東方Project×ウルトラセブン (小説版) (泉シロー(旧柊太))
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設定集その1

東方セブン設定集

ここでは本編に入る前に知っておくと、本作をより楽しめるかもしれない予備知識、設定集を載せております。
ですが、ここに載せているのはあくまで本編前の予備知識ですので、ネタバレはないく安心してお楽しみいただけます。

※尚、動画版のほうもこちらと同じ設定になります。



[]内は作者からのコメント

 

・ウルトラセブン時間設定…

ウルトラセブン原作より約30年後

地球防衛軍、ウルトラ警備隊は規模を拡大させて健在。現在では宇宙人に十分対抗出来る戦力を持つに至っている。

ただし、遊星間侵略戦争時代が終結し、ここ十数年は宇宙人の侵略も沈静化しており、一時的に平和が訪れている。最近では市井の人々の関心から宇宙人の存在が薄れつつある。

 

 

・東方の時系列……

東方作品の時間設定は非想天則、ダブルスポイラーの翌年、

書籍版茨華仙1~5話と同年度

神霊廟の前年度

星と夏と土の年(2010年度)

 

[従ってそれ以後に登場する東方Projectキャラクターは原則、登場しません。尚、東方星蓮船初登場のキャラも登場させる予定がないのでご注意ください。

 

 

※東方作品からはなるべく多くのキャラを登場させますが、一部キャラの登場回数に偏りがあったり、ほぼワンシーンのみの登場となってしまうキャラもいます、ご了承下さい。]

 

 

・ダンの姿……

ウルトラセブン原作の若い姿のまま 外見的には前に地球に来た時と変わらず、全く歳はとっていないように見える

[東方キャラクターと外見的、精神的年齢を近づけけたかった為。]

 

 

 

・他ウルトラシリーズとの関連性……

他ウルトラシリーズとの関連性は基本無し。

 

[ウルトラマンレオ劇中のダンの性格や、

セブンの息子ゼロ等の設定は一切反映していません。あくまでセブン原作による設定のみとさせていただきます。]

 

 

平成ウルトラセブン、ULTRASEVENXシリーズとも繋がりはなし。

 

[平成シリーズは繋げる案もあったのですが、一部設定がややこしくなるため断念。]

 

 

ただし他ウルトラシリーズの一部設定、繋がりを連想させるエピソードは登場する

 

[登場宇宙人、怪獣はウルトラセブン原作に登場したもののみを登場させる予定で、他ウルトラシリーズ登場の宇宙人、怪獣は本作には登場しません。平成シリーズからの登場も今のところ微妙です。]

 

 

 

 

・東方Project原作参考資料……

 

原作STG

東方紅魔郷~東方星蓮船までの原作STG作品

 

主にセリフやスペルカードなど

※いわゆる東方旧作シリーズについては反映させておりません。

 

黄昏フロンティア制作 アクションゲーム

東方萃夢想 緋想天 非想天則

 

 

書籍版

東方求聞史記 求聞口授 香霖堂 儚月抄 外來韋編(壱)

 

漫画

東方茨華仙 三妖精(松倉版除く) 儚月抄 鈴奈庵

 

[東方茨華仙に関しては、関連するエピソードをいくつか出す予定のため、読んでおくとより本作をより楽しんでいただけると思います。]

 

PCサイト ニコニコ大百科 pixiv百科事典

フリー百科事典Wikipedia

各東方Project及び登場キャラクター関連ページ

 

 

※参考資料は今後も読後に更新予定

 

 

[以上の作品、資料等を参照し、出来るだけ東方Project登場キャラや舞台となる幻想郷については、原作よりの世界観に出来るように努力しております。ただし原作の雰囲気を壊さない程度に二次設定を取り入れることもあります。よろしくお願いします。]

 

 




この設定集で本作をよりお楽しみいただければ幸いです。

設定集は今後も出すべき時に出していきたいと考えています。

本作品東方セブンを今後もよろしくお願いします。


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第1話「姿なき外来者」1/2

本作品は前述の通り、ニコニコ動画で私が投稿している東方×ウルトラセブンシリーズの小説版となります。
当分の間は動画とほぼ同じ内容になりますが、いずれは動画では描写しきれなかった場面、動画を補完する内容についても書いていきたいと思っております。
小説から読んでいただいている方は宜しければ動画のほうもご覧いただけると幸いです。

それでは東方×ウルトラセブン、お楽しみください。


-1-

 

 

 青く美しい地球。

 この地球はかつて、幾多の恐ろしい宇宙人達に狙われていた。

 

 しかし、そこに一人の真紅の巨人が立ち向かった。

 

 

 その名は、ウルトラセブン。

 

 

 彼はM78星雲の恒点観測員三四〇号という立場ながら、地球防衛軍、ウルトラ警備隊と協力しながら、多くの侵略者達と戦い、地球を守ってきた。

 

 彼が大怪獣パンドンとの死闘を終え、ボロボロの体で地球を去ってから、数十年のもの歳月が過ぎた。

 

 

 地球の各都市はゴース星人の侵略から再興し、地球防衛軍もウルトラセブンの力なしでも宇宙人に十分対抗できるほどに強化された。その後遊星間侵略戦争の時代も沈静化の時期を迎え、地球には暫しの平穏が訪れることとなった。

 

 

 

 

 

 そんな地球に、ある一人の宇宙人が地球に降り立った。

 

 

「久しぶりだな、この美しい地球は」

 

 

 モロボシ・ダンことウルトラセブンは、数十年ぶりに訪れるこの地球の大地を、感慨深げに眺めていた。

 

 

 彼はパンドンとの戦いの後、なんとかM78星雲に帰ることができた。

 そして、ようやく休暇を得て、この地球に戻ってくることができたのである。

 

 

「……。あのウルトラ警備隊の仲間達は、今どうしているだろうか、キリヤマ隊長、フルハシ、アマギ、ソガ、そしてアンヌ……」

 

 

「せっかく来たんだ、この休暇のうちは、この地球の各地を見て回ることにしよう」

 

 

 

 

 

 -2-

 

 

 所変わって、こちらは日本の東国のどこかの山奥にある楽園。幻想郷。

 

 この世界は博麗大結界という大きな結界で外の世界と隔離され、人間と妖怪、その他の幾多の種族が共存する理想郷である。この地は、妖怪の賢者達の努力により、人間と妖怪が共存できる環境を作り上げた。

 

 しかし、そんな幻想郷に、人間とも妖怪とも違う存在が、この地に入り込み始めていた。

 

 

 

「大ちゃーん、こっちこっち」

 

「チルノちゃん待ってよー」

 

 

 ここは霧の湖の近くの森の中、背中に羽をつけた二匹の妖精が飛び回っている。

 

 

「大ちゃん遅い!まあアタイが速すぎておいつけなかったのよね!」

 

 

 そう得意げに話すのが氷の妖精、チルノである。

 

 

「チルノちゃん、待ち合わせ場所まで競争だとか言って、

 いきなり先にいっちゃうんだもん」

 

 急に急がされて疲れた表情で話すのが緑の髪の妖精。

 皆からは大妖精と呼ばれている。

 

 

「待たせたのだ〜」

 

 

 二匹が話していると両腕を広げてひょこひょこと赤いリボンを頭につけた金髪の少女が近づいてくる。可愛らしい姿をしているが、これでも彼女は人喰い妖怪である。

 

 

「ルーミアちゃんも来たね」

「よーし!それじゃあ今日は何するか決めよう!」

「じゃあ私は鬼ごっ……」

 

 

 

 その時、突如大妖精の体がすっと消えてしまった!

 

 

「あれ!大ちゃん!」

「消えた?のか?」

 

 

 大妖精の姿は忽然と無くなっていた。

 それはあまりにも突然のことだった。

 

 

「大ちゃん!?どこ行ったの?」

「しゅんかんいどうってやつか〜?」

「あっ、な〜んだ。いつも大ちゃんがつかうやつか。

それならまだこの近くにいるはずだ。」

 

 

 大妖精は瞬間移動する能力を持っており、チルノ達はその能力のせいで突然消えたのだと考えた。

 

 

「よーし、大ちゃんを探すぞ!」

「探すのだ〜」

 

 

 

 しかし、その後心当たりのある場所をどんなに探しても大妖精の姿が見当たらない。

 

 

「大ちゃんどこ行ったの〜?」

「どこいった〜のだ?」

 

 

 

 結局その日、二人は日没まで探したが、大妖精の姿は見つけられなかった。

 その日を境に、幻想郷で大妖精の姿を見る者はいなかった。

 

 

 

 -3-

 

 

 大妖精が姿を消して一週間後。

 

 

 ここは幻想郷の博麗神社。

 幻想郷と外の世界の境界に存在する神社である。

 

 

 そこで紅白と白黒の衣装をした2人の少女が、なにやら難しい表情で話し込んでいた。

 

 

「全く本当に疲れたわ。

 ようやく分かったこととしては、ここまで消えた人里の人間が四人、消えた妖怪が確認出来ただけで十体以上。それに皆目の前から突然姿が消えるという話ばかりだわ」

 

 

 楽園の素敵な巫女、紅白の衣装をした、この神社の主でもある博麗霊夢は、厳しい表情で話した。

 

 この一週間、幻想郷では、人間や妖怪が突如消失するという事件が多発していた。

 

最初はただの失踪事件と見られていたのだが、やがて目の前から忽然と姿が消えるという目撃談が幾つも挙がるようになった。

 

 

 

「消えた者の種族も人間、河童、天狗、妖精、妖獣とてんでバラバラ。それにここまで誰も知らないとなると、いったい誰がなぜこんなことをやっているのか全く検討もつかないぜ。私としては早いとこ犯人を捕まえて退治してやりたいところなんだがな」

 

 

 

 そう威勢よく話したのは、黒白の衣装の普通の魔法使い、霧雨魔理沙である。

 

 二人は幻想郷の各地を周り、怪しい人物たちにひたすら弾幕ごっこを仕掛けて話を

(物理的に)聞いたが、結果は芳しくなかった。

 

 

「でもここまで空振りとなると、犯人は私達が知らない外来人の可能性が高いわね。それに消えた現場を幾つか見たけれど、特に目立った妖力や魔力、霊力といった力の類いは感じられなかったわ」

 

「えっ……。それはどういうことだ?」

「つまり今回の異変の犯人はこれまでとは全く違う力を持った、未知の外来人ということよ」

 

「妖力も魔力も使わないということは、外の世界の人間か?ひょっとすると外の世界で発達している『科学』ってやつか?外の人間はこんな力をもってるのか」

「私はそんな話聞いたことないけど……」

 

 そんな二人の様子を近くの木の影から密かに伺っている三匹の姿があった。

 

「ちょっとサニー、本当にあの巫女にあのことを伝えるつもり!」

「しょうがないじゃない!チルノが勝手に行っちゃうし」

「でもあれが本当に異変の犯人かどうか分からないでしょ」

 

 彼女らは光の三妖精。

リーダー格のサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三匹である。

 

「下手に出ていったら一回休みにさせられるのがオチよ」

「でも私達だけでどうにかなる問題じゃないわ!」

「!?ちょっと二人共、あの二人のがこっち見てるわ!」

「「えっ!」」

 

 

 

「あんたら……。そこでコソコソと何してるの?」

 

 いつの間にか気づいていた霊夢が恐ろしい表情で三妖精に近づく。

 

「ちょっとサニー、アンタ能力を解除してたんじゃないの!」

「解除してたのはルナのほうよ!」

 

 サニーミルクは光を屈折させて姿を消す能力、ルナチャイルドは周りの音を消す能力があったが、二匹は言い争っているうちにその能力を解除してしまったようである。

 

「二人共、言い争っている場合じゃないわ!」

「「はっ!」」

 

「そういえば……あんたらにはまだ話聞いてなかったわね。ちょっと『お話』お聞かせ願おうじゃないの」

「やっ、せめて弾幕ごっこで……」

「もう散々弾幕ごっこはやってきたからうんざりなのよ!」

 

「『夢想封印』!」

「「「いやー!」」」

 

 いきなり霊夢が放ったスペルカードによって、三妖精は吹っ飛んでしまった。

 

「やれやれ、霊夢は相変わらず乱暴だぜ」

 

 魔理沙が呆れたように言った。

 

「今はあちこち行ったせいで気が立ってるのよ」

 

 二人は吹き飛ばされた妖精達の方へと向った。

 

 

 

 

 

「いててて……」

 

 

 妖精達が正気に戻ると、三匹は木に持たれかかっていた。目の前には既に霊夢と魔理沙が立っており、逃げるに逃げられない状況である。

 

 

 

「さあ、あんたらが知ってる事洗いざらい話してもらうわよ」

「「「ハイ……。」」」

 

 三匹はぽつぽつと話はじめた。

 

 

 

「あのね、森の中で、スターがレーダーで変な物を見つけたの」

「変な物?」

「うん、それはレーダーでは捉えられて、"確実にそこに何かいる"はずなのに、姿が見えないの」

「何か危ない妖怪でもいるのかと思ってひとまずそこから離れたんだけど、そのことをチルノに伝えたら

 

『絶対にそいつが犯人ね!アタイの勘がそういってるわ!』

 

 って言ってその見えない物体の方に向かってちゃったのよ」

 

 

 

 サニー、スター、ルナが順に話した。

 

「どうする霊夢、行ってみるか?」

 

 魔理沙が興味津々に話しかける。

 

「そうね、他に手掛かりはないし―― 行ってみるしかなさそうね」

 

 そう言うと霊夢は三妖精の方に向き

 

「そこの三人、案内しなさい」

 

 三匹はしぶしぶと二人をその場所まで案内することになった。

 

 

 

 

 

 -4-

 

 

 そこは魔法の森の裏手と妖怪の山の間にあり、山の斜面が岩場になっており、ごろごろと岩が転がっている場所である。

 

 

 普段は何もなくだだっ広い場所のため、妖精達の遊び場となっている。

 

 

「この先の岩場の所なんだけど……」

 

 スターサファイアが全員を先導する。

 

 

 

 すると

 

「あら?」

 

 岩場に続く途中に一人の青年が立っていた。

 

「!誰?」

 

 

 霊夢をはじめ一同が警戒する。

 

 

「僕は怪しいものじゃありません。あなた達に警告しに来たんです」

「怪しくないって……。あなたその格好どう見ても外来人じゃない!」

 

 

 霊夢が指摘するように、青年の格好は黄色のジャンパーにジーンズという出で立ちで、どう考えても里の人間の格好ではなかった。

 

 

「まあとにかく、命が惜しかったら、ここから先へは進んではいけません」

「ただの人間に命の心配をされるほどヤワじゃないわ。

 とりあえず、あんた怪しいから気絶してもらうわ」

 

 

 そう言うと霊夢はお祓い棒を降って弾幕を出す。かなりの数の弾幕で、普通の人間には避け切れそうもない。

 

 青年は避けようとせず、青年のいたあたりからは土煙があがり、視界が悪くなる。

 

 

 

「オイオイ、いくら怪しいからってただの人間にいきなり弾幕打たなくても」

 

 魔理沙が呆れたように言う。

 

 

「大丈夫よ。死なない程度には加減してあるわ」

 

 砂埃が舞って視界が戻ってくる。

 

「……あれ?」

「……いない?」

 

 サニーとルナが言った。そこには倒れている人影一つなかった。

 

「多分吹き飛ばされたんだろ、そのへん探せばいるでしょ」

 

 霊夢が面白くなさげに言った。

 

「しっかしいかにも怪しそうだったのにただの人間か〜」

 

 魔理沙は残念そうである。

 

 

「!?みんな後ろ!」

 

 その時黙っていたスターサファイアが叫んだ。

 

「「!?」」

 

 一同が驚いて振り向くと、

 

「ハッハッハッ!!」

 

 あの青年が岩の上で高笑いをしているではないか。

 

「嘘だろ……。あれを避けて後ろに周りこむなんて」

 

 魔理沙が驚いたように言った。

 

 

「ようやく話を聞いてくれる気になりましたか」

 

 青年は岩から降りる。

 

「あんた何者?」

 

 霊夢が切り出す。

 

「ご覧の通りの風来坊です。」

「風来坊、ねぇ。名前は?」

「名前。そう、モロボシ・ダンとでもしておきましょうか」

「とでもしておきましょうって何よ!」

 

 怪しすぎるダンの反応に霊夢が痺れを切らして突っ込む。

 

「この先には何があるんだ?」

 

 今度は魔理沙が聞く。

 

「この先には恐るべき宇宙人、クール星人が見張っています。近づいちゃいけません」

「宇宙人?はん、そんなの永遠亭にいるやつらで十分だぜ」

 

 信用していない素振りの魔理沙にダンが真剣な表情で続ける。

 

「今あなた達が相手にしているのは、恐るべき宇宙人です。

 やつらはかつて地球を侵略するためにこの星へとやってきたんです。

その時は何とか撃退することができました。

 …だが、今度はどんな恐ろしい手段を使うかもしれない。気を付けて下さい」

 

「……霊夢、こいつ信用できるか?」

「……いきなり出てきて宇宙人とか言われてもねぇ」

 

 霊夢と魔理沙は疑り深げにダンを見つめる。

 

 

「おーい!そんなとこで集まってなにしてるんだ?」

「あっチルノ!」

 

 そこに消える生物を探していたチルノが、通りかかった。

 

「変なやつに捕まったりしてないよね」

 

 サニーミルクが心配そうに尋ねる。

 

「ううん、全然見つけられてない」

 

 チルノがそっけなく返す。

 

「そこの君もこっから先は危険だ。早く引き返したほうがいい」

 

 すかさずダンが注意する。

 

「アタイは見えない物を探すのに、忙しいんだから。邪魔しないでよね」

 

 見えないのにどうやって探すというのか…。

 

「やめなさい、ワナに落ちるようなもんだ」

「にんげんに止まれと言われて止まるアタイじゃないわ!」

 

 そう言い終えるとチルノはどんどん先に進んでしまう。

 

 

「危ない!行っちゃいかん!」

 

 

 ピー

 

 すると突然!何も無いはずの空から光線が発射される。

 

「!?わ!」

 

 

 チルノがその光線に当たると、姿が消えてしまった。

 

 

「「!?」」

 

 

「見つかったか、君たち、ここから直ぐに離れるんだ!」

 

 

 ピー ピー

 

 何も無い空間から今度は次々光弾が発射される。

 

 

「きゃあ!」ピチューん

 

「いやっ!」ピチューん

 

「あっ!」ピチューん

 

 

 スピードの早い光弾が次々と三妖精達に命中し、妖精達は一回休みにされてしまう。

 

 

「こっちも反撃よ!」

「おう!」

 

 

 霊夢と魔理沙が光弾が発射された方向へ弾幕を放つ、しかし、如何せん姿が見えないので当たったのかどうかすら分からない。

 

 

 ピー!ピー!

 

 

 その時!別の方向から光弾が発射される。

 

 

「「!?」」

 

 

 二人はとっさに避ける。

 

 光弾は二人の背後の岩山にぶつかり、岩が激しい音を立てて弾ける。

 

 

「痛っ!!」

 

 魔理沙は弾けた岩の一片に当たってしまう。

 

「魔理沙!?大丈夫!」

「ううっ……。油断した……ぜ」

 

 

 魔理沙は、そう言うと気絶してしまう。

 

 その間にも、光弾が降り注ぐ。

 

「くっ!」

 

 

 霊夢はとっさに魔理沙を抱えて光弾を避ける。

 

 しかし、このままでは二人共被弾は避けられない。

 

 

 

 その時、岩場に隠れていたダンがカプセルを取り出す。

 

 

「ウィンダム、頼むぞ!」

 

 

 ダンは二人に見つからないようにカプセルを投げる。

 

 

 ボーン!

 

 グワワァァァ!

 

 

 ダンと二人の前に銀色の巨大なロボットのような物が現れる。

 

 彼はダンの指示で戦うカプセル怪獣ウィンダムである。

 

「今度は何!?」

 

 霊夢は突然現れた巨大なロボットに驚く。

 

 ウィンダムは額のランプから光弾の降ってくる方向へ闇雲に白いビームを乱射する。

 

 ビーー!

 

 当たってはいないようだが、降り注いでいた光弾が一時的に止む。

 

「今だ!その子を抱えて逃げるんだ!」

 

 ダンが叫ぶ。

 

「でもあんたは!」

「俺は直ぐに後を追う!」

「……分かったわ」

 

 霊夢はただの人間をこんなところに置いていくのは不味いと思ったものの、魔理沙を抱えていてはいずれにせよ連れて帰れないと判断し、その場を離れる。

 

 

 霊夢が離れていくのを見送った後、ダンは目を光らせて上空を探す。

 

 ダンの透視能力である。

 

 すると森の上空に浮遊する円盤を発見する。

 

 

「ウインダム!あそこだ!」

 

「グワワァァ!」

 

 すかさずその方向にウィンダムは光線を放つ。

 

 ゴォ!

 

 

 すると鈍い音が起こり、何も無い空中から煙が上がる。

 

 

 煙は段々と落ちていき、魔法の森の中に落ちていった。

 

 

「ウインダム!戻れ!」

 

 

 深追いは無用、とダンはウィンダムをカプセルへと戻す。

 

 

 スイッと巨大なウィンダムが小さなカプセルへと戻っていく。

 

 

 ダンは煙の上がっている方へと向かって行こうとした。

 

 

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

 

 

 ダンが振り返ると、そこには霊夢が立っていた。

 

 

 

第1話2/2に続く




感想・評価ウェルカムです。お待ちしております。


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第1話「姿なき外来者」2/2

お待たせしました。後半パートです。
見やすいようになるべく行間を開けるようにしました。



 

-5-

 その後ダンは霊夢に連れられ、博麗神社へと戻った。そこには正気に戻った魔理沙と、復

活した三妖精の姿があった。

「おお、君達、無事だったか」

「お前こそな」

魔理沙は怪訝な表情で答える

「はい!それじゃあじっくりと聞かせてもらうわよ。あんたには聞きたいことがたくさんあ

るんだから!」

「いや、そんなことをしている時間はない、今がクール星人を倒すチャンスなんだ!」

 

「クール星人?」

 魔理沙がすかさず尋ねる。

「奴らはかつて地球を侵略しようとやってきた宇宙人だ。奴らの星は資源に乏しいから、他

の星の動物やら資源やらを集めている。だがまだ奴らは捕まえた人間や動物を殺してはいな

いはずだ。生け捕りにして円盤の中に隠しているに違いない。」

「チルノや大妖精はその中にいるのね!」

​ ​三妖精達は少し安堵した表情になる。

​ ​​ ​ダンは更にその宇宙人の円盤らしきものが魔法の森に落ちたことを全員に伝えた。

「奴らの円盤は保護色を使って姿を隠しているんだ。だが今はあのロボットのおかげで円盤

から煙が出てる。これは敵の位置を特定できるチャンスなんだ!」

​ ​そう言うとダンは立ち上がり、元来た道を戻ろうとする。

「ちょっと待ちなさい!まだ話は終わってないわよ!」

「しかし…。」

「ああ、もう!分かったわ!私もついて行くわ!話はそのクール星人とか何とかを、倒して

からじっくり聞くことにするわ!

​ ​異変解決は巫女の仕事だしね!」

「おっ!それなら私も行くぜ」

​ ​​ ​さっき気絶したことに全く懲りていない様子の魔理沙も行く気である。

「いや…。さすがに君はさっきの怪我では…。」

「もう大丈夫だぜ!魔法で回復したし!それに私の住んでいる所にそんなものが落ちたと

なっちゃ、黙っている訳にはいかないぜ!」

「それなら私達もいくわ!」

「えっ!」

「ちょっと何言ってるのサニー!?」

​ ​​ ​​ ​突然一緒に行くと言い出したサニーミルクに驚くスターサファイアとルナチャイルド。

「相手は危険な奴なのよ!」

「分かってるわよ!でも、チルノまでやられたのよ!

​ ​このまま黙ってる訳にはいかないじゃない!​ ​それに私達の能力はそいつに近づくのに役に

立つはずよ!」

「そりゃそうかもしれないけど…。また1回休みにされるのは嫌だし…。」

​ ​​ ​​ ​行く気満々のサニーミルクと乗り気でないルナチャイルドとスターサファイア。

「とにかく!私達も一緒に行く!これは決定事項よ!」

「ええー!」

「勝手に決めないでよ!」

「あんた達……。一緒に来る、と言った以上は最後まで来てもらうからね。

​ ​途中で逃げるなんて承知しないから」

​ ​相変わらず恐ろしい巫女である。

「もー」

「何でこんな目に」

「2人共、いつまでもグズグズしないで行くわよ!」

​ ​​ ​結局全員が落下現場までついていくことになった。

(…。無理に来るなといっても後からついてきてしまえば同じことだ。こっそりついてこら

れるよりは協力した方がましか…。)

「しかし危険な宇宙人だからな、どんなことをしてくるか分からない。落下現場では俺の指

示に従ってくれ。」

​ ​ダンは皆にそう言い聞かせたが、自分勝手な人間2人と妖精3匹がそれを聞くかどうかは甚

だ怪しいところである。

-6-

 サニーミルクとルナチャイルドによって姿と音を消し、煙の上がっている方へと3人と3

匹は接近する。

 そして暗い森の中に不自然に煙の上がっている場所を発見した。

 スターサファイアがレーダーで辺りを探る。

「変ね、10以上の生物がここにいるみたい」

「この空間に10人以上の宇宙人?がいるのかしら?」

「恐らく捕まえた人間や妖怪がこの中に閉じ込められているんだろう」

​ ​そしてこっそりとダンが透視能力を使用すると、二階建ての家一つ分はあるであろう大き

さの円盤が横たわっていた。

「不用意に近づくのは危険だ。外から攻撃して中の敵をおびき寄せるんだ。まず俺が円盤の

後ろに回る。円盤が俺に気づいて攻撃し始めたら君達は後ろから攻撃してくれ」

ダンがそう指示すると魔理沙が口を挟む。

「アンタは攻撃する手段あるのかい?」

「僕にはこれがある。」

​ ​そう言うとダンはポケットからウルトラ・ガンを取り出す。

​ ​ダンがウルトラ警備隊にいた時使っていたものと同タイプのものである。

「そんなオモチャみたいので大丈夫なの?」

​ ​霊夢がジトっとした目で尋ねる。

「これで十分さ。

​ ​​ ​それじゃ、僕が向こうに現れるまで、君達はここで大人しくしててくれよ」

​ ​​ ​そう言うとダンは森の中へと入っていった。

「あっ!ちょっと!」

​ ​​ ​霊夢が呼び止めようとするが、既にダンは妖精達の能力の範囲外に出てしまっており、範

囲内にいる霊夢の声が聞こえるはずもなかった。

「ああもう!なんで勝手に指示して勝手に行っちゃうのかしら!」

「それより、あいつ大丈夫か?人間が1人で森の中に入るなんて」

​ ​​ ​魔理沙が少し他人事のように言った。

-7-

​ ​ダンは1人森の中を走って進んで行く。

​ ​すると

「!?何だ!」

​ ​突如ダンの視界が闇に包まれた。

​ ​昼間とは思えないほどの暗闇で視界が覆われている。

「お前は誰だ!」

「あなたは食べられる人間?」

どこからかそんな声が聞こえてきた。

​ ​一方、待機している霊夢達は、ダンが闇に飲み込まれているとも知らず、

「なあ、少し遅くないか。」

「森の中の妖怪にでも食べられたかしら、もしくは、胞子にやられたとか。」

​ ​いい加減待ちくたびれている様子の魔理沙と霊夢である。

そもそもこの2人にはコソコソとしたことが性に合っていない。

するとその時

「!?」「えっ!」

​ ​何も見えなかった空間から入口らしきドアが現れ、扉が開いた。

「これは…」

「あきらかに私達を誘っているわね」

​ ​2人は視線を合わせる。

「魔理沙」「ああ、行くか霊夢!」

「えっ!」

「罠かもしれないのよ!」

「上等よ!」「どんな奴が来てもこの霧雨魔理沙様が退治してやるぜ!」

​ ​三妖精が引き止めるのを無視して、2人は扉の中へと入っていってしまう。

「ああ、行っちゃた」

「もう能力解除しちゃっていいよね、何かもうバレてるっぽいし」

「うん…。」

​ ​サニーミルクとルナチャイルドはそれぞれの能力を解除してしまった。

-8-

​ ​その頃ダンは、闇の中にいた。

「!君は誰だ!」

​ ​ダンは声のする方へ呼びかける。

「私はルーミアなのだー」

​ ​闇の中から再度声がする。

​ ​どうやらルーミアは煙が上がっているのを見て人間を探しにここまでやってきたようだ。

「早く食べたいのだー」

​ ​どうやら自分を食べようとしているらしい、とダンは理解する。

(とすると…こいつは妖怪か…。何とか撒いて円盤の所に戻らなくては)

そうするとダンは透視能力を応用して闇の中を探る。すると金髪の少女のような妖怪がうろ

うろとあたりを探しまわっているのが見えた。

(こいつか…。よし!)

​ ​ダンはルーミアのいる方へと近づいていく。

​ ​ダンはルーミアに充分に近づいた後、腹に思い切り拳をお見舞いする。

「ガハっ!」

​ ​まさか闇の中で自分の姿が見えているとは思わなかったルーミアは、拳を喰らい一瞬怯

む。

すると能力が解除され、ダンの視界に元の森の木々が広がる。

「今だ!」

​ ​ダンは一目散に逃げていった。

「ううー痛いのだー」

-8-

​ ​円盤の中へと入っていった霊夢と魔理沙は、辺りを見回す。

そこは不思議な空間であった。

幻想郷では見た事もないような金属で作られた、よく分からない器具や装置が並んでいる。

「へえ、これは本当に宇宙船なのかもしれないぜ!」

「……。」

​ ​呑気な魔理沙とは対照的に静かに警戒を強める霊夢。

​ ​2人が奥へと進むと、やがて広い制御室のような場所に出る。

「ヤア、ヨクキタナ、博麗ノミコヨ」

「「!?」」

​ ​​ ​2人が振り返ると、そこにはシラミを逆立てたような黒い風貌の、六本の鎌のような腕を

持ち、浮遊する生物がいた。

そいつは腹部にある二つの目からこちらをじっと見ている。

その姿はとてもこの地球のものとは思えないものであった。

2人はその姿に少しギョッとする。

「アンタは誰?」

「私ハクール星人ダ。コノ星ノ生物ヲ採集シニキタノダ」

「採集だと!?」

魔理沙が驚く。

「ソウダ、コノゲンソウキョウのセイブツハ、珍シイモノバカリダ。コノトチニハ妖怪、妖

精、他ニモ能力ヲモツ生物ガ沢山イル。私ハソノ珍シイ生キ物達ヲクール星ニ持チ帰リ、ス

ミズミマデシラベアゲルノダ」

「勝手にこの土地の生き物を連れて帰るなんて、私がゆるさないわ!」

「私もだぜ!」

霊夢と魔理沙がいきり立つ。

「ソコデダ、博麗ノミコ、キミヲココニ呼ンダノダ」

「私を?」

「ソウダ、コノ土地ヲ調ベルウチニ、オマエガコノゲンソウキョウノ治安ヲ守ッテイルコト

ガワカッタ。ダカラオマエサエ倒セバ、コノゲンソウキョウデ自由ニ生物採集ガ行エルトイ

ウワケダ」

「私を倒すですって!」

霊夢は既に襲いかかろうかとお祓い棒を構える。

「オマエラハ珍シイ人間ダ、私ノ標本ニナッテモラオウ」

「昆虫みたいなお前に標本にされてたまるかってんだ!」

そう言うと魔理沙は八掛炉を取り出し、マスタースパークを放とうとする。

しかし

「うっ…あっ…」

「動け…ない…」

2人は不思議な力で動けなくなっていた。

よく見るとクール星人は手元にある機械で何かを操っている。

この機械から発する力で2人の動きを止めているようだ。

「無駄ダ。オマエラノヨウナ人間コソワレワレニトッテハ昆虫ノヨウナモンダ。」

霊夢と魔理沙はそのまま宇宙船の中に捕らえられてしまった。

-9-

なんとかルーミアから逃げおおせたダンは、円盤の所へと戻ってきた。

しかしそこには能力を解除した三妖精の姿があった。

そこに霊夢と魔理沙の2人姿は見えない。

「おーい!他の2人はどうしたんだ!」

本当はここでダンが囮となる予定であったが、能力を解除してしまった上、2人がいないと

なれば作戦どころではない。

「扉のようなものが現れて、中に入っていっちゃったのよ!」

サニーミルクが叫ぶ。

「なに!迂闊に近づいては危険と言っておいたのに…あの2人は…。」

すると、それまで静かだった円盤の方向から急に光弾が発射される。

「「「きゃあ!」」」

妖精達は咄嗟に森の中へと逃げていった。

ダンの方向にも光弾が降ってくる。

「くっ!何とかあの2人を救出しなくては!」

ダンは光弾をよけ、木の影に隠れる。

そして胸ポケットから赤いメガネのような物を取り出す。

それはウルトラ・アイであり、モロボシ・ダンが、ウルトラセブンになるための変身アイテ

ムである。

「デュワッ!」

ダンがウルトラ・アイを目にかざすと、目が光出し、体が赤と銀色のボディに変わってい

く。

「ジュワァ!」

ここに赤と銀色のボディが特徴のM78星雲の宇宙人、ウルトラセブンがここに参上した。

セブンは光弾を避けながら、空中に現れている円盤のドアへ向かっていく。

「デュワァァ!」

セブンが思い切り体当たりすると、既に閉まっていたドアが倒れる。

セブンは円盤の中に侵入した。

円盤の中を進むセブン。

奥へ進むと、そこには怪しげな機械を操るクール星人がいた。

「ウルトラセブン!ナゼココニイルンダ!」

突如現れたセブンに焦るクール星人は、手元の機械をいじってセブンを押さえつけようとす

る。

「デュッ!」

少し苦しそうな表情になるセブン。

「デュワァァ!」

その時、咄嗟にセブンは額のビーム・ランプからウルトラビームを放つ。

ドゴォォン!

機械から煙が上がり、セブンが解放される。

それを見てすかさずクール星人が浮遊して逃げようとする。

「デュッ!デュワァァ!」

逃さない、とばかりにセブンは頭のアイ・スラッガーを放つ。

シャキン!

セブンのウルトラ念力によって操られたアイ・スラッガーはクール星人の頭を真横に真っ二

つにする。

そのままクール星人は動かなくなり、絶命した。

セブンはそのまま宇宙船の奥へと進む。

セブンはやがて部屋の中に監禁されている人達を見つける。

部屋の中は無重力のようになっており、中では人間や妖精、妖怪がフワフワと浮いている。

クール星人はこの中に捕まえた物を閉じ込めていたようだ。

その中には見覚えのある姿もある。

「このサイキョーのアタイを捕まえておいてたたですむとおもうなよ!」

「あんたこの状態で何が出来んのよ」

「くっ!動け、動けよ!」

「博麗の巫女さんも捕まったんじゃ…。もうおしまいだぁ…」

チルノ、霊夢、魔理沙、大妖精達はこの中に捕らえられていた。部屋の中では体の自由が効

かないようだ。

セブンが部屋のドアの隣のスイッチを押すと、無重力が解除され、部屋の中の人達の浮いて

いた体が落下する。

「うわっ!」ドテッ

「おっと!」

その後すぐセブンがドアを開ける。

「さあ!早く出るんだ!」

セブンはそう言って中にいる者を外へと誘導する。

「アンタは誰なの?!」

霊夢が宇宙船の中を進みながらセブンに聞く。

「君達の味方だ。さあ、早く!」

セブンは捕らえられていた妖怪と人間達を宇宙船の外に逃がした後、中に残っている者がい

ないことを確認する。

そしてセブンは腕を振り上げるようにして巨大化する。

「なんだありゃ!」

捕らえられていた里人が興奮したように叫ぶ。

そのままセブンは宇宙船を持ち上げ、遥か上空まで持ち去る。

そこでセブンは宇宙船を前に投げ、胸に手を掲げて光線を発射した。

ドカーン!

クール星人の円盤は光線が命中して爆発し、残骸は粉々になった。

「ジュワッ!」

セブンは空の彼方へと飛び去っていった。

-10-

「さっきの赤いやつは何だったのかしら。突然現れて巨大化したと思ったら、円盤をあんな

激しい光線で粉々にしてしまうなんて」

「でも敵じゃなさそうだし、あんまり気にし過ぎなくてもいいんじゃないか?宇宙人もあい

つが倒してくれたみたいだし」

博麗神社に戻って来た霊夢と魔理沙は、今日のことを振り返っていた。

「まったく、あの風来坊もどっか行っちゃうし!今日は不可解なことばかりだわ!」

「まあまあ、分からないことを考えても仕方ないぜ」

「あらあら、霊夢、今回の異変解決ご苦労様。といっても、解決したのはウルトラセブンみ

たいだけど」

その時、突如空間に現れたスキマから西洋の貴婦人のような格好をした女性が現れる。

彼女は八雲紫。この幻想郷を結界で外の世界と隔離し、この理想郷を作り上げた妖怪の賢者

の1人である。今はその結界の管理と監視をしている。

「紫!あんた今まで何してたのよ!宇宙人が現れて大変だったんだから!まさか寝てたとは言わせないわよ…」

「別に寝てたわけじゃないわ、私にもやることがあったんだから」

紫はホホホと笑って答える。

「あと、アンタこの異変解決したのウルトラセブン?とか言ってたわね。アンタあの赤いヤ

ツについて何かしってるの?」

「…その説明をする前に、貴方に紹介しておきたい人がいるの」

紫は障子の外に声を掛ける。

「入ってちょうだい」

すると障子が開き

「やあ、久しぶりだね」

そこには昼間会った件の風来坊が立っていた。

「あっ!お前はさっきの!」

魔理沙が声を上げる。

「紹介するわ。外の世界でウルトラ警備隊に入っていた、モロボシ・ダンさんよ」

「改めてよろしく、二人共」

この出会いの後、霊夢をはじめ幻想郷住民達は、新たな外来者、宇宙人達による騒動に巻き

込まれていくのであった。

 




次話以降は追加エピソードも加えていきたいと思っています。
よろしくお願いします。


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side story1「異変前夜」

時系列としては1話の事件の少し前のエピソードになります。


-1-

 

 夜の山道を、何者かが走る音が近づいてくる。

 

 

 「な…何だ?」

 

 

 ここは里の外れの畑。

真夜中、たまたま催して家の外の畑にある厠で用を足していた男は、こちらに近づいてくる足音に気づいた。

 

 

 どうやら人間の足音のようだが……。

 

 

「こんな真夜中に……。よ、妖怪かもしれねぇ」

 

 

 男は傍にあった鍬を持った。

 

 

 カサカサカサカサ……

 

 

 草むらをかき分ける音が、

 更に近づいてくる。

 

 男は手に鍬を持ち、厠の小屋に身を隠す。

 

 

 そして足音がついに草むらから飛び出すーー

 

 

 

「!?」

 

 

 草むらから飛び出してきたソイツの姿は、頭が臀部のように2つに突き出していた。

 禿頭で肌の色が露出している。

 目は彫りが深く、瞳は見えない。

 身体は蓑虫のようなものを全身に覆っているように見える。

 

 

 

 そいつはかつて「宇宙の帝王」を自称していた宇宙人、バド星人である。

 バド星人は手に光線銃を持ち、後方を気にしつつ逃走しているようだ。

 

 

 

 「こんな罠のような場所を用意しやがって!

 小賢しい地球人どもめ!」

 

 バド星人が振り向きざまに、後方に向かって叫ぶ。

 するとバド星人に向かって、蒼白い炎の玉が襲いかかる。

 

(狐火だ!)

 

 

 青年はそれを見て息を飲む。

 慌ててバド星人は前方に逃げ出すが、バド星人に炎の玉の一つが、ついに背中に命中する。

 

 

  「ウギィィ!ギィィィ!」

 

 

 バド星人は悲鳴のような声を上げて倒れ込む。

それを皮切りに、次々とバド星人の体に火の玉が命中する。

 

 するとバド星人の身体は火が付いたように燃え上がり、

 不思議なことに、すぐに炎ごと跡形もなく消滅してしまった。

 

 

 「ふう。これで片付いたか。

 

  宇宙人というのもこんなのばかりなら、そこまで警戒する必要はないのだがな……」

 

 

 すると、独り言を呟きながら、草むらの中からゆっくりと近づいて来る者がいた。

 

 (……九尾の、狐だ!)

 

 

 そこにいたのは、美しい九本の尾を持つ、狐の妖怪の姿があった。

 

 

(噂には聞いていたが…まぁなんとも美しい尾をしているな……。)

 

 男は小屋の影から彼女の尾に見蕩れていると

 

 

 

 

 「……。そこに誰かいるのか?」

 

 

 いつの間にか女狐と目が合っていた。

 

 

 「あ……。」

 

 

 ギロッ

 

 

 女狐は男を鋭い眼光で睨みつける。

 

 それは到底人間のモノとは思えぬ、獣のような眼であった。

 

 

 「う、うわわ……ワァァー!」

 

 

 男は女狐に恐れをなして、一目散に自分の家へと逃げ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……なんだ、ただの人間か。」

 

 

 九尾の狐、八雲紫の式神である、八雲藍はふっと溜息をつく。

 藍は自らの主である幻想郷の管理者、八雲紫の命令で、様々な仕事を行っている。

 

 

 「藍、ご苦労様。」

 

 

 どこからとも無く声がすると、藍の身体は空間に出来たスキマの中に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 -2-

 

 

 ここは八雲紫の住まう家。

 

 ここは彼女自身の「境界を操る程度の能力」により作り出された空間であり、幻想郷のどこかに存在するが、決して彼女達以外には辿り着くことのできない場所である。

 

 ここでは、その主である八雲紫とその従者である八雲藍が何やら話し合いをしていた。

 

 

 

 「そう、ここを『罠』だと。

 ……やはりこの結界が宇宙人を呼び寄せてしまっているのは間違いないようね。」

 

 

 「何故こんなことが起きているのでしょうか?

 いくら外の世界で宇宙人の存在が忘れられてきているとは言え、何もかも忘れられたものが入ってくるわけではないのに。」

 

 

 藍が尋ねると、紫は少し思案した後、悩ましげな表情で答える。

 

 

 

 「もしかしたら、幻と実体の結界の、外の妖怪を招く作用が誤作動しているのかもしれないわ。

 

 でも、はっきりした理由は分からない。

 

 原因も分からないのに結界を組み直すわけにもいかないし、

 参ったわね……。」

 

 

 紫は一つ大きな溜息をつく。

 しかし、すぐに表情を引き締め直す。

 

 

 

 「それで、現在の宇宙人対策はどうなってるの、藍。」

 

 「はい、まず先程、宇宙の帝王などと自称する、宇宙人を発見しましたが、無事全て駆除しました。

 

 しかし……他の宇宙人に関しては、巧妙に隠れているのか、未だに所在が掴めていないものばかりです。

 ただ、宇宙人の仕業ではないかと思われる噂がいくつかあります。

 

  巨大な植物が森を闊歩しているという噂や、霧の湖で感電死する魚が増えている現象、金色のやたら角張った龍を見た、火の玉から巨人が出たという証言等々……。

 

 しかし、妖怪などが引き起こしたものという可能性もあるので、これらが全て宇宙人が引き起こしたものとは一概には言えません。

 引き続き私の式や仲間を使って捜索を行わせています。

 

 更に人里の人間に化けている可能性もあるとのことですので、今までより里の監視を強化させています。」

 

 

 淡々と藍が報告した。

 

 

 「ご苦労様。私の『境界を操る能力』が通用すればもっと楽なのにね。」

 

 「本当に紫様の能力は宇宙人に通用しないのですか?」

 

 

 藍は怪訝な表情で尋ねる。

 

 

 「ええ……、それに私の能力だけに限らないかもしれない。能力全般が通用しない可能性もあると思うわ。」

 

 

 紫が真剣な表情で答える。

 

 

 「ですが、攻撃は通用しています。」

 

 「そうね、宇宙人はどういった存在なのか、私たちにどのような影響をもたらすのか。それを一つ一つ確かめていく必要があるわね。」

 

 

 

 紫は冷静に締めくくると、遠く彼方を見つめる。

 その方角には、遠く人里や、博麗神社が小さく見えた。

 

 

 

 暫くその方角を見つめていた紫だったが、不意に口を開く。

 

 

 

 「……それにしても、このままじゃ、私たちだけで対策していくのは難しそうね。」

 

 「……霊夢ですか。」

 

 

 「ええ、宇宙人に対抗できるとしたら彼女だけ……他は難しいでしょうね。」

 

 

 

 

 紫の彼方を見る表情が険しくなる。

 

 

 「ただ、彼女が負けるようなことがあればーー

 

 

 

 

 

 「藍様!紫様!」

 

 

 すると猫耳を生やした少女が息せき切って駆け寄ってくる。

 

 

 「橙、どうした!」

 

 

 この少女は八雲藍の式神、橙。化け猫の妖怪である。もっとも藍と同じ式神でも、藍に比べると大分知能や力は劣る。

 

 

 

 「何者かが結界を無理矢理破って侵入してきました!」

 

 「何っ! 橙、そいつの姿は見たのか!」

 

 「からだが赤くて、銀色の兜を被っているようなよく分からん奴です!」

 

 

 

 橙は舌足らずな説明で侵入者の風貌と、その状況を懸命に伝える。

 

 

 

 「まさか!宇宙人か!?

 しかも今度はわざわざ結界を破ってきたとは!」

 

 

 「藍、私は先回りして様子を見に行くわ。」

 

 

 紫は険しい表情でスキマの中に消えて行く。

 

 

 「橙!今すぐそいつのところまで案内しろ!」

 

 「はい!」

 

 

 

 

 

 今後の幻想郷を大きく左右する、

 彼と彼女らの出会いが、唐突に始まろうとしていた。

 

 

 

 

 




 今回も読んでいただきありがとうございます。

 今話は数話先の話のネタや先のフラグをそこそこ盛り込んでいます。
動画版のほうを見ていない方には理解不能な点も多々あると思います。
それでもこういう後々繋がる話を早々に出してしまうのもアリかなと思い、
この段階で公開しました。

 気になる方は動画版を見ていただけると幸いです。

 今後の小説版は動画版の脚本をそのまま載せるのではなく、違う方向性で書いていきたいと思っています。


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side story2 「射命丸文の手記」

ご無沙汰しておりました。

外伝小説2話です。

小説化はすっかり頓挫してしまったいるので、

こちらには外伝小説をのせる形式で細々とやっていきます。

気が向いたときに覗いていただけると幸いです。


東方セブンSide story2

 

 

「射命丸文の手記」

 

 

本当は記事にしたいところだが、

 

とても出来そうにないので

 

いつかどこかで使えるよう、

 

備忘録としてここに書き留めておく

 

 

 

 

 

 

妖怪の山の円盤と怪物騒ぎから数日が過ぎた。

 

今回の件は我々天狗にとっては苦々しい結果となった。

 

 

 

 

宇宙人とかいう存在が幻想郷に入り始めたのは、恐らくこの半年ほどだ。

 

今年の春頃、妖怪の間に「妖怪でない異形のモノが潜んでいる」という噂が立ち始めた。

 

丁度その頃、あの八雲紫が妖怪の山にやってきた。

 

 

後に聞くところによると

 

勝手にスキマを開いて大天狗様の屋敷に上がり込んできたらしい。

 

 

そこで八雲紫は

 

 

・宇宙人、及びその存在が疑われるものは刺激せず、

 

博麗の巫女に対処を一任すること

 

 

このことを半ば脅しのように

 

約束させられたらしい

 

 

 

大天狗様もこれには大変ご立腹の様であった。

 

 

だが私達天狗がいくら束になろうが

 

元支配者の鬼や八雲紫クラスの大妖怪が

 

本気を出せば抵抗できるはずもない。

 

 

悲しいことに天狗の誰しもがアタマでは理解していることである。

 

その辺は面子というものもあるので、誰も口にはしないが。

 

 

 

あの八雲紫に真っ向から渡り合えるとしたらあの巫女くらいなものだろう。

 

 

普段は遺恨を残さぬよう、ここまで荒っぽく出てくることは無い筈だが、

 

その点では異例である。

 

 

さらに八雲紫はよく分からない

 

条件を付け加えた。

 

 

博麗神社にある外来人の青年が来るが、そいつには決してちょっかいを出さぬように、と

 

 

当初の一同の反応は

 

誰だそいつは?

 

というものだったが、

 

 

果たしてこの後に、その青年の存在が浮かび上がることになる。

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く後、幻想郷で人妖が消えるという異変が起きる。

 

 

奇しくも哨戒天狗の一人もこの件に巻き込まれることになったのだが、

 

 

私達が注視したのが、

 

この騒ぎが宇宙人のものだということ。

 

またこの異変の解決したのが、

 

ある1人の外来人の青年と謎の赤い巨人だということだ。

 

 

謎の巨人は空の彼方へ消えたそうで、

 

件の青年は博麗神社に居候することになった。

 

 

私は異変の後、すぐにこの青年を調べるよう、上から命令された

 

 

私としては本件はこれ以上ないスクープであり、彼を独占取材できる口実となるわけで、

 

願ったり叶ったりであった。

 

 

彼、モロボシ・ダンによると、

 

今、幻想郷には多くの宇宙人が潜んでおり、彼らの脅威から幻想郷を守る必要がある。

 

 

そのため、かつて外の世界の防衛軍に所属していた自分が、八雲紫から宇宙人対策を

 

任されている…とのこと。

 

彼が人間ではないことは、話すうち、その印象を強くした。

 

 

人間ではないが、もっと強大な力を秘めており、我々妖怪が関わるべきでない存在……。

 

八雲紫が彼を特別扱いするのも頷ける。

 

 

 

 

餅は餅屋、蛇の道は蛇、宇宙人には……ということであろうか。

 

 

上にこのことと、彼の正体について自分の印象含め報告すると、

私はすぐさま記事の制作作業に入った。

 

 

新聞記者の私としては、真実を公表することが重大な責務だと思っているからだ。

 

 

公表して、どんな騒ぎが 起こるのか見てみたいという、邪な好奇心からでは

 

「決して」ない。

 

 

とにかく八雲紫にバレる前に記事を書きあげて流してしまえ。

 

すぐに書きあげてしまえば、さすがに見つかるまい。

 

 

記事はすぐに書きあげ、印刷作業も無事に終わり、後は配るだけ……。

 

 

 

 

 

 

しかし、認識が甘かったようだ。

 

 

バラ巻く寸前に、八雲紫にバレてしまったのだ。

 

 

印刷済みの新聞は全てスキマに回収された。

 

つまり、掛かった印刷代はすべておじゃんになったということである。

 

 

言わば、私は見せしめにされたのだ。

 

あの外来人に下手に首を突っ込むと容赦しない、と。

 

 

この強引で陰湿なやり方には殺意を覚える。

 

結局は黙る他ないが。

 

 

後からこのネタを追っていた他の天狗たちは、このことを聞いて

 

皆一様に怖じ気付いたようで、

 

 

すべて八雲紫の指示通りの内容の記事に書き換えられた。

 

いわゆる検閲である。

 

 

八雲紫の指示は以下のようなものだ。

 

 

・外来人のモロボシ・ダン

 

についての記事は一切書かないこと

 

 

・宇宙人の仕業という見解は

 

各紙統一せず、ぼかして書く事

 

 

 

この指示に違えば、どうなるか分かっているな。

 

ということである。

 

 

結局、多くの天狗が膝を屈し、

 

八雲紫の指示に不承不承従うこととなった。

 

 

 

これでは報道の自由などない。

 

私は一記者としてこの件に非常に憤りを感じたのであった。

 

 

 

さて、それからしばしも立たぬうち、

 

私たちの山にも宇宙人が現れる。

 

 

事件の始まりは、

 

河童の工房から次々と揮発油が盗まれるという事件が発生したことだった。

 

 

河童たちが騒いでいることから事件は露呈した。

 

周辺に出入りしていたのが河童だけだったので、

 

容疑者は必然的に河童のみに絞られた。

 

身内の取り締まりにしか張り切りどころのない哨戒天狗たちが、

 

ここぞとばかりに警備の強化や犯人探しに躍起になっていた。

 

 

その数日後のある日の夜、

 

哨戒天狗たちがドタバタと騒がしいので、

 

知り合いの哨戒天狗の重い口を割らせると、

 

燃料庫の警備を厳重にしていたにも関わらず、どうやらまた揮発油が盗まれたらしい。

 

何やら犯人は光学迷彩装置を悪用して、

 

見張りの哨戒天狗たちを不意打ちにしたとのことだ。

 

あれだけ張り切っていたわりにまともに警備すらできないとは情けない。

 

 

 

どうも気になるのでその哨戒天狗、

 

犬走椛と共に犯人探しに向かう。

 

 

見晴らしの良い高所で遠目が利く椛に犯人たちを捜させると、

 

やがて迷彩を切った犯人たちを発見したというので、

 

言われた場所へと急行する。

 

 

そこでは河童が二匹、大八車から燃料缶を下ろそうとしていた。

 

どうして盗みを働いたのか、問い質そうとすると、銃を持って抵抗してきたため、

 

思いっきり吹き飛ばしてやった。

 

 

すると、地面に落ちると同時に河童共の姿は液体のように解け、

 

ドロドロに溶けてしまった。

 

どうやらこの河童たちは、偽物にすり替えられていたらしい。

 

 

その後改めて止められた大八車と燃料缶の場所を見ると、

 

どうやらこの先の洞窟に燃料を運び込もうとしていることが分かった。

 

 

 

その洞窟の入り口はとてつもない力で無理やり中をこじ開けられた様な形跡があった。

 

私がその洞窟の中を進んでいくと、

 

巨大な青色の皿のようなものが見えた。

 

さらに近づくと、それはどう見ても洞窟内には不自然な無機質な物体であった。

 

 

私は、その物体を見てピンときた、

 

これが外の世界で度々噂になっているという円盤ではないかと。

 

確か以前、外から流れ着いた「少年ふあん」という雑誌に載っていた、

 

円盤というものの形に似通ったものを感じたからである。

 

宇宙人の騒ぎが起きているという現状とも合致する。

 

 

私はその洞窟を後にし、

 

この件をすぐに上司たちに申し入れた。

 

 

数日間に渡る長い話し合いの末、

 

上からは博麗の巫女にこの件を任せるよう依頼せよ、という命令が私に下された。

 

ただし、モロボシ・ダンという青年にはこのことを伝えるな、ということも併せて

 

それには正体不明の青年を山に入れたくないということに加え、以下の事情がある。

 

 

一時は八雲紫にやり込められた我々天狗であるが、その反発は根強い。

 

ただ言いなりになるのは癪であるが、かといって命令に反するのも具合が悪い。

 

また、追い出しはしたいが、できれば宇宙人とあまり接触したくない。

 

 

そこで、命令には反せず博麗の巫女には宇宙人退治を依頼し、

 

状況が巫女優勢となった所で我々天狗が一斉に円盤に襲い掛かる。

 

そうして我々だけで宇宙人退治が出来ることを示す、

 

ということで天狗たちの意見がまとまった。

 

 

宇宙人という存在の様子を見るべしという慎重な意見と、

 

自力で倒したという事実を作り、天狗の面子を取り戻せという意見、両面に配慮した裁量だ。

 

 

いずれにせよ、出来るだけ早く、八雲紫に介入される前に事を進めたい。

 

 

それ故に、なるべく博麗霊夢を焚き付け、早急に手を出させる必要があった。

 

 

私はその意図を汲み取り、モロボシ・ダンがいない時を見計らい、博麗霊夢に近づいた。

 

そこで宇宙人の話を持ちかけた。更にあの巫女に博麗の巫女としての面子というものを

 

焚き付け、あの外来人に頼り辛い空気を醸成した。

 

 

日頃から傍若無人に振舞う巫女への当てつけという意味合いがあったわけでは断じてない。

 

断じて。

 

 

案の定、博麗霊夢は言伝を残すでもなく、すぐにこちらについてきた。好都合である。

 

その場にいた白黒が横着にも着いてきたが、問題は無い。

 

 

 

 

その後、例の洞窟まで巫女を案内する。

 

守矢の風祝と、勝手について来る白黒を連れて。

 

 

守谷の風祝は大して戦力になるとは思っていないが、

 

何も言わないのでは山頂の神社の神様が五月蝿いので声を掛けた。

 

円盤が居ると声掛けた時に、

 

東風谷早苗の今にも襲いかからんとする

 

あの異様な食い付きは、

 

今思い返しても気色悪かった。

 

 

洞窟に3人を案内する間、

どうも白黒と風祝はいつもの遊びと勘違いしているようなので、

 

これは殺し合いなのだ、と釘を刺してやった。

 

 

遊び感覚で犬死されても困る。

 

せめて相手の実力が測れる程度には接戦してもらわねばならない。

 

簡単に死なれると後味も良くない。

 

 

その点、流石に巫女は弁えているようだったが。

 

 

かくして、巫女、風祝、魔女による円盤退治が始まった。

 

我々天狗は折を見てその戦闘に割って入る、

 

筈だった。

 

 

 

 

結果的には、我々天狗は傍観することしかできなかったのである。

 

何しろ、衝撃の展開の連続であった。

 

 

巫女たちと円盤の激闘。

 

追い込まれた円盤から飛び出したのは巨大な鳥のような怪物。

 

そいつは鷹のように広い翼を持ちながら、脚がなく、動く達磨のようにのそのそと動く

 

気色の悪い怪物だ。

 

 

巫女と風祝と魔法使いの必殺技を避けもせず、正面から受け止めてみせる怪物。

 

一瞬の油断により怪物と円盤の挟み撃ちに遭い、撃墜される巫女。

 

巫女は仙人に救われる。

 

しかし直後煙が立ち込め、その中から、

 

突如として、2本足で立つ、牛のような角をもった巨大な化け物が現れる。

 

 

鳥の化け物と牛の化け物による激しいぶつかり合いが繰り広げられ、

 

妖怪の山はかつてないほどに激しく鳴動する。

 

 

そのうち牛の化け物は口から火を噴いて鳥の化け物に襲い掛からんとしたが、

 

鳥は巨大な両翼をバッタバッタと羽ばたかせると

 

嵐とも見紛うほどの大風が巻き起こり、牛の口から出た炎は大風に乗り、

 

牛の体へと逆戻りしてしまった。

 

 

これには熱くてたまらぬと牛の怪物は谷中に倒れこみ、

 

駄々っ子のように手足をばたつかせた。

 

 

駄々っ子とはいえ、五重の塔よりも高く、東大寺の大仏を優に超す巨体である。

 

怪物の周りの木々は次々と巨大な手足になぎ倒されていった。

 

 

すると牛の怪物は、現れた時と同じように煙のように消え、

 

代わりにあの「うるとらせぶん」とかいう赤い巨人が現れた。

 

 

今度は赤巨人と鳥の怪物の闘いが始まる中、

 

八雲の式である狐が円盤に向かって火を放つ。

 

 

するとまもなく円盤の周りから火の手が上がり、

 

円盤が空に浮き上がっていった。

 

 

浮きあがった空からは、

 

次々と大きく亀裂が入った空間の切れ間が円盤を取り囲む様に現れ、

 

巨大な弾幕が絶え間なく円盤に向かって降り注いだ。

 

 

こんな芸当ができる妖怪は、八雲紫において他ない。

 

とはいえ、これはやり過ぎではないか、流れ弾がポンポン山に降り注いでいる。

 

 

妖怪の山は2体の巨体による激しい戦闘と、

 

降り注ぐ大量の弾幕の雨により、山肌はボコボコ、木々は次々となぎ倒され、

 

逃げ惑う動物や妖怪たちとで阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

 

 

降り注ぐ弾幕や怪物が起こす大風を必死で避けていると、

 

山中から立ち上がった光の矢が円盤を貫き、

 

谷の中に落ちていき、火を噴き上げるのが見えた。

 

 

どうやら白黒が八卦炉を使ったらしい。

 

 

すると背後で猛烈な光が弾けるのが見え、一瞬眩すぎる光が視界を包んだ。

 

視界が開けてくると、鳥の怪物が地面に横たわり、真っ黒に焼け焦げているのが見えた。

 

そして赤い巨人は飛び上がり、遥か彼方へ飛び去って行った。

 

 

あとで聞くところによると、赤き巨人が太陽の光を肩の甲冑に集め、

 

十字に手を組むと、そこから撃ちだされたとてつもない光が鳥の怪物を襲ったそうだ。

 

 

 

青天の真昼にも拘わらず、特大の雷が落ちたような衝撃であった。

 

青天の霹靂とはまさにこのことであった。

 

 

 

 

 

この間、我々天狗は、どうしていたかといえば、

 

円盤を追い詰めたところまでは想定内であったが、

 

鳥の怪物が現れてからは驚天動地の出来事の連続に指揮系統は混乱。

 

今や遅しと円盤退治に躍起になっていた天狗共も呆然とするばかり。

 

戦闘が激しさを増してくると、

 

怪物たちが起こす大風や炎、空から降り注ぐ弾幕を避けるので精一杯であった。

 

 

 

 

円盤や怪物たちの戦闘が終わると、

 

私たちの前には、荒れ果てた山と、円盤の残骸、焼け焦げた巨大な鳥の死骸が

 

残っていた。

 

私たち天狗は、山中に残っていた火災の消火、残骸の片づけ、なぎ倒された木々の処理、

 

ボコボコになった山肌の埋め合わせ、といった後始末を行う羽目になった……

 

 

 

その後の山の復旧作業にはやがて八雲紫やその式神たちが協力に入り、

 

特に廃棄物の処理に大きな助力となった。

 

しかしこれで八雲紫に大きな貸しを作ることになった。

 

我々天狗は面子を取り戻すどころか、

 

逆に八雲紫に頭が上がらなくなってしまったのである。

 

これにはどうにも歯がゆい事態である。

 

 

 

結局、今回の騒動は、宇宙人の脅威というものを辛くも味わさせれる出来事となった。

 

 

今回の件で宇宙人の実力を身をもって知らされた我々天狗であるが、

 

未だに謎は多く、八雲紫もその情報の多くを開示しようとしない。

 

我々天狗にも多少は外の世界の情報を探る手立てがあるのだが、

 

外の世界との行き来が平易である八雲紫一派に情報収集能力で敵うはずもない。

 

 

残された円盤の残骸も、幻想郷には過ぎた技術と、

 

全て八雲紫がスキマで回収してしまった。

 

 

しかし、一番の問題は、あのウルトラセブンとかいう赤き巨人が、

 

八雲紫の配下にあるかもしれないということである。

 

あの強烈な光を放つ光線は、我々天狗どころか、

 

幻想郷を滅ぼすには十分過ぎる威力があった。

 

もし、あの巨人が八雲紫の従僕であるならば、

 

最早八雲紫がこの幻想郷を支配しているに等しい。

 

 

だが、更に恐ろしいのは、あの巨人が八雲紫の配下ですらない場合である。

 

今でこそ宇宙人やその手先の怪物と戦ってくれる都合の良い存在であるが、

 

そのうち我々妖怪の素性が知れて、いつその矛先がこちらに向かってくるとも知れない。

 

最悪幻想郷の存亡に関わる事態にも発展しかねない。

 

 

また、八雲紫の動向から察するに、モロボシ・ダンとかいう青年とあの赤き巨人には

 

何か繋がりがあると見るべきだろう。あの青年には迂闊に手を出すべきではない。

 

 

今回の一件で改めて思い知らされたが、

 

宇宙人の存在に実力や情報で八雲紫を上回れない以上、

 

当面は八雲紫の意向に無条件で従わざるをえないだろう。

 

歯向かえば、次にどんな痛い目に遭うか分かったものではない。

 

 

しかし、ただで転ぶこの射命丸文ではない、いつの日かこの内容の記事を書き上げ、

 

必ずや八雲紫に一泡ふかせてやる。

 

 

 

 

 

                            星と夏と土の年 葉月

 

 

 

 

 








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side story3「密談」

東方セブン第4話の外伝エピソードその2となります。

本来は動画版4話のラストに挿入する予定でしたが、
登場人物の動きが少なく、冗長な展開になってしまうことや、
動画時間の都合などでカットした部分になります。

もっと後の公開でも良かったのですが、次回の動画を投稿するまでに時間が空き過ぎる
ことと、意外にも筆が進んだため、投稿することにしました。


書籍版東方作品 原作ZUN、漫画あずまあや作
「東方茨歌仙」を読んでいただくと、よりイマジネーションが湧き
楽しんでいただけると思います。

(未読でも作品のつながりはないので支障はありません。)



「出ていきなさい!!」

 

 

「……わかった」

 

 

 

障子が開く音の後に、ゆっくりと畳を踏みしめる足音が聞こえ、

障子の閉じる音が響く。

 

 

 

足音が遠ざかっていく。

 

音が消えると、代わりにすすり泣く声が響く。

 

 

 

 

 

「何よ、何よ……。

 

 私は博麗の巫女なの……。

 

 こんなことで負けてらんないのよ……ううっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襖を一枚隔てた先の廊下。

 

廊下の襖の傍に立っていた者が、ひっそりと耳をそばだて、神妙な顔をしていた。

 

茨木華扇。

 

彼女はここでの一部始終のやり取りを聞いていたようだった。

 

彼女は一通りの事が終わったと察すると、

踵を返し、その場を後にしようと静かに廊下を進む。

 

大きな音を出さぬよう、慎重に足を進める。

彼女は俯きながら、今度のことについて思案しているようだった。

 

しかし、そのおかげで正面に現れた珍客に気づけなかった。

 

 

 

 

 

「困ったものよね。

 ーーーー天才というのも」

 

 

 

 

華扇は驚いて顔を上げる。

 

声を上げそうになるが、それは正面の何者かに口を塞がれたことによって防がれた。

 

口から手をどかすと、華扇は正面の相手を見つめる。

 

暗闇に眼を慣らすと、金髪の少女が微笑みながら、

突き立てた人差し指を唇に宛がっているのが見えた。

 

 

 

「 八雲紫……」

 

 

 

華扇が小声で正面の相手に呟く。

 

名を呼ばれた少女はゆっくり唇から人差し指を下ろすと、

離れた襖の向こうに目を配り、伏し目がちに独演を始める。

 

 

 

「彼女は恐ろしい才能の持ち主……。

 故にこれまで真の敗北というものを、味わって来なかった。

 

 だから、いざそれに直面した時、とても脆い……。

 彼女は今、とても困惑しているのね、初めて直面する挫折に」

 

 

 

八雲紫の独演が終わった後、

 

突然の来客から落ち着きを取り戻した華扇は、

少しの間難しい顔で思案した後、意を決し彼女に質問を投げかける。

 

 

 

「ところで妖怪の賢者さん、

 貴女に聞きたいことがあるの」

 

「何かしら?」

 

 

「単刀直入に質問するわ。

これまでに異変を起こしているのは妖怪ではなく、宇宙人。そうよね。」

 

「ええ、そうよ」

 

 

 

紫は数秒間思案した後に返答した。

 

 

 

「そしてあの青年、ウルトラセブンとかいう巨人の正体も宇宙人、よね?」

 

「……あら、気がついたのね」

 

 

 

華扇は意を決して問い掛ける。

紫は表情一つ変えないが、その視線が次第に厳しくなる感覚を華扇は感じた。

 

 

 

「貴女が彼を連れてきた」

 

「ええ」

 

「何故宇宙人を幻想郷へ?」

 

「妖怪の能力が宇宙人に通用しないかもしれない。これはご存知?」

 

「初耳です」

 

 

 

突然の紫の発言に、華扇は一瞬目を丸くする。

 

 

 

「それに宇宙人は私たちの想像を超えるような力を持っている。

 さらにその力は私たちが忌み嫌っている科学力、相性が悪すぎるわ」

 

 

 

すると紫の背面に空間のスキマが現れ、紫は一瞥することなくそこに腰かけて続ける。

 

 

 

「彼らに対抗する為には、外の世界でかつて地球を守っていたウルトラセブン――

 彼の力が、どうしても必要なのよ」

 

「あの巨人は何が目的?」

 

 

 

華扇は慎重に口を開く。

 

 

 

「彼はあくまで善意でこの幻想郷を

 守りたいと言っているわ」

 

「善意?

 あなたの命令で動いているわけじゃないの?」

 

 

「彼と私はあくまで対等な関係よ」

 

「彼が幻想郷の脅威になる可能性は?」

 

「ゼロではないわ」

 

「そんな存在をよく幻想郷に入れたわね」

 

 

 

華扇は厳しい口調で紫を非難する。

紫は毅然とした態度で続ける。

 

 

 

「どうしても彼の力が必要なのです。

この幻想郷のために」

 

 

 

華扇は険しい表情で紫を見つめる。

紫は依然飄々とした態度である。

 

 

 

「それじゃ、私から。

 貴女に2つほど"お願い"があるの」

 

「お願い?」

 

 

 

唐突な紫の発言に、華扇は身を強張らせる。

 

 

 

「ええ、お願いよ。

 まず、ダンさんがウルトラセブンであることは秘密にして欲しいの」

 

「秘密、ねぇ」

 

 

 

華扇は怪訝な声で応える。

 

 

 

「もう一つはーー。

 今回の異変は宇宙人などではなく、妖怪の仕業だった、ということにして欲しいの。

 

 そして、これから起こる異変もね」

 

「妖怪の仕業に?」

 

「ええ。

 もっとも、ただの人間には妖怪と宇宙人の区別ができるとは思っていないけれど」

 

 

 

紫はどこからともなく取り出した扇子を開き、はたはたと扇ぐ。

華扇は尚も警戒した表情を崩さずに続ける。

 

 

 

「貴女のお願いを聞くことにどんな利益があるのかしら?」

 

「あら、貴女も無暗に揉め事を起こしたり、騒ぎを大きくすることは本意ではないでしょう?

 

 これは妖怪と人間の為にやっていることよ。

 貴女にも理解してもらえると信じているわ」

 

 

 

紫は笑みを浮かべながらそう告げると、扇子を折りたたみ、スキマから立ち上がった。

 

 

 

「それじゃ、これからも"ご協力"お願いしますわ」

 

 

 

そう言い終えると、紫はスキマの中へと消えていった。

 

 

 

取り残された華扇は、

長い廊下に誰もいなくなったことを確認すると、再び長い思慮に耽った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長考から華扇は顔を上げると、

先刻まで紫がいた空間を睨み付ける。

 

 

 

そして、小声だが、しっかりとこう宣言した。

 

 

 

 

 

「八雲紫、貴女がどう判断しようと、彼は私の手で見極める。

 

 彼がどんな目的で、ここに来ているのか。

 

 

 彼の本性は何者なのかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

ほのかに月明かり差し込む灰色の廊下は、

返事代わりに静寂を渡してきた。

 

 

 




次回side story 5話は、今度こそ動画東方セブン5話投稿と同時期になりそうです。

現在(2019/7/22)の完成度は5分程度(最終的には30分前後の長さを予定)、
目標としては年末年始としていますが、
勿論早く投稿できれば良いと思っています。
(本当にできるかは別)

小説の感想や動画版の要望などを感想欄にいただけると
制作のモチベーションになります。
感想どしどしお待ちしております。

それでは失礼いたします。

追記(2020/1/6)
新作、動画東方セブン5話は、2020/1/20 19:00公開予定です。



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side story4「八雲藍の困惑」

今回、5話制作が既定の期日よりも遅れたため、先に事前に描き終えていたこちらの外伝小説を公開いたします。

ただし、本編の重大なネタバレを含んでおりますので、
「動画で観るまで楽しみにしておきたい!」
という方は本編の投稿を待ち、視聴後に、こちらの小説を読むことをおススメいたします。










今回の小説は、最初から最後まで八雲藍の一人称視点で進みます。



赤い顔に黄色の頭頂部。ぎょろりと突き出た目、

 

白く、先端がささくれて分かれている腕。

 

胸から腹にかけて奇妙に光る体の溝。

 

赤くか細い上半身に青い下半身。

 

 

そんな奴が今、我が主の屋敷で

畳の上に正座し、深々とお辞儀をしている。

 

 

「メトロン星から来たものだ、

私は相棒と一緒 にこの幻想郷の人里で生活させてもらっている。

 

貴女達が私たちの提案を受けてくれたことに、とても感謝している。」

 

 

 

すると宇宙人は、

傍らにあった紙袋を前に差し出す。

 

 

「こちらはつまらないモノだが、受け取って欲しい」

 

 

紙袋の中からは、数本の茶筒が覗いていた。

 

 

「これはこれはご丁寧に、ありがとうございます」

 

 

我が主、八雲紫いつもと変わらぬ笑みを浮かべる。

 

 

その紙袋を私はゆっくりと受け取った。

 

一瞥してから中身を改めたところ、

どうやら本当に茶の筒だけが入っているらしい。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

梅雨が明け、日差しが強く照りつけ始めるようになったある日。

 

 

配下の狐がとある手紙を受け取った。

 

 

差出人はなんと宇宙人と名乗るものからであった。

 

 

これまで何体もの宇宙人と交戦してきたが、

向こうから接触してくるのは初めのことだった。

 

 

文面は以下の通りであった。

 

 

 

『拝啓

 

 

蝉の声が一層騒がしくなりました今日この頃、突然のお手紙に驚かれた事と思います。

 

 

初めまして、私、メトロン星という遠い星から参った者でございます。

 

 

先日、こちらの幻想郷に参りまして、緑映える山々に田園と多くの動植物に妖怪といった、多様な生物達に驚かされるばかりでした。

 

 

さて、私共こちらに参り、人里での生活にも大分馴染んで参りました。

 

 

そして、こちら幻想郷の領主とも言える妖怪の方々にご挨拶を済ませていないことに気が付きました。

 

 

そこで、こちらの幻想郷の領主である妖怪の方々と親睦を深めたいと存じます。

 

 

厚かましいお願いでございますが、私共を妖怪の方々のお宅にご招待いただけないでしょうか。

 

 

こちら人里では妖怪の出入りが禁じられているとお聞きしました。

 

 

そのため、私共の拠点としている里に妖怪の方々を招くことが残念ながら出来ないということを知りました。

 

 

この幻想郷でお世話になっている私共が妖怪の方々をおもてなしできないのは痛恨の極みでございます。

 

 

しかし、私共は是非とも妖怪の皆様と親睦を深めたいと存じます。

 

 

何卒よろしくお願いいたします。

 

 

敬具

 

 

お返事は下記の里の私書箱までお願いします。

 

 

○×屋 私書箱 捨七番

 

 

 

 

 

 

宇宙人とは思えない文面であった。文もきちんとした字体で書かれており、その高い知性を思わせる手紙であった。

 

 

この手紙は、里の外れにある稲荷の像の前に供えられていたものだった。私の配下の狐の1匹がそれを発見した。

 

 

発見時、ご丁寧に、手紙と一緒に油揚げが数枚のせてあったらしい。

その油揚げは紛失し、この手紙が私の下に届けられた。

 

 

……もう少し口に入れる前に思うことはないのだろうか。

 

 

私はその手紙を一見し、すぐに主である八雲紫に見せた。

 

 

主は真剣な表情で手紙を見ていた。

 

 

 

その後の調べによると、

他の妖怪諸勢力にもこのような手紙を送ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このことは、大変由々しき事態である。

 

 

 

手紙にはこの宇宙人が里に住んでいると書かれている。

 

 

妖怪をはじめとした人外が人里に住み着くことは幻想郷のルールに明確に反する。

 

 

寺子屋の半人半獣や、座敷童子の連中など昔から里に居着いているものは例外で認められてはいる。

 

しかし、里で妖怪が人間を襲ったり、悪巧みをしたとなれば、博麗の巫女などに退治されるのがお決まりである。

 

 

妖怪の本分は人間に恐れを抱かせることにある。諸勢力はあの手この手でバレないように人間の里にこっそり忍び込み、虎視眈々と人間への影響力を高めるべく、暗躍している。

 

 

 

そんな中、ぽっと出の宇宙人が里に居座っているなどと堂々と宣言することは、我々妖怪への挑発ともとれる行動である。

 

 

この手紙が妖怪の諸勢力に渡ったということは、大きな火種となりかねない。

 

 

加えて、他の妖怪勢力が宇宙人騒動に介入して欲しくないというこちらの思惑もある。

 

 

宇宙人に対抗するのは、私達と

博麗霊夢、モロボシ・ダンのみで良い。

 

 

他の妖怪に介入され、事態をややこしくすることは避けたいのが本音である。

 

 

紫様はすぐにこの手紙の返事を認め、

手紙の主を招き、その真意を探ることに決めた。

 

 

ーーーーーー

 

 

「粗茶ですが、どうぞ」

 

 

私は盆の上から宇宙人の前に茶の入った湯飲みを差し出す。

 

 

「これはこれは、どうも」

 

 

宇宙人はハサミのような手で器用に湯呑みを持ち上げ、フーフーと冷ましながら茶を飲む。

 

 

「ふふ、地球の茶は気持ちが落ち着きますなぁ」

 

 

この宇宙人、茶を飲む一連の動作といい、相当地球の生活に慣れているようだ。

 

 

「それで……。貴方には、大事なご用がおありなんじゃありませんか?」

 

 

紫様が普段の軽い調子で本題に切り込む。

 

 

 

 

 

「いや、そんな大層な用事ってわけでもないんだ。

 

 

ちょっと雑談がてら、この幻想郷について話し合いたいと思ってね」

 

 

宇宙人は軽い調子で話を始める。

 

 

 

「この幻想郷は、実に素晴らしい。

 

 

私が思うに外の世界とは違い、

この世界が素晴らしい点が二つある。

 

 

一つは、この美しい環境。

 

 

日本というクニの原風景。

 

 

宇宙広しといえど、

これだけ開発や汚染されていない

森や山を見るのは初めてだ。

 

 

外と完全に隔離されているおかげだろう。

 

 

そして、これを実現しているのが

もう一つの素晴らしい点。

 

 

 

妖怪が人間を支配していることだ。

 

 

 

 

この世界は外と違い、妖怪が支配を握っている。

 

 

人間は自分たちが地球の種族の中で一番の頭脳を持っていることを鼻にかけすぎている。

 

 

せっかくの貴重な森や山を開発し、川や海、大気を汚す。

 

他の種族のことなど気にもしない。

 

 

 

その点、君らは分をわきまえている。

 

 

人間より君たち妖怪のほうが支配者として相応しい」

 

 

 

ゆっくりと背筋を撫でられたような、

気色の悪い感覚だ。

 

 

コイツなんかに褒められても全然嬉しくない。

 

 

人間のことに関しては共感するところがないでもないが。

 

 

そもそも、幻想郷で妖怪が人間を支配しているというのは語弊がある。

 

 

妖怪と言えど、一口に言えるものでもない。

 

 

 

しかし、紫様はそんな宇宙人の幻想郷観について口出しはせず、じっと彼の話に耳を傾けている。

 

 

宇宙人は茶を一口飲み、

喉を潤してから話を続ける。

 

 

 

「ただし、不満もあってね。

 

もっと人間をきちんと管理すべきじゃないかな。

 

 

例えば外の世界の人間は動物園とかいうモノを作って他の動物を飼っている。

 

 

ここの人間も檻の中に入れてきちんと管理したほうがいいんじゃないか?

 

 

こんな杜撰な管理方法では、いずれここの人間も、外の世界のように

 

自分たちの都合のいい場所に作り変えてしまうかもしれない。

 

 

僕たちはそれを防ぐための、ちょっとしたお手伝いをしようとしたまでさ」

 

 

 

 

この宇宙人、相当人間のやっていることが気に食わないらしい。

 

 

しかし、人間を檻の中に閉じ込めるなど、随分乱暴な考えだ。

 

 

やはり、こんな奴をいつまでも里に居座らせる訳にはいかない。

 

 

 

 

我が主は、いつもの笑みを浮かべながら、

少し間を置いてこう続けた。

 

 

「貴方は幻想郷について、大きな勘違いをなさっています。

 

 

そんな環境では、私達にとって意味がないのです。

 

 

あくまで現況が、今の幻想郷にとって最良の状態なのです」

 

 

紫様は淡々と諭すように話をする。

 

 

すると宇宙人は惚けたように首を傾げる。

 

 

「ふうん……。

 

そういうものなのかね」

 

 

 

ここで引き下がるような奴はこんな所にやって来ないだろう。

 

 

問題は何を要求してくるかだ。

 

 

 

宇宙人は変わらぬ調子で尚も続ける。

 

 

 

 

「しかし、私たちは方針を変えるつもりがないんだ。

 

 

そこで、この幻想郷らしい決闘方法で、

私たちのことを認めてもらおうと思っているんだ。」

 

 

 

 

 

 

そこでピタリと空気が張り詰める。

 

 

 

 

 

 

幻想郷らしい決着方法。

 

 

 

 

 

思い当たる節は一つしかない。

 

まさかそんなことも知っているとは……。

 

 

珍しく紫様も少し面食らった様子である。

 

 

 

 

「それは、もしや……弾幕ごっこのことを仰っているのですか?」

 

 

 

 

 

紫様は少し戸惑いつつ当て推量をする。

 

 

「そう、それだ。」

 

 

宇宙人はわざとらしくささくれた腕を差し出す。

 

 

「その弾幕ごっこをこの幻想郷の代表者として、決着をつけようと思う。

 

 

貴女たちにはその勝負の相手をするか、立会人になっていただきたい。」

 

 

 

 

 

急な提案だ。

 

 

これが妖怪相手なら日常茶飯事だ。しかし、今回は得体の知れぬ宇宙人が相手である。

 

 

 

 

 

「どうだろうか?」

 

 

宇宙人の申し出に、

紫様は少しの間手を顎に乗せて逡巡する。

 

 

 

 

 

しばらくして、紫様は顔を上げた。

 

 

「わかりました。

 

 

その勝負、受けさせていただきます。」

 

 

紫様はご決断なされた。

 

 

となると相手はやはり……

 

 

 

 

 

 

「また、勝負の相手は、博麗の巫女、

 

博麗霊夢と戦うのが宜しいでしょう」

 

 

「ほう、そうか。」

 

 

宇宙人はそれが誰なのか見当がついているような反応を返した。

 

 

コイツは博麗の巫女のことも頭に入っているようだ。

 

 

 

「いずれ霊夢は、必ず貴方の所に現れます。

 

その時に勝負の申し入れをすれば、彼女は受けるでしょう。

 

 

ただし、一つだけ条件があります。

 

 

この幻想郷の人里に人間以外の者が住むのは

 

禁忌とされています。

 

 

もし、貴方が負けた場合、人里から出ていくことをお約束下さい。

 

 

そうすれば、

 

私も勝負の立会人になることをお約束いたします。」

 

 

「そうか。分かった。その条件でいいだろう。

 

ありがとう。それでは、お暇させていただこう。

 

お茶も美味しかったよ。」

 

 

 

 

-----

 

 

 

宇宙人は、配下の狐に連れられ帰路についた。

 

 

私は、今度の対談で浮かんだ疑問を素直に紫様にぶつけた。

 

 

 

「紫様、あんな勝負お受けしてよろしいのですか」

 

 

すると紫様は厳しい目付きで答える。

 

 

「相手が弾幕ごっこに乗るとしたら、私たちがその勝負を止めることはできないわ。

 

 

こうして立会人として勝負を見守り、

 

公平な勝負を担保するのが関の山ね。

 

 

弾幕ごっこは"正当な"幻想郷の決闘方法なのだから」

 

 

「しかし……」

 

 

「あら、藍。貴女は霊夢が負けると思ってるの?」

 

 

「万に一つということもあります。

 

 

それに、相手は宇宙人です。何をしてくるか……」

 

 

紫様はいつの間にか取り出した扇子をはためかせる。

 

 

「相手も明確なルール違反はしてこないでしょう。それでは弾幕ごっこをする意味がない。

 

 

それに、ここで負けるようなら、博麗霊夢は『その程度だった』ということでしょうね。」

 

 

 

それを聞いて私ははっと驚いた。

 

 

紫様の言葉の端々にはある種の残忍さが感じられたのだ。

 

 

私は忘れていた。

 

 

このお方は、いざとなればあの博麗霊夢でも容赦はしないのだ、と。

 

 

「もしそうなった時は……。

 

その時はその時ね」

 

 

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第5話「狙われた里」後半パート



本小説は、ニコニコ動画で公開された。「東方×ウルトラセブン 第5話前半」の動画の続編となる小説です。動画での完成が事実上不可能となったので、小説版として加筆修正を行い、公開に至りました。

東方×ウルトラセブン第5話前半動画

https://nico.ms/sm36727651


第5話を終わらせられなかったことに未練を残していたことと、ある事情でまとまった時間が取れるようになり、一気に執筆を終わらせました。
小説版という形とはいえ、皆さんにお見せできる形にできたことは、個人的にはほっとしております。
長々と前置き失礼いたしました。
続きは後書きの方で述べさせていただきます。

それでは本編をお楽しみください。


霊夢と魔理沙が和室で相対したのは、頭頂部が黄色、顔面が真っ赤で身体が青色の奇妙な怪物。

 

頭がやたら大きく、両手は生えている筍のようにささくれ立っている。

 

そんな怪物は、身体の大きさに合わない小さなちゃぶ台の前に鎮座している。

 

「どうも初めまして、ハクレイのミコ。私はメトロン星から来た者だ。」

 

そいつはちゃぶ台の前に二人が座るように促した。

 

「アンタまさか……宇宙人!?」

 

まずは霊夢が第一声、声を荒らげる。

 

 

「とある事情でこの地球までやって来ていたが…いつの間にやらこの里に辿り着いたのでね。」

 

メトロン星人は霊夢の慌てた様子などお構いなしに、マイペースに続ける。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、こちらはダンが忍び込んだ長屋の一室。

 

そこにはダンにとってのかつての敵が、和室にちゃぶ台と同じ構図で佇んでいた。

 

「やあ、待っていたよ。ウルトラセブン」

 

「メトロン星人…やはりお前らの仕業か!」

 

ダンもすぐに畳に座り、ちゃぶ台を挟んでメトロン星人と相対する。

 

「まぁここまできたら、計画もあったもんじゃない。素直に全部話そう。」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

メトロン星人は霊夢と魔理沙二人の前で、懸命に弁明を続けている。

 

その光景は宇宙人の巨体と比べ、どうにも不釣り合いで、何とも珍妙な光景に映る。

 

「今はこの里で、相棒と二人、慎ましく茶作りに励ませてもらっている」

 

「何が慎ましくよ!」

 

霊夢が再び声を荒らて、ちゃぶ台をドンと叩く。

 

「この茶にこの変なの混ぜたのは、アンタらでしょ!」

 

霊夢は眼兎龍茶の筒をちゃぶ台に叩きつける。

 

「おや……これは……」

 

するとメトロン星人は筒を持ち上げ、筒の帯をじっと見つめる。

 

「この茶は試作中のモノじゃないか!」

 

メトロン星人は片手を真上に突き出し、大仰に驚いて見せる。

 

「は?試作?」

 

霊夢が眉間に皺を寄せて聞き返す。

 

「これを飲んだら、とんでもないことになる!

これを売ってしまったのは誰だ?」

 

「…大福屋の主人よ。」

 

「ああ、なんということだ。せっかく隠しておいたのに。

 

あろうことかお客様にそれを売ってしまったとは!」

 

メトロン星人は分かりやすく頭を抱えて慌て出す。

 

表情が読めない癖に、妙にわかりやすいやつだ。

 

「白々しいなぁ。」

 

「え?」

 

ここでこれまでじっと黙っていた魔理沙が、初めて口を開く。

 

「お前らこれで悪さをするつもりだったんだろ。

 

じゃなきゃこんなに沢山試作品で作るもんか!」

 

魔理沙は人差し指をビシッとメトロン星人に突き出して告げる。

 

「それは大きな誤解だ。」

 

「何が誤解だ!」

 

霊夢と魔理沙の尋問は続く。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

一方、こちらは

ダンとメトロン星人。

 

メトロン星人の一方的な独白が

続く。

 

「宇宙ケシの実を混ぜたら茶を渡すことで、邪魔な人間を狂わせていき、徐々に減らしていこうという計画だった。

 

ただそれを使う前に、大福屋の主人に見つかって主人が売り払ってしまった。

 

これが真相さ」

 

長い独白を終えると、メトロン星人はちゃぶ台のお茶を一口飲む。

 

険しい表情でそれを見つめるダン。

 

 

「随分あっさりと認めるんだな。」

 

「 …… で?」

 

「は?」

 

「それで?」

 

メトロン星人は惚けたように聞き返す。

 

「この里、いや、地球から今すぐ出ていくんだ!」

 

ダンは激しい口調で詰め寄る。

 

 

「たしかに私たちは地球人に危害を加えようとした。

 

ただそれはこの幻想郷のためさ」

 

「人間を殺すことが幻想郷のためだと?」

 

「自分たちだけが知性を持つのをいいことに、地球人たちは、自分の都合の良いように地球を作り変えたり、平気で汚したりする。

 

この星の持つ自然と環境の価値を、まったく理解していない」

 

メトロン星人は静かに憤る。

 

「ここの人間たちは妖怪の支配下にいるおかげで、自然と共存できているがな。

 

もっともいずれ、人間はこの幻想郷すら作り変えようとするだろう。

 

そうならないために、害になりそうな人間を排除しようとしただけだ」

 

「ふざけるな!」

 

お前らの都合で罪もない人間を苦しめようとするのは許さないぞ!」

 

ダンは立ち上がり、メトロン星人に詰め寄る。

 

「そういう意味では、地球に害となる宇宙人を退治している君と私とで、相通じる所があるということだよ」

 

メトロン星人も負けじと切り返す。

 

 

「それはお前らの勝手な理屈だ!」

 

「ウルトラセブン、君は何故そんなに地球人たちを守りたがる?」

 

すると、鬼気迫るダンの表情が、一瞬ハッとなる。

 

「随分とここの地球人共に冷たくされてるようじゃないか。

 

ここの人間も外の人間も、君が必死になって守る価値のある存在には見えないがね。」

 

「……お前らなんかに、地球人の価値が分かるか」

 

やや苦々しくダンが返す。

 

 

「………ふうん」

 

メトロンの声は面白くなさげだったが、その表情は窺い知れなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あの後、いくつかの問答のやり取りがあった。

今は激しい口論で息を切らす霊夢と魔理沙と、相変わらずマイペースを崩さないメトロン星人いた。

 

「いずれにせよ、アンタらにはここを出て行ってもらうわ」

 

やや荒らげた息を正しながら霊夢が告げる。

 

「アンタみたいな宇宙人が、この人間の里で暮らしていいわけないもの」

 

 

「でも〜。

せっかくこんな環境の良いところに来たんだから、残りの余生をここで暮らすのも悪くないかなぁって思っていたんだがねぇ」

 

告げる霊夢の強い口調に飄々とした言葉で返される。今日何度と繰り返された光景である。

 

「それは、出ていく気がないと言ってるの?」

 

「……力ずくても出て行かせる気かい?」

 

その時今日初めて、メトロンがすこし強い口調で話した。

 

霊夢は一瞬たじろぐ。

 

 

"もしや既に人里に何か仕込んでいるのでは?"

 

 

という不安が一瞬過ぎった。

 

霊夢にはこの宇宙人が一層不気味に見えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

睨み合うメトロン星人とダン。

 

「いずれにせよ、君に何を言われても、

私はここを出てはいかないよ」

 

ダン、意を決し、懐からウルトラ・アイを取り出す。

しかし、

 

「おっと、手荒な真似は止すんだな。

 

この家には円盤が隠してある。勿論円盤にはミサイルも積んでいる」

 

「……!」

 

「ここで爆発したら、どうなるか。分かるだろう」

 

表情の変わらないメトロン星人だが、どうも笑っているように見える。

 

「ひきょう者め……」

 

ダンはそう言って、ウルトラ・アイを懐に戻すのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おお!そうだ!

 

こういう時にピッタリなものがあるじゃないか!」

 

メトロン星人がその筍のような腕をわざとらしくポン、と叩く。

 

「何だって?」

 

魔理沙が怪訝な声を上げる。

霊夢はじっとメトロン星人を見つめている。

 

 

「ここでは何か揉め事があった時、お決まりの決闘方法があるだろう?

 

そいつで決めようじゃないか」

 

 

「まさか!?」

 

驚きを見せる魔理沙と、尚も険しい表情の霊夢が口を開く。

 

「……弾幕ごっこ。」

 

 

「そうそう、それそれ。

 

私と君とで弾幕ごっこをして、もし君が勝ったら、私たちは大人しくここを出て行こう。

 

私たちが勝ったら、君は私たちがこの里で住むことを許可する。

 

どうだい?」

 

メトロン星人は相も変わらず飄々とした態度だ。

 

魔理沙が霊夢の方を振り向きざまに言う。

 

「おい霊夢。こいつらが本当に、こんな約束守ると思ってんのか?」

 

霊夢は少し思案した後、口を開く。

 

「いいわ。

その条件、呑むわ」

 

「おい霊夢!

こいつを信用すんのか?」

 

「掃除のおばちゃんは黙ってな。」

 

「誰が掃除のおばちゃんだ!」

 

メトロン星人の無遠慮な発言に、怒った魔理沙が立ち上がり、畳をドンと踏みしめる。

 

「えっ…違うのかい?

 

てっきり大きなホーキ持ってたから掃除屋の人かと」

 

その魚のような顔では、おちょくっているのか、素で言っているのか判別しにくい。

魔理沙はメトロン星人を睨めつけながら口を結んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「君にチャンスをやろう。」

 

暫く押し黙っていた両者だが、メトロン星人が急に口を開く。

 

「これから私の相棒と博麗の巫女とで弾幕ごっこをする。

もし巫女が勝ったら、私たちはここを出ていく。

 

彼女ともそういう約束をしている。」

 

 

「もし霊夢が負けたら?」

 

「その時はウルトラセブン、君がここを出ていくんだ」

 

ダンは目を見開く。

 

「君が負けたら、君の正体を里の者にばらす。

そうすれば君もここにはいられないだろう。

 

そして勿論、君がこの勝負に介入するのもなしだ。」

 

暫しの沈黙の後、ダンがゆっくりと口を開く。

 

「……わかった。

ただし、約束を破ったら、容赦しないからな。」

 

「それじゃあ、我々は彼女らの仕合を、ここから見守ろうじゃないか」

 

するとメトロン星人は傍らにあったモノの布を降ろす。

 

すると頭に2本のアンテナのついた、小型のブラウン管テレビが現れた。

 

メトロン星人はリモコンでスイッチを入れる。

 

すると、間もなくその白い画面の中から、二つの紅い頭が顕になっていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただし!私が勝ったら、この里、いやこの幻想郷から出ていく。これでいいわね!」

 

 

「よろしい!

それじゃあ表へ出たまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

霊夢とメトロン星人は、人里の中心からやや外れた路地で向かい合っていた。

 

 

空は紅く染まり始めており、西陽が二人を眩しく照らしていた。

 

 

 

その傍らには心配そうに見つめる魔理沙と、何処からともなく現れた八雲紫がいた。

 

 

「……話は聞いておりました」

 

 

「紫」

 

霊夢が警戒した表情で呼びかける。

 

「私がその勝負、立会人になりましょう」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

霊夢はメトロン星人と紫のやり取りから、二人の間に何らかの話し合いがあったことを察する。

 

(紫とも話をつけてるなんて……。随分と手回しがいいのね)

 

霊夢は警戒した表情を崩さないが、この宇宙人の妙な手回しの良さに感心してまう。

 

紫は二人の間に立ち、この仕合の取り決めを確認する。

 

「 これから弾幕ごっこの勝負を始めます。

 

もしメトロン星人さんが勝ったら、霊夢は彼らにこの里に今後も留まることを許可する。

 

もし霊夢が勝ったら、大人しくあなた方は幻想郷を立ち去る。

 

これでよろしいですね。」

 

「構わないよ。」

 

「いいわ。」

 

双方紫の取り決めに頷いた。

 

「それではご両名、ご準備を」

 

 

霊夢は右脚を後ろに下げ、右手にはお祓い棒を持ち、今にも飛びかからんとする体勢だ。

 

対するメトロン星人はだらんと両腕を下ろし、一見すると弛緩しているような体勢。

 

 

紫は二人が戦闘体勢になったことを確認すると、紫色の艶やかな扇子をゆっくりと振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではーーーー、始め!」

 

紫は声と共に団扇を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

いきなり、メトロン星人の両腕の奥が煌めいた。

 

 

 

下ろしていた腕を霊夢に向けると、その穴から数々の光の玉が霊夢へ向けて放射される。

 

彼の腕はバルカン砲のようになっていたのだ。

 

 

しかし霊夢の反応も疾かった。

瞬時に夕空へ跳び上がると、退魔針をメトロン星人が居る場所へ一斉に投げつけた。

 

 

メトロン星人、飛び上がってこれを回避する。

 

そこから空中戦が始まった。

 

 

まずメトロン星人がまたしても両腕を霊夢に向ける。

 

 

すると今度は両腕から、やけに発光する長めのレーザーを発射する。

 

単調な動きのため、初撃を霊夢、素早い動きで回避する。

 

「スペルカード発動!

『秘技!スペースサイリウム』ってね」

 

すると突然大音量で音楽が流れ始める。

 

幻想郷には不釣り合いなメタリックなBGMと、女性ボーカル特有の高音が人里中に響き渡る。

 

見ると、霊夢たちが先程まで問答していた屋敷の屋根が崩れ落ち、中から銀杏を二つ合わせたような巨大な円盤が、ゆっくりと上昇を始めている。

 

どうやらこのBGMの音源はこの円盤かららしい。

 

曲がAメロに入ると同時に、メトロン星人の攻撃が始まる。

 

「かーがーやーけミーラーイー」

 

メトロン星人は両腕のレーザーを放出させながら、曲に合わせて踊るように光るレーザーをグルグルと棒のように廻し始める。

 

夕空に黄色の閃光が乱舞する。

 

霊夢、このレーザーを縄跳びの縄を跳ぶかのように潜り抜けていく。

 

一見珍妙な動きだが、規則性がない訳ではない。

 

霊夢メトロン星人の動きを読み切り、この時限式スペルカードを乗り切った。

 

 

BGMが終わると、メトロン星人はレーザーを打ち終わり、次のスペルカードへ移行する。

 

「秘薬 ポッピングシード」

 

メトロン星人がスペルカードを名乗ると、BGMを流す為に静止していた円盤から無数の光弾が発射される。

 

レーザーほど弾速は速くないが、広範囲に整列するように放たれた赤い光弾は、空中で一時静止する。

 

すると、まるで飛び散った木の実のように、人里の夕空を真横に飛び跳ねる。

 

霊夢は空中を飛び跳ねる光弾を回避しつつ、躱しきれない光弾をお祓い棒で打ち消していく。

 

「おい!あんな円盤使うなんていいのか!」

 

霊夢とメトロン星人の弾幕勝負を見守っていた魔理沙が、近くにいた紫に噛み付く。

 

「あれはメトロン星人のサブウェポンのようなものです。別にルール違反でもないわ」

 

紫はじっと霊夢の姿を見つめている。

 

 

しばらく膠着状態が続いたが、次第に円盤からの光弾の弾幕が薄くなり始める。

 

防戦一方だった霊夢も、この機に乗じて距離を詰める。

 

 

「メトロン家相伝!ちゃぶ台返し」

 

メトロン星人は次なるスペルカードを発動させる。

 

またしても円盤から弾幕が発射される。

しかしその弾は、まるでちゃぶ台のような形をしている。

 

発射されたちゃぶ台弾は、まるで無重力の中を飛んでいるようにぐるぐると回りながら散っていく。

 

夕空一面に無数のちゃぶ台が散らばっている、という異様な光景が広がる。

 

霊夢はこのやたら面の広い弾丸を回避するため、少し後退することを余儀なくされる。

 

円盤から発射されたちゃぶ台弾は、ゆっくりと回転しながら霊夢を囲むように集まり始める。

 

このままでは多数のちゃぶ台に霊夢が押し潰される!

そう思われたが、霊夢はちゃぶ台の合間の微妙な隙間を潜り抜けていく。

 

ちゃぶ台弾は高速で回転している訳ではない。あくまでも無重力を飛んでいるかのようにゆっくりとした回転だ。

 

そのゆっくりとした回転によりできた隙間を霊夢は潜り抜け、再びメトロン星人に近づいていく。

 

霊夢はある程度メトロン星人の近くまで接近すると、いきなり高速で霊札を放つ。

 

メトロン星人はこれを素早い動きで回避する。咄嗟の攻撃を回避したメトロン星人であったが、霊夢はちゃぶ台弾幕の囲いを完全に突破してしまい、意味をなさなくなっていた。

 

メトロン星人はちゃぶ台弾幕を消滅させると、空中で霊夢と向き合い、こう言い放つ。

 

 

「それでは"LASTWORD"といこうか」

 

 

メトロン星人はまたしても円盤から光弾を発射させる。先程の光弾よりも高速で弾幕が厚い。

 

「サンセットバラージ」

 

無数の光弾が霊夢に向けて発射される。しかも紅色の弾幕であり、夕焼け空に溶け込み回避を困難にする。

 

 

霊夢の苦しい戦闘が続く。

霊夢は光弾の弾幕を回避しつつも時折霊札を投げつけメトロン星人を狙うが、命中しない。

 

メトロン星人は霊札を回避しつつも時折腕からバルカン砲やレーザーで霊夢を狙い、手数の多さで霊夢を圧倒していく。

 

その時、夕陽が雲間に隠れて空が暗くなる。夕陽は間もなく沈み、空は夜の闇に包まれる。そうなれば視界は悪化し、手数の少ない霊夢は益々不利になってしまう。

 

 

 

 

そんな不安を他所に、霊夢がアクションを起こす。

 

霊夢は思い切り上空に飛び上がると、メトロン星人の上を飛び越えるように、放物線を描いて宙返りをする。

 

メトロン星人は突然のことに驚いて霊夢が飛び越えた方向を振り返る。

 

 

すると霊夢の背後から、眩いばかりの夕陽の光がメトロン星人の眼に飛び込んでくる。

 

丁度雲間に隠れていた夕陽が、姿を表したのだ。

 

その光に一瞬、メトロン星人の意識が奪われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負を決すにはその一瞬で十分だった。

 

 

 

 

次の瞬間。

メトロン星人の顔に霊札が叩きつけられ、その身体は真っ逆さまに落下した。

 

 

メトロン星人の身体は、ボンっという大きな音を立て、人里外れの畑に頭の先だけ埋まるように不時着した。

 

 

 

決着。

 

 

 

 

霊夢の勝利は、誰の目にも明らかであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「……ははっ、ハーッハッハッハ」

 

 

 

 

 

弾幕ごっこの一部始終をテレビで観ていたメトロン星人とダンだったが、

 

相方のメトロン星人が畑に墜落するのを目撃すると、急に笑いだした。

 

「負けちゃったか」

 

「おい。約束通り、出ていくんだろうな。」

 

ダンは霊夢が勝ったことにひとまず安堵するが、目の前のメトロン星人に対しての厳しい態度は崩さない。

 

 

 

 

 

 

「あーあ。そいじゃ!」

 

メトロン星人はそれに答えず、ふざけたように挨拶すると、

 

「とお!」

 

天井を突き破り、空中に飛び出す。

 

 

「おい!待て!」

 

 

ダンはメトロン星人を追いかけるべく、

ウルトラ・アイを取り出す。

 

「デュワッ!!」

 

ダンは光に包まれ、ウルトラセブンの姿に変身する。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

畑に頭が埋まったメトロン星人であったが、自力で畑から脱出し、パンパンと頭の土を払っている。

 

「やれやれ、参ったよ。」

 

 

 

そこに鋭い形相の霊夢が飛んで近づいてくる。

 

手にはお祓い棒と札が握られており、「まだやるのか」と言い出しそうな構えだ。

 

 

さらに何処からともなく紫が現れ、箒に跨った魔理沙もこちらに近づいてくる。

 

 

 

 

「あーあー。私の負けだ。

 

見事だった。ハクレイのミコよ、約束通り、私達は大人しくここから立ち去るよ」

 

メトロン星人は両腕を上に掲げながら無抵抗のポーズを取る。

 

 

 

すると円盤から光が放たれ、メトロン星人の身体はその光の中に消えていく。

 

 

その直後、光の柱が現れ、その中からウルトラセブンが現れる。

 

同時にもう一体の飛行していたメトロン星人が、先程と同様に円盤の光に包まれて消えていくのが見えた。

 

 

 

 

セブンは円盤に向き合う。

 

円盤はセブンの周りを旋回するようにゆっくりと浮遊する。

 

円盤はセブンへ向け、一方的に宣告する。

 

 

 

「私たちは約束は守る。しかし、ウルトラセブン。君のやっていることは単なる人間贔屓でしかない。

 

地球と人類、どちらが価値あるものなのか、そのことをよく考えるがいい」

 

 

 

 

そう告げると、円盤はセブンから離れ、夕陽の向こうへと飛び去って行く。

 

 

 

セブンと霊夢は、円盤が空の向こうに消え去るまで、じっとその行く先を見つめていた。

 

 




要望ありそうであれば、シリーズ終了の後書き、未公表の設定などを書く予定です。
お暇な方はご覧ください。


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