Aランクの私の指導役がCランクの先輩でも良いじゃないか (叢雨)
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1話

良いよね。学園系バトル・ファンタジーラブコメ。

これから宜しくお願いします。叢雨です。


ぱっとした思い付きですえぇ、はい。
…頑張ります。



ではどーぞ!


「ねぇ、あれ『閃剣』のレティシア・フルーリエじゃない?」

「やっぱり綺麗だよねー。私もあんな風になりたいなー」

「あれでまだ14歳でしたかしら?凄いわよね」

 

 

 歩く私の視界の端で女子生徒達が私をチラチラ見ながら噂をする。他の生徒達は私を見て黄色い歓声をあげ道を開ける。腰元まで伸びたプラチナの髪を(なび)かせながら私はそこを周囲に軽く会釈をしながら通りすぎて行くのだが、何故ただの朝の登校でこんなに疲れなければいけないのでしょうか!

 はぁ…そんなキラキラした憧れの目で見ないで下さいよ…てか貴方達先輩でしょうに。あまり目立つのは得意じゃないので居心地悪いことこの上ないが、それを私はなんとか堪えていたのだが、もう慣れてきてしまった。

 

 私の名はレティシア・フルーリエ。14歳の魔導師である。成績優秀、容姿端麗、そして魔法戦闘の実力もある文武両道の天才だと周りは言うが、私は最初からこんなにちやほやされていた訳ではない。

 まぁ、最初から何でも出来た訳ではないが、成績はけっこう良く、戦闘もそこそこ出来る。そして私は雰囲気的に近寄りがたいらしく、何時も孤高?のぼっちになりかけて……いや、これは忘れましょう、別の話ですね。

 自分は天才とは言えなくとも中々出来る部類だと思っていた。でも私の見ていた世界がどれだけ狭かったのかを知ったのはつい最近の事だ。

 私はある日そのきっかけに出会ったのでした。なんともやる気の無いのにやるときはやる不思議な雰囲気の赤髪の先輩に。今私のずっと前を行く、私より()()()()()の、私の自慢の先輩に。

 

 

 ▼

 

 

 

「ここがシエル魔導学園…思ってたよりデカいな」

 

 

 俺の名は霧羽 紅蓮(きりばね ぐれん)。一応16歳の魔導師なのだが、今回は仕事としてこの学園に来ていた。

魔法で出来る事、やれる仕事は星のようにあるが、俺の普段の仕事は外の方に出て魔物と呼ばれる人間生活を脅かす異形のもの達と戦うこと。

 そんな俺がどうしてこんな場所に居るかと言うと、顔見知りのここの学園長に、この学園に転入しないかという誘いに乗ったからだった。

 

 

 それは約一週間前の事。

 

 

「ハァー…何か良い仕事無いかなー」

 

 

 そう言う俺の周りには蛇や骸骨、竜や甲冑、猛獣怪異の類いである者達の骸と呼べるかも怪しい残骸が幾つも幾つもそれこそ、そこらじゅうに転がっていた。

 俺は趣味で自作した愛用の剣に付いた血を払うと腰に提げた鞘に仕舞う。

 

 ここ最近の俺の住んでいる街付近ではとても平和な時間が流れており、人々に危害を加えるような魔物も居ない為にこれといったクエストも出ていなかった。つまり収入源が無いのだ。なのでこうして少し遠出して憂さ晴らしも兼ねてダンジョンを攻略していた。ただの八つ当たりの様だが、魔物の素材は何かと重宝するので町で売ればそれなりの収入となる。そんな訳でダンジョンに入り、来る魔物を片端から倒し積み上げていた。

 

 

「これを全て換金すればまぁしばらくは…ん?着信?誰からだ?」

 

 

視界の端に現れた着信を示すマークに気付き、そこをタップする。すると、眼前の画面に腐れ縁の見た目幼女がヒラヒラと手を振っているのが写った。

 

「ひさしぶりー元気してる?」

「ルドビアか…何の用事だ」

「何で私を目にした途端にそんな目をするのかな…」

 

 

 目の前の画面で不満そうな顔で椅子に座りクルクル回っている彼女は、ルドビア・サルサスと言う(本当かは不明)。元は名のある魔女だったらしいが、今は前線から引退し、後継の魔導師を育てるための魔導学校の経営をしている。

 後、こいつは見た目8歳位の幼女だが中身は確か60とかじゃなかったか。まぁ所謂ロリバ「それ以上は許さないよ?」……大変目麗しい美幼女です。

 

 

「俺に連絡するなんて珍しいな。何かあったか?」

「依頼をしたい」

「いきなりだな…で、それをやって俺にメリットは?どーせまたろくでもないことになる気がするんだが」

 

 

 この間も森林の中でひたすら小型の鳥形の魔物を狩続けながら10羽に一枚位の確率である羽根を集めるとか言う、気の滅入るクエストに連れてこられたばかりだった。

 あんなのは御免なので警戒しながら訝しげな目でそう聞くと彼女はやれやれといった様子で大袈裟に首を振った。

 

 

「全く君は…その面倒な事を避けたがるの変わらないねぇ。メリットは……ほら、うちって公都の近くだからさ、物流も良ければ情報も流れてくる。クエストが良く集まるから稼げるし、住む場所もこちらが保証する。君は最近金欠らしいじゃないか」

「どっからその情報仕入れんだよ…」

「私と君の仲じゃないか!で、どーする?」

「そんな仲になった覚えはないんだが…何を企んでんだ?」

「ちょっと面白い子を見つけてね。その育成にと。君にぴったりというか、君に頼むのが適任というかさ」

 

 

 聞くと、ルドビアが経営する学園には絶対ではないが先輩の生徒が後輩を育成する制度があるらしい。何でも指揮官の育成の一環だとか。それを俺に頼みたいらしい。

 

 

「育成……何で先生とかに頼まないんだ?」

「それがさぁ…君と同じような()()を持っていてね。宝の持ち腐れにする訳にいかないだろう?でも私の学園にはそれを持ち教えられる人物は居なくてね」

「能力って、どれのことだよ…」

「ほらほら」

 

 

 そう言ってルドビアは頭のところをコツコツと指差す。そこを示されて自分が教えられるものと照らし合わせて思い浮かぶのは…普通の人間に発現するとなると珍しいな。使い方を間違えれば一発で人生終わる代物でもある所が厄介ではあるのだが。

 

 それぐらいなら別に良いか。仕事も最近始末書の数が少し減ったし。…いや、本来これでも多いんだろうなぁ。問題児が多過ぎやしないかうちの部隊だけ。

…よし、逃げよう。うん。

 

 

「で、どうする?」

「よし、やろう。学園生になって羽を伸ばすのも良いかもしれないな。あいつの所在も探さなきゃいけないし」

「あいつ、ねぇ?今だ見つからないというのに…本当に生きているのかい?」

「当たり前だ。あいつはきっと何処かに居る。て言うかあんなので死ぬタマかよ」

「それには同感なんだが…数年前の大規模戦闘。敵陣に突っ込んだ彼女は遺品どころか一切の痕跡無し…まるで神隠しにでも会っているようだよ」

 

 

 あの時の事は忘れない。あの場に居た俺も、月夜達も想いは皆同じだろう…っと話が逸れたな。

 

 

「で、何時行けば良い?」

「まずは実力検査を三日後だな、クラス分けの為にね。その一週間後にめでたくうちの生徒だ」

 

 

 

 

 

 なんて事があって一週間とちょっと。これで自分も晴れて学園生な訳だ。こういう学校というものを経験したことがないので、ワクワクしながら学園に来た。

目の前に建つ学園は、一言で言うと、

 

 

「まるで城だな」

 

 

 広大な土地にとても大きな校舎。青と白を基調とした西洋のゴシック様式の様な造りになっており、その中に訓練場や図書室、教室等、色々なものがある他、広大な庭なんかもあるらしい。これは早いとこ場所を覚えないと迷うな。

 つーかこの城の資金はどこからどれだけ出たんだか。あまり考えるのは止めておこう。

 

 

「?」

 

 

 ───る?

 

 

 ……気のせいか。

 

 

霧羽 紅蓮(きりばねぐれん)様ですね?」

 

 敷地内に入るとそこには一人のメイドが居た。長く伸びた青みがかったストレートの黒髪、その動きを見ると、一つ一つの所作がとても綺麗だ。この学園のメイドなのだろうが、雇ってるのだろうか?もう長年やってきたベテランの風格を持ちながら、見た目は20才もいかないぐらいなのだから驚きだ。

 

 

「私はこの学園で霧羽様のお世話役を仰せつかっております紫乃梅 生芽(しのうめ うめ)と申します。どうぞお好きにお呼びください。何かお困りの事がございましたら何なりと」

「こ、これはこれはご丁寧に…」

 

 

 そんなぎこちない挨拶を交わして時間をみると、まだ約束まで時間があったので紫乃梅さんの後ろを着いていきながら学園の中を紹介しながら移動することにした。

入るとクリームがかった内観で落ち着きを感じる。設計監修はルドビアがやったと聞いているが、あいつにこんな才能があったとは思わなかった。

 

暫く歩いていると一つの扉に目が行った。なんて事はない普通の扉のはずだが、何故か鎖と南京錠、そして目には見えないが結界が張られていた。何故だろうと思ったが、確かにその向こうに……何か居るような気もする。

 

 

「どうかなされましたか?」

「いや、少し気になって。ここは?」

「危険なので近寄らないようにと学園長が魔法で鍵をかけているので誰も詳細を知らないのです」

「そうか」

 

 

 そう言われると大変気になることこの上ないが、君子危うきに近づくべからず。気にしないでおこう。というか、あいつも何で建てた時に処理しないんだよ…

それから、図書室や食堂、訓練場を回り説明を受けたが…一言感想を言うなら、凄すぎる、ここ。

 

 そんな感想と共にどれだけの金と労力で建ったのかと思い顔をひきつらせてしまった。それから暫く歩き、一つの扉にの前で止まった。紫乃梅さんによれば、どうやらここが学園長室のようだ。

 外で待つという生芽さんにお礼を言い、ノックをすると、入れーっと間延びした返事が返ってきたので中へ入ると、見慣れたチビッ子が不機嫌そうに机に頬杖を付きながら奥の椅子に座っていた。

 

 

「今心の中でチビッ子って思っただろ」

「さらっと心を読むな……で、何で不機嫌なんだよ」

「何だこの検査結果は!全部DかCじゃないか!」

「いや、目立つのは不味いから、こう、抑え気味にと」

「面倒だっただけだろ!」

「うっさい」

 

 

事実を言えば、確かに手を抜いた。出来ればあの面倒な奴らに所在をバラしたくなく、入学試験の試合で教官に録に魔法使わず、負けることにした。そこまで大した技を使わなかったお陰で魔法適正も戦闘も平均やや下ということで平均やや下のクラスになってしまった。

 

 この学園は生徒のクラスを見て、適正なクエストを受けられるように、S、A、B、C、D、Eの6段階でクラスを分ける。手抜きをしたことを何故こんなに怒るのだろうかと疑問に思っていたら、その事を読んだのか、頭を抱えぶつぶつ言い出した。

 

 

「お前、彼女にはSかAランクの先輩が指導してくれると説明してしまったのだぞ!?」

「いや知らんよそんな事はお前が勝手に言った事だろ。俺にそんな能力はないから」

「一丁前の指揮官がよく言うよ」

 

 

 そんな彼女の呆れた目線を受け止めていると後ろの扉が控えめにノックされ、一人の少女が入ってきた。

 

 

「失礼します。あの、私の指導役と言う方は…」

「おぉ来たか。紅蓮、彼女がお前が指導するレティシアだ」

 

 

 腰まで伸びたプラチナの髪。整っているがまだあどけなさの残る顔。そして彼女の纏う凛とした雰囲気。二つ下と聞いていたとはいえ、恐縮してしまうそんな雰囲気を纏っていた。

 

 

「あぁ俺がレティシアさんの指導役?になる霧羽 紅蓮だ。転入ということでここに来た」

「私はレティシア・フルーリエと言います。よろしくお願いします。つかぬことをお伺いしますがランクはA~Sとお聞きしたのですが本当ですか?そんな即戦力の方中々いらっしゃらない…」

「Cです」

「へ?」

「はぁー…」

「今私はAランクを目指して日々勉学に勤しんでいるのです。学園長、ふざけているのですか?」

「ほら言わんこっちゃない。私悪くないしぃー?」

「え?なに、俺が悪いの?」

 

 

 彼女から殺気を感じる俺とルドビア。俺の背中をつーっと冷や汗が流れた。




…現実見よう。


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2話

近所の桜が散り始めました。叢雨です。
中々戦闘シーンと話の切り方が苦手です。

後、早速お気に入りにしていただいた方々有難う御座います!

暖かい目で気長に見てくださると嬉しいです。


では第2話、どーぞ!


 ただ少しだけ(かなり)実力検査を雑にやっただけだってのに。実の所を言うと、結構ギリギリだったらしいんだよねあれ。って誰に話してるんだ俺は。

 

 

「面白くなってきたねぇ」

「どこがだコノヤロウ」

 

 

 ルドビアが観戦席でニヤニヤしながら煽るような顔でこちらを見下ろしている。マジで殴りたい衝動に駆られるが自業自得なので抑さえよう。

 

 今、俺はレティシアとの一撃決着の決闘を申し込まれて、彼女と模擬戦用の武器を持って向かい合っていた。いやー良く見るテンプレ通りだなー……要らんわこんなテンプレ、面倒くさい。もう帰りたい。

 

 何故にこんなことになったんだか────

 

 

 ▼

 

 

「これでもこいつはそれなりに力のある魔導師なんだよ?Cランクだが」

「そんな事言われても納得できませんっ!」

 

 

 普通はそうだろうなぁ。至極真っ当な意見である。

 他人事のようだが全て俺が悪いんだよね、良く考えるまでもなく。

 

 

「後、困ることがもう一つあるんだなぁ」

 

 

 ルドビアが真面目な顔になってそう言った。

 

 

「困ること?」

「まず、戦力として呼んだお前を前線に出せん。称号を付けてもな」

「マジかよ…戦力?」

 

 

 ルドビアによると、実績があったりする優秀な生徒には称号と言うものが与えられ、簡単に言えば、高難易度クエストが優先的に受けられる。そして俺を戦力として迎えたい身としては上のクエストを受けて貰いたいわけだが、その称号とやらを付けても中級ぐらいにしか出せないらしい。……十分じゃないんですかね。

 

 

「聞いてないんだけど。戦力とか」

「使えるものは使う主義だ」

「大体なぁ…俺はなにも悪くないし、反省もしていない…訳じゃないから二人してそんな冷たい目をしないで!」

「でもまぁ学園長権限で何とかするか」

「おい」

 

 

 おい、今生徒の目の前で職権乱用しやがったぞこいつ。ここにレティシア居るの忘れてない?

 

 

「そんな事許される筈無いでしょう!第一そんな実力がこの人に有るのですか?」

「お主も固いのぅ。ダメだぞー若いのがそんなんじゃー」

「いや、一番まともな意見じゃないか?」

「これでも中等部の最有望株だからねぇ…ふむ、どうしたものか」

 

 

 すると突然ルドビアが考える様な姿勢を取り、すぐにハッと何か思い付いた様な表情を浮かべた。

 

 

「紅蓮がレティシアと決闘して勝てば良いんじゃない?」

「「へ?」」

「これで勝てばレティシアも紅蓮を認めるだろう?しかも、レティシアに勝ったっていうのをだしにして話は通せそうなものだし。つまりは一石二鳥!」

「え、なに?そんなこと出来るの?」

「あぁ、まあレティシアが認めたんだ凄い奴なんじゃね?B以上は実力有るんじゃね?レベルにはなるだろう」

「あくまでも私に勝てればですが」

 

 

 なにソレ聞いてない。そんな人に勝てる気しない。今回ばかりはそんな事も言っていられないのだが。

 

 

「やるしかないか…はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 と言う訳である。全体的に自業自得だな。今思うと俺まだ入学の手続きとか殆ど何もしてないんだよなぁ……俺はこの学園に何しに来たんだ本当に。

 

 

「準備は良いですか」

「何時でもどーぞー」

 

 

 レティシアは腰からシャランと細剣を抜く。細剣は基本的にはスピードと普通の剣よりリーチが若干長いのが特徴の武器。対して俺はただの片手直剣である。使い勝手は良いが、これといった派手さは無い基本的な武器。まぁ何だって使えるから武器なんて何でも良いんだが。

 

 まぁ要するに実力差を見せつければ良いんだろ?そう思い俺がニヤリと嗤うと、それを見たレティシアが俺を変なものを見るような怪訝な目で見だした。

 

 うん、凄ーく傷つくなそれ。

 

 何でやる前からダメージ受けてんだ俺は。

 無機質な白い部屋の練習場。今日は学業は休みらしいので観客はルドビア一人。

 静寂だった部屋の中心にカウントダウンの数字が表れる。

 

 

 『3…2…1、始め!』

 

 

 そんな無機質な号令と共に俺は腰の剣を抜く。さて、少しぐらい頑張んないとなぁ。

 レティシアは素早い動きで右から旋回しながら電撃弾を打ち出す。その数20個前後。

 

 

 一見逃げ場が無い様だが、大概相手を狙う場合は相手の胸や鳩尾、後は顔の辺りを狙う。という事は足下の弾幕の密度は薄いという事。レティシアも例に違わない様で胴体を狙った弾が多い。

 そして電撃弾を選んだところを見ると、魔法の特性も一応の理解はしているようだ。

 

 俺は体を低くして走ることで弾幕を掻い潜り、レティシアとの距離を詰める。レティシアは直ぐ様バックステップで距離を取るが、加速のついた俺に簡単に距離を詰められる。

 俺は彼女の懐に入り、体のバネを使い跳ね上がる様に切り上げる。

 しかし俺が切り上げる瞬間、彼女はまるで俺がどう動くか分かっていたかの様に、少なくとも俺が動くと同時に右にサイドステップで回避する。

 

 ふむ…やはりか。面白いものを持ってるな。

 

 今、左手に剣を持っている俺は、体を無理矢理にでも捻らないと彼女に剣を振るえないので彼女から見れば隙しかない状態。

 

 

 当然レティシアは綺麗な基本の型で突きを放つ。だが、突きが基本の形と言うことは逆にどこに攻撃が来るか分かりやすい。

 

 

 俺は無理矢理体を捻りそれを避け、バックステップで距離を取る。彼女の方も迎撃を警戒してか剣を構えたまま俺を見据える。

 

 

「次は決めます」

「どうだか」

 

 

 さて、どうするか。

 

 互いに様子を窺っていたが、それも一瞬で、俺が最初に動いた。

 レティシアは俺の足元に氷塊を発生させていく。俺はそれを紙一重でかわしていく。が、内心でとても焦った。魔法の遠隔発動に多属性操作、形状のバリエーションまであるなんて。既に彼女の実力は高等部レベルである。

 

 俺はその勢いのまま彼女と距離を詰め、右手に火球を作りそれを彼女の目の前に飛ばす。彼女はそれをちらっと見て避ける。

 俺は下から全身のバネを使い切り上げ。レティシアは落ち着いてそれを弾こうとするが────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が体を低くしたままであることを視認したときにはもう遅かった。

 

「っ!」

「終わりだ」

 

 

 彼女が気付いた時にはもう、俺は彼女に剣を一閃しており、無機質な音声が俺が勝利したことを伝えていた。

 

 

 

 

 

 

『Settlement!Winner、霧羽 紅蓮』

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「負け…た…?」

 

 

 私は負けた。私は彼の挙動を見切ったと思った。過信したその一瞬、その一瞬で勝負が決まった。

 なぜだか負けたという感じより、戦いを、本当の戦いというものを知った気がした。

 

 霧羽 紅蓮と名乗る彼が行ったのは初等魔術一つと走って剣を一閃させたぐらい。私じゃなくても誰だって出来る事しかやっていないが、他ではこうも簡単には行かないだろう。簡単な様に見えるが、タイミング一つ見ても戦いなれているのが分かる。

 

 Cランクと聞いたが、戦っていて全然底が見えなかった。一体彼は何者なのか気になったと同時に、彼に教わればAランク、そして別次元と言われるSランクのその先に行ける。そんな気がした。

 自分でも自分が何を言ってるか分からないし、ただの直感で動くなど今まで無かった。でもやらない後悔だけはしたくないのだ。

 

 

「大丈夫か?」

「え、あ、はい」

「じゃあ俺はまだ色々やることがあるから」

 

 

  そう言って行こうとする彼の裾を掴む。自分でもこの行動に驚いたが動揺をなるべく隠して話しかけた。

 

 

「あ、あの!」

「ん?」

「わ、わひゃ、わひゃしの」

 

 

  全然隠れて無かった…凄ーく恥ずかしい。自分の顔が赤くなってくのが分かる。

 

 

「とりあえず深呼吸」

「すーーーはーーー」

「で、どうしたんだ?」

「私は、先輩に教われば、強くなれますか?」

「強くねぇ…てか何で俺?」

「いや、私の事を指導していただける先輩が来たという事で今日ここに来たのですが……」

「指導…はっ!」

 

 

  絶対に忘れてたでしょ。この先輩…じーっとジト目を向けると霧羽先輩は明らかに目をそらして頬を掻いた。

 

 

「うーん。ま、教えられる俺の技術を教えようとは思っているが……」

「宜しくお願いします!」

「あ、あぁ。これから宜しく」

「それで……」

「納得できないだの言ってたのは良いのか?」

「うぐ…別に良いんです!細かいことは!」

 

 

  自分で言ったことに凄く後悔する。何故に過去の自分に自分の首を絞められるのか。

  いや、大丈夫なはず!取り合えず少しずつ信頼関係を築いていこう。あまり人と関わらないから分からないけど、最初はとりあえず親睦を深めるためにどうしたら良いのか……そうだ!

 

 

「とりあえず、この後学園とその周辺の案内をしましょうか?ほら、親睦を深めるのも兼ねて」

「おう、ありがとな。助かるよ」

「ところで先輩、私はお腹が空きました」

「初めからそれが目的だっただろ…」

 

 

  ワイワイキャイキャイ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が居ること忘れてない?ルドビアちゃんの事忘れてなーい?!……ま、面白いものが見れたし良いけどさ」




睡魔に従いたい。
なるべく速く投稿します。多分、きっと、恐らく、メイビー……頑張ります。

因みに。

Eランク:ほぼ一般人
Dランク:初心者
Cランク:平均レベル
Bランク:ほぼ一人前。生業ぐらいには出来る。
Aランク:部隊長とかプロのレベル
Sランク:国家戦力。

これより上も有るとか無いとか……


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3話

遅くなりました。データがフライアウェイしました。以上!

どーしよ。

そして話が進まねぇ。

どーしよ。


 あの後レティシアと学園そして街の案内をしてもらった俺は午後の六時頃に学園に戻りレティシアを女子寮に送り、自身の寮……というか一軒家に帰って来た。

 

 これはルドビアからのプレゼントらしいが、いや、幾ら学園の中でも結構外れの辺境地に立ってると言っても目立つだろこれ……。

 

 

「ふー…ただいまーって」

 

 

 言っても誰も居ないんだった。なんて自嘲じみた事を考えていると、奥から人の気配が。

 

 

「おかえりなさいませ」

「何で居るの!?」

 

 

 済ました顔でさも当然のように玄関で俺を出迎えてくれた紫乃梅さん。

 いきなりすぎて怖い、怖いわー。…いやいやいや!

 

 

「ルドビア様から、メイドとして貴方を補佐しろと」

「は、はぁ……そう言えばそうだったな」

 

 

 そんなことすっかり忘れていたが俺の補佐役だったな。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 翌日。朝の稽古という事で俺の寮の庭でレティシアが来るのを待っている。

 俺から出向こうかと言うと教わるのだから此方から行くものだと。律儀なやつだ。

 

 昨日の街探索は楽しかったが、驚くほど何もなかったので割愛させていただく。

 飯食って改めて簡単な自己紹介して買い物して終わり。いや、昨日初めて会ったにしては仲良くなった方だとと思うけどさ、流石にあそこまで俺にコミュニケーション能力が無いと思わなかった。

 まぁレティシアが良く話しかけてくれる子で良かった。あの時間をずっと互いに無言だと思うと…ヤバイ何か悲しくなってきた。俺のコミュニケーション力の無さに。

 最近会った奴となんて殆ど仕事などの事務的な話しかしてなかったので、こういうプライベートの時に何話せば良いのか分からないのです。

 

 とそんな馬鹿なことを考えていると向こうから小走りでレティシアが駆けてきた。

 

 

「おはようございます先輩」

「ん。おはよー」

「ところで後ろのメイドの方は?」

 

 

 そう聞かれて後ろを向くといつの間にか生芽さんの姿が。

 ……何時から居たの。

 

 

「今日から稽古と聞きまして何か手助け出来ることは無いかと」

「お、おう…気持ちはありがたいが暫くは無いと思う。こちらこの学園での俺のメイドの生芽さんだ」

「紫乃梅 生芽と申します。レティシア様ですね?御話しは紅蓮様とルドビア様に聞いております」

「こ、こちらこそ」

 

 

 さて、自己紹介も済んだことだし早速戦い方を…と言いたいところだが

 

 

「始める前に一つレティシアに聞きたいことがある」

「な、何でしょう」

「何故強くなりたがる?その理由は何だ?」

「そ、それは……」

「いや、話したくないなら良いんだが。ほら、育てた教え子が魔王にーなんて洒落にならんだろ?」

 

 

 本当にそれだけは勘弁してほしい。面倒事は嫌だ。

 と言うか一人居るんだよなぁ…何か凄い俺に執着して世界を滅ぼしかねないような魔王が。まぁ暫く出逢わないことを願おう。あ、これ俺が目立ちたくない理由の一つな。目立つとばれる。世界の裏側だろうと追ってくる。万物の法則を愛の力で軽々と乗り越えようとするのは止めましょう。

 

 

「姉を探す為です。それと、あの時何も出来なかった自分が……嫌だからですかね」

「あの時?」

「私の故郷は戦禍に焼かれました。私はアルテ皇国と言う所の貴族の生まれでした…と言っても5~6歳の頃なのでうっすらと覚えている程度ですが」

 

 

 アルテ皇国は今は9~10年ほど前に独立国家を貫く貴族たちとそれを良しとしないものたちとの内戦により今は共和国になったんだったか。隣国やら何やらでややこしい話だったはずだが。

 そういや俺もそんなのに昔駆り出されたっけ。

 

 

「その戦争で私達、一部貴族は市民側に付いていました。今の国のあり方に不満や疑問を持っていた貴族も居たのです。その時に魔導師として活躍していた姉は前線に駆り出されたまま消息不明になりました。……母と父は捕まり処刑。仲良くしていた孤児院の子達も逃げ遅れた子達は無惨に殺されました」

 

 

 確か国民の半分以上が犠牲、しかも魔族まで関わってきたから戦闘の凄まじさは相当なものだった。建物は瓦礫の山に、肉と血の焼ける匂い。国だったものはただの地獄絵図と一瞬で成り果てた。俺はあそこで特殊部隊の暗殺の仕事が主だったが、そんなに忍ぶ暇も場所も無かったな。そのぐらい酷かったと言えよう。

 

 

「私も魔物に殺されそうになりましたが、そんな時助けてくれた人が居まして」

 

 

 凄いテンプレだな。つっても俺もその時誰か助けた覚えがあるな。まぁ、まだまだ良い奴も居るってことだ。……でも俺にとっては黒歴史なんだよなぁ。何故黒歴史かってそれは……

 

 

「ありがちかもしれないですけど、颯爽と現れた私とそんなに変わらない歳のその少年は私にこう言いました」

 

 

『生きろ。お前に帰る場所があるのなら。もしどうしようもなくなった時は…何とかしてやる。だから今は走れ』

 

 

 あぁぁぁぁぁぁ!俺の黒歴史ぃ……って、あの時の奴ってレティシアかよ!

 大体長いんだよ台詞が。つーか何で一字一句覚えてんのこの子…そして何でそんなキラキラしてんの。何かこうさ、改めて言われると辛い。何が辛いって俺がその本人ってこととその台詞が本人無自覚の中二病台詞なとこが尚更辛い。それとこのシチュエーションをアドバイスしてきたあいつを殴りたい。

 

 

「先輩どうしたんですか?」

「あ、あぁ…何でもない。で、そいつが憧れなのか?」

「えぇ。いつかお礼が言えたらとも思ってますし。同じ位の歳なのにあんなに強く生きていて、あの時の彼の戦いはあの様な状況の中でとても美しく感じましたし、とてもかっこ良かったんです。今でも鮮明に覚えています。私もああなれたらと思います」

「だから強くなりたいと」

「はいっ」

 

 

 その目はとても綺麗な純粋な目をしていて……俺が本人ということは墓の前まで持っていって木っ端微塵にしようと思いました、まる。

 

 ……切り替えよう。うん。

 

 

「まぁそこまでしっかりとした意志が有るなら大丈夫そうだ。目標を失うほど恐ろしいことは無いからな。じゃあ一ヶ月後の昇格戦に向けて、レティシアには取り敢えず戦術を覚えて貰おうと思う」

「戦術、ですか」

「幾ら知識があって多彩なことが出来たって使い道が解らなきゃ宝の持ち腐れだからな」

 

 

 実際レティシアは使える魔術の幅や武器などの心得はあるものの、圧倒的に経験や応用力に欠けるのだ。そこを伸ばせば……或いは“化ける”かも知れん。

 

 

「さて、じゃあ最初は組み手でもするか。実力をもう一度測りたい。…後は授業が終わった午後に座学かな。必要な書物はこっちで用意しておこう」

「分かりました」

「じゃ、早速、やっていこう」

 

 俺と彼女はある程度距離を取り互いに構える。と言っても俺は突っ立っているだけだが。レティシアの方は腰を低くし重心を落とした基本の構えをしている。うん、お手本の様だな。

 

 

「じゃあどっからでも掛かってきな」

「はあっ!」

 

 

 強い気迫と共にレティシアから渾身の正拳突きが放たれる。俺はそれをバックステップで軽く避け、直ぐ様踏み込んだと同時に彼女のおでこに人差し指を立てる。うーん…後ちょっと距離が伸ばせれば惜しかったな。

 

 

「白兵戦に置いて、間合いってのが人それぞれある。それを常に意識しないと格上相手じゃ見切られて自分の間合いに持っていかれるから気を付けるんだ」

 

 

 今のはC~Bの下の方のランク位なら牽制、或いは初撃として完璧だが、目指すとこが目指すとこ。つーか俺。取り敢えずAランクでも上の方に行ける位にしなければ。甘えは無用だ。

 

 

「後、先制攻撃をしたいのなら何か相手の気が自分から一瞬でも逸れてなければ駄目だ。その速さなら後はどう攻撃を当てるかだから」

「間合いは意識したつもりですが」

「まぁ目標は目測誤差1ミリ以内だな」

「1ミリ?!」

 

 

 そりゃあ1ミリあれば、当たるか掠るか結構大きいからな。

 

 それから俺はフォームの調整、体重や目線の移動なんかを教えて、シャワーなど学校の準備の時間を考えて少し早めに切り上げることにした。

 ……つーか何かを伝えるのって難しいな。俺も指導の勉強でもしておこうか。

 

 

「取り敢えず時間だから学校行く準備しとけー」

「はっ、はいっ!」

 

 俺の指示と共に学園に行く準備を始めるレティシアを眺めながら俺は部屋に戻ろうと玄関に向かいながら、ふと昔のことを思い出してしまった。

 

 

 

「あいつが俺を教えてた時もこんなかんじだったのかなぁ」

 

 

 

 

 ───るの?

 

 

 

 

 

「?」

「どうしました?先輩?」

「いや、なんでも」

 

 

 また、まただ。思い当たる節が有るとすれば…

 

 

「あれか…」

 

 

 彼の目線は図書館の方向を向いていた。




戦闘シーン難しいです。
次は12日までに投稿して見せる。(白目)


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4話

結局過ぎるというね…スミマセン。

今回少し長くなりました。3000文字ちょい?俺の駄文が?(震え声)

では、どーぞ!


 今朝レティシアと二人で登校した後、職員室で俺のクラスの担任の瀬木 藍那(せぎ あいな)先生に挨拶をした。

 ショートカットの髪で少し大人びており、ちょっと目付きの悪そうな彼女はパッと見10代後半に見えたりするが本人は20代後半らしく、見た目に対しその可愛らしい名前はあまり気に入ってないらしい。現に先程すれ違った生徒にも、

 

 

「藍那ちゃんおっはよー」

「ちゃん付けするな!」

「怒った顔も可愛いー」

「はぁー…」

 

 

 という挨拶をされており、藍那ちゃんとかっ…っと内心笑ってると物凄い殺気を出された。まじで自重しないと殺される気がする。生徒に対する殺気量じゃない。ちょっと身構えちゃったじゃねーか。

 

 

 そんなこんなでいつの間にか教室の前。先生がまず先に教室に入り生徒に挨拶し、先生に呼ばれたところで俺も教室に入った。

 やっべー…何か凄いみられてんだけど…こういう時は人を何だと思うんだっけ?人にしか思えねぇ。詰みじゃん。もういい、腹をくくろう。

 

 

「きっ霧羽 紅蓮です。よろしくお願いします…」

 

 

 もっと何か無いのかみたいな目で担任が見てくる。いや、無理だって。何話すんだよう。俺コミュニケーションの取り方なんて知らないやい。そーだよコミュ症だよ。若干だけどな!ギリセーフ!

 

 

「何か彼に質問有る奴居るかー?」

 

 

 Oh…定番の質問ターイム!

 フォローのつもりなのだろうがこちらとしては何聞かれるか内心ドキドキしてたりする。止めてね?無茶振りとか。

 

 

「はい質問よろしいでしょうか」

「おっ、クラス2位学年5位の優秀さん。発言とは珍しいな」

 

 

 そう言われて立ち上がった一番後ろの窓側の席に座っていた彼女。

 ストレートの青い髪に紫の瞳、まさしくクールビューティを体現したような人であった。つーか初対面なのに凄い睨んでるんですけど。絶対零度の様だよ……

 

 

「あの人誰?何か凄い睨んでんだけど」

「あいつはセテス・ルーミル。容姿端麗、学業優秀、実力はAランク、家のエースさ」

 

 

 さっぱり知らん。本当に何故に睨まれてんだろ?

 

 

「貴方、今朝レティシア・フルーリエと登校していましたね?」

「あ、あぁ…」

「どういった関係で?」

「師弟関係?ほら何かこの学園にそういうの有っただろ?」

 

 

 俺がそう答えるとクラスが少しざわつき、彼女は何だか目に見えるぐらいに膨大な闇オーラと殺気を全開にし、俺に詰め寄った。

 

 

「あの子は私が教えようと思っていたのに……!」

「どうしたんだよこいつ……」

「あぁ、他の事に興味を示さないが一度興味を示すとその者に異常なまでの執着を見せる。ただの変態だ」

「あの、金髪を靡かせたどこか愛らしくもある美しさ、そして健気に努力する姿、見ているこっちはどこかもどかしい気持ちになり保護欲を掻き立てられる、(自称)私の守るべきマイエンジェル!それを…それを!あの私の天使をあなたはぁ! 」

 

 

 何か不穏な……つーか怖い。マジで怖い。その後もブツブツ言ってるんだけど。そして内容が本人しか知り得ないような内容なんだけど?!駄目だ、アカンやつや…何でレティシアの所持してる下着の熱弁してるのこの方は。

 

 

「あの時の背伸びして買っていた紐パンが……ハァハァ…じゃなく!」

「は、はぁ…」

「貴方と!彼女を賭けて勝負です!」

「え?」

「ふむ…面白そうだ。学園長には私から言っておく」

 

 

 もうやだ。帰りたい。おかしいって。何がって全部だよぉ!

 

 

「まぁ取り敢えずこの話は放課後な。お前の席はあの後ろから二番目の右の机の真ん中の席だ。よし、じゃあホームルーム終わり!授業の準備しとけよー」

 

 

 あのーその席ってセテスさんの斜め前なんだけどー?!

 ヤバイ落ち着かないどころじゃねぇ。少しでも気を抜いたらそれは死を意味する…戦場かよ。

 

 

「やー凄い事になったねぇ。僕はソネル・クーラ、多分同じパーティーになるだろうからこれからよろしく!」

 

 

 そう言って話しかけてきたのは俺の後ろの席、セテスさんの隣に座っている茶髪の青年…今何て?

 

 

「ふん、このような男と…不服だわ」

「おい同じパーティーってどういうことだ」

「まぁまぁ…紅蓮だっけ?学外の実技とかクエストとかのパーティーは机2つごとなんだ。俺とセテス。そして君の左隣のユナ、そして右隣の子は今はクエストで居ないから来たら紹介するよ。本当は6人何だけど家だけこんなんでね。ま、この五人で行動するからさ…ほらユナも自己紹介して」

「ん……よろ…しく」

「よろしく…」

 

 

 そう言っててを差し出した彼女はピンクのウェーブがかかったセミロングの髪にマフラーをしており、頭のアホ毛が何とも特徴的な子だった。普通な子居ないん?

 

 

「大丈夫皆これでも強いから」

「そ、そうか。ソネルもよろしく」

「あぁ!はー……他は6人なのに4人だった上にこのメンツ。君が来て助かったっ!」

 

 

 そう言って涙するソネル。何だか不安材料が一気に増えた気がする。

 

 

 

 

 取り敢えず今日一通りの授業を受けたが、正直つまらん。俺がこれまでの暇な時間どれだけの書籍を読み漁ったと思ってんだ。こちとら殆ど暇なんだ。人とそんな関わらないし、自分から行かなければ滅多に用事なんて出来ないし。自分でも言ってて辛いわ。

 

 そう言えば昼の時(生芽さんが弁当を持ってきてくれた時は教室が地味に騒然となった。

 

 

「紅蓮様。忘れ物のお弁当をお持ちしました」

「お、ありがとう」

「彼女さんかい?」

「違うわ、俺のメイドさん」

「「メイドさん?!」」

 

 

 おー仲の良いクラスな事で。

 何か俺のキャラがとんでもないことになってる気がする。クラス内だけに留めて貰おう。

 

紫乃梅さんのお弁当は見た目は普通の弁当箱なんだが、一口食べてみると、これがまた凄かった。

 

玉子焼きは程好い柔らかさとほんのりとした甘さを残し、ご飯の甘味と上手いこと調和している。

鰆の塩焼きはシンプルながら魚の旨味を余すこと無く、弁当なのに皮の香ばしさが残る。そして塩加減も絶妙であり、仄かにハーブの香りもし、ご飯が進む。

 

……これミ○ュランガイド載ってたりしない?星付いてたりしない?

 

 

「凄い…」

「お気に召しませんでしたか?」

「逆です凄いです美味しいです」

「それは良かったです。では、私はこれで」

「じゃ、また」

 

 

そう言って笑顔を残し去っていく紫乃梅さんの絵になることや。

 

 

「胃袋捕まれてるね…」

「本人気づいて無いんだろうなぁ」

『良いなぁ…』

 

 

と渇望する者の目は凄かったらしいが、彼はその事を知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、気付けば放課後。今はレティシアと共にフィールドとなる中庭に向かっていた。

 

 

「セテスはどんな戦い方をする奴か解るか?」

「氷を使った遠距離攻撃と双剣を使った高速連撃ですね」

「ふむ…俺と似たようなプレイスタイルだな」

 

 

 ただひとつ違うのは俺が中距離の火球、向こうが遠距離、近距離対応の氷というとこか。一見火の方が強そうだが、氷は火が燃える要因の熱を取る。向こうの威力が未知数な分、注意するか。

 

 

「ところで怒らないんだな」

「何がです?」

「勝手にこんなことに巻き込んだことに」

「いえいえ。私の為に戦ってくださるなんて私は感激です」

 

 

 そう言って彼女は何だか目をキラキラさせだした。何故に?

 

 

「ど、どうした」

「しかもあの学園の序列5位と先輩が戦うんです。それはもう参考になる戦いになると思うので」

「お、おう…」

 

 

 何でこんなにハードル上がってるのん?つーか何でここの人達はこんな少し残念なの?戦闘狂ですか。本当に。

 

 

 中庭に着くと、そこにはセテスとルドビアが居た。

 

 

「逃げずに来たようね」

「こんな事で一々逃げられるか」

「全く……何故君はこう面倒事を起こすんだ…」

「いや、今回俺悪くないからね?!」

 

 

 ルドビアが呆れた顔をする中、セテスの目はレティシアをロックオンしていた。マジで見せられねぇ……よだれ拭けよだれを。

 

 

「レティシアさん少し待っててくださいね♪そして私のマイエンジェルになるのです」

「お断りします。と言うか前もお断りしたはずです」

「一回の失敗じゃめげないわよ?」

 

 

 そう言いセテスは闘志を剥き出しにする。あぁ…何かアカンわ。

 

 

 ルドビアとレティシアが外に出た後、中庭を防護壁が覆う。周りの校舎からは観戦する生徒達がちらほらと。俺の事を見越した情報規制はされるようだ。はぁ……ても本当に逃げられねぇなこれ。

 

 

「さあ、始めましょう?」

「せっかちだな」

「この時間も惜しいのよ」

「レティシアのためか?」

「他でもない()()と戦うからよ」

 

 

 ……他でもない?何だか買い被られているようだ。これは面倒になりそうだが、俺だって簡単に負ける気はしない。だが向こうの実力が未知数なのも事実。

 

 

「さて、どうなるかね」

「賭けでもする?」

「どっちにって事か?」

「まぁ、それは」

「勿論」

「「自分に賭ける(ミスモ・アクエスタ)!!!」」




何かこう…大丈夫だよね?


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5話

残酷な描写と、R-15のタグを追加しました。まぁ保険程度なのでそんな入れないと思います。


後、いつの間にかUA500越えてました。有難うございます!!

では、どーぞ!


 一人の少女が柱の影から下の中庭で行われている戦いを見ている。

 彼女の前には空間ウィンドウが一つ漂っており、画面の向こうには黒髪の青年が椅子に座りながら溜め息をついていた。

 

 

「彼は一体何しにそっちに行ったんだ…」

「楽しい事……好きだから」

「はぁー…全く、自由奔放と言うかなんと言うか。…どうせこのCランクも面倒だからとかそんな所だろう?」

 

 

 彼は再度溜め息をつき、冬でもないのにのマフラーをした彼女の方にウィンドウ越しに向き直った。

 

 

「取り敢えず近々そっちに行くから。後、君が僕と関わりがあると悟られないよーに」

「ん。解った……月夜は…何しに来るの?」

「まぁ色々様子見にね?じゃあユナ、後はよろしく」

 

 

 そう言って彼と彼女はウィンドウの画面を閉じた。彼の考えていることは彼女には良く分からない。

 

 

「でも、何か……大変そう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永久に限りなく凍り続け(フリーズ・エヴァーラスティング)!!」

 

「ちっ…!」

 

 

 俺の前に迫り来る氷塊や氷の刃を紙一重で潜り抜けていく。

 どちらも、着弾するとそこから冷気が出て地面が暫く凍っている。

 つまり剣などで受けるとそこが凍るということで、先程剣で受けると一瞬だが表面が凍った。焔で何となったから良かったが、何ともやりにくい攻撃だ。流石はAランクといった所か。

 

 

 セテスが扱うのは両刃の片手直剣の二刀流。刃から冷気が流れているところを見ると、剣自体に何かしら魔力が掛かるなり精霊や神が宿るなりしているのだろう。

 対して俺が持っているのは『焔剣:カグツチ』火と土の神の力……本人が宿った剣ってかほぼ本人である。

 

 主には………はいはーい!自分の事ぐらい自分で紹介するよー!

 私は紅蓮と契約してる神様?みたいなもので、主に火を扱う事のできる優秀な神様だよっ

『いや、土を扱うのが苦手な時点で…』

 きーちゃんちょーっと黙ってよっか?(暗黒微笑)

『…あっ、はい』

 あっ、きーちゃんってのは霧羽だからきーちゃん!可愛いでしょ?(本人非公認)

 

 まぁそれは置いといて、きーちゃんとは契約(コントラクト)しているからこうして頭の中で念話できるの。そしてもう一度言うけどこの剣はほぼ私。その剣が一瞬とはいえ凍るんだから相当な魔力の込められた魔法だねぇ。私関心しました。っと説明はこのくらいにしてきーちゃんにお返しするよ♪

 

 

 

 ってことでお返しされました。いきなり俺の頭の中で喋るなよ……

 まぁそんなのがマシンガンのように撃ち出せる訳でもなく、向こうも攻撃の手を止める時がある。あれだけの攻撃だし流石にそんなに維持できないか。

 

 隙を見て魔力で精製した焔の短剣を三つ投げ放った。一つは直線の牽制、もう二つは追尾。

 最初は驚いたようだが、一つ目を軽々と避け、残り二つの短剣も剣で逸らすように弾いた。当たった瞬間少し氷が溶けたし、真っ向から受けないところを見ると多少は相手の冷気を打ち消せるようだ。……よし、粗方十分な情報は集まったな。

 

 

「さっきから逃げてばかりですが、あの威勢は何処へ?」

「じゃあお望み通り」

 

 

 ここからは俺のワンサイドゲームってね。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃フィールドの外では満足気な顔のルドビアと不安な様子のレティシアが戦いを見守っていた。

 

 

「大丈夫でしょうか…」

「自分の師であろう?信じてやれ」

「先輩が強いのは知っています……ですが相手は学園5位、そしてこの学院で次期Sランクとも言われる人物ですよ?この状況だけ見ると…とてもじゃありませんが」

 

 

 この学院には中等部と高等部があり、中等部に3人、高等部に5人のSランク所有者がいる。セテスは9人のSランク有力候補の一人なのだ。流石にそれを相手に紅蓮は防戦一方に見えてしまう。

 だが、ルドビアはそれを見て半ば呆れたような、それでいて信頼しきった顔をしていた。

 

 

「大丈夫だよ。全く…早く片を着ければ良いものを」

「何故そう言い切れるのです?」

 

 

 レティシアがそう聞くと、ルドビアが不敵な笑みを浮かべながらこちらを向いた。

 

 

「彼は別に運動神経も、魔法の威力も、魔力の多さも()()Bランク位と言っても差し支えない。では問題だ。この戦いで今まで彼は何をしていたと思う?ただ逃げ回ってたと本当に思うか?」

 

 

 他に何が…とそレティシアは考える。

先輩は先程から目立った攻撃をしていない。手の内を隠すため?相手の攻撃を避けているが、不思議と余裕が有るようにも見える。

今度は自分が戦った時の事を考える……攻撃の隙は少しだがあった。そこで何故攻めに転じなかったのか。

先輩はセテス先輩の攻撃スタイルを知らなかった。

攻撃も少しはするが、避けられるかギリギリの所を攻めて避けられている。対応範囲?

もって三秒。彼女は解を出した。

 

 

「相手の情報を集めていた?」

「ま、そういうことだ。半分は遊んでた様だが」

 

 

「彼の強さはね、その状況判断能力や処理能力に有るのさ」

 

 

そう言って彼女は結果も見ずに奥に引っ込んで行ってしまった。

 最後まで見ていかないんですか。と言う前に消えてしまったルドビアを不思議に思いながらレティシアが目線を戻すと、形勢はあっという間に逆転していた。多分、分かりきっているから別に見なくても良いのだろう。

 

 

 彼の戦いはまるで、お前の考えは全て筒抜けだと言わんばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中庭は荒れ果てていた。辺りには所々地面が凍った所や焦げ跡が見受けられる。

 そこに二人、乱れた呼吸を整え前方を睨むセテス。そしてその前方に居るのは、呼吸も乱れずスタート時と対して変わらない様子で紅蓮が立っていた。

 

 

 

「何故…!」

「何故、自分の攻撃がこうも避けられるのか。か?種なんて無いよ」

 

 

 そう言うと紅蓮はニヤリと嗤いセテスに一歩ずつ歩みを進めていく。その圧力にセテスはジリジリとそれに釣られて後退する。

 

 

「分かるのさ、お前が何をしようとしているか」

 

 

 セテスの背中が何かにぶつかる。気が付くと防護壁の角まで後退させられていた。

 

 

「目線、重心の位置、剣などの構え、俺とお前の位置、上げれば幾らでもある」

「そんなの…っ」

「化け物じみてるとでも?」

 

 

 そう言うと紅蓮はやれやれといった様子でわざとらしく肩を竦めた。

 

 

「何も解ってないようだな?どれもこれも自分で招いた状況だってのに」

「どういう……こと…!」

「慢心……お前は一度でも自分が追い込まれると考えたか?自分の理想だけで事を進めるからそうなる」

 

 

 そう言われてセテスは目を見開き、歯を食い縛る。確かに彼がこう動いたら、こう動いてくれたら、そう戦いを進めてしまった。今までそれが覆ったことが無いから。

 

 

「その絶対的自信を覆してやればそちらは焦る。その焦りが判断を少しでも鈍らせる」

「っ!」

「チェスのように少しずつ相手の手を潰していけば」

「あぁぁあぁっ!」

 

 

 その叫びと共にセテスは最後の足掻きとばかりに剣を振るう。全ての力を込めた音速にも迫るような一閃。だが、紅蓮はそれも読んでいたようだ。

 気付けば紅蓮は音も無くセテスの後ろに回り込み、首筋に刃を当てていた。冷たい目で見下ろしながら。

 

 

「最初から駆け引きは始まっていて、お前は最初から負けていた……これで、お前の負け(チェックメイト)だ」




さて、主人公無双しだしたのは良いけど、キャラがおかしな方向に…頑張ろう。


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6話

遅くなりました。


最近は梅雨が来る前に夏が来る勢いで。熱中症、気を付けましょー

スッゴいスランプ…

では、どーぞ


 セテスとの勝負から翌日、朝からクラスメイトに何を言われるかと内心びくびくしていたが、思いの外他人からのちやほやが無くて拍子抜けした。

レティシアに弁当を作って持っていったら、教室がしん、と静まり返ったので、こそっと聞いてみれば、何だか怖くて近付きづらいとか。自分はこの学園で致命的な何かを失いかけてる気がした。印象とかさ、大事ですから。

 ほら、入学早々クラスメイトに怖がられるってさ…どうなんだよ。

 まぁそれは良い。良くないけれど。問題は、さっきから…

 

 

 

 じぃぃ~~~~~

 

 

 

 何でこんなに後ろから視線を感じるのかしら…しかも何が問題かって、

 

 

 ちらっ

 

「何かしら?」

「いや…視線を感じるなぁ…と」

「気のせいではないかしら?」

「そうか…」

「そうよ」

 

 

 面倒くさいなぁぁぁぁぁぁあ!!

 

 このやり取り本日3回目。セテスは朝からこんな感じで、隣のソネルに目線で助けを求めてみても、『しょうがないよ』みたいな同情の目線を返してくる。

 全く……俺が何をしたと?…あっ。なんかしたわ。恨み?恨みなの?それにしては敵意が無いような…うむ、分からん。

 でも、こいつらはいつも通りで良かったと安堵している自分が居る。流石に居場所が無くなってしまう。

 

 まぁ悩んでいてもしょうがない。それよりもレティシアの一ヶ月後と迫ったAランク昇格戦に備えなければ。あの子はまだ伸び白があるからな。

 

 とまぁ、こんな変化があったが基本的に変わらない一日でした。

 

 

 と、思いたかった。

 

 

 

「何か増えとる…」

「私も貴方にご教授願いたく…駄目でしょうか?」

「あはは…」

 

 

 放課後の修行にはレティシアと俺の他にもう一人銀髪の少女が加入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はレティシア。昨日先輩が私を賭けて勝負したので、クラスからの視線が少し痛い。

 

 

 あまり目立ちたくないよぅ…

 

 

 朝からそんなことを考えながら机に突っ伏していると、横からクイクイっと袖を引かれた。そんな呼び方をするのは一人しか居ない。

 ララ・クレシオン。幼い見た目で銀髪のショートカットにアメジストみたいな紫の瞳。そして可愛い見た目と裏腹にSランク保持者。何故私の周りはこんな強者しか居ないのですか?

 と言うか幼い見た目の所で殺気を出さないで…あぁ、周りとの距離が…ま、何時も若干遠いけど。

 

 

 そして彼女は、私が中等部2年になって初めての、初めての!(ここ大事)友達なのです!あれ、視界が霞むなぁ…悲しくなんて無い。断じて。

 

 

 おっと私情が過ぎました。私の大事なフレンズが呼んでいたのでした。

 

 

「どうしたのです?」

「昨日のレティを賭けた先輩同士の戦いが凄くて」

「流石先輩方って感じでしたね」

「あの赤髪の方が師匠だったよね?」

「うん!まだあまり先輩の事は分からないけど、とても良い先輩だよ!昨日もあの後に、私の修行に付き合ってくれたり、お詫びって言って料理を振る舞ってくれたりとても優しい先輩でね…」

 

 

 私が先輩について話しているとララは何だか遠い目をし出した。どうしたんだろ?

 

 

「どうしたの?」

「いや、レティの先輩愛が凄いなぁ…と」

「あ、愛だなんて!…まぁ見た目はそんな悪くないし、でも…うぅ」

 

 

 あまり人と関わらないからか案外チョロインと言う奴なのかも…でも、先輩顔は良いしけっこう悪くないかも…あぁ!何を考えているんだ私はぁ!

 

 

「レティ、落ち着いて」

「ふぇ?!う、うん大丈夫。で、先輩がどうしたの?」

「私が言いたいのは、ね…その」

 

 

 そう言って顔を少し赤くして俯くララ。可愛い…ぎゅってしたい。あくまでも友達の一線は守りますが。

 意を決した様で、強い意思を持った瞳が私を見る。そして彼女は頭を下げてこう言った。

 

 

「彼の弟子にしてもらいたい!」

「いや、それ私に言われても…」

「あっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という次第でして」

「お願いします」

「取り敢えずは解った。まぁ頭を上げて。な?」

 

 

 取り敢えず頭を下げたままのララの顔を上げさせ、困った顔をしたレティシアとララに向き合う形で、一番の疑問を聞いた。

 

 

「何故Sランクのララが、俺に指導を願う?実力としては申し分無いどころか俺より格上じゃないか」

「私は外での実践経験が少ないのです。どうにも魔物との戦いは苦手で…先輩はとても多いでしょう?」

「そうなんですか?」

「いや、まぁそれなりに経験しているが…それでもCランクだし…」

 

 

 俺がお茶を濁しながら答えると、ララは俺にとって衝撃の一言を言い放った。

 

 

「何を言っているのです。貴方は隣国テルーヴァ共和国特殊部t「ストーーーーーーップ!?」どうしたのですか?」

 

 

 ララを連れてレティシアから離れたところまで移動する。

 

 

「何で俺の素性を知っている?!」

「あれ?覚えていないのですか?」

「どこかで会ったか?」

「ほら、この間の魔物の掃討作戦で。あの節はありがとうございました」

 

 

 この間?この間…はっ!そんなことあったな。確か魔法学園3つ位から何人か参加してたっけ。

 そして、トカゲみたいな形の魔物数体に囲まれてる奴を助けた覚えも。

 

 

「俺が迂闊だった…」

「あれ?素性を隠してました?」

「まぁ、色々とあるからな…」

「それは申し訳ない」

「だからこの事は黙っててくれないか?」

「分かりました」

 

 

 この調子ならば他に広めることも無いだろう。まだ、素性がばれる訳には行かないのだ。

 いざとなれば消すことも厭わないが、そういうのはあまり好きじゃないしな。

 

 

「他に知っていそうな奴は居るか?」

「いえ、私も誰にも言ってませんし、大体情報が少ないので居ないかと」

「…そうならいいんだが」

「いや、でも生徒会長ならば…」

 

 

 

 

 

 その一方

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも何を話しているのでしょう?あまり聞かれたくないことなのでしょうが…」

「すみません」

「はい?…っ!」

 

 

 突然後ろから呼ばれたので反射的に振り返ると、 その殺気に一瞬だが呼吸が止まった。

 何故、気付かなかったのか、それは人物を見て合点がいった。

 

 

「っは!…生徒会長さん」

「あら、申し訳ありません。少々殺気立ってしまいまして」

「どうしたの…ですか?」

「霧羽 紅蓮様はいらっしゃいます?」

「はい…」

 

 

 生徒会長────この学園のトップの実力者であり、その圧倒的実力から『神の使い』 とさえ言われる彼女が先輩に何の用だろうか。

 

 

「あら、貴方は知らなくていいことよ」

「は…はい。呼んで参りますので少々お待ちを」

 

 

 こういう時に限って紫乃梅さんは居ない。先輩…大丈夫だろうか。

 

 

「先輩」

「あぁ気付いている。誰だあいつは」

「生徒会長です」

「ははっ……まじかよ…二人はここに居てくれ。何があってもこちらに来るな」

「はい」

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはどうも生徒会長。どういった御用で?」

「貴方は…私達と戦争でも始めるのですか?」

「いや、そういうわけではない」

「ならば何が目的なのですか?」

「場所を変えましょう」

 

 

 ここまで平静を装っているが、正直勝てる気がしないかも知れないな…()()だが。

 

 

「単刀直入に聞こう。ここには…ここの図書館には()()があるだろう?」

 

 

 シャラン────

 

 

 その音と共に俺の首筋には剣の刃が当てられていた。

 

 

「どこまで…知っている」

「さあ?…どこまでも」

 




何か訳分からなくなってきたかも。


…眠い。


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7話

スランプ感が否めない。


梅雨入りなのに何この日差し。HPゲージがゴリゴリと…


ではどーぞ。


 隣国テルーヴァ共和国は共和国体勢に変わってから反乱などのあらそいが起こっていないこのご時世とても珍しい国である。

 だが、注目すべきはそこではない。この国は共和国になったばかりの数年前に隣国等に数回戦争を仕掛けられて以来、どこにも戦争を仕掛けられていないのだ。魔族にすら。

 噂によれば、あの国には相当な手練れが集まった集団がおり、迂闊に手が出せないとか。

 

 

 テルーヴァ共和国特殊部隊─────

 

 

 テルーヴァ共和国自体がまだ小国なので三つある部隊を合わせても3~40人程度だが、その部隊の恐ろしさは、単純に言えば大国一つなら潰せる程度の戦力と言われている。勿論仕掛けられた戦は無敗である。

 

 そんな狂った部隊の中でも曲者揃いの部隊が第二部隊。それを纏めているのが、何時からか血塗られた焔(ブラッドフレイム)と呼ばれ、その髪や扱う焔はその名の通り血のような濃い紅、性格は冷酷非情、一騎当千の戦闘狂と恐れられている謎の少年……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だそんなデマ流した奴は。今すぐここに連れてこい。消し炭にしてくれる」

「お、落ち着いてほしいのです。あくまでもこちらが聞いた噂というだけで…」

 

 

 生徒会長が来てから翌日。

 昨日の事について落ち着いて話がしたいという事で俺は紫乃梅さんにレティシア達の練習メニューを伝え、生徒会室で生徒会長と生徒会室二人で話していた。

 

 

 生徒会長の彼女はフィール・エレスタイン。名門エレスタイン家の息女であり、現段階この学園の最強。そしてこの国ラステリオ王国の中でも相当な実力者で、ファンも多いとか。

 レティシアとはまた違った、濃いめの美しい金髪のロングヘアー。そして出るところは出て絞まるとこは絞まった完璧な体型。

 本当に居るんだね。こんな絵に描いたような理想的な容姿の娘。

 

 

 最初に刃を向けられた時は驚いたしその殺気は凄いものだったが、話してみれば年頃の少女。……何で縁談が来ないのかは言及はしないでおく。色々有るのだろう。

 取り敢えずは最近変な奴が多かったから、まともな奴で良かった。

 

 

「で、先程の発言からして貴方は…」

「まぁ、そこまで素性が知れてるなら隠しても無駄か。俺はテルーヴァ共和国特殊第二部隊隊長、霧羽紅蓮だ」

 

 

 特殊第二部隊。訳して特二。メンバーの素性は殆どばれてはいないが、ルドビアとかの親しい奴にはやはりばれてしまう。まぁ、認識阻害の魔法とか色々と趣向を凝らして何とかしているが。

 

俺がその証の身分証と共に素性を明かすとフィールの雰囲気が何だか明らかに変わった。具体的にはキラキラしだした。

 

 

「ご本人でしたのですねっ!」

「ど、どうした?」

「あの……サインとか、貰えますか?」

「いや、まぁ構わないけど」

 

 

そう言って、書いたこともないサインを慣れないながらも書いて渡すと、とっても幸せそうなとびきりの笑顔で受け取ってくれた。『フィール・エレスタインへ』と添えたのもプラスだったのかな?

 

俺の事はルドビアから聞いていたのだが、忙しいはずの俺が何故こんなところに?と半信半疑だったらしい。……勝手に個人情報を広めるんじゃないよ全く。

 

 

「その第二部隊…俗に特二と呼ばれる部隊の隊長()が何故、何処であの図書館の情報を?……あの情報は生徒達にも重役を除いて教えられていない、一、二を争う機密事項のはず」

 

 

 何か、様が付いたんですけど。フィールの中で俺のグレードが上がっているが、堅苦しいのは嫌なので頃合いを見て友人の位置づけにしてもらおうかな……じゃなくて。

 

 あまりに緊張感のない俺をフィールが訝しげな目で見るので、少し真面目になって話すことにしよう。

 

 

「様は勘弁してくれ。……何故か、は言えないな。こちらも内情やら手の内やらをそう易々と晒すわけにいかないのは分かるだろう?」

「では、図書館には何を求めて?」

「それは……何となく想像ついているんじゃないか?」

 

 

 俺がそう言うと、フィールは苦笑いで答えた。

 

 

「やはり、地下に十階まである図書館の内の地下八階より下…」

「そう、特定精霊召喚術式用魔導書──グリモワール、又はマテリアル保管室に用がある」

「でも、貴方は契約出来るのですか?」

「ちょっと誰かに呼ばれていてね」

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

「我が国の中でも重要なあの図書館にある神器や精霊が望みか」

「ああ、ヒヒッ…それでその場所は?」

 

 

 街の外れにある通称『裏街』と呼ばれる場所。様々な建物が老朽化したまま手付かずになっており、そこは人があまり近付かないような場所。

 

 そんな所の路地の一角で二人の男が会話していた。

 一人は立派な軍服を着た体格の良い男性。ニヒルな笑みを浮かべるもう一人は痩身長駆の色白の男性。

 

 

 

「シエル魔法学園の一角にある、図書館…その下の方だと聞いている」

 

 

 

 軍服の方がそう答えると痩身長駆の男は苦虫を噛み潰した用な顔をした。

 

 

「そいつは面倒だねぇ…でも何とかなるか貴方の力で」

「本当にこれで、俺の故郷の村は襲われないんだな!?」

「あぁ、そう約束しよう…少なくとも魔族の侵攻の対象にはならないだろう」

「そうか…じゃあ後は」

「手筈通りに」

 

 

 そう言って痩身長駆の男は背中に()()()()()()を広げ、飛び去って行った……

 

 

「ま、早いとこ攻め行った方が楽かねぇ…ヒヒッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気付かれては…居ない…月夜、着いた?」

『あぁ…今、国に入った所だ』

「そう…今の人達……消して良いの?」

『あぁ、ユナに任せるよ。一思いにやって良い』

 

 

 そう言われた彼女は建物の陰からその黒光りした銃口を、先程の軍服の男性に向ける。

 

 

 

「この国…魔族が…狙ってる……あくまでも、悟られないように……」

 

 

 そう呟きながら、彼女は無感情にその引き金を引いた。

 

 

 

 

『さて、魔族の方を泳がしたが、これで何かしら分かると良いんだが……それよりもだ』

 

 

 

 月夜と呼ばれていた青年は、先程ユナと連絡していた方とは逆方に着けたイヤホンを取りながら呟くように言葉を溢した。

 

 

 

『呼ばれているのに誰かは分からないってことは……紅蓮はやはり記憶が?』

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールと図書館について話してから翌日。休日なので、学園内はしんとしていた。結局、図書館へ行くのはまたの機会となった。ルドビアへの書類など色々あるそうだ。フィールも、王都の方に用事があるとか。大学院の人達は遠征中…あまりに人手が無くないか?

 

 取り敢えずは戦力と、この国に居る魔族を何とかするか…さて、レティシア達はちゃんとやってるかなぁ…多分あれは、あの代は化け物揃いだよ…全く。

 

 紫乃梅さんには万が一があった場合すぐ呼ぶように伝えてはある。まぁ、あの人自体それなりに動ける様だから心配はしていないが……さて、そろそろ起爆しようかな。彼女の中の()()を。

 

 …と、そんな事を考えていると廊下の向こうから誰か…セテスが駆けて来た。

 そしてガシィ!と肩を勢いよく捕まれた。え?どうしたのん?目が据わって居られるのですけど…つーか痛い。割りとマジで痛い。

 

 

「痛い痛い何?!どうしたんだよおい?!正気を取り戻せ!」

「ぐ~れん♪フフッ…ぐれんだ~!…絶対離さない」

 

 

 そう言ってセテスは俺に抱き着いてきた。どうしたんだ?何時もと全く様子の違う彼女を見て困惑する。

 と言うか力強くないですか?背中がミシミシ言ってるんだが?!

 ……てか、最後にこいつの台詞から何か不穏なものを感じたんだが。

 

 すると、その後ろから息も絶え絶えでソネル他数名が慌ててこちらに向かってきた。

 

 

「学園長はこっちには居ない!他を探すんだ!」

「おいおい何の騒ぎだ?」

「魔族の部隊だ!セテスは他の生徒を庇って、ヴァンパイアに魅了の魔法を使われた様だ…ま、欲望剥き出しになっただけみたいだけど…最悪、向こうの戦力にならないだけ良かったよ」

 

 

 何やってんだよ…って!そんな場合じゃないな。

 

 

「魔族の数は」

「ざっと150体位、増加の見込みあり。…魔物も来てるみたい」

「こちらの戦力は」

「あまり居ない…かな。先生方が踏ん張ってるけど、じり貧な気がするよ」

 

 

 

 俺はそっとセテスを引き剥がし、指示を出す。

 

 

「ソネルは他の奴と避難指示、…セテス。おーい」

「んふふ♪なーに?」

「お前が何の欲で動いてるか知らんが力を貸せ」

「ん。付いてく~」

 

  何だこの生き物。幼児退化しており、何か甘えてくるし上目使いが心臓に悪い。…可愛い。何時もこんな感じで居てくれないかな。

 って、癒されている場合じゃない。時間が無い。戦力も心許ない。

 俺はあいつにコールを掛ける。

 

 

『案外動きが早かった様で』

「ここまで機動的だとは…俺が動いた直後だ」

『ま、そんなことは後じゃない?』

「だな」

『すぐ向かうよ』

 

 

 よし、後は…聞いた以上は敵の編成が質より量っぽいのだが実際どうだろうか。手に余るかも……

 

 

自分を信じる(ミスモ・アクエスタ)、か……今思うと使い勝手の良い言葉だよなぁ。取り合えず、無事でいてくれよ……!」

 

 

 レティシアの無事を祈りながら、俺は外に急いだ。




この全然進まない感じ…何をどうしてどうなった。

こっからです。きっと。



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8話

遅くなってしまいました。


いつの間にかお気に入りもUAも増えて感激です!


季節の変わり目です。体調管理は万全に。
では、どーぞー。


 ~時間は遡り~

 

 

 

『レティシア視点』

 

 

「いやー生徒会長怖いわー」

 

 

 そう言いながら何でもない様に先輩がこちらへ戻って来ました。生徒会長さんが先輩に刃を向けた時はハラハラしましたが、何の話だったのでしょう?

 

 

「また近い内に話すよ」

「そう…ですか」

 

 

 先輩に私の心中がばれてしまった様です。

 私が解りやすいと言うよりは……何だか先輩が得体の知れないものに見えてきました。

 

 

「さて、これから二人にはそれぞれ一つの課題を与える」

 

 

 先輩に私は人の骨格等について教えて頂きました。何でも相手の動きを読む為とか。

 先輩はそんな知識どこで覚えるんでしょうか?普通魔物の関節稼働範囲とか視野の範囲とか…普通知りませんよ?

 

 

「レティシアには今まで教えた事に加えもう一つ覚えてもらう」

 

 

 …ごくり。

 先輩の目が凄く真面目になりました。そんなに見つめられると、何だかドキドキしま…せんねっ!

 

 先輩の肩がピクッと動いたと同時に左手にいつの間にか握られたナイフが私の首元を寸分違わず狙う。

 私が体を捻りながら細剣でそれをはじくと同時に、ララがハンドガンを先輩の後頭部に向ける。

 

 すると先輩はホッと安堵したような顔でそのナイフを仕舞った。

 

 

「二人とも上出来だな。レティシア、俺の教えた事を使えているようで何よりだ。その感覚を大事にしろよ」

「え?あ、はい!」

「それとララ…だったか。前の戦いも少し見たが、咄嗟の判断の時に狙いがブレる」

「はい。その通りです」

「折角二人居るんだ二人同時に鍛えよう」

 

 

 その言葉に私とララはキョトンとする。そして先輩はニヤリと笑い、こう言いました。

 

 

「ララはひたすらレティシアを狙う。レティシアはそれを弾き続けるんだ。勿論反撃は無しだ」

「面白そうだね」

「レティシアは相手がどう動くか実践で掴む。ララはその攻撃の精密さが上がる。一石二鳥だ」

 

 

 ララがキラキラした目でこちらを見る。うん…やるしかなさそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『紅蓮視点』

 

 

 その夜、レティシア達を寮まで送った後に俺が二階のベランダから星を眺めていると、その隣に紫乃梅さんが来た。

 

 

「どうかなされたのですか?」

「いや、少し夜風に当たりにな」

「あまり無理してはいけませんよ」

「しないさ」

 

 

 ちらりと隣を見るとそれに気付いたように彼女もこちらを向き、困ったような笑顔を浮かべた。

 

 

「……昔から貴方の考えている事は良く分かりませんね」

「それは俺を警戒してるのか?……まぁ悪い方にはならないようにするよ」

「約束…ですよ?」

「約束、ねぇ…」

 

 

 俺は言葉を濁す。出来ない約束はしない質なのだ。

 

 

「急にどうしたんだ?」

「何だかこうやって繋ぎ止めなければ、また何処かへ行ってしまう気がしまして」

「そ、そうか…」

 

 

 それだけ言うと彼女はそっと中に戻っていった。懐かしいような、桃の香りを残しながら。

昔から、また何処かへ、か。俺はあいつと何処かで会っているのか……?

 

 

 

 

 

 

『紫乃梅視点』

 

 

 翌日、今日は紅蓮様は生徒会長の元へ向かうらしく、私が代わりにレティシア様達を教えてくれとの事。信頼されているのは嬉しいのですが私に出来るでしょうか。その不安を乗せて「私で良いのですか?」と聞くと

 

 

「え?そのナイフホルダーとか見るに動けるんでしょ?」

 

 

 何でばれているのでしょうか…全く、恐ろしい人です。ですが主人の命令を完璧にこなしてこそのメイドと言うもの。

 仰せのままにがモットーみたいなものですし…言っててざっくりしてますね、このモットー。

 

 

「レティシア様お早うございます」

「お早うございます…今日は先輩は居ないんですね」

「えぇ。何でも生徒会長様に用事があるとか」

「ふぁ~あ…おはよー」

「ララ様は眠そうですね」

「Sランク持ちも仕事が多くてたまに嫌になるね」

 

 

あまり支障を来してはいけないので、後で安眠効果のあるお茶でも淹れましょうか。

 

 

「そう言えば紅蓮様からアドバイスを貰っていたのでした」

 

 

 そう言って私は紅蓮様が朝テーブルに置いていった紙をを読む。

 そこにはレティシア様とララ様、何故か私にまで親切ご丁寧にアドバイスが書かれていた。

 

 

『レティシアへ

 感覚が大事。目で見るだけじゃあ足りないよ』

 

 

「感覚が大事ですか…」

 

 

『ララへ

 自分を信じて。目標はセンターに入れてスイッチ』

 

 

「言いたいことは分かるけど、……何サラッと他作品パクってるんだよ」

 

 

『紫乃梅さんへ

 自信持ってやってください。後、今夜俺の部屋に来て下さい。お話があります』

 

 

 

「えっ!?」

「ほほぅ…これは…」

「何でしょうか?」

 

 

 平然を装っていますが、内心は非常に鼓動が早くなっております。顔も火照ってきました。レティシア様は明らかに動揺しております。

 

 期待して良いんでしょうか……でもまだ出逢ってから数日ですし……それとも。

いや、あの方の事です。何か重要な用事なのでしょう。そう言うのは一切無いのがあの方です。

 

 レティシア様が目に見えておろおろしております。あれを見ていると何だか落ち着いてきました。

 まあ、この件は保留にしておくとして、後でレティシア様にフォローをしておきましょう。

 

 

「はい、気を取り直して今日の訓練やりましょうか」

「「はい!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レティシア視点』

 

 

「くっ!」

「まだまだぁ!」

 

 

 徐々にララが私を追い詰めていく。不規則な動きから放たれる弾丸が私を掠める。

 紫乃梅さんのアドバイスもあり、その誤差はどんどん少なくなっていく。そして両手のハンドガンに加え紫乃梅さんがナイフで援護をするので、避け続けるのはけっこう厳しい。

 

 

 さて、どうしましょうか…いや、きっとどうにかなるはず。何たって、可能性は無限大、ですから。格好いいからこの言葉は好きですね。

 

 

 相手と私の位置、互いの目線、射程、速度、ハンドガンのリロード時間、地形、風向き──────それは一瞬、ほんの一瞬だが様々な情報が頭に濁流のように、だが無理なくスッと頭に入ってくる。

 

 

「っ!?」

「フッ!」

「これは…!」

 

 

 銃弾の弾道、ナイフの軌跡、その動き全てが鮮明に見えた。全部見える。全部、解る。

 その全てを弾いた瞬間、その一瞬の現象が嘘だったかのように元通りになってしまった。残ったのはとてつもない脱力感と疲労感。その両方が押し寄せ、意識が遠退く。

 

 

「大丈夫!?」

「疲れただけでしょうが、一応の処置はしておきましょう」

 

 

 ララと紫乃梅さんの声が聞こえる。それに安心して私は意識を手離した。

 

 

 

 

 

 

 

『紫乃梅視点』

 

 

 さて、紅蓮様の御用とは何なのでしょう。レティシア様は先程目を覚まされてララ様とお帰りになりました。

 あの能力は慣れればあのようなことも無いのでしょうが、まだ体への負担は大きいようですね。

 

 考え事をしていたら紅蓮様の自室に来てしまいました。

 …身嗜み良し、声の調子良し、少しの微笑み好印象。

 少しの間を開け扉をノックする。中から「どーぞー」と間延びした返事がしたので部屋に入る。

 

 

「失礼致します」

「まぁ座って」

 

 

 そう言って紅蓮様は紅茶を淹れる。んー…とても馴れた手つきですね。大抵のことは出来そうですよね。この人。って、私はメイドでした。見ている場合ではなかったので、急いで主人に代わりお茶を淹れた。

 

 

「それで、どういった御用でしょう?」

「まぁまぁ、そう言えば今日はどうだった?」

「レティシア様がですね…」

 

 

 私が今日の出来事を話すと、紅蓮様は顎に手を添え何やら考えているご様子。

 

 

「レティシア様のあれは知っていたのですか?」

「俺と最初に手合わせした時にな…ま、あの時はまだ疑惑だったが。少し様子を見ながら慎重にやらないとな」

「慎重に?」

「あれは脳に多少の負荷がかかっている。使ってなかった魔力回路を開けたんだからな。あまり急に多用するのは今は勧めないな」

 

 

 紅蓮様が紅茶を一口含むと、雰囲気が少し真剣になった。そしてニヤリ笑い、本題に入りだした。

 

 

「それで、話なんだが……少し協力して欲しいことがあるんだ」

「何でしょう?」

「ちょっと図書館へ行って欲しいんだ」




次回は派手にしましょうか。
…出来たらですが。


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9話

遅くなりました!何か毎回言っているような…

夏休みまで後もう少し、更新ペース上がるかな…上げよう。


では、どうぞ!


「俺は…何に見える?」

 

 

 そう言って先輩は静かに雨降る天を仰ぎ、真っ暗な瞳の奥でこちらを見る。

 …そんな目で見ないで下さいよ。決心が、揺らぎそうになるじゃないですか。

 

 

「いつも通りの、私の自慢の先輩ですよ」

 

 

 そう言って私は笑顔を作る。そうしないと──

 

 ──────何かが、崩れてしまいそうですから。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「こりゃすげーや」

 

 

 俺は魔物の数を見て思わず苦笑いを浮かべた。

 その個体自体にはそこまでの戦闘能力が無いにしても、セテスに掛けられた魅了の魔法然り、その召喚された雑魚の数然り、とても面倒なのも居るようだ。

 

 

「おーい。目は覚めたか?」

「え、えぇ…迷惑をかけたわね」

「俺にとっては中々可愛いものを見られたからプラマイゼロだな」

「今すぐワスレナサイ」

「あ、はい……何でそんなに俺を締め上げたかったかは解せんが」

「もうあまり掘り返さないで……恥ずかしいわ。別に締め上げたかった訳では無いのだけれど」

「そうなのか?」

「……そう受け取ってしまうのね……普通多少なりとも…」

 

 

 何やらブツブツ念仏を唱えだしたので取り敢えずは放っておく。何か恐いし。

 

 

 取り敢えず状況を整理しよう。

 

 まず、連絡がとれた紫乃梅さん達は一応無事か。瀬木先生は…うわぁ、めっちゃ暴れてる。大丈夫どころか見るからにオーバーキルだろあれ。

 目をつけられた魔物達が見るも無惨な姿に変えられていき、黒い霧となって消えていく。スプラッターかよ。

 

 まぁ、流石上位の教師陣。一個体がさして強くないため冷静に殲滅している。にしても人手が少ないな。

 

 ……まるでそれを()()()みたいに。

 

 

「取り敢えず、図書館に行かれたら一発アウトだな……そうなると撃ち漏らしは致命的か」

「紅蓮、兎に角私達も戦力として合流するべきではないかしら。さっきは馴れないデバフの魔法をかけられたけれど今度は大丈夫だわ」

「それもそうだな…」

 

 

 そんな事を話していると向こうから蝙蝠型の魔物が向かって来る。そしてその後ろからヴァンパイアが二体。

 

 

「話の」

「途中でしょう?」

 

 

 一つの大軍は焔が巡り、もう一つの大軍が絶対零度に包まれる。一瞬でヴァンパイアの蝙蝠を粉微塵にした俺達に一瞬怯んだ様だが、それでも二人のヴァンパイアはこちらに向かってくる。

 

 

「アシストよろしく」

「何で命令されてるのかしら…まぁいいわ」

 

 

 二人相手に俺がカグツチを出し、交戦する。この程度、一人も二人も変わらない。

 

 時折死角から氷針を飛ばしてくれるセテスのお陰か、ヴァンパイア共はあまり攻めに出られないでいる。

 カグツチの火力と俺の剣の技量。それが合わさった、一撃一撃が致命的な火力の高速連撃。それは相手の四肢を瞬く間に切り飛ばし、切られた感覚が来る頃には灰に変わっていた。

 

 

「っと。こんなものか」

『まぁ中級だし妥当じゃないかな?』

「それもそうだな」

 

 

 脳内で語りかけてくるカグツチと会話していると、セテスが不思議そうにこちらを見ていた。

 俺が首をかしげると、セテスも首をかしげながら疑問を口にした。

 

 

「貴方…さっきから誰と話しているの?」

「あ、えっと…カグツチ、繋げるか?」

『ほいさ!』

「?!」

 

 

 突然頭の中から聞こえてきた声にセテスが目を見開く。まぁ無理もないよなぁ…俺も最初は小一時間ほど騒ぎまくった挙げ句、カグツチに脳内空間に引きずられたものだ。今思うと何やってんだろ。

 

 

『ハロハロ~この間は楽しかったよ!覚えてる?』

「え、えぇ…貴方これは」

「察してる通りこいつは高位精霊、神格級の」

『カグツチだよっ!』

「まぁ察しの通り理性が蒸発した奴だ」

『あぁ?』

「「ひっ?!」」

 

 

 何かドスの効いた声がどこからか……あまり深く考えるのは止めておこう。

 

 寒気がするんだ物凄く。

 

 殺気が来るんだ何処からか。

 

 

 俺とセテスが身震いしていると、また新手の敵が現れる。先生方が奮戦しているが、まだ主戦力も幾らか残っているようだ。

 と、そこへ通信が入る。

 

 

『紅蓮そっちはどうだい?』

「ボチボチですね」

『それより不味い事になった』

「どした?」

『僕の使い魔が何だか大きな魔力を感じたんだ』

「ん、そのまま偵察をつづけてくれ。ヤバそうなら叩いて構わん」

『分かった…気を付けて』

「あぁ…」

 

 

 さて、レティシアの方へ急ぐとするか。中々に嫌な予感がするな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしましょう……

 

 今は先輩の寮から少し移動した物陰で隠れて休んでいます。この場所は出入り口少し離れた、言わば学園の変境地なので、思うように入口まで移動して逃げることができません。

 

 先程、紫乃梅さんが偵察に行きましたが、敵が多くて戦力がララと私と紫乃梅さんだけでは心許ないので先生達が殲滅するのを待った方が良いかもしれないとの事。

 

 

「キザシャァァァァ!!!」

「?!…に、逃げましょう!」

 

 

 蝙蝠の羽が付いた人の形をした魔物や、蝙蝠の魔物が襲ってきました。ララは咄嗟に簡易防護壁を展開、撤退をしようと後ずさりをしました。

 

 

「退路は私が」

「わっ、私もです!」

 

 

 早くしなければ……焦れば焦るほど頭の中がパニックになりそうになります。落ち着いて、皆が居る。そうじゃなければ私はどうなっていたでしょうか。ネガティブな思考が頭を幾つも過っていきます。

 ですが私は先輩の弟子、胸を張らずしてどうしましょうか!

 

 パリンッ!と防護壁が割れる音とがしたと同時に魔物が襲ってました。ですがもう大丈夫です。

 

 

「私達が居るよ」

「そうねっ!」

 

 

 紫乃梅さんが雑魚と魔法弾を、ララがハンドガンから放たれる特殊弾で撃ち漏らしを少しずつ倒していく。私は魔法と剣を駆使して敵を殲滅していきます。

 

 

「ハァァッ!」

 

 

 ズバンッ!という音と共に神速の突きが放たれる。それは金色の輝きを纏いながら魔物の群れを切り裂く。そこだけ大穴が空いたようになり、その先の魔物を操っている本体が露になった。

 

 

「雑魚は私達が引き受ける!レティは本体を!」

「分かったっ!」

 

 

 本体は頭が烏、体が人の様な形だが、白く張りぼての様な印象を受ける。そして背中には大きな蝙蝠の羽が付いており何とも不気味だった。

 

 

「ガァァァアッ!!」

「くっ?!」

 

 

 一瞬で間を詰められ殴りかかってきた。私は体を左側に捻り、紙一重でそれを流しカウンターを狙うが図体の割にすばしっこく掠るのみとなり、逆に相手の蹴りが私を掠る。

 

 

「クフッ!」

 

 

 多少吐血し、左脇腹から少し血が滲む。だが見た目よりは軽傷であり、まだ動ける様だ。

 

 ちらと他の二人を見ると、紫乃梅さんがこれと同じ個体を相手している。魔力で造り強化したナイフの中距離攻撃でじわじわ削っているようだが、まだ時間がかかるだろう。

 ララは順調に蝙蝠の群れを減らしているが、広範囲攻撃が無いため苦戦しているようだ。だが、そこはSランク。上手いこと立ち回っている。私達に攻撃が来ないように気を引き付けているため、消耗が少し多いかもしれない。

 こちらも早く終わらせなければ…速まる鼓動を、痛みを無理矢理飲み込み押さえ、全神経を集中させる。

 ギギギっと唸る相手から目を逸らさず、正面に見据える。

 

 動き出したのはほぼ同時だった。

 

 魔物の筋肉質な右手から鋭い突きが放たれる。右へのサイドステップでそれを避け、右手に持った細剣で切り上げる。魔物が咄嗟に左腕でガードしたが、その左腕に深々と一撃が入る。反撃に右腕を振るってくるが、バックステップで避け、電撃を放つ。だがそれはまたも右腕を振るうことで掻き消されてしまう。

 どうも魔法の耐性は強いようだ。だが、物理攻撃は効くよう。再生能力も無し。行けそうです。

 

 一撃を入れられた事でか、相手の雰囲気が変わった。

 一つ天に向かって雄叫びをあげると、体に赤黒い闘気の様なオーラの様なものを纏う。

 ゾワリ──と身の危険を感じ、咄嗟に大きく体を引くと魔物が先程とは比べ物にならないスピードで向かってきており、私の立っていたに拳を叩き込んだ。そこの地面が大きく窪む。

 あれを喰らったら死ぬ。そんな恐怖が頭をよぎる。

 

 

 大丈夫、皆が居る。可能性は、無限大。そう頭に言い聞かせ、フッと一瞬目を閉じ、息を吐き、開く。

 

 

 魔物が目の前まで迫っていた。が、そんな事は()()()()()

 私はしゃがむことでそれを回避し、右手を引き絞り突進するような形で渾身の突きを放つ。

 そのまますれ違い振り向くと、一撃が当たった時にしたリン、と言う鈴のような音と対称的に相手の腹にはぽっかりと穴が開いていた。

 傷口からは何も出ていないところを見ると、ただの生き物ではないのだろう。

 そんな事よりもだ。相手の呼吸、周囲の状況、風向き、動き、全てが頭の中へするすると入ってくる。

 

 

「行ける…!」

「グガァァァァ!」

 

 

 私は雄叫びを上げる魔物に剣の切っ先を向ける。

 

 

「さあ、ここからです!」




さて、10話、11話位にはこの回終わらせたい。


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10話

8月ですよ8月。

遅くなりましたぁ!
でも8月はここからだもん。課題は終えた。なんとかぁなる。

…人理修復終えなきゃ。☆5鯖が来ない。概念礼装しか来ない。ちくしょぉぉぉ!
じゃねーや、更新頑張ろー。



「さあ、ここからです!」

 

 

 その瞬間、私の居る場所の周辺全てに全神経を集中させる。

 見える、様々な敵の動きが。解る、様々な攻撃の軌道が。感じる、相手の思考が。

 先輩から教えてもらった、気候の事や生物学や心理学やらが、頭の中で巧く組上がっていく感覚。

 

 必要だからと、猛勉強した甲斐があったなぁ…先輩は私のこれを知っていたのでしょう。流石です。

 

 

「ガァァァッ!!」

 

 

 先に相手の魔物が動く。私は相手より早く動き、相手の懐に入る。

 魔物の右足に体重が乗った瞬間、私は勢いそのままにスライディング。魔物の左足の蹴りを寸での所で避け、魔物はその勢いで後ろを右腕で凪ぎ払うが、そこにもう私の姿は無い。

 

 

「ヤァッ!」

 

 

 力強い声と共に私は剣を切り上げ、先程左腕につけた傷に寸分のくるいもなく斬撃を叩き込む。

 深々と一撃が入るが、流石に赤いオーラを纏っているからか先程より体が硬い。

 切断するに至らず、私は後ろに下がり間合いを開ける。

 

 警戒をしながら他の事にふと気がついた。本当にふとしたことなので、この時は何も疑問に思わなかったが。

 

 

「そういえば、戦闘のできる生徒の方達が居ませんね…こういうときに限って遠征でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ…!」

 

 

 こいつを逃がしておいて正解だったな…でなければ、ユナは無事では済まなかっただろう。

 

 双方共に空を並走しながら戦っている。僕は大降りに自分と同じ大きさの鎌を降るう。

 風を纏いながら飛ぶ相手は体を後ろに引き距離を取る。風の魔法も相まって速度が速い。そして相手から放たれる光線を体を捻り避ける。

 

 このままでは防戦一方になってしまう…だが、魔力は有限。僕は下に見える建物の影から大量の槍を生成し、相手目掛けて射出する。空間リソースは自分が得意な魔法属性ならばいとも簡単に操れる。

 

 

「ダークジャベリン・エナイレイション!」

 

 

 闇から作られた、一つの軍隊をも殲滅出来るほどの大量の漆黒の槍が相手を襲うが、相手はそれを何重にも重ねた砂の壁で防ぐ。

 

 

「また、別の魔力…!」

「おやぁ…?驚きましたー?」

「お前あのヴァンパイア達と違うな」

「まぁ、高位種ですしねぇ…ククク」

 

 

 人の数だけ違う魔力が存在する。その魔力によって使用する魔法、その属性、魔法を受ける際の抵抗力、効果時間等々…の得手不得手が存在する。

 

 そしてこの目の前の魔族の男…今の戦闘の間で三種類の魔力を有していた。

 二種類の魔力を持つものも居るが、そんなものは特例中の特例。まして三つなど…こいつ、本当に何物なんだ。

 

 しばらく飛んでいたが、その向こうに学園が見えてきた。まずいな…そう思っていた時だった。

 

 

「ハァ!」

「なっ!」

 

 

 腕を鋼鉄にした相手が殴りかかってきた。咄嗟に避けるが、もう片手に持ったナイフが腕に掠る。

 

 そしてそのナイフについた血を舐めた。

 

 次の瞬間、相手が纏っていたのは闇だった。僕と全く同じ。

 

 

「吸血か…!」

「焦って油断しましたねぇ…」

 

 

 これでは分が悪い…どうするべきか。

 また相手が殴りかかってきた。それを鎌で捌くが、さっきから闇と同時に纏っている光の属性が、俺の魔力を弱体化させていく。

 一旦距離を取ろうとした時、横から目の前の奴と全く同じシルエットの黒い塊が加速しながら殴りかかってきた。

 

 そうか!僕の魔力で木の影を!そう思った時には、目の前に拳が迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 ●○●

 

 

「くっ…!」

「グギィィィ!」

 

 

 この魔物、攻撃を与えれば与えるほど耐性が付いていきます。肉体は段々固く、切り落とした左腕も手首まで再生しています。

 

 

 その時でした。上空から人が降ってきました。その人は私の丁度真横の地面に激突すると、大きな砂煙を上げながら立ち上がりました。

 大きな鎌を持った、先輩と同い年ぐらいの黒髪の青年です。

 そして彼を追ってきたのか、もう一人蝙蝠の様な翼を持った痩身の男が空をホバリングしている。翼を見るに魔族なのだろう。

 

 

「ほぉー…中々面白いモノを見つけました」

「なんて運の悪い…」

 

 

 魔族の男が私を見てクツクツと笑みを浮かべ、対称的に黒髪の青年はにがむしを噛み潰したような顔を浮かべています。

 

 

「ギヤァァ!」

「ふっ…!」

 

 

 黒髪の青年の方へ私が戦っていた魔物が突撃します。それを寸での所で避けると、左手を魔物の左腕に伸ばしそっと触れ……

 

 

「闇よ、喰らえ」

「グギ?!」

 

 

 魔物の腕を黒い何かが這ったと思った瞬間、魔物の左肩から先が消えました。あまりの突然のことに、魔物も混乱しているようです。その間に魔物の体に闇が纏わり付き、完全に動きを封じてしまいました。

 

 

「無から有を生み出す禁忌…魔族は何を始める気だ」

「素晴らしいだろう?無尽蔵に沸き出る生物兵器。と、言ってもそれはまだまだ試作品だが。まぁ、良いデータが取れましたよ」

「ちっ…」

「それよりも、貴方は何者だ?」

「何者とは?」

「少なくともここには二人?三人?ま、どっちでも良いけどさぁー…あんたらぁ、人かい?」

 

 

 知らない人達の訳の分からない会話に頭がこんがらがってくる。

 取り敢えず分かった事は黒髪の人は敵ではなさそうであることだけである。

 

 

「ま、んなことは二の次だ。私達は図書館に行き精霊、その他神器の回収を任とされた。君達に構ってる暇ないんだよねぇ…ククク」

「そうだ図書館!ねぇ君!」

「え、はい!」

 

 

 いきなり呼ばれたことで反射的に返事してしまった。

 図書館…この学園にある図書館と言うのならば奥の方にある魔導図書館の事なのだろう。

 その名の通り、魔導、魔術関連の書物が多いのだが、確か下に繋がる所があったような…行かないように言われていたので記憶の片隅にフワッと覚えていたのみである。

 

 

「ガァァァァァア!!!」

「間に合えっ…!」

「キャッ?!」

「紫乃梅さん!」

 

 そんな事をふと考えていたとき、後ろから紫乃梅さんが飛ばされてきた。ララが咄嗟に作った障壁のお陰で、目立った外傷は無いようだ。

 そして目の前には赤黒いオーラを纏った魔物。

 話を聞くには普通の生物ではないようだが、物凄い殺気をビシビシと感じる。纏うオーラも、先程より色が濃く、膨大な量の魔力が溢れ出ているのが解る。

 

 

「おぉ…!二段階目までクリアしたか!キヒッ…良いねぇ良いねぇ」

「段階…?」

 

 

 その魔物は私の方目掛け、一瞬で間を詰める。私が今の状態で無ければ見えなかっただろう。そしてこの状態も限界が近い。先程から頭が痛くなってきた。気を抜けば意識が飛びそうである。

 私は紫乃梅さんを抱えそこを飛び退く。避ける際に左脇腹を一撃が抉るが、構っていられない。

 

 

「くぅ…!」

「君!大丈夫?!」

「レティ!今止血する!」

 

 

 痛い。とても痛い。先輩に泣き付きたいがここに先輩は居ない。でも霧羽先輩はきっと来てくれると、そんな幻想に縋りたくなる。

 

 

「容器に魔力をありったけ詰め込んでリミッターとその他諸々着けて完成のお手軽兵器」

「そんなもの、下手すれば…!」

「バーン!…クククこんな具合になぁ!」

 

 

 その言葉と同時に、黒髪の青年が止めていた魔物の体が痙攣したように小刻みに震え出す。

 

 

「グ…ガ…ギグ…」

「不味い…!間に合え…!」

 

 

 間に合わない。どのくらいの規模か分からないが、この魔力量が爆発すると考えると絶対に間に合わない。

 いよいよ魔物の体が光り出す。咄嗟に顔を背け、腕で顔を守る。

 

 キィィィィンと言う音と共に魔物の最後の咆哮。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レティシア。よく頑張った」

「絶対氷壁!」

「イクスティンクション・アビス!」

 

 

 私と紫乃梅さんとララはいつの間にか後ろに下げられ、セテス先輩が氷の障壁を張ることで爆発を間一髪で防ぐ。その後、魔物の爆発は黒髪の方が出した真っ黒いドームのようなものに吸収されていく。

 そして先輩が、霧羽先輩が空に居る魔族の男目掛けて飛んでいた。セテス先輩の氷の足場を全力で踏み切っての飛翔は爆発から逃げるため空高く飛んでいた男に軽々と届く。

 

 

「よくも好き勝手やってくれたなぁ!」

「なっ…!」

「オラァァァッ!!!!!」

 

 

 先輩の焔を纏った重い拳が、魔族の男を地面に叩き落とした。




水分って大事。


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11話

終わらない課題は投げてしまえ。

…しませんよ?やらなきゃなぁ、課題。(遠い目)


FGOの夏ガチャを爆死したこの無念。いつか晴らす。



では、どーぞ!


「…やはり来たか」

 

 

 彼女は真顔でこちらを向く。肌がビリビリする様な殺気を、隠すこと無く真っ向からぶつけてくる。

 

 その様子に黒髪の青年───八雲 月夜(やくも げつや)は溜め息を吐き、やれやれといった様な雰囲気を醸しながらもその様子からは全く隙を感じさせない。

 紫乃梅は何時も通り非常に冷静に、何時でも相手の首を刈れる体制を整える。

 どうやら魔物に飛ばされた際の傷は演技だったようだ。まぁ、紅蓮にはばれていたようだが。

 

 

「それはこちらの台詞だよ……やはりここに居たか。ルドビア」

「…いや、待っていらっしゃった。と言った方が正しいかと」

 

 

 一触即発と言う言葉はこういった場面で使うのか。

 重く、鋭いこの空気。辺りはしんと物音一つ立たず、静寂が耳に痛い。無理矢理にでも気を逸らさないと、こんなもの真っ向から受け止めていたら意識が全部持っていかれそうである。

 

 常人ならば、の話だが。

 

 ここに居る三人は平然としつつ、いつでも臨戦態勢である。

 

 

「今回の件、仕組んだのは貴方だろう?」

「私の立場になってみろ。お前達の様な得体の知れないもの野放しにできんのさ」

「どこまで知った?」

「お前が冥府の所の一人だろー…で、そっちは戦乙女の…何だったか」

「スクルドの役職です。と言っても今は何も見えないのでただの人間と変わりありませんが」

「誰に聞いた」

 

 

 月夜が問うと、彼女は、奥の方から一冊の本を持ってきた。

 それは一見ただの古い分厚めの本だが、その本の中程を開けばそこには幾何学模様と中心に魔方陣が描かれており、彼女が何かの呪文を唱えると、紅く明滅する魔方陣から声が聞こえた。

 

 

『久しぶりねぇ…月夜』

「君は…!」

『貴方達のこと聞かれたから答えちゃった♪まぁ、上手く行けば人間達と手が組めそうですし』

「まだ組むとは言っていないぞ?」

『そうなの?まぁ何にせよ私の主、紅蓮と敵対するのなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …幾ら七十二柱と言えどただじゃ済まさねぇぞ』

「言ってくれるねぇ。レーヴァテイン」

 

 

 気付けば目の前には、黒い豪奢なドレスを纏った少女が怪しく微笑みながら立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

『そう言えばさー…私の姿って描写されてなくない?』

「今それ大事ですかね?!」

「ちょこまかと小賢しい…!!」

 

 

 俺はカグツチを片手に相手の攻撃を掻い潜っている。

 にしても、月夜に聞いたが本当に何種類もの魔力を使うとは…魔族なんでもありだな。ま、吸血されなきゃ良いみたいだが。

 

 それと、大体の人には使える魔法の数に限りがある。

 まぁ、主属性一つに副属性一つから二つと言ったところである。…とは言えどレティシアみたいな例外も多々居たりするが。

 

 俺かい?俺はまぁご想像の通り火しか使えないです。

 いや、初級魔法とか一部の中級ぐらいなら使えるんですよ?苦手なだけで。

 ま、何で苦手かは言わないが。人には色々あるのよ。

 

 

『ねーねー。私のー、プリティーでー、キュアッキュアなー、容姿の説明はー、無いんですかー!』

「うるっさいわっ!!大体な、プリティーでキュアな奴はそんな事言いません!魔力が足りないんだから容姿なんて今はモヤモヤしてるの!我慢して!」

「誰と喋ってやがる…ククク、まあ良い。ここが失敗に終わった所で、こちらのカードは他にもある」

「他…?」

 

 

 …幾らかこちらで探らないといけないようだな。全く、色々な案件が来るな本当に。

 

 

 魔族の男は自分のドッペルゲンガーの様な物を作り出し、水弾を大量に二方向から射出する。

 だが、複雑に魔力を組み上げていたりしている訳では無いのでカグツチで斬り捨てることは容易い。

 

 避けられるものは全て避け、そうでないものは全て切り捨て、ドッペルゲンガーとの間合いを詰め、瞬く間に五閃。四肢と頭部が分断され、同体と共に霧散する。

 

 

「やっぱりオリジナルの方が作りがしっかりしてるなぁ。真面目にやれよ、三流風情」

「貴様ぁ!舐めやがって!」

 

 

 紅蓮の言葉に激情する魔族の男。両腕をを広げ何か詠唱したかと思えば、辺りには水、火、土、風、濃密な四つの魔力の塊が現れ、男の周りを漂う。

 

 四元素に、光と月夜の闇。こいつ、六つもストックしてやがる…?!

 

 対して、紅蓮の魔力量は人並みか少し上ぐらい。後ろには壁役のセテス、能力の負担で気を失ったレティシア、周りの雑魚を処理しているララ。

 

 不味い、不味い…!あんなものフルパワーで叩き込んできたら、俺はともかく後ろの奴らに幾らかの被害が来ることは必至。

 時間が足りない。全く、あの二人は何をやっているんだ…ルドビアを倒せって訳じゃないんだから。

 ま、そんなに早く持って来られてもあいつには会いたくないんだが。

 

 

「フォー・オブ・エレメンタル…クヒヒッ、格の違いを見せてやるよ。人間ごときが図に乗りすぎだ」

「ちっ…いや、これは…?」

 

 

 火は何とかなるとして…やはりその個体が保有できる魔力量は決まっている。

 簡単に言えば、こいつの魔力量は平均やや上。俺とさほど変わらない。力比べは拮抗するので無し。

 勝てる可能性があるのは、相手は一つの属性魔法に特化しているわけではない。しかも自分のならいざ知らず、他人の魔力の複製品。扱いに馴れているとは到底思えない。

 そして今までの戦い、相手は風の飛行魔法、闇のドッペルゲンガー、水弾の掃射に、四元素の基本の守り。

 

 

 そうか…!恐らくだがこいつ、()()()()()()()()()使()()()()。つまりだ、馬鹿みたいに強力で今の俺じゃ見切れない、なんて事は無いのなら、それならば時間稼ぎ位は出来る!

 

 

「カグツチ、もう少しの辛抱だ。出力上げるぞ!」

『そんな事したら君の魔力が!』

「あいつらが来るまで持てばいい…五分だ。後五分で来る」

「お話は終わったか?まぁ君は五分も持たないよ…キキキ」

「んな事やってみねぇと分からねぇだろ?」

 

 

 魔属の男は四元素の塊を剣の形に変形させ、こちらに向ける。

 対して紅蓮はその身に煌々と燃え盛る焔を纏う。そしてその焔はカグツチにも集まって行き、その刃が紅く輝く。

 

 

 先に動いたのは紅蓮だった。早く、もっと早く。魔法で強化した脚と焔の推進力を得た体は元居た場所に紅い軌跡を残しながら、一瞬で相手との間合いを詰めた。

 その速さに相手は一瞬反応に遅れる。

 反射で体を左に捻り、水の剣でガードをするがそちらは殆ど間に合っていない。

 

 

「幽燐烈火・開け、石楠花」

 

 

 刀を左手に逆手に持ち、刺突。切り下げ、順手に持ち替え、抉るように突き、切り上げる。

 

 その動作は流れるように滑らかに、恐ろしく速く、怖いぐらいに美しかった。

 

 魔族の男が気づいたときには左肩の辺りから焔が走ったかと思えば、そこから紅い花が咲き、男は肩を押さえ、水の魔力で止血する。

 

 

「昔の癖で短剣の技出しちった。まぁ片手剣の分、威力は十二分だな」

「くぅ…!」

 

 

 紅蓮の刃がまた魔属の男を襲おうかといった瞬間、その両横から白い腕が現れ、その刃を受ける。そこから、レティシア達が戦っていた魔物が現れた。

 

 魔属の男は後ろにバックステップで間合いをとり、卑屈に歪んだ顔で嗤う。

 

 

「油断したなぁ!あの人造魔生物は私が作った。なら空間倉庫にストックがあってもおかしくないだろう?」

「ちっ…こいつら、リミッターも外れてやがるか…!」

 

 

 紅蓮も間合いを取ろうとしたが、魔物の握力が強く間合いが取れない。

 

 

「ヤバイ…!」

「「ギガァァァァァ!!」」

 

 

 二つの白い剛腕が紅蓮を襲い、辺りに粉塵が上がる。そして次の瞬間、紅い閃光が瞬いたと思えば、先程紅蓮を襲った剛腕が二本吹き飛んできた。

 

 

「出来ればこれは使いたくないんだが…しょうがないか」

 

 

 そう言って現れた紅蓮の目はつい先程、魔物と戦っていた時のレティシアと()()()、青く輝いていた。




蝉は体感温度を三度ほど上げている。と思います。


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12話

テストに次ぐテストで、ボロボロです。

そんな合間での投降。


もう秋だよ…前回お盆の投降だよ…


では、どーぞ!


 ブレインコネクト────何億、何兆と居る生物の中でも、ごく限られた個体にしか発現しない能力。

 

 

 そもそも、あらゆる生物には身体中に血管、神経の他に魔力回路と呼ばれるものが張り巡らされている。

 その名の通り、魔力を通す回路である。

 だが進化の過程等、様々な要因により使われなくなり、退化した回路もある。

 

 その回路の一つが脳への回路である。

 

 その理由の一つとされているのは、魔力を通しても、その複雑な脳の働きに対して魔力の消費が激しい。

 そして膨大な魔力があったとしても一歩間違えれば脳に多大なダメージを負う可能性がある。

 

 だが、退化せず、使われていないだけの個体が現れる事がある。

 そして、ふとしたきっかけでその閉じた回路に魔力が通ってしまう事がある。

 そしてその個体がその回路を使えるだけのキャパシティを持ち合わせていたら。

 そんな偶然の賜物で生まれた能力がブレインコネクト。

 

 

 魔力を脚に通せば脚力が強化、腕に通せば腕の筋力が強化されるように、脳に通せば脳の電気信号などに作用し、思考能力や反射神経が強化。脳に繋がる全感覚が研ぎ澄まされる。

 その瞬間、人は神にも迫る、未来予知にも等しい事が出来てしまう程の頭脳を手に入れることが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故…攻撃が当たらないっ!三人掛かりだぞ!」

「そんなものお前らが俺の思考の域を越えないボンクラだからさ」

『あれ?紅蓮そんなキャラだっけ?』

「キャラとか言うな!」

 

 

 ホムンクルス二体とヴァンパイアの猛攻を全て捌ききり、その全てにカウンターをぶつける。

 

 

「…んっ、せん…ぱい?」

「あら、気がついたのね」

「はっ!あの魔物は…!グッ…!」

「まだ起き上がっては駄目よ。止血はしたけれど傷口が開くわ」

「ありがとう…ございます」

 

 

 いきなり起き上がったレティシアをセテスが支える。

 レティシアの目の前では紅蓮と、自分が苦戦した魔物のホムンクルス二体、そして魔属の男が交戦していた。

 

 

「あの、動きは…!」

「彼も使えたのね…ブレインコネクトを」

「でも、あれは魔力が!」

「そう。時間がないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間がない…!」

 

 

 一方月夜達はと言うと、場所は図書館前に移動し、月夜と紫乃梅が魔本を片手に紅蓮の元へ向かっていた。

 

 自分を呼ぶ声と言っていたがこいつだったとは…そして紅蓮がこの声を誰か解らないとなると。

 

 

「やはり記憶か」

 

 

 ルドビアとは後日紅蓮との対話の席を設けることで、保留という形で何とかなった。あの後、ルドビアは霧のように消えてしまったが、何を企んでいるのだろうか。

 そんな事より、案外時間を浪費してしまった。まだ、間に合うだろうか。

 

 

 道中ホムンクルスや蝙蝠の残党が居たが、何とかやり過ごしながら急いでいた。…が、ここに来て強化され、リミッターが外れたホムンクルスに見つかってしまった。

 

 

『私は紅蓮とのリンクが切れている以上、今は何も出来ないの。月夜、頼んだわよ』

「全く、何でそんな契約交わしたんだあんたらは…!」

『…っ!急いでっ!』

「あぁ…生芽さん、任せられるかい?」

「えぇ。あの程度は私が引き受けます…先程の借りもありますし」

「吹き飛ばされたのわ気にしていたのか…」

『不味いわ…どんどん、紅蓮の魔力が弱くなってる』

「くそ…!間に合えよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホムンクルス二体掛かりで…倒せないどころか」

「灰に変えたわね…」

「はぁ…はぁ、あとはお前だけだ」

 

 

 頭は鈍器で殴られたように痛み、鉛を詰められたように重い。

 

 通常、魔力が底を尽きかけると体が危機を感じ強制的に脱力感、倦怠感を感じ、休息を取ろうと眠りに着くように体が出来ている。

 

 だが、紅蓮はそれを捩じ伏せる業を過去に居た場所で手に入れていた。

 けれど、魔力が元に戻る訳ではない。

 

 

「ぐっ…カグツチ、まだ、いけるか?」

『私より自分の心配をしなよ』

「相談は終わったかぁ?喰らえ!」

 

 

 相手は魔力の剣を二本射出した。それは高火力だが、避けることは容易な攻撃だった。

 

 

 

 後ろにレティシア達が居なければ。

 

 

 

 

「不味い…!だが、対応できない訳じゃない!」

「はぁっ!」

 

 

 紅蓮が剣に追い付き弾き返そうとした瞬間だった。

 

 

「ぐぅっ…!」

「先輩っ!」

 

 

 強烈な頭痛と共に、カグツチの焔が消え、

 

 

「かはぁっ!!」

 

 

 その体に二本の剣が刺さった。…が、

 

 

「もう魔力が無いはず!何故だ!」

「紅蓮…貴方…」

「魔力障壁、獄炎壁!」

「何故、魔法が使えるの…!まさか!」

 

 

 紅蓮は追加の弾幕から二人を庇うため、後ろに炎で出来た魔力壁を張った。

 

 

 魔力が無いにも関わらずに。

 

 

「魂魄を賭し、この身を燃やし、力と成す…ソウルコンバート」

 

 

 それは自身の魂、そのものを糧とする禁忌の術。

 下手をすれば自身の寿命を縮めるだけの、危険な技。

 だが、魔力より、その威力は格段に上がる。

 

 

「死に損ないがぁ!!」

 

 

 相手からの全力の刺突を指一本からの障壁で防ぎきる。

 

 

「くそがぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 相手が威力を増して攻撃しても、それはびくともしない。

 だが、些かダメージが大きかった。その少しの差。

 

 

「くっ…」

 

 

 紅蓮が倒れ伏す…その瞬間、双方の間に一つの魔導書が投げ込まれる。

 

 

「間に…合った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 知らない所で目が覚めた。果たしてあの戦いはどうなったのか。

 …それとも、ソウルコンバートの使いすぎで死んだか。

 

 いや、あれを使っていたのは一瞬に過ぎない。そんな事は無いはずなのだが。

 

 

「どこだここ…」

 

 

 気づけば、辺り一面真っ白まっさらな場所にポツンと一人佇んでいた。

 

 暫く歩いていると、ふと、何かが漂ってきた。

 鎖にに縛られたシャボン玉のような何か。

 

 どこか懐かしく感じる光の粒が、無数に目の前に現れた。その中の殆どが、やはり鎖に縛られていた。

 

 

 聖女のタロット。22の大アルカナの内の一つ、悪魔の力。

 

 

「そう言うことか…」

 

 

 その内の一つがこちらへフラフラと向かってきた。その内側からは他のものより一際輝いた力を感じる。

 

 

「これは?」

 

 

 それは心臓のようにどくどくと光の脈を感じる。がつん、がつんと、内側から鎖をこじ開けようとしているのが解る。

 

 鎖から撫でるように錠前に触れ、鍵が掛かっているのを確認する。

 

 

「どうすれば…」

 

 

 そして指先が鍵穴に触れた時、頭の中に身に覚えの無い情報が流れてくる。

 

 

 

 ────いや、知っている。俺はこれを…こいつを知っている。

 

 

 

 俺は月夜に、俺に図書館から話かけてくる奴を探れと言った。まさかこいつだとは。

 

 

「今、開けてやる。そう、お前は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助かった…今、開けてやる…ぐっ!」

「先輩!」

 

 

 目の前で、黒い魔導書が相手の攻撃から俺を守っている。その魔導書にそっと触れ、魔力を流すと、そこを中心に紅い焔が迸った。

 

 

「我は名高き火の精霊王の右腕。絶対なる矛であり、盾である。汝が我を従者とするならば、その力を示すがよい」

 

 

 精霊や魔物と契約するには条件がある。

 

 一つ、従者より力が上である場合。

 一つ、何かの魔具で相手を縛り付けた場合。

 一つ、今まで契約したことがあり、双方の合意があった場合。つまり、()()()

 

 

「我は…そなたを従えし者。いや、従えていた者か。…もういいや!グッ…!まどろっこしい契約文は、無しだ!後は頼んだぞ、レーヴァ…テイ、ン…」

「全く、ムードも何もないのねぇ…休んでなさい。大丈夫。任せておきなさい」

 

 

 倒れた紅蓮を優しく包むように焔が囲い、紅蓮の魔力が急激に回復する。

 そして、目の前には黒いドレスを纏った、少女が不敵な笑みを浮かべていた。

 

 その瞳に殺気を込め相手を見る。

 

 ぞわりと体が震え、辺りの空気が重くなる。頭の中を恐怖や死が埋め尽くす。

 

 

「私の名はレーヴァテイン。私の主を傷つけたのは貴方?」




テストがんばろー。


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13話

遅くなりましたね、十月です。もう。



頑張ります。えぇ、もう、まじで。


 聖女のタロット、十五番の力である『悪魔』のカード。

 その能力の一つ、()()の力。

 

 

「それしか心当たりが無ぇなぁ…」

 

 

 俺は今、あの真っ白な空間に戻ってきていた。一度来ることが出来れば簡単に行けるようだ。それでも、現実の世界での俺は今死にかけなので、あまりここに長居する訳にもいかないのだが。

 

 

「さーてと、色々整理しますか。全く、何がどーなってんだか…」

 

 

 この空間にふわふわと漂っていた、目の前の泡の一つに触れようとするが、弾かれてしまった。

 どうやら、何かしらの条件がないとぜ開かないどころか干渉も難しいようだ。

 

 

「見たとこ、これは俺の何かしらの一部で束縛の力でこの空間に繋がれてる訳か…いや、『制約』の力も混じってるな…こんな結界張れる奴俺は一人しか知らねぇな」

 

 

 これが俺の記憶だったり魔力の断片だったりは、中を覗くと何となく分かった。

 

 道理で思い出せない訳だ。

 

 ある日、ふと気づいたのだ。ごっそり記憶が抜け落ちていた。()()()()()()()()()()()()

 

 

 とは言っても、記憶の欠落は所々なので覚えていることはちゃんとある。

 

 

 向こうというのは精霊界の事で、俺は元々精霊界の住人。

 だからと言って、別に何かチート持ちな訳でも無いんだが。

 それが色々あって、下界に落とされた訳だ。その話は長くなるのでまた今度。

 

 重要なのは、何故俺だけこんな風に色々なものが制限されているのかってこと。他にも落とされた奴が数人いるが、少しスペックが落ちただけで特にそんな事は無いようだ。

 

 原因の心当たりは、二年前の大戦で柚葉と最後に会話した時の記憶…それも曖昧だが。何か重要な事を話したはずなのに、その記憶も封じられていた。

 …全部の記憶ではない所を見るに消えた部分が重要なのか。

 

 

「うーん…レーヴァとのリンクのおかげで少しは思い出したが、ますます分からなくなってきたな…もう少し手懸かりが有れば」

 

 

 手懸かり…やはり彼らか。

 最近活発化してきた魔属の動向。何でも新勢力らしく、それを指揮している奴なら何か解るかも。

 

 聞いたところによれば、彼らも向こう側に用があるみたいだし。

 レーヴァに何言われることやら。あいつ帰っててくれないかな。話がややこしくなりそうだし。

 さて、他の奴らにどう説明するか…ルドビア以外は記憶消さなければいけないかもしれないな。

 

 

 

 

 一人でうんうん唸っていると、段々意識が薄れてきた。

 お迎えと言うやつか…あれ?俺ってこれから死ぬんだっけ?

 いや、違うよね。いかんいかん。

 思考が段々解れていき、眠る直前のような虚脱感が包む。

 

 さて、そろそろ時間か。

 

 そろそろ帰るとしよう。皆、待ってる。

 

 

「まだ、君には早い。まぁ、また会えるから。行っておいで」

「────ッ」

 

 

 懐かしい誰かに背中を押され、意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、うぅ」

「あっ!起きました!」

「…レティ、シアか。…!あの後から、どれくらい経った?」

「二日ですよ!もう、心配したんですからねっ」

「他の、奴らは?」

「今は夜なので寮に居ます。まぁ私とレーヴァさんは看病の為に残ってましたが」

 

 

 …あいつまだ居るのかよ。

 と言うより先に。ツッコミをしなければならない。きっと俺がやらなければならないのか…!

 

 

「えーと、…その格好は?」

「あぁこれですかっ、セテス先輩が看病ならそれなりの格好があると言うことで!着てみました!ナース服!」

 

 

 …可愛いんだけどさ。可愛いんだけどさ。きっとそれセテスの趣味だろ。騙されてるし、何より何だよそのテンション…可愛い。

 キラキラした顔で見せびらかしてくるので、取り敢えず頭を撫でておいた。

 

 ふへへー。と顔が緩んでいるレティシアを撫でていて気づいた。何故今まで気づかなかったのだろうか。

 

 

「この右手の手錠は何なんだ…」

「あ、それは」

「そーでもしないと逃げるでしょ、貴方」

「げ」

 

 

 いつから居やがった…。そういや、まさか俺の事ばらして無いよな?

 

 

「大丈夫、あの契約は私達しか知らないわ」

「じゃあ」

「ただの契約精霊。って事になっているから。後、ルドビアが起きたら来いって」

「そうか…」

 

 

 良かった…ばれると話がややこしくなるからな。

 問題はルドビアだ。どこまでの話をするんだか。あいつは察しが良い。パイプも多い。地位もある。最悪じゃねぇかよ。

 まぁ、長い付き合いと言うところを利用できれば良いんだが。

 

 つーかさらっと俺の意思を読むな。

 

 

「取り敢えずルドビアのところに行ってくる」

「そ。何かあったら呼ぶのよ」

「先輩お怪我は…!」

「いってて…忘れてた。ま、動けるから大丈夫だ」

 

 

 さて、話が拗れなけりゃ良いんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや、ひどい目に遭ったよ…ククク」

「たかだか精霊一人に灰にされた割には余裕だね?」

「見てたのかい?」

「ま、その場に居たからね」

 

 

 フロアに現れた魔属の男に語りかける男。手には包帯が巻いてあり、微笑んではいるがその目は心の奥底を見透かしたような目をしていた。

 そんな目で睨まれた魔属の男は肩を竦め、長の元へ報告に行った。

 

 

「ありゃ一筋縄じゃ行かないねぇ…どうするんだい?」

「本当にどーすんのよ!向こうにとんでもないのが付いてるじゃない!」

「案ずるな。彼等はまだ何も知らん。何もな。大体、一筋縄で行くような連中に構いはしないさ」

 

 

 仮面の女はそう冷淡に言葉を返すと、隣に居た少女に手紙を渡した。

 

 

「これを彼の所へ渡してきてくれ。直接だ」

「…死なないだろうね?嫌だよ、出会い頭に焼かれるなんて」

「私の名を出せばそんな事は無いだろう」

「ふーん。ま、見てみないと解らないのかもねー」

 

 

 ───見たって解らないだろうな。私にさえ、解らないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい来たぞー」

「紅蓮か。自由に座ってくれ」

 

 

 ルドビアは落ち着いた様子で俺の向かいの席に座り、お茶を淹れた。

 毒は入っていない様なので、湿らす程度に口にした。

 

 ──さてと。

 

 

「どこから、何から話せば良い?」

「月夜から大体の事は聞いたよ。と言うか、何でも記憶が無いんだろう?そんな奴に何も聞かんよ」

「そうか…それで」

「あぁ、その事は私以外誰も知らん。安心しろ」

 

 

 懸念していたことは大丈夫そうだ。

 

 

「それで、あの襲撃は」

「あぁ、わざと向こうに解るようにした。こういう工作は得意でね」

「通りで人が居ないわけだ」

「ま、これでも一つの学園の長だ。被害は建物のみ、最小限。レティシア達が居たのは想定外だが、君が対象だからそれを加味すると、まぁ想定内だな」

「俺が対象?」

 

 

 俺がそう聞くとルドビアは真剣な顔になり、一拍開けてから、こう言った。

 

 

「実はな、お前らが帝都の奴らに目を付けられた。それで、その監査に私が選ばれたって訳だが、…この意味が解るか」

「一部にばれているのか…不味いな」

「お前らが捕まりでもしてみろ情報を抜き取られ、煮るなり焼くなり。挙げ句向こうに大軍勢だ」

 

 

 肩を竦め、そんな事を話すルドビアの顔はまるで息子を心配する親のようだ。

 ま、こいつには世話になった為、違和感はなかった。

 

 

「ところで、俺達の監査に魔物引っ張ってくる必要なくないか?」

「一石二鳥って奴だ」

 

 

 …ちゃっかりしてやがる。

 

 

「そういえば月夜は?」

「北東の共和国。本部に戻ったよ」

「そうか。じゃ、俺も寮に戻るよ」

「何かあったら言いたまえ、これでも顔は広い」

「あぁ。分かったよ」

 

 

 そう言って俺は部屋を後にした。

 

 

 

 寮に着くと、そこには入り口の前でうろうろする生徒会長。

 

 

「生徒会長が、夜分に何やってんの?」

「ふぁっ!いや、これは、その…」

「?」

 

 

 暫くその場で落ち着きのも無く、顔を俯かせていたが、何かを決心したようにこちらを見た。

 

「あの!私と、デ、デートしてください!」

「は?」

 

 …どうして、こうなった。




これから、少し過去話を改稿すると思います。話の大筋は変わりませんが、読み返して下さると有り難いです。


次回はまぁ、9日位には出します。出すよ?出せるよね?(震え声)


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14話

fgoで五十連やって事故ってやけくそになっていたらもう十月後半。

更新ペースが上がらない。



「私には時間が無い…!」

 

 

 暗がりの中一人の少女の慟哭が聞こえた。

 空間ディスプレイには、心からの笑みを浮かべるまだ小さい金髪の少女と、もう一人、白髪に少しの黒髪が混じったツインテールの少女。二人は仲良さそうに並んで写真に写っていた。

 

 

「絶対、助けるからね」

 

 

 少女はもう一つの空間ディスプレイを引き寄せる。そこには、微弱な精霊反応。そのアイコンの上には三女神の文字。

 

 

「これで、これでもう一度…!」

 

 

 暗がりの中で、長い金髪が悲しげに揺れる。だが、先程とは違いその瞳には強い光が灯っていた。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 今俺は何故、タキシード姿なのだろうか。何だろうこの悟りの境地。何をどうしてこうなった。

 

 

「なぁ…これで良いか?」

「はい、完璧かと」

 

 

 朝起きて出掛ける準備をしていたら、紫乃梅さんが何処へ行くのかと聞いてきたのでフィールと出掛けると言うや否や大真面目な真顔で紫乃梅さんに着付けをされ見定められていた。もうかれこれ一時間である。

 

 

「なぁ、フィールと出掛けるだけなんだが」

「他所へしかもフィール様と行くとなればしっかりとした正装で向かわなければ」

「なぁ、何か勘違いしてないか?」

「え?フィール様と貴族のお茶会にでも出掛けるのでしょう?」

「いやいやいやいや!都を回るだけだって!」

「ふぇ?」

 

 

 とんだ目に会った…。それでも気を取り直して直ぐ様程々に綺麗な私服を身繕いコーディネートするとは……スゲーなあの人。

 そんな事を考えながら自分の寮から少し出たところで、レティシアと出会った。

 

 

「外出ですか?」

「あぁ、ちょっとフィールと都にな…レティシアは?」

「えっ、あ、私も少し用事がありまして」

「そうか。あんなこともあったし気を付けろよ。何かあったら言えよ?」

「はいっ、ありがとうございます。先輩も気を付けて」

「おう」

 

 

 …羨ましいなぁ、生徒会長。

 

 

 別れた紅蓮の背中を見て、思わず呟いた彼女の言葉が彼に届くにはまだ少しかかりそうである。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「…人、多いなぁ」

 

 

 俺は一人学園から出て、学園のあるラステリオ王国の中心部、王都コルカスに来ていた。まだまだ王国としては小さい方だし主要四国とは比べるまでもないが、それでも人が多い。

 魔物襲撃から数日経ったが、まだ時折調査もあり、ルドビアが対応に追われていた。ま、自業自得なのだが。

 学園は今日は休みなので生徒の姿もちらほらと見える。都は帝都から外れているとはいえ連日人が溢れており、商人が客を呼び込む声や、子供の声などが聞こえてくる。

 

 待ち合わせ場所の時計塔は調度11時を示した時、人の波が二つに割れた。

 

 

「お待たせしましたっ……」

 

 

 そのフリルのついた白いワンピースは、お嬢様の様な清楚で気品がありながら羽織った水色のカーディガンと合わさって可愛らしさも残っており、とても良い。とても可愛い。帽子を目深にかぶってはいるが、何か隠せてないんだよなぁ……その雰囲気が。

 

 通りすぎる人が皆振り向いていく。その中を少し照れながらこちらに向かってくる美少女。ヤバイ眩しい。

 

 

「よう、時間ぴったりだ。……いつもこうなのか?」

「変装はしているので私だとはばれていない様ですが、自分で言うのもなんですけど容姿が些か目を引いてしまって」

 

 

 流石は名門エレスタイン家の期待の星。この国の魔導学園の生徒会長。顔も割れていれば騒ぎは必至。変装しても溢れ出るカリスマ。

 

 

「大変だな…」

「もう慣れましたよ。そんなことより、早く行きましょう!紅蓮様っ!」

「はしゃいでるなぁ……て言うか、様は止めようよ、様は」

 

 

 勿論、ただ遊びに来ている訳ではない。このラステリオ王国は帝都の東側にあり、決して近いわけではないが、それなりに栄えているため人が来る。なので学園にはよく王都の哨戒クエストが出る。

 それに、あの魔属の男の件もそうだが、最近裏の動きが活発化しているらしく、あの時もこちらの防衛に回っていてこちらに来れなかったのだとか。

 

 それともう一つ。なんでも最近、ここから微弱な精霊反応がするのだとか。行き場の失った精霊の保護もこちらの役目。

 

 

 フィールはデートなんて言っていたが、結構大事なクエストである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …あるはずなのだが。

 

 

「都にはこのようなものがあるのですねっ!…あっこの蜂蜜パイ美味しいですー!」

「楽しそうで良かったよ。うん」

「食べます?」

「あぁ、ありがとう。俺も何か買って食べようかな……」

 

 

 なんだこれ。ふらっと気になる所へ寄り、何か買ったり見たり食べたり。…デートじゃん。普通のデートじゃん!

 

 

「これ真面目な哨戒任務じゃなかったのか?」

「?…まーそうなんですけど、今日は息抜きも込みです。長期クエストですし、いつもは部下が居てこんなこと出来ないので一度くらい誰かとこんなことしてみたかったのです」

 

 

 やっぱり人の上に立ってしまうと自由度が減ってしまうのはどこも同じか。彼女の気持ちはとても分かるので(まぁ、俺は大分自由にやらせて貰っているが)慰めておく。

 

 

「…お友達と呼べる人が少ないもので。ほら、皆あまり近付いてきてくれないものですから。でも憧れの紅蓮さんとこんなことができて感激ですっ」

「紅蓮で良いよ。もし良かったら俺が友人に……」

「へっ!?うぇ!?末永く宜しくお願いしますっ!」

 

 

それ違う。嬉しいけど何か違う。気にしていてもしょうがないので気を取り直して色々回るとしよう。

 

 

 

「おう!カップルか?熱いねぇ!これおまけしてやるよ!」

「あらー可愛い彼女さんじゃない!これおまけね!」

「カッ、カップル?!ふぇっ、そ、そそ、そんな」プシュー

 

 完全にカップルと間違われている。商店の気の良い人たちがそう言う度、顔を赤くしてあたふたしているフィールを落ち着かせながら、おまけで貰ったクッキー等をかじる。…!旨いなこれ。俺も作れるかな。

 俺と回るその時だけは、硬い印象が全く無い年相応の少女の姿を見た。可愛いものだ。

 

……いつの間にか手を握っていた。俗にいう恋人繋ぎという奴ではなかろうかこれ。本人が無意識なようなのでそっとしておく。

そっと握り返すと、気づいたのかパッと手を離してサッと引っ込めてしまった。少し残念だがしょうがない、そう思って先に進もうとすると袖を引かれた。

後ろを見れば顔をほんのり赤く染めながら、然り気無くこちらに手を差し出していたので手を繋ぐとしよう。

 

……なにこれ、超ラブコメしてる。

 

 都も粗方回った。あっという間に時は過ぎ、少し休憩しようとカフェに寄った。

 時刻は夕方。夕日に照らされフィールの金髪がキラキラと輝く。

 

 

「…もう少し早く逢えていたら、なぁ」

「ん?」

「いえ、何でもないですよ」

「そうか」

「……もし、もしですよ。私が依頼をしたら、あなたは受けてくれるのですか?」

「……何か依頼したいのか?」

「…」

「まぁ言いたくなけりゃ言わなくて良いが、依頼についてだが…流石に聞いてみないと分からないな」

「そう、ですか…忘れて下さい。今の事は」

「え?」

「忘れて…下さい」

「分かったよ」

 

  ぽつり、と溢した彼女の言葉。いつか彼女の闇を払えるだろうか。何だろうこの懐かしく、辛い感じは。

 その一瞬、彼女に落ちた心の影を見て見ぬふりを俺は後悔するのかもしれない。

 

 暗い話を払拭するように笑顔になったフィールは、気を取り直した様に立ち上がった。

 

 

「もうこんな時間です。何も収穫は有りませんでしたが、とっても楽しかったです。ありがとうございます」

「こちらこそ」

 

 

 そう言って二人で夕焼けの雑踏の中を進む。はぐれそうになるが、彼女の手を取って進む。気付いた。何故にこんな気持ちになるのかが。どこか不安そうな彼女の顔が、()()に似ていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 白髪に黒髪の混じったツインテールの少女が向こうから走ってくる。それだけでは何ら不思議な事はないのだが、すれ違う時にそっと俺に触れた。その瞬間俺の頭の中に何処かの記憶が流れ込んできた。そして、目の前の少女との記憶も。

 

 

「久しぶりね」

「────っ!」

「ぁっ?!」

 

 

 その時すれ違った彼女の顔を改めて見たその刹那、俺は無意識に殺気を出し、フィールは目を見開き声に足らない叫びを上げた。

 

 

 ───お前は───

 ───貴女は───

 

 

 クスリ、と笑みを浮かべながらすれ違った彼女とのほんの一瞬の邂逅。

 いや、そんなはずは…無い。

 だって、彼女は目の前で────

 

 

「「死んだ、はず、なのに」」

 

 振り向くと、もう彼女は居なくなっていた。俺の元に一つの手紙を置いて。

 

 

「これは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 路地の暗がりに二人の少女が居た。

 

 

「渡してきたよ、柚葉。…全くあの少年、油断も隙もあったもんじゃないわ」

「そうでないと困る……さて、これで誤解を解ければ良いのだが」

 

 

 少女は嗤う。愛しいものを見る目で。

 

 ───運命がどう転ぶかは君に懸かっているよ、紅蓮。

 

 そして、我が儘かも知れないけどきっと

 

 

 

 

 

 ─────私を




新しいの書きたいけど書いたらヤバイ気がする。
…更新が。


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15話

気付けば一ヶ月も開けてしまい。
申し訳ありませんしたぁぁぁぁ!!

新しいやつ書こうかなぁ。とか、イベントの商品魅力的だなぁとかやってたらこうなりました。

失踪、ダメ、ゼッタイ。


「彼が記憶を失っているのには、何か理由があるはずなのに…」

 

 

 とある場所、とある建物の書斎にて、レーヴァテインが一人椅子に腰掛け頭を抱えていた。

 目の前の机には書類が散らばり、目には隈が出来ていた。

 この国を治める八人の賢者。その内の数人が居ない今、その内の一人の右腕であった彼女は自分の治める土地の仕事の合間を縫って調査を進めていた。

 だが、彼の書斎に残っていた書類は半分ほどが意味不明。交遊関係を洗って聞いてみても分からず、しかも知らない間に誰かと会っていたりしたようだが、それが誰かも分からず。

 

 

「手掛かりゼロ…なのよねぇ……どうしたものかしら。いや、正確にはゼロでは無いんだけども」

「そろそろ休んだらどうだ。…きっと彼はまたひょっこり出てくるんだろう。昔のように」

「でも…これ見てよ」

「どれどれ……なんだこれは」

「さっぱり」

 

 

 レーヴァテインが渡した日記。恐らく紅蓮の物だろう。半分ほどで終わっており、日常の取り留めの無い事から、政治の事まで幅広く。そして、最後のページにこう書かれていた。

 

『この計画について、誰にも漏れてはしていないようだ。終わった後、この日記を此所に置いておけば誰かが見るだろうが。

 俺は知ってしまった。その責任がある。だから彼奴の計画に乗ることにした。

 この日記が見つかる頃には終わった後かもしれない。だが、まだ俺が何も話していないのなら、この日記は見せないで欲しい。

 最後に、未来の自分に向けて。来るべき時に向けて。簡潔に書こう。この物語は────』

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

「で、結局どうだったんだい?」

「何が」

「麗しの生徒会長とのデートは」

「何で知ってんだ」

「ソネル・クーラ。非戦闘員の生徒会長補佐。宜しく!」

「はぁー……そゆことね」

 

 

 俺は溜め息を付きながら目の前に視線を戻す。

 たった三日しか経って無いんだが……

 

 

「何か言ってたか?」

「あれからちょくちょく君の話を聞かされるよ。楽しそうにね」

「そりゃ良かった」

「また付き合ってやってくれ。あの人も息抜きは必要だから」

「分かったよ」

 

 

 どうやらあの事は話してないか。

 

 あれから二日ほど。ランク昇格戦まで残り二週間を切り、出場する者達はこうして別メニューの特別授業が組み込まれる。この時期は自習や丸一日の講義が少なくなり、こうして練習を見学することも出来る。

 今日は俺とレティシアが戦った第一訓練場で、対人の戦闘訓練だそうだ。

 ソネルも暇なようで俺に付いてきており、こうして見学させてもらっている。

 

 一先ずレティシアにはここの所、ひたすら回避性能を上げさせた。

 ちらと紫乃梅さんとの訓練風景を見たことが何度かあるが、あれをやろうとはとても思えなかった。自分で言うのも難だが。

 

 俺も忙しく中々見てやれなかったが、それでも合間を見つけ色々教えた。ちゃんと成長しているようで、紫乃梅さんとララが嬉しそうに語っていた。今の件が片付いたら、しっかりと見てやらないとな。

 

 

「次がレティシアの出番だよ」

「あぁ」

「どんなことを教えたんだい?」

「まぁ、見れば解るって」

 

 

 レティシアともう一人、大柄な男子生徒が呼ばれ、互いに向き合い礼をする。今日の講師は瀬木先生。対人戦闘のエキスパートらしく、講師になる前は大分暴れていたようだ。

 

 

「双方武器を構えよ」

 

 

 レティシアは細剣を、もう一人は両手斧を構える。速さではレティシアが有利だが、両手斧はディフェンスにも使えるため、相手の技量や反応速度が勝負に影響するだろう。

 さて、だが家のレティシアは

 

 

「そんな柔じゃ無いんだなぁ…ククク。思い知るが良い!」

「紅蓮。本当に何を教えたんだい……」

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

「始めっ!」

 

 

 瀬木先生の合図と共に同時に踏み出す。

 相手のバルタさんは大柄な為に的は大きいが、一撃は重く、リーチは長く、一歩は大きい。

 前の私ならば距離をとって牽制して防戦一方。なんて事になっていたかもしれない。だけど先輩が来てから一ヶ月も経っていないが、私は色々な事を知る事が出来た。

 色々なものを身につけた。と言えるためにはまずこの練習試合で自分の力がどの位か把握しておく必要がある。

 

 

 相手がリーチを最大限に使い先手を打つとき、大体の相手の懐が空く。両手斧なんて大物を振るっていれば尚更。

 私は相手が斧を振るう瞬間の武器のリーチに入る直前、床を強く蹴る。相手の懐に潜り込み刺突。

 流石はAランクを目指すだけはあり、咄嗟に体を捻りながら防御壁で防御。掠るのみとなった。が、奇襲としては申し分無いだろう。

 

『対人戦の基本は主導権。主導権を相手に握らせないこと。それにはまぁ、初撃が肝心かな』

 

 と先輩が言っていたっけ。確かに今の一撃で流れはこちらに来ている。向こうは距離をとって鋭く尖った大きな石を何個か飛ばす。とても良い狙いで魔法の腕も高いことが分かるが、紫乃梅さんのナイフの雨よりはましである。

 ……端から見ていた先輩が引きつった顔をしていたのを覚えている。先輩にも少しやらせてみましょうか。

 

 迫る石の雨をしっかりと避けるものだけを見極め、滑る様に、踊る様に掻い潜っていく。

 当たらないと悟った相手は両手斧を構え直し、こちらに突進をする。

 横に避けようとした瞬間、相手は片足でブレーキを掛け、その勢いをそのまま遠心力に乗せ、胴を目掛け斧を横に薙ぐ。

 

 

「くっ…!速い!」

 

 

 咄嗟に脚に魔力を流し、体勢をを低くする。斧と地面のすれすれにしゃがんだ。

 頭上に斧が振るわれるその時、体のバネを総動員し魔力を脚に集め、斧の腹を蹴り飛ばす。こうして上手く行くと練習した甲斐があったと思える。

 地味ではあるが、先生も相手も驚いているのが見える。

 こうして自分より重い一撃、重い相手に力で勝つのは爽快感があり、癖になりそうではある。もっと爽快感、を求めてばっさばっさとモンスターを狩るのも良いかもしれません。

 これが、所謂バーサーカーと言われる人達の予兆なのでしょうか。

 さて、がら空きになった懐に向けて細剣の切っ先に集中し、閃光の如き一撃(周囲の人達談)を見舞うとしましょう。

 

 

「覚悟……!」

 

 

 

 ▼

 レティシアが謎の門を開こうとしていた頃、観戦していたソネルは驚きの声を上げていた。

 

 

「あれは…!よく理解させて実用させたなぁ」

「まぁ、詳しくは高等部三年の専門学でやるやつだしなぁ……話自体も高等部二年でやるやつだし」

 

 

 レティシアが今やったのは全身総魔力量の不変と呼ばれる理論の応用である。

 全身に通っている魔力を100%とすると、腕に15%づつ、脚に20%づつ、頭に5%、胴に20%と大雑把に分けられ、常に各部分に一定に通っている。

 細かく話すとエネルギーと魔力の関係や空間リソースの話などがあるが、まぁそれは置いておこう。

 

 ただ魔力を欲しい場所に流すより、全体の魔力出力を操作して、必要な場所に必要な分の魔力を流した方が効率も威力も高い。ただ、他を増やせば他が減るのでその部分が弱く、弱点となってしまうが。

 

 この理論の前提として、生物学、魔法物質理論、その他諸々。

 他にもレティシアにはいろんな事をサクッと教えてしまったが、俺の教え方というよりレティシアの理解力の早さが異常なのだと思う。いや、ララもぎりぎり理解してたな。て事は俺の教え方が上手いのか。流石俺。

 

 

「あんなのどうやって教えたんだい?」

「あー、あれはな……」

 

 

「うーん。さっぱりだなぁ……」

 

 

 あ、あれぇ…やっぱ良い後輩を持ったんだなぁ。

 っと、そうこうしている内に勝負も終わったようだ。圧勝、の一言に尽きる戦いであり、本人も楽しんでやれたようだし、見ているこちらも凄いと言える戦いだった。

 

 ““これは勝負であり命のやり取りではない””

 

 この大事なことを忘れなければそれでいい。さて、俺はその大事なことを忘れた知り合いと会うとするか。

 

 

 ポケットの中に入った手紙を自然と握りしめている自分がいた。

 

『三日後、学園外の森の中で話をしましょう』

 

 今さら、何の用だって言うんだ…。ただ、手紙を見て分かった。俺とフィールが思っている奴ではない事は確かだ。やはり見間違いではなくあいつは、ファリアは俺が間に合う前に目の前で、死んだ。恐らく俺達の目の前に現れたのは

 

 

「彼女と契約していた精霊、ビクラディア。真名は確か」

 

 破滅の悪魔、アバドーンだったか。




今回は幕間の物語的な感じですね。

次回、命がけの会話。


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16話

クーリスッマスが今年もやってくるー。楽しかった、出来事を消し去るように♪

深夜テンションですはい。
そしてまっこと遅れてますね更新。

いや、べつにね?FGOのエレシュキガル狙って七十連してキャスギル三体出たモヤモヤですっかり忘れたわけでは無いですよ?


 時刻は草木も眠る丑三つ時。俺は先程まで自室でこの後の事について考えていた。

 対話の時間が刻々と近づいている。いくら顔見知りであり、あのような局面を切り抜けた仲だったとしても、相手は今は格上の眷属。そして立ち位置的には敵……になるんだろうか。

 兎に角、こちらが一歩間違えてしまえば何が起こるか解らないのは事実。柚葉の差し金である以上、命を狙われるって事はなくとも警戒しなければならない。

 

 こういうやり取りは月夜の方が得意なんだがなぁ……なんて嘆きながらふと外を見ると、ひらりと舞い降りた黒い小鳥が窓を三回つつく。合図である。

 はぁー……腹を括るとしよう。

 紫乃梅さんにだけは、絶対ばれないように抜け出さなければ面倒な事になりそうである。俺はばれないようにそろりと窓から夜の空を駆けた。

 

 

 

 ▼

 

「逃げずに来たのね」

「参考までに聞いておくが、来なかったらどうしてたんだ?」

「その時は……地の果てまで追おうかしら」

 

 

 ……怖っ。

 

 そんな軽口を言いながら彼女はあざとく振り向きこちらに微笑みを向ける。瞳の奥は全てを見透かすようで、顔に張り付いた仮面は何も見させてはくれないようだ。

 相変わらず白髪に少しの黒髪の混じった特徴的な髪の毛を持つかつての主、リーティの姿でいた。

 

 

「相変わらずその格好かビクラディア」

「馴れちゃって」

「で、何の用だ?」

「……単刀直入に言うわ。もうすぐ、世界は破滅する」

「は?」

 

 

 あまりに突拍子も無いことだったので、間の抜けた返事をしてしまった。そして、それを俺に伝えるということは俺に何か出来ることがあるのだろうか。

 彼女は真っ直ぐにこちらを見ており、嘘を言っている様には一切見えない。

 

 

「……滅びるとして、俺にどうしろと」

「貴方の内に()あるでしょう?あれを無くせば貴方の記憶も力も戻る。そしたら解るはずよ」

「真偽が解らんな。大体、何故そんな情報を俺に流す?そちらのメリットがまるっきり無いように見えるが」

 

 

 俺が至極真面目にそう問うと、彼女は目を丸くして数秒固まり、それから堪えきれず笑いだした。

 

 

「ぷっ…あはははっ」

「?」

「貴方勘違いしている様だけど、私と貴方はあくまでも対等どころかこっちから頼みたいぐらいよ。今はそう思えなくても、絆ってのはそんなに脆いものじゃないわ」

「はぁぁ……警戒して損したよ」

「貴方らしいんだけどね」

「で、話を戻すが。……どうにかなるものなのか?」

 

 

 そこまで言ってふと思い出す。はて、レーヴァの時にはあっさりと鎖が解けたのは何故なのか。レーヴァ以外の事例が誰なのか、そもそも人物なのかさえ解らないため何とも言えない。

 ……駄目だ、情報が少なすぎる。核心を突く何かが欲しい。

 

 

「その鎖は『悪魔』の能力。私だって同じ悪魔ですもの。嘘は言わないわ。……鎖を解く簡単な方法は一つ、鍵を見つけることね」

「鍵ね……」

「何が鍵になっているかは、柚葉と記憶を消される前の貴方しか知らないから何とも言えないけれど」

 

 

 彼女はこちらに近づき、とん、と胸の中心に指を当てる。その顔は嗜虐的な笑みを浮かべ、こちらの瞳を真っ直ぐに見ていた。彼女の瞳の奥はとても暗く、吸い込まれそうになる。

 背中をつ、と嫌な冷や汗が流れる。

 

 

「私ならこの鎖を無理矢理破壊することが可能よ。破壊の悪魔ですから。それで貴方の記憶も力も戻るけれど……どうする?」

 

 

 悪魔との会話で大事なことは、相手がどうであれ何であれ、契約には裏があること。俺は一瞬の逡巡の後、小さく頭を振った。

 

 俺がここでイエスと言えば望み通りこの鎖を破壊してくれるのだろう。それが契約だから。だが、それだけが契約であり他の事は一切組み込まれてはいない。

 何があっても、『そちらが聞かなかった』で流される。悪魔とはそういう生き物だ。

 彼女が優しい悪魔で良かった。じゃなきゃ『どうする?』なんて普通は聞いてこない。

 

 

「いや、俺と柚葉が選んだ道だ。止めておくよ」

「随分信頼してるのねぇ……ちょっと妬けるかも」

「嘘つけ。そんな事微塵も思ったこと無いだろ」

「ま、取り合えず合格?正解?何にせよ命拾いしたわね」

「命拾い?」

「タロットとはいえ悪魔のカード。悪魔であることに変わりはないわ。柚葉のことよ、裏切られたらどう思うことか」

「つまり……」

「ばんっ!てね」

 

 

 あったかも知れない未来を脳裏に浮かべてしまい、少し震える。あいつ面倒だからなぁ……過去を少し振り返り溜め息が出る。

 とはいえ正解で一先ず安心した。話を続けよう。

 

 

「……時間が無いわね。手短に言うと、鎖についてはこのまま流れに任せていれば因果が何とかしてくれるわ」

「そかそか」

「……後、ちょくちょく連絡寄越しなさい。はいこれ」

「なんだこれ?」

「連絡術式」

「また面倒な術式を…お疲れ様です」

 

 

 連絡術式は空間魔術の一つ。自作するには少々複雑難解である。何でそこまで……こいつの考えていることは昔から読めない。

 

 

「最後に。貴方の記憶の事だけど……ちっ、厄介な者を引き連れてるわねっ」

 

 

 そこまで話した時に、こちらへ知っている気配に気付いて……って、速っ!

 通りで何か焦っていると思った。ばれていないと思ったのだが。高速で何かがこちらに向かっており、それが見えるか見えないかの時こちらに向かって何かが飛んできた。

 

 

退魔滅却(デモンズクラーッシュ)!!!」

「危なっ!」

 

 

 距離にしておよそ五十メートル無いぐらい。昼間に見ても小さいであろうにこの夜の暗がりに寸分の狂いもなく俺達の方へ豪速で飛んできた大きめのナイフ……いや、最早小さめの片手剣をぶん投げてきた。

 その剣を咄嗟に俺が避ける。俺の肩を掠めていった先、ビクラディアの顔面に飛んでいき、彼女はその刃を両手で挟み込み勢いを止める。破壊できない辺り、退魔の効果が付いているのだろうか。一介のメイドが持つものでは無いよね。うん。

 

 

「この紫乃梅一生の不覚」

「その前にさ、射線上に俺居たよね」

「避けてくれると信じてました」

 

 紫乃梅はそう言うとビクラディアの方へ何時でもナイフで斬りかかれる体制をとる。

 ビクラディアは何処か諦めたような呆れたような表情をし、俺の方を見た。

 

 

「変わらないわねぇ……紅蓮、大ヒントよ。貴方は向こう側での記憶の一部がが無いのよね」

「あぁ」

「貴方は向こう側で紫乃梅と会っている。無作為に消されたにしては私には共通項が見えるようにも思えるわ」

「それが」

「ま、全部やってみれば解るでしょ。それじゃね」

 

 

 ▼

 

 

 誰が敵で誰が味方か。少しこんがらがってきた。でも、今日分かったことは少なくとも彼女()は信用できるかもしれない。

 全く、あの時の俺は何を残して何を託したんだか。我ながら面倒くさいな。あ、世界崩壊について聞くの忘れた。うっかりしてたぜ……うっかりじゃ済まないな。

 一階のリビングで今後の事に唸っていると、紫乃梅が申し訳なさそうにこちらに来た。

 

「敵を逃がしてしまいました……」

「良いよ。あれと殺り合うには今は厳しいしな。それより、紫乃梅、お前向こうで俺と会っていたのか?」

「別に隠すつもりでは……」

「んにゃ、別に話したくないのなら無理しなくて良い。でも、何時か話して欲しい」

「いえ、ただ覚悟の問題です。今日はもう遅いですから明日必ず話します」

 

 

 そう言って微笑む彼女はなんだか少し悲しそうに見えた。俺の気のせいかもしれない。自意識過剰かもしれない。でも、俺に微笑みかける彼女の影を見ると心が痛んだ。

 

 嘗ても同じ情景を……見たような気もする。気のせいのような気もする。

 

 

「ま、何とかなる。何とかしてみせる」

「お優しいですね」

「優柔不断なだけさ」

「……」

「おやすみ」

「はい。お休みなさい」

 

 

 ▼

 

 

 翌朝の早朝。紅蓮の寝ている部屋にそっとだれかが入る気配。この建物には紅蓮と紫乃梅しか居ないので、勿論紫乃梅だ。

 

 彼女は彼の寝顔を愛しそうに見つめ、頭を撫でる。紅蓮が、んっ…と身動ぎし、また穏やかな顔でスヤスヤと眠る様はまだ、子供のように見える。

 

 

「私は何時でも、あの時から貴方様の従者です……たとえ世界が変わり、貴方の記憶が無くったって」

 

 

 ……きっと、全てを話してしまえば貴方はレティシア様どころではなくなるかもしれない。そう思うと、中々言い出すことが出来なかったが、もう覚悟は出来た。彼ならきっと、何とかしてしまう気がした。

 

 

 カーテンから漏れた朝日に二人が照らされる。紫乃梅はそっと彼の頬に口づけをした。

 

 

 

 

 ▼

 

「僕は君に心から惚れた。これは嘘偽りじゃない」

「あら、嬉しい」

「……テルーヴァにも損は無いんじゃないかな」

「そうですね」

 

 

 紅蓮が悪魔との対話をしている頃と同刻、豪華な客間でテーブルを挟み男女が互いに別の思惑により不適な笑みを浮かべていた。

 

 

「では、僕と婚約を交わしてくれるんだね?」

「……ふふふ。誰が受けると?」

「なっ?!」

「あなた方が只の政略結婚として来たならまだ考えたかもしれないわね。……考えただけですけど」

 

 

 断られるとは思ってなかったのか、男の方は驚愕を隠せず目を見開くが、直ぐに平静に戻る。

 そんな様子を見て女の方は笑みを一層深くした。

 

 

「何故断るんだい?」

「そんなもの、私が他の方に想いを寄せているからに決まってますでしょう?」

「……あはは!より君が好きになったよ。こうでなくちゃ」

 

 

 そう言った男は一つある提案をした。

 

 

「良いでしょう」

「本人に聞かなくて良いのかい?」

「通じ合っていますもの」

「そうか。じゃあ今度は昇格戦で会うとしよう」

 

 

 そう言って男は席を立った。男が出ていった後、女の方は思わず深い溜め息を吐き一つ不安を溢した。

 

 

「……紅蓮が断ったらどうしよう」




浮かんでは消えていく没ネタ。いつか使うだろうか……


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17話

大分遅れましたね。
いや、邪ンヌがさ……邪ンヌがさ。来ないんすよ。

いや、ちが、止めて!無言で殴んないでって!


では、どーぞ。


「オープンスキルとクローズドスキル……でしたっけ」

「前にポロっと話しただけなのに、良く覚えてるなぁ」

 

 

 翌日、俺はレティシアと何時ものように講義をしていた。ララの方は確かクエストがあり二日、三日居ないとか。昇格戦は見に来るとか言ってたな。

 

 結局、紫乃梅との話は夜にすることにした。明日はレティシアも昇格戦出場者の特別授業の方に行くので一日フリーなのでその方が動きやすい。……何だか嫌な予感もするし。

 

 今は兎に角、他の昇格戦の参加者に比べてレティシアの戦闘経験の少ないのをどうカバーするかという事。

 そこで思い付いたのが、戦闘経験が駄目なら戦闘技術を端から吸収させてしまおうという、俺の経験とレティシアの覚えの早さだから成せる技であった。

 

 

「他の環境に左右されないものがクローズドスキル、他の環境に大きく左右されるのがオープンスキルなんだが、どんなに強力な一撃を撃つことが出来ても刻々と変わる戦況の中でその時に最大の真価を発揮することは難しい」

「どんな時でもその時最大の一撃を撃てるようにという事ですか」

 

 

 さすが優等生。理解が早くて助かる。

 さてと、正直こればっかりは理屈じゃどうにもならないので、……ふむ。早速経験の方を積ませよう。

 

 

「ま、口で言ってもしょうがないし、俺と剣の立合いをしてもらうかな」

「えぇ……先輩この間の一件で強くなったとか」

「まぁ、魔術回路の詰まりみたいなのは無くなったけど、大丈夫だって本当にただの立合いだから。魔法は無し」

 

 

 レーヴァ辺りから聞いたのだろう。

 確かに記憶を取り戻したと同時になんと言うか自分の欠けたピースがはまるような感じがした。確認してみると魔力量や何やらが強化と言うか、推測するに元に戻ったという方が正しいのだろうか。まぁ、元からそんなもの無くても平均並みには有ったから別に良いんだが。

 

 

「……さーてと」

「先輩、悪い顔してます」

 

 

 そんな顔してただろうか。バトルジャンキーだと思われたくは無いが、久し振りに対人戦をするから少し楽しみではある。

 手加減はするつもりだが、まあどんな状況下でもと言うぐらいだからちょっと強めにやるつもりではあるが。

 双方剣を構え距離をとる。このコインが地面に着いた瞬間がスタートだ。

 

 ……どれくらい動けるだろうか。自己強化(バフ)をかけないでやるのは久し振りだ。まぁ、レティシアには見切りとか色々出来るし大丈夫だろう。基礎的なところはレティシアに劣るけれど、潜り抜けてきたものが違うから問題ない。

 

 

 目を閉じる。息を吸い、吐く。目を開ける。

 

 

 ゆっくりとコインが地面に落ちていくように見える。そして地面に着いた─────

 

 ヒュン。そんな軽い風切り音と共にレティシアの細剣が眼前に現れる。

 

 縮地?!んなもんいつ覚えたんだ。プロが使うような対人戦闘スキルだぞ!

 レティシアの不敵な笑みに苦笑いを返しつつ、体を捻りながら全身のバネを使い距離をとる。……これじゃあどっちが教えられてるか分からないな。

 

 刃を潰した訓練剣を逆手に持ち、体制を低くして目を閉じる。

 風の音、呼吸、心音、匂い、気配。その全てが伝わってくる。さて、スキルを使わなくてもここまでいけるなら十分だな。

 俺の姿が掻き消える。縮地なら俺だって使えるもんね!

 

 レティシアが攻撃をする前に剣をぶつける。レティシアは体を回転させ、舞うように次の一手を仕掛けてくる。

 端から見れば常人なら何が起こっているかなどほぼ分からないだろう。

 

 剣を交えて分かったが、彼女はちゃんと見ている。俺の太刀筋、月夜のフェイント、紫乃梅の戦いの組み立て方。

 今まで見てきた沢山の人達の長所を吸収しながら、自分の長所を伸ばし、短所を補っていく。これで十四歳とか恐ろしいことこの上ないな。

 

 だが、経験の差はある。

 

 

 フェイントにフェイントを被せることで、レティシアの判断に一瞬の揺らぎが生じる。

 その隙を突き、左の肩をついと押してやる。見た目では強くなさそうだが、体重や力のかけ方で全力で殴るのと同じ程度の威力は出せる。断っておくが今回はバランスを崩させるのが目的なので押しただけだ。

 レティシアはバランスを崩すが、俺はそのタイミングで狙いやすい隙を作ると、レティシアは左肩を押された反動で右半身を捻るようにして下から切り上げる。

 

 オープンスキルは、どんな体制でもしっかり攻撃が一定の威力で打ち出せる。それは対人戦でとても有利になる。これは色んな状況下を産み出して練習しなければ出来ない。

 普段の紫乃梅のナイフの雨を避けているうちに身に付いたようだ。……やっぱり恐ろしいなアレ。

 

 俺は半身だけ避けて、体制を崩したレティシアを受け止め首元に剣先を付ける。レティシアは目を丸くした後に、負けた事実で悔しそうにする。その後ハッとしたような顔をし、落ち着いた様な顔を赤くしだした。……忙しいやつだ。

 

 

「怪我は無いか?」

「うぇ?!あっ、はい!」

 

 

 サッと飛び退いたレティシアが何だかそわそわする。あれ、何か悪いことをしたかな?

 そう思い詫びをすると「べ、別にいいんです。有難うございます」と言いながらえへへーっと笑う。うん、びしょうじょなだけあってすっごく可愛い。いやーなにさせても様になるな。眼福です。

 

 

 

 先程の戦闘を参考にふむふむと頷いているレティシアに、一枚の紙を見せる。

 

 

「これは今回の昇格戦に出ることがほぼ確実な選手達の中で有力株の奴等を集めたリストだ」

「どこでこんなものを……」

「ちょっとな」

 

 

 ルドビアに調べて戴きました。あいつ仕事が早いのなんの。後でお菓子の差し入れでもするか。

 通常選手は前日にスケジュールと共に発表されるが、ルドビアは顔も広ければその手のプロの知り合いも多い。

 

 改めてその紙を見ると、今回は異常な激戦になることが容易に予想できる。

 Aランクともなれば、一つの部隊、少なくとも三人小隊(スリーマンセル)の部隊長にはなるので、それなりの実力者が揃うが、これは幾らなんでもヤバイ。

 

 北央クルト魔導訓練学校

 リゲン・エドバーグ

 レブン・トーマス

 鬼怒川 三笠

 

 西方バルダート学園

 リミリ・ルーミル

 五月雨 みくり

 ダンテス・ベルダット

 

 東都竜峰寺魔導学校

 竜峰寺 八雲

 熊耳 しらぎ

 レークス・ニルヴァレン

 草薙 ミト

 

 王立リンド魔導学校

 物部 霞

 シルヴィア・ホワイト

 アルマ・テナー

 アクア・ミスティ

 

 帝都魔法学園

 二人居るが、情報なし

 

 公都聖テルシェ魔導学園

 ノルン・リーエ

 ヴィシェス・テナート

 アーティ・サブルテット

 カリナ・シャルロット

 

 計二十人

 

 

 毎回平均して実力者は一学園に一人か二人なのだが、今回は騎士団長の息子とかどこかの王女とか、そんな名のある奴等が今回は以上に多い。この代は黄金世代なのかもしれない。

 それにしても何人かこの中に見知った顔も居るからまだ対策の立てようがあるのだが、この情報無しが一番怖いかもしれない。

 

 

「多い……ですね」

「まぁこの中にも知っているやつは居るから、それと共闘するのも良いかもしれないな」

 

 

 別の用紙に、その魔導師達の特徴などが纏めてあるのでそれも一緒に渡しておく。さて、一次試験がどの様なものかは当日でないと分からないので様々な対策を練っておくとしよう。

 

 

「さて、今回の難易度の高さが分かったところで!」

「?」

「とっておきを教えようか」

 

 

 

 昇格試験まで、あと四日

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 俺が自室で書類整理をしていると、コンコンと控えめなノックがされ、入室を促すと紫乃梅が入ってきた。

 月明かりに照らされたその顔は何か覚悟を決めたようだった。

 紫乃梅を椅子に座らせお茶を出そうとしたら止められた。そう言えばこの人メイドだったわ。

 暫く何とも言えない静寂が部屋を包んだが、紅茶で口を湿らせ、意を決して口を開く。

 

 

「単刀直入に聞こう。向こうで俺と何があった」

「色々、ありましたよ」

 

 

 色々ってなんだ。そんな顔を赤くしながら言われると余計な不安に駆られる。……大丈夫だよね?間違いとか無かったよね!?

 

 

「まぁ冗談はこれぐらいにして。過去を話すのですから、あなた様の事は昔の呼び方で呼ばなければいけませんね」

「何て呼んでたんだ?」

「こう呼ぶのは久方振りですが、やはりこちらの方がしっくりと来ます」

 

 

 彼女は一呼吸置いてから親愛なる眼差しでこう呼んだ。

 

 

「我が主、マスター、と」




過去話をちょくちょく書き直してあるので、よろしかったら宜しくお願いします。


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18話

荒野行動、キルが取れない。


やっとー、かーこーへーんー。

2話分ぐらい続きます。


 精霊界:ウルザルブルンにて

 

 

「我らに対して援助は出来ないだと?」

 

 

 ヴァルキュリア達の会議から戻ったのでお茶でもしようと思って来てみたら、知らない男がウルド姉様と話をしていた。

 どこの派閥かは知らないが、姉様が協力しないとそう言うならば私は従うだけだ。大体こうやって手を組むのを断るのは賢者様の敵だったりすることが多いので別に構わない。

 

 私達三女神は、表向きは中立を保っているようにしているが、派閥で言えば基本的に八賢者と呼ばれる精霊族の派閥に属している。現に私が素性を隠してヴァルキュリアに属しているのもその一つだ。

 他にもアース神族やらヴァン神族やら二八議会やら派閥が幾つもあるので、度々境界線で戦いが起こる。要するにここら辺の事情は下界の人間達とそこまで変わらないということだ。

 

 

「ふん。我等に楯突けばどうなるか覚えておくといい」

「あまり事を荒らげないで頂きたいですね」

 

 

 考え事をしていたら、いつの間にか話し合いは終わったようでそんな言葉を交わして男は行ってしまった。こういう政治的な部分は正直ウルドが一番上手いのでヴェルダンディ姉様と私は丸投げしている事が多い。どちらにせよ、今更首を突っ込んだところで力になれるのかは微妙なところですが。

 

 

「何の話だったのですか?」

「あら、聞いていたの?生芽」

 

 

 盗み聞くつもりじゃ無かったのだが結果的にそうなってしまったので素直に謝るとウルド姉様は、いいのよ。と言って私に席を進めてきた。

 基本的に役職(ポジション)を与えられた者は役職名で呼ばれるが、ウルド姉様は他人行儀で嫌だと自分だけは親しい者を名前で呼ぶ。いつもスクルドと呼ばれている分少し反応が遅れたが、元々お茶をするつもりでこちらへ来たのでテーブルに持ってきた茶器を置き紅茶を淹れる。

 

 

 暫く他愛のない会話を楽しんでいると、向こうの方で一人でボーッとしていたヴェルダンディ姉様から絶叫に近い声が聞こえた。

 

 

「あーーー!!!けーんじゃーっ!」

「ぐふぅっ!?」

 

 

 頭から追突していった姉様を賢者と呼ばれている彼が真正面から受け止めた。結構なダメージを受けている様だが、いつもの事なので問題ない。

 賢者と呼ばれるのは八人居るが、あの他人に関心をあまり持たないヴェルダンディ姉様が自分から呼ぶのなんて一人しか居ない。

 

 

「うぅ……いったた……いつも元気だなヴェルは。お久しぶりですね、ウルドさん」

「まぁっ!暫く何処かへ行っていて音信不通だと聞いていたから試しに連絡したら本当に何も帰って来なくって少し心配したのと同時に貴方の仕事がこちらにまで回って来はじめて大変だったというのによくもまぁ顔を出せましたねぇ」

「あっはは……はぁ、その件についてはレーヴァにこってり搾られたよ……」

「その前に言うことがないかしら?」

「申し訳なかった」

「違うわ」

「………ただいま」

「お帰りなさい♪」

 

 

 彼は八賢者の内の一人、火の賢者。

 実力もあり、人望もあり、仕事もそれなりに出来る。だが、霧羽 紅蓮として下界に勝手に降りて色々やっては何していたんだと怒られているのを何度も見る。中々やんちゃな方の様だ。

 

 彼は時折と言うか頻繁にこちらに遊びに来てはお茶していったり話をしたり聞いたり、厄介事を持ち込んだりと完全に馴染みきっており、今や私達の一員のようになっているのである。

 一体いつ仕事をしているのやら。……レーヴァさんや他の賢者さんに押し付けてそうですね。

 

 

 ヴェルダンディ姉様は先程から彼のお腹に頭をグリグリと擦り付けて甘えており、紅蓮様はそれを頭を撫でて宥めている。

 身長的には鳩尾の辺りに頭がくるので、彼女の強烈なタックルがいつもそこにクリーンヒットしていると思うと凄いなぁと感心してしまった。

 

 彼にも席を勧めお茶を出す。ヴェルダンディ姉様はいつの間にか彼の膝の上にちょこんと座ってマイペースにお菓子を食べており、彼が頭を撫でると嬉しそうに彼女の翠色のツインテールが可愛らしくピョコピョコとゆれている。

 

 ………………羨ましい。

 

 

「それで今日は何の様なのかしら?」

「最近、一部過激派の活動が活発だから注意した方がいいって忠告しにな」

「あなたが直々に言いに来るのだから相当なんでしょうね」

 

 

 聞けば近頃精霊族の方で過激派集団が幾つも現れ、それが一つに纏まってきているらしく精霊族の大派閥は共闘全線を張って警戒しているらしい。

 魔族とは争っているのを見るが、同族で争うのはあまり聞かないので中々珍しい。だがどうせこれも魔族の口車に乗せられて煽動されているだけだろう。

 

 大体、ここが攻撃されれば大部分の精霊族を敵に回すことになるだろうし、そんな不利なことはしないだろうとは思っている。

 ウルド姉様も同じ事を考えていたようで同じような趣旨で紅蓮様に話していが、彼はそうか……と呟いて考え込んでしまった。

 

 

「そう言えば先程の方は……」

「そうでした。先程、私達に助力を求める輩が来ましたね。確か、金の楔とか言ったかしら」

「正にそれだよ」

「まぁ、警戒ぐらいはしておいて損は無いわね」

「そうしてくれ。……そういえば」

 

 

 彼はそう言って自身の魔法倉庫に接続し、一本の剣を取り出す。

 その剣は、くすんだグレーの色をした刀身の中心に赤黒い線が入っている一見地味な剣だったが、その剣に魔力を流すと魔力回路が浮かび上がり何とも禍々しい色になった。

 

 

「紫乃梅、この魔力回路弄れるか?」

「……また凄いものを作りましたね」

 

 

 彼は知り合いと共にこう言った銃火器や剣、色んな道具を作ったりもしている。言わば男のロマンと少年少女の夢の結晶なんだとか。

 作ったと言ってもヘパイストスにオーダーをして彼の作ったものに魔力回路を書き込むらしいのだが、彼の頭の中は正直理解出来ない。私より後に魔法学を学び始めたというのにもう追い抜かれそうになっているし、賢者となってからはその知識の探求に拍車が掛かっているように思える。

 

 

 改めて渡された剣の魔力回路を解析してみる。こちらの分野はまだ私の方が上だと思うが、何だか自信が無くなってきた。

 魔力増幅回路に変換術式、……ここで切り替え、刃を射出、自身の魔法をそのまま……加速度術式に還元回路、ここでリソースを……どういう接続なんですかこれ……うわぁ、知らないですこんなの……何でしょうこれ、私、気になります。

 

 

「魔剣かなにかですかこれは。古代兵器みたいになってますよこれ」

「そんなつもりは無かったんだが。そんな事になってんの?」

「大体、こんな接続で何故機能するんですか」

「それはだな……」

 

 

 呆れ返るウルドと、とっくに飽きて寝てしまったヴェルダンディを置いてきぼりにして、私と彼は長いこと議論を白熱させてしまった。

 

 

 ▼

 

 

 

 

 その夜、私は紅蓮様から預かった魔剣の調整をしていた。外は星が煌めいており、気付けばもうこんな時間までと驚いてしまった。

 集中すると周りが見えなくなるのはいけませんね。悪い癖です。いや、今回の場合この剣の複雑な魔術回路のせいな気もしますが。

 

 

 姉様方の様子を見に行くとウルド姉様はもう寝てしまったようだった。最近多忙でしたからね……たまには手伝いましょうか。

 ヴェルダンディ姉様は相変わらず自由なようで、何処かへ行ってしまっていた。まぁ何時もの事です……気にはなりますが。また今度後でも尾けてみましょうか。

 

 

 何だか目が覚めてしまったので、外を歩き見晴らしのいい広場のような所で夜風に当たる。この広場には桃の木が植わっており、仄かに甘い香りに心が安らぐ。ちらと遠くを見るとそこには紅蓮様が同じ様に遠くを見てボーッとしているようだ。

 こちらに気づいてはおらず邪魔してもどうかと思ったが、何だか誰かと話したい気分だったので話しかけることにした。

 

 

「どうかなされたのですか?」

「いや、少し夜風に当たりにな」

 

 

 私が話しかけると彼は特に驚いた様子もなく、ちらとこちらを見てまた視線を前に戻した。その何だか疲れたような顔とそれを気付かせないようにする彼の気遣いに、私は少し困った様な笑みを返した。

 

 

「あまり無理してはいけませんよ?」

「しないさ」

「前から貴方の考えている事は良く分かりませんね」

「そうか?」

「何かあったら何でも相談して下さい。……約束、ですよ?」

「約束、ねぇ……」

 

 

 彼は言葉を濁す。出来ない約束はしない質なのが分かっているので心配です。彼には一体何が見えているのでしょうか。

 

 

「……なぁ、生芽」

「?」

 

 

 紅蓮様に改まって名前で呼ばれると何だかドキドキしますが、彼は生粋の朴念仁なのできっと私が考えていることなんて……伝わらないのでしょう。

 

 

「…っ、………ありがとな」

 

 

 ふるふると首を降った彼から出たのはそんな言葉でした。結局彼は全て飲み込んでしまったようです。少し悲しいですが、さっきよりなんだか良い顔になっているので良しとしましょう。

 

 暫く無言で夜景を見入ってしまいました。彼とのこわな穏やかな時間は久し振りです。こんな日々が続けば良いですね。




っていうフラグね。えぇ、はい。


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19話

さらっと書くはずが結構熱が入った気が……


話が進まない。





 暗い、暗い海の中のような感覚。私は一体どうなってしまったと言うのか。思い出そうとするが、段々と意識と記憶がぼんやりと掠れていく。

 このまま沈んでいくのも良いのかもしれないと、冷たくなってゆく心と体を感じながらそんな思考が頭を過る。

 

 光も注さず、音も無く、暖かさは消え去った。

 

 

「……!…い、……ぁ」

 

 

 ふと彼女が感じたそれは、失われつつあった彼女の意識を浮上させる。まだこんなところでは終われない。

 必死に声を出そうとするが音一つ出ず、上がろうとする体は変わらずゆっくりと沈んでいく。

 

 

 

 彼女の想いは、まだ─────

 

 

 

 ▼

 

 

 

「生芽が居なくなったぁ?!」

「そうなの。大体、何も言わず居なくなるなんて今まで無かったのだけれど……なのに……」

 

 

 ウルドが珍しく血相を変えて俺のところに来たと思えば、衝撃の発言をした。なんでも少し出掛けて帰ってきたら、淹れかけの紅茶を残し忽然と姿を消していたらしい。確かに置き手紙もなく何処かへ行くような奴ではないので、十中八九何かあったと考えるのが妥当だろう。

 

 俺の背中を、つーっと嫌に冷たい汗が流れた。最悪の事態が頭を過る。

 心当たりがあるとすれば、そんなものは一つだけ。

 

 

「金の楔……か。あるとすれば」

「ど、どうしたら……うっぐ」

「取り合えず落ち着け」

「えぅ……すんっ……」

 

 

 

 涙目になってパニック寸前のウルドを抱き寄せ、その銀髪を撫でて落ち着かせてやる。

 不機嫌な時のヴェルは大体こうすると機嫌が元に戻るか殆どの場合は良くなるので、姉妹だし同じ様に落ち着くんじゃないかと思う。

 

 

「ん、もう大丈夫よ。ありがとう」

「そうか。良かった」

 

 

 その割にソワソワしているが、まぁ冷静な考えが出来るようなので彼女の言うとおり大丈夫なのだろう。

 

 この状況に今すぐ俺の所の戦力を叩き込みたいところだが、不確定情報がだけにおいそれとそんな事をすれば自陣の守りが薄くなるので、こちらも危うくなる可能性がある。

 

 

 大体、彼女達の住む場所から一番近いのが中立国家であるノルド皇国という国なのだが、ここで俺が力を貸してしまえば何故、一番近い所ではなく三番目位に近い国の戦力を当てにしたのかと怪しまれ、表面上中立を唱っている彼女達の今後に関わってくる。

 

 そんな事を言っても事態は一刻を争う。取り敢えずウルドにはノルド皇国に助力を求めに行ってもらった。ウルド達三女神の立場の方が上なので、聞き入れてもらえるだろう。

 

 

 さて、公的に出来なければ私的に動くまで。取り敢えず調整中のあの剣を取りに行って、そのまま敵本部へ殴り込むか。

 いや、あくまで隠密に行くか。ノルド皇国の軍が動くだろうし、下手に騒ぐと余計に事態が悪化しそうだ。

 

 

「一人で行くつもり?」

「盗み聞きは感心しないな」

「たまたまよ」

 

 

 俺との契約(コントラクト)で、無線のように使って聞いたのだろう。一応、契約者との念話の部分の魔術回路を弄れば出来ないこともない。なので、こうして盗聴や、現在位置取得なども出来ないこともない。大図書館でその様な魔術の書物をこの間レーヴァが読んでいた。

 

 つーか最近、契約の主従が逆転しかけてきた気がする。

 

 ……話を戻そう。

 

 

「質問に答えて。……無茶しないで」

「はぁ、分かったよ。だが、少数の方がどちらにしろ都合が良い」

「ノルドと金の楔の主力がぶつかっている間に迂回して奇襲。自然な感じでノルドの軍に回収させる流れでどうかしら」

「あぁ、取り合えず今すぐここに呼べる戦力をあと二人呼んできてくれ。ウルド達の家で落ち合おう」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間に、「分かったわ」と言いながらレーヴァは姿を消した。うちの部下はいつも仕事が早くて助かる。さて、手荒な真似はされないとは思うが……何だ、この胸騒ぎは。

 その不安を頭を振るうことで振り払い、俺も準備を急いだ。

 

 

 ▼

 

 

 

「いや、至急なのは分かるんだが……」

「私達じゃ、不満?」

 

 

 集まったメンバーは、俺、レーヴァ、ヴェル、そしてヴィシェス。

 

 ヴィシェス・テナートはノルド国で一、二を争う実力者で、樹の賢者。八賢者に漏れた為にこちら側じゃないが、どちらかというと友好的なのでそこは問題ない。無いのだが……

 

 

「ここに居て大丈夫なのかよ」

「大丈夫だから居るのですよ?」

「いやばれたらマズイだろ……」

 

 

 ヴェルはウルドとすれ違いでこちらへ、ヴィシェスはノルド国からの命令で近くを移動しているところを捕まえたようだ。ヴィシェスはノルド国には直ぐには向かえないので、現地に直接向かうと伝えたらしい。

 

 これだけの面子を揃え、敵の大部分が居ないとなれば、大概の事は何とかなりそうだが相手の構成など多くが不明な分油断は出来ない。

 

 

「鴉葉ちゃんは?」

「月夜が居れば楽だが、黄泉まで向かう時間はない」

 

 

 確かにヴェルの言う通りあいつは広範囲系魔術に長けているので感知や相手の目を欺くことも楽だろうが何分遠いので、今回は呼べなかった。

 

 

「あ、着いたようです」

 

 

 見るとそれは、まるで要塞だった。認知阻害の結界でも張っていたのだろう。でなければこんなの気付かないわけがない。これを真正面から攻略し、恐らく相手の戦力の殆どを引き受けてくれているノルドの軍に密かに頭を下げておく。

 

 そうしている内にヴェルがスクルドの魔力を探知した。この下に居るようだが、何かに覆われているのかうっすらとしか分からないようだ。

 

 

「さて、行くか」

 

 

 気付けば向こうから微かに爆発音などの音が聞こえてきた。どうやら向こうで戦闘が始まったらしい。

 

 

「今の内だな」

「「「えぇ」」」

 

 

 

 ▼

 

 

 

 暫く進んでも、静かなもので気配が全くしない。静かだ。静かすぎる。

 罠?そんな考えが頭を過る。

 

 そんな事を考えていたら、いつの間にか開けた場所に出た。その時、暗い奥の方からガサッ、ガサッっと音が聞こえる。雑魚なら押し通らせて貰おう。なんて、そんな期待はいとも簡単に裏切られた。

 

 

「なんて量なの……」

 

 

 魔物、精霊族、魔族、ホムンクルス、敵、敵、敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵。

 

 

「有象無象ばかりね」

「押し通らせてもらいますわ」

 

 

 ヴィシェスとレーヴァがこちらに一歩前に出て、振り返りこちらに目を合わせてくる。先に行けということなのか……この数を任せろと?たった二人に?

 一瞬そう思ったが、この二人だった。何ら問題なし。……レーヴァと契約して無ければ燃料が枯渇して終わりだっただろうが。……賢者で良かった。

 

 

「早く行きなさい」

「一刻の猶予も許さないのですわ」

 

 

 こちらに向かってくる敵を片や獄炎、片や草木が凪ぎ払っていく。だが、それも些細な量だ。だが、迷っている暇はない。

 

 

「死ぬんじゃないわよ」

「そのまま返すぜ」

 

 

 二人が開く道を押し通っていく。出口の扉に着き、後ろを振り替えるも、二人の姿はもう見えなかった。

 

 

 こちらの行動を読まれていた?それとも……どちらにせよ容易に通す気はないようだ。

 無事で居てくれよ……そんな呟きと共に俺とヴェルは先を急いだ。

 

 

「はぁ……行っちゃった」

「貴方が送り出したのでしょう……ふっ!」

「さて、さっさと追い付いちゃいましょうか」

「……はぁ、どれだけ掛かるのかしら」

 

 

 ▼

 

 

 

 長い、長い螺旋階段を下る。何度か魔物に襲われたが難なく突破し、順調に進んでいた。このまま、階段に来た辺りで生芽の気配が俺にも感じられるようになってきた。確かに気配はこの先からするのだが……

 

 

「強い気配がするな」

「うん……」

 

 

 だがこの気配何処かで……

 

 ついに扉についてしまった。やはり向こうで主戦力がぶつかっているのでこちらは手薄なようだ。

 扉を開けると、薄暗い広間に出た。辺りには謎の機材やその残骸が落ちている。何故こんなところに生芽は……そこまで考えてふと先の床を見ると、間接があり得ない方向に曲がり、頭の無い何かの残骸があった。この濃い血の匂いはこれか。

 

 殺されて間もない白衣を着た────恐らくここの研究者だったもの────が、点々とその残骸を飛び散らせていた。

 

 先に誰かが助けに来た?だがあの大量の敵が居た広間は必ず通らなければならない。そう思いながら死体の跡を追う。

 ふと死体の跡が途切れたので顔を上げると、そこには白い甲冑を着た一人の騎士が居た。

 

 

「お前……生芽、なのか?」

 

 

 そう聞くが騎士は何も喋らない。だが、確かにこいつから生芽の気配がする。先程から何も話さないヴェルの方を見ると、顔を青ざめさせていた。

 

 どうした、と声を掛けようとした時、後ろを向いていた騎士が静かにこちらに向き直り、

 

 

 

 

 

 

 こちらに向けて血濡れの剣を横に薙いだ。

 

 

 

 

 

 俺の直感がけたたましい警鐘を鳴らし、ヴェルを抱え後ろに飛び退いた。

 ……あれはヤバイ。本気で死ぬかもしれない。そう考えた時、始めて騎士が声を発した。

 

 

「……に…げ……」

 

 

 それはノイズの掛かった大変聞きづらいものだったが、確かに生芽の声で「逃げて」と発した。

 普通ならここで一旦引いて二人が来るまで挑みはしないだろう。それほどまでにこれは異様な雰囲気を放っている。

 

 だが俺の頭の中には別の言葉が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…い、……ぁ』

 

 

 

 

 

『助…け……て………紅蓮』

 

 

「あぁ、少し待ってろ生芽」




レティシアの昇格戦を早く始めようよ。(使命感)


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20話

少し間が空いてしまいました!すんません!

そして、本当に予想以上に長くなりましたので、あとこれを合わせ二話ほどで本編に戻ります。

ではどーぞ。


 その根は地を支え、その枝は天地全てを切り裂き穿ち、その葉は天に広がり覆う。

 

『万能』

 

 その全てを体現したものが、世界樹ユグドラシル

 

 

 だが、それはこの───を───す事の出来るリセット装置にすぎないのかもしれない。

 ───の果てにありながら───の中心にてその役目を待つ。

 

 

 その時、そこに生きる者達は何を成せるのだろうか。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「あれがユグドラシルだって?」

「うん……」

 

 

 ヴェルは、あの騎士の甲冑そのものからユグドラシルと同じ魔力を感じるらしい。道理で対峙しただけで肌が粟立ち嫌な汗が出るわけだ。

 

 ここの研究者たちがユグドラシルのその膨大な力に目を付け、触れてはいけない禁忌に触れた。

 ユグドラシルから産み出されたこの空虚なカラクリ人形は生芽という適合する者を取り込み『完全』に一歩近付いた。完全ではないのは生芽自身が抵抗しているお陰か。

 

 

「差詰め、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)とでも言ったほうが近いかっ!」

 

 

 ヴェルの支援を受けながらその一降りを避けて間合いをとる。下手に攻撃して生芽に何かあったら本末転倒だ。

 

 重心を沈め床を強く蹴りだす。火弾を幾つか産み出し全力で撃ち込むが、殆ど効いている様子はない。本当に木製かよアレ……

 一息に間合いを詰め、掌底を打ち込むが、剣の腹で止められる。

 兜越しに視線が合った。いや、合った気がしたという方が正しいか。

 

 

「やはり空か……だとすると」

 

 

 そうでなければ勝手に動いている甲冑の中から肉体を引きずり出してでもやれば良いのだが、彼女の霊核をコアとしている事がこれで確定した為に事態はもっと厄介な方向へと進んでいる。

 一度ヴェルの元まで下がりその趣旨を伝えると、覚悟していた様に一瞬瞑目し、決断した。

 

 

 

「一思いにぶっ壊しちゃおう。あんなもの」

「了解だ」

 

 

 確かに、あの甲冑を壊して霊核を引きずり出すしか策はなさそうだ。

 俺が敵に向かって走り出したときに、後ろでヴェルが何か詠唱をした。すると俺の体の周りを翡翠色の光が包む。俺はヴェルからの全力の加護を受けたようだ。

 

 

「今なら目・が使えるはずだよ!」

「あれ慣れないんだけどなっ!」

 

 

 ヴェルは三女神の中で現在を司る女神。本気を出せば、代償は大きくても今という時は全て手中に収まる。

 その加護を受けた俺は、長く持続はしないが今という時を切り取りその一瞬を全て視て支配することができる。

 

 

 その重装備からは考えられないような早さで俺に迫る騎士。俺は自作の剣に魔力を通す。すると、刀身が仄かに紅く染まり、その周りから紅く小さな花弁のような焔が大量に現れた。

 

 

「桜花絢爛、始めから全力でいくぞ」

 

 

 その焔は桜吹雪のように咲き乱れ、吹き荒ぶ。騎士はそれを正面から喰らい、数歩下がるが大して効いている様子はない。

 その焔を自身の周りに纏わせ、持っている剣を逆手に真正面に構えてそのまま床を蹴る。焔の推進力が合わさり、俺は音を置いてどんどんと加速する。焔が作り出す紅い彗星の如き軌跡が騎士とぶつかるその瞬間、時が一瞬だけ止まる。

 

 

「あの早さを反応するかよ……」

 

 

 

 

「|瞬間停止、対象加速────動け」

 

 

 次に動き出したときには騎士は剣を振り切り、がら空きの胴体に俺の一撃が入る。

 俺が騎士の時間を加速させ、動作をずらさなければ今頃俺の首が飛んでいたことだろう。

 

 決して浅くない手応えは感じたが、と思い距離を取りながら後ろを振り向くと、騎士の胴体に深い切り傷が刻まれていた。

 ほぼ最高火力で突っ込んだのだからこれぐらいのダメージは入ってくれないと困る。

 

 

 俺の姿を捉えたとたんに騎士が斬りかかってきた。紙一重でそれを躱わし、反撃を加えようと刃を振るうが防がれる。そんなのを数回繰り返し、間を置き、また斬り結ぶ。

 一進一退の攻防に見えるが、総魔力消費量で言うと躱わす際に少しだけ目を使ったりしている俺の方がじり貧になってくる。長引けば形勢は体力がほぼ無尽蔵な向こうの方に傾くだろう。

 

 あの防御力と機動性、攻撃の手数が多い上に一撃が必殺となると、本当に倒せるのかと段々不安になってくる。

 ヴェルも俺と騎士との間に障壁を張ったり空中に足場を作ったりと支援してくれているが、元々戦闘タイプではないので長続きするかは分からない。

 

 

 

 レーヴァ達が駆けつけるのを待つか?いや、後どれだけ掛かるかも分からない上に消耗も激しいだろうから却下だ。何か良い案はないものか。

 

 ……しょうがない、相討ち覚悟の捨て身特攻でもするか。本来の目的はあの甲冑をぶっ壊すことじゃない。何としてでもあの中から生芽を助け出すことだ。

 

 俺は騎士に大量の火弾を叩き込み、その隙に戦線を離脱する。まぁ二千も打ち込めば足止めにはなるだろ。

 俺は一旦ヴェルの元まで下がり、魔力の残存を聞くとあと三割程度だそうだ。ギリギリ足りるか……だが、俺の予測だともしかしたら倒した後の方が大変かもしれないが。

 

 

「ヴェル、あの騎士の動きを三秒止められるか?」

「厳しいけど頑張ってみる」

「よし、合図を出したらよろしく頼む」

 

 

 その言葉に黙って頷いたヴェルが、目を閉じ魔法の詠唱を始めた。

 俺はその間に、二千の火弾をしのぎながらも少しダメージを受けている騎士に向かって駆け出すと、騎士はこちらを向きその大剣を俺のいた場所に叩きつけてくる。それを横に跳び避けた俺は纏っている焔の花弁を幾つかに集め、剣の形に変える。

 

 合計八本の高密度魔力剣を作り出し、それを騎士に飛ばす。騎士は八つの剣全てを捌こうとするが、徐々にそれを押し返していく。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 空間を完全に把握し八つ全てを頭で動かしていく。それは大量の情報量を頭で捌くそのキャパシティと膨大な集中力が必要だ。そしてその負担も大きいはず。

 

 ヴェルダンディは詠唱をしながら彼のその異常性に舌を巻いていた。流石、八賢者の中で一番敵に回してはいけないと言われているだけはある。

 

 

 詠唱が終わり、ヴェルダンディが合図を待つ。

 

 

 紅蓮はヴェルダンディの方をちらと見ると、一つ強く頷いた。

 

 

時間隔離(アイソレイション・タイム)!止まれぇっ!」

 

 

 彼女がその手を振るうと、騎士の周りが薄く光り足元に魔方陣が展開される。

 そしてその周りの光が騎士に張り付いた次の瞬間、騎士はピクリとも動かなくなった。ヴェルが騎士の時間を切り離し、そこだけ止めたのだ。相当な上位魔法であるためなのと、騎士の魔法抵抗度レジストが予想以上に強く、持って十秒というところだろう。

 

 紅蓮はその隙に騎士に向かってその手に持った剣の切っ先を騎士の胸の辺りに照準を合わせ一気に間合いを詰めると、紅蓮は剣に魔力を全力で流し込み、紅く紅く染まる剣をその胸に叩き込む。

 ガギン、という重い音を立てその胸に剣が突き刺さる。と同時にその剣は半ばから砕け散った。

 

 

 紅蓮がその傷に向けて焔を纏った腕を突き刺す。騎士がカタカタと動き出す所を見るともう時間はないようだ。

 霊核を掴み引っ張り出そうとするが、抵抗が強く無理に引っ張り出そうとすれば霊核が砕ける危険もあるために引き抜けない。

 

 

「このっ……帰ってこいよ!生芽!」

 

 

 その叫びと同時に、少しずつ霊核を引きずり出していく。それが騎士から出る一歩手前で強い抵抗を受ける。そして、紅蓮の横腹を騎士の大剣が襲う。

 

 

「ぐ、くぅっ……!」

「紅蓮!」

 

 

 ヴェルが叫ぶが時すでに遅し。紅蓮の横腹に大剣が深々と入る。それを右手で抑え真っ二つになるのを防ごうとするが、それも長くは持たない。

 

 

「うぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 

 激痛に顔を歪めるが、気合いと叫びで騎士の剣を押し返し、霊核を少しずつ取り出していこうとする。

 血を流し、深手を負いながらそれでも生芽を助けようとする紅蓮を見ながら、ヴェルは後ろで足が動かないでいた。

 

 

「生芽、お前の居場所はそこじゃないだろ」

『───』

「大丈夫、大丈夫だから」

『───』

 

 

 騎士がその動きを鈍らせた。何かが抵抗している。生芽のその届かぬ思いは、少なくとも紅蓮には届いていた。

 

 

「一人になんて、させるかよっ!!!」

 

 

 遂に騎士から霊核を取り出し、騎士はその動きを止める。紅蓮は強引に騎士の剣を引き抜くと、傷口を無理矢理、自身の炎で止血する。

 

霊核を優しく手の上に乗せながらその暖かな光に照らされた紅蓮がヴェルの元へ歩いてきた。それを見てヴェルは顔を歪める。

 

 

「さぁ、問題はここからだ」

「やっぱり………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生芽はもう、ほぼ死んでるんだね」




ようし!こうなったらバンドリやって忘れよう!

……レティシアちゃん?その手に持っているものを下ろそうか。そうだね、出番がね?長引いているのだけどね?

ちょっまっぎゃぁぁぁぁ!!



(実際は、生芽は説明を結構はしょったり、ざっくり話しているので本当にこんな長くなるはずじゃ……)


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21話

最近頭が痛いんですけど、頭痛薬に頼らない良い方法無いですかね……


ちょびっとずつお気に入りが増えていて嬉しいです。


「ったく……やっと終わるわねこれ」

「そうだね」

 

 

 レーヴァとヴィシェスは迫り来る魔物を倒しながらうんざりした様子でそう呟いた。

 早いところ紅蓮達に合流しようと奮戦していたが、ただでさえ広い広間に魔物が溢れているというのに上の階にも通路があるようでそこからも敵が来る。一体一体は雑魚だがその数の多さに中々前に進めないでいた。

 だが、それも気付けばあと百メートル程。

 

 あれほどいた魔物の数も半分にまで減り、辺りには炭化した物体や切り刻まれた肉片が血と共にあり死屍累々の形相を成している。だか、それでも多いと言えるだけの敵が居るとは、何処からかき集めたのやら。

 ノルド軍はまだ来るのに時間がかかるだろうが、自分達の居た痕跡を消して撤収しなければならない事を考えると早いに越したことはない。

 

 

「よしっ、扉まであと少し」

「突っ込みますか」

 

 

 扉まで残り少しの距離を目の前の敵を叩き潰しながら強引にでも突き進む。

 焦る気持ちを抑えることもなくペースを上げ突き進むレーヴァは、先程、紅蓮から来た通信(テレパス)に多少の不安を募らせていた。

 

 

「紅蓮の言ってたことが気になるの?」

「えぇ。……魔力共有(マギカ・ソシウス)を使うだなんて、一体何に使うつもりなのよ」

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 ヴェルの、ほぼ死んでいると言った見解は概ね正しい。霊核というのはあくまでもエネルギーの塊のようなものであって魂ではない。

 

 

「全部、手遅れだったの?」

 

 

 震える声でヴェルが呟く。俺は彼女の震える手を霊核を持たない左手でそっと握ることしか出来なかった。

 もっと早ければ分からなかったかもしれないが、生芽の魂はこの世を離れすぎた。霊核というエネルギーは有ってもそれを形にする魂をどうにかしなければどうにもならない。

 肉体があればまだ呼び戻せたかもしれないが、恐らく不要だと処分されただろう。この部屋にない時点でもう手遅れなのだが。

 

 

「まだ、まだ何かあるはずだ……」

 

 

 焦る気持ち、逸る想いが思考を邪魔し、流しすぎた血のせいで頭に靄がかかりそうになるのを頭を振って振り払い、今でも少し流れる俺の血に濡れた霊核を見つめながら考える。

 考えろ、もっと頭を使え!何かあるはずなんだ……生芽を呼び戻す方法が。

 

 有るのは霊核、人手は二人、魔力は少し心もとない。方法は何がある……

 霊核からまだ少し生芽の魔力を感じるのはまだ完全にリンクが途切れたわけではない。蘇生は出来ないが、魂と魔力と俺の血を吸って少し活発化している霊核で再構築すれば或いはできるのではないか。

 頭の中に様々な魔法構築論、魔方陣、魔力回路が飛び交いそれを一つに纏め上げる。今までやったことのある奴は居ないが、恐らく、出来る。

 

 

「……召喚術式だ」

「え?」

「霊核を触媒にして召喚すれば生芽を呼び戻せるかもしれない」

 

 

 召喚は、離れたところからでも強制的に任意のものを設定した場所に転移させる魔法だ。大体は実体のある物や人を呼び寄せる。契約を繋いでいるレーヴァも一応呼び寄せることは可能だ。ただし、それ相応の魔力をごっそり持っていくのだが。まぁ、そこは魔力共有を使えば何とか事足りる。

 

 

 魔力共有───それは二人以上が魔力を共有し、互いに自由に使えるようにするというもの。言葉で言えば単純だが、魔力は十人十色と言えるほど個人差があるため、たにんの魔力を自身の魔力として使うには高度な技術が必要とされる。そしてもう一点、魔力共有をするには互いに接触し回路を繋ぐ必要がある。

 だが、契約を繋いでいればそれを容易にすることが出来る。離れたところからでも、まるで自身の魔力のように引き出すことが出来る。

 

 

 

 俺はテレパスでレーヴァに用件だけを簡潔に伝え、ヴェルに俺のやろうとしていることを伝える。ヴェルは三女神の中で一番の頭脳を持つ。俺の理論を直ぐに導きだし、魔方陣の用意をしだした。

 レーヴァ達も直ぐに合流するだろうから魔力が足りなくて戦闘に支障があるということは無さそうである。

 

 

「書き上がったよ」

「流石だな」

 

 

 まさかこんなに早く、しかも俺の理論から改良を施した魔方陣を書き上げるとは……ヴェルが仲間で良かった。時を操れる頭脳明晰な敵将とか怖すぎる。

 

 

「本当に、連れ戻せるの?」

「やってみるしかない……じゃあ行くぞ」

 

 

 魔方陣の中心に霊核を置き、俺達はその両サイドにそれぞれ陣取り、魔力を少しずつ流していく。

 すると魔方陣がぼんやりと白く浮かび上がり、徐々にその光を強くしていく。

 

 

「魔力共有開始、回路接続完了」

 

 

 霊核を中心に周りにふわふわと光の粒が漂い始めた。これが組成の素となる魔力物質である。

 俺はそっと目を閉じてその意識を繋いだ召喚魔法の奥に向けていく。幾らリンクのある媒体を使っていても手綱を握ってやらなければ生芽を引っ張ってこれるとは限らない。いや、可能性は半分もないだろう。

 

 俺の意識が暗い海のような所を深く、深くまで潜っていく。……こりゃ下手すれば戻れないかもな…。

 

 

 

 

 

 何時から意識を失って居たのか。俺はいつの間にか、上下左右も浮いているのか沈んでいるのかも分からない場所に居た。

 

 ただ、暗い。寂しい。漠然とだが、ここはそんな印象を受けた。

 俺は確か生芽の残り僅かな残滓のようなものを追いかけた筈なのだが。

 何処なんだ此処は……冥界とでも言うのか。エレシュキガルに一度会ってみたいと……って別の場所かそれは。

 

 

 不意に誰かの声が聞こえた。今は手がかりもないのでその声の方向に進んでみるとするか。

 

 あと少しなのに遠い、そんなもどかしさを感じながら進むと、遠くに誰かの姿が見える。

 

 

「生芽っ!」

 

 

 進んでいるのに遠ざかる彼女に手を伸ばしながら全力で追い付こうとする。彼女はまだこちらに気づいていない様で、後ろ姿しか窺うことが出来ないが、良く見ると肩を震わせていた。

 

 泣いているのか、笑っているのか。

 

 構わず俺は彼女に近づこうとする。彼女に少しずつ近づく毎に、あと少し、その距離を詰めようと一歩踏み出すと、体が軋み悲鳴を上げる。

 

 また一歩、呼吸が苦しくなる。

 もう一歩、吐血する。

 あと一歩、何かが弾ける音がする。

 

 

 やはり、生者に冥界は厳しいようだ。深く潜れば潜るほどこれでもかと殺しにかかってくる。それでも歩みは進めない。生芽との距離は少しずつ近づいている。

 

 

「生芽」

 

 

 俺のその声にピクリと反応した生芽がこちらを向く。顔は無く、体も所々透けて骨になっている。あと一歩遅ければ……考えたくもない。

 

 

「生芽、帰るぞ」

「……もう、会えないと思っていました」

「馬鹿言え」

 

 

 そう言ってあと一歩を踏み出す前に彼女の方からこちらに飛び込んできた。感動するのは後だ。早く戻らねば……だが、安心したのか俺はまた意識を手離した。

 

 

 

 ▼

 

 

「何この光?!」

 

 

 ヴィシェスと急いで紅蓮の元へ向かってみれば、不気味な部屋の中心で、魔方陣に魔力を流すヴェルダンディとその反対側で倒れ付している紅蓮。

 直ぐ様、紅蓮の元へ駆け寄ろうとするがヴェルダンディに止められた。

 

 魔方陣の中心の光の球が白く光ったかと思えば、今度は炎に包まれ、その炎を取り込みまたその光を一段と強くする。

 これは……スクルドの魔力?

 

 その光りに照らされた紅蓮が意識を取り戻し起き上がると、ニヤリと笑った。

 

 紅蓮が魔方陣に魔力を流すと光が部屋全体を包み視界を奪うが、次第にその光が中心に集まっていく。

 あまりの光量に瞑った目をそっと開けると、そこには先ほどまで居なかった筈のスクルドの姿が。

 スクルドは紅蓮の方を向き、言い放った。

 

 

「召喚に応じ帰ってきました。ただいまです。紅蓮……いや、マスターですね」

「あぁ、おかえり」

 

 

 状況がさっぱりなので紅蓮を手短に問い詰めるとしましょうか。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 壮大な一大スペクタクルを聞かされた気がする。生芽と俺の関係を聞くだけで三話分も使うと思わなかったぜ……。これでも、少々端折ったらしい。

 

 

「という訳で晴れて貴方の従者となったのです」

「てことは俺の魔力供給とか必要なのか?」

 

 

 レーヴァと結んでいる契約と違い、召喚の形での契約は主を通して現界しているため、定期的な魔力供給が契約を通して自動的に行われるはず。

 

 

「こちら側に落とされた時に全てリセットされました」

 

 

 そう言えばレーヴァとの契約もそうだったっけ。

 そして落とされたと言うことは、誰かにやられたのか……誰にだ?

 

 

「そう言えば何でメイド?」

「従者らしくしようかと。ルドビア様と初めて出会ったときもこれで採用されました」

 

 

 なんだそりゃ。まぁ助かっているから良いけどさ。ルドビアに関してはまぁ、あいつ家事とかさっぱりだもんな……

 

 一つだけ疑問が残る。ユグドラシルって今どうなっているんだ?あんな技術が出てきたんだ。どうなっていても不思議じゃない。

 俺がその疑問を口にしようとした時、俺の元に一つメールが届く。差出人を見る前に時間が結構良い時間だった。

 今日の所はもう遅いので、俺は生芽に話してくれたことに対するお礼とお休みを告げ部屋に戻った。

 

 

 自室に戻り、メールの差出人を確認すると思わず顔を顰めてしまったことが分かった。

 

 

『テルーヴァ共和国補佐官、リーベ・ウラルより

 女王が貴方に話があるようだ。至急来られたし』

 

 

 何とも遊びっ気の無い簡素な文章を懐かしむより、俺にあいつから話があるというところに怖さを覚えてしまった。

 

 

「何も無ければ良いんだが」

 

 

 そんな一抹の不安が頭を過っていった。




ヴァルキリープロファイル。やってた人います?

スマホ版出るらしいですね……

あれのゴールはAエンドじゃない、セラフィックゲートの最終ボスだ。


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22話

これの最初の方を読み返したんですが、まぁ酷い。なにもかも。

教訓と思い出にしてあまり修正しないようにと思いつつちょくちょく書き足してたりね。

……頑張ろー。




 翌日、俺は学園にある転移ゲートの前に来ていた。

 

 その日に帰れるのかどうか以前に、昇格戦を観客席で迎えるのかすら分からないので、今後の事は取り合えず生芽に全てを任せてきた。

 幸い、するべきこともその後の予定も昨日レティシアに話していたのが良かった。すんなり進むだろう。

 

 今や殆ど全ての国の何処かに二つ以上は転移ゲートが設置されており、国家間での移動は手続きさえすれば簡単に行き来できるのでそれなりに離れた場所もあっという間である。まぁ、万が一のために国の主要都市から離れた場所や守りが堅牢な場所にあることが多いので、俺はこの後、転移した後も若干移動する訳なのだが。

 

 ここら辺には公都シエノヴァの聖テルシェ魔導学園の方にあるのと、その隣のラニアフにあるこのシエル魔法学園に一つあり、シエルの方のゲートは森の中にあり、結界を張る事で外からは完全に見つからないようにしている。ただの四角い枠だった転移ゲートに、白く薄く光る膜のような物が張られる。座標を指定して目的地へと繋がった証拠だ。

 

 

「お前も大変だねぇ」

「全く、嫌な予感しかしないな」

 

 

 ゲートを起動させているのはルドビアだ。これだけの魔法を誰でも使える訳もなく、ルドビアに起動させてもらったのだ。

 

 

「よし、じゃ行ってきな。宜しく伝えておいてくれ」

「おう。行ってくる」

 

 

 ゲートを潜り光を越えた先はテルーヴァ共和国の端の要塞、ミーティム。

 迎えの使者が来るらしいのだが、辺りにまだそれらしき人影が見えないので、暫く久しぶりに来たこの要塞を探索でもしようか。

 

 

 基本的に俺の素性は素顔どころか本名をも隠している状態。ゲートを通る際に顔に仮面を着けては来た。こちらでは陽炎という偽名、もといコードネームを使わせてもらっている。

 今俺が着ている黒色に赤い線が入ったテルーヴァの軍服とコートは特殊部隊の者という証。すれ違う人々から驚きの顔と共に敬礼されながら一人一人に挨拶をして回る。

 

 

「まさかもう来ているとは」

 

 

 粗方回り終え、今後の予定なんかを考えながら入り口に向かって歩いているとそんな声がしたので俯いていた顔を上げる。

 視線の先には黒いコートを羽織った男がこちらに向かって敬礼していたので俺も敬礼をした。……と同時に互いに破顔した。

 

 

「久しいな、ジン」

「そっちも元気そうだな。ぐれ……じゃねーや、陽炎」

 

 

 ジン・レーグスは、テルーヴァ共和国の軍の第一部隊の隊長である。年は二個上だが、立場的には俺の方が上なので間を取って対等な関係となっていて何だかんだ付き合いも長い、同期の友人である。

 右目には黒い眼帯をしており、これは彼が魔眼を持っているための配慮なのだが、この話はまた今度にしよう。

 武器は刀。良く見ると腰に刺した刀は前見たものと違い、一見しただけでも相当な業物と分かるようなものを持っている。

 

 俺のそんな視線に気づいたのか、ジンが自慢げに話してくれた。

 

 

「これはな、この間洞窟に行った時に見つけた貴重な鉱石で打ってもらった一点物だ。魔力伝導率が桁違いな上、魔力を通す度に俺の魔力を吸っているらしい」

「それはまたとんでもない物作ったな」

 

 

 そういった武器は有るにはあるが、その特性上、大体が魔力を吸いきってしまった後でそれに適応できる使い手でなければ使えないか、変な付属効果(呪いとか)が付くことで誰も使う人が居なくなるかだ。どちらにせよ唯一無二の業物になる事には変わりない。

 

 

「取り合えずさっさと行こう。姫様がお待ちだ」

「そういや何で呼ばれたんだ?」

「大方、今度のAランク戦で何か有るんだろ……さて、早いとこ向かおう」

「そうだな……」

 

 

 それを聞いた俺は、心の中で今後に対する不安指数をグッと引き上げるのだった。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

「陽炎様を客室に通しておきましたよ」

「えっ、もう来たの!?あわわ……!」

 

 

 テルーヴァ共和国の首都、リンダートンにそびえ立つ白亜の城。その一室でわたわたと落ち着きのない動きと深呼吸を繰り返す一人の少女、そんな彼女こそが女王、テルーヴァ・セレスティエである。

 

 

 紅蓮とは昔馴染みであり付き合いも長いのだが、何時からか。彼の事を意識し始めてからは彼と会う前は何だか落ち着かない。

 豪奢であり何処か妖艶なドレスもそんな姿とミスマッチしている。黙っていればとても綺麗なのだが。

 彼女の侍女のミーリ・エルトスはそんな主の姿に微笑ましさを感じながら黒く艶やかな髪の毛を綺麗にセットしていく。

 

 

「セレス様、あまり動かれてはおめかしした意味が無くなります」

「そ、そうね……」

 

 

 目を閉じてフッと一息吐くと、そこには一国の女王が居た。

 

 

「これでばっちりですよ」

「ありがとっ。さて、行きましょうか。彼には言わなきゃいけないことが沢山有るんですから」

 

 

 一応領主として彼とは主従の関係である。折角だからたまには玉座で迎えるとしよう。

 補佐官のリーベに彼を呼びに行かせ、三歩後ろにジンを従えながら玉座の間にて彼を待つ。彼には領主として聞かねばならぬことや話さねばならない事がある。

 だが、そんな事よりやっぱり彼と居られる時間が楽しみな彼女の些細な葛藤をジンは呆れた顔で見守っていた。

 

 

「……恋する乙女だねぇ」

「何か言った?」

「いえ、なんでも」

「そう。……まだかなー♪」

 

 

 ……どうやら楽しみが勝ったようだ。

 

 

 ▼

 

 

 

 コンコン、と控え目なノックがされたので入室を促すと入って来たのはセレスの補佐官のリーベだった。

 翡翠色の長い髪をポニーテールに纏め上げた姿は良く見慣れた姿だが、いつもスーツのようなものを着ていた彼女は今は俺の着ているものに似ている軍服を着ていた。

 

 

「お久し振りです。紅蓮様」

「リーベも久し振りだな」

「あまり姫様にご心配をかけさせないで下さい。こちらが大変なんですからね」

「あっはは……俺なんか放っといても大丈夫だろうに」

「そういう所も直しましょう」

「うぐっ……善処する」

「さぁ、準備ができましたのでこちらへ」

 

 

 玉座へと向かう廊下を二人で歩きながら、何時もと違う服装のことを聞いてみた。

 

 

「何で今日は軍服なんだ?」

「あ、あの。えっと……この後時間はございますか?」

「まぁ、作れないこともないが」

「久し振りに、貴方の指南を受けたいです」

 

 

 そう言えばこっちに居るときは良くそんな事もしていたっけ。指南と言うかひたすらに一対一で戦うだけなのだが。

 

 

「ジンにでもやってもらったら良いんじゃないか?」

「嫌です。あれは嫌です。絶対に嫌です」

「お、おう……」

 

 

 一体、何をやったらこんなに拒絶されるのでしょうか……。

 まぁ最近俺の魔力量も増えたことだし、色んな検証をするにはうってつけかもしれないな。

 

 

「じゃあ、この後でやるか」

「はい!是非ともお願いします!」

 

 

 先程まで見るからに嫌悪感を露にしていた顔が一瞬にして明るく華やぐ。何でこんなに扱いに差があるのだろうか、後で当人に聞いてみるとしよう。

 

 そうこうしている内に玉座の間に着いた。リーベは外で控えているようなので一人で入る。

 

 玉座までの赤い一直線のカーペットの中心を通り、ある程度の距離のところで跪き頭を垂れた。

 

 

「テルーヴァ軍第二特殊部隊隊長、陽炎、帰還致しました」

「頭を上げなさい」

 

 

 そう言われたので頭を上げると、其処には見慣れた顔の少女が玉座にふんぞり返り、何だか不機嫌そうであった。

 

 

「ねぇ、今までどこに居たの?」

「ルドビアのとこだ」

「何で何も言わずに行くの?」

「いや、あの、その、……悪かったよ」

 

 

 ハイライトの無い瞳で見つめられ、背中にすっと嫌な汗が一筋流れるが顔には出さず一先ず謝っておくことにした。

 この国を空けていた期間はルドビアの所に行くよりも少し前からだ。そう思うとやはり長く開けすぎたかなと思う。……まぁ、かれこれ三~四ヶ月くらい?

 

 ふと彼女の方を見ると、両目の端に涙をうっすらと浮かべながらこちらに飛び込んできた。

 

 

「心配したんだからぁっ!」

「うぉっと!」

 

 

 それをしっかりと受け止め、頭を撫でることで落ち着かせる。暫くすると、えへへー。という気の緩みきった声と共にいつも通りのセレスに戻った。

 セレスも元に戻ったので、本題に入ろうと思う。

 

 

「で、セレス。何で俺を呼んだんだ?」

「心配だった……じゃなくて。えっとね、落ち着いて聞いて欲しいの」

 

 

 いきなり真剣な顔で改まって言われると何だか緊張する。どんなことを言い出しても良いように覚悟を決めて来たつもりだが、少々の不安が過る。

 

 

「私、王都の方に結婚を申し込まれました」

「そうか……でも俺に相談するって事はどこぞの馬の骨って訳でもなさそうだな」

「うん。……聖堂騎士団(テンプルナイト)の騎士団長」

「うっ、まじか」

 

 

 王都を治める王直属の騎士団、テンプルナイト。王都に絶対の忠誠を誓うエリート中のエリート集団で、その全員が相当な実力者であるこの集団は知名度も好感度もトップクラスである。魔物からの土地の解放、天災、厄災級の魔物の討伐。その功績は代々続いていおり、俺もその実力は恐ろしいと思う。

 

 そんなエリートを纏め上げる長との婚約ともなればテルーヴァもこの世界の中心の仲間入りだ。普通なら一も二もなく飛び付く話だが、それに何の不満があるのだろう。

 

 

「あ、安心して。断ったから」

「え?……え?!」

 

 

 ……断っただと!?何でさ!

 

 そんな俺の混乱も露知らず、彼女は更なる大爆弾を投下してきた。

 

 

「まぁ、条件付きなんだけどね。……お願いします。Aランク戦のデモンストレーションで、騎士団長に勝ってください」

「はい?」

「俺からも宜しく頼む」

「はぁぁぁぁあ!?」

 

 

 それは、それなりの覚悟をしてきた俺の予想を遥かに上回った。いきなりこの国の未来を託されるというものを誰が予想できただろうか。




花粉が辛い……


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23話

すみません遅くなりました!

気付けば一年やってるんですねコレ。


まだまだ未熟ですがこれからも宜しくお願いします!


「そうは言っても相手はあの剣聖だぞ?勝てるかどうかの保証なんてしかねるぞ」

「そんなぁー!」

 

 

 相手は百戦錬磨のエリートなのだから一筋縄でいくわけがない。ましてや剣聖とまで呼ばれる人間、少なくとも()()()()()()()()で勝てるような相手ではないことは確かだ。

 少し前に求婚された為に時間も無く、それを断るための口実を早急に作った結果とはいえ、俺一人にそれを託すなんてあまりにもリスクが高くはなかろうか。

 

 つーか、何で本当に俺抜きで二人で話進めてんだよ。何で剣聖の方もノリノリに話進めてんだよ。

 

 

「そんなに心配するなって、何とかなるだろ」

「当事者じゃ無いからって……で、話はそれだけか?」

「う、うん」

 

 

 そうか。それだけ言い残して踵を返す俺にセレスが震えた声をかけた。

 

 

「えっと、……どこ行くの?」

「そんなの、どうやって剣聖を倒すか考えんだよ」

「そ、そっか………ありがと」

「何、お前の我儘なんて今に始まった事でもないだろ」

「うっ……」

 

 

 苦い顔をしているセレスを放っておいて俺は足早にこの場を去った。

 さて、昔馴染みの人生が懸かっているんだ。……本気で潰させてもらおうか。

 

 

 紅蓮が出ていった後、二人分の安堵の溜め息が漏れた。

 

 

「よかったぁー」

「何だかんだ言っても結局は甘いからなぁ」

「「はぁー」」

 

 

 もしも断られた時の事を考えると、少し身震いをした。……この二人は、彼が十中八九動いてくれるとは信じていたが。

 

 

 

 ▼

 

 

 

「やはり荒れてますね……」

 

 

 彼女の呟きは、はたしてこの場所の事か、それともこの惨状の事か。はたまた彼女の目線の先の彼の心情か。

 

 

 今、紅蓮様と私はテルーヴァからかなり離れた場所の廃墟となった町に来ていた。

 元々人の住んでいた場所らしいが、魔物が現れて人の数と生存圏が狭まった今の時代ここは只の魔物の苗床と化している。

 魔法を使って十分程で着く場所とはいえここは最前線、こちらの大陸に三つある激戦区の一つ。そこには凶悪な魔物が大量に蔓延っている。それにしては今日は多い気もするが、ただ運がないだけだろう。

 

 そしてそれを千切っては投げ消し炭に変えながら蹂躙していく様を、私は顔をひきつらせながら見ていた。

 

 恐らくは先程のセレスティエ様との会談の件についてだろう。あんな理不尽な決定は誰もが怒るところだし、そうでなくても多少なりとも思うところがあるだろう。

 誰だってそう思う。私だってそう思う。

 

 

 紅蓮様はあの話をどうしたのだろうか。……もし蹴ったのだとしたら、私かジンが駆り出されるか、それとも特殊部隊の誰かが出るのだろうか。

 どちらにせよ二人は表向きは護衛として、裏では戦力の誇示として誰かしら連れて行かれるのだが。

 

 

 紅蓮様は、最後の二体の内の、巨大な十字架に目が幾つも付いた異形の怪物を手に持って、もう片方のこちらも大きな溶岩蜥蜴の溶岩が冷え固まってできた鎧に叩きつける。

 その堅い鎧を簡単に粉砕し、深々と突き刺さった十字架を引き抜くと、もう一度突き刺し、二体を一度に木っ端微塵に爆破した。

 

 

 どう見てもオーバーキルじゃないですか。

 

 

 魔物の群れを一方的惨殺に追いやった張本人はとても晴れやかな顔でこちらに戻ってきた。

 ……貴方のそんな爽やかな笑顔今まで見たこと無いのですが。

 

 

「いやー、すっきりした!」

「そんなにストレスが」

「見苦しいところを見せたな」

「セレスティエ様の件ですか」

「あー、それもあるかな」

「……断ったのですか?」

「いや、受けてきたぞ」

 

 

 あの理不尽な話を受けたなんて、何と懐の深い方なのでしょう。私は感激してしまいました。

 何でまたあのような話を受けたのか気になった私は、何故受けたのか聞いてみた。きっと彼の事です、色んな事を見据えた上での事なのでしょう。

 

 

「セレスは妹みたいなもんだからな。今まで寂しい思いもさせてしまったし……ある程度の我儘は聞いてやらなきゃな。大体あんなのにくれてやるつもりなんて毛頭無いが」

 

 

 ……シスコン。

 

 

 それにしても……妹みたいな、ですか。セレスティエ様が聞いたらどう思うことか。とっても複雑でしょうね。周りからすればとってもモヤモヤします。

 こういう優柔不断鈍感系たらし主人公は皆、跡形もなく破ぜれば良いと思うんです。

 

 

 でも、そうも行かないのが現実。

 

 

 紅蓮様と手合わせしてまだ五分も満たない内に、三太刀も受けてしまった。戦場じゃ既に即死である。

 私は槍を使っているのでリーチが長い筈なのにそれを生かす前に懐に入られてしまう。

 勿論、魔力具現化(マテリアライズ)はしていないので、やられた部分への痛みだけだが、これが現実だと思うと怖気が走る。

 

 私は直ぐ様次を求めると、紅蓮様は剣を構える。あの剣は昔に知り合いと自作したという武器の内の一振り、血染咲(ちぞめざき)

 物騒な名前の通りの働きをしてきたこの一品は紅蓮様のお気に入りである。

 

 今まではこの武器の真骨頂を引き出すことの出来なかった私だが、紅蓮様がふらついている数ヵ月の間、私も遊んでいたわけではない。

 三太刀目で吹き飛ばされた私は起き上がると、自身の槍、黒槍『天戟』の柄を握り直し魔力を通す。するとその想いに呼応する様に漆黒の槍が青白く淡く光った。

 

 よし、反撃開始!

 

 

「……行きます!」

 

 

 身体強化した足で蹴りだした私は数十メートルを一瞬で詰める。

 私の突進突きを剣で反らされるが、槍に魔力を注ぎ、無理矢理に横に薙いだ。するとその軌道に青白い残像が残る。これが私の新しい技、残戟だ。効果は数秒だが、振るった軌道にこうして斬撃が残る。

 

 彼は後ろに飛び退いた。私との間にある斬撃に一瞬動作が遅れたところを私が槍で突くが剣で弾かれる。流石に対応や動作が速い。

 

 私が主導権を握れているように見えるが、そこには一つ問題がある。

 

 私は血染咲の能力を知らない。一度もその力を使わせたことが無いのだ。

 その剣自体は見せてもらったことがあるので何かしらの術式などが刻まれているのは解るのだが、そんなものを読み解けるのは極一部しか居ないのだが何処でそんなものを学ぶのだろうか。

 

 いや、今他の事を考えるのは止めよう。そんなことをして勝てる相手では決してない。

 

 

「中々嫌な技だな」

「どうもっ!」

 

 

 紅蓮様に誉められ口元がにやけかけるのを抑え、槍のリーチを保ち続ける。

 暫く辺りには剣戟の音が鳴り響く。

 一度距離をとった形になった私達は同じタイミングで決めに掛かった。

 

 

「そう言えばこれを見せるのは初めてだな」

「私もですね」

 

 

 紅蓮様の剣が煌々と紅く輝き出し、私の槍も深く蒼く黒く輝く。

 彼は剣を持つ手を後ろに引き、私も槍の矛先を紅蓮様に向け引き絞る。

 

 

天穿(あまうが)ち!』

赤椿(あかつばき)

 

 

 先にかけ出した私は確実に紅蓮様の中心を狙った神速の突きを放つ。捉えた、そう思ったとき、彼の目を見た。

 恐怖……死というものを感じた時にはもう彼の姿はそこには無かった。

 はっとして後ろを向こうとした瞬間に喉に鋭い痛みが走る。

 完全に捉えられてたのは私の方だった。

 

 

「この技はな、後の先の技。先に動いたのが駄目だったな」

 

 

 彼はそう言うがあれはそれだけじゃない。完全に相手から気配を消し、居合いを放つ。その動きはどちらかと言えば正面からの切り合いと言うよりは暗殺術のそれに近い。

 

 

「ありがとう……ござ…い、まし……た」

 

 

 その後、私の意識はプツリと切れた。

 

 

「……後でしっかりと謝っておこう。……さて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てこいよ騎士道ごっこ共」




やりたいことが多すぎる。


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24話

遅くなりました。

風邪は嘗めたらいけなかった。はい。


 辺りを見ると廃墟となった建物の物陰からぞろぞろと、全身を白に染め白い仮面をつけた集団が出てきた。

 あの仮面……俺達とキャラ被るんだよなぁ。

 ま、あれはあれで特別製だから価値はあんなのとは段違いなのだが。

 

 恐らくこいつらは聖堂騎士団の密偵部隊だろう。少数精鋭の彼らは密偵とは言うが、裏仕事や汚れ仕事でも何でも上からの仕事を受け持つ上に、長期間の任務など勤務時間を度外視していたり聞くだけ聞くとただのブラック企業である。

 

 

「お前ら何の用だ?」

「……っ」

 

 

 質問には答えないが、殺気に反応する辺りどうやら本格的に木偶人形という訳でもないらしい。俺が焔と共に殺気を出すと明らかに警戒を増した。

 俺は気絶させたリーベを右肩に乗せて退却しようとするが、そう簡単に向こうがさせてくれる訳もなく、取り囲まれた上に更に人が出てきた。ざっと二十人程度か。

 

 ……全くもって面倒くさい。

 

 とりあえず一番近くに居た奴に背中から剣を突き刺し地に捩じ伏せる。一応、急所は外してあるが地面に縫い止める形になっているので簡単に動けはしないだろう。

 

 道理でモンスターが異常に増えてると思ったんだ。

 

 今、俺はMPK(モンスタープレイヤーキル)されたことに怒るよりもそれによって何の関係もないリーベが知らない内に命の危険に晒されたことに怒っている。

 もしこの事に気付かずモンスターの間引きをする前に二人で戦っていたら、下手したらどちらかが死んでいたかもしれない。俺が小一時間ほど少し本気で殺り合うレベルだった所を見るに、彼女が戦うには万全でも少し厳しかっただろう。

 ……判断を間違えばあの時の繰り返しになるだろう。

 

 突然の出来事に警戒を増した奴等に向けて、俺は声を発する。

 

 

「死にたくなければ此処から失せろ」

「ぐっ、がぁ!」

 

 

 足元の奴の肘を思い切り踏み砕いてやるとそいつは悲鳴を上げた後、抵抗を止めた。

 

 

「……ちっ!」

 

 

 誰かが舌打ちをした後、一斉に撤退を始める彼ら。そこから俺は目的の人物を探す。

 目を閉じ、俺は最初に出した探知用の火の蝶を操作する。向こうは俺の最初のモーションをただの威嚇だと思ってくれたようで助かった。

 

 

「……見つけた。リーベ、ちょっと待ってろ」

 

 

 気を失っているリーベをそっと下ろし、地面に縫い止められ、肘を砕かれてもなお動いているこいつの首を跳ねてから行動を開始しよう。

 探知が反応した高層建造物の建物の中に気配を消しながら突入する。

 中は、四角い柱、四角い部屋、実に合理的な構造をしている。元は何の建物だったのだろう。この建物に似たものなどこの世界の各地にはこんな謎の都市などが残っているが、この消失した時代を知るものは誰もいない。

 暫く階段を上がると、魔方陣の痕跡を消している人影を見つけた。

 

 

「ちっ、もう見つかったか」

「もたもたしてるからでしょー?」

 

 

 気配に敏感なようだ。直ぐに気づかれてしまったようなので、潔く姿を現すことにした。

 

 

「見事な土塊操作だな。興味深い」

「……やはり気付いていたか」

「少数精鋭にしては大所帯過ぎる」

「ねぇー!私はー?」

 

 

 緊張感の感じられない二人に戦意が削がれるが、そういう訳にもいかない。

 男の方は、白いフードを被り顔にガスマスクを着けており、フードから覗く隈の多い目は中々不気味だった。

 隣の女の方は自分より大きなフードを被っているため容姿は解りづらいが赤紫色の長い髪をしており、その手には短刀が握られている。

 

 

「一つ忠告するが俺達は別に王都の者じゃない」

「……なに?」

 

 

 だとしたら雇われの者か?後で王都を色々と探らなければいけないな。……さっきの異常な男といい、どうも嫌な予感がする。

 

 

「あはっ!そのキョトンとした顔可愛いなぁっ」

「……っ!」

 

 

 いつの間に?!他の事に一瞬でも気を取られたとはいえ、まさかここまで接近を許してしまうとは。気配と音の消し方が普通じゃない。

 俺は咄嗟に後ろに飛び退こうとするが、腕を掴まれて押し倒されてしまった。

 

 

「これが陽炎かぁー。……一緒に来ない?」

「お前何を!」

 

 

 俺の瞳を深く覗き込みながら、にっこりとした笑顔でそう問われる。今の状況に対する焦りと同様を無理矢理押さえ込み、冷静な判断をする。

 

 まず頭突きを浴びせ、怯んだ向こうが咄嗟に振るう短刀を持つ手の手首を捻り投げ飛ばす。

 それをひらりと華麗な受け身をして受け流す彼女に向かって小さな火球を放つ。それは紙一重で避けられるが、フードに引火。焼け落ちたフードの下からはピョコっと可愛らしい猫耳が生えていた。

 

 

「やはりか」

「あわわわわっ!」

 

 

 あの様な身のこなしと音の無い動き、俺の接近を気付くその探知能力。他種族だとは目星をつけたが、猫人族だったなら下手に手出しはできない。

 

 

「くそっ、さっさと引くぞ!」

「その前に一つ聞きたい。チューベローズは今も咲いているか」

「どういう意味だ」

「……っ!うん。宜しく言っておくね。知り合いなの?」

「昔馴染みだ」

「そっか……じゃ、またねっ!」

 

 

 さて、やることがものすごく増えてしまった。俺達がここに来て直ぐのタイミングだった所や、あの手際の良さ、雇われた彼奴等の存在。そして完全に人として狂っていたあの男。

 あの男だけじゃない、何人かは殆どのぶぶんの痛覚を無くし、生命力を無理矢理高められた、捨て身の時限爆弾のような身であった。

 

 

「面倒事が増えなけりゃいいんだが……」

 

 

 

 ▼

 

 

 よし、先輩から教わったことは頭と体に叩き込んだ。後は本番でやるのみ。

 

 

「レティ、緊張してる?」

「してるけど……それよりもワクワクしてる」

「そっか。分かるよ」

 

 

 明日の昇格戦に向けて色んな事を教わった。色んな事を覚えた。それを使ってみたい。私の成長を自分で噛み締めたい。

 

 

 昇格戦に参加する選手達は、今年の会場となる東ミズハ国にある東都エルベートに前日入りする。

 転移門の前には参加選手の他にその見送りに来る者も多く、レティシア達もその例に違わず転移門の前に来ていた。

 周りはクラスメイト総出で見送りに来ていたりしており、私の見送りには、ララと紫乃梅さんの二人が来ていた。二人か……きっと皆忙しいんだよ、きっと。

 

 暫くすると、集まった生徒の前にルドビア学園長が姿を表した。

 

 

「生徒諸君!またこの季節がやって来た。我が学園は今年は例年より平均年齢が低く、将来が有望な者が多いようで嬉しく思う。

 だがしかし!他の学園からは経験豊富なベテラン、百戦錬磨の猛者共が集まることだろう。どうしても埋められぬ差というものもある。だが、貴殿等の努力が裏切ることはないだろう」

 

 

 

「長々と講釈を垂れたが、私から言うことはただ一つ!悔いを残す事無かれ!」

「はい!」

 

 

 学園長がそう言い放つと、気合いの入った返事を全員でする。その気迫はとても凄いもので、ルドビア学園長も満足げにしながらその場を去った。

 

 その後、転移門が悪のを待つ最中にララが私の元へ駆け寄ってくる。

 

 

「結局先輩は来なかったね」

「向こうで合流できるよきっと」

「そうだね。レティ、これ」

「お守り!」

「紫乃梅さんに教わりながら作ってみた」

「ありがとうっ!」

 

 

 受け取って、辺りを見回すと少し向こうで見送りに来てくれている紫乃梅さんがこちらを微笑ましそうに見ていた。

 小さな袋状になったお守りは二つあり、触ってみると何だか固いものが入っているようで、良く手で確認してみるとソレがなんなのか解った。

 

 

「銃弾と……小さなナイフ?」

「いやー、何入れたら良いか分かんなくって。努力が分かるものを入れてみた」

 

 

 ……いや、分かるけどさ。

 

 

 中を覗くと少し加工され小さくなった紫乃梅さんのナイフと、もう一つは消耗品で普段使わないはずのララの実弾が入っていた。

 あの地獄の回避練習を脳裏に思い出して苦笑いを浮かべていると、突然今まで固まっていた人の集団が二つに割れた。

 

 

「私としたことが少し遅れてしまったわ。ごめんなさい」

「セテス先輩っ!来ていただいてとても嬉しいです!」

「……あの放火魔は今日も居ないのね」

「紅蓮先輩は用事ができたそうで三日ほど前に出ましたよ。向こうで合流すると思います」

「そ、私もどこかで応援に行くから」

 

 

 そう言ったセテス先輩は突然私に抱きついてきた。騒然とする周りの反応と、恥ずかしさに身動ぎをするが抜け出せそうにない。

 

 

「恥ず……かしい、です」

「私は心苦しいわ。でも、可愛い子には旅をさせよと言うものね……」

「うぅ……」

「うん。頑張って」

「は、はい」

 

 

 ガッチリ抱きつかれた。すっごい頭を撫でられた。とても良い香りがしました、まる。

 

 未だ少しざわつく周囲を鋼の精神で受け流し、セテス先輩を引き剥がす。そろそろ本当に私離れしてくれませんか。

 そんなことをしている間に開いた転移門の前に立って、一度深呼吸をする。

 紫乃梅さんの優しい眼差しと、ララの何も言わず突き出した親指と、セテス先輩の控え目な頑張ってと言う声援を背に私は一歩を踏み出した。

 

 

いざ、東都エルベートへ!



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25話

新しいのを書きたいけど上手くいかないものです。

段々更新遅れているのを何とかしなければ……


7月24日変更:金木犀→迅雷


 休日───それは至福の日。

 一週間、はたまたそれ以上の労働により溜まった疲れを放り投げてその全てを自分のために使えるというヘブンズデイ。何故いきなりこんなことを話したのか。

 

 俺は遂に気付いてしまったのだ。

 

 

「後にも先にも俺には休みが無い……」

「後であげるからねっ?その陰鬱なオーラを仕舞って下さいっ!」

 

 

 俺とセレス、そして特殊第一部隊所属のアリス・クリスタの三人は今回の昇格戦の会場となる東都エルベートに二日前の夜に入国していた。

 

 前日である今日は、各国の主との顔合わせで愛想笑いを浮かべ、今回の昇格戦の概要やら何やらの長々とした話を聞いたりと肩の凝るような仕事の後、セレスがお忍びで町に赴きたいらしいから護衛で共にこっそり抜け出したりと気の休まる時間が今後しばらく無いのである。つーか最後のに関しては何かあったら俺問答無用で消されるんだけど。

 

 なにこれ超社畜。

 

 

「それにしてもデカい屋敷だ」

「東国の木造で作られた歴史的建築物ね」

 

 

 そんな事を考えながらふと廊下の横を見ると、見事な枯山水があった。名のある庭師がやっているのだろう。廊下の柱を見ても歴史を感じる。

 会場から少し離れた場所に建つ荘厳な雰囲気のこの建物は、エルベートの領主でありこのミズハ国を実質的に治める水祓(みずは)の一族の屋敷だ。

 今の領主とは仕事で会ったから一応面識はある。長く、水色っぽい白髪が印象的だったのでこちらは覚えているが、その時は少ししか会話をしなかったし向こうが覚えているのかは定かではない。どちらかと言えばその時一緒に来ていた月夜の方が仲が良いんじゃなかろうか。

 

 

「そういえば月夜の奴どこ行った?テルーヴァで見かけなかったけど」

「あー……帰ってくるなり直ぐに千代姉に連れてかれたわ」

「まじか……」

 

 

 千代姉は俺や月夜と同じ部隊の人で普段は面倒見の良い姉御肌なのだが、よく俺や月夜を引き摺って強いダンジョンで暫く無双して帰ってくる。所謂バトルジャンキーである。あの人に捕まると一ヶ月は帰ってこないと思っておこう。

 

 月夜に内心で黙祷を捧げ、暫く迷路のような屋敷内を歩くと目的の部屋の前に来た。

 家紋である水仙の描かれた襖を開けるとそこには見事に着物を着こなしたお淑やかな女性が正座で座していた。

 向こうもこちらに気がついたようで、閉じていた目をパチリと開け立ち上がると華麗な三段跳びでこちらに両腕を拡げて飛んできた。

 

 

「陽炎君おっひさーっ!」

「そいっと」

「ふぁやっ?!」

 

 

 咄嗟の事だったのでとりあえず隣に居たアリスを身代わりにさせてもらった。当のアリスはというと、目の前で領主様にされるがままにされている。向こうが領主なので無理に抵抗することもできず、こちらを恨みがましそうに睨む事しか出来ないようだ。……南無三。

 

 

「後で、覚え、ときなさいっ!ひぃあんっ!」

「ここが良いのかな?かなっ?」

「んっ、いっ……ひゃうっ」

「……陽炎」

「うん。分かってる」

 

 

 何か空気感がアレなので……というか流石にこれ以上見てられない。隣でセレスが遠い目をし始めたので、目の前の百合百合空間を何とか壊し、アリスを助け出す。

 アリスは乱れた金髪とはだけた服を直しながら俺の後ろでブツブツと何か呟きながらプルプル震えていた。

 当の領主様はご満悦のようで艶々していた。

 

 

「さて、気を取り直して」

「「「直せるかぁっ!!!」」」

「水祓様、各国の方々がいらっしゃったようです」

「そっか、じゃっ!どこでも好きな席に着いてね」

 

 

 そう言われたので俺達は彼女の座る場所から左の少し後ろの場所に座った。……嵐のような奴だな。

 

 暫くすると続々と各国の首領達が現れた。俺達の姿を恐らく初めて見る者が多いのか、仮面を付けた二人組に対してチラチラと目線を向けてくるものも多い。そしてその中には王都の奴等も居た。

 

 

「あいつが騎士団長ね……」

 

 

 アリスが怪訝な目線を向けるが特に反応を示すわけではなかった。

 

 

「これより、各国首領会議を始める」

 

 

 とても圧のある声でそう言ったのは水祓の一族に代々仕える枯宮の当主だ。当代の枯宮はまだ二十代である所を見ても相当若い当主だ。他が四十代程の古参ばかりであった歴史を見てもその実力は侮れないだろう。

 

 

「今回の昇格戦の予選は水祓家の持つ蛙翠の森でのバトル・ロワイアルを行う」

「ほう……」

 

 

 水祓家の持つ蛙翠の森は空気中の魔力とても綺麗なことで有名な森だが、その分危険な魔獣も多いはずだ。本当に昇格する見込みが無ければバトル・ロワイアルどころではないだろう。

 

 

「この競技の開始のため、この中から四名、当日の危険な魔獣の排除と監視を手伝って貰いたい。勿論こちらから何名か派遣もするが、いざという時の戦力が足りぬ。誰かやってくれる者は居ないか」

「テルーヴァの従者はどうだい?今回は珍しくトップの二人を連れてきたみたいじゃないか」

 

 

 そう言ってこちらに矛先を向けてきたのは北東部の国クレーニベルクの首領だ。灰色がかった髪を短く切り揃え、ニヒルな笑みを浮かべている姿はまるでこちらを試しているようだった。ま、その通りなのだろうが。

 

 

「まだ得体の知れない輩を入れて大丈夫なの?」

「でもそれなりに出来るんだろう?」

「だから見たことがないのです」

「確かに名を聞くだけで、『陽炎』『迅雷』共にその実力を見たことはないな」

「生憎だがその話断らせてもらう」

 

 

 当事者抜きで話を進めそうだったのでキッパリと言い切らせてもらった。俺の発言により勝手に話していた二人は口をつぐむ。

 

 

「何故だ?」

 

 

 何故断ったのかという当然の疑問を口にしただけだというのに、まるでこちらに拒否権が無いように聞こえるのは何故だろうか。

 とりあえず断る理由を言おうとしたが、セレスに制されたので発言を譲った。

 

 

「先日、私の国の兵が襲われました」

 

 

 いきなりなんの話だと眉を潜める者も居たが、そんなことを気にせず彼女は話を進める。

 

 

「相手はトレイン行為により大量のモンスターを使い、疲弊した彼等を殺すつもりだったようです」

「相手は誰か分かっているのか?」

「いえ、判別は不能。数は二十人ほど居たようです」

「それと今回のを断る理由がどう関係する?」

「こちらの長が狙われているかもしれないということだ」

 

 

 そう言うと他の奴等も引き下がらざるを得ない。追求をしてきた大男、南西の国ギルバージで一番の傭兵であるバードンも大人しく引き下がったようだ。

 俺はちらりと騎士団長、クリフ・ライオネルを盗み見るが毅然とした態度で顔色一つ変えない。ピクリとも動かずに立っていた。

 

 

「……なにあいつ。知らんぷりしちゃって」

「……んー。どうだかな」

「?」

 

 

 俺達がこそこそ話している間に、他の奴に哨戒の任務が回ったようだ。

 話題は今回の目玉の一つであると同時に俺の頭痛の原因であるデモンストレーションに移っていた。

 

 

「デモンストレーションの場所は開会式のある第一競技場だが、何か要望はあるだろうか」

「私は特に無いですが……」

「ま、一つあるとすれば」

「防壁をしっかりと張っていただければそれで」

「相解った」

 

 

 そこからは俺達の介在する余地の無い、財政や前線などの話だったので割愛させてもらうが一言で簡潔に述べるとしたら。

 

 

「「テルーヴァ以外と顔広くない?」」

 

 

 

 

 そして会議後、俺達の元にライオネルが来た。

 

 

「先程の襲撃の件、私から謝罪させていただきたい」

「あぁ、別に良い。あんた関係してないだろ」

「それは…!」

「どういうこと?」

「あれは王国の暗殺部隊、ホワイト・クロウで間違いない。だが、指揮したのはこいつじゃない事は確かだ」

 

 

 彼、ライオネルは顔色は変えなかったが、体は強張っていた。話を聞けばあれはホワイト・クロウの独断での行動だったらしい。

 だが、今までそんなことが無かった為、調べてみれば王国の派閥争いが関係しているらしい。恐らく指揮したのは第二王位継承権を持つガイノス・ラインハルト。

 

 

「そいつの狙いが分からない以上こちらも手の出し様がないな」

「……何で僕が関係してないって分かったんだい?」

「お前の反応との辻褄が合わないからだ」

「辻褄かい?」

「体を強張らせている時点で動揺や罪悪感を抱いているのは明白。だとしたら、何人にもあんなことをしておいて今更罪悪感なんてあるものか」

「あんな事って?」

無痛兵(ペインレスソルジャー)の生産だ」

 

 

 その言葉が放たれた瞬間、その場に居た者全てが息を飲んだ。




沖田オルタが欲しいー。




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26話

夏風邪舐めたらあかん。


無痛兵(ペインレスソルジャー)か……」

 

 

 アリスが神妙な面持ちでそう呟くと同時に、その部屋に重い空気が流れる。

 それもそうだろう、無痛兵とは数年前、正確には約二年前に一応の形で終結を迎えた大陸戦争で実験・運用されていた戦力の事である。簡単に言えばその名の通り痛みを感じない体にするために非人道的な改造を主に脳に施して出来た人造兵だ。

 ここにいる世代ならその恐ろしさを目の当たりにしているだろうから、それを思い出したのだろう。その誰もが顔をしかめた。

 

 

 そして勿論、痛覚だけでなく、抵抗する実験体の人を様々な拷問にかけて心を潰した挙げ句に、無理矢理頭を改造して出来たその人間に自我なんてものは当然これっぽっちも残ってはいない。

 

 出来るのは漠然とした敵味方の判断と、ただ敵を殺すことのみ。その後の世界裁判でその研究と製造は禁止されて、完全凍結と共にその殆どが闇に葬られたはずなのだが、俺があのとき首を跳ねた男が、串刺しにされても構わずもがく姿はその無痛兵の特徴に酷似していた。

 

 

「だが、あの無痛兵とは前と違うところがあった」

「それは?」

「大まかな指示を聞けるってところだ」

「何だって……!」

 

 

 確かに、あの虚ろな目や剣で串刺しにされながらも言葉を発することも無く平然と動く姿はかつてと同じだが、撤退や待機などはできずに命令されたら最後、息の根が止まるまで敵陣に突っ込んでいく使い捨てだったはすだ。

 そして今、一番重要なのは新たな機能が増えているということ。つまりその研究はその後も密かにどこかで行われていたということである。それも身近なところ、この話の感じだと王家のお膝元でだ。

 あくまでも最後のは憶測だが、確実に一枚噛んでいることは間違いないだろう。

 

 

「ただ相手の大きさが分からない分、下手に手出しできないわね」

「……この件、僕が引き受けよう。元はと言えばこちら側の案件だ」

 

 

 自分からこうも積極的に動いてくれると、クリフの場合は疑いより真っ先に謎の心強さと何だか申し訳無い気持ちになってくる。恐らくこいつは生粋のお人好しなのだろう。普通なら、へぇ、と相槌を打って終わり、触らぬ神になんとやらだ。いや、自国の事ならもっと酷いだろうな。

 裏から事情が分かり次第漁夫の利を狙って潰そうと思ったが、クリフがこちら側に居れば大分難易度が変わってくる。セレス達とそっと相談し、こちらも協力することにした。

 

 

「ま、内部からの方が楽だろうな。でも何かあったら連絡してくれ。協力しよう」

「ありがとう」

「とりあえずこの話は終わりだ、陰気になるし。互いに明日は晴れ舞台だしな、楽しもうぜ」

「あぁ、惚れた人が認める人だ。私の持ちうる全力で挑もう」

 

 

 そう言ってクリフと拳を付き合わせる。そういや、こいつとセレスの将来が懸かってたんだったな。……ここはお兄ちゃんとして良いとこ見せてやらないとな。

 

 純粋な恋をする青年と、ただのシスコン。互いのその目には綺麗な強い意思が込められていた。

 

 

 

 ▼

 

 

 

「どーせまた妹の為にーとかって思ってたんでしょ?」

「当たり前だろ?」

「むぅ……ばーか!ばーか!」

「何で罵倒されてんだ俺」

 

 

 あの後、アリスに「ちゃんとやれ」と耳元で囁かれ、その意味を聞く暇もなく外に追い出された俺は、約束通りセレスと町を探索するため、二人で出掛けることにした。

 

 

 勿論、折角の久し振りの二人きりという事もあるので、(セレスからの要望の方が凄く強かったが)俺は仮面を外し素顔を晒すことにした。セレスは流石にそうは行かずにつばの広い帽子を被っていて、俺達の仮面よりは弱いがしっかりと認識阻害の魔術が掛けられている。

 

 話を戻して。先程ついさっきまで機嫌の良かったセレスがいきなり不機嫌になった件について。

 セレスは、謎の罵倒を食らいあたふたしている俺の腕に今度は引っ付いてきた。

 ……女の子とは分からない生き物だ。

 

 

「あの、歩きづらいんだが」

「罰だもん」

「お、おう」

 

 

 ……ご褒美です。

 

 

「さーて、町の端から端まで探検するわよっ!」

「おー!」

 

 

 気合いの入ったセレスが腕を高らかに上げてそう宣言したので、俺も合わせて声を上げた。

 

 セレスに手を引かれながら辺りを見渡せば、屋台やら何やらが並び、人も活気に満ちており、完全なお祭り状態だ。

 

 それもその筈、昇格戦は世界が注目する次世代のルーキー達を発掘する場所。この大会から有名な魔導師や、今も最前線で活躍する人が名を残してきたこともあり、名を変え形を変え紆余曲折あれど少なくとも百年近く続く大会であり、開催地はここぞとばかりに盛り上がる。

 そんな昇格戦を前日に控えたここエルベートも世界中から色んな人が来ているようで、目を凝らせば名の知れた人もちらほら居るようだった。

 

 

「あれ食べたい!」

「?……あぁ、蕎麦か」

 

 

 彼女の指差した方向に目を向けてみると立ち食いの蕎麦の屋台があった。言われてみればここミズハでしか見ない料理だな。

 彼女にはああやって目の前で作っているのも、立ち食いと言うのも新鮮に写るらしく目を輝かせている。……バレたら侍女とかに何か言われそうな気もするが。

 

 

「二人分くれるか?」

「あいよ」

 

 

 白髪の混じった店主がそう返し、蕎麦を茹でている間にカウンターの端の方を陣取る。あの店主、どっかで見た顔なんだが……気のせいか。

 頼んで直ぐに出てきた蕎麦は香り、喉ごし、薬味との相性、そのどれもがとてもバランスのとれていて、とても美味しかった。

 ……今度自分でも作ってみようか。なんてことを考えながら、ちらと隣を見ると普通に帽子を外して蕎麦を食べ始めているセレスが。

 

 

「おいしいわね!」

「あ、あぁ」

 

 

 おいおい、認識阻害ついてるの忘れてないかと冷や汗を一瞬流すが、まぁいざとなれば自分が何とかするかと諦めに近い溜め息をついた。

 すると、こちらを見てオレと目があった店主が苦笑いに近い同情の目を向けてきた。

 

 

「まぁ領主ってのはどこもそんなんだからなぁ」

「あはは……この事は内密に」

「良いさ、俺も元水祓様のお付きだから分かってるよ。それにほら」

 

 

 この男が元水祓のお付きということに驚いたが、言われて直ぐに思い出した。この人は枯宮の先代当主である枯宮空木(うつぎ)さんだ。前見たときは現役バリバリだったはずだが、少し見ない内に次に任せて好きなことをやっているようで。道理で現当主が若いわけだ。

 

 空木さんに、ほらと指を指された方向を見ると、先程まで顔を会わせていた水祓の領主がこちらに向かってブンブンと手を振っていた。

 彼女に対して周りの人は最初に怪訝な顔を浮かべるが、その顔を見た途端ぎょっとした顔で一礼していく様はこちらから見るととても異様だ。

 つーかおい、さっきの枯宮の人をどこにやったんだ。見当たらないんだが。

 

 

「空木さーん!あ、セレスちゃーん!お兄ぃーさーん!」

「む?つるつるむぐむぐ」

「セレスは食べてな」

「ん」

 

 

 

 俺を見つけて手が空いていると分かった途端、俺に狙いを定めた現水祓の当主である水祓 天音(みずは あまね)が目を輝かせながら飛びかかってくるが、被害を最小限に抑えるためにも、一歩前に出て右手を突きだしその頭にアイアンクローを喰らわせる。

 

 

「うー!あー!」

「あぁ?」

「ちょっとごめん痛いって領主様なんだってちょっと待って砕けるぅぅ!」

「その辺りで許してやんな……」

 

 

 店主がそう言うならと手を離す。これでもう懲りただろうと信じたい。懲りたよね?

 天音が頭を抱えて涙目で悶絶している間にセレスが食べ終わったので、早いところ他に行こうと歩きだした。だが、その腕を後ろからガシッと、それはもう万力のように力強く掴まれた。

 

 

「ねぇ、私を置いてどこ行くの?」

「いや、あの」

「置いてかないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………ねぇ?」

 

 

 

 

 

 天音のそのあまりの迫力と、じっとりとしたハイライトの無い目を目の当たりにした俺とセレスは、直感的な恐怖を感じながら涙目で首を縦に振るしかなかった。




殺戮の天使のアニメにワクワクが止まらない。


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27話

本当に遅くなってしまい申し訳ありませんでした!!

8月入っちゃったよおい!ってことで。
やっちまったなぁ…


 あの後、俺とセレスは途中乱入した天音に引かれながら町を歩いた。何だかんだセレスも天音も楽しそうで何よりだ。

 俺が射的を楽しんでいるセレスを眺めていると、突然左隣から満面の笑みと共に綿菓子が差し出されたのでありがたく一口貰った。

 仄かな甘みを口の中に広げながらもフワッと一瞬で溶けていくソレを楽しんでいると、右隣から横腹目掛けコルク弾を当てられた。

 …それは人に向けるものじゃありません。

 

 

「何デレてんのよっ!」

「あららー?嫉妬かなっ?」

 

 

 そう言って煽りながら俺に引っ付こうとする天音を引き剥がす作業に手間取っていると、みるみるセレスの機嫌が悪くなってゆき、彼女の周りに黒いオーラが漂い始める。どうしよ。

 

 

「そんな引っ付くなって」

「一国の長にアイアンクローやったなんて知れたらどうなるかにゃー?」

「うぐっ…」

 

 

 それを言われるとあまり強く出れない。先程からそれを良いことに好き勝手されている気がするが。

 少々騒がしくなってきたので、射的の店主にすみませんと軽く会釈をし、近くの広場のベンチに三人で座る。

 

 

「大体、何でそんな距離近いのよっ!」

「勿論、殿方との逢瀬を…」

「えっ…えっ?!」

「セレス、真に受けるんじゃない」

 

 

 案外、純情で純白な乙女のセレスはこういった冗談を真に受ける節がある。突然の言葉に目を白黒させているセレスを正気に戻るまでの間に天音に聞きたいことを聞いておこう。

 

 

「で、本当に何しに来た?」

「本当に君と親睦を深めに来たにゃ」

 

 

 嘘を言っている風には見えない…はて、顔は前回と今回しか合わせてないし、前回した会話は仕事関係だったし。思い当たる節を端から探していくが一切思い当たらない。

 

 

「…覚えてないの?」

 

 

 俺が頭を悩ませていると突然、天音が俺の袖をちょこんと摘まみうるうるした上目遣いで、ずいと顔を近付けて来たので思わず仰け反った。近いし甘い香りするし不覚にも可愛いと思ってしまいました、まる。…誰に話してんだ俺は静まれ鼓動抑えろ動揺。

 

 

「お、覚えてないって?」

「前に来てくれた時に『今度いらした時は歓迎します』って言ったでしょ?」

「えっ?」

「私なりの歓迎っ!」

「分かるかっ!!」

 

 

 俺の声で正気に戻ったセレスが強引に天音を引き剥がし、ふしゅーっと威嚇するので、とりあえずこれが天音なりの歓迎だということを話すと不服そうながらも渋々引き下がってくれた。

 

 

「そーだっ!もうちょっとだけ付き合って!」

「「えっ?」」

 

 

 そんな二人の間の抜けた返事をよそに彼女は勢い良く立ち上がり、俺達を引っ張っていった。

 

 

 ▼

 

 

「わぁ…綺麗な所ねっ!」

「喜んでくれたっ?」

「確かに凄いな」

 

 

 天音が連れてきたところは、町からかなり外れた所の森、つまり今回の試験会場である蛙翠の森である。

 町の最南端から天音の顔パスで難なく転送ゲートを使いここに来たのだが、枯宮の人に何て説明したら良いんだろうか…

 

 木々の隙間から優しい木漏れ日が降り注ぐ。少し向こうにある小さく開けた場所では滝が流れ、その周りの木には実が生っており、一目で人の手が入っていないことが分かる。

 さらに彼女について行くと、大きく開けた場所に出た。その中心には樹齢何千年になるのだろうかという巨大な木が立っていた。

 

 

「ここはね、小さい時からの遊び場。私の大事な場所なの」

「何でその大事な場所に私達を?」

「二人共ね、一緒に居ると落ち着くの。私はこんな生まれだから、こんな風に遊んだこと無かった。だからそのお礼」

「私も楽しかったわ」

 

 

 そう言ってセレスは天音に対して手を差し出す。それを見て、こてんと首を傾げ不思議そうにする彼女の手をセレスは強引に繋いだ。

 

 

「友達。これで友達!」

「わぁ…っ!うんっ、友達!」

 

 

 そういえばセレスは俺達が居たから兎も角、天音の周りに俺達みたいなのは居なかったと、ふと気付いた。

 俺は少し罪悪感を感じて謝ろうとした時、天音がこっちを向いて俺に頭から突撃する形で抱き着いてきた。

 

 

「謝らないで。貴方の態度は当然の事。でも、これから仲良くしてくれると嬉しいな」

「勿論だ」

「…そして将来的にはですね水祓家に嫁ぐ形に」

「させるかぁっ!」

 

 

 天音から放たれた衝撃の発言に、セレスが俺から無理矢理彼女を引き剥がす、が逆にセレスが引き剥がされ俺の腕に引っ付いてきた。

 

 

「ビビっと来たのっ!運命だよっ!」

「認めないわよ!」

「うーっ!」

 

 

 俺を置いてうーだのにゃーだの混沌でも這い寄ってきそうな戦いを繰り広げているのを他所に、俺はただならぬ気配を感じ取っていた。

 

 

「…何か来る!下がれ!」

 

 

 俺が二人を背後に下がらせたと同時に森から鳥が飛び立ち、メキメキと木の倒れる音がした。

 目の前に現れたのはA級の魔物、スプラッタデーモンだった。

 

 人の形をしてはいるが、体長は6メートル程で皮膚は血のように赤黒く硬く、顔には目と口だと思われる空洞がポッカリと空いている。

 そして一番の特徴はその腕、脚より太くできたその腕の先には大きな刃物のような爪が付いており、これで相手を原形を留めない程に引き裂く。

 

 

「在来種か?」

「そんなわけないよっ!」

「やばっ、こっち気付いた」

 

 

 天音の声に反応したスプラッタデーモンがこちらを向いた。後ろでひっと小さな悲鳴が聞こえる中、俺は魔方陣から血染咲を取り出す。

 …王女二人に俺一人って大丈夫なのかこれ。何を言って嘆いても状況は変わらないのでやるしかないが。

 

 

「私がサポートするよっ」

「私もするわよっ!」

「いや、周辺の警戒をしていてくれ」

 

 

 そう忠告だけして俺は走る。これは真面目にやらないと流石に勝てる相手じゃないな…

 頭の中で戦闘の流れを何パターンも構築し、あらゆる可能性を取捨選択してゆく。

 

 スプラッタデーモンの足元まで魔法の補助を使い一気に詰める。それに気づき向こうは俺に向けてその爪を振るが、追い付いてはいない。

 俺は宙に飛び、相手の右肩から刃を入れるが思ったより堅い。

 

 

「はぁぁっ!!」

 

 

 気合いで剣を振り抜きそこそこのダメージを与えた。振るった刃から炎が吹き出てその周りの肉ごと焼く。傷口は若干炭化したようで黒く崩れた。

 スプラッタデーモンは一つ咆哮をあげるとその口から粘性の液体を吐く。俺は着地と同時に横に飛び退くとさっきまで俺の居た場所がどろどろに溶けていた。

 

 スプラッタデーモンのブレスは強力な酸性。敵の倒し方が本当にスプラッタだな。

 

 俺は止まることなくスプラッタデーモンに動きを捉えさせず、今度は脚を切り裂き、片手でアクロバットに着地しもう一閃。辺りはスプラッタデーモンが暴れて荒れ地になってしまっている。

 …早いところ片付けないとな。

 

 俺が再び剣を構えた時、こちらに向かってくる魔力を感じ、そしてこちらに何か走ってくる音が聞こえた。

 

 

「マジかよ…誘われてきたか。セレス!天音!障壁を張れ!」

「え、あ、うん!反射壁(リフレクトガード)っ!」

「ほいほーい!水流壁(スプラッシュウォール)!」

 

 

 二人が障壁を張ったと同時に森から新緑狼の群れが飛び出てきた。その数、十は普通に越えているだろう。

 狼達はそのまま直進し二人の障壁にぶつかって行く。だが、どんどん来る狼のタックルは少しずつ障壁にヒビを入れていく。

 

 

「あわわっ!」

「大丈夫。紅蓮を信じよう」

 

 

 セレスはそう言うものの、紅蓮はスプラッタデーモンの相手をしており、とても助けに行けるとは思えない。

 だが、彼の思惑を知るにはそうかからなかった。

 

 

 目の前の狼が一瞬の間に氷漬けになり、電撃で粉々になる。そして後続の狼達が一瞬の間に飛んできた何かに吹き飛ばされる。

 よく見ると、その中心には電気を纏った木の棒が突き刺さっており、辺りに電撃を撒き散らしていた。そして、そこに両腕を広げ降り立ったのは、プラチナがかった金髪の見覚えのある少女だった。

 

 

「レティシア参上っ、ですっ!」




お気に入りありがとうございます!
これからも頑張ります!


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