外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 (カロライナ)
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Episode0-1 『探索者』+3

2017年05月02日(火) 17:37【作成】




名前:熊野(くまの) クリスティーナ(女) 22歳

職業:ディレッタント 出身:日露

STR10   DEX15   INT13

CON13   APP17   POW14

SIZ10   SAN79   EDU16

アイデア65  幸運70   知識80

HP12    MP14    DBなし

 

職業技能

写真術  =70

図書館  =60

信用   =70

説得   =70

運転   =50(+1【幕間成長】)

芸術(花火)=80(+5【幕間成長】)

ショットガン  =75

 

興味技能

目星  =70

聞き耳 =60

応急手当=50(+25【幕間成長】)

 

・持ち物

デジタルカメラ、日露辞典、ZIPPOライター、バックパック、ダクトテープ

財布、携帯、衣服靴、電子タバコ、ロケット花火簡易発射台

12ゲージショットガン(2連)、ショットシェル*24

花火セット(海外産:ロケット花火*20、爆竹*10、連発花火*3、噴射花火*2)

 

・設定

 たった1人の友人である不知火 響に会うために日本へと来航。

 実際はロシアの実家であると室内に軟禁状態にされてしまう為、逃げ出して来た模様。

 幼初期はソ連、小学期は日本、中学期はロシア、高校は日本と2ヶ国間を往復していた

 『ぬいぬい[不知火 響]』と出会ったのは高校のときである。

 大学にも現在進行形で通学しており、普段は制服姿が基本。大学名は『滝ノ宮(たきのみや)大和(やまと)学園(がくえん)』紫芋色のブレザーを着用している。

 

 十五胎(15つ子)の長女。あと同い年の妹が14人存在する。

 そして父ローチェフ=熊野=ティーナが頭を抱えさせる元凶の1人。

 おしとやかな外見をしているが、見かけによらずお転婆な様子が見られ、将来はマフィアの妻よりも、自分自身でファミリーを仕切っていきたいと考えている。

 ロシアでは反LGBT法があるため、百合+麻薬ルートを調べに日本へ来ていることもあり普通の百合希望派。

 迷わず神話生物が関係するような薬物など平気で飲み込むような行動を取ることもある。

 

 ロジーナとは小学期からの古い仲であり、もっとも信頼を置いている人物でもある。

 足高 八雲とはあれから上手く行っているようであり、タグに恥じないGLを展開しているが小説で描かれるかは未定。

 

外見詳細:

 身長140cmぐらい。しかし胸部のサイズはFカップほどの大きさ。肌の露出は控えめで濃いベージュ色のボアコートを着用。それでも胸の大きさに目が行く。

 美しい彫刻が彫られた芸術品でもある12ゲージショットガンにスリングベルトを付加し、肩に背負うようにしてショットガンを持っている。背中にはOB色のバックパック(リュックサック)を背負っている。バックパックの中身ははみ出るほどの花火が大量に詰め込まれている。衣服に引火したら正直危険なレベル。

 髪型や顔つきこそ『艦隊これくしょん』の『アイオワ』そっくりであるが、正確には目つきを凛とした様子から、能天気そうな穏やかなぱっちりとした目にした容貌。

 

・元キャラ外見イメージモデル

最近、指定できるキャラで似たキャラクターを見つけました。

『ゲーム:艦隊これくしょん』の『Iowa(アイオワ)』に類似。

 

・そのほか外見の特徴

髪色:鮮やかなブロンド 瞳の色:黒 肌の色:薄黄色

 

・リアル探索者として存在。

3回探索。見事生還。存命。

TRPG側では、SANが残り76

 

武器ステータス

フィリピン爆竹

ダ1D6 距30m《投擲時》 攻1 装-- 故00で暴発

ロケット花火【ギリシャ製】

ダ2D4 距100m 攻1 装-- 故00で暴発

連発花火【中国製】

ダ1D3+引火 距3m 攻3 装【使い捨て】 故00で暴発

噴射花火【ロシア製】

ダ2D3+1+引火 距タッチ 攻撃1/2 攻1 装【使い捨て】 故00で暴発

12ゲージ上下二連

ダ4D6/2D6/1D6 距10m/20m/50m 攻2 装2 耐12 故00 ダブルバレル

 

 

 

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名前:修羅(しゅら) (ぬい)(女) 23歳

職業:SHIELD 出身:日本

STR14   DEX15   INT16

CON13   APP9   POW15

SIZ12   SAN75   EDU17

アイデア80  幸運75   知識85

HP13    MP15    DB+1D4

 

職業技能+7

聞き耳=80

キック=80

目星 =80

回避 =80

跳躍 =78

 

興味技能

太刀=89

 

・特技

《居合》

《?????》

《?????》

《?????》

《?????》

《?????》

 

・持ち物

格闘用特殊防具、H&K USP*2、レーザーポインター*2

閃光発音筒(スタングレネード)、個人用暗視装置、96式装輪装甲車

コンバットナイフ、太刀*2、財布、携帯、懐中電灯、

ホイッスル、結束バンド*30

 

・設定

SHIELD部隊の近接格闘部隊員。

主に銃器の使用を許可されない時や隠密行動が要求される任務の戦闘専門部隊。

SHIELD無能部隊とは別部隊所属。

 

一般市民は守るべき存在なので、気には掛けるが状況によっては切り捨てることもある。

 

実家が道場を営んでおり、父親は剣術道場の師範代である。

男児に恵まれなかった家系だったため長女である修羅は男として育てられてきた。

妹(現:探索者)が居たが、修羅が10歳にも満たない頃行方不明になっており今も見つかっていない。

それ以来 妹を攫った人物をこの手で仕留めるために剣術の習得に励むのであった。

 

外見詳細:

 身長160cmぐらいの桃色髪のポニーテールをした女性。胸部のサイズは驚異のAAカップ。まな板。実際、断崖絶壁。下着は色気のかけらもなくスポーツブラ、パンツを着用し、腹筋は割れている。

 SHIELD部隊に所属していた頃は髪を自然に下していたようであるが、ある時を境にポニーテール上に結うようになった。目つきは細眼であり三白眼。目つきの悪さから人相は悪く見える。目つきの御蔭で、愛想笑いでも笑顔を作ると何か企みを思いつたかのような表情となる。

  都市迷彩の軍服を着用し、何処か日本警察の特殊部隊を連想させるかのような防具、ブーツ、暗視ゴーグル、革手袋、ホルスター、拳銃を2丁装備している。予備マガジンは胸ポケットの中に入っている。胸が平たいその分、身軽であり素早く太刀を振り回すことができるようだ。

 

・元キャラ外見イメージモデル

『ゲーム:艦隊これくしょん』の『pixiv:戦艦クラスの眼光』タグより『不知火』

・そのほか外見の特徴

髪色:桃色 瞳の色:黒 肌の色:薄黄色

 

・リアル探索者として存在。

1回探索。見事生還。存命。

TRPG側では、SANが残り89

 

武器ステータス

格闘用特殊防具

装備  防具 白兵戦におけるダメージを半減

H&K USP

ダ1D10 距20 攻3 装15 耐8

日本刀

ダ1D10+DB 距タッチ 攻1 装-- 耐20

キック

1D6+DB 距タッチ 攻1 装-- 耐--

 

 

 

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名前:赤大(あかだい) (しょう)(女) 24歳

職業:SHIELD 出身:日本

STR13   DEX15   INT16

CON17   APP7   POW13

SIZ12   SAN65   EDU18

アイデア80  幸運65   知識90

HP15    MP13    DB+1D4

 

職業技能

回避 =85

拳銃 =89

武道 =81

キック=85

隠れる=75

聞き耳=85

 

興味技能

 隠す =75

忍び歩き=60

 

・持ち物

財布、携帯、格闘用特殊防具、H&K USP*2、

閃光発音筒、個人用暗視装置

コンバットナイフ、ダクトテープ、音楽プレイヤー

レーザーポインター*2、結束バンド、サイレンサー*2

H&K USP*2、弾倉[ホーロー弾]*4、安全靴

 

・設定

SHEILD隊無能部隊の戦闘狂。

シナリオ『奇妙な共闘』で増山達が探索者に打ち勝った場合の世界線の住人。

まだ東京の平和は保たれており、それも神話生物撲滅隊SHIELDが拡大しているからである。

最高指揮官の古鷹 源太に喧嘩を吹っ掛け、幾度となく虫の息になるまでボコられている経験を有する。

 

いつか、あの憎きあのクソ野郎(古鷹 源太)をたたき留めすために、戦闘に特化し神話生物も同様に物理で叩きのめす。

89式ライフルを振り回すよりも、二挺拳銃と蹴りで何とかする質。

視力が悪いため目での物探しには得意としないが、嗅覚や聴覚を使った五感は鋭い。

しかし眼鏡やコンタクトレンズなどを使わないのは、彼女なりのポリシーという一説がある。

 

酒癖が悪いと噂持ち、学生時代アメリカに留学した経験をも持つ。

直属の上司は家守 源水であり、最高指揮官に喧嘩を吹っ掛けるため悩みの種となっている様子。

 

外見詳細:

身長は170mほど。胸部のサイズはEに近いDカップ。スタイルは腹筋も割れており、筋肉的視点での肉体美を感じさせるが、人相がとにかく悪い。ところどころ古傷や縫傷などで治療痕が残り、人相だけは決して良いとは言える様な人相ではない。

 髪色は血液並みに赤黒い紅蓮の色をしており、よぶんな前髪が目元に掛からないよう黒色のカチューシャで止めている。髪形は痛んだボサボサのロングヘア。口内の舌は2つに縦へ裂けており、ヘビの舌の様にパックリと2つに分かれている。

 都市迷彩の軍服を着用し、何処か日本警察の特殊部隊を連想させるかのような防具、ブーツ、暗視ゴーグル、革手袋、ホルスター、拳銃を2丁装備している。予備マガジンは胸ポケットの中に入っている。

 

・元キャラ外見イメージモデル

『マンガ:5evils』より『レジーナ』

 

・そのほか外見の特徴

髪色:赤髪 瞳の色:紅 肌の色:白

 

・リアル探索者として存在

8回探索。見事生還。存命。

TRPG側では、成長しすぎてロストした。

 

・武器ステータス

キック

ダ1D6+DB 距タッチ 攻1 装-- 耐-- 故--

 

H&K USP

ダ1D10 距20m 攻3 装15 耐8 故98

 

ホーロー弾:銃ダメージ+2

安全靴:キックダメージ+1

格闘用特殊防具:白兵戦におけるダメージ半減。

 

 

 

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名前:星乃(ほしの) (あや) 年齢不詳

職業:巫女 出身:にほん?

STR18   DEX16   INT14

CON17   APP15   POW19

SIZ18   SAN79   EDU5

アイデア70  幸運90   知識25

HP18    MP19    DB+1D6

 

職業技能

心理学=85%

聞き耳=85%

目星 =55%

 

興味技能

日本語=11%

???? =80%

回避 =32%

???? =20%

 

・持ち物

巫女服

 

・特技

《神速》

《?????》

《?????》

 

・設定

比叡山神社に住まう巫女の一人。

常に神代(かみしろ) 飛鳥(あすか)という人物の背後について回り、巫女の『いろは』を教えて貰っている。

顔立ちは日本人のものではなく、どこかの国の外国人のような井出達がある。

 

巫女の中で、誰よりも力持ちで図体がデカくタフネスである。

そして何よりもAPP15という美しさまで兼ね備えており欠点がある様には思えない。

あるとすれば表情が乏しいことぐらい。

 

外見詳細:

 身長約200cm(約2m)。胸部はHカップ。腹部はスラッと痩せているが臀部もそこそこ大きい。巫女服を着用し、下着は何一つ付けていない。素肌に直接巫女服を着ている。まるで高身長のモデルのような体形をしている。

 燃え盛るような鮮やかな赤髪に、長い髪は自然に垂らしているロングヘアのツンとした無表情の女性。額には白いハチマキを巻いて、カチューシャの代わりとしている。年齢不詳となっているが、外見の様子から年齢を察するに24~27歳ぐらいであると推測ができる。

 虹彩の色が透明なのは生まれつきである。だからと言って、白目を向いているかのような恐ろしい瞳ではない。虹彩の色が透明ではあるものの、黒色の水晶体は仄かに見えるので、色合い的にはシルバーやグレーに近い色をしている。

 赤大 将を小奇麗にした姿が、星乃 彩の姿に似ている。

 

・元キャラ外見イメージモデル

『マンガ:5evils』の『休載・立ち絵』より『レジーナ』

 

・そのほか外見の特徴

髪色:朱色 瞳の色:透明 肌の色:白

 

・リアル探索者として存在。

1回探索。見事生還。存命。

 

 

 

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名前:??? ?? (?)

職業:??? 出身:???

STR??   DEX??   INT??

CON??   APP??   POW??

SIZ??   SAN??   EDU??

アイデア??  幸運??   知識??

 

のちに追加予定の探索者。

 

 

 

※※ハウスルール※※※※

マイナス数値~01~05【クリティカル】

96~100~超え数値【ファンブル】

SANチェックのクリティカル、ファンブル処理はない。

戦闘は一部を除いて既存のルールを使用。

戦闘に1R1回のディレイを投入。順番を最後に繰り越す。

連射のルール:『1D100』を一回振り、出た目から当たる数を算出。

       『1D当たる数』を1回振り、何発当たったか決める。

       当たった数分 ダメージロール判定。

仲間同士の殺し合いはご自由に。野蛮な人間だもの。

ただし一切の責任を邪神は持たない。

 

・ネクロニカ戦闘ハウスルール

 戦闘中、ネクロニカの敵モブが探索者に対して、妨害を行った場合。

 妨害数値*10の数字が出目に加算される。逆もまた然り。

例1:

出目80→72【成功】

妨害2

出目80→72→92【失敗】

例2:

出目80→7【スペシャル】

支援1

出目80→7→-3【クリティカル】

 

・射程距離について

 よほど敵との距離が開いていない場合の射程に関して、距離感を10m/20m/50mで区切る。

例:

煉獄から探索者ショットガン射撃する場合、最大射程は奈落~楽園まで

楽園から探索者ショットガン射撃する場合、最大射程は煉獄まで

楽園から探索者200mライフル射撃する場合、最大射程は奈落まで

 

・ダメージ換算について

 探索者からネクロニカ敵モブを狙うときのダメージ換算は○D○のダイス1つにつき、1ダメージの換算とする。

 またネクロニカショトガンや日本刀などに付属する【爆発】【切断】判定などはネクロニカ世界線で拾った武器のみの処理とする。但し、ネクロニカ世界線上の武器は、どんなに高い技能を持っていたとしても命中率は5割に固定する。クリティカル・ファンブル率を1割ずつとして処理をする。

 10~=クリティカル、9~6=成功、5~2失敗、1~=ファンブル

 ネクロニカ世界線の武器を探索者が使ったとしても手数は増えない。利点を上げるとするならば耐久値が非常に高い。

 

・ネクロニカの敵モブが探索者に向けて攻撃を加えた場合

攻撃○の○をダイスの数とし、D6~D10のダメージを与えることとする。

この時、クトゥルフルルブ準拠のダメージとし、切断判定はあるものとして処理をする。

 手足切断を切断されてしまった場合、手足の委縮と同じ処理を行う。

 胴体や頭が切断されてしまった場合は、即死として探索者はロストする。

 

必ず投稿するって宣言したのに、遅くなって申し訳ありませんでした!

 

 

 




【更新内容】
2017/05/08 22:10【更新】
戦闘ハウスルールについての追加。
2017/05/13 22:00【更新】
星乃の特技を更新。
2017/05/19 21:45【修正】
区切り線を修正。文字数減少。



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Episode0-2 『ドール』+2

2017年05月03日(水) 17:37【作成】


ドール名:ロジーナ

 享年 :17

 暗示 :【希望】

記憶のカケラ:

【記憶】歌 =どんな由来があるのかも分からないけれど、あなたは1つ歌を覚えている。気がつけば口ずさんだりハミングしたり、時々ちょっと歌詞を変えたり。たった1つの歌だけど、あなたにとっては大切なものだ。

【記憶】少女=あなたの傍らには1人の少女がいた。彼女の名前も顔も、関係さえも忘れたけれど、その笑みはまだ心に残っている。彼女を愛していた。あなたは、そんな笑みを見せてくれる仲間を愛する。

 

初期配置:【楽園】

ポジション【オートマトン】

メインクラス【レクイエム】

 サブクラス【レクイエム】

強化パーツ:4/0+1/0

行動値:6+3+2 寵愛:0 総寵愛:0

 

内容 狂気度 発狂時

【たからもの】 への依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

【ぬいぬい】  への独占 ■■■□ 独占衝動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、対象はパーツを選んで損傷しなければならない)

【飛鳥】    への対抗 ■■■□ 過剰競争(戦闘開始時と終了時に1つずつ、あなたは狂気点を追加で得る)

【纒】     への保護 ■■■□ 常時密着(自身か対象以外は移動マニューバの対象にできない。また、対象が違うエリアにいるなら移動以外の効果持ちのマニューバは宣言できない)

【熊野 クリスティーナ】への保護 ■■■□ 常時密着(自身か対象以外は移動マニューバの対象にできない。また、対象が違うエリアにいるなら移動以外の効果持ちのマニューバは宣言できない)

 

スキル タイミング/コスト/射程

【無茶】オート/なし/自身

【銃身】オート/なし/自身

【集中】ラピッド/2/自身

【魔弾】オート/なし/自身

【子守歌】オート/なし/自身

     寵愛点-10(1)

 

□【のうみそ】オート/なし/自身(最大行動値+2)

□【めだま】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【あご】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【カンフー】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【アドレナリン】オート/なし/自身(最大行動値+1)

  寵愛-10(2)

□【スコープ】ジャッジ/0/自身(支援2、射撃・砲撃のみ)

  寵愛-10(2)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い頭部。

 取り外しが可能な片眼鏡式のスコープを装着し、さらに精密な射撃ができるように調整が加えられ、クリスティーナに対する恋心がロジーナの動きを更に素早く活動させるまでに至った。

 艶のある紫色のスーパーロングヘアに白い肌。表情はジト目が特徴的。

 ロシア人っぽい顔立ちをしている。ハーフのようではなく、純粋のロシア系。

 

 

□【こぶし】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【うで】ジャッジ/1/0(支援1)

□【かた】アクション/4/自身(移動1)

□【対戦車ライフル】アクション/4/1-3(射撃攻撃5)

□【ショットガン】アクション/4/0-1(射撃攻撃1+爆発、攻撃判定出目+1)

□【日本刀】アクション/1/0(白兵攻撃1+切断)

 

外見詳細:

普通の人間と変わり映えの無い腕。

左肩に対戦車ライフルを背負い、背中にはホルスターに仕舞われたソードオフショットガンを装備。後ろ腰には日本刀が装備してあり、接近戦にも対応できる。

また扉や、狭い通路で引っかからないように傾きはやや縦軸で装備している。

 

 

□【せぼね】アクション/1/自身(次に使うマニューバーコスト-1(最低0))

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【しんぞう】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【たからもの】オート/なし/なし(なし)

□【エナジーチューブ】オート/なし/自身 最大行動値+2。装備箇所にダメージを受けた際、あなたは任意の基本パーツ1つを通過で損傷しなくてはならない。

  寵愛-10点(2)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い胴体であったが、背中の肩甲骨から腰に掛けて太いチューブを付け加えた。スーツのみでは違和感を覚える身体的特徴を持ってしまったが、マントのようなものを羽織ることでチューブの歪さは隠すことができるようになっている。

 胸のポケットには自分の生前の姿が映った【写真】が入っている。

 それなりに豊胸、かつ腹はくびれのある綺麗な体つきである。のちの手術によって豊胸されたのではなく天然もの。

 胸に手を当てると死んでいる筈なのに心臓の鼓動が聞こえる。

 

 

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【あし】ジャッジ/1/0(妨害1)

 

外見詳細:

普通の人間と変わり映えの無い足。

太ももはむっちりとしており、尻もそこそこ大きい。

 

 

 

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ドール名:ぬいぬい

 享年 :8

 暗示 :【喪失】

記憶のカケラ:

【記憶】料理=料理を作っていた…野菜を切って、鍋をかきまぜて、卵を割って、肉を炒めて。確か最初は何もつくれなくて。けれどだんだんと上手に、上手に…でも料理の味を思い出せない。おいしく、作られていたのか、な。

【記憶】迷子=はぐれてしまって1人きり。あなたは何もわからないまま、泣きながら彷徨う。知らない道、知らない場所。そこは暗闇と同じで。周りにいるのは知らない人ばかり。それでも、あの時はあの人がいた…。

 

初期配置:【煉獄】

ポジション【ジャンク】

メインクラス【ゴシック】

 サブクラス【ステーシー】

強化パーツ:1/3/1

行動値:6+3+1 寵愛:0 総寵愛:0

 

内容 狂気度 発狂時

【たからもの】  への 依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

【ロジーナ】   への 恋心 ■■■□ 自傷行動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、あなたはパーツを選んで損傷する)

【飛鳥】     への 友情 ■■■□ 共鳴依存(セッション終了時、対象の方が損傷しているパーツの数が多い場合、対象の損傷数と同じになるようパーツを選び損傷させなければならない)

【纒】      への 憧憬 ■■■□ 贋作妄想(自身か対象以外は移動マニューバの対象にできない。また、対象が同じエリアにいるなら移動以外の効果持ちのマニューバは宣言できない)

【星埜 妖】   への 友情 ■■■□ 共鳴依存(セッション終了時、対象の方が損傷しているパーツの数が多い場合、対象の損傷数と同じになるようパーツを選び損傷させなければならない)

 

スキル    タイミング/コスト/射程

【随行】オート/なし/自身

【肉の宴】オート/なし/自身

【背徳の悦び】オート/なし/自身

【庇う】オート/なし/自身

【肉の盾】ダメージ/0/0-1

  寵愛-10(2)

【悪食】オート/なし/自身

  寵愛-10(2)

【地獄の住人】オート/なし/自身「地獄」にいる際、攻撃判定の出目+1。

  寵愛-10(2)

 

□【のうみそ】オート/なし/自身(最大行動値+2)

□【めだま】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【あご】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い頭部。

 桃色髪のポニーテールをした優しそうな顔をしている。

 ただし、歯はサメの歯のようにギザついており 死人たちの肉を捕食するのに非常に適した形状となっている。

 

□【こぶし】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【うで】ジャッジ/1/0(支援1)

□【かた】アクション/4/自身(移動1)

□【日本刀】アクション/2/0(白兵攻撃+切断)

□【マシンガン】アクション/3/1(射撃攻撃1+全体攻撃)

 寵愛点-10

□【たからもの】オート/なし/なし(たからもの)

  名刀「不知火」

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い腕

 左手に無いよりはマシな、切れ味の鋭い日本刀を持っている。

 クリスティーナの拾ってきたマシンガンを手に取る。形状はザクマシンガンに類似しており、弾薬はドラムマガジン形式。

 背中には修羅から託された刀を背負っている。日本刀のように壊れることのない材質で作られていない為、今のぬいぬいでは扱うことはできない。

 

□【せぼね】アクション/1/自身(次に使うマニューバーコスト-1(最低0))

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【うろこ】ダメージ/1/自身(防御2)

□【やぶれひまく】ダメージ/0/自身(防御2)

□【スチールボーン】ダメージ/1/自身(防御1+「切断」無効化)

□【かわいい衣装】オート/なし/なし(たからもの)

 

外見詳細:

 背中の肩甲骨付近から2枚の天使のような翼が生えている。羽には骨格を整えるための骨組みがあり、その骨組みを覆うように皮膚がある。そしてその皮膚を覆うかのような白い羽がついていると言った構造となっている。

羽には神経が繋がっており、自分の意思の赴くままに動かすことができる。

 空を飛ぶ事はできないが、敵の攻撃から身を守るには十分な強度がある。

 骨格は金属製で日本刀のような鋭い切断攻撃にも耐えられるように設計されている。

 背中にはトカゲのような鱗がついており、翼と同等の強度を誇っている。しかし背中の一部にしかない為、そこに正確に当てるための技術が必要そうである。

 胸部はまったく成長していない平坦な胸。修羅の胸に似ているほど平坦。断崖絶壁。

 太っている訳でもなく、むしろ腹回りはくびれがあり痩せ形。

 そんな彼女の「たからもの」は可愛いコスプレ品に近いメイド服。フリルがついている。背中には二つの切れ込みが入っており、翼を通すための穴が丁寧に開いている。また戦闘用として装備を想定されていたのか動きやすく、強度があり、修復のしやすい繊維が使われている。

 

 

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【あし】ジャッジ/1/0(妨害1)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い脚

 胴体に合わせて、すらっとした足をしている。

 

 

 

============================

 

ドール名:飛鳥

 享年 :14

 暗示 :【幸福】

記憶のカケラ:

【記憶】たからもの=大切な宝物、あなたは1つの品をそれはそれは大切にしていた。その品はいったい何だったろう?きっと今持っている[たからもの]に違いない。あなたとそれは、運命の絆で結ばれているはずだ。

【記憶】双子   =あなたには半身がいた…同じ日に生まれた同じ顔の子。二人の間には不思議な絆があって、相手が何をしているか、なんとなく分かるのだ。だから、この世界でも…あなたの半身がどこかにいると分かる。

 

初期配置:【煉獄】

ポジション【アリス】

メインクラス【ロマネスク】

 サブクラス【ロマネスク】

強化パーツ:1/0/4

行動値:6+3+4 寵愛:0 総寵愛:0

 

内容 狂気度 発狂時

【たからもの】  への 依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

【ロジーナ】   への 独占 ■■■□ 独占衝動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、対象はパーツを選んで損傷しなければならない)

【ぬいぬい】   への 信頼 ■■■□ 疑心暗鬼(あなた以外の全ての姉妹の最大行動値に-1)

【纒】      への 信頼 ■■■□ 疑心暗鬼(あなた以外の全ての姉妹の最大行動値に-1)

【星埜 妖】   への 依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

 

スキル    タイミング/コスト/射程

【癒し】オート/なし/自身(他の姉妹からの、あなたに対する対話判定は全て出目+1される)

【戦乙女】オート/なし/自身(最大行動値+2)

【死の舞踏】オート/なし/自身(攻撃判定のサイコロを振りなおす)

【時計仕掛け】オート/なし/自身(レベル3改造パーツを追加で1つ追加する。修復も可能。)

 

□【のうみそ】オート/なし/自身(最大行動値+2)

□【めだま】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【あご】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【アドレナリン】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【カンフー】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【ボイスエフェクト】ラピッド/2/0-2(最大行動値+1)

□【発勁】ラピッド/0/0(自身には不可、移動1)

  寵愛-10(2)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い頭部。

 外部装備として目立たないマイク付ヘッドホンのようなものを頭に着けており、これがボイスエフェクトとして機能している。咽頭と連動しており、使うときはスイッチを入れて音声を飛ばしている。

 白髪(しろかみ)のストレートロングヘアで額には赤ハチマキが巻かれ、前髪が固定されている。顔つきは目がぱっちりとしており、元気が良さそうな顔をしている。

 巫女として星乃と行動を共にしている間に、相手を覇気で吹き飛ばす術を習得していることに気が付いた。

 

□【こぶし】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【うで】ジャッジ/1/0(支援1)

□【かた】アクション/4/自身(移動1)

□【ワイヤーリール】ラピッド/2/0-2(移動1)

□【ライトセイバー】アクション/2/0(白兵攻撃1+切断+連撃1)

□【エレクトリッガー】アクション/2/0(肉弾攻撃1+転倒)

  寵愛点-10(1)

□【アームバイス】ジャッジ/1/0(支援2 or 妨害2)

  寵愛-10(2)

□【たからもの】オート/なし/なし(たからもの)

 シスターの物【聖書】

 

外見詳細:

 ほぼ普通の人間と変わり映えの無い腕。

 片腕にワイヤーリールが備え付けられており、普段は人間の指をしているものの指先をピースサインをし人差し指と中指をくっつけた状態で「射出する。」と思えば指の先端だけを飛ばすこともできるし、掌を開いてCOBRA THE SPACE PIRATEのCOBRAが装備しているサイコガンのように打つこともできる。その時は手首から先が、ワイヤーリルとなって飛んでいく。飛んで行った指を開閉も可能。

 ライトセイバーはコンパクト型の型番となっている。光線を吐き出していない時の大きさは中ぐらいの懐中電灯サイズで持ち運びが、とてもお手軽。普段は巫女服の帯に挟んで持ち歩いている。

 クリスティーナが拾ってきたショートしている導線をワイヤーリールの中に組み込み静電気などの電気を逐電し放出可能にして見せた。

 更に腕には風化し読むことのできなくなった聖書を抱え、ワイヤリール側の腕とは反対側の腕を、更に機械的なものへと変貌させている。まるでロケットパンチでも飛ばすことが出来そうな腕だ。

 

 

□【せぼね】アクション/1/自身(次に使うマニューバーコスト-1(最低0))

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【サイボーグ】ダメージ/0/自身(防御2)

□【ぬいぐるみ】オート/なし/なし(たからもの)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い胴体にみえる。

 乳房や臀部を除いた肌は金属が仕込まれているかのように硬くなっている。

 体系はスレンダー体系であり、別に腹が出ているとかはない。

 彼女の「たからもの」はイソギンチャク状の人形。解説は追々入れる予定。

 

 

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【あし】ジャッジ/1/0(妨害1)

□【しっぽ】オート/なし/自身(最大行動値+1)

  寵愛-10(2)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い脚

 健康的な人間の足の太さ程度。

 あまりにも転倒が多く1戦闘に1回は転ぶためバランス感覚を取るための狐尻尾を付けた。付けるまでの経緯としては、神社。狐。という星乃の発言によって決まった。

 

 

===============================

 

ドール名:纏

 享年 :12

 暗示 :【渇望】

記憶のカケラ:

【記憶】会話   =友人とのなにげない会話を思い出す。流行のこと、天気のこと、キライな人のこと、好きな人のこと、恋のこと。今になればどうでもいい雑談だけれど。思い出すと、羨ましくて涙がこぼれてくる……。

【記憶】パーティー=友達が集まり、家族が揃い、とてもとても楽しいパーティーの記憶。間違いなく幸せの時間…それはとても幸せだったけれど、それだけに思い出すごとに、あなたを今との落差で苛んでいく。

 

初期配置:【煉獄】

ポジション【ソロリティ】

メインクラス【ステーシー】

 サブクラス【ステーシー】

強化パーツ:1/3/1

行動値:6+3+1 寵愛:0 総寵愛:0

 

【たからもの】への 依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

【ロジーナ】 への 憧憬 ■■■□ 贋作妄想(自身か対象以外は移動マニューバの対象にできない。また、対象が同じエリアにいるなら移動以外の効果持ちのマニューバは宣言できない)

【ぬいぬい】 への 恋心 ■■■□ 自傷行動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、あなたはパーツを選んで損傷する)

【飛鳥】   への 依存 ■■■□ 幼児退行(最大行動値減少(-2))

【赤大 将】  への 友情 ■■■□ 共鳴依存(セッション終了時、対象の方が損傷しているパーツの数が多い場合、対象の損傷数と同じになるようパーツを選び損傷させなければならない)

 

スキル    タイミング/コスト/射程

【号令】ラピッド/2/特殊

【蠢く肉片】ジャッジ/0/0-2

【かばう】ダメージ/0/0-1

【死に続け】ラピッド/0/自身

【看破】ラピッド/0/0-3

 寵愛-20(2)

 

□【のうみそ】オート/なし/自身(最大行動値+2)

□【めだま】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【あご】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【カンフー】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【たからもの】オート/なし/なし(たからもの)

  音楽プレイヤー

 

外見説明:

 普通の人間と変わり映えの無い頭部。

 特徴をあげるとするならば、女の子っぽい中性的な顔立ちをしている。

 桃色の髪色をしており、全体的にショートカットヘアではあるものの襟足は長く、三つ編みにし、その三つ編みは背後の臀部(尻)まで垂れる程度のもの。左前髪に白色のメッシュが入っており、両こめかみ部分には蝶々結びされた黒色のリボンのアクセサリーが2つ着いている。

 可愛らしさに加え、微量に凛とした表情も兼ね備えている。

 首には赤大との別れ際に預かった音楽プレイヤーのイヤホンを巻きつけ、時々音楽を聴き楽しんでいる。バッテリーが切れたとしても飛鳥のエレクトリッガーで充電できることが分かり、皆で景気づけとして聞くことが殆ど。4人の知らない曲しか入っていないがその中でも好みを順番に見つけている。

 

 

□【こぶし】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

□【うで】ジャッジ/1/0(支援1)

□【かた】アクション/4/自身(移動1)

□【救急箱】オート/なし/特殊(このパーツが戦闘終了時に破壊されていなければ、自分以外の姉妹の損傷している基本パーツ合計3つを選んで損傷前の状態に戻してもよい。)

□【ショットガン】アクション/2/0~1(射撃攻撃1+爆発、攻撃判定+1)

  寵愛点-10

□【たからもの】オート/なし/なし(たからもの)

  写真。

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い腕。

 特筆することはない。手にはドール用の救急箱を持っており、その中にはパーツの他に縫合するための縫合糸や鋏、縫い針などが大量に入っている。強度もあり、簡単には壊れてしまわないような軍事用として作られている。

 クリスティーナが拾ってきた得物の1つ。コッキング式のショットガン。本体が非常に軽量化がされており、重量があるのは弾薬が重いため。

 

 写真にはロジーナ、ぬいぬい、飛鳥、纒とシスター、そして片目が髪の毛で隠れた少女が仲良さげに移っている光景が写っている。

 

□【せぼね】アクション/1/自身(次に使うマニューバーコスト-1(最低0))

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【はらわた】オート/なし/なし(なし)

□【あるびの】ジャッジ/1/0-1(支援1)

□【よぶんなめ】ジャッジ/1/0-1(支援2)

□【おとこのこ】オート/なし/自身(対話判定出目+1)

□【壊れた部品】オート/なし/なし(たからもの)

□【リフレックス】オート/なし/自身(最大行動値+1)

  寵愛-10(2)

 

外見詳細:

 正面から見る分には、普通の男の娘。

 しかし、首元の裏には人間の「めだま」が余分に2つ着いている。この瞳は本人の望むままに動かすことが可能であり、背面からの奇襲に備える為につけられたものであると思われる。見え方については本人にしか分からない。

 肌はロジーナの肌よりも白く、綺麗な素体をしている。

 彼の「たからもの」は壊れた部品。それは、彼の身体についている。股間にそびえ勃つバベルの塔付近に秘められし2つの宝具。とそれを守る袋。彼の肉体は既に死を迎え、いくら身体が壊れようとも痛みはない。しかし強打するような想像を膨らませると塔と宝具が痛むようなそんな気がする。

 

 

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【ほね】アクション/3/自身(移動1)

□【あし】ジャッジ/1/0(妨害1)

 

外見詳細:

 普通の人間と変わり映えの無い脚。

 特筆することはない。男の娘ではあるが、女の子のように肌がムチムチしていることぐらいか。

 

 

 

 




【更新内容】
2017/05/13 22:33【更新】
寵愛点による入手した得物(ぬいぬい、飛鳥、纒)の追加。
2017/05/19 21:41【更新】
寵愛点による入手したパーツ、拾った宝物(Episode4-5まで)の追加、外見描写の追加。(ロジーナ、ぬいぬい、飛鳥、纒)



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序章
Episode1-1 『迷い込んだ人間』


 時は2161年。人類は核戦争によって滅び去った。
 70億居た人間も1億4千万人まで減り、外を闊歩する存在は突然変異を繰り返した昆虫か、放射能に耐えきったもののみ。今もなお生き延びた人間も、その限りある生存数を自らが撒いた種である放射能の影響によって急速に減らしつつあった。

 これより語られるは、2161年より更に未来の話。
 2xxx年。生き残った人間の人口はついに1億を切った。それでも僅かながらに生き続けている。
 この世界にとって人間は希少な存在となった。
 滅びの一途を辿り、語られるとすれば夢物語の住人。出会うことなど滅多にない生物。

                                   ・・・その筈だった。



 そこは分厚いコンリートで固められた四角形状の通路。細長い通路の両端面には木製の扉が1枚と、閂状の簡単な鍵の付いた扉が1枚閉じている。

 その2枚の扉の中央。どちら側にもつかない中央で『滅んだ』とされる人が、4人。それぞれの姿勢で佇んでいた。

 

 1人は腕組みをし、向かいの壁を見ながら壁に寄り掛かっている女性。

 桃色髪に長い髪の毛を後頭部でまとめ上げ、ポニーテール状に結っている。目つきは細眼であり三白眼であった。目つきの悪さから人相は悪そうに見える。また何処かの部隊の特殊部隊であったのか、分厚そうな防具や都市迷彩服、ブーツ、革手袋、暗視ゴーグルに加え、ホルスターには拳銃が2丁、予備マガジンは胸元のポーチにあり、最大3回分装填が出来そうな程のふくらみがあった。その他に目ぼしい持ち物といえば、両腰脇には太刀が2本帯刀されており、いつでも敵を切り伏せることが出来そうな重みのある得物が見える。

 

 1人は耐ショック姿勢を取るかのように蹲っている非常に小さな女性。

 彼女の顔を現状況からは確認する術がないが、ふくよかな胸と輝くかような艶のあるスーパーロングヘアのブロンド髪、揉み心地の良さそうな尻が彼女を女性であると示す身体付きが、コートやズボン越しからでも分かるのだった。

 彼女はその衣服から民間人であることが分かるものの、蹲った状態からでも何かしらの武器を所持していることを確認することは出来る。1つは背中に背負ったバックパックから見えるもの。開閉部分には、何やら大きめのロケット花火が見え隠れしており、肩には2連式のショットガンが掛けられており、銃にはスリングが付けられ隠す気のない装備しているのが目に入る。

 更にそのショットガンは この荒廃した世界には似つかわしくないほど、丁寧な彫刻が施されており得物の他に芸術品としても素晴らしいショットガンであることが見て取れた。

 

 1人は、2人目の紹介した女性の脇にしゃがみ込み、蹲っている女性の背中を摩っている。

 1番初めに紹介した女性と同じように、顔つきは悪く見えた。ところどころ古傷や縫傷などで治療痕が残り、人相は決して良いとは言える様な人相ではない。

 髪色は血液並みに赤黒い紅蓮の色をしており、よぶんな後ろ髪が目元に掛からない程度ではあるがカチューシャで止めている。髪形は痛んだボサボサのロングヘアと言った具合だ。そして時々、桃色髪の女性の方へ向き様子を伝えているのか、口が開く。その口内に垣間見える舌は、ヘビの舌の様にパックリと2つに分かれていた。

 彼女もまた、桃色髪の女性と同じ特殊部隊に所属しているのか、分厚そうな防具や都市迷彩服、ブーツ、暗視ゴーグルに加え、革手袋やホルスターに拳銃が2丁、予備マガジンは胸元のポーチに入っているようだった。

 

 そして最後の1人は燃え盛るような鮮やかな赤髪に、長い髪は自然に垂らしているロングヘアのツンとした無表情の女性。

 彼女は何処を見ているのか分からないような様子で、閂状の扉を口を開くこともなく無言でただ見つめていた。

 彼女は武器らしい武器は何も持っているようには見えない。彼女の特徴を上げるとすれば、それはブロンド髪の女性よりも勝る豊満な胸部と、この場に居る3人の中で誰よりも身長が高く、下手をすると目の前で縮こまっている女性の2倍は身長があるかもしれない巨体をしていた。

 決して、コスプレの衣装ではない巫女服を着用し、ただひたすらに閂状の扉方面を見つめている。

 

「・・・・・いつまでそのようにしているつもりですか?」

「・・・。・・・夢では・・・御座いませんのね。背中を摩って下さって ありがとうございました。もう大丈夫ですわ。現実逃避は止めて、この悪夢のような現実を受け入れることと致します。」

 

 4人の呼吸音以外に何も聞こえない空間へ向けて、重々しく桃色髪の特殊部隊風の女性が、蹲っているブロンド髪の女性に向けて視線を落し口を開く。

 ブロンド髪の女性は、重たそうに蹲っていた状態から顔を上げ、周囲を見渡した。

 その瞳に映るものは、無機質なコンクリートの壁と2枚の扉、そして彼女等の姿のみである。

 彼女は何処か諦めがついたような、苦虫を奥歯で噛み潰したように苦々しく特殊部隊風の女性に微笑みかけながら呟いた。

 その顔は非常に整っており、ロシアと日本の良き特徴を兼ね備えた、APP17はありそうなハーフ的美貌には何処か見覚えがあった。そう、それは第一クトゥルフ神話や第四クトゥルフ神話に出てきた熊野クリスティーナ。彼女そのものの姿である。

 

 

 




【後書き】
始まりました。
外伝クトゥルフ神話『4つの愛』
タイトルもまだ確定しきっていないので、今後変動する可能性があります。

今回の小目標は、【前書き】に可能な限り前回のあらすじを加筆していきたいと思います。

これから、また新しい物語をよろしくお願いいたします。




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Episode1-2 『私の名は』

【前回のあらすじ】
 時は22xx年。人類は核戦争によって滅んでいた。生き残った1億4000万人の人も1億を切っている。そんな『滅んだ』とされる絶滅危惧種である人間が4人、コンクリート造りの通路で立ち往生していた。
 構成は特殊部隊隊員2名、民間人2名。全員女性だ。
 そのうちの民間人の1人が前回、神話的現象に遭遇し深きものを見てしまったクリスティーナであった。




「・・・そうか。そいつは良かった。」

 

 クリスティーナが立ち直ったのを見届けると、お礼を言われた方の赤髪の特殊部隊隊員はクリスティーナに向けて微笑む。

 

「そちらの御方は? 先ほどからあちら側の扉を凝視しているようですが、何か気になった物でもあるのですか?」

「・・・・・。」

「・・・Is there something to worry about?(何か気になる事でも?)

「・・・・・。」

「・・・。」

 

 そのやり取りの間に桃色髪の特殊部隊員は、そのまま視線を巫女服姿の赤髪の女性へと移す。問いかけをしてみるものの返事はなく、言語が異なるのかと仕方なく流暢な英語で話しかけてみるが依然として無反応と言った様子であった。

 言語が伝わらないことに対して、少し嫌気を示したかのような表情をすると話しかけるのをやめ、彼女が見ている方向へと顔を向ける。

 そこには先ほどと変わらない閂状の鉄の扉があるだけであった。

 

「何をそんなに見ているのです・・・・。・・ッ!」

 

 特殊部隊隊員の女性は、扉に何も異常性が感じられないと分かると、顔を先ほどの女性に戻した。

 その時の事だ。彼女は素早くその場から飛びのき、巫女服の赤髪の女性との距離をとる。理由は単純なものであった。彼女は既に扉を見るのをやめ、見つめる視線を感じさせることもなく特殊部隊隊員の女性に注意を向けていたからだ。

 特殊部隊隊員の女性は、その無機質のような瞳に対して何か恐怖のような物を感じ取ったのか、反射的に彼女の右手が帯刀中の太刀へとのびる。

 

SANチェック0/1

???? 73→56【成功】

 

「向こう。何か。居そう。警戒。する。ました。」

「居そうだとしても、開かないのでは確かめようもありませんわ。丁度、開かない鍵も閉められていますし・・・例え何かが居たとしても、向こう側からでは開かないのではないかしら?」

「もしも。為。」

「まぁ、よくわからねぇけどさ。その『もしも』が現れたら、アタシ達が護ってやっから安心しろよ。」

 

 太刀を抜刀しようとする女性に対して、巫女服の女性は気にする様子も警戒するでもなく、はなから興味を無くしたように残り2人に向けて視線を戻した。そして接続詞のない、何処かの他言語が訛りのようなカタコトの日本語でゆったりと返事を返す。

 飛び退いた女性の代わりに、クリスティーナと同僚でありそうな赤髪の女性が応じるが、彼女達は桃色髪の特殊部隊員が感じた恐怖を感じ取ることは無かったかのように、普通に話しかけている。

 

「ところで、なんで飛びのいてんだ?」

「汗。凄い。気分。大丈夫。」

「・・・・大丈夫です。問題ありません。」

 

 クリスティーナ達は一通り巫女服の女性と話をすると、振り返るような形で桃色髪の方を見る。さらに巫女服の女性にも単調的ではあるが、心配するかのような声を掛けられ 敵意の無いことが分かると太刀に伸ばしていた手をゆっくりと降ろした。

 

「でしたら良いのですが・・・・。この後はどういたしましょう? 閂側の扉は開きませんし、このまま奥の扉に向かいますの?」

「・・・開かない以上、進める方向はこっちだけになるからな・・・そうなる。」

「向こう。物音しない。嫌。予感。ない。」

「その口調ですと、閂の向こう側から何か嫌な気配がしたんですの?」

「した。女性。泣く。歌う。よくわからない。怖い。」

「・・・それが事実だとして、他に被害者が居たとしても助ける手段は無いですから・・・どちらにせよ。奥の扉に進むしかありませんね。」

 

 閂のされた扉に注意をしながら4人は歪な円陣を囲む。

 すると今後の方針について話し始めた。

 巫女服の女性は特殊部隊隊員の女性へ視線を向けるのを止め、再び閂扉を見つめる。クリスティーナは半歩、輪から外れている女性に向けて視線を合わせ指先を反対側の扉の方に指を指した。赤髪はクリスティーナに対して頷いて見せる。桃色髪は肯定しつつも、巫女服の女性に警戒しながら話す。

 

「そうなりますわね・・・・おっと、申し遅れました。わたくし、熊野(くまの) クリスティーナと申しますの。その気が付いたらこの場所にいまして・・・・先ほどは取り乱してしまい、申し訳ありませんでしたわ。」

「お気になさらず。修羅(しゅら) (ぬい)です。修羅でも縫でも呼びやすいように呼んで頂いて構いません。私もクリスティーナさんと同じように、気が付いたらこの場に居たと言った状況です。直前まではとある任務の為、運転していた記憶があるのですが・・・・。ふと意識がと切れたかと思えば、いつの間にかこの通路に居ました。」

「アタシは赤大(あかだい) (しょう)。アタシも こっちの修羅 縫と同じ車両に乗っていたんだけどさ。同じように意識が飛んで気が付いたら、この通路の中に居たって訳だ。死語の世界って分けてもねぇようだし、一体ここは何なんだ?」

「・・・。」

「・・・・そちらの方は?」

「私。星乃(ほしの) (あや)。神社。巫女。人探し。ここ。来た。」

「ん? それは、神社の巫女さんを探していたんですの?」

「私。巫女。人探し。相手。巫女。」

「あら、同じ巫女さんを探していたんですの・・・。」

「・・・・・・。」

 

 ふと思い出したかのようにクリスティーナは、口を開き自己紹介と自分がココにいる経緯と先ほどの失態に対して謝罪の言葉を述べる。

 それに続くようにして、同じように特殊部隊の女性2人と赤髪の巫女も簡潔に自己紹介を済ませるのであった。

 

アイディア

クリスティーナ65→91【失敗】

修羅80→49【成功】

赤大80→82【失敗】

 

修羅は一瞬だけ、表情を何か考えるかのように左手を口元に添える。そして眉を潜めた。

 

 

 




【後書き】
前書きで、前回のあらすじを書いて見ました。
途中から読み始めた人でも前回の内容がザックリと内容が分かってもらえれば・・・と
思い始めてみましたが、結構難しいですね。

今回も0話はあります。
まだ投稿予定日ではないだけです。




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Episode1-3 『ダイナミック☆エントリー』

【前回のあらすじ】
 桃色髪ポニーテールの女性が閂状の鉄扉を注視している巫女服女性に声を掛けるも無視される。彼女自身も確認をしてみるが特に変わったところはない。
 巫女服の女性曰く、開かない閂状の扉の向こうには『何か』が居るようだ。

 彼女達は自己紹介を済ませる。
桃色髪  特殊部隊隊員:修羅 縫
赤髪   特殊部隊隊員:赤大 将
赤髪   巫女    :星乃 彩
ブロンド ディレッタント  :熊野 クリスティーナ
                             以上4名である。




「人探しであれば、わたくしも手伝いますわよ! ひとりで探すよりも大人数で探した方が効率的に決まっていますわ。 その巫女さんの お名前は何と仰いますの? よければ教えて下さらないかしら?」

「名前。飛鳥(あすか)白髪(しろかみ)。私。同じ。飛鳥(あすか)。髪。長い。小柄。優しい。刀。類似。武器。得意。」

「飛鳥さんと仰いますのね。星埜さんと同じぐらい長い白髪の小柄の巫女さんで、優しくて、刀に似た武器の扱いが得意な方ですのね?」

「そう。飛鳥。すごい。優しい。」

 

 修羅が考え事をしている間、クリスティーナと星乃は探し人について話の花を広げる。淡々と口から排出される星乃の言葉をクリスティーナが繋げ、誤りが無いかどうか確認を取る。星乃の表情は頑なに、無表情ではあったがクリスティーナが復唱をすると肯定するかのように頷いていた。

 

「ですって、修羅 縫さん。」

「はい?」

 

 唐突なクリスティーナの話題の振りに、修羅の口から上ずった声が漏れ、更にキョトンとした表情でクリスティーナの方を向いた。

 

「星乃が探している巫女だってよ。名前は『飛鳥(あすか)』って奴で、小柄の巫女らしいぜ。白髪のロングヘアで刀みたいな武器が得意な奴なんだと。」

「そう。飛鳥。飛ぶ鳥。飛鳥。」

「・・・そうですか。分かりました。私の方でも探してみましょう。それで、クリスティーナさん、今 私の名前を何と?」

「『修羅 縫さん』と言いましたわ! 修羅さんにするか、縫さんにするか迷ったんですけど、どちらも語路(ごろ)があまり宜しくなくて・・・フルネームで呼ぶことに致しましたの! ・・・お嫌でしたか?」

「いえ。『好きなように』と言ったのは私の方ですからお気になさらず。中々フルネームで呼ばれるのに慣れていないもので、少しばかり驚いただけです。」

 

 聞いていなかった様子の修羅に対し、口を挿まず無言で聞いていた赤大がもう一度 星乃から聞いた「飛鳥」の特徴をまとめ 修羅に説明する。その隣では、星乃は首を縦に振り肯定を示した。修羅は適当に相槌を打ち、探すことに対して肯定的な素振を3人に見せる。

 星乃はそれを見て笑いもしない無表情を一貫していた。しかし星乃に代わって、クリスティーナは情報が正確に伝達されたことが確認すると、無邪気に修羅に対して微笑んで見せた。

 それよりも、修羅は自分の名前をフルネームで呼んだ事に気になったのか、キョトンとした表情で尋ねる。

 クリスティーナはうって変わって しょんぼりとした表情になり、何かまずいことをしてしまったのかと心配するような顔で修羅の顔色を伺う。修羅は凛とした赴きでクリスティーナの気持ちを汲み取り、軽く自分の襟を直しつつ率直な感想を述べた。

 再びクリスティーナの表情は明るい笑顔となる。

 

「さて。人探しの話はこれぐらいにして、そろそろ奥の扉に入りましょうか。」

「そうですわね。ここに居ても何も変わらない事については、つい先ほど分かりましたもの。」

「私が先陣を切ります。殿(しんがり)は・・・赤大、任せても宜しいですか?」

「あぁ、任せとけ。」

「「・・・。」」

 

 修羅は小回しの利く拳銃を抜き、木製の扉の目の前で2人に向けて指示を送る。赤大は小声で了承の返事とハンドサインを送り、クリスティーナはこくりと頷いた。

 クリスティーナはショットガンを抜き構える。星乃は、ホルスターに仕舞われていた2挺の拳銃を引き抜いた赤大と共に、閂側の扉へ向けて向き直った。

 

「では行きます。」

 

聞き耳

修羅80→98【ファンブル】

 

 修羅は扉のドアノブに手を掛け、少しだけ隙間を開けることで中の様子を伺おうとする。

 その直後、壁と扉を繋いでいた蝶番が外れ、修羅は扉の奥に向けて『メキャアッ!!』豪快な物音を立てながら、扉ごと豪快(ダイナミック)()侵入(エントリー)して行った。

 これにはクリスティーナも目を丸くし、3、2秒呆然となる。しかし修羅が、突入の基礎である索敵に失敗したと察した赤大がクリスティーナの脇をすり抜け、ヤムチャ姿勢の修羅を踏みつけながら中へと突入していった。

 続くようにして気を入れなおし、クリスティーナも踏みつけられ倒れたままの修羅を援護するようにショットガンを構え、素早く室内に入り敵対する人影が居ないかどうか隈なく(くまなく)探しに打って出る。

 星乃は特に大きな物音にも驚くことは無く、歩きながらマイペースにその後ろに続いた。

 

 

 




【後書き】
 前回のあらすじを見るだけで、あらかた内容が分かるようにしてしまうと本文を呼んでくれる方が減ってしまいそうですね。前回のあらすじは『忙しい人向け』の内容であると思っておいてください。
 ゆえに、細かいことは記入しないでおきます。

今回もダイスの女神が荒ぶっておりました。
出目が非常にキツかったです。立てたプロットが折れ、心が折れかけたこともありましたね。




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Episode1-4 『4つの人形』

【前回のあらすじ】
 巫女である星乃は、探し人が居るらしい。みんなで手分けをして探すことに。
 修羅はどこか上の空。話の3割も聞いていない。

 小説的には美味しいですが、開幕ファンブルとか勘弁してください女神様。

 修羅は同僚に踏みつけられる。




 部屋の中は雑多な実験器具が並ぶ、いかにも研究室と言った部屋だった。

 ベッドが4つ置かれており、そこには8~17歳ほどの少女たちが横になっているのが見える。

 その周辺に簡単な机と椅子、薬品棚、書類立て、電源のないコンピューターなどが置かれていた。埃は積もっていないものの、どこか病的な清潔さを醸し出していた。凹凸の無い本棚、キーボードにはカバーが取り付けられ、クリアファイルも細かく色分けされていた。

 部屋には青白い光が灯っており、寝ている少女たちの顔色が更に悪く見えるのだった。

 

「ベッドに寝ているあの子たち以外に誰も居ないみたいですわね。・・・・修羅 縫さん大丈夫ですの?」

「・・・・・大丈夫です。」

 

 クリスティーナはショットガンを降ろし、ホッと一息を付く。

 そして背中にくっきりと赤大の踏み跡が残る修羅に手を差し伸べた。差し出された手に修羅も掴まり、恥ずかしげに顔を染めあげながらも、付着した土埃を叩き落しながら身体を起こした。

 

図書館

赤大25→67【失敗】

目星

赤大25→18【成功】

 

「おい、星乃。ちょっとこっちに来てくれ。」

「・・・・・・。」

「これ、お前の探しているって奴じゃないよな?」

 

 その間に赤大は書類立てに近づくと、何気なく置かれている書類を適当に手に取り読み上げてみる。そこには日本人や外国人、ハーフまで様々な名前が記入されているのが目に留まった。その書類を何気なく読み上げて居るときのことだ。書類の中に『五十嵐 飛鳥』と書かれた文面を見つける。

 修羅が冷たい視線を赤大に送っているさなか、星乃は赤大に呼ばれ機械的な足取りで歩み寄る。そして赤大が呼んでいた書類がそのまま手渡され、それに目を通すが『五十嵐 飛鳥』と書かれた文面を見るや否や、書類を赤大に返し首を横に振った。

 

目星

クリスティーナ70→52【成功】

修羅80→24【成功】

 

 赤大と星乃が書類を読み上げている間、クリスティーナと修羅はベッドで寝ている少女たちに若干の警戒をしながらも近づいていく。

 少女たちはどの子も時が止まったかのように、静かにベッドの上で横たわっていた。このベッドも、他と同様に病的なまでにシワ一つない清潔感を保たれた様な有様をしている。

 2人は近づき、少女たちを観察している間にある事に気が付く。彼女たちは寝ているのではない。既に息絶えている。呼吸による肺の脈動も無ければ、首に指を当ててみても脈は無く、そこにあるのは異様なまでの冷たさのある皮膚だけだ。

 

「えっ・・・・。」

「・・・まさか。」

 

 さらに悲惨な事実にも気が付いてしまう。今横たわっている4人の少女たち。そのうちの2人は、クリスティーナと修羅が良く知る人物の人相をしていた。

 クリスティーナは、4人の少女のうち最も成熟した17歳ぐらいであろう死体の傍らに立ちつくす。その外見は死んでいるにも拘らず、艶のある長い紫色の髪をしスーツを纏った正装の少女。クリスティーナにとって、知っている彼女は若い。否、若すぎる姿であったが、この少女は自分が幼い頃から慕い続けていた『ロジーナ』である事に気が付いてしまった。

 またベッドの下に何かがある。コツンと蹴り飛ばしたような感覚がしたため下を覗いた。ベッドの下には、ロジーナが子守歌としてかなりの頻度で話してくれたソ連時代の得物である『対戦車ライフル』があり、クリスティーナや妹のクラースヌイに武器の扱い方を教えてくれていた時に所持していた『ショットガン』や『日本刀』などが見つかってしまった。

 

 修羅も軍人用の革手袋を脱ぎ取り、自らが最も記憶として残っている少女に近づいてベッドに腰を掛ける。

 そして愛おしそうに既に息絶えている少女の左頬を撫でた。その少女は修羅と同じように桃色髪であり、修羅よりは小さなものであったが、髪の毛を後頭部で結っているのか小さなポニーテールがあった。年端もいかぬ未熟な8歳ぐらいの身体に、衣装はメイド服を纏い、背中からは天使を連想させるかのような2つの翼が生えていた。

 そして彼女の遺品であるのか、柵には立て掛けられた日本刀がある。修羅は、自分が今見ている光景が誤りである事を願うような顔つきで、その日本刀を手に取り抜刀する。

 ・・・・無慈悲にも、現実は修羅を酷く傷付けることとなった。刀に名前が彫ってある。『ぬいぬい』と。

 

親しい人人間が死亡していたSANチェック【0/1D4】

クリスティーナ79→98【失敗】

1D4→4

修羅73→80【失敗】

1D4→3

 

「ロジ・・・。どう・・・・・して・・・・・・。」

「ぬい・・・・。」

「おい、修羅、クリスティーナそっちは何かあったか?」

「書類。名前。リスト。」

 

目星

赤大25→10【成功】

星埜55→10【成功】

 

「桜井!? お前っ・・・お前もこっち――」

「飛鳥。飛鳥。探す。ました。飛鳥。」

 

 呆然としている2人に対し、一通り書類を読み終えた2人も少女たちが横になっているベッド付近まで近寄る。

 2人も同様に気が付いてしまった。ベッドで寝ている存在について。

 赤大は呆然となっているクリスティーナと修羅を尻目に、ベッドで寝ている少女のような存在に駆け寄る。

 彼女は、否、彼は少女と言うよりも少年と言った井出達をしていた。女の子のように小柄で、非常に可愛らしい顔つきをしており、ピンクのショートヘア風に後頭部の襟足を伸ばし、長い三つ編みが結われていた。また白色メッシュが左前髪に入っている。

 赤大は『桜井』と呼んだ。彼へ、より接近し乱暴にベッドから引き起こす。もちろん彼も既にこの世にあらず。引き起こされても、そのアルビノ肌をした素体は不自然にぐにゃりと崩れ、首も支えてやらねば座ることは無い。そして赤大が座らない首を支えようと首に手を回した時だ。何か、何か『()』を描くような柔らかい感覚と切れ込みが2つあるのを感じ取る。動かなくなった『桜井』を布団に寝かし、その柔らかい個所を確認した。そこには、人間の瞼。瞼の下には『眼』が。「よぶんなめ」があった。本来あるべき場所の他に、もう一対の両目が首元に付いている。

 言葉にしようのない絶望と恐怖、怒りがこみ上げるのを赤大は表情に表した。

 

 星乃も残りの1人の少女に近づいた。『飛鳥』と呼ばれた少女は、3人に対して説明した通り、白髪のロングヘアに死後も安らかな眠りにつきつつ優しそうな顔つきをしていた。そして星乃と同じ巫女服を着用し、額には赤ハチマキを巻いている。祈るかのように指を組み、ベッド上で横になっていた。

 星乃はベッドで横になり、決して起きることのない眠りについたままの『飛鳥』を姫様抱っこの方法で持ち上げる。

 他の少女たち同様、首を生気なく(もた)げたが、星乃は気にした様子もなく、それどころか何処か嬉しそうに無表情な顔に微笑が浮かべた。そんな様子が窺えた(うかがえた)

 そのまま抱え上げると、付近に設置されていた簡単な椅子に座り 寝ている子供をあやす母親の様に優しく抱いていた。

 

親しい人間が死後、罷業の改造を施されていたSANチェック【0/1D6】

赤大65→15【成功】

親しい人人間が死亡していたSANチェック【0/1D4】

星乃79→93

79→77

 

「飛鳥、飛鳥。起きる。私。一緒。帰る。」

「クソ・・・許さねぇ・・・・アタシの・・・アタシたちのアイドルに悪趣味な改造を施したクソヤロウをアタシは絶対に許さねぇ・・・・!!」

「赤大。飛鳥。起きる。ない。疲れ。」

「おう・・・・。多分な・・・。」

「そう。飛鳥。お疲れさま。起きる。私。一緒。帰る。」

 

 星乃は『飛鳥』が明らかに人間であるにしては冷たく、どんなに揺らしても起きることなどない死体であったが、機械的ではありながらも優しい口調で話しかけ、包み込むかのように抱き締めた。

 赤大も『桜井』を元の状態に横にならせると、修羅の手によって破壊された扉を粗々しく踏み抜き、怒りを露わにする。

 クリスティーナと修羅はその間も動くことはなく、呆然と親しかった友人や肉親の手を握ったり、名残惜しそうに触れていた。

 

 

 




【後書き】
低い出目がここではなく、聞き耳に出てきてほしいと思いました。
察しの良い方や、多くのシナリオで遊んでいる方は今回使わせて頂いているシナリオが何か察しているかと思います。

そうです。公式ルルブ記載のシナリオです。
リプレイ動画も上がっていたので小説版も作ってみました。
元ネタや動画は、見つからなければ自力で探すのです。




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Episode1-5 『目醒める少女』

【前回のあらすじ】
 部屋の中で少女が4人ベッドの上で眠っていた。
 4/5はファンブルするのに1/4は成功する不思議。
 少女達は人の姿をしていないものもあった。




 4人が4人の少年少女を見つけてから、何時間程が経過しただろうか。室内は静寂が支配していた。

 クリスティーナは『ロジーナ』の左手を離すまいと、両手で包み込むかのようにベッドに突っ伏したまま入眠し、修羅は妹を弔うかのように顔に布を掛けて、その隣に添い寝するかのように眠っていた。赤大は『桜井』付近の壁に寄り掛かり、ポケットから煙草を一本取り出すと虚空を見上げながらどこか濁った瞳で、タバコを吸っていた。星乃は『飛鳥』を抱えたまま椅子に座っている。

 そんな中『飛鳥』の瞼が「ぱちり」と瞑っていたその眼を開く。

 その両眼は蜂蜜色の虹彩をしており、本当に死んでいるのかと疑わしくなるぐらいに瞳は潤っているように見えた。

 

「ん・・・・ふぅ・・・・・ここ・・・ふぁ!?」

「飛鳥。起きた。おはよう。気分。大丈夫。」

 

 飛鳥は眼を開くと、目前に赤髪の女性が自分を抱き上げ顔を覗き込んでいることに気が付き、思わず上ずった悲鳴を上げる。その悲鳴に連動するかのように左手を握られている『ロジーナ』、『桜井』、『ぬいぬい』の順番にその眼を覚ました。

 

「うっ・・・・・・ここは?」

「あれ・・・? ボク、どうして・・・・・確か・・・・死んだはずじゃ・・・。」

「ん・・・・上手く起き上がれな・・・え? ・・・・・生きている・・・人間?」

「・・・・・!?」

 

 赤大はうとうとしながらも咥えていた二本目の煙草が、唇からポロリと転がり落ちた。

 あの後、星乃を除く3人で確認し合ったはずだ。

 確かに死んでいた。

 しかし、今はその死人どもが起き上がり、聞き取りやすい声で話したではないか。

 

死体がベッドから起き上がったSANチェック【1/1D10】

赤大65→3【成功】

65→64

 

 思わず壁に寄り掛かっていた状態から、目を見開き瞬時に立ち上がる。

 『飛鳥』を除く3人の視線が、一斉に赤大に集まる。赤大は眼を白黒させながら3人の顔をそれぞれ見る。3人も、慌てた様子の赤大に対して困惑の表情を見せる。

 

「あ、えー、えーっと? 初めまして・・・・ですよね・・・? ボクは『(まとい)』って言います。あの・・・・えっと・・・その、まずは互いに自己紹介から始めませんか・・・? このままだとお互いを呼ぶのが大変ですし・・・・どうでしょう?」

「・・・・・・そうだな・・・・・わたしは『ロジーナ』。・・・・・・この手を握っている・・・人間については・・・・・・知らない。」

「寝たままで ごめんなさい。わたしは『ぬいぬい』って言います。えっと、私もロジーナさんの手を握っている人間さんや、隣で寝ている人間さんについては存じ上げないです・・・。」

 

 3人の視線は赤大へと向く。

 

「あー、どうも。アタシは赤大 将。今ロジーナの手を握って起きない奴は、クリスティーナ。で、そっちのぬいぬいの隣で寝ている奴は修羅 縫っていう・・・・アタシの同僚だな。で、向こうの椅子を見て貰えたら分かるんだけどさ。」

 

 赤大は右掌を頭に付けると天井を見た後、熱が無い事を確認する。そして瞬きを数度行ったのち3人に向けて自己紹介を返した。

 また熟睡中の2人の自己紹介も代理で済ませると、飛鳥を抱き上げていた星乃を指差した。

 3人の視線は、その指を指した方向を向く。

 そこには目覚めた3人へ、涙目になりながらも必死に目で助けを求める『飛鳥』の姿と、大事そうに姫様抱っこで『飛鳥』を抱える星乃の姿があった。4人ほどの注目を浴びているはずなのだが、星乃はまったくそちらを見向きもしない。

 

目星

赤大25→25【成功】

 

 代わりに星乃の頭頂部に生えたアホ毛がピクンと揺れたような気がした。

 

「赤髪の白髪を持ち上げている方が、星埜で、持ち上げられている方が・・・・飛鳥・・・だったと思う。・・・おーい! 星埜!!」

「赤大。飛鳥。起きた。飛鳥。起きた。」

「おう、それは良かったな。ちょっと今起き上がった人・・・人? まぁいいか。人達と自己紹介してんだ。その子を連れてこっちに来いよ。」

「わかった。行く。」

 

 赤大に呼ばれた星乃は『飛鳥』を抱え、悠々とベッド側に歩み寄る。

 その体格の大きさに、ぬいぬいと纏は圧倒されたようで口をポカンと開け、星乃を見上げた。

 

「私。星乃。星乃 彩。」

「ひゃっ!」

「飛鳥。自己紹介。」

 

 星乃は『飛鳥』を抱えたまま、機械的に無表情で自己紹介を済ませる。そして抱き抱えていた飛鳥を優しく床に降ろすと立たせ、『飛鳥』の尻を軽く叩いた。またもや飛鳥から上ずった声が漏れ出たが、星乃は気にした様子もないと言った表情をしていた。

 それを見たロジーナが星乃に対し、若干の軽蔑するような嫌悪を抱いたような視線を向ける。

 

「あ、えっと・・・飛鳥です。何故、こちらの方が私の名前を知っているのか分かりませんが・・・よろしくお願い致します。えっと・・・ロジーナさん、纏さん、ぬいぬいさん、赤大 将さん、クリスティーナさん、修羅 縫さん、星乃さんです・・・ね?」

「あぁ、アタシは赤大で良いぜ。フルネームだとちょっと歯がゆいからな。そっちの修羅は修羅 縫の方が語呂は良いかもな。」

「分かりました。赤大さん。」

 

 赤大は飛鳥に『ニシシシシ』と笑った表情を向けた。飛鳥は何処か緊張のほぐれたかのような顔をする。

 

「えっとー・・・御互いに聞きたい事は山ほどあるだろうし、とりあえず寝ている奴等を起こしても良いか? バラバラで話して その都度説明するより、まとめて話をした方が良いだろうしさ?」

「・・・・・・・そうだな。・・・・私は・・・・・・クリスティーナを起こす・・・。・・・・赤大は修羅 縫を・・・・・頼む。」

「おうよ。」

 

 赤大の提案にロジーナは頷きを返し、恐る恐ると言った様子で寝ているクリスティーナの肩を揺する。

 赤大も軽く、修羅の頬を往復ビンタするかのように はたき起こす。

 

「うにゅ・・・・?」

「クリスティーナ・・・。・・・・起きて・・・。」

「オラー、修羅起きろ! お前の写真に写っている子が起き・・・・生き返ったぞ!!」

「ぐっ・・・。ん・・・・はい? 死んだ人間が生き返るなどそんなあり得な――」

「・・・ど、どうも?」

 

死体がベッドから起き上がっているSANチェック【1/1D10】

クリスティーナ75→10【成功】

75→74

修羅70→63【成功】

70→69

 

 二人は確かに死んでいた4人が生きていることに対して大きく驚いたが、それよりも親しい友人や肉親が生きていたことの方が喜ばしかったのか、驚きよりも微笑みの表情が零れていた。

 死体が死体のまま生き返った。という事実に対し、本能は恐怖を2人にも平等に訴えかけていたが、感情がそれを勝っていた。

 

「ロジーナァァァァ! 生き返ったんですのね!? もう大丈夫なのですのね?!」

「・・・・う・・・うん・・・・。・・・・・生き返った・・・というよりも・・・アンデットとして甦――」

「あぁっ! これで約束を破りかけたのは3回目ですわよ!! もう勝手にいなくなったりしないで・・・・! 今度こそ! 今度こそ守ってくださいね!?!」

「・・・・ん・・・・・・・。・・・・・何も・・・・覚えてない・・・・・・けど・・・・・分かった。」

「もうあなたを失うのは嫌なんですの・・・っ。」

「・・・・・・ん。」

 

 クリスティーナは眼中にロジーナが、起き上がっていることを確認すると誰しもが驚くような瞬発力で抱きつき、全身で大切そうに抱擁した。ロジーナは戸惑いながらも、身体の表面に伝わる確かなぬくもりと背中を伝う生暖かい水を感知し、クリスティーナを一人にしてはいけないようなそんな気持ちが芽生えているように。覚束ない手取りで同じくクリスティーナを抱き締めた。

 

「ぬい・・・・ぬい・・・・・ですか?」

「そうです・・よ? えー、修羅 縫さんでしたよね?」

「あぁ・・・。夢なら覚めないでください。もっと私が家族を顧みて居れば・・・すみません・・・すみませ・・・ん・・・。」

「あぅ?! ど、どうして泣くんですか・・・!?」

「私が護ってやるべきだったのに・・・護れなくて・・・・本当に悪かった・・・・。許してください・・・。」

 

 修羅は起こした赤大がその場から退くと、かつての自分の妹の手を取る。

 ぬいぬいも修羅が退いたことで上半身を起き上がらせ、修羅に潰されていた天使のような破れ皮膜が動くか確認しつつも戸惑いながらも、泣きながら謝る修羅を慌てながらも励ますかのように左肩を優しく撫で、破れ皮膜をパタパタとせわしなく動かした。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 4【失敗】

ぬいぬい→修羅 10【成功】

 

 

 




【後書き】
今度から、あらすじを3行にまとめてみようと思います。
その方がネタバレが少なく、なおかつ制限をすることで簡易的に伝えられるように努められるかなと。

もうここまで話が進めば、わかりますかね?
今回は2つのシステムを合わせています。




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Episode1-6 『手駒は揃う』

【前回のあらすじ】
 死んでいたと確認を取った少女たちが起き上がった。
 赤大は簡潔に自分と仲間の紹介をし、アンデット達も自己紹介を済ませる。
 死体が起き上がったことよりも、彼女たちが生き返ったことに対し感極まる。




 互いの意識が戻ったところで互いの状況について話し合う。

 赤大、修羅、クリスティーナ、星埜の4人は気が付いたら、そこに転がっている木製の扉の先にあった通路にいたこと。通路の奥にはもう一つ扉があり、そこは閂状の鍵が掛かっており、自分たちの力では開かなかったこと。通路に居ることへ気が付く前は何をしていたかについて4人に対して話した。

 一方、ドールとして目覚めたロジーナ、纏、飛鳥、ぬいぬいの4人は自分たちが朧げながらも知っている状況下と異なる事に対して、首を横に傾けながら それぞれが知っているネクロマンシーという死者を意のままに操れる技術がある事や、自分たちは既に死んでいる筈のこと、人類は最終戦争によって無事ではない・・・滅んだことについて話される。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 2【失敗】

ぬいぬい→修羅 5【失敗】

飛鳥→星乃 8 【成功】

纏→赤大 10+1 【大成功】

 

「私達が知っている世界情勢と纏さん達が話して下さった世界情勢。大きく異なっていますね。もしその話が真実だとするのであれば、やはりアイツの仕業でしょうか? 手を組んだ?」

「何か知っていらっしゃるのですか? 修羅 縫さん?」

「・・・・いえ、この仮説は誤っていることでしょう。気にしないで下さい。それよりも貴方に修羅 縫さんとフルネームで呼ばれるとなかなか新鮮味がありますね。」

「そ、そうですか?」

「はい。いつもは修羅さんと呼ばれていたので。しかし、私の知っている貴方と貴方が知っている私は異なるでしょうから、別人の戯言とでも聞き流してください。」

「は、はぁ。」

 

 纏は心当たりがありそうな修羅に対し、尋ねるがその答えは真面に返されることは無く、話を逸らされ躱されてしまう。

 

「で、修羅。どうするよ? 今度は8人全員で閂状の扉をこじ開けに行くか?」

「そうですね、ここら一帯を調べて目ぼしいものが無ければ、もう一度開くかどうか確認してみましょう。」

「だったら一通り星乃と調べてみたが、目ぼしいものは無かったぜ?」

「そうですか。でしたら・・・・・・。」

 

 赤大の誘いに修羅は纏との話を切り上げ、ベッドから立ち上がると赤大に向けて歩み始める。

 ドールである4人は互いに顔を見合わせる。クリスティーナはそんな4人を見ると、飛鳥を再び抱き上げている星乃に飛鳥をベッド上に置くように示す。星乃は飛鳥を手放すことに対して、嫌悪を示していたものの、一度飛鳥の何処か強張ったような表情を見るや否やクリスティーナの提案をのみ、ベッドに降ろして2人で修羅と赤大の元まで歩み寄った。

 探索者4人は集まったところで今後の方針について話し始める。

 

「・・・・・皆はどう思う? あの人間達。」

 

 4人が自分達から適度な距離まで離れると、4人を一瞥した後 纏は離れて行くクリスティーナを名残惜しそうに眺めるロジーナ、星乃から降ろされホッと一息を付く飛鳥、痺れる感覚がまだ残っているのか羽をパタパタと動かしているぬいぬいに話しかけた。

 

「・・・・・・・どう・・・・と・・・・いうと?」

「果たして『信用しても良いかどうか』かな。」

「わたしは、信用しても良いと思います。わたしたちが話している内容について、全く知らなかった様な素振でしたし、私達を作ったネクロマンサーでもなさそうです。それに・・・わたし個人としては修羅 縫さんは一人で抱え込みそうなので守ってあげないといけないような気もしますし。」

「私も・・・。私をずっと抱き抱えていた星乃さんから、敵意のような物を全く感じませんでした。信用してもよろしいのではないかと思います。星乃さんは私の事を何かとても大切にされていた様な・・・あの方についての記憶は全くないのですが・・・。」

 

 ぬいぬいと飛鳥は纏の問いに対して、少し考えたのちに4人に聞こえないように配慮しながら、内緒話をするかのように自分を除く3人に対して意思を伝える。

 その返答を聞いている間も、ロジーナはクリスティーナが気がかりで仕方ないのか、逐一様子を確認し その様子に気が付いたクリスティーナが微笑み手を振ると、若干口角が上がり軽く会釈を返すのだった。

 一方、纏は2人の意見を聞きながらもクリスティーナに対して会釈しているロジーナを会話に織り交ぜ、修羅のことを鋭い眼差しで一瞥した。

 

「ボクは、信用すべきではないと考えているのだけど・・・。」

「それは どうしてですか? 星乃さんは、目覚めた時に私にあんなことをしていた人でしたが、恐らくあれは死体となっても、私を思ってくれていてやった事の様に思えますし・・・悪気はないと思いますよ?」

「・・・星乃さんは、ボクも信用しても良いかなって思っているところはあるけど、修羅 縫彼女ばかりは信用できないよ。ボク達の記憶は全てを思い出すことが出来ないって伝えているのにさっきだって茶を濁して、仮説だとしても考えられる情報を教えてくれなかったじゃないか。・・・ロジーナはどう思うかな?」

「私は・・・・・・・。・・・・クリスティーナは・・・・・・信用できる。・・・・あの子は・・・・・守って・・・あげないと・・・・・いけない子・・・・・。赤大も・・・裏表がないタイプ・・・・・・だと思うから・・・信じて良いと思う・・・・・・・・けど・・・・・・・。」

「けど?」

「・・・・・・・纏と同じく・・・・・修羅 縫は危険。信用するべき・・・じゃない・・・・それに・・・・・・星乃も。」

「星乃さんもですか?!」

「・・・・・・・・クリスティーナ・・・・引っ張って行った・・・・。」

「・・・あの様子だと、どちらかというとクリスティーナさんが纏さんの様子を察して、私達の4人だけの空間を作ってくれただけだと思いますけど・・・。」

「・・・・・。」

 

 4人は一通り自分の思いを伝えると、離れている4人の探索者を覗く。

 今はどうやら穴の開いた木製の扉を持ち上げ、壁に立て掛けながら扉を盾や武器として活用できないかどうか話しているようだ。扉に関してはかなり時間が経っているのか、星乃が扉を一撃殴ると更なる穴が開いてしまった様子が窺えた。

 ドールたちは探索者を見るのを止め、互いに向き直る。飛鳥とぬいぬいの2人は纏をじっと見据え、ロジーナは相変わらずクリスティーナが気がかりであるのか、扉、盾化議案について修羅に意見している様子を見守っていた。

 

「よし、それじゃ こうしない? お互いに思う事もあるし、今は半分信用して一緒に行動しよう。ボク達の記憶が誤っていなければ、人間達は滅んでいる筈だし ここで人間と出会えたのも貴重な体験かもしれないしね。」

 

 纏はドールたちの顔つきをそれぞれ確認すると、一回頷き双方の意見を汲み取った『今は信用する』という事で結論付けた。その結論が決まるとぬいぬいと飛鳥の表情は明るくなり、ロジーナの表情にも若干光が灯った。

 

 

 




【後書き】
 序章が終わりましたので、明日から本格的にシナリオに沿ったリプレイ風小説を投稿していきます。
 今回はネクロニカ要素増し増しで行きたいと思います。
 もちろんクトゥルフの探索者も使っているのでクトゥルフ要素も絡めているようになっている筈です。

 これが『外伝』であった理由です。




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1章 『捧げる愛』
Episode2-1 『超能力実験』


【前回のあらすじ】
 探索者側とドール側で現状分かっていることを話し合うも情報が食い違う。
 必要以上の情報を伝えない探索者に不信感を募らせるドール達。
 探索者と離れた隙に内緒話を展開し、それぞれ感情を抱くドール達。




対話判定

ロジーナ→纏 6【成功】

ロジーナ→ぬいぬい 7【成功】

ぬいぬい→飛鳥 5+1【成功】

ぬいぬい→ロジーナ 4【失敗】

飛鳥→ぬいぬい 4【失敗】

飛鳥→纏 1【大失敗】1D10→5

纏+1 【信用】→【恋心】 [発狂状態]

纏→ロジーナ 8+1【成功】

纒→飛鳥 1+1【失敗】

 

 飛鳥が纏の顔を見ながらモジモジし始め、この先の話がまとまった時のことだ。

 8人全員に対して、何か唐突に背筋へゾワリと不穏な感覚が広がるのを感じた。

 それは例えようがなく胸が悪くなり、眩暈が生じる様な感覚。互いに、その感覚を感知しているのかと全員互いの顔を見合わせる。

 誰も彼もが青い顔をしていた。但し星乃だけは青い顔をせず、全身の毛を逆立てるように気張ったように目を見開き、不気味な感触に唸るように牙を向けながら耐えていた。

 

そんな不気味な感覚にSANチェック0/1および狂気判定

クリスティーナ74→10【成功】

修羅69→44【成功】

赤大64→65【失敗】

64→63

星乃77→91【失敗】

77→76

 

ロジーナ→6【成功】

ぬいぬい→8【成功】

飛鳥→1【大失敗】 1D10→10

星乃+1 星乃に対する【恋心】→【信頼】

纏→4【失敗】

赤大+1

 

 

「飛鳥。大丈夫。」

 

 全員が全員苦悶の表情を浮かべながらも、真っ先に動いたのは星乃であった。

 真っ直ぐに飛鳥の元へと駆け寄ると、顔を赤らめながらも辛そうな飛鳥を抱き寄せ抱える。口から出て来る声は機械的ではあったが、表情は少し心配したかのような表情になっている。それを飛鳥は微笑むと星乃の左頬を優しく撫でた。

 

「星乃さん・・・。はい、大丈夫です・・・。」

「大丈夫。よかった。」

「・・星乃さんはお優しいのですね。自分も辛そうなのに真っ先に私の事を心配して下さるなんて・・・。」

「飛鳥。私。大事。護る。約束。」

「約束・・・。そうなのですか・・・星乃さんになら、安心して背中を預けられそうですね。」

 

対話判定

飛鳥→星乃 7【成功】

 

 他の3人も足取りは重くも近づき、互いの安否を確認する。幸いにも一瞬でも動けなくなるような感覚はすぐに引き、真面に動けるようになるまで時間は掛からなかった。

 

「酸素不足・・・という訳ではないようですね。ですが、長居はよろしくないのかもしれません。纏さん、飛鳥さん、ロジーナさん、ぬいぬい・・・さん。この先にある扉を開けるのを手伝ってくださいませんか?」

「はい。星乃さん。星乃さんも扉を開けるの手伝ってくださいませんか?」

「わかった。飛鳥。頼み。手伝う。」

「纏! お前も手伝ってくれ! アタシじゃ敵わなくてもお前なら行けると思うんだ。」

「・・・! うん、任せて!」

 

 赤大&纏、星乃&飛鳥の2組が修羅と赤大の指示に対して頷くと、駆け足で扉が外れた入口をくぐり、閂状の扉まで走って向かう。最初、修羅の指示が気に食わなかった纏とロジーナは鋭い目つきをしていたが、ロジーナはクリスティーナが勝手に何か資料を漁り始めていることに気が付き、纏は赤大に呼ばれると力強く頷きその後ろに走って行った。

 

図書館+判定

クリスティーナ60→55【成功】

ロジーナ→4【失敗】

ぬいぬい→7【成功】

修羅25→81【失敗】

 

 残った4人はクリスティーナが書類棚を細かく漁り始めたため、便乗するかのようにその場に留まり資料を漁り始める。星乃や赤大は何もないと言っていたが、クリスティーナとぬいぬいはその資料について漁っているうちに興味深い内容を2つ見つける。

内容としては次の通り。

 

・この部屋では人間の脳に刺激を与え、強い思念の力。いわゆる超能力の実験を行っていた。

 記録を見る限りではロジーナ、ぬいぬい、飛鳥、纏に行ったという実験記録は存在せず、

 また身体の方にも実験の形跡が行われた様な後は見当たらない。

・実験の立案者兼責任者の名前はゲオルグ・アイヒマン博士。

 添付された写真で見る分には偏狭(へんきょう)そうな老人に見える。

 

「赤大さんや星乃さんは、ココには何もないと仰っていましたけど、やはり重要そうな書類がありましたわね・・・。超能力の実験記録です・・・か・・・。・・・見たところロジーナやぬいぬいさんに、そのような痕は残っておりませんから安心して良いですわよ。」

「・・・・・ん・・・。・・・・ありがと・・・・。」

「修羅 縫さん、こっちにはこんなモノがありました。この写真の老人が実験をしていたようですね。」

「ふむ。纏さんが仰っていらしたように、この世界にはもう『道徳』の概念は存在しないのかもしれませんね。わかりました。ぬいぬいさん、ありがとうございます。」

 

 そして、一通りの調査を終えた時の事だった。

 先ほど収まったと思っていた あの感覚が先ほどよりも過敏に4人へ襲いかかった。それは、非常に粘液のあるものを体中に擦りつけられザラザラとした細長いもので全身を嬲り尽くされる様な不気味な感覚。

 

不気味な感覚にSANチェック1/2+狂気判定

クリスティーナ74→58【成功】

74→73

修羅69→97【失敗】

69→67

ロジーナ→8【成功】

纏+1

ぬいぬい→4【失敗】

飛鳥+1

 

 修羅は身体に沿う不気味な感覚に対し、引きはがそうと思わず全身を駆け巡る感覚に手掛け、引きはがす素振をするがその感覚は空を切った。当たり前である。肉体的に修羅を犯している物体など存在していないのであるから。

 ぬいぬい自身も、暴れる自分と似た存在を落ち着かせようとするものの、自分のことで手一杯なためか、あと一歩のところで膝を付き頭を抱える。

 ロジーナとクリスティーナも同様の状況下に陥っていた。修羅やぬいぬいほどでは無いものの体中を凌辱される様な不気味な感覚に包み込まれ、暴れたり動けなくなるほどではなかったが明らかに動作に支障は出ていた。

 

 

 




【後書き】
 ナイトメア達による精神攻撃などは威力に応じて0/1D20~40の処理をしようと考えております。
 そのほかの戦闘処理につきましては、のちに公開するハウスルールを見て頂けたら幸いです。




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Episode2-2 『代理指揮通達』

【前回のあらすじ】
 一旦、2手に分かれ不快感に身を震わせながらも探索を進める。
 ここの研究所では超能力の実験を行っていたことが判明。
 謎の不快感は二度、ドールと探索者を襲う。




 書類に関して新たな記述を見つけ、謎の頭痛や不快感に襲われている間。

 その頃、扉の開閉に向かった4人のうち、纏が(かんぬき)に手を掛けていた。

 

「飛鳥。先。女。泣く。声。」

「泣いている方がいらっしゃるのでしたら、励まして差し上げないといけませんね。星乃さん、教えて下さってありがとうございます。」

 

「開きそうか?」

「なん・・・とか。」

「援護射撃は任せておけ、何が出てきてもアタシが護ってやる。」

 

 扉側を先頭に、纏、赤大、星乃、飛鳥の順序で立っている。

 赤大は二挺拳銃をホルスターから既に引き抜いており、いつでも発砲できる状況で纏を励ましているのであった。そんな掩護射撃をしてくれるという赤大に友情の高鳴りを感じながら、重く閉ざされた閂を開け切った。そして扉さえ押せば開くと言った瞬間だ。

 背後から修羅とぬいぬいの苦渋に満ちた声が通路側にも聞こえた。

 

「あ、ああ赤大さん!」

「あぁ、分かってるよ! 星乃! ここを見張ってろ!!」

「分かった。」

 

 纏の掛け声と共に纏と赤大も踵を返し、通路先の研修室に戻る。

 しかし、2人が戻った時には幸運にも謎の発作は収まったようで、壁を背凭れ(せもたれ)掛けながら休んでいる2人の姿が見えた。

 その付近ではクリスティーナとロジーナが、自分の頭に手を当てたり、身震いをしているのが目に入る。

 

「どうかしたの?!」

「大丈夫か!? 何があった?!」

 

 纏は重症なぬいぬいに駆け寄り、赤大は比較的話の聞けそうなクリスティーナに近づき事情を尋ねる。しかし、クリスティーナは良くわからないと言った様子で首を振るだけであり、ぬいぬい自身も纏に向けて引き攣った笑顔を見せるだけだった。

 

「赤大さん! ボクはぬいぬいを運びます! 赤大さんは修羅 縫さんを!」

「おう! ・・・・クソッ・・・一体なんだッてんだよ・・・!」

 

 2人はそれぞれ重傷な2人の方に手を貸すと、2人の歩幅に合わせた速度で扉まで運んで行った。残された2人も、対戦車ライフルを杖や互いに肩を貸し合う事で、なんとか閂の前まで訪れる。閂前まで来ると4人の調子も落ち着き、若干の疲労感がある様子ではあるが、行動するには支障がない程度には回復したようだった。

 

「・・・大丈夫です。行きましょう。」

「わたしも・・・大丈夫です。ここに長居するのは良くないかもしれません。行きましょう。」

 

 しかし“回復した”と言っても、顔色は決して良いと言えるようなものではなかった。

 修羅が立ち上がるとぬいぬいも後を追うように立ち上がる。被害が少なく済んだ2人は、ほぼ完全に回復したと言った様子で戦闘準備をしている。

 

「・・・・・おい、纏。頼みがあるんだが。」

「なにかな?」

「修羅が意地で動いているところがある。お前は他の連中のまとめ役としても動いていたな。いざとなった時の指揮は任せても良いか?」

「うん・・・!」

 

 明らかに大丈夫な様子ではない修羅を見た赤大が、小声でぬいぬいを補助しに行こうとした纏を呼び止める。纏はその場で立ち止まり、赤大の声に耳を傾けた。

 幸いにもぬいぬいのフォローは飛鳥が手を貸しているようだ。安心して、そのままの状態で返事を返す。

 そして赤大の表情は見えなかったものの、すべての指揮を任されると表情は替えなかったが、自信ある返答を返した。

 

 

 




【後書き】
 クトゥルフ×ネクロニカ小説を書いていると言うことで、私も新たに新システムに挑戦してみました。
 思いのほか楽しかったですよ! ネクロニカ!

 まさに、スプラッター洋画劇場
 はじめろハラワタ!飛び散れ血液(粘菌)
 四肢バラバラ、アンデットの少女!!
                          ネクロニカ!

 シナリオ時間通りで毎回終わりますし、買ってよかったです。


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Episode2-3 『黒き姑獲鳥』

【前回のあらすじ】
 どうやら星乃の話では、閂状の鉄扉の奥に泣きわめく女性が居る様子。
 通路まで足を運んでいたドールと探索者両名には不快感は及んでいなかった。
 無理しながら動く修羅を尻目に、赤大は正しい判断能力を備えてそうな纒に後任を任せる。




 8人は閂の付いた鉄の扉を開けて中に入る。

 そこは高い天井のある巨大な吹き抜けとなった洞窟のようであった。壁には全て、何段もある棚となっており、数えきれないほどの培養槽がびっしりと所狭しに並べられている。培養槽にはそれぞれ、崩れかけた肉片やふやけて膨らんだ奇怪な塊りが入っていた。床にはいくつかの作業機械が置かれており、中には血液のような液体が媚びりついた機械が置かれているのが目に入る。

 そして高い天井の上、上空では奇怪な黒い鳥が浮かんでいた。よく見ればその奇怪な鳥は身体の大半を機械化させた少女のようで・・・狂ったかのように歌い泣き叫びながら、腕にしっかりと小さな培養カプセルを抱きかかえているのが8人には確認できた。

 その中にはピンク色の人間の胎児が入っているようであった。

 

目星+行動判定(+1)

クリスティーナ70→85【失敗】

修羅80→49【成功】

星乃55→25【成功】

赤大25→12【成功】

ロジーナ→10+1【大成功】

ぬいぬい→4+1【失敗】

飛鳥→1+1【失敗】

纏→4+1【失敗】

 

 そして8人のうち、修羅、星乃、赤大はその胎児に対して何か気になる点を感じたが、それは何がそのように感じさせるのかまでは理解が及ぶことは無かった。

 それよりも周囲の肉片やふやけた何かが、あの胎児を見ていると・・・何か、人間の形をしているような、そんな思考が狂気として身体を包み込んで行った。

 

SANチェック0/1

修羅67→29【成功】

星埜76→22【成功】

赤大63→49【成功】

 

 3人が身震いをしている間、戦闘準備を整え終えたロジーナは狂ったように泣き叫ぶ少女に向けて対戦車ライフルの標準を合わせていた。スコープを覗き込んでいた時の事だ。たまたまスコープ越しに『胎児』と目が合った。

 その胎児は緑色の培養槽の中でも生きているのか、ピクピクと痙攣し、一度大きくビクンッと震えたようにロジーナには見えた。それは生きているが故の生理的反応ではない。まるで、『何かに対し驚いた』かのような反応に似ていると感じ取る。

 ロジーナが胎児の反応について思う事があった直後、警報音が周囲に響きわたる。警告する音声など混じっていない純粋な警告音。その音と同時に床に置かれた作業機械が動き始めドールと探索者ににじり寄ってくるのであった。

 

「わたしの子! わたしの子!! いい子! いい子!! いいいいいい子! わたさない! わたさないぃぃいぃいいいいい!!!」

 

 奇声を上げながら、空を飛びまわる少女は一旦その場でホバリングすると、探索者ドール双方を狂った眼差しで捉えた。

 ロジーナはこれまで通ってきたコンクリートの通路上に素早く寝そべり、銃身を安定させ狂った少女・・・仮の名『レイヴン』に狙い定めた。残りの7人は、ホールの床で武器を構える。

 そして今、戦いの火ぶたが切って落とされたのだった。

 

 

 




【後書き】
 既に書きたい後書きの内容が、枯渇していますが今回も無事に最後まで【後書き】を記したいです。
 今回、クトゥルフ×ネクロニカのドラマ風小説を書いたのは、あるNCさんが回してくださった『E=sの落とし子』というシナリオが、とてもクトゥルっぽい。お前、クトゥルフに居なかった? それっぽい奴居るよな?と思い当たった節があったので織り交ぜてみた次第です。




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Episode2-4 『相手の大切なものに弾をシューッ!!』 - 前半戦

【前回のあらすじ】
 閂状の鉄扉の奥はサンプル保管庫のような作りとなった実験場だった。
 上空、天井近くには『胎児』を抱いた黒き姑獲鳥が飛び立ち、警告音と共に機械が起動し始める。
 ロジーナは『胎児』を見つめた瞬間、とある『気づき』を得た。




===1ターン目========

 

編成

【奈落】

レイヴン

【地獄】

ミートシュレッダー1~4

【煉獄】

リフトバイス1~6

ぬいぬい、飛鳥、纒

クリスティーナ、修羅、赤大

【花園】

なし

【楽園】

ロジーナ

 

 

先制射撃

クリスティーナ150→19,50【スペシャル、成功】

ゼロ距離射撃+貫通

対象リフトバイス1[完全解体]

 

赤大178→81,43【両方成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾

対象リフトバイス2

→以下のパーツを破壊

モーターギア、キャタピラ、強化装甲、サブエンジン、装甲板、装甲板

 

 

 

 開幕と同時に探索者固有のスキル。

 先制ゼロ距離射撃が動き出し8人に接近してくる重機械へ向けて鉛玉が放たれる。唐突な射撃攻撃に対して機械も反応しきれなかったのか、2発のショットシェルを同時に受け穴まで開けられたリフトバイス1はクリスティーナの目の前で機能を停止させる。

 その動きに続くようにし、赤大も残りのリフトバイスに対し二挺拳銃が放たれる。レーザーポインターは正確に的を狙い。そして通常弾とは異なるホローポイント弾が込められた弾は、リフトバイス2の装備を抉って行く。

 

 

 

COUNT16

星乃

????80→43【成功】

対象リフトバイス2[完全解体]

 

 

 

COUNT15

クリスティーナ

→ショットガンリロード

 

修羅

武道キック80→61【両方成功】

対象リフトデバイス3

ダメージ:強化装甲+2

→以下のパーツを破壊

装甲版

 

赤大

拳銃178→30,39【スペシャル,成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾+貫通

対象リフトバイス3[完全解体]

 

 

 

 先制射撃も終え、真っ先に動き出したのは機械でも狂った少女でもドールたちでも無かった。それよりも早く動ける者、それは人である探索者4人だ。

 星乃は手近にあったリフトバイス2を素早く殴りつけた。その拳の鋭さは、他の7人には捉えることのできない鋭い一線であったが、実際に体感した機械自身はその機能を停止させ動かなくなった。

 修羅は動けなくなったリフトバイス2には興味がなくなったかのように3に対して軍隊式格闘術の立ち蹴り技をお見舞いする。しかし、先制射撃ではない攻撃に対しリフトバイス3は強化装甲で、蹴りが当たるよりも早く身を守った筈だった。装甲板が外れ、床に転がる金属音が培養室に響く。

 赤大の二挺拳銃は終わっていない。修羅が蹴り壊した装甲版に向けて鉛玉を叩き込む。内臓とも呼べる部位をかき乱されたリフトバイス3は動くのを止めた。

 その間にクリスティーナは中折れ式ショットガンの弾を装填する。これで再び時が来れば先制で仕留めることができる。

 

 

 

COUNT14

『レイヴン』

レーザービーム→6[防御側任意]

対象ぬいぬい

ダメージ:スチールボーン 防御1+「切断無効化」

 

「わたさないわたさないぃぃ!!!」

「ぐっ!」

「ぬいぬいっ!!」

「・・・大丈夫です! 修羅 縫さんは他の敵を!!」

「いぃいいいぃいいいいい!!」

 

 探索者が行動を終えた直後、『レイヴン』もけたたましく叫び狂いながら、目を輝かせたかと思うと横に薙ぎ払うかのように一閃。ぬいぬいの胴体部分を狙い「レーザービーム」を繰り出す。しかし、そのレーザーの攻撃はぬいぬいの腹部に装備されていた「スチールボーン」により事なきを得る。

 

 

 

COUNT13

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

 

「ど、どどどどどうしましょう!? あの人、目から、目からビームを撃って来ましたよ!?」

 

 飛鳥は目の前のリフトバイスにライトセイバーで斬り掛かるも、最近部にて浮遊している彼女の瞳からレーザー光線を放ったことに浮足立ち、上手く攻撃を当てることは出来なかった。

 

 

 

COUNT11

『レイヴン』

レーザービーム→2【失敗】

対象:修羅

 

ロジーナ

対象:『レイヴン』

対戦車ライフル→4【失敗】

無茶→はらわた損傷

対戦車ライフル→5【失敗】

無茶→はらわた損傷

対戦車ライフル→8[銅に命中]

胴体全損

 

飛鳥

せぼね

 

 『レイヴン』は狂った奇声を上げながら、ぬいぬいを心配しリフトバイス2の装甲を破壊した修羅に対して『レーザービーム』を射出する。間一髪。修羅が元居た場所の培養カプセルが音を立てて割れ、中から何かの肉片が零れ落ちるだけで済んだ。

 修羅に注目が向かっている『レイヴン』の はらわたが粉砕し雨のように周囲へと散りばめられた。通路にはロジーナが周囲に臓物を飛び散らせつつも、真剣な眼差しで対戦車ライフルを構えている。床には薬莢(やっきょう)が3発落ちており、どうやら3発撃ちこんだようであった。

 

 

 

COUNT9

ラピッド:号令

 

星乃

????80→35【成功】

対象:リフトバイス4

ダメージ:強化装甲+2

→以下のパーツを破壊

装甲板*2

 

クリスティーナ

待機

 

修羅

武道キック80→72【成功】

対象:リフトバイス4

→以下のパーツを破壊

サブエンジン、キャタピラ、強化装甲

 

赤大

拳銃178→85,81【成功,成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾

対象リフトバイス4[完全解体]、リフトバイス5

→以下のパーツを破壊!!!

装甲板*2

 

ぬいぬい

日本刀→7【成功】

対象:リフトデバイス5

→以下のパーツを破壊

サブエンジン、キャタピラ

 

飛鳥

ライトセイバー→1【大失敗】

切断判定失敗

足全損

 

ロジーナ

対戦車ライフル→1【大失敗】

無茶→ほね損傷

対戦車ライフル→9【腕】

対象リフトバイス5[完全解体]

 

「全員、総攻撃!!」

 纏は周囲の様子を確認し、素早く状況を判断する。自らが出来ることで誰も死なずに、被害を最小限に、最善の殲滅をするにはどのように戦えば良いか。

 結論は相手が動くよりも先に、少しでも多くの敵を亡きものにすることだった。

 赤大に頼まれた期待に応えるように敵が動き出すよりも早く『号令』を掛ける。

 そして8人全員の猛攻が始まった。真っ先に動いたのは星乃。飛鳥の最寄に居る敵を素早く殴りつけ、装甲板を2枚引きはがす。修羅が剥がれた装甲板の箇所を重点的に蹴りを入れ、赤大は情け容赦なくリフトバイス4の更に貧弱性がある個所に特製の鉛玉を。付近に居るリフトバイス5に残りの1撃を叩き込んだ。赤大の銃撃に合わせるようにぬいぬいも『ぬいぬい刀』を引き抜き切りかかる。リフトバイス5はプスンプスンと音を立て始めていた。斬り掛かりに向かおうとした飛鳥は、コードに足を引っ掛け転んでしまう。その時迂闊にも手を放してしまったライトセイバーは宙を舞い、あろうことか自分の足を切断した。

 そんな動けなくなった飛鳥に対し、リフトバイス5の魔の手が忍び寄る。しかし、それよりも早くロジーナはリフトバイス5に狙いを定め破壊した。足の骨を銃の支えにしたのか、一本『ほね』が多脚の代わりをしていた。

 

ミートシュレッダー1~4

多脚戦車→【煉獄】移動

 

リフトバイス6

対象:修羅

クラッシュバイス→ 4【失敗】

 

 最新鋭の6脚の足を使い、ミートシュレッダー4機は前進を開始する。その歩行は遅いが着実に8人との距離を縮めて行った。最後の1機となったリフトバイス6は、痛みを感じぬ死人のドールよりも破壊しやすそうな修羅を握りつぶそうと腕を伸ばす。しかし、その攻撃は武術を極めている修羅にとって躱すのに問題のない機械的な動きであった。

 

飛鳥

せぼね

 

 

 

COUNT8

『レイヴン』

レーザービーム→3【失敗】

対象:修羅

 

飛鳥

ライトセイバー→9【腕】

ライトセイバー→9【腕】

対象リフトバイス6

ダメージ:強化装甲+2

→以下のパーツを破壊

装甲板*2、キャタピラ

 

せぼね

 

ぬいぬい

日本刀→3【失敗】

対象:ミートシュレッダー

 

赤大

拳銃89→40,10【両方成功】

二挺拳銃+ホーロー弾

ジャッジ

ミートシュレッダー=正面装甲 防御1

→以下のパーツを破壊

スクレーパー、正面装甲、突進、オートバランサー、サブエンジン、装甲板

 

 攻撃をひらりひらりと(かわ)した修羅に対して、執拗な『レイヴン』の「レーザービーム」が放たれる。しかし、やはり その一撃は動き回る修羅には当てることはできない。

 脚を自分のライトセイバーで失った飛鳥ではあるが、再びライトセイバーを手に取ると胴体を横に回転させるように回ったのち、攻撃が届きそうなリフトバイス6を斬りつけパーツを3種ほど破壊する。

 纏は何が来てもよいように身構えていた。そんな纏を気遣うように赤大が傍らに立ち、接近してくるミートシュレッダー共に鉛玉をお見舞いする。先頭を走るミートシュレッダーから火花が飛び、赤大は背後の纒にウィンクを飛ばした。纒も明るい表情を見せる。

 

 

 

COUNT7

せぼね

 

飛鳥

ライトセイバー→4【失敗】

 

 

 

COUNT6

リフトバイス6

クラッシュバイス→2【失敗】

対象:修羅

 

ミートシュレッダー1~2

移動→【花園】

 

ミートシュレッダー3~4

対象:飛鳥、纏

シュレッダー→【9+1,8+1】→【頭、腕】

ジャッジ

ミートシュレッダー3~4

スクレーパー→支援+2

ぬいぬい+纏=あし 妨害2

飛鳥

サイボーグ防御+2

 

→以下のパーツを破壊【纏】

こぶし、うで

切断判定9【成功】

 

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

 

せぼね

 

 

 

COUNT5

『レイヴン』

レーザービーム→6【任】

対象:修羅

 

「何度も同じ様な攻撃が当たるとでも・・・・。」

「血が!血血血血血が!!ゆるさなぃぃいぃいいい!!」

「修羅 縫さん!!! 危ないっ!!」

 

ぬいぬい

ダメージ:庇う

ダメージ:背徳の悦び「スチールボーン」

→以下のパーツを破損【ぬいぬい】

こぶし損傷

切断判定→6【成功】

 

「・・・!!」

「・・・・。」

「っ・・・! キサマッ!! 私の家族に手を出してくれたな?! 生きて出られると思うなよ!?」

「こここここののこの子ここ・・・・わたさなぃい! わたさない!!」

 

ロジーナ

対戦車ライフル→3【失敗】

無茶→かた損傷

対戦車ライフル→5【失敗】

無茶→ほね損傷

対戦車ライフル→7【脚】

対象ミートシュレッダー1[完全解体]

 

せぼね

 

 ミートシュレッダーは二手に分かれる。

 ホールの床に集中して集まっているものを亡きものにしようとするグループと、後方の援護射撃を行っている煩わしいロジーナを仕留めるグループである。

 ホールの床に集まっている敵性ドールや人間に向けて、ミートシュレッダーは全てを破壊する金属音を響かせながら飛鳥や纏に食って掛かる。ミートシュレッダー4の捕食とも呼べるべき廃棄活動は纏とぬいぬいの足に引掛けられる形で不発に終わる。飛鳥も巻き込まれかけるが、自分の身体に備わっていた合金金属製の部品により、跡形もなく破壊されずに助かった。

 一方、リフトバイス6は修羅を再び狙いクラッシュバイスで押しつぶそうとする。それを修羅はバックステップを取ることで避けた直後、待っていましたと言わんばかりに修羅に向けて正確な「レーザービーム」が放たれる。世界が遅くなった気がした。回避は間に合わない。直撃すると覚悟を決めた瞬間、別の何かに背中を押され 修羅は床を滑る。そして遅くなった景色の中、目に映るのはメイド姿のぬいぬいが修羅を庇い背中を「レーザービーム」で焼き焦がしている瞬間だった。

 修羅の瞳孔が開く。そのまま床に崩れるぬいぬいを素早く抱き上げるが、それは目を瞑ったままの動かぬ死体であった。怒りに震え修羅は『レイヴン』に向け感情を爆発させたような怒声を響かせる。怒鳴られた彼女はヒステリックにも会話にならないような叫び声を上げるだけだ。

 そんな中、ロジーナは手汗を握らせながら、黙々と接近を試みるミートシュレッダー2体に対して鉛玉を撃ちこんでいた。多少のパーツ破損如き何ともないと言った様子で敵を射抜く。クリスティーナが絶望と泣き出しそうな表情をしていたが、微笑み自分は大丈夫だとサインを送るのであった。

 

 

 

COUNT3

ミートシュレッダー3~4

シュレッダー→【5+1、6+1】→【任、脚】

対象:ぬいぬい、飛鳥

 

ジャッジ

蠢く肉片→妨害3ミートシュレッダー4

 

ミートシュレッダー3

ぬいぬい→切断判定失敗。→脚全損

 

ミートシュレッダー1~2

移動→【楽園】

 

リフトバイス6

クラッシュバイス→2【失敗】

対象:修羅

 

 敵の攻撃は後半になればなるほど激しさを増していた。

 ホールの床で のた打ち回っているドールたちに向けて、ミートシュレッダーは歩みを進める。1台は纏の千切れた肉片により、脚を引掛け攻撃が当たるのを阻止できたが、ぬいぬいに向かったミートシュレッダーを止める術はなかった。修羅も接近してくる存在に対し、妹の亡骸を持ちながら逃げようとするものの、それよりも早くミートシュレッダーはぬいぬいの足をズタズタに引き裂いて脚を全て解体してしまった。

 

せぼね

 

ぬいぬい

かた

移動→【楽園】

 

 リフトバイス6が修羅に対して攻撃している間に、ぬいぬいは閉じていた瞼を開き、這いずるようにしながら1人戦っているロジーナ側へと培養槽の隙間に身体を引きずって入って行く。背後から修羅の呼び止める様な声が聞こえたような気がしたが、笑って何ともない様子を装う。

 

飛鳥

ライトセイバー→6【敵任】

ライトセイバー→3【失敗】

死の舞踏

ライトセイバー→10【頭】

 

ジャッジ

ミートシュレッダー3

正面装甲+1

飛鳥=うで 支援1

→以下のパーツを破壊

正面装甲、メインエンジン、サブエンジン、装甲板

 

 その間も、飛鳥は転がりながらミートシュレッダーを逆に粉みじんにすべく奮闘していた。攻撃が外れれば、舞踏を踊るかのように身体を横に回転させながら敵を切り裂いて行く。

 

 

 

COUNT2

『レイヴン』

レーザービーム→2【失敗】

対象:星乃

 

ロジーナ

待機

 

 『レイヴン』は怒り狂う修羅を嘲笑うかのように狂った叫び声を上げながら、星乃に一閃を浴びさせる。しかし、その攻撃は星乃の髪を焦がすだけであり、当たることもなかった。星乃は焦げた部分を指で触り、確認を取り終えると何事もなかったかのように構えの姿を取る。

 ロジーナはクリスティーナがこちらに来ないように奮闘する素振を見せる。ほねも、かたも壊れた今、移動する手段はない。であれば精一杯足掻いて、心配させないようにしようと思ったのが彼女の考えであった。その射撃はミートシュレッダー3を粉砕する。

 飛鳥の身体全体を使った、回転を加えた攻撃も留まることを知らなかった。ミートシュレッダー2着実に解体していく。

 そして、飛鳥のミートシュレッダー2に向けての攻撃が終えたところで、10秒が経過した。

 

狂気点

ロジーナ→ぬいぬい+1

ぬいぬい→修羅+1

飛鳥→纒+1

→こぶし損傷

纏→ロジーナ+1

 

自分たちの最愛の存在が形を崩れて崩壊していくSANチェック2/1D4+2

クリスティーナ73→15【成功】

73→71

修羅67→39【成功】

67→65

赤大63→54【成功】

63→61

星乃76→14【成功】

76→74

 

 

 




【後書き】
 前回の【後書き】の続きになりますが、ただ単純に人間を出して見たかった。絶望しかない世界でドールと探索者が出会ったらどうなるのだろう? と、それだけの理由で作っている節も正直ありました。
 ですから今回完全に見切り発車で執筆しています。何がともあれ、一区切りできるところまで執筆を終えることができて本当に良かったです。
 安定しながら小出しにしながら投稿ができますからね。




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Episode2-5 『超☆エキサイティン!!』 - 後半戦

【前回のあらすじ】
 クトゥルフにおいて、神話生物もカルト教祖も一撃で屠る可能性のある最強のスキル発動!
 ドール達にも勝る威力の攻撃を的確にブチ当てていく探索者。
 響きわたるは、怒号、銃声、悲鳴、狂劇。最後に立っているのは誰か。




===2ターン目===============

 

 クリスティーナは迷っていた。自分はロジーナを助けに向かうべきか、それとも少しでも脅威を減らすために敵の数を減らすか。いくらロジーナが微笑んだとしても、クリスティーナにとって家族同然の存在が目の前で悲惨に崩されていくのを見ているのは、決して心の良いものではなかった。そして一歩ロジーナの方に一歩踏み出した時。ロジーナの銃声がミートシュレッダー3を粉微塵に吹き飛ばす。そして走り寄って行こうとしたクリスティーナへ向けて可能な限りの笑顔を向けた。

 

先制射撃

クリスティーナ150→11,37【スペシャル、成功】

ゼロ距離射撃+2連ショットガン+貫通

対象ミートシュレッダー4[完全解体]

 

赤大178→50,96【両方成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾

対象リフトバイス6[完全解体]

 

 ロジーナの覚悟を受け止め、傍若無人に暴れ回るミートシュレッダーへ向けてショットガンを叩き込む。ミートシュレッダーは壁面からのショットガンの攻撃に耐えきることなく黒い煙を吐き出して機能停止した。

 その先制射撃に続くようにしぶとく生き残っているリフトバイス6に向けて、赤大は二挺拳銃で応戦する。リフトバイス6もホーロー弾には勝てずそのまま停止した。

 

 

 

COUNT16

星乃

????80→22【成功】

対象ミートシュレッダー3[完全解体]

 

 

 

COUNT15

クリスティーナ

ショットガンリロード

 

修羅+赤大

移動【煉獄】→【楽園】

 

 星乃もこぶしを振るいミートシュレッダーを解体する。血液の代わりに油が星乃の顔に飛び散ったが気にした様子は無かった。

 クリスティーナは次の戦闘に備え、ショットガンに弾を込める。修羅はぬいぬいを追いかけるように、赤大は残るべくミートシュレッダー4を屠る為に走り出した。

 

COUNT14

『レイヴン』

レーザービーム→9【腕】

対象:飛鳥

 

ジャッジ

ぬいぬい

庇う

ダメージ

ぬいぬい

スチールボーン防御1+「切断無効化」

 

 

 

COUNT13

飛鳥

待機

 

 

 

COUNT11

『レイヴン』

レーザービーム→8【胴】

対象:纏

→ほね損傷 切断判定成功

 

 『レイヴン』の猛攻は続く。

 修羅は奴が攻撃するたび、傷付いて行くぬいぬいを眼中に捉えながら、少しでも近くへ走り寄って行った。

 

ロジーナ

対戦車ライフル→5+1【敵任】

対象:レイヴン

ジャッジ

うで支援+1

→以下のパーツを破壊

[脚] エンジン     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+2

[脚] ブースター    : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1

[脚] ブローター    : オート   : なし  : 自身: 自身を対象とする肉弾・白兵攻撃判定-1。全体攻撃は自身に対してのみ-1.

[脚] ヒートブロウ   : ジャッジ  : 1   : 0  : 妨害1

[脚] オートバランサー : オート   : なし  : 自身: 転倒、移動を無効化してよい

 

せぼね

 

ぬいぬい

せぼね

 

 

 

COUNT8

『レイヴン』

レーザービーム→6【任】

対象クリスティーナ

 

ジャッジ

ぬいぬい

庇う

ダメージ

背徳の悦び スチールボーン

やぶれひまく防御2

 

 ロジーナは、自分の目の前に迫りくるミートシュレッダーには眼もくれず『レイヴン』に向けて射撃を試みた。ブレが激しくなかなか狙いが定まらないでいたが、残っている腕で、対象を狙い定めると不思議と吸い込まれるように弾丸が命中し、彼女の機動力の高そうな足のパーツを粉砕していく。

 『レイヴン』が行ったことは意図してやったのか、それとも起動が逸れ偶然起ったのかは分からない。「レーザービーム」はクリスティーナに直撃しそうになる。ロジーナの顔にも絶望の表情が浮かび上がったが、それよりも早くぬいぬいがクリスティーナを庇い盾になることで事なきを得た。

 

 

 

COUNT7

ラピット

飛鳥

ワイヤーリール→ロジーナ

 

号令

 

星乃

パス

 

クリスティーナ

ショットガン70→85、25【片方成功】

ミートシュレッダー2

ダメージ:正面装甲+1

→以下のパーツを破壊

装甲板

 

修羅

武道キック80→71【両方成功】

対象:ミートシュレッダー4

→以下のパーツを破壊

メインエンジン、サブエンジン

 

赤大

赤大89→88,93【片方成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾

対象:ミートシュレッダー4

→以下のパーツを破壊

オートバランサー、スクレーパー、正面装甲

 

ロジーナ

対戦車ライフル→7【脚】

→以下のパーツを破壊

[頭] 狂気の浸食    : アクション : 3   : 0~1: 精神攻撃

[頭] のうみそ     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+2

[頭] めだま      : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1

[頭] リフレックス   : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1

[頭] アドレナリン   : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1

 

飛鳥

パス

 

ぬいぬい

日本刀→5+1【任】

うで支援+1

ミートシュレッダー4

→以下のパーツを破壊

多脚戦車、突進

 

『レイヴン』

レーザービーム→8-3【失敗】

対象 纏

ジャッジ

蠢く肉片

 

 再び纏の号令が8人に対し呼びかけられる。リロードの終えたクリスティーナの射撃、赤大の連続射撃、星乃の肉弾攻撃、ぬいぬいの日本刀の白兵攻撃が正確にミートシュレッダーを粉砕していく。

 号令と同時に飛鳥はライトセイバーを持つ手とは反対の手でワイヤーリールを射出。動けなくなったロジーナを撒きつけ花園側、ミートシュレッダーによって踏み荒らされた培養槽側へと引っ張るのだった。脚を破壊され動けなくなったミートシュレッダーは、ロジーナの居なくなった通路で悔しがるように軋るような機械音を鳴らしていたが、追いかけるための移動手段がない事を悟るとその機能を停止させた。

 

パス

 

ぬいぬい

肉の宴*2

→あし、ほね回復

 

飛鳥

ボイスエフェクト

纏→飛鳥→6+2【成功】

飛鳥→纏→7【成功】

発狂停止

 

『レイヴン』

レーザービーム→10【敵任】

対象:飛鳥

 

ぬいぬい

庇う

背徳の悦び「やぶれひまく」回復

ダメージ

ぬいぬい=うろこ防御2

 

ぬいぬい

肉の宴*2

→こぶし。ほね回復

 

飛鳥

ボイスエフェクト

飛鳥→ぬいぬい10【成功】

ぬいぬい→飛鳥8+1【成功】

 

せぼね*2

 

ロジーナ

対戦車ライフル→7【胴】

対象『レイヴン』[完全解体]

 

 8人は『レイヴン』に向き直る。ミートシュレッダーの息の根を止めた今、驚異になるのは『レイヴン』ただ一人である。飛鳥のワイヤーリールでロジーナが引き摺られている間、『レイヴン』と敵対しながら飛鳥は纏とぬいぬいと僅かな会話を交わす。水を差す様に途中『レイヴン』のレーザービームが生じたが、それをぬいぬいが庇い うろこのような皮膚が硬化した個所に正確に当てる。

 そして最後の一撃必殺のロジーナの鉛玉が『レイヴン』の残りパーツを“胎児ごと”粉砕した。

 

入手装備品

基本パーツ:16

強化パーツ:8

 

 

===戦闘終了===============

 

 

 

 




【後書き】
 今回、戦闘シーンは長めとなっております。
 実際コマを動かしながら小説を執筆するだけで、今回の2話分だけで3~4時間掛かっています。更にここから、マニューバ(ネクロニカドールのアクションパーツのこと。)ミスを見つけ出した場合 再び戦闘を展開しなおしたりしているので・・・実質2話分で8時間とか使ってそうです・・・。
 クトゥルフのように1ターン(ラウンド)1回行動ではなく、ドールやネクロニカの敵対モブは1ターンの間に行動値内であれば何回でも行動ができますからね。
 クトゥルフで言うところの戦闘卓(ハウスルール:回避無限)みたいな感じです。

 そしてNCの管理の大変さが身に染みた瞬間でもあります。ドールと敵モブ・・・戦術も緩くなる理由もわかりました。
 NCの皆さん、お疲れ様です。




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Episode2-6 『修復の時間』

【前回のあらすじ】
 探索者の特技は一撃必殺。ドールの特技は手数勝負。1.5倍の兵力でも覆すことは可能である。
 ロジーナの正確な狙撃は胸元の胎児ごと射貫き『レイヴン』は撃墜した。
 見事8人で協力をした結果、『レイヴン』の討伐を完遂させる。




『あ。』

 

 8人の声が1つの声となってハーモニーを繰り出す。

 単純明快。壊してはいけないようなものまで、その対戦車ライフルは射抜いてしまったからである。

 

幸運

?????→11【大成功】

 

DEX*5

クリスティーナ75→75【成功】

修羅75→75【成功】

赤大75→75【成功】

星乃80→53【成功】

 

 しかし、幸運にもそのカプセルは割れることもなく『レイヴン』ごと落ちてきた。

 『レイヴン』の肉体は、そのままカプセルを抱きかかえるかのように落ちて行く。そして床と衝突すると「ブシャリ。」と鈍い音を立て高所からトマトを落下させたときと同様に肉片が周囲に爆裂四散する。

 クリスティーナ、修羅、赤大の3人は『レイヴン』が潰れる間際の顔立ちを視界の先から背けることで直視することは無かった。星乃は『レイヴン』の最期をしかと見届ける。『レイヴン』表情はしっかりと8人へ向けて、何かを必死に訴えかける様な視線であった。その瞳にはハイライトが灯っていたような気がする。

 が、星乃は気にも止めず飛鳥の方に振り返った。どうやら他の仲間に抱き抱えられるようにして、壊れてしまった脚や拳を“直して”いるようだった。そのまま星乃は潰れた『レイヴン』の元までゆったりと歩いて行く。

 

 

大切な相手が半壊になっているSANチェック0/1D3

クリスティーナ71→1【成功】

修羅67→29【成功】

赤大61→29【成功】

星乃74→42【成功】

 

 

「ロジーナ!! あぁぁっ・・・ロジーナぁ、あしが・・・・かたが・・・・・っ!」

「・・・・・大丈夫・・・・。くっつければ・・・・・元通り・・・・。・・・・ね?・・・・だから・・・・泣かないで・・・。」

「すまない・・・すまないっ・・・・私がぬいぬいを守ると約束したのに・・・・!!」

「大丈夫だよ。痛くないから。・・・そんなに謝らないで。むしろ修羅 縫さんは大丈夫? 怪我してない?」

 

 星乃が『レイヴン』のだったものに近づいている間、こちら側はこちら側で阿鼻叫喚な光景が広がっていた。基本パーツを修復するドールたちに、それぞれの探索者が寄り添い、慰める側が逆転しているという状況が起きていた。

 クリスティーナは涙を溜めていた両目を決壊させ、ボロボロと大粒の涙を流し号泣。それを抵当なパーツを拾い上げ『接着』し、『接着』の終わった肩でを動かして涙をぬぐい慰めるロジーナ。

 正座の状態で下唇を噛みしめ、非常に悔しそうにしながらぬいぬいに対して、感情を押し殺したかのような声で謝罪を述べる修羅。それを少し戸惑い困ったような表情をしながら、優しい言葉を掛けるぬいぬいの姿がそこにあった。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 3【失敗】

ぬいぬい→修羅 5【失敗】

 

「まさか、あんな場所で電気コードに躓いて転んでしまうだなんて、流石に想定して無かったです。」

「気を付けてね。今回は偶々パーツが全員分あったから良かったけど・・・。赤大さん、ほねの代わりになりそうなものはないかな?」

「お、おう。こんなのでどうだ?」

「ありがとう。」

「お、おう・・・・縫い付ければ動くものなのか・・・?」

「詳しい事は分からないですけど、粘菌同士が接合して動くようになるみたいです。」

 

 2人のドールが探索者を慰めているのに追われている間、反対側では纏が持っている救急箱の中から縫合糸を取り出し、丁寧に飛鳥にほねとあしを縫合(ほうごう)していた。パーツが足りなくなると赤大が周囲を見渡し、動くことが出来ないドールに代わって使えそうなパーツを持ってくる。非常に戸惑うような赤大に向けて、纏は首裏にある余分な目で簡易的な表情を作りながら縫合を続けて行く。

 

対話判定

纏→赤大 2+1【失敗】

纏→飛鳥 10+2【大成功】

【依存】→【保護】

飛鳥→纏 8【成功】

飛鳥→纒 10【成功】

 

「纏さん、縫合お上手ですね! これで問題なく動けます! 赤大さんも、私に合うパーツを探し出してくれてありがとうございました!」

「いやアタシはその分 飛鳥や纏に助けて貰っているからな。お互い様だ。また必要な時は探してくるよ。」

「そう言って頂けると助かります!」

「それじゃ、アタシは纏の部品調達があるから。」

「はい。ありがとうございました!」

 

 丁寧に頭を下げる飛鳥に対し、赤大は手を血液のような粘菌で赤く染めながら振り返ることもなく、手を振り、纏の元まで向かって行く。

 

「纏ー。そっちはどうだー? 合うパーツは見つかったかー?」

「今、縫合してるところ。」

「でよ、ちょっと気になることがあるんだけどさ。」

「なにかな?」

「お前の首筋の瞳って視野として見えてんの?」

「みえてるよ。視界を3等分にして下の部分に背後の景色が見えているって感じかな。」

「うへぇー、酔ったりしねぇの?」

「不思議と酔わないかな。むしろ視界が広いから奇襲にも対応できるね。」

 

対話判定

纏→赤大 4【失敗】

 

 他の姉妹より復帰した飛鳥は、遠目から和やかな雰囲気を生暖かい目で観察していた。

 クリスティーナはロジーナに慰められ、今はロジーナの両大腿の中に顔を埋めることで事なきを得ているようであり、修羅もまた 纏から縫合針を受け取ると覚束(おぼつ)ない手取りで、ぬいぬいの手の届かないメイド服破損個所を縫い直している。

 その間、ロジーナは修復した手で優しくクリスティーナの後頭部を撫で、ぬいぬいは何処か恥ずかしそうに恥じらいながら大人しく破損個所を縫い直して貰っていた。

 

対話判定+1

ロジーナ→クリスティーナ 5+1【成功】

ぬいぬい→修羅 6+1【成功】

 

 

 




【後書き】
 因みに1度、第二章の話まで全体的に修復しています。
 原因はネクロニカルールに存在する【未練】の取得数(ルルブP.111)について。ネクロニカルルブを購入して3セッションほどシナリオを楽しみ、2週間目ぐらいからこの小説の執筆を始めたのでルールが、まだ完全じゃなかったんですよね。

 修復はしましたが、名残として『纒』が『修羅』に嫌悪のまなざしで見つめていたり、『ロジーナ』が『星乃』に対して『纒』と同様な感情を抱いていたりします。
 しかし、未練はないので発狂はしませんし、狂気点取得もないですね。




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Episode2-7 『エムボリョ』

【前回のあらすじ】
 散らばったパーツをかき集めドール達は体を完全に修復する。
 探索者はその姿に戸惑い驚き取り乱しつつも、動ける者は修復の手伝いを行う。
 そのなか、星乃は一人潰れた『レイヴン』の元へ向かうのであった。




「飛鳥。」

「・・・! 星乃さん、驚かせないで下さい。どうかなされたんですか?」

 

 そんな光景を眺めて居ると飛鳥の背後から唐突に声が掛かる。安堵しているところにいきなり声を掛けられ、度肝を抜かれたのかビクンと身体を大きく揺らした。そんな飛鳥ではあったが、聞きなれた声と単調的な独特の声の主から個人を特定しホッと胸をなで下ろす。

 背後には、血液のような粘菌で手を赤黒く染めながらも、何かカプセル状の物を持っている星乃が見下ろすかのように立っていた。

 

「敵。持ってた。コレ。どうする。」

「これは・・・・。」

 

 星乃から手渡されたものを飛鳥は受け取る。それは、『レイヴン』と対峙した時に彼女が持っていた胎児そのものであった。クリアグリーン色の培養液に浮かんだその胎児は生きているのかピクピクと反応し、瞼のない2つの瞳が飛鳥を捉えていた。

 カプセルには『Embryo(エンブリオ)』と書かれているのが目に留まる。

 

「飛鳥。文字。読める。 」

「も、もちろん。ここには・・・・・エ・・・え、えん、えむ、ぼ、りょ・・・・。エム↑ボリョ↓と書かれていますね。」

「エむ。ボリョ。凄い。飛鳥。読めた。凄い。流石。」

「・・・・///」

 

 星乃の問いに焦りを覚えながら、飛鳥はカプセルに書かれている勘の赴くままに読み上げる。何か明らかに違う翻訳に対し、星乃は飛鳥を褒め、飛鳥は知ったかぶりをしている自分と、それを疑うこともなく素直に受け止め褒めてくれる星乃に対して恥ずかしのあまり赤面していた。

 

「飛鳥。意味。何。」

「えっ?」

 

 唐突な更に奥まった質問に対し、赤らめていた顔をキョトンとさせる。

 

「エムボリョ。意味。」

「えっ、あ! あー! あーっ! い、いいい意味ですね!! 意味は・・・。」

 

 顔を恥じらいで真っ赤に染めながら、胎児を見つめる。胎児はピクピクと脈動し、まるで飛鳥の回答を待っているかのように巨大な瞳が見つめていた。

 

行動判定

飛鳥→1 【大失敗】

 

「この入れ物の名前ですね!!」

「入れ物。名前・・・。 エムボリョ。」

「そうです! エムボリョです!」

「エムボリョ。」

「エムボリョ!!!」

「「エムボリョー!!!!!!」。」

 

対話判定+2

飛鳥→5+2【成功】

 

 謎の一体感に包まれながら、顔を赤らめオーバーヒート気味の飛鳥は手の中の胎児を、星乃と共にエムボリョ!エムボリョ!叫びながら頭上に掲げていた。

 それを何事といった様子で6人は複雑な目つきで、その掲げるカプセルと2人の姿をまじまじと様子を伺うのであった。

 

 

 




【後書き】
 最近、ネクロニカのルルブを読み込んで気が付いたことなのですが、どうやらネクロニカの世界線では、スプラッターなシーンが多いため、常に周囲に鉄錆びの香りが充満していると思われがちですが、『におい』に関しては大分改善されていたそうです。
 石鹸のような香りから、ミカンや、マウスウォッシュのような香りのする粘菌(ドール達を動かしている血液のような物)に改良されているようです。
 ですから、戦闘中はドール達が弾け飛ぶとフローラルな香りが周囲を包み込みます。・・・・なかなかにシュールな光景です。
 ですが、やはり匂いは混ざり混ざって悪臭になっているようなそんな気もしました。腐敗臭だって出ますしね。




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Episode2-8 『胎児所持の有無』

【前回のあらすじ】
 一足先に修復の終えた飛鳥に、星乃がその手を赤黒く染めながら胎児片手に声を掛ける。
 星乃の問いに見栄を張りながら、記憶の無い脳味噌で最大限の誤った翻訳を披露。
 戦闘に引き続き、知識ロールすらファンブル(大 失 敗)をたたき出した。




「ひっぐ・・・・えっぐ・・・えっぐ・・・・。」

「修羅 縫。飛鳥。泣いた。謝る。謝れ。」

「え、えぇ・・・?」

 

 現在8人は一か所に集まっている。

 星乃の背後で飛鳥が泣きだし、ぬいぬいがそれを慰め、星乃が修羅の正面に立ち腕組みしながら、怒りを露わにしていると言った状況が発生していた。

 ここまでに至った経緯を説明すると、胎児を一通り掲げたのちに星乃が『エムボリョ』を他の6人に対して見せびらかし、修羅が正しい「Embryo」=エンブリオの名前を解読。

 さらに意味は胎児。つまり入れ物ではなく、中身の本体の事を指示していることを伝えると、飛鳥が泣きだしたと言った流れだ。

 纏とロジーナは飛鳥を泣かせた修羅を白い眼で見つめ、赤大は飛鳥の翻訳である『エムボリョ』がツボに入ったのか床に腹を抱えて笑い転げ、クリスティーナはロジーナの傍らに立ち、明らかな険悪なムードにオロオロとしていた。

 

「こ、これは私が悪いですか?」

「そうだと思うけど?」

「・・・・・・謝るべき・・・・。・・・・悪い事したら・・・・謝る・・・。」

「は、はぁ。飛鳥さん、申し訳ないことしました・・・。」

「ぐすっ・・・・ひっく・・・大・・・丈夫・・・です。」

「エムボリョ!! エムボリョだってよ!!! ヒーッ!! ヒッヒッヒーーーッ!!!」

「赤大さん、笑い過ぎでしてよ! 飛鳥さん。落ちこまないで・・・? 人間、誰しも間違いはありますわ。き、記憶が朧げであれば尚更ですわ! ね? ぬいぬいさん!」

「え? あ、は、はい! そうですよ。今回は偶々ですよ。だから気にしない方が良いですよ!」

 

対話判定+1

ロジーナ→纏 7+1【成功】

纏→ロジーナ 7+1【成功】

 

 集団で囲み、飛鳥も落ち着いたところで適当な作業台の上にカプセルに入った胎児を乗せ、8人で取り囲む。胎児は脈動しながら8人の様子を伺っているようだった。

 

「この胎児どうしよう・・・。持っていった方が良いのかな?」

「持って行きませんか? こんなところで一人ぼっちにするのは可哀想ですし何よりも、母親らしき人は殺してしまいましたし・・・。」

「・・・・・・・致し方なかった・・・・。・・・・殺らなきゃ・・・・こっちが・・・・殺られてた・・・。」

 

 纏は周囲の7人の顔を見ながら、静寂に包まれた培養室で困り果てたように尋ねる。泣き止んだ飛鳥は困り果てたような纏の様子を確認した後視線をロジーナに移す。ロジーナは、後ろめたそうに俯くと顔をクリスティーナの方角へそっぽを向いた。

 

「んーでも、問題もあるぜ? 例え、胎児で連れて行ったとしても飯はどうする? もしも、その世界が滅んでいるのが本当だとしたら、メシの調達はどこでする?」

「それだけではありません。見たところ瞳はあるようですが、口が見当たりません。栄養を与えるにしてもどのように与えるのですか? 私の記憶が正しければ、この時期の胎児は母親のへその緒から栄養を受け取り成長をします。ですが・・・この胎児は・・・。」

「わたしも詳しいことは知りませんけど・・・この外の培養液が栄養になっているのでは、ないですか?」

 

 持って行こうとする飛鳥の発言に対し、赤大は少なくとも学校で学んだ知識を、記憶障害により思い出す事の出来ないドールに周知する。それに便乗するかのように修羅、少し悩むような顔つきで赤大よりも正確な情報を口にした。2人を話しながら、ぬいぬいもクリアグリーン色の培養液を指差しした。

 

「もしその仮説が正しければ、この胎児はカプセルの中で更に巨大化していきますわよ。わたくしもロジー・・・・ゲフン とある方の出産に付きあった事がありますが、食事を摂れるようになるまでの大きさは、そこそこ巨大でしたわ。」

「・・・・・・今・・・・わたしの・・・・名を・・・呼ばなかった?」

「気のせいですわよ。」

 

 クリスティーナは、その中ヒョッコリ顔を出すと胎児を見たことがなさそうな7人に向けて、実際の胎児の大きさを手で表現してみる。7人はクリスティーナの表現の大きさを確認した後、全員揃ってカプセルの大きさと最大成長比を比べてみるが、明らかにカプセルの中からはみ出す大きさであった。

 

「連れる。置く。」

 

 星乃は話の本題を誰も切り出そうとしない無表情で告げる。その瞳は相変わらずの無機質な感情の籠っていない声色であったが、咎める者も、星乃の顔を見る者も居なかった。

 

「申し訳ないですが、私は彼・・・? 彼はここで息を引き取らせることが、今後の彼の為になると思います。」

「アタシも・・・コイツには悪いけどさ、無駄に長生きさせるよりもスパッとやっちまった方が互いの為になると思う。安心しろ。汚れ役は慣れているからな。始末する時はアタシがやる。」

「・・・赤大さんや修羅 縫さんの言う通り、この子をこれ以上苦しませないためにも終わらせてあげるべきだと思います。『終わらせてあげる』というのは一方的なエゴですが、長い間一人にして苦しませるよりは・・・いく分かマシかと思います。」

「ボクは連れて行ってあげるべきだとは思うけど、今後を考えると・・・・・・・・うん。」

 

 ぬいぬいを除く、修羅・赤大は培養液に浮かび上がる胎児に気の重くなっているような視線を向けて、ボソボソと呟くように胎児を殺す案を告げる。ぬいぬいも胎児の事を見るに堪えなくなったのか、修羅の裾を掴み、目を逸らしながら呟き、纏も歯切れが悪そうに小声ながらもどうするか、みなまでは言わなかった。

 

「・・・・他の4人は?」

「私は。私は連れて行ってあげるべきだと思います。母親を殺してしまったのは不慮な事故や正当防衛であるとしても、子供だけは折角生きているのですから・・・助けの手を差し伸べなくてはならないと・・・私はそう思います。」

「・・・・・・・わたしは・・。・・クリスティーナ・・・・わたしは・・・・・育てられる・・・・かな・・・?」

「必要な食料・日用品などがあれば、可能であるとは思いますが・・・。・・・! ロジーナが連れて行きたいと言っているのに断る要素はありませんわ。出来るかどうか分かりませんけど、連れて行くにあたって最大限の補助は致しましょう!」

「・・・・・だったら・・・・連れて・・・・・行きたい・・・・・・かな・・・。」

「飛鳥。胎児。連れる。望む。飛鳥。賛成。私。賛同。」

 

 纏はまだ回答を聞いていない4人に対しても話を振る。

 飛鳥は両手を自分の胸元前で握ると、決意の籠った瞳を向けながら持って行くことを提案し、ロジーナと、クリスティーナの一押しもあってか持つことを希望し、最後に皆の視線が集まったのを確認してから 困ったような目の逸らし方をして一呼吸置いたのちに胎児の処分に関して否定的な意見を告げた。

 

「4対4かぁ・・・。ボクとしては、双方の意見を尊重したいけど・・・うーん。」

「こういうのは如何でしょう。少なくともこの子に対して嫌悪的感情を抱いている人は居ません。とりあえず、持って行くだけ持って行くというのは?」

「・・・・・・ん・・・。ぅぅん、それが一番いいのかな?」

 

 纏は分かれた意見に対し、どのように決定づけるか頭を捻る。

 自分の嫌悪の対象である修羅が提案してきたことに対してにすら嫌気があったが、双方の意見を汲み取るには修羅の案が最も適切であった。

 念のため、他の姉妹にも確認を取る。全員、修羅の案に納得したのか互いに頷きを返していた。

 

「っ!」

「・・・! おい! どうした纏?!」

「うっ・・・!!」

「ぬいぬい、大丈夫ですか!?」

 

狂気判定

ぬいぬい→7-1【成功】

纏→4-1【失敗】

飛鳥+1

 

 方針も決まった所でこれからどうしようか話を切り出そうとした時である。頭を押さえ、苦しそうにしながら纏とぬいぬいが、しゃがみこみ膝をつく。瞬時に隣に赤大や修羅が2人をそれぞれ抱き抱えるが、それでも2人は苦渋の表情なのは変わらない。

 

記憶の欠片【入手】

ぬいぬい→???

纏→???

 

 

 




【後書き】
 設定が、あまりお好きではない方にとっては不評かもしれませんが、設定にそれぞれの探索者の立ち姿をより詳細に記入してみました。モデルも用意しているので、『あまりイメージが膨らまないよー』って方は余裕のある時に調べてみると良いかもです。




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Episode2-9 『大脱出』

【前回のあらすじ】
 飛鳥の誤りは、英語のできる修羅によって無事に正しく翻訳されたものの、次は修羅が無事では済まされず四面楚歌に陥る。
 『胎児』を連れて行くかどうか、8人で相談し方針を決めたのであった。
 突如としてぬいぬいと纒の2人が苦渋に満ちたうめき声をあげながら倒れる。




 途端、破壊しつくした筈のリフトトバイスやミートシュレッダーが再び起動し始める。

 強襲かと6人は身構えるもそうではない。次々に爆発し始めたのである。戸棚に設置された培養槽のカプセルは振動によって落ち、床に叩きつけられるたびにカプセルが割れ、中身が零れ落ちる。更に誘爆するかのように次々と部屋の様々な場所が爆発を引き起こし、瓦解(がかい)し始めた。

 

「クソッ!! 最近の作業機械には自爆機能も備わってんのかよ!!」

「ぬいぬいは私が背負います! 赤大は纏さんをお願いします!」

「わかってらぁ!」

 動けないでいる2人を抱きかかえ、背負うことで逃走準備に取り掛かる。飛鳥も、机の上に置かれた胎児を素早く手に取ると巫女服の中へ仕舞い込んだ。感覚は無い筈であるのに、ひんやりとでもしたのか、飛鳥は身を小さく捩らせる。

 誘爆は止まることなく、引き続き爆発を続けていた。

 

目星

クリスティーナ70→6【スペシャル】

修羅80→27【成功】

星埜55→90【失敗】

赤大25→68【失敗】

 

DEX*5

クリスティーナ75→20【成功】

 

「みなさん、今の爆発で壁に穴が!! あそこから出られそうですわ!!」

「飛鳥。こっち。」

「きゃっ。」

 

 クリスティーナが指差した先には、爆発によってできた明るい光の差し込む光が見えていた。指差すのと同時に星乃が真っ先に飛鳥の手を引いて、その穴を潜り抜ける。呆気にとられながらも飛鳥は星乃に引き連れられるように爆発する穴から安全地帯へと這い出て行った。

 その行動に修羅と赤大も続く。一番巨体の星乃が通れるほどの穴であった為、纏やぬいぬいを背負った2人だとしても難なく通過することが出来た。

 

「・・・・! ・・・・・クリスティーナ・・・! ・・・・はやく・・・・!!」

「これだけ持ったら今行きます・・・・わっとぉおぉぉ!?!」

 

 ロジーナも修羅と赤大に続くようにして、潜りぬけようとした時だ。気が付いた。クリスティーナの姿が見えないと。もしや・・・といった焦燥が浮かび上がった顔で背後を見る。そこにクリスティーナは居た。武器らしきものをかき集めている。幸いにも、ロジーナが想定していた最悪の事態は免れていた様子で胸を撫で下ろす。

 ロジーナは、出口から呼びかけるもののなかなか穴に向かわない。修羅たちと、うってかわってドール側が探索者を、米俵を肩に担ぐかのように持ち上げると穴に向かって走って行った。

 直後、クリスティーナが武器をかき集めていた場所に巨大な瓦礫が降り注ぐ。あと一歩でも遅れて居ればあの瓦礫の下敷きになり、『レイヴン』と同じ運命を辿っていたことだろう。

 

「・・・・ぉぉ。ロジーナ、助かりましたわ!」

「・・・・・・はぁ・・・・・。」

 

 死んでいたかもしれないというのにも関わらず、能天気な反応を見せるクリスティーナに対し、ロジーナは溜息を1つ付いた。そしてクリスティーナの手には武器が4つほど握られており、ロジーナ自身もその量には目を丸くし同時に何処か呆れたような、微笑ましいような表情をする。

 

 

 




【後書き】
 察しの良い方なら『4人の少女』とであった時に、既に気が付いているかもしれませんが、探索者×ドール、それぞれに相棒(バディ)が居ます。一番初めに執筆していた頃は、探索者は探索者。ドールはドールと個別にして書いていたのですが、今書いているものよりも執筆の速度は鈍足で、話の展開は高速的に進んでしまったので途中で飽きてしまったんですよね。
 読み返せば、もうドールだけでよくね? と思うところも何点かあったり。
 今もそうだなんて言われてしまったら、修正できる余地もないので『次、気を付けますね』としか言えないのですが・・・。




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Episode2-10 『我らの足』

【前回のあらすじ】
 ぬいぬいと纒が倒れたのとほぼ同時刻に機能を強制停止させた機械共が起動し、自爆し始める。
 探索者が動けないドールを背負い次々に脱出していく最中。その逆を実現する組も存在した。
 爆発によって壁に開いた穴から脱出した探索者とドール。彼女等が見る初めての光景とは・・・。




 穴を潜り抜けた先は幸運にも外だった。しかし、それは探索者が知っている生き生きとした景色ではない。生命を感じさせないかのような荒れ果てた荒野だ。

 外は昼間である時刻にもかかわらず、空色は重苦しい鉛色で、空気は乾き、大地は焼かれたように枯れた土で覆われていた。8人が出てきた背後は岩山に偽装され、地下にあの研究施設が築かれていたことが分かる。

 

 

ドールたちが話していた通り世界は滅んでいたという事実に対しSANチェック1D4/1D10+1

クリスティーナ71→95【失敗】9+1

71→61

修羅67→76【失敗】1+1

65→63

赤大61→70【失敗】6+1

61→54

星埜74→13【成功】3

74→71

 

アイディア

クリスティーナ65→79【失敗】

赤大80→2【クリティカル】

一時的発狂1D10→1気絶あるいは金切り声の発作

 

 4人は世界の惨状に対して言葉を失う。クリスティーナは目の前で起きている惨状について、小刻みに瞳を泳がせながら引き攣った無表情を浮かべ、修羅は何処か全てを悟ったような赴きになり、星乃は顔をその光景から背けた。そして赤大は、纏を背負ったまま力尽きたかのように倒れる。

 

目星

クリスティーナ70→32【成功】

修羅80→10【スペシャル】

 

「星乃さん! 赤大さんが! 私は纏さんを背負うので、星乃さんは赤大さんを!」

「分かった。」

 

 倒れた2人に飛鳥は駆け寄り、胸元に仕舞った胎児が落ちないように調整を加えると纏を赤大の代わりに背負う。星乃も飛鳥に指示され、一呼吸を置いてから赤大を持ち上げた。ロジーナは表情が引き攣ったクリスティーナに対して、不安な様子で状態を確認していたが、星乃の元まで駆け寄ると、赤大に付着した土や泥を払い落とした。

 そんな中、引き攣らせていたクリスティーナが真顔に戻り、首を左側に捻る。そこには荒廃した世界に似つかわしくない車両が停車しているのが目に入った。OB色をした8輪の車両。天井の固定砲台にはFNミニミが備え付けてあり、あれはまるで・・・。

 

「・・・・・・修羅さん?」

「・・・もしかしなくとも、視界左端に映る装甲車についてですか?」

「わたくしにも見えているという事は、あれは幻覚ではないのですね。」

「そういうことになりますね。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「「・・・・・!!!」」

 

 二人はほぼ同タイミングで、2人の視界に映る車両に向けて走り出す。途中、異変に気が付いたロジーナが2人の後を追う。そして僅差の差で、クリスティーナが先に装甲車に辿り着く。ぬいぬいを抱えた修羅も若干の息を切らせながらも到着する。3秒後ロジーナも2人の後に追いついたが、初めて見るであろう装甲車の大きさに圧倒されていた。

 修羅とクリスティーナの2人は波長を合わせるかのように片や後部ハッチに手を掛け、片やショットガンを構える。そして2人の息があったクリアリングにより装甲車の安全の確保を済ませた。戸惑うロジーナをクリスティーナは開口部の後部ハッチから内部に押し込み、ぬいぬいの看護を頼む。

 

「・・・・! 何故、運転席に乗っているのですか?」

「簡単なことですわ。わたくしが運転を致しますからですわ。安心してくださいな。これでも家守 源水さんや足高お姉様から運転技術については大分学んだんですのよ? 修羅さんは、可愛い妹を看て差し上げたら如何かしら?」

「・・・・・。それは出来ない。」

「・・意地を張るとロクなことがおきませんわよ。かつてのわたくしがそうであったように、貴方は『また』後悔いたしますわ。」

「・・・・・・。」

「さ。・・・・次こそは護るのでしょう?」

「・・・。」

 

 そしてクリスティーナが、ちゃっかり運転席に座っていることに対して驚きの表情を見せるが、すぐに降りるように喰ってかかる。しかし、家守の名前を出され、妹について言及されると その勢いはすぐに減退し、最終的にはロジーナが天井に後部座席に修羅とぬいぬいが乗車することとなった。

 エンジンを掛けると軽やかに車両は走り出す。そして、気絶している赤大や飛鳥を拾うと当てもなく荒野に装甲車は走り出すのであった。

 

 

 

シナリオクリア『捧げる愛』

SAN報酬

クリスティーナ1D10+2D4→15

修羅1D10+2D4→5

赤大1D10+2D4→13

星埜1D10+2D4→8

 

 

寵愛点

記憶の欠片を手に入れた。【ロジーナ以外達成】

胎児を連れて行く。【全員達成】

戦闘寵愛15点。

ロジーナ17点

ぬいぬい19点

飛鳥17点

纏19点

 

ロジーナ10点消費

スキル追加 子守歌

 

ぬいぬい10点消費

強化武装+1 棺桶

 

飛鳥10点消費

強化改造+1 エレクトリッガー

 

纏10点消費

強化武装+1 ショットガン

 

 




【後書き】
 唐突な小説の話に突っ込んでいきますが、探索者:修羅の持ち物に96式装輪装甲車があったと思いますが、そうです。ここで登場するのです。実質チートアイテムなので、ヌルゲーになってしまい臨場感が薄れるかなと思ったのですが、ネクロニカルルブの36ページから連なる【世界の様子】について読んでいるうちに登場させることを決意しました。次回、その登場させる決意を固めた要因について、彼女たちが紹介してくれます。




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2章 『求める愛』
Episode3-1 『放射能汚染被曝』


【前回のあらすじ】
 探索者組は外の光景に酷く取り乱す。
 赤大は倒れ、まともに動けそうな飛鳥と星乃が、纒と赤大の補助に入る。
 絶望に打ちひしがれるなか、修羅とクリスティーナは希望を見つけ、走り出したのだった。




 奇妙な組み合わせの8人を乗せて装甲車両は軽やかに走り出す。

 ところどころ舗装していたであろう道路も、整備がされていないために荒廃による穴があり、それが車体を揺らすものの8輪装甲車の前には微々たる振動でしかなかった。

 ぬいぬいの看病を行っている修羅が、時折クリスティーナに放射能の濃度に関する測定器の情報を伝え、クリスティーナ自身も放射能汚染の軽い場所を走っていた。

 

「・・・っぁ・・・あぁ? ここは?」

「目覚めましたか。96(くろ)の中ですよ。」

96(クロ)の? あぁ・・・やっとあの狂った世界から帰ってこれたのか・・・。長い悪夢だったな。」

「いえ、その悪夢は継続しています。第一、それが夢だとして気絶していた貴方を叩き起こすこともなく私が後部座席に座っていると思いますか?」

 

 あの胎児を拾った場所から それなりに走り出した頃、気絶していた赤大も目を覚ます。目頭を指先で抑え、装甲車の名称を聞くと何処か落ち着いたような声色になるが、修羅の無慈悲な宣告により何処か諦観したかのような顔つきになった。

 

「それで? 96(クロ)があるって事は搭載していたガスマスクや防護服なんかもあるのか?」

「・・・。残念ながら、それらの類はありませんでした。他隊員の食料や武器、弾薬、替えの燃料、応急箱などはあったのですが・・・。」

「・・・・・・。」

 

 非常に苦虫を奥歯で噛み潰したかのような表情で修羅は、残酷な現実を赤大に告げる。赤大も諦観の表情で、物資に僅かな希望に掛けていたようであったが、その望みも絶たれたことが分かると、いよいよ絶望に打ちひしがれたと言ったような顔つきになり、うつむく。

 

自分の余命を悟ってしまったSANチェック0/2

赤大63→5【成功】

修羅68→97【失敗】

68→66

 

「・・・なんとか、なるだろう!」

「・・・。・・・そうですね。今後は身の振り方を考えましょうか。・・・飛鳥さん。」

「あっ、はい! 何でしょうか?」

「もしも私に何かありましたら、ぬいぬいさんの事をよろしくお願いいたします。」

 

 赤大は苦しそうにしながらも、無理やり笑顔を作り自分の未来の予想図を考えないようにとでもするように首を横に振った。一方、修羅はぬいぬいを看病しつつも、どこか諦観している赤大と修羅に対し、話しかけようかと迷っている飛鳥に向き直ると丁寧に深々と頭を下げた。

 

「は、はいっ! 確かに承りました!」

 

 飛鳥もそんな修羅に気押しされるかのように頭を下げながら、その願いを聞き入れる。

 修羅と赤大は、互いに互いの思い人に類ずるドールに寄り添い、頭を押さえ苦しそうにするぬいぬいと纏を看病するのであった。

 

 

 




【後書き】
 新章が始まりましたね。

 そうです。前回お話した96式装輪装甲車を登場させた訳とは、ネクロニカ世界線で探索者が活動するには時間が足りなさすぎるのです。
 少しばかりインタネットの方で放射能被曝による死亡について調べてみましたが、数時間で症状が表われ、2~3日で死亡する場合もある様なのです。
 ネクロニカの世界線は核戦争後の話ですから、放射能はガッツリと残されていることでしょう。




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Episode3-2 『彼の名は』

【前回のあらすじ】
 クリスティーナが操縦する陸上自衛隊が保有している96式装輪装甲車は快適に走りだす。
 しばらくすると赤大も気絶していた状態から復帰し、絶望の継続に落胆した。
 さらに圧倒的な装備不足に2人は非常な現実に苦笑するほかなかった。




「ねぇ、星乃さん。」

「何。」

「この子に名前とかって付けた方が良いのかな?」

 

 2人が看病されながらも頭痛に苦しんでいる間、飛鳥は胸元から仕舞っていた胎児を取り出す。胎児は液体の中でピクピクと脈動していたが、飛鳥はその姿に何処か愛おしさでも感じているのか大切そうに抱きかかえながら、隣で正面を無表情で見つめる星乃に声を掛けた。星乃は一切の感情の乗っていない声色と表情で、飛鳥の方を首だけ向けるが、飛鳥はそれでも根気良く星乃に対して精一杯の笑顔を向けていた。

 

「名前。」

「そう、名前。エンブリオっていうのは、胎児という意味でこの子の名前じゃないんでしょう? だから、名前を付けてあげなきゃいけないかなって。本来は8人全員で付けた方が良いかも知れないけど・・・クリスティーナさんは作業でお忙しそうですし、ロジーナさんは周囲の警戒の最中ですし、ぬいぬいさんや纏さんもそのような状況ではないですから・・・。」

「私。飛鳥。一緒。名前。考察。」

「はい。星乃さん、何か名案はありますか?」

「分からない。」

「即答しないでちょっとは一緒に考えてくださいよー。私は一応考えているのですよ! まったくもう・・・。」

「ごめん。飛鳥。考察。飛鳥。名前。何。」

 

 あまりにも、星乃の何も考えていないかのような素早い返答に飛鳥は口を尖らせ、ふて腐れたかのように怒る。腕組みをし最大限に怒りを表現するが、胎児は胸元に大切そうにしまい、星乃に対して本当には怒っていないのか、チラチラと横目で星乃の顔色を伺っていた。

 

「男の子でしたら希望(キボウ)、女の子でしたら未來(ミライ)なんて名前はどうでしょうか? 次世代では夢のある世界が実現されるようにって意味を込めています。」

「男。希望。女。未来。」

「ね。いいでしょう?」

「いい。」

 

 そして、星乃が名前に対して聞いてくると怒っているような素振を止め、笑顔になり星乃へと向き直る。無表情なのは変わらなかったが、それでも飛鳥は笑顔を浮かべ、星乃に対し丁寧に自分が考えた名前とその意味について解説した。

 星乃に賛同してもらえると更に上機嫌になり優しく胎児をカプセル越しに撫でた。

 

記憶の欠片【入手】

飛鳥→母の手(02)

 

「・・・・・・鳥。飛鳥。飛鳥。」

「えっ・・・あ、どうかしたんですか? 星乃さん。」

「急。飛鳥。生気。ない。」

「えっ。」

「心配。大丈夫。」

「だ、大丈夫。ごめんなさい、少し忘れていた記憶を思い出せたようで・・・。我を忘れてしまったみたいです。」

「記憶。どんな。」

「あれは・・・お母さんの記憶だと思います。温かい手で私をそっと抱き締めてくれて・・・。」

「・・・。」

「そのお母さんの顔は思い出せないのですけど、確かに「あった。」そんな気がしたんです。」

「・・・。」

 

 飛鳥は星乃に呼ばれる声で、何処か夢うつつになっていた状態から現実へと引き戻される。

 そこには両肩に両手を置いて、飛鳥の名を呼ぶ星乃の姿があった。少し錯乱したかのような表情をするが、すぐにそこが夢ではない現実の肌寒さであることに気が付くと我に返ったかのように笑顔に戻る。そして自分が一瞬の白昼夢ではあるが体感したことを星乃に告げた。

 

対話判定

飛鳥→星乃 3【失敗】

 

 

 

 




【後書き】
 17話目にして本格的に【後書き】として書き記すことがなくなってきました。
 どうしましょうか・・・。




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Episode3-3 『悪夢』

【前回のあらすじ】
 修羅と赤大が絶望に染め上げられている最中、飛鳥と星乃は胎児の名前を考える。
 他人任せな星乃に飛鳥はふてくされながらも、自らが決めた名前を星乃だけに伝える。
 突如、飛鳥の中で忘れていた記憶のカケラが隆起した。




ぬいぬい→亡者(70)

 

 飛鳥が白昼夢を体感している間に、ぬいぬいと纏も同じような感覚を脳で体感していた。

 ぬいぬいは頭痛に打ちひしがれながら、夢の中で走り逃げ回っていた。

 周囲の視界に映るのは灰色のコンクリートのような、蜂の巣状の建物のような、今までぬいぬいが見たことのない世界。

 姉妹たちの名を呼ぶが誰も返答を返してくる者はおらず、代わりにアンデット達が建物の影や曲がり角から現れる。応戦しようにもその手には武器はおろか、棒切れ一本ない。

 誰も居ない空間で、みっともなく悲鳴を上げて逃げ回る。叫んでも誰も助けてくれない。それどころか、アンデットの蠢く唸り声だけがぬいぬいを狩り立てる。身体の小ささを活かして、小さな抜け穴を潜り抜けたり、シャッターの下に潜り込んだりするが、その先にもアンデット共はたむろしている。

 そして長い、長く感じる逃走劇も終わりを告げた。

 逃げ込んだ先は高い塀。行き止まりである。

 ぬいぬいは言葉の通じぬアンデット達に許しを請う。誰かに悪戯しただとか、友達との約束に遅れただとか。本当に些細な事。

 しかし、その許しの声は許されることは無かった。

 ぬいぬいの幼き体に刻まれる激痛。死者の手で生きたまま解体される苦しみ。制止するように叫んでも、助けを呼んでも。誰も来ない。誰も止めることは無い。

 その中、誰かの笑い声が聞こえたような気がした。その声は非常に不快で年老いた男のような声。まるで自分自身がバラバラになって行くのが愉快で愉快でたまらないような嘲笑の笑い方に類似しているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

纏→手術台(45)

 

 纏は夢の中ではベッドのような場所に寝転がされていた。天井にはライトが備え付けられており、自分を明るく照らしているのが分かる。何故、自分はこのような場所で寝ているのだろう。自分は今まで何をしていたのだろう。そう疑問に思い寝転がらされているベッドから立ち上がろうと身体に力を入れた時だ。

 ・・・どういう事だろうか。起き上がることが出来ない。首を動かして身体の様子を探ろうにも首も動かせられない。四肢1つ。指一つ動かす事が出来ない。更に口元には何かの違和感。何か、硬いものを噛まされている。喋ることも、喚き立てることもできない自分の身体。必死に眼球を左右に動かし自分の状況を確認する。

 纏はベッドのような場所に拘束されていた。大の字を描くように両手足は大きく開かれ足首手首に巻かれた拘束具は張るように付けられており真面に動かす事は出来ない。頭にも巨大なベルトのような物が巻き付けられており、これが首すら満足に動かせない原因である事が理解できた。

 自分の状況を理解したところで、唐突に何か足もとの方から自動扉が開くような物音がし、何人かの人が入ってくる足音が聞こえた。目を凝らし、その足音の主を探る。そこには手術用の衣服を着用した血みどろの医師が数名、纏を取り囲むように立つ。その医師達はとても正気とは思えないような濁った瞳が印象的であった。医師の一人が鈍く光るメスを取り出す。纏は必死に身を捩り、そのメスから逃げ出そうと試みる。しかし、拘束具はそれを許さない。「やめて、助けて」と必死に叫ぼうとする。それも猿ぐつわによって阻まれる。

 そして濁った瞳で医師達は、光るメスを纏の皮膚に切り込ませた。麻酔のない状態での耐え難い苦痛。叫ぼうにも、舌を噛み切り自決しようにも猿ぐつわに阻まれ何もできない。

 そんな最中でも、何か男性の優越な笑い声だけは脳味噌に擦りこまれるように纏を穢して行った。

 

 

 




【後書き】
 1章の話で彼女等が頭痛にうなされ、倒れたのは唐突に上記の記憶が隆起したためです。
 文字にして1400文字程度の内容となっていますが、この悪夢を彼女たちは長時間味わっているといった様相です。
 もしも似た内容に例えるならば、世にも奇妙な物語に出てくる『懲役30日』のような様子です。




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Episode3-4 『あなたを正気に戻す2つの方法』

【前回のあらすじ】
 ぬいぬいはアンデットから逃げ戸惑う夢を見る。
 纒は自分が生きたまま解体される夢。
 2人の夢には、とある共通点があった・・・。




「っ・・・ひぃっ!」

「っ・・・・・はぁっ!!」

 

 唐突に身体が動くようになり、2人は蹲った状態から頭を俊敏に引き上げ、起き上がる。

 周囲では赤大や修羅が非常に驚いたような表情。その少し奥では、飛鳥が胎児を大切そうに抱き上げている姿が目に入る。

 

「ぬいぬいさん、大丈夫ですか?」

「ひっ! いや、やめてっ! 来ないで!! 殺さないでぇっ!!」

「お、おい、纏、頭痛は引いた・・・か・・・?」

「やだっ! やだやだやだぁっ!!」

 

 しかし、2人には明らかな恐怖に満ちた表情が浮かび上がっており、同時に完全に錯乱した様子を見せていた。

 ぬいぬいは修羅が手を伸ばし、触れようとするとそれを必死になって振り払い。纏は赤大が額に手を置こうとすると強い拒否反応を示し、装甲車の後部座席の角に身を潜める。

 飛鳥と星乃も何事と言った様子で錯乱状態の2人を見つめる。胎児はクリアグリーン色の培養液の中でプカプカと浮びつつも2人を見つめていた。

 絶叫にも近い悲鳴に対し、装甲車を運転していたクリスティーナもブレーキをかけ、後部座席の様子を伺う。中には非常に錯乱した様子の纏とぬいぬいの姿があった。

 

「何事!? 何事ですの!?」

「来ないで! 来ないでぇっ!!!!」

「ひっ・・・ひぃっ・・・。」

 

 錯乱は留まる事を知らず、狭い96式装輪装甲車をほうほうの体で逃げ回る。

 そんな2人に対して赤大と修羅は顔を合わせる。そして修羅の方が先に頷き、赤大も釣られるように頷いた。

 

「・・・何か怖い夢を見たんですね? 大丈夫です。大丈夫ですよ。私がちゃんと着いていますから。今ぬいぬいに危害を加えるものが現れれば、私が護ります。落ち着いてください。」

「はぁーっ・・・はぁーっ・・・。」

「そうです。ゆっくり深呼吸をして。大丈夫です。私が護りますから。ね?」

 

 真っ先に動き出したのは修羅であった。四つん這いになりながらも、逃げだす、ぬいぬいを全身で抱き締めるように優しく温めるように抱擁する。

 優しく諭すように耳元で修羅はぬいぬいの耳に語りかけて行く。抱きつかれた当初は、逃げ出そうとしていたぬいぬいも小刻みに震えながら、両手を口元に持ってくると震えを止めようと息を整える。修羅はぬいぬいの首元に己の喉元を埋め、人間の体温のぬくもりをぬいぬいに体感させていた。

 赤大は修羅の動きに対して、はっと我に返ったような表情をすると纏の方に振り返った。纏は背中を赤大達に向け、必死に隠れようとしながらも小刻みに震えている。修羅の様に抱きつき、安全であることを伝えようとしたのか纏に手が伸びるが寸前のところでその伸ばした手を止める。

 

「おい、纏。アタシの声が聞こえるか?」

「・・・・・・。」

「・・・修羅みたいに上手いことは言えねぇからよ。怯えているお前になんて声を掛ければいいか分からねぇんだが・・・。」

「・・・・・。」

「お前もその様子から、ぬいぬいと同じように・・・同じかわかんねぇけど・・・。怖い夢を見たんだよな? そしてその悪夢がまだ続いていると信じている。違うか?」

「・・・。」

「ここにはアタシを含め、お前を傷付ける奴は誰も居ない。」

「・・・。」

「って口だけで信じる奴はそうそう居ねえよな・・・。ほら、コイツをやる。」

 

 赤大は怯える纏に一方的に話しかけるが、震える彼からの返答はない。赤大は手困ったような様子で右手を使い前髪を掻き毟ると、何か決断したかのような瞳を纏に向け、そして懐からコンバットナイフを取り出すや否や、それを纏の傍の床に放り投げた。

 

「もしもその夢が現実だと思っているなら、ソイツでアタシを刺せ。お前にアタシがお前に危害を加えるクソヤロウだと思うなら全力でソイツをアタシに突き刺せ。そしてお前の目で見極めろ。何が現実でどれが悪夢なのか。」

「っ・・・・!!?」

「・・・・・・・ッ!! うわああああああああっ!!!」

 

 修羅も赤大の演説に息を飲み生唾を飲み込む。そして他の6人が纏を止めるよりも先に、コンバットナイフを拾うと全力でそのまま赤大に突き刺した。

 

ダメージ

1D4+2+1D6→7

装甲

白兵戦攻撃に限りダメージ1/2

赤大HP15→12

 

 纏の手に伝わるのは確かに肉を刺した感覚。纏の一撃は深々と赤大の防具を貫き、刃物の先端は赤大に突き刺さる。そして刺した相手を見るが、苦そうにしながらも敵意のない精一杯の爽やかな笑顔を見せる。ゲスめいた不気味な笑顔ではない。瞳が小刻みに揺れ、刺している手も震えだす。

 

「ぐっ・・・・ぅっ・・・・。」

「・・・・ぁ。ぁ・・・。」

「・・・・な・・・・? アタシの言う通りだ。お前が見ていたのは・・・・・ただの悪夢で・・・誰もお前を傷付けたりしねぇ・・・・だろ・・・?」

 

 ボタボタと赤い血液が装甲車内部を汚していき、ついに我慢をしきれなくなったのか赤大は苦しそうな呻き声を上げた。突き刺さったコンバットナイフが引き抜かれ、そのまま装甲車の床に転がり落ちる。

 辛そうに笑顔を引き攣らせながらも、赤大は血濡れていない方の手で纏の頭に手を置く。キメ顔と言わんばかりに纏に対してウィンクを飛ばした。

 

「ぁ・・・ぁぁ・・・ぁぁっ! ・・・ごめんなさい!! 赤大さん、ごめんなさいっ!!!」

「・・・安心しろ。この程度・・・・っぐ・・・神話生物に負わされる・・・・傷に比べたら・・・掠り傷程度だからな・・・・。それと・・・やっぱり、『桜井』は笑顔も可愛いが・・・泣いている顔も可愛いなぁ・・・。」

 

 纏は正気に戻ったかのように赤大に対して謝り始める。しかし、赤大は引き攣った笑顔を浮かべながら片手で負った傷を圧迫止血しながら、頭に置いた手で頭を撫でた。そして減らず口を叩きながらもコンバットナイフを回収し、元の定位置に仕舞った。

 

応急手当

クリスティーナ75→22【成功】

1D3→3

赤大HP12→15

 

 すぐにクリスティーナは赤大の防具を脱ぎ捨てさせ、傷の治療に入る。幸いにもその傷跡は浅く胸元に縫い傷が1つ追加されるだけで済んだ。手慣れた手付きで縫合し、包帯を巻きつける。その間赤大は布を噛みしめ呻き声を発さないように耐え切り3分ほどで手当は終わりを告げた。

 

行動判定

纏→7【成功】

 

 そして纏は見ることになる。赤大の身体には、いくつもの銃跡や切り刻んだのであろうかと疑いたくなるほどの背中までも続く、多数の縫い付けた後の手術痕が残っているのを。

 クリスティーナは手を真っ赤に染めながらも、適当な布で血液を付き取ると再び装甲車を走らせた。途中、急に停車した装甲車を心配したロジーナが窓越しにノックをしたが何でもない風に装うとすぐに頭を引っ込めた。

 

対話判定+2

ぬいぬい→修羅 4+2【成功】

纏→赤大 6+2【成功】

 

 

 




【後書き】
 今回の話の裏話になりますが、赤大のアプローチ方法が180度異なっています。
 改善する前は錯乱している『纒』に馬乗り状態になってマウントを取り、殴って正気に戻していました。しかし、ボツになりましたね。理由としては以下の通りです。

1.ドール達は人間の頃に比べ怪力となっており、拉げた扉でも無理やりこじ開けることができる。
2.『赤大』にとって『纒』は『桜井』と重なる存在であり、アイドルとして扱っていた彼を殴りつけるだろうか?

 と、後から考えた為ですね。因みに、ドールのDBは一律+1D6で処理しています。初めは1D6~2D6管理にしようかと思ったのですが、パーツ、未練、DB・・・・等々考えた結果、一律になりました。
 それにドール達は怪力とはいっても、内臓などが飛び散っているのでSIZは低目であると想定したためですね。





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Episode3-5 『荒野の教会』

【前回のあらすじ】
 ぬいぬいと纒は、悪夢から目覚めることに成功するが錯乱し続けたままだった。
 それを修羅と赤大が、自分達が可能な限りできる精神分析を2人に掛ける。
 同じ精神分析にも、2人の特徴が十分に含まれた精神分析であった。




 あれから8人を乗車した装甲車は半日ほどかけて走行を続けていた。何処を走っても広がるのは荒野ばかりではあったが、8人はそれぞれ退屈しないようにクリスティーナが拾って来た武装を拾い上げ操縦片手間に動作確認を行ったり、人間である4人はそれぞれの故郷の話を車外に居るロジーナを除くドール達に話したり、飛鳥が考えた胎児の名前の紹介など済ませる。

 全員名前の由来まで聞くと納得したように頷き、希望にするか未來にするかに関しては意見が分かれたものの、赤大のコイントスで裏が出たため胎児の名前は『未來』という名で決定する。それも終わると、96式装輪装甲車に搭載されていた備品の確認などを済ませていた。

 

対話判定

ぬいぬい→纏 7【成功】

ぬいぬい→飛鳥 9+1 【成功】

飛鳥→修羅 9【成功】

飛鳥→クリスティーナ 6 【成功】

纏→ぬいぬい 5【失敗】

纏→ぬいぬい 9【成功】

 

 ロジーナも腹ばいになりながらも、周囲を警戒しつつ何もない荒野の周辺を見回していた。話こそ入れなかったものの、空に飛び立つマカドリの数を数えるなどをし、暇をつぶしていた。

 鉛色の空の地平線が薄ぼんやりと暗くなり始めた頃。ロジーナは運転席に乗車しているクリスティーナのフロントガラスをノックする。クリスティーナの注意がロジーナに引かれると、とある方角に指を指す。何やら視界の端に半ば崩れかけた教会が見えたのだ。クリスティーナはロジーナに対して親指を立てる。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 1【大失敗】

【保護】→【恋心】

 

「みなさん、今夜の宿泊施設が見つかりましたわよ。決して綺麗とは言い難い外装をしていますが、少なくとも宿泊費は浮きますわ。」

 

 軽いジョークを飛ばしながらクリスティーナは巧みに車両を運転し、進路を教会へと切り替える。舗装されていない荒野は先ほどまでよりも激しく車体を揺らしたが、徐行に切り替えることで、比較的揺れは抑えることには成功した。

 そして半ば崩れかけた教会に装甲車は停車する。修羅が後部ハッチを開き瞬時に索敵を行う。幸いにも教会付近に敵対するような外敵は居ない事を、索敵後、確認する。

クリスティーナも修羅が外周の索敵を済ませ、装甲車まで戻ってくる直前あたりでエンジンを止め、鍵を抜いた。そして、飛び降りてきたロジーナに近寄る。

 

「ロジーナ! 今夜の宿泊施設を見つけるなんてグッジョブですわ!」

「・・・・・ぅん・・・・。・・・・クリスティーナも・・・・操縦・・・・上手かった・・・・。」

「お褒めに授かり光栄ですわ。あ、そうだ。ロジーナは装甲車外で索敵していらっしゃったから、お話しできなかったのですけど・・・今夜とっておきの面白い話があるんですが、良かったら話を聞いて下さらない?」

「・・・・ぅん・・・・。・・・・聞く・・・・。」

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 1【大失敗】

【恋心】→【恋心】

 

 表情がコロコロと変貌しボディーランゲージも含め最大限に表現をするクリスティーナにロジーナは微笑んだ。そして修羅も索敵を終え、7人の目の前に姿を現した。

 

「周囲の索敵を行いましたが、特に危険なものは潜んでいないようです。」

 

 修羅は地下研究所に居た時よりも重装装備で身を固めていた。ヘルメットを着け、オプションとして暗闇でも活動できるように暗視ゴーグルが付けられている。

 

「んじゃ。後は、教会内部の索敵だな。・・・・纏ぃー。いつまでアタシに申し訳なさそうな顔しながら、引っ付いてんだー? あれはアタシがお前に『アタシを刺せ』って命令して、お前は仕方なくそれに従っただけだろ? お前は悪くねぇんだからもう落ち込むんじゃねぇよー。」

「ほんとうに・・・ごめんなさい・・・・。」

 

 赤大は軽く傷を押さえながら戻ってきた修羅に視線を教会内の扉に向け、合図を送る。

 すると半歩後ろの位置で俯いて申し訳なさそうにしている纏に振り返ると、もう一つの片手で頭をワシャワシャと撫でる。声色も語尾を伸ばし、怒っていない素振を見せるが纏は平謝りを続けていた。

 

「あちゃー。『桜井』にここまで似ているとは・・・修羅、アタシ・・・やり方ミスったよな?」

「ミスどころか大失敗と考えた方が宜しいかと。」

「ヴァー。」

「あ、あの。中の確認に行きませんか? 少し風も出てきましたし・・・。」

 

 ぬいぬいの助言で駄弁っている5人は我に返ったような顔をする。

 

「ぬいぬいさんの言う通りです。フォーメーションはどうしましょうか? 私が先頭に出ます。」

「じゃ、アタシ中衛左方。」

「・・・・・・後衛で・・・・掩護・・・する・・・・。」

「わたしは中衛の中央で皆さんを護る事の出来る位置に立ちますね。」

「前衛。飛鳥。護る。」

「私は未來を守らなきゃ行けないので後衛に居ますね。」

「ボクは中衛で反対側を索敵するね。」

「えーっと、それじゃぁ、わたくしは前衛に行きますわ!」

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 5+1【成功】

飛鳥→ロジーナ 8【成功】

纏→ロジーナ 10【成功】

 

 適当な棒を拾い上げると、修羅は立ち位置を地面に記入していく。名乗りを上げるたびにその個所に立ち位置を書き込み、3分もしないうちに不完全なフォーメーションを組み立てる。周囲は光が無ければ見辛くなるほどに日は落ちていた。赤大も暗視ゴーグルを着用し、1つ予備分をクリスティーナに装備させる。初めは星乃にも渡そうとしたが、星乃自身が断った為であった。

 

 

 

 




【後書き】
 ご存知の方は、この後の展開を考える分に5話ほどで次章に進むだろうと思うでしょうが、実はまだ3分の1程しか、この章は進んでいません。他の章に比べて、今のところ一番長いかもしれません。
 それも1章を読み返して探索者×ドールの関わりが少ないと感じた為ですね。




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Episode3-6 『見覚えのある顔』

【前回のあらすじ】
 胎児の名前は性別が分からない為、赤大のコイントスによって決定した。
 半日ほど走行を続けた結果、日は傾き周囲には薄暗さが蔓延する。ロジーナはクリスティーナにキュンキュンしながら、今宵営みを育めそうな宿泊施設を指差し行先を導いた。
 周囲の索敵も無事に済ませ、施設の中に入る探索者とドール。そこで待ち受けるものとは・・・。



 装備を整え、決めたフォーメーションで8人は教会の崩れかけた扉を潜り中に入って行く。教会の中は荒れ果てていたが、複十数人の人影がぼんやりと佇んでいた。粗末な鎖でつながれた何人もの少女たちと・・・・・メガネのようなものをかけたシスターの後ろ姿であった。

 

行動判定

ロジーナ→8【成功】

ぬいぬい→2【失敗】

飛鳥→8【成功】

纏→6【成功】

 

狂気判定+記憶の欠片【シスター(入手)】

ロジーナ→5【失敗】

飛鳥→8【成功】

纏→7【成功】

 

 ロジーナ、飛鳥、纏の3人はぼんやりと佇んでいる少女たちやシスターを見るや否や生唾を1つのみ込んだ。ロジーナは対戦車ライフルに付属しているスコープを他の周囲に立っている少女たちに狙いを定め、その瞳が大きく見開かれる。纏や飛鳥も同じ状態であった。何かの間違いであってほしいと言わんばかりに身体が小刻みに震え、視点が定まらない。

 

聞き耳

クリスティーナ60→17【成功】

修羅80→17【成功】

赤大85→17【成功】

星乃85→27【成功】

 

 探索者4人は、ぬいぬいを除いたドール3人の様子がおかしいことを感知し、足音を立てないようにしながら、前衛を星乃とクリスティーナ両名に任せ最寄りの相手に近寄り震えている原因を小声で尋ねた。ぬいぬいも周囲を警戒しながらも、様子のおかしい2人の話に耳を傾ける。2人はそれぞれ言葉を繋ぐかのように言い合う。

 

「ぁ、ぁぁ、赤大・・・さん・・・あそこにいる女の子・・・見覚えがあって・・・。」

「あちらに、居る、シスター・・・私に・・・神教を教えて下さっていた方で、困っている、方には、誰にでも、手を、差し伸べて、私も、私も、いつかはあんなふうに、なりたいって・・・。」

「シスターはある教会に居たの・・・周りの少女たちも・・・・ボクたちに優しくしてくれて・・・。その時は・・・ぬいぬいも、居たような・・・。」

「地上が戦争によって焦土と化したのですが、私達は、何処かに逃げ込みました。そこに、あのシスター、の、教会もあったはず。」

 

狂気判定

ぬいぬい→6【成功】

 

記憶のカケラ【入手】

シスター(特殊)

 

 2人の繋ぐような言葉に、ぬいぬいも驚いたような顔をすると途端に震えだす。

 

「修羅 縫・・・さん、わたしも・・・・思い出しました・・・。ですが、ですが・・・一つ変なんです・・・。」

「・・・変?」

 

 飛鳥に対して様子を伺っていた修羅ではあったが、ぬいぬいがうわごとのようにブツブツと呟き始めるとそちらにも近寄り話を聞こうとする。そして4人は口を揃えて言った。

 

「「「「記憶にあるシスターの教会はここじゃない。」」」」

 

 その声は4人とも小声ではあったものの、重なった結果大きな1つの声となってしまった。

 シスターが振り向き8人の姿を完全に捉える。同時にクリスティーナは2連式ショットガンを構え、星乃は冷徹にシスターを睨む。

 シスターは人型をしていたが人間ではなかった。顔面や表に出ている腕には多数の継ぎ接ぎ跡が付いており、その肌色はブラックジャックを連想させるかのような顔つきであった。顔の様子から優しさが滲み出ているものの、継ぎ接ぎが全てを台無しにしていた。

 

「・・・時は満ちたのですね。」

「待って・・・おりました。」

「どれほど長い月日を待ち望んで・・・。」

 

 シスターはフラフラと夢遊病患者のような足取りで一歩一歩と距離を縮める。そして、どこか納得したかのような頷きを見せた途端、シスターは両目に涙を溢れさせ床に膝をついた。同時に周囲に佇んでいた『ナイトメア』や『バンシー』がずるずると前へ突き進んでくる。

 

『ナイトメア』『バンシー』を目撃SANチェック0/1D4+1

クリスティーナ76→36【成功】

赤大63→31【成功】

修羅66→36【成功】

星乃79→79【成功】

 

 探索者達は生唾を飲み込むものの、初めて目撃する“アンデット”の存在に対して恐怖の感情を抱くことは無かった。それどころか、彼女達を見つめる視線は何処か悲しげかつ、憐みも混じったかのような瞳であり、どこかやるせない表情を浮かべていた。 

 そんな中、シスターは唄うように高らかに叫び声を上げる。

 

「御使いは降臨いたしました! わたくしの胎にいざ御子を! 荒廃せる世界に救いを! おいでください、御子よ! 迷える子らからの讃美歌を!! 高らかなわたくしの子守歌を! どうぞお聞きください!! どうぞわたくしの中へお宿りください!!!」

 

 叫び終えるのと同時に、修道服から4本腕とそれぞれに構えた銃が露わになる。

 

明らかに不気味な存在に対してSANチェック0/1D2

クリスティーナ76→96【失敗】

76→74

修羅66→24【成功】

赤大63→28【成功】

星乃79→67【成功】

 

 それに合わせるようにして赤大や修羅も戦闘態勢に移行し、星乃はブツブツと『ナイトメア』が呟くうわごとのような呟きを発する。

星埜HP18→14 1D6→6

 

 次の瞬間、銃声の子守歌とナイトメアとバンシーの狂気の声が教会内を包み込んだ。

 狂気じみた感動の涙を流しながらシスター・・・否、サヴァント・バレットシスターは銃口を8人に向けた。

 

 

 




【後書き】
 ネクロニカサプリが届きました!
 ナイトメアやアンデット達の様相が想定していたよりも、おどろおどろしく探索者の如くSANが減りましたね。SANの減少を0/1D6ぐらいにすれば良かったと後悔しましたが既に時遅しでした。




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Episode3-7 『一騎当千』 - 前半戦

【前回のあらすじ】
 教会の中へと8人は陣形を組みながら索敵する。
 教会内にはドール達の見覚えのある子や、ドールのもっとも親しい存在が屯していた。
 狂ったように叫びながら銃口を向ける存在に対し、応じるように8人も武器を構えるのだった。
 


===1ターン目=============

編成

【奈落】

バレットシスター

ナイトメア25

【地獄】

ナイトメア20

バンシー4,5

【煉獄】

ナイトメア30

バンシー1~3

ぬいぬい、飛鳥、纒

クリスティーナ、修羅、赤大、星乃

【花園】

なし

【楽園】

ロジーナ

 

 

先制射撃

赤大

赤大178→53,51,61,41【全て成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾+神速

対象:バンシー1[完全解体]、バンシー2

→以下の部位を破壊

はらわた*2

 

クリスティーナ150→48,27【成功、スペシャル】

ゼロ距離射撃+ダブルバレル+貫通

対象バンシー2[完全解体]

 

 クリスティーナがずるずると這い寄ってくるバンシーに向けて、狙いを定める。完全な人型である物体を撃つのは初めてなのか、手は震え額には汗を掻いていた。そしてやっとの思いで撃とうと、指が引き金を引き切る前に隣で銃声が4発響き、クリスティーナが狙っていたはずのバンシーは体中に風穴を開けてその場にドシャリと崩れ落ちた。

 赤いレーザーポインターの先を眼で追う。隣では赤大が二挺拳銃を構えた赤大が、いつもよりも俊敏な動き拳銃を両手に取りながら佇んでいた。

 

「人を撃つのは初めてか? お嬢ちゃん? もし戦えねぇってならここはアタシ達に任せて可愛いガールフレンドにでも泣きついて――」

 

 赤大が小馬鹿にするように鼻で笑った途端、怒号のショットガンの発砲音が教会内に響き、赤大が仕留めたバンシーよりも酷い肉塊となった別のバンシーが崩れ落ちた。

 

「いえ、人・・・正確には人型も含めましたら・・・・撃ち殺したのは、これで6回目ですわ。最近、久々に殺しをしていなかったので感覚が鈍ってしまったみたいですわね。エスコートして下さるかしら? 赤大さん?」

「・・・・へっ。遅れるなよ!!」

 

 鼻で小馬鹿にした赤大を嘲るように、クリスティーナも自らの得物であるショットガンから火を噴かせて黒い笑みを浮かべた。呆気にとられた赤大ではあったが、すぐに笑顔を取り戻すと残りの敵に向かって走り出した。

 

 

 

COUNT18

赤大

赤大178→53,51,61,41【全て成功】

ゼロ距離射撃+二挺拳銃+ホーロー弾+神速

バンシー3[完全解体]

 

 先陣を切るようにして、特攻隊長の如く敵陣に切り込んでいく。目の前に現れた新たなバンシーへ向けて、寝転がるようにスライディングで粘菌上を滑りながら、特性の鉛玉を確実に叩き込み肉塊に替えていく。その速度は明らかに先ほどの赤大のものでは無かったが、修羅を除いてその様子を気に留めることもなかった。

 

 

 

COUNT16

ラピット

バレットシスター【死の手、余分な腕】

熊撃ち銃→6【成功】

対象:星乃

ぬいぬい

庇う

ダメージ:やぶれひまく防御+2

はらわた損傷

 

熊撃ち銃→8【成功】

対象:クリスティーナ

ぬいぬい

庇う

ダメージ:うろこ防御+2

ダメージ:背徳の悦び→やぶれひまく復活

はらわた損傷

 

星乃

????80→59【成功】

ナイトメア30→26

 

 赤大が敵陣に切り込み陣形を崩している間。星乃は飛鳥の目の前に立ち塞がり、クリスティーナは次に備え、新しいショットシェルを手に取っているところであった。その明らかにも不用心なリロードをしている人物にバレットシスターの鉛玉が飛び、あわや当たりそうになる。

 しかし、それを一人のメイド服の幼女が敵の攻撃を遮り、2人の生身の探索者は命を救われことになる。シスターの放った弾丸は、ぬいぬいの防御力を持ったとしても内臓を抉るほどの一撃であり、はらわたが腹部から零れ落ちたが、ぬいぬいは修羅に対して親指を立てて無事を知らせる。

 星乃もよろけたかのように一歩前に踏み出すや否や、ひとりごとを虚しく呟いている少女たちに鋭いこぶしによる一撃を放った。4人程の少女がその場に崩れ落ちる。

 

 

 

COUNT15

纏『号令』

赤大

拳銃89→70,4,44,78【成功、クリティカル、成功、成功】

二挺拳銃+神速

対象バンシー4[完全解体]、バンシー5

→以下のパーツを破壊

めだま、しんぞう、はらわた*3

 

星乃

????80→72→82【失敗】

対象:ナイトメア

ジャッジ バンシー5

ちみどろ妨害1

 

クリスティーナ

銃床アタック25→54【失敗】

 

修羅

武道キック80→97【ファンブル】

1D3→2+転倒+装甲

修羅HP13→12

 

ロジーナ

対戦車ライフル→2【失敗】

無茶→はらわた損傷

対戦車ライフル→7【脚】

対象:バンシー5[完全解体]

 

ぬいぬい

日本刀→1【大失敗】

切断判定→成功

こぶし損傷

 

飛鳥

エレクトリッガー→10【頭】

対象ナイトメア26→25+転倒

 

ショットガン→10+1+3【大成功+4】

ジャッジ

うで=飛鳥、ぬいぬい、纏 支援+3

対象ナイトメア25→17

 

 

 

「総員! 一斉掃射!!!」

 星乃の強烈な一撃が放たれると共に、纏もドールたちの指揮官として掛け声を掛ける。

 赤大は狂った『サヴァント』の如く笑いながら、まだ壊れ切っていないナイトメアとは、明らかに違う存在バンシー2体に向けて鉛玉をお見舞いする。またもや1体を片付け、もう一体も膝付かせた。

 星乃もバンシーを解体しようとこぶしを振り上げるが、赤大が攻撃を仕掛け、膝をつかせた1体が最後の抵抗のように血飛沫を浴びせた結果、星乃の攻撃は付近の椅子に直撃し椅子を粉砕させた。

 クリスティーナは、このタイミングでは撃つことの出来なくなったショットガンの銃床で殴りかかるものの、命中することは無く不発に終わる。修羅も攻撃を加えようと、一歩前に踏み出すものの床に撒かれた血糊に足を取られ転倒してしまう。

 ロジーナは、この好機を逃すまいと取り逃がしたバンシーに標準を合わせ、解体を試みる。1発目は外れる。焦りにより無意識のままはらわたをかき乱してしまったが、2発目にしてバンシーの脳天に大穴を開けることで解体に成功した。

 転んだ修羅の事が気がかりであったのか、ぬいぬいも余所見をしながら敵に斬り掛かった結果、バンシーが撒き散らした血糊に足を取られ転倒してしまう。そして宙を舞った日本刀はぬいぬいの拳を刈り取った。

 飛鳥は、ほぼ同タイミングで同じようにコケた桃色髪ポニーテール姉妹を不安げに見つめながら、地下研究施設からクリスティーナが命がけで回収してきた帯電装置『エレクトリッガー』で指先から電撃を飛ばし、ナイトメアの集団を転倒させる。

 号令をカッコよく決めた纏も、新しく得たショットガンをナイトメアに狙い撃つ。自分を含めた3人の支援もあってか、初めて試射するショットガンは8人のナイトメアを亡きものにした。

 

クリスティーナ

ショットガンリロード

 

「・・・こほん。」

 

 クリスティーナは銃床による攻撃が外れると、大人しく片手に持っていたショットシェルを新しく装填するのであった。

 

 

COUNT10

飛鳥

せぼね

 

 

COUNT9

赤大

拳銃89→66,14,77,2【成功、スペシャル、成功、クリティカル】

二挺拳銃+神速+貫通

対象ナイトメア(2) 20→2

 

飛鳥

ライトセイバー→10【頭】

ライトセイバー(連撃)→3【失敗】

ナイトメア17→15

 

 赤大の猛攻は止まらない。前衛ナイトメアの大群の中に潜り込んだかと思えば、その中から中衛のナイトメアに対して二挺拳銃で素早い射撃を行う。20体居たはずのナイトメアはほぼ肉塊と貸し、これにたいしては残った2体のナイトメアも、言葉にならないうわごとを呟きながら、困惑している様子が見えた。

 そんな赤大に前衛のナイトメアが迫る。しかし、赤大の余裕な表情は崩れることは無かった。赤大に注目している間に、飛鳥がライトセイバー片手に赤大に近づくナイトメアを斬り伏せて行く。何処かナイトメアを斬り伏せることに対して、嫌そうな顔をしている飛鳥ではあったが、赤大が危機的状況に陥った時は真顔の表情に戻り、切り捨てる。

 

 

 

COUNT8

ナイトメア3

待機

 

ナイトメア2

移動【地獄】→【煉獄】

 

ぬいぬい

日本刀→3【失敗】

 

ロジーナ

対戦車ライフル→7

対象:ナイトメア(3) 25→20

 

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

 

 2体しか残っていない中衛ナイトメアは、互いに相談するかのように頷き合うと、よろめきながらもたった2人で前衛へ躍り出る。ぬいぬいは少しでも前衛に居るナイトメアの数を減らそうと片手だけで日本刀を振り回し、攻撃を加えようとするものの、その攻撃は空を切るばかりであった。

 一方ロジーナは、最も遠距離から敵を蹂躙できるという特性を生かして最後衛に居るシスターを守っているナイトメアを一掃し始めた。

 

 

 

COUNT7

バレットシスター

熊撃ち銃→5【失敗】

 

ショットガン→4+1【失敗】

 

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

死の舞踏

ライトセイバー→7【成功】

対象ナイトメア(2)[完全解体]

ライトセイバー(連撃)→3【失敗】

 

 シスターは情け容赦なく、大型口径のライフルを8人へ向けて発砲する。その攻撃は飛鳥のこめかみをすり抜け壁に激突し、壁を崩落させた。これには纏も気が散り、ショットガンによる攻撃を真面に与えることは出来ず、飛鳥も思わず舞踏を踊るかのような足つきで、慌てふためきながら前衛まで出てきた2体のナイトメアを切り捨てた。

 

 

 

COUNT6

ナイトメア

うわごと→6→5【失敗】

ジャッジ

あし=纏 妨害1

 

ぬいぬい

肉の宴

はらわた回復

 

 前衛ナイトメアはブツブツと未練がましい事を連ねようとするが、纏がたまたま差し出した足に躓いてしまい、心に来るような事を言おうとした矢先に全員で地べたに倒れ込む。

 ぬいぬいは椅子に隠れ、他の7人からは見えない位置に身を潜める。そして嫌そうな顔をしながらも、肉片に喰らいつき失ったはらわたを取り戻した。

 

 

 

COUNT5

バレットシスター

熊撃ち銃→2【失敗】

 

ぬいぬい

肉の宴

はらわた回復

 

ロジーナ

対戦車ライフル→8【成功】

対象ナイトメア15→10

 

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

 

 暴れ回る赤大に対してシスターはトドメの一撃を撃ちこもうとする。しかし、素早い赤大を捉えることは出来ず、危うく味方の前衛ナイトメアに打ち込みかける。ぬいぬいは相変わらず椅子の影に隠れ、落ちている肉片をかき集め飲み込む。

 ロジーナは前衛のナイトメアに標準を合わせ、鉛玉を打ち込む。1発の銃声で5人のナイトメアが宙を舞い肉片と化す。

 

「・・・・。」グッ

「・・・・。」コクン

 

 クリスティーナが振り返り微笑みながらロジーナに向けて親指を立てる。ロジーナもはにかむように微笑むと頷きをクリスティーナに返した。

 

 

 

COUNT4

ショットガン→9+1【成功】

対象ナイトメア10→8

 

飛鳥

ライトセイバー→1【大失敗】

切断判定→成功

ほね損傷

 

ぬいぬい

せぼね

 

「あぁん! アシクビガクジキマシター!!」

 

 ロジーナが打ち込み隊列が崩れた ところで纏もショットガンを崩れた隊列に向けて打ち込む。広がる散弾は貫通力がなく、クリスティーナのショットガンの様に貫通力は無いものの、崩れかけたナイトメアを屠るのに対しては優秀な性能を持っていた。

 前方の熊撃ち銃、目前の人間の特攻隊長、後方から対戦車ライフルとショットガンが浴びせられていた敵陣中の飛鳥は非常に混乱したかのように目を回していた。そしてここでも、またもやバンシーが巻いた血糊が飛鳥を襲い転倒に持ち込む。あの地下の研究場でもあった時の様に空を舞うライトセイバー。そのライトセイバーはまたもや飛鳥の足を深く切り裂いた。

 

 

 

COUNT3

バレットシスター

熊撃ち銃→4【失敗】

 

ナイトメア

うわごと→3【失敗】

 

ぬいぬい

日本刀→9【成功】

対象ナイトメア8→6

 

 シスターは執拗に赤大を狙い、熊撃ち銃を放つ。しかし、それは常に的外れな個所に当り爆ぜる。今回は礼拝椅子に直撃し、力を溜めているぬいぬいの姿が露わになった。

 ぬいぬいは急いだ様子で口元を拭い何事もなかったかのように立ち上がる。前衛のナイトメアたちは非常に混乱している飛鳥にうわごとを呟いた。しかし、それは飛鳥の耳に届くことは無かった。理由としては単純明快。飛鳥の方が、それを理解できるだけの知能を現状では有していなかった。これに限る。

 居場所が発覚してしまった ぬいぬいは立ち上がった後、垂直方向に弾け飛ぶようにしてナイトメアに斬り掛かる。その跳躍は天井に頭が付きそうなほどに飛びあがり、そこから縦に一刀両断の要領で真っ二つにした。

 

 

 

COUNT2

ショットガン→7【成功】

対象ナイトメア7→5

 

飛鳥

ライトセイバー→5【失敗】

 

ぬいぬい

せぼね

 

ロジーナ

対戦車ライフル6→【成功】

ナイトメア[完全解体]

 

 

 纏は素早く次の標的に向けてショットガンを放つ。対戦車ライフルの射線を考え余分な2体のナイトメアを刈り取る。飛鳥もロジーナの攻撃が通りやすいようにとわざとライトセイバーを掠るように空振りさせ、ナイトメアを半歩下がらせる。ぬいぬいは何が起きても瞬時に行動を取れるように腰に力を溜める。そして射線に敵が重なり合った瞬間。ロジーナの対戦車ライフルが火を噴いた。

 

 

COUNT1

バレットシスター

熊撃ち銃→10+1【大成功】

対象赤大

うで=バレットシスター 支援1

 

ぬいぬい

庇う

ダメージ:やぶれひまく防御+2

→めだま、あご損傷。

 

 

 シスターは自分達を嘲笑うかのように動き回る赤大の行動を予測し、今までは標的に対して狙い撃っていたのを止め、その次の行動を読んだ場所に大型口径のライフルを打ち込む。赤大がそのことに気が付くも既に時遅し。鉛玉は赤大の瞳の目の前まで接近していた。

 そこに力を溜め込んでいた ぬいぬいが赤大に体当たりするように全力で押し込み、自分が代わりに身代わりになる。天使のような形をした やぶれひまくで己の身を守るもシスターの放った鉛玉はそれすらも見抜いていたかのようにひまくの薄い部分を突き抜け、ぬいぬい本体を引き裂いた。

 衝撃により激しく身体が後方に弾け飛ぶ。頭から突っ込むような形で赤大を守りきった為、損傷は頭に被害が集中しており顎と目玉が弾け飛んだ。

 迅速な速度で修羅がぬいぬいに駆け寄るものの、両目は抉れ顎は弾け飛んでおり非常に人間であれば事切れている様にしか見えない惨状となっていた。

 

狂気点追加

ロジーナ

クリスティーナ+1

ぬいぬい

飛鳥+1

飛鳥

纏+1

飛鳥+1

 

幼気な少女を敵とはいえ蹂躙している自分に対しSANチェック0/1

クリスティーナ74→10【成功】

赤大63→38【成功】

星埜79→3【成功】

 

上記に加え仲間が酷い傷を負っていることに対しSANチェック1/1D3

修羅66→40【成功】

66→65

 

 

 




【後書き】
 前回の第一章で、伝え忘れていたことなのですが、今回を含め。前回。次回も敵の兵力は1.5倍増しで行きます。探索者も居ますし、脆いですが人手は足りていますからね。今回は優秀な盾役もいるので、そのようにして処理しました。




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Episode3-8 『探索者の強み』 - 後半戦

【前回のあらすじ】
 探索者は開幕から敵を薙ぎ払っていく。その攻撃は何処か自棄気味な弾薬を惜しまぬ攻撃方法。
 飛鳥は血糊に足を取られ、またもやライトセイバーで脚を傷つける。
 シスターもやられっぱなしではない。自棄気味の赤大の動きを予測しエレファントガン程の威力がありそうな銃器で、正確に射貫きぬいぬいが瞬時に身を挺して庇うのであった。





===2ターン目=================

 

先制射撃

クリスティーナ

ショットガン75→22【成功】

対象バレットシスター

→以下のパーツを破壊

[頭] めだま     : オート   :    :   : 1

 

 クリスティーナはもっとも離れているシスターに向けて、最大射程50mである1920sから愛用されている現代兵器ショットガンの利点を生かし狙撃を試みる。スラッグ弾ではない為、広がる散弾は威力は抑えられるものの見事シスターの眼球を削り取る。シスターの腕には何やら鎖が握られ、その鎖は隣のナイトメアたちに繋がっているようではあったが、ショットガンの拡散した散弾を受けてもその鎖が千切れるようなことは無かった。

 

 

 

COUNT16

ラピット

バレットシスター【よぶんなうで、死の手】

熊撃ち銃→6【成功】

対象:星乃

熊撃ち銃→6【成功】

対象:赤大

 

 シスターは調子を取り戻して来たのか、ぬいぬいが撃ち抜かれてから動きが鈍くなった赤大と元々最低限しか動かない星乃に標準を合わせ、引き金を引いた。

 顔面のほとんど潰れたぬいぬいが、何をどう察知したのか起き上がりボロボロの身体で赤大と星乃を庇いに行こうとする。しかし、それを修羅は腕を握り、ぬいぬいが走り出そうとするのを止めた。

 

「助けに行かずとも、あの二人なら大丈夫です。」

「え゙?」

「それよりもぬいぬいさんは自らの手当を。その姿は・・・・・こちらとしても辛いです。」

 

回避

星乃32→92【失敗】

3D6→4

装甲

星埜HP14→14

赤大85→20【成功】

 

 ぬいぬいはボタボタと体液を床に飛び散らせながら、2人の方を向く。ぬいぬいが2人の姿を見えているかどうか分からないが、赤大はシスターの銃撃を飛び上がりながらも身を翻し銃弾を躱す。

 

「お゙ぉ゙。」

 

 そのまま星乃に視線を移す。星乃は最小限に躱そうとしたのか、微動だに動かないまま熊撃ち銃の鉛玉が腹部に減り込んだ。

 

「星乃さん!!」

「大丈夫。痛い。ない。」

 

 すぐに飛鳥が駆け寄るが、星乃はケロッとしたような表情で自分の巫女服の乱れを正す。特に出血している様子もなければ、苦しそうにした様子にしている様子もなかった。足元には潰れた熊撃ち銃の弾頭が転がっている。

 修羅は想定していた予想に準ずる2人の反応に、眉間に皴が寄るものの直ぐに表情を元に戻した。

 

 

 

COUNT15

クリスティーナ

一発だけリロード+ショットガン75→69【成功】

対象バレットシスター

→以下のパーツを破壊

[頭] カンフー    : オート   :    :   : 1

 

「飛鳥さん! 車内で話していたワイヤーリールとやらを使って、わたくしを最前線に飛ばして頂けるかしら?」

「え、でも、そんなことをしてしまったら敵の集中砲火を受けてしまいますよ!?」

「大丈夫ですわ! 後方には心強い味方が居るんですもの。それに消耗戦は好きではありませんの。派手にぶっ飛ばさないと気が狂いそうですわ!」

「・・・わかりました・・・!」

 

 確実にショットガンで一発ずつシスターの部位を剥ぎ取りながら、挑発するかのようにシスターへ向けて中指を立てた。クリスティーナは星乃の傍に居る飛鳥に指示を送る。飛鳥は気乗りしない表情で、クリスティーナを心配するものの、対戦車ライフル覗くロジーナの姿と彼女の決意の固まった意志に押される様になりつつもその頼みを承諾した。

 

 

 

COUNT13

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

対象:ナイトメア

 

修羅

バレットシスターからの攻撃を回避準備

 

「それと、ぬいぬいさん。私の事も守って下さらずとも大丈夫ですよ。私も赤大の様に自分の身を守りますから。・・・シスター、貴女はそれだけ大量の銃器を扱うと言うのに多寡だか人間の1人も殺せないのですか?」

 

 

 

COUNT11

ラピット

飛鳥

ワイヤーリール→クリスティーナ

移動【煉獄】→【地獄】

 

バレットシスター

熊撃ち銃→9【成功】

対象:修羅

 

回避

修羅80→64【成功】

 

(問題は、その後。ぬいぬい達の様に動けないって事でしょうか。)

 

 飛鳥はクリスティーナに指示された通り、彼女の胴体にワイヤーリールを撒きつけ教会の入り口周辺から更に奥、教壇の前まで彼女を連れて行く。ロジーナは、飛鳥の行動に立ち上がり前線へ送る姿を確認する。

 修羅は、呆然とするぬいぬいへ見せつけるように悠長にシスターへと向けて歩く。その歩き方は非常に挑発しているかのような無防備な歩みであり、シスターへの挑戦状でもあった。

 そして力の差を理解して居な愚かな人間に向け、シスターの再び大型口径のライフルが火を噴く。その鉛弾が修羅に当たることは無かった。ステップを踏むようにしてそれを回避しきる。そして不敵な笑みを作ってみせたものの、一筋の冷や汗が流れた。

 

 

 

COUNT10

ロジーナ

対戦車ライフル→1【大失敗】

無茶→はらわた損傷

対戦車ライフル→5+1【成功】

ジャッジ

うで=ロジーナ

ダメージ:屍肉の盾

ナイトメア(3)20→15

 

せぼね

 

 ぬいぬいは修羅が鉛玉を避けきる姿を確認すると、一度頷きシスターの強行を止めるためクリスティーナに続く。ロジーナも生身単身で前線に赴くクリスティーナの援護射撃に打って出る。一瞬、飛鳥の後頭部を狙いかけたが、はらわたをかき乱すことで冷静さを取戻し、次こそシスター目掛けて居ぬく。

 スコープ越しでシスターと目が合ったような気がし、ゾワリと背筋が凍るような気分になったのか身震いをする。シスターは笑っていた。笑いながら手持ちの鎖を引き、ナイトメアたちを肉盾として活用し、ロジーナの一撃を防いだのだ。

 

 

 

COUNT9

号令

赤大、修羅、星乃

パス

 

クリスティーナ

ショットガン70→56【成功】

1D5→胴

対象:バレットシスター

ジャッジ

スチールボーン防御+1

→以下のパーツを破壊

[胴] はらわた    : オート

 

ぬいぬい

待機

 

飛鳥

待機

 

ロジーナ

対戦車ライフル→1【大失敗】

無茶→あご損傷

対戦車ライフル→9【成功】腕

対象バレットシスター

→以下のパーツを破壊

[腕] うで      : ジャッジ  : 1   : 0  : 支援1

[腕] 狙撃ライフル  : アクション : 1   : 2-3 : 射撃攻撃1、出目+1

[腕] 二丁拳銃    : アクション : 2   : 0-1 : 射撃攻撃1+連撃1

[腕] 熊撃ち銃    : アクション : 2   : 0-2 : 射撃攻撃3

[腕] 死の手     : ラピッド  : 0   : 自身: 攻撃マニューバ1つを「ラピッド」化

 

待機

 

ナイトメア

うわごと→4【失敗】

対象:纏

 

「ぜ、ぜんいん!! もう一度! そうこうげき!」

 

 纏の焦りが混じるような号令が教会周辺に響き渡る。

 その中で真面に動くことが出来ていたのは、クリスティーナとロジーナのみであった。

 移動中に装填した1発をシスターにぶち込む。しかし、捨て身の渾身の一撃はスチールボーンによって効果を半減されてしまう。

 シスターはクリスティーナに対して、勝ち誇ったような笑みを向ける。

 されども、その勝ち誇った笑顔を浮かべ続けていたのはクリスティーナも同様であった。嫌な予感でもしたのか、ナイトメアの肉盾を再び使おうと鎖を振るおうとした直後、一閃の咆哮が最後方から響き渡る。その一撃はシスターの余分な腕や、その他の銃器を消し飛ばすには十分すぎる一撃であった。

 

хороший!!«ナイス!» |Выстрел!!(ショット!!)

 

 クリスティーナのロシア語での歓喜の叫びが周囲に響き渡る。

 だが、そこで敗れ去るシスターではない。身体を不気味に歪ませながら、起き上がり最後の得物であるショットガンを構えた。

 

 

 

COUNT9

ぬいぬい

ほね

移動【煉獄】→【地獄】

 

 

 

COUNT8

飛鳥

ほね

移動【煉獄】→【地獄】

 

ほね

移動【煉獄】→【地獄】

 

 

 

COUNT7

バレットシスター

ショットガン→3+1【失敗】

対象:クリスティーナ

 

 

 

COUNT6

バレットシスター

ショットガン→2+1【失敗】

対象:クリスティーナ

 

 

 

ぬいぬい

肉の宴

あご回復

 

 

 

COUNT5

バレットシスター

ショットガン→1+1【失敗】

対象:クリスティーナ

 

ナイトメア

うわごと→5【失敗】

対象:纏

 

ぬいぬい

肉の宴

かた回復

 

飛鳥

エレクトリッガー→6【成功】

対象:バレットシスター

 

せぼね

 

 シスターは不気味な格好のまま、一杯喰わされた生身であるはずの人間に向けてショットガンを3発ほど連射する。しかし、どの攻撃も当たることは無かった。

 その合間に、ぬいぬいは明らかに無茶をしすぎているクリスティーナを護る為、前進しつつも再び身を隠しナイトメアの血肉を貪り喰らい体の損傷を直していくのであった。

 3発目も外したところで、シスターにいよいよ死の宣告が下される。飛鳥の指先から電撃が迸りシスターを転倒させたのだ。

 

 

 

COUNT4

ぬいぬい

肉の宴

はらわた回復

 

ショットガン→3+1【失敗】

狂気点振り直し ロジーナ+1

ショットガン→6+1【成功】脚

対象:バレットシスター

→以下の部位を破壊

[脚] ほね      : アクション : 3   : 自身: 移動1

[胴] しんぞう    : オート   :    :   : 1

 

 飛鳥がシスターを転倒させている間に、ぬいぬいは身体をほぼ完全な状態になるまで直し続け、纏もこの10秒間で全てを終わらせるような勢いで散弾の嵐を撃ち込み続けた。

 

ロジーナ

対戦車ライフル→3【失敗】

無茶→こぶし損傷

対戦車ライフル→1【大失敗】

無茶→ほね損傷

対戦車ライフル→1【大失敗】

無茶→ほね損傷

対戦車ライフル→7【脚(なければ攻撃任意)】

対象バレットシスター

→以下のパーツを破壊

[腕] ショットガン  : アクション : 1   : 0-1 : 射撃攻撃1+爆発、出目+1

[腕] よぶんなうで  : ラピッド  : 0   : 自身: アクションマニューバ1つを「ラピッド」化

 

 ほぼほぼ動けなくなったシスターに対し、ロジーナは記憶の片隅にある過去と決別し、今護り通すべき者を護るため曇りなき(まなこ)で見つめる。

 口から泡なような物を吹き出し、意味のない言葉の羅列を続け、不気味に脈動しているソレはかつてロジーナが知っているようなシスターでは無い別の人物に見えた。

 

「・・・・До свидания(さようなら).」

 

 知りえない言語が口から漏れ出たような気がしたが、標的を狙い定め引き金を引く。その銃声は、とても長く周囲に響き渡っている様に聞こえ続けた。

 

 

 

COUNT3

ナイトメア

よろめく

移動【奈落】→【地獄】

 

ぬいぬい

日本刀→2【失敗】

 

飛鳥

ライトセイバー→6【成功】

狂気点 ぬいぬい+1

ライトセイバー→7【成功】

ナイトメア(3)20→16

 

ショットガン→10+1+3【大成功+4】

うで=纏、ぬいぬい、飛鳥+3

ナイトメア(3)16→8

 

 

 

COUNT1

ぬいぬい

日本刀→6【成功】

ナイトメア(3)8→6

 

飛鳥

ライトセイバー→6【成功】

ライトセイバー(連撃)→7【成功】

ナイトメア(3)6→2

 

ロジーナ

対戦車ライフル→7【成功】

ナイトメア[完全解体]

 

 

 

 シスターが動けなくなったとはいえ、後衛に控えているナイトメアの少女たちはまだ動ける。盾にすらされなくなった彼女たちは鎖の音を高らかに響かせながら、着実に向かってくる。

 姉妹たちは、想い想いの複雑な表情を作りながらも、肉体からの開放して欲しいと助けを求めている様にしか見えないナイトメアたちに向き直る。彼女たちは抵抗すらしなかった。よろめきながらも近寄って来たかと思えば、ライトセイバーや日本刀に斬り伏せられていく。うわごとを呟いている口も次第に数が減り、残されたのは胴体と頭しか残っていないシスターの姿だけであった。

 

入手戦利品。

基本パーツ:21

強化パーツ:11

 

たからものの狂気点回復

飛鳥-2

ロジーナ-1

ぬいぬい-1

纏-1

 

===戦闘終了=================

 

 

 




【後書き】
 探索者の攻撃を優遇しすぎとお叱りを頂けそうですが、探索者は探索者成りに脆い設定となっております。
 例えば、『対戦車ライフル』の射撃攻撃5を探索者が受けた場合 5D10のダメージが探索者に与えられます。余裕で即死圏内です。また今回も、クトゥルフ探索者側は既存のルール使用をしているため、回避は1回しか行えず、回避後は『修羅』が施行を張り巡らせた通り攻撃することは不可能です。
 それでもダイスの出目が、比較的ドール達を狙ってくれているので九死に一生を得ているのですがね。クリスティーナへ向けてのショットガン3連射は震えましたね。ホントに。
 全弾命中で2D6*3のダメージです。クトゥルフ基礎ルルブのC4と同じ威力です。




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Episode3-9 『蠢く肉片』

【前回のあらすじ】
 悲惨な姿となってしまったぬいぬいを見た赤大は正気を取り戻す。そして次は庇われることなく銃口の向きから射線を読み取り鉛玉を正確に回避するのであった。
 ドールと探索者は手を取り合い探索者を前線へと送り出す、ショットガンの援護の元対戦車ライフルで敵を貫いたのであった。
 恩師であるシスターへとトドメを指したのち、動くことのできるドール達はその他に蠢いている『ナイトメア』となった少女たちを成仏できるよう1人残らず無に還すのであった。




 ドールたちは慣れた手つきで自分たちの身体を修復していく。

 探索者も、また使えるパーツの捜索や、今夜 教会内に泊まるための場所確保に勤しんでいた。

 ドールと探索者。各々の行動をとっていると、バラバラになったバレットシスターが肉片同然の身体で動き、呟くように再び呻き始める。8人はその様子に呆気にとられバレットシスターを見つめる。戦闘不能となった後も、彼女は腕を乱暴に接合し自らの腹部からこぼれた臓物を、ちぎれ落ちた手で丁寧に拾い並べている。

 更にはらわたから取り出した己の子宮を掲げながら彼女は呟いた。

 

「どうか彼の子らに救いを・・・・・・・受難の果てに救済を・・・・・主の慈愛を大地へ・・・・・・。」

 

 転がり落ちた目玉は、痙攣の様に脈立ちながらドールたちをじっと見つめて、ズダズタになった顔も僅かに・・・・・わずかにではあるが微笑を浮かべていた。

 

狂気判定+SANチェック1D3/1D6

ロジーナ→4【失敗】

飛鳥+1

ぬいぬい→6【成功】

飛鳥→4【失敗】

ロジーナ+1

纏→8【成功】

 

クリスティーナ74→79【失敗】

74→68

修羅65→25【成功】

65→64

赤大63→83【失敗】

63→59

星乃79→92【失敗】

79→73

 

アイディア

クリスティーナ65→70【失敗】

70→8【スペシャル】

星乃1D10→異食症

 

 肉片が蠢き微笑むという不気味な光景に、誰もが口を押え吐き気を催すのを耐え切るしかなかった。

 探索者、星乃を含め、全員は揃いも揃って青白い嫌悪を抱いているような表情になり、シスターから目を逸らしたり、耳を塞ぎ肉片が蠢くような音を阻害していた。

 星乃は、フラフラとナイトメアを片付けた屍の山に近づくと、その一切の感情を表に出すことなく無表情のまま顔面から死体の山に飛び込んだ。腕を死体の隙間に深く差し込み、顔面も奥へ奥へと減り込ませていく。

 シスターに加え、星乃の奇行に飛鳥は恐れ(おのの)いたようにその場に腰を抜かし、ロジーナも瞳を閉じ気が遠くでもなったのか、ふらつきながらも近くの椅子に腰を下ろした。

 満足に動けるのは纏とぬいぬい2人しか居ない。

 二人は顔を見合わせる。いくら自分達に攻撃してきたとはいえ、自分たちの恩師が目の前で自分達を見ているのだ。このまま野営などしようものなら、生暖かい視線によって狂いそうな気分でもあった。

 

「・・・治しませんか? もう中身はシスターではないのかもしれませんが・・・それでも・・・外見はわたし達に生前は優しく接してくれた方です。このままではあまりにも可哀想だと思います。」

「・・・うん。武器は取り上げて基本パーツだけでも直そう。もしも、また攻撃してきたその時は・・・・。」

 

 ぬいぬいと纏は、それ以降言葉を交わすことなく、蠢く肉片をかき集めシスターに縫合する。接合ではない。纏は持ち合わせの縫合糸を使い、丁寧にシスターの肉片をかき集め生前のシスターを作り出していた。まるでネクロマンサーにでもなった気分だった。

 ぬいぬいはナイトメアの屍の山から、星乃の行動に若干引きつつシスターの肉片を探し出す。動かない肉片から蠢く肉片を探し出すのは、苦労が殆ど必要なかった。しばらく肉片を捜索していれば、肉片自らがぬいぬいの目の前に現れることもあれば、症状の落ち着いた修羅がぬいぬいのサポートをしに、巨体で動かしにくいナイトメアの死体を移動させに手伝いに入るなどをした。

 そのうち、シスターを修復する人手も増え、2人で修復する時よりも効率的に修復が行えるようになる。

 ぬいぬいと修羅の二人は、積み重なった大量のナイトメアの死体から、シスターの肉片を探し出す。探し出した無害な肉片を赤大が、縫合糸で修復中の纏の元まで運搬する。ロジーナとクリスティーナでシスターの扱っていた武器や武器になりそうなものをシスターから遠ざけ監視し、我に返った星乃と飛鳥の両名は教会に新手の敵が居ないかどうか歩哨していた。

 太陽も完全に沈みきり、辺り一帯は深淵の闇が包み込んでいた。しかしクリスティーナ、修羅、赤大の3人は暗視ゴーグルにより視界の確保は出来ており、シスターの修復に励む。

 ぬいぬい、纏、ロジーナ、飛鳥も本来、人間であれば何も見えない中を ドールと成り果ててから感覚器官が特化したのか、暗闇による弊害は及んでいる様子はなく修復を行っていた。

 星乃は飛鳥の手を握り他愛のない話を交わしながら、無音かつ暗闇の中を歩哨しているのであった。

 

 

 




【後書き】
 今回は裏話となります。今回の話を書いていた時なのですが、不思議と牛モツが食べたくなりましたね。自分でもよくわかりません。
 蠢く肉片の描写をしていた時は、気分の悪さを感じていたのですが、シスターが自分の肉片を地面に並べ、子宮を掲げた直後無性にモツが食べたくなりました。
 恐らく噛み応えのあるモツと、分厚そうで噛み応えのありそうな子宮が重なったんですかね?
 一番、執筆中に困惑した場面です。




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Episode3-10 『本名』

【前回のあらすじ】
 シスターや旧友だったかもしれない存在を殲滅した一行は、壊れたパーツの修復に勤しんでいた。
 もう戦うことも(まま)ならないシスターがボロボロの身体で狂気の笑みを一行へ向ける。
 衝撃的な光景に真面に動ける存在は、纒とぬいぬいの2人しかいなくなってしまった。




「い、挿れるよ・・・?」

 

 纏はごくりと生唾をのみ、シスターに対して正常位の姿勢で息を荒げながら、乗り上げている。その様子を遠目から、ロジーナ・クリスティーナが見守り、飛鳥・星乃も歩哨を一時的に静止し輪の中に集まる。ぬいぬい修羅は纏の傍らに立ち、赤大は何か茶化そうと口を開くが、修羅から尻にローキックを叩き込まれ口をつぐんでいた。

 そしてシスターの酷く落ち窪んだ穴の中に、纏の指がツプンと入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 最後の部品である「めだま」がシスターの中に入ったのだ。

 

 べつに纒の「おとこのこ」が、シスターの「おんなのこ」に挿入った(はいった)訳ではない。

 

 纏はすぐにその場からバックステップを踏むように離れる。

 全員が全員、シスターから視線を反らさず息を潜めた。

 不快な静寂が辺りを包み込む。

 そして探索者には分からなかったが、ドールである4人には何故か理解することが出来た。今、目の前に居るのは自分達に攻撃を仕掛けてきたシスターではない。生前、記憶の片隅に居る、あの優しかったシスターであると何故か分からないが、そう確信を得たような顔をする。

 

「貴方達は・・・・確か・・・。」

 

 声色も唄っていた時の叫び声と比較して非常に落ち着いたものであった。

 

「シ、シスター・・・? ボクを覚えていますか・・・? ・・・纏です。」

「えぇ、覚えてますよ。『桜井(さくらい) (まとい)』ちゃんでしたよね。ファンキーな髪色をした赤髪の同僚がいらっしゃる・・・影響されて染めた、その髪のメッシュ・・・直してなかったんですね。」

「なぁ、修羅。ファンキーな髪色をした赤髪の同僚って・・・。」

「さぁ・・・?」

「おい、何故目を逸らした?!」

 

 纏の非常に戸惑いながらも、恐怖が入り混じったような語りかけに、非常に慈愛に満ちた優しげなシスターの声が崩れかけた教会に木霊する。声色を聞いている分には敵意のようなものを感じることは無く、シスターを囲むようにして離れていたものの誘われるかのようにシスターに近づいた。

 

「シスター! シスター!!! 私の事は覚えていますか?」

「はい。私の大切な教え子の・・・神代(かみしろ) 飛鳥(あすか)ちゃん。隣の貴方はロジーナ。ロジーナ=ブレアちゃん。こんな世界が崩壊しきってもその隣のクリスティーナちゃんとの誓い通り、護っているのですね。」

「・・・・私・・・・名前・・・・・・ロジーナ=ブレア・・・・。」

「えっ!? わたくしのことも知っていますの!?」

「よくロジーナちゃんから窺って(うかがって)いましたから。」

「・・・・・・ん・・・///」

「今も仲が良さそうですね。・・・成長した様子からシェルターから何年経過してしまったのでしょうか・・・。」

 

 そして正気を取り戻したかのようなシスターに対し、やや喰い気味に飛鳥が一歩踏み出しシスターが見えやすいように纏の隣に立つ。シスターは笑顔で微笑み、一度頷くと飛鳥の名前も呼ぶ。

 一足遅れる様な形でロジーナが何も言わず、クリスティーナを傍らに引き連れながら飛鳥の隣に立った。シスターの視線は、そんなロジーナとクリスティーナも捉えほっこりとした笑顔を作る。

 予想外の相手から、自分の名前が出てきたことでクリスティーナは一瞬身体を飛び上がらせた。そんな彼女を宥めるようにロジーナは腕を組ませ、恥ずかしそうにしつつも積極的に引き寄せる。

 一方、シスターは仲睦まじそうな様子を作り上げているロジーナを尻目に、虚空に向けて何も映らない空を見上げ呟きを漏らしていた。

 

「・・・・シスター。・・・ぁー。」

「シスターで構いませんよ。・・・私自体名前を忘れてしまいましたから。」

「それでは、失礼しまして・・・シスター。彼女の名前についても何か存知あげませんか?」

 

 話が弾み、なかなか一歩踏み出すことが出来ない、ぬいぬいを引き連れた修羅が割って入る。ぬいぬいは修羅に背後に隠れながらも、シスターの近くまで来るとひょっこり頭を出した。

 

「・・・・・・。」

「・・・? どうかされましたか?」

「・・・・彼女の名前ですが・・・実は私も存知あげないのです。皆から、『ぬいぬい』という愛称で呼ばれていたことは覚えているのですが・・・。」

 

 急にシスターの表情が強張る。

 暗視ゴーグル越しに分かるシスターの強張りに修羅は丁寧な敬語で尋ねると、シスターは悲しげに首を横に振って、強張った理由について2人に話した。それを傍らで聞いていたぬいぬい自身も酷く落ち込んだ表情をする。

 

「・・・・ですが・・・。苗字であれば・・・知らないこともありません。」

「・・・・・。・・・あの・・・宜しければ、その苗字・・・教えて貰えませんか?」

「・・・確か、貴方の苗字は『修羅(しゅら)』。そんな苗字だったような気がします。」

 

 落ち込んだ様子のぬいぬいではあったものの、苗字だけであれば覚えているかもという彼女に対し、僅かな希望が宿ったような表情を向ける。ぬいぬいの表情に希望が宿り、それから一呼吸を置いたのちにその苗字を名乗った。

 

 

 




【後書き】
 ちょっと官能小説っぽく書いてみました。官能は初めてなのですが、うまく掛けているでしょうか? まぁ、官能でも何でもないんですがね!!!




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Episode3-11 『コワレタ人形』

【前回のあらすじ】
 修復を決意した纒とぬいぬいはシスターも繋ぎ直したところ、シスターが正気を取り戻した。
 シスターは4人+1人へ向けて、シスターが知る限りの本名について教えてくれる。
 中には探索者のことすら顔馴染そうであったものの、本人は思い当たる節は特になかった。




 修羅は考える様な険しい表情になる。

 ぬいぬいは修羅の様子に気が付いていないのか、対照的な笑顔をシスターに向けた。

 

「・・・つかぬことをお聞きしますが、他の3名の名前を覚えているのにも関わらず、ぬいぬいさんの名前だけは愛称以外知らないというのは、それはぬいぬいが貴方の元に通い始めてから本名を知る前に・・・・先ほど貴方が仰っていたシェルター内で何かが起こったという事ですか?」

「ロジーナさん、纏さん、飛鳥さん、ぬいぬいさんは口を揃えて、『記憶にあるシスターの教会はここじゃない。』と仰いました。シスター、貴方が4人の事を覚えていらっしゃるという事は、可能性として4人が言っていた教会はそのシェルター内部にあるのではないかと仮定しております。」

「また、先ほどの貴女のシェルターでの出来事を懐かしむような言葉。しかし、貴女は自分の教会ではない教会で“ゾンビ”・・・いえ、アンデットとして佇んでいた。これはシェルター内で何かが起きたと考える他無いように思えるのですが?」

 

 修羅の険しい表情は一転し、真剣な赴きになってシスターを見据える。シスターは真剣な様子で核心に迫る修羅を真意に受け止め、何か話そうと口を開いた。

 

「それは・・・・・ぁ・・あ゙? ・・・・・が・・・・ごぼ・・・・・。」

 

 突然、シスターは眼を見開いたかと思うと口から泡のような物を噴き出す。纏が折角直した「めだま」は、ぐるりと白目を剥き眼球から零れ落ちる。彼女は苦しそうにもだえ苦しみもがきながらも、震える手先でとある方向に指差し動かなくなった。

 

狂気判定+SANチェック0/1

ロジーナ→8【失敗】

ぬいぬい→9【成功】

飛鳥→5【失敗】

たからもの+1

纏→1【大失敗】

飛鳥+1

 

クリスティーナ68→52【成功】

修羅64→54【成功】

赤大63→24【成功】

星乃73→72【成功】

 

記憶の欠片【入手】

全員【名前(特殊)】

 

 正気を取戻し、あれほど穏やかな表情を浮かべていたシスターが。苦しみもだえる様子にドールたちは再び目を瞑るなり、相方にもなりつつある探索者の背後に隠れるなどをし、つらく厳しい現実から目を背ける。

 一時的に動かなくなったシスターは、再び身体を持ち上げよたよたと歩き始めるが、その姿は明らかに異常であった。この教会で出会ったころは、しっかりとした足取りで二足歩行であった。今は引きずるような足取りで、ドールや探索者に縋りよっている。纏が戻し、零れ落ちた「めだま」を引きずる足で踏み潰した。口から涎のような粘液を絶え間なくしたたらせ、片目に残った眼球は完全に白目を剥いており、黒目はどこにも存在していなかった。

 

 クリスティーナは自分の腕を抱きしめているロジーナを星乃に任せる。それからショットガンを取り出しシスターが、今度こそ無事にあの世に旅立つことができるように祈りが込められる。

 直後、銃声が一つ闇に響き、余韻は溶けるように吸い込まれて行った。

 

 

 




【後書き】
 今気が付いたのですが、今回のシスター戦闘中にサヴァント的発言をしていませんね。
 もうちょっと喋らせてあげれば、良かったかもしれません。

 そして本日クトゥルフサプリのデルタグリーンの翻訳で『ドラゴンブレス弾』の記載を見つけました。シスターにぶち込んであげれば、完膚なきまでに他界させてあげることができたのですが・・・・惜しいですね。見つかるのが遅すぎました。




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Episode3-12 『初夜はカレー』

【前回のあらすじ】
 『気が付いた』修羅は一通りドール達の本名を聞き終えた後、シスターが正気を保っている間に湧き上がった疑問を問い詰めるような形で尋ねる。
 シスターもそれを真意に受け止め応じようとするが・・・・。
 暗い闇夜に響くショットガンの銃声。それだけが彼女たちが行える唯一の”弔い”であった。




 崩れかけた教会で木材を剥ぎ取るような音と、その木材を解体するような物音が周囲に響く。それは決して崩落音によるものではなく、意図的に誰かが何かを壊しているようだ。

 そして壊したものを1か所に集め、そこから何か火打石を高速で擦り合わせる様な音か聞こえる。無を象徴するかのような暗天に1つの炎が揺らめいた。その炎は紙のようなものに燃え移ると更に火の手を増してゆく。そして先ほど砕いていたであろう木材に燃え移ると、パチパチと音を立て暖かい焚き火が出来上がった。

 円陣を囲うように8人は揃う。乾燥しきった木製の椅子は火を付けると勢いよく燃え上がり、周囲を更に明るく照らした。しかし8人の表情はすぐれない。ぼんやりとしながら、火を囲い暖を取る。

 

グゥゥゥ・・・・

 

 重苦しい雰囲気の中、炎の燃える音に混じって誰かの腹鳴りの音が周囲に響いた。

 その音は星埜が常に護衛している人物から鳴ったようで、本人は何処か恥ずかしそうに俯いた。

 

「・・・そうですね。あの研究所から何も食べて居ませんし、火も起こせました。夕食にしましょうか。クリスティーナさん、装甲車の鍵を頂けますか?」

「あ、はい。」

「ありがとうございます。」

 

 修羅がなるべく明るい声色を出しながら立ち上がり、クリスティーナから装甲車の鍵を受け取る。

 教会の外側から装甲車の後部ハッチを開く音が聞こえ、3分ほど時間が経った辺りで修羅は飯盒と水、レトルトパックを持って炎の元まで歩みよる。

 

「給水車もない今。限られた資源ですから水も貴重です。研ぎ汁も飲料として有効活用しましょう。赤大、ぼんやりしてないで手伝ってくれませんか?」

「お、おう!」

「あ、修羅 縫さん! わたしも料理をした記憶があるので手伝います!!」

「そうでしたか。でしたら・・・ぬいぬいさんは、飯盒セットを火にくべることが出来るように準備を整えて頂けると助かります。」

「はいっ!」

 

 手慣れた手付きで修羅、赤大、ぬいぬいの3人は食事の支度を整える。

 飯盒の数の多さに、大喰らいの人が居るのかと疑問を浮かべたぬいぬいであったが、修羅に頼まれた通り飯盒の数に見合った量の火を炊く。

 

「纏さん。手伝ってほしい事があるのですが宜しいですか? 可能であれば、ロジーナさんも。」

「・・・・・ん・・・。・・・・わかった・・・・。」

「ボクで良ければ手伝うよ。」

「あまり、女性として認めたくないことですけど、私達の怪力で少しでも多くの燃えそうな木材を探しませんか? 人間の皆さんは何か頭に付けている機械のような物が無ければ、行動できない様子でしたし・・・。私達であれば、そんな小道具を使わずとも探せますから。」

「・・・・・頑張る・・・・・。」

「そうだね。戦闘面に置いて、彼女達に助けられていることも多かったから、恩返しも兼ねてボク達はボク達で彼女達に出来ることを最大限にしよう。」

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 8+1【成功】

飛鳥→ロジーナ 6【成功】

纏→飛鳥 6+2【成功】

 

 互いに頷きを交わし合い、教会にある座席の解体を始める。随分と風化により脆くなっているのか、3人がドールの常識範囲中で軽く握っただけで音を立て座席は崩れ去る。纏と飛鳥が座席を破壊し、ロジーナがそれをクリスティーナの付近まで運搬していた。クリスティーナは火の元までその木材が運び込まれると明かりの周囲に居るぬいぬいに向けて木材を運ぶ。

 

 予備の分の槇を片側に備蓄した頃、飯盒から白い煙が立ち昇り、蓋を開けると白米が炊ける。

 荒廃した世界には、似つかわしくない香りが教会内の焚き火の周囲に立ち込める。修羅は厚手のグローブを着用するとそれを丁寧に8等分し、8枚の皿に盛りつける。また余熱で温めたレトルトパックを8等分した白米の上に乗せ、火でを囲むようにそれを設置した。

 

「やっと帰ってきましたか。食事の準備が整いましたよ。さ、好きなのをどうぞ。」

 

 作業を済ませ、再び焚き火を中心とした円陣の輪に戻る。そこには後片付けも済ませた修羅がロジーナ、飛鳥、纏を仁王立ちで待っていた。左隣には、左手にスプーン、右手に飯盒を持ったぬいぬいが困惑したような顔で、修羅と飯盒を交互に見ているのであった。

 

「・・・・・え・・・・。」

「『え』ではないですよ。各個人の分の食事の支度が終わりました。『料理が冷めてしまうので好きな皿を取って下さい』と言っているのです。」

「あ、あの・・・修羅 縫さん・・・・? あの初めて出会った部屋で話した通り、私達は・・・認めたくはありませんがアンデットなので食事がなくとも平気です・・・よ?」

「腹鳴りを響かせた張本人が何を言っておられるのですか?」

「ゔっ。」

「アンデットである以前に貴方方は育ち盛りの少女ではありませんか。個人的に、明らかに年上である私達だけが食事を取り、貴方達だけひもじい思いをするのは理に適っていません。」

 

 呆然としている3人に修羅は淡々と指示を送る。

 想定していなかった食事の誘いに対し、キョドりながらも飛鳥は研究所で話した筈の内容を再び伝える。ロジーナも言葉を失いつつ隣で頷く。しかし、それを修羅はぴしゃりと払いのけた。そして真実を伝えられた飛鳥はぐうの音も返事が返せなくなる。

 

隠れる&忍び歩き

赤大75,60→44【両方成功】

 

「纏ぃー。」

「・・・ひぇ・・・。」

「こうなった修羅はアタシにも止めらんねぇ。観念して食っちまえよー。ぐへへへ・・・レトルトかつ人相の悪い顔だが、修羅の料理はうめぇぞぉ・・・?」

「・・・赤大。貴方とは少しお話をする必要があるみたいですね。」

「やっ、やっ、やだなー。マジになんなよ。ちょっとした場を和ませるジョークじゃねぇか。」

 

 その場から忍び足で姿を消そうとする纏に向けて、ヘビのような素早く無音で赤大は腕を纏いの肩に絡ませる。そしてゲスめいた笑い声を上げながら、悪魔のような低音の質で耳元に囁く。

 纏の状況を例えるのであれば、ヘビに睨まれた蛙と言うのが正しいであろう。動くことが出来ず、そのまま赤大に引き摺られる様になりながら火の元まで半ば強制的に連れて来られる。

 そしてそのヘビを黙らせるような、鋭い戦艦クラスの眼光が赤大に向いており、鷹に睨まれたヘビの状況に赤大は陥る。そして必死に弁解する小物の様に引き攣った笑い声で修羅に愛想笑いを浮かべていた。

 

「ぐすっ・・・・。わたくしが折角 運んだ(まき)でカレーを食べてくれないのですのね・・・。クリスティーナ悲しいッ!! ・・・フフッ。」

「飛鳥。食べない。元気。ない。私。悲しい。」

「・・・・・食べる・・・! 食べる・・・・! ・・・泣かないで・・・・。」

「た、食べます!」

「うひひひひ・・・・まぉとぉいぃぃぃ・・・。」

「食べるから! 食べる!!」

 

 ついには自分の嘘泣きの小芝居に吹きだすクリスティーナと星乃の心配まで入る。

 ロジーナは瞬時に火の回りに置かれている皿を取り、星乃も本気で心配される様な素振をされたため、皿を手に取った。纏も皆が料理を手に取るというなら・・・といった様子でしぶしぶ皿を手に取る。

 

『いただきます。』

 

 8人はそれぞれの皿を手に取り、食前の挨拶をし白米とレトルトカレーを口の中に運ぶ。

 口内に仄かに暖かくも、食感のある風味の香ばしい味が、既に人を止めたはずのドール達を包み込む。痛覚が無ければ、味覚も無い筈である。されども記憶片隅に残っているのか、確かなカレーの味にドール達は自然と笑みが零れる。そして、4人は口々に『美味しい』と呟いた。

 

「美味しい理由は味だけの問題じゃありませんわよ。」

 

 もぐもぐと口を動かしながら口々に歓喜の言葉を発する4人に向けて、クリスティーナは諭すように笑顔で呟く。

 

「このようにしてみんなで食事を囲むことによって、感情を共有し合い『美味しい』と互いに認知し合う事で、その料理の味の深みが増していくんですわ!」

「えぇ。だからこそ、貴方達を多少強引でしたが食事にお誘いした訳です。記憶が無いのであれば、このような感覚も存じ上げないでしょう? でしたら思い返せるようにキッカケを作れば良いだけです。難しいことではありません。」

 

 修羅も口の中に入っているカレーを飲み込むと不器用ながらにも微笑み、ドール達を見渡した。

 

「それだけじゃねぇぜ? 飯を囲むと、不思議と明るい話題も出て和気藹々として食も進むモンだ。親睦を深めるなら話しながら飯を食えって姉貴から習ったしな。・・・まぁ。価値観の違う奴にやったら、地雷を踏むことになるけど。」

 

 歯で嚙みながら、スプーンをタバコの様に加えた赤大も修羅やクリスティーナに便乗するかのように笑いながら話す。

 

「でさぁ・・・・纏? アタシ、ニンジン嫌いなんだけどさぁ・・・食べてくれねぇ?」

「・・・・しょうがないですね。角によせて置いてください。後で食べときますから。」

「ニシシ。サンキュー。」

「・・・。・・・代わりに・・・ジャガイモをお願いします。」

「おっけおっけ。」

 

「暖かい料理なんて、なんだか初めて食べたような気がしますね。」

「・・・・・・ね・・・・。」

「ロジーナ=ブレアさんでしたっけ?」

「・・・・そう。・・・・神代 飛鳥?」

「そうです! なんだか、予備慣れていないフルネームで呼ばれると違和感がありますね。」

「・・・・・ん・・・・。」

 

「修羅 縫さんって、修羅 縫で苗字なんですか?」

「いえ、貴女と同じ『修羅』までが苗字で『縫』は名前ですね。何故か分かりませんが、赤大と星乃さんを除いて皆さん、繋げて私の事を呼ぶのですが・・・。どういう事なのでしょうか?」

「あはは・・・。・・・。あの・・・。」

「なんですか?」

「もし良ければ、わたしの事、今度から呼び捨てで『ぬいぬい』って呼んで貰えませんか? 私も、修羅 縫さんのこと、縫お・・・いえ、『ぬい』って呼びますから。」

「・・・・・。」

「あ、いや、嫌でしたらいいんです! でも・・・修羅 縫さん・・・わたしを『ぬいぬいさん』って呼ぶのなんだか時折言いづらそうに見えたので・・・。」

「・・・お心痛み入ります。今度からぬいぬいと呼ぶことにしますね。」

「・・・・はい!」

 

対話判定+2

ロジーナ→飛鳥 8+3【大成功】

ロジーナ→ぬいぬい 7+2【成功】

ぬいぬい→修羅 2+2【失敗】

ぬいぬい→ロジーナ 7+2【成功】

飛鳥→ロジーナ 8+2【成功】

飛鳥→纏 10+2【大成功】

纏→赤大 5+3【成功】

纏→赤大 1+3【失敗】

 

 

 




【後書き】
 この話の裏話として、私には同じ小説を執筆する友人が居るのですが、タイトルについて『(意味深)っぽい?』と尋ねたところ『そんなことはない。』と返事が返って来たので、タイトル決定時に安心したのを覚えています。
 ドール達には味覚も痛覚もないようですが、記憶として残っている場合『味』を感じることがあるようです。
 今回は、互いに少しずつ距離を狭めていく様子を描写できて、その様子が伝われば良いなと思っています。






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Episode3-13 『コミュニケーション』

【前回のあらすじ】
 崩れかけた教会に設置されていたベンチを解体し、それに火を付けて暖を取っていた一行。
 シスターが狂った様相になってしまい誰もが気を落としていた。
 シスターの死に打ちひしがれていた時、空気の読まない腹鳴りが闇夜に響き修羅は思い立ったように装甲車からあるものを持ってくる。




 和気藹々とした食事も終え、修羅とぬいぬい食器を簡潔に洗い 洗った水は飲み水としてボトルに保管する。その間、6人は別々行動をとっていた。

 

「星乃さんって、一回殴ったら大抵ものを粉砕している様に見えるのですが、どうやったらそんな風に強くなれるんですか? ボク・・・みんなの援護とかで役に立ちたいんですけど、ボクの手順になった頃には殆どの敵が片付いてしまっていて・・・役立たずなんじゃないかって思えてきて・・・。」

「・・・。相手。弱点。捉える。例。人間。脳天。鼻。顎。喉。心臓。鳩尾。秘部。弱点。縦。並列。見極め。殴打。強い。なる。」

「機械とかもパーツを破壊して居たような気がするんですけど・・・あれはどの様に?」

「・・・。・・・。・・・。・・・勘。」

「えぇっ?!」

「・・・。纏。」

「は、はい!」

「纏。居る。それだけ。価値。ある。悪い。考え。ない。」

「・・・ありがとうございます・・・!」

 

 纏は星乃の元まで近寄り、敵を縦横無尽にしていく星埜に対して強くなるコツを聞いていた。星乃は目を逸らし無表情のまま考えた後、纏を正面に立たせ人の基本弱点を軽くこぶしで小突いて行く。秘部を小突いたときには、星乃の手には『ふにゃり』とした感覚がし、小突かれた纒は股下に寒気が走ったのか内股になった。

 星乃は特に気にする様子も見せず解説を続ける。そしてどこか落ち込んでいるような様子を見せる纏に対し、途切れ途切れの言葉を繋いで励ましていた。

 

「・・・・クリスティーナ・・・・До свидания(ダス ダビーニャ)・・・・意味・・・・わかる・・・?」

До свидания(ダス ダビーニャ)でしたら、ロシア語で『さようなら』を意味する言葉ですわ。それがどうかしたんですの?」

「・・・・シスターを・・・射抜くとき・・・・・・・咄嗟に・・・この言葉が・・・・・・出た。・・・意味は・・・・分からなかったけど・・・・・クリスティーナも・・・・似たような言語を・・・話していたから・・・・聞こうかな・・・って・・・・。」

「では、それはきっとロジーナの祖国がわたくしと同じロシアである事の裏付けで間違いないですわ! でないと、咄嗟の呟きでロシア語なんて出ませんもの。」

「・・・・そう・・・なのかな?」

「そうに違いないですわ!」

 

 ロジーナとクリスティーナであれば焚き火の近くに座り込み何気ない会話をしている。少し慣れない言語が口から飛び出て戸惑って居るような表情をしていたロジーナではあったが、クリスティーナが笑顔でニコニコ笑いながら話しかけられているうちに自身も朗らかに笑顔を作り出していた。

 

「赤大さん、1つ質問があるのですが宜しいですか?」

「ん? 構わねぇよ。巫女さんが、アタシに質問とは なんだ?」

「あの星乃さんについてなのですけど・・・・。星乃さんは、赤大さんの親戚・・・ですか?」

「ん? んっ? 待て待て待て。何処からそんな思考になった?」

「いえ、風貌は全く異なるのですが・・・どこか星乃さんと赤大さん・・・似ているなって思いまして・・・。」

「・・・うーん・・・他人の空似じゃねぇか?」

「ですかね・・・?」

 

 飛鳥は赤大に話しかけに行っていた。食事中は胸元に仕舞われていた胎児が抱えられており、クリアグリーン色の培養液の中でプカプカと泳ぐように浮遊している。

 最終的には赤大と飛鳥は互いに首を捻り、簡潔に話は終わる。

 

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 6【成功】

 

 

 




【後書き】
 今回もこの話の裏話です。
 以前、取得できる【未練】には上限があるとお話しましたが、今回にもその名残は残っています。『纒』と『星乃』の会話と『飛鳥』と『赤大』の会話ですね。対話判定には2つ分あったのですが、未練がなかったことになったと言うことで、ロジーナとクリスティーナの判定の身になっております。
 しかし、結果として、これはこれで良かったのかもやしれません。誤った認識によって、本来会話をするはずのない存在同士がコミュニケーションを取ることができましたので。




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Episode3-14 『就寝』

【前回のあらすじ】
 自分の存在意義に纒は疑問を持ち、星乃に素手で戦う術を伝授してもらうべくして話しかける。
 星乃に慰めてもらい元気を少しだけ取り戻したが、危うく纒の『たからもの』が潰れるところであった。
 一方ロジーナはシスター戦で毀れた(こぼれた)単語についてクリスティーナに尋ねに向かう。




「さて、これから就寝に入る訳ですが、見張りは私と赤大がします。皆さんは、さっさと明日に備えて就寝するように。明日はシスターが指差した方角に向かう予定ですからね。時間がどれほど消費するか不明の為、朝一番に教会に何か使用できそうなものを捜索した後に出発します。」

 

 硬い地面にビニールシートを引きながら修羅は周囲に指示を送る。その上に半ば疲れたような様子のクリスティーナが座り込みと飛鳥が横になる。背面では暖かな焚き火が、8人を照らし暖かな空気を運んでいた。

 

「それで。何か異論はありますか?」

「あるよ!」

「なんですか纏さん? 念のために先に申し上げておきますが、アンデットは眠らないというような点でしたら、それは『偽り』・・・仮にそうだとしても休息は貴方たちにとっても必要でしょうと先に申し上げますね。既に飛鳥さんは就寝に入っていらっしゃるようですし。」

「うぐっ。」

 淡々と全体を指揮するように指示を入れる修羅に纏が、食って掛かろうとするものの飛鳥が横になり、大切そうに未來を抱きかかえながら寝ている姿を指摘されるとぐうの音も出ないと言った様子で引き下がる。

 

「あいにく職業柄、夜間の歩哨は慣れていますのでご安心ください。布団が必要な方は隅に置いておきます。ご自由に使用してくださいね。」

 

 纏の食って掛かる様子に修羅はあしらうような笑みを見せる。決して小馬鹿にしているような嘲笑を含んでいる笑みでは無かったものの、纏は番犬が警戒するように唸りながら、ビニールシートの上に横になり瞼を閉じた。

 

「ロジーナ・・・・一緒に寝ましょう・・・。」

「・・・・・・うん・・・・。」

「もうちょっと近くに・・・。」

「・・・・・・このぐらい・・・?」

「もうちょっと・・・。」

「・・・・このぐらい?」

「このぐらいですわ。」

「・・・・っ!」

「ふふっ・・・・ロジーナの身体、冷たくて心地良いですの・・・。」

 

 クリスティーナの手招きに応じるようにロジーナも隣で横になった。横に成ると向かい合うような形となる。ロジーナはクリスティーナと視線が合う度に目を横に逸らし、近づくように言われれば、恥ずかしそうにしながらも接近する。そして腕で巻き込めるぐらいになると、クリスティーナは抱き寄せた。口を近づければキスを交わすことが出来るほどのゼロ距離まで接近する。クリスティーナは両腕で彼女を抱き寄せる。そしてロジーナと同じように、恥ずかしそうではあるが嬉しそうにも笑うのであった。

 

「ほら、ぬいぬいも。貴女も今日は頑張ったのですから、もう寝て疲労を回復させた方が良いですよ。」

「ぬいも・・・ぬいも無理したら駄目ですよ。眠くなったら、わたしにいつでも言ってくださいね?」

「分かりました。睡魔に耐え切れそうになくなった時はお願いしますね。」

「・・・! はいっ。おやすみなさい!」

「おやすみなさい。ぬいぬい。」

 

 修羅に促され、ぬいぬいも半歩ビニールシートの上に足を乗せる。そして振り返り、周囲に目を泳がせながらも、上目づかいで互いを呼び捨てで呼び打ち解けたようになった修羅に心配するような声色で注意する。修羅も一呼吸開けることなく、ぬいぬいの好意をささやかな微笑を作りながら頷き返答した。ぬいぬいはそれだけでも嬉しくなったのか、元気よく返事をすると纏の背中に引っ付くようにして瞼を閉じた。

 

「ふぁーぁ・・・・。」

「何を大きな欠伸をしているんですか、私が外周の警戒をしますので赤大は火番兼室内の警戒を担当してください。誤っても寝ないようにお願いいたしますね。」

「へいへい・・・分かったよ。」

 

 6人が床に就いたところで、赤大が大きく口を開き欠伸をする。

 その様子に修羅が足早に接近すると軽めのチョップを赤大の頭に叩き込んだ。赤大は叩かれたところを掻きながら、焚き火に新たな木材を投げ込んでいた。

 

 

 




【後書き】
 焚き火が無ければ、星ひとつ見えない闇なんですよね。
 目を開いているのか閉じているのかすら分からない暗闇・・・ちょっと考えるだけでもぞっとします。




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Episode3-15 『剣術』

【前回のあらすじ】
 崩れかけた教会の下に6人と『未來』は固まって就寝に入る。
 纒が修羅に対し反発しようとしたが、修羅の方が言いくるめる力は一枚上手であった。
 クリスティーナはロジーナの心変わりなど、つゆ知らず抱き寄せる。ほのぼのとした空気が辺りをを包み込んだ。そんな気がした。


行動判定(イベント判定)

ロジーナ→4【失敗】

ぬいぬい→7【成功】

飛鳥→4【失敗】

纏→2【失敗】

 

 夜も更け肌寒くなってきた頃。

 ぬいぬいは耳を一度ピクリと震わせるとその瞳を開けた。武器を片手に周囲を警戒する。しかし、特に敵影のような物は見当たらなかった。右隣では飛鳥の背中に縮こまるようにして、しがみつく纏。星埜にしがみつく飛鳥、抱きつかれながらも仰向きで微動だにしていない星乃の順で寝転がっていた。左隣には穏やかな寝息を立てながらもロジーナの手を握るクリスティーナ、クリスティーナの腕にしがみつくロジーナの順で寝ている姿が見える。片や朗らかな顔、片や暑苦しそうにしつつも嬉しそうな顔をしているのが見える。

 微笑ましさに口元を緩め、焚き火に視界を移す。そこには座ったまま、眠りこける赤大の姿がうつる。ぬいぬいは左手を口元に当てクスリと一度だけ笑う。そして、隅に置かれている布を赤大にそっと掛けると、自分の得物片手に聞こえた物音を確認、かつ修羅の安全を確認しに表へと出るのであった。

 外は相変わらずの漆黒の闇が辺りを包み込んでいた。先ほど聞いた物音を除けば、本当に世界が滅び、無に還ったと誰かから話されれば信じる他無いような殺風景な景色である。これだけ暗ければ、さぞや上空には末恐ろしいぐらいの星の瞬きを見られるはずであったが、星はおろか、月すら見えない。恐らく昼間に空を覆っている鉛色の雲のせいだろう。

 そのまま得物である日本刀を片手に教会の外周を一回りしてみる。自分たちが乗車してきた装甲車が止めてあり、装甲車が停められている奥に修羅の姿があった。黒いジャケットのような物や銃火器は傍らの地面に置かれており、本当に最小限の頭に付けたヘルメットと暗視ゴーグル左腰に帯刀した太刀のみの軽装であった。左手の親指を鍔にかけ、右手も柄に添え、抜刀術の姿勢で微動だにしていなかった。

 

居合&太刀

修羅80→4【クリティカル】

1D3→1

 

 一声かけようとぬいぬいは一歩踏み出す。

 その刹那、修羅も虚空に向けて刀身を振り抜き高らかに切上げ、切り上げた太刀を左手でも握ると素早く下段に斬り伏せた。

 太刀の空を切る音が周囲に反響する。

 

「ぉぉ・・・。」

「・・・誰だ。」

 

 目の前に何かしらの敵が居れば、確実に5体は葬っていたであろう一撃。鮮やかな太刀捌きに思わず口から言葉が漏れ出る。その視線には殺気の色が混じっていたが、相手を確認るや否や抜き身であった太刀を鞘に収め、殺気も周囲に霧散させた。

 

「・・・ぬいぬい、ですか。驚かせないで下さい。・・・どうかされたのですか?」

「いえ、何か奇妙な物音が聞こえたので、なにかなーと思って見に来ただけです。」

「・・・。十分離れたつもりだったのですが・・・起こしてしまいましたか、これは失礼いたしました。・・・・・もうやめることにしますね。」

 

 修羅は何処か胸を撫で下ろしたような表情をすると、左手で額の汗を拭い。落ち着いたような視線でぬいぬいを見つめた。ぬいぬいも、修羅の問いに対してすっとんきょんな声を出しながらうそぶく。しかし、修羅にはそのうそぶく様子に気が付かなかったのか、謝罪の様に一礼ぬいぬいに対して行うと、周囲に置かれている装備を背負い始めた。

 

「ぁ、えっと・・・・・・・綺麗な刀捌きでしたね! 何処で学んだんですか?」

「実家が剣道道場を営んでいまして。この剣術は父から学びました。」

 

 素直に謝罪をしてきた修羅に、ぬいぬいは気まずそうな顔を一瞬浮かべる。そこで思い出したかのような明るい顔で太刀筋を褒める。修羅は背負っていた荷物を持ちながらも淡々と返事を返す。

 

「も、もう知っていると思いますけど、わたしも刀を使うのですが強い一撃を繰り出せなくて困っていたんです! ・・・・それで、あの・・・良ければ・・・ぬいに教えて貰えないかなって・・・。」

 

 ぬいぬいの横を歩き去り、教会へと戻ろうとする修羅に必死に呼び止めるかのような声で声を掛ける。教会へ向かう歩みは、その何処か悲痛とも取れる様な声によってぬいぬいの願い通り止まった。

 

「・・・・・・。」

「わたしも肉盾だけではなく攻撃役として皆さんを守りたいんです。ですから、ですから、その・・・強くなるために、稽古をつけて下さいませんか?」

「・・・。」

「お願いしますっ!」

 

 しばらくの静寂。

 修羅はいつものように考える素振を見せる。ぬいぬいはもうひと押しだと感じたのか、今度は取り繕いではない本心からの叫びのような訴えかけに出る。その表情は真剣そのものであり、迫真なその姿をもしも正面から見たのであれば、息を飲んでいたであろう。

 

「・・・・・私の指導は厳しいですよ? それも覚悟の上ですか?」

「・・はいっ! 望むところです!!」

「わかりました。今回は特別です。」

 

 そして彼女は振り返った。戦艦クラスの眼光に不敵な微笑みまで浮かべた恐怖の顔で。しかし、それでもぬいぬいは嬉しそうに笑うと力強く頷いた。

 

対話判定

ぬいぬい→修羅 9【成功】

 

行動判定

ぬいぬい→8-2【成功】

 

 

 




【後書き】
 せっかく各々のイベントを用意したのにも関わらず、ぬいぬい以外のドール達が行動判定に失敗してしまったため、3話分短くなってしまいました。
 出目は偽ってはならない。偽ることでTRPG小説ではなく、茶番小説になってしまう。

 ・・・・・出目に関して、私、いつも同じこと似たようなこと言ってますね。
 証明する術はありませんが、今回も普通のセッション同様に振っています。




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Episode3-16 『御呪い』

【前回のあらすじ】
 6人が熟睡している間、ぬいぬいは教会付近から聞こえた物音に身体を起こす。
 得物片手に教会の周囲を探るが赤大の姿しか見当たらなかったものの少し離れた位置で太刀を振う修羅を見つけた。
 魅入るような美しい太刀筋に心を奪われながら、修羅に剣術の稽古をつけて貰えるように交渉を試みるが・・・。




 翌朝、クリスティーナ、ロジーナ、纏、飛鳥、星乃は近くから漂う美味しそうな香りで目が覚める。起き上がると、そこには朝食の支度を終えた何処か嬉しそうなぬいぬいの姿に、壁に寄り掛かり立ちながらもうつらうつらとしている修羅の姿、そして頭部にタンコブを作り 悲しげな表情で教会の入り口付近に一人穴を掘っている赤大の姿が見えた。

 

「おはようございます皆さん。ぬいと赤大さんとわたしはもう先に食べちゃいました。残りは皆さんだけですので、どうぞ。」

 

 5人は食前の儀礼を行い。食事を済ませる。質素なものではあったが星乃を除く4人は満たされた様な表情をし、胃袋に栄養を流し込んだ。クリスティーナは物陰で粗相も済ませ、出発の支度を整える。

 

行動判定

ロジーナ→8【成功】

ぬいぬい→3【失敗】

飛鳥→10【成功】

纏→7【成功】

 

目星

クリスティーナ70→44【成功】

修羅80→97【ファンブル】

赤大25→81【失敗】

星乃55→99【ファンブル】

 

 出発する前に崩れかけた教会を8人で捜索し、何か手がかりが落ちていないかどうか調査を始める。既にこの教会に残っているものと言えば、大量のナイトメアの死骸とバンシーの血肉、焚き火跡、そして動かなくなったシスターだった肉のみではあったが、ロジーナは教会の最深部に小部屋がある事を見つけ皆に知らせる。

 先陣を切り部屋の中を捜索していると、昨晩シスターが指差していた方角と同じ方角に『シェルター』なるものが存在していると書かれた地図を見つけた。

 ぬいぬいは、睡魔に侵され若干ふらつきながらも部屋を捜索しようとしていた修羅が小部屋の扉に手を掛けた瞬間、またもや扉ごと豪快(ダイナミック)()侵入(エントリー)していく姿を見たため、そちらの介抱へ向かった。結果、満足に小部屋を探す事はできずに終わることとなる。

 ロジーナとぬいぬいを除くドール2人は、名残惜しそうに動かなくなったシスターを眺めていた。しばらく眺めていたところ、シスターの衣服が異様に膨らんでいる部分に気が付いた。手を伸ばし膨らみを持ち上げると、シスターが大切にしていたのであろう『聖書』とシスターとドール4人そして10歳ほどの少女が一緒に写っている『写真』が見つかる。

 少女は雪のような白い肌に、ゴスロリチックな黒いドレスで顔と手先以外のほぼ全身を包み込んでいる衣装を着ており、飛鳥と同じように長く白い髪であり、その子は前髪で片目を隠しながら写真には写っていた。

 

修羅HP12→11

星乃KP14→14

 

「これ・・・シスターが大切にしていた・・・。シスター、分かりました。私がシスターに代わり迷える子羊を救って見せます。空から見守っていて下さい。」

「シスター、この写真に写るのはボク達・・・? そしてこの女の子は・・・。」

 

 二人はそれぞれ得たものを交換し合い確認をとる。そして再び最初に見つけたものに交換し合い、大切そうに仕舞ってから他の6人の方へ向き直る。

 背後では星乃が立ち上がった修羅に躓き大転倒し、クリスティーナが星乃の怪我に気が付いて治療。赤大は疲れたかのように息を荒げ壁の付近で待機している様子が窺えた。

 

「わぁ~っ!! 星乃さん、大丈夫ですか!?」

「大丈夫。飛鳥。ありがとう。」

「今日はおっちょこちょいな方が多数いらっしゃいますわね。どれ、ちょっと傷を見せて頂けるかしら?」

「クリスティーナさん・・・。」

「大丈夫ですわよ。ちょっとした掠り傷・・・ではないですわね・・・。手当しますからそこの石畳にお座りになって?」

「わかった。クリスティーナ。ありがとう。」

「お気になさらず。」

 

応急手当

クリスティーナ75→30【成功】

1D3→3

星乃HP14→17

 

アイディア

クリスティーナ65→59【成功】

 

「・・・あら?」

「どうかしたんですか?」

「いえ・・・。なんでもないですわ。」

 

 クリスティーナは手慣れた手付きで、星乃の怪我を手当する。そして出血しているであろう個所を探り当て、適切な処置を施した。手当も無事に終わり、星乃が何事もなかったかのように立ち上がる。

 ・・・治療を終えたクリスティーナはキョトンとした顔で手当をしたあとの手を見つめる。手には何も付着していなかった。何も付着していなかったのだ。しかし、片手を擦り合わせればサラサラとしたみずみずしい何かの液体の感覚はあった。

 

「クリスティーナ。」

「なんですの?」

「ありがとう。お礼。呪い(まじない)。掛ける。前衛。出られる。お呪い。」

 

 星乃は不思議そうにしているクリスティーナに対し、体調が良くなったのか星乃は普段とあまり変わらない口調ではあったが、接近すると反応の是非に関わらず。本当の魔術の様に何かを唱え始めた。その詠唱は12秒も掛からない間に終わる。

星埜73→70

 

「あ、ありがとうですわ。」

「うん。」

 

対話判定

飛鳥→クリスティーナ 6【成功】

 

 星乃は一度頷き、飛鳥の隣に立つ。そして飛鳥が向かうところどころへ、ぴったりと護衛の様について歩き回るのであった。

 ロジーナは教会の広い場所で7人に地図を見せる。

 クリスティーナは応急箱片手に、次は修羅の元まで駆け寄り手当を行っていた。

 

応急手当

クリスティーナ75→12,22【両方成功】

修羅HP11→13

 

「・・・地図を・・・・・見つけた・・・・シェルター・・・・案内図・・・だって。」

「丁度、シスターが差した方角と同じだね。こっちの方角だから・・・。」

 

 眠たげにしながら、修羅はロジーナに見せられた地図を地面に置くと 付近に落ちていた瓦礫の破片を装甲車に見立て全員に例えが伝わりやすいように配慮する。纏はその瓦礫を手に取り、直線方向に駒を動かす。そこには海や湖ではない黒い何か塊りが描かれているのが見える。

 

「途中、森とぶつかりますね。ぬい、あの装甲車(くるま)(?)で、ぶつかった場合は通れるんでしょうか?」

「難しいですね。時間は掛かりますが、迂回路を通ってこのシェルターに向かう方が確実です。何か森を一掃できる道具があれば、弊害なくして進めるのでしょうが・・・。」

「待ってください! 木々を斬り倒すのは木達が可哀想ですよ! 木達だって生きているんです!! それにこの荒廃しきっている世界で僅かな生命体なのですから、無暗に破壊するべきではないですよ! 子供にそんな木々をなぎ倒す光景は見せるべきではないと思います!」

「私。飛鳥。意見。同意。する。」

 

 ぬいぬいは修羅を抱えるように支えながら、日本刀を杖代わりにし、顔だけを修羅に向ける。修羅は首を横に振った、装甲車で通行するならば森を開拓する案を提示するもの、飛鳥がそれを声を張り上げて拒否をする。星乃もまた頷きその案を却下する。

 

「環境破壊ハ 気持チイイ ゾイ!!」

「赤大は後でぶん殴る事にしまして。」

「ナンデ!?」

「でしたら迂回路を通る方向で行きましょう。こちらの方角に進むと遠回りではありますが街が2つほどあるそうです。何か食料などの物資を調達できるやもしれません。」

 

 途中、赤大が場を和ませようと声色を変えてふざけた一言を小声で呟くが、瞬時的に、修羅に見抜かれ悲痛な叫び声を地声で悲鳴を上げた。

 そんな赤大を尻目に修羅はコマを教会に戻し、再び新たなルートを皆に提示する。その案に拒否をするものは居らず、全員はお互いに顔を見合わせた後頷いてみせた。

 

 

 

 

 最後の別れを惜しむように動かなくなったシスターを、朝方掘り進めていた穴に埋める。簡易的な墓ではあったが、ドール達ができる恩師へに向けての最大の手向けであった。

 今回は天井に星乃が見張り役として座り、周囲の警戒を行う。運転はクリスティーナが請負い、夜間の見張りとぬいぬいの訓練に力を使い果たしたのか、修羅は寝息を立て穏やかな表情をしながら熟睡し始めた。ロジーナは、運転するクリスティーナと隙間から見える景色を眺め、飛鳥は未來を取り出しては楽しそうに話しかけていた。ぬいぬいは寝息を立て寝る修羅に膝枕をし、あやすかのように毛布を掛ける。纏は寝静まった修羅に対して、あくどい笑みを浮かべていた赤大と一緒に音楽プレイヤーから蘇ってから初めて聞いた音楽を聞いていた。中にはロジーナの鼻歌も収録されているようだ。

 

対話判定

ぬいぬい→ロジーナ 9【成功】

纏→赤大 10【成功】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

シナリオクリア『求める愛を』

SAN報酬

クリスティーナ1D6→1

修羅1D6→5

赤大1D6→5

星乃1D6→2

 

寵愛点

記憶の欠片を入手する【全員達成】

シスターの記憶を取得する【全員達成】

全ての敵を撃破する【全員達成】

戦闘寵愛20点。

ロジーナ26+7=33点

ぬいぬい26+9=35点

飛鳥26+9=35点

纏26+9=35点

 

ロジーナ 26+7=33点

□【アドレナリン】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【スコープ】ジャッジ/0/自身(支援2、射撃・砲撃のみ)

□【エナジーチューブ】オート/なし/自身 最大行動値+2。装備箇所にダメージを受けた際、あなたは任意の基本パーツ1つを通過で損傷しなくてはならない。

 

ぬいぬい26+9=35点

【肉の盾】ダメージ/0/0-1

【悪食】オート/なし/自身

【地獄の住人】オート/なし/自身「地獄」にいる際、攻撃判定の出目+1。

 

飛鳥26+7=33点

□【発勁】ラピッド/0/0(自身には不可、移動1)

□【アームバイス】ジャッジ/1/0(支援2 or 妨害2)

□【しっぽ】オート/なし/自身(最大行動値+1)

 

纏26+9=35点

【看破】ラピッド/0/0-3

□【リフレックス】オート/なし/自身(最大行動値+1)

 

 

 

 




【後書き】
 無事に2章もこれにて閉幕となります。
 これで現段階では折り返し地点に到達しました!

 駒動かしが複雑で戦闘もあるため、どどんとふで進行したのですが ドール達は良いとして(大失敗が連続で出る時もありましたが。)探索者の出目がとことん酷かったです。やはりダイスボットをネクロニカ指定にしてダイスを振るとファンブルする確率が高いのでしょうか? それとも、私のリアルラックがたまたま悪かっただけですかね?




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3章 『耐える愛』
Episode4-1 『おさらい』


【前回のあらすじ】
 教会で一晩夜を明かした一行は、シスターに別れを告げ教会内で見つけたシェルターを目指し前進する。
 しかし、最短ルートでシェルターに向かう場合、森との衝突は避けられず飛鳥の意見もあり、迂回路を通ることに。
 寝起きと血糊の組み合わせは、悪く2名ほど転倒者を出すものの、それぞれに応急手当をするのであった。


 装甲車はシェルターまでの道中に存在する森の迂回路を走行していた。

 しかし、どれだけ走らせようともそこは民家1つすら目に入らぬ、荒れ果てた荒野が広がるばかりであった。見晴らしの良い荒野である為に、見張りである星乃を車内に戻していた。

 

「ぬい、確認したい事があるのですが、ちょっといいですか?」

「はい。なんでしょうか?」

「正面から相手が斬り掛かってきた場合は、相手の太刀筋をそのまま受け止めるんじゃなくて、受け止める力は最小限で右脇に受け流して、相手がバランスを崩したところに円を描くように刀を振り上げて・・・。」

「反撃として首を落すのです。この時、刀の先端で斬り捨てる事をイメージしてください。・・・しかし、敵の首を落せるかと言われれば貴女の実力ではまだ不可能でしょう。下手をすると刀が根元で折れてしまい役に立たなくなる可能性もあります。ですから、まずは敵の攻撃を真面に受け止めず受け流す事から始めるといいですね。」

「相手が突いてきた場合は・・・」

「剣先を貴女の日本刀で中央の軸から右や左に逸らすのです。軸さえ逸らす事が出来れば、貴女に痛恨の一撃は入りません。」

 

 ぬいぬいは、仮眠に近い熟睡を終え 地図を眺めて方位確認を行っている修羅に近づき、おずおずとした表情で昨晩稽古をつけて貰った剣術復習を尋ねる。修羅は寝起きで、いつも以上に目つきが悪かったものの ぬいぬいに微笑むと嫌がることもなく再び指導を始めた。狭い車内で実際に刀を振り回すわけにもいかない為、互いに片手を出し合いそれを刀に見立て確認作業を行っていた。

 

「ありがとうございます!」

「はい。・・・ぬいぬい。貴女にこれを預けておきましょう。私の家系に代々受け継がれてきた刀です。昨晩、伝えた技法が身に沁み込んでいれば必ずや役に立ちます。」

「え・・・い、いいんですか? そんな大切なものをもらってしまって・・・。」

「えぇ。構いませんよ。貴女は私が指導してきた誰よりも、素質がありましたから。私も教会の方で切れ味の鋭い別の日本刀を頂きましたし、流石に三刀流は出来ませんからね。・・・受け取ってください。」

「た、大切にします。」

「はい。」

 

 確認作業を終えたぬいぬいは、先ほどのおずおずとした様子から一変。華やかな笑顔へと変わる。修羅も僅かにほほ笑むと視線を自分が帯刀している刀へ向けた。そして2本あるうちの一本を手に取ると、それをぬいぬいに差し出す。

 ぬいぬいは刀を渡されると両手で丁寧に受け取り、笑顔からおずおずとした顔に戻ってしまったが、修羅の方は微笑を崩さずに太刀が受け取られると満足したかのように頷き、新しく拾った日本刀をノックするかのように叩いた。

 

対話判定

ぬいぬい→修羅 8【成功】

 

 

 




【後書き】
 『修羅』が『ぬいぬい』に教えた技を使うときは来るのでしょうか・・・(遠い目)
 そもそもとして『修羅』が、まだ太刀での攻撃を一度も行っていないのが問題なのですよね。
 小話として投稿しようかと考えていた時期もありましたが、4章に組み込みました。
 関係が深いほど失った時の代償は大きくなりますからね。(ゲス顔)





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Episode4-2 『類似』

【前回のあらすじ】
 シェルターに向かうために迂回路を走行する一行。
 熟睡から目覚めた修羅に対し、ぬいぬいは昨晩のおさらいを執り行う。
 修羅も熱心な彼女に快く応じるのであった。




「星乃さん! 纏さん赤大さん!! 見てください! 未來がまたピクンって動きましたよ!! ピクンって!!」

「話しかけにも応じているみてぇだし、誰が親か認知しているみたいだな。」

「飛鳥さんが一番 未來に話しかけているもんね。赤大さん・・・カプセルの中でも口の動きで分かるんですか?」

「さぁ? そもそも、それだけの脳味噌が育っているか自体怪しい所だが・・・。」

 

 その頃、出口付近に陣取っている飛鳥、纏、赤大、星乃は、『未來』を抱きかかえながら燥いでいる飛鳥に呼ばれ、胎児を覗き込んでいる最中であった。赤ん坊が見せる反応に対して逐一喜ぶ母親の様な飛鳥を生温かな目で見つめる。

 

「星埜さん! 星埜さんも見てください!! 未來が動いたんですよ!!」

「そう。良かった。」

「むー。もっと感情豊かに反応してくれないんですかー?」

「表情。作る。難しい。鏡。沢山。練習。した。ない。」

「またそんなこと言って。纏さん、ちょっと未來を抱いてて!」

「あっ、はい。」

「よっ。纏もこれで一児のパパだな。」

「赤大さん、茶化すのはやめてくださいよぉ。」

「笑う時はこうやって口角を上げて目尻を下げるんですよー!」

 

 ここまでずっと飛鳥に張り付き動いていた星乃に対しても、飛鳥は笑顔で未來を見せつけた。すると飛鳥の動きに反応するように胎児は反応を返していたが、しかし星乃は素っ気ない返事で淡々と返答する。

 それが気に食わなかったのか、飛鳥は頬を膨らませ口を尖らせながら星乃に文句を垂れた。星乃なりに必死に早口の弁解を試みるものの飛鳥にその思いは通じず、それどころか飛鳥は胎児を纏に預けると自由になった両手で、星乃の顔を挿み込むように掴み、両方の親指を星乃の口に突っ込み引き上げ、人差し指で目尻を、中指で目頭を垂れさせるとと無理やり笑顔の表情を作らせた。

 

目星

赤大25→31【失敗】

 

「この飛鳥。強引。この飛鳥。怒りんぼ。」

「それは星乃さんが、素っ気ない態度ばかり取るからですよー!!! ぬいぬいさんに修羅さんが何か教えているみたいですし、私も星乃さんに笑顔の作り方を教えます!!」

「強引。この飛鳥。強引。怖い。」

「誰が怖いですかー! これも星乃さんの為なんです!! 今後円滑なコミュニケーションを取れるように必要なことなんです!!!」

「怖い。考え。飛鳥。そっくり。」

「私が誰とそっくりなんですかぁー!!!」

 

 星乃は口角と目尻と目頭を無理やり変化させられながらも、落ち着いた口調で淡々と思った感想を連ねる。そして、その感想を聞いた本人は声を荒げながらも、ふざけるように笑いながら無理矢理、星乃の顔を変化させていく。それを赤大はゲラゲラと愉快そうに笑いながら見つめ、纏は胎児を不思議そうな顔で見つめていた。

 

対話判定

飛鳥→星乃 7【成功】

纏→赤大 4+1【失敗】

 

 

 




【後書き】
 今日も、まだ96式装甲車の中は平和です。辛辣な世界でほのぼのとした光景は、少しだけ心が安らぎますよね。





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Episode4-3 『運転技術』

【前回のあらすじ】
 赤大、纒、星乃、飛鳥の4人は後部ハッチ側で胎児片手に盛り上がる。
 隣では修羅がぬいぬいに剣術の再認識を行っている真っ最中のため、更に装甲車は盛り上がるのであった。
 無理強いをする飛鳥に、星乃は恐れを見せる。




「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

 運転席の背後ではにぎやかに騒いでいる組とは、うってかわり装甲車を運転してるクリスティーナとロジーナは非常に静かであった。クリスティーナが運転しているところをロジーナが無言で見つめている。

 

「ふぁーぁ・・・。・・・わたくしもこのまま無言で運転していると眠くなって居眠り運転してしまいそうですわ・・・。ロジーナ、良ければお話につきあって下さらない?」

「・・・・ぅん・・・・いいよ・・・。」

 

 欠伸を1つし、更に賑やかになってきた背後に負けないような声を出しながら、視線を一瞬ロジーナへと向ける。承諾するかのように彼女も頷いてみせた。

 

「さて、と言ったものの・・・何を話しましょうか。わたくしの妹達について? 足高お姉様についてにしましょうか? ロジーナは何か希望はあります?」

「・・・・・・昨日・・・・クリスティーナが・・・・・言っていた・・とっておきの・・・・・・・面白い話について・・・・聞きたいな・・・・。」

「あっ。話すって言ったまま結局話しませんでしたわね。忘れていましたわ。」

「・・・・。」

「ロジーナ、昨日わたくしの運転が上手だって褒めてくれたでしょう?」

「・・・・・ぅん・・・・・・褒めた・・・・。」

「実は、なんと、この運転を教えてくれたのはロジーナ。貴方自身なのですのよ!」

「・・・へぇ・・・・・。」

 

 クリスティーナはロジーナに話す内容について、フロントガラスから敵影を警戒しながらも模索していたもののロジーナ自身に話題を振られると一瞬ハンドルから手を放し、思い出したかのように手鎚を1つ着いた。そして話し方のアクセントに強弱を付けながら、衝撃の事実っぽく、運転が上手い理由を伝えた。しかし、帰ってきたのは星乃のような素っ気ない返答であった。

 

「あら、反応が薄いですわね。つまらなかったかしら? 驚いて貰えるかと思ったのですけど・・・。」

「・・・・うーん・・・・記憶にないから・・・なんとも・・・いえない・・・・だけ・・・。わたしは・・・・クリスティーナの・・・・・話・・・・好きだよ・・・・?」

「あらそう? ありがとうですわ。ふふっ。」

「・・・・・わたしは・・・人に教えられるほど・・・・運転・・・上手かった?」

「ええ! それはわたくしに仕えた誰よりも上手でしたわ! 例えるならば、まるでハリウッドのアクション映画のような運転捌きで・・・! あの運転のおかげで わたくしは何度もロジーナに助けられましたもの!!」

「・・・・・・そう・・・なんだ・・・・・。」

「まぁ、今の幼いロジーナがそうだったとは限りませんし、無くした記憶は少しずつ思い出していけばいいだけですわ。だから、全て思い出すまで一緒にがんばりましょう?」

「・・・・・・うん・・・・・・頑張る・・・・。」

「流石ロジーナですわ! その意気ですことよ!!」

 

 運転席組も和気藹々としてきたところで、やがて車両は海岸沿いの切り立った崖まで、その脚を進めているのであった。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 7【成功】

 

 

 




【後書き】
 本来は就寝する前に展開するはずだった小話の1つです。
 行動判定に成功したら、装甲車の上でクリスティーナが生活していた日常風景の話も交えながら展開する予定だったんですがね・・・。なにぶん失敗しましたので。
 今、盛り上がっているときにショートバージョンですが、組み込んでみました。




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Episode4-4 『死の死』

【前回のあらすじ】
 まともに運転していたクリスティーナだったが、どれだけ走っても変わることのない光景にうんざりしていた。
 背後が、にぎやかになってきたところで隣で窓の外の光景を共に眺めていたロジーナに話しかける。
 声にメリハリをつけて、衝撃の事実を伝えたが以外に反応は薄かった。




 そこは随分と寂れた道路。

 片側は山側の斜面となっており、角度も急すぎて装甲車では走ることは不可能であることがわかる。もし、無理に走ろうとすれば間違いなく横転してしまう未来を想像にかたくない。

 反対側は海岸沿いであるだけあって形を成していないガードレールはところどころ破損し、少しでも接触してしまえば全損するような破損をしている。

 また崖下は、打ち付けられる波により浸食が進み、道路自体まだ残っていることが不思議なほどに管理者の居ない道路は危険に道溢れていた。

 

「修羅さん。ちょっと見て貰いたい光景があるのだけどいいかしら?」

「構いませんよ。伏兵でも待ち構えていましたか?」

「いいえ。むしろ伏兵の方が良かったですわ。」

「どれ。・・・ふむ。」

「本当にこのルートしか迂回路はありませんの?」

「ナビゲーターも使えない今、この地図を信じる他ありませんからね。この地図の通りであればそのようになります。」

 

 クリスティーナは装甲車を止め、修羅を呼びフロントガラスから見える景色を見せる。

 修羅は一通りの確認を済ませると7人を呼び地図を見せるが、ここを通るほか森を迂回するルートは無いことが全員に理解することが出来た。

 

「ここからは車両も動かしますが、念のため全員降りて徒歩で行きましょう。もしも、全員96に乗車したまま海へ落ちたら元もこうも無いですから。」

「わかりましたわ。ですが、運転手の座は譲りませんことよ。」

「・・・・よろしくお願い致します。」

 

 修羅の提案に頷き、それぞれは各々の火器を持ち装甲車の外に降り立つ。空は相も変わらず鉛色、海もまた青白く光り、現実とは思えないほどの不気味な光沢を魅せていた。

 

「私達が先頭を努めますので、纏さん達は後方の索敵をお願いいたします。」

「こう・・・海まで汚染されちゃ・・・本当に世界滅亡したみたいだな。」

「纏さんの話ではもう滅亡しているんですよ。あまり海岸側に寄らないで下さい。縁ほど崩落しやすくなっているかもしれません。」

「へいへーい。」

「クリスティーナさん、天井ハッチを開けていつでも脱出が出来るようにしてくださいね?」

「わかっていますわ。」

 

 修羅の指示の元、7人は装甲車を護るように円陣を囲み徒歩での迂回路に変更する。装甲車の操縦をするのは、クリスティーナであり、皆の歩幅に合わせて車両を徐行させる。その様子を屋根からロジーナが心配そうに見守り、星乃と飛鳥は山側斜面で森側からの強襲や落石を警戒する。赤大は修羅に適当な言い訳をつけて、後方に回り込むと纏に音楽プレイヤーを持たせ、修羅が没収しないように代理で預かって預かるように頼み込んでいた。纏も秘密を共有する身として、周囲を見渡しソワソワしながらそれを承諾。修羅とぬいぬいは最も危険と思われる海岸側で磯と油の混じった変わり果てた海の香りを味わいながら、真面目に索敵を行っていた。

 

対話判定

ぬいぬい→ロジーナ 5【失敗】

飛鳥→星埜 6【成功】

纏→ロジーナ 8+1【成功】

 

幸運+(行動判定+2)

クリスティーナ70→67【成功】

修羅75→21【成功】

赤大65→40【成功】

星乃95→100【ファンブル】

ロジーナ→9+2【大成功】

ぬいぬい→4+2【成功】

飛鳥→6+2【成功】

纏→4+2【成功】

 

「・・・・っ! ・・クリスティーナ・・・・・クロを急いで出して・・・!!!」

「分かりましたわ!!」

 

自動車運転

クリスティーナ81→78【成功】

 

 それは海岸沿いの危険地帯を半分超えた辺りの事であった。

 海岸沿いの波に一際大きな波が壁に打ち付けられたとき、聞き耳を立てずとも辛うじて繋がっているであろうアスファルトに亀裂が入るような大きな音が周辺に響き渡る。その物音がする前、異変に真っ先に気が付き動き出したのは、装甲車の上で索敵をしていたロジーナであった。

 ロジーナの叫びに修羅、赤大も素早く装甲車にしがみ付き天井部に低姿勢で這いつくばる。次の瞬間、装甲車はアクセル全開の全力で走行した。ロジーナはそのまま流れるようにぬいぬいと纏を装甲車の進行方向とは逆側に押し倒し、音の発生源から出来る限り離れる。

 装甲車が、その場から居なくなるのと同時に道路の崩落が始まった。飛鳥は崩落に巻き込まれ落下したものの瞬時にワイヤーリールを崩落の始めた縁に突き刺し、海への転落から己の身を守る。しかし、星乃はどの段階においても間に合うことは無かった。

ロジーナの指示によって走り出した装甲車に掴む事はおろか、人の身では飛鳥の様にワイヤーリールで海への転落を防ぐこともできない。そのまま他の瓦礫と共に海の中へと消えていった。

 

Идти!(Go!) Идти!(Go!) Идти!!(Gooo!!)

運転

クリスティーナ51→??【??】

 

 背後から迫る崩落の音にクリスティーナは滾らせる様な方向を飛ばしながら、全開でアクセルを踏み続ける。その崩落は、まるで全てを飲み込む大蛇を連想させるかのように3人へ対し死の手を伸ばし、大きくその一撃を叩きつけた。

 

 

 




【後書き】
 幸運95でもファンブルするんですね。しかも100ファンブルの場合、技能値上限は99なのでPOWが20だったとしても失敗するという・・・。ダイスボットはネクロニカからクトゥルフに変更しようと決心したシーンでもあります。
 はい。出目は偽れません。偽ってはいけません。
 星乃は・・・・駄目だったよ・・・。装甲車に飛び乗れませんでした。




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Episode4-5 『取り残された人形』

【前回のあらすじ】
 崖が崩れた。
 星乃も落ちた。
 装甲車は・・・・分からない。




 取り残された3人のドール達は、ワイヤーリールを使い崖を登ってくる飛鳥を3人掛かりで引き揚げていた。彼女の体重は重くはなかったが、様々な持ち物を持っていたためそれを何一つ落とさないように引き上げるのに対して3人の協力が必要不可欠であった。

 飛鳥を引き上げた後、呆然と崩落した崖沿いを見つめる。どうやら山の斜面ごと削られたように山は半身を失い、半身を海へ投げ込んでいた。それが現在4人の佇んでいる場所からの光景であった。どんなに崖から頭を覗かせて装甲車が沈んでいないか確認しようにも、土煙が邪魔をし何も見えない。例え視界が晴れていたとしても上から土砂が降り注いでいる分、装甲車が海の藻屑となったか否かの判別は難しいものがあった。

 

狂気判定-2

ロジーナ→8-2【成功】

ぬいぬい→9-2【成功】

飛鳥→9-2【成功】

纏→2-2【大失敗】

飛鳥+1

 

行動判定

ロジーナ5,6→【成功】

 

 

「・・・道路が全て崩落するなんて・・・。大丈夫かな・・・。」

「・・・・クリスティーナが・・・・・・運転している・・・・・きっと・・・・大丈夫・・・・・。」

「そ、そうですよね・・・ぬいや赤大さん、みなさん、きっと無事ですよね・・・。」

「星乃さん・・・。」

 

 纏は崩落直前に手に入れた音楽プレイヤーを握りしめ、ぬいぬいは受け渡された太刀を抱き寄せる。ロジーナは対戦車ライフルを背負いながら新たに得たスコープで装甲車の安否を確認しようとし、飛鳥は女性座りで地面に座り込み両手も地面につけ頭を垂れていた。

 

「ロジーナさん・・・どうですか・・・? 赤大さん達、無事ですか・・・?」

「・・・。・・・・確認・・・できない・・・・。」

「そう・・・ですか・・・・。」

 

 ぬいぬいの問いに応じたロジーナの言葉に誰も動けなくなる。打ちつける波が周囲に悲壮感を漂わせ、時間だけが刻々と過ぎ去って行く。

 

「・・・ここも崩れるかもしれない。ボク達は森を通ってシェルターに向かおう。・・・大丈夫だよ。ロジーナさんの言う通りクリスティーナさんの運転が上手いんだったら皆生きているよ。」

「・・・・・・そうですね・・。あまりここで時間を潰してしまったら、あちらが先に到着した場合待たせてしまいますよね。」

「・・・・・・・大丈夫・・・・・・・きっと・・・・。」

「そうですよね・・・。」

 

 30分ほど経過しても、その場から誰も崩落現場から立ち去っては居なかった。立ち去ることができなかった。

 魂が抜けた人形の様にその場から誰も動かない。崩落がドール4人を釘づけにしていた。

 だが更に5分経過した後、纏が音楽プレイヤー片手に立ち上がる。その瞳は活力が弱まった色をしていたが、同時に僅かな決意を込めたかのような瞳でもあった。その場から動けない姉妹を元気づけるように励ます。音楽プレイヤーを握る手は震えていたものの、なるべく明るい声を出して勇気づけさせる。

 纏の振る舞いに3人も顔を上げ、その場を後にした。

 

対話判定

ロジーナ→纏 2【失敗】

ぬいぬい→纏 7【成功】

飛鳥→纏 2【失敗】

纏→飛鳥 8+2【成功】

 

 




【後書き】
 正直、星乃が崖崩れに巻き込まれた時は落ち込みました。
 それも100ファンブルですから、どうも救いようがないという。
 しかしドール達が然程、狂気に瀕していないことに対しては驚きました。これは無事であると思い込むのは短くも長い間に結成された絆と捉えるべきか、現実逃避と捉えるべきか。
 渡されたものは大切な遺品ですから、壊さない様にしなくてはなりませんね。




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Episode4-6 『見敵必殺』

【前回のあらすじ】
 探索者達が崖崩れに巻き込まれ、ドール達は取り残される。
 辛く苦しい現実を良い方向に捉え 何とか正気を保とうとする。
 4人は、ぽっかりと大穴の開いたような感覚を胸に抱きながら最短ルートを通り、シェルターを目指す。




 ドール達は2日かけて森を目指す。

 時折、初めての夜に食べたカレーライスの思い出が、ふと湧き出ては消えて行ったが、合流さえすることができれば あの時のように、また皆で仲良く食事を囲めると互いに励まし合いながら歩き続ける。

 教会で見つけた地図には書かれていなかった廃墟跡を横目に荒野を進んでいくと、やがて生い茂る森が見えてきた。

 そこは非常に青々とした美しい生命に満ち溢れた森の景色だった。確かに装甲車を走らせるには明らかに道幅が足らず、案として浮上していた切り倒さなければ入れそうにもなかった。

 

対話判定

ロジーナ→ぬいぬい 10【成功】

ぬいぬい→飛鳥 8+1【成功】

飛鳥→纏 10【成功】

纏→飛鳥 4+2【成功】

 

「ここが森かぁ。」

「青々としていて綺麗ですね。迂回路を探して正解だったかもしれません。こんな綺麗な場所を斬り倒さなくて良かったです。」

「・・・・・・この先に・・・・・・シェルターが・・・・。」

「・・・行きましょう。」

「うん、そうだね。」

 

 纒を先頭にドール達は歩みを進めて行く。そこはどこか絵本や悪夢を思わせるような森であった。外見は爽やかな景色であったというのにも関わらず、内部には毒々しい巨大な花や。触手めいた蔓草がうねる様に這い、木々の幹さえも奇怪に歪曲していた。踏み込んできたドール達に驚いて、多数の蟲が飛びまわる。

 

行動判定

ロジーナ→10【成功】

ぬいぬい→1【大失敗】

飛鳥→1【大失敗】

纏→5【失敗】

 

「ミャー!!! 飛鳥さん! そ、そそそこに大きなムカデがぁ!」

「大丈夫ですよ。別にこっちに向かって来た訳じゃないんですから、なるべく踏まないようにしましょう? 虫たちだって生きているのですから、殺してしまっては可哀想です。むやみな殺生は避けて行きましょうか。ほら、手を繋いで・・・そしたら、もう怖くないですよ。」

 

 森の中を生い茂る草やかき分けて4人は進む。外見は普通の森であったのに対し、内蔵物は悪夢のような外見は変わることもなく、ドール達は4角形編成で身を寄せ合って進んでいた。

 前をロジーナと纏が固め、背後を飛鳥とぬいぬいと言った編成である。

 ロジーナと纏が率先して先に進んでくれるおかげで、虫たちが後方の2人に衝突するといったことが起こりはしないものの、それでもぬいぬいは偶に飛鳥に身を引き寄せ巨大な虫が現れては驚いたように声を張り上げた。そのたびに飛鳥が窘める。

 

「そ、そ、そそそそうですね・・・。あっ、あ飛鳥さん・・・。」

「なんです・・・・わっぷ!?」

 

 ぬいぬいが足を止めるたびに飛鳥も足を止めるゆえ、ロジーナ纏とは大きく間隔が開いてしまう。巨大ムカデも森の茂みに消えて行ったところでは、2人とは3mも離れていた。

 飛鳥はぬいぬいと手を繋ぎ、目の前には何も居ないこと前提で、ぬいぬいの顔に微笑みかけながら先を急ぐ。ぬいぬいは飛鳥に手を引っ張られながらも、前方二人に追いつこうと足を一歩踏み出したが、すぐに歩みを止める。そして非常に青白い顔で震えながら飛鳥の正面を指差す。飛鳥はその指差した方向を振り返ったが一足遅かった。

 顔面に感じる柔らかくも生暖かい感触。それは脈動しており、ぶつかった衝撃で周囲に『きなこ色の粉』が舞い散った。飛鳥は顔を鱗粉塗れにしながらも、二歩ほど下がる。そしてその衝突した生き物を見た。

 初め、それは巨大な人間の顔に見えた。大きな丸い目玉に黄色の肌。輪郭は下三角形にあり、塗りつぶされたような瞳が飛鳥を見つめているのだ。

 飛鳥の顔に血の気が引く。

 

「・・・・に゙ゃ゙ーーーーーーーーっ!!! 悪霊退散ッ!!!」

 

 そして、ぬいぬいの悲鳴よりも巨大な絶叫が森全体に響き渡る。その大きな絶叫により、周囲の木蔭に隠れたはずの蟲たちがパニックでも起こしたかのように飛び散る。目前の顔もそうであった。それは大きく羽ばたくとその場から逃げようと飛び立つ。

 しかし、飛び立つよりも素早い一撃がその顔面の鼻に当たる位置へ放たれる。

 飛鳥の鉄拳であった。

 右足で地面をしっかり踏みしめ、全身全霊の一撃が鼻、もとい蛾の胴体を捉え殴りつける。飛鳥の右こぶしに蛾の体液はべっとりと付着し、そのまま無情にも爆裂四散。周囲に鱗粉が舞い散り悪夢の空間を『きなこ色の鱗粉』でリフォームした。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁっ・・・。」

「えっ。え? 飛鳥さん・・・むやみな殺生は・・・避けるんじゃ・・・。」

「あっ、あれはっ、不可抗力ですっ!!」

 

 普段から息などしている訳ではないのに、息も絶え絶えの状況になる。

 汗もかかない。かけないはずであるのに汗を拭うような動作を行う。白い巫女服はきなこ色に染まり果てた。なお先ほどまで発言していた言動と、今目の前で引き起こした行動。とてもかけ離れた矛盾現象に、ぬいぬいも髪の毛をきなこ色に染め上げながら驚いた顔で爆裂四散した蛾と飛鳥を交互に見ていた。

 飛鳥はぬいぬいに向き直ると、言葉がつっかえながらも慌てた様子で必死に弁解し始める。

 

 

 




【後書き】
 ここの話はちょっとした反省点だったりします。
 探索者が居なくなったドール達の悲哀を描写すればよかったのですが、あまりにも長すぎるのも問題視していため省略してしまいました。
 すべては後の祭り。もう完成してしまっているので微加筆を加えながら進めるだけです。




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Episode4-7 『恋バナ』

【前書き】
 2日掛けてドール達は教会からシェルターまでの最短ルート上にある森へと到達する。
 森は外見に比べ悍ましい容姿をしている。
 しかし、僅かな希望を掛けて4人は歩む足を止めることはなかった。




「ははは、あっちは賑やかだね。」

「・・・・・・そうだな・・・。」

 

 飛鳥の絶叫が入ったことにより、ロジーナと纏も前進を中断し各々の武器を構え、背後を振り返る。

 そこでは飛鳥が巨大な蛾に対し、はち切れんばかりの絶叫を上げ既に右手は握り拳を作っている光景であった。そのまま、その拳は蛾を捉え粉砕する。

 そして驚くぬいぬいと、焦る飛鳥の姿を確認することが出来た。

 

「・・・・纏・・・。」

「ん?」

「・・・・・少しだけ・・・・・記憶・・・・・思い出した・・・・・・。」

「おお。・・・どんな記憶を思い出したの?」

「・・・・・笑顔が・・・・素敵な・・・・・女の子と・・・・・・花の世話を・・・・する・・・・・・記憶・・・。」

「へぇー。因みにさ、その笑顔が素敵な女の子って、もしやクリスティーナさんだったりする? ほら、あの人もロジーナに多くの笑顔を見せていたから。」

「・・・・・多分・・・・・違うと・・・・・・思う・・・・。・・・クリスティーナの・・・・口元と・・・・記憶の女の子・・・・・口元・・・・・似ているけど・・・・違う・・・・・。」

「・・・そっか、クリスティーナさんはロジーナの事良く知っているみたいだったから、彼女かなって思ったんだけど。」

「・・・・そういう纏は・・・・・・赤大に・・・・ついて・・・・・・何か思い出した・・・?」

「えっ?」

「・・・・・纏も・・・赤大から・・・・ちやほやされている・・・・印象あったから・・・。」

「うーん・・・・赤大さんか・・・。思い出せないかなぁ・・・シスターの話だと赤大さんっぽいんだけど、んー・・・ボクの方が思い出せないって言うか・・・。」

「・・・そうなんだ・・・・・。」

 

 弁解が終わるまで、飛鳥の背後まで近づいて行き2人は気長に待つことにした。

 纏は口元を少しばかり緩め、ロジーナもそれにつられる様に口角を上げた。しばらくすると、ロジーナは目を凝らすかのように目を細める。それから、纏の肩を二度ほど叩き弁解の終わりを見せない飛鳥を尻目に思い出したことを呟くように伝える。纏も思い出した内容にクリスティーナの話題も織り交ぜてみるが、ロジーナは首を横に振り拒否反応を示す。

 逆に問われれば纏は顔をしかめ、首を傾げるようにした。ロジーナは両目を瞑り纏の両肩に両手を置きコクコクと頷く。

 

「ねぇ・・・・纏は・・・・赤大の事好き?」

「ブーーーッ!!」

 

 まだ終わらない飛鳥の弁解を、二人はロジーナが纏をあすなろ抱きするかのように眺めて居た。ぬいぬいは弁解する飛鳥に対して、目を逸らしては蛾を。飛鳥を。蛾を。交互に見ていた。

 2人も必死な弁解に飽き飽きしていたころ、唐突なロジーナの問いに纏は盛大に吹きだす。

 

「・・・その反応・・・・図星?」

「ち、違うよっ!? そんなことないよっ!」

 

 こちらはこちらで纏が弁解するかのように、あすなろ抱きで抱きついているロジーナを見つめ、顔を赤らめながら慌てたように四肢を躍らせる。

 

「そ、そういうロジーナはクリスティーナさんの事どう思っているのさ!」

「わたしは・・・・・・クリスティーナのこと・・・好きだけど。」

「れ、恋愛対象として?」

「恋愛対象として。・・・よく笑うし・・・一緒に居ると気分が楽になる・・・・・・辛いことがあっても・・・明るくなれる・・・。現に・・・・最初・・・目覚めた時から・・・・勇気や元気を・・・・たくさんもらった・・。」

 

 そしてサラリと自分へ向けての話題をロジーナへと切り替える。ロジーナはその問いに対して、特に纏に顔を赤らめることなく素直な気持ちをありのままを伝える。

 

「・・で、纏は?」

「ボ、ボクは・・・ボクは。」

「・・・正直に・・・・話したら・・・? ここにはわたし達しか居ないよ・・・。」

「んん・・・・。赤大さんは・・・友人として好きかな!! シスターの話と被るけど・・・同僚っていうか、悪友っていうかさ。役に立たないボクを引っ張って行ってくれる・・・そんな存在かな。」

 

 真っ直ぐな視線を向けるロジーナに対し、纏は徐々に顔の赤みを薄めながらも俯き口ごもっていた。言い出さない纏に対して、ロジーナは耳元で悪魔の囁きのような声で話しかける。観念したかのように顔を上げると背後から抱きついているロジーナにしか聞こえないような声の大きさでボソリと一回呟いた。

 

対話判定

ぬいぬい→飛鳥 1【大失敗】

【友情】→【恋心】

ぬいぬい→飛鳥 8【成功】

飛鳥→ぬいぬい 10【成功】

飛鳥→ぬいぬい 4【失敗】

ロジーナ→纏 7【成功】

ロジーナ→纏 5【失敗】

纏→ロジーナ 9【成功】

纒→ロジーナ 5【失敗】

 

 




【後書き】
 前回、登場した蛾ですが鱗粉は人間にとって猛毒でした。オリジナルエネミーとして戦闘に参加させる予定だったのですが、シークレットダイスの結果。小役としての登場のみとなってしまいました。
 プロット上の正式ルートであると探索者も装甲車を捨てて、この森を歩く予定だったのである意味崖の崩落は良かったのかもしれません。

 全てはダイスの女神(クソビッチ)が悪い。




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Episode4-8 『アポルオン』

【前回のあらすじ】
 蛾に対し、鉄拳制裁で粉砕した飛鳥とその瞬間を目撃したぬいぬい。
 飛鳥の悲鳴によって、前方を歩んでいた纒とロジーナは2人の仲睦まじい様子を確認する。
 飛鳥の弁解が終わるまで、ロジーナは纒へ思い出すことができた記憶について話すのだった。


「うふふふふふ・・・・・・ここは素敵な場所ね~。命で溢れているわ~。賑やかだけど、一体何のお話をしていたのかしら~?」

 

 4人が悪夢のような森の中で『きなこ色の鱗粉』に捲かれながら恋バナを繰り広げたり、長い弁解をしていると突然4人の背後から声が掛けられる。4人が振り返ると、うっとりとした声で歌うように話し、枝葉のこすれ合う音も立てず木々の間から一人の少女が姿を現していた。

 10歳ほどの少女は、くるくるとドレスの裾を浮かすように、回り踊りながらどこを見ているともつかない目で話しかけて来る。少女は雪のような白い肌に、黒いドレスで顔と手先以外のほぼ全身を包み込んでいる衣装を着ており、長く白い髪に前髪で片目を隠しながら少女。

 纏は思わずロジーナのあすなろ抱きを振り払うようにほどき、写真を取り出す。見比べれば見比べるほど、そこには瓜二つの少女が写っていた。

 

「あ、えっと、君は・・・・。」

「わたしはアポルオン~。この森で暮らしているの~。」

「アポルオンって言うんだ・・・。あの、君についての記憶にないんだけど・・・ボク達について何か知ってないかな?」

「残念だけど、なにも知らないわ~。あなたたちとわたしは初対面だもの~。」

 

 少女はコマの様に忙しなくクルクルと回転しながら、何処か楽しげに話す。纏は知らないという彼女に怪訝な表情をした。少なくとも、生前ではあるが彼女とは会い一緒に写真を撮っている。さらに写真を取るほどの仲であるのにも関わらず初対面・・・。仮に自分たちと同じように記憶が無いのであれば、その趣旨を伝えるのでは?

 纏の中で『アポルオン』に対する不信感は強まって行く。

 そして正気に戻ったシスターが話していた内容をふと思い返す。あれは確かロジーナとクリスティーナに対して話しかけていた時だ。

 

『今も仲が良さそうですね。・・・成長した様子からシェルターから何年経過してしまったのでしょうか・・・。』

 

 もし彼女が、自分たちが生前仲良くしていた『アポルオン』であり、生きているのであればクリスティーナの様に成長している筈なのだ。しかし、写真に写る彼女と目の前に居る彼女は何も変わらない。そのままの彼女である。

 

行動判定-2

纏 9-2【成功】

 

 そして纏はハッしたように『アポルオン』から距離を取る。彼女を細かく観察していると、彼女が生きた人間でも無ければ、4人の様にアンデットでもない事に気が付いた為であった。

 それどころか、正体が何であるのかそれすらも特定できない。そんな(おぞ)ましき存在に恐怖の感情を抱いた為の行動でもあった。

 

「・・・・纏・・・・・? どうかした・・・・?」

「ロジーナ・・・下がって・・・・・・彼女、生きた人間でもアンデットでもない・・・っ。」

「・・・ッ・・。」

 

 纏の警戒する姿勢にロジーナも背負っていた対戦車ライフルを両手に構える。2人の只ならぬ気配に、背後に居た鱗粉塗れの2人も『アポルオン』に対し身構え警戒する。

 すると、あれほどくるくると踊り回っていた『アポルオン』がピタリとその場で動きを止める。

 

「・・・あ~ぁ・・・この姿なら、油断すると思ったのに・・・・。」

 

 うっとりとした声からは、連想が出来ないようなおどろおどろしい声を上げた。口を大きく開口するのと同時に、口や鼻、眼球、耳などの穴と言う穴から無数の羽虫を吐きだしながら、ドール4人に向けて囲うかのように襲い掛かる。

 

狂気判定-1

ロジーナ→8-1【成功】

ぬいぬい→9-1【成功】

飛鳥→10-1【成功】

纏→7-1【成功】

 

行動判定-1

ロジーナ→10-1【成功】

ぬいぬい→4-1【失敗】

飛鳥→7-1【成功】

纏→4-1【失敗】

 

 襲われる最中ロジーナと飛鳥の2人は思い出す。かつて最終戦争間際、各国が作るアンデット兵器に対して作られたのがミュータント昆虫兵器である事。彼らは欧州の人口の60%を死滅させ最終戦争のパワーバランスを大きく変動させた存在であることについて。

 目の前にいる群体は、各個体の戦闘能力は低いものの、奇跡的な変異を繰り返し集合体への自我を習得し。さらに彼等はドールやサヴァントを喰らう事で情報を収集し、時には人間も襲い、今や滅んだはずの人類に比肩する知性を得つつある。

 蟲の群れはそれぞれが大きな顎を持ち、4人の身体に噛みつき肉を貪ってきていた。

 『アポルオン』がある程度の蟲を吐きだし終えた後、くすくすと愉快そうに嘲笑うがその声はもうどうあがいても耳障りな蟲の羽音にしか聞こえなかった。さらに上空や地中からも巨大昆虫が囲み逃げ場を完全に失わせていた。

 

 

 




【後書き】
 伏線を大量に張っているつもりですが、回収できているか不安です。
 回収できていないものがあれば『謎』としてでも扱ってください。
 そう、小説を書くきっかけとなった『E=sの落とし子』と同じようにな!!
 『E=sの落とし子』は面白かったですよー。遊ぶ機会があれば、ぜひどうぞ。




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Episode4-9 『一撃必殺』 - 前半戦

【前回のあらすじ】
 森の中で少女と出会うドール達。彼女は纒が教会で拾った写真に写っていた少女と類似していた。
 纒は思い出せないことを申し訳なさそうにしながらも、彼女に自分たちのことについて尋ねるが彼女もドール達のことを知らないようだ。
 纒は彼女の様子に、何か『引っかかり』を覚え彼女を注意深く観察し、逸早く危機を察知するのであった。




===1ターン目===============

 

編成

【奈落】

『アポルオン』

【地獄】

ツデムシ1~4

【煉獄】

ヘビトンボ1~9

ぬいぬい、飛鳥、纒

【花園】

なし

【楽園】

ロジーナ

 

 

COUNT14

ラピット

ロジーナ

【集中】

飛鳥

ワイヤーリール

対象アポルオン

【奈落】→【地獄】

 

飛鳥

せぼね

 

ロジーナ

対戦車ライフル→10+2【成功、任意+2ダメージ】

対象:アポルオン

頭部全損

 

 常に誰よりも素早く行動していた探索者は存在しない。鼓舞するかのように敵をなぎ倒し、自分達を勇気づけてくれていた存在が居ない事に対して、4人は寂しさを感じつつも、同時にこの場に彼女達が居ない事に対し喜び笑みを溢した。

 『アポルオン』から湧き出た蟲たちは、今も自分たちの肉体に噛みつき蝕んでいる。

 もし、こんな中に人間である彼女達が同伴していたら、考えるだけで浮かび上がるおぞましい光景に4人は身を震わせた。

 飛鳥は、『アポルオン』とその他の不愉快な害虫共が自分達を囲んだところで、踵を返し『アポルオン』を霧散させるために一歩踏み出し接近する。

 『アポルオン』の目前には彼女を護るかのようにツデムシ達が陣取っていた。しかし気にする様子もなくライトセイバー片手に突っ込むと思わせ相手の動きが強張ったのを確認してからワイヤーリールデ『アポルオン』を手前に引き寄せる。

 ロジーナは瞬時に超遠距離から対戦車ライフルで『アポルオン』を狙う。纏は生きた人間でもアンデットでもない事を語り、更に自分自身は『集合体への自我を習得している』という情報を知り得ている。

 蟲の何処に自我を持ち合わせているのか、ロジーナにそれを見抜く力は持ってはいない。されど人間であれアンデットであれ、大事な機能が詰まっているであろう脳天に狙いを定め、鉛玉を放った。その弾丸は数多の巨大昆虫の隙間を潜り抜け、一撃で『アポルオン』の脳天を貫いた。額の中央に穴が開いたと思えば、後頭部が膨れ上がり霧散し粉々になった蟲の欠片が、飛び散る脳味噌の様に噴出する。

『アポルオン』はそのまま反動を受けたように倒れるように仰向きで崩れると動かなくなった。

 

===戦闘終了===========

 

 周囲のヘビトンボやツデムシも驚いているのか、視線を狙撃された『アポルオン』へと注目を浴びせていた。次第に4人を覆っていた羽虫たちも、逃がさぬよう形作っていたがその姿を消す。周囲には『アポルオン』の亡骸と、浮遊するヘビトンボ、地べたを這いずるツデムシしか居なくなった。

 

「私が引き寄せる必要もありませんでしたね・・・。」

「ロジーナさん! 凄い!!」

「ロジーナ!」

 

 飛鳥はがっくりと肩を落し落ち込む一方、ぬいぬいと纏はロジーナを讃えるように明るい顔でロジーナの方に振り向く。しかし、ロジーナの顔はスコープ越しに倒れ切った『アポルオン』から視線を外すことは無い。それよりも一層、顔を険しくさせた。

 直後、頭部を射抜かれ後頭部を爆ぜさせた『アポルオン』が立ち上がったのだ。

 その立ち上がり方は実に不気味であった。大の字に仰向けで倒れていた彼女は手足を使うことなく大の字を描いたまま、まるで逆再生するかのように起き上がったのだ。

 後頭部は完全に弾け飛び、その姿は人の形をしていなかったが それでも白目の無い黒い眼球でドール達を睨みつけていた。

 

「う ぇ ぇ ぇ ・・・・・・ひ ど ど どぃぃぃ、わ・・・・・ぁ。ぁ―――――、はぁ―――――――、でもまd・・・・・、きる、かわ・・・・・・さえ・・・・あrbbbbbbbbb」

「・・・・・・来る・・・・っ!!!」

 

 『アポルオン』は辛うじて聞き取れる日本語で脳天を抉ったロジーナを視点の定まらない目で見つめた。

 さらに不完全の日本語を話した直後、彼女の皮膚のところどころに黒い黒点がポツポツと複数現れ始める。その黒点は最終的に全身の肌を覆う様に黒くなったかと思うと、次第に大きくなり始め、中から生き残っている大量の蟲が『アポルオン』だった身体を食い破り雪崩の様に湧き出てきた。

 

狂気判定

ロジーナ→3【失敗】

飛鳥+1

ぬいぬい→2【失敗】

纏+1

飛鳥→2【失敗】

纏+1

纏→10【成功】

 

 

 




【後書き】
 探索者達が居なくなってから、出目が輝き始めるドール達ってどうなの・・・。
 探索者とは別れる形になりましたが、兵力は変わりません。1.5倍で戦闘を続行します。
 戦闘勝利条件が『アポルオン』の撃破じゃなければ詰んでいたような気もします・・・。そこはシナリオに感謝です。





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Episode4-10 『ポンコツ』 - 後半戦

【前回のあらすじ】
 飛鳥が『アポルオン』を狙いやすいように引き寄せる。
 ロジーナが開戦と同時に『アポルオン』を打ち倒したのだった。
 歓喜の声をあげるドール達ではあったが、戦闘は始まったばかりであった。




===1ターン目続行==========

 

COUNT12

飛鳥

ライトセイバー→1【大失敗】

ほね損傷

切断判定→6【成功】

 

 

 

COUNT11

ショットガン→8+1【成功】

対象アポルオン

→以下のパーツを破壊

蟲の群れ*2

 

 

「このぉっ!!!」

「とおぉぉ↑ぉぉぉぉぉぉおう↓?!」

 

 まだ動き、蟲達を旋回させる『アポルオン』に対し、素早く纏はショットガンを叩き込む。しかし、その一撃は『アポルオン』本体を傷付けることは叶わず、蟲の集合体部分に直撃するとその周囲の蟲を粉とするだけであった。

 飛鳥もライトセイバーを振り上げ、近くを飛び回るヘビトンボに斬り掛かった。しかし、呪われているのかという疑いを持ちたくなる勢いで蠢く触手に足を取られ転倒してしまう。

 なお、完全に恒例行事の如く宙を舞ったライトセイバーは、飛鳥の足を切断し損傷させる。この恒例行事には纏やロジーナ、ぬいぬいですら白い目で飛鳥を見つめる。

 

 

 

COUNT10

ツデムシ1~4

節足

移動【地獄】→【煉獄】

 

「私は、もしもに備えてロジーナさんとお二人を守れる位置に移動します! 飛鳥さんは真面目にライトセイバーを振ってくださいね?」

「真面目に振ってますよ?!」

 

ぬいぬい

ほね

【煉獄】→【花園】

 

飛鳥

ライトセイバー→2【失敗】

 

 ぬいぬいは足早にロジーナ、纏、飛鳥、全員を守りに行ける位置まで走って行く。途中、ライトセイバーを片手によろめきながらも、ヘビトンボを斬り掛かりに向かっている飛鳥を白い目で眺めつつも、助言として一声かけると そのまま中間地点まで走って行った。

 飛鳥は再びライトセイバーを振り被り、目の前で小賢しく飛び回るヘビトンボに斬り掛かるが、森まで飛鳥の行動を邪魔したいのか、蔓草が足に絡まり斬り掛かる前に転倒してしまう。

 

 

 

COUNT9

ショットガン→9+1【成功】

対象:アポルオン

ジャッジ

アポルオン=群れの防御 防御1

 

 

 

COUNT8

ヘビトンボ6~9

はね

【煉獄】→【楽園】

 

ヘビトンボ4~5

はね

【煉獄】→【花園】

 

ヘビトンボ1~3

おおあご→7、7、10【全部成功】

対象:全飛鳥

→以下のパーツを破壊

【ボイスエフェクト】ラピッド/2/0-2(対象の姉妹1人と対話判定可能)

【発勁】ラピッド/0/0(自身には不可、移動1)

脚全損

 

ロジーナ

対戦車ライフル→9+1+3【成功、ダメージ+3】

対象アポルオン

ジャッジ

ロジーナ=集中、スコープ、うで、集中支援合計4

ジャッジ

アポルオン=無限の軍勢 防御2

→以下のパーツを破壊

数多の羽音、数多の群がり、群れ防御、無限の軍勢、

無形の悪意、数多の複眼

 

「あぁぁぁぁぁ!! 食べないでくださいーっ!!!」

 

 ヘビトンボ達はドール4人を攪乱させるつもりなのか、『アポルオン』が復活し、飛鳥が全ての攻撃を失敗した光景を見届けた後、それぞれの位置に己の羽を使い分散した。 【煉獄】には一人攻撃を全く当てられない巫女が居るものの、油断は禁物と考えたのか3体その場に残り、蔓草に足を取られ転倒している飛鳥に全員でかぶり付きに向かう。 流石に転倒しているなま物は狙いやすかったのか、残りの無事なほねや、あし、他の姉妹と会話に使うために必要なボイスエフェクトやボイスエフェクトに付属させていた発勁をもぎ取って行った。

 【楽園】には2体のヘビトンボがぬいぬいに追従するかのようにその背中を追いかけ、ぬいぬいが日本刀を抜き、振り返った所で修羅に教えて貰った構えを見よう見まねで取ってみる。2匹のヘビトンボは警戒しながらもぬいぬいを挿むように飛びまわっていた。

 【花園】には4匹のヘビトンボがロジーナ目掛けて一直線に飛び立つ。先ほどの1撃で誰が最も脅威であるのか、蟲共の知能でも人間と比肩するほどになれば理解できたのであろう。

 しかし、ロジーナは4匹のヘビトンボの接近など目もくれず、まっすぐに今は蟲の塊りとなった『アポルオン』を見据えていた。そして研ぎ澄まされたロジーナの対戦車ライフルが放たれる。飛鳥を除いて、他の外敵の接近など目もくれず目前の倒すべき集中し、前回手に入れた新しいスコープで更に精密射撃を極める。さらに外さぬよう腕も添え、鉛玉を放った。その鉛玉は【花園】【楽園】【煉獄】の味方や眼中にもない敵をすり抜け、吸い込まれる様に【地獄】の『アポルオン』に命中した。『アポルオン』も再びただやられるだけではない。次は無限にも思える様な蟲の軍勢や群れで防御態勢を取る。しかし、それを上回る正確な一撃は、防御策を練っている『アポルオン』に直撃し爆ぜた。

 遠くでは飛鳥の悲痛な叫びが聞こえたような気がしたが、まずは敵の総大将を仕留めることを目標とし、ぬいぬいに飛鳥の救助は任せることにした。

 

 

 

COUNT8

ラピッド

よぶんなはね

ヘビトンボ1~3

おおあご→6-1、6、1【失敗、成功、大失敗】

対象:纏、纏、飛鳥

ジャッジ

纏=あし 妨害1

ダメージ

ヘビトンボ1=外骨格

 

ヘビトンボ4~5

おおあご→5、3【失敗、失敗】

対象:ぬいぬい

 

ヘビトンボ6~9

おおあご→2、1、10、4【失敗、大失敗、成功、失敗】

対象:ロジーナ

ダメージ

ぬいぬい=庇う(ロジーナ)

ヘビトンボ7=外骨格

「スチールボーン」 防御+1

→以下のパーツを破壊

脚*2

あご、はらわた、はらわた

 

 ロジーナの2回目の狙撃が終わった直後、ヘビトンボ達は一斉に動き出す。しかし、一斉に一度に同じ標的を狙ったのが策略として誤っていた。【楽園】にてロジーナを狙う1匹と【煉獄】にて纏を狙う1匹は何とか混雑しながらも攻撃が当てられそうになる。見事纏を狙ったヘビトンボ2は纏のはらわたを抉り取った。しかしヘビトンボ1も纏のはらわたに喰らいつこうとしたが、あしを出されよろけてしまう。そしてそのまままだ転倒している飛鳥に噛みつこうとしていたヘビトンボ3に足を嚙み千切られてしまった。

ヘビトンボ4、5は身体がぶつかり合ってしまい上手くぬいぬいに嚙み付くことが出来ず、日本刀の太刀筋に受け流されてしまう。

 ロジーナを狙ったヘビトンボは頭に被り付き少しでも『アポルオン』から注意を逸らそうとするものの、受け流しを終えた ぬいぬいがルイージロケットの様に頭から飛び込んできたため、目標物に攻撃は当たらず、ぬいぬいの顎をもぎ取った。

 

アポルオン

多数の顎→3【失敗】

対象:纏

 

飛鳥

ライトセイバー→1【大失敗】

切断判定→8 成功

→はらわた損傷

 

「わざとじゃないんです!! わざとじゃないんですっ!!!」

 

 『アポルオン』は対戦車ライフルで射抜かれようとも、まだ攻撃できる手は残っていた。よろけながらも射程圏内に居る纏をかみ砕こうと、攻撃部隊の蟲を飛ばす。しかし、その攻撃は当たらず、大きく逸れた。

 飛鳥は足で動けなくなった為腕を使い、身体を引きずりながらも転がったライトセイバーを手に取りレーザースイッチを入れた。今度はライトセイバーの向きが悪かった。レーザーは飛鳥の横っ腹を貫通しハラワタを抉り出した。

 悲惨な状況に誰も目を向ける味方は居ない。見てくれているのは、先ほどボイスエフェクトと発勁をもぎ取って行ったヘビトンボだけである。

 

 

 

COUNT7

ラピッド

ツデムシ1~3

突進→6、5、8、9【成功、失敗、成功、成功】任、胴、腕

対象:全飛鳥

ツデムシ1~4

節足

ジャッジ

飛鳥=サイボーグ防御+2

→以下のパーツを破壊

■【こぶし】アクション/2/0(肉弾攻撃1)

■【うで】ジャッジ/1/0(支援1)

■【かた】アクション/4/自身(移動1)

■【ライトセイバー】アクション/2/0(白兵1+切断+連撃1)

■【せぼね】アクション/1/自身(次に使うマニューバーコスト-1(最低0))

■【はらわた】オート/なし/なし(なし)

■【サイボーグ】ダメージ/0/自身(防御2)

 

「えっ?! ちょっと待っ・・・・!!」

 

 そんな戦闘中にも関わらず弁解している動けなくなった飛鳥へ向けて、構ってくれる存在は敵の中にも存在した。全長10mは下らない巨大百足の群れであった。動けない飛鳥へ向けて、タイムセールが始まった店内の人間達の様に4匹纏めて、飛鳥に向けて突進してくる。1匹は逸れるものの残り3匹が飛鳥の身体に直撃し、飛鳥自身が宙を舞う。咄嗟にサイボーグの身体で衝撃に耐えるものの、そのサイボーグすら貫くような重い一撃。艦これに登場する大破した妙高のようなポーズで跳ね飛ばされる。胴体に捲きつけていた人形と『未來』だけは壊れないようにと身体全体で守りきる。

 飛鳥の残っている物はもう たからものと胸部、片腕、頭しかない状況まで追いつめられていた。

 

ショットガン→9+1+3【追加ダメージ+3】

ジャッジ

飛鳥=アームデバイス支援2

纏=うで支援1

対象アポルオン[完全解体]

 

流石に完全解体間近になってきた飛鳥を纏は一瞥する。そして次の攻撃が来る前に仕留めようとアポルオンに狙いを定める。ショットガンを放つまでの時間がとても長く感じた。轟音と共に散弾が発射され『アポルオン』を今度は粉微塵に切り刻んでいく。

 

 

戦闘終了。

基本パーツ:32

強化パーツ:16

 

ライトセイバーを除いて全回復

 

たからものの狂気点回復

飛鳥-3

ロジーナ-1

ぬいぬい-2

纏-3

 

 

===戦闘終了================

 

 

 




【後書き】
 出 目 が 輝 い て い た 。
  そ う 思 っ て い た 時 期 が 私 に も あ り ま し た 。

 この飛鳥は敵に足を壊される前に自分で壊さないと気が済まないようです。
 飛鳥の出目のポンコツ率が異常で、執筆中は戸惑いが止まりませんでしたね。ポンコツドールと歌われるゾンビクイーンですら、情けを掛けるレベルで戦闘出目がポンコツですね。そして敵の攻撃が何故か飛鳥に集中していくのです。





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Episode4-11 『足元要警戒』

【前回のあらすじ】
 飛鳥が戦闘面に関してポンコツ過ぎた為、呪われしライトセイバーを破棄することを決意。
 飛鳥に甚大な被害が及んだもののパーツは全て修復ができ、飛鳥がボコボコにされただけで、他のドール達はほぼ無傷であった。
 あ、あと、アポルオンは纒のショットガンによる攻撃で無事に倒せた。


 纏がショットガンを降ろす頃には、向けていた場所には何も存在しなくなっていた。

 ヘビトンボやツデムシ達は互いに顔を見合わせるような仕草を取る。よぶんなはねがせわしなく動き、それは人間で例えるところの焦りを象徴していた。ツデムシも触覚を細かく振動させる。

 直後、銃声による怒号が周囲に響き渡った。ヘビトンボ9匹とツデムシ4匹はその音の方角を見る。

 そこにはロジーナが立ち上がり対戦車ライフルを上空へ向けて発砲している姿であった。瞬時にロジーナはヘビトンボ達に向けて対戦車ライフルを向ける。そして1度だけニヤリと笑って見せた。その笑みを見た途端ヘビトンボやツデムシはその場から散り散りになって逃げだす。

 ヘビトンボやツデムシが森の中に逃げ込んだ途端、森は死んだかのように静かになった。

 

「飛鳥! 飛鳥、大丈夫?!」

 

 ヘビトンボとツデムシが去った後、纏は近くに落ちているボイスエフェクトとボイスエフェクトに付属している発勁を手に取ると飛鳥の元まで駆け寄り土や鱗粉、泥を払ったのち。着いてあった場所に丁寧にくっ付けた。

 

「ありがとうございます。私は大丈夫です。・・・それよりも、皆さんや未來、ぬいぐるみ、シスターの聖書は無事ですか!?」

 

 取れた顎を拾い上げ再び接合し直したぬいぬいも飛鳥の元に駆け寄り、胸元を確認する。胸元には、カプセルに入りクリアグリーンの培養液に使った『未來』が見えた。聖書もツデムシとぶつかった衝撃で飛鳥自体から離れた位置にはあったものの奇跡的に壊れず、長方形の形を保ったままの本をロジーナが拾い上げ、飛鳥に手渡す。ぬいぐるみは飛鳥の僅かな血液によって赤黒く変貌していたがしっかり手元にある事を確認すると満足そうにそれを抱き締めた。

 飛鳥のたからものが全て揃ったところで、纏はその場に座り込み 金属製の縫合糸で飛鳥の身体を繋げ始める。その間ロジーナは周囲の索敵、ぬいぬいは飛鳥に合いそうなパーツを拾い上げ纏の元まで運んでいた。

 

「あ、言っておきますけど! 私、今回は2回もライトセイバーで自分の事斬りつけてしまいましたけど、本当にわざとじゃないんですからね!! 敵を攻撃しようと振り被った瞬間に血糊やら、今回は蔓草に足を取られて転んでしまうんです!! 不運なだけなんですっ!!!!」

「はいはい。疑ってごめんね。」

「むーっ!! その言い方、信じていませんね!!」

 

 纏に修理してもらいながらも、飛鳥はまたもや弁解を始める。議題はライトセイバーで自分の足を切断する行為についてであった。纏はそれを聞きながらも慣れた手つきで皮膚と皮膚を繋ぎ合わせ縫い続ける。あしらうような返答に飛鳥はプクーっと頬を膨らませ怒った表情を作っていた。

 

「・・・・・地下の研究所に・・・・・居た頃から・・・・転び続けていたから・・・・。・・・・ごめん・・・疑いの目なんか・・・・向けて・・・・・。・・・・今度は・・・・転ばないように・・・・足元・・・注意しよう・・・・・?」

「そうですね・・・血糊や、足元を妨害する何かが無いかどうか確認してから斬り掛かった方が良いかもですね。飛鳥さんのしっぽ根元から切断されたみたいですから、繋げばまだ大丈夫ですよ。」

「う、うん・・・・注意しているんだけどなぁ・・・。」

 

ロジーナも歩哨しながら、飛鳥が纏に向けて弁解している姿を見ると、一言謝りに近づいた。丁度、ぬいぬいも飛鳥に適したパーツの分別も済み、元から付いていたであろう狐尻尾のパーツ片手に戻ってこけ続ける飛鳥にアドバイスを伝えていた。

飛鳥は怒った様子から口を尖らせ、ふてくされた様子に変わる。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥7+1【成功】

ぬいぬい→纏10【成功】

飛鳥→ロジーナ1【大失敗】

【独占】→【執着】

纏→飛鳥10+2【大成功】

 

 

 




【後書き】
 身体がボロボロに崩れ去っても、修復すれば元通り。修復も会話をしながら行える。ドールだから成せることですね。
 因みにツデムシの攻撃は探索者が受けた場合、3D6+DBになる予定でした。ツデムシは10mほどの大ムカデなため、SIZ、STRもろとも最恐を誇っていたことでしょう。恐らく荒野で出会っていれば装甲車がひっくり返されるようなイベントもありえたかもしれませんね。




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Episode4-12 『ザイクロトル』

【前回のあらすじ】
 大失敗当初は、白い目で飛鳥を見ていたドール達ではあったが、ツデムシに弾き飛ばされると流石に危険を察知し心配の声を掛ける。
 結論から飛鳥は無事であった。
 そして自分の身よりも『たからもの』の無事を心配をするのであった。




「緋袴がボロボロです。うぅぅ・・・お気に入りだったのに・・・。」

「よし、シェルターに着いたら修理できる代わりのものは無いかどうか探そう。ボクで良ければそれも縫合するよ。」

「よろしくお願いします・・・。」

 

 それは飛鳥の修理も殆ど終わり、森の中で一息ついた時の事だった。

 ロジーナが何かを察知すると周囲を鋭い視線で見渡す。

 

「ロジーナさん、どうかしましたか?」

「・・・・・待って・・。・・・・この森・・・変。」

「変って、どうかしたの?」

 

 ロジーナの指摘に全員が周囲を見渡す。全員で見渡すことでその異変は目を凝らさずとも見ることが出来た。今まで動いていなかった植物、特に木々が地面に生えていた根っこを引き抜くや否やまるで歩くかのように蠢き、明らかに移動している。

 動いた後には今までは存在しなかった道が開かれ、空の様子も見えるようになる。空は面白くもない鉛色の雲で覆われ、薄暗い。そして上空を何かが通った。ヘビトンボではない巨大な何か。それはまるで空を飛ぶツデムシのようにも見えた。そんな大きな巨大昆虫が大空を飛んでいたのだ。

 更に今まで通ってきた道を見てみれば、蔓草が、木々がざわめき、入ってきた方角を防いでいた。また茂みからは蔓草が蠢きながらヘビトンボの大破した足の欠片を絡み取り、茂みの中に引き込んでいく。

 ・・・数秒後、何か硬いものをかみ砕くかのような、飴玉を奥歯で潰したかのような音が森に響きわたった。捕食対象がヘビトンボの脚だけであれば、まだ良かった。ドール達の肉片もその蔓草は掴む。ただ掴むだけではない。1体の茂みがその肉片を掴んだかと思うと他の茂みまでもが、その肉片を取り合い始めたではないか。

 纏は座りこんでいる飛鳥の手を握り立ち上がらせ、そしてその茂みから逃げ出す様に走り出す。ロジーナも同様であった。歩幅が小さなぬいぬいを抱きかかえると纏の後を追う様にして随行する。

 10分もしないうちに先ほど血戦場となっていた場所は数々の木々で埋め尽くされ、足場の踏みようがない魔境と化していた。

 

行動判定-2

ロジーナ→8-2【成功】

ぬいぬい→5-2【失敗】

飛鳥→8-2【成功】

纏→5-2【失敗】

 

 逃げ出す最中、ロジーナと飛鳥はそれぞれとあるものを見つけた。否、正確には見つけてしまったの方が正しいかもしれない。それは魔境と化する前の血戦場の光景である。

 ロジーナが見たのは木とも別の生き者とも取れない物体だった。高さは約5mあり太い筒のような枝が付いている。・・・・・筒は根元のところで6本の平たい根の様になって分かれている。これはこの荒廃した世界では自然の形なのかもしれない。木のてっぺんについている枝の奇妙なまん丸い並び方も、自然の形が偶然そのように変異し、そうなったのだと説明されているのかもしれない。しかし、それは明らかに4人のドール達を見つめていた。木の梢だと思えるてっぺんから、目鼻の付いていない楕円形のものがいきなり顔を出し、楕円形の上部に穴が開き、ギザギザの歯が見えていた。

 飛鳥が見つけたのは、瞼のない大きな瞳。頭のところから宇宙のリズムで曲がりくねっていて、両先端がくっつきあっている撒きひげ、10本の脚、光沢のある触肢に覆われているその10本の脚は、青白い腹部に折り曲げられていた。半円型の硬そうな翼は、三角形の鱗で覆われている。口は3つもあり、濡れた口が蠢いていた。

 

狂気判定-1

ロジーナ→6-1【失敗】

飛鳥+1

飛鳥→1-1【大失敗】

ロジーナ+1

 

 “それら”は明らかに4人を目視しているようではあったが、襲い来る様子を微塵にも見せない。その様子は、興味はあるが何かによって静止されているようにも捉えることができた。二人は既に白い顔を青白くしながら森の中を駆け抜けていく。

 

 

 

 

 

 

寵愛点

戦闘寵愛点31

個人寵愛点2~4

記憶の欠片を手に入れる【ロジーナのみ成功】

『アポルオン』を2ターン以内に倒す【全員成功】

ロジーナ

□【リフレックス】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【アームバイス】ジャッジ/1/0(支援2 or 妨害2)

□【ボルトヘッド】ジャッジ/1/自身(支援2)

ぬいぬい

【捕食者】ダメージ/2/0(自身のいるエリア内の敵全てに「転倒」効果)

□【名刀】アクション/2/0(白兵攻撃2+切断、攻撃判定+1)

□【リフレックス】オート/なし/自身(最大行動値+1)

飛鳥

【円舞曲】ラピッド/1/自身(ターン終了まで攻撃判定-1)

□【けもみみ】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【単分子繊維】アクション/2/0~1(白兵攻撃1+切断+連撃1)

□【エンバーミング】ジャッジ/2/0(妨害2.1ターンに何度使ってもよい)

  寵愛-6(3)ライトセイバーチェンシ

□【しんぞう】オート/なし/自身(最大行動値+1)

□【エンバーミング】ジャッジ/2/0(妨害2.1ターンに何度使ってもよい)

□【よだれじた】ジャッジ/2/0~1(妨害1+転倒)

 

 

 




【後書き】
 忘れかけていたクトゥルフ要素・・・!!!
 いえ、忘れていませんよ? ちょっと、ちょっと出す余地が無かっただけです。
 今回の友情出演はあの2体となります。さぁ、リアル神話技能を振るのだ。

 そして無事に4章は閉幕しました。
 クトゥロニカ5章にも入っていきます。
 果たしてドール達はネクロマンサーの悪意に打ち勝つ事はできるのか。

 明日もレッツ いあいあ!





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4章 『果てる愛』
Episode5-1 『合流地点』


【前回のあらすじ】
 森の木々や植物が蠢き、飛び散った肉片や蟲の破片を捕食していく光景を目撃してしまった4人。
 逃げるように最深部へと足を運ぶがロジーナと飛鳥は見てしまった。変異体等ではない異形の化物の姿を。
 道中、この森に迷い込んだ哀れな過去の犠牲者の持ち物を拾い装備を固めながら、奥深くに潜っていくのであった。


 ドール4人は森の中を走り抜けると、草木の生い茂っていない小さな広場に到着する。

 正面は反り立つ崖となっており、崖の中に埋め込まれるかのようにしてその巨大な鉄扉は存在していた。附近の崖を登攀しようと手を掛ければ、その部分から崩れてしまい上る事は困難であると分かる。

 右手を見れば、恐らく迂回路から向かうことが出来るであろう巨大な道路の残骸が目に入った。奥には地図に書かれていた廃墟群が小さく視界に映っている。

 どうやら装甲車は、先に到着しているという訳では無いようだ。

 4人は互いに顔を見合わせる。地図を持っていないが曖昧な地図の記憶から、正確な距離は分からないものの彼女たちの方が移動は速い筈だ。

 到着していないという事は・・・・つまり・・・。

 考えたくもない想像に首を振り、嫌な想像を振り払う。誰もが現実から顔を背け、言葉を発せなかった。

 目標物であったシェルターを目の前にして動けないでいると、唐突に金属製の分厚い巨大な扉が勝手に開いた。隙間から地下へと続く横幅の広い階段も見える。

 互いに顔を見合わせる。しかし、誰も扉に接近して居ない。ロジーナが崖を触った程度ある。

 

「あ、赤大さん・・・?」

 

 纏はわずかとなってしまった希望に掛けるように、震えた声で勝手に開いた巨大扉に接近し、中を覗き込んだ。既に非常灯は切れており、通路の中は真っ暗であったが纏の目には昼間の様に中を確認することが出来た。

 随分と長い間、この階段は使われていないのか埃が積雪のように積もっている。しかしその埃を踏みしめるかのような人間の靴による足跡が4組、続いているのが窺えた。

 

「み、みんな! みんな来て!!」

 

 纏の曇っていた表情は明るくなり、震えた声は歓喜に満ち溢れたような声で3人を呼ぶ。

 3人は先ほどまでと声のトーンと異なる纏に釣られる様に扉の前に集まった。纒の指をさした方向を見ると其処には足跡が存在している。3人の表情を明るくなった。寄り道することなく足跡は直線状に階段を降りて行ったようであった。

 

「赤大さん、遅れちゃってごめんなさい・・・。ボク達も急いで最短ルートを通って来たつもりだったんだけど・・・地図が無いから時々迷っちゃって・・・・。」

「・・・・流石・・・・・クリスティーナ・・・・あんな崩落は・・・・・余裕だよね・・・・・。」

「ぬい、わたしやりましたよ!! 縫に教えて貰った通り敵の攻撃を受け流しました!!」

「星乃さん! 私もまた強くなりましたよ! 未來も居ますし、こっちは全員生存して到着です!! 星乃さん達も大丈夫ですか? こんな暗闇の通路ではなくて、外でお話ししましょうよー。」

 

 4人は通路の入口から、中で先に待っているであろう4人に向けて嬉々としながら各々話しかける。不思議とその呼びかけは一心同体になっているような不思議な感覚がする。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 7+1【成功】

ぬいぬい→ロジーナ 1【大失敗】

【恋心】→【信頼】

飛鳥→ロジーナ 7【成功】

纏→【全対象発狂点なし】

 

行動判定

ロジーナ→3【失敗】

ぬいぬい→2【失敗】

飛鳥→2【失敗】

纏→4【失敗】

 

 ところが、4人からの返答はなく通路は不気味なほど静まりかえっていた。

 ロジーナ、ぬいぬい、飛鳥、纏の4人は首を傾げる。

 

「反応・・・・ありませんね。」

「クリスティーナ・・・・・! わたしの事・・・嫌いになった?」

「赤大さぁーん!」

「ぬいー!!」

 

 されど反応は無い。

 

「・・うーん・・・・。・・・・・・・はっ・・・!」

「飛鳥、どうかした?」

「もしや、これはサプライズって奴なんじゃないでしょうか?」

「・・・サプライズ・・・・・?」

 

 ここで飛鳥が考え込むようにしながら、突然閃いたような顔をする。

 その表情を覗き込むようにして纏が尋ねると、己の顔の真横で人差し指を立て、至って真面目な顔で4人の顔が見えるようにやや前傾姿勢になりながら説明する。そんな説明にロジーナも食いつくように近寄りながら興味ありげな顔をした。

 

「みなさん、本当は再開を喜びたいのですが、普通にお祝いするのは嫌でこの先にある空間で感動の再開!! なんて準備しているんだとおもいます。ここで私たちの元に出てきてしまったら、サプライズも何もなくなってしまいます。そんな事情で私たちの前に姿を見せられず、返答も出来ず・・・苦しい思いをしているのでは?!」

 

 確信めいた顔で飛鳥は、目を輝かせながら夢と希望に満ち溢れた解説を3人に説明する。

 

「ぬいは・・・・しなさそう・・・。」

「・・・・・・クリスティーナ・・・・だったら・・・・・・確実にやる・・・!」

「赤大さんは・・・どうかなぁ・・・。」

 

 ぬいぬいは飛鳥から最も離れた位置で腕組みをし、首を傾げ怪訝な顔をしていたが、ロジーナはしばらく考え込むような仕草をした後、両目をカッと開いたかと思うと飛鳥の予測に力強く頷いた。纏もぬいぬいと同じような仕草をする。

 

「あー・・・・でも、赤大さんもクリスティーナさんのノリでやりそう・・・。」

「そうです! あの人ならやりますよ! あまり待たせるのも良くないですし、行きませんか!?」

「・・・そうだね。」

「・・・・・・クリスティーナ・・・・・ふふふっ♪」

「あ、待ってよー!」

 

 纏も頷きを見せたところで飛鳥の声は一段と大きくなり、一足先に階段に足を踏み入れる。それに続くようにぬいぬいも飛鳥の後ろに付く。その背後にサプライズと再会を楽しげにしているロジーナ、最後に纏が続いた。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 5+1【成功】

飛鳥→ロジーナ 4【失敗】

纏→【全対象発狂点なし】

 

 

 




【後書き】
 惜しい人を亡くしてしまった。
 そしてダイスの女神よ。クソビッチって言って申し訳なかった。申し訳なかったから、これ以上ダイスの出目を輝かせるのはやめてください。いろんな意味で私が死んでしまいます。

 シナリオの最終章始まりました。残すところ現段階で13話です。
 彼女たちは幸せを手に入れることができるのか。次回へと続きます。




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Episode5-2 『静寂』

【前回のあらすじ】
 森を抜けた先に小さな開けた空間に出た。装甲車はまだ止まっていない。
 壁には鉄のような金属でできた扉が存在し、ドール達を中へと招き入れる。
 姿を見せない探索者達を不安げに想いつつも、飛鳥の閃きに乗じて嫌な予感を振り払うかのように地下へと歩み始めるのであった。




 4人が入口の階段を降りると、その先も扉も次々と開いていく。先には4人の足跡が続いているのが目に入った。心を躍らせながら4人は歩みを進める。

 一行の足がようやく止まったのは、外観が広大な地下都市と呼ぶべき空間についてからであった。

 ドーム状の地下空洞には無数の建物が所狭しと並び、巨大な蜂の巣を思わせる。十分な広さと高い天井を持つために、シェルターに閉鎖感はない。まだ何処からか電気を供給しているのか、地下だというのに明かりが内部を明るく照らしていた。

 

「とうちゃーく!! 星乃さーん!! 来ましたよー!!」

 

 飛鳥が出来る限り大きな声かつボイスエフェクトを使って、星乃の名を呼ぶ。その声はドーム全体に響き渡り、木霊となって反響する。だが木霊以外の、返答は何一つなかった。

 

「・・・クリスティーナ・・・・?」

「赤大さーん。」

 

 2人も木霊しない程度に2人の人間の名を呼ぶが、返事は無い。

 

「縫々ーっ!!!」

 ぬいぬいは、修羅の名前を二つつなぎ合わせて叫ぶ。木霊が反響するが、返事は無い。

 

行動判定

ロジーナ→9【成功】

ぬいぬい→3【失敗】

飛鳥→9【成功】

纏→9【成功】

 

 ロジーナ、飛鳥、纏の3人は薄々感づいていたことではあったものの、ここが巨大シェルターで自分たちが目指していた終着点であり、人類の避難所だったことを思いだした。かつての最終戦争の様相を考えると、この施設を作った国は比較的『人道的』であったと思えてくる。

 しかし、1万前後の人口を収納出来たであろう地下シェルターに人の気配が全くない。それどころか途中、はぐれてしまった人間達にも出会えず、狂気が心を蝕んでいく。

 

狂気判定

ロジーナ→9【成功】

ぬいぬい→7【成功】

飛鳥→3【失敗】

ロジーナ+1

纏→9【成功】

 

記憶の欠片【全員入手】

シェルター(特殊)

 

「あ、案外、奥の方でサプライズの準備をしているかもしれないよね。」

「・・・・そう・・・・・そうだと思う・・・・。」

「て、手の込み過ぎたサプライズですよね、ほ、本当に。」

「ぬいは生きている生きている生きている生きている・・・・。」

 

 不安を振り払うかのような声で纏が、周囲を忙しなく見渡す。ロジーナは目を伏せながらも、ふらつく足取りで街に向けて一歩踏み出す。飛鳥は泣きそうになりながらも、ロジーナの腕にしがみ付くように歩き、ぬいぬいは何処か壊れたラジオのように呟きながら歩みを進めていた。

 並ぶ建物は1つ1つが金属めいたタイルで覆われ、頑丈極まりない扉と、金属の雨戸のシャッターで閉じられた窓が付いている。堅固ながらも陰鬱な建物の群れは、眺めながら歩みを進めるドール達に得体のしれない不安感と同時に懐かしさを感じさせた。

 4人は墓石のように建ち並ぶ建物の間を突き進む。建物の扉は強固に閉ざされ、簡単に中に入ることが出来ないようになっていた。時折、明らかな争いが残る建物や弾痕や血痕痕が残る通りが目に入った。

 

「・・・・・暴動・・・・・?」

「暴動で誰も居なくなるなんてことがあるんですか?」

「電力も生きているなら、外よりもここの方がずっと生きやすい筈だよ。暴動だとしたら誰かしら残っているんじゃないかなぁ。」

「ですよね・・・。」

 

 3人は弾痕や血痕をしゃがみ込み、触れ確認する。血痕は付着してからかなりの日数が経っているのか、血液は既に凝固し床にこびり付いているだけであった。

 

行動判定

ロジーナ→9【成功】

ぬいぬい→10【成功】

飛鳥→6【成功】

纏→6【成功】

 

4人は奥へと歩みを進める。

 しばらく歩いていると、やはり生存者とおぼしき人間とは会えなかったものの、それぞれが「シャッターをこじ開けてでも中に入りたい」と思えるような建物が4件見つけることができた。

 ロジーナの歩みを止めたのは、何処か豪邸を連想させるかのような巨大な家。

 この家も、他の家と同様にシャッターが下ろされ厳重な管理がされていたが、それでもこの中にロジーナが求めている物がある。そんな気がしたのだ。標識には『熊野』と掛かっている。少なくともロジーナが知らない名前だ。だが知っているような気がする。理由はわからない。

 ぬいぬいは商店に挿まれた一件の家。二階建てになっており、1回は雑貨屋となっていたのか、寂れた看板が地面に落ちている。2階に上がるには外付けされた階段を登らなくては入ることが出来ず、階段でも銃撃戦があったのか柵に銃痕が残っているのを確認することが出来た。

 飛鳥はシスターが教会として使っていた建物の前で佇んでいた。そこは教会と神社、寺などを全て織り交ぜた施設になっており、僅かな石畳の上にその建物が建っている様子がうかがえた。本殿に入るためには、何やらカードキーのような物が必要であり、他の扉の様に力任せでこじ開けることは困難に見える。

 石畳には血痕とは、また違った緑黒っぽい液体が付着しているのが目に入る。既に乾ききっており、それがいったい何なのか飛鳥には特定することは出来なかったが、脳裏では決して良いものではないと警報を鳴らしていた。

 最後に纏は『警察署』と書かれた建物の前で歩みを止めた。この建物は他の建物とは異なりシャッターは降ろされておらず、入り口なども開け放たれたままであり、侵入するのは難しくないと誰が見ても思うような外観をしていた。

 

 

 




【後書き】
 今回も小説の裏話になります。この小説を書き始めた時や中断してしまった時のドールと探索者の数は計6人しか居ませんでした。
 しかし8人まで増やしたのは、クトゥルフの方で新しいサプリを買ったためですね。
 あれからサプリの数がかなり増えたんですよ。
 一覧として、1920sIC、ダークエイジ、キーパーコンパニオン、比叡山炎上などを買いました。




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Episode5-3 『雑貨屋』

【前回のあらすじ】
 次々と開く扉に沿って通路を歩いて行くドール達。
 たどり着いた先は彼女たちが目指していたシェルターの内部だった。
 しかし何やら様子がおかしい。人の気配が全くしない。4人は一旦別れて探索者や人間探しを始めるが・・・?




行動判定

ロジーナ→9+1【成功】

ぬいぬい→8【成功】

 

 ぬいぬいは修羅から渡された太刀を鞘から引き抜く。太刀は美しいと思えるような煌びやかな刀身をしており、手入れを怠ったことが無いのか 切れ味の鋭そうな刃先をしていた。

 数分間ほど修羅に手渡された名刀に見惚れたが、はっと我に返ると一呼吸を置いた。

そして精神統一をしたかと思うと、シャッターのロックが掛けられている部位のみを狙い定め一閃太刀を浴びせた。

 刀は刃毀れ(はこぼれ)することなく、ぬいぬいの手の中で鈍く輝いていた。鞘に収め、シャッターが壊れていることを確認しながら、まずは1階の探索から始める。

 どうやら、この店では文房具や日用品を販売していたようた。店内は何者かに荒らされたのか、それとも誰かがこの店内に逃げ込み 追跡者が荒らしていったまでは分からないが、地面に商品が散らばっているのが目に入った。

 鉛筆を踏むたびに風化しているのか粉のように散らばってしまう。丁寧にケースの中に仕舞おうとしてもケースに触れた瞬間、ケースが破損してしまう。またレジも引っ繰り返され、機械は大破しもう動きそうにも無かった。

 

 ぬいぬいは1階の探索を終え、2階の鍵を同じような用法でシャッターをこじあける。

 そこはぬいぬいも感じていた懐かしさが更に加速されるような風景。ここの家は4人家族で会ったのか、ベッドが4つ置かれているのが目に入る。白の無地の何の面白みのないベッドが2つに水色と桃色のベッドが1つずつである。

 ここも物品の風化が激しく、ぬいぬいが腰を降ろせば音を立てて崩れ去ってしまった。

 そんな中、両親の部屋であろう部屋に一際目立つ刀が2本、置かれているのが目に留まる。これすらも鞘から刀を引き抜けば刀身以外はボロボロと崩れ去り使い物にならなかったが その刀身に名前が彫ってあることに気が付いた。

 上段に掛けられている日本刀には「縫」と刻まれ、下段には「縫々」と刻まれた2本の刀。

 その2本の刀に触れた途端に、とある記憶を取り戻す。

 まずはシスターですら知らなかったはずの自分自身の本名についての記憶。

 自分の本名は修羅 縫々。決して愛称などでは無かったのだ。『ぬいぬい』その名前自体が本名の名前であった。

 次に思い出したのは姉の記憶。無愛想ではあるが、常にぬいぬいを見守ってくれていた優しい姉。その顔や風貌は修羅と重なる。しかし、その実姉はここで何かが起こった時に何かの拍子で別れてから会えていないのを思い出した。そう、記憶の片隅にある【迷子】の記憶と一致した。

 

記憶の欠片【入手】

名前(特殊)、姉(特殊)

 

 姉は何処に行ったのだろうと思った矢先に、背後のクローゼットから重いものが落下するような大きな音が聞こえ、思わず肩を一度跳ねさせた。

 その物音に怯えながらも、ぬいぬいは修羅から教えて貰った抜刀術の構えで、そのクローゼットの中身を確認する。

 

 

 

 そこに居たのは修羅であった。

 

 

 

 いや、姉だったかもしれない。

 

 違う。

 

 姉が修羅で、修羅が姉。

 

 頭の中で混乱が巻き起こり整理が付かない。

 

 姉=修羅で無ければ、この修羅にそっくりな首は誰の首? 姉? 修羅? 姉?

 

 

 

狂気判定

ぬいぬい→3【失敗】

修羅+1

 

 非常に戸惑った顔をしたぬいぬいは、よろめく足でこの家のトイレに駆け込み吐こうとした。しかし内容物は出てこない。当たり前だ、この気持ち悪いという感覚はただの生前の思い込みであり、2日前から何も食べていないのだ。既にアンデットとなってから、消化し栄養を運ぶ筈の胃腸の機能は停止している。

 それでも、ぬいぬいは辛そうに嗚咽を漏らしながらトイレに吐く動作を取るのであった。

 

 

 




【後書き】
 前回の話の続きとなりますが、最初の編成は

 クリスティーナ-ロジーナ
 修羅 縫-ぬいぬい
 星乃 彩-飛鳥

 の3組でした。
 これに赤大 将-纒が組み込まれたのです。

 理由とはクトゥルフSoJのサプリが、かなり強さを知らしめていた為ですね。他のサプリと併用すると本当に強くなります。たとえば、比叡山炎上とか。

 それと野良セッションではソロリティを使う勇気がないので小説で空想しながら使ってみたかったためです。みんなを纏めるリーダー役とか、小説なら演じられますがリアルセッションでは私には無理です。




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Episode5-4 『豪邸』

【前回のあらすじ】
 別れた4人は各々気になった施設へと足を運ぶ。
 4人一塊なって行動するべきではあったが周囲からは物音一つなく人影すらない為、大丈夫だろうと見通したうえでの行動だった。
 雑貨屋で調べものを始めたぬいぬいは、あるものを見つけてしまう・・・。




 ロジーナは豪邸の扉を対戦車ライフルで射抜く。いくら頑丈なシェルターの鉄扉でも対戦車ライフルの攻撃に耐えきられる様には作っていないのか、何発か打ち込むとその入口を開けた。

 内装は如何にも金持ちの豪邸と呼ぶにふさわしい内装が施されていた。しかし、その内装も今は見る影もなく、調度品は床にばら撒かれ価値のある絵画は血糊でべったりと汚れている。

 

狂気判定

ロジーナ→1【大失敗】

飛鳥+1

 

赤い絨毯も埃が溜まり、薄汚く2階建ての建物であったようであるものの2階へと通じる階段は既に崩落しきっており、ロジーナがどう逆立ちをしようとも上がることが出来る様な内装をしていなかった。

 ロジーナは適当に部屋を見て回る。応接間、食堂、厨房、娯楽室。記憶にない筈であるのに全て何処か見覚えのある景色。通路の廊下側には植木鉢がいくつかおかれており、現在そこには何も花は咲いていない。土のみが敷かれている。記憶の中の花壇の世話をしたのがココであることをおぼろげに思い出す。しかし、誰と花の世話をしたのかまでが思い出せない。土は完全に乾ききっており、触れればパサパサとしてあの悪夢に満ちた森のように、命に満ち溢れているという感覚は微塵にもなかった。

 部屋の隅に備え付けられていたブレーカーのような物に手を掛け、壊さないように力を込めながら上げてみる。ケーブルは断線していないのか、完全にブレーカーのような機械のレバーを上げきると、窓を覆っていた雨戸が全自動で開いて行く。

 外の光が窓から差し込み、寂れた通路を美しく照らしていた。どうやら日当たりについても十分に考慮された家のようだ。

 そのまま心ゆくまで、この巨大な豪邸をロジーナは徘徊する。

 2人部屋や浴室。書斎なども見つかった。書斎には小さな金庫が備え付けられていたが、不用心にもその金庫には鍵がかかっておらず中身を持ち出すのであれば問題なく持って行けるようにとなっていた。

 ロジーナは好奇心に負けて、その不用心な金庫を開ける。そこには一冊のアルバムが入っているのが目に留まった。適当なページを開いて見てみる。ロジーナが現在知っているクリスティーナを幼くしたかのような外見をした少女や、後頭部に大きなリボンを付けた目つきの悪いショートヘアの赤髪の少女が写っていた。アルバムにメモが貼られていたようであったが削られており読めなかった。それでもなんとなく、この豪邸の両親がクリスティーナ似の少女とその姉妹たちを愛していたことは写真の様子から十分に伝わってきた。

 埃まみれの絨毯の上に腰を下ろすと、そのまま早読するかのようにロジーナはアルバム片手にパラパラと捲り始めた。記録の様子から少なくとも、2150s以降にとられた写真のようだった。ときどき親が書いた保存の良いメモには、『本物の空や太陽を見せてあげたい』等、切実な内容が一言メモのように貼られている。

 最後まで適当に流し見で済ませようと心に決めていたが、とあるページでその手は止まり、写真を注視する。

 その写真にはロジーナ自身が写っていた。クリスティーナ似の少女が手の届かない花壇に如雨露(じょうろ)で水を与えている姿であった。そこからスローペースでアルバムをめくって行く。一緒に食事を摂る姿、共に昼寝をする姿、遊技場で投げナイフで100点を取った時の自分の姿。マジックペンで落書きをされた時の姿。立派な髭が生え、額には肉と書かれている。アルバムを眺めているうちに思わず笑みが零れ、忘れていたはずの記憶も思い返す。なんとしてでも彼女と再会して伝えたい。「ありがとう。」と。

 ロジーナはアルバムを片手に立ち上がり、そのまま外へ出た。

 

記憶のカケラ入手

感謝

 

 

 




【後書き】
 話が早いですが、現在5作目のクトゥルフ神話物語を書こうと構想を練っています。
 昔は腐るほど時間と体力に余裕があったのですが、今は時間はあるのですが体力に余裕がなく執筆するという気力が湧かないのです。
 ですからまた長い目で見ていてください。最後の小説から6ヶ月ほど経ってから新作を出しましたし・・・。この後書きを書いているときは、まだ気力がありますが、書くかどうかは未定なままです。
 書くのであれば、サプリをふんだんに使った『奇妙な共闘』でも書きたいかなーと思っています。




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Episode5-5 『警察署』

【前回のあらすじ】
 ロジーナは豪邸に足を運んだ。
 その中にも人間はおらず、寂しい光景が広がっていたが同時に懐かしさも湧き出してきた。
 クリスティーナ似の少女のアルバムを胸に散開地点へと踵を返す。





 纏は警察署内に入る。中は世界が滅んだとしても少しでも治安を維持しようと努力していたのか、比較的真面なオフィスがそこにはあった。しかし、そのオフィスも今や見る影は無い。大通りの道路よりも銃痕と血痕に満ち溢れているところであり、視線を何処へ移したとしても、必ずと言っていいほどの2つの痕跡が確認できた。

 何が起こったかは分からないが、相当の激戦がこの場で行われ、大勢の命が失われて行った場所なのだろう。

 考えずとも『とうに人間は滅んでいる。』という事は、他の思い出や知識は持っていずとも何故か知っていた。わかりきっていた結末じゃないかと心の奥底で自分に言い聞かせる。人の気配すらなければ、物音ひとつしない。自分だけがたった一人の空間に切り離されたように感じながら、受付とオフィスを区切っている割れた強化ガラスを乗り越え、オフィスに入る。

 床に落ちた書類の殆どは血液と風化、黄ばみにより、何も文字を読み上げることは出来なくなっていた。オフィスには仕事をするための事務机、事務机には引き出しがいくつかついており、今も、その引き出しを引くことは出来たが何か目ぼしいものは入っていない。また事務机の上には大量の書類と巨大な何かを移すスクリーンが1枚、そのスクリーンにコードでつながっている英語と日本語の書かれたボタンが大量に書かれている板が置かれていた。

 纏は何気なく、そのスクリーンを触れてみる。なんということだろうか、黒い画面であったスクリーンは青い画面を映し出した。そしてユーザーネームとパスワードを入力してくださいと書かれたではないか。

 突然の動きに狼狽えながらも、纏は事務机上に書かれているそれらしい2つのパスコードを震える指先で丁寧に打ち込んでみる。扱い方は分からなかったが、不思議と身体が反射的に動いたと言った様子だった。例え記憶になくとも体は覚えているという事なのだろう。

 しばらくすると青い画面のスクリーンは、右端に大量のクリアファイルみたいなものを提示し始めた。『21xx年 加害者』『殺人件数』などと言った文字が綴られている。

適当に1つタップしてみる。すると画面は何かのファイルを開いたのか大量の動画をアップロードした。一番最新の映像をタップする日付は数十年以上前に撮られたものであり、誰も区切る人間が居なかったのか、動画の長さは他の動画最長になっていた。

 動画は警察署の天井から内部の様子を写していたのだろうか。映像の中には大量の生きた人間が業務をこなしていた。机に向かって何か作業をするもの、休憩しているのか飲み物を飲みながら一息ついているもの。受付に訪れる者に対応しているもの。和やかな日常がそこに映し出されていた。

 だが、ある血塗れの民間人らしき男が入って来てから状況は一変する。

 誰もが狂ったかのようにオフィス内を狂奔し映像の下側に集結したかと思うと、次々にショットガンやら拳銃を持ち、外に走り出していった。中には透明な盾を持った人間もいる。そして纏は映像の中に見覚えのあるものを見つけた。

 それは現在、狂奔し続けている人間達が着ているあるものにあった。

 赤大や、修羅が装備していた『SHIELD』と書かれた防具と類似している。否『SHIELD』防具そのものだ。オフィスや受付にも何人かの人間が陣取り、バリゲードを造り避難してくる民間人を保護している。しばらくの間、画面に民間人を助けるでもなく、警察が動く訳でもなく何もないワンシーンがあったが、それは嵐の前の静けさであった。

 唐突に武装している受付側で、武装していた人間達が見えない何かに引きずられると、壁や床、天井に叩きつけられ始めた。それも1人や2人ではない。同時に続けざまに何人もであった。叩きつけられた人間は苦しみもがくかのように銃弾を周囲に乱射する。それが保護した民間人を射抜き、同僚を射抜き、区切っていた防弾ガラスにもいくつか衝突していた。受付側が叩きつけられた肉片と銃痕によるひび割れで何も見えなくなったころ。内部の人間達は非常に緊迫した様子で銃をガラスに付きつけていた。

 再び、外が静かになる。時折、血液の隙間から漏れ出る光も消えていた。そして人間が、オフィスの強化ガラスへ叩きつけられるかのように無理やり叩き割り侵入してきた。叩きつけられた人間は四肢が様々な方角へ飛び散り頭蓋骨は砕け散っていた。開いた穴に向けて発砲する人間達。しかし、その事件を引き起こしている存在には当たることは無く 中に立て籠っていた人も蹂躙され肉片と化して行った。

 そして、最後の2人であろう人物が空中に吊り下げられる。その背後から個人を特定することは出来なかったが、1人は桃色髪でぐったりとしており、もうひとりは赤髪で四肢を暴れさせて逃れようとしていた。ここで止めておかなければ今から酷い事が起きる。唐突に脳内警報が鳴り始める。だが、纏は好奇心の方が強かった。

 暴れていた方が突然動きを止める。すると、今度は全身を圧縮するように折り畳められていくではないか。その光景に隣の人物は震える。そして血液ジュースでも作る気なのか、全身から大量の血液が吹きだし、その折りたたまれた人間はサッカーボール1つほどの肉塊となってぼとりと地面に落ちた。もう一人の人間の方は、そのまま空中に浮遊したまま何処かに連れ去られてしまった。

 

狂気判定

纏→9【成功】

 

 纏はたちの悪い悪戯映像であると思い込むことで、あれが現実であったという真実を捻じ曲げた。だからその現場にこびり付いている大量の赤い液体は誰かがペンキを溢しただけであり、その近くに転がっている赤黒いボールは、誰かが業務中に遊んでいたのだろう思い込んだ。

 

記憶の欠片【入手】

銃声

 

 

 




【後書き】
 ネクロニカの世界線では武器弾薬が大量に残されているらしいです。
 サプリではドラゴンブレス弾や、スラッグ弾などの銃弾のバリエーションが増えているかなーって思ったんですけど・・・そんなことはありませんでしたね。
 代わりに強いパーツやエネミー情報などが記載されていました。




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Episode5-6 『合同神社』

【前回のあらすじ】
 纒は警察署へと足を運ぶ。
 警察署は何処を見渡しても酷い有様であった。
 一つだけ起動するパソコンから、この警察署に何が起こったのか映像から確認を行ったところ、映し出されたのは悲惨な映像であった。




 飛鳥はたからもの片手に裏手へ回る。そして何気なしに見た植木鉢の隙間から、カードのような物がはみ出ているのを確認する。カードを拾うとそれはクレジットカードほどの大きさであり、黄色をしていた。カードリーダーに読ませるためのコードが刻まれており、これを何処かに通すことによって、何処かに入ることができる。という事だけはわかった。

 そしてここで思い出す、本殿に入る扉の横にカードリーダーがあった事を。浮かれた様子スキップしながら、飛鳥はカードキー片手に本殿の目の前まで訪れる。先ほどと変わらぬ外観がそこには広がっていた。

 飛鳥が浮かれているのにも理由はある。カードキー式で建物に入れるか否か選別するのであれば、力任せに入ろうとして阻まれる。中に入れるのはカードキーを持った人間と、その人間と同行した人間だけ。可能性的には本殿の中に生きている人間が居るかもしれないと考えた為であった。

 カードキーをリーダーに通す。電力が生きているだけあり、カードリーダーはカードキーが通されると赤色から青色に代わり、シャッターが開いた。ノックをし、そっと中に入る。

 だが、期待していた飛鳥を裏切るには十分な全容をしていた。ここには何人もの聖職者が居たのであろう。彼等は物を言わぬ、肉片と化している。床から壁までびっしりと血痕に覆われ、誰も銃器を持っている人間は居なかったのか、銃痕はないものの、散りばめられた頭皮などが、この場で起きた惨状を引き立てていた。

 

狂気判定

飛鳥→8【成功】

 

 顔を背け、直視を最小限に留める。なるべく肉片は見ないように気を付けながら、飛鳥は更に奥へ、とぼとぼと歩みを進めた。

 どうやら本殿と社務所は繋がっている構造となっているのか、御守などを授与している裏方にも比較的簡単に入ることが出来る。そしてそこから見える扉を片っ端から生き残りの人間は居ないか。別れた星乃が隠れていないかどうか細かく見て回る。あれだけの巨体であれば、ベッドの下やクローゼットの中には隠れられないだろうと思い調べなかった。ベッドの下から干からびたようなミイラのような腕が延びていたが、疲れによる幻覚だと言い聞かせ部屋を捜索する。

結局のところ、生き残りや星乃を見つけることは叶わなかった。

 それでも収穫もあった。ツデムシの突進や呪われしライトセイバーによって、ボロボロになった巫女服であったが、替えの巫女服が見つかったのだ。埃を掃い着用してみる。サイズも丁度ピッタリであり、動き易さも申し分なかったため4日間着用していた巫女服は破棄し、新しい巫女服で行動することとした。

 

記憶のカケラ【入手】

故郷

 

 

 




【後書き】
 過去にハーメルンでシナリオ公開していらっしゃる方を見たのですが、そういったことも行って良いんですかね? 良いのであれば、公開したいシナリオが2つほどあるのですが・・・。どうなんでしょうか?
 利用規約に問題が無ければ投稿しようかなって考えています。




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Episode5-7 『実験跡地』

【前回のあらすじ】
 飛鳥はかつて自分がシスターに世話になった場所へと足を運んだ。
 入口はカードロックキー式のカギとなっており生存者がいるのではないかと、心を躍らせる。
 とある部屋の一室で巫女服を見つけると拝借し、ボロボロだった状態から目覚めた当初の姿へと着替えた。




 4人は各々の思いを胸に、一度別れた場所で再び合流する。

 ぬいぬいは気分が悪そうな非常に青ざめた顔、ロジーナはアルバムを胸に抱え何処かホッコリとしたような顔、纏は悪夢を振り払うかのように首を横に振りなるべく笑顔を作ってみせようとする顔、飛鳥は何処か残念そうにしながらも ちょっとだけ良いことがあったかのような顔をしていた。

 

「・・・・・・だ、大丈夫だよ!! 赤大さん達なら、きっとこのドームの何処かに隠れているだけだって。ま、まったくもう。オイタが過ぎる様な気がするなぁ!」

 

 最年少である ぬいぬいが最も落ち込み、顔色が悪いことに真っ先に察知した纏はなるべく、なるべく明るい声色をしながらぬいぬいを励ます。しかし、その励ましは生首を見てしまったぬいぬいに対して何の効果も示さなかった。それどころか止めどなく涙が溢れ出て来る。

 

「お姉ちゃん・・・おねえちゃん・・・・・。」

「・・・・・ぬいぬい・・・・何か・・・・あった・・の・・・?」

「お姉ちゃんの・・・おねえちゃんの首・・・・。」

「首ですか!?」

「首・・・?!」

「雑貨屋の2階を調べていたら、急に背後のクローゼットから物音がして・・・開けたらそこにお姉ちゃんの首が・・・っ。」

 

 ぬいぬいはナイトメアが呟くうわごとのようにブツブツと、自分が見てきたことを話し始める。その話が終える頃には周囲もその悲しみに飲まれる様に暗く落ち込んでいく。

 纏は首の話を聞いてから、謎の力で圧縮されて行った人物が赤大に思えてきたのか、3人には聞こえないような小声で「あれは別人、違う人」と呟きながら自分の両頬をペチペチと2回ほど叩く。

 

「他人の空似・・・・じゃ、ないかな? たまたま似ていただけで、別人とか・・・。」

「そ、そうですよ! 悪い方に考えるのはよしましょう? 奥に行けばきっと会えますから・・・ね? ね?」

「・・・・・・・そう・・・・・。また・・・会える・・・。」

「・・・・・そう、ですよね・・・ごめんなさい・・・気が弱くなってしまって・・・。」

 

 纏は一瞬暗くなるなるものの、無理にでも笑顔を作り、ぬいぬいを慰める。飛鳥も纏に気がついた様子で、焦った表情をしながらも、ぬいぬいの慰め援護に入る。ロジーナも二人が慰める様子を見た後にアルバムを握りしめると、ぬいぬいに一歩近づき頭を撫でて励ました。

 ぬいぬいは一度両目をしっかり瞑ったあと、目を伏せつつも頷いてみせた。

 

「大丈夫だよ。ボクでも気が弱くなることあるんだから。ぬいぬいが謝ることじゃないし、みんな気にしてないから安心して? ねっ。みんな。」

「・・・・・・うん・・・・わたしも・・・・稀に・・・・良くある。」

「ロジーナさん稀に良くあるって結局どっちなんですか。」

「・・・・稀・・・・稀の方・・・。」

 

 纏は無理に作っていた笑顔を、自然な笑顔へと切り替える。そしてロジーナの織り交ぜたボケを飛鳥が拾い上げ、辺り一帯にちょっとした笑いが立ち込めた。

 

対話判定+1

ロジーナ→ぬいぬい 6+1【成功】

ぬいぬい→ロジーナ 8+1【成功】

飛鳥→ロジーナ5+1【成功】

纏→【全狂気点なし】

 

「それじゃ、奥の方まで行ってみよっか。」

「・・・・・ぅん・・・。」

「・・・はい・・・ぐすっ。」

「ゴー!」

 

 4人は人間探しの旅を再開する。数々の陰鬱な建物を抜けた先には広場が見えてきた。

 中央には巨大な噴水があり、水は吹きだしていなかったのが原因か、透明であった可能性のある水は苔生して緑色に染まっていた。

 更に広場の至る所には、ミイラ化した死体が大量に積み上がっているのが一望することができた。これらは明らかに死んでおり、白骨死体同然のものも少なくは無かった。ドール達は『アンデット』の存在に対しては見慣れていたものの『死体』には耐性がなく不気味さを感じさせることになる。

 

狂気判定

ロジーナ→10【成功】

ぬいぬい→2【失敗】

飛鳥+1

飛鳥→7【成功】

纏→9【成功】

 

「ひぅっ・・・・。」

「大丈夫。ボク達が着いているから・・・。」

「ぬいぬいさんは下がっていた方が良いかもしれませんね。」

 

 ぬいぬいは死体に対して小さな悲鳴を上げ、近くに居た纏の袖の裾を掴む。袖を掴まれると纏は素早くぬいぬいを背中で隠し、ぬいぬいの隣に居た飛鳥もぬいぬいの右半身を隠すかのように一歩前に出る。

 

対話判定

ぬいぬい→飛鳥 5+1【成功】

飛鳥→ぬいぬい 2【失敗】

 

 その間、ロジーナはその死体群に近づき一つ一つ丁寧に赤大やクリスティーナ、修羅、星乃の顔が混じっていないかどうか確認作業を行う。

 

行動判定

ロジーナ→10【成功】

 

 確認作業をしていると、気が付いてはいけない真実にロジーナは気が付いてしまう。

 これらの死体は、いずれも半ば面白半分とでも言いたげに捻られたり、内側から破裂させられたり、皮をはがされたり、全身を執拗に串刺しにされていた。それは、ロジーナの知る限りの武器では押さえつけ拷問まがいの方法を行わない限り不可能な殺害方法であり、不可能な殺害方法であると分かる。

 

狂気判定

ロジーナ→10【成功】

 

 しかし救われたこともあった。その死骸の山にクリスティーナ達らしき遺体は混じっていなかったこと。それだけは不幸中の幸いであった。それが気の遠くなりそうな殺害方法から己の気を逸らすために役立つ。

 

「ど、どう? ロジーナ?」

「・・・・・・・。」

 

 不謹慎ではあるが、ロジーナは纏に問いかけられると振り返り親指を立て、無理やりにでも微笑んだ笑顔を作った。3人は良くわからないと言った表情をする。

 

「・・・・・・この中に・・・・・クリスティーナ・・・・赤大・・・・星乃・・・・修羅 縫は・・・・居ない・・・!」

 

 そんな表情をする3人にロジーナは今度は言葉を添え、もう片方の手の親指も突き立てると前に突き出した。誰もが言葉に表情を明るくする。

 もしかすると、外の教会で出会った少女たちのような友人が居るかもしれない、そうは一瞬考えたものの、思い出せない死んでいるかもしれない友人よりも、僅かな生きている望みを掛けた友人が居ない事は4人にとって大きなことであった。明るくすべきではないとわかってはいるものの、自然と口角は上がり、安心したような溜息が零れる。

 

「やはり、サプライズで何処かに隠れているんですね! 新しい巫女服にも着替えられましたし、星乃さんに会っても恥ずかしくないですよ!」

「・・・・・飛鳥・・・・・髪の毛・・・・・髪の毛に・・・・蛾の鱗粉が着いてる・・・・。」

「えっ! 落とさなきゃ。・・・えっと、これで落ちましたか?」

「後ろ髪にもついていますよ。これはわたしが落しますね。」

「・・・・・そういう・・・ぬいぬい・・・・・鱗粉塗れ・・・・だよ。・・・・落してあげる・・・・。」

「あ、ありがとうございます!」

 

 飛鳥は、安心したように微笑むと小さくガッツポーズを取りロジーナ、纏、ぬいぬいに新しい巫女服を見せつけるように踊る様にくるっと横へ一回転回る。『アポルオン』を撃破する前に粉砕した蛾の鱗粉が髪の毛からパラパラと零れ落ちる。ロジーナに指摘され、急いで大雑把に髪の毛を振り払う、想像以上に鱗粉は髪の毛に付着していたのか、きなこ色の煙が周囲を覆った。

 ある程度落し終わり、再び3人に向けて髪の毛を見せる。表面上は確かについていなかったが、背の低いぬいぬいが飛鳥を見上げると若干、付着しているのが見えるようであり、それを払い落とししてあげる。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥6+1 【成功】

飛鳥→ロジーナ 8【成功】

 

 

 




【後書き】
 久々に3000文字越えの小説を投下したような気がします。
 物語も佳境に入って参りました。戦闘パートが、とあるミスで1パートに収まりきってしまったのでエンディング内容が大体2話。
 戦闘まで残り2話ですが早く探索者達と出会って、心が安らげばいいですねぇ・・・。




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Episode5-8 『ポロリもあるよ!』

「よく、ここまでたどり着きました。すばらしい。」

 

 広場で仲良く鱗粉落しをしていると突然、細くしわがれた『声』が4人の精神に直接響いてくる。それは空気を震わせる『音』ではなく、自我を直接震わせてくるような『テレパシー』のような感覚だった。まるで心の奥を覗かれ頭の中で囁かれる様な初体験は4人に酷い不快感を味わせた。

 

狂気判定+1

ロジーナ→8+1【成功】

ぬいぬい→3+1【失敗】

飛鳥+1

飛鳥→1+1【失敗】

纏+1

纏→2+1【失敗】

飛鳥+1

 

 ロジーナを除く3人は恐怖に身を縮こませていた。

 しかし、恐怖現象はまだ終わる事はなかった。唐突に飛鳥の巫女服の胸元がはだけ、乱暴に押し広げられるように開かれたため、乳房がポロリと零れる。ブラなど付けていない為に露わになるのも唐突であった。

 胸元からは地下の研究施設で拾いここまで連れてきた『未來』はふわりと空を滑り、死体の山の上に浮かび上がる。ドール達は、先ほどのテレパシーがカプセルの中の胎児から発せられていることに気が付いた。

 

狂気判定

ロジーナ→2【失敗】

飛鳥+1

ぬいぬい→8【成功】

飛鳥→3【失敗】

纏+1

纏→7【成功】

 

「あなたたちは素晴らしい男女です。私を愛し、名前まで付け、護り、敵を打ち破る強さも兼ね備えている。・・・・・途中イレギュラーや、最も母らしい女性が戦闘面では点で役に立たな・・・・ゲフン 人には得意不得意がありますからね。仕方ないことでしょうが・・・・本当に素晴らしい。」

 

行動判定-1

纏(おとこのこ)使用→5,7-1【成功】

 

 『未來』のテレパシーは真の愛情に満ち溢れているものの、老いた男の様相をにじませていた。だが纏は見抜いた、優しい愛情の籠ったその声の裏腹には下衆な下心、下劣で見るに堪えない欲望が潜んでいることに。

 彼の口調は丁寧で、外見はカプセルに入った胎児そのものであったが、ドール達を『男』の目で見ていた。

 

「途中イレギュラー共のせいで、前回の屑肉同様。またもや捨てられ、本気で最初から胎の中に居ておこうかと考えましたよ。しかしッ!! あなたたちは それでもわたしを愛し、捨てなかったッッッ!! 素晴らしい! 素晴らしい!! すばらしいっ!!!」

 

 『未來』はその歓喜に酔いしれカプセルの中で身を捩る。ドール達はその様相に、纏を除いたロジーナ、ぬいぬいただただ呆然としていた。

 そんな中、ロジーナ、ぬいぬい、纏の肩を叩く者が現れる。飛鳥であった。飛鳥は非常にまじめな顔をして言う。

 

「声を聞く分には男性のようですね。つまり『希望』に改名した方が良いという事でしょうか?」

「今、それどころじゃないと思うんだけど・・・。」

「いえ、大事ですよ? 子供の名前は今後の将来を左右するかもしれません。もし彼が成長できたとして女性名で世界を旅する存在になったら・・・名付け親としてなんだか恥ずかしくないですか?」

「・・・・・・確かに・・・・。」

「ですから彼の事は『未來』ではなく、『希望』に改名しませんか?」

「するのなら、後でぬいやクリスティーナさんにも教えないと・・・。」

 

 真面目な赴きで比較的どうでもいいことを呟く飛鳥に全員が、思わずロジーナ、ぬいぬい、纏は鼻で笑ってしまいながらも、改名案について小声で話し始める。『未來』改め『希望』はそんなドール達に見向きもせず、自分の功績について語り始めていた。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥7+1【成功】

ぬいぬい→飛鳥9+1【成功】

纏→飛鳥9+1【成功】

 

「老いて死ぬ くだらない人間だった私は遥か過去に消えたのです! この素晴らしい神の身体を研究の果てに得た! まさに努力の結晶!! 私は人をやめ、神となったのです!! 私はこの体で全てをやりなおし・・・・いえ、全てを最高の環境で見つめるのです!ああ、すべては母様がいてこそ! なんて素晴らしいことでしょうか!」

「母様たちを念入りに造った甲斐がありました。老いて死んでいたら、、なんという損失だったのでしょう。」

「あの目から光線を姑獲鳥やシスターは良い線を行っていたのですがね。戦闘面に関しては蟲達に食われた屑肉の堕胎者共も・・・ですが、彼女たちは母様たちほど強くも美しくも素晴らしくもなかったのです。最後に至っては馬糞以下の存在でした。屑肉は見つけ次第ミートシュレッダーに食わせるとして、残りは母様たちの護衛にでもさせますよ。まぁ、そんな護衛など無くとも母様たちは素晴らしいですから必要ないと思いますがね。」

「・・・・・ところで。母様、わたしの話を聞いていましたか?」

 

 やっとドール達が、自分そっちのけで改名案に話が盛り上がっていることに気が付いたのか『希望』は4人の方に目を向ける。

 

「あ、聞いてます。聞いていますよー。」

 

 飛鳥は一旦話すのを止め、『希望』に向けて手を振る。随分と己に陶酔しきった気持ち悪い男の自慰紹介であったが、飛鳥の表情は全く人の話を聞いていない事を裏付けるかのような明るい笑顔であった。

 しかしその反応は『希望』とって良いことでもあった。彼は上機嫌になり、一度は区切った話を再開し始めた。

 

 

 




【後書き】
 お ま た せ
 小説を執筆しながら先の展開を読み上げた時に憤りを感じたネクロマンサーさんです。
 お前だけは絶対に殺す。そう思いましたね。生理的嫌悪と思考の狂気。悍ましさの塊です。

 よくタイトルなどで『ポロリ』というと首などが落ちるシーンが多いですが、今回は期待を裏切らせず乳房をポロリさせました。ベストな状態でのタイトル回収ですね!

 飛鳥がポンコツキャラ確定となっていますが、さんざん彼女の出目に振り回されたので仕方のない処置ですよね。




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Episode5-9 『お・も・て・な・し』

【前回のあらすじ】
 飛鳥の胸元からヤツが現れる。
 彼はとても丁寧な口調をしていたがリーダーである纒は、誰よりも早く彼の本質を見抜いていた。
 そして纒が他の3人に、その事実を伝えるよりも先に飛鳥がすっとんきょんなことをボヤき、ドール達の緊急会議が始まった。




「そうだ。わたしの母様に喜んで頂きたく、母様たちが寝ている間、ちょっとしたプレゼントを用意したのです。良ければ見て頂けませんか?」

「・・・・・・プレゼント・・・・?」

「そうです! 彼女達は母様たちを愛し、母様たちは彼女達を愛しておりました。中には穢れた汚物も居ましたが、母様が望むのであれば護衛として着かせるつもりです。」

 

 『母様たちは彼女達を愛しておりました。』というフレーズに、ドール達は顔を怪訝に歪める。そして『希望』は手を広げ紹介するかのように奥の通路を振り向いた。

 4人の人影がよろけながらも歩いてくる。その人影は建物の影に遮られ姿こそ見えなかったが、ドール達に一抹の不安を煽らせる。

 

「紹介しましょう!」

「ロジーナ母様、貴女には愛くるしく振る舞ってくれるクリス人形を! ぬいぬい母様には、もう既に先見せををしてしまいましたが・・・剣術から武道まで指導可能な縫人形を! 纏父様には母様同士が離ればなれになったとしても寂しくないように汚but・・・赤大人形を! そして・・・・! もっとも優しい飛鳥母様には親子丼も楽しめる母様人形を!!!」

 

 そこに現れたのは、変わり果てたクリスティーナ、修羅、赤大、飛鳥と星乃を足して2で割ったかのような姿の30代ぐらいの女性の4人であった。

 どのアンデットも目が酷く落ち窪み、濁り、口は半開きに開いて意味をなさない呪詛を呟いていた。ドール達は顔を思わず引きつらせる。何も言葉を発することは出来なかった。動くこともできない。恐怖と混沌、絶望が完全に4人を支配していた。

 

「まぁ、赤大人形は圧縮しすぎてしまったので、復元が大変でしたが母様の為を思い頑張りましたよ。ちゃんと処女膜もつけましたし、純潔を失った汚物であることは変わりませんが結果オーライですよね☆!」

 

狂気判定-3

ロジーナ→1-3【大失敗】

クリスティーナ+1

ぬいぬい→4-3【大失敗】

修羅+1

飛鳥→6-3【失敗】

星乃+1

纏→4-3【大失敗】

赤大+1

 

「ああ、ほんっっっっとうに! この都市の皆さんに協力して貰った甲斐がありました。たかが1万だかの屑肉を処理して研究する羽目になりましたが、安い苦労でした。なんて素晴らしいんでしょう! あなたたちのような、すばらしい母を作り出せただなんて! 美しい、美しい、愛しい、すばらしい。あなたたちこそ理想の母です。私を身ごもるにはふさわしい!! ふっ!さっ!わっ!しっ!いっ!!!」

「これからは母様同士だけではなく、わたしにも話しかけてくださいね。話せば話すほど、絆は母様たちのように固いものに・・・・。ぐふふっ。」

「そして、『この目で確かめた』母様の、純潔の子宮に包み込まれる! ああ、なんて素晴らしいのでしょう! これ以上の幸福はこの世にありません!!」

「いやしかし、この都市の風紀は酷いものでした。純潔の娘の少ないこと! それに比べて母様たちの美しきこと、ああ、道中でも、何度も、何度もっ! 何度も見せて頂きました! 本当に素晴らしい! 腸の中もずっと綺麗に洗浄してきましたからねぇ・・・・道中母様たちが食べたカレー美味しかったですよぉ・・・? 母様とカレーが混ざり合いクリーミーな食感・・うっふっふっふっ!」

「テレポート能力が、全てを可能にするのです。私は母様に純潔の証を残したまま奥へ宿りましょう! そして母様たちを汚そうとする者あれば、全て倒してみせましょう!!」

 

 『希望』は卑猥に身を捩り小刻みにビクビクと痙攣してみせた。クリアグリーン色の培養槽の中で『希望』は僅かな白濁液を射精()しては、それを外殻に放り出す。粘着質な液体が、床に落ちる音がした。その様子に胎児の愛らしさなどは微塵にも感じられず、醜悪で抹殺すべき肉塊としか見えかった。

 

狂気判定

ロジーナ→2【失敗】

飛鳥+1

ぬいぬい→6【成功】

飛鳥→6【成功】

纏→3【失敗】

飛鳥+1

 

 

 




【後書き】
 全ての元凶です。はい。
 後書き中に ふと思ったことなのですが、このセッションに参加したドール達・・・PLがドールを作るわけじゃないですか。つまり・・・それって・・・・。
 PL=『胎児』ってことになりませんか?
 今、気がついてはいけない真理について気が付いてしまい、身震いが止まりません。

 敵として登場するネクロマンサーって・・・・どうして、こう・・・変態が多いのでしょう。
 今度ネクロマンサーを作る時は、私も変態に作らねばならないのでしょうか?




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Episode5-10 『圧倒的な力量』

【前回のあらすじ】
 『希望』がプレゼントを用意していたという言葉に一抹の不安が過ぎるドール達。
 現れたのは探索者を模した人形の数々。
 不安は悲惨にも的中し『希望』は醜悪にドール達の精神を根こそぎ削いでいく。繋ぎ止めていた余裕すら粉々に粉砕していったのだった。




 ドール達は気が遠くなったかのように、光景が全て遥か遠くに見えていた。しかし、『希望』の声だけは嫌にはっきりと脳に焼き付けられ、精神がどれだけ拒もうとも意味を刷り込まれる。耳を塞いでもそれは意味を成さない。

 

「それにしても彼女達は何者だったのでしょうか? わたしの超能力を使っても握りつぶせず、何食わぬ顔で平然と出来る怪物(バケモノ)・・・まぁ結果として、崖を倒壊させ亡き者に出来ましたので良いでしょう。彼女達は監禁室から出た形跡はありませんでしたし・・・。」

 

 『希望』は宙に浮きながらも考え込むように周囲をうろうろと動き回る。

 ドール達は震えながらも、怒りの表情を露わにしながら『希望』に対して武器を構える。動かない身体を殺意を狩り立て、絶叫と共に『希望』を抹殺することに駈け出した。

 

「おや? わたしを拒むというのですか? まぁ、お互いの反目が更なる愛を育むことも確か。胎を割る前に、良く語り合いましょう。盲目的な愛よりも、互いに鍛えた愛こそが私達母子に堅固な絆を生みますからね・・・・・・ふふふふふっ。ひひひひ・・・ヒャーッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 脳内でけたたましく『希望』は培養槽の中で笑い転げ始める。

 この笑い声はぬいぬいと纏にとって聞き覚えのある声であった。そう。あの記憶の中で笑い叫んでいた・・・。

 『希望』は思う存分4人を嘲り笑ったのち、その不快な笑い声を余韻を残すことなくピタリと止める。すると『希望』はカプセルの中、不気味に血走った眼球を見開く。その瞳は非常に欲望に塗れ、咆哮を上げ自らを奮い立たせていたドール達の狂奔を留まらせ、あんなにも『希望』を我が子のように扱っていた飛鳥でさえ、嫌悪の表情を浮かべていた。

 睨みつける彼の周囲には、名状しがたいエネルギーの塊としか言いようがない渦が巻き起こる。

 そのエネルギーは広場にあった大量の死体どもを、次々に立ち上がらせ 悪趣味な『プレゼント』ととして、用意していたドール達が生前最も関係の深い存在も己を護る隊列に組み込ませる。

 エネルギーをまとった死体は、アンデットのように「生きた死体」として立ち上がったのではない。人形が空中に、糸で吊り上げられるように・・・・・地面に足さえ着けず、ただぶら下がっていると言った表現が最も似合う。無数の死体が、空中に吊られ浮かび上がる。青白い光は、脈打つように死体に絡み付く。

 一部の死体は全身を激しく蠢かせ、狂ったかのように触れるものを引き裂こうと・・・否、動かない死体をエネルギー爪でバラバラに引き裂いた。

 また、凄まじいエネルギーをまとい怪力を発揮している様子を見せる死体もある。『プレゼント』として用意された彼女達もその様子が窺える。

 彼等は亡霊のように宙を滑ったり、地上を半ば転がる様にしながら『希望』を護るかのように立ち塞がる。

 

行動判定

ロジーナ→2【失敗】

ぬいぬい→7【成功】

飛鳥→6【成功】

纏→3【失敗】

 

 ぬいぬいと飛鳥は、これらは通常のアンデットではなく『希望』の“超能力”が無数の死体を操り人形にしていることに気が付く。そして死体を操る『希望』を倒さない限り、この狂った演舞は終わらない事を悟るのであった。

 更にドール達は狂奔を止めたからこそ、視界が広くなり気が付いたこともあった。広場の周囲、路地という路地に、青白い光を微力ながらも脈打たせる死体の群れが立ち塞がっている。

『希望』を倒す他、逃げる手段はないようにひしひしと感じ取った。

 

 

 




【後書き】

【次回予告】
  寝ぼけながらエネミーの隊列は組み込むものではない。




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Episode5-11 『ワンターンキル』 - 1回戦

【前回のあらすじ】
 『希望』のプレゼントによって言葉を失うドール達。
 その様子を愉快そうに嘲り笑う『希望』。
 今、ドール達の敵討ちが始まるのであった。





===1ターン目===========

編成

【奈落】

『希望』

ゾンビ30

【地獄】

ゾンビ20

【煉獄】

ゾンビ30

モンスター1~9

ぬいぬい、飛鳥、纒

【花園】

グール1~4

ゾンビ20

【楽園】

ロジーナ

 

 

 

COUNT15

ラピッド

ロジーナ=集中:攻撃出目+1

飛鳥=円舞曲:ターン終了まで飛鳥への敵攻撃判定-1

 

 戦闘が始まるのと同時にロジーナは対戦車ライフルを構え、精神を研ぎ澄ましすべての元凶である『希望』に狙いを定め、飛鳥自身は攻撃が命中しない 不運な切断事故が発生しない事を祈りつつ、その場で足踏みを踏みリズムを取りながら回り始める。

 

ロジーナ

対戦車ライフル→10+1+7【大成功】

対象:『希望』

ジャッジ

ロジーナ=うで アームバイス ボルトヘッド スコープ 支援7

ダメージ

『希望』=屍人の盾:受けるダメージをレギオン(ゾンビ)に肩代わりさせる

纏=『希望』の屍人の盾を『看破』

『希望』=培養カプセル エネルギー相殺 精神バリア防御4

→以下のパーツを損傷

培養カプセル、精神バリア、エネルギー相殺、リミッター

めだま、しんぞう、アドレナリン、カプセル装甲*2

 

 狙う攻撃目標は青白い光の中心部に居る『希望』のみ。

 頭に付いたボルトヘッドのネジを緩め、スコープの先に居る『希望』へ標準を合わせる。新たに手に入れたアームバイスで銃身を支え、命中率をより正確なものとし、決意の籠った瞳でトリガーを引こうとする。

 

「ふふふふふ・・・今までの旅で誰が最も戦闘の要なのか、母様の子として既に熟知しているのですよ。ロジーナ母様、貴女の最後方からの遠距離狙撃は高火力で誰よりも強い。しかし、その攻撃は当たればの話であり――」

「ロジーナ!! ゾンビたちの挙動が変異、肉盾にする可能性があるよ!」

・・・・・Нет проблем.(・・・・・問題ない)

 

それを嘲るように笑いながら『希望』は血走った眼で周囲に居る「ゾンビ」を肉盾にしようと超能力を用いる。しかしその渾身の一撃を無駄弾として終えさせようとするものの、それよりも素早く『希望』との距離が最も近い纏が『希望』のテレパシーを遮り、手早く指示を送る。

 ロジーナは肉盾にして来るであろうゾンビの軌道を読んだうえで、戦闘のコングを鳴らすかのように銃声を放った。爆音が周囲に木霊する。対戦車ライフルから発砲された鉛玉はゾンビたちの死肉の盾をすり抜け、まっすぐに『希望』に直撃した。

 死人の盾で防ぎきれなかったという事実を瞬時に察知した『希望』も自らを硬化させ、ロジーナからの攻撃に耐えようとするが、その即席の防御よりも丹念に練られた火力が勝り『希望』を引き裂いた。

 『希望』を護っていたはずの装甲はひび割れ砕け散り、鉛玉こそカプセル装甲によって阻まれ、逸れ壁に弾痕を残したが直撃した衝撃波は中身の『希望』を激しく揺さぶり、胎児の心臓部や頭部に備わっていたであろう器官をネギトロめいた肉片へと変貌させる。透き通るようなクリアグリーン色の培養液は『希望』の体液によって赤緑色へと変化を遂げていた。

 鋭い一撃にぬいぬい、飛鳥、纏の3人は顔色を少しだけ明るくする。

 

「よ・・・・・よくも・・・・よくも、よくも、よくもっ! よくも やりやがったな!!同性に鼻を伸ばしていたアバズレがぁぁっ!!!俺に作られた分際で!! 俺を! 俺を!!! よくも!!! ふざけやがって!!」

 

しかし、その表情は脳内に直接 情緒不安定気味の怒りの怒号を発してくる『希望』のおかけで再び険しいものとなった。

 

 

 

飛鳥

単分子繊維→10+4【大成功】

対象:グール1[完全解体]

ジャッジ

飛鳥=うで 支援1

纏=あるびの よぶんな目支援3

 

連撃→1【大失敗】

切断判定→4【失敗】

飛鳥→脚全損

 

「ウソダドンドコドーンっ!?!!」

 

 踊る様に回り続ける飛鳥も自分達を取り囲むようにロジーナとの間に割って入る爪の鋭いゾンビ『グール』に向けて、ライトセイバーに変わる新たな武器『単分子繊維』で切り刻もうと指を素早くグールに巻き付け、切断する。初めての武器であるというのにも関わらず、その得物は初めて飛鳥にとって長い付き合いの相棒ともなりえる存在・・・・であった。クルクル回りながら、単分子繊維を振り回しながら、次の得物であるグール2に指を向けるまでは。

 完全に様式美となった飛鳥の大転倒が敵陣の中央で繰り出される。

 今回は足先が電気コードに躓いたわけでも、血糊に足を取られたのでも、ましてや蔓草に引掛けられたのでもなかった。調子に乗り回り続けている間に足元に捲きついた『単分子繊維』がグール2へ指先へと向けられたことで大転倒し、なおかつその足を分断したのだ。

 

『・・・・・・・。』

「ま、待ってください!! どうして皆さん、目を逸らすのですか!?」

 

 戦闘中にも関わらず、周囲に微妙な空気が漂い始める。飛鳥の恒例事故に、誰もが目を背けた。纏は視線を飛鳥から横に逸らし、ぬいぬいは左手で口元を押さえ左斜め下に視線を落す。ロジーナはスコープから前線を伺うのを止め、明後日の方角を見つめており、『希望』ですらあれほど4人に向けて怒号をテレパシーで発していたはずなのだが、飛鳥が自分の得物で転び両足を切断したところで一旦黙った。

 まともに飛鳥を見てくれる存在は超能力で動かされるアンデット達のみとなる。

 

【ポンコツ・・・・。】

 

 飛鳥を除いた3人の心の声が同調した。

 

 

 

COUNT12

ラピット

号令

 

ロジーナ

対戦車ライフル→9【成功】

対象:『希望』

ダメージ

『希望』=死肉の盾

ゾンビ(4)30→25

 

ぬいぬい

名刀→10+1+切断【大成功】

ダメージ

モンスター=肉の盾:付与効果を全て打ち消す。

対象:ゾンビ(2)20→17

 

飛鳥

単分子繊維→8【成功】

連撃→7【成功】

対象:グール2[完全解体]

 

ショットガン→5【失敗】

対象:グール3

 

 

「・・・今ですっ!!!」

「考えが甘ぇんだよっ! クソガキがっ!!!」

 

 完全に微妙な空気となった空間に、纏の『号令』が飛ばされる。明らかに防御の手が緩んだように見えた『希望』へロジーナは引き続き鉛玉を発砲する。だがそんな古典的なだまし討ちに引っ掛かる『希望』では無かった。迅速な速度でロジーナの射撃攻撃を「ゾンビ」で受け流す。「ゾンビ」達はロジーナの対戦車ライフルによって引き飛ばされると、そのまま下半身や上半身を残して崩れ去った。

 ぬいぬいも纏の号令に合わせて、日本刀を居合術の要領で抜刀し、目の前に居るゾンビを切り刻む。目の前の二体を切り裂き、切断しきった流れで残り2体も亡き者にしようと太刀筋を振るったが ゾンビの合間に割り込み、ぬいぬいの日本刀を掴んだ怪力を有するゾンビに剣先を握られ遮られる。

 飛鳥は、他の3人と比べ1歩出遅れたものの肩で這いつくばる様にしながらも、後方に居るグールを切り裂き、『単分子繊維』を首や四肢に捲きつけ力強く引っ張ることで輪切りに並べて行った。

 纏もショットガンを構え、後方に停滞するグールを仕留めようと『希望』に背を向け、鉛玉を放とうとするもののロジーナに対して向けた怒りに加え、更に殺意が上乗せされた様な様相に銃身が上方に向いてしまい掠りはするものの当たらなかった。

 

 

 

COUNT10

モンスター7~9

移動【煉獄】→【花園】

 

モンスター1~6

怪物の腕*6→6-3、5-4+2、5+2、4+2、8+2-1、8-1-5【失敗、成功、成功、成功、成功、失敗】

対象:纏、纏、ぬいぬい。ぬいぬい、纏、飛鳥

ジャッジ

纏=あし エンバーミング妨害3

飛鳥=あし妨害1 アームバイス エンバーミング妨害4

モンスター2~5=ボルトヘッド支援2

ダメージ

ぬいぬい=やぶれひまく、うろこ

→以下のパーツを損傷【ぬいぬい】

はらわた、ほね

→以下のパーツを損傷【纏】

脚全損、こぶし、かた、応急箱

 

 

 

「ぬいぬい母様、飛鳥母様。貴女方はアバズレとクソガキに命令されて仕方なく、貴方達の子供であり神である私に刃を向けているのですね? ああ、何も言わずもがな分かります。安心してください。私の手駒で母様たちを苦しめる2人を排除してみせますから。しかし、ぬいぬい母様、時に貴女はあのアバズレに匹敵するほど力強い技術を習得していらっしゃる。少し心苦しいですが邪魔をされないように分解させて頂きますね。」

「大丈夫です。壊れたのであれば、またすぐに直して差し上げますからね。うふふふふっ。」

 

 赤緑色の液体の中で『希望』は不快としか言いようのない声色で、ぬいぬいと飛鳥を嘗め回すような優しい言葉遣いで陶酔しきったような甘えたようなテレパシーを送り付けながらも、怪力ゾンビ『モンスター』を動かす。

 9体いる内のクリス人形を含めた3体の『モンスター』をロジーナ側へ移動させ、その場に残った6体で纏や強力な庇い技術を有する ぬいぬいに重々しい一撃の乗った拳を振り降ろさせた。

 『モンスターたち』は地面に足を付けず、明らかに体重が掛かっていないのにも関わらず、地面を抉り凹ませるほどの高威力の拳を叩きつける。移動している吊り下げられているマリオネット人形のような姿勢になりながら滑空をし通常ではありえないような光景が4人の目の前では広がっていた。

 立て続けに振り下ろされる拳に飛鳥、ぬいぬい、纏はその場から動くことが出来ず、限りある防具や妨害機器を駆使し、その場を乗り切る他なかった。

 

 

 

COUNT9

ラピット

纏=死に続け:こぶし回復

 

アクション

『希望』=屍人暴走

地獄:ゾンビ(3)20→19

地獄:グール5出現

 

 纏が身体を修復している最中も、耳障りな鼻歌をテレパシーで直接4人に流し込み、ゾンビの一体に更なる超能力の覇気を纏わせ、新たなグールを量産し始める。2足方向で浮遊していた死体は這いつくばるような姿勢になると、指先から鋭い爪を生やし 鋭い牙を供えた顎を発達させた。

 

 

 

COUNT8

アクション

グール3~4

移動【花園】→【楽園】

 

ゾンビ(3)~(4)

待機

 

ゾンビ(1)

移動【花園】→【楽園】

 

ゾンビ(2)

ひきさく→7【成功】

連撃→3【失敗】

対象:ぬいぬい

ダメージ

ぬいぬい=背徳の悦び『やぶれひまく』回復、捕食者

→以下のパーツを損傷【ぬいぬい】

あし

 

ぬいぬい

名刀→5+1【成功】

対象:ゾンビ(2)17→15

モンスター2=肉の盾

 

 動きが緩和なグールやゾンビたちもモンスター同様に動き始める。

 モンスターの猛攻に晒され、ぬいぬい等の身動きが取れない間に孤立しているロジーナへ向けて前進してくる。ロジーナは対戦車ライフルに起きた故障に手間取っている様子であり接近するゾンビやグールに対抗する術は持ち合わせていなかった。

 ゾンビはしぶとく防御を駆使して、最低限の損傷に留まらせるぬいぬいに引き裂きにかかる。ぬいぬいはその一撃を防御態勢を取ることもなく甘んじて受けた。だが、ここでやられてっぱなしの彼女でも無かった。修羅に稽古をつけて貰った事を想い返し、攻撃を受けるの同時にその眼光に殺意を乗らせ 付近に駐留している存在を一掃するかのように戦艦クラスの眼光で睨み付けた。今までとは、明らかに気配の異なる ぬいぬいに『希望』の操る操作も鈍ったような気がした。

 

 

 

COUNT7

『希望』=死人暴走

地獄:ゾンビ(3)20→19

地獄:グール6出現

 

モンスター7~9

移動【花園】→【楽園】

 

モンスター1、6

怪物の腕→8+2、6+2【両方成功】

対象:纏、ぬいぬい

ダメージ

ぬいぬい=やぶれひまく防御2

 

グール5

移動【地獄】→【煉獄】

 

→以下のパーツを損傷【ぬいぬい】

こぶし

→以下のパーツを損傷【纏】

めだま、あご、カンフー

 

「・・・やはり、ぬいぬい母様は侮れない存在ですね。母様、今からでも考え直してみませんか? 少女は少女のまま母になるべきなのです。」

「断らせて頂きます!!!」

「強情ですね・・・。少しやり方を変えてみましょうか。」

「ぶっ!!!」

「纏さん!」

「ボ、ボクは・・・・だいじょぶ・・・だ、だいじょうぶだから・・・。」

「さぁ、くだらないことにしがみつくのはやめて私に全てを委ねなさい。」

 

 モンスター3体もついに動きだし、ロジーナは四面楚歌。完全に囲まれてしまう。

 ぬいぬいは現状にある包囲網を突破し、ロジーナ、纏、飛鳥全員を守護できる立ち位置に走り寄ろうとするものの、ゾンビがその行く手を阻み駆けつけることはできない。

 それどころか敵の攻撃は一層激しさを増し、ぬいぬいが扱える防御技能は無力化されていくのであった。修羅から教えて貰った受け流しの技を使っている余裕もない。

 激しい猛攻の最中でも『希望』は余裕を持った様子で周囲の操り人形を留まらせ、絶望的状況下でも諦めることなく、もがき続けるぬいぬいに語りかける。しかし、それを確固たる意志で跳ねのけた。されど内心、その決意は少しずつ揺らいでいた。

 隣では纏がモンスターの攻撃を頭部でモロに受け止め、文字通り蹂躙される様に床を転げまわり、保護の手の届かない場所ではロジーナが敵に囲まれつつある。果たしてこの状態のまま戦う事は正しいことなのか。気の迷いが生じる。

 

 

 

COUNT6

モンスター2~5

怪物の腕→5、6-2、8、10-2【失敗、失敗、成功、成功、】

対象:飛鳥、纏、纏、飛鳥、纏、

ジャッジ

纏=エンバーミング妨害2*2

 

→以下のパーツを損傷【飛鳥】

こぶし、うで、かた

→以下のパーツを損傷【纏】

はらわた*2、せぼね

 

 『モンスター』は休まることを知らない。

 その上、もう身体を張って護ることが出来ない ぬいぬいの心を抉るように纏や飛鳥を集中砲火していく。2人も簡単には倒されまいと防御姿勢を取り、受け流そうと構えるが凄まじい力を持ち、全てを縦横無尽に薙ぎ払う打撃攻撃にその受け流しは効いていない様子であった。飛鳥は左半身を吹き飛ばされ、文字通り転げまわる。単分子繊維が絡まり自分自身を再び切り刻まなかったのは不幸中の幸いであろう。纏も立ち上がった所に、鋭いボディーブローを叩き込まれる。一撃は纏の腹部についている内臓を、まるで腸に仕込まれた小型爆弾が破裂するかのように弾けさせ、再び床を舐めさせる。

 

 

 

 

COUNT5

『希望』=死人暴走

地獄:ゾンビ(3)18→17

地獄:グール7出現

 

グール6

移動【地獄】→【煉獄】

 

グール3~4

かみつきあご→4+1、9+1【失敗、成功】

対象:ロジーナ

 

ゾンビ

ひきさく→7【成功】

連撃→3【失敗】

対象ロジーナ

→以下のパーツを損傷【ロジーナ】

あご、カンフー、ほね

 

飛鳥

単分子繊維→7【成功】

連撃→10【成功】

対象:ゾンビ(3)17→13

ダメージ

モンスター3~4=肉の盾

 

 『希望』はゾンビから更なるグールを量産し始める。動きはまるで、人形師のように念力を更に纏わせ強固かつ凶暴な物へと。

 一方ロジーナへの攻撃も開始された。対戦車ライフルに新たな弾薬を装填しているロジーナへ2匹のグールが飛びかかる。一匹は身体を逸らすことで回避するが、もう一匹は回避しきった所に、押し倒すかのように馬乗りになったかと思うと頑強な顎で、顎を引き裂き、齧った。グールが馬乗り状態にあるロジーナへ、ゾンビの群れがすがりつく。縋りついた部位は必死にグールを蹴り飛ばそうとバタつかせていた足の骨。手が触れるのと同時に1本の足を引き抜いた。

 飛鳥はぬいぬいがロジーナの元まで走り寄ることが出来るように、目障りなゾンビをサイコロステーキ状に切り刻む。鋭い一閃で背後の敵も刻もうとするが、立ち塞がる様にして現れた自分似のモンスターに受け止められてしまう。

 

 

 

COUNT4

ゾンビ(2)

ひきさく→10【成功】

連撃→5【失敗】

対象:ぬいぬい

 

グール5

かみつきあご→1+1【失敗】

 

ロジーナ

対戦車ライフル→9+1【成功】

対象『希望』

ダメージ

『希望』=死人の盾

ゾンビ(4)25→20

 

ぬいぬい

名刀→10+2【大成功】

対象:ゾンビ(2)

ジャッジ

ぬいぬい=うで支援1

モンスター5=肉の盾

ゾンビ(2)15→11

 

→以下のパーツを破損【ぬいぬい】

あご

 

 

 ゾンビは目前でチョロチョロ動き回る ぬいぬいをロジーナから引き離すかのように大きく腕を下から上に振り上げ、遠方に弾き飛ばそうとする。しかし、その一撃は指先に顎を引掛け、本体はバックステップで避けきり完全に引き離す事は叶わなかった。

 ロジーナは伸し掛かられ下半身や上半身が動かせなくとも、銃身だけを『希望』へ向け放つ。倒れて身動きが取れない上に不自然な格好であるのにも関わらず、その狙撃技術は瞠る(みはる)べきものがあった。もし相手がサヴァント相手であれば、ロジーナは絶望的状況下から仲間たちを救い出す事の出来る一撃となった事だろう。

 しかし、今回の相手はネクロマンサー。それもドール達を作った本人である。どんな背伸びをしても、追いつけることは無かった。無慈悲にもまたもや死人の盾で防がれ、元凶にその一撃が届くことは無い。ぬいぬいも『たからもの』であり『得物』でもある名刀「不知火」を振り抜き死体を切り捨てる。されど、その一撃は決定的な一打とはならない。

 4人の顔に明らかな焦燥の色と絶望に染まったかのような表情が包み込む。

 それを『希望』は嘲るのだ。

 

 

 

COUNT3

モンスター1~6

怪物の腕→9、7-2、5、10-2、6、7-2【成功、失敗、失敗、成功、成功、失敗】

対象:飛鳥、纏、纏、ぬいぬい、纏、纏

ジャッジ

纏、飛鳥=エンバーミング妨害2*3

ダメージ

ぬいぬい=スチールボーン防御1『切断』無効化

 

グール7

移動【地獄】→【煉獄】

 

「あ・・・・あかだ・・い・・・・さ――」

 

 動けること自体、通常では考えられない姿となった纏は、露出している皮膚が折りたたまれたような皺だらけの赤大にそっくりな人形にすがり寄る。めだまも弾け飛び、四肢もなくなった纏は芋虫のようにモゾモゾと地面を這いつくばり、赤大だったものにすがりよるその姿はまるで助けを求めるかのような様子にも見えた。

 しかし差し伸べられた手を握る人物は居ない。ここに居るのは『希望』に操られる哀れな人間の成れの果てだ。

 容赦のない殴打が纏を襲い、地面に這いつくばったまま動かなくなる。

 

グール3~4

かみつきあご→4、3【両方失敗】

ゾンビ

ひきさく→3【失敗】

モンスター7~9

怪物の腕→9、9、9【全成功】

 

→以下のパーツを損傷【ロジーナ】

腕全損 攻撃手段ロスト

→以下のパーツを損傷【ぬいぬい】

はらわた、スチールボーン

→以下のパーツを損傷【纏】

こぶし、うで、写真+狂気点1

あるびの、しんぞう、リフレックス

 

 またロジーナも纏と同様状況下であった。

 体中を貪られながら、カプセル内で不気味に痙攣する『希望』を濁った両目で眺める。もう彼女一人の力では起き上がる事すら出来なかった。そんな彼女に接近してくる3つの影。気怠そうにロジーナは視線を向ける。そこにクリスティーナは居た。

 ロジーナから見る分には隣には、赤大と修羅が立ち中央にクリスティーナが佇んでいるように見えた。助けを求めるかのように彼女もまた探索者の面影に手を差し伸べる。3人はロジーナを取り囲んだが、ロジーナはクリスティーナだけを見つめていた。ふと彼女は、自分へ向けて地下研究所から脱出し、別離するまでに見せてくれた無邪気で悪意のない笑顔を向けてくれたような気がした。ロジーナ自身も笑顔が零れ落ちる。

そして、差し伸べられた手は握られることは無くはたき落されるかのように地面に叩きつけられ腕のパーツが粉砕しきるまで殴打され、武器も両腕も無くした少女が転がっているだけとなった。

 

 

 

COUNT2

『希望』=亡者の目覚め:レギオンを1D10増やす

ゾンビ(4)+8→20→28

 

ゾンビ(2)

ひきさく→5【失敗】

 

グール5~6

かみつきあご→4、9【片方成功】

対象:纏

 

ぬいぬい

名刀→8+1

対象:ゾンビ(2)

ダメージ

モンスター6=肉の盾

 

ゾンビ(2) 11→9

→以下のパーツを損傷【纏】

腕全損 攻撃手段ロスト

 

「最後に良い夢は見れたか?クソガキ共。お前等がどんなに足掻こうが、背伸びしようが、俺様に勝つことだなんて不可能なんだよ! 身の程を弁えろこのグズがっ!!」

 

 動けなくなった纏にもグールは馬乗りになり、武器であったショットガンをかみ砕いた。

 これで真面に戦うことが出来るのは飛鳥とぬいぬいのみになった。二人は顔を見合わせる。攻撃の要となっていたロジーナが武装解体され、攻撃の指揮を行っていた纏も完全解体まで一押しと言った状態だ。敵は戦闘が始まった頃よりも増えている。『希望』が扱う死人の盾は『希望』が望むままに駆使し、補充もできる・・・・。

 

「必死にテメェが霧散させてきた屑肉も俺様が手を加えれば・・・・このとおり。全ての努力は水の泡って奴だ。ヒャハ! ヒャーッハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 ゾンビをとことん破壊つくし、最期は慰めるために作られた愛玩人形にトドメを刺されたロジーナと纏を嘲りながら肉片となった死体に青白い光を灯す。生きたアンデットであれば、偉大なネクロマンサーとはいえ修復に時間を要するはずだ。しかし、『希望』はそんな無駄な努力などしない。

 上半身しかないはずの死体が、半ば宙に浮き『希望』を守護する盾と変貌する。それだけではない。完全にバラバラにし、飛鳥がサイコロステーキ状でバラバラに切り刻んだ死体も半ば人の形を保ちながら起き上って来ていた。

 

 

 

COUNT1

ゾンビ

ひきさく→2【失敗】

グール3~4

かみつきあご→4+1、6+1【失敗、成功】

モンスター7~9

対象:全ロジーナ

 

移動【楽園】→【花園】

 

→以下のパーツを損傷【ロジーナ】

脚全損 逃走手段ロスト

 

 狂気の笑い声を脳内に響かせる『希望』にぬいぬいと飛鳥は呆然とするしかなかった。

 逃走手段として残っていたロジーナの最後の足もかみ砕かれ、だるま人形が出来上がる。腕も、脚もない。だるまの人形だ。

 ロジーナがクリスティーナとしてみていたクリス人形を含む3体は、ロジーナが完全にだるま化したのを尻目に残るべく2人へ向けて一歩足を踏み出し接近しつつあった。

 

 

 

狂気点追加

ロジーナ

ぬいぬい+2

 

ぬいぬい

飛鳥+2

 

飛鳥

ぬいぬい+1

纏+1

 

飛鳥+2

 

 ドールたちは心の奥底でポッキリと心がへし折れる音を確かに聞いた。

 幻聴ではない。されど、現実では決して鳴らない音。

 そして湧き上がる後悔。懺悔。謝罪。全ての負の感情が彼女達を覆って行った。

 

===戦闘終了===========

 

 

 




【後書き】
 何を勘違いしたのか、この時寝ぼけていた私はやってしまいました。
 兵力を誤って2倍で留めておくところを2.5倍。
 つまり4人に対し、8人分の兵力で殴る筈が、10人分の兵力でドールを殴りに行ったわけです。

 行動値も強化したし、パーツも増えたし大丈夫だろう。と
 完全な慢心ですね。完全にダイスの女神の目が敵に対しても微笑んでいました。
 999・・・嬉しくなかったです。飛鳥はいつも通り過ぎて、実質戦力が3人でしたね。

 後悔しても、すべては後の祭りなのでこのままエンディングに入ることになりました。




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Episode5-12 『弁解』

【前回のあらすじ】
 敵の配分、間違えた。
 なんということでしょう。
 ご覧のありさまだったよ。




「ぬいぬい母様、飛鳥母様。邪魔者は排除しました。お二人はそこの屑肉に振り回されていただけなのでしょう? ええ、分かっています。分かっていますとも。全ては、あのイレギュラーと屑肉のせい。お二人は何も悪くない、そうですよね?」

 

 『希望』は最も疎く思っていた存在を半壊に出来たのが、よほど精神安定剤の代わりになったのか非常に落ち着いたような口調で、テレパシーで穏やかに語りかける。その一語一句に対して飛鳥とぬいぬいは嫌悪感を抱きつつも、周囲に目配せをする。

 赤大人形に叩き潰された纏は、その赤大人形に髪を掴まれ引き摺られるような姿で飛鳥とぬいぬいの元まで全身し、だるまの状況下にあるロジーナはゾンビの一体が纏の対応と同様に髪を掴みながら引き摺り2人との距離を狭めつつあった。その更に奥、『希望』の力によって宙吊り状態にある死体は4人が先頭を始めた時よりも更にその規模を広げ、突破することは不可能である。ワイヤーリールを屋根部分に引っ掛け離脱する方法も考えるが、それで移動するよりも先に『希望』が何かを仕掛けてくるのは明白であり、第一ワイヤーリールで離脱する方法では負傷している2人を見捨てることにもなる。

それだけは避けねばならない事態であった。

 

「おや? 役立たなくなった屑肉共を奪取し逃走を図る算段ですか? それもこのクソガキが浅知恵で企てた愚策ですか? 私を最後まで守ってくださった飛鳥母様のワイヤーリールで逃走するにしても、それは1人を連れるだけで精いっぱいでしょう? そもそも心優しいぬいぬい母様や、戦闘面に関してはポンコツですが慈悲深い飛鳥母様が、ここまでともに行動してきた仲間を見捨てられるのですか?」

「「・・・・・・っ。」」

 

 まるでぬいぬいと飛鳥の思考を読み取っているかのように『希望』はヘラヘラとした口調で脳内に直接語りかけてくる。思わずその身体を震わせ振り向いた。『希望』は目と鼻の先と言っても過言ではないに浮遊していた。

 ぬいぬいか形振り構わず抜刀術で斬り掛かれば優に届く距離。しかし、ぬいぬいには『希望』を切り捨てることができるほどの決意は、前の戦闘により残されていなかった。目の前の圧倒的な存在に身体を震わせざる負えない。飛鳥も同様であった。全身が細かく振動し表情は強張り両目を見開いている。

 今、彼女達に出来ることは、ぬいぬいは『たからもの』である名刀以外の武装を解除し得物を『希望』の目の前に投げ捨て、飛鳥は内々に充電した電撃を放電し自分の足諸とも数匹のグールを刻んできた『単分子繊維』を指先から振り落とした。

 

「・・・・・・よろしい。互いの絆も更に固めたところで、それでは早速 母様達を少女のまま孕むことができるように改良を施しましょうか。いやぁ、それにしても複数いるとどれを母体にするか迷いますね。全員の子宮に場所を作って、定期的に移しながら平等に母にしてあげるのも―――――うふふふふふ。」

「・・・・ぁの・・・・。」

「うふふふふ・・・なんでしょうか飛鳥母様。もしや自らの胎の中へ私を招待してくれるのですか!? ああ!貴女は本当に聖母のようなお方ですね。戦闘面ではポンコツですが。しかし、その願いは聞き入れられませんよ。貴女一人だけ特別扱いしてはぬいぬい母様の立場はどうなるのです? 私はもう決めたのです。平等にお二人を母にすると!!」

 

 『希望』踊るかのように2人を中央にして周囲を楽しそうに浮遊する。

 6周ほど周回したところで、飛鳥が正面に『希望』を蚊の鳴くかのような振り絞る声で呼び止めた。『希望』は卑しく笑いながら飛鳥が要件を伝える前に喋りだし勝手に自己完結し、陶酔した様子で歓喜の声をあげる。

 

「・・・ぃぇ・・・・・そうではなく・・・・・。」

「は?」

「ぁぁぁぁ! そそそののの他にに、ににそ、その他にににって意味みみみでです・・・!」

「ああ、そういうことでしたか。なんですか?」

「ロ・・・・。」

「ロ?」

 

 機嫌が最高潮に良さげな様子を見せる『希望』に飛鳥は否定から入ってしまう。突き刺すような冷たく鋭い槍に貫かれたように背筋は凍え顔色も見る見るうちに青ざめる。すぐに慌てた様子で言い直し、“機嫌が良い”とは言い切れないものの普通のテンションへ戻った『希望』へ震えながら語りかける。その様子をぬいぬいは緊張した赴きで見守る。

 飛鳥は小さく息を吐きだし、何かを言いかける。そして、少しの深呼吸を行ったのち生唾を飲み込むかのように咽頭を震わせると、勢いに任せたかのような声で言葉を発す。

 

 

「ロ・・・・ロロロロジーナさんと纏さんを許してくださいっ!!! お願いします!!!」

「あ゙?」

「まっ、ま、ま・・・まままままままといささささんんは、は、あああああかだいささんが人形にににになっててててて驚いてててかかかんんんしゃででででじゃじゃじゃじゃれつつつつつつつつつつつ―――」

 

 先ほどとは比べ物にならない殺意をまとった威圧が『希望』から放たれた。覚悟を決めたかのように言葉を大声で発した飛鳥ではあったが、その威圧に屈服するかのように非常に恐怖と困惑が入り混じった様子で壊れたスピーカーから、流れだす音声のように言葉を発していた。

 床に何も広がる液体は存在しなかったが、飛鳥は下腹部の股から液体が広がるような感覚に更にパニック症状に陥る。

 

「わ・・・わ、わたしからもお願いします・・・。ロジーナさんや纏さ、さんを壊さないでくださ、さい・・・」

「はぁ? ぬいぬい母様まで何を仰っているのですか?」

「ロっ、ロジーナさ、さんも、本気で、でっ、『希望』を嫌っている訳・・・じゃ、な、なくて。ド、ドッキリ、サ、サプライズ? しようとしたら手元が狂って。ふ、ふりょの、じこ、ふりょりょの、事故! なんでっ、すっ! さ、さいしょに、見つけたときっ、つれて、行こうとして、ましたし・・・!」

 

 明らかに真面な返事ができなくなった飛鳥を見つめていたぬいぬいも加わり、土下座をしている姿勢で己の頭を垂れ、震える声で許しを請う。『希望』の声は、明らかに不快そうで不機嫌ではあったものの、飛鳥に向けていた殺意程に凶悪な物ではなかった。全身の毛が恐怖で逆立ちながらも、途切れ途切れの日本語を繋ぎ額を打ちつけるように頭を下げ続ける。

 

行動判定-2

ぬいぬい→?-2【??】

飛鳥→?-2【??】

 

 

 




【後書き】
 戦闘に関しては一度、書き直したのですが書き直したデータをコピペして、修正してハーメルン投稿予定日に登録した時にWindowsのアップデートが唐突に始まってしまいまして・・・。
 はい。6時間かけて書き直した収録データが全て爆裂四散し、悲しくなりながら心が折れたので、飽きるというのとはまた別ですが、あの惨敗データで行くことにしました。

 いつか書き直します。絶対に『希望』はこの手で叩き潰すののです。




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Episode5-13 『罪と罰』

【前回のあらすじ】
 真面に行動可能なドールは『ぬいぬい』と『飛鳥』のみになってしまう。
 何とかして動けない2人を抱え、この場から離脱する策を張り巡らせるが名案は思い付かない。
 それどころか感情を読み取っているかのように『希望』は全てを見抜くのであった。




行動判定-2

ぬいぬい→10-2【成功】

飛鳥→5-2【失敗】

 

「・・・・ふむ。そこまで仰るのであればいいでしょう。」

「「・・・・!」」

 

 『希望』は暫くの間、考えるかのように静かになった。

 そして、上機嫌でも不機嫌でもない普遍的な普通の声色で2人の要望を認めた。飛鳥も困惑した様子から解き放たれ、ぬいぬいは頭を上げ『希望』を見上げる。そして俄か(にわか)には信じられないと言ったような僅かな希望が灯ったような顔をした。

 

「しかし、条件があります。」

「・・じょ、条件ですか?」

 

 だが、その希望が灯った表情を嘲笑うかのように若干の笑みを含ませながら『希望』は提案をあげる。明らかに悪意の籠った企みを感知したぬいぬいは生唾を飲み込み、震えながらもその提案について問う。

 

「悪いことをしたら“罪”を償うための“罰”が必要ですよね? 過失ではあるとはいえ最愛の我が子である私に危害を加えたのですから、2人の母様達にも当然“罰”が下るべきです。そして、それを庇う母様達にも『連帯責任』ということで当然、罰せられるべきなのです。違いますか?」

 

 その質問を待ってましたと言わんばかりに『希望』はヒビはいったカプセルを縦方向に細かく振動させると、悪意を十分に含ませた嘲りと共に恐怖の色に染まって行く2人をカプセル越しに見つめた。口など見えないはずであるのにも関わらず、その口元は裂けるほどに口角が上がっている様に2人には見えた。

 

「ち、ちがいななないいいでです。」

 

 ・・・2人は『希望』に逆らえることもなく、暴虐極まりない提案にただ頷く事しか出来ない。

 

「では、ぬいぬい母様はロジーナの大切そうにしている写真と、アルバムの中身を粉々になるまで破り捨ててください。飛鳥母様は纏のクソ汚ねぇ玉袋と、首に巻き付け大切そうにしているゴミの破壊を。あぁ、アルバムとゴミは粉になるまで壊しきってくださいね?」

 

 超能力を使い、動けなくなった2人から『たからもの』である ロジーナの写った写真、楽しげにしている様子が収められたアルバム、音楽プレイヤー、纒本人を抜き取り飛鳥とぬいぬいの目の前にそれぞれ落下させた。

 2人は青ざめながらも動くことのできない2人を見る。

 

「・・・・・ぬいぬい・・・・やめて・・・・・・。・・・・・・わたしは・・・・どうなっても・・・・・・いいから・・・・それを・・・・・壊さないで・・・・。」

「ア゙がだイ゙・・・ザン・・・・がら゙・・・・・預かってぐれっで・・・・頼まれダ・・・・アズガ・・・・ヤ゙メ、やめ゙・・・で・・・お願・・・い゙・・・・。」

 

 ロジーナはまだ動く首を横に振り、芋虫のような状態になりながらも身体を這いつくばらせ、僅かではあるが『たからもの』に向けて前進する。しかし、モンスターに背中を力強く踏まれるとその場から1ミリたりとも動くことは出来なくなった。

 纏はボロボロになった声帯を必死に動かし、飛鳥に語りかける。その眼は潰れて見えなくなっているはずにも関わらず顔の向きは飛鳥を直視していた。

 2人はそれぞれ、纒の玉袋と写真を手に取るが指は震え、力を必死にこめようとするが引き裂く一歩を踏み出すことができない。

 その様子に対し『希望』は、飛鳥とぬいぬいの腕に視認できないほどの自らの青白い光を微量に纏わせ、じわじわと時間を掛けて引き裂き始める。

 ビリっと紙が破ける音にプチプチと肉がちぎれる音、身動きの取れない2人から絶叫とも呼べる悲鳴が上がった。

 2人も指を離そうとするが、何故か指は2人の『たからもの』を離そうとしない。それどころか2人の苦しみを一瞬で終わらせようと引き裂きに掛かるが、引き裂けない。悲鳴を上げようにも、自分がやっているのではないと弁解しようにも、口も開けない。動けない2人の心を玩び(もてあそび)甚振る(いたぶる)かのように。ゆっくりと『たからもの』は形を崩していく。

 

「ヒャハハハハハハハッ!!ロジーナ! 纏ィ! これは貴方達の為に母様達が心を鬼にしてやっていることなんですよぉ!? どうですかぁ? いまの御気分はぁ! ヒャーッハッハッハッハッハァ!!」

「あ・・・・・あ・・・・・。」

「・・・・・・っ・・・!!」

 

 4人は声にならない悲鳴を上げる。

 『希望』は今までよりも更に強大な笑い声をドール達に浴びせる。ぬいぬいと飛鳥は涙を流しながら心の奥底で2人に謝る事しか出来ない。

 10分ほど時間が経過しただろうか? ついに“1つ目”『たからもの』が完全に崩壊した。

 

狂気判定-1

ぬいぬい→1-1【大失敗】

ロジーナ+1

飛鳥→7-1【成功】

 

狂気判定-2

ロジーナ→8-2【成功】

たからもの+1

纏→6-2【失敗】

たからもの+1

飛鳥+1[発狂]

 

「あ゙、あ・・・ああ゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙あ゙あ゙ア゙ア゙?!!!!」

(ごめんなさい・・・・っ。ごめんなさい・・・・っ。)

 

 纏は何かタガが外れたかのような絶叫をあげ、ぬいぬいはただひたすらにロジーナに向けて謝罪する。心の中で戦意とは異なる決意が軋む音が聞こえる。

 

「良い声ですねぇ・・・。しかし、“罰”はまだ終えて居ませんよ? さぁ、メインディッシュも手早く壊してください。」

 

 『希望』は、心の奥底から愉快そうに震動する様子をドール達に見せつけ震える。

 そして、超能力で無理矢理、飛鳥を立ち上がらせ足元に音楽プレーヤーを置く。ぬいぬいも引き上げられるように号泣しながら立ちあがり、目の前に青白い光をまといつつも浮遊しているアルバムに向けて名刀を引き抜く。その様子はまるで操り人形そのものだ。

 

「ああ、それと。目を逸らしたら罰にならないじゃないですか。『次は』壊れる瞬間を目視するように。」

 

続けるようにして目を瞑っていたロジーナと飛鳥の瞼を引き上げ開眼させ、視線を無理にでも『たからもの』へと注視させた。瞳のない纏に対しては乱暴に眼球がねじ込められ、見えるように鮮明な視界を確保させてから、ロジーナと同様の姿勢にし、音楽機器を見つめさせる。

 

「さ、ぬいぬい母様、飛鳥母様。どうぞ。」

「ぬいぬい・・・! ・・・それだけは・・・! それだけは・・・!!」

 

ロジーナの悲痛な叫びが、さらにぬいぬいの心を抉っていく。

もしも自分自身がロジーナの立場であったらどうしていたであろう。『ぬい』に剣術を認められて、別れる直前に託された名刀を目の前でへし折られたらどんな気分になるだろう。今のロジーナと同じように”きっと”懇願するに違いない。いや、ロジーナよりも酷く取り乱すはずだ。

 ぬいぬいは両目から涙を零し、噛める範囲の下唇を噛みしめる。この残酷な現実では、ヒーローは遅れてやってこない。自分たちにとって確かな【希望】を与え続けてくれていたヒーロー(修羅 縫)は『希望』の姑息な手段によって死んだ。

 どんなに待ち望んでも彼女等は来ないだろう。もう目の前に『希望』の手駒となって存在しているのだから。

 時間だけが刻々と過ぎ去っていく。

 

「ぬいぬい母様、分かっていらっしゃいますよね?焦らすのはそこまでにしてください。それとも貴女は、本当はロジーナと纏を助けたくない 飛鳥母様に便乗しただけの偽善者だったのですか?」

 

 涙を流して、なかなかアルバムを切り裂かないぬいぬいに対し、いら立ちを覚えたような様子で『希望』は煽り催促をする。号泣しているぬいぬいに対しロジーナは必死に語りかけ、纏は狂った絶叫をあげ、飛鳥は絶望した顔でその様子を静観していた。

 

「・・・分かり、ました。」

Hеeeeeeeeeт!!!(やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!)

 

 ぬいぬいは偽善者よりも早く『本当は助けたくない』という言葉に対して、号泣しながらもビクリと反応を示すと袖で涙を拭いアルバムに向かって斬首するかのように振り被る。この名刀は【姉妹】を守るために修羅は渡したのだろうと、切りかかるときに限って脳裏に過ぎった。

 ぬいぬいは修羅に対しても一言謝罪する。ロジーナのロシア語での絶叫が上がるが、そのまま『希望』の指示した通り、ほぼ粉になるまで引き裂き破壊した。

 

「この絶望のハーモニー・・・いいですねぇ・・・。さて、飛鳥母様も行ってみましょうか。」

 

 もしもこの場に『希望』の実像があれば、爽やかすぎる笑顔で振りむいていたであろう。しかし、そこに浮遊するは胎児。上半身を肉片とした胎児であり爽やかさなど微塵にも存在せず、醜悪さが更に引き立てられている。

 

「飛鳥・・・・お゙願い゙・・・・飛゙鳥・・・・・・。」

「戦闘面に関してポンコツな母様の為に、今回は転倒しないよう支えていますから。安心して踏み潰してくださいね。おおっと、そうだ脚は自分で切断したんでしたね。では足の一本だけ修復して壊せるようにしましょうか。」

 

 悲痛な纏の叫びを遮る様に『希望』は飛鳥と纏の間に割って入り、近くのモンスターを呼び寄せると切断した足を繋ぎ直させ、踏みつけられる環境を用意する。

 更に足が自動的に持ち上がると、いつでも踏みつけるような体制となったではないか。

 

「飛鳥母っ様の~!いいっとこ!みってみったいっ!!」

 

 周囲の死体どもの手を打ちならし、合いの手リズムを取らせる。纏の声はかき消される様に聞こえなくなり、その場には飛鳥と音楽プレイヤーしか存在していないかのような感覚になる。

 

『ウォォォォオオオオ?!!』

「っ!!!」

「アアアアアアアアアッ!!!!!」

 

 死体共は口を大きく開き盛り上げるかのように咆哮をあげる。そしてその咆哮が終えるのと同時に飛鳥も『たからもの』を踏み付けた。纏から更なる絶叫が上がる。それは他の声援で聞こえない筈の飛鳥にもしかと聞き取れてしまった。

 一踏みで外殻にヒビが入り、2踏みで基盤がさらけ出し、、、、、6踏みで部品が粉々になり始める。纏の女の子のような甲高い絶叫もそれに合わせて木霊する。

 どんなに身体を引き千切られたとしても、痛みなど感じなかったのにも関わらず。ガッ、パキッ、バキッ、ゴシャ、グシャ、グシャリ・・・と踏み潰す感覚は新明に伝わる。

 心の奥底では必死に纏に謝り続けていたが、口から漏れ出す言葉は言葉として意味を成さない。

 

狂気判定-2

ぬいぬい→6-2【失敗】

ロジーナ+1

飛鳥→4-2【失敗】

纏+1[恋心発狂]

 

狂気判定-3

ロジーナ→3-3【大失敗】

たからもの+1

ぬいぬい+1

纏→1-3【大失敗】

たからもの+1

ぬいぬい+1

 

 

 




【後書き】
 全滅ENDや別ENDついて彼の描写や性格について読み上げていると、陰湿で執念深さがありありと浮かびあがって来たので、シナリオにはないですが加筆することで彼の陰湿で残虐かつ冷酷さを表現してみました。
 納得できない終わり方かもしれませんが、彼の本質的なものをオリジナルで書けたことに関しては、自分の中で納得しています。

 そして次回で第5章 最終話です。




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Episode5-14 『BAD END』

【前回のあらすじ】
 『希望』に懇願することで『ロジーナ』と『纒』の完全解体を拒む説得に成功する。
 しかし、出された条件は非情かつ陰湿で残虐めいたものであった。
 『ぬいぬい』と『飛鳥』は半ば強制的に2人の「たからもの」を破壊していくのであった。




 完全に纏のたからものを粉砕しきったところで『希望』は満足そうに嗤う。

 

「それでは、お次はぬいぬい母様と飛鳥母様の、もっとも大切な『たからもの』を壊していきましょうか。」

 

 4人の真面な記憶が残っているのは ここまで。

 もし微量に覚えているとしても、それは『希望』が 修羅に貰った太刀と飛鳥が大切に身に着けていたイソギンチャクのぬいぐるみを剥ぎ取ったシーンであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強大なテレパシーが心まで崩壊しかけたドール達の意識を押しつぶし、途切れさせる。

 

 試練を乗り越えた『母』を、地下都市の奥深くにある研究室へとテレポート能力で連れてこられたことが4人も気絶している最中で感じ取ることができる。周囲からは今まで感じたことのない仄かな暖かさと微かなノイズ、そしてカタカタカタと何かボタンのような物が叩かれる音が聞こえた。

 母親の羊水に使っているような生温い水温に身体全身が浸かるような感覚がする。

 『希望』はゆっくりと、そして歪んだ愛情を込めて、彼女たちの胎の中に己の居場所を作り上げて行くのだろう。

 抵抗は出来ない。

 目覚めることもできない。

 されど4人とも確実に腹部に『何か』を施されている感覚だけは伝わって来る。

 

 やがて、4人は目覚めた。

 その時、そこは地下シェルター入口の外。扉の前の開けた空間には何も車両は停車していない。『まだ到着していないのか。』『崩落の時に死んだんだ。』『あの出会いは夢だった。』『人間は全滅した種族だ。』そんなことを思いながら周囲を見渡す。

 『希望』は居ない。

 しかし、全員の腹がぽっこりと膨らんでいる。

 

行動判定

ロジーナ→10【成功】

ぬいぬい→8【成功】

飛鳥→6【成功】

纏→10【成功】

 

 飛鳥は腹部に重みを感じながらも空を見上げた。空は明るく鉛色の綺麗な空が見えている。

 4人は『希望』に対し、憎悪も絶望も、嫌悪感すら抱くことはない。そこにあるのは、ただただ幸福感があるのみ。彼のテレパシーはドール達の精神を完全にねじ伏せたのだろう。

 

 そう。

 

 もはや、4人は「ドール」ではない。「サヴァント」となった。

 愛しい胎児、『希望』を胎内に抱え、彼の望むままに世界を彷徨うのだ。『希望』は気まぐれに他の『母』の胎内へとテレポートする。「サヴァント」たちはその都度、体重の変化によろけるだろうが、『希望』の「寝返り」にただただ喜びを感じるだけである。

 もしかすると、他のネクロマンサーが作ったドールに出会うかもしれない。あり得ない話ではあるが、僅かな希望ではあるが崩落から免れた「しぶとい人間」と出会うかもしれない。相手は狂った「サヴァント」をどう思う事だろう?

 きっと祝福してくれることだろう。

 否、祝福してくれるに違いない。

 分からないあれば解体し、愛を教えてあげればよいだけ。

 難しいことではない。

 

 

 

             もっとも、もはや全て関係ないこと。

 

          空は明るく、胎内には愛しい子がいるのだから。

 

                  よき旅路を。

 

 

 

                                      END.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             遠くから何か聞こえたような気がした。

 

              意識を落し、暗く何も見えない。

 

             何も聞こえないはずの暗闇なのに。

 

 

               超能力とは異なる浮遊感。

 

               暖かいものに接している感覚。

  

              長い間、味わっていない温もり。

  

 

 

               それは、長い、永い夢の続き。

 

              彼女たちが望んでいた永い後日談。

 

 

                                 

 

 




【後書き】
 これにて第5章『果てる愛』閉幕となります。
 閲覧ありがとうございました。
 また出会うときがあれば、どうぞよしなに。




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