Doctor・Who the 0 (ヨシヒデ)
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貴方は、誰?

使い魔の召喚の儀式。

それはメイジとして、文字通り一生のパートナーを呼び出す神聖な儀式であり、ここトリステイン魔法学院では生徒の進級に関わる大事な行事である。

皆、どんな使い魔が表れるのか、期待と不安を抱えて杖を振るわれていた。

 

「やったぞ!成功した!これから、よろしく」

 

また一人の生徒が無事に使い魔と契約をする姿に近くで指導しながら、見守っていた教師のコルベールは微笑んでいた。

たしか、今の生徒で大半の召喚の儀式が終わった事になる。

実は今年の召喚の儀式では、ある一人の生徒を除いてそこまでは心配には思っていなかった。

ある意味では今からが本番だぞと、コルベールは気を入れ直して最後の一人の名を呼ぶ。

 

「では、最後にミス・ヴァリエール」

 

コルベールに名を呼ばれた生徒が前に出て来た。

ピンク色の綺麗な髪を長く伸ばし、気が強そうな中にも幼さを残した美少女と言っても差し支えない容姿をした少女だ。

今は極度に緊張しているのか若干、表情が固く、手に持った杖をギュッと握り締めていた。

 

「さぁ、緊張せずに呪文を唱えなさい。大丈夫、君なら絶対に成功する。落ち着いて」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

ルイズは震える脚を抑えながら、コルベールの前に立っていた。

緊張しなくても良いという言葉に裏返りそうになりがら、一言返事を返すのがやっとの状態。

それでも、今日の為に一月以上もの準備を重ねて来た事を思い返して真っ直ぐに顔を上げてまだ、見ぬ使い魔へと視線をやった。

 

(絶対、絶対に成功してやるんだから!私はゼロじゃない!お願い、必ず私の前に来て!私の使い魔!)

 

息を一度、大きく吸い込み、ルイズは何度も練習した言葉を紡ぎ出した。

 

「この世界いえ、この宇宙の何処かにいる、叡知溢れ、勇敢で、気高き、私の使い魔よ!私は心の底から、求めるわ!我が導きの下、私の前に姿を表しなさい!」

 

勢い良く、紡がれる言葉に周りで様子を見ていた生徒達は召喚したばかりの使い魔を撫でながら、クスクスと笑いを漏らす。

 

ー何、あの呪文?

ーゼロのくせして威勢は良いよな

ーどうせ、失敗するわ

 

悪意ある言葉がルイズの胸に突き刺さる。

萎えそうになる気持ちを何とか保ち、精神をひたすら一つの事に集中させる。

そして、杖を思いっきり放り下ろした。

ドンッ!

腹に響く爆発音と共に土煙が周囲に舞い上がった。

 

(そんな!お願い、成功していて!)

 

多大な精神力を使い、その場に膝をついたルイズは自身の起こした土煙の中を一心に見詰めた。

すると、土煙の中に何とも奇妙な物が佇んでいるのが見えた。

 

(え?あれは、何?)

 

それは、小屋と言うには余りにも小さい青い箱の様な物だった。

不意にガチャッと箱の扉が開き、中から一人の蝶ネクタイを占めたヒョロッとした男が出て来た。

男はまだ、土煙が舞う中で辺りを見渡して、その視線をピタリとルイズに合わせた。

 

「やあ!君だな、僕を呼んだのは」

 

男はにっこりと笑い、ルイズに近付いて来た。

 

「呼んだ?私が?」

「そうさ!僕がターディスでタイムヴォルテックスの中を飛んでいた時に鏡が現れたんだ!最初は何なんだろうって、思ったけど、サイキックペーパーが鏡から君の強い想いを受信したんだ。だから、僕はピンと来たんだ。これは鏡では無く、ゲートの一種だと!あとは、簡単だ、解ってしまえば突入すれば良い、ジェロニモーって!」

 

男はルイズが息つく暇の無いほど、意気揚々と説明しだし、それに着いて行けず、ストップを掛けた。

 

「意味解んないわ!私が呼んだのは使い魔よ!だいたい、貴方は、誰?」

「僕かい?僕は、ドクター!」

 

ドクターの答えにルイズはさらに怒鳴った。

 

 

 

 

 

 

ドクター、何よ!?

 




次回の『Doctor・Who the0』は・・・

これは、何かの間違いです!

彼と契約をするんだ。

貴族が平民にこんな事をするのは滅多にない無いんだから、光栄に思いなさい。

ようこそ!ターディスへ、ご主人!


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welcome to

「流石、ゼロのルイスだ!珍しく一発で、成功したと思えば平民だなんて!」

 

誰かが言った一言が引き金になり、周りの生徒達が一斉に笑い出した。

それに耐える様に顔を赤くし、歯を食い縛るルイズは後ろに控えるコルベールに必死に抗議する。

 

「ミスタ・コルベール!これは何かの間違いです!やり直しを要求します!」

「それは出来ない。ミス・ヴァリエール、これは神聖な儀式なんだ。確かに人を呼び出した事は前代未聞な事だが、やり直しは効かない。彼と契約するんだ」

 

コルベールにアッサリと切られてルイズはそんなと、眉を八の字にして、ゆっくりと後ろを振り返る。

そこには変な青い箱を背にドクターと名乗った男がニコニコと立っている。

 

「話しはもう、済んだかい?僕は君の強い想いを叶えに来たんだ。その、使い魔だったかな?契約を結ぼうじゃないか」

 

それで契約書とかあるのと、懐から羽ペンとメガネを取り出してドクターは何時でもサインするよと人好きする笑顔を向けている。

ルイズは深く溜め息を吐いた。

 

「しゃがみなさい。良い?貴族が平民にこんな事をするのは滅多に無いんだから、光栄に思いなさい」

 

そう言ってしゃがませたドクターに口早に呪文を唱えて、唇を重ねた。

 

「!?」

 

これにはドクターも少しビックリした。

ルイズは顔を赤くしてサッと身を引いた。

 

「えーと、これで終わり?あー、サインとか、判子は要らなかったかって!うわうち!!」

 

突然、ドクターは左手を押さえて地面にのたうち回った。

 

「ちょっと、使い魔のルーンが刻まれているだけだから、我慢なさい」

 

直ぐに終わるわと言うルイズの言葉通りにドクターの左手の熱さは直ぐに収まっていく。

 

「フゥ~、まったく、僕は次から絶対に女の子とはキスをしないぞ。どれどれ、僕の左手に何か刻まれているな?うーん、読めないな」

 

ドクターはぶつぶつと呟きながら、懐から何かを取り出した。

 

「!?」

 

ルイズはそれが一瞬、杖に見えてドキッとしたが、見た目が銀色で先端が少し光っているまたヘンテコな物だと解った。

それをドクターは左手に向けた後にカシャッと目の前にかざしている。

 

「あんた、それ何よ?」

「これかい?これは『ソニック・ドライバー』って言って」オホンッ!

 

ドクターがルイズに解説しようとしたが、そこにコルベールが咳払いをして止めに入った。

 

「ミス・ヴァリエール、使い魔と触れ合うのは良いですが、次の授業が始まりますぞ。他の生徒達はもう、フライで学院へと戻っているので、君も戻らねば」

「えっ!もうそんな時間なんですか!わかりました、ミスタ!」

 

慌てるルイズにコルベールは使い魔になったドクターに使い魔のルーンを写させてもらう様に頼み、それが終ると一枚の紙をルイズに渡した。

 

「ミスタ、これは?」

「それは、私の用事で君が遅くなってしまったというメモだ。これがあれば少し遅くなっても大丈夫だろう」

 

コルベールの気遣いにルイズは改めて礼を言った。

コルベールはその礼を受けつつ、あまり遅くならない様に注意してフライで学院へと戻って行った。

 

「うん、良い先生だ!よかったね!さあ、僕らも行こう!こっちだ!」

 

コルベールを見届けたドクターはルイズの手を引き、青い箱の扉に連れて行った。

 

「何よ!私、急いでるんだから、離してよ!」

「まあまあ、走って、この場合は飛んでかな?まぁ、どっちでも良いけど、行くよりもターディスで行った方が速いよ!」

 

そう言って、ガチャとドクターはターディスの扉を開いた。

 

「うっそ!何これ!?どうなってるの?」

 

そこには小さな箱の外見では、信じられない様な広い空間が広がっていた。

 

「ようこそ!ターディスへ、ご主人!」



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さあ、準備は出来たかい?

「凄い!いったい、どうなってるの?」

 

ルイズは先程から、ターディスを出たり、入ったりを繰返していた。

ドクターはそんなルイズを見て期待通りの反応だとニヤニヤと見ていた。

 

「ドクター、このマジックアイテムは何処で手に入れたの?」

「マジックアイテム?」

 

ひとしきり、観察を終えたルイズは質問するとドクターは心外だなと言う表情になった。

 

「ターディスには魔法的な要素は無いよ」

「嘘!」

「本当さ、ターディスは僕の故郷のガリフレイの科学だけで作られた物だからね」

 

ガリフレイ、そう聞いてルイズは怪訝な表情になった。

 

「ガリフレイ?聞いたこと無いわ、そんな国」

「当然さ、ガリフレイはこの世界とは別の世界の別の時間軸にあった国なんだからね」

 

ルイズは更に頭に?を浮かべた。

 

「そんな事よりも、えーと」

「ルイズよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン」

「長いね、ルイズで良いよね?」

「ちょっと!」

「決めた!僕はルイズって君の事を呼ぶよ!」

 

そう言ってドクターはサッと右手をルイズに差し出した。

 

「改めて、自己紹介しよう!僕はドクター、宇宙と時間を旅をするタイムロードって人種で今はルイズ、君の使い魔だ!」

 

爽やかに言ってドクターは戸惑って手を差し出さないルイズの手をパッと取り、ブンブンと上下に振り回した。

 

「ちょっと!痛いわよ!あんた、何が宇宙と時間を旅するタイムロードよ!ホラ話しも良い加減にしなさいよ!」

 

ルイズは怒って手を振りほどき、ドクターを睨み付けた。

ドクターは、それに気に留めた様子も無く、懐から懐中時計を取り出すとルイズに告げる。

 

「さて、ルイズ?この世界の時間の基準って僕の時計と合ってるかな?そろそろ、出発しないと授業に間に合わないよ?」

 

ドクターの言葉にルイズの顔はサッと血の気が引いた。

確かに今から、このターディスから走って出たとしてもギリギリ間に合うか、と言うかもう授業が開始されている時間だった。

 

「どっ、どどどどど、どうするの!?あんたのせいだからね!?」

 

ドクターの蝶ネクタイを締め上げてルイズは詰め寄った。

ドクターはそれに慌てる事なく、手元のパネルの隙間から吸盤の付いたコードを取り出してルイズの額にペチッと張り付けた。

 

「こんな、時に何してんのよ!!」

「ルイズ、これは僕が暇な時に作ったターディスの新機能なんだ!ターディスの移動には座標の設定とかしないといけないから、初めて行く場所には上手く行けない確率があったんだけど、これは張り付けた人物から、記憶を読み取って、場所の固定座標を教えてくれる装置なんだ!」

「はぁ?」

 

ルイズは何言ってんのと疑う視線をドクターにやった。

 

「教室をイメージしてご覧よ!今から、そこにターディスで送ってあげるよ」

「あんた、本当に頭は大丈夫なの?そんなの出来る訳がないじゃない。それに移動出来たとしたも、授業はもう始まっているのよ」

 

呆れて言うルイズにドクターは我が意を得たりと笑い掛けた。

 

「大丈夫だよ、ルイズ。授業が始まる少し前の時間に行けば良いだけだからね。その変わり、もしそれが出来たら僕の話を真実だと、認めてくれる?」

「あ~、はいはい。出来たらね」

「よーし!じゃルイズ、君は教室をイメージするんだ!」

 

ドクターはそう言い残して中央の雑多なパネルに忙しそうに操作を開始した。

ルイズは一つ、溜め息を吐いて取り合えず、自分の教室をイメージする。

 

「さあ、準備は出来たかいルイズ?行くぞ、ジェロニモー!」

 

 

草原にぽつりと佇んでいた青いpoliceboxは突然、独特な音を発し出すと、まるで最初からその場に無かった様にその姿が消えてしまった。



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呼んだかい?

結果的にはルイズは授業に間に合った。

それは良い、間に合うのは良い事だ。

しかし今、ルイズはその事にホッと安堵した気持ちに今一つなれなかった。

何故なら、この授業は本来ならば既に始まっていて自分はまだ、時間的にドクターと草原の練習場に居る筈だったからだ。

ルイズは教卓で授業を進める教師にバレない様にソッと自分の懐中時計を見てみた。

時計の針はやはり、先程確認した通りに周りの時間より進んだ刻を刻んでいる。

 

(本当に何なの?時間が巻き戻るなんて!そんなの、どんな魔法でも不可能の筈よ!)

 

何度も繰り返して考えても訳が解らなかった。

ドクターの青い箱、ターディスと言っていたが、草原に居た筈が扉を開けたとき、いつの間に学院の教室に移動していのも驚いたが、もっと驚いたのはドクターが少しこのハルゲニアを調査してくると言ってターディスごと消えた後にガヤガヤと自分のクラスメートが入って来てお互い眼を丸くしていた。

 

(もしかして、あのターディスって伝説の虚無に関わっている代物なのかしら?)

「ミス・ヴァリエール!」

「えっ?あ、はい!」

 

教師の自分の名を呼ぶ声に慌てて起立したルイズだった。

 

 

 

結局、ルイズは授業中にボンヤリしてならないとお小言をもらう羽目になってしまった。

そして、日が落ちて辺りが暗くなってもドクターはルイズの前に戻らなかった。

 

「もう、何よ!使い魔の癖にご主人様を混乱させるわ、帰っても来ないわ!こうなったら、帰ってきたらお仕置きしてやるんだから!」

 

決心固く、自身の部屋の前に来たルイズ。

 

「ドクター!」

 

バンと勢い良く扉を開けると、そこは今朝、ルイズが出た後とと変わらない風景が広がっていた。

ただ、違うのは暗いだけだろうか。

 

「何よ!部屋にも居ないの!もう、帰って来ても部屋になんか、入れてあげないんだから!」

 

怒髪天につくと言わんばかりに憤慨する。

しかし、一刻、一刻と時間が進むに連れてルイズの心に何とも言えない不安が襲って来た。

 

(ドクター、何で帰って来ないのよ。もしかして、使い魔が嫌になって逃げちゃったの?それとも・・・)

 

全ては、私の妄想だった?

変な青い箱に乗った変なドクター。

時間を旅するなんて、お伽噺の様な事を言う可笑しなドクター。

「ドクター・・・」

 

ルイズは一人、ベットに座り込み小さく呟いた。

 

「呼んだかい?」

「!?」

 

突然、窓からドクターが姿を現した。

ルイズは驚き、パクパクと口を開けた。

 

「ん?どうしたんだい?」

「あ、あああ、あんたね!今、何時だと思ってんのよ!それに何処から、入って来てんの!?」

「いやー、ごめんごめん!ちょっと、遠くに行ってたからね!それとルイズ、君に良いモノを見せてあげるよ!さあ、ターディスに乗り込んで!」

 

ドクターが、窓越しから手を差しのべる。

ルイズはそれをどうするか、迷って思いきってドクターの手を握り締めてた。

 

「キャッ!」

 

ドクターに手を引かれて窓の外に出たルイズはフライが使えないので思わず小さく悲鳴を上げて眼を瞑った。

しかし、足元に確かな固い床の感触を受けて恐る恐る眼を開けると、ターディスの中に居た。

 

「驚いた?ターディスの透明化機能で外からは見えない様にしていたんだ!」

 

透明と聞いてルイズは驚きを通り越して心底呆れてしまった。

それより、気になったのは

 

「ターディスって浮けるの?」

「浮けるのだけじゃないけどね。ルイズ、少し眼を閉じてくれないか?」

 

ニッコリと微笑みながら、言うドクターにルイズはここまで来たら、取り合えず言う通りにしてやるかと素直に眼を閉じた。

そして数分後、ずっと眼を閉じているのも飽きて来たときにドクターが眼を開けてと、耳元で優しく言われた。

 

「夜空?ドクター、これがどうしたの?」

 

開け放たれたターディスの扉には、いつもの見慣れた双子月と夜空が広がっており、ルイズは訝しげにドクターに聞いた。

ドクターはクスクスと笑いながら、扉に近付いてと言った。

ルイズは一歩、また一歩と扉に近づくと『それ』は姿を現した。

 

「な、何、あれは?」

 

眼を大きく開けて驚愕の眼差しでルイズは『それ』を見詰めていた。

 

「おめでとう、ルイズ。君はハルケギニア有史以来、初めて宇宙に出て惑星ハルケギニアをその眼で見たトリスティン人だよ」

 

ドクターは今の雰囲気を壊さない様に静かにルイズに告げた。

しかし、ルイズはそんな言葉に気付かない様にポツリと呟くだけだった。

 

 

「なんて、美しいの・・・」

 



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おはよう、ルイズ!

「ルイズー!ル~イ~ズ!」

 

太陽が顔を出して、トリスティン魔法学院を照らし出した刻、ドクターはルイズを起こそうと耳元で大きな声を出していた。

昨夜、ターディスでの宇宙遊泳を楽しんだ後に学院に戻ってルイズから朝、洗濯と起こすように言われていたドクターは洗濯を早々に終わらせて先程から大声を出していた。

しかし、ドクターがどんなに頑張ってもルイズは唸るか寝返りをするかで全く起きる気配がない。

 

「ルイズ!・・・イヤー、全然、起きないな。こうなったら、最終手段だ!」

 

仕方ないと言った様にポケットから、耳栓を出してつけると、ドクターは懐からソニックドライバーを取り出した。

 

「ルイズ、最後の警告だ。朝だぞー!おっきろー!」

「ウッ、ウーン」

 

起きないルイズ。

その様子を確認したドクターは今から、悪戯を決行する子供の様な笑みを浮かべてソニックドライバーのスイッチを押した。

途端にソニックドライバーから、高音の音波が響き、部屋全体が震え出した。

 

「キャアアアアアアア!!なっ、何!?何なの!!」

 

ルイズはたまらず、ベットから飛び起きて耳を塞ぐ。

ドクターはサッとソニックドライバーを切って懐に仕舞うと満面の笑みでルイズに声を掛ける。

 

「おはよう、ルイズ!今日は良い朝だよ!」

「あ、あんた、誰よ?」

「僕だよ!ドクター、君の使い魔!」

 

寝ぼけて、聞いてきたルイズにドクターは笑みで答えるとルイズは、ああ、そうだったと頭を掻いて思い出す。

 

「ドクター、着替えを」

「No.program!もう、用意してるよ。じゃ、着替え終わったら教えてね!」

 

ドクターはそう言い残すとサッと部屋の片隅にあるターディスに入って行った。

 

「ちょっと、私に着せなさいよ!もう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い!今度は私に着せなさい!」

「はいはい、ご主人様」

 

ドクターに文句を言いつつ、二人は扉を開けて廊下に出た。

 

「あら、ルイズじゃない」

「ツェルプストー・・・」

 

そこに第三者の声が聞こえて二人は振り向くと、赤毛で褐色の肌の美女が立っていた。

ルイズは、あからさまに眉を潜めて、ドクターは気軽にやぁと挨拶をする。

 

「アハハハハハハ、何?貴女、本当に平民を詠んじゃったの?」

 

褐色の美女はパッとドクターを見ると突然、笑い出した。

ルイズは更に眉間に皺を寄せる。

 

「もう、貴女って本当、人を笑わせる才能があるのね」

「人を笑わせる才能って、すばらしい事だと僕は思うよ」

「ドクター、お黙り!」

「使い魔ってのは、こう言うの呼ばないとね。おいで、フレイム」

 

そう言うと、足元から大きな赤いトカゲが姿を現した。

 

「ワォ!何だい、これは!」

 

すかさず、ドクターはフレイムに近づくとソニックドライバーで全身を調査し出した。

 

「えっ?何、それって、杖?ルイズ。貴女、メイジを呼び出したの?」

「違うわよ!あれは私にもあまり解んないわけど、ソニックドライバーって言うので、ドクターはメイジじゃなくてタイムロードでって、ちょっとドクター、何してんのよ!」

 

ルイズはそこまで言うと、フレイムからドクターを引き離した。

 

「いやー、ごめんごめん!見たことない生き物だったから、ついね。それに見てごらん、尻尾の先の炎を綺麗だと思わないかい?」

 

悪びれもせずにウィンクする。

 

「まぁ意外にお目が高いのね、ミスタ。フレイムは火龍山脈のサラマンダーで好事家に見せたら、値段がつけられないのよ。そう言えばまだ、自己紹介して無かったわね。私はキュルケよ。二つ名は"微熱"」

「僕はドクター!二つ名は・・・ねぇ、何が良いかな?」

「知らないわよ!」

「まぁ、よろしく!」

 

自己紹介が終わり、キュルケは早々に階段を降りて行った。

残ったルイズは、きつくドクターに食って掛かった。

 

「良い、ドクター!ツェルプストーとは、あまり関わったら、駄目よ!」

「また、何で?」

「トリスティン貴族のヴァリエールとゲルマニア貴族のツェルプストーの領地は隣り合っていて事ある毎に争ってるのよ!ご先祖様なんて、婚約者を奪われたりしてるの!!」

 

憤慨して言うルイズにドクターは苦笑する。

 

「それに何よ!自分がサラマンダーを召喚したからって、あんな自慢しちゃって!悔しい!!」

 

そこまで言ったときにドクターはルイズの頭に手を置いた。

 

「何よ!」

「ルイズ、悔しがる事ないじゃないか。君の使い魔は不思議なboxで宇宙に連れて行く事が出来るんだよ。さぁ、僕はお腹が空いたから食堂に行こう!」

 

笑顔で言われてルイズは毒気を抜かれて、それもそうねとドクターに釣られて笑みを溢した。

 

「さあ、行こう!置いてっちゃうぞ!」

「ちょっとドクター、食堂の場所知らないでしょ!待ちなさい!」



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僕の席は何処かな?

「ワァオ!これは、イメージ通りと言うか、期待通りと言うべきか!」

 

食堂に着いたドクターは嬉しそうに全体を見渡して大声を出した。

 

「ちょっと!ドクター、もう!恥ずかしいから、そんな大声出さないでよ!」

 

朝食中の生徒達が何事かと、一斉に視線を向ける中でルイズは赤面してドクターに注意する。

 

「だって、ルイズ!見なよ!広々とした立派な空間に長いテーブルが連なって豪華な料理が並んでいるこの空間!正に映画で見た通り!」

「ハァ?エイガ?何よ、それ!それより、静かにしてよ!恥ずかしいんだから!」

 

注意されて、わかったよと苦笑しながら手前の椅子を引き、ルイズをエスコートするドクター。

それに満足して、ルイズは椅子に座る。

 

「あっ!そうだ、ルイズ!」

「今度は何よ、ドクター?」

「僕の席は何処かな?君の隣で良いかな?」

「あっ!」

 

ルイズは、ドクターに言われて初めて気付いたと言う様に眉を寄せて少し考え出した。

 

「ごめんなさい、ドクター。ここは貴族専用で貴方の席は無いのよ」

「え~、そんな!僕は腹ペコなんだよ!」

 

お腹を押さえて抗議するドクターにルイズはちょっと待ってと声を掛けて周囲を見渡す。

 

「ねぇ、ちょっと、そこの貴女」

「ハイ。何でしょうか、ミス・ヴァリエール」

 

ルイズは直ぐ近くに居た黒髪のメイドに声を掛けて呼んだ。

 

「やあ、シエスタじゃないか!」

「あら、ドクターさん」

 

すると、そばに来たメイドにドクターは親しげに手を振った。

 

「ドクター、彼女を知ってるの?」

「ん?ああ、彼女はシエスタ。僕がルイズの洗濯物を持っていく時に案内してもらってね。久しぶり、シエスタ!」

「フフフ。久しぶりって今朝、会ったばかりじゃないですか」

 

二人のやり取りにルイズはそれじゃ頼みやすいわねと言うとシエスタにドクターの食事を厨房で賄いでも良いから用意してもらいたいと頼んだ。

 

「わかりました、ミス・ヴァリエール。さぁドクターさん、こちらですよ」

「ありがとう、シエスタ。それじゃルイズ、行ってくるよ!」

「行ってらっしゃい。そうそう、授業には遅れないでね。場所は」

「大丈夫だよ。この学院は昨日、探検してある程度は把握してるし、第一に教室がある塔の設計担当したのは僕だからね! 」

「そう、なら大丈夫ね・・・。ちょっと、ドクター!今、何て言ったの!?」

 

ルイズはドクターの不穏な一言に遅れて反応して慌てて振り返るが、当のドクターはシエスタに早く行こうと促して厨房へと行った後だった。

 

「もう!昨日はいったい、何してたのよ!」

 



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ファンタスティック!

「ルイズ、君の使い魔はいったい、何処に行ったんだい?」

 

空いていた机に着席して、そうそうに投げ掛けられた嘲りを含む質問にルイズはグッと奥歯を噛み、無言で耐えた。

 

「どうせ、本当は使い魔が召喚出来なくて金で雇った平民だったんだろうけど、愛想を尽かせて逃げられたんだろ?」

 

クスクスと嫌みったらしく、静かに起こる笑いにルイズはとうとう、両手をバンと机に打ち付けて立ち上がると後ろに座る少年を睨みつけと。

 

「何だよ?」

「良い加減、その口を閉じたらどうよ?風邪っぴきのマリコルヌ」

「なっ!?僕の二つ名は"風上"のマリコルヌだ!この、ゼロのルイズ!」

 

顔を真っ赤にして言い返すマリコルヌにルイズは拳を握り、フンと鼻を鳴らした。

 

「貴方には風邪っぴきで充分よ!」

「なっ、何ー!この、ムグ!」

 

我慢の限界だと、勢い良く立ち上がったと同時に突然、マリコルヌの口を覆う様に粘土質の土が飛んで来た。

飛んで来た方向を生徒達が見ると、教室の入口に少し小太りの中年の女性が立っていた。

 

「ミスタ・マリコルヌ。同級生に対して、そんな態度はいけませんよ。あとミス・ヴァリエールも、挑発されたとは言え気安く買うものではありません」

 

女性はそう言うと教室の教卓に移動する。

 

「コホン、改めまして、初めまして、私はシュベールズと言います。二つ名は"赤土"これから一年間、皆さんに錬金を始めとした土系統に関する事を教えていきます。どうぞ、よろしく」

 

シュベールズは場の騒ぎが収まった事を確認すると往々に自己紹介を行う。

また生徒達もよろしくお願いします、ミセス・シュベールズと返事を返して満足そうにシュベールズは頷く。

 

「このシュベールズ、皆さんがどのような使い魔を持ったか見られるこの時が一年で一番、楽しみなのです」

 

実に楽しそうに眼を細めて多種多彩な使い魔を眺めて視線がルイズを捉えた時にシュベールズは不意にアッと何かを思い出した様に手を口に当てた。

 

「ミス・ヴァリエール。そう言えば、貴女の使い魔の事を忘れていましたわ」

「えっ!わ、私の使い魔ですか?」

 

苦笑するシュベールズにルイズはドクターが何か仕出かしたのかと嫌な汗が米神をつたう。

 

「慌てなくて大丈夫ですよ。彼が迷子になっていたのを私が案内しただけですからね。さぁミスタ、お待たせしましたね。お入り下さい」

 

シュベールズが扉の方を促すと、ドクターが笑顔でバンと押し開けて教室に入って来た。

 

「ミセス・シュベールズ!このままずっと、廊下に立たされるかと思ったよ!そして、やぁ昨日ぶりだね!ご主人様の同級生諸君!」

「あっ、あんた!何でミセス・シュベールズと一緒に来てるのよ!?」

 

飄々とした態度で自然に自分の隣に座ったドクターの肘を小突いてルイズは詰問する。

ドクターは、そんなルイズに小声で返答する。

 

「ルイズ、聞いてよ。この塔の設計は僕が担当したのにロニーの奴が僕が帰った後、勝手に手を加えたみたいで全く違う内装になっていたんだよ!そして、迷子になっていた僕にミセスが声を掛けてくれたんだ」

 

僕の設計だったら、この教室だってこんなに地味じゃなかったのにと、わざとらしく顔をしかめるドクターにルイズはロニーって誰よと使い魔の言動に頭を押さえる。

 

「ミス・ヴァリエール。使い魔との交流は後にしてもらえません?」

「あっ、すみません!」

 

授業中にドクターと話すルイズに気付いて注意されて、ルイズは慌てて謝った。

シュベールズは次は気を付ける様にと釘をさして、場を仕切り直す様にコホンと咳払いする。

 

「皆さん、魔法には四つの属性があるのはもちろん、わかりますね。では、そうですね、ミスター・ギーシュ。説明を」

 

シュベールズが指名したギーシュという少年はキザったらしく、前髪をかき上げると立ち上がった。

 

「はい、ミセス。属性は『火』『水』『風』『土』の四つがあります」

「はい、その通り。今は失われた『虚無』も含め、ペンタゴン五芒星を司る重要な要素です。中でも『土』は生活環境に根付いた、なくてはならない魔法といっても過言ではありません。これは何も私が『土』系統メイジだから贔屓している訳ではないですよ」

 

家や作物などの例えをあげながら、シュベールズは生徒達に土系統の重要性を説いていく。

ルイズは熱心にノートに土系統の解説を写していき、ドクターはその様子を微笑ましそうに眺めている。

 

「では皆さん、これより土系統の初歩、『錬金』を見せましょう」

 

そう言ってシュベールズは教卓に大きめの石を乗せると低く呪文を詠唱して杖を振るった。

すると、石は黄金色に輝く物体に変化した。

 

「そっ、それってゴールドですか!?」

 

生徒の誰もが驚き、シュベールズの錬金したゴールドを見詰める。

ルイズも驚き、見詰めていたが不意に隣のドクターが居なくなっていることに気付き、まさかと思い教卓の周辺を探した。

案の定、ドクターは眼をキラキラさせながらシュベールズのゴールドを確認しようと教卓の側に居てソニック・ドライバーの光を当てていた。

 

「いや~、この口癖は久しぶりに言ってしまうけど、本当にファンタスティック!!」

 

何してんのよ、バカドクター!!

 



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僕の勘が告げているんだ!

「ミセス・シュベールズ、それは本物のゴールドですか?」

「いや、これは真鍮だね」

 

まだ、興奮覚めあらぬ教室で一人の生徒が質問する。

それにシュベールズが答えようとすると、ドクターがソニック・ドライバーを顔の前に持って来て代わりに答えた。

 

「よく、わかりましたね。その通り、これは石の表面をゴールドに変えただけです。スクウェアになると本物のゴールドを錬金できます」

「ワァオ、それは是非、地球の古代の錬金術師の友達に見せてあげたいな!」

 

ドクターの言葉にチキュウと?が浮かぶシュベールズだったが、コホンと咳払いするとルイズに話し掛ける。

 

「ミス・ヴァリエール、錬金に挑戦してもらいましょうか?」

 

そう気軽に指名した瞬間、クラスの雰囲気が凍りついた。

ドクターも周囲のそんな反応にルイズの隣の席に座りながらオヤッといぶかしんだ。

 

「あ、あのミセス・・・、ルイズにやらせるんですか?」

「彼女は座学がとても優秀な生徒と聞いていますからね。実際にやってもらいます」

「危険です!」

 

机を叩き、キュルケが立ち上がる。

シュベールズは何が危険なのか、全くわからず席に座る様に促す。

 

「ルイズ、駄目よ!止めてちょうだい!」

 

シュベールズの説得は難しいと思ったのか、次にルイズに直接止める様に説得にかかるキュルケだったが、自身の因縁とも言える家の人間の説得では逆にルイズの決心は固くなってしまう。

 

「・・・やります!」

「ルイズ!」

 

スッと立ち上がり、教卓に歩を進めるルイズにシュベールズはやる気のある事は素晴らしい事ですと褒める。

 

「失敗は気にせずに今、出せる精一杯の力を出すのですよ」

「はい!」

 

ルイズは自身の杖を強く握りしめて、先程の呪文を復唱していく。

 

「ちょっと、ドクター!貴方も机の下に隠れなさい!危ないわよ!」

「え?」

 

詠唱をするルイズを観察していたドクターの袖をキュルケが引っ張る。

ドクターは何が起きるのかわからないが、改めて周囲を見渡すと青い髪の女の子が一人、教室から出て行き、その他の全ての生徒達が避難訓練の時の様に机の下に避難している。

 

「ルイズ、 」

 

流石に危険なのを察してルイズを止めようと声を掛けるが、ルイズは最後の詠唱を終えて勢い良く杖を石に振るっていた。

瞬間、石が暴力的な光を帯びていく。

ドクターはまずいと感じて懐に納めたソニック・ドライバーをガンマンの早打ちの如く、抜き出して石に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ちょっと、何か言いなさいよ」

「ん?何をかな?」

 

ルイズの錬金により、教卓は粉々になり一番近くに居たシュベールズは昏倒してしまい授業は中止、二人は罰として粉々になった元教卓の破片を片付けていた。

そして、ずっと無言で片付けていたルイズが唐突に話し掛けて来た。

 

「何かって・・・決まってるじゃない!」

 

そう言ってルイズは持っていた箒を床に叩きつけた。

ドクターはそんなルイズを不思議そうに見詰めている。

 

「あんたも、さっきの失敗でわかったでしょ?私は今までどんな魔法も成功したことが無いのよ。全部、爆発するだけ・・・成功する確率が0%」

「ああ、だから君の二つ名はゼロなんだね」

 

ドクターは合点がいったと言うとルイズは悔しそうに唇を噛み、そうよと消えるような声で返答した。

 

「呆れちゃった?貴族の癖に魔法が使えないなんて・・・」

 

我慢していた筈の涙が頬を伝う。

ドクターはにっこりと微笑むとルイズの涙を指ですくい、優しい声で語りかける。

 

「ルイズ、僕のご主人様。僕は今まで歴史上で偉大な画家や発明家、政治家とか色々な人に会って来た。皆、君と同じだったよ」

「同じ?」

「皆、苦しんでいた。いつも失敗ばかりで周囲から、評価されなかった。無能、変人、奇人、彼らの評価はどれも同じだったよ。でも、彼らは歴史にその名を残したんだ。誰に何を言われようと彼らは努力し続けたから、彼らは皆、成功を納めたんだ」

「何よ・・・私がその人達より努力してないとでも?私は必死に努力してるわよ!でも、駄目なのよ!ずっと、失敗ばかり、ずっと、きっと未来まで・・・ずっと」

「過去でどんなに魔法が使えなかったとしても、それは未来もまた同じく魔法が使えないって事にはならないよ」

「ヒック、何よ。そんなのわからないじゃない」

 

頑なルイズにドクターは苦笑すると、僕にはわかるよと優しく頭を撫でる。

 

ルイズ、僕はいったい何かな?

 

「え?貴方は・・・ドクター」

 

そう、それで?

 

「へんてこな私の使い魔で、タイムロード」

 

へんてこはひどいな。

 

「青いboxのタイムマシンに乗ってる?」

 

その通り。

さぁ、僕が何をしようとしてるか解るだろう?

 

「あっ、貴方!まさか!?」

「そのまさかさ!さぁ、行こう!」

 

急にドクターはルイズの手を取り、走り出す。

 

「ちょっと、待ってよ!本気なの!?」

「当然さぁ!流石に何十年後だろうと同じ人間が存在していたら、面倒臭いから、ここは一気に千年先に行ってみよう!」

「はあ!?そんな先なんて行っても私が魔法を使える何てわからないじゃない!」

「大丈夫!君はずっと先の未来には歴史書に名前が刻まれている筈さ!」

「歴史書!?何よ!もしかして、もう見に行ったの?」

「いいや、まだ過去だけさ!僕の勘が告げているんだ!君は偉大な事を仕出かすってね!それも宇宙の歴史に刻むくらいな!」

必死にドクターへ質問するがドクターは爽やかな笑顔をルイズに向けて事投げに言う。

ルイズがまた何か言う前に気付いたら、二人はルイズの部屋の角に立つ青いbox、ターディスに乗り込んでいた。

 

「ルイズ、僕のご主人!旅行の準備は良いかな?」

「準備なんて、してないわよ!着替えも何も持って無いわよ!」

「着替えなら、ターディスの衣装部屋に沢山あるから大丈夫さ!」

 

ドクターは忙しくターディスの中心の奇っ怪なスイッチやレバーを操作しながらルイズの問いに答えていく。

 

「お金はどうすんの!?」

「いざとなったら、ターディスが作ってくれる!」

「授業はどうすんのよ!?」

「ルイズ、これはタイムマシンだよ!心配するだけ無駄さ!」

「じゃ、旅行の準備ってなんなのよ!?」

 

最後の問いにドクターはレバーを掴んだ状態で止まる。

 

「心の準備さ!行くぞ、ジェロニモ!!」

 

満面の笑みで答えるとガンとレバーを下に下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズの部屋の前で、シエスタは訝しげに立っていた。

そこにキュルケが青い髪の少女と通りがかった。

 

「貴女、ルイズの部屋の前で何してるの?」

「あっ、すみません!えっと、あの!」

「落ち付きなさい。別に取って喰おうとしてるんじゃないから」

「はい。えっと先程、ミス・ヴァリエールとドクターさんが入って行くのを見まして」

「それで?」

「それで、その後すぐに御部屋の中から低く唸る様な音がして、何だろうかと」

 

低く唸る様な音とキュルケは確かに気にはなるわねと同意する。

すると、キュルケを押し退けて青い髪のの少女がドアに近く。

 

「どうしたの、タバサ?」

「気になるなら、確認すれば良い」

「それもそうね」

 

青い髪の少女、タバサが口数少なく言うとキュルケも直ぐに同意する。

 

「貴女、えっと」

「シエスタです」

「そう、シエスタ。貴女も音の正体が気になるなら、私達の後に入ってきなさい」

 

キュルケがシエスタにそう言うと、前からタバサが開いたと声を掛けて来た。

 

「さっすが、タバサ。アンロックの呪文も速いわね」

「早く、入るなら入る」

「そうね。ルイズー、入るわよー!」

 

まるで、自分の部屋の様にガチャとドアを開けて奥に入って行くキュルケをタバサ、シエスタの順で続いて入って行く。

そして、

 

「ちょっと、シエスタ~。誰も居ないわよ」

「あれ?おかしいですね。確かにミス・ヴァリエールとドクターさんが入っていった筈だったのに」

 

何を期待したのか詰まらなそうにするキュルケと困惑するシエスタ。

部屋には誰かが居た痕跡も無いほど静まり返っていた。

ただ、タバサは何か気になったのか、部屋の角に視線をやっていた。




次回の『Doctor・Who the0』は・・・


ようこそ!千年後のトリスティン魔法学院へ!

場所、間違ったんじゃないの!?

うーん。そんな事を言っても、これも歴史だからね。

ようこそ、紳士淑女の諸君!我が、歴史あるトリスティン魔法学院へ!


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エスコートしてくれるかしら、ジェントルマン?

緑溢れ、時折、鳥の囀ずりが聴こえる森の中で突如、静かな雰囲気に似つかわしく無い低く唸る様な音が響き渡り出した。

同時にうっすらとだが、徐々に不思議な青いboxが姿を現す。

次第に確りと姿を現した、青いbox。

すると、boxに取り付けられた扉がガチャリと音を発する。

 

「ようこそ!千年後のトリスティン魔法学院へ!」

 

そう言って中から一人の蝶ネクタイを占めたヒョロッとした男が出て来た。

それに続いてピンク色の綺麗な髪を長く伸ばし、気が強そうな中にも幼さを残した美少女と言っても差し支えない容姿をした少女もまた、boxから出てくる。

 

「ここが、千年後の魔法学院?ちょっと、ドクター!本当なの?」

「当然だろ?ルイズ、自分の学院もわからないのかい?見てみなよ!千年という時を刻み込んだ名門校の、この鬱蒼とした森!・・・森?」

 

ビックリしたと言う様に改めて、周囲を見渡すと男、ドクターに少女、ルイズが問い詰める。

 

「場所、間違ったんじゃないの!?」

「いやいや、この座標であってるよ!ここは魔法学院の千年後の君の部屋の筈だ」

 

じゃ、どうなってるのよと言い掛けてルイズは一つの嫌な予想が頭に浮かぶ。

 

「まさか、魔法学院は廃校になっちゃたのかな?」

 

かろうじて、そんな訳ないと頭を振って、その可能性を排除しようとしていたルイズの気も知らずにドクターは事なげもなく言う。

 

「こっ、このバカ使い魔!そんか事ある訳無いじゃない!」

「えっ?だって、千年後のトリスティンだよ?ほら、良く見たら蔦の間に城壁みたいなのが、有るし」

 

確かによく観察すると、見覚えありそうな城壁がちらほらと森に埋まっているのが見てとれる。

 

「嘘よ!トリスティン魔法学院は歴史ある学院よ!たかが、千年で廃校になる筈ないわ!」

 

いくら魔法が出来なくて、あまり良い思い出が無い学校でも自分の母校だ。

それだけにルイズは絶対に信じられないとドクターに詰め寄る。

 

「うーん。そんな事を言っても、これも歴史だからね」

「うっさいわね、良い!魔法学院は単なる学校じゃないのよ!貴族の由緒ある学校なのよ!そこが無くなったなんて!だったら、トリスティンにも何かあったって事じゃない!きっと、別の場所よ!!」

「そこに居るのは誰だ!?」

 

突然、第三者の声が響き、ルイズはビクッと肩を震わせて声の聞こえた方向に杖を抜き、振り向いた。

 

「ここは、立ち入り禁止エリアだぞ!何をしていた!?」

 

怒鳴りながら、近付いて来る初老の男性だった。

ルイズはその男を見るとホッとしたように胸を撫で下ろした。

男はトリスティン魔法学院を守る衛兵の姿をしていた。

 

「良かったわ。貴方、ここが何処だか解るかしら?」

「はぁ?何を言ってんだ?ここは、トリスティン魔法学院遺跡だろう。頭は大丈夫か、嬢さん?」

「いっ、遺跡って何よ!それに貴族に対して何て口の聞き方を!」

「何だ?本当に頭は大丈夫かよ?まぁ、良い。お前らちょっと、事務所まで来い!」

 

そう言って、衛兵は顔を真っ赤にして憤慨するルイズの手を取ろうした。

そこにサッとドクターが間に入ると懐から、一枚の紙を取り出して衛兵にかざして見せた。

 

「僕らは怪しい者じゃないぞ。こう言う者だ」

「これは!政府の文化財保護局のお方でしたか!」

「そうさ!これで良いだろ?」

「はっ、はい!それはもう!」

 

いきなり、恐縮する衛兵にルイズは不思議そうにドクターに小声で質問する。

 

「ドクター、彼に何を見せたの?」

「これかい?これは、サイキックペーパーって言って僕達に都合の良い身分を相手に見せる身分証さ」

 

衛兵に気付かれない様にウィンクをしてドクターが答えるとルイズは便利なマジックアイテムねと頷く。

 

「ところで私は今日、何の用で?あと、保護局の方が来るとは連絡を受けて無かったのですが?」

「何、実はトリスティン魔法学院史で新たに判ったことがあってね。君に連絡が行って無かったのはこちらのミスだろ」

 

すまないねと衛兵に笑い掛けた。

 

「そうですか、わかりました。では、ごゆっくりと調査をして下さい。私は事務所におりますんで」

「ああ、ちょっと、待ってくれるかな?君は警備員でガイドだろ?」

 

踵を返しかけた衛兵にドクターは声を掛ける。

 

「え?まぁ、そうですが?何か?」

「是非、ここの解説を頼めるかな?ほら、僕の付き添いの娘は僕の仕事に着いてくる様な歴史マニアでね。この遺跡で働く君の解説を聞きたいんじゃないかなって!」

 

ドクターに頼まれて衛兵、改めて警備員兼、ガイドの男は良いですよと快諾するとゴホンと咳払いすると芝居がかった調子で二人の前に立った。

 

「ようこそ、紳士淑女の諸君!我が、歴史あるトリスティン魔法学院へ!我輩は名門の貴族の子弟が集まるこの学園で警備を任されている衛兵である!おや、よく見ると、そちらの新入生の生徒では無いかな?」

 

ドクターは面白そうに聞いているが、ルイズは不機嫌そうに、そんな風に喋る衛兵なんて居ないわよと呟いている。

 

「まずは、この学院の始まりから、汝らに教えて差し上げよう!」

「そんなの知ってるわよ!聞きたいのは何で学院がこんなになっちゃたのかよ!」

 

段々と役にノッて来ていたガイドにルイズはピシャリと言う。

ガイドもちょっとビックリした様子だったが、気を取り直してまた芝居がかった調子で始める。

 

「いやはや、ご貴族様のご機嫌とりは大変だが、ご要望ならば答えるのもまた、衛兵の務め!では、お答えしよう!さる、三百年前に大地は突如としてゆれ動き、学園の建物に相当なダメージを受け申した!」

「フム、地震のせいか、耐震構造なんて無かったから、かなりヤバかっただろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒壊した塔は多く、巻き込まれた生徒達の生存は絶望的だった。

しかし、王宮から駆けつけて来た救援隊は驚くべきものをみたのだ!

確かに学院は崩壊していただが、不思議な事にメイドや衛兵を含め、生徒、教師に誰一人として死者が出ていなかったのだ!

もちろん、負傷した者すら居なかった。

訳が解らず、どうして無事だったのか訪ねるが、全員が同じ様にわからない、気付いた時には皆で外に居て地揺れで倒壊する学院を見詰めて居たと言うのだ!

後にブリミルが奇跡を起こして下さったなど、色々な噂があったが、真相は未だに分かってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程。で?その後、学院はどうなったのよ?」

「学院は首都のトリスタニアに移って、今も由緒ある学院として続いている」

 

場所が移っただけと聞いてルイズはホッと胸を撫で下ろした。

 

「以上ですが、まだ何かありますか?」

「いや、良いよ。ありがとう」

 

ガイドにお礼を言って、ドクターはルイズに向き直る。

 

「よーし!それじゃ、行こうか!」

「今度は何処によ? 」

「トリスタニアにさ!もしかして、せっかく此処まで来たのに未来の世界を見ないで帰るのかい?」

 

ドクターに言われてルイズは最初にターディスに入れられて訳のわからない内に未来に来たというのに、ここが本当に未来の世界なんだと実感して来て、自分の好奇心が強く刺激されていっているのに自覚する。

 

「もちろんよ!エスコートしてくれるかしら、ジェントルマン?」

「では、お手をどうぞ、お嬢様」

 

ニッコリと腕を差し出すドクターにルイズは、この時代に来る前のどうしようもない思いなど忘れて腕を抱く。

そして、二人は意気揚々と『順路』と書かれた標識を見付けて、標識に沿って出口を目指して行く。

 

 

 

 

 

そんな二人を影から見詰める人影には気付くことはなく。



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姉ちゃん達は何処から来たの?

「何、これ!?繋ぎ目の無い道が続いているわ!」

 

ルイズ達は魔法学院遺跡のゲートまで出て来ていた。

そこには地球で言えば、アスファルトで硬められた道路が続いている。

更には、

 

「見て見て!あれ、馬が引いて無いのに馬車が動いてるわ、ドクター!」

「うん?う、うん。そうだね」

 

所謂、自動車だ。

それに未来に来たのだと、実感が湧き、一つ一つに驚き指を指して驚くルイズに対してドクターは訝しげに周囲を観察していた。

 

「可笑しいな?普通、千年たったなら、もっと文明レベルが上の筈なんだが?」

 

そう呟いてドクターはしげしげと自動車を眺める。

地球で言えば、だいたい50年代くらいの技術で、最も良く見たら少し劣るくらいにも見える。

いぶかしむドクターを余所にルイズは珍しげに見渡している。

 

「ルイズ、そんなにキョロキョロしてると、お上りさんみたいだぞ」

 

苦笑しながら、ドクターが言うとルイズは顔を真っ赤に染めて仕方ないじゃないと文句を言う。

 

「まだ、トリスタニアにも行ってないんだぞ」

「そうね!早速、行きましょう!でも、どうやって行くの?馬を借りられそうな場所はないし?」

「そうだね~。あっ、あれってバスかな?」

「こんな大きな物が馬も無しに動くの?」

 

移動手段を探して道路沿いを見ると、大型の二階建バスがちょうど良く停車している。

二人は早速、バスに乗車して一番後ろの席に腰をかける。

そしてバスのドアが閉まり、静かに動き出そうとしたときにルイズの視界にバスに走り寄ってくる小さな人影が入った。

 

「おーい!待ってよ!俺も乗るよ!」

 

小さな人影、どうやら少年は手を振りながら、大声でバスに叫んでいる。

 

「ねぇ!ちょっと、止めて!乗り遅れている人が居るわよ!」

 

気付いたルイズはバスの運転手に伝えると運転手も気付いたようで直ぐに停車してドアを開いた。

そして、バスに乗り遅れそうになっていた少年はするりと乗車して来た。

 

「いやー、ありがとう!お姉ちゃん、お陰で助かったよ!」

 

少年は今しがたまで全力で走って乱れた呼吸を整えながら、ルイズにお礼を言う。

ルイズより、頭一つ分は低い身長にハンティングキャップを被り、膝までの長さのズボンをサスペンダーで吊った、ドクターに言わせればロンドンやパリにいる新聞売りの少年みたいな少年はルイズの隣に座る。

ハンティングキャップから、除く少年の容姿にルイズは可笑しな事に少年と昔、何処かで会ったような気がした。

 

「お姉ちゃん達は何処から来たの?ここら辺の人じゃないでしょ?その格好って古いけど、制服みたいだね。何処かの学生?似合ってるね!」

「えーと、そっ、そうねぇ」

「僕らはとっても、遠い所から来てね!今日は観光だよ!」

「そう、そうなの!」

 

少年は、好奇心旺盛に質問攻めにしてくる。

ルイズはどう言ったもかと、考えているとドクターが助け船を出してくる。

 

「そうなんだ。あっ、そうそう俺はアンソニーって言うんだ!姉ちゃん達は?」

「僕はドクター!」

「私はルイズ・フランソワズ」

「よろしく!ルイズ姉ちゃん、ドクター!」

「ルイズで良いわ」

 

それから、暫く三人は時折、ジョークを交えつつ話に花を咲かした。

 

「アッ、そうそう!ルイズ姉ちゃん達はトリスタニアは初めてなんだろ?良かったら、俺が案内するよ!」

 

アンソニーは元気よく提案すると、ルイズはどうしようかと悩む。

トリスタニアは自分にとっても知らない土地では無いが、流石に千年という時を経てどの様に変化しているのかは想像が付かない。

最終的にドクターの良いんじゃないかなという一言でルイズも同意する事にする。

 

「なら、よろしくね」

「任せてよ!大丈夫、安くしとくよ!」

「ちょっと!お金は取るの?」

「当たり前だろ?こっちだって、生活が掛かってんだから」

 

ルイズは溜息をつくと分かったわよと財布から、金貨を一枚の取るとアンソニーに手渡した。

 

「こりゃ・・・」

「どうしたの?」

「いや、何でも無いよ。毎度!」

 

一瞬、アンソニーは眼を見張ったが何事もなく、ズボンのポケットに押し込んでルイズ達に笑い掛けた。

 

「さぁ、もうすぐ着くよ!」

「えっ、もう!」

 

アンソニーの言葉で窓に視線をやるルイズ。

ドクターもルイズと同じ様に窓を見る振りをしながら、アンソニーを盗み見ると、先程の金貨を取り出して鋭い目付きで観察していた。

 



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骨董品じゃないか

「さぁ、到着だよ!」

 

アンソニーの案内でルイズ一行はバスから外に出る。

そこはトリスタニアの広場で所狭しと行き交う人々と車で溢れていた。

 

「何て、広いの!!」

 

ルイズの時代の感覚では、広場は人も肩をぶつけそうなくらいの間隔しか無い。

 

「ルイズ、そんなにはしゃいでいたら、直ぐに迷子になっちゃうよ」

 

ドクターは笑いながら、お手をどうぞと手を差し出す。

ルイズはドクターの手をエスコートをよろしくと取り、キョロキョロと辺りを見渡している。

 

「ルイズ姉ちゃん、子供みたいだな」

「何かいった?」

「いや、何でも無いよ!ところで何処に行ってみたい?近場なら、彫刻通りって、歴代の彫刻家の作品が置かれている通りがあるし、博物館とかもあるよ」

「良いね!僕は博物館が大好きなんだ!」

 

正に子供の様だと言われるくらいに顔を輝かせるドクター。

 

「私は魔法学院とか観てみたいわ!」

「魔法学院か~。あそこも近いけど、ただの歴史ばかりの詰まらない学院だぜ?」

 

良いのかいと、アンソニーが問い掛けるとルイズは構わないわと強く希望する。

 

「了~解。じゃ、魔法学院に行くか」

 

博物館はその後で良いだろと、ドクターにも確認をとるとドクターもそれで良いよと言った。

行き先が決まった一行はアンソニーの案内の下、幾つもの通りを抜けて行く。

その間にもルイズはあれは何、これは何と目に入る物すべてに質問する。

 

「まったく、ルイズ姉ちゃんはどんな田舎から来たんだよ?」

 

アンソニーは呆れた様に言ってルイズを見る。

 

「うっ、うるさいわね!私の時には無いのが、たくさん有りすぎるのよ!」

「まぁまぁ、ルイズ。それより、アンソニー。魔法学院はまだ着かないのかい?」

「ん?ああ、もう見えてるよ。ほら、あそこ」

 

アンソニーが指を指した方向には、周りの建物よりも大きな洋館風の建物が周囲を鉄柵で囲まれて鎮座していた。

 

「あれがトリスティン科学・魔法学院」

「カガク?」

 

ルイズが思わず、聞き返した時に閉まっていた学院の門が開き、学生と思われる子供達が出て来た。

この時代の制服なのだろうか、一様に校章を刺繍した白いマントを羽織っている。

 

「あっ、科学コースの奴等だ!ルイズ姉ちゃん、その黒のマントを隠して!」

 

アンソニーは慌ててルイズのマントに手を掛けるが、その前には数人の学生がルイズに気が付いてニタニタしながら、近付いて来た。

ルイズがアンソニーにあいつら誰と聞こうとしたが、いつの間にかにアンソニーは居なくなっていた。

 

「おやおや、何だか古臭い匂いがすると思ったら、魔法コースの骨董品じゃないか」

 

いかにも人をバカにしたしゃべり方で話し掛けてきた少年にルイズの顔から、すっと感情が消えていった。

 

「君、よく見たら、美人だね。どうだい?その古臭いマントを脱いで僕らとお茶でもしないかい?」

「結構よ、ミスタ。私、忙しいの。もう、行って貰えないかしら?」

 

取り合わない、取り付かせないと言った風にツンと澄まし仮面で少年に言い放つルイズに一瞬、ポカンとした表情になった。

しかし、直ぐにクスクスと忍び笑いが起こってきた。

 

「何かしら?」

「いや、ごめん、ごめん!ミスタだなんて、死語を初めて聞いたからね。君ってもしかして歴史マニアか何か?よく見れば、その制服もデザインが古いし、昔の貴族の真似かい?」

 

そう少年が言うと周りの学生達は魔法コースには予算が無いから、古いデザインしか無いんだろとヤジを飛ばす。

 

「真似ですって?私はメイジ、本物の貴族よ!文句ある?」

「アハハハハ、本当に何を言ってるんだ?貴族なんて、何百年前の話だよ!」

 

少年の言葉に何ですってと、ルイズは眉を潜める。

 

「歴史マニアのお嬢様は、どうやら近代史に疎いらしいね!良いだろ、僕が教えてやるよ!良いかい。昔、魔法が使えるだけで世界を支配していた貴族は科学が徐々に発展していった事で、その役割が無くなって行ったんだ。そりゃ、昔は万能だったらしいけど、所詮は個人技能でしかない技術なんて、万民が平等で使える科学が発達すればお払い箱だよね。そして、無能になってしまった貴族の社会が崩壊して、貴族制は廃止。今では、科学の片隅で申し訳ない程度に伝統技術として細々、生き長らえているよ」

 

此処までで質問はミスと少年は子供に常識を教える様な態度でルイズに言い放つ。

ルイズは澄ました仮面が外れて、悔しそうな表情になり、今にも懐の杖を抜き放つ様に固く握った。

 

「そこまでだ。諸君!ここで無駄話をする暇なんて無いだろう」

 

そんな、ルイズを見てドクターは学生達に声を掛ける。

 

「あんた、誰だ?」

「僕はこう言う者だ」

「!?」

 

ドクターがサイキックペーパーを見せると学生達は途端に青ざめた様子になった。

 

「僕の目の前で、こんな少女をいじめるとはね」

「いえ、いじめでは無く!ただ、お茶に誘おうと」

「では、誘い方が不味かったな」

「すみません!」

「もう、良い。さぁ、何処となり行くが良い。ただし!明日の朝までに今の反省文を、そうだな百枚に描いて提出するように!」

 

ひゃ、百枚と学生達は慌て出すとドクターはもっと追加されたいかと脅して学生達は逃げる様に走り去って行った。

 

「大丈夫かい?」

 

心配げに声を掛けると、ルイズは顔を上げてドクターを見上げた。

 

「貴族が無くなったなんて!それじゃ、王族とかはどうなったの!?」

「ルイズ、落ち着いて」

「王族は無くなってないよ」

 

いつの間にかに姿を消していた、アンソニーが声を掛けて来た。

 

「着いてきて、落ち着ける所で話そう」

 

そう言って歩き出すアンソニーにルイズ達は着いて行った。

 



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あんたら何者だよ?

「王族は、今もこのトリスティンに居るよ」

 

三人は、路地裏のこじんまりとしたカフェに居る。

その中でアンソニーは向き合ったルイズ達に話をしている。

 

「良かったわ!でも、何故なの?貴族が無くなったのに?」

 

ルイズはホッとして疑問を投げ付ける。

アンソニーは、何でって困惑してルイズを見る。

 

「ルイズ姉ちゃん、本当に何処に居たんだよ?貴族制が無くなるときに貴族達、とくに大貴族って言われるヴァリエール家が王家の存続を条件に政府と交渉したんだ」

「えっ、ヴァリエール家が!?」

「結果、何の政治権限も与えられず、王家は君臨しせども統治せずって訳さ」

 

アンソニーは、そんなのどの歴史の本にも載ってるよと呆れ顔でルイズを見る。

 

「それで家は、ヴァリエール家はどうなったのよ?」

「暫く、政府と元貴族達の交渉のパイプ役をしていたけど、ある日、突然、消えたんだ」

「消えた!?」

「そう、まるで霧の様にね」

 

ヴァリエールだけじゃない、グラモンとか元貴族の有力者も消えたんだと語られるが、ルイズは衝撃のあまり耳に入って無かった。

 

「ふーん。突然ねぇ、原因は解ってるのかい?」

「諸説あるけど、暗殺が有力かな」

「君は納得してないんだろ?」

 

アンソニーが何をと言いかけて突然、ドクターは大袈裟な動作で立ち上がった。

 

「少なくとも、僕は納得出来ない!大貴族って事は、そんじょそこらの貴族よりも魔法の力が強かったんだろ?ルイズ、君にはわかるだろ?君の家はたかが数百年で暗殺程度でどうにかなる家なのかい?」

「冗談じゃないわよ!家の一族は家族は勿論、使用人も熟練の兵よ!数百年でも、数千年でも家を滅ぼすなら、三個師団とかじゃないと無理よ!納得いかないわ!」

 

ドクターに言われてルイズも勢い良く立ち上がる。

アンソニーは、そんな二人に着いて行けずに呆然と見ている。

 

「その意気だ、ヴァリエール!あと、まだ僕が納得出来ない事がある!それは千年経ってもまだ、月にすら行ってないんて、納得出来ない!魔法が衰退してる?不自然だ!時が経つに連れて、魔法は洗練されて、科学と結びつき、もしかしたら、地球よりも速い進歩で銀河を渡る事が出来た筈だ!納得出来ない!君もそうだろ?」

「え?うっ、うん。いや、待ってよ!いったい、何を言ってるんだ?それに俺が何を納得していないんて言うんだ?」

「この世界にさ!」

 

ドクターの気迫に、押されて黙るアンソニーに更にドクターは言葉を放つ。

 

「少なくとも、君がこの世界に疑問を持つ切っ掛けが合った筈だ。それで君は調査してたんだろう?」

 

調査とドクターが言った瞬間、アンソニーの目が鋭くなった。

 

「ドクター、何のこと?」

「惚けても無駄だ。さあ、君は何処まで知ってるんだ?」

 

次の瞬間、アンソニーは机の下から杖を出して二人に突き付けた。

 

「アンソニー、貴方は何してるの!?」

「動かないで、ルイズ姉ちゃん」

 

先程まで元気よく明るい雰囲気だったアンソニーは、一気に冷たく、鋭い雰囲気になった。

余りの変わりようにルイズは呆気にとられるが、自分の杖を抜こうとした。

 

「ルイズ、駄目だ。回りを見てごらん」

 

ドクターに言われて周囲を見渡すといつの間にかにアンソニーと同じくらいの杖を持った少年達に囲まれていた。

仕方なく、ルイズは杖を机に置いた。

 

「ドクター、あんたも何かあるんだろ?」

「これの事かな?」

 

そう言って、ソニック・ドライバーを同じく机に置く。

そして、大人しく二人が席に座るのを確認すると置かれた杖とドライバーを見てアンソニーは自分の杖を下に下ろした。

 

「国宝級な古い杖と明らかに、オーバーテクノロジーじみた杖。学院遺跡で突然、現れた青いbox。本物なら、数十億する古金貨。本当に何者なんだ?」

「やっぱり、ターディスの近くに居たのは君か!」

「答えろ、あんたらは何者だよ?」

「僕らかい?僕らはタイムトラベラーさ!」

「冗談は嫌いだ」

「本当よ、私はルイズ・フランソワズ・ド・ヴァリエール。千年前のヴァリエール家三女」

 

真っ直ぐな眼でアンソニーを見詰める。

 

「アンソニー、君らが何者かで、何を目的にしているのかは知らない。けど、これだけは言える。僕らを信頼しないと事態は好転しないぞ」

 

ドクターの説得に何かを考える様に眼を瞑り、おもむろに左手を上げて手を振ると周囲の少年達は戸惑いの表情を浮かべた。

アンソニーは良いいからと、少し強目に言うと渋々と杖を下ろしてカフェから出ていった。

残るのは三人だけになった。

 

「信じてくれて、ありがとう!」

 

ドクターが笑顔で言う。

 

「別に全部、信じた訳じゃない。・・・あと、悪かったよ、杖を向けて」

 

ばつが悪そうに、そう言うと結局、何者だよとまた、聞き返す。

 

「何よ!さっきから、言ってるじゃない!」

「まあまあ、ルイズ。それで質問があるけど、君たちは皆、メイジみたいだけど、君らは革命家とかかな?」

「革命家?違うさ、俺達はレジスタンスさ」

「レジスタンス?」

「ああ、そうだ。俺達は戦ってるんだ」

 

ドクターが誰とと問い掛けると、アンソニーは絶対に笑うなよと念を押して小声で何かを言った。

 

「ん?何て?」

「だから・・・と」

「だから、何よ!」

「ああ、もう!だから、

 

 

 

 

 

宇宙人の侵略者とだよ!!」



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・・・貴族みたい

「・・・プッ、本気で言ってるの?」

 

アンソニーが告げた一言に思わず、吹き出してルイズは冗談でしょと言うと、アンソニーは不機嫌そうに腕を組んでルイズを睨み付ける。

 

「だから、笑うなって言っただろう!」

「ハイハイ、悪かったわよ。でも、もっとマシな設定が合ったでしょう。ねぇ、ドクター?」

 

子供の遊びだろうと思い、ルイズは軽く受け流してドクターに顔を向けると、ドクターは深刻そうな表情でアンソニーを見ていた。

 

「ドクター?」

「・・・もし、そうならとんでもない条約違反だ!」

「「条約?」」

 

訳が分からずにルイズとアンソニーはドクターを見ると、ドクターは独り言の様に話し出す。

 

「シャドウ条約で、この惑星はレベル5相当の保護惑星に指定されている筈だ!それを侵略するなんて、なんてバカな真似をするんだ!」

 

憤慨するドクターに二人はいったいどうしたのか、訳が分からずにただ、呆然と見ている事しか出来ない。

 

「アンソニー、敵が侵略を始めたのはいつか特定出来ているのかい?」

「えっ?」

 

いきなり、ドクターに質問されて慌てる。

 

「えっと、三百年前のトリスティン魔法学院の消滅事件だと思うけど」

「何故だい?」

「トリスティン魔法学院が、いや古文書によると、あの時代の魔法学校がその年に次々と謎の消滅や廃校に追いやられて行っていったんだ。魔法衰退の切っ掛けで、その変わりに科学の発展が始まったんだ」

「成る程、君はそこがターニングポイントだと思い、学院遺跡を調査していたのか」

「そうだけど、収穫はゼロだったよ。まぁ、収穫の変わりにドクターやルイズ姉ちゃんが突然、現れたのはビックリしたけどね」

「ちょっ、ちょっと、ドクター!この子の話を信じてるの?」

 

ルイズがそう言うとドクターは勿論だと頷いた。

 

「良いかい、ルイズ。文明は確かに緩やかに発達するモノだが、ハルゲニアの発達速度は遅すぎる。明らかに何か、何者かが故意にある水準までの発達をさせたら、文明のレベルを停滞させている」

 

そうドクターは断言する。

 

「でも、目的が侵略なら何故、侵略者の姿が無いの?街中を堂々と歩いていても可笑しくはないわ!」

「そこさ、解らないのは!シャドウ条約違反を隠す為にゆっくり侵略する場合でも、こんな手間が掛かるマネをする意味が解らない!目的は、そもそも惑星の支配なのか?」

「目的は解ってる僕ら、メイジさ」

 

アンソニーは唐突にドクター達に告げると、どう言う事だと首を傾げる二人に懐から、やけに古い紙を取り出して見せた。

 

「これは俺の家に伝わる手紙だ。ここには正体は解らないけど、ハルゲニアに来た敵の目的が何なのか突き止めた貴族が王家に知らせようとした内容が書かれていた」

 

俺はこの手紙で、宇宙人の事を知ってレジスタンスを作ったんだとアンソニーは言うとドクターに手渡した。

ドクターは、その手紙を開いて一読すると更に険しい表情になった。

 

「ドクター、何が書いているの?」

「ルイズ、君も読んでごらん」

 

ドクターに手紙を手渡されて、ルイズも手紙に眼を落とす。

手紙は所々で読み取れない場所があるが、書き手の品格を現す様に流暢な文字でしたたまれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この手紙が**へと届いているならば、私の計画が失敗し、この世から消されてしまったという事でしょう。ご存知の通り、私には新政府や貴族らに多くの敵が居ります。しかし、私を消したのはそれらの者共では無いでしょう。勿論、エルフや亜人の者共でも無いでしょう。奴等は、このハルゲニア世界の外から来た存在、******************です。何故、私が奴等の存在を気付いたのか、それは新政府側に潜入させていた間者が、その命をかけて私に知らせたからです。その後、私は死に物狂いで情報を集めました。そして、断片的な情報を推察するにトリスティン魔法学院の謎の崩壊は奴等の計画の始まりだったと思われます。また、これから行われるすべの事柄は奴等の目的達成の計画の一部だと思われます。そして、奴等の目的とは我らメイジの*****です。

私が敗れもはや、この状況を覆す事は出来ないでしょう。どうか***、奴等に抵抗はしない様にして下さい。そうすれば奴等は我々の数を管理しつつ、殲滅はしないでしょう。

最後に、この事を子孫らに語り継がせて奴等から解放される機会をお待ち下さい。

トリスティンにハルゲニアにブリミルの御加護があらんことを祈っております。

ヴァリエール公爵より』

 

 

 

手紙を読み終えたルイズは何かを耐えるように眼を瞑り、小さく聖句を唱えた。

 

「ルイズ姉ちゃん、大丈夫か?」

 

アンソニーが心配げに声を掛けると、ルイズは問題ないわと答えた。

 

「私の子孫は貴族の義務を全うしたの、私は彼らを誇りに思うわ。それに、子孫を消されたままなんて出来ないわ。ねぇ、ドクター?」

「その通りだ。これは間違った歴史さ。歴史が間違っていたなら、どうする?」

「正すわ」

 

力強い声でドクターに答えるルイズには先程までの田舎者丸出しの御上りと言った雰囲気は消えていた。

 

「・・・貴族みたい」

 

アンソニーは思わず、思った事を呟いた。

 

「私は本物の貴族よ。アンソニー、貴方もね。だから、貴方も一緒に来なさい。 私達と歴史を正すのよ!」

「正すって、どうやって?」

「それは」

「ボス!!」

 

ルイズが答えようとした瞬間、カフェの入口からアンソニーの手下が飛び込んで来た。

 

「ボス、奴らが来た!早く、逃げて!!うわっ!」

 

必死に扉を押さえようとしていた手下の子供が押し出された様に吹き飛び、変わりに全身を黒いスーツで覆った男が入って来た。

 

「何よ、こいつら!?」

「アイツらは敵だ!」

 

ルイズの言葉にアンソニーは憎々しげに侵入者を睨んで答えた。

 

 



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奴等の目的は

「ここは、包囲している。抵抗は無駄だ。全員、杖を捨てろ」

 

突入して来た黒服が抑揚の無い声でドクター達に警告する。

恐らく、包囲されているのは事実なのだろう。

外で待機させていた仲間達には、いざとなったら派手な魔法で敵の撹乱と自分に襲撃を報せる手筈になっていた筈だった。

 

(それが、何の抵抗も出来ずにあっさりとこいつが侵入出来るって事は)

 

明らかに今まで相手にしてきた黒服達とは違う。

隠密に敵を掃討出来るだけのスキルを持ったプロ。

反射的に構えた杖をアンソニーはどうするか迷った。

 

(くそ!ここまでか)

「抵抗は無意味だ。大人しく杖を」

「断るわ」

 

黒服の言葉を遮り、ルイズがそう言い放つ。

 

「私が杖を捨てるのは、最期の時だけよ。あんたみたいな奴の命令で捨てる訳無いじゃない。逆にあんたに命令するわ。消えなさい。私達の邪魔をしないでちょうだい」

 

驚く程に明瞭でハッキリと拒絶の意思と命令を口にするルイズにアンソニーは状況が解ってるのかと横目でルイズを確認する。

杖を真っ直ぐ伸ばし、鋭く相手を見据える様はまるで現在の不利な状況を全く感じさせない。

 

「よくぞ、言ったぞ!流石、貴族の女の子だ!」

 

後ろのドクターが、やけに楽しそうに言うとテーブルの上を通り、ヒラリと黒服の男の前に出て来た。

 

「抵抗は無意味だ。諦めろ」

「諦めろだって?残念だが、僕の辞書に諦めるってのは載ってないんだ」

「抵抗するなら、排除する」

「やってみな」

 

そう言った直後、男の手がドクターの首に伸びる。

見るからに細身の男の首を簡単に折ることが出来そうな手が迫る。

しかし、ドクターが素早くソニック・ドライバーを取り出して男の眉間に押し当てると、男の手は首を掴む前にピタリと止まってしまった。

 

「ドクター?」

「殺したの?」

 

ルイズとアンソニーの二人は突然、止まった男に驚いてドクターに質問した。

 

「まさか!ソニック・ドライバーに生物をどうこうする力は無いよ」

「じゃ、何で動かなくなったの?」

「ああ、それはね。こいつが生物じゃないからだよ」

 

ドクターは言いながら、男の頭を掴むと思いっきり引っ張った。

 

「「!?」」

 

男の首から上の皮膚が剥げて剥き出しになり、金属の骨組みや小さな歯車の塊が露になった。

二人は絶句して男の頭部を見詰める事しか出来なかった。

 

「これって、ゴーレムなの?」

「ルイズ姉ちゃん。ゴーレムなんて、もう廃れた技術だよ。これはロボットだよ!」

「いや、こいつはある意味ではゴーレムみたいな物だ」

 

停止させた男にソニック・ドライバーを当てながら、分析していたドクターは難しい顔で二人に説明をし出す。

 

「ルイズ。君達、メイジは魔法を使う際にどんな力を使っている?」

「どんなって、そりゃ精神力に決まってるわ」

「そう、その通り!そして、こいつはどうやら、その精神力を動力に動いていたみたいなんだ」

「やっぱり、ゴーレムじゃない!でも、何でドクターはこの男がゴーレムだと解ったのよ?」

「ん?ああ、この男がカフェに入って来た時に床の軋む音がしてね。見た目のわりにかなり重そうなのと、声の中にノイズが聞こえたからね」

 

そう説明して、更にドクターは黒服を調べていく。

アンソニーはノイズ何て聞こえなかったと言ったが、ドクターは僕の種族は耳が良いんだよと事投げに説明する。

そして、男の胸の中心にソニック・ドライバーを当てて分析結果を確認した時に僅かに眼を見開いた。

 

「アンソニー。最近のメイジって数はどうなっているか解るかい?」

「えっ?あ~確か統計ではここ二、三年はメイジの数が少なくなっているって、新聞とかで読んだ気がするよ。あと、原因不明の失踪とかも最近は多いから」

「そうか」

 

ルイズとアンソニーの答えを聞いてドクターは怒りを静める様に息を深く吐き出す。

 

「アンソニー。手紙には侵略者の目的はメイジと書いていたね」

「目的は俺ら自身じゃなくて、精神力!・・・いや、でも、何でだよ?ずっと思ってたんだけど、奴等の目的がメイジの精神力だったら、とっくの昔にメイジは全滅してる筈だ」

 

アンソニーの疑問にドクターは今度こそ怒りを抑えきらずに声を荒げる。

 

「当然さ!こいつらの目的はただメイジの精神力を捕るだけじゃないんだ!こいつらは、安定したエネルギー確保の為にメイジの数をコントロールしているんだ!」

「・・・メイジの数をコントロール?」

「そうさ、アンソニー。君は二、三年はメイジが減少気味だと言ったね。でも、その前は?多かった時期があるんじゃないかい?」

「たっ、確かに一時期、メイジの人口が多くなった世代があるよ。・・・俺の世代だ」

 

ドクターの質問に顔を青ざめさせてアンソニーは質問の答えを口にする。

 

「奴等はメイジファームを作り上げる事が目的なんだ!言わば、今の時期は出荷時期ってところなんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫しの沈黙、二人は何を言えば良いか解らなかった。

 

「うっ・・・ボス?」

 

しかし突然、聞こえて来た声にアンソニーはハッとして自分達に知らせに来た少年に駆け寄った。

 

「エル、大丈夫か!?」

「イテテ、大丈夫ですよ。ちょっと、頭を打っただけです!」

「ちょっと、見せてよ。う~ん、うん。大丈夫だ。血は出てないし、軽い脳震盪だ。心配ない」

「ボス!俺の事より、どうすれば良いんだ!外は黒服連中に囲まれて仲間も・・・くそ!」

 

エルと呼ばれた少年は悔しそうに床を殴る。

アンソニーも悔しそうに歯を食い縛る。

 

「皆、大丈夫だ!僕に考えがある!」

 

そんな二人の肩にドクターは手を置いた。



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反撃開始だ!

カフェの外では、数人の黒服が待機していた。

 

「うっ、くそ!離せよ!」

 

そして、その側には一人の黒服の監視の下にアンソニーの部下の少年達が一纏めにされてロープで拘束されていた。

 

「突入させたDからのリンクが切れた」

「想定外の状況」

「再度、突入させるか?」

「暫し待て」

 

黒服達はお互いにボソボソと話し合っている。

 

「最後に確認された映像を確認する。全員、リンクせよ」

「ターゲット確認」

「アンノウンが二名」

「女性トリスティン人、未成体、1。男性、成体、種族不明」

 

およそ、人同士の会話には聞こえない会話を聴きつつ、捕らえれた少年達は黒服達の動向を警戒していた。

 

「なぁ、アイツら本当に人間かな?」

「何、言ってんだ?アイツら亜人に見えるのか?」

「ボスは無事かな?」

「無事だと、信じるしかねぇだろ。・・・よし、もうすぐ切れるぞ」

「抵抗は許可していない」

「!」

 

捕らえれたている中で袖にペーパーナイフを隠し、ロープの切断を試みていた少年の首を監視の黒服が掴み上げてた。

 

「抵抗するならば、排除する」

「ぐぅ!あ、ああぁ」

 

黒服は容赦無く、片手で少年の身体を吊して首を絞めていく。

 

「離せ!」

「止めろ‼」

「もう、抵抗はしないよ!頼む!」

 

口々に仲間の助命をするが、黒服は一瞥もくれずに更に力を加える。

少年の顔が赤から、青に変わっていく。

 

「C、排除の用なし。目的は達成した」

 

もう駄目だと思ったとき、カフェから先に侵入した黒服が一人の男を引きずりながら、姿を現した。

少年の首を絞めていた黒服は、その姿を認めると手を離す。

少年は受け身も取れずに地面に転がるとゲホッ、ゲホッと咳を繰り返して新鮮な空気を肺に入れる。

 

「状況の説明を」

「建物内に侵入後、魔法での奇襲に遭遇。一時的にフリーズした」

「不可解。アンチマジックシールドがあるのに魔法が効くわけが無い。説明を求む」

「口では説明しずらい。説明する為にリンクの再接続を要請する」

「暫し待て、その前にその男は?」

「建物内のターゲットの近くに居た。詳細は不明」

「データには無い。種族だ」

「種族について特定している。ただ、口では説明しずらい。説明するには再度、リンクへの再接続を要請する」

 

それから二、三言、説明を求めるが全て説明しずらいと返された事でリーダー格の黒服は漸く、再接続を許可した。

 

「リンクの再接続を確認」

「フリーズの説明と、その男の種族を説明せよ」

「男は、タイムロード。名ばドクター、私は彼に停止させられた」

「?」

「そして、彼は私を再起動させてくれました」

「全員、リンクを切断しろ!」

 

何かに気付いた様にリーダー格が叫ぶ。

そして、黒服に捕らえられていた男、ドクターが伏せていたパッと顔を上げる。

その顔は悪戯が成功した子供の様に笑っている。

 

「残念、もう遅い!さぁ、おねんねの時間だ!」

 

ドクターはソニック・ドライバーを取り出して自分を捕らえられている黒服に向けて起動する。

すると、周囲の黒服達が途端に震え出して次々と地面に倒れ出した。

 

「良し、これでOKだ!三人とも、出て来て良いぞ!」

 

黒服全員が倒れたのを確認するとドクターはカフェに声を掛けた。

直ぐにカフェから、ルイズらが出てくると周囲の状況を見て眼を見張った。

 

「何したの?」

「何って、説明したろ?まずは彼のプログラムを書き換えて僕達の味方にして、ああ、君は良くやってくれたよ」

「恐縮です」

「そして、簡単なコンピューターウィルスを作って彼の中に入れて他の黒服がリンクした瞬間に拡散させただけさ」

「説明を聞いても意味、解んないわ」

 

ぼやくルイズにドクターは伝染病みたいな物さと笑い掛けて、仲間の救出をしているアンソニーとエルの方に歩いて行った。

 

「さあ皆、怪我はないかい?」

「ドクター!」

「早速で悪いんだけど、行動だ!まずはエル、君は仲間達と一緒に街中のレジスタンスに警告をしに行くんだ。奴等は本気で君らを潰しに行くとね」

「わっ、わかった!」

「ルイズ、アンソニーは僕と一緒にターディスへ行って、元凶を潰しに行く」

 

矢継ぎ早に指示を出してドクターは足早に歩き出した。

二人もその後を追っていく。

しかし、何を思ったのかドクターは立ち止まる。

ルイズ達は危うくぶつかりそうになった。

 

「もう、いきなり止まらないでよ!」

「ごめん、ごめん。Dだったかな?まぁ、この際、そんな味気ない名前は変えよう!そうだなぁ~、ドクトル!うん、君の名前はそれに決まり!ドクトルも僕達に付いて来るんだ!」

 

いかにも適当に付けた名前にD改めて、ドクトルは了解しましたと頷き、ドクター達の後に続く。

 

「さあて、反撃開始だ!行くぞ、ジェロニモー!」



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改めて自己紹介を

かなり、時間が掛かってしまいました!


「現在ノ、状況ヲ報告セヨ」

 

センサーとモニターの光だけが闇を照らす部屋に数人の人影が世話しなく動き回っていた。

動く毎にガシャン、ガシャンと音を立てる中で、その内の一人、指揮官の様な物言いで周囲の人影に指示を出す。

 

「状況、『惑星ハルゲニア』ニオケル人口ノ2%ノ『メイジ』ノ、捕獲ヲ達成」

「改造ノ状況ハ?」

「改造ノ成功率、0.1%」

「成功率ノ状況ハ芳シク無イ。0.1%ナド、何ノ戦力ニハナラナイ」

「シカシ、改造ニ成功シタ『メイジ』ハ我々ノ予測ヨリ遥カニ優秀。纏マッタ数ヲ揃エル為、長期的ナ『プラン』ヲ提案スル」

 

指揮官は、その報告に一瞬、考える様に間を置くとプランを説明せよと命令を下す。

 

「『メイジ』ノ数ハ少ナイ。従来ノ様ニ、一気ニ全テヲ『アップロード』スル場合、必要数ノ半分以下ノ数シカ『アップロード』デキナイ。ヨッテ、『メイジ』ノ人口ヲ管理シテ数ヲ定期的ニ増ヤシテ『アップロード』スル事ヲ提案スル」

「提案ヲ許可スル」

 

まるで初めから、そのプランを考えていたと言う様に指揮官は間を置く事なく即断する。

 

「例エ時間ガ掛カロウトモ、奴トノ戦争ノ為ニ何トシテモ『プラン』ヲ成功サセヨ」

 

指揮官が、そう言うと窓から太陽の明かりが部屋中に入って来た。

全身を覆う鉄の身体。

慈悲や優しさと言った感情など無い様な眼。

彼らを知る者がこの場に居たら、震えながら彼らの名前を言う事だろう。

彼らは

 

『サイバーマン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、正確にはその数百年後、ドクター達はターディスに戻って来ていた。

 

 

「・・・広い。何で?外は小さいのに!?」

 

 

初めてターディスに入ったアンソニーは異常さに眼を白黒させながら、出たり入ったりを繰り返している。

 

「科学でも魔法でも、こんなのあり得ない!空間を圧縮するなんて!」

「フフン!凄いでしょう!」

 

自分の事の様に自慢気に鼻を鳴らすルイズに何時もは憎まれ口を叩くアンソニーは何も言わずにただ素直に頷く。

 

「二人とも、何してるんだ?早く入りなよ。ハルゲニアを解放しに行くぞ!」

「そうね、ドクター!取り敢えず、私の子孫が手紙を王家に書いた時代に行くの?」

「いや、ヴァリエール公爵が手紙を書いていた時代に行っても侵略者の占領は殆ど終わっていた筈だ。行っても侵略者をどうにか出来る可能性は低い」

「じゃ、何処の時代に行くのよ?」

「そりゃ、一つしかない!奴らが、この惑星に来た直後さ!」

 

ターディスを操作しつつ、華麗にターンを決めて言い切るドクターにルイズは訳が分からないと言った様に見詰める。

 

「ドクター、何言ってるのよ!ハルゲニアに来た直後なんて一番、敵の戦力が多い時じゃないの!」

「・・・いや、ルイズ姉ちゃん。悪く無いかも、来た直後なら敵は油断してる筈だし、もしかしたら、その時代に来ていたのが斥候部隊だったなら、そいつらを叩けば侵略は頓挫する筈だよ!」

 

ルイズは難色を示すが、アンソニーはドクターの考えに賛同する。

しかし直ぐに、でもと言葉を続ける。

 

「奴らが、いつの時代にハルゲニアに来た何て分からないよ」

「ノープログレム!その為のドクトルさ!ドクトルの頭の中には色々な情報が詰まってるんだ!勿論、ドクトルの制作者がいつ来たのかもね!」

「お言葉ですが、ドクター。私はドクターに頭をいじられて以来。リンクが切られて情報にロックが掛かっています」

 

ターディスの角で静かに佇んでいたドクトルは自分の名前を出された事に反応してドクターに自分の状態を報告する。

しかし、ドクターは気にした風もなくドクトルにソニックドライバーを向けて起動させる。

 

「心配ないさ!リンクはともかく、情報のロックくらい僕とドライバーに掛かれば意味無い」

「ロック解除を確認。先見隊の到着日時の情報を開示可能」

「よーし、これで良い!それじゃ、敵の司令官の土真ん前に行こう!」

「ちょっと!いくらなんでも、いきなり司令官の所に行くの!?」

「そうだよ!司令官なら、精鋭の護衛部隊が周りを囲ってる筈だよ!奇襲するなら、もっと戦力を揃えないと!」

「何言ってるんだ?僕らは戦いに行く訳じゃない」

「「はぁ!?」」

 

 

いよいよ、ドクターが何言ってるのか分からずにルイズとアンソニーは頭を抱える。

 

「当然さ!ドクトルを観てみろ!こんなのを造り出せる知的生命体なんだ。知性があるなら、解り合える!外交交渉できっと両者の落とし所が見つかる筈だ」

「無理よ、外交交渉何て!」

「何故だい?」

「えっ?そりゃ、そんな事したこないし、それに!国処か星の代表って事でしょ!そんな権限無いわよ!」

「誰にも初めてはあるものさ!それに千年前の公爵令嬢と千年後の女王陛下なんだから、権限なんて問題無いだろ?」

「そりゃ、私はヴァリエール公爵家の三女だけど・・・えっ?今、何て言ったの?」

 

ドクターの発言に眼を点にするルイズにアンソニーは帽子を深く被り直す。

唐突にドクターは手を伸ばしてアンソニーの帽子をパッと取り上げる。

途端に帽子で隠していた髪が拡がる。

肩口で切り揃えられた綺麗な髪に今まで誰かの小さい頃に似てるなと思っていたルイズは大きく眼を開いた。

彼、いや、彼女はあまりにもルイズの知っている御方に瓜二つだったのだ。

 

「・・・何で、解ったの?」

「これさ」

 

アンソニーの問いにドクターは二人に見える様に手を差し出す。

ドクターの手には一枚のコインが置かれていた。

ルイズの居る時代のコインではない。

未来のコイン。

コインの表には一人の女性の横顔が彫られている。

 

「改めて自己紹介を僕はドクター。アンソニーいや、アンリエッタ10世【テン】陛下」



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番外編 ドクターフー

使い魔の召喚の儀式。

 

それはメイジとして、文字通り一生のパートナーを呼び出す神聖な儀式であり、ここトリステイン魔法学院では生徒の進級に関わる大事な行事である。

 

皆、どんな使い魔が表れるのか、期待と不安を抱えて杖を振るわれていた。

 

 

 

「やったぞ!成功した!これから、よろしく」

 

 

 

また一人の生徒が無事に使い魔と契約をする姿に近くで指導しながら、見守っていた教師のコルベールは微笑んでいた。

 

たしか、今の生徒で大半の召喚の儀式が終わった事になる。

 

実は今年の召喚の儀式では、ある一人の生徒を除いてそこまでは心配には思っていなかった。

 

ある意味では今からが本番だぞと、コルベールは気を入れ直して最後の一人の名を呼ぶ。

 

 

 

「では、最後にミス・ヴァリエール」

 

 

 

コルベールに名を呼ばれた生徒が前に出て来た。

 

ピンク色の綺麗な髪を長く伸ばし、気が強そうな中にも幼さを残した美少女と言っても差し支えない容姿をした少女だ。

 

今は極度に緊張しているのか若干、表情が固く、手に持った杖をギュッと握り締めていた。

 

 

 

「さぁ、緊張せずに呪文を唱えなさい。大丈夫、君なら絶対に成功する。落ち着いて」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズは震える脚を抑えながら、コルベールの前に立っていた。

 

緊張しなくても良いという言葉に裏返りそうになりがら、一言返事を返すのがやっとの状態。

 

それでも、今日の為に一月以上もの準備を重ねて来た事を思い返して真っ直ぐに顔を上げてまだ、見ぬ使い魔へと視線をやった。

 

 

 

(絶対、絶対に成功してやるんだから!私はゼロじゃない!お願い、必ず私の前に来て!私の使い魔!)

 

 

 

息を一度、大きく吸い込み、ルイズは何度も練習した言葉を紡ぎ出した。

 

 

 

「この世界いえ、この宇宙の何処かにいる、叡知溢れ、勇敢で、気高き、私の使い魔よ!私は心の底から、求めるわ!我が導きの下、私の前に姿を表しなさい!」

 

 

 

勢い良く、紡がれる言葉に周りで様子を見ていた生徒達は召喚したばかりの使い魔を撫でながら、クスクスと笑いを漏らす。

 

 

 

ー何、あの呪文?

 

ーゼロのくせして威勢は良いよな

 

ーどうせ、失敗するわ

 

 

 

悪意ある言葉がルイズの胸に突き刺さる。

 

萎えそうになる気持ちを何とか保ち、精神をひたすら一つの事に集中させる。

 

そして、杖を思いっきり放り下ろした。

 

ドンッ!

 

腹に響く爆発音と共に土煙が周囲に舞い上がった。

 

 

 

(そんな!お願い、成功していて!)

 

 

 

多大な精神力を使い、その場に膝をついたルイズは自身の起こした土煙の中を一心に見詰めた。

 

すると、土煙の中に何とも奇妙な物が佇んでいるのが見えた。

 

 

 

(え?あれは、何?)

 

 

 

それは、小屋と言うには余りにも小さい青い箱の様な物だった。

 

不意にガチャッと箱の扉が開き、中から一人の上等な服を身に纏った目付きの鋭い白髪の老人が姿を表した。

老人はゆっくりと周囲を見渡すと真っ直ぐ、ルイズに視線を合わせる。

 

「君かね、私を呼んだのは?」

「えっ、何?」

 

ルイズは老人が呟いた言葉が聞き取れずに聞き返す。

 

「私の言葉が解らなかったのかね?何て事だ!言葉が解らないとは!」

「はぁ!?なっ、何言ってんのよ!?」

「ほら!まただ!ターディスの自動翻訳でも翻訳出来ないのか?それとも・・・そうか!君の頭の中身はプディングか!」

 

いきなりの発言にルイズはポカンと何も言葉が出て来なかったが、老人の発言の意味を遅れながらも理解していくと徐々に血が頭に登って行くのを感じた。

 

「だっ、誰の頭が、プッ、プディングですって!」

「君だ。他に誰が居るのかね?」

 

とくに悪びれもせずに言う老人にルイズは思わず、手に持った杖に力が入る。

 

「ふっ、ふざけないでよ!私が呼んだのは使い魔よ!あっ、あんたみたいな、おじいさんなんかじゃないわ!」

「ああ、やっと私の質問に答えてくれたか。使い魔か、フム。ならば、問題ないな。良いだろう!よろしく、プディングのお嬢さん」

 

そう言って、老人は手を出すがルイズは更に怒りがこみ上げて来て、老人を睨み付ける。

 

「よろしく、じゃないわよ!あんたが使い魔なんてごめんよ!だっ、だいたい!わっ、私、プディングじゃないわ!私はね、ルイズ=フランソワ「長い、ルイズで良いな?」」

 

名乗りの途中で遮られてしまった。

 

「長い名前は嫌いでは無いんだがね。これから、使い魔と主人となるんだ。フランクにいこう」

「キィー!!何なのよ!あんた!」

 

あまりの事にルイズはそう言うと、老人は懐から黒いサングラスを取り出して顔に掛けて、ニヤリと笑う。

 

「私かね?私はドクターだ」

 

ドクターの答えにルイズはさらに怒鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクター、何よ!?

 




気づけば、かなり時間が経ってしまいました。まだ構想は煮詰まっていないのですが、今回番外編として召喚されたのが、12代目ドクターだったらを書いてみました。


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