東方天帝悲恋 (Aliceチャンネル)
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序章~神の計画、実行前~

とある何もない空間…

 

真っ暗で何も見えない、聞こえないこの空間の中に一人の男が…目を閉じながら誰かを待っていた

 

男は白髪の長髪で、背中に金色の十字架を刺繍していた、白いフード付きの長いコートを身に纏っていた

 

そんな男が誰かを待っていた…

 

するとどこから来たのかもう一人の男がフード付きの男の元に来て、膝をついた

 

ちなみにそのもう一人の男は少し長めの銀髪…黒いラインでのクロスをデザインとした白い服装を身に纏っている者だ

 

 

 

「…アクトラス」

 

男はフード付きの男、アクトラスと呼んだ

 

「おおっ、シィーガーか…」

 

そしてアクトラスもシィーガーと呼ばれる男に気づいたか、目を開き、シィーガーを向いた

 

「で、シィーガー…状況はどうだ?」

 

「ああ…お前が言ってたあの女の居場所ははっきりわかった」

 

「そうか…それでどこなんだい?」

 

「女の居場所は…どうやら"幻想郷"というところらしい」

 

「"幻想郷"か…

そこに彼女がいるんだね」

 

「だがアクトラス…幻想郷に入れるのはそう簡単に行くものではないみたいだ…

幻想郷に入るには…"博霊大結界"と言う厄介な結界をどうにかしないと…」

 

シィーガーがそう深刻そうな顔をしていると、アクトラスは涼しそうな顔して言った

 

「ああ…あの結界か…確かに"普通"では簡単に破ることは出来ない…

あの結界に関しては心配しないでくれ…僕がなんとかするよ

 

 

…それで、他の皆は準備は万全かい?」

 

「ああ、もちろん…

だが、またあの妹の奴がどこかに行ってしまいまして…」

 

呆れた様子のシィーガーに対し、アクトラスはどこか可笑しそうに笑った

 

「また好奇心旺盛って奴?

 

やれやれ…甘いものといたずら好きな妹が困った子だね…」

 

「今はそいつの連れの奴が連れ戻しに来ると言ったから問題はないかと…」

 

「そうかい?

なら、彼に任せよう…

 

シィーガー、君も幻想郷にいる"奴"と闘う日を待ち望んでいるだろう?

 

情報収集も充分集めてくれたし、今はゆっくりと休んでいたら?」

 

アクトラスの"奴"と言う言葉にシィーガーは頷いた

 

「ああ…俺は"奴"と闘い、そして消す…それが俺の目的…

 

悪いが…俺には俺なりの行動をするからな」

 

「君が言っていた"奴"に…どんな因縁なのかわからないけど、構わない…

 

僕は彼女を手にいれればそれで十分さ…

 

そんな僕の計画を邪魔する奴は一人残らず消してやるんだから…

 

もしかすると君のお目当てである奴も邪魔に来るだろう…」

 

「……そいつが来たら、直ぐ様この俺が消すのみ」

 

シィーガーの目はそうギラギラとなりながら呟き、アクトラスの前から去った

 

 

「もうすぐ……もうすぐ会える…

 

君と言う名の安らぐ場所へ…

 

 

これで僕の心を傷を癒えてくれる…

 

早く僕の元に来るんだ…

 

 

 

 

 

………"アリス"」



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第1話 幻想郷に来た手品師~part1~

幻想郷…それは妖怪や妖精…僅かな人間たちが暮らしている世界…

 

そんな幻想郷で、少し離れた魔法の森にある一軒家…

 

そしてその一軒家に住んでいるとある魔法使いがいた

 

 

彼女の名はアリス・マーガトロイド

 

人形使いの魔法使いである

 

 

元々彼女はこの魔法使いの森にあるたった一軒家での独り暮しをしていた…"元々"は…

 

 

 

 

 

とある日の朝…

 

アリスは台所で朝食を作っていた

 

「う~~~ん…こんなものかしら?」

 

料理の出来栄えを見て、満足したアリスはテーブルに並べた

 

テーブルに並べた料理……が、一人にしては多すぎる量だが…

 

「ふふっ…そろそろお寝坊さんを起こさないとね」

 

そう、彼女には……"彼"がいたのだ

 

 

 

するとアリスは寝室の部屋へ向かった

 

部屋に入ると、ベッドには男性がぐっすりと眠っていた

 

そう、この男がそのアリスの"彼"だ

 

 

 

「ほら、神威…起きなさい

 

いくら休みだからってずっと寝ていると体が鈍っちゃうわよ?」

 

アリスは男を神威と呼び、体を揺すりながら起こそうとしていた

 

「んん…?

 

ああ…もうこんな時間か…」

 

するとアリスの声に反応したのか、神威は目が覚め、体をゆっくりと起こした

 

「おはよう神威…ぐっすり眠れたかしら?」

 

アリスは微笑んだ表情で神威に言った

 

「ああ、おはようアリス」

 

神威もアリスに向けてそう言った

 

「朝食が出来たのよ…一緒に食べましょう」

 

 

 

 

「昨日は随分と大忙しだったみたいだね…」

 

「まぁな…

 

寺子屋での特別講師に永遠邸での薬の材料集め…パチュリーの図書館の整理に、最後は魔理沙の魔法店での後片付け……

 

目が回る程忙しかったな…」

 

「全く…万屋だからって、魔理沙のは無いでしょう?

 

パチュリーのはあれだけ広い図書館で整理するのは仕方ないけど…

 

後片付けぐらい自分で出来ないのかしら?」

 

「ははっ…だが、あいつにもちゃんと報酬をやるって言ったからな…

 

報酬がある限り、俺はやらない主義なんでね…」

 

「もぅ…神威ったら…」

 

アリスと神威はそう会話しながら朝食を取っていた

 

いい忘れていたが…神威こと、天城神威は…この幻想郷での唯一の万屋だ

 

報酬が有る限り、どんな依頼でも引き受けるらしい…

 

そして神威にはもう1つの顔がある…

 

一見、どこにでもいる人間の男に見えるが…

 

転生前はなんと!!

日本神話に出てくる神…須佐之男命(スサノオノミコト)なのだ…!!

 

(※何故神威が須佐之男命(スサノオノミコト)なのかは、詳しくはSatomura Shion様の紙芝居シリーズ、S2で)

 

神威は万屋として働きながらも…アリスの彼氏として…夫として、この幻想郷で暮らしているのだ

 

 

 

 

「ねぇ、神威…今日は暇かしら?」

 

「んん?どうしたんだ?…急に」

 

「だって…今日は神威休みだし…せっかくだから夕飯は神威の食べたいものを作ってあげようかなぁって…」

 

アリスは少し恥ずかしそうにそう神威に聞いた

 

「俺はアリスが作ってくれるのであれば何でもいいが…」

 

神威がそう答えると、アリスは少し不服そうに頬を膨らせながらこう言った

 

「もう!それが困るんだから!!」

 

「アハハハハ…そう怒るなって」

 

怒っているアリスに、神威は優しく慰める

 

「だったら一緒に買い物して、決まればいいじゃないか?」

 

「うふふ…そうね

 

久しぶりにあなたとデートみたいになれるなんて嬉しいわ」

 

神威の案に、アリスは賛成したのか機嫌が治り、笑顔でそう言った

 

「それじゃあお昼ぐらいに人里の所でお買い物に行きましょう!」

 

「ああ」



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第1話 幻想郷に来た手品師~part2~

そしてお昼ぐらいに…二人は人里で買い物に出掛けた

 

人里はその名の通り、多くの人間たちが暮らしている里だ

 

もちろんその人里の中には妖怪や妖精たちも遊んだり、買い物したり、時には学校で学んだりしている

 

今日も人里は平和である

 

「うふふ…こうしていられるのって久しぶりだね」

 

「ああ…最近は万屋の仕事が忙しくて、アリスとろくに過ごす時間なんてなかったからな…」

 

「そういえば…刹那のことは大丈夫なの?」

 

「ああ…俺からちゃんと事情説明をしたし、刹那も色々と大変だっただろうし、休ませる機会を与えたからな

 

…あ、アリスと一緒にいる時間が欲しいって言うのは内緒にしているがな」

 

「そうね…そんなの聞いたら、絶対私に敵視してくるわ

 

ま、元からそうだけどね」

 

二人から言ってた"刹那"とは…

 

刹那と言うのは"天城 刹那"

 

神威と同じ万屋で働いており、さらには神威のメイドである

 

自称"美少女メイド"と呼ばれているが…

 

実は彼女も神威と同様、"神"の転生…櫛名田比売(クシナダヒメノミコト)でもある

 

(※詳しくはSatomura Shion様のMMDドラマ 紙芝居シリーズ、S3で)

 

しかし彼女はかなり神威への愛が強く、アリスとは犬猿の仲らしく…下手にしたら手が負えなくなったりして…

 

神威はそのようなことを起きないように、あらかじめそう説明し、争い事を避けているのだ

 

「ま、俺が言うことが聞くのであれば…何でも聞いてくれるからなんとかなるが…

 

会わなければな…」

 

二人がそう会話しながら歩いていると…

 

何やら人の集まりを見かけた

 

「ん?なんだ?あの集まりは…」

 

「そうね…一体何をやってるのかしら?」

 

「ちっと見てくか?」

 

 

どうやら二人も謎の集まりに気になる様子…

 

その集まりの中を見ることに…

 

 

 

「さぁさぁ!!よくご覧なさい!!

 

こちらに手にしているのはタネも仕掛けもないただのハンカチ…

 

さてこのハンカチをですね…あることをすると素敵な出来事を起きます」

 

集まりの正体は…この幻想郷には滅多に見れない手品だった

 

そしてそんな手品を行っているのは、これまた見かけない女性…

 

アリスと同じ年齢ぐらい…紙の色は茶色と黒を混ざったような色で、少し長めだ

 

瞳は宝石のサファイアのような綺麗な青だった…

 

そんな彼女が何故この幻想郷に?そして何故手品をやっているのか?

 

「それでは…せっかくですので、誰かお手伝いを…

 

では、そちらにいる綺麗な黄緑髪をした妖精さん」

 

女性は手品を見ていた妖精(大妖精)を指名し、手品の手伝いを要求された

 

「では…このハンカチはしっかりと握ってくださいね

 

私がOK出るまでにね」

 

「は…はい!!」

 

大妖精は女性の言う通りにハンカチを丸め、しっかりと握りしめていた

 

「では今から魔法をかけますよ?いいですか?

 

3(スリー)…2(ツー)…1(ワン)…!!」

 

そう唱えた後に、指を鳴らした女性

 

「OK!そろそろ開いてもいいわよ」

 

女性がそう言うと、大妖精は恐る恐る手を開いてみたそのとき…

 

「!!」

 

なんと!!さっきまでのハンカチが小さな花のブーケが現れた

 

「わああ!!すごーい!!」

 

「どうして?どうして?」

 

周りにいた人たち、妖怪や妖精たちも思わず驚きと歓喜の声が上げた

 

「そのお花はあなたにあげます

 

手品を手伝ってくれたお礼です」

 

「あ…ありがとうございます!!」

 

「大ちゃんいいな~!!」

 

「羨ましいのだ~!!」

 



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第1話 幻想郷に来た手品師~part3~

大妖精の手元にある花束に、周りにいた妖精たちや人間たちは歓声を上げた

 

「ねぇねぇお姉さん!!アタイも何かちょーだい!」

 

「私もなのだー!!」

 

すると妖精たちや人間の子供たちが、女性におねだりをしようとしていた

 

その様子を見た女性はクスクスと笑った

 

「そうですね…こんなにたくさんの方たちが私の手品を見てくれたですものね…

 

では、私から最後に皆さんにプレゼントを!!」

 

女性は懐から白い紙を取りだし、筒状に丸めた

そしてその筒に向かって指を鳴らしたら…

 

ボトボトボトボト!!

 

なんと、筒から大量の飴が出てきた

先程タネも仕掛けもないただの紙から飴が出てきたことに、観客は喜んでいた

 

「これは私からのお礼…私の手品を見てくれたお礼よ!

 

今日は本当にありがとう!」

 

 

 

 

「へぇ…魔法や能力が使えない人間たちにこういった催しをやってるんだな」

 

「でも素敵ね…そういう人たちに楽しませてくれるのって」

 

二人も彼女の手品を見て、そう評価した

 

「おっ、神威とアリスじゃないか!」

 

そのとき、何やら魔女が被ってそうなとんがり帽子を被った金髪の女が二人を呼び、近づいてく…

 

「あら、魔理沙じゃない」

 

「オタクもあの手品を見ていたのか?」

 

「へへ~ん!まぁな

 

それにタダで飴を貰うなんてラッキーだからな」

 

二人は女を"魔理沙"と呼んだ

 

 

とんがり帽子の金髪の女は"霧雨 魔理沙"

 

魔法を使える程度の能力の人間でありながら、霧雨魔法店を経営している魔法使い

 

異変が起きたときは共に戦った仲間の一人でもある

 

 

「なぁ、魔理沙…あの女もこの幻想郷の人か?」

 

「いや、私も初めて見る顔だぜ

 

霊夢でもあんな奴聞いたことがないって」

 

「そうか…霊夢でも知らないとなると…

 

この幻想郷に来たのは最近となるか…」

 

「まぁきっと紫によってここまで連れてこられたとか」

 

「…確かにその可能性もあり得る」

 

魔理沙が言っていた紫とは"八雲 紫"

 

スキマを操る程度の能力であり、この幻想郷の中での最強と呼ばれる神隠し…

 

彼女はときどき外の世界へ行き来する時もあるため、あの手品の女も紫によって来たのではないかとそう予想していた

 

ちなみに神威も幻想郷に連れてこられたのも、紫の仕業だ

 

 

 

「あ、そうだわ…

 

魔理沙!あなたまた神威をどうでもいい後片付けをやらせて!!

 

神威は何でも屋じゃないのよ!?」

 

「おいおいアリス…そう怒るなって…

 

本当は私の力でやるってわかってるけどさ…あまりにもとんでもない量だったからさ…」

 

「それはこまめに片付けないからでしょう!?

自業自得よ!」

 

アリスは…今朝が言っていた神威が魔理沙の店の後片付けの件を魔理沙に叱った

 

「だ…だが、ちゃんと神威に報酬をやったんだからさ…」

 

「そういうこったよアリス…その辺にしなよ

 

それに…報酬がある限り、断らない主義なんでね」

 

神威がそう魔理沙に庇うと、アリスは呆れたように溜め息をついた

 

「もう…神威ったら」

 

「それじゃあ私は霊夢のところに行くぜ!

 

アイツにもこの飴をあげないと可愛そうだからな」

 

魔理沙は先程手品で貰った飴を霊夢という人物に渡すようだ

 

「ああ…霊夢にまたよろしくと伝えてくれ」

 

「おぅ!それじゃあまたな!!」

 

と魔理沙は箒に乗って、飛び去った

 

「全く…魔理沙は相変わらずね」

 

「別にいいじゃないか

 

そういうところが魔理沙らしいからさ」

 

「もう…」

 

なんて会話していると、アリスは神威の腕を抱き締めた

 

「…私たちもそろそろ行きましょう」

 

「おっと、そういや買い物するんだったな」

 

「もう!」

 

こうして二人は再び人里での買い物をすることに…



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