだろう。

 

 

 

「覚悟しな悪共!」

 

 

男の言葉にメラミは面白くないものを感じた、確かに自分は正義などではない、今までに食うために畑から野菜とかを盗んだこともあるし、襲ってきた盗賊などを返り討ちにして殺したこともあったのである。

 

 

「確かに私達は正義じゃないよ、でもあなたが正義とは限らないでしょ?」

 

「何言ってやがる、お前らは国を乱そうとしただろう、それを悪と呼ばずなんて言う?」

 

 

···コイツ、この帝国が今どういう有り様なのか知らないんでしょうね、まあ、そのこと言っても絶対信じないよね。

 

 

「そういうことだからさっさと俺に倒されやがれ」

 

「そんな義務一切ないよ、だから抗うことにするから」

 

「好きにしな、どうせ俺が勝つに決まってるからな」

 

 

メラミと男は瞬時に戦闘態勢をとった、そのまま激しい戦闘になるかと思いきや二人はお互いにらみ合って動かずにいた。

 

 

「···どうしたの?」

 

 

キャスカは動かないメラミに質問した、なぜ動かないのかキャスカも薄々感づいていた。

 

 

この男はすごく強い、だがうかつに動けない理由は他にもあったのだ、それは男のスーツであった。

 

 

 

突然洞窟の奥から現れた、明らかに人間業ではない、間違いなくスーツの能力であろう。

 

 

 

コイツのスーツ、もしかしたら帝具かな?もし帝具ならかなりまずい、なんとか確認しないと。

 

 

 

「そのスーツ、もしかして帝具?」

 

「さぁ、どうかな」

 

「じゃあ、臣具?」

 

「そ、そんなことどうでもいいだろ」

 

 

臣具と言われて少し動揺した、間違いないこのスーツ臣具だ、臣具は帝具よりも制限が多くてムラがあるのよね、おそらく能力は乱用しにくい、一気にかたをつける。

 

 

メラミは猛ダッシュで男の右側面に回り込んだ、狙うのは右脇腹である、そこは人間の急所の一つであり、防御が困難な場所であった、打ち合いになれば圧倒的に不利であり、一撃で大ダメージを負わせる戦法をとったのである。

 

 

全身全霊で撃ち込む、一撃で仕留められるかは微妙だけど···

 

 

メラミは左腕を振り上げて男の右脇腹に狙いをつけて思いっきり拳打を入れようとした、だが男はとっさに右拳を振りかざしてメラミの拳打を防いだのである。

 

 

 

「ツッ!!」

 

 

メラミの左の拳の皮膚が破けて血が飛び散った、左拳に激痛が走りグーパーをして骨折していないか確かめた。

 

 

すごく痛いけど骨折はしていないわね、けど左手は使えないわね···

 

 

 

ただでさえ体格で負けているのに左腕が使えなければ勝ち目はほぼない、それにあのスーツの能力も全くわかっていない、何か手を打たないと···

 

 

「ねぇ、全力の一発勝負しない?」

 

「ああ?」

 

「私とあなたでそれぞれ渾身の一撃で勝負をつけようって言ってるのよ」

 

「なんで俺がそんなモン受けなきゃならねぇんだ」

 

 

そんなもの受ける義務なんて微塵もねぇ、何を言い出すんだコイツ···

 

 

 

「怖いの?」

 

「ああ!?」

 

「あなた腕っぷしは強いけどものすごく打たれ弱いんじゃないの?」

 

「バカを言え、そんなわけねぇだろ」

 

「無理することないよ、打たれ弱いって知られるの恥ずかしいから受けたくないんでしょ?」

 

「んなわけねぇって言ってるだろ!!」

 

「可哀想ね、図体だけでかいひ弱君なんてとんだ笑いものだからね」

 

「···いいぜ、お前の提案受けてやるよ」

 

 

男は明らかに激怒しており大爆発寸前であった、さんざんひ弱呼ばわりされたのだから当然であった。

 

 

「ホント?じゃあさっそくやろうか?」

 

 

二人は渾身の一撃を繰り出すために精神を集中している、そのさまを見てキャスカは不安そうにメラミに話しかけた。

 

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「大丈夫って?」

 

「あなたアイツに勝てるの?」

 

 

キャスカは正直に言ってあの大男にメラミが勝てるとは思えなかった、力勝負では圧倒的にあの男の方が優勢である、素早さもあの巨体で考えられないほど高いのである。

 

 

「やるだけやってみるわ」

 

 

メラミには一つだけ打つ手があった、だがあの男が思惑通りに動いてくれるかわからない、それでも動かなくては活路は見い出せないから。

 

 

 

男はブンブン腕を振り回しながら笑みを浮かべている、渾身の一撃を繰り出すために気合を入れている。

 

 

「度肝を抜かせてやるぜ」

 

 

その様子を見て男が小細工せず真っ向勝負に挑んでくる可能性が高いとメラミは予想した、これならなんとかなる、あとはタイミングさえずれなければうまくいく、腹をくくって勝負に挑むことにした。

 

 

「行くわよ」

 

「来いや!」

 

 

二人はダッシュで駆け出し右腕を思いっきり振りかざして同時に拳打を打ち込んだ···打ち込んだに見えたがメラミは瞬時に腕を引っ込めてその場にしゃがみ込み男に背を向けて両手で男の右腕を掴みそのまま一本背負いで男を投げ飛ばしたのである。

 

 

「うおおお!!?」

 

 

男は今自分に何が起こったのかわからず何もできなかった、そしてそのまま洞窟の壁に激しく激突し崩れ落ちた石に埋もれてしまったのである。

 

「···すごい」

 

あの大男を小さい体で投げ飛ばすなんてこの娘本当にすごい···

 

 

「ちょっとあなたぼさっとしない」

 

「え?」

 

「あいつが埋もれているうちに逃げるよ」

 

「う、うん」

 

 

メラミとキャスカは駆け足で洞窟から逃げ出した、あれであの男が倒れるとは思えない、すぐに起き上がり仕留めにくるだろう、出来る限り距離を離さなければならない。

 

 

「もっと速く走って」

 

「う、うん」

 

 

そう返事したキャスカだったがメラミの足はかなり速くついていくのがやっとであった、それでも走るしかなかった。

 

 

「このままこの一帯から逃げるよ」

 

「え?でも···」

 

 

指定されたエリアから離れたら問答無用で殺す、そう通告されていたのである、キャスカはそのことを思い出しにげることを一瞬躊躇した。

 

 

 

「あいつ等は最初から約束なんて守る気なんてないよ」

 

「えっ!?」

 

「無罪放免というエサをちらつかせてあなた達にその気にさせて体の良い練習台にしたのよ、あなたも薄々連中が約束を守るのか不安に感じていたのでしょう?」

 

「···」

 

メラミのいう通り約束を守るのか不安はあった、だが他に選択の余地がないので約束を守ると信じたかったのである。

 

 

「で、でもここを逃げ切れてもいつかどこかで捕まってしまうよ!」

 

 

取り決めを破って逃げ出したら帝国全土に手配される、そうなったらもうお手上げになってしまう、常に追われる不安とともに生きていかなくなってしまう。

 

 

「そんな心配は今逃げ切ってからしたらいい」

 

「そんなアバウトな···」

 

 

 

だが実際メラミの言う通り今は逃げることに専念しなくてはならない、死んだらそこで終わりである。

 

 

 

 

「わかった、わかったわよ、腹をくくるよ、このまま全力で逃げるよ!!」

 

「そう、その意気よ」

 

 

正直に言ってすごく怖い、だけどこのまま足掻かずに死ぬのは絶対嫌だ、どれだけ格好悪くてもジタバタしなければ後悔する。

 

 

 

「私、走りながら糸仕掛けるね、何もしないよりはマシだと思うけど」

 

「やってちょうだい」

 

 

キャスカは糸の罠をそこらに仕掛けまくった、あの大男に有効とは思えない、それでも1秒でも足止めできればもうけたものである。

 

 

二人は走った、とにかく走った、男に追いつかれる前にこの地から逃げ切らなければならないのである、もし追いつかれたら勝ち目は極めて低いであろう、すると目の前に崖が見えた。

 

 

 

「あの崖の向こうがエリア外だよ」

 

 

···エリア外と言われても向こう側までかなり距離があり、とても飛んでいける距離じゃない、別のところ探さないと、ん?あれ、あれは···

 

 

メラミは前方に人影を見つけた、それも見覚えのある人影を、それはさっきまで洞窟で戦っていた男であった。

 

 

 

「なんであいつが!?後ろから追ってする気配は感じなかったのに」

 

 

全力で逃げつつも常に後ろを警戒していた、確かに後ろから気配を感じなかった、それなのに突然前方に現れた、おそらくスーツの能力であろう、瞬間移動の能力を持っているのだろうか?

 

 

 

「ど、ど、どうしよう?」

 

 

キャスカは恐怖に引きつった顔でメラミを見つめた、あの男に対抗できるのはメラミしかいないからである。

 

 

「どうしようって言っても···」

 

 

投げ飛ばせたのも完全に不意をついたからできたわけでもうあの手は使えない、真っ向勝負になったらはっきり言ってほとんど勝ち目はない、かと言ってすんなり逃がしてくれるわけがない。

 

 

 

「どうしたものかな···」

 

 

はっきり言って打つ手はない、それでも何もしなければ死ぬだけだ、メラミは腹をくくることにした。

 

 

一方男の方もメラミ達の姿を確認した、真っ向勝負と言いながら姑息な手を使った女に怒り心頭であった、必ずリベンジをする、男の頭にはそれしかなかった、元々思慮が浅い人間であるが。

 

 

 

「来やがれ、クソチビが、ひねりつぶしてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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