好きとも嫌いとも言ってない関係 (lime-255)
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好きとも嫌いとも言ってない関係①

「ふぁ~」

 

もう朝か……。

 

「面倒臭いけどいきますか」

 

身だしなみを整えて家をでた、

30分ほどかけて『東方不動産』に着いた。

 

「おはようございます」

 

「おはよう~ 花衝"はなつく"君」

 

先輩のアリスさんと挨拶を交わす。

いつもの日常である。

 

新卒で入って、早一年が経過し、

ようやく仕事に慣れて来た感じだ。

 

自分の席に座りパソコンを立ち上げ、

お客様からメールが来てないか確認。

 

ふと隣の席を確認すると紅茶が湯気を立てており、

隣の方はどうやら出社はしているが、席を離れているようだ。

 

「うーん……」

 

メールを確認したが、大したメールは着ていない。

 

「ふぅ……よかった」

 

「あら おはよう」

 

「おっおはようございます」

 

隣の席の風見さんが帰ってきた……。

 

この、お姉さんは俺の一つ上の先輩で、

最初に仕事を教えてくれた人なんだが……。

 

こわい……とてつもなくこわい……。

 

ミスったら殴られるとかそういう怖さではないが、

強烈な威圧感があり、教えてもらっているときは変な汗が止まらなかった……。

やっぱりミスったら殴られる怖さもあるわ。

 

「じゃあ行ってきます」

 

上司に一言伝えて、

早々と外にでた、決して風見さんが怖いからではない。

お客さんとの約束があるからだ、怖いからではない。

 

だいぶ時間に余裕があるが、

なにかあってもいいように余裕を持って出たいからだ、

怖いからではない。

 

――

―――

――――

 

お客様との交渉はうまく進み、物件を預かる事ができた。

上司に電話で結果を報告して、事務所に戻った。

事務作業の処理に少し時間が掛ったが何とか終わった。

 

「20時か……帰ろう……」

 

本来なら18時30分までなので、残業になってしまった。

事務所の中には誰もいなく、俺以外は帰っていた。

 

会社帰りに外食するのが楽しみだったりする。

会社を後にし、夕飯を目当てで外に出た。

 

この辺りには飲食店が多く、いまだに行った事がない店がたくさんある。

 

「今日は なに食べようかな~」

 

道を歩き、適当に散策していると。

 

「あれ?」

 

目の前に二人で歩いている姿が見える

片方は、なにか見た事がある後ろ姿が……。

 

「たぶん風見さんだ……」

 

触らぬものになんとやらだ視界に映る前に消え失せよう。

 

悟られるように慎重に立ち去ろうとしたが、何か様子が変だ

暗くてよく分からないが、一緒に歩いている男が絡んでいるように見えた。

 

「……」

 

頭で考える前に風見さんの方に向かっていた。

 

「いいじゃんお姉さん うち安いからさ~」

 

「……」

 

「無視してんじゃねーよ!」

 

「あ~もう うっざいわね!」

 

風見さんは男を手ではじき飛ばした。

 

「このやろ!?」

 

よし! その間に俺が体をねじこめば……。

 

「やっやm」

 

俺が一瞬見えたのは風見さんが足を振りあげて

ハイキックをぶっ放した瞬間だった。

タイミング悪く顔面に食らい……倒れた……俺が……。

 

なんてタイミングが悪いんだろう……

倒れる瞬間にそんな事を過った。

 

「あぁ!? 花衝君!?」

 

「あ~あ 俺しらね~」

 

「こら!? 逃げるな!?」

 

――

―――

――――

 

「うぅ……」

 

「やっと起きた……よかった……」

 

「ここは……いてて……」

 

「だっ大丈夫?」

 

「なっなんとか……」

 

顔面の痛さに比べて、ムニムニして気持ちよく後頭部が妙に心地よかった。

 

あっこれ膝枕だ。

 

「おきおき起きます」

 

無理やり体を起こした。

まだ多少痛いが、なんとかなりそうだ。

 

人気のない細い路地で、どうやら介抱されてたらしい……。

あの怖い風見さんが……。

 

「ごめんなさいね」

 

「だっ大丈夫です平気です……はい……」

 

「本当はもう少し居たい所だけど 私も用事があるから」

 

「わかりました 本当に平気なんで……はい……」

 

「あなた ボケっとしてるけど意外と勇敢なのね」

 

「……ども」

 

「じゃあ また明日」

 

「はっはい」

 

風見さんは夜道に消えていった。

明日仕事なのに、これから何処か行くのか……元気だな。

 

――

―――

――――

 

いつも通りに出社し、自分の席に着いた。

 

「おはよう 花衝君」

 

「おはようございます」

 

「昨日はごめんね」

 

「いえ いいんです 少し運が悪かっただけです」

 

正直、膝枕の心地よさで『まっいっかな』って感じである。

 

「花衝君? ちょっといいかな?」

 

上司に呼ばれた。

 

「なんでしょうか?」

 

「これを頼む」

 

書類作成のお願いだ。

どっちみち、今日は事務所にいる予定だったので、

差支えはない。

 

仕事をこなしていると、もう昼だ。

キリがいいので食べに行こうかな。

 

「ねえ?」

 

「はい?」

 

風見さんが話しかけてきた。

なんだろう? 殴られるのかな?

 

「そろそろ お昼に行く?」

 

「そうしようと してました」

 

「昨日の事もあるし お昼は奢ってあげるわよ」

 

一瞬『NO』と言おうとしたが怖いので従う事にした。

 

「わかりました お言葉に甘えます」

 

「早く行きましょ」

 

風見さんと一緒にお昼を行くことに。

どこにしようかな……。

 

「どこにするの?」

 

できれば風見さんに決めて欲しいのだが……。

 

「ラーメンでいいですか?」

 

「いいわよ」

 

よく行くラーメン屋に連れて行くことにした。

事務所を出て、エレベータに乗った。

 

「そこのラーメン屋は近いの?」

 

「近いです」

 

「ふ~ん」

 

外に出て、2分程歩き着いた。

 

「ここです」

 

「へぇ~」

 

そっけない返事が返ってきた。

ラーメン屋の外観なんて感想を述べようもないか。

 

「へい らっしゃい2名様で?」

 

「そうです」

 

「テーブルが空いているので奥にどうぞ」

 

タイミングがよく、お昼時でも並ぶ事なく入れた。

 

「う~ん」

 

風見さんはメニューを見て悩んでいた。

 

「あなたは もう決めたの?」

 

「はい」

 

まあ、いつも同じものしか頼まないからな。

 

「あなたと同じでいいわよ」

 

「えっ? いいんですか?」

 

「いいわよ」

 

「わかりました」

 

俺は結構食べるので、

半チャーハンのセットを頼むつもりだったが、

いいのだろうか?

女性の方にそんな大盛りの物を……。

 

……何度も聞き返すと引っ掻かれそうなので、やめた。

 

「すいません 注文いいですか?」

 

「はい」

 

「このAセットを二つ」

 

「畏まりました」

 

後は待つだけだ。

 

「仕事はどう? 順調?」

 

「普通ですね」

 

風見さんも営業なのだが、

暴力で屈服させて契約をとるのだろうか?

 

「あなたは いつも外食なの?」

 

「そうですね」

 

「夕飯も?」

 

「そうです」

 

一人暮らしをするときに、調理道具を一通り揃えたが

ほぼ未使用状態です……あははは……。

 

そう言えば風見さんは弁当が多いな……。

料理が碌にできない俺からすると尊敬する。

 

「はい どうぞAセットです」

 

きたきた。

半チャーハンと家系ラーメンのセットだ。

 

「あなた こんなに食べるの?」

 

やはりちょっとビックリしている。

 

「あっはい」

 

「細身だから小食だと思ってた……」

 

やはり聞けばよかったかな。

 

……

……

 

「ふぅ~ 食べた食べた」

 

「すごい太りそう……」

 

風見さんもなんだかんだで全部食べていた。

 

「さてと戻りましょうか」

 

「はい」

 

午後からも面倒臭い仕事を頑張りますか。

 

――

―――

――――

 

事務所に戻りキーボード音を響かせていると

 

「う~ん」

 

風見さんは何かを悩んでいる様子だ。

いつもはアリスさんに相談するのだが、今はいない。

 

「ちょっといいかしら?」

 

「はい?」

 

案の定きた。

 

「これ なんかおかしいんだけど」

 

パソコンの画面を俺に見せて、一言そう申し上げた。

どうやらエクセルで何処か触って、うっかり保存したみたいだ。

それぐらいなら、任せろ!

 

「これはですね」

 

俺は席を立ちあがり、風見さんの背後に回りこむ。

すごいいい匂いがする。

 

なんで女の人って、いい匂いがするんだろうか?

不思議でしょうがない……。

 

「難しい?」

 

一瞬トリップした。

 

「ああ いや そんなことないですよ」

 

背後からパソコンを操作して、数式を修正してあげた。

 

「ありがとう」

 

「いえいえ」

 

人から頼りにされるのは悪くないな。

このやり取りを皮切りに風見さんと話す事が多くなった。

 

――

―――

――――

 

「早く戻らないとやばいな」

 

今日は、お客様との約束の時間が遅く、

事務所に帰る時間が大変なことになっていた。

 

就業時間は過ぎているので、直帰しても文句は言われないのだが、

今日は一日外にいて、メールと書類の確認がしたいので戻る事にした。

 

事務所に戻ると。

 

「あれ 戻って来たの?」

 

風見さんだけが居た。

 

「一日事務所にいなかったので」

 

「真面目ね」

 

「そうですかね」

 

その理論でいくと、

この時間まで残っている風見さんも真面目だと思うけど……。

 

早くメールの確認をしないと、

慌ててパソコンのメールを見てみる……。

 

「……よかった」

 

重要なメールは来ていなく、

自分の机の上にあった書類もすぐ終わるものばかりだ。

 

思ったより早く帰れそうだ。

 

「どう? 帰れそう?」

 

「30分もあれば」

 

「あらそう そういえば 今度の飲み会は来るの?」

 

「あ~」

 

正直、こういう飲み会は好きじゃなかったりするのだが。

 

「たまには来なさいよ」

 

「じゃあ行きます」

 

「了解」

 

風見さんは帰る準備をしつつも、

隣でハンドクリーム塗っていた。

 

「……」

 

「これはこうしてと」

 

「手を出して」

 

「あっはい」

 

手を差し出した。

なんだろう? 切り落とされるのかな?

 

「最後の一絞りだからって出し過ぎちゃった」

 

俺の手をマッサージするように、クリームをつけてくれた。

手も疲れていたのだろうか? すごく気持ちがいい。

 

「はい 終わり じゃあね~」

 

「おっお疲れ様です」

 

気のせいか、手が軽くなった気がする。

 

「頑張りますか」

 

仕事を片づけて、家に帰った。

 

――

―――

――――

 

今日は会社の飲み会なので、定時には余程の事がなければ強制終了の日だ。

まあ、事務所の人だけでやるので10人もいない飲み会なんだけどね。

 

今回は、中華料理屋で飲み会だ。

店に着くと予約を取ってあり、宴会席に案内された。

 

俺は一番端っこに座ったのだが。

 

「よいしょっと」

 

なぜか風見さんが横に座ってきた。

少し慣れてきたとはいえ、怖いものは怖い。

 

というかアリスさんの近くに座ればいいのに……。

そう思って周りを見てみるけど。

 

どうやらいないみたいだ。

あれ? 欠席? 珍しい。

 

周りのガヤで聞こえたが、アリスさんは用事で欠席らしい。

なんてこったい。

 

「みんなそろったか?」

 

上司からの全員に対する問いかけだ。

 

「「「はぁ~い」」」

 

「みんないるみたいだな それでは かんぱ~い!」

 

「「「かんぱ~い!!!」」」

 

 

 

生ビールをグイッと飲みエビチリを頬張る……幸せだ。

 

隣にいた風見さんはいつの間にか、席を移動しており、

女子グループに混ざっていた。

 

俺は、近くにいる人と、どうでもいい話で盛り上がっていた。

 

当たり前の事だが、明日は休みなのでかなり遅くまで飲み会は続いた。

 

「さてと そろそろかな お~いみんな」

 

上司の一言で、飲み会は終わり、みんな帰っていった。

 

「じゃあな花衝」

 

「お疲れ様です」

 

俺も帰るかな。

帰ろうとしたら、腕を掴まれた。

 

「なっなんぞ!?」

 

「ごっごめん ちょっとお願いが」

 

風見さんだった。

 

「なんでしょうか?」

 

このまま、腕を折られるかどうかの心配をしてしまった。

 

「一度さっきの店へもどりましょ」

 

「あっはい」

 

よく分からないけど、店に戻る事になった。

 

「あら どうなさいました?」

 

店に戻ると店員さんが不思議そうな顔をしていた。

 

「すいません 忘れ物をしまして」

 

「そういう事ですか どうぞどうぞ」

 

先ほどまでいた、宴会席に戻ってきた。

 

「なにを忘れたんですか?」

 

「忘れたというより 無くした」

 

「???」

 

「……ピアス」

 

「なるほど」

 

これで全てが繋がった。

恐らく一人では探せないから、近くにいた俺を誘ったのだろう。

 

「店も閉まっちゃうから 早く探しましょ」

 

「わかりました」

 

二人で虫のように、這いつくばって探した。

 

 

 

そのピアスは、結局みつかる事がなく、店が閉まってしまった。

 

「実は亡くなってしまった彼が買ってくれた物なの……」

 

それを聞いた俺が死にもの狂いで探すという熱い物語は

…………あるはずもなく。

 

 

 

「ありましたよ」

 

割かし早くみつかった。

 

「ありがとう」

 

よかったよかった。

 

「あれあれ」

 

「今度はどうしました?」

 

「……つけられない」

 

たぶんお酒で手が、おぼつかないのだろう。

というか、そのまま着けずに帰るという選択はないのだろうか?

 

「つけてよ」

 

「ふえ!?」

 

一方的にピアスを渡された。

俺はピアスをしてないし、ましてや人に着けたこともない。

でも否定すると後が怖いので……言う事を聞くことにする。

 

風見さんの耳たぶを触りピアスを……。

わあ……耳たぶってこんな感触なんだ……やわらかいな……。

つーか特別仲がいいわけでもないのに、こんなことをしていいのだろうか?

 

何度も耳を触り、苦戦しつつも、つける事ができた。

決して耳の感触を楽しみたいのではなく、ガチで苦戦した。

そう苦戦しただけだ。

 

「どうでしょうか?」

 

「うん ばっちり♪」

 

ここに、いつまでも居る訳には行かないので店を出た。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

お互いに黙りながら歩いた。

駅までの距離は短いし、

変に話を盛り上げても仕方がないからだ……と俺は思ってるけど、

風見さんはどう思ってるかは知らん。

 

黙々と歩き駅に着いた。

 

「じゃあ俺はこっちのホームなんですけど風見さんはどっちでしたっけ?」

 

「……」

 

「風見さん?」

 

「今日 あなたの家に行っていい?」

 

どうしたんだろうかこの人は?

 

「ダメ?」

 

「いえいえ いいですよ」

 

怖い人だけど、やっぱり美人には勝てないよ。

そんな事を話している内に電車が来た。

 

この時間だと車内は空いており、二人とも座る事ができた。

 

「あなたの駅はどのくらいなの?」

 

「20分くらいですかね」

 

「そうなんだ」

 

風見さんは携帯を取り出した。

なんだろう? その携帯で殴り殺させるのかな?

 

「これ私のLINEのID」

 

「ありがとうございます」

 

連絡先の交換だった。

 

「あなたは音楽は聞くの?」

 

「まあ聞きますね」

 

「私もよ これ聞いてみてよ」

 

右のイヤホンを俺の耳に左のイヤホンを風見さんの耳に入れて

風見さんの携帯から音楽を聞いた。

 

「♪~~♪~♪」

 

いくつか聞いて、幽閉サテライトのメビウスだけが分かったが、

後は知らない曲だった。

 

「着きましたよ」

 

「はい」

 

駅から歩いて5分ぐらいで俺の家だ。

 

「ここです」

 

「近いのね」

 

オートロックを抜けて、自分の部屋に到着した。

 

「いい部屋じゃないの」

 

「そうですかね」

 

1LDKの普通の部屋だと思うけど。

 

「片付いているのね」

 

「荷物が少ないだけですよ」

 

家に招き入れて気がついたけど、もう終電なんか間に合わないよな……?

まさか……泊まる気じゃ……?

まっいっか。

 

風見さんをリビングに通した。

 

「とりあえず 座ってください」

 

「はい」

 

紙コップにお茶を入れて出した

 

「押しかけて 悪いわね」

 

「いえ 気にしないでください」

 

とりあえず、理由ぐらいは聞いておくか。

 

「急にどうしたんですか?」

 

「なっなんとなく……」

 

「さっさいですか……」

 

「……」

 

「……」

 

また沈黙

 

「ねえ?」

 

「はい」

 

「あなたの事をもっと教えて」

 

「自分の事ですか?」

 

「うん」

 

いきなり自分の事を教えてと言われてもなぁ……。

 

「好きな料理とか趣味とか なんでもいいの」

 

そういう事ね。

 

「あなたの事あんまり知らないから お話したかったの」

 

今日の風見さんなんか、可愛いな。

 

「そうですね……」

 

自分の事を洗いざらい話した……

と言っても、自分のことなんて大した話はできず、

むしろ風見さんが傘を集めるのと花が好きな事に驚いた。

 

色んな話題で盛り上がり、時計を見ると2時になっていた。

 

「あなたは明日 予定ってある?」

 

「特には」

 

「一緒に出かけない?」

 

「いいですよ」

 

「そうと決まれば、早く寝ましょ」

 

「あっはい」

 

「私はどこで寝ればいいの?」

 

「俺のベッドでよければ」

 

「いいの?」

 

「いいですよ 鍵はここに置いておくので 勝手に使ってください」

 

机の上に鍵を置いた。

 

「わかった いろいろありがとね」

 

「いえいえ」

 

早速、風見さんは外に出ていった、恐らくコンビニにでも行ったのだろう。

俺はお風呂に入って、リビングのソファーで寝た。

 

zzz

zzzz

zzzzz



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好きとも嫌いとも言ってない関係②

「んっ……」

 

いま……何時だ……?

携帯を見て時間を確認

 

「10時か……」

 

まだ寝よう……あれ……

 

「…………風見さん??」

 

「あっ!?」

 

これは夢なのか? バスタオル一枚の風見さんが、

『あっ!?』という感じの表情で目の前にいた。

というか『あっ!?』って聞こえた気がする。

 

スタイルいいな……たわわな果実がこぼれそうだ。

じゃなくて……俺死ぬかな?

 

「……まだ寝てていいわよ」

 

「……そうします」

 

次に目を覚ますと12時になっていた。

 

「なんかいい匂いがする」

 

キッチンの方を振り向くと風見さんが料理をしていた。

 

「おはよう ごはんできるわよ」

 

「わかりました」

 

寝ぼけた頭を覚ますために顔を洗って戻ると

目玉焼きとクラムチャウダーとトーストが用意されていた、

それと……ちょっと怒った顔で風見さんが座っていた。

 

「……」

 

「風見さん?」

 

「冷蔵庫の中を見て驚いたわよ コーラしか入ってないじゃない」

 

「あっはい」

 

「ちょっとは自炊しなさいよ!」

 

「いや……まあ……すいません……」

 

「まあいいわ 冷めないうちにどうぞ」

 

「頂きます」

 

このクラムチャウダーはどうやって作ったのだろうか?

早速飲んでみた。

 

「すごい美味しい」

 

「よかった」

 

……そういえば全部風見さんの自腹じゃん。

 

「あっすいませんね お金返しますよ」

 

「食料代の事? 別にいらないわよ」

 

「えっ……いいんですか?」

 

「宿泊代よ」

 

「なんかありがとうございます」

 

風見さんは昨日からずっとスーツ姿で過ごしていた。

よく見るとワイシャツが違うような……。

 

「ワイシャツ変えました?」

 

「コンビニで買ってきたわ」

 

変えずに過ごすのは抵抗あるよな……

女の人なら尚更だろう。

 

「洗濯機やらお風呂やら勝手に借りてごめんなさいね」

 

「別にいいですよ」

 

洗濯機もお風呂も俺に使われるより、

さぞかしい嬉しいだろうね。

 

…………えっ洗濯機??

なにか洗ったのか??

 

なんかこう……高揚してきた、

風見さんの一日着た何かを洗ったのを想像して……。

 

「どうしたの?」

 

「なっなんでもないっす」

 

朝食なんだか昼飯なんだか分からんものを食べ終わった。

 

「どこか行きたい所でもあるんですか?」

 

「う~ん 取り合えず 隣の駅にでもいきましょうか」

 

「いいですよ」

 

「私は先に外に出てるから」

 

「わかりました」

 

風見さんは先に外に出てしまった。

 

「待たすのは嫌だから さっさと用意するか」

 

自分の部屋に入り準備をする事に。

 

「わぁ……なんだかいい匂いが……」

 

どこだ……? なんだ……? 枕か……?

枕を手に取り匂いを嗅ぐ。

 

「ふわぁ……」

 

頭が溶けそうだ……。

 

手を合わせてあがめたて一言

風見さんありがとうございます。

 

「着替えるか」

 

なるべくオシャレな格好をして外に出た。

 

「お待たせしました」

 

「調べたら もう電車が来るから急ぐわよ」

 

「はい」

 

小走りで駅に向かい到着すると、ちょうど電車が来た。

隣駅なので3分程でついた。

 

「本屋に行きましょ」

 

「わかりました」

 

ここの駅は駅ビルになっており、大概の施設は揃っている。

エスカレーターで上り、本屋に着いた。

 

俺は私服で風見さんはスーツで歩いているが、

他の人から見るとどんな感じなんだろうか?

 

特に欲しいものはないので、漫画の新刊コーナーでも見るかな。

 

「風見さんは欲しいものでもあるんですか?」

 

「いや なんとなくよ」

 

「そうですか」

 

そう言って、風見さんは女性誌に方に、

俺は漫画の新刊の方に。

 

「どれどれ」

 

目新しいものは無しと……

俺の用事はこの瞬間終わった。

 

「適当に見るかな」

 

この本屋はかなり大きく、見て回っているだけで

結構面白かったりする。

 

いろいろ見て回って、ゲームの攻略本を見ていると。

 

「いたいた なんか買うの?」

 

「欲しいものはないです」

 

「じゃあ出るわよ」

 

「次はどこにいくんですか?」

 

「嫌じゃなければ カラオケでも」

 

「お! いいですね!」

 

「好きなの?」

 

「結構」

 

「じゃあ場所は任せるわ」

 

「承知しやした」

 

本屋を出て、よく行くカラオケに連れて行き、

2時間で部屋を取った。

 

「最初どうぞ」

 

「わかりました なにを歌おうかな」

 

デンモクを操作して探すか……

あっこれにしよう。

 

<エピクロスの虹はもう見えない>

 

「いいわね」

 

「こ~の晴れわたる空~♪」

 

いや~カラオケっていいよね

 

「いい声してるわね」

 

「ありがとうございます」

 

俺が歌い終わると、テンポよく風見さんが入れた。

 

「私はこれ」

 

<眠れる花の幽遠の>

 

俺が知ってる曲だ。

 

「眠れる花の香り~♪」

 

「歌うま!?」

 

~~♪

~~~♪

~~~~♪

 

お互いに知っている曲を、

散々歌い10分前の電話が来た。

 

「次で最後にしましょうか」

 

「そうですね」

 

順番的には風見さんだけど、何を歌うんだろ。

 

「一緒に歌わない?」

 

「えっ! あっいいですよ」

 

意外な提案に驚いた。

 

「最後はこれ」

 

俺に聞かないで入れた曲は『紅い宴』……

いやまあ知ってるけど。

 

「私が最初のパートね」

 

「御意」

 

「太陽が~消えてゆく♪ 今から始まる♪」

 

「「私達だけの世界が~♪」」

 

――

―――

――――

 

最後はお互いに熱唱してカラオケを出た。

 



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好きとも嫌いとも言ってない関係③

これギリギリセーフだよね?
アウトかな?


カラオケから出ると、外は薄暗くなっていた。

次はどこにいくんだろ?

 

「服を見に行ってもいい?」

 

「ああ はい」

 

何店か回ったが風見さんが気にいった服は無く、

買わずに終わった。

 

うろついていると、お腹が減ってきた。

いい時間になっていた。

 

「お腹減ったわね」

 

「減りました」

 

「そこのパスタ屋でいいかしら?」

 

「わかりました」

 

パスタ屋で食事を済ませると、

21時になっていた。

 

「最後にゲーセンに行きましょ」

 

「いいですけど」

 

まさかゲーセンに行くとは思わなかったな。

 

ゲームは好きだが、

風見さんを置いて熱中する訳にはいかない。

そうなると、二人でするものと言えば……。

 

「あなたUFOキャッチャーは得意?」

 

まあ、そうだよなぁ……。

 

「全くできないです 買った方が安くなるぐらいですよ」

 

「あら残念 久々にやってみようかしら」

 

そう言うと風見さんは、お金を入れて操作をした。

そのUFOキャッチャーは『バケバケ』というお化けの、

ぬいぐるみだけが入っていた。

 

俺は興味も無くジーット見ていた。

 

「……う~ん……だめね~」

 

風見さんは何回かやって、いいところまでいくが

結局取れずにあきらめていた。

 

「あなたも やってみてよ」

 

「えぇ!?」

 

ゲーセンはそれなりに行くけど、

UFOキャッチャーなんて何年ぶりだろう……。

2~3回もやれば、風見さんも納得してくれるだろう。

納得してくれるよね? 殴られないよね?

 

アームを操作して、人形を掴む

結局掴めずに……落ちる……落ち……ない……あれ?

 

「おっおお!?」

 

「あら 取れたわね」

 

なんと一発で取れてしまった。

 

「うまいじゃないの 最初からやってよ」

 

「たまたまですよ」

 

俺は必要ないので、風見さんに『バケバケ』を上げた。

 

「ありがとう♪」

 

「いやまあ……」

 

なんか照れるな……。

 

ゲーセンを出ると、人は少なくなっていた。

明日は平日で働く人は家にグッバイだ……そう俺も。

 

仕事やだなぁっとお互いに愚痴りながら駅に着いた。

 

「いろいろありがとね」

 

「いやいや 俺も楽しかったですよ」

 

「……」

 

「……」

 

「あっあれなんだろう?」

 

「???」

 

風見さんが指を差した方を見ると何にも無かったが……。

 

「なんですk」

 

「んっ♪」

 

ほっぺにキスされた。

 

「かっ風見さん!!!?」

 

「じゃあ また明日!」

 

風見さんは電車に乗って、帰ってしまった。

俺は茫然と立ち尽くしていた。

 

――

―――

――――

 

結局頭が熱いまま、家に着いた。

完全に混乱状態だ……。

 

とりあえず風呂に入って、落ち着くか……。

風呂からあがると、多少は落ち着いてきた。

 

さっきまで人が居たのに、いざ一人になると、

違和感があるな……。

 

キッチンを見ると、鍋が置いてあり、

中にはクラムチャウダーが残っていた。

 

「食べちゃうか……それにしても美味しいな」

 

残りのパンと一緒に平らげた。

満腹になり、眠くなってきたので寝る事にした。

 

「寝るのが楽しみだ」

 

理由はいい匂いがするからだ、消えないうちに寝ましょう。

部屋に入ると薄くなってしまったが、香りが残っていた。

 

枕に鼻をこすりつける、熟睡できそうだ。

 

『~~♪』

 

携帯が鳴った。

確認すると風見さんからLINEが来ていた。

 

 

 

----------------------------

 

『こんばんは』

 

「こんばんは」

 

『今日はありがとう』

 

「いえいえこちらこそ楽しかったです」

 

『私も楽しかったわよ』

『ぬいぐるみありがとう』

 

「喜んでくれてよかったです」

 

『また一緒に遊ぼうね』

 

「はいお願いします」

 

『また明日ね おやすみなさい』

 

「おやすみなさい」

 

-----------------------------

 

 

風見さんとのやり取りが終わった。

携帯に汚れが付いていたので、テッシュで拭きとってと。

 

「……なんだあれ?」

 

テッシュを捨てようと、ごみ箱を見ると、

なんだか見たことがあるものが……。

 

コンビニで目に入るが自分には不要な物……

まさか……あれは……。

 

ごみ箱をあさると……あった……

ストッキングが入っていた袋と……

それと……風見さんが履いていたものが。

 

手にとって感触と……匂いを嗅ぐ

風見さんの汗……甘いような……酸っぱいような。

 

「やばい……」

 

体が熱くなる……一気に臨戦態勢に……。

速攻で自分を慰める。

 

風見さん風見さん……。

何度も名前を呼ぶ……。

まずいよこれは……。

 

「うっ……ふぅ……」

 

一週間は困らない自信はあるね。

でも、明日から風見さんの事がまともに見れねーな。



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好きとも嫌いとも言ってない関係④

 

俺はベッドにいて隣に風見さんがいる。

スーツで足を組んで、挑発的な目で見ている。

 

「欲しい?」

 

「何がですか?」

 

「私の……」

 

「私の?」

 

「ストッキング」

 

「……」

 

「欲しいんでしょ?……脱ぎたてのが……」

 

「……はい」

 

「じゃあ……跪きなさい……」

 

俺は床に跪き風見さんを見上げた。

 

「私の足に口づけなさい」

 

「はい」

 

足に口をつけようとした瞬間……不思議な光が。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……夢か」

 

目覚ましが鳴る5分前に目が覚めた……。

なんつー夢を見たんだ……。

 

「これのせいか?」

 

その夢のせいか、この時間がたった物ではなく、

新鮮なものに興味が……。

 

「とにかく準備するか」

 

着替えて職場に向かった。

職場に着くと、風見さんはもう来ていた。

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

意識をしないようにしたが、

ストッキングが見えてしまった。

 

『……欲しい』

そんな考えを本気でしてしまった。

どうやら俺の頭は相当『アレ』でやられてしまっているみたいだ。

 

風見さんの近くにいると、

やばいので少し早いがお客様の所に向かった。

 

待ち合わせ場所に着き、お客様に説明しているのだが、

なんだか集中できず……いまいちな結果に……。

上席に結果を報告し、事務所に戻った。

 

戻ると、風見さんの姿は無く、なんだかほっとした。

違う意味で、前より怖くなったような……。

 

「戻りました~」

 

そう思ったのも束の間、風見さんが戻ってきた。

戻ると、すぐにパソコンを立ち上げていた。

 

「花衝君も戻ったのね」

 

「はい 今戻りました」

 

「どうだった?」

 

「一つはダメでもう一つは検討ですね」

 

「そんなもんよね」

 

「風見さんは?」

 

「一つは検討もう一つは受託よ」

 

「結構いいじゃないですか」

 

平常心を保って話してはいるが、

かなりやばい。

 

今日は暑く、汗をかいて帰って来た。

風見さんも例外ではなく、

ケアをして事務所に戻ってきた……けど……。

 

「ふぅ~ 蒸すわね~」

 

上着を椅子に引っかけ、ワイシャツのボタンを緩めていた。

こう……なんというか……蒸れたストッキングを、

妄想してしまい……落ち着かない……。

 

『いくら払えば』貰えるかな?

なんて事を考えている当たり相当やばい……。

脱ぐ姿を考えてしまい、さらに倍プッシュ!

 

「どうしたの?」

 

「なっなんでも無いです」

 

「あらそう」

 

いかん、全く集中できない。

とりあえずトイレで落ち着こう。

 

トイレの個室に入り、落ち着こうとしたが……。

まあ、無理だよね。

 

落ち着くのは無理だから、

欲求を解決する方向で考えるか。

 

できれば脱ぐ所が見たい、

もっと言うなら、ちょっと汗をかいている方が……。

 

そんな事は無理に決まっている……でも。

 

『なんとか脱ぎたては欲しい』

 

こんな事をガチで考える時点でアホなんだが……しょうがない!

でも不思議な事に、そわそわする感じが落ち着いてきた。

 

そのためにはどうするかな……。

ちょっと考えたがいい案は出ない。

あんまり長く居ると、よくないから、そろそろ出るかな。

 

ちょっと怖いが、自分の席についた。

さっきよりかは、落ち着いて仕事はできそうだ。

 

――

―――

――――

 

何とか定時で終わった。

外で食事を済まし、家に帰った。

 

家に帰り、なんとなくテレビを見ていると……。

 

「まてよ……これなら……」

 

いや……しかし……でも……。

それなりのアイディアが閃いたが、

成功した所で結果はいまいちだな……。

 

『脱ぎたて』がゲットできないが……。

『汗をかいたストッキングを脱ぐところと履く所を見る事ができる!』

この辺りが妥協点か?

 

問題はどうやって誘うかだな……。

 

「う~ん」

 

男は度胸だ!

気をうかがって、ストレートに誘うか。

そう心に誓って今日を終えた。

 



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好きとも嫌いとも言ってない関係⑤

ベッドで寝ていると、横に風見さんがいた。

 

「口を開けなさい」

 

「え……なんでですか?」

 

「いいものをあげるから」

 

「いいもの?」

 

いいものと聞けば悪くはない……大人しく口を開けた。

風見さんはクチュクチュと口に唾液を溜めて……え?

 

「じっとしてなさい」

 

風見さんは髪をかきあげて、

口を開いてネットリと垂らしてきた……俺の口に入る瞬間……。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ゆっ夢か……」

 

ちょっと欲しかったな……なんて考えた。

 

ここ数日間、風見さんを見ていたが、暑い日はストッキングを履かないがある。

これからどんどん暑くなるので、ここいらで勇気を出さないといけないな。

 

――

―――

――――

 

今日は朝から交渉で事務所に帰るのが遅くなってしまった。

 

「やべーやべー 自分のデスクを見るのが怖すぎる」

 

書類の山を考えるだけで嫌になる……

幸い明日は休みだから頑張るか……。

 

事務所に戻ると風見さんだけがいた。

 

「お帰りなさい」

 

「もどりました」

 

デスクを見ると予想よりは少ない……というか無い!?

 

「あれ……?」

 

「あなたの仕事やっておいたわよ 大したものは無かったし」

 

「あっありがとうございます」

 

「い~え」

 

今日はストッキングか……。

そうだ……ここだ……ここで……決めるんだ!

 

「あっあの……今日は夕飯どうでしょうか? 奢るんで」

 

「じゃあ甘えちゃおうかしら」

 

すんなり了承を貰えた。

 

「会社の近くにとんかつ屋があるんでそこでいいですか?」

 

「お酒はあるの?」

 

「多少は」

 

「そこでいいわよ」

 

そうと決まれば、片づけて店に向かった。

風見さんもお気に召したみたいでご満悦だ。

 

――

―――

――――

 

満腹食べて店を出た。

 

「あっあの嫌じゃ無ければ 家に来ませんか?」

 

「えっ……!?」

 

「あっいや 嫌なら大丈夫です」

 

「嫌ってわけじゃないけど……」

 

さらっと誘ったけど、我ながら

すごい事を言ったな……。

 

「コンビニ行っていい?」

 

「どうぞ」

 

近くに在ったので俺は外で携帯をいじくって待っていた。

 

「行きましょ」

 

風見さんか出て来た。

 

なに買ったんだろ?

まあいいや、着替えかなんかだろ。

適当に話していると、俺の家に着いた。

 

 

ここまで来たら簡単だ『マッサージを提案』すれば

簡単に『汗をかいたストッキングを脱ぐ所と履く所』が見れるわけだ。

自分の才能が怖すぎる。

それに今日のためにマッサージを勉強したからな。

序盤中盤終盤と隙がない戦略だ。

 

「ねえ?」

 

「はい」

 

「お風呂借りていい?」

 

はい! なにもかも終了!

 

「………………どうぞ」

 

「なにその間は」

 

「なんでもないですよ」

 

「着替えってある? なんでもいんだけど」

 

「ああ……シャツと短パンならありますよ」

 

なるべく綺麗なものを用意してあげた。

 

「ありがとう♪」

 

浴室に入り脱ぎ始めた。

ドア越しに風見さんが脱いでいるのを考える。

なんかいいな……。

 

30分ぐらい、たっただろうか

風見さんが出て来た。

 

当然、ストッキングが履いていない……。

その変わり、ゆるいシャツを着ていて、

とても色っぽい、とてもいい。

 

「あなたも入ったら?」

 

「そうですね」

 

風見さんが綺麗で、

俺が汚いと、まずいからな。

 

適当に洗い流し出てくると、風見さんは携帯をいじっていた。

 

「俺の部屋へ」

 

「…………うん」

 

急にしおらしくなった?

なんだろう?

 

とりあえず、俺の部屋に入ってもらい。

アロマキャンドルに火をつけた。

 

先に俺がベッドに座った。

 

「風見さん隣へどうぞ」

 

「えっ? もう?」

 

なんか驚いてる?

そっか、そう言えば、なにするか伝えてなかったな。

そりゃ不安にもなるか……あれ?

風見さんは何をすると思ってるんだろう……?

まあいいや。

 

つーか、このマッサージもやる意味がほとんどなくなってしまったな。

穴だらけの作戦で笑いが零れる。

 

「あっいや 日頃の感謝を込めてマッサージでもしようと思って」

 

「………………はぁっ!?」

 

思ってもみない反応が返って来たな。

……まだ早すぎたか? 彼氏でもない俺が人の体に触るのは?

 

「……うふふ……じゃあお願いしようかしら」

 

「あっじゃあ うつ伏せになってください」

 

風見さんがうつ伏せになってくれた。

ノーブラか……いかんいかん何を考えているだ。

 

すげーいい匂いがする……。

どこから始めるか考えが飛んだ……。

全然集中できない。

 

「どーしたの?」

 

「いっいやなんでもないです 痛かったら言ってください」

 

「はーい」

 

まずは、首筋から両方の親指で挟みこみ、下にずらして行く。

そのまま肩を揉みほぐす。

 

先ほどより、なんだか体が暖かくなってきたような……。

 

背骨も指で挟み何度も圧力をかけて上下に動かす。

 

両方の太ももを揉みほぐす……

下心があると思われるとアレなので、

ほどほどにして、今度は足だ。

ここは時間をかけてやるか。

とは言っても、ツボというものはよくわからんがな。

 

最初にクリームを足全体に塗り込む、

足の甲を中心に念入りに。

 

次は足の指を一本一本を念入りに……。

ギュッ ギュッ ギュッっと

ギュッ ギュッ ギュッっと

絞りあげるように挟む。

 

「ん……」

 

足の指の股も丁寧に押していく……。

グッ グッ グッっと。

グッ グッ グッっと。

少し強めに押し込む。

 

「んん……」

 

最後に足の裏だ。

自分の指を「く」の字にして、

グイッと押し込むように動かす。

グイッ グイッ グイッっと。

グイッ グイッ グイッっと。

 

「~~~うぐ」

 

小さな悲鳴が聞こえた気が……。

 

「痛いですか?」

 

「だ……大丈夫……つづけて……」

 

「はい」

 

引き続きマッサージを続行した。

 

――

―――

――――

 

足の裏から汗が噴き出ていた。

多少は効果があったのだろうか?

仕上げに足のクリームを拭きとって終了。

 

「終わりです」

 

「ありがとう 気持ちよかったわ」

 

うつ伏せのまま返事が来た。

 

「なんか飲みます?」

 

「もらおうかな」

 

お茶を紙コップに注ぎ風見さんに持っていった。

 

「ど~も」

 

風見さんは一気に飲み干した。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ここで沈黙。

 

「今日はてっきり」

 

「はい」

 

「…………」

 

「はい?」

 

「………………」

 

「はい??」

 

言いづらい事を言おうとして言えない……ってことかな?

 

「なんでしょうか? 言いづらい事ですか?」

 

「そうね言いづらい事ね できれば察して欲しいところ」

 

察してあげたいけど、いくらなんでもヒントが無さすぎる。

 

「う~ん……ちょっとわからないです……すいません……」

 

「…………分かったわよ」

 

風見さんは自分の鞄からあるものを取りだした。

箱? なんだ食べ物か?

 

「こういう事をすると思ったの!」

 

そう言って取り出したのは避妊具だった。

 

「えぇぇ……そっそいうつもりじゃ……」

 

「なんか強気に誘ってくるし……いざ来たらマッサージって ふふふ」

 

なぜか笑みが零れていた。

 

「ビックリしちゃったわよ」

 

「なっなんかすいません……」

 

「…………つかう?」

 

「…………いいんですか? 俺なんかが?」

 

「…………ええ」

 

「…………じゃあお願いします」

 

――

―――

――――

甘くて暑い夜を過ごした。

風見さんの体は柔らかく暖かく大きくて最高でした。



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