ぼっちと魔術師 (SPZS)
しおりを挟む

第一話 哀れな転生者

処女作!ムシャクシャしてやった後悔しかしてない!


 目が醒めると見知らぬ場所に居た…しばらく辺りを見回してると

「ようこそ星野 ロアさんあなたの人生は先ほど、終わりを遂げました。私は水の女神アクア。死後の魂を導く神様です」

 

いきなり何を言ってるんだこの子は…髪も目も水色だしかなりの美少女だ。そして、なかなかいい体をしている。しかしこれはアレか、ドッキリっていう奴かな?そんなことを思ってると…

 

「別にドッキリではありませんホントに貴方は先ほど亡くなったのです」

 

心まで読まれちゃったよ。これが神様パワーって奴なのかな?てことはマジで俺死んだのかよ。

 

「なら俺はどうやって死んだんですか?」

 

と質問してみると

 

「えぇと…貴方の死因は……プハッ!フフフ……ぷーっくすくす何これ受けるんですけど〜〜!!」

 

え?

 

えぇ…なんかさっきまでの神様っぽい荘厳な雰囲気どこいったよ…つーか何笑ってんの?もしかして俺の死因なの?そうなの?

 

「ふーふーあーおもしろ…でね、貴方の死因はねテクノブレイクです」

 

「ほぇ?(゚Д゚)

 

え?ホントに?俺そんな悲しい死に方したの?それもう人間としての尊厳がなんか…こう……アレなんだけど!?」

 

「そんなこと言われても知らないわよ性欲お化け。あんまり近寄ってほしくないんですけどー!!」

 

あぁ、思い出した…受験へのストレスでいっぱいいっぱいになってる時にムシャクシャして抜きまくったんだった…。

なんということでしょう。俺はきっと現世で世界で最も馬鹿な死因のギネスに乗るんだろうなぁーアハハ…

そんな感じで現実逃避をしていると

 

 

「まぁいいわ!「よくねぇよ!」貴方には2つの選択肢があります。1つはその記憶を持ったまま天国に行くか…2つ目は記憶を失い新たに現世に転生するかです」

 

さっきまでの素はどこいったんだろう。まぁいいや転生かぁ、恥ずかしい死に方したしそれもいいかもなぁ。

 

「じゃあ転生で」

 

「え?」

 

「ん?俺なんか変なこと言いました?」

 

「いや普通の人は天国に行きたいって言うんだけど…」

 

「いや、こんな恥っずい記憶もって天国行くよりも今の自分を消し去ってしまった方がいいと思いまして。さぁ!一思いにやってくださいよ!」

 

もうヤケクソじゃい!

 

「いやいやちょっと待って!貴方ゲームは好きよね!「オフコース」そんな貴方にもう1つの選択があります」

 

そんなこんなで女神(笑)は俺にもう1つの選択というものを説明してきた。

曰くその世界では魔王がいて、人間と敵対していると、そしてその世界で死んだ人たちは結構なトラウマを持ってしまいその世界で転生したくないと、そして転生する魂がないとその世界では赤ちゃんが産まれないのだとか、そしてどんどん人間が減っているのでその原因に当たる魔王を現世から神様からつよーい防具や武器、または特殊能力を授かり魔王をシバいて欲しいのだとか。

 

「ふむふむ、それを俺にやれと…そういうわけですか?」

 

「そうよ。やってくれないかしら?」

 

あ、こいつ女神ぶるのめんどくさくなったな、まぁそんな美味しいお話を逃す気もないんだけど

 

「いいっすよ、俺そういうの憧れてたんですよね〜」

 

「じゃあ決まりね!次に特典についてだけど…この中から選んでちょうだい!」

 

そういうと女神(疑)は紙の束を俺の前にばら撒いた。おいコラまとめて渡せよ読みにくいだろうが。と文句を心の中で言いつつ拾い集めつつ内容を確認してみる。

 

「ねぇ早くしてくれない?こっちはいろいろ忙しくてあんたみたいな性欲魔獣の相手をしてる暇ないんですけどー」

 

こいつナグリテェ…(^∇^)そしてどっからか出したポテチを頬張りながらこの糞女神様はそうおっしゃる。ならばら撒くなってんだよ…

 

「そうは言うけど自分に合ってるって物が見つかんないんですよ」

 

ドラゴン召喚とか超魔力とかはね、何かこうね、違うんだよ!(謎のこだわり)あと、モテそうなかっこいいのがいいなぁ。

 

「一応そこにないものでも説明してくれれば作ることができる決まりがあるんだけど…めんどくさいからその中から決めてくれない?」

 

そう聞いて俺は閃いた

割と昔にやったあのゲーム

あのゲームのあのキャラの能力があれば楽しいなぁ〜と何度思ったことか…そのチャンスが目の前にある!これを逃す手はない!

 

「マジで!じゃあ作ってくれますか!?」

 

「人の話聞いてた?めんどくさいからそうぃ「えぇとですね、まずはこのゲームの中の」聞きなさいぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

10分後

 

 

「〜というモンなんですがいかがですか?」

 

だいぶ詳しく言ったつもりだがダメかもしれないと少し不安になる

 

「ふーん、まぁそれくらいならいいんじゃない?あ、でも世界を壊しかねない技はナシね。そういうルールだから」

 

あー、一部ダメだったかまぁでも一部くらいなら大丈夫だろう。少し劣化はしたもののきっと俺の想像通りになってくれるはずだよね!

 

「あ、そうだどうせなら容姿も変えたい。せっかくの異世界なんだ黒髪黒目じゃ目立つしイケメンになりたい」

 

「注文が多いわねぇ、めんどくさいからそういうのナシにしたいんですけどー」

 

ヤベェ断られる、こうなりゃ最終手段

 

「アクア様ってすごいですよね!もうあった瞬間から神って感じがするくらい神でした」

 

うん、何言ってんだ俺。焦ってよくわからん日本語になったな

 

「え、そう?やっぱあなたもそう見える?」

 

あ、こいつチョロいわ(笑)

 

「そうです!アクア様!あなた様ほどすごい神ならば私の容姿などチョチョイのチョイと変えれるのでしょう?」

 

「もちろんよ!何たって私は水の女神!そんなの朝飯前だわ!やってやるわよ!」

 

「ありがとうござます!アクア様!!」

 

そう言って俺は土下座した

 

計画通り……(ニヤっ

 

「じゃあそこに立ちなさい。送り出すから」

 

遂にきた!さらば俺の恥ずい人生!そしてようこそ我が新しい人生を!高まりすぎておかしな方向にテンションが爆発した俺は駆け足で魔法陣の上に乗る。

 

「んっんん…さぁ勇者よ!数多の冒険者の中から貴方が魔王を倒すことを願っています!ちなみに魔王を討伐した暁には神々からの贈り物でなんでも願いを叶えてさしあげます!…さぁ旅立ちなさ…………あっ…ヤバ!乗せる魔法陣間違えた…」

 

 

 

「ゑ?」

 

ちょっと待って今この女神なんつった?

 

 

「おい待てそれどういうこt「えっと…ごめんね!なんか間違えて違う魔法陣に乗せちゃったみたい」はぁ!?おいコラここから出せ!なんだこれ透明な壁で出れねぇ!チクショウ!」

 

オイオイオイ待てや違う魔法陣ってなんだよ!え?俺これからどうなんの?一体どこに転送されんの?そんなの聞いてないんですけどー!?

 

「ごめんね!間違えて昔作った古い魔法陣に乗せちゃった。いろいろと不備やバグがあったから今はもう使ってなかったんだけど間違えちゃった。えっと…なんかごめんねっ!」

 

「チクショウ!ぜってぇ許さねぇからな!つーかどうなんの俺!?だんだん浮いてきたし!」

 

「大丈夫!…多分。昔使ってたとはいえ一応あっちの世界に転送する魔法陣だからきっとなんとかなるわよ!………多分、頭がパーになったり、姿が人じゃなくなったりいろいろあったけど大丈夫よ!………多分」

 

「ふっざけんなよお前!?それもうフェイタルエラーじゃねぇか!うわぁぁぁ!!!なんか体が透けてきたぁぁぁ!

覚えておけよこんの糞アm「ブウォン」」

 

………

 

「……この事はなかったことにしよ……」

 

 

 

**************************

一方その頃

山奥の小さな集落…そこは一見するとただの民家の集まりだがそこの村人はみんながみんな例外なく魔法使いのエキスパート!そして俗世間では≪厨二病≫と呼ばれる病にみーんな感染している。だがみんな根は優しいとってもいい人達ばかりと見方によれば暖かい村である。

そんな村の辺境に少女はいた…

 

「もう…悪魔が友達でもいいや……」

 

黒い魔法陣の側で少女はそう言った。

この少女この厨二病の吹き溜まりみたいな所で唯一≪まとも≫であったために周りの人から≪変わり者≫と不遇なレッテルを貼られ、尚且つコミュニケーション能力の低さからボッチになってしまった可哀想な子である。そして今、ボッチを拗らせた彼女は事もあろうに悪魔と友達になろうとしていた…

 

「一応護身用に聖水は持ってきたけど…大丈夫よねっ!きっと悪魔でも話せばきっとお友達になれるはずだから!でも…悪魔にまで断られたらどうしよう…」

 

片手に本≪悪魔とお友達になれる方法≫を手に彼女は難儀していた。一体友人とはなんなのか彼女の中では一体どこからどこまでが友人なのだろうか。そんな難儀している彼女を見る影が2人、木の影から覗いていた…。

 

「こめっこ、今日はあのボッチ娘ゆんゆんから昼食をご馳走してもらいましょう」

 

「うん!わかった姉ちゃん!」

 

さてこの姉妹、この魔法使いのエキスパートの集まりの中でもすごい魔力と知力を叩き出した天才の姉と迫真の演技で新聞屋のお兄さんや散歩中のおじいさんや金のないニートにまで食べ物を貢がせる魔性の妹である。

 

「それにしてもゆんゆんは何をやっているのでしょうか?まさかあの魔法陣で友達でも召喚する気なのですかね?」

 

そう言いつつボッチ娘ゆんゆんに近づく2人。

 

「ゆんゆん姉ちゃ〜ん!」

 

「あ!こめっこちゃん!それにめぐみんも!ひ、久しぶりね!」

 

「いや、昨日会ったばかりじゃないですか…ところで何をしているのですかゆんゆん。とりあえず昼ご飯を奢ってください」

 

「え、えっとね!これはね、べ、別に悪魔と友達になろうとしたわけじゃぁ………」

 

だんだんと尻すぼみになっていく彼女の言葉に呆れるめぐみん。

 

「全く、これだからボッチは…悪魔なんかと友達になったりしたら、魂と引き換えに友達になって地獄に連れてかれるのがオチですよ」

 

「う、でも話せば無償で友達になってくれるかもしれないじゃない!」

 

「そんな訳ないでしょう。悪魔も無償でこんなボッチ娘と友達になんかなろうとしませんよ。それこそ「俺たち友達だよな!」と言っていろんな人に自分と契約させるよう働かされるパシリになるのが容易に想像できます」

 

「そんなことないわよ!め、めぐみんだって悪魔に「人1人連れてきたら食いモンやるよ」て言われたらころっと騙されそうじゃない!」

 

「何おう!?人の事を食べ物で釣れるチョロいお手軽女のように言ってくれますね!ゆんゆんこそそこら辺のダメ男にでもすこし優しくされればころっと騙されるチョロい尻軽女なんじゃないですか?」

 

「なっ!言ってくれるわねめぐみん…今日こそ決着をつけるわよ!」

 

「いいでしょう!ここらで格の違いを思い知らせてやりましょう!」

 

そう言って2人は構えてじりじりと躙り寄る。そして…

 

「姉ちゃん達喧嘩はダメ!仲良くしないとダメだよ!」

 

取っ組み合いになる寸前でこめっこが止めに入る。そう言われて2人は構えるのは止めて

 

「そうよね…仲良くするべきだよね!ライバルでも!」

 

「ライバルって馴れ合うものじゃない気がするのですが…まぁいいでしょう。今日のところは見逃してあげます」

 

「じゃあ姉ちゃん!3人でご飯食べに行こ!」

 

「そうですね。もちろん全部ゆんゆん持ちですが」

 

「えっえぇ、まぁ友達とご飯食べに行けるならいっか!」

 

「とうとうライバルではなくなりましたね。まぁ奢ってもらう身なので何も言いませんが」

 

「あ。そうだ!この魔法陣消さなきゃ!」

 

「すっかり忘れてましたね…でもいいんじゃないですか?そんな学校の図書館にあるような本の魔法陣が本物の訳ないじゃないですか。何も起こりませんよ」

 

そしてそのフラグが建築された瞬間

 

 

ズズッ… ズズッ…ズガン!ズガン!ズガン!

 

 

魔法陣から黒い光が出て、周囲に黒いイナズマが落ちる。

 

 

「あわわわわわっ!めぐみん!どうしよう!なんか魔法陣が起動したんだけど!」

 

「し、知りませんよ!まさか魔法陣が本物だったなんて…こめっこ!お姉ちゃん達の後ろに隠れていなさい!」

 

「わかった!」

 

「め、めぐみん!一応私聖水持ってきたんだけど…」

 

「それです!それを早く言ってください!それさえあれば逃げる時間は稼げます!」

 

そう言ってる間にも魔法陣の光は強くなり始めて

 

「き、きますよ…」

 

一瞬強い光を魔法陣が放つとそれは居た。

 

2つの青いツノ(?)球のような胴体で青い服そして、浮いている。

 

「あ、あれは何でしょうか、悪魔?にしては小さいし魔物?にしてもあんなの図鑑で見たことありません…」

 

「あ、悪魔でも魔物でもないなら……と、友達に…」

 

「なれるわけがないでしょう!はっ!こ、こっちに気づきました!近づいてきます!ヤバイです!ゆ、ゆんゆん!その聖水を投げつけるのです!ほら!早く!」

 

「待ってよ!まだ襲ってくるとわかったわけじゃあ…あっ!ちょっちょっとめぐみん!」

 

めぐみんはゆんゆんから聖水をひったくった。ゆんゆんのような甘い事を言っていてはここにいるこめっこまでもが襲われてしまう。仕方のないことだった。

 

「アノォ、ちょっとキミ達「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

ガッシャーン!!

 

少女それに向かって聖水をスパーキング!

 

 

**************************

 

あの駄女神に護送された後、俺は目の前が真っ白になり落ちていく感覚にとらわれる。

あぁ、どうかちゃんと街について変なバグもありませんように…そう願った。もう一心不乱に願った。ただあの女神にだけは願わなかった。今度会ったら一発殴ってやる!そして不意に視界がクリアになったかと思うと…

 

平原?ここはどこだろうか?つーかなんか視界が低いのは気のせいだろうか。

 

「ハァ、一体ここハどこなんダロウ?」

 

 

 

!?

 

 

何だこの声と口調!自然に出てきたよ!今までこんな口調でしたが?ってレベルの素ででたよ!まさか…これがバグ?喋り方がおかしくなるだけ?あぁ"、心配して損した〜何だバグも大したことないな(笑)

 

「なれるわけがないでしょう!」

 

ん?今声が聞こえたような?

振り向くと3人の少女達がいた。3人姉妹だろうかあの長女の方は高校生、そして中学生、小学生くらいかな?まぁいいや、あの子達にここらの事を聞いてみよう。

 

「アノォ、ちょっとキミ達「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

 

ガッシャーン!!

 

俺が一体何をしたって言うんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついつい書きすぎちゃった。
批判でも何でもコイヤァァァ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話 ゲームにバグはつきもの

滑出しにしては上々なのではなかろうか


前回までのあらすじ

 

転生したらなんか美少女に水の入ったビンをぶつけられたよ!やったねチクショウ!

 

 

**************************

 

 

いきなり水の入ったビンをぶつけられた…。これが異世界の洗礼ってヤツなの?村人Aに話しかけたら水瓶を投射されるとかどんなクソゲーだよ!

 

俺が異世界への理不尽を嘆いていると

 

「あれ!?聖水がまるで効いてませんよ!!てことはあれは悪魔ではなくモンスターですか!?」

 

え?悪魔?モンスター?もしかして俺の事?

 

「ネェ、人の事をイキナリ悪魔とかモンスター呼ばわりスルのって酷くナイ?」

 

「じゃああなたは一体何なんですか!?」

 

やたらと興奮気味に質問を投げかけてくる彼女。いやいや今の俺はイケメンだぜ?モンスター呼ばわりされる言われもないはずだ。

 

「ナニって僕はニンゲn……」

 

俺は見てしまった…

 

自分に足が無いことを…

 

つーか

 

俺、浮いてんだけど…

 

あれ!?何だこれ!?さっきまで違和感がなかった自分の体に違和感が芽生え始める…

 

そういや足の感覚がない…そして腕は…

 

存在しなかった

 

ただ腕のように動かせるモノはあった

 

それは…自分の体から離反している手のような何かだった……ん?

 

あれ?この手どっかで見たことあるような?そう思い自分の体をよく見てみる。

 

あぁ…なるほどね…

 

うん

 

これは

 

「マホロアじゃねぇかヨォォォォォ!」

 

なんと!俺はマホロアそのものになっていた!いや確かに転生特典はマホロアの能力を願ったさ!けどね、だからってマホロアそのものはないんじゃねぇの!?俺イケメンにしろって言ったよね?これはアレか!バグか!ひっでぇわ!口調が変わるだけかと思ったらその口調ごと全てがマホロアに変えられたってことか?フザケンナ!!

 

と心の中で嘆いていると…

 

「キシャッー!!!!」

 

「!?」

 

唐突に俺の耳(?)に鋭い痛みが走る。

何事かと思ったら…

さっきの一番小さい子が俺の耳(仮)に噛り付いていた…

 

「ギャアァァァ!!!」

 

「姉ちゃん!今夜の夕食捕まえた!」

 

「こ、コラ!こめっこ!離れなさい!毒でもあったらどうするんですか!?後ゆんゆん!貴方は近くにいる大人を呼んできてください!」

 

「わ、わかったわ!」

 

そう言い長女?はどこかへ行ってしまった…いや、そんな事はどうでもいい。とりあえず…

 

「チョ、チョット!やめて!イタイから!とりあえず話でもシヨウ!」

 

「フシャッー!!!」

 

猫みたいに威嚇して全く離してくれそうにないこの子。ヤメロォ!耳が取れる!

 

そう思ってたとき不意に

 

「あああああああああ!!!!」

 

姉の方にそこらへんにあったのかそこそこ大きな石で殴られ、俺の意識は再度闇に沈んでく…

 

クソ…こんな事なら普通に転生しとくべきだった…ガフッ…

 

 

**************************

 

……

 

「こいつはなんなんだろう?」

 

「さぁ…聖水が効かなかったらしいしなんかのモンスターじゃないかな?」

 

なんか遠くから声が聞こえる。あぁ…頭イテェ…確か棒で殴られて木を失ったんだっけか

 

そう思い目を開けると見知らぬ天井…そして

 

「!?」

 

俺は固まった。なんと俺の周りを紅い目の大人たちが取り囲んでいた…しかもみんな中々のイケメンだ。ムカツク

 

「おや、目が覚めたかい?」

 

一人のダンディなヒゲを生やしたおじさんがそう聞いてくる。

 

「我が里の者が失礼をしたね…とりあえずこれでも飲んで落ち着きなさい」

 

そう言って粗茶を出してくる。ふむ、いい茶葉を使ってやがる。

 

「エット…ここはドコ?」

 

「ここは紅魔の里…そして私は紅魔の里の族長だ。ところでコレが何かわかるかい?」

 

そういいおじさんはレストランとかの受付にあるチンチンなるアレを取り出した。

 

「ウン。レストランとかにアルやつダロォ?」

 

「え?」

 

「エ?」

 

あれ?違うのか?

 

「こ、これは嘘をつくと鳴る魔道具だよ。単刀直入に聞こう君は何者だい?」

 

なるほど嘘発見器か…

 

そういい族長を始め周りの人達の目が紅く光る。

 

怖! あの人達の目!俺にはわかる!あれは研究者の目だ!気になった事をとことん調べ自分の納得のいくまで止まらない!そういう目だ!そしてその目は俺にこう言ってくる…

 

 

解剖したい…

 

 

「ヒィ!!」

 

 

ヤバい!これは言葉を間違えるとモルモットにされる!

 

「ボ、ボクの名前は星野 ロア「チリーン」エ?」

 

アレ?いやいやおかしいでしょ!俺の名前だよ!?まさか俺の名前は偽名だった…?

 

 

 

 

ん?あぁ…そうか「ボク」の名前かぁ…。

 

「…ボクの名前はマホロア。彼方からの旅人ダヨ。後信じてもらえないかもしれないケド、ボクはニンゲンだっタンダ」

 

シーン…

 

魔道具が鳴らない事を確認すると大人たちは顔を合わせザワザワしだす。

 

一応信じて貰えたのかな?

 

そしてその後自分の身にあった事を洗いざらい話した。

ちなみに死んだ件と女神の件は伏せた。知られたくないしイタイ子だとは思われたくない。

 

一通り話した後俺はお茶を飲んで一息つく。

 

 

「なるほど…ところでそのお茶は美味しいかい?」

 

イキナリどうしたんだろう?

 

「ウン、なんか体の内側からあったかくナル感じがするヨォ」

 

「そうかい。実はそれは聖水入りでね、君を試させてもらったんだ。許して欲しい」

 

そういい族長は笑いかけてくる。

 

はは〜ん。なるほど試させて貰ったわけね。つーかこれで俺に聖水が効くなら俺は内側から溶けてたんじゃ…うん。考えるのをやめよう吐きそうになる。

 

ところで…

 

「アノォ何故みんなはボクを見て目を紅く光らせてるんデスカ?」

 

 

気のせいか…さっきの「研究者の目」よりも紅くなってる気がする…

 

「あぁ、それはね君の設定が我々の琴線に大きく振れてね。紅魔族は興奮したり感情が高まると目が紅くなるんだ」

 

なんかジ○リの○蟲みてぇだな…

 

 

「とりあえず君の処遇についてだが…君は帰る事ができるのかい?」

 

「ムリダネ。遠すぎてもう帰ることはできそうにないヨォ」

 

「ふむ…両親とは?」

 

「死に別れタネ」

 

俺がな

 

「そうかい…」

 

そう言うと周りの空気が心なしか重くなる。

 

「…なら君を我が家で預かろうと思うんだが、どうだい?」

 

 

ふむ、悪くない提案だ。何しろ俺は今無一文だしこの世界の事がよくわかってない。この人達はなんとなくいい人達の様な気がする。俺の勘がそう言ってる。ま、なんとかなるかぁ…

 

「ジャアお言葉に甘えさせて貰おうカナァ」

 

 

「そうか!私は紅魔族の族長かみつれ!これからよろしく!」

 

 

か、かみつれ?それ本当に名前か!?この世界ではそれが常識なのか!?ま、まぁいいや。

 

「改めテ、ボクはマホロア!よろしくネ!」

 

「じゃあこの子は我が家で保護するとこになった!これにて解散!」

 

 

こうして俺は紅魔族の族長の家にお世話になる事になった。

 

集会所から出ると空はもう赤くなっていた。そして、みんな≪テレポート≫と叫んで消えた。

すげぇ!あれが魔法ってやつか俺の特典にも似たような奴があるけど…まぁ明日試してみよう。

 

そう思って族長さんの後ろを飛んでついていくと、いつのまにか家についていた。

 

「さぁ!ここが我が家だよ!これからはここを自宅と思って使うといい!」

 

見ず知らずの人(?)にここまで優しくしてくれるとは…この人めっちゃいい人やん。

 

「タダイマ!」

 

そう言って俺は新しい我が家に入る。

 

「ここが君の部屋だ。自由に使うといい。困った事があったらリビングにいるから呼んでくれ。夕食の時になったら呼びに来るよ」

 

そう言って族長さんは部屋を出て行く。

 

部屋には一通りの家具があってなかなか広い客室と言ったところだろうか。

 

とりあえずベッドの上に横になって頭の中を整理してみる。

 

いろんな事があったなぁ…死んで自分の欲しい能力を貰って新しく転生…するはずがアノ駄女神のせいでマホロアとして転生。転生してから初めて人に話しかけると水瓶を投げつけられて齧られて殴られて拉致されて今に至る……か。

 

うん、散々だな!なんだこれ!最初から何一ついい事がねぇな!強いて言うなら住むところを見つけれた事だけが唯一の救いだなぁ…

 

そう軽く憂鬱になっていると

 

トンットンッ

 

ドアがノックされる。族長さんかな?

 

「ドウゾー」

 

そういい中に入ってきたのは…

 

「お、お邪魔します…」

 

 

昼間の女の子(長女?)が入ってきた。

 

 

予想外の来客に思わず固まってしまう。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

「エ?あ、ウン!ダイジョウブダヨ!」

 

ついついきょどる俺。

 

「ソ、ソレで君はどうしてココ二?」

 

「あ、私族長の娘のゆんゆんです」

 

もう名前については何も言わんぞ。

 

「ゆんゆんか!ボクはマホロア!よろしくネ!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「ア、それと敬語はやめてクレ。ボクは居候の身だしネ」

 

「わ、わかりまし…わかったわ。よろしく」

 

「ウン!ヨロシク!」

 

「じゃ、じゃあ一つ質問いい?」

 

「構わナイヨ」

 

「マホロアって一体何者なの?」

 

まぁそうくるわな、うん。

 

俺は大人達にした話と同じ話をした。

最初は興味津々に聞いていたゆんゆんだが、俺がこの体になったあたりで急に顔を青ざめさせて

 

「ご、ごめんなさい!」

 

急に謝ってきた

 

「エ?どうして謝るノ?」

 

「だ、だって私のせいでマホロアが人じゃなくなったんでしょ!?」

 

あぁ…そゆことね。

 

「ウウン、違うヨ。悪いのは全部その青い髪のおバカさんダヨ。だから多分ゆんゆんのセイじゃないヨォ」

 

そう、全て悪いのはあの駄女神なんだ。今度会ったらジャイアントスイングしてやろ。

 

「で、でも私のせいかもしれないんでしょう!?」

 

「マァ、そのカノウセイがないわけじゃないケド…」

 

「じゃあ元の姿に戻る方法はないの?」

 

「タブンないと思…」

 

いや、あったわ…あの駄女神確か「魔王を倒したら願いを1つ叶えてくれる」て言ってたな。それなら戻れるんじゃないか?神様だし。なんでもって言ってたし。

 

「どうしたの?」

 

そう言って顔を覗き込んでくるゆんゆんに俺は言った。

 

「イヤ、あることにはあるヨ。マオウを倒して神に願いを叶えてもらうっていうネ」

 

「え!?」

 

と、驚愕の表情を浮かべるゆんゆん。そして

 

「え、えっと私にできる事があったらなんでも言ってね?」

 

ほう…なんでもか…

 

「ジャア!ボクと一緒に旅をしヨウヨ!」

 

「え?」

 

ゆんゆんは何を言われたのかわからないのか頭の上に?を浮かべたような顔をしていた。

 

「ダカラ、マオウを倒すためにボクはそのうち旅にデル。その時ゆんゆんもついてきて欲しいんダ!」

 

「わ、私なんかでいいの?」

 

「ダイジョウブ!実はボクも魔法が使えるし、結構強いはずダカラ!」

 

ふむ、少し強引だったかな?でも目の前にぶら下がるチャンスをみすみす逃すのはもったいないだろう。それにパーティに美少女がいるとモチベが上がる。

 

「や、やった!私、人見知りが激しくて…外に出てもパーティを組めるかどうか不安だったんです」

 

あれ?普通こんな相手の失言につけこむようなマネをしたら嫌そうな顔するのに…

 

「ナ、ナラちょうどよかった!これからは仲間だネ!」

 

何はともあれ仲間ゲットゥ!いろいろあったけどやっぱりいい事ってのもあるもんだな!

 

「ならさ!ゆんゆんの事も教えテヨ!」

 

「え?」

 

「ダカラ!ゆんゆんの事とかこの里の事、他にもいろいろ知りタイナァ」

 

「えっとね、それじゃあ「マホロア君、ご飯ができたよー」」

 

ゆんゆんから話を聞こうとしたところで族長さんがドアから入ってきた。

 

「おや、ゆんゆんとはもう会ったのか。マホロア君、ゆんゆんと仲良くしてやってくれ。その子はどうも友達が少なくてね…」

 

 

「ちょ、お父さん!?その話今は関係ないでしょ!?」

 

まじかよ…この子アレか、俗に言うボッチって奴か…じゃあせめてものお礼にこの子に友達をたくさん作ってあげよう!

 

「ま、まぁご飯ができたからリビングにおいで。マホロア君の口に合うといいんだが」

 

「アリガトウ!ボクは基本なんでも食ベルから大丈夫ダヨ!」

 

**************************

 

「と、そんなワケでゆんゆんとボクは旅をしようと思うんダケド…いいカナ?」

 

「ハッハッハ!構わんよ!ちょうどゆんゆんは外に出ても仲間を作れるかどうか不安だったんだ!マホロア君、ゆんゆんをよろしく頼むよ!」

 

「よかったわねぇゆんゆん、もう旅仲間が見つかって!」

 

そう言って族長さんと奥さんは笑う。ちなみに、奥さんは「るんるん」という名前だ。ともかく両親から承諾を得られてよかった。ちなみにゆんゆんはさっきから照れてるのか顔を赤くして俯いてる。

 

あぁ〜楽しいなぁ〜こんな風にいろんな人と話しながら食べる食事はいつぶりだろう…

 

そんな楽しい夕食は終わり、俺はゆんゆんといろんな話をしていた。

 

「トコロでゆんゆん。妹達はどこにいるノ?」

 

「え?私は一人っ子よ?」

 

「アレ?じゃあ昼間にいた他の二人ハ?」

 

「あぁ、同級生のめぐみんとその妹のこめっこちゃんの事ね」

 

え?同級生、あの中くらいの子とこの子が?

 

「…ゆんゆんっテ、今何歳ナノ?」

 

「?12歳だけど」

 

「!?」

 

まじか!このスタイルで12歳…だと?将来有望過ぎるだろ!流石異世界…いろんなところがダイナミックだな…ん?

 

「ネェゆんゆん。同級生って事は学校がアルノ?」

 

「?あるわよ、ただ紅魔の里以外にあるとは聞いてないけど…」

 

その後俺はゆんゆんと学校について話した。12歳までは一般的な教養を身につけて、12歳からは学校で魔法の勉強をするらしい。そして普通の人は上級魔法というのを身につけると卒業するらしい。ちなみにその話をしている際に紅魔族特有の名乗りがある事を知って、どんなものかゆんゆんに見せてくれと頼んだところ、顔を真っ赤にさせながらも名乗りあげてくれた。名乗りは正直引いたがゆんゆんが照れて可愛かったのでどうでもよかった。

 

そうしている内に眠くなったので2人(?)ともそれぞれの部屋に戻って寝た。

 

 

**************************

 

翌日

 

俺は今、冒険者カードを作りに族長さんと出かけている。ちなみにゆんゆんは朝早く学校に行ったので会えなかった。

 

「君は魔法は使えるのかね?」

 

「使えるヨォ。とっても強力でかっこいいのガ!」

 

「おぉ!それは楽しみだ早く見せて欲しいなぁ」

 

「カードを作ったら見せてあげるヨォ!」

 

そう話してる内にギルドに着いた。

 

「いらっしゃいま………!?」

 

ウエイトレスさんが俺を見て固まる。まぁそりゃそうだわな。

 

「えっと本日はどういったご用件で…」

 

俺の方をチラチラと見ながら族長さんと話すウエイトレスさん。

 

「今日はこの子の冒険者カードを作りに来たんだ」

 

「!?」

 

まじかよお前って顔をしながら俺と族長さんを交互に見るウエイトレスさん。わかるけどされた方からするとなんかムカつくな

 

「で、では奥のカウンターにどうぞ」

 

そう言って受付まで案内される。

 

「えっと…ここに必要事項を記入してください」

 

そういい差し出してきた紙には、

 

・名前

 

・性別

 

・身体的特徴

 

などが書かれていた

 

マホロア…男…と書いていたペンが止まった。

 

「アノォ、身体的特徴ってボクは何を書けばいいのカナァ?」

 

人間から見ればこの項目に書ききれないほどかけるがマホロア視点だと今の俺は「普通」なのだ。

 

「うーん。浮いてるでいいんじゃないかな?」

 

「ナルホド」

 

ここはもう任せておこう

 

「は、はぁ…では次にこの装置に手をかざしてください。あなたの身体的ステータスなどを鑑定する魔道具です」

 

ふむふむこれで自分のステータスやアビリティがわかるわけだね。

 

そう思いながら手をかざしてカードを作る。すると

 

「はい、有り難うございます。えぇとあなたのステータスは…ハァァァァ!?なんですかこのステータス!!!魔力や知力、後生命力がありえない数値になっていますよ!!!?貴方一体何者なんですか!?」

 

「マホロアダヨォ」

 

もう説明すんのもめんどくさくなったのでこの一言で済まそう。

 

「凄いじゃないかマホロア君!君そのステータスならアークウィザードになれるのではないかい?」

 

「はい!問題なくなれますね!じゃあ職業はアークウィザードに………あれ?」

 

ん?

 

「ドウしたノ??」

 

「あの、職業選択の欄に一つ得体の知れないものがありまして。」

 

何それこわい

 

「チナミにそれハ?」

 

「≪魔術師≫と書いてあります。」

 

「ジャアソレで」

 

「え、あっはい。かしこまりました。では職業は≪魔術師≫で…」

 

…多分アレだな。チートのせいだな。恐らくチートを心置きなく使えるような職業なんだろう。

 

「ようこそ!冒険者の世界へ!私達は貴方の活躍に期待しています」

 

そう言って冒険者カードを渡してくる

それにしても似たようなセリフを昨日聞いたような…

 

「本当にアークウィザードじゃなくてもよかったのかい?」

 

「ウン、多分これが一番ボクにあってると思うんダ!」

 

と冒険者カードに目を通す。

 

ステータスは何が基準なのかよくわかんないけど高いらしい。ちなみに種族はマホロアになっていた。マホロアってなんだろう(哲学)

 

ふと、スキル習得欄に移動するするとそこには

 

 

・習得済み

魔力球lv1

ワープ

 

マホロアパック1 (15p)

・マホロア砲lv1

・キルニードルlv1

・ワープホール

 

マホロアパック2 (25p)

・レボリューションボウル

・虚無の波動

・リフバリア

・ブリザード

 

ブラックホール (35p)

 

ローア召喚 (40p)

 

 

うん?あれ?これってまさか…

 

「族長サン族長サン、スキルってどうやって取得するのかについて教えてヨ」

 

「スキルはね、ある程度のスキルポイントを消費して取得するんだ。モンスターを倒したり、そういう食べ物を食べることでレベルが上がる。その時にスキルポイントも増えるんだ。ちなみにスキルアップポーションというのを飲んでもスキルポイントを得られるぞ!」

 

「………」

 

これはあれか、つまりは

 

 

 

自分で覚えろってことカァァァァァァ!!!!

ダメだった!!マホロアそのものになるバグの他にここにもバグが出ていた!!どんだけバグだらけなんだよ俺は!チー○ーマンかよ!

つーかマホロアパック1ってなんだよ!!カードゲームじゃねぇんだからさぁ!!

 

「それで、君の魔法を見せてくれるのか!」

 

「エェ、ア…一部だけナラ…」

 

かなりがっかりしながら、俺達は外に出る。

 

「トリあえず、初期に覚えてた物を出してみるカナ?」

 

そういい手を空に掲げ、力を入れる。すると…

 

キューという音と共に手のひらの上にはバスケットボールくらいの紫のボールが浮いていた。

 

おぉ!自分で出しといてなんだけどこれスゲェな!ほとんど何もできないけど今ならなんでも出来る気がする!そんな感じ。

 

「それが君の魔法かい?それでそのボールをどうするんだ!?」

 

少し興奮気味に族長が言ってくる。

 

俺はそれを思いっきり近くの木に向かって振り下ろした。

すると魔力球はまっすぐ木に飛んでいくと…木に当たった瞬間破裂し、木の表面の皮を削った。初期にしてはなかなかの威力ではないだろうか。

 

「見たことない魔法だ…他は…他にどんな魔法が使えるんだ!?」

 

「アトはこれダネ!」

 

その木のそばに意識を集中させ手を素早くクロスさせる。すると自分の目の前に木があった。いや、自分が木の前に移動したのだ。

 

「コレが、ワープダヨォ!」

 

「ボクの視界の中ならどこでも瞬時に移動できるんダ!」

 

そういいながら族長の後ろにワープする。

 

「…テレポートではなく好きな場所にワープすると…凄い。他にはどんな魔法あるんだ!?」

 

俺も使って見せてやりたいよ!でもできねぇんだよチクショウ!

 

「ミセたいのはヤマヤマなんだけど…技の大部分が封印されてて使えないんダ…」

 

それによく見てみると第三形態の技がねぇ…除外されたのか?

 

「格好いい…だが、それは残念だ…」

 

一瞬目を紅くさせがっかりする族長。

 

「デ、デモスキルポイントがあればいろんな魔法が使えるヨ!」

 

「そうか!」

 

うーんこれからどうしようか…早くいろんな魔法を使いたいしレベル上げするしかないかなぁ…でもワープと魔力球だけでモンスターが倒せるか?

 

そう思ってると族長が

 

「マホロア君、君学校に行ってみないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ローパー召喚の奴は入れようと思ったけど召喚した後どうなるかわからないからダメになりました。

魔力球lv1. ノーマルのマホロアが使う紫の球。
lv2で赤黒く lv3で深緑色に。

キルニードルlv1 ノーマルのマホロアが使うキルニードル紫の針。 lv2では深緑色になってトゲも生えてくる。
*ワープホールと合わせることでキルニードルワープになる。

マホロア砲lv1 ノーマルの(ryが使う白いビーム
lv2ではコーラみてぇな色になる
*ワープホールと合わせるとマホロア砲ワープになる。

ワープホール どこでもドアの容量。

レボリューションボウル 魔法陣から回転する3つの火の玉を打ち出す。

虚無の波動 凍てつく波動の容量。バフなどの解除

リフバリア 本編おなじみのクソバリア。演出のための技だったが、今作品では弱い魔法、物理を無効化し、そこそこの攻撃なら5回無効化する感じ。

ブラックホール なんでも飲み込むダイソン。吸い込まれたら亜空間の中でもみくちゃにされる技。

ブリザード 完全に忘れてた。リフバリアの演出の時に使ってた技。

ローア召喚 空飛ぶ船ローアを召喚する。今作品のローアはアナザーディメンションに行く能力はない。

第三形態の技はそのうち出す予定。







なかなか自分の思う通りに物語が進まない。小説って難しいね。これからも頑張ります。
批判、感想、なんでもお待ちしております。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話 ほのぼの?学校生活

今回は学校回。
本当はもっと進む予定だったけど区切りが良かったので切りました。


「ト、言うわけで明日カラ学校に行くことになったヨ。ココにソードマスターをテレポート」

 

「本当にその姿で大丈夫なの?ソードマスターにクルセイダーで攻撃」

 

今俺たちはゆんゆんが持っていたチェスみたいなボードゲームで遊びながら今日の事を話していた。

 

「ムゥ、なかなか手強いネェ。マァ説明すればわかってくれるダロウ…紅魔族はいい人ばっかりダシ…アーチャーでクルセイダーを援護」

 

「うぅ…アークウィザードでソードマスターを攻撃。…ところでマホロアの職業ってなんなの?」

 

「アァ…エエット説明するのが難しいからコレを見てクレ。」

 

そう言って俺は昼作った冒険者カードを渡す。

 

「ま、魔術師!?こんな職業見たことないんだけど!?」

 

「ソレ親父さんにも言わレタ。…ウィザードでアークウィザードを氷結」

 

にしてもこのボードゲーム、なんでもありすぎるだろ。最初のうちはルールがわからなくてゆんゆんにボッコボコにされたが今はもう普通に戦える。百聞は一見にしかずってね。ルールを説明されてもわけわかめでした。

 

「それに見たこともないスキル…本当にマホロアって何者なの?」

 

「マホロアはマホロアダヨォ〜。ササッ、早く続きヲ」

 

「ウィザードの氷結魔法をクルセイダーのデコイで防御…ところでもう魔法を覚えてるなら学校に行く必要ってないんじゃ…」

 

「イヤ、この世界のことも勉強したいシ、ボクの魔法もどんどん解放していきたいシネ……ところでゆんゆん…罠にかかっタネ!」

 

クルセイダーを動かしたことで王様からアーチャーまでのマスがガラ空きになる。

 

「あ」

 

「アーチャーにプリーストのブレッシング!ソシテ狙撃!チェクメイトダ!」

 

初めてゆんゆんに勝った…まぁ俺の冒険者カードが目を引いていたお陰なんだが…でも勝ちは勝ち!ナイス!俺の冒険者カード!

 

「マホロア上達が早すぎるわよ…。でもいつも一人でやってたから友達とやるのがこんなに楽しいなんて思わなかった!ありがとう!マホロア!」

 

あぁ…なんか切ないなぁ。いつのまにか友達になってるけど悪い気はしない。これからも俺が相手になってあげよう…そうしよう。

 

「トモカク、明日はボクも学校があるし今日は早めに寝るネ」

 

「わかったわ…本当はもっと遊びたかったけど…またこれからたくさん遊べるしね!おやすみ!マホロア!」

 

「ウン、オヤスミー」

 

そう言って部屋から出て行くゆんゆん。なんかすっごい楽しそうだったな。ゴムボールで遊ぶ子犬みたいだったよ。

 

そんな事を思いながら俺は布団に潜る。

 

にしても明日から学校かぁ〜どんな学校なんだろう。あっちの学校みたいなのか…それともハ○ーポッターみたいな学校なのか…できれば後者がいいなぁ〜なんか楽しそうだし。後この世界の魔法はどんなんだろ。俺の魔法は見たことないって言ってたし…人によって姿が変わる守護霊獣を呼び出すとかそんな感じなのか?それに魔物ってなんだろう吸魂鬼とかいるのかなー。

 

 

考えてもキリがないしもう寝よう。明日あたりにみんなに聞いてみたりしてみよっと。それにしても昨日から何か大事なことを忘れてるような…こう…なんだろう…人として失ってはいけないって感じがするようなものが…

 

ま、いっか!

 

*****************

 

(^q^)ツギノヒー

 

「ワが名はマホロア!紅魔の里に召喚されし魔術師にシテ、固有魔法を操るモノ!ソシテ…いつかは自分の姿を取り戻すタメに魔王を屠るモノ……ヨロシクネ!」

 

「いい自己紹介だったぞマホロア!じゃあみんな、これから仲良くしてやってくれ」

 

俺は今、大勢の美少女達の前で決めポーズをして、前の世界なら黒歴史直行物の自己紹介をしていた。誤解しないで欲しいのだがこれは紅魔族なら当たり前の自己紹介なのだ。以前の俺がこんなんだったわけではない。…本当だよ?

しかし紅魔族流の自己紹介はちゃんとしたはずなのにみんな( ゚д゚)って顔をしている。どこかおかしいところがあったのかな?ゆんゆんに至っては真っ赤になった顔を両手で覆っている。

 

「じゃあみんな、今からマホロアへの質問時間とする。質問があるやつはいるか?」

 

と俺の担任となる予定の先生ぷっちんが言う。なんかプリン食いたくなってきたな…それはそうとして先生がそう言った瞬間ゆんゆん以外の生徒が一斉に手を挙げる。目を紅く光らせながら…

 

「じゃあ…一番手を挙げるのが早かったあるえ!」

 

そういい先生は一際紅く目を光らせて、毛先がカールしている右目に眼帯を当てたいろんな意味で大人びている生徒を当てた。つーかこの子達本当に12歳?サバ読んでんじゃねってくらい大きいんだが…どことは言わんが。

 

「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!」

 

自分でも自覚してんのね…

 

「えっと、…マホロアだっけ?ちょっと長くなるかもしれないけど質問いいかい?」

 

「構わないヨ」

 

そういい少女は大きく息を吸うと…

 

「まず君は何者なんだい?そして元に戻るための旅というところを詳しく…それとその姿になったのには一体どんな経緯があったのかも知りたい…それに君はどうやって浮いてるのか。後、召喚とはどういうことなのか、誰に召喚されたのか。魔術師って事は職業はアークウィザード?それとも別の職業?別の職業ならそれが何なのか、それに固有魔法というのは一体どんなものなのか教えて欲しい。それに(ry……」

 

あるえは一通り質問を終えると小さく息を吸って、席に座りメモ帳を取り出した。そして今か今かと俺の回答をお待ちになっていらっしゃる。

うん、この子…質問が多いよ!みんなが聞きたいことを代わりに一人で代弁したって感じだよ。ほらみんなまた( ゚д゚)って顔をしてる。

 

「エット…順番に答えていくね…まずは…」

 

それから俺は転生されてから3回目になる回答をした。

それに加えて魔王を倒すと願いを叶えて貰うという事を話した。

 

「アトは召喚された事についてダケド…サッキも言った通りおバカな駄目人間サンのせいだから関係ないんダ。….デモ強いて言うならソコのゆんゆんに召喚されたって事になるのカナ?」

 

「ゆんゆんが召喚した!?」

 

そうあるえが言うとクラスのみんなが一斉にゆんゆんの方に向いた。ゆんゆんは突然の事にビックリしたのか顔を手で覆ったままその場に俯いてしまった。

 

「ゆんゆん…後で君にも話を聞かせてくれるかい?」

 

ごめんねゆんゆん…つい口が滑っちゃった★

 

「アトは固有魔法についてダケド…今は封印されていてアマリ使えないけどこんなのとかダヨ!」

 

そういい俺は右腕を天井にかざし、魔力球を出現させる。クラスのみんなもゆんゆんから目を離し、視線は魔力球に集まる。俺は魔力球を破裂しないようにゆっくりと教卓の上に置いて

 

「アトはこれダネ!」

 

そういい俺は教室の後ろにワープする。俺がいきなり消えたので教室がざわざわするが

 

「こっちダヨ!」

 

そう言うとみんな一斉に後ろを振り返り。拍手を貰う。するとあるえが

 

「確かに見た事もないし聞いた事もない魔法だ!すごい!封印中の魔法についても聞いていいかい?」

 

「構わないケド、口で説明するのがムズカシイからそれはまた「パァン!」」

 

突如教室の前から何かが破裂した音が聞こえる。みんな前の方に向き直ると…

 

「…何をやってるんですか先生…」

 

先生が俺の魔力球に触ったのか教卓の机の部分が吹っ飛んでた。先生と共に…

 

「ト、言う感じデ、そこそこ危ない魔法ばかりダカラまた今度話スヨ…」

 

 

*****************

 

 

「…スッゴイ疲れる1日ダッタ…。」

 

「人気者で羨ましいなぁ…マホロアは…」

 

そんな事があった初日の放課後。俺は昼休みとかも生徒のみんなに話をしていたのでとても疲れた。ちなみにゆんゆんのとこにもあるえがメモ帳を片手に迫っていた。はよ帰ってプリンでも食べようと思ってたら。

 

「少しいいですか?」

 

不意に後ろから声をかけられて振り返ると…一昨日水瓶を投げつけていた。少女がいた。確かめぐみだっけ?

 

「ウン、別にいいケド…」

 

「ならよかったです。ついてきてください」

 

「ワカッタ。ゆんゆん、先に帰っていてクレ」

 

そう言い残し俺はめぐみ?の後をついていく。着いたのは校舎裏だった…

 

「エット…めぐみ?「めぐみんです」…めぐみん…ドウシテここに?」

 

めぐみんだった…そんな事よりも俺は一体どうなるんだ…あれか!転校生にこの学校での上下関係を教える不良みたいに俺をシめるのか?なんか古くね?

 

「まずは先々日の事は謝ります。いきなり水瓶を投げつけたり、石で殴ったりしてすいませんでした。」

 

そう言ってめぐみんは頭を下げてくる。

お!これは違うパターンだ。謝罪するのが恥ずかしいから人目のつかないとこまで来たってとこかな?

 

「ウウン、気にしないでクレ。ニンゲン誰しも間違いなんて「ですが」」

 

 

めぐみんは顔を上げると紅く光った目をこちらに向け。

 

「私はまだあなたを信じたわけではありません」

 

うん、前言撤回これはシめる方向だった。

 

「あなた、ゆんゆんを誑かして仲間にしたそうではないですか。何故仲間にしたのか教えてもらおうじゃないですか。事と次第によっては…」

 

そうは言うけども魔法使える俺に勝てるわけがないんだよなぁ。でもここで手を出したら確実に俺は里から追い出されるか叩きのめされるし…ハァ…

 

「ウン。確かに弱みに付け込んだトハ思ってるし、悪い事もしたと思ってル。ケド、ボクだって早くホントの姿に戻りたいンダ。わかってくれないカナ?」

 

確実にこちらが不利だしここは正直に言おう。

 

「…わかりました。ですが私はまだ信じたわけではありませんよ?」

 

ぐぬぬぅ

 

「ドウしたら信じて貰えるノ?」

 

今はめぐみんの信用を勝ち取るのが最優先だ。そのためならなんでもしよう。

 

「そうですね…なら…」

 

そう言いめぐみんはニヤリとする。なんか嫌な予感が…

 

「ならば!これから毎日私に昼食を作ってきてください!」

 

「エェ…めんどクサイ」

 

「この場であなたに脅されたと叫び回ってもいいんですよ?」

 

「ワー!わかっタヨ…作ればいいんデショ?めぐみんも大概ダヨネ…」

 

うーん。まだ無理難題とか多額の金とかを要求されないよりましか…にしても俺は朝弱いから超絶めんどくさいんだが…仕方がないか…

 

「じゃあ明日からよろしくお願いしますよマホロア!」

 

「ハイハイ、やればいいんダロォ?めぐみん」

 

「あ、そうそう」

 

不意にめぐみんがこちらに振り返る。

するとにへらと笑って

 

「めぐみんじゃなくて、

めぐみん≪さん≫

ですよ?」

 

この女ぁ…こいつなかなかいい性格してやがる…

 

そう思いながら教室に荷物を取りに行くと…

 

「帰っててクレと言ったノニ…」

 

ゆんゆんがいました。

 

「帰れるわけないじゃない!いきなりめぐみんに呼び出されてどうなったのか気が気でなかったんだから!」

 

それはどっちの意味だろう。俺がめぐみんに何かされるという意味か、それとも逆か。あるいは両方?

 

「マァ、その話は帰りながらでもするヨ。とりあえず帰ロウ、今日は疲レタ…」

 

その後俺はゆんゆんと共に家へ帰る。ゆんゆんには、俺がめぐみんに頼み事をされたと言っておいた。

 

「アー、ゆんゆん。明日弁当を作るトキ、ボクを起こしてクレル?」

 

「え?どうして?…もしかして今日私のお弁当美味しくなかった?」

 

そう言って顔を青くするゆんゆん。目も潤ってる…

 

「イヤイヤ!ゆんゆんの弁当はとってもオイシかったヨ!これから毎日食べタイくらい!デモその頼み事の件で明日いろいろ作らなきゃいけないンダ…」

 

「そ、そうなの…よかったぁ」

 

はぁ…めんどくさいなぁ。どっちも…

 

 

*****************

 

 

次の日から俺の新たな習慣が始まった…

 

翌日

 

「おはようめぐみん!」

 

「おはようございますゆんゆん。それで、例のものは持ってきましたか?マホロア」

 

「ハイハイ…持ってきたヨめぐみん…「ん"っんん」…めぐみんサン…」

 

完全に尻に敷かれてしまった…年下に尻に敷かれるとは屈辱だなぁ…

 

「お願いってめぐみんに弁当を作る事だったの?」

 

「ソウダヨ…」

 

「じゃあ、…これからは勝負しないの?…」

 

寂しそうに言うゆんゆん。実はこの2人ライバル関係であり、いつもゆんゆんが勝負に負けては弁当をさらわれるらしい。

 

「いえ、ちゃんとゆんゆんとも勝負して弁当をいただきます。」

 

パァと顔を輝かせるゆんゆん。昨日のといい今日のといいこのめぐみん。ゆんゆんのことが本当に好きなんだなぁとわかる。うん。美しきかな友情愛。

それはそれとして

 

「太るヨ?」

 

「あぁ?」

 

「ゴメン」

 

「はぁ、余った分は妹に食べさせます」

 

こいつの妹…あぁ、あの噛り付いてきた子か…本当に飢えてるんだなぁ。この家族。可哀想だから次は多めに作ってやるか…

 

「んぐんぐ…ぷはー!まぁ普通って言ったところですかねマホロア。よくもなく悪くもなく普通です。次はもっと美味しくしてきてください」

 

前言撤回。こいついつか復讐してやる。

 

*****************

 

それから何日かたったがこの習慣を続けていたが…

 

「マホロア、今日のこれは手を抜きましたね?次やったら許しませんよ?」

 

「マホロア、今日のはなんだが味がパッとしません。明日からは私の事をめぐみん様と呼んでください。」

 

「マホロア、今日のは…」

 

「マホロア…」

 

「マホ…」

 

「アホ」

 

こいつぅ!日に日に態度がでかくなってきやがる!もういい、今こそ復讐の時だ!目に物を見せてやるぜめぐみん様よぉ!

 

*****************

 

「お、今日のは張り切ってますね。量も見た目も大違いです。」

 

「ハイ!めぐみんサマ!今日はイツモよりも朝早く起きテ、イツモよりも制作にこだわっテ、イツモよりも感情を込めて作ったんダァ」

 

復讐心という感情をなぁ…

 

「サァ!召し上ガレ!」

 

「ふむ、いただきます」

 

そう言ってもぐもぐ俺の作ったハンバーガーを食べるめぐみん。クククいいぞ、その調子だ…どんどん味わえ…そろそろかなぁ?

 

「ほむほむ、いふもとあんまりかわら……………ゴフッ!?!!!?!」

 

突然ハンバーガーを咳き込むめぐみん。ククク始まったか…

 

「ど、どうしたの!?めぐみん!マホロア!このハンバーガー何が入ってるの?」

 

「ン〜?大量のコショウとタバスコダヨォ?」

 

「み、水っ!!!」

 

「オット」

 

めぐみんが慌てて水筒に手を伸ばすが俺はそれを即座に抱え高く飛ぶ。

 

「ま、マホロア!!!!謀りまひたね!!!今なら許ひてあげまふ!!だから水を!!」

 

めぐみんが必死に俺に訴える。が、

 

「エェ〜、ヒト(笑)に物を頼む時の態度ってものがあるダロォ?クックク…まずは「調子に乗ってすみませんでした。」って言ってみよウカ」

 

「ごめんなさい!!!今まで調子に乗ってすみませんでした!!!だから早く降りてきてくださいマホロア!!」

 

「アァ、それともう一つ」

 

俺はにへらと笑うと

 

「マホロアじゃなくて

マホロア≪さん≫

ダロォ?」

 

めぐみんは目に涙を溜めながらとても悔しそうな顔をして

 

「今まで調子に乗ってすいませんでした…マホロア…さん」

 

「ヨロシイ」

 

そう言って俺は下に降りてめぐみんに水筒を渡す。めぐみんは水筒を受け取ると勢いよく飲みだした。

 

「ねぇマホロア?いくらなんでもやりすぎなんじゃ…」

 

「ゆんゆん。コウいうのは一度痛い目を見なきゃいけないンダヨ?」

 

俺は何か疎むような視線を送るゆんゆんにそう言った。日頃の恨みってやつなのさ…許せゆんゆん。

 

そう言ってるうちにやっと落ち着いたのか水筒から口を離すめぐみん。そして目をこれでもかと紅く光らせ、ゆらりとこちらに振り返り。

 

「っ!!」

 

つかみ掛かってきたが

 

「甘いヨ!!」

 

華麗に回避そのまま廊下へ出てめぐみんと追いかけっこを繰り広げる。

 

「クックク…クラスで一番体力がないのにボクに追いつけるわけがないダロォ?」

 

「っ!!!!」

 

もはや言い返す余裕もなく怒り狂い追いかけてくるめぐみん。怖えよ

 

「オニさんこちら〜手の鳴る方へ〜!」

 

めぐみんを正面に捉えて手を叩きながら小学生みたいな煽り文句を言う俺。

 

「ふぅ!ふぅ!」

 

既にもう疲れてきているめぐみん。だんだんと追いかけるスピードが遅くなっている。

 

「クックク…ハッハッハ!めぐみん!どうしたノ?ボクを捕まえるんじゃなかったのカイ?」

 

やっぱり復讐っていいよね!憎き相手の悔しそうな顔を見るのって大好き!

 

そんな事を思ってると

 

 

 

「ヘブゥ!!!」

 

突如ガン!と後頭部に鈍い痛みが走り。俺は廊下に倒れる。

 

「ウゥ…イタイ…」

 

見上げると俺の視界の先には時計があった。ほら学校の廊下の時計って天井とか柱とかから固定されてるだろ?アレだ。

 

そんな風に時計を恨めしく見てると俺の視界に2つの真っ赤な目が映り込む。

あ…やべっ死んだ

 

「ナァめぐみん。話をしよう。ナ?コレはあれだヨ。チョットした好奇心ってやつダヨ」

 

そう言うとめぐみんはにっこりと笑い俺の事を持ち上げる。そしてギリギリと力が入っていき……

 

「チョット!!めぐみん!ゴメンっテ!!待っテ!話せばわかる話せばわかアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!」

 

その時のマホロアの悲鳴は学校中に轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱりマホロアは黒い一面がないとね。
ゲスいところ書いてる時が一番楽しかったです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話 とあるボッチの友達作り

今回は少しだけ作者の独自の解釈が含まれております。


そんなこんなと日常を過ごしていたのだが、気づいたことが二つある。

ちなみにめぐみんとは互いに見下したり脅したりしないという約束の元、停戦契約を結んだ。…余談だがそのあとも俺は貧乏で可哀想なめぐみんの為にお昼ご飯を作ってる。別に見返りを求めているわけじゃないしただの善意だったんだが…

 

 

 

**************************

 

 

「これはなんですか?また檄物でも持ってきたんですか?」

 

「違うヨォ、めぐみんはホントーに飢えてるみたいだから作ってあげてるだけダヨ。タダの善意だから受け取って欲しいナァ」

 

「…怪しいですね。本当に何も入れてませんか?この間のが軽くトラウマなんですが…」

 

「めぐみん!マホロアはあの後ちゃんと反省していたのよ!流石にやり過ぎたって、だから受け取ってあげてめぐみん!」

 

「そんなに言うならゆんゆん。あなたが毒見をしてください」

 

「えぇ!?…わ、わかったわよ…えっと、マホロア?ほ、本当に何も入れてないんだよね?」

 

「心外ダナァ、何も入れてないっテバ」

 

「そ、そう…………………ん、普通においしい……」

 

「そうですか。ではゆんゆん、私のお昼ご飯を返してください。今食べた分はあなたの弁当で我慢してあげますよ」

 

「えぇ!?毒見してって言ったのはあんたでしょう!?なんで勝負もなしに私の弁当をあげなきゃいけないのよ!」

 

「私は毒見をしろと言っただけで誰も食べろとは言ってませんよ?ほら早くマホロアの弁当とあなたの弁当をください。くれないのなら学校中にあなたが私の弁当を盗んだって言いふらしますよ?」

 

「や、やめてぇ!わかったわよ!弁当はあげるから!」

 

「クックク、やっぱりイイ性格してるヨネェ、めぐみんは」

 

「あなた程ではないですよ」

 

 

 

**************************

 

 

 

という事があったが、今は素直に受け入れてくれている。

話が逸れてしまったんだが、まず気づいた事が一つ。実は俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレなんてしません。

 

 

 

 

 

 

 

 

びっくりした。何にびっくりしたってトイレをしなかった事に全く気づかなかった自分にびっくりした。前々から人間として何か失ったような気はしてたんだが気づくまでに数日かかった。だって全く尿意も便意もなかったんだからさぁ。

ちなみにお風呂に入ってる時に自分の体を色々探ってみたんだが、この体に口以外の穴がない!一体食べたものや飲んだものは何処に消えたのか…。

しかしそんな事はどうでもいい。もっと大変な事に気付いたのだ。

 

 

 

 

 

 

俺は自慰行為する事が出来ない…

 

 

 

 

 

 

これには流石の俺も絶望した。この間下級生の女の子達に「かわいい!」と言いながら抱きつかれたその夜。久しぶりにムラムラしたからしようと思ったんだが…そこでこの事実に気付いた。前世でもエロ大魔神だった俺にこれ以上の苦痛があると思うか!?いや無いね!だから俺は自分の内側で増殖し続ける欲望を発散するかのようにここ最近は森でモンスター狩りをしている。

 

 

そしてもう一つ気付いた事というのは…

 

 

ゆんゆんはマジで友達がいないという事だった。

学校でも話しているのはめぐみんか俺、たまーにあるえと話しているがそれ以外の人とはあまりというか全く接点が無い。

 

これは流石にマズイっしょ…、大事な青春の一部なんだ。ゆんゆんにはそれを寂しく過ごして欲しく無い。だから俺は決意した。未来のパーティメンバーとしてそして友達としてゆんゆんに友達を作ってやろうと!

 

「ネェゆんゆん。ゆんゆんにはボクとめぐみん以外に友達は何人いるノ?」

 

「え!?えっと………ひと……りだけ……それに…めぐみんは友達じゃなくてライバルで………」

 

おぉ、あるえとはもう友達になっていたのか…

 

「ソノ一人って「い、今連れてくるね!」……行っちゃタ…」

 

うん?連れてくる?もう夜も遅いのにあるえが家にいるとは考えにくいし…この家でペットかなんか飼ってるとは聞いてないし…

 

「お待たせマホロア!私の最初の友達!サボテンのサボちゃんよ!」

 

絶句した。ここまで重症だとは…まだ末期(イマジナリーフレンド)にまで行ってないだけマシなのか?ま、まぁいいともかく

 

「ゆ、ゆんゆん。もっと友達が欲しくないカイ?」

 

 

 

**************************

 

 

翌日 学校

 

 

「ね、ねぇマホロア?本当に友達ができるの?」

 

「ソレができるかはゆんゆんしだいダヨ、ボクはあくまでキッカケを作るだけダ。ソコからはゆんゆん、君の力で友達を作るンダ。」

 

「う、うん!わかったわ!私頑張る!マホロアが昨日の夜教えてくれた講義を、私は無駄にしないわ!」

 

「ククッ、その意気ダヨ!」

 

そういい俺達は教室に入っていく…決行は昼休み!さぁ…ゆんゆんお前は今日をもってボッチを卒業するのだ!

 

 

 

**************************

 

 

 

〜昼休み〜

 

「サァ!ゆんゆん!昨日図書室で話していたツインテとかポニテとかに声をかけてくるンダ!」

 

そういい俺はテーブル4つくらいをくっつけて大きな1つのテーブルを作る。そしてその上に昨日俺が徹夜して作ったある物を乗せる。俺の考えた史上最強の友達作りアイテム!その名も

 

 

 

 

 

 

 

 

UNOである!!

 

 

 

 

 

 

こぉの素晴らしきパーティゲームは俺が前世で一番友達を作るのに成功したゲームだ!これを俺は昨日一晩で作ってやりました。眠い!

 

 

ともかくそしてゲームをするメンバーが集まった。メンバーは

 

俺、ゆんゆん、めぐみん、ツインテ、ポニテ、ぱっつんロング、

 

「サァ!これからゲームを始めるヨ!これはボクの故郷で流行っていたゲームなんダ!後ボクはまだみんなの名前がわからないカラ教えて欲しいナ!」

 

とりあえず俺も名前が知りたいし、ゆんゆんのためにも、まずはお互いを知っておく必要がある。

 

「ゆ、ゆんゆんです「ん"んんっ」…うぅ、わ、我が名はゆんゆん…、やがては紅魔族の長となる者…」

 

そう言って赤くなった顔を手で覆いながら座るゆんゆん。うむ、よくやった!まずは自分を知ってもらう事が大事だからね、説明した時は猛反対したが友達を作る為というと渋々了承してくれた。チョロい。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして、爆裂魔法を愛する者!」

 

さてめぐみんにはゆんゆんの友達作りの為に協力してもらっている。やはりゆんゆんも知ってる人が近くにいた方が色々と安心するだろうと思ってね。ちなみに「嫌です」と反対されたが、明日の弁当を倍にすると言うと快く引き受けてくれた。こいつもなんだかんだでチョロい。

 

「我が名はどどんこ、紅魔族随一の…!随一の…。なんだっけ…」

 

えぇ…紅魔族はみんな濃いキャラの中でさらに個性があり、なかなかカオスになっているのにこの子はなんだろう。濃いキャラで留まってるといった感じだ。そんなにキャラが欲しいなら紅魔族随一のポニテとかでいいんじゃないかな。ちなみにゆんゆんにはボッチという個性が付与されてしまってる。

 

「我が名はふにふら、紅魔族随一の弟おもいにしてブラコンと呼ばれし者!……ブラコン……」

 

こいつはなんだろうクラスに一人はいるスキャンダルとかに過敏に食いつく系の女子な気がする。ツインテだし。でもツインテにありがちなツンデレという感じはしない。自分でブラコンとか言ってるあたりもうかなりのもんなんだろう。

 

「我が名はねりまき、紅魔族随一の酒屋の娘、居酒屋の女将を目指す者!」

 

居酒屋かぁ、そういや族長さんにはお酒を飲んでいいのか聞いてみたところ、年齢的には問題ないらしいのだが学校に行ってるからダメらしい。卒業したら一緒に飲もうと約束した。

 

そんなこんなで自己紹介が終ったら俺はみんなにルールを説明した。そして楽しい楽しい友達作りUNOが始まった。

 

 

〜数分後〜

 

 

俺の手札は3枚、ゆんゆんは2枚、他の人が4枚といった感じだ。

 

と、ゆんゆんのターンになる

ゆんゆんは手札を一枚捨て…やばい!ゆんゆんが先に上がってしまうと友達を作るという目的が達成されない!ここは仕方がないアレを使うか。

 

「ワァオ!ゆんゆん!もう手札が一枚じゃナイカ!さすがは時期族長!覚えが早いネェ!」

 

「え?えっと、そう?私が…すごい?」

 

よし!ゆんゆんの気を引く事に成功!

今だめぐみん!やれ!

 

俺はそういいめぐみんに目で合図をする。めぐみんも俺の意図に気付いたのか頷き…

 

「ドロー!」

 

「でも時期族長なら紅魔「ゆんゆん」……どうしたの?」

 

「キミ、残り1枚になったのに≪ウノ≫って言ってないヨネ?」

 

「あっ!」

 

「クックク!ジャア2枚引かないトネ!あーんな簡単な子供騙しに引っかかるナンテ、ゆんゆんはチョロいネェ、ククク!」

 

そういうとゆんゆんが恨めしそうに俺を見る。仕方がない、説明してやるか

 

俺はゆんゆんの近くに行き、ゆんゆんにそっと耳打ちする

 

「ゆんゆんが先に上がっタラ意味がないダロウ?ボクはそれを止めたんダヨォ?だからボクに感謝して欲しいナァ。コレも友達を作る為なんだヨォ」

 

「むぅ、でもそういう事なら仕方がない……かも」

 

よし!丸め込めた。しかしこの子のチョロさも改善するべきかな?

 

その後も俺はゆんゆんが上がりそうになる度にドロ4とか貯めておいたドロ2をぶつけたりして遊んでいると

 

「マホロア、ちょっと時間をもらっても構わないかい?」

 

あるえが後ろから話しかけてきた。

 

「イイヨ、ジャアボクはちょっと抜けるカラ、後は適当に楽しんでてネ!」

 

そういい俺はUNOから抜けると

 

「ソレで、どうしたんダイ?」

 

「うん、実は君をネタにした小説を書いてみたんだが良ければ感想をもらいたいんだ」

 

そういいあるえは紙の束(厚さ8cm)を手渡してきた。

 

俺いや「ボク」をネタにした小説かぁ、ていうかこの子寝てないな目の下のクマがくっきり出てるしとっても眠そうだ。

 

「じゃあ読み終えたら起こして感想を聞かせて……」

 

そういい机に突っ伏して寝始めた。

 

えぇとどれどれ

 

「邪悪な魔女との死闘に敗れたマホロア、彼は醜い化け物の姿に変えられる。だが彼は箱舟≪ローア≫を使い命辛々も逃走に成功。降り立った先は洗練された魔法使いの地だった!そこで最初は魔物と間違えられるも、なんとか説得し治療を受ける事が出来た。そこで彼は一人の孤独な凄腕女魔法使や、知的な魔法使い、さらには鍛え上げられた肉体を持つ魔法使いと出会い、彼女らと邪悪な魔女を倒すための度に出かける。

そして…

 

 

中略

 

 

〜邪悪な魔女を倒した彼女ら。そして彼は真の姿へと戻る。しかし、彼はなんと魔女の手によって姿を変えられた邪悪な魔法使いだった!世界を滅ぼしかねない力を取り戻した彼は、仲間だった彼女らに向き直り、今まで彼女らを利用していた事や本当の目的、さらには彼女らの故郷、ましてや全世界をを丸ごと征服すると言った。それを聞いた彼女らはショックを隠しきれず、唖然と彼を見上げるしかしこのままでは彼女らの故郷、家族、そして全世界が彼の手に渡ってしまう。そして彼に立ち向かう彼女ら。全世界をかけた戦いが今始まる!」

 

………これ、ほっとんどマホロアそのものじゃねぇか!確かに腹黒い性格とかついつい出てしまう事があったり、覚える予定の技についても話したがここまでまんま作るとは思わなかった…俺も最初マホロアの正体を知った時かなりびっくりだったのに…それをたったあれだけの情報で再現するとは…あるえ、恐ろしい子っ

 

 

「あるえ…オーイ、起きテ!起きロッテバ!」

 

あるえの肩を叩いても起きなかったので揺さぶってみる。しかし起きない。仕方がない俺は適当な紙に感想を書き、あるえの机の上に置いた。

 

一方UNOの方は

 

「め、めぐみん!またマホロアみたいな手を使って、正々堂々とやりなさいよ!」

 

「勝った方が正義なのですよ!騙される方が悪いのです!」

 

「や、やめたげなよめぐみん。ゆんゆんがかわいそうになってきた」

 

「まぁまぁ、そんな事もあるって!それより…はい!くらえねりまき!ドロ2!」

 

「ふ、甘いよふにふら!ドロ2重ね!はいゆんゆん!」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

おぉ、これはひどい…なんてかわいそなゆんゆん。しかしこれはいい流れだ。ゆんゆんがめぐみん以外の人に相手にされている。よし、もう充分だろう。

 

「ハイハイ!もう昼休みも終わるシ片付けるヨォ〜」

 

そういい俺はUNOを片付けにかかるその際にゆんゆんの側に行き、

 

「今がチャンスダヨォ」

 

と告げる。それを聞いたゆんゆんは一瞬ビクッとなったが覚悟を決めたような顔をして俺に頷く。そして

 

「ふ、ふにふらさんにどどんこさん!それとねりまきさん!わ、私と友達になってくれませんか!」

 

ナイスだゆんゆん!

 

「え?う、うん!あたしもあんたとは友達になりたかったのよ!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「うん、私もゆんゆんはあまり他の人と関わりたくないって感じがしてたから話しかけずらかったんだけど…」

 

「えぇ!?私ってそんな風にみられてたの!?」

 

「ゆんゆんって変わり者だし、孤独が好きなんだと思ってたんだけど…私で良ければ友達になるよ!」

 

「か、変わり者……で、でもこれからと、友達になってくれるんですよね!?」

 

「「「うん」」」

 

「ふっ……、ふつつかものですが、これからよろしくお願いします!」

 

「ねぇゆんゆん、あんた友達ってなにかわかってる!?わかってるんだよね!?」

 

…一部危ない発言もあったが何はともあれゆんゆんのボッチは卒業できたな!

 

「ボクの手にかかレバこんなもんダヨ。めぐみん」

 

「あのボッチが友達を作るとは明日は雪が降るかもしれませんね」

 

「めぐみんも友達になってきたらドウ?」

 

「やめておきます。私に友達は必要ありません」

 

「ソコで意地を貼るのは得策じゃないと思うナァ」

 

「もし仮に作るとしても自分でやります」

 

あぁ、そういうことね。

つまりは人の手は借りないと、こいつのプライドの高さは折り紙付きだな。

 

「ならボクから言うことは何もないネ、でもニンゲン何事も一人でできることには限りがあるってコトをお忘れるなヨォ?」

 

「……頭の隅に置いておきます」

 

 

 

**************************

 

 

 

 

「お父さん!お母さん!今日はね、マホロアのおかげで友達が3人もできたんのよ!」

 

「本当かい!?よかったなぁゆんゆん!マホロア君もありがとう!」

 

「ボクはただキッカケを作っただけダヨォ、後はゆんゆんが頑張ったからダヨ」

 

「でもマホロア君がきっかけを作ったのでしょう?ところでそのきっかけって何なのかしら?」

 

「ソレはネ、このUNOっていうボクの故郷に伝わるカードゲームだヨォ」

 

「へぇ、トランプに似てるけどこれはどうやって遊ぶものなんだい?」

 

「エットネェ…」

 

それから4人でUNOをした。やっぱりUNOは絆を深めたり新しく出会いを作る事が出来る素晴らしいアイテムだと思う。

 

その夜

 

「マホロア、少しいい?」

 

「ウン、イイヨ」

 

もう寝ようかと思ってた時にゆんゆんが部屋を訪ねてきた。

 

「マホロア、今日は本当にありがとう!…多分、マホロアがいなければ私、ずっと一人ぼっちだったと思うの」

 

「何度も言うケド…それはゆんゆん自信が掴んだ栄光ダヨォ。ソレにゆんゆんならその内友達くらいできていたっテバ」

 

しかしゆんゆんは首を横に振る。そして

 

「でも私…マホロアに恩返しがしたい!マホロアは私の子供の頃からの夢を叶えてくれた恩人なの!だから私にできることが何でも行って欲しい!」

 

どうやら俺はゆんゆんのヒーローか何かになってしまったらしい。

 

「ジャアゆんゆん、改めて言うネ。ゆんゆんが卒業したらボクが元の姿に戻るための旅についてきてくれるカイ?」

 

「うん!私マホロアの為、そして時期族長として強くなる!だから…これからもよろしくお願いします!!」

 

「ウン!よろしくネ!ゆんゆん!」

 

ゆんゆんが自分の意思で仲間になる事を決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




来週こそはバトルシーンとか書きたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話 マホロアパック1

あくまで趣味で描いてるものなので生暖かい目で読んでください。
感想でも批評でも大歓迎です。


ある日♪

 

森の中♪

 

クマさんに♪

 

出会った♪

 

「グルオオオォォォォォォ!!!」

 

「ワァァァァァァ!!!」

 

はい。というわけで一撃グマというヒグマの2倍くらいあるおっそろしいモンスターと追いかけっこをしております。

 

「クソ!これでもクラエ!」

 

魔力球を2つ作りクマさんに投げつける。

が、しかし

 

「ガァァァァ!!」

 

その豪腕を使いそれを弾き飛ばす。

 

「ウソダロ!?」

 

今までファイヤードレイクとかなら3回当てたら倒せる威力のはずなのになぁ…弾いちゃうかぁ〜

 

なら

 

「ワープ!」

 

そう良い俺はクマさんの背後にワープする。そして魔力球を4つ作り、内2つをキョロキョロしてるクマさんに投げつける。

 

「グガァ!」

 

背中を攻撃されてすぐに振り返るクマさん。しかし

 

「かかったネ!!」

 

クマさんの鼻先に残る魔力球をぶつける。

すると

 

「ガァァァァ!?」

 

「オォ…今度は効いてルみたいダネ!」

 

クマさんは鼻を押さえて悶絶する。

 

「ええぃ!くたばりナァ!」

 

魔力球を2つ作っては投げ作っては投げ上空から悶絶するクマさんに総攻撃をかける。

 

 

「ウ………ガ……ァ……」

 

魔力球を15個あたり投げつけるとクマさんは動かなくなった。

 

「ハァ……ハァ……フゥー」

 

さすがに魔力値が高いとはいえこれだけ魔力球を連発すると疲れるな…

ちなみに今は魔力球は同時に4個まで出せる。

 

「今日はココまでカナァ…」

 

そう呟き俺はクマさんの肝を採って帰宅した。

 

 

*****************

 

 

「タダイマー」

 

「お帰り〜今日も森で修行かい?」

 

帰ると族長さんが迎えてくれた。

 

「ウン、今日は一撃グマっていうのに出会ったヨォ〜、イヤァおっそろしいモンスターだったナァ…でもボッコボコにしてやったヨォ!後、肝も換金してもらったんダ!」

 

「一撃グマを倒したのかい!?け、怪我した所とかはないのかい!?」

 

心配性だなぁ

 

「ないヨォ基本ボクは空から一方的にヤレるからネェ…クックク!」

 

自分でも卑怯だと思うが安全第一だしね

 

「と、取り敢えずご飯にしよう!今日は今朝畑から上がったばっかりのさんま定食だよ!」

 

この世界の食べ物っておかしいよね、最初は「何言ってんだこいつ」と思ったが実際土からチンアナゴの如く生えるさんまを見て俺は考えるのをやめた。

 

 

*****************

 

this night

 

「マホロア!これどう!?似合う?」

 

ゆんゆんが腰に短剣をぶら下げて嬉しそうにそう聞いてくる。どうやら俺が修行してる間にふにふら達とお買い物してたらしい。それにしても…

美少女に短剣ねぇ…

 

「ウン!イイと思うヨォ!なんかイイ感じダ!」

 

「でしょ!?ふふふ♪これでめぐみんにもっ………」

 

この子はその短剣でめぐみんをどうするつもりなのだろう。危ない思考に染まってなければいいんだが…

 

「ところでマホロアは今日も修行?」

 

「ウン、今日は森で一撃グマっていうモンスターを狩って来たンダ!」

 

「一撃グマ!?マホロアあんなのまで倒せるの!?」

 

「ケッコウ苦戦したケド…なんとかなったヨォ」

 

「へぇ…マホロアって見かけによらず強いのね…そう言えば一撃グマを倒したのならレベルも上がってるんじゃない?」

 

ふむ、そう言われれば一撃グマを狩ったのは初めてだしレベルが上がってるかも…

 

俺は懐(?)からカードを取り出して見てみるすると

 

マホロア

 

職業 魔術師 lv6

 

スキルポイント 15

 

(etc

 

おぉ!レベルが上がった時のポイントと授業で貰ったポーションのお陰かポイントが結構たまってる。

ちなみに俺はクラスで成績は3番だ

やっぱり勉強に興味を持てたら最強だと思う。これがあっちの世界でできてたらなぁ…

ともかくこれで俺はマホロアパック1を開けれるわけだ…正直ポイントをもっと貯めて≪ブラックホール≫とか覚えたいが取り敢えず攻撃手段が魔力球しかないのは厳しい。だから…

 

「ネェゆんゆん。スキルってドウやって習得するノ?」

 

「え?スキルは覚えたいスキルを選択して職業の絵のところを触ればいいのだけれど………マホロア、スキルポイント使っちゃうの?」

 

ゆんゆんが少し不安そうな顔で見てくる。

なんだ?

 

「ドウしたノ?」

 

「……マホロアはスキルを覚えたら…その…卒業しちゃうの?」

 

なんだそんなことか

 

「イヤ、ボクは最初からスキルを習得してルシ、コノ国について知りたいカラまだ卒業はしないヨォ」

 

「そっ、そうなの?…よかった…」

 

ほっとした顔でそう呟くゆんゆん。

 

「ソレより!スキルを覚えるヨォ!」

 

俺はそう言ってゆんゆんが教えてくれた通りに冒険者カードを操作する。

すると…

 

「オォ…なんか内側カラ何かが湧き上がル感じがスル…」

 

そんなよくわからん開放感と共に俺の体がペカーっと光り輝いていく。

 

そして光が引いたと思ったら…

 

「あれ?マホロア?その頭につけてるそれ…何?」

 

 

*****************

 

翌日

 

「めぐみん!わかってるわね、今日も勝負よ!」

 

よく晴れた日。 やけに上機嫌なゆんゆんはこれ見よがしに腰の短剣をめぐみんに見せながら今日も勝負を挑んでいる。

 

「いいでしょう、受けて立ちます。でも、掛け金代わりのスキルアップポーションを持ってないのですがどうします?」

 

「掛け金…。そ、それじゃあ私が勝ったらマホロアのお弁当を貰うわ!」

 

「食べタイなら作ってあげるノニ…」

 

「いいですよ。特別に、勝負方法はゆんゆんに決めさせてあげます。」

 

あれ?珍しい。いつもは勝負内容はめぐみんが決めるのに。

…内容は理不尽なんだがな。

 

「え?じゃ、じゃあ今回はこのUNOで勝負よ!」

 

そう言ってゆんゆんはカバンから製品化されたUNOを取り出す。プラスチックじゃなくて画用紙的な物というところがまた新鮮。

 

「いいでしょう、さぁ始めましょうか」

 

 

そして二人はUNOを始める

始めはめぐみんがリバースやスキップを使いゆんゆんにターンを譲らない。しかしゆんゆんも負けじとトラップカードを駆使し徐々にめぐみんを追い詰める。やはり経験の差が出ているな、家でこれでもかと勝負を挑んでくるゆんゆんはまだ目に新しい。

 

「くっ」

 

「ふふふ、今日こそ私が勝つ時が来たわよ!」

 

みればゆんゆんのカードは1枚、そしてめぐみんのカードは2枚でめぐみんのターンだ。

 

「……」

 

めぐみんはそっと緑の0を出す。そして

 

「これで私の勝ちよ!」

 

そういいゆんゆんは4カードを出す。

 

「クッ」

 

「ふふふ!初めてめぐみんに勝ったわ!」

置かれた4カードを悔しそうにみるめぐみん。

嬉しそうに跳ね回るゆんゆん。うん、よかったね。けどね…

 

「ゆんゆん」

 

「うん?何マホロア」

 

ニコニコした顔で振り返ってくるゆんゆん。

 

「…嬉しそうなトコロ悪いんだケドネ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数字カード以外で上がっチャダメなんダヨォ?」

 

 

 

ゆんゆんは笑顔のまま固まった。そして、

 

「ふっ…やはりこの私に敗北の2文字はないのです!」

 

「イヤ、キミさっきまでトーッテモ悔しそうにしてたヨネ?」

 

「ッ…」

 

ゆんゆんはさっきまでの喜びが恥ずかしさに変わり、ゆんゆんに襲いかかる。

 

ゆんゆんは手で顔を覆って机に突っ伏してしまった。

 

 

「取り敢えず、弁当は貰いますよ」

 

「キミは鬼なのカイ?」

 

「私にとっては死活問題なんです。しょうがないじゃないですか。」

 

「ソレはそうだケド…」

 

「はぁ…仕方ないですねぇ」

 

そういいめぐみんはゆんゆんの肩を叩く。

 

「ゆんゆん」

 

呼ばれたゆんゆんは赤い顔をあげて紅い目をめぐみんに向ける。

 

「今回は本当に負けるかと思いましたよ。初めて追い詰められた感じがします」

 

「めぐみん…」

 

「まぁ負けたら意味がないですし、さっきの私は第一形態で本気の10%も出してないんですがね」

 

上げて落とすんかい。ていうかそろそろゆんゆんがかわいそうな状態になってきた。あそこまで人の顔って赤くなるもんなのか?….紅魔族じゃあ当たり前なのかな…まぁ、フォローを入れてやろう。

 

「ヘェー!めぐみんも形態が変化するノ!?ワァオ!ボクだけかと思ってたヨ!ソレで?第何形態まであるんダイ?」

「ふぇ!?わ、我は第四形態まであります!その我に勝ってこそ真の勝利がつかめるでしょう!」

 

「ヘェ…ボク、めぐみんの最終形態が見たいナァ!ちなみにボクは第三形態までしかないんだケド…じゃあサ!明日の養殖の授業の時に見せてヨォ!ボクも第二形態になるカラ!」

 

「なっ!ふっ…いいでしょう!しかしマホロアが第二形態にしかならないのでしたら、私も第二形態までしかなりません!そう簡単に本気というのは見れないものなんですよ」

 

そんな奇妙な約束をすると。ゆんゆんはさらに顔を腕に埋めて机とくっついてしまった。一体どうすればよかったんだ…

 

 

 

*****************

 

〜放課後〜

 

「あるえ、ソウ言えば新しく魔法を覚えたケド…ミル?」

 

その言葉を聞くとあるえはブンっと音がなりそうなくらい早くこちらに向き直り

 

 

「おぉ!もう魔法を覚えたのかい!?是非!是非見せて欲しいな!」

 

めっちゃ食いついてくる文才少女あるえ。あるえには小説のネタのために魔法を覚えたらすぐ見せてくれと頼まれてる

 

「わ、私も行く!」

 

「私も見たことのない魔法には興味がありますから見に行きます。…まぁ、爆裂魔法には遠く及ばないでしょうが」

 

ゆんゆんとめぐみんも食いついてくる。

 

「ジャアみんなボクに捕まっテ!ワープで移動するヨォ!」

 

3人が俺の手を掴むのを確認すると、俺はワープを使いワープの射程ギリギリのところを飛び続け、あっという間に森の入り口に着いた。

 

「今の移動方法結構楽しいね!テレポートを使ったような気分だったよ!」

 

「こんなに早く移動できるなんて…やっぱりマホロアってすごいよね…」

 

「実はコレ、普通に歩くのの何倍も疲れるカラ普段は使わないンダ…」

 

「…なんでわざわざそんな事を…」

 

「カッコいいダロォ?」

 

「それには激しく同意します」

 

あるえも目を輝かせて頷いている。

ゆんゆんはなんか呆れたような顔をしてため息をついてる。そんなんだから浮いてしまうんだよ…ゆんゆん。郷に入っては郷に従えってね。

 

「マァそんなコトはどうでもイイ。まずはコレ!≪キルニードル≫」

 

俺は手をクロスさせて右腕をクイッと上げると、狙った地面からシュッと太い紫の針が飛び出してくる。大きさは後ろの木くらいある。

 

「なんとも恐ろしい技だね…これをモンスターとかに使ったら結構グロい仕留め方になりそうだよ…」

 

確かに串刺しだしね…でもこれならあの一撃プ○さんをワンパンできるかもしれない…

 

「ト、ともかく次はコレだよ!

ハァァァァァァァァ……」

 

どうやっていいかちょっとよくわかんなかったけど取り敢えずかめはめ波みたいに溜めてみる。すると

 

「おお…マホロアの正面に魔力が集まっていくのを感じます…!」

 

目の前に自分の体と同じくらいの魔法陣が展開される。そしてパワーが溜まるのを感じると、俺は手を前に勢いよく突き出す!

 

「ハァァァァァァァァ!!!」

 

≪マホロア砲≫

 

 

自分の体の一回り小さいビームが前にあった木次々と抉っていき、そこには森の奥の方まで見える程、ぽっかりと穴が木々に開けられていた。

 

「すごっ!技の出し方といいビームといい本当にマホロアは紅魔族の琴線に強く触れてくれるね!」

 

「い、今のは私もかっこいいと思った……」

 

好評なようでなによりだ。けど

 

「フゥ…フゥ…」

 

「?マホロア大丈夫かい?」

 

「ウン…大丈夫だケド…この技…魔力消費が…すごい…」

 

この前の一撃グマ戦くらい疲れた…。

 

「サァ…最後の技ダヨ…」

 

「マ、マホロア?無理しないでね?」

 

「大丈夫ダヨォゆんゆん。今からやるヤツはそんなに疲れないと思うカラ…」

 

そういい俺は手をかざし、指定した座標にワープホールを作る。そして少しずれたところにもう一つ作る。

 

「これは一体?」

 

「……ソノ中に石でも投げ込んでみてヨォ…」

 

「わかりました」

 

そういいめぐみんは手頃な石をワープホールに投げ込む。すると、もう一つのワープホールからさっきの石が出てくる。

 

「うーん。これは正直言ってそこまで魅力的なものじゃないかな…」

 

「それはなんでも中に通すことができるんダヨォ…ツマリ、さっきの≪マホロア砲≫や≪キルニードル≫も通すことができるンダ…ここまで言えばわかるヨネ?」

 

「…なるほど!つまりたとえ攻撃外したとしてもそれを使って追撃する事も出来るってことかい?」

 

「ソウダヨォ…ソレはあくまで補助の魔法ダネェ…」

 

「私は結構気に入りましたよ。石を投げ込んでもこっちから出てくるのが面白いです」

 

「わ、私もちょっと楽しいかも…」

 

2人はさっきからいろんなものをワープホールに投げ入れている。すると…

 

 

 

ゴトッ

 

 

 

何か得体の知れないものがワープホールから出てきた。

 

「…なんだろうこれ?私こんなの入れてないのだけれど…」

 

「私も入れてませんよ。元から入ってたんじゃないですか?」

 

「今日初めて使ったんだけどナァ…」

 

それは全体的に紫色でバスケットボールくらいの球形で、

 

「なんかシミのようなものがついてるし…これはもしかして…

 

 

 

 

 

 

 

 

何かのたまごではないかい?」

 

 

 

「え、えええぇぇ!?」

 

「いやいや、こんなたまご図鑑でも見たことがありませんよ?」

 

俺はそっとたまご?に耳をくっつけてみる。すると…

 

 

とくん……とくん……

 

 

「脈があるネ……多分たまごで間違いないヨォ…」

 

 

 

「ほ、本当に!?」

 

ゆんゆんがそう言うとみんなたまごに駆け寄り耳を当てる。

 

 

「た、確かに脈がありますね…」

 

 

「これはなんだろう…ドラゴンのたまごだったりして……!」

 

 

「確かになんかそれっぽいような気がしないでもないね…」

 

 

ドラゴン…ワープホールの中にあったたまごだから、出てくるとしたらランディアとかかなぁ…

 

 

「そうだ!ドラゴンはたまごの時に魔力を注ぐと個体値が上昇するらしいよ!」

 

個体値ってポケモンみたいだな…

 

まぁいいや

 

「ナラみんな魔力を注いでミル?」

 

「じゃあ私から」

 

若干食い込み気味にあるえは答えると目を紅く光らせながらたまごに触れる。そして…

 

「我が魔力!その身に宿すがいい!」

 

と言うとたまごに魔力をこめてるのかたまごが淡く光始める…

 

「ふぅ…初めてだったからうまくできたかわからないけど取り敢えずやってみたよ」

 

「じゃ、じゃあ次は私が!」

 

そう言ってゆんゆんもたまごに触れる。

 

するとたまごはさっきよりも少し強く光始める。

 

「何かセリフは言わないのカイ?」

 

「い、言わないわよ!恥ずかしい!」

 

と、ゆんゆんも魔力を注ぎ終わる。後は…

 

「めぐみんもやってみたら?」

 

「ふっ!我が魔力をこんな所では使うべきではありません!」

 

「今度あの喫茶店でナンカ奢ってアゲルカ「いいでしょう!我が魔力を喰らい、最強のドラゴンとなるのです!」」

 

こいつやっぱチョロいわ(笑)

 

めぐみんがたまごに手を触れるとさっきの2人よりか遥かに紅く輝き出し…っておいおい爆発とかしねぇよな?なんか危険な色になってるし、心なしかたまごが震えてる気が…

 

「ふぅ、我が魔力を受け止めきれたみたいですね。さすがはドラゴンといったところでしょう…」

 

たまごはなんかヤバそうだったがどうやらめぐみんの馬鹿魔力を食いきれたらしい。こいつは手加減というものを知らないのだろうか…

 

「エット、取り敢えずボクの新しい魔法は今ので全部ダヨォ」

 

「あ、うん。ありがとうマホロア、早速帰って小説を書いてみるよ!じゃあね!」

 

と、あるえは帰っていく。

 

「私も魔力を使って疲れたので家に帰ります。ではまた明日」

 

めぐみんも帰っていく。

 

「ジャア、帰ろうカ」

 

「う、うん。ところでそのたまごはどうするの?」

 

「ウーン….取り敢えず元の場所に戻しとくカナァ…」

 

そういい俺はワープホールの一つを消滅させて、残った方にたまごを放り込んだ。

 

「え?えぇ!?今普通に投げ込んだけど大丈夫なの!?」

 

「マァ元々あの中にあったし大丈夫じゃないカナァ?」

 

「そ、そう言う問題なのかなぁ?」

 

まぁ細かい事は気にすんな。なくなったらなくなったで鶏でも育てればいいさ。

 

「ところでゆんゆん」

 

「何?マホロア」

 

帰ろうとするゆんゆんを呼び止める

 

「実は魔力を使いすぎてヘトヘトなンダ…チョット家まで運んでくれないカナァ?」

 

「え」

 

 

*****************

 

 

「ところでマホロア」

 

「何?ゆんゆん」

 

俺は今ゆんゆんに抱っこされた状態だ。背中に当たるマシュマロ(おっぱい)がたまらんが…今の俺にはSAN値を上昇させる効果しかない。

 

「昨日のアレはどうして使わなかったの?」

 

「…ソレは…明日のお楽しみにトッテおこうと思ってネ」

 

「ふーん」

 

「ソレよりも!明日は学校にたまごを持って行ってミンナに魔力を注いでもらオウ!」

 

「…マホロア、なんだか生き生きしてない?」

 

「ボク、昔から何かを育てるのってトーッテモ好きだったんだよネ!」

 

「そ、そう…」

 

 

*****************

 

 

ねくすとでい

 

「………」

 

「……めぐみん。……め、めぐみん」

 

「おはようゆんゆん、マホロア。そんな顔をしてどうしましたか?」

 

「イヤ…キミ。ソレはナニ?」

 

「使い魔です」

 

俺が問うと、めぐみんは机の上で仰向けになっている黒猫に指を戯れつかれながらそう言った。

 

「使い魔!?使い魔を使役する魔法使いなんて、お伽話の中だけだと思ってたのに!」

 

「見て、あの愛くるしくもふてぶてしい顔を!恐ろしいわ、ああして無垢な子猫のフリをして、主人のめぐみんのために私達の昼ごはんを狙っているのよ!」

 

「悔しいっ!でも、ご飯あげちゃう!」

 

クラスのみんなはめぐみんの使い魔(猫)にメロメロである。もしかして俺のドラゴン(仮)のたまごに対抗心でも燃やしたのか?

 

「う、うわー……。ふわっふわだね……!ねえめぐみん、名前は?この子に、もう名前は付けてあげたの?」

 

目をキラキラさせて猫を撫でようとするゆんゆん。そしてゆんゆんが手を伸ばすと、

 

猫は警戒するように前足を構え、「フゥー!」と威嚇する。

 

「なんだろうこの子は。めぐみん以外には懐かない感じなのかな?」

 

あるえがそう言いながら伸ばす手を、猫はあっさり受け入れた。

 

「クックク…どんまいゆんゆん。…マァいいじゃなイカ、ボクらにはコノたまごがあるんだカラサ!」

 

泣きそうなゆんゆんにフォローを入れつつ、俺は先日手に入れたたまごを机の上に召喚する。

 

「え、えぇ!!!??なにそのたまご!?」

 

「色も見たことないし…ドラゴンのたまごなんじゃない!?すごいよマホロア!私ドラゴンのたまごなんて初めて見た!!」

 

「な、なんのドラゴンかな?紫色だし…ポイズンドラゴン?…それともシャギードラゴン?…まさか!新種のドラゴンだったりして!!」

 

この間ゆんゆんの友達になった3人を中心にいろんな人がたまごに詰め寄ってくる。

 

「コレは昨日ボクが新しい魔法の試運転をシタラ、偶然拾ったンダ。………ソレよりミンナ!ドラゴンのたまごには個体値を高くスルためにたまごの時から魔力を注ぐんダロォ?コノ子のために、みんなの魔力を分けてくれタラ、嬉しいナァ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

俺がさりげなーくみんなにたまごに魔力を注ぐ事を伝えると、みんなは目を紅く輝かせながら

 

「わ、私のを分けてあげる!」

 

「わ、私のも!」

 

「ちょっ!どきなさいよ!私が先よ!」

 

「ハイハイ、押さないデネー。チャーントみんなの魔力は受け取るカラ列になって待っててネェ」

 

「……マ、マホロア、ノリノリですね…」

 

計画通り……(ニヤァ)

うまくみんなを誘導する事ができたぜぇ…これで俺のドラゴンの潜在能力は格段にアップするはず…なんせここには<アークウィザード>しかいない。つまりは魔力がバカ高い連中の集まりという事…その全員から魔力を受け取る事が出来れば…クックク。孵化が楽しみだゼェ。

 

「ン?」

 

ふと頭に少し重い感触が…とってみると

 

「にゃう!」

 

さっきの使い魔が俺の手に抱かれながら鳴いた。ゆんゆんと違ってこいつは俺には懐くらしい。

 

「オォ…どうしたんダイ?まさかキミもたまごに魔力を注ぎたいノ?」

 

猫がたまごに手を伸ばすのでそう聞いてみると…

 

「にゃう!」

 

言葉がわかってるのかわからないがそんな返事(?)をしたので取り敢えずたまごの上に乗っけてみる。すると…

 

「ワァオ!?」

 

たまごがまたペカーと光りだした。この猫…まさかただの猫じゃなくてなんかの魔獣の子供じゃねぇのか?初心者殺しみたいなやつの…

 

そんな事を思ってると光りは収まり、猫はたまごから飛び降りる。

 

「マサカ本当に魔力を注ぐと……は……ネ………」

 

「?どうしたのマホロア」

 

「イヤ…ゆんゆん。昨日コノたまごのシミにこんなのなかったヨネ?」

 

そう言い俺はたまごの一角(?)を指差す。

 

「?どれそ…………え?」

 

そこには猫のようなシミが出来てた。

 

「ふふっ、なんか一気に可愛くなりましたね…中から猫でも産まれるんじゃないですか?」

 

いや、猫は哺乳類だしたまごからは出ないだろう…

 

「コレ…出てくるヤツに支障とか起きないんだろうネ?顔が猫のドラゴンとか出てきタラ泣くヨ?ボク」

 

「たまごの中身がキメラならあり得るんじゃないですか?」

 

まじかよ……

 

 

*****************

 

 

それから、猫を飼う事を担任には反対されたがめぐみんは紅魔族的ニュアンスを用いて説得(?)したところ「おもしろそうだから」という理由で認めた先生。大丈夫なのか?この学校…ちなみに名前はゆんゆんによって「クロ」と名付けられた。

そしてたまごについては、話したところ「我が強大なる魔力を受け取るがいい!」といい昨日のめぐみんのようにたまごがめっちゃ光りだすまで魔力を注ぎ込んだ。ノリのいい先生でよかった。

 

「先日、里のニート……手の空いていた勇敢なる者達を引き連れ、里周辺のモンスターを駆除した事は知っているな?おかげで現在、里の周りには強いモンスターがいない。弱いモンスターはあえて残してもらって、危険なものだけを駆除してもらった。今日の授業は野外でも実践だ。比較的安全になった里周辺で、我が紅魔族に伝わる、養殖と呼ばれるレベル上げ方法を使って全員のレベルの底上げをする。というわけで校庭に集合する事!グループを作りたいものは作っても構わん!以上!」

 

「めぐみん、例の準備は出来てるのカイ?」

 

「えぇ、マホロアこそ出来てるのですか?」

 

「バッチリダヨォ」

 

そんなやり取りをしているとゆんゆんが座ったまま俺らをチラチラ見てくるのに気付いた。

 

「なんですか?自称私のライバルのゆんゆん」

 

「自称!?いや、その……そうだけど……。…….グループ作りだってさ」

 

「そうダネェ。マ、ボクは一人でやるつもりだけどネェ」

 

どうやら俺とめぐみんを誘いたかったらしいが断る。…アレのテストも兼ねてるからね…ゆんゆんは出鼻を挫かれてオロオロしだした。しかしめぐみんの方を誘うつもりなのかまたソワソワしだした。

 

「めぐみん。組む人がいないなら私とどうだい?」

 

いつの間にか俺の後ろにいたあるえが声をかけていた。

 

「いいですよ。一緒に組みましょうか」

 

「!?」

 

ゆんゆんはそんな二人のやり取りを見て困ったようにオドオドしだした。

そして…

 

「あ、あの、めぐみん、私も「ねーゆんゆん、あたし達と一緒に組むでしょ?」」

 

「うんうん。いつもあぶれてるよね?入れてあげるよ」

 

「私達友達になったんだしさ、一緒に組もうよー」

 

「あ、あの、えっと……」

 

とニューフレンズに連れて行かれるゆんゆん。

 

そんな後ろ姿を眺めるめぐみんにあるえがポツリと…

 

「これが寝取られ…」

 

「ね、寝取られじゃない!」

 

 

*****************

 

 

さぁて遂にこの時がきた。うまく行くかな…行かなくても何かしらの影響は出るはずなんだが…と、物思いにふけり、校庭で俺は待機していると…

 

「遅くなりましたマホロア!よく目に焼き付ける事ですね!これこそが!我が第二形態です!」

 

頭にクロを乗せ、めぐみんは得意げに言う。

 

「イヤ、クロ乗せただけじゃなイカ」

 

「言ったでしょう?こいつは私の半身……つまり!今の私はこの子と合体する事によって1つになったというわけです!」

 

「もう苦し紛れの言い訳にしか聞こえないヨォ…」

 

「マホロアだって!そのカッコいい王冠を被っただけじゃないですか!大体それはなんなんですか?」

 

「コレカイ?コレはネェ…

 

 

 

 

 

 

 

 

マスタークラウンダヨォ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんのたまごかはお楽しみに多分これ読んでる人ならわかるんじゃないかなぁ…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話 クラウンの代償と"友達"

ゴールデンウィークなんて俺たちには存在しない


「ま、ますたーくらうん?なんですかそれは?鍛冶屋にでも売ってたんですか?」

 

「コレはネェ…無限のチカラを持つと言わレル伝説のアイテムダヨォ」

 

そう。何故だか知らんがみんなお馴染みマスタークラウンはマホロアパック1を習得した時に何故かついてきたのだ。ゲームの設定からすると第2形態になって無双できると思うのだが…だってゲームのマホロアどんだけ魔法打っても疲れる様子なかったしね。とりま第3形態にならないように気をつければ最強のアイテムだと思う。

 

そんな事を考えてると

 

「よし、全員揃ったな!武器を持っている者は自分のを使っていいぞ。武器を持っていない者は、モンスターにトドメを刺すのにこれを使え!」

 

そう言って先生は地面に転がってる物を指差す。それは様々な武器の山。ただ…

 

「せ、先生!武器が大き過ぎてどれも持てそうにないんですが…」

 

うん。とても12歳には無理だろ…ってレベルの大剣やら生徒よりデカイ刃がついてる斧を始め、巨大な武器がたくさん置いてあった。

すると先生は俺たちの前で巨大な剣を顔色一つ変えず軽々と持ち上げやがった…まじかよ!いつもポンコツな先生だと思ってたらやる時はやるもんなんだなぁ…

と、俺が先生を少し見直していると…

 

「コツは、自らの体に宿る魔力を肉体の隅々まで行き渡らせる事だ。それにより紅魔族は一時的に肉体を強化させる事ができる。今日までの授業を通して、実はお前達にその基礎を叩き込んでいた。意識さへすれば、自然とその力が使えるはずだ!」

 

紅魔族にそんな設定が…て事は魔法使いの癖に物理攻撃もこなせるという事か…こいつら種族的に酷いチートだなぁおい!もう全人類紅魔族にしたら魔王に勝てるんじゃね?

 

そんな感じに俺が悟ってると…

 

「……我が魔力よ、我が血脈を通り我が四肢に力を与えよ!」

 

「この子、私の持てる全ての魔力を注いでも壊れないだなんて……!さぁ、あなたには名前をあげる!そう、君の名は……」

 

「フッ!!……へぇ、今の素振りにも耐えるなんて、なかなかの業物ね。いいわ、これなら私の命を預けられる……!」

 

「え!?す、凄い……!凄いけど、そのセリフは必要だったの!?」

 

みんなが中二的なセリフを言いながら武器を選ぶ中、ゆんゆんはそんなみんなにツッコミを入れている。そこはノっておけばいいものを…それはともかく幼気な少女達が身の丈よりも大きいエモノを振り回してる絵面に違和感しか覚えない…なんだこれ、いつからここはドラ○ンボールの世界になったんだ?

 

すると

 

「せ、先生、これ全部ハリボテじゃないですか…。木に金属メッキがされてるだけで、どれもこれもすごく軽いんですけど…」

 

「ゆんゆん、減点5だ」

 

「ええっ!?ちょ、先生っ!」

 

ハリボテかい!世界観がド○ゴンボールから小学生のお遊戯会に成り下がったのを感じた。

 

「マホロア、お前は武器を選ばないのか」

 

「エ?」

 

「まぁお前は魔法を使えるし武器はなくていいのか」

 

「クックク…先生!ボク、武器は使わないケド……第2形態になってもいいカナァ?」

 

 

「だ、第二形態!?そんなものがあるのか!?」

 

先生が驚くと生徒達の視線もこちらに集まってきた。

 

「あるヨォ、ダカラなってもイイカイ?」

 

「もちろんだ!全くお前はどうしてこうも我々の琴線に触れてくれる!」

 

「ジャア…行くヨォ…」

 

そういい俺はゲームのマホロアの様に手で体を覆う様に力を入れる。自分の中で何かが高まるのを感じ、心なしかクラウンも動いた気がした。自分の体が光り出すのを確認すると…背伸びの感覚で腕を一気に解放!すると…

 

自分の体が変化するのを感じる…視線もどんどん上がっていく、そして自分の中で溢れるパワー…今ならなんでも出来る気がする!

そしてポカン( ゚д゚)…と口を開ける先生達に…

 

「な〜んて顔してるんダイ?これがボクの第二形態。どうダイ?かっこいいダロォ?」

 

先生ですら見下ろすくらいでっかくなった俺。そんな俺に

 

「す、凄い!なんだかラスボスって感じがしてかっこいいぞ!マホロア!」

 

そりゃぁ…ラスボスだしねぇ…

 

「マホロア!どうして昨日それは見せてくれなかったんだい!?それを知ってればもっといいストーリーが書けたのにっ!」

 

そう言ってめっちゃ紅く光らせた目で悔しそうに訴えてくるあるえ。そんなにウケるとは予想外だよ。

 

「めぐみんとの約束だったからネェ…、どうダイめぐみん。これが第二形態ダヨォ?」

 

「う…ま、まぁい、いいんじゃないですか?わ、私も見た目は変わってませんがな、中身は…」

 

どんどん尻すぼみになり言葉が消えていくめぐみん。勝ったな…これは言い逃れできまい…

 

「マ、マホロア…なんか魔王って言われても違和感ないような感じがする…」

 

「アリガトウゆんゆん。褒め言葉として受け取っておくヨォ」

 

 

*****************

 

そして森の中

 

「クックク…ハッハッハァ!!いいネェ!ぜんっぜん疲れないシ技の出せる数も多くなって快適ダヨォ!」

 

そういい俺は先生に氷結される前の魔物も駆逐していく。

 

ちなみに魔力球は8個

キルニードルは4個

一度に出せるようになった。

マホロア砲は試してないが多分威力とか上がってるだろう。

 

そんな感じで空からワープで移動し、魔物を見つけると、キルニードルで串刺しにしたり、魔力球ぶつけて粉砕したりして遊んでた。すると、

 

「おーい!マホロア!ちょっと降りて来い!」

 

先生から呼び出しを食らった。

 

「ドウしたノ?」

 

「おま、お前モンスターを狩りすぎだ!かっこいいけどこれでは他の生徒達のためにならない!以後自重するように!」

 

この教師から自重という言葉を聞くとは思わなかった…

 

「わかったヨォ…後は見守るダケにしとくネェ…」

 

まぁこれ以上弱いモンスター狩っても意味ないしな…休日あたりにいつぞやのクマさんでも血祭りにあげてこよう…

 

そんな感じで先生の後に着いていった。流石は腐っても紅魔族の大人、見事にトカゲモンスターの首から下を凍らせる先生。?なんか心なしか息が上がってるような…

 

そんな感じでしばらく成り行きを見守っていると…

 

「「「先生先生先生先生ーーーーッ!!」」」

 

ふにふら、どどんこ、ねりまきの叫び声が聞こえた。

 

「なんだ?…まさかモンスターに襲われたか!?」

 

そういい先生は声のした方向に掛けようとするが…

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

疲れてすぐに動きを止める先生。

 

「ド、ドウしたノ!?」

 

「…いや、実は……朝たまごに魔力を全力で注いだから…その…魔力が……ない…」

 

えぇ…やっぱこの先生ポンコツだわ…人からの評価を上げて落とす天才なんだろうか……俺たちが呆れていると…

 

「…ま、マホロア!今こそお前の力を示す時だ!ゆけ!あいつらの命はお前にかかっているッ!」

 

「…ハイハイ。わかったヨォ…」

 

そういい俺はワープを使い声のした方向に進んでいく…

 

 

*****************

 

 

「めぐみん、アレは知り合い?なんか思い切り狙われてるけど」

 

「知り合いな訳ないじゃないですか、アレは私に秘められた力を恐れし、魔王の尖兵か何かで……、ほ、本当に、なぜ私を追いかけてくるんですか!」

 

「めぐみんの日頃の行いが悪いからよー!こないだ、マホロアのロッカーにミミズ入れてたの見たんだからね!」

 

両隣を走るあるえとゆんゆんの声を聞きながら、私はモンスターに追われていた。空に舞い上がったモンスターは他の者に目もくれず、なぜか私だけを追いかけてくる。

あるえは走る邪魔になる大きな武器はとっくに捨てていた。私はクロを頭に乗せ、第二形態のまま並走してる。マホロアの様に分かりやすくはないが、今の私は第二形態だ。そのおかげで体力に自信のない私でもあるえとゆんゆんに追いついている。

 

しかしこのままでは食われてしまう。仕方がない….これも生きるためだ。

私はクロを頭から引き離すとそれを高々と掲げ。

 

「仕方ありません、この毛玉を差し出しましょう!どうです?私よりも美味しそうでしょう!我が妹がごはんにしようと言い出す程ですから!」

 

「流石は主席、発想が違うね!」

 

「酷すぎる!そんな事ばかりしてるからモンスターに追われるのよ!」

 

ゆんゆんに叱られながらもクロを掲げてると、モンスターは空中でゆっくりと旋回し降りてきた。敵意は感じないが凶暴そうなので油断はできない。そして、私はモンスターと対峙する……とゆんゆんが私の前に立ち、無言で銀色の刃を煌めかせ構える。

 

無抵抗なウサギも殺せない小心者に倒せる訳がない。足も生まれたての子鹿の様に震えていた…

あるえは自分の冒険者カードを見る。強力な魔法を覚えられないか確認したのだろう。

…私なら既に上級魔法を覚える事ができる…しかし覚えてしまうと爆裂魔法が…。

しかし、ゆんゆんがこうしている以上…私も腹をくくるしか…くっ、こんな時にマホロアがいれば…

そう思った瞬間

 

「キルニードルワープ!」

 

「ギィ!?」

 

星型の'穴'がモンスターの横の空間に空けられ、そこから太い針が飛び出す。そしてそれは目の前のモンスターの羽を貫いた。

 

「アレェ?ヤッパリまだ思い通りにはならないナァ…」

 

上空からそんな言葉と共に降りてきたのは、

目の前のモンスターよりもモンスターらしい風貌の我が悪友だった。

 

 

*****************

 

 

「アレェ?ヤッパリまだ思い通りにはならないナァ…」

 

上空から声のした方にワープを続けていると、少し開けたところで見た事ないモンスターと対峙してる3人がいた。

 

うーん。あれだけ近づいてると魔力球じゃ2次被害が出そうだし…キルニードルを使うには遠すぎる…あ、そうだワープホールの応用をしてみよう!

 

と思いキルニードルワープを使ってみたのだが、これがまた繊細な技で今の俺じゃ1個完成されるのがやっとだ。しかも外れたし…要練習っと…

 

「マ、マホロア!」

 

「ハイハイマホロアダヨォ」

 

「遅いんですよ!もう少しで食べられるところでした!」

 

「でもピンチで助けに来ると言うのも中々美味しい展開…!」

 

とりあえず無事みたいだ。あるえはこの状況でも紅魔族のお約束を大事にするあたり流石だと思う。

 

「マ、マホロア!あのモンスター、まだ倒せてないよ!」

 

「マァマァ、ゆんゆんそう焦るなヨォ」

 

そういいつつモンスターを見ると少しよろめきながら俺の事を敵意たっぷりの視線で見つめてくる。そんな目で見つめるなよ……♠︎興奮しちゃうじゃないか……❤︎

 

まぁいいや消そ

 

「ハァァァァァァァァ」

 

またかめはめ波のように溜める。すると、"今の"俺と同じくらいの大きさの魔法陣が展開され魔力を帯び出す…

 

「マホロア砲!」

 

先日の物とは比べものにならないくらい太いビームがモンスターを襲う。

しかし、

 

「ッ!!」

 

間一髪のところで転がり、避けるモンスター

 

「ーーーーッワープ!」

 

ビームの先にワープホールを展開

そして出口を悪魔の転がる先に展開し

 

「!?ッギャァァァァァ!!!」

 

白い光が悪魔を包み込み消滅させる。

 

「クックク、少しはやるようだったケド、ボクの敵ジャアなかったネェ」

 

にしてもこんなに魔法を使ったのに全く疲れないとは…マスタークラウンやばすぎるだろ…これ量産してみんなに被せればそれこそ本当に世界とか征服できたりして…

 

そんな物騒な事を考えてると!

 

「マホロアぁ!」

 

ゆんゆんが抱きついてきた。

 

「怖かった…怖かったよぉ…」

 

余程怯えてたのか俺の胴体(?)…燃えてるように見えるところにしがみついてくるゆんゆん。そこって摑めるんだ…そんなゆんゆんの頭をなでていると…

 

「ねぇマホロア…君は昨日たくさん魔法を使って疲れてたよね?…どうして今は疲れてないんだい?」

 

「ソレは多分このマスタークラウンを、ツケてるからだネ…仮にも無限のチカラを持つ伝説のアイテムと言われてるからネェ、クックク」

 

「それを少し見せてくれないかい?挿絵にしたいから詳しく見てみたいんだ」

 

「イイヨォ」

 

そういい俺はクラウンを取るーーーー

 

 

*****************

 

 

ん?あれ?ここは………俺の部屋?

 

気がつくと今や見慣れた天井が視界にあった。

 

あれ?確かあるえに渡す為にマスタークラウンを脱いだところまでは覚えてるんだが…?

 

それにしても……

 

体がピクリとも動かん

 

体はいつもの第一形態なのだが…どう頑張っても腕1本動かす事ができん。どうなってるんだ?

 

そう思ってると

 

「気がついたかい?」

 

族長さんがマスタークラウンを手に部屋に入ってきた。

 

「体の調子はどうだい?」

 

ベッドの横の椅子に腰掛けながら聞いてくる。

 

「全身が動かないヨォ…」

 

「…そうかい、まぁ今はゆっくり休むといい」

 

「エッと、ボクは一体どうしたノ?」

 

「……ゆんゆんやあるえ、めぐみんが倒れてた君を抱えて森から出てきたんだ。これを持って」

 

そう言って族長さんはクラウンを撫でる。

 

「…ソウなんダ…」

 

「何があったのか聞かせてもらえないかい?」

 

俺は今日の事を話した。

第二形態になった事、

変なモンスターを消し炭にした事、

クラウンを取った後の記憶がない事、

俺が話してる間族長さんは目を紅く光らせて興味津々といった感じで話を聞いていた。

 

「つまり、これのおかげで第二形態とやらになれて、これを外すと倒れたというところかな?」

 

「タブンネェ…」

 

「禁忌の力…中々そそるものだが、これからはこれを使っちゃいけない。いいね?」

 

いつもは見ない族長さんの親のような厳しさを見た気がした。

 

「…わかっタ」

 

俺は特に歯向かってもメリットがないので従う事にした。まぁあの爽快感が味わえなくなるのが残念だが、今の状況を踏まえるとそこまでして使いたいものでもないという結論だ。

 

「じゃあこれはしばらく私が預かっておくね」

 

そう言って部屋を出て行く族長さん。

 

…さて、ここら辺で今の状況を踏まえて考えてみよう。

 

・俺はマスタークラウンを使い第二形態になった。

 

・普段はある程度使えば疲れるはずの魔法を際限なく使用できた。

 

・クラウンを外すと卒倒した。

 

と、

 

つまりあのマスタークラウン、劣化版という事だな…

【魔力が無限になると思い込ませてる】といったところか…

なんか麻薬みてぇだな…

 

限界を超えた魔力を使おうとすると生命力から持ってかれると聞いていたが、俺はクラウンによって生命力までも魔力に変えられていたという事か…生命力も無駄に高くて助かったのか?

まぁ、この全く動けない状態が助かったとは言い難いんだがな…

 

とりあえずなんか疲れたし寝よ…

 

 

*****************

 

 

……ドタドタドタ

 

……ん〜?ふあぁ…よく寝た…

 

なんか慌ただしい物音で目覚めた俺は首(?)だけ動かして時計を確認する。どうやら俺は長い事寝てたらしい…気付けば外はもう朱色に染まっていた。

 

ドタドタドタ…

 

?なんださっきから騒がしい…泥棒でも捕まえたのか?

そんな事を思っていると

 

ドタドタドタ…バタン!

 

勢いよく部屋の扉が開け放たれた。

そこには学校からここまで走ってきたのか息を荒くさせ、顔と目を赤くさせたゆんゆんがいた。

 

「マホロア!」

 

「…ヤァゆんゆん。ソンナに慌ててどうしタノ?」

 

「ッ!」

 

また抱きついてくるゆんゆん。しかし今度は決して離さないとでも言いたげに強く抱きしめられる。

 

「…ゆんゆん。い、イタイヨォ…ボクは今動けないんだカラもう少し優しく…」

 

「……どうしてあんな無茶したの?」

 

どうやら倒れたのは俺が無茶をしたと思ってるらしい。

 

「違うヨォ…アレはボクがクラウンのコトをチャーント把握してなかったのが原因なンダ…」

 

そう言って俺は未だ離してくれないゆんゆんに俺の先程の見解を説明した。

 

「…マホロア、クラウンは…」

 

「親父さんに没収されタヨォ…まぁボクとしてもアンマリ多用できるものじゃないシ構わないのだけドネ」

 

「…そう…」

 

そう小さく呟くとゆんゆんはやっと俺の事を離してくれた。目に涙を少し溜めて

 

「…ゴメンネゆんゆん…もう心配させるようなコトはしないように頑張るカラ」

 

「……約束よ?…マ、マホロアは私の仲間なんだから!」

 

俺を励まそうとしてるのか笑顔を作るゆんゆん。素直になればいいのに…強がりなのが丸わかりだ。

 

…ゆんゆんと約束したけど俺としてはあのクラウンをなんとか使いこなせるようになりたいんだがなぁ…とりあえず今は大人しくしてクラウンを奪還しよう…それから慣れるために修行だな…

 

 

*****************

つぎのひぃ

 

朝起きたら体は完全に元どおりで、普通に動けるようになってたんだが…

族長さんやゆんゆんに今日は大事をとって休めと言われてベッドに押し込まれた。まぁ人間じゃないし本当に大丈夫なのか不安だったんだろう。

 

そんな訳で暇になった俺は当然修行など許してくれるはずもなかったので、里を族長さんと共に散歩していろんな人に俺の事をよく知ってもらうのと、たまごに魔力を注いでもらったりしていた。

 

「おぉ…キミが噂の≪封印されし異界の魔術師≫だね?我が名はちぇけら!アークウィザードにして上級魔法を操る者、紅魔族随一の服屋の店主!キミは魔王を屠る旅に出るんだろ?ならば!我が傑作のローブを今ならやすくしとくよ!」

 

「このチョー強いドラゴン(?)にキミの魔力を注がせてあげるカラ…もうチョーット安くできないカナァ?」

 

と俺は*新しいコスチューム…もとい服を買ったり

 

ポーション屋でたまごに魔力を注がさせた上でスキルアップポーションをまけてもらったり

 

農家の人達に同じやり方で野菜を譲ってもらったり…

 

占い師そけっとのとこにも行って、占って貰うと何故か上手く映らなくて見通せなかったり(変わりにありったけの魔力を注いでもらった)

 

何もないニートにも出会ったが搾取できそうなものがなかったので魔力を限界近くまで搾取させてもらった。

 

…この人達の価値観はかっこいいが最優先だからかたまごに魔力を注ぐ事をとても名誉な事とおだてあげるとなんでもしてくれた。…ちょろすぎん?この人達…そんな感じで里のあちこちを挨拶兼ドーピングして回っていると、

 

「ここが謎の巨大施設だよ。中には世界を滅せるかもしれない兵器を始め危ない物が眠ってると伝えられている。

でもこの施設は古代の言語によって封印されており、誰も開ける事が出来ないんだ」

 

「ヘェ…チョット中を覗いてみていいカナァ?」

 

「?構わないけど…開けないから入り口までだけど…」

 

「いいカラいいカラ、少しダケ」

 

そういい俺は扉の近くに行くと…

 

【コナミコマンドを入力せよ】

 

と日本語で書かれていた。遠目で見てなんとなくわかったが、古代文字って日本語の事かぁ…にしてもコナミコマンド……やっべぇ忘れちゃったよ…あぁーくそ!まさか古いゲームの知識をこんなとこに活用できる日が来るとはッ!不覚!

 

「ね?何もないだろう?」

 

「アァー…ウン、そうダネェ…」

 

そんな感じで里を隅々まで案内され終わるとあたりはすっかり夕方になり、空も焼けていた。

 

*****************

 

家に帰り、新しい服に着替えて鏡の前で衣装合わせしていると

 

「ただいまー…」

 

心なしか元気がないゆんゆんが帰ってきた。どうしたんだろう

 

「!マホロア!その格好どうしたの!?」

 

すぐに顔色を戻してそう聞いてくるゆんゆん。

 

「新しい服を買ってもらったンダ!ドウ?似合ウ?」

 

「似合ってるけど…服を買いに行くなら私も行きたかったな…と、友達と服選び…いいなぁ…」

 

そう少し残念そうに肩をすぼめるゆんゆん。うん、やっぱいつものゆんゆんだわ。

 

「マァ…服選びクライ旅に出ればする機会なんていくらでもあるダロォ?」

 

「そ、それもそうね!そ、それに今日はふにふらさん達と……」

 

後半声が小さくなって聞こえなかったが、やっぱり何かあったんだろうか?

 

 

*****************

 

〜翌日

 

「あ、めぐみんおはよう。……クロちゃんもおはよう」

 

おかしい…いつもは私の姿を見つけると、嬉々として勝負を挑んでくるゆんゆんが、何故か普通に挨拶してきた。

 

「おはようございます。……どうしたんですか?いつもは私の顔を見ると、まるで野党か山賊のごとく、必ず喧嘩を売ってくるクセに…それと今日はマホロアは来るんですか?マホロアの弁当がある事が当たり前になっていたので昨日は妹が飢えてクロを食べかけたんですから」

 

「私、そこまで無法者だった!?いや、まあ間違ってはいないけど、も、もうちょっとこう、言い方を……。ライバル同士の勝負、とか…」

 

モニョモニョいうゆんゆん。まさかあのバカが倒れた事で感傷的になってしまったんだろうか…

するとふにふらとどどんこが近づいてくる。

 

「ゆんゆんおはよう!昨日はありがとね!助かったあー!やっぱ、持つべきものは友達だよね!」

 

「そうそう、ありがとね!さすがゆんゆん!」

 

「あ、その……。わ、私も、友達の助けになったのならよかったよ……!」

 

ゆんゆんがパァッと顔を輝かせ、笑みを浮かべた。

 

……何があったんだろう。

 

「ヤァ!みんなおはよう!マホロアは復活したヨォ!」

 

いつもの青い服ではなく白い服に身を包んだマホロアが勢いよく教室に入ってきた。

 

 

*****************

 

俺が新しい服を着て教室に入ると

 

「ま、マホロア!?まさか…一昨日のマホロアは死んで…二代目のマホロアになったのかい!?」

 

とあるえがなんか物騒な事を言ってる。

 

「イヤ、死んでないカラ…昨日散歩ついでに服を買っただけダカラ」

 

「よーし、お前ら席につけー!では、出欠を取る!」

 

と、担任が入ってきた。

 

その後、ゆんゆんの様子がおかしい事を探ろうと思ってると…

 

ガタッ!

 

授業中、椅子を蹴って立ち上がったゆんゆんが、泣きながらめぐみんに襲いかかり、廊下に2人共立たされていった…

 

大方からかわれたのだろうが、やっぱりなんかおかしい…か?いや、いつも通りか。

 

体育の授業、2人は未だ睨み合っていて、仲良く減点20とか食らってたりしてた。先生の質問にも互いを間接的に貶めるような答えを返してたが、先生に"なんちゃって紅魔族"とレッテルを貼られて正座してた。

…何やってんだこいつら…

 

で、各自ペアを作り、戦闘前のセリフを練習する授業が始まった。俺は情報を集めるためにゆんゆんの友達の一人、ねりまきに声をかけた。

 

「ヤァねりまき!キミ、ペアはイル?いないならボクと組もうヨォ!」

 

「?いいけど…マホロアが私を誘うなんて珍しいね、いつもは大抵あるえと組むのに…」

 

「マァたまには他の人もいいカナァ…テネッ!」

 

それからまずは

 

「ボクの戦闘力は……53万ダヨォ…」

 

「フッ…どうしたの?笑いなさいよマホロア…」

 

などと適当に授業をこなしながら本題に入る。

 

「13キロダヨォ………ところでねりまき、昨日ゆんゆんに何かなかったカナァ?」

 

「なん……だと……。?私は別に何も知らな………あっ、そういえば昨日はふにふらとどどんこがゆんゆんを誘ってどこかに行ってたようだけど…私は家の手伝いで帰ったから詳しい事は知らないよ」

 

「ヘェ………アリガトウねりまき……」

 

あの2人………か

 

*****************

 

放課後……

 

ゆんゆんに詳しい話を聞かせてもらおうとしてると…

 

「マホロア!昨日何があったか、何が起こったのか…しっかり聞かせてもらうよ!」

 

あるえにつかまった…

 

「エェ…今日はチョット…明日!明日話すカラ!」

 

逃げようとドアに手をかけるが…

 

「逃がさないよ…昨日もお預けを食らったんだ…今日!徹底的に聞かせてもらうよ!」

 

とがっちりホールドされる。おぉ…これはゆんゆんよりも凄い……これは明日森行き決定だな…

 

そんな訳であるえにつかまった俺は昨日ゆんゆんにした話をした後、あるえによる質問攻めにあった。

 

 

*****************

 

 

「ただいまー……」

 

「おかえりマホロア。どうしたの?遅かったじゃない」

 

「あるえに捕まって質問攻めにあってたンダ…」

 

「そ、そうなの…….あ、そうだ!さっきぶっころりーさんが明日相談に乗って欲しいって言ってきたんだけれど…めぐみんも一緒なんだけれど…マ、マホロアも来ない?」

 

ぶっころりー……あぁ…あのニートか…どーせろくな相談じゃないだろうしなぁ

 

「イヤ、やめておくヨォ…明日はやることがあるからネェ…」

 

適当な理由でごまかしておく。

 

「そ、そう…」

 

ゆんゆんにふにふら達のことを聞きたかったけどなんか今日はもう質問とかしたくないし…明日にしよう…

 

 

*****************

 

tomorrow

 

あるえにsan値を上昇させる攻撃を食らった俺は再び森に入っていた。

もちろん族長さんやゆんゆんには内緒だ。

 

ある程度の敵はキルニードルてワンパンなので魔力の消費も少なく、安全に狩っていると…

 

「「「ゴルァァァァァァ!!!」」」

猛り狂った一撃グマの群れが現れた。

 

「前は倒すのに苦労したケド…今のボクなら三秒で片付けてヤルヨ…」

 

と、マホロア砲を打つために魔力を集中していると

 

「キシャー!!!」

 

以前俺に噛み付いためぐみんの妹、こめっこだったか?が一撃グマの群れに突撃する……ちょ!?おま!?何してんの!?とりあえずこめっこを回収しようとワープホールの準備をすると

 

「こめっこさん!?」

 

そんな声と共に現れたのは漆黒の、強靭な肌を持つ。凶悪な牙や羽を持っている、今まで見た中でも一番強そうなモンスターだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




*新しいコスチューム

カービィハンターズのアレ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話 人は一人じゃぁ生きてはいけないもんだ

ようやく爆㷔一巻の内容が終わる…


「こめっこさん!?」

 

そういい現れたとっても強そうなモンスター…やべぇ…直感的に俺にはわかるこいつには今の俺じゃあ勝てねぇ…せめてマスタークラウンがあればまだ渡り合える気がするが…いや、そんな事はどうでもいい。とりま奇声とともに突っ込んでった何時ぞやの幼女を助けねば…正直怨みしかないが、めぐみんの妹だ。妹が死んで泣き喚くめぐみんなんて見たくない。だが、

クマさんの群れと格上モンスターか…うーん…最低でも全治3ヶ月は余裕かな…

 

そう軽く絶望してると

 

「!おいそこの……あー…青いヤツ!お前ちょっと手伝え!こめっこさんが死んじまう!」

 

なんと強そーなモンスターが助けを求めてきた。とりま敵対してもデメリットしか見当たらないしここは従っておこう…

 

「わ、わかったヨォ!」

 

魔力球を出現させ、クマさんに投球する。

 

 

*****************

 

 

数十分後

 

俺は今、例のモンスターと対峙してる。そして…

 

「いいカイ?その子を離すなヨォ?そのまま押さえておいてクレ」

 

「ホースト離して!そいつ食えない!」

 

「お、おう。な、なぁこめっこ?一旦落ち着こうぜ?俺には何があったかわからんが食べるのはやめとこうぜ?な?代わりにまたなんか食わせてやっからよぉ」

 

このホースト?というモンスターに取り押さえてもらい、説得してもらっていた。

 

「むぅ…わかった!」

 

やっと大人しくなるこめっこ。にしてもこの子、俺みたいなゲテモノ(マホロア)を食べようとするのはダメだろう…

 

「フゥ…サテ、ジャア話をしてもらおうカナァ?エット…ホーストサン?」

 

「俺としてはお前の方が怪しいんだが…しょうがねぇなぁ…姿も見られちまったし。…俺はウォルバグ様の側近である上位悪魔、ホーストだ。で?お前は?」

 

「ボクはマホロア、こんな見た目ダケド、元は人間で今はマホロアダヨォ」

 

「マホロアってなんだよ…」

 

「マホロアはマホロアダネェ…」

 

そうとしか答えようがない。つーか俺が聞きたい。

 

「そ、そうか…しかし、まいったな。こいつも口封じしなきゃならんのか…」

 

おっとなんか危ない言葉が聞こえたような…チッこうなったら

 

「ホーストってスゴ〜ク強そうだヨネェ!ボクが今まで見たモンスターの中で一番迫力があったヨォ!

 

何時ぞやの女神の時と同じ作戦を試してみる。

 

「そんな見え見えの煽てに乗ると思うか?」

 

クソ!こいつ意外と頭がいいな…あの駄女神といいゆんゆんといいこの世界の住人はみんなチョロイのだと思ったのだが…

 

「だがそうだな……マホロア!お前が俺の事を喋ったらこいつがただじゃすまねぇと思え。そしたら見逃してやる!」

 

何か悩んだ後にそんな条件を突きつけてきた。力じゃどうしようもないしここは諦めて従おう…

 

「わかったヨォ…約束するヨォ」

 

「…悪魔は約束や契約にうるさいんだ。破ればどうなるか……な?」

 

なかなか賢いなこいつ…痛いところを的確についてきやがる。そう思ってると、ホーストの背中からこめっこがぴょこっと出てきて

 

「ホーストのくせになまいき!」

 

「こめっこさん…今はちょっと勘弁してくださいよ…」

 

「もうキミの方が尻に敷かれてないカイ?」

 

「ぐっ…否定できねぇ…」

 

あたま(頭部)を掻きながら目をそらす上位悪魔…おかしいなぁ、さっきまでとても怖いイメージがあったホーストが今はとてもなよなよしく見える…

 

その後俺はホーストがこめっこに害を与えていない事を確認した後、暇だったし俺は人間だった事を話して、ホーストは何を目的にしてるかは話してくれなかったが、こめっこと遊んで(?)いるという事を話してくれた。ホーストのは3/4が愚痴だったんだが。

後は適当にこめっこも混ぜてモンハン(血祭り)したりして遊んだ。

 

そんなこんなと話してる内に夕方になった。

 

「じゃあネェホースト!キミとは仲良くなれそうダヨォ!」

 

「ヒャッヒャッ!だが俺の事は話すなよ?約束だぜぇ?」

 

「じゃあな!ホースト!また明日!」

 

「おう!」

 

そう言ってホーストはどっかに飛んでいった。あいつ怖い見た目のくせに話してみると意外といい奴だったなぁ…

 

「ジャアボクらも帰るヨォ」

 

「うん!……じゅるっ」

 

返事をして、俺の方を美味しそうに見つめてくるこめっこ。

え?まだ俺の事を食う気なのこの子?

 

「……こめっこ?ボクは美味しくないヨォ?」

 

「美味しくないって事は食べられるね!」

 

キラキラした瞳で見つめてくるこめっこ。まじかよ…このままじゃ俺は物理的に食べられちまう…とりあえずこの子の意識を変えよう。

 

「………こめっこ?ボクの体にはネェ、呪いがかかってるンダ。だからボクを食べると、キミ死んじゃうヨォ?」

 

とりあえず意外とありそうななんかの童話のような嘘を並べてみる。

 

「……じゃあ呪いを解いてから食べる!」

 

たくましいなぁ!おい!

 

「わかったヨォ…呪いが解けたらこめっこのところに行くカラ…その時ネ?」

 

逆手に取って延命措置を施してみた。

 

「……しょうがねぇなぁ!見逃してやる!」

 

「……」

 

ホーストの口調が移ってる…。

 

 

*****************

 

 

そんなこんなでこめっこ、もといめぐみんの家についた。

 

「ジャア、また今度ネェ!ホーストがいるケド、森の中は危険だカラ気をつけるんダヨォ?」

 

「わかった!バイバイマホロア!早く呪いを解いてきてね!」

 

笑顔で早く食べさせろ(死刑宣告)と言ってくるこめっこ。怖いよこの子…俺が骨を収めるのはどうやらこめっこの胃の中らしい。

 

そして家に帰ってると…

 

「……おや、マホロアじゃないですか。こんなところで何をしてるのですか?」

 

めぐみんとばったり出会った。

 

「…チョット修行しててネェ」

 

ホーストの事は言えないので適当に誤魔化しておく

 

「そうですか……マホロア、少しいいですか?」

 

転入当時の様に俺を誘ってくるめぐみん。

 

「いいケド…マタ締められるノ?」

 

「違いますよ!ちょっと…相談したい事がありまして…」

 

そう言って近くのベンチまで連れて行かれた。

 

「デ?めぐみんが悩み事なんて珍しいネェ。明日は雪でも降るのカナァ?」

 

「私だって女です!悩み事くらいしますよ!」

 

そう言ってめぐみんは俺の隣に座ってくる。

お?なんだ?俺にフラグが立つのかな?そう期待してると…

 

「えっとですね……私……巨乳になりたいのです」

 

…シラネェヨ

ベンチから立ち上がり無言で帰宅しようとする手をめぐみんが慌てて掴んできた。

 

「エェイ!離せヨォ!キミの胸事情ナンテ知らないヨォ!牛乳でも飲んでレバ育つんじゃネェノ!?」

 

「ち、違います!今のは冗だ……いや冗談ではないのですが……ともかく!次は真面目な話ですから!」

 

聞こうじゃないか

俺は仕方なく再びベンチに腰(?)掛ける

本当に重要な事を話すのか、めぐみんは大きく息を吸い

 

「私、爆裂魔法を覚えようと思うんです」

 

と告げた。

爆裂魔法…確かクッソ魔力を使うからまともに使えないし、音もデカイから魔物を呼び寄せる。そして唯一の取り柄の超火力も、大体がoverkillで覚える意味がないネタ魔法って先生が言ってたな。

 

「…ゆんゆんにはソノ話ハ?」

 

「してません。マホロアは世間知らずですし、この里の人間じゃないので話そうと思いました」

 

「?里の人間じゃないカラ?」

 

「はい。ほら、私って紅魔族随一の天才じゃないですか。そうなると…ほら、周りからの目がありましてですね…」

 

あーはいはい。知能と魔力が人より優れてる期待の星が、蓋を開けてみれば産廃魔法使いと知ったらみんながっかりするだろうしねぇ。

 

「……めぐみんは爆裂魔法を覚えテどうするノ?」

 

「……私は子供の頃、魔獣に襲われた事があったのです。そこにはたまたま通りかかった魔法使いのお姉さんが、爆裂魔法でその魔獣を撃退したのですよ。その時の爆裂魔法の破壊力!圧倒的な暴力!絶対的な力!それはもう凄まじく、最強魔法の名に相応しい威力でした。あれを一度でも見てしまったなら、他の魔法を覚える気が起きませんでしたね。ともかく!そのお姉さんに私の爆裂魔法を見せて、こう聞くのです!"あなたに教えてもらった、私の爆裂魔法はどうですか"と」

 

昔の事を語る英雄の様に力強く語っためぐみん。その目には強い決意が見える。なら…

 

「イイんじゃナイ?ボクは素敵だと思うナァ」

 

「…反対しないんですか?」

 

「マァ、僕自身爆裂魔法を見た事がないシ、本当にネタ魔法なのカこの目で見たわけじゃないシネ。…ソレに、チャーントした目標を持ってるナラ、ボクは応援するヨォ。ソレがもし単なる好奇心とかだっタラ反対してたけどネェ」

 

本人が絶対に叶えたい夢をいたずらに否定したり笑ったりするのは許されない事だと思う。それにこの歳でもう人生の目標を見つけてるんだ。そこは友達として応援するべきだろう。

 

すると目をパチクリさせためぐみんが。

 

「…意外です。てっきりいつもの様にバカにされると思ってました」

 

「ラシクない事をしたとは思うんだケド…ボクにはボクなりの価値観があるからネェ」

 

自分の価値観を持つのは大事だと思う。

 

「…この事は内密に頼みます。今知られてしまえば上級魔法を覚えさせられそうなので…もちろんゆんゆんにもです。……あの子にはいずれ話します。」

 

「胸のコト?」

 

「違いますよ!爆裂魔法の事です!」

 

「冗談ダヨォ〜それに、めぐみんはいつか虚乳になれるッテ!」

 

「あ、ありがとうござ……なんか釈然としないのですが…」

 

今日で2つも秘密事が出来てしまった。

 

「気のせいダヨォ…アァ、ソウダ!代わりにボクの頼みも聞いて貰おうカナァ」

 

とたんに嫌そうな顔をするめぐみん。

 

「ミンナにこの事言いふらすヨォ?」

 

「ぐっ…卑怯です!何故私はこんなのに話してしまったのでしょう!」

 

悔しがるめぐみん。

「こんなの」って…

 

「はぁ…悔やんでも仕方がないです…で?頼み事とは?」

 

「そうダネェ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふにふらやどどんこがゆんゆんと何かあったのは知ってるダロォ?ーーーーー」

 

 

*****************

 

 

傷心のニートが家に引き篭もってから3日が経った。血迷って私の秘密を悪友に話した時に脅された。全くなぜ私はあんなのに話してしまったんだろう。何時ぞやのマホロアの言葉に影響を受けてしまったのだろうか…ともかく最近はある調査をしている。それは

 

ーゆんゆんの様子がオカシイのを調べてちょうダイー

 

との事だ。

 

「めぐみんおはよう。はい、これ」

 

教室に入った私は、マホロアの様に無償で弁当を手渡された。

やはりこれは重症だ。

 

「なんですか?ひょっとして私の事が好きなんですか?いきなり一足飛びに、こういった愛妻みたいな事をされてしまうとちょっと……」

 

「愛妻ってなに!?ねえなに言ってんの!?今日は勝負をするつもりもないから、素直にお弁当渡すだけよ!お弁当あげるから絡んでこないでねって事!」

 

…なあんだ。

 

「というかその言い方だと、弁当をもらえない場合私がゆんゆんに弁当をたかる無法者みたいに聞こえるのですが」

 

「毎日勝負を挑む私も大概だけれど、めぐみんも無法者じゃない」

 

アッサリと言ってくれたゆんゆんをどうしてやろうかと考えていると、白い服を着たマホロアが教室に入ってきた。

 

「オハヨウ!」

 

短く挨拶するとマホロアは私に向かって手招きした。

 

「……デ?ドウ?調査は順調カイ?」

 

「いえ、今の所なにがあったのかわかりませんね。ただ、今日の朝ゆんゆんが無償で弁当を手渡してきました。」

 

「……ホント?イツモ野盗の様に勝負を挑んでクルゆんゆんが?」

 

信じられないと言った口調で驚くマホロア。

 

「はい。マホロアの方は何かわかりましたか?」

 

「イヤ、3日前からゆんゆんに遠回しに聞いテルんだけドネェ、『……な、なんでもないわよ…』とか『と、友達と遊んで疲れたのよ、きっと!』しか言わなくてネェ…」

 

「そうですか…恐らくマホロアが作ってあげた友達ですし、言えないのでしょう」

 

「フム……ジャアますます君に頼らなくチャァいけないネェ…」

 

ゆんゆんにどうやって吐いてもらおうか考えてると担任が教室に入ってきた。

 

ざわめいていた教室内が静まり、担任が教壇に立つ。

 

「おはよう。この間の授業でマホロアが葬った、邪神の下僕と思われるモンスターが里の中でも目撃されたらしい。流石にうかうかしていられない状況になってきた」

 

担任の言葉で教室内がざわめいた。

紅魔族の姿を見るだけで、先日の一撃熊くらすでもなければ、大概のモンスターは逃げ出してしまうはずなのだが。

…もしかしてマホロアの第二形態の事では?あの姿は正直悪魔にしか見えない。

 

「という訳で、まだ準備は足りていないが人数を集めて強引に再封印を行う事になった。儀式は明日の夕方から明後日の朝にかけて行われる。万が一失敗でもした際には、里に邪神の下僕が溢れる事になる。そのための対策も講じてはあるが、儀式が始まったら家からは出ないように」

 

普段はいい加減な担任が珍しく真面目な表情で言ってきた。

 

「それとマホロア、放課後職員室に来るように」

 

「エッ?」

 

あの馬鹿何か余計な事をしたのだろうか…

 

 

*****************

 

 

放課後

 

「ソレで?話って何カナァ?」

 

いつになく真面目な先生に呼び出されたので、今日一日の時間が早かった。

まさかホーストの事がばれたのか…?

 

「朝話した通り里中にあのモンスターが大量に溢れ出している。これは族長とも話し合って決めたんだが…お前はあの時そのモンスターを消しとばしただろう?だからお前にも儀式に付き合って欲しいんだ」

 

違った。にしても封印に付き合って欲しいねぇ…

 

「いいヨォ…ケド、マスタークラウンがないとキビシイのだけド…」

 

「……あれは俺は管理してないからな、帰ったら族長に相談するといいい」

 

はようマスタークラウンを使いこなしたい、後里のみんなに第二形態みせとかなくちゃ修行中に俺が襲われかねないし…全力で説得しよう。

 

「じゃあ明日の放課後教室に残っていてくれ」

 

「わかったヨォ」

 

そういい俺は職員室を後にする。

 

 

*****************

 

夜、家にて

 

「ト、いう訳でマスタークラウンを返して欲しいんダケド」

 

族長に懇願中である。

 

「ううむ、確かに生徒とぷっちん以外

はマホロア君の…その第二形態?を見てないし…わかった里のみんなへの紹介も兼ねてマスタークラウンの使用を許可しよう!」

 

「アリガトウ族長さん!」

 

「しかしその第二形態がとても気になるのだが…紅魔族的にとてもポイントが高いぞ!マホロア君!明日が楽しみだ!」

 

「この姿よりもカッコよくて大きくなるヨォ。楽しみにしてテネッ!」

 

なんとか丸め込む事に成功した。

最初はダメって言われたが、第二形態の事を大袈裟に話すと許可してくれた。紅魔族の人達は交渉とかに向いてないような気もする。

とりあえず許可をもらった俺は寝るまで暇なのでゆんゆんを部屋に呼んだ。

 

そして現在。ゆんゆんとトランプタワーを製作中。

 

「へぇ…マホロア明日儀式に行くんだ」

 

「マァネェ…マスタークラウンも許可もらったシ、みんなに第二形態見せてくるヨォ」

 

ふとゆんゆんの手が止まる。

 

「マホロア!?またあれを使うの!?あれを使ったらマホロアまた倒れるんじゃないの!?大丈夫なの!?」

 

タワーを崩して俺を揺さぶるゆんゆん。

 

「オイオイ落ち着きなヨォゆんゆん。マッタク…心配性ダナァ、ゆんゆんは。大丈夫ダヨォ…ただみんなにボクの第二形態を見てもらうだけダヨォ。ボクの第二形態を知らなくて里のミンナに攻撃されるかもしれないダロォ?」

 

「うん…確かに……そうだけど………じゃあ前みたいに無茶して倒れないって約束してくれる?」

 

上目遣いで俺を見てくる。どこでそんな必殺コンボを覚えてきたのやら…

 

「…わかったヨォ魔法は使わない様にするからサァ」

 

俺がそう返答すると安心した様で俺から手を離し一息つくゆんゆん。

 

「そう………えっと…マホロア?めぐみんにも話したんだけど……………」

 

お?ついに話してくれる気になったか?

 

「ドウしたノ?」

 

「………ごめん…やっぱりなんでもない……おやすみ…」

 

そう言って部屋から出て行くゆんゆん。

めぐみんの言う通り俺に話すのは気がひけるのだろうか…まぁめぐみんに話したって言ってたし明日聞いてみよう。

 

 

*****************

 

 

tomorrow

 

「ヤァ…オハヨウめぐみん」

 

「おはようございます。調査の結果が出ましたよ。……あの二人、ふにふらとどどんこはゆんゆんにお金をたかってるようです」

 

……舐めたことしてくれるじゃねぇか

 

「ヘェ……ジャア今日の昼休みにでも締め上げようカナァ…アノ二人…」

 

「待ってください。マホロアが手を出せば追放されますよ?」

 

ッチそれはそうなんだが…

 

「……コノまま見過ごす事はしないよネェ?」

 

「わかってますよ。…まぁここは私に任せてください。ーーー私に考えがありますーーーー」

 

 

*****************

 

 

「ではこれより、魔道具作製の授業を始める。魔法薬や魔道具の製造などは、我々魔法使い職の者にとっては大切な収入源となる。覚えておいて損はないぞ。では各自好きな材料を使っていいから簡単な体力回復のポーションを作ってみろ。上手くできたら、そこにアレンジを加えてもいい。調合の比率によって、ポーションの効果が変わってくるからな。自分だけのレシピを作ってみろ」

 

さて、俺たちは今学校の地下室でポーション製作の授業を行っている。そして、

 

「ではマホロア。私は作戦通り病を治療するポーションを作ります。マホロアはそのサポートをしてください」

 

「オッケェー」

 

そう言って先生にレシピをもらいに行くめぐみん。

なぜ俺らは無謀にも難易度の高い物を作ろうとしてるかと言うと、

ーーあの二人はゆんゆんに病気の弟の為に薬を買うお金が欲しい。という体でお金をたかったそうです。だから、私達で病を治すポーションを作って渡せば何も言い逃れができないはずです。だから、今日のポーション製作の授業でそれを作りましょう。ーー

との事だ。

おっと、何か怒った様子のめぐみんがレシピを手に帰ってきた。

 

「ドウしたノ?」

 

「いえ……ちょっと爆裂魔法を最初に打ち込む相手が決まっただけです」

 

「?」

 

「いいから、これ見て材料を集めてきてください」

 

気にしても仕方ないので言われた通り材料を集めていく。すると

 

「めぐみんとマホロア、そんな材料集めてきて何を作るつもりなの?それよりも、体力回復ポーションは?クロちゃんがグッタリして弱ってるんだけど、できればこの子の薬を……」

 

俺たちが集めてきた材料をみて、近くにいたゆんゆんが心配そうな顔で言ってきた。

 

「これは私の友……友達?との秘密の事ですので、ライバルのゆんゆんには言えません」

 

「オイ、なんで言い淀んだのカナァ?」

 

「あっ!な、なにそれ!ふにふらさん達からの相談を内緒にした事への当てつけ!?」

 

ゆんゆんの言葉を聞き流しながらめぐみんは淡々と作業を進める。

 

「ゆんゆん。ジャアキミがクロちゃんを助けてアゲテくれるカイ?ボク達チョット手が離せなくてサァ」

 

「ま、マホロアまで内緒にするの!?…確かにマホロアには…話してないの

だけど……」

 

「マァマァゆんゆん。イズレわかるヨォ。その時はターップリと話し会おうネェ?」

 

「え?う、うん……マホロア何か怒ってる?」

 

「気のせいダヨォ」

 

軽く遺憾に思う程度かな…

とりまゆんゆんを説得して作業に戻る。

 

その後、めぐみんがすり潰してた鉢から火の手が上がり火事になりかけた。そこで先生が鎮火するために使った≪クリエイト・ウォーター≫が勢い余って、近くにあったマンドラゴラに直撃。そして俺は今、大脱走を繰り広げるマンドラゴラと鬼ごっこ中だ。

 

「エェイ!チョコマカと!大人しく捕まってヨォ!」

 

この植物早っい。この世界の野菜はたくましいのだが、それは植物全般に言える事なのだろうか…そう思ってると不意に追いかけていたマンドラゴラが誰かに捕まえられた。

 

「ほい。一本捕まえたよ。なにを作ってるのか知らないけど、面白そうな事をやってるね」

 

あるえがマンドラゴラをぷらんぷらんしながら話しかけてきた。

 

「アァ…めぐみんと、あるポーションを作っていてネェ…ソレをめぐみんの所に届けてキテくれるカイ?後、暇ならアイツを手伝ってやってチョウダイ。ボクは残りのマンドラゴラを捕まえてくるからサァ」

 

「構わないさ。マホロアも頑張ってね」

 

そう言ってめぐみんの所に行くあるえ。さて、残りの植物共を捕まえて来るか。

 

ーーー

 

そこそこの逃走劇を繰り広げた後に

 

「ヨシ!ヤット捕まえ…イッタァ!!」

 

なんと捕まえたマンドラゴラに指(?)を噛まれ、怯んだところを逃げられてしまった。そして、してやったとばかりにこっちにあっかんべーをする雑草ちゃん。

ーー調子に乗りやがってッ!

 

「ミニマム≪キルニードル≫!!」

 

「ギィィィィィィィ!!!???」

 

股下から割り箸くらいの太さの≪キルニードル≫で頭まで穴を開けられた雑草野郎は断末魔の様な悲鳴をあげると動かなくなった。

 

「クックク!ナァンダ…最初からコウすれば良かったのカァ…」

 

「「ヒィ!!」」

 

偶然近くにいて、その現場を目撃してたふにふらとどどんこが顔を青くして小さな悲鳴を上げた。

……まぁ…マンドラゴラって人の形に似てるからなぁ…。ここで

 

『ふにふらサン、どどんこサン。ココに穴の空いたマンドラゴラがあるダロォ?………数分後のキミ達の姿ダヨォ』

 

って言ってみたいなぁ。言わないけど。

その後残りのマンドラゴラたちを串祭りにした。小さな人形植物を追いつめて問答無用で串刺しにしていく俺を見た生徒や先生はドン引きしながらその様子を見ていた。

余談だが、今回のこれのせいか後日から俺に『マンドラゴラキラー』というたいして嬉しくないアダ名がついたのはまた別の話。

 

穴の空いたマンドラゴラ達を、抱えてめぐみんのところに戻ると。

 

「めぐみんは、レベルが上がった」

 

「ばかあああああーっ!」

 

カモネギというどう見てもポケ○ンのカモネギの姿をしたモンスターの首を握りしめ、冒険者カードを掲げるめぐみんにゆんゆんが泣きついていた。

……なにがあったし。

 

 

*****************

 

 

放課後

 

「では、あの二人の所に行ってきます。……呼び出した時に『マ、マホロアは来ないよね?』と随分怯えた様子で聞いてきたのですが……あなた何やったんですか?」

 

病用ポーションをちゃぷちゃぷ揺らしながらそう尋ねて来るめぐみん。

 

「マダ何もしてないヨォ…ボクはただマンドラゴラを締めてただけダヨォ」

 

方法は伏せるがな…

 

「そ、そうですか…では後の事は任せてください。そっちもいろいろあるのでしょう?終わったら家でたっぷり聞くなりするといいです」

 

いつもはストレスの種のめぐみんがなんだか頼もしく見えてしまう…

 

「…ワカッタ。ジャア健闘を祈るヨォ」

 

そう言って俺は教室を出て行く。

 

 

*****************

 

 

「では儀式の流れについて説明する。

まず封印をする人が8名。そして、恐らく邪神の下僕が邪魔をしてくると思われるので封印を行う8人を取り囲む様にして迎撃部隊を配置する。時間は封印が終わり次第終了だ。以上、何か質問はあるか?」

 

現在俺は、担任のぷっちんに連れてこられ、里の集会場で作戦会議中だ。そして、

 

「誰が封印をするんだ?」

 

という質問をして、かれこれ1時間ずっと話し合っている。内容は…

 

「俺がやる!邪神の封印なんて美味しそうな役……ごほん!そんな大事な役目、この中でも魔力が人一倍高い俺が適任のはずだ!」

 

「いや!我だ!我が身に宿る闇の力は邪神を封印するのに最も相性がいい!」

 

「違うね!俺には前世で奴との因縁がある!今こそ!この俺が奴をもう一度封印してみせるッ!」

 

といった様にだーれも譲ろうとしない。みんながやりたくないという押し付け状態よりかはマシだが…このままじゃあ埒があかない

 

「ハイ!ココはクジ引きでいいんじゃないカナァ」

 

「ダメだダメだ!それじゃあ誰が相応しいかわからないだろう」

 

「……いや、案外ありかもしれんぞ?本当に相応しい者は因縁としてクジ引きくらい引き当てるのではないか?すなわち!選ばれし者は自ずと決められてるということかッ!」

 

「!……確かに!よし!早速クジ引きの準備をしよう!」

 

……今更なんだが、いい年した大人が集団で中二病的な発言で会議をしてるのを聞いてると頭が痛くなる…

 

そしてクジ引きで8人が決まった。

決まった時にまた言い争いになるかと思ったが、決められた事には誰も文句は言わなかった。ここはこの人達のいいところだと思う。

 

「よし、じゃあ出発するぞ!」

 

「ア、チョット待ってチョウダイ」

 

危ない危ない、肝心な事を忘れるところだった。

 

「どうしたマホロア?怖気付いたか?」

 

「マサカ……イヤ、実はボク第二形態がアルんだけどネェ。見た目が凄く悪魔っぽいからサァ、ミンナに一度見せておこうと思ってネェ」

 

「ナニィ!?第二形態だとぉ!?そんな素晴らしい設定まであるのかキミは!」

 

「なんてことだ……クソっ!何故紅魔族には形態が変化しないんだッ!」

 

「早く!早く見せてくれ!」

 

みんなが興奮して目が紅くなっていく…

 

「マ、マァ落ち着いテ。急かさなくテモ見せるカラサ」

 

そう言って俺は何時ぞやの様に第二形態になる。

…あぁ、やっぱり視点がだんだん高くなっていくこの感覚と満ち溢れていくパゥワァの感覚がすばらしい!

 

「「「「「オォ!!!!!」」」」」

 

「すばらしい!想像の何倍もカッコいいよ!マホロア!」

 

「今度あんな感じになれる魔道具作ってみようかなぁ…」

 

みんなにも大好評の様だ。

 

「よし、じゃあ早速封印に向かう。各自マホロアに見惚れてないでちゃんと任務を遂行しろよ?では出発する!」

 

族長がそう言った瞬間。

 

邪神の墓の場所と思われる場所からおびただしい数のモンスターが薄暗い空に飛び広がっていった。

 

 




今回は要素を詰め込みすぎた気がする……

感想、評価なとありがとうございます!
これからも頑張ります!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話 バスターコール

投稿が遅くなって申し訳ありません。
受験期間に書くのは間違っているのだろうか


いやない!!!!


暗い空を塗りつぶす黒い影達…それらは雲の様に里全体を覆っていく…

 

「ヤッベェ!!!!封印解けちゃったよ!」

 

「糞!なんでこんな早く解けるんだよ!ちくしょう!」

 

ガヤガヤと突然の事態に困惑し慌てふためく大人たち。

 

「おちつけぇ!とりあえずお前!今から警鐘鳴らして来い!……残りのみんなは作戦Bで行くぞ!」

 

族長さんが慌てるみんなを宥め、指示を出す。封印に失敗した時用の、作戦Bに移行するらしい。

あーあ。それじゃあまた卒倒してしまうなぁ…ま、(俺が)死なない様に手加減してやるか。

 

「それじゃあ各自里の周りから里の真ん中に追い込む様に包囲しろ!邪神の下僕が出現し終わったらどんどん包囲網を縮めて殲滅する!」

 

「…そうだな!慌ててる場合じゃねぇ!」

 

「クズ共がぁ…血祭りにあげてやる!」

 

「まだ慌てるような時間じゃないぜ」

 

「いいからハンティングだ!」

 

…ちょくちょくこの里で聞くどっかで聞いた事あるセリフはなんなんだ?ここはニコニコ動画なんですか?

と、この里の何かに呆れていると

 

「マホロア君!君は空が飛べるんだろう?じゃあ君は包囲網じゃなくてアレの迎撃、それか各部隊の援護に混ざってくれ!」

 

いつにも増して切羽詰まった顔をする族長さんにそう言われた。

 

「わかったヨォ!マァ、倒れナイように頑張るヨォ」

 

「あぁ、無理はするなよ?じゃあ私は里の入り口の部隊にいる。何か困った事が起こったら私の所に来てくれ!『テレポート』!」

 

そう言って族長さんはテレポートで消える。多分里の入り口にでもテレポート先を登録してたんだろう。…さて、俺も行きますか…そういえば、めぐみんやゆんゆんは無事だろうか。例の件

で外とかに出ていなければいいのだが…。まぁ、あいつら頭がいいし大丈夫だろう………たぶん。

 

不安を残しつつ俺は里全体を覆う黒い雲に突っ込む。

 

 

*****************

 

 

一方その頃 里の外れの家の前にて

 

「あわ、あわわわわわわわわ……こ、こめっこがっ!こめっこがぁ!」

 

「め、めぐみん!めぐみん!ちょっと!しっかりして!」

 

ボロボロに荒らされた家の扉を見て慌てふためくめぐみんをゆんゆんが揺さぶっていた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ゆんゆんゆんゆんゆゆゆ!こめっこが!ゆんゆん!こめっこが!」

 

「わかった!わかったから!落ち着いてめぐみん!……めぐみんって意外に逆境に弱いのね…」

 

普段の冷静さをかなぐり捨てトチ狂う友達兼ライバルに軽く引くゆんゆん

 

「と、とりあえず中に入ろう?もしかしたらこめっこちゃんが隠れてるかもしれないし。ね?」

 

「そそ、そうですね!わ、我が妹がそう簡単にやられてるはずがあ、ありません。……こめっこー!返事をしてく…………」

 

少し落ち着きを取り戻し、家の扉を開ける2人、すると

 

「?」

 

「「」」

 

黄色い目をした何時ぞやのモンスターが2人の目の前にいた。

 

「………ぁぁぁぁぁああああああ!!!!ゆんゆんゆんゆんゆん!」

 

「ちょ!ちょっと押さないでってば!」

 

「ゆ、ゆんゆんは短剣を持ってるでしょう!?ほら!友達を助ける為にサクッとやってください!さぁ!」

 

「シャアアアァァァァァァ!!!」

 

「わぁぁぁぁぁ!!」

 

短剣を構えて中腰の姿勢でモンスターに構えるゆんゆん。しかし、ビビりまくってるのか今にも泣き出しそうな顔で小さく震えていた。そして、モンスターは2人を容易い相手と見て取ったのか、腕を広げて捕まえようとにじり寄り…

 

「今です!」

 

ドンッとゆんゆんの背中を押すめぐみん。すると…

 

「ヒギャアアアアア!」

 

「きゃあああああ!」

 

お腹を刺されたモンスターと刺したゆんゆんが何故か悲鳴をあげる。

そして、腹を刺されて玄関を転がり回るモンスターにめぐみんはゆんゆんから短剣をひったくり、相手の喉元に突き立てトドメを刺した。

 

「わ、わぁぁぁぁぁ!!!めぐみんが!め、めぐみんがあああ!」

 

「う、うるさいですよゆんゆん!魔王も怯む紅魔族とあろうものが、こんな事でいちいち騒いで……いて……は?」

 

めぐみんに刺されたモンスターがしばらく苦しそうにもがいた後に黒い煙となって消えた。

 

「き、消えた?」

 

「ど、どうして?」

 

「ま、まぁいいです!ともかくこめっこです!様子からして家に入っていたのはこの1体だけのようですしこめっこを探しますよ!」

 

「そ、そうね!こめっこちゃん?こめっこちゃーん!」

 

二人が呼びかけるが家の中は静かなまま…まさかと思い探索したが血痕らしきものも見つからず、最悪の結果は避けられた事に二人はひとまず安堵する。

 

「……外です!家の中にいた痕跡がないという事は外にいるのでしょう!きっと逃げたに違いありません……」

 

攫われたという可能性がちらついて言葉が窄むめぐみん。

 

「そ、そうね!きっとそうよ!一緒に外を探しに行こう?」

 

励ますように呼びかけ、外に出るように促すゆんゆん。

 

「……そうですね!とりあえずあの子が逃げそうな……….場所……に…」

 

外に出ると先程慌ててためぐみんがほっぽり投げたかばんをモンスターが引き裂いていた…

 

「クロちゃんがっ!あのカバンの中には、確かクロちゃんを入れてたでしょ!?」

 

ゆんゆんの悲鳴にモンスターが二人に気づいた。

 

「も、もうあの子はダメです、諦めましょう!私達の尊い犠牲になったということで、ちゃんとお墓も作ってあげますから!大丈夫、あの子はこれからも私達の中で永遠に生き続けるのです!」

 

「死んでないよ!まだ生きてるよ!だから見捨てようとしないでぇ!」

 

ドライなことを言い出し、逃げ出そうとするめぐみんの首の後ろをガッと摑み、鞄を指差すゆんゆん。そこには鞄から這い出そうとする黒猫とそれを何をするでもなくモンスターは見守っていた。

 

「なんだかわかりませんがチャンスです!あの毛玉に母性本能でも刺激されているのかもしれません、今の内にここを離脱して妹を……!」

 

「待って!お願いだからクロちゃんも助けてあげて!こめっこちゃんが気になるのはわかるけども!」

 

「何言ってるんですか、あれだけ執着しているクロをあいつから奪えば、きっと私達を追いかけてきますよ!なんだかそんな気がします!」

 

めぐみんの言葉にゆんゆんが捨てられた子犬を拾って来た子供のような目でめぐみんを見る。

 

「逃げる用意をしといてください!妹が大事に育てているあの毛玉を取り返してきますから!」

 

折れためぐみんにゆんゆんがパァと顔を輝かせた。すると不意にめぐみんはゆんゆんから短剣をひったくり

 

「その子を持って行かれると、成長を心待ちにしている我が妹に恨ませそうなのです!我が投擲術を見るがいい!」

 

「ああーっ!」

 

めぐみんが投げた短剣がモンスターに直撃………するわけなく、明後日の方向に飛んでいった。

 

「まさか風邪の結界を身に纏ってるなんて………!」

 

「纏ってないよ!どう見てもノーコンのあんたが変な所に投げただけよ!」

 

「そんな小さな事で言い争ってる場合ではありませんよ!クロが……!」

 

「そうなんだけど!めぐみんの言ってる事は正しいんだけど、私さっきから、すごく釈然としないんだけど!」

 

そう言い争ってるうちにクロを抱き抱えたモンスターは空高く舞い上がっていく。

 

攫われたクロを二人が見送ってめぐみんが妙に落ち着き払った声で言った。

 

「きっとあの子は、天の御使だったのですよ。帰るべき所に帰っていっただけです。なので泣いてはいけません、温かく見守ってあげましょう……」

 

「バカなこと言わないで!クロちゃんをあきらめないでよ!どうしよう、攫われちゃった!きっと巣に持ち帰って食べる気なんだわ!どうしようどうしよう!」

 

投げられた短剣を回収して、半泣きで言ってくるゆんゆん。

 

「まあ落ち着いてください。抱き抱えられたクロが暴れなかったところを見るに、あまり危険はないものと思われます。あの毛玉は我が家での教育の結界、身の危険を敏感に察知する様になったのです」

 

「ねえ!家でどんな飼い方をしてるの!?虐待とかしてないでしょうね!?」

 

「ペットを飼うとわかりますよ。甘やかし過ぎるとニートの様にダメになるかもしれませんしね。…あの卵が孵っても可愛いからと言ってなんでも与えてばかりではいけませんよ」

 

めぐみんの肩を揺さぶるゆんゆんにめぐみんが言った。

 

「そんな事よりこめっこです!うちの妹もアレでなかなか根性が据わり、世渡り上手なところがあります。訳も分からず泣き喚いて、無残に殺される様な甘っちょろい子には育てていません。きっとどこかにいるはず……」

 

「そ、そうだった!ねえめぐみん、こめっこちゃんが行きそうな所に心当たりはない!?」

 

そう言われめぐみんは考え込む

 

「心当たりはありませんが、どうにも引っ掛かるのです。私も幼い頃、こめっこと同じ様に………………あっ」

 

「……?どうしたのめぐみん?」

 

突如何かに気づいたのか素っ頓狂な声をあげてソワソワしだすめぐみん。

 

「あぁ……、ああああああ……!ももも、もしかして………!」

 

「何!?な、何なのめぐみん、急にソワソワしだして…………って待って!ちょっと!どこ行くの!?」

 

冷や汗を流しながらめぐみんはどこかに駆けて行き、その後をゆんゆんが追っていった。

 

 

*****************

 

 

里 上空

 

「エェイ!多い多い!一体ドンダケ墓の中に入ってたんだヨォ!」

 

≪拡散魔力球≫

 

「「「「ギィアァアアア!!」」」」

 

わんさかわんさか湧いてくるモンスター共に魔力消費が少なくした小さめの魔力球を投げまくっていた。しかしどれだけ撃ち落としていっても全く数が減ってない様に見えるモンスター共にだんだん腹が立ってきていた。

もういい!少しくらいぶっ倒れても死ななければ問題ない!一掃する!

魔方陣を自分の前に展開し、魔力を込める

 

「キエロォ!!」

 

≪マホロア砲≫

 

白い光線がモンスターの群れの真ん中に綺麗な穴を開ける。

 

「マダマダァ!」

 

しかしそれだけでは終わらず、そのまま光線を横に薙ぎ払う。

 

「ウォォォォォォォアァァァァァァ!」

 

60°ほど薙ぎはらった所でマホロア砲を消す。これ以上この技を出すと今後の戦闘が出来なくなると思うからだ。まだ限界点がわからないが以前の様に7、8発も調子に乗ってマホロア砲をぶっ放すと倒れる。つまり、5、6発ならギリ大丈夫なのではないかと思うのだ。……疲れを感じない分自分の中での調節がとても難しくなるなぁ…もっとこいつの事を研究しなければ…

 

戦意がなくなり、逃げていくモンスタの群れを見ながら、今後の課題を見つけたりしていると、ふと魔物たちの動きが止まった。そして、ある一点を見てみんな固まっている。

 

「?」

 

視線の先に目を向けると……

めぐみんの使い魔兼半身を抱き抱えたモンスターがお墓の方向へ向かっていくのが見えた。

もしかしてあいつら襲われたのか?

そしてめぐみんがあの黒猫を囮に逃げ出した…といったところかな?

全くひどい事をするものだ。あの黒猫には一応魔力?というかネコスタンプを押してくれた恩もあるし……しょうがねぇなぁ!

 

「それを返して貰おうカナァ!」

 

ワープを繰り返して敵陣を突っ切り、そのモンスターに向かう。

 

 

「!?ウォ!コイツら!どけヨォ!」

 

それまでただバラバラに攻撃してくるモンスター達がいきなり妙な統率力を発揮し、俺に襲いかかってきた。

 

「グウッ!?」

 

そして、周囲を囲まれた俺は背中から1発もらってしまう。初めての痛みに軽く怯んでしまった。そして、その隙を逃すまいとモンスター達が掴みかかってくる。

 

「…………調子にのるなヨォ!!」

 

紅魔族の様に眼を赤くさせた俺は魔力消費やクロなど知った事かとばかりに掴みかかられながら強引に魔力を練り上げ…

 

「消しとびナァ!!」

 

≪マホロア砲≫

 

再度マホロア砲をぶっ放す。そして今度は60°では終わらず

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

360°グルッと回転してやった。

すると、自分の上や下を旋回している連中以外は跡形もなく消し飛んだ。

相変わらず疲れは微塵も感じないが、おそらく今クラウンを外すと意識が飛ぶだろう。もうこれ以上は魔法はあまり使えないな。それにクロを抱き抱えたモンスターも見失ったし……消し飛ばしてないよね?大丈夫だよね?怒りに任せてやっちゃったけど大丈夫だよね………ともかく他の人一旦合流しよう…

 

軽く冷や汗を流しながら前線から外れて里の外側に向かう。

 

 

しばらく飛んでいると

 

 

「きゃあああああああ!!!」

 

目の前に巨大な竜巻が現れたと思ったら、何時ぞやの占い師…そけっと?が空に舞い上がっていくのが見えた。

ほうほう…黒か……

 

「オオオ!?」

 

とりあえず空中でキャッチする。

 

「わぷっ!……あ、ありがとうマホロア君。助かったわ…」

 

「ウン。無事ならイイんだケド…ドウしたノ?」

 

「……それはあの駄目に「おーい!そけっとー!無事かー!?」……あいつに吹き飛ばされたのよ…」

 

「……ソレは気の毒に……」

 

とりあえずそけっとを抱えて地上に降りる。すると前に魔力を絞ったニート…ぶっころりーだっけ?が心配そうに駆け寄ってきた。

 

「よかった!無事だったみたいだね!マホロア君ありがとう!」

 

「あ、アァ……ウン。ソウダネ」

 

「……ねぇあなた…。やっぱり本当は私の事が嫌いなのね?また前みたいにトルネードで吹き飛ばしてくれて…今ここで決着をつけましょうか!」

 

眼を紅く光らせて木刀を構え、ぶっころりーににじり寄るそけっと。

 

「ち、違っ!誤解なんだそけっと!聞いてくれ!ただちょっとかっこつけたかっただけなんだ!……だからその木刀を下ろしてくれ!頼むって!」

 

「…………やましい気持ちがあったわけじゃないのね?」

 

「……………」

 

おし黙るぶっころりーにそけっとが襲いかかっていった。

すげえな紅魔族って、女子のスカート捲るために上級魔法で女の子ごと吹っ飛ばすのか……エロい悪戯に全力で挑む俺でもそこまではしなかったぞ……

 

しばらくたち、変態ニートをしばき終えたそけっとがこちらに向かってきた。

 

「そういえばあなたはどうしたの?空でかっこいいレーザーをぶっ放していたのはあなたでしょう?もっと続けないの?」

 

「あ、アァ…….魔力が尽きたトイウカ、コレ以上やると死んじゃうトイウカ…ホントはモット戦いたいんだけどネェ…」

 

背に腹は代えられんしな。

 

「そう……じゃあこれをあげるわ」

 

そう言ってそけっとは懐から球状の何かを取り出す。

 

「コレは………マナタイトじゃなイカ!しかもナカナカ高品質なモノを…コンナもの貰っていいのカイ?」

 

「えぇ、以前あなたを占えなかったお詫びとして受け取って。……それにしてもなんで見えなかったのかしら…しかも映らないのならまだわかるのだけれど、あなたのは強い光で眩しくて見えなかったのよ。あんなの初めてだったわ…」

 

あの時のお詫びは卵に魔力を注いでもらう事で完結したと思ったんだが…何かと義理堅い人だなぁ…

 

「アリガトウ!コレは有難く受け取っておくヨォ!」

 

そう言って俺はマナタイトを受け取り、また前線に戻ろうとした時…

 

 

 

ドッゴォォォォォォォォォォン!

 

 

 

凄まじい爆発音と閃光が紅魔の里に轟いた。

 

 

*****************

 

 

私は、所々に点在する灯りを頼りに、こめっこの手を引きながら走っていた。

 

「姉ちゃん、ゆんゆん凄かったね!雷が、ドーンって!」

 

「そうですね、凄かったですね。というか、この私がゆんゆんに先を越されてしまいました!いつもおどおどしているだけの子かと思っていたのに!」

 

こめっこへ悔しげに返事をしながら里の大人を探して駆ける。

 

ーー今から数十分前

 

こめっこの居場所に確信を持った私は邪神の墓に向かった。するとそこには予想どうりこめっこがいた。クロを抱えたモンスターと対峙しているこめっこが。こめっこはモンスターに威嚇して押してはいたが、いざ襲われるとたまったものではないだろう。

……私はそこで上級魔法を覚えて、こめっこを助けようとした。爆裂魔法よりもこめっこのほうが大事に決まっている。しかし、中々踏ん張りがつかなかった。上級魔法を覚えてしまえば、爆裂魔法を覚えるのは数十年後になる。子供の頃からの夢が目前まで迫ったのにそれを捨てなければいけない。そう簡単に割り切れるようなものではないのだ。でも他に妹を助ける方法などない……こんな時にマホロアがいれば……この間のように助けてはくれないだろうか……と、無意識にヤツに助けを求めるとは私も甘っちょろくなったものだ…以前の私なら一人でなんとかしようと思っていただろう…しかし、ないものをねだっても仕方がない。覚悟を決めて冒険者カードを操作しようとしたところで

 

 

「声も体も震えてるわよ。踏ん張りがつかないんでしょ?」

 

ゆんゆんが、冒険者カードを握り言ってきた。

 

「一体何を」

 

するつもりなのかーー

そう尋ねようとした私の言葉は……、

 

「≪ライトニング≫ーーーッ!!」

 

ゆんゆんの唱えた魔法の声に遮られた。

 

ーーーゆんゆんが中級魔法を覚えた。

魔法を覚えてしまった以上卒業する事になる。そうなればスキルアップポーションは貰えない……しかもアークウィザードなので、レベルも上がりにくい。ゆんゆんが上級魔法を覚えるのは1年くらいかかるだろう。そして同時に未熟者扱いされる……しかもマホロアと旅に出る為に、最近はより一層頑張ってきたのにそれが水の泡となってしまったのだ。私達を守る為に…

 

「姉ちゃん、泣いてる?」

 

「泣いてませんよ!悔しさの余り、目から魔力が漏れ出しているだけです!」

 

ゆんゆんはクロを抱えたモンスターの頭を電撃魔法で消しとばしながら、ゆんゆんは言った。

 

ーークロは私が回収するから、めぐみんは里の大人のところに行けーーと。

私が魔法を覚えるのに躊躇ったために、ゆんゆんは魔法使い見習いではなくなってしまった。

そして、生き物を殺す事にあれだけ抵抗があったあの子は、あっさり魔法を撃った。

普段はヘタレていたクセに、誰かを守る場面では腹をくくれるゆんゆん、マホロアのように最初から力があるわけでもないのに、その力を惜しむことなく他人に使うことができるゆんゆん。

 

そんな、ライバルの姿が眩しくてーー

 

「……?姉ちゃん、どうした?走るのつかれた?」

 

足を止めた私を、こめっこが不思議そうに見上げてきた。

今頃は、一人でモンスターを相手取って戦っているだろう自称ライバル。

私にまともに勝ったこともなかった自称ライバル。

変わり者で常に私に絡んできた、マホロアが現れるまで友達もできなかったろう自称ライバル。

ーーここで自分の夢のために逃げたなら。今後、私のライバルを自称してきたあの子と、堂々と競い合う資格はなくなる。

 

そう覚悟して、自分の冒険者カードを取り出し、固まり思わず笑いだしてしまった。

 

「姉ちゃんがこわれた!」

 

「ふふふ!ははははは!違いますよこめっこ!嬉しさを抑え切らないだけです!」

 

そういいながら私はカードの項目にあるソレをーーーー

 

森の中。少女は一人、黒猫を傍にどんどん湧き続けるモンスターと戦っていた。

 

「≪ブレード・オブ・ウィンド≫!」

 

ゆんゆんが叫ぶと同時、シュッと振った手刀が鎌鼬となり、空中にいたモンスターを切り裂いた。

普通はこの程度の魔法ではここまで致命的な威力が出ないのだが、流石は族長の娘、学校で成績2番を収めていたからこそできる芸当だ。

そんな事も束の間、モンスターの数が減ると同時に空から援軍のようにモンスターが舞い降りてくる。

いくら魔力が高く、モンスターを倒せる実力があれど魔法を使うのが初めて、しかも初めての戦闘だ。いくら秀才でも限度がある。その証拠に、ゆんゆんの魔力はもう尽きかけていた。

自らの夢を捨て、自分達を助ける為に魔法を覚えようとしたライバル。

自分とは違い、自ら夢を持ちその為にひたむきに走るライバルが自分の為にその夢を捨て去るのは我慢ができなかった。族長の娘として、成績で1番を収めることしか眼中になかった自分と比べ、急にライバルが遠く見えたゆんゆんは恩人に「未熟者」と見捨てられてもいいという覚悟も決め、ライバルの夢を捨てるのをやめさせた。

 

「≪ファイアーボール≫!!」

ーーー残りの魔力を振り絞り全力で放った火球魔法は、降りてきたモンスターの群れを一掃した。しかし、同時に魔力が尽きたゆんゆんはくたっと地面に足をつく。

 

しかし、まだ空を埋め尽くさんとモンスターが集まってくる。

もうダメかと観念し、クロを抱き抱えるーー

 

「我が名は「我が名はこめっこ!家の留守を預かるものにして紅魔族随一の魔性の妹!」…こめっこ!あな……、あなたという子は、姉の最大の見せ場をかっさらってどうするのですか!」

 

「あやまらない!」

 

「こ、こめっこ!」

 

突然出現したライバルとその妹に目を白黒させるゆんゆん。

 

「ちょっと!二人共、なんでこんな所にいるのよ!?逃げたんじゃなかったの!?」

 

「この私がライバルに借りを作ったままで逃げられる訳がないじゃないですか………それにもう魔力が残ってないのでしょう?後は私に任せてください」

 

そういいめぐみんは空で滑空し続け、たった一つのキッカケがあれば襲ってきそうな気配を放つモンスターの群れを睨む。そして魔法の詠唱をーー

 

「!?めぐみん!?……あんた魔法を覚えたの!?これじゃあ私が中級魔法を覚えた意味がないじゃない!!バカ!」

 

涙目になりながら、ライバルに文句を言うゆんゆん。

 

しかし

 

「姉ちゃんが、ピリピリしてる!パリパリいってる!」

 

「めめめ、めぐみん!?何これ、何なの!?一体どんな上級魔法を使うつもり!?ていうか、里の人達やマホロアが使う時でも、こんな事にはならなかったんだけど!ねえ、これ何の魔法なの!?」

 

今からめぐみんが使うのは最上級にして最高難易度の魔法、しかも魔法を使うのも初めてなので、うまく魔力を制御できず、パチパチと魔力が漏れ出しているのだ。

その異様な雰囲気にモンスター達がギャーギャー騒ぎ出す。

 

……そして詠唱も終わり、めぐみんの手には小さな光が輝いていた。

 

「ゆんゆん。こめっこ、頭を低くして伏せていなさい」

 

興奮で目を輝かせながらゆんゆんとこめっこを制す。

ゆんゆんはめぐみんの意図を察して、力の入らない体を引きずりながらもこめっこのそばに近づくと、抱きしめ、地面に伏せる。そして

 

「我が名はめぐみん!紅魔族一の天才にして、爆裂魔法を操りし者!ひたすらに!ただひたすらに追い求め続け、やっと手にしたこのまほう!私は、今日という日を忘れません!………食らうがいいっ!!」

 

カッと目を見開き、手の中の光をモンスター共に突き出し唱えた。

 

「≪エクスプロージョン≫ーーーー!!!!!!」

 

てから放たれた閃光が、モンスターの群れの真ん中に突き刺さる。そして、

輝ける光と共に、夜空に大輪の華を咲かせたーー!

 

 

*****************

 

 

「ああああああああ!きゃあああああああーっ!!」

 

「ーーッッ!!」

 

「わははははは!これです、これが見たかったのです!何という爆裂!何という破壊力!何と心地よい爽快感!」

 

ゆんゆんが悲鳴を上げながらこめっこを抱きしめる中、吹き荒れる爆風と轟音も気にせずに、私は最高の気分で笑い声をあげていた。

それも束の間、爆裂魔法の衝撃で私も吹き飛ばされ地面を転がされる。

ーーそのまま仰向けになり、あれだけいたモンスター達が跡形もなく消え失せた空を見上げた。

 

「………ななな、何これ……これが爆裂魔法……?凄いとか、強いとか、そんな言葉は全て通り越しちゃってるわね……魔力を制御し、威力を増幅させる杖もなしでこの威力だとか。最強魔法って呼ばれるわけね。……ちょっとだけ。ちょっとだけ、めぐみんが爆裂魔法に取り憑かれた気持ちがわかったかも」

 

ゆんゆんが、爆裂魔法のあまりの破壊力に、呆れた様な声を上げる中。

私は返事をする気にもなれず、寝転がっていた。

たった1発の魔法なのに私の全魔力では足りなかったらしく、体力もとい生命力までごっそり持ってかれもう動けない。

 

この魔法を、使った後は無防備になる。

それはつまり、今後冒険者としてやっていくつもりなら、魔力と体力を使い果たした自分を守ってくれる仲間が必要だという事。

天才と持て囃された私は、ずっと一人でやっていけると思っていたが、ゆんゆんに助けられた事といい、マホロアにも指摘された事といい、私にはどうも仲間が必要らしい。

ずっと一人でも大丈夫だと思っていた。

でも、一人では出来ないこともあるとマホロアに言われ、その時は大して受け止めなかったが、今はそれが大事だと痛感した。

今日あったことを忘れずに。私は、絶対に仲間を大事にしよう。

そう思い目を閉じようとした時に

 

「あ!姉ちゃんがとりにく全部消しとばしたと思ったら、まだ残ってた!わーい!」

 

………え?

 

急いで目を開け、顔を横に倒すと。

 

「……シャアァァァァァァ……」

 

モンスター達が私達を囲っていた。

恐らく、空ではなく地上で隠れていたのだろう……て!呑気に考察している場合ではない!

 

「ゆんゆん!大変です!このままじゃ殺されてしまいま……す……」

 

顔だけゆんゆんに向けると、ゆんゆんは眠っていた…

 

「こんな時に!何眠ってるんですか!ゆんゆん!……あぁ、こめっこ!早くゆんゆんを起こしてください!」

 

「わかったー!」

 

こめっこがゆんゆんを揺さぶりに行ったが、その間にもモンスター達はじりじりと近づいてくる。

 

「あ、ああぁ……嫌です!こんな所で死にたくありません!お願いです!誰か助けてくださいっ!」

 

仲間を大事にするって決心したばかりなのに、この仕打ちはあんまりだ。過酷な現実に目を閉じる。すると

 

「ギィヤァァァァァァァァ!!!!」

 

モンスター達の断末魔が鳴り響く。何事かと目を開けると、見た事ある針がモンスターたちを串刺しにしていた。

そして、

 

「ブラボー、ブラボー。さすがは紅魔族一の天才。よくあの数のモンスターを消しとばしたネェ」

 

拍手をしながら降りてくる第2形態マホロア。

 

「オヤオヤ、なぁ〜んてカオしてるんダイ?ソレにさっきの爆発…….アレが爆裂魔法カ……大した威力ジャナイカ」

 

手を動かす事も出来ないので私は今涙顔のままだ。そんな顔を見られて恥ずかしみを覚える。

 

「えぇ、そうですよ…あれが人類最大の攻撃魔法!究極の暴力!全てを蹂躙する魔法!爆裂魔法です!」

 

「フム……確かに今のボクじゃあアンナ威力の魔法は撃てないネェ」

 

「そうでしょう、そうでしょう!しかし、後はこの通り指一本動かせないので後は頼みます」

 

そう言い残し、意識が闇に沈んでく。

 

「ン、了解。後は任せてネ!」

 

「あぁぁぁぁぁ!せっかくのとりにくがさんかくに消し飛ばされた!!こうなったらおまえを食ってやる!」

 

「ちょっ!?やめっ……」

 

 

*****************

 

 

あれから俺は3人と一匹をそれぞれ家に帰し(帰る時にこめっこにかじられながら説得した)俺は家に帰るとクラウンを外し、予想通りぶっ倒れた。

俺がぶっ倒れてる間に、ゆんゆん達は事情聴取などを受けて、担任にこってりしぼられたらしい。そして、魔法を習得した彼女らは卒業するのだが、

 

現在俺の部屋 夜

 

ーー俺はベッドに横たわりながら隣で正座しているゆんゆんに顔を向ける。

 

「ごめんなさい!」

 

突然の謝罪に困惑し、どう返答しようか迷っていると

 

「私!マホロアと旅に出るって約束してたのに、中級魔法を覚えたの……」

 

あぁ…その事ね。俺は俯いて震えるゆんゆんに優しく、

 

「だからドウしたノ?」

 

「え?」

 

予想外の答えが返ってきたのか顔を上げ、赤く潤んだ目をこちらに向けるゆんゆん。

 

「え、えっと…だから……その、み、未熟者になってしまった私をお、置いていっても………」

 

そこまで言って黙りこくるゆんゆん。

しかしそんなこと関係ない

 

「……アノネ……ゆんゆん。ボクはキミと旅に出たいンダ」

 

「……え?」

 

「上級魔法とか中級魔法とかじゃナクテ、キミと旅がしタイ。ココ最近キミと一緒に居て、トテモ楽しかッタ。友達を作る為に躍起になるキミのサポートもしタイ。ダカラ、ゆんゆんが何を覚えてようとボクには関係ないんダヨォ」

 

どうやら俺は、知らぬ間にゆんゆんの事が好きになってしまったようだ。

……つーかこれ告白じゃね?自分で言っといて小っ恥ずかしいことこの上ないんだが!

 

「え…あ……うぇっ……グスッ…」

 

泣き始めるゆんゆん。

オイオイオイちょっと待てぇ!

 

「ナ、なぜ泣くノ!?ボク酷いこと言っテタ!?モシそう言ったナラ謝ま「ううん」……エ?」

 

俺の言葉を遮り、

 

「ううん…違うの。こんなに嬉しいこと言われたのが…初めてで…」

 

そういい涙を拭くゆんゆん。

 

「ナ、ナラよかった………。

ソウダ!コレからの旅の目的に、魔王を倒すトイウ目的とゆんゆんの友達作り、ソレにプラスして、上級魔法の習得も目的に加えヨウ!ネ?」

 

「うん!うん!ありがとう!マホロア!」

 

そう言って抱きついてくるゆんゆん。あぁ…女の子って何時でもいい香りがする……。

 

ゆんゆんが離れて、落ち着くのをしばらく待った。

 

「……ありがとうマホロア。不束者ものですが、よろしくお願いします」

 

言葉の使い道が違うという事は伏せておこう。

 

…さて、本題だ

 

部屋を出て行こうとするに

 

「オットォ、マダ話は終わってないヨォ。チョットおいで?」

 

「?なぁに?」

 

疑問符を浮かべた顔で、またさっきの位置で正座するゆんゆん。

 

「サテ、さっそく本題に入るネ。

ーーゆんゆん、キミがふにふらとどどんことの間であったコトを話して貰おうカナァ?」

 

ギクッと固まるゆんゆん。

 

「ちなみに、めぐみんカラある程度の話は聞いてるカラ、惚けても無駄ダヨォ」

 

「!………わかりました…話します」

 

観念して吐くゆんゆん。

 

ふにふらの弟が病弱なので、薬を買うお金をカンパした事。

「友達だよね」というフレーズに惑わされ、ついついなんでも言うことを聞いてしまったとのことだった。

 

「………ハァ……ゆんゆん」

 

「………ハイ…」

 

「『友達だから』っていうフレーズで騙そうとスルのは、ボクは友達じゃないと思うナァ…」

 

「……はい……」

 

「ボクはネ?友達っていうノハ、平等なモノだと思うンダ。一方的なモノじゃなクテサ。……ゆんゆん、キミも疑わなかったワケじゃないんダロォ?ナンデ断らなかったのカナァ?」

 

「うっ……えっと…断ったら友達をやめさせられるような気がして……せっかくマホロアが作ってくれたから、失いたくなくて……つい……」

 

やっぱりぼっち気質の子は軽く依存癖があるなぁ…これは治せるなら治しておきたいなぁ…

 

「……友達ならソノ程度断っても友達解消とかにはならないヨォ…ともかく、今後はこんな騙される事がないヨウに!外に出たらこの里のヒト達とは違って、ゆんゆんを騙そうとするヤカラが沢山いるカモしれないからネ」

 

「はい……以後反省します」

 

「ウム!なら行ってヨシ!」

 

そう言ってしょんぼりと出て行くゆんゆん。

好きだからこそ厳しくする……あれ?これって恋心じゃなくて、親心……いや、考えるのは止そう。これはこの恋だ!そうに違いない!

そう言い聞かせ俺は睡魔に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで爆㷔1巻の内容が終わりました。
まだまだ続きます。打ち切りません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話 フレンドショック

1巻のところは少し原作に縛られすぎた所があったので、これからはもっとクリエイティブに書いてこうと思います。

ちなみに今回はオリジナル


雨が降り、雷も鳴るほど荒れた天気。族長の家の一室で少女は動かないマホロアの横で泣きじゃくっていた。

 

「うっうぇ……ぐすっ…マホロア!!目を開けて……うっ……お願いっ……!」

 

動かないマホロアの手を握り、泣きじゃくるゆんゆん。

 

「……ゆんゆん。手を放してあげなさい。彼は今…眠ってるだけなんだ…そっとしておいてやりなさい」

 

そんなゆんゆんの背を摩り、諭す族長。

 

「嫌よ!……マホロア!お願い!マホロアまでいなくなったら……私っ……もう………もうっ………」

 

首を横に振り、強く手を握って項垂れるゆんゆん。そんな彼女に答えるように握っていた手に力が入った。

 

「……ウゥ……ゆんゆん……」

 

「!?……マホロア!?大丈夫なの!?しっかりして!!」

 

彼女の願いが届いたのか、意識が戻ったマホロア。しかし、彼の答えは残酷なものだった。

 

「ゆんゆん…お願い…このまま寝かせてヨォ……ダイジョウブ…少し寝タラ…また元気になるカラ………ダカラ…少しの間…眠……る…ヨォ…」

 

そう言い終わると同時に雷が落ち、部屋は白い閃光に包まれ、一瞬目がくらむ。

目が冴えるとそこには、力尽きたマホロアが静かな顔で眠っていた。

 

「!!……嘘………やだ!お願いマホロア!逝かないで!!マホロア!!!」

 

目の前の現実を受け入れられず、膝から崩れ落ちるゆんゆん。大切な人を失う苦しみを知った彼女は泣き崩れ、叫ぶ。

 

「マホロアァァァァァァ!!!!」

 

 

*****************

 

 

数日前

 

「オーオー偉大なハールトマン♪

オーオー偉大なハールトマン♪

銀河に〜名だたる〜王者ヨォ〜♪」

 

鼻歌を歌いながら家の掃除を手伝ってると

 

「ただいま!」

 

なにやらご機嫌で帰ってきたゆんゆん。

ちなみにあの後ゆんゆんは卒業し、俺も後を追って卒業した。

そのまま旅をしても良かったのだが、ゆんゆんが中級魔法だけでは心許ないし、上級魔法を覚えてから旅がしたほうがいいと言ったので、ゆんゆんはニートが構成した組織【レッドアイ…なんとか】という自警団に入り修行。

俺は暇を持て余してるのでこうして家の掃除やら買い物やら雑務をこなしていた。たまに修行について行ったりもするが、基本何もしないので、平穏な異世界ライフを満喫していた。

 

「ヤァ!オカエリ!ご機嫌ダネェ、ドウしたノ?」

 

布巾で窓を拭きながら後ろ向きで尋ねる。

 

「実はね!今日小物屋で、植物用の肥料っていうのが入荷しててね、それを買ってきたの!」

 

え?そんな喜ぶことなのか?ハタキを置いて振り向きながら

 

「そんなに嬉しいコトナノ?」

 

「うん!サボちゃんは私の大切な友達だから、もっと元気になってほしくて!」

 

パァと顔を輝かせながらそう答えるゆんゆん。

あぁ…笑顔が眩しいよゆんゆん。その笑顔が素敵なんだけど…理由が酷いよぉ…

 

「とりあえず、早速サボちゃんにあげてくるわね!じゃあ掃除頑張ってね!マホロア!」

 

そう言って買い物袋を手に部屋に駆けて行くゆんゆん。

 

なんだか妙な胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。杞憂ならいいんだが…

 

 

*****************

 

 

そして昨日

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

「ウワッ!?な、ナニ!?ビックリした!」

 

朝っぱらからけたたましい声が鳴り響き、叩き起こされた。

空が曇ってて日の位置がわからないが、感覚的に恐らく早朝5時くらいだろうか。

とりあえずクッソ眠いので2度寝しようと目を閉じかけた時、ドタドタドタと廊下を走る音が聞こえバンッと勢いよく扉が開け放たれた。

 

「ま、マホロア!……どうじよう!サボちゃんが!サボち"ゃんがぁ!」

 

泣きながら何かを抱えて入ってくるゆんゆん。

よく見るとそれは、植木鉢にサボテンだった物が中心にあり、その周りをアンプルタイプの肥料が円を描くように刺さってた。

………そりゃあいくらサボテンでも枯れるわ…

 

「ゔ、ゔわ"ああぁぁぁぁぁん!!!サボぢゃあぁぁん!サボぢぁぁん"!!」

 

にしてもガチ泣きである。「たかが植物が枯れただけじゃないか」とか言える雰囲気ではない。ましてや、からかおうものなら一生口を聞いてくれなくなる気がする。

 

「ゆ、ゆんゆん?」

 

そう尋ねるとハイライトのない目を潤ませながら俺を見てくる。

怖ぇよ…

 

「だ、ダイジョウブ。サボちゃんはキット天国からゆんゆんの事を見守っててくれるヨォ」

 

「……ぐすっ……本当に?」

 

「う、ウン!ゆんゆんはサボちゃんが大好きだったんダロォ?ジャア!サボちゃんもキットゆんゆんのコトが好きダカラ、見守っててくれるヨォ!」

 

「うん……うん!」

 

泣きながらも頷いてくれるゆんゆん。

俺はその背中を優しく撫でて落ち着かせてあげた。

 

数十分後ーー

 

「ありがとうマホロア。もう大丈夫、落ち着いたわ」

 

ようやく落ち着いてくれたゆんゆん。

 

「ウン。エット、サボちゃんはモウどうしようもないケド、ボクにできるコトがあったら何でも言ってネ!ボクでよければ協力するヨォ?」

 

流石にサボちゃんを生き返らせろとかは無理だし、俺に出来る事なんてほとんどなさそうだがな…

 

「じゃ、じゃあ……頼んでもいい?」

 

上目遣いで俺に尋ねるゆんゆん。

 

「アァ!何でも言ってチョウダイ!」

 

「ならーーーーーーーーーーー」

 

 

*****************

 

 

昨日 お昼

 

 

「ウーン……コレじゃあ……大き過ぎるカナ?」

 

現在俺は霊峰:ドラゴンズピークの麓辺りで採掘中だ。

あの後ゆんゆんに、縦110cm横30cm程度の岩をワープホールに突っ込んでこいと言ってきたのだ。どうやらお墓を作るようだ…サボテン程度に墓って(笑)…ともかく イイヨォ とは言ったものの、そんな都合のいい岩が中々なく難儀してる。

なんか雲行きも怪しくなってきたし、はよ見つけて帰りたいなぁ…

 

 

岩を求めて30分

 

「オォ…凄いソレっぽい岩が見つかったヨォ」

 

大きさ的にも申し分ないツルツルな岩が見つかった。早速俺はその岩をワープホールにしまう。

 

ヴォン

 

と音を立てて岩が星型の穴に飲み込まれる。

………あっ。やっべ…これタマゴにぶつかったりしねぇよな?割れてたらマジ洒落にならんのだが…今から取り出して様子を見るかな?

と、思った矢先

 

ガタッ

 

「ン?」

 

何かが崩れる音がしたと思ったら…

 

ガタッ……ガッタン……ガラガラガラガラガラ!!!

 

と音を立てて軽い岩雪崩が起きてしまった…どうやら先程の岩がピタゴラスイッチ的な役割を果たしたらしい。

俺は咄嗟にワープで回避したが、その岩雪崩はゴロゴロと転がって行き…

 

ドゴォ……

 

と鈍い音を立てて、この間封印が解けた邪神の墓に突撃し…

 

「ア……やべ…」

 

邪神の墓の中央に立っていた、縦長の墓石が倒れた。邪神の下僕はこの間里のみんなで駆逐したので中からは何もでてこなかったが、流石に里の建造物?をぶっ壊したのはまずい。急いで元に戻そうとした時

 

ポツン……ポツン………………………ザアァァァァァ!

 

スコールの如く突然大雨が降り出した。

 

「ウワァ!!フッざけんなヨォ!?こんな時にふりやがっテェ!?」

 

直す作業を中断し、魔力を結構消費して疲れるのだが、ワープを繰り返して急いで家に帰った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「タダイマ……」

 

びしょびしょな上に、魔力をそこそこ消費して疲れた状態で帰宅する。

 

すると部屋の奥から

 

「おかえりマホロア君……うわっ!びしょびしょじゃないか!すぐにお風呂を沸かすから入ってきなさい!」

 

族長が心配そうに出てきた。

 

「アァ…アリナトウ……ゆんゆんの調子はどうダイ?」

 

「………ゆんゆんは今部屋に篭ってるよ。今は一人にして欲しいらしい…」

 

こりゃあ予想以上に傷が深そうだ…

傷口を抉るような事はしないように心掛けよう…

 

「ア、ソウダ。墓石を持ってきたケド…ドコに置いとけばいいカナァ?」

 

長い間ワープホールに突っ込んでおくのもあれなので聞いてみる。

 

「あー…どうせ今日はもう作業はできそうにないし、玄関先にでも置いといてくれるかい?」

 

「わかったヨォ」

 

そういい俺は玄関先に岩を

 

ドゴォ

 

設置した。

 

その後は風呂に入って夕食を食べ寝たんだが、邪神の墓の事は言わなかった。この雨で勝手に倒れたと勘違いしてくれるだろう。ま、明日人知れず直しに行けば問題ないだろう。

 

 

*****************

 

 

そして今日

 

朝何気なく目を覚ますと…

 

なんか頭がぼーっとする。これは寝起きで寝ぼけた感じじゃない…しかも、鳥肌……肌かどうかはわかんないけどたってる。そして肌寒い。頭痛い。

 

うん。これは風邪引いたな…

人間だった頃の熱が出た時の感じとそっくりだ。………ただ、人間の頃と随分違った点がある。それは…

 

「(^q^)<あうあー…」

 

クッソ怠い…なんだこれ…声を発するのもめんどい…こんなの初めてだ……あぁ…考えんのもめんどーになってきた………寝よ……

 

もっぺん寝よーとしたところで…

 

「マホロア君。おはよう!朝ごはんだよ!」

 

ぞくちょーがはいってきた…

 

「あー…ウーン………熱……」

 

かすれたこえでそー伝える…

 

「何!?熱!?どれどれ?」

 

そーいい俺のおでこに手をあてるぞくちょー……

 

「いつもより熱い……?気がするな…大丈夫かい?」

 

「ホェ〜」

 

てきとーなへんじをかえす……

 

「大変だ!ひどく衰弱して……る?

とにかく、マホロア君はそのまま安静にしてるんだよ!?」

 

そーいいどっかにいくぞくちょー

あぁ…ねむ…………おやすみ………

 

 

*****************

 

 

「………ロア!!………………がいっ!…………」

 

ウーンうるさいなぁ…

だれかが近くでさわいでいるのと、手がつよく握られたよーな気がして、おきた。

あーまだ……だりぃ…これは………ゆんゆん?

 

「……ウゥ……ゆんゆん……」

 

「!?……マホロア!?大丈夫なの!?しっかりして!!」

 

そーいって顔をちかづけて来るゆんゆん。 かおちかい…

 

「ゆんゆん…お願い…このまま寝かせてヨォ……ダイジョウブ…少し寝タラ…また元気になるカラ………ダカラ…少しの間…眠……る…ヨォ…」

 

そー伝えて眠りにつく……むにゃむにゃ…

 

「!………そ……………いで!!……………」

 

ゆんゆんが泣きながらなんかいってるけど…いまは眠いんだ……勘弁してぇ……後みみもとでさけばないで…あたまいたい…

 

「マホロアァァァァァァ!!!!」

 

俺の内側で何かが変わる音がした

 

「ウルセェェェェェェ!!!!」

 

飛び起きながら叫ぶ俺

 

「ゆんゆん!ボクは頭が痛いンダ!叫ばないでクレェ……ズキズキするンダヨォ…」

 

「ひぐっ……だ、だって…サボちゃんだけじゃなくて!グスッ…マホロアまでいなくなりそうだったがらッ」

 

「死なねぇヨォ!ソンナ植物と同レベルなわけないダロォ?ただのカゼダカラ!寝たら治るカラ!」

 

「おぉ!マホロアが死の淵から蘇った!奇跡だ!ここに奇跡が起こった!」

 

「族長さんもややこしいコト言って事態を悪化させないでクレェ!」

 

ピカッ……ゴロゴロ!!

 

「ウルセェ!!さっきカラ眩しいンダヨォ!!」

 

さっきまでの怠惰な自分は何処へやら、もう何でもかんでもに怒鳴りつける俺。何故かイライラしてしょうがないのだ……なんか辺り一面が平になるまで破壊の限りを尽くしそうな衝動に駆られてる。

 

「フゥ…フゥ…」

 

深呼吸をして落ち着いた後、自身の異常に気づく。

なんだこれは…朝から妙に怠かったり…急にそこらかしこで暴れたくなったり…今日の俺はどうしたんだろう?

そんな感じで考えてると…

 

「え、えっと…マホロア君?と、とりあえず大事をとって休みなさい?お粥を妻に作らせるから、ね?夕方に届く病治療のポーションで風邪は治るだろうけど…悪化するといけないから寝てなさい」

 

族長に優しく声をかけられた。

 

「……わかったヨォ…」

 

そういいベッドに戻り、さっきからベッドの側で泣いてるゆんゆんに

 

「ゆんゆん。サッキはゴメンネ…カゼでイライラしてただけなンダ…ソレに、ボクは死なないしゆんゆんの側から離れないカラ、安心しなヨォ」

 

「うん………グスッ…」

 

そういい族長と共に部屋から出て行った。

はぁ…ホント今日はどうしたんだろう?もしかして、邪神の墓を破壊した祟りとか?まさかな……………………………まさかな……

 

そう思いながらも再び眠りに落ちる。

 

 

*****************

 

 

「……ン」

 

なんか妙な違和感を感じ、また起きる。外はもう晴れていて、オレンジ色の光が部屋を照らす。…どうやら夕方まで寝ていたようだ。とりあえず起きてみようと思ったら

 

「!?」

 

腰辺りに白い腕が巻きついていた!

お化けか!?と思い、割とガチでびっくりしたが……暖かい……それに耳元でも息遣いが聞こえる。

これってもしかして…

 

「……ん?……マホロア…起きたの?おはよう」

 

とゆんゆんが聞いてくる

 

「ウン、オハヨウ………………じゃないヨォ、何してんノ?」

 

当然のように挨拶をしてきたので返してしまったが、本当に何してるんだ?

 

「うん。えっとね?さっき本で、熱が出た時は人肌であっためるといいって聞いたから」

 

なんか決して正気とは言い難いぐるぐると回った目でそんな事を言ってくるゆんゆんに

 

「エェ…確かに聞いたコトはあるケド…実際にやらなくても、湯たんぽトカがあるじゃなイカ…」

 

と言うと

 

「ゆたんぽ?なに?それ?」

 

……しまった…この世界には湯たんぽなど存在しないのか…いやそんな事はどうでもいい。そっちじゃねぇ

 

「と、とりあえず離れヨウ?ゆんゆん」

 

早く離してくれ…さっきから君のマシュマロ(おっぱい)が俺のSAN値を毎ターン1D6くらい削ってきてるから!

 

「……イヤよ…離したらいなくなりそうで、胸が苦しいの…」

 

「…」

 

そんな事言われたら断れないじゃないか…ずるいなぁ…ゆんゆんは

 

「わかったヨォ…好きにしてチョウダイ…タダシ、ポーションが届くマデだからネ?」

 

「……わかったわ」

 

はぁ…早くモンハンしなきゃ俺の何かが耐えきれなくなりそうだ…

クソッ!なんであっちの世界ではこんな裏山体験ができなかったのにこっちの世界に来て○○○○ができなくなった途端にこんな事ばかり起こりやがって生き地獄だよチクショウ!

……もういいや。寝よ……

 

ゆんゆんに抱かれながら、俺の意識は沈んでった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その後部屋にポーションを持ってきた族長さんが俺たちの姿を見て、ポーションを落としそうになったのはまた別の話。

 

後日談だが

夕方の雷雨の中、そけっとのストーカーをしていたぶっころりーが、倒れた邪神の墓を見かけて、彼の善意(本人談)によって元の位置に戻されると、嘘のように空が晴れたそうだ。

 




*アンプルタイプの肥料 よく観葉植物とかの植木鉢に刺さってるスポイト的なやつ大体緑色。


そろそろたの死いたのちい受験勉強に本腰を入れなきゃいけないので投稿ペースがだんだん遅くなっていきます。
すいません。
後、添削や誤字、脱字の報告ありがとう御座います!

P.S なとりうむって平仮名で書くとなんか可愛い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話 らいふわーく

これは2巻入るの少し前の話かな〜

12話から2巻の内容に入っていきますのであしからず。


添い寝事件から1ヶ月の時が過ぎた。

一体あれはなんだったのだろう?1日であのおかしな症状はすべて消え失せた。ちなみにゆんゆんは、次の日の朝ようやく冷静になり、1週間おれと目を合わせられなくなった。ていうか目を合わせてくれなかった。とっても寂しかったです。

そして、現在俺の家の庭には戦国武将顔負けレベルの立派なお墓が鎮座してる。どうやら俺が寝てる間に、あの岩を≪ライト・オブ・セイバー≫で削り、≪ブレード・オブ・ウィンド≫でヤスリがけのような事をし、≪クリエイト・ウォーター≫と、≪ブレード・オブ・ウィンド≫の合わせ技でウォーターカッターのようなものを作り出し中央に『サボ』と彫った、立派な墓を作ったらしい。この魔法の無駄遣い所が実に紅魔族らしいね。ちなみにこのお墓、他所で作ろうと思うと数千万エリス相当の値がつくらしい。紅魔族って凄いね。

 

ところで今日はゆんゆんは森へ討伐に、俺は川へバナナ釣りに行く予定だ。

 

…そう。バナナである。

この世界のバナナ…だけではないのだが、野菜や魚のあるべき場所が逆転しているのだ。例えば、バナナは川で泳ぎ、サンマは畑に生えていたりする。最初は驚いて軽く引いたりもしたが、1週間も見続ければ流石になれた。

 

「行ってくるヨォ!」

 

そんなこんなで俺は渓流に出発する。

 

 

*****************

 

 

渓流に着くと、俺は釣竿(自作)を用意し構え、先っぽの針の部分に『ジャイアントミジンコ』という手で掴めるくらい肥大化したミジンコの餌をつけ、川に垂らす。後は生きのいいバナナが食いつくのを待つだけなのだが……

 

〜30分後

 

「釣れないナァ…」

 

ピクリとも動かない釣竿を前に、軽く諦めかけてきた。

おかしいな?確か本にはバナナ釣りには『ジャイアントミジンコ』を使うとよく釣れると書いてあったのだが……

まぁ釣りは待つものだというし、気長に待ってみようか…………

暇だし今後の方針でも考えて待つとしよう。

 

まず、いつ出発するかなのだが……ゆんゆんが上級魔法を覚えたら出ると言っていたが、旅にはもちろん金がいる。今ちょうどめぐみんが旅費を稼ぐために四苦八苦していると聞いて、いくらかかるか聞いてみると、テレポート代だけでもなんと30万もかかるそうだ。タクシーもびっくりの衝撃価格である。流石に賞金を稼ぎ続けると言っても、これはないだろう。おそらく馬車代もこれよりかはマシだろうが、きっととんでも価格に違いない。

…だから俺はあるスキルを覚える事にした。

 

≪ローア召喚≫である。

 

そう。ローア。みんなおなじみ空飛ぶ船ローア。

アレが欲しい。習得ポイントが40と凶悪だが、なんと俺の職業『魔術師』は最弱職と呼ばれる冒険者に負けず劣らずくらいの勢いでレベルが上がる。つまり、スキルポイントが貯まりやすいのだ。ちなみにスキルアップポーションの効果もでかい。1本で2〜3くらい増える。俺が早く卒業できたのもこの特性のおかげだ。バグってもチートという事だろう。だから、ゆんゆんと同時に俺も暫くしたら修行しようと思う。

ちなみに旅の目的は

俺からは

・元の姿(人間)に戻るため

・ゆんゆんに友達の作り方を伝授する事

 

ゆんゆんからは

・俺への恩返し?

 

の筈だ。ま、長い旅になりそうだし気長に旅しよう。

 

それともう一つ、これは俺の内面事情なのだが……これは、……ほら…アレだ。ゆんゆんの事だ。

この俺の内面は絶対にゆんゆんには知られないようにする事にした。

ヘタレと思う人がいるかもしれない。けどお前ちょっと想像してみろよ…

ドラ○エのスライムがいきなり、

「ぷるぷる。ぼくわるいスライムじゃないよ。ずっと君が好きだったんだ。つきあって」

て言ってきてお前了承するか?

…しねぇだろ?例えがアレだが恐らくゆんゆんから見たらこのまんまじゃないかと思うんだよね。だから、人間に戻ってから言おうと思う。

それまでは嫌われないように今のこの友達という関係を保ち続けようと思う。これはこれで心地いいしな…

 

そんな感じで外面的にも内面的にも予定を立てていると…

 

「オ?」

 

ついに竿に感触があった。

コツン…コツン…と探るように餌を突くバナナ。そして暫く様子をみると…

 

クンッ

 

「!」

 

ようやく食いつき、暴れるバナナ。

中々の引きである。前世の岩魚の3倍くらいの力で竿を引いてくるバナナ。

この世界のフルーツといい野菜といい生きが良すぎて怖いね!噂ではキャベツは空を飛び、鉄球のごとく突撃してくるのだとか…季節によっては野菜による死亡案件が何件か起こってるらしい。

 

俺は竿を強く握りしめ、バナナが疲れるのを待った。

そして一瞬動かなくなったところを狙い、

 

「ソォイ!!」

 

掛け声とともに思いっきり竿を上げると、

 

ビチビチビチビチ!!!

 

長さ18cm、太さ7cmくらいの超大物が釣れた。そいつは空中に弧を描くと小石の上を激しく跳ねる。

 

「エェイ!動かないでクレヨォ!」

 

俺はバナナを押さえつけながら、ヘタに刺さった針を外す。

…こいつどうやって食ったんだ?そして餌のミジンコはどこへ消えたし…

 

ともかく俺は刺さった針を外すと、バナナを左手で固定し、

 

「フン!」

 

右手でヘタのちょい下部分をぶん殴った。

するとバナナは殴った部分が黒くなり、おとなしくなった。

 

これが一通りのバナナの締め方である。前世視点でみると、川で冷やしたバナナを釣竿で釣り上げ、地面に押さえつけ、思いっきりぶん殴っているというとても正気とは思えない行動に見えるのであろうか…致し方ない。あっちはあっち。こっちはこっちなのだ。

 

俺はバナナと釣竿をワープホールに突っ込むと、釣り場を変えるために川の上流の方へ向かった。

 

 

*****************

 

 

上流へ向かう途中。俺は野生(天然)のサンマの群れが地面からチンアナゴのように陳列しているのを見かた。すぐさま収穫しに飛びかかったのだが、流石は天然物。畑に生えてる養殖物とは違い、とっても早かった。残り数センチで収穫できそうな所で、素早く地面に潜りモグラのように地面を泳いで行った。なので、たくさんいたのに3匹しか捕まえられなかった。まぁ思わぬ収穫が少なからずできて満足である。

しかし、一応族長にも報告しておこう。野生のサンマは切れ味が高く危ないからね…やばい奴だと木とか両断する。おぉ…こわいこわい。

 

そんな感じで気分良く上流に向かってると開けた河原に出た。そこには見覚えのある人影が二つ…

 

「……いいですかこめっこ。奴らは大きめの岩の隙間や平たい石の下にいます。めくり上げて捕縛するのです!」

 

「わかった!」

 

おぉ…この間念願の爆裂魔法を覚え、俺と同じでやる事がなくニートしてるめぐみんと、俺を物理的な意味で食べようとしてる、めぐみんの妹のこめっこがいた。

そして、河原方にはなんか火をかけた大きめの鍋が用意してあった。

 

「ヤァめぐみん!こめっこ!二人でナニしてるノ?」

 

夢中で何かを捕らえようとしてる二人に声をかけると

 

「ひゃあ!?ま、マホロア!?なぜこんなところにいるのです!?」

 

小さな悲鳴を上げ、勢い良くこちらを振り返るめぐみん。

 

「?ナゼって…釣りダケド?」

 

「そ、そうなのですか……わ、私達はこの辺に……その…わ、我が爆裂魔法にもっと磨きをかけるために!魔法威力向上の効果を持つ魔法石を探しているのです!」

 

そう言い放つめぐみん。ほぉ…こいつもいろいろと頑張っているんだな。

と感心していると

 

「姉ちゃん!やった!ごはん捕まえた!……あ、マホロア!呪いは解けた!?」

 

といいザリガニをこちらに見せてくるこめっこ。

 

「………」

 

「……ネェめぐみん。こっち向きなヨォ…ナンデウソをついたのカナァ?」

 

俺から目をそらし、明後日の方向を向くめぐみん。

 

「……ハァ、別に見栄を張らなくたってもいいじゃなイカ…キミの家の事情はもう知ってるからネェ…」

 

そう呆れる俺に

 

「え、ええそうですよ!こっちはあなた達とは違って1日1日生きるのに必死なのです!わかったなら何か奢ってくださいお願いします!」

 

開き直って飯を要求してきた。

 

「わ、わかったヨォ…さっきそこで天然のサンマが取れたカラやるヨォ」

 

そう言ってワープホール(クーラーボックス)を展開しようとすると…

 

ガブッ!

 

「イ"!?」

 

右耳?に激痛が走る。しかもこの痛み覚えがあるぞ…

 

「ギャアアァァ!!こ、こめっこ!ま、マダ呪いは解けてないカラ!解けてないカラ!食べないデェ!」

 

「フゥゥゥ!!!!」

 

また嚙りつかれる。そして、必死の説得もむなしくこめっこは俺をまだ齧り続ける。

 

「チョ!?イタイ!ヤメテ!やめてチョウダイ!!め、めぐみん!タスケテ!!」

 

「え、えぇ…わ、わかりました……………コラ!こめっこ!マホロアなんて食べたらお腹壊しますよ!」

 

めぐみんも若干引きながらこめっこを説得し、ひきはがす。

 

「じゃあ煮れば食べれる!?」

 

そう言ってグツグツ煮立った鍋を指差す。

 

ま、まずい…このままでは幼い少女に食べられる……この手はあまり使いたくなかったが…

 

「こ、こめっこ?ホラ!さっき獲れたバナナをあげるカラ…今日はカンベンしてチョウダイ?」

 

そう言い俺はさっき獲ったバナナをワープホールから取り出す。

 

「しょうがねぇなぁ!」

 

そうホーストの真似をして俺からバナナをひったくり、モグモグ食べて大人しくなった。

 

「ハァ…ヤレヤレ。酷い目にあったヨォ………ネェめぐみん。なんでコノ子はいつにも増して飢えてるノ?トウトウ生活費までオヤジさんが使ってしまったトカ?」

 

何時ぞやの俺の話を無視して喰らい付いてきたこめっこを見るに、相当飢えてたに違いない。一体どうしたんだろう?

 

「……そ、それはですね…ほら、学校にいる間私の栄養源はゆんゆんから巻き上げた弁当とマホロアの賄いくらいだったと言ったじゃないですか……それが消えた今、私達はお昼に食べる物がないのです……だからこうしてザリガニを獲ったり畑から盗んだり、む、虫を食べたりしてたのですが……限界だったようですね」

 

……なんか後半よく聞こえなかったが、なんとも気の毒な話だ…なんかこっちまでウルッときてしまいそうだよ…

 

「そ、そうなンダ……良かったら明日からお昼ぐらいなら奢ってあげるヨォ?」

 

俺に出来るくらいの事はしてあげたいよね

 

「い、いいんですか!?」

 

信じられないと言う顔付きで俺に向き直るめぐみん。

 

「やったねニート姉ちゃん!姉ちゃんも魔性の姉って名乗っていいよ!」

 

「え、えぇ…そうですね…考えておきます。ところでマホロア、貴方お金はあるのですか?私達二人分の食事となると結構な量になりますよ?」

 

大丈夫だ、問題ない

 

「いいヨォ…お金はたくさんあるしネェ…クックク」

 

そう。俺は今ちょっとした小金持ちなのだ。ナゼかと言うと…ほら、以前俺はこの世界でUNOを完成させて、族長さんに頼んで里の外にも公開してもらっただろ?それがねぇ…王都で大ブームを引き起こして爆発的に各国に広まってった。なんと一部ではカジノにも取り入れられてるらしい。

……カジノにUNOって(笑)

ともかく、世界中で売れたという事はUNOの特許を持つ俺の所に金が流れてくるワケで…まぁ後は御察しの通りさ。

 

「そんなにお金があるなら私の旅費も賄ってくださいよ」

 

と頼んでくるめぐみん。

…それはぁ…いかんなぁ…

 

「ダメダヨォめぐみん。ソノお金はめぐみん自身の旅だからネェ…自分の力でなんとかしてチョウダイ」

 

人は甘やかすとロクなコトにならないからね。

 

「むぅ……ケチですね」

 

そう言うなよ…めぐみんの為を思って言ってるんだからさ。

 

「ダメなモノはダメダヨォ。ジャ、はいさっき獲れたサンマダヨォ。味わって食べてネェ。ボクはもう少し上のホウで釣りを再開するヨォ」

 

サンマをワープホール(クーラーボックス)から出して渡し、さらに上流の方へ飛んでいくと

 

「ありがとうございます!あ、後マホロア!この事は他の人には内緒ですよ!紅魔族随一の天才の肩書きに泥が塗られてしまいますので!」

 

「ハイハイわかったヨォ」

 

後でゆんゆんに事細かく話してあげよっと♪

 

 

*****************

 

 

暫く歩くと、川の上流…と言うか渓流についた。水がキレイで、そこらかしこで黄色い影が見える。

絶好の穴場だ。俺は近くにあった苔だらけの岩の表面を魔力球の衝撃波で削っていい感じにしてから腰掛け、釣りを再開した。

 

 

ー数時間後ー

 

 

「オォ!大量♪大量♪」

 

ワープホール(クーラーボックス)の中を覗き込み、バナナの数を数えながら俺は充分な釣果に満足していた。

 

「…ソロソロ暗くなってきたナァ…かーえろット」

 

そう呟いて釣り道具をワープホールの中に突っ込んでいく。

だいぶ俺も紅魔族の様に魔法を無駄遣いできる様になってきた。悪い兆候なのだが、便利なので仕方がない。人間いつだって楽な方に流されるもんさ…

 

全部しまい終え、川を下ろうとすると…

 

 

「「きゃああぁぁぁぁ!!!」」

 

「ン?ナンダ?」

 

なーんかどっかで聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。

ともかく、森の中でクマさんに襲われてるのかもしれないし、声のした方向へ出来るだけ早く飛んで行った。

 

 

ーーー鬱蒼と生い茂る森の中。ここいらの土は多くの自然的な魔力が宿っており、そこで育つ木は土からたくさんの魔力を吸いその身に宿している。つまり、杖とかにするには高品質という事だ。しかしながら、この木達はモンスターにとっても、魅力的なものでありここいらに縄張りを張っているモンスターは決まって中ボスクラスなのだ。

ーーーそう、今目の前にいるこの大きな黒いクマの様に…

 

「グオオオォォォォォォ!!!!」

 

「「きゃああぁぁぁぁ!!!」」

 

ーーブラックファング。

一撃グマよりも大きく、その黒い巨体は突進するだけでダンプカーとか跳ね飛ばせそうなくらい強靭、そして太い腕の先にある鋭利な爪は鉄程度なら紙のように引き裂く事が出来るくらい凶悪で、中級冒険者くらいなら3秒でソーセージにされてしまうだろう。

…そんな中ボスクラスのモンスターと対峙するのは3人の紅魔族の少女達だった。

 

「ああああるえぇ!こ、ここっこれなんとかなるんでしょうね!?ていうかお願い!なんとかしてぇ!!」

 

「あ、あぁ…私、まだやりたい事いっぱいあったのに……さらば我が人生…そしてダンジョンの奥で私を待つ運命の人よ……先に旅立つ事をお許しください…」

 

まだ学校に通い、魔法を覚えてない2人の少女達は半ばこの状況に諦めて絶望しかけていた。

だが、

 

「フッ…まぁ落ち着くのだ我が同志達よ…私がこんな事態を予測していなかったと思っているのかい?」

 

眼帯をつけたこの少女。こっちは既に上級魔法を覚え、学校を卒業している。その為か他の2人より余裕があるのか紅魔族特有のかっこいい(中二的な)ポーズを決めている。

 

「さ、さっすがあるえ!伊達に成績が良かったわけじゃないわね!」

 

「え?わ、私まだ死なないの?生きてていいの?やったぁ!」

 

…普段地味な方がなんかトリップしているが、希望が見えて落ち着きをとり戻しつつあった。

 

「ま、まぁいいや…喰らえ!人類の英知によって生み出されし、汝を葬らんとする轟音の珠ァ!!」

 

そう言って少女は、懐から出したソフトボールくらいの珠をクマの頭部に向かって投げつける。

すると珠は弾け…

 

ギイ"イ"イ"ィィィィィィィンンンン

 

という鈍くてとても大きな音が辺りに炸裂する。

 

「グオオオアアアァァァ…………」

 

と吠え、耳を押さえてクマはその場にうずくまった。そしてその隙に…

 

「我が手に宿りし黒雷よ……醜き魔獣を貫き屠れ!≪カースド・ライトニング≫!!」

 

とかっこいいセリフ(中二)を詠唱に混ぜながら雷の上級魔法をクマに撃ちこんだ。

そしてその黒雷はうずくまるクマの頭部を貫通し、クマはビクンッと痙攣すると動かなくなった。

 

「はぁ……今回ばかりはダメかと思ったぁ…」

 

「うん…やっぱり私達も勉強頑張って早く魔法を覚えるべきかもね…」

 

そう言ってへなへなと後ろの木にもたれかかる2人に

 

「予め、この辺りの森にブラックファングが出るって聞いていたからね、もしもの時の為に買っておいたのだけど…まさか使う事になるなんて思わなかったね」

 

そう言って2人に手を差し出し、起こそうとすると…

 

ガサ…

 

不意に後ろの方で草がこすれる音がした。

 

3人がその方向を見ると

 

「グルルルルルルゥ…」

 

さっきよりも小型だが、そこにはブラックファングがいた。

 

3体も

 

「あ、あるえ!早く音爆弾を!」

 

「そ、そうよ!早くしなさいよ!じゃないとまた食べられちゃうじゃない!」

 

最初にクマとミーティングした時よりか随分と落ち着いた対応だが、3体も黒い○ーさんが並んでいるところを見るとやはり焦るものだ。しかし、今先程これらよりもデカイ個体を倒した本人が自分の前にいる。なのでその安心感もあったのだろう余裕そうだ。

 

しかし、その安心感は次の言葉でかき消される。

 

「………ごめん…1個しか買ってないんだ……後、魔法なんだけど…打てて後1回か2回が限界……」

 

「「ふぇ?」」

 

予想外の言葉に頭の理解が追いつかず、素っ頓狂な声を上げる二人。そして、2人の安心感…もとい希望が一気に絶望に変わり、泣き出しそうになる

 

「「「グルァァァァァァ!!!」」」

 

「「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」」

 

3体のクマがこちらに向かってきた恐怖に叫び、目を瞑る2人。

眼帯の少女は運命を受け入れたのか、同じく目を瞑った。

ーーそして

 

 

「≪キルニードル・フォレスト≫!」

 

そう聞こえた瞬間、クマの近くに生えていた木々から出た、たくさんの枝の様な針が3体を滅多刺しにした。

 

 

*****************

 

 

現在夕方。空が赤く染まり出して若干肌寒いような夕方。ーー俺は森の奥地にて2人の少女に抱きつかれ、顔から出た色んな液体で数少ない自分の服を汚されていた。

 

「ゔっゔあ"ぁぁぁぁ!!あり"がどう!あり"がどうマホロアぁ!!」

 

「ウゥッうえっ…ごわがっだよぉ…あ"あ"あ"ぁん!!」

 

「お、オォ…ヨシヨシ…もう怖くないヨォ…大丈夫ダヨォ…」

 

そういいながら2人の頭を撫でていた。

……なんか最近女の子のガチ泣きばかり見てる気がする…なんだろうこの数奇な運命。

 

「マホロア、ありがとう。さっきは流石にダメかと思ったよ。マホロアがいなければ私の小説家人生は終わっていたね…」

 

そういいお礼を言ってくるあるえ

 

「デモ、ソノ割には落ち着いているネェ」

 

こっちの二人とはえらい差である。

 

「まぁね。ああいう場面では決まって誰かが助けに来るってわかっていたからかな?」

 

こいつ命の瀬戸際まで紅魔の流儀に従ってやがる。こっちの2人は捨てたというのに…こいつめぐみんやこめっことは違った大物感があるなぁ…

 

「それに、マホロアの新しい技も見れたしね。あれはなんだったんだい?」

 

「ン?アァ…あれはネェ、≪キルニードル≫って技があったダロォ?アレはどうやら地面じゃなくても地面と繋がってるモノからデモ生やす事がデキルってわかったンダ!卒業しても、研究は怠っていないンダヨォ」

 

まぁ…暇だし色んな事を試せるからね。今ある応用的な技のほとんどは遊んでたら偶然できた感じなんだよねぇ…

まぁそれはいいとして

 

「ところで、キミ達はドウシテこんな森の中にいるんダイ?」

 

と聞くと、撫でられていたどどんこが

 

「えっとね……グスッ…ふにふらの弟の病気が……うえっ…めぐみんのポーションで治ったからッ……借りを返したいって……ふにふらが…」

 

「エ!?アノ話本当だったノ!?」

 

てっきりゆんゆんからお金を搾り取る口実かと思ってた。

するとふにふらが

 

「さ、流石に…私もそこまで鬼じゃないわよ!」

 

と訂正してきた。

 

「アー…なんか疑ってゴメンネェ……で、ナンデ森に?」

 

「2人はめぐみんが旅に出る前に杖を渡そうと思ってるらしいよ。ふにふらのお父さんが杖職人でね、その材料を取りに来たってわけさ」

 

なぜかドヤ顔をするあるえ。

手作りで渡すとは…ふにふらとどどんこも俺の中では印象があまり良くなかったが、何も完全なドライという訳ではないようだ。きっちり借りを返すというところを見る限り、あつい一面もあるんだなぁ…

 

「ソウなんだ……マァ頑張ってチョウダイ。デモ、今日みたいなコトにならないヨウに、気をつけるんダヨォ?」

 

「「「はい……」」」

 

返事を貰うと俺は懐からクラウンを取り出し、第2形態になり

 

「ヨシ!ジャア里まで送るヨォ!ミンナボクに捕まって!」

 

里までワープしながら飛んで行った。

 

 

*****************

 

 

「タダイマ!!」

 

テンション高く玄関の戸を開ける。

すると

 

「あ!マホロア君遅いぞ!みんなマホロア君が帰ってくるのを待ってたんだからね!私なんてもう腹が何回鳴った事か…」

 

「クックク…ゴメンゴメン。バナナ釣りをしてタラ時間を忘れちゃってネェ」

 

あぁ…イレギュラーな日もいいけど、こうした何気ない日常ってのもいいものだなぁ。

 

「ハイ!今日獲れたバナナダヨォ。デザートにみんなで食べヨウ!」

 

そう言ってバナナを奥さんに渡し席に着く。

 

「あ!マホロア遅かったね…何かあったんじゃないかって心配したんだから」

 

「ゴメンゴメン。後で面白い話してあげるカラ許してヨォ」

 

どうやらゆんゆんも俺の事を心配してくれていたようだ。

 

「じゃあみんな揃った事だし、食べようか!」

 

こんな日常も

 

「「「「いただきます」」」」

 

いいものだなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーワープホールにて

 

 

どくん……………

 

……………どくん………

 

どくん…………………

 

 




キルニードル・フォレスト

木の枝のように少しサイズが小さめのキルニードルをたくさん木に展開して滅多刺しにする。
キルニードル・ワープよりも消費魔力が少ない。
だが、木があるとこでしか使えない。それに、対象が木から離れすぎてると当たらないため、森専用の技。
ちなみに岩石だと≪キルニードル・ロック≫と、技名が変化するが基本的な性能は同じ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話 ○ものフレンズ

これだけはやりたかった。
後悔なんぞない。


ーーボッチとは何か

 

人にとっては永遠の課題となるかも知れぬこの質問。

ここに来てあの約束をしてからと言うもの、いつも俺はこの課題に挑み続けた。

 

ーーついに答えは出た。

あくまで俺の独断と偏見によって導き出された答えだが…………まぁないよりはマシだろう……

 

「サァテ、ゆんゆん。今から講義をハジメるヨォ」

 

「はい!」

 

現在俺は、広間を改造しホワイトボード的な物も持ってきて、擬似教室を作り授業を行おうとしてた。

…こういうのは雰囲気が大切なのだ。

 

「ウン!元気があってイイネェ」

 

一つしかない席に着き、目を輝かせながら今か今かと期待するゆんゆん。

…ゆんゆんにとっての一生の願いが今果たされるかも知れないのだ無理もない。

 

「ジャアまずハ、なぜボッチとはできるのか。ソコからはじめヨォ」

 

ホワイトボードに『ボッチの発生方法』と書き、説明する。

 

「ボクなりに考えたんだケド、ボッチは周りにハブられるのじゃなくテ自分から無意識に遠のけテルのだと思うンダ」

 

「ふむふむ」

 

自分に心当たりがあるのか探るように考えこむゆんゆん。

 

「ダカラ、克服するには自分が積極的になるコトがいちばんいいのダト思うンダ」

 

「うーん」

 

ホワイトボードに赤文字で『積極性』と書くと、難しい顔をし出すゆんゆん。

 

「あの……マホロア?「『先生』をつけてチョウダイ」…マホロア先生。そんな簡単に積極的になれたら苦労しないと思うんですが…」

 

諦めたようにそう質問するゆんゆん。

はっはっは、何を言うか。

 

「…キミ。数日前にボクのベッド潜り込んでキテ抱き枕にしたヨネ?」

 

「あっ…あれは気が動転してて!」

 

思い出したのかゆんゆんは真っ赤になった顔を押さえながら机にうつ伏せになってしまった。

 

「アー……ツマリ。ボクが言いたいノハ、ゆんゆんは妙なトコロで積極性があるというコトダヨォ。ホラ、めぐみん達を助けるタメに遠慮なく魔法も覚えたんじゃなイカ。フツウの人はソンナにそんな逆境で咄嗟の判断ナンテできないヨォ。…ホラもっと自分に自信をモッテ」

 

まぁあれは積極性なのかと言われるとなんか違うような気もするが……まぁいいか。

そう思いながら頭を撫でてみると

 

「本当に?」

 

と頭を上げるゆんゆん。

今度は違う意味で顔が赤くなっているが、まぁいいだろう。

 

「デモ!ソンナ逆境じゃなクテ、日常生活で発揮できなかったら意味がナイ!デモ、イキナリ積極的にナレと言われても難しい…そうダロォ?」

 

こくこくと頷くゆんゆん。

 

「ソコで!今日はこんなモノを持ってきたヨォ!」

 

そう言って俺はワープホールからドサドサとソレラを召喚する。

 

「……………マホロア?「『先生』」……マホロア先生……な、なにこれ?」

 

「カチューシャダヨォ!」

 

「うん……いや、でもこれどう見ても…」

 

「動物カチューシャダネェ」

 

そう…ただのカチューシャではない。動物の耳がついたカチューシャ………行ってしまえばけも耳である。

 

「……マホロア…こういう趣味があったの?」

 

なんだいその『マジかよお前』って顔は…

 

「違うヨォ。ボクはソーイウ趣味なんてないヨォ!……因みにソレマジックアイテムなンダ。意外と高いカラ壊さないでネェ」

 

「え!?」

 

疑いと驚きを兼ね備えたように返事をするゆんゆん。

 

…無理もないね。俺も最初そんな反応したもん。

 

 

*****************

 

 

この世界で紅魔族と並び人間、魔物。どちらからも危険視されている教団。

 

アクシズ教徒

 

そんな彼らと、無から有を生み出す黒髪黒目の変態チート持ちが出会ってしまった。

 

彼は性癖全開な彼らに自分と同じ変態魂を感じ結託。その結果生まれたのが

 

カチューシャ型性格改変魔道具

 

≪まものフレンズ≫である。

 

その商品は当然の如くアクシズ教徒の総本山「アルカンレティア」に近い紅魔の里にも流れ込んできた。

 

雑貨屋の店主がどう処理したものかと困っているところで、マホロアが金に物を言わせて買い占めたのだった。

…衝動買いである。

 

 

*****************

 

 

「と、言うワケで積極的になるには実際になってみるのがイチバン!ダカラコレをつけてみなヨォ!」

 

俺が選んだのは「モチーフ:サーベルキャット」効果は超ポジティブ。タグの所に、「コレを付けて見たら、知らない間に友達が一桁増えました!」と言う体験談も書いてあった。まさにゆんゆんぴったりと言えるだろう。

 

「い、いや!付けたところを誰かに見られたらわ、わたし……もうお嫁にいけない!」

 

言葉選びがなんか間違ってる気がするが…このままではせっかく大金叩いて買ったのが全部無駄になる。

……せっかくそこの白板消しに超小型カメラも仕込んだというのに…

 

「ゆんゆん。ダイジョウブダヨォ。スコーシだけ積極的になるダケだし、家から出なければいいダケじゃなイカ!せっかくゆんゆんの為に買ってきたんダヨォ…付けてくれなきゃ悲しいナァ」

 

「うっ……そ、そうなの?なら……」

 

よぉーしうまいこと誘導したぞ〜。

 

「い、一瞬だけ!一瞬だけだからね!」

 

そう言って半ばヤケになりながらも装着するゆんゆん。

ッシャァ!お宝映像いただき!

 

カチッ

 

と子気味いい音が響き、装着したゆんゆん。

……ほぅ

 

「ウン!中々似合ってるヨォ、ゆんゆん!」

 

「……」

 

あれ?囃し立てて見たけど反応がない…おかしいな?

 

「ゆんゆん?オーイ?ゆんゆーん?」

 

そういいながら、ゆんゆんの前で手を振ってみるが反応がない…おかしいな?なんか副作用とかあったりしたのかなと説明書を読もうとすると…

 

「すっご〜い!」

 

「!?」

 

びっくりした…いきなり背後で大声を出さないで…………て、え?

 

恐る恐る振り向くと

 

「なにこれなにこれー!すっごく気分がいいよー!」

 

手を広げてクルクル回って広間を駆け回るゆんゆん。ワァオ、想像以上だ。想像以上過ぎて軽く引いた。

 

「…エットゆんゆん?だ、ダイジョウブ?」

 

「え?どうして?」

 

「い、イヤ……なんでもないヨォ。気に入ってもらえたナラ良かったヨォ…」

 

「ふーん」

 

なんだろう…これは超ポジティブっていうか…………これただ頭が空っぽになっただけじゃあ……あぁ…IQが溶けそう…

 

……とりあえず一旦外そう。流石にこれはやばい。広間を元気に駆け回りまくるゆんゆんはキャラ崩壊が甚だしい。もう俺も満足したし、カメラもいい感じに撮れてるだろう。

 

魔道具だし一応取り外し方を見ておくか……

えーと何々?

 

「サーベルはですね。基本的には山岳地帯の魔物の巣と呼ばれる地域に過ごしていまして……」ペラ

 

「本商品をご購入いただき有難うございます。本商品をご装着なさると3時間経過しないと外れません」

 

なにぃ!?なんだよこの糞設定!

 

「故、ご装着なさる場合はくれぐれも自分の周りとの人間関係などが「マホロア!ちょっと外に行ってくるね!」

「アーハイハイ、イッテラッシャイ。…エットどこまで読んだッケ?そうだココここ」

人間関係などが変わる場合を念頭に入れてください。

尚、本商品で怪我、社会的な死、ボッチとなった場合はアクシズ教徒に限り手当を施します。

もしその時アクシズ教徒に入ってなくてもその場でアクシズ教徒にご入会いただければ大丈夫です。

では本商品をお楽しみください」

 

畜生!こうなったらカチューシャを破壊するしか…

 

「注意:装備中に本商品を破壊した場合主人の頭がクルクルパーになる可能性が高いのでお控えください」

 

なるほど抜かりがないなぁ!アクシズ教徒ォ!

まずい、この状態を里のみんなに見られてはゆんゆんがアクシズ教徒に入る事になってしまう。

あんなキチ○イ共の仲間入りとか流石の俺でも良心が痛む。むぅ…取り敢えず部屋に縛り付けておけば後は時間が解決してくれるだろう。

 

「オーイ!ゆん…ゆ……ん」

 

いねぇ!あいつ外に出やがった!

…そういやなんか言ってたな読むのに夢中で適当に返事したけど…

やっちまった…

しかもあの子ご丁寧に残りのカチューシャも持ってきやがった!

 

まずい…このままではゆんゆんが里全体がディストピアにしてしまう…。早く捕まえて被害の拡大を止めなければ…。

 

 

*****************

 

 

さて、勢いよく飛び出してきたはいいけどゆんゆんの行方がわからん。

漫画みたいに足跡を追ってとかできたらいいんだけどそんな都合よく足跡なんてつかないし見えない。取り敢えず里のはずれにある公園っぽいとこまで来たけど……困ったものだ…どうしよう。果てしなくめんどくさい。

 

とか思っていると……

 

「わーい!たーのしー!」

 

「……姉ちゃん…」

 

ワァオ……これは酷い。

今俺の目には、( `・ω・´)で滑り台を滑るという行為を永遠に繰り返すゆんゆんのライバル。めぐみんがいた。

 

「ヤ、ヤァめぐみん…こめっこ…」

 

「あ!マホロア!ヤッホー!どう?私と一緒に滑らない?」

 

「イ、イヤ…遠慮しておくヨォ…」

 

やばい…キャラ崩壊が酷すぎて吐き気を催してきた………あれは確か「モチーフ:オオヅメカワウソ」だっけな…確かあれも超ポジティブの効果だったはず…でもあれどう見てもアホの子…つーかデフォルトで顔が( `・ω・´)の奴初めて見た…

と考えていると、不意に服の裾が掴まれる。見るとそこにはなんか複雑な顔したこめっこがいた。

 

「あのね、なんか大きな耳を付けたゆんゆんみたいな人が急に来てね、姉ちゃんがそれを笑ったの。そしたらね、ゆんゆんみたいな人が姉ちゃんにあの耳を付けたんだ。そしたら姉ちゃんが……」

 

「ウン…もういいヨォ。大体わかッタ」

 

ここまでドン引きしているこめっこは初めて見たかもしれない。

取り敢えずフォローを入れよう。

 

「いいカイこめっこ。キミがあった人はゆんゆんじゃないンダ。あれは……ソウ、ゆんゆんの偽物ダヨォ。わかったカナァ?」

 

「う、うん。わかった」

 

「後偽ゆんゆんはどっちに行ったのカナァ?」

 

「あっち」

 

そう言って公園の奥の方を指差す。

まずいなぁ…あっちは確か喫茶店とか居酒屋とかが並んだところ…あぁ考えたくもない。

 

「アリガトウ。それとこめっこ。姉ちゃんが元に戻ったら、あのカチューシャをボクの家に届けて欲しいンダ。…………アー沢山のお菓子と交換するカラ…」

 

「しょうがねぇなぁ!」

 

良かった。いつものこめっこに戻ってきた。

 

「ジャアボクはゆんゆん……の偽物を追うヨォ!後キミの姉ちゃんの為にもあの姿は他の人に見せちゃダメダヨォ!」

 

「うん。わかった!」

 

「あ、マホロアもう行っちゃうの?バイバーイ!」

 

「バ、バイバーイ…」

 

そう言って俺は急いで後を追う。

 

まずい。非常にまずい。あのめぐみんですらあんな事になっているとは……ていうかあれ正気に戻って俺のせいとばれたら俺死ぬんじゃね…いやよそう。これ以上は考えるな。今はゆんゆんを捕まえることだけを考えていればいい…

 

 

*****************

 

 

ゆんゆんを追って早幾年ついに商業区に到着しました。

おおっと!早速喫茶店の前が騒がしいぞー!…こんな時間に喫茶店が混む筈がない。十中八九あれだろうなぁ…。

 

外でガヤガヤする外野をかき分け中に入ると。

 

「ふわああぁ! いらっしゃぁい! よぉこそぉ↑私のカフェへ~! どうぞどうぞ、ゆっぐりしてってぇ!」

 

「ヒェッ」

 

ウゲェァ…店主のおっさんがそんなセリフ言うなよ!

 

「いやま゙っ↓てたよぉ! やっとお客さんが来てくれたゆぉ! なんか外にいっぱいいるけど中に入ってこなくてにぇ!嬉しいなあ! ねえなんにぃ飲んむぅ? いろいろあるゆぉ!」

 

「エットォ…」

 

やばい吐き気を催してきた。

 

「アノォ…」

 

「ん?」

 

「ボク、ゆんゆん……の偽物を探してて…」

 

「…お客さんじゃないのか……ぺっ」

 

ビチャァ

 

うわきったねぇ!このオヤジ唾吐き棄てやがった!

……あのカチューシャは…「モチーフ:アルパカ・スル」だったな…確か効果は看板娘だったか?…まぁ少女ならまだしもお前はアウトだろう。控えめに言って死ねってレベルだぞ?

 

「エット、それでドッチに行ったかわかるカイ?」

 

「あぁ…それなら畑の方に行ったゆぉ」

 

「あ、アリガトウ!また今度来るヨォ!」

 

そう言って俺は店を出ると

 

「ま、マホロア…あれについて何か知らないか?」

 

野次馬の一人が聞いてくる。

 

「エ?あーー、ウン。ちょっと禁じられた召喚術を使ってネェ、ソノ結果ゆんゆんのコピーが生まれたんだ。そのコピーが悪さをしてるんダヨォ」

 

「そ、そうなのか!なら早く捕まえなきゃな!」

 

よし!何故か誤魔化せた。

こんな感じでみんなのヘイトをありもしない人物になすりつけよう…その方がみんな幸せだ。うん。

 

さて、畑に向かいますか。

 

 

*****************

 

 

「うみゃぁ!うみゃあ!うみゃみゃみゃみゃみゃーー!」

 

「ゆんゆんちゃんは元気だねぇ」

 

中央の畑群にいないと思ったら少し離れたところの小さな畑で元気よく野菜を捕まえるゆんゆんと、畑の持ち主らしきおばあちゃんがいた。

ある程度近づくとゆんゆんがこちらに気づき

 

「あ!マホロア!すっごいね!いっぱいフレンズが増えたよ!これをつけるだれけで……こんな風に!」

 

と言ったかと思うとどっからか取り出したカチューシャをおばあちゃんにつけやがった。

 

「チョ!おまっ!」

 

婆「たーのしー!」

 

「たのしーねー!」

 

やめろぉ!それ以上感染を拡大させるなぁ!

 

「わーい!この調子でみんなをフレンズにしよう!」

 

この子無邪気な笑顔でテロ予告をしやがった。

どう止めたものかと考えてると…

 

「うみゃあ!」 ブン!

 

「ウォイ!?」

 

ゆんゆんがいきなりカチューシャを被せに来た。

……早いッ!ゆんゆんとの距離は10mは離れていたはず……なのにあの一瞬で距離を詰めやがったッ!

 

「うみゃあ!うみゃあ!うみゃみゃみゃみゃみゃーー!」

 

「ウ!ウワァァァァァ!!」

 

ゆんゆんが目にも留まらぬ速さで連続攻撃を繰り出してきた。

ワープで避けてるが…いかんせん速すぎる。すぐに距離を詰められる。

まずい!このままでは俺までフレンズ化してしまうッ!つーか速すぎるだろ!人間の限界を超えてやがる!…まさかあのカチューシャか?クソ!アレにそんな機能があったなんて!

 

「わーい」がしっ!

 

「!!??」

 

なんとさっきまで空気だったばあちゃんが俺をホールドしてきた。

 

「ウォォォォ!!ババァ!放せ!放しやがレェ!」

 

くそ!このばあちゃんも身体能力が強化されてるのか振り解けねぇ。

 

「うみゃあ!」ブン!

 

「しまっ!」

 

ヤバい!ばあちゃんに気を取られすぎた!

まずい!やられ……

 

「ッ!!」ブォン

 

「うみゃあ!?」

 

咄嗟にワープホールをゆんゆんの真下に展開。ゆんゆんはそのまま星型の穴に吸い込まれていった。

 

あーくそ……まさかここまで手こずるなんて…危なかった…

とりまゆんゆんは1時間たったら出してあげよう。

 

「サテ、この状況をどうしよウカ」

 

現在けも耳を付けたおばあちゃんに拘束されている俺。

せめてお姉さんだったらなぁ…

とか思いながら頑張って脱出してみようとする。が

 

「ふぬぬぬぬ!」

 

「ダメ!畑を手伝ってくれるまで逃がさないよ!」

 

畑を耕すまで逃してくれないらしい。

 

「ハァ……わかったヨォ。手伝うカラ…放してチョウダイ」

 

「うむ」

 

と言って放してくれた。

馬鹿め!

放した瞬間、俺はワープを使い空に逃げる。

 

「クックク!誰が手伝うかバーカ!アバヨォ!ババァ!」

 

と捨てゼリフを吐いて逃走する。

 

ーーしかし彼は忘れていた。ここは紅魔の里。老若男女問わず誰もがアークウィザードだという事に。中でも高齢の魔導士は洗練されているのだ。経験値が若者とは比べ物にならないゆえに。

 

瞬間!彼の側を黒い閃光がかすめた!

 

「………」ゾクッ

 

恐る恐る振り向くと

 

「次はあてるからね?」

 

おばあちゃんが笑顔で手をかざしていた。とてつもない魔力を纏いながら…

 

「わ、わかったヨォ…」

 

怖っ!なんだあの笑顔!軽くちびりかけたんだが!

まいったなぁ…彼女に逆らう事は死を意味すると言っていいだろうつまりはDead or working

働きたくねぇ!でも死にたくねぇ!

くそ!こうなったらばあちゃんを倒して帰るしかない!

行くぜおばあちゃん!俺をなめるなヨォ!

 

*マホロアは畑仕事を半日手伝わされました。

 

 

*****************

 

 

家にて

 

クソ!なんであのばあちゃんあんな強えんだよ…魔法は洗練されてるし弱点である物理攻撃もカチューシャで補われて理不尽の権化みたいな事になってたよ………なんという高性能ばあちゃん………もう最悪里がみんながアレつければ魔王倒せんじゃね?

 

と、思いながら部屋に戻り

 

「サテ、ゆんゆんを出してあげヨォ」

 

もう3時間以上たってるしもう外れてる頃合いだろう。

 

ブォン

 

ドサッとゆんゆんが落ちてきて…

 

「わぁい!たーのしー!」

 

「!?」

 

アレェ!?戻ってない!なんでだ?

あのおばあちゃんのカチューシャが外れるまで働いたからゆんゆんのは確実に取れるはず…………

 

 

まさか…

『ワープホールの中は時間が止まってる』?

と、ともかく今はゆんゆんをなんとかしなければ!

 

と思ってると

 

「マホロア」

 

「ッ!」

 

いつの間にか真横にいたゆんゆんに声を掛けられる。

まずい!この狭い部屋。というよりこの距離!確実にカチューシャを被せられる!そして多分同じ手は通じない!

 

とか思ってると

 

「あのね、そんなに急ぐ事はないと思うんだー」

 

「?………?」

 

( ゚д゚)あれ?

 

「えっとね、急いで性格を変えなくてもゆっくり変わってけばいいんじゃないかなー」

 

「…………エ(" ゚д゚)!?」

 

え?なにこのシリアス?ついていけないんだが…

 

個性(フレンズ)があるから、みんな違うから、それでいいんだよ。無理に変えて友達が増えても嬉しくない…」

 

「余計な御世話ってコトカイ?」

 

「言っちゃえばそうかなぁ…」

 

…….確かにそれはゆんゆん自身の力で得たものじゃない…ていうかなにこの状況。なにこのゆんゆん。

 

「だからね、これからは自分で頑張るから!こんな道具に頼るのは間違ってるよ!」

 

「ウン……」

 

これはなんだろう。ゆんゆんの意志なんだろうか。だとしたら俺はこの意志を尊重するべきなんだろうか?

 

「でもね、多分一人じゃできないと思うの!だから手伝ってくれる?」

 

といいながら手を差し伸べてくる。

俺はその手を取りながら

 

「………わかったヨォ」

 

と言うと。

 

カチッ!

 

と小気味のいい音がし、ゆんゆんの頭からカチューシャが落ちる。

 

あっ………やっべ!

 

「うーん………あれ?ここは?」

 

「アレ?」

 

お?これはもしかして…

 

「ゆんゆん?ダイジョウブ?」

 

「マホロア?私…確かカチューシャをつけてから……………?あれ???ていうかなんで私マホロアと手を繋いでるの?」

 

ははーん…記憶がないんだな…それは好都合…

恥ずかしさで暴走したゆんゆんに半殺しにされるかと思った…

 

「エットネェ。カチューシャをつけた後すごいポジティブになっテ、ボクの部屋をナゼか掃除し始めたんダヨォ。………エットォ…それでアリガトウって言って手を繋いで欲しいって言ってきたンダ」

 

我ながら苦しいウソだ。

 

「えぇ…そうなの?それにしてはあんまり綺麗になってないような…それにどうしてその流れで手を繋ぐことになるの?」

 

「そ、ソンナコトナイヨ。キニシチャダメダヨ。

ササ、カチューシャはなんかダメっぽかったシ、今日の授業は終わりダヨォ。さ、今日はもうナンカ疲れたし寝かせテ…ネ?」

 

と言ってゆんゆんを部屋から押し出す。

 

「えぇ!?ちょ!マホロア?なんか適当じゃない?あ、待ってまだ…」バタン

 

ふう、これにて一件落着かな?

……もう寝よう…なんか農作業、思いの外疲れた…もう寝よう…

 

あっそうだ

 

俺はワープホールを展開し、例のタマゴを取り出す。

 

環境がわからないからワープホールの中で育ててたけど、時が止まってるなら育たないよなぁ…これ

 

と考えながら、パンを入れるカゴを用意し、毛布を詰め込む。そしてその中にタマゴを入れようとタマゴをつかんだ時

 

どくん…どくん…

 

「なんかビクンビクンしてル…」




ゆんゆんはネェ、基本的には紅魔の里の、族長宅に過ごしててネェ、若干ゃライバルが、生えているトコロだから、ソウいったトコロで生きやすいようにゆんゆん、アノォ、グラマァーな個体デェ。
デ、あといつもオドオドしてるンダァ、周りの環境に慣れなくて
コミュ力ぅ…カナァ…
今までボッチ期間が長かったらしいからネェ…軽々と一週間や2週間は余裕でボッチしてくれると思うヨォ。

こうまのさと まほろあおにいさん?


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。