Veronica (つな*)
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起点
Veronicaの生誕 


処女作です。優しく見守ってくれると嬉しいです。

ヴェロニカは思った。

ここはどこで、私は誰で、目の前の男は誰なのだろうと

そしてヴェロニカは夢を見ている。



私の名前はヴェロニカ。

イタリアに住んでいて現在5歳だ。

 

 

「おはよう、プリンチペッサ」

「おはようルッスーリア」

 

私は普通の人間と違うところがある。

 

「パパは?」

「さっきスクアーロが頭からワイン被ってたから、もう起きてるはずよ」

 

「そう…いただきます」

「あら、日本の礼儀なんていつ覚えたのかしら?」

「この前、本であった…」

「ボスの前ではあまりやっちゃダメよ~」

「わかったわ…」

 

 

それは、私が日本人として生きていた記憶があるということだ。

 

そしてこの世界が漫画として知られていた世界で私が生きていたということと…

 

 

バンッ

 

リビングのドアが大きな音を立てて乱暴に開かれた。

 

「おいルッスーリア、カス鮫はどこだ」

「あらボスおはよ~、スクアーロならシャワー浴びてるんじゃないかしら?さっきワイン被ってたし」

「ふんっ」

 

ザンザスはそれだけ聞くと、すぐさま部屋を出ようとする。

 

「パパ」

 

ヴェロニカが声を掛けると、ザンザスはこちらを見ないものの足を止める。

 

「おはよう」

「……ああ」

 

パタン

 

小さな返事だけ残すと、ザンザスは出て行った。

 

 

そう、私はボンゴレ直属暗殺部隊ヴァリアーのボス、ザンザスの血のつながった娘である。

 

 

「ほーんと、ボスはプリンチペッサには甘いわね~」

「……知ってる、ごちそうさま…」

「あら、プリンチペッサまだおかわりあるわよ?」

「いらない、私庭の方で散歩でもしてくるわ…」

「わかったわ~いってらっしゃい」

「……いってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェロニカは、そういうと庭のほうへ出て人気のない花壇の方へ足を進める。

段々と歩く速度が速くなり、花壇へ着くと周りを見渡し誰もいないことを確認すると、白いベンチに腰掛ける。

 

「はぁーーーーー……緊張したー…」

 

朝っぱらからなんちゅーアクシデントだよ…

パパってかザンザスが父親って、ほんと何があったんだよ

毎度ながら、ザンザスに声かけたり目線合うと緊張しすぎて心臓破裂しそうなんだけど…

愛を知らない男でも流石に自分の娘に手は上げないだろうと思うけれど。

そこまで堕ちちゃいないだろう…

 

 

私の名前は、ヴェロニカ。

そして日本人だった時の名前は仲田夏美、最後に覚えているのは大学3年頃、アルバイトを終えて家に帰ろうとしていたところである。

父母姉私と四人家族であり、長女ともにオタクではあったが、長女は漫画派であり、私はアニメ派という奇妙な二人姉妹であった……ハズだ。

この日本人だった記憶があるという、ましてや漫画の中の世界にいるなんて何かの夢ではないかと思いながら早2年。

何故2年かというと、私の3歳の頃…何がきっかけで思い出したのかは分からないが急に倒れて高熱でうなされていた時があったそうで、熱が引いて意識がハッキリとしたときには日本人であった記憶は既に私の中に存在していた。

最初は困惑が大きかった。

周りにはどこかで見たようなコスプレ集団、自身の体は小さくなっていて、呂律が回らない、何故か口から出るのは未知の言語(イタリア語)etc...

もう、ヤバかったですね、ハイ。

急に大人しくなってしまった私を一番心配してくれたのがルッスーリアで、私の身の回りの世話も彼がやってくれていたのが私の中ではとても感謝が大きかったのか、今じゃ心の中でママと呼んでいる始末。

ザンザスとルッスーリアのカップリングとか嫌でも考えたくないので、あくまでも心の中でそう呼んでいるだけである。

 

記憶を得て最初の頃、時間をかけて頭の中を整理した結果、ここが家庭教師ヒットマンリボーンの世界なのだと認めざるを得なかった。

ヴァリアーの人たちは私に生々しいところは教育上良くないと思っているのか死ぬ気の炎やらナイフやら血やらを私の前では見せないけれど…

考えてみろよ、4階まで人が登れると思うか?ちなみに登ってきたのはスクアーロである。

そして赤ん坊が喋るだろうか?もちろんマーモンである。しかもなんか浮いてるし。

色々現実を突きつけられて、一週間ほどで自分の中で整理できたと思った時期に長期任務でどこかへ行っていたザンザス帰還。

いやー、ルッスーリアから「プリンチペッサ、あなたのパパが帰ってきてるわよ」なんて言われて父親の顔を覚えておこうと行ったらザンザスがいるではありませんか。

あの時は、死ぬかと思いましたまる

父親になりそうな人物に当たりをつけようとして一番最初に候補から外した男である。

ちなみにレヴィかオッタビオらへんの出来ちゃった子かと思っていた。時間軸も分かんなかったし。

だが現実は奇なり、父親ザンザスと対面した時顔から変な汁がでそうな勢いで緊張しまくっていたし、呼び方なんて分かんなかったしとりあえず「おかえり」とだけ小さく呟いたのは今でも覚えている。

 

当時の私は、あの愛を知らない男と言われるザンザスが子供作るか?いや知らない間に出来ちゃってた感もありはするけれど、それでも施設に預けてポイしそうだし、ここら辺は本気で不思議であった。

まあ、その謎も一か月過ぎたあたりで解けたんですがね、ハイ。

憤怒の炎…私も出るじゃないですかやだー

………まじかよ、おい

誰もいない部屋で発現した時は、頭抱えて絶望しましたよ。

私がザンザスの血をばっちり受け継いでいてなおかつ憤怒の炎を一般人の前で出しちゃったらそれこそ危ないと思ったのだろう、私を育てている理由がバッチリ分かってしまった。

誰も私にマフィアと悟られないようにしてはいるけれど、これバレたらマフィアルート一直線ではなかろうか?

そう思った私は、このことを誰にも言わずに人気のない場所で何度も手から炎を出しては調節しようと努力してきたのだった。

 

そうして、2年経つ現在、私は今も父親であるザンザスとあまり喋ったことがないし、この炎のことも言っていないのだ。

ちなみに今は炎をごく少量、一見誰も気づかない程度を手に纏わせている。

これが出来るまでに長い時間を浪費したのは懐かしい思い出である。

 

「にしても暇ね」

 

そういえばさっきルッスーリアがザンザスは私に甘いって言ったから、咄嗟に知ってるとか言っちゃったけど、全く身に覚えがない。

声かけても目も合わせないし、まぁ足を止めてくれるだけ彼なりの優しさか?

だがしかし、こちとら精一杯挨拶してんだから、少しくらいは返せよ…ってんなもん出来てたら、あんな非情な男になってないわけで。

 

「はぁ……」

 

5歳になってもどこか保育園みたいなのに預けられるわけでもないし、英才教育を受けるわけでもなし、ぶっちゃけ暇だ。

……とりあえず、暇だから炎の調節に励みますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルッスーリアside

 

 

食卓にトースト、オニオンスープ、サラダにソーセージを並べて小さなお姫様が好きなブルーベリージャムを棚からとっていた時、リビングの扉がゆっくりと開く音がした。

眉毛がとてもボスに似ている可愛いヴェロニカが、少し眠たそうに入ってきた。

寝起きはボスと似ていて、表情をムッスリとしている様に思わず顔がにやける。

 

「おはようプリンチペッサ」

「おはようルッスーリア」

 

ヴェロニカがいつもの席に座ると、ルッスーリアはバターナイフとジャム瓶をヴェロニカの近くに置く。

 

「ありがと」

 

そろそろベルとマーモンが起きてくる時間ね…トースト焼けたかしら?

ルッスーリアが考え事をしていると、ヴェロニカが口を開く。

 

「パパは?」

 

ボスをパパ呼び出来るのはこの子の特権よね、ボスもよくそれに応えたわね…

 

「さっきスクアーロが頭からワイン被ってたから、もう起きてるはずよ」

 

大方、大きな声で怒鳴り散らしながらボスの部屋に入っていったから近くにあったワインを投げつけられたんでしょうね。

 

「そう…いただきます」

 

いただきますってたしか、日本のご飯を食べるときの礼儀作法だったかしら…

 

「あら、日本の礼儀なんていつ覚えたのかしら?」

「この前、本であった…」

 

昨日あまり見ないと思ってたらまた書庫へ行っていたのね、にしてもそんな本あったかしら…?

 

「ボスの前ではあまりやっちゃダメよ~」

 

沢田綱吉達を思い出して不機嫌になって、私たちに八つ当たりしそうだし。

 

「わかったわ…」

 

 

バンッ

 

リビングのドアが大きな音を立てて乱暴に開かれた。

 

「おいルッスーリア、カス鮫はどこだ」

「あらボスおはよ~、スクアーロならシャワー浴びてるんじゃないかしら?さっきワイン被ってたし」

「ふんっ」

 

ザンザスはそれだけ聞くと、すぐさま部屋を出ようとする。

 

「パパ」

 

可愛いヴェロニカの声がザンザスの足を止める。

ちゃんと娘の言葉を待つとこがボスが父親に見えるときなのよね~

 

「おはよう」

「……ああ」

 

パタン

 

ちゃんと返事はしてくれるとこがもう、とってもプリンチペッサに甘いって一目で分かるわ、ああ羨ましい。

 

「ほーんと、ボスはプリンチペッサには甘いわね~」

「……知ってる、ごちそうさま…」

「あら、プリンチペッサまだおかわりあるわよ?」

「いらない、私庭の方で散歩でもしてくるわ…」

「わかったわ~いってらっしゃい」

「……いってきます」

 

パタンと小さく扉が閉まると、扉の向こう側で小さな気配が外へ行くのが分かる。

そして、ルッスーリアはベルとマーモン、他の幹部が来るまでにヴェロニカの使った皿を洗おうと立ち上がった。

 

 

いつもいつも、一人で遊ぶ小さな背中にルッスーリアは心配していた。

ヴェロニカから、外へ出たいと言われたこともなければ一緒に遊びたいと言われたこともなかった。

ルッスーリアは、無表情でただいつも庭の奥の誰も寄り付かない、薔薇が植えられているところのベンチで自身の手を覗き込む小さな子供がただ気がかりだった。

 

 

「ふわぁぁ…飯~」

「あら、ベルおはよ」

「なに、トースト?ならピーナッツバターちょうだい…」

「はい」

「ヴェロニカはー?」

「庭にいるわよ」

「また?昨日もいなかった?」

「昨日は書庫じゃないかしら?」

「ふ~ん…暇じゃないのかなー…」

「私も少し心配なのよねー、あの子いつも一人でいるじゃない…」

「にしてもいつも庭で何してんの?」

「ずっと、手を眺めてるのよ…何か思い詰めることでもあったのかしら…」

 

ルッスーリアは紅茶を淹れると、ベルの前に置く。

ベルはそれを飲むと、トーストを齧る。

 

「はぁ?んなのあの事件しかないでしょ」

「でも二年前のことよ?しかもあの時のことは忘れてたし…」

「思い出したのかもよ?」

「ボスにもいつも通りだったわよ?」

「何言ってんの、あの時からじゃん……ヴェロニカがああなったの」

「………それは…そうね…」

「つーか、こんな場所にいて普通に育つわけないでしょ」

 

ベルはトーストをすべて食べ終えると、ウィンナーをフォークで刺し口に持っていく。

 

「あいつが思ってることなんてボスが聞かない限り、誰も分かんないんじゃない?」

「そうね……ボスに少し言ってみようかしら……」

「別にあいつみたいなガキは沢山いんでしょ、世の中」

「それでもそのままってわけにはいかないでしょ!もう……」

 

ルッスーリアは庭の方向を眺めて、ため息をはく。

ベルは空腹が満たされたのか、椅子から立ち上がり扉の方に手を掛ける。

 

 

「ボスが裏切り者を殺してる場面に出くわすなんて、これからもありそうだし」

 

 

扉が閉まる音を耳にしながらルッスーリアはまた溜息を吐く。

 

 

 

 

「あらやだお洋服に血が付いちゃったわ!」

 

ザザーザ…

 

「はーい、こちらルッスー『おい、カス今すぐ本部に来い』え?ボス?何かあったの?」

『…』

「とりあえず、すぐ向かうわ」

 

 

 

 

「ボス!何があっーーーー……」

「こいつを空いてる部屋に運べ」

「……わかったわ…ボス…その…見られたの?」

「……」

「…そう…」

 

 

 

 

 

「うぇぇぇぇええん…ルッスーリアぁ…」

「プリンチペッサ、今お薬飲んだから直ぐ良くなるわよ」

「うぅ…ぐすっ」

「ええ、さあ寝なさい」

「やだぁ…やだっ」

「どうして?悪い夢でも見るの?」

「パパが赤く…って………こわいよぉ…」

「……大丈夫、あたしがプリンチペッサとずっと手を繋いでおくから大丈夫よ」

「ふぅ……ううぅ……」

 

 

 

 

 

「あたま…もう、いたくない」

「ほんと?でも少し熱あるから今日まで寝ましょ?」

「わかった」

「プリンチペッサ、この前ボ……パパが帰ってきたこと覚えてる?」

「……?おぼえてない…」

「そう…わかったわ……」

 

 

ああ、可愛いプリンチペッサ、思い出さないで。

 

 

 

 

 

 

そのころのヴェロニカ

 

あ、こいつカテキョーに出てくるオカマのやつに似てる

 

 




*処女作です。
誤字脱字あれば教えてください。


カテキョー自体、ハマってたのは5か月ほど前なんですけど、ハマってた時に出てきたネタを書かずにはいられなくて…吐き出したくてとりあえず投稿してみました。(笑)
ちなみにアニメもうろ覚え(2~3年前に見たっきり)で、原作は見たことないです。
でもザンザスが好きなので、wikiで調べるという…ほんとなんかカテキョーが本当に大好きな人には申し訳ないほど寄せ集めの知識で書いてます。
どこか間違っていたら、または違和感があるならば教えてください。



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Veronicaの父との別れ

ヴェロニカは気づいた。
寂しかったのだと

ヴェロニカは知った。
父の手はこんなにも硬くて大きいものだったのかと


「プリンチペッサ、誕生日おめでとう!」

「おうおう、プリンチペッサ!あんなちっせーガキがこんな大きくなりやがってよおお」

「いつの話してんの?ありがとルッスーリア」

「うおおおい、俺には礼がねぇのかああ」

「はいはいありがとスクアーロ」

「心が籠ってねええええ」

「プリンチペッサ、これ誕生日プレゼントです」

「あらありがとう、レヴィ」

「俺からもあるよ~シシッ」

「僕からもあるからね」

「ベルもマーモンもありがとう」

 

はい、プリンチペッサ、ことヴェロニカです。

今日でなんと14歳になってしまいました。

え?早すぎないかって?いやここ9年ほど語ることもなかったので省いちゃいましたよ、ええ。

やはり10年以上ヴァリアーの面々と一緒にいるせいか、度胸も態度も少し大きくなってしまったヴェロニカです。

これだけ長くいるとヴァリアーの人達が家族のように思えるようになってきたんだが…

だがしかし未だに父ザンザスとはあまり喋ることはない。

ほんともうなんていうか、ザンザスが攻略無理ですわ、いやする気もなかったけれども…

あやつ私に何かを聞いたこともなければ、喋りかけてくれたこともなかった。

あと、何回かボンゴレのパーティーかなんだか知らんけど、連れていかれた式典で沢田綱吉に会いましたよ。

他の原作キャラに会えて、私はなんだか満足です。

雲雀恭弥がめちゃくちゃ怖かったのでずっとスクアーロとベルの後ろに隠れていたのは今でもいじられるネタである。

しかし、私は未だに憤怒の炎が出ることを皆に言っていない。

これからも、言う気はないけどね

そういえばこれ最近知ったんだけど、私ってザンザスが35歳の時に生まれたらしいのよね。

多分、未来編終わった直後だろうか…

まあ今年でザンザスも49!もう人生折り返し地点まで来てるじゃん。

だがこいつほんと四捨五入したら50なのかと疑わしくなるほど、老けないんだよね…未だに30代に見えなくもないし。

学校の友達に、キャーヴェロニカのパパちょーかっこいー!を期待してたわけなんですよ…ザンザスが私の学校に来たことなんてなかったわけで…

別に寂しくないですよ、分かってたし……代わりにベル来てくれたし。

キャーヴェロニカのお兄ちゃんカッコイー!は実現できたし満足です。

それより、現状報告と行きましょう。

 

この9年間ただ惰性に生きていたわけでなく、私だって炎の微調節に勤しんでたわけですが…

なんというか、やりすぎたのかなんなのか…

ずっと手の表面に炎をほんの僅かの量を纏わせているんだが、誰も気づかない。

これまじで、最初え?ってなったから…自分でも纏わせてるの忘れてたくらいだし。

ご飯食べようとしてスプーンを触った瞬間、スプーンが若干溶け出してめちゃくちゃビビった。

誰も気が付いていなかったけど。

今じゃ炎を網状に張り巡らせることも可能になったんだが、これ使う機会絶対ないなと思う。

炎のコントロールなら誰にも負けない自信しかない。

それ以外目ぼしい成果はなかったかな。

さて、長々と喋りすぎたので誕生日パーティーに戻ろうか。

 

「俺これ~シシッ」

「あ、ちょっとベル!そのショートケーキあたしのだったんだけど!」

「早いもん勝ちだよん」

「もう…」

「にしてもプリンチペッサはとっても女の子らしくなって、悪い男ひっかけなきゃいいけどねぇ」

「あら、でもあたしの理想は高いわよ?」

「いうね、どんな男なら君はなびくんだい?」

「とりあえず、最低条件としては年収1億ね」

「んまぁ!悪女みたいなこと言わないでよん!」

 

ルッスーリアが両手で頬を抑えながら叫ぶ。

私は、笑っていた。

ヴァリアーの面子はお世辞も言えないほど極悪人だ。

でも…だけれども私はこの人たちがとても大好きなのだ。

いつも私を見てくれる彼らが…それがザンザスの娘だからといっても……それでもとっても嬉しいのだ。

また明日になって、スクアーロがザンザスからグラスやワイン投げられて朝風呂から始まるんだろうな…

その次にベルが起きだして、私は学校へ行って……

 

それで―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボスが危篤状態だ」

 

「………え?」

 

授業中、いきなり呼び出されて、学校の前には迎えの車があって…乗ったらスクアーロが真剣な顔で……え?

 

「今、なんて…」

「ボスがさっき危篤状態に入った…もう長くない…覚悟しておけ」

「………」

 

はい?あのザンザスが?あれ?今日エイプリル…じゃない……

 

「なんで?」

「病気だ」

「嘘。ねぇ、何で?」

 

敵の攻撃にもろ当たったのか?そんな馬鹿な…

 

「本当だ、元々そういう兆候はあったぁ…」

「は?…分かってたのに黙ってたわけ?」

「ああ」

「何でっ…何で⁉手術でもなんでもする時間はあったでしょ⁉」

「…治療できるものじゃなかったんだあ……」

「それでも!それでも……私に教えるくらいはあったでしょ⁉」

「ボスがそれを拒否しやがったんだよお」

「はあ⁉意味わかんなっ……ばっかじゃないの⁉あの人っ……あ、ああ……」

 

それ以上何も言えずに、私はただ両手で顔を覆うしかできなかった。

少し経ち、車がそろそろ本部につく頃、私は顔を覆っていた手を離した。

 

「スクアーロ…」

「なんだぁ」

「パパの病気って…?」

 

自分でもひどいと思うくらい、声は震えていて、バックミラー越しにスクアーロが顔をしかめているのが見えた。

 

「HIVだ…治療法はない…」

「ああ…あああああ……」

 

どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして

 

どうして教えてくれなかったの?パパ……

 

 

「着いたぞぉ…」

 

スクアーロの声がスッと頭に入ってきて、混乱していた頭が冷水を浴びたように冴えていった。

 

「会いたくない…」

「会って来い…最期だ」

「やだぁ…」

 

私はスクアーロに手を引かれるがまま、歩き出して本部の中まで入っていった。

段々と奥に行くにつれ、人気が無くなり、スクアーロの足が止まったところの廊下はとても暗かった。

 

「俺は外にいるからなぁ」

 

スクアーロはそれだけ言うと、私を部屋の中に押し込めて、自身は外へ出ていった。

部屋の中にはピー、ピー、ピーという機械の音が聞こえていて、私の足は鉛のように重かった。

真っ白いベッドの上には今まで無表情で冷徹で非情な男であったザンザスが眠っていて、私の気配で起きたのか瞼がゆっくりと開く。

 

「……パパ…」

 

上ずった声でザンザスに声を掛ける。

ザンザスの目は私を捉え、僅かに眉を顰める。

 

「あのカス鮫がっ……」

「パパ死ぬの?」

 

声を出すのも辛そうなザンザスに私は無意識にそう呟いていた。

 

「ああ…」

「手立てはないの?」

「…ない」

「どうして黙ってたの?」

「死ぬまで黙ってるつもりだった」

「ねぇ答えて」

「………」

 

ザンザスは黙り込んで、眉間にしわを寄せて目を閉じている。

 

「ねぇパパ……本当はパパが元気だったら2,3発殴ってたけど……それについては許してあげる…」

「……ふん、お前に俺が殴れるわけねーだろうが…」

「減らず口……パパだって私を叱ったことも手を上げたこともないくせに…」

「ふん」

「あーー、なんだろ……沢山言いたいことあるんだけど…」

「めんどくせぇ、一つにしろ」

「そういうとこほんっとパパらしいよね…」

「っけ、早く言え」

 

 

「あたし……手から炎が出るの…」

 

ザンザスが目を大きく見開いた。

 

「いつからだ…」

「子供のころから……多分4歳くらい…」

「何故黙っていた」

「その時は、怒られると思ってたの……でも最近じゃ怖がられると思ってたの…」

「……はぁ…」

 

若干嘘ついたけど、バレないからいいか

ザンザスは何か考えるように、黙り込んで、私もそれをずっと眺めていた。

 

「…それは誰にも言うな…」

「誰にも?スクアーロにも、ルッスーリアにも?」

「そうだ…そしてそれをこれからも誰にも見せるな」

「どうして…?」

「どうしてもだ…」

「……分かった…でも一つだけ私からお願いがあるの…」

「なんだ」

 

「あたまを……なでて…ほしい」

 

今までただ一度も触れてこなかったその手で、一度でいいから撫でられたかった

 

「何故…」

「いいから」

 

ザンザスは不服そうに手を私の頭に持って行った。

無骨な大きい手のひらが、私の頭に乗っかる感触に私は目の奥が熱くなっていった。

少しだけ、ザンザスの指が動き、私の髪を梳くような動きをしていく。

 

 

「ヴェロニカ」

 

 

一瞬誰の名前だろうと思った。

それが、自分の名前だとわかり、私は目を大きく見開いた。

 

 

「ヴェロニカ……お前は俺のようになるな…」

 

 

いつものように無表情で、だがそれとなく柔らかい表情をしていて…

いつものように低い声ではなく、言い聞かせるような声で

 

「わたしの…なまえ――――…」

 

 

私が言い終える前に、ザンザスの手が重力に従って私の頭からずり落ちていった。

 

 

ピーピーピーピー

 

機械の音が部屋中に響いていて、後ろから扉が開く音と、スクアーロの声と……それと…それと―――――…

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

目を覚ますと、私の部屋のベッドの上で寝ていた。

いつ寝たのかと、思い返すと父のことを思い出し、あれは夢なのではと思い始める。

起き上がり、おぼつかない足取りで部屋を出る。

リビングに行けば誰かいるだろうか…

そう思い、足を進めた矢先、ベルの部屋から声がした。

 

 

「――――…!…‼」

「――けど、―――」

 

なんだろう、あまり聞こえない…

ヴェロニカは耳を扉の前まで近づける。

 

「あいつらファミリーごと殺そうよ!」

「もう今は同盟ファミリーだ…それにボスと戦ったやつはボスが殺した」

「こっちはボス失くしたんだよ?弔いでもなんでも、相手を殺さなきゃ収まんないね…」

「おいお前らぁ…あれは10年前のときの戦争時にあった出来事で、ボスはそれについて何も言わなかったんだぞぉ」

「くっそ!ボスもボスだよ…何でスクアーロにだけ教えんだよ!くっそ…」

「ほんとよねぇ…にしてもどうして攻撃手段にHIVなんて選んだのよ?あんなの潜伏期間が8~10年もあるじゃない…」

「いや、あれは…奴がボスにビビッて手にしていた薬品やらなんやらを投げつけたんだよぉ…」

「あーーーっ、ほんっとムカつく、あのファミリー…やっぱ殺そうよ…」

「やめろベル、ボンゴレの意見を聞かないことには俺たちだけで独断するなぁ」

「にしても何でボスはHIVの治療受けなかったんだい?受けてたらもう少し生きられただろう?」

「あれは単に、治療受け続けるのが嫌だっただけだろぉ」

「お前はそれでいいわけ?ボス死んじまったじゃんかよ」

「死んだやつに関してどうこう言うより、これからを考えろぉ…プリンチペッサもいんだろーがぁ」

「はぁ?ヴェロニカはこっち側のこと何も知らないじゃん…」

「だから―――――」

 

 

 

扉から手を離し、ヴェロニカは出来るだけ音を立てずその場から離れるように駆け出した。

 

攻撃?10年前…?戦争……?

パパはそれでHIVにかかって死んじゃったわけ?

 

ふざけんな 

 

「…ふざけんなよ……カスが…」

 

最期の最後だけ父親面して死んだザンザスに腹が立って、それと同時にとっても悲しかった。

自身の最期であるにも関わらず、私を最後までマフィアに関わらせようとはしなかった私の父親。

 

「やっぱ殴る……!」

 

私は部屋に駆け込むと、直ぐに財布と携帯、そして服を鞄に詰め込んで部屋をすぐに出る。

本部を抜け出す前に、最後にもう一度ザンザスの顔が見たくて、死体がどこにあるかも分からず、ザンザスのいた病室に駆け出す。

 

「はぁ…はぁ…まだ……あった…」

 

顔に布がかけられてあるが、父のソレだと分かり近寄り、布を取る。

 

「パパ、その余裕めいた顔ぶん殴りに行くからね…」

 

私はそれだけ言うと、病室を出ようとしたが、あるものが目に留まり足を止める。

目の先にあったのは、テーブルの上に置かれていたザンザスの愛用していた二挺拳銃。

私は迷わずそれを取ると、部屋を出て本部から出た。

目指すはボンゴレ本部。

足の裏には薄く憤怒の炎を纏い、一気に地面を蹴ると爆発的に加速し、常人であれば目で捉えられないほどのスピードでただただ走っていた。

 

数十分走っただろうか、本部が見えてきて、ヴェロニカは途中で歩き出して、本部の門の前で立ち止まる。

 

「貴様、何者だ」

 

警備の者が警戒しながら私の近くに寄ってきた。

 

「ヴェロニカ、沢田綱吉に会いたい…名前を伝えれば分かるはずだ」

「……待っていろ」

 

警備の者は暫く通信機器で何を話していたが、数分経つと慌ただしくなり、正面玄関から大きな音を立てて一人の青年が現れた。

 

「ヴェ、ヴェロニカちゃん⁉どうしてこんなところに…ザ、ザンザスは⁉」

 

現れたのは、現ボンゴレ10代目、沢田綱吉である。

 

「沢田綱吉、貴方に話がある」

「え?俺に……?」

「急を要する、今は大丈夫か?」

「え?あ、うん…とりあえず入って」

 

私の表情で何かを悟ったのか、沢田綱吉はすぐに私を本部に招き入れてくれた。

そのまま、沢田綱吉の執務室まで行き、一息ついたところで私は本題に入ろうとしたが、その前に沢田綱吉が口を開いた。

 

「ザンザスのことでかい?」

「どこまで知っている?」

「さぁ…勘でなんとなく…ザンザスになにかあったのかなって……」

「父が死んだ」

「……え…」

 

沢田は目を見開いていた。

 

「病気で、だ。私はそれが許せない……一度だけ父を殴りたい……力を貸してくれないか?」

「えー⁉な、殴るの?え、何でそうなったの⁉」

 

私は今までの経緯を沢田綱吉に話した。

 

「最期に私に父親面して死んだあの人にもう一度会って、殴って、抱きしめたいんだ…」

「ザ、ザンザスを殴るって……いやそれよりも、ザンザスにそんな一面があったなんて……」

「頼む、私を過去に……連れて行ってはくれないだろうか…?」

「……ダメだよ…」

「何故」

「確かに、過去に飛ばせるけれど、君はそこでどうやってザンザスを助けるの?」

「父が攻撃を受ける前に私が殺す」

「それはダメだよ……ザンザスが君を守ってきた意味がないじゃないか」

「ならば今の医療では予防接種があったはずだ!それを彼に打てばいいだろう⁉」

「それなら…ってダメだってば!君を危険な目に合わせたらあの世でザンザスに合わせる顔がないよ!てか殺される‼」

「私は!」

 

ここまできて中々頭を縦に振らない沢田綱吉にしびれを切らし、私は大きく声を上げる。

 

「父に……パパに……頭を撫でてもらったのがあれが初めてで最後だった……」

「ヴェロニカちゃん…」

「名前を呼ばれたのもあれが初めてで最後だった…」

「…」

「いやだ、あれが最後だなんて嫌だ!わた、私は!パパに大好きの一言も言えなかった!」

 

今まで我慢してきた涙がとうとう決壊してしまう。

 

「非情で、冷酷で、暴君で、極悪人だったけど……」

「めちゃくちゃ言われてるねザンザス…」

 

 

「それでも私の…血の繋がった…たった一人の父親なんだ……」

 

 

ヴェロニカ  お前は俺のようになるなよ

 

どうして最後に父親面なんてするんだパパ……

どうせなら最後までツンケンとしてくれていたらここまで苦しい思いなんてしなかったのに。

 

 

「ヴェロニカちゃん…ザンザスの…いや、僕たちの仕事…気づいてるね?」

「…うん……マフィア…」

「そう、とっても危ない世界だ…無暗に突っ込むべきところじゃないんだよ」

「わたしに…」

「ん?」

「私に、死ぬ気の炎があればいいの…?」

「え…」

 

私は右手に纏っていた憤怒の炎を最大火力にして、手のひらに凝縮して見せる。

それをみた沢田綱吉の表情が今までにないほど真剣みを帯びていた。

 

「ヴェロニカちゃん…それは…」

「まだパパにしか言ってない…パパから受け継いだ炎…憤怒の…炎」

「そうか…そこまで知っているのか……」

「私を…過去に…連れてって……」

 

沢田綱吉は、少し黙り込むと、徐に机の引き出しから鍵を取り出す。

 

「本当は、止めるべきなんだろうね…大人としては…」

「…」

「でも、誰かを助けたい気持ちは死ぬほど分かるから…人の死を書き換えるのは禁忌だけれど…ある意味僕らもやっちゃったことあるから強く言えないんだよなー…」

「……」

「女の子を一人で行かすと、ヴァリアーの人達に殺されそうだから、誰か一人護衛つけるよ?それでいいかい?」

「問題ない…ヴァリアーの人には私がここに来ていることすら言ってない…バレる前に過去に行きたい」

「はい⁉言ってないの!?え、俺殺されそう⁉だって彼らとっても君を大切に育ててたから余計怖いー!」

「来る前にすべて終わらせれば万事解決だ」

「んな他人事な!」

 

涙目の沢田綱吉についていき、部屋を出る。

そのままある部屋につき、中へ入ると、武器倉庫のようだった。

 

「ここにあるバズーカはランボが持ってきたものなんだけど、確かこの辺りに過去に飛ぶバズーカがあったはず…あ、あった。これこれ」

 

古びたバズーカが出てきた。

 

「確かここを回して、遡る年数が調整できたはず…少しランボや正一君に聞いてくるから一緒に行こうか」

「分かった」

「あと予防接種の方は本部の医療施設にあったよ…」

「やはりボンゴレの力はすごいな…」

「あはは…そうだね、護衛は誰にしようか…今守護者皆忙しいわけじゃないと思うんだ」

「そうだな…雲雀恭弥以外なら誰でも…あ、いや獄寺隼人は嫌だ」

「デスヨネー、なら山本あたりかな」

「そうだな」

「あ、着いたよ…ここが開発局」

 

沢田綱吉が扉を開けると

 

「あわわわわわわ!綱吉君⁉危ないぃぃぃいいいいい‼」

 

 

入江正一の焦った声が聞こえてきて、目の前が真っ白になった。

私の記憶はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

「―――――!」

「―――!」

 

何か騒がしい声が聞こえる。

 

「うー……」

「ぉ、起きた…―――、女が起きましたよ」

「そうか、君」

 

「……んぅ?」

 

私は寝ぼける頭で声のする方へ視線を寄越す。

 

「君、名前は名乗れるかい?」

「……?ヴェロニカ……」

「ヴェロニカちゃんか、いくつだい?」

「…14」

「そうかそうか、14歳か。最後に覚えてることは?」

「………うん?」

 

私は誰に話しかけられているのだろうか?

思考がクリアになっていき、目の前の人物を確認すると、同時に固まった。

 

 

「きゅ、九代目?」

 

「おや、私のことを知っているのかね?」

 

私が8歳の頃あなたポックリ逝ったじゃないですかやだー

 

 

 

うっそ、ここ過去?

 

 

 




ちょっとご都合入ってますが、シーッ…。
本当は何話かにわけて、ちゃんと行く理由と経緯とか詳しく書きたかったんですが、別にそこまでして完璧に書いて投稿したかったわけでもなかったので、とりあえず急展開ではありますが、本編スタートなのかな?


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XANXUS side

不意に名前を思い出した。

最期に過ぎったこの思いは何だったのか…

最期まで俺には分からなかった。


いつもように任務を終わらせるだけの日だった。

 

「おいボスさんよぉ」

「あ"?」

「これが玄関に置かれてたぞぉ」

 

スクアーロが右手に何か白い布と、左手に白い紙を持って執務室に入ってきた。

 

「なんだそれは」

「ガキ、それとコレ見ろぉ」

 

スクアーロが差し出す白い紙を見る。

 

〝この子はヴェロニカ、ザンザスとの子です″

 

「身に覚えはぁ?」

「ヤってきた女の顔なんて覚えてるわけねぇだろうが」

「一応、DNA鑑定を頼んであるから明日また報告に来るぜぇ」

「あ?そのまま施設かどっかに捨て置けばいいだろうが」

「このガキが本当にあんたと血縁だったら、炎も受け継いでる可能性があんだろうがぁ」

「ッチ」

 

スクアーロはそれだけ言うと、ガキを連れて部屋を出た。

 

翌日

 

「うおおおい、ボス!昨日のガキ繋がってたぞぉ」

「ッチ、ルッスーリアにでも押し付けておけ」

「了解」

 

この時の俺は、面倒な存在に心底嫌気が差していた。

 

 

「あらスクアーロ、なぁにその赤ん坊」

「ボスとどっかの女のガキだあ」

「うっそ、まあ!とっても眉毛がボスに似ているわぁ!」

「ボスからの命令だ、このガキの面倒見ておけぇ」

「別にいいわよん」

「ッチ、ボスも何で避妊しねーんだか…」

「あのボスがやるわけないでしょ、にしてもこの子可愛いわねぇ」

 

 

 

「あ!そういえばこの子ここに来て一年経つけれど…誕生日いつなのかしら?」

「んなもん誰も知らねーだろ、シシッ」

「んま、じゃあこの子がここに来た日を誕生日にしようかしら…確か今日は5月5日ねぇ」

「ボスの半分じゃん、ボス10月10日っしょ」

「あら偶然、名前もVが入ってるわね」

 

 

 

「プリンチペッサ!3歳の誕生日おめでとう!」

「あいあとー」

「とっても可愛くなっちゃって、ああ、ますますボスに似てきてるわね」

「パパに?」

「そうよぉ、ねぇレヴィこの子ボスに似てるわよね」

「む?ああ、ボスと同じように整った顔をしている」

「やったー」

 

 

 

「ねぇベル、あの人がパパー?」

「そうだよん、俺たちのボスー」

「ボス?ボスってなあに?」

「僕たちより強いってことだよプリンチペッサ」

「ねぇマーモン、パパに会っちゃダメなの?」

「見てごらんよ、ボスは今とても忙しいだろう?」

「……うん」

 

小さな視線が向けられているのをあえて無視していたザンザスは、ため息を吐いた。

 

ある日

 

「おいカス鮫」

「んだぁ」

「あのファミリーを潰せ」

「例の?了解」

 

「ねぇボス、敵が数で攻めてきたよ」

「それがどうした、皆殺しだ」

「了解ボス」

 

ザンザス以外のヴァリアーが全員出払って、とあるファミリーを殲滅しているときだった。

ザンザスは酒を飲んでいたが、不意に外の方に気配がした。

 

「ッチ、殺し漏らしてんじゃねぇよ、ドカスが」

 

自分から出向くのは癪に障るが、城へ入られるのはもっと気に食わなかったのかザンザスは二挺拳銃を両手に椅子から立ち上がった。

気配のある方向へ進んでいくと、悲鳴が聞こえた。

 

「きゃあぁぁぁあああああああああ」

 

そういえばガキがいたな…

ドカスが、そいつが人質にでもなると思ってんのか

 

ザンザスは気にした風もなく、そのまま悲鳴のあった場所に向かう。

扉が壊されていた部屋の中には、カスとのどを掴まれているガキがいた。

カスは俺の存在に気づき、ガキの頭に銃を押し付けた。

 

「く、来るんじゃねぇ!このガキ殺すぞ!お前のガキなんだろ!」

「ッケ、そいつが人質にんるわけがねぇだろうが…」

「なっ!」

「カッ消す」

 

何の彷徨いもなくガキ諸共殺そうと引き金を引こうとした時

 

 

「パパぁあああああああ!助けてぇぇぇぇえええ!」

 

 

気づけば、俺はカスのド頭をぶち抜いていた。

ガキは重力に従って落ちると、放心しながら俺と死体を眺めていた。

 

「…パ、パ……」

 

ガキがそう呟くと、気を失い血溜まりの上に倒れた。

俺はそのままガキを放置して部屋に戻ろうと思っていたが、何をとち狂ったのか、ガキを抱き上げてベッドに寝かせていた。

偶々持っていた無線機でルッスーリアに連絡し、直ぐにくるよう命令した。

ルッスーリアが来るまで俺は血の気が引いたガキの顔を俺は暫く眺めていた。

所々血縁を思わせる似通った顔に、俺はこいつが自身のガキであることを自覚した。

 

「ッハ、何を考えてんだ…俺は」

 

自嘲気味に笑うと、こちらに近づいてくる気配に気づく。

 

「ボス!何があっーーーー……」

「こいつを空いてる部屋に運べ」

「……わかったわ…ボス…その…見られたの?」

「……」

「…そう…」

 

ルッスーリアはそのままガキを抱き上げて、部屋を出ていく。

俺は血だまりを作る死体を数秒眺め、直ぐに部屋に戻った。

 

翌日から長期任務で俺は本部を開けた。

ガキが高熱で寝込んでいるという話を聞いたのは、長期任務から帰ってきた時だった。

長期任務帰ってきて、執務室で休んでいると、扉がゆっくりと開くのが分かった。

ガキが無表情のまま入ってきて、俺の顔を見つめてきた。

 

「何だ」

「………おかえり」

 

小さな声で、それだけ言うとガキはそのまま出て行った。

ガキから声をかけてきたのはあれが初めてだったことに気づいたのは少ししてからだった。

その頃からか、ガキからの視線は大幅に減り、ガキの話し声を聞くことが少なくなった。

ルッスーリア曰く、表情が無くなっただ、言葉遣いが変わっただ、一人でいることが多くなっただ

俺には必要ない情報ばかり寄越すようになってきた。

だが、ガキは俺に頻繁に声を掛けるようになった。

おはよう、おやすみ、お疲れ様

短い単語ではあるが、会えばとりあえず声をかけてきた。

何故俺に声をかけるのかが理解出来なかったし、俺を父親として呼ぶのも理解出来なかった。

 

「パパ、おはよう」

 

理解できなかった。

 

 

 

ガキが13歳の誕生日を迎えたころ、俺は倒れた。

運の悪いことにカス鮫が倒れた俺を見つけ、医者に見せたらしい。

 

「HIVです、恐らく末期ですが…病状は既に出ていましたか?」

 

医者からはそう言われたとき、俺は死ぬんだと直感した。

ここ最近、風邪の症状や立ち眩みは多々あった、誰も見ていないところではあったが。

 

「おい、どれくらいもつ」

「あ、いえ…まだどれ程の進行状態かは詳しく検査してみなければ…」

「早くて、どれくらいだ」

「ええと、そうなると1年というところでしょうか」

「そうか」

「えー、まず延命措置に関して―――え、あの!」

 

医者が言い終える前に、俺は立ち上がりその部屋を出た。

部屋を出ると、カス鮫が扉に背を預けたままで佇んでいた。

 

「…ボス」

 

スクアーロが何かを言う前に、俺は足を進めその場を離れようとする。

 

「一年だ」

 

俺はそれだけ言うと、その場を離れた。

カス鮫は何も言ってはこなかった。

 

 

カス鮫の配慮だろうか俺が任務出ることは、片手で数えられるほどしかなかった。

朝起きると、体に力が入らなくなることが増えたが、時間がたてば戻るので何もなかったように日々を過ごしていた。

以前より喉が痛むことが増え、好物の高級肉をあまり食べなくなった。

いつも使っていた銃が少し重く感じ始めた。

 

それからだろうか、ふと気づけば視界に入ったガキを眺めることがあった。

あの日からずっと無表情のガキは前よりも態度がでかくなっていた。

そして、顔を合わせれば必ず俺に声をかけてきた。

 

「パパ、おやすみ」

「…ああ」

 

何故、こいつは俺を父と呼ぶのだろうか。

理解できないし、したくもなかった。

 

 

 

ガキが14歳になったらしい、遠くの部屋で喚き声が聞こえるのを無視し、俺は酒を飲んでいた。

最近では眠る前に体を動かしにくくなった。

食べることが億劫に感じることが多くなった。

喉が痛い、体の節々が痛む。

既に俺の体はいつ死んでもおかしくないことは分かっている。

0時を過ぎるころには、屋敷全体が静まり返っていた。

俺もそろそろ寝ようと、痛む体を無理に動かしながらベッドに向かう。

向かう途中、カス鮫が入ってきた。

 

「ボス、手伝うかあ?」

「死ねカス鮫」

 

お前に補助されるくらいなら死んだ方がマシだ。割と本気で。

 

「あんたもう、ボロボロだろ……他のやつらになんて言うんだぁ」

「黙らせろ」

「ったくよぉ」

 

俺はそのまま倒れこむようにベッドに沈み込んだ。

 

「プリンチペッサはもう14歳になったぜぇ」

「それがどうした」

「あんたから声かけてやれねーのかあ?」

「フン、くだらねぇこと言う為に来たんなら失せろ」

「ったくよぉ、明日また起こしに来るぜぇ」

 

カス鮫はそういうと出て行った。

カス鮫の気配が遠くに行くと、俺は瞼を閉じた。

 

 

 

朝起きると、いつも以上に体が重かった。

またいつものように、一時間ほど経てば動くだろうと思っていた。

数時間経っても、若干腕や足が動くだけで今日はもうそのまま眠ろうかとすら思った時にカス鮫が入ってきた。

未だベッドの中にいる俺に焦った声で近寄ってきた。

 

「おいボス、医者呼んでくるぞぉ」

「いい」

「はあ?」

「誰も呼ぶんじゃねぇ…」

「……分かった、だがここじゃ他のやつらにバレる、奥の医務室に移るぞぉ」

 

カス鮫は俺の腕を肩に回して、部屋を出る。

 

「ッチ、クソが」

 

思い通りにならない体に嫌気が差すも、そのまま奥の医務室へ辿り着く。

ベッドに横になると、違和感を感じ重たい腕を持ちあげて顔の前まで持ってくる。

 

炎が出ない…

 

それもそうか、死に間際だ…出なくてもおかしくないか

そろそろ視界もボヤけてきて、意識も薄れてきてたのでそのまま俺は意識を手放した。

 

 

何かが近づいてくる気配を感じ、俺は目を覚ます。

寝ていた間に、体のいたるところに装置やら管やらが繋がれていた。

そして、視界の端にはガキがいた。

 

「…パパ……」

 

あのカス鮫が、勝手に呼びやがって…

 

「あのカス鮫がっ…」

「パパ死ぬの?」

 

上ずった声が耳に響いた。

ガキの顔を見ると、眉を顰め苦しそうにこちらを見ていた。

いつも無表情だったガキの表情の変化に少し驚いた。

 

「ああ…」

「手立てはないの?」

「…ない」

「どうして黙ってたの?」

「死ぬまで黙ってるつもりだった」

「ねぇ答えて」

「………」

 

どうしてお前に教えなければならにのか、本気で分からなかった。

ガキは拳を握り、耐えるように顔を顰めながら俺を見つめている。

 

「ねぇパパ……本当はパパが元気だったら2,3発殴ってたけど……それについては許してあげる…」

「……ふん、お前に俺が殴れるわけねーだろうが…」

「減らず口……パパだって私を叱ったことも手を上げたこともないくせに…」

「ふん」

「あーー、なんだろ……沢山言いたいことあるんだけど…」

「めんどくせぇ、一つにしろ」

「そういうとこほんっとパパらしいよね…」

「っけ、早く言え」

 

若干ガキの声が震えている。

俺は喋りすぎて喉が痛い。

 

「あたし……手から炎が出るの…」

 

 

今こいつ何と言った?

炎……死ぬ気の炎が…?

 

 

「いつからだ…」

「子供のころから……多分4歳くらい…」

「何故黙っていた」

「その時は、怒られると思ってたの……でも最近じゃ怖がられると思ってたの…」

「……はぁ…」

 

くそ、いつもなら絶対カッ消してた。

気づかなかったあいつらも一緒にカッ消していた。

俺の言葉を待っているのか、ガキが黙って俺を不安そうに見ている。

 

 

「…それは誰にも言うな…」

「誰にも?スクアーロにも、ルッスーリアにも?」

「そうだ…そしてそれをこれからも誰にも見せるな」

「どうして…?」

「どうしてもだ…」

「……分かった…でも一つだけ私からお願いがあるの…」

「なんだ」

 

「あたまを……なでて…ほしい」

 

本気で、分からない。

頭を撫でて何になるっていうんだ…

 

「何故…」

「いいから」

 

不服だが、最期だ。

腕を動かし、ガキの頭に乗せる。

そして少しだけ指を動かしながらふと思う。

 

 

こいつの名前は何だったか…確か……

 

 

 

「ヴェロニカ」

 

 

目の前のガキは大きく目を見開いた。

そして俺は無意識に口に出していた。

 

 

「ヴェロニカ……お前は俺のようになるな…」

 

 

呪われた炎で憎しみと怒りに身を委ねた俺のように――

 

 

せめてお前は――…

 

 

「わたしの…なまえ――――…」

 

 

 

俺は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の前にこれ入れておきたかったんです。
次回から本編です。
誤字脱字、口調の違和感があれば教えてください!


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過去へ
Veronicaの祖父と力


ヴェロニカは知った。

自身の力を

ヴェロニカは思った。

私が助けたいのは父なのだと…


「えぇぇぇえええ⁉ヴェロニカちゃん、バズーカの故障で戻ってこない⁉」

「ええと、ごめんよ…何年前に行ったか分かれば僕も対処の仕方があるんだけど…」

「え、じゃ、じゃあヴェロニカちゃんは戻ってこれるの⁉」

「今からバズーカを修復しないとどうにも…」

「どどどどどうしよ…これ絶対ヴァリアーにバレるって!っていうかヴェロニカちゃん予防接種のワクチン持って行ってないよぉぉぉお」

 

「おい、それはどういうことだぁ」

 

 

 

 

 

「君は未来から来たと?」

「……うん」

「ふむ…理由を聞いてもいいかい?」

 

こんにちわ、ヴェロニカです。

私は今、九代目の前にテーブルを挟んで座っています。

バズーカの故障かなんかで過去に飛ばされてきたことに大変遺憾であります。

ワクチンも持っていないし、戻れる保証はない。

持ってきたのは、財布、携帯、洋服、パパの拳銃のみ。

ぶっちゃけ涙目です。

というか、飛んだ場所がボンゴレ本部だったので説明するまで逃げれる気がしないです。

その上相手はボンゴレ九代目…超直感あるから嘘つけないじゃないですかやだー

いやほんと、私からしたら一応祖父ではあるんですよねぇ…

私が6歳の頃に、パパに娘がいると耳にした九代目が私のもとに会いに来てたんですよね、ハイ。

その時のパパの形相は凄まじかった。

だが、孫ということもあってとても可愛がられていた自信があります。

そんな九代目が亡くなった報せを聞いたときは凄くショックだったなぁ…

と、まあ現実逃避はここままでにして、目の前の九代目に事情を話さねば…

ここがどの時間軸なのか定かでないので、それも知りたいですな。

 

小一時間、今までの経緯を話して、一息着いたヴェロニカです。

目の前の九代目は何やら考え事をしています。

 

「そうか、君はザンザスの―――…」

「えーと……うん…」

「ザンザスは父親らしかったかい?」

「全く」

 

予想通りだったのか、九代目が苦笑いしている。

おっと、少しだけ父を持ちあげてやろうか。

 

「でも…最期は、私の心配をしてくれた……」

「ほう、ザンザスが…」

「私の頭を撫でてくれた……それが、とっても嬉しかった」

 

九代目を見ると、とても安心そうに私を眺めている。

 

「君はこの時代に帰る場所も住む場所もないじゃろう?」

「え、と…うん」

「ならば少し日本に行ってそこで住んでみないか?」

「日本?何で?」

「ここだとザンザスと顔を合わせてしまうリスクがあるからね……少しでもボンゴレの手の届く範囲でリスクの低い場所は日本くらいでね…」

「パパ……は、ここにいるの?」

「ああ…」

 

九代目の表情が硬い。

あ、これ冷凍されてる時期かな?

 

「えっと……今パパに会ってもメリットはないし、日本に連れてってもらっても…いい?」

「ああ、勿論だ。君は私の孫だからね…何か不安なことがあれば言いなさい、わしが手伝おう」

「ありがとう、九代目」

「お爺ちゃんと呼んでくれてもいいんじゃよ?」

「周りに勘違いされちゃったらどうするの…」

「まあ怪しまれては元も子もないな…それと少し君に聞きたいことがあるんだがいいかい?」

「ん?えっと…なに?」

「君は、我々に関してどこまで教えてもらったんだい?」

 

我々、マフィアうんぬんか…ふむ、これは正直に答えねば自爆するやつだな。

 

「えっと…パパがヴァリアーのボスで…死ぬ気の炎が出て……えっと……憤怒の炎使える、ことくらい」

 

色々端折ったけど、嘘はついてない。

 

「そうか……そして君に、炎が出たんじゃな」

 

超直感ってほんと厄介だな。

 

「うん…パパは最期まで私をマフィアとは関わらせたくなさそうだった……でも私が決めたことだから」

 

そういうと私は右手に憤怒の炎を纏わせた。

九代目はそれを見て悲しそうに私を見ていた。

 

「君の決めた道だ…わしは止めはしない……だが、祖父という立場で見ると…悲しいねえ」

「ごめんねお爺ちゃん」

 

炎を仕舞うと、九代目は口を開く。

 

「ヴェロニカ、君がザンザスに会うということはとても危険じゃ…君の存在が消えてしまう危険性を孕んでいる」

「覚悟の上よ」

「そして、今のザンザスは君のことを知らない…だから平気で君を傷つけてしまうかもしれない」

「そうね、でも私は簡単にやられはしないわよ」

「それでもじゃ、君がちゃんと自分の命を自分で守れるくらいに強くなってもらわなきゃならない」

「うん」

「だから、近々日本に家庭教師を送る予定だったんじゃ…君も彼に教わってきなさい」

「……分かった」

 

リボーンが家庭教師に付きました、やったね☆

じゃねえ、死ぬ。命いくつあっても足りない、これ絶対死ぬ。

死亡フラグとまではいかないけれど、これすんごい面倒なフラグを立てた気がする。

確かに私は、自身の力がどこまで通用するかを知らない。

ならやっぱり、経験も積んでおくべきだろう…

だがしかし、リボーンの指導はお断りしたい、切実に。

マーモンかラルじゃダメなのだろうか…

でもこれ断れないパターンですよね、知ってます。

 

「でもどうして日本に家庭教師を?」

「沢田綱吉君を知っているかい?」

「うん」

「彼に、ボスの器になれるよう家庭教師をつけようと思っていたんじゃ」

「彼は確か大空…私も大空だ。彼の守護者にはなれないよ」

「問題ない、彼には彼なりに仲間を探し出すだろう…君は自分の目的を優先しなさい」

「優先したいが、とりあえず待機状態なんだ……未来から連絡が来るか、パパが病気になる時期まで待つか…」

「そうだね、でも焦ってはいけないよ」

「分かっている」

 

九代目はそういうと立ち上がり、私の頬にキスをしたので、私もキスを彼の頬に返す。

 

「私にも愛嬌のある子供が欲しくてね」

「未来での貴方はいつもお菓子を持ってきてくれてたから大好きだったよ」

 

これは本当である。

日本好きの彼は毎回くる度、私に日本のお菓子や食べ物を教えてくれていた。

元々日本人だった記憶があった為、みそ汁のもとを持ってきてくれた時は抱きしめてしまった。

 

「あ、九代目」

「ん?どうしたんだい?」

「少し広い場所ない?あの…少し自分の力を確認したくて…過去に来ちゃったので変化がないか気になって」

「そうだね、じゃあ部下に案内させよう…コヨーテ」

「はい、こちらに」

「ヴェロニカを訓練場へ連れて行ってあげなさい」

「分かりました」

「ではな、ヴェロニカ…また日本への準備が整い次第君を連れて行こう」

「うん、ありがとう九代目」

 

九代目は、部下を呼ぶとそのまま部屋を出て行った。

私は、コヨーテさんに連れられ訓練所まで案内してもらった。

 

「九代目から、今日寝泊りする部屋の案内まで任されている…夕方になったら来る」

「え、と…はい。お願いします」

 

コヨーテさん、見た目が獄寺隼人みたいで苦手だ。

コヨーテさんが外に出ると、私は扉に鍵を閉め、訓練所の中に人がいないのを確認する。

 

「よし」

 

表立って派手に使うのは初めてである。

いつも手に纏うように少量しか出せなかったので、思いっきり使ったことがなかった。

その上、未来から拝借してきたザンザスの拳銃を扱ってみたかった。

 

まず手のひらに憤怒の炎を圧縮する。

それを薄く、とても薄く伸ばして手のひら全体を覆う。

とりあえず、殴ってみるか…

私は思い切り地面に殴りかかった。

 

ドゴン

 

 

「……ん?」

 

 

 

私の目の前には数mに渡るクレーターが出来ていた。

 

「おや…?」

 

自身の手を見る限り、無傷である。

私は、纏っている炎の量を圧縮せずにただ纏ってみる。

そして思い切り地面を殴った。

 

ドッ

 

「……痺れる…」

 

先ほどより小さい、半径50cmほどの浅いクレーターが出来ていた。

 

「えーと…圧縮して纏うと威力が桁違いなのか…にして殺人レベルじゃんコレ……」

 

え、パパこんなん日頃からスクアーロとかレヴィにブッパしてたの?

え、あいつらよくこれで死なないね。

ヴェロニカはザンザスの拳銃を取り出すと、拳銃に憤怒の炎を溜めて発射した。

 

ドガアア

 

発射した瞬間、ヴェロニカの体に風圧が一気に押しかかった。

そして目を開けると、壁に最初に地面を殴ったとき出来たクレーターの倍ほどの大きいクレーターが出来ていた。

 

「……ハハ……えー…これは…ひどい…」

 

あまりの惨状に頬が引き攣る。

 

「でもこれ原作じゃこんな威力なかった気がする……」

 

十数年前の記憶をなんとか思い出そうとするが、こんなに威力のあるものではなかったような気がする。

そのあと、小一時間ザンザスの拳銃を試していて分かったことがあった。

 

この拳銃は、手から出る炎を圧縮して加速させながら飛ばす武器であること。

そして圧縮具合で威力が異なるということ。

何も圧縮せずに、ただ中に溜めてみたところ、原作のザンザスの放っていた威力であった。

なるほど、圧縮コントロールしないことで次撃つまでの時間を短縮していたのか。

そして、圧縮せずに通常より炎を多めに溜めると少し圧縮されて広範囲で攻撃が撃たれた。

 

次に、圧縮をしたまま炎を溜めると、銃の性能で圧縮された炎が更に圧縮され威力が数倍まで跳ね上がった。

最初に銃を使ったように、いくつか大きなクレーターが出来たので修理する者に後で謝っておこうと思った。

 

結論、圧縮は危険すぎるのでやめた。

ぶっちゃけ普通に撃つだけでも危険なので、本当に命の危機に陥った時以外では使うまいと心に決めた。

 

 

ヴェロニカは知らない。

4歳の頃憤怒の炎が発現し、14歳まで地道にただコントロールの練習だけしていた彼女は、イタリア全マフィアの誰よりも炎のコントロールが上手いということを。

そして、少量の炎とはいえ、毎日いつも手に纏っていて、いわゆる垂れ流し状態で何年も過ごしていたことで炎の保有量が大幅に増えていることを。

 

 

「……リボーンが行くってことは…もうすぐで原作が始まる…」

 

このおぼろげな記憶でどこまでやれるのかは分からない。

別に作中で死んでしまったキャラを生き返らそうとは思っていない。

私には、ザンザスを助けることでいっぱいいっぱいだ。

私は原作キャラを助けたくてここにいるわけじゃない…

父親を助けたくてここにいるのだ。

 

 

ヴェロニカ

 

 

今も、父の声を思い出す。

 

 

 

 

九代目side

 

未来からきたわしの孫娘、ヴェロニカはとてもザンザスに似ていた。

最初に会った時、わしは直感した。

ザンザスの血縁だ、と。

最初はザンザスの年齢を考えると兄妹だと思っていた。

だが、この子の話を聞いてこの子が未来のザンザスの娘であることに納得した。

そして、ザンザスが亡くなってしまった未来を聞いてしまった。

ヴェロニカは淡々と無表情に父親であるザンザスの死を語っていった。

親子間の仲が悪かったのか、それとも父の死で変わってしまったのか、わしには分からなかった。

ザンザスは父親らしかったかと問うと、全然と言われて苦笑してしまった。

ザンザスは娘の愛し方を知らない、そしてわしはそれを教えなかった。

この子はさぞ寂しかっただろうに…わしの罪でもあるのだろうな…

だが、この子は自身の父としてザンザスを好いていた。

そして、ザンザスの最期にわしも驚いていた。

そこでわしはふと気づく、ザンザスの頭を撫でたことがあっただろうか…と。

目の前の子は、ただそれだけで、過去へ来て自身の父を救おうとやってきた。

ああ、わしよりザンザス…お前の方が父親に向いているようだ。

ヴェロニカに日本へ行くことを促進すると、ザンザスがここにいるのかと聞かれた。

 

ああ、いるとも…冷たい…氷の中で……

 

わしは無意識に拳を握っていた。

それに気づいたのかヴェロニカは話を戻すと、日本へ行くことに賛成した。

わしは気がかりであった、ヴェロニカの我々マフィアに対する知識がどこまであるかを聞いた。

深くもなければ、浅くもない…マフィアの業を抜けられないところまで来ていた。

わが孫娘を思うと、これほど心苦しいことはないだろう…

ザンザスもこの子をマフィアから遠ざけようとしたのだなと思うと、今氷の中で眠っているザンザスが脳裏に浮かぶ。

直ぐに、考えを戻す。

直感で、この子は炎を受け継いでいると思った。

案の定、この子の手から憤怒の炎が燃え上がった。

ああ、呪いというものは恐ろしいものだ…まだ小さな子供に重たい覚悟を背負わせるなどと。

せめて、この子が未来に無事帰れるように、わしが出来ることは鍛えることしか出来ないのだと悟る。

日本に住むついでに、ここ最近リボーンに沢田綱吉を任せてあるので、この子も一緒に鍛えさせようと考えた。

それを伝えた時、ヴェロニカの表情は一層真剣みを帯びる。

覚悟をした目だった。

竦みそうな足を必死に押さえつけ、足を踏ん張って前を見据えるような…必死の覚悟をした目だった。

ああ、孫の覚悟を見守るのも、わしの務めなのか…なんと心苦しいことじゃ

話も終わり、わしは立ち上がるとヴェロニカも立ち上がる。

挨拶代わりに頬にキスをすれば、し返してくれたので、とても愛しく思えた。

力に変化がないか、確認したいというので訓練場までコヨーテに送らせ、離れていく孫の背中を見えなくなるまで見つめていた。

 

 

 

ああ、あの子がザンザスを変えたのか、変えてくれたのか…

未だ氷の中で眠る、我が子を思う。

 

あの子がいるということは、ザンザスの封印はいつか解かれてしまうことを意味する。

だが、わしはそれを誰にも言わなかった。

それもまた運命であり、あの子が生まれてくる大切な事柄なのだろう

 

あの子は苦しい道のりを歩むのだろうな…

 

 

どうかヴェロニカが無事であるようわしは祈ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは

 

「あー…チーズ蒸しパンになりたい……」

 

 

 

 

 

 

 




九代目はヴェロニカのことより、自分の心配をした方がいいと思うんだ。
これから祖父が瀕死になるが、敢えて静観する気満々のヴェロニカ。
この人でなしぃぃ!
いや、確かにお爺ちゃんは好きよ?お菓子くれるし、でもこれはこれ、それはそれ。はい終わり。
次回、原作スタートです。


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Veronicaの家庭教師

ヴェロニカは恐怖した。

その男が常に私の近くに潜んでいることを

ヴェロニカは味わった。

息の詰まる苦しみを



「さて、今日でおわかれじゃなヴェロニカ…あちらでの転校手続きはこちらで全てやっておいた」

「………ありがとう九代目…色々助かったよ」

「可愛い孫のためじゃ、何か困ったことがあれば直ぐに連絡してきなさい」

「うん、じゃあ行ってきます」

 

こんにちわ、ヴェロニカです。

これから日本へ行きます。

何故か、並盛中へ転校手続きをされていたことを今しがた知りました。

あるぇー?もしや私原作キャラともろつるむ感じですかねー?

まあ、家庭教師が同じ時点でどこかで絡まれること間違いないんですがね。

あたたたた、急にお腹が…これじゃ飛行機に乗れなく…ハイ、行ってきます。

九代目が手を振ってきたので、振り返して搭乗口へ進む。

 

 

飛行機での長旅はただただ私の胃を締め上げるだけの時間になっていた。

飛行機が日本へ到着するころには、萎えたもやしのようになっていた私ですが、空港に着いた瞬間聞こえる日本語に感動し、数時間はハイテンションでした。

まず最初にそば食べに行きましたわ、めっちゃ美味い…泣きそう…

九代目にもらった日本住所が書かれている紙を頼りに、並盛を歩き回ること数十分…

 

「これ…だよね……」

 

目の前には高級マンション…紙には結構上の方の階が書かれてあるけれど…これ最上階とか言わないでよね?

九代目…いやお爺ちゃん…奮発しすぎだとヴェロニカは思うの…

とりあえず、中へ入ると支配人らしき人物と従業員たちがいたので、キャリーケースを預ける。

待て、何故マンション如きに従業員がいるんだ…

部屋の番号を教えると、物凄く目を開かれてとても頭を下げられると同時にエレベーターに案内される。

案の定、最上階の部屋だった。

うわー…これ家賃200万とか普通に超えそうなんだけど…いやマジで普通のマンションでよか……無理だな。

ヴァリアー本部の屋敷はとても広かったし、それに当たり前となって十年以上経っている今、普通の一般家庭のマンションでの生活は無理かもしれない…

こんなところでおもわぬ弊害が…金銭感覚狂ってそうで怖いなぁ…

換金してもらった財布の中には諭吉とブラックカード…アカンてこれ…待て野口どこいった…

そりゃ元の時代でも、学校行ったらすぐに家に帰るという生活で、貰ったお金は全然使わなかったけどさぁ…

てか私料理作れないけど、どうすんだおい…

部屋にあるパンフレットを見ると、一応マンションの中にはレストランがあるらしいので、暫くはそこで食べるしかないようだ。

ルームサービスあるからそれだけで十分かもしれない。

そして、ベッドの淵の方をよく見てみると、ボンゴレのマークが縫われていた。

おもっくそボンゴレの経営してるホテルでしたね、ハイ。

そりゃオーナーがお爺ちゃんなら金の心配はするまい。

それよりも、明々後日から並盛中に転校になっている。

どうしようか…うーん……原作の内容とかおぼろげだがとりあえずノートに書きだしてみるか。

 

・沢田綱吉全裸告白で原作スタート

・山本飛び降り

・並盛中の生徒襲われる→黒曜編

・黒曜編終わったらヴァリアー編

 

思ったより覚えていることが少なすぎた…

とりあえず大切なやつは近づいたら気を付けよう。

あと、ヴァリアー編は小まめにお爺ちゃんに電話しよう。

正直いつやられてんのか分からない…なんとなく可笑しいと思ったら既に入れ替わっていると仮定して行動しよう。

 

予測不可能な案件といえば、リボーンがどこまで私を探ってくるかだな。

お爺ちゃんから何て言われてんだろ…聞いとけばよかった。

ちなみに、私の日本名は仲田夏美となっている。

ハッキリ言って、前世?の名前だから呼ばれなれてるという理由でこれにした。

流石にヴェロニカで触れ回ると未来で何かしら不備がありそうだし…

 

よし、私の暫くの目標は黒曜編の六道骸…幻術対策だな。

一応対策は考えているんだが、上手くいくかも分からないし…せめて誰かもう一人死ぬ気の炎を使える人がいれば検証出来たんだけどな…

あいにく今の時点死ぬ気の炎を使いこなせるのはリボーンだけではないだろうか…

正直、リボーンには修行以外で関わりたくない。

ああ、イタリアで誰かにお願いしとくべきだった。

でも仕方ないこれ考え付いたの飛行機での中だったし。

とりあえず、もう夜遅いし、フライトで疲れたし眠りますか。

 

 

 

何かと修行という名の炎のコントロールに時間を費やすこと3日、今日は私の転入日です。

並盛中の門をくぐるが、緊張しすぎてどこに行けばいいのかまるっきり分からない。

とりあえず、学ランを着ている男性にどこに行けばいいか聞こう。

 

「すいません」

「…なに?」

「今日転入して来たんですが、職員室ってどこ行けばいいですか…?」

「ふーん、君転入生なんだ…草壁」

「っは」

「この子、職員室に連れてって」

「っは、分かりました」

 

偉く、不遜な態度の男の子だったなぁ

背の高い男の人の後ろをついていく。

ドアに職員室と書かれているのを見て、ここだと分かると、リーゼントの男性は中に案内すると、出て行った。

そのあとは、教師達に教室やら規則やらを教えてもらった。

教室も聞いたので、とりあえず自身の教室に行こうと職員室を出て廊下を歩いていた。

すると、少し離れた先に先ほどの不遜な態度の男がいた。

 

どっかで見た気がする…どこだったかなー…

 

「ねぇ、さっきから何ジロジロ見てるの」

「ああ、ごめん…君が知り合いに似ていた…それよりこの教室にはどうすれば行けるんですか?」

「そぅ…そこならここの曲がり角奥に行って階段上がってすぐだよ」

「そうか、ありがとうございます」

 

ヴェロニカは言われた通り会談を上がろうとした。

ふむ、意外といい人なのかもしれない。

だが容姿がだめだ、雲雀恭弥に似ている。

 

 

………雲雀恭弥に似ている………似ている…?

 

……………ご本人じゃね?アレ

 

 

 

うおえぇぇぇぇあああああ!!!???

 

 

辛うじて口から奇声は出なかったものの、ヴェロニカは廊下で屈みこむ。

 

そういえば、中学生時代はあんな姿だったかもしれない!ていうかあんなだった?

あまりにも浴衣とかスーツでしかも髪の毛ぼさぼさな雲雀恭弥しか見ていなかったから丸っきり忘れていた

ひょえ、私はあんな化け物に声をかけていたのか!

なんて死に急ぎ野郎だったんだ!これから積極的に避けよう!

 

ヴェロニカはそのまま雲雀のいた方を振り返らずに、階段を駆け上げ教室の方に向かう。

教室の扉を開くと、今まで騒々しかった教室が静かになり視線が私に集中した。

私はそれを無視して、担任の方へ行く。

 

「今日から転入してきた、ここで当たっていますか?」

「え、あ、ああ……待て、自己紹介しようか……えーと」

 

ヴェロニカは教室を見渡し、口を開く。

 

「仲田夏美…イタリアからきた……先生、私の席どこですか?」

「え?あ、ああ…そうだな……じゃあそこの一番後ろに座ってくれ…」

「はい」

 

私は、そのまま席に座ると教室を見渡す。

特徴的な髪形を見つけ、表情に出はしないが、心拍数が上がる。

 

沢田綱吉…十代目…

 

休み時間になると、生徒たちがわらわらとヴェロニカに近づいてくる。

話を聞いてる限りじゃ、沢田綱吉はダメツナ呼ばわりされて、昨日全裸で告白をしたらしい。

 

既に原作は始まっていたか…

 

ああ、これから全てが始まるのだ――――…

 

 

 

 

入学登校日初日は何も問題なく終わりヴェロニカは帰り道を歩いていた。

そろそろリボーンから接触があるはずだが、あるとすれば帰り道か…又はマンションに戻ったところか。

ヴェロニカがマンションに着き、自分の部屋に帰るとトレーニング用の衣服に着替えようとしていた時

 

「ちゃおっす、お前がヴェロニカか」

 

うおおおい、着替える直前に来るな!どこが紳士だこいつ!

 

「あなたが私の家庭教師か…だが女性の部屋に堂々と上がり込んだ挙句着替える直前に声をかけるとは…紳士の名が泣くぞ」

「それはすまねーんだぞ」

「まぁいい、今後ないようにしてくれ…それで本題は?」

「俺はリボーン。九代目からの頼みでお前をダメツナと共に鍛えろと言われている…お前はどこまでこちらのことを知っているんだ?」

「九代目から聞いていないのか?死ぬ気の炎ぐらいまでしか知らないぞ」

「そうか、それでお前に死ぬ気の炎がある程度コントロールできると聞いているがどうなんだ?」

「そうだな、コントロールは問題ない…私が今身に着けたいのは反射神経と運動神経…あとは経験だけだ」

「なるほど、お前には自分に何が足りないのか理解できているのか…よし、俺が直々に指導してお前を一流のマフィアにしてやるぞ」

「いや、私はマフィアになりたいわけではない…マフィアからわが身を守れるようにしたいだけだ」

「ふむ、分かったゾ…にしてもお前、九代目がお前のことを優遇しているようだが、九代目とどういう関係だ?」

「易々と誰かに言えることではない」

「そうか、それともう一つ」

「何だ」

「お前、顔がザンザスに似ているところがあるが、あいつの血縁か?」

「ザンザスとは誰だ」

「知らねえならいい、訓練はまだしねえぞ…だが自主練はしておけ、じゃあな」

「……」

 

そう言い残してリボーンは窓から飛び降りて行った。

残されたヴェロニカはベッドに力なく飛び込む。

 

ああああああっぶねええええええ、パパのこと聞かれた時咄嗟に返したんだけどおおお

にしてもどんだけ私パパと似てるの?

パパの遺伝子強くないですかねぇ?

っていうかここ17階なんですが…

ああ、リボーンが怖すぎる…なんか色々と見透かされてそう…

んもおおおおお、初っ端から何でこんなに疲れるのぉぉおおおお

 

 

……トレーニングルーム行こ

 

 

 

 

 

リボーンside

 

 

ふむ、あいつ何か隠してやがるな…

 

リボーンは沢田家に帰る帰路、先ほど顔を合わせたヴェロニカのことを考えていた。

 

ヴェロニカのことを頼んだ九代目の顔を見れば、ヴェロニカに害がないことは既に分かっている。

だが実際会ってみるまで確信は出来なかった。

対面してみると、ひしひしと伝わる、強者の威風が…リボーンの肌を刺激する。

そしてそれは8年前、クーデターを起こしたザンザスのそれと酷似していた。

なので俺はやつにザンザスの名前を出したが、無反応だった。

ならばザンザスとは無関係か?いやそう決断するには早すぎるな…

やつは何かを隠している…

大切な何かを。

それを読み取ることは出来なかったが、それはお互い信頼度がないので聞き出すことは不可能だと断念する。

にしても、あいつとダメツナじゃ実力が違いすぎて両方一緒に鍛えることはできない。

だから、ダメツナがある程度実力が付かない限りあいつには俺が個人指導を空いた時間で付けるしかないのか。

にしてもあの目、あの雰囲気、俺を目の前にあの態度…

 

「あいつは間違いなく強者の風格だぞ」

 

リボーンはそう呟くと口角を上げた。

 

 

面白くなりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「も、もう無理……あ、あと20秒走ったら休むっ…絶対休む!」

 

この後20分走った。

 

 




ヴェロニカの現時点の強さ

炎を使えば現時点の雲雀より強いです。
ただ雲雀が死ぬ気の炎を会得すれば、均衡するんじゃないかなぁ…若干雲雀に軍配が上がる程度。
一応ザンザスの遺伝子がっつり受け継いでいるのでそれなりに基礎ステータスは高いです。


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Veronicaの憂鬱

ヴェロニカは思う。

無駄なのだと

ヴェロニカは考える。

本当の名とはなんだろうかと


「二人目の転校生を紹介する、イタリアに留学していた獄寺隼人君だ」

 

獄寺隼人は、不愛想な顔で指定された席へ移動する。

途中で沢田綱吉を睨みつけるのも忘れずに。

私は極力視線を合わせず、授業に取り組んでいた。

 

確かこの後、獄寺がダイナマイトで沢田綱吉と一悶着あって、仲間にしたんだったか…

リボーンは私のことを未だ沢田綱吉に教えた様子はない。

 

体育の後、午後の休み時間に入ると、遠方で爆音が聞こえた。

教室では生徒たちが音のした方へ視線を向ける。

だが私は面倒なことに巻き込まれたくないため、聞こえなかったフリをして昼食を食べていた。

その日は、獄寺が沢田綱吉に尻尾を振るようになったこと以外は何もなかった。

 

二日後、朝から教室では男女問わずざわざわしていた。

昨日、山本が腕を骨折したという噂が立っていた。

であれば、あれも今日中に起こるだろう…

休み時間、外のほうが騒がしくなってくる。

 

「おい!あれ山本じゃねぇか?」

「何考えてんだよあいつ!」

「ぇ?あれ大丈夫なの?」

 

どうやら、屋上から飛び降りようとしているらしい。

だが数分後、皆一様に安堵し席に着き始める。

どうやら自殺ごっこは終わったらしい。

 

数日経過…

 

私の記憶通りというか、原作通りといか…そのまま進んでいればイーピンやビアンキ、にはもう会っているだろうな…この前家庭科で調理実習あったし、屋上で謎の爆発あったし。

雲雀に笹川…ディーノが近いうちに現れるということか。

私は、今はただ傍観を通すのみ。

ハッキリ言ってこのお遊戯のようなごたごたには関わりたくない。

私から何もしなければ、あっちから来ることもないだろう…

 

 

 

「おいてめぇ…イタリアから留学してきたって聞いたが、まさか十代目のお命を狙ってんのかぁ?」

「や、やめなよ獄寺君!」

「ですが十代目っ…」

 

前言撤回、コイツ(獄寺隼人)がいた。

め、めんどくさっ…何もせずとも突っかかってくるから苦手なのに。

流石に未来では落ち着いているものの、犬の気質は色濃く残ってたわけで…

というか、ここ教室なんですけど?

え、マフィアのことこんな軽々しく言っちゃっていいの?

未来のヴァリアー達でさえ私に気づかれないように注意してたのに。

 

「何のこと?」

 

取り合えずとぼけておこう。

 

「しらばっくれんじゃねぇ!てめぇどこのファミリーの刺客だぁ?」

 

あ、アカンって。

これ何故にリボーンは見て見ぬふりをしているのだろうか…

つか沢田綱吉も、あわあわしてないで止めろ。

まだ獄寺が怖くてもお前一応立場上だろうに。

あーさっきから獄寺が私に突っかかってくるから、教室中の視線が集中しているじゃないですかやだー

これは逃げるに限りますな

 

ガタッ

 

「あ、おいてめぇ!待て!」

 

ヴェロニカが椅子から立ち上がり、教室の出口へ歩いていくと、獄寺隼人に手を掴まれた。

 

「待てっつってんだろ!」

Silenzia(黙れ)

 

おおっと危ない、イタリア語がポロッと出てきてしまった。

ヴァリアーの中で育つときつい言葉とかが身に付いちゃうんだよなー…

取り合えず、トイレに逃げれば流石にこいつも中までは入ってこないだろ…てか来たら変態だ。

 

獄寺隼人の手を振り解き、私はそのまま教室を出て行った。

 

あ~、やっぱトイレの中は落ち着きますな。

 

授業開始ギリギリに教室に戻った私は、そのまま授業を受けた。

何事もなく、そのまま終わったので即効で帰る支度をして教室を出る。

後ろで獄寺が何やら慌てていたが知るか、私は帰る。

何がなんでも私は帰る。

 

 

「ちゃおっす」

 

校門で、リボーンに捕まりました。グッバイ平穏な日々。

これは絶対直ぐに帰れないパターンですね、分かります。

 

「何だリボーン」

「これからダメツナの家に行く、お前も来い」

「何故だ」

「お前のことを獄寺達にも言わなきゃならねぇ、決定事項だぞ」

「これからは事前に知らせてくれ」

「善処するんだぞ」

 

つまりしないというわけですね、分かります。

仕方なく、ほんとに仕方なく…本当は嫌だけど、すっごい嫌だけど。

リボーンの後についていく。

 

沢田綱吉の家の前まで来ると、既に中から声が聞こえてくる。

山元に獄寺と沢田綱吉の声がする他、イーピンやランボの声もする始末。

気が遠くなってきた…

別に私は子供は嫌いではないが、相手はランボだ。

間違って10年バズーカが私にでも当たってみろ…どうなるか予想がつかない上に、私の身の上がバレる可能性がある。

これは素早く撤退するに限る。

 

私は腹をくくって、リボーンの開けた玄関の扉をくぐる。

そのまま二階へ上がり、リボーンが沢田綱吉の部屋のドアを勢いよく開けた。

 

「ちゃおっす、おいダメツナ、おめーにこいつを紹介するぞ」

「え⁉リボーン!お前またどこ行ってたん……ええ⁉転入生の仲田さん!」

「て、てめぇ!まさか十代目の家まで突き止めて来やがったのか!」

「お、仲田じゃん!俺山本武ってんだ、初めましてなのなー」

「ふぎゃ、また知らないやつが増えたんだもんねー、おまえだれー?」

 

既に帰りたい…

何だこのカオス……

切実に家に帰りたい。

 

「………」

「おい、おめーの本名も教えてやれ」

「ええええ⁉仲田夏美って偽名だったのーー⁉」

「あ"あ⁉偽名名乗るたぁますます怪しいぜ!十代目、俺がこいつをぶっ殺してやりますよ!」

「俺は別に仲田夏美でもいいと思うけどなー」

 

隣でリボーンが要らぬことを口走ってくれやがった。

こいついつか絶対、憤怒の炎喰らわしてやる。

 

「…………ヴェロニカ」

 

一言それだけ言って、私は部屋から出ようとするが、リボーンに止められる。

 

「帰る」

「まだダメだぞ」

「何故」

「今日はお前がどれだけ勉強が出来るかの確認をするんだぞ」

「何故、こいつらと一緒にやらなければならない…非効率だ」

「それは俺が決めることだ、いいから座れ、おい山本、おめーの隣少し空けてやってくれ」

「いいぞー」

 

これは逃げれそうにありません。

少しリボーンの横暴さに色々ストレスマッハですが、何とか抑えよう…今手を出しても負ける未来しか思い浮かばない。

というかリボーンに勝てるやつがいるのだろうか…

仕方なく、山本の隣に座ることにした。

獄寺じゃないだけマシか…

 

「ねぇ、リボーン…何で仲田…ヴェロニカさん連れてきたのさ」

「それはこいつも俺の生徒だからだぞ」

「えええ⁉じゃあヴェロニカさんもマフィアの…?」

「違うぞ、こいつは色々事情があって鍛えなきゃならねぇから俺が家庭教師をしてるんだぞ」

「な、なんだぁ…マフィアみたいに怖い人じゃないのか…よかったぁ」

「だがあいつはこの部屋にいるやつの中で俺の次に強ぇぞ」

 

うっそん、マジ?

私山本とやりあって五分五分くらいかなと思ってたけど……リボーンが言うならそうなのか?

 

「えええええ⁉うっそおおお!」

「く、リボーンさん!俺がこいつに負けるわけがありません!」

「バカか…相手の力量も量れねー奴がボスの右腕なんぞなれやしねーぞ」

「がっは!」

 

なんか心に重傷を負った獄寺隼人が地面に伏した。

にしても私は獄寺より一応強かったのか…まぁ、死ぬ気の炎が使える時点であながち間違ってはいない。

だがなにぶん戦闘経験がゼロである。

これに関しては不安しかない…まず相手に炎を放つことが出来るのだろうか……

ん…待て、獄寺よりも実力が上ということは…フゥ太ランキングに入るということで…

ランキングに入ればそれが六道骸の目にも止まるわけで…

止まれば私もちょっかい出されるわけで…Oh…

これはツライ…いやどのみちランキング上位だとは思ってたから六道骸に会いそうだったけど…

まだ幻術対策が出来てない…案はあるけどそれを成功させるとなると…確証がほしいし。

取り合えず考える時間がほしい、早く家に帰りたい。

目の前のうるさい彼らを無視しして、リボーンに声を掛ける。

 

「リボーン、早く帰りたい…何をすればいい」

「これを解いてもらうんだぞ」

「…」

 

中学二年生で習う範囲内か…

日本人としての記憶も、イタリアにいた時間も合わせれば私の敵じゃないぜ

日本語だから私には難しいとでも思ったか?残念だったな、日本人だった記憶のある私には効かない

隣の獄寺もスラスラと書いているが時々手が止まっている。

恐らく国語のところだろう…日本語ってかなり面倒な言い回しとかあるからな…

うん、書けたな

 

「おいリボーン」

「ふむ、合格だぞ…にしてもおめぇずっとイタリアに住んでたのか?」

「そうだが」

「そうか、えらく日本語が達者だと思ってな」

「日本には前々から興味があった…それより帰っていいだろうか」

「おう、おめーの学力は文句なしだぞ」

「ええー⁉ヴェロニカさんすごい!あんな量のテストもう終わったのー⁉」

「…」

「ええと……」

「沢田綱吉、学校ではその名で呼ぶな」

「え、あ…うん…分かった」

「てめぇ!十代目になんて口ききやがる!」

 

きゃんきゃんうるさい犬は放っておいて、私はバッグを肩にかけ沢田綱吉の部屋を出た。

下の階へ降りると、先ほど部屋にいたランボとイーピンがテーブルに座って遊んでいた。

ランボと視線が合ってしまい、急ぎ足で玄関まで行こうとするがランボが引っ付いてきた。

 

「なぁなぁお前ヴェロニカっていうんだろー?ランボさんと遊べー!」

「……」

 

私は相手するのが面倒だったので、バッグに入れていたガムを一枚出してランボに与える。

ランボも嬉しそうにそれを貰い口の中に入れる。

 

「やったねえー!お前ランボさんの子分に……に………」

 

おや?ランボの様子がおかしい。

私はガムの入っていたラベルを見ると、ミントと書かれている。

ん?もしやランボはミントが嫌いなのか?確かに子供には少し辛いと思うが…

 

「うぇっ……うっ……」

 

うっそだろおい、泣き出した。

取り合えず吐き出せと、テーブルに置いてあったティッシュを取りランボの口に寄せる。

が、遅かった。

 

「ふびぇぇぇぇえええええええ」

 

泣きわめきだして、ランボは頭からバズーカを取り出し、容赦なく四方八方に打ちまくる。

私は当たるまいと、避けること数秒…バズーカがランボ自身に当たった。

もくもくと煙があがり、人型の影が中から出てくる。

 

「おや?ここは…若きボンゴレの実家では…」

 

10年後のランボ来てるし……沢田達に知られる前に帰ってもらおう。

 

「ん?君は…知らない顔だ…若きボンゴレのご友人だろうか…」

「いや、私は…「そいつは俺の生徒だぞ」」

「リボーン!ここであったが百年目!しねぇえ!」

「うるせぇゾ」

 

大人ランボはリボーンを見ると、いきなり飛び掛かり雷を出そうとするもリボーンに蹴られて顔から床にぶつかる。

 

「それよりおめー、こいつのこと知らねーのか?」

「ぐぬぬ……くそリボーンめ…」

「答えやがれ」

「うぎゃああ」

 

リボーンが蹴っていると、大人ランボがボンッと煙に包まれちびランボに代わっていた。

 

「ッチ、聞き出せなかったか…」

「ふえぇ?なになに~?」

 

ランボはそのままリボーンに突っかかっていき、返り討ちにされて窓から飛んで行った。

さて、私も帰るか。

 

「おいヴェロニカ」

「…」

「おめー、強くなるのに護身以外の何か目的があんのか?」

「…別に」

 

それだけ言いうと、リボーンの返事を待たずに玄関の扉を閉めた。

帰路を歩きながら後ろからついてきてないか気配を探りながら歩くためとても神経を使った。

 

にしてもリボーンめ…私の事を探っているな…

確かにランボと今日既に顔を合わせていたにも関わらず、10年後では私の顔を知らないときた。

それは当たり前だ、今から10年後では私は生まれていない…

多分10年と半年あたりでやっと生まれたというくらいだ。

幸いにもランボがアホなお陰で、リボーンはただランボが覚えていないだけで済ませそうだが…

一度疑われたことに関して、リボーンは何通りの可能性を出しているはずだ。

未来から来たことがバレれば、自ずとザンザスの血縁ということがバレてしまう。

くそ……もう少しランボあたりを警戒すべきだった。

だがこれからランボとの接触を避けていれば、未来で忘れられている確率が高くなり、さきほどの10年後の大人ランボの言っていたことに真実味が出てくるだろう。

 

それよりも、未来から何も連絡がこないな…

私のいる時間軸の特定に手間取っているのだろうか。

ワクチンがない今、10年後まで居続けなければいけないが、その前に未来への帰り方すらわからないし。

帰ったら沢田綱吉カッ消す。

おっと、パパの口調が移ってしまった。

 

一体これからどうなるんだろう…

………不安だ。

 

 

 

 

獄寺side

 

俺はこんな弱っちい奴を10代目になんて認めねぇ、こいつをぶっ殺して俺が10代目になるんだ…

そんな俺の野望を尽くぶっ壊したこの方こそ、俺がお仕えするお方なのだと思った。

10代目の命は俺が何があってもお守り致す、そう誓った。

それからちょくちょく変な奴が10代目の周りに増えた。

アホ牛に野球バカ…姉貴まで出てくる始末。

そしてある日、10代目が口にした。

 

「そういえば、クラスにイタリアから留学してきた子が獄寺君以外にもう一人いるんだよねー…確か名前は…えーと…」

 

名前は覚えておられていなかったけれど、俺は名も知らぬ留学生を警戒した。

そしてその翌日、留学生としてイタリアから来た女…仲田夏美というやつに声をかけた。

 

「おいてめぇ…イタリアから留学しにきたって聞いたが、まさか十代目のお命を狙ってんのかぁ?」

「や、やめなよ獄寺君!」

「ですが十代目っ…」

 

大人しそうな雰囲気で内心何を考えているか分からないやつほど、危険なものはないと俺の今までの経験で分かっていた。

10代目は難色を示しておられたが、ここは白黒ハッキリしなければいけない。

 

「何のこと?」

 

目の前の女は、心底俺たちがうっとおしそうに、あしらう様にそう口にする。

そのいい様に俺は腹が立っていく。

 

「しらばっくれんじゃねぇ!てめぇどこのファミリーの刺客だぁ?」

 

俺が大声で女に対して声を荒げるが女の顔色は変わらずうっとおしそうにこちらを見つめる。

 

ガタッ

 

女はめんどくさくなったのか、椅子から立ち上がり教室を出ようとするが、俺はそいつを呼び止めるためまた声を荒げる。

が、女はそれを無視する。

 

「あ、おいてめぇ!待て!」

 

痺れを切らした俺は女の腕を掴む。

逃げようたってそうはいかねぇ!てめぇの化けの皮を剝がしてやる!

 

「待てっつってんだろ!」

Silenzia(黙れ)

 

一瞬だった。

たった一言で、俺の体は氷のように固まった。

たかが一言…だがその一言に濃厚な殺気が込められていた。

俺は自身の首が飛び体が跡形もなく消し飛ぶような光景がフラッシュバックし、体の芯から冷めていく感覚に陥った。

 

死ぬ、今、数mmでも動けば俺は死ぬ

 

そう思わずにはいられないほどの濃密な殺気に足が震えだしそうになる…いや実際震えていたのかもしれない。

後ろには10代目がおられる…守らなければ…守らなければ…

だが体は動かない、殺気が肌に突き刺さり激痛が走るような錯覚すら覚える。

 

女はふと目を細め、俺の掴んだ手を振りほどき、そのまま教室を出ていった。

女の視線、殺気に開放された俺はようやく呼吸することができた。

体の筋肉が弛緩するのが分かるほど、俺の体は緊張で固まっていたのだ。

助かったのだ…と唾を飲む。

そして分かった。

あいつはこちらの世界のやつだ。

それも飛び切りヤバいレベルの…

俺では力が及ばない、と思わされるほどの実力者だ。

そんな危険人物がいるのに、リボーンさんが気付かないわけがない…。

今度リボーンさんに聞かなければいけない。

 

後ろに控える10代目がいつまでも動かない俺を心配なさっていらっしゃるので、俺は何でもなかったように振る舞う。

未だ指が震えているけれど、10代目に気づかれないように拳を握る。

 

放課後、ホームルームが終わると同時にあの女はすぐに帰る準備をして教室を出て行った。

俺は女を尾行しようとしたが、まるで俺に尾行させまいと女は早歩きで帰っていった。

教室にいない女に俺は、ため息を吐くが、同時に安堵する。

あれと同じ空間に10代目がいるという事実がこれ以上なく恐ろしかった。

そのまま10代目、野球バカと10代目の家に着く。

そこで10代目のお話やらを聞いていた時、ガキ共が入ってきて部屋を荒らしまくる。

俺は怒鳴りながらガキ共を捕まえようと躍起になる。

そんなとき、下の階で玄関が開く音がした。

 

「ん?今下から音がしなかった?」

「リボーンさんが帰ってきたのかもしれませんね」

「げっ」

「ツナはほんと坊主が苦手なのなー」

 

野球バカが笑っていると、階段を上る音が聞こえる。

聞こえる?リボーンさんは軽すぎて足音が聞こえないのに…10代目のお母さまだろうか…

 

ガチャ

 

部屋の扉が開くと、予想通りリボーンが入ってきて…そのあとに昼間の女が入ってきた。

 

「ちゃおっす、おいダメツナ、おめーにこいつを紹介する」

「え⁉リボーン!お前またどこ行ってたん……ええ⁉転入生の仲田さん!」

 

あの女!10代目を狙ってきて…!

 

「て、てめぇ!まさか十代目の家まで突き止めて来やがったのか!」

「お、仲田じゃん!俺山本武ってんだ、初めましてなのなー」

「ふぎゃ、また知らないやつが増えたんだもんねー、おまえだれー?」

 

野球バカは呑気に自己紹介すらしている始末。

ここは俺が10代目をお守りしなければ!

 

「………」

「おい、おめーの本名も教えてやれ」

「ええええ⁉仲田夏美って偽名だったのーー⁉」

「あ"あ⁉偽名名乗るたぁますます怪しいぜ!十代目、俺がこいつをぶっ殺してやりますよ!」

「俺は別に仲田夏美でもいいと思うけどなー」

 

女はただ黙ってこちらを見ている。

いつ10代目が攻撃されても大丈夫なように俺は女挙動を警戒する。

心なしか少量の殺気さえ放っている。

女は口を開く。

 

「…………ヴェロニカ」

 

圧倒的な威圧感を放つその声に、俺は委縮しそうになるのを耐え10代目を守らんとする。

一言それだけ言って、女は部屋から出ようとするが、リボーンさんに止められる。

 

「帰る」

「まだダメだぞ」

「何故」

「今日はお前がどれだけ勉強が出来るかの確認をするんだぞ」

「何故、こいつらと一緒にやらなければならない…非効率だ」

「それは俺が決めることだ、いいから座れ、おい山本、おめーの隣少し空けてやってくれ」

「いいぞー」

 

女は先ほどの殺伐とした雰囲気を仕舞うと、野球バカの隣にしぶしぶといった風に座る。

女は10代目の目の前に座ったので、俺は身構える。

だが10代目は気にした風もなく、リボーンさんに聞く。

 

「ねぇ、リボーン…何で仲田…ヴェロニカさん連れてきたのさ」

「それはこいつも俺の生徒だからだぞ」

「えええ⁉じゃあヴェロニカさんもマフィアの…?」

「違うぞ、こいつは色々事情があって鍛えなきゃならねぇから俺が家庭教師をしてるんだぞ」

「な、なんだぁ…マフィアみたいに怖い人じゃないのか…よかったぁ」

 

リボーンさんの生徒であればあの殺気、風格…ありえねぇ話ではねぇ…

だが、マフィアじゃないだと?あれだけの殺気を放っていながら?

リボーンさんはそうは言っているが俺は信用ならねぇ

これからも女を監視する必要性がありそうだ。

俺の考え事はリボーンさんの次の一言で吹き飛ぶ。

 

「だがあいつはこの部屋にいるやつの中で俺の次に強ぇぞ」

 

今戦えば俺に勝ち目が無いことくらい分かっている。

分かっているがそれを肯定すれば10代目の前で無能だと言うようなものだ。

 

「えええええ⁉うっそおおお!」

「く、リボーンさん!俺がこいつに負けるわけがありません!」

「バカか…相手の力量も量れねー奴がボスの右腕なんぞなれやしねーぞ」

「がっは!」

 

くっそ、俺にはまだ10代目を守り抜くための力が足りない…

この女に勝つまで右腕として誇るわけにはいかない。

俺の考えを他所に女は心底うんざりしたような雰囲気でだるそうな声を出す。

 

「リボーン、早く帰りたい…何をすればいい」

「これを解いてもらうんだぞ」

「…」

 

リボーンさんは何枚かの用紙を出してきた。

全教科の学力テストのようなものだった。

女はそれを受け取ると、筆箱からシャーぺンを出し書き始める。

俺も、負けてられねぇ!こいつにだけは勝つ!

そう思い、テストを出来る限りの速さで解いていく。

数十分経つと、ラストの国語に入る。

一瞬女を見るとそいつもラストの国語に入っていた。

くそっ早ぇ!

俺は国語を解くが、今までイタリアで育ってたことに加え日本語はここに来る数週間で基本的に喋れる範囲で学んだものばかりだ。

漢字などは少ししかやっていないので、文章問題などで少しばかり止まることがあった。

まだ十数問残っているときに、女はシャーペンを置きテストをリボーンさんに渡す。

 

「おいリボーン」

「ふむ、合格だぞ…にしてもおめぇずっとイタリアに住んでたのか?」

「そうだが」

「そうか、えらく日本語が達者だと思ってな」

「日本には前々から興味があった…それより帰っていいだろうか」

「おう、おめーの学力は文句なしだぞ」

「ええー⁉ヴェロニカさんすごい!あんな量のテストもう終わったのー⁉」

「…」

「ええと……」

「沢田綱吉、学校ではその名で呼ぶな」

「え、あ…うん…分かった」

「てめぇ!十代目になんて口ききやがる!」

 

俺はすべてに置いてぼろっぼろに負かされたような気分だった。

くそっ、くそっ……こんなんじゃ俺は10代目をお守りすることができねぇ!

あの女!いつか絶対負かす!

 

俺がそいつをライバルとして見始めた時だった。

 

 

 

 

リボーンside

 

獄寺が仲田夏美…ヴェロニカについてクラスの奴らに聞いている様子を見ていた。

獄寺の奴め…勘ぐってやがるな。

だが獄寺程度じゃあいつには勝てない。

それをまた自覚するのも獄寺が成長する為に必要なことだゾ。

獄寺がヴェロニカに詰め寄っているところを傍観していた。

ヴェロニカの方は相手にするのが心底面倒なのか、席を立ち教室を出ようとする。

だが獄寺はそれが気に食わないのかヴェロニカの腕を掴み引き留める。

 

Silenzia(黙れ)

 

その時だった。

俺は無意識に懐にある拳銃に手を伸ばしていた。

 

驚愕した。

俺の本能を従わせるような、殺気を、まだ14歳の少女が出したことに。

強者だとは思っていた。

ダメツナ達にとって格上の存在だとは思っていた。

だが、これ程までとは誰が想像出来ようか…

リボーンはこめかみに伝う汗に気づかず、口角を上げる。

 

「九代目……とんでもない奴を俺に任せてくれるじゃねーか…」

 

 

そのあと、ヴェロニカをダメツナの家に呼び、あいつらと対面させようとした。

案の定獄寺が突っかかってきたが今の獄寺じゃヴェロニカの相手にもならないと思い窘めた。

ちくちくりと肌に刺さる僅かな殺気…いやこれは怒気だろうか…

時々それが俺に刺さるが、獄寺もそれに気づいているのかダメツナをいつでも庇えるような態勢で警戒している。

俺は、とりあえずヴェロニカの学力を知りたくて、テストをさせた。

日本語でのテストだったがヴェロニカは満点を取っていた。

国語も満点だったので俺は驚いていた。

次いで獄寺が終わらせていたが、その時にはヴェロニカは部屋から出ていた。

少し経つと、下から何かの爆発音が聞こえ、ランボあたりかと思いダメツナ達に気づかないように下の様子を見に行った。

そこには大人ランボとヴェロニカがいた。

 

「おや?ここは…若きボンゴレの実家では…」

 

10年後のランボはそういうと、ヴェロニカを見据えて首を傾げる。

 

「ん?君は…知らない顔だ…若きボンゴレのご友人だろうか…」

「いや、私は…「そいつは俺の生徒だぞ」」

「リボーン!ここであったが百年目!しねぇえ!」

「うるせぇぞ」

 

ヴェロニカとの会話に俺が入っていくと、ランボは俺に攻撃を仕掛けてきた。

俺はそれを軽く避けて、ランボを強く蹴り飛ばす。

ランボはうめき声を出すが、俺はそれより聞きたいことがありランボに問いただす。

 

「それよりおめー、こいつのこと知らねーのか?」

「ぐぬぬ……くそリボーンめ…」

「答えやがれ」

「うぎゃああ」

 

俺が蹴っていると、ランボがボンッと煙に包まれちびランボに代わっていた。

 

「ッチ、聞き出せなかったか…」

「ふえぇ?なになに~?」

 

何も役に立たなかったランボに俺はイラつき、蹴り飛ばすと窓を突き破り星の彼方まで飛んで行った。

仕方ないので、俺は直接本人に聞くことにした。

 

「おいヴェロニカ」

「…」

「おめー、強くなるのに護身以外の何か目的があんのか?」

「…別に」

 

ヴェロニカはそれだけ言うと、家を出て行った。

俺は、やはり答えなかったかと思い部屋に戻る。

そして、先ほどふと感じた違和感を思い返したが、何に違和感を覚えたのかまでは思い出せず、頭の隅に追いやった。

 

あいつは一体何を考えているんだ…

誰にも背中を見せず、ただ先を見据えている。

 

気付けヴェロニカ…

一人じゃ、人間ってのは進めねえんだぞ……

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

 

なんか獄寺から敵を見る目で睨まれるし、リボーンからは疑いの眼差しで見られるし、胃に穴があきそう…

 

 

 

 

 




それぞれのヴェロニカへの印象

リボーン「予想以上の強者」
獄寺「越えなければならないライバル」
山本「転入生」
沢田「マフィアじゃないのに強い人、少し怖い」




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Veronicaの初戦闘

ヴェロニカは考えた。

調和とは

ヴェロニカは見出した。

包み込む炎を


どうも、ボッチ飯のヴェロニカです。

沢田綱吉が、一人で食べている私を気遣ってくれてか昼休みよく声を掛けてくるが尽く拒否っているヴェロニカです。

そして笹川京子もたまに私に声を掛けてくる。

が、私はこれまた理由を付けては毎回断っている。

これ以上原作キャラと仲良くなったら後のバタフライエフェクトが怖い。

 

さて、そんな私ですが、クラスでは今日も噂が絶えない。

曰く、雲雀恭弥が沢田綱吉に目を付けたとか

曰く、笹川了平に沢田綱吉がボクシング部に勧誘されたとか

 

大方順調に原作が進んでいっている。

未だ雲雀恭弥に目を付けられたくない私は毎日彼の目に映らないように必死に息を殺している。

そろそろ桜が満開になる頃だ。

黒曜編が近いという証拠である。

 

私は今日まで、とりあえず走ったり、筋トレしたりしている。

因みにリボーンとはあの学習テスト以来、会っていない。

あいつ一応家庭教師任されているはずなんだが…

トレーニングにあたり、パパの拳銃を練習していた私だが、途中で重大なことに気付く。

 

今の時代のパパも同じ拳銃使ってね?

 

非常に由々しき事態だ。

私が使っているところを、ヴァリアー又はザンザスを知っているものが見れば、即刻問い詰められる。

というか原作キャラのほとんどに見せればアウトという件について…

てなわけで、拳銃は奥の手でしか使えなくなってしまった私は日々なんとか手だけで頑張っています。

一応、他の武器も考えてみて使っては見たが、上手くいかなかった。

例えると、ナイフ。

炎を纏うと溶けた。

同じ理由で殆どがダメだった。

結局、九代目に相談すると武器を作ってくれるとのこと…

武器が送られてくるまで待機中です。

さて、長々と話していたが私は今沢田家にいる。

何故かって?リボーンが強制しやがったんだよこんちくしょー…

面倒だが、沢田家に訪れてみるとフゥ太がいた。

ランキングフゥ太、あらゆるランキングを出せる少年。

こいつの喧嘩の強いランキングを元に、六道骸が襲撃をしてきた。

フゥ太は皆の要望のランキングを読みすぎて疲れ切っている。

先ほど沢田綱吉とは挨拶をして、私は皆から離れて、フゥ太を見ていた。

私の視線に気づいたのか、フゥ太が私の方を見て目を大きく見開いた。

そして、とことこと私の近くまで来て、口を開く。

 

「お姉さん、すごいね…並盛中喧嘩ランキング1位だよ」

 

…………はい?一位?

雲雀は??うん…?

いやいやまさか…ないないないない

 

「あとは…重大な秘密を抱えているランキングで一位だ…」

 

まぁ、それは分かるが…未来人なんて言えないし。

いやそれより、喧嘩ランキングについて物申したいことがあるんだが。

 

「マフィアに相応しい並盛中学生ランキングでも一位だよ!すごいね」

 

嬉しくない、激しく嬉しくない…

なんだそのランキングは。

いやだからそれより先ほどの喧嘩ランキングについてだな…

 

「えーと…本当は言葉遣いが汚いランキング9位だね!」

 

えええええ?何それマジで?パパ譲りですかぁ?

うっそだろおい…

いやじゃなくて喧嘩ランキングで…

 

「ほら皆ー!夕飯で来たわよー!」

 

沢田綱吉の母の一言で皆が下へ降りていく。

ええええ…私雲雀より強いの?

まだ実践したことない初心者ですよ?

マジかー…これ雲雀にバレたら詰む。

冗談じゃなく詰む。

 

その日は、何故リボーンが私を連れて来たかったのか分からないまま帰った。

 

翌日、満開の花びらで、朝からリボーンに花見に来いと言われたが無視してトレーニングルームに籠っていた。

黒曜編が迫っている今無暗に外に出たくないのだ。

多分、今日雲雀はサクラクラ病になるはずだ。

そして笹川良平が明日くらいに入院する。

私は、未だ幻術対策のことを誰にも言っていない。

最低限、リボーンに教えておくべきだったか…

 

その日は、ひたすらトレーニングをするだけで終わった。

翌日、朝方ボンゴレマークの入った箱が届けられていた。

 

おじいいいいちゃああああん

 

すぐさま箱を開けると、デュランダルのような両手剣だった。

剣…?取り合えず持ってみて憤怒の炎を通してみた。

だが剣から炎の色が若干滲み出ているだけで溶けはしなかった。

 

「おおお…」

 

にしてもこんなん持ってたら職質されるわ。

今日は置いといて、学校終わってから扱う練習すればいいか。

私は学校へ向かった。

すると、リボーンが校門で私に声を掛けた。

 

「ちゃおっす」

「…」

「今朝、笹川了平が何者かに襲撃されて病院送りになった」

「そう…」

「おめーも周りには気を付けるんだぞ」

「分かった」

「何かあったらこの番号にかけろ」

 

リボーンはそういうと、私に携帯番号を渡すと沢田のもとへいったのかいなくなっていた。

 

 

私は授業が終わり、帰り道を歩いていた。

後ろに何人かの気配がするが、無視して次の曲がり角を全力で走る。

最近トレーニングしていたお陰で持久力には自信があるし、今は炎を足の裏に纏っている状態なのでハッキリ言って視界に捉えられるのはマフィア関係の人だけじゃないだろうか。

間違いなく私をつけ狙っているそこらの不良に見えるわけがない。

後ろでなんか声が聞こえるが無視して、マンションに帰る。

部屋の中に入ると直ぐに武器を白い布で覆い、マンションを出る。

マンション内でドンパチやって壊すのは九代目に申し訳ないし…

一番ベストなのは逃げ切ることだ。

幻術対策とかまだ誰にもやったことないから自信ないし。

何も考えずにとにかく走っていると、視界の端に黒曜ランドが見えた。

 

……黒曜ランドはなかった。いいね?

 

おもっくそ地雷源じゃん。

絶対行くものか。

今頃雲雀恭弥がぼろっくそにやられてると思うけど私が知ったことではない。

てか今言ったところで雲雀に鉢合わせして、私がそこそこ戦えること知られる。

そしたら学校とかでTHE☆咬み殺TIMEになる。

嫌だ。絶対に嫌だ。

と、思考が少しズレていたので、戻すと目の前に黒曜ランドがあった。

あるぇ?

………んん?私は確かに黒曜ランドとは逆方向に走っていたハズなんですが?

……神は言っているってやつか?

取り合えず、逆方向へ走り直すこと数分。

また黒曜ランドの前に辿り着いた。

……幻術じゃなですかやだー

ふぅ……幻術を解くのは初めてだけど出来るかな…

 

 

 

ここで私が開発したスキルを見せてあげよう。

私は炎のコントロールを習得して、更に上達するために日々こつこつ練習していたわけだが。

ある日ふと思った。

一つ目は、死ぬ気の炎を全身に纏うことが出来るのか、と。

結果、手足は出来た。

だが、細かな部分、指先へ纏うなどは緻密なコントールを必要とした。

一度指先に覆ってみると、指先に火傷を負った。

まぁ生半可なコントロールでは無理ということだ。

そして二つ目は、私の炎の属性は『大空』つまりは『調和』。

その特性は『全てに染まりつつ、全てを包容する』だ。

これすごく大雑把に言うと、嵐・雨・雲・霧・雷・晴の炎であれば調和することが出来るというのだが。

普通に大空の炎を纏うだけで雲の炎を喰らえばダメージを喰らう。

何故か?それは調和出来ていないからである。

大空が調和できると言っても、実際それをやっていたボンゴレのボスはいない。

炎の質量でぶつかり合っていただけなので、あれは調和とはいえないのだ。

調和というのは矛盾なくまとまっていること。

理論上でいくと、炎で攻撃を喰らっても調和すればダメージは喰らわない。

ダメージを喰らうのは矛盾があるからである。

欠点として、雲雀恭弥のようにトンファーに炎を纏っていると、炎で上がった威力は消してもそのままの相手の素のトンファーの攻撃力は消せないところだ。

なので、これは笹川了平などに対しては不利な技でもある。

実際コントロールが難しすぎて誰も出来ないが。

確かに、毎回同じ相手と勝負するならば習得出来たかもしれない。

が、現実は毎回敵が違って炎の波長も属性も違う。

これをいちいち調和するために時間をかける馬鹿はいない。

しかし、私には時間があった。

約10年の長い時間があった。

私はこの二つが出来るように心がけていた。

その結果が、誰にも気づかれないほど薄い炎の膜をどこにでも張れるようになった。

これは普通に歩いていていきなり銃を撃たれたとしてもダメージを最小限に抑えられるほどの効果を持つ。

実際銃で撃たれたことはないが、屋敷の4階から勢いよく飛び降りて無傷だった。

また炎を糸状にして張り巡らすことが出来るようになった。

これは未だに集中力が必要な作業であるが、私以外誰にも出来ないという自負があるほど精密だ。

もう一つの調和は、よく相手の炎を見て波長を探すだけで、実際に調和をしていたことはなかった。

なので、今六道骸が初めての相手になるのだ。

 

 

まずはえーと…六道骸の炎の波長を探す。

幻術とはいわゆる炎を相手の周りに拡散しないと出来ない技であり、一番掴みやすい炎でもある。

要は、今の私の周りを流れている波長を探して調和すればいいのだ。

んー…あ、これだ。多分。

ええと、これならこうして………

 

出来てる?のか?

あ、町の方が見えてきた。

お?解けてる?おお、黒曜ランドが後ろにある。

成功した!やったぁ!

よし、逃げよ。

 

「クフフ」

 

私が逃げようと、足を動かそうとすれば、後ろから特徴のある笑い声が聞こえてきた。

聞き間違えだと思うことにして、走りだそうとすると

 

「僕の幻術を解くとは……何者です?あなた」

 

ナッポーが声をかけてくる。

これ私にですかねぇ…

ああ、逃げたい…切実に逃げたい。

 

 

ヴェロニカはゆっくりと声の主の方を振り向く。

声の主、六道骸は目の前の少女を注意深く見まわす。

 

「並盛中喧嘩ランキング一位…ヴェロニカ…イタリアからの留学生」

「……」

「大方予想はついていますよ…どこぞのファミリーが寄越したボンゴレへのスパイというところですか」

 

いえ全く。

何言ってんだこいつ…

 

「クフフ、まぁあなたがどこのファミリーかは知りませんけど、ここで殺すことに変わりはありません。精々先ほど倒した雲雀恭弥よりは僕を楽しませてくださいね」

「…」

「フン、その余裕そうな仮面、剥ぎ取ってやりますよ!」

 

六道骸はそういうと、ヴェロニカへ攻撃を仕掛ける。

だがヴェロニカも避ける。

途中で骸は幻術をかけるも、ヴェロニカは先ほどで骸の炎の波長を覚えてしまっているため、直ぐに破られる。

ヴェロニカも持っていた両手剣に憤怒の炎を纏わせて、骸に切りかかる。

そのまま攻防をしていると、いつの間にか黒曜ランドの中で戦闘をしていた。

数分攻防が均衡していると、骸が手を止めヴェロニカをまじまじと見る。

 

「最初は幻術に嵌まっていたにも関わらず、今じゃ数秒で解かれる始末……一体何をしたんです?」

「教えるとでも?」

「それもそうですね…あなた一体どこのファミリーなんでしょうねぇ…」

「…」

「駄弁は銀、沈黙は金ですか……仕方ないあなたの四肢を切断した後に聞くとしましょうか」

「あなたはお喋りね」

「……にしてもあなたのその得物…まだ使い慣れていなさそうですね?」

「それで?」

「ッフ、慣れない得物で僕に勝てると思わないことですね!」

 

骸が先に槍の切っ先を私に向ける。

が、私はそのまま後方に飛ぶ。

それを骸が見越していたように、私に向かってくる。

が、私が待っていたのはこの時なのだ。

 

ジュッ

 

「?」

 

焼けた音とともに骸に左腕に一本の線が出来る。

骸はすぐさまその場を飛びのくが、飛びのいた直後背中に鋭い痛みが走る。

骸はすぐさま、立ち止まり周りを見るも、何も見えない。

 

「何をしたんです?」

 

骸は険しい顔でヴェロニカを睨む。

睨みながら痛む腕と背中を幻術で誤魔化す。

 

骸には教えてやらないが、実は今戦っている部屋、私の炎の糸を張り巡らせていた。

糸は主に足と剣先から伸ばしていたので、結構な広範囲に及ぶ。

薄すぎると威力もなければただの糸のように千切れるも、強度を上げれば先ほどの骸のように腕を焼かれることになる。

これの欠点は細さを保つために張った後でも糸に集中しないといけない点である。

故に、バレないように細工するのに非常に時間がかかるのだ。

 

「ふぅ……これ初めてやるから時間かかっちゃった…」

「なに…?」

「今ここでこの部屋カッ消してもいいけど…取引しない?」

「取引?内容によりますね」

「別に、簡単なこと。今起こった戦闘は他言無用。それと雲雀恭弥は私が回収するけどそれの黙認…あ、あと今後私に関わらない」

「………最後以外は受け入れましょう、だがあなたがマフィアである限り僕はあなたを殺すことを諦めませんよ」

「…何か勘違いしてるようだけど、私マフィアじゃないよ」

「白々しい嘘を!」

「なら私がどこのマフィアか調べ上げてから襲いに来なよ…カッ消してあげる」

「クフフ、どこからくる自信なんでしょうね、いいでしょう…それなら受け入れます。どのみちこのままじゃ僕の負けです」

「交渉成立ね、私がここから離れるまで何もしなかったら、あなたの周りにあるソレとったげる」

「取り除いたと分かるんですか?」

「分かるようにするわ…」

 

それだけ言うと、私は両手剣を下ろし、部屋を急ぎ足ででる。

今ここで骸を負かすと、沢田綱吉が強くならないので敢えて退く。

途中で雲雀恭弥を探して、見つけると丁度気を失っているので担ぐと炎で足と手を強化して黒曜ランドを出て行った。

出ていく途中、骸のいる部屋に巡らした糸を小規模爆発させた。

骸には何かが爆ぜる音しか聞こえないはずだ。

私はそのまま雲雀を病院の前に放りなげると、帰路についた。

 

初の戦闘。

六道骸相手に白星。

今日は何か私の中で成長したような気がした。

………気のせいか…。

 

 

 

 

六道骸side

 

 

最初、フゥ太のランキングを見た時意外だと思った。

喧嘩ランキングの一位にヴェロニカとあった。

そして二位が雲雀恭弥。

並盛の情勢を聞き及んだ時に、雲雀恭弥が一位だと思っていたのだ。

だが実際は一位は女子の名前である。

だが、並盛中にヴェロニカという名前はなかった。

偽名でも名乗っているのだろうか、骸はヴェロニカに少しだけ興味を持った。

 

雲雀恭弥をサクラクラ病で弱らせじわじわと嬲り、虫の息の彼を嘲笑っていた。

雲雀恭弥は未だ意識があり、なんと強靭な精神だろうと感心する。

 

「そういえば、あなたの中学にヴェロニカという外人はいますか?」

 

骸は雲雀の返事など期待せず次を喋る。

 

「並盛中喧嘩ランキングで、二位に雲雀恭弥、一位にヴェロニカ…とあったんですよねぇ」

 

若干雲雀がピクリと動く。

 

「どんな気分です?自分を最強だと思っていたのにまさか自分より強い女性が同じ学校にいたなんて…」

 

クフフフフ、と独特な笑い方をして雲雀恭弥で遊んでいた。

そろそろ雲雀恭弥の目をくり貫こうとしたとき、自分の張っていた幻術に誰かが引っ掛かったのが分かり、そちらへ向かうことにした。

 

「クフフフ、あなたは後で嬲り殺してあげますよ」

 

それだけ言うと、骸は部屋を出て黒曜ランドを窓から見下ろす。

すると、何か白い長物を持っている女子が門のところで幻術にかかっていた。

もしかすると、あれがヴェロニカなのだろうかと思い、骸がそちら足を向ける。

女性が数十mというところで、自分の幻術が解かれたのが分かった。

解かれたと言っても、いつもの感覚とは異なっていた。

相手に破られるようなものではなく、自分で解いたかのような感覚だったのだ。

内心首をかしげるが、目の前の女子に興味が沸き声をかける。

その女子がこちらを向く。

独特な眉、整った顔、西洋の顔立ち、なによりもその佇まいが風格を表すかのようにそこにあった。

骸は直感した。

この女子がヴェロニカだと。

笑いがこぼれ、僕は目の前の女子に声を掛ける。

 

「並盛中喧嘩ランキング一位…ヴェロニカ…イタリアからの留学生」

「……」

「大方予想はついていますよ…どこぞのファミリーが寄越したボンゴレへのスパイというところですか」

 

ヴェロニカが少しだけ眉を顰めた。

 

「クフフ、まぁあなたがどこのファミリーかは知りませんけど、ここで殺すことに変わりはありません。精々先ほど倒した雲雀恭弥よりは僕を楽しませてくださいね」

「…」

「フン、その余裕そうな仮面、剥ぎ取ってやりますよ!」

 

僕はそういうと、ヴェロニカへ攻撃を仕掛ける。

だがヴェロニカも避ける。

途中で幻術をかけるも、ヴェロニカに直ぐに破られる。

ヴェロニカが持っていた両手剣に炎を纏わせて、僕に切りかかる。

そのまま攻防をしていると、いつの間にか黒曜ランドの中で戦闘をしていた。

進展しない攻防に痺れを切らし、僕は立ち止まる。

 

「最初は幻術に嵌まっていたにも関わらず、今じゃ数秒で解かれる始末……一体何をしたんです?」

「教えるとでも?」

「それもそうですね…あなた一体どこのファミリーなんでしょうねぇ…」

「…」

「駄弁は銀、沈黙は金ですか……仕方ないあなたの四肢を切断した後に聞くとしましょうか」

「あなたはお喋りね」

「……にしてもあなたのその得物…まだ使い慣れていなさそうですね?」

「それで?」

「ッフ、慣れない得物で僕に勝てると思わないことですね!」

 

屈辱だった。

この僕に、そんな余裕めいた顔で対峙するなどと。

僕はそのまま槍を突き出す。

だがヴェロニカは後ろへ飛ぶ。

それを見越していた僕は口角を上げながら地面を蹴る。

ヴェロニカまで槍の矛先があと少しという瞬間

 

ジュッ

 

「?」

 

焼けた音とともに鋭い痛みが腕に走る。

すぐさまその場を飛びのくが、飛びのいた直後背中に鋭い痛みが走る。

一旦立ち止まり周りを見るも、何も見えない。

 

「何をしたんです?」

 

ヴェロニカを睨むも彼女は無言である。

痛む腕と背中を幻術で誤魔化す。

何かがこの部屋に張り巡らせているのだろうか…

ワイヤーであれば目に見えるはずなのに、肉眼では何も見えない。

彼女は両手剣を向けたまま息を吐く。

 

「ふぅ……これ初めてやるから時間かかっちゃった…」

「なに…?」

「今ここでこの部屋カッ消してもいいけど…取引しない?」

 

彼女のいきなりの取引に眉を顰める。

 

「取引?内容によりますね」

「別に、簡単なこと。今起こった戦闘は他言無用。それと雲雀恭弥は私が回収するけどそれの黙認…あ、あと今後私に関わらない」

 

戦闘の他言無用?自身の戦闘スタイルを誰にも教えないように…でしょうか?

 

「………最後以外は受け入れましょう、だがあなたがマフィアである限り僕はあなたを殺すことを諦めませんよ」

「…何か勘違いしてるようだけど、私マフィアじゃないよ」

「白々しい嘘を!」

 

その殺気、その経験値、マフィア以外のどこで得るというのか。

心の底からどす黒い感情が沸きあがる。

 

「なら私がどこのマフィアか調べ上げてから襲いに来なよ…カッ消してあげる」

「クフフ、どこからくる自信なんでしょうね、いいでしょう…それなら受け入れます。どのみちこのままじゃ僕の負けです」

 

僕は潔く負けを認め、妥協した彼女の案で取引を受け入れた。

調べ上げて直ぐに寝首を行くと誓う。

 

「交渉成立ね、私がここから離れるまで何もしなかったら、あなたの周りにあるソレとったげる」

「取り除いたと分かるんですか?」

「分かるようにするわ…」

 

それだけ言うと、彼女は出て行った。

僕は今周りに張り巡らされているものがなくなるまでそこで立ち尽くすしかなく、手持ち無沙汰になっていた。

僕が同じ世代…しかも女子に負けるなんて…

ショックは大きいが、首が繋がっているのは儲けものである。

 

少しすると、僕の耳に何かがボンッと爆ぜる音がした。

周りを見ると少量の煙が立っていた。

それらを見ても一体何を仕込んでいたのか分からなかった。

 

 

「クフ、僕は諦めませんよヴェロニカ…」

 

そういって僕は、直ぐに来るであろうボンゴレどもを狩るためその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「げ、剣の布そのまま置いてきちゃった……雲雀の袖でいいか」ビリッ

 

 




ヴェロニカの黒曜編はここで終わりです。
沢田綱吉達のシーンは全面カットで次行きます(笑
↓ヴェロニカ

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ヴァリアー編
Veronicaの逃走と再会


ヴェロニカは逃げた。

わが身可愛さに

ヴェロニカは見るだけ。

ただそれだけ


黒曜編が終わって数週間…

リボーンには私が黒曜ランドにいたことを知られることなく。

私には平穏な日々が戻ってきた。

 

 

 

 

「ヴェロニカって君のことかい?」

 

 

 

 

拝啓

 

春の桜の散ってしまいました。

春風が涼しい中そろそろ梅雨に入ろうとしています。

私は日本で色々学んでおります。

父上は地獄でどうお過ごしでしょうか。

やはり鬼どもをカッ消しているのでしょうか。

父上を思うととても寂しいです。

そういえば、この前六道骸相手に白星を付けることが出来ました。

これからも父を見習い頑張っていきます。

私ももしかしたら直ぐにそちらへ行くことになりそうです。

 

     敬具

 

ヴェロニカ

ザンザス

 

 

 

「ねぇいつまで黙ってる気?」

 

あぶなっ、現実逃避というかあの世にいるパパへの手紙が出来上がってた。

 

「…ごめん、もう一度言ってくれない?」

「だから、ヴェロニカって君かい?」

 

六道骸カッ消す。

あいつしかいない。

10万回ほどカッ消す。絶対だ。

 

「……………確かに私の本名はヴェロニカだけど…」

「やっぱり君だったのかい、ねぇ僕と戦いなよ」

「何故」

「君が並盛中の喧嘩ランキングで一位だったんだよ…だから僕と戦うんだよ」

「…断る」

「君に拒否権はないよ」

 

そういうと雲雀はトンファーを構える。

私はそれを見た瞬間、大きく後ろに飛ぶ。

先ほど私のいたところには雲雀のトンファーが叩きつけられていた。

 

「学校だぞ」

「それが?僕の学校だ」

 

なんという暴論。

パパと張るな…

じゃない、とりあえず誰もいなさそうな…屋上に行くか。

ほんと誰もいないところで聞かれてよかった。

 

ヴェロニカはそのまま階段まで走り、足の裏に炎を纏い一気に上に上がる。

雲雀が後ろから迫ってくるとかどこのホラーゲーム?

 

屋上に出て、開けた場所に到着する。

 

「へぇ、わざわざ誰もいないところまで来るんだ…」

「……」

「ま、やるならどこでもいいけどね」

 

雲雀はにこやかにヴェロニカに向かってトンファーを振りかぶる。

ヴェロニカは死ぬ気の炎を全身に覆い、避け続ける。

今の雲雀に炎は出せず、トンファーで殴りつけるため調和は使えないし、私には武器がない。

一応、スカートの中にザンザスの拳銃を隠してあるが、これからザンザスと戦うであろう雲雀に見せるわけにはいかない。

ヴェロニカは、どうやって逃げ切るかを必死に考えていた。

 

「ねぇ攻撃してきなよ」

「武器を持たない相手にどの口が言う」

「ふーん…いいよ、見逃してあげる」

 

お?マジ?思ったより物分かり…

 

「でも明日は得物、用意してきなよ」

 

よくない、やっぱり雲雀恭弥は苦手だ。

雲雀はトンファーをしまい、そのまま屋上から消えていった。

残されたヴェロニカは叫びたくなった。

 

雲雀恭弥が黒曜編でボロカスにやられたたから、全快するまでに数週間もかかったんだろうけど、そろそろヴァリアー編じゃないの?コレ。

逃げ切ってたら、全部ディーノに押し付けられるパターンかな?

妙案を思いついたヴェロニカは、ディーノが来るまで徹底的に雲雀恭弥を避けようと思った。

一応、見つかったらやばいので剣を常備して。

 

次の日から雲雀恭弥と鬼ごっこを開始した。

 

『仲田夏美、今すぐ風紀委員室にきて』

 

ブツン

 

その放送があったときは、教室中の全員の視線が寄せられた。

沢田綱吉は、どこか心配そうに私を見ていたが、無視した。

そのあと、何回か放送及び風紀委員が来たが尽く避け続けた。

授業中も来たので、窓から逃げさせてもらった。

クラスメイトがめちゃくちゃ騒がしかったが、多分気のせいだ。

鬼ごっこを始めてかれこれ一週間。

そろそろ雲雀の忍耐袋がブチ切れる頃だろうか。

日に日に痣を作ってくる風紀委員達に同情しながらも逃げるヴェロニカ。

ある日、雲雀の放送がないので、風紀委員室を覗いてみると、金髪の青年がいた。

 

よっしゃ!後は任せますわディーノさん!

 

ヴェロニカは内心ガッツポーズをして、帰りの支度をして校門を出た。

久しぶりに得られた放課後の休息をヴェロニカは満喫した。

帰る途中、喫茶店によって私の好物のイチゴタルトとチョコケーキを頼み、寛いでいると後ろから声がした。

 

「んまぁ、どこもかしこも満席じゃないのぉ」

 

とても聞き覚えのある…オカマの声がしたような……

 

ヴェロニカは、声のもとを視線で辿ると、そこにはルッスーリアが立っていた。

そして何故か隣はベルとマーモンもいた。

そしてルッスーリアと目が合ってしまい、私の席は4人席だった。

これは来ますわ、絶対に。

案の定、ルッスーリアがこちらに近づいてきた。

 

「そこの可愛いお嬢さん、ここ相席していいかしらん?」

「………いいよ」

 

久々に顔を見た彼らに私は断り切れず、頷いてしまった。

ルッスーリアとベル、マーモンはそれぞれ席に着いた。

 

「あたしルッスーリアよん、あなたは?」

「……ヴェロニカ………」

「あら、いい名前ね」

「俺ベルフェゴール~」

「僕はマーモンだよ」

 

久々にこの人たちの声を聴いて、心のどこかでとても安堵した。

 

「あなたここの近くの学生さんかしらん?」

「並盛中…」

「あら、じゃあ沢田綱吉って知ってる?あたし達彼の知り合いなのん」

「同じクラス…でも喋ったことない」

「そう、にしてもあなた日本人じゃなさそうだけど、国籍どこなのん?」

「イタリア」

「あっらまぁ!あたし達もイタリアなのよ~」

「シシッ、ちょ~偶然じゃん」

「世間て狭いね」

 

少しお喋りをしていると、ふとルッスーリアが口にした。

 

「ねぇベル、ヴェロニカちゃんって少しボスに似てない?」

「あ?んー…確かに…眉毛とか…顔立ちとか…」

「僕は最初からそう思ってたけどね」

「気付いてたんなら言いなさよ~、にしてもそう思い始めるとますます似てくるわね~」

「……ボス?」

「あ、あたし達の上司でね~あなたにとても似ているのよ!」

 

あっぶねぇ、ここでもか!どれだけ私はパパに似てんのよ!

パパの遺伝子頑張りすぎだろ!

だが美形遺伝子だから許す。

 

「あ、そろそろ時間だわ!ここら辺であたしたちはお暇するわね!」

「…わかった」

「会計はあたしが払ってあげる!」

「ありがとう…」

「じゃあねん、ヴェロニカちゃん!」

 

ルッスーリア達と別れて、私はマンションに帰ろうと思った。

彼らがいるということは、既にヴァリアー編は始まっている。

…暫くは九代目に電話出来ないや。

少ししんみりしていると、知らぬ男に声をかけられた。

 

「すみません、少しいいですか?」

「……何…」

「ここに行きたいのですが、どこに向かえばいいですか?」

「………私もこの方向へ行くので途中まで送ります」

「え、あ、ありがとうございます」

 

男は私の後をついてきて、私はマンションの一つ外れた道まで歩き出す。

 

……?

 

歩く途中、僅かな違和感を覚えた。

何か、見逃しているような……何だろう……

この感覚、どこかで…ッ

 

 

幻術に嵌まっているかもしれない……そう直感で思った。

父譲りの直感を信じ、私は後ろをついてくる男にバレないよう、波長を探す。

少し時間がかかったが、見つけた。

だがこの波長は……どうして……

私を一般人か確認しているのか、それとも私を嵌めようとしているのか…

後者と判断し、私は一気に幻術を解き男から一気に距離を取る。

幻術を解くと、先ほどいた場所は空き地になっていた。

 

誘導されたか…

 

後ろにいた男は解かれたことに気付いた様子だが、焦っている様子はない。

 

 

「何のつもり…?…………マーモン」

「ふーん、そこまで分かったんだ」

 

男の姿が縮小し、小さなフードを被った赤ん坊の形になる。

にしても先ほどのカフェでの会話に何か不自然なところでもあっただろうか…

いや単に、私がリボーンの生徒だからか?

 

「で、何故私に幻術を?」

「……強くなったんだね、プリンチペッサ」

「え……」

 

ヴェロニカは大きく目を開いた。

 

「……マーモンあなた……」

「君を追って未来から来たのさ、全く皆心配していたよ」

「え、……と…ごめんなさ…い」

 

私は警戒を解いて、マーモンの近くに寄る。

マーモンはムスっとしていて、怒ったように私の頭を弱く叩いた。

 

「全く、君に何かあればあの世でボスにカッ消されちゃうの僕たちなんだけど」

「……えと…」

「色々聞きたいことも、教えることもあるからどこか誰もいないところに移動するよ」

「うん……」

 

私はマーモンの言葉に頷いて、マーモンを腕で抱えると近くにあるホテルへ移動した。

ホテルに入ると部屋の中でマーモンは椅子に座ったので私もそれの反対側へ行く。

そして私の今の状況と、未来の状況を教えてくれた。

 

まず、私がこの時代にいきなり飛ばされたのは、沢田綱吉がいきなり部屋を開けたせいで中で実験していた電子機器稼働ボタンを正一が押し間違え、そのせいでバズーカが作動してしまっとか。

そして、私を未来に戻れるようにするにはまだ時間がかかりそうだ。

とりあえずヴァリアー幹部全員に沢田綱吉は殴られたそうだ。

沢田からヴェロニカのことを聞いたときは驚愕して、それから荒れたんだと。

何故、死ぬ気の炎のことを知っていたのか、マフィアと分かっていたのか…いえばいくらでもあったくらいだった。

そのあとパパを火葬して、会議を行ったらしい。

誰が過去に行くかだった。

最終的にはじゃんけんだったそうだ。

じゃんけんでなくともマーモンにすべきだと思った。

 

そのあとマーモンには私の話をした。

ここにきて九代目に話して協力をしてもらったことや、リボーンに家庭教師をしてもらっていること、この前六道骸に勝ったこと。

六道骸のあたりはマーモンは大げさなほど驚いていた。

だが、一つだけ、死ぬ気の炎はザンザスが死ぬ直前に発現したことにしている。

 

私はマフィアのことを知ったのは最近です、あなた達のことは何も知りません。をアピールするためマーモンに質問を投げかけた。

 

「にしても、マーモンあなた姿がそのままだけど10年前からそうだったの?」

「一応ね、未来では大人の姿になれたけど、君の前ではずっと赤子の姿をしていたのさ」

「そう……マーモンはどれくらいここにいるの?」

「多分、二週間くらいだよ…ボンゴレリング争奪戦が終わるまではいると思うけどね」

「そっか……」

「あと、これを預かってきたよ」

 

マーモンはそういうと、箱を渡してきた。

中を開けると、注射器と液体が入っていた。

 

「これ!」

「ワクチンだよ…僕も数本持っているけどね。一応君にも渡しておこうと思って…」

「ありがとうマーモン!」

「あとこれは、このボンゴレリング争奪戦中にワクチンをボスに接種できなかった場合使うものだよ」

「なにこれ」

 

マーモンが出したのは小さめの手のひらサイズのバズーカ

 

「小型10年バズーカ…タイムリミットは一か月…君には少し未来を教えておくよ」

 

少し省いてはいたが、マーモンは未来編のことを教えてくれた。

何故、未来まで行かなければならないのか、マーモンに聞いてみたところ…

 

「ボスに少しでもワクチンを接種出来る可能性がある場面に出くわす確率が高いから」

 

ふむ、詳しく聞くとザンザスにワクチンを打つにはまずザンザスが意識がないとき、又は眠っているときにしか出来ない、と。

そしてザンザスがこれと言って目立つ怪我をしたことがあまりなく、唯一怪我をしたのが指輪争奪戦の時と未来編でのみなのだと。

なるほど、確かにあの人寝てても近づいたら起きそうだもんな。

 

「ん?待って、ってことはワクチン打つときって手負いのパパを抑え込んでやるの?」

「まあ、そうなるね…僕も少し前にバズーカで入れ替わったけど、ボスに打つタイミングなんてこれっぽっちもなかったね」

「そっか…」

 

それなんて無理ゲー?

え、手負いのザンザスに?無理でしょ。

結構ハードルたけぇなおい…

 

「マーモン、ボンゴレリング争奪戦でパパに打てそうなタイミングって?」

「最後だね、ボスが沢田綱吉に敗北した時倒れたからそのときか、あとは入院中…かな」

「その時皆重傷だったの?」

「そうだね、ま、今回僕は傷を負うつもりはないよ。未来も知っていることだしね」

「分かった」

 

胃が痛くなってきた。

目の前のマーモンは少し険しい雰囲気で口を開く。

 

「プリンチペッサ、この時代のボスは君を知らない」

「うん」

「この時代のボスは君の父親ではないんだよ……だからボスは多分容赦なく君に攻撃すると思うよ」

「分かってる、覚悟の上よ…」

「なら僕は何も言わないよ……でも一つだけ最後に聞きたいことがあったんだ」

「僕の幻術、どうやって解いたんだい?」

 

マーモンはそれが気になって仕方なかったらしい。

一応、調和の性質を使ったと言ったらマーモンはあんぐり口を開けていた。

 

「ぇ、じゃあ何…君は僕の波長をあの短期間で探し出した挙句、調和して幻術を解除したっていうの?」

「そうだけど」

「君、憤怒の炎ってだけでも破格なのにっ、なんだいその化け物並みの探知力とコントロールは⁉」

 

まぁ、他の人から見ればそうなるよね、うん。

 

「ほんっと、非常識なとこもボスそっくりだね!」

 

おい待てやコラ、『も』ってなんだ『も』って。

顔はともかく、暴君じゃないし、非情なつもりもないぞ。

大変遺憾である。

 

「ほんっと、僕達のいない間にどれだけ強くなる気だい……」

「取り合えず目標は打倒スクアーロ」

「今のスクアーロになら出来るんじゃないかい?」

「経験が足りない」

「まぁ、そうだね…それに君得物も持ってないし」

「一応持ってる」

「何だって?」

「両手剣、九代目にもらったの……マンションの方に置いてあるわ」

「剣だって?君剣士にでもなる気かい?」

「違う、本当は銃を使うつもりだったけど、パパも使ってるから使えないの」

「そういえば君ボスの二挺拳銃奪っただろ!あれ無くて皆屋敷中探し回ったんだよ⁉」

「ごめん」

「ちゃんと持って帰ってきてよね…ったく」

 

マーモンはほっぺを膨らまして、プンスコ怒っている。

正直可愛いだけである。

 

「僕はもう皆のところに行かなきゃならないけど、何かあったらコレに連絡しなよ」

 

マーモンはそういうと、私に番号の書かれた紙を渡す。

 

「プリンチペッサ」

「何」

「これだけは約束してくれないかい?」

「?」

「何があっても絶対にボスの前にそのままで現れないこと」

「…………分かったわ」

 

下手したらバレますもんね。

ザンザスって何で血が繋がってないのにあんな超直感みたいなのあるんだろう…

 

マーモンと別れて、私はマンションに帰っていった。

 

私はいつでも一歩後ろから全てを見るだけ。

どれだけの人が傷ついても私は見ているだけ。

目的をはき違えるな…

原作を変える為に来たんじゃない。

 

「ごめんね、おじいちゃん……」

 

 

私の独り言は誰にも聞こえることなく消えていった。

 

 

 

 

 

マーモンside

 

最初、ルッスーリアがプリンチペッサが部屋にいないことに気付いた。

そのあと、トイレかと思ったが数十分経っても部屋に戻ってくる気配はなく、屋敷を探し始めた。

だが見つからなかった。

ボスの遺体のある部屋も、いつも籠っていた庭にも、書庫でも。

プリンチペッサがいそうな場所を探したがどこにもいなかった。

屋敷外も数時間探して、ベルがふと声を出した。

 

「俺たちの話、聞かれてた?」

「プリンチペッサが気配を消せるわけないだ……ろ…」

 

ただの傷心で、どこか外に出て行っただけなのかもしれない。

けれど、皆ベルのその言葉を何故か否定できなかったのだ。

 

いつもどこか達観していたプリンチペッサ。

無表情で、だが声の起伏は顕著で。

ボスに似てとても頭の切れる子だった。

僕たちの仕事は悟られないようにしていたけれど、賢いあの子がそれに気づかないフリしていた可能性が無くもないのだ。

 

ベルの一言で、僕らはボンゴレの方へ出向いた。

そしてそこには沢田綱吉が顔を青ざめながら入江正一に何かを訴えていた。

 

「えぇぇぇえええ⁉ヴェロニカちゃん、バズーカの故障で戻ってこない⁉」

「ええと、ごめんよ…何年前に行ったか分かれば僕も対処の仕方があるんだけど…」

「え、じゃ、じゃあヴェロニカちゃんは戻ってこれるの⁉」

「今からバズーカを修復しないとどうにも…」

「どどどどどうしよ…これ絶対ヴァリアーにバレるって!っていうかヴェロニカちゃん予防接種のワクチン持って行ってないよぉぉぉお」

 

「おい、それはどういうことだぁ」

 

スクアーロが一段と低い声で沢田綱吉の襟元を掴んだ。

沢田綱吉はこの世の終わりとばかりの顔で僕たちをみていた。

 

プリンチペッサが過去に行ってボスを助けに行くと言い出して、そのあとのバズーカの故障で飛ばされた年代が分からない。

 

これだけ聞いた瞬間、僕たちは沢田綱吉をタコ殴りにした。

沢田綱吉は暫くずっと謝っていた。

僕たちのプリンチペッサを…ボスの形見を…よくも…

これ以上時間を無駄にするわけにはいかなく、入江正一に至急特定をさせた。

その間、僕たちはプリンチペッサと沢田綱吉の会話を聞かされていた。

 

マフィアと知っていたことも、炎のことも、そして彼女に死ぬ気の炎が発現していたことを聞かされた時は、眩暈がした。

だがそれ以上に、ボスがそれを知ってなおプリンチペッサをマフィアに関わらせないようにしたことに驚いたのだ。

だから、プリンチペッサはボスを助けようとしたのだろうか。

無表情で、何を考えているか分からないように見えて、プリンチペッサはボスが好きだったから。

それでも、何も言わず一人で行動した彼女に喚き散らしたくなった。

 

プリンチペッサの時間軸の特定はとても時間がかかった。

そして、それからバズーカをその時間軸に合わせる調整期間を経てようやく会いに行けることになった。

だが、直ぐに作っただけあり一人だけしか飛ばせないことが分かり、誰が行くかで喧嘩になった。

最終的にじゃんけんで収束したが、皆一様にボロボロだった。

そのあと僕はワクチンを数本持って、バズーカで過去に飛んだ。

 

飛んだ先で直ぐに状況を確認すると、ボスが8年ぶりに目覚めた直後だった。

イタリア滞在中にヴェロニカについて探していたけれど、見つからず焦りながら日本へ向かった。

日本に有幻覚を置いて、自分はイタリアに戻りヴェロニカを探すつもりだった。

けれど、日本に到着した翌日、ルッスーリアがカフェに入りたいというので渋々入る。

満員と言われ、帰ろうと言おうとする前にルッスーリアが一般人の女子生徒に声を掛けたので内心イラついた。

だが、女子生徒がこちらを向いた瞬間さっきまでのことが全部吹き飛んだのだ。

 

プリンチペッサ!

 

彼女の方は相席に了承すると、四人席にそれぞれが座って話し始めた。

僕はプリンチペッサを見つけた喜びにその時喋っていた内容はあまり覚えてはいなかった。

カフェを出ると、ベルとルッスーリアに有幻覚の僕を見せて、僕はプリンチペッサを追いかけて行った。

幻覚で男に見せて、僕はプリンチペッサに声を掛けた。

 

「すみません、少しいいですか?」

「……何…」

「ここに行きたいのですが、どこに向かえばいいですか?」

「………私もこの方向へ行くので途中まで送ります」

「え、あ、ありがとうございます」

 

彼女は疑いもせず、僕を案内していくが、僕は人気のない場所へ誘導するため彼女に幻覚を掛ける。

そのまま人気のない場所につき、そのまま奥まで行こうとした時、幻術が解けた。

破られたんじゃなく、解けたのだ。

僕は驚愕し、幻術を張り直そうとした時、プリンチペッサが振り向く。

 

「何のつもり…?…………マーモン」

「ふーん、そこまで分かったんだ」

 

僕は驚きを表には出さなかったが内心ひやひやしていた。

プリンチペッサがマフィアや炎のことについて既に知っているのは聞いていた。

だが、僕の幻術を解けるほどの力を持っているなんて聞いていない!

僕は観念した。

 

「で、何故私に幻術を?」

「……強くなったんだね、プリンチペッサ」

「え……」

 

プリンチペッサは大きく目を開いた。

 

「……マーモンあなた……」

「君を追って未来から来たのさ、全く皆心配していたよ」

「え、……と…ごめんなさ…い」

 

意外にも彼女はすんなりと謝ったので、拍子抜けした。

それと同時に、黙って行動した彼女にイラだっていた感情が再び沸き上がるが、彼女は相も変わらず無表情で宥める様に僕を抱き上げてた。

そのあとは近くのホテルに移動して、今までの報告をし合っていたが、驚きの連続だった。

 

あの!六道骸に!勝ったなんて!!

いくらボスの娘でもこれは飛び抜けすぎていると正直に思った。

 

10年後の為のバズーカとワクチンを渡し、一段落ついた頃僕は先ほどからの疑問を投げる。

何故、僕の幻術が解かれたのか…あんな解かれ方をされたのは初めてだった。

そして返ってきた回答に顎が外れそうになった。

 

ちょ、調和だって⁉

あの短時間で僕の炎の波長を見つけて⁉

 

あまりにも恐ろしいことをさらっという目の前の少女に僕は気が遠くなった。

そして確信した。

この子は将来ボスより強くなる。

経験がないにも関わらず六道骸に勝ち、僕の幻覚を解いて見せた。

これだけでも称賛に価するのだ。

リボーンの野郎に任せるにはあまりにも惜しいと、本気で思った。

 

そのあとも、剣士の真似事をやっていたり、ボスの拳銃を盗んでいたりと驚かされたが。

プリンチペッサの無事な姿を見て取り合えずホッとしたのだ。

最期にプリンチペッサと約束をして別れた。

 

帰り道、僕は思い出した。

 

 

そういえばこの時代のボスってめちゃくちゃ性格悪かったような。

スクアーロなんて鮫に喰われちゃうし。

大丈夫かな、プリンチペッサ…

ボスに失望しなければいいんだけどなー。

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「てか今回のパパおもっくそかませ犬じゃね?」

 

 

 

 




ヴァリアーとの対面。
レヴィは口調があまりわかんないので出番ないです。
マーモンが未来と入れ替わってます。
次回はボンゴレリング争奪戦の対戦開始です。


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Veronicaの偵察

ヴェロニカは見守る。

ただ行く末を

ヴェロニカは逃げる。

彼の銃口から


現在並盛中から少し離れた建物で争奪戦を観戦しているヴェロニカです。

今、私の目の前で雷の守護者の対決が行われていた。

晴?原作通り、笹川了平が勝利を収めた。

私的にルッスーリアがボコボコにされるのはあまり気分のいいものじゃなかったので、直ぐに帰ったのだが。

雷、嵐はヴァリアー側が勝つので、最後まで見ようと思う。

今回のマーモンは未来から来ていて、六道骸にどう対処するか予想不可能なので、取り合えず見に行く予定である。

 

あ、ランボがバズーカ使った。

レヴィも小さい子相手に普通に攻撃してるけど、外道だなぁ…

あれ、ここでもっかいバズーカ使うんだっけ?

ってことは20年後のランボか、変わりすぎだろおい。

 

ヴェロニカがそんなことを思っているとき、一瞬だけ大人ランボと目が合った気がした。

いやないだろ…だって結構離れてるし、私双眼鏡使ってるし…

待って大人ランボが二度見してこっち見てる、これ絶対私の居場所バレてますわ。

 

ヴェロニカはすぐさま、双眼鏡を仕舞いその場を離れた。

双眼鏡を覗くとき、フードが邪魔で取っていたけど、あの距離から顔バレてないよね……

足を炎で強化して、建物の上を飛び越えながらマンションへ遠回りしながら帰る。

マンションへ着き、部屋の中に入ると持っていた剣を置きベッドに転がる。

ヴェロニカは少しだけ目を閉じ、これからのことをシミュレーションしていた。

 

ザンザスの入院中の病院へ侵入した後、マーモンの幻覚で医者に化ける。

化けたら、そのままザンザスの病室まで行き、点滴液の方にワクチンを投与すればいい。

その前に気付かれれば直接パパに投与。

抵抗した場合のことも考えて、今のうちにパパの波長を思い出す。

同じ憤怒の炎だからか、又は親子だからか、パパの波長はとても私に似ていた。

私にはとても心地よいほど似ていて、何もせずに攻撃を喰らっても多分ほぼダメージは通らないのかもしれない。

 

ヴェロニカは目を開ける。

部屋の天井には、薄く細い炎の糸が複雑に張り巡らされている。

 

もっと複雑に もっと細く

 

ヴェロニカは目を細くし、炎の千切れるギリギリの細さまで炎を伸ばす。

 

プツン

 

炎の糸が力なく千切れ、紛散していく。

ヴェロニカは力なくため息を吐き、そのまま布団を被り目を閉じた。

 

 

翌日、嵐の守護者の対決で、何事もなくベルフェゴールの勝利で終わった。

途中で足を折ったベルに私は少し心配になったが、原作通りになり安堵した。

 

明日はスクアーロなのでパス。

ぶっちゃけ鮫に喰われるスクアーロという共食いなんぞ見たくない、泣く自信しかない。

しかもそれに対してパパが非情な言葉を掛けた覚えがある。

この頃のパパが荒れていたのは知っているけど、聞くと辛いものがあるので敢えて聞かないように明日は来ないことにしていた。

していたんだ。

 

なのに、何で私は双眼鏡を持ってまた並盛中を見ているんですかねぇ…

くっそ、久々にパパ見れると思うと居ても立ってもいられなくなって、結局来てしまった。

ちゃんとフードはしております。

スクアーロも最初に山本をナメぷするから最後に逆転勝ちされるんだよ、あのアホ。

最初から殺す気で…おっと危ない、思考が危険な方向にいってしまった。

 

にしてもパパ若ぇぇぇ

私の記憶に残ってるパパなんて50手前のおっさんってこともあって少しだけ目頭にしわあったし。

それ思うと、大分若く見える。

私のパパはいつでもイケメンだな。

性格クソだけど。

あ、スクアーロが負けた。

鮫にぱっくんちょされるのは見たくないので退散しますかっと。

 

ヴェロニカが立ち上がった瞬間。

 

バゴォオオ

 

ヴェロニカの足元が一気に崩れた。

いきなりのことに、驚愕したが直ぐにその場を飛び退き建物から降りる。

攻撃源を見ると、ザンザスがこちらに向かって銃を構えていた。

 

うっほおぉあ!バレてらぁ!

 

ヴェロニカはその場から出来るだけ遠くに退避した。

何か複数の視線が背中に刺さってるけど無視。

逃げる途中、何発か足の近くに銃弾がぶつかり足場が崩れていくと、ヴェロニカは慌てて足に炎を圧縮して纏い、その場を蹴った。

すると、足場にしていた建物が崩れた。

 

もう一度言おう、崩れた。

 

んんんんんん?

 

一瞬ザンザスの攻撃かと思ってが、自身のせいだと気付く。

あまりに急な襲撃だったので、思わず炎を圧縮して飛んだせいで、建物がその負荷に耐えられなかったようだ。

やっべ、これ絶対逃げ切らないと…!

ヴェロニカは必至でその場を去った。

 

 

数分後、マンションに戻ったヴェロニカは疲れた体で風呂を入り終えると、ベッドに潜り込んだ。

その時、携帯が鳴ったのでディスプレイを見るとマーモンだった。

 

「はい」

『プリンチペッサァァァァァァァァアア!』

「ごめんなさい」

 

こういうのは素直に謝るのが一番である。

 

『君ってやつは!どれだけ僕の心臓が止まりそうだったことか!』

「ごめん、あの距離でバレると思わなかった」

『ボスの獣並みの勘を侮っちゃダメだよ!それよりどこか怪我してないよね!?』

「別にどこにも…」

『君に怪我がなくてよかったよ…というか君、何したのさ…建物が崩れたけど』

「ごめん、まだ炎の加減が出来てなくて…」

『やっぱり君だったか…ベルが君に興味持っちゃったじゃないか』

「うわっ」

『もうちょっと上手く隠れなよ!どうせボスの若い頃見たくて来たんだろう?』

「うっ…」

『ったく……君はもう少し慎重に動くべきだよ』

「はい」

『もう僕は眠るよ。明日は僕の番だからね』

「頑張ってね、マーモン」

『分かってるよ、おやすみ』

「おやすみ」

 

ピッ

 

携帯の通話を切ると、一気に疲れが押し寄せてきた。

 

「ふぅ……」

 

リボーンにバレてないといいんだけどな…

ヴェロニカはベッドの上で瞼を閉じた。

 

翌日、学校への登校時、いきなりリボーンが現れた。

 

「ちゃおっす」

「…」

「おいヴェロニカ、おめー昨日の夜どこにいやがったんだ?」

「マンション」

「嘘だな、おめー並盛中の近くにいただろ」

「昨日は外出していない」

「ボンゴレリング争奪戦のこと、誰から聞いたんだ?」

「知らない」

「嘘をつくんじゃねぇ」

「くどい」

「……ヴァリアーの奴らがお前に興味を持っていた。あぶねーからもう覗きに来るんじゃねぇぞ」

 

リボーンはヴェロニカに忠告すると、直ぐに姿が見えなくなった。

これはもうバレてますわ。

でも私が否定しているから誰にも言うことも出来ないだろうな。

いや沢田家光には言っていそうだ。

ああ、なんて面倒な…

色々自業自得すぎて、何も言えないが。

だが今日はマーモンの晴れ舞台!見に行かないわけにはいくまい。

ナッポー野郎をボコボコにしてほしい、切実に。

 

その日の夜、私はバレないように周りに細心の注意を払いながら対戦を見ていた。

マーモンは容赦なくクロームを叩きのめしている。

女の子に手をあげるマーモンも意外と外道だよね。

でも仕方ない、あいつら生粋のマフィアだし。

そんな外道なあいつらが私は好きだし、私も色々外道思考になってきているかもしれない。

って、あーあ…クロームボロボロじゃん。

っと、そろそろ骸が……来た。

あの顔見ると殴りたくなる。

雲雀恭弥に私のこと喋ったのあいつだし。

だから私は雲雀に追われるハメになってるわけで。

ヴェロニカは殴りたい衝動を抑えて、戦いの行く末を見守っていた。

あるぇ?骸が勝っちゃった。

それもマーモンがボロ負けしてる。

えー、原作通りじゃん。

 

「解せぬ」

「何がだい?」

 

後ろから、マーモンの声がして私は驚きすぎて勢いよく振り返ると、そこにはマーモンがいた。

 

「え?……もしかして」

「そ、今六道骸にやられてるのは僕の有幻覚さ」

「……何で有幻覚?マーモンが六道骸カッ消せばいいじゃない」

「君ボスの口調移ってるよ……そうするとヴァリアーが勝っちゃって、明日の雲の対戦が無くなっちゃうじゃないか…一応、僕たちの目的は沢田綱吉に濡れ衣着せて殺すことなんだし」

「そうだったんだ……濡れ衣って?」

「ああ、言ってなかったっけ?雲の守護者、ゴーラモスカの中身は九代目だよ」

「……そう」

「僕たちは九代目を沢田綱吉に殺させて、それで大義名分を得て沢田綱吉を殺すのが目的だったんだよ」

「……」

「君は九代目を慕っていたからね…僕達を軽蔑するかい?」

「九代目、未来で生きてたってことは一応死にはしないんでしょ?」

「ま、そうだね…」

「なら別に思うところはないかな……それに…九代目とあなた達を比べたって、私はマーモン達を選ぶわ…」

「……何故だい?」

「子供のころから一緒にいたのはあなた達だったし、私の誕生日をいつも祝ってくれてたのもあなた達だもの……マーモン達の方が好きよ」

「フン、君はたまに恥ずかしげもなくそんなこと言うよね、聞いてらんないよ」

「そう」

 

マーモンはフードで隠し切れないほど、顔を赤くさせていた。

めちゃくちゃ可愛いです。

天使かな?

 

「そろそろ有幻覚と代わってくるよ」

「気を付けてね」

「それ、そのままお返しするよ。くれぐれも誰にも見つからないように早く帰りなよ」

「うん、おやすみ」

 

マーモンはそういうと、ヴェロニカから離れていく。

ヴェロニカも闇に紛れながらその場を去っていった。

 

 

 

 

リボーンside

 

晴の守護者の対決が始まった。

対決中、ふと近くに気配があることに気が付いた。

敵意はないので、深く探りはしなかったが、こちらに刺さる視線は少し鋭かった。

 

次の、雷の守護者の対決でもその気配はあった。

一体どこから見ているのか定かではなかったが、やはり敵意はなかったので放っておくことにした。

ランボが負けそうになり、10年バズーカを使い10年後のランボが来るも、窮地に追いやられたことで再びバズーカを使った。

出てきたのは20年後のランボで、この戦いの行方が分からなくなっていた時、ランボがある一点を見た。

そして目を見開き、もう一度そちらの方角を見て口を開いた。

誰にも聞こえないほど小さな声で、そして誰にも気づかない程僅かな間の視線の動きだった為、それに気づいたのは俺だけだっただろう。

 

『あれは――――の娘……何故ここに……』

 

読唇術で、分かったのはそれだけだった。

誰の、までは分からなかったが、俺たちを覗き見ているのは女のようだ。

そこで俺には直ぐ浮かんできた人物が、ヴェロニカだった。

やつならば、この騒動に気付いて見に来てもおかしくないと思った。

隠れていた気配が遠くなるのに気づき、撤退したと分かった。

俺は手を顎に添え、対決を観ながらヴェロニカのことを考えていた。

 

先ほどの気配をヴェロニカと仮定してだ。

10年後でのランボはあいつのことを知らない、といった。

だが20年後のランボは知っているようだった。

単に、10年後以降に知り合った可能性が高いが、俺はそれだけだとは思わなかった。

今の段階で頭角を現しているあいつが10年以上も知らないわけがないと思ったのだ。

そして誰かの娘……マフィア関係者の娘ということが分かるが、ランボでも知っているような人物を当たるしかないのだろうか。

一体あいつに何が隠されているんだ…

リボーンは雷の守護者の対決が終わっても思考が休まることはなかった。

 

次の嵐の守護者対決でも、その気配はあった。

今とっ捕まえてもいいが、逃げられる可能性があるのでやはり放置していた。

ベルフェゴールの片足が折れた時、俺たちを見る視線が一瞬だが揺らいだ。

何故揺らいだ?ベルフェゴールの足が折れたから?

それとも、ヴァリアーに何らか思うところでもあったのか。

その日は、結局ベルフェゴーレの勝利で幕は下りた。

 

次の雨の守護者対決でも、気配はあった。

どこから見ているか未だ分からない。

雨の守護者の対決が決まった時、隠れていた気配が動いたと思った瞬間。

大きな爆発音が聞こえた。

そちらを見ると建物が少しだけ崩れていて、チェルベッロ達も驚いている。

なにせいきなり無人の方向に発砲したのはザンザスであった。

 

「どうしたのさ?ボス」

「ネズミがいた」

 

マーモンの問いにザンザスはそう答えると、もう何発か同じ方向に撃ち始めた。

俺の隣のダメツナは、発砲に驚いて状況が分からないようだった。

ザンザスの攻撃を上手く避けているのか、銃撃が終わらず、チェルベッロが止めに入ろうとした時、攻撃していた建物が崩れた。

ザンザスが僅かに目を見開いたのを俺は見逃さず、これは奴が引き起こしたことではないと分かった。

で、あればあの建物を破壊したのは、先ほどの気配の持ち主。

何故壊したかは分からないが、恐らく目くらましのつもりだろう。

既にその気配はなかった。

 

「何そいつ、ずっと見てたわけ?王子気付かなかったんですけど…シシッ」

「俺たちに気付かれずに隠れるとは…余程の手練れだろうな」

「んー、俺気になるかも」

「ベル、お喋りはそこまでだ。舞台が動き出すよ」

 

気配の主に興味を持ったベルフェゴールをマーモンが黙らせる。

マーモンの言う通り、試合会場には鮫が投下され、スクアーロが喰われたのだ。

山本は腑に落ちない顔をしていたが、その日の対決はダメツナのチームが勝利を収めた。

 

 

俺はその次の日、登校時のヴェロニカを捕まえ声を掛けた。

 

「ちゃおっす」

「…」

「おいヴェロニカ、おめー昨日の夜どこにいやがったんだ?」

「マンション」

「嘘だな、おめー並盛中の近くにいただろ」

「昨日は外出していない」

「ボンゴレリング争奪戦のこと、誰から聞いたんだ?」

「知らない」

「嘘をつくんじゃねぇ」

「くどい」

「……ヴァリアーの奴らがお前に興味を持っていた。あぶねーからもう覗きに来るんじゃねぇぞ」

 

ヴェロニカは始終俺の言葉に否定していたが、俺はあの気配がこいつだと思っている。

確証はないが、今までの勘でこいつだと思った。

取り合えず、忠告はして俺はその場を去る。

ダメツナの元に向かう途中、ふと思い出した。

 

確か、俺はヴェロニカの炎を見たことがなかった。

大空の属性であることは知っているが、実際見たことがなかった。

今回のボンゴレリング争奪戦が終わってからでも、確認しにいくか。

 

 

その日は、霧の守護者の対決だった。

クロームがマーモンに一方的にやられていて、ダメツナも山本も止めに入ろうとするくらい焦っていた。

だが、力尽きたクロームはその場で意識を失う。

これで終わりかと思った時、六道骸がクロームの体に憑依し現れた。

やつは、周りを見て少し落胆した様子を見せたが、直ぐにマーモンに攻撃を開始する。

六道骸はマーモンを圧倒する。

マーモンも奮闘するも、敗北。

今回もこちらの勝利で、明日の雲の対決で全てが決まることになった。

気付けば、さきほどあった気配もなくなっていた。

その気配はまるで、何かを待ちわびているようだった。

 

 

「何も、起こってくれるなよ…」

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「マーモンは天使、異論は認めない」

 

 

 




次回で、多分ヴァリアー編が終わります。
ザンザスの「崇高なるボンゴレ」発言にヴェロニカの腹筋は耐えられるのか―――⁉
私は耐えられませんでした。


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Veronicaの力

ヴェロニカは思う。

自身には行き過ぎた力なのだと

ヴェロニカは笑う。

滑稽で 滑稽で


「よくも9代目を!9代目へのこの卑劣な仕打ちは実子であるXANXUSへの、

そして崇高なるボンゴレの精神に対する挑戦と受け取った」

 

「なっ」

 

ザンザスの言葉に驚愕する沢田綱吉に、ザンザスは追い打ちの言葉を発した。

 

「しらばっくれんな。9代目の胸の焼き傷が動かぬ証拠だ。

お前がしたことの前ではリング争奪戦など無意味!

俺はボスである我が父のため。そしてボンゴレの未来のために貴様を倒し、仇を討つ。」

 

誰もが仕組まれたことに気付いていながらも、あまりの事態に言葉が出せないでいた。

リボーンが口を開こうとした時――

 

 

「んぐふっ」

 

 

場の雰囲気に似つかわぬ声が遠くの方から発せられた。

その場にいた者、チェルベッロも含め皆がそこに視線を移した。

ザンザスが声のした方に、銃口を向け誰かの静止の声を無視して発砲する。

大きな破壊音と共に、黒い影がその場から飛び出し遠くの方へ走っていく姿が見えた。

 

「誰だか知らんが、ここ数日俺たちをじろじろ見やがって不快だ。レヴィ、殺せ」

「ハッ」

 

レヴィが遠くに逃げる黒い影を追う為、駆け出す。

影は、物凄いスピードで掛ける。

もし、レヴィでなくベルフェゴールであれば恐らくついて行けたかもしれないが、ベルフェゴールの足は嵐の対戦で負傷していたため、レヴィが駆り出された。

あまりの足の速い影に、レヴィは追いつかないと判断し、攻撃に移った。

電気傘を抜き、前を走る影に打ち込む。

が、そのまま攻撃が当たったにも関わらずその影はスピードを落とす気配はない。

 

「貴様、何者だ!」

 

レヴィはそう叫ぶも、影は何も答えない。

何発か喰らわすも、全く効いていないかのように影は走っていき、やがては闇に飲まれていった。

 

「くそっ、奴は一体……」

 

レヴィは追うのを諦め、ザンザスの元へ引き返した。

 

 

 

一方、黒い影はマンションの一室で、誰も周りにいないことを確認し、被っていた黒いフードを脱いだ。

 

「あーーーー……あっぶなかったぁ…」

 

黒い影、ヴェロニカは来ていた黒い服をすべて脱ぎ、普段着を着てベッドに倒れこむ。

しん、と静けさの広がる一室の中でヴェロニカは枕に顔を沈めている。

段々と、肩が震えていき、思わず声が漏れだす。

 

「ふ、くく………も、無理……ふはは…」

 

ヴェロニカの声は段々と大きくなり、遂には耐えることをやめ、盛大に笑い始める。

 

「あははははははっ…す、崇高なるボンゴレって……くふ、ふははははは」

 

思い出したらさらに笑いがこみ上げる。

 

「卑劣な仕打ちって……って…んぐ…我が父の為とか……あっはははははは……ないわー」

 

数分間、笑い続けて疲れたのかようやく笑い声が収まり、ヴェロニカは枕から顔を上げる。

その顔は涙に濡れており、一見悲壮な少女を表すも、本人は至って正常である。

なにせ笑い泣きなのだから。

 

パパのクソ演技に思わず吹いて居場所がバレたけど、これは見る価値ありましたわ、ハイ。

なにあれ、めっちゃウケる。

ああ、ボイスレコーダーに入れて未来の皆に聞かせたかった。

我が父って…くっそ吹いたわ…

パパに仇って言葉自体合わないっていうか、遺伝子レベルで拒否られてる。

もうダメだ、変な声出たけど不可抗力だね。

あ、電話なってる。

 

「もしもし」

『プリンチペッサァァァァァァァアアア!』

「後悔も反省もしてないよ」

『そこはしてよ!何で声なんか出すかなぁ!』

「ごめん、耐えられなかった」

『え?そりゃ九代目は瀕死だったけど、あれじゃ死なないって事前に言ったじゃないか!』

 

んん?そうやらマーモンは私が泣きそうであんな変な声を出したと思われているみたいだ。

 

「マーモン違う」

『何がだい⁉』

「別に私は悲しくて声を出したんじゃないわ」

『…は?』

「パパの発言に思わず笑ってしまったの」

『…………』

「あんなクソ演技…よくパパ考え付いたね、録音したかったわ」

『君ほんっとボスの娘だよね!』

「それ誉め言葉?」

『絶対違うから!』

 

ようやくマーモンへの誤解が解けた。

が、マーモンも思うところがあったのだろう、笑ってしまったことに対して責められはしなかった。

 

『ほんと、ボスが君のこと殺そうとしたんだよ⁉もっと気を付けてよ!』

「ごめん、でもあれは仕方がないと思うの」

『うん、君からすれば笑うのも致し方ないけどね……それよりレヴィが追いかけて行ったけど大丈夫だったかい?』

「ええ、何発か雷喰らったけど無事よ」

『それ無事って言わないから‼え⁉怪我は⁉』

「ないわ、全部調和したから…水鉄砲が背中に当たったような感覚はあったけどね」

『それレヴィに言ったら絶対泣くよ』

「言わないからいいわ」

 

電話越しでマーモンが溜息を吐くのが伝わった。

 

「にしても我が父って……卑劣な仕打ちって…ふっ」

『やめてよ!僕まで笑いそうじゃないか!君の笑いどころに僕は今驚いてるよ!』

 

確かに、私が笑ったところを彼らには見せていないかもしれない。

確かに嬉しかったりしたら笑いはするけど、面白くて爆笑したことは一度もなかった気がする。

それで一時期心配されたな、うん。

 

「心配かけてごめんねマーモン」

『……本当に気を付けなよ……今度危ない目に合ったらスクアーロやルッスーリアに言うからね』

「えー…」

『えー、じゃない!君は一度彼らに説教されるべきだよ絶対』

「逃げるからいいよ」

『逃げないでよ!全く』

「これ以上話しててもマーモンが怪しまれるわ」

『そうだね、もう切るけど、ちゃんと寝なよ』

「うん、おやすみ」

 

通話を切った私は、お風呂に入り、そのあと直ぐに眠りについた。

翌日の朝は寝坊したので学校へは休みの連絡を入れ、その日はトレーニングに勤しんだ。

 

大空決戦の夜、私は並盛中に余め設置されていた監視カメラをハッキングしていた。

今日、流石にあちらの被害が尋常じゃない上、パパがめちゃくちゃ破壊しまくるのでついでで殺されかねないと思ったからだ。

あ、出来た。

カメラのモニターがPCのディスプレイに映し出された。

既に守護者達は集合しているようだ。

毒入りのリストバンドをハメた彼らは、チェルベッロの言葉を待っている。

数分すると、いきなり守護者たちが倒れだす。

 

「始まった……」

 

後は、パパが沢田綱吉に負けるのを待つだけ。

 

「にしても物凄い悪役っぷりだな…パパ」

 

いきなり沢田綱吉を殴りつける外道っぷり、そこに憧れもしないし、痺れもしない。

数十分、モニターを見ていると、沢田綱吉が零地点突破をし出した。

 

「そろそろか…」

 

一応、ザンザスが倒れたところ私が乱入してワクチンを打つ隙があれば実行しようとは思っていたので、準備をする。

余めマーモンに作らせておいた私の有幻覚にマンションの下の階にあるレストランで監視カメラに映る位置で時間を潰せと指示をする。

有幻覚はそのままレストランへ向かう中、私はマンションのガラス窓から外へ出る。

両手剣を腰に差し、建物の上を駆けていく。

あと少しで並盛中が見えるというところで、交戦する音が耳に入ってきた。

視線をそちらに向けると、ヴァリアー隊員であろう集団と、一人の男が戦っていた。

最後の一人に攻撃を食らわした男の顔を眺める。

 

あれは確か…

 

ヴェロニカは記憶を探る。

原作でヴァリアー編の最後らへんに沢田綱吉側に助太刀で来たランチアだっただろうか…

その男と、一瞬目が合うと男は私に向かって攻撃を繰り出してきた。

 

ッチ、ヴァリアーの隊員だと思われたのか!

確かに黒い服を着ている私はヴァリアー隊員に見えなくもないが、そんな視界に入った一般人…じゃない!私今腰に剣差してるわ!

これは敵だと認識してもおかしくないですわ、ハイ。

 

ランチアの攻撃を尽く躱す私に、他の奴らとは実力が違うと悟ったのかランチアは一歩距離を取り、一層険しくした顔で武器を構える。

まぁ、あちらが先に敵か味方か部外者かを確認せずに攻撃したので…正当防衛って許されますよね?

潔いヴェロニカは、剣を構えた。

先に攻撃してきたのは、ランチアである。

鋼球がヴェロニカを襲うが、ヴェロニカは剣に憤怒の炎を纏い一気に振り下ろした。

甲高い金属のぶつかった音と爆発音が鳴り響く。

そのままヴェロニカは足に炎を纏い、建物を降りる。

炎の糸を使うには建物の上という広い空間では不利だったからだ。

下に降りだしたヴェロニカを追ってランチアも降り、背後から攻撃を繰り出してきた。

その攻撃を防ごうと、ヴェロニカは炎を剣先に集中させ、真横にあった壁を思い切り破壊した。

壊れた壁がランチアの攻撃を防ぐと同時に、一定の距離を取ることに成功したのだ。

目の前に壁があり、どこにも逃げ場のなくなったヴェロニカはすぐさまこの狭い空間に炎の糸を張り出す。

見えないように、薄く、そして細く…

追いついたランチアは逃げ場のないヴェロニカに無表情で構えだす。

 

「お前だけ、他の奴らとは雰囲気も威圧感も違ぇ……てめぇ本当にヴァリアー隊員か?」

 

違います。

全くもって違います。

ん?ここはひとまず誤解を解くべきか?

 

「違うけど」

「やはりな。大方ザンザスが雇った腕利きの私兵かなんかだろうよ」

 

あちゃー、そっちにいっちゃいますか!そうですか!

 

「だが俺も、沢田綱吉には借りがあるんでな…てめぇにはここでやられてもらうぞ」

 

ランチアは鋼球を私に向けて、攻撃してきた。

私は両手剣で鋼球を弾き、足に炎を少し多めに纏い、壁を蹴って上に登りだす。

 

「いかせねぇ」

 

ランチアもヴェロニカを追い、足を出した瞬間に焦げるような匂いと共に焼けるような痛みに襲われる。

 

「ぐっ」

 

足には一本線の焦げ跡が残っており、周りを見るが何も見えず、ヴェロニカを睨みだす。

ランチアは上からこちらを見下ろすヴェロニカに鋼球を投げようとするも、動かした腕に炎の糸が引っ掛かり、鋭い痛みと共に焼けていき腕の腱が切れ力なく腕を垂らした。

だがヴェロニカは無慈悲にも張り巡らせていた糸に憤怒の炎を大量に通した。

ヴェロニカが建物の屋上にあるフェンスに足を付けた瞬間、下の方から凄まじい爆発音と共に、熱気が襲ってきた。

ヴェロニカはフェンス越しに下を見て、呟く。

 

「……や、やりすぎた……」

 

建物の破損範囲が広すぎて、爆発のあった両隣の建物自体が崩壊しようとしていた。

下には、ランチアが爆発に巻き込まれており、このままでは建物の下敷きになるのは目に見えていた。

ヴェロニカは流石にそれは死んでしまうと思い、慌てて下に降りる。

下に降りると、あたり一帯憤怒の炎で覆われていた。

自身の炎なので、透き通るように炎の中を歩く。

少し離れた場所にランチアが意識をなくしたまま倒れていた。

爆発の衝撃でここで飛ばされてきたのか……

死んでないよな、うん。だってスクアーロとかこんくらいじゃ死なないし。

ヴェロニカは知らない、それはスクアーロが頑丈すぎるだけだということを。

意識のないランチアを背負うと、そのまま被害の及ばなさそうな場所まで運ぶ。

ここまで来れば、大丈夫だろう。

ランチアを放置して、そのまま並盛中へ向かう。

ちゃんと憤怒の炎は消化した。

 

並盛中へ行くと、ザンザスは倒れており、マーモンとリボーン達が何か言っている。

 

「行くぞコラ!」

「待て、解除されてねぇぞ」

「甘いよ、細工しておいたのさ…あいつらは纏めて檻の中で消す予定だからね」

 

おおう、もうここまで進んでいたのか。

ていうかこれチャンスじゃね?ザンザス倒れてるし。

リボーンたちは何も出来ない、手の空いてるマーモンも私には手は出せないし、唯一気を付けるのはベルフェゴールくらいだな。

他の奴らは負傷しているし、今の私でも倒せる。

 

ヴェロニカはワクチンを片手に、もう片方では剣を持ち思い切り駆け出す。

ザッ

グラウンドに上手く着地し、ザンザスに向かって思い切り走りだす。

その場にいた者は突然の乱入者に驚く。

だが、流石はヴァリアー。

ベルフェゴールが狙いはザンザスと気付き、乱入してきた影にナイフを投げつける。

 

「くそ、死ね!」

「誰だい⁉」

 

負傷して疲れた体での攻撃はヴェロニカには通用しなかった。

マーモンも影の正体に気付きながらも幻術を掛けてくるが、どれも簡単な幻術で解除される。

あと少しでザンザスに手が届くというところで、思わぬ邪魔が入った。

最後の力を振り絞ったのだろう、必死に肩を上下させて息を荒くしていた男。

 

沢田………綱吉っ!

 

グローブに炎を纏い、ヴェロニカの前に現れた。

 

何でお前出てくんの?……正直言って意味わかんない。

え、ザンザスってお前にとって敵だよね?そうだよね?何で庇ってるのさ…

もしかして主人公の誰も死なせない!とかいう馬鹿な思い込みで?

馬鹿なの?死ぬの?いや主人公補正かかってるから死ぬことはないと思うけど。

沢田綱吉の暴挙にベルフェゴーレもマーモンも唖然としていた。

そういう私も数秒、思考を停止していたが、直ぐに思考切り替え沢田綱吉に攻撃する。

 

「っく」

 

回し蹴りや拳がもろに入っていくが、倒れる気配はない。

これ絶対、内臓傷ついているよね?

アホだ、こんな……外道なザンザスを庇うなんて…

いや私は別にパパを殺しに来たんじゃないからね?

逆に助けに来てるからね?

そこは超直感働かなかったんですかね?

 

考え事をしていると、後ろからベルの攻撃が迫ってきていた。

なんなく避けて、距離を取る。

ッチ、これじゃもう奇襲の利が潰されてしまった。

いやまだ入院中に機会がある。

ここはひとまず撤退しなければ……

すぐさま判断したヴェロニカは一気に駆け出してグラウンドから遠ざかる。

後ろからベルが何か叫んでナイフ投げてきているが、ザンザスの元を離れる気がないのか追っては来なかった。

 

沢田綱吉の腑に落ちない表情が気になるが、今はただ逃げることに集中した方がいいだろう。

ヴェロニカは最初のチャンスを失敗で終わり闇に消えていった。

 

 

 

ランチアside

 

特例で復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄から解放された俺はヴァリアーの隊員と交戦していた。

どいつも三下の実力しかなく、これくらいなら直ぐに片が付くと思っていた。

最後の一人に鋼球を当てると、視界の隅に影が通り過ぎた。

俺は迷いなくその影に鋼球を投げつけるが、避けられた。

そいつを一目見た瞬間、確信した。

こいつは強者だ、と。

ただ立っているだけで、こちらにまで伝わる威圧感に武者震いする。

フードを被っていても分かる、その覇気に飲み込まれそうになるのをぐっと耐え鋼球を構える。

そいつは腰に差していた剣を抜き、こちらへ反撃してきた。

軽く剣を振るように思えるが、威力が想像以上に重く、強く、速かった。

俺は必死に相手の攻撃に喰らいつく。

そいつはいきなり建物の屋上から降りて行き、俺はそれを追っていく。

建物間の狭い道をそいつは掛けていき、俺は背後を容赦なく攻撃しだす。

その攻撃は、そいつが壊した壁の残骸で防がれた。

残骸を乗り越えると、相手は遠くに行っており、距離を取られたことに舌打ちをする。

遠距離を仕掛けてくる気か?いやトラップの可能性もある。

そのまま追っていくと、相手は逃げ場のない道で出てしまい俺は好機だと思った。

投げつける鋼球は剣ではじかれ、そいつは壁を蹴り上げて上に上がろうとした。

そんな無防備な背中を敵に見せるとは!

 

「いかせねぇ」

 

罠を疑いながら攻撃をしかよう足を踏み出した時だった。

ジュッ、と焦げる音と匂いがした瞬間俺の足に激痛が走った。

目を見開き、周りを見渡したが、何も見えなかった。

罠だったか!だが、何も仕掛けられている様子はなかった!

一体何を…そう思いながら上に登っているそいつを強く睨む。

くそっ、逃がすわけには行かねえ!

俺は無意識に腕が動いていて、鋼球を構えようとしたら腕がいきなりカクンと垂れ落ちた。

その次に、激痛が走り腱が切られたのだと分かった。

痛みに眉を顰めながらそいつを見上げたその時、そいつの顔が一瞬見えた。

俺は思考が一瞬だけ止まった。

 

 

 

真っ赤な、血を吸ったような瞳が俺を射抜いた。

 

魅せられたのだ。

 

その瞬間俺は悟った。

死ぬ、と。

恐ろしくはなかった。

 

赤い、朱い、紅い、その瞳があまりにも、あまりにも……

 

 

美しかった――――

 

 

俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「過剰防衛すぎた…反省はしている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヴァリアー編終わらなかった…
ランチアをすっかり忘れてましたね、ハイ。
結構人気のあるランチアをふるぼっこしてみました。
次でまとめきれるかなー…。


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Veronicaの失敗

ヴェロニカは涙した。

悔しくて 悔しくて

ヴェロニカは流す。

紅い 赤い 朱い 血を


大空の決戦が終わり、沢田綱吉達は戻ってきた平穏の中、学校へ登校していた。

昼休み、私は屋上の扉に鍵をかけ弁当を開いていた。

だが数秒で、ガチャガチャと不穏な音がなり屋上の扉が開いた。

そこにはリボーンの暴挙に呆れ顔をした沢田綱吉と、獄寺に山本が続いて入ってきた。

だが屋上に先客がいて、その相手が私だと気付くと目を丸くして驚いていた。

 

「ヴェ、ヴェロニカさん⁉」

「ちゃおっす、ヴェロニカ」

「げ、てめー!ここは十代目がお昼を食べる場所だぞ!」

「ごごご獄寺君、そんなこと言っちゃダメだって!」

「あれ、ヴェロニカじゃん、やっほーなのなー」

 

私がここにいることを分かっていながらも屋上に沢田達を誘導してきたリボーンを睨む。

だがリボーンはそれをものともせずに、私に声を掛けてきた。

 

「おめー、一昨日の夜何してやがった?」

「リ、リボーン⁉いきなり何聞いてるんだよ!」

「別に、マンションにいた」

「…本当のことを吐きやがれ」

「ならば私が嘘をついてる証拠見せろ」

「十代目やはりこの女!怪しいですよ!」

「獄寺君!そうやって人を頭ごなしに疑うのはよくないってば!」

 

どうやらリボーンは、あの夜の影が私だと思い込んでいるようだ。

まぁあれ私ですけどね、ハイ。

でもそれ肯定しちゃうと面倒なので否定しまくるんですが。

 

「一昨日の夜、ランチアという男がヴァリアー隊員を相手している時に、女に襲撃されたようでな…おめーじゃねぇかと思ったんだが、違うのか?」

「一昨日の夜ならマンションの一階にあるレストランに長居してた。監視カメラ見ろ」

「リボーン!証拠もないのに疑うなってば!ヴェロニカさんが可哀そうだろ!」

 

すまん、沢田綱吉、そいつ病院送りにしたの私だ。

生きてたのか、よかったよかった。

だが私から仕掛けてない。

なんか捏造されてる。ツライ。

 

「なんかごめんね?ヴェロニカさん…お昼中にこんな嫌な気分にさせちゃって…」

「十代目は悪くありません!怪しいコイツが悪いんです!」

「獄寺君!」

「まぁまぁ別にヴェロニカがやったって証拠はねーんだろー?なら疑うのはお門違いなのな」

「そうだよ、ね!山本」

「十代目がそう仰るのなら…」

 

にしてもこの茶番、毎回私の前で続ける気だろうか?

いい加減、獄寺は大人になればいいと思う。

にしてもコイツらこんなにうるさくしてたら、あいつ出てこないか?

 

「ねぇ、君たち……うるさいよ……咬み殺す」

 

ほらいたじゃないですかー、何でこんなフラグ立てて回収するんですかねー。

雲雀がいきなり屋上の扉を勢いよくふっ飛ばしてこちらにトンファーを構えだす。

 

「それと、君」

 

なんか私に向かって声をかけているが、無視して弁当を片付けだす。

雲雀は無視されたのが気に喰わなかったのか、早歩きでこちらに向かってきている。

 

「この前の逃走といい、僕を無視するとはいい度胸だね」

「そう」

「その態度、気に喰わないな…咬み殺す!」

 

やっぱり攻撃してきた雲雀恭弥から遠ざかり、屋上のフェンスを蹴り上げ屋上から飛び降りる。

落ちる直前沢田綱吉の悲鳴が屋上に木霊する。

体全体に炎を纏い、グラウンドに着地する。

人のいない場所を選んで飛んだので、誰にも見られることなく私はその場から歩き出した。

あの場に残された沢田達には雲雀の餌になってもった。南無。

ほんと雲雀恭弥怖い。

何で人の話聞かずにくるんだろうね…

ディーノさん戻ってきてくれませんかねぇ。

にしてもリボーンがめちゃくちゃ私を怪しんでる件について。

だが、パパが並盛の病院に入院する期間も限られており、明後日にはイタリアの方に病院を移るらしい。

なので、奇襲に行くには今日か明日のどちらかになる。

一昨日ザンザスを奇襲しようとしたことで、ザンザスの近くにはベルフェゴールが殆どついているらしい。

めんどくさっ、マーモンに呼び出させて少し外してもらおう。

さて、マーモンに有幻覚作ってもらうけどどこで入れ替わろうかな。

先ほどのリボーンの様子から今日明日はずっと張り付いてそうだし。

ヴェロニカは数分考えて、マーモンの携帯番号に電話を掛けた。

 

放課後、いきつけのカフェに行く。

ケーキを注文して待っている間にトイレに行く。

女子トイレの中には、人が並んでおり私の後にもう一人女性が並んでいた。

私の番になり、トイレから出ると先ほどの女性以外誰もいなくなっていた。

そして私は目の前の女性のバッグを見て、声を掛けた。

 

「ありがとマーモン」

「どういたしまして、にしても場所選べなかったのかい?プリンチペッサ」

「リボーンの監視がきつくて」

「ったく、何教え子監視してんだよあの野郎」

「流石にトイレまでは来ないでしょ」

「来たら変態だよ」

 

マーモンの声をした目の前の女性の姿が変わり、マーモンになっていく。

そして、女性のバッグが私の使っていた剣になっていた。

マーモンは剣を私に渡した。

 

「はい、プリンチペッサこれ」

「ありがと、マンションまで取りに行かせちゃってごめんね」

「君のマンションとても広かったけど、あれも九代目が?」

「うん」

「そ、にしても一昨日のは惜しかったね」

「ほんと、沢田綱吉が乱入するのは予想外だった」

「僕もだよ…だけど今回はその心配はないよ」

「ベルは?」

「僕が呼び出すから、その間にやってよね…ボスはまだ起き上がれるほど回復してないから」

「分かった……ありがとう」

 

マーモンは私とそっくりの有幻覚を作り、有幻覚を先ほどの席に座らせた。

その間に、私とマーモンはトイレの小さな扉から外へ出た。

これ絶対前世の私じゃ通らなかった。

今の体がどんだけナイスバディなのか再確認する。

さて、マーモンと別れて、先ほど剣と一緒に取りに行ってもらった黒いフードを被る。

あたりは夕方で、まだ日が落ちていないので人通りがそこそこあり、私は建物の上で日が落ちるまで隠れることにした。

数時間した頃、あたりは暗くなっており、人通りも少なくなっていたのでザンザスのいる病院へ向かった。

病院の近くまで来て、双眼鏡でザンザスの病室を覗く。

ザンザスは横になって目を閉じてて、隣にはベルが座っていた。

ヴェロニカはマーモンの携帯にかけ、ベルを呼び出すようお願いして、また双眼鏡を覗く。

ベルの携帯が鳴り、何かを話した後ベルは立ち上がり病室を出ていく。

今だ!

ヴェロニカは直ぐにザンザスの病室の窓を割り、中に入り手元にあったワクチンの針をザンザスの腕目掛けて刺そうとした。

その時、額にごつり、と硬い感触がした。

 

「てめぇ、この前の奴だな」

「……」

「誰の差し金だ」

 

パパ起きてるじゃん!

いや分かってた、ベル隣いたし、パパが誰かの隣で爆睡とかありえないと思ってたし。

でも、銃口向けるまでの時間が速くないですかねぇ!

 

「っけ、答える気はねぇってか…カッ消えろ」

 

ザンザスが引き金を引く音がして、私は撃たれる覚悟でザンザスの腕にワクチンを刺した。

刺した感触がした直後、ヴェロニカの額に衝撃が走った。

一瞬意識を失いそうだったが、なんとか持ち直し、爆発の煙に乗じてその場を離れた。

必死に、その場を離れる様に足を動かした。

マーモンと報告するための待ち合わせ場所である森に逃げ込む。

少し森の中へ行くと、目に留まった木の幹に座る。

 

「ぅ……ぃったー…」

 

じくじく痛む額を触るとぬちょり、と滑った感触がするので、手の平を見ると血が付いていた。

うっひょい、血だ…ビックリした。

 

「あたた、拳骨並みに痛い……」

 

フードで額を擦るが、傷ついたのが額だけあって中々止まらず、途中で止血を放棄した。

結構血が出ているが、あんまり痛くない。

しいて言うなら、拳骨された程度…勢いよく頭ぶつけた感覚だな…

やっぱり親子なのかそれとも同じ炎だからか、波長がほぼ一緒だったのでダメージが驚くほどなかった。

だってめっちゃもろに額にぶち当たっていたにも関わらず、こんなに怪我ないし。

数分経つと、痛みは消えていたので、取り合えず息を吐いて肩の力を抜いた。

 

注射器を刺した感触はした。

ので、多分ワクチン打てた気がする………

ミッションコンプリート?

確認の仕方がわからない……

だけどあれは絶対に出来たでしょ。

だってめっちゃ腕にぷっすり刺したもん。

色々納得して、喜ぼうとした瞬間、ヴェロニカはふと思い出す。

 

 

押し子(ブランジャー)……押してない…」

 

 

んあああああああああああああああああ

押し子(ブランジャー)押してないよぉぉぉぉぉおおおおおお

意味ないじゃん!意味ないじゃん‼

アレ押さなきゃ、薬液が入らないじゃん!

うっそだろおい

なにそれ……噓でしょ……だって頭撃たれる覚悟までしてぶっ刺したのに……そんなことって…

ちょっと、待って……

悔しい…っていうか悲しいっていうか……ツライ…

ヴェロニカは色々な感情が混ざり、目には涙が溢れてくる。

情けない……自分が物凄く恥ずかしい……ぅぅぅうう

パパの前で泣いた時以来に泣く、人生2度目の涙がまさかの押し子(ブランジャー)の押し忘れって…!

これは誰にも言えない!無理、恥ずか死ぬ。

待って涙が止まらない。

ぅぅ、くっそぉぉぉぉおおおおおおお

 

「プリンチペッサ!いるなら返事をしてくれ!」

 

マーモンの声がする。

でも待って今顔を合わせられない。

あんな失態をして合わせる顔がない。

無理、死のう。

でもめっちゃマーモンが私のこと呼んでくれてるんだけど、嬉しいけど今は無理だってぇ…

 

「マーモン……」

 

呟くよりも小さな声でその名を囁いた。

 

「プリンチペッサ!」

 

え、さっきの声聞こえてたの?うっそでしょ。

だってめっちゃ小さな声でしか言ってない…ま、ちょ、それよりこっち来ないで!

今泣いてるし、血出てるし、恥ずかしいし、ダメだアカン。

マーモンが駆け付ける音が聞こえて咄嗟にヴェロニカは手で顔を覆う。

 

「プリンチペッサ!怪我は⁉痛いのかい⁉」

「マーモン……わた、しは大丈夫…」

「何言ってるんだい!傷を見せなよ!」

 

マーモンが無理やりヴェロニカの手を剥がす。

ま、ちょ…つっよ!マーモン力つよっ!

じゃない!今涙でぐちゃぐちゃだから!らめぇ!

マーモンの顔を見ると、唖然としていた。

あ、一応額切れてるんだった。

いや驚くよね、血が出てたら。

めっちゃ傷浅いけど。痛くないけど。

とりま弁解をだな。

 

「いや、痛く…ないの……」

「プリンチペッサ、黙ってて」

「アッハイ」

 

マーモン怖い。

何でそんな怖いん?私が失敗したから?

パパの命が掛かってるもんね…

それ考えると、余計ツライんですが。

せっかくのチャンスをあんなしょうもないことで棒に振っちゃったし。

あ、また涙出そう…

 

「マ、マーモン…ごめ…」

「黙っててってば、今傷見てるから」

 

傷見てたんですか。

頼むから抉らないで下さい死んでしまいます。

そんなこと考えてたら、マーモンがタオルを私の額に強く押し付けた。

あだっ、そんな強く押し付けんでもいいやん。

そんなに怒ってるの?

 

「ごめん…」

「いいよ、プリンチペッサが無事だったからね」

「でも……あと少しだったのに……ごめ…なさっ……」

「気にしてないよ…それより君が軽傷ですんでよかったよ」

「パパの炎…私と波長似てるから……あまりダメージなかった」

「そう、それより泣き止みなよ」

「……うん」

 

マーモンが優しすぎる。

これスクアーロとかベルだったら絶対からかってた。

ただ押し子(ブランジャー)の押し忘れがあまりにも辛すぎる事実で、涙があまり止まんないです。

恥ずかしいので、何も言わないが。

 

「プリンチペッサ、まだチャンスはあるよ…大丈夫」

「うん」

 

マーモンいい子だぁぁぁぁああ

 

「僕のタイムリミットはもうすぐなんだ……あとは君一人でやらなきゃいけないんだ……」

 

え?え、もう未来帰っちゃうの?マジ?

私一人でパパと対峙するとか死にそう。

 

「もう……行っちゃうの?」

「ごめんよ、プリンチペッサ……」

「絶対に……やってみせるから」

「君なら出来るよ…いいかい?ボスには絶対に顔を見せちゃダメだよ……それと10年後のボスと真正面で対峙するのは絶対しちゃダメだからね」

「何で?」

「いくら君が強くても、今から10年後のボスは桁違いに強くなってる…いくら憤怒の炎のダメージが少なくても無事じゃいられないよ」

 

わぉ…なにそれ怖い。

パパと目が合った瞬間逃げそうですわ。

てか逃げる。

真っ向勝負とかない。

 

「分かった…」

「約束だ、絶対に無理はせずに、命の危険があるなら直ぐに逃げること」

「うん」

 

「健闘を祈るよ、プリンチペッサ」

 

マーモンはそういうと、ボフンと白い煙をあげて消えていった。

多分今の時代のマーモンはイタリアにいるのかな…。

この後怪しまれなければいいんだけどなー…

 

 

 

マーモンside

 

大きな爆発音の後、ベルと一緒に慌てて病室に駆け付けた。

 

「ボス⁉何があったのさ!」

「ボス!またあの野郎現れやがったの⁉」

 

荒れ果てた病室で、隣の部屋への壁には大きな穴があり、ザンザスはベッドに座りながらそこを顎で指す。

僕はベルと一緒に煙のたっている壁の向こうを警戒しながら進む。

そこには誰もいなくて、僕は心底を胸を撫で下ろした。

 

「ボス……誰もいないよ……」

 

ベルがザンザスにそういうと、ザンザスは目を少しだけ見開く。

 

「脳天ぶち抜いたんだぞ…生きてるはずがねぇ」

 

僕は心臓が冷えるような感覚に襲われた。

プリンチペッサ!

 

「それじゃ幻覚の可能性もあるね……」

 

冷静なフリをした僕の言葉にザンザスは舌打ちして、寝る体制に入る。

 

「ま、待ってボス!寝る前に部屋替えようよ」

「僕、周辺を見てくる…可能性は少ないけど一応警戒するに越したことはないからね」

「ボス、あっちの部屋空いてるから、そっち行こうぜ」

 

ベルとザンザスが他の部屋に移ったのを確認して、僕は部屋を隅々まで見まわした。

 

「……あった…」

 

部屋の隅の方に、ワクチンの注射器の欠片があった。

液体も少しついており、僕はこれを回収して病室の外へ向かっていった。

病院の少し離れたところに大きな森があり、そこをマーモンは探し回っていた。

そこは、余め成功しても失敗してもここに来るよう言ってあったからだ。

 

「プリンチペッサ!いるなら返事をしてくれ!」

 

先ほどから携帯電話にかけても繋がらず、僕は焦り出す。

 

「プリンチペッサ!」

「マーモン」

 

小さな声がする方向へ僕はは勢いよく振り返る。

目を凝らすと、木の上に顔を隠して蹲るヴェロニカがいた。

 

「プリンチペッサ!」

 

僕は急いで駆け付け、ヴェロニカに声を掛ける。

ヴェロニカの額を覆う手からは血が垂れていた。

僕は血の気が引くような感覚に襲われる。

 

「プリンチペッサ!怪我は⁉痛いのかい⁉」

「マーモン……わた、しは大丈夫…」

「何言ってるんだい!傷を見せなよ!」

 

僕は無理やりヴェロニカの手を剥がす。

そこには涙と血で濡れたヴェロニカの顔が会った。

 

「いや、痛く…ないの……」

「プリンチペッサ、黙ってて」

「ぁ……はい…」

 

無理をして気丈に振る舞おうとするプリンチペッサに思わず、低い声が出た。

僕は彼女の額の傷を見るため、血を拭いていると、彼女は小さな声で呟く。

 

「マ、マーモン…ごめ…」

「黙っててってば、今傷見てるから」

 

うん、見た目より浅い傷でよかった。

これなら3日もしないうちに塞がるね。

僕はプリンチペッサの額に病院から拝借したタオルを押し当てる。

 

「ごめん…」

「いいよ、プリンチペッサが無事だったからね」

「でも……あと少しだったのに……ごめ…なさっ……」

 

プリンチペッサの目から涙が零れ落ちてゆく。

ボスから攻撃を受けたことに相当ショックを受けたんだろうな…

どれだけ覚悟していても、悲しいものは悲しいのだから。

 

「気にしてないよ…それより君が軽傷ですんでよかったよ」

「パパの炎…私と波長似てるから……あまりダメージなかった」

「そう、それより泣き止みなよ」

「……うん」

 

やっとプリンチペッサが持ち直したところで、僕はそろそろ未来に帰る時間であることを教えようとした。

 

「プリンチペッサ、まだチャンスはあるよ…大丈夫」

「うん」

「それと僕のタイムリミットはもうすぐなんだ……あとは君は一人でやらなきゃいけないんだ……」

 

少しプリンチペッサの表情が曇る。

無表情であるけれど、とても感情豊かな彼女を守れないことに僕はとても歯がゆくなる。

 

「もう……行っちゃうの?」

「ごめんよ、プリンチペッサ……」

「絶対に……やってみせるから」

「君なら出来るよ…いいかい?ボスには絶対に顔を見せちゃダメだよ……それと10年後のボスと真正面で対峙するのは絶対しちゃダメだからね」

「何で?」

「いくら君が強くても、今から10年後のボスは桁違いに強くなってる…いくら憤怒の炎のダメージが少なくても無事じゃいられないよ」

 

プリンチペッサの表情が真剣みを帯びる。

本当に、無茶はしないでほしい。

 

「分かった…」

「約束だ、絶対に無理はせずに、命の危険があるなら直ぐに逃げること」

「うん」

 

「健闘を祈るよ、プリンチペッサ」

 

視界が白くなり、やがてハッキリとしてきたので周りを見渡すと、イタリアの自身の部屋にいた。

直ぐに部屋を出てリビングへ入ると、ルッスーリアがいた。

 

「あらベルちゃん、もう起きたの?」

 

ルッスーリアがこちらを向くと、持っていたフライパンを盛大に落とした。

僕に駆け寄り、プリンチペッサはどうだったと勢いよく聞いてきた。

 

「す、少し落ち着きなよ」

「そ、そうね……」

「沢山、報告することがあるんだ…とにかく驚いたことばっかりだったよ…」

「待って、皆呼んでくるわ」

 

ルッスーリアは慌てて皆を呼びに部屋を出て行った。

僕はいつもプリンチペッサが座っていた席を眺めていた。

 

 

「早く、帰ってきておいで……プリンチペッサ…」

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

押し子(ブランジャー)さえ……押し子(ブランジャー)さえ押していれば……くっ」

 

 

 

 

 

「おいベル」

「何?ボス」

「さっきの奇襲した奴、探し出せ…俺が直々にカッ消してやる」

「今、レヴィがどのファミリーの刺客なのか探してるよ」

「フン」

「それに、さっきの部屋に少量飛び散っていた血痕を鑑定してもらってるから、直ぐに相手分かるんじゃない?」

 

 

 




DNA鑑定の結果を知った時のザンザスの顔がとても見たい。
一応、ヴァリアー編は終わりです。
次、未来編です。
ハッキリいって未来編に至っては全く知識ないので、アニメを飛ばし飛ばしで1時間でざっと通しました。
矛盾点あれば教えてください。
まず未来編の舞台が並盛であることすら忘れてたほどデスカラー。
ほんと舞台設定とか間違ってたら教えてください。

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未来編
Veronicaの過去の未来


ヴェロニカは経た。

時を 再び

ヴェロニカは出会う。

とある女性に 



昨日、マーモンが未来に帰ってしまい、私は一人です。

パパの警護は昨日より厳しくなっていて、今日はもう諦めている。

明日にはイタリアの方の病院に移る予定なので、私への特定は難しいはず。

パパへのワクチンを打つチャンスは数回もないだろう…

今度こそ成功しなければ、本気でマズいことになりそうだし。

それよりも、いつから未来編に入るのだろうか。

もうチャンスが残ってるのは未来編のみだ。

こればかりは沢田綱吉達を見ておくしかないと思うんだが。

えーと、沢田綱吉達がいなくなったタイミングで私も小型10年バズーカを自身に打てばいいのか。

ていうか、私未来編での寝床とかどうすればいいんだろうか。

だって、九代目なんて10年後に死んでてそうだし…

今の九代目から貰ったカードから現金を出来るだけ引き下ろして、手元に持っておくのがベストなんだろうな、多分。

てなわけで、今からATM行っておこう。

ざっと数千万出しておこう。念の為。

ヴェロニカはその日、学校帰りにいくつかの銀行・ATMに寄ってお金を下ろし、その中の半分をユーロに変えていた。

数日後、沢田綱吉が私のマンションへ来た。

どうやって特定したのかは聞かなかった。

どうせリボーンが教えでもしたんだろ。

このマンションの敷居が彼には高かったのか、そわそわしながら中に入ってきた。

 

「ねぇ、ヴェロニカさん…」

「なに」

「あー…じゅ、10年バズーカって知ってる?」

「ああ」

「えーと……リボーンがバズーカに当たったきり消えちゃったんだけど…ヴェロニカさんのところに来てた?」

「知らない」

「そっか……」

「…」

「えっと……その、10年バズーカに当たったまま消えるってことあるのかな?……アハハ」

「ある」

「え、あるの⁉」

「簡単な話だ。10年後の未来ではリボーンは死んでいる…それしかないだろう」

「え……」

「あいつはあれでもヒットマンでしょ…なんら不思議でもない」

「じゃ、じゃあリボーンは……いやでも、5分以上経ってるのにリボーンが戻ってこないのはどうしてだろう…」

「さぁ?バズーカの故障か、それとも既に戻ってきていてあなたの前に現れていないだけかもしれない」

「……お、俺ちょっと…ランボに10年バズーカで未来に飛ばしてもらってくる」

「そう」

「あの、ありがとう!」

「別に」

 

沢田綱吉は、そのまま帰っていった。

始まった!

ヴェロニカはすぐさま金庫の中にあった現金をあるだけボストンバックに入れて、ベッドの下に隠してあったパパの銃と両手剣を手にする。

剣は腰に、銃は足に付けていたガンホルダーに差して、ワクチンを数本箱に入れマーモンから渡された小型10年バズーカを構える。

 

「ふぅ…」

 

息を吐き、バズーカを自身に向け引き金を引いた。

体全体に軽い衝撃と浮遊感が襲う。

足元に地面の感触と重力を感じると、うっすらと目を見開く。

目の前にはさきほどいた自身の部屋であった。

 

「まだ…私生まれてないから……そのままの位置座標で飛ばされたのか」

 

さて、この時代のボンゴレはどうなってるのかな…

確かミルフィオーレにほぼ占拠されてる状態じゃなかった?

ボンゴレは弱体化っていうか追い詰められてるはずだし。

沢田綱吉達はそろそろラル・ミルチと交戦する頃だろうか。

どちらにせよ、私が彼らに会うことはあるのだろうか?

どうせ私はメローネ基地行く予定ないし、うん。

つかヴァリアーの方行かなきゃいけないし。

私が日本にいるのはデメリットだらけだなぁ…

それにパパって最後の方以外はずっとイタリアにいるよね。

じゃ、イタリア行こうかなぁ

その前に、パパが傷を負う又は、体力消耗しているタイミングが分からない。

なんか敵の主戦力の古城を占拠してたとかマーモンから聞いたけど、多分それあれだよな、ベルのお兄さんと戦った場所。

超音波が云々…でもあれ相手にパパが体力使うわけないし。

じゃあゴーストのときかな?

確かに炎を結構吸われて体力を一気に消耗した感あったけど。

でもあれ皆集合してるから無理じゃね?

私フルボッコじゃね?

でも未来編の間しか私はいないわけだし、未来編のどこかでやらなきゃダメだし。

ううーん……ベルのお兄さんのところはパパめっちゃピンピンしてるし直ぐにスクアーロ達が来るから、危ないよな…。

くっそ、これ白蘭と皆が戦った後に私が乱入するしかないやん!

終わった私の人生…。

こうなったら自棄だよくそぉ!

未来編が終わるギリギリまで私は修行一択じゃないかぁぁぁぁあああ

どのみちイタリアには行かねば。

日本じゃミルフィオーレの人達が多すぎて修行する場所無さそうだし。

 

そう思い立ったヴェロニカは、手続きもろもろを済ませて、いざイタリアへ出発する。

その際、大空の炎で武器を石化して、検査を免れた。

十数時間の旅を終え、久々にイタリアの地を踏む。

イタリア語を耳にするのも久々で、懐かしかった。

いや元々の母国語は日本語だけど、一応ヴェロニカの人生ではイタリア語が母国語だもんな。

入国検査もボンゴレ関係者に任せ、そのまま空港を出る。

空港で捕まえたタクシーでヴァリアー本部の近くの宿の集中している地域まで向かう。

数時間ほど走ると、現地に着き金額を払うとタクシーを降りる。

ヴェロニカは取り合えずどこでもいいので、空いている宿を探し出す。

いきなりだったので、予約で満室の宿やホテルが沢山あり中々見つからない現状にヴェロニカは嘆息し、宿を探す。

数時間後…

見つからない!

マジか…野宿とか…涙出そうなんだけど。

ヴェロニカが涙目になりそうな時、後ろから声をかけられた。

 

「あの、先ほどからここら辺をうろうろしてますが、何かお困りですか?」

 

声の主は、黒髪の美女だった。

お腹が膨れているので妊婦だろうか。

いい人や…ていうか美人…

 

「えっと……急にイタリア来たから……宿なくて…」

「あら、最近ここは観光地指定されたから宿は満室が当たり前になってるんですよ…」

「……そうだったのか……」

 

知らんかった!

私の子供の頃とか外にも出なかったから観光地が近くにあったとか分からなかった!

 

「あの、どれくらいの滞在ですか…?」

「え…と、一か月ほど……」

「それなら私の家に来ませんか?」

「え?」

「私は見ての通り妊婦です。ですが一人暮らしで……そろそろ人手が欲しかったんですが……ダメでしょうか?」

「えっと……」

「あ、あの、別に断ってくれてもいいですよ、少し急いてしまいました…」

「いや嬉しい申し出なんですが…その……私日中は出かけますよ?」

「ああ、それなら大丈夫です。私も日中は病院の下の方でパートをしているので…」

「あ、えっと……それならお願いします……ヴェロニカといいます」

「ええ、こちらこそ…私はヴェラよ」

 

何て美味い話なんだろうか。

というよりこの人めっちゃ良い人……でも一応疑った方がいいのかな?

めっちゃ美人だけど、シングルマザーっぽいし…何か訳ありかな?

とりあえず住むとこ確保出来たけど、少し様子見した方がいいな。

ヴェロニカはその女性についていった。

 

「あの、こちらです」

 

女性が案内したのは、こじんまりとした小さな家だった。

中は少し古びていて、でも家具などは意外と新品のものばかりだった。

 

「私、ここに住み始めてまだ半年ほどなんです。」

「どうしてですか?」

「その……色々あって…この子を育てるための環境に適してなかったんです」

「はぁ…」

 

これ聞いちゃアカン奴だ。

にしても訳ありの女性だけど…なんかから追われてるのかな?

やっべ、厄介な人に捕まったかも?

でもまあ直ぐに判断するには早計か。

 

「これから一か月ほどよろしくお願いします」

 

女性が頭を下げてきたので、ヴェロニカも慌てて頭を下げる。

それから家の家事のことを一通り聞いていた。

家事なんていつぶりだ!

おもっくそ昔…十年以上前にやったきり…というよりヴェロニカの人生で一回もやったことがない。

出来るかなー…

ヴェロニカの不安を他所に、女性はお腹の子供について語り出す。

 

「この子、今妊娠7か月目なんですよ」

「じゃあ性別とかもう分かってるんですか?」

「ええ、女の子よ……とても可愛い子が生まれてくるわ……」

「元気に産まれるといいですね」

「ええ!もう、とても待ちきれなくて、名前も考えてあるの!」

「へぇ、どんな名前ですか?」

「ヴェロニカよ!あなたと同じ名前!なんて偶然かしら」

「そうですね」

 

なんと、同じ名前か。

何たる偶然…親近感沸くなぁ…

 

その日は、既に日が暮れていて、私は夕食をヴェラさんと一緒に作り親睦を深めた。

ベッドは子供が大きくなった時の為にと購入したらしい大きなベッドを使わせてもらうことにした。

私がやることと言ったら、定期的な掃除にゴミ出しのみだ。

夕食はまぁ時間が開けばやるくらいでいいらしい。

家賃は普通の宿と同じくらいだったが、食費込みで考えたら妥当か。

ヴェロニカは今日一日の出来事を思い返しながら、目を閉じた。

 

翌日、起きたら既にヴェラさんが朝食を作っていた。

 

「あらおはようございます」

「おはようございます……」

「朝ご飯作ったから、一緒に食べましょう」

「え、あ、ありがとうございます」

 

ルッスーリアが浮かんできた。

ごめんヴェラさん。

あのオカマと比べちゃアカン。

 

「今日からもう行くんですか?」

「え、ええ……あの、敬語要らない…です」

「そう?じゃあお言葉に甘えて…あなたも敬語は要らないわ。それで、いつ頃帰ってくるの?」

「多分夕方以降になる…でも暗くなる前には多分帰る」

「そう、分かったわ」

 

ヴェラさんを病院まで送り、私はヴァリアー本部の様子を見るべく、足を向ける。

数分歩くと、本部の屋敷が見えた。

全く外観が変わってないなぁ…

未来と変わらぬ姿で、本部がそこに建っていた。

警備が数人おり、私は少し離れたところで屋敷の中の様子を見ようとした。

屋敷の中の、比較的皆が集まる部屋を覗くと、案の定幹部の数人がそこにいた。

だが、一人見慣れない者もいた。

 

んんー?あの人…確か……骸の弟子の…えーと…フラン?

そういえば何で未来にあの人いなかったんだろ…

マーモンの代理だったのかなー?

この時代のマーモン死んじゃってるし。

 

双眼鏡の向こうでは、ベルとフランが言い争うのような乱闘をしていた。

そこにレヴィが参戦したが、二人から猛攻撃を受けてノックアウトした。

ここまで見ている分には、まだ作戦は開始してないな…

ヴェロニカはヴァリアー本部を後にして、人が全くいない空き地や森を探していた。

結構歩いた先に、誰もいなさそうな森があり、私はその森へ入っていった。

 

森自体の面積は思っていたよりも大きく、これなら色々騒音を出しても気付かれないだろうと思った。

とりあえず体力を増やしつつ、パパの銃を使い慣れねば。

ヴェロニカは大きく息を吸うと、ザンザスの銃を構えて、引き金を引いた。

 

 

 

沢田綱吉side

 

俺たちは、いきなり10年後の世界に飛ばされ、戻れないままでいた。

ラル・ミルチという人にリボーンの死を聞かされた時は頭が真っ白になった。

でも、アジトへ行くとリボーンがいて、俺は訳も分からないぐらい泣きたくなったんだ。

それと、俺たちのいる場所が日本であることに一番驚いた。

俺がアジトを見まわろうとした時、リボーンは俺を引き留める。

 

「おいツナ、おめーこっちに来るときに10年バズーカ使ってきたんだよな?」

「え?あ、うん……ヴェロニカさんにリボーンが死んでいる可能性があるって言われて…それでいてもたってもいられなくて」

「ヴェロニカの所へ行ったのか?」

「え、うん……バズーカに飛ばされて戻ってこないけどヴェロニカさんの所に行ったのかと思ってたんだ」

「あいつにこのことを話したのか…」

「ええと、ダメだった?」

「いや…」

 

リボーンが何やら考えているところ、隣にいた山本から声が掛かった。

 

「なぁ」

「え?な、何?」

「その、ヴェロニカって誰だ?」

「え⁉」

「おい山本、おめー覚えてねーのか?」

「…?中学の時の同級生か?」

「ヴェ、ヴェロニカさんだよ!イタリアからの留学生で……とっても強い子!」

「待て、そんな記憶どこにもないぞ…俺たちの中学に転入してきたのは獄寺だけだ」

「えええええ⁉どどどうなってるのーーー⁉」

「ふむ………それは妙だな、ヴェロニカは俺の生徒だ。山本にも何回か面識はあったハズだ」

「だが俺の記憶にはそんな女子はいなかった……これって…」

「あいつはいつも何かを隠してやがった……これも、それに関わってるのかも知れねえ…」

「ヴェロニカさんの記憶が皆の中から消えてるかもしれないの⁉」

「そうだな、おい獄寺。おめーは覚えてるか?」

「覚えてますよ、あのいけすかねぇ女…」

「これは他の奴らにも聞かなきゃならねぇようだな…」

「でも何でヴェロニカさんだけ……」

「ま、他の守護者を探してそいつらのヴェロニカに関する記憶を確かめてから、また話せばいい」

「そ、そうだな…」

 

そして俺たちはその日は、アジトで寝た。

そのあとも、山本が戦闘中に10年前の姿になったり、京子ちゃんが脱走してそれを追いかけたり、雲雀さんが助けてくれたりしていてずっと忙しかった。

雲雀さんにはリボーンがヴェロニカさんのことを聞くと、知らないと答えた。

やはり、10年後の人達の記憶に彼女はいなかった。

これが何を意味するのか俺にも、リボーンにも分からなかった。

まずヴェロニカさんがこの時代に存在しているのか、それともこの時代に飛ばされたかすら分からなかった。

けれど、俺は何故かふと思った。

彼女はこの時代のどこかにいる、と。

そして何か、何かが起こる予感が…彼女を思い出すと胸騒ぎがするのだ。

彼女が普通の人とは違う何かを知っている。

そして、何を目的として動いているのか、俺たちは未だ何も知らなかった――――…

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは

 

「うおおお…やり過ぎたっ…しょ、消火ぁぁぁぁぁああああっ」

 

 

 

 

 

 

 

 




未来編スタートです。
私もまだこの小説の終着地点が分かりません。
矛盾点たくさんあると思うので、容赦なく指摘ください。
詳細を知ってるわけじゃないので、未来編が一番矛盾点ありそうで怖いです。

それと、コメントしてくださった方の中で、間違って削除してしまったコメントがあります。
覚えがある方は再度コメントしてくださると助かります。
なんか質問系というか疑問が残ったというコメントだったので、確認がしたいです。



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Veronicaの虚像と涙

ヴェロニカは分からなかった。

涙を流す理由が

ヴェロニカは存在しない。

今はまだ


「ヴェロニカちゃん、そこのゴミお願いしていい?」

「分かった」

 

ヴェロニカです。

ヴェラさんの家に居候して早数日…

今はゴミ出しを手伝っています。

ヴェラさんめっちゃいい人です。

私が帰ってくると暖かく出迎えてくれるし、わざわざ温め直して夕飯出してくれるし。

修行三昧ということもあって、疲れ果てて帰ってくる毎日、すごく、ヴェラさんの優しさが心に沁みます。

私も、毎日修行しただけあって色々成果が見え始めてきた。

久々の炎の圧縮練習をしたが、精度は衰えておらず、そこから応用に移した。

まず、大空の炎と憤怒の炎を混ぜると石化と分解の性質を帯びるのは原作知識で元々知っていた。

原作では石化の次に分解という順で書かれていたように私もやってみたところその順番に木々が灰になっていった。

で、私は考えた。

分解の次に石化を持ってこれないだろうか、と。

そこで先ほどいった炎の圧縮の応用を持ってきた。

大空の炎だけ圧縮して、それに憤怒の炎を圧縮せずにコーティングしてみた。

すると、地面に放った炎が地表を分解で削り、飛び散った土は石化したまま広範囲に渡り飛び散っていった。

例えると、石ころつめたグレネード弾をぶっ放す感覚だった。

これは遠距離から撃つことが出来、広範囲に至って攻撃できるためとても使い勝手がいいのだ。

しかも、どの性質の炎か分かりにくいことも挙げられる。

ただこれを使う状況になって欲しくないと心底思う。

あとは、私の十八番といってもいいほど重宝している炎の糸。

今までの私では、張り巡らせていた炎の糸は同一調整しか出来なかった。

部分的に細く、部分的に可視化させたりという調整が出来なかったのだ。

だが、これもまだ若干時間がかかるが、モノに出来そうなところまできていた。

体力面は、ただ森の中飛び回って、走り回っていただけなので特筆することはなかった。

修行三昧だった私だがヴァリアーの偵察は怠ってはいない。

ぶっちゃけヴァリアーが既に作戦会議をしているので、今日明日には実行すると思っている。

 

ゴミ出しを終えると、ヴェロニカはヴェラのいる部屋に戻る。

 

「ヴェラさん、終わった」

「ありがとう」

「今日はパートは休みなの?」

「ええ、ヴェロニカちゃんは今日も出かけるのかしら?」

「うん」

「そう、いつも朝から夜まで頑張ってるわね、もう行くの?」

「ううん、もう少し後で」

「じゃあ少しだけお茶でもしない?」

「……わかった、カップと紅茶持ってくる」

「あらありがとう」

 

ヴェラは妊婦なのでヴェロニカが率先して紅茶を淹れる。

ヴェラの部屋に紅茶を持っていくと中でヴェラがクッキーを出していた。

 

「最近ね、よくお腹の子が蹴ってくるのが分かるの」

「そう…」

「触ってみる?」

「いいの?」

「ええ」

 

ヴェラの腹にヴェロニカの手が添えられる。

少しの間そうしていると、少しだけ触れていた手のひらに蹴られる感覚があった。

 

「蹴った」

「そうね、フフ」

「生きてる」

「そうよ」

 

少し感動ものですわ、赤ちゃんめっちゃ元気じゃん。

なんていうか、道徳の授業を受けているような気分だ。

私が腹の中の赤子に感動していると、ヴェラさんが口を開いた。

 

「少しだけ、私の愚痴……聞いてくれない?」

「いいですよ」

「あのね、今の職場で少し陰口言われてて……少し参っててね…」

 

そこからヴェラさんは語ってくれた。

彼女は一年ほど前まで娼婦だったそうだ。

だが、ある日身籠ってしまったのだ。

複数の客を相手していたが、一人だけ避妊せずに行為に及んだ人がいた。

妊娠して面倒ごとを避けるため事後に必ず避妊薬を飲んでいたが、その人に抱かれたとき思ったのだ。

この人との子供なら産んでもいい、この人との子供を産みたい…と。

妊娠する可能性は低かったので、世迷言の如く儚い夢だと分かっていた。

だが身籠ってしまった。

最初は同僚などから直ぐに下ろしてしまえと忠告された。

だが、どうしても産みたかった。

娼婦をやめ、ボロいアパートで掃除業務員を始め、最初の頃は酷い環境で働いた。

だが、一目見て妊婦だと分かってしまうほどお腹が膨らんできたとき、病院に勤めていた一人の医者の目に留まり、お腹の子にそこは悪環境だと指摘され今の病院下で働かせてもらった。

それからずっとそこで働き、少しだけお金が貯まったころに古びた安物の家を購入した。

そして現在に至るが、一緒に働いている人たちからは遠ざけられていた。

父親が分からない子を孕んでいる、娼婦をしていた女、など陰口を言われ出したのだ。

 

「父親は分かってるの…でもどこに住んでいるのかも分からなくて……それに分かったとしても妻子を既に持っていたら?………ただの迷惑にしかならないことは分かっているの…」

 

おおう、ありえそうな重い話やん。

何気に自業自得感あるけど、本人がそれを望んでやったことだし後悔はしてないならいいのか…。

にしても妊婦相手に陰口たぁ、酷い人たちだな…あんたの同僚。

 

「産みたいの……どれだけ苦労しても、この子だけは……」

「羨ましいです」

「え?」

「私には物心ついた時から、母親はいなかった…そして父と親子のようなことをしたことなんてなかった……」

 

私にはヴァリアーの面々に愛されていた。

でも、それでも…

やっぱり小さい頃は精神が引きずられて、母という存在に焦がれていた。

 

「こんなに愛されてるお腹の子がとても羨ましい……」

「ヴェロニカちゃん…」

「あなたの境遇は良いとは言えない……けれど子供の為に我慢しているあなたが…私にはとても母に見える」

 

ああ、私を産んでくれた母はどうして私を産んだのだろうか……

 

「あなたは誇っていい……少なくとも私はそう思う」

「っ……ありがとう、ヴェロニカちゃん…」

 

ヴェラは涙ぐみながら笑顔を見せてくれた。

ヴェロニカは出かける、と言い紅茶の片づけをし始める。

今日はヴェラが玄関まで見送ってくれた。

 

「いってらっしゃい」

「……いってきます」

 

 

私は直ぐに頭を切り替えて、大きな黒いローブを被りヴァリアーへの偵察に集中する。

双眼鏡で見た時、隊員の数名が武器を持って本部を離れていた。

 

…?もう出るのか?

 

ヴェロニカは最後に本部を出た隊員の後をついていった。

数時間走ったところで、隊員達は大きな森の中に入っていく。

森の中は静まり返っていた。

私は、森の中にあった古城を見て、原作の舞台がここだと判断し、夜になるまで草むらの中に隠れていた。

日が落ちた頃、古城の方が騒がしくなった。

私は木の上に登り双眼鏡を覗く。

古城の窓に血が飛び散るところを見て、襲撃が始まったのだと分かる。

そのまま占拠すれば、四方八方からミルフィオーレに囲まれる。

そこでヴァリアーの面々の無双が始まるのだが、私は周りを見て隠れられそうな場所を探る。

出来るだけ気配を消して、古城の近くまで歩いていく。

また数時間ほど時間が経つと、ヴェロニカにはこの森に近づく気配に気付いた。

 

「ミルフィオーレ……」

 

思ったより早く来たな……ヴェロニカは出来るだけ交戦を避けたいので、木の上に登る。

一番上まで登ると、古城から煙が少しだけ崩れてるのが分かった。

ガサガサ、と下の方から聞こえるので直ぐに意識をそちらに移し、気配を消す。

 

「そろそろヴァリアーの奴らがいるはずだ…気を引き締めていけ」

「分かりました」

 

数名の男たちはそのままヴェロニカを通り過ぎ、古城の方へ飛んでいった。

数分すると、各地から爆発音や山火事、雷が見えた。

あの山火事、ベルだよね…。

このままだと、ベルのお兄さんはそろそろ出てくるわけだよね…。

ヴェロニカは古城が全体的に見えるような場所を探すため木の天辺から見渡す。

それらしい場所を見つけると、木から降りようとした。

 

「⁉」

 

いきなり、草むらの方から赤い閃光がヴェロニカを襲った。

ヴェロニカは咄嗟にそれを避け、木から降りる。

 

「お前ヴァリアーの奴らだな?女だろうが抹殺命令が出ている限り、殺させてもらうぞ」

 

おおう、何故に居場所がバレたし。

とりあえず倒した方がいいのかな?

だってここで逃げたら、逆に他のヴァリアーの面々に会いそうだし…。

 

「死ね!」

 

男は、武器の鎌を振り上げてヴェロニアに振り下ろす。

ヴェロニカはなんなく避け、腰に差した剣を抜く。

剣に大空の炎を纏い、相手とぶつかる。

10年後の舞台だけあって、雑魚でもそこそこ動けるようだ。

それでもランチア以下ではあるが。

ヴェロニカは相手の隙をついて、腕と足の腱を切る。

 

「ぐあぁぁぁぁあああああ」

 

男の悲鳴を聞いた者たちがぞろぞろと集まってきた。

ヴェロニカは舌打ちをして、その場を飛ぶ。

先ほどヴェロニカのいた場所は一斉攻撃で更地となる。

多対一は初めてだったヴェロニカは、目まぐるしく視界を移動する相手に苦戦する。

っち、ちょろちょろと……ん?これあれ使えるんじゃね?

それは最近開発した自称炎のグレネード弾。

一際後ろに飛んだヴェロニカは太もものガンホルダーに差していた銃を引き抜き、敵の密集している辺りに照準を絞る。

そして大空を圧縮し憤怒でそれを覆った炎を思い切り撃ち込んだ。

 

ドゴオオオオオオオ……

 

大きな爆発音と大量の煙が立つ。

煙を手で掻き分け、先ほど敵がいたところを覗くと、大の大人の男たちが地面に這いつくばり唸っていた。

 

わぉ、これは凄い。

多対一で本領発揮したら、こうなるのか。

 

「うぐ…ぅぅぅぅ」

 

未だ意識のある倒れている者の傍まで来て、銃で頭を思いっきり殴打する。

男は力なく気絶したので、ヴェロニカは古城に進もうとした。

その時、古城の方で大きな爆発音がした。

もしかして、始まった⁉

ヴェロニカは急いでそちらに向かった。

向かうにつれ誰かの声が聞こえてきた。

 

「まさに不良軍団の大将だな。 だけど実力はたいしたことねーんだってな 」

 

ぶっふぉ

ベルのお兄さん!

 

「中学生に負けたんだろ?しーしっし!! 14歳の沢田綱吉に凍らされたんだぜ!激弱ってことじゃん!」

 

自殺願望者かな?自分からめちゃくちゃ死亡フラグ立ててるんだけど…

 

「あれれ? どーした?図星で言葉も出なくなったか?しししっ」

 

おおふ、ピンポイントで煽っていくなぁ…

お前の死は忘れないよ……5分くらい

ヴェロニカは回り道をし、ベストなポジションでザンザスとジルの戦いを見ていた。

 

あ、側近のハゲが象でパパ攻撃した。

おおおベースター!めっちゃ久々に見る!

私が小さいころから何かと遊び相手になってくれたベスター!

モフりてぇ…

 

「まぁ ゆっくりしてけや…沢田綱吉の名をほざいた以上てめーらはここで――――かっ消す!!!」

 

パパかっけー

あらら、ハゲの象が石化しちゃったよ。

あー、そろそろベルのお兄ちゃんの攻撃で、超音波出す頃かな?

ヴェロニカは予め探っていたジルの波長を調和するための炎を出す。

一瞬、耳に違和感があったが、成功したのだろうか。

ザンザスの方へ視線を向けると、耳から血が垂れてるのを見て、調和に成功したことが分かった。

あー、パパ痛そう…

ベベベベスター……あああ、大丈夫かな…

すると、ザンザスの顔中に痣が浮き出てきて、それを見たヴェロニカは悟った。

 

あ、ベルの兄さん死んだな

 

「てめーらは本気で俺たちを怒らせた」

 

いやそりゃパパが最初にナメぷするからある意味自業自得のような…

 

「次にこいつが開匣されたときが、てめーらの最期だ」

 

え、なに何で仕舞っちゃうん?

え?白蘭呼べって?無理でしょんなこと…

ってやべ

 

ジルの超音波の攻撃を慌てて、調和して事なきを得るヴェロニカ。

 

「交渉決裂だな…それ相応の死をくれてやる」

 

あーあ……これそろそろ皆が集まってくる頃かな?

帰るか、どうせあとはパパの無双だし。

にしても久々にパパの声聞いたなー…

10年前だと、まだ声が幼いっていうか……今の声が私のパパの声なんだよなー

もう少し見ときたいけど、気配が四方から集まってきてるので退散!

ヴェロニカはその場を離れ、本部へ向けて森をかけた。

背後の方で、ジルの声が聞こえたが、そのあと憤怒の炎が森全体に光が差したかのように照らされた。

 

 

数時間かけて、ヴェラさんの家に帰る。

あと数時間で夜が明けるという時間帯なので、流石にヴェラさんは寝ているだろう。

心配かけちゃったかもしれないので、申し訳ない。

武器を隠し、玄関を開ける。

 

「ヴェロニカちゃん!」

「え」

 

リビングの方からヴェラさんの焦ったような声でこちらに駆け寄ってきた。

 

「心配したのよ!もう、何時だと思ってるの⁉」

「えっと……あ…ごめん…なさい……」

「次から連絡してちょうだい!ほらこれ、この家の固定電話の番号!」

「え、あ……うん……」

「お腹すいてない?ご飯食べる?」

「待って、ずっと……起きてたの?」

「心配で眠れなかったのよ」

「ごめんなさい……」

「もういいわ、次から気を付けてね。あなたはまだ子供なのよ!」

 

ヴェラはヴェロニカの頭に手を置き、少し乱暴に撫でまわす。

 

衝撃的だった。

私の為にここまで心配してくれたのが、あまりにも、衝撃的だった。

確かに私は子供だけど、赤の他人なのに。

 

「ちょ、ヴェロニカちゃん…もう怒ってないわよ?……だから泣かないで…」

「え?」

 

ヴェロニカは自身が涙していることに初めて気付き、指を目の下へ伸ばす。

濡れた感触がして、本当に泣いていたのだと本気で驚いた。

 

「大丈夫?ほら、紅茶でも飲んで落ち着いて」

「ちが……大丈夫……」

「もう怒ってないわよ?それとも何か嫌なことでもあったの?」

 

ヴェラの言葉にヴェロニカは首を振り、否定する。

 

「まあ、泣くのに理由なんて要らないわよね。ほらあったかい紅茶でも飲んで落ち着きなさい」

「…うん」

 

分からない、本当に悲しいわけでもない。

ただただ驚いていただけなのに。

何故だろう…

 

この人の声を聞くと、涙が溢れてくるのだ―――――

 

 

その日、私が泣き止むまでヴェラさんは隣で背中を摩ってくれていた。

私が泣き止んだのは、夜が明けていて部屋の所々が明るくなる頃だった。

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

ここまで色々あったけど、メローネ基地での戦いは一先ず落ち着いた。

そのあと、入江正一からボンゴレボックスを貰い、これから一週間だけ過去に戻ることになった。

 

「あ、そういえば正一君」

「なんだい?綱吉君」

「ええと、少し気になることがあって…」

「?」

「ええと、俺のクラスメイトが、この時代の人の記憶に残ってないんだけど…その、そういうのってあり得るのかなって思って…」

「記憶にない?忘れてるとかじゃなくて?」

「獄寺君と同じ時期に転校してきた女の子なんだけど、この時代の山本も雲雀さんも覚えてなかったんだ…」

「それは妙だね…過去の人物の記憶が消えてるなんて…その子は一般人かい?」

「えっと…マフィアじゃないけど、ボンゴレの関係者…だと思う…」

「随分と曖昧な表現をするね」

「ええと……なんていうか…」

 

沢田綱吉が言葉に詰まっていると、リボーンが沢田の横に歩いてきて口を開いた。

 

「そいつは俺の教え子の一人だ、だがマフィアじゃねぇ。俺が九代目に頼まれて家庭教師をしていたんだぞ」

「え?だが、僕のデータじゃ君の生徒は綱吉君だけだったハズだ!」

「そう、そこなんだ…この未来ではあいつに関する記憶だけじゃなく存在までねぇんだ」

「どういうことだ……」

「一応、俺たちはこれから過去に戻る…そこでそいつの存在の確認をしてくるつもりだぞ」

「…僕も、君たちがいない間に調べてみるよ…彼女の名前は何だい?」

「ヴェロニカ…日本名は仲田夏美だ」

「分かった」

 

そして俺たちは過去へ戻った。

戻った先では、3日も過ぎていて、俺たちはピクニックで3日も迷ったことにした。

俺が久々に母さんのご飯を食べて、自室に戻るとリボーンが既に部屋にいた。

 

「あ、リボーン。お前食卓にいなかったけど、どこいってたんだ?」

「ヴェロニカのマンションに行っていた」

「え⁉どどどどうだった⁉」

「あいつも3日前から行方不明になっていた」

「ええええええ⁉じゃ、じゃあヴェロニカさんも未来に飛ばされていたの⁉」

「それしかねぇだろ…問題は何故未来であいつと会わなかったのか、だ…そして何故あいつの存在がなかったのか…」

「待ってよ、俺らは正一君のお陰で一時期過去に戻れたけど、ヴェロニカさんその場にいなかったよね⁉」

「恐らくまだ未来にいるだろうな」

「そ、そんな」

「それ以前にどうしてあいつも未来に飛ばされたんだ?俺たちのように、白蘭を倒すことなら一緒に行動するよう入江の野郎が考えてそうなのに、入江もヴェロニカのことを知らなかったしな」

「そういえば………ええ?じゃあヴェロニカさん今どこいるんだよ~⁉」

「さぁな…未来に戻った時に入江にもう一度聞くぞ、まずはアルコバレーノの印を集めることからだ」

「そ、そうだな……」

 

物事が進むにつれて、俺の中には違和感があった。

ヴェロニカさんを思い出すと、その違和感は大きくなる。

 

「あ……」

 

そうか、ヴェロニカさん…誰かに似てるんだ……

誰だろう…

確かに誰かと一瞬面影が重なったのに…

 

「一体、なんだってこんなに胸がざわつくんだよ……」

 

 

 

 

その頃のヴェロニカは…

 

「あ、そういえば沢田達って一時期過去に戻ってなかったっけ?」

 

 

 

 




気付く人は気付きますよね。
何がとは言いませんが(笑)
私はベスターが好きです。
次回はもっと急展開です。
コメント・指摘ありがとうございます!


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Veronicaの帰省と疑惑

ヴェロニカは思った。

まるで母のようだと

ヴェロニカは気付かない。

最後まで


 

「ヴェラさんおはよう」

「おはようヴェロニカちゃん」

 

ヴェロニカです。

そろそろ並盛の方ではチョイスが始まる頃だと思う。

なので、そろそろ並盛に帰ります。

約三週間程、ヴェラさんにお世話になりました。

お世話になったお礼にヴェラさんにプレゼントを買ったのです。

 

「ヴェロニカちゃんいなくて寂しくなるわ…」

「ヴェラさん、これ」

「なぁに?これ」

「こっちがヴェラさんに、そっちがヴェロニカちゃんに…」

「あら、開けてもいいかしら?」

「うん」

 

フフフ、少し値段は張ったが安心しろ、全て九代目の金だ。

 

「きゃー!これブランドもののネックレスじゃない!」

「似合うと思って」

「こんな高価なものっ」

「いいの、私の気持ち…それとヴェロニカちゃんにもお揃いのネックレス…」

「嬉しいわ…何かⅤって彫ってあるけどなぁに?」

「ヴェロニカちゃんのⅤとヴェラのⅤ」

「あら、とっても嬉しいわ」

「よかった」

「…ヴェロニカちゃん…本当にこの3週間ありがとね」

「こちらこそ、ありがとう」

 

ヴェラは、ヴェロニカを抱きしめる。

 

「あなたは娘のように思っているわ…何かあったらここに逃げてきてもいいのよ」

「……ありがとう…短い間だったけれど、お母さんが出来たみたいで嬉しかった」

「あら嬉しいこと言ってくれるわね」

 

ヴェロニカは荷物を肩にかけ、ヴェラに最後に挨拶をして空港へ向かった。

飛行機の中、ヴェロニカは窓から雲を見下ろしていた。

 

私がこの時代でパパを助けたとして、未来にはどう変化が起こるのだろうか。

そして、そのヴェロニカは私なのだろうか。

パパが生きているという可能性の未来へ辿り着くとしたら、恐らく分岐点は私の14歳の誕生日…

あの日から私の時間は進んでいない。

戻る未来は、今私のいる過去の延長線上。

白蘭との決戦直後に乱入者が現れたという事実のある未来。

この延長線上の未来に、私はいるのだろうか。

仲田夏美という名のヴェロニカはいるのだろうか。

 

ヴェロニカは窓に頭を付けたまま瞼を閉じて、日本への到着を待ちわびた。

 

飛行機が日本に着くと、すぐさま変装を施し、並盛へ急いだ。

最終決戦は森の中…

今はチョイスをやっている時期だと思うので確認したいが、手段がなかったので、川平不動産の方へ足を向けた。

ヴェロニカが目的地へ着くと、周りを見渡す。

交戦の跡がない。

一応、幻術で一時補強されている可能性を考え、周りに流れる波長を探すが、見つからず。

まだここで交戦がなかったことが分かった。

で、あれば明日にはここで交戦があるはず…

そして明後日に森での最終決戦が始まる。

ヴェロニカは森の方へ行き、原作でユニが逃げ込んだ場所を探していた。

あれかなぁ?あ、あれっぽいな…。

ヴェロニカは場所を確認すると、もう一つ遠くにある森まで移動する。

森の中で誰もいない、センサーもないことを確認して、両手剣を抜いて構えた。

ヴェロニカにはとある作戦があった。

それは単純に、ザンザスとそれ以外を離すことである。

その手段にも色々あるが、ザンザスとその他を離し、かつ他の人らが近寄れないようにしなければならないのだ。

そして考え付いた方法はあったけれども、あまりにも強力かつ広範囲に及ぶため最大火力を出すのは本番ぶっつけになるのだ。

マーモンにはザンザスとの正面から戦うなと言われていた。

だがこの作戦以外、この悪い頭では思いつかなかったのだ。

失敗は許されない。

これが実質のラストチャンスなのだ。

ヴェロニカは両手剣を構え、力いっぱい振り下ろした。

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

「私は、ミルフィオーレを脱退します」

 

衝撃の言葉に俺は戸惑っていた。

ユニは俺の近くまできて、両手を胸の前に持ってきて言ったんだ。

 

「私を守ってください」

 

もう驚くこと以外することがなかった。

そのあと、色々あったけれどユニを守ることになった。

ユニを白蘭から逃がすために、並盛の地下にあるボンゴレアジトに避難していた。

皆疲れて直ぐに気絶するように眠っていたが、俺は不安であまり眠気が襲ってこなかった。

今回、あまりにも精神的疲労が多すぎた…

チョイスは無効になったとしても、実質俺たちは負けてしまったのだ。

これで本当にユニを守り切れるのだろうか。

不安で押しつぶされそうになって、眠れずにただ瞼を閉じていた時

 

「あ!ヴェロニカさん!」

 

ヴェロニカさんのことをすっかり忘れていたや、今から聞きに行こう。

俺はリボーンのいる場所へふらつく足で向かう。

 

「リ、リボーン」

「ツナか、なんだ?」

「いや、あのヴェロニカさんのことさっき思い出したんだけど…」

「確かにあいつのこともあるが、今はそんな余裕ねぇだろうが。おめーは休んで体力を戻しやがれ」

「でも、なんか違和感があるんだ……その、ヴェロニカさんのことを考えてると…」

「違和感?」

「その、なんていうか……彼女が近いうちに関わってきそうで…分からない、俺の思い過ごしかもしれないけど…」

「ふむ…」

「正一君にヴェロニカさんのこと聞きたかったけど、今聞ける状態じゃないし…」

「そうだな…ずっと一緒にいたスパナならなんか知ってるかもしれねぇぞ」

「そうだな…少しスパナのところに行ってくる」

「待て、俺も行く」

 

リボーンは俺の肩に乗り、俺はスパナのいるコントロール室へ向かう。

 

「スパナ…いる?」

「どうしたボンゴレ」

「あのさ…俺らが過去に戻ってるとき、正一君が何調べてたか分かる?」

「ああ、そういえばとある人物について調べていたな……確かヴェロニカだったか」

「そう、それ!あのさ!調べた内容とか残ってないかな?」

「あると思うぞ……少し待て、今だしてやる」

「あ、ありがとう」

「よかったなツナ」

「うん」

 

数分、スパナが画面を見ながら文字を打ち込んでいた。

 

「あったぞ、今コピーする」

「ありがとう!」

 

そのまま、入江の調べた内容が入っていたフォルダをコピーして沢田に渡す。

沢田はリボーンと共に、コントロール室を出た。

資料に目を通している限り、ヴェロニカという人物は存在していなかった。

 

「……あ」

「何かあったか?」

「ここ、ほら…飛行機の搭乗客の名前欄に❝仲田夏美❞ってあるよ」

「これは10年後、いわゆるこの時代のものだな」

「ってことはやっぱり、ヴェロニカさんも俺たちと同じ時期にこっちに飛ばされてたんだ…」

「そして並盛から離れた…行先はイタリアになってやがる」

「イタリア?……どうして」

「恐らく、自身の置かれた状況に疑問を抱いてボンゴレ本部の方に向かったんだろうな…」

「そっか、そうだよね…だっていきなり10年後に飛ばされちゃったわけだし…知り合いのところに行くのは当然か」

「だがやはり、理解できねぇ…あいつの飛ばされた理由は何だ?」

「そうだよね……白蘭を倒すためじゃ、なさそうだけど…」

「それにだ、イタリアに行ったとしてボンゴレ本部は壊滅している…この後あいつは今どこにいるんだ?」

「あ、そうか…じゃ、じゃあまだイタリアにいるのかなぁ…でもそんな連絡もないし…」

「連絡以前に、誰もあいつの存在を知らねぇがな。さっきのページを見ろ」

「ん?これ?」

「それには、九代目の関係者が書かれてるんだぞ」

「え?これが…まさかこれボンゴレ狩りの時使われてたやつじゃ…」

「多分そうだろうな、だがそこにもヴェロニカの名がねぇ」

「え、うん…」

「ヴェロニカに被害がいかねぇよう、九代目が存在を隠蔽した可能性も考えたが、他の奴らから記憶がなくなってることを考えるとその可能性もなくなる…」

「……ごめん、もっかいスパナのところに戻るよ」

「分かったぞ」

 

沢田は再び、スパナの元に戻った。

 

「ごめん、スパナ…また来たけど」

「ん?まだ何かあるのか?」

「あ、いや…その、この名前の人が最近日本に入国したか調べたいんだけど……分かるかな?」

「ああ、それならお安い御用だ」

 

スパナに資料を渡して数分経った頃、スパナが画面を拡大して沢田に見せる。

画面には空港の出入り口付近だった。

 

「ボンゴレ、このどこかにいるハズだ」

 

出入り口の方にある監視カメラをハッキングして、その時間を再生した。

すると、他の客に混じり出口から出てくる一人の女子がいた。

 

「あ!ヴェロニカさん!」

「おいスパナ、これはいつの日のものだ?」

「…今日の朝の便だな」

「きょ、今日⁉じゃあもうヴェロニカさんは並盛のどこかにいるのー⁉」

「そうらしいな……にしても一体何の理由で…」

「でも、白蘭を倒してヴェロニカさん探せば、一緒に過去に戻れるってことだろ?」

「そうだな、あいつも過去への戻り方が分からず困ってるハズだ」

「そう、だよね…」

「あとは俺らで調べておく。おめーはさっさと寝て体力の回復に専念しろ」

「分かった…スパナありがとう」

「どういたしまして、ボンゴレ」

 

そのまま獄寺君や山本がいた部屋まで行って仮眠をとる。

俺はヴェロニカさんの居場所が大まかではあるけれど、分かったことで安心したのか倒れる様に眠った。

起きると、京子ちゃんたちがオムライスを作ってくれていて、ユニの味付けは美味しかった。

でもユニはどこか辛そうにしていたのが、気がかりだった。

そのあと、真6弔花からの襲撃があり、俺たちはユニと共にアジトを脱出した。

脱出後不動産屋に逃げ込み、ザクロが過ぎ去るのを待っていた。

川平さんがなんとか追い返しが、トリカブト、ブルーベル、桔梗 (ききょう)が襲ってきた。

ユニを連れ去られそうになった時、ガンマ、野猿に太猿が応戦してくれて、なんとかユニを守り切る。

途中、雲雀さんがデイジーを倒したとの報告があり安堵した。

そのあと森に逃げ込み、一夜を過ごした。

朝になり、桔梗 (ききょう)、ブルーベル、ザクロ達がこちらへ向かっているのが分かり、ユニを守るため俺を残して、他の守護者は奴らを迎え撃った。

 

「……皆大丈夫かな…」

「心配すんな、おめーの守護者はそう簡単にはやられねーぞ」

「うん…分かってる……けど」

「ボスのお前が不安がってんじゃねぇ、部下を信じろ」

「し、信じてる…けど……さっきから違和感が…」

「なに?またか?」

「分からない…昨日から違和感が増していってる……」

「どういうことだ?」

「嫌な感じってわけじゃないんだ……でも…何か起こりそうで……」

「ふむ……それもヴェロニカのことか?」

「うん」

 

沢田とリボーンの会話にユニが入ってくる。

 

「沢田さん、ヴェロニカとは…誰ですか?」

「え、ああ…えーと、10年前のクラスメイトなんだけど…」

「そのヴェロニカさんが何かあったんですか?」

「ヴェロニカさんも俺たちと同じ頃にこの時代に飛ばされてるんだ。でも行方がわからないし、この時代で彼女の存在がないんだ…」

「え?」

「誰も彼女を覚えてないんだよ…それに彼女が並盛に転校していたという事実すらなかった」

「そんなことって…」

「俺たちは白蘭を倒す為にここに飛ばされてきた……けれど、ヴェロニカさんは…一体何の為に……」

「それで先ほどの違和感は彼女と関係しているんですか?」

「わかんないけど、ヴェロニカさんのことを考えれば考えるほど分かんなくて…違和感も大きくなってきてて……」

「不自然ですね…存在がなくなるというのは」

「ユニは何か思い当たることでもある?」

「いえ、ですが…視点を変えてみてはどうでしょう…」

「視点?」

「はい…おかしいのがこの時代ではなく、そちらの時代かもしれない、ということです」

「ええ?ど、どういう意味?」

「ヴェロニカは本来、10年前にいるハズのねぇ存在。ってことか、ユニ」

「そうですリボーンおじ様…あくまで別視点からの推測ですが、そうであればこの時代に存在しないのも辻褄が合います」

「そういう考え方もあるのか…でも、まだ決まったわけじゃないし…」

「そうですね、慎重に考えた方がいいと思います」

「う、うん」

「もし、そのヴェロニカさんという方が…今よりももっと未来の人であれば、どの行動も彼女の存在の有無に関わってくるのですから」

「そっか……もっと未来の人………」

「あくまで憶測です、本気に考えず、広い視野で彼女を捉えてみると何か分かるかもしれませんよ」

「うん、ありがとうユニ…少し整理出来そう」

「よかったです」

「ねぇツナ君」

「え、な、何?京子ちゃん」

 

ユニと沢田の会話に入ってきたのは京子だった。

 

「さっきから話してる、ヴェロニカさんって仲田さんのこと?」

「あ」

「だって転校生でしょ?仲田さんしかいないと思って……」

「えーと、その、仲田夏美は日本名で、イタリア名はヴェロニカらしいんだ…」

「そうだったんだ」

「あああ、でもこれ仲田さんに口止めされてるから、本人の前でその名前で呼ばないでね!」

「うん、分かった」

 

京子ちゃんは頷いてくれたのをみて、俺は安堵する。

その時、遠くの方で大きな爆発音がした。

俺たちは皆不安げな顔でその方角を眺めていた。

通信機では何やら交戦中の音ばかりで、状況が分からなかった。

俺は不安に駆られるも、皆を信じようとした。

再び爆発音が聞こえ、通信機では獄寺君やラル、ガンマのうめき声が聞こえてきた。

一気に心臓が冷えてくような感覚を覚えた。

京子ちゃんとハルも爆発音の方角を見て怖がっている。

ダメだ、ここで俺がへたれこんでちゃダメだ。

誰か、誰でもいいから応答を…。

 

ジジッ

 

『じゅっ、十代目…』

「⁉ご、獄寺君⁉」

『十代目、聞こえますか?』

「聞こえてるよ!みんな無事⁉」

『ええ…なんとか……俺たちヴァリアーに救われました…』

「ええ⁉ヴァリアー⁉」

 

獄寺君達の絶体絶命の時に、ヴァリアーの面々が助けてくれたのだと分かった。

今もなお、戦闘中のヴァリアーが俺にはとても頼もしかった。

あのザンザスが助けてくれるなんて…

 

―――――?

 

まただ。

また違和感が大きくなっていく……

どうしてこのタイミングで…

 

 

何が起こるっていうんだよ―――――

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「直ぐ近くに桔梗(ききょう)がいて下手に動けないんですが、これ如何(いか)に…」

 

 

 

 




ヴェロニカ、並盛へ帰ってきました。
んでもって最終決戦スタート。
次回で最終決戦は終わります。
いつもご指摘・コメントありがとうございます。


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Veronicaの対峙と再会

ヴェロニカは歓喜した。

自己満足と知りながら

ヴェロニカは分からなかった。

涙が出そうになった理由が


 

 

 

ヴェロニカです。

並盛で行われる最終決戦の場である森にいます。

そして、今私は桔梗の近くに潜んでいる。

何故かって?

私が潜んでいた場所に、あいつが来たんだよ。

バレずにやり過ごそうと息を潜めていたら、あいつらここでドンパチ始めやがりました。

ふざけんな、私はザクロの所行きたいんだよ!

パパの戦闘シーンが見たいの!

おお、ランボが善戦してる。

泣いてるけど。

消耗はっや!もう終わりか。

ああもう、修羅開匣したよ、桔梗の奴。

暫く私動けないじゃん…。

恐竜とか…もうちょっとデザインあっただろうに…

なんだっけ、恐竜の名前…ヌー…ヌーブラ?ヴェロキラプトルだったっけ?

あ、笹川了平がタイマンで勝負仕掛けてきた。

………ん?何か違和感……ッハ

そういえばこのシーンって骸の幻覚じゃんかよ!

でもこの幻覚解いちゃうと、桔梗に掛かってる幻覚まで解いちゃうことになるじゃん。

うっそん、ここにきてまさかの弊害…。

ヴェロニカは敢えて幻覚に掛かり続ける。

あ、雲雀登場。

でもこれ瞬殺されて……ああ、殺られちゃった。

じゃあそろそろ幻覚がって…ぅぇぇぇぇえええええ

恐竜の顔を雲雀に変えるなんて、なんてえぐい幻覚使いやがるんだ!骸の野郎…

いやぁぁぁぁぁああパパぁぁぁぁあああああ

骸殺す!フラン、てめぇも同罪だ!あんなカッコ悪いパパの幻覚見せやがって!

ヴェロニカは殺気がバレないように、骸に殺意を抱く。

あ、やっと幻術が解けた。

もう皆ここで集まってるし、ゴーストが来るのもここかな…

もういっそのこと白蘭との決戦終わるまでここで大人しく見といた方がいいかもしれない。

 

「あれぇ?師匠今何気に一歩前に出ましたねー?直ぐに真ん中に立とうとするんですからー」

「クッフッフッフ、何を言っているんですか、お前の頭が邪魔だからですよ」

 

やっと他の面々も喋り始めた。

 

「はーい、本番いきまーす」

 

フランって真面目になったことあるのかなー?

でもまぁ、これから本番か。

じゃああと少しでゴーストが出る。

にしても凄い乱闘…

少し後ろに下がろう。

ヴェロニカが下がった瞬間、近くにスピノサウルスの頭が落ちてくる。

ひえっ、きもっ…

内心冷や汗垂らしまくりながら、誰にも気付かれずにゆっくりと後退する。

その時――

 

ジジジジッ

 

空中にいきなり何かが光り出す。

 

きた―――――!

 

一気に光を放ったそこには、発光している半透明な巨人―――GHOSTがいた。

周りの者は攻撃を加えるが、GHOSTに効いたような様子はなく困惑している。

真6弔花も同様に困惑していた。

 

「あれが噂のGHOST?ヤバくない?」

「白蘭様、何故こんなに早くアイツを・・・」

 

めっちゃ混乱してる。

まぁ実質あいつを倒す方法なんて沢田綱吉の死ぬ気の零地点突破 初代(ファースト)エディションしかないし。

レヴィの匣兵器がやられてるし。

あ、パパがめっちゃ攻撃してる。

その勢いだ、今のうちにめっちゃ炎消費してほしい。

あ、リングから炎が吸収されていってる。

もっとやれ。

傍から見れば完璧に敵だが、誰も彼女に気付いていない。

少し経って、ようやく皆がリングを外した。

だが途中でブルーベルやザクロは炎を吸われて干からびてしまった。

桔梗も修羅開匣のせいで炎が吸われ続け、体力が底を尽きかけている。

ヴェロニカはリングがないので一切吸われることはなかった。

獄寺や笹川の方にGHOSTの光線が伸びていくが、二人に当たりそうな時に、山本がそれを助ける。

それに続き、スクアーロとディーノたちが現れた。

 

「おせぇぞ、カス」

「すまねぇなぁ"」

 

パパも素直に心配してたって言えないのかな…いや言ったら言ったで気持ち悪いな。

 

「何してたの、待ってたわよ~」

「おのれぇ、生きておったか!」

「ちょーガッカリ…」

 

本気でガッカリしている人若干2名いるが、無視。

手詰まりで、何もできない状況に誰もが歯を食いしばる。

だがその時、

 

「それはさせない」

 

声がした方へ皆が視線を向けると、そこには沢田綱吉がいた。

沢田綱吉は、死ぬ気の零地点突破・改の構えをして、GHOSTの炎を吸収し出す。

吸収対吸収が始まると、周りにも影響が出始める。

山本などはどんどん剣から吸われ出し、他の者もリング関係なしに吸われ出す。

この調子で、皆のスタミナ全部吸ってくれれば私がやりやすくなるんだけどな…

皆が吸われぬよう必死に対抗している最中、ヴェロニカは先ほどより遠くに後退して、木の上から双眼鏡で眺めていた。

吸収対決の影響がぎりぎり届かない範囲を見切って距離をとっているので、今のところヴェロニカへの被害はゼロである。

吸収対決は沢田綱吉が勝利を収めるが、様子がおかしいことに周りが(いぶか)しげな面持ちで見ている。

そこに白蘭が現れる。

ザンザスや六道骸が白蘭に攻撃するが全く効かず、沢田綱吉が白蘭と対峙するが白蘭の優勢は変わらなかった。

吸収対決が終わったので、双眼鏡を片付けたヴェロニカは沢田綱吉が白蘭に押し負ける様子を静かに覗いていた。

 

今、出ていくことも可能だけど…

まだだ。

この後に、全匣兵器の炎を雨イルカに集めて大空の結界に穴を空ける過程があったハズだ。

そこが全員のスタミナが底を尽きる瞬間だ。

焦るな、焦るな…

ヴェロニカの剣を持つ手に汗が浮かぶ。

震えだしそうな手を必死に握り込む。

大丈夫…恐い……大丈夫、大丈夫…怖い…

 

 

〝ヴェロニカちゃん”

 

 

ふとヴェラさんが私を呼ぶ声を思い出した。

脈拍の速くなっていた心臓がスッと静まっていくのが分かった。

どうしてこんなときまで彼女を思い出したのかは分からない。

だけれど、その声が私の背中を押してくれたような気がした。

 

ヴェロニカが目の前の戦場を見ると、既にユニがおしゃぶりに炎を注いでいた。

ユニの目からは涙が溢れていて、死への恐怖に顔が歪んでいく。

そこに、全匣兵器の炎を蓄積した雨イルカの攻撃が大空の結界に穴を空けた。

全ての炎を出し尽くしたのか、周りの者は皆肩で息をしていた。

ユニの元へ駆けつけたγと共に、ユニとγ(ガンマ)は消えてしまった。

ユニが消えたことに絶望した白蘭と、彼の言動に怒気を表す沢田綱吉が、最後の攻撃に備え構えだす。

だがヴェロニカの目線は、始終ザンザスに向けられていた。

タイミングは白蘭が消えて、皆が一息をついた瞬間。

一番気を抜いたその時に、ザンザスとその他を離す。

ヴェロニカは剣に炎を纏わせ始める。

 

白蘭と沢田綱吉の炎が衝突し、大空の結界に罅が入っていく。

遂に結界が壊れ、白蘭が沢田綱吉に押し負けて沢田綱吉の炎を喰らう。

白蘭の姿が搔き消されていき、その場には沢田綱吉が肩で息をしながら立っていた。

 

「か、勝った」

「や、やったぁぁぁぁあああ」

 

獄寺と山本、そして笹川にバジルが沢田綱吉の元へ駆けつける。

沢田綱吉の額に浮かぶ死ぬ気の炎が消えた刹那――――

 

 

 

巨大な炎がザンザスに向かって放たれた。

 

 

 

XANXUS side

 

 

「⁉」

 

俺の方に襲い来る炎を飛躍し避ける。

炎は衰えを見せず、そのまま俺を囲むように襲ってくる。

 

「ッチ」

 

俺は舌打ちしながら、残り少ない炎で飛びながらそれらを避け続ける。

だが、炎はそのまま俺を囲み、炎が壁のように広がりやがてドーム状になった。

 

隔離されたか……他の奴らから俺を離すような攻撃といい、タイミングといい…最初から俺を狙ってやがったか。

 

俺は少しでも炎の消費を抑えるために、地面に降りた直後、背後から黒い影が迫ってきた。

黒い影の乱入者は、剣を両手に俺に襲い掛かる。

俺もそれに応戦するが、先ほどの戦いで体力を大幅に削られた為押し負け始める。

段々と掠り傷が増えていき、ついに怒りが頂点に達した。

 

「クソがっ……カッ消す!」

 

俺は匣を開き、ベスターを出す。

 

「ベスター!」

 

俺の命令に従い、ベスターは咆哮する。

だが黒い影に効いた様子はなく、ベスターは再び咆哮し出す。

ベスターの攻撃の中、俺も銃で黒い影に向かって攻撃するが相手は避け続ける。

体力が底を尽きかける俺の頬には汗が伝う。

このままではジリ貧であることは明らかだった。

俺はベスターを匣の中に仕舞う。

先ほどから肩で息をし、荒い呼吸をしているせいで喉の奥が乾きだす。

 

「ドカスが……跡形もなくカッ消す」

 

何も喋らない黒い影に向けて、俺は残り少ない炎を全て銃の中に溜め始める。

俺がでかい技を出すのが分かったのか、黒い影は剣を仕舞う。

そして足に差してあるガンホルダーから銃を抜き出す。

その銃を目にした俺は驚いた。

 

「てめぇ、その銃は…」

「…」

 

あれは、俺と同じ、七代目の使っていた拳銃。

何故同じものがあるんだ。

答える気はないのか、無言で黒い影も銃に炎を溜め始める。

拳銃を使うことで火力を底上げするアドバンテージが消えるが、俺には憤怒の炎という高火力の炎がある。

火力比べなんぞ、俺の憤怒の炎の前ではすべてカスだ。

 

「カッ消す」

 

俺はありったけの炎を溜めて、奴にぶっ放した。

そして奴も溜め込んだ炎を撃ち出す。

お互いの炎の塊が衝突すると、周りを囲んでいたドーム状の炎の壁が一気に吹き飛んだ。

周りには爆風が吹き荒れ、炎の壁の外側にいた奴等は踏みとどまれず吹き飛ばされていた。

カス鮫の声が小さく耳に届いたが、暴風の中に一瞬で消えていく。

目の前の均衡する炎の衝突に、俺は歯を食いしばる。

もう絞り出す炎はない。

あとは意地のみで、足に力を入れ衝撃に耐える。

一瞬、体全体に重い衝撃が走り、目の前で均衡していた炎は爆発を起こした。

その際何かが聞こえたような気がした。

爆風に吹き飛ばされ、背中を木に思い切りぶつけ息が一瞬止まるも、直ぐに肺から熱風と共に吐き出す。

既に動けるほど体力はなく、木に凭れるように立つ。

荒い息を繰り返す中爆風が収まり、俺は煙の奥を睨みつける。

瞬間、煙の奥から黒い影が現れ俺にぶつかってきた。

俺は動く気力がなく、そのままそいつと重なって倒れた。

 

「はぁ…はぁ…はっ……」

 

そいつの口から出てくる息遣いと声に、若い女だと分かった。

一瞬、腕に小さな痛みが走る。

だが次の瞬間、俺の上に跨っていたそいつは吹き飛んだ。

 

「ボス!」

 

ルッスーリアがそいつを蹴り飛ばし、俺に駆け寄る。

俺には息を吐くだけしか体力はなく、指一本動かせない俺にルッスーリアが憤慨する。

 

「ボス!あたしが直ぐに殺してあげるわよ!」

「ししっ、俺も参戦~!」

 

ルッスーリアに続きベルもその黒い影と戦闘に入る。

黒い影は先ほどの銃を仕舞ったのか、剣で二人と応戦していた。

数回の衝突の後、ベルがそいつの隙を狙う動作に入った時、俺の視界は白くなった。

 

 

 

 

ヴェロニカside

 

ヴェロニカは思い切り地面を蹴り上げて、ザンザスに向かう。

両手剣に大空の炎と憤怒の炎を編み込み、出来るだけ広範囲に渡るよう全力で放った。

炎はザンザスの周りを囲い、数十mに渡るドーム状の壁を作った。

実はこの壁、一見普通に炎を高圧縮したものに見えるが、憤怒と大空の炎を網上に重ねてある。

なので外からの衝撃におもっくそ強いのだ。

ザンザスが地面に降りてくるのを狙って、ヴェロニカは両手剣を構え走りだす。

狙いは拳銃。

あれがあるのとないのでは結構違う。

あの拳銃は炎の消費量を少なくするので、ハッキリいって邪魔だ。

ただでさえ体力尽きかけてるパパが拳銃無しで戦えば、直ぐにぶっ倒れるだろう。

ヴェロニカは取り合えず拳銃を狙い、ザンザスと対峙する。

数度の打ち合いでぶち切れたザンザスがベスターを出す。

残念!ベスターの炎は攻略済みだ!

ヴェロニカはベスターの咆哮に合わせ調和し出す。

ザンザスの攻撃を避けつつ、ベスターの攻撃を調和していくと、無駄と分かったのかザンザスがベスターを仕舞う。

そして、拳銃に大量の炎を溜め始めた。

最後の炎を溜めて、ここら一帯を消し飛ばすつもりだと分かり、ヴェロニカは剣を腰に差しガンホルダーから拳銃を抜く。

ヴェロニカの拳銃を見たザンザスが目を見開く。

 

「てめぇ、その銃は…」

 

パパの銃です、ハイ。

本当は使いたくないんだけど、最大火力出すにはこれしかなくって。

ヴェロニカは憤怒の炎と大空の炎を出来るだけ圧縮して拳銃に溜め込む。

まだだ、まだ出来る……

拳銃の許容量をガン無視で圧縮して溜める。

そして、全て溜め切ったのかザンザスが引き金を引く。

私も直ぐに引き金を引き、溜まりに溜まった炎が噴出する。

二つの炎の塊が衝突し、二人を中心に暴風が荒れ狂う。

ヴェロニカの被っていたフードは外れ、張った炎の壁が吹き飛び、外にいた人たちも例外なく飛ばされる。

ちょ、待って…パパって体力尽きかけだったじゃん!

何でこんなに強いのさ!

あわばばばば、気を抜くと一瞬で押し負ける!

くっそ、私だって…頑張ったんだからっ

パパの炎がしつこい…めちゃくちゃしつこい…

こっちも死ぬ気で押してるにも関わらず、ずっと均衡してるってどうゆうことよ?

 

「いいかげんっ」

 

ヴェロニカは目を見開き、大声で叫んだ。

 

「ぶっ倒れろ―――――!」

 

全身の細胞が活性化したような感覚に襲われた瞬間、均衡していた炎が爆発した。

元々重くなかった体重の私はいとも容易くふっ飛ばされるが、剣を近くの木にぶっ刺して、爆風を耐える。

爆風が止むと、瞬時にフードを被り直してザンザスの元へ走りだす。

ザンザスの影が見えた時、一瞬だけ足がもつれてしまいそのままザンザスにぶつかり重なるように倒れた。

 

ワクチン!

 

荒い息のままザンザスに跨り、懐からワクチンを一本抜き、直ぐにザンザスの腕に刺し込む。

ちゃんと押し子(ブランジャー)を押すのも忘れずに、全て注入する。

 

やっと、出来た……これでっ――――

 

気を抜いた瞬間、激しい衝撃がヴェロニカの腹部を襲う。

そしてそのまま茂みの中に吹き飛ばされるが、直ぐに起き上がり剣を構えて周りを警戒する。

先ほどの攻撃はルッスーリアだったらしい。

ルッスーリアはヴェロニカに攻撃を繰り出す。

ベルも加わり二対一で対峙していた。

状況を確認し、冷静になると、段々腹部が痛みだしてくる。

これ絶対折れた…。

くっそルッスーリアめ…帰ったら殴る。

二対一の経験がなく、更に相手はヴァリアー…しかも彼らも私も疲労しているときた。

これ私の詰みかな?泣きたい。

彼らの攻撃を流しながら、逃げ道を探る。

ルッスーリアの猛攻に気を取られ過ぎて、ヴェロニカはベルが直ぐ後ろにいることに気付くのが遅れたのだ。

 

「もーらいっ、死にな!」

 

やっばっ……

ベルのナイフがヴェロニカの心臓に刺さる瞬間

 

ベルが吹っ飛んだ。

 

もう一度言おう、吹っ飛んだ。

ヴェロニカは状況が分からず、目を丸くするが、それは相手も一緒だったのかルッスーリアも固まっていた。

そしてルッスーリアが吹っ飛んだ。

はい?え?何で??

二人が吹き飛んだ原因が分からず、辺りを見回す。

すると、先ほどザンザスのいた場所に煙が立っていた。

け、煙?

私は煙の中に人いるのに気づき、剣を構えた。

 

 

 

「おい」

 

 

私はその声を聞いた瞬間直感した。

 

「ここは…過去のハズだ」

 

私は目元が熱くなるのを感じていた。

 

「何故お前がいる……ヴェロニカ…」

 

顔を隠してるのになんで分かるかな……

 

 

 

 

「……パパ…………」

 

 

 

 

 




はい、最終決戦が終わってヴェロニカの独壇場です。
んでもって最後にパパさん登場です。
本当はヴェロニカに勝たせようと思ったんですが、娘に負ける父親ってどうよ…と思ったので引き分けで(笑)
いつもコメント・誤字指摘ありがとうございます!


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Veronicaの涙と喧嘩

ヴェロニカは涙す。

嫌わないで

ヴェロニカは叫ぶ。

心の底から


 

「ここは、過去のハズだ…何故お前がいる…ヴェロニカ」

 

顔を隠してるのに何で分かるかな…

 

「……パパ………」

 

え?

ほんと何でパパいるの?

10年バズーカで来たの?でもバズーカなんてどこにも……

ヴェロニカはふと、10年前から来るときに使用した小型バズーカをポケットの中に入れていたのを思い出した。

そして、今手でポケットを探るとバズーカが無くなっていた。

ルッスーリアとの戦闘中にポケットから落ちたのか。

で、それが運良くザンザスの倒れていた場所に落ちたと……

ヴェロニカは瞬時に状況を理解し、目の前のザンザスにどう説明しようかと考え出す。

私が貰った小型10年バズーカは未来への滞在時間が一か月というタイムリミットがあった。

と、いうことは今のザンザスは少なくとも一か月は戻れないということなのだろうか?

頭を抱えたくなるヴェロニカを他所に、ザンザスがヴェロニカの元にゆっくりと歩いてくる?

 

「おい」

「ぅ……なに…」

「何故ここにいる」

「ぇ……と……その…話せば長くて…」

「面倒くせぇ、短く説明しろ」

「うっ…えっと」

 

パパが数年後死んでしまうことを言ってもいいのだろうか…

中々言い出さないヴェロニカにザンザスは眉を顰めて、一段と低い声を出す。

 

「ヴェロニカ」

「数年後パパが病気で死んじゃったからワクチン持って過去に飛んできた」

 

若干イラついた様子のザンザスに怖気づいて、あっさりと簡潔に吐いたヴェロニカは内心涙目である。

っていうか何だこれ、まるでザンザスが子供の悪戯を叱っている父親のようではないか。

ありえない。

どうせ、面倒くさいことに巻き込まれて不機嫌、でも娘は殴りにくい、そしてもっと不機嫌のループなんだ。

絶対そうだ。

ヴェロニカが内心そう思っていると、ザンザスは(おもむろ)に私の手に自身の手を伸ばす。

私は一瞬ビクつくが、そのまま握っていた手を開くと、ザンザスはヴェロニカの手首を掴んだ。

 

「いつからだ…」

「え?」

「炎を宿したのは…いつからだ……」

「ぁ………よ、4歳…くらい」

「何故黙っていた」

「ご、めんなさい」

 

咄嗟に謝罪が口に出た。

パパの真っ赤な瞳が私を捉えていて、嘘がつけなくなりそうになった。

前世の記憶のことを言うつもりはない。

それこそ、気味悪がられる。

 

嫌だ、嫌だ、嫌われるのは嫌だ…

 

言いたくない、言いたくない…気味悪がられるのは嫌だ――――

 

気付いた時には、涙が零れていて、嗚咽(おえつ)が止まらなかった。

私はただ掴まれていない手で顔を隠すしか出来なかった。

 

「ごめん、なさ……ごめんなさいっ」

「怒ってるんじゃねぇ」

「でもっ…」

「誰かに見せたか?」

「わかっ……分かんないっ……じ、時間軸ごっちゃに…なっててっ」

「お前今いくつだ」

「14歳っ…」

「過去に来たのは」

「14歳になって…、すぐ…」

「過去に来て誰かに炎を見せたか」

「見せた、けど……顔見られてないっから…でもっ」

「…」

「私、が…14歳になった……以降の未来…では、皆知ってる、と…思う」

 

マーモンは、私が過去にいることや、炎が使えることを、未来の沢田綱吉がヴァリアーの面々には話してたって言ってたし。

多分もうマフィアに関わらせずに生きていくには私は足を踏み入れすぎたのだ。

目の前のザンザスが溜息を吐き、掴んでいた手首を放すと、そのまま森を出ようと歩き出す。

私はパパが何故ここにいるか説明しようとパパの袖を掴んだ。

 

「あ"?」

「ぁ……パパがここに来たの、私の持ってた小型バズーカのせいかもしれない」

「いつ戻れる」

「……一か月後…」

 

更に深いため息をザンザスが吐き出す。

呆れ果てたのだろうか、袖を掴んだ私の手を無視して歩き出す。

ヴェロニカもザンザスについて行こうと足を動かした。

その瞬間、腹部に鋭い痛みが走ると同時に視界がボヤけ、ヴェロニカの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

 

やっとの思いで白蘭を倒したのにユニのことを思うと、喜べずにいた。

獄寺君や山本、バジルや京子ちゃんのお兄さんが近づいたときに、俺の体から力が抜けていった。

その瞬間、大きな音がしてが疲れ切った俺は咄嗟に動けなかった。

音のした方を見やると、巨大な炎の塊がザンザスを狙って攻めてきた。

誰もが、驚愕し、ヴァリアーの面々はザンザスを守ろうと動き出していた。

だが、炎を避けていたザンザスを囲い込むように炎が壁になりドーム状になった。

 

「な、なんだこれは⁉」

「そんなっ、敵か⁉」

 

獄寺君や山本は険しい顔で、その炎の壁を見ていた。

未だ動けないスクアーロ以外のヴァリアーの人達は、壁を壊そうと攻撃をしていた。

 

「くっそ、何だこの壁っ…」

「んもう!全然攻撃が通らないわよ!」

「おのれ!中にはボスが閉じ込められてしまったというのに!」

「ミーの幻術も通りませんねー」

 

皆焦りながら、炎の壁を壊そうとしていたが一向に壁が傷つく様子はない。

無理もない、誰もが先ほどの白蘭の戦いで死ぬ気の炎を使い果たしたのだ。

ザンザスも例外ではない。

そこに、こんな技を使える者が襲ってきたならば、ザンザスもひとたまりないだろう。

俺も体が動けば、何か出来たのにっ…

先ほどの戦いのせいで力が全く入らない己の体に歯を食いしばる。

 

「このタイミングといい、やり方といい、襲撃者はどうやらザンザスが狙いのようだな」

「く、リボーン!この壁壊すことは出来ないのか⁉」

「皆既に疲労状態だ、そんな状態であの壁を壊すのは難しいぞ」

「そんなっ」

「おいツナ、お前の言っていた違和感ってのはこのことだったのか?」

「え?あ……そういえば……」

 

俺の中に直前まであった違和感はなかった。

目の前の炎の壁を見ていると、何かを思い出しそうになる。

 

「あ」

 

ザンザスだ。

俺が思い出そうとしたのは、ザンザスの憤怒の炎だ。

 

「リボーン……あの壁もしかしたら大空と憤怒の炎が混ざってるのかも……」

「何?憤怒の炎だと?」

 

リボーンは驚いたように聞き返してきた。

だが俺にはその言葉すら耳に入ってこなかった。

 

「似てる……」

「じゅ、十代目?」

「ザンザスに……誰が…?」

「おいツナ…大丈夫か?」

 

獄寺君と山本の声が聞こえた気がしたが、今の俺は目の前の炎のことしか頭に入ってこなかった。

 

「そうだ、あの時も……敵意がなかったんだ………だから――――」

 

ボンゴレリング争奪戦の時ザンザスを襲った黒い影。

あの黒い影から敵意がなかったような気がした。

今回も、同じように敵意じゃないような気がする…

黒い影 ザンザス 憤怒の炎 敵意のない襲撃 ヴェロニカさん

 

何かが…何かが……繋がる何かが―――…

 

❝今よりももっと未来の人であれば―――❞

 

「…あ――――…」

 

分かったかも……分かってしまったのかもしれない…

 

「リボーン…」

「ん?何だ?」

「ヴェロニカさんはもしかして――――…」

 

次の言葉を告げようとした瞬間、大きな爆発音が響き渡り、炎の壁を一気に吹き飛ばした爆風が俺らを襲った。

その場に踏ん張るも、力尽きた俺たちはそのまま飛ばされる。

視界の端には風太とリボーン、京子ちゃんのお兄さんがハルと京子ちゃんを守りながら飛ばされていたのが見えた。

そして飛ばされた先で、爆風をやりすごしていると、ルッスーリアとベルが一目散に爆発源まで走っていくのが見えた。

俺の予想が当たっていれば、あの人を殺しちゃダメだ―――!

 

「と、とめてっ……誰か…」

「じゅ、十代目⁉」

「あの人を……殺しちゃ…ダメだっ……」

「何がですか⁉十代目!」

 

動け、動け、動け、動け――!

どれだけ強く思っても、自身の体が動くことはなく、ただ彼女が無事であることを祈ることしか出来なかった。

少し先で、金属のぶつかる音が聞こえた。

焦った俺は、獄寺君にお願いして肩を貸してもらい、戦闘している場所へ向かおうとする。

だが俺たちがその場に着く前に、金属音は止んだ。

 

「音が止んだッスね………どうやら襲撃者を倒したみたいッスよ、十代目」

 

俺は獄寺君の言葉に心臓が冷えるような感覚に襲われる。

居てもたってもいられず、無理やり軋む体を動かそうとした時

 

ガサッ

 

茂みの中からザンザスが出てきたのだ。

しかも、黒いフードを被った人物を横抱きにしながら。

 

「あ"?」

 

ザンザスは俺と目が合うと、一際低い声を出す。

俺は怖気づきそうになる自分を奮い立たせようとした時、ふと違和感が生じた。

なんだろう……ザンザスがさっきと違うような……

 

「え、ザンザス……なんか変わって―――…」

「話かけんじゃねぇ、カッ消すぞ」

 

違和感の正体を聞くために声をかけるが一刀両断され心は折れそうになる。

だが、ザンザスが横抱きにしている人物が気になっていた。

隣の獄寺君も同じだったようで、ザンザスに問いかける。

 

「おいザンザス、そいつはさっきの襲撃者じゃねぇのか」

「襲撃者?」

「ああ?さっきおめーに向かって炎放った奴だよ!そいつじゃねぇのかっつってんだろーが!」

「フン」

「あ、てめぇ!」

 

ザンザスは獄寺君の問いを無視して、そのまま歩き出す。

でも俺にはなんとなくわかった。

横抱きにしているのが誰であるのかを。

でもそうだと、ザンザスが彼女を助けた理由が分からない。

 

「あ」

 

もしかして…え、まさか…そんな――

 

「ザ、ザンザス!お前まさか10年後の――「沢田綱吉」」

 

俺の言葉にザンザスが声を被せてきた。

 

「それ以上言ったらてめぇをカッ消す」

「ひえぇぇ」

「てめぇ、十代目になんて口ききやがる!」

 

ザンザスの眼光に、今度こそ怖気づいた俺は何も喋らず立ち尽くした。

ザンザスの姿を見たスクアーロとレヴィは目を見開いていた。

 

「う"ぉぉおおいボスゥ!そいつ襲撃者じゃねぇのかあ"⁉」

「黙れ」

「ボス、一体何があったんですか⁉」

「黙れカッ消すぞ」

 

ザンザスは誰からの問いも答えることなく、森の入り口に向けてひたすら歩いていた。

途中で、ルッスーリアとベルが追いつき、何故か二人は額から血を流している。

 

「ちょっとぉボスったらぁ!いきなり攻撃することないじゃなぁい!」

「ねぇボス、そいつ誰。さっきの奴っしょ?殺さねーの?」

 

ザンザスは横抱きにしている彼女を、部下に押し付けることなくその場を去っていった。

俺は、少しザンザスの意外な一面を見た気がした。

 

「ザンザスって意外と―――…」

「え?十代目?何か言いました?」

「ううん、何でもない」

 

やっと終わった。

俺の体から今度こどすべての力が抜けていき、立っていられずヘタれこむ。

俺たちは平和な未来を勝ち取った。

そして皆で過去に戻るんだ。

彼女はどうするのか分からないけれど、過去に戻ったら少し話をしてみよう。

 

俺は皆が駆け寄ってくるのを、眺めながら意識を手放した。

 

 

 

ヴェロニカside

 

「っは…」

 

ここどこ……ん?……ここヴァリアー本部じゃね?

窓から見える景色とか…めっちゃ見覚えあるし。

あれ?全部夢だったとか?夢オチ?

待て、夢だったなら私は部屋にいるハズだ。

私の部屋はこんな殺風景な部屋では断じてない。

あれ?最後は確か…

 

「あ」

 

20年後のパパが10年前に来ちゃったんだ!

ってことはまだここは原作の10年後の世界かな?

いやまさか寝てる間に元の(私の存在する)時代に戻ってましたとかないよね?

取り合えず、この部屋から出てみるか。

ん?腹が痛くない…治ってる…

待て、何日も寝てましたとかいうオチじゃないよね⁉

それならタイムリミット過ぎて過去に戻ってるハズ。

ダメだ、何もわからない……パパの執務室行こ。

拘束されていないのを見ると、10年後から来たパパのままだと思うけど…

あの後私倒れたけど、パパが運んだのかなぁ?

いやルッスーリアに運ばせたんだろうなぁ…

 

ヴェロニカはベッドから起き上がり脱がされていたフードを被り直すと、隣に置かれてあった剣と布に包まれていた銃を装備して部屋を出た。

部屋から出ると、やはりそこはイタリアにあるヴァリアーの本部だった。

日本で気絶してイタリアで起きるとか、どこの映画だよくっそ。

ヴェロニカはそのままザンザスのいるであろう執務室まで歩き出す。

そこの曲がり角を曲がるとザンザスの執務室というところで、大きな声がした。

 

「おい!クソボスゥ!この書類は今日までって言ってただろうがよぉ"!」

 

スクアーロの大きな声と共に、何かが割れる音がする。

 

「う"ぉぉおおおい!何しやがる!くそっ、後で取りに来るからなぁあ"!」

 

扉が乱暴に開かれて、荒れた足音がヴェロニカの方へ近づいてくる。

ヴェロニカは焦るが、逃げ場などなくスクアーロと鉢合わせしてしった。

 

「んあ"?てめぇ起きたのかぁ"」

「……」

 

ヴェロニカは声は出さずに、首を縦に振る。

 

「あ"?喋れねぇのかよ…っち、ボスが何故てめぇを庇うのかは知らねぇがなぁ"、妙な動きをしてみろ、三枚に卸してやるぞお"」

 

あの、すごく威嚇のつもりなのだと思うんですが、そんなワインまみれた顔で言われても…すごく、酒臭いだけです。

スクアーロはもう一度舌打ちすると、ヴェロニカの脇を通り過ぎそのままどこかに行ってしまう。

ヴェロニカはそっと、ザンザスの執務室の扉を開ける。

中には、椅子に座り机に脚を置き、酒を片手に何かの資料を見ているザンザスがいた。

ザンザスはヴェロニカの姿を一瞬視界に捉えると、また資料に目を通し始めた。

 

これは…話しかけてもいいのだろうか……

 

ヴェロニカは取り合えず扉を閉め、ザンザスに近寄る。

 

「ぇ……っと……今いつ?」

「てめぇがぶっ倒れてから一日しか経ってねぇ」

「スクアーロ達に、パパが10年後と入れ替わってるの教えてないの?」

「あ?何で俺がカス共にわざわざ教えなきゃならねーんだ」

 

ア、ハイ。通常運転ですね、私のパパは。

 

「えっと…これまでのこと……話すね」

 

ヴェロニカの言葉にザンザスは何も返さない。

だが黙れとも言われてないので、多分肯定だと受け取り今までの経緯を話す。

未来で病気になって亡くなったこと、それで私は過去に行こうとしたところバズーカの故障でいきなり過去に飛ばされてしまったこと。

過去にどんなことがあって、途中マーモンが来たことや、未来へのバズーカを使って来たこと、そしてワクチンを打てたこと。

殆ど省きながら説明したので、大体10分ほどで説明は終わった。

少しの間ザンザスは黙り込む。

 

「てめぇは馬鹿か」

「ぅ…」

「誰が生き返らせろと言った」

「…」

「俺がそう選んだなら、放っておけ……面倒ごとを増やすな」

 

めちゃくちゃボロクソ言ってくるよこのパパは…

そりゃザンザスならそういうと思っていた。

これは完璧に私の望みだ。

死人を生き返らせるという禁忌。

私は世界の(ことわり)において禁忌を犯してしまったのだ。

パパからしたら、生きても死んでもどうでもいいんだろうけれど。

感情だけで動いた私は馬鹿だけれど、それでも、後悔なんてしてない。

 

「反省も後悔もしてないからね」

「…」

「私の私欲だ……全部、全部…」

 

ザンザスはただ黙っていた。

てか誕生日の次にの日に死ぬパパもどうかと思う!

どれだけ衝撃的だったことか!

何も父親らしいことすらしてくれなかったけど、こちとら一応あんたのこと父親だと認めてたんですけど⁉

 

「少しくらい、我儘聞いてくれたっていいじゃない」

 

少しだけ本音が出てしまった。

 

「ぶっ、ぶはっ…過去改変が我儘だと?っく……くく…くはは」

 

いきなりザンザスが笑いだす。

その様子にヴェロニカは目を丸くする。

 

「くだらねぇ、過去に足止めされる奴なんぞ器が知れる…施しを与える価値すらねぇ」

 

この言葉には流石の私もカチンときた。

いや全部私の私欲だ!エゴだ!

だけれど、私の頑張りをくだらねぇの一言で済ますのかコイツは!

 

 

「私だって!パパがあのまま素っ気無い態度で死んでくれればこんなことしなかったわよ!」

 

我ながら酷いことを言っている自覚はあるが、一度零れると抑えることが出来ず目の前のパパに喚き散らす。

 

 

「何よ!今まで父親らしいこと何一つしたことなんてなかったじゃない!声掛けても素っ気無く返すだけじゃない!」

 

ああ、溢れると止まらないのだ。

涙も言葉も 

私の本当の想いを ただ伝えたかっただけ

 

「なのに何で……何で、何で……なんでっ」

 

 

❝ヴェロニカ お前は俺のようになるな❞

 

 

 

「どうしてっ……どうして私の心配なんかするのよ‼」

 

今までのように無関心でいてくれれば良かったのに!

私の言葉にザンザスは目を開く。

 

「どうして頭を撫でてくれたの⁉」

 

断ってくれれば良かったのに!

 

目の前のザンザスは知らない。

だってそれは今の彼の4年後の最期なのだから。

でも、私にはこの想いをぶつけるしかなくて、ただぶつけたくて。

それは叫びに近かった。

 

「どうしてっ…私の名前を呼んだのよ‼‼」

 

未だ目の前で固まるザンザスを一睨みして、(かかと)(ひるがえ)し、扉の方へ早足で歩き出す。

もはや意地であった。

扉を乱暴に開けて、部屋を出て扉を閉める寸前私は息を吸う。

 

「パパのバカ!」

 

言い切ると、そのまま扉を力強く閉める。

私はフードを被り、そのまま執務室から遠ざかり、本部の屋敷を出て行った。

 

 

 

 

 

冷静になったヴェロニカが頭を抱えて自己嫌悪に至るのは20分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 




ヴェロニカとザンザス中心でした。
パパのバカって言わせたかったんですよね。
沢田綱吉がヴェロニカの正体に気付いた可能性浮上。
一応未来編の日数数えて大体26日ほどあったんですが、日数間違ってたら言ってください(笑)
毎回のご指摘・コメントありがとうございます!


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Veronicaの父と想い

ヴェロニカは省みる。

自身の言葉を

ヴェロニカは再会する。

同じ名を持つ子を身籠る彼女に


やっちまった…

現在私ヴェロニカは頭を抱えています。

何故かって?

パパに喚き散らした挙句バカと罵る暴挙に出てしまった。

あれ、私って思っていたより死に急ぎ野郎かな?

感情に任せて全部ぶちまけてきたから、あまり内容を覚えていない。

けど多分酷いことを言ったよな……

あーパパ途中からめっちゃ固まってた。

今度顔を合わせたら間違いなくカッ消される。

パパのいうことが正しいのだ。

パパからしたら余計なお世話だったのだろう。

あの人は余命宣告されたって、ああ、そう。で終わりそうだもん。

それをただの私の私欲で、あったハズの未来を変えてしまったのだから、まぁ呆れるか。

でも……いや私が全面的に悪いんだから、諦めてパパに謝った方がいいのだろう。

まぁその前にカッ消されそうだけど…

因みに今私は町中のベンチに座っています。

ボンゴレ本部に行こうとしたが、直ぐにパパに居場所がバレそうだったので町中に私服で佇んでいた。

感情的になって抜け出してしまったので手持ちが非常に少ない。

あるとすれば、銃と少しの金銭くらいである。

このままどっかに泊まろうかと思っていた。

どのみち私がこの時代にいる時間はあと僅か。

多分3~4日ほどしかないと思う。

それくらいならそこら辺の安い宿で過ごすくらいは出来るだろう。

なんか喧嘩別れみたいになっちゃうけど、カッ消されたくないので過去に帰る直前に謝罪の手紙でも出せばいいか。

にしてもあんなに感情的になったのは、パパの最期以来じゃないだろうか。

大声を出したせいもあってすごくスッキリした。

さて宿探すか…。

ヴェロニカが腰を上げると、肩を叩かれた。

 

「ん?」

「ヴェロニカちゃん!」

「ヴェ、ヴェラさん」

「またイタリアに来たの⁉」

「え、あ…うん」

 

肩を叩かれたので、振り向くとそこにはヴェラさんがいた。

そういえばさっき病院の前を通ったけど、ヴェラさんが働いているのはあっちだったのかな?

 

「どうしたの?こんなところで」

「い、家出…」

 

咄嗟にそう答えてしまった。

だがあながち間違ってはいないと思う。

ヴェラさんは目をまん丸くしていた。

 

「え、家出でイタリアまで?」

「あ、ちが……実家はイタリア…」

「あら!育ちが日本だったのね。じゃあ今やることないの?」

「う、うん」

「それなら私の家にいらっしゃい、ヴェロニカちゃんに会えなくて寂しかったのよね」

「え、あ…ちょ」

 

ヴェラは笑顔でヴェロニカの手を掴むと、ぐいぐい引き摺っていった。

行く当てもなかったヴェロニカはそのままヴェラに流されるように引き摺られていった。

 

 

 

XANXUS side

 

 

それは、任務の報告書を読んでいたいたときに起こった。

いきなり目の前が真っ白になり、気が付けば森の中に佇んでいた。

状況が分からず、目の前の煙を手で払おうとした時

 

「もーらいっ」

 

聞き慣れた声が耳に届き、そちらに視線を向ける。

そこには黒いフードを被った奴の心臓に向けてベルがナイフを突き立てようとしたところだった。

 

「死にな!」

 

そこからはもはや、反射に近かった。

何故、手が出たのか全く理解出来なかった。

気付いた時には銃を抜いてベルにぶち当てていた。

やっと思考が追いついていくと、黒いフードを被る奴に目が留まった。

俺は直感でそいつの正体が分かった。

そして近くにいたルッスーリアを見やり、そのままルッスーリアに銃をぶち当てる。

俺は、取り合えず今の状況を考えた。

ベルとルッスーリアを見た感じじゃ、ここは過去のハズだ。

なら何故こいつが、ここにいやがる。

 

「ここは過去のハズだ…何故お前がいる…」

 

少しだけ身長が高くなっているそいつを見下ろす。

 

「ヴェロニカ」

 

目の前のガキは驚いていて、目を最大限に開けきっていた。

 

「……パパ………」

 

ガキの声は俺の知っているそれより少し異なっていて、数年後のガキの姿だと確信する。

それよりも、何故過去にこいつがいるのか問いただす。

 

「おい」

「ぅ……なに…」

「何故ここにいる」

「ぇ……と……その…話せば長くて…」

「面倒くせぇ、短く説明しろ」

「うっ…えっと」

 

中々言い出さない目の前のガキに若干イラつき、もう一度名前を呼ぶ。

 

「ヴェロニカ」

「数年後パパが病気で死んじゃったからワクチン持って過去に飛んできた」

 

正直かつ簡潔に理由を吐いたガキの言葉に驚いた。

俺はマフィアをやっている以上どこかで殺されて死ぬと思っていたが、目の前のガキは病気で死んだという。

意外な死因と、何故こいつがそれと関係あるのか分からなかった。

名ばかりの父親の死に何かを思うような奴には見えなかった。

いや、ガキの思考なんぞ分かるものでもないか。

こいつが毎日、声を掛けてくる理由すら理解出来ないのだから。

俺は思考を戻し、目の前のガキの手を見やる。

そこに手を伸ばすと、一瞬ガキの体が強張るも、ゆっくりと閉じていた手を開いていった。

ガキの手首を掴み、俺より二回りも小さいガキの手を見ていた。

俺の憤怒の炎を……呪いを受け継いだその小さな手を見る。

 

「いつからだ…」

「え?」

「炎を宿したのは…いつからだ……」

「ぁ………よ、4歳…くらい」

「何故黙っていた」

「ご、めんなさい」

 

ガキは咄嗟に謝ってきて、その目には涙が溜まり始める。

別に黙ってただけで怒るわけじゃない。

なのに目の前のガキは泣き出しそうな顔で俺を見つめる。

これだからガキは……面倒くせぇ

 

「ごめん、なさ……ごめんなさいっ」

「怒ってるんじゃねぇ」

「でもっ…」

「誰かに見せたか」

「わかっ……分かんないっ……じ、時間軸ごっちゃに…なっててっ」

「お前今いくつだ」

「14歳っ…」

「過去に来たのは」

「14歳になって…、すぐ…」

「過去に来て誰かに炎を見せたか」

「見せた、けど……顔見られてないっから…でもっ」

「…」

「私、が…14歳になった……以降の未来…では、皆知ってる、と…思う」

 

ガキの言葉に今度こそ溜息が零れた。

既に複数の者に知られているならば、このガキはもうマフィアと関わらない生活は出来ないと思った。

というより剣や俺の銃を使用している時点で無理だと気付く。

何故、このガキのことを俺が考えているのか俺自身分からなかった。

俺はガキの安否を考え出す自分自身に嫌気が差し、ガキの手首を離しその場を動く。

足を進めようとしたら、ガキに裾を握られた。

 

「あ"?」

「ぁ……パパがここに来たの、私の持ってた小型バズーカのせいかもしれない」

「いつ戻れる」

「……一か月後…」

 

その言葉に溜息を吐く。

別に過去だろうが未来だろうが俺のやることは変わらない。

気に入らない奴をカッ消す。

それだけだ。

俺は掴まれた袖を無視してそのまま歩き出すと、後ろから何かが倒れる音がした。

煩わしさとイラつきを面に出しながら振り向くと、ガキが気絶していた。

先ほどベルとルッスーリア相手に奮闘していたのを見ていたので、そこで怪我でも負ったのだと推測する。

 

「おい」

 

俺の声掛けにも答えず、ただ静かに意識を失っているガキを見つめ、そのガキに近寄る。

数年前、ガキの前でカスを殺した時のことを思い出した。

あの時気を失ったガキと、今目の前で気絶しているガキが重なる。

何か(もや)のようなものが心臓の辺りをうろつく。

 

 

この感情は何だ…

 

俺は理由も分からず、ガキを横抱きにして茂みを歩き出した。

数年ぶりに抱き上げたガキは、当たり前に重くなっていて、俺はそれにまた理解できない感情が()ぎったような気がした。

茂みを出ると、沢田綱吉とその側近の奴がこちらに向かってきていた。

俺の抱き上げているガキを見ると、そいつらは目を見開いた。

声を掛けられるが、面倒ごとに巻き込まれた俺は苛立っていて、これ以上沢田綱吉の声を聞いたらカッ消しそうになるだろうと思い、そいつらの言葉を無視して歩き出す。

 

「ザ、ザンザス!お前まさか10年後の―――…」

「沢田綱吉、それ以上言ったらてめぇをカッ消す」

「ひぇぇええ」

 

本気で、銃を抜こうかというところまで考え至ったが、耐える。

舌打ちし、沢田綱吉から離れる。

周りを見ると、ここが白蘭の野郎とやり合ったところだと分かった。

そしてさっきのカスの言葉で、ここが10年前であることが分かる。

俺はボンゴレの所有する個人使用のジェット機の場所を思い出す。

確か10年前のこの日はそれで日本へ来た記憶があった。

その方向へ向けて足を進めると、カス鮫とレヴィがボロボロの姿でこちらを見ていた。

俺の姿を捉えるなり目を見開いて大声を張り上げる。

 

「う"ぉぉおおいボスゥ!そいつ襲撃者じゃねぇのかあ"⁉」

「黙れ」

「ボス、一体何があったんですか⁉」

「黙れカッ消すぞ」

 

カス鮫の声にイラつくが、両手が塞がっている為ぶっ飛ばすこともできずさらに不機嫌になっていった。

 

「ちょっとぉボスったらぁ!いきなり攻撃することないじゃなぁい!」

「ねぇボス、そいつ誰。さっきの奴っしょ?殺さねーの?」

 

ルッスーリアとベルが先ほどの俺の攻撃から回復して、追いかけてきた。

無意識に強めに撃ったのか、二人の額からおびただしい血が流れている。

普段であれば、ルッスーリアにガキを渡していただろう。

だが、今はどうしてもこのガキを誰かに任せる気にはならなかった。

 

 

ジェット機に乗り、そのままイタリアに向けて飛び立つ。

機内ではいくつかの視線が俺に突き刺さってくる。

そんな空気に耐えられなかったのか、ルッスーリアが声を出す。

 

「ね~え、ボス。何でその子助けたの?敵じゃないのかしら?」

「あ"?」

「あたし、その子と戦った時に腹部思いっきり蹴っちゃったから折れてるハズよん、放置すると最悪死んじゃうわよん?」

「………治せ」

 

俺の言葉があまりに衝撃だったのか機内に乗っていた奴等全員が目を見開く。

その視線を無視し、俺はガキをルッスーリアに預ける。

 

「ちょっとぉ~どうしたの?ボスが…他人を気遣うなんてっ」

「あ"あ"?くだらねぇこと言ってないで手ぇ動かせ、カッ消すぞ」

「んもぅ、あたしさっきの戦いで炎使い切ったから後で治療するわよん」

「っけ」

 

俺は腕を組み瞼を閉じる。

誰もが俺の不機嫌な雰囲気を察知したのか、喋ることはなかった。

数時間の末、イタリアに到着し俺は執務室へ向かう。

そこは10年後と大差なく、いつもの椅子に座り出す。

直ぐにルッスーリアがガキを横抱きにしながら入ってきた。

 

「ボス~、この子あたしの隣の部屋に寝かせとくわよ~」

「勝手にしろ」

「ボスも早く休んでね~」

 

ルッスーリアの遠ざかる足音を聞きながら、俺は部屋を見渡す。

ガキがいるから煙草は控えてくれと言われ、最近じゃ殆ど吸っていなかった煙草が机の上に置いてあった。

俺はその煙草を一本取り出し、火をつけた。

口に咥えた煙草が思っていたよりきつく、眉を歪ませる。

 

「ッチ」

 

俺は全く減っていない煙草の火を灰皿に押し付け、ベッドに移動するとそのまま眠った。

 

 

翌日、目が覚めると、腹が減ったのでルッスーリアが飯を用意している部屋に足を向ける。

 

「あらボスおはよ~今ベーコン焼けたから待っててね~」

 

ルッスーリアは俺に気付くと、俺の座る椅子を引き、キッチンへ行ってしまった。

俺が椅子に座ると、テーブル越しの反対側にある椅子が視界に入った。

数年後には、ガキが座れるように小さなクッションが置かれる椅子。

ふと思い出した事柄に眉を顰める。

ルッスーリアが飯を用意し、俺はそれを腹に入れると、部屋に戻った。

数時間した頃、カス鮫が今回のミルフィオーレとの交戦での書類を至急仕上げてくれと言ってきた。

だが俺は10年前の事柄なんぞ覚えていないので、書類は放置していた。

カス鮫が数時間後に、書類を取りに来たと言って部屋に入ってきた。

 

「おい!クソボスゥ!この書類は今日までって言ってただろうがよぉ"!」

 

カス鮫の煩わしい声に俺はイラつき、近くにあったワイングラスを投げつける。

見事にワイングラスがヒットしたカス鮫は睨んできた。

 

「う"ぉぉおおおい!何しやがる!くそっ、後で取りに来るからなぁあ"!」

 

それだけ言うと部屋を大きな足音を立てて出ていく。

俺は静かになった部屋で、仕方ないので最低限の書類に目を通そうとした時、遠慮がちに小さく扉が開いた。

開いた扉にはガキが俺の様子を伺いながら入ってきた。

俺はガキを視界に捉えると、また書類に視線を戻す。

ガキは俺に最低限の情報だけ聞いてきたので、仕方なくそれに答える。

そしてガキは今までの経緯を喋り出した。

20年前のリング争奪戦も遠くから見ていたと聞いたときは、僅かに動揺した。

であれば、俺と九代目が血縁ではないと知っているのだろうか。

馬鹿馬鹿しい、知られてどうこうなるもんじゃねぇ…

ガキが全て喋り終えると、俺の様子を伺っていた。

ガキの話を聞いていた限りじゃ、思うことは一つだけだった。

 

「てめぇは馬鹿か」

「ぅ…」

「誰が生き返らせろと言った」

「…」

「俺がそう選んだなら、放っておけ……面倒ごとを増やすな」

 

そう、こいつがやった行いは全て俺にとっちゃどうでもよかった。

こいつが何もしなければ俺が今過去に飛ばされることもなかったわけだ。

ハッキリ言って面倒ごと増やすだけ増やしやがったガキにイラつき出す。

死のうが生きようが俺の勝手だ。

ガキに惜しまれるような人間でもない。

何故このガキは俺を生き返したのか…

ただのエゴで、ここまでやったとすれば滑稽だ。

救いようのない馬鹿が俺のガキなのだろうか…

 

「反省も後悔もしてないからね」

「…」

「私の私欲だ……全部、全部…」

 

ガキは小さな声で、だが俺に聞こえる声量で呟く。

 

「少しくらい、我儘聞いてくれてもいいじゃない」

 

我儘だと?過去改変が…?

我儘だとこのガキはのたまった。

 

「ぶっ、ぶはっ…過去改変が我儘だと?っく……くく…くはは」

 

俺は耐えきれず笑い出す。

ガキはそんな俺を見て目を見開いている。

 

滑稽だ…このガキは滑稽だ。

何も知らない無知なガキは、俺の命を我儘で蘇らせた。

それがどういうことなのかすら知らない阿呆なガキだ。

俺を生き返らせたところで俺がこいつに何を思うわけでもないというのに。

見返りを求める目の前のガキに俺は興が冷めたような感覚を覚える。

 

「くだらねぇ、過去に足止めされる奴なんぞ器が知れる…施しを与える価値すらねぇ」

 

俺の言葉にガキの雰囲気が一変した。

まさにそれは憤怒を表すかのように…

 

 

「私だって!パパがあのまま素っ気無い態度で死んでくれればこんなことしなかったわよ!」

 

 

ガキは大きな声で喚く。

ガキの大きな声を俺は初めて耳にした。

 

「何よ!今まで父親らしいこと何一つしたことなんてなかったじゃない!声掛けても素っ気無く返すだけじゃない!」

 

ガキはついに泣き出しながら、不満を喚き散らす。

 

「なのに何で……何で、何で……なんでっ」

 

「どうしてっ……どうして私の心配なんかするのよ‼」

 

その言葉に俺は耳を疑った。

俺が?このガキを?

ありえない―――ガキの妄想だ。

 

「どうして頭を撫でてくれたの⁉」

 

ありえない、この俺がこんなガキに…

絆されるなどありえない。

 

 

「どうしてっ…私の名前を呼んだのよ‼‼」

 

 

それは叫びだった。

ガキは憤慨した様子で、大股で部屋の外まで出ると俺の方を振り返り、俺を睨みつけた。

 

「パパのバカ!」

 

今までにないほどの音を出して閉められる扉を俺は呆然と見ていた。

ガキの言葉があまりにも衝撃的過ぎて、信じられなかった。

ガキの言葉が脳内を反芻(はんすう)する。

すると、言い様もない程の(もや)が心臓を駆け巡った。

 

何だこれは……

 

俺は今までに味わったことのない不快感に襲われる。

何故あんなガキ如きを俺が気にしなきゃいけない―――!

ふざけるな、ふざけるな!

 

「ふざけんな………くそっ……」

 

俺は知らぬうちに手に持っていた書類を燃やしていた。

灰になったそれを眺めていると、部屋の扉が勢いよく開く。

 

「ちょ、ボス!え、何があったのよん!扉が溶けてるわよ?」

「うっせぇ…要件がねぇなら消えろ」

「あら、機嫌悪いところごめんなさいねぇ…さっき例の子が屋敷の外に走っていったけどいいのかしら?」

「放ってろ」

「分かったわ~」

 

ルッスーリアはそれだけ言うと、俺の視界から消えた。

俺は無意識に近くにあった酒を瓶ごと煽る。

ああ苛つく。

あのガキをカッ消せばこの(もや)は治まるのか。

カッ消されたガキを想像すると、更に心臓付近に(もや)が広まった。

俺は(たま)らず持っていた酒瓶を扉の方へ投げつける。

瓶の割れる音が聞こえるが、俺の苛立ちは治まることはなかった。

この(もや)は何だ…

 

「くそがっ」

 

俺は少しでも気を晴らす為に椅子から立ち上がり部屋を出る。

廊下の途中で誰かの声が聞こえるが、憤怒の炎で黙らせて進む。

屋敷を歩き回っても気が晴れることはなかったので、仕方なく屋敷の外まで足を向ける。

後ろからカス鮫の声が聞こえてきたが俺が銃をぶち込むと静かになった。

 

ああ 苛つく

 

胸の内に溜まる(もや)

 

いつまでもめそめそと泣き喚くあのガキに――――…

 

 

 

途方に暮れた俺の足は

 

小さかった頃、ボンゴレ本部の広大な敷地で迷子になった時の俺の足と重なった。

 

 

 

 




ザンザスとヴェロニカ、絶賛喧嘩中です。
ザンザスの性格見てると、多分受け入れるかカッ消すかの二択だと思うんですよね。
ここでヴェロニカを殺しても多分数日で元のザンザスに復活すると思う。
少し扱いづらい場面でした。
毎回指摘・コメントありがとうございます!


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Veronicaの父と炎と手と

ヴェロニカは嘆いた。

この身に流れる血を

ヴェロニカは耽る。

記憶と共に 虚しく




「じゃあお父さんと喧嘩しちゃったのね…」

 

現在、私ヴェロニカはヴェラさんの家で、パパの愚痴を言っていた。

 

「喧嘩っていうより、私が一方的に不満ぶつけてきただけ…」

「へぇ」

「なんていうか……初めて父に馬鹿なんて言ったから、帰るの怖くて…」

「お父さんは怖い方なの?」

「うん……」

「殴っちゃうとか、そんな人?」

「あー……うん」

「なるほど、そりゃ娘と疎遠になりそうな父親なわけだ」

「別に父が嫌いなわけじゃないし……むしろ好きだけど…」

「あれ?意外…」

「暴君だけど、私を殴ったことはないし…」

「ふむ、ヴェロニカちゃんには甘いの?」

「そういうわけでもない…なんていうか、殴るほど近かったわけじゃないっていうか…」

「あー……でも、ヴェロニカちゃんそのお父さんのどこが好きなの?」

「……………一応、私の将来のこと…考えてくれてたから……」

「なるほど、垣間見せる愛情に絆されたのか」

「え…っと…愛情なのかな……あんま分かんないけど……嬉しかった」

「それを愛情と言わずなんて言うのよ!」

 

ヴェラさんは呆れながら笑う。

だけど私には、パパのあの言葉が愛情なのか判断に困る。

だって、あの、パパがだよ?

たかが血の繋がった娘如きに、不必要と判断した愛情が、芽生えるだろうか?

答えは(いな)

最期の言葉は哀れみのようなものだと思うけれど…それすら怪しい。

私は父の言葉を都合よく、解釈し、それを糧に前に進んできた自覚がある。

でも、でも都合よく解釈したかった。

そうしないと虚しさで押し潰されそうだったから。

ヴェロニカの表情が乏しいことに気付くヴェラは、ヴェロニカの手を握る。

 

「あのね、ヴェロニカちゃん」

「?」

「母親もそうだけど、父親も…自分の子供に何も思わない人はいないわ…」

「…」

「憎しみであり、慈しみであり、哀れみであり…何かしら思うことはあるハズよ」

「そうかな…」

「現に、貴方のお父さんはあなたに手を上げたことはないんでしょ?それは、あなたが大事だからよ」

「あの人がそんなこと思ってるハズないよ…」

「あなたのことを大切に思っているから、あなたの将来のことを考えているのよ」

「でもただ…私の将来が父自身に面倒がかからないようにする為に考えていたかもしれないし…」

「そんなこと考えるくらいなら施設に預けるわよ、普通」

 

それは、私には憤怒の炎が発現する可能性があったからで……

思えば思うほど、パパが私を手元に置いていた理由が出てきて虚しくなっていく。

私の価値は何だろうか……

 

❝施しを与える価値すらねぇ❞

 

 

ザンザスの言葉を思い出すと、ヴェロニカは胸が苦しくなった。

 

「こんな血………受け継ぎたくなかった………普通に産まれたかったっ…」

「ヴェロニカちゃん、それを言ってはダメよ」

「…」

「それをね、言われると……きっと、絶対…傷付くわ」

 

ただの娘として愛されたい…

 

「ヴェロニカちゃんはお父さん嫌い?」

「好き……」

「なら、傷ついて欲しくないよね?」

「…うん」

「じゃあもう…そんな悲しいこと言わないで」

 

ヴェラさんは私を見て苦い表情をする。

 

「多分ね、その人、不器用なだけじゃないかしら?」

「不器用?」

「多分、それが愛情だと気付いていないんだと思うわ…持て余しているように思うの…」

 

いやあのパパは愛情なんてもんドブに捨てそうだけど…

 

「可哀そうな人ね…愛を知らない人はとてもつまらないわ…」

 

はたしてあのパパに面と向かって可哀そうなどと言える人はこの世界にいるのだろうか…

いや、いない。

そうか、他人から見るとパパって可哀そうな部類なの……か?

いやそんなハズはない、ないったらない。

 

「ヴェロニカちゃんがお父さんに愛情を教えてあげたら?」

「え」

 

無理。

咄嗟に脳内に出てくる二文字を振り払い、ヴェラの言葉を待つ。

 

「別に、言葉にしなくてもね…伝わることは沢山あるわ…一緒にいてあげたり、お菓子あげたりするだけでも愛情は伝わるものよ」

 

なるほど、餌付けかな?

パパの好物っていったら高級肉じゃん。

愛情(はぐく)む前に私が破綻する。

一緒にいるだけで私のチキンハートじゃ寿命が縮みそう…

ふむ、その前にパパに愛が芽生える可能性自体、大気圏超えそうなほど低い。

愛情?なにそれおいしいの?状態だもんね。

これは私が潔く諦めた方がいいのでは?

あのパパに何かを求めること自体が無謀というか…

 

「諦めちゃダメよヴェロニカちゃん……諦めて苦しむのはあなたなのよ」

 

ヴェロニカの心を読んだように、ヴェラを呟く。

 

「意地でも関わってみて……あなた達はお互い何も知らなさすぎるのよ」

「……」

「ここに来る前に、お父さんに思ってることぶつけてきたんでしょ?」

「うん」

「ならもう一歩目は踏み出したわ…あとは頑張って歩き出しなさい」

 

ヴェラさんは私の背中をバンバン叩くと、玄関に放り出す。

 

「ほら、今から家に帰ってお父さんと仲直りしてきなさいよ!」

「え」

「大丈夫よ、失敗したらまたここに来なさい!相談くらい乗るわよ!」

「え、あ………うん」

 

ヴェラの勢いに負け思わず頷くヴェロニカ。

 

「いっその事抱き着いちゃえば?応援してるわよ~」

 

やめて下さい、死んでしまいます。

ヴェロニカは戸惑いながらも、遅い歩調でヴァリアー本部への帰り道を歩き出す。

観光地街を少しだけ逸れたところの、下が歩道の橋の上を歩いていた。

うう、足が重いですヴェラさん。

これ死地に赴いてる戦士の気分です、絶対に父親と仲直りしに行く人の気分じゃないと思います。

 

❝ヴェロニカ お前は俺のようになるな❞

 

何を思ってそう言ったのさ、パパ…

でも少し冷静になって考えたことがある。

私はザンザスを前世の父親に当て嵌めようとしていたのかもしれない。

どれだけ頑張ってもザンザスがヴェロニカの父で、前世の父はヴェロニカの父ではないのだ。

ザンザスは父親らしくない、と私が思っていたのは、前世の父親を当たり前の基準として見ていたからなのかもしれない。

前世の父は過保護だった記憶があった。

だから余計、ザンザスが父親に思えなかったのか。

ああ、こんな記憶さえなければ今頃苦しまずに、ザンザスが父だと納得していたのだろうか。

ザンザスが私の父親であり、ただ唯一血の繋がった私の家族。

事実を飲み込むだけで、本当は理解していなかったんだ。

父とは娘を心配するものだ、そんな思い込みでザンザスの最期の言葉を自分勝手な解釈をして、先走った行動を起こした。

ザンザスがそんな男じゃないのは分かっていたつもりでも、父親という虚像を通してザンザスの言葉を解釈した。

ああ、はやり私は阿呆だ。

本当に歩み寄らなかったのは私の方だ。

いやパパも歩み寄る姿勢すら見せなかったけれど。

私なんてそう思い込んでいただけで、本当は一線を引いて彼を見ていた。

なんて失礼で、侮辱的で、なんて滑稽なんだろうか。

父親らしくない彼と、娘らしくない私はお似合いだったのだろうか。

そういう父なのだろうと、あっさり認めてしまえばこんなに苦しくならずに済んだのか?

無意識に、足元にあった拳サイズの石を蹴飛ばす。

石はそのまま勢いを失わず、橋の柵の間を抜けて下に落ちて行った。

はぁ……腹括って帰るしかないのかな…

いっそボンゴレ本部から日本支部に連絡取って、日本に戻りたい。

橋を渡り切ると、いきなり頭に衝撃が走った。

 

「いっ!」

 

思わず声が出るほどの痛みが襲ってきて、手で痛みだす部分を押さえる。

 

「なにす―――――」

 

睨みながら振り返ると、ザンザスがヴェロニカを睨みながら拳を握っていた。

あ、死んだ。

瞬間私は死を覚悟した。

ああ、二度目の人生は短かったな…

 

「おい、さっき石落としやがったのてめぇだろ」

 

…………え?

い、石?

パパの額が若干赤くなっているけども…。

え、嘘……も、もしかして

 

「え……パパに当たったの?」

 

ザンザスが盛大な舌打ちをする。

えええええ、うっそおおお

避けろよ!それでもヴァリアーのボスかよあんた!

いやこれ100%私が悪いけど!

石ころ蹴飛ばして下の方に落とした私がめっちゃ悪いけれども!

何で当たるのさ!仮にもあんたボスだよね!

 

「んだその目は……カッ消すぞ」

 

いやカッ消す為に私を探しに来たのでは?

私さっきあなたに向かって色々喚き散らしたし…

唖然としているヴェロニカにザンザスは再び舌打ちする。

舌打ちを聞いて、ヴェロニカは我に返りザンザスに謝る。

 

「え……あ……ごめん、なさい……」

「クソがっ…」

 

しかしあのサイズの石がぶつかったってことは、結構痛かったハズだ。

まぁパパのことだから、平気だとは思うけれども。

えー、私もう死亡フラグ乱立してるじゃん。

めっちゃ死に急いでるじゃん。

すまん、殺すなら一気にやってくれ。

死亡理由が父親に石当てたからとか……あ、泣けてきた。

だがザンザスはヴェロニカの横を通り過ぎ、歩き出す。

あ、あれ?

まさかさっきの拳骨で許してくれるの?

未だズキズキ鈍い痛みを訴えてるので、それなりの力で殴っているは分かるけど。

いやそれでも血が出ていないから凄く加減しているのは分かるけど!

前を無言で歩くザンザスにヴェロニカは困惑する。

 

 

 

「さっきは言い過ぎた」

 

 

 

……………はい?

ごめん、耳おかしくなったかも。

パパが今、言い過ぎたって言ったような声が聞こえた。

ない。

え、あれぇ?ゆ、夢?

 

「え……パパ?」

「何だ」

 

あれ、パパが振り向いてくれる。

やっぱこれ夢じゃね⁉

だって今まで足とめるだけで振り向いてくれたことなんて一度もなかったし!

え、じゃあ夢なら、今のうちに謝る練習しておいた方がいいのかな?

 

「さ、さっき馬鹿って言ってごめんなさい」

 

私の言葉にパパは何も返すことなく、再び歩き出した。

んー……リアルな夢だ。

ってかどっから夢なんだこれ……

そんなヴェロニカにヴェラの言葉が蘇る。

 

『いっそ抱き着いちゃえば?応援してるわよ~』

 

夢なら抱き着いても死にはしないだろ…

いやでも抱き着くのはハードルたけぇな。

手……手を握るくらいなら…………振りほどかれたら泣きそう。

どうせ夢だし、こんな機会ないもんな。

 

思い切ったヴェロニカは前を歩くザンザスの手を後ろから握る。

一瞬、握ったザンザスの指がピクリと動くが、ザンザスは無言で歩き続ける。

 

あ、やっぱ夢だ。

ヴェロニカはそう確信する。

だけれど夢の中でぐらい親子のように手を繋いで帰ってもいいんじゃないですかね。

夢の中ででしか出来ない時点で酷く虚しいがな。

パパの手って硬くて大きいなぁ…

銃を強く握りしめるからかな、親指と人差し指の間が若干他の部分より硬めだ。

この手で同じ炎を出すのだ。

 

憤怒の……炎を……

 橙色の輝く光を…

 

 

ああ、私はこの人の娘なのだ。

同じ血が流れていて、同じ炎を宿した血縁者。

不愛想で素っ気無い、暴君なこの人が私の父親なのだ。

私の、生きている今の、家族なのだ。

 

 

「私……パパの子でよかった…」

 

禍々(まがまが)しくも 

  (おびただ)しくも

     高潔な美しい炎よ

 

 

前世で人混みに流されて泣いていた私の手を掴んでくれた顔も覚えていない父を思い出し、私は無性に泣きたくなったのだ。

 

 

 

 

 

XANXUS side

 

 

気を紛らわす為に街中を乱雑に歩いていた。

そろそろ日が暮れる上に腹減ってきたので本部へ帰ろうとした時

 

ゴッ

 

「っ…⁉」

 

真上から何かが激突してきた。

俺は気が散っていた中、それに気付かずもろに額にぶつかる。

額の痛みの中、足元に転がる石が視界に入る。

痛みと共に怒りが沸き上がる。

 

――――――――カッ消す!

 

石は上から落ちてきていて、俺は直ぐに橋の上に登る。

橋を渡り切るというところにガキが歩いていた。

ガキの後ろ姿に見覚えがあり、俺は額に血管が浮いた気がした。

あのガキ!いい度胸してんじゃねぇか!

俺は大股にそいつに近づき、一応加減しながらそいつの頭を殴りつける。

もちろんリングをつけたままだ。

そいつは頭を押さえ俺の方へ振り返ると目を見開いていた。

ガキの態度を見ていて、石をぶつけてきたのは偶然だったことが分かる。

だが許せるかで言われると、(いな)だ。

一応殴ったので苛立ちはほぼ収まる。

目の前のガキは困惑しながらも慌てて俺に謝る。

するとガキの目には涙が溜まり出す。

また泣かれるのは御免だと思い、俺は仕方なくガキを慰める。

 

「さっきは言い過ぎた」

 

ガキは涙の溜まった瞳を大きく開き、俺を凝視するが俺は無視してそのまま歩き出す。

ガキは焦ったように俺の後ろをついてくる。

少しすると、ガキが上擦った声で俺を呼んだ。

俺は無意識に、足を止め振り返る。

 

「さ、さっきは馬鹿って言ってごめんなさい」

 

それだけ言うとガキはまた黙り込む。

今思えば俺に正面切ってあれだけ喚き散らす根性は称賛に値する。

まぁただの無謀と言えばそれで終わりだが。

少し無言で歩き続けていると、いきなりガキが俺の手を握ってきた。

俺は一瞬反応したが、放置した。

本来なら振りほどくなり悪態つくなりしていただろう。

ただ、ガキのまだ柔らかい手のひらの感触に心臓をうろついていた(もや)が薄れていくような気がした。

 

俺はふと思った。

 

哀れだ

 

このガキは哀れだ。

 

俺の血をその身に流し、呪われた炎を継いでしまった哀れな子供。

 

繋がっている小さな手のひらがとても、とても…哀れで仕方なかった。

 

 

「私……パパの子でよかった…」

 

 

ああ、この(もや)はかつて俺が捨てた感情だ――――……

 

 

 

 

 

 




夢だけど夢じゃなかったwwww
やっと親子らしいこと出来ました!
ぶっちゃけここら辺が書きたくて長々と長編を書いてました(笑)


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Veronicaの正体と露呈

ヴェロニカは観念した。

隠せないと

ヴェロニカは喜悦した。

身に受ける愛に


「ねぇお前ボスの娘なの?」

 

私はヴェロニカ、現在ピンチです。

目の前にはベルがニヒルな笑みを見せながら、私をロックオンしています。

 

「………」

「王子聞いちゃったんだよね~、『パパのバカ』って凄く怒ったような声。」

 

あ、詰んだ。

何とか誤魔化そうと考えたが、これは詰んだ。

大きな声を出してしまった私の完璧なミスである。

 

「でもさー…少し分かんねーことがあんだよね」

 

まだ若い肌をしているベルお兄さんは私を隅々まで見てるんですが、今私フード被ってるから見れなくね?

 

「お前どう考えても13~16くらいだろ?合わねーんだよなぁ…ボスの子だったら11~17は有り得ねーし」

 

ああ、冷凍期間ありましたもんね。

っていうかお前まだパパが10年後から来たの気付いてないの?

え、お前のボスだろ。

いや確かにパパは全く老けないけど!

髪形も変わってな…いや少し長くなってるじゃん!

目頭にも小皺が出来てるじゃん!気付けアホ!

 

「んじゃお前は何?っつーわけ…」

「さぁ?」

 

一触即発の雰囲気にヴェロニカは全身に炎を纏う―――

としたとき、勢いよくヴェロニカの部屋の扉が開いた。

 

「ちょっと~!あなたボスの娘ってどうして教えてくれなかったのよん!って、ベルちゃんもいたのね」

 

ルッスーリアが体をくねくねさせながら入ってきて、爆弾を投下する。

 

「は?オカマもこいつがボスの娘だと思ったわけ?」

「思ったも何も、この子は正真正銘ボスの子よ」

「はぁ?時期が合わねーじゃんか」

「それはね、この子が未来から来てるからなんですって」

「は?」

 

ちょ、ま、どっからそれ聞いたの?

え、私の存在はトップシークレットというか、この時代の人には誰にも教えてないのに。

 

「誰から聞いたわけ?」

「ボ・ス・よ」

 

あんたかパパ!

どうしてくれんじゃおいいいい

 

「何でボスそれ知ってるわけ?」

「ボスが10年後のボスと入れ替わってるらしいわよ?」

「は⁉」

 

それも言っちゃったか!

ああ、もう…これ全部バレてんじゃん。

私の存在どうなんだよマジで。

 

「ヴェロニカちゃんでしょ?顔を見せてちょーだい」

 

ルッスーリアは目にも留まらぬ速さでヴェロニカのフードを剥ぎ取る。

いきなり視界が広くなったヴェロニカは何が起こったのか分からず呆然とする。

 

「あっら、見てボスにそっくりよ~!特にこの凛々しい眉毛!あなたとっても美人じゃな~い!」

「あー…これはボスの娘だわ…」

 

待って、何で二人そろって私の顔見ただけでパパの娘って納得するわけ?

私が口を開こうとした瞬間

 

「う"ぉぉおおおおい、ボスの娘って本当かぁ"!」

 

ああ、なんか来た。

つかこれ以上知っている人増やしたくないんですが。

スクアーロはヴェロニカの顔をまじまじと見ながら納得したように頷いた。

 

「これはボスの娘だぜぇ"」

 

だから何で私の顔見るだけで納得するんですかねぇ?

一度徹底的に問い詰めてみたいんですが。

 

「つかオカマ、何でこいつのことボスに聞いたんだよ」

「あ、それはねスクちゃんがいきなりボスがロリコンだったって叫んであたしの所来たからよ~」

「は?ロリコン?」

「だってよお"、書類仕事終わらせねぇボスを探してたらボスがこいつと手ぇ繋いで歩いてたんだぜえ"?ボスがそんな趣味だと思うじゃねぇかあ"」

 

おおふ、あれ見られてたのか、マジか。

待って、本部着く前に一応距離離していたけど、どこで見たんだよくっそ。

 

「は?ボスが手繋いでたの?精神病院紹介してもらえよ、シシッ」

「ボスに確認しに行ったら俺のガキだって言うからもービックリしちゃうわよねぇ!」

「あ"?つーかボスの娘だと時期おかしくねぇかあ"?」

「あ、それはね―――――」

 

ルッスーリアが先ほどと同じ内容をスクアーロに教えると、スクアーロは直ぐに部屋を出て行った。

 

「う"お"おおおおおいクソボスゥ!入れ替わってるならそうと言いやがれぇぇぇええええ!」

 

多分書類とか丸投げでもしてたのかな?

気付けばベルが私を凝視している件について。

 

「何」

「元々口数すくねーの?」

「あらそこまでボスに似たのかしらね?」

「つーかいつボス10年後と入れ替わってたんだよ」

「あれでしょ、白蘭と戦った後の…」

「あ、そういえばお前何でボス襲撃したんだよ」

 

これ言わなきゃいけないの?

ダメじゃね?

いやもう私の存在バレてるから何やっても意味ないような気がしてきた。

ヴェロニカは諦めて、事の全てを省略しながら説明した。

 

「はあ?ボス14年後に死んじゃったわけ?マジかよ」

「それであなたが過去に来たのね、ボス相手するなんて大変だったわねぇ」

「つか何で襲撃?普通にボスに言えばいいじゃん」

「そう言うけど、パパが素直に予防接種受けると思うの?」

「「しねぇな/しないわねぇ」」

「でしょ、本人も勝手なことするなって怒ってたし」

「まぁボスらしいっちゃらしいけど…」

「じゃあ私たちからしたらボスの命の恩人になっちゃうわねぇ…ありがとヴェロニカちゃん」

「シシッ、いい仕事すんじゃん」

「別にあなた達の為にやったわけじゃないわよ」

 

ルッスーリアは始終私の頭を撫でまくっていた。

ベルは嫌がる私の頬を摘まんだり伸ばしていたりして遊んでいたので炎でぶっ飛ばした。

最近手が出るの早くなってるけど、パパの影響かなぁ

ベルが窓から消えたあと、ルッスーリアは夕飯の準備をすると言ったので私も手伝うことにした。

 

「ボスが少しだけ丸くなったように見えたのは、10年後と入れ替わってたからなのねぇ」

「は?丸く……なってんの?」

「ほんの少しだけそう感じただけよん、それにあなたのこと大事に思ってるようだし…少し意外だわ~」

「大事……ねぇ…」

「あら、気絶したあなたをイタリアまで運んだのはボスよぉ?」

「………そう」

 

まじで?

ルッスーリアとかに任せてたと思ってた。

あー…何だろ……これは………嬉しい。

帰り道の夢も夢じゃなかったし、なんかパパがおかしい。

なんか物凄く、優しいような気がする。

何でだ、何があったし。

 

「怖いパパの方がヴァリアーには合ってるんじゃない?」

 

私はただの興味本位でルッスーリアに聞いてみた。

 

「あら、あたしはどんなボスも愛せる自信があるわよん!」

「………そっか…」

 

❝ヴェロニカちゃんがお父さんに愛情を教えてあげたら?❞

 

❝あなた達はお互い何も知らなさすぎるのよ❞

 

 

「そうだね」

 

「でしょぉ!あたしのボスへの愛は誰にも負けないわよぉ!」

「ねぇルッスーリア、ご飯のあと暇?」

「空いてるわよぉ?どうしたのん?」

「私にお菓子の作り方教えてほしいの」

 

流石に高級肉は無理です。

 

3日後、私はリビングにいた。

どんなに計算しても今日中には過去に自動的に戻るハズである。

それはヴェロニカの事情を知っている人たちには教えてあった。

ヴェロニカは本部にいるメンバーとカードゲームをして時間を潰していた。

 

「あ……」

「んー?次お前の番だぜー」

「あ、えっと…トイレ」

「んじゃカード出してから行けよ、シシッ」

「うん」

 

ヴェロニカはカードを出すと、テーブルに手札を伏せ、部屋を出る。

部屋をでると、一旦自室に戻り剣と銃を持ってザンザスの執務室へ向かう。

 

「パパ、入るね」

 

執務室の扉をゆっくり開けると、奥にはザンザスが机に脚を乗せながら眠っていた。

 

「寝てるのか……」

 

お菓子一応作ったけど、これ机の上に置いとくだけでいいかな…。

ヴェロニカはザンザスの机の上に包装されたクッキーを置いた。

多分あと何分もせずに私は過去に戻るだろう。

何故かは分からないが、漠然と分かってしまったタイムリミット。

目の前で目を閉じて、浅い眠りを貪るザンザスを眺める。

 

 

「パパ、またね」

 

ああ、私は満足だ。

パパを救えた。

パパと手を繋ぐことが出来た。

少しだけパパのことを分かったような気がした。

 

一瞬だけパパの真っ赤な瞳が見えたような気がした。

 

 

 

瞬きをすると、そこは私の日本で住んでいたマンションだった。

 

「あー…どれくらい経ってるんだろう…」

 

沢田綱吉達とは違って、私は原作のように時間調節したタイムトリップじゃないからなぁ…

もしかしたらこっちでも一か月経ったのかな。

ヴェロニカはTVを付けて、日付を確認した。

あ、同じ日付…ここでは一日しか経ってなかったか…

じゃあ沢田綱吉達も今日中には戻ってくるのか、いやもう戻っているのか?

一応、一か月前の記憶だから少し朧気だな…明日は一体何があっただろうか。

ヴェロニカは鞄の中を探り、学校のノートを確認する。

っていうか、私もう学校行く意味なくね?

だって当初の目的達成したわけだし。

これ以上原作キャラに関わっていって、何か変な展開になるの困るんだけど。

アニメじゃ未来編までしかなかったし、これ以上ここにいても私自身が不安材料すぎる。

確か姉さんが漫画の方で継承式がなんとかって言ってたような…

ああ、ダメだ前世なんてもうほとんど思い出せなくなってる。

母の名前も父の名前も、姉の名前も思い出せない。

別にそれがショックであるとは思わない。

これも多分、この世界でヴェロニカとして自己を確立してしまったからなのだろう。

ただ少しだけ寂しかった。

まぁ普通は前世なんて覚えてるもんでもないし、そこまで悲観しているわけでもない。

仲田夏美の人生は過去であり、既に終えた人生だ。

私にとっての原作終了はここであり、もうこの記憶を思い起こすことはないだろう。

あー、あとは未来から何かしら連絡があればなー…

 

ポーン

 

インターホンが鳴り、私は画面を見る。

そこには沢田綱吉がそわそわしながら、カメラを眺めていた。

取り合えず入れてやるか、どうせ今回の未来のことだし。

いきなりロックが開いたことに肩をビクつかせて、びくびくしながら中に入っていく。

こいつ本当に白蘭倒したのか?

玄関がノックされ、ドアを開けると、沢田綱吉がいた。

 

「やぁ」

「……リボーンは連れてこなかったのか?」

「あ、俺だけ……少し聞きたいことあったから」

「そう」

 

中に入れて椅子に座らせる。

 

「何」

「あ、えっと……あのさ…」

 

中々言い出さない沢田綱吉に苛立つ。

なるほど、パパが苛立つ理由がなんとなく分かった。

 

「あのさ……ヴェロニカさんって…ザンザスの子供?」

 

まさかそれを言われるとは思わなかった。

あるとしても未来に来ていたかとかそんな内容だと思っていたが、まさか過程ぶっ飛ばしていきなりそれを聞きだしてくるとは。

 

「何で?」

「え、あの、なんていうか…勘みたいなものなんだけどさ……」

 

超直感って本当に厄介だなぁ

 

「あ!でもこのこと誰にも言ってないよ!リボーンにも!言うつもりないし…」

 

おや?既にリボーンには相談していると思っていた。

彼自身で考え彼自身で行動するのは、ハッキリ言って予想外だった。

この彼ならば言ってもいいのかもしれない。

 

「でも知られて欲しくないとか…だったら忘れるけどさ」

「そうだよ」

「え?」

「私の父はザンザスだ」

「あ……そっか……えっと、ヴェロニカ…さんは未来から来たんだよね?」

「そう、今から24年後」

「に、24年…俺が38歳の頃…」

「父が死んだから、それを防ごうと過去に来たのよ……あなた達が未来に行ったように…私は過去へ来た」

「え⁉ザンザス死んじゃったの⁉」

「病気でね、この時代じゃまだ治療法がないし、未来でも発症すれば治療法は確立されてない病気」

「えええ…病気ってなんか意外だなぁ」

「ワクチンは開発されてたから、それ持ってこの時代に飛んだの」

「ああ、だからリング争奪戦の時や白蘭の決戦後、ザンザスにそれ打とうとしたんだ…」

「父が弱っている時くらいしか無理そうだったから」

「た、確かに…」

「まぁ最初の機会はあなたに潰されたけど」

「う、ご、ごめん…」

「もういいわ、未来で打てたし…父の死は無くなった」

「じゃあヴェロニカさんはもう未来に帰るの?」

「そうしたいけど、未来から連絡がくるまで待機」

「そっかぁ…あ、このこと誰にも言わないよ、約束する」

「漏らせばカッ消すがな」

「ひぇぇええええ、そこはザンザスに似ないでよ!」

「それより、聞きたい…何故私の正体が分かった?」

「ああ…本当に……勘みたいなものだったし…ユニの言葉がなければ絶対分からなかったよ」

「ユニの?」

「あ、ユニ知ってる?」

「知っている、大空のアルコバレーノだろ」

「ああ、うん。ええとね未来ではその、ヴェロニカさんの存在が無くなってたからどうしてだろうって思ってリボーンと調べてたんだ」

 

そんなことしてたのか。

確かに私まだ生まれてないしなぁ…

 

「存在のないことをユニに聞いてこんなこと有り得るのかなって聞いたんだ」

 

そこは入江正一じゃないか?

まぁ入江でも知るわけはないが。

でもユニはどの時空にも点として存在出来るから、何か知っているかと思ったのかな。

 

「そしたらユニがね、もっと先の未来の人であればって口にしてたんだよ」

「それで、私の正体を知ったのか」

「あ、いやそのあとに、ヴェロニカさんの襲撃の時炎の壁みたいなの出したでしょ?」

「ああ」

「あれがとってもザンザスの炎と似てると思って……そのあとで今までのこと思い出したら自然とそうなのかもって思って」

 

なるほど、証拠半分、超直感半分ってことか。

 

「あの襲撃者がヴェロニカさんでザンザスの子だったら殺しちゃダメだと思って、爆発の後そっちに向かったんけど…」

「…」

「いきなり茂みからザンザスがヴェロニカさん抱き上げながら出てくるから、そこらへんで確信したかな」

「なるほど、な」

「あとザンザスが少し変わってたから多分20年後と入れ替わってたんじゃないかって思ったんだけど…それなら辻褄もあうし…」

 

超直感こっわ!

 

「確かにあの時父は私のもっていた10年バズーカで20年後の父が10年後のあの時代に飛ばされてきた」

「やっぱりかぁ……っていうかバズーカ持ってたの⁉」

「あなた達が未来に行くことは余め聞いていたからな…バズーカでタイミングを合わせて私も飛んでいた」

「あああ、なんか全部納得いっちゃったなぁ…そっか…そうだったんだぁ」

「因みに私が一人で過去に飛ばされたのはあなたのせいだぞ」

「え⁉俺⁉」

「未来でヴァリアーの面々に袋叩きにされてたって聞いた」

「うそおおおお⁉えええ、俺未来でボコボコにされるのおおおお⁉」

 

沢田綱吉は悲壮に塗れた様子でその場に崩れ落ちる。

そのあと喋ることは喋ったので、沢田綱吉は帰るようだ。

 

「もうリボーンにはヴェロニカさんを探らないように言っておくよ」

「それは助かるな」

 

沢田綱吉は玄関で靴を履き、ドアを開けると何かを思い出したかのようにヴェロニカの方に振り向く。

 

「そういえば、ザンザスがヴェロニカさんを大切に抱き上げてたから何か意外だったよ…」

「そうか………」

「ザンザスも娘は大事なんだね」

 

ああ、彼までもが言ってしまうのならば…もう信じるしかないじゃないか

❝それを愛情と言わずなんていうのよ!❞

 

 

「ああ……強くてカッコいい自慢の父だ…」

 

目の前の沢田綱吉は目を少し丸くして、笑みを浮かべる。

 

「ヴェロニカさんは笑った方がキレイだよ」

「それは笹川に言ってやれ」

「ええ⁉何でそれをっ、ていうか未来じゃ俺って京子ちゃんとどうなって――――」

 

無意識に笑っていたのか…

にしてもこの主人公め、そのタラシ文句はヒロインに言ってやれよ。

私はそんなこと言われても、この時代に人達と年齢離れすぎて(なび)きもしないがな。

沢田綱吉を帰した後、私は部屋に戻る。

ふとベッドの上の携帯が鳴っているのに気付いた。

 

「もしもし」

『やぁ、君がヴェロニカって女かい?』

「………マーモン?」

『おや僕のことを知っているのか…』

 

内容からして、多分今の時代のマーモンだと思うけど、何で私の携帯知ってんだ?

 

「何?」

『未来の僕が君にあるものを送るよう言われたんだけど、身に覚えはあるかい?』

「あるわ」

『そう、じゃあ送るけど、住所教えてくれないかい?』

「………いや、私がイタリアに向かうわ…直接渡して」

『了解したよ、にしても未来の僕は君を無償で助けてるみたいだけど、一体何者なんだい?』

「今はまだ知る時じゃないわ」

『あっそう、まぁいいや…待ってるよ』

 

マーモンはそれだけ言うと、通話を切ってしまう。

 

「未来のマーモンが?」

 

 




未来編終了です。
沢田綱吉だけがヴェロニカの正体を見破りました。
ヴェロニカからしたら沢田綱吉って近所の勘のいいおっさん的な存在なんだろうなと思います。
えーと、次回で最終話です。


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Veronicaの軌跡

ヴェロニカは思った。

愛していると

ヴェロニカは辿った。

軌跡を


この時代のマーモンから電話がかかってきた日の翌日、私は空港にいる。

 

マーモンに会いに行くついでに九代目にも会いに行くか。

ヴェロニカはイタリア行きの飛行機に乗る。

未来と違って、この時代ではボンゴレの影響力は大きく、九代目から貰ったボンゴレマークの入ってるブラックカードを見せるだけでファーストクラスに載せてもらった。

ボンゴレパネぇ…

数時間のフライトの末、やっとこさ来れたイタリア。

10年変わると結構景色変わるなぁ…

ヴェロニカは本部まで周りの景色を見ながら歩いていく。

本部へ着くとコヨーテさんが待ってましたよ、何故?

どうやらカードを使ったことで、私がここに来ることが伝わっていたようだ。

 

「九代目はまだ傷が癒えてなくてな…ベッドから起き上がれねぇが、会いにいってくれ」

「そうする」

 

ヴェロニカは案内された病室の扉を開けると、九代目が本を読んでいた。

 

「九代目」

「おお、ヴェロニカ…無事でなによりじゃ」

 

ヴェロニカは辺りの気配を探り、誰もいないことを確認する。

 

「おじいちゃん、無事でよかったわ」

「うむ、孫を見るまでは死なんよ」

「今見てるじゃない」

 

九代目は穏やかに笑うと、ヴェロニカの頭を優しく撫でた。

 

「おじいちゃん…あのね…」

「何じゃ?」

「どうしてパパに嘘ついてたの?」

 

これはずっと昔から聞きたかったことだ。

この嘘が無ければパパはクーデターを起こさなかったかもしれないし、二人の間にここまで大きな亀裂が走ることはなかった。

九代目は悲しそうに、ヴェロニカを見ていた。

 

「わしのエゴで……自業自得じゃ……」

「…」

「あの子がわしの子じゃないことは最初から知っていた……だが否定して追い返せば、彼らはまたスラム街に戻らねばならないと思ってしまうと…断ることが出来なかったんじゃ……」

 

ああ、やっぱり…

 

「だがいきなり出来たあの子を我が子と思うことは難しくてな…子供との関わり方も分からずに距離を取っていた…」

 

パパは愛を知らない。

 

「そして真実を告げるにはわしも、ザンザスも……離れすぎていた」

 

愛されることを知らない。

 

「すまぬヴェロニカ……これはわしの担うべき罪じゃ…お前には苦労を掛けたな」

「嘘ついたおじいちゃんも悪いけど、直ぐに暴力で解決しようとするパパも悪いし、両成敗じゃない?」

「そうか……そうか…ヴェロニカはザンザスが好きじゃな」

「まぁ私の父親だからね…」

「わしよりザンザスの方が父親に向いているのかもしれんのう」

「私はどっちも好きよ、ま、一番はパパだけど」

 

九代目は困ったように笑い、私の頭を撫でる。

 

「ヴェロニカ、ザンザスを頼んだぞ…」

 

普通逆じゃね?

何で孫に息子を頼むのさ…

いやパパは目を離せば直ぐにクーデター起こす人だしなぁ

私にパパがクーデターしなようにちゃんと見ていろってことかな?

 

「うん」

 

まぁ私もまたパパが負けるの見るの嫌だし。

沢田綱吉には主人公補正ついてるから絶対パパ勝てないと思うんだ。

九代目の体に障るといけないので、ここら辺でお(いとま)しますよ。

 

ボンゴレ本部を出たその足でそのままヴァリアー本部へ向かう。

門前に警備がいたが、マーモンから聞いていたのか名前を言えば直ぐに入れてもらった。

何か顔見られたら直ぐに血縁関係バレそうなので、赤いフードのついているパーカーを着てきた。

マーモンの部屋の前まで来ると、ノックをし中へ入る。

 

「やあ、君がヴェロニカだね?」

「ええ」

「そ、じゃあ早く用事を終わらせるよ…僕は忙しいんだ」

 

マーモンは棚の方からごそごそと手のひらより少し大きい箱を取り出し、私に渡す。

 

「一昨日棚の整理をしてたら見つかったんだ…中には僕と君あての手紙は入っててね、この箱を君に渡すよう書かれていたんだよ」

「そう……」

「全く……ボスが復活して直ぐの記憶が数週間もないし未来から変な手紙が来るし…これで終いにしてくれよ」

 

ですよね、すみませんマーモンさん。

リング争奪戦全部記憶ないですもんね。

気付いたら数週間の記憶ないし、何故か日本にいるしですごく困惑したに違いない。

未来のマーモンもそこらへん考えてればよかったのに…

ヴェロニカはマーモンの部屋を出て、ヴァリアー本部を出ようと廊下を歩き出す。

廊下を歩きながら箱の中身を確認していた。

箱の中には手紙とバズーカ、匣の形をした装置が入っていた。

 

『プリンチペッサへ

 

君のいる10年後の未来の時間軸の特定が出来なかったから、君が10年後の未来から帰ってくる頃にこれを過去の僕に渡しておいたよ。

まず、ボスへのワクチン投与が成功していても失敗していても一度未来に帰ってくること。

君の炎を調べないと、時間軸の特定がとても困難ということが入江正一の見解らしいからね。

この箱に入っているのは、僕たちの時代に戻るバズーカで、一緒に入っている装置は、ヴェロニカという人物の記憶を抜くためのものだ。

抜くと言っても、君が生まれるまでの時間で限定しているから、未来で君の存在が消えることはないよ。

装置は大空の炎と憤怒の炎で反応するようになっているよ。

           マーモンより』

 

ふむ、これなら私の存在も安心だな。

ってなわけで早速帰りますか。

帰るなら同じ場所じゃないと危ないかな…ボンゴレ研究所だったよな確か。

取り合えずボンゴレ本部まで行かなきゃな…

ヴェロニカが手紙から顔を上げると同時に、何かに顔から突撃する。

 

「ぶっ」

 

鼻を思い切りぶつけ、痛みに鼻を摩りながら、ぶつかった対象に視線を向ける。

と、同時に硬直した。

 

「あ?んだてめぇ」

 

目の前には至る所に包帯とガーゼが貼られてあるザンザスがいた。

おっふ、この時代のパパじゃないですかやだー

なんでいるの?

入院中じゃないの?

待って待って、その手に光っている光球は何ですかね。

憤怒の炎ですか、そうですか。

 

逃げよ

 

ヴェロニカは一気に足元に炎を纏うと、その場を力強く蹴り出しザンザスから距離を取る。

さきほどいたところにクレーターが出来る。

マジでパパが殺しにかかってきている!泣きたい。

ザンザスは己の攻撃を躱した赤いフードを被る人物を見やり、口角をあげる。

嫌な予感がががががが…

 

「おもしれぇ…カッ消してやる」

 

何でそうなるの。

ヴェロニカは内心涙目でその場をあらん限りの力で走りだす。

後ろから何か炎を溜めてる音がするんだけど、これ銃取り出してんの?あの人アホでしょ!

屋敷の中で爆発が起こり、他の者たちも次々と駆け付けてくる。

 

なんでじゃあああああああああ

 

ヴェロニカは今、両手が装置とバズーカで塞がっていて、腰に差してある剣が抜けない状況で走っていた。

ヴァリアーの下っ端も駆けつけてきて、人数が増えている今屋敷の中で鬼ごっこはまずいと思い屋敷の外へ逃げるが、外には警備員が待機していた。

 

「侵入者だ!殺せ!」

 

侵入者じゃねええええ!

マーモンどこだ!あいつに説明っ…何でお前パパの後ろからこっち見てんだよアホ!

なに僕知りませんみたいな顔してんの?カッ消したい。

ヴェロニカは周りを見渡し、窓の空いてる部屋を見つける。

二階だったので少し強めに地面を蹴って、窓から二階の部屋に侵入する。

ザンザスが後ろから追いかけてくる音が聞こえ、ヴェロニカはすぐさま持っていた装置に大空と憤怒の炎を注入する。

ザンザスがヴェロニカの入った部屋に壁を突き破りながら入ってきた瞬間、ヴェロニカの持っていた装置が光り出した。

 

「「⁉」」

 

ザンザスもヴェロニカもその光の強さに目を強く閉じる。

ヴェロニカはこれを好機と思い、もう片方に持っていたバズーカを自身に向ける。

バズーカの引き金を引くと同時にザンザスが銃の引き金を引く音が聞こえた。

 

 

 

 

視界が暗転し、次に浮遊感が襲う。

 

「きゃっ」

「う"お"⁉」

 

重力に従って落ちると、何かとぶつかり、下から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「いっ…た…」

「その声はあ"、プリンチペッサかあ"!」

「うわっ」

 

ヴェロニカの下敷きになっていたスクアーロがいきなり起き出して、ヴェロニカをまじまじと見つめる。

スクアーロはヴェロニカの顔をぺたぺたを触ると、担ぎ上げてリビングまで歩き出し、扉を勢いよく開けた。

 

「う"お"お"い!おめーらあ"!プリンチペッサが帰って来たぞおおお」

 

扉を開けると、そこにはマーモン、レヴィ、ベル、ルッスーリアが全員集合していた。

何でだ。

全く状況が分からないけど、これ帰れたのかな?

 

「プリンチペッサぁぁぁあああ!待ってたわよ~!」

「プリンチペッサ!無事でよかったよ」

「シシッ、元気そうじゃん」

「うむ、怪我がなくて安心したぞ」

 

ルッスーリアがスクアーロを蹴飛ばしてヴェロニカにいきなり抱き着いてきた。

 

「んもう!何で黙って行っちゃったのよん!心配したんだからぁ!」

「根性あんじゃん、シシッ」

「全く、無事でなによりだよ」

 

ああ、これは間違いなく私は帰ってこれたのだ。

え、待ってどうなってんの?ここ。

私が状況を把握していないことに気付いたマーモンが説明し出す。

どうやら私の14歳の誕生日は一昨日あって、それまで皆に、過去に行ったヴェロニカの記憶はなかったようだ。

昨日、いきなり皆に記憶が戻りヴェロニカは行方不明に。

それで私が今日中に飛ばされて帰ってくることは知っていたので、帰ってくるまで待ってたらしい。

 

「つか何で俺の上に落ちてきたんだあ"?」

「24年前のパパと鬼ごっこしてて逃げ込んだ場所がたまたまスクアーロの部屋だった」

「はあ"⁉」

「あ…待って……パパは?」

 

ヴェロニカの言葉に、スクアーロがヴェロニカの手を引いてザンザスの執務室に向かう。

歩いている途中にスクアーロが教えてくれた。

 

ザンザスは生きている、と。

 

ここはパパが生きている未来であると。

誰もが昨日までパパが生きていることが当たり前だと思って過ごしていたが、今日記憶が戻ったらパパの命日じゃないですかーってことで、全員焦りながらパパの執務室に押しかけたらぶっ飛ばされたらしい。

にしても、ザンザスが死んでしまった未来での記憶が、ザンザスが生きている未来の彼らに上書きされた理由がいまいち分からないけれど、未来を変えたこと自体が世界の法則を捻じ曲げちゃったようなもんだし、理論上で解決出来るわけないのか。

少し時間に余裕が出来たら、ボンゴレ本部いって入江正一に聞いてみよう。

ヴェロニカの考えを他所に、スクアーロがザンザスの執務室の前に来ると思い切り扉を乱暴に開け、大声を出す。

 

 

「う"おおおい!ボスさんよお"!プリンチペッサが帰って来たぞおおお」

「うっせぇんだよカス!」

 

ガラスの割れる音と共に、スクアーロが部屋の外にぶっ飛んだ。

ヴェロニカは静かにそれを見届けて、部屋の中に入り扉を閉める。

 

部屋の奥にはザンザスが不遜な態度で座っていた。

 

「あ………」

 

 

生きているパパを見ると言葉が出なかった。

そんなヴェロニカを横目にザンザスがゆっくりと口を開いた。

 

「おい」

 

「ぇ……なに……」

「菓子作りは諦めろ、才能が壊滅的にねぇぞ」

「は?」

「くそまずかった」

 

かし…菓子……お菓子?

まさかあのクッキーのこと?

てか食べてはくれたんだ。

 

「な…」

「あ?」

「何で一言目がそれなのよっ……バカぁ…」

「あ"?」

「ていうか何で覚えてるの?記憶消したハズなんだけど…」

「あの時代にいた俺は10年後と入れ替わってただろうが」

「あ」

 

そうだった。

消したのはあくまで私が本来存在しない時間にいる人間の記憶だけ

あの時パパって確か私が10歳になった頃の時期から飛ばされてきたから、一応私が存在する時間軸の人なのか。

じゃあ手を繋いだことも覚えてるわけ?この人

 

「もう面倒くせぇことすんじゃねぇぞ」

 

ザンザスは呆れたような声と共に溜息を吐く。

ヴェロニカは少しだけ感考え込み、ザンザスに近寄り、彼に問いかける。

 

「ねぇパパ」

「あ?」

「パパが死ぬ直前に、『お前は俺のようになるな』って言ったの………」

「……」

「私、パパみたいにならないよ」

 

ザンザスが少しだけ目を見開く。

 

 

「だって私パパが好きだからね」

 

 

❝あなた達はお互い何も知らなさすぎるのよ❞

 

「あのね、私――――」

 

 

パパは不器用だから、仕方なく私のことから教えてあげる。

 

 

禍々(まがまが)しくも 

  (おびただ)しくも 

    気高き炎よ

 

 

燃え(たぎ)るその心に宿すは

 

 

  憎愛か

 

   はたまた親愛か―――――…

 

 

 

 

 

fin.

 

 




ご愛読ありがとうございました。
一応これで最終話ですが、後日談というか番外編があります。
私が気付く限りの、回収できなかった伏線を処理したいので後日談という形を使いますw
ほんとただの思いつきの設定をここまで書くことになるとは思いもよらなかった(笑)
因みにヴェロニカはポイズンクッキング一歩手前の料理の腕です。
今まで誤字・指摘・感想された方には大変感謝しております。


【挿絵表示】


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番外&リクエスト
Veronicaの日常


その後ろ姿は――――――


「つーかさー、なんか記憶思い出してみて気付いたんだけど……ボスの兄妹事件ってこれヴェロニカじゃね?」

「あ、そういえば…そうなるわねー」

「ああ、あれヴェロニカだったのか」

「うむ、確かに考えればそうだろうな」

 

やぁ、ヴェロニカです。

やっとこさ帰れた未来で、日常を送っているんですが、今何か聞き捨てならぬ言葉が聞こえたような?

 

「何、それ」

「プリンチペッサが過去で入院中のボスを襲ったことがあっただろう?」

「うん、失敗してパパに頭から銃でぶっ飛ばされた」

「ねぇ何で生きてるの?」

 

若干皆が引いている、酷い。

ただ炎の波長が似ていてダメージが少なかっただけだよ!

 

「そのとき君の血液が病室についてて、それをDNA鑑定してボンゴレの方で人物特定しようとしたんだ」

「ああ…」

「そしたら、結果は血縁者だと分かって、ヴァリアーは大混乱だったよ」

「それでフード越しで見た感じだと若かったから妹だろって話になってさ、シシッ」

「ボスもボスで鑑定書ガン見してたから、皆誰もボスに近寄れなかった時期があったんだよ」

「ん?待って私の記憶って消したんじゃないの?」

「だってあれはヴェロニカっていう人物じゃなくて、ただの襲撃者っていう認識だからね」

「そう」

 

そんなことがあったのか…

 

ヴェロニカがそう思っている頃、ヴァリアー本部の固定電話が鳴る。

誰も取ろうとせず、痺れを切らした私が渋々立ち上がって受話器を取る。

 

「はい」

『え⁉ヴェ、ヴェロニカちゃん⁉』

「……沢田綱吉か」

『あああああ、よかった!今すぐボンゴレ本部に来て、う、うわああああ』

「…?」

『ザ、ザンザスが大暴れしてて、待てってザンザス!待って壊さないで!やめてええええ』

「何でそうなってるんだ」

『ええと、いや俺が悪いんだけど!』

 

私が過去に行ってなんやかんやあった元凶の一端に沢田綱吉が関係していたと思い出すと、いきなり銃構えて沢田綱吉に向かって発砲してると…

自業自得では?

パパからしたら、面倒事を起こした元凶の一端だと思われてるなコレ。

一応、沢田綱吉は若干私の被害者でもあるんだが。

 

『ス、スクアーロもザンザスを止めてくれよぉぉおおおお!』

 

どうやらスクアーロは率先してザンザスに銃を抜かせてるらしい。

あ、電話越しにパパの声が聞こえる。

沢田綱吉の守護者がボロボロになっているので、誰かザンザスを止められる人物を連れてきてほしいということになって、私があがったというわけか。

 

「…いいよ」

『あ、ありがとっ』

 

沢田綱吉の通話がいきなり途切れる。

これは私が付く頃にはボロ雑巾になってはいないだろうか?

とにかくボンゴレ本部に向かいますか。

 

「何だったの、電話」

「ちょっとボンゴレ本部行ってくる」

「はぁ?何でだよ」

「ボスのお迎えかしらぁ?」

「……パパが暴れてるって…」

「放っておけばいいじゃないか」

「………行ってくる」

 

誰も行こうとはしないので、ヴェロニカはコートを羽織り部屋を出る。

後ろからルッスーリアがマフラーを首に巻いてくれたが暴れたボスの攻撃を喰らいたくないのか、ついてきてはくれなかった。

ヴェロニカは指に嵌めているリングに炎を灯し、ポケットから出した匣兵器に注入する。

すると、そこにはヒョウ柄の白いチーターが出てくる。

「レッサ、ボンゴレ本部まで行って」

私はそれに跨り、本部まで駆け抜けた。

ん?何でリングと匣兵器あるのかって?

聞いて驚け!パパからの誕生日プレゼントだ!

なんせパパは私が10歳の頃、過去に飛ばされて私が炎を使えることを知っていたので、14歳の誕生日にこれらをくれた。

炎のこともマフィアのことも何も知らないと思われていた私にパパがこれをあげたことは、皆に心底驚かれたらしい。

というより今までパパから誕生日プレゼントを貰ったことがなかったので、二重の意味で絶叫ものだよね。

まぁそれは翌日に彼らに記憶が戻ったので納得していたが。

あ、銃は未来に戻った時に私の手元から無くなっていて、パパの手元に戻っていた。

銃がないことにションボリしていた私を見兼ねたスクアーロがボスに何やら相談して、銃は製作しているらしい。

太っ腹だなぁ、パパ。

一応、スクアーロに剣の手ほどきを受ける予定ではあるが、メインは銃にしたい。

因みに、匣兵器はチーターとホワイト・レオパード(雪ヒョウ)のミックスだ。

ベスターとめちゃくちゃ仲がいいです。

まだ若干幼いものの、足の速さは匣兵器中堂々たるトップである。

流石ミックスといえどチーターだね。

これならボンゴレ本部に数分もしないうちに着くだろう。

ってもう見えた。

 

「レッサ、ここでいいわ」

 

ヴェロニカの匣兵器であるレッサは足を止め、ヴェロニカを降ろす。

ヴェロニカはレッサを匣に戻すと、そのまま本部に入っていった。

中では爆発音やら金属音やらが盛大に聞こえる。

近くで壁が爆発し、ヴェロニカを煙を手で払いながら壁の奥を見た。

 

「あ、パパ」

 

そこにはボロボロの沢田綱吉の襟を掴んでいるザンザスがいた。

ザンザスはヴェロニカの声に振り向き、眉を顰める。

 

「何で来やがった」

「沢田綱吉がパパを止めてくれって頼んできたの」

「あ"?」

「ひぃぃぃぃいいい」

「あなた仮にもマフィアのボスでしょ、そんな情けない声出さないでよ」

「ヴェ、ヴェロニカちゃん⁉え、来るの早くない⁉」

「レッサに跨ってきたからね…それよりパパ、この前オープンしたレストランのステーキが好評なの、行ってみたいわ」

「フン」

 

ザンザスは乱雑に沢田綱吉を離し、本部の玄関に向かって歩き出した。

沢田綱吉は、ザンザスとヴェロニカを交互に見て感嘆する。

 

「す、すげぇ…ザンザスが大人しくなった…」

「あいつ、ザンザスの扱い上手ぇな」

 

沢田綱吉の隣にリボーンが寄ってきた。

 

「お前俺のこと見捨てたろ!」

「自業自得だろ、ダメツナ」

「ダメツナって言うなよ!」

「にしてもザンザスの奴、やっと父親らしくなったじゃねぇか」

「確かに……」

「暴君なところは変わってねーがな」

「……確かに」

 

リボーンの言葉に項垂れる沢田綱吉を横目に、ヴェロニカはザンザスの後を追う。

途中でスクアーロが合流して、黒いリムジンに乗り込む。

 

「本部でよろしいですか?」

 

運転手が畏まった様子で聞いてくるのに対し、スクアーロが口を開く前にヴェロニカがレストランの名前を言う。

 

「う"ぉい、どこ行くつもりだぁ」

「レストラン、もう夕飯の時間だし」

「俺は行かねぇぞお"お」

「元々スクアーロは途中で下ろすつもりだったわよ」

「どういう意味だあ"あああ」

 

スクアーロの突っ込みを無視して、窓の外を見る。

私が正式にヴァリアーに所属するのは18歳の時になってかららしい。

それは皆からの配慮でもあった。

18歳まで思い切り、表の世界で遊んで来いと。

私はあまり友人もいなかったのでそのままヴァリアーに直ぐに入っても良かったのだが、パパが反対した。

弱ぇ奴を入れるつもりはねぇ、と言っていたけれど、精神的に強くなるまで心配だから入れられないとしか聞こえなかった。

ハッキリ言って私は今幹部と結構いい勝負だったし、弱い訳ではないのだ。

因みにレヴィには5勝0敗である。

あいつ何で幹部になれたんだろう…

レストランは本部に行く途中だったので、スクアーロはそこから歩いて帰り、ザンザスとヴェロニカはレストランに入る。

スクアーロは誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。

 

 

「全くよぉ"……後ろ姿が丸っきり親子じゃねぇかあ"…」

 

 

 

積もった雪の上には大きな足跡と一回り小さな足跡が並んでいた。

 

 

 

 




後日談でした。
あと一話だけ残ってます


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Veronicaの真実と未来と

生んでくれてありがとう。



      それは涙だった。


現在私、ヴェロニカは17歳です。

そして3日後に18歳の誕生日を迎えます。

18歳になったらヴァリアーに入れることになっていて、一応ヴァリアーの次期ボス候補になっているんだよね。

まぁ自分でパパに志願したんですがね。

力不足ではと下の者達が半信半疑だったが、スクアーロと模擬戦をして勝利を収めたので誰も何も言わなくなった。

剣の師匠がスクアーロで銃の師匠はパパだからね、そうそう負けないと思いたい。

今私は何をしているかだって?

部屋の掃除です。

要らないものを全部捨てようと思い、タンスや本棚の中身を全部出して一つずつ捨てていってる。

 

「ん……?」

 

ヴェロニカが机の一番下の引き出しを開けると、奥に小奇麗な箱があった。

見覚えが無かったので、自身の幼い頃のものだろうと思い、箱を開ける。

 

「……ネックレス?」

 

良く見ると、ネックレスにはリングが通されていて、そこにはⅤと彫られていた。

……どっかで見たことあるような?

ヴェロニカは数分考えるも、思い出せずそのネックレスを箱に戻す。

 

「プリンチペッサ、ルッスーリアが呼んでんぞ」

「分かった…あともう私大人よ…その呼び方やめて」

「言いじゃん別に、シシッ」

 

ベルがヴェロニカを呼びに来たので、一旦物を置き立ち上がる。

 

「あ」

「ん?」

「これ見覚えある?」

「なにこれ」

「引き出しの奥にあったんだけど…」

「さー?オカマなら何か知ってんじゃね?お前の世話係だったし」

「そうね…」

 

ヴェロニカはルッスーリアの部屋へ向かう。

扉をノックして中に入ると、ルッスーリアが中でドレスを数着持っていた。

 

「あら、プリンチペッサ!三日後のあなたの誕生日パーティ何着ていこうかしら?」

「どれでもいいけれど、その呼び方やめてったら…」

「3日後まではまだ子供よん、ささ着比べましょ!」

「めんどくさ…あ、ルッスーリア…私の部屋の机の引き出しの一番下にあった綺麗な小さい箱にネックレスあったんだけど、あれ何か知ってる?」

「ネックレス?」

「リングが付いてて、Vって彫られてたんだけど、私は買った覚えないし…」

「ああ!それね、それはあなたが赤ん坊の頃にヴァリアーの玄関に置かれてたって話はしたでしょ?」

「ええ」

「その時に、一緒に籠の中に入ってたのよ~、なんかのブランドものだったハズよ」

「ああ、覚えてないわけだ…」

「あなたの母親があなたに置いていったものだから、一応箱に入れて引き出しの方に入れてたのよ~」

「そう……Vってそういうことか…」

「気に入ったの?」

「まぁ、綺麗なネックレスだったから……」

「あ、ほら腕広げなさ~い」

 

母親か……

今まであんまり意識してなかったなぁ…

ここは男しかいないから、母親が凄く欲しいときが子供の頃あったような?

昔、私が初潮を迎えた時なんてルッスーリアが不在で、スクアーロなんて医者呼びそうになってたし。

あれは本当に恥ずかしかった。

最終的に任務帰りのルッスーリアにナプキンを買って来てもらったけど、あんな思いは二度としたくない。

あれ以来、私専用というか、女性専用トイレを設置したりと女一人だと何かと面倒だったな。

今じゃあまり気にしたことなんてなかったけど、母親かぁ…

私の母親ってどんな人だろう。

パパが特定の女性と付き合うなんて有り得ないから、どこかの娼婦かなんかだったんだろうな。

んで金銭的にきつくなってパパの元に置いていったのかな……捨てないだけマシな母親だったんだろうな。

高価なネックレスを赤子の私に授けるぐらいだし。

別に自分の出生に関して不幸だなんて思ったことはないけど、母親は少し気になるかなぁ。

そういえば4年前過去に行ったとき、優しそうな女性に出会ったけど、名前何だったっけ。

宿無くて困ってた私に寝床貸してくれたりして、人の好さそうな女性だったけれど…今も元気にしてるかな?

お腹の子もそろそろ産まれそうだったし、シングルマザーなんてすごく大変そうだ。

でも私の記憶って彼女から消えてるのか。

少し寂しいな…私の母親があんな人だったら良かったけど。

 

「プリンチペッサはやっぱり赤と黒が似合うわねぇ」

「そうかしら、気にしたことなかったわ」

「ボスも赤と黒が似合うのよぉ、あなた達親子は目の色が赤いからそれに色を合わせてるの」

「パパの服って殆ど黒と白でしょ」

「たまに赤色のシャツを着てるボスは一段とカッコいいわよん!」

「そう」

「あ、ほらこのドレスとっても似合うわ!これにしましょ」

「じゃあこれで」

「もういいわよ、丈合わせるのはあたしがやっといてあげるわ!」

「ありがとうルッスーリア…」

 

ヴェロニカは着替えると、部屋に戻る。

先ほどの箱が視界に入り、もう一度箱を開く。

 

何だろう、何か忘れてるような気がする。

一度どっかでこのネックレスを見たことがある。

それも5年以内くらいに……

 

「んー……」

「まだそのネックレス見てんの?」

「あ、ベル」

「つーか、そのブランドここの近くの店の奴じゃね?」

「え、近場にあるの?」

「ほら、ここ少し歩くと病院あんじゃん」

「ああ、結構昔からあるやつよね」

「そ、そこの向かい側の方にあった気がするぜ…なに気に入ったのかよ?」

「うん、他に何かあるか見に行こうと思って」

「ふーん、俺暇だから一緒に見にいってやるぜ」

「え、今?」

「当たり前じゃん、シシッ」

 

ベルはヴェロニカの腕を掴むと、玄関まで有無を言わせず歩き出す。

ヴェロニカは途中から諦めて、ベルの歩調に合わせて歩く。

街中を歩いていくと、病院が見えてくる。

 

「あ、ほらあれじゃん」

「あれか…」

「げ、閉まってんじゃねーか」

「仕方ない、帰ろ」

「マジかよー折角外出たしどっか寄り道しよーぜ」

「え、ああ……別にいいけど……」

「あ?」

「少し待ってて…」

 

ヴェロニカは向かい側の病院の方へ入っていく。

確か14年前に私に宿を貸してくれたあの女性はここで働いていなかっただろうか?

えーと、名前……は確か……ヴェ……ヴェラ?そう、ヴェラだ。

ヴェロニカが院内を見回すと端の方に売店があった。

ヴェロニカは迷わずそこに足を向け、売店の中に入ると、レジの方に男性がいて他に客はいなかった。

 

「すみません」

「いらっしゃいませ、どうしました?」

「ここにヴェラって女性働いてませんか?多分4~50代だと思うんですけど…」

「ヴェラ?さぁ……ここ数年勤務してますがそのような名前の従業員はいません」

「そうですか、失礼します……」

 

やっぱり十年以上も前のことだから、どこかに引っ越しでもしてるのだろうか。

ずっとここで勤務してる方が珍しいよね。

ベル待たせてるし、行こ。

 

「あ、ねぇ君」

 

後ろから少し老いた白衣の男性に呼び止められる。

 

「え、はい。何ですか?」

「君、さっきヴェラという女性を探していなかったかい?」

「え、ええ…十年以上前にここで働いていた人なんですけど…知ってるんですか?」

「もちろん、私が彼女をここに雇ったのだから…」

「あの、ヴェラさんはまだここで働いているんですか?」

「いや……彼女は十年以上も前に病で亡くなったよ」

「え」

 

ヴェラさん亡くなってしまっていたのか…寂しいなぁ…

 

「君はヴェロニカ……という名前じゃないかい?」

「え、あ、そうですけど……何で…」

「彼女から娘の名前を聞いていたんだよ…だけど出産後、彼女が病気で倒れる直前に子供をどこかの施設に預けたらしくてね…心配してたんだよ」

「あ、いや、私は……」

 

待って。

それはヴェラさんの子であって私じゃ…

……私じゃ………

 

「いやぁ、こんなに無事に育って…彼女も喜んでるはずだよ。君のことを大層可愛がっていたからなぁ…とても優しい女性だったよ」

 

❝ヴェロニカよ!あなたと同じ名前!なんて偶然かしら❞

 

「彼女は身寄りが誰もいなくてね、遺品は私が預かっていたんだ………少しだけ待っててくれ、確か私の執務室にあったはずだよ」

 

老いた男性は急いだように階段を駆け上がっていった。

ヴェロニカはそこにただ立っていた。

 

そんな、馬鹿な……有り得ない…そんなわけがない…

彼女が……ヴェラさんが……

 

❝ええ、女の子よ…きっととても可愛い子が生まれてくるわ…❞

 

そんな都合のいいことがあるわけないじゃん。

 

❝産みたいの……どれだけ苦労しても、この子だけは…❞

 

そんな……偶々名前が同じだけで…

 

「あったよ、これだこれ…ほらヴェラがずっと身に付けていたものだよ…誰から貰ったのか覚えてないけど大事なものだって言ってずっと身に付けてたんだよ…」

 

男の人の手のひらにはリングが通されているネックレスがあった。

 

「ほらここにVって彫られてあるだろう?多分ヴェラのVじゃないだろうか…」

「あ……」

 

ヴェロニカは震える手でそのネックレスを手に取る。

 

「あああ……ああ……」

 

どうして今更思い出したんだろう…

思い返せば気付く機会なんて沢山あったハズなのに……

 

 

「……お…母さん……」

 

 

❝こんなに愛されてるお腹の子がとても羨ましい❞

 

 

「……おかあさんっ……」

 

私は人目を憚らずみっともなく、泣いてしまった。

 

男性は私にもう少し休んでいけばいいと言ってくれたけれど、私はベルを待たせていることを思い出して、断って病院を出た。

 

「ベル、ごめん…待たせた」

「おせーよ、なにやって……は?何、誰にやられたわけ?俺が殺してあげよーか?」

「ちが、違うから、ナイフしまって…」

「おめーが泣くって相当じゃん」

「ほんとに…違うから…大丈夫……」

「………取り合えず帰るぞ」

「うん」

 

ベルは目元の真っ赤になったヴェロニカを見てナイフを出してきたが、ヴェロニカが焦って止める。

二人は寄り道せずに本部に帰った後、ヴェロニカは部屋に戻ると直ぐに部屋の鍵をかけた。

ただ、ただ一人になりたかった。

 

「お母さん……」

 

部屋にあった箱を開けてネックレスを取り出す。

どこから見ても同じに見えるネックレスは確かに私が過去に行ったときにヴェラさんに買ってあげたものだった。

 

「優しい…人だったなぁ………」

 

彼女を思い出すだけでまた涙ぐみ、ヴェロニカは枕に顔を押し付けて静かに泣いた。

 

私は望まれて生まれたんだ…

あんなに苦労して私を産んでくれたんだ……

あんなに…あんなに愛されてたんだ―――…

 

「ありがとう…お母さん………」

 

 

私を…産んでくれてありがとう……

私は今とっても幸せよ

 

お母さんのお陰でパパと仲直り出来たよ

 

「ありがとう……」

 

 

 

 

 

三日後、ヴェロニカは18歳の誕生日を迎えた。

以前からヴェロニカはヴァリアーのボス仮候補ということは既にマフィア界では広まっていた。

狙われる可能性を考慮し、ヴェロニカは18歳までヴァリアー本部から一人で外を出ることはなかった。

だが、今日18歳になりヴァリアーに所属することで、正式なボス候補となり、任務も請け負うことが出来るようになる。

ヴェロニカは、現ボスであるザンザスに次ぐ実力を有していることからヴァリアー全隊員から賛同を得ており、現在53歳であるザンザスが引退するまでの間、十年余りあるだろうが彼女の地位は固まりつつあった。

そんなヴェロニカの成人する誕生日であり、表向きはザンザスの娘の祝典となっているが、ヴァリアー入隊日ということもあり、盛大に祝われた。

人混みを嫌うザンザスも流石に娘の祝典は顔を出している。

ヴェロニカ本人は先ほどからいろんな人に声を掛けられていて忙しそうにしていた。

悪い虫が付かぬようベルが傍にいるが、ヴェロニカ自身恋愛に関してはザンザスに似てとても興味を示さないので、あまり心配はされていなかったが。

あくまで彼女の興味は1にザンザス、2に自分、3にヴァリアー、4・5飛ばして6にその他である。

そんな彼女に、ボンゴレ10代目ボス沢田綱吉が声を掛けてきた。

 

「ヴェロニカちゃん、誕生日おめでとう」

「沢田綱吉か、来てくれてありがとう」

「今もまだフルネームなのか…」

「癖なんだ、それよりもあなたの守護者も来ているのか?」

「え、うん、一応雲雀さん以外は皆来ていると思うよ…にしてもあんな小さかった君がこんな大きくなって…なんか感動するなぁ」

「あまりあなたに会わなかったからだろう」

「それもそうだね…これからも色んな苦労があると思うけど頑張ってね…何かあれば助けるよ」

「あなたがそういうのなら頼もしいな」

「じゃあ、僕はこれで」

「ああ」

 

色んな苦労という言葉に、ヴァリアーでの任務が入ってる気がするけど、沢田綱吉もようやくボスらしくなってきたということなのだろうか。

2時間ほどに及ぶ祝典は終わり、ヴェロニカは本部の広間に向かう。

今から入隊するにあたって、私の所属する部隊はスクアーロの第一部隊となっている。

なので、一応顔合わせとして第一部隊で宴会をするらしい。

 

「そういえばプリンチペッサぁ、おめー酒飲むの初めてじゃねぇかあ"?」

「…そうね、あとプリンチペッサはやめて、私大人よ」

「おうおう、気を付けるぜぇ」

「気を付ける気ないでしょ…」

「おめぇも俺のこと隊長っていっていいんだぜぇ"?」

「鳥肌立った」

「う"ぉぉおおおおいどういう意味だあ"!」

「あ、ほらもう先に皆来てるじゃない」

 

ヴェロニカが広間へ行くと、第一部隊と共に何故か別部隊の幹部までいたのだ。

 

「もう始めてるわよ~」

「主役ほっぽいて先やってんじゃねえよお"」

「ほら、プリンチペッサ…あなたもじゃんじゃん飲みなさいよ」

「あまり沢山飲ますんじゃねえぞお"」

「分かってるわよ、最初はカクテルでいいじゃないかしら?」

 

ルッスーリアから手渡される酒をちょびちょび飲み始めるヴェロニカに、第一部隊の面々は声を掛けてくる。

小さい頃から本部で育ったヴェロニカには殆どが見慣れた顔ではあったが、喋ったことはあまりなかったので新鮮であった。

 

「いやー小さい頃からいらっしゃったが、我が部隊に配属される日が来るとは…」

「やっと女性隊員が入ったぞおおおお」

「「やったああああ」」

「おめぇらあ"!プリンチペッサに手ぇ出すんじゃねぇぞお"!ボスにカッ消されてえのかあ"!」

 

既に酒が回っている者がちらほらいて、ヴェロニカには少し騒がしく思え、少しだけ隅の方でカクテルを飲んでいた。

目の前の騒がしく、賑やかな光景を眺めて、口元に笑みを浮かべる。

 

マフィアとしての私のスタート地点にやっと立ったのだ。

色々ありすぎたけど、まだこれからなのだ。

お母さん、私は普通の人生は送れないけれど、満足よ。

ここじゃ、孤独死なんてさせてくれない人達ばかりに囲まれてるんだもん。

 

「ヴェロニカさん!これ飲みますか⁉」

 

一人の隊員がヴェロニカに話しかけ、ヴェロニカも快く貰った酒を飲みだす。

そうやって楽しくスタートをヴェロニカは切ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

日差しが顔にかかり、少し眉を顰めた後ヴェロニカは起き出した。

 

「ん?」

 

ベッドを起き上がると、自身の部屋ではないことに気付く。

 

「あれ?ここパパの部屋?」

 

周りを見ると、ザンザスの部屋と分かり困惑したまま部屋を出る。

昨夜、宴会をやっていた広場に行くと、そこは地獄絵図だった。

死屍累々とはこのことか。

積もりに積もった気絶した男たちの山と、頭から血を流し白目をむいているスクアーロ、レヴィも何故か鼻から血を出しながら寝ている。

何故か壁もぶっ壊れているところがちらほら…

一体何があったし。

 

「おおう、何があったんだ…」

「あらプ……ヴェロニカ起きたのね~」

「あ、ルッスーリアおはよう、ねぇこれ何」

「え」

「え?」

「お、覚えてないの?」

「?」

 

目の前のルッスーリアが手を口にあてて、まあ!みたな表情でヴェロニカを見つめている。

 

「い、いや覚えてないならいいのよ!というか覚えてない方がいいわ!」

「え、ちょ…何があったの」

「ほら、朝ご飯あるから食べに行きましょ、ここの掃除はこの子たちにやらせるわ!」

 

ルッスーリアはヴェロニカの肩に手を回し、部屋から出す。

ヴェロニカは始終首を傾げていた。

 

 

 

XANXUS side

 

ガキの祝典の後、部屋で静かに酒を飲んでいると、遠くの広場の騒音がこちらまで響いてきていた。

度々爆発音などが聞こえ、いい加減うるさく感じカッ消そうと広場に足を向けた。

段々と広場に近づくにつれて声が聞こえてきた。

 

「――――――ま―――だれ―――ああ―」

「――せぇ――――――す!」

「おい誰だ――――――ペッサにこんなに酒―――奴はぁ"!ぐはっ」

「黙れこのカス鮫!」

 

一瞬俺かと思う台詞が聞こえた瞬間、カス鮫が広場の扉からぶっ飛んできた。

俺は若干眉を顰め額から血を流すカス鮫を眺めていると、カス鮫は俺の存在に気付き体を引きずって俺のとこへ向かってくる。

 

「う"おぉいボスさんよお"…あんたの娘…どうにかしてくんねぇかあ"…」

「あ?」

「俺逃げる!」

「ちょ、ま、僕も逃げるぅぅぅううう」

「あ、あたし肌荒れるといけないからもう寝るわね!おやすみなさぁぁぁあい!」

 

ルッスーリアにマーモン、ベルが慌てたように広場から出てきた。

俺はこいつらが焦る理由に少しだけ興味が沸き、広場を覗く。

そこにはガキがレヴィの頭を地面に蹴り付け、右手にカス、左手にカスの首を絞めながら何かを喚き散らしていた。

 

「てめぇら弱っちいんだよこのカス共!カッ消す!」

「ぐふっ」

「うげっ」

「ごっふ」

「どいつもこいつもプリンチペッサ、プリンチペッサって私はヴェロニカって名前あんだよこのドカス共ぉぉぉお」

 

ガキは手に炎を圧縮して、カス共を壁に叩きつけると壁がぶっ壊れる。

ガキは穴の開いた壁を一蹴して、振り返ると俺と目が合った。

 

「あ、パパ!」

 

ガキから甘い酒の匂いがして、俺は眉を顰める。

 

「酒くせぇ」

「パパはいつも酒臭いよ!」

「あ"あ?」

「あはは、怒らないでよ」

 

ガキが酔っぱらっているのが分かると、俺は面倒になり部屋に戻ろうとした時、ガキが後ろから抱き着いてきた。

 

「離せ」

「パパ、私がパパの跡継ぐんだからね」

「いいから離せ」

「うーん」

 

ガキが眠たげな声を出すと、そのまま俺の背中を壁にして眠り出した。

この時キレなかった俺は人生で初めて我慢という行いをしたと思った。

周りにいる者は皆意識を失っていて、ガキを任せる相手がいないと分かると、俺は非常に不本意だったが、ガキを背負い自室へ向かう。

ガキの部屋に捨て置きたいが、最近ガキの部屋が移動になり場所が分かっていなかった。

廊下を歩いていると、背中から鼻をすする音がした。

 

「おい鼻水つけてみろ、カッ消すからな」

「んー」

「聞け」

「お母さんに会ったの」

 

脈絡もなく放ったその言葉に俺は一瞬足を止めたが、またすぐ歩き出す。

 

「過去に行ったときにね、お母さんにあったの」

 

ガキはゆっくりと、思い出すかのように語った。

 

「お腹にね私がいてね……私その時気付かなくてね……この前ね………あの人がお母さんだって分かったの」

 

「お母さん死んでた…」

 

俺は何も言わずに長い廊下を歩く。

 

「私を産んで…直ぐに亡くなったんだって………」

 

俺の首に回しているガキの腕に力が入るのが分かった。

 

「とっても……私が産まれてくるの…待ってた……凄く喜んでたの……優しい人だったなぁ」

 

上擦った声が耳の近くで聞こえてくる。

 

 

「生んでくれてありがとう…」

 

 

俺の肩が濡れていくのが分かり俺は眉を顰めた。

 

 

「おい、鼻水つけたらカッ消すって言ったぞ」

「鼻水じゃないもん」

 

 

 

俺の部屋に着くころには、ガキの静かな寝息しか聞こえなかった。

 

 

 

 

 




改めてご愛読ありがとうございました!
これ以上伏線あったかなー?
自分ではこれ以上見つけられなかったんで、取り合えずこれで終わりです。
長々と呼んでくださった方には感謝します。
※感想欄にリクエストは書かないでください
活動報告の返信、またはメッセージでお願いします。

では、チャオ!


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Veronicaの成長

ウンバボ族の強襲さんからのリクエスト作品です。



「何このガキ」

「んふふ、聞いて驚いてちょうだい!ボスの子供よ~!」

「「「は?」」」

 

深夜、任務帰りで血まみれだったベル、マーモン、レヴィの声が揃ったのはザンザスが眠った後のことだった。

ルッスーリアが任務外の時に交代で赤ん坊を見ることになった。

因みにスクアーロは任務でその場にいなかった。

 

「へぇ~ボスのガキねぇ…何で施設とかに持ってかないんだよ?」

「あらやだ、炎が発現したらどうするのよん!」

「それもそうだね、でも僕子供苦手だから近寄らせないでくれないかい?」

「ボスからちゃんとベビーシッター代貰ってるわよ?」

「それを早くいいなよ!どれくらいだい⁉」

「せっかちね~」

 

最初の担当はレヴィだった。

 

「おぉ!まさしくボスのお子だ!! この凛々しいお顔立ち!」

「ぁぁああああああぁぁぁぁあああああ」

「ちょっと!あんたの顔怖がってるじゃない!どきなさい!」

 

レヴィ、数秒で担当から除外。

 

次の担当はベルだった。

 

「ふーん、ガキの世話なんて王子のやることじゃねーし」

「ふん、自信がないのか」

「ぎゃん泣きされたてめーに言われたかねーよ!」

 

ベルは渋々、レヴィの顔に泣き喚くヴェロニカの元に寄る。

ベルはナイフを出して、空中で交差させたり金属音を出したり一種のショーのように振る舞う。

泣き喚いていたヴェロニカもナイフの動きに夢中になり、泣くことを忘れていた。

 

「流石王子、何やっても出来るし、シシッ」

 

段々とヴェロニカが笑いだし、ナイフを眺めている。

手の届かない場所でやっているため、ヴェロニカに傷付くことはない。

 

「じゃあ取り合えず最初はベルちゃんお願いね」

「シシッ、仕方ねーからやってやるよ」

「明日から3日くらい任務行ってくるわねん」

 

ルッスーリアはヴェロニカをベルに任せると、赤ちゃんの育て方という本を渡し自室へ行ってしまう。

 

「あーぅー……」

「あ?」

「だうぅぅぅぅううう」

「何言ってるか知らねーし」

「コレ多分トイレだよ」

「は?」

 

ベルと一緒にいたマーモンはルッスーリアが置いていった本を捲る。

そしてヴェロニカの部屋の箪笥の引き出しからパンパースを取り出し、ベルに差し出す。

 

「どうやらこれと新しく替えるみたいだね」

「は⁉無理だし!」

「君がやり出すって言ったんだろう」

「王子に汚れ役なんて出来ねーし、する気もねーし!」

「じゃあ誰がやるのさ」

「マーモンお前がしろよ、今回お前が復活したのも俺らが手助けしてなかったら出来なかったんだぜ」

「むぐぐ、今回だけだよ!」

 

マーモンはヴェロニカのパンパースを替えると、ベルにヴェロニカを渡してそのまま自室の方に帰っていった。

ヴェロニカはスッキリしたのか寝ていて、ベルもナイフを片付けヴェロニカの部屋にある大人用のベッドに眠り出す。

三日後、ルッスーリアが長期任務から帰ってきて、ヴェロニカの様子を確認しに来た。

そこには本を読んでいるベルと、玩具で遊ぶヴェロニカがいた。

 

「ベルちゃんありがとね~」

「シシ、別に」

「んま!汗疹出てるじゃない!ベルちゃん本読んだの⁉」

「あー?何それ」

「やだ、赤ちゃんの育て方って本渡したでしょぉ⁉」

「知らねーていうかベビーシッター飽きたし」

「んもぉ!そんなことばかり言って!」

 

ルッスーリアはヴェロニカにベビーパウダーを塗り、再び寝かせる。

いつの間にかベルはいなくなっており、ルッスーリアは溜息を吐く。

 

「あの子にお守は向いてなかったかしら……」

 

ベルフェゴール、担当から除外。

次はマーモンの担当だった。

 

「ふん、ベビーシッター代は貰ったからね、給料分は仕事するよ」

「ガキがガキの世話してる、あはははは、ひーー」

 

そう宣ったマーモンは後ろからベルが腹を抱えて笑っているのを無視してヴェロニカの部屋へ入る。

 

「ぅーぁ……」

「ふん、どうせ幻術見せてればいいんだろう」

 

マーモンは幻術をヴェロニカに見せる。

だがヴェロニカは幻術に目もくれずマーモンをじっと見つめていた。

マーモンは首を傾げ、幻術が効いていること確認しようと、ヴェロニカに近寄る。

 

むぎゅ

 

「んな⁉」

 

ヴェロニカはいきなりマーモンの頭に乗っているファンタズマを掴みだす。

 

「ぅぁぁぁぁああファンタズマぁぁぁああ!」

 

マーモンは焦ってヴェロニカの手を掴み、ファンタズマを助け出そうとするが、それに抵抗してかヴェロニカの握る力は強くなる。

 

「ファンタズマぁぁぁぁあ!」

 

赤子の握力に勝てない赤子の姿をしたアルコバレーノの図はその場にベルがいたならば呼吸困難を起こさせていただろう。

ヴェロニカの手の中でもがいていたファンタズマが動かなくなりマーモンが絶叫する。

 

「ぅわぁぁぁぁああああん、ファンタズマぁぁぁぁああああ!」

「ちょ、どうしたのよん!」

 

マーモンの絶叫に任務に行く直前のルッスーリアが慌ててヴェロニカの部屋に入ってくる。

ヴェロニカの中から見える緑の足と、既に泣きそうなマーモンを見てルッスーリアは状況を理解する。

 

「ほーらプリンチペッサ~あたしと遊びましょ~」

「ぅーぁーああ」

「ほらこれなんかどうかしら?」

 

ルッスーリアが別の玩具を持っていき、ヴェロニカに見せると興味がそちらに移ったのかファンタズマを放す。

力なく落ちるファンタズマをマーモンが勢いよく抱きしめる。

 

「ファンタズマぁぁぁあ!」

 

ぐったりとしているが、若干生きているファンタズマにマーモンが涙目になりながら部屋を駆け出して行った。

ルッスーリアはヴェロニカを抱き上げたまま、マーモンの背中を眺めていた。

 

「もう二度とベビーシッターなんてやらないよ!どれだけ金積まれようがね!」

 

マーモンはファンタズマを抱き寄せながら叫ぶ。

お怒りである若干涙目のマーモンにルッスーリアは溜め息を吐く。

 

マーモン、担当から除外。

次はスクアーロだった。

 

「う"ぉぉぉおい、俺が子守りだとお"?」

「もうあなたしかいないのよスクちゃん」

「あ"?ベルは?」

「放置」

「レヴィは?」

「ぎゃん泣き」

「マーモンは?」

「逆に泣かされていたわね」

「マーモンあいつそれでもヴァリアーの幹部かぁぁぁああ"あ"!」

「もうあなたしかいないじゃない、あたしもう任務行かなきゃいけないから今日一日だけでもこの子見といてちょうだいよん」

「う"お"ぉぉぉおい、勝手に置いていくんじゃねぇぇぇぇぇえ!」

 

スクアーロの叫びを無視してルッスーリアは急いで任務に向かっていった。

 

「うーあー」

「…」

「だう」

「くそ、何で俺が子守なんぞ…」

 

スクアーロはヴェロニカを見やり、舌打ちをする。

だがスクアーロ、きちんとルッスーリアから渡された本を読み、ヴェロニカの世話を淡々としていた。

途中ヴェロニカが泣き出せば、様子を見ようと顔を近づけ、ヴェロニカに髪を掴まれる。

 

「ぃ、う"お"い、離しやがれぇ」

「だー」

 

ヴェロニカは泣き止み、必死にスクアーロの髪で遊んでいた。

何度か同じ目に合い、最終的に満足するまで放っておくことにしたのだ。

ルッスーリアが帰って来た時、一番まともに世話をしていたスクアーロを見て、今後も任そうと決めた瞬間だった。

そしてそれはヴェロニカが3歳になるまで続き、スクアーロの頭部が一部剥げていたことが明らかになるのもその頃だった。

 

 

月日は経ち、ヴェロニカが7歳の頃。

ルッスーリアが急な任務に本部にいなかったため、スクアーロにヴェロニカが任されていた。

スクアーロも書類整理などがあり、ヴェロニカを見る時間などなかった。

 

ヴェロニカside

 

現在7歳のヴェロニカです。

目の前には書類を捌いていくスクアーロがいた。

いつもの大きな声はなりを潜め、期限の迫った仕事に手いっぱいのご様子である。

ぶっちゃけ暇だ。

だってスクアーロの部屋とかなんもないし。

スクアーロは仕事で私の動作に反応していない、というわけでこの部屋を脱出します。

あーあー、私ももう7歳だし放置してくれてもいいだろうに。

いやそれで誘拐にあったら目も当てられないわ。

ヴェロニカはスクアーロの部屋を出て、本部を歩き回っていてた。

周りを確認しながら誰もいない道を歩いていると、曲がり角で何者かにぶつかる。

ヴェロニカはいきなりのことで尻もちをつく。

やっべ、見つかった!

慌てて立とうとすると、どっかで聞いたような声が聞こえてきた。

そこには金髪のイケメンと、いい年したおっさんがいた。

 

「お?子供?」

「ボス、どうし…子供?」

「何でこんなところに…大丈夫か?」

 

金髪のお兄さん、これディーノじゃね?

うっわ、近くで見るとイケメンだなぁ。

ディーノはヴェロニカに手を差し出すと、ヴェロニカもゆっくりとその手を掴み立たせてもらう。

 

「にしてもどっから来たんだ?親は?」

「……仕事」

「うん?ヴァリアー隊員の子供か…何で仕事場に連れてくんだよ」

「ここ私の家」

「え?」

「ボス、この子供の顔……ザンザスに似てねーか?」

「え、ザンザスはないだ………マジだ」

 

目の前のディーノはヴェロニカの顔をまじまじと眺める。

めっちゃ見てくるんだけど、何で?

ヴェロニカは恥ずかしさで眉を傾げた。

 

「おっと、眺めすぎて悪いな、お名前を聞いても?」

 

目の前にイケメンがががががが

うっわ顔整ってる。

こいつ絶対リア充だ、爆発しろ。

そう考えていると、ディーノが咳払いをしてヴェロニカの手を彼の手の上に置く。

 

「初めましてベッラ、俺の名前はディーノ…スクアーロとザンザスの悪友だ」

「ヴェロニカよ」

 

おおっと、名前聞いてたのに無視してたから咳払いされちゃったよ。

にしても部下いると様になるなぁ。

 

「ヴェロニカはザンザスの娘なのか?」

「そうよ」

「へぇ、あのザンザスが…」

「何よ悪い?」

「別におかしかったわけじゃねぇんだ…少し意外だっただけだ」

「そう、あなた何でここに来たの」

「スクアーロとザンザスに会いに…」

 

ディーノが喋っていると、遠くからスクアーロの声が聞こえてきた。

あちゃー抜け出したのバレちゃったー

ヴェロニカは舌打ちする。

段々とスクアーロの足音がこちらへ近づいてくる。

 

「う"お"ぉぉおい!プリンチペッサぁぁぁああ!」

「うるさいわね、ここにいるわ」

「おめーいきなり抜け出すなぁぁああ!」

「よぉ、スクアーロ」

「あ"あ"?何でてめーがいんだ?」

「ザンザスから聞いてないのか?今日訪問するって言ってあったぞ」

「あんのクソボスぅぅううう!」

「うるさいわよスクアーロ」

 

スクアーロはヴェロニカを抱き上げると、ディーノたちをザンザスの部屋に案内する。

途中で、ヴェロニカを部屋に戻し、そのままディーノとザンザスの部屋に行ってしまった。

これヴェロニカのヴァリアー以外の原作キャラへの初対面であった。

 

 

 

ディーノside

 

 

急にぶつかってきた子供に俺は目を丸くした。

どうしてヴァリアーという殺伐とした場所にこんな小さな子供がいるのか分からなかった。

直ぐに我に返り、子供に手を伸ばし立たせる。

 

「にしてもどっから来たんだ?親は?」

「……仕事」

「うん?ヴァリアー隊員の子供か…何で仕事場に連れてくんだよ」

「ここ私の家」

「え?」

「ボス、この子供の顔……ザンザスに似てねーか?」

「え、ザンザスはないだ………マジだ」

 

ロマーリオの言葉に俺はよくよく少女の顔を見つめると、あのふてぶてしい強面をしているザンザスの顔が過ぎった。

まじまじと眺めていると、少女の眉間に皺が寄る。

不機嫌な様も父親似とは…

 

「おっと、眺めすぎて悪いな、お名前を聞いても?」

 

いつまでも言葉を発さない少女に首を傾げるが、少女の眉が僅かに上がったのが見えた。

まるで、何故自分から名前を言わねばならないの?と言う様に俺は咳払いをして、自分の名前を教える。

 

「初めましてベッラ、俺の名前はディーノ…スクアーロとザンザスの悪友だ」

「ヴェロニカよ」

 

やはり俺の自己紹介を待っていたのだと確信した。

そして少女が名前を発すると同時に、威圧感を感じた。

なんて子供だ、この年でそれほどの風格を纏うだなんて…

流石はザンザスの子供だろうか。

 

「ヴェロニカはザンザスの娘なのか?」

「そうよ」

「へぇ、あのザンザスが…」

「何よ悪い?」

「悪い別におかしかったわけじゃねぇんだ…少し意外だっただけだ」

「そう、あなた何でここに来たの」

「スクアーロとザンザスに会いに…」

 

少しだけ目の前のベッラは不機嫌になってしまったようだ。

言葉を選ばねば、さらに機嫌が悪くなっていくことを分かってしまい、ディーノは言葉を選んで彼女の言葉に返答する。

すると、耳に悪友の声が入ってきて、目の前の少女は舌打ちをした。

俺はその舌打ちに驚きながらも、視界に入る長い銀髪に手を上げた。

 

「う"お"ぉぉおい!プリンチペッサぁぁぁああ!」

「うるさいわね、ここにいるわ」

「おめーいきなり抜け出すなぁぁああ!」

「よぉ、スクアーロ」

「あ"あ"?何でてめーがいんだ?」

「ザンザスから聞いてないのか?今日訪問するって言ってあったぞ」

「あんのクソボスぅぅううう!」

「うるさいわよスクアーロ」

 

スクアーロの厳つい声にも全く怯えずさらに不満をぶつける子供に俺は感嘆する。

スクアーロはそのままヴェロニカを抱き上げると、ザンザスの部屋に向かった。

途中ヴェロニカをスクアーロの部屋に置いていくと、俺はスクアーロに声を掛ける。

 

「ザンザスに娘かぁ…驚いた」

「俺だって出来た時は驚いたぞお"」

「ていうか、流石ザンザスの娘って感じだな…」

「まぁな…プリンチペッサはてめーの思っているよりも賢いぞぉ」

「さっき思い知らされた……お前たちの仕事…教えてんのか?」

「教えるわけねーだろぉ」

「え、それであの威圧感か……もはや天性の賜物だな」

「あれを誰彼構わず放つから困りもんだあ"」

「へぇ…」

 

まだ何も知らずにあの威圧感……あれは大物になる者の風格だ。

強者の…気迫…

 

「何も知らずに……てのは無理だろうなぁ…」

「あ"あ"?何か言ったかぁ"?」

「いいや別に…」

 

あの赤い眼は…強者の眼だ………何も知らない子供がする眼ではない…

ああ、でもまだ……こちら側に来るべきじゃないなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「リア充は許すべからず…だがヘタレは許す」

 

 

 




ちゃっかりヴェロニカのことをヴァリアーよりも理解してしまったディーノです。
多分もう少しヴェロニカと交流があれば、ヴェロニカの炎のことも最初に気付けたかもしれないのもこいつ。
ロマーリオは私の中では無害なモブおじさんAです。
一応他の方のリクエストをざっと読みましたが、本編内容と矛盾が生じそうなので書くことは出来ませんでした。
ご了承ください。
※感想欄にリクエストは書かないでください。
活動報告の返信、又はメッセージでお願いします。


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Veronicaの好きな人

アルテウムさんからのリクエストです。





ヴェロニカ24歳、女性として輝く時期である。

何事なく過ぎていく日々で、ソファに座っていたザンザスにヴェロニカが声を掛けた。

ほんの気まぐれだった。

 

「ねぇパパ」

「あ"?」

「あたしね、好きな人が出来たの」

「は?」

「とってもカッコいい人でね…ライアンっていう―――」

 

パリンッ

 

「え」

 

ヴェロニカの目の前にはザンザスが先ほど持っていたワイングラスが無残に砕け散っていた。

 

「くだらねぇことを言う暇があんなら仕事しやがれ、クソガキ」

「もう、少しくらい聞いてくれたっていいじゃない…はぁ、任務行ってくる」

 

ヴェロニカは興冷めしたように、部屋を出て行った。

任務へ行く途中、廊下でスクアーロに会って任務に行くことを告げると快活に送り出された。

そしてヴェロニカは任務に向かった。

 

この後のことを、のちにライアンの事件と呼ばれることになる。

 

スクアーロがザンザスの執務室に書類を届けに無遠慮に入ってきた。

 

「う"お"ぃ!ボスさんよお"報告書を………」

 

スクアーロは次の言葉を発することはなかった。

いや出来なかった。

部屋を入って直ぐに襲ってくる重圧に体が強張る。

すっかり委縮したスクアーロはザンザスに小さく声をかける。

 

「ぅ"ぉぃ……ボス?……報告書…」

「おいカス」

「う"お"?なんだあ"?」

「消えろ」

 

スクアーロの意識はここで途切れていた。

 

ザンザスの部屋の前に、血溜まりの上でスクアーロが倒れているところを、ルッスーリアが見つけるのはそれから1時間後だった。

 

「ちょちょちょ、なにあれ⁉なにあれ⁉」

「あ、あたしだって知らないわよん‼」

「ボ、ボボボボスがご乱心ををををっ」

「いやお前がまず落ち着けよ!」

「まず君たちみんな落ち着いたらどうだい?」

 

マーモンの声で、ルッスーリア、レヴィ、ベルがマーモンを見る。

そしてマーモンを捕まえ、部屋から出てザンザスの部屋のある廊下に放り込んだ。

そして数秒後

全力疾走のマーモンがベルのフードに隠れる。

 

「なななななな何だいあれははは⁉」

「「「いや俺たちが知りてぇよ」」」

「ぅ……ぉ?」

 

額を数針縫ったスクアーロがようやく目を覚ます。

 

「あ!スクちゃん!あんた何かボスに言ったの⁉」

「あ"?……ってぇ…」

「なんかすごくボスの周りに黒い何かが…てかあれなに⁉何なの⁉」

「え?あ!あんのクソボス!いきなりっ……ていうか何であんなに怒ってんだあ"?」

「お前何かしたんじゃねぇの⁉ボスがやばくなってんぞ⁉」

「俺ぁ何もしてねぇぞお"!報告書出そうとしたらぶっ飛ばされただけだぁ"」

「はぁ⁉じゃあボス何でああなってんだよ!」

「あああ、あたしあの廊下歩けないんだけど⁉」

「ぼぼぼぼぼくも死にたくないよ!」

 

幹部が恐れるほど、現在ザンザスの執務室のある廊下は言い知れぬ重圧がかかっていた。

近づけば殺される。

本能的に死を直感してしまうほどの重圧に他の隊員は廊下に入った瞬間意識が刈り取られた。

既に3時間が経過したが、その重圧が止むことはなく、被害者が続出していった。

 

「ちょっと、これ本格的にやばいでしょ」

「まず何でああなったんだい」

「ボスがあそこまでキレるってクーデター以来だぞぉ"⁉」

「プリンチペッサしかボスを止められる人いないのに、そのプリンチペッサは任務でいないじゃなぁい!」

「とととと取り合えず電話かけようぜ」

「そそそ、そうだな!」

 

ルッスーリアが携帯を持ち出し、ヴェロニカに電話を掛けるが一向に繋がらない。

 

「くっそ、どうなってんだよ」

 

皆が一様に死の淵に立たされているような錯覚に落とされていた。

ヴェロニカが帰ってくるまでの間、あれがずっと続くと思うと死んだような気分である。

時間が過ぎれば過ぎるほど重圧は広範囲に広がっていった。

その間何度か、ヴェロニカに電話をかけるが何故か繋がらず、皆涙目であった。

ようやくヴェロニカに電話が繋がったのは、それから5時間後であった。

 

 

ヴェロニカside

 

「んー、ターゲット来ないなぁ…」

 

私は今イタリアの最北端の町にいた。

ターゲットはこの町に隠れている男性だった。

この男、他のマフィアとのパイプの役割をしているらしく、今回そいつから情報が漏洩したとのこと。

ヴェロニカはそいつが教会の中で情報の取引が終わり、出てくるところを待っていた。

 

「あ、出てきた」

 

ヴェロニカはその男が出てきて、宿への帰り道人気のない場所を歩いているところ、後ろから近づいていく。

そしてヴェロニカは男を通り過ぎて、路地裏を歩いていると、遠くの方から悲鳴と数分後にサイレンの音が聞こえた。

ヴェロニカはそのまま道を進んだところで崖があり、そこを登り切ると匣兵器に炎を注入した。

 

「さて、検問が張られる前に急ごうかレッサ」

 

レッサは咆哮と共に、炎を纏いその場を駆け出す。

近くの町に着くとレッサを仕舞い、ヴェロニカは書店に入った。

 

「あった、もう新刊出てる……」

 

そのまま本を手にすると、レジに向かい列に並んでいた。

待っている途中で携帯を確認すると、すごい数の着信履歴に目を丸くする。

 

「ふぁ⁉何この件数…」

 

一番多かったルッスーリアに電話を掛けると、ものの数秒で繋がった。

と、同時に

 

『プリンチペッサぁぁぁぁあああ!今すぐ帰ってきてちょうだぁぁぁあいい!』

「は?」

『ボスが、何かやばいのよぉぉお!』

「え?」

『はやくきてちょうだあああい!』

『おい!ちょ、黙れ!ボスの部屋まで聞こえたらどうすんだよ!』

『だってぇえ!プリンチペッサとやっと繋がったのよ⁉』

「待って、何があったの」

『プリンチペッサぁ!早く戻ってきやがれぇ"ぇ"ぇ"えええ!』

 

ブツ…ツーツーツー

 

「ええ?」

 

スクアーロの声を最後に通話は切れてしまった。

ヴェロニカは困惑しながらも、レジを済ませると山に登りレッサを出して本部へ向かった。

 

「ごめんレッサもう少しスピード出して」

 

ヴェロニカは大量の炎をレッサに注ぎ込むと、レッサのスピードが上がる。

獣の咆哮を聞きながらヴェロニカは山の上から下を見下ろす。

そこには電灯がぽつぽつ光っている夜の街並みがあった。

 

「キレイだなぁ…」

 

その頃、本部ではスクアーロがザンザスの八つ当たりで窓から数百m飛ばされていた。

数時間後、任務からおよそ二日後にヴェロニカは本部に到着した。

 

「ただいま…ってなんだこれ」

 

ヴェロニカが玄関から入ると、まずそこには死屍累々と化していた。

 

襲撃かな?でもそれにしたってボンゴレが動いてないのがおかしいけど…

 

更に奥に行くと、レヴィとルッスーリアが倒れておりヴェロニカは近寄る。

吐血しているルッスーリアの体を揺らすと、僅かに目が開かれる。

 

「あ、生きてた」

「殺さない…でよん……」

「ただいま」

「おかえり…なさい…」

「で、何この状況」

「ボスが………機嫌…が…クーデターの時並みに…悪くって……」

「え」

 

え、なにその世紀末。

 

「え、何でそれで私呼んだの?」

「あ、あなたなら……ボスを…止められ……」

 

ルッスーリアは言い切ることなく再び意識を失う。

ヴェロニカはそのままルッスーリアを放置し、廊下を歩く。

 

え?何でパパ機嫌悪いの?

クーデターの時並みって相当じゃね?

ヴェロニカは首を傾げる。

つーかそんなパパ止められるわけないじゃん、うん。

無理無理、私が死ぬ。

でも一応任務完了の報告だけはしとかなきゃなぁ…あー胃が痛い。

ヴェロニカは内心死地に赴く戦士のような覚悟をして、ザンザスの執務室の扉を開ける。

 

「パパいる?」

「あ"?」

 

うっほほーい、めっちゃ怒っとる。

ここ数年ヴェロニカはザンザスと親子のように接したつもりだが、ここまで怒気を隠さないザンザスを見るのは久々だった。

だがヴェロニカはここ数年でヴァリアーの任務や親子喧嘩を経験して果てしなく肝が据わりまくっていたのだ。

まだパパと喧嘩した時の方が怖かった。

あれはガチで命の危機を感じ取った。

ん?あれ?じゃあクーデターの時より私との喧嘩の方がパパ怒らせたのかな?

まぁそれよりも、この目の前の非常に不機嫌なパパをどうしようか。

何か私の立っている足の横に、スクアーロが倒れてるような気がするけど、幻覚かな?

ああ、ベルまで八つ当たりされたのか…

壁に盛大に血が飛び散ってる…

 

「任務終わったよ」

「報告書出せ」

「後で出すけどさ…任務帰りに面白い本買ったの」

 

ヴェロニカは取り合えずザンザスの怒気を散らそうと、任務帰りの町で買った本を出す。

 

「これ…ライアンの一生っていう本……私その主人公が好きなの」

「は?」

「ん?」

 

何かパパが素っ頓狂な声をあげたが、何故だ。

 

「あ、朝好きな人いるって言ったじゃない…この主人公なんだけど」

 

パリン

 

あるぇ?パパがワイングラス割ったんだけど何で?

でも怒ってないっぽい?

あ、めっちゃ呆れてる時の目だこれは。

どこに呆れる要素あったんだ、任務帰りに寄り道したからかな?

 

「このライアンって主人公ね、とってもパパに似てて」

 

横暴で酒豪で外道で…何でこんな奴が生きてるんだろうって思うくらい非情な男が、一匹の犬を飼って性格が変わるお話。

まさにパパのような男だったね、うん。

 

「パパも暇な時見てみて」

 

でも読んだら読んだで怒りそうな気がしないでもない…

まぁ八つ当たりは全部スクアーロが請け負ってくれるしいいか。

ああ、私も大分外道になってきてるよ…

流石パパの娘だね。

 

「まぁパパの方が好きだけどね、疲れたから私寝るね…明日中には報告書出すよ」

 

それだけ言ってヴェロニカは執務室を出て行った。

その後、全治一週間の幹部と数名以外は病院に搬送され、ヴェロニカは幹部に事情聴取されることになる。

気に入った本を渡したら機嫌治った、とだけ言ったが全く信用されず、事細かに会話内容教えると何故か皆顔を覆う。

 

「お前のせいかあ"…プリンチペッサぁ"ぁ"ぁあああああ」

 

スクアーロの怒鳴り声が屋敷に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【予告】

 

 

 

 

 

 

ヴァリアーボス就任し、およそ一年が経った頃――

 

「ボス、報告書です」

 

 

空を見上げるヴェロニカ――

 

 

「パパー」

「あ?」

「顔見に来たよ」

 

 

父との関係は良好だった―――

 

 

「入江」

「あ、ヴェロニカちゃん」

「この前の論文を見た」

「え、あれをかい?それは嬉しいなぁ」

 

 

だが彼女の波乱はこれからだった―――

 

「勘弁してよ…」

 

 

いやぁぁぁぁあああああああああっ

 

 

ヴェロニカの悲鳴は誰にも聞こえることなく――――

 

 

「ザンザス様」

 

 

ただ無慈悲に―――

 

 

「ボンゴレの…闇……」

 

 

ただ時は過ぎていく―――

 

 

「おいカス鮫」

「なんだあ"」

 

 

私はここで生きなきゃ――――

 

 

「カッ消すぞ」

 

 

 

 

私は 私は 私は―――――

 

 

 

 

パパ助けて……

 

 

 

 

ヴェロニカは何を思い、導くのか。

 

 

    ⅩVeronicaⅩⅡ

 

 

 

 

 

 

「「どうしてこうなった」」

 




ⅩVeronicaⅩⅡ 6月中旬に投稿予定。

友達のともき君にどうしても続きを頼まれたので書こうと思います。
本当はここで完結させる予定だったのに………。
※6月に予定しておりますが、延長する可能性もありますのでご了承ください。
※リクエストを感想欄に書かないでください。
活動報告の返信、又はメッセージでお願いします。


ライアンの事件:イタリア全土のライアンという名を持つ人物が暗殺対象にされかけた事件である。



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Veronicaの父と旅行

Newベアーさん、アッハンアヘ男さんのリクエストです。




「パパ、ここ行こうよ」

 

こんにちわヴェロニカです。

現在16歳、今のうち表の世界で遊べということで18までヴァリアーに入れずぶっちゃけ暇です。

そして友達と遊ぶにも、そこまで親しい友人がいるわけでもなく、ただひたすら本部で修行して時間を潰している毎日でした。

だが、これを見て行かねばという使命感に襲われたので、勇気を出してパパに言ってみました。

 

私の手に持っているのは、『沖縄の美ら海はこんなに綺麗!』と書かれているチラシ。

目の前のパパは物凄く、物凄くだるそうにそれを眺めている。

 

「何で俺にそれを言う」

「パパと行きたい」

「……一人で行け」

「と、言うと思って既に飛行機・ホテル予約しておいたよ…二人分」

「あ"?」

 

パパが若干低い声を出すが、ここで諦めてはいけない。

私は、沖縄に、行きたいのだ!パパと!

最近ようやく私の誕生日にプレゼントを用意してくれるようになったパパに、遠慮なく甘えてみることにした。

うむ、基本的に私の我儘をめんどくさそうな顔をしながら聞き入れてくれるパパを信じよう。

 

「7日後の便だから、仕事入れないでね」

 

気丈に振る舞いながらそれだけ言うと、そそくさと部屋を出る。

 

「絶対だよ!」

 

最後に後押しして、自室に戻る。

チラシを机の上に置いて、スケジュール表をもう一度確認する。

幹部の者には誰にも言っていないし、パパ自ら誰かに言うとは思っていない。

つまり!プライベート旅行!

パパに海は似合わないと分かっているが、私が見たい、切実に。

そして水族館行ってみたい。

2泊3日と短い期間だが、ザンザスが本部を長い間開けることも出来ないので、この期間で妥協した。

内心浮かれるヴェロニカは、一週間後を待ちわびていた。

 

 

 

 

ヴァリアーside

 

 

「ね~プリンチペッサ見なかったかしら?さっきから探してるんだけど見当たらないのよん」

「あ?そういえば朝から見てねーな」

「俺も見ておられないぞ」

 

ルッスーリアの言葉にベルとレヴィが答えた。

するとそこにスクアーロがやってきた。

 

「う"ぉぉおい、ボス見なかったかぁ"?」

「見てないわ~」

「え、ボスもいねーの?」

「『も』って何だぁ"?」

「プリンチペッサもいなのよん」

「「「「………」」」」

 

四人は沈黙の後、マーモンの所へ向かった。

 

「プリンチペッサもボスも見てないよ」

「あらやだ、マーモンも知らないの?」

「書類溜まってるっていうのによお"!」

 

五人は首を傾げて、屋敷中を探し回る。

一時間後、ベルとマーモンがヴェロニカの部屋の中に侵入していた。

バレたらカッ消されるが、要はバレなきゃいいんだよ、バレなきゃ。

すると、ヴェロニカの部屋のベッドのサイドテーブルに一枚の紙があった。

ベルはそれに気づくと、マーモンと共にそれを見た。

 

『美ら海をみるなら沖縄!』

『沖縄の美ら海はこんなに綺麗!』

 

でかでかと綴られる文字にマーモンとベルは顔を見合わせる。

 

「「沖縄?」」

 

ここからヴァリアー幹部の3日間に渡る沖縄ストーカー旅行が始まった。

 

 

 

数時間後

 

「う"ぉぉおい、本当にボスさんはこの島国にいんのかぁ"?」

「さっき個人ジェット機が使用されたの確認しただろう、ボスはこの島国におられる!」

「あたし達に内緒で親子旅行なんて、いくらプリンチペッサでも抜け駆けは許さないわよん!」

「いや抜け駆け以前にお前土俵にすら上がってねーだろ、シシッ」

「僕にだけでも教えてくれればよかったのにね」

 

五人は今、沖縄の空港に佇んでいた。

取り合えずザンザスとヴェロニカの行方を追うことから始め、マーモンが警備の者に幻術をかけて監視カメラを見る。

 

「やっぱりいたよ、何やら北の方に行くみたいだね」

 

マーモンの情報で、五人はザンザスとヴェロニカの乗ったリムジンを追うことにした。

数時間後、着いたのはとても高そうなホテルだった。

 

「ぅ"ぉおおい、まさか宿泊代経費で落としてねえだろうなぁあのボス…」

「ねぇ俺たちはどこに泊まるんだよ」

「そりゃぁ……野宿でいいだろぉ"」

「は?ふざけんな」

「あら、ここ民宿多いじゃない、ちょっと空き部屋あるか探してくるわね」

 

ルッスーリアが宿の確保のため民宿を回り始めると、数件空き部屋があり、ホテルの玄関が見えやすい場所を取ることになった。

 

「つーかこれボスにバレたら俺達殺されね?」

「何を言うか!俺はボスの安全を考慮して「いやこれ普通にストーカーだろ」」

「あ、ボスが出てきたよ」

 

五人は借りた宿の窓からホテルの玄関を覗き込む。

するとヴェロニカとザンザスはリムジンに乗り出したので、五人もその車の後を追うと着いた先は水族館だった。

 

「す、水族館?」

「あのボスが…?」

「おい水族館といえば鮫いるよなぁ"」

「もう遊び目的に変わってる子いるんだけど、これはボスとプリンチペッサを見守るために来てんのよ!」

「つーか何で水族館?」

「どうやらここは世界二位で大きな水族館らしいよ…それに沖縄は海が綺麗と言われているからね」

「へぇ、つかボスもう中入ったけど、俺らも入んの?」

「こんな機会もうないだろぉ"、折角だから入んぞお"」

「明らかに鮫見たさじゃねえか…」

 

五人はザンザスとヴェロニカの後をついて水族館に入る。

中は広い、そして暗くリラックス出来るような空間となっていた。

そして視界の奥の方にザンザスの後ろ姿が見えた。

 

「ボス何かずっとくじら?見てるけど…」

「あれはクジラじゃなくてジンベエザメだよ」

「んだよボスの野郎、鮫が好きなら俺のアーロいつでも見せてやんのによぉ"」

「いやあれはどっちかっていうと…」

 

ベルが言う前に、ザンザスの隣にいたヴェロニカの声で意識が逸れる。

 

「パパ、鮫ばっか見てるけど…好きなの?」

「あ"?」

「これジンベエザメね…さっきから見てたけど」

「鮫見るとカッ消したくなる」

「……スクアーロ思い出すのね」

 

ヴェロニカの声が若干呆れているが、二人はそのまま次の水槽へ移る。

 

「ちょ、スクちゃん!どうどう」

「あのクソボスぅぅぅぅ!」

「シシ、ボスに同感」

 

スクアーロが暴れるのをルッスーリアが宥めている時に、再びヴェロニカがザンザスに声を掛けていた。

ヴェロニカはカクレクマノミを指差し、ザンザスに聞いているようだ。

 

「あれ知ってる、何だっけ…パパ分かる?」

「あ"?」

「ほら、あのイソギンチャクの間に見えるやつ」

「ニモだろ」

 

ここで笑わなかった俺達を褒めて欲しかった。

レヴィ以外の四人は柱に隠れて必死に声を押し殺していた。

 

「ニモ…って……嘘でしょ…んぐっ」

「ほ、ほらボスって魚に興味ないじゃん……ふっ」

「バカの俺でも分かるぞぉ"…あれカクレクマノミだろ…」

「映画でしか見たことないのよきっと……ふふっ…」

 

レヴィはああ!そうですともボス!とか言ってるけど、あいつにとってボスの言葉は全て正解であるようだ。

隣にいるヴェロニカも、流石にニモでないことは分かるようで若干顔が引き攣っている。

水槽の横に説明文を見つけたのか、背中で隠しているヴェロニカに思わず吹き出す。

他の客は圧倒的に怪しい俺たちに怪訝な面持ちをするが、何も言わずまた水槽を眺め始める。

 

「あ、パパ、ウミガメだって」

「カメなんぞ見て何が楽しいんだ」

「あ、こいつなんかレヴィに似てる」

 

その言葉にレヴィが即座に反応し、水槽の方を見る。

そこにはメガネモチノウオがいた。

 

「不細工すぎるだろあれ、シシッ」

「プリンチペッサの目にはレヴィがああ見えてんのかぁ"」

「ちょっとレヴィ、あまり気にしちゃダメよん」

「次の水槽へ行ったよ」

 

マーモンの言葉にそそくさと二人について行くヴァリアー幹部。

 

「あれベル、あれルッスーリア」

 

何故かヴェロニカは誰がどの魚に似ているか探すので夢中になっているようだ。

ベルに至っては、目の場所が見えにくい魚だと全てベルに似ていると言われていた。

本人は若干ショックを受けていた模様。

小一時間経つと、ほとんど見終えたのか外に出始めた。

 

「あれ?もう終わり?」

「違うよ、多分イルカショーでも見に行くんじゃないかい?」

「待って、ボスが水族館にいることさえシュールなのに、イルカショーも行くの?俺の腹筋耐えられないんですけど」

「ちゃんと旅行満喫してて安心したわ~」

「あ、ほらやっぱり」

 

五人の目の前では、ザンザスとヴェロニカがイルカショーの椅子に座っていた。

イタリア最大のボンゴレマフィア独立暗殺部隊ヴァリアーのボスがイルカショーを見るというシュールな光景にベルの腹筋が崩壊した。

水しぶきがかからないぎりぎりの距離に座って、ショーを見ていた。

平日ということもあって人もあまりおらず、ヴェロニカが人混みを嫌うザンザスを配慮していることはすぐ分かった。

というか休日だったら確実にザンザスは来なかっただろう。

イルカショーが始まり、イルカたちが従業員の指示に従って行動し出す。

 

「イルカって知能指数とっても高いから、今度匣兵器でミックス作ってみたいな…」

「…」

 

ヴェロニカの言葉に無言で返すが、何やら考え出すザンザス。

 

「待ってマジでミックス作る気?」

「プリンチペッサは自身の発言力をもう少し理解した方が良さそうだね」

 

無言になるザンザスにヴェロニカは何気なく言った。

 

「あ、でもイルカと鮫のミックスなんて作ったらスクアーロと見分けがつかない…」

「っぶは」

 

「「「「「⁉」」」」」」

 

ただの冗談にまさかザンザスが笑うとは思っていなかったようで、ヴェロニカは目を丸くしている。

そしてそれを聞いていたスクアーロが無言で立ち上がる。

それを抑えるルッスーリア。

 

「ス、スクちゃん!どうどう!」

「離せルッスーリアぁ」

 

ようやくスクアーロが大人しくなり、前でイルカショーを見ている二人を見る。

上機嫌なザンザスにヴェロニカも安堵したのか、その後はただイルカショーを眺めていた。

最後に触れ合い体験があり、イルカの頭を撫でていたヴェロニカ。

思いついたかのようにザンザスにもイルカの触れ合いを催促する。

先ほどから異様に上機嫌なザンザスは流されるままにイルカの前に立ちはだかる。

だが、ザンザスを見た瞬間イルカが物凄い勢いで水の奥底に逃げて行った。

飼育員も慌ててイルカを呼ぶが、出てこない。

この状況に笑い出したのはヴェロニカだった。

 

「ふっ、ふふ…流石パパ…」

「るせぇ」

「イルカ逃げたし、帰ろ」

 

ヴェロニカはザンザスの手を握り、出口の方に歩き出す。

その行動に五人は仰天する。

 

「カ、カメラ!カメラ!」

「ぅ"ぉ"ぃ……ボスがまともな父親に見えるぞぉ"」

「ま、マジか…」

「ふっ、こんなこともあるかと思い最初から全て撮影している!」

「レヴィったらよくやったわね!」

「一応あれで、ボンゴレ最強独立暗殺部隊のボスなんだけどね」

「それな」

 

その日は、既に夕方近くでそのままホテルに戻っていった。

次の日はビーチを貸し切って、そこでプレジャーボートに乗って遠くへ行ってしまった。

海の上だと隠れる場所はなかったので仕方なく2人の帰りを待つことになった。

5時間ほど経った頃、プレンジャーボートが見えてきて、五人は再び双眼鏡を持って帰ってきたボスとプリンチペッサの様子を見ていた。

何故か上機嫌なボスが降りてきて、ボートの運転手は信じられない顔で巨大なクーラーボックスを見ていた。

 

「にしても流石パパ、まさかあんな大きい魚釣るなんて」

「ハッ、他愛無ぇ」

「いやいや、マグロで5mってあんた達これギネス世界記録超えちゃってるよ!」

 

運転手のおじさんの言葉に五人は耳を疑った。

 

「ねぇ、マグロって5mいくものなのかい」

「ていうかあの巨体をどうやって釣り上げんの?無理じゃね?」

「いやボスなら…」

「流石我がボス!」

「俺のアーロと張るじゃねぇかあ"…」

 

ヴェロニカとザンザスはマグロを眺めている。

 

「ていうかパパこれどうするの、パパ魚好きってわけじゃないでしょ」

「ベスターの餌にする」

「ああ、じゃあレッサにもあげるか」

「あんたらこれどこに置くんだ?」

「あ、そこら辺の砂場に置いててくれません?」

「おうおう、にしてもこのでかさの魚を一人で釣り上げるたぁ…あんたすげぇなあ」

「フン」

 

マグロとそれ以外にも釣った魚をクーラーボックスごと砂辺に置いて、運転手はボート置き場の方へ行ってしまった。

一日中ビーチは貸し切りの為、ヴェロニカはピーチパラソルを用意してベスターとレッサを出す。

 

「あれ食べていいよ」

 

ヴェロニカの言葉にベスターとレッサが魚を食べ始め五人はそれを眺める。

 

「なんか非常識な光景だよね」

「あー…普通の親子に見えたが、幻想だったなこりゃあ"」

「にしてもあの大量の魚ってボスが釣ったのかしら?」

「いやプリンチペッサも釣ったでしょ」

「釣りをするボスも中々シュールだよね」

「それな」

 

その日は、釣りをするだけで終わり二人はホテルに戻っていった。

翌日、朝早くホテルを出る二人に五人も慌てて準備して追いかける。

二人が向かったのは那覇市という沖縄の都市である。

国際通りというお土産店が並ぶ大通りを歩いていく二人を、五人も周りを見ながら追っていく。

 

「あ、何かの店に入っていったわよ」

 

ルッスーリアの声に全員がお土産から二人に視線を戻す。

入っていったのは酒の店だった。

セレブであるボスのお眼鏡に敵う酒が見つかったのだろうか。

五人は店の中の様子を遠くから眺めていると、中の声が聞こえてくる。

 

「え、パパそれ買うの?」

「…」

「ハブ酒って……」

 

ザンザスの手に持っていたのは、ハブが入っている酒瓶であった。

 

「は?ハブ?何で瓶に入ってんの?」

「あら、あたし聞いたことあるわよん、ハブのエキスでお酒作る地域あるって…ここだったのね~」

「ゲテモノじゃねぇかあ"」

「ボスが御選びになったんだ、美味いに決まっている」

 

ヴェロニカは若干気持ち悪そうにハブを見るも、ザンザスはそのままレジに持って行った。

その後、色々なお土産を見て回り買っていく二人をただ追いかける五人。

 

「パパ、そろそろ飛行機の時間だから空港行こう」

 

ヴェロニカの言葉に五人は驚く。

 

「え、まだ3日目よ⁉早くない?」

「つーか俺たちどうやって帰るの?」

「君たち、ボスより先に僕ら帰ってないと不審に思われるんじゃないかい?」

 

マーモンの一言でその場が静まり返る。

一瞬の間、すぐさまスクアーロがイタリア行きの飛行機で空いている便を探し出す。

 

「やっべー、これバレたら死ぬじゃん俺ら」

「死ぬのはスクアーロだけだよ、多分」

「う"ぉぉおい!どういうことだああ"!」

 

ボンゴレの権力を使い、なんとか便を取ることが出来た五人。

ザンザスとヴェロニカの乗る飛行機と同じ便に乗り、出来るだけ顔を隠しながら乗り切ること数時間。

空港に着いてから全速力で本部に帰る五人は、ザンザスとヴェロニカよりも早く到着し一息つく。

数十分後、二人が本部へ帰ってきた。

 

「ただいま」

「おかえりプリンチペッサ!全くもうどこに行ってたの⁉探したのよん」

「沖縄行ってきた、はいこれお土産」

「あらあたしに?ありがと~プリンチペッサ!」

「皆にもあるよ」

「じゃあ他の子も呼んできてあげるわね~」

 

ザンザスはそのまま自室に戻り、ヴェロニカは皆がよくいる部屋に来る。

何か大きいクーラーボックスを机の上に置きながら、他のお土産も置いていく。

ベルが見覚えのあるクーラーボックスに顔を引き攣らせヴェロニカに問う。

 

「おい何?このクーラーボックス…」

「あ、それパパから皆にお土産だって」

「「「え」」」

 

スクアーロ達が驚いて、クーラーボックスを開けると、そこには所々食い散らかされているマグロの胴体があった。

これ、明らかにベスターとレッサの喰ってたマグロの残り物じゃん。

ベルとマーモンは呆れながら、まぁボスだもんな、と無理やり納得する。

隣のスクアーロを見ると、拳を振るわせていた。

 

「あんのクソボスぅぅぅう!ベスターとレッサの残りもんじゃねぇかあああああああ!」

「え、何でそれ知ってるの?」

「「「あ」」」

 

この後、ストーカーしていたのがバレて、皆ザンザスにぶっ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 




因みにマグロ世界最高記録は458㎝680㎏らしいです。


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Veronicaの初対面

リエさん、モログロンさん、男祭りさんのリクです。
※本編に矛盾が生じる可能性が出るので、白蘭はヴェロニカと対面していません。
※アニメまでしか知識ないので、シモンファミリーとの対面は書けませんでした。


 

「プリンチペッサ、おめかしするわよ~ん」

 

私はヴェロニカ、現在7歳です。

この前初めて会ったディーノが私の存在を他の人達に言い触らしてしまったようです。

今年から大きな式典に参加することになりました。

クソぅあの跳ね馬めぇ…

初めてのパーティードレスをルッスーリアが大興奮しながら持ってきて、着せられたのが先ほどのことだった。

少しの化粧を施すと、いざ出発とヴァリアー幹部と共に車に乗って目的地へ向かっていた。

 

「プリンチペッサは行儀がいいから皆ビックリしちゃうわよん」

「そう?」

「まぁこの年頃だと走り回ってるガキばっかだしなぁ"」

「私以外子供いるかしら」

「いるわよ~一緒に遊んできたらいいわ」

 

マフィアでも子供は当たり前にいるか…

10代目の守護者達も来るのか?でも私子供用の部屋に連れてかれるだろうし対面はしないよな、きっと。

これがフラグだったのは、もう少しで知ることになった。

 

「じゃぁプリンチペッサ、ここでいい子に待っててね」

「分かったわ」

 

子供がちらほら遊んでいる部屋に大人が一人いるだけで、後は自由に食べ物を食べていた。

ビュッフェだったので皿にいくらか盛り、ヴェロニカは近くの低いソファで座って食べ始めた。

子供の体では直ぐに腹は満たされ、まだ来てから30分しない内に手持ち無沙汰になった。

子供の騒ぐ声が煩わしくなっていきベランダに出て涼んでいると、一羽の鳥が羽を休めに柵の方に留まる。

 

「ミードーリータナービクーナーミーモーリーノー…」

 

これ雲雀恭弥の鳥じゃね?

黄色いし、丸いし…うんこれはヒバードですわ。

何かすごくフレンドリーに私の肩に乗ってくるんだけど、何ゆえ?

 

「ヒバリ、カミコロー」

「物騒ね、飼い主の元に行きなさいよ」

「ヒバリー?」

「私は雲雀じゃないわよ」

 

うっとおしい鳥を手で払うがどこにも行かず、そこにもう一羽乱入してくる。

 

「ホーホー」

「カミコロー」

 

このフクロウ………骸のだよね……

何で来るかな…ヒバードと何か睨み合いを始めてるし

段々と剣呑な雰囲気を発しながら睨み合う二羽の元に、これまたもう一羽乱入してくる。

ああ、もう…何か分かったこれ絶対山本の燕だ

だってすっごい青色の炎纏ってるもん

ヒバードとムクロウが睨み合う中、まるで仲裁しているかのように真ん中に入っていく。

そして両方から若干突かれている。

 

「何でここでやるのよ、他でしなさいよ」

 

飼い主があなた達探してここまで来たらどうすんのよ…

ヴェロニカはうるさくなるベランダから部屋の中に入ると、三羽もついてくるように入っていた。

 

「…ついてこないで」

 

ヴェロニカの呆れた声にすら反応し、飛び回り出す。

他の子供は部屋に入ってきた三羽に視線が釘付けになっている。

物珍しさに静かになった部屋にヴェロニカは再びソファに座る。

すると、足元に何かが這い寄る感覚を覚え下を見ると若干大きい豹がいた。

 

「グルル…」

 

もう驚かない、こいつは瓜だ、うん。

何かでかいけど、赤い炎らしきものがゆらゆらしてるし

もうなんなのコイツら、何で私に寄ってくんのよ…

遠い目をし出す私の肩に何かが這い上ってくる感触が伝わり、諦めてそちらに目をやる。

 

「今度はお前か」

 

そこにはハリネズミがおり、その後ろにはライオンがいた。

動物園か何かですかね、ここは…

 

「あ、小次郎…ここにいたのかって何だこれ」

 

部屋のドアが開き、男の声がしたのでそちらを振り向く。

そこには顎下に傷を携えた山本武がいた。

 

「何でこんなにいるんだ……」

 

え、山本じゃね?原作キャラの山本武じゃね?

うわぁぁぁああああ…渋い…

ヴェロニカの混乱を他所に、山本は匣兵器が集まって囲んでいるヴェロニカを視界に捉えると、近づいてきた。

 

「なぁ…お嬢さん、こいつらどっから来たんだ?」

「さぁ」

 

近づいてきた、っていうか話せた…だと?

やばい、ディーノの時より緊張する

 

「んー……俺山本ってんだ…お嬢ちゃんの名前は?」

「………ヴェロニカ…」

「そうか、それで―――――」

「あ、瓜てめぇこんなとこにいたのか…匣に戻れ」

 

山本の言葉を遮るように、別の男の声が部屋に響く。

ヴェロニカはそちらに視線を向けると、そこには獄寺隼人が立っている。

ヴェロニカは目の前の人物達の登場に混乱の極みにいるが、悲しいかな、表情に出ないので誰も気付きはしなかった。

 

「つーか何でこんなに群がってんだ?」

「さぁ…俺もわかんねーんだけど、俺の小次郎もここにいたんだよ」

「ナッツもいんじゃねぇか…十代目が探してたぞ」

「ガウ」

「あとクロームがムクロウを探してたな…」

「ホー」

 

ヴェロニカの後ろに座っていたナッツが返事をするが、動く気配はない。

先ほどから飛び回っている小次郎もヒバードもムクロウもが主人の元に戻る気配がなく、山本も獄寺も首を傾げていた。

どうすんだこれ、いやマジで動物園みたいになってるから早く主人の元に帰れって…

他の子供たちは飛び回る鳥を目で追うことに夢中になっている。

再びドアが開くと、今度は栗色のツンツン頭の背が低い男性が入ってきた。

 

「あ、ナッツ、こんなとこにいたのか」

「十代目」

「ツナ」

 

もはやヴェロニカは驚くことを放棄して、原作キャラの顔をまじまじと見納めることにした。

ナッツは主人に一声吠えるだけでやはり動こうとはしなかった。

 

「あれ?ナッツ、匣に戻れって…」

 

ナッツの態度に若干狼狽える沢田綱吉31歳。

珍しい態度を取るナッツに首を傾げていると、後ろの方からもう一人声が降ってきた。

 

「おやこんなところにいましたか…クロームが探していましたよ」

 

ナッポオオオオ!

うっわ、マジでナッポーだ

頭がまるでナッポーだ…結構髪形で弄られてたけど、これは弄られて当たり前だと思えるナッポーだ

にしても本当に瞳の中に六って入ってる

原作主要キャラの集合に内心興奮しているヴェロニカが沢田綱吉と目が合った。

匣兵器に囲まれている少女が関係していると超直感でも働いたのか、沢田綱吉はヴェロニカの元に寄ってくる。

 

「君…もしかしてザンザスの子?」

「「え」」

 

後ろにいる獄寺と山本の声が重なる。

私もそれを言われると思わなかったので固まった。

沢田綱吉は、固まって喋らないヴェロニカの言葉を待つが、ふと何かを思い出したかのような表情をした。

 

「あ、俺沢田綱吉…君の名前は?」

「………ヴェロニカ…」

「そっかヴェロニカちゃんか…この子たちが何でここにいるか分かるかな?」

 

沢田綱吉の言葉にようやく我に返り返事をした。

後ろの方で、六道骸がほう…とか言って笑みを見せてるけど、何が面白かったのかな?

皆目見当もつかない…いやそれよりも沢田綱吉の質問に答えねば…

 

「さぁ…気付いたら部屋の中に入ってきていたわ」

「そっか…教えてくれてありがとう…ナッツ行くよ」

 

沢田綱吉の言葉に立つ様子のないナッツに今度は私が若干困惑する。

んー?こいつらが動かないと私、ここ出れないよね…

一気に原作キャラと対面しまくってもうお腹一杯です。

スクアーロのとこ行きたい…あわよくば帰りたい

ぶっちゃけ六道骸の興味深そうな目がアカン、怖いわ

何の力を持たない幼女に向けるような目じゃないことだけは分かる。

諦め半分で、わんさか自分勝手に寛いでいる動物たちに声を掛けた。

 

「主人の元に戻って……」

 

その一言で、先ほどまで寛いでいた匣兵器達がのそのそと歩き出した。

ヒバードとロールだけはヴェロニカの肩に移動する。

何でだ…

なんか匣兵器達が匣に戻ろうとしていたので、それを見ないように部屋を急ぎ足で出ていく。

私は一応マフィアも何も知らない幼女ですから!

ヴェロニカは、ロールとヒバードを肩に乗せたまま、大人たちがいる会場を探し出した。

少し歩いていると、二人の警備が両サイドに待機している会場があった。

ヴェロニカはそこだと確信し、扉の前まで行くと警備の人がしゃがんできた。

 

「お嬢ちゃん、ここは子供が入れる場所じゃないんだよ」

「さっき同じ子供達が遊んでいた部屋があっただろう?そこに戻りな」

 

極力怖がらせないように優しくいているが、顔が厳ついので多分普通の子供なら一発アウトだろうな。

だがヴェロニカはこの扉の奥で、ヴァリアーの皆の所へ行きたかった。

先ほどの骸の視線が忘れられず、怖くて誰でもいいから彼らの傍に行きたかった。

何故この壁の向こうにいるのが分かったのか…自分にも分からなかったが、どこからともなく確信めいたものがあった。

これがザンザスから継いだサブスキルのような直感だったことは後に知ることになる。

ヴェロニカは入れようとしない警備の男性に苛つき、つい強く駄々をこねる様に強い口調で言葉を発してしまった。

 

「開けて」

 

警備の人達が何故かたじろいでいるが、お構いなしに侵入しようとした。

あと少しで扉に触れるというところで、扉が内側から勢いよく開いた。

扉を開いたのは、黒髪と吊り目が特徴の雲雀恭弥だった。

ヴェロニカは目の前の雲雀恭弥の登場に先ほどの恐怖と焦燥が一気に吹き飛んだ。

 

「わぉ…久々に大物かと思ったらこんな小っちゃい子供だったんだ…」

 

雲雀恭弥はまじまじとヴェロニカを見ると、警備員を見やる。

 

「何してたの?」

「は、あの…この子供が中へ入りたいと聞かなくて…」

「ふぅん…君、中に何の用?」

「スクアーロ探してる」

「入れていいよ…僕が責任取るから」

「え、あ、分かりました」

 

雲雀恭弥はにんまりと笑みを浮かばせながらヴェロニカを中へ入れた。

めっちゃこっち見て笑ってるんですが、すごく、怖いです

私何かしたかな?

ヴェロニカは雲雀の視線に体が強張るが、肩に乗っかっていたロールとヒバードを思い出した。

肩に手を持っていくと、そこには何も乗っておらず首を傾げると、足元から鳴き声が聞こえた。

 

「ロール」

 

雲雀がロールの名前を呼ぶと、ヴェロニカの足元にいたロールはそのまま雲雀の肩によじ登っていく。

ヒバードはそのままどこかに飛んで行った。

中に入ることが出来たヴェロニカは取り合えず入れてくれた雲雀に礼を言う。

 

「ありがとう、助かったわ」

「そ、ところで君名前は?」

「………?ヴェロニカ」

「ふぅん…じゃ、またね」

 

雲雀はそれだけ言うと、どこかに行ってしまいヴェロニカはスクアーロを探し出す。

人混みの中に銀髪を見つけ歩き出す。

スクアーロのスーツの端を強めに引っ張ると、スクアーロがヴェロニカの存在に気付いた。

 

「う"!?プリンチペッサ?」

「スクアーロ…いつ帰るの」

「あ"?まだ一時間弱あるが…ていうかお前どうやってここに入れたんだぁ"?」

「………ハリネズミの飼い主が入れてくれた」

「ハリネズ……雲雀恭弥か……つかお前他のガキ共と遊んでなくていいのか?」

「いい、静かにしてるからここにいる」

「お"ぉ…それなら別にいいがよ…」

 

スクアーロは再び喋っていた相手と会話し始める。

相手はディーノだったので、ディーノもヴェロニカの突然の乱入に目を丸くして次に笑って挨拶してきた。

 

「お、ヴェロニカじゃねぇか…久しぶりだな」

「そうね」

「どうだ、飯たくさん食ったか?」

「味がいまいちね」

「おめーの舌は肥えすぎだぁ"…」

「あっそ」

 

その後九代目に会ったりして少しだけお喋りをした。

そしてパーティーはその後一時間すると閉会し、ヴェロニカはそのままヴァリアー本部へ帰った。

原作キャラとの対面でどっと疲れたが、それでも貴重な思い出になったのだった。

 

 

 

沢田綱吉side

 

匣の中が空だと気付いたのは、パーティーの最中だった。

慌ててナッツを探そうと一旦会場を出て、他の部屋を見て回っていた。

すると、子どもの為の部屋が少し騒がしく、念のため顔を出してみた。

そこには小次郎、ロール、瓜、ムクロウ、ナッツと沢山の匣兵器で溢れかえっていた。

状況に困惑するも、ナッツを見て声を掛ける。

が、反応はなくさらに困惑する。

その後骸が現れ、ムクロウに声を掛けるがムクロウもそれを聞く気はない様子だった。

俺は首を傾げながらナッツの近くに座っている女の子を見ると、女の子は何事もないかのように座っていた。

そして女の子の顔を眺めていると、あることを思い出した。

それは先日、ディーノさんがヴァリアー本部へ訪れた時の話だった。

あのザンザスに子供が出来たとか…

俺はディーノさんの言葉に驚愕したのを覚えている。

とても、聡明で…ザンザスに似ていて、あれは大物になると笑っていたディーノさんを思い出す。

目の前の女の子を見てそれを思い出すということは、まさかこの子が…と思い、声を掛けてみた。

 

「君…もしかしてザンザスの子?」

「「え」」

 

気付いてなかったのか、後ろにいる山本と獄寺君が驚いて声を上げていた。

そして目の前の女の子の返事を待ってみるが、中々返してこなくて内心首を傾げる。

だがディーノさんの話の続きを思い出して、慌てて自分の自己紹介からしてみた。

 

「あ、俺沢田綱吉…君の名前は?」

「………ヴェロニカ」

「そっかヴェロニカちゃんか…この子たちが何でここにいるか分かるかな?」

 

案の定、彼女は俺から名前を教えると、自身の名前を教えてくれた。

そして俺を驚かしたのは、彼女が自身の名前を発した時の雰囲気だった。

ザンザスとまではいかないが、それでも肌に伝わるピリッとした雰囲気に一瞬飲まれそうになった。

直ぐに我に返り、匣兵器のことを聞いてみた。

 

「さぁ…気付いたら部屋の中に入ってきていたわ」

「そっか…教えてくれてありがとう…ナッツ行くよ」

 

俺の言葉にナッツは動く気配すらなく、その珍しい態度に驚いた。

目の前のヴェロニカはそんな俺を見て呆れたように、ナッツや他の匣兵器に向けて言葉を放った。

 

「主人の元に戻って」

 

たった一言、その一言にナッツや他の匣兵器達が動き出す。

まるで彼女の言葉を待っていたかのように。

そんな状況にますます困惑して、現状が掴めないまま俺は取り合えず匣を取り出す。

ナッツを匣に戻そうとすると、ヴェロニカちゃんは立ち上がり、早歩きで部屋を出ていく。

俺は彼女を追おうとしたが、骸に呼び止められ足を止める。

 

「沢田綱吉…」

「え、何骸…」

「彼女は……ザンザスの娘ですか?」

「そうだと思うよ…ディーノさんの言っていた特徴と一致してるし…」

「なるほど、とても興味深いですね」

「え、何でお前魔レンズ出してんだよ…」

 

骸は悪だくみしそうな表情をしながらヴェロニカちゃんの背中を眺めている。

 

「彼女の魂が……ぶれて見えるのですよ……それも大きく、ね」

「魂って…え?」

「何でしょうね…魂の量が膨大すぎて器から零れ落ちている…いや収まり切れていないと言った方がいいでしょう…」

「それどういう…」

「動物は霊的対象にとても敏感だ…だから彼女の膨大な魂に引き寄せられたのか」

 

骸の言葉に俺は驚きを隠せなかった。

 

「だが、動物があそこまで懐いていたのならそこまで警戒する必要もありませんね」

「そっか…俺の直感も何もなかったし…」

「ムクロウ、クロームのところに行きますよ」

 

骸はムクロウを連れて、反対方向へ去ってしまう。

俺はヴェロニカちゃんの行ってしまった方向を眺め、先ほどのことを思い出す。

 

あの威圧感……まるで、ボンゴレリング争奪戦のときのザンザスみたいな感じだった…

まだ小さいのにあそこまで刺々しく、誰も近寄らせない雰囲気を纏うだなんて…

なんだろう、嫌な予感がする―――…

この時の俺の直感が現実となったのは、7年後だった。

 

 

 

雲雀恭弥side

 

式場で人混みに嫌気が差して、後は哲に任せて帰ろうかと思っていた。

だがその時に、濃厚な殺気が扉の向こう側から押し寄せてきた。

久々の大物の殺気に無意識に口角を上げて、足を扉へと向けていた。

そして扉を勢いよく開けると、そこには誰もいなかった。

先ほどの殺気はなりを顰め、ふと下に存在する気配に僕は視線を下にズラした。

 

「わぉ…久々に大物かと思ったらこんな小っちゃい子供だったんだ…」

 

そこには、とても小さい少女がいた。

まだ6~8歳ほどだろうと推測し、さっきの殺気がこの子から発せられたものだと気付く。

この年で、あれだけの殺気を放つなんて…将来が楽しみじゃないか

僕は無意識に少女を見つめる。

そして警護していた二人の男に声を掛けた。

 

「何してたの?」

「は、あの…この子供が中へ入りたいと聞かなくて…」

「ふぅん…君、中に何の用?」

「スクアーロ探してる」

「入れていいよ…僕が責任取るから」

「え、あ、分かりました」

 

よく見ると、少女の足元にロールがいることに気付きロールを呼ぶ。

珍しいね、この子が僕以外に懐くなんて…

 

「ロール」

 

ロールが肩に乗り、僕は彼女の存在に機嫌が良くなっていった。

普通は僕を前に怯える子供しかいなかったが、彼女は怯える素振りすらない。

 

「ありがとう、助かったわ」

「そ、ところで君名前は?」

「………?ヴェロニカ」

「ふぅん…じゃ、またね」

 

ヴェロニカ、ね……

早くて10年後かな

ああ、彼女が強くなるのが楽しみでたまらないよ…

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

「ナッポーと雲雀恭弥めっちゃ怖い」

 

 

 

 

 




ヴェロニカは前世の魂が、今世の魂と合わさっていて、骸から見ると器からはみ出ているように見えます、って話でした。
何か綺麗に纏められず申し訳ない。

※本編に矛盾が生じる可能性が出るので、白蘭はヴェロニカと対面していません。
※アニメまでしか知識ないので、シモンファミリーとの対面は書けませんでした。





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