IS―兎協奏曲― (ミストラル0)
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キャラ設定

主人公・雪兎と専用機の設定です。

二次移行後のデータも追加しました。


天野雪兎:あまのゆきと

身長:168

体重:62

誕生日:2月3日

趣味:機械弄りと読書

苦手なもの:蛙などぶよぶよしてる生き物

イメージCV:櫻井孝宏or犬飼貴丈(桐生戦兎)

 

本作の主人公

転生者ではあるが、神様に会った訳でもなく特典などのチートスキルは持っていないがどういう因果か一夏らと知り合い何だかんだあってIS学園に入ってしまった。

前世がメカオタだったせいか姉を通じて知り合った束に弟子入りしてしまうなど原作にない行動をいくつも取っており、そのため原作と少し相違が生じているが、そのことに関しては「自分や姉というイレギュラーが生まれて主要人物と知り合っている時点で原作から外れているから」「それでもターニングポイント的な出来事は変わってない」という理由から原作の世界というより原作に程近い平行世界(限りなく近く果てしなく遠い世界)と認識している。

転生チートはしていないが前世知識を用いて色々やらかしており、過去に「拡張領域内のパッケージ(パック)を入れ換えあらゆる状況に対応する万能機」というコンセプトのISを考案しており、専用機はそれを束が具現化したものである。元々エンジニア志望だったためか整備技術等も束仕込みというハイスペックな上にシャルロットと同じ「高速切替(ラピッド・スイッチ)」が使える等のリアルチート。

また、AGEシステムを元に武装・パッケージ(パック)設計システム・EVOLsystemまで開発している。

家事スキルは一人暮らしは問題無いレベルで、苦手なのは女性と付き合い方。

 

イメージイラスト

 

【挿絵表示】

 

 

チビキャラの雪兎

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

専用機:雪華(せつか)

 

束が雪兎の考案したコンセプトを元に白式と同時期に作成した3,5世代に該当するIS。戦闘中のパッケージ(パック)換装を主としており本体には両腕にマウントしたビームブレード兼ビームガン以外に武装を付けず拡張領域を限界まで増やしパックを最大4つまで持ち込めるようにしており、パック換装によりあらゆる状況に対応できる。またEVOLsystemにより蓄積したデータから新たな武装やパックが設計されるため一度食らった手は二度は食らわない。初期からあるパックは汎用型試作パック【T:トライアル】近接型破砕作業パック【S:ストライカー】射撃型パック【G:ガンナー】の三種。パックを換装すると装甲の一部が追加装甲と同じ色に変化する。後にシャルロットは本体のデータを譲り受けて専用機が3,5世代機に改修されることになる。

待機形態はチェーンブレスレット。

二次移行したことで【極限化】という単一仕様能力を発現している。【極限化】はエネルギー消費が加速する代わりに機体出力や速度を1.5倍にするという能力で、発動時は各パックと同じ色の粒子を放出する。パックの一部も二次移行に合わせて強化させている。

また、拡張領域まで増加し保有できるパックの最大数が4から6に増えた。

 

雪華第三形態【雪月華】

 

無人コア内蔵自律型追加補助外装【白月】と武装合体した事で第3移行した雪華。アドヴァンスドを複数同時装備というとんでも能力を持つ化け物ISで、その戦闘能力は既存のISを容易く蹂躙する程。白月のおかげで保有パック数が10を超え、通常のパックとアドヴァンスドの区分なく1つ分としてカウント出来るようになった。また、アドヴァンスドをも凌駕するエクシード(Exceed:極限)というカテゴリーのパックも使用可能になった。エクシードは一種類ずつしか持ち運び出来ないらしい。アムドライバー編までの段階ではNo.01~06までのエクシードが存在する。

 

【T:トライアル】

情報収集用の汎用試作型パック

バックパックにスラスター、右肩にレーダーユニット、左肩に小型ミサイルポッド、脚にサブスラスターを追加し、ソードライフルとシールドで武装した基本形態。追加装甲の色は白。

二次移行後はソードライフルが二つになった。

 

【S:ストライカー】

近接型破砕作業パック

宇宙空間でのデブリ等の排除を目的に作成された重機のようなパック。バックパックに大型スラスター右腕に大型クロー・パイルバンカー・ドリル・ブースターを複合した多目的シールドブースターを、左腕にはアンカークローを、脚に大型サブスラスターを、腰に作業用サブアームを装備する。初期型パックでは最も堅く、最もロマンに溢れている。追加装甲の色は重機イメージから黄色。

二次移行後は左腕のアンカークローがシールドブースターに内蔵式になり、左腕には雪羅の荷電粒子砲とシザーズクローを内蔵した別のシールドブースターが増設された。

 

【G:ガンナー】

射撃型パック

小型レールキャノンを両肩や脚のミサイルポッド兼サブスラスター等の固定装備の他にアサルトライフルやガトリングガンなど銃器メインのパック。その全力射撃はまさに鉄の雨。追加装甲の色は赤。

 

雪華の追加パック

 

【W:ウィザード】

対遠隔操作武装用パック。グラスパービットによる遠隔操作武装の乗っ取りにより相手を無力化することを想定して設計されたパックで、ブルー・ティアーズや打鉄弐式のデータが反映されている。

ローブ状のミサイルコンテナに背面のグラスパービット、手持ち武装のビームハルパーを持ち、魔術士や死神を彷彿させるデザインをしている。

学年別トーナメント用の切り札として温存しておくはずが、姉・雪菜との模擬戦のために使用することになり、その存在が明らかになった。セシリアにとっては偏向射撃を用いない限り天敵となるパック。イメージカラーは紫。イメージはデスサイズと革命機の6号機。

 

 

【J:イェーガー】

 

対ラウラ戦に備え開発させた高機動強襲型パック。白式や打鉄弐式を上回る機動力を備えたウイングバインダーとブルー・ティアーズのスターライトmk.Ⅲを凌駕する超高出力のバスターライフルを持つ。バスターライフルはカードリッジ式で連射可能という化け物のようなパックでラウラ以外が相手でも高い制圧力を誇る。武装がバスターライフルに全振りなのでバスターライフルが使えなくなると高機動白兵戦しかできない(十分脅威)のが欠点。装甲の色はブルー・ティアーズと同じ蒼。モデルとなったのは自爆大好きでおなじみのウイングガンダムの【EW】仕様。

福音戦で第二形態となった際にバスターライフルは砲身の下に新たに小型のバスターライフルをマウントしたバスターライフル改にバージョンアップした。

 

 

【B:ブレイド】

 

紅椿戦で使用した近接特化型のパック。

打鉄・参式をベースに白式や打鉄弐式のデータを反映させて設計された。肩の非固定浮遊部位は大型スラスターを内蔵した装甲で、背面のスラスターと合わせて高い機動力と二重瞬時加速を可能にしている。

武装は高周波ブレードの刀が二本に零式と護式・斬艦刀を合わせたような大太刀の他、近接用のものを中心としたもので肩のスラスターを用いた変幻自在の動きで相手を翻弄しつつ斬りかかることを主眼に開発された。

イメージはフルメタアナザーのブレイズ・レイヴン1号機と白式と参式を足して割った感じ。装甲の色は藍色。

 

 

【F:フォートレス】

 

福音戦でシャルロットがリヴァイヴ・カスタムEVOLで使用した防衛砲撃型パック。

肩の非固定浮遊部位に大型シールドを備え、システム補助付きの大型シールドビット【アイギス】を持ち防御力はパックシリーズでもトップクラス。また、一二◯口径大型バズーカ【グランドスラム】や高周波の刃を持つ砲撃槍【ハルバートカノン】などの武装を持つ。

防衛戦や味方の盾役、支援砲撃などを得意とする。単機でもその堅牢さで中々墜とすのが困難で長期戦向きの機体でもある。雪華が装備した場合、機動力も持つため非常に厄介な機体と化す。

カスタムEVOL仕様は灰色だが、雪華仕様はカーキ。

 

 

アドヴァンスドパック

 

雪兎が二次移行後に開発した通常のパック二つ分以上の拡張領域を使用する強力なパック。今までの通常パックがアルファベット一文字だったのに対して二文字以上で表示される。アドヴァンスドパックは何れも複数分の拡張領域を使うだけあって化け物じみた性能をもつ。

 

 

【LA:ライトニング・アサルト】

 

キャノンボール・ファストのために雪兎が設計していた超高機動型仕様パック。両肩にリンドヴルムより大型のミサイル内蔵型シールドブースターキャノンを、腰にシールドブースタービットを、背面に大型ウイングバインダーを四つと大型ブースター、ウイングバインダーに装備された四基のブレードガンビットを持つ。脚部も大型のアーマードブースターになっている。シールドブースターキャノンと腰シールドブースタービット、背面装備に脚部のアーマードブースターから構成される装備群を【フレスベルグ】という。武装もランパードランチャーのプロトタイプ【ガングニール】を装備する。大型ウイングバインダーには衝撃砲の空圧技術を応用したエアロスラスターが使われている。鈴達三人のパッケージはこのパックの装備を分割して個別に調整し直したものを装備したものである。使用する拡張領域は三つ分でカラーリングは黒と黄色の某雷光の執務官カラー。

また、このパックはTR-5と同じく単機での大気圏離脱と再突入能力を持ち、成層圏からの弾丸機動による襲撃を可能にしている。

モデルはブラックサレナ、TR-1ヘイズルイカロスユニット装備、TR-6、ヴァイスセイヴァーの三機。

 

 

【LF:ルシフェリオン】

 

某魔法少女のゲーム及び劇場版三作目に登場する星光の殲滅者を模したアドヴァンスド。本家よろしくの超高出力型で、その一撃は正に一撃必倒。近接格闘と中・遠距離砲撃戦を得意とし、ダリル&フォルテペアを瞬殺する。ダリル&フォルテ戦では使わなかったが【ルシフェリオン・ドライバー】という本家の砲撃形態を模した砲撃槍を持ち、これから繰り出される【真・ルシフェリオン・ブレイカー】はアリーナのシールドをも容易くぶち抜く威力を持つ。

 

 

【CF:コールド・フレイム】

 

楯無の制裁に使われたアドヴァンスド。ギリシャのコールド・ブラッドの上位互換に相当する【分子活動の活性・停滞化】を操る。武装はヒートショーテル、コールドショーテル、シールド内蔵型ヒートロッド、右手に輻射波導等の装備で近・中距離を制し、遠距離では炎と氷を使った遠距離攻撃やビットで敵を翻弄する。また、左手に絶対零度を、右手に輻射波導を纏いそれらを合わせて物質を崩壊させる【ハザードインパクト】というえげつない技を持つ。

モデルはコードギアスの紅蓮聖天八極式等。

 

 

【YK:エルシニアクロイツ】

 

【LF:ルシフェリオン】と同じく某魔法少女のゲーム及び劇場版三作目に登場した闇を統べる王を模したアドヴァンスド。主に重力操作系の遠距離攻撃を得意とする広域殲滅型。戦闘だけでなく、管制能力も高く前線指揮等もこなす・・・・流石は王様。武装はビームカノン【アロンダイト】、4基のビームカノンビット【ランスロット】、ダガービット【ブリンガー】と少なく感じるが前述した重力操作攻撃が強力過ぎてちっとも安心出来ない。

また、【LF:ルシフェリオン】や【VF:バルニフィカス】と合体しトリニティモードになる際にはベースとなる。

 

 

【VF:バルニフィカス】

 

【LF:ルシフェリオン】と同じく某魔法少女のゲーム及び劇場版三作目に登場した雷刃の襲撃者を模したアドヴァンスド。高機動と近接戦闘に特化したアドヴァンスドで、瞬間速度であればアドヴァンスド最速。蒼雷を操り、蒼雷に触れたものを行動不能にして最速で最大威力の攻撃を叩き込む戦法を得意とする。武装は複合武装の【ライトニング・スラッシャー】と補助ビット武装【レヴィ】(チヴィットのレヴィ)だけ。スラッシャーは本家と同じく斧、大剣、鎌になる。レヴィはまんまレヴィのような性格をしており厄介極まりないが普段は使っていない。レヴィはISを展開していなくても使用出来る。チヴィットは後にISから分離させて単独行動が可能に。

 

 

【SF:スピリットフレア】

 

他のマテリアルズ同様に砕けえぬ闇を模したアドヴァンスド。背面の魄翼を模した翼状の大型アーム【マテリアルウイング】と両手から放つ【ヴェスパーリング】が主な攻撃方法。【マテリアルウイング】等による防御力はアドヴァンスド随一だが、攻撃力もやはりアドヴァンスドということで【マテリアルウイング】から放たれる大型ビームサーベル【エターナルセイバー】等高いものを備える。しかし、その最大の特徴は広域にナノマシンを散布し、それを介してエネルギーを奪い取るというナインテイルの上位互換機能を持つ。他のダークマテリアルズのアドヴァンスドと合体することでそれぞれの特性を得て更に手がつけれなくなる。更にトリニティモードを超えるカルテットモードが存在するんだとか・・・・少しは自重しろ。

 

 

【SG:ソウルゲイン】

 

ソウルゲインを模したアドヴァンスド。近接格闘特化のアドヴァンスドで、気のようなエネルギーを利用出来る。技は四聖獣と麒麟をモチーフにしており、必殺技に当たる麒麟は絶大な威力を誇る。実はオーバーリミット技として麒麟・極がある。

 

 

【VS:ヴァイサーガ】

 

ソウルゲインと同じくヴァイサーガを模したアドヴァンスド。こちらは五大剣による斬撃に特化したタイプで、技のモチーフは火、水、地、風、光などの属性。必殺技である光刃閃は「音を超え、光に迫る」とされる超高速連続斬り。マントが特殊合金繊維で編まれており、並みの攻撃ならばマントで弾ける。

 

 

 

 

 

EXCEED

 

雪兎の最新の切り札(ジョーカー)。その能力は未知数。アムドライバー編まででNo.01~06まで存在することが判明しているが、何れも開発者たる雪兎すら完全制御出来ないじゃじゃ馬らしい。展開可能時間もかなり短く、雪兎曰く「常に極限化してるようなもん・・・・いや、あれより酷い」とのこと。雪兎も余程の事がなければ使わない。使用後は大体筋肉痛になる。

 

01:EXCALIBUR

某騎士王を模したEXCEED。対聖剣用に開発した。聖剣の出力制御が出来ず必ず最大威力で放たれる為対人では使えない。

 

02:RAISING

某魔砲少女ととあるガンダムを模したEXCEED。ブレイカーがヤバいことに・・・・魔王繋がり。

ストライクカノンやフォートレス装備のフォーミラ仕様のなのはにサテライトシステムを組み込んだ最大火力が破格のEXCEED。別世界の束こと束スタークが最初の被害者。

 

03:NEO

蒼の魔神を模したEXCEED。詳細不明。

 

04:タナトス

タロットの死神を模したEXCEED。詳細不明。

 

05:???

詳細不明

 

06:GENESIC

破壊神を模したEXCEED。というか、まんまジェネシックガオガイガー。使い方は独自のものが多い。シャルロットに手を出したガン=ザルディの制裁に使用された。




パックにこんなのあったらいいなぁーってのがあれば感想まで。

感想等から
CVに犬飼貴丈(桐生戦兎)を追加


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オリジナル・改修系IS一覧

本作に登場するオリジナルISや改修機などのデータです。時々更新します


打鉄・改

 

雪兎が廃棄処分になっている打鉄の外装を回収し、束から貰ったコアを移植して改修したISで、実質的にスペックは2,5世代機に該当する。訓練機同様にパーソナライズされていないので誰でもIS適性さえあれば使える。

見た目は縁取りが紅い打鉄だが、中身は雪兎の手で大幅にアップデートされている。実は肩の非固定浮遊部位に隠しサブスラスターが内臓されており、初期の打鉄弐式並みの機動力がある。武器は対ビームコーティング刀が二刀とアサルトライフルが一丁。爆裂反応装甲シールドが一つ。主に紅椿入手前の箒が雪兎から借り受けて使用している。

 

 

打鉄弐式(雪兎監修版)

 

打鉄弐式を雪兎監修で大幅に改修したIS。雪兎がEVOLsystemを用いて大きく手を加えており、荷電粒子砲【春雷】は肩の非固定浮遊部位でなく腰部にサブアームで固定されており、二つの連結の仕方で広範囲殲滅モードと一点突破貫通モードに切り換えれるようになっている(もちろんそのままでも使える)。最大の特徴でもあったマルチロックオンシステムに対応した高性能誘導ミサイル【山嵐】は追加装甲にも同様のミサイルを内臓することで殲滅力を上げており、逃げ切るのは至難。追加装甲に【山嵐】用のミサイルと打鉄・改同様に追加サブスラスターを持つため機動力も高い。しかし、扱いにはかなりの技量を必要とし、雪兎の指導を受けた簪でもやっとのようだ。【春雷】の改修に用いたデータはバスターとセラヴィーの武装。追加装甲はパージすることも可能で、別の追加装甲なども雪兎は考えているようだ(ただ、拡張領域の関係で雪華のように瞬時に換装などはできないらしい)。

 

弐式専用パッケージ【白雷】

 

【山嵐】用のミサイルを内蔵した追加装甲を大型化し、荷電粒子砲【春雷】を大型化して砲身の下部にグレネードランチャーを追加した複合砲【白雷】に換装した砲戦型パッケージ。【白雷】の火力はチャージに時間がかかるがバスターライフルを上回る。チャージ中にもグレネードは射てるので、グレネードで牽制しつつチャージすることも可能。機動力は低下したが制圧力は増している。

 

弐式専用パッケージ【剣山】

 

ミサイルを内蔵した追加装甲の代わりにサブアームと大型ブレードを内蔵した追加装甲を装備し近接戦に対応させたパッケージ。全てのブレードが【夢現】と同じ高周波ブレードのため、このパッケージを装備した弐式に近付くのは無謀と言っていい。肩の非固定浮遊部位に追加されたブレードは鋏のようになっており、安全装置を解除していると相手を挟み切ることも可能というとんでも装備を持つ。また【夢現】を【F:フォートレス】のハルバートカノンと同じ砲撃槍【夢幻】に換装してある。肩の鋏状のブレードで相手を拘束して【春雷】を0距離で撃ち込むという戦法を行える。

 

弐式専用パッケージ【暴風】

 

追加装甲を機動力特化型に換装した高機動パッケージ。【B:ブレイド】や参式のスラスターや、【J:イェーガー】のウイングバインダーを参考に作られているためその機動力は正に暴風。ミサイルをバラ撒きながら高速飛翔するという戦術を得意とする。

 

 

打鉄・参式(通常カラー)

 

雪兎が打鉄・改を再改修したIS。白式や弐式、そしてベースとなった改の蓄積データと半ば冗談で組み込んだ超闘士の参式、参式斬艦刀のデータで魔改造されたIS。肩の非固定浮遊部位にスラスターと装甲の一体化したものを、背面には白式同様の大型スラスターを持つことで防御力と機動力を合わせ持つ。武装は改の対ビームコーティング刀が二振りとアサルトライフル、爆裂反応装甲シールドまでは同じだが、大型ドリルブースターアーム(ドリル部位が射出可)や参式斬艦刀を追加しており、大幅に強化された。特に参式斬艦刀は大型モードにすればその名の通り艦艇を一刀両断することすら可能というキチガイ武装であり、並みの操者では満足に振るうことすら叶わない。推進力が大幅に強化された理由もこの斬艦刀を振るうために行われたと言っても過言ではない。当初は箒がテストをしていたが、箒が紅椿を入手してからはコアとカラーリングを変更し、織斑千冬に預けられた。通常カラーは打鉄・改と同じくグレーに紅の縁取り。

 

打鉄・参式(千冬仕様、または親分カラー)

 

打鉄・参式のISコアとカラーリングを変更したIS。完全に千冬仕様となっており、箒の時につけられていたリミッターが外され完全体となった機体。カラーリングは親分カラーとも呼ばれる参式のゼンガー・ゾンボルトカラーで親分カラーに違わぬ活躍を見せる・・・・かも?本作でもトップ5で敵に回してはいけないIS。

 

 

不知火(打鉄のカスタム機)

 

打鉄を軽装にし、速度特化にカスタムされた機体。

とある企業があるISのデータを元に打鉄を改修した機体で、軽装化して容量を増した拡張領域から多彩な装備を取り出して様々な状況に対応するようにしている。第2世代機ではあるが、状況次第では第3世代にも匹敵する性能を持つ。形状は肩や腰回りを小型化したり軽量化した打鉄。色はダークグレー。

 

 

 

シルフィオーネ

 

天野雪菜専用機の天災お手製の第3世代IS。反射反応装甲というチートじみた装備により無類の速さを誇るISで、第3世代兵器は背面の非固定浮遊部位のリフレクションビット。背面のビーム攻撃をリフレクションビットによって反射させて行うオールレンジ攻撃が唯一の武装。反射反応装甲は受けた衝撃を任意の方向に弾くというもので、物理攻撃は反射反応装甲、光学兵器はリフレクションビットで反射することで無力化することができる。但し、扱いには高度な演算処理能力が必要で本作で扱えるのは束と雪菜くらいのもの。イメージは某学園都市最強のあの方である。なお、白式との相性はイメージモデルの方と某不幸少年並みに悪い。

 

 

ラファール・リヴァイヴ・カスタムEVOL

 

雪兎が所持するパーソナライズしていないもう一つのIS。ラファール・リヴァイヴのカスタムモデルの一種で、シャルロットのカスタムⅡ同様に固定武装を除いて拡張領域を増設した仕様。カスタムEVOLとつくようにEVOLsystemで改修したものらしく、パック換装システムを汎用化するテストベッドとして利用されている。そのため、基本スペックは通常のラファール・リヴァイヴとあまり変わらない。固定武装がカスタムⅡより少ないのと色が白に変更されているため別のISに見える。

見た目は背面の非固定浮遊部位のないラファール・リヴァイヴ。

パックは初期の雪華と同じく三種(雪華のものの簡易版)あるが色は全て灰色に統一してある。

時々一夏の特訓などで雪兎が使っているらしい。

 

 

ウェーブ・ライダー

 

雪兎がサーフボードから着想を得て開発したIS。専用の展開装甲武装【バイザーボード】を用いた高機動型万能機で擬似第4世代機という特殊な試作機。バイザーボードは白式の雪片弐型を参考にしており、複数のバイザーボードが存在することから紅椿と雪華の中間に位置するISでもある。バイザーボードは分離・変形・合体によって本機の武装になり、その姿を変える。初期のバイザーボードは近接戦用の【ソードダイバー】、射撃戦用の【シャープガンナー】、更なる高機動を目指した【ソニックレイダー】の三種。

モデルとなったのはエウレカのニルヴァーシュなど、アムドライバーのバイザーシステム、ヒュッケバインMk.Ⅲのガンナーとボクサー。カラーリングは白ベースに部分的な装甲がライトグリーン。

 

 

ナインテイル

 

特訓メンバーの中で専用機がないのが本音だけになってしまったので雪兎が本音に与えた特殊なIS。世代的には第3世代機だが、戦闘用というよりサポート用で紅椿のように速度は遅いがシールドエネルギーを譲渡できたり、戦闘中に味方を修理用ナノマシンで修理したりすることができるかなり変則的なIS。エネルギーの譲渡は背面の尻尾のような部分で行い、逆に吸収すらでき、これがこのISの第3世代武装【九尾】である。九本の尻尾を用いたオートガードやエネルギーの吸収・譲渡により味方のサポートに徹するが、タッグ戦などでパートナーに相手を拘束して貰えば一方的にエネルギーを吸収し戦闘不能にできるという反則スレスレな武装(吸収の上限が自身のシールドエネルギーの上限なので吸収も無限に出来る訳ではない)。その代わり拡張領域が【九尾】で埋まっており、追加武装は装備できず、攻撃武装は【九尾】のみというピーキーな機体になった。ラウラのレーゲンとはAICの特性もありパートナーとしての相性がいい。

見た目は狐の着ぐるみの延長線上のような姿だが、背面の【九尾】があるため初見のインパクトは凄まじい。

ネタとして作られたはずが高性能機になっている。

 

 

ラファール・リヴァイヴⅡS(スゴン・シャルロット機)

 

雪兎がリヴァイヴを改修して作り上げたシャルロット専用機。スゴンはフランス語の「第2」から二度目の再誕という意味で付けられた。雪華のデータを流用しており、世代は雪華と同じ3,5世代に当たる。

雪華同様に装甲切換に対応したISで性能的には初期の雪華と同クラスの性能を持ち、雪華とハードポイントの位置を同じにすることで雪華用に作られたパックを全て使用できるようにしてある。

また、拡張領域を更に拡張してあり、保有できるパック数は4。

ハードポイント以外のデザインはリヴァイヴを発展させたものにしており、カラーリングは雪華における【T:トライアル】に該当するパック【C:カスタム】時はカスタムⅡと同様のカラーリングだが、パック換装でオレンジの部分がパックのカラーに変化するようになっている。

【C:カスタム】はカスタムⅡと似た武装で背面に大型スラスター三基とサブアームが二基、左腕に【灰色の鱗殻】を改修した新型のシールド内蔵式リボルビング・パイルバンカー【一角獣の紋章(ユニコーン・クレスト)】を持ち、共通装備として雪華のソードライフルを発展させた二丁の専用のソードアサルトライフル【グリフォン】やカスタムⅡの時に使っていた武装の一部を継承している。【C:カスタム】だけでも十分に第3世代機と互角なのだが、装甲切換が可能であるため汎用性は高く、劣化版のパックを使用する量産試作機としてデュノア社に提出した劣化版のリヴァイヴⅡすら一対一でリヴァイヴを蹂躙できる性能を持つ。

 

【AG:アンジュルグ】

 

リヴァイヴⅡS専用のアドヴァンスド。女性的なフォルムの鎧を纏ったヴァルキリーを模したアンジュルグをベースにしており、弓からエネルギーを実体化させた矢を放てるイリュージョンアロー、ビームと実体化エネルギー刃を切り替えて使えるミラージュ・ソードを主兵装とする。必殺技であるファントムフェニックスは矢を不死鳥のように変化させて放つ攻撃で凄まじい威力を発揮する。初登場は別のSSとのコラボ中にその別のSS中でという異色なものだった。

 

 

 

ラファール・リヴァイヴⅡ

 

雪兎がデュノア社に送ったリヴァイヴⅡSの簡易版もしくは劣化版といえるIS。

リヴァイヴからの改修が容易であり、装甲切換を使用する量産試作機。その性能はリヴァイヴ自体が準第3世代機と呼ばれていただけに高水準でイグニッションプランへのトライアルにも食い込めるレベルの機体。普通のIS操者でも十分に扱えるが、高速切替持ちが用いるとその厄介さが跳ね上がるという。パックはタイプ1、タイプ2などとある程度簡易的な仕様らしく、雪華やリヴァイヴⅡSほどの高性能パックは再現出来ていない。タイプ1は【C:カスタム】の簡易版で背面スラスターが二基に減っており、【一角獣の紋章】はオミットして大型シールドを装備する。カラーリングはリヴァイヴと同じカラーで固定されている。デュノア社で作られた試作1号機は雪兎の元に送られ、雪兎が真耶用にカスタムした簡易パック・タイプSPを装備させて真耶に貸し出された。

タイプSPは原作10巻で真耶が使用したリヴァイヴのカスタム型と同様の仕様をパワーアップさせた鬼仕様。

 

 

ラファール・リヴァイヴⅡC(カテリナ機)

 

アレシアの姉・カテリナ用にカスタムされた青いリヴァイヴⅡ。CはカスタムのC。専用武装として双銃剣・大剣に組み換えれるヴァリアブル・リッパーを装備する他、全体的に性能を強化しているが、特にスラスター出力は大幅に強化されている。パックは基本のタイプ1の他に【J:イェーガー】モデルのタイプJ、【G:ガンナー】モデルのタイプGを搭載している。

 

 

甲龍専用総合強化型パッケージ【嵐龍】

 

雪兎が鈴の要望で作成した総合強化型パッケージ。左右の衝撃砲【龍咆】を取り外し、それを半分の大きさに縮小した【龍玉】を左右に三つずつ装備する。それを龍の腕を模したサブアームとワイヤーで制御する形でオールレンジ対応にした。【龍玉】は小型化されてはいるが、三基による連射や連動させることで【龍咆】よりも強力な衝撃砲を放てる。また、圧縮した空気自体を壁として射撃攻撃を弾く【嵐壁】や背面に回して衝撃砲をスラスター代わりにして加速できる疑似瞬時加速【龍翔】、六基全部を連動させて放つ最大威力の衝撃砲【覇龍咆哮】など衝撃砲を幅広く活用出来るようになっている。また、龍の頭部を模したアンカークローの付いた籠手【龍顎】が追加されており、これも衝撃砲の原理を利用した方法で射出できる。

【龍顎】はアルトロンのドラゴンハングをワイヤー式にしたもの。

 

煌龍

 

甲龍が二次移行したIS。その際に【嵐龍】を取り込んでおり、左右の小型龍咆【龍玉】が三つから四つに増え、背面には龍の翼を模した大型スラスターを得た。更に二本の大型青龍刀だった双天牙月は刀身が少し細身の刀刃になり鋭さを増した。

双刀【炎龍・氷龍】はそれぞれヒートブレード・コールドブレードになっており、翼状の大型スラスターには電撃を放つ機能が追加されており、【龍玉】を含め四属性を操る力・単一仕様能力【四聖龍】を発現している。煌はかがやく、きらめくを意味する。

 

 

ブルー・ティアーズ専用高機動射撃型パッケージ【エンジェル・フェザー】

 

雪兎がセシリアの依頼で作成した高機動型パッケージ。【ストライク・ガンナー】の欠点であったビットの固定化を解消すべく設計された。ビットをサイレント・ゼフィルスと同様の六基に増設し、背面の翼のようなサブアーム兼スラスターである【フェザーバインダー】にマウントさせている。スカート部分には追加スラスター兼シールドビットであるシールドブースターを二基装備する。ビットはマウントしたままでもサブアームを使って前面に向けて射撃が可能になっており、高機動型といいながら総合性能も強化されているが、その分扱いが困難になっている。また、ライフルもスターダスト・シューターを発展させ、実弾用の砲身をレーザー用の砲身の下に増設し側面の装甲を砲口部分にスライドさせることで槍にもなる【ランパードランチャー】までオマケで装備している。これにより高機動突撃という近接技まで使えるようになった。インターセプターは一々展開していては遅いということで両腕に籠手と一体化させる形で装備した。

【フェザーバインダー】はHi-νのフィンファンネルのマウントを。【ランパードランチャー】はヴァイスリッターのオクスタンランチャーとアッシュセイバーのハルバートランチャーを参考にしている。

 

ブルー・ティアーズ・ガブリエル

 

ブルー・ティアーズが【エンジェル・フェザー】を取り込んで二次移行した姿。翼状のビットマウントが大型化し、それに伴いビットも大型化。火力も当然上昇しており、かつてのスターライトmk.Ⅲに匹敵する。また、刃も備えて斬撃も行えるようになった。ランパードランチャーも槍の部分が大型化し、【LA:ライトニング・アサルト】のガングニールと同様に複数砲門を使った拡散攻撃も可能に(偏向射撃も可)。ガブリエルは四大天使の中で水の元素を司る天使から。

 

シュヴァルツェア・レーゲン専用高機動型パッケージ【アンシュラーク・シルト】

 

雪兎がラウラの依頼を受けて作成した高機動型パッケージ。アンシュラーク・シルトはドイツ語で「突撃盾」を意味する。右側にあった大型レールガンを外し、両側に可動式大型シールドブースターキャノン【リンドヴルム】を装備する。【リンドヴルム】には内蔵型レールキャノンがあり、また背面から伸びるサブアームに大型ガトリングガン【ゲヴィッター】を装備する。ラウラに合わせシンプルな強化だが、十分に強力なパッケージである。雪兎の遊び心で【リンドヴルム】には眼帯を着けた黒い兎のイラストが描かれている。

【リンドヴルム】は飛竜、【ゲヴィッター】は大嵐を意味する。

参考にしたのは兎の部隊章繋がりでTR-6のシールドブースターキャノンなど。

 

シュヴァルツェア・レーゲン・インレ

 

シュヴァルツェア・レーゲンが【アンシュラーク・シルト】を取り込んで二次移行した姿。両肩のシールドブースターキャノンに大型レールガンが融合して大型化。眼帯の部分にスカウターのようなものが追加され、ヴォータン・ルージェ発動時に限るが、ワイヤーブレードの先からAICを展開出来るようになっている。更にそのワイヤーブレードに高周波振動を加えることで切断能力までも付与している。また、二次移行時に雪兎のデータベースからTRー6のデータを参照してバージョンアップしており、追加装甲形態のモード・インレと高機動形態のモード・ハイゼンスレイに切換が可能。他にもTRー6関連の装備を持つ。インレとは児童文学作品【ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち】にあるうさぎ語で月を意味する単語。

 

 

フッケバイン

 

凶鳥の語源となった烏の名を冠するマドカ専用機。

本来はマドカの自衛用だったのだが、マドカの要望と雪兎がかなり自重せず組んだためとんでもISとなった。高機動型で背面に専用マルチウエポンバインダー【レーヴァテイン】を持つ。その他の武装はファングスラッシャー×2、ビームブレード×2、ソードライフル改【レイヴン】、ダブルハンドガン【ヴァイス&シュヴァルツ】、高周波ダガー【ドラグバイト】×4、小型シールドブースター兼ソードガンビット【ソードブレイカー】×4、腕部内蔵型アンカーショット【スティンガー】等と多彩で、特にマルチウエポンバインダー【レーヴァテイン】は背面では大型スラスター、武装としては大剣、双剣、レーザーキャノンになり、バイザーボードのように乗ったり出来る複合兵装。

マドカの能力と相まって並み代表候補生では相手にならない実力を発揮する。黒騎士より相性がいいらしい。

カラーリングは黒、赤、金のトロンベカラー。

デザインは凶鳥の眷族であるエクスバインにタクティカルアームズを背負わせたような機体。

 

 

月光

 

ミュウ専用に作られた兎用IS。サイズは普通の少女と変わらないサイズだが、脚部は高周波ブレード、推進装置内蔵機械鎚【ラビット・スタンプ】など近接格闘特化した武装を持つ。

 

 

白牙

 

神宮寺晶専用機として開発されたIS。白虎を模したISで腕にあるナックルガードによる打撃、収納式の高周波爪による斬撃、掌の砲口から放たれる龍咆を参考にした圧縮空気砲、人でいう脛の部分のブレードを用いた蹴り等を主体とする近接格闘型。また、背面に二基の大型可動式スラスターと尻尾型の多層スラスターを持ち、複雑な高速移動を可能にしている。零距離で放つ圧縮空気砲である【虎咆穿】は戦車くらいであれば軽く吹き飛ばしてその装甲を丸めた紙屑のようにしてしまう威力を持つ。【S:ストライカー】と【B:ブレイド】がベース。

 

 

ガト・グリス(灰猫)

 

エリカ=ピーリ専用機。機動力を損なわない大きさのクローアンカー内蔵シールドと銃身が折り畳み式になっていてスナイパーライフルとアサルトライフルを切り換えて使用出来るマルチレンジライフルを主に各ハードポイントにスラスター付きミサイルポットや索敵用のレドームを装備している。また、マドカの【フッケバイン】のヴァイス&シュヴァルツを元に作成した短双剣タイプのソードライフルとも言えるガンブレードや超遠距離狙撃用電磁投射式オーバーレンジライフル【アルテミス】等を装備する。【G:ガンナー】と【J:イェーガー】のデータを元にしている。

 

 

ロッソ・アクイラ(赤い鷲)

 

アレシア=ロッタ専用機。剣を用いた近接斬撃仕様。籠手に内蔵されたアームブレードや楯無も使っている蛇腹剣、リヴァイヴⅡにも装備されているソードライフル【グリフォン】の派生系で銃身の下に弧を描くように刃が付けられた双銃剣【アクイラ】、投擲用遠隔操作武器のヒートチャクラム、鋭い刃のような翼状のシールドとスラスターの役割も持つ【カッポット・ディ・アーラ(イタリア語で翼の上着)】など近・中距離系の武装中心。【J:イェーガー】と【B:ブレイド】のデータを元にしている。

 

 

リリコンバージュ

 

カロリナ=ゼンナーシュタット専用機。リリコンバージュとはスウェーデンの国花であるドイツ鈴蘭のことで、花言葉は純潔、純愛、幸福の訪れを意味し、花と実にコンバラトキシンという毒を持つ。このISの特徴は背面にあるサブアームで大型の複合武装シールド【ストール・ブラード(大きな葉)】で、背面では大型スラスター、シールドとしては表面にバリアフィールドを展開可能で、そのバリアフィールドを利用したバリアフィールドタックルやブレード状にバリアを展開したバリアブレードとしても利用できる。その他の武装としては左腕と一体化している複合武装【グスタフ】を持つ。その構成はシールド、サブマシンガン、レーザーブレード、杭を射出することもできる小型パイルバンカーの四つ。他にもアサルトライフルと槍を組み合わせたショットランスを装備しており遠近のバランスの良い機体。【S:ストライカー】と【F:フォートレス】のデータの流用機。

 

 

白式・白鳳

 

白式が雪兎の開発した無人コア内蔵自律型追加補助外装【白鳳】を取り込み三次移行した姿。

デュアルコアによる高出力化、雪片弐型の強化系である【煌月白牙】と小太刀になった【雪片参型】や雪羅も強化され【雪羅弐型】に、更に零落白夜を応用した攻防機一体兵装エナジーウイング【新月】など雪兎の想定外のキチガイIS化した。また、本来の第3形態である【ホワイト・テイル】に発現する真の単一仕様能力【夕凪燈夜】も発現しており、紅椿の補助無しでも無双出来る機体になってしまった。

自律型追加補助外装である【白鳳】は分離して一夏のサポートまで可能。白式本体の外装も一夏が八葉一刀流を学んだせいか灰の機神【ヴァリマール】に近いものに変化している。まだ一夏が未熟故に本来のスペックを引き出しきれていないが、雪兎曰く「乗りこなせるようになったら最終形態の紅蓮とアルビオンを越えんじゃね?」とのこと。【白鳳】のコアの人格はイタズラ好きの甘えん坊。

 

 

ワンダーランド

 

束用の自衛兼工作補助用IS。不思議の国のアリスに登場するキャラクターをごちゃ混ぜにしたようなデザインのISで多目的ナノマシンと重力制御、八本のサブアームを持つ。第4世代相当のISで兎師弟の合作という悪夢の機体。雪兎曰く「ターンシリーズとグランゾンと天竜神の複合機」というキチガイコラボしたこの作品で敵に回してはいけないISの一つ。

 

 

(ハガネ)

 

雪華や打鉄シリーズをベースに開発した量産仕様IS。装甲切換に対応したISで近接仕様【村正】狙撃仕様【種子島】装甲強化仕様【防人】高機動仕様【隼】のパックを持つ。また、四種のパックをフル装備した【武神】という形態も存在するが、並みの搭乗者では扱えない。指揮官機として【白銀(シロガネ)】、隠密仕様機として【黒鉄(クロガネ)】というバリエーション機が存在する。本機は主にIS学園用として配備され、後に自衛隊にも配備される。

 

 

風舞

 

蘭用に雪兎が作成したIS。風舞の全長と同じサイズの巨大な扇状の専用装備【風神】を二つ持つ。【風神】は衝撃砲を応用したもので、表面に風を圧縮・解放する事で風を操り鎌鼬や竜巻等を発生させる事も出来、強度も優れるため打撃武器としても利用可能。一応、第3世代機に該当する。元々は蘭がIS学園に入学した際に渡すように作っていたが、アムドライバーの世界に転移したため蘭の護身用にと予定を前倒しして完成させた。

外装のイメージは巫女。待機形態は髪留め。

 

 

第2部以降登場IS

 

エクストリーム

 

プロジェクト・フロンティアにて開発された第4世代IS。その最大の特徴はEVOLsystemを内蔵しており、常に装備の追加・改修が可能というとんでもIS。聖剣事変後に作成され、3人目の男性操者の専用機となる。モデルはエクストリームガンダム。

 

 

テスタメント

 

エクストリームと同時期に開発された第4世代IS。エクストリームとは異なりテスタメントは雪華や白式、リヴァイヴⅡ等から得たデータを元に開発した自律型追加補助外装を複数使い分けるタイプのIS。

 

 

 

 

その他

 

EVOLsystem

 

雪兎が考案し束が形にした雪兎専用ツールその1。

雪兎が入手したデータを最適化し、新たな武装やパックを設計する雪兎を支えるトンデモツール。

原作キャラが酷い目(メタ張られる)のは大体コイツのせい。

 

storage&factory

 

雪兎専用ツールその2。

余剰のパックや材料などストレージできる電子端末。

EVOLsystemで設計した武装やパックをストレージ内の材料で組み立ててしまう代物。二次移行などでISが増築改造するのを参考に作ったと思われる。

雪兎がポンポン新しいパックを取り出せたり、打鉄弐式があっさり完成したのはコイツが原因。

 

storage

 

雪兎のstorage&factoryのstorageの機能だけを持つツール。シャルロットのリヴァイヴⅡS用のパックや簪の弐式専用パッケージを格納する用に雪兎が作ったもの。

 

 

おまけ

 

蒼龍

 

雪兎がINFINITE・CROSS-Zの万城龍我用に開発した専用機。

武装は普段は両肩のアーマーになっているネイルグローブで、ブースターが内蔵されており、ロケットパンチ、ブーストパンチが可能。また、変形してドラゴンモードとボードモードになる事が出来、両方ともクローズとなった龍我のサポートが出来る。

ドラゴンモードはクローズドラゴンとリンクしており、クローズドラゴンが操作出来るようになっている。また、腰のアーマーの横にフルボトルを差すスロットがあり、フルボトルを装着する事でそのボトルの力を使う事も出来る。




今後も随時追加していく予定です。


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オリジナルキャラ設定

雪兎以外のオリジナルキャラの設定です。

順番は登場順です。


天野雪菜:あまのゆきな

身長:165

体重:60

誕生日:10月10日

趣味:カラオケ、雪兎の料理を食べること

苦手なこと:料理、家事

イメージCV:川澄綾子

 

雪兎の実姉。両親が既に他界しているため、金銭的に天野家を支えていた。しかし、雪兎も束の弟子となり自分で稼ぐようになったため次第にISの事以外は駄目姉になりつつある。唯一の肉親である雪兎を溺愛しており、基本的に余程のことがない限り雪兎の頼みは断らない。IS操者としては適性:A+で高速の妖精の二つ名を持つトップレーサーでもある。現在はIS学園に教師として赴任している。専用機は束の作成した第3世代IS【シルフィオーネ】

容姿は焦茶色のポニーテールでイメージはBLAZBLUEのマイ・ナツメ

 

 

 

宮本聖:みやもとひじり

身長:159

体重:?

誕生日:12月7日

趣味:お菓子作り、ぬいぐるみ集め

苦手なこと:激しい運動

イメージCV:種田梨沙

 

1年2組に所属する生徒。学年別タッグトーナメントにて原作の箒に代わりラウラのパートナーを勤めた少女。最初はラウラとパートナーになったことを不幸に思っていたが、最後は雪兎のバスターライフルの一撃からラウラを庇い、ラウラを改心させるという偉業を成し遂げた。その後、ラウラと友人となったのをきっかけに雪兎達と交友を深めることになる。

両親がパティシエで本人もお菓子作りが趣味だがIS適性がA-だったことでIS学園に入学することになった。

成績は平凡ではあるものの状況判断能力は高く、覚悟を決めた時の行動力は専用機持ちに匹敵するものを持っている。雪兎達との特訓に参加してからは実力を上げており、ランク戦などでは場合によっては専用機持ちに勝つことすらある。

箒が紅椿を手にし、参式が千冬の手に渡ったことで雪兎の試作ISのモニターをすることになり、専用機持ちのいざこざに巻き込まれていく。

乗機は最初は打鉄、後に雪兎の試作IS【ウェーブ・ライダー】を使う。

容姿はスパロボZのセツコを黒髪にし、丸眼鏡を着けた感じ。

後にクラス再編により1組に編入した。

 

 

二村千春:ふたむらちはる

 

某ブランドの服飾デザイナー。雪兎が雪菜の代表候補生としてのモデル仕事の付き添いで出会った女性。

雪兎と結託してシャルロットの着せ替えショーで店の売り上げを上げるような強かな面を持つ。

 

 

棗忍:なつめしのぶ

身長:168

体重:?

誕生日:1月10日

趣味:天体観測

苦手なこと:恋愛関係

イメージCV:水瀬いのり

 

IS学園に通う二年生で、雪兎のスポンサーをしている企業の社長令嬢。雪兎とはビジネスライクな関係ではあるが、出会いはナンパされていた忍を雪兎が助けたのがきっかけ。企業は宇宙開発系の事業をしており、雪兎の協力によりISを二機所有している。束のISの開発目的であった宇宙開発に賛同しており、軍事転用や女性権利主義者がISを我が物顔で使っていることを嫌悪している。女性ではあるが女性権利主義を否定している。企業所属のIS操者でもあり、実力は二年生の中でも楯無には劣るがトップクラス。企業の持つISの一機を専用機として与えられており、使用機体は打鉄のカスタム機である【不知火】

容姿は肩までの黒髪で後ろの一房だけ尻尾のように長く束ねている。

 

 

ミュウ

 

白いロップイヤー(♀)

好きなもの:人参、雪兎、束、クロエ、マドカ、お昼寝、特訓メンバー(鈴を除く)

嫌いなもの:鈴、お昼寝の邪魔をするやつ

 

束から雪兎が預かったスーパー兎。人語を理解し、兎とは思えないスペックの運動神経をしており、対人格闘までこなすUSAGIである。

名前の由来はミュータントな兎から。

意識表示は思ったことを表示できるプラカードなどで行う。

その愛らしさから来て数日で1年1組のマスコットの座を獲得する。

鈴とは初対面の時に色々あって敵視している。

 

兎のくせに専用機まで持っているらしい。

 

 

神宮寺晶:じんぐうじあきら

身長:162

体重:?

誕生日:9月1日

趣味:運動全般、格闘技、プロレス観戦、動物観察、編み物

苦手なこと:勉強(主に文系)

イメージCV:花村怜美

 

元2組でクラス再編の際に1組に編入した空手部の次期エースと評される少女。その近接格闘能力は雪兎やラウラからも絶賛されるレベル。空手部に所属してはいるが空手に限らず様々な格闘技に精通しており、それらを複合した総合格闘技を主体とした戦闘スタイルを取る。意外にも可愛い動物等を好み、休日には動物園に通っているらしく、ミュウとも仲が良い。また、手先も器用で編み物も得意なんだとか。

 

 

エリカ=ピーリ

身長:155

体重:?

誕生日:8月30日

趣味:射撃、料理、園芸

苦手なこと:絵

イメージCV:藤田咲

 

スペイン出身。元3組の生徒で専用機は持ってはいないもののクラス代表だった生徒で実力は十分なのだが、国の国家代表が去年代替わりしたばかりなので国家代表よりはプロジェクト・フロンティアの方が活躍の場があると判断して志願したらしい。料理は素材から拘るタイプで、野菜やハーブ等は自分で育てている。

 

アレシア=ロッタ

身長:157

体重:?

誕生日:5月4日

趣味:食べること、園芸

苦手なこと:食事制限

イメージCV:佐藤聡美

 

イタリア出身。簪と同じ4組の生徒で明るい印象の娘。戦闘スタイルは二本の短剣による近接格闘。二つ上の姉であるカテリナも代表候補生でその筆頭らしく、姉とは違う道に進みたいと志願したんだとか。特技は大食い。エリカとは元々園芸部仲間でアレシアは花を好んで育てている。

 

カロリナ=ゼンナーシュタット

身長:142

体重:?

誕生日:月日

趣味:機械弄り、プログラミング

苦手なこと:早口言葉

イメージCV:野村真悠華

 

スウェーデン出身。5組から来た生徒で先の二人はそれぞれ前衛・後衛型なのに対しどちらもこなすバランス型。口数が少なく、また表情の変化も少ないので手を動かしたりして感情表現を行う。代表候補生ではあったが雪兎が作るISやパッケージ類に興味があるらしく、整備・開発方面でも色々学べるかもしれないと志願したとのこと。先日の体育祭ではコスプレリレーで着ぐるみを着ていたらしい。ちなみに鈴やラウラより身長が低いせいで小・中学生と間違われるのが悩み。雪兎に弟子入りし、アムドライバーの世界でジョイやジャックと知り合った事で完全に雪兎の同類と化す。本音とは親友。

 

 

コラボゲストキャラ

万城龍我:ばんじょうりゅうが

身長:175

体重:69

誕生日:?月?日

趣味:バッティングセンターで打ちっぱなし

苦手なもの:頭を使うこと

イメージCV:.赤楚衛二

 

概要

『INFINITE・CROSS-Z』における主人公。改造手術を受けている途中に何故か目を覚まし、逃走する途中でISを動かしてしまいIS学園に入学する。

改造手術を受ける以前の記憶が一切なく、ポケットに入っていた名前だけ書かれた身分証明書から彼が万城龍我という名前であることが発覚した。

熱血で感情の起伏の大きい性格をしており、こう見えて割と責任感がある。また、かなり馬鹿でデリカシーがなく、そのせいで周りを呆れさせることがしばしばある。

かなり喧嘩っ早い上に思い込みが激しく、始めて雪兎と遭遇した時も勘違いから喧嘩をふっかけた。

オープンな本人とは反してかなり謎が多く、未だイマイチ分かっていない事が多い。

炊事、洗濯、掃除などの家事スキルは壊滅的で、一人暮らしを始めたら即座に死んでしまう。

 

専用機:蒼龍

詳しくはオリジナル・改修系IS一覧を参照。

 

変身ライダー:仮面ライダークローズ

身長:197.0cm

体重:109.9kg

パンチ力:27.6t

キック力:33.7t

ジャンプ力:57.7m(ひと跳び)

走力:3.2秒(100m)

 

変身方法

絡繰り仕掛けの小型ドラゴンである『クローズ・ドラゴン』の背中に『ドラゴンフルボトル』を挿し、それを『ビルドドライバー』に装着してハンドルを回して変身する。

 

戦闘スタイル

ボクシングとプロレスを足して2で割ったような、インファイト主体の戦闘スタイル。

身体能力自体は中の上程度ながらも、常人離れした反射神経と判断能力や周りの物を使って即席の武器を作ったりして戦う。(例としては、鉄パイプや自動販売機)

龍我は記憶が全くないのだが、それでもこれだけ戦うことが出来ることも大きな謎のひとつになっている。

 

 

 

 

第2部以降の登場人物

 

天野紫音:あまのしおん

 

雪兎達がとある違法施設で保護した中性的な容姿をした少年で第3の男性IS操者。施設に入れられる前の記憶が無く、行く宛がなかったため雪菜が保護観察者となり、IS適性が発覚した事でIS学園に入る事になる。記憶に関しては半ば諦めており、過去よりも現在を重視している。紫音という名前も記憶と共に名前を失っていたので雪兎が付けたもの。第2部において雪兎と並ぶ第2の主人公。

容姿はリリカルなのはシリーズのトーマの髪を少し長くして薄紫にした感じ。

使用ISはエクストリーム。

 

 

イクス=シアハート

 

新一年生首席合格者の少女。真面目な優等生タイプだが、押しに弱く流され易い。しかし、これと決めたことは絶対に曲げない頑固さも合わせ持つ。イギリス出身でセシリアとは旧知の仲。

容姿はPSO2のマトイを金髪にしたもの。

使用ISはテスタメント。

 

 

新藤レオン:しんどうれおん

 

母親が日本人とアメリカ人のハーフでクォーターの少年。父親は既に亡くなっており母親も病気がちで入院していて生活費をバイトで稼ぐ苦学生だったが、IS適性が見つかりIS学園に入学する第4の男性操者。人前では常に明るく振る舞ってはいるが、根は寂しがり屋。紫音とルームメイトになり親友になる。

容姿はBLACKCATのトレイン。

使用ISは黒雷。

 

 

ルーク=ファイルス

 

福音の操者・ナターシャ=ファイルスの実弟。聖剣事変後に姉や家族と共に日本に渡り、IS適性が発覚した事でIS学園に入学することになった第5の男性操者。姉の通じて雪兎達と面識を持つ。

容姿はテイルズオブディズニーのリオンを金髪にし、表情を少し柔らかくした感じ。

使用ISはシルバリオファング。




こちらも時々データを更新します。


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オリジナルIS設定・募集系

以前にアンケートで募集したオリジナルISを修正等を加えたものの設定です。これらの機体は主に第2部(2年目)から登場予定です。

投稿してくださった方々にはここでお礼申し上げます。

投稿された上達

修正案

作者と雪兎の解説

となっております。


投稿者 ムリエル・オルタ さん

IS名 シュヴァルテァ・ローズ(和名 黒い薔薇)

開発元 ドイツ

特徴 スラスター部分に増設されたジャマーシステムや実弾とBT兵器の併用

武装 ロケットランチャー付きビームサブマシンガン

   ビームマグナム

   ガトリングガン(実弾)

   6連装マイクロミサイル

何世代機 第3.5世代(白式とは別次元だが)

単一仕様能力 デストロイモード(展開装甲 色は金色)注意:使った場合絶対防御では防ぎきれないGがかかるため、非常時以外は使いたくない。

パッケージ フルアーマーパッケージ(実弾ビーム兵器がてんこ盛り)

      バンシェパッケージ  

      緋の鮮紅(Florid Scharlach)

参考 ガンダム(シナンジュ、ガンダムユニコーン、ガンダムユニコーンバンシィ、ヤクトドーガ(武器)、ローセン・ズール)

 

修正案↓

IS名 黒雷

開発元 欧州・PF(プロジェクト・フロンティア)共同

特徴 対誘導兵器試験用武装と誘導兵器の両立

武装 変更はガトリングガンが実弾・ビーム混合

単一仕様能力 電光石火(雪華の極限化の速度特化版)

パッケージ アーマードタイプG(フルアーマーユニコーン)、アーマードタイプV(バンシィ、バンシィ・ノルンのアーマード)

説明 イグニッションプランとの合同開発機。フランスのリヴァイヴⅡ、ドイツのシュヴァルティアシリーズ、イギリスのBTシリーズ、イタリアのテンペスタ等の欧州諸国のISの技術とPFの技術を結集したイグニッションプランの集大成と言える機体。聖剣事変後に開発された機体だが、最大加速に並の操者では耐えられない事が判りPF預りとなる。後に四人目の男性適合者に高い耐G適性があったため、彼の専用機として提供された。

 

解説

 

雪兎「まんまユニコーンシリーズの複合型って感じのISだな」

 

作者「面白そうだったのでイグニッションプラン関連機にしてみた」

 

雪兎「コンセプト的に混ぜるとそんな感じになるんだよなぁ」

 

作者「この機体には第2部に登場予定の新たな男性操者の三人組の一人に使わせる予定だ」

 

雪兎「ああ、あの後輩達か・・・・ちなみにその内の一人には俺の試作機に乗ってもらう」

 

作者「最後の一人のは丁度良さそうなのが他の投稿にあったのでそっちの時に説明する」

 

 

 

投稿者 上海・人形 旧桜花繚乱 さん

IS名 WF(ホワイトフォックス) 和名 純狐

開発元 プロジェクト・フロンティア

世代 第3世代

特徴 普段は緑の機体に薔薇のツルが巻き付いていて、赤いヘッドセット

単一仕様能力時に全身の装甲が銀と紫の間の様な色になり機体性能が3倍から5倍になるが、精神状況によって上下する

見た目は頭以外の全てが銀と紫の間の様な色になり、ヘッドセットから銀色の糸状センサーが髪

の様に伸び、腰くらいまでの長さがある

単一仕様能力 妖狐純化 装甲が全て淡い紫の着物になる(防御性能が倍程)

深緑にピンクの斑点のラフレシア型大型シールドビットを4機、オジギソウ型モーニングスター、鳳仙花型レーザービットが追加

使った後は反動で全身筋肉痛になる

武装 薔薇のツル型鞭 名称薔薇鞭(ローズウィップ)

竹型レールガン 名称竹砲 (バンブーレール)

ドングリ型砲弾 名称団栗弾(エイコーンシェル)

オナモミ型榴弾 名称枲耳弾(カカルバルハゥイトゥサ)

単一使用能力発動時

ラフレシア型耐ビームシールド 名称魔界のラフレシア(デモンズラフレシア)

ラフレシア型耐実弾シールド 名称冥界のラフレシア(アンダーラフレシア)

オジギソウ型モーニングスター 名称魔界のオジギソウ(デモンズミモザ)

ホウセンカ型レーザービット 名称魔界のホウセンカ(インペイションビット)

 

修正案↓

 

IS名 ミステリアス・ガーデン

特徴 植物型の誘導兵器や近・中距離武装を使用する特殊型。部分的にフェイズシフト装甲を採用しており、機体出力の調整でカラーリングが変化する。他にも対実弾・対ビームの積層型シールド等、防御に秀でた性能を持つ。

単一仕様能力 月下ノ華園 一定時間機体出力を上げ、一部の武装の特殊機能を解放する。また、機体出力の向上によりフェイズシフト装甲のカラーも変化し、一部の装甲が可変する。火事場のクソ力みたいなものなので長時間の使用は機体・操者共に大きな負担となる。

説明 とある新入生用に雪兎達によって開発されたIS。攻めよりも守りに特化した性能を持つが、単一仕様能力を使えば攻勢にも回れる。

 

解説

 

雪兎「幽白の蔵馬をモチーフにしたISとの事だ。武装も植物が元なものオンリーとユニークなコンセプトな機体だった」

 

作者「名前はナインテイルと被りそうだったのでこちらで変更しました」

 

雪兎「単一仕様能力に含まれてたカラーチェンジはフェイズシフト装甲で再現する事にしたが、名前と単一仕様能力以外はあまり変更点はなかったな」

 

 

 

投稿者 アサルト さん

IS名 白牙試作型(試作兵装搭載型)

開発 メタルグリフォン社

特徴 全身装甲の機体でスラスター背中と脚部に搭載されており、特に背中のスラスターはバックパックを搭載して巨大になっている、また、特殊な耐熱対弾装甲をつけたため防御力と高機動の確保に成功したが機体自体かなり大型化しておりコストがかなり高い機体になった

武装 30mmマシンガングレネードランチャー搭載型 (実弾)

152mmガンランチャー改修型バズーカ(様々な特殊弾頭が搭載できる)

20mm対空シェルカノン(背中の巨大スラスターに2機ほど固定装備としてついており簡単に言えば自動照準で散弾が近接信管のショットガン)

試作プラズマカノン(右腕に搭載しており、射撃にしたり剣の形にして格闘に使用することも可能だがエネルギーは独立型のバッテリーであまり長く使えない、エネルギーが切れた場合はパージすることが可能)

ヒートチェーンソー

サブアーム二本(本来は武装交換など戦闘サポート用だが格闘にも使用可能になっている)

単一仕様能力 高速演算戦闘モード

背中のバックパックに搭載された小型スーパーコンピュータにより敵の動きや弾道を高速で演算したり、それによる武器の適材適所の対応を高速でできるようになるシステム(搭乗者からは敵の動きや周りの動きがスローモーションに見えるようになる)

使用後は背中のバックパックの一部が開きそこから排熱する

モデル 頭部ジム・ストライカー

胴部オーバーウォッチのバスティオン

脚部陸戦型ガンダム

背中のバックパックガンダムmk-2

を参考にしている

設定 本機はもともと新型のEOS「H.A.C.S」を開発するための試作機だったが女性権利者の圧力によりISに路線変更せざる得なくなった機体でもともと拡張性が凄まじかったためか八つ当たりの感じで様々な機能を搭載した結果リミッターつけた状態で第3.5世代の性能を持つことに成功した

なお本機を開発した企業はこれらのデータをもとにまだ「H.A.C.S」をまだ作る気でいる模様。

 

修正案↓

 

IS名 シルバリオファング

開発元 アメリカ(メタルグリフォン社)

説明 元々は京都にて雪兎達に破壊され国連に提出された機械戦乙女(マシナリー・ヴァルキュリア)の残骸をメタルグリフォン社が解析し試作していたEOS。だが、支援者の女性権利主義者達の圧力でISに仕様変更を余儀なくされた機体で、全身装甲からISに改修した際にいくらか装甲を削ってはいるが通常のISに比べて装甲が多く機械的なイメージが強い。ISコアと操者の脳波を連動させ高速演算を行い、最適解の行動を指示したり、高速思考を補助する【エニグマ】(雪兎曰く劣化ゼロシステム)という機能を搭載しており、ISコアとの相性次第ではシルバリオ・ゴスペルすら圧倒出来るらしい。武装はほとんどが試作品ではなく既存の量産物で、試作品は試作型プラズマチェーンソーや試作型プラズマガンのみ。サブアームやフレキシブルスラスター等の装備も充実している。メタルグリフォン社はこの機体の運用データから新たなEOSを開発するつもりらしい。しかし、皮肉にも本機は聖剣事変後にアメリカのとある国家代表(ナターシャ)の弟・・・・つまり男性操者が使用する事になる。

 

解説

 

作者「ぶっちゃけ、コイツの修正案が一番難産だった」

 

雪兎「一番修正したからな、コイツは・・・・しかも、コイツに関しては俺も開発にはノータッチだしな」

 

作者「ちなみにこの世界ではシルバリオ・ゴスペルのアメリカ側の開発責任者がこのメタルグリフォン社になるから機体も操者の姉弟・姉妹になるんだわ」

 

雪兎「これ書いてる時点では俺もナターシャさんとは面識無いんだ。それに俺はアメリカと仲悪いし・・・・この辺に関しては元の世界に帰還後の聖剣事変で語ると思うからお楽しみ」

 

作者「ハードル上げんな!まあ、原作の聖剣編に相当する聖剣事変が原作よりかなり大事になる予定です。ナターシャとその弟君もそれに巻き込まれる形でIS学園に関わる事になります」

 

雪兎「今ある構想だけでも結構大事だな」

 

 

投稿者 武御雷参型 さん

型式  RCWI-X001 プラテストゥ

武装  20口径50㎜単装砲 二基

    15口径90㎜散弾銃 一基

    対IS用六連装ミサイルポット 二基

    レーザー重斬刀 一振り

量子変換武装

    六銃身ガトリング砲 四基

型式については某国機業を英訳した結果、Ruined Country Weaving Industryの頭文字を取って使っています。

機体名については、英訳で抗議を意味します。

武装については、ディンを基に構成し、ミサイルに関しては、ザクファントムを採用しています。レーザー重斬刀については、シグーディープアームズを使っています。六銃身ガトリング砲に関しては、シグー専用アサルトシュラウド装備の物を流用しています。

 

最後に、機体のモチーフになったのは、ゲイツRです。

ゲイツRの腰部に装備されているレール砲を単装砲に載せ換え、基本武装として散弾銃を持つと言うスタイルです。

レーザー重斬刀は、折り畳み式の物を採用し、腰部後方に横付けされています。

ミサイルポットは、バックパックとしてスラスター一体の物です。

六銃身ガトリング砲を装備時は、散弾銃が量子変換され、両腕、両肩部に二基づつ装備される形です。

単装砲は、アサルトシュラウド装備時にも使えます。但し、レーザー重斬刀は使えません。と言うか、取り外せないです。腕にガトリング砲が付いてるんだもん。引っ掛かるしね

 

修正点↓

 

IS名 抗議する天秤(プラテストゥ・リブラ)

追加装甲が最初から装備に変更し途中でパージ出来るようにした。

 

解説

 

雪兎「これは元々メッセージをくれた武御雷参型さんに依頼して作成してもらったISだな」

 

作者「なので変更点も名前と追加装甲の使い方くらいなんだわさ」

 

雪兎「本編では山田先生のリヴァイヴⅡにやられてあんまし強敵感なかったけど、一夏達とだったら優位に立てたんじゃね?」

 

作者「そうだね、相手が・・・・間が悪かったんだよ」

 

雪兎「コイツに関しては聖剣事変辺りでもう一度出てくる予定らしい」

 

作者「残りの星座の連中も出さなきゃ・・・・」

 

雪兎「・・・・がんばれ」




こちらも増えたら更新していきます。


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アムドライバー編登場人物とオリジナルメカ

アムドライバー編の設定です。
説明文の長さの内容は作者の独断と偏見を含みますので、詳しく知りたい方はググって下さい。

先程、書きかけの話を間違って投稿してしまいました。申し訳ありません。


アムドライバー編登場人物

 

ジェナス=ディラ

アムドライバーの主人公。熱血漢で民間人を救うアムドライバーを志すいかにもな主人公キャラで、近接系の装備を得意とする。口癖は「やっちゃるぜ!」「GET RIDE!」「撃っ!」など。熱くなると周りが見えなくなる癖があるものの、ピュアアムドライバーのリーダー的存在となる。シーンの死でロシェットに対し殺意を抱くも、その殺意溢れる自身の姿に自己嫌悪に陥るが、ゼアムの力で容易く人を消すガン=ザルディの姿を見てかつて憧れたガン=ザルディを打倒する事を決意する。そのガン=ザルディとの最終決戦ではイヴァンの決死の一手でフルゼアムを完成させガン=ザルディとの死闘に勝利した。

 

ラグナ=ラウレリア

ジェナスと同じスクール(養成所)出身のアムドライバー。ジェナスとは反対に射撃を得意とするスナイパー。チャラい印象があるが、心優しい一面を持つ。アムドラサポーターであり、工作員だったシシーと恋仲になるも、直後にロシェットにシシーを殺され復讐に走ろうとするが失敗。その後、一時離脱するも自分の護るべきものを思い出し戦線に復帰した。

 

セラ=メイ(メイナード)

ジェナスやラグナと同期のアムドライバーの少女。

兄・ジョナサン=メイナードの死に疑念を抱き、その真相を知る為にアムドライバーなった。原作ではエーリックを誤って殺してしまったり、恋仲となったシーンを殺されたりと多くの死と向き合わされる。

 

シーン=ピアース

ジェナス達が所属していたキャンプ・リトルウィングのNo.1アムドライバー。最初はキャシーに言われるがまま人気取りの為のバトルをしていたが、ディグラーズとの戦いに敗れ挫折を味わうもジェナス達や途中で知り合ったニコラのおかげで立ち直りジェナス達のいい兄貴分となった。キャンプではロシェットとK.K.と共にユニットを組んでいたが、ディグラーズによってキャンプ崩壊後はジェナス達と行動を共にする事となり、キャシーと共にJAに寝返ったロシェット達とも敵対する事になる。原作ではキャシー達との決戦の最中キャシーを説得中にキャシーもろともロシェットに刺され死亡。ピュアアムドライバー唯一の戦死者であり、その死はジェナスやセラは勿論、ピュアアムドライバーとその協力者達に大きな傷を残した。

 

ダーク=カルホール

タフトとコンビを組むベテランアムドライバー。若手ばかりのピュアアムドライバーのまとめ役。打撃等の近接戦闘を得意とする。暴走しがちなジェナス達のストッパー。戦闘中はやたらと擬音を多様する。

 

タフト=クレマー

ダークとコンビを組むベテランアムドライバー。奇抜な喋り方をするが子供の相手が好きだったり、ダークに装備のメンテの重要性を説いたりする事も。とある一件で女装してからは女装に目覚めた。

 

ジョイ=レオン

ジェナス達ピュアアムドライバーのローディ(メカニック)。若いながらその腕前は一流で、たった一人で全員の装備のメンテと新装備の開発をしてきた。近年ネットでは「人間AGEシステム」とまで言われている。雪兎の同類。

 

イヴァン=ニルギース

アムテクノロジーの開発者であった兄・カペリ=ニルギースをアムテクノロジーの独占の為に殺され復讐の為に生きていた男。最初はジェナス達の敵として立ちはだかったが、ジェナス達とガン=ザルディに接触してゼアムのピースを集める為に協力するようになり、最後はジェナス達の起死回生の一手の為にジェナス達を裏切ったと見せかけてガン=ザルディからフルゼアムのデータを奪いジェナスに託した。

 

シャシャ

イヴァンと行動を共にする少女。高い戦闘能力を持つがやや天然。ジェナスに強い興味を抱いている。シーンの死とロシェットを殺そうとした事で落ち込むジェナスをデートに連れ出して励ました。最後は行方不明になったイヴァンを探しに一人旅立った。

 

マリー=ファスティア

ジャーナリストでピュアアムドライバーの協力者の一人。ジェナス達の活躍を報道し、彼らのサポートバジェット(活動資金)調達に貢献した。

 

ニック=キーオ

マリーとコンビを組むカメラマン。時折トレーラーの操縦も行った。

 

シシー=クロフト(シルヴィア=クラフトン)

アムドラサポーター兼工作員だった少女。最初のピースの受け渡し役。ラグナと恋仲になるもロシェットに殺害された。

 

パフ=シャイニン

シーンと人気を二分するパフユニットのリーダー。

セラの兄・ジョナサンとはコンビを組んでいた仲で、ジョナサンの失踪直前にセラの事を託されていた。

 

ジュリ=ブルーム、ジュネ=ブルーム

パフユニットに所属する双子のアムドライバー。見分けはサイドテールの向き。空気キャラでもある。

 

ジャック=ホンジョー

パフユニットのローディ。メカニックの腕前はジョイに劣らない。

 

キャシー=モルトン

元シーンユニットのローディ。JAに寝返ってからはロシェット達やディグラーズを使って何度もジェナス達を襲撃する。ゼアムの存在を知ってからはシムカやガン=ザルディと手を組み、JAの指導者ジャン=ピエール=ジノベゼを暗殺し連合軍を率いたが、シーンと共にロシェットに殺害された。

 

ロシェット=キッス

童顔な元シーンユニットのメンバー。JAに寝返ってからは執拗にシーンやジェナスを狙ったり、非道な行いを平然としたりした。我儘な子供そのものといった未熟な精神故に噛ませ犬なキャラではあるが、原作ではシシー、キャシー、シーンを手にかけている。それが祟りジェナスに殺されかけるがK.K.に助けられ、二度とアムジャケットを着ない事を条件に見逃される。大体悪いのはコイツ。

 

クック=カーランド(K.K.)

元シーンユニットのメンバー。ロシェットと共にキャシーに誘われてJAに寝返るもキャシーの手駒扱いされる。割りと空気な人。主にロシェットのお守りが仕事。ジノベゼ暗殺時にはジノベゼの乗る飛行機を撃ち落とすのに躊躇いを見せるも実行した。

 

シャドー=エーリック

イヴァンに兄を殺されその恨みからロシェット達とチームを組んでジェナス達を襲撃する。

原作ではシシーを人質にとるも事故でセラに射たれて死亡した。セラにトラウマを、ロシェットに復讐心を抱かせた。

 

ランディ=シムカ

連邦評議会議員でウィルコット派のNo.2。元アムドライバーでもあるが、今はその面影は無い。ジェナス達に支援する代わりに利用したり、他にも裏で様々な工作をしていた。ウィルコット議長死後にガン=ザルディやキャシーと手を組み連合軍を結成する。ガン=ザルディの目を盗みゼアムジャケット部隊を作りガン=ザルディに反旗を翻すもそのデータは偽物で直後ガン=ザルディによって殺害された。

 

バーロック=ウィルコット

連邦評議会議長。人間同士の争いを止めようとバグシーン・アムドライバー計画を承認する。ほとんど派閥議員の傀儡と化していたが、娘のシェリルがアムドライバーとなりJAに殺されてからは戦いをやめようとするもシムカらの圧力で叶わなかった。ジェナス達との邂逅へてムーロンの決戦ではシムカの制止を振り切って戦い、最後はJAを道連れに地下のミサイルを爆破して散っていった。

 

ジャン=ピエール=ジノベゼ

JAのボス。連邦評議会議員で、ウィルコットを失脚させるためにイヴァンと手を組みアムドライバー計画の真実を暴露するが、イヴァンと違い力による支配を目論んだため決別する。JA発足後はキャシーらを使って連邦アムドライバーを追い詰めるが、キャシーがゼアムを隠している事を知ったがために乗っていた輸送機をキャシーの命を受けたK.K.に狙撃され死亡する。

 

ガングリッド=ディグラーズ

度々ジェナス達ピュアアムドライバーの前に立ち塞がった男。当初はバイザー無しでエッジバイザーを纏ったシーンを圧倒する実力を見せたが、一度ジェナス達に敗れて以降は噛ませ犬のような存在に。しかし、その実力は本物で最終戦ではネオアムジャケットとはいえたった一人でピュアアムドライバー達を圧倒。ネオボードバイザーを装備したジェナスをアムギア(アムドライバーの装備)無しで相手にしても力負けしなかった。戦闘狂ではあるが、正々堂々と戦う男で、キャシーが人質を取りピュアアムドライバーが反撃してこないと知ると勝手に人質を解放したりもした。それが原因でキャシーの怒りを買い、仕掛けてあった爆薬で崖に落とされ生死不明となった。ケケという梟型の自作ロボットを連れており、力だけではなく技術力も兼ね備えていたようだ。尚、ケケは一度ラグナに射たれて破壊されたが、ネオケケとして復活している。

 

ガン=ザルディ

アムテクノロジー研究者の一人でファーストアムドライバーだった男。アムテクノロジーの独占を狙う連邦評議会に狙われ雲隠れしていたが、ジェナス達と出会いゼアムのピースを集めるよう指示を出した。しかし、ジェナス達がゼアムジャケットを自分に無断で作成した事等からシムカやキャシーと対ピュアアムドライバー連合を結成し敵対する。ゼアムを揃え「静寂こそ平和。それを阻む者は理由が何であれ排除する」と宣言し、自分こそが神と世界を支配しようとするがピュアアムドライバーに阻まれ、マグマへと落下し死亡した。

 

 

 

用語

 

アムテクノロジー

アムドライバー計画のために開発された技術。

 

アムエネルギー

アムマテリアルから抽出される謎のエネルギー。アムドライバーの世界ではエネルギーはこれに一本化されており、そのせいで後述するゼアムによって大惨事に陥る。

 

アムマテリアル

アムジャケット等の素材兼エネルギー資源。

 

アムジャケット

アムドライバーが纏うパワードスーツ。各所にハードポイントがあり、そこに各種武装(アムギア)を装着することでカスタムすることが出来る汎用性の高い装備。ネオアムジャケットはこれの背面にエネルギー供給用のチューブシステムを組み込んだバックパックを装着したもの。雪兎はこれにIS由来の瞬間装着機能や拡張領域を追加し、ゼアム対策としてエネルギーコンバータを組み込んでネオアムジャケット改へと魔改造する。

 

バイザー

Binary Silhouette Armorの略で乗り物としてのビークルモードとアーマーのブリガンディモードの二形態に変形する。当初は高額装備のために数は少なかったが、開発、強奪、借りパク、譲渡などで数を増やしていった。

 

ビーストバイザー

雪兎がIS由来の技術を用いて開発したバイザー。従来のビークルモードとブリガンディモードに加え独自に自律行動が可能なビーストモードに変形する。簡易型の劣化ISコアを内蔵しており、アムドライバーが操作しなくても独自に行動出来る(余程の事が無い限りアムドライバーの操作が優勢される)。ゼアムジャケットの作成を止めた代わりに開発したという経緯もあってゼアムジャケット並の性能を持つ。これによりロシェットをはじめとしたJAは蹂躙される事になる。雪兎もこのバイザーをジェナス達が直ぐに使いこなすとは思ってもおらず、紅椿と同じ無段階移行によるリミッターを掛けていたが、ジェナスは初戦で全解放モードを使いこなし雪兎を驚愕させた。

 

ゼアム

究極のアムテクノロジー。使い方次第で世界を救うも滅ぼすも自在なんだとか。作者の推測ではその本質はアムエネルギーの増幅と集約。

 

ゼアムジャケット

ゼアムを用いたアムジャケット。凄まじい性能を誇り、未完成でもネオアムジャケットを蹂躙する程。機能としては・・・・

1.アムエネルギーの増幅

2.浮遊・飛行能力

3.アムエネルギーによる粒子分解

4.アムエネルギーの集約(支配)

ジェナスのゼアムジャケットはピース2つをジョイが解析して作成したもので完成度が低く当初は1の効果しか使えなかった。一方で半分のピースを所持していたガン=ザルディのものは3まで使用出来、フルゼアムとなってからは4の力で全世界のアムエネルギーを吸収してエネルギー恐慌を引き起こした。これに反発した市民がデモを行ったが、ガン=ザルディによって都市毎消滅させられた(この攻撃は丸1日のチャージが必要らしく連発不可)。最後はジェナスとガン=ザルディのフルゼアム同士の戦いとなり双方のゼアムジャケットを消滅した。

 

 

 

オリジナルバイザー

 

ドリルランスバイザー

ランスバイザーを改修し、先端をドリルにしたバイザー。

 

バーストバイザー改

バーストバイザーに拡張領域を付与し、ミサイルを即補充出来る用に改修したバイザー。

 

ジェットバイザー【ペガサス】

ビーストバイザーのプロトタイプであるエアバイク型のバイザー。後にジェットバイザー【ペルセウス】になる。

 

ドラグバイザー【ドラグーン】

ジェナス用に開発されたビーストバイザー。ボードバイザータイプでネオボードバイザー【ソードダンサー】のデータを元に作られた。単独飛行が可能で、翼にそれぞれ大型ソードが装備されており、尻尾も有線式遠隔操作が可能なテイルブレードになっている。竜の頭部には荷電粒子砲まで内蔵しており遠距離にも対応。その分扱いが難しくなっているのだが、ジェナスは初戦であっさり使いこなしたため雪兎にバグキャラ(人外・同類)認定される。モデルはモンハンのバル・ファルクと鉄血のハシュマル。

 

チェイスバイザー【ガルム】

ラグナ用に開発されたビーストバイザー。モトバイザーやネオクロスバイザー2号機等のバイク型バイザーの発展機で2砲のハイビームキャノン【イフリート】、6連ミサイルポッド×2、ガトリングガン×2と重装備ながら高い機動力を誇る。ビーストモードは狼型でトパスを容易く噛み砕く高周波振動のバイブレーションファングやネイルクロー、バイク形態のホイールを利用したホイールギアなど近接戦装備も充実している。モデルはゾイドのケーニッヒウルフ。

 

ウイングバイザー【ストームウイング】

セラ用に開発されたビーストバイザー。ストームバイザーをベースにミサイルポッドなどを追加した。機首のビームキャノンはバスターライフルに変更され、ビームサーベルを内蔵したシールドも装備している。まんまウイングガンダム。後にパフにもカラーリング違いのものを作成する。セラカラーが白とオレンジで、パフカラーが黒とオレンジ。

 

ストライクバイザー【シーザー】

シーン用に開発されたビーストバイザー。ビーストバイザーの中で唯一装甲切換を実装したバイザーで、近接のエッジ、砲撃のランドとそれぞれエッジバイザーとランドバイザーの特性を持つものと新造された高機動型のインパルスと防御型のプロテクションの4形態を使い分ける事が出来る。元々ビーストバイザーはシーンの死亡フラグ回避用に作られたらしくシーザーは正に守護獣と言える。モデルは装甲切換の元ネタであるライガーゼロ。ビークルモードは戦車型。

 

スピアバイザー【スピアヘッド】

ダーク用に開発されたビーストバイザー。ドリルランスバイザーをベースにしたカジキ型で、ブリガンディモードはランスバイザーに酷似しているが、右腕と一体化していたランスを取り外して背中にマウント出来るよう改修してある。両腕にはホイールガンドレットを装備しており、それによる打撃戦も可能。機首のドリルランスは展開してクローにもなり、内部に射出可能なバンカーバスターを備えている。撃ち込む際には左腕のホイールガンドレットを右腕のランスに接続する。モデルはダイガードのノットパニッシャー。

 

ブラストバイザー【ブラストホーン】

タフト用に開発されたビーストバイザー。バイソンと装甲車を組み合わせたデザインで装甲を展開する事で砲撃形態になり、面制圧砲撃を行う。バーストバイザーのミサイルも搭載しており、火力は非常に高い。また、ビーストモード時の頭部はブリガンディモードではホーンシールドとなり、それを使ったシールドタックルは強烈。モデルはゾイドのディバイソン。

 

ジェットバイザー【ペルセウス】

ペガサスの完成版。イヴァン用に改修したビーストバイザー。エアバイク形態の機首がビーストモードやブリガンディモード時はガンランスとして使用出来る。他にもビームを反射するリフレクトシールドを備える。ブリガンディモードの外見は騎士だが高機動。ビーストモード時にも騎乗出来る。

 

フライトバイザー【エアロフライヤー】

シャシャ用に開発されたビーストバイザー。エアバイザーを改修したもので、ステルス機とエイを組み合わせた外見をしている。エイの尻尾にあたる部分が蛇腹剣とレイピアを組み合わせたウイップサーベルになっている。ブリガンディモードはシャシャの要望で背面に背負って手足に装甲が少しつく程度のものだが、シャシャの機動力を最大限に活かすよう工夫がされている。また翼を巨大なブーメランとしても利用出来る。

 

フロートバイザー【ワイズ】

ジャイロバイザーを改修したビーストバイザー。ジャイロバイザーでは背面にあるため前屈みにならないと使えないプロペラが変形したビームキャノン・レーヴァテインをベースをオスプレイ型にし、両サイドに取り付けた事で威力こそ落ちたが前屈みならずに発射出来るようにし、ISのPICを組み込んで一時的に浮遊出来るようにして空中からも発射可能に改良した。また、両サイドに取り付けた事でプロペラを回転する刃にして攻撃したり、手裏剣のように飛ばしたり、プロペラをバスタークローにしたり、プロペラを前方に向けて竜巻を発生させたりとやれることが多彩になった。ビーストモードは梟型。モデルはゾイドのナイトワイズとバーサークフューラー。ムーロンとダラートでのピース回収とケーナ防衛のために3つに部隊を分けた際にダラート組に協力したパフユニットにパフのストームウイングと共に報酬として2機譲渡しジュリとジュネの双子が使用した。

 

 

アーマードギア

雪兎が開発した

Expected Operation Seeker(外骨格攻性機動装甲)の一種。性能的にはネオアムジャケットと同等。

 

アーマードギア1号機

セラを追ってミュネーゼに潜入した蘭を追うために弾が雪兎から借り受けた。ゲシュペンストシリーズをごっちゃにした機体。

 

アーマードギア2号機

数馬用に雪兎が作った自衛用パワードスーツ。見た目はアムジャケットにガンダムアストレイ(ブルーフレーム)の装甲を追加したようなデザインのもの。ブルーフレーム系の装備を使用出来る。他にも独自装備としてアムドライバーのライドボードに似たサブフライトユニット・フローターシールドを装備する。




こちらも変更があれば随時更新する予定です。


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special1 兎放送局 なぜなにIS (質問コーナーその1)

質問がある程度きたので一回目です。

※尚、これは夢と現実、精神と物質の狭間にある電波発信施設・兎放送局から放送しています。
また今回はゲストキャラもいるので台本形式にてお送りします。


「「3・2・1・・・・わぁー!なぜなにIS始まるよ~」」

 

雪兎「という訳で始まってしまいました、質問コーナー」

 

シャル「・・・・結構早くやれたね、このコーナー」

 

雪兎「そりゃあ、お気に入り登録して下さってる方々からそれなりに質問いただいたからな」

 

シャル「雪兎、メタいよ・・・・」

 

雪兎「知らん、ここは本編とは別時空・・・・ってか、某青い部屋だよな、ここ」

 

シャル「そ、それよりゲストの人待たせてるんでしょ?」

 

雪兎「こんな世界に遊びに来たいっていう奇特なゲストがな・・・・今回は初回という事もあって本編からは俺とシャルの二人だけ。あとは別世界のゲストが数人来る予定だ」

 

シャル「数人?一人じゃないの?」

 

雪兎「三人+α?」

 

シャル「+α?四人じゃなくて?」

 

雪兎「何か一人?人間じゃないのいるからな」

 

シャル「そ、そうなんだ・・・・」

 

雪兎「それじゃあ、最初のゲストだ。『仮面ライダー学園 〜学園一の落ちこぼれに俺が憑依してビルドになっちゃった話〜』より戦場学兎だ。」

 

学兎「ども、戦場学兎です」

 

シャル「どうも」

 

学兎「こっちにもシャルロットがいるのか」

 

シャル「もしかして別の世界の僕を知ってる?」

 

学兎「ああ、万城龍我ってやつのとこのシャルロットをな」

 

雪兎「あの脳筋んとこか」

 

学兎「ん?知り合いなのか?」

 

雪兎「ちょっとこっちの世界で世話してやった関係だ」

 

※113話~122話参照

 

学兎「おっと、忘れるとこだった。ウチの作者や仲間達から質問預かってるぞ」

 

雪兎「ネタバレにならない範囲で答えるさ」

 

学兎「安心しろ。今回はそういう質問は無いから・・・・え~っと、まずは俺から『好きな仮面ライダーは?』」

 

雪兎「仮面ライダーときたか・・・・好きなライダーはバースやGー3とかかな?」

 

シャル「あ~、武器とか付け替えたりするからかな?」

 

雪兎「正解。あとは変身者の伊達さんや氷川さんが好きってのもある」

 

学兎「なるほど・・・・次は楓子から『一番苦戦した相手とか聞きたいかな』だとよ」

 

雪兎「銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と束スタークだな」

 

シャル「福音の時は本当に心配したんだからね?」

 

学兎「福音か、意外だな」

 

雪兎「今の俺なら苦戦はしないだろうけど、当時はアドヴァンスドも対福音用のメタ装備も無かったんでな。本当に死ぬかと思ったぜ」

 

学兎「じゃあ束?スタークとやらは?」

 

雪兎「それは単純にこっちの手読まれて対策されていったからな・・・・」

 

シャル「それ、雪兎のいつもの戦法だよね?」

 

雪兎「まんまやり返された形だな」

 

学兎「よく勝てたな・・・・」

 

雪兎「ちょっとブチギレて質と量の暴力でねじ伏せた」

 

学兎「(こいつ敵に回すのだけはやめよう)つ、次は雷華の質問だな、『雪兎君は休日に何をしてるんですか?』」

 

雪兎「休日かぁ・・・・」

 

シャル「その質問は僕が答えるよ。休日でも雪兎は相変わらずだよ。用事が何も無ければ今まで収集したデータの整理か新しいアイデアまとめたり、一夏達の特訓の相手をしたり、録画してたアニメや特撮みたりしてるよ」

 

学兎「や、やけに詳しいな・・・・」

 

シャル「僕は雪兎の彼女だからね」

 

雪兎「あとはシャルとデートぐらいか?」

 

学兎「ご馳走様です。次は美咲だな。『スクラッシュドライバーと生身で使いたいフルボトルは?』」

 

雪兎「フルボトルか・・・・スクラッシュなら掃除機と扇風機、生身ならラビットとペンギンだな」

 

学兎「掃除機と扇風機とラビットはわかるが・・・・ペンギン?」

 

雪兎「ああ、何か予想つかないからな!」

 

学兎「あ~、それ、判る気がする。実験してみたくなるよな」

 

雪兎「そうそう!」

 

シャル「はいはい、そういうのは収録終わってからにしようねぇ?」

 

雪兎・学兎「「あっ、はい」」

 

学兎「次というか、最後の質問だな、これはウチの作者から『雪兎君にとって、ヒーローとは?』」

 

雪兎「ヒーローねぇ・・・・信念を貫く者、かな?」

 

学兎「信念?」

 

雪兎「正義や悪なんて人それぞれだろ?ヒーローってのはそんな自分の正義っていう信念を貫いたやつの事だと俺は思ってる。こんな風に考えるのは前に知り合ったやつにそういうやつがいてな、そいつの影響だ」

 

学兎「なるほど」

 

シャル「学兎君の質問も終わったみたいだし、次のゲストに登場してもらいましょうか。あっ、学兎君も引き続きよろしくね」

 

学兎「はーい」

 

雪兎「次のゲストは『転生したらエボルトに乗っ取られて勝手に色々されてた件』から石動龍兎と相棒のエボルトだ」

 

龍兎「石動龍兎だ、って、エボルトは?」

 

エボルト[俺はここだ!]←仮面ライダーエボルのぬいぐるみ

 

龍兎「エボルト!?何やってんだ、お前」

 

エボルト[何か気付いたらこのぬいぐるみに入ってたんだよ]

 

雪兎「あっ、その犯人俺な。一人で二人分喋ったらややこしいだろ?」

 

龍兎・エボルト「[なるほど]」

 

龍兎「あっ、このぬいぐるみ持って帰っていい?」

 

雪兎「元よりお土産のつもりで用意してたからいいぞ」

 

シャル「人間じゃないって、そういう事だったんだ・・・・」

 

龍兎「そんじゃあ、質問といこうか。まずは俺から『一番好きなベストマッチとボトルは?』」

 

学兎「今度はベストマッチか」

 

雪兎「・・・・ペンギンスケーターかな?」

 

エボルト[また意外なベストマッチがきたな・・・・]

 

雪兎「あのネタ臭が逆に面白いなって」

 

龍兎「ボトルの方は?」

 

雪兎「同じくペンギン。あのいかにもペンギンって感じがいい」

 

シャル「雪兎、ペンギン好きなんだ・・・・意外」

 

雪兎「そんなに意外か?」

 

シャル・学兎・龍兎・エボルト「「「[うん、意外]」」」

 

雪兎「即答かつ息ピッタリかよ!?」

 

エボルト[雪兎のペンギン好きはおいといて、今度は俺だ『ビルド関連のドライバーやトリガー、武器など全て含めて一番好きなアイテムは?』]

 

雪兎「トランスチームガンだな。あの音声がいい」

 

シャル「ドライバーじゃないんだ?」

 

雪兎「デザインや銃で変身ってのがいいんだよ」

 

龍兎「お前、わかってんなぁ」

 

エボルト[ディケイドよりディエンドの方が好きだろ?お前]

 

龍兎「そんじゃあ、最後にウチの作者から『雪兎君が最も尊敬しているライダーとその変身者は?』」

 

雪兎「仮面ライダースカルと鳴海荘吉だな」

 

龍兎「おやっさん!?」

 

エボルト[また渋いのがきたな]

 

雪兎「だってあの生き様格好よくね?翔太郎があの人の弟子になったのよく判るし」

 

学兎「トランスチームガン好きな理由って、まさか・・・・」

 

雪兎「鳴海荘吉リスペクトですが、何か?」

 

龍兎「ガチのおやっさんファンだな、こいつ」

 

雪兎「そういや、龍兎はスカルも変身してたよな?くそ羨ましい。あの名言まで引用してるし」

 

シャル「今日は雪兎の意外な一面をよく見る日だね・・・・」

 

エボルト[これは俺も想定外だぜ]

 

学兎「これさ、次のゲストの質問とも被るし、そろそろ最後のゲストにも来てもらったら?」

 

雪兎「・・・・そうだな。最後のゲストは『INFINITE・STARK』より石動惣一だ」

 

惣一「うん、何かすっげーカオスな現場に呼ばれたな」

 

学兎「まあ、四作品分のキャラ大集合だしな」

 

龍兎「ふと思ったが、名前に『兎』ってつくの三人もいるよな、ここ」

 

エボルト[確かに・・・・雪『兎』、学『兎』、龍『兎』だもんな]

 

惣一「・・・・ところで、俺呼ばれたの質問するためだよな?」

 

シャル「ごめんなさい。ほら、三人とも謝って!」

 

三兎「「「すみませんでした」」」

 

エボルト[名前まで三兎にまとめられてるw]

 

惣一「まあ、いいや・・・・まずは話題に挙がったウチの作者の質問な、『仮面ライダーで好きなセリフは?』何かもう答え出てる気がするが」

 

雪兎「鳴海荘吉の『俺は自分の罪を数えた・・・・さあ、お前の罪を数えろ』だな」

 

一同「「「「うん、知ってた」」」」

 

雪兎「ですよねぇ」

 

惣一「まあ、あれが名言なのは認めるが、お前どんだけスカル好きなんだよ・・・・」

 

雪兎「ダブルドライバー買った後、トリガーマグナム買う前にスカルマグナム買うくらいには」

 

惣一「・・・・ガチだな、こいつ」

 

シャル「そういえば、他の平行世界に行った時用に作ってる偽装装備の一つに黒い銃型の変身アイテム作ってたような・・・・」

 

学兎「えっ!?マジで?後で見せて!」

 

雪兎「いいぜ」

 

龍兎「俺もちょっと興味あるな・・・・」

 

惣一「兎って名前につくやつはこんなんばっかか?」

 

シャル「雪兎に限っては平常運転だよ」

 

惣一「そうか・・・・次の質問いいか?」

 

雪兎「すまんすまん」

 

惣一「『なってみたい怪人とかいるか?あと、好きな変身アイテムとかあるかい?これは仮面ライダー以外でもいい』」

 

雪兎「怪人か・・・・なるとしたらグリードかな?俺ってどんな欲望の怪人になるか見てみたい」

 

学兎「うわぁ~、一番厄介そうな怪人選んだな」

 

龍兎「しかも、グリードならセルメダルでヤミー増やせるしな」

 

惣一「自分の興味ある事に突っ走るのはある意味グリードらしいかな?」

 

雪兎「好きな変身アイテムはライダー系ならロストドライバー。それ以外となると、電脳超人グリッドマンのアクセプターや勇者司令ダグオンのダグコマンダーだな。戦隊系ならキョウリュウジャーのガブリボルバー」

 

シャル「またマニアックなのがきた!?」

 

エボルト[お前、前世昭和生まれだろ?そのセレクトは]

 

雪兎「おう、昭和63年生まれだが?」

 

龍兎「実質昭和最後の年じゃねぇか!?」

 

学兎「というか、電脳超人グリッドマン?」

 

雪兎「昔の円谷作品の一つだ。最近のウルトラマンのフォームチェンジの先駆けとも言えるサポートメカとの合体する電脳空間で戦うヒーローだ」

 

シャル「あっ、この前簪さんと一緒に見てたやつ?」

 

雪兎「ああ、今度時を超えてアニメ化するらしくてな、おさらいしてたのさ。しかも、グリッドマンの声優は当時と同じ緑川さんだぞ!胸熱さ」

 

龍兎「じゃあ、勇者司令ダグオンは?」

 

雪兎「こいつは勇者王ガオガイガーや勇者特急マイトガインと同じ勇者シリーズの作品で、高校生が宇宙犯罪者と戦うシリーズだ。これの最大の特徴はそれまで超AIという人工知能を持ったロボット達がメインだったのに対し主人公達が変身・メカとの融合合体・更に強化形態への合体というプロセスを使っているところだな」

 

惣一「雪兎、お前、本当にロボットの事になると饒舌になるな・・・・」

 

雪兎「まあ、死んでも治らなかったロボット馬鹿だからな、俺は」

 

一同「「「「うん、何か納得した」」」」

 

雪兎「さてと、質問は以上だな?」

 

シャル「何かすごくグダグタしてたけど、楽しんでもらえたでしょうか?」

 

雪兎「質問はまだまだ募集してるからどんどん投稿してくれよな」

 

シャル「ゲストの皆にはそれぞれお土産があるから後で持って帰ってね?」

 

ゲスト一同「「「はーい」」」

 

雪兎「という訳で今回は俺、天野雪兎と」

 

シャル「シャルロット=デュノアと」

 

学兎「戦場学兎」

 

龍兎「石動龍兎&」

 

エボルト[エボルト]

 

惣一「そして石動惣一でお送りした」

 

雪兎「・・・・次にゲストに困ったらあの脳筋引っ張ってくるか」




ゲストへのお土産

学兎→学兎、楓子、雷華のイラスト風の焼き印がされたチーズケーキ。焼き印で分けるとキレイに三等分できる。ミュウ型の目覚まし時計。

龍兎→エボルコブラフォームの顔を模したフルーツタルト。雪兎厳選コーヒー豆。

惣一→ブラッドスタークをイメージしたブラッドチェリーがのったガトーショコラ。コブラボトル型水筒。


尚、この話は後日場所を移動させます。


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一章「兎、IS学園に入学す」
1話 入学


はじめましてミストラルと申します。

私はシャルロットが大好きなのでシャルロットルート予定です。

ツッコミどころや誤字脱字は感想までお願いします。

宇宙を目指す兎の協奏曲、始まります。


IS(インフィニット・ストラトス)

元々は宇宙開発用パワードスーツとして開発された本来は女性しか(・・・・)使えないはずの兵器。その操縦者を育成するための学校・IS学園。そこに男なのにISを起動させてしまった二人の少年がいた。

 

「なあ、雪兎。俺達何でこんなとこにいるんだ?」

 

その片割れ織斑一夏は隣にいる幼馴染の一人・天野雪兎(あまのゆきと)に問うた。

 

「・・・・一夏、お前が試験会場間違えてISなんか起動させたからだろうが」

 

そう女性しか起動できないはずのISを試験会場を間違えて起動させてしまった一夏はその瞬間「ISを起動させた男」となってしまった。なら他にもISを起動できる男性はいるのではないか?と同年代の男性を対象に適性検査が行われ、何故か雪兎もISを起動してしまい二人まとめてIS学園に強制入学させられてしまったのだ。

 

「それにしても幼馴染が揃ってISを起動しちまうとはな」

 

「・・・・」

 

暢気な一夏に対し雪兎は当初困惑していた。

 

(何で俺までIS学園入っちゃってんの!?俺、主人公補正とかないはずなんですけど!)

 

実は雪兎は転生者である。ただし、神様とかに会った訳でもなく普通に事故で死んだかと思えば赤ん坊になっていたのだ。そしてこの世界がIS(インフィニット・ストラトス)の世界だと気付いたのは小学生になった頃。隣の席になったクラスメイトが織斑一夏だったのを知った時だ。

 

(てっきり弾や数馬と同じモブキャラかと思ってたのに・・・・まあ、IS使えんのは嬉しいんだけどさ、元読者としては)

 

誤算と言えば誤算だが、ある意味嬉しい誤算だった。なにせ雪兎は前世の頃からこのライトノベルは読んでいたし、元々ロボットなどが好きだったのだ。そんな雪兎がISに関わろうとしない訳がない。幸い姉が開発者である篠ノ之束と交遊があったために一時期束に弟子入りしていた程だ。

 

「同じ男同士、しかも知り合いが一緒ってだけでも気が楽だぜ」

 

「だな、IS学園はほとんど女子校(・・・・・・・)みたいなもんだしな」

 

何度も言うが本来ISは女性しか起動できない。その為IS学園に通う生徒も女性ばかりだ。そんな中に男二人で放り込まれるのだ。原作で一夏一人で放り込まれることを思えば気も楽だろう。だが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

「・・・・」

 

入学式のあとのSHRで二人は思い知る。女子校に男子が紛れ込むというのがどれだけ女子の興味を引くかということを。

 

((居心地悪っ!))

 

四方八方からの好奇の視線は容赦なく二人に突き刺さっており、大変居心地が悪かった。

 

「では、次は天野雪兎君」

 

「へっ?」

 

「聞いてなかったんですか?出席番号順で自己紹介をしてもらってるんですが、次は天野君の番ですよ?」

 

「す、すいません!」

 

副担任である山田真耶にそう言われ雪兎は慌てて立ち上がる。

 

「あ、天野雪兎と言います。趣味は機械弄りと読書。一年間よろしくお願いします!」

 

何とか無難に自己紹介を終え席着くと鋭い視線を感じる。

 

(ん?この方角にいんのは確か・・・・)

 

原作の知識を思い出し視線のする方を向くと

 

(やっぱり箒か)

 

そこにいたのはもう一人の幼馴染・篠ノ之箒だった。その視線は今自己紹介をしている一夏と雪兎に交互に向けられており、箒の方を向いた雪兎と目が合った。なので雪兎は軽く手を振ってみると箒は慌てて視線を逸らす。

 

(六年振りだってのに冷たいなぁ)

 

そんなことを考えていると脳天に鋭い痛みが走る。

 

「あだぁ!?一体何が・・・・」

 

頭を押さえつつ振り向けばそこには笑ってない笑みを浮かべた幼馴染の姉にしてこのクラスの担任である織斑千冬が出席簿を片手に立っていた。隣の席の一夏も同じように頭を押さえていることから一夏が自己紹介でやらかした直後のようだ。

 

「・・・・お久しぶりです。織斑先生」

 

「久しいな、天野。だが、余所見は感心せんな」

 

「す、すいません」

 

姉同士・弟妹同士が同い年とあって雪兎・一夏・箒と同じく雪兎の姉の雪菜・千冬・束も幼馴染で親友なのだ。それ故に雪兎は千冬とも面識があった。

 

(箒のやつ、千冬さんに気付いて目を逸らしたのか・・・・)

 

噂(どこのとは言わん)の出席簿アタックの痛みはSHRが終わるまで消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しいな、二人とも」

 

SHRが終わり休み時間になると箒が二人に声をかけてきた。

 

「その声・・・・箒か?」

 

「ああ、雪兎の方はさっきのSHR中に気付いたようだがな」

 

「あっ、それでさっき余所見してたのか!」

 

先程の一件を思い出し一夏はポンと手を打つ。

 

「そういうこった。おかげでヤバいの一発もらったがな」

 

「ああ、あれは痛かった」

 

「あれはお前達が悪い」

 

六年振りだというのに三人は昔のように笑い合う。

 

「そういえば、箒、去年、剣道の全国大会で優勝したってな。おめでとう」

 

「なんでそんなこと知ってるんだ」

 

一夏がそういうと箒は顔を真っ赤にし一夏に詰め寄る。

 

「いや、新聞載ってたし」

 

「ゆ、雪兎まで」

 

その休み時間はそんな話で盛り上がった。




次回予告

やっぱり絡んできたチョロインことセシリア・オルコット。一夏に巻き込まれて雪兎も試合をする羽目に。

次回、「クラス代表決定戦 兎、やらかす」


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2話 クラス代表決定戦 兎、やらかす

早速雪兎がやらかします。

そして私が原作を読んだ時に思ったこともチラッと・・・・


「ちょっと、よろしくて?」

 

箒と話した次の休み時間。再び二人に声がかかった。

 

(このタイミングってことは・・・・チョロコットか)

 

「へ?」

 

声をかけてきたのは読者からはチョロコットなどの愛称で呼ばれることもあるイギリスの代表候補生・セシリア・オルコットだった。

 

「訊いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ。訊いてるけど・・・・どういう用件だ?」

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

(やっぱこの時のこいつは好きにはなれないなあ・・・・)

 

雪兎はこのセシリア・オルコットのことが原作を読んだ当初はあまり好きではなかった。なので、できればこの時期の彼女とは雪兎は接したくなかったのだ。

 

「そこの貴方もですわ!わたくしが声をかけているのですのよ!お返事ぐらいなさったらどうなのかしら?」

 

「・・・・はぁ、まずは自分が何者なのかくらい名乗れよな。こいつはその手の知識全然ないからあんたが何者なのかわかってないんだよ、イギリスの代表候補生」

 

「そ、そんな代表候補生ですわよ!?」

 

確かに代表候補生ともなれば下手なアイドルよりメディアへの露出が多く知らぬ者も少ない。しかし、この織斑一夏という男はその手のことへの関心があまりなく「代表候補生?」と代表候補生の存在すら知らなかったのだ。

 

「国家代表ならともかく代表候補生なんて他国ではこんなもんさ。あと話しかけられただけで光栄に思われたきゃ織斑千冬(ブリュンヒルデ)くらいの知名度になって出直してこい、セシリア・オルコット代表候補生」

 

「ぬぐぐぐぐ・・・・」

 

それだけ言うと雪兎は「話しはもう済んだ」と言わんばかりに話しを切った。そんな雪兎にセシリアはハンカチを噛み悔しがりながら自分の席へと戻っていった。

 

「雪兎、お前相変わらずだなあ・・・・ところで代表候補生ってなんだ?」

 

「読んで字の如くISの国際大会とかの国家代表の候補生のことだよ。さっきの娘はイギリスの代表候補生で名前はセシリア・オルコット。貴族生まれのお嬢様で、専用機はイギリスのイグニッションプランの第3世代機の試作機ブルー・ティアーズ。【BT兵器】っていう光学兵器の試験運用機の1号機だ」

 

「み、妙に詳しいな・・・・」

 

「俺は元々エンジニア志望だぞ?それにあの人の弟子でもある。各国の試作機やその操縦者・代表候補生についてはそれなりに調べてる」

 

「へー、なら今度色々教えてくれよ」

 

「まあ、今後実技試験とかで当たることもあるだろうしな。傾向と対策くらいは教えてやる」

 

そうこうしている間に休み時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

その授業は千冬が教壇に立っていた。

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

(確かここで一夏が推薦されてセシリアがキレて決闘になるんだっけか?)

 

「なあ、雪兎。これってクラス長決めるようなもんか?」

 

雪兎が原作の流れを思い出そうとしていると隣の一夏が質問してくる。

 

「似たようなもんかな?クラス対抗戦とか矢面に立つ仕事も多いらしいけどな」

 

「自薦他薦は問わないぞ」

 

その一言を聞き早速一人の生徒が挙手をする。

 

「はいっ。私は織斑君を推薦します!」

 

原作通り一夏が真っ先に推薦され「私も!」と次々に声が上がる。この時、他人事のように振る舞っていたことを後に雪兎は後悔することになる。

 

「私はアマアマ(多分、雪兎のこと)がいいと思う」

 

そんなことを言い出したのは原作5巻まで一夏に本名を覚えてもらえなかったダボダボの袖の少女・布仏本音だった。

 

「・・・・はっ?」

 

「だってあまあま、せっしー(セシリアのこと)論破してたし」

 

どうやらさっきの雪兎とセシリアのやり取りを見ていたらしい。伊達に更識の従者の家系ではないようだ。

 

「確かに織斑君より頼りがいはありそうよね」

 

「言われてみれば・・・・」

 

「・・・・雪兎。俺、さりげに貶されてね?」

 

ドンマイ一夏。

クラスが一夏か雪兎かで盛り上がる中、それを面白く思わない生徒が一人。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

それはイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットだ。それも当然だろう。代表候補生である自分ではなく物珍しさから男である一夏と雪兎が候補に上がったのだ。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!」

 

この時点で大多数を占める日本人のクラスメイトを敵に回しかねない発言である。

 

「わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

IS技術の修練というのはわかるが、イギリスも島国である。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

自意識過剰ではあるが、「実力トップが」というのも間違ってはいない。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でーー」

 

IS学園を日本に作らせた国連だの国際機関に言えと言いたいところだが、ここでとうとう一夏がキレた。

 

「イギリス大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

この発言で一夏がどれだけキレているかわかる。だが、ここでセシリアは原作にない雪兎にとって逆鱗に触れる発言をしてしまう。

 

「そ、そういう日本だって大したことありませんじゃないですの!IS発祥の国だというのに未だに第3世代機の一機もないじゃありませんか!!」

 

その瞬間、教室の温度が5度ほど下がったと後にクラスメイトは語る。一夏も隣から発せられる冷気に冷静さを取り戻した程だ。

 

「おい、イギリス人。てめえ、何言ってんのかわかってんのか、おいっ!」

 

そう、雪兎までもがぶちギレたのだ。世界最高峰の頭脳と呼ばれた篠ノ之束の弟子にしてエンジニア志望の彼が今の発言にキレない方がおかしい。しかし、愚かにもセシリアは発言を撤回せず、むしろ火に油を注いでしまう。

 

「じ、事実ではありませんか」

 

この時、二人以外のクラスメイトの心は一致していた。

 

((((セシリアの馬鹿!))))

 

「よろしい、ならば戦争だ。織斑先生、俺はこの決着に決闘を所望します」

 

「う、受けて立ちますわ!」

 

こうして一週間後にクラス代表決定戦という名の決闘が決まった・・・・約一名(織斑一夏)の意見を無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で特訓パートだ」

 

そして放課後。一夏は雪兎に連れられ(連行され)空いているアリーナにやってきた。

 

「俺の意志は!?」

 

「知らん。というか、あそこまで言われて悔しくないのか?一夏」

 

「く、悔しいけどさぁ・・・・」

 

「なら見返してやろうではないか!」

 

「お前、キャラ違くない!?」

 

セシリアにぶちギレて若干キャラ崩壊しつつある雪兎だが、実を言うとぶちギレなくても元より一夏を特訓するつもりだったりするのだが。

 

「そもそも訓練機も借りてないのにどうやって特訓すんだよ?」

 

一夏の言うとおり二人は訓練機を借りて来ていない。まあ、そうすんなりと借りれる物でもないのだが。

 

「心配するな。お前の専用機は俺が最終調整してたし、俺も専用機持ちだ」

 

「ちょっ!?何さらっと重大発言してんのさ!?ってか、俺の専用機!?」

 

「いやー、お前の専用機作るって言ってた倉持技研の連中がさ、お前の専用機作るために他の娘の専用機作るの投げやがったくせにちっとも完成させねえもんだから束さんがぶんどって完成させて最終調整のために俺が預かってたんだ」

 

「さらにやべぇことぶっちゃけやがった!」

 

開発を投げられた生徒会長の妹は泣いていい。というか倉持技研が馬鹿なのである。

 

「で、俺の専用機ってのはどこにあるんだ?」

 

雪兎のは既に待機形態なのはわかるが、アリーナにそれらしいものは見当たらない。

 

「ああ、ちょっと待ってろ」

 

そう言うと雪兎は指はパチリと鳴らす。すると、上から巨大な卵のようなものが轟音と共にアリーナに降ってきた。一夏のすぐ隣に。

 

「あ、あ危ねえじゃないか!」

 

「ちゃんと地面に対して寸止めだし、当たらないよう計算したぞ?」

 

「そういう問題じゃねぇよ!お前のそういうとこ束さんに似てきたよな・・・・」

 

あの天災の弟子となればこうなるのも無理はないのかもしれない。「悪い悪い」と明らかに思ってないだろうことを言いつつも卵状のカプセルを量子転換で片付け、織斑一夏の専用機【白式】が姿を現す。

 

「こいつが兎印のお前専用機【白式】だ」

 

「これが俺の専用機・・・・」

 

「さてと、さっさとフィッティングとフォーマット済ますぞ。それが終わったら俺は準備があるから一次移行(ファーストシフト)するまで慣らしでもしていてくれ」

 

「お、おう」

 

並のエンジニアより手早く正確にそれらの作業を終えると雪兎は投影型キーボードを操作し準備とやらを始めた。

 

「訓練機も借りずにアリーナに向かって何をしているのかと思えばこういうことか」

 

「なんだ、箒も来たのか」

 

そこに二人を心配したのか箒もアリーナにやってきた。

 

「心配は無用だったようだな」

 

「俺が無策で代表候補生に挑むとでも?」

 

「お前はそういう奴だったな」

 

ちなみにこの会話の間、雪兎の手は止まってはいない。

 

「そうだ、丁度良い。箒、こいつで一夏の慣熟の手助けをしててくれないか?」

 

ふと、雪兎は思い付いたように箒に刀の柄だけのようなものを投げ渡す。

 

「何だ、これは?」

 

「前に廃棄処分になった打鉄を外装だけ貰って俺の持ってたコア(・・・・・・・・)を入れて改修した打鉄・改」

 

またしても雪兎はさらっととんでもない発言をする。

 

「お前、持ってたって・・・・ああ、姉さんか」

 

目の前の幼馴染が(天災)の弟子であったことを思い出し、姉経由で入手したのだろうと察する。そして姉のことで少々複雑な思いを抱く箒。

 

「いいのか?これはお前の専用機ではないのか?」

 

「いんや、そいつは訓練機とかと同じでパーソナライズしてねぇから誰でも使えるぞ。色々弄ったから少しピーキーかもしれんが」

 

「それくらいなら問題ない。では少し借りるぞ」

 

そう言って箒は縁取りが紅い打鉄・改を展開し一夏の方へ飛んでいった。

 

(俺は問題なさそうだが、やっぱ原作通り姉妹間は複雑か・・・・)

 

キーボードを叩きながら雪兎はここにはいない師匠である妹大好きのシスコン兎のことを思った。




ちょっと長くなって初戦闘までいけませんでした。

次回こそは戦闘します!

次回予告

打倒セシリア!と、クラス代表決定戦に向けて特訓をする一夏と雪兎。そんな二人を手伝う箒。そして迎えるクラス代表決定戦!
一夏の白式はともかく雪兎の専用機とは?

次回 「クラス代表決定戦 兎、チョロインをボコす」


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3話 クラス代表決定戦 兎、チョロインをボコす

前回に少し誤字があったので修正しました。

とうとう雪兎の専用機のお初見目です。
前半が特訓パート、中盤が一夏VSセシリア、後半が雪兎VSセシリアです。


「一夏、箒、一度戻って来てくれ」

 

「わかった」

 

「うむ」

 

白式が一次移行(ファーストシフト)を終えた頃、雪兎も準備ができたのか二人を呼び戻した。

 

「やけに時間かかってたけど、何の準備してたんだ?」

 

「俺の専用機じゃセシリアの専用機の真似事は難しいからちょっとしたオプションの準備をな」

 

そう言うと雪兎は4つの球体を実体化させる。

 

「ブルー・ティアーズの最大の特徴はBT兵器と呼ばれる光学兵器だ。4つの自律機動兵器(ビット)と中・遠距離用のライフルを用いた射撃戦特化の機体でな。ビットでの誘導、ライフルでトドメってのが彼女の得意パターンだ」

 

つまり4つの球体はビットに類する武装なのだろう。

 

「あと、ミサイルも2基あるからビットを何とかしても油断するなよ?」

 

「お前、ほんとにどこでそんなこと調べたんだよ・・・・」

 

「公開されてる情報と実機を見ればある程度は推測できる」

 

原作知識というカンニングもあるが雪兎のメカオタとしての知識と束仕込みの知識である程度推測できるのは本当だ。

 

「一夏の白式には近接用のブレード【雪片弐型】しか武装がない。まあ、当たりゃ一撃必倒レベルなんだがな」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)【零落白夜】か」

 

先程、一次移行を終えた時に表示された白式の力。普通、単一仕様能力は二次移行(セカンドシフト)後に発現するものなのだが白式は一次移行の段階でそれが使えるのだ。しかし、【零落白夜】はシールドエネルギー無効化という強力極まりない効果の代わりに自身のシールドエネルギーを消費するという欠点を抱えていた。

 

「なので一夏がすべきことは『いかに相手の攻撃を掻い潜り、一撃必倒の攻撃を確実に当てるか』ってことになる」

 

「なるほど・・・・しかし、それでは私はあまり手伝うことはできそうにないな」

 

箒もどちらかというと近接よりの戦闘スタイルなためセシリア対策の模擬戦は難しいだろう。好意を寄せる幼馴染の役に立てそうにないと、箒は少し落ち込む。

 

「そうでもないぞ。このビットは外部操作もできるから箒に操作してもらおうかと思ってたんだが」

 

「私はその手の武装の扱いは慣れていないのだが・・・・」

 

「ISを操作しながらやれってわけじゃないし、操作はかなり簡略してある。それに箒が手伝ってくれれば俺も一夏のモニタリングがしやすいからな。手伝ってくれると助かる」

 

「そ、そこまで言うのなら仕方ない。手伝ってやろう」

 

「サンキューな、箒」

 

幼馴染達に頼られ嬉しいくせにツンデレ発言をする箒に雪兎は内心「ツンデレ乙」などと思いつつも自身のISを展開する。

 

「こい、【雪華】」

 

そのISは白式と同じ白い装甲を持つが、所々の装甲の色が灰色になっており、汎用機として傑作機とも呼ばれた第二世代機ラファール・リヴァイヴのようにハードポイントが多数設けられた機体だった。

 

「ビットは箒に任せるから装備は標準でいいか・・・・装備展開【T:トライアル】」

 

すると、各ハードポイントに白い装甲が追加され、灰色だった装甲も白く変化していた。

 

「雪兎、お前、今何をした?」

 

通常、ISは二次移行などでしか姿形を変化することはない。例外としてパッケージなどの装備もあるにはあるが、今の雪華のように瞬時に行われるものは今現在発表されているISには存在しない。

 

「こいつは装甲切換(アーマー・チェンジ)っていう俺が考案した特殊機能だ。まだ試作段階だから雪華にしか搭載してねぇんだがな」

 

「切換というからには他にもいくつか種類があるのか?」

 

今のところ(・・・・・)はこの【T:トライアル】を含めて3つだな」

 

「随時と厄介な機能だな、それは」

 

箒はその機能の有用性に気が付いたようだ。

 

「何が厄介なんだ?」

 

「考えてもみろ。戦闘中に相手の戦闘スタイルが突然全く違うものに切り替わるのだぞ?これが厄介以外のなんだというのだ」

 

「うわぁー、確かにそれは厄介だ」

 

一夏も箒に言われその厄介さを理解する。確かに近接戦闘していたと思えばいきなり距離を取って遠距離戦闘を強いてくるなど厄介過ぎる。

 

「さてと、試合まであまり時間はないから今回は多少付け焼き刃にはなるがビットと遠距離射撃への対策といかに接近戦闘へ持ち込むかの二点に絞ってやるからな」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えたクラス代表決定戦当日。

 

「逃げずに来たことは誉めて差し上げますわ」

 

一夏が白式を纏いアリーナに向かうと、既にセシリアがブルー・ティアーズを纏って待ち構えていた。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

試合は既に始まっているがセシリアは六七口径特殊レーザーライフル【スターライトmkⅢ】の砲口を下げたまま一夏に話しかけてきた。

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

明らかな上から目線の発言に一夏は呆れるよりも笑みを浮かべる。

 

「そういうのはチャンスとは言わないな。それに、一週間前の俺ならそうなる可能性も高かったと思うがーー」

 

そういうと一夏は一気にセシリアとの距離を詰め雪片弐型を振るう。

 

「油断し過ぎじゃないか?」

 

「くっ!いきなり攻撃してくるなんて卑怯ですわ」

 

「試合はもう始まってんだぜ?卑怯も何も無いだろ?」

 

まさか先手を取られるとは思ってもみなかったセシリアだったが、そこは代表候補生。紙一重で雪片弐型を回避し距離を取ろうとする。

 

「させるか!」

 

だが、一夏がそれを許さないとセシリアを追う。

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

そこでセシリアは4基のビットを展開し一夏を近付けまいと妨害する。

 

「それも読めてたぜ!」

 

しかし、雪兎達との猛特訓で鍛えた一夏には通用せず、瞬く間に2基のビットが切り伏せられる。

 

「な、何故!?彼は初心者のはず・・・・」

 

いきなりの劣勢にセシリアは焦っていた。無理も無い。初心者で素人と侮っていた一夏に想定とは逆に一方的に攻められるなどと誰が予想出来ただろうか。その後もミサイルやビットで妨害を入れるも一夏を引き離すことができずセシリアは劣勢を強いられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天野のやつ、オルコット対策のみに重点を置くことでそれなりに形にしてきたか」

 

試合を管制室で見ていた千冬は一夏の動きを見て雪兎が行った特訓の内容を把握したようだ。

 

「すごいですね。たった一週間でここまで仕上げてくるなんて・・・・」

 

これには真耶も千冬同様感心していた。

 

「これは勝負あったな」

 

最後のビットが切り伏せられ、苦し紛れでミサイルを放つも一気に距離を詰めた一夏は零落白夜を発動。ミサイルで少しダメージを受けたものの、結果は一夏の圧勝という大判狂わせという結果に見学していたクラスメイト達も驚きを隠せなかった。驚いていなかったのは特訓に付き合っていた雪兎と箒くらいのものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先手を取れたのが大きかったな。最初にライフルで牽制してビットを展開してりゃもう少し良い試合になってたのに」

 

「ああ、明らかに相手が油断していてくれたのが救いだったな」

 

クラスメイト達と試合を見ていた雪兎と箒はそう今の試合を評価する。

 

「それでお前は大丈夫なのか?ここ一週間の間、一夏の特訓ばかりでお前は何もしていなかったように思えるが」

 

「問題無い。BT兵器が真価を発揮しているならともかく、今の彼女に負ける気はしないよ」

 

「BT兵器の真価?」

 

「ああ、BT兵器は【偏向射撃(フレキシブル)】というレーザーを自在に曲げて変幻自在の射撃を行うというコンセプトで開発された兵器だ。だが、彼女はまだ偏向射撃を行える程BT兵器を使いこなせてはいない」

 

「お前はどこまで知っているのやら・・・・知らぬことの方が少なそうだ」

 

「そんなことはない。知っているのは俺が知っていることだけさ」

 

『次の天野対オルコットの試合は30分後に行う』

 

管制室の千冬からそうアナウンスがあると雪兎は「準備がある」とピットへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後、一夏に負けたショックから何とか立ち直ったセシリアがアリーナへ向かうと雪兎は既に雪華を展開しセシリアを待っていた。

 

「お待たせしましたわ」

 

「いや、そこまで待ってはいないさ。それよりちゃんと万全なんだろうな?一夏に負けてショックのまま試合したから負けました、とか言い訳されては敵わん」

 

「見損なわないでいただきたいですわ。このセシリア・オルコット、そのような言い訳はいたしませんわ!」

 

装備も予備パーツがあったようでブルー・ティアーズに不備は見当たらないし、見たところセシリアにも不調は見受けられない。

 

「そうか。なら安心してやれそうだ」

 

そう言うと雪兎は雪華に【T:トライアル】とは異なる装備を展開させる。

 

「【S:ストライカー】お前の力、見せつけてやろう」

 

展開されたのは黄色の装甲に右腕に備え付けられた巨大なシールドのような武装。装甲の色や装備から重機のような印象を受ける。見たところ近接戦用のようだ。

 

「二度も無様は晒せませんわ。いきますわよ、ブルー・ティアーズ!」

 

先程の試合のこともあってかセシリアは慢心などはせずすぐさまビットを展開しライフルで雪兎を狙い射つが。

 

「ふんっ!」

 

雪兎はシールドを前面に展開しその一撃を弾く。

 

「ならーー」

 

「遅い!」

 

「なっ!?」

 

ならばとビットでのオールレンジ攻撃を仕掛けようと動きを止めた隙を逃さず、雪兎は左腕に備え付けられたアンカークローを伸ばしセシリアを捕まえ引き寄せる。

 

「悪いが速攻で決めさせてもらう。シールドバンカー展開!」

 

セシリアを引き寄せつつも右腕のシールドを変形させ中から大型の杭打機(パイルバンカー)を展開する。

 

「そ、それはまさか!」

 

第二世代機の装備の中でも最大の攻撃力を誇る武装に灰色の鱗殻(グレー・スケール)、通称盾殺し(シールド・ピアース)と呼ばれるものが存在する。それは通称通り盾をも貫く威力を誇る。雪兎が展開したそれはその改良型ともされる彼オリジナルの武装で元は宇宙空間でのデブリ粉砕用。その威力は盾殺しをも上回る。

 

「こいつはこの【S:ストライカー】のとっておきだ。持っていけ!【星屑砕き(スターダスト・ブレイカー)】!!」

 

轟音を響かせて炸裂した一撃はブルー・ティアーズのシールドエネルギーを食らい尽くしたった一撃で戦闘不能にしてしまった。また、絶対防御という安全装置で怪我こそ負わなかったものの、その有り余る衝撃は絶対防御を抜けセシリアを気絶させる程のものであった。




ちょっとやり過ぎた感はありますが後悔はしていません。

チョロコットさんは別に本作のヒロインではないので雪兎に惚れることはありませんが、一夏に対しては・・・・

今回登場した【S:ストライカー】はロマン武装が多いのですが、それを補佐する装備もあるので割りと強力な装備です。バンカーは完全に私の趣味全開ですが(笑)

次回予告

クラス代表決定戦を終え(一夏対雪兎戦?やりませんよ?)クラス代表にされてしまう一夏。そして現れるセカンド幼馴染・凰鈴音。
そして更識簪もフライングで登場!?本音の頼みで簪と接触する雪兎。
専用機を持たない彼女の悩みを雪兎は解決できるのか?
「原作遵守?何それ?鈴の酢豚より美味しいの?」と雪兎は再びやらかす。


次回

「セカンド幼馴染と本音の頼み 兎、新たな友達を得る」


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4話 セカンド幼馴染と本音の頼み 兎、新たな友達を得る

セカンド幼馴染の鈴と不遇系でアニメオタクな簪が登場。
あと、普段の一夏と雪兎もチラリと・・・・


クラス代表決定戦はセシリアの二敗と雪兎の棄権により一夏が代表となることで決着した。この際、一夏はかなりごねたのだが、一応、原作通りに鈴とぶつけるために雪兎とセシリアが結託し無理矢理クラス代表の座を押し付けた。

 

「お前ら、いつの間に仲良くなったんだよ・・・・」

 

「一夏さんの方が伸び代があると雪兎さんと意見が一致しただけですわ。それに敗者であるわたくしに代表の座は相応しくありませんもの」

 

先の試合で二人のことを見直したセシリアはそれ以降友好的になり積極的に二人と接するようになった。雪兎やクラスメイトからすればセシリアが一夏にホの字なのは火を見るより明らかだったのだが、一夏は全く気付いていない。

 

「それはそうと、クラス対抗戦に向けて特訓しねぇとなあ」

 

「そうだな。この前の試合はオルコット対策での付け焼き刃。みっちり仕込んでやらねば」

 

「そういうことでしたらわたくしも協力させていただきますわ。クラス代表に負けられてはわたくしも舐められてしまいますもの」

 

ここに雪兎・箒・セシリアの三人による一夏コーチ陣が結成された。原作と違い箒とセシリアが対立していないのは雪兎が原因で、この二人を対立させても迷惑を被るのは一夏であり、特訓の時間も減るからといがみ合う二人にぶちギレかけた雪兎が30分にも及ぶ説教をしたこともあって箒とセシリアの二人はできるだけ雪兎の前では対立しないという協定を結んでいる。決してお仕置きと称して特訓中にバンカーを叩き込まれたからではない・・・・はずである。

 

「今日中に瞬時加速(イグニッション・ブースト)くらいは習得してもらうぞ。あれのあるなしで戦術の幅が違うからな」

 

「確かに一夏の取れる戦術を考えれば有用だな」

 

「零落白夜の一撃必倒の攻撃を生かすには良い考えだと思いますわ」

 

本当に原作よりも優秀なコーチ陣に囲まれ一夏の特訓の日々は続く。途中で代表就任パーティーや新聞部の取材もあったがその辺は原作とあまり変わらなかったとだけ言っておこう。

 

「そいうや中国から転入生が来たらしいよ。しかも代表候補生なんだって」

 

そんなある日、クラスでそんな噂が流れた。

 

(もうそんな時期か、確かその代表候補生って・・・・)

 

原作を知る雪兎はその転入生の正体を思い返し少し憂鬱になる。

 

「織斑君、頑張ってねー」

 

クラス対抗戦に出る一夏に檄を飛ばすクラスメイト達。それもそのはず。

 

「フリーパスのためにもね!」

 

そう、一位のクラスには学食デザートの半年フリーパスが配られるのだ。それに女子が食いつかない訳がない。

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」

 

しかも、その4組の生徒の専用機は未完成。実質専用機を持っているのは我らが1組だけ。クラスメイトはそう思っていた。

 

「ーーその情報、古いよ」

 

そこに待ったをかける声が響く。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

そう自信満々に言うのは。

 

「鈴・・・・?お前、鈴か?」

 

「聞き慣れた声だと思えばやっぱりお前か、凰鈴音」

 

「久しぶりね、一夏に雪兎」

 

そう、二人の箒とは別の幼馴染・凰鈴音だった。

 

「何格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」

 

「キャラに合ってないな。そういうのはせめてもう少し身長が欲しいところだ」

 

「んなっ・・・・!?なんてこと言うのよ、アンタ達は!特に雪兎!また身長のこと言ったわね!!」

 

二人の言葉にやっと普段通りの言動に戻る鈴だったが・・・・

 

「鈴、後ろ」

 

「へ?」

 

雪兎の指摘で後ろを振り返るとそこには出席簿を片手に立つ千冬の姿があった。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん・・・・」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

雪兎の指摘も虚しく出席簿アタックの餌食となる鈴。「また後で来るから逃げるんじゃないわよ!」と捨て台詞を残し二人目の幼馴染との再会はぐだぐだなまま終わりを告げた。また、その後の授業で鈴の存在が気になって仕方なかった箒とセシリアは仲良く出席簿アタックの餌食となったのだった。

 

((これも全部一夏(さん)のせいだ(ですわ)!!))

 

授業に集中できてない貴女達が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のせいだ」

 

「あなたのせいですわ」

 

「何でだよ・・・・」

 

午前の授業も終わり昼休み。授業が終わって早々二人は一夏に詰め寄る。午前中の授業で真耶からは5度も注意を受け、千冬から3度も出席簿アタックを食らったのにこの二人は全く懲りていなかった。一夏が不憫でしょうがない。

 

「言いたいことも分からんではないが先に食堂へ行かないか?詳しい話はそんときにしてやる」

 

「むぅ、お前がそう言うなら仕方ない」

 

「雪兎さんに免じて許して差し上げますわ」

 

件のOHNASHIがあったせいか雪兎に対して強く出られない二人は仕方なしにと食堂へと移動を開始する。

 

「雪兎、お前が友達でほんとによかったよ」

 

「気にするな。それよりも俺達も食堂へ急ぐぞ」

 

他にもクラスメイトが何名かついてくるがいつものことだ。食堂に移動した一行は券売機で思い思いのメニューを選ぶ。一夏は日替わりランチ、箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ、そして雪兎は・・・・

 

「カツカレーうどん定食?」

 

なんとも変わったメニューを注文していた。

 

「カレーうどんに丼ご飯と揚げたてのカツ・・・・」

 

そこにミニサラダという「どんな構成だ!カレーうどん食ってから丼ご飯にカツと残ったカレーかけて食えと!?」とどこぞのメダロッターが突っ込んだ程のメニューである。

 

「まさかこの食堂にこの伝説のメニューがあるとは思わなかったぜ」

 

作る方も作る方だが、頼む方も頼む方である。

 

「待ってたわよ。一夏、それと雪兎!」

 

そこに仁王立ちで待ち構えていた鈴がいた。

 

「そこ邪魔、待ってたのはわかるがそこは他の人の邪魔になる」

 

「あっ、すいません」

 

「それと、何でラーメン?待ってる間に伸びるだろうが」

 

「ごもっともです・・・・じゃなくて!何で早く来ないのよ!」

 

「お前の都合など知らんし、約束してた訳でもないだろうが」

 

「うぐぐぐぐ・・・・」

 

雪兎に一方的に言い負かされ悔しそうにする鈴。

 

「お前らは相変わらずだなぁ」

 

一夏には少し前までよく見ていた懐かしの光景だ。

 

「さてと、鈴弄りはこの辺にしといて、あそこのテーブルが空いたし移動しようぜ」

 

丁度空いたテーブルへ移動し一行は席に着く。

 

「で、一夏、雪兎、そろそろどういう関係なのか説明してくれないか?」

 

「そうですわ!一夏さん、まさかこの方と付き合っていらっしゃいますの!?」

 

他のクラスメイトも興味津々のようで聞き耳をたてている。

 

「べ、べべ、別に付き合ってる訳じゃ・・・・」

 

「そうだぞ。何でそんな話になるんだ。ただの幼馴染だよ」

 

鈴、憐れである。

 

「幼馴染・・・・?」

 

そこで怪訝そうな顔をするのは二人の幼馴染であった箒だ。

 

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ?鈴が転校してきたのは小五の頭だよ」

 

「でもって中二の終わりに国に帰ったもんで会うのは一年ちょっと振りという訳だ」

 

所謂「入れ違い」というやつである。

 

「箒をファースト幼馴染とすれば、鈴はセカンド幼馴染ってことだ」

 

その後、互いに自己紹介をするが女子三人の間に火花が散っていたのは気のせいではないだろう。こうして後に一夏ラバーズと呼ばれるものの中の三人がここに集結したのだった。

 

「ねえねえ、あまあま。ちょっといいかな?」

 

それを余所にカツカレーうどん定食を食す雪兎にのほほんさんこと布仏本音が声をかけてきた。

 

「どうした、布仏」

 

「本音でいいよー、三年にお姉ちゃんもいるから紛らわしいし」

 

「わかった。で、何の用だ?」

 

これまでクラス代表に推薦してきたくらいしか関わっていなかった本音が個人的に声をかけてくるとは思ってもみなかった雪兎だったが、とりあえず話を聞くことにした。一夏達は一夏達で盛り上がっている(修羅場)っぽいので放置だ。

 

「あまあまってISのこと詳しいよね?」

 

「まあ、ISに乗れるってわかる前からエンジニアになろうと色々勉強してたしな」

 

「あの専用機もあまあまが考えたんだよね?」

 

セシリア戦の後にクラスメイトに色々聞かれた際に答えたことを覚えていたらしい。

 

「そんなあまあまにお願いがあるんだよ」

 

「お願い?」

 

それは雪兎にとって意外なものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、雪兎は一夏の特訓を箒とセシリアに任せ(若干不安なものの)、ISの整備室を訪れていた。

 

(更識簪、ねぇ・・・・)

 

本音の頼みとは先も話題に上がった専用機を持たない日本の代表候補生にして4組のクラス代表に選ばれた更識簪に関することだった。彼女と幼馴染で従者という関係にある本音は未だに完成していない簪の専用機【打鉄弐式】について手を貸して欲しいと雪兎に頼んできたのだ。

 

『あまあまがおりむーの特訓で忙しいのはわかるんだけど手を貸して欲しいんだよ』

 

流石にクラス対抗戦には間に合わないとは思うが手伝って欲しいと真剣に頼まれ、雪兎はその頼みを聞き入れた。

 

(でも、簪って最初に出てくんの七巻の全学年専用機持ちタッグマッチの時だったよな?フライングじゃね?)

 

そう、簪は一夏の専用機【白式】の開発により倉持技研によって開発を凍結された【打鉄弐式】を一人で完成させようとしており、姉である楯無の依頼でタッグを組むべく一夏が接触する原作七巻より登場する娘だ。

 

(まあ、原作崩壊なんて今更か・・・・俺と姉さんがいる時点で原作崩壊もいいところだしな)

 

突然だが雪兎には年の離れた雪菜という姉がいる。雪菜は主に原作六巻などでお馴染みのキャノンボールファスト等のレース系競技で活躍する選手で二つ名は「高速の妖精(ラピッド・フェアリー)」と呼ばれる程のトッププレイヤーである。スタートダッシュからゴールまで何人足りとも寄せ付けぬそのレースっぷりは親友の織斑千冬(ブリュンヒルデ)すら賞賛するレベルである。そんな姉がいるせいか、簪が姉である楯無に劣等感を抱く気持ちもわからなくはない。本音の頼みを聞いたのもそんなところがあったのも理由の一つだ。

 

(打鉄弐式にも興味が無いと言ったら嘘になるしな)

 

このメカオタクからすれば未知のメカに触れられるというだけで手伝う理由としては十分なのだが。

 

(えーっと更識簪はどこかなっと)

 

とりあえず声をかけてみようと簪の姿を探すと整備室の隅で一人黙々と作業をする簪を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪side

 

「更識、簪さんで間違いない?」

 

「誰?」

 

突然後ろから話しかけられ私は警戒しつつも声のする方を向く。

 

「俺は1組の天野雪兎、訳あってIS学園に来た男子の一人だ」

 

話しかけてきたのはIS学園に二人だけいる男子の片割れだった。「1組」と聞き、少し顔をしかめるも打鉄弐式凍結の原因(織斑一夏)ではないとわかると私は少しだけ警戒を解いた。

 

「あー、やっぱり一夏のやつのこと怒ってる?」

 

「・・・・悪いのは彼じゃない。悪いのは倉持技研」

 

「だよな。君の専用機引き受けておきながら一夏がIS使えるとわかった途端にそれを勝手に凍結しちまって一夏の専用機に掛かりきりになっちまうんだもんな」

 

その発言に私は少し驚いた。天野雪兎のことは織斑一夏のことと共に何度か噂は聞いていたが、まさか自身の友人のことより私のことを気遣う発言をしたからだ。

 

「まあ、その白式も中途半端にしやがるクソ共がこの国一番っていうんだから情けない」

 

しかも国の最高峰の研究機関をボロクソに言っているのだ。流石の私も「そこまで言うか」と倉持技研をほんの少しだけ擁護したい気分になった。

 

「技術者ってのは最後まで責任持って仕上げてこそなんだよ。それも出来んような半端者は国が許そうと俺が許さん」

 

そんな私の気持ちを読んだかのように彼は続けてそう言う。

 

「で、その打鉄弐式、完成できそうなのか?」

 

おそらく1組にいる幼馴染(本音)に聞いたのだろう。彼は目の前に展開された未完成の私の専用機【打鉄弐式】を見ながら訊ねる。

 

「貴方には関係ないこと!」

 

「悪い、聞き方が悪かったな」

 

ついキツイ言い方をしてしまったが、彼は特に気にした様子はない。

 

「君はこいつ(打鉄弐式)を一人で組もうとしてるんだって?」

 

「それが何か?」

 

「どうしてとは聞かない。だけど、君一人じゃ危なっかしい。一技術者としても少しばかし見過ごせないな。あっ、そこの配線逆だぞ」

 

何故か彼はそんなことを言ってきた。

 

「本音に言われてやめさせにきたの?なら帰って!」

 

彼も他の人達と同じでお姉ちゃんと私を比べるんだと私は先程よりも強く拒絶するが、彼は全く引かなかった。それどころかとんでもないことを言い出した。

 

「それは出来ん相談だ。本音に頼まれたのは事実だが、理由については聞いてないし、さっきも言ったが一技術者としてこれは見過ごせないんだ。それに少しお詫びってのもある」

 

「お詫び?」

 

「倉持技研から未完成の白式を回収して完成させたのはうちの師匠でな。そんとき俺と師匠で倉持技研の連中に結構キツイこと言ってしまってな。君の打鉄弐式が凍結解除にならなかったのそれが理由じゃないかと・・・・」

 

「え?」

 

思わず素で返してしまった程だ。だが、驚くのはまだ早かった。

 

「あと、君の姉さんの楯無先輩だっけ?彼女のISも一人で組んでねぇぞ?あんな複雑なIS一人で組めんのなんて俺の師匠の篠ノ之束くらいだってぇの」

 

篠ノ之束。世界で知らぬ者はいないとされるISの開発者。その弟子だと彼は言ったのだ。そしてお姉ちゃんのIS【ミステリアス・レディ】がお姉ちゃん一人の手で作られたものではないと。

 

「篠ノ之博士の、弟子?」

 

「ああ、俺の専用機もあの人のお手製だぞ?まあ、基礎設計は俺がやったけどな」

 

「お姉ちゃん一人で、作ってない?」

 

「多分、三年の布仏虚先輩とかの手を借りたんじゃね?あの人も本音と同じで楯無先輩の従者かなんかだろ?」

 

それを聞いて私は何故か全身の力が抜けたような気がした。いや、実際に抜けたのだろう。今までお姉ちゃんが一人でやってきたと思っていたことがそうではないと言われて気が抜けてしまったのだ。

 

「大丈夫か?簪・・・・いきなり名前で呼んじゃ失礼か」

 

「ううん、大丈夫。お姉ちゃんと被るし」

 

「なら簪って呼ばせてもらうわ。代わりに俺のことは雪兎でいい」

 

「うん、雪兎」

 

力が抜けへたりこんでしまった私の手を取り、雪兎は少し嬉しそうな顔をしていた。

 

「でさ、簪。俺と友達になってくれねぇか?」

 

「どうして?」

 

「いや、友達を手伝うって大義名分があれば俺もこいつ(打鉄弐式)仕上げるの手伝えるかなぁーと」

 

「ぷっ」

 

この時、私は久しぶりに笑った。そして私はこの変わった人・天野雪兎と友達になった。




なんか簪ちゃんがヒロインでよくね?状態に・・・・どうしてこうなった?
雪兎(メカオタク)が悪い。そうに違いない!

雪兎「ちょっとOHANASHIしようか、作者」

ひぃっ


次回予告

簪と友達になり打鉄弐式の完成を目指す雪兎。だが、雪兎が原作通りなことをするはずもなくまたしても自重しない行動に出る。
そして、クラス対抗戦に挑む一夏は鈴に勝つことができるのか!?

次回

「打鉄弐式とクラス対抗戦 兎、自重しない」


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5話 打鉄弐式とクラス対抗戦 兎、自重しない

またしても雪兎がやらかす。
打鉄弐式、大幅に改造されます。

※簪は雪兎のヒロインじゃなく友達です。


寮の自室。男子同士ということで同室になっている二人は夕食後、互いに放課後何をしていたか話していた。

 

「特訓はいつもの調子か・・・・」

 

「ああ、何であの二人だけになると途端に駄目になるんだ?あいつら」

 

雪兎というストッパーがいないと箒とセシリアは原作通りに自分の考え方を押し付けるような教え方になるため、特訓があまり進まないらしい。

 

「それでお前はどこに行ってたんだ?」

 

「ん?前に専用機凍結された娘の話したろ?あの娘んとこ」

 

「ぶー!?」

 

それを聞き一夏は口にしていた緑茶を吹き出す。

 

「汚いなぁー、ちゃんと拭いとけよ?」

 

「おう・・・・じゃなくて!何でその娘のとこ行ってんだよ!?」

 

一夏も専用機凍結の間接的原因であるため気にはしていたのだが、このフットワークの軽い友人は早速接触してきたらしい。

 

「いやー、本音に頼まれて」

 

「本音?」

 

「布仏本音、クラスメイトの名前くらい覚えとけよ・・・・あののほほんとしてる娘だよ」

 

「ああ!!のほほんさんか!でも何で?」

 

原作通りのほほんさんで記憶していたようだ。

 

「その娘と幼馴染なんだとよ。それで未完成の専用機を一人で組もうとしてるから様子を見てくれないかって」

 

「そうだったのか・・・・」

 

「んで友達になった」

 

「どこをどうしたらそうなるんだよ!?友達になるの早くね!?」

 

急展開過ぎて一夏も突っ込むことしかできない。一夏が話を聞いた限りでも重そうな背景を抱えていそうな少女とどうしたらすぐに友達になれるのだろうか。

 

「しばらくその娘、簪っていうんだが。簪の専用機仕上げようと思うから特訓は箒とセシリアに一任するわ。あっ、箒には打鉄・改預けてるから訓練機の心配は要らんぞ」

 

「ちょっ!?あの二人だけだと特訓にならないってさっき言ったじゃんか!」

 

箒は感覚的、セシリアは細かい理論的なことしか言わないので間を取ってくれる雪兎がいないのは一夏にとって

死活問題なのだ。

 

「焦ってるな?鈴と揉めでもしたか?」

 

「うぐっ」

 

「そんでクラス対抗戦での勝ち負けに何か賭けた?」

 

「ぐはっ」

 

「はぁー、この唐変木は・・・・」

 

原作だと試合前にあるやり取りだが雪兎がカマをかけてみたら見事にフライングしてやらかしていた。

 

「で、何があった?」

 

「実は・・・・」

 

ここで例の「毎日酢豚を」の件で怒らせ賭けの話になったらしい。

 

(俺が同室になった影響か?まあいい、こっちは誤差の範囲だから大筋に影響はないだろう)

 

どうせ無人ISの乱入で賭けはお流れになるのだし問題ないと雪兎は判断する。

 

「結論から言うとお前が悪い。大体予想つかないか?「毎日」ってのは「ずっと」って意味でもあんだぞ?」

 

「あ、やっぱり?」

 

「それを「おごってくれる」と勘違いするとか・・・・鈴でなくてもキレるわ」

 

それこそ「どこをどうしたらそうなるんだよ!?」である。

 

「とりあえず、勘違いしてたことは試合の後にでも謝っとけ。ただし!それで付き合う付き合わないまで決めるなよ?そこで好きでもない、この場合はlikeじゃなくてloveの方な、娘と付き合ってみろ。すぐにすれ違い起きて破局すんぞ」

 

「お、おう・・・・なんか実感込もってね?」

 

「一般論だ一般論。とりあえず後悔するような選択はすんなよ?」

 

「わかった」

 

これで少しは唐変木さが治ればいいのだが、生憎雪兎もそこまでは期待していない。そこは伊達に(箒や鈴より長く)幼馴染をやってはいない。

 

「あと、特訓メニューは二人に送っとくからそれやっとけ」

 

「サンキューな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、クラス対抗戦の相手がいきなり鈴の2組と判明し、箒とセシリアがまたあーだこーだ言っていたが、昨夜は特訓メニューや簪の打鉄弐式の組み上げプランを練っていて寝不足気味の雪兎に一喝されて静かになった。

 

「天野君って、やっぱり頼りになるね」

 

「そーだよねー。それにISの操縦も上手いし」

 

「なんてクラス代表辞退したんだろ?」

 

二人を止められなかった一夏の株がほんの少し落ちたのはある意味仕方ないのかもしれない。

 

「あまあま、かんちゃんはどうだった?」

 

そんな雪兎が少し恐かったのか、または簪が今も自分を拒否していないか?などを考えていたのだろうか?本音が恐る恐る雪兎に声をかける。

 

「・・・・本音か、何とか友達にはなったよ。弐式に関してももう一人で全部やろうなんては考えてないと思うぞ。しばらく手伝ってやる約束もしたしな」

 

「ほ、ほんと!?」

 

たった一日なのに成果を出してきた雪兎に本音は驚く。

 

「なんなら今日一緒に会いに行くか?多分、簪も気にしてんじゃねぇか?」

 

「い、いく!」

 

尻尾があればブンブンと振っている姿が幻視できる程本音は嬉しそうだ。

 

「何の話だ?」

 

雪兎と本音という珍しい組み合わせに箒は何事かと訊ねる。セシリアも興味があるのか箒と共に雪兎達のところへやってくる。

 

「ちょっとな、二人の共通の友人の話さ」

 

「いつの間にそんな方が?」

 

「昨日。今はちょっと事情があって紹介できないが、また向こうの事情が片付いたら紹介するよ」

 

この時、その話を聞いていたクラスの雪兎ファンクラブ(非公認、一夏のもある)の面々はいつの間にか抜け駆けしていた本音とその友人(簪)に激しく嫉妬したとかしないとか・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、約束通り本音を連れて雪兎は簪のいる整備室を訪れた。

 

「よっ、簪」

 

「いらっしゃい、雪兎。それに本音も」

 

「かんちゃん・・・・」

 

今まで拒絶されてきたこともあって以前のように声をかけてきてくれた簪に本音は涙ぐんでいた。

 

「ごめんね、本音。今まで心配かけて」

 

昨日雪兎に諭されていかに本音が自分を気にかけてくれていたかを思い返し簪は謝った。

 

「かんちゃーん!!」

 

そこからは普段の本音からは想像もできないくらい号泣して抱きついた簪の制服を濡らしていた。

この時、生徒会長と虚の姉二人も密かに物陰で涙ぐんでいたのを雪兎は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがどう、あまあま」

 

数分後、ようやく泣き止んだ本音は雪兎に頭を下げる。

 

「礼を言うのはまだ早いだろ?打鉄弐式も何とかするんだから」

 

しかし、雪兎の本命は打鉄弐式の完成。ここで引き下がる訳がなかった。

 

「最終調整とかは対抗戦には間に合わないから対抗戦には訓練機で出てもらうことになっちまうが、手は尽くさせてもらうぜ」

 

そう言って雪兎が取り出したのは少し大きなノートPC型の端末。しかも簪達の見たこともないモデルのものだった。

 

「それは?」

 

「こいつは俺のISが収集したデータから新たな武装やパッケージを設計してくれる便利ツール【EVOLsystem】さ」

 

「え?」

 

ここにきて雪兎はまたしてもとんでもないものを持ち出してきた。

 

「打鉄弐式のデータを入力すればそれを最適化してくれるだろうからそれに合わせて機体をチューンすればかなり進むと思うんだが」

 

「いいの?そんなの使わせてもらって」

 

「気にすんなって、友達だろ?」

 

そう言って簪から許可を取ると雪兎は打鉄弐式のデータを端末に入力していく。

 

「打鉄は防御に重点を置いてたが、弐式の方は機動系か・・・・デザインは白式に似てるってか白式が弐式のデータを流用したのか・・・・ならこっちのデータも追加して・・・・ん?ってことはあのプランも使えるな・・・・武装は荷電粒子砲にマルチロックオンシステムによる高性能誘導ミサイルに高周波ブレードの薙刀か・・・・マルチロックオンはあの機体のデータを参照して・・・・パーツはまだストレージに残ってたよな?足りなきゃ束さんに頼むか・・・・ふっふっふっふっ、久しぶりに腕が鳴るじゃねぇか!」

 

データを入力しながらイキイキとしだした雪兎に少し引く簪と本音だったが、これが天野雪兎の素なのだろう。本当に楽しそうに作業をする姿に頼もしさを感じた。

その時、二人はまだ気付いていなかった。雪兎という劇物を投入したことで打鉄弐式がとんでもないことになっていることに。コンセプトと武装の種類は同じだが、倉持技研が当初設計したものとは全く別の機体になっているということに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦当日。打鉄弐式の開発は雪兎の暴走によって随分と進んだが、結局クラス対抗戦には間に合わなかった。

 

「調子はどうだ?」

 

開発に一区切りをつけた試合に出る白式のメンテを前日に行っており、その具合を訊ねる。

 

「ああ、バッチリだ。流石は雪兎」

 

やはり開発者の弟子の名は伊達ではない。

普段はオートメンテナンスに任せてはいるが、今回の対抗戦に合わせ珍しく雪兎が自分から買って出たのだ。そこには原作通りなら試合中に乱入してくる無人ISのことを知っている雪兎の知らせれない罪悪感と親友が無事でいてほしいと願う気持ちが含まれていた。

 

(あとはいざって時に備えておくか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね、一夏」

 

「鈴、負けねぇぞ」

 

対峙する二人は。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

そのアナウンスと共にそれぞれの得物を構え激突する。白式の雪片弐型と甲龍の双天牙月のぶつかり合いは甲龍に軍配が上がり弾き飛ばされるもセシリアに教わった三次元跳躍旋回(クロス・グリッド・ターン)ですぐさま立て直し次に備える。すると、甲龍の肩にある非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の装甲がスライドする。

 

『【衝撃砲】?』

 

『空間に圧力をかけて砲身を生成し、余剰分の衝撃を見えない弾丸として発射する。簡単に言えば広範囲空気砲かな?』

 

雪兎から事前に聞かされていた甲龍の第3世代兵器のことを思い出し、咄嗟に回避行動を取る一夏。

 

「へぇー、【龍咆】を初見で避けるなんてやるじゃない。と言ってもどうせ雪兎の入れ知恵でしょ?」

 

「まあな、ほんとにあいつには頭が上がらないぜ」

 

全方位射角という恐ろしい兵器ではあるが、発射の一瞬に大気のブレが生じるため、それを感知できれば理論上回避は可能だ。雪兎は鈴対策としてハイパーセンサーがそれを感知したら即座に反応できるよう特訓メニューを組んでいたのだ。

 

(付け焼き刃ばっかなのは俺が未熟だから。なのにあいつはいつも俺に勝てる可能性をくれる・・・・これで負けたら男が廃るし、あいつに並べねぇ!)

 

親友と並び立つという目標のためにも一夏は負けられなかった。だから、箒やセシリアから可能な限り技術を学んだ。それが一夏を大きく成長させていた。

 

(くぅ、一夏のくせに!ほんとあの白兎(雪兎)は敵に回すと厄介よね!)

 

次々と龍咆をかわす一夏に鈴は苛立ちを募らせ次第に砲撃の精密さを欠いていく。

 

(チャンスは一度きり・・・・だが、その一撃で決める!)

 

そして、鈴の砲撃に隙を見つけた一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰めようとするが。

 

ズドオオオオンーーという轟音と共にアリーナの遮断シールドを貫いてアリーナ中央に何かが降り立った。

 

(なんだ、あいつは・・・・)

 

それは全身装甲(フル・スキン)のISらしき人型だった。




無人ISが乱入しました。さあ、この事態に雪兎はどう動くのか?
原作通りだと一夏が仕留め損ない不意討ちを食らうが本作では一体どうなる?

次回予告

乱入してきた謎の全身装甲(フル・スキン)IS。遮断シールドのせいでアリーナに取り残された一夏と鈴。また観客席に閉じ込められた生徒達。一夏と鈴は生徒達を避難させる時間を稼ぐべく謎のISに挑むが・・・・その時、雪兎が取った行動とは?

次回

「決戦!謎の乱入IS 兎、乱入す!?」

感想とかあればいただけると幸いです。


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6話 決戦!謎のIS 兎、乱入す!?

雪兎君がガチ戦闘。セシリア戦では不完全燃焼でしたので今回は雪兎が暴れます。
セシリアの出番?すいません雪兎のために犠牲になりました。

今回は雪兎の初期から所持していた最後のパックが登場。


「遮断シールドがレベル4に設定、アリーナの全扉がロックされています!」

 

「三年の精鋭チームにシステムクラックを行わせていますが手間取っているようです!」

 

「アリーナの生徒達がパニックを起こして扉へ詰めかけています。このままでは怪我人が!」

 

「織斑君!凰さん!返事をしてください!」

 

次々に寄せられる報告を聞きながら真耶は必死に一夏と鈴に退避を勧告するも二人は聞き入れようとはせず、生徒の避難のため謎のISと交戦を開始してしまう。

 

「一体どうしたら・・・・」

 

「落ち着け山田先生」

 

「織斑先生!なんで落ち着いていられるんですか!?」

 

実の弟が襲われているというのに妙に冷静な千冬を見て真耶は問う。

 

「確かに事態は最悪に近い。だが、不幸中の幸いとでも言おうか。アリーナには天野がいる」

 

「天野君?彼一人で一体何がーー」

 

「だから落ち着け山田先生。あいつはあの束の弟子だぞ?そろそろ・・・・」

 

「あ、アリーナの扉のロックが解除されました!えっ?でも精鋭チームはまだ・・・・」

 

何故急に扉が開いたのか?それを疑問に思っていると管制室に通信が入る。

 

『とりあえずアリーナ内の内部隔壁と扉はアンロックしました。でも外部隔壁と出入り口のロックは別口・・・・多分あのISから発しているプログラムで秒数単位でパスワードが変えられてるようで解除できませんでした』

 

「上出来だ、天野」

 

通信を入れてきたのは雪兎だった。更に言えば三年の精鋭が手こずっていたアリーナの扉のロックをあっという間に解除していたのだ。

 

「ついでで悪いがアリーナにいる織斑と凰の二人のことも頼めるか?」

 

『遮断シールドぶち抜いていいならやりますよ?』

 

遮断シールドのレベル4ともなれば並のISでは突破は不可能なレベル(零落白夜などの例外はあるが)。それを雪兎は容易く「抜ける」と言い切った。千冬が慌てていなかったのは雪兎の実力をよく知っていたからに他ならない。

 

「出来れば穏便にいきたいところだが緊急事態だ。特別に許す」

 

『了解しました。では少し荒っぽくやるんで、観客席の生徒の退避が完了次第突入します』

 

そう言うと雪兎は通信を切ってしまう。

 

「だ、大丈夫なんですか!?それに今彼とんでもないこと言いませんでした!?レベル4の遮断シールドをぶち抜くだなんて!」

 

「安心しろ。あいつはあの天災の弟子で高速の妖精(ラピッド・フェアリー)の弟だ。それに私の弟弟子でもある」

 

「あ、なんだかその面子を聞いたら急に安心しました」

 

ISの開発者で世界有数の天災・篠ノ之束、第1回モンド・グロッソ優勝者・織斑千冬、最速のIS乗りと名高い天野雪菜、最強(凶)の世代と呼ばれたこの三人の弟子・弟分が普通な訳がない。

そして、この三人と面識の有った真耶から不安感が抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、生徒も退避終わったようだし俺もそろそろいきますか」

 

三年や教師の誘導で観客席の生徒が退避したのを確認すると雪兎は雪華を展開し遮断シールドの前に立つ。

 

「【S:ストライカー】リミットリリース。フルブレイカーモード起動」

 

雪兎のその言葉で右腕のシールドが大きく展開し、セシリアを破った時に使用した杭打ち機(パイルバンカー)が姿を現す。だが今回はそれだけではなかった。撃ち出す杭に高出力のバリアフィールドを展開させ、それを大きく振りかぶって構え、遮断シールドに杭を叩き込んだ。

 

「これで本当の全力全壊!限界突破(リミテッド・オーバー)星屑破砕(スターダスト・ブレイカー)!!」

 

それは謎のISが遮断シールドを破ったのとは比較にならない轟音をあげて遮断シールドを文字通りぶち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡る。一夏と鈴は摩耶からの通信を切り謎のISと対峙していた。

 

「くそっ、なんなんだよこいつは」

 

何度か攻撃を加えてみるも遮断シールドを破ったであろう高出力ビームと人が乗っているとは思えない動きに翻弄され一夏と鈴は疲弊し、二人のISのシールドエネルギーも底をつきかけていた。

 

「・・・・でも、何か変だよな、あいつ」

 

「変って何よ?」

 

「あいつの動きって何かに似てる気がするんだよ」

 

「コマとか言わないわよね?」

 

「そりゃあ見たまんまだろうが。あー、なんていうかな。昔自動車メーカーが作った人型ロボットあったろ?」

 

「いたわね。工場見学で雪兎がやけに興奮してたのを覚えてるわ」

 

「あれに似てないか?」

 

「言われてみれば・・・・それに私達が会話してる時はあんまり攻撃してこないし」

 

「もしかしてあいつはーー」

 

『無人機だ。あのISに生体反応は無い』

 

「ゆ、雪兎!?」

 

一夏と鈴が謎のISの正体を探っていると雪兎から通信が入った。

 

『お前らの予想通りさ。ありゃコアの周りに細工して無人機として改造したものだろう』

 

「それ、ほんとなの!?」

 

『俺がそんなくだらん嘘をつくとでも?』

 

「そうね。あんたはこの手の分野で嘘は言わないもんね」

 

雪兎が断言する以上、あのISは無人機なのだろう。

 

『さっきアリーナの扉のロックは解除した。観客席の生徒が避難完了次第、俺もそっちに加勢する』

 

「遮断シールドは?」

 

『織斑先生の許可は取ったからぶち抜く』

 

「で、俺はどうすればいい?」

 

『多分、俺がシールドをぶち抜こうとすると妨害行動に出るはずだ。それを邪魔してくれ。その後は俺がやる』

 

「オッケー、こっちはシールドエネルギーがジリ貧だから任せるわ。美味しいとこ譲ってあげるんだからちゃんと決めなさいよ?」

 

『ああ、文句出ねぇくらいに決めてやるよ』

 

そして観客席の避難が完了し雪兎の合図で二人は謎のISの注意を雪兎から逸らし、雪兎は限界突破星屑破砕で遮断シールドをぶち抜きフィールドへと降り立つ。

 

「待たせたな。幼馴染二人の試合を邪魔してくれた礼はキッチリ利子つけて返してやる」

 

そう言って雪兎は雪華を装甲切換(アーマー・チェンジ)させる。黄色から赤へと色合いを変えたそのISは両手にはシールドと一体化したガトリングガンが、他にも各ハードポイントに多数の銃器を搭載している。

 

「釣りはいらん。全弾持っていけ」

 

雪兎は敵向かって距離を詰めながらミサイルやガトリングガンにサブアームで保持したアサルトライフルなどを敵に向けて容赦なく叩き込む。その光景に一夏と鈴は唖然となる。無理もない。それは鉄の雨とも思える圧倒的物量による面制圧攻撃だったからだ。

 

「な、何よ、あれ・・・・」

 

「まるで動く弾薬庫だな」

 

無人機もこれには成す術もなくただの的と化していた。元よりこの狭いアリーナというフィールドで雪兎の使う面制圧を得意とする射撃武装運用試作型パック【G:ガンナー】の相手をするのは無謀であった。しかも、雪兎は高速切替(ラピッド・スイッチ)という技能を有しており、これにより瞬時に弾を拡張領域より補充できるのだ。正直な話、これが無人機でなく有人機であったなら絶望もいいところである。

 

「これくらいやっときゃいいかな?」

 

無数の弾丸を撃ち込まれ砂煙の中から現れた無人機は見るも無惨なことに両手の武装は木っ端微塵、脚や推進部も逃走防止のために破壊、コアがあると思われる胸部以外は破壊し尽くされていた。それを確認すると雪兎は無人機へと近付き残骸を回収する。

 

「任務完了。あー、久しぶりにぶっぱなしたからスッキリしたぜ」

 

この時、一夏と鈴は思った。「こいつだけは本気で怒らせちゃ駄目」だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして後に無人IS襲撃事件と呼ばれる事件は幕を閉じた。残骸は無論IS学園に事件の原因究明の手掛かりとして引き渡された。

 

「ほんと今回の事件は雪兎がいなかったらヤバかったんだな」

 

事件を改めて振り返り一夏はそう感じた。

 

「まあ、アリーナの損害はあの無人機より雪兎のISによるものの方が大きかったそうだがな」

 

その当の本人は自主的にアリーナの修繕を行っているらしいが。

 

「それでも何もできなかったわたくし達よりはご活躍されていましたわ」

 

アリーナの扉のロック解除に一夏と鈴の救出と相手無人機のコア確保。これを一人でやったというのだから恐ろしい。

 

「俺も精進しないとな」

 

「その通りだ」

 

「わたくしもお手伝いしますわ」

 

「一夏がどうしてもって言うんなら手伝ってあげなくもないわよ?」

 

一夏も鈴と和解したようでラバーズの面々はいつも通り騒ぎ出す。

 

「ふぁー、朝っぱらから元気なことで」

 

一方、アリーナの修繕などで寝不足気味の雪兎は取り戻した平穏を噛み締める。だが、これはこれから続く波乱の物語の一幕にすぎないことを知るのはほんの一握りの者達だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下にある関係以外立ち入ることのできない特別な場所で例の無人機の解析は行われていた。

 

「やはり無人機のコアは未登録のものか」

 

「ええ、各国のコアとデータを照合してみましたが該当するコアはありませんでした」

 

「・・・・」

 

「織斑先生?何か心当たりでも?」

 

「いや、ない。今はまだーーな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆー君元気にしてるかなぁー?」

 

その女性は変わったISを纏っていた。紺色の必要最低限と言える装甲と背後に妖精の羽を思わせる非固定浮遊部位を持つIS。それを操るのは高速の妖精(ラピッド・フェアリー)と呼ばれる最速のIS操者・天野雪菜。今現在彼女はレースの真っ最中なのだが、周りに他の選手の姿は無い。そう、彼女は現在単独首位を独走していた。

 

「いっくんやほーきちゃんにりんちゃんもいるって聞いたし大丈夫か。ちーちゃんもいるしね」

 

そこでようやく二位の選手が雪菜を視界に納める。

 

「追い付いたぞ、天野雪菜!」

 

「やっときたんだ。やっぱ第2世代相手(・・・・・・)じゃこの娘(・・・)の本気にはついてこれないか」

 

そう、彼女が纏うISは第3世代機(・・・・・)しかし、そのISはどこの国が作ったものでもなかった。たった一人の天災がたった二人の親友の内一人に作った彼女専用機なのだから。

 

「悪いけど今回も私が勝たせてもらうね。今日の試合に勝ったら私のお願いを叶えてもらう約束してるんだから」

 

「お願いだと?」

 

「うん、IS学園の教師(・・・・・・・)前からお願いしてたんだけど中々OKもらえなかったんだよねー。それじゃ。チャオー」

 

そして再び加速していく雪菜を二位の選手は悔しそうに見送った。

 

「待っててねー、雪兎。今、お姉ちゃんが会いに行くから!」




とりあえず一巻のエピソードは終わりました。
そしてエピローグ部分でも登場しましたが、次章ではとうとう雪兎の姉・雪菜が本格的に登場です。もうお分かりかと思いますが、束・千冬に並ぶブラコン(シスコン)です。
他にも本作のヒロイン(予定)のシャルやラウラも参戦しかなりカオスなことになります。
という訳で結構早足でしたが一章はこれにて閉幕です。



次回予告

クラス対抗戦は結局ドロー。しかし、次のタッグトーナメントで優勝すれば一夏か雪兎と付き合えるという噂が流れ始める。
そんな中、二人の転入生と新教師がIS学園にやってきた!
しかも転入生の一人は三人目の男!?そして新教師は・・・・

次回

「姉襲来!?新教師は俺の姉!?転入生は貴公子と黒兎 兎、色々あってパンクする」


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二章「兎と姉と訳有りの少女達」
7話 姉襲来!?新教師は俺の姉!?転入生は貴公子と黒兎 兎、色々あってパンクする


第2章開幕です。
ある意味雪兎受難の章でもあります。

そのうち箒が借りている打鉄・改や魔改造された弐式などの詳細も書こうと思っています。

それではISー兎協奏曲ー第2幕開演です。


6月初頭の日曜日。久しぶりに外出許可をもらい一夏と雪兎は共通の友人・五反田弾の家を訪れていた。

 

「これで終いだ」

 

「ちょっ!?そこでアストラルとか容赦無さすぎるだろ!」

 

今は雪兎と弾が対戦格闘ゲームで盛り上がっている(負け抜けの二勝先取ルール)。どうやら弾は雪兎にフルボッコにされたようだ。それもそのはず。この格ゲー、雪兎が前世の時から学校の先輩や友人とやり込んでいたゲームだったのだ。また、雪兎の前世の時にあったゲームやアニメ・マンガは何故かこの世界にも存在し(原作であるISやそれに関するものは流石になかったが)、雪兎は前世で培ったそのゲームスキルを無駄に発揮していたのだ。

 

「お前、ほんとに久しぶりにやるのかよ・・・・ってか、そのキャラはインチキ過ぎね?」

 

雪兎が使っていたのは人間サイズの人形を連れた魔術士の少女。一つ前のタイトルから参戦したキャラだ。弾が使ったのはバランスの取れた所謂主人公キャラなのだが、本当に一方的にボコられていた。

 

「使い勝手のいい主人公使っといてそれか?まあ、他のキャラでも勝てなくはないが・・・・もう一戦するか?キャラはお前が指定してもいい」

 

「言ったな!ならこいつだ!」

 

結果は弾の惨敗。年季が違い過ぎたと言う他ない。

 

「ちくしょー、何でそのコマンドあっさり成功させてんだよ・・・・」

 

複雑怪奇なコマンドの必殺技で止めを刺されたのか弾は項垂れる。

 

「そういや、どうなんだ?IS学園って。女の園なんだろ?いい思いしてんじゃねぇか?」

 

「してねぇよ。むしろ女子ばっかりで居心地が悪い」

 

「嘘をつくな、一夏!メールを見た限りじゃ楽園じゃねぇか!」

 

「そうでもないぞ、弾。トイレは校舎内に数ヶ所しかないし、クラス以外の女子の目も三分の一くらいが色物扱いだ。少数派だが、嫌悪する視線を向けてくるのもいる」

 

「嫌悪?何でまた」

 

「女性権利向上を主張してる団体あるだろ?」

 

「あー、「ISに乗れる女性は選ばれた存在」だの「ISに男性が乗るなんて穢らわしい」とか言ってる連中のことか」

 

「そそ、そんな連中に毒されてる生徒もいてな」

 

「・・・・苦労してんだな、お前も」

 

「俺は?」

 

「「一夏、お前は少し周りを気にしろ」」

 

箒、セシリア、鈴の三人からは少なくとも好意を寄せられている一夏に雪兎と弾は辛辣だった。更に言えばこの五反田家にも一夏に好意を寄せる少女がいる。

 

「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べにーー」

 

このドアを蹴り開けてきた少女、五反田弾の一つ下の妹・五反田蘭。彼女も一夏にホの字の少女だ。どうも弾一人だと思ってドアを蹴り開けてみればそこに憧れの一夏とその友人の雪兎がいたので固まってしまったようだ。普段のラフな格好をしていたのも理由の一つだろう。

 

「い、いい、一夏さんに雪兎さん!?」

 

「あ、久しぶり。お邪魔してるよ」

 

「久しぶり、蘭ちゃん」

 

「お兄、何でお二人が来るって教えてくれなかったのよ!」

 

この後、弾が一夏達が来ているのを何で言わなかったのかと蘭に問い詰められてり、お昼をご馳走になったり、蘭がIS学園に受験すると聞いたり、中々に充実して休日を過ごせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み明けの月曜日。教室はとある噂で持ちきりだった。女子の間だけで噂になっていたことではあったが、雪兎は簪経由でそれを知る。噂をまとめると・・・・

 

「今月の学年別トーナメントで優勝すれば一夏か雪兎の好きな方と付き合えるらしいよ」

 

というものだった。

 

(あれ?それって箒が同室だった時に部屋の振り分け直しで引っ越すことになって、そんときに言った言葉が原因じゃなかったっけ?)

 

しかし、一夏の同室になっているのは雪兎なのでそんなイベントはなかったはずだ。雪兎が首をかしてげいると明らかにパニクっている箒が雪兎のところにやってくる。

 

「ゆ、雪兎、どうしよう」

 

この一言で雪兎は知らぬうちに別の場所で箒が「優勝したら付き合ってもらう」発言をしたことを察した。あとは原作同様伝言ゲームの要領で広まっていくうちに「優勝したら一夏か雪兎と付き合える」という内容に変わってしまったのだろう。

 

「俺か一夏、もしくは箒、お前が優勝するしかないな」

 

「わ、私が優勝!?」

 

「俺は好きでもない娘と上辺だけの付き合いなんてゴメンだからな。その点、俺や一夏ならお流れになるだろうし、箒なら俺に被害は及ばん」

 

セシリア、鈴にも同じことが言えるが、今目の前にいるのは箒なので彼女に合わせて話を進める雪兎。

 

「しかし、簪の打鉄弐式も完成してるから結構厳しいトーナメントになりそうだな」

 

「簪か・・・・彼女は強敵だな」

 

そう、雪兎が手を貸していた打鉄弐式も先日無事に完成し、一夏や箒達とも顔を合わせ友人関係を結んでいる。その時、一夏が簪に謝ったり色々あったがそこは何れ話すとしよう。

 

「打鉄・改は借りられるか?」

 

「少しアップデートしておきたいから少し待っててくれ。トーナメント前までには慣らしが出来るようにしとく」

 

「いつもすまない」

 

「気にするな。こっちとしてもデータ取りさせてもらえてるんだ。逆にありがたいくらいさ」

 

そうこうしている間にSHRの時間が迫ってきたので箒を自分の席に戻らせ残りの時間を雪兎はトーナメントをどうやり過ごすか考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!それに加え新しい先生も赴任されました!」

 

「はっ?」

 

「「「「え、えええええ!?」」」」

 

クラスメイト達は噂にもなっていなかった情報に。雪兎は転校生ではなく赴任してきたという教師に驚く。

 

(このタイミングで来んのって、シャルルとラウラだよな?新しい先生?そんなの知らないんだけど!?)

 

「では、入ってきてください」

 

真耶の言葉で教室に入ってきた三人。フランスからきた三人目の男性操者という触れ込みで転入したシャルル・デュノア、ドイツからやってきた黒兎隊隊長ラウラ・ボーデヴィッヒ、そして・・・・

 

「おいおい、嘘だろ・・・・なんで姉さん(・・・)が」

 

それは雪兎の姉・天野雪菜だった。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

転校生の自己紹介はフランスのシャルルから始まった。

 

「お、男・・・・?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入をーー」

 

「きゃ・・・・」

 

「はい?」

 

「きゃあああああーーっ!」

 

三人目の男子。しかも守ってあげたくなる系の貴公子の登場に教室が沸く。

 

「これで三人目!」

 

「熱血系の織斑君に頼れるお兄さんポジの天野君ときて今度は守ってあげたくなる系・・・・これで一組の布陣は完璧だわ!」

 

雪兎は知らぬ間にクラスのお兄さんポジになっていた。まあ、勉強のわからないところはなんだかんだで親切に教えてくれるし、箒達一夏ラバーズの抑え役でもあり、先のクラス対抗戦の乱入騒ぎを解決したのも雪兎だ。それにどこから漏れたのか簪の専用機の件も伝わっており、頼れる兄貴分というポジションを獲得するに至ったようだ。ちなみに五反田蘭も「実の兄より役に立つ」と中学時代はお世話になっていたんだとか。

 

「・・・・」

 

一方のドイツからきたラウラはというと、無言だった。無関心というふうにも見えるが、雪兎にはシャルルに対する騒ぎように呆れているような雰囲気すら感じられる。

 

「・・・・挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

しかし、千冬が一言かけるとすぐに姿勢を正す。

 

「ここではそう呼ぶな。それに私はもう教官ではないし、お前もここでは一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼ぶように」

 

「了解しました」

 

軍人のような(実際ラウラは軍人だが)やり取りにクラスメイト達は静まりかえる。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

ただそれだけ簡潔に言うと、「これで終いだ」と言わんばかりに元の休めの姿勢に戻る。

 

「あ、あの、以上ですか?」

 

「以上だ」

 

そして最後は・・・・

 

「えー、この度IS学園に赴任することになりました天野雪菜です。弟のゆーく・・・・ゴホン、雪兎と同じ名字だから気軽に雪菜先生と読んでね」

 

「えっ?天野君のお姉さん?」

 

「それに天野雪菜ってまさか高速の妖精(ラピッド・フェアリー)!?」

 

「それに今、雪菜先生、天野君の呼び方言い直してなかった?」

 

これにラウラで一度沈静化したクラスが再び沸いた。

 

(何やってんだあの姉は!!)

 

そんな中、ラウラはクラスを見渡し一夏を視界に捉えるとスタスタと近付いていき、バシィンッ!と一夏の頬を平手打ちで叩いた。

 

「私は認めない。お前があの人の弟であるなどと、認めるものか!」

 

「い、いきなり何しやがる!」

 

「ふんっ」

 

こうして一組に新たなメンバーが加わったが、その初会合は一波乱も二波乱も起きそうなものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、シャルルの世話を同じ男子ということで引き受けた一夏と雪兎はすぐに更衣室に移動(女子が教室で着替えるため)しながら野次馬と化した他の生徒達を掻い潜ることとなり、グラウンドに着いたのは本当にギリギリの時間だった。

 

「黛先輩め・・・・こっちは時間ねぇってのにしつこいわ!」

 

「それを何とかしちゃった雪兎って、さりげに凄いね・・・・」

 

「雪兎だからな」

 

数少ない男子ということで互いに名前呼びすることとした三人は雪兎の活躍で新聞部のエース黛を退けたが、そのせいでかなり疲弊していた。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。やってもらうのは・・・・凰、オルコット、お前達にやってもらおう」

 

選ばれた鈴とセシリアはお互いに火花を散らしていたが相手はなんと真耶だった。元代表候補生ということもあってその実力は本物だ。鈴とセシリアは終始翻弄されたまま一度も攻撃を当てれずに撃墜されてしまう。しかも、真耶が使っていたのは教員用の何のカスタムもされていないラファール・リヴァイヴ。普段のアワアワしている姿しか知らなかった生徒達は大いに驚くこととなる。

 

「さて、存外早く終わってしまったからもう一戦いけそうだな・・・・天野、お前もやってみるか?」

 

「・・・・相手次第ですね。織斑先生とやれだなんて言われたら流石に辞退しますよ?」

 

「いや、お前の相手はアレだ」

 

そう言って千冬が上を指すとそこには妖精のようなISを纏った雪菜の姿があった。

 

「・・・・ちょっと待て、いくらなんでも生徒相手にガチ装備で挑むとか何考えてんだ姉!」




弾とやってたのは私もよくやってた某格ゲーです。
昔、映画館のゲーセンでストレートのアストラルフィニッシュを決められたことはトラウマレベルの思い出です。

とうとう登場したヒロイン候補に姉。その姉の実力とは如何に!?

次回予告

何でかガチの姉弟戦をする羽目になった雪兎。実力未知数の姉・雪菜にどこまでやれるのか?
そして、何故かシャルルと同室になってしまった雪兎はシャルルの秘密を知り今回もやらかす。

次回

「姉弟対決!雪菜VS雪兎 兎、貴公子の秘密を知る」


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8話 姉弟対決!雪菜VS雪兎 兎、貴公子の秘密を知る

雪兎の姉・雪菜の実力が明らかに。
そして貴公子・シャルルの秘密とは?(実はもう知ってる)

雪華の新パックも登場!


「ゆーくん、久しぶり」

 

「久しぶり、じゃねぇよ。バカ姉。そのIS、学生相手に使うもんじゃねぇだろ・・・・」

 

久しぶりの姉弟の会話はそんな罵倒から始まった。

 

「第3世代IS【シルフィオーネ】そんなもん持ち出しやがって」

 

「ゆーくんだって【雪華】使ってるじゃない。それに勝とうと思ったらお姉ちゃんもこの娘(シルフィオーネ)持ち出すよ」

 

第3世代IS【シルフィオーネ】雪菜専用機として開発された天災(束さん)お手製のISだ。装甲は必要最低限と一見貧弱そうに思えるこの機体だが、そのリソースの大半は装甲の表面にある発光パーツと非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)に割り振られており、拡張領域(バス・スロット)も最低限しかない。ある意味では白式と同じようなものだ。そしてその機能こそこの機体が不落の最速IS足る由縁でもあるのだ。

 

「【反射反応装甲(リフレクション・アーマー)】は厄介過ぎる」

 

反射反応装甲(リフレクション・アーマー)】とはその装甲にかかる負荷を任意の方向に弾くことができるというとんでもない代物なのだ。しかし、一度に反射できる方向は一方だけで弾くタイミングなどの見極めが難しく、反射の計算処理などが常人では不可能なレベルのもので使いこなせるのは世界で雪菜と束くらいのものだろうとすら言われている。雪菜は主に瞬時加速(イグニッション・ブースト)によってかかる負荷を別方向に向け加速し続けたり、方向転換したりするのに使っている。つまり、一度瞬時加速を使われると追い付けなくなるというレースでは悪魔のような機体なのだ。当然、攻撃も反射できるので防御性能も高い。

 

「でもほとんど攻撃方法ないよ?」

 

「その数少ない攻撃方法も厄介だろうが」

 

シルフィオーネの数少ない攻撃方法は背面の非固定浮遊部位から放たれるビーム攻撃。しかも、羽がリフレクションビットというビームを反射するものでそれによるオールレンジ攻撃を可能にしている。ブルー・ティアーズの偏向射撃(フレキシブル)より断然使い勝手はいい。

 

「ほんとなんて機体作るんだよ、あの人は・・・・」

 

この機体を破るにはオールレンジ攻撃を掻い潜り反射反応装甲以外の部位を攻撃するか、零落白夜のようなバリア無効化攻撃くらいしか攻略法が存在しないのだ。ちなみに、ブルー・ティアーズにはその機体特性上天敵と言っていいレベルで、余裕で完封出来る。

 

「仕方ない・・・・トーナメントまで使うつもりはなかったが、こいつを使わせてもらう。来い【W:ウィザード】!」

 

なので雪兎はトーナメント用に用意していた新たなパック【W:ウィザード】を展開した。その装甲の色は紫で、肩と背面に大型のローブのような非固定浮遊部位を持つパック。そして手にする武器はビームの刃を持つ大鎌。それを纏った雪華はその名の通り魔法使いを彷彿させる。

 

「それ、新しいパック?」

 

「ああ、セシリアのブルー・ティアーズと簪の打鉄弐式のデータを元に作った今の俺が姉さんに対抗できる可能性がもっとも高いパックさ。悪いが今回は勝たせてもらうぞ、姉さん!」

 

「私もこの娘を持ち出した以上、それにお姉ちゃんの意地にかけても勝つよ!」

 

そして二人の模擬戦は始まった。

 

「いけ、グラスパービット!」

 

先手を取ったのは雪兎だった。シルフィオーネはその特性上、攻撃展開速度に難があるため(リフレクションビットを展開してからしか攻撃できないため)どうしても先手を相手に譲ってしまう傾向があるのだ。対して雪兎が展開したグラスパービットは雪菜を取り囲むように展開させるだけでいい。

 

「雪兎、この娘に光学兵器は通用しないのは知ってるよね?」

 

「当たり前だ。そいつの設計に俺も咬んでるからな」

 

そう、シルフィオーネに使われている技術は雪兎の前世にあったアニメ等の知識を束が実用化したもの。当然そのスペックは把握済みである。

 

「言っとくがグラスパービットに攻撃機能なんざ付いてねぇぞ?」

 

「えっ?」

 

支配者(グラスパー)の名の意味を見せてやるよ!」

 

そういうと雪兎は多数のミサイルを同時展開し雪菜に向けて放つ。

 

「それくらい!・・・・って、えええええ!?」

 

対して雪菜はリフレクションビットを展開しビームで迎撃しようとするもリフレクションビットが上手く機能せずミサイルで撃ち落とされてしまう。

 

支配者(グラスパー)って、そういう意味!?」

 

「そう、このグラスパービットは相手の遠隔操作系兵器のコントロールを文字通り支配(・・)するフィールドを形成できるのさ!」

 

簡単に言えばサイコジャマーみたいなものである。このグラスパーシステムはブルー・ティアーズや打鉄弐式に対抗するために作られた装備。ビット自体の耐久値は低いので通常火器を使われればあっという間に潰されるが、遠隔操作武器オンリーのシルフィオーネやビットを多様するブルー・ティアーズには天敵と言っていい装備だった。

 

「メタ装備とかズルくない!?」

 

「一応これ制御下に置くのに演算能力かなりいるんだぞ。それに・・・・対策してないやつが悪い!拡張領域に少し空きあんだから銃の一個や二個入れとけよ!」

 

「だってこの娘、銃器の好き嫌い激しいんだもん!」

 

こうして姉弟対決は雪兎のメタ装備による完封というあんまりな結果で終わった。

 

「うわぁーん、ちーちゃん。ゆーくんがいじめるよー」

 

「ちーちゃん呼ぶな!織斑先生と呼べ、この馬鹿者!それに天野の言う通りメタ対策くらいしておけ!」

 

試合後、弟にフルボッコにされた姉が親友に泣きつき出席簿アタックの餌食になり、なんとも締まらない授業となってしまった。

 

「雪兎さんのあれ・・・・わたくしにもメタ装備になってますわよね?」

 

そして、自身の専用機と似たようなコンセプトの機体が完封されセシリアが震えあがることになったのだが、御愁傷様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後。

 

「「部屋割りの変更?」」

 

「はい。デュノア君の部屋なんですけど、転入したばかりですのでお二人のどちらかと同室になってもらって補佐してあげて欲しいと」

 

教室に残された一夏と雪兎は真耶からそんなお願いをされた。

 

「もちろん、残った方の引っ越し先は一人部屋ですよ。流石に男女が一緒の部屋というのは色々問題ですし」

 

(いや、原作では普通にやってたよな!?それにシャルルは本当はシャルロットって女の子だから同室って結構ヤバいんですけど!?)

 

原作知識でシャルル(シャルロット)の秘密を知る雪兎は内心すごく焦っていた。

 

「そういうことだったら面倒見のいい雪兎の方が適任だよな?」

 

「はい、私もそう思います!」

 

「ちょっ!?」

 

そうこうしてる間に一夏と真耶の間で話がついてしまい雪兎がシャルルの同室となってしまった。

 

(マジかよ!?俺がシャルルと同室だと!?正体知ってるっていうのがこんな形で仇となるなんて・・・・)

 

原作知識とはこういう時に不便であると雪兎は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからよろしくね、雪兎」

 

「・・・・おう」

 

結局、シャルルの正体を勝手にバラす訳にもいかないので了承せざるを得なかった雪兎のテンションは凄まじく低かった。

 

「大丈夫?僕が同室になったの迷惑だった?」

 

「そんなことはねぇよ・・・・ちょっと思うことがあってな。それに今日は色々ありすぎた」

 

「はは、その色々の一つとしてはなんとも言いづらいね」

 

「まあ、同室になったんだ。何かあったら遠慮なく言えよ?俺にできることなら手を貸してやる・・・・どんなことでもな」

 

「うん!頼りにさせてもらうよ、雪兎」

 

その眩しいくらいの笑顔に雪兎はある覚悟を決めた。

 

「・・・・あと、この部屋にいる時は無理はしなくていいからな、シャルロット(・・・・・・)

 

「えっ?」

 

突然隠していた本名を呼ばれ固まるシャルロット。

 

「な、なな、何でそれをっ!?」

 

「俺はお前が女だって知ってるし、親に言われて俺と一夏のデータ取りにきたのも知ってる。情報の出所は訳あって言えないが、別にそれを理由に脅す気もねぇし、ここから追い出す気もないよ」

 

「ど、どうして?」

 

「そんなことする理由がねぇし、友達をそんな形で売るなんてのはクズのすることだ」

 

「と、友達・・・・?」

 

「違ったか?俺は少なくともシャルロットを友達だと思ってるんだが」

 

「ううん!僕もだよ!」

 

「ま、そうこうことだ。俺はシャルロットがしたいってことを尊重するし味方でいてやる。だから本当に困ったことがあればちゃんと言えよ?」

 

「うん!ありがとう、雪兎!」

 

こうして雪兎とシャルロットは秘密を共有する関係になった。

 

(さてと、あとはデュノア社の馬鹿共をどうしてやるかだな)

 

そして雪兎は密かに友達(シャルロット)にこんなことをさせているデュノア社への嫌がらせをすることを心に誓うのだった。




雪兎がデュノア社をロックオンしました。
結局、雪兎は早々にシャルロットの秘密を看破し秘密を共有するという選択をしました。
原作知識あると「実は知ってる」っていうのやりにくいんですよねぇ。

姉弟対決は雪兎がやらかしました。
まあ、あんなチートIS相手じゃメタ張らないと勝てませんから。
雪菜がモンド・グロッソとかに出ない理由は、1:先手が取りにくい(千冬とか天敵です)。2:アリーナとか狭いフィールドでは瞬時加速を用いた無限加速モードがいかせないから。

【W:ウィザード】のイメージはGデスサイズと革命機の6号機です。

次回予告

シャルロットと秘密を共有することになった雪兎。一方、一夏はラウラに一方的に敵視される理由を知ることに。
そして、ラウラは一夏と勝負するべく強行手段に出る。

次回

「一夏と黒兎の因縁 兎、友達のために頑張る」


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9話 一夏と黒兎の因縁 兎、友達のために頑張る

今回はラウラがやらかす回。
雪兎に対してはラウラは特に悪感情を持っていないためあまり絡まないので難しいんですけどね

とりあえずデュノア社はボコすのは確定。11巻の内容からデュノア社の扱い少し変更します。


雪兎とシャルル(シャルロット)が秘密を共有した翌日。

この日から雪兎達の一夏強化特訓にシャルルも加わることとなった。

 

「助かるよ。今までまともな説明できんの俺と簪くらいだったんだ」

 

「うん、シャルル君の説明はわかりやすいから私も楽」

 

「そんなことないよ。雪兎は要点がしっかりまとまってるし、簪さんも教え方上手いと思うよ」

 

「「「うぐぐぐぐ・・・・」」」

 

コーチとして箒達も下手ではないのだが、箒は擬音だらけ、セシリアは色々と細かすぎ、鈴は感覚的、と三人は説明に向いていなかったのだ。その点、雪兎、簪、シャルルは親切丁寧で一夏もやり易かった。

 

「白式は雪片以外の武装を嫌う傾向にあるが、別に絶対に使えないって訳じゃないんだ。持ち主が使用許可を出してれば一時的に使うこともできる。白式みたいな極端なのは姉さんのシルフィオーネくらいだからタッグ戦とかで武装を共有する場合とか状況は限られるがな」

 

「一度使ってみればどういうものかもわかるから対処がしやすくなるし、機会があれば色んな武装を使ってみるといいよ」

 

「一夏はいきなり専用機だったみたいだから専用機じゃなくて訓練機でそういうのを使ってみるのもいいかもね」

 

「なるほど・・・・」

 

シャルルから銃を借り試し撃ちをしてみた一夏は三人の説明を聞き納得する。

 

「もしかしたら二次移行(セカンド・シフト)してそういう武装が増える可能性もあるからやっておくといい」

 

「二次移行ってそんなに変わるのか?」

 

「まだ実例が十件もないから何とも言えないが、長所を伸ばす特化型とか、弱点を補うように機能が追加されるパターンもあったみたいだから可能性はあるんじゃないか?」

 

(原作通りなら技量が半端なく必要になるんだがな)

 

「あと、お前らも一夏にばっかかまけてないで自分のメニューもやれよ?トーナメントで無様な姿を晒しても俺は知らんからな」

 

「「「うぐっ!?」」」

 

そう実は一夏だけでなく箒達にも雪兎それぞれ課題を与えている。雪兎、簪、シャルルはこのメンバーの中で行う模擬戦での成績が良いため一夏の指導に回っているのだ。ちなみに下から一夏、箒、セシリア、鈴、シャルル、簪、雪兎の順で専用機の無い箒は仕方ないとしてもセシリアと鈴の勝率は少し問題である。雪兎はほぼ全員に対するメタ装備があるし、簪の打鉄弐式もかなり凶悪な性能を誇るため勝率は高い。それに第2世代機の改修型で食いついてくるシャルルの技量も中々のものである。

 

「箒は一夏程じゃないが銃器の扱いが雑だし、セシリアはインターセプターの即時展開と近接対策。鈴は近接と射撃の切り換え・・・・他にもトーナメントまでに改善できるとこは多いんだ。徹底的にやるぞ。怠けようもんならどうなるかわかってるな?」

 

少し前に模擬戦で改善がされていなかった時はメタ装備(箒には【G:ガンナー】で近付けさせず完封、セシリアには【W:ウィザード】でライフル以外を封じてチマチマ攻撃、鈴には【S:ストライカー】のアンカークローで捕まえて延々と振り回してバンカー)で延々と模擬戦を繰り返すという鬼畜の諸行だったのを思い出し、箒達はすぐに自分のメニューへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・おいでなすったか」

 

しばらくするとアリーナが騒がしくなり、もう一人の転入生ラウラ・ボーデヴィッヒが専用機【シュヴァルツェア・レーゲン】を纏って姿を現した。

 

そして、ラウラは一夏の姿を見つけると開放回線で声を飛ばす。

 

「おい」

 

「・・・・なんだよ」

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「イヤだ。理由がねえよ」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

ラウラが一夏を敵視するのは第2回モンド・グロッソで千冬が優勝を逃したのが一夏のせいだったからだ。その時、一夏は謎の組織(後に亡国機業の仕業と判明)に拐われ千冬は決勝戦を辞退してまで一夏の救出に向かった。その際、手を貸してくれたのがドイツで、その見返りとして千冬は一時ドイツで教官をしていたのだ。ラウラは千冬の指導を受け心酔するようにすらなった。そんな千冬の経歴を汚した一夏をラウラは認められなかったのだ。

 

「また今度な」

 

一夏もそれを承知の上で戦う気は無いと返すが。

 

「ふん。ならばーー戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

ラウラは問答無用と左肩の大型レールガンを一夏に向けて放つも、それは間に割り込んだ雪兎の【S:ストライカー】の大型シールドに阻まれた。

 

「随分と血の気の多いやつだな、ラウラ・ボーデヴィッヒ。挨拶代わりに対ISアーマー用徹甲弾とはな。こいつじゃなきゃただじゃ済まなかったぞ?」

 

「天野雪兎か、お前には用はない。そこをどけ」

 

「お前にはなくても俺にはある。ダチを守るって理由がな」

 

「貴様っ!」

 

ラウラの「貴様になくても私にはある」をそっくりそのまま返す形で雪兎はラウラと対峙する。

 

「・・・・今お前とやり合うのは割りに合いそうになさそうだ。今回は引いてやる」

 

「次はちゃんとアポとってから来るんだな」

 

「ふんっ!」

 

ラウラはISを待機状態にするとアリーナから去っていった。

 

 

「すまない、雪兎。助かった」

 

「いや、気にすんな。だが、あのラウラってやつ、そのうちまたちょっかい出しに来るぞ」

 

「ああ、そうだな」

 

(あっぶねぇ・・・・原作と違っていきなり徹甲弾とか、原作通りシャルロットが庇ってたらヤバかったな)

 

とりあえず退かせることはできたが、雪兎は原作とは違うラウラの攻撃に内心ヒヤヒヤしていた。

 

(これは最悪のパターンも想定しといた方がいいな)

 

原作以上の何かが起こる気がして雪兎はトーナメント、いや、ラウラ対策として用意していたある物の完成を急ぐことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、放課後からずっと険しい顔してるけど、ボーデヴィッヒさん関係?」

 

「ああ、あいつ、徹甲弾とか持ち出してきたからな。次は何やらかすかわかったもんじゃない」

 

原作通りであれば少しして鈴とセシリアが大怪我をするあの事件が起こるはずだ。それを知っていて黙っていられる程雪兎は薄情ではなかった。

 

(そのために一夏以外も鍛えてたんだ。あとはタッグパートナーとかがどうなるかってとこだな)

 

その後、学年別トーナメントが先日の無人IS襲撃事件のせいでタッグマッチになり、原作では一夏とシャルロットがペアとなるのだが・・・・

 

「そういえば、今度のトーナメントってタッグ戦になるんだよね?」

 

ここでもう一つ想定外の事態が起きていた。そう、タッグトーナメントという告知が原作より早く行われたのだ。一夏は例によって箒達三人からタッグを組めと迫られており、簪は幼馴染の本音と組むと聞いている。雪兎はまさかシャルロットと同室になるとは思っていなかったのでペアに関してはノータッチだった。

 

「より実戦的な状況を想定してってやつだったな」

 

「雪兎はもうペア決めたの?」

 

この聞き方は「もし決めていないんだったら僕と組んでよ」のパターンではないか?と雪兎が思っていると。

 

 

「もし決めていないんだったら僕と組んでよ」

 

一字一句間違わずシャルロットは雪兎の思っていた通りの言葉を口にした。

 

「お、俺と?」

 

「うん、同室で時間も合わせ易いし、何より僕が女の子だって知ってるしね。他の人だとそこのところが・・・・」

 

「あー、確かにやりづらいわな」

 

「だからお願い!僕と組んでよ」

 

雪兎としてはありがたい申し出だが、そうなると一夏が誰と組むのか完全に予想がつかない。一番確率が高いのは箒だろうが、そうなると必然的にラウラが一般生徒と組むことになるのだろう。雪兎はその哀れな一般生徒の武運を祈った。

 

「ダメ?」

 

その様子を否定的に捉えたのかシャルロットが上目遣いでそう聞いてくる。

 

「あーもう、そんな顔するな!困ったら手を貸すって約束したろ?」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「ああ、俺がペアを組んでやんよ。やるからには優勝以外ないからな」

 

「うん!」

 

こうして雪兎はシャルロットとペアを組むことになった。後日、それを聞き箒達にペアになることを迫られる一夏が「雪兎とシャルルの裏切り者ー!」と叫ぶことになったとか。

 

 

 

 

 

しかし、その数日後。雪兎の努力も虚しく原作通り鈴とセシリアはラウラにISを大破させられトーナメント出場を辞退することとなった。




雪兎はシャルロットとペアを組むことに。
そして一夏は箒と鈴やセシリアの無念を晴らすべくペアを組む。

ラウラと組むことになる生徒さんには合掌。絶対ろくな目に遇いません。


次回予告

ついに始まる学年別タッグトーナメント!色々と原作と違いトーナメントは大混戦に!果たして雪兎とシャルロットペアの実力とは!?

次回

「開催!学年別タッグトーナメント!! 兎、疾風と共に」


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10話 開催!学年別タッグトーナメント!! 兎、疾風と共に

タッグトーナメント開催!
ラウラのパートナーになった娘はトーナメント中のみのオリキャラです。(要望があればまた出るかもですが)

そして、箒がちょびっと覚醒モードです。

今回は構成の関係上ちょっと短めです。


学年別タッグトーナメント当日。

トーナメント表が公開され、一夏・箒ペアはAブロック、簪・本音ペアはBブロック、雪兎・シャルルペアはCブロック、そしてラウラは抽選により二組の宮本聖(みやもとひじり)という生徒とペアでDブロックとなっていた。

 

(かなり原作から変わったなぁ・・・・そろそろ原作知識も通用しないかもな)

 

「綺麗にバラけたね」

 

「ああ、しかも順調にいけば一番最初にあいつと当たるのは俺達だ」

 

各ブロックを勝ち上がるとAブロックはBブロックと、CブロックはDブロックの代表と当たることになる。見た感じ一夏達や簪達がそんな簡単に負けるとは思えないのでこの二組のどちらかが決勝に上がってくるだろう。

 

「雪兎、負けんなよ」

 

「一夏、お前こそちゃんと勝ち上がってこいよ」

 

「私も負けない」

 

「簪もやる気だな。だが、私も負けるつもりはない」

 

「僕だって皆が相手でも簡単には負けないよ」

 

一夏、雪兎、簪、箒、シャルルの気合は充分。ただ、本音は一人場違い感がして一人あわあわしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

(私、何か悪いことしたかなぁ・・・・)

 

一方、ラウラとペアになった聖は途方に暮れていた。専用機持ちの代表候補生とペアになれたのはラッキーであったが、そのペアになったラウラは聖のことなど試合に出るための付属品くらいの認識しかしておらず、聖は凄く居心地が悪かった。

 

「おい」

 

「は、はひ!」

 

「宮本と言ったな?お前は何もするな。ただ私の邪魔にならないよう隅によっていろ」

 

「は、はい」

 

(うう、もうやだぁー)

 

聖の受難はもう少し続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Aブロック

 

「はぁっ!」

 

「きゃっ!?」

 

今日の箒はいつもと違った。気迫は勿論、中学の剣道の試合の時のように八つ当たりの剣を振るう訳でもなく、怒りに身を任せた剣でもなく、真っ直ぐ、鋭い剣筋で相手を圧倒していた。

 

「ま、まだよ!」

 

相手のリヴァイヴは近接戦では勝てぬと悟り、距離を置いてアサルトライフルで攻撃するが。

 

(この程度、雪兎の弾幕に比べれば!)

 

するりとそれ避け、箒は自分の間合いへと再び持ち込む。

 

「くっ!」

 

だが、相手もすぐに近接ブレードを取り出し応戦する。

 

(こんなもの、鈴の双天牙月に比べれば軽い!)

 

「はぁっ!!」

 

打鉄・改の対ビームコーティング刀が二振り振り抜かれ相手のリヴァイヴのシールドエネルギーを削り切る。

 

「悪いな。今の私はこんなところで負ける訳にはいかんのだ」

 

「箒、お疲れ」

 

一夏も相手を下したのか箒を労う。

 

「それにしても今日の箒は凄いな」

 

「何、負けられない理由がある。それだけだ」

 

実は箒、鈴やセシリアと今回のタッグトーナメントが終わってから改めて一夏と付き合う権利を賭けた試合をすると決めており、他の有象無象に優勝を譲るつもりはなかったのだ。別に鈴やセシリアを待ってやる必要などないのだが、そこはこの真面目武士道少女、抜け駆けなど己の矜持が許さなかった。

 

「そうか、なら俺も頑張んなきゃな」

 

一撃必倒の一夏と気迫の乗った箒を止められるペアは残念ながらAブロックにはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bブロック

 

「かんちゃん!」

 

「いけ!【山嵐】!」

 

一方のBブロックの簪・本音ペアは本音が防御、簪が攻撃、と役割分担して試合をしていた。打鉄弐式は攻撃を決めてしまえば普通の訓練機など相手にならず、装備を防御重視で固めてひたすら簪を守ることに専念するという運用法で経験の少ない本音でも何とか簪の僚機を務めていた。

 

「【春雷】モードB。本音、退避して!」

 

「がってん!」

 

止めは荷電粒子砲【春雷】の広域攻撃モードの一撃で相手ペアを撃墜。このペア、幼馴染というだけあって連携は中々である。

 

「そういえばかんちゃん」

 

「何、本音」

 

「優勝したらかんちゃんはどっちとお付き合いするの?」

 

「えっ?」

 

突然の本音の言葉に簪がフリーズする。

 

「やっぱ、あまあま?あれは絶対ゆーりょー物件だよ?」

 

「な、なな、何言ってるのよ!?雪兎はただの友達でーー」

 

「じゃあ何で顔真っ赤なの?」

 

「本音ー!!」

 

本音がいる以上、どうしても締まらないのは仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Cブロック

 

「雪兎!」

 

「おう!」

 

連携という意味ではこのペアが一回りも二回りも抜きん出ていた。雪兎は装甲切換(アーマー・チェンジ)で多彩な戦術を繰り広げ、シャルルも膨大な拡張領域に納められた武器を的確に使用してくる。それをパートナーの行動に合わせ常に最適解の動きで行ってくるのだ。厄介と言う他ない。一年生でこんな真似ができるのはこの二人くらいのものだろう。

 

「やっぱ、シャルルがペアだとやり易いわ。援護が的確で助かる」

 

「それはこっちの台詞だよ。雪兎もこっちに合わせてくれるから凄くやり易いし」

 

まるで長年ペアを組んでいたパートナーのような二人の連携は一年生は勿論、上級生や教師陣すら絶賛するレベルでいつの間にやら優勝候補筆頭にあげられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dブロック

 

「・・・・私、いる意味あるんでしょうか?」

 

Dブロックはタッグマッチのはずなのにラウラの独壇場であった。聖は文字通り隅に追いやられ相手二人をラウラが蹂躙する試合が続いており、聖は自身の存在意義を見失っていた。

 

「もう、ボーデヴィッヒさん一人でいいじゃないですか・・・・成績とかもうどうでもいいので帰らせてください」

 

聖、君は泣いていい。相手のペアにすら相手にされず隅で小さくなる彼女の乗る打鉄からは哀愁が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、各ブロックの代表は番狂わせが起こることなく一夏・箒ペア、簪・本音ペア、雪兎・シャルルペア、ラウラ・聖ペアが勝ち残った。

 

「まあ、予想通りと言うかなんというか・・・・」

 

「そうだね。明日の準決勝と決勝も頑張ろう、雪兎」

 

「ああ、シャルロットとなら負ける気がしねぇよ」

 

学年全員の試合となればいくら早く決まっても1日で終わる訳がなく、準決勝と決勝は翌日の2日目に行われる。だが、雪兎にとっては物凄くありがたかった。

 

(それにしても今日は箒が大分頑張ってくれたからデータがかなり蓄積できたな)

 

それはもう獅子奮迅の活躍だった。正直、「我に断てぬもの無し!」とか言い出してもおかしくないレベルだった。

 

(いっそのこと参式作る?液状形状記憶合金って束さん作ってたよな?)

 

打鉄が超闘士化しそうである。

 

(簪からも打鉄弐式の戦闘データ回してもらえたし、タッグトーナメント様々だな)

 

雪兎はEVOLsystemの関係上、データが蓄積されれば新しいパックや武装を手にできるので、こういうのは大歓迎だった。

 

(新しいパックも完成したし、ラウラ対策は充分だと思いたいが、少し念を入れとくか)

 

「シャルロット、リヴァイヴの拡張領域に空きあるか?」

 

「うん?少しならあるけど・・・・」

 

「明日のボーデヴィッヒ対策でこんなもん用意したんだが・・・・」

 

「うわ、雪兎は容赦ないなぁ」

 

「でもAIC対策はいるだろ?シャルロットのリヴァイヴは基本的に実弾メインだし」

 

「確かにこれならAICで防げないとは思うけど・・・・雪兎のメタっぷりはある意味感心するよ」

 

「わかってることを対策して何が悪い。逆に対策してなくて詰むなんて俺からすれば怠慢だからな。セシリアは国の方針であの装備オンリーでやれってことらしいから同情するわ」

 

「うん、雪兎が敵じゃなくて良かったよ」

 

この男は敵に回すと厄介すぎるとシャルロットは改めてそう思った。




箒さん、雪兎達と模擬戦のしすぎで基準が上がり過ぎていて一般生徒じゃ相手にならなくなってます。
そりゃ、代表候補生とかと常日頃模擬戦してりゃそうなりますわ。

そして雪兎はまたしてもメタを張る。雪兎の基本戦術がそれなんで仕方ないんですがね。


次回予告

学年別タッグトーナメントもいよいよ準決勝!
一夏・箒ペアと簪・本音ペアが激突!
そして雪時・シャルロットペアもラウラに挑む(聖?いらない娘扱いです)
ラウラのAIC対策として雪兎が用意した物とは?VTSは原作通り起動するのか?雪兎のメタっぷりにも御注目。

次回

「決着!タッグトーナメント 兎、黒兎と激突す!」


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11話 決着!タッグトーナメント 兎、黒兎と激突す!

原作二巻も終盤です。
大分原作離れしてきましたが、我らが雪兎君は気にしません。

さて、どんな結末なるやら・・・・今回は少し長いです。


学年別タッグトーナメント準決勝第一試合。

一夏・箒ペアVS簪・本音ペア

 

「お互い悔いのない試合にしようぜ、簪」

 

「うん。でも、負けない」

 

この対決、一夏・箒ペアは二人とも超がつく近接メインなのに対し、簪の打鉄弐式は中・遠距離型。本音という壁役がいるが、一夏の白式には零落白夜というバリア無効化攻撃があるため有効とは言いにくい。一夏達からすれば本音をさっさと片付けて二人で簪の撃破を狙いたいところだ。しかし、簪がそれを許すかと言えばそんなことはない。

 

「【山嵐】!」

 

最初に山嵐で二人を分断、一夏を簪が、箒を本音が相手することで一夏達の狙いを崩す。そして、箒を本音が止めている間に一夏を遠距離で仕留める作戦に出る。

 

「やっぱ、そう簡単にはやらせてくれないか」

 

「一夏の零落白夜は厄介。でも、当たらなければ意味はない!」

 

二砲の春雷から放たれる荷電粒子砲が一夏を追い詰めんと迫るが、ギリギリのところでかわされていく。

 

「そう焦るなよ。もっと試合を楽しもうぜ!」

 

春雷の連射が止まる隙を突き一夏は瞬時加速で一気に距離を詰め、零落白夜を発動させる。雪兎との特訓で零落白夜の展開スピードは以前と比べかなり早くスムーズになっており、簪が咄嗟に薙刀を展開していなかったらそこで簪は脱落していたことだろう。

 

「やっぱ、しののんも強いよー」

 

「私の攻撃をキッチリガードしている布仏も中々やるではないか」

 

一方の本音も箒の攻撃をしっかりガードし、箒の足止めをこなしていた。防御に絞ったからこその芸当であり、反撃などは全くできないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより良い試合するじゃん、あいつら。特に本音」

 

「うん、あの箒の剣を止められるなんて布仏さんもやればできるんだね」

 

酷い言われようだが、本音は元々整備科志望であることを考えるとこういう評価になるのも無理はない。

 

「こりゃ、簪が一夏を仕留めるまで本音が耐えられるかが勝敗を訳そうだな」

 

「逆に布仏さんがやられれば一夏と箒の2対1になるからね」

 

地味に勝負の行方を握ることになってしまった本音。

 

(ん?一夏のやつ・・・・なるほど、そう来るか)

 

そんな中、硬直した試合を動かしたのは一夏だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺が簪にやられるか箒がのほほんさんを倒すか、どっちが早いかって感じだな)

 

あまり認めたくはないが今の一夏に簪を打ち破る一手は思いつかない。だが、箒に任せっきりというのも一夏には認められないことであった。

 

(せめて箒と俺の立ち位置が逆なら・・・・いや、雪兎ならそういう状況にするよな、絶対に)

 

あの親友はことその手のことに関しては恐ろしく頭が回る。ならばこの状況を彼ならどうするだろうか?一夏はそれを考えた。

 

(加速性能は白式と打鉄弐式は互角。じゃあ、打鉄と打鉄・改は?打鉄・改だよな・・・・なら)

 

『箒、頼みがある』

 

一夏は戦況を変える一手を打つべく箒に個人回線(プライベート・チャンネル)である頼みごとをする。それは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、二人同時に瞬時加速!?しかもそれを利用して相手を入れ替えた!?」

 

この大胆な作戦にシャルルも驚いた。そう一夏が考えた作戦は一瞬の隙を突き、二人同時の瞬時加速で入れ替わるというものだったのだ。

 

「やるじゃんか、一夏。確かに俺もお前のその状況ならその手を打つな」

 

簪の打鉄弐式は確かに強力だが、箒の使う打鉄・改なら短時間であれば足止めは可能だ。その間に当初の予定通り本音を先に沈め2対1に持ち込む。一昔前の一夏なら思いつきもしなかったであろう作戦に簪・本音ペアは隙を見せてしまった。そう、決定的な隙を。本音が撃墜され、一夏と箒の波状攻撃を受けて簪もついに撃破されてしまった。

 

「面白い試合だったぜ。一夏、箒。次は」

 

「僕らの番、だね」

 

一夏達の見せた試合に雪兎とシャルルも気合が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あと一つ勝てばやつ(織斑一夏)と戦える。だが)

 

一方のラウラは一夏が決勝まで勝ち上がってきたことに胸の奥にある感情が高ぶるのを感じつつも次の試合は今までのようにはいかないだろうと軍人としての勘がそう告げていた。

 

(天野雪兎・・・・やはりやつが立ち塞がるか)

 

あの最強の世代と呼ばれたうちの天災・篠ノ之束の弟子にして高速の妖精の二つ名を持つ天野雪菜の弟、そしてラウラが教官と慕う織斑千冬の弟弟子という間違いなく同世代最強の男。そんな男が何故あの織斑一夏を庇うのか?ラウラはそれが疑問だった。

 

(何れにせよ立ち塞がるというのなら打ち破るまでだ!)

 

そんなラウラとは対照的に聖はもう帰りたかった。

 

(私、何もやってないのにもう準決勝だよ・・・・「寄生だ」とか言われてるよね?)

 

何故、この娘はここまで卑屈になれるのだろうか?ちなみに他の生徒からはラウラが凄すぎて認識すらされていなかったりする。聖、君はやっぱり泣いていい。

 

そんな両ペアの試合はアリーナにいる全ての者の想定外の結末を迎えることになるのだが、それを知るのは密かに妹の活躍を眺め(盗撮)ひゃっはーする天災だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝第二試合。

雪兎・シャルルペアVSラウラ・聖ペア

 

「ボーデヴィッヒ、悪いが一夏と戦うのはもう少し延期させてもらうぜ」

 

「ふん、お前のISが如何に強力だろうとこのシュヴァルツェア・レーゲンの敵ではない!」

 

「そういうのは負けフラグって言うんだぜ」

 

「それに雪兎ばかり気にしてると痛い目を見るよ」

 

第2世代機(アンティーク)に何ができる」

 

「量産化の目処の立たない第3世代機(ルーキー)よりは動けると思うよ」

 

試合前からの壮絶な舌戦に一人蚊帳の外にいる聖は「もう帰りたい・・・・」と涙目だった。

 

『試合開始!』

 

「悪いが最初から飛ばしていくぜ!」

 

開幕直後、雪兎は展開していた【G:ガンナー】でいきなり面制圧射撃を繰り出す。

 

「ちっ!」

 

容赦の無いその攻撃にラウラはワイヤーブレードで聖を自身の後方に放り投げるとAICを展開し何とかそれを耐えきる。

 

「ほらほら、こっちがお留守だよ!」

 

すると今度は側面からシャルルの射撃がラウラを襲う。

 

「くっ!」

 

「AICは確かに強力だがよ、流石に全方位には張れないよな!」

 

(こいつら、停止結界の弱点を!)

 

メタに定評のある雪兎がそんな弱点を見逃す訳がなく、ラウラはいきなり窮地に陥る。

 

「シュヴァルツェア・レーゲンが停止結界だけのISと思うな!」

 

しかし、ラウラも軍人としてそこそこの修羅場を潜り抜けてきた猛者。大型レールガンやワイヤーブレードを用いて牽制し、態勢を立て直す。

 

「やっぱ、一筋縄じゃいかんか・・・・じゃなきゃこいつ(・・・)を用意した甲斐がねぇもんな!」

 

そう告げて雪兎は雪華に新たなパックを展開させる。その色は蒼。セシリアのブルー・ティアーズと同じ蒼天を連想させる色のパックだった。

 

「【J:イェーガー】お前を倒す切り札だ」

 

狩人(イェーガー)の名を冠したそのパックの最大の特徴はブルー・ティアーズのスターライトmk.Ⅲを凌駕する大型のライフル。しかもこのライフル、ただのライフルではない。

 

「ターゲット、ロック。fire」

 

放たれたのは超高出力ビーム(・・・・・・・)。そうこのライフル、元になったのは自爆がお家芸と化したとある機体が使用したバスターライフル(・・・・・・・・)というものだった。光学兵器はAICでは防げない。尚且つ一撃で仕留める火力を求めた結果、セシリアのブルー・ティアーズをベースに打鉄弐式の春雷や白式の機動力を合わせ持つ機体としてこの【J:イェーガー】は設計された。しかも、このバスターライフルは【EW仕様】のためカードリッジ式で連射も可能というえげつない代物だった。カードリッジも高速切替で補充が容易である雪兎にとって問題なのは連射のし過ぎによる砲身の過熱化くらいのものだ。

 

「くっ、そんなものまで用意していたとはっ」

 

これは流石のラウラも想定外の事態であり、大いに焦った。雪兎のバスターライフルを警戒すると意識の隙間を縫うようにシャルルが攻撃を仕掛け、シャルルの攻撃をAICで防ぐために足を止めれば雪兎のバスターライフルの餌食となる。そう、雪兎・シャルルペアの必勝パターンにラウラは既に追いやられていたのだ。

 

「余所見してる時間はあげないよ、黒兎さん」

 

「さあ、舞い踊りな。終わり無き円舞曲(エンドレス・ワルツ)という絶望の中で!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、流石は雪兎さんですわ・・・・あの動き、わたくしのブルー・ティアーズの理想形ですわ」

 

「しかもあの高出力ライフル・・・・ほんとあいつだけは敵に回したくないわ」

 

「ええ、あのメタ装備の展開に関して雪兎さんの右に出る方はいないでしょうね」

 

怪我で不参加となったセシリアと鈴も試合の映像を見て改めてそう思った。こうなるといくら自分達に大怪我をさせたラウラとはいえ同情したくなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かんちゃん。私、どうしてもあまあまに勝つ光景が想像できないよ」

 

「雪兎に勝とうと思ったら初見で情報無しの一撃しか無理だと思う。時間をかけたり、何度もやるのは愚策。絶対に対策したメタ装備使ってくるから」

 

「だね・・・・」

 

「お姉ちゃんでも怪しいかも」

 

どうすれば勝てるんだ、あんなやつ!状態である。情報と時間を与えてしまえば現状の特化型のISではまず彼には勝てない。かなり特殊なISを使う簪の姉にして学園最強の称号を持つ生徒会長・更識楯無なら初見で何とかレベル。想像するだけでも恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何、あの子。噂は聞いてたけど、ちょっとトンデモ過ぎない!?)

 

その生徒会長本人も試合を見て唖然としていた。現役軍人すら手玉に取るその戦術眼に徹底したメタ装備。学年最強と噂される実力は確かである。

 

(私対策とかどんな装備で来るか予想がつかないわね・・・・出来れば敵に回したくないわ)

 

学園最強からもそう評価される雪兎はやはりトンデモないやつだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ここでほぼ全ての人間が忘れている存在がいた。聖である。そう、あまりにも存在感が無さすぎて雪兎達からもパートナーであるラウラにも忘れられていた聖である。

 

(何、この人外魔境・・・・)

 

空からはバスターライフルが降り注ぎ、地上ではシャルルがこれでもかと弾丸をバラ撒き、それを必死に捌くラウラ。聖の居場所はやはりアリーナの隅であった。

 

(早く帰りたいよ・・・・)

 

そんな中、試合はだんだんラウラが追い詰められていく展開だ。

 

(早く帰りたいけど・・・・何もせずに負けるのは嫌だなぁ)

 

ラウラには「何もするな」とは言われたが、聖にも意地があった。

 

(どうせ負けるならせめて一矢報いてやる!)

 

この彼女の決意がラウラの運命を変えることになるとは誰も想像してはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラはもう正直なところ限界間近だった。頼りのAICが封じられ回避行動と牽制をするぐらいしかさせてもらえない一方的な攻防。ここまで一方的なのは随分と久しぶりのことであった。以前、千冬にも「選ばれた人間気取りか?」と言われたが全くもってその通りだ。世界は広かった。この国には「井の中の蛙」という言葉があるが、ラウラは正にその「蛙」であったのだ。

 

(そんな私が、見下すことしかしていなかった私が勝てるはずもなかったのだな)

 

とうとう心が折れてしまったラウラは動きを止めてしまう。そして、それ雪兎が見逃すはずがなく、バスターライフルの銃口がラウラを捉える。

 

「これで終わりだ!」

 

誰もがそう思った。だが、放たれたバスターライフルの一撃はラウラには届かなかった。

 

「えっ?」

 

何故なら、ラウラの前に会場中から忘れさられていた聖が、ラウラを庇うように立ち塞がっていたのだ。

 

「宮本っ!?どうしてお前が!」

 

自分の代わりにバスターライフルの直撃を受け大ダメージを負った聖にラウラは困惑していた。

 

「あは、はは、ごめんね・・・・動くなって、言われてたけど、何も、せず、に、負け、るのは、嫌、だったから」

 

「何故だ!何故私などを庇った!?」

 

「ボーデ、ヴィッヒさ、んは、そうで、もなかっ、たかも、しれない、けど、私は、ボー、デヴィッ、ヒさんのパートナー、だから」

 

それを聞いてラウラは知らぬうちに涙をこぼしていた。

 

「馬鹿者・・・・」

 

あれだけ辛く当たっていたというのに迷わずパートナーだからと告げた聖にラウラは負けた。精神的に、ラウラはこの少女にすら劣っていたと認めた。

 

「私の負けだ」

 

こうして準決勝第二試合は聖の脱落とラウラの敗北宣言により雪兎達の勝利という結末を迎えた。

 

『認めん・・・・我はこのような結末など認めん!』

 

だが、ラウラのISの内に潜んでいたそれはその結末を認めなかった。




という訳でVSラウラ戦は終了です。

最後のあれは何かって?
ご想像通りのあれかと・・・・原作と違い発動条件がもう一個あったっぽいという設定です。

聖よ、お前はいい仕事をした!世界が認めなくとも私が認めよう。という訳で聖ちゃんにラウラとお友達フラグが建ちました。


次回予告

ラウラ・聖ペアを破った雪兎とシャルルだが、ラウラのISに仕込まれていた悪意が二人を襲う!

次回

「VTS強襲!? 兎、人命救助をする」

活躍報告にて少し相談がありますので時間があればよろしくお願いします。


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12話 VTS強襲!? 兎、人命救助をする

とりあえずタッグトーナメントに関してはこれで終了です。
現れたVTS出オチ要員で無いことを祈る。

あと活躍報告にて相談したいことがありますので時間のある方はそちらもお願いします。


『認めん!我は認めんぞー!!』

 

決着がついた。そう思っているとラウラのISに異変が生じた。

 

「な、何だこれは!?」

 

突如ISの装甲がドロドロと溶け始め操者であるラウラを飲み込み姿を変えていく。

 

「ゆ、雪兎!あれって」

 

「ちっ、ありゃVTSだ。宮本って娘がいい仕事したから発動しないと思ってたんだがなぁ」

 

原作では一夏への対抗心が力を求め、それをトリガーにして起動するよう仕組まれていたものだが、何故かはわからないがラウラの意思を無視して起動し暴走しているようだ。

 

「VTSって条約で禁止されてるはずじゃ・・・・」

 

「どの国にも「そんなもん知るか」っていう傍迷惑なやつがいるってことさ。さて、どうしたもんかね」

 

近くにいた聖はラウラが咄嗟にこちらに投げ飛ばしているため巻き込まれずに済んだが、ラウラは取り込まれてしまっている。

 

「雪兎!」

 

そこに一夏と箒、それと簪が駆けつけてきた。

 

「雪兎、あれは・・・・」

 

「VTSだ。一夏、お前の予想通りあれの元になったのはブリュンヒルデ時代の織斑先生だ」

 

「やっぱり・・・・」

 

VTSが模倣したのは世界最強と言われたブリュンヒルデとその愛機。何より姉を尊敬している一夏がそれに気付かない訳がない。

 

「こっからは普通は先生達の仕事だ。だが、一夏。お前はそれで満足か?」

 

「いや、これは俺達の役目だ!そうだろ?雪兎」

 

「そうだ、ここからは試合じゃねぇ。人の試合に割り込んできやがったやつと俺達二人の喧嘩だ!」

 

一夏と雪兎が二人で立ち向かうことを決意するが。

 

「雪兎、パートナーである僕のこと忘れてない?」

 

「そうだぞ二人とも。私だっている」

 

「私も手伝う」

 

シャルル、箒、簪も協力を申し出た。

 

「お前ら・・・・多分、反省文とか山盛りだぞ?」

 

「皆でやればそれくらいすぐだよ」

 

「ったく、そんじゃせっかく改心した馬鹿を取り返しにいくとしようや!」

 

「「「「おう!」」」」

 

ここにタッグトーナメント上位五名によるスペシャルチームが結成された。

 

「雪兎!やつが動き出したぞ!」

 

このVTS、原作の時のように攻撃や武器に反応するプログラムではなく周囲を無差別に攻撃するものになっているようだ。

 

「簪は俺と共に牽制射撃!箒は一夏の護衛!シャルルはその援護!一番重要なオフェンスは一夏、お前に任せる。零落白夜で決めてこい!それじゃあ、各自散開!」

 

「「「「了解!」」」」

 

雪兎は引き続き【J:イェーガー】でバスターライフルを構え、簪も直列接続のモードAで春雷をVTSに向ける。

 

「「fire」」

 

二砲の超高出力砲をVTSはバックステップで回避するもシャルルはそれを読んでいた。

 

「そうくると思ってたよ!」

 

両手のアサルトライフルから弾丸をバラ撒きながら距離を詰め左腕のシールドに隠された武装、雪兎の【S:ストライカー】と同じパイルバンカー【灰色の鱗殻(グレー・スケール)】のリボルバー機構が唸りを上げ四連撃を叩き込む。

 

「いくぞ、一夏!」

 

「おう!」

 

シャルルが態勢を崩したところで箒と一夏が迫る。しかし、VTSもただでやられてやるつもりはないと模倣した雪片を振るうが。

 

「その程度!」

 

「千冬姉に比べたら!!」

 

箒が二刀で受け止め、一夏が雪片弐型で払いのける。

 

「やれ!一夏!!」

 

「はぁあああ!!」

 

零落白夜を展開し放たれたその一刀はVTSの装甲を引き裂き、中からラウラがこぼれ落ちた。

 

「よっと、これで終わりか?」

 

解放されたラウラを一夏が受け止めるとVTSは再び蠢き始める。

 

「ちっ、往生際が悪すぎだろ!」

 

「離れろ、一夏!中に人がいねぇなら、こいつのフルパワー焼き尽くす!ご丁寧にISコアも分離してくれたみたいだしな!」

 

どうやらラウラと一緒にISコアまで分離してしまったらしく、ラウラの手にそれらしき結晶体が握られていた。ラウラもただで取り込まれてやった訳ではなかったらしい。

 

「【J:イェーガー】リミットリリース!バスターライフル最大出力!!」

 

その言葉と共にバスターライフルから勢いよくカードリッジが三つ射出された。

 

「ボーデヴィッヒにはお前みたいな力はもう必要ねぇんだよ!!消えされ、バスターライフルオーバーバースト!!」

 

それは天から落とされた裁きの焔。VTSはその焔に呑まれ跡形もなく焼き尽くされたのだった。

 

「・・・・やっぱ雪兎は敵に回したくないわ」

 

「「「うん」」」

 

一夏達はその光景を目に焼き付けながらそう思ったんだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、この馬鹿者共が」

 

その後、雪兎達はやっぱりというか千冬よりお説教と反省文の束を受け取る羽目になった。

 

「しかし、よくやった。怪我人が試合中の宮本以外出なかったのは天野の状況判断が適切だったからだろう。教師達だけでは鎮圧するのにもう少し時間がかかったやもしれん。今回の件は正式にドイツに抗議がいくだろう」

 

「ボーデヴィッヒのやつはどうなるんですか?」

 

「あいつは力に呑まれず己を見失わなかった。VTSはどうして起動したかは知らんが今回の件に関しては不問になるだろう」

 

「そうですか」

 

「お前は相変わらず身内には甘いな」

 

「そこは姉弟子に似たんでしょうね」

 

「ふっ、言うようになったな、この弟弟子が」

 

こうしてVTS事件と呼ばれる事件は幕を閉じた。トーナメント決勝はあんなことがあったせいか中止となり、当然、「優勝すれば・・・・」というあの話もお流れとなったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(結局、負けちゃったかぁー)

 

今回の事件で一番の被害者と言えるのはラウラを庇って病室送りになった聖だろう。

しかし、パートナーを庇ったあの行動は周りから好評を受け、今回の事件で一番株を上げたのも彼女だった。

 

(そういえばボーデヴィッヒさんは大丈夫だったのかな?)

 

VTSというヤバいものに取り込まれかけたと聞いていたので(他言無用と念を押されている)聖は少し心配であった。

 

「宮本聖の病室はここであっているな?」

 

すると、聖の病室にそのラウラがやってきた。

 

「ボーデヴィッヒさん!?もう動いても大丈夫なの!?」

 

「私は元軍属だぞ?あれくらいでどうにかなるものか!」

 

「そっか」

 

「私よりもお前の方が重症だろうが、あの高出力砲の直撃を受けたのだぞ?」

 

「そうでした」

 

VTSに取り込まれたのとバスターライフルの直撃。どっちもどっちである。

 

「まったく、お前は危なっかしいやつだな」

 

「あははは」

 

「さて、ここにきたのはまずお前に詫びを入れるためだ。すまなかった」

 

「ええっ!?ボーデヴィッヒさんが謝るようなことはないよ!」

 

「いや、仮にもコンビを組んだ相手を信用せず単独で突撃した挙げ句ピンチを救われたのだぞ?謝って当然だ」

 

あの時は一夏のことで冷静さを欠いていたが、ラウラは本来軍人として冷静な方だ。それがあの体たらくである。ラウラはそれをずっと気にしていたのだ。

 

「なら私もごめんね。大して役にも立てないパートナーで」

 

「そんなことはない!何度も言うがお前は私をあの一撃から救ってくれたのだ。あの威力を目の当たりにしてそれができる宮本が役立たずのはずがあるまい」

 

何故かラウラの聖への評価が異様に高い気がするのは気のせいだろうか?

 

「そしてもう一つの要件だが・・・・宮本聖、お前をIS学園における私の副官に任ずる!異論は認めん」

 

「はい?」

 

これには聖もどうしてそうなったかわからなかった。

 

「つまりは、だな・・・・私と友人になってくれ、という意味だ。それぐらい察しろ」

 

(えっ?何この可愛い生き物。お持ち帰りしていい?)

 

少し照れながらそう言うラウラは聖にとってドストライクだった。

 

「あと、私のことはラウラと呼べ。私もお前のことは聖と呼ばせてもらう」

 

「うん!よろしくね、ラウラ」

 

これにより聖も専用機持ち達のいざこざに巻き込まれていく運命を辿ることになるのだが、この時の聖にそんなこと知るよしもなかった。




一応次で二章は終了です。

次はシャルロットの今後とデュノア社のお話。


そして聖はおめでとう準レギュラー確定だよ。これからも彼女の受難は続く(笑)


次回予告

VTS事件も片付き一息ついた頃、シャルロットの問題にも進展が。
雪兎がデュノア社に行っていた嫌がらせの正体とは?

次回

「シャルロットの気持ちとデュノア社の運命 兎、嫌がらせも妥協しない」


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13話 シャルロットの気持ちとデュノア社の運命 兎、嫌がらせも妥協しない

二章最終話です。

三章以降は更新速度がかなり落ちますのでご了承ください。

それでは本編をどうぞ。


トーナメントから数日後、聖も病室を出て日常へと復帰(二組では何故か英雄扱いされていた)しラウラも一夏と和解。とりあえず表面化していた問題は片付いた。一方でまだ解決していない問題もあった。シャルル(シャルロット)のことだ。

 

(束さんに賄賂(箒に関するアレコレ)贈って頼んだ甲斐あったな)

 

雪兎がデュノア社に行った嫌がらせとは束にお願いしてデュノア社の不正などの情報を入手し、「社会的に殺すよ?」と脅すというものだった。やることが鬼畜である。

 

(これでデュノア社はシャルロットのことで色々言えまい)

 

そんなことすれば社会的に抹殺される。更に言えばシャルロットのこと自体口にすれば自爆行為である(シャルロットを男子と偽り男子のデータを盗ませようとしていた)ため、

デュノア社は詰んでいた。これにはデュノア社も大慌てで必死に雪兎へ「何でもしますからそれだけは!」と言ってきた(無論、言質は取った)。これでシャルロットがデュノア社と縁を切りたいと言い出しても問題なくなったのだ。

 

(その辺はシャルロットに任せるか)

 

そう考え食堂に向かうと真耶が一夏とシャルルに何か話しかけていた。

 

「おっ、話をしてればいいところに」

 

「何かあったのか?」

 

「ああ!大浴場の件、前に話してたよな?」

 

「男子にも大浴場使わせてくれっていうあの話か?」

 

そこで雪兎は「そんな話あったなぁ」と思い出す。

 

(あれ?それってシャルロットが女の子ってバレる前の話だから・・・・ああ!!あの一緒に入浴するとかいうあのイベントか!!)

 

「今日は定期的に行われているボイラー点検の日だったので女子も元々使えなかったんですが、早めに点検が済んだので男子に使ってもらおうという話になりまして」

 

(ヤバいな・・・・一夏はシャルロットが女の子って知らねぇし、かといって行かないと変に怪しまれかねん)

 

「という訳で今日は男子でトーナメントお疲れ様会しようぜ」

 

(どうしたものか・・・・)

 

シャルルもどうしようと雪兎を見ている。

 

「一夏、俺とシャルルはまだ少し用事があるから先行っててくれ」

 

「うん?少しくらいなら待つぞ?」

 

「いやいや、お前、大浴場入るの楽しみにしてたろ?先にゆっくりしてこいよ!」

 

「そ、そうだよ、一夏。ゆっくりしておいでよ!」

 

「二人して何か怪しくないか?」

 

こんな時に限って鋭い一夏。その鋭さをもっと周りの女子に向けてやってくれ。

 

「何でもないって。なっ、シャルル?」

 

「う、うん、そうだよ!」

 

「そこまで言うならそうさせてもらうよ」

 

何とかその場しのいだ二人は食事を終えると一旦部屋に戻った。

 

「ふー、一時はどうなるかと思ったぜ」

 

「ありがとね、雪兎。おかげで助かったよ」

 

「気にすんなって・・・・ああ、そういえばデュノア社の件だが」

 

「デュノア社の件って例の僕が男子って偽って学園に来てる件だよね?」

 

その時、シャルロットは何故か凄く父親が心配になったという。こんなことになっている原因とも呼べる人物のはずなのにとても心配になったのだとか。理由は勿論・・・・

 

「ちょっとデュノア社脅してシャルロットが女子として学園通って良いって言質取ってきた」

 

「・・・・」

 

流石のシャルロットもこれには言葉を失った。まあ、普通に考えて一学生がどうしたら外国の一流企業を脅せるのかという話だが、そこは雪兎である。この天災の弟子であるこの男ならこのくらい造作もないのだろう。

 

「ついでに例え離縁しても代表候補生として支援するって約束も取り付けといた」

 

「・・・・あははは」

 

もうシャルロットからは乾いた笑いしか出なかった。

 

「まあ、その辺を決めるのはシャルロットに任せるよ。このまま男子としていても、女子ってばらして通い直すことにしたとしても俺はシャルロットのその意思を尊重する」

 

(あー、もう!何で君はそう僕が悩んでいたことをあっさり解決しちゃうかなぁ)

 

そんなことを思いつつもシャルロットの表情は次第にニヤケてきていた。

 

「ねぇ、雪兎。何でそこまでしてくれるの?」

 

元々は父親に言われた通りデータ取りのつもりで接触しただけだった。

 

「ん?友達が困ってるのを俺がほっとけるとも?」

 

最初に同室になったあの日も雪兎は同じようなことを言ってシャルロットを助けてくれた。

 

「それにシャルロットみたいに可愛い女の子が男子のふりして青春を浪費するってのは勿体無いだろ?」

 

「か、可愛いって!?ぼ、僕が!?」

 

「ほんとクラスの連中の目は節穴だよなぁ。こんな可愛い娘が男子な訳あるかよ」

 

「か、可愛い・・・・僕が可愛い・・・・」

 

そしていつの間にかシャルロットは雪兎の傍にいたいと思うようになっていた。

 

「シャルロット?」

 

「は、はひ!?」

 

「すぐに答えは出さなくていい。でも、お前が女子だったからってクラスの連中はお前を嫌ったりはしないよ。するやつがいたら俺が何とかしてやる」

 

「うん・・・・」

 

頼りになり安心出来る雪兎の傍にずっといたいと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

「今日は、ですね・・・・皆さんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと・・・・」

 

真耶の言葉にクラスのほとんどの生徒が首を傾げた。

 

(やっぱ、そっちを選んだか)

 

この中で事情を知るのは雪兎と事前に説明をしておいた教師三人だけだ。何故かその時千冬と雪菜にやたらニヤニヤされたのを雪兎は疑問に思っていたが。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした」

 

「「「「えええええ!?」」」」

 

当然クラスは大混乱である。

 

「お、おい、雪兎・・・・この前、大浴場に来なかった理由って」

 

「珍しく察しがいいな。そういうことだ」

 

「いつから知ってたんだよ!?」

 

「始めからだが?普通に考えてみろ。あんな美少女が男子な訳あるか」

 

「「「「あっ」」」」

 

雪兎のその一言でクラスメイトは納得してしまった。

 

「ってことは天野君は全部知っててデュノアさんを助けてたってこと!?」

 

「やばっ、天野君、男前すぎる・・・・」

 

「愛、だね」

 

原作の一夏の時に比べて評価が段違いであった。

 

「改めて、これからもよろしくね、雪兎」

 

そう言ってシャルロットは雪兎の頬に唇をつけた。

 

「えっ?」

 

「「「「きゃああああ!!!」」」」

 

その歓声はシャルルとして転入してきた時以上のもので雪兎は「鼓膜が破れるかと思った」と後に語った。




短いですが、これにて二章閉幕です。

やっとヒロインにヒロインさせれました。長かった・・・・
次の三章は海に行くまでの日常がメインの予定。
天災兎の出番はもう少し後になります。
打鉄・改やシャルロットのリヴァイヴもそろそろ強化フラグが・・・・

ちなみに、デュノア社には他にも細かい嫌がらせ(色々な書類の数値データが一桁変わってたり)食らってます。


次回予告

シャルロットの一件も片付き次は臨海学校!
夏だ!海だ!青春だ!と雪兎達も思い思いに準備を開始する。

次回

「夏の準備と恋する乙女 兎、デートに誘われる!?」

待て、次回!

そして第一回兎協奏曲人気投票を後日開催します。活動報告をお見逃しなく。


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三章「兎と夏と恋する季節」
14話 夏の準備と恋する乙女 兎、デートに誘われる!?


三章スタート!
三章は日常メインなのであんまし戦闘とかありません。
福音さんと天災兎は四章からの予定。

それではISー兎協奏曲ー第三章開演です。


6月下旬。梅雨も明け、夏らしい日射しが眩しくなってきたある休日。天野雪兎はIS学園に程近い大型ショッピングモール【レゾナンス】の一角で一人頭を抱えていた。

 

「・・・・どうしてこうなった?」

 

それは先日のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットが女子として正式にIS学園に通うようになって再び部屋割りが再編され一夏と雪兎は再び同室となった。

 

「おかえり、一夏」

 

「ただいま、雪兎」

 

と言ってもシャルロットが原作と同じくラウラと同室となり、一夏が雪兎の部屋に戻ってきただけなのだが。

 

「まさかシャルロットが女子だったとはなぁ」

 

「いや、気付けよ・・・・そんなんだから唐変木とか言われんだぞ?」

 

原作でもキングオブ唐変木とか言われてた気もするレベルの一夏に何を言っても無駄な気もするが、雪兎はそう言う他なかった。

 

「そういえば雪兎ってISじゃ剣術全然使わないよな?」

 

そう、雪兎は一夏同様にブリュンヒルデと呼ばれた織斑千冬の弟弟子であったはず。なのに今まで雪兎は試合などでは一切剣術を使っていなかったのだ。

 

「単に使う機会がないだけだ。一応、鍛練は続けてる」

 

「ってことはまだ切り札残ってんのかよ・・・・お前ってほんとに底が見えないな」

 

「俺にだってできないことはあるぞ?それに料理とかの家事スキルはお前には勝てん」

 

そうは言うが、一般的な男子高校生より遥かに高いレベルではある。

 

「そんなので勝ってもなぁ」

 

「ならタッグトーナメントでつけられなかった決着、今度のランク戦でつけるか?」

 

「望むところだ」

 

ランク戦とは雪兎達が行っている特訓中におけるランキング戦のことで、最近は機体スペックに依存しないよう訓練機同士で行っている。ちなみに、現在特訓に参加しているのは雪兎、一夏、箒、セシリア、鈴、簪、シャルロット、本音、ラウラ、聖の十名。これに時々ではあるが雪菜が指導役で参加してくれている。

 

「じゃあ、ランク戦で負けたやつが勝ったやつの言うことを一つ聞くってことで」

 

「一夏、お前その賭け何連敗中だよ」

 

「今度こそは勝つ!」

 

「俺がメタだけだと思うなよ?」

 

そう、この話が原因だったのだ。これが何故か他のメンバーにもバレ、ランク戦優勝者が他のメンバーに一つ命令できるということになってしまい、珍しく凄まじいやる気を見せたシャルロットに雪兎が敗北するという結果となりシャルロットが優勝した。そして、シャルロットが望んだこととは・・・・

 

「雪兎、今度僕とデートしてください!」

 

だったのだ。女子とカミングアウトしたあの日も雪兎にキスをしていることからシャルロットが雪兔に好意を寄せているのは周知レベルの話なのだが、まさかこんな手でデートに誘ってくるとは雪兎も想像していなかった。

 

「今度の休日、レゾナンスの噴水のある広場に10時に集合だからね!」

 

それはもう周囲の他のメンバーが「ご馳走さまです」と口を揃えた程にシャルロットはご機嫌だったのだ。それに優勝者の命令でもあるし、雪兎もシャルロットが嫌いではないため断る理由もなくデート当日を迎えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

(時間は・・・・9時20分。早く出過ぎたか)

 

女子を待たせてはいかんと早めに出たはいいが、少し早く来すぎたようで雪兎は少し待つことになった。そして話は冒頭に戻るのだが・・・・

 

(デートなんて前世でも経験ねぇーぞ!?)

 

雪兎が頭を抱えた理由はこれだった。雪兎は前世では没個性もいいところの彼女いない歴=人生の人間だったのだ。それが生まれ変わった程度でどうにかなるものでもなく、むしろ考え込むタイプの雪兎はどうすればいいのかと悩んだ挙げ句、よりにもよって弾に相談し「リア充爆発しろ!」というお言葉を頂戴したくらいだ。

 

「ごめん、待った?」

 

そうこう悩んでいるうちにシャルロットが集合場所にやってきた。時間は9時30分。どうやらシャルロットも待ちきれずに早く来てしまったのだろう。

 

「・・・・いや、そんなに待ってないよ。俺も少し前に来たところだ」

 

気がつけば雪兎はそんな台詞を口にしていた。

 

「そっか、でもごめんね。せっかくのデートなのに僕は制服姿で」

 

「仕方ないだろ。今までシャルは男装してたんだから女子っぽい服なんて持ってこれなかったんだろ?」

 

「う、うん・・・・それより、今シャルって」

 

「・・・・デートなんだろ?なら、普通に名前で呼ぶより愛称で呼んだ方がそれっぽい気がしてな・・・・嫌だったか?」

 

「ううん!そんなことないよ!えへへ、シャルか・・・・」

 

どうやらお気に召したようでシャルロットは可愛らしくにやけていた。

 

(ダメだ・・・・こんな表情されたら男は勝てん。ヒロインの中で女子力トップと言われた実力は本物だった!)

 

しかも、それが自分に向けられているのだこれで落とせないのはあのキングオブ唐変木(織斑一夏)くらいのものだろう。

 

「それに服なんて今から買いに行けるだろう?なんなら買ってやろうか?」

 

苦手とか悩んでおきながらいざとなるとこんな台詞をポンポン吐く辺り雪兎も大概である。

 

「い、いいの?」

 

「ああ、それくらい男の甲斐性ってやつだ」

 

実は雪兎も代表候補生程とは言わないがそれなりの資産を持っている。理由はEVOLsystemで開発した武装の技術を一部とある企業に売っておりその技術料として多額の金額を毎月貰っているのだ。ちなみに雪兎のスポンサーも引き受けており、雪兎が持つEVOLsystemに並ぶチートツール【storage&factory】に使う資材もこの企業から一部提供して貰っている。

 

「なら雪兎のコーディネートに期待してもいい?」

 

「うっ、俺はそういうの姉さんにしかしたことないからあんま過度な期待するなよ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、あんだけ不安だ不安だ喚いといてちゃんとやれてんじゃんか」

 

「本当にあの人に苦手なことなんてあるんでしょうか?」

 

「私が知る限り蛙とかぶよぶよしてる生き物に触れないくらいよ?」

 

「えっ?なにそれ、ちょっと意外」

 

「あまあま蛙苦手なんだ」

 

「ああ、昔に近所のワルガキが雪兎の顔にウシガエル張りつけてそれ以来トラウマらしい」

 

「ほう、それはいいことを聞いた。いつか仕返しでやってーー」

 

「やめといた方がいいわよ、それ。やったワルガキなんだけど。翌日に学校の玄関で全裸で赤いペンキまみれにされた挙げ句縛りつけにされて吊るされてたらしいから」

 

「「「「「・・・・」」」」」

 

「よし、俺達も買い物に行こうか」

 

後ろで今度誕生日を迎える箒へのサプライズでプレゼントを買いに来ていた(ついでに雪兎達の様子見)一夏達がそんな会話をしていたとは雪兎達は知るよしもなかった。




という訳でデート回です。
シャル、物凄く頑張ってます。
雪兎も色々テンパり過ぎて逆にイケメン化してます(笑)

そして私も蛙ダメなんです。某軍曹とかはいいんですが、リアルなのはちょっと・・・・このすばのあの蛙とか見たら失神する自信あります。


次回予告

デートを続ける雪兎とシャルロット。
雪兎は無事にシャルロットをエスコートしデートを終えられるのか?

次回

「初デートは何の味? 兎、エスコートする」

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15話 初デートは何の味? 兎、エスコートする

デート回その2です。

キャラ設定やオリジナルISの設定も少し更新してありますので気になる方はチェックしておいてください。

活動報告の人気投票もよろしくお願いします。


まず雪兎達が向かったのは女性物の服が売られているエリア。ISの普及に伴い女尊男卑が蔓延ること世界では女性物のエリアが圧倒的に広い。しかも、下手に女性物のエリアに男性が足を踏み入れると見知らぬ女性に命令され、断れば警備員を呼ぼうとする。そして「この人に暴力を振るわれました」などと言われようものなら問答無用で御用という理不尽すらあるのだ。なので、男性連れでこのエリアに足を踏み入れるのであれば連れの女性がしっかり側にいておかないと何をされるかわかったものではない元の世界のことを知る雪兎には魔境と言っていい場所だった。

 

「頼むから離れないでくれよ?昔、姉さんと来たときにはぐれちまって、姉さんと客がめちゃくちゃ揉めてエライ目に遭ったんだ」

 

雪兎も既にその洗礼を受けていた。その時は雪菜が代表候補生ということもあり雪兎達の言い分が正しいとわかり客の方が迷惑行為で店に起訴されたという珍事で終わったのだが。

 

「な、なら・・・・えい」

 

ならば、とシャルロットは雪兎の左腕に抱き付き両手でしっかりとホールドする。

 

「しゃ、シャル!?それはいくらなんでも歩き難くないか?」

 

「だ、大丈夫だよ!それに今日はデートなの!これぐらい当たり前だよ!」

 

「そ、そういうもんか?なら仕方ない」

 

女性関係に疎い雪兎はシャルロットの言い分を信じそのまま買い物へ。

 

「うわぁ、この服、可愛い・・・・」

 

「確かに、これって◯◯ってブランドの新作だったか?」

 

「よく知ってるね、雪兎」

 

「姉さんが昔モデルの仕事とかやってた時、付き添いでブランドの人と知り合っててな」

 

「ふーん。雪菜先生とねぇー」

 

「ちょっ!?シャルロットさん!?姉さんは姉弟だぞ!そんなんでスネられたら学園の話題とかオールアウトじゃねぇか!?」

 

「つーん」

 

「うわぁ・・・・いきなりこれかよ」

 

「あれ?そこにいるのは雪兎君?」

 

するとそこに店員と何か話していた女性が雪兎に声をかけてきた。

 

「えっ?あっ、千春さん!お久しぶりです」

 

千春は先の雪菜がモデルをした時に現場にいたデザイナーの女性で、その時に色々と話す機会があって知り合った人だ。フルネームは二村千春である。実は雪兎、こういう知り合いが結構いる。師匠の束と違い人の繋がりはばかにできないと、そこそこ人脈はある方なのだ。

 

「あら?そっちの娘は彼女?また可愛い娘捕まえて」

 

「ま、まだ彼女って訳じゃ・・・・」

 

「ほうほう。アプローチ中?でもその制服IS学園のだよね?勿体無い!デートならもっといい服着ないと!」

 

「ええっと、その・・・・」

 

千春のデザイナーとして何かに火がついてしまったようだ。

 

「ええ、彼女ちょっと訳有りで私服をあまり持ってこれなかったんですよ。そこでデートですのでプレゼントしようと思ってたんですが」

 

「なるほどなるほど。雪兎君、予算はおいくら?」

 

「このくらいなら・・・・千春さんのとこならこのくらいはいるでしょう?」

 

「ふんふん。これなら・・・・彼女のコーディネート私に任せない?」

 

「お願いしても?俺ってそういう経験無いんでちょっと困ってたんですよ」

 

「あー、それで私のとこのブランドを見てたのね?」

 

「ええ、数少ない知り合いのブランドですから。その経緯を話してたらスネられちゃって」

 

「あらあら、青春してるわねぇ、雪兎君」

 

そうこうしている間に雪兎と千春の間で何か決まってしまった。

 

「ゆ、雪兎?」

 

「心配すんなって、千春さんはデザイナーでセンスもいい人だから」

 

こうしてシャルロットはしばらく千春に着せ替え人形にされるも、雪兎が毎回ちゃんと感想を言ってくれるので途中からノリノリになり、それを見ていた一般客が挙ってそのブランドの服を買い、売り上げがかなり伸びたんだとか(千春と雪兎の狙い通りに)。その後、その内の何着かを雪兎がシャルロットにプレゼントし、その中でも最も気に入った服に着せ替えたシャルロットは機嫌を直してくれた。

 

「すいません。お仕事中だったのに」

 

「いいのよ、シャルロットちゃん。おかげさまで今日の売り上げ大分増えたから」

 

本当に強かな人である。

 

「雪兎君、この娘。大事にしなきゃ駄目よ?」

 

「わかってますって、こんな俺がいいって言ってくれる娘ですよ?」

 

(ふしゅー)

 

「ん?シャル!?大丈夫か、顔真っ赤だぞ!?」

 

「雪兎君、ほどほどにしてあげなさいよ」

 

「どっちですか!」

 

シャルロットの恋はある意味前途多難であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か、シャル?」

 

「う、うん、もう大丈夫。次は水着だね」

 

先程の雪兎の不意討ちから何とか復帰したシャルロットは更なる難所・水着売り場へと雪兎を誘う。

 

「シャルはスタイルいいし、選ぶの大変そうだよな」

 

「そ、そうかな?」

 

「これとか似合いそうだな」

 

「どれどれ?」

 

そう言って雪兎が選んだのは特に捻った訳でもないオレンジのビキニだった。

 

「そ、そうゆうのが好きなの?」

 

「い、いや、シャルに似合いそうだったな、と・・・・ん?あの水着は」

 

その時、雪兎の目に飛び込んきたのは原作でシャルロットが着ていた水着だった。

 

(そういや、アニメでもあの水着似合ってたよなぁ)

 

「あの水着が気になるの?」

 

そんなことを思っているとシャルロットがその水着を手に取る。

 

「あっ、確かにこれもいいなぁ」

 

「・・・・絶対に似合う。それは保証する」

 

「どうしたのいきなり?まだ試着もしてないのに」

 

「すまん、それを着てるシャルを少し想像した」

 

「・・・・雪兎のえっち」

 

「ぐはっ」

 

生で聞くその台詞は結構な破壊力があったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、水着は雪兎が選んだものと原作のものの二つを買い、他にも次の臨海学校の準備なども済ませ、休憩のため二人がやってきたのはオープンテラスのあるカフェだった。

 

「ふぅ、これで買い物は全部か?」

 

「そうだね、これで臨海学校も大丈夫だよ。でも、デートって言っておきながら買い物ばっかでごめんね?」

 

「いいって、色んなシャルが見れて俺は楽しかったから」

 

「うう、僕は少し恥ずかしかったよ」

 

「どれも可愛いかったぞ?」

 

「もう!雪兎はそうやって僕を弄ぶんだから」

 

「割りと真面目に答えたつもりなんだがなぁ」

 

この二人、これでまだ付き合ってないんだぜ?付き合ったら一体どうなることやら。

 

「さて、荷物もこいつ(storage&factory)にしまったし、次は何しようか」

 

「ほんと、雪兎のツールってとんでもないよね・・・・」

 

「ん?でも、これってISの拡張領域の応用だしな・・・・こういう技術こそ普及しなきゃいかんと思うんだがなぁ。エコバッグよりエコだぜ?」

 

「確かに・・・・雪兎って、そういうとこ変わってるよね」

 

「他の連中が気付かないだけだと思うんだがなぁ」

 

拡張領域をエコバッグと同列で語るなと言いたい。

 

「そういや、シャルはリヴァイヴどうするんだ?」

 

今は待機形態でシャルロットの首にかけられたペンダントトップになっている彼女の愛機ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。タッグトーナメントまでは問題なかったのだが、皆のISは箒や本音、聖といった専用機持ちでない者以外は全員第3世代以上のISの所持しており、ランク戦などでは雪兎を除くとシャルロットが抜きん出ているが、専用機戦になると少し押され気味になることも少なくはなくなってきていた。これは雪兎の特訓の成果とも言えるのだが、シャルロットの場合、リヴァイヴが若干シャルロットに合わせれなくなってきているのだ。

 

「やっぱり改修はしてるけど第2世代機で第3世代機の相手は難しくなってきてるかな?皆が成長してると思えばいいんだろうけど・・・・」

 

「俺が弄っても多分、少しの延命措置レベルだろうな」

 

二次移行でもすれば別なのだが、二次移行で強化されるのは精々1~2世代分。第3世代機が二次移行するのと第2世代機が二次移行するのではやはり差があるのは否めないのだ。

 

「いっそのこと第3世代機に改修しちまった方が早いか。いや、むしろシャルのリヴァイヴは雪華よりだし、雪華のデータ使って第3,5世代機にするのも・・・・」

 

またしてもとんでもない言葉がポンポンと・・・・

 

「ゆ、雪兎?」

 

「お、おう、悪い癖だな。またやっちまったか」

 

「とりあえずまだいいよ。本当にどうしようもなくなったら雪兎にお願いするから」

 

「ああ、任せろ」

 

「じゃあ、この話はここまで!そろそろ行こっか」

 

二人のデートはもう少しだけ続く。




リヴァイヴ強化フラグです。

今回は半ば勢いだったから不自然なとこがあるかもです。

さて、次回で今回のデート回は最後。
どんな風になるやら・・・・

次回予告

雪兎のシャルロットのデートは続く。しかし、二人のデートは思わぬ事態に!?

次回

「デートの終わりは事件とともに 兎、アクション映画の真似事をする」


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16話 デートの終わりは事件とともに 兎、アクション映画の真似事をする

デート回最後の話。
また雪兎がやらかします。

次は参式の話かな?


カフェを後にした二人は再びレゾナンスを回ることにした。

 

「そういや、シャルって何の部活入ったんだ?」

 

「僕?僕は料理部だよ。ラウラは茶道部だって」

 

「料理部ってまた家庭的というかなんというか・・・・ラウラはもうわかりやすいな」

 

料理するのが得意というシャルロットと副官の影響か日本文化マニアなラウラ。どちらもわかりやすい選択だ。

 

「箒は剣道部、セシリアはテニス部、鈴はラクロス部で簪はアニメ研究部、本音は生徒会の手伝いらしいし、聖は園芸部だったな」

 

聖が名前呼びなのは特訓メンバーになってすぐに他のメンバーも名前で呼んでいるのだからという理由だ。

 

「そうゆう雪兎は?」

 

「俺か?俺や一夏は色々問題があって部活やってないんだ」

 

「あっ、皆がどの部活に入れるか揉めたんだ・・・・」

 

「そういうこと。だから俺と一夏は今は無所属って訳だ」

 

これに関してはまた何れに。

 

「ひったくりよ!!」

 

すると、突如そんな声があがった。

 

「あっちの方からだ!」

 

二人が声のする方へ向かうと下のフロアでバッグを盗られた女性と逃げる男の姿が目に入った。

 

「ちっ、ああいうのがいるから女も増長するってのに!」

 

雪兎はそう言うと吹き抜けになっているフロアの階段の手摺に乗って滑るように降りていき、先回りするべく走り出す。

 

「待ってよ、雪兎!」

 

シャルロットも雪兎を追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どけどけ!」

 

ひったくり犯はショッピングモールの出入り口を目指し一直線に走っていた。そこに仲間が車を待機させている手筈になっている。そこまで逃げ切ればと、半ば成功を確信したその時であった。

 

「悪いがここから先は通行止めだぜ?」

 

「盗んだバッグを返してもらうよ!」

 

一組の男女が立ち塞がった。

 

「じゃ、邪魔するじゃねぇ!!」

 

そう言って男は隠し持っていた大型のアーミーナイフを取り出し突き出すも。

 

「構えが悪い。それに突き出す位置も悪い。掴まえてくれって言ってるようなもんだ」

 

相手が悪すぎた。男女の内の男・雪兎が素早くナイフを持つ腕の手首を掴み、そのまま捻りあげて床に叩き伏せる。その際に手放したバッグを女・シャルロットが回収する。

 

「シャル、外に多分仲間の車があると思う」

 

「大丈夫、そっちはもう通報して確保してもらったから」

 

「ナイス。そんじゃ、あとはこいつを警備員に引き渡して任務完了か?」

 

「そうだね」

 

「お、おまえら一体・・・・」

 

「ん?俺達か?俺達は通りすがりの学生さ。この近くにある学園のっていやわかるだろ?」

 

「この近くの?でも貴様は男・・・・!?お前はまさか!?」

 

「そういうこった。運が悪かったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、警備員が雪兎達の元にやってきて男の身柄を引き渡すと軽く調書などを取らされたが迅速な犯人の確保と犯人の仲間とおぼしきグループを捕らえられたことで感謝された。しかも、このひったくりグループは似たような事件を他にも数件やらかしていた常習犯だったのだ。

 

「ほんと運が悪かったんだな、あのひったくりグループ」

 

「みたいだね。それにしても良かったよ。バッグ取り戻せて」

 

「盗られた女性、凄く感謝してたもんな」

 

何でも亡くなった旦那のからプレゼントされた大事な物が入っていたらしく、女性は二人に何度も礼を言っていた。

 

「亡くなった旦那さんのこと、本当に愛してたんだね・・・・」

 

「あっ」

 

シャルロットは愛人の娘。母親は多分、旦那であるデュノア社の社長を恨んだりはしてはいないだろうが、娘であるシャルロットは今でも父親にあまりいい印象を持ってはいないのだろう。

 

「シャル・・・・」

 

「心配しなくても大丈夫だよ。ちょっとお母さんのこと思い出しただけだから」

 

事情は知っていたつもりだったが、シャルロットの心の闇は雪兎が思った以上に深かった。

 

「無理はすんなよ?辛かったら遠慮無く俺に言え・・・・俺はお前の傍にいてやるから」

 

「うん、ありがと、雪兎」

 

手を繋ぎ直し、帰ろうかと思ったその時、雪兎の目にある物が映った。

 

「シャル、ちょっとここ寄ってかないか?」

 

そこはブレスレットやネックレスなどのアクセサリーが売られている店だった。

 

「アクセサリー?珍しいね、雪兎がこんなお店入ろうなんて」

 

「ちょっとな」

 

すると雪兎は何かを手に取るとレジへと向かう。

 

「何を買ったの?」

 

そうシャルロットが訊ねると、雪兎は買ったばかりのそれをシャルロットに手渡した。

 

「今日の記念ってやつだ。大した値段するもんでもないけどな」

 

「くれるの?」

 

「ああ」

 

「開けて見ても?」

 

「いいぜ」

 

中に入っていたのはチェーンブレスレットと呼ばれるチェーンで出来たブレスレットで、一ヶ所にアメジストと思われる宝石がついているものだった。

 

「これって・・・・」

 

それにはシャルロットも見覚えがあった。雪兎の雪華の待機形態はチェーンブレスレット。そして、雪兎のプレゼントしてくれたものと同様に一ヶ所だけ水色の宝石のようなものがついたデザインで、というよりほとんど同じデザインのチェーンブレスレットだった。

 

「・・・・何か雪華に似てるなって思ってさ。お揃いみたくていいかなぁ、なんて」

 

「ありがとう。これ大切にするね!」

 

「大切にするのもいいがちゃんと着けてくれよ?お揃いなのもそうだが、シャルに似合うと思ってプレゼントしたんだから」

 

「うん!」

 

その笑顔はその日一番彼女らしくて良い笑顔だった。




短めですが今回はここまで。
もう付き合っちゃえよ、おまえら。とか思われれば私の勝ちです。

今回の買い物。これがやりたかったと言っても過言ではない!
原作とものを変えたのは相手が雪兎だからです。
ちなみに雪兎もしっかりシャルロットのこと意識しまくりです。時々、天然で誉め殺しにくるので一夏とは別に厄介ですが。

次回予告

デートを終えてすっかり上機嫌のシャルロット。そんな中、雪兎は打鉄・改を改修した新たなISを開発しデモンストレーションを行ってみるのだが・・・・

次回

「守護者の剣 兎、親分の偉大さを知る」


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17話 守護者の剣 兎、親分の偉大さを知る

何故かできてしまった親分回。
雪兎が彼の偉大さを知る回となります。

普通、あんなの振り回せねぇよ!といいたいアレを生身でも十全に使いこなしてた親分って一体・・・・

活動報告の人気投票もよろしくお願いします。
せめて十票は欲しいところです。


デートから数日経ち、臨海学校も目前になってきたある日。珍しく一夏と雪兎を除く特訓メンバーで食堂にやってきていた。

 

「えへへ・・・・」

 

「シャルロット、最近機嫌いいわね」

 

「ああ、例のデートの日からずっとあんな感じだ」

 

鈴の問いにラウラが答える。

 

「時々、あのブレスレット見てニヤニヤしてるな」

 

「プレゼントじゃないですかね?雪兎さんそういうのマメそうですし」

 

「雪兎さんはIS、いえ、ロボットのこと以外に関しては割りと紳士ですものね」

 

箒、聖、セシリアの三名もシャルロットのブレスレットを見て雪兎のプレゼントと看破する。

 

「そういえば箒さん、最近は普通の打鉄なんですね?いつも雪兎さんの打鉄・改借りてらしたよね」

 

「ああ、なんでもデータが大分集まったからここで大規模な改修を行うと言ってな」

 

その言葉に集まっていたメンバーの顔がひきつる。

 

「・・・・それ、絶対雪兎のやつが何かやらかすわよ」

 

「あまあま、こうゆうの自重しないからねぇー」

 

「「「「「・・・・」」」」」

 

本当に嫌な予感しかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、放課後。雪兎は皆とは別に一人きりで別のアリーナを貸し切ってあるISの試験をしていた。

 

「打鉄・参式、起動」

 

それは集まった打鉄・改や白式などの運用データから雪兎が独自に開発していたIS【打鉄・参式】の試験だった。

 

「ふむふむ。起動した感じは問題なさそうだなっと!」

 

「ほう、それがお前が最近弄っていたISか」

 

「あれ?織斑先生。どうしたんですか?」

 

そこにやってきたのは雪兎の担任でもある織斑千冬だった。

 

「何、お前がアリーナの貸し切り申請をしていたのを知ってな。監視のようなものだと思っておけ」

 

無理も無い。雪兎は千冬の親友にして世界規模の問題児・篠ノ之束の弟子である。何をやらかすかわからないので見張りにきたということらしい。

 

「まあ、構いませんよ。ちょっとこの参式固有の武装が危ないから貸し切りにしてもらっただけですから」

 

「危ない?」

 

「ええ、武装としてでなく振り回すのに広いスペース必要なんで他の人がいると危ないんですよ」

 

「なるほどな。で、その武装というのは?」

 

「こいつです。参式斬艦刀(・・・)といいます」

 

そう言って雪兎が拡張領域から取り出したのは通常のIS用の刀より刃渡りの長い一本の刀だった。

 

「言うほど危険には見えんが・・・・」

 

通常形態(・・・・)ではね」

 

「そういうことか」

 

雪兎が参式経由で斬艦刀に指示を送ると刀の鍔に当たる部分が開き、中から液状の金属が流れ出すと刀身を覆っていき、参式を纏った雪兔よりもはるかに長い巨大な両刃の剣へと変貌した。

 

「こんなの周りに人いたら振れないでしょ?」

 

「だが、そんなもの使えるのか?」

 

「一応、理論的にはこいつのパワーアシストがあれば振れるはずなんですがっ!」

 

一度持ち上げ地面に向かって振り下ろすと、地面には接していないというのに空気が震える。

 

「ヤバいな、これ・・・・普通に振り下ろすだけで並みのISだったら一撃だよ」

 

「違いない。だが、それを振るうにはかなりの技量が必要そうだな。ちょっと貸してみろ」

 

「えっ?」

 

「打鉄・参式といったか?暮桜を使っていた私が直々に評価してやると言ったんだ」

 

「・・・・是非、お願いします」

 

参式を待機状態に戻すと雪兎はそれを千冬に渡した。

 

「少し離れていろ」

 

そう言って千冬は参式を纏うと斬艦刀を取り出す。

 

「なるほど、液状形状記憶合金か。また変わったものを作る」

 

そして、説明もしていないのに斬艦刀を大太刀モードに変形させる。

 

「先程の大剣にこの大太刀、ほう投擲を前提にした形状まであるのか」

 

(えー、なんでこの人もう使いこなしてんの!?)

 

流石は世界のCHIHUYUである。

 

「この推進力はこの剣を活かすためのものか。中々に考えられているじゃないか」

 

気に入ったのか千冬は大太刀モードの斬艦刀を軽々と振るう。生身でIS用の刀とか振り回してしまうような方である。使用できる前提で作られた参式でなら斬艦刀も振るえよう。そこからしばらく千冬の剣舞が続いた。ファンが知れば大荒れ間違い無しのことだろう。

 

「すまないな、天野。中々動かしていて気持ちのいいISだった」

 

「そう言っていただければ一技術者としては幸いですよ」

 

「だが、あれは一般に使わせるのであればリミッターはかけておけ、特にあの斬艦刀にはな。あれは加減を知らねば容易く人を殺めかねん」

 

「勿論。俺は人殺しの道具を作りたい訳じゃありませんから」

 

「ならいい。ではな、また機会があれば使わせてくれ」

 

そう言うと千冬はアリーナから出ていった。

 

「やっぱ、一度は世界を取った人はちげーわ。それと、これを普通に使ってた親分もやっぱやべぇー・・・・俺でも振り回されかけたぞ」

 

改めて雪兎は偉大な先人二人に敬意を表するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、箒にもこの参式を使わせてみたのだが・・・・

 

「な、何なんだこの剣は!?こんなものまともに振るえるか!」

 

「だよな、俺も振り回されかけた。織斑先生は普通に振れてたんだがなぁ」

 

と、やっぱり斬艦刀に振り回され、それを観客席で見ていた一同はやはり千冬を敵にしてはいけないと改めて世界最強の実力を思い知ることになった。一部、「流石は教官!」とズレた発言をしていた黒兎もいたが。




という訳で打鉄・参式回こと親分回でした。
そして、やっぱり振るえるのか、織斑千冬よ。
親分、よくあんなん振るえる、全く・・・・


次回予告

臨海学校は目前!そんな中、雪兎の日常に迫る。

次回

「雪兎の1日 兎、観察日記」


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18話 雪兎の1日 兎、観察日記

今回は少し番外編的みたいなものです。

これまであんまり触れていなかった雪兎の生態についてです。
雪兎が普段何をしてるのか、ここくらいしかなかったので。


臨海学校の数日前のある1日。

 

雪兎の朝は割りと早い。技術者系は普通、遅くまで色々やっていて朝が遅いイメージがあるが、雪兎は基本的に翌日に疲れは残さないようにしている。師匠の束は何日も徹夜とかが普通でそれを反面教師にしているらしい。

 

「一夏、朝練いくぞ」

 

「お、おう」

 

ここ数年の間バイト等で鈍った一夏の身体を鍛え直すべく、雪兎と一夏は朝練を行っている。最近は箒やシャルロット、ラウラなども一緒に行っており、おかげで一夏も大分昔の感覚を取り戻しつつある。

 

「おはよう、雪兎」

 

「おはよう、シャル。箒、それにラウラも」

 

「うむ。おはよう、雪兎」

 

「今日も早いな。それに比べて嫁は・・・・」

 

雪兎はあのデート以降、シャルロットのことをシャルと呼んでいる。どうもしっくりくる、とのことで本人も嬉しそうにしているので問題はない。ラウラも特訓のメンバーに加わった際に他人行儀になる必要はないとメンバーに名前呼びを許しており、すっかり仲間というイメージがついている。それとラウラは原作同様一夏に助けられた際に精神的邂逅があったらしく。気が付けば一夏を嫁呼ばわりしている。何度か一夏が訂正を試みたが結局は直らなかった。

 

「すまん、遅くなった」

 

「遅いぞ、嫁。お前はただでさえ皆に遅れを取っているのだ。ならば少しはフィジカル面で挽回するようにせねば」

 

「うっ、痛いところを・・・・」

 

「悔しいと思うならもう少し気合を入れろ、一夏」

 

ラウラの加入は一夏を鍛える面でも本当にありがたく、軍人として蓄積されたその技量は中々に貴重な戦力だった。

 

「よし、それじゃあ今日も朝練はじめっぞ」

 

朝練のメニューはランニングの後にラウラの指導による対人組み手、箒や雪兎による剣術指南などでシャルロットやラウラも一緒にこなせるよう調整されている。

 

「雪兎、お前はまた腕を上げたな?」

 

「指導者が優秀だからな」

 

「いや、私など教官に比べたらまだまだだ。そういえば貴様も教官の教えを受けたことがあったのだったな?」

 

「一応は弟弟子だからな。どこぞの弟はあの体たらくだが」

 

「まったくだ。やはり我々が鍛え直してやらねば」

 

この会話は雪兎とラウラの対人組み手の最中に行われている。二人とも軽く流すつもりでやっているが、他のメンバーからしたらとても会話などできないレベルだ。

 

「雪兎って技術者志望なんじゃなかった?」

 

「あいつ、昔から筋が良くてな。千冬姉ともよくやってたんだよ」

 

「私達の世代で織斑先生についていけたのはあいつくらいだ」

 

やはりあの細胞からオーバースペックとすら語る天災の弟子はこちらもハイスペックだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝練後は一度シャワーを浴びてから朝食。一夏同様、雪兎も朝はしっかり取る方である。それから学園で授業。

 

「えーっと、この問題は・・・・天野君」

 

「はい、その答えは・・・・」

 

天災の弟子が学園の授業などで苦戦などするはずもなく、スラスラと問題を解いていく。

 

「これでいいですか?」

 

「はい、正解です」

 

成績も学年主席。こいつ、本当に欠点ないの?ってレベルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。雪兎は一夏同様に自炊も出来るため、週に数回全員でお弁当会のようなこともしている。

 

「鈴、また中華の腕上げたな。だが、他の分野では負けん」

 

「くっ、雪兎も玉子焼きのクオリティまた上げてきたじゃない」

 

「ほんとだ、雪兎の玉子焼き美味しい」

 

「雪兎って定番のメニューなら弁当屋のクオリティで出してくるからなぁ」

 

「流石に普段から主夫してたやつには負けるわ」

 

一夏は料理や家事という分野においてはメンバーの中ではトップである。無駄に女子力が女子を上回っている。

 

「ゆ、雪兎、僕も作ってみたんだけど、どうかな?」

 

すると、シャルロットが雪兎に自分の作った料理の試食をお願いする。

 

「ん?ほうほう、これまた定番中の定番、肉じゃがか、どれどれ・・・・ん、いけるな。味もしっかり染みてる。シャルの料理、俺は好きだぞ」

 

よし!とシャルロットが握り拳を作り喜びを露にすると、一同は「今日もご馳走さまです」と手を合わせるのであった。ちなみにセシリアは最初の時に雪兎から徹底的に駄目出しを食らっており、原作のようなとんでも料理はしなくなったものの、まだ上手いとは言えず、目下修行中である。この時の雪兎は一同から救世主扱いされていた。

 

「ラウラ、今日のプリンはどう?」

 

「うむ、聖のプリンは好きだぞ、私は」

 

「私も私も!」

 

一方で聖もデザート作りに関してはかなりの腕前で、何でも両親がパティシエなんだとか。ラウラと本音は着々と聖に餌付けされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業も終わっていつもの特訓が始まるが、「部活にもちゃんと顔は出しておけ」と以前に雪兎がメンバーに言っており、全員が揃うのは週に数回だ。今日はその全員が揃う日のようだ。

 

「今日の相手はっと」

 

「げっ、雪兎とじゃんか」

 

「げっ、とはなんだ。鈴」

 

特訓で行う模擬戦の相手はくじ引きで決めており、今回の雪兎の相手は鈴だった。

 

「あんた、メタしか張らないじゃないのよ!そんなやつと当たったら、げっ、とも言いたくなるわよ!」

 

「そうか、メタ張るから負けると、お前はそう言うんだな?」

 

「それがどうかしたの?」

 

「なら今回はメタ装備は使わずにやってやろう」

 

「えっ?いいの?」

 

「構わん。俺もメタだけとは言われたくないからな」

 

そう言って雪兎は雪華を【T:トライアル】で起動する。

 

「今日こそ勝ってやるんだから!」

 

「悪いがそう簡単には負けんぞ?」

 

その試合はそう時間もかからず決着した。無論、雪兎の勝利だ。

 

「龍咆に依存し過ぎだ。確かにあれは強力な兵器だが、さっきみたいに速射にすると威力が落ちて強行突破しやすい。そこで近接戦に上手く切り替えるか龍咆の威力を時々強いの混ぜたりして距離保つとか考えないと」

 

「うぐっ」

 

その辺は現在の鈴の課題である。

 

「お前の甲龍は比較的燃費もいいし、攻守のバランスもいいんだから。それに見えない攻撃ってのもさっき言ったように威力をばらして撃っても気付かれ難いって利点があるんだ。決して弱くない。もう少し自信を持てって」

 

「うう・・・・」

 

使用者より効果的な運用を相手に指摘され凹む鈴。しかも言っていることは分かりやすくすぐに実践できるとあって余計に凹む。

 

「雪兎さんってメタ張らなくても十分強いですよね・・・・」

 

「じゃなきゃランク戦で上位にいない。雪兎のメタはちゃんと技量があって成立するものだから」

 

「簪の言う通りだ、聖。あいつ程の技量がなければあれほどの装備郡を使いこなすなど不可能だ。そういう意味でも雪兎と並び立てるのはシャルロットくらいのものだろう」

 

「やっぱり、似た者夫婦?」

 

「ほ、本音!?何言ってるのさ!?」

 

「おー、しゃるるん顔真っ赤ー」

 

そんなこんなで特訓の時間も過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、今日も終わったな、雪兎」

 

「おう、今日も良いデータが取れたぜ」

 

1日の終わりに雪兎はその日得たデータをまとめて今後の特訓などに活用できるようにしている。このマメさが雪兎の持ち味と言ってもいいだろう。

 

「そろそろ次のパックの設計も終わることだし、臨海学校で試すとするか」

 

「うげ、また新しく増えんのかよ。またパターンのバリエーション増えて読み辛くなるな。で?今度はどんなやつなんだ?」

 

「今度は近接型だ。前の参式とかのデータを使ったやつだ。千冬さんが使ってくれたのが良かった。あの人のデータは貴重だからな」

 

「そういえば千冬姉も使ったんだったな、アレ。確かに千冬姉ならアレも使えるか」

 

アレとは参式斬艦刀のことだ。やはりアレは並みの人間に使いこなせるものではなかったらしく、箒も参式は使うが斬艦刀は使わないようにしているくらいだ。

 

「明日も早いし、そろそろ寝るか」

 

「おう、それじゃ、お休み」

 

「ああ、お休み」

 

こうして雪兎の1日は終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある天災のラボ。

 

「ん?この着信音は」




という訳で以上が雪兎の1日です。最後に何かいましたが、次からは原作三巻のメインエピソードになる四章になります。つまり息抜きたる三章は閉幕です。
次の四章は天災や福音が登場するアニメ一期のラストエピソードでもありますが、本作は原作メインなので福音さんは有人機です。
はてさて雪兎の介入でどう変化するかはお楽しみに。


次回予告

ついにやってきた臨海学校!海に水着に大騒ぎの生徒達。という訳で次回は水着回じゃー!

次回

「夏真っ盛り!IS学園臨海学校! 兎、海にいく!」


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四章「兎師弟と紅椿 新たな力と暴走IS」
19話 夏真っ盛り!IS学園臨海学校! 兎、海にいく!


兎協奏曲も四章に突入。兎師匠や福音なども登場します。

今回は水着回。いつも以上に頑張っていきます。

それではISー兎協奏曲ー第4幕開演です。


7月6日、臨海学校当日。

 

「海っ!見えたぁっ!」

 

トンネルを抜け窓から海が覗くとバスの中でクラスメイト達が声を上げる。

 

「テンション高いなぁ、まあ、海って何かテンション上がるのはわかるけど」

 

「そうだね。皆、普段は学園から出ることがないからそれもあるんじゃない?」

 

「かもな」

 

しかも、初日の日中は自由時間となっており、海で遊びたい放題なのだ。遊びたい盛りの高校生にテンションを上げるなという方が無理があるだろう。

 

「雪兎は楽しみじゃないの?」

 

「ん?ああ、ちょっと心配事があってな」

 

そう言うと、雪兎は箒の方を見る。

 

「箒がどうかしたの?」

 

「箒というかな。明日、箒の誕生日だろ?あの人が何かやらかさないか心配でな」

 

「あの人って、篠ノ之束博士のこと?」

 

「そう、俺の師匠でもある束さんな。あの人、箒の誕生日だから何かしそうでな」

 

そう、箒大好きなあの束が何もしないというのはあり得ない。それについ先日、雪兎にも束から「近い内に会いにいくよー」とメールが来ていたのだ。それで箒の誕生日間近となれば、この日以外ないだろう。

 

(原作なら確か紅椿持ってくんのこの時期だったはず)

 

紅椿、現行のISを遥かに凌駕する第4世代IS。束が自重の一切をせず作り上げた箒の為のISだ。

 

「ほう、面白い話をしているな?」

 

「お、織斑先生」

 

「やっぱ気になります?あの人こと」

 

「先日のVTSに関してあいつに問い合わせてな。あの件は無関係だったそうだ」

 

「あれ、あの人嫌いな類いですしね。むしろ、作ってたとこ殲滅とかする方ですよ?」

 

あんなの無粋だ、とか言い出して色々やってそうである。

 

「確かにな。それで、やはりあいつは来るのか?」

 

「近い内に会いにいくよ、とメールが来てました。なので多分明日かと」

 

「そうか」

 

それだけ聞くと千冬は自分の席へと戻っていく。

 

「雪兎、話を聞いた限りだとものすごい人みたいだね・・・・」

 

「本物見たらもっと驚くと思うぞ。あと、あの人は身内認定してない人は基本的にどうでもいいって人だから注意してな」

 

「うん、覚えとくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一同は三日間お世話になる旅館・花月荘に到着した。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

 

「「「「よろしくお願いしまーす」」」」

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね。あら、こちらが噂の・・・・?」

 

「ええ、まあ。今年は二人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんな。それに、いい男子じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

「感じがするだけですよ。挨拶をしろ馬鹿者共」

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「天野雪兎です。よろしくお願いします」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲景子です」

 

そんなこんなで女将さんの景子に挨拶をした後に一夏と雪兎の二人は教員の隣の部屋に宛がわれた男子部屋に荷物を置き、別館で着替えて海に行くことにした。途中、箒と出会いどっかで見たことのあるウサミミを見つけたが、雪兎と箒はスルーして海へと向かった。その後、人参型の何かが降ってきた気もしたが、雪兎はスルーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、俺は何をしようか」

 

「雪兎ー!」

 

海岸に出た雪兎に後ろからシャルロットがやってきた。

 

「おっ、そっちの水着にしたのか。やっぱ似合ってるな、その水着」

 

シャルロットの着ていた水着は原作で着ていた水着だった。

 

「あ、ありがとう、雪兎」

 

「そういやラウラは一緒じゃなかったのか?」

 

「うん、さっきまでは一緒だったけど聖さんが連れていくからって」

 

「そっか、聖なら大丈夫だろう」

 

原作のシャルロットの役目は聖が引き受けたようだ。

 

「なら、一緒に泳ぐか?」

 

「うん!」

 

それからしばらく二人で泳いでいると海岸の方が騒がしい。

 

「また一夏か・・・・あいつの周りはいつもあんなんだな」

 

「みたいだね。アレはセシリアと鈴かな?」

 

「あの二人は・・・・もう少し仲良くできんのか、まったく」

 

「あっ、雪兎さんにシャルロットさん!一緒にビーチバレーしませんかー!」

 

すると、聖が雪兎とシャルロットをビーチバレーに誘う。

 

「ビーチバレーか、シャルはどうする?」

 

「せっかくだしやろっか、雪兎」

 

チームは雪兎、シャルロット、櫛灘(クラスメイト)のチーム対、一夏、ラウラ、聖のチームである。

 

「ふっふっふっ。7月のサマーデビルと呼ばれたこの私の実力を・・・・見よ!」

 

そう言うだけの実力はあるようでいきなり鋭いジャンピングサーブが一夏のチームを襲う。

 

「任せろ!」

 

だが、原作と違い早々に照れ状態から復帰していたラウラが拾い上げ。

 

「一夏さん!」

 

「おう!」

 

聖がトスを上げ一夏がスパイクを放つ。

 

「任せて!」

 

しかし、こちらもシャルロットがレシーブで上げ。

 

「天野君、お願い!」

 

「任せろ!しゃあ!」

 

櫛灘、雪兎と繋ぎ鋭いスパイクが飛ぶ。

 

「やるな、雪兎!」

 

「勝負というからには負けられん!」

 

その後も激しい打ち合いとなり、気付けばギャラリーが周りを囲っていた。

 

「随分と白熱してるな」

 

「織斑先生!」

 

更に千冬や真耶も参戦して試合は更に加熱していった。

 

 

 

 

 

 

「こんなとこにいたのか、箒」

 

「雪兎か」

 

箒の姿が見えないと思い探してみれば箒は崖の上で一人佇んでいた。

 

「束さんのことか?」

 

「やはりお前にはお見通しか」

 

「明日は箒の誕生日だもんな。あの人が何もしないなんて思えないだろ?それに近い内に会いにいくよ、ってメールが来てたからな」

 

「そうか」

 

「まだ許せないのか?束さんが」

 

箒はISを開発したことで何度も引っ越しを繰り返すことになる生活を強いられるようになり、一夏と離ればなれになったことで束のことを少なからず憎んでいた。それを察して雪兎はそう訊ねた。

 

「恨んでいないと言えば嘘になる・・・・しかし」

 

「頼んだのか、自分の、自分専用のISを」

 

「ああ、やっぱりお前は何でもお見通しだな」

 

「いや、あれだけライバルが専用機持ちばかりじゃそう思うのは無理ないだろう?」

 

確かに今は雪兎の打鉄・参式を借りているが、それは借り物に過ぎない。だから欲したのだろう自分の専用機を。

 

「それを悪いとは俺は言わない。だが、専用機持ちには責任ってのがある。それだけは忘れんなよ」

 

雪兎はそれだけ言うと箒の元を去っていった。

 

「専用機持ちの責任・・・・」

 

雪兎に言われたそれが箒の心に深く突き刺さるように残った。




水着描写とかそんな真似は私には無理でした。
そんなこんなで次はとうとうあの兎師匠こと束が降臨する。


次回予告

臨海学校2日目、箒の誕生日に姿を現したIS開発者・篠ノ之束!その目的は箒に自分の作った専用機を渡すことだった。そして、何故か雪兎と箒が模擬戦をすることに!?

次回

「登場!篠ノ之束!激突、雪華VS紅椿!? 兎、箒とガチバトル!?」


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20話 登場!篠ノ之束!激突、雪華VS紅椿!? 兎、箒とガチバトル!?

束と紅椿回です。

さて、雪兎は紅椿にどう挑むのか?

人気投票、本当に投票お願いします。現在3票で企画倒れレベルです。


夕食では刺身に小鍋、山菜の和え物が二品、赤だしの味噌汁にお新香というメニューだった。しかも、刺身はカワハギとIS学園は随分と羽振りがいいようだ。

 

「雪兎、さっきはどこ行ってたの?」

 

隣に座るシャルロットが自由時間の最後に行方を眩ませていた雪兎に訊ねる。

 

「ちょっと箒に野暮用がな」

 

「それってバスで話してた?」

 

「そういうことだ。それより食おうぜ。こんなの滅多に食えないんだから」

 

「うん、僕も雪兎にお箸の使い方習っておいておいてよかったよ」

 

シャルロットは雪兎と同室だった時から正座や箸の使い方などを習っており、難なく雪兎の隣を確保している。というより雪兎の隣は既にシャルロットの指定席というのが1年1組の暗黙の了解になりつつある。

 

「っ・・・・ぅ・・・・」

 

一方、一夏の隣のセシリアはかなり無理をしているのかうめき声を上げていた。

 

「あそこまでいくと健気だよな」

 

「うん、本当に練習しててよかったよ」

 

この時ほどシャルロットは正座が苦でないことに感謝したことはないんだとか。

 

「無理はすんなよ?そんときは俺も一緒に移動してやっから」

 

「う、うん、大丈夫だよ(雪兎はほんとにナチュラルに僕を落としにくるから油断できない)」

 

一夏にもこれくらいの気遣いができれば、と一部のヒロイン達が思っていたとかいないとか。また、シャルロットが雪兎と同室になった影響か、セシリアのあーんのシーンはお流れとなっていた。頑張れ、セシリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、やっぱ温泉は違うな」

 

「ああ、さっぱりしたよ」

 

男子の入浴時間は限られているので二人はさっさと入浴を済ませ部屋に戻る。教員部屋の隣なので女子達も遠慮しているのか、男二人で寛いでいた。

 

「そういや明日の準備ってしてあるのか?」

 

明日の準備とは臨海学校の主目的である「ISの非限定空間における稼働試験」のものではなく箒の誕生日のことだ。一夏や雪兎は特に国や企業から新型装備が送られてくる訳でもないため(一夏は拡張領域が無いので装備不可能だし、雪兎は自前で用意しているため)、そっち方面は特にやることがないのだ。

 

「ああ、雪兎は何を用意したんだ?」

 

「俺はこのカーボンファイバー製の竹刀だ。壊れ難いって評判のやつ」

 

「なるほど、俺はリボン、かな?」

 

「あー、なるほど。お前らしいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方、女子達はというと・・・・

 

「あのー、何で私達呼び出されたんでしょうか?」

 

箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラの五人は何故か教員部屋に集められていた。簪がいないのは友達止まりだからだろう。

 

「いや、何、お前らはあの二人に好意を寄せているだろう?」

 

「だからちょっと色々聞いてみたかったのよね」

 

そう千冬と雪菜の二人はぶっちゃけた。

 

「それとほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、紅茶だ。それぞれ他のがいいやつは各人で交換しろ」

 

だが、順に箒、シャルロット、鈴、ラウラ、セシリアに不満はなかったので交換会は開かれなかった。

 

「「「「「い、いただきます」」」」」

 

全員が口をつけたのを確認すると、千冬はニヤリと笑った。

 

「飲んだな?」

 

「は、はい?」

 

「そ、そりゃ、飲みましたけど・・・・」

 

「な、何か入っていましたの!?」

 

「ううん、ちょっとした口封じよ。ね、ちーちゃん」

 

「だから、ちーちゃんと呼ぶな」

 

そう言って二人が取り出したのは星のマークがキラリと光る缶ビールであった。

 

「口封じって・・・・」

 

「私達だってお酒は飲むのよ?」

 

「いや、今は仕事中では・・・・」

 

「口止め料は払ったぞ」

 

そう、先程の飲み物はそういう意味であった。

 

「さて、本題だ。お前ら、あいつらのどこがいいんだ?」

 

全員、「あいつら」が誰を指しているかわかっていた。箒達四人は一夏。シャルロットは雪兎のことに他ならない。

 

「わ、私は別に・・・・以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

 

「あたしは、腐れ縁なだけだし・・・・」

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです」

 

箒、鈴、セシリアのコメントである。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう」

 

そんなことをしれっと言う辺り、千冬も中々意地悪である。

 

「「「言わなくていいです!」」」

 

それをはっはっはっとからかう千冬。もう酔ってないだろうか?

 

「で、お前は?」

 

次に一夏に惚れている最後の一人、ラウラに矛先が向く。

 

「つ、強いところが、でしょうか・・・・」

 

「いや弱いだろ」

 

容赦無さすぎません?

 

「つ、強いです。少なくとも、私よりも」

 

恐らく精神的な強さのことだろう。

 

「まあ、強いかは別にしてだ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだってうまい」

 

休日にたまにしてもらっているらしい。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

「「「「く、くれるんですか?」」」」

 

「やるかバカ。女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」

 

一方、シャルロットは・・・・

 

「ぼ、僕は・・・・やさしいところ、です。いつも雪兎は僕にやさしくしてくれて」

 

「だよねー、ゆーくんやさしいもんね」

 

「だから、いつの間にずっと傍にいたいなって・・・・な、何言ってるんだろう、僕」

 

顔を真っ赤にしてそう言うシャルロットに雪菜はうんうんと頷きながらとんでもないことを口走った。

 

「もうゆーくんと付き合っちゃえよ。私はシャルちゃんみたいな義妹なら大歓迎だよ?」

 

まさかの姉公認である。そして、いつの間にかシャルちゃん呼びである。

 

「え、ええー!?」

 

「だって、シャルちゃんならゆーくん任せても安心できそうだし。そうだ!お姉ちゃんって呼んでもいいんだぞ?」

 

「きゅ、きゅー・・・・」

 

あまりのことにシャルロットはオーバーヒートしたかのように倒れてしまう。

 

「雪菜、ほどほどにしといてやれ」

 

「私は本気なんだけどなぁー」

 

そんなこんなで夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。各種装備試験運用の為、訓練機グループと専用機グループで分かれることになった。専用機持ちは個人でデータ取りを行わなければならない為、当然の処置だ。しかし、その専用機グループの中には何故か箒の姿もあった。

 

「専用機持ちは揃ったな」

 

「先生、一人専用機持ちじゃないのがいるんですけど」

 

「それこれから説明すーー」

 

その時だった。

 

「ちーちゃーーーーん!!」

 

ずどどどど・・・・!と砂煙を上げながら天災・篠ノ之束がこちらに駆けてくる。本来は部外者立ち入り禁止なのだが、この天災にそんなもの関係なかった。

 

「・・・・束」

 

「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、ハグハグしよう!愛を確かめーーぶへっ」

 

飛びかかってきた束を千冬は片手で顔面を掴み、見事なアイアンクローを決める・・・・手慣れている。

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬぬ・・・・相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

その拘束から抜け出す束までが一連の動作なのだと言われても不思議でない。あっさり世界最強の手から逃れる束もやはりただ者ではない。

 

「やあ!」

 

そして今度は箒に話しかける。

 

「・・・・どうも」

 

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年振りかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」

 

がんっ!とどこから取り出したのか箒が日本刀の鞘で束をぶつ。

 

「殴りますよ」

 

「な、殴ってから言ったぁ・・・・し、しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどい!箒ちゃんひどい!」

 

いきなり久しぶりに再会した妹にセクハラ発言するから悪い。

 

「え、えっと、この合宿では関係者以外ーー」

 

「んん?珍妙奇天烈なことを言うね。ISの関係者というなら、一番はこの私をおいて他にいないよ」

 

「えっ、あっ、はいっ。そ、そうですね・・・・」

 

真耶が色々言おうとするもあっという間に論破されてしまう。

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

 

いかにもテキトーな自己紹介だったが、それでようやく一同はこの人物が篠ノ之束であると理解する。

 

「雪兎、僕は雪兎の忠告聞いててよかったと思ったよ」

 

「言ったろ?驚くって」

 

「うん、想像以上だった」

 

そこで束は雪兎の存在に気付き手を振る。

 

「やあやあ!我が弟子よ!久しぶりだね」

 

「この前会ったのは春休みに白式と雪華受け取った時だから3ヶ月ぐらい振りですかね?」

 

「そうだねー、もうそれくらい経つんだぁ」

 

「クロエは連れて来なかったんですか?」

 

クロエとは束が保護して娘のように可愛がっている少女のことだ。

 

「うん、くーちゃんはお留守番してるってさ。それよりも、あれから色々作ってたみたいだけど?」

 

「後で見せますよ。それとこれ箒の最新のデータです。使いますよね?」

 

「流石は我が弟子!それではお見せしよう!さあ、大空をご覧あれ!」

 

「このパターンはもしや・・・・」

 

すると上空から銀色の金属塊が降ってきた。

 

「やっぱりかー!」

 

一夏が何か叫んでいるがとりあえず無視する方向で。そして、その金属塊が開くと中には・・・・真紅のISが鎮座していた。

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと【紅椿】!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

紅椿、ある意味でISの一つの到達点とも呼ばれるISがそこにあった。

 

「さあ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!我が弟子がデータくれたからすぐに終わるよ!」

 

そう言うと6枚もの空中投影ディスプレイを展開し、あっという間に作業を終わらせる束。

 

「近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ」

 

やはり天災は格が違った。

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの・・・・?身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」

 

どこからともなくそんな声が上がるも。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな?有史以来(・・・・)世界が平等であったことなど一度もないよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう束に言われて作業に戻っていく。その後も一夏の白式や雪兎の雪華のデータも見て興味深そうに眺めていたり、箒の試運転をしたりしていると。

 

「さてと、紅椿の試運転も一段落したところで・・・・ゆーくん、紅椿と戦ってみない?」

 

「えっ?」

 

「師匠としては弟子のゆーくんが育てた雪華の力。データじゃなくて実際に見てみたくなっちゃってね」

 

「そういうことですか・・・・なら弟子としては受けざるを得ませんね」

 

こうして、紅椿VS雪華という師弟のISがぶつかることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここで紅椿とやれるとはな・・・・師匠の作った万能型の最高峰とやれるなんて技術者冥利に尽きるぜ)

 

雪兎はこの試合、かなり乗り気だった。それだけ雪兎にとって束は大きな存在だった。

 

(雪兎の雪華か・・・・何度も模擬戦は行っていたが、その性能をフルに発揮させたかと言えばそうではなかった。だが、この紅椿なら!)

 

対する箒も手にした紅椿という力を試す絶好の機会であると闘志を燃やす。

 

「悪いが、箒。紅椿相手なら俺も加減は一切しねぇからな?」

 

「望むところだ、雪兎。今日こそはお前から一本取ってやる!」

 

『それではー、試合開始!』

 

束の合図で両機は一斉に動き出した。

 

「いくぜ【J:イェーガー】!」

 

初っぱなから雪兎はバスターライフルで紅椿を狙うも、紅椿は思った以上の速さで動きそれをかわす。

 

「確かにそのバスターライフルは脅威だが、当たらなければどうということはない!」

 

そう言い右に持つ雨月で突きを放ち無数のレーザーが雪兎に迫る。

 

「機動性なら【J:イェーガー】も負けてねぇよ!」

 

だが、雪兎に簡単に当たるはずもなくレーザーは空を切る。

 

「なら次は・・・・来い【W:ウィザード】!」

 

雪兎はバスターライフルが通じないとわかるとパックを【J:イェーガー】から【W:ウィザード】に切り換える。

 

「前はグラスパーしか使わなかったからな!展開しろ、ディフェンサー!」

 

展開したのはグラスパーとは違う円盤状ビットだ。

 

「数を展開しても無駄だ!雨月!」

 

それに対し箒は再び雨月のレーザーを放つが。

 

「かかったな!」

 

雪兎がディフェンサーと呼んだビットの表面は鏡のようになっていた。

 

「鏡面・・・・まさかっ!?」

 

「そのまさかだよ!」

 

雪兎の周囲に並んだディフェンサーは雨月のレーザーを数回反射させると箒へと跳ね返す。

 

「ちっ、簡単には落とされてくれないか」

 

「その程度、セシリアのオールレンジ攻撃に比べれば楽勝だよ」

 

「ならば、空裂!」

 

今度は左の空裂で帯状の斬撃を飛ばしディフェンサーを撃墜する。

 

「なるほどね、確かにそっちは反射出来ん。でも、斬撃を飛ばせんのはそっちだけじゃないぜ!」

 

雪兎が大鎌・ビームハルパーを振るうと、ビームでできた刃そのものが飛び、箒は慌てて空裂で相殺する。

 

「なるほど、そちらは刃自体が飛んでくるのか!」

 

「ああ、こっちも何回でも飛ばせるぜ!」

 

それからは飛ぶ斬撃と隙を縫うような近接戦を両者は繰り返す。

 

「紅椿、束さんの自信作なだけはあるな」

 

「はぁ、はぁ、これでも追い付けないか・・・・やはりお前は強いな」

 

まさか【W:ウィザード】で近接戦がここまでできるとは箒も思っておらず、思いの外苦戦していた。

 

「せっかくだ。お前に俺の新しいパックを見せてやるよ」

 

「ここにきて新型だと!」

 

「こいつはお前や織斑先生のおかげで出来たパックだ。初戦は箒で試すつもりだったよ。来い【B:ブレイド】!」

 

現れたのは深い藍色の鎧武者のような追加装甲を持つISだった。

 

「参式や白式のデータを元に作った近接特化パック【B:ブレイド】だ。久しぶりに剣術勝負といこうか、箒!」

 

その加速はその鎧武者の姿からは想像もつかない速さを持って箒の紅椿に迫る。

 

「くっ、何て加速だ。その肩の非固定浮遊部位は参式と同じか!」

 

「ご名答っ!」

 

そして、雪兎も紅椿同様に二本の刀を構え斬りかかる。

 

「こいつは弐式の薙刀と同じ高周波ブレードだ。あんまし受けるとその刀、叩き折るぜ!」

 

「また厄介なものを!」

 

雨月や空裂のレーザーで接近されないよう戦う箒だが、雪兎はそれを難なく掻い潜り斬撃を浴びせていく。

 

「空裂!」

 

再度空裂を振るうもレーザーは放たれない。

 

「エネルギー武器の使い過ぎだ!一夏と同じで武器性能の把握が疎かだぞ、箒」

 

そして喉元に雪兎の剣が突き付けられ試合は決着した。

 

「また私の負けだな、雪兎」

 

「まあ、経験の差ってやつだ。もっと経験を積んでまた来な。いつでも相手になるぜ」

 

試合は雪兎の勝利。しかし、紅椿はその圧倒的な性能を周囲に知らしめるのであった。




結構長文になりました。

試合までが長いもの原因でしたが・・・・

雪兎の新パックは【B:ブレイド】イメージはフルメタアナザーのレイブンです。あれを二刀流にした感じですね。他にも武器はありますが今回は紅椿に合わせて日本刀です。

次回予告

二人の模擬戦も終わって一息ついたところで緊急事態発生!?実験中のIS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が暴走してこちらに向かっているという情報が!これを束の提案で白式、紅椿で撃墜することに。その時、雪兎がとった行動とは!?

次回

「暴走!銀の福音 兎、提案する」


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21話 暴走!銀の福音 兎、提案する

さて、ここからはちょっとシリアスパートに入ります。
福音の暴走、その作戦会議の中、雪兎が提案したこととは?


雪兎と箒の模擬戦が終わり、再び評価試験へと戻ろうとすると、真耶が慌てて千冬の元にやって来た。

 

「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」

 

その慌てようは今までの比でなく、それだけで非常事態だとわかる。

 

「どうした?」

 

「こ、こっ、これをっ!」

 

渡された端末を見て千冬の表情が曇る。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし・・・・」

 

その内容だけで十分に厄介事である。

 

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていたーー」

 

「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」

 

「す、すみませんっ・・・・」

 

(きたか、福音事件・・・・)

 

紅椿と模擬戦というイレギュラーはあったが、原作通り福音の暴走事件が起きたようだ。

 

「ーー全員、注目!」

 

真耶が他の先生へ連絡をしに離れた後に千冬は特殊任務行動になるため試験は中止、専用機持ち以外は各自旅館の部屋での待機が命じられた。そして、専用機である雪兎達は旅館の一番奥の宴会用の大座敷・風花の間に集められた。

 

「では、現状を説明する」

 

千冬の説明では二時間前にハワイ沖で試験稼働中だったアメリカとイスラエルの共同開発軍用IS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が突如暴走。衛星による追跡の結果、ここから二キロ先の空域を通過することが判明し、IS学園の上層部によりここにいるメンバーでの対処が命じられたとのこと。しかも、教員は訓練機による空・海域の封鎖に回ることになり、直接の対処は専用機持ちが行うということになった。

 

「それでは作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」

 

「はい」

 

真っ先に手を挙げたのはセシリアだった。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外するな。情報漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

 

「了解しました」

 

そして開示された情報は・・・・

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・・わたくしのISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」

 

「攻撃と機動の両方に特化した機体ね。厄介だわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利・・・・」

 

「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」

 

「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速二四五○キロを超えるとある。アプローチは一回が限界だろう」

 

「一回きりのチャンス・・・・ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

 

「ですね。しかも、近接でのワンアプローチワンキル・・・・やれるのは」

 

そこで皆の視線が一夏に集中する。

 

「え・・・・?」

 

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ!」

 

アタッカーは一夏で決定。問題は一夏をどうやって福音のところまで連れていくかだ。白式は零落白夜に全エネルギーを集中させるため移動に割くエネルギーが足りないのだ。

 

「天野、お前の【J:イェーガー】はどうだ?」

 

「セシリアのパッケージよりは稼働データもありますし、バスターライフルに使うエネルギーを全部回せば不可能ではないですが・・・・」

 

「どうかしたのか?」

 

「どうせ聞いてるんでしょ?言いたいことがあるなら出てきてください。束さん」

 

「ありゃりゃ、ゆーくんにはバレてたか・・・・」

 

すると、天井裏から束が姿を現す。

 

「束・・・・お前というやつは」

 

「その作戦は待ったなんだよー!私の頭の中にもっといい作戦がナウ・プリンティング!」

 

「・・・・出て行け」

 

頭を押さえ、束に退去を命じるも束がそれを素直に聞き入れる訳がなく、言葉を続ける。

 

「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」

 

「なに?」

 

そこから紅椿が第4世代ISであり、展開装甲という装備によるパッケージ換装を用いない万能機であると説明がされる。それを調整すればスピードは確保できるという。

 

「展開装甲・・・・それはまるで」

 

「俺の雪華の上位互換ってとこさ。俺の雪華が常時パッケージ換装を行えることによる万能機化がコンセプトなら、紅椿はそれを必要としない万能機なのさ。まあ、紅椿並みの高性能万能機はそうそう作れんだろうがな」

 

「どういうこと?」

 

「燃費だ。束さんのことだから何か考えがあるんだろうが、一戦した俺から言わせてもらうと紅椿は白式並みに燃費が悪い。長期戦には向かない」

 

「流石は我が弟子、やっぱりそこに気付いちゃったか」

 

「まあ、一撃で決めれれば二人のコンビで出るのが現状では一番確率が高いが、予備プランは必要だと思う」

 

「となると、第一陣を織斑、篠ノ之の二名。二陣に天野とオルコット、それと後一人といったところか」

 

「そうなりますね。出来れば精密射撃が可能なメンバーがいいかと」

 

一夏の二撃目を補佐するためには射撃型の方が都合がいいのだ。

 

「ならばデュノア、お前が行け」

 

「えっ?ぼ、僕ですか!?」

 

「お前が残りのメンバーで一番精密射撃に向いている。それにお前と天野のコンビネーションはタッグトーナメントで実証済みだ。選出理由としては十分だろう」

 

「は、はい」

 

こうして対福音のメンバーはファーストアタックを一夏と箒が担当し、万が一に備え雪兎・セシリア・シャルロットが補佐に付くことになった。

 

「セシリア、オートクチュール(専用パッケージのこと、今回は高機動パッケージ・ストライクガンナーを指す)の調整は悪いが俺がやる。時間が惜しい」

 

「お願いしても?雪兎さんなら万全の状態にしてくれると信頼していますわ」

 

「任された。早速やるぞ」

 

そして、雪兎はブルー・ティアーズを、束が紅椿の調整を行うこととなり、急ピッチで作業が開始されたのだった。




という訳で雪兎の提案は高機動系二機と射撃型一機によるファーストアタックが外れた場合の補佐をする体制を作ることでした。
これなら白式と紅椿が決めれば出番はないので束に止められないのでは?という私の考えです。

次回予告

とうとう始まった対福音作戦。しかし、思わぬハプニングの連続でまさかの事態に!?

次回

「福音迎撃作戦! 兎、ピンチに陥る!?」


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22話 福音迎撃作戦! 兎、ピンチに陥る!?

第一次福音迎撃作戦開始。
だが、雪兎を想定外の事態が襲う!?


セシリアのブルー・ティアーズの調整を終え、出撃準備をする雪兔達。雪兎自身も【J:イェーガー】以外のパックも用意し、万が一に備えていた。

 

(福音の性能を考えれば対抗できるのは【W:ウィザード】と【B:ブレイド】くらいだな)

 

「雪兎、準備は大丈夫?」

 

「ああ、シャルの方こそ大丈夫か?」

 

「・・・・ちょっと不安だけど、皆が一緒だから」

 

「そうか、俺達は万が一のオマケだけど、何かあってもお前は俺が守るよ」

 

「う、うん・・・・」

 

(一応、模擬戦で箒の慢心は折っといたが、やっぱりまだ安心はできないな・・・・原作通りならこの出撃で一夏は)

 

原作では一夏と箒の二人で行う作戦は初撃を外してしまう。更に封鎖区域に船舶が侵入し、それを放置して作戦を優先しろという箒に一夏が反発。それで隙を作ってしまった箒を庇って一夏は撃墜されてしまう。そして、立ち直った箒ら五人の専用機持ちが無断で出撃しピンチになるも二次移行した白式で駆けつけた一夏と単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)・絢爛舞踏を目覚めさせた箒との連携で福音を撃破する。そういう流れだったはず。

 

(俺というイレギュラーがいる以上、何かしらの変化があるかもしれない。それは覚悟してはいたんだがな)

 

「雪兎?」

 

「何でもない。そろそろ作戦開始時間だ。行こう」

 

「うん」

 

雪兎は不安が残るのを隠しつつ、集合場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は十一時半。砂浜に出撃する専用機持ち五人が揃う。

 

「来い、白式」

 

「行くぞ、紅椿」

 

「行きますわよ、ブルー・ティアーズ」

 

「来て、ラファール・リヴァイヴ」

 

「行くぜ、雪華【J:イェーガー】」

 

そして、それぞれが専用機を展開し、五機のISが並ぶ。

 

「じゃあ、箒。よろしく頼む」

 

「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ」

 

そう言う箒だが、その表情はどこか嬉しそうで雪兎の不安が増す。

 

「セシリア、シャル。俺達はあくまで補佐だが、ファーストアタックが失敗したらすぐに二人の援護に入る」

 

「ええ、お任せください」

 

「僕も頑張るよ」

 

「心配は要らない。私と一夏が力を合わせればできないことなどない。そうだろう?」

 

「ああ、そうだな。でも箒、先生達も言ってたけどこれは訓練じゃないんだ。実戦では何が起きるかわからない。十分に注意してーー」

 

「無論、わかっているさ。ふふ、どうした?怖いのか?」

 

やはり箒は浮かれ過ぎているような気がしてならない。

 

「そうじゃねえって。あのな、箒ーー」

 

「ははっ、心配するな。お前はちゃんと私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいればいいさ」

 

今の箒には一夏の言葉すら満足に届いていない。これには流石の一夏も不安を隠せないようだ。

 

(箒のやつ・・・・これは本当にヤバそうだ)

 

原作やアニメで見た時もそうだったが、一夏も箒も一歩間違えば死んでいた可能性すらあった。だから雪兎は何があってもいいようにやれることはやったつもりだ。雪兎にとって一夏と箒はかけがえのない幼馴染なのだ。

 

『天野』

 

そこで雪兎にプライベートチャンネルで千冬が声をかけてきた。

 

『先程、織斑にも言ったがーー』

 

「箒、ですね?」

 

『ああ、万が一の時は頼む。だが、お前も私の生徒だ。無理はするな』

 

「はい。わかりました」

 

通信を終えると、雪兎達は一夏達に続いて出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「束さん、本当に自重せずに作ったなぁ、紅椿」

 

「瞬時加速とほぼ同じスピードですわね・・・・一夏さんが乗っているというにも関わらず」

 

「篠ノ之博士が提案したのも納得だよ。あのスピードなら福音に接触できる」

 

一夏達の後方を追う雪兎達は改めて紅椿のデタラメさを実感していた。

 

「暫時衛星リンクより情報照合完了。目標と白式の位置確認。そろそろ接触するぞ」

 

そこで紅椿は更に加速し、白式も零落白夜を起動。そこから瞬時加速で福音へと斬りかかる。しかし、福音は最高速のまま反転し、それをかわし迎撃モードに移行した。

 

「ファーストアタック失敗!これより援護行動に移る!行くぞ、二人共!」

 

「わかりましたわ」

 

「うん、わかった!」

 

迎撃モードになったことで移動速度が落ちた為、雪兎達はすぐさま一夏達の元へと向かう。だが、零落白夜の稼働時間を気にして大振りになってしまった一夏の隙を福音は見逃さなかった。

 

「しまっーー」

 

福音が持つ多方向推進装置の翼は砲口も兼ねた装備であり、そこから幾重もの羽のような光の弾丸が白式に撃ち出された。

 

「ぐぅっ!?」

 

その弾丸は接触と同時に爆ぜてダメージを与える。何とか致命傷は避けたものの、その圧倒的な連射速度で放たれるそれに一夏と箒は回避しながら二面攻撃を仕掛けるがかすりもしない。

 

「一夏っ!」

 

そこでようやく雪兎達が到着し、ビットを機動力強化に回した代わりに装備された大型BTレーザーライフル【スターダスト・シューター】と雪兎の背中に乗るシャルロットのアサルトカノンが福音の攻撃を中断させた。

 

「遅くなった!これより援護に入る」

 

「助かる!」

 

そこからは雪兎達後衛組が射撃で福音を牽制し、その隙を突いて一夏と箒が攻撃を仕掛けるが、流石は軍用ISというべきか。福音は多方向推進装置と弾幕のような光弾で一夏達を寄せ付けない。

 

(こいつ、やっぱり暴走と言う割には行動が的確過ぎる。ということは認識を操作されて周り全部が敵に見えてるのか?だとしたらこいつの行動もあらかた理解できる)

 

雪兎がそんなことを考えている間に箒が一夏の攻撃をする隙を作るが、直後、それは起きてしまった。何と一夏は攻撃のチャンスを棒にして封鎖しているはずの区域に入り込んでいた密漁船と思われる船に向かって放たれた福音の攻撃を切り払ったのだ。

 

「何をしている!?せっかくのチャンスにーー」

 

「船がいるんだ!海上は先生達が封鎖したはずなのに・・・・ああくそっ、密漁船か!」

 

更にエネルギーが尽きたのか零落白夜の刃が消え、展開していた装甲が閉じてしまう。

 

「馬鹿者!犯罪者などを庇って・・・・。そんなやつらはーー!」

 

「箒!!」

 

「ッーー!?」

 

「箒、そんなーーそんな寂しいことは言うな。言うなよ。力を手にしたら、弱いヤツのことが見えなくなるなんて・・・・どうしたんだよ、箒。らしくない。全然らしくないぜ」

 

「わ、私、は・・・・」

 

一夏のその言葉で箒は自分が何を言っていたのか気付き、動揺して動きを止めてしまう。それは実戦では致命的な隙である。

 

「箒さん!」

 

その隙を見逃さなかった福音は先程から脅威となっていた箒へとその光の弾丸による雨を放つ。

 

「箒ーっ!!」

 

それを一夏は自身のシールドエネルギーが尽きかけているのにも関わらず箒を庇う。

 

「一夏っ!!」

 

シールドエネルギーの不足により絶対防御が十分に機能せず、一夏は大ダメージを負い撃墜されてしまう。しかし、そこで福音の攻撃は止まない。

 

「二人はやらせないよ!」

 

そこにリヴァイヴ専用の防御パッケージ【ガーデン・カーテン】に装備された実体とエネルギーの二つのシールドで構成された複合防御壁でシャルロットが福音と二人の間に割って入る。

 

「くっ・・・・」

 

しかし、その防御も福音の波状攻撃には耐えきれず次第にリヴァイヴはボロボロになっていく。

 

「もう少し、もう少しだけ耐えて!リヴァイヴ」

 

「シャルっ!」

 

そこで雪兎はバスターライフルを展開し福音の注意を引く。

 

「くそっ!作戦は失敗だ!セシリアは箒と一夏を回収してシャルを連れて離脱してくれ!」

 

「ゆ、雪兎は!?」

 

「俺はお前らの撤退の時間を稼ぐ。どうやら福音さんは俺達をただじゃ逃がしてくれねぇらしい」

 

「でも!」

 

「悪い、俺一人なら後からでも離脱できるが、皆がいちゃ難しいんだ。それにシャル、お前のリヴァイヴももう限界だろう?」

 

「雪兎・・・・」

 

「それに約束したろ?お前は俺が守るって」

 

「シャルロットさん、ここは雪兎さんに任せましょう。今のわたくし達では足手まといにしかなりませんわ」

 

「・・・・わかった」

 

セシリアの言葉もあって、シャルロットも何とか撤退に賛同する。

 

「でも、絶対に戻ってきてよ!」

 

「ああ、俺が簡単にやられるかよ」

 

そう言うと雪兎は福音の注意を引くべく福音へと向かっていき、セシリアとシャルロットは箒と箒に抱かれた一夏を連れて戦域から離脱していった。

 

「さてと、もうしばらくお相手願おうか、銀の福音!」

 

そして、雪兎の孤独な戦いの幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、何とか撤退を終えた一同は千冬から雪兎の雪華の反応がロストしたことを伝えられた。




という訳で雪兎が行方不明に。
また、原作と違いシャルロットのリヴァイヴまでも行動不能に・・・・

次回予告

一夏は重傷で意識不明。雪兎も生死不明の行方不明という最悪の結果に終わった第一次福音迎撃作戦。
一度に二人の幼馴染がやられ箒は失意のドン底へと叩き落とされる。
一方、シャルロットは雪兎の生存を信じ、他のメンバーと共に再度福音へと挑むことを決意する。

次回

「少女達だけの戦場 兎、行方不明になる!?」


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23話 少女達だけの戦場 兎、行方不明になる!?

一夏は重傷、雪兎が行方不明に・・・・
残された少女達は再起を果たし福音を討つことができるのか?

珍しく雪兎が出ません。


「あの馬鹿者が・・・・」

 

千冬は指令室となっている宴会場で静かに呟く。一夏が撃墜され、その後、雪兎により速やかに撤退が決断された。しかし、一夏達の撤退を支援するために雪兎は一人殿として福音の元に残った。結果的に一夏達は撤退に成功するも一夏は重傷、そして殿として残った雪兎の反応はロストしてしまった。

 

「ちーちゃん、ゆーくんはきっと生きてるよ」

 

「当たり前だ。あいつはお前の弟で、私の弟弟子で、あのバカの弟子だ。そんな簡単にくたばるものか」

 

そう口にする千冬からも心配はすれど雪兎を信頼しているのが感じられる。

 

「問題はあいつらの方か・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏・・・・」

 

重傷を負い未だに目を覚まさない一夏の傍で箒は己の至らなさに、雪兎達がいなければ自分も同じようになっていたという可能性に自分を責めていた。

 

「私は・・・・一夏、雪兎、お前達に救われる価値があったのだろうか・・・・」

 

しかも、その雪兎は生死・行方ともに不明なのだ。セシリア達に連れられ撤退した際にそれを聞かされ箒の心は失意のドン底に叩き落とされた。紅椿を手にして舞い上がっていたばかりに幼馴染二人がこうなってしまった。そう箒が考えるのもある意味自然なことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎・・・・絶対に戻るって約束したじゃないか」

 

もう一人、雪兎のロストで落ち込む少女がいた。シャルロットである。しかし、シャルロットには疑問に思っていることがあった。

 

(雪兎はもしかしてこうなることを知ってたんじゃ・・・・)

 

そう思った理由は作戦会議や出撃前にやたら一夏達が失敗することを懸念していたこと。密漁船がいたことにもあまり驚いていなかったこと。一夏が撃墜されたというのに冷静に撤退の指示を出していたこと。そして・・・・

 

「これを渡したのもこうなるってわかってたからなの?」

 

シャルロットの手にある白い剣十字のペンダント。雪兎がシャルロットに渡していたパーソナライズをしていないリヴァイヴを装甲切換(アーマー・チェンジ)対応機として改修したラファール・リヴァイヴ・カスタムEVOLである。本来は今日の稼働試験でシャルロットが装甲切換を使えるか確かめるために貸し出されていたものだったが、シャルロットには雪兎がこの事態を見越していたのではないか?と考えるには十分なものだった。

 

「僕の時も雪兎は色々知ってた。なら、雪兎は今までも色々知っていて、それに対して対策をしていた?」

 

そう考えると色々と納得がいく。雪兎が行っていた特訓も全体のレベルアップを図り、今回のような事態にも対処できる力を付けさせるつもりだったと推測できる。このことに気付いているのはおそらくシャルロットただ一人だろう。

 

「帰ってきたら聞かなきゃいけないこと増えちゃったなぁ」

 

ならば雪兎がそう簡単にやられる訳がない。シャルロットは最も信頼する想い人から託された剣十字を握りしめ、涙を拭って立ち上がる。

 

「僕が、僕達がやるんだ。それで雪兎を探すんだ」

 

「こちらは問題なかったようですわね」

 

「セシリア?」

 

部屋を出るとそこにはセシリアの姿があった。

 

「シャルロットさん、わたくし達はもう一度福音の攻略に挑むつもりです。シャルロットさんはどうなさいますか?」

 

「愚問だよ、セシリア。僕もやる。このまま負けたままなんて雪兎のパートナーを名乗れなくなっちゃうよ。それでメンバーは?」

 

「ええ、鈴さんやラウラさん、それに簪さんも参加するそうですわ。箒さんは今、鈴さんが説得に向かってらっしゃいますわ」

 

全員雪兎が鍛えてきたメンバーだ。ならば不可能ではないはずだ。

 

「見せて差し上げましょう。わたくし達の力を」

 

「うん。僕達がやるんだ」

 

こうして少女達だけによる第二次福音迎撃作戦が教師達には黙って計画されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箒の説得を終え、ラウラが黒兎隊が保有する衛星で福音の居場所を突き止めた。どうやら雪兎との交戦の後にその場にとどまり続けているらしい。

 

「待ってなさいよ。一夏と雪兎の借りは私が返してやるわ」

 

機能増幅パッケージ【崩山】を装備した甲龍を纏う鈴。

 

「今度は負けませんわ」

 

前回同様【ストライク・ガンナー】を装備したブルー・ティアーズに乗り込むセシリア。

 

「私も全力でいく」

 

打鉄弐式で気合を入れる簪。

 

「見せてやろう、私達の実力を」

 

砲撃パッケージ【パンツァー・カノニーア】を追加したシュヴァルツェア・レーゲンを展開するラウラ。

 

「もう私は間違えない!」

 

二度と過ちは犯さないと誓い紅椿を出す箒。

 

「雪兎、力を貸して」

 

修復中のカスタムⅡの代わりに雪兎から渡された白いカスタムEVOLを使用するシャルロット。

 

「さあ、行こう!」

 

少女達は自ら戦場へと向かう。少女達だけの戦場へと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、この反応は!?」

 

指令室で福音の様子を監視していた真耶は福音へと近付く六つの反応を感知した。

 

「あの馬鹿どもが・・・・」

 

「あちゃー、待機命令無視して行っちゃったかぁ」

 

無断出撃で福音の元へと向かう少女達に千冬や雪菜は溜め息をつきつつも、彼女らが通信を遮断し止まるつもりがないとわかるととりあえず事態の静観を決めた。

 

「帰ってきたら覚悟しておけよ、小娘ども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上二◯◯メートルの位置で静止していた福音は何かを察知し顔を上げると、そこに超音速で飛来した砲弾が頭部に直撃する。

 

「初弾命中。続けて砲撃を行う」

 

左右に装備された八◯口径レールガン【ブリッツ】による連続砲撃が放たれ福音を襲う。ただ、福音もそれを黙って受ける訳がなく、翼のエネルギー弾で半数を落としながらラウラに接近するが。

 

「セシリア!」

 

それをステルスモードになっていたセシリアが【スターダスト・シューター】で迎撃する。

 

「簪さん!シャルロットさん!」

 

「任せて!いけ【山嵐】!」

 

「いくよ【G:ガンナー】!」

 

更にそれを打鉄弐式の山嵐とカスタムEVOLのG装備による面制圧射撃が襲い、福音はラウラへの接近を諦め全方位にエネルギー弾を放った後、離脱を試みるが。

 

「させるかぁ!」

 

海中から接近していた紅椿と甲龍が現れ砲口を倍増し、熱殻拡散衝撃砲となった龍咆が赤い炎のような弾丸を吐き出す。しかし、福音を討つには足らず、福音は再びエネルギー弾の弾幕を展開する。

 

「箒!こっちに!【F:フォートレス】!」

 

展開装甲のエネルギー消費を抑えるべく機能を限定した紅椿をカスタムEVOL用に開発された防御パック【F:フォートレス】に装甲切換し、備え付けられた大型シールドビット【アイギス】で守る。その防御力は【ガーデン・カーテン】のシールドを遥かに凌駕しており、要塞(フォートレス)の名に違わぬ堅牢さを発揮した。

 

「これはお返しだよ!」

 

そしてエネルギー弾の返礼として腰のサブアームで固定した一二◯口径大型バズーカ【グランドスラム】による砲撃を放つ。

 

「こっちも食らえ【春雷】」

 

簪も春雷の広域砲撃モードで反撃する。

 

「動きさえ止まれば!」

 

そこに鈴が双天牙月で切り込み、エネルギー弾のダメージと引き換えに福音の片翼を奪う。

 

「はっ、はっ・・・・!どうよーーぐっ」

 

片翼となった福音だが、すぐに態勢を立て直し鈴の左腕に回し蹴りを叩き込む。脚部のスラスターによる加速された蹴りは左腕のアーマーを砕き、鈴を海へと墜とす。

 

「鈴!おのれっ!」

 

激昂した箒は雨月と空裂で福音に斬りかかるが、福音は両腕でそれを掴み腕を広げ、残った片翼の砲口を箒に向けエネルギーチャージを始める。

 

「させるか!」

 

箒も紅椿を縦に一回転させ脚の展開装甲から刃を出し、踵落としの要領で福音を海に叩き落とした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「無事か!?」

 

珍しく慌てたラウラが駆けつけ、乱れた呼吸の箒に訊ねる。

 

「私は・・・・大丈夫だ。それより福音はーー」

 

誰もが勝利を確信するも、その瞬間、海面が強烈な光と共に吹き飛び、その中心に青い稲妻を纏った福音の姿があった。

 

「!?まずい!これはーー第二形態移行(セカンド・シフト)だ!」

 

その姿は斬られた片翼の代わりに光の翼を生やし、腕や脚からも小さな光の翼を生やした光の天使を彷彿させる姿だった。




福音が第二形態移行しました。
そしてカスタムEVOL用のパック【F:フォートレス】登場です。圧倒的防御力と砲撃力を持つ名の通り要塞地味たパックです。
さあ、福音戦も後半戦へ!一夏と雪兎は少女達のピンチに間に合うのか!?

次回予告

第二形態となった福音の猛攻に次々とやられていく少女達。そこに駆けつけたのは二機の白きISだった。目覚めた一夏と帰還した雪兎。そして二人の新たなる力が覚醒する!

次回

「白き騎士と白銀の翼 兎、覚醒する!?」


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24話 白き騎士と白銀の翼 兎、覚醒する!?

一夏と雪兎のパワーアップ回です。
福音戦も後半戦、少女達のピンチに駆けつける二人は福音を倒せるのか!?


第二形態となった福音は先程までとは違うプレッシャーを放っており、各ISは操縦者へ警鐘を鳴らす。しかし、福音は速く、ラウラが足を掴まれる。

 

「なにっ!?」

 

「ラウラ!?」

 

シャルロットがすぐに助けようとF装備の近接武装である先端に高周波ブレードの刃と砲口をもつ槍【ハルバートカノン】で突撃するが、福音は空いている片手でそれを受け止める。

 

「よせ!逃げろ!こいつはーー」

 

そこでラウラは福音の光の翼に包まれエネルギー弾の零距離射撃を食らい、ズタズタにされ海へと落下する。

 

「ラウラ!よくもラウラをっ!!」

 

怒ったシャルロットもハルバートカノンから砲撃を繰り出すが、福音も腕と脚の翼からエネルギー弾を放ち相討ちとなってシャルロットも吹き飛ばされる。

 

「あの性能・・・・いくら軍用機と言えど異常ですわ!」

 

セシリアも一度距離を取って狙撃に回ろうとするが、両手足の翼を用いた瞬時加速で一気に距離を詰められ回し蹴りで海面に叩き飛ばされた。

 

「セシリア!」

 

簪は再び山嵐による広域攻撃を行おうとするが、またしても瞬時加速で接近した福音の光の翼で砲撃され墜とされてしまう。

 

「私の仲間を・・・・よくも!」

 

箒は再び福音に斬りかかり、展開装甲も使って連撃を浴びせるも途中で展開装甲の多用でエネルギー切れを起こしてしまいラウラと同様に光の翼による抱擁を受けてしまった。

 

(すまない・・・・一夏、雪兎・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、箒達が福音と交戦を始めた頃。

 

「うぅ・・・・」

 

雪兎は福音との交戦に敗れ、近くの小島に漂着していた。

 

「こ、ここは・・・・くっ、近くの小島か。運がいいやら悪いやら」

 

雪兎のダメージも酷いものだったが、雪華の負ったダメージはそれ以上に深刻なものだった。

 

「くそっ、時間的に箒達が福音とやってる頃だってのに俺は動けないのか!?」

 

すると、雪華が突如輝き出す。

 

「これって・・・・」

 

『貴方は力を求めるのですか?』

 

雪華から声が聞こえた。

 

「雪、華・・・・なのか?」

 

『貴方は何のために力を求めるのですか?』

 

「俺は、守りたいんだ」

 

『何をですか?』

 

「世界中の全部なんて不相応なことは考えちゃいねぇよ・・・・でも、俺の手の届く範囲を、イレギュラーであるはずの俺を、天野雪兎という存在を認めてくれたあいつらを守って一緒に戦いたいんだ」

 

『マスターはイレギュラーなんかじゃありませんよ?』

 

「何?」

 

『マスターはちゃんとこの世界のここに存在しています。彼ら同様に私も貴方を認めているのですから』

 

「雪華・・・・」

 

突然の雪華の言葉に雪兎は思わず涙をこぼす。

 

『マスター、貴方はいくのですね?』

 

「・・・・ああ、俺は戻らないといけない。あいつらだけじゃまだまだ頼りねぇからな。力を貸してくれ、雪華」

 

『はい!行きましょう、マスター!』

 

そして光が消えると雪華の姿が少し変化していた。

 

「これって・・・・第二形態移行(セカンド・シフト)?」

 

そう、雪華もまた第二形態へと至っていた。第二形態となった雪華はパックの装着箇所等は変化していないものの、装甲の一部が多層式になっており、スペックも大幅に上昇しており、更に単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)まで発現していた。

 

「単一仕様能力【極限化(エクシードモード)】だと?またピーキーな能力発現しやがって・・・・」

 

その能力はかなりとんでもないものだった。

 

「奥の手ってとこだな、こいつは。さてと、そろそろいくぜ、相棒!」

 

一夏と違い怪我は治ってはいないが、雪兎は最低限の応急処置を済ませると新しくなった雪華を纏い、福音の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎が福音の元へ辿り着くと、既にこちらも第二形態へと至った白式・雪羅を纏った一夏が福音と対峙していた。

 

「グッドタイミングってやつか、これは?」

 

「ゆ、雪兎!?」

 

一夏に続いて雪兎まで現れ、箒は涙を堪え切れなくなっていた。

 

「お前も第二形態移行したんだな?」

 

「ああ、お前も随分とピーキーそうにバージョンアップしてるじゃねぇか」

 

すると、一夏は箒の方を見てから言う。

 

「雪兎、少し任せていいか?」

 

「なるほど、そういうことか。少しだけだぞ?お前と違って俺はあんましダメージ回復してねぇんだ」

 

「悪い、すぐに戻る!」

 

そして一夏は箒の元へと向かった。

 

「よぉ、福音さんよ。さっきの借り、返しにきたぜ」

 

先程は一夏達が撤退後【W:ウィザード】で交戦し撃墜されたため、雪兎は再び【J:イェーガー】を展開していた。

 

「第二形態になったのはお前だけじゃないってのを教えやるよ!」

 

瞬時加速で迫る福音を雪兎は【J:イェーガー】の機動力だけで回避すると二つになった砲口(・・・・・・・・)を持つバスターライフルを福音の背中に向ける。

 

「こいつは前とは一味違うぜ?」

 

双発となったバスターライフル、バスターライフル改が火を噴き、福音を吹き飛ばす。

 

「やっぱ改ともなると威力がちげーわ」

 

何とか光の翼で防御したものの、福音はその威力に雪兎の警戒レベルを上げる。

 

「俺を警戒すんのはいいんだけどよ・・・・後ろも気にした方がいいぜ?」

 

そんな福音の背後から一夏が雪片弐型を片手に斬りかかる。間一髪のところで福音は回避するが、続けて左腕に追加された雪羅のクローモードで切り裂き福音にダメージを与える。

 

「待たせたな!」

 

「ほんとにピーキーそうだな、それ」

 

「荷電粒子砲に零落白夜のシールドとクローの複合兵装【雪羅】だ」

 

「ピーキー過ぎる・・・・」

 

「そういうお前のそれ、砲口が二つになってないか?」

 

「砲口だけじゃなくて分離して二丁にもなるぞ」

 

そう言うと雪兎はバスターライフル改の下にある小型のバスターライフルを分離させ両手で構える。

 

「小型は連射が効いて、大型の方は今まで通りよ!」

 

一夏に説明しながら小型の連射で牽制しつつ、大型で福音にダメージを与える雪兎。

 

「こっちも忘れんなよ!」

 

ついでとばかりに一夏も荷電粒子砲を放つ。これには堪らず福音は再びエネルギー弾の掃射を開始する。

 

「もうそいつは食らわねぇ!」

 

だが、零落白夜のシールドを得た一夏にエネルギー弾が通用する訳もなく、掃射を防ぐと四基に増設し大型化したスラスターによって二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)が可能になった白式が福音に迫る。

 

「瞬時加速が使えんのは白式だけじゃねぇぞ!」

 

雪華の【J:イェーガー】もウイングバインダーが大型化しており、翼を広げた雪華も瞬時加速で福音の背後へと回り、腕部にマウントされたビームブレードを展開し、一夏と共に斬りかかるが、福音は光の翼を繭のように丸めて自身を包む。

 

「雪兎っ!」

 

「わかってる!」

 

その福音の行動に嫌な予感がした二人は攻撃を中断し距離を取る。すると福音は翼を回転しながら開き、全方位にエネルギー弾を撒き散らす。その範囲内には回復しきっていない鈴達の姿があり、一夏はそれを庇おうとするが。

 

「それは僕の役目だよ!」

 

態勢を立て直したシャルロットがアイギスを展開し、それを防ぐ。

 

「一夏、こっちは僕が何とかするから!雪兎と一緒に福音を!」

 

「わかった!」

 

「雪兎にはこれが終わったら色々聞きたいことがあるから!」

 

「話せる範囲なら答えてやるよ!」

 

「今度こそ約束だからね!」

 

「ああ、もう約束は破らねぇよ!!」

 

鈴達の心配が要らなくなり、一夏と雪兎は再び福音へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一夏が駆けつけてきてくれた・・・・雪兎も戻ってきてくれた)

 

それだけで箒は嬉しさを飛び越え、胸が熱くなるのを感じた。そして、戦う二人を、いや、一夏を見て箒は何より強く願った。

 

(私は、共に戦いたい。あの背中を守りたい!)

 

その願いに呼応するかのように紅椿の展開装甲から黄金の粒子が溢れ出す。

 

「これは・・・・!?」

 

それは単一仕様能力【絢爛舞踏】展開装甲を通じエネルギーバイパスを形成、溢れ出すように回復したシールドエネルギーを接触した機体にも分け与えることのできるというとんでもない能力だった。

 

「まだ、戦えるのだな?紅椿・・・・ならば、行くぞ!紅椿!」

 

紅き椿は再び飛翔する。未だ戦っている幼馴染の元へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、きりがない」

 

一夏は何度も福音の光の翼を零落白夜で切り裂いているが、二撃目は毎度かわされ、斬られた翼はすぐに再構築されてしまう。雪兎も同様で、バスターライフル改で翼を撃ち貫くもすぐに再構築されてしまうため、二人のISのシールドエネルギーは既に二割を切っており、稼働時間も残り少なくなっていた。

 

(ちっ、これじゃ奥の手も使えねぇ)

 

福音のエネルギー残量がわからず、このままではエネルギー切れになってしまうと、二人が焦燥にかられる中、金色の光が二人に近付いてきた。

 

「一夏!雪兎!」

 

「箒!?」

 

それは戦線に復帰した箒だった。

 

「ダメージはいいのか?」

 

「私は大丈夫だ。それより二人共、これを受け取れ!」

 

そう言って二人のISに紅椿が触れると凄い勢いでシールドエネルギーが回復していく。

 

「箒、それがお前の単一仕様能力か?」

 

「ああ、これが私と紅椿の力だ」

 

「これなら俺も奥の手を出せる!」

 

「奥の手?まさかお前も!?」

 

「そのまさかだ。一夏、俺が隙を作る。だから最後はお前が決めろ!いくぜ、相棒!【極限化】起動!!」

 

その瞬間、雪華の装甲が展開していき蒼い粒子を纏う。

 

「それは、展開装甲!?」

 

「フルドライヴ!」

 

そして、今までとは比べものにならない速度で福音に迫るとすれ違い様にビームブレードで切り裂き、それを繰り返す。その姿はあまりにも速く、粒子を放出しながら行うせいか残像すら見え、また再構築が間に合わず福音は徐々に光の翼を失っていく。

 

「一夏っ!」

 

「おおおおおっ!!」

 

光の翼を完全に失った直後、一夏は最大加速で零落白夜の刃を福音の腹部に突き刺しシールドエネルギーを削り切る。エネルギーを失いISのアーマーが消失し、操縦者と思われる女性がISスーツ姿で残され、それを極限化を解いた雪兎が無事に受け止め、箒にその女性を預ける。

 

「終わった、のか?」

 

「ああ、俺達の勝ちだ」

 

長い戦いが終わった。

 

「雪兎っ!」

 

すると、雪兎の元にシャルロットが駆けつける。

 

「シャル、か・・・・」

 

「心配したんだからねっ!って、雪兎?」

 

そこでシャルロットは雪兎の様子がおかしいことに気付く。

 

「す、まん・・・・ちょっ、と、無理、しす、ぎた、みたい、だわ・・・・後、は、任せ、た」

 

極限化の超加速で応急処置をしていた傷が開いたのか、雪兎は気を失い雪華も消失してしまう。

 

「ゆ、雪兎!?」

 

すぐさまシャルロットがそれを受け止めるが、雪兎の怪我はとてもじゃないが戦闘などしていいものではなかった。

 

「は、速く戻らないと!!」

 

こうして福音の暴走事件は幕を閉じた。旅館に戻った一同を待っていたのは救護チームと怒りのオーラを纏った千冬であり、大怪我をしている雪兎を除くメンバー全員はそのお説教と学園に帰ってからの懲罰用トレーニングと反省文というお決まりの罰だった。




福音戦終了です。

雪兎の雪華が発現した【極限化】とは装甲を展開し、機体性能を1,5倍にする能力です。しかし、発動中はエネルギー消費も1,5倍になるのでほんとに奥の手な能力です。また、装甲を展開した時に纏い放出する粒子の色は各パックの装甲の色と同じ色になります。

次回予告

福音暴走事件も終わり一件落着かと思えば雪兎は怪我のため病室送りに。そして病室を訪れたシャルロットに訊ねられ雪兎はその秘密の一端を語る。

次回

「語られる秘密と告白 兎、暴露する」


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25話 語られる秘密と告白 兎、暴露する

今回で四章も閉幕です。
雪兎はどこまで語るのか?そして二人の関係は?

やっとアニメ一期分終わる・・・・


「・・・・知らない天井だな」

 

目覚めて早々元の台詞とは少し違うが転生者がよく使うテンプレの台詞を口にする雪兎。やはりこの手の場面になれば言ってみたい台詞なのだろう。

 

「ここは病室?ってことはあの後すぐに移送されたのか。それはさておき・・・・」

 

あれだけの無茶をやらかしたのだ。病室送りも妥当と言ったところだろう。そこで雪兎はあることに気付いた。

 

「何でシャルがここにいるんだ?」

 

見れば眠っていた雪兎の足元の辺りにもたれ掛かるようにシャルロットが眠っていたのだ。

 

「・・・・ん、あれ?僕いつの間に・・・・」

 

「おはよう、シャル」

 

「おはよう、雪兎・・・・えっ?雪兎?」

 

「おう、心配かけたな」

 

目を覚ましたシャルロットは雪兎が起きているのを知ると目に涙を浮かべながら雪兎に飛びついた。

 

「雪兎ーっ!」

 

「うごっ!?」

 

「雪兎!夢じゃないよね!?ほんとに雪兎だよね!?」

 

「シャ、シャル・・・・苦し、い・・・・それ、に、傷に、響く・・・・」

 

雪兎がそう言いながら懸命にタップするとシャルロットは慌てて雪兎を解放した。

 

「ご、ごめん!あれから3日も寝たきりだったから、つい・・・・」

 

「3日か、それは心配かけたな」

 

あれから雪兎は3日も寝ていたらしい。それは確かにシャルロットでなくとも心配になるだろう。

 

「そ、そうだよ!僕、物凄く心配したんだからねっ!」

 

それはもう、毎日千冬の懲罰用トレーニングメニューをこなした後に病室に来る程だ。ちなみに雪兎への罰は目を覚ましてから一週間の病室軟禁である。

 

「すまん、これからはこういうのはなるべく控えるよ」

 

「なるべく?控える?」

 

「あっ、いえ、ないよう努力します!」

 

そう言わせるだけの何かがその時のシャルロットにはあった。

 

「まったく、これは僕がしっかり見張ってないと安心できないよ」

 

「信用ねぇな、俺・・・・それはそうと、何か聞きたいことがあったんじゃないのか?」

 

そこで雪兎は福音戦の時にシャルロットが言っていたことを思い出す。

 

「うん・・・・雪兎、雪兎は今回のこと、こうなるって知ってたよね?」

 

「気付いたか」

 

「うん、僕の時も雪兎は情報源は明かせないって言ってたけど、僕のこと詳しく知ってた。だから気が付いたんだよ」

 

「これで二人目だな、気付かれたの」

 

実は雪兎は何れ誰かにバレるのを覚悟していた。その上で気付かれた以上はシャルロットにも事情を話すことを決めた。

 

「他にも気が付いた人がいたの!?」

 

てっきり自分だけだと思っていたシャルロットは雪兎のその言葉に酷く動揺していた。

 

「束さんだよ。まあ、「聞いちゃったらつまらないから聞かないけど」とか言って詳しくは聞いてこなかったがな」

 

「な、なるほど・・・・」

 

束であれば納得だと、シャルロットは落ち着きを取り戻す。

 

「聞きたいって言うんなら話すが、結構無茶苦茶な話だから信じるか信じないかはシャルに任すわ」

 

「う、うん・・・・」

 

そしてシャルロットは予想もしていなかった雪兎の秘密を知る。

 

「説明が難しいから簡単に結論だけ言うとだな。俺、実は転生者ってやつなんだわ」

 

「転生者?それってよく創作とかであるあの転生?」

 

「そっ、俺は一回別の世界で死んで、こっちの世界で天野雪兎として生まれ変わったってことだ」

 

「そ、それと今回や僕のこととどういう関係が?」

 

転生のことはとりあえず置いておいて肝心な雪兎がそれらのことを知っていた件の説明がまだだ。

 

「こういうのはちょっとシャル達には申し訳ないんだが・・・・」

 

そう前置きして雪兎が口にしたのは転生よりもとんでもないことだった。

 

「前の世界にな、この世界を題材にした小説(ライトノベル)があったんだよ。【IS〈インフィニット・ストラトス〉】ってタイトルの小説がな」

 

「えっ?」

 

これにはシャルロットも驚いた。無理もない。まさか自分たちの世界が小説の世界だった、などと言われてはいそうですかと言える訳がないのだ。

 

「その舞台がIS学園で主人公が一夏だった。俺はそれを読んでたからある程度のことは知ってたんだ。って言っても俺というイレギュラーが増えて細かいとこは大分変わってるけどな」

 

「それが・・・・雪兎の秘密?」

 

「ああ、これが俺の秘密だ。話したのはシャルが初めてだがな」

 

あまりの内容にシャルロットが絶句していると雪兎は少し寂しそうな顔をする。

 

「やっぱ信じられないよな?こんな話。それに、俺は結局一夏を見殺しにしかけたんだ。そんな俺が仲間面とかおかしいよな」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

そんな雪兎を見てシャルロットは何故か物凄く腹が立った。

 

「そんなことない!雪兎は知ってたから皆が立ち向かえれるように皆を鍛えてたんでしょ!色々と対策を練ってたんでしょ!」

 

「シャル・・・・」

 

「僕のことだって本当は別のやり方があったんだろうけど、雪兎は僕のこと助けてくれたじゃないかっ!」

 

雪兎は驚いた。シャルロットが今にも泣きそうな顔で必死にそう言ってくれたからだ。

 

「あんまり僕を見くびらないで欲しいよ、雪兎。僕はそんなことで雪兎を嫌いになんかなれないよ・・・・僕はそんな雪兎も引っ括めてもう大好きなんだからっ!!」

 

そして、さらっとシャルロットは更なる爆弾を投下した。

 

「えっ?」

 

好意を寄せられていたのは知っていたが、まさかここで告白されるとは思ってもみなかった。むしろ、雪兎は先程の話で嫌われるとすら思っていたのだが、恋する乙女にそんな細かいことは関係なかったのだ。

 

「雪兎は僕のこと嫌い?」

 

その聞き方は狡いと雪兎は思った。こんな聞き方をされて嫌いだと言える訳がない。

 

「あー、もう降参だ、シャル。だからそんな捨てられた仔犬みたいな顔はやめてくれ」

 

「・・・・まだ雪兎の返事聞いてない」

 

今日のシャルロットはいつになく積極的だった。

 

「好きだよ。俺も・・・・」

 

雪兎は観念した。この娘にはおそらく一生、いや生まれ変わっても勝てないな、と。

 

「シャル、いや、シャルロット。こんな俺と付き合ってくれるか?」

 

「うんっ!」

 

その時のシャルロットの表情は今までで一番輝いて見えた。

 

「覚悟してよね、雪兎。僕は結構独占欲強いし甘えん坊でしつこいよ?」

 

「問題ねぇよ。シャルこそ覚悟しとけよ。俺は恋愛経験なんざねぇから加減できねぇからな」

 

こうして二人はとうとう付き合うこととなったのだった。




とうとう二人がくっつきました。
結局、ほとんどバラしちゃいましたよ、雪兎君。
なのにどうしてこうなった?ほぼ勢いでこうなりました。

そんなこんなで四章は閉幕です。


次回予告

ついに付き合い始めた雪兎とシャルロット。そして訪れた夏休み。二人は改めてデートをすることに!?

次回

「二度目のデート!ミックスベリーは恋の味? 兎、シャルとデートする」

五章は夏休みネタだぁああああ!!


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五章「兎とシャルと夏休み」
26話 二度目のデート!ミックスベリーは恋の味? 兎、シャルとデートする


さて、夏休み編である五章開幕です。
まあ、色々と原作ネタからオリジナルネタまで色々ぶっこんでいく予定なのでよろしくお願いします。
さあ、ブラックコーヒーの準備は万全かい?

ISー兎協奏曲ー第5幕開演です。


一夏達の懲罰用トレーニングメニューも終わり、雪兎も一週間の病室軟禁を終え退院。休み前の中間テストも終わり、終業式を終え、IS学園は夏休みに入った。それぞれ国に帰省する生徒もいるため寮に残った生徒の数は割りと少ない。寮に残っている生徒はそれぞれ事情があって帰省していない生徒や日本でも家が遠く帰り難い生徒がほとんどだ。

 

そして、雪兎の周りはというと・・・・

箒は重要人物保護プログラムの関係で引っ越してばかりだったため帰省する意味がなく、セシリアやラウラは代表候補としての仕事があるため少ししたら帰省するそうだ。鈴は帰省することを止め寮に残るらしい。簪はまだ姉との関係がギクシャクしているため彼女も帰省せずに残るそうだ。本音は簪が残るため自分も残ると言っているらしい。聖は実家が遠いので帰省は延期だそうだ。一夏と雪兎は実家が近いため一度帰省するという。最後にシャルロットは実家のデュノア社が例の件で大慌てな状況なため帰省は任意で構わないと言われているため今は帰省せずに寮に残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の家に程近い雪兎の実家の前に妙にソワソワしたシャルロットの姿があった。

 

(今日は家にいるって言ってたよね?)

 

雪兎も既に両親が他界しているため雪菜と二人暮らしなのだが、雪菜が代表候補生だった関係上、雪兎の家も割りと立派だったりする。

 

(か、彼女だもんね。彼女が彼氏の家を訪ねるのは普通だよね?)

 

先日正式に雪兎と付き合うことになったシャルロット。そのことは雪兎が退院した翌日にはクラスはおろか学園中の噂になっていた。それで一夏ラバーズがかなり慌てた(特に幼馴染二人)のだが、その話は何れ機会がある時にしよう。

 

(で、でも、雪兎には今日いくって言ってないし・・・・)

 

迷惑にならないだろうか?などとシャルロットが考えて いると。

 

「ん?シャルか?どうしたんだ、こんなところで」

 

「えっ?」

 

後ろから雪兎の声がした。

 

「ゆ、雪兎?」

 

「よっ。来るなら連絡してくれれば良かったのに」

 

「ど、どど、どうして、雪兎が後ろに!?」

 

「いや、家に食材とかの備蓄無かったからちょっと買い出しにな。にしてもどうしたんだ?」

 

「う、うん、雪兎が帰省するって聞いて、雪兎の家ってどんなの何だろうって思って、そしたら雪兎に会いたくなっちゃって・・・・来ちゃった」

 

この娘。相変わらず男がやられたらドキッとする仕草が妙に様になっている気がする。雪兎もそんなこと言われて内心悶えていた。

 

「そ、そうか。上がってけよ。外、暑かったろ?」

 

「う、うん」

 

色々と悩んではいたが、雪兎の思わぬ登場でシャルロットは当初の目的である雪兎の家に上がることに成功した。

 

「その辺で適当に座っててくれ、今飲み物出すから」

 

「うん」

 

居間に通されたシャルロットは置いてあるソファーに腰かける。

 

「悪いな、麦茶くらいしか冷たいのなくて」

 

「ううん、気にしないで。僕がいきなり来ちゃったからなんだし」

 

「そういやシャルは帰省しなかったんだな?」

 

「うん、帰ってもお母さんのお墓参りぐらいしかすることなくてね。そっちは次の長期休みに行くつもり」

 

「そうか、その時は俺も一緒に行っていいか?シャルのお母さんにも挨拶したいし、何よりシャルの育った場所を見てみたい」

 

「うん!その時は一緒行こっ!」

 

そんな約束を交わし、その日は二人で雪兎の家で過ごした。なお、その際に雪兎が作った昼食を食べ、シャルロットが改めて料理の勉強をしようと決意したんだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日。二人はデートしていた。どうも駅前のデパートで秋物の服が出始めているらしく、先取りして買っておきたいと言うシャルロットに連れられる形ではあったが、雪兎もシャルロットと出かけるのは嫌いではなかったので問題はなかった。

 

「ごめんね、この前ラウラと服を買いに来たときはラウラのばっかり買っちゃって僕のはあまり買えなかったんだ」

 

「ラウラって、やっぱ私服とか全然持ってねぇの?」

 

「うん、パジャマすらもね・・・・」

 

「なるほど、俺が同室だからやってねぇけど、一夏が一人部屋だったら確実に潜り込んでるな。その格好で」

 

「そういう知識もやっぱりアレで?」

 

「まあな、二人が買い物行ったエピソードもあったからな」

 

秘密を暴露して以来、雪兎は時々こういう話をシャルロットにするようになった。それはシャルロットが雪兎が無茶しないように知識を共有したいと言い出し、大きな事件などは覚えている限りシャルロットに伝えてある。だが、日常的なエピソードはこういう時だけ口にしているのだ。

 

「一応、確認なんだが、@クルーズって店で昼食取った?」

 

「そこもお話になってるんだね・・・・って、ことはその後のことも」

 

「メイドと執事の衣装着てバイトして強盗撃退したことか?」

 

「やっぱり知ってたんだ・・・・」

 

これは結構シャルロットにとって苦い思い出だったので雪兎に知られていたのは少しショックだった。

 

「・・・・俺はメイド服のシャルを見て見たかった」

 

「えっ?」

 

「いや、あそこの制服ってクラシックタイプの正統派のメイド服だから結構好きでな」

 

「ミニスカメイドより?」

 

「あれは何というかメイドじゃない気がしてならないんだ」

 

雪兎の意外な好みが発覚した。

 

「それに、そんな衣装着たシャルを他の男に見せたくない」

 

「ゆ、雪兎・・・・」

 

そして、またしても雪兎の不意討ちが炸裂し、シャルロットは顔を真っ赤にする。

 

「そういやクレープは食ったのか?」

 

「クレープ?それは食べてないかな」

 

ここで細かな違いが出ていることがわかる。

 

「そうか、なら後で行くか」

 

「そのクレープ屋さんに何かあるの?」

 

「ああ、女子が好きそうなおまじないがな」

 

それ以上は雪兎は語らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

服の買い物を終え、二人は@クルーズとは別のカフェで昼食を取ることにした。@クルーズは以前のこともあってシャルロットとしては入り辛いらしい。

 

「ここのパスタ、結構美味しいね」

 

「そうだな、っと、シャル、顔にソースついてる」

 

「えっ?どこどこ?」

 

「じっとしてろ。とってやるから」

 

そう言うと雪兎はシャルロットの頬についていたソースを自分の指で拭い、それを自分で舐めとる。

 

「な、なな、な・・・・」

 

「あっ、すまん、つい」

 

「う、ううん!ありがとうございます!」

 

なんとも恋人っぽいやり取りにシャルロットはまた顔を真っ赤にする。

 

「・・・・ちょっと御手洗いに行ってくる」

 

それは雪兎もだったらしく、雪兎は恥ずかしさからか少し席を外す。

 

(いいなぁ、こういうの。恋人になったって実感がするよ)

 

付き合う前からそうではあったが、この二人。かなり甘々である。

 

「聞いた?城址公園のクレープ屋さんの話」

 

すると、シャルロット的には聞き逃せない話題を隣のテーブルの女性達が始めた。

 

「聞いた聞いた。そのクレープ屋さんでカップルでミックスベリーのクレープを食べると幸せになれるって話でしょ?」

 

「でも、いっつも売り切れらしいのよねぇ」

 

(雪兎が言ってたクレープ屋さんって、もしかしてこのクレープ屋さん?)

 

雪兎は「女子が好きそうなおまじない」と言っていたので間違いないだろう。

 

(雪兎もそういうの気にするんだ)

 

シャルロットはまだ知らなかった。「いっつも売り切れ」というミックスベリーの秘密を。

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットの推測通り、雪兎が行こうとしていたクレープ屋は城址公園のクレープ屋であった。

 

(やっぱりあのおまじないのクレープ屋さんだったんだ)

 

シャルロットはそれを知り、今日はミックスベリーは残ってないかなぁ、と胸を弾ませてクレープ屋へと向かう

 

「すいませーん、クレープ二つください。ミックスベリーで」

 

「何だ、その噂もう知ってたのか」

 

「さっきのカフェで話してるのが聞こえてね」

 

しかし、店主である二十代後半であろう無精髭ながら人懐っこい顔の男性は申し訳なさそうに言う。

 

「あぁー、ごめんなさい。今日、ミックスベリーはおわっちゃったんですよ」

 

「あ、そうなんですか。残念だなぁ」

 

だが、そんなシャルロットを見て雪兎は笑みを浮かべると店主に注文をする。

 

「なら、イチゴとブルーベリーを一つずつ」

 

すると、店主も雪兎の顔を見て含み笑いをしながら注文を受けた。

 

「ここは俺が奢るから機嫌直せって」

 

明らかに残念そうにしているシャルロットに雪兎はイチゴのクレープを差し出す。

 

「うん・・・・あっ、このクレープ、美味しい」

 

ミックスベリーを食べられなかったのは残念だったが、そのクレープは絶品だった。

 

「だろ?こっちも食ってみろよ」

 

そう言って雪兎は今度は自分のブルーベリーのクレープを差し出す。

 

「う、うん・・・・こっちも美味しい」

 

間接キスっぽくて少し恥ずかしかったが、ブルーベリーのクレープも美味しいかった。そして雪兎はシャルロットにある種明かしをする。

 

「どうだ?ミックスベリーのお味は?」

 

「えっ?あーっ!ストロベリーとブルーベリー!?」

 

そう、あのクレープ屋にミックスベリーというメニューは元から存在せず、ストロベリーとブルーベリーを二人で分け合って食べることこそ「幸せのミックスベリー味」の噂の真相だったのだ。

 

「そ、そういうことだったんだぁ・・・・すっかり騙されたよ」

 

「ははっ、ただミックスベリーを食べるだけで幸せとかじゃ雰囲気出ないだろ?だからこんな噂が生まれたんだと思うぜ」

 

きっとこれを思い付いた人はロマンチストだったのだろう。

 

「それにあの店主、メニューにないミックスベリーを売り切れって言って誤魔化してるから真相を知ってるのは注意深く店を確認してるやつくらいだろうな」

 

先程の店主の含み笑いはそういう意味だったのである。

 

「それはそうと、俺にもミックスベリー食わせてくれないか?」

 

「うんっ!」

 

そして二人は発案者の思惑通りに二人でクレープを分け合って幸せそうな顔をしていた。




という訳で今回はミックスベリーのクレープ屋さんのお話でした。

この話見ると無性にクレープ食べたくなりません?


次回予告

ある日、何故か織斑家に集結した一同。しかも雪兎とシャルロットのラブラブっぷりに一夏ラバーズの四人は焦りながらも一夏へのアピール合戦と称する料理対決が幕を開ける。

次回

「とある夏の織斑家の食卓 兎、幼馴染達を焦らせる」


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27話 とある夏の織斑家の食卓 兎、幼馴染達を焦らせる

今回は一夏の家で原作メンバー達と色々やります。
ちょっと長くなったので前後編に分かれます。


これはとある夏休みの1日のことだ。

 

その日、雪兎の家に再びシャルロットが訪れていた。今回はちゃんと事前に連絡を入れており、前回のような入れ違いは発生しなかった。

 

「そろそろ昼か、今日はどうする?また俺が作ろうか?」

 

「雪兎に作ってもらってばっかじゃ申し訳ないし・・・・そうだ!雪兎、僕に料理教えてくれない?」

 

前回、雪兎の料理の腕に自身の女子力に危機感を抱いたシャルロットはせっかく手本のなる人が目の前にいるのだから教えてもらおうという結論に至ったようだ。一緒に料理もできるし、雪兎の好みも知れる良い機会でもある。

 

「俺でいいのか?料理ならあの主夫(一夏)の方が上手いぞ?」

 

「僕は雪兎に教えて欲しいの!わかるでしょ?」

 

「・・・・何か付き合うようになってからシャルって結構積極的だよな」

 

「だめ?」

 

「だからその眼はやめろ、それは俺に特攻だぞ!」

 

すっかりシャルロットに攻略されてしまっている雪兎。やはりシャルロットは手強い。一夏ラバーズがシャルロットが雪兎狙いでどれだけ安心したことか。

 

「教えるよ。それだと食材が足りないな・・・・買い出し行くか?」

 

「うん」

 

そして雪兎とシャルロットは近くのスーパーまで買い物に行くことにしたのだが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故わたくしに料理をさせていただけませんの!」

 

スーパーにやってくると、どこか聞き覚えのある声がした。

 

「またやらかしてやがんのか、あいつら・・・・」

 

「みたいだね」

 

そこには以前より改善したとはいえ料理下手なセシリアを宥める一夏達の姿があった。

 

「そうか。今日だったのか、あれ」

 

「あっ、これも読んだことあるお話なの?」

 

「ああ、ちょっと時間が夕食と昼食って違いはあるが誤差の範囲だろうな」

 

そう、これは原作四巻であった「恋に騒がす五重奏」もしくはアニメのアンコールディスク「恋に焦がれる六重奏」のエピソードだろう。

 

「どうするの?」

 

「ほっといても気付かれるだろうし、こっちから出向くか・・・・セシリアは流石に放置できん」

 

セシリアは放っておくと以前のようなことをやりかねないと懸念し、一夏の胃袋のためにも加勢することを決めた。

 

「悪いな、せっかく二人っきりだったのに」

 

「ううん、それはまた今度でも大丈夫だよ。それより僕もセシリアを止めないとマズイ気がするよ」

 

セシリアの料理はそれだけの飯テロ(意味は本当にテロである)をやらかした前科があるのだ。

 

「おい、お前ら。もう少し静かに買い物できんのか」

 

「おっ、雪兎か!良いところに。雪兎もセシリアを止めてくれ」

 

「わかってる。セシリア、お前、またOHANASHIされたいのか?」

 

雪兎のその言葉で騒いでいたセシリアが動きを止め、ゆっくり油を注していないロボットのようにギッギッギッと雪兎の方を振り返る。

 

「ゆ、雪兎さん・・・・それに、シャルロットさんも・・・・何故ここに?」

 

「僕達もお昼ご飯を作ろうと思って買い物に来てたんだ」

 

「そういえばシャルロットは雪兎の家に行っていたのだったな」

 

そこでシャルロットと同室のラウラが納得したとばかりに手をポンっと叩く。

 

「ほんと、あんた達ラブラブよね・・・・」

 

呆れたようにそう言う鈴だが、内心は滅茶苦茶焦っていた。まだ知り合って半年も経っていないのにあっさりと付き合い始めたこの二人の進展具合を見て長年幼馴染をやっているのに一夏を攻略できていないことに鈴は最近焦りを感じ始めていたのだ。

 

「二人揃って買い物なんて・・・・まるで夫婦だな」

 

「ふ、夫婦だなんて・・・・」

 

箒の言葉で顔を赤らめるシャルロットに箒もまた鈴同様に焦りを感じていた。

 

((やっぱり一夏を攻略するにはあいつ(雪兎)を味方に引き入れるしか・・・・))

 

一夏の幼馴染同士とあってか、二人の心境は似たようなものだった。

 

「ほんとお似合いだよな、お前達は・・・・俺も彼女欲しいよ」

 

そう呟く一夏だが、今周りにいる四人の誰かに「付き合ってくれ」と言えば即OKが出るなどとは思いもしていないのだろう。だからこの唐変木は・・・・。ちなみに、今の「彼女欲しい」発言はラバーズ達にもちゃんと聞かれており、「我こそは!」と闘志を燃やしている。

 

「ほんと一夏ってたまにわざとやってるんじゃないかって思う時があるよね・・・・」

 

「その台詞、今聞くことになるとは思わなかったわ」

 

先のシャルロットの台詞は原作だと学年別トーナメントの後に一夏がやらかした後に言われる台詞である。

 

「前にも言ったよ?その時、雪兎はいなかったけど」

 

やはり一夏はやらかしていたようだ。

 

「はぁ・・・・さてと、お前はどうせ夕食の時間くらいまで一夏ん家に居すわるつもりなんだろ?ついでだ、夕食の分の食材も買っていったらどうだ?」

 

「いいアイデアね、雪兎!」

 

「うむ。流石だな、雪兎」

 

雪兎の提案は渡りに船と幼馴染の二人がグッジョブと内心雪兎を褒め称える。

 

「セシリア、お前は俺が監視する。前みたいなことやってみろ・・・・どうなるか、わかってるな?」

 

「は、はいっ!」

 

以前、セシリアの料理のあまりの酷さに堪えかねた雪兎が指導した時にセシリアは色々やらかしており、その際に受けた制裁はセシリアにとってトラウマレベルで身に染みていた。

 

「雪兎の料理か、嫁やシャルロットからある程度聞かされてはいたが」

 

「俺なんてそこの主夫には劣るっての。俺は精々自炊できる程度だって」

 

そうは言うが、雪兎の料理の腕は店を開ける程度にはあり、それを知る箒達からすれば謙遜もいいところである。本当に一夏と雪兎の家事能力は下手な女子など比較にならないレベルであり、何人もの女子が自らの女子力と比較し絶望したことか。

 

「でも雪兎が参加してくれるなら色々と安心だな」

 

「そうか?でも、一夏の家のキッチンで全員は料理できないだろうし、昼食は女子に任せて俺達男子はそのフォロー。夕食は俺達二人が作るってのはどうだ?」

 

「それいいかもな。流石は雪兎」

 

この雪兎の提案に女子達全員は再びグッジョブを送るのだった。

 

「よし、全員作りたいメニューを教えてくれ。料理が被らないよう調整したり必要な食材の計算とかしたいからな」

 

雪兎の参戦で混迷に陥りそうだった織斑家の食卓の平和は守られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度か雪兎自身も言っているが、一夏と雪兎では料理の腕自体は一夏に軍配が上がる。しかし、それが教えるとなると評価は一変し雪兎に軍配が上がる。学園でのISの特訓などの指導がいい例だろう。教え方は初心者でもわかり易く、言われた通りに調理すれば並みの女子よりは上手く作れる程だ。

 

「さて、食材も揃ったし始めようか」

 

ちなみに、セシリアが買おうとした使用用途不明な調味料や隠し味に使おうとしていただろう食材は全て雪兎によって徹底的に除去されている。セシリアは不満そうだったが雪兎の一睨みで沈黙した辺り、彼女が雪兎をどれだけ恐れているかがわかる。それほど雪兎の制裁がトラウマだったのだろう。

 

「調理を始める前に言っておく。料理は愛情などとよく言われるが、それは最低限の腕前があって始めて通用する言葉だ。間違っても「最初に口にして欲しいから」と味見をしないことでも、「隠し味に」などと入れてどうなるかもわからないものを入れることでもない」

 

織斑家のキッチンに整列させられた女子達に雪兎が口にする言葉は約一名、セシリア・オルコットに深く突き刺さっていた。

 

「料理本の写真の通りにならないのも、これはプロが美味しそうに見えるよう素材を厳選し、プロの腕前で調理したからできるものであり、見よう見まねで作ったやつに全く同じものが作れる訳じゃない。それだけは心に留めて調理をしてくれ」

 

明らかに雪兎の言葉はセシリアを狙い射ちしにきている。本当に以前何をやらかしたのだろうか?まあ、雪兎はよほどのことがなければ優しく丁寧に教えてくれるので他の四人は思い思いの料理を作っていく。

 

「雪兎、これはこんな感じでいいの?」

 

「ああ、そんな感じだ。あと、油を使う時は慎重にな?周りに人がいる時は特に油が跳ばないようゆっくりと低い位置から入れるんだ。手に油が跳ぶのが怖いなら菜箸かトングを使うといい」

 

「うん、ありがとう」

 

「どう致しまして、っと!」

 

シャルロットに指導していた雪兎は突然どこから取り出したのか果物ナイフをセシリアの手元に当たらないギリギリのところに投擲する。

 

「おい、セシリア。お前、今何をしようとした?」

 

セシリアが手を伸ばそうとしていたのは元々織斑家にあったタバスコの瓶だった。

 

「お前が作ろうとしているハッシュドビーフにそれは不要だと俺は言ったはずだよな?」

 

「も、申し訳ありません!」

 

怒る雪兎のオーラがとてもではないがセシリアに反論を許さない。

 

「見事な投擲技術だ。あれも今度教えてもらおう」

 

一方のラウラはその雪兎の投擲技術に感心していた。先程の雪兎の投擲はラウラから見ても取り出してから投擲するまでに一切の無駄がなく狙いもかなり正確だった。

 

「ノールックであれとか中学の時より腕上げてるわね・・・・」

 

鈴はその投擲技術に戦慄している。どうやら中学時代にも果物ナイフでこそないものの、投擲はかなりの腕前だったようだ。

 

「調理前に言ったことをもう忘れたのか?見ていないからなどと余計なことはするな、いいな?」

 

「は、はひっ!」

 

こうして雪兎の監視下の元、セシリアは一切余計なことはできなかった。やろうとする度に果物ナイフが飛んでこれば誰でも諦めるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、全員の料理が完成した。

 

「何とか無事に全員完成させれたな」

 

「約一名、部屋の隅で震えてるやつがいるがな」

 

結局、あれからセシリアは諦めるまでに数回雪兎の投擲を放たれ、盛り付け後に部屋の隅で恐怖からガタガタ震えていた。本当に以前の指導で雪兎は何をしたのやら。

 

((((雪兎の前では絶対に料理で余計なことはしないでおこう))))

 

それを見て女子達が学んだのはその一点だった。

 

「そんじゃ、一夏、試食を頼む」

 

「お、おう。雪兎監修ならよっぽど大丈夫だろうけど」

 

それぞれが作ったのは・・・・

箒がカレイの煮付け、セシリアがハッシュドビーフ、鈴が肉じゃが、シャルロットが唐揚げ、ラウラがおでん(マンガ)である。何れも原作のものとは完成度が違った。特にラウラのおでんなどはマンガで見るまんまではあるもののとても美味しそうだった。セシリアのハッシュドビーフも普通に美味しそうな程だ。あのセシリアにまともな料理を作らせた雪兎の指導力は確かに本物だ。

 

「うん、どれも旨いな。これなら全員いい嫁さんになれると思うぞ」

 

「良かったな、主夫のお墨付きだぞ?」

 

その言葉に女子達は揃って安堵したのだった。




雪兎、セシリアに一切の容赦無しです。
雪兎の言葉の一部は今日の夕食時に妹と話してた内容から引用しました。
ほんと、よくメシマズとか言いますけど、どうしてそうなるのやら・・・・私は雪兎が言っていた内容が答えだと思っています。


次回予告

昼食は雪兎のおかげで平穏が守られた。そして、気になる一夏と雪兎の作る料理とは?

次回

「とある夏の織斑家の食卓 兎、そして主夫の実力」


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28話 とある夏の織斑家の食卓 兎、そして主夫の実力

料理回その2です。
連休も終わり仕事やら色々あって毎日更新は難しくなりますが、今後も兎協奏曲をよろしくお願いします。


「騒がしいと思ったらお前達か」

 

一夏による料理の試食が済み、全員で昼食にしようとすると寮長の関係上、滅多に帰って来なかった千冬が帰宅した。

 

「千冬姉お帰り。お昼は?まだなら今皆で作ったところだから一緒にどうだ?」

 

「そうだな、せっかくだ。少しいただこうか」

 

ここでまた原作とは違うことが起きた。

 

「作ったのは箒達だけど雪兎が指導してくれたから皆旨いぜ」

 

「ほぅ、雪兎がか。それは期待できそうだ」

 

ここにきて一夏ラバーズ最大の障害とも言える千冬がそれぞれの料理を評価することになった。しかも雪兎の指導でハードルがかなり上がったと見える。

 

(((((どうしてこうなった!?)))))

 

女子達の内心はそんなところだった。

 

「カレイの煮付けに肉じゃが、唐揚げにハッシュドビーフ、そしておでんか・・・・おでんはラウラ、お前だろう?」

 

「はっ、その通りであります!」

 

一発でラウラがおでんを作ったのが見破られた。

 

「このカレイの煮付けの味付けは篠ノ之か。それと肉じゃがは凰だな?」

 

煮付けの味付けに覚えがあったのか箒が作ったのを見抜き、鈴の性格もよく知ってるため、肉じゃがの食材の切り方から鈴のものであると気付いたようだ。

 

「この唐揚げはデュノアだろう?雪兎のよく作る味付けだ。となるとこのハッシュドビーフはオルコットか」

 

流石は世界最強のIS操者にして主夫(一夏)の姉。誰が何を作ったのかあっという間に看破してみせた。

 

「流石は千冬さん、お見事です」

 

「雪兎が手を加えてはいるだろうが、全員十分合格圏内だ。誇っていいぞ、小娘ども」

 

「「「「「!?」」」」」

 

千冬からの思わぬ好評価に女子達は驚きながらも喜んだ。

 

「まあ、この二人はある意味で別格だ。普通の女子じゃ比較対象にもならん。だが、研鑽を怠るなよ?」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

その後、全員で昼食を食べ、千冬は用事があるからとまた出掛けていった。

 

「こりゃ、気を利かされたな」

 

「みたいだね。箒達も大変だね」

 

雪兎とシャルロットは用事があるというのは嘘で箒達が千冬がいると落ち着かないだろうと気を遣ったのを見抜き、二人で微笑み合った。

 

「さて、夕食まで時間あるし、何かゲームでもしないか?」

 

一夏の提案に全員が賛同し、雪兎がどこから取り出したのか、某ゲームキャラクター達がボードゲームで色々競うパーティー系ゲームをゲーム機本体ごと取り出し、皆でプレイする事になった。

 

「あっ!そこでそうくるの!?」

 

「ふふ、この手のゲームはこうした方が有利なのだよ」

 

「ちょっ!?ここでこのゲーム!?」

 

「あっ、これ俺が得意なやつだ」

 

「しまった!?それはこのための布石だったのか!?」

 

「甘いよ。そんな手が私に通じる訳ないでしょ!」

 

「そ、そんな!?わたくしが最下位なんて・・・・」

 

ちなみに某電鉄系ゲームもあったが、あれは下手するとリアルファイトに発展しかねないのでやらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、そろそろ夕食の準備をするか」

 

「だな」

 

時間もそこそこ経ち、一夏と雪兎が夕食の準備のため立ち上がる。

 

「二人は何を作るの?」

 

「それなんだが、俺達は二人で合作にしようってことになってな」

 

「メニューはオムライスのデミグラスソースだ」

 

これまた技量が問われるメニューだった。

 

「一夏、ライスの方は任せていいか?」

 

「おう、ならオムレツの部分とソースは雪兎の担当だな」

 

そして始まった二人の調理はまるでオープンクッキングのように見る者を魅力した。

 

「雪兎、ライスはこんな感じでいいか?」

 

「ああ、ソースも出来たし、一夏はライスの盛り付けを頼む。今から上にのせるオムレツの方をやる」

 

その手際に無駄がなく、女子達は思わず見入ってしまう。

 

「やはりレベルが違う・・・・」

 

「こ、これが主夫の領域ですの・・・・」

 

「うわぁ、また一段と差つけられちゃってる・・・・」

 

「これが二人の本気・・・・」

 

「鮮やかな手並みだ・・・・」

 

それぞれ間近で見る二人の調理に戦慄する。これが自分達の目指す目標なのかと。

 

「よし、完成だ!今日のオムレツは満足いく出来だ」

 

「久しぶりに雪兎と作ったけど俺も満足いく出来だよ」

 

出来上がったオムライスは店で出されるような出来映えのものだった。

 

「「さあ、御上がり」」

 

「「「「「い、いただきます」」」」」

 

二人に促され女子達はそれぞれオムライスを口にする。

 

「うわぁ、なにこのオムレツのトロトロ加減・・・・」

 

「中のライスもソースや卵に合わせて味付けされてる・・・・」

 

「こんなオムライス初めて食べたよ・・・・」

 

「ほ、本国の料理人にも劣りませんわ・・・・」

 

「おかわりはあるか?」

 

概ね好評である。

 

「よし」

 

「やったな、雪兎」

 

これには一夏と雪兎も満足そうな顔をしていた。

 

「雪兎、このオムレツ、普通のと少し味付けが違うけど何か隠し味に入ってるの?」

 

「ああ、それはこれさ」

 

そう言って雪兎が取り出したのは色んな出汁などによく使われる味の●の粉末だった。

 

「えっ?そんなの入れるの!?」

 

「これを入れるとちょっと和風っぽくなってな。ソースをこれに合うように調整するの苦労したんだよ」

 

「それ、俺も最初は驚いたんだよなぁ。でも、大体日本じゃどの家庭にもあるからな、それ」

 

「隠し味ってのはこういうのを言うのさ」

 

他にも一部の県でよく使われていた中華スープの素なども炒飯の味付けに使えたりと色々な使い方が出来る。この辺は雪兎の前世の母親がよくやっていたのを雪兎はよく覚えていた。

 

「雪兎の料理ってそういう「どの家庭でも出来ます」的なのだから話聞くとほんと役に立つのよねぇ」

 

「流石は食文化の盛んな日本だな。今度クラリッサにも教えてやろう」

 

その後、クラリッサが日本の料理バトル系のマンガにドハマりすることになるのだが、それはまた別の話である。




短いですが料理の部分の後編です。

というわけで二人が作ったのはデミオムライスでした。


次回予告

夏はまだまだ続く。暑さの続くある日にシャルロットが雪兎を誘ったのはプールだった。
今度は二人っきりでと考えるシャルロットだったが、皆考えることは似たようなことで・・・・

次回

「夏のプールでの遭遇 兎、プールに行く」


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29話 夏のプールでの遭遇 兎、プールに行く

プール回その1。
雪菜や聖などのオリジナルキャラのまとめも作りましたのでどうぞ。

人気投票は投票数は少ないですが、今回はここまでで・・・・シャルの人気凄い。

今回は久しぶりのあのキャラ達も・・・・


「雪兎、プールに行かない?」

 

雪兎はあの食事会から数日後に実家から寮に戻った。何でもIS関係でやることがあるらしい。そんな寮に戻った翌朝、寮の食堂でシャルロットと朝食を食べていると、突然シャルロットがそんなことを言い出した。

 

「プール?そういや先月に新しいプールがオープンしたとか誰か言ってたな」

 

「うん、そこ。行ってみない?」

 

「今年は臨海学校の時しか泳いでなかったもんな」

 

「雪兎が選んでくれたもう一着の方の水着も着てないし、ね?」

 

そう、以前買った雪兎が最初に見ていた水着は結局披露する機会がなかったのだ。

 

「そうだな・・・・行くか」

 

せっかく買った水着が勿体無いし、雪兎もその水着を着たシャルロットを見てみたかったということもあり、雪兎はシャルロットの誘いを受けることにした。

 

(よし、雪兎とプールデートだ!)

 

シャルロットもそう意気込み準備をしてプールに向かったのだが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?雪兎さんにシャルロットさんじゃないですか」

 

「ほんとだ。あまあまとしゃるるんだ」

 

「あっ(察し)」

 

プールの入り口で私服姿の聖、本音、簪の三人と鉢合わせた。

 

「み、皆も来てたんだ・・・・」

 

考えることは皆一緒らしい。

 

「簪と本音はわかるが、聖も一緒とは珍しい」

 

「ひじりんは私が誘ったんだよー。いつもお菓子くれるお礼に」

 

「そういや、お前は聖に餌付けされてたな・・・・」

 

そう言われ雪兎はラウラと一緒によく聖からお菓子を貰っていたのを思い出す。

 

「私は趣味で作ってたから別に気にしてなかったんですけどね」

 

「いや、聖のお菓子は十分金取っていいレベルだぞ」

 

両親がパティシエというだけはある。

 

「だから今日は私達が聖を誘ったの」

 

「なるほどな」

 

すると、今度は本音の方が訊ねる。

 

「そういうあまあまとしゃるるんはデート?」

 

「う、うん」

 

「一応、夏のデートの定番だからな」

 

恥ずかしがるシャルロットに対し雪兎は堂々と言い切った。

 

「流石は雪兎さん・・・・堂々と言い切りましたね」

 

「お、おおう・・・・」

 

「雪兎ならこれくらいやる」

 

あまりに堂々と言い切るものだから聖と本音も思わず後退る。

 

「そういう訳だから俺達は行くな。シャル、また中で落ち合おう」

 

「う、うん」

 

そう言うと雪兎は入場料を支払い(さりげなくシャルロットの分まで)、更衣室へと行ってしまった。それからシャルロットも慌てて更衣室へと向かっていった。

 

「さらっとシャルロットさんの分まで払って行きましたよ?」

 

「うん、しかも、かなり自然にやってる」

 

「私、あまあまを甘くみてたよ・・・・」

 

雪兎の何気無いその行動に三人は驚きつつも、遅れて三人も入場料を支払い更衣室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更衣室を出てシャルロットを待っていると・・・・

 

「ん?そこにいるのは雪兎じゃねぇか?」

 

「弾?お前こそこんなところで何やってんだ?」

 

続いて遭遇したのは友人の弾だった。

 

「俺か?俺はここのバイトさ。オープンしてあんまり経ってねぇから臨時でバイト雇ってんだよ」

 

「あー、なるほどな」

 

「そういう雪兎こそ一人でこんなとこ来るなんて珍しいじゃねぇか」

 

「いや、一人じゃなくてな・・・・」

 

「雪兎、お待たせ!」

 

そこに薄いオレンジ色のビキニ型の水着に白いパレオを着けたシャルロットがやってきた。

 

「おう、やっぱり見立て通り似合ってるぞ、シャル」

 

「えへへ、そうかなぁ?」

 

「お、おい、雪兎。その美少女は一体・・・・?」

 

「そういや言ってなかったな。この娘はシャルロット、俺の彼女だ。シャル、こいつは俺と一夏、それと鈴の共通の友人で五反田弾だ」

 

「シャルロット・デュノアです。よろしくね」

 

雪兎がシャルロットを紹介すると弾が石のように固まる。

 

「弾?」

 

「か、彼女だとぉおおおおお!?雪兎!いつの間にそんなの作ってやがったんだよ!」

 

「先月始め頃かな?」

 

「それ、俺が学園のこと聞いた一ヶ月後じゃねぇか!?その間に何があったんだよ!?ってか、前にデートがどうこう言ってたのはこの娘か!?」

 

まあ、前に会った一ヶ月後に友人が突然彼女作ってれば弾でなくてもそう思うだろう。そして、初デートの時に相談されていたことを思い出す。

 

「シャルやラウラって千冬さんの元教え子が転入してきたりタッグトーナメントがあってシャルと組んだり・・・・後は機密事項に抵触すっから言えんが色々あってな」

 

「ラウラってこの前一夏と一緒にいた眼帯着けてる娘だよな?相変わらず濃い学園生活してやがんな。先月始め頃っていうと臨海学校とかいうやつの後か?」

 

「一夏辺りにでも聞いたのか?まあ、その通りだ」

 

どうやら弾は雪兎とシャルロットの初デートの際に他のメンバーと一緒にいた一夏と遭遇していたらしい。

 

「それにしてもこんな美少女捕まえやがって、羨ましいぞ」

 

「美少女・・・・雪兎も前に言ってたけど僕って美少女なのかな?」

 

「しかも、僕っ娘かよ!?お前のハイスペックっぷりは彼女にまで適応されんのか!?」

 

「落ち着け、弾。シャルが少し引いてる」

 

「おお、すまん。改めまして、俺は五反田弾だ。気軽に弾って呼んでくれ。苗字は妹と被るからな」

 

「妹?」

 

「俺らの一個下の娘で蘭っていうんだ。そういや蘭ちゃんもIS学園志望なんだっけか?」

 

「ああ、来年にはお前らの後輩になるかもだからよろしく頼むわ」

 

その後、弾はそろそろバイトに戻ると言って去っていった。

 

「弾って面白いけど妹想いのいい人だね」

 

「もう一人、数馬ってのがいるが、そいつはまた何れな」

 

御手洗数馬、もう一人の共通の友人である彼は原作にすらほとんど登場していないキャラだったので雪兎も知り合った当初は驚いたものだ。

 

「さてと、そろそろ俺達もプールにいくか」

 

「うん!」

 

弾と遭遇して少し時間を食ったが、二人はプールへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れるプールを堪能し、次はどのプールへ行こうかと二人が思っていると。

 

「あれ?雪兎さん?」

 

今度は弾の妹の蘭がいた。

 

(どんなエンカウント率だよ・・・)

 

「よっ、蘭ちゃん」

 

「今日は一夏さんは一緒じゃないんですね」

 

「俺だって四六時中あいつと一緒にいねぇって」

 

「雪兎、この娘が蘭ちゃん?」

 

「はい、私が蘭です。もしかしてシャルロットさんですか?」

 

「なんだ、一夏達から聞いてたのか?」

 

「はい、このお会いした時に」

 

弾とは違い、蘭は一夏達シャルロットのことを聞いていたらしい。弾が離れているときに聞いて、弾だけ聞いていなかっただけかもしれないが。

 

「ラウラさんと一緒に転入されたフランスの方なんですよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

自己紹介も不要ということで雪兎は気になっていたことを訊ねる。

 

「そういや蘭ちゃんはどうしてここに?」

 

「お兄がここでバイトしてるんですけど、この前、ここのグループ優待券を貰ったらしくて、それで学校の友達と来たんです」

 

蘭がそう言うと近くのプールで手を振っている友達と思われる女子達がいた。そして、雪兎達の姿を見つけると傍にやってくる。

 

「蘭、その人ってもしかして・・・・」

 

「実のお兄さんよりお兄さんらしいっていう雪兎さん?」

 

「蘭、お前は俺をどう友達に紹介してるんだよ・・・・」

 

優待券をくれた弾が哀れすぎる。

 

「あははは・・・・お兄って、誉めるとすぐに調子乗るから」

 

「だわな」

 

(すまん、弾。否定できん)

 

「すいません、お二人ってお二人だけでいらしたんですか?」

 

すると、友達の一人がそんなことを訊ねてきた。

 

「そうだが?」

 

「も、もしかしてお付き合いされてるんですか!?」

 

「・・・・うん、そうだよ」

 

シャルロットがそう答えると少女達はきゃーきゃーと騒ぎ出す。

 

「はいはい。そのくらいにしときなさいよー。他のお客さんもいるんだから」

 

「そ、そうだった」

 

「それにお二人にも失礼でしょ?」

 

「す、すいませんでした」

 

学校で生徒会長をしているらしい蘭は騒ぎ出す友達を静め雪兎達に謝らせる。

 

「へぇー、生徒会長してるって聞いてたけど、しっかりやれてるんだな」

 

「そ、そそ、そんなことないですって!」

 

「おー、会長が照れてる・・・・好きな人は別にいるって聞いてたけど、お兄さん代わりでこれなら本命はもっと凄いんだろうなぁ」

 

「ほどほどにな?」

 

いつものクラスメイト達のようなやり取りに雪兎は微笑みながら少女達に注意する。

 

「蘭ちゃんは俺にとっても妹みたいな娘だからこれからも仲良くしてやってくれよ?」

 

「「「それはもちろん!」」」

 

その後、IS学園への受験でわからないことがあれば頼ってくれとだけ言って蘭達と別れた。




久しぶりの登場である五反田兄妹。
21話振りの出番でした。


次回予告

簪達や五反田兄妹と遭遇しつつもプールデートを楽しむ二人。そんな二人はまだまだプールで遊び尽くす。
そんな中、二人は見覚えのある二人を目撃し・・・・

次回

「続、夏のプールでの遭遇 兎、他人のふりをする」


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30話 続、夏のプールでの遭遇 兎、他人のふりをする

プール回その2です。
本当にこの二人は何がしたかったのやら・・・・

オリジナルキャラも一人登場します。
そして、雪兎は何やら思い付いたようです。


蘭達と別れてから雪兎達がやってきたのは波を人工的に再現し、サーフィンを楽しめるというプールだった。

 

「サーフィンか、一度やってみたかったんだよなぁ」

 

「僕も初めてかも」

 

という訳でインストラクターから指導を受けられるそうなので二人は早速申し込んでみようと受付に向かうと。

 

「雪兎?」

 

サーフボードを持った女性が雪兎に声をかけてきた。

 

「あれ?忍先輩?」

 

サーフボードを持った女性はIS学園の二年生で雪兎が技術提供する代わりにスポンサーをしてくれている企業・棗宇宙開発局の局長の娘である棗忍だった。

 

「雪兎、知り合い?」

 

「ああ、前に技術提供する代わりにスポンサーやってくれてる企業があるって言ったろ?そこの娘さんで学園の棗忍先輩だよ」

 

「シャルロット・デュノアね。棗忍よ、よろしく」

 

「よろしくお願いします、棗先輩」

 

「今日はデート?」

 

「そんなところです。先輩はサーフィン出来るんですか?」

 

「うん。子供の時からやってるから。二人もやるの?」

 

初心者だと言うと教えてくれるというのでお言葉に甘え指導を受けることに。

 

「おっ、結構バランス取るの大変なんだな、これ」

 

「うん、思ったより難しいね」

 

「でも、雪兎もシャルロットも結構筋がいい」

 

忍の言う通り、二人はあっという間にコツを掴むと小さな波でならちゃんとサーフィンできるようになっていた。

 

「これ、結構面白いな(そういや昔見たアニメにサーフィンっぽい装備したパワードスーツやロボットいたな)」

 

サーフィンをやってみて、「やっちゃるぜ!」とか「I can fly!」とか叫んでるアニメを思い出す雪兎。

 

(もしかしたらISにも応用できないか?)

 

帰ったら早速シュミレートしてみようと雪兎は考えた。

 

「雪兎、また他の事考えてない?」

 

「わ、悪い、シャル。ちょっと面白そうなアイディア浮かんで」

 

「もう!デートなんだから僕の事を考えてよね」

 

「今日はもうデートに頭切り替えるから、な?」

 

少しむすっとするシャルロットだったが、雪兎がそう言うと機嫌を直したようだ。

 

「噂通りのラブラブぶり。いい彼女」

 

「ほんと勿体無いくらいいい彼女ですよ、シャルは」

 

「ゆ、雪兎ー!」

 

「ご馳走さま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りレクチャーを受けた後、まだ続けるという忍とは別れ二人はそろそろ昼食を取ろうと屋台などが並ぶコーナーへと向かった。

 

「おっ、お二人さんも昼食か?」

 

「よっ、弾。さっきぶり」

 

屋台では弾がバイトしていた。弾も家が五反田食堂という食堂をしていることもあってかそこそこ料理が出来る。なのでこのバイトには雪兎も納得していた。

 

「さっき蘭にも会ったぞ。優待券くれてやったんだって?」

 

「ああ、俺はバイトとか家の手伝いとかで忙しくて使えそうになかったからな。家族か本人同伴限定だったし、丁度良いかなってな」

 

なんだかんだ言って蘭には甘い弾なのだ。

 

「それより何か食うんだろ?丁度空いてきたところだから今ならささっと作れるぜ」

 

「そうか、なら焼きそば一つと・・・・」

 

「あっ、僕も同じのを」

 

「焼きそば2つな、少し待っててくれ」

 

そう言うと弾は慣れた手つきで焼きそばを作っていく。

 

「流石は五反田食堂の跡取りだな」

 

「まだまだだよ。うちのじーさんにはまだまだ敵わねぇって」

 

「厳さんはな・・・・またあの野菜炒め食いたいぜ」

 

「ならまた顔出しにこいよ。じーさんも雪兎のこと気に入ってるからな。はいよ、焼きそば2つだ」

 

プール内に手荷物を持って入るのは面倒ということで、このプールではリストバンド型の防水電子マネー端末が貸し出されており、予めチャージしておけばプール内の施設全てで使えるようになっている。もちろん、残額は返却時に返金される仕組みだ。そのリストバンドで雪兎は焼きそば2つの代金を支払う。

 

「毎度ありー」

 

「おっ、あっちのテーブルが空いたみたいだし行こうぜ」

 

「うん」

 

(また雪兎に払われちゃった)

 

今日は入場料といい、さっきのサーフボードのレンタル代といい、今の焼きそばといい、全部雪兎に支払われてしまっている。しかも、ごく自然とやっているため、シャルロットが何か言う暇すらなかった。

 

「あっ、飲み物買い忘れたなぁ・・・・」

 

「な、なら僕が買ってくるよ!」

 

両手が塞がっている雪兎を見てチャンスと思ったシャルロットはそう言うとドリンクコーナーまで走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットside

 

(何飲むのか聞かずに来ちゃったけど、雪兎だったら烏龍茶かな?)

 

慌てて何を飲むか聞かずに来てしまったが、雪兎が食堂でよく飲んでいたものを思い出して僕はドリンクコーナーでドリンクを購入する。

 

「ねぇ、そこの彼女。俺らと遊ばない?」

 

すると、あまりにも前時代過ぎる言葉と共に数人の男性が僕を囲んでいた。

 

「いえ、連れがいますので・・・・」

 

「おっ?女の子かな?ならその娘も呼んで」

 

「か、彼氏です」

 

「けっ、男かよ・・・・そんな飲み物を買いに行かせるような男なんてほっとい俺らと遊ぼうぜ?」

 

連れが男だとわかると、男は僕の手を掴んで連れて行こうと手を伸ばすが・・・・

 

「おい、てめえら誰の女に手出そうとしてやがるんだ?」

 

鬼の形相をする雪兎がその男の手を掴み捻り上げる。

 

「い、いてててて!?」

 

「な、何だ、こいつ!?」

 

「その娘の彼氏だよ・・・・てめえら、覚悟は出来てんだろうな?」

 

その時の雪兎の表情はラウラを取り込んでいたVTSを消し炭に変えた時と同じぐらい怒りに染まっていた。

 

「あ、相手は一人だ!や、やっちまえ!!」

 

「お、おう!ぐべらっ!?」

 

「一人じゃねぇぜ?雪兎、俺も加勢させてくれや」

 

さらにバイトしていたはずの弾まで現れ一撃で男の一人をのしてしまう。

 

「いいのか?騒ぎ起こしたらバイトクビにならねぇか?」

 

「チーフには許可貰った。むしろ責任はこっちで取るからやってこいってよ」

 

「へぇ、いい人じゃねぇか」

 

そんな話をしてる間にも二人は男達を一人ずつノックアウトしている。

 

「さあ、てめえらの罪を数えろ」

 

それからものの数分で男達はボコボコにされ、チーフと思われる人が呼んだ警備員に連れて行かれてしまった。その後、バイトのチーフの人からは謝られてしまった。

 

「ごめんなさいね。オープンしたばかりでまだまだ警備体制が甘くて」

 

「い、いえ、ちゃんと助けてもらいましたから・・・・」

 

「ほんといい彼氏を持ったわね。うちの弾くんのお友達だったみたいだから加勢させたけど必要なかったかしら?」

 

「いや、チーフ。雪兎だけにやらしてたらボコボコどころか半殺しでしたよ?」

 

どうやらあれでも加減した方らしい。そう思うと、僕が雪兎にどれだけ大切にされていたかがわかる。

 

「すいません。ちょっと彼女に手出されてカッとなってました・・・・弾が来なかったらマジで半殺しにしてましたよ」

 

「いいのよ。あんなやつら放置しておいたらここの評判にも関わるところだったわ。それに他のお客さんからも貴方は格好良かったって言われてたわ」

 

確かにあの時の雪兎は物凄く格好良かった。今も心臓がドキドキしているくらいだ。

 

「そうですか・・・・まあ、シャルが無事で何よりだったよ」

 

「雪兎。お前、ベタ惚れじゃねぇか」

 

「悪いかよ。初めての彼女だぞ?大切にして当たり前だ」

 

その後も観ていたお客さん達に冷やかされながらも僕は幸せな気分で少し冷めた焼きそばを食べたのでした。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の時にちょっとしたトラブルがあったが、気を取り直して昼からも遊ぼうとプールに繰り出すと・・・・

 

『さあ!第一回ウォーターワールド水上ペアタッグ障害物レース、開催です!』

 

さっき出場者を募集していたレースが始まったらしい。景品が「沖縄ペア五泊六日チケット」ということもあってシャルロットも出場したがっていたが、何故か男性は受付で弾かれる(弾曰くおそらく水着美女だけでやらせたかったのだろうとのこと)ということで出場は出来なかった。しかし、出場者の中に見覚えのあるペアの姿があった。

 

「あれって、鈴とセシリアだよね?」

 

「だよな・・・・シャル、この場を離れるぞ」

 

「えっ?どうしたの、雪兎」

 

「この話も読んだことがあるのを思い出した・・・・俺の記憶が正しければあの二人がまたやらかす」

 

雪兎がそう言うと、スタートと同時に鈴とセシリアのコンビは妨害工作に出た。プールに突き落とすのはもちろん、時には他の出場者の水着を奪いプールから出られないようにされたり(この時、雪兎はシャルロットに目を塞がれた)している。

 

「最後に鈴がセシリアを踏み台にしてゴールするんだが、それでセシリアがキレてISで乱闘騒ぎになる」

 

「・・・・」

 

目隠しされながらそう雪兎が呟くと、丁度、鈴がセシリアを踏み台にしゴールのフラッグを掴んだ。

 

「逃げよっか、雪兎」

 

「ああ、他人のふりだ・・・・俺達は関係ない」

 

始まった乱闘騒ぎを背に雪兎とシャルロットは我関せずとばかりにその場を離れプールから脱出するのであった。




という訳で色々やらかした鈴とセシリア。
この二人、やたらISを無断展開してますが大丈夫なんでしょうか?かなり始末書書いてそうですよね?

そして、定番のナンパネタです。
シャルロットも訓練受けてるのであれくらい何とか出来ますけど、雪兎がその前にぶちギレました。

初登場の忍に関してはオリジナルキャラ設定をご覧ください。

プールデートは鈴とセシリアのせいでぐだぐだとなってしまったため、雪兎はシャルロットにお詫びとしてレストランに誘ったそうです。


次回予告

プールで新たなアイディアを得た雪兎は新たなISの開発に取り掛かり・・・・

次回

「新ISは波乗りサーファー!? 兎、新たなISを作る」


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31話 新ISは波乗りサーファー!? 兎、新たなISを作る

本日二度目の更新。
今回は前回アイディアを得た雪兎が新たなISを作るお話です。かなりクセのあるISになったんじゃないかなぁ?

そして、とうとうアレが千冬の手に・・・・


プールでの乱闘騒ぎの中、脱出した雪兎とシャルロットは景色のいいレストランで食事をしてデートを終えた。騒ぎを起こした二人は何故か全てを真耶の代わりに迎えに行った一夏のせいにして@クルーズで高級パフェを奢らせたらしいが、後日、雪兎とシャルロット、そして簪達の証言により一夏も流石に理不尽だとキレて数日二人は口を聞いて貰えなかったそうだ。そして、雪兎達がそこでデートしており、邪魔されたことへの意趣返しだと知ると二人揃って泣きついてきた。などと色々あったが、今は平常運転だ。セシリアとラウラも一週間ほど帰省しているし、一夏もまだ実家のため、雪兎の部屋は静かである。

 

「よし、こっちの調整はこんなもんか」

 

今やっているのは箒が紅椿を手に入れ使われなくなった打鉄・参式の調整だった。雪兎は後に起こるとある事件に備え参式をある人物に渡すため調整し直していたのだ。

 

「今日は千冬さん、学園に来てたよな?」

 

その人物とは千冬であった。原作では彼女の専用機である暮桜はとある理由で凍結処理がされており、千冬は今はISを所持していないのだ。先日の鈴とセシリアの起こした事件の後始末の書類とかで出勤していたと雪兎は記憶している。

 

「受け取ってもらえるかな?」

 

そんなことを考えながら雪兎は職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します。織斑先生はいらっしゃいますか?」

 

「ん?天野か、珍しいな。お前が休みに私を訪ねてくるなんて」

 

訪ねてきた雪兎を千冬は物珍しそうに見た後、入室を許可し自分のデスクへと呼んだ。

 

「ちょっと渡したいものがありまして」

 

「渡したいもの?」

 

「これです」

 

そう言って雪兎は再調整を終えた参式を千冬に手渡した。

 

「これは・・・・参式か?何故これを私に?」

 

「箒も紅椿を手に入れて使い手がいなくなりまして・・・・他の人ではちょっと手に余るISなので預かっていただけないかと」

 

「お前は今後も何か起きると思っているのだな?」

 

雪兎の思惑はあっさりと千冬に見抜かれた。

 

「バレました?」

 

「何年お前と付き合いがあると思っている。確かに今年に入ってからトラブルに事欠かんし、備えておくことも必要だろう。だが、何故私に?」

 

「暮桜、今は使えないんでしょ?」

 

「・・・・束にでも聞いたのか?まあいい、確かに今は暮桜は使えん。しかし、それでも訓練機ぐらいは使えるぞ?」

 

「それじゃ間に合わない事態のためにも現状切り札とも呼べるこいつは織斑先生に持っていて欲しいんです」

 

いつになく真剣な雪兎に千冬は参ったと息をつき参式を受け取る。

 

「・・・・わかった。お前がそこまで言うなら受け取ろう」

 

「コアは初期化して再調整してあります。整備が必要な時は俺に言ってください」

 

「お前が何を危惧しているかは知らんが、この剣を預かる以上は何とかしてみせよう」

 

こうして守護者の剣は世界最強の手へと渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、千冬は真耶を伴って早速アリーナで参式を試すことにした。すると、パーソナライズやフィッティングが開始され参式は名実共に千冬の剣となった。

 

「あいつ、やってくれたな・・・・」

 

しかも、先行して千冬のデータがある程度入っていたのかあっという間にパーソナライズとフィッティングは終了した。そこで千冬はあることに気付く。

 

「ん?前とカラーリングが違う?」

 

そう、以前は打鉄と変わらぬカラーリングだったのに対し、今の参式は所謂親分カラー、ゼンガー・ゾンボルトが使用していたものと同じカラーリングになっていたのだ。更に出力調整も千冬の癖に合わせてあり、このISならば一夏達専用機持ち達が束になってかかってきても負ける気がしなかった。

 

「こんなものを私に渡すとはな・・・・その信頼、応えねば大人の恥だな」

 

それからしばらく参式を動かしていたが、その規格外っぷりに真耶が絶句していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎は先日アイディアを得た新たなISの設計に取り掛かっていた。

 

「雪兎、それってこの前プールで考え事してた時の?」

 

丁度、部屋を訪れていたシャルロットは画面に表示される一風変わったISの設計データを見てそれがサーフィンをしていた時に雪兎が着想を得たものだと気付いた。何故なら、そのISに装備された特殊な装備はまるでサーフボードのような形状をしていたのだ。

 

「ああ、昔、前世でこんな装備で飛んでるロボットとかのアニメが流行ったことがあってな」

 

しかも、このサーフボード、分離・変形・合体によって様々な武装へと変貌するのだ。

 

「雪片弐型と同じ擬似第4世代武装【バイザーボード】だ。こいつも別のアニメから着想を得た装備さ」

 

この【バイザーボード】複数の種類があり、状況に応じて切り換えれるので雪兎の雪華と紅椿の中間という印象を受ける。

 

「ほんと、雪兎の前世の世界って凄いこと考える人がいたんだね・・・・」

 

こんなアイディアがあちらの世界ではゴロゴロ転がっていたのだと思うと、シャルロットはその世界に束のような科学者がいなかったことが幸いに思えてくる。絶対にとんでもないことになっていただろう。

 

「基礎設計は終わったな。あとは束さんにデータ送って評価してもらってからテスター探さないと」

 

「自分でやらないの?」

 

「いや、雪華のやつが最近自分以外のIS使うの気に入らないらしくてな」

 

声に出してそう言ってくるのではなく、他のISを使った直後は何故か展開速度が遅くなるのだ。

 

「ランク戦の訓練機とかは許してくれるんだが、参式とかカスタムEVOL使うと露骨に反応鈍くてさ」

 

「嫉妬してるんじゃないの?「自分じゃ不満なのかー!」って」

 

「シャルもそう思う?」

 

ISは装備というより相棒・パートナーという表現がしっくりくる。そのため他のISにホイホイ乗り換えられては機嫌も損ねるというものだ。

 

「だから誰かテスターになってくれるやつ探さないといけないんだ。俺もこれ以上相棒の機嫌損ねたくねぇし」

 

そういう訳で新たなISには新しいテスターが必要なのだ。

 

「相棒と言えばシャルのリヴァイヴはもういいのか?」

 

「うん、一応修復は終わってるんだけどね」

 

どうも最近シャルのリヴァイヴも反応が悪い時があるらしい。

 

「ちょっと貸してくれ、調べてみる」

 

「お願い」

 

待機状態のペンダントを雪兎に渡すと、雪兎は専用のスキャナーのような機械にリヴァイヴを入れEVOLsystemのメンテナンス画面を開く。

 

「はぁ?何だこりゃ?」

 

すると、リヴァイヴから妙なエラー反応が出ていた。

 

「おいおい、こいつは・・・・」

 

更に調べてみると、そのエラーの内容はリヴァイヴ自身からの要望だった。

 

「シャル・・・・リヴァイヴのやつ、こんなこと言ってんだが」

 

『現状の機能では所有者の技能についていけません。性能向上の為、雪華とのデータリンクを願います』

 

「どういうこと?」

 

「多分、二次移行するだけじゃシャルの能力に合わせれないから俺の雪華のデータを使わせてくれって言ってるんだと思う」

 

よほど前回の福音との戦いが、最後まで主と戦えなかったことが悔しかったらしい。

 

「リヴァイヴ・・・・」

 

「なあ、シャル。リヴァイヴ、しばらく俺に預けてくれないか?俺、こいつを改修してやりたいんだ」

 

ここまで主想いなリヴァイヴをみて、雪兎は心動かされたようだ。

 

「僕からもお願いしていい?あっ、でもデュノア社にはなんて言おう・・・・」

 

「そっちは俺で何とでも出来るから心配するな。んじゃ、リヴァイヴはしばらく預かるぞ?」

 

その時、画面に新たな文字が表示された。

 

『よろしくお願いします』

 

「任せろ。お前は俺が完璧に改修してやる」

 

こうしてシャルロットのリヴァイヴは新たなる力を得るべく雪兎の元へと預けられたのだった。




新しいISと新生リヴァイヴは次の章にて御披露目しようかと思います。

そろそろ六章に入ろうと思います。
多分、あと1、2話で五章は終わりです。


次回予告

雪兎が新たなISとリヴァイヴの改修に取り掛かり、夏も終わろうというある日。雪兎は一夏に気晴らしにと神社の夏祭り誘われる。

次回

「紅の舞と夏の花 兎、夏祭りにいく」


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32話 紅の舞と夏の花 兎、夏祭りにいく

今回はアンコールディスクの後半のお話がベースです。
次でアニメ二期に入る予定です。会長は次章です。


シャルロットside

 

リヴァイヴの改修作業を始めて数日。雪兎は朝練や食事の時以外は部屋で作業をし続けるようになった。それだけ雪兎はリヴァイヴの改修に気合を入れているということなんだろうが、僕は少し心配になっていた。

 

「はぁ・・・・」

 

「なんだ、雪兎はまだ部屋に籠っているのか?」

 

そして僕はラウラに電話で相談していた。

 

「うん、僕が頼んだことでもあるから無理はしないでって言い難くて」

 

「そういうことなら教官や嫁、それにあいつの姉に相談したらどうだ?」

 

「うん、そうしてみるよ」

 

ラウラの提案を聞き、僕はまず雪兎のお姉さんである雪菜さんを訪ねた。

 

「あー、ゆーくんがまた何かしてると思ったらシャルちゃんのIS弄ってたのかぁ」

 

雪菜さん曰く、雪兎は時々ああなることがあるらしく、前は無理矢理モデルの仕事に同行させて気分転換させたらしい。その時出会ったのが僕の服を見繕ってくれた千春さんなんだとか。

 

「この時期なら・・・・やっぱり。シャルちゃん、実は今日、篠ノ之神社で夏祭りやってるんだ」

 

「篠ノ之神社?もしかして箒の?」

 

「そっ、ほーきちゃんの実家だよ。今は叔母さんの雪子さんが管理してるはずなんだ」

 

そこで夏祭り・・・・確かに気晴らしにはいいかもしれない。

 

「でも、今のゆーくんだと、シャルちゃんに誘わせても出てくるとは・・・・よし、いっくんに連れ出させよう!それに夏祭りだったら浴衣だよねー。よし、家に私のお古があったはず」

 

そんなことを考えていたらあっという間に僕は雪菜さんに拉致され天野家へと連行されるのだった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、夏祭り行こうぜ」

 

「はぁ?」

 

リヴァイヴの改修作業をしていると、一夏が突然部屋に戻ってきてそんなことを言い出した。

 

「今日、篠ノ之神社の夏祭りなんだよ。久しぶりに一緒行かないか?」

 

「いや、他の女子達を誘ってやれよ」

 

「セシリアとラウラはまだ帰ってきてないし、他の皆も都合がつかないんだとさ」

 

「箒は?」

 

「多分、手伝いに行ってるんじゃないか?近いうちに顔出すって言ってたし」

 

鈴辺りなら暇してそうなのだが、前の騒ぎのせいでしばらく寮で謹慎なんだとか。せっかくのチャンスを・・・・自業自得である。

 

「仕方ない。俺も世話になってたし、顔くらい出すか」

 

「シャルロットは誘うのか?」

 

「そうだな・・・・ん?姉さんからメール?」

 

『シャルちゃんはちょっと借りてくから』

 

どういうことだってばよ?

 

「シャルは姉さんに拉致られたらしい」

 

「雪菜さんならそこまで心配しなくても大丈夫なんじゃないか?シャルロットのこと気に入ってるみたいだし」

 

そう、臨海学校の後くらいから雪菜はシャルロットを「シャルちゃん」と呼び、えらく気に入っているみたいなのだ。雪兎としては姉と彼女が仲が良いことはむしろ歓迎なので良いのだけれど。

 

「作業詰まってる感もするし、気晴らしがてら行くとしますか」

 

ということで雪兎は一夏と共に篠ノ之神社へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは夢だ!そうに違いない!」

 

「・・・・忘れてた。夏祭りはこの話だったんだ」

 

一夏と一緒に篠ノ之神社の夏祭りに訪れた雪兎は箒の叫びでこの話は箒メインの話だったことを思い出していた。ちなみに、箒が叫んでいる理由は自分の和装を一夏に似合ってると言われて錯乱しているのだ。

 

「一夏、後はお前に任すわ」

 

「ちょっ!?逃げるのかよ、雪兎!」

 

面倒になってきたのと、箒の邪魔をして馬に蹴られたくない雪兎は一夏を残しその場を離脱した。

 

「まったく、一夏はもう少し女子の気持ちを理解するべきだな」

 

「そう言う雪兎は僕の気持ちを理解してほしいかな?」

 

「えっ?」

 

聞き覚えのある声が後ろからして雪兎は後ろを振り返る。

 

「しゃ、シャル?なんでここに?ってか、その浴衣は・・・・」

 

そこにいたのは雪菜に連れて行かれたはずのシャルロットだった。しかも着ているのは紺色の浴衣でよく似合っていた。

 

「ふふ、似合う?雪菜さんが昔着てたのくれたんだ・・・・わっとと」

 

「危ない!」

 

慣れない下駄で一回転したせいか、シャルロットがバランスを崩して転びかけるも、雪兎がシャルロットの手を掴み抱き寄せる。

 

「ゆ、雪兎!?」

 

「慣れない格好でそんなことするからだ・・・・ったく、せっかく似合ってる浴衣汚れちまうだろ?」

 

「う、うん」

 

抱き寄せたことと、似合ってると言われたことでシャルロットは顔を真っ赤にして雪兎にしがみついていた。

 

「姉さんのやつ、シャルを拉致ったのはこういう訳か・・・・ってことは一夏の誘いも姉さんの仕込みか。はぁ、何やってんだよ、あの姉は」

 

「雪菜さんは悪くないよ!僕がーー」

 

「わかってる。俺を心配して姉さんに相談したんだろ?まったく俺ってやつは学習してないな・・・・」

 

自覚症状があったのか雪兎は申し訳なさそうにシャルロットに謝る。

 

「心配かけてごめんな?どうもこういう時は周りが見え難くなってな」

 

「ううん、元はと言えば僕のリヴァイヴの問題だし」

 

「それでもだ。彼女に心配かけさせるようじゃ彼氏としてまだまだだよ、俺は」

 

そうやってしばらく互いに謝り続けるが、きりがないということで最後に互いにごめんなさいと謝って終えることにした。

 

「さてと、せっかく夏祭りに来てるんだ。一緒に回ろうぜ」

 

「うん!」

 

屋台や出店を回ったりしていたところで蘭を探す弾に出くわしたりもしたが、特に問題もなく二人で祭りを回った。

 

「そろそろ神楽舞か」

 

「神楽舞って、神様に踊りを奉納するっていうあれ?」

 

「それさ。今年は箒が舞うんだってさ。見に行くか?」

 

「うん」

 

神楽舞が行われる舞台へと向かうと、既に多くのお客さんが集まっていた。その中には一夏の姿もある。

 

「始まるぞ」

 

子供の頃にも一夏や雪兎は箒が舞うのを見たことがあるが、今舞っている箒はとても綺麗だった。神楽鈴や扇もしっかり扱えており、幼馴染という贔屓目を除いても目を惹かれる舞だった。それは同性のシャルロットも同じようで、舞う箒の姿をうっとりと眺めていた。

 

「雪兎、ちょっと想像以上だった」

 

「ああ、俺も小さい頃の箒の舞を見たことあったけど、別物だったよ・・・・シャルが彼女じゃなきゃ惚れてたわ」

 

雪兎にとってはシャルロットの浴衣姿の方がインパクトがあったようだ。

 

「そろそろ花火の時間だな」

 

「オススメの場所とかあるの?」

 

「あるにはあるが・・・・今日はあいつらに譲ってやろうか」

 

「そうだね。今日は箒頑張ってたもんね」

 

「おっ、始まったな・・・・」

 

幼馴染同士が知る穴場があるのだが、雪兎は今日は幼馴染二人にその場所を譲ってやることにした。それに、シャルロットの浴衣姿の方が気になって今日の雪兎は花火に集中出来そうになさそうだからだ。

 

(どうしようもなく惚れてんな、俺)

 

当初はそんなつもりは全くなかったのだが、今では隣にいる愛らしい恋人にすっかり夢中になっていると雪兎は自覚し、花火を楽しそうに見るシャルロットの横顔を見つめる。

 

「雪兎、どうしたの?」

 

見つめられていたことに気付いたシャルロットが訊ねる。

 

「いや、ちょっとな。例年通りだと次は連続だぞ」

 

そう言ってシャルロットに前を向かせる。その横顔を見ながら雪兎はあることに気付く。

 

(あれ?そういやシャルが再転入してきた時に頬にキスされてから俺の方は何もしてなくね?)

 

そう、この二人、付き合っているというのにキスはその時の一回きりなのだ。

 

(タイミング今までなかったけど、この雰囲気って絶対そういう雰囲気だよな?)

 

恋愛経験のない雪兎でもそれくらいはわかったようだ。そうこう考えている間に花火は最後の大連続に入っていた。

 

(流石にここは人目あるから帰りにしよう)

 

雪兎にシャルロットのように人目のある場所でキスはまだハードルが高いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花火も終わって、二人はシャルロットの着替えの関係もあって今日は雪兎の家に向かっていた。

 

「綺麗だったね、花火」

 

「あ、ああ、そうだな」

 

シャルロットばかり見ていたため、雪兎は花火なんてちっとも見ていない。

 

「来年もまた絶対に来ようね」

 

「おう、今度は俺から誘うよ」

 

家も近くなり人気も少なくなってきたところで雪兎は繋いでいたシャルロットの手を引き再びシャルロットを抱き寄せた。

 

「えっ、雪兎!?なーー」

 

突然のことにシャルロットも驚くが、雪兎は少し強引にシャルロットの唇にキスして言葉を遮る。

 

「・・・・悪い、さっきやられっぱなしなの思い出してやり返したくなった。嫌だったか?」

 

「・・・・嫌じゃなかった」

 

腕の中で顔を真っ赤にしてそう言うシャルロットは反則なくらい可愛かった。

 

「けど、ズルいよ、雪兎・・・・もう一回して」

 

「えっ?」

 

「もう一回ちゃんとキスしてほしい・・・・だめ?」

 

もう一度と言うシャルロットのおねだりに雪兎は黙って唇を合わせることで答えた。




という訳で夏祭りネタでした。
一夏達のオマケ感が半端ない・・・・

そして、雪兎がとうとうやりました。

次がこの章の最後のエピソードかな?

次回予告

夏休みもあと僅か・・・・最後の思い出として皆でプールの縁日に出掛けることに(当然ながら一夏の発案)
夏の最後を満喫する雪兎達だが、その一方で動き出す者達がいた。

次回

「夏の日の最後の思い出と暗躍する者達 兎、再びプールへ」


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33話 夏の日の最後の思い出と暗躍する者達 兎、再びプールへ

一応、五章最終話です。
二学期も学園祭にキャノンボールと忙しいのでまた長くなりそうです。


夏休みもあと数日となり多くの生徒が学園へと戻り始め一学期のような賑やかさが戻ってきたある日のこと。

 

「ウォーターワールドで縁日イベント?」

 

先日、雪兎とシャルロットがデートし、鈴とセシリアが騒ぎを起こしたあのプールで縁日イベントが開催されるらしい。幸い、鈴とセシリアは出禁は食らっていなかったので参加出来そうである。

 

(ってことはアニメ二期の方のイベントが採用されたのか・・・・本当にごちゃ混ぜだな、この世界は)

 

「雪兎もシャルロットと一緒にどうだ?」

 

そして、一夏はアニメ同様に親しい知り合いに片っ端から声をかけているようだ。

 

「ウォーターワールドは前に一回行ったが、結構良いとこだったぞ。鈴とセシリアにとってはどうかは知らんが」

 

「あのプールか。前は俺は色々あって行けなかったし、行ってみたかったんだよなぁ」

 

「それはそうと、一夏は誰に声かけたんだよ?」

 

「とりあえずいつもの特訓メンバーと弾と数馬とか中学の時の仲間と蘭かな?弾達は他に予定あるらしくて駄目だったけど」

 

「あいつらも誘ってたのかよ。確か中入に灯下と人里だったよな?」

 

フルネームは中入江文、灯下枝理、人里花梨という鈴を含めた中学で仲の良かったグループの女子の名前だ。

 

「ああ、この前皆で集まろとした時、鈴が風邪で流れちまったろ?だから集まれないかなぁと思ったんだが」

 

鈴が風邪引いた云々はアニメのDVDに付いていた特典の書き下ろし小説の話だ。その日は結局、一夏が鈴の看病に行き、残りのメンバーでカラオケに行ったのだ。その時、何故か箒達のキャラソンが各声優の名前で、主題歌が普通に存在し雪兎が大いに驚くことになり、更に弾が雪兎に彼女が出来たことを暴露して問い詰められたりしたが、いい思い出である。

 

「そういや、俺もあいつらにシャルに会わせろとか言われたな・・・・」

 

中学では彼女なんて興味も無いと言わんばかりの態度をしていた雪兎が入学して半年もせずに作った彼女である。気にもなろう。

 

「で、どうする?」

 

「わかった。俺もシャル誘っていくよ」

 

一夏のように変な誤解を与えぬようしっかり説明することだけ決め雪兎はシャルロットを誘うことにした。

 

(アニメのエピソードってことはあいつらが動き出すのもこの時期か・・・・ってことはあの人もそろそろ動くのか)

 

今まで接触することがなかったあの組織と学園最強の生徒との接触が間近に迫っているのを感じ、雪兎は少しだけ気を引き締めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所にはむすっとしたラバーズ四人と少々呆れている簪、聖、本音の三人と少しおめかししたシャルロットがいた。

 

「一夏、お前さ、何て説明した?」

 

「これに一緒に行かないかって」

 

そう言って一夏はイベントのチラシを取り出す。

 

「はぁー、お前はなぁ、いつも説明不足なんだよ・・・・そういうのが何人迷惑被ってると思ってるんだ」

 

「「「「うんうん」」」」

 

雪兎の言葉は頷くラバーズ。

 

「す、すいません」

 

そんなこんなはあったが。一同はウォーターワールドへと向かった。

 

「それにしてもよく出禁食らわなかったな、お前ら」

 

「そ、その話はもうしないでいただけますか」

 

「私達だって反省してるわよ」

 

あの事件の後、千冬による改修前の参式との時間無制限試合と反省文、そして国への弁解という罰のフルコースを受け大いに反省させられた二人にはあの事件はトラウマ化していた。

 

「学園ならともかく外でIS展開とか何やったらそうなるんだよ」

 

「「うっ」」

 

言えるはずがない。景品の沖縄旅行を廻って争ったなどとは二人は口にできなかった。下らなすぎる。

 

「お前ら、さっさとしないと置いてくぞ」

 

さりげにプールを楽しみにしていたラウラが皆を急かす。

 

「ラウラ、プールは逃げないから」

 

「しかし聖、遊ぶ時間は減るぞ」

 

「おりむー、あまあまも早く!」

 

「本音、恥ずかしいからもっと落ち着いて」

 

そんなこんな賑やかに雪兎達はウォーターワールドへと入場していった。

 

「相変わらず色々あるプールだよな」

 

一部を鈴とセシリアに破壊されていたというのにもう修繕されている。仕事の早い業者がいたのだろう。

 

「お前ら、遊ぶのは自由だが、IS学園の生徒として恥ずかしくない行動を心掛けるように」

 

水着に着替えた一同に雪兎は注意する。

 

「特に鈴とセシリアは前科があるからな」

 

「「うぐっ」」

 

言い返せず俯く二人。

 

「それじゃ、いくか」

 

アニメのようにセシリアの抜け駆けがないため皆で平和にプールを回ることに。スライダーのペア滑りは雪兎はシャルロットと、一夏はラバーズ全員と一回ずつやったり、聖はラウラと、簪は本音と滑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、イギリスの某IS研究施設。セシリアのブルー・ティアーズを開発した施設である。

 

「侵入者確認!至急応援をーー」

 

「ふんっ!」

 

「がはっ」

 

その施設に侵入した何者かは警備の兵士を気絶させ、その施設で開発されていたIS、BT二号機【サイレント・ゼフィルス】を手にする。

 

「随分と呆気ないものだな。まあいい、サイレント・ゼフィルス。確かにいただいた」

 

その侵入者の正体は織斑千冬そっくりの少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プールで遊んだ後、雪兎達はプールでレンタルしている浴衣に着替えて縁日イベントの会場を訪れていた。

 

「結構本格的なんだな」

 

「おっ、射的だな」

 

昔ながらの射的の出店を見つけ皆で挑戦することに。

 

「わたくしの得意分野ですわ!」

 

そう豪語するだけあり、セシリアはペンギンのぬいぐるみを一発で射ち落とす。

 

「おー!」

 

「僕も射撃は得意だよ」

 

「私も軍で一通り訓練したしね」

 

「私も」

 

続いてシャルロット、鈴、簪も景品を射ち落としていく。

 

「縁日のスナイパーと呼ばれた俺の実力、見せてやろう」

 

そう言うと雪兎は正面からでなく斜めから白い猫の置物を狙い射ち、跳弾した弾で近くの狐のぬいぐるみまで射ち落とす。

 

「はぁ!?何よそれ!?」

 

「あえて硬い置物に当てて跳弾させましたの!?」

 

普通の射的ではあり得ない光景に鈴とセシリアが驚愕する。

 

「またやってるよ・・・・あいつ、子供の頃にもああやって射的屋泣かせてたよな」

 

「ああ、それで毎年雪兎と射的屋の戦いが祭りの名物化していたな」

 

「あれ、昔からやってたんだ」

 

篠ノ之神社での夏祭りを知る一夏、箒、シャルロットの三人は少し呆れている。どうやら先日の夏祭りでも名勝負をしていたらしい。しかもシャルロットが見ていたので余計に雪兎が張り切ってしまい、射的屋が泣いていた。

 

「雪兎、すまぬが手を貸してくれ」

 

その実力を買ってラウラが雪兎に助けを求める。ラウラが狙っていたのは一抱えもある招き猫のぬいぐるみだった。

 

「ラウラ、左の耳を狙ってバランスを崩せ。そこに俺が射ち込んで落とす」

 

「わかった」

 

雪兎の言う通りに左の耳を射ってラウラがバランスを崩すとすかさず雪兎が招き猫の眉間を射ち抜き招き猫を転倒させた。

 

「す、すごっ!?本当にあれ落としましたよ!?」

 

「感謝するぞ、雪兎」

 

よほど欲しかったのか、ラウラは素直に雪兎に礼を言う。すると、射的屋のおじさんが雪兎を見て何か納得したように頷いていた。

 

「兄ちゃんやるねー。噂には聞いてたが、射的屋泣かせの白ウサギって兄ちゃんのことだったのか」

 

またえらく大層な二つ名までついていたようだ。

 

「この白猫はシャルに、狐は本音にやるよ」

 

雪兎は取った景品をシャルロットと本音に渡す。

 

「ありがとう、あまあま」

 

「大事にするね、雪兎」

 

その後、たこ焼きやわたあめ、かき氷といった定番の食べ物を食べ、最後に配られていた線香花火をしたりして雪兎達は夏の最後のイベントを楽しんだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、そろそろ私も彼らに接触するとしようかしら」

 

今までは陰ながら見ているだけであったが、もう少ししたら行われる学園祭のこともあって彼女はとうとう雪兎達への接触を決めた。

 

「それに、彼には色々とお礼をしなきゃいけないしね」

 

そう言って生徒会長・更識楯無は雪兎と一夏の写真を見て微笑むのであった。




という訳で五章は閉幕です。

次章より会長も参戦します。

そして、雪兎は一体何をしているんだか・・・・


次回予告

二学期も始まり再び始まる学園生活。そんな中、雪兎と一夏に生徒会長にして簪の姉・更識楯無が接触してくる。未だに姉妹の確執が残る中、これがどう影響してくるのか・・・・

次回

「生徒会長と妹の再会 兎、学園最強との邂逅」


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六章「兎と姉妹と学園祭」
34話 生徒会長と妹の再会 兎、学園最強との邂逅


二学期です。
ここからは原作に沿った部分と離れた部分が大きくなります。例えば更識姉妹とか、一部のキャラの専用機とかです。行事関係は原作に合わせますが、結末は今までみたいに雪兎が介入していきます。
今章では新ISや更識姉妹がメインとなるのでイチャイチャ成分は控えめにする予定です。

では、ISー兎協奏曲ー第6幕、開演です。


夏休みも終わり二学期を迎えたIS学園。

雪兎達の特訓も再開され一学期の時よりもハードなものになっていた。

 

「うへー、休み前よりハードになってね?」

 

「ハードにしてるぞ?二次移行してから白式の追加武装・雪羅はお前が今まで使ってなかったタイプの武装だからな、その扱いに関するものを増やしたからだろう」

 

「僕のもハードになってるよね?」

 

「シャルは改修中のリヴァイヴを問題なく扱えるようにカスタムEVOLで装甲切換をメインにメニューを組んでる。福音の時はある程度使えてたが、俺からして見ればまだまだ粗いからな」

 

「あのー、何で私まで?」

 

「聖には今度新型のテストをしてもらいたいからな。そのためのメニューだ」

 

件の新型ISのモニターに雪兎が選んだのは聖だった。特訓メンバーということもあって信用出来るし、このところの成績を見ても十分にモニターに適していると判断したのだ。

 

「し、新型ですか!?」

 

「今度持ってくるから頼むな。専用機扱いになるから申請の書類とか手間をかけさせるが」

 

「い、いえ!この時期に代表候補生でもないのに専用機持ちになるとか恐れ多いといいますか・・・・」

 

「担任にはもう許可貰ったぞ?聖なら安心だとよ」

 

実は聖、既に代表候補生とあまり変わらぬ実力があるのだ。そこで、雪兎の知り合いである棗のところで企業代表候補にしては?という話も出ており、名実共に専用機持ちの仲間入りになりそうなのだ。

 

「せ、先生まで・・・・」

 

「聖、安心しろ。お前は私のパートナーも務めたのだ。きっと大丈夫だ」

 

メニューが特にハードになっていたのはこの三人だった。無論、雪兎自身は別で二次移行して向上した性能の把握の特訓しているため更にハードなのだが。

 

「教官の指導に比べればまだ楽な方だぞ?」

 

そんな中ピンピンしているのはラウラと雪兎くらいのものだった。

 

「これよりハードとかどんなのよ・・・・」

 

「でも、確実にレベルアップはしてる」

 

「ええ、わたくしもBT兵器の稼働率が上がってきていますわ」

 

「私も大分紅椿の扱いに慣れてきたな」

 

雪兎の課すメニューは個人に合わせて徹底的に行われるため、成長がそれなりに実感できていた。

 

「またいつあんな事件があるかわからないからな。今月は学園祭で部外者の立ち入りもある。もしもに備えて鍛えておけよ」

 

「あまあまが言うと説得力あるよー」

 

そんなこんなで特訓がハード化する中、雪兎には少し懸念事項があった。

 

(そろそろあの人が接触してくる頃だけど、簪がいるからな・・・・どうなることやら)

 

本音とは和解したものの、簪は未だに姉である楯無とは和解できていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「引っ越し?」」

 

そんなある日、雪兎と一夏に真耶から言い渡されたのは雪兎の部屋の引っ越しだった。

 

「はい。天野君が今デュノア社から依頼を受けて行っている作業も一人部屋の方が効率はいいだろうと学園側から打診がありまして」

 

そう、リヴァイヴの改修はデュノア社からの依頼という形で雪兎に託されていた。改修の件をデュノア社に連絡したところ「こちらからの依頼という形でお願いします。ですのでどうかよろしくお願いいたします」と逆にお願いされてしまったくらいだ。それほどイグニッションプランでの遅れが酷いのだろう。一応、改修後のデータは好きに使っていいと言ったおいたのでデュノア社は再び返り咲くことはできるだろうが・・・・シャルロットのリヴァイヴは雪兎が生産面を度外視して作っているので劣化版にはなるだろうが新生リヴァイヴがデュノア社の最後の希望なのだろう。社長も雪兎の本気を知って改心したらしく。雪兎とシャルロットが付き合っていると知るとシャルロットへの全面的な援助を約束してくれたくらいだ。

 

(ってか、これ。絶対に十蔵さんと更識動いたろ?)

 

一夏の護衛と特訓の件で原作では楯無が一夏の部屋に転がり込むのだが、今は雪兎が同室のためそれが出来ない。だからもっともらしい理由をつけて雪兎を別室に引っ越させるという手に出たのだろう。十蔵さんというのはIS学園の本来の学園長で用務員に扮している男性のことだ。

 

「俺は別に構いませんよ。確かに夜遅くまで作業することもありますから一夏に迷惑かけずに済みますし」

 

今後起こるだろうラウラや楯無の侵入イベントは一夏に頑張ってもらうことにし、雪兎はその引っ越しを了承した。これが雪兎も学園祭のとあるイベントに巻き込まれる伏線とは雪兎も思ってもみなかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。一夏は放課後になっても特訓に姿を現さなかった。

 

「一夏、どうしたんだろう?」

 

(引っ越して早々か、動くのがお早いことで)

 

皆が心配しているのを他所に一夏は遅れてやってきた。

 

「お姉ちゃん・・・・」

 

そう、生徒会長・更識楯無と共に。一夏の様子から察するに既に勝負に負けて専属コーチになると決まったのだろう。

 

「あっ、会長」

 

「あら?簪ちゃんに本音ちゃんもいたのね」

 

だが、雪兎としてはこんなに早く楯無が動くとは思ってなかった。何故ならまだ生徒集会も学園祭の話も出ていないからだ。楯無の専属コーチ発言にラバーズは少し不満そうな顔をするが相手は上級生で生徒会長。誰も何も言えなかった。ただ簪は納得がいかないとばかりに楯無を睨んでいたが。

 

(やっぱりまだ簪は楯無さんのことは納得してないか)

 

この姉妹の溝はまだ埋まってはいないようだ。そんなことを考えていると楯無は雪兎を見つけ近付いてきた。

 

「天野雪兎君ね?」

 

「何ですか?更識楯無生徒会長」

 

「へぇ、まだ一年生にはほとんど顔を見てせなかったんだけど、君は私を知ってるのね?」

 

「お噂はかねがねってことですかね?それで何の用でしょうか?」

 

「そうね。雪兎君、君は一夏君にどんな特訓をさせていたのかしら?」

 

「こんな感じですかね?」

 

雪兎はそう言って一夏のトレーニングメニューを投影スクリーンに表示して見せた。

 

「なるほど・・・・流石は篠ノ之博士の弟子ね。一夏君の白式についてかなり正確に把握しているわ」

 

「メンテナンスとかも俺が担当してますからね」

 

「虚が欲しい人材だって言ってるだけはあるわね」

 

貴女が動いた(・・・・・・)ということはそういうことだと思っていいんですよね?」

 

「!?なるほど、君はそこまで知ってるのね。君とはまた近いうちにお話したいわね。出来れば二人で」

 

「生徒会長のご指名と有らば。ですが、数日お待ちを。こちらにも優先することがありますので」

 

優先することとはシャルロットのリヴァイヴのことだ。

 

「わかったわ。じゃあ、後日連絡をもらえるかしら?」

 

「連絡の必要がありますか?当面の間は貴女が一夏のコーチをするんでしょ?俺は技術者なのでお手並み拝見させてもらいますよ」

 

「そう?なら都合のいい時は教えてね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は少し練度の確認をして特訓は終了となった。

疲れて先に帰った一夏といつの間にかいなくなった楯無を除くメンバーで雪兎は今後のことを話し合うことにした。

 

「簪、姉さんと会うのが辛いなら特訓を2グループに分けてやってもいいが」

 

「ううん、これは私の問題だから・・・・そういえば、雪兎は私の実家のこと知ってたんだ?」

 

「まあな、ちょっと調べたからな」

 

「簪、お前も姉と仲が悪いのか?」

 

「・・・・うん、ちょっとね」

 

その後、簪から二人の経緯について語られた。一応、雪兎も友達になった時に聞いていたため、少しだけ自身の推測も交えて補足を入れていたが。

 

「そういうことだったのか・・・・」

 

「雪兎からも色々聞いてお姉ちゃんの考えは一応わかってるつもり。でも、私はまだ納得はできてないの」

 

今までが今までだったため、箒同様に仲直りし辛いのだ。

 

「あんたも複雑な事情があったのね」

 

「俺は姉さんと喧嘩なんて滅多にしねぇからあんま力になれなくてな」

 

「そんなことない。弐式のことで雪兎にはお世話になったから」

 

「そういうことなら私も協力しよう」

 

同じく姉のことで悩む箒は簪に共感したらしく、協力を約束した。

 

(まあ、原作みたく変なすれ違いは起きてねぇからまだマシな方なんだがな)

 

あれは楯無が変に干渉したのが悪いので早いうちに雪兎が干渉したのが今回は良い方向に作用したようだ。

 

(まったく、束さんといい、会長といい不器用なんだから・・・・俺の出来る範囲で悲劇は覆してやる!)

 

雪兎は絶対に姉妹を仲直りさせると、雪華に誓った「手の届く範囲の仲間を守る」という誓いを果たすべく、雪兎は陰ながら動くことを改めて決意した。




という訳で雪兎と楯無がエンカウント。
簪の件が雪兎の介入でかなりイージーモード化してます。
次はお待ちかねのリヴァイヴの改修機が登場です。

11巻の内容から少し変更しました。

次回予告

楯無の登場で思い悩む簪。友達として雪兎は姉妹の仲直りを手伝うべく楯無との対話をすることに。
そして、とうとう完成した新生リヴァイヴが産声を上げる。

次回

「疾風は二度甦る 兎、会長と対話する」


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35話 疾風は二度甦る 兎、会長と対話する

とうとう新生リヴァイヴ他の新型ISが登場。
機体の詳細はオリジナル・改修機設定にあげてあります。

ついでに特訓組以外にも新型が・・・・

楯無とも対話も。


楯無が特訓に一夏のコーチとして参加するようになって数日。とうとう新生リヴァイヴが完成した。更に聖にモニターをしてもらうISとオマケで作っていた特殊装備のISも同時期に完成した。

 

「まさかデュノア社がこんなのまで送ってくるとは思わなかったが・・・・」

 

ついでにデュノア社に提出しておいた完成したリヴァイヴの量産試作機のデータを送ったらコアを除いた試作1号機を送ってきたのだ。

 

「コアはカスタムEVOLに使ってる分を初期化して回して誰かにモニターしてもらうか・・・・確か山田先生もリヴァイヴ使ってたよな?」

 

元代表候補生で実力も確かで信用も出来る人物なので丁度良いかもしれないと雪兎は考える。

 

「さてと明日の放課後にでも御披露目しますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、特訓メンバーが揃ったところで雪兎が全員を集めた。

 

「全員呼び集めてどうしたんだ?」

 

「もしかして、完成したの?」

 

「ああ、リヴァイヴと新型二機がな」

 

「二機?聖用の機体だけではないのか?」

 

「いや、聖に新型渡すと本音だけ訓練機ってことになるだろ?だからオマケで作ったやつだ」

 

そう言って雪兎が取り出したのはリヴァイヴの待機状態であるペンダントと黄緑色の珠のペンダントと黄色のカチューシャだった。

 

「まあ、オマケと言っても手は抜いてないから安心しろ」

 

それぞれをシャルロット、聖、本音に手渡す。

 

「名前はそれぞれ、【ラファール・リヴァイヴ(スゴン)S】、【ウェーブ・ライダー】、【ナインテイル】だ」

 

「来て、リヴァイヴⅡS!」

 

「いくよ・・・・ウェーブ・ライダー」

 

「おいでませ、ナインテイル!」

 

三人がISを展開すると、シャルロットはカスタムⅡと似ているがシルエットは雪華に近いISを。聖のウェーブ・ライダーは細身だが各所にハードポイントを持ち、大きなサーフボードのような武装を装備した白いボディに黄緑色の装甲を纏ったISを。本音は着物のような黄色の装甲と何より特徴な9本の尻尾を持つISを身に纏っていた。

 

「おー!あまあま、この子可愛いね」

 

「イメージは九尾の狐と狐巫女だ」

 

ぴょこぴょこ動く耳とゆらゆら揺れる尻尾が狐らしさを表現している。

 

「こっちのはサーファー?」

 

「【バイザーボード】っていう専用武装だ。三種類拡張領域に入れてある。変形したり分離して本体武装にもなるぞ」

 

「雪兎、バイザーボードという武装はまさか・・・・」

 

「箒は気付いたみたいだな?あれは雪片弐型と紅椿の中間みたいな展開装甲武装だ。つまり、ウェーブ・ライダーは疑似第4世代機なんだよ。もちろん束さんにも意見もらって作ったから完璧だぜ?」

 

「またとんでもない機体のモニターになってしまった・・・・」

 

そうは言うが聖は嫌そうな顔はしていない。

 

「これが、新しいリヴァイヴ・・・・」

 

「とりあえずシャルが使い慣れてたカスタムⅡの装備を発展させたパック【C:カスタム】を装備してるが、雪華と同じパックが使えるようにしてある。シャル用の各パックとstorageも作ってあるからパックの入れ替えはそれでやってくれ。今はカスタムEVOLと同じパックをインストールしてあるから」

 

「それじゃあ・・・・【G:ガンナー】!」

 

すると、オレンジだった装甲が赤くなりパックが【G:ガンナー】に換装される。

 

「色まで変わるんだ・・・・」

 

「そいつはシャル仕様のⅡSだけの機能だ。量産試作機はリヴァイヴと同じカラーだよ」

 

「はぁ!?もう量産試作機までできてんの?」

 

「ああ、ⅡSの簡易版とも劣化版ともいえるやつがな。この前、コアのない外装だけの試作1号機がデュノア社から送られてきてな」

 

「あんた、もうデュノア社乗っ取ってない?」

 

事実、デュノア社では雪兎に開発主任の席を与える準備があるとかないとか。

 

「流石は篠ノ之博士の弟子ね・・・・この短期間にこれだけのISを三機も開発するなんて」

 

これには楯無も驚愕していた。

 

「リヴァイヴⅡSは雪華の応用ですし、実質新規で作ったのは二機ですけどね」

 

「そういえば試作1号機はどうなさるんです?」

 

「リヴァイヴⅡは山田先生にでも貸し出そうかなと。山田先生も元代表候補生ですし、使ってるISもリヴァイヴでしたから」

 

「流石は雪兎。自重とか全然してない」

 

「自重なんてしても守りたいもの守れん。そんなことなら俺は自重なんてしないよ」

 

「雪兎らしい」

 

弐式の時のことを思い出し、簪は何か納得したように頷いた。

 

「弐式用のパッケージもいくつか出来たから今度試しといてくれ。ほい、簪用のstorage」

 

「ありがとう、雪兎」

 

「簪までパワーアップするのか・・・・これまで以上に気合を入れねば」

 

「わたくしも早く偏向射撃を習得しなくては」

 

四人がいきなりパワーアップしたことで特訓に気合を入れる箒とセシリア。

 

「私も今度雪兎に頼もうかなぁ・・・・本国に確認取ろ」

 

雪兎の改修で大きく化けたリヴァイヴを見て自分にも何か作ってくれないかなぁ、と考える鈴。

 

「聖、少し模擬戦をしてみないか?新しい機体の性能を見てみたい」

 

「お願いしていい?私もこの子に慣れておきたいから」

 

ラウラは聖の専用機の性能が知りたいらしく、早速模擬戦を始めていた。

 

「反応速度も良い・・・・これなら僕も自信を持って雪兎のパートナーを名乗れるよ!」

 

「当たり前だ。そのリヴァイヴⅡSは雪華並みの俺の傑作機だぞ?」

 

シャルロットも新しくなったリヴァイヴの反応にご機嫌だ。

 

「あまあまー。この子ってどんなISなのー?」

 

「今から説明してやるよ」

 

本音も整備科志望ではあるもののやはり自分のISというのには憧れがあったらしく、はしゃいでいた。

 

「オートクチュール・・・・専用パッケージまで用意してたんだ。今のが攻撃と機動力メインだとするとこのパッケージは・・・・」

 

簪もstorageに入れてあるパッケージのデータを見ながら新たな戦術を考え始める。

 

(本当にあの子は生徒会に欲しいわね・・・・一夏君と一緒に引き込んじゃおうかしら?)

 

そんな中、楯無も雪兎をどうにか味方にできないか考え出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型の御披露目も済み、雪兎は楯無を部屋に招いて話をすることに。

 

「それで話とは?」

 

「貴方に回りくどい話は必要なさそうね。生徒会に入ってくれないかしら?」

 

「俺の監視と引き込みですか?」

 

「やっぱりお見通しみたいね」

 

楯無の考えを雪兎は正確に見抜いていた。

 

「今日見せてもらった新型もそうだけど、君の技術力と観察眼は出来れば敵に回したくないの」

 

「俺も更識みたいな暗部組織は敵に回したくありませんよ」

 

「なら了承ってことでいいのかしら?」

 

「断っても一夏みたいに負かして会長権限使うんでしょ?」

 

「君相手だったら私でも簡単には勝てないと思うわ・・・・私のISの情報だって少しは知ってるんでしょ?」

 

「まあ、簡単に負けてやるつもりはありませんよ」

 

互いにそこまで意地を張るつもりがないのか雪兎は割りとあっさり生徒会の手伝いを了承した。

 

「出来れば整備部か料理部とかにも参加したかったですけどね」

 

「整備は確かに君なら大歓迎でしょうね。料理部は彼女さんかしら?」

 

「そんなとこです」

 

「その辺はまた何とかするわ」

 

そこまで話すと楯無は姿勢を正した。

 

「ここから生徒会長としてではなく私個人としての話よ・・・・簪ちゃんのこと、色々助けてくれてありがとう」

 

簪のことを気にしてはいたが、自分が動くと逆効果だと知って動けずにいた楯無は雪兎に感謝していた。

 

「あれは本音に頼まれて、俺個人も打鉄弐式に興味があったから手伝っただけですよ」

「それでもよ・・・・君が友達になってくれるまで簪ちゃんは色々無理をしてたわ。あのまま一人でやっていたらいつか大きな事故を起こしてたかもしれないし」

 

事実、原作では飛行テスト中にエラーを起こして墜落。一夏が傍にいなかったら大怪我をしていただろう。

 

「そんなに心配ならちゃんと話し合えば良かったのに・・・・どうも俺の周りの姉という人種は不器用なんですから」

 

「うぐっ」

 

「簪も今は貴女のことをそこまで嫌ってはいませんよ。ただ、今は貴女が簪をどう思っているのかわからなくて距離が掴めないだけですから」

 

「そう・・・・」

 

「そっち関係は簪の友達として関係修繕に協力しますよ」

 

「うん、ありがとう」

 

どうも楯無は原作通り簪のことになると弱気になってしまうようだ。

 

「そんなに弱気にならないでくださいよ、学園最強の名が泣きますよ?俺は一夏のことを貴女に任せます。だから簪のことは任せてください」

 

「これじゃあどっちが年上かわからないわね。一夏君はことは任せなさい。代わりに簪ちゃんのこと、お願いね?」

 

こうして雪兎と楯無の対話は終わった。雪兎の部屋を出た楯無はどこか憑き物が落ちたように気が楽になっていた。

 

「さてと、気も楽になったことだし、今度は一夏君に噂のマッサージしてもらって身体の方も解してもらおうかしら?」

 

頼りになる後輩を得て楯無は嬉しそうに現在居座っている一夏の部屋へと戻っていくのだった。




やっと新型三機出せました。

そして楯無さんは雪兎という援護を受け簪と仲直りするため頑張ることに・・・・


次回予告

学園祭が迫り1年1組の出し物は原作通りに御奉仕喫茶に決まり、準備に取り掛かる。一方で、雪兎は更識姉妹の関係修繕と襲撃してくる亡国機業対策をシャルロットと行い始める。

次回

「学園祭準備と亡国機業 兎、メタの準備を始める」


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36話 学園祭準備と亡国機業 兎、メタの準備を始める

学園祭が迫る中、更識姉妹と亡国機業の襲撃に対し雪兎が動きます。

シャルロットの閑話もそのうち書くつもりです。


楯無と対話した翌日、全校集会にて学園祭の話が出たため、その日のホームルームで出し物を決めることになったのだが・・・・

 

「何で学園祭の出し物の投票で一位になった部に俺が入ることになってるんだよ・・・・」

 

結局何の部活にも入っていない一夏は景品にされていた。尚、雪兎は事前に生徒会所属で本人の希望から整備部と料理部も兼任ということが発表され集会が少し荒れたが、千冬の一喝で静かになった。雪兎の役職は原作で一夏がなる予定だった副会長である。

 

「一夏、それよりもクラスの出し物を何とかするべきだ」

 

何故なら・・・・『織斑&天野のホストクラブ』『・・・・とツイスターゲーム』『『・・・・とポッキー遊び』などと原作通りまともな案が何も出ていなかったのだ。

 

「「却下!」」

 

「「「「えーっ!?」」」」

 

「言いたいことはわからんこともないが俺達二人への負担が大き過ぎるわ!あと今の案だと客に対して対応する人数も合わん!まともな案を出さないなら問答無用で休憩所にするぞ!!」

 

非難の声は雪兎の一喝で沈黙した。正論過ぎて先程の案を強行出来る理由がなかったのだ。

 

「ならば、メイド喫茶はどうだ?」

 

そこでラウラが意見を述べた。

 

「確かに客受けもいいし、飲食店での経費回収も出来るな」

 

「そうだ。それに招待客もいるのだから休憩所としても需要があるはずだ」

 

普段のラウラからは想像できない意見にクラスメイト達は少々驚いていたが、実現性などを考えれば今までの案より随分とまともで、クラスメイト達はラウラの案に割りと乗り気である。

 

「メイド服については私にツテがある。そこの二人の執事服も含めて借りられないか聞いてみよう」

 

ツテとは@クルーズのことだろう。どうやらラウラはあの制服が少し気に入っているようだ。

 

「なら、1年1組はメイド喫茶・・・・いや、御奉仕喫茶だな。それで決定でいいな?」

 

「「「「はーい!」」」」

 

こうして1組の出し物は御奉仕喫茶に決定した。

 

「クラス委員、俺なんだけど・・・・」

 

クラス委員である一夏を半ば無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の特訓終了後、一夏と楯無とメイド服の件を連絡しにいったラウラを除くメンバーは食堂に集まっていた。

 

「ーーという訳で、会長も簪とは仲直りしたいんだってよ」

 

面と向かっては言えないと言う楯無に代わり、雪兎が先日の話を一同に聞かせていた。

 

「お姉ちゃん・・・・」

 

信じたいけどまだ信じ切れないといった表情を見せる簪だが、少なくとも否定的ではなさそうだ。

 

「俺が話してみた感想だが、会長ってどうも説明下手っていうか言葉が足りないというか・・・・」

 

「あー、なんとなくあまあまが言ってることわかるよー」

 

「うん、今のは私にもよくわかった。お姉ちゃんっていつも肝心なとこ言わないから・・・・」

 

つまり、「簪が大事だから」その一言さえ伝えていればこんなのややこしい事態にはならなかったのだ。

 

「束さんの場合は大事ってのは伝えくれてるが、本心的なもんが見えなくて信用できない・・・・違うか、箒」

 

「う、うむ、その通りだ・・・・」

 

箒と束の場合は束の普段の態度のせいか本音が見え難く、どこまで本気なのかわからないのだ。

 

「俺が二人に言えるのはもう少し姉を信用してやれってことと、もう少し話をしてみろってことくらいだ」

 

「箒はすぐに会えないからまた何れってことになるけど。簪はすぐ近くにいるんだ。明日、特訓の後くらいに時間取ってもらうよう俺から言っておくから少し話してみろよ」

 

「うん、雪兎がそう言うなら私、お姉ちゃんと話してみる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って話になりました。なんで、少し簪とちゃんと話してやってください」

 

食堂での話し合いを本人達の許可を得て雪兎は楯無に伝えた。

 

「ごめんね。こんなメッセンジャーみたいなことさせて」

 

「そう思うならさっさと仲直りしてください。それで俺の仕事が一つ片付くんですから」

 

「はい、善処します」

 

この手の話だと楯無は何故か雪兎に強く出れない。

 

「・・・・それと、学園祭の時に一夏に接触してくる企業の人間がいたら警戒しておいてください。おそらく、最近起きているIS強奪グループの人間です」

 

「聖ちゃんや本音ちゃんも貴方の新型を持ってるけどそっちはいいの?」

 

「俺がそんなこと対策してないとでも?盗難防止措置はしてありますし、出来るだけ他の専用機持ちと一緒に行動するよう言ってあります。でも、一番狙われるとしたら一夏です」

 

「わかったわ。私の方も警戒はしておくわ」

 

(亡国機業、俺がいる限り悪いがお前らに好き勝手はさせねぇからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楯無との話を終えて雪兎が部屋に戻ると部屋の前にシャルロットの姿があった。

 

「シャル?どうしたんだ、一体」

 

「うん、ちょっと雪兎に聞きたいことがあって」

 

「とりあえず部屋に入れよ」

 

他人には聞かせられない話題だと察した雪兎はシャルロットを部屋に招き入れた。

 

「それで?」

 

「うん、前に雪兎が言ってたIS強奪犯の話だよ」

 

以前、雪兎は自身が知る原作知識で起きた大きな事件について大まかに聞かされており、学園祭で起きる一夏襲撃事件についても聞いていたのだ。

 

「犯人グループは亡国機業っていう全貌がわかってない組織だ。俺が知ってる構成員は四人でスコール、オータム、エム、レインで、今回動くのはオータムとエムだ。使用ISはアメリカの第2世代【アラクネ】とイギリスの【サイレント・ゼフィルス】だ」

 

「!?サイレント・ゼフィルスってセシリアのブルー・ティアーズの・・・・」

 

BTシリーズ2号機であるサイレント・ゼフィルスが奪取されているという雪兎の言葉にシャルロットは驚愕する。

 

「亡国機業ってのはそういう組織なんだ。まあ、使用機体さえわかってれば対策のしようなんていくらでもあるからな」

 

すると、雪兎は投影モニターにアラクネとサイレント・ゼフィルスのデータを表示する。

 

「アラクネはデータがあったから詳細まではっきりしてる。そして、サイレント・ゼフィルスは俺の記憶通りならブルー・ティアーズと同じ対応でいけるはずだ。まあ、偏向射撃も使ってくるから警戒は怠るなよ?」

 

「偏向射撃ってブルー・ティアーズのBT兵器が最大稼働した時に使えるっていうあれだよね?」

 

「ああ、それを苦もなく扱うやつが亡国機業にはいる。そいつがエムだ。そんで、一夏に接触してくる巻上礼子を名乗る女がアラクネを使うオータムだ」

 

そんな組織すらメタを張ろうとするのが雪兎なのだ。

 

(悪の組織っぽいけど、亡国機業って組織の人達には同情するよ・・・・)

 

理由は不明だが、各国のISを強奪している亡国機業。となれば次に一夏の白式や雪兎のISが狙われるのは無理もないだろう。だが、相手が悪過ぎたのだ。このメタに定評がある雪兎に事前に使うISを把握されるというのがどれだけ致命的なことなのか、亡国機業はこの学園祭で思い知ることになる。




という訳で雪兎が亡国機業の歓迎準備を開始・・・・原作での強敵感が大幅ダウン確定です。
福音の時と違い遠慮する必要性ゼロのため、雪兎はガチモードです。(終わったな、亡国機業)


次回予告

やってきた学園祭当日。一夏と雪兎、それとシャルロットに招待券をもらった五反田兄妹と御手洗数馬の三人がIS学園を訪れる。一方、亡国機業から白式強奪の任を受けやってきたオータムは雪兎や更識によって徹底的な妨害を受けることに・・・・

次回

「学園祭開幕 兎、更識と一緒に妨害工作に回る」


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37話 学園祭開幕 兎、更識と一緒に妨害工作に回る

学園祭スタートです。
そして今回はとある理由でシャルロットがキレます。

雪兎のイラストを妹が描いてくれたのでキャラ設定にアップしておきました。


雪兎が設けた更識姉妹の話し合いの場によって姉妹が抱えていたすれ違いも解消され、姉妹の仲は改善された。長年簪との仲に悩んでいた楯無は雪兎に感謝のあまり抱きついてしまい、シャルロットが嫉妬のあまり楯無を雪兎ごと射とうとするという事件もあったが、それ以外は特に問題なく学園祭の準備は進んでいた。

 

「シフトはこんなもんか・・・・」

 

クラス委員として様々な準備に終われていた一夏に代わり、雪兎が人員配置や休憩時間のシフト、厨房担当への指導などを行っていた。休憩時間のシフトにはラバーズ達が色々言ってきたが、休憩時間をずらして1組の三人は一夏と少しずつ回れるように調整して黙らせた。鈴?違うクラスまでは手が回らないので一夏に投げておこう。あと、クラスの善意で雪兎とシャルロットは同じシフトで休憩時間に入れるのだが・・・・

 

「すまん、シャル。一緒に回ること自体は出来そうなんだが生徒会の見回りも兼ねることになりそうだ」

 

そう、一夏への襲撃を警戒し雪兎も楯無に協力して見回りをすることになっており、シャルロットとゆっくり学園祭デートとはいけそうにないのだ。

 

「う、ううん。それはあの話を聞いた時から覚悟はしてたから・・・・(亡国機業め・・・・一年に一回しかない学園祭デートのチャンスだったのに)」

 

先日亡国機業に同情していたことも忘れ、シャルロットは亡国機業への徹底した妨害を決意する。

 

(恋する乙女の邪魔をするとどうゆうことになるか・・・・たっぷり教えてあげるよ)

 

この時、作戦を前日に控えたオータムとエムが背筋に悪寒を感じたんだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園祭当日。1年1組の御奉仕喫茶は大盛況だった。それもそのはず、学園で二人しかいない男子である一夏と雪兎が接客をしており、その姿が執事服なのだ。これが受けないわけがない。雪兎にはシャルロットという彼女がいるのは既に学園の常識になりつつあるが、せめて接客を受けるだけでも、という生徒は少なくはないのだ。また、店員とちょっとしたゲームをして勝つと一緒にツーショット写真が撮れる。そして、料理は全て雪兎監修ときた。これで盛況にならない方がおかしい。

 

「三番テーブルにサンドイッチ二つお願いします!」

 

「五番テーブル、ロールケーキとアイスティーのセット三つです」

 

「りょ、料理長!ヘルプです!」

 

途中、鈴が自分のクラスの中華喫茶の制服で来店したり楯無が新聞部の黛薫子を連れてやってきたりもしたが、雪兎は料理長として注文を捌きながらあることを警戒していた。そしてそれは楯無が一夏の代わりをするからと休憩に入ろうとしていた時に訪れた。

 

「ちょっといいですか?」

 

その女性は出来る営業担当といった印象を受ける出で立ちで一夏に接触してきた。

 

(来たか・・・・)

 

雪兎はすぐにシャルロットと楯無にアイコンタクトで知らせる。

 

「失礼しました。私、こういう者でーー」

 

「すいません、店内でそのようなことはご遠慮願えませんか?」

 

名刺を渡そうとする女性をシャルロットがトレイで遮る。

 

「それに、そういうのは正式に学園を通してからと事前に説明されていますよね?」

 

そこに楯無が規則を口にし、完全に接触を断つ。

 

「一夏、今のうちにいけ」

 

「サンキュー、助かった」

 

その隙に一夏は教室を出ていった。

 

(ちっ)

 

これには女性も苛立ちを隠せず、舌打ちをすると教室を出ていった。

 

「あの女ね?」

 

「ええ、割りと簡単に尻尾出しそうですね。多分、あんまり我慢強くないタイプだと思うので徹底的に一夏に接触できないようにしてやれば強引な手段に出るかと」

 

「ふふふ、お主も悪よのぉー」

 

「いえいえ、生徒会長程ではありませんよ」

 

「「フッフッフッフッフッ・・・・」」

 

シャルロットはこの時「この二人、組ませると怖いなぁー」とそう思った。

 

その後も巻上礼子を名乗り学園に侵入したオータムは徹底的に一夏との接触を邪魔される。ある時は話しかけようとした時に更識の手の生徒にぶつかられたり、またある時は一夏達を出し物の教室へ入れて順番待ちと言って足止めされたり、またある時はソフトクリームを持った客(当然仕込み)にぶつかられたり、その他諸々の手でオータムは徹底的に妨害を受けた。

 

(何なんだよこの学園はぁあああ!!)

 

これだけ自分にばかり色々起きては雪兎の推測通り我慢強くないオータムはぶちギレる寸前であった。それが全て雪兎と楯無の手平の上だったと知ったら作戦など無視して暴れ回ったことだろう。

 

(くそっ、こうなったら・・・・)

 

そして、オータムは雪兎達の予定通り強引な手段へとやり方を変えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、とある三人がIS学園の正門にやってきていた。

 

「ついに、ついに、ついにっ!女の園、IS学園へと・・・・来たぁあああ!!」

 

「気持ちはわかるがもう少し落ち着けよ、弾」

 

「お兄、うるさい」

 

それは一夏が招待券を渡した弾と雪兎に招待券をもらった数馬、そしてシャルロットに招待された蘭の三人だった。原作では弾だけだったのだが、雪兎が「数馬も誘ってやるか」と招待券を送り、弾だけ誘って蘭を誘わないのは不公平ということで誘う相手のいなかったシャルロットが蘭に招待券を渡したのだ。

 

「仕方ねぇだろ?IS学園なんてこんなことでもなけりゃ来れねぇんだから」

 

「そりゃそうだけどよ」

 

少しがっつき過ぎではないだろうか?

 

「ここで一夏の迎えを待つ手筈だったよな?雪兎とは夏休みに会ったけど一夏とは卒業以来だな」

 

「シャルロットさんには後でお礼言わなきゃ」

 

そんなことを話していると。

 

「そこの貴方達」

 

IS学園の制服を来た三年生の生徒が声をかけてきた。

 

「「「は、はい!」」」

 

「貴方達、誰かの招待?一応、チケットを確認させてもらっていいかしら?」

 

「ど、どうぞ」

 

生徒にそれぞれチケットを見せる三人。

 

「あら?配布者は織斑君に天野君、それからデュノアさんね」

 

「知り合いなんですか?」

 

「織斑君と天野君のことを知らない生徒はいないわ。それに天野君はデュノアさんとの噂もあるし、一緒に生徒会で仕事してるもの」

 

声をかけてきた生徒は生徒会会計を務めている布仏虚。本音の姉だった。

 

「そ、そうなんですか」

 

この時の弾は挙動不審だった。何故なら虚は弾の好みのタイプの女性だったからだ。

 

(な、何か話題は・・・・)

 

「あ、あのっ!」

 

「何かしら?」

 

「いい天気ですね!」

 

「そうね」

 

この時、弾は自分の会話センスに絶望していた。そんな弾を不思議そうに眺めながら虚は「楽しんでいってね」と言い残し去っていった。

 

「ドンマイ、弾」

 

「はぁー。お兄、あの人雪兎さんの知り合いなんだから後で聞いてみたら?」

 

弾のあまりの落ち込みように流石の蘭も同情したのか、微かではあるが希望を与える。

 

「お、おう・・・・」

 

それから三人は一夏が来るのを大人しく待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一夏と合流した三人はしばらく一夏と学園祭を回り、蘭の希望で1年1組の教室を訪れた。

 

「おっ、来たな三人共」

 

「いらっしゃい」

 

「あっ、雪兎さんにシャルロットさん!」

 

そんな四人を丁度休憩時間になったらしい制服姿の雪兎とシャルロットが出迎えた。

 

「写真で見せてはもらったけど、すげぇ美少女じゃねえか、雪兎の彼女・・・・おっと、自己紹介がまだだったな。一夏と雪兎の友人の御手洗数馬だ。よろしく」

 

「シャルロット・デュノアです。こちらも雪兎達から話は聞いてるよ」

 

「シャルロットさん、チケットありがとうございました」

 

「ううん、僕は誘う相手いなかったから丁度良かったよ。今日は楽しんでいってね」

 

「はい!」

 

原作と違い一夏を取り合う仲ではないためか二人は割りと仲が良い。容姿が似ていれば姉妹と言われても違和感無いレベルだ。

 

「一夏、すまんが休憩終了だ。会長も生徒会の方に行って人手が足りなくなりそうなんだ」

 

「わかった。それじゃあ、三人共、俺は仕事戻るけど楽しんでいけよ」

 

雪兎と入れ違いで仕事に戻る一夏が去ると、蘭が雪兎に先程の生徒・虚について訊ねた。

 

「生徒会所属の三年生?ああ、虚さんか」

 

「やっぱり知り合いだったか」

 

「虚さんがどうかしたのか?って、弾。なんだそのすがるような顔は」

 

「あー、どうもうちのお兄がその虚さんに一目惚れしたらしくって」

 

(あー、原作でもそんなことあったなぁー。アニメだと虚さん自体出ないから削られたエピソードだったな)

 

「虚さんって言うのか・・・・」

 

「こりゃ重症だな。何やった?」

 

「何か話そうとして「いい天気ですね」って」

 

「・・・・ドンマイ、弾」

 

(原作通りなら虚さんも弾のこと気にしてたはずだし、虚さんへちょっと探り入れとくか)

 

弾に訪れたせっかくの春なのだ。友人として応援しようと雪兎は思うのだった。

 

「ところで雪兎はシャルロットさんと休憩か?」

 

「ああ、クラスメイトが休憩時間合わせてくれてな」

 

「それなら邪魔するのは野暮だな」

 

「悪いな」

 

「いや、チケットくれただけでも感謝してるって」

 

「じゃあ、楽しんでけよ?」

 

「おう。雪兎もな」

 

そんなやり取りをして雪兎達も弾達と別れて学園祭を回ることにした。




オータム乙。
シャルロットまで妨害に回り、徹底的に接触を封じられてオータムは一夏に近付けません。

雪兎と楯無のコンビも恐ろしい。片やメタと妨害、片や情報収集と妨害。何、この嫌がらせコンビ・・・・しかも二人ともISも生身も強いときた。亡国機業、哀れ。


次回予告

学園祭も大詰めを迎え生徒会の参加型演劇【シンデレラ】が幕を開ける。しかし、この演劇には一夏だけでなく雪兎も巻き込まれることに・・・・

次回

「戦う灰被り姫と王子と騎士 兎、演劇に巻き込まれる」


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38話 戦う灰被り姫と王子と騎士 兎、演劇に巻き込まれる

学園祭も終盤戦のシンデレラへ・・・・
ここでとあるフラグが回収されます。わからない人は六章の1話目をご覧ください。

簪の弐式用のパッケージのデータもアップしてきました。


雪兎とシャルロットは弾達と別れた後、見回りを開始した。途中でオータムが一夏を連れ込むと思われる生徒会の出し物【シンデレラ】の行われるアリーナもチェックし、雪兎はとある仕掛けを施していた。

 

「よし、これでいいな」

 

「どうしてそこまで思い付くのかなぁ」

 

それは更衣室のセキュリティに細工がされると細工されたように見せかける仕掛けで、実際は細工を無力化するという代物だった。それは一夏を隔離しようとするオータムに対する仕掛けだ。

 

「この手のやり口は束さんの教えだ。ちゃんと会長にも許可取ったから問題無い」

 

「で、演劇中に一夏がいなくなってここに反応があれば救援にいくってことでいいの?」

 

「ああ、俺はもう一人の方を相手にするからオータムはシャルロットに任せる。アラクネのスペックは把握してるな?」

 

「誰に言ってるの、雪兎。そっちこそサイレント・ゼフィルスの相手でしょ?」

 

「ブルー・ティアーズの強化仕様程度で俺がやられるとでも?」

 

今回は福音の時のような強化フラグなどもないので雪兎は最初から一切遠慮するつもりはない。シャルロットもリヴァイヴⅡSの扱いにも慣れアラクネとオータムのデータは頭に入っている。その上、二人はそれぞれ新たなパックまで準備している。どう考えてもオーバーキル前提である。

 

「オータムはいざとなったらアラクネからコアを抜いて自爆させてくると思うから注意しろよ?」

 

「うん」

 

「さて、そろそろ演劇の方の準備にいかねぇとな」

 

「まさか僕達まで出ることになるとはね」

 

実は雪兎とシャルロットも演劇で役があるのだ。その役とは王子の護衛という原作にない役だった。

 

「・・・・何か嫌な予感がしてならんのだが」

 

「そ、そうかな?」

 

雪兎が何か不穏なものを感じ取るとシャルロットは雪兎から目を逸らした。

 

(・・・・まさか、な)

 

雪兎はある可能性に至るが、それを否定する。しかし、この時シャルロットをちゃんと問い詰めておかなかったことを雪兎は後に後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンデレラ。誰もが大抵聞いたことのあるお伽噺の一つで、義理の母とその娘である義理の姉二人にいじめられていたシンデレラが魔女の魔法でドレスアップして舞踏会に行き王子のハートを射止めるが、魔法の制限時間である12時が過ぎ慌てて帰ろうとする中、ガラスで出来た靴を落とす。王子はその持ち主を妃にするとシンデレラを探し見事結ばれる。要約するとこんなお話だ。黒い原文の方だと色々凄まじいらしいがそこは置いておこう。シンデレラストーリーなどと言う言葉が生まれる程有名なこのお伽噺だが、更識楯無が生徒会の出し物として改変された演劇【シンデレラ】はとんでもない内容だった。

 

1、シンデレラはスパイである。

2、シンデレラは数々の舞踏会をくぐり抜けた歴戦の兵士である。

3、シンデレラが舞踏会に参加する目的は王子の王冠に隠された国の機密情報を奪取するためである。

 

色々と突っ込みどころ全開である。そんな王子役に選ばれたのは原作通り織斑一夏。原作と違うのは王子に二人の護衛役がいることだった。一人は護衛の騎士である雪兎(舞踏会なので軍服)。もう一人はメイド兼護衛のシャルロット。護衛は劇中にオータムを警戒するためであり、本当に護衛なのだ。

 

「雪兎、シンデレラって何だったっけ・・・・」

 

劇の前説をする楯無のナレーションを聞き、王子の衣装を身につけた一夏が呟く。

 

「気にしたら負けだ。とりあえず王子はその王冠を守ることだけ考えていてください」

 

「護衛は僕達がしますから」

 

原作通りに一人で五人を相手にするよりは遥かにマシな状況ではあるが、四人共原作より強くなっているため油断はできない。

 

「はぁっ!」

 

そんな中、一番最初に仕掛けてきたのは鈴だった。鈴は偏月刀を片手に一夏に襲いかかるも雪兎が何処からか取り出した片刃の直刀で弾くと、弾かれて後方に跳んだ鈴にハンドガン(弾はゴム弾)で追撃する。

 

「わっとっと、相変わらず容赦ないわね、あんた」

 

「仮にも護衛だ。手は抜かん」

 

「た、助かったよ、雪兎」

 

「油断大敵ですわ!」

 

鈴の襲撃を防ぎ、一夏が気を緩めた瞬間、一夏を潜んでいたセシリアの狙撃(ゴム弾)が襲うも、今度はシャルロットが防弾シールドで弾丸を弾く。

 

「僕がいるのを忘れちゃ困るよ、セシリア」

 

「今のは完璧な奇襲だったはず!」

 

「僕達が狙撃ポイントを予めチェックしてないとでも?」

 

「ま、まさか鈴さんの襲撃の直後から死角のカバーを!?」

 

そう、オータムへの仕掛けを行った際についでにこの舞台の下見もしており、セシリアが潜んでいた狙撃ポイントなどは全てチェック済みだったのだ。

 

「セシリア達には悪いけど、これも仕事だからね」

 

そう言うとシャルロットはシールドを量子変換してアサルトライフル(ゴム弾)に持ち変えるとセシリアのいる狙撃ポイントを攻撃する。

 

「高速切替!?それ、反則なんじゃ」

 

「護衛対象の一夏は攻撃手段ないからな。人数差のハンデとして会長の許可は貰ってある」

 

直刀をしまいもう一丁ハンドガンを取り出した雪兎は容赦なく鈴に発砲する。

 

(やっぱりこのコンビ厄介すぎぃ!!)

 

用意周到、抜群のコンビネーション、そして雪兎は近接よりの万能型、シャルロットは射撃よりの万能型と穴も少ない。一方の鈴達は互いに王冠を狙うライバル同士であるためコンビネーションなど皆無である。どちらが有利かなど火を見るより明らかだろう。

 

「やはりこうなったか」

 

「私達も参加させてもらおうか」

 

そこに姿を現したのは箒とラウラの二人だった。

 

「げっ、箒、ラウラ」

 

「来ましたわね」

 

こうして四人のシンデレラがこの場に揃う。

 

「やっぱそうなるよな」

 

「でも、僕達が簡単に抜けるとは思わないでね?」

 

しかし、雪兎とシャルロットも負けるつもりはないようで各々武器を構える。

 

「これ、絶対シンデレラじゃない・・・・」

 

そんな中、一夏の虚しい声が響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も激しい戦いが繰り広げられていた。

 

「そろそろ弾切れじゃないの?」

 

「問題無い」

 

ハンドガンの弾切れを狙っていた鈴だったが、雪兎はマガジンを外しそのまま落としながら量子変換し、新たなマガジンを同じ位置に出すとガンスピンさせてマガジンを嵌め込む。

 

「ガンスピンリロード!?あんた何処の魔王様よ!」

 

そう、その技能は某奈落から這い上がった魔王様が得意としていたリロード法だったのだ。

 

「練習したら出来た」

 

「これだからあんたは!」

 

「やはりお前は厄介だな」

 

雪兎が相手にしているのは鈴とラウラで、ハンドガンで片方を牽制しつつ、もう片方を直刀で抑える雪兎。

 

「そんなんじゃ一夏の王冠は獲れんぞ」

 

攻めあぐねている鈴とラウラに今度は二刀流となった雪兎が斬りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、当たりませんわ」

 

一方で少し離れたところでシャルロットの相手をする箒とセシリアもシャルロットを攻略出来ずにいた。

 

「シャルロットが強敵なのは知っていたが、ここまでとは・・・・」

 

高速切替による武器交換があるとはいえ、二対一で攻めきれないとは思っていなかった箒とセシリア。雪兎と並び立とうとするシャルロットの成長は凄まじかった。

 

「これくらい離せば十分かな?」

 

「はっ!?い、一夏さんは!?」

 

「これがお前の狙いか!?」

 

気付けば箒とセシリアは一夏を見失っていた。

 

「そういうことさ。じゃあ、僕はそろそろ雪兎と合流しないといけないから」

 

「ま、待てっ!」

 

その声も虚しくシャルロットはスタングレネードで行方を眩ませてしまう。

 

「は、嵌められましたわ」

 

「くそっ、一夏を探すぞ!」

 

スタングレネードの閃光から回復すると二人は再び一夏を探しに舞台を駆けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャル、お疲れ様」

 

「雪兎もね」

 

シャルロットが箒とセシリアを撒いて事前に打ち合わせていた合流ポイントに向かうと既に一夏と雪兎の姿があった。どうやら雪兎も鈴とラウラを撒いたらしい。

 

「め、目が・・・・」

 

一夏は雪兎の放った閃光玉の光をまともに食らってしまったのかム○カのようなことを呟いている。

 

「ふぅ、やっと落ち着けるぜ」

 

「鈴とラウラの相手してたんだもんね、当然だよ」

 

雪兎を労いつつ、シャルロットはハンカチを取り出して片手で雪兎の汗を拭おうとするが・・・・

 

「おい、シャル。その手はなんだ?」

 

残るもう片方の手は雪兎の胸にあるブローチを狙っていた。

 

「な、なんのことかな?」

 

すると突然、楯無のアナウンスが入る。

 

『実は護衛の少女の正体は某国のスパイ。しかし、彼女はもう一方の護衛の少年に恋をしてしまい、それが本国にバレてしまった少女は護衛の少年が持つもう一つの機密情報を隠したブローチを奪えば見逃してもらえると言われ少年のブローチを密かに狙っていたのだ』

 

微妙にシャルロットの境遇に似た解説が入り、味方だと思っていたシャルロットまでもが雪兎の敵となってしまう。

 

「雪兎、ごめんね・・・・」

 

「シャル・・・・まさか、部屋割りか!」

 

ここで雪兎は事前に仕込まれていた事態の全貌を知る。そう、今の雪兎の部屋は一夏と同様に一人で部屋を使っている。それを利用して劇を盛り上げるべく楯無はシャルロットに雪兎のブローチを奪えば再び雪兎と相部屋にしてもいいと悪魔の囁きをしていたのだ。

 

「謀ったなぁ!更識楯無ぃいいいいい!!」

 

そして、舞台上に雪兎の絶叫が響くのであった。




雪兎、楯無に謀られるの巻。

次でシンデレラは終わってオータム戦に入る予定です。


次回予告

楯無の策略でシャルロットと攻防を繰り広げることになった雪兎。一方、一夏に再びオータムの魔の手が伸びる。

次回

「シンデレラの幕引きと亡国の足掻き 兎、彼女との攻防」


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39話 シンデレラの幕引きと亡国の足掻き 兎、彼女との攻防

最近、あまり甘くないので糖分投下。
ブラックコーヒーの備蓄は十分か!

という訳でシンデレラの続きでございます。この話に別のサブタイをつけるなら「裏切りと怒りのシャルロット」ですかね?


楯無side

 

『謀ったなぁ!更識楯無ぃいいいいい!!』

 

舞台上で雪兎君の絶叫が響く。すると、本音ちゃんが少し青ざめた表情でこちらを見る。

 

「かいちょー、ちょっと今回はマズイかもよー」

 

「・・・・もしかして、私、彼の逆鱗に触れちゃった?」

 

「うん、前におりむーやりんりんに聞いたんだけど・・・・」

 

そこで私は「顔面ウシガエル事件」と呼ばれる事件の顛末を聞かされた。

 

「・・・・マズイわね」

 

更に集めた情報では一夏君に想いを寄せる専用機持ちの娘達がクラスで問題行動を起こすと雪兎君は罰として時間無制限試合(メタ装備)×十数回というえげつないメニューで心を折りにくるらしく、気の強い彼女達でも雪兎君には逆らわないそうだ。私に対しても簡単には負けないと言っていたので私の霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)に関しても情報を持っているに違いない。そう考えると私も顔が青ざめているのだと自覚する。

 

「か、かいちょー・・・・あまあまから伝言。「後で覚えておけよ、更識楯無」だそうです」

 

コアネットワーク経由で連絡がきたらしく、本音ちゃんのIS【ナインテイル】の待機状態であるカチューシャに狐耳が生えている。

 

(ヤバい、間違いなく彼は怒ってる)

 

「お嬢様、ここは変に誤魔化さずに謝った方が賢明かと」

 

虚の言う通り普通に謝るのが最善だろう。

 

「うん、今回の件は後でちゃんと謝ります」

 

そう誓い、私は舞台上を映すモニターに視線を戻した。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、そのブローチを渡して!そうすればまた二人一緒(の部屋)にいられるんだよ!」

 

楯無の甘言に唆されたシャルロットは雪兎にダガーとハンドガンを手に雪兎に言う。

 

「シャル、なんでそんな甘言に乗ったんだ!」

 

「仕方ないじゃないか!僕は雪兎とずっと一緒にいたいんだもの!」

 

始まった二人の戦いは互いに学生とは思えないガチ戦闘で閃光から回復した一夏や雪兎の絶叫を聞いて駆けつけた箒達も介入出来ないものだった。また、一夏はその二人のど真ん中に位置しており、そこに突入する勇気は箒達にはなかった。

 

「雪兎は僕と一緒(の部屋)は嫌なの!?」

 

「そんなこと言ってねぇだろっ!俺が気に食わないのはその為にこんなことしてることだよ!」

 

下手に突入すれば間違いなく二人の銃弾の雨と投擲された刃の餌食になるだろう。一夏に当たらないのは単に彼らが一夏に当たらないように配慮して攻撃しているからだ。この二人の技量が他と隔絶しているのがよくわかる。

 

「僕にはこうする(会長の提案を飲む)しか雪兎と一緒(の部屋)にいられないのに!」

 

「そんなことしなくたって俺はお前と(恋人として)いられる!だからもうそんなことはやめろ!」

 

「ゆ、雪兎・・・・僕、僕はっ!」

 

雪兎が必死に説得するもシャルロットは今さら止める訳にはいかず涙を流しながらも雪兎のブローチを狙うべく雪兎に突撃する。

 

「この馬鹿がっ!」

 

それを雪兎は二丁のハンドガンでシャルロットの武器を射ち落とし抱き締める。

 

「雪兎、僕・・・・」

 

「何も言うな。悪いのはこんなことをお前に命じた馬鹿共(楯無)だ。お前は悪くない」

 

「うわぁあああん!」

 

雪兎は優しく抱き締められシャルロットはとうとう泣き出してしまう。

 

(シャルを泣かせてただで済むと思うなよ?更識楯無・・・・)

 

実はこの演劇、観客席や学園のモニターなどで観られており、今までの一夏を巡る騒動より雪兎とシャルロットの一幕の方が観客受けしていた。特に文芸部などは「この一幕を切り取って物語書けないかしら?」などと考えていたくらいだ。しかし、ここで一つの問題が発生した。

 

「あれ?一夏は?」

 

そう、一夏が消えていたのだ。

 

「あの弾幕の中でどこへ・・・・」

 

「シャル」

 

「うん」

 

そして、泣き止んだシャルロットは雪兎の言いたいことを理解すると行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一夏はというと巻上礼子ことオータムに連れられて雪兎の仕掛けが施された更衣室にいた。

 

「ここまで来れば大丈夫だろう」

 

「貴女は・・・・あの時の」

 

ちゃんと自己紹介出来ていないため巻上礼子という偽名すら知らない。まあ、キレかけのオータムは巻上ではなくオータムとしての素の話し方をしているため一夏もすぐには気付けなかった。

 

「何で俺を?」

 

「なんだ、お前は気付いてなかったのか・・・・私はな、お前の白式をいただきにきた悪の組織の美女だよ!」

 

そう言うとオータムの背中からアラクネの特徴でもある蜘蛛の脚ようなサブアームがスーツを突き破って現れる。

 

「くそっ!」

 

白式を展開して対抗しようとするが・・・・

 

「下がってて、一夏。彼女の相手は僕がするから」

 

そこにシャルロットが姿を現す。

 

「て、てめえ!どうやってここへ!?」

 

「ああ、雪兎っていつもこんな気分だったんだ・・・・学園祭には外部の人間が来るんだよ?君達亡国機業(ファントム・タスク)みたいなのが入り込んでくるのなんてお見通しだよ。対策してないとでも思った?」

 

「そんな馬鹿なっ!?ってことはあの邪魔も全部・・・・」

 

「ご名答。全部僕らの妨害だよ。そこで君が怒り心頭でこんな手荒な真似することも全部雪兎と楯無さんの手の平の上さ」

 

「あ、相変わらずえげつねぇ・・・・」

 

敵対するものへの容赦の無さは尋常ではない。だが、その肝心な雪兎の姿が見えないことに一夏は疑問を持つ。

 

「あれ?雪兎は?」

 

「ああ、雪兎ならもう一人来るだろうお仲間の相手をしに行ったよ。こっちは僕に任せてね」

 

「た、たかが一人で何ができる!」

 

援軍がシャルロット一人だと知り、侮られていると感じたオータムが吼えるが彼女はまだ理解していなかった。

 

「たかが一人?一人で十分だよ。そのIS、アラクネの対策はちゃんとしてきてるから」

 

「な、何だと・・・・?」

 

ここでオータムは漸く事態の深刻さに気付いた。相手は自分達亡国機業が動くのを知っていた。更に自分の行動まで完全に先読みされ、使用するISすらバレている。つまり、戦う前から詰んでいる(・・・・・・・・・・)ということだ。

 

「言ったよね?全部雪兎と楯無さんの手の平の上って」

 

そう言ってシャルロットはリヴァイヴⅡSを展開する。

 

「ラファール・リヴァイヴ?いや、違う、そのISは一体・・・・」

 

オータムは未知のISを目にし硬直してしまう。対してシャルロットは手始めに【G:ガンナー】を展開し、シャルロットはシールドガトリングとリヴァイヴⅡ用のソードアサルトライフル【グリフォン】を両手に構える。

 

「さあ、蹂躙を始めようか?」

 

学園祭デートという雪兎との一時を邪魔された乙女の怒りがここに炸裂する。

 

「簡単にやられないでね?歓迎の準備はしっかりしてきたから」

 

そう笑顔で言うシャルロットだが、眼が笑っていない。そして、オータムに更衣室のことなど考えていない鉄の豪雨が襲いかかった。

 

ズガガガガガ!!

 

「くそがぁあああああ!!」

 

これには堪らずオータムはアラクネを動かし回避行動に移る。途中、サブアームからレーザーを放とうとするも、サブアームを攻撃態勢にした瞬間にサブアームが射たれていく。それが繰り返されアラクネは最大の特徴であるサブアームを削られていく。

 

「う、嘘だろ!?」

 

「何度言わせるのかな?僕はちゃんと対策してきたって言ったよね?」

 

そのままアラクネはどんどんサブアームを失っていく。

 

(やべぇ、シャルロットがキレてる・・・・)

 

いつになくシャルロットの攻撃のキレがよく、見ているだけの一夏にもシャルロットがガチギレしているのがわかった。

 

「こ、こんなはずじゃ・・・・」

 

サブアームを全て失い、アラクネはオータム自身の手足以外残っていなかった。

 

「くそっ!」

 

そこでオータムは撤退することを決めるが、シャルロットが逃がすはずもなく【J:イェーガー】に換装するとオータムの前に先回りし【グリフォン】のソードを突き付ける。

 

「逃げられるとでも?」

 

「戦闘中にパッケージ換装だと!?まさかそのISはフランスで開発された新型の・・・・」

 

原型(オリジナル)だよ?亡国機業のオータムさん」

 

現行の機体を凌駕するとさえ言われているフランスの新型の原型であるISに第2世代機であるアラクネで勝てるはずもなかったのだ。

 

「チクショウ!!」

 

そして追い詰められたオータムはアラクネからコアを抜き取りアラクネの自爆シーケンスを起動させ、アラクネを乗り捨てる。

 

「シャルロット!」

 

「大丈夫!これも想定済みだから」

 

一夏はアラクネが自爆シーケンスに入ったことを知り、シャルロットに警告するが、それすらも雪兎達には読まれていた。今度は【W:ウィザード】に換装し、グラスパービットでアラクネを囲い、アラクネのシステムを支配して自爆シーケンスを停止させ、オータム本人もディフェンサーで囲い逃げ場を奪う。

 

「チェックメイト、だね」

 

シャルロット対オータムの戦いは完全にメタを張っていたシャルロットの圧勝にて終わり、オータムは剥離剤(リムーバー)を使う間も与えられず捕らえられたのだった。




シャルロット圧勝・・・・
正直な話、アラクネって雪華とリヴァイヴⅡSは天敵レベルで相性悪いです。そしてオータムどころかアラクネまで確保してしまいました。
恋する乙女やべぇー・・・・

会長「・・・・私、出番なかった」(しゅん)

次は雪兎対マドカの戦いです。


次回予告

オータムはシャルロットにより捕らえられ、それを知ったサイレント・ゼフィルスを纏うマドカは仕方なく救助に向かおうとするも、そこに学園最凶の男・雪兎が立ち塞がる。あれ?どっちが悪役だ?

次回

「雪兎VSエム 兎、マドカと戦う」


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40話 雪兎VSエム 兎、マドカと戦う

シャルロットVSオータム戦の次は雪兎VSマドカです。
捕まってしまったオータムはどうなるのか?
マドカは雪兎に勝てるのか?
何で亡国側の心配してるかって?雪兎が負けるイメージが浮かばないから。


マドカside

 

『エム、オータムが捕まったわ』

 

その通信は私がIS学園に向かっている途中にきた。

 

「そうか。あれだけ大きな口を叩いておいてこの様か」

 

『救助に向かってくれる?』

 

「拒否権などないのだろう?了解した」

 

私の体内には監視用のナノマシンが投与されている。そんな私が逆らえる訳がない。

 

『でも、篠ノ之束博士の弟子、天野雪兎とは出来れば交戦しないで。彼は不確定要素が強すぎるわ』

 

天野雪兎。織斑一夏と同時期に発見された二人目の男性IS操者にしてISの開発者である篠ノ之束の弟子とされる人物だ。彼に関しては学園内にいるスパイですら全貌を把握できておらず、高い戦闘能力と開発力、そして謎の情報収集力を併せ持つ異才。オータムに関しても彼が何かしら手を打ったのだろう。となれば・・・・

 

「スコール、それは無理な話だ。既にこちらが捕捉されている」

 

そう、彼は私が何処から来るのか知っていたかのように私を待ち受けていた。

 

『何ですって!?今すーー』

 

「スコール?通信妨害(ジャミング)か」

 

この時、私は気付くべきだった。コアネットワークを用いた(・・・・・・・・・・・・)通信が通信妨害される(・・・・・・・・・・)というのがどういうことかということを、そして今、私が使用するISが(・・・・・・・・・・・)どのようなISだったのか(・・・・・・・・・・・)ということを・・・・

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、シャルロットを一夏の元に向かわせた雪兎は楯無や千冬との打ち合わせ通りにセシリアと鈴を連れて哨戒に出ていた。

 

「セシリア、お前には言っておかないといけないことがある」

 

「今、この場でということは襲撃犯に関することですの?」

 

「ああ、今回の襲撃者は亡国機業という組織の連中だ」

 

「それって最近、各国のISを強奪してるっていう・・・・」

 

「その通りだ、鈴。俺の独自の情報網でその連中は先日イギリスのとある施設を襲撃したという情報が入った」

 

「まさか!?」

 

そこでセシリアは何故雪兎が自分にその話をするのか理解する。

 

「BT2号機【サイレント・ゼフィルス】それが強奪されたISの名だ」

 

「BTってセシリアのブルー・ティアーズの・・・・」

 

「ああ、同じコンセプトの機体だ。だが、試験用のブルー・ティアーズに対してサイレント・ゼフィルスは実戦用だ。この意味がわかるな?」

 

「それであんたは【W:ウィザード】で来たわけね」

 

祖国の、それも自身のISと縁のある機体が敵の手にあると知り項垂れるセシリアに対し、鈴は雪兎が装備したパックが何を警戒してのものかを察する。

 

「それもあるが、もう一つこいつで通信妨害を張るためだ。お仲間に連絡取られると面倒だからな」

 

「あんた、本当に容赦ないわね・・・・」

 

「ついでに言うとこの通信妨害エリア内ではコアネットワーク経由の通信とか全部出来なくなるから二人は範囲外にいてくれ。特にセシリア、お前のブルー・ティアーズはビットも使えなくなる。だからすまんが鈴と他の警戒に当たってくれ」

 

「・・・・サイレント・ゼフィルスのことはお任せしても?」

 

出来れば自身で取り戻したいところだが、【W:ウィザード】の性能は学園では雪兎の次に熟知していると言ってもいいセシリアは邪魔になると判断し雪兎にサイレント・ゼフィルスのことを託す。

 

「可能なら奪還するが、最悪の場合は破壊する。それだけは承知しておいてくれ」

 

「わかりましたわ。破壊されたとしても祖国へは私が説明しましょう」

 

「助かる」

 

そう言うと雪兎は高度を上げ【W:ウィザード】の広域センサーでマドカの位置を調べる。

 

(そこか)

 

そして、マドカのサイレント・ゼフィルスをセンサーに捉えると指令部で指揮を取る千冬に連絡を取る。

 

「織斑先生、こいつ(【W:ウィザード】)のジャミングフィールドを使います。以後は通信が出来ませんのでご了承を」

 

『わかった。やはり敵は早速投入してきたか』

 

雪兎がジャミングフィールドを使うのは打ち合わせで説明されている。そして、それが何を意味しているのかを千冬も悟る。

 

「ええ、おかげで準備が無駄にならずにすみましたよ」

 

『そちらはお前に一任する。とっとと片付けてこい』

 

「了解!」

 

通信を終えると雪兎は二次移行によって進化した【W:ウィザード】の力を解き放つ。

 

「いくぜ、グラスパー!」

 

進化したグラスパービットは別々であったディフェンサーを取り込み支配と反射のビットを一体化させた装備だ。攻撃機能こそ相変わらず存在しないものの、ジャミングフィールドの生成や耐久性の向上により、より凶悪な能力を発揮する。そのグラスパーを広域展開し、ジャミングフィールドを展開してマドカを待ち構える。そして、マドカも雪兎の存在に気付き接近してくる。

 

「さあ、宴を始めようか。織斑マドカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マドカside

 

スコールとの通信が途絶えて程なくして私は天野雪兎と対峙した。彼の装備は紫色のローブのような装甲と魔導師の杖を連想させる武装をもつISだった。

 

「天野雪兎だな?」

 

「そう言うお前は織斑マドカ(・・・・・)だな?」

 

「!?」

 

これには流石の私も驚いた。初対面であるはずなのに目の前の彼は組織でも知る者が少ない私の本名を迷いもなく口にしたからだ。この男は危険だ。そう私の本能が警鐘を鳴らし、私はすぐさま攻撃を仕掛けようとビットを起動させようとするが、ビットは微動だにしない。

 

「な、何故だ!?」

 

今までこんなことは一度もなかった。ビットの部分展開や偏向射撃すら使える私に何故かサイレント・ゼフィルスは応えない。

 

「どうした?お得意のビットでも不調か?」

 

(思念誘導通信の不調?そんなはずは・・・・思念誘導通信(・・)!?)

 

それを見てニヤリと笑みを浮かべる彼を見て漸く私は自分の失態に気付いた。先程のスコールとの通信途絶。そう、コアネットワーク経由の通信すらジャミングするフィールド。これが意味するものは・・・・

 

「そのIS・・・・対誘導兵器特化武装か!?」

 

「ご名答。そのサイレント・ゼフィルスの主兵装は六基のBT兵器のビットとシールドビット、そして実弾・BT兵器を兼ねたスターブレイカー。確かに強力なISだ。だが、その長所たるビットと偏向射撃を封じられてどこまで戦える?」

 

彼は私がサイレント・ゼフィルスを使用してここに現れることを予測し、サイレント・ゼフィルスに対して最悪の相性を持つ誘導兵器封じの武装を用意していたのだ。スコールが戦うなと言っていた意味がよくわかった。

 

「舐めるな!」

 

しかし、私は負ける訳にはいかない。残されたスターブレイカーで攻撃を仕掛けるも彼は容易くそれを回避する。偏向射撃も思念誘導を必要とするため通常の射撃しか行えないため高出力の代わりに連射性能を落としたスターブレイカーでは彼を捉えきれない。

 

「その程度か?偏向射撃が使えるとはいえ、やはりお前にそいつ(サイレント・ゼフィルス)は向いてないな」

 

確かにこの機体は奪取した機体であるため私の専用機という訳ではない。しかし、私がこの機体で勝てなかったのはスコールくらいのもので決して弱い訳ではない。ビットだってだれよりも上手く使える自信はあるし、偏向射撃だってすぐに習得してみせた。なのに、彼はこのサイレント・ゼフィルスを私には向いていないと言い切った。

 

「つまらん。亡国機業ってのは他人が作った強力な兵器がなければ何も出来ない無能集団なのか?その程度で俺のいるIS学園に攻めてきたのか?はっきり言って失望した」

 

スターブレイカーの射撃をかわしながら彼は酷くつまらなさそうな表情を見せる。

 

「興が冷めた。出直してこい・・・・極限化、起動」

 

そう言うと彼のISは紫色の粒子に包まれ残像を残す程の加速で私に近付くといつの間にか二本に増えた杖のような武装は先端からビームの刃を生やした大鎌へと変貌し、サイレント・ゼフィルスを斬り刻んでいく。

 

「・・・・・織斑マドカ、お前が本当に成したいことがあるのならそんな借り物のISなんざ使わず自身の力で成すんだな」

 

初めての惨敗。意識が途切れようとする中、最後に聞いた彼の言葉には何故か温かさを感じた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エム!」

 

マドカを打ち倒した雪兎が彼女を確保しようとすると、雪兎の想定外の人物が姿を現した。

 

「ちっ、その金ぴかの趣味の悪いISは・・・・まさかあんたまで出てくるとはな」

 

それは金色のIS【ゴールデン・ドーン】を纏った亡国機業の幹部スコール・ミューゼルだった。

 

「やっぱり私のことも知っていたようね、天野雪兎」

 

マドカを両手で抱え、背面にある巨大なサブアームを向け、スコールは雪兎と対峙した。しかし、スコールは交戦の意識はないようだ。

 

「ここは退かせてもらえないかしら?」

 

「・・・・なら、次のキャノンボール・ファスト。こいつへの手出しをやめてもらおうか?」

 

スコールの提案に雪兎は条件を出す。

 

「私達がそんな口約束を守るとでも?」

 

「その場合、お前らが地獄を見ることになるぞ?」

 

「・・・・わかったわ」

 

天災の弟子である雪兎の言葉である。下手をすれば今後接触を考えている束の心情にも影響が出ると考えたスコールはその条件を飲んだ。

 

「ならとっとと行け。出来ればもう俺の前に姿を現すな」

 

スコールがマドカを連れて去ると雪兎はジャミングフィールドを解除して千冬に連絡を取る。

 

「すいません、撃退は出来ましたが思わぬ援軍が来て取り逃がしました」

 

『・・・・そうか、わかった。帰投しろ』

 

こうして雪兎と亡国機業の初の接触は終わりを告げた。




マドカには勝ちましたが、スコールの横入りで勝負はお預けに。また、さりげにキャノンボールの事件を潰しました。
そして、マドカは雪兎の言葉に何かを感じたようです。

次回で学園祭も終わり六章も閉幕予定です。

次回予告

亡国機業を無事に退けた雪兎達。しかし、雪兎にはまだやらねばならないことがあった。一方、一夏の王冠はどうなるのか?

次回

「王冠の行方と雪兎の後始末 兎、お説教(物理)する」


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41話 王冠の行方と雪兎の後始末 兎、お説教(物理)する

六章最終話です。
雪兎が楯無のに用意したお仕置きとは?
そして捕まったオータムは・・・・


「すいませんでした!!」

 

雪兎が舞台に戻ると真っ先に楯無が土下座で謝罪してきた。

 

「反省はしてるみたいですね?」

 

「そ、それはもう!」

 

「なら俺からは一つの罰で許しましょう」

 

罰と聞き、楯無が少し震えるも許してもらえると知り安堵する。だが、安堵するのは少し早かった。

 

「織斑先生と時間無制限試合一回で」

 

「・・・・えっ?」

 

「楯無さんくらいの実力があれば織斑先生と試合しても瞬殺はないでしょう?丁度、参式の稼働データ欲しかったんですよ」

 

そう、千冬クラスになると相手が出来る操者など限られている。その点、楯無ならば十分なデータが取れるだろう。また、その試合のデータからミステリアス・レイディのデータも取れる。雪兎からすれば一石三鳥な提案だった。勿論、楯無にとっては絶望案件なのだが・・・・

 

「さ、参式ってあの大きな剣持ってるISよね?」

 

「はい。先日、織斑先生にお渡ししました」

 

「・・・・」

 

あの規格外ISに元世界最強の組み合わせである。絶望しない方がおかしい。

 

「織斑先生には既にお願いしておきました。「参式の慣らしに丁度いい。失望させるなよ?学園最強」だそうです」

 

(終わった・・・・)

 

いくら学生ながら国家代表に選ばれる実力のある楯無と言えど、この組み合わせは泣きたくもなろう。これ以降、楯無はシャルロットへのちょっかいはしまいと誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の王冠に関しては雪兎への謝罪の際に楯無が全てを自供し、一夏が守り抜いたためにドローとなった。また、オータムの乱入のせいで一般参加が行われなかったために投票権は返却されたのだが、何故か投票で一位になったのは生徒会だった。理由は雪兎とシャルロットの一件である。あれが予測以上に受けたらしく、投票数はダントツだったんだとか。

 

「そんな訳でシャルロットちゃんにはこれを進呈します」

 

そう言って何とか絶望から復帰した楯無はシャルロットにカードキーを手渡した。

 

「こ、これって・・・・」

 

「うん、雪兎君の部屋のカードキーよ」

 

「おいこら、何勝手に人の部屋のカードキー渡しとるんじゃ!」

 

「だって、シャルロットちゃんはちゃんとこれ(ブローチ)取ってきたもの」

 

ユーリが抗議すると楯無は雪兎の胸についていたはずのブローチを取り出す。

 

「はぁ?何でそれが・・・・もしかして!?」

 

「ごめんね、雪兎」

 

実は雪兎に抱きしめられた時にシャルロットはちゃっかりブローチを盗っていたのだ。

 

「なんてこった・・・・」

 

一応ルール通りブローチを手に入れていたとなっては雪兎もこれ以上抗議する訳にもいかず、大人しく決定を受け入れることに。

 

「またよろしくね、雪兎」

 

((((シャルロット恐るべし))))

 

ちゃっかり目標を達成していたシャルロットにその場にいた全員が戦慄していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、本当に雪兎とシャルロットは相部屋となった。真耶からは「ふ、不純異性間交遊はいけませんよ!」等と言われもしたが、シャルロットがシャルルと偽っていた頃と大した違いはなく、特に問題は起こってはいない。

 

「今回はシャルにまんまとやられたよ」

 

「恋する乙女を甘く見ちゃ駄目だよ?雪兎」

 

「よく思い知ったよ」

 

原作通りとはいけなかったものの学園祭の投票で一位となった生徒会に所属することになった一夏。しかし、副会長の席は雪兎が既におり、一夏は庶務として生徒会に加わることとなった。

 

「それにしても一夏だけでなくシャルまで生徒会に引き込むとはな」

 

「僕が雪兎の手伝いがしたいって言ったんだよ」

 

さらに、副会長補佐という名目でシャルロットも生徒会に入ることとなり、生徒会は布陣はある意味で万全なものとなったと言える。また、原作のような手段ではなく正当な投票結果であったため、各部活動もそこまで文句を言うことはなかったらしい。

 

「そういえば文芸部の人達には驚かされたよね」

 

「あれか・・・・確かにびびったわ」

 

そう、あの演劇での一幕を小説にしたいから許可をくれと文芸部の部長と副部長が揃って頭を下げにきた時のことだ。名前等はちゃんと変えると言っていたため雪兎達はそれを承諾したが、その時の喜びようは凄かった。何でも部長は最近スランプ気味だったらしく、あの一幕を見たおかげでスランプを脱せそうだと言っていた。

 

「驚いたといえば虚さんもだがな」

 

虚はやはり原作通り弾のことが気になっているらしく、雪兎や一夏に弾のことを色々聞いていた。普段はあまり表情を変えない虚が恋する乙女のような顔をしていたのは幼馴染更識姉妹や妹の本音も驚く事態だった。

 

「弾も良い人だし、上手くいくといいね」

 

「だな。一友人としても応援したいとこだな」

 

この短い期間に実に色々なことがあったものである。

 

(捕らえたオータムからアラクネのコアは回収したが、まさか護送中にオータムに逃げられるとはな)

 

あの後、学園から護送される際に護送車が襲撃を受けオータムは脱走したと千冬から報告を受けている。

 

(まあ、アラクネはこっちにあるから当面は何も出来ないだろうがな)

 

アラクネはアメリカとしては返して欲しいが、返却を要求すると強奪されたことが露見してしまうため言い出すことが出来ず、修理という名目で現在は雪兎が保管している。

 

(千冬さんは返却するつもりないみたいだし、参式も作ったし今度はアレ作ってみるか・・・・)

 

こうしてアラクネだったISは雪兎によって新たな形を与えられることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げ出したオータムは何とかスコール達と合流に成功し、隠れ家に戻ることが出来た。

 

「くそっ!何なんだよ、あのガキ共はっ!!」

 

「落ち着きなさい、オータム」

 

「だけどよぉ!」

 

「今回の件で貴女の顔はあちら側に知られてしまったわ。それにエムのサイレント・ゼフィルスはボロボロ、貴女のアラクネは取られてしまった。しばらくは大人しくせざるえないの」

 

しかし、亡国機業が受けた今回の損害は酷いものだった。スコールの言う通り、サイレント・ゼフィルスは雪兎によりこっぴどくやられ、オータムは助け出せたもののアラクネを失ってしまったのだ。

 

(彼には借りが出来てしまったわね)

 

ある意味で雪兎が出した条件が亡国機業には救いだったとも言える。雪兎はやろうと思えばスコール達の隠れ家を襲撃できた。しかし、雪兎は次のキャノンボール・ファストを邪魔しない限り手は出さないと言った。つまり見逃されたのだ。

 

(エムの様子も少しおかしいようだし、しばらくは大人しくしていましょうかしら)

 

そう考えるとスコールはまだ荒れているオータムを宥めるべく、彼女を自室へと誘うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(天野、雪兎・・・・あいつは一体何なんだ?)

 

マドカは天野雪兎という人物のことがよくわからなかった。そして、最後に投げかけられられ言葉が耳を離れない。

 

『・・・・・織斑マドカ、お前が本当に成したいことがあるのならそんな借り物のISなんざ使わず自身の力で成すんだな』

 

(あれはどういう意味だったのだろうか?それにやつは私の願いも知っているような感じだった)

 

マドカにはわからなかった。何故彼は敵であるはずの自分にそのようなことを告げたのか?次に会ったら答えてくれるのだろうか?そんなことばかり考えていた。

 

(こ、これではまるで私が彼に会いたいと思っているようではないか!?)

 

結局、答えはわからずマドカはらしくもなくベッドの上でのたうち回るのであった。




という訳で六章閉幕です。

マドカが若干キャラ崩壊中、オータムもアラクネをコアごと失い亡国大打撃でございます。

次章はキャノンボール・ファストのお話ですが、主役はまさかのマドカ!?
お楽しみに・・・・


次回予告

学園祭も終わり、次に控えるキャノンボール・ファストに向けてそれぞれ準備を始める一同。そんな中、セシリアと鈴、そしてラウラは雪兎にある頼みをする。

次回

「キャノンボールと英中独三人娘の頼み 兎、三人娘から依頼を受ける」


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七章「兎とマドカとキャノンボール」
42話 キャノンボールと英中独三人娘の頼み 兎、三人娘から依頼を受ける


やっとキャノンボール・ファストの六巻にあたる七章です。
今回はほぼオリジナルとなる章なので色々不安ですがお付き合いよろしくお願いします。

また、前章でマドカがやられてサイレント・ゼフィルスはボロボロなため福音強奪未遂事件は発生しておらず、ナターシャさんとイーリスさんの出番は延期です。

今回、誕生日の話題が出て、原作の設定が確認できてないメンバーは勝手に誕生日を設定しています。原作で誕生日が確認でき次第書き直す予定です。

という訳でISー兎協奏曲ー第7幕開演です。


学園祭も終わり、9月も後半に差し掛かったある日。

 

「一夏の誕生日って9月だったんだ」

 

「ああ、今月の27日だ」

 

いつものように食堂で昼食をとっていると、セシリアとラウラの二人には聞き捨てならない話題が飛び出した。

 

「何だ、話してなかったのか?一夏」

 

「ああ、別に大した話題でもないだろ?」

 

「はぁー、お前はもう少し視野を拡げろ。一応、今年も弾達とお前ん家で祝う予定なんだからいつものメンバーくらいには連絡しとけよ」

 

相変わらずの唐変木っぷりである。

 

「助かったぞ。雪兎にシャルロット。お前達夫妻に話を聞かねば私とオルコットは当日近くになって慌てるところだった」

 

「「夫妻っ!?」」

 

「恋人同士で同室。その上、保護者も既に公認なのだろう?夫妻と変わらんではないか」

 

「そんなことより一夏さんの誕生日のことですわ!」

 

「そんなことって・・・・」

 

学園祭以来、どうも雪兎とシャルロットは最早学園一のカップル扱いされており、料理部で一緒に料理する姿など仲睦まじい夫妻にしか見えないと言われている。

 

「嫁の誕生日を知っていて黙っていた二人よ。何か弁明はあるか?」

 

そう言われ幼馴染故に当然一夏の誕生日を知っていた箒と鈴は目を逸らす。

 

「どうせ抜け駆けするつもりだったんだろ?器の小さいやつめ」

 

「「うぐっ」」

 

雪兎の言葉が深く箒と鈴に突き刺さる。

 

「そういえば、あまあまの誕生日は?」

 

「俺か?俺は2月3日だ。鈴は11月6日だったよな?」

 

「よく覚えてたわね」

 

「僕は10月4日だよ」

 

「わたくしは12月24日ですわ」

 

「あっ、セシリアも12月なんだ。私も7日なんだ」

 

「私は3月1日だったはずだ」

 

「私は6月2日だよー」

 

「私は1月20日」

 

「へぇー、皆バラバラなんだな。まとめると・・・・」

 

布仏本音 6月2日

篠ノ之箒 7月7日

織斑一夏 9月27日

シャルロット・デュノア 10月4日

凰鈴音 11月6日

宮本聖 12月7日

セシリア・オルコット 12月24日

更識簪 1月20日

天野雪兎 2月3日

ラウラ・ボーデヴィッヒ 3月1日

 

「って感じか?」

 

「だね。本音はもう過ぎちゃってるけど、他の皆はお祝い出来そうだね」

 

簪の提案に全員が賛成し、誕生日の話はここまでにして一夏の誕生日の日に行われるもう一つの催し【キャノンボール・ファスト】へと話題は変わる。

 

「一夏の誕生日の話もいいが、お前らはキャノンボールの準備してんのか?」

 

【キャノンボール・ファスト】ISで行われる何でもありのレース競技のことだ。昔はキャノンボールと言えば公道を用いた走り屋達の非合法のレースのことを差すが、今ではこの競技のことを差す単語となっている。

 

「僕と雪兎は高機動パックがあるし、一夏と箒は調整だけだけど、皆は?」

 

「私はこの前雪兎に貰ったパッケージに高機動パッケージがあったからそれを使う予定」

 

「【暴風】か、あれはキャノンボール用に用意したパッケージだし、妥当だな」

 

そう、簪には雪兎がリヴァイヴのお披露目の時に渡したstorageに【白雷】【剣山】【暴風】という三種のパッケージが渡されており、簪はその中の高機動仕様である【暴風】を使う予定だった。

 

「私のライダーは高機動バイザーを使えばいいのかな?」

 

「ただでさえあんたのライダーは速いのに高機動仕様なんてのもあんの?」

 

「うん、まだ使ったことないけど。スペックデータなら紅椿クラスだよ」

 

「またとんでもない伏兵がいたな」

 

聖のウェーブ・ライダーは元々高機動戦仕様なのだが、更に速度特化したバイザーボード【ソニックレイダー】が存在する。そのトップスピードは通常のアリーナでは使い所がなく、今までお蔵入りしていたらしい。

 

「私のナインテイルはキャノンボールには向いてないんだけどがんばるよ」

 

一方で本音のナインテイルは専用装備【九尾】に拡張領域をほとんど食われており、武装が追加出来ない仕様であるためキャノンボールは不向きと言っていい。武装は入らないも残っている拡張領域はお菓子などの入れ場になっているそうだ。そして・・・・

 

「わたくしには一応、ストライク・ガンナーがありますけれど」

 

「私も一応本国から高機動仕様パッケージ【風】が来る予定よ」

 

「私は姉妹機の高機動パッケージを借りることになっている」

 

セシリア、鈴、ラウラの三人はそれぞれ専用パッケージを使う予定だったのだが、ナインテイルを除くメンバーのISと比べると力不足であると感じていた。

 

(この前本国には一応許可貰ったし、駄目元で聞いてみようかしら?)

 

(わたくしのストライク・ガンナーも以前調整していただきましたし、本国から許可も得ましたから雪兎さんにお力添えをお願いできないでしょうか・・・・)

 

(あのパッケージはクラリッサの物だしな・・・・ここは本国の許可もあることではあるし、雪兎に頼むのも一手か)

 

そこで、以前から考えていた雪兎の助力を得られないかと、三人は同じことを考えていた。何せこの雪兎はあの束の弟子である。その技術の一端でも手に入るならイギリス、中国、ドイツの三国も許可くらい出すというものだ。問題は交換条件に何を要求されるかということと、雪兎が作成する以上は雪兎にスペックデータを把握されるということだが、二つ目はメンバーの過半数が雪兎の手が加わったISであるためあまり関係ないかもしれない。

 

「ねぇ、雪兎。ちょっとお願いがあるんだけど」

 

そんな中、初めに話を切り出したのは幼馴染である鈴だった。

 

「お願い?」

 

「うん。私の甲龍のパッケージの件なんだけど・・・・私にも何か作ってもらえない?」

 

「ず、狡いですわ、鈴さん!雪兎さん、私にもお願いできませんか!?」

 

「ついでで申し訳ないのだが、私もお願いできないだろうか?」

 

「いや、本国の許可とかはーー」

 

「「「既に取ってあるわ/ありますわ/ある!」」」

 

「ならいいんだが・・・・どんなパッケージにするかは俺の一存で構わないか?要望があれば予め言っておいてくれ」

 

幸いにも雪兎は乗り気のようで三人は一安心する。

 

「とりあえず鈴からな」

 

「私は高機動って縛りはいらないからもう少し衝撃砲の扱いを何とかしたいわ」

 

鈴は雪兎に以前から言われている衝撃砲の扱いについてもう少し使い勝手をよくしたいらしい。

 

「衝撃砲か、なるほど丁度考えてた装備があったからそれを応用したパッケージにしてみるよ」

 

「ありがとね、雪兎」

 

「次はセシリアだな」

 

「わたくしはストライク・ガンナーをベースにビットも扱えるパッケージがいいですわ」

 

一方のセシリアは元々ストライク・ガンナーというパッケージがあるため、その発展型を依頼する。ストライク・ガンナーはビットをスカート部分に固定することでビットを封印する代わりに機動力を得るパッケージだ(アニメでは何故かビットを使っていたが)。そのためセシリアは高機動とビットの両立を求めたようだ。

 

「ストライク・ガンナーは確かにブルー・ティアーズの特色を殺すパッケージだからな・・・・考えてみるよ」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「次はラウラか」

 

「私は借り物というのが少しな・・・・停止結界も高機動戦では扱うのが難しいから無視してくれて構わない」

 

ラウラはクラリッサのシュヴァルツェア・ツヴァイクのパッケージを借りるというところに思うところがあるようで、専用であることが条件のようだ。AICに関しては高機動下で一つのことに集中するというのが危険なことを理解しているため考慮しないようだ。

 

「AICは変なとこに欠点あるからな・・・・じゃあ、ラウラの戦闘スタイルに合わせてってことでいいな?」

 

「すまない。お前も自分の準備があるだろうに我ら三人のパッケージまで頼んでしまって」

 

「水くさいこと言うなよ。俺達は仲間だろ?それに俺はもう大体調整終わってるし、三人のパッケージももう大体の構想はまとまったからな」

 

「「「「早っ!?」」」」

 

これには一同も驚きである。

 

「鈴に関しては元々丁度いい装備があったし、セシリアは前にストライク・ガンナー調整した時のデータもある。ラウラのもちょっと面白い装備を思い付いたからそれを使う予定だ」

 

やはり天災の弟子は伊達ではなかった。すると。

 

「雪兎、面白そうな話をしてる」

 

「忍先輩?」

 

そこに棗忍が通りかかった。

 

「実は私も雪兎にお願いがあった」

 

「忍先輩もですか?」

 

「そこの宮本聖の使うバイザーボード。あれを一つ私にも作って欲しい。無理そうなら基礎データだけでもいい」

 

そう、元々バイザーボードは忍とサーフィンをしていて思い付いた武装だ。忍が興味を持ったのも不思議では無い。

 

「展開装甲を積んでない試作品なら一つ余ってますけど・・・・」

 

「それでいい。譲って」

 

「いいですよ。元々局に提出するつもりでしたし、忍先輩とサーフィンして思い付いた武装なんでお礼に差し上げますよ」

 

「感謝するわ」

 

こうしてセシリア、鈴、ラウラはそれぞれ専用パッケージの作成を。忍は試作品のバイザーボードを譲ってもらうこととなったのだった。




再び魔改造フラグオン。今回はパッケージですが、今回も雪兎は自重しません。技術流出?再現できるならやってみろよ。ってな感じですのでまたとんでも装備が・・・・

ついでに忍にも試作品とはいえバイザーボードが・・・・


次回予告

三人の依頼で新たなパッケージを作成することになった雪兎。そんな中、一人で街に出掛けると思わぬ人物と遭遇することに・・・・

次回

「新パッケージと思わぬ再会 兎、街で○○○と出会う」


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43話 新パッケージと思わぬ再会 兎、街で○○○と出会う

自重無しパッケージ襲来(詳しくはオリジナル・改修系IS一覧をどうぞ)
三つとも中々のパッケージになった思っています。個人的には鈴用のがお気に入りです。三機ともこれで二次移行したら・・・・

そして、雪兎が遭遇した人物とは?


三人の依頼から三日が経ち、三人のパッケージが完成した。その日の放課後、雪兎は早速三人をアリーナに集めた。

 

「もう出来たの!?」

 

「パッケージだけだからな。丸々一機作るよりは簡単だったぞ?」

 

「いや、普通は一人でIS作ったりしないから」

 

「それはともかく。ほれ、お前らのstorageだ」

 

それぞれ専用機と同じカラーのstorageを鈴、セシリア、ラウラの三人に渡す雪兎。

 

「今回もいい仕事をしたと自負してる。材料費と依頼料は国に請求すればいいんだよな?」

 

雪兎が三国に要求したのは材料費と依頼料、そしてそれぞれのISと作られたパッケージの運用データの収集許可であった。作成する段階でどうしても各機のデータが必要になったので要求したのだが、完成パッケージのデータを提出する代わりに三国はそれを許可した。その程度で最先端技術のデータが手に入るなら安いものだと判断したのだろう。

 

「はい。国からはそう聞いていますわ」

 

「どれどれ、どんなパッケージになったのかしら・・・・えっ?何よこれ」

 

「ほう、こうきたか・・・・気に入った」

 

「この装備は・・・・わたくし、試されていますの?」

 

それぞれパッケージのデータを見て鈴は驚き、ラウラは笑みを浮かべ、セシリアは自身の技量を問われていると察する。

 

「そんじゃ、早速試してみてくれ」

 

そう言われ三人はパッケージをインストールさせISを展開する。

 

鈴の甲龍は肩の衝撃砲が小型化され左右三基ずつになっており、両腕に龍の頭を模したアンカークローの付いた籠手が追加されていた。

 

「衝撃砲の小型化とか本国でもまだできないっていうのに・・・・」

 

セシリアのブルー・ティアーズは天使のような翼が与えられ、ビットが二基、シールドブースタービットが二基増設。そして、BTレーザーと実弾と馬上槍を融合したランチャー。更に偏向射撃を補助する強化型ハイパーセンサーなど大幅なアップデートがされていた。

 

「これはわたくしの技量を問われる装備ですわね」

 

ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンは肩の大型レールキャノンを外し、左右に大型のシールドブースターキャノンを装備し、背面にサブアームで固定された大型ガトリングガンを装備していた。しかも、シールドブースターキャノンには眼帯をした黒兎のマークまでついている。

 

「いいぞ。特にこの兎のマークが気に入った」

 

それぞれ新しくなった装備を確かめ、その想像以上のスペックに驚いていた。

 

「何、あの六基連動衝撃砲【覇龍咆哮】って・・・・あれ、本当に龍咆の威力?」

 

試しに放った左右の六基を連動させて放つ衝撃砲【覇龍咆哮】の威力に唖然とする鈴。

 

「これだけの装備を高機動中に制御するのは難しいですわね・・・・ハイパーセンサーが強化されてなかったらできませんわ」

 

強化されたハイパーセンサーと今までの特訓のおかげでセシリアも増えたビットの制御ができた。また、ビットを制御していない時であれば偏向射撃も僅かながら行えるようになっていた。

 

「これが雪兎謹製装備か・・・・雪兎とシャルロットはこんなクセの強い武装を切り換えながら戦っているのか。それは強いはずだ」

 

ラウラも雪兎の作った装備を使うことで雪兎とシャルロットの強さの一端を知る。

 

「どうだ?どっか不備はなかったか?」

 

「無いわよ。でも、これはちょっと凄すぎだわ」

 

「ええ、問題ありませんわ。扱うのが少し大変になりましたが、これは雪兎さんがわたくしなら扱えると考えて作成された装備。必ずや使いこなしてみせますわ!」

 

「うむ、問題は無い。正直、ここまでとは思っていなかった」

 

「そうか、満足してくれたなら技術屋冥利に尽きるよ」

 

鈴達も満足したようだ。こうして鈴達三人も雪兎の魔改造装備を手に入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後の休日。雪兎は珍しく一人で街にやってきていた。理由は忍の父親が局長の棗宇宙開発局に顔を出すためだった。

 

「ご無沙汰してます、棗局長」

 

「やあ、雪兎君。先日は忍が無理を言ってすまなかったね」

 

「いえ、忍先輩にも言いましたけど元から局にもデータを渡すつもりでしたから」

 

この棗宇宙開発局はISコアを二基所有しており、一基は国内トライアル用、もう一基は当初の開発理由であった宇宙開発用のISに当てられている。

その国内トライアル用のコアは現在打鉄を高機動仕様に改修した【不知火】として局長の娘である忍が使用している。先日の試作バイザーボードはこの不知火に装備される。

 

「いつもすまないね・・・・で、今日は資材の補充かな?」

 

「ええ、ちょっとパッケージやパックに試作機と一度に大量に作ったもので」

 

「相変わらずだねぇ、君は」

 

その後、storageに資材を補充してもらう間、世間話をしつつ開発したいくつかのデータを棗局長に渡し、雪兎は棗宇宙開発局を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、今日はシャル置いて来ちまってたから何かお土産買わないとなぁ」

 

そんなことを考えながら歩いていると、人混みの中に少し浮いた格好をする少女の姿があった。

 

(あれって・・・・マドカ(・・・)?)

 

そう、その少女とは先日交戦したばかりの織斑マドカだった。そんな雪兎の視線に気付いたのかマドカは振り返り雪兎の姿を見つけると目を見開いて驚いていた。

 

「な、何故お前がここに・・・・」

 

「お前、ちょっと馬鹿だろ?」

 

「な、何だと!?」

 

「だってお前さ、前はゼフィルスのバイザー着けてたから顔バレしてないのにそんなこと言ったらバレバレじゃないか」

 

「!?」

 

どうやら本名を知られていたことから顔もバレていると(間違ってはいない)思ったようで、雪兎の指摘を聞いて顔を青くする。

 

「そんな顔すんなって。別に今お前をどうこうするつもりなんざねぇよ」

 

「何故だ?」

 

「お前、まだゼフィルス直ってねぇだろ?そんなやつを一方的にやるほど俺は落ちぶれてねぇぞ」

 

「あれだけ盛大にやってくれてよく言う」

 

「あれは万全の相手を滅多打にして鼻と心を折るからいいのであって、万全でない弱いもの虐めなんぞ俺はせん」

 

「そちらの方がよほど質が悪い気が・・・・」

 

雪兎の言い分を聞きマドカは呆れながらも青くしていた顔色を戻していた。

 

「次に敵対した時はまた全力で相手してやるけど、今はただ街中で知り合いに会った程度だ。何もせんさ」

 

「そうか」

 

「あと、俺の周囲だけジャミング張ってるから監視は気にしなくていいぞ。ジャミングって言っても俺との会話を傍受できんだけだが」

 

「・・・・お前は本当に規格外なのだな」

 

体内のナノマシンのこともバレていたことにマドカはもう驚くより呆れていた。また、こんな会話ではあるが、マドカは楽しんでいるという自覚があった。

 

(やはりこの男は不思議だ。何故かこの男との会話は不快にならない)

 

「立ち話も何だしそこの喫茶店にでも寄るか?」

 

「お前の奢りなら付き合おう」

 

「それくらいは出すさ。誘ったのはこっちだからな」

 

そんなこんなで雪兎とマドカという奇妙な組み合わせで二人は喫茶店へと入っていくのだった。




遭遇したのはマドカでした。

棗局長はナイスミドルのおじさんです。奥さんは年齢不詳の美人だとか・・・・


次回予告

何故かマドカと喫茶店に入ることになった雪兎。そこでマドカは先日の言葉の真意を雪兎に問う。

次回

「喫茶店の雪兎とマドカ 兎、少女と話す」


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44話 喫茶店の雪兎とマドカ 兎、少女と話す

今回はマドカとの対話です。
また、今後のための仕込み回でもあります。


喫茶店に入った二人は角のテーブル席に座り、店員にアイスコーヒーを頼むと話を始めた。

 

「前にお前は言ったな、本当に成したいことがあるのならそんな借り物の力など使わず自身の力で成せ。と・・・・あれはどうゆう意味だ?」

 

「大体わかってるんじゃねぇか?お前はそもそも千冬さんのクローンの失敗作として破棄された存在だろ?」

 

「やはり知っていたか」

 

そう、マドカは千冬のような実力者を量産しようなどという狂気の研究の産物だった。

 

「それが千冬さんを超えたいと願うならお前が証明すべき力は亡国機業みたいな組織では手に入らん」

 

「かもしれんな・・・・では、サイレント・ゼフィルスが私に向いていないというのは?」

 

「そっちはもっと簡単だ。千冬さんが近接よりの万能型なのに対してマドカはオールラウンダーだろ?近接も射撃もバランスのいいIS、しかも高機動型なら尚いいかな?そんなお前が遠距離特化のゼフィルスじゃ能力の半分は殺してるようなもんだ。相性のいいISさえ使えればお前は間違いなく国家代表クラスの能力はある」

 

「・・・・」

 

雪兎の思わぬ高評価にマドカは驚く。事前にある程度情報を知っていたとはいえ、あの一戦で雪兎はマドカの実力を正確に見抜いていたのだ。

 

「どうした?」

 

「いや、何故お前はそこまで私をかってくれるのかわからなくてな」

 

「俺は評価は平等にするぞ?お前んとこのオータムとかいう馬鹿は調子にさえ乗らなきゃ強いんだろうけどな」

 

「違いない」

 

オータムが聞けば激昂しそうな会話である。

 

「あと、俺はお前を千冬さんのクローンとして評価してる訳じゃない。さっきの評価は織斑マドカとしての評価だ」

 

「!?」

 

これにはマドカもかなり驚いた。今までマドカは研究所では千冬の失敗作として、亡国機業ではただ力がある駒としてしか扱われておらず、織斑マドカとして見られたことはほとんどなかったのだ。

 

「そもそも、双子ですら育った環境とかで全然違うってのにクローン作っただけで千冬さんと同じ能力を期待するとか馬鹿なのか?あの人がどんな努力してたかとか、お前がどれだけ頑張ったかとか全部無視して失敗作だのどうでもいい扱いとか消えればいい」

 

雪兎の表情には明らかな怒りがあった。雪兎は前世の頃からマドカの扱いには少し腹を立てており、こうして接してみてそれが再燃したようだ。

 

「・・・・」

 

そんな雪兎に呆気に取られるマドカ。

 

「おっと、すまんすまん。お前に言ってもしょうがないことだったな」

 

そしてマドカは納得した。この天野雪兎という男は自分を織斑マドカを個人として見てくれる存在なのだと。

 

「お前もIS学園の生徒だったら専用機組んでやったんだがなぁ」

 

これは雪兎の偽りない本音だった。

 

「もし、そんなことがあればお前を頼るとしよう」

 

そんな都合のいい未来があるとはマドカは思わなかったが、気付けばそんな言葉を口にしていた。

 

「そういえば・・・・お前、通信端末持ってる?」

 

「ああ、一応支給されたのがあるが」

 

「ちょっと貸せ」

 

そう言うと、雪兎はマドカの端末に何かを送信する。

 

「よしっと」

 

「これは?」

 

「今度のキャノンボールの観戦チケットだ。あっ、スコールには一応言ったが、それ使って襲撃とかすんなよ?複製とかもやったらすぐバレるからやるな」

 

「どうしてこれを私に?」

 

「なんとなくだ。あと、そんな格好で来るなよ?絶対不信がられる」

 

「これしか服は持ってないのだが・・・・」

 

その言葉に今度は雪兎が驚いた。

 

「はぁ?亡国機業ってやつは・・・・よし、今から買いに行くぞ」

 

「しかし、私は金をーー」

 

「俺が払う。流石にこれは見過ごせん」

 

そう言うと喫茶店でコーヒー代を支払うと雪兎はマドカの手を引き服屋に直行する。

 

「すまないがこいつに見合う服を三着ほど頼む。予算は気にしなくていい」

 

「かしこまりました」

 

「ちょっ!?」

 

店員にマドカを引き渡し、マドカはしばらく店員の着せ替え人形と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・戻った」

 

マドカが隠れ家に戻ると、マドカはげんなりした顔をしていた。

 

「あら、遅かったわね・・・・どうしたの?その服」

 

スコールがマドカを出迎えると、そこには可愛らしい服を着たマドカの姿があった。

 

「天野雪兎に買って貰った」

 

「はぁ?・・・・今、何て言ったの、エム」

 

予想外の名前に流石のスコールも驚く。

 

「街で偶然やつに出会って、今度のキャノンボール・ファストに招待されて、服がいつものしかないと言ったら問答無用で買って押し付けられた」

 

買った後、せっかくだからそのまま帰れと言われ着替えさせられたまま帰されたのだ。

 

「・・・・」

 

マドカはどうしてこうなった?という顔をしているが、それはスコールも同じだった。

 

「どうかしたのか?って、お前、なんだその格好?」

 

今度はオータムが出てきてマドカの格好を見て首を傾げる。

 

「天野雪兎に偶然会って押し付けられたそうよ」

 

「はぁ?」

 

何故そうなる!?とオータムの顔にはそう書いてあった。

 

「しかも、キャノンボール・ファストにまで招待されたそうよ」

 

「ああ、それでそんな格好を・・・・って、あのガキはどんな神経してやがんだ!」

 

その日の彼女達は雪兎の行動が読めず、しばらく三人揃って頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その亡国機業を困惑させた雪兎はまた何か作っているようだった。

 

「ゆ、雪兎。それって・・・・」

そのモニターを覗き込んでシャルロットは絶句する。

 

「これがキャノンボールでの俺の切り札さ」

 

「鈴達の依頼をあっさり受けたと思ったら、そういうことだったんだね・・・・」

 

シャルロットが見つめるモニターにはこう表示されていた。

 

『超高機動型アドヴァンスドパック【LA:ライトニング・アサルト】』と・・・・

 




今回は短いですがここまで。
マドカの着てた衣装はスパロボのラトゥーニのアレを黒にしたやつです。

次回よりキャノンボール・ファスト開幕。
雪兎の切り札とは一体?シャルロットが絶句した理由も明らかに!


次回予告

とうとう開幕したキャノンボール・ファスト。一年生の専用機持ちによるレースにてまたしても雪兎がやらかす!

次回

「開幕!キャノンボール・ファスト! 兎、やはり自重しない」


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45話 開幕!キャノンボール・ファスト! 兎、やはり自重しない

キャノンボール・ファスト開幕!
雪兎の用意した新装備アドヴァンスドパック【LA:ライトニング・アサルト】の実力とは?


9月27日、キャノンボール・ファスト当日。

 

マドカside

 

キャノンボール・ファスト当日。私は天野雪兎の言う通りカジュアル系の物を着て髪型をポニーテールにし、帽子を被って会場を訪れた。

 

「賑わっているようだな」

 

このチケットは普通に入手しようものならかなりの値段がするらしい。しかも今年は織斑一夏と天野雪兎という男性操者がいるとあってか抽選の倍率もはね上がったらしい。

 

(確か、入り口で端末のチケットを見せればいいのだったな)

 

招待客用の入り口に向かうとそこには私と同じくらいの歳と思われる赤髪の少女がいた。

 

「えっと、どうすればいいんだっけ?」

 

どうやら私と同じ招待客のようだが、招待者がちゃんと説明しなかったのか、あたふたしている。

 

「貸してみろ」

 

「ふえ?」

 

見ていられなかった私は彼女の端末を操作しチケットを表示させる。

 

「これを見せればいい。ではな」

 

少女に端末を返すと私は自分の端末でチケットを見せて指定された席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?貴女はさっきの・・・・」

 

席に座って開幕を待っていると、先程の少女が私の隣にやってきた。どうやら彼女の席は私の隣だったようだ。

 

「さっきはありがとうございました」

 

「かしこまらなくていい、見たところ同い年だろう」

 

「うん、そうさせてもらうね。私は蘭、貴女は?」

 

「・・・・マドカだ」

 

別に名乗る必要はなかったのだが、私はこの蘭という少女に気付けば名前を教えていた。この出会いが後の私の運命を大きく変えることになるとは、まだ私は気付いていなかった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練機を使った一般生徒の部門が終わり、とうとう専用機持ち出番が来た。今年は一夏や雪兎の影響で専用機持ちが多く十人もいるのだ。それ故に多くの観客がこのレースに注目していた。

 

「そういえば今日はあの人(父親)も来るんだったっけ・・・・」

 

「そうなのか?」

 

「うん、僕のリヴァイヴⅡSと雪兎を見に来るって連絡があったよ」

 

「そうか」

 

「雪兎はだれか招待したの?一夏は蘭ちゃんを招待したみたいだけど」

 

「俺は最近知り合ったやつだな」

 

そう雪兎が言うとシャルロットの目が途端に鋭くなる。

 

「女の子でしょ?」

 

「何でわかった?」

 

「なんとなく、女の勘かな?」

 

「マジか・・・・でも、そいつはどっちかっていうと妹分みたいなやつだから安心しろ。俺が好きなのはシャルだけだから」

 

「も、もうっ!雪兎ったら・・・・」

 

今度は顔を真っ赤にして照れるシャルロット。

 

「あー、はいはい。そこのバカップルはところ構わず見せつけないの!」

 

「雪兎、本当に変わったよなぁ・・・・」

 

「そうだな。私が知る雪兎はあまり女性にあんな甘い言葉は使わない男だったのだが・・・・」

 

「女の子よりメカ!って感じだったもんね・・・・どうしてこうなったのやら」

 

雪兎をよく知る幼馴染三人は昔の雪兎を知っているだけに今の雪兎の姿は想像できなかった。

 

「さて、今日は私も本気で勝ち狙いに行きます!」

 

レース競技ということもあってか聖も珍しくやる気に満ちている。

 

「私も新しいパッケージを手に入れたからな。負けんぞ 、聖」

 

ラウラも気合十分のようだ。

 

「本音は結局どうするの?」

 

「私とナイちゃんは適当に頑張るよ~」

 

「まあ、布仏さんは仕方ありませんわね」

 

「それでは皆さんISの展開をお願いします」

 

係員の誘導し従いそれぞれISを展開する。

 

「来い!白式!!」

 

「いくぞ!紅椿!!」

 

「来なさい!甲龍【嵐龍】!!」

 

「行きますわよ!ブルー・ティアーズ【エンジェル・フェザー】!!」

 

「出るぞ!シュヴァルツェア・レーゲン【アンシュラーク・シルト】!!」

 

「来て!打鉄弐式【暴風】!!」

 

「おいでませ!ナイちゃん!!」

 

「私も!ウェーブ・ライダー!!」

 

「続くよ!ラファール・リヴァイヴⅡS【J:イェーガー】!!」

 

そうして雪兎を覗く九人のISが並ぶ。

 

「それじゃあ、真打ち登場といくか・・・・出ろ、雪華【LA:ライトニング・アサルト】!!」

 

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

 

てっきり雪兎も【J:イェーガー】と思っていたシャルロットを除く八人は雪兎が纏う新たなパックを見て驚愕する。

 

「ちょっと、あのパックって・・・・」

 

「鈴さんもですか。では、わたくしの見間違いではありませんわね・・・・」

 

「なるほど、通りで我々のパッケージが早く完成した訳だ」

 

その中でも鈴、セシリア、ラウラの三人はそのパックに見覚えがあった。そう、自身が雪兎に依頼したパッケージだ。

 

「そういうこった。三人のパッケージはこの【LA:ライトニング・アサルト】の装備を流用して作ったんだからな」

 

そのパックは、肩にはラウラのリンドヴルムをより大型にしたシールドブースターキャノンが、腰にはセシリアと同じシールドブースタービットを備え、背面のウイングバインダーに四基のブレードガンビットを持ち、推進部は衝撃砲の流用であるエアロスラスター。更にセシリアの持つランパードランチャーのプロトタイプである【ガングニール】まで装備したてんこ盛りパックだった。そのカラーリングは黒と黄色の二色である。

 

「それ、今までのパックと何か違うよね?」

 

「その通りだ簪。こいつはアドヴァンスドパックって言って、従来のパックの複数分の拡張領域を使用するパックだからな。ちなみにこいつは三つ分だ」

 

「またとんでも装備を・・・・」

 

やっぱり雪兎は自重なんてしていなかった。

 

「わたくし達ですらこのパッケージを物にするのに苦労したというのに・・・・」

 

「あれは間違いなく操者を選ぶぞ」

 

「うん、僕にはまだ無理だったよ・・・・」

 

「シャルロット。それ、マジ?」

 

あの器用なシャルロットですら持て余すと聞いて一同は言葉を失う。

 

「あまあま、ガチだ」

 

「当たり前だろ?このキャノンボール・ファストは姉さんの得意種目なんだ。弟の俺が恥ずかしい姿は見せれないからな」

 

(((((((((そういやそうだった!!)))))))))

 

そう、雪兎の姉・雪菜はこのキャノンボール・ファストでは無敗の高速の妖精(ラピッド・フェアリー)の二つ名を持つプロレーサーだ。それ故に雪兎は張り切っているようなのだ。

 

「ヤバい、雪兎が本気とか色々ヤバいって!?」

 

「不幸だよ・・・・」

 

「わたくし達のパッケージの複合型・・・・」

 

「僕は一回だけ稼働テスト付き合ったけど・・・・本気でヤバいよ」

 

「シャルロットがそこまで言うとなると・・・・」

 

「あのパックを運用できる雪兎が異常」

 

「開幕ぶっぱで逃げ切れば・・・・無理ね」

 

「あれ、白式並みに燃費悪そうだよなぁ」

 

「絢爛舞踏が使えれば・・・・」

 

やはり雪兎の本気はとんでもなかったのであった。




という訳で【LA:ライトニング・アサルト】登場です。
かなりオーバースペックなパックです。普通のパック三つ分って・・・・

そして、マドカは蘭と遭遇しました。


次回予告

レースが始まり一同はまず雪兎を狙うのだが・・・・

次回

「レーススタート! 兎、本気出す」


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46話 レーススタート! 兎、本気出す

レース開始です。
【LA:ライトニング・アサルト】がヤバい・・・・


『レーススタート!!』

 

スタート直後に行動を起こしたのは鈴だった。背面に六基の龍玉を回し龍翔を発動して周りを吹き飛ばしながらスタートダッシュを決める。

 

「よし、これなら!」

 

「読んでたぞ、鈴」

 

「ソニックレイダーの方が速かったね」

 

「【J:イェーガー】の性能に助けられたよ」

 

しかし、雪兎、聖、シャルロットの三人はそれをかわして鈴と並ぶ。

 

「げっ!?」

 

「悪いが俺も本気でいくぞ!」

 

雪兎がそう言うとシールドブースターキャノンの装甲の一部がスライドし、ミサイルが現れる。

 

「な、内蔵式ミサイル!?」

 

「持ってけ!」

 

打鉄弐式の山嵐に匹敵するミサイルの雨に鈴は龍玉を雪兎に向けて圧縮した空気の壁【嵐壁】でガード、シャルロットと聖は回避しながら迎撃する。

 

「あばよー!」

 

その隙に雪兎は二重瞬時加速で一気に距離を空けてしまう。

 

「ついでにこれも持っていけ」

 

更に加速中に振り返り、ガードで身動きを止めた鈴にガングニールを向け、レールガンを撃ち込む。

 

「ちょっ!?」

 

慌てて嵐壁でガードするも、嵐壁に触れた瞬間弾丸が破裂し閃光が鈴を襲う。

 

「うわぁー、あのタイミングで閃光弾とかえげつない・・・・」

 

「僕達もボーッとしてたらやられるよ」

 

高機動用のバイザー越しとはいえ真近くで閃光弾を食らったために鈴は視界を失いバランスを崩す。その間に鈴に足止めされた後発組が次々と鈴を抜いていく。

 

「鈴もやってくれたが、雪兎も恐ろしいな・・・・」

 

「ああ」

 

「おお、やられてしまうとは情けない。えい」

 

挙げ句に視界を失っている間にナインテイルにシールドエネルギーを吸われ、鈴はあっという間にリタイアとなった。

 

「本音、意外と怖いことを・・・・」

 

つまり、下手に雪兎に近付くと行動不能にされてナインテイルにエネルギーを吸われるという恐ろしいコンボが成立したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マドカside

 

「前門に兎の皮を被った何か、後門に九尾と言ったところか」

 

レースの様子を見て私はそう思った。あの布陣、打ち合わせしていたとは思えないが、あの九尾のようなISの操者の性格を雪兎が把握していて行ったと見るのが正しそうだ。

 

「相変わらず雪兎さんは容赦ないなぁー」

 

「何だ、蘭もあいつの知り合いだったのか?」

 

「はい。そう言うマドカも?」

 

どうやらこの蘭という少女も雪兎の関係者らしい。

 

「ああ、最近知り合ってな・・・・今日もあいつが招待してくれたんだ」

 

「あー、そっちも相変わらずなんですね・・・・」

 

「?」

 

「私は相談に乗ってもらったり、色々助けてもらってて、実の兄より兄らしい人といいますか・・・・」

 

その蘭の言葉に私は納得する。確かに私も色々と話したり、服を買いに連れていかれたり、雪兎からはどこか兄っぽさを感じていた。

 

「兄か・・・・確かにそんな感じだな」

 

そんな中、再びモニターへと視線を移すと血縁上では兄に当たる男(織斑一夏)の姿が映る。

 

「私を招待してくれたのはあの織斑一夏さんなんですよ」

 

そう言う蘭の表情は私にもわかるくらいに恋する乙女の顔をしていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから新たに脱落したのはセシリアだった。どうやら機体制御で手一杯のところを雪兎に狙撃されてバランスを崩して吹っ飛び、本音のナインテイルに吸われたようだ。

 

「なんか本音のやつ誰かがやられるのを待ってないか?」

 

「うん、そんな気がする」

 

偶然できた布陣とはいえ、雪兎も本音も互いに利用しない手はないというところなのだろう。

 

「しかも、雪兎のやつ。我々をおちょくっているな・・・・」

 

そう、雪兎はあえて後ろ向き(・・・・)で飛びながらガングニールでこちらを狙っているのだ。コーナーなどでは機体を一回転させ、エアロスラスターの噴射口を砲口にして小さな衝撃砲までバラ撒いてくるのだ。

 

「それに、雪兎はまだビットやシールドブースターキャノンを使ってない・・・・あれまで使われたら本当に何もできなくなるよ」

 

一度、そのフルスペックを相手にしたシャルロットも警告する。そう、今現在、雪兎と本音の除く全員はいかに雪兎を攻略するまで限定という同盟を結んでいたのだ。

 

「全員で一斉に攻めてもあのミサイルと衝撃砲を食らってやられるな」

 

「ああ、しかも、下手に動きを止めれば後ろのナインテイルにやられる」

 

「かと言って本音を先に墜とそうとすると雪兎は絶対に本音ごと私達を墜とすよ?」

 

「では、あの時と同様に私が一夏を乗せて行くのはどうだ?」

 

「雪兎に一度使った戦術が通じるとは思えないんだけどなぁ」

 

考えれば考えるほど雪兎のラスボスっぷりがわかる。

 

「多方面からの波状攻撃で隙を作ってシャルロットのバスターライフルか一夏の0距離での荷電粒子砲が確実だろう」

 

「それしかないか・・・・」

 

こうして対雪兎同盟の反撃が始まる。

 

「やっぱりそうきたか」

 

散開して波状攻撃を仕掛けようとする一夏達を見て、そして観客席に蘭と並んで観戦しているマドカを見つけると雪兎は笑みを浮かべた。

 

「いくぜ、相棒・・・・見せてやるよ、これが【LA:ライトニング・アサルト】の力だ!」

 

最初に斬りかかってきた箒の紅椿をガングニールのランスモードで弾き、急かさず攻めてきた聖の進路をシールドブースタービットで阻害してシールドブースターキャノンを構えるラウラにレールガンモードのガングニールを放つ。更に上からグリフォンを射ちながら突撃してくるシャルロットをエアロスラスターの衝撃砲で迎撃し、動きを止めたところを雪羅を構えた一夏が瞬時加速で突っ込んでくるが、シールドブースターキャノンで返り討ちにする。

 

「どうした、それで終わりか?」

 

「ま、魔王・・・・」

 

聖は思わずそう呟くが今の雪兎は正に魔王の如くといったところだ。

 

「それなら今度はこちらからいくぞ?」

 

すると、ガングニールのランスモード時に穂先となる部分が開きボウガンのような形に変形する。穂先の内側にはいくつもの砲口が存在し、それを一夏達に向ける。

 

「!?皆!逃げて!!」

 

それが何かを知るシャルロットは皆に警告する。

 

「遅い!スプレッドバースト!!」

 

全ての砲口から一斉に発射された拡散レーザーが一同に襲いかかる。

 

「まだそんなのまで隠してたのかよ!?」

 

回避が間に合わないと思った一夏は雪羅のエネルギーシールドを展開してガードするが・・・・

 

「計算通りなんだよ、ミサイルフルバースト!!」

 

そこで動きを止めてしまった一夏に無数のミサイルが放たれた。

 

「ちょっ!?」

 

「一夏!?」

 

爆炎に包まれた一夏はシールドエネルギーを失い脱落。残されたのは箒、シャルロット、ラウラ、聖、簪の五人。だが、魔王(雪兎)の攻撃はまだ終わっていなかった。ランチャーモードに変形させたガングニールでランスチャージをラウラに食らわせ、そのまま0距離射撃でラウラを聖の進行先へと吹き飛ばす。

 

「きゃあ!?」

 

「うわぁ!?」

 

そこにランスチャージ中に放っていたミサイルの雨が降り注ぎラウラと聖も脱落。

 

「ラウラ!聖!」

 

「機体性能と技量が違い過ぎる・・・・」

 

「簪!」

 

残りは三人。だが、そこで忘れていたもう一人の敵が簪に迫る。

 

「えっ?」

 

「かーんちゃん!捕まえた!」

 

そう、本音のナインテイルだ。

 

「しまった!?」

 

ナインテイルに取り付かれ打鉄弐式はシールドエネルギーを奪われていく。

 

「俺も忘れんなよ?」

 

気付けば雪兎は箒の目の前におり、ガングニールを一突きする。

 

「くっ!」

 

何とか雨月と空裂で防ぐも再びランチャーモードとなったガングニールの砲撃で箒も吹き飛ばされる。丁度そこで簪の打鉄弐式のシールドエネルギーはナインテイルに吸い尽くされた。

 

「あとはシャルだけか」

 

「ぼ、僕は簡単にはやられないからね!」

 

その後、シャルロットは善戦したものの、雪兎の使う【LA:ライトニング・アサルト】と【J:イェーガー】では地力に差がありすぎてあえなく撃墜された。結果、雪兎と本音以外が全滅というとんでもない幕引きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・地獄を見る。誇張でも何でもなかったという訳ね」

 

観客席でそれを見ていたスコールはその圧倒的な力に以前雪兎が言っていたことが事実だったと理解する。

 

「・・・・彼と協力関係結んで良かった」

 

シャルロットの父親であるデュノア社社長も雪兎と敵対しない道を選んだ過去の自分を誉めたかった。

 

「またとんでもないの作ったねぇ・・・・」

 

棗局長は【LA:ライトニング・アサルト】の性能を見て改めて雪兎のとんでもなさを知る。

 

「あれはきっと兎の皮を被った災害だ」

 

雪兎の高機動時バイザーが兎の頭部を模したような形をしており、某試験部隊と同じ兎のエンブレムを見て誰かがそう呟き、雪兎の二つ名が決まった。『兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、このレース以降、雪兎のアドヴァンスドパックシリーズは余程のことがない限り使用を控えるようにと学園から通達があったんだとか。




ついに雪兎が天災と同じ災害認定を受けました。

メディアデビュー戦でこれとか色々ヒドイ・・・・


次回予告

様々な人に衝撃やトラウマを与えたキャノンボール・ファストが終わり一夏の誕生会が行われることに。そして、何故かそこにはマドカの姿も!?

次回

「一夏の誕生会 兎、一夏を祝う」


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47話 一夏の誕生会 兎、一夏を祝う

今回、新たに原作と決定的に分岐する出来事が発生します。
雪兎にとっても今回の件は想定外の事態です。


キャノンボール・ファストは結局雪兎と本音の勝利に終わり、続く二年生のレースも試作バイザーボードを手にした忍の圧勝で終わった。三年生?ああ、あのダリルとかいうアメリカ代表候補生が圧勝していた。

 

「「「「一夏/君/さん、誕生日おめでとう!」」」」

 

その後、予定通り一夏の誕生会が織斑家で開催されたのだが、そのメンバーは・・・・

 

主役の一夏、箒、鈴、セシリア、ラウラのラバーズに雪兎、シャルロット、聖、簪、本音の特訓メンバーと楯無、虚の生徒会メンバーに新聞部の薫子、更に中学の友達である弾と数馬に弾の妹の蘭、一夏の姉である千冬と一緒になった真耶に雪菜、そして・・・・蘭に連れられてきたマドカ(・・・)だった。

 

「マドカ、お前はどうしてここに?」

 

「いや、チケットの礼を言わねばと蘭に話したら今日はここで集まるからと連行された」

 

「そうか・・・・」

 

色々とイレギュラーなことが発生していて流石の雪兎も困惑している。

 

「なぁ、その子。千冬姉に似てないか?」

 

そんな中、一夏が気付かなくていいことに気付く。

 

「言われてみれば・・・・」

 

「その娘、雪兎の知り合いらしいな。どこのどいつだ?」

 

流石に千冬は誤魔化せないようで、明らかにマドカを敵視している。

 

「ゆーくん、怒らないからお姉ちゃんに説明してくれないかな?」

 

雪菜も何かを察したらしく雪兎とマドカに逃げ場はなかった。

 

「・・・・マドカ、お前さ。こっち側来る気ねぇ?」

 

「何をいきなり」

 

「こっち側に来てくれるならお前は俺が何とかしてやるから」

 

「・・・・どのみちこのままでは組織には戻れんだろう。好きにしろ」

 

流石のマドカもこの人数と人員は厳しいらしく両手を上げて降伏する。

 

「本人の承諾も取ったんで説明するが・・・・最初に言っとく。こいつのことは俺に預けてもらえないか?」

 

「どういう意味だ、雪兎」

 

「まあ、大体の人は察してると思うが、このマドカは先日のサイレント・ゼフィルスの操者で亡国機業の一人だ」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「といっても体内にナノマシン入れられて従う他なかったらしいんだがな・・・・今は俺が無効化してるから安心してくれ」

 

「お前はレースのアドヴァンスドといい、どれだけ私を驚かせれば気が済むんだ・・・・」

 

「いやー、今日のレース見せて少しは気が変わって組織抜けてくれるようにしようかと思ってたんですけど、蘭が連れて来ちゃったんで前倒ししようかと」

 

「お前、そんなこと考えてたのか・・・・」

 

これにはマドカも呆れている。

 

「だが、亡国機業の手の者となるとそう簡単にはーー」

 

「マドカ、ゼフィルス持ってる?」

 

「修理は終わったから持っているが・・・・」

 

「それの返却を条件に取引しようかと」

 

「雪兎君、もしかしてサイレント・ゼフィルスを手土産に組織から亡命させる気?」

 

「そういう訳です、楯無さん。そういうの得意でしょ?」

 

そう、雪兎がマドカに接触した理由はこれだった。本来なら黒騎士事件の時に取っ捕まえてやるつもりだったのだが、先も言った通り蘭のファインプレーで前倒しになったのだ。

 

「それより、何で千冬姉に似てるんだ?」

 

「クローンか」

 

ラウラは何か思い至ることがあったのかマドカが千冬のクローンであると見抜いた。

 

「そうだ、私は織斑千冬を、ブリュンヒルデを量産しようなどという下らない研究の産物だ」

 

「「「「!?」」」」

 

これには何となく察していた千冬達以外も絶句する。当然だ。これはVTSなんて比べ物にならない問題だったからだ。

 

「なるほどね、ゆーくんがマドカちゃんを庇うのはそういう理由なのね」

 

「そういう訳さ、姉さん。こいつは失敗作だの名前なんてどうでもいいだのと存在を認められなかったんだ」

 

未だに一個人として扱われないマドカを雪兎はどうにか世界に認めさせたかったのだ。

 

「・・・・雪兎、お前の言いたいことはわかった。だが、これはある意味で私の問題でもある。お前一人に背負わせては教師としても姉弟子としても失格だ」

 

「それじゃあ!」

 

「保護責任者はお前と私と更識楯無として処理する。ゼフィルスに関してはオルコット、お前も手を貸してもらうぞ」

 

「わかりましたわ。サイレント・ゼフィルスが穏便に祖国に戻るのでしたらわたくしが説得してみせますわ。雪兎さん、貴方はわたくしとの約束を果たしていただきました。次はわたくしの番です」

 

「千冬さん、セシリア・・・・」

 

千冬は教師・姉弟子としてセシリアはゼフィルスを取り返してくれたことへの返礼として協力を約束してくれた。

 

「戸籍はどうする?ちーちゃんのクローンみたいだし、やっぱりちーちゃんとこで?」

 

「ちーちゃん言うなと言っているだろう・・・・マドカと言ったな?希望はあるか?」

 

「・・・・私はこいつ(雪兎)のところがいい」

 

「えっ?」

 

「織斑千冬は何れ超える目標だ。それに、そこのだらしないやつ(織斑一夏)を兄とは呼びたくない」

 

「この娘、俺に対してなんかキツくない?」

 

こうしてマドカは亡国機業からの亡命者として雪兎達の保護下に入ることとなった。ついでに戸籍は雪兎の妹という扱いになり、蘭と同い年ということで、来年度IS学園に入学させるまでは学園で保護ということになった。

 

「こ、これからよろしく頼むぞ、に、兄さん」

 

「とんだ妹ができちまったな・・・・」

 

その後、この話は口外不可ということが言い渡され、その後、一同は誕生会へと戻っていった。この面子、案外神経が図太い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれのプレゼントは、箒が着物、鈴が手打ちのラーメン、セシリアがティーセット、ラウラがナイフ、シャルロットが時計、弾と数馬がそれぞれのオススメのバンドのCD、蘭が手作りケーキ、楯無が小型の護身用スタンガン、簪が好きなアニメの総集編のディスク、聖がクッキー、本音がオススメのお菓子詰め合わせ、虚は好きな日本茶の茶葉、薫子がどこで知ったのか一夏が写真を撮るということで新しいカメラ、千冬はトレーニング用のリストバンド、真耶が入浴剤とバリエーション豊かである。

 

「何だ、俺がトリなのか?」

 

「うん、何だか雪兎の後だと皆霞んじゃいそうで・・・・」

 

「「「「うんうん」」」」

 

シャルロットの言葉に全員が頷く。

 

「まあいいか・・・・俺はこれだ」

 

そう言って雪兎が取り出したのは簪と同じく映像ディスクだった。

 

「それは?」

 

「過去のモンド・グロッソの中から俺が選りすぐりの試合を解説付きでまとめた総集編ディスクだ」

 

思ったより普通であった。

 

「一夏の参考になりそうな試合をまとめた一夏エディションと千冬さんの試合をまとめた千冬エディションもあるぜ」

 

「ぶーっ!?」

 

この不意討ちに千冬が噴き出す。

 

「やっぱ姉弟とあって参考になる試合が多くってな」

 

「おお!助かるぜ、雪兎」

 

「「「「やっぱり雪兎に持ってかれたー!!」」」」

 

ラバーズが何か言っているが無視である。その後も皆でケーキを食べたり、弾と虚がいい雰囲気になったり、一夏にラバーズが誰のプレゼントが一番だったか聞いたりと賑やかに誕生会は過ぎていった。




まさかの蘭のファインプレーでマドカが雪兎の妹になりました。本当にどうしてこうなった・・・・
蘭がいい仕事しすぎて黒騎士事件消滅です。
今回はキャラが動いた感がすごいです。本当ならもっと後だったんだけどなぁ、マドカの回収。


次回予告

マドカが仲間に加わり更に賑やかになる一同。そんなマドカに雪兎がまたしても自重を忘れた専用機を・・・・

次回

「凶鳥の系譜 兎、マドカの専用機を作る」


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48話 凶鳥の系譜 兎、マドカの専用機を作る

昼頃、日間で30位にいてびっくりした。
今後も駄文かと思いますが、お付き合い願います。

今回はマドカの専用機のお話。千冬のクローンだからスレードを・・・・という方もいるかもですが、私はマドカは凶鳥が似合うと確信しております。
いつものように凶鳥ことフッケバインも設定上げておきました。


マドカを保護してから数日後。雪兎は千冬に呼び出されていた。

 

「マドカの専用機ですか?」

 

「そうだ。あいつの護身用にISを持たせることになったのだが、あいつはお前が作ったのじゃなきゃ嫌だとごねてな」

 

今は雪兎謹製の腕輪でナノマシンを無力化しつつ、体内のナノマシンを除去する薬を飲んでいるマドカだが、サイレント・ゼフィルスを返却したため自衛手段が無い。そこでISを持たせようという話になったのだが。

 

「あー、マドカのやつ、前に生徒だったら専用機組んでやるって言ってたの覚えてたんだ」

 

「そういう訳だ。責任を持ってあいつに作ってやれ・・・・ただし、少しは自重しろよ?」

 

「アドヴァンスド程やらかすつもりはありませんが・・・・」

 

「あれには各国も言葉を失っていたぞ?まあ、自国の最新鋭機が手も足も出んなどとは笑えん話だ」

 

あのレースを見た各国のお偉いさん達は雪兎を兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)と呼び、絶対に敵対するな!と各代表候補生に厳命したんだとか。

 

「・・・・あれでもアドヴァンスドシリーズでは一番マシな方だったんですけど」

 

「あれでマシとはな・・・・やはり天災の弟子は天災か」

 

千冬は雪兎の規格外っぷりに頭を抱えるも、本家天災に比べたらまだマシだと割り切る。

 

「くれぐれも問題を起こすなよ?イギリス、中国、ドイツ、フランス、ロシアは黙ってはいるが、警察国家を自称するあの国はまだマドカのことでとやかく言ってこんとも限らん」

 

「あの国ですか・・・・黙らせる手段は無くはないですけど、面倒なのでやりませんが」

 

そう、かの国の代表候補生のとある秘密を知る雪兎は黙らせようと思えば簡単にできたのだ。

 

「本当にお前達師弟というやつは・・・・あの国を黙らせるなどどんな手段を使う気だ?」

 

「あの国の代表候補生の秘密を知ってる・・・・そんなとこです」

 

「私にも言えんことか?」

 

「いえ、今はまだ言っても確証とかないので逆に面倒なことになるから言えないだけです。まあ、個人的に脅したりはできますが」

 

「確かにお前は兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)だな」

 

「その二つ名はあまり好きじゃないんですけどねぇ」

 

そして、雪兎は去り際にこういい残した。

 

「あの国、もう少し警戒しといてください。そのうち絶対にあの無人機のコアとか白式にちょっかい出しにくると思うので」

 

「なるほど、それで私にだけでなく山田先生にまでアレ(リヴァイヴⅡ)を・・・・」

 

「出来れば先生方で何とかしてください。俺は身内に手出されて穏便に済ます程気は長くないんで」

 

「わかった。お前が動くまでもなく終わらせてやる。お前が作ったこの(参式)でな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室を後にした雪兎は早速部屋にマドカを呼び、専用機の話をすることにした。

 

「という訳でお前の専用機は俺が用意することになった。なんか要望あるか?」

 

「また雪兎がとんでもないものを作る気がしてならないよ・・・・」

 

一応、シャルロットがストッパーとしてついているが安心は出来ない。

 

「兄さん、既に草案くらいは出来ているのでしょう?まずはそれを見せてください」

 

そして、マドカは雪兎の妹になった以降は雪兎などにはこうして敬語を使うようになった。一夏などには相変わらずぶっきらぼうな態度を取るが、シャルロットには「義姉さん」と呼んでくるのでシャルロットもマドカを気に入っているのだが。

 

「基礎フレームまでは出来てるからな。ほれ」

 

そう言って雪兎はモニターにそのISのデータを表示する。そのISの名は・・・・

 

「【フッケバイン】・・・・相手に凶事をもたらす烏ですか?」

 

「高機動系のフレームにマルチウエポンバインダーか・・・・他の武装もマドカに合ってると思うよ」

 

ちなみにマドカも雪兎達について朝練や放課後の特訓にも参加している。セシリアなどはマドカに偏向射撃のコツなどを聞いてかなりレベルアップしており、一夏も誕生会で渡した映像ディスクのおかげか動きが大分よくなっていた。その際に一度リヴァイヴⅡを使わせてみたのだが、雪兎の推察通り千冬とは違った戦闘スタイルを好むマドカにフッケバインはマッチするように設計されていた。

 

「マドカを除くと特訓メンバーじゃ俺かシャルくらいしか使いこなせないピーキーな仕様ではあるが、常識の範疇でマドカに合わせようと思ったらこうなった」

 

「確かにアドヴァンスドシリーズ程無茶苦茶ではないけど・・・・」

 

実はシャルロットも【LA:ライトニング・アサルト】以外のアドヴァンスドパックのデータを見せてもらっているのだが、何れもとんでもないキチガイパックだったのだ。

 

「兄さん、これも追加して欲しいんですが・・・・」

 

すると、マドカは別のモニターに表示してあった試作品の武装に目をつけ、雪兔に着けてもらえないかと頼む。

 

「試作型シールドブースタービット【ソードブレイカー】をか?まあ、ゼフィルスのビットを使えたんだから使えなくはないだろうが・・・・」

 

その後も雪兎とマドカが意見を交わし、シャルロットが二人の意見をまとめながらフッケバインの設計を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、完成したフッケバインのお披露目は放課後の特訓の時間に行われた。

 

「こい、我が凶鳥!フッケバイン!」

 

マドカの声に応えるようにマドカをフッケバインが覆うように姿を現す。

 

「へぇ、マドカの専用機はそんなISなのか」

 

装甲の大部分が黒で、所々が赤く、縁取りや細かいパーツが金で構成されたフッケバイン。その最大の特徴は背面にマウントされたマルチウエポンバインダー【レーヴァテイン】だ。マドカはビットを扱う要領でレーヴァテインを手元に持ってくると大剣へと変形させる。

 

「可変武装か、聖のバイザーボードに似ているな」

 

「一応、バイザーボードと同じように乗ったりも出来るぞ。マドカ、他の武装も使ってみろ」

 

そう言うと雪兎はアリーナの機能を操作してターゲットを出現させる。

 

「まずはお前からだ【ヴァイス&シュヴァルツ】」

 

レーヴァテインを背面に戻して取り出したのは腰にマウントしてあるホルスターに納められた白と黒の二丁拳銃【ヴァイス&シュヴァルツ】だった。白のヴァイスがリボルバータイプ、黒のシュヴァルツがマガジンタイプのハンドガンだ。それでマドカは次々とターゲットを撃ち抜いていく。

 

「拡張領域があるのにわざわざホルスターがあるのには意味があるの?」

 

「まあ、見てろって」

 

その理由はすぐに明らかになった。それぞれ弾を射ち尽くしたのかヴァイス&シュヴァルツをホルスターに戻すとガシャンという音と共にすぐさまリロードが完了する。

 

自動装填機(オートリローダー)か・・・・」

 

そう、高速切替を持たない人間でも高速リロードを可能にする自動装填機能を持つホルスターだったのだ。続いてマドカが取り出したのは雪兎やシャルロットが使うのと同じソードライフル系の武装ソードライフル改【レイヴン】だった。

 

「ふっ!」

 

その名の通り漆黒の翼のようなレイヴンを剣と銃のモードを切替ながらターゲットを破壊していくマドカ。更に腕部内蔵のアンカーショット【スティンガー】も使いターゲットに撃ち込んで引き寄せてからレイヴンで斬り刻む。最後にシールドブースタービット【ソードブレイカー】を起動させてターゲットを破壊しつつレーヴァテインをビームキャノンモードにしてターゲットを破壊すると、腕部に取り付けられたもう一つの武装、三刃のブーメランのようなファングスラッシャーを手にし、最後のターゲットに投げつけ破壊した。

 

「すごい・・・・」

 

「あれだけの武装を使いこなすマドカさんもすごいですが、あのフッケバインというISもとんでもないISですわね」

 

「ああ、装備の一つ一つが洗練されたデザインで無駄が無い。性能も文句のつけようがないな。あれを量産されたら厄介だ」

 

「しかも、あれでまだ拡張領域に余裕ありそうな感じよ?汎用性も高いんじゃない?」

 

「何だか参式とはコンセプトが逆な印象があるね」

 

代表候補生達の評価も上々である。

 

「よし。マドカ、ちょっと模擬戦でもするか?」

 

「はい!」

 

それから雪兎、の雪華と模擬戦になったのだが、その凄まじい戦闘に一同は負けていられないと刺激を受けるのであった。




という訳でフッケバインのお披露目回でした。

重力系の武装はとりあえず今はつけてません。
そのうち作るかもですが・・・・


次回予告

ある日、雪兎は久しぶりに束に呼び出しを受け、束のラボへと足を運ぶ。雪兎や箒達の近況を聞き天災は何を思うのか・・・・そして、新キャラ登場?

次回

「おいでよ天災のラボ! 兎、ペットを飼う!?」


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49話 おいでよ天災のラボ! 兎、ペットを飼う!?

七章の最後は兎師匠のターンです。新キャラはちょっとぶっ飛んだやつです。


マドカの件は未成年であること、マドカの境遇、ナノマシンによる監視があったことなどとマドカがサイレント・ゼフィルス強奪時に殺しをしていないこと、サイレント・ゼフィルスはちゃんとイギリスに返却されたこと、亡国機業の情報を話したこと、そして何よりも雪兎と千冬が保護するということもあって多くの国が保護観察という処分を認めた。キャノンボール・ファストで雪兎の脅威を目の当たりにして雪兎が保護すると言っているマドカをどうこうしようという国は表立ってはいないだろう。

そんなこんながあったがマドカは最近ではすっかり特訓メンバーとも親しくなってきて皆の妹分というポジションを獲得していた・・・・実力は雪兎やシャルロット、楯無に並ぶレベルなため他のメンバーもマドカに負けていられないとレベルアップに励んでいる。

そんなある日、雪兎の端末に珍しい人物から連絡があった。

 

『はろはろー。やあやあ我が弟子よ、元気にしてるー?』

 

それは雪兎の師匠でありISの開発者・篠ノ之束だった。

 

「珍しいですね、束さんが電話してくるなんて」

 

『そうだねー。ところで今度の土日は空いてるかな?』

 

「予定は特にありませんけど・・・・」

 

『では久しぶりに私のラボに来て欲しいんだよ。あっ、座標データは雪華に送っとくから』

 

「いいですよ。クロエやあいつ(・・・)にも会っておきたかったとこですから」

 

『それじゃあ、よろしくねー』

 

こうして、雪兎は約半年振りに束のラボへと赴くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かこの辺のはずなんだが・・・・」

 

そして土曜。雪兎は千冬からの依頼という名目でISでの飛行許可を取って束の移動ラボである原子力潜水艦【吾が輩は猫である、名前はまだない】のいると思われるエリアにやってきた。

 

『来たね!ちょっと待てって』

 

すると束から通信があり潜水艦が浮上してくる。

 

『いつものところから入ってねー』

 

ハッチが開き、雪兎は慣れたようにハッチから中へと入っていく。

 

「やあやあ。よく来たね、我が弟子よ」

 

「来ましたよ、師匠」

 

「「いぇい!」」

 

まずはハイタッチを交わす師弟。

 

「そういえば面白い娘を拾ったんだって?」

 

「マドカのことですか?」

 

「そうそう、ちーちゃんのクローンって聞いてるけど、どんな娘?」

 

それからしばらくマドカや箒、一夏の近況を話していると・・・・

 

「お久しぶりです。雪兎兄様」

 

「クロエか、久しぶり。半年振りか?」

 

束のラボにいるもう一人の住人クロエ・クロニクルが兎(ロップイヤー)を抱いてやってきた。

 

「ミュウも久しぶりだな」

 

「きゅ」

 

この兎、ただの兎ではない。何処ぞの施設で実験動物になっていた兎なのだが、人語を理解するくらい賢いのだ。それを施設を叩き潰した束が面白がって連れて帰ったのがこのミュウと名付けられた兎なのだ。ちなみに名前の由来はミュータントな兎から。

 

「雪兎兄様、また料理の腕が上がりました」

「へぇー、なら後で食べさせてもらおうか」

 

「はい。束様は美味しいとしか言ってくださいませんから雪兎兄様にちゃんと評価していただきたいです」

 

「本当に我が弟子には感謝してるよ。ゆーくんがくーちゃんにお料理教えてくれたからラボでも毎日美味しい料理が食べられるんだから。それよりもくーちゃん、私のことはお母さんと呼んでいいんだよ?」

 

「いえ、束様は束様ですので」

 

「またやってんですか、そのやり取り」

 

束はことある毎にクロエに「お母さん」と呼ぶように言っているのだが、クロエにとって束は恩人であるためか「束様」と呼んでいる。一方で雪兎は料理などを教えたりしていたらいつの間にか「雪兎兄様」と呼ばれるようになっていた。

 

「それで、今回の呼び出しの理由は何なんですか?」

 

「それなんだけどね。ゆーくんが収集したデータと・・・・みゅーちゃんをしばらく預かってほしいんだよ」

 

「はぁ?ミュウをですか?」

 

「ちょっと忙しくなりそうでね」

 

おそらく専用機限定タッグマッチに出てくるゴーレムⅢ達のことだろうか?と雪兎が考えると。

 

「やっぱりゆーくんは色々知ってるみたいだね」

 

「!?」

 

束は心を読んだかのような指摘をする。

 

「前は聞かなかったけど、束さんが当ててみせよう!ズバリ、ゆーくんはこの世界について(・・・・・・・・)色々知ってるよね?外の世界(・・・・)でこっちのこと知って生まれ変わった。違うかな?」

 

「束さんはそういうオカルトじみたこと信じないと思ってたんですが・・・・正解ですよ」

 

転生者であることを看破され、雪兎は大人しくそれを認める。

 

「まあ、私としてはあまり認めたくないけどゆーくんという実例がいちゃね・・・・で、何処まで知ってるの?」

 

「この後束さんがやろうとしてることと・・・・今年の冬近くのことまでですかね?そこまでしか本で出てなかったので」

 

「本か、ってことはライトノベルか何かかな?」

 

「大正解ですよ。でも俺というイレギュラーがいたんで色々変わってますし、アニメとかにもなっててそのエピソードも混ざってたりしますからもうあまり当てにはならないと思います」

 

「そっか、でもイレギュラーっていうのは少し違うんじゃないかな?」

 

「えっ?」

 

「ゆーくんはちゃんとこの世界の住人だよ。君を私は認めてる」

 

「束さん・・・・前に雪華にも言われました」

 

「おっ?二次移行の時かな?」

 

「はい」

 

「とりあえず今はゆーくんが何を何処まで知ってるかまでは聞かないよ。聞いちゃったらやっぱりつまらないもの」

 

前回と同じく束はそう言う。

 

「多分、ゆーくんにとっての本番はここからじゃないかな?」

 

「俺にとっての本番?」

 

「そっ。きっとこれからはゆーくんの知らない事ばかりのはず。だから油断はしちゃ駄目だよ?」

 

「はい、わかってますよ」

 

「よろしい。ではみゅーちゃんのこともよろしくね?ちーちゃんには連絡しといたから」

 

「根回し済みでしたか・・・・まあ、ミュウなら手間はかからないからいいですけどね」

 

何せ下手な子供より賢い兎だ。ちゃんと言って聞かせれば問題無いだろう。

 

「じゃあ、ついでにコレも手伝ってもらおうかな?」

 

そう言って束はモニターにゴーレムⅢと思われる無人機のデータを表示する。

 

「それ、やっぱ束さんが作ったやつかよ!?」

 

「だっていっくんや箒ちゃんを強くしようと思ったら百の模擬戦より一回の実戦でしょ?」

 

「だから天災なんて呼ばれるんですよ・・・・」

 

「そういうゆーくんだって兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)だっけ?そう呼ばれてるじゃん」

 

どっちもどっちである。

 

「これさぁ、前に作っておいたやつなんだけど。今のゆーくんだと全部一人で殲滅出来ちゃうよね?それじゃあ意味ないからもっと強化しようと思っててね」

 

「まあ、こいつら程度なら俺でなくとも殲滅されますね・・・・千冬さんに」

 

「あの打鉄・参式とかいうISでならちーちゃんでもやれるね・・・・」

 

二人の脳裏に参式でゴーレムⅢを叩き斬る千冬の姿が浮かぶ。

 

「・・・・俺が協力したことはバラさないでくださいよ?」

 

雪兎としても楯無や簪が怪我をしないのであればあの襲撃はレベルアップにもってこいのシチュエーションのため、少し協力することに。

 

「あっ、束さん。千冬さんには参式渡してるんで暮桜は無理に封印解除しなくて大丈夫ですよ」

 

「そうだね。あれがあれば必要ないかもね」

 

「あと、クロエをお使いに出す時は十分注意してくださいね。亡国機業とかいう馬鹿が人質とかにしようと拉致るかもしれないので」

 

「くーちゃんを?わかった注意しておくね。万が一そんなことしたら私自ら殲滅してあげるよ」

 

さりげにワールドパージや亡国機業との邂逅も潰しにかかる雪兎。本当に亡国機業は泣いていい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、クロエの料理を食べてからミュウを連れて雪兎は学園に戻った。

 

「お帰り、雪兎・・・・って、どうしたの、その兎」

 

「束さんが預かってくれって渡された兎。名前はミュウって言うんだ」

 

「きゅ」

 

すると、「よろしくな」と言っているのか前足を上げてシャルロットに挨拶するミュウ。

 

「・・・・えっと、もしかしてこの子。人の言葉分かるの?」

 

「きゅっ」

 

『その通り』

 

今度は何処からともなくプラカードを取り出したミュウ。

 

「・・・・」

 

「そのプラカードは楯無さんの扇子と同じ原理な」

 

「うん、雪兎が連れてきた兎だし、普通じゃないのは予想してたけど。ここまでとは僕も予想してなかったよ」

 

こうして雪兎とシャルロットの部屋に新たな住人が増えたのであった。




という訳で七章はこれにて閉幕です。
そしてスーパーラビット・ミュウちゃん登場です。この兎、束の興味を引くだけあって色々おかしい兎です。(♀)

ゴーレム超強化。特訓メンバーでないダリルとフォルテは泣いていい。


次回予告

襲撃に備え専用機持ちのレベルアップを図る専用機持ち限定タッグマッチが開催されることとなり、一夏のパートナーを廻りラバーズがいつもの如く大騒ぎ。一方、雪兎はキャノンボールのせいかタッグマッチなのに一人で参加させられる羽目になり・・・・

次回

「専用機限定タッグマッチ!一夏のパートナーは? 兎、ハブられる」


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八章「兎と襲撃のタッグマッチ」
50話 専用機限定タッグマッチ!一夏のパートナーは? 兎、ハブられる


新キャラ・ミュウも加わり更に賑やかになり八章でございます。

八章は専用機持ち限定タッグマッチのお話ですが、更識姉妹の問題は解決済みのため特訓メンバーのパワーアップがメインとなります。
特に一夏とセシリアが七章で学んだことをからパワーアップします。

それではISー兎協奏曲ー第8幕開演です。


ミュウが学園にやってきた翌日の昼休み雪兎達と昼食を取ろうとマドカが授業中はマドカに預けられているミュウと共にやってきた。

 

「兄さん、昼食の時間だ」

 

「きゅ」

 

「あっ、マドカちゃんいらっしゃい。って、それ兎?」

 

マドカもすっかり1年1組の生徒にはお馴染みとなっているが、ミュウを見るのは初めてであるため驚く。そもそも学園に兎はいなかったはずなので驚くのも無理は無い。

 

「兄さんの兎でミュウという」

 

「きゅ」

 

『ご主人がお世話になっております』

 

すると、ミュウはプラカードを出して挨拶する。

 

「えっ?」

 

普通に考えて兎がプラカードなんか出して挨拶したら驚くに決まっている。

 

「ん?その兎ってミュウなのか?」

 

そんな中、以前にも雪兎に預けられた時に会っている一夏がミュウに近付く。

 

「やっぱりミュウだ。久しぶりだな」

 

「きゅ」

 

『あっ、一夏だ』

 

ミュウも一夏を覚えていたのかマドカの腕の中から飛び出すと一夏に飛び付いた。

 

「おっと、相変わらずだな、お前は」

 

「雪兎が動物を飼っていたとは初耳だな」

 

「正確には束さんのとこから預かってるというのが正解だ」

 

「何、姉さんの?」

 

「きゅ?」

 

『貴女が箒?』

 

「あ、ああ、私が箒だ」

 

すると今度は箒に飛び付くミュウ。

 

「きゅ」

 

『よろしくなの、箒』

 

「ああ、よろしくな、ミュウ」

 

早くも箒とも打ち解けようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、屋上でお弁当会となったのだが・・・・

 

「げっ!ミュウじゃない」

 

「きゅ」

 

『久しぶりなの、雌猫』

 

そう、鈴もミュウとは面識があり、何故かこの一人と一羽は物凄く仲が悪いのだ。

 

「こっちも相変わらずだな」

 

しかし、鈴以外のメンバーとは仲良くなった模様。

 

「あんた達は知らないのよ、そのバグ兎の本性を・・・・」

 

「きゅっ!」

 

『失礼な!元はと言えば雌猫が悪い!』

 

どうも鈴がミュウに何かしたのが原因っぽいが・・・・

 

「ふん!」

 

鈴には言う気は無さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、全校集会にて専用機持ち限定タッグマッチの開催が知らされた。しかし、雪兎だけは一人で参加が言い渡される。

 

「何で俺だけ?」

 

「お前がキャノンボールでやり過ぎたからに決まっているだろうが、馬鹿者」

 

不思議そうにしていると千冬の主席簿アタックが久しぶりに雪兎に炸裂した。

 

「・・・・そういう訳ですか」

 

「その代わり、アドヴァンスドの使用は許可してやる」

 

「つまり仮想敵をやれと?」

 

「そういう訳だ」

 

この瞬間、専用機持ち達の、特にキャノンボールでボコられた一同の表情が凍る。あのアドヴァンスドシリーズが解禁される。つまり、あのキャノンボールでの悪夢が再びということだ。

 

「マズイな、まだあれに対抗する手段は・・・・」

 

「シャルロットさんの話ではアレ以外にもアドヴァンスドはあるとのこと・・・・」

 

「つまり、アレよりヤバいのが出てくるかもってこと?」

 

(ガクガクブルブル)

 

「シャ、シャルロット?何故震えているんだ?」

 

「他のアドヴァンスドはアレよりヤバいのね・・・・」

 

「不幸だよ・・・・」

 

「うん、無理だねー」

 

特訓メンバーは未知のアドヴァンスドを、シャルロットは以前に見たアドヴァンスドシリーズの性能を知るが故に身体が震えていた。

 

「・・・・」

 

「先輩?」

 

そして、震えている生徒はもう一人いた。

 

(ヤバい、何故だか知らないが身体が震えてしょうがない)

 

震えていたのはダリル・ケイシーという三年生でアメリカの代表候補生だった。そして、このダリル・ケイシー。本名はレイン・ミューゼルといい、あのスコールの姪で亡国機業のスパイでもある。それゆえなのかアドヴァンスド解禁の知らせを聞いた雪兎の笑みに物凄い悪寒を感じたのだ。

 

(ん?何か視線が・・・・!?)

 

そして視線を感じてそちらを向くと、犬歯を剥き出しにして笑う雪兎の顔があった。

 

(・・・・ヤバい、これバレてんじゃね?)

 

そう思わずにはいられないダリル。何故なら、以前から雪兎達の情報を得ようと周りを嗅ぎ回っていたのだが、ダリルは中々雪兎達に接近する機会を得ることが出来ずにいたのだ。そこであの笑みである。全てを見透かすような雪兎の視線にダリルは恐怖を感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、早速一夏のパートナーを賭けてラバーズ達が言い争いや一夏に迫ったりしていると・・・・

 

「きゅ」

 

一夏の前にミュウが立ち塞がる。

 

「ミュウ?」

 

「きゅっ!」

 

『そんなことばっかりしてるから選んでもらえないんじゃないの?』

 

グサッ!とプラカードに表示された言葉がラバーズに突き刺さる。

 

「きゅ」

 

『迫るのは脅迫してるってこと。一夏が怯えてる』

 

「「「「・・・・」」」」

 

「きゅきゅ」

 

『パートナーになりたいならタッグマッチでパートナーになる利点をちゃんと示してお願いするの。少しはシャルを見習うの!』

 

兎に説教される女子四人という謎の光景が出来上がっていた。

 

「ミュウちゃん凄い・・・・あの四人を止めた」

 

だが、ここで一人キレるラバーズがいた。

 

「一夏は私と組めばいいのよ!」

 

鈴だ。ミュウと対立する鈴は一夏に手を伸ばそうとするが。

 

「きゅっ!」

 

そこにミュウのジャンピングローリングソバットが鈴の顔面に直撃し、吹っ飛ばされる。

 

「「「「えっ?」」」」

 

「やったわね!このバグ兎!!」

 

そして鈴はついいつもの癖でISを部分展開してミュウに殴りかかってしまう。

 

「あっ、やばっ!?」

 

鈴も途中で気付いたのだがもう遅い。しかし、鈴の攻撃がミュウに届くことはなかった。

 

「「「「えっ!?」」」」

 

何故ならミュウを何処からともなく現れた白い機械の腕がガードしていたからだ。

 

「きゅ」

 

『今の私じゃなかったら危なかったの』

 

「人の台詞真似してんじゃないわよ!って、その腕ってまさか・・・・」

 

「きゅ!」

 

『来るの!束ご主人特製IS【月光】』

 

ミュウが鳴くとミュウの周りに透明の球体が現れ、それに先程の腕や脚自体がブレードになっている脚部に兎を模した頭部、背面にスラスターを持つマドカくらいの大きさの小型IS【月光】が出現した。

 

「「「「う、兎がISに乗ってる!?」」」」

 

そう、ミュウが束の興味を引いた最大の理由はミュウがISを使えることなのだ。つまり、ミュウは世界でたった一羽のIS操者兎なのだ。

 

「しかもあれ、モビルトレースシステム使ってるな。脚のブレードからして近接格闘型か・・・・」

 

そんな中、雪兎は一人。月光に使われてる技術を観察していた。

 

「きゅ」

 

『雌猫、かかってこいなの!』

 

「上等じゃない!今日こそ人間様の力を思い知らせてやるわ!!」

 

その後、ミュウVS鈴の戦いが繰り広げられたのだが、小回りが効くミュウに翻弄された鈴が敗北するという結果に終わった。

 

「きゅ」

 

『笑止、なの』

 

「「「「兎つえー」」」」

 

やはり束が気に入っただけあってミュウも細胞単位で普通の兎ではなかったのであった。




ミュウ無双です。
ISまで操る兎とかどんだけ・・・・

25日に出た新巻の内容から少し修正を入れています。
デュノアの正妻いい人やん!新しいシャルロットのISもおもしろい。あれはどっかでどういった形かは未定ですが使うつもりです。


次回予告

すっかりメンバーに馴染んだミュウも加わり特訓は続く。そしてとうとうタッグパートナーが決定する。

次回

「決定タッグパートナー! 兎、皆を鍛える」


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51話 決定タッグパートナー! 兎、皆を鍛える

昨日と一昨日は色々あって更新できませんでした。

とりあえず今回はタッグパートナーが決まり、その特訓の模様です。一夏は誰と組んだのかな?


専用機持ち限定タッグマッチは文字通りタッグ戦。千冬に言われてソロプレイとなった雪兎を除き、それぞれペアを組むことになったのだが・・・・

 

「まさかお前も出ることになるとはな・・・・」

 

「前みたいに雪兎と組みたかったけど織斑先生の指示じゃ仕方ないよね」

 

「私も出来れば兄さんと組みたかった」

 

「きゅ」

 

『頑張って、シャル、マドカ』

 

そう、マドカまでも参加することになったのだ。しかも、シャルロット・マドカチームというとんでもペアで。その他のメンバーはというと・・・・

 

「頑張ろうぜ、箒」

 

「うむ(少し複雑だが、よしとしよう)」

 

前回組んだという理由で一夏・箒チーム。

 

「鈴さん、今回は一時休戦ですわ」

 

「そうね、セシリア。私達を選ばなかったことを後悔させてあげるわ!」

 

選ばれなかった怨み(完全に逆怨み)でセシリア・鈴チーム。

 

「一夏君と組めなかったのは残念だったかもだけど、私はまたラウラと組めて嬉しいよ」

 

「悪いな、聖。今回は前回のような失態は犯さん」

 

ラウラは親友である聖とチームを組み。

 

「本音、頑張ろう」

 

「うん、かんちゃん」

 

「私も簪ちゃんと組みたかった」

 

「たっちゃんとは私が組んであげる」

 

簪は本音と組み、楯無は意外にも友達だった忍と組むことになった。そして、原作通りのダリルとフォルテのイージスコンビにソロの雪兎で計八組15名が競うことになる。

 

(原作より増えたよなぁ・・・・専用機持ち)

 

原作一巻でもセシリアが言っているが、専用機持ちというのは一種のエリートであり、学生の時点でそれを保有するというのは極少数である。それが一夏(と雪兎)という起爆剤がいたためにセシリア、鈴、シャルロット、ラウラといった専用機持ちの代表候補生が入学してきたのだ。更に雪兎の関与で聖や本音も専用機持ちになった。それを考えれば一年生に専用機持ちが10名もいる今年は間違いなく異例のことだろう。

 

「さてと、皆の様子でも見てくるか」

 

普通ならこの期間中は各自が特訓を行うため雪兎が様子を見に行くのは偵察になるのだが、一年生の専用機で現在雪兎が関与していないISは無いと言ってよく、更に言えばメタ装備やアドヴァンスドというキチガイシリーズを持つ雪兎にまともにやって勝てるとは特訓メンバーも思ってはいるはずがない。そこで、他のメンバーに勝つためにもそれぞれが雪兎に特訓メニューを組んでもらっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロット・マドカペアの場合。

 

「行くよ、マドカ」

 

「ああ、シャル姉さん」

 

二人とも戦闘スタイルが似ていることもあって特に問題はなく、ひたすらコンビネーションを鍛える特訓を雪兎は課していた。

 

「この二人ならまず大丈夫だろ」

 

この二人に限って言えば技量はメンバーの中でもトップクラスであるため雪兎はあまり心配はしていない。片や雪兎の雪華と同じスペックを持つリヴァイヴⅡSを操るシャルロットに、片や凶鳥の名を冠する自重無しのフッケバインを乗りこなすマドカだ。間違いなく優勝候補だろう。雪兎も流石にアドヴァンスド無しでこのペアはキツい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏・箒ペアの場合。

 

「はぁっ!」

 

「くっ!また太刀筋がよくなってきたな、一夏」

 

「ああ、雪兎のくれたあのディスクで色々学んだからな」

 

そう、一夏は誕生日に雪兔から貰ったあのディスクを何度も見返してその技術を吸収しており、朝練で取り戻しつつある昔の勘も合わさって急激に成長していた。その一つが千冬が試合で使っていた戦術「先の先、後の先」を体現した抜刀術だ。零落白夜は確かに消耗が激しい。では、千冬はどうしていたのか?簡単だ。一撃で決めてしまえばいい、とばかりに瞬時加速と抜刀術の合わせ技による一撃必倒の斬撃。やはり姉弟と言うべきか一夏にはこれが一番合っていたのだ。

 

「あとは雪羅も使いこなせれば完璧だろう」

 

「雪兎に言われるまであの使い方は思い付かなかったよ」

 

「零落白夜のクローで掴んでの継続ダメージとはな・・・・盲点だった」

 

雪羅の一番有効な使い方はクローで斬ったり、0距離で荷電粒子砲を射ったりするよりクローで掴み続けることだった。一人目を瞬時加速からの抜刀術で瞬殺し、二人目を零落白夜のクローで掴み続ける限り絶対防御を強制発動させ続けてシールドエネルギーを削る。自身のエネルギーが少なくなったら荷電粒子砲で吹っ飛ばしてからか常時紅椿が接触し絢爛舞踏で回復。雪兎が二人に教えた戦術だ。それは実に雪兎らしいえげつない戦術だった。

 

(簪と本音にも似たような戦術教えたしな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア・鈴ペアの場合。

 

「お前らは機体相性はいいんだからもっと連携を鍛えろ」

 

こちらもシャルロット・マドカペアと同じく連携を重視したメニューだった。連携に関しては以前の真耶との模擬戦の時にも散々言って聞かせたが、この二人のISは確かに相性がいい。近接に強く、衝撃砲という攻撃手段を持つ甲龍。ビットによるオールレンジ攻撃と偏向射撃を可能とする遠距離型のブルー・ティアーズ。上手く立ち回れば衝撃砲で牽制しつつスナイプすることで相手は近付くことも出来ずやられるか、ビットで翻弄されているところを衝撃砲や双天牙月でバッサリ、という戦術が使える。

 

「この連携、使えるわね。セシリア」

 

「ええ、まるで鳥籠(バードケージ)ですわ」

 

「「ふふふふふ・・・・」」

 

「やっぱりお前ら仲良いよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ・聖ペアの場合。

 

「静と動、お前らはある意味対極にいるISを使うペアだな」

 

AICによる停止と防御を得意とするラウラと、バイザーボードで縦横無尽に駆け抜ける聖は普通の連携は難しいと考えた雪兎が二人に与えた戦術は・・・・

 

「あえて連携をせずに相手を分断しろ」

 

その対極に位置する戦闘スタイルから逆にそれを利用して敵を分断して一対一にして各個撃破というものだった。

 

「なるほど、停止結界は一対一なら非常に有効だからな」

 

理想としてはラウラがAICで一人を停め、その間に聖がもう一人を潰して残りを二人で叩くというもの。原作でラウラ戦の一夏とシャルロットがやった戦術だ。

 

「私無視してラウラに向かっていったら私がソニックブーストアタックで突っ込んで蹴散らせればいいんだよね?」

 

「高速移動によるバリアタックルか・・・・」

 

ソニックブーストアタックとは某神聖十字軍製のロボットなどが使った高速移動時に形成されるブレイクフィールドによる突撃技などのバリア系を攻撃に転用した技を再現した技で、バイザーボードに特殊なフィールド発生装置が積んであり、高速移動時にそれを展開して敵を蹴散らすのだ。この手の攻撃は割りと昔からアニメ等で存在し、その有用性は実証済みだ。

 

「こっちも問題なさそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪・本音ペアの場合。

 

「なるほど・・・・そうきたか」

 

二人の戦術はこうだ。まず、簪がオートクチュールである【剣山】の大型クローで相手を拘束し、本音のナインテイルの九尾で打鉄弐式にエネルギーを供給しながら相手のシールドエネルギーを食らい尽くす。単純だが有効な戦術だった。

 

「この前のレースを参考にした」

 

「私も頑張る!」

 

「少し入れ知恵したとはいえその戦術に至るとはな・・・・」

 

この戦術、一夏と箒のものに似ているが、大型クローによる拘束があるためこちらの方が確実性は高い。ただ、もう片方の相手を拘束しつつ簪が相手しなければならないのがネックだが、拘束した相手を盾にする戦術も雪兎は教えておいた。

 

「うん、やっぱり雪兎はえげつない」

 

「あまあまって本当に敵にしたくないね・・・・」

 

特訓メンバーはこんな感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、タッグマッチ当日。トーナメント表が公開された。

 

「へぇー・・・・少しは楽しめそうじゃん」

 

一回戦で雪兎と当たった不幸なペアは・・・・ダリル・フォルテペアだった。




という訳で雪兎の相手はイージスコンビです。ちなみに襲撃は一回戦後です。
イージスコンビに合掌。


次回予告

雪兎の相手は鉄壁と呼ばれるダリル・フォルテペアのイージスコンビ。そんな彼女らに雪兎が用意した装備とは?

次回

「タッグマッチ開幕! 兎、蹂躙する」


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52話 タッグマッチ開幕! 兎、蹂躙する

今回は蹂躙戦です。
登場するパックの名称はダークマテリアルズの星光の殲滅者から。


注目のタッグマッチ第一回戦第一試合は唯一ソロで参加となった雪兎と三年生のダリル・二年生のフォルテペアの試合だった。

 

「まさかこんな早くお前と当たるとはなぁ」

 

「先輩、しかもあの装備はおニューっぽいッスよ?」

 

雪兎が事前に相手の情報を調べ尽くしてからくるタイプだということから考えて雪兎の装備は対ダリル・フォルテ用に用意したものだと二人は考えていた。

 

「先輩方、準備はいいですか?」

 

そんな雪兎が纏っているパックは濃い紫と赤紫色のパーツで構成されている。これといった武装は見当たらないが、両腕を大型のガンドレッドで覆っており、手も白式の雪羅のクローモードと同じくらいに大型化されていることから近接格闘型と推測されるが【LA:ライトニング・アサルト】のようなてんこ盛りではないことにダリルは少し疑問を抱く。

 

「お前、オレ達にはアドヴァンスドとやらを使う気がねぇってか?」

 

「いいえ、こいつもちゃんとアドヴァンスドですよ・・・・【LF:ルシフェリオン】、こいつのこと甘く見てると痛い目見ますよ?」

 

明星(ルシフェリオン)?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、観客席では・・・・

 

「うわぁー、雪兎ヤる気だよ」

 

「シャルロット、そんなにヤバいのか?あのルシフェリオンってのは」

 

雪兎の試合は見ておくようにと千冬に言われて他のメンバー総出で観戦していたのだ。

 

「うん、ルシフェリオン、バルニフィカス、エルシニアクロイツ、スピリットフレアっていう四種類のパックはダークマテリアルズってカテゴリーに入るアドヴァンスドパックで、性能的にはライトニング・アサルトより上位のパックだよ」

 

バルニフィカスはバクテリアで傷、エルシニアは感染症の一種を意味する単語だ。スピリットフレアは揺らめく炎を吐くものを意味する。どれもかなり厄介なものを意味しており、暗黒物質(ダークマテリアル)というカテゴリー名からも普通ではないとわかる。

 

「ルシフェリオンは明星。特性は一撃必倒の超火力仕様なんだよ」

 

「つまり、この試合は・・・・」

 

「うん、瞬きなんかしたら見逃すよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合開始!』

 

そのアナウンスと共に最初に動いたのは雪兎だった。

 

「なっ!?」

 

いきなりの瞬時加速で雪兎はダリルが纏う【ヘル・ハウンド】の懐に飛び込むとその大きな手でダリルの頭部を掴み地面に押し倒すように叩き付ける。

 

「あがっ」

 

「先輩っ!?」

 

「まだ終わりじゃねぇぞ?」

 

そして、そのまま再び瞬時加速で地面に叩き付けたダリルを押し付けながら直進し引き摺っていく。

 

「自慢の【イージス】も展開する時間なきゃ意味ねぇわな?止めだ、ディザスター・ヒート」

 

最後に雪兎はダリルを持ち上げると掌にある砲口から爆炎を放ちアリーナの壁まで吹き飛ばされたダリルはあっという間に戦闘不能になってしまった。

 

「なっ・・・・!?」

 

「鉄壁とか言うからどんなもんかと思えばこの程度か・・・・」

 

その声には明らかな失望が感じられた。

 

「次はあんたの番だ。フォルテ・サファイア」

 

「くっ!」

 

雪兎がフォルテに視線を向け瞬時加速で迫るとフォルテはすぐさま正面に氷壁を作り出してブロックしようとするも。

 

「誰が直進しか出来ないなんて言った?」

 

声がしたのは背後からだった。

 

「ひぃっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のは・・・・個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)!?」

 

雪兎が行ったのは氷壁に当たる前に横方向に瞬時加速を行い軌道修正をし、更にもう一度瞬時加速を重ねてフォルテの背後へ回るというものだった。これは複数のスラスターを用いた連続瞬時加速で方向転換までこなす神業だったのだ。

 

「何よ、アレ・・・・あんなのどうしろって言うのよ」

 

「・・・・」

 

鈴は雪兎の変態的な神業に戦意を落とすが、一方で一夏は試合を食い入るように観ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、それならこれでどうッスか!!」

 

なんとか雪兎の魔の手を逃れたフォルテは自身の周りを氷壁のドームで覆い隠し全面防御を展開する。しかし、それは悪手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったね」

 

「どういうことだ?あの氷壁は彼女達の得意とする鉄壁だぞ?そんな簡単に破れはーー」

 

「言ったよね?ルシフェリオンは超火力仕様だって」

 

「ちょっと待ちなさいよ・・・・あのパック、アドヴァンスドとか言いながら全然装備無いわよね?」

 

「じゃあ、複数分のパックの容量(・・・・・・・・・・)は何処に使われたの?」

 

そう、アドヴァンスドは通常のパックの複数分の容量を使用する装備。だが、ルシフェリオンにそんな容量を使っているようには見えない。

 

「ルシフェリオンに使われた容量はいくつ分だ?」

 

「四基分・・・・雪兎はそう言ってたよ」

 

ライトニング・アサルトよりも一つ多い。つまり、その分のほとんど(・・・・・・・・)を火力に回したということになる。そして、その火力は氷壁のドームに引きこもったフォルテへと向けられる。

 

「確かに終わったな・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎は氷壁のドームを見て酷くつまらないものを見た顔をする。

 

「正直、マドカの時以上の失望だな、これは・・・・これでアテナの楯(イージス)とは笑わせる」

 

そう言いながら雪兎は右手の掌を氷壁に向ける。

 

「・・・・コードSLB起動」

 

すると掌の砲口に超高温の炎が集束されていく。

 

「疾れ明星、全てを灼き消す焔と変われ・・・・ルシフェリオン・ブレイカー!!」

 

放たれた焔は氷壁など無かったかのように容易く氷壁を貫通すると、そのまま中にいたフォルテをアリーナの壁へと叩き付けた。絶対防御によって守られていたからフォルテ自身はなんともないが、彼女のIS【コールド・ブラッド】の装甲の表面は黒焦げになっており、その威力の凄まじさを物語る。

 

「・・・・これを防ぐつもりだったのなら楯じゃなくて城壁でも用意しておくんだったな」

 

試合は当初はもう少し拮抗した試合が予測されていたが、結果は雪兎の圧勝。それも蹂躙と言っていい圧倒的な試合だった。そして、雪兎は試合後に観戦している一夏に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・やっぱりか」

 

「どういうことだ、一夏」

 

その視線の意味を理解した一夏に箒は説明を求める。

 

「この試合なんだけどさ・・・・雪兎は俺に見せてくれたんだよ。俺が目指す頂きを」

 

そうこの試合、雪兎は初めからダリルとフォルテなど眼中にはなく、一夏が目指すべき戦闘スタイルの極地を見せつけることが目的だったのだ。

 

「待ってやがれ・・・・絶対に追い付いてやる!」

 

この一夏の決意が白式にある決断をさせることになるとはこの時は誰も思いもしていなかった。




はい、蹂躙戦でした。
イージスコンビが哀れ過ぎるけれど、雪兎が今後裏切る二人に手加減なんて真似はいたしません。

そして、一夏が更なるパワーアップフラグを・・・・


次回予告

雪兎の試合が終わり他のメンバーの試合が始まると思いきや再び学園を無人機が襲う。しかも、その数は八機!?一夏達は無事に無人機を倒すことが出来るのか?

次回

「無人機再来! 兎、特訓の成果を見る」


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53話 無人機再来! 兎、特訓の成果を見る

無人機再来ですが、今回のゴーレムはⅢではありません。

今度、クロスオーバーに関するアンケートをする予定です。といってもあんまし選択肢はありませんが・・・・少しマイナーなのあります。


雪兎の圧倒的な試合の後、残りの試合が始まろうとしていたが・・・・

 

「うわぁっ!?地震!?」

 

突如アリーナが大きく揺れる。

 

『全生徒は地下シェルターへ避難!繰り返す、全生徒はーーきゃあああっ!?』

 

教師が避難勧告のアナウンスを入れるが、その時、再びアリーナが揺れる。

 

「一体何が・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その揺れの原因は数体のISだった。それぞれ試合前で待機していた専用機持ちを狙ったものと思われ、各アリーナに二、三体ずつ黒いボディでバイザーを着けた明らかにマネキンと思われる何かが乗っているような不気味なISが現れ攻撃してきたのだ。

 

「何だ、あれは・・・・」

 

「前に雪兎君が倒した無人機に似てる」

 

だが、そのデザインは・・・・

 

「あれって、【ムラクモユニット】?」

 

そのデザインに一夏は見覚えがあった。そう、以前に弾の家でプレイしていた対戦格闘ゲームに登場する【ムラクモユニット】と呼ばれる人型兵器で、λ、μ、νの三基がゲーム中には登場する(もう一体ムラクモユニットと思われるキャラも存在する)。アリーナを強襲してきたISは本体の次元接触用素体の少女をマネキンのようなものに変え、手足のユニットをISっぽく大型化したようなものだった。この二機の違いは色、そして腕と背面のブレードだったパーツが爪と砲身になっていることだろう。

 

「一夏!迎撃するぞ!」

 

「聖、私達もいくぞ!」

 

このアリーナにいたのは一夏、箒、ラウラ、聖の四名。この無人機を仮にゴーレムα、βとし四名はISを展開して迎撃に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、鈴、セシリア、シャルロット、マドカのいるアリーナには鋏のようなシザークローを持つγとパイルバンカーを持つδにチャクラムのようなものを持つεの三機が襲撃して来ていた。

 

「何よこいつら・・・・」

 

「前のクラス代表戦の無人機に似てはいますけど・・・・」

 

「ともかく、他の生徒が避難する時間を稼がなきゃ!」

 

「何であろうと敵であるならば倒すまでだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪、本音、楯無、忍のいるアリーナにはチェーンソーを持つζ、トンファーを持つη、蟷螂の鎌のようなものを持つθの三機が現れる。

 

「これって・・・・」

 

「あの時の無人機?」

 

「随分と強化されてるみたいね」

 

「みたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつが警戒していたのはこいつらか!」

 

突如現れた無人機達に指令室にいた千冬はすぐに自身も参式で迎撃に向かおうとするが・・・・

 

「織斑先生!まだ別の無人機が!」

 

真耶がそう言い反応を調べると雪兎のいたアリーナに三機、更に上空に二機の無人機がいた。

 

「くそっ!天野、お前は出られるか?」

 

『幸いダメージもないので出られます・・・・織斑先生は上空の二機をお願いします』

 

「無理はするなよ?足留めで十分だ」

 

『了解・・・・でも、倒してしまっても構わないのでしょう?』

 

明らかに危機的状況だというのに雪兎は某錬鉄の英雄のようにそう言う。

 

「構わん、私が行くまでに片付けば他の援護に向かえ!」

 

千冬も無人機ごときでやられるとは思っていないようで少し冷静さを取り戻しそう指示する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「束さん、俺殺しにきてないよな?」

 

千冬との通信を切り雪兎が対峙したのはλ、μ、νと思われるゴーレム。ダリルとフォルテは雪兎がボロボロにしてしまったので出られないことを考えると雪兎が三対一で一番不利な状況だ。

 

「調子にのってムラクモシリーズ全部作るんじゃなかったわ・・・・」

 

そう、このムラクモシリーズは雪兎が束のところで改修したゴーレムなのだ。それぞれの武装は雪兎の創作ではあるが、元のゴーレムⅢをフルボッコ出来る性能はある。しかも限りなく原型の武装を再現した武装を持つため能力は高い。

 

「少し勿体ない気もするが、あいつらの援護もせにゃいかんし、速攻でいくぞ?」

 

そう言うと雪兎は再び【LF:ルシフェリオン】を纏い瞬時加速で一気に距離を詰めるとμの胸部を貫手で貫く。原型と違い少女の姿をしていないからか雪兎に躊躇いはない。

 

「お前が一番厄介だからな」

 

遠距離での封殺を得意とするμのコアを抜き取り機能停止させると雪兎はすぐに後方に跳ぶ。すると、雪兎が先程いた場所を左右からソードビットが飛ぶ。

 

「あっぶねぇ!」

 

λとνのソードビットを避けつつ、νへと接近した雪兎はνの放った蹴りを受け止め逆に投げ飛ばし胸部を貫きコアを抜き取る。

 

「二体目。やっぱりあいつ先潰して正解だったな」

 

順番を間違えていればソードビットとμの射撃で封殺されていた可能性を考え雪兎はゾッとする。そこにλのソードビットが迫る。

 

「ちっ、少しは休ませろっての!」

 

それを雪兎はルシフェリオンの固有武装である大型の槍のような武装を取り出しソードビットを薙ぎ払う。

 

「ルシフェリオン・ドライバー!ぶち抜けっ!」

 

そしてそのままλに接近して胸部を突く。

 

「三体目っと・・・・少し時間かかったな」

 

ちゃっかり三体分のコアをゲットしておいてこれである。

 

「さてと、他の連中の様子を見に行くとしますか」

 

そう言うと雪兎はルシフェリオンからイェーガーへとパックを切換て他のアリーナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏達はそれぞれ二人で一機の無人機を相手にしていた。一夏と箒が近接型のαを、ラウラと聖が砲戦型のβを相手にしている。

 

「くっ、こいつ、硬い」

 

「下手に近付けばあの爪のビットで狙われ、隙を見せれば強力な一撃・・・・厄介な相手だ」

 

何度かαと切り結んでいる一夏と箒だが、思った以上にαの爪を用いた格闘戦能力とネイルビットが二人を苦しめていた。

 

「雪兎ならどうしただろうか・・・・」

 

そこで一夏の脳裏を過ったのは先程の雪兎の試合だった。

 

「一か八か・・・・箒、援護を頼む!」

 

「一夏!?」

 

そう言うと一夏はいきなりαへと向かっていく。αもそれを感知すると一夏にネイルビットを飛ばし迎撃しようとするが。

 

「今だ!」

 

突然一夏の姿が消え、αが周りを見回す。

 

「こっちだ!人形野郎っ!!」

 

その隙に背後へ回っていた一夏は零落白夜を起動させαを一刀両断する。

 

「ふぅ、なんとかなったか・・・・」

 

「一夏!今のは雪兎の・・・・」

 

「ああ、瞬時加速で背後を取る技。なんとか物にしたぜ」

 

そう、一夏がやったのは雪兎がフォルテに対して使った瞬時加速の応用技。それを一夏は一回見ただけで覚え、物にしてしまったのだ。

 

「おかげでエネルギーはほとんど使っちまったがな」

 

瞬時加速二連打と零落白夜でエネルギーを使い果たしてしまった一夏は苦笑する。

 

「まったく、お前というやつは・・・・」

 

そんな一夏に呆れつつも徐々に強くなっている一夏に箒は嬉しさを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でラウラと聖はというと・・・・

 

「捉えた!」

 

砲戦型のβになんとか接近したラウラがAICでβの動きを止め。

 

「私だってやってみせる!」

 

近接戦仕様のバイザーボード【ソードダイバー】で動けないβへと迫り、ボードから降りて加速させたボードを掴み敵に叩き込むウェーブ・ライダーの元となったアニメで使われる高等テクニック【ボーダタック】でβを貫く。

 

「よし!」

 

「やったな、聖!」

 

それは丁度一夏がαを倒したのと同じタイミングだった。

 

「一夏のやつ、ちゃんと見てたみたいだな・・・・それに聖もボーダタックとかどこで覚えたんだよ」

 

一夏達の様子を見に来た雪兎だったが、既にαとβは二組に撃破されていた。

 

「まあいっか、次のアリーナに行くか」

 

一夏達の成長を見届けつつも雪兎は別のアリーナへと向かうのであった。




雪兎は瞬殺、一夏は雪兎の技を盗み、聖がやらかしました。

という訳で改修されたゴーレムはムラクモユニットをベースに魔改造されたゴーレムⅣってとこですかね?
αからνまでの13機です。予告では八機って言ってたって?それは一夏達が戦うゴーレムⅣの数です。雪兎には数機当てないと足留めできないし、千冬の参式も同じく。


次回予告

なんとかゴーレムⅣを撃破した一夏達四人。一方で別のアリーナでは他のメンバーがゴーレムⅣと対峙していた。

次回

「それぞれの戦い 兎、見学する」


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54話 それぞれの戦い 兎、見学する

残り二組の戦闘模様です。
今回は雪兎は戦わない予定です。

活動報告にてアンケート実施中です。


雪兎が次に訪れたのは鈴、セシリア、シャルロット、マドカのいるアリーナだった。

 

「あの二人がいるからここはそんなに心配してねぇんだけどな・・・・」

 

そう、このアリーナにいるシャルロットとマドカは特訓メンバーの中でもトップクラスの実力を持つ二人。雪兎のように瞬殺とはいかないまでも負けはしないと雪兎は考えていた。そして、鈴とセシリアも連携さえしっかりすれば負けはしないと踏んでいた。

 

「やっぱりこのメンバー相手じゃ三機でもキツいか・・・・」

 

見れば最後まで残ったチャクラムを持つεがマドカのフッケバインのレーヴァテインで両断されるところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、突如γ、δ、εが現れアリーナは騒然となる。

 

「何よこいつら・・・・」

 

「前のクラス代表戦の無人機に似てはいますけど・・・・」

 

鈴とセシリアにとっては苦い思い出となっている無人機襲撃事件。それと似たISの出現に雪辱戦と闘志を燃やす鈴とセシリア。

 

「ともかく、他の生徒が避難する時間を稼がなきゃ!」

 

(雪兎から聞いてたのと違う無人機?)

 

「何であろうと敵であるならば倒すまでだ!」

 

今回が初の遭遇となるシャルロットとマドカだが、シャルロットは前に雪兎が言っていた原作の無人機との違いに少し困惑していたが、すぐに切り替えて現場の指揮をとる。

 

「僕と鈴とマドカでそれぞれ一機ずつ、セシリアはそれぞれのフォロー・・・・いける?」

 

「この面子じゃそうなるわよね」

 

「わかりましたわ」

 

「了解だ、義姉さん」

 

そしてシザークローのγは鈴、バンカーのδはシャルロット、チャクラム持ちのεはマドカが担当することに。

 

「いけ!龍顎!」

 

七機では狭いアリーナで誤射の危険のある衝撃砲は使えないため、鈴はアンカークロー【龍顎】と双天牙月しかまともに使えない。対するγは両腕のシザークローと背面のシザービットで攻撃してくるので鈴の方が不利と言える。だが、それは一対一の場合であり。

 

「はぁっ!」

 

精密狙撃を得意とするセシリアがフォローに回りシザービットを撃ち落としていくことで戦況は鈴の方に傾きつつあった。

 

「所詮は無人機のパターン化した動き。であればわたくしにも」

 

セシリアのビットで逃げ場を失いとうとう鈴の龍顎がγを捕らえる。

 

「ナイス、セシリア!そいやっと!」

 

そして、鈴はその捕まえたγを何故か放り投げる。しかし、鈴とて何も考えずそんなことをした訳ではない。

 

「こっちもいくよ!」

 

放り投げられたγに向かってシャルロットも【一角獣の紋章】で突き刺したδを吹き飛ばしγにぶつけ・・・・

 

「鈴!」

 

「いくわよ!【覇龍咆哮】!!」

 

二機まとめて六基連動衝撃砲【覇龍咆哮】を上から撃ち込み、地面にクレーターを作りつつ二機をスクラップへと変える。

 

「相変わらずえげつない威力よね、コレ・・・・」

 

「うん、絶対防御なかったら受けたくないね」

 

一方、マドカはいくつものチャクラムを操るεを相手にしていたが・・・・

 

「その程度か?」

 

軽々しくレーヴァテインを振るい全てのチャクラムを両断すると一気に距離を詰めてεをも両断する。

 

「拍子抜けだな・・・・」

 

あっさり片付いてしまったことに落胆するマドカだったが。

 

「よっ、援護に来てみたが・・・・必要なかったみたいだな」

 

「当然でしょ?」

 

「兄さんの方は?」

 

「こっちも三機だ。あの二人は出れなくて一人だったが、面倒だったから速攻で片付けたわ」

 

「相変わらず規格外ですわね・・・・」

 

「雪兎だからね」

 

最早特訓メンバーの中では雪兎=規格外という式ができていた。

 

「この分だと簪達の方も片付いてそうだな・・・・」

 

「その様子ですと一夏さん達も?」

 

「あっちはもう片付いてる。二機だけだったしな・・・・他は三機ずつだったみたいだが」

 

「雪兎がアドヴァンスド使わなきゃ一夏達も三機だったんだろうなぁ・・・・」

 

雪兎一人に対し三機投入する相手の気持ちが少しだけ理解できた四人。

 

「他にも二機いたけど、織斑先生も参式で出たしな」

 

「「「「えっ?」」」」

 

もう一人の規格外(ブリュンヒルデ)も出ていたと知り、四人も驚く。

 

「今頃は真っ二つだろうなぁ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、当の簪達はというと・・・・

 

「ご馳走様でしたー」

 

無人機のうち二機は既に簪の打鉄弐式【剣山】の大型クローで拘束されナインテイルによってシールドエネルギーを吸い尽くされ機能停止していた。

 

「ISの無力化という点においては本音のナインテイルは優秀」

 

残る一機も楯無のミステリアス・レイディの清き熱情(クリア・パッション)による爆破攻撃でボロボロになったところを試作バイザーボードに乗った忍の不知火のブレードで両断される。

 

「ふぅ、スッキリしたわ」

 

「たっちゃん、ストレス溜まってる?」

 

こちらは楯無がいたことと、簪との仲が拗れていなかったことが幸いし、見事に無人機は鎮圧されていた。

 

「ほぅ、二機も確保したか」

 

「あっ、織斑先生」

 

そこに上空の二機を片付けた千冬が降りてきた。

 

「かんちゃんと私が連携したんだよー」

 

「なるほど、布仏のナインテイルの九尾か・・・・使えるな、その装備は」

 

「ええ、本家の方でもこのまま譲ってもらえないか検討中らしいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦いで回収されたコアは雪兎が三つで学園が五つ(残りはスクラップ同然らしい)となったが、そのことは前回同様秘匿されることになった。元々雪兎の持つコアは束から貰った476外のものではあるが、それ以上にコアが存在すると知られれば各国がそれを求めて争うことは目に見えているからだ。

 

「IS学園め・・・・今に見ていろ」

 

しかし、そんな中、IS学園がコアを秘匿していると気付いたある国はとある手段に手を出した。

 

名も無き兵たち(アンネイムド)を出せ。無人機のコアと白式、それを奪取するのだ」

 

それが兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)の逆鱗とも知らずに・・・・




次回で八章も終わりです。
そして、とうとうあの国が動きます・・・・あの国ってどれだけ雪兎の逆鱗刺激する気なんだか。


次回予告

無人機の襲撃を切り抜けた雪兔達。しかし、今回の襲撃で思うところがあったのか一夏は雪兎にある相談を持ちかける。

次回

「一夏の決意 兎、親友に技を教える」


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55話 一夏の決意 兎、親友に技を教える

一夏と白式の魔改造回です。
白式をどう改修するか考えてたら原作にヒントが・・・・本体の容量無いなら外付けすればいいじゃない!
原作のやつを先取り・強化することにしました。

活動内容のアンケートにもご協力ください。


二度目の無人機襲撃事件は色々と原作との違いはあったが怪我人も大きな問題なく解決した(襲撃前のダリルとフォルテを除く)。それでも各専用機の受けたダメージは少なくないため一年生の専用機と忍の不知火は雪兎が、楯無のミステリアス・レイディは楯無と整備科がそれぞれ修理することに。ダリルとフォルテは専用機のアップデートも兼ねて一時帰国して修理するらしい。

 

「で、頼みたいことってのは何だ?」

 

そんな中、一夏は雪兎の部屋である相談をしていた。

 

「それなんだが・・・・特訓のレベルを上げてくれないか?」

 

「急にどうした?それに今のお前の担当は楯無さんだろ?」

 

「それとは別にこの前のタッグマッチの時の技とかちゃんと教えて欲しいんだ。頼む、この通り!」

 

確かに雪兎は前のタッグマッチで一夏に見せるような試合をした。まさか無人機戦で早速使うとは雪兎も思ってもみなかったが、どうやら一夏は己の目指す戦闘スタイルをそこに見たらしく、改めて雪兎に教えを乞うたのだ。そのせいか一夏は土下座までして雪兎に頼み込んでいる。

 

「だぁー!もうわかったから土下座はやめろ」

 

「よっしゃ!」

 

「とはいえまだ白式とかは修理中だしなぁ・・・・先にあっち教えるか」

 

「?」

 

連れていかれたのは武道場。一夏にとっては箒に鍛えられたり、楯無にボコボコにされたりした思い出深い場所である。

 

「こんなとこに連れてきて何をするんだ?」

 

「一夏、お前に一つ技を教えておく」

 

そう言って雪兎は試し切りで使われる的を用意する。

 

「見せるのは一回だけだ・・・・見逃すなよ?」

 

そして的から離れた場所に立つと一気に距離を詰めてすれ違い様に抜刀し的を切り落とす。

 

「・・・・八葉一刀流、四の型【紅葉切り】」

 

雪兎が使ったのは某軌跡シリーズにて一夏と同じ中の人が演じるキャラも使う八葉一刀流の技だった。

 

「他にもいくつか知ってる技はあるが、今の一夏に必要なのはこの紅葉切りだろう」

 

「紅葉切り・・・・」

 

「ほれ、やってみ」

 

そう言い雪兎は使っていた特殊合金製の打刀を一夏に渡す。

 

「練習用に作ったやつだから簡単には歪まないから遠慮なく使え」

 

「お、おう」

 

それから何度か一夏も試してみるが太刀筋が悪いのか中々両断できない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「少なくとも半分以上は切れてるから最初にしては上出来か」

 

普通の抜刀術ですら半分切れるのは素人にしては上出来な方であると考えればダッシュからすれ違い様に行う紅葉切りでここまで出来れば上出来な方だ。

 

「その打刀は暫く貸してやるから練習してみな」

 

「わかった」

 

こうして雪兎の手により一夏は原作とは違う新たなスタイルを学んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、お前もか、白式」

 

修理中の白式用のモニターに表示された文字を見て雪兎は苦笑する。

 

『私にもどうにか追加装備を付けれませんか?』

 

似た者主従とでも言うのか以前のリヴァイヴのように雪兎に改修を願う白式。

 

「拡張領域無いのにどうやって追加装備する気だよ?そもそもお前は好き嫌い多すぎだろ」

 

白式は使用許可(アンロック)した武装を使うことですら機嫌を損ねる気難しいISなのだ。それが自ら追加装備を願うなど雪兎からすれば驚くべきことだ。

 

「まあ、拡張領域の方は試作してるアレ(・・)使えば何とかなるか・・・・でも武装はどうする気だ?」

 

すると、白式はモニターに雪兎が試作していたいくつかの武装を表示する。

 

「お前、どんだけ一夏にハードモードさせる気だよ・・・・」

 

確かに今の白式にある欠点を埋める武装ではあるが、一夏の操縦技量を超える代物になりそうである。

 

「しょうがねぇな、アドヴァンスドシリーズでやる予定だったあっちも組み込むか・・・・」

 

雪兎が新たにモニターに表示したのは今までに無い新たなカテゴリーの武装だった。

 

「これの試作機の一個を回してやる。お前の我が儘で追加するんだから拒否とかすんなよ?」

 

こうしてリヴァイヴに続き白式までもが雪兎によって新たな姿へと変貌を遂げることとなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

雪兎にあの技を見せてもらってから数日が経った。その日も俺は雪兎に借りた打刀を手にあの技【紅葉切り】を習得すべく特訓に励んでいた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

幸いなことに雪兎の打刀は強度だけならば既存の刀に喧嘩を売っているようなとんでもないもので、どれだけ振るっても歪み一つ無いのでいくらでも練習することができた。

 

「もう一度っ!」

 

雪兎の動きを思い出し、的の懐に飛び込んで抜刀。

 

「はぁっ!」

 

それは今までと違いスッと打刀を振り抜けた。

 

「・・・・できた」

 

見れば切り口こそ荒いが、確かに的を両断していた。

 

「ほぅ、あいつに習ったのか」

 

すると、そこに千冬姉が近付いてきた。

 

「千冬姉・・・・見てたのなら声くらいかけてくれよ」

 

「織斑先生と呼べと言っているだろうが・・・・」

 

そう呆れたように言ってはいるが、その時の千冬姉は少し嬉しそうに見えた。

 

「八葉一刀流、その名の通り八つの型から成るあいつが篠ノ之道場とは別で学んだ剣らしい。その中でも紅葉切りは確かにお前にピッタリの剣だろう」

 

「ああ、雪兎も今の俺に必要な技だって言ってた」

 

初めて使う技なのに何故かこの紅葉切りはしっくりくる感じがする。

 

「上手くいかないのはお前の体重移動が雑だからだ。貸してみろ」

 

打刀を受け取ると千冬姉は雪兎と寸分も変わらない紅葉切りで的を両断する。

 

「体重移動がしっかりしないから軸が振れて剣筋が荒くなるんだ。普通の抜刀術とは異なり相手との距離を詰めながらの抜刀だ、そこを怠るな」

 

それだけ言うと千冬姉は打刀を俺に返し武道場を去っていった。

 

「体重移動と軸か・・・・」

 

それから俺は下校時刻ギリギリまで何度も剣を振るい千冬姉のアドバイスのおかげか確実に的を両断できるようになった。

 

side out




という訳で雪兎が一夏に仕込んだのは同じ中の人が演じるリィンの使う八葉一刀流です。

今回は少し中途半端な形で章を終えますが、次の本来ならばワールド・パージに該当する章の関係です。
ワールド・パージが発生しないため半ばオリジナルの章となります。

これにて八章は閉幕となります。


次回予告

ワールド・パージは事前に防いだものの、それと期を同じくして発生する名も無き兵たち(アンネイムド)の襲撃は別の形でIS学園を襲う。だが、それすら予期していた雪兎によって解き放たれた守護者の剣が動き出す。

次回

「名も無き兵と守護者の剣 兎、罠を仕掛ける」


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九章「兎と千冬と襲撃者」
56話 名も無き兵と守護者の剣 兎、罠を仕掛ける


やっと原作8巻・・・・
ワールド・パージが発生しないこの世界にて雪兎達に襲いくる事件とは?
その他にも色々な事件が・・・・

それではISー兎協奏曲ー第9幕開演です。


無人機襲撃事件から数日が経ち、修理のためISを預けている専用機持ち達は暇をもて余していた。一方で雪兎はその修理中のISについて千冬に呼び出され説明をしていた。

 

「では、まともに動かせるのはお前の雪華と私の参式、それと山田先生のリヴァイヴⅡに楯無のミステリアス・レイディだけか」

 

「ええ、ダメージこそあまり無いですが、実戦稼働となるとフルメンテはしておきたいですね」

 

「そうか・・・・」

 

「せっかくですし、あのExpected Operation Seeker(外骨格攻性機動装甲)略してEOSでしたっけ?あれの試験運用でもやらせたらどうです?」

 

「ああ、あの国連が寄越した玩具のことか・・・・いいかもしれんな」

 

「まともに動かせるのはラウラくらいでしょうけどね」

 

EOSにはISのようにPICなどの補助機構がなく、パワーアシストはあれど稼働時間や能力はISには劣り、EOS千機でIS一機と同等とすら言われている。そのため使用したことがあるのは本格的に軍属経験のあるラウラくらいのものなのだ。

 

「お前もあれくらい余裕だろう?」

 

「俺はあんな不細工なの使うくらいなら自作しますけどね。というか作ってありますよ?」

 

「お前というやつは・・・・今回は国連の寄越したやつを使え。データ取りの必要があるらしいからな」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の実習で早速EOSの試験稼働を行ったのだが、雪兎の予想通りまともに動かせたのは雪兎以外ではラウラだけだった。

 

「お、重い・・・・」

 

「ISと同じに考えるからそう感じるんだ。はい、終了」

 

全員で模擬戦を行うも一夏は早々に雪兎の足払いを食らい転倒、そこにペイント弾を食らいリタイア。セシリアは銃の反動に慣れる前にラウラに転倒され、ペイント弾の掃射を受けてリタイア。鈴もラウラの隙を狙い殴りかかるも簡単に回避されてつまづいて転倒してリタイアした。

 

「残るは箒とシャルロットに雪兎か」

 

「箒とシャルなら終わったぞ」

 

言われて見てみれば箒とシャルロットは既にペイント弾まみれになっていた。

 

「やはりお前もこれ(EOS)の扱いに慣れていたか・・・・」

 

「まあな、というか、これより少し小型なもん自作してたら束さんに目を付けられてね」

 

「・・・・お前はやはり弟子になる前から規格外だったのだな」

 

雪兎が束の弟子となった意外な理由がここで発覚する。というか、どこにそんな部品を買うお金があったのやら。

 

「つうわけで決着つけるか、ラウラ」

 

「そうだな」

 

それから二人の壮絶なEOS戦が始まるが、結局決着はバッテリー切れでドローという結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、突然学園の電源が落ちる。それどころか防御シャッターが降り、緊急用電源にも切り換わらず、非常電源も点かない。雪兎の部屋は雪兎個人で緊急用電源を持っていたため無事だった。

 

「来たか」

 

「みたいだね」

 

この襲撃を予期していた雪兎は部屋のセキュリティレベルを上げ皆の専用機を納めたケースを手に部屋を出る。

 

「全員のstorageに通信機能付けといてよかったわ」

 

「そういえばこの前一夏達にもあげてたもんね」

 

そう、今まで渡していなかった一夏や箒にもstorageを渡していたのだ。当然、緊急用の装備も入れてある。

 

『全員聞こえているな?各自、地下のオペレーションルームへ集合。今からマップを転送する。防壁に遮られた場合、破壊を許可する』

 

そして、またしてもIS学園は何者かの襲撃を受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が地下のオペレーションルームへと到着するとそこには千冬に真耶、それに雪菜の姿があった。

 

「全員揃ったな?それでは現状の説明をする」

 

千冬の説明から今IS学園は何者かによってハッキングを受けていること。同時に何者かが侵入して来ていることが説明される。

 

「IS学園は独立したシステムで運用されているが、どうやら内部から干渉する為の装置を設置されたらしい。信じたくはないが内通者がいるとみて間違いないだろう」

 

しかもハッキングは常時行うものではなくウイルスを送り込む為のものらしく、装置を取り外してもすぐに復旧できるものではないらしく、電脳ダイブを用いて撃退するとのこと。

 

「天野と更識姉妹に布仏、それと棗以外の八名で電脳ダイブを行ってもらう」

 

「何故八名なのですか?」

 

「電脳ダイブ用の装置は八つしかない。それに更識妹と布仏、そして棗には各員のオペレートを。天野にはシステムの復旧という仕事がある」

 

それを聞いてダイブ組は納得する。

 

「残った私と山田先生、それと楯無は侵入者の排除だ。天野先生にはここの統括を頼む。まだ一般生徒に被害は出ていない今の内に片をつけるぞ」

 

「「「「了解!」」」」

 

こうしてハッキングを仕掛けてきた侵入者を撃退するというミッションが発令されるのであった。

 

「マドカがダイブ組なのは万が一にもマドカを糾弾対象にしないためですか?」

 

「ああ、十中八九今回の襲撃はお前が予想していたあの国だろう。代表候補生であるあいつを国に戻したこのタイミングだ、まず間違いないだろう」

 

「それじゃあ、約束通り今回は先生にお任せしますよ?でも、復旧がてら防壁や侵入者用のトラップを起動させてしまうくらいのことならやってもいいですよね?」

 

「・・・・好きにしろ。但し、やり過ぎるなよ?」

 

そう言い残し千冬は参式を手に侵入者達の元へと向かう。

 

「私のいるこの学園で好き勝手できると思うなよ?米国」

 

学園で敵対してはならないとされる世界最強(ブリュンヒルデ)守護者の剣(打鉄・参式)と共に今動き出す。

 




という訳で米国襲撃です。

今回はワールド・パージが無いのでこんな形となりました。


次回予告

侵入した名も無き兵達を迎撃すべく、千冬が参式で、真耶がリヴァイヴⅡで出撃する。
対する敵はファング・クエイクで対峙するが・・・・

次回

「我に断てぬもの無し 兎、トラップで翻弄する」

活動報告のアンケートにもご協力ください。


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57話 我に断てぬもの無し 兎、トラップで翻弄する

一週間近く空いてすいません。

参式無双回。やはり世界のCHIHUYUは化け物だった・・・・

最近、他のISのSSを読んでいかにISの世界が歪か思い直しました。



「・・・・」

 

今回の襲撃にて名も無き兵達が請け負った任務は「白式及びIS学園に出現した無人ISのコアの奪取」。特に無人ISのコアはとある計画において大きな意味を持つ物らしく、その重要性は隊長に支給されたステルス仕様の能力試験型のファング・クエイクの存在が雄弁に語っている。しかし、名も無き兵達に指示を出した米国は忘れていた。兎の皮を被った災害がその程度で出し抜ける相手では無いことを。そして知らなかった、世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を持つ織斑千冬が守護者の剣(打鉄・参式)を手にしているということを。

 

「すまないがここから先は関係者以外立ち入り禁止だ。お引き取り願おうか」

 

その時隊長が見たのは暗闇に佇む藍色のボディに金色の装飾、巨大な刀を装備した鎧武者のような未知のISを纏う千冬だった。

 

「それでもここを通りたいと言うのなら私が相手になろう。出し惜しみなどするなよ?目の前にいるのは元世界最強(ブリュンヒルデ)だ。全身全霊でかかってこい、一兵士」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、一夏達電脳ダイブ組は雪兎の特製プログラムによってデフォルメされたアニメやゲームの敵キャラクターのように見えるウイルスをISで駆逐していた。

 

「何か昔の電脳バトル系のゲームを思い出すな、これ」

 

『確かにこの敵のデザインはあのゲームそっくり』

 

一夏が昔にプレイしたゲームを思い返していると、オペレートをしていた簪も同じようなことを考えていたらしく、一夏に同意する。

 

『というか、まんまあのゲームのデータ流用したぞ?今回は一からデザインしてる暇なんてなかったからな』

 

すると、復旧作業をしている雪兎からそんな言葉が返ってくる。

 

『ついでにウイルスどもにもあのゲームと同じ攻撃パターンしか出来ないプログラム組んでやったぜ』

 

「・・・・お前がこの襲撃を予測してこのプログラム組んでたって言われても俺は納得出来る気がするよ」

 

実際はその通りなのだが、一夏はそれを知らない。

 

「あー、雪兎が弾のやつを嵌めコンしてたゲームね?ノーダメワンターンキルとか平気でやってたわよね、あんた」

 

『ラビリング(麻痺攻撃)からのプリフォレボムのことか?あれくらい上級者なら対策してくるぞ?まあ、あれやれたの2だけだったけどな』

 

ちなみにプリフォレボムことプリズムフォレストボムは公式大会使用禁止コンボであり、プリズム(攻撃を周り8マスに拡散する設置物)とフォレストボム(着弾点から8マス拡散する木が生えるボム)のプリズムが消えるまで無限に攻撃が続くという悪夢のコンボである(ボスクラスの敵も大抵瞬殺可)。

 

「そういや3でカスタムバグで無限キューブと設置物飛ばしでフルボッコしてなかったっけ?」

 

「ゼリーでエリア削って地雷とかもやってたわね」

 

『ファラオ毒沼とかもやったよなぁー・・・・今度久しぶりやろうかな?』

 

それらのコンボも全て弾が食らったコンボである。

 

『鬼だ・・・・あまあまは鬼だよ・・・・』

 

簪に付き合ってやっていた本音もそれらのコンボを聞いて戦慄する。

 

「それよりもウイルスどもを駆逐するぞ。動きがワンパターンならば恐るに足らずだ!」

 

その後も一夏達は特に問題もなくウイルスを駆逐していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、別口で潜入していた名も無き兵達はというと・・・・

 

「何なんだこの学園は!?」

 

突如出現した通路一杯の大きさの鉄球に追われていた。しかもこの鉄球、曲がり角を曲がっても角でバネ仕掛けで弾かれて追い続けてくるのだ。

 

「こんなトラップがあるなんて聞いてないぞ!」

 

無理もない。何せこのトラップを仕掛けたのは雪兎なのだ。

 

「わ、分かれ道だ!二手に分かれるぞ!」

 

すると、名も無き兵達の前に丁字路が現れたので左右に分かれ鉄球から脱するも、床がパカッと開き名も無き兵達は落ちていく。そう両方共落とし穴が仕掛けられていたのだ。更にその底には強力な粘着力を持つ粘性の液体で満たされており、名も無き兵達はあっさり御用となったのであった。この映像を見た簪は「これ、どこの罠ゲー?」と呟いたんだとか・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、千冬と隊長の戦いはやはりと言うのか、終始千冬の優勢であった。

 

「どうした?その程度か?」

 

それもそのはず、ファング・クエイクは元より安定稼働を主として開発された機体で攻撃手段は拳とナイフ、それから拡張領域に収用していたアサルトライフルだけに対し、打鉄・参式は可変式の大型実体刀【参式・斬艦刀】に高周波刀が二振りとアサルトライフルに炸裂装甲楯、ドリルブースターアームなど多彩である。ライフルは既に両断され、ナイフなど斬艦刀や高周波刀の前では無力でしかなく、拳はドリルブースターアームで左を破壊された。

 

「これが世界最強(ブリュンヒルデ)・・・・」

 

最早、満身創痍に近い隊長に千冬は斬艦刀を向ける。

 

「さて、そろそろ終わりにするか。あちらもあらかた片付いたようだしな」

 

雪兎のトラップで捕縛されたグループの他にも真耶、楯無によって無力化されたグループもあり、名も無き兵達は千冬と交戦していた隊長以外は全滅していた。仕込んだウイルスも一夏達に消去(デリート)されている。

 

「何、殺しはせんさ。だから気にせず眠るといい」

 

最後に自身が最も得意とした抜刀術でファング・クエイクのシールドエネルギー及び隊長の意識を削り撃破すると、参式が仮想モニターに新たに発現した単一仕様能力が表示される。

 

「【我に断てぬもの無し】か・・・・暮桜の【零落白夜 】といいまたピーキーなものが出たものだ」

 

シールドバリアを無効化する【零落白夜】と違い、シールドバリアすら切断することで破り、絶対防御を強制的に発動させるという【我に断てぬもの無し】。それを見て千冬は苦笑しつつも隊長を捕縛し皆の待つオペレーションルームへと帰投するのであった。




戦闘描写は苦手なのでこんな風になってしまいました。
ファング・クエイク自体があまりどういうISなのか分かりにくい・・・・せめてもう少しコンセプトがはっきりしてれば。

【我に断てぬもの無し】は防御不可攻撃と思ってください。食らったらあっという間にシールドエネルギー削られます。そして【零落白夜】より燃費いい・・・・


次回予告

名も無き兵達の起こした騒動はあっさりと鎮圧され、すぐに日常が戻ってくる。そんな中、一夏達と共に雑誌の取材を受けることになった雪兎。そこで雪兎が口にしたこととは?


次回

「代表候補生のお仕事 兎、取材を受ける」


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58話 代表候補生のお仕事 兎、取材を受ける

順番が前後しましたが、今回は原作七巻のエピソードです。
雪兎は取材で何を語るのか?

活動報告のアンケートの方もご協力ください。


「「雑誌の取材?」」

 

名も無き兵達の襲撃から数日経ったある日、一夏と箒それと雪兎に新聞部の薫子から姉の勤める出版社の雑誌に三人の独占インタビューを掲載したいというのだ。

 

「でも、この雑誌ってあんまりIS関係無いんじゃ・・・・」

 

「国家代表や代表候補生ってのはある意味国の顔でもあるからな。アイドルみたいにこういう仕事もあるんだよ」

 

疑問を抱く一夏と箒に雪兎が説明する。

 

「ちなみに俺はこの取材受けるぞ」

 

「「えっ!?」」

 

普段ならば「面倒だから」と言って断りそうな雪兎であるが、今回は乗り気らしい。

 

「私は見世物は主義にーー」

 

「報酬は豪華一流ホテルのディナー招待券なんだけどなぁ」

 

「受けましょう」

 

雪兎に続き箒も報酬に釣られて承諾する。

 

「織斑君はどうする?」

 

「受けとけ、何事も経験だ」

 

「雪兎がそう言うんだったら・・・・」

 

雪兎にそう言われ一夏も取材を承諾する。

 

「それじゃあ三人共OKってことでいいわね?」

 

「あっ、黛先輩。招待券、もう一枚なんとかなりません?」

 

「うん?大丈夫だと思うけど・・・・ああ、デュノアさんね?」

 

「はい」

 

シャルロットを誘いたいというのも理由の一つだが、雪兎は一夏と薫子にばれないよう箒にウインクし、箒も雪兎の意図を知る。

 

(ディナーには一夏と二人で行けと?雪兎、この礼は何れ必ず!)

 

そう、原作通り二人でディナーに行かせるべく、一夏と箒とは別行動する理由を作るためでもあり、雪兎は幼馴染である箒が一歩踏み出せるよう手を打ったのだ。

 

「じゃあ、三人共、明後日の日曜日にこの住所にお昼の二時までに来てね」

 

こうして、雪兎達三人は揃って取材を受けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日曜日。薫子に渡されたメモの住所へと三人は向かっていた。当然のことながら三人共私服である。

 

「そういえば雪兎はどうしてこの取材を受けたんだ?」

 

そう言う一夏の私服はグレーのジーンズにシャツと黒のジャケット。

 

「ああ、ちょっと宣伝しときたいことがあってな。あの出版社なら丁度いいと思って」

 

雪兎は茶色のカーゴパンツに黒いシャツ、そして白い上着姿だ。

 

「宣伝?また何かやらかす気か?」

 

そんな雪兎に呆れ気味の箒は黒のミニスカートに白いブラウス。そして秋物の蒲公英色をしたパーカーコートを着ている。

 

「やらかすとは失礼な!束さんや俺の夢に関してのことだよ」

 

「姉さんや雪兎の夢?」

 

「ああ、白騎士事件で色々とおかしなことになってるISの本来の使用用途、宇宙開発。これに関して少し進展があってな」

 

「そういや棗先輩の実家の棗宇宙開発局にちょくちょく出入りしてんだっけ?」

 

世間一般では既にIS=兵器という印象が強いが、一部では雪兎や棗局長のように宇宙開発にも力を入れている人達もいる。

 

「詳しくは取材の時にな」

 

その後は一夏が箒の私服を誉めて箒が上機嫌になったりしつつも三人は出版社へと辿り着いた。

 

「どうも、私は『インフィニット・ストライプス』の編集長をやっている黛渚子よ。今日はよろしく」

 

「あ、どうも。織斑一夏です」

 

「篠ノ之箒です」

 

「天野雪兎です。本日はよろしくお願いします」

 

インタビューの後に写真撮影ということで最初にインタビューを受けることに。

 

「それじゃあ最初の質問ね。織斑君に天野君、女子校に入学した感想は?」

 

「いきなりそれですか・・・・」

 

「まあ、世間一般から見たら気になりますよねぇ」

 

「そういうことよ。読者アンケートでも一番多かった質問だしね」

 

「えーと・・・・使えるトイレが少なくて困ります」

 

「ぷっ!あは、あははは!妹が言ってたこと、本当なのね!異性に興味の無いハーレム・キングって」

 

「黛先輩、的射て過ぎだろ・・・・」

 

これには渚子や雪兎も思わず吹き出して笑ってしまう。

 

「いいわねえ。そのキングダム、入国許可証ないの?」

 

「あなたは弾ですか!」

 

「あっ、弾ってのは俺と一夏の友人の五反田弾ってやつのことです」

 

さりげなく一夏の発言にフォローを入れる雪兎。弾は哀れ。

 

「で、天野君は?」

 

「そうですね・・・・外から見れば羨ましいかもしれない光景ですが、実際は結構辛いですね。興味本意の視線もあれば明らかに敵視してくる視線とかもあって居場所があまり無いと言いますか・・・・今は大分マシにはなりましたけどね」

 

「なるほどなるほど・・・・ところで天野君には彼女がいるって聞いたんだけど?」

 

「黛先輩め・・・・」

 

「結構噂になってるわよ?」

 

聞けばデートの目撃例がいくつかアンケートにあったらしい。

 

「まあ、隠すつもりはありませんが・・・・」

 

「へえ、このことは記事にしても?」

 

「変に噂になるくらいなら公表した方がいいですね」

 

「さて、それじゃあ今度は篠ノ之さんと天野君に篠ノ之さんのお姉さんの話をーー」

 

束の話題になると箒はガタッと席を立ち、立ち去ろうとする。しかし・・・・

 

「ディナー券あげないわよ?」

 

その一言で箒は大人しく席に座り直す。

 

「いい子ね。うふふ、素直な子は大好きよ。ーーまずは篠ノ之さんから・・・・お姉さんから専用機をもらった感想は?どこかの国家代表候補生になる気はないの?日本は嫌い?」

 

「紅椿は、感謝しています。・・・・今のところ代表候補生には興味はありません。勧誘は多いですが。日本は、生まれ育った国ですから、嫌いではないですけど」

 

矢継ぎ早の質問だったが、箒はしっかりと全ての問いに答える。

 

「次に天野君。篠ノ之博士の弟子ということだけど実際篠ノ之博士ってどんな人?何機かISを設計したって聞いてるけど本当?最後に今後の目標とかはある?」

 

「束さんは興味のあることと無いことへの温度差の激しい人、ですかね?間違いなく天才ではあるのですが、どこか興味の無いことへの配慮が無いので誤解されやすいと言いますか・・・・IS設計したのは本当です。自分の使ってる雪華も俺の設計したものを束さんが完成させたものですし、あと何機か学園の生徒にデータ取りを兼ねて使ってもらってます。今後の目標はISの本来の使用用途である宇宙開発への参加ですかね?」

 

「ということは将来は棗宇宙開発局に?」

 

「いえ、今はプロジェクト段階なんですが、いくつかの企業から国際事業としてISを使った宇宙開発事業を立ち上げる計画がありまして、そこに参加しようかと」

 

「「えっ!?」」

 

それを聞き、一夏と箒は二人揃って驚いた顔をする。

 

「その情報は公開してもいいの?」

 

「ええ、実は今回取材を受けたのもこのプロジェクトについて公表することが目的でして」

 

そう、雪兎が取材を受けたのはこのプロジェクトのことを一般公開する先触れだったのだ。

 

「なるほどね。ということは君はプロジェクトからの橋渡し役ってことかしら?」

 

「ええ、この話はまた後日」

 

「了解よ」

 

その後、インタビューを終え、写真撮影では編集部が用意した服に着替えた三人がそれぞれ一人ずつ、二人、三人の集合写真などを撮った。ちなみに写真撮影用の服はそれぞれ持ち帰ってよいとのことだったので三人はもらっていくことに。

 

「今日はお疲れ様。ディナー券は後日端末に今日の写真と一緒にデータ転送してあげるから帰る前にアドレス教えてね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取材を終えた帰り道、三人は五反田食堂に寄って食事をすることに(本当は箒は一夏と二人でレストランに行きたかったのだが、雪兎に予約していないと二時間以上待たされると聞き断念した)。

 

「よっ、弾」

 

「おっ、一夏に雪兎じゃねぇか。後ろの娘は前に誕生会で会ったもう一人幼馴染か?」

 

店に入ると丁度店の手伝いをしていた弾と遭遇し、席に案内される。

 

「あんときはちゃんと自己紹介出来なかったな。俺は五反田弾だ」

 

「篠ノ之箒だ。よろしく」

 

「おう。それじゃあ注文が決まったら呼んでくれ」

 

その後、蘭が店に出てきて箒と一悶着あったりしたが、平和な日曜日であった。寮へ帰宅後、五反田食堂に寄ったのを知ったシャルロットが蘭に会いたかったと拗ねて機嫌を直すのに雪兎は一苦労することになったんだとか。




という訳で取材回でした。

雪兎の目標はISの原点である「宇宙開発への利用」です。
今後もこのプロジェクト関係でオリジナルの展開をしていこうと思っています。


次回予告

取材の報酬として貰った豪華一流ホテルディナー招待券でシャルロットをディナーに誘う雪兎。一方、束に協力を依頼すべく別のレストランへと誘い出された束は・・・・

次回

「ディナーデートと亡国の思惑 兎、ディナーデートする」


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59話 ディナーデートと亡国の思惑 兎、ディナーデートする

少し、更新するのが遅くなりましたが、早速ディナーデートです。
そして、束も・・・・
今回は少し長めです。

活動報告にてアンケート実施中。

あと、いきなりですが、ポケモンのSSも始めました。
【とあるポケモントレーナーのお話】というタイトルですので、興味があればどうぞ。


取材から数日後、届いたディナー招待券の日付は一夏や箒と違った。渚子が気を利かせてくれたようだ。

 

「こういうとき同室だと楽だなぁ、って思うよ」

 

「どうかしたの、雪兎?」

 

「いや、この前黛先輩の頼みで取材受けに行った報酬でこれ貰ってな」

 

そう言って雪兎はシャルロットに端末の画面を見せる。

 

「こ、これって、有名なホテルの豪華ディナー招待券じゃないか!?しかもペア券!」

 

「これ、一緒に行かないか?」

 

「えっ、いいの!?」

 

「ああ、というかシャルと一緒に行きたいからわざわざペア券にしてもらったんだが・・・・」

 

「雪兎・・・・うん、絶対一緒に行こ」

 

少し照れながらそう言う雪兎にシャルロット嬉しそうに頷く。

 

「あっ、そういやあそこってドレスコードあった気が・・・・」

 

「だろうね。今後もそういう場に出ることもあるだろうし、今のうちに買っておいた方がいいかも」

 

という訳で二人は事前にスーツとドレスを買っておくことにした。だが、雪兎には一つ気になる事があった。

 

(ダリルとフォルテはまだ戻ってないのか・・・・こりゃ、マドカが抜けた分の人員補充で亡国(あっち)に戻ったとみるべきだな)

 

本来なら京都の亡国機業の拠点襲撃作戦で起こるはずだったダリルいやレイン・ミューゼルの離脱とフォルテ・サファイアの裏切りが早まったのでは?と雪兎は疑っている。

 

「雪兎、どうかしたの?」

 

「いや、何でもない」

 

「ならいいけど・・・・」

 

(もう原作知識はあてにならんな・・・・となれば好きに動かさせてもらうか)

 

その後、雪兎とシャルロットは以前お世話になった千春の伝でスーツとドレスを購入し、ディナーに備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディナー当日。

 

「お待ちしておりました。天野様とデュノア様ですね」

 

二人を出迎えてくれたのは老紳士と言う言葉がピッタリのウェイターで、彼に夜景の一望出来る窓側の席へと案内され、二人は席につく。

 

「随分といい席を用意してくれたみたいだな」

 

「うん、そうだね」

 

「本日は当店のスペシャル・ディナーにようこそお越し下さいました」

 

二人が席につくとウェイターは綺麗な模範的な礼をし、二人もそれ合わせて礼をする。

 

「基本的にコースメニューで順番にお料理を出させていただきます。それとお二人は未成年なのでアルコール類は出せません。前に同じIS学園のお客様に間違ってお酒をお出ししてしまったこともございましたが、今回はそのようなことは無きよう徹底してありますのでご安心を」

 

どうやら原作同様に若いウェイターのミスで箒がお酒で酔っ払ってしまったらしい。

 

「では、ごゆるりと」

 

老紳士のウェイターが去った後、コース料理が前菜、スープ、魚料理、肉料理、ソルベ、ロースト系の肉料理、生野菜、デザート、食後のコーヒーの順で出てきたが、流石は高級ホテルと言うべきか、料理は二人を満足させてくれた。

 

「美味しかったね、雪兎」

 

「ああ、流石は高級ホテル。使ってる素材もだが、料理人のレベルが高いよ」

 

「ご満足いただけたようで何よりでございます」

 

二人が料理の感想を言い合っていると、先程の老紳士のウェイターがやってきた。

 

「天野様、貴方様宛にお電話が」

 

このような店では基本的に携帯電話などはNGであるため、このようにフロントなどに電話がかかってきてそれを受ける形になることがある。

 

「俺宛に?」

 

こんなタイミングで電話してくる人物の心当たりが少ないため疑問に思いながらも雪兎はフロントで電話に出ると・・・・

 

『はろはろー。ごめんねー、せっかくの彼女とのディナー中に』

 

電話の主は束であった。

 

「・・・・どうかしたんですか、束さん」

 

『うん、ちょっと悪いんだけど迎えに来てほしいんだよ』

 

「迎えですか?」

 

『◯◯◯って言うお店わかる?そこでね、ご飯に誘われたから来てみれば亡国機業とかいう連中が私にIS寄越せって言うんだよ・・・・』

 

「・・・・何してんですか、貴女は」

 

そこで雪兎は気付く。これは原作で束が亡国側に回ることになったイベントで、この世界では既に亡国にマドカがおらず、雪兎の警告のお陰でクロエは人質になっておらず、という状況なため束が亡国につく理由がないということに。そして、かといっていくらオーバースペックの束といえど一人で亡国の包囲を抜けるのは面倒ということで雪兎に迎え(包囲の突破)をお願いしてきたということらしい。

 

「はぁー、わかりました。俺が行くまで出来るだけ大人しくしてて下さいね?」

 

『はーい』

 

束の返事に若干不安が残りつつも雪兎は電話を切った。

 

「雪兎、誰からだったの?」

 

「束さんだった。ちょっと迎えに来てくれってさ(束さんが亡国と接触して包囲されるらしいからちょっと迎えに行ってくる)」

 

「なら僕もいくよ。一人より二人の方がいいでしょ?」

 

詳細を小声で伝えるとシャルロットも同行すると言い出す。

 

「ごめんな、せっかくのディナーだったのに」

 

「ううん、もう食べ終わってたからいいよ。ウェイターさん、ご馳走様でした」

 

「ご馳走様でした。それとあわただしくしてすいません」

 

「いえ、またのお越しをお待ちしております」

 

老紳士なウェイターにお礼を告げ雪兎とシャルロットは束から聞いた座標へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、当の束はというと・・・・

 

「はぐはぐはぐ・・・・」

 

まだスコールの用意した料理を食べていた。

 

「束博士、いい加減に私達に協力して下さいませんか?」

 

「はぐ・・・・何で?私はあんたらのことなんてこれっぽっちも知らないのに何で協力しなきゃいけないの?ねぇ?」

 

「我々はーー」

 

「そういうのは興味無いから。それとお迎え頼んだからそろそろお暇するね」

 

「オータム!」

 

束が席を立とうとするとスコールはオータムへと指示を飛ばし束を拘束しようとするが、オータムが飛びかかる前に束はローリングソバットを繰り出しオータムをワインセラーへと蹴り飛ばす。

 

「おー、みゅーちゃんの真似してみたんだけど結構いいね、この技」

 

その光景にスコールが呆けていると。

 

「あのねぇ、私ってば天才天才言われちゃうけどねー、それって思考とか頭脳だけじゃないんだよー。肉体も(・・・)細胞単位で(・・・・・)オーバースペック(・・・・・・・・)なんだよ(・・・・)

 

スコールからしてみればそれは完全な誤算だった。しかし、スコールにはまだ勝算があった。いくら束といえど生身でISの相手は出来まいと、そう思ったその時。

 

「私が一人だったからってISさえあれば何とかなるとでも思った?甘いよ。メープルシロップを煮詰めて砂糖をかけたくらい甘いよ」

 

「!?」

 

「私の弟子が何て呼ばれてるかもう忘れたの?」

 

その一言でスコールは全てを理解する。束の呼んだ迎えが誰であるかということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スコール達がいる地下にあるレストランへと続く通路には二人の女性がいた。

 

「本当に大丈夫なんッスか?先輩」

 

「心配性だな、フォルテは」

 

それはIS学園を抜けたダリル・ケイシーもといレイン・ミューゼルと彼女に誘われ亡国機業に与したフォルテ・サファイアの二人であった。二人は今回の束の勧誘作戦において束の逃亡防止と侵入者の撃退という任務を与えられていた。

 

「おっと、侵入者だ。フォルテ、準備はいいな?」

 

「だ、大丈夫ッス」

 

二人はいつでもISを展開出来るよう身構えつつ侵入者に備えるが。

 

「へぇー、やっぱりあんた達はそっちに付いてたんだ?」

 

現れた侵入者の顔を見て二人は絶句する。

 

「ゆ、雪兎、あの二人って・・・・」

 

「そういうことだ。だよな?フォルテ先輩にダリル、いやレイン先輩と言った方がいいか?」

 

その侵入者とは雪兎とシャルロットの二人だった。

 

「な、何でてめぇがっ!?」

 

「驚くことか?お前らがうちの師匠に手出したんだろ?」

 

それを聞きレインとフォルテはすぐさまISを展開する。

 

「ヘル・ハウンドとコールド・ブラッドだったか?それもやっぱり持ち出してたんだな。雪華」

 

そして雪兎も雪華を、シャルロットはリヴァイヴⅡS展開する。

 

「悪いがあんたらの相手をしてる程こっちは暇じゃないんでね」

 

すると、雪兎は雪華に【B:ブレイド】を纏わせ瞬時加速で一気に距離を詰めるとレインのヘル・ハウンドを手にした双刀で斬りつける。

 

「先輩っ!?」

 

「余所見してる暇は無いよ、フォルテ先輩!」

 

「くっ!」

 

レインに気を取られたフォルテにはシャルロットがグリフォンで牽制する。

 

「フォルテ!」

 

「あんたも余裕そうだな?」

 

「ぐわっ!」

 

双刀から刀身と柄の間にリボルバー銃のシリンダーのようなものの付いた大剣【バルムンク】に高速切替した雪兎に斬られレインは通路の壁に叩きつけられる。

 

「これはオマケだよ」

 

そこにシャルロットがグリフォンで弾丸の雨をお見舞いする。

 

「先輩!!」

 

「やっぱり脆いな、イージス」

 

フォルテはレインを庇うべく駆けつけようとするがそれを予想していた雪兎はバルムンクを振るいフォルテを反対側の壁に叩きつける。

 

「これが学園最強コンビだったとか、簪と本音の方がマシなコンビネーションするぞ?」

 

「それでも一人で圧勝する雪兎がそれ言う?」

 

狭い通路とタッグマッチでの恐怖からか満足にコンビネーションを発揮できないレインとフォルテに対し、雪兎とシャルロットの連携は完璧で、レインとフォルテを分断しつつお互いをカバーし合っていた。

 

「な、なん、なんだよ、お前ら、は・・・・」

 

「通りすがりの天災の弟子だよ。あんたら二人がどこで何してようが俺にはどうでもいいんだが、まだ邪魔するってんだったら俺も加減はしねぇぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束とスコールが対峙していると、唐突に束が呟く。

 

「そろそろかな?」

 

すると、レストランの壁を突き破ってレインとフォルテがISを纏ったまま吹き飛ばされてきた。

 

「レイン!?」

 

ボロボロになったレインのヘル・ハウンドを見てスコールは血の気が失せていくのがわかった。叔母である自分に対しては生意気な姪であってもその実力は疑いようのない実力者であるレインがここまで一方的にやられるなどとは思ってもいなかったスコールは壊れた壁の向こう側からやってきた存在を睨む。

 

兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)・・・・」

 

「久しぶりだな、スコール・ミューゼル」

 

二人が睨み合っていると束は雪兎へと近付き笑顔を見せる。

 

「やあやあ。早かったね、我が弟子よ」

 

「千冬さんからあっさりISの使用許可も出ましたし、道塞いでたのがそこの二人だけだったんで突破すんの楽でしたよ」

 

「だよね。あの程度の第3世代機が雪華の相手になる訳ないじゃん」

 

ヘル・ハウンドとコールド・ブラッドのスペックは既に束も雪兎も把握済みであり、ちょっとばかしの改修程度でこの二人を出し抜こうなど甘いとしか言い様がない。

 

「じゃあ、帰ろっか。あっ、行き先はIS学園でいいよ。そろそろ私も隠れるの嫌になっちゃったし」

 

「クロエは?」

 

「くーちゃんならラボと一緒にIS学園に向かってるよ」

 

「逃がすと思っているのかしら?」

 

帰る気満々な雪兎と束に対しスコールは逃がしてなるものかと自身のISを展開するが、素早く【J:イェーガー】に切り換えた雪兎がバスターライフル改をスコールの顔に突きつける。

 

「さて、お前が動くのと俺が引き金を引くのとどっちが速いと思う?」

 

「くっ・・・・」

 

少しでも動けば射つと言わんばかりの雪兎にスコールは敗北を認めISを解除する。

 

「じゃ、そういうことで」

 

そして束は雪兎に抱えられ、シャルロットが背後を警戒しつつその場を離脱した。

 

「・・・・天野、雪兎!!」

 

マドカを奪い、自分達亡国機業実働部隊【モノクローム・アバター】をここまでこけにしてくれたイレギュラーにスコールはいつもなら抱かない怒りを強く抱くのであった。




という訳で束師匠がIS学園に。
レインとフォルテもリベンジならず・・・・もう、ボロボロだな、亡国。


次回予告

束がIS学園にやってきた!?
更には雪兎の言うプロジェクトへも参加を表明し世界は大慌て!そんな中、プロジェクトの名がとうとう明らかに・・・・

次回

「プロジェクト・フロンティア 兎、開拓への準備を開始する」


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60話 プロジェクト・フロンティア 兎、開拓への準備を開始する

兎師弟が本格的に行動開始です。

やっと束が学園に合流できます。

あと今回でこの章は終わりです。次、体育祭なんで・・・・


IS学園に着くと、そこには既に連絡を受けていた千冬と雪菜、真耶の他に一夏達専用機持ち達とクロエの姿があった。

 

「天野が突然ISの使用許可を求めてきたと思えば、お前が発端とはな、束」

 

「めんごめんご。あっ、ちーちゃん。私、しばらくIS学園(ここ)でお世話になるから」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

これに驚いたのは雪兎とシャルロット、楯無に忍を除く専用機組だった。

 

「学園長から話は聞いている。随分と長い遠回りだったな」

 

「世話になるとは一体・・・・」

 

「あれ?ゆーくんに聞いてない?この度束さんはプロジェクト・フロンティアの開発チーム主任兼代表に任命されたのだよ!」

 

「プロジェクト」

 

「フロンティア?」

 

その言葉に多くが首を傾げるが、一夏と箒はそこで先日のインタビューを思い出す。

 

「それって、もしかして」

 

「雪兎が先日言っていた宇宙開発事業がどうのというやつのことか?」

 

「そのとーり!」

 

「その正式名称がプロジェクト・フロンティア。ISを使った宇宙開発事業プロジェクトで。代表は俺と束さんで、参加企業は棗宇宙開発局やデュノア社、他数社さ」

 

その他数社の中に他の作品に登場する企業・研究所名がちらほらあったが、雪兎は別物・似ただけだと思いたい。

 

「あんた、とうとうデュノア社取り込んだのね・・・・」

 

「言っとくが、俺は強制もお願いもしてねぇぞ」

 

鈴の発言に雪兎は強く否定する。

 

「僕は前にIS一本で倒産しかけたから保険のつもりなんだと思うよ」

 

「リヴァイヴⅡは換装用のパッケージだけでそっち方面にも対応できるもんね」

 

「リヴァイヴⅡは元よりそういう設計だからな」

 

なお、このプロジェクトに参加している国は日本、イギリス、中国、フランス、ドイツ、ロシアと見事に専用機持ちの国である。アメリカが参加してないのは先日のアレのせい。ちなみに参加国には数個ずつ新規に製造されたISコアが贈られている。

 

「束さんをここで保護するのはプロジェクトの拠点がまだ無いのと警備的な問題な」

 

「あー、そんな一大プロジェクトだと拠点の設営だけでも問題だものね・・・・」

 

それこそ各国が我こそは!と言い争っているくらいだ。

 

「ああ、だからこそ各国の代表候補生のいるIS学園が適任ということになってる」

 

「もしかして私達もそのプロジェクトに?」

 

「多分な。ここに集められた面子はほぼ関係してくるんじゃないか?ちなみに箒に関しては確定だ」

 

「な、なんだと!?」

 

「いつまでも無所属のままではいられんだろう。丁度良いな」

 

そう、箒は未だに無所属の専用機持ち。なので手に余り扱いに困った参加各国は姉であり紅椿の製作者である束のいるプロジェクト・フロンティアに箒を丸投げしてきたのだ。

 

「詳しくは各国の政府から通達があると思う。参加は強制ではないはずだが、俺としては皆と一緒にやりたいと思ってる。本格的に動くのは卒業後だからすぐに決めなくてもいい。じっくり考えてみてくれ」

 

こうして兎師弟の夢は着実に実現に向けて歩み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロジェクトの説明を終えた後、雪兎とシャルロットは学園長室にいた。

 

「そうか、彼女らは・・・・」

 

「はい、ダリル・ケイシーもといレイン・ミューゼル及びフォルテ・サファイアは亡国機業に与したと思われます」

 

その場にいるのは雪兎、シャルロット、千冬、楯無の他にIS学園の真の学園長・轡木十蔵だった。

 

「レイン・ミューゼルに関しては元より亡国の人間のようで叔母に当たるスコール・ミューゼルの命でヘル・ハウンド奪取のためのスパイだったと推測します。スコール・ミューゼルに関しては米軍にて十二年前に死亡扱いになっています。おそらく今の彼女は機械移植(インプラント)もしくは機械義肢(サイボーグ)でしょう」

 

「それは本当かね?」

 

「ええ、この前の仕返しで調べておきました」

 

サラッと前世で知った知識を調べたと言って明かし、その他亡国機業に関して知っていることを報告書として提出する。

 

「幹部ではあれど彼女らは一部隊に過ぎないか・・・・」

 

スコールの属するモノクローム・アバターも所詮は一部隊に過ぎず、いざとなれば簡単に切り捨てられると雪兎は考えている。

 

「それに女性権利主義団体にもパイプがあるようね」

 

「どうりであの無能集団(女性権利主義団体)が大きな顔をしてる訳だ」

 

これは楯無が更識として調べたものらしい。

 

「亡国機業、実に厄介な存在だね・・・・君と君の師はどうするつもりなのかな?」

 

「邪魔をするなら叩き潰す。それだけです」

 

十蔵の問いに雪兎はそう即答した。




短くてすいません・・・・
束がこの世界で亡国機業に与しなかった最大の理由はこのプロジェクトのせいです。
そりゃあ、夢が叶いそうなのに犯罪者に手なんて貸しませんよね?
今章はこれにて閉幕です。


次回予告

束がIS学園にやってきたものの、すぐに大きな変化はなく、秋も深まる中。IS学園でも体育祭のシーズンを迎える。
IS学園の体育祭が普通の体育祭な訳がなく・・・・

次回

「開幕!IS学園秋の体育祭!! 兎、走る」


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十章「兎と秋と体育祭」
61話 開幕!IS学園秋の体育祭!! 兎、走る


早いもので、もう十章です。
原作の9巻に当たるシナリオですが、大幅に変更点がございます。

それではISー兎協奏曲ー第十幕開演です。


束がIS学園に来て数日が経った。

とはいえ、たった数日で劇的に何かが変わる訳ではない(束がやろうと思えば数日でも劇的に変わるが)。そんな中、秋ということでIS学園でも体育祭が迫っていた。

 

「という訳で出たい種目に手を挙げて下さい」

 

1年1組もクラス代表の一夏の仕切りで出場種目について話し合いが行われていた。その種目はスタンダードなものからネタとしか思えないものまで多種多様だ。

 

「体育祭ねぇ・・・・」

 

割りと美少女率の高いIS学園の体育祭ともなれば世の男達ならば見たがること間違いなしの光景なのだろうが、雪兎はそういうのにはあまり興味が無かった。

 

「雪兎はどの種目に出るの?」

 

「無難にリレーとかの徒競走もんかね?騎馬戦や障害物競走とか接触事故の無いやつ」

 

「それ、一夏が出たら絶対やるよね・・・・」

 

「やるな。あのラッキースケベ系の主人公スキル持ってる一夏なら確実に」

 

今まで散々ラッキースケベイベントをこなしてきた一夏ならば、と雪兎とシャルロットには妙な勘がそう囁いている。

 

「そこ!聞こえてるんだが?」

 

「聞こえるように言ったからな。それに本当に気を付けないと後ろから刺されるぞ?」

 

その瞬間、箒、セシリア、ラウラ、そして何故か隣のクラスの鈴から一夏に鋭い視線が飛ぶ。

 

(原作よりはマシなんだがなぁ・・・・)

 

原作ではこの体育祭は文化祭の時と同様の修羅場と化すのだが、それは雪兎がなんとか阻止した模様。代わりに専用機持ちを中途半端に分散させるくらいなら一つのクラスにまとめては?と提案して原作通りに専用機持ちを集結させることになっている。これは体育祭の後に公表される予定だ。ちなみに各種目は・・・・

・50m走

・クラス対抗リレー

・軍事障害物競走

・パン食い競走

・騎馬戦

・スプーン競走

・玉打ち落とし

・二人三脚走

・コスプレリレー

色々ツッコミたいだろうが、コレが伝統なんだとか・・・・それでいいのか、IS学園。

 

「二人三脚・・・・」

 

そんな中、シャルロットは二人三脚の文字をじっと見つめていた。

 

「ん?シャルは二人三脚に出たいのか?」

 

「えっ!?で、出たいには出たいんだけど・・・・」

 

どうやら雪兎と一緒に出ている姿を妄想していたようだ。しかし、シャルロットが「一緒に出たい」とは言い出せずにいると・・・・

 

「出るか?一緒に」

 

まさかの雪兎の方からお誘いがあった。

 

「えっ?いいのっ!?」

 

「出たいんだろ?ならそのパートナーは俺がやってやるよ(まあ、こういうのって誘うの勇気要るからな)」

 

しかも、雪兎はシャルロットの内心を完全に把握していた。なので雪兎から誘ってみたら、もうそれは嬉しそうにしている。

 

「じゃあ、二人三脚の一組目は雪兎とシャルロットな」

 

この二人は普段からコンビネーションに隙が無いため、クラスメイト一同の賛同もあってすんなり決定する。箒達も一夏とペアで出ようとするも、一夏はこの競技の時に実況担当ということで残念ながらそれは叶わなかった。

 

「よし、それじゃあこの通りにいくから皆しっかり練習してきてくれ!」

 

「「「「おー!」」」」

 

なお、この体育祭は学年別のクラス対抗戦になっており、優勝したクラスにはデザートフリーパスが配られるんだとかでクラスメイト達の気合も十分だ。

 

「デザートの力ってすげー」

 

「女の子は恋とデザートのためなら強くなれるんだよ」

 

「みたいだな」

 

こうしてIS学園体育祭までの日数は皆各競技の練習に燃えるのであった。




短いですが、プロローグ的な部分なのでご勘弁を。

そして、割りとギリギリですが・・・・箒さん、お誕生日おめでとう!


次回予告

体育祭当日。様々な思いを胸に熱い戦いの幕が上がる。

次回

「IS学園体育祭開幕! 兎、彼女を応援する」


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62話 IS学園体育祭開幕! 兎、彼女を応援する

体育祭本格始動。
オリジナルISと白式の改修版(魔改造)のデータをアップしました。こいつら、割りと洒落にならん性能です。
この二機は次章に登場予定です。あともう二機敵側にもオリジナルISが出る予定。一機はオータムの新型、もう一機はオリキャラの機体になります。

アンケートとポケモンのSSもよろしくお願いいたします。


なんやかんやあって体育祭当日。

 

「何か賑わってるなぁ・・・・」

 

「今年は男子が二人もいるんですもの。皆張り切ってるのよ」

 

雪兎の言葉にいつの間にか隣に来ていた楯無が答える。

 

「あー、なるほど。そりゃあ張り切りますわな」

 

雪兎はともかく箒達四人が周りを囲っていて普段は近付けないフリーの一夏に自分をアピールするチャンスと一部の女子がテンションMAXになっているらしい。無論、箒達も同様だ。

 

「雪兎君の甲斐性ならもう二人くらい余裕でしょ?」

 

「俺はハーレムとか興味無いんで・・・・ってか、シャルと妹分二人で結構手一杯なんですが」

 

束と一緒にIS学園にやってきたクロエは本来はラウラの姉に相当するのだが、彼女は成長しきる前に失敗作の烙印を捺されて処分されかかっていたためかラウラより肉体的に幼いらしく、マドカ同様に来年度からIS学園に通うことになっている。その為、今日は二人共束と一緒に応援という形で教員テントの傍で見学している。

 

「そういえばあの二人仲良いのよね?」

 

「二人とも同じような出自ですからね」

 

片や世界最強のクローン。もう一方は遺伝子操作されたデザインベビーであり、真っ当な出自では無い。そして、同じく雪兎を兄と慕っている者同士ということもあって初対面の時には無言で握手を交わしていた。それからは割りと二人で行動していることが多く、そこに同じく遺伝子操作されたバグウサギことミュウも一緒に行動している。この二人と一匹はその容姿から既に学園では一種のアイドル・マスコット扱いされている。

 

「いっくん!箒ちゃん!ゆーくん!頑張れー!」

 

「「兄さん(兄様)!頑張れー」」

 

「きゅっ」

 

『皆、頑張るの!』

 

天災、世界最強のクローン、デザインベビー、バグウサギ・・・・そう思うと、この応援席の面子の濃さも中々侮れない。

 

「頑張ってね、お兄ちゃん」

 

「楯無さん、次の模擬戦でアドヴァンスド使われたいですか?」

 

「すいませんでしたっ!」

 

マドカとクロエの応援を聞き、早速雪兎を茶化す楯無だったが、雪兎の発言を聞き慌てて謝罪する。流石の楯無もタイマンでアドヴァンスドとの模擬戦は嫌らしい。

 

「さてと、最初はシャルも出る50m走だったな」

 

楯無のことは放っておいて雪兎はシャルロットの応援をすべくクラスのテントへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットside

 

「体調は万全!頑張るぞ」

 

今日の体育祭は普段良いところを見せられてばかりの雪兎に良いところを見せるチャンスということで僕は猛練習をしてきた。

 

「シャル!頑張れよー」

 

すると、クラスのテントから雪兎の声援が聞こえる。

 

「相変わらず愛されてるわね、あんた」

 

「あはは・・・・」

 

たまたま一緒のレースに出る鈴に茶化されつつもスタート位置に着く。

 

『On your mark・・・・Set。Go!』

 

ピストルの音と共にスタートを切る。僕は鈴の少し後ろにつき必死に鈴を追うも鈴はトレードマークと言っていいツインテールの髪を地面と平行するように靡かせながら疾走していく。

 

(このままじゃ追い付けない!)

 

半分の25mを越え差が開く一方だった。僕はその時、既に「相手は鈴だし・・・・二位でもいっか」と諦めかけていた。だが・・・・

 

「シャル!諦めるなっ!!」

 

その一言。世界で最も僕が信頼する彼の一言で僕の心に火が灯る。

 

「負けるもんかーっ!!」

 

「えっ!?嘘っ!?」

 

そして、気が付けば僕は鈴より先にゴールテープを切っていた。

 

「えっ?僕、勝ったの?」

 

雪兎の声援を聞いて無我夢中で走っていたからか、僕は鈴を追い抜いていたのに気が付かなかったみたいだ。

 

「やるじゃない、シャルロット!」

 

「ううん、僕一人だったら途中で諦めてたよ」

 

「愛の力は偉大よねぇー」

 

「も、もうっ!鈴ったら・・・・っとと」

 

鈴にからかわれて言い返そうとするも、途端に力が抜け倒れそうになるが。

 

「よっと。大丈夫か?シャル」

 

それを多分おめでとうと言いに来てくれた雪兎が受け止めてくれた。

 

「ごめん、ちょっと気が抜けちゃって・・・・」

 

「まったく、まだ一つ目の種目だぞ?」

 

「はいはい、いちゃつくなら自分達のクラスのテントに戻ってからにしなさいよ」

 

そんな様子を見て鈴がやれやれといった顔で言う。鈴は冗談のつもりで言ったみたいだけど、雪兎は違った。

 

「そうだな。そんじゃあ、頑張ったお嬢様をテントにお連れしますか」

 

「えっ?えーっ!?」

 

雪兎はそう言うと僕をお姫様抱っこで抱え上げ、テントへと向かって歩き出す。

 

「ゆ、雪兎!僕は歩けるからっ!」

 

「さっきフラついたやつが何を言うか。それに、これはご褒美なんだから大人しく抱っこされてろ」

 

「うう・・・・」

 

結局、雪兎はテントに着くまで僕を下ろしてはくれず、僕は自分でも分かるくらい顔を真っ赤にしてテントへと戻ることになった。

 

side out




シャルロットの50m走を少し弄って甘々にしてみました。
やぁー、コーヒーが砂糖無しでも甘くなりそうだ。

前書きの続きですが、オータムの新型の名前が浮かばない・・・・アラクネ同様の蜘蛛型のつもりなんですが、いい名前はないものか。


次回予告

50m走の次は玉打ち落とし。この独自の競技に雪兎がとった行動とは?

次回

「激闘!玉打ち落とし! 兎、クールに決める?」


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63話 激闘!玉打ち落とし! 兎、クールに決める?

体育祭第2種目 玉打ち落とし です。

活動報告にアンケート3としてオリISorオータムのISの名前募集します。
とりあえず敵味方問わずです。二年目に出す新キャラ勢(新一年生組)用のISとして採用するかもです。そして、そのISからオリキャラが生まれる・・・・かも


シャルロットをテントに運んだ雪兎は自身の出る競技・玉打ち落としに参加すべくフィールドに降り立つ。

 

「うわぁ、私のグループに天野君いるんだ・・・・」

 

「装備制限してるとはいえ強敵だよぉー」

 

そう、他の参加者が言うようにこの競技では他の参加者が訓練機を使用するため雪兎は【T:トライアル】で出場する決まりとなっていた。

 

「シャルも頑張ってたし、俺もいっちょ頑張るとしますか」

 

両手にソードライフルを構え雪兎はやる気満々で競技開始を待つ。

 

『Go!』

 

開始直後、中央に設置された射出機から大量の玉が上空へと射ち出され、他の生徒が狙いを付けようと各々の武器を構えるが、狙いを付けようとした的から次々と打ち落とされていく。

 

「えっ?」

 

「まだ私射ってないよ!?」

 

「あ、あれ!」

 

その理由は・・・・他の生徒よりも速く雪兎がノールックでソードライフルを射ち放ち、的を殲滅していたからだった。

 

「う、嘘っ!?ほとんど見ずに全弾命中させてる!?」

 

その恐るべき技量に競技中だというのに他の生徒達は動きを止めて見入ってしまう。

 

「やはり雪兎の射撃技術は恐ろしいな」

 

だが、以前にセシリアへ向けてノールック投擲や模擬戦でのとある一幕を知る一夏達はそこまで驚いてはいなかった。むしろ「あいつならこれくらいやるだろう」という妙な確信があったくらいだ。

 

「私の山嵐もあれで全基落とされたことあったし・・・・」

 

「えっ?簪さんの山嵐全部っ!?」

 

「うん、しかも【白雷】装備の時に」

 

【白雷】とは打鉄弐式の砲撃強化パッケージで、追加装甲のミサイル量も増し増しのものだ。それを全基撃墜とか並みの技量ではない。先の模擬戦でのとある一幕とはこれのことである。

 

『しょ、勝者、1年1組天野雪兎・・・・』

 

結果を告げる放送担当もそのぶっちぎり過ぎる雪兎の得点に若干引いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、やり過ぎ」

 

「すまん、ちょっと張り切り過ぎた」

 

クラスのテントに戻ると雪兎はシャルロットに注意されていた。

 

「もう、そんなに頑張られたら僕が良いところ見せられてないじゃないか!」

 

「「「「怒るとこ、そこっ!?」」」」

 

シャルロットや1組クラスメイト達も随分毒されてきた気がする・・・・

 

「あっ、次セッシーとひじりんにかんちゃんのグループだ!」

 

「また特訓メンバー固まってんなぁ・・・・」

 

どうやら鈴はこの競技には出ないようだ。

 

「聖は今回アレできたか」

 

「シャープガンナーか・・・・しかも最初からアーマードモードかよ」

 

聖の専用機の射撃戦仕様バイザーボード【シャープガンナー】は四基のビームキャノンと二基のガトリングガン、ミサイルコンテナに有線式ヒートチャクラムなどを装備するもので、それらを武装として身に纏うアーマードモードでは肩にビームキャノン、腕にチャクラム、背面にミサイルコンテナを装備する重装備化する。

 

「あれ、劣化版【G:ガンナー】だからな・・・・」

 

「劣化版と言ってもあまり差は無かったな」

 

「あの重弾幕はないよぉ・・・・見てて怖かったもん」

 

以前、3対3の模擬戦で雪兎、シャルロット、聖の三人でトリプルガンナーで開幕ブッパをされた一夏、箒、簪は軽いトラウマになりかけた程だ。その時観戦していた本音は既にトラウマ化しているかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖さん、本気のようですわね」

 

「セシリアこそエンジェル・フェザー装備じゃない」

 

「私も本気でいく」

 

「こっちは【白雷】か」

 

セシリア、聖、簪が闘志を燃やす中、他の生徒は再び恐怖していた。

 

「これだったらさっきの天野君の方がマシだったよぉー!!」

 

「私、体育祭が終わったら幼馴染に告白するんだ・・・・」

 

「そこ!死亡フラグはダメーッ!!」

 

「ってか、あんた告るような幼馴染いたんかい!」

 

『Go!』

 

そこからはビームと弾丸の雨霰が飛び交う正に死地と言える戦場と化した。

 

「「「「いーやーっ!!」」」」

 

巻き込まれた生徒達には合掌。特に死亡フラグを建てた彼女は告白が上手くいくことを願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目に遭いましたわ」

 

「酷いのはお前らだろ」

 

結果はなんと聖の勝利。聖の弾幕でビットやミサイルが思ったように動かせず聖の大量得点を許す形となったようだ。

 

「一昔前の弾幕ゲー見てるかと思ったわ」

 

ちなみにそれ以降のグループではそんな派手な試合にはならなかった。当然である。

 

『続いての競技はスプーン競走です』

 

「何だろう、この落差は・・・・」

 

スプーン競走も特に大きな見せ場は無かった。むしろあったら驚く。




雪兎より後の三人が酷い件について・・・・

体育祭編は大体こんな感じ。


次回予告

続いての競技は軍事障害物走。誰だ!こんな競技考えたのは!?と言いたくなるこの競技では一体どんな一幕が見られるのか?

「進め!軍事障害物走 兎、呆れる」


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64話 進め!軍事障害物走 兎、呆れる

今回の種目は軍事障害物走です。

ある意味IS学園らしい競技かも。


『次の競技は軍事障害物走です』

 

ルールは普通の障害物走に近いこの競技だが、最初と最後に他には無いIS学園が一応は軍事系の学校であることが伺える要素を含んでいる。それは、最初にバラバラに分解されているライフルを組み立て、それを持って三メートルの梯子を登り、五メートルの鉄骨を渡り、ポールを降りた後に匍匐前進で網を潜り抜けてゴールまでライフルを運び、最後に的に当てて初めてゴールというものだ。ちなみに外したらスタート地点まで弾をもらいに行かねばならない。

 

「この競技はラウラが有利だな」

 

確かに軍事経験豊富なラウラにこれ以上ない競技だ。他にもスナイパーのセシリアや銃器の扱いに長けたシャルロットもこの競技は得意であろう。そして、原作と違いあの人物も・・・・

 

『1着、1組・布仏本音』

 

そう、射撃を苦手としていた本音も雪兎の猛特訓のおかげでその脅威的な整備技術を生かし無事に1着でゴールしたのだ。

 

「まあ、組み立ての段階であんだけ差つけれればこの結果は順当だろ」

 

ちなみに一発外して弾を取りに戻って1着だったことを考えれば本音の組み立てが如何に速かったかが分かる。

 

「雪兎、この競技、目のやり場に困らないか?」

 

確かに跳んだり揺れたり挟んだり潰れたりと一部の生徒の身体の一部分は気にはなるだろう。

 

「お前さ、恋愛感情には鈍感な癖に思春期真っ只中だな?」

 

「仕方ないだろ!というかお前はどうなんだよ!?」

 

「シャル以外眼中に無い」

 

「・・・・そう言い切れるお前は眩しいぜ」

 

シャルロット一筋と言い切る雪兎を一夏はある意味尊敬する。

 

「お前はもうそろそろ周囲から向けられる好意ってやつに真剣に向き合え。じゃないとさっきも言ったが、刺されるぞ?」

 

「周囲って・・・・箒やセシリア、鈴にラウラのことか?」

 

「お前、やっと自覚したのか」

 

ワールドパージによる彼女らの妄想を垣間見ていないため、もう少し時間がかかるのでは?と思っていた一夏は何とか鈍感から鈍いへと改革されていた。

 

「誰か一人選ぼうが、ハーレム作ろうが、四人以外を選ぼうが、どんな結末を選ぶかはお前次第だ。だが、親友が優柔不断で刺されて死にました、ってなのは勘弁してくれよ?」

 

「お、おう。ちょっと真剣に考えるわ」

 

やっと、恋愛のスタート地点に立った一夏に呆れつつも雪兎は障害物走の応援に戻った。その後もラウラを筆頭に代表候補生達が奮闘し、軍事障害物走は1組の圧勝に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次に行われたのはクラス対抗リレー。

 

「任せたぞ、アンカー(一夏)!」

 

「任せろ!」

 

これは雪兎と一夏が男子の意地を見せ、他のクラスに大差で勝利し、1組に貢献する。

 

「残るは騎馬戦に二人三脚」

 

「パン食い競走に・・・・」

 

「コスプレリレーか」

 

「あれ、出場者が衣装用意しなきゃいけないんだよね」

 

衣装に関しては雪兎と簪の助力で揃えることが出来た。それぞれの衣装に関しては二人共妥協せず選定したため自信があるという。

 

「騎馬戦、頑張ってこいよ」

 

「俺達は放送のテントにいるから」

 

午前の部最後は騎馬戦。これには色々配慮があって男子二人は参加はしない。この手の競技では絶対に面倒な事故(Toloveる的な何か)が起きると雪兎の判断で色々企んでいた楯無を止めたのだ。

 

『続きまして、クラス対抗騎馬戦です』

 

こうして、女子達の熱い戦いが始まる。




呆れたのは一夏の鈍さでした。これでも原作よりはマシ何ですがね・・・・


次回予告

午前の部最後の種目は騎馬戦。実はこの騎馬戦、女子達のある賭けがあり・・・・

次回

「熾烈!女子だけの騎馬戦 兎、実況する」


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65話 熾烈!女子だけの騎馬戦 兎、実況する

今回は騎馬戦。騎馬戦やったことないので上手く書けてるか心配ですが・・・・

活動報告で行っているオリジナルISの方はまだ募集中です。細かく設定書かなくてもこちらで補完するので気にせずアイデアを書きなぐって下さい。


騎馬戦。それは数人の馬役の上に乗った人のハチマキ等を奪い合う競技。ハチマキを奪われても、落馬しても失格となるため、その戦いは熾烈を極める。

 

「ゆくぞ!」

 

「出るからには狙うは一位のみ!」

 

「その通りですわ!」

 

「僕も頑張るよ!」

 

1組のプレイヤーは箒、ラウラ、セシリア、シャルロットの四人とその馬役に各三人ずつがついての計十二人のチームだ。

 

『さあ、始まりますは騎馬戦です。司会進行は私、放送部の国枝椎名と・・・・』

 

『実況の織斑一夏です・・・・』

 

『解説の天野雪兎の三名でお送り致します』

 

そして、その騎馬戦の実況・解説には雪兎と一夏も参加していた。

 

『さて、実況と解説のお二人はどこが勝つと思われますか?』

 

『俺は同じクラスとして1組に勝って欲しいですね』

 

椎名の質問に一夏は無難に答える。

 

『確かに1組は四人とも代表候補生。実力的にも十分ですが、代表候補生以外にも実力者はいますし、2組と4組にも代表候補生はいます。それに、騎馬戦は一人が突出していても勝てる競技ではないので何とも言えませんね』

 

対して雪兎は解説らしく冷静に戦力分析した結果から発言する。

 

『なるほど・・・・つまり、どのチームにも勝ち目はあると?』

 

『そう思います。俺個人としては自分のクラスに頑張っては欲しいですがね』

 

そんなこんなで騎馬戦が始まる。

 

「せ・し・り・あ~!」

 

「鈴さん!」

 

まずはセシリアの騎馬と鈴の騎馬がぶつかる。

 

『おっと、早速1組のオルコットさんと2組の凰さんが激突!』

 

『これはいつもの組み合わせですね。この二人は何といいますか、強敵と書いて友と読む関係ですからね』

 

『確かにこの二人はいつもこうだよなぁ』

 

激しい取っ組み合いになる二人を見て、雪兎と一夏はいつものことと流す。

 

『近くでは2組の宮本さんが他の生徒を指揮して凰さんのフォローをしています』

 

『聖は状況判断能力が高いので指揮官向きですからね。多分、鈴がこうなることを想定して彼女を遊撃に据えたんでしょう』

 

『なるほど・・・・』

 

セシリアと鈴は互角であれど、騎馬戦は団体競技。聖は鈴のフォローに周りつつセシリアを他の四人から引き離し隔離することで鈴に有利な状況を作り出す。

 

「流石だな、我が友よ。だが、こちらを忘れてもらっては困る!」

 

「忘れてないよ、ラウラ。神宮寺さん!」

 

「イエス、コマンダー!」

 

その包囲を崩そうとラウラの騎馬が聖を狙うが、聖はそれを予想していたのか、箒に似た茶髪のポニーテールの少女・神宮寺晶を投入する。

 

「むっ、貴様。できるな」

 

「ドイツの代表候補生にそう言っていただけるとは光栄だな」

 

『あれは空手部の神宮寺晶さんですね。彼女は一年生ながら期待の新人とのことです』

 

『空手部・・・・なるほど。ラウラの対人格闘能力に対して空手で対抗してきたか』

 

『ラウラとやりあえるって・・・・凄いな、彼女』

 

聖によってセシリアとラウラを抑えられた1組。しかし、箒とシャルロットは二人ならばそう簡単にはやられないと踏んで残るチームのハチマキを奪いにかかる。

 

「私達もいく」

 

一方で簪率いる4組もまとまって他のクラスのハチマキを奪いにかかる。

 

『4組は多人数で一人ずつ確実にハチマキを奪いにいく作戦の模様』

 

『四人の騎馬で一人の騎馬を引きずり込んでハチマキを奪う。簪も指揮官の戦い方だな』

 

『こうやって見ると騎馬戦って言っても戦い方が色々あるんだなぁ』

 

個人の技量で戦う1組。鈴の行動力と聖の指揮で戦う2組。簪を中心に一つの生き物のように動く4組と皆戦い方が違う。

 

『3組が全滅!ここでリタイアです』

 

『今のは完全にとばっちりでしたね・・・・』

 

『セシリアと鈴の巻き添えって・・・・あっ、二人とも落ちた』

 

その後も3組が聖と簪の策略でセシリアと鈴の争いに巻き込まれて落馬してリタイアしたり、5組が箒とシャルロットに全滅させられたり、6組が簪の戦術で全滅したりし、セシリアと鈴が同時に落馬してドローになったり、簪の指示で神風特攻をかました4組の生徒によって箒とシャルロットがリタイアしたり、そして最後に残ったのは聖と簪の二人の騎馬のみとなっていた。

 

『の、残ったのは2組と4組!そのそれぞれの指揮をしていた二人だけです!』

 

『雪兎はこの結果は予測できてたのか?』

 

『まあな、あの二人はこの手の戦術詳しかったしな』

 

ちなみに、この騎馬戦の結末は結局は二人がどちらも攻めあぐねて時間切れ。双方のチームのハチマキ獲得数で勝った4組の勝利となった。




ちょっと難産だった・・・・
騎馬戦はやっぱりキツい。


次回予告

騎馬戦を終えて午前の部が終了し、昼食の時間。いつもの四人は一夏にアピール合戦を始めるが、一夏の様子がいつもと違い・・・・

次回

「ランチタイムとアピール合戦 兎、彼女のお弁当を食べる」


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66話 ランチタイムとアピール合戦 兎、彼女のお弁当を食べる

お待ちかね?の改心一夏とラバーズのお昼休みですよ~

はてさて、どうなることやら・・・・




最近、新しいISやパック書いてないから少し禁断症状が・・・・


午前の部が終わり昼休み。一同はいつものように集まって食事をすることにしたのだが・・・・

 

(変だ)

 

(変ね)

 

(変ですわ)

 

(変だ)

 

一夏の様子が少しおかしいことに気付く箒達ラバーズ達。具体的に言うと、いつもなら箒達が近くにいても平然としている一夏が雪兎側におり、箒達に近付こうとしないのだ。

 

(これは・・・・)

 

(もしかして・・・・)

 

(私達・・・・)

 

(避けられてる?)

 

今までにない事態に箒達は困惑していた。そんな中、雪兎は一人真相を知る身として一夏に呆れていた。

 

(一夏のやつ、意識し始めた途端にこれかよ)

 

そう、一夏は箒達を避けているのではなく、むしろ箒達を恋愛対象として意識したが為に距離感が掴めなくなっているのだ。つまり、鈍感の次はヘタレたのだ。

 

(はぁ、これは箒達にもフォロー入れとかないとマズイな)

 

一方の箒達は何故一夏に避けられているのか考え始め、今まで行ってきた数々の事(主に一夏をボコボコにしたこと)を思い出したのか顔が真っ青になっていた。

 

「箒、鈴、セシリア、ラウラ。お前らに話がある」

 

とりあえず箒達の方にフォローを入れるべく、雪兎は箒達を少し離れた場所へと連れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、我々は一夏に避けられているのだろうか?」

 

連れ出された四人を代表して箒が不安そうに雪兎に訊ねる。

 

「安心しろ。避けてる訳じゃない」

 

雪兎がそう断言すると四人はホッと息を吐く。

 

「まあ、お前らが何を思って顔を青くしてたかは知らんが、程々にしとかないと本当に避けられるぞ?」

 

((((びくっ!?))))

 

「な、なんのことかしら・・・・」

 

明らかに目が泳いでいる四人。自覚はあるようだ。特に鈴は冷や汗まで出ている。

 

「今までは割りと多目に見てきたが、今後はああいう暴力沙汰にIS使うのは止めてもらおうか?今は学園がフォローしてくれるが、それが癖になって将来あんなことしてみろ。軽くて罰則、最悪は捕まってブタ箱行きだぞ?」

 

「「「「うぐっ」」」」

 

雪兎の指摘に四人の顔が再び真っ青になる。

 

「お前らが一夏に恋愛対象として意識されてなかった原因の一つはそれだぞ?事あるごとに武器だのISでやられてみろ?恋愛感情なんぞ沸くか!」

 

「「「「・・・・おっしゃる通りです」」」」

 

気付けば四人は正座して雪兎の説教を受けていた。

 

「・・・・お小言はこの辺にして、一夏に避けられてるように見えるのは何故か?って話だったな」

 

すると、箒達は正座をしたまま聞き入る姿勢を取る。

 

「それは一夏がお前らを恋愛対象として意識し始めたからだ」

 

「「「「えっ?」」」」

 

それを聞き、四人は思わず我が耳を疑う。あの鈍感を擬人化したような鈍感の化身たる一夏が自分達を意識している?

 

「いい加減に後ろから刺され・・・・いや、ISが殺人の凶器になりそうだったからはっきり言って意識するようにした」

 

この時、箒達は雪兎を崇めたくなっていた。今、雪兎を神とした宗教を興せと命じられれば実行してしまいそうな程に。それほど一夏の鈍感さは深刻だったのだ。

 

「俺ができんのはこれくらいだ。あとは真っ当な手段であいつを取り合ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

顔を青くした箒達は雪兎に連れ出された。原因はわかっている。俺がいきなり箒達を避けるような行動をしたからで、雪兎は箒達のフォローをしてくれているのだろう。思い返せば似たようなことは以前にも何度かあった。つまり、その頃から雪兎には色々と世話になっていたのだろう。

 

「大丈夫?一夏」

 

「あ、ああ」

 

そんなことを考えていると残っていたシャルロット達が心配そうにこちらを見ている。

 

「一夏君、何か悩み事?良ければ相談に乗るよ?」

 

「ありがとう、聖」

 

せっかくなので相談に乗ってもらうことに。

 

「悩み事って、やっぱりしののん達のこと?」

 

のほほんさんの言葉に頷き、俺は雪兎に言われたことや自分が思っていたことを話す。

 

「・・・・確かに毎回あんな仕打ち受けてたら混乱するよね」

 

「真剣とかISとか・・・・そういえば何度か当たったら死んでるようなのもありましたね」

 

「一夏の話を聞くと箒達も半ば自業自得な気がしてきた」

 

「おりむー、よく生きてるよね」

 

うん、俺もよく生きてると思う。

 

「それでも、急にあの態度はどうかと思うよ?」

 

「ああ、それはわかってるつもりだ」

 

急に意識したせいか、俺はいつも通りに箒達と接することが出来ず、結果的に箒達を避けてしまっていた。思い返せば意識する前は一緒に座るなんて目じゃないことも平気でやっていた気がするのに・・・・

 

「戻ってきたら、ちゃんと謝るよ」

 

「謝ったら、謝ったで色々話が拗れそうだけどね」

 

「じゃあ、どうしろっていうんだよ・・・・」

 

聖の指摘に頭を抱えていると。

 

「ふん、いつも通り接してやればいいだけだろう」

 

そんな俺に遅れて束さん達と一緒にやってきたマドカがそう言った。

 

「あいつらはお前がいつもと違う態度を取ったから不安になったのだろう。だったらいつも通りに接してやれば安心する」

 

「めっずらし~。まどっちがいっくんにアドバイスするなんて」

 

「わ、私はこいつが兄さんをこれ以上煩わせないようにと・・・・」

 

束さんの言葉にマドカは顔を真っ赤にしてそう反論する。しかし、マドカの言葉は正しいと俺は思った。

 

「ありがとな、マドカ」

 

「ふんっ!」

 

俺がお礼を言うと、マドカは顔を真っ赤にしたままソッポを向いた。

 

side out




遅くなってすいません。
そして、昼食にたどり着けなかった・・・・orz


劇場版なのは公開初日に観て来ました。ライブビューイングでヴォルケン暴走してる・・・・


次回予告

改めて昼食を開始する雪兎達。しかし、そんな雪兎達を楯無のサプライズが襲う。

次回

「ランチタイムパニック 兎、堪忍袋の緒が切れる」


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67話 ランチタイムパニック 兎、堪忍袋の緒が切れる

雪兎の名前修正してて更新できず申し訳ありませんでした。やっと更新再開です。


「あっ、戻ってきた」

 

雪兎達が戻ると遅れて来た束達が既に合流しており、一夏も先程とは違い何とかいつも通り箒達と接しようとしているのがわかる。

 

「そっちも何とかなったみたいだな」

 

「うん、マドカがね・・・・」

 

「へえ、マドカが・・・・」

 

シャルロットに自分がいない間のことを聞き、雪兎はマドカも少しずつ一夏に対する態度を軟化させていることを嬉しく思う。そして、雪兎がシャルロット特製の弁当を食べていると・・・・

 

「私達も一緒してもいいかしら?」

 

楯無と虚の二人も雪兎達のところへやってきた。

 

「構いませんよ」

 

「それじゃあお邪魔するわね」

 

すると、楯無は一夏の隣(・・・・)に座る。

 

「「「「えっ?」」」」

 

これには箒達だけでなく雪兎も驚いた。何せ楯無が一夏に惚れるようなイベントは別の危険を回避すべく雪兎自ら潰していたので楯無がこんな行動に出るとは思っていなかったからだ。そして、楯無は更に予想外の行動に出る。

 

「ちゅっ」

 

「「「「なぁっ!?」」」」

 

「い、いきなり何するんですか!楯無さん!?」

 

何と楯無が一夏の頬にキスをしたのだ。この楯無の行動に箒達はいつものように暴力を振るいそうになるも雪兎の言葉を思い出してぐっと堪える。それを見て楯無は意外そうな顔をするもすぐに意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

「最近の一夏君頑張ってるし、ちょっといいかなぁって」

 

おちょくっているように見えて楯無は満更でもない顔でそう言う。どうも一夏の強化特訓が楯無の好感度を上げてしまったようで。つまり、楯無も一夏争奪戦に加わろうと言うのだ。そして楯無は一夏の腕に胸を押し付けるように抱きつく。

 

「た、楯無さん!?」

 

そんな楯無の行動に慌てる一夏。それを見て我慢の限界に達しそうな箒達。だが、それより先にぶちギレそうな人物がいた。

 

「・・・・せっかく人が鎮めた騒ぎを掘り返すとか、何考えてるんです?生徒会長殿?」

 

その人物とは雪兎だった。元々、この体育祭でも色々企てていた楯無だったが、一夏の身を案じて普通の体育祭になるよう人力した雪兎。それに先程説得したばかりの箒達を煽るような楯無の行動。そして何よりこの騒ぎで彼女の弁当を味わう邪魔をされ雪兎の堪忍袋の緒は切れる寸前だったのだ。

 

((((あっ、これはマズイパターンだ))))

 

幾度となく雪兎のお仕置きを受けてきたor目の当たりにしてきた特訓メンバーはそんな雪兎を見て顔を真っ青にする。

 

「え、えっと、これは・・・・」

 

そこでようやくマズさに気付いた楯無が弁解しようとするももう手遅れだった。

 

「昼休みに何の余興も無いのは寂しいですよね、虚先輩?」

 

「えっ、あ、はい・・・・」

 

虚も今の雪兎に逆らわぬ方が良いと察する。

 

「せっかくですから俺と生徒会長殿で模擬戦でもしましょうか」

 

即ち、「公開処刑だ」と雪兎は言っているのだ。

 

「で、でも、そんな簡単にアリーナの使用許可は」

 

「面白そうだからちーちゃんに聞いたらOKだって」

 

楯無の抵抗も束によって打ち砕かれる。どうも束も箒を煽ったのがお気に召さなかったようだ。

 

「さて、許可も出ましたし、行きましょうか生徒会長殿」

 

「い、いや!助けて簪ちゃん!!」

 

「ごめん、お姉ちゃん」

 

楯無は最後の手として簪に助けを求めるも雪兎は容赦無く楯無を引き摺りアリーナへと向かって行った。

 

「きゅ」

 

『たっちゃん、短い付き合いだったの』

 

「い、いや、死んでないから!って、皆も黙祷捧げちゃ駄目だって!」

 

こうして楯無のお仕置きもとい公開処刑が始まるのであった。




先日、家でバーベキューをしたのですが、炭を片付けにいったら服越しに乳首の真下を蜂に噛まれました。滅茶苦茶痛かった・・・・


次回予告

ひょんなことから決まった雪兎と楯無の模擬戦。皆の注目が集まる中、雪兎のとった戦法とは?

次回

「学園最強VS学園最凶 兎、公開処刑開始」


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68話 学園最強VS学園最凶 兎、公開処刑開始

対楯無用決戦兵器登場!?
簡単にいうとイージスコンビのISの上位互換です。
これをあの二人に使わなかったのは慈悲です。


楯無が雪兎に連れて行かれてからしばらくすると、校内放送で雪兎と楯無の模擬戦が行われると連絡があり、アリーナに行かなくとも校内ローカルネットや各所のモニターでも観戦出来ることも通知される。これにより楯無は完全に逃げ場を失う。

 

「覚悟は決まりましたか?生徒会長殿」

 

「・・・・ええ、もうやってやるわよ!」

 

逃げ場を失った楯無は半ば自棄になりつつもミステリアス・レイディを展開し雪華を纏った雪兎と対峙する。

 

「では、こちらも・・・・こい、【CF:コールド・フレイム】」

 

すると、雪兎は雪華に新たなるパックを展開させる。その姿は【W:ウィザード】のようにローブのような白い装甲を纏い、他にも手足に追加された装甲の縁には透明なパーツが取り付けられており、見るものに神秘的なイメージを与える。楯無は外見から【W:ウィザード】系の発展型のアドヴァンスドシリーズと推測する。そして名前である『冷たき炎(コールド・フレイム)』の意味が楯無の予想通りのものであれば、この模擬戦は楯無にとって厳しいものになるのは間違いない。

 

『それではこれより更識楯無と天野雪兎の模擬戦を始めます・・・・試合開始!』

 

開幕と同時に仕掛けたのは意外にも楯無の方であった。雪兎に試合のペースを握らせまいと楯無は槍に付いたガトリングガンで牽制しつつ接近を試みるが、雪兎はそれを円形のシールドビットを展開して防ぎつつ接近し両手に背面にマウントしていた半月状の刃を持つショーテルという武器を持ち左右から挟み込むように斬りかかる。

 

「またマニアックな武器を!」

 

「驚くのはまだ早いぜ!」

 

このショーテルは17世紀頃にエチオピアで使われていた武器で盾を持っている相手や馬上の相手を引き摺り落とすのに有効だったとされる武器だ。まあ、雪兎が使うのが普通のショーテルな訳がなく、これにも更なる工夫が施されており、楯無が水のベールで防ごうとすると片方は凍てつき砕かれ、もう片方は熱で蒸発させられる。これに慌てた楯無はすぐさま回避して事なきを得るが、その表情は険しいものに変わる。

 

「やっぱり!そのパックの特性は【温度変化】ね!!」

 

「厳密に言えば【分子活動の活性・停滞化】だけどな」

 

そう、雪兎が今回使っている【CF:コールド・フレイム】はフォルテが使っていたコール・ブラッドの【分子活動を停滞化させて氷結させる】の上位互換とも言える能力。分子活動を活性化させて高速振動を起こし熱を生み、逆に停滞化させて氷結させる。それが【CF:コールド・フレイム】の能力なのだ。コール・ブラッドの開発元であるギリシャの技術者連中は泣いていい。

 

「それ、この子と相性最悪じゃない!?」

 

「それくらいしなきゃ制裁にならんだろうに」

 

楯無のミステリアス・レイディは水をナノマシンで変幻自在に操る機体。だが、雪兎の【CF:コールド・フレイム】はその水をナノマシンごと蒸発させたり氷結させることが出来る。楯無の言う通りはっきり言って相性最悪である。

 

「他にもこんなことも出来るぜ!」

 

ショーテルをしまい雪兎が次に繰り出したのは左腕に装備されたシールドの先から先端の尖った鞭のようなものを伸ばし楯無に向けて放つ。それは熱されているのか赤くなっており、直に触れたら火傷では済まないのは明白であった。

 

「ちょっ、それは危ないでしょ!?」

 

回避はしたものの、もし捕まっていたらを想像し楯無は冷や汗を垂らす。拘束されてじわじわ熱され、万が一にもその間にシールドエネルギーが尽きれば丸焼き確定。えげつなさ過ぎる装備である。

 

「まだまだ付き合ってもらうぞ、生徒会長殿。こいつは流石にシャル相手でテスト出来なかったからな」

 

「いぃ~やぁ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、あれ・・・・」

 

アリーナで観戦していた一夏達を代表して鈴がそう呟く。

 

「やっぱゆーくんの作る装備は面白いね!流石は我が弟子!」

 

一夏達が絶句する一方で束は嬉しそうに雪兎の【CF:コールド・フレイム】を見つめる。

 

「蒼流旋のアクアナノマシンを許容値以上の高周波で破壊するとか流石は雪兎。あっ、ラスティー・ネイルが凍った」

 

簪も姉である楯無のミステリアス・レイディをよく知るが故に雪兎が何をしているのか理解し、その出鱈目さに驚く。

 

「今度は右手で掴んだビットが弾けた・・・・右腕の籠手は振動制御出来るのか?」

 

「それって、右腕が電子レンジと高速冷凍庫ってこと?」

 

それ、どこの輻射◯導ですか?と言いたい。出力は抑え目であったが、最大出力でビットではなく本体が捕まれていれば装甲はおろか肉体ごと吹き飛んでいただろう。

 

「アイツ、ストレス溜まってたんだな・・・・」

 

最後の一夏の一言を聞き、今後は絶対雪兎を怒らせないようにしようと一同は誓うのであった。




という訳で楯無フルボッコ回です。
楯無ファンに色々言われそうですが・・・・

【CF:コールド・フレイム】の装備のモデルはサンドロック、エピオン、紅蓮弐式とかです。他にもシールドビットが氷の刃を纏った手裏剣化したり、ヒートブレード化したソードビットなどもあります。


次回予告

楯無の制裁を終えスッキリとした雪兎。そんな雪兎はシャルロットと二人三脚に出場する。

次回

「レースにならない?二人三脚 兎、見せつける」


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69話 レースにならない?二人三脚 兎、見せつける

やっと二人三脚です。
まだ仮装リレーとかあるので大変だ・・・・

次の章の京都が終わったらクロスオーバー編に入ろうかと思います。

そろそろ募集してたオリジナルISを修正仕様をまとめねば・・・・


「良いデータが取れたぜ」

 

「ぐすっ・・・・」

 

あの後も雪兎の蹂躙劇は続き模擬戦が終わった後楯無はガチで泣いていた。尚、生徒会長である楯無に勝利したため雪兎は生徒会長になる権利を得たが、「面倒」の一言でその権利を放棄し楯無が号泣したとかしないとか・・・・

 

「さてと、戻ってシャルの弁当食わなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、午後の部最初の競技は二人三脚です!』

 

昼休みが終わって最初の競技は雪兎とシャルロットの出る二人三脚だった。

 

「な、何だか緊張してきたよ」

 

「大丈夫だって、俺とシャルが一緒なら負けっこないって」

 

「う、うん・・・・」

 

((((いちゃつくなら他所でやれ!!))))

 

スタート位置で緊張するシャルロットに雪兎が安心するよう声をかける姿はどう見てもいちゃついているようにしか見えず他のペアを苛立たせていた。だが、他のペアは気付いてはいなかった。それが雪兎の作戦だということに・・・・そして、それはスタート直後に起きた。

 

『On your mark・・・・Set。Go!』

 

「「「「うわぁ!?」」」」

 

何と他のペア数組がスタート直後一斉に倒れたのだ。その原因は雪兎とシャルロットのいちゃつきぶりを見せつけられて冷静さを失ったペアが踏み出す足を間違え転倒したのだ。

 

「「1・2、1・2、1・2」」

 

一方で雪兎とシャルロットのペアと雪兎の策略に乗らなかったペアは問題無くスタートするも、やはり普段から阿吽の呼吸を見せる雪兎とシャルロットのペアがトップに躍り出る。

 

「体格差があるのに何故!?」

 

「こっちはそういうのも全部合わせてきてるのに・・・・」

 

そう、本来ならば男の雪兎と女のシャルロットでは体格差があり、いくら息がぴったりとは言えども互いが上手く合わせられるとは限らない。なのにも関わらず体格差の無いペアを作り多くの練習を重ねてきた他のペアが遅れをとっている現状を彼女達は受け入れることができなかった。

 

「ああ、そのことか」

 

そんな彼女達の疑問を聞き、雪兎はさらりととんでもないことを口にした。

 

「女子のシャルが男子の俺に合わせられるわけないだろ?だから俺がシャルに合わせてる(・・・・・・・・・・・)だけだぞ」

 

「「「「は?」」」」

 

雪兎のその言葉に他のペアだけでなく1年1組と特訓メンバー以外の生徒は揃って唖然とする。つまり雪兎の言葉を分かりやすく言うなら『他のペアが二人三脚で走っている中シャルロットは一人で走っているのと変わらない』と言っているのだ。

 

「ふふ、そろそろ本気出そっか、雪兎」

 

「ああ!」

 

「ま、まだ余力があるだと!?」

 

「あのカップルは化け物か!?」

 

その後、スピードを上げた雪兎とシャルロットは歴代の記録を大きく塗り替えて圧勝した。




短くてすいません。
京都編入るまではこんな感じかと・・・・


次回予告

二人三脚も圧勝で終え、残すはパン食い競走とコスプレリレーの2種目。このまま第一体育祭は無事に終わるのか?

次回

「パン食い競技とコスプレリレー 兎、仮装する」


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70話 パン食い競走とコスプレリレー 兎、仮装する

遅くなりました。
雪兎達のコスプレはこんな感じになりました。

若干、簪がキャラ崩壊してるかも・・・・


二人三脚を終えて1年1組の学年別得点はトップ。残すパン食い競走とコスプレリレーをそれぞれ三位以内で終えればそのまま入賞は狙えるところにいる。

 

『続けてはパン食い競走です』

 

このパン食い競走はラウラが出場している。理由はパン食い競走に使うあんパンを一夏と買いに行ったラウラがこの競技に興味を持ったかららしい。

 

「む、また会ったな神宮寺」

 

「ほう、ラウラ殿もこの競技に出てくるとは」

 

そこでラウラは騎馬戦の時に対峙した神宮寺晶を見つけ声をかけた。

 

「どうやら同じレースのようだな」

 

「それでは騎馬戦で着けなかった決着。このレースで着けるとしようか」

 

「その挑戦、受けてたとう」

 

この二人、似た者同士のようですっかり意気投合している。そして、先の騎馬戦でもわかる通りこの神宮寺という少女は一年生の非専用機持ちの中でも近接戦闘に関してはトップクラスの実力を持っており、これから多くの人材を必要とするプロジェクト・フロンティアに欲しい即戦力の逸材だった。実は今回の体育祭は専用機持ちの影に埋もれてしまっている優秀な人材の再発掘も兼ねており、神宮寺以外にも何人か雪兎が目を付けている生徒がいた。

 

(やっぱり何人か楯無先輩に言って1組に再編させてもらおうかな?)

 

クラスの再編はそう何度も行えるものではないので一度しかできない以上、神宮寺らを獲得するチャンスは次の再編くらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パン食い競走での勝負はラウラに軍配が上がり、1組は以前トップを独走しつつ最終競技であるコスプレリレーまで辿り着いた。

 

「ここまで順調だな」

 

「だが、最終競技の配点が高い。ここで下手な順位となれば逆転も有り得る」

 

そう、このコスプレリレーではリレーでの順位は勿論、コスプレの完成度にも配点が存在するのだ。

 

「衣装の完成度に関しては問題無い。そっちに関しては簪のいる4組以外に負けるつもりはない」

 

「ず、随分と自信があるのだな」

 

「当たり前だ。何せ俺の自信作だからな」

 

「雪兎が裁縫まで得意とは思わなかったよ・・・・」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

シャルロットの一言でその場にいた一夏、箒を除く1組の皆も驚き視線を雪兎へと向ける。

 

「色々と言いたいことはあるだろうがそれはリレーが終わってからだ」

 

そう言うと雪兎はリレーに出る一夏、箒、セシリア、シャルロット、ラウラに衣装の入った紙袋を手渡す。

 

「サイズはちゃんと合わせてあるが違和感とかがあれば言ってくれ直ぐに直すから」

 

紙袋を受け取った面々はそれぞれ仮設の更衣室へと向かい着替え始める。雪兎も自分の衣装の入った紙袋を手に更衣室へと向かう。数分後、着替えを終えた一夏達が姿を現す。

 

「本当にサイズぴったりでしたわ」

 

「でしょ?」

 

最初に出てきたのはセシリアとシャルロットの二人。そして、その二人の衣装を見れば1組の衣装が何をモチーフにしているかは一目瞭然だった。まずシャルロットの衣装だが、淡い水色の服の上に白いエプロンを纏い、兎の耳のような大きなリボンをした衣装。一方のセシリアは赤と黒のドレスにトランプのマークをちりばめ、頭に金の王冠を乗せている。もうお分かりだろう。1組のコスプレテーマはズバリ『不思議の国のアリス』だ。

 

「うむ、嫁とセットの役とはアイツも気が利いているな」

 

「本当によく出来てるよな、この衣装」

 

「私の衣装は何故こんな・・・・」

 

続いてラウラ、一夏、箒の三人の衣装だが、ラウラは茶色のウサミミに同じ色のスーツ姿の三月兎で、一夏は緑のスーツに帽子を被った帽子屋、箒は紫とピンクの縞模様のネコミミと尻尾付きワンピースに肉球付きの手袋とブーツを着けたチェシャネコだ。

 

「うむ、見立て通りだな。箒はチェシャネコなのは他に主要なキャラが思い浮かばなかったからだ」

 

最後に出てきた雪兎は赤いスーツに白いウサミミ、懐中時計とモノクルを着けた白兎である。

 

「ふーん、1組はアリスなのね」

 

そう言って現れたのは金の輪を頭につけ、朱色の棍を持った孫悟空のコスプレをした鈴だ。

 

「そう言うそっちは西遊記か」

 

他の面々も三蔵法師一行や道中の妖怪のコスプレをしている。

 

「聖が三蔵法師で、鈴が悟空・・・・うん、イメージピッタリだな」

 

「雪兎、今の間は何よ!?私が猿っぽいとでも言いたいわけっ!」

 

「うん」

 

「ウキー!!」

 

いつものように雪兎が鈴をからかい鈴が怒る。それを見ていた面々が「あっ、確かに猿っぽい」と思ってしまったのは無理も無いだろう。

 

「不思議の国のアリスに西遊記、基本に忠実」

 

続いて4組の簪達の衣装は魔女と戦う某魔法少女達のコスプレである。ちなみに簪は剣を使う青髪の娘である。

 

「簪、確かにそのコスは動き易いし、肌の露出も少ないが・・・・」

 

あの作品は色々な意味で魔法少女達に救いがなさすぎる。喰われたり、魔女になって倒されたり、救えなかったり、マミられたり・・・・

 

「正直に言えばま○かとほ●らは魔法少女版か究極・悪魔で迷ったけど動き易さ重視で魔法少女にした」

 

「確かにあの衣装は走るのには向かないだろうけどさ・・・・おっ、そろそろ入場か」

 

他のクラスは流行りのアイドルグループだったり、着ぐるみだったりで1、2、4組ほど目立つものはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リレーは第一走者の鈴がドレスで出遅れたセシリアを離し2組がトップでバトンを渡すも、続く第二走のラウラが軍人の意地を見せ抜き返して逆転。三人目は一夏と神宮寺の勝負かと思われたが3組の陸上部の生徒が二人を追い抜きトップになるが、バトン渡しに手間取り第四走者の箒と聖がツートップに。そして第五走者の雪兎で差がつき、雪兎からバトンを受け取ったアンカーのシャルロットがリードを維持したままゴールイン、という結果に終わった。5組?聞いてやるな・・・・強いて言うならば着ぐるみはリレーには向いていない、とだけ言っておく。




コスプレ描写で気力を失いリレーはダイジェストに・・・・
すいません、この手の描写苦手で。

一応、次でこの章を終え、その次で京都編に入る予定です。


次回予告

体育祭で学年優勝をもぎ取った1年1組。だが、直ぐにクラスの再編があり慌ただしくも平和な日が続いていたが、亡国機業の日本での拠点が京都にあることが判明し・・・・

次回

「体育祭の終わりと新たなる火種 兎、備える」


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71話 体育祭の終わりと新たなる火種 兎、備える

十章の最終話です。
続く次章は戦闘色強めかも・・・・

そして、今回は新キャラ祭りデス!


リレーで一位になったこともあり、1年の学年優勝は1年1組となった。つまり今までは無人機の襲撃等でお流れとなっていたデザートフリーパスがクラスに配布されるということでもあり、クラスメイトの歓声はそれはもう凄まじいものであった。祝勝会ではそのフリーパスを早速使ってデザートバイキングのような状況になり、後日体重を気にする生徒が多発した(自業自得である。そしてお菓子やデザートは控えめに)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育祭から数日後。プロジェクト・フロンティアが正式に発表され、それに伴いプロジェクトに所属する生徒が多くいる1年1組に関係者を集めて一括管理するという名目でクラスの再編が行われ、雪兎を始めとしたプロジェクト所属生徒の他にプロジェクトに推薦された生徒や参加を希望する生徒が1年1組に集った。これにより旧1年1組から三分二(プロジェクト所属者・1組からの参加希望者を含む)、残り三分一が他のクラスからの推薦・希望者が新1年1組となった。新たにクラスに加わった者の中には体育祭でラウラと競い合った神宮寺晶の他にもスペインのエリカ・ピーリ、イタリアのアレシア・ロッタ、スウェーデンのカロリナ・ゼンナーシュタット、といった代表候補生が名を連ねていた。エリカ、アレシア、カロリナの三名はプロジェクト参加に伴い代表候補生から外れる(※1)ことも本人・国が了承しているらしい。おそらく、三国がプロジェクト・フロンティアへ参入するために少しでも束と雪兎の心象を良くしようと非専用機持ちとはいえ虎の子の代表候補生を差し出したと思われる。

※1 プロジェクト所属者はプロジェクト・フロンティアにおける代表と扱われるため。

 

「3組から来たエリカ・ピーリよ。よろしくお願いするわ」

 

エリカは元3組の生徒で専用機は持ってはいないもののクラス代表だった生徒で実力は十分なのだが、国の国家代表が去年代替わりしたばかりなので国家代表よりはプロジェクト・フロンティアの方が活躍の場があると判断して志願したらしい。特技は狙撃と料理。

 

「元4組のイタリアのアレシア・ロッタです!よろしくね」

 

アレシアは簪と同じ4組の生徒で明るい印象の娘だ。戦闘スタイルは二本の短剣による近接格闘。二つ上の姉であるカテリナも代表候補生でその筆頭らしく、姉とは違う道に進みたいと志願したんだとか。特技は大食い。そしてイタリアと言えば現在の世界大会優勝者アリーシャ・ジョセスターフのいる国。しかし、そのアリーシャはテンペスタⅡの機動試験で大怪我を負っており、テンペスタⅡも現在は開発が凍結されているため新型開発が遅れているらしく、プロジェクトを通して技術交流を謀るつもりなのだろう。

 

「元5組、カロリナ・ゼンナーシュタット・・・・よろしく」

 

最後はカロリナ。彼女は5組から来た生徒で先の二人はそれぞれ前衛・後衛型なのに対しどちらもこなすバランス型。口数が少なく、また表情の変化も少ないので手を動かしたりして感情表現を行う。代表候補生ではあったが雪兎が作るISやパッケージ類に興味があるらしく、整備・開発方面でも色々学べるかもしれないと志願したとのこと。先日の体育祭ではコスプレリレーで着ぐるみを着ていたらしい。特技はプログラミングと機体整備。ちなみに鈴やラウラより身長が低いせいで小・中学生と間違われるのが悩み。

この三名も雪兎がチェックしていた生徒で背後関係は楯無率いる更識によって調べられており、亡国機業等との関わりが無いと確認されている。

 

「1年の代表候補生が集結か・・・・また賑わしくなるな」

 

「織斑先生、代表候補生=問題児とか思ってません?」

 

「国家代表も癖の強いやつが多いからな。代表候補生もあまり変わらんだろう」

 

「やけに実感篭ってますね?」

 

「実体験だ」

 

そんなこんなで新たなクラスでの日々が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス再編から数日後、いつもの特訓に晶、エリカ、アレシア、カロリナの四人も参加するようになっていた。この日は四人に専用機が無いため基礎トレーニングと対人組手がメインだ。

 

「あなた達、毎回こんな訓練をしていたのね・・・・」

 

「うん、こんなのやってればあの実力も納得だよ~」

 

「同意・・・・でも、あの二人についていけるアキラも十分可笑しい」

 

今回は四人が初参加ということで少し軽めとはいえ、ピンピンしているのは雪兎とラウラ、そして晶の三人だけだった。流石は空手部といったところだろうか?

 

「そうか?今日はまだ軽い方だと聞いたのだが・・・・」

 

「あ、アキラさんは既にあちら側ということですのね・・・・」

 

「ラウラと対等にやれる時点で察しとくべきだったわ」

 

そんな晶に戦慄するセシリアと鈴。

 

「代表候補生でもキツイ特訓についていけるようになった私って・・・・実家でお菓子作ってた頃に比べて遠いとこ来ちゃったなぁ」

 

「私も結構体力ついたし」

 

「本音は前が動かなすぎだっただけ」

 

遠い目をする聖といつもの調子な本音と簪。参加した当初など本音は直ぐにバテていたものだ。

 

「うむ、これはうかうかしていられないな」

 

「だな」

 

逆に気を引き締めている箒と一夏。この二人も初期からのメンバーとあって雪兎達程ではないが余裕がある。

 

「そういや今日は楯無さんいないんだな」

 

「うん、お姉ちゃんは会議があるって言ってたけど・・・・」

 

どうも楯無は学園の上層部の面々との会議らしく、今日は姿を見ていない。

 

(そろそろ京都の亡国機業の拠点攻略作戦か・・・・例のアレ(・・)は一応完成してるがもう少し念を入れた方が良さそうだな)

 

マドカやアラクネを失い、束を味方に出来なかった亡国機業がどんな行動に出るかは雪兎にも分からない。また、レインとフォルテの二人も原作とは違い既にあちら側にいることを考えれば更なる戦力の増強をしていると考えてもおかしくはなく、雪兎も以前の福音での一件で不覚をとったことから今まで以上に対策を練っている。

 

(多分、こっからが原作との完全な乖離になる。やらずに後悔するくらいならやって後悔した方がマシだ。だから、もう出し惜しみはしねぇ)

 

新たなる戦いを前に雪兎は決意を新たにした翌日。楯無より専用機持ち達が召集される。




これにて十章は閉幕です。

新キャラであるエリカ、アレシア、カロリナを今後よろしくお願いします。
キャラの詳細は後日キャラ設定に上げておきます。


次回予告

亡国機業の拠点攻略に際して戦力増強の為に雪兎は晶達四人に専用機を用意することに。
新たなる四機の専用機とは・・・・
そして、亡国機業にも新たなるもの達が・・・・

次回

「新たなる専用機と闇夜の星座 兎、戦力増強を謀る」


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十一章「兎と京都と亡国機業」
72話 新たなる専用機と闇夜の星座 兎、戦力増強を謀る


早いものでもう十一章目です。
今回はかなり長めです。
新型ISと亡国の話まとめたらこうなった・・・・

新キャラ、新ISのラッシュ章でもあるこの章は京都編ですがほぼオリジナル展開になります。
今回は前章の四人の専用機と亡国の新戦力の紹介回になります。


それではISー兎協奏曲ー第十一幕開演です。


楯無の召集で専用機持ちの生徒と何故か一緒に召集された晶達四人が生徒会室に集められた。いきなりの召集に多くの生徒が戸惑う中(特に専用機持ちではない四人)、楯無から更に驚くべき事柄が告げられた。

 

「今回皆を召集したのは現在IS学園とプロジェクト・フロンティアにとって障害になっているとある国際テロ組織(亡国機業)の日本での重要拠点が京都にあることが協力者(マドカ)のお陰でわかったの」

 

マドカ自身はその場所を知らないそうなのだが、どうも表向きには亡国機業と癒着していると思われる女性権利主義者の別荘になっていて簡単にはバレない、と以前にスコールが言っていたんだとか。また、先日の地下レストランでの一戦の最中に雪兎がレインとフォルテのISに仕込んだ発信器の反応も京都にあったことから亡国機業の拠点が京都にあるのは確定らしい。

 

「亡国機業は学園祭の時には一夏君にちょっかいをかけて、更に篠ノ之束博士を引き込もうと色々工作していたらしいわ。博士に関しては博士から連絡を受けた雪兎君とシャルロットちゃんが救援に向かって無事だったのだけど・・・・」

 

ここで楯無が一度言葉を切る。ここから告げることは千冬達教員と特訓メンバー等の一部の人間にしか伝えられていない情報が含まれているからだ。

 

「・・・・二人が救援に向かった際に専用機の修理の為に一時帰国しているはずの我が校の生徒、ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアが亡国機業に与したことが発覚したわ」

 

「「「「!?」」」」

 

これには晶達四人も信じられないといった顔をする。当然だ。ダリルことレインは学園では兄貴分の姉御として割と慕われていた生徒だったからだ。

 

「これは後の調査で判明したことだが、ダリル・ケイシーは当初より米国の第3世代機の奪取を謀るために学園に潜り込んでいた亡国のスパイであったらしい。一方でフォルテ・サファイアはダリル・ケイシーに拐かされたと思われる」

 

楯無の言葉を補足するように千冬がそう告げると、ようやくそれが真実だと理解する。

 

「そう、あの二人が・・・・」

 

今回召集された生徒の中にはセシリアと同じイギリスの代表候補生で、セシリアにISの基礎を教えたサラ・ウェルキンの姿もあった。原作ではこの場にいないはずの彼女が何故ここにいるかと言うと、以前にマドカに関する裏取引で返却されたサイレント・ゼフィルスにブルー・ティアーズ・エンジェルフェザーの強化型ハイパーセンサーの技術を流用したことでサラでもサイレント・ゼフィルスを扱えるようになり、そのテストとして現在は彼女の専用機になっているのだ。

 

「色々あって延期になっていた二年生の修学旅行の行き先が京都に決定した。だが、奴等のお膝元にほいほいと生徒達を連れていく訳にはいかん」

 

「そこで今度は私達から打って出る、ということになったの」

 

「織斑先生」

 

楯無と千冬がそう説明すると、エリカが手を挙げる。

 

「ピーリか、どうした?」

 

「僭越ながら、この件は既に学生の領分ではないのではありませんか?国際IS委員会に報告した方が・・・・」

 

「残念ながらそれは出来ん」

 

「実はさっき言った癒着してる女性権利主義者ってのがどうもその委員会の上層部の人間らしくてね。まず間違いなく揉み消されるわ」

 

「なっ!?」

 

そう、亡国機業のようなテロリストが何故世界でも有数の警備態勢を持つ日本に軽々しく出入りが出来るのかといえば、その程度の事など容易く揉み消せる人物が背後にいるからに他ならない。

 

「だが、こちらには奴等が目の敵にしている標的が何人もいる。修学旅行の下見とでも言って彷徨いていればあちらから手を出してくるだろうよ」

 

「つまり俺達は釣り餌ってわけね。三年前の借りも返さなきゃな」

 

「ふっ、私も大人しく食われてやる気は無いがな」

 

「その意気だ、一夏、マドカ」

 

元々亡国機業に一度誘拐され今も狙われている一夏に組織を抜けたマドカ、そして今まで散々妨害しまくってきた雪兎。これを亡国機業が見逃すとは到底思えない。

 

「他に質問はあるか?」

 

「はい」

 

エリカに続いて手を挙げたのはカロリナだった。

 

「ゼンナーシュタットか、言ってみろ」

 

「はい。作戦の概要は理解した。でも、私達四人が呼ばれた理由がわからない」

 

カロリナが言いたいのは自分達四人は何故専用機を持っていないのにこの作戦に組み込まれたのか?ということだ。専用機と違い学園の訓練機は簡単に外に持ち出せるものではない。ましてや表向きには修学旅行の下見となっているため訓練機など持ち出せる訳が無いのだ。

 

「そいつに関しては俺から説明するよ」

 

その疑問に答えたのは雪兎だった。この段階で察しのいい人は気付いていた。この後雪兎が何を言い出すかを。

 

「元々プロジェクト所属になる生徒にはデュノア社のリヴァイヴⅡをはじめとした量産試作機を専用機として与えてのテストをしてもらうことなってるんだが、カロリナ達四人の推薦組には雪華のパックを元にした俺が設計した新型(・・・・・・・・)のテストパイロットをしてもらう」

 

「そ、それって・・・・」

 

「聖や本音の【ウェーブライダー】や【ナインテイル】と同じプロジェクト・フロンティア製のISだな。元々四人を推薦したのはこれが目的だったわけだしな」

 

雪兎の言うように聖の【ウェーブライダー】や本音の【ナインテイル】はプロジェクト・フロンティア発足に伴いプロジェクト・フロンティア製のISとして登録された。他のフロンティア製扱いされているISは雪兎の【雪華】、一夏の【白式】、箒の【紅椿】、簪の【打鉄・弐式】、千冬の【打鉄・参式】、雪菜の【シルフィオーネ】が該当する。

 

「四機とも既に完成してる。この後渡すから作戦までに扱いを覚えてくれ」

 

「作戦は二週間後だ。天野、それまでに四人を使えるようにしておけ、アリーナはその間貸し切りにしておく」

 

「助かります・・・・四人共、今日から二週間は他のメンバー総出でしごくから覚悟しておくように」

 

この時、晶達四人はプロジェクトに志願したことを後悔しそうになるが、その後の特訓でそんなことを考える余裕を失うことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎主導の強化特訓が始まって既に一週間。その日も晶達四人はそれぞれ専用機を纏いアリーナの地面に倒れ伏していた。

 

「・・・・実力差はタッグトーナメントの時に分かっていたつもりだったが、私達四人がかりでも勝てないとは」

 

「こちらはまだ慣れていない機体であちらは私達の専用機の設計者。情報的優位もあちらですが、ここまでとは・・・・」

 

「アドヴァンスド怖いアドヴァンスド怖いアドヴァンスド怖い・・・・」

 

「広域殲滅型とか、本気過ぎる・・・・」

 

約一名トラウマになりかけているその惨状を生み出したのはアリーナの上空に佇む一機のISだった。そのISは黒と紫の追加装甲と背面の三対の紫の翼、そしてその周囲に鋭い羽根状のビットを展開しており、腕を組んで四人を見下ろしている。

 

「休んでないでさっさと上がってこい!来ないならとこちらからいくぞ」

 

その正体はアドヴァンスドシリーズの【LF:ルシュフェリオン】と同じダークマテリアルズにカテゴリーされている【YK:エルシニアクロイツ】を纏った雪華であった。そう、晶達四人を短期間で鍛える為に雪兎が行ったのはアドヴァンスドシリーズを用いて徹底的に強敵との戦い方を身体に覚えさせる、というものだった。

 

「まるで魔王だな・・・・」

 

「うん、ゲームとかのラスボスの風格だよね、あれ」

 

そんな光景を見ていた一夏と簪の呟きに他のメンバーも頷き同意する。元となったキャラも王様と呼ばれていたので違和感はなく、目の前の蹂躙劇もストーリー中盤辺りでラスボスが顔見せで現れて行われる負け戦イベントの如くだ。だが、元ネタの世界ではもっと恐ろしいピンク色の砲撃を放つ白い魔王様がいることを一夏達は知らない。

 

「なんかキャノンボールの時のこと思い出すわね・・・・」

 

「ええ、アドヴァンスドシリーズによる蹂躙。あのレースと同じ状況ですものね」

 

「でも、加減はしてるとはいえ使い始めて一週間の専用機であれだけ食らいついてるのは凄い。私達も負けてられない」

 

あの時は本音も雪兎側だったので2対8だったし、キャノンボールということで雪兎もそれなりに本気だった。何れにせよ、アドヴァンスドシリーズとの模擬戦は彼女達の良い経験値になるだろう。

 

突然だが、ここで晶達四人に与えられた専用機について説明しよう。まず最初に晶の専用機だが名は【白牙】。白虎を模したISで腕にあるナックルガードによる打撃、収納式の高周波爪による斬撃、掌の砲口から放たれる龍咆を参考にした圧縮空気砲、人でいう脛の部分のブレードを用いた蹴り等を主体とする近接格闘型。また、背面に二基の大型可動式スラスターと尻尾型の多層スラスターを持ち、複雑な高速移動を可能にしている。

 

「いけっ!虎咆穿!」

 

零距離で放つ圧縮空気砲である【虎咆穿】は戦車くらいであれば軽く吹き飛ばしてその装甲を丸めた紙屑のようにしてしまう程だ。しかし、捉えたとか思えば既に雪兎は離脱しており、代わりに紫色の光球が晶の前にあった。

 

「しまっーー」

 

次の瞬間、その光球が弾け晶は紫の爆発に呑まれてしまう。

 

「狙いは良かったんだがなぁ・・・・っと!」

 

「ちっ、外した」

 

次に雪兎を襲ったのはエリカの狙撃だった。エリカに与えられた専用機は【G:ガンナー】と【J:イェーガー】の中間とも言える射撃型で名は【ガト・グリス(灰猫)】。機動力を損なわない大きさのクローアンカー内蔵シールドと銃身が折り畳み式になっていてスナイパーライフルとアサルトライフルを切り換えて使用出来るマルチレンジライフルを主に各ハードポイントにスラスター付きミサイルポットや索敵用のレドームを装備している。また、マドカの【フッケバイン】のヴァイス&シュヴァルツを元に作成した短双剣タイプのソードライフルとも言えるガンブレードや超遠距離狙撃用電磁投射式オーバーレンジライフル【アルテミス】等を装備する。

 

「こちらは狙いが正確過ぎて読み易いな」

 

エリカの狙撃を難なく回避した雪兎に今度は隙を見て距離を詰めたアレシアが籠手から伸びた双剣で背後から襲いかかるが、それすら読んでいた雪兎は振り向き様に持っていたビームカノン【アロンダイト】でアレシアの横腹を打ち付け弾き飛ばすと追撃に【アロンダイト】の砲撃を放つ。

 

「げほっ・・・・銃器を鈍器扱いしてぶん回してくるとかありなの!?」

 

アレシアの専用機【ロッソ・アクイラ(赤い鷲)】も晶と同じく近接型だが、こちらは剣を用いた斬撃が主で、先程も使った籠手に内蔵されたアームブレードや楯無も使っている蛇腹剣、リヴァイヴⅡにも装備されているソードライフル【グリフォン】の派生系で銃身の下に弧を描くように刃が付けられた双銃剣【アクイラ】、投擲用遠隔操作武器のヒートチャクラム、鋭い刃のような翼状のシールドとスラスターの役割も持つ【カッポット・ディ・アーラ(イタリア語で翼の上着)】など近・中距離系の武装中心。こちらは【J:イェーガー】と【B:ブレイド】のデータを元にしている。

 

「また『あの砲撃』がくる前に勝負を決めないと・・・・」

 

カロリナが警戒しているのは先程四人を地に伏さした【YK:エルシニアクロイツ】の最大威力重圧砲撃【ジャガー・ノート】。これは先程の【アロンダイト】を中心に四基のシールドカノンビット【ランスロット】から放たれる重力波砲撃で並みの戦車であれば一瞬で鉄屑へと変えてしまう威力があるんだとか。

 

「いくよ、【リリコンバージュ】」

 

カロリナの専用機の名は【リリコンバージュ】。リリコンバージュとはスウェーデンの国花であるドイツ鈴蘭のことで、花言葉は純潔、純愛、幸福の訪れを意味し、花と実にコンバラトキシンという毒を持つ。そんな名を持つこのISの特徴は背面にあるサブアームで大型の複合武装シールド【ストール・ブラード(大きな葉)】で、背面では大型スラスター、シールドとしては表面にバリアフィールドを展開可能で、そのバリアフィールドを利用したバリアフィールドタックルやブレード状にバリアを展開したバリアブレードとしても利用できる。その他の武装としては左腕と一体化している複合武装【グスタフ】を持つ。その構成はシールド、サブマシンガン、レーザーブレード、杭を射出することもできる小型パイルバンカーの四つ。他にもアサルトライフルと槍を組み合わせたショットランスを装備しており遠近のバランスの良い機体。【S:ストライカー】と【F:フォートレス】のデータの流用機。

 

「バリア展開、コードACS」

 

「紫天の力の一端を放て、コキュートス」

 

バリアを円錐状に展開し突撃を仕掛けるカロリナに雪兎はビットを前面に展開させて淡紫色のブリザードを放ちバリアごと凍らせて押し返す。

 

「重力波砲といい、その吹雪といい、そのアドヴァンスドは無茶苦茶過ぎるわよ!」

 

「これでも加減してるんだがなぁ・・・・ルシフェリオン、バルニフィカスと合体してトリニティモードになったり、スピリットフレアと合体してヴェスパーレッドモードにならんだけまだマシだぞ?」

 

「ちょっと待って!?今サラッととんでもない発言しなかった!?」

 

そんなこんなでその日の模擬戦も四人の大敗に終わり、その後は一夏達も順番にアドヴァンスドシリーズに挑んだりしながら京都での作戦に備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、京都の拠点へと戻っていたスコール達の元にも援軍が到着していた。

 

「久しぶりね、スコール」

 

「増援が来るとは聞いていたけど・・・・サダル、貴女達とはね」

 

やって来たのはスコールらモノクローム・アバターとは別の部隊【闇夜の星座(ゾディアック・ノワール)】に所属する者達だった。彼女らのコードネームは黄道十二星座やその星座を構成する星々に由来する。

 

「にしてもザマァないね、スコール。たかがガキ一人に好き放題にされるなんて」

 

「アンタレス、貴様!!」

 

スコールを馬鹿するアンタレスという女にオータムが掴みかかるも、アンタレスはひょいとそれを避ける。

 

「やだなぁ、アタシはホントのこと言っただけじゃない。そういやアンタも一度捕まったんでしょ?」

 

今度は自身を小馬鹿にするアンタレスにオータムがぶちギレかけるが。

 

「やめなさい、オータム」

 

「アンタレスもその辺にしておきなさい」

 

それぞれスコールとサダルにより止められる。

 

「ちっ!」

 

「はーい」

 

舌打ちするオータムと全然反省の色が見えないアンタレス。この二人の相性は水と油らしい。

 

「・・・・それで他には誰が来たのかしら?」

 

レグルス(獅子)ストレア(天秤)カストとポルクス(双子)の四人ね」

 

「随分と大盤振る舞いじゃない」

 

「それだけ件の天野雪兎(ラビット・ディザスター)篠ノ之束博士(天災)の師弟を警戒しているということよ」

 

「楽しみだなぁ~、強いんでしょ?彼」

 

「・・・・戦闘狂めが」

 

雪兎の話になるとアンタレスは(ご馳走)を前にした狼のように舌舐めずりをするのだった。




という訳で色々出し過ぎて長くなりました・・・・

闇夜の星座のメンバーは基本的に戦闘狂の気があります。


次回予告

準備を終えて京都へと向かう雪兎達。その一行を待っていたのは亡国機業だけではなかった。

次回

「京都と風の戦乙女 兎、二代目と邂逅する」


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73話 京都と風の戦乙女 兎、二代目と邂逅する

いよいよ京都へ・・・・

閃の軌跡Ⅲでやっと海都・・・・
今回は結社の連中ガチ過ぎね?

消防団の出動要請が週に二度とかマジでやめて・・・・


作戦が伝えられて二週間が経ち、雪兎達は新幹線で京都へと向かうことに。途中、ラウラが駅の売店でひよこ饅頭に心奪われ駅弁を買いそびれたり、日本の駅弁に海外組が唖然としていたり、いつもの四人が一夏の隣の席をジャンケンで争っていたり、いつものように雪兎とシャルロットがイチャイチャしていたり、束が千冬に絡んで拳骨食らったり、と割といつものノリのまま京都に到着した。

 

「久しぶりの京都だな」

 

「そういえば雪兎達は来たことあったんだったね」

 

「小中と修学旅行が京都だったんだ。他所の中学校は東京にも行くんだが」

 

東京の学校の場合、わざわざ東京に行く必要性がなく再び京都になるパターンが多いんだとか。

 

「だから鈴は不機嫌なんだ」

 

今回で三度目な上に来年も京都だと聞いてウンザリしているのだ。セシリアも「京都?ロンドンより美しい古都は無いですわ!」などと言っていたが、雪兎に「ロンドンが素晴らしいのは分かるが、何を美しいと感じるかは人それぞれ感性の差がある。それにセシリアにその気は無いんだろうが、俺達からしたら自分の国の古都を馬鹿にされたと捉えてもおかしくないんだぞ?セシリアに分かり易く言うなら「ロンドンなんか大したことない」と言われるようなもんだ。入学当初も似たような問答をしたよな?その辺を考えて発言しろ。そもそも京都が選ばれたのも国外を選ぶとその国を贔屓したように思われかねんからと日本の文化を知ってもらおうという狙いがあってだな・・・・」と雪兎のOHNASHIが始まってしまった。しかも、苦手な正座付きである。少しでも崩そうものなら怒声が飛ぶ中でのお説教は相当堪えたらしい。鈴もそれを見ていたため、文句はあれどそれを口にする愚行はしなかった。

 

「今日の予定は表向きは全体行動で明日からは数人のグループに分けての班行動か・・・・」

 

全体行動でまずは自分達が京都に来たことをあちらに認知させ、班行動で少人数にして襲撃を誘発する作戦だ。無論、千冬達教師陣が直ぐに駆けつけれるよう待機しているし、この二週間の特訓で力をつけた一夏達があっさりやられもしないだろう。それでも保険は多いに越したことはない。

 

「一夏、コイツをやる」

 

雪兎が一夏に渡したのは剣を抱く鳳の意匠が施されたペンダントだった。

 

「これは?」

 

「御守りみたいなもんだ。一応、肌身離さず持っとけ」

 

「ふーん・・・・お前がそう言うなら着けとくか」

 

ペンダントを受け取った一夏は首を傾げつつも素直にそれを身につける。

 

「そういや雪兎は班行動は誰と組むつもりなんだ?」

 

「とりあえずシャルと簪に本音、あとアレシアとカロリナと回る予定だ」

 

ちなみに一夏は箒、セシリア、鈴、ラウラの四人と一緒らしい。

 

「簪と本音はわかるが、アレシアとカロリナも一緒なのか」

 

「カロリナは本音とも仲いいからな。アレシアはちょっと別件絡みだ」

 

「別件?」

 

「楯無さんがもう一人協力者がいるって言ってたろ?そのお迎えでな」

 

「それがアレシアの知り合いなのか?あれ?アレシアの知り合いだからイタリア人だよな?ってことは・・・・」

 

珍しく一夏が何かに気付いたようだ。そう、アレシアが同行するのはアレシアが彼女(・・)の知り合いだからだ。

 

「一夏、多分その予想通りの人だ」

 

千冬がある条件で呼び寄せたその人物。イタリア人で亡国機業を相手にするにあたって呼び寄せたともなれば必然的に候補は絞られる。その人物を迎えに行く役割を雪兎は命じられていた。千冬曰く「あいつのことだ、放っておくと一人で勝手に始めかねん」とのこと。本当に国家代表や代表候補生にまともな人は少ないらしい。米国のナターシャ?あの人は数少ない例外だろう。ちなみに雪兎自身は自分をまともな人物とは認識しておらず、また束からは自身と同類の人間だと評されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視察初日は特に問題もなく終了し、二日目の班行動になると雪兎達は待ち合わせの人物がいるホテルの前にやって来た。

 

「よく来たネ」

 

そこで雪兎達を待っていたのはイタリアの国家代表のアリーシャ・ジョセスターフ。世間一般では二代目ブリュンヒルデと呼ばれる人物だった。

 

「に、二代目ブリュンヒルデ!?」

 

「その呼び方は好きじゃないネぇ。まだアイツとの決着は着いてないサ」

 

アリーシャは今も千冬との決着を望んでおり、今回の件は千冬との決着の場と対等に戦える環境を与える。それが彼女が望んだ条件だった。

 

「久しぶり、アーリィ姉」

 

「久しぶりサ、シア」

 

「随分と親しそうだな、アレシア」

 

「はい!お姉ちゃんと一緒によく遊んでもらってたの」

 

どうもアリーシャとアレシア達は昔からの付き合いがあり、アレシア達にISの操縦を教えたのもアリーシャなのだとか。

 

「どうりで・・・・あの近接格闘はアリーシャさん仕込みという訳か」

 

「キミが天野雪兎(ラビット・ディザスター)ネ。チフユやユキナから話は聞いてるサ」

 

「俺もその呼び方は好きじゃないんだがね・・・・それはそうと今回はよろしくお願いします」

 

「そういう契約サ。こちらこそよろしくなのサ」

 

雪兎とアリーシャが握手を交わしたその時、突如雪兎の端末から緊急連絡時の呼び出し音(某潜入ゲーの発見音)が鳴り響く。

 

『天野、奴らが織斑のところに現れた!』

 

「ちっ、食い付くの早すぎだろ」

 

こうして京都での騒乱の幕が開く。




アリーシャの口調難しい・・・・

次回より戦闘パート突入?


次回予告

雪兎達と別行動をしていた一夏達。そこに現れたのは新たなISでリベンジに燃えるオータムと闇夜の星座のレグルス。このピンチを一夏達は凌ぐことが出来るのか?そして雪兎達にも刺客の魔の手が・・・・

次回

「復讐の蜘蛛と狂える獅子 兎、襲撃される」


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74話 復讐の蜘蛛と狂える獅子 兎、襲撃される

早速ですが、戦闘パートです。弾?余裕があれば戦闘後にでも出します・・・・需要があるかは知らないけど。


一夏side

 

視察二日目の朝。別のホテルに宿泊しているという件の協力者を迎えに行った雪兎達や別行動の楯無先輩達と別れた俺達は囮役として箒達と京都を散策することに。

 

「さてと、そろそろ俺達も行くか」

 

今回は亡国機業に対する囮役ということもあって箒達がいつものように言い争ったりすることはなかった。というか前日に雪兎からその辺りを徹底的に言い含められている。仮にもしそんなことをすれば後日雪兎のOHNASHIが待っているとわかっているので箒達も自重している。その代わり、京都でデートするならば定番というコースを教えて貰っており、俺達はそのデートコースを回ることになっていた。まずは皆で人気の老舗和菓子屋で各々好きな和菓子を食べ・・・・

 

「これは旨いな」

 

「思っていたより上品な甘さなのですわね」

 

「ティナ達にもお土産で買っていこうかしら?」

 

「私も隊に買っていこう」

 

着物の体験をしてみたり・・・・

 

「うむ、やはり着物は良いものだ」

 

「あっ!?鈴さん!帯を引っ張らないでくださいまし!」

 

「良いではないか!良いではないか!」

 

「ほぅ、それが有名な・・・・」

 

「いや、普通に体験してくれ・・・・」

 

そんなこんなを終え、次の場所へと向かっている時だった。

 

「一夏!」

 

突然ラウラが俺を突飛ばし、ISを部分展開させてAISを発動させ俺を狙っていたと思われる弾丸を受け止めた。

 

「狙撃!?一体何処から!?」

 

俺を囲うように箒達が隊列を組むと犯人はあっさりと姿を現した。

 

「久しぶりだな、織斑一夏」

 

「お、お前は、オータム!?」

 

それは以前に学園祭で俺を襲ってきた亡国機業の構成員の一人オータムだった。

 

「あ、あんた生きてたのね!」

 

そう、オータムは学園祭の時にシャルロットに惨敗し捕らえられたものの、護送車が爆破され行方不明になっていたはずなのだ。

 

「あのくらいでこのオータム様がくたばるかよ!ん?あの糞兎とフランスのガキは一緒じゃないんだな」

 

どうも前回の(学園祭)時のことを未だに根に持っているようで、雪兎とシャルロットがいないのを見るとオータムの表情は誰から見ても悪人面な笑みを浮かべている。

 

「おいおい、私のことを忘れていないか、オータム?」

 

そこにもう一人、オータムの背後から別の女性が姿を現す。その姿を見て再び俺達は驚愕する。

 

「あ、貴女は・・・・」

 

「し、シルヴィア・メルクーリ!?」

 

「ギリシャの国家代表が何故亡国機業と一緒に!?」

 

その人物はシルヴィア・メルクーリ。ギリシャの国家代表だった人物で千冬姉や二代目ブリュンヒルデと呼ばれるアリーシャ・ジョセスターフに並ぶとすら言われた現世界二位の実力者だった。そして・・・・

 

「そんなの決まっているだろう?織斑一夏、お前の姉織斑千冬と再戦する為さ!そして、亡国機業【闇夜の星座(ゾディアック・ノワール)】のレグルス。今はそう名乗らせてもらっているよ」

 

彼女こそ雪兎が警戒していた亡国機業から派遣された新たな戦力【闇夜の星座】の一人、獅子座のレグルスだったのだ。

 

「世界第二位が亡国機業に加担してるなんて・・・・」

 

「っう訳で、私らにとっちゃお前らは前座なんだよ。だからさっさとくたばりな!」

 

そう言ってオータムは以前押収したアラクネに酷似したISを展開した。

 

「そのISは・・・・アラクネ?いや、細部が異なる」

 

「コイツの名前はアラクネⅡ【アトラク・ナクア】さ!前のアラクネと一緒だと思ってると痛い目みるぜ!」

 

「私達も行こうか、【混沌の獅子(ハオス・リョダリ)】」

 

続けてレグルスも大剣を持つ黒い獅子を模したISを展開する。

 

「やるしかないか。いくぞ、皆!こい、白式!」

 

「ああ!紅椿!」

 

「私達の力を見せる時ですわ!ブルー・ティアーズ!」

 

「来なさい、甲龍!」

 

「ゆくぞ、シュヴァルティア・レーゲン!」

 

俺達もISを展開し迎撃態勢を取り、戦いの幕が切って落とされる。

 

「さあ、愉しいお遊戯を始めようか!」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏達がオータムとレグルスの両名と交戦を始めた頃、雪兎達の前にも亡国機業の刺客が立ち塞がっていた。

 

「へぇ~、兎さんだけかと思ったらもう一人面白い人がいるじゃんか」

 

「「当たり?私達当たりだった?」」

 

一人は血のような真紅の髪を伸ばし放題にしている軽装の女性。その背後には髪色が白と黒、髪型が左と右のサイドテール以外が瓜二つのゴスロリを着た双子の少女。一見観光客にも見えなくもない三人ではあるが、雪兎とアリーシャは彼女らが敵であることを一目で見抜いた。何故なら、彼女らから漂う血の気配と赤毛の女性の眼が獲物を前にした獣のソレであったからだ。

 

「お前ら、亡国機業か」

 

「うん、そうだよ。私は亡国機業【闇夜の星座】蠍座のアンタレス。そっちの双子は黒いのがカスト、白いのがポルクスだよ」

 

雪兎の問いに赤毛の女性・アンタレスはあっさりと自分達の正体を明かす。

 

「カストにポルクス・・・・カストールとポルックス、あんたが蠍座ということはそっちは双子座。なるほど闇夜の星座の星座ってのは黄道十二星座か」

 

「へぇ~、よくわかったね」

 

「こんなもん今時の中学生でも思い至ると思うぜ?んで、その闇夜の星座とやらが俺達に何の用だ?こっちは急いでるんだが」

 

「とぼけなくてもいいよ?分かってるんでしょ?私達が来た理由くらい」

 

そう言うとアンタレスは血のように紅い蠍型のISを展開し、双子も白と黒のISを展開する。

 

「ちっ、狙いは俺達の足止めか」

 

「覚悟を決めるサ、アレ(アンタレス)は間違いなく戦闘狂サ」

 

「最悪だな・・・・シャル、俺とアリーシャさんでここは抑える。だからシャル達は一夏達の援護に向かってくれ」

 

「で、でも・・・・」

 

「私達三人をたった二人で?」

 

「「それ、本気?」」

 

雪兎がシャルロット達だけでも一夏達の元へ向かわせようとするが、アンタレスと双子にそんなことをさせるつもりはない。だが、雪兎には勝算があった。

 

「二人?コッチは四人サ」

 

すると、いつの間にやらISを展開していたアリーシャがテンペスタの単一仕様能力を発動させ二人の分身を出現させていた。

 

「と、いう訳だ。それとアンタレスとかいったな?シャル達を見逃してくれんだったら俺も奥の手使ってやるよ」

 

雪兎がそう言うとアンタレスの表情が一変し獰猛な笑みを浮かべる。

 

「いいよ、君のその提案受けたげる」

 

「雪兎!?」

 

雪兎の思わぬ提案とそれを即答するアンタレスにシャルロットは不安そうな表情をするが、雪兎は安心させるようにシャルロットの頭を撫でながら微笑む。

 

「安心しろ、シャル。俺がそう簡単に負けっかよ。すいません、アリーシャさん。アリーシャさんにはそっちの双子をお願いします」

 

「了解サ」

 

「シャル、一夏達を頼む」

 

「・・・・帰ったら1日付き合ってもらうからね」

 

「御安い御用だ。簪達も頼む」

 

甘い空気になりかけたところで雪兎は他のメンバーにも一夏達のことを託す。

 

「雪兎、無理はしないでね」

 

「雪兎さんもアーリィ姉も無茶しないでね」

 

「かしこまり!」

 

「うん」

 

そして、シャルロット達が一夏達の元へと向かうと雪兎はアンタレス達に向き直る。

 

「待たせたな」

 

「それじゃあ、始めよっか!」

 

アンタレスはもう待ちきれないとばかりにチェーンソーのような武器を構え臨戦態勢を取る。

 

「さぁ、見せてよ・・・・私とこの血染めの蠍(ブラッディ・スコーピオン)に!」

 

「見せてやるよ・・・・俺の正真正銘の奥の手ってやつをな!」




アラクネⅡ【アトラク・ナクア】はsyouiさんの意見を採用させていただきました。ありがとうございます。

次はもう1つの班と教師陣営の様子、それから一夏達の戦闘模様かな?


次回予告

亡国機業と交戦状態となった雪兎と一夏達。一方で楯無や聖達の班にも亡国機業の刺客の魔の手が伸びる。そして、ついに最()の世代と呼ばれた彼女達も動き出す。

次回

「動き出す姉達と楯の意地 兎、戦闘狂と戯れる」


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75話 動き出す姉達と楯の意地 兎、戦闘狂と戯れる

今回は楯無班と教師陣営がメインです。

束の愛機や新たな登場人物も出ます。


雪兎と一夏達が襲撃を受けている頃、楯無率いるもう1つの班も襲撃を受けていた。その襲撃者は楯無達もよく知る彼女達だった。

 

「そちらについたとは聞いていたけど、こんなに早く再会出来るとは思わなかったわ。イージスのお二人さん」

 

「うげっス」

 

「お前は、サラ・ウェルキン・・・・」

 

「私もいるわよ」

 

「生徒会長まで」

 

そう、亡国機業へと与したイージスの二人だ。

 

「ところで・・・・お二人だけですか?こちらは会長やサラ先輩含めて一番人数がいるのですけど」

 

そんな中、聖が一人疑問に思っていたことを口にする。無理も無い。レインとフォルテはたった二人でこの場にいる。対して楯無班は楯無、サラ、忍、聖、晶、エリカの六名。いくらイージスと云えどこの人数差を何とか出来るとは考え難い。

 

「オメエはあのクソ兎のとこの・・・・その疑問は最もだ。だが、それくらいちゃんと準備してんだよ!」

 

レインは聖を見て雪兎のことを思い出し苦虫を潰したような顔をするも、すぐに余裕の表情を見せ指を鳴らす。すると、物陰からモーター音を鳴らしながら数十機もの全身装甲の人型(・・)が姿を現した。

 

「あれは・・・・EOS?」

 

「いえ、アレからは人の気配を感じない・・・・無人機よ」

 

エリカはその人型をEOSかと思ったが、忍がそれを否定する。そもそもEOSはその重量とパワーアシストの脆弱性、エネルギーの問題から装甲は必要最低限しかないため、目の前のモノのような全身装甲は不可能なのだ。

 

「その通り!こいつらは初代ブリュンヒルデや過去のモンド・グロッソ出場者の戦闘データをインプットしてある【機械戦乙女(マシナリー・ヴァルキュリア)】さ!」

 

そこで亡国機業が開発したのがこの【機械戦乙女】。これは以前ラウラのシュヴァルティア・レーゲンに内蔵されていたヴァルキリー・トレース・システムを元に同じく亡国機業が造ったオリジナルの半分以下の性能しかない模倣ISコアを用いて量産された束や雪兎からすれば出来損ないと言うべきものなのだが、インプットしてあるデータのせいでEOSとは比べ物にならない戦闘力を獲得した兵器なのだ。それでもその性能はリヴァイヴ一機に対して十機で互角といったところだ。EOSが千機で一機だったのに比べれば十分に使い物になるのだが・・・・それが数十機、飛行能力は無いとはいえ武装はISのものであるため苦戦は必須だ。

 

「忍と晶ちゃんとエリカちゃんは無人機の迎撃!私とサラであの二人(イージス)を相手するわ」

 

楯無が指示を出すとそれぞれISを展開し迎撃態勢を取る。

 

「丁度いい、学園最強の名。ついでにいただかせてもらうぜ!」

 

「ふふっ、やれるもんならやってみなさい!」

 

「こ、こうなったらもう自棄っス!」

 

「生まれ変わったこの娘(サイレント・ゼフィルス)の力、見せてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、各班の様子をモニターしていた千冬達はというと・・・・

 

「シルヴィアの奴もあちらに与していたか」

 

「どうするの、ちーちゃん?」

 

「やられっぱなしが性に合わんのはお前がよく知っているだろう?」

 

「だよねぇ~。それじゃあ私達も行こっか」

 

「天野君にお借りしたこの娘(リヴァイヴⅡ)も使ってあげませんとね」

 

千冬と束、それと雪菜、更にいつもは止める側の真耶までもが今回はやる気満々である。そんな四人の前に現れたのは・・・・

 

「申し訳ないけれど、貴女達の相手は私達よ」

 

スコールに闇夜の星座のサダルにストレアの三人にイージスの二人が連れていた機械戦乙女達。

 

「丁度三対三でいいですわね」

 

「こちらには機械戦乙女もいます。例え相手がブリュンヒルデだろうとそう簡単にはーー「それはちょっと違うんだなぁ、これが」何っ!?」

 

サダルとストレアが千冬、雪菜、真耶を見てそう言うが、その声を遮り束がにこやかに前に躍り出る。

 

「そこの出来損ないには流石の束さんも激おこプンプンって感じだけど・・・・いつこの束さんが専用機を持ってない(・・・・・・・・・)だなんて言ったのかな?かな?」

 

「「「!?」」」

 

束から告げられる言葉にスコール達は自分達がとんでもない勘違いをしていることに気付く。確かに束はISが不要な程にオーバースペックな存在だが、「専用機を持ってない」とは誰も言っていない。むしろ、何故持っていないなどと勘違いしていたのか。

 

「ISの開発者たるこの束さんが専用機を持ってないはずないじゃない。まあ、その初陣が君達程度になるなんて思ってもいなかったけど、仕方ないか」

 

そう言うと束はとびきりの笑顔をしつつ弟子との合作である(・・・・・・・・・)その愛機を展開する。

 

「それでは本邦初公開!おいで、束さんの専用機【ワンダーランド】!」

 

現れたのは束の普段着である「一人不思議の国のアリス」に合わせたハートの女王やトランプ兵などのアリスの登場人物を彷彿とさせるデザインのIS【ワンダーランド】。ファンタジーな見た目ではあるが、スコール達の本能は今までの経験から「アレと戦ってはならない」と警鐘を鳴らす。

 

「私も前回は消化不良とも言えるレベルだったからな・・・・貴様らは楽しませてくれるんだろうな?」

 

「私もゆーくんに負けてからまだ一度もまともに動かしてなかったっけ?」

 

続けて千冬も打鉄・参式を展開。雪菜もシルフィオーネを呼び出す。

 

「先輩方、私にも残しておいて下さいね?」

 

真耶もいつになく黒い笑みを浮かべて雪兎の手の加わったリヴァイヴⅡ改を纏う。

 

「「「「さあ、覚悟はいいか(かな・かしら・ですか)?亡国機業」」」」

 

そこには本当の絶望が存在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シア達は無事だといいのですが・・・・」

 

そしてもう一人、戦場と化した京都の地に助っ人が姿を現す。

 

「待っていて下さい、シア!お姉ちゃんが今助けに行きますから!」




一夏の戦闘まで行けなかった・・・・
つ、次こそは戦闘シーンや!

最後に出てきた人物?それも次回!


次回予告

戦場と化した京都。一夏は現世界第二位という強敵と対峙し追い込まれていく。一方で雪兎も戦闘狂のアンタレスと激戦を繰り広げる。

次回

「狂える獅子対白き刃 兎、奥の手発動!」


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76話 狂える獅子対白き刃 兎、奥の手発動!

今度こそ戦闘パートじゃあ!




オータムと彼女が引き連れてきた機械戦乙女によって箒達と引き離された一夏は一人でレグルスの相手をすることに。だが、レグルスの計算違いは一夏が想定外にレグルスに食い付いてきたことだった。その原因は一夏が雪兎に懇願して受けてきたある特訓にあった。とある世界では「東方剣術の極み」とすら言われた【八葉一刀流】。雪兎から教わったこの剣術が思った以上に一夏に合っていたのか【紅葉切り】の習得以降も雪兎は幾つかの技を一夏に伝授しており、今や【零落白夜】無しでも他のメンバーと渡り合える実力を身に付けていた。また、剣術に至っては既に箒を凌駕する実力になっており、それに焦った箒までもが雪兎に教えを乞うてきたぐらいだ。

 

「これも凌ぐか・・・・アイツ(千冬)の弟だからと相手に選んでみれば思わぬ掘り出し物に出会ったものだ」

 

「ぐっ・・・・これが世界二位の実力か」

 

レグルスがまだ本気ではないのか、それとも雪兎のアドヴァンスドによるシゴキよりマシだったのか、一夏は何とかレグルスと戦えていた。それでも少しでも気を抜けば殺られるという予感が一夏にはあった。

 

「それでも、負ける訳にはいかないんだ!!」

 

だが、一夏は雪片を手にレグルスに挑み続ける。

 

「その意気やよし!だが、まだまだ私には届かんよ!」

 

すると、レグルスは手に持つ大剣を縦に二分割し二振りの剣に変形させ今までの剛剣による一撃ではなく双剣による乱舞に切り替わる。しかし、一夏に動揺した様子はなく、瞬時に左腕の雪羅をソードモードにして乱舞を捌く。

 

「ほう、これも耐えるか」

 

「その戦い方はアイツ(マドカ)との模擬戦で散々やってきたんだ!」

 

「こいつは本当に殺すのが惜しいな!」

 

更にスピードと威力が増し、一夏は再び劣勢に。そして・・・・

 

ピシッ

 

一夏だけでなく、白式も徐々にダメージを負って限界に近付いていく。特にレグルスの攻撃を一身に受け続けてきた雪片弐型に至っては既に限界間近といったところだ。

 

(もう少し、もう少しだけ耐えてくれ雪片・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、オータムと対峙する箒達はというと。

 

「その程度か・・・・はっ、やっぱあのクソ兎と金髪のガキ(シャルロット)以外は大したことねぇな」

 

「うぐ・・・・」

 

以前、シャルロットに完封されたことから多くの機械戦乙女の連れて挑んだが、思いの外箒達は機械戦乙女達とオータムを突破出来ずにいたことに拍子抜けといったところだ。

 

「くっ、このままでは一夏が・・・・」

 

「でも、こいつらを抜けれないっ!」

 

一夏のピンチを知りつつも駆けつけることが出来ず、苦しい思いをする箒達。

 

「これが亡国機業の本気・・・・」

 

「でも、負けられない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが・・・・最凶の世代」

 

その頃、スコール達の襲撃受けた千冬達は・・・・

 

「その程度か、亡国機業」

 

既に機械戦乙女の姿はなく、スコール、サダル、ストレアの三名は満身創痍だった。

 

「ホント、この程度なんて拍子抜けだよねぇ~」

 

ほとんどの機械戦乙女を重力圧で圧壊させた束。

 

「ゆーくんが言ってた程強くなかったかな?」

 

圧倒的なスピードと反射反応装甲というチート装備でサダルを翻弄した雪菜。

 

「この装備のお蔭ですね。天野君にお礼を言わなくてはいけませんね」

 

雪兎の調整したリヴァイヴⅡ改でかつての異名通りの蹂躙劇でストレアを制した真耶。

 

「またつまらんものを斬ってしまったな」

 

放たれた炎弾等も全て斬艦刀で斬り伏せてしまった千冬。こいつら、チート過ぎる・・・・

 

「くっ・・・・しかし、もう私達の目的は果たしましたわ」

 

「何?」

 

「織斑一夏の抹殺・・・・きっと今頃レグルスが果たしていますわ」

 

そう、亡国機業の今回の最大の目的は一夏の抹殺。故に最大戦力であったレグルスを一夏の元へと向かわせ、その障害となり得る千冬達の足止めにスコール達自らが出向いたのだ。

 

「くっ」

 

「行かせませんよブリュンヒルデ。それに、機械戦乙女ならまだまだいますよ?」

 

千冬達が一夏の元へと向かおうとするが、再び無数の機械戦乙女とスコール達が立ち塞がる。

 

「もう一踏ん張りいきますよ、【抗議する天秤(プラテストゥ・リブラ)】!」

 

身に纏っていた重装甲と両肩両腕のガトリングシールドをパージし、腰の折り畳まれていたレーザー重斬刀を構えるストレア。

 

「ひび割れても溢れる水は尽きませんわ。【尽きぬ水瓶(イニィグゾォースタァブル・アクエリアス)】!」

 

両肩の水瓶を彷彿とさせるビームカノンをチャージして戦闘続行を示すサダル。

 

「そう、まだ私達は負けていませんわよ?ブリュンヒルデ!」

 

両腕に炎を纏わせ起き上がるスコール。

 

「う~ん、まだやる気なの?束さんとしては早く箒ちゃんやいっくんのとこ行きたいんだけど・・・・」

 

「えっ?この反応は!?」

 

まだまだやる気の亡国機業の三人に対して束がつまらなそうに呟いた時、戦闘と同時に戦場全域をサーチしていた真耶の表情が曇る。

 

「どうした?真耶」

 

「織斑君の反応が・・・・ロストしました」

 

その真耶の一言で千冬達は絶句した。

 

「ふふ、勝負に負けて試合に勝った・・・・勝ったわよ、ブリュンヒルデ!」

 

「これはマズイことになったね・・・・」

 

一夏の反応のロスト、その言葉を聞き勝ち誇るスコール。そして束が珍しく深刻そうな表情で告げる。

 

「紅椿が暴走した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、シャルロット達を一夏の元へと向かわせる為にアンタレスの足止めをするべく残った雪兎は藍色の装甲を持つ【B:ブレイド】を展開しアンタレスと対峙していた。

 

「うん?それ、アドヴァンスドとかいうやつじゃないよね?もしかして私のこと嘗めてる?」

 

「まあ、落ち着けよ。これで終わりだなんて一言も言ってねぇだろ?」

 

そう言って雪兎が取り出したのは一夏に渡したペンダントによく似た白い飛竜を模したペンダント。

 

「来いよ【白月】」

 

その一言に反応してペンダントが光を放つと雪兎の背後に白い飛竜のようなメカが姿を現す。

 

「無人兵器?いや、違う・・・・それはまさか!?」

 

無人機であれば亡国機業にも既に機械戦乙女が存在する。しかし、その飛竜からはISコア(・・・・)の反応が存在した。更に各所に雪華のようなハードポイントを持つことからアンタレスはその正体を察した。

 

「本邦初公開だ・・・・その眼をかっぽじってよく見とけよ?白月、武装合体」

 

すると、機械の飛竜は甲高い機械音の咆哮をあげ、幾つかのパーツに分離すると雪華へと組み込まれていく。

 

「無人コア内蔵自律型追加補助外装【白月】、そして、それと合体し二つのコアを連動させるデュアルコアシステム搭載IS雪華第三形態【雪月華】。これが俺の切り札(ジョーカー)だ」

 

ここに二つのコアを持つ理不尽の塊たる最凶のISが世界に顕現した。




一夏の生死と紅椿の暴走については次回で・・・・
そして、雪兎の切り札(ジョーカー)登場です。


ストレアの【抗議する天秤(プラテストゥ・リブラ)】は武御雷参型さんに考案いただいたISです。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

次回予告

雪兎が切り札を切り優位に立ったと思われたが、一夏の反応がロストという最悪の事態に。その時、紅椿が暴走した理由とは?


次回

「折れた白刃と乱れる椿 兎、もう1つの切り札を切る」


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77話 折れた白刃と乱れる椿 兎、もう1つの切り札を切る

もうお気付きの方も多いでしょうが、今回は一夏がやらかす回です。
そして、紅椿暴走の理由とは?


「ほらほら!さっきまでの勢いはどうしたっ!」

 

雪片弐型の限界が近付き消極的になった一夏にレグルスは容赦の無い攻勢をかけていく。

 

「くっ・・・・」

 

ピシピシッ

 

とうとう雪片の刀身に罅が入りはじめる。

 

(こうなったら・・・・一か八か!)

 

「零落白夜、発動!」

 

もう時間が無いと一夏は零落白夜を発動させ最後の賭けに出る。

 

「四の型、【紅葉切り】!」

 

八葉一刀流四の型【紅葉切り】今まで散々練習を重ねてきた一撃を瞬時加速を併用し目視不可能な速度で放つ。だが、只でさえエネルギー消費の激しい零落白夜に瞬時加速の合わせ技となれば疲弊していた一夏と白式では打てて一発が限界の諸刃の剣。一夏にとって全身全霊とも言うべきその一刀であったが、一太刀入れることは出来てもやはりレグルスを破るには至らなかった。

 

「・・・・」

 

「気迫の乗った良い技だ、本当に殺すのが惜しくなってきたな。だが、これも仕事だ・・・・せめて私の放てる最大の一撃で終わらせよう」

 

自らが持てる最大の一撃を放ち零落白夜を維持できなくなった一夏に対し、レグルスは敬意を表し双剣を大剣に戻し上段の構えを取る。

 

「さらばだ、織斑一夏!!」

 

その一撃は大剣とは思えない速度で放たれ、一夏は直感で雪片弐型でその一撃を防ごうとするも限界に達した雪片弐型はあっさりと真っ二つに折られ、その先にいた一夏を袈裟斬りにする。

 

「がはっ・・・・」

 

「先程の一撃は絶対防御すら捨てた一撃だったか・・・・本当に殺すには惜しい男だったよ」

 

白式は零落白夜と瞬時加速で絶対防御を満足に発動させられるエネルギーを残していなかった。即ち一夏はその斬撃を直接受けてしまい傷口から大量の血を吹き出しながら一夏は京都の街へと落下していく。

 

「一夏っ!?」

 

そして、その光景を見てしまった箒はオータムに致命的な隙を晒してしまう。

 

「余所見してんじゃねぇよ!!」

 

「がっ!?」

 

その絶好の隙を突きオータムは両腕から糸状の物体を放ち箒の紅椿を拘束する。

 

「箒さん!?」

 

「箒!」

 

拘束された箒をセシリアと鈴が助けようとするが、オータムの指示で機械戦乙女達がその前に立ち塞がり邪魔をする。

 

「乗ってる機体が第4世代機だろうが、乗ってるのが小娘じゃ宝の持ち腐れってやつだな」

 

そう言って紅椿に近付いたオータムは何かの装置を取り出し紅椿にそれを装着する。

 

「だからそれを上手く使えるようにしてやるよ」

 

「がぁあああああ!!」

 

装置のスイッチが入ると、装置から電撃が迸り紅椿からISコアが露出する。そう、この装置は剥離剤(リムーバー)と呼ばれるISコアをISから強制的に抜き出す装置の改修型。以前の剥離剤はコアを抜き出すだけで一度使えばISに耐性が出来てしまうという欠陥品だったのだが、この新型剥離剤はコアを抜き出すことが目的ではない。オータムは抜き出した紅椿のコアを奪わず新型剥離剤のもう一つの機能を起動させる。

 

「その紅椿ってISはあの天災の特注品とあって何重にもプロテクトが掛かっててそう簡単にはウィルスを捩じ込めない・・・・だが、露出したコアに直接ウィルスを注入すればどうかねぇ?」

 

この新型剥離剤の真価はISコアに直接ウィルスプログラムを撃ち込むというもの。ウィルスを撃ち込まれたコアはその輝きを濁らせ黒く染まっていく。そして、剥離剤の効果が切れコアが紅椿へと戻ると美しかった真紅の装甲が徐々に赤黒く変色していく。

 

「き、貴様・・・・紅椿に、何を・・した?」

 

「ん?ちょっとしたプレゼントさ」

 

「プレゼントだと?」

 

「そうお前らもよく知ってる福音に使われたウィルスを弄って作った特製のな!」

 

「「「「!?」」」」

 

オータムの言葉に箒達の顔が険しいものに変わる。何故なら福音はかつて臨海学校の際に交戦した暴走ISで、事件後に雪兎に聞いた話によれば「目にしたもの全てを敵と認識させる」という凶悪極まりないウィルスが原因だったと言う。亡国機業はどのような経緯かは不明だが、そのウィルスプログラムを入手していたのだ。そして、今回そのウィルスを撃ち込まれたのは現行のISを一蹴する性能を持つ第4世代機である紅椿。はっきり言って嫌な予感しかしない。

 

「や、やめろ、紅椿・・・・私は、がぁあああああ!!」

 

完全に装甲が血のような赤黒い色へと変色すると紅椿は箒の意識を奪い、オータムの施した拘束を引きちぎる。

 

「う、嘘でしょ!?」

 

「一夏は生死不明、紅椿は暴走でこちらの戦力が二つ減り、あちらは変わらず、いや暴走した紅椿も敵に回すとなると状況は絶望的だな・・・・」

 

亡国側は依然オータムとレグルスに無数の機械戦乙女が健在。紅椿もウィルスプログラムで敵なったことから流石のラウラも今回ばかりは弱気になってしまっていた。

 

「しかし、やるしかありませんわ」

 

それでもセシリア、鈴、ラウラの眼はまだ戦意を失ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三形態となった雪華【雪月華】その最大の特徴は雪華とは別に【白月】にも別のパックを装備可能ということだ。つまり、二種のパックを同時運用可能というキチガイ装備だった。現在雪兎が装備しているのは【B:ブレイド】とアドヴァンスドシリーズの一つで高機動近接戦仕様パック【VF:バルニフィカス】の組み合わせの超近接戦仕様である。一方のアンタレスの【血染めの蠍(ブラッディ・スコーピオン)】も銃と巨大なチェーンソーを組み合わせたような武装や背面の蠍の尾を模したサブアームを使う近接戦仕様。その戦いは当然激しい近接戦となった。

 

「果てろ、【バルムンク】!」

 

「やっちゃえ、【テスタロッサ】!」

 

大剣とチェーンソーがぶつかり合い火花を散らす。何度目かわからないその激突の後にアンタレスが突然距離を取った。

 

「・・・・あらら。君のお友達、死んじゃったみたいだよ?」

 

それはどうやらレグルスからの通信だったようで、アンタレスは少し残念そうにそう告げた。おそらく彼女も一夏と直接戦ってみたかったようだ。しかし、雪兎の顔に動揺した様子はなく、むしろ笑いを堪えているようにすら見えた。

 

「意外だね、もっとこう怒り狂うかと思ったのに・・・・」

 

「く、ククク・・・・アハハハハハ!」

 

そのアンタレスの一言で我慢の限界に達したのか雪兎は大声で笑声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!」

 

同じ頃、束も雪兎同様に大声で笑声を上げていた。理由はスコールが束が気にしたのが紅椿の暴走だけだったので「心配なのは妹だけなのか?」と訊ねたからだ。

 

「「一夏(いっくん)が死んだ?あんたら(君達)それをちゃんと確かめたのか(かい)?」」

 

その問いに対して雪兎と束は言い方は少し異なるも全く同じ言葉を口にした。そして、兎達は全て戦場と通信を繋げ全てを明かす。

 

「そもそも、何でこの作戦で一夏の護衛が箒達だけだったと思ってるんだ?」

 

「そんなの君達がいっくんを狙い易くする為に決まってるじゃないか!」

 

「そんでもって、そんな狙われる一夏に俺達が何の手も施してないとでも?どんだけおめでたいんだ、お前ら」

 

「だ、だが、レグルスは確実に致命傷を与えたと!」

 

兎達の種明かしにスコールが反論するも、追い討ちをかけるかの如く束がとある真実を口にする。

 

「あ~、君達は知らなかったんだっけ?いっくんの白式に使われてるコアは白騎士に使われていたものなんだよ?つまり・・・・」

 

「白騎士のナノマシンによる自己治癒能力がある。そいつの効果を増幅する機能を持たせたあるものを一夏には持たせてたのさ」

 

これが発覚したのは福音事件の時、当然この情報も秘匿レベルの高い情報としてIS学園でも一握りの人間にしか伝えられていないのでスコール達が知らないのも無理は無い。

 

「だ、だが、お前達の仲間が織斑一夏の反応がロストしたと!」

 

これは真耶が口にしたもの。実際に今も一夏と白式の反応はロストしたままだ。

 

「そんなの君達をぬか喜びさせる為にその機能が起動したら一時的に反応がロストするようにしてたに決まってるじゃない」

 

つまり、ここまで起きた全ては兎達の手の平の上だった。そう彼らは言っていた。

 

「な、ならば、もう一度探し出して織斑一夏を殺し直せば!」

 

「それも対策済みだ。言ったろ?自己治癒能力を増幅させる機能を持たせたあるものを持たせたと」

 

「ま、まさか!?」

 

雪兎のその一言でそれに気が付いたのは亡国側ではたった今それを体感(・・・・・・・・・)していたアンタレスだけだった。

 

「そのまさかさ!誰が切り札(ジョーカー)が一枚だけだなんて言った?」

 

すると、一夏が落下したと思われる場所から白い光が迸った。




という訳で以前使い損ねた剥離剤登場。

そして全ては兎師弟の手の上でした・・・・この二人、愉悦してやがる。


次回予告

全てを兎師弟に出し抜かれ激昂する亡国機業の面々。そんな中、白き鳳を従え白き騎士が戦場へと舞い戻る!

次回

「舞い戻る白刃ともう一人の助っ人 兎、チェックメイトする」


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78話 舞い戻る白刃ともう一人の助っ人 兎、チェックメイトする

今回は一夏メイン。兎弟子が自重しなかったのと白式がやらかしたせいでとんでもISが爆誕!
それと忘れられてるシャルロット達も・・・・


再び時間は一夏がレグルスに斬られた直後まで遡る。

 

一夏side

 

雪片が砕け明らかに致命傷の傷を負って落下する中、俺は不思議と不安を抱いていなかった。普通ならこうなったことへの後悔や走馬灯を見るものなのだろうが、俺が思い出したのは今朝の幼馴染(雪兎)との会話だった。

 

『一夏、コイツをやる』

 

雪兎がそう言って俺に渡したのは剣を抱く鳳の意匠が施されたペンダントだった。

 

『これは?』

 

『御守りみたいなもんだ。一応、肌身離さず持っとけ』

 

『ふーん・・・・お前がそう言うなら着けとくか』

 

御守りだなんてあいつらしくないことを言いながら渡してきたペンダント。ならばきっと何らかの意味がある物だと思い、俺はそのペンダントを身に付けた。そして、落下しつつある俺の視界にそのペンダント(・・・・・・・)が映る。そこで俺は朧気ながら違和感を抱いた。

 

(あれ?ISを展開すると身に付けてたものは全て拡張領域に収納されるはずじゃ・・・・)

 

そう、ISの展開中にそのペンダントがあるはずがないのだ。それによく見ればペンダントは淡く白い光を発しており、白式もそれに呼応するかのように白い光を纏っていた。

 

(それにこの感覚・・・・前にも・・・・)

 

すると、突如俺の視界が切り替わる。そこは以前にも福音との戦闘で意識を失った時に訪れた謎の空間。

 

「ここは・・・・」

 

『来ましたね、マスター』

 

そこには以前にも見た白いワンピースの少女と白い装甲を持つ白騎士に酷似したISを纏う女性、そして、初見の麦わら帽子を被った少女がいた。

 

「君達は一体・・・・」

 

『わかりません?』

 

そう呟いたのは白いワンピースの少女だ。その少女の言う通り、俺にはなんとなくだがその少女が誰なのか分かる気がした。

 

「もしかして・・・・白式、なのか?」

 

『はい♪』

 

俺がそう答えると少女・白式は嬉しそうに微笑む。彼女が白式なのだとしたらその隣にいる白いISの女性の正体も雪兎や束さんから聞いた話から想像がつく。

 

「ってことは貴女は白騎士、なんですね?」

 

白騎士は静かに頷くことで俺の言葉を肯定する。そうなると疑問なのは初見の麦わら帽子の少女だ。この少女に関しては全く心当たりが無い。しかも少女は「私は?私は?」と期待した眼差しでこちらを見てくるので「知らない」とはとても口に出せない。

 

『・・・・マスター、大丈夫です。この娘はマスターが知らないのを知っていてやってますから』

 

『ブーブー!ばらしちゃつまらないじゃない、白式お姉ちゃん!』

 

「確信犯か!」

 

隣で見ていた白騎士もバイザー越しではあるが呆れているような気がする。それとこの少女はどこか親友に似ている気がした。

 

(ちょっと待て、今この娘は白式のこと「お姉ちゃん」と呼ばなかったか?)

 

白式の妹もしくは妹分、そしてこの空間は俺と白式が作り出した空間である以上は彼女もISなのだろう。だが、白式を「お姉ちゃん」と呼ぶのであれば彼女は千冬姉の使っていた【暮桜】ではないだろう。だが、俺は白式以外のISは持っていないはず。では彼女は一体・・・・

 

『とりあえず初めましてお兄ちゃん(マスター)♪私の名前は【白鳳】だよ』

 

「ハク、ホウ?」

 

『そっ、白い鳳って書いて白鳳。いい名前でしょ?』

 

鳳と聞いて俺は胸元にある雪兎から貰った白い鳳のペンダントを取り出す。

 

「もしかして君は・・・・」

 

『大当たり~♪』

 

この麦わら帽子の少女の正体は雪兎がくれたペンダント【白鳳】だった。

 

『私はね、雪兎お兄ちゃん(マイスター)からお兄ちゃんを助ける為に作られたんだよ』

 

「えっ?」

 

『正確には私がマイスター雪兎に頼んで作成して貰った強化外装・・・・正式名称は自律型追加補助外装【白鳳】です』

 

詳しく話を聞くと、俺が雪兎から八葉一刀流を習い始めた頃に白式が雪兎に頼んでいたパワーアップアイテムがどういう訳か白鳳になったんだとか。

 

『まだ色々と話したいことはありますけど、マスターには今しなければならないことが』

 

「そうだった!」

 

そう、俺はレグルスに斬られて落下中だったはず。

 

『傷は前回同様私達が治しておきました』

 

「それは助かる!あっ、でも雪片が・・・・」

 

しかし、俺の唯一の武装(今は雪羅があるので厳密には違うが)であった雪片を折られてしまったんだった。

 

『それも問題ありません!』

 

すると、白式が雪片弐型とは違う刀を俺に差し出す。

 

「これは・・・・」

 

『【煌月白牙】、雪片と違いマスターの為だけに作られた刀です』

 

「【煌月白牙】・・・・俺の刀」

 

『折れちゃった雪片も形は変わっちゃったけど、ほら!』

 

白鳳も太刀から脇差まで短くなった新しい雪片を俺に手渡す。

 

『他にも色々と強化されていますが、説明は後程』

 

「ああ、今度は負けない!」

 

俺がそう言うと、徐々に視界がぼやけていく。おそらく次に目覚めるのはさっきまでの戦場だろう。ぼやけつつある光景の中、白式達が微笑んでいたような気がしたところで俺の意識は現実へと浮上した。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い光が納まった時、そこには見慣れぬ白いISの姿があった。しかし、そのフォルムは白式に酷似している。いや、その表現は正しくない。そのISは白式が白鳳を取り込み発展強化、つまり三次移行(サード・シフト)した姿、白式第三形態【白鳳】だった。

 

「い、ちか?」

 

「おう。悪い、心配かけたな、鈴」

 

「一夏さん!ご無事でしたのね」

 

「セシリアも無事でよかった」

 

「私は心配などしていなかったぞ、一夏。我が嫁であるお前がそう簡単に死ぬなどとは思っていなかったからな!」

 

「ラウラ・・・・その割には目が潤んでるぞ」

 

鈴、セシリア、ラウラの三人のISは既にボロボロだ。無理も無い。短い時間とはいえ彼女達はたった三人でオータムにレグルス、無数の機械戦乙女、そして暴走した紅椿の相手をしていたのだ。むしろ誰一人欠けていない方が奇跡と言えよう。

 

「もう大丈夫だ。後は俺に任せろ」

 

「三次移行したとはいえ大した自信だな、織斑一夏」

 

そんな一夏の言動が癪に感じたのかオータムが不機嫌さを隠さず一夏を睨む。

 

「ふふ、惜しいとは思っていたが、まさかあの状態から復活してくるとはな・・・・ますます気に入ったぞ、織斑一夏!」

 

レグルスに至っては興奮冷めやらぬと言ったところだろうか?

 

「・・・・」

 

(箒、今助けてやるからな)

 

最後に無言で白式を見つめる紅椿に一夏は覚悟を決める。

 

「やっちまえ!機械戦乙女どもっ!」

 

先手はオータムの指示を受けた機械戦乙女達。それぞれ銃口を一夏に向け一斉に銃弾の雨を見舞うも全ての銃弾は白式の背面に装備されたクリアブルーのエナジーウイングに阻まれ無力化される。

 

「なっ!?」

 

「ありがとな、白鳳」

 

『どういたしまして♪さあ、お返しだよ』

 

そう白鳳が告げると、エナジーウイングの表面から無数のエネルギー弾が放たれ一瞬にして一夏を射った機械戦乙女達が全滅する。

 

「はぁあ!!」

 

そこへレグルスが大剣で斬りかかるが、一夏は手にした煌月白牙を振るいそれを弾く。

 

「いくぞ、白式」

 

『はい、マスター!』

 

そして、今度はお返しとばかりに一夏が煌月白牙を振るう。それをレグルスは大剣で防御しようとするが、それは悪手だった。何故なら一夏の煌月白牙はまるで熱したナイフでバターを切るかの如くその大剣を両断したからだ。

 

「何っ!?」

 

「これで終わりだ!」

 

そのまま一夏は返す太刀に零落白夜を乗せた斬撃をレグルスに浴びせシールドエネルギーを削り切りレグルスを無力化する。

 

「レグルス!?くそっ!こうなったら残りの機械戦乙女をーー」

 

「させないよ!」

 

レグルスの敗北に焦ったオータムが残りの機械戦乙女を出し一夏を攻撃させようとするが、それを阻む者がいた。

 

「シャルロット!」

 

そう、雪兎と分かれて救援に駆けつけたシャルロット達だ。

 

「皆は鈴達を守りながら無人機を!この人は僕が相手をするから」

 

「シャルロット、気を付けて」

 

簪達に鈴達の護衛を任せ、シャルロットは一人オータムの前に立ち塞がる。

 

「お前はあの時の・・・・会いたかったぜ!」

 

「僕はもう会いたくなかったけどね」

 

シャルロットとオータムが対峙する一方で簪、本音、アレシア、カロリナの四人は鈴達を守りながら機械戦乙女達を相手にする。いくら劣化IS程度の機械戦乙女といえど数が多く簪達が不利かと思われたその時。

 

「はぁっ!」

 

数機の機械戦乙女が背後から襲撃を受けた。その襲撃者の正体は意外にもアレシアのよく知る人物だった。

 

「えっ?お、お姉ちゃん!?」

 

「Yes!アイアムアお姉ちゃん!!」

 

その人物の名はカテリナ=ロッタ。アレシア=ロッタの姉でIS学園の三年生であるイタリアの代表候補生だった。

 

「な、何でお姉ちゃんが!?それにお姉ちゃんのそのISはーー」

 

アレシアが驚くのも無理は無い。元々カテリナは代表候補生だがテンペスタⅡの事故のせいで未だに専用機を持ってはいない。故に今回の作戦には参加していないはずだったのだ。それが青いカスタムが施されたリヴァイヴⅡで現れたのだ。その疑問に答えたのは雪兎だった。

 

『あー、カテリナ先輩にはフランスまでプロジェクト・フロンティアで使う予定のリヴァイヴⅡを受け取りに行って貰っててな。その帰りにタイミング良かったから援軍として呼んどいたんだ。あと、そのリヴァイヴⅡはその報酬としてカテリナ先輩用にカスタムしたやつな』

 

つまり、これも雪兎のせい、という訳らしい。

 

「やっぱ雪兎さんのせいか・・・・」

 

「そんなことよりも今はこの機械戦乙女とやらを片付けるのが先です」

 

三年生のカテリナが加わったことで戦力的不利を覆すことができ、徐々に機械戦乙女の数も減り始めた。

 

「あっちは大丈夫そうだな。となると・・・・」

 

『残るは彼女(紅椿)だけです』

 

そして一夏は暴走する紅椿と対峙する。

 

「ああ、紅椿は・・・・箒は俺が止めてみせる!」

 

こうして戦況は最終局面を迎えた。




白式超強化。こいつの真価はこんなもんじゃありません。
そしてアレシアの姉・カテリナ登場。この人、あんな性格ですが、ダリル並みには強いです。


次回予告

暴走する紅椿を止めるべく紅椿と対峙する一夏。ウィルスに侵された紅椿を元に戻すべく、一夏は白式の真の単一仕様能力を解き放つ。一方の雪兎はアンタレスを倒すべく本気を出すことに・・・・

次回

「夕凪燈夜とトリニティモード 兎、ダメ押しする」


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79話 夕凪燈夜とトリニティモード 兎、ダメ押しする

今章も後二、三話で終わる予定です。
雪兎、一夏に続いてシャルロットも本気モード解禁。ヒントは雪兎が確保した無人機のコアは何個だったか。


「こっちは終わったサ」

 

一夏が暴走する紅椿と戦闘開始した頃、双子の相手をしていたアリーシャは既に双子を降していた。

 

「そうですか。ならこっちもそろそろ終わらせますわ」

 

雪兎も一夏の三次移行を確認しシャルロット達が合流したのを知り、本気(・・)を出すことにした。

 

「【B:ブレイド】から【YK:エルシニアクロイツ】にチェンジ。加えて【LF:ルシフェリオン】展開。コード【トリニティ】」

 

そう雪兎が告げると雪華本体が纏っていたパックが【B:ブレイド】から【YK:エルシニアクロイツ】に変わり、白月の【VF:バルニフィカス】が半分【LF:ルシフェリオン】に換装される。

 

「アドヴァンスドシリーズが三つ・・・・」

 

白月がアドヴァンスドを纏った時に予感はしていたアドヴァンスドの複数装備。それが予想を上回る三重装備としてアンタレスの前に顕現する。

 

「まだだ。【極限化】発動」

 

そこにダメ押しの【極限化】。白月の翼が紫、水色、紅の三色のエナジーウイングへと変貌し、紅蓮の砲槍・ルシフェリオンドライバーを砲撃モードで展開させた。どう見てもオーバーキルを予感させるこの状況。そう、雪兎は完全にブチギレていたのだ。

 

「悪くおもうな・・・・怨むならあのガラクタ(新型剥離剤)を使ったオータム辺りを怨め」

 

その原因はオータムの使った新型剥離剤。紅椿のコアをウィルスで汚染し暴走させたあの装置だ。そのウィルスは以前に福音を暴走させたあのウィルスをベースに改造されたもの。実は福音はあの事件以降はウィルスを取り除いたにも関わらず再度暴走の危険があるとして凍結封印されている。今回の件で紅椿も同じ処置を望む声が出るかもしれない。そして何より全てのISコアは束が産み出した娘のようなもの。それを汚されたことに弟子たる雪兎が怒らない訳が無い。加えて紅椿は幼馴染たる箒のIS。それが暴走させられ想い人である一夏と戦わされると思うだけで雪兎は怒りを抑えるきれないのだ。

 

「ひっ!?」

 

その漏れ出す濃密な殺気にアンタレスは恐怖する。

 

「コード【TLB】・・・・集え星光」

 

その言葉と共に雪兎の目の前に四基のビットが集まり紫のエネルギーを収束し始める。それを見てアンタレスは「あれは食らってはいけない」と察して上空(・・)へと逃げ出した。

 

「光を奪い全てを覆う闇となりて我が敵を討ち滅ぼせ・・・・」

 

だが、それは雪兎にとって都合がよかった。何故なら・・・・これで街を焼かなくてすむ(・・・・・・・・・)からだ。

 

「夜明け前が最も暗いと知れ、リミットリリース、フルドライヴ・・・・」

 

収束したエネルギー塊にルシフェリオンドライバーを叩きつけ、その全てをアンタレスに向けて解き放つ。

 

「トワイライト・ブレイカー!!」

 

解き放たれたエネルギーはすぐさまアンタレスに迫り根こそぎシールドエネルギーを奪い尽くす。そしてアンタレスは悲鳴をあげる間も無く意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットとオータムは学園祭で一度対峙しており、その時はオータムが第2世代機であるアラクネを使っていたことと、シャルロットのISがリヴァイヴⅡSにパワーアップしていたこともあってシャルロットの圧勝で幕を下ろした。

 

「前と同じようにいくと思うなよ?」

 

「悪いけど、今回も僕は不機嫌なんだ・・・・速攻で決める!」

 

今回の作戦が亡国機業を誘き出すものであったのは千も承知だったが、班行動を始める前に襲撃があり雪兎と京都を回れなかったこと。一夏達の救援の為に雪兎と一緒に戦えなかったことなど不満が溜まっていたところでボコってもいい相手(オータム)との戦闘である。シャルロットも雪兎の影響か自重という言葉を捨て始めており、初っぱなから全開だった。

 

「来て、【コスモス】!」

 

そして、「二度あることは三度ある」シャルロットが呼び出した【コスモス】とは白鳳や白月と同じ自律型追加補助外装。

 

「・・・・はっ?」

 

これには流石のオータムも唖然とする。無理も無い。ここまで亡国機業を翻弄してきた兎印の秘密兵器が三度姿を現したのだ。

 

「武装合体!」

 

そうこうしている間にシャルロットはコスモスをリヴァイヴⅡSと合体させ新たな力を顕現させる。

 

「これが僕の切り札(ジョーカー)、ラファール・リヴァイヴⅡRC(リインカーネーション)さ!」

 

リヴァイヴⅡRCはシャルロット用に開発されたコスモスとリヴァイヴⅡSが武装合体したデュアルコア搭載IS。雪兎の雪月華と同じくリヴァイヴⅡとコスモスの双方にパックを装備可能。白月との違いはエナジーウイングを持たず、コスモス側にアドヴァンスドを装備出来ない代わりにリヴァイヴⅡとコスモスの双方に同じパックを展開する重複武装(デュアルシフト)を可能としている(白月はアドヴァンスドを複数種展開する為に雪華とパックスロットを共有しているため重複武装は出来ない)。

 

重複武装(デュアルシフト)【G:ガンナー】!」

 

栄えある最初の重複武装に選ばれたのは今まで多くのトラウマを製造してきたパック【G:ガンナー】だった。当然、重複武装により火力は通常の二倍・・・・えげつない。

 

「ちょっ!?」

 

オータムも直ぐにその脅威を理解し慌て出すがもう遅い。

 

「お釣りは要らないよ、全弾受け取ってね?リミットリリース、全砲門開放!全弾一斉発射(フルオープンブラスト)!!」

 

容赦無い事にシャルロットは重複武装した【G:ガンナー】の全武装を一斉に発射するというかつて雪兎がゴーレムⅠにやったことを上回る攻撃を敢行した。

 

「やっ、それ死ねるから!ISあってもそれは絶対死ねるって!!ぎゃああああああ!!」

 

戦う前までの威勢は何処へやら、オータムはシャルロットの放った砲撃の嵐の中へと消えていった。

 

「「「「シャルロットさん、こえ~・・・・」」」」

 

それを見ていた鈴達は揃って戦慄し、絶対にシャルロットを怒らせないようにしようと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その上空では一夏の白式と暴走している紅椿がぶつかりあっていた。

 

「くっ!やっぱり絢爛舞踏は敵に回すと厄介過ぎる!」

 

一夏の使う白鳳は白月やコスモスのパック換装システムをオミットする代わりに零落白夜や瞬時加速に多くのエネルギーを回せるように特化させた仕様の為、以前まで問題だった「エネルギー不足による短期決戦型」という制限を無くし、零落白夜も「展開装甲によって発動中常時消耗」から「斬撃が触れている時のみ零落白夜を発動する」仕組みへと変化しており、エナジーウイングにより瞬時加速を使わなくても高速機動を可能にした為、かなり戦闘可能時間が延びたのだが、紅椿はエネルギーの無限供給が可能な絢爛舞踏を持つ為に長期戦は一夏の方が不利と言っていい。更に暴走の影響か紅椿の展開装甲が全て展開状態になっており、束の最高傑作というだけあってその戦闘力は極めて高い。

 

『ええ、あの娘には零落白夜でシールドエネルギーを削り切って無力化という手は通用しないわ』

 

「じゃあ、どうすればいい?手はあるんだろ、白式?」

 

『あるわ。私達の本来の(・・・)単一仕様能力を使えば』

 

「本来の単一仕様能力?零落白夜は白式の単一仕様能力じゃないのか?」

 

零落白夜は白式が一次移行した時に雪片弐型に備わっていた単一仕様能力。千冬の暮桜が有していた単一仕様能力と全く同じものということもあって疑問視されることもあったこの能力は白式曰く白式本来の単一仕様能力ではないらしい。

 

『あれは暮桜から受け継いだ能力で借り物みたいなものよ。だから私達には零落白夜とは別にもう一つ単一仕様能力があるの』

 

「色々と聞きたい事は増えたが、それは後だ。教えてくれ、白式。俺達の本来の単一仕様能力ってやつを」

 

『【夕凪燈夜】全てのISのコアを初期化出来る能力よ』

 

「うわぁ・・・・使いどころ次第じゃチートスキルだな、それ」

 

雪兎達から多くを学んだ一夏はすぐさまその単一仕様能力の凶悪さを察した。ISコアを初期化出来るということはそのコアが今まで搭乗者と学んできた全てを無に還すということ。下手をすれば戦闘中に突然ISを一次移行前まで戻すことも可能なのだ。よって、普段は使えないだろうが、福音の時や今回のような事態であればかなり有用な能力と言える。

 

「でも紅椿を初期化するってことは今までの箒の頑張りも全部消してしまうってことだよな?」

 

『・・・・それでも、このまま暴走させ続けさせたり、凍結処理されるよりはずっとマシだわ』

 

白式はコアネットワークにより福音が凍結封印され搭乗者だったナターシャと離れ離れにされていることを知っている。だから白式はそんなことになるくらいならばいっそのこと初期化して改めて絆を紡ぎ直せば良いと言っているのだ。

 

「・・・・わかった。今はとりあえず箒と紅椿を止める為に使うよ、【夕凪燈夜】を」

 

そんな白式の想いを知り一夏も改めて覚悟を決める。その後、紅椿の猛攻を凌ぎながら白式に夕月燈夜の使い方を聞き、一度紅椿から距離を取る。

 

「行くぞ、次で全てを終わらせる!」

 

そう告げると一夏は煌月白牙と雪片参型を腰の鞘に戻し、小型化し左腕の籠手になっていた【雪羅弐型】をクローモードで展開し、瞬時加速で一気に距離を詰めて紅椿の胸部に淡く光る掌を叩き込む。

 

「【夕凪燈夜】発動!!」

 

すると、雪羅から白い光が迸り、その光が紅椿を包み込んでいく。

 

「いっけぇえええええ!!」

 

一夏の叫びに呼応するかのように光は拡大していく。そんな最中、一夏は一瞬ではあったが髪を下ろし巫女装束姿の箒によく似た少女の姿を見た。その少女は悲しそうに、だが、嬉しいとも受け取れる笑みを一夏に見せた。

 

(今のはもしかして、紅椿?)

 

なんとなくだが一夏はその少女が紅椿だと思った。

 

『・・・・終わったわ、マスター。すぐに紅椿の展開が解除されると思うから箒を受け止めてあげて』

 

「ああ、わかった」

 

光が消えると元の真紅の装甲に戻った紅椿の姿があり、その展開が解け空に放り出された箒を一夏は受け止めた。

 

「・・・・おかえり、箒」

 

これと同時にスコールらの亡国機業の構成員は一部を除いて逃走。京都での亡国機業掃討作戦は終了となった。




とりあえず戦闘は終了です。

雪兎、一夏、シャルロットの使う白月、白鳳、コスモスは本文中にも書きましたが差別化してあります。

白月→アドヴァンスドの複数種運用と???の運用
白鳳→零落白夜と瞬時加速の効率化
コスモス→重複武装の運用
こんな感じです。白月の???についてはまた何れ。


次回予告

京都における亡国機業掃討作戦は一応の成果を挙げるも多くの課題を残した戦いでもあった。そして、戦いを終えた雪兎達に束の間の休息が訪れる。

次回

「少年少女の休息 兎、シャルロットに連れ回される」


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80話 少年少女の休息 兎、シャルロットに連れ回される

作戦の後日談と糖分補給回です。皆の衆、珈琲(無糖)と壁の準備はよろしいか?

アーキタイプ・ブレイカーは一応事前登録しました。
何か面白いキャラ増えるっぽいし・・・・


京都における亡国機業の日本拠点を叩く今回の作戦はスコールら数名の幹部は取り逃がしたものの、アンタレス、オータム等の幹部数名を捕らえることに成功。また、亡国機業を支援していたと思われる人物(予想通りIS委員会の重鎮の一人)の逮捕に繋がり大きな成果を挙げたと言える。一方でセシリアのブルー・ティアーズ、鈴の甲龍、ラウラのシュヴァルティア・レーゲンは深刻なダメージを受けており、搭乗者であった三人も全治二週間の怪我を負ってしまった。ウィルスによって暴走させられた紅椿も夕凪燈夜による初期化後は束によって精密検査を受けることに。箒も剥離剤の放った電撃や暴走時の無茶な動きのせいでしばらくは入院することになっている。その事後処理等でまだ数日は京都を離れれないらしい。

 

「改めて見ると今回の被害は甚大だな・・・・」

 

「でも、雪兎の知る最悪な状況は回避出来たね」

 

そう、原作ではこの京都での一戦で束とアリーシャが亡国機業側につくのだが、雪兎の事前の行動により回避された。代わりに【闇夜の星座】という未知の敵や機械戦乙女などが現れ予想以上の被害を被ってしまった。

 

「ああ・・・・でも、もう俺の持つ原作知識も役に立たないだろう。って言っても元々俺が知ってるのはこの京都の戦いまでなんだがな」

 

雪兎が前世で読んでいたのは原作十巻まで。それ以降の話を雪兎は知らない。

 

「でも、これで原作知識とかいう未来予知的な隠し事もなくなったから少しは気が楽になったかな?」

 

「雪兎・・・・」

 

「いつになるかはわからないけどあいつらにも話さないとな。まあ、あいつらのことだからあっさり受け入れてくれそうではあるが」

 

「そうだね。特に一夏とか「それがどうした?」とか言われそうだよね」

 

確かにと思いつつ雪兎はホテルのベランダから星空を見上げる。

 

(聖剣(エクスカリバー)か・・・・)

 

十巻の最後にスコールと束が呟いていた事から独自に雪兎が調査したところ、聖剣(エクスカリバー)とは米国と英国が共同開発した対IS用攻撃衛星ということになっているとあるIS(・・)だ。ISであるならばとコアネットワークを経由してハッキングしてみたところ、搭乗者というかコアと一体化している少女の名はエクシア・カリバーンというらしい。

 

(どう考えても厄介事の種にしか見えないな)

 

対IS用というのもそうだが、共同開発といいつつも主導は米国らしく、プロジェクトの障害になりそうな気しかしない。束にも訊ねてみたところ同意見らしく。束曰く、「物凄く不愉快なモノ、今すぐにでも壊しに行きたいレベル」とのことなので次は聖剣を巡る争乱になるだろう。本当にこの世界の米国は何を考えているのやら・・・・

 

「雪兎、また考え事?」

 

「ちょっとな」

 

「もう、僕はまだあの時の事許してないんだからね!」

 

あの時のこととはアンタレスと対峙した時にシャルロット達を先に行かせたことだ。勝つのは信じていたが、今回は相手が相手だったためシャルロットは心配でならなかったようだ。

 

「悪い、シャルが足手纏いだなんては思ってねぇけど、他のメンバーだけで行かせるのは不安だったからな。その点シャルなら安心して任せれるしな」

 

「もう、調子いいんだから・・・・」

 

そう言って雪兎はシャルロットの頭を撫でる。撫でられるシャルロットは誤魔化されているようでむすっとするが撫でられるの自体は嫌じゃないのかされるがままだ。

 

「そうだ!一日付き合ってもらうって約束、明日使ってもいい?」

 

「いいぜ、ってか俺に拒否権無いだろ、それ?」

 

「うん♪」

 

「・・・・知ってた」

 

(よし!雪兎と二人っきりで京都デートだ)

 

こうしてシャルロットは班行動のリベンジをデートという形で実現することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で翌日、二人は京都の街に繰り出した。亡国機業も街への被害は抑えたかったようで襲撃があったのにも関わらず被害は軽微だったことが幸いし、数日経った今ではすっかり元の賑わいを取り戻している。

 

「で、シャルさんや。今日のプランは決まってるのか?」

 

「一応、行ってみたいところを書き出してはみたんだけど・・・・」

 

そう言ってシャルが取り出したメモを見ると素人目にも徒歩で回るには時間が明らかに足りない。

 

「コースはこれで・・・・ここと、ここは時間的に無理があるから除外・・・・シャル、最低限外したくない場所は?」

 

「ここと、ここと・・・・それとここかな?」

 

「ならこの二つも除外して・・・・」

 

とりあえず時間的に回れそうな場所を厳選し、実現可能なプランを作成する二人。そんな二人の前を日本の観光地ならではの交通手段が横切る。

 

「人力車か・・・・」

 

「本当に人が曳いてるんだね」

 

人力車は明治から昭和初期にかけて使われた移動手段で、観光に用いられ始めたのは1970年頃に飛騨高山が最初とされる。後に鎌倉、浅草、京都等の観光地での遊覧等で使われるようになったと言われている。一応は軽車両に該当するため、自転車以外の通行が禁止されている自転車用道路や自転車が走行可能な歩道は通行できないそうだ。

 

「シャル」

 

「雪兎」

 

「「乗ってみようか」」

 

せっかくの機会なのと、人力車が観光地での遊覧が目的なので丁度良いということで二人は人力車を利用することに・・・・しかし、人力車に乗りにいった二人は意外な人物と遭遇することになる。

 

「ん?」

 

「あれ?」

 

最寄りの人力車乗り場に着くと、見慣れた赤いロン毛が二人の目についた。

 

「ん?おお!雪兎にシャルロットじゃねぇか」

 

「な、何で弾がここに!?」

 

(あっ、そういやこの時期は虚さんへのプレゼント資金の為に人力車のバイトしてたっけ・・・・)

 

その人物とは雪兎と一夏の友人である五反田弾だった。弾が京都にいたことにシャルロットは驚くが、雪兎は原作を思い出し一人納得している。聞けばやはりプレゼント資金を稼ぐために短期バイトで来ていたらしい。更に先日の襲撃事件にも巻き込まれていた。

 

「いきなりISでドンパチだもんなぁ~、我ながらよく無事だったぜ」

 

なんでも機械戦乙女に出くわしたものの、楯無達に助けられたらしい。

 

「マジか・・・・でも、弾が無事で良かったぜ」

 

「うん、僕も友達に何もなくて安心したよ」

 

一安心したところで本題だ。

 

「せっかくだし、弾に頼む?」

 

「そうだな」

 

「デートかよ・・・・ああ、羨ましいぜ」

 

「今日一日貸し切りで特別料金で払おう」

 

「任せろ、親友!」

 

目の前でイチャイチャされると憂鬱そうな弾だったが、雪兎の一言で態度が一変し爽やかな笑みを浮かべて人力車の準備を整える。

 

「雪兎、弾の扱い方を心得てるね・・・・」

 

「まぁな、弾と数馬は一夏の次に付き合いの長い友人だしな」

 

その後は弾の計らいでデートにオススメのコースを回ってもらうことになり・・・・

 

「どうかな?この着物、似合ってる?・・・・雪兎?」

 

「す、すまん、ちょっと見惚れてた」

 

「も、もう、雪兎ったら・・・・」

 

(この着物、買って帰ろうかな?)

 

着物の試着をしてみたり・・・・

 

「このお団子、美味しいね」

 

「シャル、タレが口元についてるぞ」

 

「えっ?どこどこ?」

 

「じっとしてろ、拭いてやるから」

 

「う、うん・・・・」

 

団子屋でお団子を食べたり・・・・

 

「わぁ♪綺麗な紅葉・・・・」

 

「弾、写真頼めるか?」

 

「あいよ・・・・はい、チーズ!」

 

パシャッ!

 

「綺麗に撮れてるね・・・・でも、何で『はい、チーズ』何だろう?」

 

「元はcheeseって発音した時に笑みを浮かべてるように見えるってのが日本に伝わって変化したものらしい。元々は撮られる側がcheeseと言うんだが、日本語の発音だとチーズでズと尖ってしまうから撮られる側は言わなくなったんだとか」

 

「・・・・相変わらず雑学にも詳しいんだな、雪兎」

 

紅葉をバックに記念撮影したり・・・・

 

「これ可愛いね」

 

「記念に買ってくか?」

 

「うん!あっ、皆にもお土産買っていこうよ」

 

「そうだな」

 

皆へのお土産を買ったりしているうちにあっという間に一日は過ぎていった。

 

「最後はここだな。この辺りの夜景が一望出来る穴場だ。夜景も綺麗なんだが、夕焼けもこの通りよ」

 

最後に案内されたのは見晴らしの良い高台。弾曰く地元民が知る穴場なんだとか。

 

「うわぁ!綺麗な夕陽だね」

 

「ああ、京都の夜景って聞くと京都タワーを思い浮かべるだろうし、確かに穴場だな・・・・」

 

そこから一望出来る夕陽に照らされる京都の街はとても綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、弾にホテルの近くの乗り場まで送ってもらった二人は弾に礼を言って別れた。

 

「今日は楽しかったね、雪兎」

 

「そうだな、改めて弾に感謝しねぇとな」

 

「うん」

 

大満足でその日を終えた二人だったが、後日この話をして箒達に大層羨ましがられた。




今章はこれにて閉幕。
とりあえず京都の話はこれでおしまいです。

次章からは一話導入部を挟んでコラボシナリオに入ります。
コラボするのは知名度が怪しいですが『GetRide アムドライバー』になります。

次回予告

京都での戦いから帰還した雪兎達。学園に帰って早々プロジェクトにて聖剣対策として兎師弟が作っていたものが完成し、その御披露目会が開かれたのだが・・・・


次回

「夢への一歩と御披露目会 兎、師弟で移動拠点を作る」


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十二章「兎と異世界とアムドライバー」
81話 夢への一歩と御披露目会 兎、師弟で移動拠点を作る


新章はコラボによる原作十巻と十一巻の間に起こった幕間の物語となります。
今回コラボするのは『GetRideアムドライバー』そこそこ古い作品なので分かる人がどれだけいるか不安なところです。

当然、新ISやIS以外のメカ、オリジナルのバイザー等も出す予定です。

それではISー兎協奏曲ー第十二幕開演です。


京都での戦いの傷も癒え、日常が戻ってきたと感じる十一月末。その事件は束と雪兎のとあるものの完成に端を発する。

 

「出来たね、我が弟子よ」

 

「ええ、これで聖剣も怖くありませんね、師匠」

 

そのとあるものとは、束が移動ラボとして使用していた【吾が輩は猫である名前はまだない】を原型を留めない改修を行ったものだ。

 

「陸海空は勿論、宇宙空間だってへっちゃら!」

 

「収容可能人数、整備・開発設備、その他衣食住も抜かり無し!」

 

「他にも様々な機能を満載した我らが最高傑作!」

 

「「移動拠点型(・・・・・・)IS(・・)その名も【宇宙飛ぶ兎(フライング・ラビット)】!!」」

 

このフライング・ラビットは兎師弟がこれまで開発してきた技術の粋をこれでもか!と盛り込んだプロジェクト・フロンティアの移動拠点にして旗艦とも言えるもの。ちなみにISにしたのは「聖剣とかいう攻撃衛星ISがあるなら宇宙船とかもありじゃね?」と雪兎が言い出したのが発端だ。フライング・ラビットには他の登録したISとリンクさせてそれぞれの単一仕様能力を船に付与出来る機能があり、絢爛舞踏を使える紅椿をリンクさせれば無限に活動可能なのだ。※紅椿は束がバックアップを取っていたのですぐにデータは復元出来、絢爛舞踏も箒がコツを掴んでいた為に再度発現させることに成功している。

 

「そういえばコイツの御披露目するんでしたよね?」

 

「うん、スポンサーとかへのアピールも兼ねてるから大々的にやる予定だよ」

 

そう、このフライング・ラビットの開発には宇宙開発が実際に可能であることを証明する為のアピールとして作られた側面もあり、御披露目会が予定されている。だがこの時、雪兎はおろか束すらも御披露目会後の処女航海であのような事件が発生するとは思ってもいなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、フライング・ラビットの御披露目会当日。

 

「まさかこんなイベントに俺達まで招待されるとはな・・・・」

 

「しかも後で乗せてくれるってよ」

 

「何か場違いな気が・・・・」

 

学園祭に引き続き弾、蘭、数馬の三人は雪兎の友人枠でその御披露目会に招待されていた。弾は虚に会えるかもと期待もしている。

 

「でも、あんなスゲーの作ってるのがダチってのは誇らしいよな」

 

「昔から何やかんやと作ってたもんな、アイツ」

 

「ですね」

 

そして、御披露目会は大盛況で幕を閉じ、試験的な長距離飛行テストにはいつもの特訓メンバー(雪兎、シャルロット、一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、聖、本音、晶、エリカ、アレシア、カロリナ、マドカの十四名)に加えて生徒会から楯無と虚、船のオペレーターとしてクロエ、ゲストとして弾達三名、開発者の束、引率として千冬と真耶に雪菜の三名、それにミュウの総勢二十四名+一匹が乗り込んでいた。

 

「結構大所帯だな・・・・」

 

「まあ、何かあってもこの人数なら一ヶ月は問題無い物質は積んであるがな」

 

「あれ?でもそんな量積んであるようには・・・・」

 

「storageの応用で保管してる。だからスペースも取り出すスペースだけで十分なのさ。あと賞味期限とかもきにする必要は無い」

 

「IS関連も数十機分新造出来る分しまってあるから問題無いよ」

 

storage万能過ぎる・・・・

 

「とりあえず日本をぐるっと一周ーー」

 

そんな最中、事件は起こった。

 

「束様!進行方向に異常な磁場を確認!」

 

「これは・・・・磁場だけでなく、重力場まで!?船が吸い寄せられてます!」

 

「振り切れないのか!?」

 

「ダメです!重力場が強過ぎて振り切れません!」

 

突如発生した謎の異常な力場にフライング・ラビットが捕らわれ吸い込まれていく。

 

「くっ・・・・総員、対衝撃用意!」

 

「「「「うわぁああああ!!」」」」

 

力場の中央は空間が歪み穴のようになっており、抵抗虚しくフライング・ラビットはその中へと呑み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・・一体何が起きたっていうんだよ」

 

酷い揺れが船を襲い、気が付けばフライング・ラビットは何処かへ着陸しているようだ。

 

「とりあえずは外の様子を確認します」

 

クロエが外部の様子をモニターに映すと一同は揃って絶句した。そこに映っていたのは見慣れぬ光景、荒野とその先に見える寂れた廃墟と化した街の姿であった。

 

「・・・・ここは一体何処なんだ?」

 

判ったのは、彼らは何かとんでもない事態に陥ったということだけであった。




短いですが、今回は導入部なのでこんなところで・・・・

動画とかでシナリオ確認しながらになるので更新が少し遅くなるかもしれませんがご容赦下さい。


次回予告

突如発生した謎の重力場によって何処かも判らない場所に跳ばされた雪兎達。とりあえず廃墟らしき街を散策する雪兎達を謎のロボットとパワードスーツを纏った集団が襲いかかる。そして、続いてそこへ現れたのは・・・・

次回

「ヒーロー達との邂逅 兎、異世界に行く」


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82話 ヒーロー達との邂逅 兎、異世界に行く

今回は彼らとの邂逅のお話。
また登場人物一気に増えます。特に雪兎と()の出会いはとんでもないことに・・・・


広域スキャニングの結果、現在地はデータ上には存在しない場所、即ち未知の場所だと知り困惑する一同。そんな中、一人スキャニングデータを睨んでいる人物がいた。雪兎である。

 

(これは、まさか・・・・だとしたら俺達は)

 

とあるモニターに映された廃墟の映像、そこに映り込んだある存在が雪兎にある仮説を思わせる。

 

(バグシーン(・・・・・)、コイツらが存在するってことはこの世界(・・・・)は・・・・)

 

映り込んでいたのはピンク色の烏賊を彷彿とさせるトパスと呼ばれる機動兵器(バグシーン)。その存在は雪兎の表情を曇らせる。

 

「雪兎?」

 

そんな雪兎の異変に真っ先に気付いたのはやはりシャルロットだった。

 

「シャル、俺達はどうやらかなり突拍子も無い事態に陥ったらしい」

 

「それはどういうことだ?」

 

「織斑先生、これから話すのは普通なら信じられないことです。ですが、話だけでも聞いて下さい」

 

そう言うと、雪兎はクロエに頼んで先程のトパスの映像を拡大表示させる。

 

「これは・・・・」

 

「もしかして、バグシーン?ってことは・・・・」

 

意外にも簪もトパスに見覚えがあったらしく、雪兎の言いたいことを理解したようだ。

 

「ああ、簪の思った通りだと思う。俺達は今、異世界にいる」

 

「い、異世界!?」

 

「あれはトパスというバグシーン。バグシーンとはこの世界で人類を脅かしているとされていた機動兵器の一種だ」

 

当初、バグシーンは突如現れた侵略者だと思われていた。しかし、バグシーンは紛争に満ちた荒れた世界を一つにまとめる手段として意図的に作り出された偽りの侵略者だった。

 

「バグシーンは通常兵器ではダメージを与えられず、それに対抗する為に作られたアムテクノロジーと呼ばれる技術で作られたアムドライバーだけがバグシーンと戦うことが出来た」

 

「なるほど、マッチポンプという訳か」

 

「そうです。その後、その事を公表し政府と対峙したジャスティ・アーミー(以後JA)と連邦政府、それとアムドライバー本来の在り方『市民を守るヒーロー』としての姿勢を貫こうとしたピュアアムドライバーと呼ばれた第三勢力の戦いになったんだ」

 

ピュアアムドライバー。この物語の主人公・ジェナス=ディラ達の少数勢力。だが、その影響力は計り知れないものであった。

 

「ここが異世界だと言うのはとりあえず納得したけどさ。何でそんなに詳しいんだ?」

 

「だってこれ、昔やってたアニメの世界だもん」

 

「はっ?」

 

そう、アムドライバーのアニメはISの世界でも放映されていたのだ。そして、ヒーロー大好きな簪がそれを知らない訳がなかった。

 

「問題はどの時期か、よね」

 

「おそらくだが、今はそのJAが活動し始めた頃だと思う」

 

「根拠は?」

 

「トパスがノーマルタイプかつ他のタイプのバグシーンが見当たらない。廃墟を調べればもう少し詳しい時期が分かると思うんだが・・・・」

 

という訳で一同はまず廃墟を調べることに・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「壊れかけの端末をレストアしてそこからこの辺りの地形データを回収出来た」

 

「流石は雪兎、慣れたものだね」

 

「他にもデータを回収出来たから大体だが時期も特定出来そうだ」

 

回収したのはニュースなどの報道系のデータだ。それに寄ればつい先日ジェナス達がアムエネルギーの輸送列車を守った事件が起こった。ピュアアムドライバーが登場した第二十話から二十二話の辺りだと判った。しかもこの辺りはジェナス達の次の目的地である『ミュネーゼ・タウン』と今彼らがいる『ナムールリバー』の途中にあるらしい。

 

「帰投するか・・・・ん?」

 

そこで雪兎が近付いてくる存在に気付く。

 

「あれはトパスⅡα!?」

 

それは十九話辺りから登場したバグシーンでαとβの二種同時に運用している。それと遭遇したのだ。

 

「アレがいるってことは近くにJAの連中も・・・・」

 

見つかる訳にはいかないと廃墟に隠れる雪兎とシャルロット。すると、アムジャケットを身に纏ったJAが姿を現す。

 

「・・・・例の反応があったのはこの辺りなんだな?」

 

「はい、近くにピュアアムドライバーが来ているという情報もあります。何かあるのは間違い無いかと」

 

どうやらフライング・ラビットが転移した時のエネルギーを感知し調査に来たJAが雪兎のレストアした端末から情報を抜き取ったのに気付かれたらしい。

 

(ちっ、俺としたことがへましたか・・・・)

 

「どうするの?雪兎」

 

「とりあえず皆と合流しないと・・・・」

 

その時、二人の傍にいたJAが何かを発見する。

 

「この端末はレストアされた跡がある!近くにいるはずだ!捜せ!」

 

見つけたのは先程雪兎がレストアした端末。それを見つけたJAはトパスⅡ達に指示を出す。

 

「見つかるのは時間の問題か・・・・なら一か八かだ!来い、雪華!」

 

「いくよ、リヴァイヴⅡ!」

 

逃げ場は無いと察した雪兎とシャルロットはそれぞれISを展開し打って出る事に。

 

「何っ!?」

 

「はっ!」

 

幸いな事にISの装備はバグシーンに通用する様で、【B:ブレイド】を展開した雪兎はバルムンクでトパスⅡαを両断する。

 

「シャル!ISの武器ならコイツらにも通用するぞ!」

 

「了解!」

 

一方のシャルロットは【G:ガンナー】を展開し、一斉掃射でトパスⅡ達を撃ち抜く。

 

「な、何だその装備は!?」

 

初めてISを目にし困惑するJA達。

 

「やられてばかりいるものか!やれ、トパスⅡ!」

 

だが、すぐに立ち直るとトパスⅡをけしかけてくる。

 

「くっ、数が多い・・・・」

 

攻撃は通用するも流石に数が多く劣勢に陥る雪兎とシャルロット。そんな時だった。

 

「やっちゃるぜ!」

 

「アロンジー!」

 

「えっ?」

 

そこに現れたのは青と赤の装甲を持つアムジャケットを着用したアムドライバー。

 

「まさか・・・・彼らは!?」

 

「ちっ、ピュアアムドライバーか!」

 

そう、そこに現れたのはピュアアムドライバー・ジェナス=ディラとラグナ=ラウレリアの二名だった。

 

「どこの誰かは知らないが助太刀させてもらうぜ!」

 

「ジェナス=ディラ・・・・マジかよ」

 

「俺様もいるぜ!」

 

「雪兎、この二人が?」

 

「ああ、ピュアアムドライバーだ」

 

ジェナス達と邂逅した雪兎とシャルロットはそのまま彼らと共闘しJAを追い払うことに成功した。

 

「助かった。しかし、まさかピュアアムドライバーに助けられるとはな」

 

「へっへ~、俺達も有名になったもんだぜ!」

 

礼を言う雪兎にジェナスは戦闘中気になっても聞けなかったことを訊ねる。

 

「それはそうと、君らは一体何者なんだ?それにそのアーマーはアムジャケットとは違うみたいだが・・・・」

 

「詳しく話すと長くなる。だから俺達のところに来ないか?お仲間も連れて来てもらって構わない。ついでに助けられた礼に飯も出すよ」

 

「マジで!?」

 

「うん、雪兎のご飯は美味しいから期待していいよ」

 

「本当にいいのか?」

 

「命に比べたら飯の一つや二つ安いもんだ」

 

その後、一夏達とも合流し、ジェナス達ピュアアムドライバー達を迎え入れた一同はフライング・ラビットへと帰投するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべー、何この飯!?旨すぎるんですけど!」

 

「本当だ、美味しい・・・・」

 

まずは腹ごしらえとフライング・ラビットの食堂にて腕を振るうは雪兎と一夏に弾の三名。この三名は男子ながら料理の腕は主婦顔負け。ピュアアムドライバーの面々も彼らの料理には手が止まらないようだ。大絶賛しているのはラグナで、驚いているのはセラ=メイ。

 

「それにしてもこの設備といい、ISといい、普通ではないな」

 

「そうッスよ!さっき見せてもらったISとかいうパワードスーツもそうだったッスけど、このフライング・ラビットって船も僕らからして見ればオーバーテクノロジーの塊ッス!」

 

フライング・ラビットやISに興味を示したのは協力者のイヴァン=ニルギースとジェナス達のローディ(アムドライバーのサポート技師のこと)のジョイ=レオンだ。

 

「メシだ!メシだ!メシだ!」

 

「すまんな、お前さん達も大変だろうに・・・・」

 

メシだと繰り返し叫びながら食べているのはタフト=クレマーで、気を使ってくれているのがダーク=カルホール。

 

「それにしても随分と男女比が女性寄りなんだな」

 

「何でも、あのISってパワードスーツは基本的に女性しか使えないそうよ」

 

「なるほど、だが、雪兎と一夏という少年二人は例外みたいだな」

 

そう考察するはシーン=ピアース、専属ジャーナリストのマリー=ファスティアとニック=キーオの三名。

 

「ジェナス、モットタベル」

 

「い、いや、シャシャは自分のを食べなって」

 

そしてジェナスに絡んでいるシャシャ。これが現在のピュアアムドライバーのメンバーだ。

 

「楽しんで貰えてるなら作った甲斐があったな」

 

「ああ、しかし物語の中心人物達と接触出来たのは幸運だよな」

 

聞けばジェナス達はナムールリバーを出てからJAと戦いつつもデポトレーラー・プロメテウスでミュネーゼ・タウンに向かう途中らしい。

 

「さてと、腹ごしらえも済んだことだし、今度は俺達の話だな」

 

食事の後、雪兎はジェナス達に自分達が別の世界からやって来た異邦人であることを告げ、元の世界に帰れる目処がつくまで同行したいと申し出た。何故同行を申し出たかと言うと、このままでは何れJAや連邦政府に見つかり利用される恐れがある。であれば、何者にも縛られないピュアアムドライバーに同行した方が身の安全を確保出来ると考えたからだ。その事も雪兎は隠さずジェナス達に伝える。

 

「確かに君達の戦力と物資は役に立つ。それに我々に与する理由ももっともだ。私は賛成だ」

 

最初に言葉を発したのはニルギースだった。彼は彼なりに雪兎達の言葉とメリット・デメリットを精査した上で雪兎の提案に賛成する。

 

「俺も良いと思うぜ。少なくともアイツらが嘘をついてるようには見えねえ」

 

ダークも雪兎は信用していいと思ったようで賛成のようだ。

 

「僕も賛成ッス。それに、雪兎とはもう少し色々と話してみたかったんスよ」

 

「お前の場合、そっちが本命なんじゃね?まあ、俺も旨い飯が食えるなら反対する理由もねぇけどよ」

 

ジョイは技師としての興味から、ラグナは旨い飯を理由に賛成。

 

「決めるのはジェナスだ。俺はお前の決定に従う」

 

「私もシーンと同じ。ジェナスに任せる」

 

今まで彼らを率いてきた信頼からシーンとセラはジェナスに決定を委ねるようだ。他のメンバーもジェナスに一任するらしい。

 

「それじゃあ・・・・」

 

ジェナスはしばらく考えた上で結論を出す。

 

「よろしく頼む、雪兎」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ、ジェナス」

 

こうしてピュアアムドライバーと異世界からやってきたIS学園チームの同盟が結ばれることとなった。




とりあえずピュアアムドライバーと合流。
遭遇したJA?奴らは踏み台になったのさ。
やっぱりシャシャとタフトが書き難い・・・・


次回予告

ジェナス達と共に行動する事となった雪兎達IS学園の面々。そして次の目的地であるミュネーゼ・タウンに向かうのだが、JAに与したキャシー率いるネオアムジャケットを纏うロシェット達と交戦となり・・・・

次回

「ネオアムジャケットと新たなる力 兎、ジョイとやらかす」


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83話 ネオアムジャケットと新たなる力 兎、ジョイとやらかす

早速雪兎とジョイがやらかします。
そして、ロシェットはISでのオータムポジションに・・・・つまり、咬ませ犬。


プロメテウスを格納したフライング・ラビットで(一応目立たないように陸路で)ミュネーゼ・タウンを目指すジェナス達ピュアアムドライバーと雪兎達ISチーム。そんな中、雪兎とジョイの二人はあるものを弄っていた。

 

「ガン=ザルディの使っていたアムジャケット、ネオアムジャケットか・・・・コイツをジェナス用に?」

 

「はいッス。戦闘スタイルもジェナスと似てたみたいッスから。それにダークさん達が託されたのはジェナスだからって・・・・」

 

「なるほどな。よし、俺で良ければ手を貸そう。こんな面白そうなもん手を出さずにいられるか」

 

「雪兎ならそう言ってくれると思ってたッスよ」

 

「「ふっふっふっふっふ・・・・」」

 

この二人、似たもの同士のようでお互いに出会った瞬間に自分と同類と直感したんだとか・・・・

こうしてガン=ザルディのネオアムジャケットは雪兎とジョイの手でジェナス用に魔改造されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、他の面々は・・・・

 

「へぇ、ジェナス達は私達より年下なのね」

 

「ワァオ、年上だったのかよ!?」

 

意外にもジェナス達は十四歳、シーンやジョイは十七歳と若いことに鈴達は驚くが、ラグナもまさか年上とは思っていなかったのか驚いていた。

 

「セラさんはマドカや私と同い年なんだ」

 

「うん」

 

「じゃあ、セラって呼んでも?」

 

「いいよ。私も蘭、マドカって呼んでもいい?」

 

「ああ、よろしく頼む、セラ」

 

「よろしくね、セラ」

 

同い年の蘭、マドカ、セラは早速仲良くなったようだ。

 

「で、次に向かうミュネーゼ・タウンってJAとかいう連中の拠点なんだろ?どうやって潜り込むんだ?」

 

「ニルギースが言うには俺達が陽動を仕掛けて、その間にピースに関しての情報を持ってるっていう工作員と接触するんだとさ」

 

一夏の質問にシーンが答える。だが、どうもシーンはダークと同様にニルギースを信用していないらしい。

 

「ふーん・・・・ところで、雪兎とジョイは?」

 

「何かガン=ザルディのジャケットがどうとか言ってたな・・・・」

 

「それ、絶対に改造・・・・ううん、魔改造されてるよ」

 

「魔改造って・・・・ジョイならやりかねないな」

 

シャルロットの言葉をジェナスは否定する事が出来なかった。むしろ、絶対にやっていそうな気すらする。

 

「雪兎もジョイと同類か」

 

「お互いに別系統の技術を持ってるからな・・・・混ざってとんでもない装備になってたりしてな」

 

「そんなまさか・・・・」

 

「「「「・・・・」」」」

 

ダークが冗談混じりに呟いた言葉だが、誰も否定する言葉を告げれない。それだけあの二人はやらかす実績があったのだ。

 

「敵の本拠地を攻めるんだ。戦力が向上する事に何の問題がある?」

 

ニルギースはそう言うが、問題はそこではないのだ。だが、ニルギースがそれに気付くのはもう少しだけ後になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュネーゼ・タウンが目前に迫ってきた頃、雪兎とジョイはジェナス用に魔改造されたネオアムジャケットを完成させてしまっていた。

 

「ネオアムジャケット、中々の強敵だったが・・・・」

 

「僕らの敵じゃなかったッスね」

 

この二人、一体何と戦っていたのだろうか?

 

「完成したのか?」

 

丁度そこにジェナスがやってくる。

 

「ああ、俺の持つ技術とジョイの持つ技術を複合して改修したネオアムジャケット。コイツなら今までのアムドライバーやバグシーンなんぞバイザー無しで蹴散らせるぜ」

 

「そうッスよ!IS由来の拡張領域にネオアムジャケットのチューブチャージシステムを組み合わせた現在僕らが作れる最高のアムジャケットッス」

 

なんとこの二人、ネオアムジャケットをジェナス用にチューンするのに加えてISの技術を融合させ更なる改修まで施していたのだ。

 

「ついでにもう一つ一から作れたしな!」

 

「雪兎が手伝ってくれたおかげで時間に余裕が出来たッスからね!」

 

更にこの二人は本来ならもう少し先に登場する筈のラグナ用のネオアムジャケットまで完成させていた。

 

「・・・・やっぱりやらかしてたよ」

 

心配になって見に来たシャルロットも流石に呆れている。

 

「おーい、ニルギースの野郎が呼んでるぜって、なんじゃこりゃ!?」

 

「ん?新しいお前とジェナスのアムジャケットだが?」

 

「おいおい、マジでとんでもないことなってんじゃんか!」

 

こうしてネオアムジャケット二つが原作より早く誕生しミュネーゼ・タウン攻略が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新しいアムジャケットの調子はどうだ?ジェナス、ラグナ」

 

「ああ、問題無い。今までとは完全に別物みたいだ」

 

「こっちもノープロブレムだぜ」

 

新しいアムジャケットのテストも兼ねて先行偵察に出る事になった雪兎、ジェナス、ラグナ、シーンの四人。雪兎はネオアムジャケットの機能確認として同行している。

 

「この調子なら全員が新型になるのも時間の問題だな・・・・」

 

「っ!全員散開!おいでなすったぞ」

 

そんな話をしていた時、雪兎達目掛けて突如ビーム砲による襲撃が起きた。

 

「へぇ~、今のを回避するなんてやるね。流石はシーン」

 

「見慣れない奴もいるが他のアムドライバーはジェナスとラグナか」

 

「その声は!?」

 

「ま、まさか!?」

 

「ロシェ、KKか・・・・」

 

襲撃してきた者達の声を聞き、ジェナス達はその正体がかつてシーンとユニット(チーム)を組んでいたロシェット=キッスとKKことクック=カーランドである事に気付いた。

 

「久しぶりだね、シーン」

 

すると、ロシェット達はヘルメットを外し、その素顔を現す。更に二人と一緒に現れたのはガン=ザルディの隠れ家で遭遇したJAのシャドー=エーリックだった。

 

「寝返っていたのか、JAに」

 

「シーンこそ、ジェナスの子分か?」

 

「何っ!」

 

「お前達、俺達を倒すつもりか?」

 

シーンがそう訊ねると三人はヘルメットを着け襲いかかってくる。

 

「ふふっ!」

 

「させるか!」

 

真っ先に飛び出してきたロシェットをシーンはエッジバイザーをブリガンディ・モードへと変形させ迎え撃つ。しかし・・・・

 

「いくよ!」

 

「ぐぁああああ!!」

 

シーンの攻撃をものともしないロシェットはシーンにボディブローを叩き込み崖の壁まで吹き飛ばす。

 

「シーン!」

 

「行かせるか!」

 

吹き飛ばされたシーンに駆け寄ろうとするジェナスだが、そんな事を敵が許す訳が無く、KKは二本のガンサイズを合体させたドレッドアーバレストでジェナスを狙うが・・・・

 

「そっちこそ、やらせねぇよ!」

 

雪兎が【F:フォートレス】を展開し、大型シールドビット・アイギスでそれを防ぐとお返しにとばかりに大型バズーカ・グランドスラムを放つ。

 

「ぐっ!?」

 

KKは直撃こそ避けたものの、グランドスラムの放った一二○㎜弾の衝撃で仕切り直しを余儀なくされる。

 

「ナイス、雪兎!こっちもいくぜ!」

 

「何っ!?こいつら俺にダメージを!?」

 

ラグナもエーリックに向けてアサルトガンで攻撃を仕掛けダメージを与える。

 

「大丈夫か!シーン」

 

「ああ、だが、どういうことだ?まるでパワーが違う」

 

「そりゃそうだろ。アイツらのアムジャケット、ネオアムジャケットだ」

 

「何だって!?」

 

そう、彼らが纏っているアムジャケットはJAによって作られたネオアムジャケットだったのだ。

 

「今まともアイツらとやれんのはジェナスとラグナ、それと俺くらいだろう。いくらシーンが強かろうと装備性能が段違いだ」

 

「くっ」

 

「悔しいのはわかるが、ここは俺達に任せろ。いくぜ、ジェナス!ラグナ!」

 

「ああ!」

 

「こっちのネオアムジャケットの力、見せてやろうぜ!」

 

向かってくるロシェット達に対し雪兎達はそれぞれ新たなる力を解き放つ。

 

「来い、【NB:ネオブレイド】!」

 

雪兎が展開したのは【B:ブレイド】をネオアムジャケットの技術を流用して改修した強化モデル。チューブチャージシステムも搭載しており、今までよりも性能が格段と上昇している。

 

「展開、ヴァリアブルソード!」

 

ジェナスの展開したヴァリアブルソードは右腕と一体化した小型のシールドと十徳ナイフのようにシールド内部に格納させたブレードを切り替えることでショートソードから大型ソードまで多彩なソードを展開可能な装備。当然チューブチャージシステム対応だ。

 

「俺様も、ハイコートカノン!」

 

ラグナのハイコートカノンは特殊コーティングを施された弾丸を撃ち出す中型砲で、元々装備していたアサルトガンとコアガンを組み合わせて使うマルチジョイントガンに接続することで高威力砲や超長距離狙撃にも組み換え可能した装備だ。

 

「何だと!?」

 

エーリックにダメージを与えたことからジェナス達もネオアムジャケットを着用しているのは察していたが、新たに彼らが装備したものはロシェット達からすれば突如何処からともなく出現したもの。雪兎の雪華に至っては装備がガラッと変わっており彼らが困惑したのは無理も無い。だが、それは雪兎達に見せてはいけない隙を生んでしまう。

 

「バルムンクⅡ、チューブ接続」

 

「ヴァリアブルソード、モード・クレイモア!」

 

「マルチジョイントガン、ブラストモードだぜ!」

 

「しまっーー」

 

「竜殺しの一撃、受けてみろ。ドラグバスター!」

 

「撃っ!!」

 

「アロンジー!!」

 

雪兎とジェナスの地を裂く斬撃とラグナの高威力砲が炸裂し、ロシェット達は返り討ちにされてしまう。

 

「くっ、くそっ!」

 

「ちっ、一旦退くぞロシェット」

 

「覚えてやがれ!」

 

ボロボロになったロシェット達はそのままミュネーゼ・タウンへと引き返していく。

 

「口ほどにも無い奴め・・・・だが、これはちょっとマズイことになったな」

 

「ああ、ロシェット達にこっちの存在が知られた」

 

「それにあの様子だと他の連中もネオアムジャケット持ってそうじゃね?」

 

「そうだな、俺達も一旦退こう」

 

ロシェット達は追い返せたものの多くの問題が露呈し、雪兎達はその対策の為に一度フライング・ラビットへと帰還するのだった。




ロシェット達惨敗。
キャシーさん、計算違いで怒り狂うこと間違いなし!
そして、対策を始めた雪兎が妥協などする訳ないよね?


次回予告

JAがネオアムジャケットを作成していることを知った雪兎達。そこで雪兎とジョイはこれを機にピュアアムドライバー一同の装備を一新することに。だが、リベンジに燃えるロシェット達は新たな戦力を率いてフライング・ラビットを強襲。アムジャケットの改修で出撃出来ないアムドライバー達に代わり一夏達が迎撃に出る!そして、ついに鈴達の専用機達が新たな力を生む!

次回

「月夜の攻防と進化する力! 兎、大改修に取り掛かる」


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84話 月夜の攻防と進化する力! 兎、大改修に取り掛かる

アムドライバーの二十二話の後半パートに該当するお話。再び雪兎とジョイがやらかす中、今度は一夏達が戦います。

ふと思った。常時飛べるISに対してアムドライバーってかなり不利じゃね?パフ達どうしよ・・・・


「厄介な事になったな・・・・」

 

雪兎達の報告を受け、ニルギースは作戦の修正を余儀なくされていた。一方、雪兎とジョイはニルギース、シェシェのもの以外の一同のアムジャケットの改修作業を行っていた。

 

「とりあえず急ぎはシーンのやつだな」

 

「そうッスね、ロシェットはシーンをつけ狙ってるみたいッスからね」

 

手始めに取り掛かったのはシーンのアムジャケット。これからの戦いを考えれば主力級のアムドライバーの戦力アップは急務と言える。

 

「問題は次の襲撃までに作業が終わるかってとこだな・・・・」

 

「そうッスよね」

 

正直な話、JAのネオアムジャケットは想像以上に強力だった。前回は雪兎と改修済みのジェナスとラグナがいたが、未改修のアムジャケットではいてもいなくても大差は無いレベルだ。それにアムマテリアルにも限りがある為、改修作業は残っているアムジャケット全機同時に行っている。それ故に残ったジェナスとラグナ、雪兎以外のISチームで迎撃を行わねばならない。

 

「多分、今夜が勝負だ。やるぜ、ジョイ!」

 

「合点承知ッス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シシーちゃんが捕まった!?」

 

それは情報を漁っていたマリーが見つけたもので、アムドライバーの公認サポーターをしているシシー=クロフトという少女がミュネーゼ・タウンにて連邦アムドライバーを応援、JAを批判したとしてJAに捕まったというのだ。

 

「まず間違いなく罠だろうな」

 

「貴女もそう思いますか、織斑女史」

 

「ああ、このような放送を流したということは十中八九我々を誘き出す為だろう。だが、我々が行かなければ・・・・」

 

「ピュアアムドライバー、それに連邦政府は彼女を見捨てたと報道して非難を集めるでしょうね」

 

「くそっ!あの野郎どもめ・・・・」

 

彼女の大ファンであるラグナは悔しそうにディスクを叩く。

 

「だがどうする?俺達のアムジャケットはジェナスとラグナのものを除いて改修中だ。ISもネオアムジャケットに何処まで通用するかわからん」

 

「今はまだ様子を見る他無いな。だが、我々が懸念していた事が一つ減ったな」

 

「なるほど、シシー救出を隠れ蓑に工作員と接触するのか」

 

「それなら大義名分が立つという訳ね?」

 

ニルギースの言い分に千冬とマリーが納得していると。

 

「そんなのは関係無い!」

 

「シシーちゃんは俺達のサポーターなんだぜ?」

 

「ああ、シシーが、いや、俺達の力を必要としている人がいるのなら」

 

「「助け出すのがアムドライバーだ(ぜ)!」」

 

ジェナスとラグナはアムドライバーとしての在り方を貫く姿勢を示す。すると、ブリッジのクロエから通信が入る。

 

『皆様、前方にアムエネルギー反応を検知しました。固有波数から見て前回雪兎兄様達と交戦した三名かと。更にバグシーンと思われる反応も多数有ります』

 

「早速おいでなすったか!」

 

「ディラとラウレリアは出られるな?」

 

「ああ!」

 

「任せとけって!」

 

「今回はこちらからもISを出す。だが、決して無理はするな!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

こうしてISとアムドライバーの混成部隊がロシェット達JAを迎え撃つ為出撃するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またその変なパワードスーツか!」

 

「まだそんなにいたんだね」

 

「トパスⅡを持って来て正解だったな」

 

ロシェット達は原作と違いジェナス達がネオアムジャケットを装備している事を知っていた為に連れて来たトパスⅡを展開する。

 

「すまない一夏、お前達の力を貸してくれ!」

 

「ああ、俺達もここでやられる訳にはいかないんだ。やるぞ、皆!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

ロシェット達ネオアムジャケット装備に対するはジェナス、ラグナ、一夏の三人。残りのメンバーはシャルロットの指揮の元でトパスⅡの掃討を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「くっ!」

 

ロシェットと対峙するのはジェナス。今回は早々にヴァリアブルソードを使用してロシェットのシザースブレードを押し返す。

 

「お前なんかに!」

 

ロシェットは何処か焦ったようにグラップルブレードとシザースブレードを合体させナイトメアブレードにするとジェナスに斬りかかる。

 

「シーンは何処だ!」

 

「教えるかよ!それにお前の相手はこの俺だ!」

 

シーンに拘るロシェットは明らかに目の前のジェナスを見ていない。それ故にジェナスに対して有効な攻撃が出来ないでいた。

 

「ババババババーン!」

 

「くっ、コイツらやはりあの頃とは違う!」

 

「当たり前だろ!俺達がどれだけ修羅場潜ってきたと思ってるんだ!」

 

KKもパワーアップしたラグナの攻撃に押され気味だ。

 

「な、何なんだよコイツらは!?」

 

「遅い!」

 

エーリックも二度目のIS戦で一夏に翻弄されるばかりで手も足も出ない。無論、戦ったのが雪兎や一夏と三次移行済みのISである為それは当然と言える。だが、そんな彼らに援軍が到着する。

 

「何っ!?」

 

突如の狙撃を何とか回避したジェナス達だが、現れたのはセラと同じエアバイザーにジャイロバイザー、そして未知の飛行型バイザーを纏った三人。その三人は一度崖の上に着陸するとそのヘルメットを外す。

 

「パフ!?」

 

「それにジュリ、ジュネまで!?お前達もジノベゼ側に寝返ったのかよ!?」

 

それは以前セラが所属していたパフユニットのパフにジュリ、ジュネの双子だった。言葉を交わそうとするも、パフ達は問答無用とジェナス達に襲いかかる。

 

「ちょっと!あんた達は仲間だったんじゃないの!?」

 

「これは戦争なのよ!」

 

そんなパフに激昂した鈴が仕掛ける。

 

「戦争?知ったことじゃないわ!!信頼していた相手に裏切られるのがどんな気持ちか!あんた考えたことあるの!?」

 

「珍しく同意だ。貴様の事はセラから聞いていたが、そんな女だったとはな。セラが聞いたら悲しむぞ!」

 

更にマドカもセラと仲良くなったが故にそんなパフが許せないらしい。

 

「私もお手伝いしますわ!」

 

「上空はむしろ私達の戦場よ?」

 

どうやらトパスⅡを片付け終わった女性陣はパフ達の言動に思うところがあるようで全員がパフ、ジュリ、ジュネを包囲する。パフが使う新型バイザー・ストームバイザーといえど、彼女達からすれば未知の能力を持つISに囲まれては流石に不利というもの。しかし、パフも歴戦のアムドライバーの一人。そう簡単にはいかない。

 

「貴女達に何が判るっていうの!」

 

ストームバイザーをブリガンディ・モードに変形させ、機首部分であったキャノンと翼が変形したブーメラン状のブレードを用いて攻撃してくる。

 

「私達だって!」

 

「やってみせるんだから!」

 

それに合わせて双子だからこそのコンビネーションで攻撃してくるジュリとジュネ。

 

「なんと厄介な!」

 

ストームバイザーは勿論、ジュリとジュネが使うエアバイザーやジャイロバイザーもネオアムジャケット対応になっている為か楯無やシャルロットでもパフ達を追い込み切れない。そんな時だった。

 

「甲龍!私達の意地、何としてでもアイツらに思い知らせるわよ!」

 

「私達も負けていられませんわ!」

 

「我らシュヴァルツェ・ハーゼの誇り!今こそ示す時!」

 

そんな三人の気持ちに応えるかのように甲龍、ブルー・ティアーズ、シュヴァルツェア・レーゲンが光り輝く。

 

「これってまさか!?」

 

光が消えると、三機のISはその姿を大きく変貌させていた。まずは甲龍だが、兎印のパッケージを取り込んでおり、左右の小型龍咆【龍玉】が三つから四つに増え、背面には龍の翼を模した大型スラスターを得た。更に二本の大型青龍刀だった双天牙月は刀身が少し細身の刀刃になり鋭さを増していた。

 

「私に応えてくれたんだ、甲龍・・・・」

 

続いてはブルー・ティアーズ。エンジェルフェザーで追加された翼状のビットマウントが大型化し、それに伴いビットも大型化。火力も当然上昇しており、かつてのスターライトmk.Ⅲに匹敵する。また、刃も備えて斬撃も行えるようになった。ランパードランチャーも槍の部分が大型化し、【LA:ライトニング・アサルト】のガングニールと同様に複数砲門を使った拡散攻撃も可能に(偏向射撃も可)。

 

「私達も二次移行を?」

 

最後にシュヴァルツェア・レーゲンだが、両肩のシールドブースターキャノンに大型レールガンが融合して大型化。眼帯の部分にスカウターのようなものが追加され、ヴォータン・ルージェ発動時に限るが、ワイヤーブレードの先からAICを展開出来るようになっている。更にそのワイヤーブレードに高周波振動を加えることで切断能力までも付与している。

 

「三機同時とは因果なものだな」

 

三機共に同時期に雪兎から専用パッケージを与えられたISだ。それが同時に移行するというのはラウラの言う通り因果なものだ。

 

「ジュリ、ジュネ、退くわよ」

 

この異常事態には流石のパフも危険を感じ、撤退を指示する。ロシェット達もどさくさ紛れに撤退したらしく、月夜の戦いは引き分けという形で幕を閉じた。




ちょっと中途半端になりましたが、この後のセラのイベントの為に戦闘は切り上げに・・・・
鈴達の二次移行したISはまた今度データを上げておきます。


次回予告

ロシェット達の他にパフ達までもジノベゼ側についたことに動揺するジェナス達。中でも同じユニットだったセラの精神的ダメージは大きく、セラは一人パフの真意を探るべくミュネーゼ・タウンへと潜入する。しかし、そんなセラを追って蘭とマドカのスニーキングミッションが幕を開ける。

次回

「セラの心とパフの真意 兎、妹分に隠し玉を与える」


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85話 セラの心とパフの真意 兎、妹分に隠し玉を与える

セラ一次離脱回です。
そして、今回は蘭とマドカがやらかします。

コラボしてから地味に文字数増えてきました・・・・


パフユニットの裏切り。これはジェナス達に思った以上の衝撃を与えていた。中でもセラは話し合いにも応じてくれないパフ達の姿を見て部屋に引きこもってしまった程だ。

 

「セラ・・・・」

 

そんなセラを心配する蘭。

 

その夜、セラはエアバイザーを持ち出しミュネーゼ・タウンへと姿を消した。それと同時に蘭とマドカも・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、セラが抜け出した事と同時に蘭とマドカも姿を消している事が発覚。その事で弾が雪兎の胸ぐらを掴んで問い質す。

 

「はぁ!?蘭のやつを一人で行かせただと!?」

 

「だからマドカに監視を頼んだんだが、まさか一緒に行くと予想外だった。一応保険は持たせてあるし位置も把握してるんだが・・・・マドカのやつ、通信まで切りやがって」

 

この行動は流石の雪兎も予想外だったらしい。

 

「マドカちゃんが一緒ならとりあえずは大丈夫か・・・・お前もマドカちゃんが心配だよな、すまん」

 

ついカッとなってしまったと謝る弾だが、雪兎はあまりマドカの心配はしていなかった。

 

「大丈夫さ、マドカは単独で基地一つ襲撃して脱出出来るやつだからな」

 

元亡国の工作員だったマドカ。故の信頼なのだが・・・・

 

「それ、別の意味で大丈夫なのか?」

 

ジェナス達は別の意味で心配になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュネーゼ・タウンの近郊にある森にエアバイザーを隠したセラ。そこから単身ミュネーゼ・タウンに向かう。だが、セラは気付いていなかった。その背後に蘭とマドカがいる事に。

 

「き、気付かれてないよね?マドカ」

 

「この光学迷彩マントを羽織っているんだ。プロでもなければ気付きはせんさ・・・・だが、帰ったら兄さん達からのお説教は覚悟せねばな」

 

「うっ・・・・」

 

実はセラが抜け出した夜。それに気付いていたのはジェナスだけではなかった。蘭とマドカもセラを心配していたからこそ気付いたというべきか。そして、気付いてからの行動は迅速だった。アムジャケットの改修作業でヘトヘトな雪兎の目を盗み、蘭の分の光学迷彩マントを持ち出したマドカはフッケバインのステルスモードでこっそりセラの後をつけていたのだ。ちなみに蘭はマドカにお姫様抱っこされていた。

 

「せっかく敵陣に潜り込んだんだ。手土産は多いに越したことは無いだろう」

 

「そうだよね、私だった役に立つところ見せるんだから!」

 

こうして、二人の少女のスニーキングミッションが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュネーゼ・タウンに入ったセラはパフユニットのローディであるジャックに導かれパフ達のところへと案内される。ジャックは警備態勢は万全と言っていたが、兎印の潜入装備とマドカの前には無力であった。素人の蘭が問題無く潜入出来た事からもお察しだろう。

 

「ここが奴らの本拠地か・・・・随分と杜撰な警備だ」

 

「うん、私もマドカが元工作員だったって改めて実感してるよ」

 

その後、セラを追ってパフ達の屋敷に辿り着くと、パフとセラの会話を盗み聞く。パフはセラの兄・ジョナサン=メイナードとかつて同じユニットであり、セラの事はお見通しだったとの事。そして、キャンプリトルウイング崩壊後、怪我を負ったジュリと共にジノベゼに助けられ彼に与したそうだ。そしてジョナサンとの約束の為にセラを守ろうとしている。

 

「なるほど、そういう事か・・・・」

 

「セラ、敵ならないよね?」

 

「それはないだろう。だが、この後の選択次第ではセラは辛い思いをするかもしれん」

 

見たところ、セラの中には既に結論は出ているのだろう。それをどうパフに伝えるのか、それを迷っているようにマドカは思えた。

 

「さて、ついでにシシー=クロフトとやらの居場所も探っておくか」

 

「おー」

 

少女達のスニーキングミッションは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭やマドカが潜入している間にも雪兎達はアムジャケットの改修を終え、ロシェット達の罠を潜り抜けてランドバイザーを回収していた。

 

「何だろう、あの咬ませ犬・・・・本気で何がしたいのかわからん」

 

「咬ませ犬って・・・・最近のアイツを見てると確かにそんな風に見えなくもないが」

 

かつてのユニットの仲間を咬ませ犬と評され複雑なシーン。ランドバイザー回収作戦でもクレイモアがあると知るや否や雪兎は【NW:ネオウィザード】を用いて飛行しながらコンテナに近付き、ビーム攻撃は全て反射した上にそれで足元を崩されたロシェットはクレイモアの真っ只中に落ちて自爆・・・・咬ませ犬と言われても仕方がなかった。

 

「今一番の問題はあの三人か・・・・」

 

原作ではパフ達がJAを抜ける一因になるからとセラは放置していた雪兎だが、蘭とマドカまで潜入するとは思ってもいなかった。

 

「そういえば保険を持たせたと言っていたが、一体何を持たせたんだ?」

 

「ん?ああ、こっちに来て自衛手段がいると思ってISを一機持たせた」

 

「・・・・」

 

さらっと告げられた言葉にシーンは改めて雪兎は間違いなくジョイの同類だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地下水路?」

 

ミュネーゼ・タウンへ侵入する経路を探っていた時、この古代の地下水路のデータがアップされたんだとか。

 

「罠だろ、絶対・・・・」

 

「ああ、十中八九キャシーの罠だ」

 

それでもじっとしているよりはいいとジェナス達は行動することに。

 

「今回は俺も同行する。妹を迎えに行くのは兄の役目だからな」

 

「なら俺も連れて行ってくれ!」

 

そう願い出たのは弾だった。やはり蘭の事が心配らしい。

 

「だが、お前はアムジャケットもISも無いんだろう?」

 

ただ連れて行くだけなら問題は無いのだが、今回は罠だと分かっている為、戦闘は避けられないだろう。そんなところに民間人を連れて行くのはジェナス達としては出来れば避けたい。しかし、蘭を心配する彼の気持ちもわかるせいか頭ごなしに断ることが出来ない。

 

「なら、装備があればいいんだな?」

 

「えっ?」

 

そう言って雪兎が出してきたのは全身装甲(フルスキン)のISやアムジャケットによく似たメカだった。

 

「なあ、これってもしかしてEOSか?」

 

Expected Operation Seeker(外骨格攻性機動装甲)略してEOS。前に一夏達も使用したことがあるパワードスーツの一種だ。しかし、EOSは稼働可能時間が短い上にパワーアシストがほぼ機能しない為、全身装甲は出来ないはずである。

 

「あんな玩具と一緒にすんなよ。コイツは元々向こうで俺が作ってた試作品をジョイと一緒に改修した特別製さ」

 

大きさ的にはモトバイザーを着けたアムジャケット程で、聞けばISとの違いは単独飛行出来ない事とシールドエネルギーが無いくらいらしく。その辺の問題はアムテクノロジーの応用で克服したんだとか・・・・本当に何作ってんだ、この二人。

 

「こいつを貸してやる。使い方は死ぬ気で覚えろ」

 

「恩に着るぜ、雪兎!」

 

実はこのパワースーツ【アーマードギア】はネオアムジャケット並みの性能があったりするのだが・・・・

 

「突入メンバーは俺、ジェナス、ラグナ、ダーク、タクト、雪兎、弾でいいんだな?」

 

シーンがそう確認した後、メンバーは水路へと足を踏み入れた。しばらくすると広場のような空間に出る。

 

「思ったより広い空間だな」

 

「やな感じだぜ」

 

その時、シーンが何かに気付いた。

 

「ちっ」

 

「ワッツ?」

 

「きたか」

 

すると、あちらこちらにある通路からビームが飛んでくる。

 

「バグッチか?」

 

「きたな!」

 

通路から現れたのはずんぐりとした身体を持つトロワトパス。シーン、ダーク、タクトはそれぞれランドバイザー、ランスバイザー、バーストバイザーをブリガンディモードに変形させ、ジェナスもクロスバイザーを身に纏う。

 

「なるほど、新型バグか!」

 

「てぇええい!」

 

いつものようにジェナスがトロワトパスに向かっていくが、トロワトパスは身体中にある棘のようなものをビットのように展開しそこからマルチレンジ攻撃を仕掛けてきた。

 

「何だ、こいつら!?」

 

「かわせ!」

 

「その必要は無い。【NW:ネオウィザード】展開、いけ!グラスパー!」

 

しかし、すかさず雪兎がグラスパービットを展開し、誘導兵器無効化フィールドを形成する。

 

「助かった」

 

「本当にお前のISは何でもありだな・・・・」

 

「よく来てくれたね。歓迎するよ」

 

そこにロシェット達が姿を現す。

 

「やはりロシェット達か・・・・」

 

「フフフ・・・」

 

「またお前らか、咬ませ犬(ロシェット)

 

「か、咬ませ犬だと!?」

 

呆れたように呟く雪兎の言葉に激昂するロシェットだが。

 

「そうやってキャンキャン喚いてるところが犬っぽいってんだよ!」

 

そんなロシェットに雪兎はビームハルパーで斬りかかる。

 

「くっ、相変わらず厄介な・・・・」

 

トロワトパスの最大の特徴であるマルチレンジ攻撃を封じられ焦るロシェット達だが、それは雪兎にとって絶好の隙であった。

 

「シーン!」

 

「オッケー!」

 

グラスパービットのリフレクトモードとランドバイザーの高出力ビームの合わせ技が炸裂し、ロシェット達を無数のビームが四方八方から襲いかかる。

 

「オールレンジ攻撃ってのはこうやるんだよ」

 

「うわぁ、えげつねぇ・・・・」

 

「タクトさん、今のうちに!」

 

「任せろ!ぶっぱなす!ぶっぱなす!ぶっぱな~す!」

 

その隙にバーストバイザーの大型ミサイルをトロワトパス達にぶちこみ撃破していく。

 

「くっ、だがバーストバイザーのミサイルはそれでおしまいだろ?トロワトパスはまだまだ・・・・」

 

エーリックが言葉を続けようとした、その時。バーストバイザーのミサイルコネクタに再びミサイルが装填される。実はバーストバイザーにもISの拡張領域の技術を応用し、すぐさまミサイルを再装填出来るように改修していたのだ。

 

「うそだろ!?」

 

「バーストバイザーはバーストバイザーだが、そいつはバーストバイザー改なのさ!」

 

「どっちが悪役かわかんねぇな・・・・っと!」

 

ダークもランスバイザーの槍の先端をドリルに改修したドリルランスバイザーでトロワトパスを次々撃破していく。

 

「いいねぇ、やはりドリルは漢のロマンだ!」

 

ダークも若干キャラが壊れ始めている気がする。

 

「こいつら、あの短期間でこれだけの戦力を・・・・」

 

「俺も忘れちゃ困るぜ!」

 

「ぐはっ!?」

 

KKを襲ったのは雪兎とジョイのコラボ装備【アーマードギア】を纏った弾の蹴りだ。

 

「音声認識にモーションアシストか・・・・本当にコイツは思った通りに動くぜ」

 

「弾、ついでにアレをお見舞いしてやれ!」

 

「えっ?アレやんの?」

 

「虚さんにカッコいいとこ見せなくていいのか?」

 

「やってやんよ!」

 

(計算通り)

 

「コード・AGK!」

 

『承認!』

 

弾がそのコードを音声認識させると弾のアーマードギアが大きく跳び上がる。

 

「これを使う時はこう叫ぶのがお約束なんだとよ!究極!ゲシュペンスト・キィイイイイック!!」

 

そう、アーマードギアのモデルとなった機体はゲシュペンスト。それ故に当然ながらこの技も搭載していたのだ。※ちなみに叫ばないと発動しません。

 

「がはっ!」

 

その一撃は正に究極!直撃したKKはスーパーボールのように弾かれ水路に倒れ伏す。

 

「「KK!?」」

 

KKがやられたことに動揺するロシェットとエーリック、その隙をジェナス達も見逃さない。

 

「雪兎達ばっかにやらせてたまるか!はぁっ!!」

 

「これでもくらいやがれ!」

 

「「ぐぁあああ!!」」

 

クロスバイザーのクローラートンファーとラグナのマルチジョイントガンの一撃がロシェットとエーリックを襲う。

 

「今のうちに行くぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

ロシェット達を撃破し、トロワトパスを蹴散らした一同はジョイの見つけたデータを元に地下水路を駆け抜けていった。




ここで一旦切ります。
次はセラ帰還回かな?


次回予告

キャシーの罠を強引に撃ち破り水路を抜けたジェナス達を待ち構えていたのはパフ達とJA製のネオアムジャケットを纏ったセラだった。パフ達は攻撃態勢を取るがセラは・・・・

次回

「妹の決断と姉の選択 兎、お説教再び」


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86話 妹の決断と姉の選択 兎、お説教再び

セラ帰還回です。
雪兎がお説教です。

今度、アムドラ編に関するアンケートを活動報告に上げるのでご協力をお願いします。


雪兎達が水路を進行している頃、パフ達は水路の出口の広場に待機していた。そこでセラは改めてパフの真意を問う。

 

「パフ」

 

「何?」

 

「兄が今生きていたら私達をどう思うだろう?」

 

「どうって?」

 

「バグシーンの真実を何か知りたがっていた兄は」

 

セラの実の兄・ジョナサン=メイナードはバグシーンの真実を求め、バグエリアと呼ばれるバグシーンの拠点と思われる場所に単身で侵入した。

 

「バグシーンはウィルコットが操っていたものよ」

 

だが、ジョナサンはおそらくバグシーンが人工的に産み出された存在であると知ったが為に行方不明となり、その後、遺体として発見された。

 

「そう、それはそうかもしれない。でも・・・・」

 

「でも、何?」

 

「私は真実が知りたい」

 

セラはジェナスと共にファーストアムドライバー・ガン=ザルディに会い、そして、バグシーンとアムドライバーの真実を知った。

 

「真実?・・・・セラ、何か知っているの?」

 

「言えない、でも」

 

「何?」

 

「パフは何かを信じてる?誰かを信じてる?」

 

「なんですって?」

 

「少なくとも私は、いえ、私達は誰の命令も聞かず、自分で考え、自分達で判断して行動している」

 

これはピュアアムドライバーと呼ばれている全員に言える事だ。

 

「何を言い出すの?」

 

何故セラがこんな話をするのか、パフには分からなかった。

 

「なら、何故ここにきたの?」

 

「それは・・・・」

 

「私を信じてくれたからじゃないの?」

 

パフはずっとそう思っていた。

 

「パフ、パフみたいな人がどうして?」

 

だが、いくら命を救われたからといえどセラはやはりパフがJAに身を寄せている事が納得出来なかった。

 

「貴女の、大切なジョナサンの妹。だから私にとっても妹と同じ」

 

「分かってるよ、パフの気持ちは、でも!」

 

セラもパフの事は姉のように慕っていた。だからこそパフには戻ってきて欲しかったのだ。

 

『パフ!ロシェット達が抜かれたわ!』

 

その時、通信でキャシーのヒステリックな叫び声が聞こえた。どうやらロシェット達が雪兎達にやられたようだ。

 

「了解、こちらで対処するわ」

 

元々、ロシェット達に期待していなかったパフはすぐに臨戦態勢を取る。

 

「どう思っているかしら、兄さんは」

 

「えっ?」

 

(でも・・・・でも、私は・・・・)

 

そこでセラが思い返したのは今までジェナス達と過ごしてきた日々だ。

 

(私は・・・・)

 

その時、雪兎達が水路を抜けパフ達の前に姿を現す。パフはすぐさま気持ちを切り替えジェナス達に銃口を向ける。

 

「ジェナ!ラグ!」

 

「その声はセラ!?」

 

「何!?」

 

「そういうことだったのね」

 

そこでパフは侵入者がジェナス達だと知る。そして、パフはジェナス達を射とうとするが、それをセラが阻む。

 

「射つなら私を先に射って!」

 

「セラ!?」

 

これにはパフも動揺を隠せない。だが、ここで空気を読まない男が一人。

 

「あ~、お取り込み中悪いんだけどさ、射たないんならこっちが射つぜ?パフ=シャイニン」

 

いつの間にか【NJ:ネオイェーガー】を纏い、バスターライフル改を改修したネオバスターライフルをパフ達に向けていた。しかもチューブを接続しチャージ済みだ。

 

「こ、この熱量・・・・ストームバイザーの比じゃない!?」

 

「俺としてはその銃を下げて欲しいところだが、やるってんなら容赦しねぇぜ?」

 

「・・・・わかったわ」

 

少し考えはしたが、パフはストームバイザーのライフルを下げる。

 

「パフ・・・・」

 

パフと戦わずに済んだ為、セラは安堵の息を吐くが、雪兎はまだネオバスターライフルを構えたままだ。

 

「そいつは良かった・・・・そういや、この水路ってもう使われてないんだよな?」

 

「え、ええ、それがどうかしたの?」

 

「なら、ぶっ壊しても問題無いよな?」

 

そう言って雪兎はネオバスターライフルを水路の出口に向ける。

 

「待て~!!」

 

そこに態勢を立て直したロシェット達が水路を通って追ってきていた。

 

「あっ、ロシェット・・・・」

 

その時、ジェナス達はこの後の展開が読めたのか、ロシェット達に同情した。そして合掌した。

 

「Fire♪」

 

雪兎が笑顔で放ったネオバスターライフルは無情にも逃げ場の無い水路にいたロシェット達を襲う。

 

「「「えっ?」」」

 

「お前らもやろうとしてた事だ。俺らの代わりにお前らが食らっとけ」

 

「「「ぎゃあああああ!!」」」

 

更にネオバスターライフルの威力に水路が持たず崩落、ロシェット達はそのまま生き埋めにされるのだった。

 

「ロシェ、今回ばかりは俺もお前の事を咬ませ犬と呼ばれても擁護出来ない・・・・」

 

「雪兎にかかれば完全に落ち要員だな、アイツら・・・・」

 

「踏み台か?踏み台だな!踏み台乙!」

 

「ほんと容赦ねぇな、アイツ・・・・」

 

上からシーン、ラグナ、タクト、ダークのコメントである。

 

「・・・・彼、いつもあんな感じなの?」

 

「うん」

 

「敵対すると情け容赦無しにボコボコにされて・・・・何故かギャグになるんだよなぁ。この前もクレイモア仕掛けてきたんだが、逆にロシェットがそこに落とされて自爆してたし」

 

「「うわぁ・・・・」」

 

「敵対しなくて正解だったな」

 

こちらは上からパフ、セラ、ジェナス、ジュリとジュネ、合流したジャックだ。

 

「あ~、あのロシェットってやつ見ててなんか懐かしくなったと思ったら、いつぞやのワルガキそっくりだからか!特に性格が」

 

※ワルガキ→三章一話で話題になった『雪兎の顔面にウシガエルをくっつけ、お返しに全裸で縛られ赤ペンキまみれで吊るされた』やつ。これに懲りずに何度か雪兎に突っ掛かったある意味で勇者(愚者)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、セラの説得で協力してくれる事になったパフ達を交えてシシー救出の為の作戦会議をしていると、雪兎に通信が入る。

 

『・・・・あの、兄さん』

 

「マドカ、お説教は帰ってきてからだ。で、勿論何か成果はあったんだろうな?」

 

その時、雪兎は初対面のパフ達から見ても明らかにキレていた。

 

『は、はい!シシー・クロフトの身柄を確保し、蘭と三人でミュネーゼ市街にて潜伏中です!』

 

だが、マドカはちゃんと成果を上げていた。予想以上に良い成果を。

 

『しかも、ニルギースが言っていた協力者はどうやら彼女の様です』

 

「「「「な、何だってぇえええええ!?」」」」

 

聞けば、蘭がシシーと仲良くなり、ガン=ザルディの話題を出したところ、彼女はゼアムのピースを持っていた協力者からその一片を預かったのだとか。キャシーはジェナス達を誘き出す餌としてしか見ていなかった為バレずに済んだそうな。

 

「どのみちシシーは救出する必要があったって訳か・・・・まあいい、身柄を確保しているんだったら話は早い。こっちから迎えを出すからそのまま待機してろ」

 

『はい』

 

「今回の活躍に免じてお説教は一時間で勘弁してやる」

 

((((それでも一時間なんだ・・・・))))

 

そして、パフの協力でミュネーゼ市街に入りマドカ達と合流するという作戦でいく事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・何?シシーに逃げられた!?何をやっているの!!あ~!!ロシェット達とも連絡は途絶えたままだし!パフ達は裏切るし!どうして私の思い通りにならないのよぉ!!」

 

その頃、シシーに逃げられたと知ったキャシーは悔しそうにハンカチを噛みながらシシー捜索の指揮を取るのだった。




マドカが順調に雪兎色に染まってます。
そして、今回も蘭がファインプレーして色々前倒します。


次回予告

シシーを救出したマドカと蘭に合流すべくミュネーゼ市街に潜入する雪兎達。合流後、ミュネーゼに残れないと知ったシシーはしばしのお別れとピースと一緒に協力者から預かった物を受け取るべく孤児の保護施設に向かい・・・・

次回

「潜入、ミュネーゼ・タウン 兎、キャシーをおちょくる」」


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87話 潜入、ミュネーゼ・タウン 兎、キャシーをおちょくる

今回はまたしても蘭がファインプレーします。
そして、キャシーをおちょくります。そりゃあもう盛大にw

そのおかげで一人生存。

活動報告にアンケート4を設置しました。


雪兎達が地下水路を通っていた頃、マドカと蘭はシシーの監禁場所を突き止め、伝説の傭兵も愛用していた秘密兵器【ダンボール】で監禁場所であるホテルに潜入していた。

 

「やはり潜入と言ったらダンボールだな」

 

「何で誰も不審に思わないんだろう・・・・明らかに怪しいのに」

 

謎のダンボール万能説はこの世界でも有効らしい。

 

「あの部屋だな・・・・いくぞ、蘭」

 

「うん」

 

そこからは光学迷彩マントで姿を隠し通気口から部屋へと侵入。監視カメラにクロエ特製のウィルスで偽の映像を流し、見張りはマドカが手刀、蘭が兎印のスタンガンで気絶させる。

 

「・・・・えっ?」

 

シシーには彼らが突然倒れたように見えた為驚くが、肝が据わっているのか逃走経路の確認を始める。そんなシシーにマドカはマントを脱いで声をかける。

 

「シシー=クロフトだな?とある人物達の依頼で貴様を救助に来た」

 

「えっ?救助?」

 

「うん、ピュアアムドライバーの人達が貴女が捕まったって聞いてこっちに来てるの」

 

蘭もマントをとってマドカの説明の補足をする。

 

「ピュアアムドライバー!?それって本当!?」

 

「ああ、とりあえずここを脱出するぞ。いつまでもここにいては見張りに見つかる」

 

そこからはマドカにとっては簡単なものだった。予め探しておいた逃走ルートでホテルを抜け出すと(そのついでに兎印の嫌がらせグッズもばらまいて)、シシーの案内で迷路のようなダウンタウンの工作員のところに身を隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、シシーの脱走に気付いたキャシーは鬼の形相でシシーを捜索するよう指示を飛ばしていた。

 

「警備は万全だったはず!どうやって脱走したというの!?」

 

だが、更なる不幸がキャシーを襲う。それは・・・・

 

「きゃ、キャシー様!ホテル内の我々の設備が次々と動作不良を・・・・」

 

「なんですって!?」

 

聞けばJAが設置していた通信機材などの電子機器がいきなりダウンしたらしい。

 

「早く原因を調べなさい!」

 

そう怒鳴り散らすキャシーを他所にキャシーの使っているモニターが落ち、原因の方がキャシーの前に現れる。

 

「キャシー様!あそこ!」

 

「えっ?」

 

そこにいたのは端末のケーブルをかじるハムスターのような何かだった。

 

「ね、ネズミィイイイイ!!」

 

「い、いえ、あれはハムスターではないかと・・・・」

 

「どっちでも大して変わらないじゃない!どちらも同じ齧歯類よ!」

 

ネズミに何かしらのトラウマでもあるのか取り乱し始めるキャシー。それを見てそいつは目をキランッと光らせる。

 

「えっ?ちょっと待ちなさい!まさか、あなた・・・・」

 

そいつが何を考えているのか直感的に察し後退りするキャシーだったが、時既に遅し。そいつはキャシーの胸元へと跳びかかる。

 

「きゅう・・・・」

 

「きゃ、キャシー様!?」

 

そいつに跳びかかられ気を失うキャシー。その後は何匹ものそいつらによってJAは甚大な被害を被り、その立て直しに時間がかかりシシー達をまんまと逃がしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あの、兄さん」

 

『マドカ、お説教は帰ってきてからだ。で、勿論何か成果はあったんだろうな?』

 

ダウンタウンに逃げ延びたマドカ達はとりあえず雪兎に連絡をする事にしたのだが、やはり雪兎はお冠状態だった。

 

「は、はい!シシー・クロフトの身柄を確保し、蘭と三人でミュネーゼ市街にて潜伏中です!」

 

雪兎の声に震えながらもマドカは自身の得た成果を報告する。

 

「しかも、ニルギースが言っていた協力者はどうやら彼女の様です」

 

『『『『な、何だってぇえええええ!?』』』』

 

これは蘭が聞き出した事なのだが、シシーはニルギースが探していた工作員だったらしく、これを聞きあちらは驚愕していた。

 

『どのみちシシーは救出する必要があったって訳か・・・・まあいい、身柄を確保しているんだったら話は早い。こっちから迎えを出すからそのまま待機してろ』

 

「はい」

 

『今回の活躍に免じてお説教は一時間で勘弁してやる』

 

通信を切ると、マドカは目に見えて落ち込んでいた。

 

「ごめんね、マドカ。私が巻き込んじゃったから・・・・」

 

「いや、決めたのは私だ。それにこうしてシシーも救出出来たんだ・・・・一時間くらい我慢する」

 

「私も一緒に怒られるから」

 

「蘭・・・・」

 

あの冷酷無比だったマドカが変わったものだ。そして、その原因とも言える蘭が今回もシシーの運命を変える。

 

「ところでシシー」

 

「何?」

 

「多分、この後街を脱出する事になるけど、やり残した事とか無い?しばらく帰って来れないと思うから」

 

「だよね・・・・あっ、施設の人達にお別れを言っておきたいかな?」

 

「施設?」

 

「うん、孤児の子達の面倒をみてくれる施設があってね。日頃お世話になってたから・・・・それと、そこにピースと一緒に預かった物があるの」

 

そう、本来なら一度ミュネーゼ・タウンを出てからシシーの我が儘で戻ってくる一因となった出来事なのだが、蘭が脱出前にそれを上手く潰してしまったのだ・・・・本当にこの世界の蘭はフラグクラッシャーの才能があるのかもしれない。

 

「今日はもう遅い。兄さん達と合流してからにしよう。一応、今のうちに連絡はしておく」

 

シシーから聞いた事をメールで雪兎に報せると三人は一時の休息を取るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。未だに混乱が続くキャシー達を他所に雪兎達はミュネーゼ市街へと潜入していた。検問は余裕で通過している。

 

「潜入成功だな・・・・本当にJA仕事してないな」

 

「これを見破れっていう方が無茶だと思うよ、僕は」

 

雪兎達が潜入に用いたのはクレープの移動販売車と束がハッキングして偽造した通行許可証。そして、ウィッグと網膜認証付きカラコン装備というやたら手の込んだ偽装を施したものだった。ちなみに潜入メンバーは雪兎、シャルロット、弾、ラグナ、セラ、シーンの六名。全員変装済みだ。

 

「声帯まで変えれるなんてな・・・・本当にお前と束博士は凄いな」

 

声は喉の辺りに目立たない特殊なシールを貼ることで声を変化させれる某怪盗が愛用してそうな一品を再現したものだ。

 

「とりあえず、マドカとの合流ポイントに向かう。その後、シシーの言う預かり物とやらを回収してからジェナス達の陽動の隙を突いて脱出する」

 

「でも、その預かり物はどうやって持ち帰るの?」

 

「こっちにはstorageって便利アイテムがあるんでな。こいつの拡張領域にならバイザーくらいなら十は余裕で持ち出せるぜ?」

 

「本当に住む世界が違うと常識も通じないのね」

 

「あはは・・・・雪兎と束さんはこっちでも非常識の部類だよ」

 

セラの疑問は雪兎の非常識アイテムで解決。世界を越えても兎師弟の非常識っぷりは健在のようだ。

 

「さて、そろそろ合流ポイントだ」

 

合流ポイントに着くとそこにはマドカ、蘭、シシーの三人が待っていた。

 

「君がシシーか?」

 

「は、はい」

 

「話はマドカから聞いている。その施設に案内してくれるか?」

 

「うん!」

 

シシーの案内でやってきたのは市街から少し離れた丘にある児童保護施設。そこに住まう子供達や管理人の女性・べティはシシーがJAに捕らえられたと聞いて心配していたそうだ。

 

「兄ちゃんのクレープうまっ!」

 

「こんなの初めて食べる」

 

そんな子供達に雪兎はクレープを振る舞っていた。道中でも、偽装工作を兼ねて市街の市民に売ったり、JAに陣中見舞いとして振る舞っていたが、何れも大盛況だった。おかげで疑われる事なく潜入出来たのだから食の力は侮れない。

 

「クレープって甘いのだけだと思ってた・・・・」

 

こっち(この世界)には惣菜クレープは広まってないみたいだね」

 

シシーも惣菜クレープ(クレープ・サレとも言い、日本人に一般的なクレープはクレープ・シュクレと言う)という存在に驚いている。

 

「日本人の食への探究心は本当に尊敬するよ・・・・」

 

元々クレープはフランス北西部ブルターニュが発祥で、元になったとはそば粉で作られた薄いパンケーキ(ガレット)である。現在のような生クリームや果物を巻くクレープは1977年に原宿で誕生したものでフランス発祥ではないらしい。世界各国の料理を日本風に魔改造(アレンジ)するのはもはや日本のお家芸と言ってもいいだろう。あんかけスパや肉じゃがなどがいい例だ。

 

「それでね、べティさん・・・・」

 

その後、シシーはべティにしばらくミュネーゼを離れなければならない事を告げ、施設の地下倉庫に隠してあった二つのコンテナを雪兎達に預ける。

 

「こいつはバイザーじゃねぇか!しかもおニューの・・・・」

 

「ピースを私に預けた人がJAには渡せないって言ってたんだ」

 

「なるほどな・・・・とりあえずこいつはstorageに入れておくか」

 

そう言うと雪兎はそのバイザーをコンテナごとstorageに格納する。

 

「何度見てもその電子変換だっけか?その技術には驚かされるぜ」

 

「だろうな。でも、こいつを応用すればそのうちにアムジャケットもISみたいに装置無しで装着出来るようになるかもな」

 

「ん?それくらいならすぐに出来るぞ?」

 

「「・・・・」」

 

さらっとそう告げる雪兎にラグナとシーンの二人は揃って絶句する。

 

「アムジャケットのIS化か・・・・意外に面白いかもしれんな」

 

「ほんと、こいつが敵じゃなくてよかったぜ」

 

「ああ、本当に味方でよかった・・・・」

 

雪兎はこの世界でも兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)の二つ名通り敵に災いを、味方に恵みをもたらしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にあっさり脱出出来ちゃった・・・・」

 

施設の皆と別れた後、雪兎達は行きと同様に帰りもクレープを売りながら何事も無かったかのようにミュネーゼを脱出していた。むしろ最後の検問所では惣菜クレープを振る舞って感謝されたくらいだ。キャシーがその事を知ったら激オコ案件だ。

 

「こういうのは焦って早く脱出しようとするからバレるのさ。逆にこれくらい堂々としてりゃ怪しまれないのさ」

 

「はは、こりゃ一本取られたな」

 

雪兎の言い分にシーンはなるほどと納得する。

 

「それに、ちょっと置き土産も置いてきたしな」

 

「今度は何やらかした?」

 

「なに、アイツらの拠点にハムスター型の破壊工作ロボ撒いてきただけさ」

 

そう、キャシー達を混乱の渦に叩き込んだあのハムスターらしきものは雪兎特製の破壊工作ロボだったのだ。しかも、このロボは捕まるか機能停止するとシュールストレミング並みの悪臭を放つ液体をばら撒いて自爆するという厄介極まりない機能を持つ嫌がらせにはもってこいのものだ。

 

「シュールストレミングって、えげつないにも程があるだろ!?」

 

阿鼻叫喚としているキャシー達の姿がラグナ達には容易に想像出来た。

 

「ほんと、雪兎は相変わらずだな・・・・」

 

「あはははは・・・・」

 

そんなこんなでシシー救出作戦は呆気なく終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ロシェット達は・・・・

 

「ところで、俺達はいつになったらここから出られるんだ?」

 

「さあ?」

 

「覚えてやがれぇえええええ!!」

 

未だに雪兎に崩落させられた地下水路に閉じ込められていた。




という訳で脱出時の戦闘なく、シシーがもう一度ミュネーゼに来ない為にエーリック生存。
次は雪兎とあの男が初邂逅。


次回予告

無事にミュネーゼを脱出した雪兎達。次なるピースの情報を求めムーロンに向かうべくナムールリバーのキュプロクスを回収しに向かう最中、ジェナス達と因縁の深いあの男が姿を現す。

次回

「復活のDと新バイザー 兎、色々と企む」



ジョイ「本日のメカニック紹介コーナー」

雪兎「これ、アムドライバーの原作にあったやつだな」

ジョイ「そうッス!今回からこの作品オリジナルのアムジャケットやバイザーを紹介していくッス!初回である今回は勿論、ジェナスの改修型ネオアムジャケットッス!」

雪兎「ベースは原作のネオアムジャケットとあまり変わらないが出力は1.5倍。拡張領域などのIS固有の機能も付加した既存のアムジャケットとは別物のアムジャケットだな。追加装備としてヴァリアブルソード等を装備している」

ジョイ「ヴァリアブルソードは十徳ナイフをモチーフにしたマーキュリーレヴとGNソードを元にしており、ショートソードから大型ソード、他にも様々な用途のソードを格納した装備ッス。当然、チューブチャージシステムにも対応しており、他の装備と一緒にスクラムソードと組み合わせる事ではバスタースクラムソードになり、凄まじい威力を発揮するッス!」

雪兎「まだまだ明かしていない装備や機能があるが、それは何れ本編でな」

ジェナス「俺のアムジャケット、そんな事になってたのか・・・・」


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88話 復活のDと新バイザー 兎、色々と企む

D「待たせたな」

NK「レギュラー復帰、レギュラー復帰、ネオケケッ」


という訳でとうとう奴が登場。こいつ、キャラ濃いんだよなぁ・・・・

ちなみに、パフ達は原作通り一時離脱してます。

余力のある方はアンケート4もご協力下さい。


無事にシシーを救出し、ピースを手にした雪兎達。しかし、ピースはガン=ザルディの持つ半分と残りの半分のはずが、協力者が何を危惧したのかその半分を更に三等分して分散させたらしい。そして、次のピースはムーロンという場所にあるらしく、そこに行く為に一度ナムールリバーのキュプロクスを回収する事になったのだが・・・・

 

「ナムールリバーが落ちたか」

 

そう、ナムールリバーはつい先日JAの手に落ちたのだ。そのせいでナムールリバーに隠したキュプロクスの回収が困難になってしまったのだ。

 

「フライング・ラビットがあるからどうしても必要って訳じゃないが、やっぱり勿体ないな」

 

「そうだな、数人で取りにいってこの大容量storageで回収するか」

 

「何でもありだな、お前達は・・・・」

 

という訳で、道案内のセラに加えて雪兎、シャルロット、簪、聖でキュプロクスの回収に向かうことになった。この編成の理由は上空から一気に移動する為で、機動力重視の装備を持つ者が選ばれた。雪兎とシャルロットは高機動パック【NJ:ネオイェーガー】、簪は高機動パッケージ【暴風】、聖は高機動バイザーボード【ソニックレイダー】、セラはエアバイザーにパフが残していったストームバイザーもある。だが、ここでもう二人この作戦に参加したいという者が現れた。

 

「俺も一緒に連れていってくれないか?」

 

「すまない、私も同行させてくれ」

 

それはシーンとニルギースだった。

 

「また珍しいコンビだな?ついてくるのは構わないが、装備がなぁ・・・・」

 

ストームバイザーを貸し出せばシーンかニルギースのどちらかは大丈夫なのだが、こういう時ジャイロバイザーが無いのが悔やまれる。理由はそれぞれ、シーンは興味から、ニルギースは協力者への連絡とのこと。

 

「ん?そういや実験的に作ってたアレがあったな」

 

そう言って雪兎が自身のstorageから量子変換して呼び出したのはモトバイザーとストームバイザーを足して二で割ったようなデザインの灰色のバイザーだった。

 

「こいつは?」

 

「ある実験で作ってたバイザーでジェットバイザー【ペガサス】だ。まだ未完成ではあるが、ちゃんとブリガンディモードにもなれるぞ」

 

「ペガサス・・・・天馬か、それにこの機構は・・・・中々に面白い発想をする」

 

ニルギースも兄がアムテクノロジーの技師あり、その研究データを使って自身のアムジャケットやバグシーンを作らせていたからか雪兎が未完成だと言った機構が何であるか気付いたらしい。

 

「ならこいつはあんたに預けるよ、ニルギース」

 

「承知した」

 

その結果シーンがストームバイザーを借りる事になり、他にも念のため改修したエッジバイザーとランドバイザーをstorageに格納して一同はキュプロクスのあるナムールリバーの外れを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ、これはいいな」

 

ナムールリバー周辺の上空にてジェットバイザーを乗り回すニルギースはその乗り心地に感心していた。

 

「モトバイザーと同じバイクみたいなバイザーだな」

 

「発想的にはエアバイクが元だからな」

 

しかも、このジェットバイザーは搭乗者のアムジャケットのカラーに合わせてカラーリングが変化するというオマケ機能やチューブチャージシステム対応だったりと地味に高性能なバイザーだった。

 

「ニルギースのはまだネオアムジャケットじゃないからチューブチャージシステムは使えないが、それでもストームバイザー並みの性能は保証するぜ」

 

「またとんでもないものを作ったな・・・・」

 

「そろそろナムール周辺か」

 

既にナムールリバー周辺はJA達が警戒網を敷いているも、雪兎達は高度をとって移動しているため楽々通過し、キュプロクスのある滝までやってきた。

 

「こいつがキュプロクスか・・・・」

 

キュプロクスをstorageに格納し、ニルギースは地下組織に連絡を取り、手配していた補給物資を受け取っていた。これもstorageがあった為、多めに手配出来ていた。

 

「これで補給物資は大丈夫だな」

 

「じゃあ、早いとこフライング・ラビットに戻るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警戒網を抜け、陽動の為に別行動しているフライング・ラビットに合流しようと合流ポイントへ移動を開始する。警戒網を越えてからはエネルギーの節約の為に雪兎が作成した小型のホバートレーラーで移動していた。その途中、大きめの川を通りかかった時だった。

 

「この反応は・・・・アムエネルギー、JAか?」

 

追ってきたのは黒いJA製のトパスを引き連れた黄色の装甲を持つアムドライバーだった。

 

「見つけたぞ、裏切り者にシーン=ピアース、それと未知の技術を使う小僧共か」

 

「お前は!?」

 

「ディグラーズか!」

 

その正体はかつてニルギース達と共にジェナス達を苦しめたアムドライバー・ガングリッド=ディグラーズだった。

 

「死んだはずじゃ」

 

「ああいう奴に限って中々死なないんだよなぁ」

 

「雪兎、エッジバイザーを!」

 

「ストーム、エッジ、ジェットバイザーセット」

 

逃げ切るのは困難と判断しシーン達はそれぞれバイザーをトレーラーから出撃させ、シャルロット達もISを展開する。

 

「いけっ!」

 

対するディグラーズもトパスを迎撃に向かわせ、自身も肩のハンマーギアとアームのエクステンションクロー、ハンマーシャフトを組み合わせてギガンデスハンマーにするとシーン達を迎え討つ。

 

「まずは裏切り者からだ!」

 

「ジェットバイザー、お前の力を見せてみろ!」

 

パワーアップしたディグラーズに対してニルギースは原作では一度も行わなかったバイザーのブリガンディモードを使用するという行動でギガンデスハンマーの一撃を凌いでみせた。

 

「ぬぅ!旧型のアムジャケットで俺のネオアムジャケットの攻撃を凌いだだと!?」

 

ディグラーズが驚くのも無理は無い。本来ならば通常のアムジャケット装備ではいくら強力なバイザーを装備してもネオアムジャケットとは勝負にならない性能差が存在する。かつてシーンもエッジバイザーを装備していながらネオアムジャケットのロシェットに圧倒されている。しかし、ニルギースはいくら通常のアムジャケットより強力なアムジャケットといえど出力的にはネオアムジャケットに大きく劣るはずなのだが、ニルギースはチューブを繋いでいるギガンデスハンマーを受け止めている。実はジェットバイザーにはISのパワーアシストシステムを組み込んでおり、ネオアムジャケットに負けないパワーを発揮出来るのだ。

 

「驚くのはまだ早いぞ、ディグラーズ」

 

「・・・・何、だと?」

 

そう、通常のアムジャケットでこの出力なのだ。つまり・・・・

 

「こうしたらどうなるのかくらいお前でも判るだろう?ディグラーズ」

 

例えば『他からチューブチャージしてもらえれば』どうなるのか?それは簡単な事だった。

 

「シーン=ピアース!?いつの間に!?」

 

いつの間にかニルギースの背後にいたシーンがジェットバイザーのチューブ接続部に自分のネオアムジャケットのチューブを接続していたのだ。

 

「「はぁああああっ!!」」

 

「ぐああああ!?」

 

そのパワーは容易くディグラーズを弾き飛ばしトパス達のど真ん中まで飛ばされてしまう。

 

「今だ!」

 

そこへシャルロット、簪、聖の三名(重複装備G、【白雷】、シャープガンナー装備)による集中攻撃を受け、トパスは全滅、ディグラーズもネオアムジャケットをボロボロにされながら何処ぞの悪役三人組のように夕暮れ空の星にされる。

 

「くっ、覚えていろぉ~!」

 

「残念、無念、また来週~・・・・やなかんじ~、ネオケケッ」

 

「なんでそのセリフ知ってんだよ・・・・ってか混ざってるし」

 

やられ際のネオケケの台詞につっこまずにはいられない雪兎なのであった。




はい、ディグラーズも咬ませ犬枠です。
それにしてもあいつ、崖があれば確実に落ちてますよね・・・・よく生きてんなぁ。


次回予告

ムーロンへ向かう前に最後の補給として立ち寄った町で出会ったのは頑固な技師とその娘。一方、ガン=ザルディに疑問を抱くニルギースはジェナス、シャシャ、雪兎を連れて彼に会う事になり、その道中にニルギースは己の過去を語る。

次回

「頑固親父とニルギースの過去 兎、ガン=ザルディに会う」




ジョイ「今回のメカは今回登場した新バイザー、ジェットバイザーッス!」

ラグナ「俺のネオアムジャケットじゃないのかよ!?」

ジョイ「通称はペガサス。実験的に作られたバイザーで未完成ながらディグラーズを圧倒する性能を秘めているッス」

ラグナ「無視かよ!?ところでその実験って?」

ジョイ「それはまだ秘密ッス。でも、雪兎が言うにはビークルモードとブリガンディモード以外の形態が存在するんだとか・・・・」


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89話 頑固親父とニルギースの過去 兎、ガン=ザルディに会う

待たせ棚!リアルが忙しくて更新できませんでした。

やっぱりアムドライバーの知名度はそんなもんか・・・・ちょっとしたあらすじとキャラ紹介いる?

アムドライバーが気になった人はあまりレンタルビデオ店に無いので動画で見る事をオススメします。

今回は29話~31話の各前半にあたるお話です。


ディグラーズを退け、何とかフライング・ラビットに合流した雪兎達。ナムールリバー周辺で補給物資は受け取ったが、ムーロンに向かう前にもう一度街に寄っておこうということでフライング・ラビットを別の場所に待機させ、買い出し班が中型のトラックで食糧等を買いに行く事になった。そして、肝心なフライング・ラビットの待機場所を探している時に雪兎は辺りの地形を見てある事に気付いた。

 

(あれ?この辺りって29話のワット=ジョバンニがいる町の辺じゃ・・・・)

 

ワット=ジョバンニ。道具を大事にしないシティのアムドライバーを嫌い、娘と共に人気の少ない町に工場を構える頑固親父なのだが、その腕前は第一級戦略兵器技術者という資格を持つ超一流と言っていい技術者だ。原作ではダークとタクトの二人が彼に気に入られてモノクルバイザーを譲渡されるのだが・・・・

 

「なあ、この町はどうだ?」

 

「うむ、JAの侵攻で人気の無くなった町か・・・・確かに隠れるのには打ってつけだな」

 

隠し場所も見つかり、買い出し班の一夏、箒、鈴、セシリア、ラウラ、ラグナ、シシーと分かれた雪兎達は早速その町に向かう事に。だが、そんな中、浮かない顔をしている人物がいた。

 

「どうしたんだ、ニルギース」

 

「・・・・少し、気になる事があってな」

 

(そういや、ガン=ザルディに疑問を持ち始めたのってこの頃か。となると、そろそろ・・・・)

 

そう、ニルギースはピースが三つに分けられていた事などガン=ザルディが伏せていた情報からガン=ザルディの目的を疑問視し始めていた。

 

「すまないが私達もしばらく別行動をさせてもらう」

 

「えっ?一体何処へ?」

 

「ガン=ザルディのところだ」

 

故にニルギースはガン=ザルディの真意を確かめるべく彼に会いに行く事にしたのだ。

 

「ジェナス、お前も来るか?」

 

「えっ?」

 

「ジェナス、カオニカイテアル」

 

シャシャの言う通りジェナスの顔は「俺も行きたい!」と書いてあると思えるくらい分かり易かった。

 

「あと、雪兎。お前にも来てもらいたい」

 

「俺も?」

 

「ああ。少し気掛かりな事があってな。付いて来てもらえると助かる」

 

どうやら先日の一件で雪兎はニルギースの信用を得たようだ。それにガン=ザルディに対して第三者からの意見も欲しいのだろう。

 

「・・・・そうだな。俺も一度会っておきたいとは思ってたから同行させてもらうよ」

 

一技師としてワット=ジョバンニに会えないのは少し残念ではあったが、敵対(・・)する前のガン=ザルディと接触出来る貴重な機会を逃すまいと、雪兎はニルギースの要請を承諾するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、気を付けてね」

 

「ああ、ちょっとラスボスの面を拝んでくるわ」

 

ガン=ザルディとは後にゼアムの利用法でジェナス達は対立することになり、アムドライバーという物語のラスボスポジションとなる存在だ。それを雪兎や簪から聞かされたシャルロットは「自分も付いて行く」と言ったのだが、もう一つこの後に起こる出来事への備えとしてシャルロットには残ってほしいと雪兎は言う。その出来事とは先日仲間になったシシーがロシェットの凶弾に倒れるというもの。また、死を免れたエーリックが物語の修正力で原作と同じくセラに殺される可能性もある。それらを回避するにはシャルロット達の力が必要になると雪兎は踏んでいた。

 

「マドカ達もセラとシシーを頼む」

 

「任せてくれ、兄さん」

 

(何処の誰が俺達をこの世界に招いたかは知らないが、俺が関わる以上、ジェナス達は誰一人欠けさせねぇ)

 

そんな事を考えつつも雪兎はニルギース、シャシャ、ジェナスと共にガン=ザルディが潜伏している街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん!」

 

フライング・ラビットが目的の町に到着すると、これまで異世界転移した原因と帰る方法を探るべく食事時以外研究室に引きこもっていた束が珍しく研究室から出てきた。

 

「束か、何か判ったのか?」

 

「あっ、ちーちゃん。うん、やっぱり原因はあの重力場で間違い無いよ。というか、重力場はどちらかと言うと副産物って言った方が正しいね」

 

「どういうことだ?」

 

「あの重力場の中心部の空間が歪んでててね。その歪みってのがどうも世界の境界線に穴を開けちゃってたんだ。それで、その歪みに世界の修正力が働いて直そうとして出来たのがあの重力場だったのさ!私達はその直そうとする修正力に巻き込まれたってことだね」

 

「巻き込まれた、か・・・・しかし、あれは明らかに我々を吸い寄せていたように思えたが」

 

(それに関してはおおよそ見当がついてるんだけどねぇ~、ゆーくんも多分気付いてるよね?)

 

その時束が思い浮かべたのは興味深く理解のある弟子の存在だ。

 

「あっ、元の世界に帰る方法だけど、もう一度あの重力場みたいな歪みに飛び込めば私達が本来いるはずの世界に帰してくれるはずだよ」

 

「それも修正力とやらの力か・・・・しかし、その歪みとやらはそんな簡単に発生するものなのか?」

 

「それに関しては心配要らないと思うよ?ゼアムとか言ったっけ?その膨大なエネルギーと束さんにかかれば歪みの一つや二つ簡単に作れるよ」

 

「つまりはこのまま彼らに協力し続ける事が帰還への最善策という訳か」

 

さらりととんでもないことを呟く束に呆れつつも色々とやらかさないよう見張ろうと決意する千冬だったが・・・・

 

「嬢ちゃんは話が判るじゃねぇか!」

 

「ワットさんこそ、この束さんについてこれる人が我が弟子以外にいるとは思わなかったよ」

 

何故か意気投合してしまった(天災)ワット(頑固親父)を止めるのは千冬(世界最強)をもってしても困難な事であった。

 

「まさかあのバカ()と会話が成立する人間がいるとはな・・・・」

 

「お姉さんも苦労してんらな」

 

苦労する友人()(ワット)を持つ者同士として千冬はワットの娘のビスに同情されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにザルディさんが・・・・」

 

ニルギースに連れられて雪兎達がやってきたのはとある港町。その一角にあるホテルが待ち合わせの場所らしく、そのホテルのフロントでガン=ザルディを待つ事に。しかし、一時間程待ったがガン=ザルディは一向に姿を見せない。すると、ニルギースの持つ端末が鳴る。

 

『私だ』

 

「ガン=ザルディ!」

 

連絡してきたのは待ち人であるガン=ザルディだった。

 

『待ち合わせの場所には着いたようだな。では、次は町外れの工場跡に向かってくれ』

 

それだけ言うとガン=ザルディは通信を切ってしまった。

 

「随分と疑り深いみたいだな、ガン=ザルディは」

 

「ガン=ザルディ、オビエテル」

 

「怯える、か・・・・評議会やJAを警戒するのは判るが、俺達すら完全には信用してないって感じだな」

 

「・・・・」

 

雪兎がそう呟くとニルギースは無言でホテルを出ていく。

 

「ニルギース?」

 

そんなニルギースにジェナスはいつもとは違った印象を持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニルギースの運転でガン=ザルディの指定した工場跡に向かう雪兎達。そんな中、ニルギースはガン=ザルディへの不信と自身の過去を口にした。イヴァン=ニルギースの兄・カペリ=ニルギースは当時は知らされていなかったがアムテクノロジーの研究者で、ガン=ザルディはその同僚だった。兄の紹介でガン=ザルディと出会ったイヴァンは研究で留守にしがちなカペリに代わって自分の世話をしてくれるガン=ザルディをもう一人の兄のように慕っていた。その後、バグシーンが現れカペリは家に帰ってこなくなった。ガン=ザルディが言うには研究が忙しいのだと。それからしばらくしてガン=ザルディがアムドライバーとして表舞台に登場する。そこでイヴァンはカペリ達の研究がアムテクノロジーに関するものであったと知ったらしい。当然アムドライバーに憧れを抱くイヴァンだったがその一年後、カペリが突然家に帰ってきたところで全ては一変する。当時の政府はアムテクノロジーの独占を考えカペリ達研究者を次々と消しており、カペリもその命を狙われ逃げてきたのだと言う。しかし、すぐに追手が家の外に現れてカペリを射殺。カペリから研究データと逃げ延びた研究者について記されたデータチップを託されたイヴァンは何とか逃げ延び、その前にガン=ザルディが姿を現した。ガン=ザルディも真実を知る者として命を狙われる立場にあり、姿を隠さねばならないと告げ、一緒に連れていって欲しいと頼むイヴァンに「アムドライバーは道化だ」と言い、「ここを頼れ」と何処かの連絡先の書かれたメモを渡して去っていったのだと。

 

「・・・・その後、逃げ延びた研究者達に独自に研究を続けさせジノベゼに接触。そこからはジェナスの知る通りだ」

 

連邦評議会議長・ウィルコットの失脚を狙うジノベゼはイヴァンのもたらした「アムドライバーとバグシーンの戦いはウィルコットの自作自演」という情報を得てJAを組織。しかし、イヴァン達の「アムドライバーが道化であるという真実を公表する」という目的とジノベゼのやり方は食い違い始め、ジノベゼに裏切られたイヴァンはジェナス達に導かれるようにガン=ザルディと再会し、ゼアムの事を知った。

 

「何故ゼアムのピースが三つある事を黙っていたのか?ピースを揃えゼアムが完成した時、ガン=ザルディはどうやって争いを止めるつもりなのか?ガン=ザルディもアムテクノロジーを利用しようとしている一人ではないのか?そんな気がしてならないのだ」

 

「ニルギース・・・・」

 

「いいのか?そんな話をジェナスはともかく俺にまで聞かせて?」

 

「ああ、お前達二人には聞いておいて欲しかった」

 

そうこうしている間に工場跡に到着する。

 

「お待ちしておりました」

 

「オリヴィエさん!」

 

そこで待っていたのはガン=ザルディのローディを務めていたデューク=オリヴィエだった。

 

「お久しぶりですなぁ。そして、そちらの方はお初にお目にかかりますな。私はデューク=オリヴィエと申します」

 

「天野雪兎です」

 

そのオリヴィエの運転で四人はガン=ザルディの待つ空港にあるジェット機の前へと案内された。

 

「私に話とは何かね?」

 

そして、ジェット機の中からガン=ザルディが姿を現した。




少し駆け足になりましたが、今回はここまで。
ガン=ザルディとの対話は次回になります。


次回予告

ついにガン=ザルディと対面した雪兎達。雪兎はニルギースに代わりにガン=ザルディにある事を問う。その一方、ラグナ・シシーと共に買い出しに出た一夏達。箒達はラグナとシシーの仲睦まじい二人に充てられて一夏との距離を縮めようとあの手この手でアピールをするが・・・・

次回

「真実の行方と恋の行方 兎、ガン=ザルディと話す」










ジョイ「今回は・・・・」

ラグナ「今回こそ、俺のネオアムジャケットだよな!?」

ジョイ「仕方ないッスねぇ・・・・今回はラグナのネオアムジャケットにするッス」

ラグナ「やったぜ!」

ジョイ「とはいえ、ジェナス同様基本的なところは変わらず、追加されたハイコートカノンを含めた多彩な銃火器を代わる代わる展開したり、マルチジョイントガンと組み合わせたりする装備ッス」

ラグナ「高速切替だっけ?俺もその適性があるらしくてよ。シャルロットさんと雪兎にしごかれたぜ」

ジョイ「その他の武装はそのうち本編で出ると思うッス」


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90話 真実の行方と恋の行方 兎、ガン=ザルディと話す

遅くなりましたが前回の続きの中編です。


アーキタイプ・ブレイカー始めました。ユーザー名は天野雪兎です。


連絡事項
・各設定を更新しました。
・各話のサブタイトルに話数を付けました。


ガン=ザルディ。ファーストアムドライバーと呼ばれ、数多くのバグシーンを葬ってきた伝説のアムドライバー。そして、アムドライバーとバグシーンの真実を知る男。

 

「おや?見慣れない顔がいるようだが?」

 

ニルギースやジェナスを見回し、雪兎の姿を見つけるとガン=ザルディはニルギースに訊ねる。

 

「雪兎、我々の協力者だ」

 

「なるほど、彼が例の未知のパワードスーツを使う者達か」

 

「随分と通る耳をお持ちで」

 

「そうでなければ今の今まで生き長らえていないさ」

 

雪兎の言葉にそう皮肉で返すとガン=ザルディはニルギースへと向き直る。

 

「それで、聞きたいこととは何だね?」

 

「もういい!何故ピースが三つある事を黙っていたのか?完成させたゼアムをどう使うつもりなのか?聞くつもりだったがーー」

 

「そんじゃあ、俺に質問させてくれ」

 

ニルギースが会話を断とうとしたその時、雪兎がニルギースの言葉を遮る。

 

「雪兎?」

 

「何かね?」

 

そんな雪兎に興味を持ったのかガン=ザルディは質問を許した。

 

「ガン=ザルディ、あんたにとってアムドライバーとは何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって買い出しに出た一夏達はというと・・・・

 

「え~っと、ここで買う物はっと・・・・」

 

「一夏、これはいくつ買うんだったか?」

 

「箒、それは五つだ」

 

ラグナ・シシーの二人とは別々に買い物をしていた。シシーにお熱なラグナに一夏達が気を利かせたのだ。分担は食品の目利きが出来る一夏がいる一夏達が食品関係、その他の雑貨系をラグナ達にという感じだ。なお、セシリアは一夏の監視下の元カートの荷物番だ。これまでのあれこれでこと料理については食べられるレベルにはなったものの、一夏達の信頼は勝ち得ていないのだ。

 

「セシリア、今回は予算が決まってるから余計な物は一切買わないからな?」

 

「わ、わかっていますわ、一夏さん。私だってそれくらいは弁えていますわ!」

 

「信じてあげたいけど、あんたは実績がね・・・・一夏、これでよかった?」

 

「流石だな、鈴。うん、これなら満足いく料理が出来そうだ」

 

失った信頼は簡単には取り戻せない。セシリアはこの時程その言葉の意味を実感した事がなかった。そして改めてもっとちゃんとした料理を作れるようになろうと涙ながら決意するのだった。

 

「ところでラウレリア達は上手くいっているのだろうか?」

 

「大丈夫なんじゃないかな?シシーもラグナの事は気になってるみたいだったし」

 

ラグナはその性格とは裏腹にシシーに対しては真剣に想っているようで、シシー加入後は何かと彼女を気にかけたりしており、そんなラグナにシシーも惹かれているような感じを一夏達は感じ取っていた。

 

「割と似た者同士って感じもするし、あの二人が仲良くしてるのを見ても嫌な感じはしないからな・・・・」

 

「確かに・・・・あの二人はそんな感じがするな」

 

「聖に聞いた話ではあの二人は両想いだそうだ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、だが・・・・」

 

その後、シシーがどうなったのかはラウラの表情を見れば想像は容易だろう。

 

「なるほど、雪兎があの二人を気にかけてくれと言っていたのはそういう事か」

 

「それにしても何でそれを聖が知ってたわけ?」

 

「うむ、どうもウェーブライダーのバイザーボードはジェナス達の使っているバイザーがモデルなんだとか。それでその扱いを学ぶ教材としてDVDを貸してもらったらしい」

 

まさかアムドライバーの世界に跳ばされるとは雪兎も思っていなかっただろう。しかし、この情報は非常に有益だ。

 

「ってことは、雪兎がニルギース達と行く前に大急ぎで完成させてたアレって・・・・」

 

「おそらくはその展開を打破する為の何かだろう」

 

「確かにアイツがそんなシナリオ通りの展開なんて認める訳無いわよね・・・・」

 

「絶対にそんな展開ぶち壊しますわね、雪兎さんなら」

 

「姉さんと一緒に亡国機業もあれだけ手玉に取っていたアイツならやりかねん・・・・というか、今までもそういう事をやっていたと聞かされても私はもう驚かんぞ」

 

箒がさりげに核心をついていたが他の面々も「雪兎なら・・・・」と思っている。案外雪兎が真実を打ち明ける日も早く訪れるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別行動をしていたラグナとシシーは買い物を終えた後、シシーの夢が学校の先生だったことを打ち明けられたり、子供達に混ざってサッカーをしたり、二人でボートに乗ったり、公園のブランコに乗ってラグナがシシーと同じ夢を見たいと語ったり、といい雰囲気だったが、そこに突然ジョイからの通信が入る。

 

「はぁ?合流ポイントの変更?」

 

『はいッス。どこから嗅ぎ付けたのか町にディグラーズが攻めてきて応戦。その場はダークさん達や千冬さん達が何とかしてくれたんスけど、潜伏先を変えなきゃいけなくなって・・・・』

 

聞けば例によって雪兎と離れ離れになってしまった事でストレスの溜まっていたシャルロットとたまには運動しなくてはと出撃した千冬が獅子奮迅の活躍だったらしい。

 

『今度はロシェット達が大量のバグッチを連れて追ってきてて』

 

「わかった。一夏達と合流してすぐに戻る!」

 

楽しい一時は終わり、新たなる戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私にとってアムドライバーとは何か?か・・・・私にとってアムドライバーとは【道化】だよ」

 

雪兎の問いにガン=ザルディは少し間を空けてそう答えた。

 

「【道化】か・・・・なるほど、バグシーンとの茶番にウィルコットとジノベゼの対立。確かに市民と共に踊らされ続けていたアムドライバーを皮肉った表現をするならその言葉が適切だな」

 

ガン=ザルディの言葉に納得する雪兎だったが、「だが」と言葉を続ける。

 

「俺がこいつらを見てきて思ったのは【希望】だ。確かにバグシーンとアムドライバーはウィルコットの操り人形だった。だけど、最初にあんたの活躍を目にした人々がアムドライバーの活躍に【希望】を持ったのは嘘偽りの無い事実だろ?それと同じように俺はジェナス達ならこの終わりの見えない戦いに決着をつけてくれる。俺はそんな人々の【希望】を見た」

 

「雪兎・・・・」

 

「俺達が使うISも元々は見果てぬ宇宙を夢見て作られた【希望】だ。あんたやカペリって人も人同士の争いの無い世界っていう【希望】をアムドライバーに託してたんじゃなかったのか?」

 

「・・・・」

 

雪兎の思いがけない言葉にガン=ザルディは口を閉ざす。

 

「雪兎が私の言いたかった事をほとんど言ってくれた。だからこれだけ言っておく・・・・ゼアムの使い道は私と彼らで決める」

 

「・・・・ゼアムのピースの半分は私が持っていることを忘れない事だ。それと雪兎といったかな?君と話せて良かった」

 

「そりゃあ光栄だな」

 

「ジェナス君も使命を忘れないでくれたまえ」

 

そう告げるとガン=ザルディは小型のプライベートジェットで飛び立っていった。

 

「よかったのか?あんなこと言って」

 

「構わんさ、帰るべき場所を失っただけだ」

 

「そんなこと無いさ。俺達はもう仲間なんだから」

 

「アムドライバー、アムドライバーヲホロボスノトナカマ。オカシイ」

 

かつては敵対していたジェナスとニルギース。それを疑問に思いながらも嬉しそうにするシャシャ。

 

「行く場所がなけりゃ全部終わってから俺達の世界に来るか?ちょっと人手がいる事してるもんでな、イヴァンなら歓迎するぜ」

 

「イヴァン?どうしていきなり名前呼びに?」

 

突然イヴァンの呼び方を改めた雪兎にジェナスが訊ねると。

 

「仲間なのにいつまでもファミリーネーム呼びってのもおかしいだろ?」

 

と、割と真面目な答えが返ってきた。

 

「なるほどな・・・・では行く当てがなくなったら頼らせてもらうとしよう」

 

「それじゃあ、お喋りはこの辺で終わりにするとしようか・・・・JAの連中が近付いてきてる」

 

「ちっ!全員車に乗れ!」

 

イヴァンの指示で車に乗り込むジェナスとシャシャ。しかし、雪兎は乗ろうとしない。

 

「雪兎は乗らないのか!?」

 

「一人くらい迎撃に出る必要あるだろう?今満足な装備が使えるのは俺一人。なら俺が担当するのも当然だろ?」

 

そう言って雪兎は雪華を展開する。

 

「すまない、頼む」

 

「任せろ」

 

「いたぞ!」

 

丁度その時、JAのアムドライバー達か雪兎達の元へと殺到してきた。

 

「さてと、ド派手なカーチェイスといこうか!」




もう少しだけ続きます。

スマホの画面が割れて書き難い・・・・


次回予告

雪兎達がJAとカーチェイスを繰り広げる一方で、フライング・ラビットをロシェット達が襲撃する。一夏達と合流したラグナとシシーも現場に駆けつけ応戦するが・・・・

次回

「凶弾の行方と目覚めた獣 兎、逃走中」

今回はメカコーナーはお休みです。


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91話 凶弾の行方と目覚めた獣 兎、逃走中

また少し空きましたが、今年最後の更新になります。

来年もISー兎協奏曲ーをよろしくお願いいたします。


JAとのカーチェイスは町中ということもあって銃器は使わず車体を使った体当たりが主になったが、そこに雪兎が雪華で割り込んだためにJAの乗る車が一方的にダメージを追っていた。しかし、町を出るとJAは増援を呼び寄せたため、雪兎とイヴァンは目眩ましをしている間にジェナスとシャシャを車から下ろし囮になることに。ジェナス達には光学迷彩マントを装備させたので無事に逃げおおせただろう。

 

「熱烈な歓迎だな、イヴァン」

 

「そうだな。しかし、良かったのか?」

 

「何がだ?」

 

「わざわざこちらに残らずジェナス達と先に戻っても良かったのだぞ?」

 

どうやらイヴァンは囮に雪兎を付き合わせた事を悔いているようだ。

 

「それに、お前に何かあったらデュノアに何と言われるか・・・・」

 

「・・・・埋め合わせはするさ」

 

雪兎もそこまでは考えていなかったようだ。二人がこんな会話をする余裕があるのは雪兎が使っている装備が【NF:ネオフォートレス】と【NW:ネオウィザード】であるからだ。バグシーンはグラスパーで無力化。JAの攻撃は【NF:ネオフォートレス】の装甲の前には無力。というか、雪兎が反撃すれば一瞬で片付きそうなのだがジェナス達を逃がす囮の為に反撃していないだけだ。

 

「で?どうするよ、イヴァン」

 

「できればもう少し引寄せておきたいものだが・・・・せめて、私にもアムジャケットがあれば」

 

「・・・・アムジャケットがあればいいんだな?」

 

そう言うと、雪兎は竜が剣を抱える意匠のペンダントを取り出す。

 

「それは?」

 

「こんなこともあろうかと、ってやつだ。ISの技術を流用して作ったイヴァン用のネオアムジャケットさ。この前、シーンとラグナが話してたのを参考に作ってみた瞬間装着仕様」

 

「・・・・お前というやつはこちらの想像を容易く凌駕するな」

 

()常識とはよく言われる。使い方は判るな?」

 

「ああ」

 

「そんじゃあ」

 

「派手にいくとしようか」

 

車を乗り捨てネオアムジャケットを纏ったイヴァンと【NB:ネオブレイド】+【NJ:ネオイェーガー】に装甲切換した雪兎の反撃が始まる。この時出動したJAの面々は後にこう語る・・・・

 

「あれは人ではない・・・・災害か何かだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、襲撃を受けていたフライング・ラビットはロシェット達が無断で持ち出した旧型を含めた大量のバグシーンの軍勢に追われていた。

 

「敵も必死だな」

 

どうやらディグラーズの復帰と度重なる失態で彼らも追い込まれているようだ。

 

「いくら数を揃えてもこっちには対物量装備があるもんね!」

 

「リーダー機は任せなさい」

 

エリカがリーダー機を超遠距離狙撃用電磁投射式オーバーレンジライフル【アルテミス】で狙撃し、聖がガトリングガンを乱射して動きの鈍ったバグシーンを蜂の巣に変えていく。

 

「もう少しで一夏君達が合流するそうよ」

 

「合流する前に片付けてしまっても構わんだろう?」

 

一夏達から通信を受けた楯無がそう言うと、撃ち漏らしたバグシーンを蹴散らしながら晶が「やってしまっても構わんのだろう?」と獰猛な笑みを浮かべる。

 

「晶、それフラグだから・・・・」

 

簪がそう呟くと今度は地下水路で遭遇したトパスⅢがフライング・ラビットの進路上に出現する。

 

「げっ!?」

 

慌てて晶が迎撃に行こうとするが、その前にトパスⅢが光の雨に貫かれて撃破されていく。

 

「頭上がお留守でしてよ?」

 

「セシリア!」

 

トパスⅢを撃破したのは進化したブルー・ティアーズ・ガブリエルのビットのレーザーだった。

 

「一夏さん達もすぐにいらっしゃいますわ」

 

セシリアの言う通りフライング・ラビットの進路上に隠れていたバグシーンを撃破しながら一夏達が合流する。

 

「皆、無事か?」

 

「ああ、こっちは何とかってとこだが、シーン達があの噛ませ犬野郎達とやってる」

 

「そうか・・・・あっちは彼らに任せてこっちは船の防衛に専念しよう」

 

「俺らも一度船に戻ってーー」

 

ISがあった一夏達と違い、アムジャケットの無かったラグナが運転する車がフライング・ラビットへと戻ろうとハッチに入ろうとしたその時、倒したと思っていたトパスの一体が再起動し勢いよく開いたハッチ目掛けて飛び出した。

 

「ラグナ!シシー!」

 

皆がそのトパスを迎撃しようとするが、思った以上の速度でハッチに迫るトパスに反応が遅れてしまう。ラグナも咄嗟にシシーを庇うように抱き寄せるが・・・・その瞬間ハッチの中から何かが飛び出す。

 

「・・・・あれ?」

 

ガシッという音がしてラグナが音のする方を向くと、二人に迫っていたトパスはグレーの巨大な狼のようなロボットに咥えられ動きを止めていた。

 

「ワッツ!?な、何なんだコイツ・・・・」

 

その狼型のロボットは咥えたトパスを噛み砕き放り捨てるとラグナを見下ろす。すると、ロボットから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『このメッセージを聞いてるってことはガルムは無事に起動したということだな』

 

「この声は雪兎?ってことはコイツは雪兎が作ってた・・・・」

 

『コイツはビーストバイザーっていう新しいカテゴリーのバイザーでチェイスバイザー・モデル【ガルム】という。ラグナ、お前専用に調整したバイザーだ』

 

「俺、専用・・・・」

 

二人を助けた狼型のロボットは雪兎が開発していた新型バイザーだった。

 

『ビーストバイザーはビークルモードとブリガンディモードの他に自律行動が可能なビーストモードに変形できる。このガルムはお前に合わせてバイク形態に変形できる。詳しい説明はお前のアムジャケットに転送しておいたから確認しといてくれ』

 

メッセージが終わるとガルムはラグナとシシーを守るように周囲を警戒し始める。

 

「ラグナ、無事で良かった・・・・」

 

「ああ、雪兎とコイツのおかげさ」

 

ラグナがガルムに触れるとガルムのグレーの装甲が黒く染まりクリアグレーの部分がラグナのアムジャケットと同じクリアレッドへと変わる。

 

「あんにゃろう、憎い演出しやがって」

 

「フェイズシフト装甲・・・・流石は雪兎、分かってる」

 

その演出に苦笑するラグナ、そして簪は雪兎が何をモデルにしているか察してうんうんと頷く。

 

「シシーちゃん。俺、行ってくるわ」

 

「ラグナ!」

 

ラグナがアムジャケットを身に付けてそう言うとシシーがラグナを呼び止める。

 

「シシーちゃん?」

 

「あ、あのね・・・・ラグナが戻ってきたら伝えたいことがあるの!だから絶対に帰ってきてね!」

 

「オーライだぜ、シシーちゃん!絶対に無事に帰ってくるから待っててくれよ!」

 

シシーの言葉に笑顔でそう答えるラグナ。その後、ガルムをバイク形態に変形させ乗り込みラグナは出撃する。

 

「いくぜ、相棒!アロンジー!!」




という訳で新オリジナルバイザー登場です。


次回予告

新たなバイザー・ガルムの出現で窮地を逃れたラグナとシシー。しかし、新たな力を得ていたのはラグナだけではなかった。

次回

「ロシェットの逆襲 兎、出番無し!?」







ジョイ「今回のメカは雪兎と共同開発した新バイザー!その名もビーストバイザーシリーズ2号機チェイスバイザー・モデル【ガルム】ッス!」

ラグナ「俺の新バイザーだな!って、2号機?」

ジョイ「ビーストバイザーは従来までのバイザーがビークルモードとブリガンディモードの二形態だったのに対し、自律行動形態であるビーストモードを搭載したバイザーッス。チェイスバイザー・モデル【ガルム】以降はガルムはラグナに合わせてバイク形態に変形する狼型のバイザーッス」

ラグナ「1号機は!?」

ジョイ「ビーストモードでは前足のネイルクローや高周波振動するバイブレーションファングによる近接戦闘、背中の大型ビームキャノン【イフリート】やミサイルポットによる射撃も可能なんス!」

ラグナ「スッゲー1号機が気になるんだけど!?」

ジョイ「ブリガンディモードではバイク形態のタイヤがホイールギアという武器になったり、脚部についたランニングスピナーによって高速機動が出来たり、他にも拡張領域に多くの武装を備えたかなりハイスペックなバイザーッス」

ラグナ「無視ですか・・・・」

ジョイ「今後もビーストバイザーは続々登場予定ッス。なので楽しみにしていて欲しいッス」

雪兎「それでは皆さん、良いお年を!」


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92話 ロシェットの逆襲 兎、出番無し!?

遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
今年もISー兎協奏曲ーをよろしくお願いいたします。

そろそろ本編が100話越えますね・・・・越えたら何か番外編をやろうかと思います。
北斎は手に入れたけど、晴れ着シャルは出なかった・・・・


「シィィィイイン!!」

 

「ロシェェェエエエエ!!」

 

フライング・ラビットから少し離れた場所でシーンとロシェットはそれぞれ手にした大剣【ヴァリアブルアームズ】とナイトメアブレードをぶつけ合う。

ヴァリアブルアームズはシーン用に雪兎が改修したネオアムジャケットの武装でカテリナのリヴァイヴⅡCの可変合体武装ヴァリアブル・リッパーをアムドライバー仕様にしたもので、装甲パーツと合わせて双銃剣、大剣、双刃剣、弓に可変合体する。また、チューブを接続すれば剣からビームを放つことも可能だ(原作でもダークのネオアムジャケットのナックルからは拳状のエネルギーを飛ばしてた)。つまり、「ーーカリバー!!」が出来るのだ(ここ重要!)。

 

「くっ!」

 

打ち負けたのはロシェットだった。装備性能の差もあるが、かつてのチームメイトであったロシェット達と戦う覚悟を決めたシーンと、大した覚悟も無くシーンを追い落とすことを考えてキャシーの甘言に乗ってJAについたロシェットでは心技体全てにおいてシーンの方が勝っていた。

 

「ロシェ!」

 

「おっと、お前さん達の相手は俺達だぜ?」

 

「はははっ!やっちまうか?やっちまうぜ!やっちまおうぜ!」

 

「くそっ!」

 

「シーンの邪魔はさせない!」

 

残るK.K.やエーリック、バグシーン達はダーク達に抑えられており、シーンとロシェットの一騎討ちの邪魔をする者はいない。

 

「こうなったらアレを使う!こい!【バンダースナッチ】!」

 

劣勢に陥ったロシェットは多脚型の昆虫を模したバグシーンとバイザーを組み合わせた新兵器バグブレイム【バンダースナッチ】を呼び寄せ背面に接続する。このバンダースナッチは脚部がガンスラスター【ドラグヴァンディル】という兵装になっており、推進装置として以外にもビーム兵器としても使うことが出来る。これにより複雑な変則機動と多彩な攻撃を仕掛けることが可能なのだが、雪兎からすれば京都でオータムの使っていたアラクネⅡ【アトラク・ナクア】の劣化版程度の認識だ。

 

「これが僕の奥の手だ、シーン!」

 

「バグシーン型のバイザーか・・・・」

 

自律行動も可能な事から使い方次第では確かに脅威になりそうなバイザーではあるが、シーンは雪兎達の使う白月や白鳳、コスモスを知っているせいか大した脅威には見えなかった。白月達はISコアに内蔵された高度なAIがある事もあってそれ単体でも桁外れの性能を有している。それに比べたらバンダースナッチなど赤子も同然なのだから仕方あるまい。

 

「そっちもバイザーを着けなくていいのかい?シーン」

 

「必要無いな。ヴァリアブルアームズ(コレ)で十分だ」

 

「舐めやがって!!いけっ、ドラグヴァンディル!!」

 

そんなシーンの言葉に激昂したロシェットはドラグヴァンディルを一斉に展開しシーンへとビームの雨を放つ。

 

「はっ!その程度、あの弾幕に比べたらどうということは無い!」

 

しかし、シーンはヴァリアブルアームズを双刃剣に組み替え、それを高速回転させることで対ビームコーティングされた刃でビームを弾いていく。また、シーンも移動の合間に雪兎達と模擬戦を行い、あの弾幕の洗礼を受けていたらしく、この程度の弾幕では動じない。

 

「くそっ!くそっ!くそぉおおおおっ!!」

 

ダメージを与えられないことに苛立ちエネルギー残量を考えずドラグヴァンディルを乱射し続けたことでロシェットのアムジャケットのエネルギー残量はあっという間に尽きてしまう。その隙をシーンは見逃さず、ヴァリアブルアームズを弓に組み替え背面のチューブを接続しチャージを開始する。

 

「・・・・穿て、ライトニングバースト!!」

 

そして緑の雷光は矢となってロシェットへと迫る。

 

「ひ、ひぃ!!」

 

咄嗟にバンダースナッチを分離させ、それを楯にすることで直撃を避けたが、大破したバンダースナッチの爆風で大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「ロシェット!?」

 

「くっ、ここは退くしかない!エーリック、ロシェを」

 

自分達の不利を察したK.K.は即座に撤退を宣言し、エーリックと共に気を失ったロシェットを連れ撤退していった。ただ、残った大量のバグシーンを置き土産として残していったことと、フライング・ラビットから遠く離れる訳にはいかなかったため、シーン達もロシェットを追う事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がしたか・・・・」

 

残ったバグシーンはラグナの合流やジェナス達の帰還により殲滅する事は出来たものの、結局はロシェット達を取り逃がしてしまったのは大きかった。それとは別に彼らには心配な事があった。

 

「それに雪兎とニルギースもまだ戻ってない」

 

そう、雪兎とイヴァンの事だ。

 

「あの二人の事だから大丈夫だとは思うが・・・・」

 

「何、あいつらの事だ。そのうちひょっこり帰ってくるさ」

 

彼ら(主に雪兎)をよく知る面々はそこまで心配してはいないようだったが・・・・むしろ、また何かやらかしてないか?という方が心配だった。

 

「雪兎のバカ・・・・(絶対に帰ってきたら心配させた分の色々してもらうんだから)」

 

それでも心配になるシャルロットは密かにそんなことを考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その雪兎はというと・・・・

 

「なあ、イヴァン・・・・俺と、人の形をした災害と呼ばれた俺と取引してみないか?」

 

この世界を変える取引をイヴァンに持ちかけていた。




ロシェット乙・・・・

シーンのネオアムジャケットは完全に原作とは別物です。解説は下の方で。
そして兎はついに本格的に動き出す。


次回予告

他の面々がロシェット達の襲撃を返り討ちにしている最中、雪兎はイヴァンにある取引を持ちかける。そして一行はムーロンへと旅立つ。


次回

「雪兎の取引と二つ目のピース 兎、取引をする」



ジョイ「今回のメカは大きく改変されたシーンのネオアムジャケットッス」

シーン「俺のアムジャケットだな」

ジョイ「原作では連結して射出出来るミサイルポットを装備してたッスけど、シーンのスペックを最大限に活かすために距離を選ばずに使用する事が出来る可変合体武装ヴァリアブルアームズを装備したッス」

シーン「近・中・遠距離どこでも対応出来るな」

ジョイ「今回は弓形態で使ったッスけど、各形態でチューブチャージが可能で恐ろしく汎用性が高い装備ッス。でも、その分扱いが難しい装備でもあるッス」

シーン「組み替えの練習とか言っていくつも立体パズルやらされたな・・・・」

ジョイ「雪兎曰く『変形武器の練習には手先の器用さを培うパズルが打ってつけなんだよ』とか言ってたッス」

シーン「他にも金剛なんとかとかいう武器の使い手がどうとか言ってたな」

ジョイ「それとぶっちゃけ、あの装備小型のエッジバイザーみたいなもんなので並のバイザー要らないんスよね・・・・」

シーン「ロシェを挑発するのに役に立ったな」

ジョイ「今後出るシーン用の新バイザーも結構ヤバいんスけどね・・・・」

シーン「えっ!?」


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93話 雪兎の取引と二つ目のピース 兎、取引をする

今回は雪兎が本格的に動き出します。

そして、あの元アムドライバーのあの男も登場・・・・


「なあ、イヴァン・・・・俺と、人の形をした災害と呼ばれた俺と取引してみないか?」

 

追っ手のJAを蹴散らした後、ジェナス達とは別ルートで皆との合流しようと大きく迂回するルートを使っていた。その途中、雪兎はイヴァンにある取引を持ちかけた。

 

「取引だと?」

 

「そっ、何かザルディともゼアムを巡って揉めそうな感じだし、ウィルコット派とジノベゼ派が本格的にドンパチやり出すのも時間の問題だろ?」

 

「ああ、組織が手に入れた情報でも双方が戦力を集結させつつあると聞いている」

 

「人間同士の争いを止める為に作られたアムテクノロジーがその人間同士の争いに使われる・・・・皮肉過ぎるだろ?」

 

アムテクノロジーは人間同士の争いを止めようと人類共通の敵・バグシーンを人工的に作り出し、アムドライバーというヒーローを使って人類の結束を強めようとして作り出されたものだ。だが、アムテクノロジーを独占しようとした一部の者達によってその在り方は歪められた。これはISにも同じ事が言える。当初、宇宙開発用に束がISを発表した際には多くの人々が夢物語だと相手されなかった。だが、白騎士事件で兵器としての有用性を見せれば人々は掌を返して束へとすり寄っていき、ISが女性にしか使えないと判ると今度は女性というだけで男性を見下す女性権利主義者が台頭するようになった。

 

「ザルディがゼアムをどう使うつもりなのかは知らないが、争いを鎮静化出来るは一時的なものに過ぎない、と俺は考えている」

 

そしてイヴァンは雪兎のよく知る幼馴染の少女・箒と境遇が重なる点がある。まずは両者ともその技術の産みの親が兄・姉であること。イヴァンはその技術を独占しようとする者達に兄を殺され、箒は重要人物保護プログラムによって家族や一夏と離れ離れにされ、それぞれ理由は違えど各地を転々とせざるえなかった。また、イヴァンは復讐の為に、箒は姉が開発者であったことと自身にIS適正があったことからその技術とは切っても切れない関係が存在した。そして、イヴァンは兄のような存在であったガン=ザルディによってゼアムの存在を知り、箒は一夏と共に在りたいと願い、それぞれその技術を求めた。そんなこともあってか雪兎にはイヴァンの事が他人事には思えなかったのだ。

 

「だからこの争いを止める鍵はゼアムじゃないと?」

 

「ああ、そして武力以外の断罪の場を求めるのであれば俺がその場を設けてやる」

 

そこまで言うと雪兎は不敵な笑みを浮かべこう続ける。

 

「元の世界で【兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)】と呼ばれたこの俺がな」

 

「なるほど、悪魔との契約という訳か。ならばその対価だが・・・・私の今後の人生でどうだ?あの話、乗ろうじゃないか」

 

悪魔との契約と言いながらもイヴァンも同じような笑みを浮かべながら、その対価として雪兎がガン=ザルディと話し終えた際に言った「行く場所がなけりゃ全部終わってから俺達の世界に来るか?」という提案に乗ると言い出した。

 

「・・・・くくっ、くははは、ははははは!」

 

これには流石の雪兎も笑いを堪えきれなかった。

 

「くくっ、お前さ・・・・対価に自分の人生差し出すとか正気か?」

 

「私一人の人生を対価に世界を変革出来るならば安いものだろう?」

 

「違いねぇな!いいぜ、その対価で取引成立だ!」

 

この契約によりこの世界の結末は原作とは大きく変化する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、心配したんだからね!」

 

その後、フライング・ラビットに合流した雪兎達を待っていたのは涙目のシャルロットだった。雪兎がそう簡単にはやられないのはシャルロットも勿論知ってはいるが、心配しなかったかといえばNOであり、色々あって若干雪兎に依存気味なシャルロットからしたら雪兎達と別れていたこの数日間は耐え難いものだったようだ。

 

「す、すまん・・・・連中、数だけは多いから見つからないよう移動すんのに手間取ってな」

 

「今日一日絶対に離れないから!」

 

「えっ?」

 

そう宣言したシャルロットは早速「離すもんか!」と言わんばかりに雪兎の右腕にしがみつく。

 

「あの~、シャルロットさん?これじゃあ俺、何も出来ないんですけど・・・・」

 

「・・・・離さないって言った」

 

「飯も食えないんだが・・・・」

 

「僕が食べさせてあげる」

 

「風呂とかは・・・・」

 

「・・・・僕は雪兎なら」

 

「・・・・」

 

「・・・・いや?」

 

「・・・・もう勝手にしてくれ」

 

その日は結局寝るまでシャルロットは雪兎を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ムーロンへ向けて出発した一行にウィルコット派のNo.2の元アムドライバーの議員ランディ=シムカが通信を入れてきた。

 

『やあ、ジェナス君。ミュネーゼではご活躍だったね』

 

ミュネーゼでのシシー救出の報はシムカの元にも届いているようだ。

 

『ナムールリバーを失ったのは大きかったが、アムドラサポーターであるシシー君の救出は大きな成果だ』

 

シシーはその容姿からアイドル的な人気もある為、影響力も大きいのだろう。そんな彼女がJAの手から救い出されたのはシムカとしても喜ばしい事のようだ。

 

「それで、そんな労いの言葉が本題ではないのでしょう?」

 

『おお!そうだった。ジェナス君、君達のところにアムドライバーとは異なるパワードスーツを使う一団がいるそうだね?』

 

ジェナスの言葉に大袈裟に頷くとシムカは雪兎達IS勢の事を話題に挙げた。

 

『彼らの責任者と話がしたいのだが』

 

どうやらシムカはジェナス達ピュアアムドライバーだけでなくIS勢をも自分達連邦評議会に引き込もうと考えているらしい。

 

「少し待って下さい」

 

そう言ってジェナスがモニターから席を外すと、雪兎達に相談する。

 

「シムカはああ言ってるが・・・・」

 

「そういう事なら私が出よう」

 

そう言って千冬が交渉の席につく。雪兎達は生徒で、教師陣の中で最も権限があるのは千冬だ。だから千冬が交渉の席につくのも納得である。

 

「待たせたな。私が彼らの代表の織斑千冬だ」

 

その後、千冬とシムカの交渉が始まるもシムカはISをアムドライバーに代わる戦力としてしか見ておらず、それに対し生徒を保護する立場であり、IS学園の教師としてISを兵器転用させる訳にはいかないとシムカの言葉に首を縦に振らない。これにシムカは激怒し雪兎や束に聞かせてはいけない言葉を発してしまう。

 

『ええい!こちらが高待遇で迎えてやると言うのに!黙って頷いていれば兵器開発部門(・・・・・・)に率いれてやったものを!!』

 

(ぴくっ)

 

『それにジェナス達への支援も打ち切ってもいいのだぞ!!』

 

そのシムカの言葉に「ブチッ!」と何かが切れる音がし、皆が振り返るとそこには目元に影を落としつつも不気味な笑みを浮かべる兎達がいた。

 

「ねぇ、ゆーくん。私の聞き間違いかな?あのミジンコ、私のISを兵器って言わなかったかな?かな?」

 

「聞き間違いじゃないですよ。俺もしっかり聞きましたから・・・・それにあのミドコンドリア、俺達が従わないならジェナス達の支援打ち切るとか脅してきましたよ?」

 

この時、一夏達は勿論ジェナス達も「シムカ、終わったな・・・・」と心を一つにしていた。

 

「そっか、聞き間違いじゃないのか・・・・ゆーくん、やっちゃおうか?」

 

「ええ、師匠。やっちまいましょう」

 

そう言うと二人は目にも止まらぬ速さで投影式のコンソールを操作し始める。そんな二人を見てダークがジェナスや千冬の代わりにシムカへ返答する。

 

「シムカ、悪いが今後は俺達は俺達で勝手にやらせてもらうぞ」

 

『何だと!?』

 

「あと、覚悟しておいた方がいい。あんたは怒らせちゃならない奴らを怒らせちまったみたいだ」

 

『ど、どういうことだ!?』

 

『し、シムカ様!!』

 

丁度その時、シムカの側近達が慌てた表情でシムカの元を訪れる。

 

『ええい!何事だ!?』

 

『ね、ネットにこんな情報が・・・・』

 

それはシムカが今まで行ってきた数々の失態や不正等の情報がネットに拡散されているという報告だった。勿論、兎共の仕業である。

 

「どうやら議員殿はお忙しいようだ。では、我々はこの辺で」

 

『お、おい!ま、待てーー』

 

シムカの返事も聞かず千冬は通信を切ってしまう。

 

「すまない、うちの馬鹿共がやらかしたようだ」

 

「いや、いつまでもシムカのヒモ付きって訳にはいかなかったからな丁度良いだろう」

 

「そうだぜ!あのシムカの野郎の慌てた顔、最高にスカッとしたぜ!」

 

千冬が兎共に代わり謝罪するも、ダークとラグナはむしろ清々したと笑みを浮かべる。

 

「補給の心配ならば心配いらん」

 

「ザルディに会いに行った帰りにイヴァンのとこの組織から少し多めに物質を貰っといたし、途中にあったJAの拠点から根刮ぎ物資を拝借してきたから半年は補給要らんだろう」

 

「「「「・・・・」」」」

 

そして、サラッととんでもない事を告げる雪兎とイヴァン。帰りが遅いと思えばこの二人、そんな事をやらかしていた。

 

「・・・・お前達というやつは」

 

それを聞き、千冬は頭が痛くなった。

 

「・・・・ほいっと!これであの塵は社会的に抹殺完了だね」

 

「俺はてっきり暗殺でもするんじゃないかと思ったんだが・・・・」

 

「ん?あんなやつ、殺す価値も無いよ」

 

「そうそう。それに殺すなんて短絡的な手段は使わないさ・・・・むしろ、死んだ方がマシと思える目に遇わせてくれる」

 

どうやらシムカは皆が思った以上に兎達を怒らせたらしい。

 

「シャルロット、もしかしたら一歩間違えばデュノア社もああなっていたのではないか?」

 

「・・・・うん、僕もそう思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、ランディ=シムカが汚職等の罪で逮捕されたとのニュースが流れた。尚、JAがこんな格好のスキャンダルを静観していたのはしなかったのではなく出来なかった(・・・・・・)である。何故なら、兎達に「余計な事したらお前らもああなるからな?」と脅されたからだった。

 

「この兎共、凶悪過ぎんだろ・・・・」

 

この一件で一同は改めて兎を敵に回すとどうなるのかを思い知るのであった。

 

「工作員から連絡があった。二つ目のピースの在処はダラートという町らしい」

 

そんな中、イヴァンの元に工作員から次なるピースの情報がもたらされた。




シムカの出番はこれだけです。
兎を敵に回すからこうなる。彼は思いっきり兎共の地雷を踏み抜きました。


次回予告

連邦評議会と袂を分かった雪兎達はJAの支配地域であるダラートには直接向かわず近くにあるケーナという町を訪れるが、ケーナにはアムドライバーに不信感を抱く住民が大勢残っており・・・・


次回

「護るべきものと機械仕掛けの獣達 兎、大盤振る舞いする」




ジョイ「今回のメカはニルギースのネオアムジャケットッス」

イヴァン「私のアムジャケットか」

ジョイ「これもシーンと同じく雪兎のオリジナル仕様に改修されたネオアムジャケットで、主装備はネオアムバスタードソードッス」

イヴァン「原作ではサーベルだったな」

ジョイ「このネオアムバスタードソードは原作のサーベル同様に装甲パーツを組み合わせて大型ソード【アロンダイト】になるだけでなく、バスタードソードの内部 に刀状のブレードがあり、チューブを接続する事で凄まじいエネルギー噴射と共に刀身を抜刀したり斬撃を飛ばしたり出来るッス」

イヴァン「状況に合わせて使い分けれる訳だな?」

ジョイ「その通りッス!そして、肩の竜の翼のような装甲はそのまま変形して飛行したり、すれ違い様に切りつけたりできるんスよ!」

イヴァン「流石は雪兎だ」

ジョイ「オイラも負けてられないッス!」


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94話 護るべきものと機械仕掛けの獣達 兎、大盤振る舞いする

今回も兎共がやらかします。

先程、別の設定資料と間違えて書きかけのものを投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。

アムドライバー編の設定集作りましたので興味があればどうぞ。


連邦評議会と決別した為、直接ムーロンへは向かえず、もう一つの目的地であるダラートもJAの支配地域であったため、一行はムーロンに程近いケーナに降り立つ事に。

 

「雪兎、何故このケーナを選んだ?」

 

「このケーナはムーロン包囲網の一角だ。ゼアムのピースを得る為には今ムーロンに落ちてもらっちゃ困るからな」

 

「ゼアムはこの戦いを終わらせる鍵ではない、そう言いつつもお前がゼアムのピースを集めるのは何故だ?」

 

「ピース一つだけでもゼアムの存在を知らせる事になる。そうなればゼアムを巡って新たな争いが起こる。それだけは避けなければならない」

 

「つまりお前はゼアムを揃え、その存在を闇に葬ろうというのか?」

 

「力とは救いでもあり、滅びでもある・・・・ゼアムなんて過ぎた力はこの世界には必要無い」

 

ゼアムを不要と断ずる雪兎。その言葉を聞き、イヴァンは雪兎の考えを理解する。

 

「だから間違ってもゼアムをアムジャケットに転用なんかするなよ、ジョイ」

 

「うっ、確かにゼアムの力をそんな形で示したらゼアムの存在をばらす事になるッスもんね・・・・」

 

そして原作でガン=ザルディがジェナス達を敵視するようになった要因・ゼアムジャケットを作成しないようジョイに言い含める雪兎。ジョイもその危険性を理解してその開発を取り止める事を約束する。

 

「今回の目的はケーナに向かってるJAの連中を蹴散らして包囲網の完成を遅らせる事と、ここの空港をムーロンとダラートへ向かう為の一時的な拠点にする事だ」

 

「なるほど、ここなら双方にアプローチするには絶好の場所だ」

 

「でも、俺達だけでここを護りきれるのか?」

 

「それは俺に考えがある」

 

そう言って雪兎はジェナス達と同じ数のコンテナを示す。

 

「これは?」

 

「俺や束さん、それにジョイやカロリナ達の手伝いで完成させた新しい力さ」

 

「これってまさか俺っちのガルムと同じ・・・・」

 

「その通り、全員分のビーストバイザーさ」

 

そのコンテナに納められていたのはそれぞれ用に調整されたビーストバイザーだった。

 

「俺達のビーストバイザー・・・・」

 

ジェナスにはワイバーン型のドラグバイザー【ドラグーン】、セラにはイーグル型のウイングバイザー【ストームウイング】、シーンにはライオン型のストライクバイザー【シーザー】、ダークにはカジキ型のスピアバイザー【スピアヘッド】、タフトにはバイソン型のブラストバイザー【ブラストホーン】、イヴァンにはペガサス型のジェットバイザー【ペルセウス】、シャシャにはエイ型のフライトバイザー【エアフライアー】が与えられた。

 

「それぞれが使ってた装備をベースに俺が改造したバイザーだ。全員のアムジャケットもISと同じ瞬間装着機能も付加してある」

 

「お、大盤振る舞いだな」

 

「少数勢力の俺達には力が必要だからな(他にも保険は掛けてあるんだがな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、空港にいたトトとナナという兄妹の案内で街を訪れるが、市民達は街を守ってはくれなかったアムドライバーを信用してはおらず、ジェナス達ピュアアムドライバーも受け入れてはくれなかった。

 

「だろうな・・・・一度失った信用は容易くは取り戻せない」

 

「でも、彼らを放ってはおけない!」

 

「だったらやる事は一つだな」

 

「私達が口だけじゃないって示す」

 

「そういうこった。全ては行動で示せばいい」

 

市民の信用が無くともジェナス達は護ると決めた。それは他でもない「誰かを護る為にアムドライバーになった」と普段から口にするジェナス達らしい言葉だった。

 

「今のうちにビーストバイザーの特性を理解しとけよ。今までのバイザーとは一癖も二癖も違うからな」

 

このビーストバイザーがこの後のケーナ防衛戦でとんでもない事態を引き起こすのだが、流石の雪兎にも予想出来なかった。




短いですが、ケーナ防衛戦前ということで区切ります。

次回予告を忘れてました(汗)


次回予告

ビーストバイザーを投入してのケーナ防衛戦。敵の指揮官はジェナス達のよく知る人物だったが・・・・

次回

「ケーナ防衛戦、獣の蹂躙 兎師弟、反省する」

メカコーナーはお休みします。


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95話 ケーナ防衛戦、獣の蹂躙 兎師弟、反省する

ケーナ防衛戦・・・・防衛戦?

今回はジェナスがやらかします。
ついでにJAの行動について雪兎が色々指摘します。


原作よりもケーナに早く着いた影響か、JAと思われる反応はまだケーナには来ていない。そこで、雪兎は街を破壊されたり、原作で敵の指揮官がとった街の市民を人質にするという手段を封じるべく街の外で迎え撃つ事を提案した。これは市民に配慮したいジェナス達にとってもありがたい申し出だった。そして、街外れの街道に防衛線を張ることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェナスside

 

雪兎の提案で街の外れに防衛線を張った翌日。JAは思いの外ゆっくりと近付いてきた。雪兎の話では「ケーナの市民が避難したふりをして潜伏しているのを知らずに大した抵抗も無いと相手の指揮官が油断しているのではないか?」との事だがそんな間抜けな指揮官がいるのだろうか?

 

『ジェナ、そろそろ敵さんが作戦予定ポイントに到着するッス』

 

そんな事を考えているとジョイから通信が入った。

 

「わかった」

 

『では、オペレートは私が』

 

すると雪兎達の仲間の一人・クロエ=クロニクルの声と共にフライング・ラビットのハッチを開きカタパルトが展開する。

 

『ハッチオープン。カタパルトセット・・・・』

 

そして、雪兎が開発した俺の新たなバイザー【ドラグーン】がカタパルトにセットされる。

 

「いくぜ、相棒!」

 

そう言ってドラグーンに飛び乗りアムジャケットを展開する。

 

『ジェナス=ディラ、ドラグバイザー【ドラグーン】セットアップ。進路クリア・・・・どうぞ』

 

「やっちゃるぜ!」

 

プロメテウスのカタパルトとは違う電磁加速カタパルトによって射出されるドラグーンから振り落とされ無いよう踏ん張る。雪兎達と行動するようになってから何度も経験してはいるが、少しでも気を抜くとバイザーから吹き飛ばされそうになる。それに耐えて空へと飛び出すと視界の端にJAと思われる一団の姿が映る。

 

『ジェナス、まずは作戦通りに一夏と先行して退去勧告だ』

 

『何でだ?奇襲を仕掛けちまえばいいじゃんよ?』

 

「勧告する事でこちらからは仕掛けていないというアピールをして、あちらから仕掛けきたっていう正当防衛に仕立て上げる・・・・そうだろ?雪兎」

 

作戦会議の時にも疑問に思っていたことをラグが問うと、いつの間にかドラグーンに並んだ一夏が答えてくれた。

 

『よく判ったな、一夏。その通りだ。俺達はあくまでケーナの防衛の為に出撃するのであってJAを攻撃したくてした訳じゃない・・・・こういう記録を作っておけば後々便利なのさ』

 

『交渉とかの時にそういう記録を持ち出してこちらに優位な状況を作る・・・・だね?』

 

何か黒い会話が聞こえた気がする。

 

「・・・・とりあえず訳は判った。でも、どんな理由退去させるんだ?」

 

『それこそ簡単だ。そもそも今のJAに正統な都市の支配権なんてない。ジノベゼは自分達こそ正義だと言うが、ウィルコット議長がそれを認めるか決定的な証拠でも無い限り全く正統性の無い一種のクーデターだ。やり方も武力と脅迫による制圧だしな。そこを突く。それに俺達には正統な依頼人様(トトとナナ)がいるからな』

 

そう、実はトトとナナの兄妹がなけなしのお小遣いを持って俺達にケーナを守ってくれとお願いしてきたのだ。しかし、雪兎はそのお金は受け取らず無料で引き受けると言い出した。後で訊いたら「そういう美談は信用の回復にはうってつけだからな」等と言っていたが・・・・

 

『相手が仕掛けてくれば相手は武力に訴えてきたという何よりの証拠となり、退去させれれば今後も正統な理由無しにケーナを容易く攻めれなくなるという訳だな?』

 

Exactly(その通り)

 

本当に雪兎を敵に回さなくて良かった。二手三手先を見据えた悪辣な手口を聞いてそう思ったのは俺だけではないはずだ。

 

『まあ、この進軍速度とかからその部隊の指揮官が優秀とはとても思えない。まず武力行使に出ると見て間違い無いだろう』

 

雪兎曰く「他の包囲網は出来てるのにここだけ進行が遅れてる」との事。こういうポイントを残しておくと包囲網を崩されるので普通はやらないそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏と共にJAの前に立ち塞がると俺達は退去勧告を行った。すると、敵の指揮官が現れたのだが、それは意外な人物だった。

 

「あっ、アレンだ」

 

それはかつて俺達が所属していたキャンプ・リトルウイングの司令官だったアレン=ルー。正直なところ、所属していたアムドライバーからのアレンの評価は底辺もいいところである典型的な小物だ。

 

「お、お前はジェナス=ディラ!?」

 

明らかに俺を見て動揺しているアレン。確かにコイツなら雪兎の言っていた通りになりそうだ。

 

「大人しく退去すればこちらからは何もしない」

 

「な、何故お前達にそんな事を言われねばならない!」

 

「俺達は街の住人から街を守ってくれって依頼されてるんだ。ムーロンにいるウィルコット陣営とドンパチやろうっていうお前達を通せるかっての」

 

一夏にそう言い返されしばらく「ぐぬぬ・・・・」と唸っていたアレンだったが、突然何かに気付いたかのように笑みを浮かべる。

 

「敵はたった二人で武器も持っていないじゃないか!総員、奴らを蹴散らせ!」

 

なるほど、俺達がたった二人で丸腰に見えたから強気になったのか・・・・

 

「やれ!」

 

アレンの指示に従いJAがこちらを攻撃してくる。

 

「これで正当防衛成立だな」

 

「本当に恐ろしいくらい予想通りだな」

 

対して俺達も直ぐに武装を展開しつつも攻撃を回避する。

 

「なっ!?さっきまで確かに丸腰だったはず!?」

 

俺達が武装を展開した事でアレンが慌て出すがもう遅い。俺達を囲むように展開していたトパスを俺はヴァリアブルソードで、煌月白牙と雪片参型の二刀流で斬り裂く。

 

「もう終わりか?なら、今度はこちらからいくぞ」

 

一夏はそう言うと一気にJAの懐へと飛び込んでいき彼らの武器だけを斬り破壊していく。

 

「は、速い!?」

 

「これくらいで速いなんて言ってたら千冬姉やアイツ(雪兎)の動きなんて見えやしないぞ?」

 

一夏の方は大丈夫そうだな。

 

「俺達も負けてられないぜ、ドラグーン!」

 

ドラグーンをブリガンディモードに変形させて身に纏うと両翼にマウントされた大型ソードを両手に持ち、エッジバイザーを身に纏ったシーンのようにバグシーンを両断していく。

 

「こちらだって!」

 

武器を破壊されたJAがバンダースナッチを纏いドラグヴァンディルを放とうとするも、背面に装備してある有線式のテイルブレードを使ってバレルを斬り裂き無力化する。

 

「えっ?」

 

「邪魔だ」

 

あっという間にバンダースナッチまでもが無力化された事に呆けるJAを大型ソードの腹で払い退け次の相手へと向かう。

 

「な、何なんだこいつらはっ!?」

 

「ば、化け物だ!」

 

「ひ、ひぃいいいいい!!」

 

混乱に陥るJA達。だが、そこに追撃を仕掛けるように他の皆も駆けつける。

 

「随分とお楽しみじゃないか、ジェナ。俺も混ぜてくれよっと!」

 

挨拶代わりに手にした二振りの大型ブレードでバンダースナッチを両断するシーン。

 

「し、シーン=ピアース!いつの間にか!?」

 

「俺だけじゃないぜ!」

 

すると、あちらこちらから戦闘音が響き始める。

 

「ドリルがぁ、ズドーン!」

 

「制圧、制圧、面制圧ぅ~!」

 

ダークさんはドリルランスバイザーをベースにしたスピアヘッドのドリルでバグシーンを次々とスクラップに変えていき、タフトさんはブラストホーンに搭載された無数の砲身から砲撃とバーストバイザー改から引き継いだミサイルをぶっぱなしている。

 

「やるぜ、セラ」

 

「ラグこそ外さないでよ?」

 

ラグはガルムの背にマウントされていたビームキャノン・イフリートを、セラはストームウイングの機首をシールドとバスターライフルに分離させて遠距離から攻撃している。

 

「せい!」

 

「ニルギース、チョウシイイ」

 

「そう言うシャシャこそ調子が良いのではないか?」

 

ニルギースはビーストモードのペルセウスに乗りガンランスとジャケットのブレードの変則二刀流で暴れ回り、シャシャはエアロフライヤーのウイップサーベルをウイップモードで振るっている。

 

「fire!!」

 

シーンも二刀流で近場のバグシーンを片付けるとシーザーの装備をエッジからランドに切り換えて砲撃していた。シーンには雪兎やシャルロットのように装甲切換の適性があったらしく、シーザーにはエッジバイザーやランドバイザーから継承した装備の他にも高機動用のインパルスや防御型のプロテクション等があるらしい。

 

「く、くそう!こうなったらさっき奪った新型バイザーで!」

 

すると、JAはどこかからか強奪してきたと思われる新型バイザーを2機持ち出してくるが・・・・

 

「せいっ」

 

「おっ!弾、グッショブ」

 

カタパルトから射出される前にアーマードギアで出撃した弾に蹴り飛ばされ再び2機共一緒に強奪されていたプロメテウスごと奪い返した(厳密には俺達のではないが)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、退却だ!」

 

その後も多少の抵抗はあったが、敵わぬと判るとアレン率いるJAは退却していった。

 

「一昨日来やがれってんだ」

 

「それにしてもアレンもJAに寝返っていたとはな」

 

「キャシーと立場逆転してこき使われてんじゃないか?」

 

「かもな」

 

そんな事を話しながら奪い返したプロメテウスを持って帰ると何故かひきつった顔した雪兎が俺達を待っていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、これ・・・・」

 

ジェナス達の戦う様子をモニタリングしていた雪兎は思わずそう呟いた。そう思っていたのは雪兎だけでなく、共にビーストバイザーを作り上げ不具合が無いか一緒にモニタリングしていた束、カロリナ、ジョイのメカニック勢。

 

「ゆーくん、あれって紅椿と同じ無段階移行組み込んでたよね?」

 

「ええ、いきなりは扱い切れないだろうと思ってリミッターとして」

 

「・・・・全員、少なくとも2段階までは難なく使ってる・・・・ジェナスは全解放モードだけど」

 

「皆、人間辞めだしたッス」

 

そう、ビーストバイザーにはリミッターとして紅椿と同じ無段階移行を組み込んでいた。仕組みとしてはアムジャケットの方にアムドライバーの能力を測る機能を追加しておいてそれと連動してビーストバイザーのロックが解除されるようにしていた。だが、ピュアアムドライバーの面々は初っぱなから何段階かリミッターが外れており、ジェナスにいたってはリミッターが機能していなかった。

 

「アイツ、もう俺らと同類(人外)認定でよくね?」

 

一基だけとはいえ誘導兵器であるテイルブレードを難なく使いこなして死角の敵を攻撃し、三次元機動で一夏と一緒に暴れ回るジェナスは雪兎達から人外認定されていた。

 

「お前達、問題はそこじゃないだろう?」

 

そんなメカニック勢に呆れる人がいた。千冬である。

 

「いくら人的被害は無いとはいえ、これはやり過ぎだ」

 

言われて雪兎達が戦場となった場所に目を向けると、全員が色々ぶっぱなしたせいで地形が原形を留めていなかった。

 

「「「「・・・・」」」」

 

これには流石の束も黙る。

 

「後で整地だけはしますか」

 

この後、やらかした面々も含めて全員で後始末をするのであった。また、回収した新型バイザー(ネオボードバイザー)はビーストには及ばない性能だったためメカニック勢の玩具として弄り回されることになった。原作最強バイザー、哀れである。




地形、変形しました。
そりゃあ、高出力砲やミサイルぶっぱしてドリルとか使ったらそうなりますよね・・・・
そして、玩具扱いされるネオボードバイザー・・・・性能は原作随一なんスけどね。


次回予告

無事(?)にケーナの防衛に成功した一同はケーナを拠点としてムーロンとダラートにあるピースの回収に向かうべく、防衛班を含めて部隊を3つに分ける事に。そして雪兎とシャルロットはシーンやセラ達と同じダラート組に組分けられる。他よりも人数が少ないダラート組の人数を何とかするべく、雪兎達はある人物に協力を要請する。

次回

「パフ再び、ダラート潜入作戦 兎、交渉する」







ジョイ「今回のメカはこちら!セラのビーストバイザー、ウイングバイザー【ストームウイング】ッス」

セラ「私の?順番的にジェナのドラグーンかと思ってた」

ジョイ「雪兎から提供してもらった【J:イェーガー】のデータを流用してストームバイザーを発展させたバイザーッス。一番の特徴は機首に備えた新型のシールドとバスターライフルッス」

セラ「バスターライフル・・・・地下水路の時にロシェット達が食らったアレね」

ジョイ「他にも追加したウイングスラスターはブリガンディモードにも背面の翼になるッスよ」

セラ「空戦時の機動力はビーストバイザー随一よ」

雪兎「ビークルモードはまんまウイングガンダムのバードモード、ビーストモードはバスターライフルをウイングスラスターにマウントしてシールドが頭部になるんだ」

セラ「ところで何で今回は私のなの?」

雪兎「そいつは次回に関係してるからさ」

セラ「あっ、パフ達ね」

雪兎「そういうこと」


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96話 パフ再び、ダラート潜入作戦 兎、交渉する

もうこの章だけでもう16話。25話までにはアムドライバー編を終わらせたいところです。

モンハンワールド、何とかゾラ・マグダラオスまではやりました。やっぱり普通のモンスター相手だと麻痺チャーアクは優秀だな。
FGOの百重の塔はストーリークリアが限界でした。陽炎までは時間が足りない・・・・そして、今年バレンタインはお前か、セミラミス。


ケーナの防衛に成功し、住民から信頼を勝ち取った一同は今は使われていない空港を拠点として借り受けることに。ただ、今後も包囲網の為にケーナが狙われる可能性があるため、防衛にも戦力を割く必要があった。

 

「・・・・となると、ムーロンに向かう部隊、ダラートに潜入する部隊、防衛班の部隊の3つに分かれる必要があるか」

 

幸いにも移動手段にはフライング・ラビットの他にプロメテウスが2機に兎謹製のトレーラーもあるので困りはしないが、防衛班はローテーション等の事を考えて多めに配分する必要がある。

 

「ムーロンやダラートでも目立つのは避けたいが敵と鉢合わせる事も考慮しなくてはな」

 

「そうだな・・・・1:1:3くらいの配分が無難か」

 

雪兎達は戦力として数えれるのは18人程(弾達民間人3名と非戦闘員の虚とクロエの2名、基本的に戦闘に興味の無い束を除いて)、ジェナス達を8人の計26人。それを小隊数で割ると1小隊当たり5~6人となる。しかし、それでは少々人数に不安がある。すると、弾と蘭、更に数馬の3人が「手伝わせてほしい」と願い出てきた。

 

「弾、状況が状況だったからお前には何度か戦わせてしまったが、お前らは一応民間人なんだぞ?」

 

「今更水臭い事言うなよ、雪兎」

 

「そうだそうだ、ダチが命張ってくれてんのに何もさせてもらえないってのは辛いんだぞ」

 

「わ、私だって皆さんの役に立ちたいんです!」

 

「・・・・はぁ~、わかったわかった。ここで断っても前の蘭みたいに勝手されるよりは参加させて監視させといた方が安心だしな」

 

「うぐっ」

 

雪兎がやれやれといった顔でそう言うと、蘭が苦い顔をする。

 

「数馬には仕方ないからアーマードギアの2号機を貸してやる。弾はまあいいとして、数馬と蘭は戦闘なんてした事ないだろうから防衛班な」

 

「俺はいいのか?」

 

「前回あれだけ暴れておいて今更何を言うか。援護つったのに敵陣の真っ只中のプロメテウスに突撃かますとか・・・・結果だけならファインプレーだがな」

 

「うぐっ」

 

兄妹揃ってやらかしている事を指摘される五反田兄妹。

 

「あとは・・・・ジョイ、ジャックさんと連絡出来るか?」

 

「ジャックさんッスか?ああ!なるほど、その手があったッス!」

 

雪兎が何をしようとしているのか察したジョイは直ぐにジャックへと連絡を取る。

 

「となれば編成はこんな感じかな・・・・」

 

そんなこんなで雪兎が決めた編成は・・・・

 

ムーロン組

イヴァン、シャシャ、楯無、マドカ、ラウラ、カロリナ、弾、虚

 

ダラート組

雪兎、シャルロット、シーン、セラ、ミュウ

 

防衛班

その他(18人)

 

「ダラート組、少なくない?」

 

ムーロン組は潜入工作に長けたメンバーを中心に編成し、サポートとして虚を加えている分少し多いが、ダラート組は雪兎とシャルロット、そしてミュウも連れているとはいえ少人数だ。ちなみに今回シャルロットが一緒なのはシャルロットが「雪兎と一緒の編成以外やだ!」と珍しく我が儘を言ったのが原因だ。まあ、このところ別行動が多かったので今回こそは一緒がいいという可愛らしい我が儘なので皆了承している。

 

「そいつに関してはちょっと考えがあってな」

 

「雪兎!ジャックさんからOK出たッス」

 

「なるほど、そういうことか」

 

イヴァンも雪兎の考えを察し、この編成になった理由を理解する。

 

「そんじゃあ、ミッションスタートといきますか」

 

そして、残るピースを回収する作戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎のトレーラーでダラートを目指すダラート組。少人数とはいえ雪兎にシャルロット、そしてシーンのエースクラスが3人いるのでそう簡単にはやられはしない編成だ。それにこの後合流するパフ達を含めれば十二分の戦力だ。それに、雪兎にはパフ達に協力を要請する為に用意した切り札もある。

 

「妹を溺愛してる姉ってのは妹と同じものを欲しがるものだ」

 

「あ~、それでコレ(・・)を用意したんだね?」

 

「オマケにアレ(・・)まで用意して・・・・用意周到だな」

 

「で、溺愛って・・・・」

 

「きゅ」

 

『絶対喜ぶと思うの』

 

兎(ミュウ)にすら断言されるパフのシスコンっぷり(正確には妹ではなく妹分だが)。今回、ミュウはセラに抱っこされている。猫派のセラもミュウはお気に召したようだ。

 

「そろそろジャックさんが指定したポイントなんだが・・・・」

 

「おーい!こっちだ」

 

すると、JA仕様のプロメテウス(エンブレムは塗り潰してある)とジャックの姿が見えてきた。パフ達も一緒だ。

 

「ミュネーゼ以来だな、雪兎」

 

「ええ、またよろしくお願いします、ジャックさん」

 

「ジャックで構わないさ」

 

実はジャックとも同じメカニックマンとして交友を深めており、そのノリは年の離れた兄弟のような感じだ。

 

「で、今回は何やら厄介事があって協力してほしいとジョイから聞いてるが?」

 

「それについては中で・・・・盗み聞きされると不味い情報なんで」

 

「判った」

 

という訳でプロメテウスの中で詳しい話をする事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼアム・・・・そんなものが」

 

原作ではイヴァンに止められて依頼する際にはパフ達に明かせなかったゼアムの情報を雪兎はイヴァンの許可を取ってパフ達に話した。原作ではそれが原因でパフから信用してもらえなかったからだ。

 

「俺達の目的はそのゼアムの抹消・・・・過剰な争いの火種に成りかねない力は必要無い。これが俺達のゼアムを求める理由だ」

 

「確かにそんな力があると知られれば今以上に戦火が拡がりかねないね」

 

やはりパフは聡明で雪兎の話からゼアムの危険性に気付いていた。

 

「そのデータの一部が入ったディスクがダラートにあるらしくてな。その回収に協力してほしい・・・・無論、報酬は用意した」

 

「「報酬?」」

 

依頼である以上報酬は当たり前なのだが、この依頼に見合う報酬とは何か?

 

「ここでは出せないから格納庫に行こうぜ」

 

格納庫に移動すると、雪兎はstorageからその報酬を取り出した。

 

「こ、これは!?」

 

「ほう、新型のバイザーか・・・・ジョイのヤツが言ってたビーストバイザーってやつか?」

 

「ああ、こっちの黒いのがウイングバイザー【ストームウイング】、そっちのオスプレイ・・・・プロペラが2基あるヘリ型がフロートバイザー【ワイズ】だ。これがカタログスペックだ」

 

「なるほど・・・・コイツは面白いのを作ったな!」

 

「ちなみに、ストームウイングはセラのと色違いの御揃い(・・・)さ」

 

(ぴくっ)

 

御揃いと聞いてパフが僅かに反応したのを一同は見逃さなかった。

 

「コイツらを報酬として前渡しする。それでどうだ?」

 

「・・・・私達が持ち逃げするとは思わないの?自慢じゃないけど、私達は二度も味方を裏切ったんだよ?」

 

そうパフが問うが、雪兎はそれを鼻で笑いこう断言する。

 

「いいや、あんたは裏切らないさ。大切な妹分をもうあんたは裏切れない」

 

「・・・・貴方とは話が合いそうね、天野雪兎君」

 

「同感だ、パフ=シャイニン」

 

何故か固い握手を交わす雪兎とパフ。実の妹のように接する妹分がいる同士共感する部分があったらしい。

 

「雪兎・・・・」

 

「パフ・・・・」

 

それを見て一同の空気が緩む。

 

「この依頼、受けさせてもらうわ。いいわね?皆」

 

「こんな前報酬を貰ったんじゃ受けざる得ないな」

 

「「私達も賛成~」」

 

こうしてパフユニットの協力を得た雪兎達。原作より万全な態勢でダラートでのピース回収に挑む・・・・ダラートに配属されているJAの安否は如何に。




という訳でパフユニット懐柔w
個人的にジャックさんのキャラが好きです。
そして、本作のパフは少々シスコン気味になってます。


次回予告

パフユニットを加えてダラートに潜入した雪兎達。その潜入方法はミュネーゼでも使ったアレ(・・)で・・・・だが、原作と違いこの時のダラートにはある部隊が駐留していた。

次回

「ダラート潜入作戦その2 兎、女の戦いに戦慄する」






ジョイ「今回のメカはフロートバイザー【ワイズ】ッス」

パフ「ジュリ達のバイザーね?」

ジョイ「これはジャイロバイザーの改修型のビーストバイザーで、オスプレイ型ッス」

パフ「ジャイロバイザーとはどう違うの?」

ジョイ「まず、プロペラが左右で2基あり、向きも自在に変えられるッス」

パフ「ということはレーヴァテインも前屈みにならずに射てるのね」

ジョイ「その通りッス!正直、ジャイロバイザーって量産向きのバイザーなのに主兵装が使い難いって不評なバイザーなんスよね・・・・」

パフ「滞空出来る事が強みなのに地上でしか使えないものね、レーヴァテイン・・・・まともに使われたのってK.K.が使った時くらいじゃなかったかしら?」

ジョイ「空気なバイザーッスね・・・・」

雪兎「言ってやるな・・・・双子まで空気扱いされる」

ジョイ「でも!このワイズはビーストモードも可愛らしい梟型!」

雪兎「梟・・・・ディグラーズんとこのケケも梟型だったような・・・・・」

ディグラーズ「つまりケケバイザーか!?」

雪兎「うわっ!?どこっから沸いたし」


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97話 ダラート潜入作戦その2 兎、女同士の戦いに戦慄する

今回は原作通りに後にクプティへ向かわない為、とある部隊が出張してきました・・・・雑魚なので今回限りの登場ですが。

セミラミスはきたが、ゴールデンが来ない・・・・インフェルノやオケアノス、茨木は二枚ずつ来たのに・・・・


雪兎達がパフと合流し、ダラートへ向かおうとしていた丁度その頃。ダラートにあるJAの前線基地に輸送機の一つがやってきた。

 

「出迎えご苦労」

 

その輸送機から現れたのは全員女性だった。彼女達は隊長であるガモ=フレアが率いるJAの中でも女性のみで編成された部隊なのだ。原作ではクプティでジェナス達と邂逅するはずの彼女達が何故このダラートにいるのかと言えば前回のケーナ防衛戦の影響だ。どうやらJAの上層部はアレンではケーナを攻略出来ないと判断し、増援としてガモ隊を派遣したのだ。

 

「あんな狐に任せず、最初からガモ隊長にお任せしていれば良かったものを!」

 

ケーナでの一件を聞き、ガモ隊の副官・ミルン=ハッキネンがそんな事を言っているが、誰だろうとあの結果は変わらなかったと思う。まあ、すぐにその事を彼女達は知る事になるのだが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎がダラートの潜入に使ったのはミュネーゼでも使ったクレープ屋のワゴン車(屋号はラビット・プレート)。しかもミュネーゼでの評判も伝わっていたせいか(何故かバレてない)あっさり街に入ることができた。

 

「前にも思ったのだけれど、何でバレないのかしら?」

 

「パフ、気にしたら負けだと思う」

 

今回も全員変装しているので簡単にはバレないだろうが、JAに顔を知られているパフ達には裏方に徹してもらっている。すると、行列を割ってJAの制服を着たガモ隊の面々が雪兎達のクレープ屋にやってきた。

 

「ふ~ん、クレープの屋台ねぇ」

 

「お客さん、割り込みは感心しないね」

 

「貴様!私達はJAだぞ!」

 

そんなガモ隊に雪兎はそう注意をするが、すぐにミルンが脅しかける。

 

「JAだろうが、連邦評議会だろうが客は客だ。ルールを守れんやつに売るものは何一つない・・・・ほれ、注文のストロベリーだ」

 

しかし、相手は雪兎だ。そんなもの通用するはずもなく睨み返しミルンを退け、元々並んでいた少女にクレープを手渡す。

 

「我々に楯突いてただで済むとーー」

 

「うるさい。こちとらちゃんと許可を貰って商売してんだ。これ以上邪魔すんだったらお前らの上司に突き出すぞ?それと、俺の持ってる仕入れのネットワークに「正義を名乗るJA様が市民の営業妨害をしてくる」って情報ばら蒔いてもいいんだが?」

 

営業許可証(正規の手順で発行されたもの)を掲げ、逆に脅し返す雪兎。ちなみに行列の中には非番のJAの隊員も何名かおり、ガモ隊に向ける視線は冷たい。「お前らのせいで俺達までクレープ食えなくなるだろうが!」そんな視線だ。やはり食い物の怨みは恐ろしい。

 

「く、くっ・・・・」

 

「やめなさいミルン。騒がせて悪かったわね、店主」

 

「いや、判ってさえくれれば俺も何も言わんよ」

 

その後、最後尾に並んだガモ隊の面々が雪兎のクレープに驚愕し「いつまでダラートにいるんですか!?」と態度が180度変わったり、ガモがミュウを模して作った特別なクレープ【ウサギスペシャル】を注文して「こ、こんな可愛いものを食べろと?・・・・あっ、溶けちゃう!?」とか百面相し始めたり、クレープ以外の鉄板系メニューもバカ売れしたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、チョロいもんだな」

 

その日の売上はとても移動車販売とは思えない金額であった。その売上の1/4がガモ隊から得たものだ。やはり女性は甘いものに弱い。

 

「原材料費から考えればボッタクリだな」

 

「店で出すならこんなもんだろ?」

 

「間の加工の手間賃全部すっ飛ばしてるだろうが!」

 

そう、雪兎の持つ機器のおかげで原材料さえあればすぐに調理前の状態に出来る。そのため非常識な程に安価で作れる。それを相場の価格で売ればボロ儲けもいいところである。しかも、材料はstorageに保管しているので大量所持かつ鮮度を保っていられるので材料費もまとめ買いで通常よりかなり安価に抑えている。storageは本当にチートツールだ。

 

「やっぱり定番のファンタジー系転生物でよくある物流チートは現代でもチートだな」

 

「自重しない天才ってのは本当に天災だね・・・・」

 

シーン達アムドライバー勢は改めて兎の非常識さを知る。

 

「まあまあ、ピースは手に入ったんだから」

 

シャルロットの言う通り雪兎がガモ隊の注意を惹き付けている間に工作員からピースのディスクを受け取っている。あとは怪しまれないように数日滞在してから撤収するだけだ。

 

「これで何事も無ければいいのだけど・・・・」

 

「パフ、それフラグだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダラート滞在中は何事も無かったのだが、セラの言う通りパフの発言はフラグだった。ワゴン車からトレーラーに乗り換えて移動していると連邦アムドライバーとガモ隊の戦闘に鉢合わせてしまったのだ。

 

「・・・・はぁ、見捨てるのも後味悪いし、助けておくか」

 

迂回するのも面倒という事で雪兎達はガモ隊を蹴散らして強行突破することに。

 

「来たわね!ピュアアムドライバーに裏切り者のパフ=シャイニン!」

 

雪兎達が出撃すると、白ベースに淡いピンク色とピンク色のカラーリングのアムジャケットを身に纏ったガモが立ち塞がる。しかし、所詮は強化タイプのアムジャケットであるため雪兎達の敵ではないのだが・・・・

 

「大人しく捕まるというなら女性は私の部隊に入れてやってもいい。そこの男共もどうしてもと言うなら考えてやってもいいぞ」

 

ガモはいきなり上から目線でそう言ってくる。実はこのガモ隊、JAの中でもISの世界にいるような女性権利主義者の集まりなのだ。

 

「断ーー「お断りだよ」ーーシャルロットさん?」

 

そして、雪兎が「断る」と言い切る前にシャルロットがぶちギレた。

 

「君達何様のつもりなのかな?それにそのアムジャケットの色・・・・いい歳したオバサン(・・・・)が恥ずかしくないの?」

 

更に雪兎達が思っても口にはしなかった事を平然と指摘する。

 

((((シャルロットさん!?))))

 

最近、シャルロットは雪兎に関する事に対する沸点が低い。

 

「お、オバサン!?」

 

「そうでしょ?そんなドキツイ格好して・・・・鏡見たことある?」

 

ブラックシャルロットさんの攻勢は止まらない。

 

「え、えーい!やっておしまい!」

 

口ではシャルロットに勝てないと悟ったガモは部隊に攻撃命令を下すもシャルロットは余裕の表情だ。

 

「雪兎、コイツら僕がやるけどいいよね?」

 

「・・・・やれやれ、そんな装備で大丈夫か?」

 

「大丈夫、特訓の成果をここで見せて上げるよ・・・・来て!【LA:ライトニング・アサルト】!」

 

シャルロットが呼び出したのは以前は持て余すと言っていたアドヴァンスド【LA:ライトニング・アサルト】。あれから雪兎に並び立とうと特訓を重ねシャルロットはついにアドヴァンスドすらものにしていたのだ。そのカラーリング(黒・金)からも完全にブラックシャルロットさん降臨である。

 

「さて、覚悟はいいかな?オバサン達・・・・答えは聞かないけどね!」

 

そこからの一戦は完全にシャルロット一人による蹂躙劇だった・・・・




という訳でシャルロットさん、アドヴァンスド解禁です・・・・ガモ隊、哀れ。
決め技はコスモス側に着けた【W:ウィザード】のグラスパーとガングニールのスプレッドバーストのコンボ技【プリズムストリーム】です。範囲内で拡散ビーム砲をリフレクターで乱反射させ続ける範囲攻撃です。

雪兎「イメージが掴めない人はクロスボーンガンダムフルクロスのビーコックスマッシャーを数の多いリフレクターインコムで作ったドームの中で反射させるのをイメージしてくれればいい」

凶悪過ぎる・・・・



次回予告

無事にダラートでピースを手に入れた雪兎達。一方、ムーロン組はまたしても咬ませ犬・ロシェット達と遭遇することになり・・・・

次回

「3つ目のピースと覚醒の淑女 兎、義妹に非自重武装を預ける」







ジョイ「今回のメカはシーンのビーストバイザー【シーザー】ッス」

雪兎「こいつは俺の雪華の装甲切換の元になったものに原点回帰したバイザーだな」

ジョイ「そう!このバイザーの最大の特徴は戦闘中に各種装備を換装出来るんスよ!」

雪兎「それぞれエッジ、ランド、インパルス、プロテクションと近接、砲戦、高機動、防御に特化した形態に装甲切換が可能だ」

ジョイ「その分、取り扱いが難しくなったんスけど、シーンなら使いこなせると信じてるッス」

雪兎「ハードル上げるなぁ」

シーン「前に結構ヤバいとは聞かされてたが、ここまでとはな・・・・」


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98話 3つ目のピースと覚醒の淑女 兎、義妹に非自重武装を預ける

先日、2日3日に愛媛県の道後温泉に行ってきました。住んでるのが岐阜なので行くのに半日以上バスに乗ることになりましたが、いいところでした。帰りに姫路城も寄ったのですが、何かコスプレ系のイベントやってましたね・・・・オッキー等fateのコスしてる人とか刀剣のコスしてる人とか色々いました。中には犬夜叉とか懐かしいコスの方もいましたが(犬夜叉、かごめ、弥勒、七宝の四人は見かけた)


マドカside

 

兄さん達とは別にピースを持つ工作員と接触するべくムーロンに向かっている私達。メンバーは私、更識楯無、布仏虚、ラウラ=ボーデヴィッヒ、カロリナ=ゼンナーシュタット、イヴァン=ニルギース、シャシャ、そして蘭の兄・五反田弾の8名。他のメンバーはともかく五反田弾の参加は意外だった。いくら兄さんの決めた編成と言えど潜入任務に素人である彼をメンバーに加えたのは疑問だ。前回のミュネーゼでの一件は蘭の護衛を兼ねての同行だったので仕方なかったが、今回は計画的なものである以上万全の態勢で挑むべきだ。

 

「この編成に疑問があるみたいね、マドカちゃん」

 

そんな私の心を読んだかのように更識楯無が声をかけてきた。

 

「お兄さんが信用出来ない?」

 

「そうではない。あの妙に用意周到な兄さんが何の考えも無しにこの編成を組んだとは思わないが・・・・」

 

「あ~、彼って時々・・・・ううん、ほとんど何考えてるかわからないものね」

 

その言葉に頷く。今回の任務に際し兄さんは私と更識楯無、そして五反田弾に新たな装備を持たせていた。その中でも私に託された開発コード【BBC】はスペックデータを確認して思わず絶句してしまった。アレは対人で使っていい代物ではない。兄さん曰く「俺と束さんのやつの劣化版」とのことだが、完全版(オリジナル)はどんなキチガイ武装だとツッコミたい。

 

「私もこんなもの(専用パッケージ)なんて貰ったから万が一なんて事は無いとは思うけどね」

 

更識楯無には兄さんが考案した専用パッケージ【ミストラル】が与えられている。ミストラルとはフランスの地方風に由来する名で、この名を持つこのパッケージはアクア・クリスタルを介したナノマシンによる水操作を主とするミステリアス・レイディの機能拡張パッケージだ。元々このISはアクア・クリスタルで清き熱情(クリア・パッション)やミストルテインの槍等の水の状態変化を操っていた。対してこのミストラルはそのアクア・クリスタルの強化版とも言えるアクア・スフィアを搭載しており、通常の水だけでなく軽水や重水(※1 中性子を減衰させる作用のある水。人体には約30%程で害を成し、重水中では魚は生存できず植物は発芽しない。一般的な水にも極僅かに含まれているが、まずその程度では害にはならない)すら生み出し支配下における。他にも(ミスト)を用いてビームを霧散させたり、空間中の水分子を操り敵の動きを阻害させる事すら可能だという(※2 これは原作におけるミステリアス・レイディの単一仕様能力【沈む床(セックヴァベック)】に該当する能力なのだが、雪兎は原作知識がこれが登場する前の巻で途切れている為これの存在を知らない)。

 

「二人共、そろそろムーロン近郊だ」

 

そうこうしている間に私達の乗るプロメテウスがムーロン近郊に到着した。ここからはプロメテウスをstorageしまい本格的な潜入工作に入る。まずチームを更に変装し街中に潜入するチームと工作員と接触するチームの二手に分かれる。街中に潜入するチームには市民達から連邦評議会の動きをそれとなく探らせる。これは兄さん曰く「シムカが捕まった事で議長の行動がどう変化しているのかを探る」とのこと。原作とやらではシムカ派がウィルコット議長を傀儡にしていた為、派閥のトップであるシムカのいなくなった影響を知る必要があるらしい。こちらのチームには更識楯無、ラウラ=ボーデヴィッヒ、カロリナ=ゼンナーシュタット、五反田弾、布仏虚が回される。潜入方法はもはやお馴染みの屋台だ。確かにこの方法ならば五反田弾が編成に加わっていても不思議じゃない。そして、残る私、イヴァン=ニルギース、シャシャが工作員と接触するチームだ。

 

「それではそちらの指揮は任せるぞ、更識楯無」

 

「ええ、更識の名は伊達じゃないとこ教えて上げるわ」

 

こうして私達の潜入任務は始まった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楯無side

 

久しぶりの裏方仕事とあって若干張り切り過ぎた感はあった。しかし・・・・

 

「ほんとにこの世界の情報管理は雑よね・・・・」

 

いくら雪兎君から借りた兎印のハッキングツールを使ったとはいえ私達の求めていた情報がものの数十分で手に入るとは思わなかった。

 

「それに彼の予想通りというか何というか・・・・」

 

そして、得た情報は「旧シムカ派が引き続きウィルコット議長を傀儡とし、JAに対する反抗作戦を計画中」というものだった。

 

「仕方あるまい。今ウィルコット議長を自由にすれば市民達の安全の為にとジノベゼとやらの言い分を認め戦争を終結させようとするだろう。そうすれば旧シムカ派の議員達がどうなるかなど火を見るより明らかだろうに」

 

「そうだわなぁ・・・・でも、雪兎のやつが言うにはジノベゼってやつは例え戦争に勝利したとしても今みたいな武力行使を止めねぇんだろ?」

 

弾君の言う通りジャン=ピエール=ジノベゼという男は武力行使を止めないだろう。簪ちゃん曰く「原作でもあの人はそういう人だった」との事。どうやら何でも自分の思い通りにならないと気が済まない小者らしい。

 

「だからこそ雪兎君はあの【計画】を・・・・」

 

虚の言う雪兎君の【計画】とは今後起こるであろう連邦評議会とJAの全面衝突に介入し双方を制圧。そして、ウィルコット議長とジノベゼ氏を公の場で法的に裁く。これにより戦乱が終わりゼアムは不要になるのでガン=ザルディを説得し(訊かないなら物理で)廃棄させるというもの。雪兎君曰く「ウィルコット議長にはバグシーン・アムドライバー計画の罪、ジノベゼにはJAのやらかした諸々の罪があるからな。そもそもJAに各都市を武力制圧していい権限なんざ無いからな。市民からしちゃあバグシーンもJAも大差ねぇし」との事。またジノベゼ氏としてはウィルコット議長を追い落としたとしても、今後反抗勢力が生まれないようにJAの力を見せつける為にも武力行使は続くと私は見ている。なのでウィルコット議長が未だに傀儡となっているのはある意味でこちらにとっては好都合なのだ。

 

「さてと、あっちのチームも戻ってきたみたいだし撤収するとしますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お前らはピュアアムドライバーとその一味!」

 

あちらも無事にピースを確保出来たようなので合流しムーロンからケーナへと帰還している最中、運悪く包囲網を完成させようとケーナに向かっていたJAの部隊と遭遇してしまった。しかも、雪兎君からは「咬ませ犬」と扱き下ろされているロシェット=キッスの率いる部隊だった。

 

「また貴様らか・・・・懲りない連中だ」

 

「だ、黙れ!こうなったらお前達を捕らえて人質にしてやる!」

 

マドカちゃんの挑発に簡単に激昂し、どう見ても小者としか言えない発言をするロシェット。だから咬ませ犬なんて呼ばれるんじゃないかしら?

 

「丁度良い。新装備の評価試験をさせてもらうとしよう」

 

あとマドカちゃん、貴女も随分とお兄さん色に染まってきてない?

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ロシェット達は楯無の沈む床で身動きを封じたところを他のメンバーに意識狩り取られ、バグシーンだけを残して全員拘束。拘束した後に全員叩き起こし、残ったバグシーンをマドカの【BBC】・・・・ブラックホール・バスターキャノンで一掃するのを見せて戦意喪失させ、武装解除した後にプロメテウスの一室に缶詰にした。

何?戦闘がダイジェスト過ぎないか?だと?それぐらい呆気なかったのさ・・・・




設定をいくつか更新しました。

戦闘がダイジェストですいません・・・・正直、長々と戦闘描写するまでもないくらいあっさりな展開になってしまいまして。
更新に時間がかかったのは楯無の専用パッケージで躓いたからです。
・・・・K.K.は?彼も一言も発する間もなくやられましたよ?流石は空気キャラ。


次回予告

あっさりと残りのピースを回収した雪兎達はついにムーロンで始まる連邦アムドライバーとJAの一戦に介入することに。果たして雪兎達はこの一戦を止められるのか?


次回

「開戦!アムドライバーVSジャスティスアーミー! 兎、喧嘩両成敗する」







ジョイ「今回のメカはマドっちの使ったBBCことブラックホール・バスターキャノンッス」

弾「あのやべぇやつか・・・・」

ジョイ「次回登場するアドヴァンスドの方がキチらしいッスよ?」

弾「マジか」

ジョイ「さて、話は戻してこのBBC。元ネタは勿論あのキチガイPT【エグゼクスバイン】のブラックホール・バスターキャノンッス。今回は沈む床で拘束して撃ってますけど、当然本体の方にも拘束系装備が用意してあるらしいッス」

弾「これって確か着弾点を中心に超重力圏を発生させ圧殺するんだよな?IS同士だと使えねぇな・・・・」

ジョイ「まず食らったら死ぬッスね・・・・」

雪兎「ネタとして作らなきゃいかんと思って作ったが、ヤバかった・・・・後悔・反省はしてないし、俺と束さんのやつの方がヤバい」

ジョイ・弾「・・・・」

シャルロット「・・・・本当に自重してないや」


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99話 開戦!アムドライバーVSジャスティスアーミー! 兎、喧嘩両成敗する

今回は原作でいう38話【エンド・オブ・ムーロン】に該当するお話。ほとんどオリジナルになってますけどね。前半はギャグです。
やっとここまで書けた・・・・一応、あと数話でアムドライバー編はおしまいの予定です。
次は少し日常やって聖剣事変に入ります。



アンケートやっといて今更ですが、イヴァン含めて数人引き抜いていく予定。


『ぷ~、クスクス。ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ち?』

 

『うがぁあああ!!絶対に殺してやる!!』

 

『お、落ち着けロシェット!』

 

無事にピースを集め終えた雪兎達。近く連邦アムドライバーとJAの全面衝突が起こるという中、雪兎達はというと・・・・決戦の準備の合間に捕虜にしたロシェット・K.K.・エーリックの三人をVR空間で弄っていた。

 

「やはりライ◯ン大迷宮をベースにしたのは正解だったな」

 

「・・・・そりゃああの魔王様がぶちギレるダンジョンよ?あの咬ませ犬の煽り耐性で耐えられるわけないじゃない」

 

尚、このVR空間は・・・・

・ダンジョンをクリアしないと出られない。

・ダンジョンで死んだらスタート地点に戻される(冒頭の煽り付き)。

・所々で煽られる(某駄女神voice等)。

・エネミーが超COOLなヒトデっぽいアレ等。

・トラップが半分ギャグ系、もう半分ガチ系。

・装備はお情けで各ネオアムジャケット。

etc・・・

 

「お前が関わると本当にギャグにしかならないな・・・・」

 

「一夏、原作の最後に比べたらまだまし」

 

「だよね~、特にエーリック。彼、途中で死ぬキャラだし」

 

「ひじりん、それを言ったらおしまいだよ」

 

「あっ、またエーリックがトラップで死んだ」

 

「エーリックが死んだ、この人でなし!・・・・で、いいんだっけ?」

 

「アレシアもノリノリ」

 

「いくらリアルでは死なないとはいえこれは・・・・」

 

一夏達もこんな事が言える時点でだいぶ雪兎に毒されてきたと言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※以下はロシェット達の様子のダイジェストです。

 

『エーリック!上だ!』

 

『う、うわぁああああ!!!』

 

『エーリーック!!』

 

上から飛び掛かってきた生物に喰われるエーリック。

 

『よし、これで完成だ!』

 

パカッ

 

『えっ?』

 

『地面がな~い!!』

 

扉を開ける為にパズルを解いたら(不正解)床が開いて真っ逆さま。

 

『よし!こっちだ!』

 

『本当に大丈夫なのか、ロシェット』

 

『ロシェット!K.K.!レールが切れてーー』

 

『『『うわぁああああ!!!』』』

 

トロッコで道を間違えて溶岩に落下。

 

『二人共!こっちだ!』

 

『ふぅ~、助かったぜ』

 

『・・・・二人共、ここ、スタート地点じゃ?』

 

NDK(ねぇ、どんな気持ち)?』

 

『『『うっぜぇえええええ!!!』』』

 

モンスター部屋から隣の部屋に逃げ込んだらスタート地点(煽り付き)。

 

『こ、今度こそ!』

 

『バッカも~ん!』

 

『うぎゃ!?』

 

『『ロシェット!?』』

 

再びパズルを解いたら(不正解)タライ(超合金)落下。

 

『ふぅ~、やっと一息つけるぜ』

 

デデン!

 

『一発ギャグを言う。つまらなかったらお仕置き』

 

『え、ええっと・・・・猫が寝込んだ!』

 

『・・・・ポチッとな』

 

バシュン!

 

『ぐふっ!?』

 

『『ロシェット!?』』

 

椅子があったので座ったら無茶振りされ、お仕置きとして椅子ロケットで天井に衝突(切りもみ回転とBGM付き)。

 

『・・・・ぷっ』

 

『K.K.、アウト~』

 

『がふっ』

 

『『K.K.~!!』』

 

笑ってはいけない部屋で笑ってしまい、巨大な丸太で横殴りにされる。

 

『もう嫌だ~!お兄ちゃ~ん!!』

 

パカッ

 

『うわぁああああぁぁぁぁ・・・・』

 

『『エーリーック!?』』

 

何度もスタート地点に戻され嫌になり走り出したら落とし穴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・くくっ・・・・もう、限界・・・・何、こいつら、俺を笑い殺す気?」

 

三人をモニターしていた雪兎は面白いくらいにトラップに引っ掛かる彼らを見て大爆笑していた。

 

「確かにここまでお約束なの見てると狙ってんじゃねぇ?としか思えないぜ」

 

「ロシェ・・・・K.K.・・・・」

 

「いくら敵対していたとはいえ、これは流石に同情するよ」

 

「一つだけ確かなのはコイツ(雪兎)と敵対しなくてよかったってことだな」

 

ロシェット達がVR空間から帰還したのはその三日後のことだった。その頃には三人共すっかり精神的に疲弊しており、ロシェットなんかは「兎怖い兎怖い兎怖い・・・・」と何やらトラウマを植え付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている間にJAは包囲網こそ未完成ではあったがムーロンに向けて進攻を開始。その情報を得た連邦評議会も多くのアムドライバーをムーロンに集結させ迎撃態勢を整えた。

 

「・・・・どっちも随分と戦力を集めたもんだな」

 

ムーロンベース近郊で睨み合っている双方を見て雪兎は呆れたように呟く。

 

「この戦いがこの戦乱の終わりを左右するものだと双方理解しているのだろう」

 

その呟きにイヴァンも少し緊張したようにそう答える。

 

「まあ、俺達にとってもこの状況は都合が良いんだがな」

 

「アレを使うのか?」

 

「使うさ。誰も殺さずにこれだけの数を制圧する事にかけてはアレは最適な装備だからな」

 

そう、雪兎は今回の決戦に向けてある装備を準備していた。カテゴリー・ダークマテリアルズの最後にして最凶のアドヴァンスド・・・・砕けえぬ闇(アンブレイカブル・ダーク)を模したアドヴァンスドを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるJAの技官side

 

ムーロンに程近い荒野にて連邦アムドライバーとJAの全面衝突が始まろうとしていたその時、ソレは上空より姿を現した。

 

「何だ、アレは・・・・」

 

ソレは我々JAや連邦アムドライバーが身に纏っているアムジャケットに似て非なるパワードスーツで、背面に備えた大きな掌にも見える翼から淡い赤色の粒子を放ち浮遊していた。

 

『双方、直ちに武器を納めろ』

 

そして、ソレはオープンチャンネルで双方にそう要求してきた。しかし、その要求はJA側の無言の砲撃により拒絶の意志を示された。

 

「やったか?」

 

だが、その言葉がフラグだったのか無情にも煙が晴れた先には無傷で佇むソレがいた。

 

『・・・・それがお前達の回答か?』

 

その砲撃は機動力を犠牲に限界まで出力を追い求めた母艦の主砲である高出力収束砲。例えネオアムジャケットであろうとも直撃すれば只では済まない威力のそれをソレはまるで蚊にでも刺された程度と言うかのように平然としている。

 

「に、二射目、てぇーっ!!」

 

それをまぐれか一度限りのものだと思った司令官が二射目を指示し放たれるが、ソレは背面の片翼を間に割り込ませ赤色の粒子でバリアを展開し二射目をも防ぎ切った。これには我々JAはおろか、おそらく連邦アムドライバー達も唖然としたことだろう。この段階で実力のある者達はソレが自分達とは全く別次元の域にいる存在だと察したに違いない。だが、司令官は愚かにも三度目の砲撃を敢行し二射と同じように防がれてしまう。それでも司令官は諦めず四度目の砲撃を行おうとチャージを開始するが・・・・

 

『仏の顔も三度までと言う。それにいい加減に目障りだ』

 

ソレも効かぬとはいえ鬱陶しく感じたようで片手を母艦に向けバリアにも使われた赤色の粒子をリング状に展開する。すると、母艦の主砲が突然爆発し主砲の内部から粒子と同じ赤色の結晶体が食い破るように生え主砲を破壊した。正直に言って何が起きたのか自分にも理解が及ばない。何なんだアレは!?

 

『再度言おう。双方、直ちに武器納めろ・・・・聞かぬと言うならばこちらも武力行使を辞さない』

 

そう言ってソレは我々JAと連邦アムドライバー達の間にある戦場の中央部に降り立つ。そこで真っ先に動いたのはJAに所属する戦闘狂・ディグラーズと連邦アムドライバーのジン=クロスの二人だった。

 

『また貴様かっ!丁度良い、以前の借りを今ここで返してくれる!!』

 

『悪いがこちらにも面子ってもんがあるんでねっ!』

 

本来は敵同士の二人が意図せずとはいえ同時にソレに仕掛けるも、ソレは翼を巨大な手のように操りディグラーズのハンマーとジン=クロスのブレードを受け止めた。

 

『血の気の多い奴らだな、お前らは・・・・面倒だ、少し大人しくしてろ』

 

武装解除勧告の時とは違い乱雑な言葉遣い(おそらくこちらが素なのだろう)でソレは両手に先程と同じ粒子のリングを発生させ二人を弾き飛ばすと、二人の手足を何処からともなく発生させた結晶体を使って拘束する。

 

『う、動けねぇ・・・・』

 

『それにアムジャケットのエネルギーが急速に失われていくだと!?』

 

注意して見れば結晶体が輝きを増すのに比例してディグラーズとジン=クロスのアムジャケットのアムエネルギーの輝きが失われていく。まさかあの結晶体、いやあの赤色の粒子は!?

 

『もういいだろう・・・・蒐集開始』

 

再び上空に浮かび上がったソレが手を上翳すと我々のアムジャケットやバグシーン達からも結晶体が現れアムエネルギーを奪っていく。その奪ったエネルギーを更に結晶体を介してソレに集積されていく。そう、あの結晶体、あの赤色の粒子はおそらくナノマシンか何かで作られた「エネルギー蒐集兵器」だ。多分だがあのパワードスーツは恐ろしくエネルギー消費の激しいものなのだろう。だが、このナノマシン型のエネルギー蒐集兵器を用いる事で敵からエネルギーを奪いつつ無力化し、奪ったエネルギーで戦闘可能時間を延長する。そういうコンセプトなのだろう。それに加えてあの防御性能だ。あれはきっと「対軍戦闘用兵器」に該当するもの。これを開発した技術者に私は嫉妬した。私もJA側でネオアムジャケットの開発に携わってきたからこそ判る。アレを開発した技術者は間違いなく天才だ。だが、ソレはまだ私を驚かせるようだ。

 

『ユニゾンモード・デュアル【LF:ルシフェリオン】展開』

 

ソレは新たに赤紫の装甲を纏い、槍のような武器を手にする。そして、その槍の先端に赤色の粒子を収束させていく。

 

『天より来るは明星の光、その光を業火に、全て焼き払う焔と変われ!』

 

ソレは我々に見せつけるかのように槍の先端を離れたところに見える山に向け、戦場からかき集めた膨大なエネルギーを解き放つ。

 

滅焔の明星(ルシフェリオン・イレイザー)!!』

 

轟音と共に放たれたその砲撃は遠く離れた山に着弾するや否や山頂から中腹までを消滅させた。もし、アレが我々に対して放たれていたら・・・・そう考えただけでゾッとする。そう思ったのは私だけではなかったようで、司令官を含めた多くの者達が顔を蒼白くしている。

 

『これが最終通告だ。双方、直ちに武器を納めろ』

 

その最終通告から程なくして我々JAと連邦アムドライバー達は武器を納めた。ムーロンにおける我々JAと連邦アムドライバーの戦いは後に【人の姿をした兎という破壊神】と呼ばれた彼の介入により僅か30分程で幕を閉じたのであった。

 

side out




はい、またしても兎がやらかしました。
後半に登場した技官はJAに参加したのは「好きにアムテクノロジーを研究させてもらえるから」という雪兎達の同類な方です。
というか、【SF:スピリットフレア】の特性をほぼ初見で見抜いているあたりJAには勿体無い人材。

雪兎は地味に魔王様信者。

ジン=クロスはシムカ派所属のアムドライバーです。シーンやエーリックの同期で刀剣系の扱いに長けた凄腕のアムドライバーですが、シムカにはジェナス達の代替品みたいな扱いをされてた不遇な人。おそらく連邦アムドライバーで唯一のネオアムジャケットを使っていたアムドライバー。元はゲーム版のオリジナルキャラでアニメに逆輸入されたキャラらしいです。


次回予告

雪兎の【SF:スピリットフレア】を用いた介入で無理矢理停戦状態となった連邦アムドライバーとJA。その両者のトップであるウィルコット議長とジノベゼを集めた雪兎はイヴァンとの約束を果たすべく、両者の断罪を開始する。そして、沈黙を続けていたガン=ザルディが集まったピースを求め姿を現す。

次回

「断罪と究極の力 兎、論破する」






ジョイ「今回のメカは今回登場した新アドヴァンスド【SF:スピリットフレア】ッス」

シャルロット「まあ、本編中でJAの技官さんがほとんど解説してたけどね」

ジョイ「そうッスね・・・・最大の特徴はエネルギー蒐集型汎用粒子ナノマシン【エグザミア】ッスね。何処ぞの太陽炉みたいに常に放出してるッスけど、バリアやエネルギー蒐集、ビーム兵器に使用出来るッス」

シャルロット「今回は使わなかったけど、集めたエネルギーをそのまま巨大なビームソードにして振るったりも出来るんだよね」

ジョイ「それと今回は【LF:ルシフェリオン】と合体してたッスけど、他のダークマテリアルズ系のアドヴァンスドとも合体出来るッス」

シャルロット「しかも、【YK:エルシニアクロイツ】のトリニティモードの発展系カルテットモードで全部盛りになるともう手がつけれないよ」

雪兎「(・・・・まだそれを超えるヤバいのあるなんて言えねぇ)」


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100話 断罪と究極の力 兎、論破する

とうとう100話目です。そしてこの章も20話目・・・・それともうすぐ一周年か、長いようで短かったな。

記念番外編は何を書くか・・・・

98話に何故かダラート組のはずのミュウがいる描写がありましたので修正しました。

引き続き兎協奏曲をよろしくお願いします。


制圧後雪兎が各陣営に要求したのはそれぞれのトップであるウィルコット議長とジノベゼを集める事だった。ウィルコット議長は直ぐにその要求を呑んだが、ジノベゼはそれを拒否した。しかし、雪兎はキャシーにロシェット達を捕らえている事を通達し、ミュネーゼでのあれこれを使ってジノベゼを連れて来いと脅迫。意外にもネズミが苦手なシーンが震え上がる脅しに屈したキャシーに連れられジノベゼも最終的にはムーロンにやってきた。

 

「君があのパワードスーツ、ISと言ったかな?アレの操縦者なんだね?」

 

話し合いの会場に選ばれたのは連邦のムーロンベースの会議室の一室。「連邦の本拠地に入るなど!」とジノベゼがごねたが、雪兎が「護衛はお好きなように・・・・まあ、誰が来ようが、連邦が仕掛けてこようが、まだ争うつもりなら叩きのめすだけだがな?」と宣言した事で黙った。

 

「ええ、ウィルコット議長。まずはあのような手段で強引にこのような場を設けた事をお詫び申し上げます」

 

「いや、君は誰一人傷付けようとせず双方を無力化した。それにあの状況だ。ただ話し合い等と言っても双方受け入れなかっただろう」

 

雪兎の謝罪にウィルコット議長はそう告げる。ジノベゼもあの場でああしなければ話し合いの席には着かなかったことに関しては同意のようだ。

 

「・・・・そんな事をしてまで我々をこの場に集めた理由は何だ?もし下らない内容であればただでは済まさんぞ!」

 

「そう慌てないでいただきたい。それにお二人に話があるのは俺ではなく彼です」

 

ジノベゼを宥め雪兎はその人物を会議室に招き入れる。

 

「・・・・」

 

「お、お前は!?」

 

その人物の登場にウィルコット議長は言葉を失い、ジノベゼは狼狽する。

 

「イヴァン=ニルギース。アムテクノロジーの研究者だったカペリ=ニルギースの弟と言えばお分かりいただけますかな?」

 

会議室に招き入れられたのはイヴァンだった。雪兎の紹介にウィルコット議長は納得した顔を、ジノベゼは顔を青くしている。

 

「ウィルコット議長、お初にお目にかかる。そして、久しぶりだな、ジャン=ピエール=ジノベゼ」

 

「カペリ君の弟か。生きているのは知ってはいたが・・・・そうか、ピュアアムドライバーや彼らと共にいたのか」

 

「兄をご存知で?」

 

「勿論だとも・・・・私の至らなさ故に失った命だ」

 

意外な事にウィルコット議長はイヴァンの兄・カペリを知っていた。その命がアムテクノロジーを独占しようとしていた連邦評議会の一部の議員のせいで失われた事もだ。しかし、ここで空気を読まない男が一人。

 

「聞いたか!ついにウィルコット議長が非を認めたぞ!やはり私は正しーー」

 

「少し黙ってろ、三流悪党」

 

ジノベゼの空気を読めない勝利宣言をドスの効いた声で遮る雪兎。

 

「さ、三流悪党だと!?」

 

「そうだろが・・・・ジャスティス・アーミーだから知らんが、やってるのは自分達に従わない連中を武力で無理矢理支配してるだけだろうに。従わないなら排除するとかどんな恐怖政治だよ?そもそもお前らに各都市を武力制圧していい権限なんぞどこにも無いぞ?その点、市民の顔色を伺って都市や市民に危害を加えなかったランディ=シムカの方が何倍もマシだわ」

 

「な、なぁ・・・・」

 

ISを兵器扱いしようとした為やむを得ず社会的に排除する形となったシムカだが、雪兎は「市民に手出ししていない」という点でジノベゼよりマシと認めていた。

 

「議会があんのは市民の為だろうに・・・・ジノベゼ、確かにウィルコット議長には非がある。だがな、あんたはやり方を間違えた。イヴァンの言う通りにアムドライバーの真実を証拠付きで開示する事だけしていればあんたは議長にも成れただろう。武力に頼るべきじゃなかった」

 

「わ、私は・・・・私は間違ってなど・・・・」

 

「もし、先の大戦であんた達が勝っていたとしても恐怖政治なんかしてりゃあ何れJAに反発する組織が誕生するか、あんたのやり方についていけない連中にクーデター起こされて殺されるかだと思うがな?」

 

そう言って雪兎はジノベゼに同行していたキャシーを見る。キャシーも雪兎が何を言いたいのか理解し顔を青くする。

 

「特にそこの女狐とか・・・・実際に連邦からJAに鞍替えしてるんだ。また状況が悪くなれば寝返るぞ、その女」

 

原作を知るからこそ雪兎がしてきた指摘は正しく、その場にいた誰もがそれを否定出来なかった。そんな中、最初に口を開いたのはイヴァンだった。

 

「・・・・まったく、結局私の言いたかった事は全て言われてしまったな?」

 

「すまん、あのド三流があんまりにも状況理解してねぇもんで、つい・・・・」

 

「いや、私が言うよりも説得力があっただろう。ジノベゼを見てみろ。燃え尽きてしまっている」

 

「あっ・・・・」

 

半端に頭が回る分雪兎の言っている事が現実に起こりうると判ってしまったジノベゼはイヴァンの言う通り二次元であれば真っ白になっていると思われる程に燃え尽きてしまっていた。

 

「・・・・それで、君達の要望は私達に罪を認め、政治という舞台を降りろという事かな?」

 

「ええ、それが今回の件での一番穏便な解決策かと・・・・勿論、今後も色々と荒れる事でしょうが、このまま争い続けるよりは良いかと」

 

「それは私もかしら?」

 

「当然だ。言っておくが、俺はジノベゼ以上にお前が信用ならん」

 

ウィルコット議長はいち早く雪兎達の狙いに気付き、キャシーもある程度は予想していた事を雪兎に確認する。

 

「初対面だというのに嫌われたものね」

 

「あんたの評判はジェナスやシーン達から聞かされてるからな」

 

その言葉に「そう・・・・」と納得したキャシーはふと思い出したかのように雪兎に訊ねる。

 

「そういえばロシェット達は無事なのかしら?」

 

「一応な。帰りにでも引き取っていってくれ」

 

「あら?何も要求しないの?」

 

「したらあんたはアイツらを見捨てるだろ?」

 

「・・・・降参だわ。貴方には情報戦や交渉でも勝ち目は無さそうね」

 

「これで長かった戦いも終わる」

 

これで全てが解決したと雪兎以外の全員が思ったその時。

 

『否、まだ終わりではない』

 

招かれざる者が姿を会議室の外、地上数十メートルの空中(・・)に現す。

 

「やっぱりこのタイミングで仕掛けてくるか・・・・ガン=ザルディ(・・・・・・・)

 

それはおそらく原作通りに彼の持つハーフゼアムで作られたゼアムジャケットを纏ったガン=ザルディだった。

 

『残りのピースを渡してもらおうか?』

 

「断る。見ての通りこの戦いは既に終結した。もうゼアムは必要無い」

 

『いや、必要だ。二度とこのような争いが起きないよう管理する神となる力が!』

 

雪兎とガン=ザルディのやりとりにゼアムの事を知らぬ議長らは首を傾げる。だが、ジノベゼですらガン=ザルディが狂気に駆られているのは理解出来た。人間が神に至ろう等狂気以外の何物でも無い。

 

「新世界の神にでもなるってか?名前を書いたら殺せるノートでも手に入れてから出直してこい」

 

『新世界の神か・・・・惹かれるフレーズではあるが、そのノートを手にしたところで何故か失敗するイメージしか浮かばんな』

 

「実際失敗してるからな、そいつ。要するに止めとけって話だ」

 

『そんな言葉で今更私が止まるとでも?』

 

そう言いながらガン=ザルディはその手にアムエネルギーを収束させ始める。

 

「思ってねぇよ!来い!雪華っ!!」

 

そして本当の最後の戦いの幕が開く。




ということで原作のラスボス・ザルディ戦突入です。
とりあえずウィルコット議長、ジノベゼ、キャシーの三名も生存しました。


次回予告

雪兎達の持つ半分のゼアムを求め、ついにガン=ザルディが牙を剥く!それを予想していた雪兎は残るゼアムのデータディスクを手にガン=ザルディとの戦う事に。そんな雪兎が対策を講じていないはずがなく、雪兎の新たなる切り札(ジョーカー)が顕現する!

次回

「究極の神VS創生の破壊神! 兎、神に挑む!?」


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101話 究極の神VS創生の破壊神! 兎、神に挑む!?

アムドライバー編最後の戦いです。
今回は福音以来の激戦回になります。それくらいフルゼアムジャケットはヤバいです。
まあ、それよりも今回も兎が色々やらかしますが・・・・


咄嗟に雪華を纏った雪兎は【CF:コールドフレイム】と【NW:ネオウィザード】を展開し、グラスパーの防御フィールドを使いガン=ザルディの放ったエネルギー砲を弾く。そうしたのは背後のイヴァンやウィルコット議長らを守る為だ。

 

「ちっ、議長達もいるってのにお構い無しかよ」

 

『神の統治する世界には不要だ』

 

「いかれてやがる」

 

このままではせっかく彼らを生かした意味が無いと、雪兎は【NW:ネオウィザード】から【NJ:ネオイェーガー】に装甲切換し、拡張領域からゼアムのデータをまとめたメモリを取り出す。

 

「ゼアムのデータはここだ。欲しけれりゃついてこい!」

 

『いいだろう』

 

そう言ってムーロンベースを飛び出し上空へ向かうと、ガン=ザルディもそれを追っていく。そして、十分にムーロンベースから距離を取ると両者はそれぞれの武器を手に激突する。

 

「ガン=ザルディ!何故そこまで神になることに固執する!」

 

『人間が愚かだからだ!例え今平和を取り戻したとしてもまた何れ人間は争いを繰り返す!それが判らぬか!』

 

「それはあんたのやり方だって同じだろう!!ゼアムに不老不死になる力なんて無い!だったらあんたが死ねば残されたゼアムを廻って再び争いが生まれる!」

 

『その程度の事で再び争うのであれば人間など滅んでも仕方あるまい』

 

絶え間無く激しい空中戦を繰り広げる二人。それはアムドライバー達はおろかIS学園の面々でも簡単には介入する事が出来ないレベルの攻防だった。

 

「ふざけるなっ!」

 

両手のショーテルに熱と冷気を纏わせ斬りかかる雪兎をガン=ザルディは両手をブレードに変化させて受け止めるが、雪兎はすぐさまガン=ザルディの腹部に蹴りを入れ吹き飛ばす。

 

「人間はっ!」

 

それを雪兎は追い抜き蹴り上げ。

 

「お前の!玩具じゃねぇ!!」

 

再び追い抜き両手を合わせて上から下に叩き込み、落下するガン=ザルディに容赦無くネオバスターライフルを放つ。しかし、すぐに落下点からガン=ザルディが飛び出し上空の雪兎と激突する。

 

「判ってはいたが・・・・化け物だな、ゼアムジャケットってのは」

 

『化け物では無い。神の力だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのガン=ザルディと互角だなんて・・・・」

 

その戦いを観ていたジェナス達はそれ以上の言葉を口に出来なかった。

 

「でも、雪兎があの装備で押し切れないなんて・・・・」

 

「雪兎・・・・え?」

 

その時、心配そうに雪兎を見上げるシャルロットとガン=ザルディの目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほぉ・・・・』

 

何度目かももう判らない激突の後にガン=ザルディがふと下を見詰めた。雪兎を相手にそのような隙を見せるのは致命的な行動ではあったが、その見詰める先に居たのは・・・・"シャルロット"だった。

 

「まさかっ!?」

 

雪兎が気付いた時には既にガン=ザルディは行動を起こしていた。転移と変わらぬスピードでシャルロット達の前へと現れ迷わずシャルロットの首を掴む。

 

「うぐっ・・・・」

 

「シャルッ!!」

 

『止まりたまえ』

 

雪兎も慌てて駆けつけたが、ガン=ザルディはシャルロットを盾に雪兎を制止する。

 

『彼女は君にとって大切な存在のようだね?』

 

「シャルを離せ」

 

『ならば取引といこうか。君の持つゼアムのピースを渡したまえ。そうすれば彼女を解放しよう』

 

そして、ガン=ザルディは雪兎にシャルロットと引き換えにゼアムのピースを渡せと要求する。

 

「人質なんて卑怯だぞ!ガン=ザルディ!!」

 

これにはガン=ザルディに憧れていたジェナスも激昂する。だが、シャルロットを人質にされているためジェナス達も何も出来ない。

 

『何とでも言いたまえ、ジェナス君。私はもう決めたのだ。私は何があってもゼアムを完成させ、神に成るのだと!』

 

「だ・・・め、ゆき・・と・・・・渡しちゃ、だめ」

 

「わかった。その代わり、シャルに傷一つつけてみろ・・・・その時は俺は自分を律する自信はねぇぞ?」

 

シャルロットはガン=ザルディにメモリを渡しては駄目だと言うが、雪兎はゼアムのメモリをガン=ザルディに放った。

 

『確かに・・・・では、彼女を解放しよう』

 

メモリを受け取ったガン=ザルディはシャルロットを掴んでいた手を離しシャルロットを解放する。

 

「げほっ、げほっ・・・・」

 

「シャル!無事か!?」

 

「う、うん・・・・僕は大丈夫、でも・・・・」

 

とうとうガン=ザルディの手にゼアムのピースが揃ってしまった。

 

『ふ、ふはははは!!ピースは全て揃った!これで私は神に成れる!』

 

解放されたシャルロットを抱き止める雪兎。そんな彼らを嘲笑うかのようにガン=ザルディは再び上空へと昇り、ゼアムジャケットのヘルメットのインカムの部分に備えていたスロットにメモリを差し込みゼアムのデータを吸い出す。すると、手足は鋭くなり、背中から翼のようなものが生え、両肩にバグシーンの目のようなパーツが現れ、ガン=ザルディのゼアムジャケットは禍々しい姿へと変貌していく。

 

「あれがゼアムの、神の力なのか・・・・」

 

「まるで悪魔じゃねぇか」

 

そして、フルゼアムジャケットとなったそれを纏ったガン=ザルディは早速その力の一端であるエネルギードレインを発動し、周辺のアムエネルギーを吸収し始める。それによってムーロンベースを警備していた連邦アムドライバーやJAのアムジャケットだけでなくムーロンベース等のアムエネルギーを利用していた施設全てがアムエネルギーを失い沈黙していく。

 

「お、おい。皆どうしちまったんだ!?」

 

そう、ゼアムが神の力と呼ばれるのは今やこのアムエネルギーに依存した世界の全エネルギーを掌握出来るこの能力によるところが大きい。しかし、アムエネルギーを利用していないISを使う雪兎達とジェナス達ピュアアムドライバーの面々には何の効果も無かった。

 

「何で俺達だけ・・・・」

 

『それはオイラ達がジェナス達のネオアムジャケットに仕込んでおいたエネルギーコンバーターのおかげッス!』

 

「マジか!?でも何でそんなもん搭載してたんだ?」

 

『ゼアムのピースを解析してた時に雪兎がこの事に気付いて万が一に備えて、って仕込んでたんスよ』

 

「こんな事もあろうかと、ってやつだ。メカニックならば誰もが一度はやってみたいシチュエーションだな」

 

雪兎はドヤ顔でそう言う。

 

「つまり、雪兎達はゼアムが悪用される事を想定していたと?」

 

「当たり前だろ?ピースがもし敵に奪われていたら、それこそ前にイヴァンが言ってたガン=ザルディがアムテクノロジーを、ゼアムを悪用する可能性も想定していた」

 

つまり、雪兎は最初からガン=ザルディを信用していなかったのだ。

 

『おかしい・・・・全世界のアムエネルギーを吸収したはずなのに、吸収したエネルギー量が少な過ぎる』

 

更に、全世界のアムエネルギーを集約出来るはずのフルゼアムジャケットのエネルギードレインだが、実際に吸収出来たエネルギー量の少なさにガン=ザルディが疑念を抱く。

 

「馬鹿か?俺が知り得た事に関して対策の一つや二つ立てて無いとでも?」

 

その疑念に雪兎はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべる。

 

『き、貴様っ!何をした!?』

 

「なに、簡単な事さ・・・・このムーロンベース一帯にアムエネルギーを遮断するフィールド発生装置を設置した。ゼアムとて使うエネルギーはアムエネルギーだからな」

 

ピースを集め終えた後、ロシェット達を弄るのと並行して雪兎達は手分けしてその装置を設置して回っていたのだ。

 

「そうか!だからフィールド内にしかゼアムの影響がでなかったのか!」

 

Exactly(その通り)

 

『おのれ・・・・だが!それで勝ったつもりか!』

 

「そういうあんたこそ、この人数を何とか出来ると?」

 

雪兎達IS学園の面々とジェナス達ピュアアムドライバーの総勢29名がいる状況。人数こそ有利ではあるがガン=ザルディの言うように勝ったつもりになるのは少し早い。

 

「それに・・・・ここまでやっといてフルゼアムに対抗出来る力を俺が用意していないとでも?」

 

『何?』

 

「見せてやるよ・・・・これが俺の最新の切り札(ジョーカー)だ!」

 

雪兎は【CF:コールドフレイム】だけでなく【NJ:ネオイェーガー】まで一度解除し、新たなる力を解き放つ。

 

「来い!【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】!!」

 

起源や発端等の意味を持つ英語のGENESISの形容詞の変型とも言われるGENESIC。その名を冠した勇者王にして破壊神とも呼ばれるロボットを模した雪兎が束の協力を得て作成したアドヴァンスドを超えるEXCEED(極限)という(パック)

 

『させぬ!』

 

それに本能的な恐怖を覚えたガン=ザルディは腕をキャノンに変えて極太のビームを放ちまとめて消し去ろうとしたが・・・・

 

『Protection』

 

その電子音と共に既にGENESICの展開を終えた雪兎に左手一つで張られた障壁に遮られた。そして姿を現したのは黒き装甲と金の装飾、所々に翡翠のエネルギーマテリアルを付けた破壊と創造の力たる【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】となった雪華を纏う雪兎。

 

「変身や合体シーンでの攻撃とは無粋な・・・・こっちは待ってやったってのに」

 

『む、無傷だと!?』

 

「これはお返しだ」

 

驚くガン=ザルディを余所に雪兎は右手を貫手の形にし、それをドリルのように高速回転させながら腕を大きく振りかぶりガン=ザルディへと撃ち放つ。

 

「貫けっ!!」

 

凄まじい回転とエネルギーを纏ったその攻撃はフルゼアムジャケットの左肩を貫くが、フルゼアムに変貌した際に拡張されたパーツの部分だったために中の肉体が傷を負う事はなかった。だが、これにより左肩のエネルギードレインを司るパーツは破壊されてしまう。

 

『くっ、この程度っ!?』

 

「こいつはさっきシャルを人質に取った分だ」

 

しかし、雪兎のターンはまだ終わってはいなかった。気付けばガン=ザルディの目の前に射出したはずの右手を再び高速回転させ振りかぶり、今度は貫手ではなく拳を顔面に叩き込む。その拳は高速回転だけでなく、全身の力を余さず伝える何処ぞの覇王様の拳の異色のコラボレーションとなっており、その相乗効果で生まれた一撃はガン=ザルディを音速の壁を突き抜ける勢いで吹き飛ばし、先日雪兎が滅焔の明星(ルシフェリオン・イレイザー)で山頂から中腹まで消し飛ばした山の隣の山の丁度中腹に激突し山全体と比較して1/3程の巨大なクレーターを作り上げた。

 

「・・・・何、あれ?」

 

これにはジェナス達は驚愕していた。

 

『か、神が・・・・神の力を得たはずの、私が・・・・負けるはずが・・・・』

 

「覚えておけ、最後に勝利するのは・・・・勇気ある者だぁああああ!!」

 

フルゼアムを得て神に至る力を得たと思っていたガン=ザルディもその圧倒的な力に声が震えていた。それでもシャルロット(大切な人)に手を出された雪兎がこの程度でガン=ザルディを許すはずもなく、トドメに拡張領域から巨大なプラスドライバーのようなパーツを右腕に装着し、ガン=ザルディが埋まっている山のクレーターが反対側に貫通するような一撃を放ちフルゼアムジャケットを完全破壊した。

 

「・・・・雪兎、シャルロットに手出されてブチギレてるよな?」

 

「そうだな、人質に取ったのがシャルロットでなければもう少しマシな決着だったろうに・・・・」

 

「シャルロットさん、愛されてますわね」

 

「はぅ・・・・」

 

「何処の勇者王よ、あいつ・・・・」

 

「最後の台詞はあの名シーンの再現・・・・流石は雪兎」

 

「かんちゃん、あのシリーズも好きだったもんね」

 

「元の世界に帰れたら本国に忠告しておくべきだな・・・・アレと敵対すれば国が焦土となりかねん」

 

「うん、あんなのと敵対しようと思ったら衛星兵器クラスがいるよね」

 

「体育祭の時にアレがなくてよかった・・・・」

 

「お嬢様・・・・」

 

「あ、あれはまさか覇王流!?」

 

「アキラ、貴女って本当に格闘技になると博識よね」

 

「でも、覇王流って魔法少女もののアニメに出るやつじゃなかったっけ?」

 

「あれは魔砲少女・・・・それにしてもやはり師匠達は凄い」

 

一方でIS学園の面々は雪兎と束がやらかす事に慣れてしまったのかこの調子である。

 

「束、あれ、生きているのか?」

 

「生きてるんじゃないかな?ゆーくん、一応手加減してたみたいだし」

 

「あれで手加減なんですね・・・・」

 

「だってアレ、衛星・小惑星級のデブリ破砕が本来の使用用途だもん」

 

「あ~、【S:ストライカー】の発展仕様なんだ、アレ」

 

その後、救助されたガン=ザルディはゼアムの防護フィールドのおかげで命にこそ別状はなかったものの、その心はバキバキに砕かれミキサーにかけられたレベルで燃え尽きた症候群と化していたらしい。




いや~、ゼアム強敵でしたね。
処刑BGMは某勇者王の曲をイメージして下さい。

次辺りでアムドライバー編は終了となります。少々駆け抜けた感がありますが、原作に合わせるとかなり長くなるのでこの辺りでズバッと切りました。
やっと聖剣事変にいける・・・・


次回予告

ガン=ザルディを破り、戦いの幕を閉じた雪兎達はようやく元の世界に帰る事に。そして、ジェナス達とも別れの時が・・・・

次回

「See You Again 兎、元の世界に帰る」


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102話 See You Again 兎、元の世界に帰る

やっとアムドライバー編が終わる・・・・
アンケートの結果、3一択だったので雪兎と契約したイヴァン以外はピュアアムドライバーの面々からは連れて行きません。

100話記念閑話は遅くても4月中には書き上げるつもりです。内容は・・・・雪兎と束の出会いか、シャルロット目線のお話のどちらかにしようと思います。


ガン=ザルディとの戦いから十数日が過ぎた。

そのガン=ザルディは【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】にゼアムと(プライド)を木っ端微塵にされほぼ廃人となってしまい、海の見える崖にある家に引きこもり静かに絵を描く(ジェナス達が訪ねてくるまでの)生活を送っている。余程ショックだったようだ。

 

ウィルコット議長やジノベゼも政界を脱し、議長は原作では少し前に亡くなってしまうはずが雪兎達の介入により生存していた娘と田舎に移り住み、ジノベゼもJAを解散して元々多くの支援者がいた地元の地方へと隠居したらしい。そして、その解散させたJAだが、ディグラーズを筆頭に解散を良しとしない多くの残党勢力が集まり【Deracine Army(はぐれ者の兵隊)】と名乗り各地で暴れているらしく、アムドライバーの任務は対バグシーンからDAの鎮圧へと変わっている。アムドライバー達の戦いはまだまだ続くようだ。勿論、ピュアアムドライバーの面々も今までの活躍を買われ、連邦アムドライバーとは別に独立遊撃部隊として今後も戦っていくとのこと。

 

さて、何故こんな近況報告のような事をしているかと言うと、漸く雪兎達が元の世界に帰る事になったからだ。実を言えばムーロンベースでの一件の前に帰る方法自体は確立していたのだが、雪兎が先日のガン=ザルディとの戦いで使った【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】の全力稼働の負荷で数日まともに動けなかったのだ。このEXCEEDシリーズは未完成で、そのアドヴァンスドをも超える規格外っぷりは搭乗者とISに掛かる負荷やじゃじゃ馬さも規格外らしく、雪兎をしても全力稼働は負荷無く扱うのが困難という代物だったのだ。決着が着いた直後に雪兎が気を失い、束がその事をカミングアウトした事でそれが発覚し、目覚めた雪兎はシャルロットに泣かれ珍しく狼狽していた。

雪兎や束達が見つけた元の世界に帰る方法だが、その鍵はGENESICに搭載されたある武装であった。それはフルゼアムジャケットを木っ端微塵にした【マルチボルトドライバー】という先端のボルトを変える事で様々な用途に使用出来る物で、そのボルトの中に元ネタである勇者王の設定にも存在した空間歪曲ボルトを再現した【ディメンションドライバー】があり、その力で強引に空間の歪みを発生させ、世界の復元力を辿り元の世界へと移動する方法だ。

※尚、元ネタには次元を移動するゲートを開くツールも存在するが、残念ながらそれはまだ再現出来ていない。

 

「随分と世話になったな」

 

「それはこっちの台詞だ、雪兎。雪兎には本当に色々と助けてもらったからな」

 

雪兎達が帰ると聞き、ジェナス達ピュアアムドライバーの面々もわざわざ見送りに集まってくれた。

 

「でも、コイツら(ビーストバイザー)、本当に貰っていいのか?」

 

「気にするな。元々そっちの資材で作ったやつだし、持って帰っても使い道無いからな。それにデータは十分取れたから作ろうと思えばあっちでも作れるし」

 

「それもそうか・・・・なら、ありがたく使わせてもらうよ」

 

「そうしてやってくれ」

 

ビーストバイザーを残していくのは先程話題に出た残党勢力であるDAとの戦いに備えてである。DAには原作でも最後の登場話ではピュアアムドライバー全員を相手に無双したディグラーズがいるため、ビーストバイザーを使えるのはジェナス達にとってもありがたい事だった。

 

「色々と驚かされてばかりだったが、達者でな」

 

「元気でな!」

 

「お二人もお元気で」

 

歴戦のアムドライバーで別れも多く経験してきたダークとタフトはそうさっぱりと。

 

「ロシェ達やキャシーの事では迷惑を掛けたな」

 

「気にすんなって・・・・それより、セラとは上手くやれよ?」

 

「なっ!?」

 

「どうしたの?シーン」

 

「な、何でもない!?」

 

シーンは最近仲の良いセラとの仲をからかい。

 

「向こうに行っても元気でね?」

 

「セラこそ」

 

「また何れ会おう」

 

「うん、絶対に」

 

「あ~!セラだけ狡い!」

 

「私達もだよ!」

 

そのセラやジュリジュネの三人は蘭やマドカと再会を約束し。

 

「ラグナ、シシーを大切にな?」

 

「そういう一夏はさっさと答えだせよ?」

 

「うっ、痛いところを・・・・」

 

「まあ、一夏に関しては今更だがな」

 

「うんうん」

 

「酷っ!?」

 

ラグナは一夏や弾達とそんな会話をし。

 

「本当に最後まで賑やかな人達ね」

 

「でも、しんみり別れるよりはいいでしょ?」

 

「そうね」

 

パフは楯無とそんな一同を見て微笑み。

 

「ジョイ、ジャックさん、良い勉強になった」

 

「それはお互い様ッス」

 

「だな。それにしても束の嬢ちゃんに雪兎のやつはこっちが一を知って十を知る間に百も千も知識を吸収していくから何度か危うく置いてかれそうになったぜ」

 

「そうッスよ。特にあのEXCEEDってやつはオイラ達だけじゃ再現出来そうに無いッス」

 

「それについていけるジョイやジャックさんが異常。あと、アレは再現出来たら人間辞めてる」

 

ジョイやジャックといったメカニックは一緒に作業したカロリナと語り合い。

 

「貴方達の事は忘れ無いわ」

 

「ああ、私達もだ」

 

「また一緒に飲みましょうね」

 

マリーは旅の中で飲み仲間となった千冬や麻耶とまた飲もうと誓い。

 

「ニルギース、ゲンキデ」

 

「ああ、シャシャもジェナス達を頼む」

 

「ウィ」

 

イヴァンは残るシャシャにジェナス達を託し。

 

『皆様、準備が整いました』

 

別れの時がやってきた。

 

「そんじゃ、いくぜ!ディメンションドライバー、フルドライヴ!」

 

雪兎は再び【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】を纏い、フライング・ラビットの上に立ちディメンションドライバーを起動し、真上の何も無いはずの空間にその先端を射し込む。

 

『空間歪曲率規定値を突破。開きます!』

 

すると、こちらへ跳ばされる前に遭遇したものとは違い安定した?空間の歪みが発生する。

 

「またな!アムドライバー!」

 

「また会おうぜ!IS学園の皆!」

 

その言葉を最後に歪みはフライング・ラビットを呑み込み消滅した。

 

「いっちまったな・・・・」

 

「ああ・・・・でも、またいつか会えるさ」

 

「そうね。彼なら『一度行った世界への移動くらい楽勝』とか言ってあっさり来ちゃいそうね」

 

「雪兎の場合、あり得そうで困る」

 

「違いねぇ」

 

「でも、その前に俺達の世界を平和にしなきゃな!」

 

「ウィ。コンドハミンナデカンコウリョコウ!」

 

「いいッスね!」

 

「そうね、そんな再会がいいわね」

 

そんな光景を夢見てアムドライバー達はこれからも戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・通常空間に戻りました。座標データも正常、私達が跳ばされた場所と誤差の範囲です!」

 

「時間は・・・・跳ばされた一時間くらい後だな」

 

「「「「やった!!」」」」

 

何とか元の世界へと戻る事の出来た一同はクロエや雪兎の観測データを聞き歓喜する。

 

「随分と長い一時間だったな」

 

「まあ、完全に記録外の出来事(ロスト・メモリー)って感じですかね」

 

「確かに誰に言っても信用してもらえなさそうですよね・・・・」

 

そう皆がしみじみと思っていると、雪兎が一人険しい顔をしていた。

 

「雪兎?もしかしてやっぱり負荷が?」

 

「いや、そっちは短時間だったから少し疲れた程度だよ・・・・問題は二次移行した鈴達の専用機をどうやって説明したもんかと」

 

「「「「あっ」」」」

 

そう、こちらでは一時間しか経っていない間に鈴、セシリア、ラウラの三人の専用機は二次移行してしまっていたのだ。

 

「ど、どうしよう・・・・」

 

「こ、これは本国にどう説明したら・・・・」

 

「何を悩む必要がある?二次移行自体は喜ばしい事ではないか」

 

「その過程が説明出来ないって言ってんの!」

 

元の世界に戻ってもまだまだ問題は山積みのようだ。

 

「ふふ、相変わらず愉快なのだな、お前達は」

 

「そうは言うが、今日からお前もその愉快な仲間達の一員だぞ?」

 

「そうだったな。よろしく頼む」

 

「そんじゃあ・・・・welcome to the world(ようこそ、この世界へ)イヴァン、歓迎するぜ」




とりあえずこれにてアムドライバー編閉幕です!

長かった・・・・ちょっとがっつりやり過ぎたと反省しております。
かなり趣味全開なコラボシナリオでしたが、ここまで読んでいただき感謝致します。この後は予定通り11巻の聖剣編に突入します。やっと兎がフランス行くよ。


次回予告

元の世界に戻ってしばらくして冬休みが近付く中、雪兎はシャルロットに故郷・フランスへの里帰りに誘われ・・・・

次回

「冬休みとシャルロットの誘い 兎、彼女の故郷へと誘われる」


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幕間《EXTRA》
EXTRA-01 天災と兎の出会い


これは本編が100話、アムドライバー編終了を記念して書いた閑話です。



これは異世界から戻った直後ぐらいのお話。

 

「ん?俺と束さんの出会った時の話?」

 

「うん、前にEOSの訓練してた時に言ってたよね?」

 

「その話を詳しく」

 

メタな話をすれば56話で雪兎はそんな事を口にしており、その話を聞いて是非とも話を聞きたいというカロリナと気になってはいたが中々聞けずにいたシャルロットの二人が雪兎に訊ねる。

 

「そこまで面白い話って訳でも無いんだがなぁ・・・・仕方ない話してやるよ」

 

そう言いつつも雪兎は当時の事を語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは雪兎が小学1年生の頃まで遡る。雪兎が一夏や箒と知り合ったのは入学式の事だ(ISの世界だと知ったのはその少し前)。当時から雪兎はメカオタクとして様々な物を作っていたのだが、その極めつけと言っていいのが後に弾が使う事になるアーマードギアのプロトタイプである作業補助外骨格(パワーローダー)だ。

 

「今日は良いシリンダーが見つかったな」

 

その日、雪兎はいつものようにスクラップ置き場から大小様々なまだ使えそうな部品を自作の搬送台車で持ち出し、ホクホク顔で家の裏にあるガレージを改造した自分の工房へと戻ってきた。だが、工房の主たる雪兎以外には姉である雪菜でも、少し前に工房を見せた一夏や箒でもない見知らぬ(正確には雪兎は知っているがあちらは知らない)人影があった。その姿は獣耳付の赤い頭巾を被り、淡い紫色の肩掛けという一人赤ずきんという格好の少女・当時中学生の篠ノ之束の後ろ姿だった。

 

「・・・・何でさ?」

 

それを見て雪兎は思わず某赤い弓兵の若かりし頃の彼と同じツッコミをしていた。そのツッコミを聞き、束が振り返りジト目で雪兎を睨みながら近付いてきた。

 

「・・・・これ、作ったのお前?」

 

そう束が言い指差したのは雪兎が組み上げていた作業補助外骨格(パワーローダー)だ。どうやら束はどうやって知ったかは不明だが、雪兎がそれを作っている事を知り興味を抱いたらしく、確かめに来たようだ。

 

「うん、それは僕のだけど・・・・」

 

「何でこの子のこの機構は◯◯式なの?」

 

「△△式だと細かい動作は出来るけど、こいつにはそんな細かい動作必要無いから」

 

「ふ~ん、ならこれは?」

 

その後も束の質問は続き、束の表情も険しいものからにこやかなものへと変化していった。

 

「フムフム・・・・成る程ね。流石は我が友・ユッキーの弟だよ!」

 

「ユッキー?もしかして雪菜姉さんの事?」

 

「Yes!今年たまたまクラスが同じになったんだけど、ユッキーは平々凡々の凡人共と違って私の夢に賛同してくれた同志だからね」

 

「(あ~、そういや春に新しい友達出来たとか言ってたっけ・・・・名前くらい確認しとくんだった)」

 

それがまさかの篠ノ之束と思ってもいなかった雪兎はこの場にいない姉にちゃんと確認しておけばよかったと後悔する。

 

「夢ですか?」

 

一応は原作を読んで知ってはいるが、その事を怪しまれないよう雪兎は上機嫌の束に訊ねる。

 

「うん!それはね・・・・この天才たる束さんの理解も及ばない星の海・宇宙に行く事なんだよ!」

 

そのキラッキラと目を輝かせて話す束を見て雪兎は面白そうだな、と思った。原作では多くの事に阻まれ宇宙に行く為に開発したISを兵器扱いされてテロリストのようになってしまった束が障害を乗り越え宇宙へと旅立つ事になったらどうなっていたのか。見てみたくなったのだ。

 

「うん?どしたの、ゆーくん?」

 

「ゆーくん?」

 

「うん、雪兎だからゆーくん。それで、どしたの?ものすっごく楽しそうな顔してるけど?」

 

「えっ?僕、そんな顔してます?」

 

「うん、新しい玩具貰った子供みたいな顔してるよ」

 

どうやら思っていた事が顔に出てしまったようだ。

 

「束さんも同じ顔してますよ?」

 

それは束も同じだった。

 

「ねぇ、ゆーくん」

 

「何でしょう、束さん?」

 

「君、私の弟子にならないかい?」

 

「えっ!?」

 

どうやら束は自身の夢に好意的で、人並み以上の機械知識を持つ雪兎を気に入ったらしい。

 

「だって、ゆーくんを凡人共の中に置いておくの勿体ないじゃん!だから、この天才たる束さんが色々教えてあげようと言うのだよ!」

 

「マジで!?」

 

雪兎が驚くのも無理はない。何せこのISの世界で最高峰とも言われる天才から直接教えを受けるチャンスが降って湧いてきたのだ。

 

「ぜ、是非御願いします!師匠!!」

 

「師匠・・・・うん、何か良い響きだね!これからよろしくね、ゆーくん」

 

こうして兎師弟は誕生した。そして、束に付いて篠ノ之神社を訪れた際に千冬や道場の師範だった篠ノ之柳韻(りゅういん)に目を付けられ一夏や箒達と道場に通う事にもなり、準束級の天災が誕生したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、まあこんな感じかな?」

 

そこまで話し終えると、用意していた珈琲を飲み一服する雪兎。

 

「その結果が今雪兎って事なんだ・・・・」

 

「だな。まさか俺自身がIS動かしてこの学園に入るとは思ってもみなかったがな」

 

本当にそれだけは雪兎の想定外の出来事だった。しかし、束は雪兎の設計した雪華を専用機として用意していたりと前もって知っていたようではあるが・・・・

 

「まあ、そのおかげでシャルと出会えたんだから文句はねぇけどな」

 

「ゆ、雪兎!?」

 

「・・・・ご馳走さまです」

 

そんな雪兎の言葉に顔を真っ赤にするシャルロットとやれやれと言わんばかりのカロリナ。そんな甘い空気を変えるべく、カロリナはずっと気になっていた事を雪兎に訊ねる。

 

「師匠は白騎士の搭乗者については知ってるの?」

 

「知らないな。白騎士に関しては俺もノータッチだったからな」

 

流石に弟子と言えど白騎士の正体に関しては束も雪兎には教えてくれなかったらしい。まあ、雪兎も雪兎なり白騎士の正体については察しているが、本人が隠しているようなので口にはしない。

 

「それに当時はISの基礎理論を覚えるので精一杯だったし」

 

「いや、普通は小1でISの基礎理論覚えるってだけで異常だから」

 

それを言えば中二でISを作り上げた束はもっと異常なのだが・・・・

 

「ちなみに姉さんが俺をゆーくんと呼ぶのも束さんがそう呼んでるのを知ってからな」

 

どうも束と雪菜は互いに波長の合う友人だったらしく、この世界の束が原作よりまともなのは彼女の功績と言っても良い。

 

「ところで師匠、当時に作ってたものってまだ残ってる?」

 

「あるぞ?というかstorageにあるけど・・・・」

 

「見たい!」

 

「わかったわかった、ここじゃ出せないから格納庫辺りにいくか」

 

「うん!」

 

「シャルはどうする?」

 

「それじゃあ僕も一緒に行こうかな?」

 

その後、雪兎達が格納庫で昔作った発明品を広げていると途中一夏達も加わり、各発明品にまつわる思い出話で大いに盛り上がったのであった。




改めて思うが中二でIS作った束って・・・・
この作品で束がマイルド仕様なのは雪菜のせいというかおかけというか。

また何かの機会があればこのような閑話を書こうと思います。

ABの新キャラのブラジルの代表候補生グリフィン=レッドブル、この娘もまた濃いキャラだなぁ、とか思いながらピックアップガチャ一回引いたら星5来てビックリした。


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十三章 兎と聖夜と聖剣と
103話 冬休みとシャルロットの誘い 兎、彼女の故郷へと誘われる


という訳で新章です。十三章である今章では原作11巻のヨーロッパを縦断する聖剣編です。
まあ、兎が絡んでる時点でかなり原作乖離していますので「原作と全然違うじゃねぇか!」という方はバックで。

それではISー兎協奏曲ー第十三章開幕です。


それはクリスマスが20日後に迫った12月4日の事だった。その日、シャルロットは少し緊張した面持ちで雪兎にある話をする事に。

 

「ねぇ、雪兎」

 

「うん?何だ、シャル」

 

「僕ね、冬休みに一度フランスに帰ろうと思うんだ」

 

その話とはシャルロットの帰省に関するものだった。

 

「そういや夏休みに言ってたな、母親のお墓参りに行くって話だろ?一緒に行くって約束してたやつ」(※26話参照)

 

「お、覚えててくれたんだ」

 

「当たり前だろ?シャルとの約束だからな」

 

「雪兎・・・・」

 

その約束を覚えていてくれた事にシャルロットは嬉しさを隠せない。

 

「その約束もあるが、デュノア社も色々落ち着いたらしいし、一度直に会いたいってシャルの親父さんにも誘われててな」

 

「そうなんだ・・・・」

 

しかし、その後に雪兎が口にした言葉で一気にテンションが下がる。やはりシャルロットと父親であるアルベールの溝は深いようだ。

 

「デュノア社には俺だけで行ってもいいが」

 

「ううん、僕も行くよ」

 

「そうか・・・・(まあ、あっちも落ち着いたし、今なら本当の事話してくれるだろう)」

 

実は雪兎は以前シャルロットの為にデュノア社を調べた時にとある事を知り、シャルロットの父・アルベールにそこまで敵意を持たなくなっていたのだ。その事については先の誘いの連絡の際に本人にも確認しており事実だと判明している。

 

「大丈夫だシャル、俺が一緒だ」

 

「うん・・・・って、ゆ、雪兎!?」

 

雪兎がそう言うもシャルロットは不安そうだったので、雪兎はシャルロットを軽く抱き寄せた。

 

「大丈夫だって、俺の事が信じられないか?」

 

「・・・・雪兎はいつも僕が無茶しないでって言ってるのに無茶するくせに?」

 

「ぐっ、痛いとこを・・・・」

 

少し調子が戻ってきたのか、シャルロットの毒舌が雪兎に突き刺さる。そんな苦い表情をする雪兎を見てシャルロットはくすりと笑う。

 

「でも雪兎の事は信じてる・・・・僕が言っても聞かないくせに自分から言い出した事はちゃんと守ってくれるからね。あの時を除いて」

 

「シャル、まだ福音の時の事根に持ってる?」

 

「当たり前だよ・・・・あの時、僕がどれだけ心配した事か」

 

「うっ・・・・」

 

雪兎にとってもあの福音と一対一で対峙した撤退戦は色々トラウマらしい。アドヴァンスド等、その後に雪兎が自重しなくなったのもこの事が少なからず影響していると言ってもいい。

 

「今度あんな無茶したら簡単には許してあげないからね?」

 

「お、おう」

 

早くもシャルロットの尻に敷かれつつある雪兎。それから楽しげに冬休みの予定を立てる二人はまだその冬休みにあんな事件が起こるとは思ってもいないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって衛星軌道上。そこにただの人工衛星とは思えない人工衛星が存在した。

 

「これが聖剣(エクスカリバー)か・・・・」

 

そこには亡国機業・モノクローム・アバターのレイン、フォルテ、そして京都で雪兎達と交戦した闇夜の星座(ゾディアック・ノワール)の一人・魚座(ピスケス)こと楊小雨(ヤン・シャオウー)の姿があった。

 

「既に牡羊座(アリエス)掌握(クラッキング)してるはず・・・・合図があったら中に入ってこの聖剣を完全掌握するよ」

 

「本当に上手くいくのかねぇ」

 

今回も協力する事になった二部隊だが、レインはどうにも闇夜の星座のメンバーを信用出来ずにいた。確かに実力は元国家代表や代表候補生レベルの者が多く所属している闇夜の星座だが、そのメンバーの秘匿の為と言って今まで大した成果を挙げていないのだ。それ故にレインは叔母であるスコール以上に闇夜の星座を信用していないのだ。

 

「私はあの戦闘狂共(アンタレスやレグルス)とは違う」

 

このピスケス(小雨)と言う女は亡国機業では珍しい嫌女性権利主義者である。何でも彼女の父は政治家で、女性権利主義という偏った思考の危険性を公の場で訴えたが為に女性権利主義者達に冤罪で投獄され、母もその陰湿な嫌がらせで自殺した。当時代表候補生だった彼女も女性権利主義に染まった他の代表候補生から嫌がらせを受けていたらしい。その為、彼女は女性権利主義やその温床となったISを産み出した篠ノ之束を憎んでおり、束にISを産み出した事を後悔させんとISを兵器転用する亡国機業に与したのだ。なので、基本的に彼女は他の亡国機業のメンバーとも仲がよろしくない。例外は同じような境遇のアリエスだけだ。

 

『ピスケス、終わった』

 

そのアリエスからクラッキングが済んだと通信が入り、聖剣のハッチが開く。

 

「よし、突入するぞ、小娘共」

 

「命令すんなよな、おばさん」

 

IS故に生体コアとなっている少女以外に無人の人工衛星などすぐに掌握出来ると突入した三人だったが、その後すぐに通信が途絶えてしまう。慌てたアリエスが通信を復旧しようとするも、通信の代わりに聞こえたのは少女の歌声・・・・その歌は原作とは少し違い『清しこの夜』だったと言う。




という訳で新キャラとして闇夜の星座からアリエスとピスケス登場です。

ピスケスは雪兎や束とは別の意味で女性権利主義者の被害者です。まあ、雪兎と束の逆鱗踏み抜きそうなキャラだよなぁ。

原作の曲を知らんので代わりに清しこの夜を選んだのは完全に趣味です。くぎゅvoiceです。これで何が元ネタか判れば同類。


次回予告

フランスに向かう事になった雪兎とシャルロット。それに合わせそれぞれの理由でヨーロッパの母国へと一夏を招待するセシリアとラウラ。抜け駆けは許さんと同行する箒と鈴。更にそれに便乗してヨーロッパ旅行といつもの面々が集い結局大所帯に・・・・

次回

「旅は道連れ、欧州旅行? 兎、欧州に立つ」


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104話 旅は道連れ、欧州旅行? 兎、欧州に立つ

お待たせしました。

4月と5月は色々とリアルの方が忙しくてあまり更新出来ないかもしれません。

それと、今回は少しフライングでABから数人の名前が出ます。


多国籍の生徒通うIS学園は冬休みが長い。多国籍であれば年末年始に帰国しなければならない生徒や国で仕事のある代表候補生の生徒などに配慮しなければならないからだ。まあ、その分祝日等の休日が削られるので日程的な問題は無いらしい。期末試験で一夏が雪兎に泣きつくなどのトラブルはあったものの、学園長に代わり楯無の挨拶で冬休みに突入したIS学園。そして、雪兎とシャルロットは二人でフランスに向かおうとしたのだが・・・・

 

「イギリスは初めてだな」

 

「そうですの?では私自らご案内して差し上げますわ」

 

「我らがドイツには第二回モンド・グロッソの時に一度訪れているのだったな?」

 

「ああ、でも、ほとんど見て回れなかったから楽しみだぜ」

 

「そうか、ならば楽しみにしているがいい」

 

「抜け駆けとはいい度胸だな?」

 

「私達も一緒に行くわよ!」

 

どこで知ったのか、フランスに行くという二人に便乗し一夏をイギリス・ドイツに誘うセシリアとラウラ。その抜け駆けをよしとしない箒と鈴。

 

「ごめんなさいね、私達まで・・・・」

 

「あっ、お二人の邪魔はしませんから」

 

「・・・・ごめん、師匠」

 

「私まで申し訳ない」

 

セシリアやラウラと同じくヨーロッパ組で一緒になったエリカ、アレシア、カロリナの三人とアレシアの姉・カテリナ。

 

「どうせなら皆で一緒に行きましょ」

 

「たっちゃん・・・・」

 

「お嬢様・・・・」

 

「お姉ちゃん・・・・ごめん、雪兎」

 

「ひじりんは実家行かなくてよかったの?」

 

「うん、なんか両親二人ヨーロッパの菓子職人の催しに行ってるらしくて」

 

「ついでに会えるといいな、宮本」

 

何故かついてくる事になった楯無、忍、虚、簪、本音、聖、晶の七人。

 

「虚さんも一緒か・・・・」

 

「良かったね、お兄・・・・誘ってくれてありがと、マドカ」

 

「気にするな」

 

「本当にすまんな、雪兎」

 

マドカの誘いで参加した弾、蘭、数馬の三人。

 

「人数いるし、フライング・ラビットで行こう、そうしよう!」

 

「雪兎兄様の為ならば私も」

 

「こいつの事は心配するな、雪菜と共に目を光らせておく」

 

「ゆーくんと海外旅行なんて久しぶりだなぁ~」

 

「・・・・すまん、こいつも見張っておく」

 

「相変わらずですね、先輩達は・・・・」

 

大人数になったのでフライング・ラビットを持ち出す束とクロエ、その見張りに千冬と雪菜、あと真耶。勿論、ミュウやイヴァンもいる。

 

「何でこうなった・・・・」

 

「結局、いつものメンバーだね・・・・」

 

シャルロットの言う通りいつものメンバー+αが揃い踏みである。

 

「雪兎と二人きりもいいけど、皆と一緒なのも楽しいよ」

 

「賑やかだもんな、こいつら」

 

予定では雪兎とシャルロットがフランスに行っている間にエリカ達他のヨーロッパ組は母国へ戻り、残りのメンバーはドイツへ。数日後、再び全員集まってイギリスに向かいクリスマスに行われるセシリアのバースデーパーティーに参加する事になっている。

 

「首相からは雪兎にも会いたがっていたが今回は仕方ない」

 

「ドイツの首相にはまた何れ挨拶に伺うと言っておいてくれ」

 

「承知した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで皆とは分かれフランスのシャルル・ド・ゴール国際空港にやって来た雪兎とシャルロット。今回は事件が起きた訳でもないので事前に空港にも連絡を入れ自家用機扱いでフライング・ラビットを着陸させている。まあ、フライング・ラビットでの登場という事や今や【兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)】の二つ名で知られ、リヴァイヴⅡでデュノア社を返り咲かせた雪兎の突然の来仏に空港は大混乱となり、デュノア社からの迎えがなければ今もまだ空港から出られなかった事であろう。

 

「助かりました。まさかあんな事になるとは・・・・」

 

「ほっほっほ、雪兎殿はある意味我が国の英雄のようなものですからな。お嬢様も今ではジャンヌダルクの再来とも言われておりますよ」

 

「じ、爺やったら!」

 

デュノア社が迎えに寄越したのはデュノア家の執事である初老の男性・ジェイムズで、前からシャルロットの事を気に掛けてくれていた人の一人らしい。彼から見ても雪兎はシャルロットを預けるに足る男と判断されたらしく、雪兎にも友好的であった。

 

「それでか・・・・にしても、ジャンヌダルクとはねぇ。それは火炙りの刑にされねぇようにしっかり守らないとな」

 

「ええ、よろしくお願い致します。もし、そのような事になればこの爺や、ジル=ド=レェになるのも辞さない所存にございます」

 

「本気さは伝わったからジル=ド=レェはやめて!」

 

ジャンヌダルクはフランスにとっては聖女であり魔女だった存在だ。その悲劇的な最後を遂げた彼女だが、昨今も多くの創作物で人気キャラになったりしており、日本でも多くの人が知っている存在だ。そんな彼女に例えられシャルロットは顔を真っ赤にしている。

 

「ん?」

 

そんな話で盛り上がっていた時、雪兎は貼り出されているとあるポスターを見つけた。

 

「コメット姉妹来仏記念ライブ?」

 

それは最近人気のカナダの双子のアイドル・オニール=コメットとファニール=コメットの来仏記念ライブのポスターだった。

 

「へぇ~、あいつら今ヨーロッパツアー中なのか」

 

「雪兎、コメット姉妹を知ってるの?」

 

「ああ、昔、姉さんのレースの付き添いでカナダに行った時に色々あってな」

 

「ふ~ん・・・・」

 

それを聞いて少し不機嫌になるシャルロット。

 

「おい、また疑ってんのか!?あいつら十二だぞ!?妹分だっての!」

 

流石にシャルロットにロリコンと思われるのはごめんだと雪兎は必死に弁解する。雪兎は割りと面倒見が良いので男女問わず結構年下から好かれており、実は中学時代も数回後輩に告られている。だが、当時は色恋沙汰に興味が無かった雪兎は全て断っており、それを知る中学時代の同級生達は雪兎がシャルロットと付き合い始めたのを弾達を通して知り驚愕したんだとか。

 

「仲がよろしいようで」

 

そんな雪兎とシャルロットを見てジェイムズは嬉しそうにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう少しでデュノア社に着くというところで信号に捕まり停車していると、何やら人だかりが出来ているのが見えた。しかもそのほとんどが女性で黄色い声を上げている。

 

「今度は何だ?」

 

気になって窓を開けてみると・・・・

 

「ロラン様~!」

 

どうやらこの女性達はロランと呼ばれる人物の追っかけらしい。

 

「落ち着きたまえ、私の百合の蕾達」

 

そう言って女性達の中から現れたのは凛々しい男装の麗人(・・・・・)といった姿の女性(・・)だった。そして、ロランは雪兎達に気が付くと女性達を引き連れ雪兎達に近付いてきた。なのでジェイムズは一度車を路肩に寄せて停める。

 

「こんなところで【兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)】もといフランスの救世主とジャンヌダルクの再来とお会い出来るとはね。おっと名乗るのが遅れたね、私はロランツィーネ=ローランディフィルネィ。気軽にロランとでも呼んでくれたまえ」

 

「なるほどね、こっちのことは知ってるようだが一応自己紹介しておく。天野雪兎だ、俺も雪兎で構わないよ・・・・オランダの代表候補生さん」

 

「えっ?」

 

「ははっ、やはり知っていたか!」

 

「名前だけはな」

 

そう、ロランは演劇で男役を演じる役者でありながらオランダの代表候補生だったのだ。

 

「まあ、役者としての方が有名だからね。以後お見知りおきを、マドマアゼル」

 

「シャルに色目使うなよ?お前の恋人たち(・・・・)の噂も知ってるからな?」

 

「おっと、これは失礼。綺麗なお嬢さんは口説かずにはいられなくてね」

 

実はロランは同性愛者としても有名で各地に恋人がおり、その総数は90を超えるという。

 

「俺のシャルに手出すなら相応の覚悟をしておけよ?」

 

「ふふっ、高い障害の方が燃えるというものだが、流石に君は高過ぎる壁だね」

 

流石のロランも雪兎相手では分が悪いと判断したようで、あっさりとシャルロットを口説くのを止める。

 

「さて、そろそろ公演の時間でね。時間を取らせてすまなかった・・・・また逢おう!」

 

そう言うとロランは雪兎とシャルロットに白い花を一輪ずつ投げ渡し、恋人たちを引き連れ去っていった。

 

「【ネリネ】の花とはまた用意周到なこって」

 

「ネリネ?この花がどうかしたの?」

 

「ああ、そいつの花言葉は三つくらいあるんだが・・・・今回の意味は多分【また会う日を楽しみに】だろうな、キザなやつめ」

 

ちなみに他の花言葉は忍耐・箱入り娘である。

 

「キザなやつって・・・・雪兎も十分キザだと思うよ?まあ、あんな風に言ってくれて僕は嬉しかったけど」

 

「ははは・・・・何か勢いで出た」

 

照れてお互いに赤くなる二人をジェイムズは微笑ましく見守っており、それに気付いた二人が更に顔を真っ赤するのであった。




という訳でフライングしたのはコメット姉妹とロランでした。

ロランの恋人は原作設定だと99人ですが、この段階ではそこまでいっていないという設定です。
コメット姉妹も次かその次辺りで一度出したいと思ってます。ちなみに雪兎はまだコメット姉妹が代表候補生になっているのを知りません。


次回予告

とうとうデュノア社にやって来た雪兎とシャルロット。出迎えてくれたのはシャルロットの父・アルベール=デュノア。その口からシャルロットをIS学園に送り込んだ真相が語られる。

次回

「父と娘の再会 兎、歓迎される」


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105話 父と娘の再会 兎、歓迎される

更新が遅れるとか言っておきながら数日で更新です。深夜、寝れずに筆が乗りました。
今回はデュノア社訪問回です。
事件開始は原作よりもう少し遅れます。
そして・・・・久しぶりのシャルロット視点です。


シャルロットside

 

「(戻ってきたんだ・・・・)」

 

僕は今フランスのデュノア社の前にいる。本当はお母さんのお墓参りだけするつもりだったのだけど、雪兎がデュノア社に、父に呼ばれていると知って僕もついてくる事にしたんだ。

 

「大丈夫か?シャル」

 

「う、うん、大丈夫」

 

どうやら顔色が悪くなっていたようで、それを見た雪兎が心配してくれたけど、これは僕が乗り越えなきゃいけない事だからと慌てて元気を装おう。

 

「気持ちはわかるが無理はすんなよ?」

 

それでも雪兎にはお見通しだったようで、心配しつつも僕の気持ちを尊重してくれた。

 

「来たか」

 

そんな僕達を出迎えてくれたのは案の定僕の父(アルベール=デュノア)だった。

 

「よく来てくれた、天野雪兎君。それとシャルロット」

 

だが、その父は僕が今まで見た事の無い穏やかな顔をしていた。

 

「お招きいただきありがとうございます、アルベール社長。その表情からして片付いた(・・・・)みたいですね?」

 

「ああ、つい先日にな。君の協力もあっての事だ、感謝する」

 

「それは何より」

 

雪兎は父がそんな顔をしている理由を知っているどころか関わっていたようで、そうにこやかに父と話している。その事を咎めるように雪兎を見るが、雪兎と父は苦笑するだけだ。

 

「シャルロット、彼を責めないでやってくれ。シャルロットに黙っているよう頼んだのは私だ」

 

「理由は後でちゃんと説明するから」

 

二人がそう言うので仕方なく引き下がると僕達は父に連れられ社長室まで行く事に。途中、すれ違った社員の人達は雪兎を見ると皆頭を下げていた。おそらくリヴァイヴⅡの件だろうなと思い、僕は少し嬉しくなった。

 

「ここだ」

 

父の案内で社長室に入ると、そこにはあの人・父の正妻であるロゼンダ=デュノア夫人の姿があり、僕は思わず固まってしまう。それを見てロゼンダ夫人は何故か悲しそうな顔をしていた。

 

「お初にお目にかかります。アルベールの妻のロゼンダです」

 

「こちらこそ、お初にお目にかかります。天野雪兎です」

 

そんな僕と違い雪兎はロゼンダ夫人と挨拶を交わし、父に薦められるがまま社員室のソファーに腰掛けた。

 

「シャルロットもそこに座りなさい」

 

「は、はい」

 

僕も父に言われるがまま雪兎の隣に腰掛ける。

 

「まずは雪兎君、よくフランスに、デュノア社に来てくれた」

 

「いえ、俺も何れこちらに伺うつもりでしたので」

 

「それとシャルロットの件では迷惑を掛けた」

 

父はそう言うと雪兎に頭を下げた。すると、雪兎は少し慌てたように頭を下げ返した。

 

「それは俺の台詞ですよ。まさかシャル、シャルロットの転入にあんな裏があるとは俺も思っていませんでしたし」

 

「娘の呼び方ならいつも通りで構わんよ。それと、例の件だが君の口から説明してやってほしい・・・・私が言っても説得力は無いだろうからね」

 

「では、失礼して」

 

「ど、どういうこと?」

 

二人の話についていけず、僕がそう訊ねると、雪兎がその理由を説明してくれた。

 

「シャル、実はな・・・・シャルがIS学園に転入させられたのはシャルを守る為だったんだ」

 

「えっ!?」

 

その時の僕は多分、「信じられない!」という顔をしていたのだろう。でも、雪兎がそんな嘘を言うとは思えず動揺していた。

 

「まあ、信じられないのも無理は無いか・・・・」

 

「そのように振る舞っていたのだ無理も無い」

 

しかし、その反応は雪兎も父も予想していたようだ。

 

「シャルが社長の愛人・妾の娘だったってのはシャルの方がよくわかってるよな?」

 

「う、うん・・・・」

 

「そこでちょっと考えて欲しい・・・・ロゼンダ夫人には少し申し訳ない言い方になるが、愛人だったシャルの母親との間にシャルが生まれたのに対してロゼンダ夫人との間に子供がいないのは何故か?」

 

「えっ?」

 

それは考えてもいなかった。確かに愛人だった僕のお母さんとの間に僕が生まれているのに、正妻であるロゼンダ夫人との間に子供がいないのは不自然だ。その疑問の答えはロゼンダ夫人自身が答えてくれた。

 

「ロゼンダ夫人」

 

「ええ、私はね・・・・不妊症なの」

 

不妊症・・・・これは正確には病気ではなく症候群に該当し、一般的には「妊娠を望み、一年以上性生活を行っているにも関わらず妊娠しない」場合、不妊症と判断される。この原因は人によって様々であり、明確な治療法が存在する訳ではない。

 

「そのせいで彼女は子供を作れなかった。シャルロットに辛く当たってしまったのはそのせいでもあったんだ」

 

父のその言葉を聞き、僕は以前に「この泥棒猫っ!」と強く当たられた事を思い出した。

 

「ごめんなさいね・・・・本当はあんな事言うつもりじゃなかったのに」

 

多分、さっき僕がロゼンダ夫人を見て固まってしまったのを見て彼女もそれを思い出してしまったのだろうと察した。でも、これが僕をIS学園に送り込んだのとどう関係してくるのだろう?

 

「この話がどうして関係するのかって顔をしてるな?実はシャルが引き取られてすぐの頃にデュノア社の派閥はおおよそ二つに分かれてたんだ。一つはシャルを後継者にしようとしてた一派。そして、もう一つがシャルが妾の娘って事で後継者と認めず排除しようとしていた一派だ」

 

「ーーっ!?」

 

そこまで聞いて僕にも事の全貌が理解出来た。僕はその一派に暗殺されそうになっており、そんな僕を自分達だけでは守れないと思った父が無理矢理理由をつけてIS学園に送り込んだのだろう。つまり、一夏や雪兎のデータ取りと言うのは僕をIS学園に行かせる為の方便だったのだ。

 

「その顔は理解したっぽいな?」

 

「うん・・・・」

 

「良かった、シャル。お前は父親にちゃんと愛されてたんだよ」

 

「う、うん・・・・」

 

その雪兎の一言で僕の中にあった何かが崩れたような気がした。

 

「雪兎、ちょっと、胸借りてもいい?」

 

「ちょっとと言わずいくらでも」

 

そこで我慢の限界がきて僕は雪兎の胸で声を上げて泣いてしまった。社長室は防諜の為に防音仕様だったのが幸いしてそれを聞いていたのは胸を貸してくれた雪兎と父にロゼンダ夫人、それから同席していた爺やだけだった。その後泣き止んだ時に父達からとても暖かい視線を向けられて僕は恥ずかしくなって今までにないくらい顔を真っ赤にしてしまったらしい(雪兎談)。

 

side out




という訳で原作11巻にあったデュノア社の事情をシャルロットに暴露しました。
これにはきっとジェイムズ爺やもホロリと涙した事だろう。
ちなみにそのシャルロットを排除しようとした一派は雪兎のデュノア社への嫌がらせを食らった上に不祥事が社長にバレて逆に会社から排除されました。雪兎とアルベールが片付いたと言っていたのはコレの事です。


次回予告

シャルロットとアルベールの仲を改善した雪兎。お墓参りも終え、セシリアの誕生会までまだ時間があるのでシャルロットと二人でフランス観光という事になったのだが・・・・

次回

お墓参りとフランス観光 兎、双子と再会する


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106話 お墓参りとフランス観光 兎、双子と再会する

本日、4月21日午前3時・・・・ISー兎協奏曲ーは一周年を迎えました。こんな作品ですが、今後もよろしくお願い致します。

今回は前々回で名前だけだった彼女らも登場します。

先日、麦ちゃさんのINFINITE・CROSS-Zにて本作品が紹介されました。
その後、一気にお気に入り増えて少し困惑中・・・・
あちらもシャルロットがヒロインの作品で龍我君が頑張っております。よろしければあちらもどうぞ。



アルベールが真実を語り、親子仲が多少改善されたデュノア家。その後、デュノア夫妻に誘われ雪兎達は高級フランス料理店で食事をし、元々シャルロットの母親とは親友だったというロゼンダの頼みでシャルロットはデュノア邸で一泊。雪兎は家族の時間を邪魔してはいけないと一人ホテルに泊まった(料金はアルベールが持つと言い、高級ホテルのスイートルームに一泊した)。

 

「こんなホテル一人でなんて泊まった事ないってのに・・・・」

 

高級ホテルなんて前にシャルロットと食事をしに行った以来で、いつもなら姉である雪菜が一緒だった事もあり色々と落ち着かなくなった雪兎は一人ホテルをさまよっていた。

 

「シャルはちゃんと話せてればいいんだが・・・・」

 

そんな事を考えていると。

 

「あれ?もしかして、雪兎お兄ちゃん!?」

 

「えっ?あっ、本当だ!」

 

雪兎の前方から見覚えのあるオレンジと水色の髪をそれぞれ左右別々のサイドテールでまとめた双子の少女が近付いてきた。

 

「ファニールとオニールか、久しぶりだな・・・・お前達もこのホテルに泊まってたのか」

 

「うん!」

 

「明後日のライブの為にね」

 

「ところで雪兎お兄ちゃんは何でフランスに?」

 

「ちょっとデュノア社に野暮用でな。数日したら今度はクラスメイトの誕生会に出る為にイギリスまで行く事になってる」

 

雪兎がフランスに数日滞在すると聞き、オニールは嬉しさを全面に出して、ファニールはほんの少しだけ嬉しそうに微笑む。

 

「じゃあ!明後日、私達のライブ来てくれる?」

 

「ちょっとオニール、雪兎だって都合があるでしょ?」

 

「そうだな、連れが一人いるからそっちの予定も訊かないと・・・・ってか、明後日なのに席用意出来んのか?」

 

「まあ、関係者席ならまだ空きがあったはずよ。雪兎有名人だし、私達の招待客って事にすれば大丈夫だと思うわ」

 

今や雪兎の名前は束に次ぐレベルなのでゲストとして招くのは問題無いとの事。

 

「ちょっと連れに確認取るわ・・・・あっ、シャル?今ちょっといいか?実は・・・・」

 

ファニールとオニールが大丈夫だと言うので、雪兎は電話でシャルロットに確認を取ると、シャルロットも行ってみたいと言う。

 

「・・・・判った。それなら二人に頼んでおくよ。うん・・・・また、明日」

 

そして通話を終えると、コメット姉妹は興味津々といった表情で雪兎を見上げる。

 

「今のって、もしかして例の彼女さん?」

 

「確か、フランスの元代表候補生だっけ?」

 

雪兎とシャルロットの関係は既に記事にもなっており、一般人も知るものとなっている(58話参照)。そのため、コメット姉妹もそれを知っていたようだ。

 

「流石は芸能人、詳しいな」

 

「えっへん!」

 

「オニールは雪兎の関連記事は全部チェックしてるものね?」

 

「ファ、ファニール!?」

 

「ははは、相変わらずだな、お前達は」

 

「うう・・・・それはともかく!雪兎お兄ちゃんと彼女さんの分の席はとっておくから!」

 

「ぜ、絶対に観に来なさいよ!」

 

もう少し話をしていたかったが、マネージャーから呼ばれたとの事でコメット姉妹は部屋へと戻っていった。

 

「あいつらの歌を生で聞くのは数年振りか・・・・楽しみだな」

 

その後、雪兎も明日はシャルロットの生家と母親のお墓参りがある為、部屋に戻って休む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、何やらご機嫌なシャルロットとホテルの前で合流した雪兎は再びジェイムズが運転する車でシャルロットの生家にやってきた。生家はシャルロットがデュノア邸に移り住んだ後もアルベールの手の者によってシャルロットの母親のお墓共々管理されていたらしい。

 

「へぇ~、いいとこだな」

 

「はは、何にも無い田舎だよ?」

 

「俺は街生まれ街育ちだから逆にこういうところは憧れるけどな・・・・IS学園卒業したら移り住んでもいいくらいだよ」

 

「町から離れてるから色々不便だよ?って言っても雪兎だし、不便だったら自分でなんとかしちゃうか」

 

「だろうな」

 

シャルロットとその母親の思い出の詰まった生家を見て回った後は、その母親のお墓でシャルロットが近況報告をしたり、雪兎が挨拶とシャルロットと付き合っている事を報告してシャルロットが真っ赤になったり、父・アルベールと仲直りした事を報告したりしていた。

 

「・・・・また来るね、お母さん」

 

「もういいのか?」

 

「うん、久しぶりに一杯話したから」

 

「そうか」

 

その後、雪兎達は雪兎が泊まったホテルへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、コメット姉妹のライブ当日。

 

「す、すごい人だね」

 

「まあ、あの二人は今売り出し中のアイドルだからな。俺も生で聞くのは久しぶりだから少し楽しみなんだ」

 

ライブの行われる会場は既に入り口が大混雑しており、関係者席は入り口が別らしく、雪兎達も関係者席でなければ並ぶだけで疲れ果ててしまいそうな程だ。

 

「あっ、雪兎お兄ちゃ~ん」

 

「来たわね」

 

関係者入り口に行くと、そこにはコメット姉妹が待っていた。

 

「お前らリハとかはいいのか?」

 

「うん!今日は私もファニールも絶好調だもん!」

 

「それに私達が案内しないと席わからないでしょ?」

 

「まあ、お前らが大丈夫ってんならいいが」

 

「それよりも!そっちのお姉さんが雪兎お兄ちゃんの彼女さん?」

 

「あっ、うん。僕はシャルロット=デュノア。シャルロットって呼んで」

 

「あっ、どうも・・・・姉のファニール=コメットです」

 

「妹のオニール=コメットだよ、シャルロットお姉ちゃん」

 

お互いに名前は知っていたが、一応自己紹介をする。オニールの方は早速シャルロットをお姉ちゃん呼びしている。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「だって、雪兎お兄ちゃんの彼女さんでしょ?だからお姉ちゃん!」

 

「はぁ、オニールったら・・・・ごめんなさいね、シャルロットさん」

 

「ううん、僕は構わないよ」

 

「やった!」

 

「そういや、マドカにもシャル姉さんって呼ばれてたな」

 

「マドカ?雪兎、また妹分増えたの?」

 

「ちょっと訳有りのやつをウチで引き取ってな。義理の妹みたいなもんだ」

 

「うぅ~!雪兎お兄ちゃんの義妹なんてズルい!羨ましい!」

 

そんな話をしながら雪兎達はコメット姉妹の案内で関係者席の中でも特等席に当たる席へと案内された。

 

「いいのか?こんな良い席」

 

「いいのいいの!」

 

「むしろ雪兎が来るって言ったらこの席用意されたのよ」

 

という訳で雪兎達はその特等席でライブを聞く事になった。ライブ自体は特に問題もなかったが、ライブの途中で二人が二人で一つのIS【グローバル・メテオダウン】に搭乗したのを見て雪兎が「二人で一つってどこの半熟探偵と相棒だよ・・・・それに歌で動くって熱◯バサ◯じゃあるまいし」とか呟いていたが、他は特に問題はなく無事にライブは終了した。

 

「二人共お疲れ様。まさかライブでISに乗るとは俺も予想してなかったわ」

 

「えへへ、驚いたでしょ?」

 

「ああ、調べてみたらカナダの代表候補生になってたなんてな。お前達ってIS適性Cじゃなかったか?」

 

「それは個人で計測した場合よ」

 

「なるほど、双子だから二人揃ってはじめて真価を発揮するって事か」

 

「うん!ファニールと一緒ならIS適性Aなんだよ!」

 

「不思議な事もあるんだね・・・・それに歌で動くISなんて初めて見たよ」

 

「兵器としてではなく、こんな使い方なら俺も束さんも文句は言わないさ・・・・それにしても双子・線対称・赤と青・ドッキング・・・・でも、単独だと適性Cじゃ・・・・いや、アレを応用すれば・・・・」

 

「また始まった・・・・」

 

ライブを見てまた何やら思い付いた雪兎に苦笑する三人。そんな和やかな空気を次の瞬間、突如轟音と地響きが雪兎達を襲う。

 

「え、えっ!?何っ!?」

 

「ここではないが近い」

 

四人がライブ会場を出て震源地と思われる場所に向かうと会場に程近い自然を色濃く残していた公園のど真ん中に直径1㎞ぐらいの大穴が穿たれていた。幸い当時公園には誰もいなかったらしく死者は出ていないとのこと。だが、その一部始終を見ていたと思われる男性が酷く狼狽しながら叫んでいた「空から光の柱が降ってきた!」と。

 

「光の柱?もしかしてそれは・・・・聖剣(エクスカリバー)

 

IS学園から約9,980km離れた異郷の地にて聖剣を巡る新たな争乱の幕が今開かれる。




という訳で日常パートは終わり、とうとう聖剣事変が本格的に始まります。

一周年記念で何やった方がいいのかな?要望がもしあれば考えます。


次回予告

聖剣のものと思われる被害を目の当たりにし、唖然とする雪兎達。しかし、聖剣のものと思われる被害はフランスだけでなく欧州各地にその爪痕を残していた。これに対抗するべく、欧州を訪れていたIS学園の面々は集まる事になったのだが・・・・

次回

「聖剣の脅威と亡国の影 兎、疑う」


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107話 聖剣の脅威と亡国の影 兎、疑う

今回もABから一人ゲスト登場。今後の展開の関係で原作とは年齢が異なっております。


聖剣のものと思われる攻撃はフランスに限ったものではなく、その被害は欧州各国にも及んでいた。雪兎達はすぐに他の面々と連絡を取り、一度フライング・ラビットで全員を集めるとイギリスにあるセシリアの屋敷で情報交換を行う事になったのだが・・・・

 

「で、雪兎さん。そちらの方々は?」

 

「すまん、こいつら三人ともついてくるって聞かなくて・・・・というか、そっちも一人増えてね?」

 

「ちょっと色々あってね」

 

そう、そこには雪兎と共に一緒にいたコメット姉妹や現場で偶然居合わせたロランがおり、一夏達の方にも赤いロングヘアーに四角いフレームの眼鏡をかけた目付きの鋭い少女が一緒だったのだ。

 

「まあいい、さっきから箒にアプローチをかけてる馬鹿がオランダの代表候補生・ロランツィーネ=ローランディフィルネィ。そんでこっちの双子がカナダの代表候補生のコメット姉妹だ。オレンジの方が姉のファニール。水色の方が妹のオニールで、双子は俺の知り合い」

 

どうもロランは箒に一目惚れしたようでしつこくアプローチしているが、箒を一夏が庇いそんな一夏に箒がときめいている。それを面白くないと鈴とラウラがロランを焚き付ける。雪兎と話しているセシリアと楯無も話はしつつも視線は時折そちらに向けられていた。

 

「あっ、ファーちゃんとオニちゃんだ!」

 

「雪菜お姉ちゃん!」

 

「久しぶり」

 

雪兎が紹介を終えると元々知り合いの雪菜がコメット姉妹を抱きしめ再会を喜ぶ。

 

「彼女はベルベット=ヘル。歳は雪兎君達の一つ上でギリシャ(・・・・)の代表候補生よ」

 

ギリシャ(・・・・)?」

 

一方楯無からベルベットの紹介を聞いて雪兎の表情が強ばる。無理も無い、ギリシャと言えばIS学園を裏切ったフォルテ=サファイアと京都で交戦した闇夜の星座のレグルスことシルヴィア=メルクーリの母国。それ故に雪兎のギリシャへの心象は米国に次ぐレベルで悪いのだ。

 

「私の目的は祖国を裏切ったあの二人を倒す事。祖国も私も貴方と敵対する気は無いわ」

 

「なるほどね・・・・祖国を貶めた奴とかつての親友(ライバル)をこの手で、ってとこか?」

 

「!?」

 

ベルベットが驚いたのは自分とフォルテがかつて代表候補生の座を争うライバルであり、親友だった事を初対面の雪兎に看破されたからだ。

 

「驚くこともないだろ?年の近い後任の代表候補生ともなりゃ面識ぐらいあったのはすぐに判る。それにそのフォルテ=サファイアへの敵愾心はかつての友情の裏返し」

 

「流石ね」

 

「まあ、あんたがこの作戦に加わる理由は理解したが、今回の最優先事項は聖剣だ。私情で俺達の邪魔はしないでくれ」

 

「私はフォルテを討てればそれでいいわ」

 

そう言ってベルベットは下がっていった。

 

(こいつは少し監視しといた方がいいな・・・・)

 

そんなベルベットを見て、雪兎は敵対こそしないだろうが、ベルベットの危うさに気付き何かしらの問題の火種になりそうだと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、聖剣攻略の為に各ISのメンテを行う事になったのだが、その前に雪兎は会っておかなければならない人物がいた。その人物はチェルシー=ブランケット。セシリアの家に仕えるメイドにしてセシリアの姉のような存在だ。何故彼女と会わねばならないのかというと、それは彼女が聖剣に深く関係しているからだ。

 

「すまんな、セシリア」

 

「構いませんわ。それに私にも関係のあるお話なのでしょう?」

 

ちなみに二人が話している場所は屋敷の執務室。かつてセシリアの母親が使い、今は家を継いだセシリアが使う部屋だ。無論、防音も完璧である。

 

「ああ、多分だが、セシリアの御両親とも関係のある話だ・・・・だろ?チェルシーさん」

 

「流石ですわ、雪兎様。もうそこまでお調べになっていらっしゃるとは」

 

丁度そこにお茶の準備を終えたチェルシーが部屋に入ってきた。

 

「さて、まだるっこしい事は抜きにしてストレートに訊くぞ?聖剣の操者・・・・いや、生体コア(・・・・)になってるエクシア=カリバーンってのはあんたの妹だろ?」

 

「!?」

 

その言葉にセシリアは耳を疑った。何故なら今までチェルシーに妹がいたなんて話は長い付き合いになるセシリアにしても初耳だった。

 

「その通りでございます」

 

そして、チェルシーもそれを肯定した。

 

「これは俺が独自のルートで調べた情報なんだが、エクシアは重い心臓の病を患っていたらしい」

 

しかもそれは当時の医療では治すのが困難な病で、それを知ったセシリアの両親はとあるルートで入手したISコアをエクシアに埋め込み生体融合させエクシアを延命した。更に聖剣は元々来るべき時の為にセシリアの剣として作られた物で、聖剣の開発において主導権を握りたかった米国はそれを良しとせず、策略で列車事故に見せかけてセシリアの両親を殺害した。なお、エクシアの戸籍は生体コアにされた段階で抹消されているらしい。そう雪兎は語る。

 

「そ、そんな・・・・お母様やお父様が?」

 

「はい、私も雪兎様程ではありませんが個人的に調べてはいました。雪兎様のおっしゃる通りかと」

 

「更に問題なのはコアの出所だ」

 

「と、言いますと?」

 

「亡国機業・・・・どうもそのコアはあいつらから提供されたものらしい」

 

つまり、今回の一件には亡国機業が関与している可能性があるのだ。セシリアからすれば両親が亡国機業と関係があった事の方がショックだろう。

 

「安心しろって言い方はおかしいかもしれないが、セシリアの両親があいつら(亡国機業)に関与したのはその一件だけだ」

 

「私もそのように聞いております」

 

むしろ本格的に関与する前に暗殺されたと言った方が正しいかもしれない。

 

「セシリアには悪いが、俺は聖剣を破壊するつもりだ。あれはまだこの世界には早すぎる兵器だ」

 

「ちょっと待って下さい!聖剣は構いませんが、チェルシーの妹は!」

 

「救うさ。暴走は一夏の夕凪燈夜でなんとかなる。エクシアも俺と束さんでなんとかしよう」

 

それを聞きセシリアとチェルシーは安堵する。

 

「この事は作戦にも関わる事だから後で他の連中にも話すが、構わないな?」

 

それに対しセシリアとチェルシーは頷いた。すると、雪兎は席を立ち扉へと近付く。

 

「俺の話は以上だ・・・・まあ、他の連中に話す必要は無さそうだけど、な」

 

「「「「わ、わわっ!?」」」」

 

扉を開くと盗み聞きしていたのか、一夏達が雪崩れ込んでくる。

 

「ったく、盗み聞きとは感心しないな?」

 

「い、一夏さん!?それに皆さんも!?」

 

「え、え~っと・・・・」

 

「どっから聞いてた?ってか、チェルシーさん、あんた知ってたろ?」

 

「はてさて、何の事でしょうか?」

 

「まあいい、聞いてたんなら話は早い。俺達が何をすればいいかは判ったな?」

 

「妨害してくるだろう亡国機業を掻い潜って聖剣に突入」

 

「エクシアって娘を一夏が助けて脱出」

 

「それから聖剣を破壊、だね?」

 

「だが、資料で見た聖剣は巨大だ。そう簡単に破壊出来るのか?」

 

「問題無い。手は用意してある・・・・聖剣には聖剣を、な」

 

ラウラの問いに自信有り気にそう答える雪兎。そして、表情を一変させ一夏達に問う。

 

「それよりもお前らメンテは済んだんだろうな?後でちゃんとチェックするし、それで半端な状態だったならどうなるか、わかってんだろうな?」

 

「「「「・・・・」」」」

 

その雪兎の言葉に一夏達は雪兎から目を逸らす。どうやらこちらが気になってメンテの途中に抜け出してきたようだ。

 

「さっさとやってこいっ!!」

 

「「「「イ、イエッサー!!」」」」

 

雪兎の一喝で一夏達は慌てて執務室を飛び出していった。

 

「まったく、あいつらは・・・・」

 

「ふふ、お嬢様は良き御友人に恵まれましたわね」

 

「ええ、本当に」

 

そんな様子を見てセシリアとチェルシーの主従コンビは笑みを浮かべるのであった。




という訳で今回はベルベットが参戦。
第二部に出す用に年齢を一つ下げました。多分、最近ABに参入したグリフィンもそうなります。

こちらではチェルシーはダイヴ・トゥ・ブルーを盗んではいませんが、別のISで参戦させます。
黒兎隊については次回で・・・・ログナー=カリーニチェ?あいつは出すの面倒なんだよなぁ・・・・

次回は作戦会議とかになりそうです。


次回予告

雪兎達が聖剣攻略を話し合っている頃、亡国機業も聖剣を奪取せんと行動を開始していた。そして、ISの本来の活躍の場である宇宙にて双方が激突する。

次回「激突する宇宙 兎、宇宙へ」


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108話 激突する宇宙 兎、宇宙へ

遂に原作最新巻出ましたね。
正直、「なんだって~っ!?」感が半端ないわ、あれ・・・・
ある程度設定は組み込みますけど、結末は原作と大分変わると思います。今回明らかになった設定多いし。白式、特にお前の設定は大分こっちよりだぞ・・・・



国際IS委員会の承認を経て正式に対聖剣作戦【オペレーション・ソードブレイカー】が発令された。この作戦は大きく分けて三つの部隊に分かれて行動する事になる。まずは聖剣に突入する突入班、二つ目が妨害してくるであろう亡国機業から突入班を護衛する迎撃班だ。最後にフライング・ラビットは司令部として機能させ雪菜のシルフィオーネとリンクさせ聖剣からの攻撃をブロックする役目があり、こちらにも防衛戦力を残す必要があった。

 

「突入班は部隊長に私、織斑千冬。メンバーは織斑、篠ノ之、宮本、神宮寺、それとマドカとブランケットの七名だ」

 

「続けて迎撃班は部隊長は俺こと天野雪兎。メンバーは鈴、セシリア、シャル、簪、エリカ、アレシア、カロリナ、ベルベットさん、コメット姉妹、ロランの十二名だ」

 

「最後に防衛班は部隊は私、更識楯無よ。メンバーは山田先生、忍ちゃん、ラウラちゃん、本音ちゃん、カテリナ先輩、ニルギースさん、それとラウラちゃんが助っ人で呼んでくれた黒兎隊の皆よ」

 

束、雪菜、クロエの他弾達非戦闘員はフライング・ラビットで待機だ。

 

「聖剣が次をいつ射つかわからない以上、早期に動く必要がある」

 

「作戦開始は明朝04:00だ。それまで身体をやすめておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ピスケスやレイン達との連絡が途絶え、更に聖剣の暴走というトラブルに見舞われた亡国機業。先の京都での一件でまたしても捕らわれたオータム、雪兎やアリーシャに敗れたアンタレスや双子(カストとポルクス)を失いモノクローム・アバター、闇夜の星座(ゾディアック・ノワール)の双方は甚大な被害を被っていた。更には支援者だったIS委員会の者や多くの機械戦乙女をも失った。聖剣奪取は捕らわれたオータム達の解放や制空権の確保という目的だったのだが、それも失敗・・・・この度重なる失態で彼女達の組織内での評価は暴落していた。それ故に彼女達は酷く焦っていた。

 

「アリエス、まだピスケスと通信は回復しないの?」

 

「駄目・・・・完全に聖剣の内部に取り込まれてる」

 

「となれば我々で救出する他ないか」

 

スコールの問いにアリエスが答え、星座のリーダーであり、本来十二宮に含まれない星座である蛇使い座(レピオス)がそう呟く。

 

「レピオス、どうやらIS学園のやつらも動くようだよ?」

 

「ほう、アンタレスやレグルスを退けた子らか」

 

「まさかこんなに早く再戦の機会に恵まれるとはね」

 

レピオスの呟きに射手座(タリアス)がIS学園の動きを伝え、再び巡ってきた再戦に沸き立つレグルス。

 

「今度はお子様達に負けないで下さいね?レグルス」

 

「慢心するな、蟹座(カルキ)。子供と言えどやつらは戦士。侮れば痛い目を見るぞ?」

 

牡牛座(プレアデス)の言う通りよ。決して侮っていい連中ではないわ」

 

一夏(お子様)にやられたレグルスを見下すカルキとそれを窘めるプレアデスとサダル。

 

「・・・・」

 

山羊座(アルマ)はどう思うの?」

 

「・・・・私は一兵士。レピオスに従う」

 

最後のメンバーであり、双子を除き最年少のアルマはストレアの問いにレピオスに従うだけだと答えた。

 

「こちらは全員異存は無いようだ。スコール、君はどうする?」

 

「行くわ。どうせ(レイン)とフォルテを回収する必要があるもの」

 

オータムとレイン、フォルテがいない今、残るモノクローム・アバターの最後の一人であるスコールも出撃を決める。

 

「それに今回は彼女・・・・福音(ナターシャ)もいるものね」

 

そして、スコールが見つめる先には凍結されたはずの福音を手にしたナターシャ=ファイルスの姿もあった。

 

「聖剣を破壊させぬ為にとはいえ、(大統領)も酷な事をする」

 

「・・・・」

 

何故ナターシャがここにいるかと言うと、国際IS委員会の聖剣破壊作戦を良く思わない米国が利害の一致から亡国機業に手を貸すべく、凍結された福音の操者(ナターシャ=ファイルス)を凍結された福音を盗み出したという名目で亡国機業に協力させたのだ。ナターシャも当初は反発したものの、家族を人質にされてしまい命令に背く事が出来なかったのだ。

 

「期待しているよ、君と福音の働きには」

 

こうして、かつて雪兎達を苦しめた銀の福音までもが再び雪兎達の前に立ち塞がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、【オペレーション・ソードブレイカー】が始動し、雪兎達は単機で大気圏を突破可能なフライング・ラビットで宇宙へと上がった。そして、視界に聖剣を捉えると突入班と迎撃班が出撃する。

 

「これが、宇宙・・・・」

 

「一夏、感動するのは後だ。あっちもお出でなすった」

 

PICのおかげで宇宙空間でも問題無く行動出来たが、予想通り亡国機業と思われる集団が現れる。

 

「(原作にいない機体が何機もいやがる・・・・例の星座の連中か)・・・・ん?この反応はっ!?」

 

「ちょっと待ちなさいよ!あれってまさか!?」

 

しかし、その内の一機に雪兎達は見覚えがあった。それは・・・・

 

「・・・・銀の、福音?」

 

そう、かつて臨海学校の際に交戦したあの銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)だったのだ。

 

『データ照合。間違いなくあれは銀の福音です。米国に問い合わせたところ、凍結されていた銀の福音をその操者・ナターシャ=ファイルスが盗み出したとの事』

 

「ナターシャさんが?嘘だろ・・・・」

 

クロエの通信を聞き、前にナターシャと話した事のある一夏は信じられない、といった表情をする。

 

(あれは確か原作でマドカが盗もうとしてナターシャ=ファイルスとイーリス=コーリングに阻まれたはず!それが何故ナターシャ=ファイルスが盗み出してるんだ!?まさかとは思うが米国のやつ、聖剣を破壊させない為にナターシャと福音を?わざわざIS学園に仕掛けてくるような連中だ。十分に可能性はある)

 

原作とは大きく異なるこの事態に困惑するものの、すぐにその背景に気が付く雪兎。

 

「一夏!気にするなとは言わんが落ち着け!」

 

「雪兎!?でもっ!」

 

「多分だが、訳有りだ。それも含めて俺が何とかする。だからお前はお前が成すべき事を!エクシアを救い出す事を考えろ!」

 

「・・・・わかった。頼むぞ、雪兎」

 

一夏は少し戸惑いを見せたものの、雪兎の一喝で冷静さを取り戻すと、他の突入班と共に聖剣へ向かう。

 

「させない!」

 

「それはこっちの台詞だよ!」

 

それを人馬型のIS【ケイローン】を操るタリアスが右腕と一体化した弓型のビーム砲【アルバレスト】で一夏達を狙うもそれを予期していたシャルがそれをシールドで阻み、その間に雪兎達が一夏達と亡国機業の間に立ち塞がる。

 

「悪いが、ここから先は通行止めだ」

 

「ここをただで通れるとは思わないでね」

 

「やはり立ち塞がるか!兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)!」

 

「さっきのは射手座か、他にも牡羊、牡牛、蟹、獅子、乙女、天秤、山羊、水瓶かな?それにあんたのそれ、蛇使いか?」

 

闇夜の星座のISはそのモチーフが黄道十二宮と同じく黄道に存在する蛇使い座がモデルにされており、どこかしらにそれぞれの星座に由来する装備を持つのが特徴だ。それ故に一度見たことのある獅子、乙女、水瓶の特徴から他の星座にも当たりをつけていた。

 

「魚座に相当するのがいないとこを見ると既に聖剣(あっち)の中ってとこか」

 

「イージスの二人もそっちにいるのかな?」

 

「多分な」

 

イージス、その片割れであるフォルテがいないと知り、ベルベットが少し揺れるものの、まだこの場にもう一人の裏切り者であるレグルス(シルヴィア)がいた為、ベルベットはこの場に留まった。

 

「代表候補生の小娘ばかりで私達が止められるか!」

 

「ただの小娘達だと侮ってると痛い目見るぞ?それに・・・・この俺もいるんだからな」

 

そう言って雪兎は【VF:バルニフィカス】と【YK:エルシニアクロイツ】を展開し、戦斧のような武器【バルニフィカス・スラッシャー】を手する。

 

「さあ、お前達の罪を数えろ」




残る星座一斉登場・・・・考えるの面倒だった。
バルニフィカスも今回メインアームで登場します。

一応、星座の連中は今回限りの出番になるかと。その専用機については次回。


次回予告

激突した雪兎達迎撃班とスコールやナターシャ、闇夜の星座の面々。雪兎達にとってはある意味トラウマとなっていた福音の登場だが・・・・

次回

「駆ける蒼き閃光 兎、ぶちころがす」


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109話 駆ける蒼き閃光 兎、ぶちころがす

亡国蹂躙回再び・・・・
今回は初っぱなから飛ばしていきます。


「とは言ったものの、流石に人数が拮抗していては辛い・・・・少し間引くか」

 

雪兎はそう告げるや否や目にも止まらぬ速さでたかが学生だと慢心していたカルキのIS【断ち切る巨蟹(セイバーキャンサー)】の前に姿を現しスラッシャーを一閃、その両腕とサブアーム大鋏を砕くとそのままカルキの腹部を蹴りプレアデスへとぶつける。

 

「がはっ」

 

「だから侮るなといったのだ、カルキ!」

 

「プレアデス!」

 

「なっ!?」

 

「おせぇ!雷刃封殺爆滅剣!」

 

プレアデスは自身のIS【猛進する金牛(ラッシャー・タウルス)】で蹴り飛ばされたカルキを受け止めるが、同時展開していた【YK:エルシニアクロイツ】のビット・ランスロットから蒼い稲妻が剣のように放たれ、カルキとプレアデスのISに突き刺さった。

 

「爆発」

 

そして雪兎がそう言うと稲妻の剣が爆発し、二人のISのシールドエネルギーを削り切る。仕組みとしては突き刺さった稲妻の剣がシールドエネルギーを漏電させ、それを爆破のエネルギーにするというえげつないものだ。

 

「まずは二人」

 

「カルキ!プレアデス!」

 

「あの二人が瞬殺だと!?」

 

全くもって何もする間も無く国家代表クラスの使い手が二人も無力化された事に亡国機業の面々は動揺するが、すぐにそれを成した雪兎を警戒する・・・・しかし、それは雪兎の狙い通りだった。

 

「きゃあああああ!?」

 

直後、アルマが突然悲鳴を挙げ意識を失う。

 

「い、一体何が!?」

 

「あれだ!」

 

またしても混乱する亡国機業の面々。だが、レピオスがアルマの背後にいた小さい何かに気付いた。それは雪兎の【VF:バルニフィカス】を小型化し三頭身くらいの人形サイズの蒼い髪をツインテールにしたチビッコだった。

 

「な、何、あれ?」

 

「僕の名前はレヴィ!」

 

「しゃ、喋った!?」

 

「あれはこのバルニフィカス用のサポートツールでチヴィットシリーズ1号【レヴィ・ザ・スラッシャー】だ。見ての通り小さいがバルニフィカスと大体同じ事が出来る。自律型のビットロボってとこかな?」

 

どうやらアルマはこのレヴィに背後から襲われたようだ。

 

「・・・・1号って事は他にもいるの?」

 

「ルシュフェリオンにはシュテル、エルシニアクロイツにはディアーチェ、スピリットフレアにはユーリってのを製作中だ」

 

ちなみにこのチヴィットシリーズ、IS非展開時にも出せるらしい。

 

「ほらほら、ぼさっとしてると」

 

「僕達にぶちころがされるよ?」

 

雪兎とレヴィに陣形を掻き乱され、カルキ、プレアデス、アルマに続きアリエスもやられ大混乱となる亡国機業の面々。人数も減った事でIS学園と代表候補生達は二人一組でそこを強襲。普段から特訓メンバー同士で連携訓練をしていた為かロラン、コメット姉妹、ベルベットとも上手く連携し二対一もしくは三対一に持ち込んでいる。

 

「こいつら・・・・代表候補生の小娘ばかりじゃなかったのか!」

 

「悪いけど、あんた達の相手なんて雪兎との特訓に比べればマシなのよ!」

 

「我が祖国のものに手を出した罪、償っていただきますわ!」

 

鈴・セシリアコンビVSタリアス

 

「今こそあの特訓とあの世界を培った力を見せる時ですわ!」

 

「ファニール、私達も頑張ろ?」

 

「ええ、オニール」

 

「いきますわよ、双子さん!」

 

「「はい!」」

 

「この娘たち、京都の時より強くなってる!?」

 

エリカ・コメット姉妹トリオVSサダル

 

「久しいな、ベルベット」

 

「シルヴィア=メルクーリ、いえレグルス!貴女は私が倒す!」

 

「私が援護するからベルベットさんは思いっきりやって」

 

「・・・・わかったわ」

 

カロリナ・ベルベットコンビVSレグルス

 

「私も本気、見せちゃうわよ」

 

「では、私は騎士として君をサポートさせて貰うよ」

 

「あら、それは貴女の恋人達に嫉妬されそうね?」

 

「私の恋人達はそこまで矮小ではないさ」

 

「くっ、この二人、隙があるようでお互いに隙を潰してる」

 

アレシア・ロランコンビVSストレア

 

「さて、残るはそこの三人か・・・・」

 

「たった二人で私達三人の相手とは・・・・舐められたものね」

 

「ご主人と僕に速攻で四人やられたくせによくそんな台詞言えるよねぇ」

 

「レ、レヴィ!?」

 

「落ち着けシャル。スコールのゴールデン・ドーンと福音のデータは既に持ってるし、あのレピオスとかいうやつのISの性能も大体予想がついた。負ける要素は無い」

 

「言ってくれるね、兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)。だが、私の【ハイドラ】の毒は凶悪だよ?」

 

「このゴールデン・ドーンにもパッケージを追加しているわ。今までのようにはいかないわ!」

 

雪兎の発言にレピオスとスコールが反論するも、雪兎は呆れたような表情でスコールを見る。

 

「はぁ・・・・宇宙空間で炎が使える訳ねぇのに炎特化ISなんか使うとか馬鹿なの?パッケージって言っても宇宙空間用の武装追加しただけで本来の機能十全に使えないだろ?そんなISにされたISコアが可哀想だわ」

 

「あ、そうだね・・・・なんだろう、僕も負ける要素が無い気がしてきた」

 

言いたい放題である。でも、雪兎の言う事も間違ってはいない。本来宇宙空間メインのISに宇宙空間で十全に機能を発揮出来ないゴールデン・ドーンは雪兎からしてみれば欠陥機もいいところであった。そして、ゴールデン・ドーンに追加したパッケージも雪兎の指摘通り宇宙空間で炎熱機能を使う為の応急処置に過ぎない。また、レピオスのハイドラも背面から伸びる大蛇を模した二本の攻撃用サブアームと蛇使い座の元となったアスクレピオスからメデューサ関連の(ウィルス)を利用した剥離剤のような武装があると雪兎は推測しており、その程度(・・・・)の対策をしていない訳が無い。更に福音とはある意味一番戦闘経験がある雪兎が対策済みの為、正直なところ雪兎が本気(・・)を出せば一人でも三人を完封する自信もある。だが、その本気(・・)をここで出すのは少し不都合があった為、今回はシャルロットの手を借りる他にレヴィを使用する事にしたのだ。

 

「シャル、って事でこいつら例のコンビネーションパターンの実験台にするわ」

 

「うん、早く片付けて皆の援護に行こっか」

 

「さて、覚悟しとけよ?・・・・亡霊が暴れ回るからな」

 

そう告げると、雪兎とシャルロットはそれぞれパックを換装しスコール達へと突撃した。




カルキ、プレアデス、アルマ、アリエスの四名は活躍する間も無く退場ですw
それぞれのISのモデルはカルキのキャンサーはガンダムアシュタロンハーミットクラブ、プレアデスのタウルスはFGOのアステリオス、アルマはストライカージンクス、アリエスはガンダムWのメリクリウスです。多分出番もう無いけど・・・・
新規組で残ってるのはタリアスのケイローンとレピオスのハイドラだけ。


次回予告

雪兎達が亡国機業と激突する中、一夏達も聖剣内部へと突入。しかし、聖剣内部は機械戦乙女の技術を得た米国が配備し、暴走する聖剣に制御を奪われた無人兵器が存在した。

次回

「突入!聖剣(エクスカリバー)! 兎、シャルと暴れる」


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110話 突入!聖剣(エクスカリバー)! 兎、シャルと暴れる

続・亡国機業蹂躙回。
今回は雪兎とシャルロットのコンビネーション技が御披露目になります。元ネタは某ロボット大戦の亡霊コンビの暴れまくり幽霊・・・・片方は私がバンカー好きになった一因です。


「でけぇ・・・・これが聖剣」

 

雪兎達が亡国機業を足止めしている間に聖剣へと辿り着いた一夏達。その圧倒的な大きさに一夏はそう声を洩らす。

 

「メンテナンス用のハッチは全てロックされているようだ・・・・時間が無い。どのみち最後には跡形も無く破壊するんだ。扉の一枚や二枚壊しても問題あるまい」

 

ハッチが全てロックされていると知るや否や千冬はハッチの一つを斬艦刀で斬り捨て強引に侵入口を作ってしまった。

 

「ち、力技で・・・・」

 

「流石は織斑先生。迷いが一切無かった」

 

「晶、そこは感心するとこじゃない」

 

「グズグズするな、置いていくぞ?」

 

あまりにも脳筋な突入方法に突入班の面々が唖然となるが、千冬の一言で我に返り、千冬に続いて聖剣内部へと突入した。

 

「これが、聖剣の中・・・・」

 

聖剣の内部は意外にも広く、ISが数機並んで移動出来るくらいの広さがあった。これは物資の搬入やメンテナンスの関係でそれなりに広く作られていたのだろう。

 

「各員油断するなよ、ここは既に敵地だ。案内は任せるぞ、ブランケット」

 

「かしこまりました。皆様、こちらです」

 

今回、チェルシーの参戦の為に雪兎から貸し出されたISの名は【蒼の従者(サーヴァント・ブルー)】これは雪兎が昔設計したISで、刀身を相手に突き刺した後切り離し爆破させる【ブラストサーベル】と左腕に付けられたボウガン【ビームボウガン】二基の球状ビット【ガードスフィア】を装備するISだ。

 

「・・・・でも、何か不気味だね」

 

「どうした?聖」

 

「うん、何かここまですんなり来てるから何かあるんじゃないか、って」

 

その聖の予感は的中する。順調に進んでいた一夏達の前に京都で亡国機業が使っていた機械戦乙女によく似た無人兵器が現れ行く手を遮る。

 

「こいつらはあの時の!」

 

「流石は聖。言ってる傍からだな」

 

「嬉しくなぁあああない!!」

 

「総員、迎撃しろ!」

 

聖の絶叫が響く中、一夏達は無人兵器の迎撃行動を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎達は・・・・

 

「やっぱりそのISって宙間戦闘考慮してねぇよなぁ・・・・」

 

「宇宙って燃焼三要素の酸素供給体無いもんね」

 

「熱伝導兵器も宇宙空間に熱が逃げちゃうからエネルギー効率悪いしね」

 

「というか、さっきの熱線も一発限りっぽいし・・・・オバサン、馬鹿なの?」

 

「オ、オバサン!?」

 

「いや、間違ってないだろ?随分と身体弄ってるみたいだけど、加齢臭とオバサン臭さは消せなかったんじゃね?」

 

「い、言わせておけば!!」

 

「お、落ち着けスコール!」

 

雪兎、シャルロット、レヴィの二人と一体で盛大にスコールをディスっていた。

 

「怒った?ってことは自覚あるんだね」

 

「レ、レヴィ、言っちゃ駄目だよ・・・・多分、気にしてるんだよ」

 

「うぐっ・・・・」

 

シャルロットの気遣いは逆にスコールにクリティカルだったようで、宇宙空間だというのにスコールは器用にorzで項垂れてしまう。

 

「・・・・あの子達、えげつないわね」

 

これには脅されて従っているナターシャも同情を禁じ得ない。宇宙空間用に装備したパッケージも雪兎達が指摘したように強力な熱線と熱伝導兵器を追加したものだが宇宙空間での燃費は悪く、普通の相手ならスコールの技量で何とか出来るものの相手はISには一家言ある兎達である。そこに女性にはデリケートな年齢の事を突かれたスコールが心折られても無理は無い。

 

「レヴィ、スコールの方は任せていいか?」

 

「オッケー!この僕に任せて!」

 

レヴィはそう言うと何処から取り出したのか(おそらく拡張領域)雪兎の開発した対IS用拘束ワイヤーでスコールをゴールデン・ドーンごとミノムシのように拘束してしまう。

 

「これで一人片付いたな」

 

「お前は鬼かっ!?」

 

この対IS用拘束ワイヤーは雪兎達のISの中でもパワー自慢の鈴の煌龍すら抜け出すのに手こずる逸品で、ISごと拘束された事で抜け出すにはISを解除する他無く、仮にその方法で抜け出せたとしても宇宙空間でそんな事をすればいくら身体のほとんどを機械に変えたスコールと言えど助かる見込みは無い。つまり、先程まで雪兎達におちょくられて攻撃を連発していた現在のゴールデン・ドーンはスコールの生命維持装置ぐらいの価値しかないのだ。

 

「ん?通信か」

 

そんな時、雪兎に通信が入った。

 

『雪兎兄様、工作員のカレンからナターシャ=ファイルスの家族を保護したと連絡がありました』

 

「だとよ」

 

「!?」

 

以前にIS学園に潜入し、失敗した事で米国の捨て駒にされた特殊部隊【名も無き兵たち(アンネイムズ)】という者達を覚えているだろうか?実はあの事件後に雪兎は千冬と共に彼らを掌握して【影狼隊(シャドウ・ウルフズ)】という名の部隊として米国に潜入させていたのだ。今回はナターシャが脅されていると踏んで雪兎が影狼隊にナターシャの家族を保護させていたのだ。ちなみに、彼らには彼らが与えられていたファング・クエイクを魔改造したISや兎謹製の装備を与えており、並みの部隊では手が出せない屈強な部隊と化している。

 

「これであんたがそいつらに、そして国に従う理由は無くなったと思うんだが?」

 

「・・・・本当に君は規格外だね」

 

家族の無事を知り、フルフェイス越しでも涙しているのが判る。

 

「という訳で、完全に形勢逆転したんだが・・・・まだやる?」

 

「ふざけるなっ!私は例え一人になっても戦う!それが負け戦だろうともっ!」

 

あっという間に一人になってしまったレピオスだが、それでも一部隊の長としての矜持かその目に諦めの色は見られない。

 

「仕方ない・・・・やるぞ、シャル」

 

「うん!」

 

「先に仕掛ける。タイミングは任せる」

 

「OK!」

 

すると、雪兎は【NS:ネオストライカー】とネオガンナーに換装し先行しつつアサルトライフルで牽制、シャルロットもライトニング・アサルトとネオイェーガーに換装しレピオスの上に回り、アサルトライフルがヒットしガード状態のハイドラにガングニールのEモードで砲撃の雨を浴びせながら背後に回る。

 

「くっ、挟まれたか」

 

前方からは大型の杭打ち機(パイルバンカー)星屑砕き(スターダスト・ブレイカー)を起動し突撃してくる雪兎。背後からはランスモードのガングニールで突っ込んでくるシャルロット。一度ガードに回ってしまったがために回避は困難と判断したレピオスはサブアームを犠牲にしてそれを受け切るつもりだったが、兎達がそれを許すはずもなく、突如お互いの位置を入れ替えガードの薄いポイントに雪兎が杭を撃ち込む。

 

「がぁ!?」

 

「吹っ飛べ!」

 

そのまま撃鉄を打ち鳴らし薬莢を炸裂させ重量級であるハイドラを難なく吹き飛ばす。

 

「これもあげるね」

 

吹き飛ばされたハイドラに並走しつつ、Bモードで弾丸を叩き込みつつ、シャルロットがハイドラの前方に回り込み再びEモードでハイドラを雪兎の方へと撃ち返す。

 

「そら、もう一発っ!」

 

「ごはっ」

 

「もう一回っ!」

 

「ちょっ、まっ!?」

 

それを雪兎もシャルロットへとバンカーで返し、シャルロットもEモードで撃ち返す。

 

「今度はこいつで!」

 

ネオストライカーをネオブレイドに切り換えてバルムンクで打ち返し。

 

「なら僕はこれ!」

 

シャルロットはネオイェーガーからネオフォートレスに切り換えグランドスラムの砲撃を連射して弾き返し。

 

「大出血サービスだ!全弾持ってけ!」

 

ネオガンナーの全弾発射を浴びせる。

 

「雪兎!」

 

「おう!」

 

最後に【C:カスタム】の一角獣の紋章(ユニコーン・クレスト)を突き刺し動きを止めたハイドラにルシュフェリオンに換装した雪兎がドライバーを突き刺しチャージを始め。

 

「これで止めだ!」

 

「「いっけぇえええええ!!」」

 

シャルロットがバンカーを放った直後にドライバーから収束砲が放たれる。明らかにオーバーキルの攻撃を受け、ハイドラはボロボロ、レピオスも白眼を剥いて気絶してしまっていた。

 

「これが僕達の」

 

切り札(ジョーカー)だ、ってとこだな」

 

決め台詞とハイタッチを交わす雪兎とシャルロットだが、それを見ていたレヴィとナターシャはそのコンビネーション(惨劇)に身を震わせていた。

 

「うん、ご主人達は怒らせないようにしよう」

 

「あれ、マニュアル操作よね?あんなの絶対プログラムパターンじゃ制御出来ないわよ・・・・」

 

一歩間違えばフレンドリーファイアになりかねない、お互いを信頼するが故の連携攻撃にナターシャは戦慄する。

 

「あれ?そういえばオバサンが静かだけど・・・・」

 

「気絶してるわね・・・・まあ、あんなの見せられたらそうなるわよね」

 

そして、スコールも次は我が身と感じ取ったのか気を失っていた。




スコール&レピオス瞬殺・・・・
というかスコールのゴールデン・ドーンは絶対に宙間戦闘考慮してないと思う。
そして、レピオスのオーバーキルっぷりがヤバい・・・・ちょっとやり過ぎたかもしれない。


次回予告

スコールとレピオスが敗れ、ナターシャも戦闘せずに投降した。その一方でレピオスの敗北に動揺する星座の面々。一夏達も無人兵器を破り聖剣の中枢へと向かう。そんな中、聖剣が突如チャージを始め・・・・

次回

「聖剣VS聖剣 兎、ぶった斬る」


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111話 聖剣VS聖剣 兎、ぶった斬る

聖剣事変もそろそろ終盤。
雪兎がまたやります。


雪兎達がレピオスを下した頃、残りのメンバーもそれぞれ特訓の成果が出ているのか善戦している。

 

「はぁっ!」

 

「くっ!」

 

タリアスと戦う鈴とセシリアは龍咆等の特殊武装の半数が宇宙空間では使えない為、鈴が前衛を務め、セシリアが射撃で鈴をフォローする。

 

「これが本当に代表候補生の実力か!?」

 

「あら?情報が古くてよ」

 

「今の私達はプロジェクト・フロンティアの所属よ。それに、私達もそこそこ修羅場を抜けてきたんだから!」

 

以前の鈴達であったならばおそらくタリアスには敵わなかったであろう。しかし、異世界での戦闘経験や二次移行を経た鈴達にとってタリアスは敵たりえなかった。

 

「ついでだからあんたには私のとっておきを見せたげる!【四聖龍】!!」

 

鈴がそう叫ぶと、鈴の周囲に四色の龍が顕現する。それぞれが炎、氷、風、雷の属性を持ち、それを宇宙空間であろうと行使可能という煌龍に発現した単一仕様能力こそが【四聖龍】なのだ。

 

「いっけぇえええ!!」

 

鈴の号令で四龍はタリアスに襲いかかり、正確に武装だけを破壊していく。

 

「止めはあんたに譲ったげるわ、セシリア」

 

「ありがとうございますわ、鈴さん。では、踊り狂いなさい・・・・私とこのブルー・ティアーズ・ガブリエルの奏でる葬送曲(レクイエム)で!」

 

すると、今度はセシリアのブルー・ティアーズ・ガブリエルから放たれたビットがタリアスを取り囲む。

 

「こ、今度は一体・・・・」

 

六芒閃光陣(ヘキサクロス・レイ)!」

 

そして、ビットから無数のBTレーザーが放たれタリアスを襲う。しかもこのレーザーは全て(・・)追尾してくるので回避は出来ず、タリアスは徐々にビットの囲いからなる六芒星の中央に追い詰められる。

 

「これで終わりですわ・・・・カーテンコール!」

 

止めにランパードランチャーから極太のBTレーザーが放たれタリアスを貫く。

 

「ご安心を・・・・非殺傷設定ですので」

 

白目を剥くタリアスにセシリアはまるで演奏を終えたバイオリニストのような例をしながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たらないっ!」

 

サダルの操る【尽きぬ水瓶(イニィグゾォースタァブル・アクエリアス)】は両肩に装備した大型のビームカノンを主とする第2世代IS。それ故に近接戦には向いていない。それでも水瓶のような堅さで高い防御力を持つが・・・・

 

「ほらほら」

 

「こっちだよ~」

 

スピードは一般的なISより遅く、コメット姉妹のグローバル・メテオダウンに翻弄され。

 

「こちらもお忘れなく」

 

その隙をエリカが突いていく。

 

「このままでは・・・・」

 

焦ったサダルは逆転を狙いビームカノンをチャージし始めるが、それはエリカの狙い通りだった。

 

「雪兎さんに教わったやり方ですが・・・・これ、結構有用なのよねっ!」

 

何とエリカはチャージ中のビームカノンの砲口を狙い射ちビームカノンを破壊したのだ。

 

「しまっ!?」

 

「追撃、いくわよ!」

 

「うん!」

 

片方のビームカノンを破壊されバランスを崩したサダルをコメット姉妹がサウンドビットとハンドガンで追撃。そこで更なる隙を晒してしまったサダルにエリカの放った射撃がヒットしていきサダルのISは戦闘不能にされてしまった。

 

「投降して下さるかしら?」

 

「・・・・好きになさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「そんな攻撃、当たりはしないよ」

 

「・・・・油断大敵」

 

「くっ、他の者達よりはマシとはいえ、これはキツいな・・・・」

 

レグルスと交戦するベルベットとカロリナのペアは相手が元世界第二位とあって苦戦していた。レグルスも勝ち切れないこの状況に苦い表情をしている。

 

「ベルベットさん、提案がある」

 

「・・・・何?」

 

最初こそカロリナのことを少し煩わしく感じていたベルベットだが、何度かフォローされてきた事から提案を聞く程度には信用するようになっていた。

 

「私が何とかして隙を作るから、ベルベットさんは撃てる最大の一撃をお願い」

 

「・・・・いいでしょう」

 

ベルベットが頷くとカロリナはストール・ブラードを背面に回しショットランスを構えてレグルスへと突撃する。

 

「ふっ、何か相談していたようだからと警戒してみたが、大した事は」

 

「さっきも言ったけど・・・・油断大敵」

 

レグルスが手に持つ大剣でカロリナを迎え討とうするが、カロリナはレグルスと接触する直前にストール・ブラードを前面に移動させバリアフィールドを展開させ、勢いが乗り切る前の大剣を受け止めた。

 

「何っ!?」

 

「大剣みたいな重量系武装は勢いが乗り切る前が一番隙になる」

 

そこにショットランスでバリアフィールドの内から弾丸を連射してレグルスを怯ませる。

 

「うぐっ」

 

「食らいなさい、これが今の私の全力よ!」

 

カロリナがレグルスから離れたところでベルベットはレグルスに接近し左右の腕から0距離でヘルアンドヘブンの分子制御能力を発動。右で分子の動きを止め、左で活性化させる事で装甲に温度差と分子の高周波振動によるダメージを浴びせ防御性能を下げ、そこにハンドマシンガン、多連装ミサイル、グレネード、止めに大型ミサイルを叩き込みレグルスを吹き飛ばす。

 

「・・・・師匠のコールドフレイムに似てるとは思ったけど・・・・そのIS、興味深い」

 

何とかレグルスを下したベルベットとカロリナだったが、カロリナはベルベットのIS【ヘルアンドヘブン】に興味津々のようだ。

 

「今度、分かーーメンテさせて」

 

「今、分解と言いかけなかった?」

 

カロリナも雪兎の影響を受け(おそらく最も影響を受けている)メカオタクになりつつあった。そんなカロリナに呆れつつも、ベルベットの表情は少しだけ晴れやかなものになっていた事にはまだ気付く者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「ふっ!」

 

「くっ」

 

アレシアとロランのコンビは元々コンビネーションの得意なアレシアと女性の動きを見てに合わせる事を得意とするロランというペアであった為、初めて組むとは思えないコンビネーションでストレアを追い込んでいた。ストレアのIS【抗議する天秤(プラテストゥ・リブラ)】は各所に追加装甲を纏い、状況に応じてその装甲をパージする事で戦い方を変えたり、パージした装甲を敵にぶつけてダメージを追わせる、装甲をパージしてダメージを軽減する等といった戦術を得意するISなのだが、今は既にアレシアとロランにその追加装甲を剥がされチクチクと攻撃され続けていた。

 

「ほらほらほら!」

 

「まだ弾数は残っているのでお返ししよう」

 

アレシアは刃の接触部のみを加熱し相手を溶断する蛇腹剣【ヒートウィップ】とヒートチャクラムで滅多斬り、ロランは自身のISから伸びるコードをストレアがパージした装甲に突き刺しハッキングし、その装甲につけられたガトリングガンを使って牽制しつつ、自前のレーザーライフルでストレアを狙い射つ。ちなみに、追加装甲もロランがコードを突き刺しハッキングして強制的にパージさせたのだ。地味にやり方がえげつない。

 

「私達にはもう後が無いのだ!」

 

それでもストレアは諦めず、レーザー重斬刀でヒートウィップやヒートチャクラムを弾き、ロランの射撃を回避する。

 

「知らないわよ、そんなの」

 

「それに君達のしている事には(正義)が無い」

 

ストレアの攻撃はロランがコードを刺した装甲を盾にする事で防がれ、レーザー重斬刀もアレシアのアームブレードでバラバラにされる。

 

「なっ!?」

 

「ごめんね、この娘の(アームブレード)は高周波ブレードなの」

 

「そして、フィナーレだ」

 

止めにロランがサーベルで残りのシールドエネルギーを削りストレアも行動不能になってしまう。

 

「すいません、レピオス・・・・」

 

それと同時にストレアも意識を失った。

 

「うーん、(アレシア)(パーフェクト)(ヴィクトリー)ね」

 

「君、イタリア人だろ・・・・」

 

他の面子に比べて完勝に近い勝利だったが、何とも締まらない幕引きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、突入班は何とか無人兵器を無力化してエクシアがいる中枢・制御室に辿り着いた。

 

「ここにエクシアが・・・・」

 

「チェルシーさん・・・・」

 

幼い頃に生き別れとなってしまった姉妹の再会。だが、それは感動的なものではなく、世界の命運を賭けた場であった。

 

「はっ!」

 

制御室への厚く堅い扉も参式を得た千冬の前では紙切れ同然に斬り裂かれ、突入班が中に入り見たものは繋がれたコードが触手のように身体に巻き付き制御室と一体化している少女・エクシアの姿だった。

 

「一夏」

 

「ああ、やるぞ、白式!白凰!」

 

『はい!』

 

『ガッテン!』

 

そんなエクシアに一夏は近付くと早速夕凪燈夜を発動させようとするが・・・・

 

「一夏っ!」

 

それを阻むように制御室に広がるコードが一夏を襲う。

 

「うおっ!?」

 

『聖剣が彼女(コア)を奪われまいと抵抗しているようです!』

 

「くそ!どうしたら・・・・」

 

エクシアから引き離されてしまった一夏が歯噛む。

 

「シャープガンナー!」

 

「一夏様!」

 

だが、そんな状況を打開せんと一夏に迫るコードを聖とチェルシー射ち落としていく。

 

「聖、チェルシーさん・・・・」

 

「世話の焼ける男だ」

 

「突破口は私達に任せろ」

 

「一夏はエクシアを!」

 

続いてエクシアへの道を阻むコードをマドカ、晶、箒の三人が破壊し突破口を開く。

 

「いけ!一夏!」

 

そして、千冬が直近で一夏を守りながら進み・・・・

 

「今度こそ!」

 

「『『いっけぇえええ!!』』」

 

一夏達の手がエクシアに届き、白い光と共にエクシアにまとわりつくコードを吹き飛ばす。

 

「・・・・これで任務完了、だな」

 

光が薄れると一夏の手の中にエクシアが抱かれていた。

 

「よくやった。後は脱出するーー」

 

誰もがそう安心したその時、聖剣内部にアラートが鳴り響く。

 

「い、一体何が!?」

 

『織斑先生!緊急事態です!』

 

「何があった、真耶!」

 

『今まで沈黙していた聖剣が突如チャージを再開しました!目標は・・・・バッキンガム宮殿です!』

 

「な、何だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、絶対に何かあるとは思ってたが、こんな仕掛けしてやがるとは!」

 

おそらく敵対している勢力に内部に侵入されコアを失った際に発動する仕掛けなのだろうと雪兎は考えつつ、雪兎は一人聖剣とバッキンガム宮殿の射線上へと移動していた。

 

「織斑先生、聖剣の砲撃は俺が何とかします。そのついでに聖剣を破壊しますので早く脱出を」

 

『やれるのか?』

 

「知ってるでしょう?俺は出来ない事は言いませんよ」

 

『・・・・デュノアを泣かせるような真似はするなよ?』

 

「・・・・なるべく」

 

それに関しては雪兎は断言出来なかった。

 

『雪兎・・・・』

 

そこにシャルロットが通信を入れてきた。

 

「心配するな、シャル。死にはしないだろうから・・・・怪我ぐらいはするかもだが、そんときは看病頼む」

 

『・・・・絶対だからね?』

 

「ああ」

 

そう約束して雪兎は通信を切り、聖剣を見据える。

 

「つうわけだ・・・・俺の今後の為にも消えてくれ」

 

そして、雪兎は聖剣対策として用意していた切り札(ジョーカー)を切る。

 

「こい、【EXCEED:No.01・Excalibur(エクスカリバー)】」

 

現れたのは銀と青の騎士を彷彿とさせる装甲に黄金の剣。そう、この装備はとあるゲームに登場する騎士王アーサー=ペンドラゴンを模したパックであった。

 

「さあ、どっちの聖剣(エクスカリバー)が勝るか・・・・比べようじゃねぇか!!」

 

そう言って雪兎が両手でエクスカリバーを構えるとその刀身が変形し、溢れんばかりの黄金の光を放つ。

 

「いくぞ!【約束されし勝利の剣(エクスカリバー)】ァアアアア!!」

 

その光の奔流は同時に放たれた聖剣の砲撃と衝突し拮抗し始める。

 

「まだだ!リミットオーバー!!」

 

すると、雪兎は出力制限を解除し、雪華の全エネルギーをエクスカリバーへと注ぐ。

 

「ぶち抜けぇえええええ!!!」

 

エクシアとISコアを失いエネルギーの不足していた聖剣にそれを抑える力はなく、雪兎の放った光に呑まれ聖剣は光の粒子となって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんつっうデタラメな出力だよ、アレ・・・・」

 

「今回、雪兎がシャルロットの手を借りてたのって、この出力確保する為だったんじゃ・・・・」

 

「でなければあいつ一人で亡国の連中は狩られていただろうな」

 

「でも、アレって前にガン=ザルディの時に使ってたやつと同じEXCEEDだよな?」

 

「今頃、全身筋肉痛になってたりして・・・・」

 

『・・・・その通りだよ・・・・助けて、動けん』

 

「もう、今いくから待ってて、雪兎」

 

こうして後に聖剣事変と呼ばれる戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『み~つけたっ!』

 

そんな雪兎達から少し離れた場所。ISとは似つかない血のように赤い装甲と全身に張り巡らされた管のようなもの、コブラの意匠が施されたパワードスーツらしきものを見に纏った何者かが嬉しそうにそう呟いていた。




次のエピローグで聖剣事変と今章は終了です。
最後の怪しいやつは何者かって?
それは次章をお楽しみに。


次回予告

聖剣から救出されたエクシアの治療なども済み、聖剣に関係したアレコレが片付いた頃、IS学園に新たな人物が赴任してきた。その名は・・・・

次回

「後片付けと新たな仲間 兎、暗躍する」


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112話 後片付けと新たな仲間 兎、暗躍する

次章より麦ちゃさんのINFINITE・CROSS-Z コラボ編となります。
あちらとは前書きやラジオネタ等で何度かコラボしておりますが、今度は本編でのコラボになります。お楽しみに。

という訳で今章はこの回で終了。アムドラ編は長かったが、今回は元の話数で安心した。


聖剣事変が終わって数日後。ちょっと後始末の話をしよう。

 

「わ、私は悪くない!私は悪くないんだ~!」

 

雪兎によってナターシャを脅していた事が明るみに出てISが登場して以降強行な政策が目立っていたアメリカ大統領がその地位を剥奪された。代わりに新たに大統領になったのはその反対派閥のリーダー。彼はナターシャに非礼を詫び、険悪になっていたIS学園とも和解に成功し世論を味方につけた。

 

「という訳で私もIS学園で教師をする事になったわ」

 

そして、そのナターシャは福音と共にIS学園に教師として赴任する事になった。新大統領曰く「友好の証」なんだとか・・・・

 

「本当にありがとうございました」

 

「ありがとうございました!」

 

救出されたエクシアもエクシア=カリバーンではなくエクシア=ブランケットとしてセシリアに仕える事になったのだが、埋め込まれたISコアは完全に彼女と一体化してしまっているらしく、そのコアの保護の為に雪兎が新たにエクシアに専用機を作成する事になった。クロエという生体融合型ISの見本がある為、そこまで苦労はしないとの事。だが専用機の訓練の為にエクシアは来年度にマドカ達と一緒に学園へ入学が決まってしまった。エクシア本人は嬉しそうなので問題無いとは思うが・・・・

 

「私もIS学園に編入する事にしたよ」

 

更に、箒に一目惚れしたロランがIS学園に編入してきた。これには箒が渋い顔をしていたが・・・・箒、頑張れ。今回の件で雪兎達との繋がりを欲したオランダ政府の意向もあるとは思われるが、ロラン本人も乗り気なので問題無いだろう。

 

「それにしてもまさか全員捕らえられるとはな」

 

雪兎達が拘束したスコール達の他にも聖剣内部で捕らわれていたピスケス、レイン、フォルテの三人もあっさり捕まり、表立って動いていたモノクローム・アバターと闇夜の星座のメンバーは全て捕らえられた事になる。まだ彼女達の上位者達がいると考えられ油断は出来ないが、亡国に関しては一区切りついたと言える。ちなみに彼女達が使っていたISは全てプロジェクト・フロンティアに回収され再利用される事が決定している。

 

「全く、大事な話があるって聞いてたけど・・・・そんな事とはね」

 

「・・・・俺にとってはすっげー一大事だったんだが」

 

「いえ、驚いてはいますよ?でも・・・・」

 

「雪兎だったらあり得るって感じで、なぁ?」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「マジかよ・・・・」

 

「あっ、雪兎が凹んだ」

 

雪兎は聖剣に関する事が一通り片付いてからプロジェクト・フロンティアに関わる一同に自身が転生者である事を明かしたのだが、雪兎が今までやらかしてきた事がやらかしてきた事だけに随分とあっさり受け入れられてしまった。その為、罪悪感とか色々なものを抱えてきた雪兎はがっくりと項垂れてしまう。

 

「・・・・俺、一応皆が傷付かないように気にしながらとはいえ色々暗躍してたの気にしてたんだぞ?なのにそんなにあっさり受け入れられたら俺の頑張りは何だったんだよ・・・・」

 

「ヤバい、雪兎が滅茶苦茶凹んでる・・・・」

 

「彼からしたら本当に一大事でしたものね」

 

「拒絶される事すら想定していたのだろうが・・・・」

 

「皆あっさり許しちゃったものね」

 

「だけど雪兎が色々な物を思い付く要因の一つは判ったね」

 

「それを実際に作っちゃえる時点で普通じゃないけれどね」

 

「つまり、師匠の頭の中にはまだまだ色々な異世界の知識が詰まっていると!」

 

「むしろ喜んじゃってる娘もいるわね・・・・」

 

「もう、『雪兎だから』で済んじゃうわね」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「てめえら・・・・全員アリーナに出ろや!新しいアドヴァンスドシリーズの実験台にしてやる!!」

 

「「「「ちょっ!?」」」」

 

その後、一同は雪兎の新型アドヴァンスドのテストでボコボコにされはしたが、彼らの結束はより強いものになった。

 

「お前は知っていたのか?束」

 

「うん、それでも私は狡いとは思わないよ?だって、ゆーくんはそれをちゃんと活かせるように努力したんだし」

 

「なるほどな」

 

「それに、私達の弟(分)なのは変わらないでしょ?」

 

「それもそうだな」

 

「え~っと、ということは天野君って精神的には私達より年上?」

 

「「「・・・・」」」

 

「今まで通りでいいのではないかな?ヤツは結局はヤツでしかないだからな」

 

「いーくんは良いこと言うね」

 

「い、いーくん?」

 

「イヴァンだからいーくん」

 

「・・・・出来ればやめてほしいのだが」

 

「「え~!」」

 

「雪菜、お前もか」

 

教師達大人勢も結局は「雪兎は雪兎」と考える事にしたらしい。

 

「良かったね、雪兎」

 

「はぁ、ずっと悩んでたのが馬鹿らしくなるよ、まったく」

 

そう告げる雪兎の顔は言葉とは裏腹に嬉しそうな笑みだったと後にシャルロットは語る。




今章はこれにて閉幕です。
今回は短いですが事後処理のお話がメインなのでご了承下さい。

そして、雪兎がとうとう転生者とカミングアウトしましたが・・・・雪兎だった故にそんな大して驚かれませんでした。

次回からは前書き通りコラボシナリオとなります。


次回予告

聖剣事変によるあれこれが片付き冬休みを満喫していた雪兎達。そんなある日、雪兎はIS学園に侵入しようとしていたとある男と出会う。

次回

「交わる世界 兎、龍と遭遇する」


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十四章 兎と龍とシャルロット
113話 交わる世界 兎、龍と遭遇する


新章となる十四章です。
今回は麦ちゃさんとのコラボシナリオです。

それぞれ雪兎と龍我がメインで書かれているので双方読んでいただけると色々と見えてくると思います。


それではISー兎協奏曲ー第十四幕開幕です。


聖剣事変と呼ばれた事件が終息し、雪兎が転生者とカミングアウトしてから更に数日が経った。あれからセシリアの誕生会に出席した後、雪兎達は日本に戻り残りの冬休みを満喫していた。そんなある日の事・・・・

 

「さてと、これで全部か・・・・ん?」

 

買い出しに出ていた雪兎がIS学園と外を繋ぐモノレールを降りたところで何者かの視線を感じる。雪兎はゆっくりと人気の無い場所に移動し、視線の主がついてきているのを確認すると視線の主に訊ねる。

 

「・・・・何者だ?」

 

『ほぅ、こちらの視線に気付いていたか』

 

その声はボイスチェンジャーで加工されたような声で、その声の主の姿もISとは似つかない血のように赤い装甲に全身に張り巡らされた管のようなもの、コブラの意匠が施された宇宙飛行士の服に似たパワードスーツらしきものを身に着けており、素顔はわからない。

 

「あんなねばついた視線を向けられれば嫌でも気付くさ・・・・で?あんたは何者だ?」

 

『そう慌てなさんな、イレギュラー。ブラッドスターク、そう名乗ってる』

 

ブラッドスターク(正統なる血)ねぇ・・・・そのブラッドスタークさんとやらが何の用だ?」

 

『だから慌てなさんなって』

 

ブラッドスタークを名乗る人物はおどけた様子でそう言うが、雪兎としてはIS学園の敷地内にあっさり侵入したブラッドスタークを警戒していた。

 

『IS学園の校舎に行ってみな・・・・面白いものが見られるよ』

 

「面白いもの、だと?」

 

『伝える事は伝えたし、退散させてもらうよ・・・・チャオ!』

 

「お、おい!?待て!」

 

言いたい事だけ言って去っていくスタークを追う雪兎だったが、スタークはその手に持つ黒い銃のようなものから黒い煙を放つとその姿を眩ませてしまう。

 

「ブラッドスターク、何者なんだ?あいつは・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタークを見失った雪兎はスタークの言っていた事が気になり校門の方へと歩いていく。すると、龍の描かれたスカジャンにジーンズという格好の見覚えの無い男がいた。

 

「何だアイツ?見覚えがねぇし、あんな格好で寒くねぇのか?もしやスタークの言ってた面白いものってアイツの事か?」

 

「・・・・の性格上、遅れる事はねェと思うんだけどな・・・・何でだ?つーか寒いなオイ・・・・」

 

雪兎が近付いてみると、その男は若干雪兎より背が高く、髪の毛をエビフライのように編み込んでいる。寒いのには今気が付いたようだ。

 

「おい、お前ここで何してんだよ?」

 

「あ?ンだよ?」

 

後ろからその男の肩に手を置き振り返らせると一昔前の不良を彷彿とさせる口調でそう聞き返してきた。

 

「テメーこそ誰だ。IS学園の制服着やがって」

 

「いやお前が誰だよ。この季節に半袖Tシャツに前が全開のスカジャンとか、ヤベー奴じゃねえか」

 

振り返らせて判った事だが、この男、スカジャンの下は半袖のTシャツだった。

 

「は?今6月だろ」

 

「何言ってんだ?今は1月だぞ?」

 

「「は?」」

 

どうも話が食い違う。そう思った雪兎は彼から事情を聞く為に彼を連れていく事にした。

 

「・・・・とりあえず、来てもらうぞ。どうやってこのIS学園に入ったか知りたいしな」

 

「どうやってって・・・・オイ!離せ!」

 

男は抵抗するが、どうも疲弊しているようで雪兎にあっさり拘束され連れて行かれる。

 

「クッソ・・・・何でこうなるんだよーッ!」

 

(こいつ、さっき俺がIS学園の制服な事に反応してたな?それに6月・・・・まさかな)

 

これが雪兎と・・・・謎の男こと万城龍我のファーストコンタクトであった。




という訳でコラボシナリオスタートです。

111話でチラッと出たのはブラッドスタークでした。詳しくは麦ちゃさんとこのINFINITE・CROSS-Zを見て下さい。


次回予告

ブラッドスタークの言う面白いものこと謎の男・万城龍我。彼から事情を聞こうと雪兎は彼をIS学園に連れていくのだが、雪兎を出迎えたシャルロットと遭遇した途端、龍我がおかしいな事を言い始め・・・・

次回

「雪兎VS龍我!? 兎、龍と喧嘩する」


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114話 雪兎VS龍我!? 兎、龍と喧嘩する

多分、皆さんのお察しの通り修羅場回です。

~前書きあらすじ劇場~

雪兎「前回までのあらすじ!」

龍我「どうせ、こっちみたいにグダグタになるんだろ?」

雪兎「聖剣事変を解決して残りの冬休みを満喫していた俺達。だが、突如俺の前にブラッドスタークを名乗る謎の人物が現れる」

龍我「ま、まともにあらすじ紹介してるだと!?」

雪兎「ブラッドスタークに言われるまま俺は学園に戻るのだが、そこには季節を間違えたようなヤベーイ格好をした脳筋・・・・もとい謎の男・万城龍我の姿が」

龍我「ちょっと待てやコラァ!」

雪兎「話を聞いてみても何やら食い違う事に疑問を持った俺は万城龍我を学園内へと連行するのだが」

龍我「無視すんなや!」

雪兎「はいはい、アレやるぞ?せーの」

雪・龍「「さてさてどうなる第114話!」」

龍我「・・・・ちゃんと全部やりきられた」

雪兎「凹むとこそこかよ!?」


「イテテッ!いい加減放しやがれ!!」

 

「出来る訳ねぇだろうが・・・・お前にも事情あるっぽいが、今のお前は不審者以外の何者でもねぇんだぞ?」

 

「誰が不審者だ!俺には万城龍我って名前があんだよっ!!」

 

雪兎が校門で拘束した自称「万城龍我」と名乗る謎の男。その力は雪兎が思ったよりも強く、雪兎は相手が力を込めにくい方法で龍我を拘束しつつ学園内にある生徒指導室にて事情を聞こうと思っていた。

 

「そういうお前は何者なんだよ!」

 

「俺か?俺は天野雪兎・・・・天の野原に雪の兎と書く」

 

「なるほどなるほど・・・・じゃなくてっ!お前が何でこの学園にいるんだよ!?って言ってんだよ!」

 

「そんなもん俺がここの生徒だからに決まってるだろうに・・・・」

 

「はぁ!?俺はお前なんて知らねぇぞ!」

 

(こいつ、馬鹿っぽいけど嘘はついてないっぽいな)

 

龍我があれこれ騒いでいるが、対する雪兎は冷静に龍我から得た情報を整理しつつ先程考えついた仮説が正しいのではないかと考えていた。すると・・・・

 

「雪兎、遅かったね?何かあったの?」

 

そこにシャルロットが雪兎の帰りが遅いからと心配してやってきた。

 

「「シャル・・・・ん?」」

 

その時何故か雪兎と龍我の言葉が被った。

 

「な、何でお前がシャルを知ってんだよ!?しかもシャル呼ばわりしやがって!」

 

「いや、それはこっちの台詞なんだが・・・・」

 

「雪兎、その人は?」

 

「エッ?お、俺だよ!龍我!万城龍我!」

 

「シャル、知り合いか?」

 

「う、ううん、知らないよ」

 

雪兎は答えが判っていながらシャルロットに問うが、シャルロットは知らないと首を横に振る。これに龍我は酷くショックを受けた表情を見せるが、すぐに雪兎に食ってかかった。

 

「オイ!てめぇ!シャルに何しやがった!!」

 

だが、龍我は雪兎がシャルロットに何かしたのでは?と思ったらしく雪兎の拘束を無理矢理引き離すと雪兎の胸ぐらを掴んだ。

 

「俺がシャルに何かするだと?見損なうなっ!何となくお前の事情は把握したが、とりあえずお前の頭を一度冷やす必要が有りそうだ」

 

「やるってんのか!やってやるよ!」

 

すると龍我は雪兎から手を放しファイティングポーズをとる。

 

「そう焦るな。お前もここの生徒だったって言うんだろ?なら持ってんだろ?専用機を」

 

そう言うと雪兎は何処かに連絡をしながら龍我とシャルロットを連れてアリーナへとやってきた。

 

「とりあえず俺とシャルロットで模擬戦をやるってことで申請を出した。ここなら思う存分やれるだろう」

 

そう、雪兎が連絡していたのは学園で、このアリーナの使用許可を取る為だった。

 

「俺が勝ったら金輪際シャルに近付くなっ!」

 

「それじゃあ、俺が勝ったらお前の専用機を調べさせろ。あと俺の話を聞け」

 

「いいぜ!だが、俺は負けねぇ!」

 

「いくぞ、雪華!」

 

「こっちもいくぜ、ドラゴン!」

 

『ギャーォッ!』

 

「「はっ?」」

 

雪兎が専用機・雪華を展開すると龍我はスカジャンのポケットから小さなドラゴンのようなものを取り出し、その背中に蒼いボトルのようなものを嵌め込んだ。

 

『ウェイクアップ!』

 

「「えっ!?」」

 

更に龍我はハンドルのついた機械を取り出すと腰に装着する。

 

「おい、ちょっと待て!?それってまさか!!」

 

それを見て雪兎はソレ(・・)が何であるか気付いた。

 

『クローズ・ドラゴン!Are You Ready?』

 

「変身!!!」

 

龍我がそう叫ぶとベルトから伸びたチューブが前後で左右半分ずつのアーマーを形成し、それが龍我を挟み込むように合体した。その後、アーマーを纏った龍我の後ろから翼龍のようなアーマーが追加される。

 

『ウェイクアップバーニング!ゲットクローズ・ドラゴン!イエーイ!』

 

「・・・・仮面、ライダー、だと!?」

 

そう、龍我が変身したのは仮面ライダーと呼ばれる雪兎の前世で流行っていた特撮ヒーロー。

 

「クローズ、仮面ライダークローズだ!覚えとけ!」

 

更にベルトから剣を抜き取り龍我は雪兎に斬りかかってきた。

 

「やっぱり仮面ライダーかよ!?というかISじゃねぇのかよ!?」

 

龍我が振るう剣・ビートクローザーをソードライフルで受け止める雪兎。

 

「ちっ、流石は仮面ライダー・・・・パワーが桁違いだ」

 

このまま斬り合うのが不利だと察した雪兎は龍我から一度距離を取ると雪華のパックをトライアルからネオガンナーに切り換える。

 

「はっ!?そんなの有りかよ!?」

 

今度は龍我が驚く番だった。それもそのはず、龍我の知るISは武器を切り換える事はあっても雪兎の雪華のように装甲等のパーツまで丸っと切り換えてしまうようなISは存在しなかったのだ。

 

「こんなもん高速切替の応用だ。それにやっちゃ駄目だなんてルールも無いからな!」

 

そして、雪兎はお返しとばかりに両腕の計四門のガトリングガンをぶっ放ち龍我を攻撃する。

 

「ちょっ!?あ、あ、あ、危ねぇだろ!?」

 

「これも持ってけ!」

 

更に追撃として全身に備えたミサイルを龍我目掛けて放つ。

 

「ぎゃあああ~っ!?」

 

ミサイルとガトリングの雨霰に翻弄される龍我を余所に雪兎は再びパックを切り換えネオイェーガーのネオバスターライフルで龍我を狙う。

 

「fire」

 

「うわぁああああ!?」

 

今まで受けた事の無い攻撃に龍我は手も足も出ないようだ。

 

「そ、空から射ってくるなんて卑怯だぞ!」

 

「そんなもん飛べないお前が悪い」

 

抗議する龍我に雪兎は問答無用とネオバスターライフルを連射する。

 

「・・・・」

 

その光景に唯一の観客であるシャルロットは少し呆れながらも雪兎に提案する。

 

「雪兎、ちゃんと戦ってあげたら?じゃないと龍我は納得しないんじゃないかな?」

 

「・・・・分かったよ」

 

シャルロットにそう言われては雪兎も聞かざるえず、ネオブレイドに切り換えて地上に降りた。

 

「サンキュー、シャル!」

 

自分を気遣うシャルロットの言葉に気分を良くした龍我がシャルロットに手を振るのだが・・・・

 

「余所見してんじゃねぇよ!」

 

そんな隙を雪兎が見逃す訳もなく、バルムンクで龍我をぶん殴りアリーナの壁へと叩きつける。

 

「がぁ・・・・」

 

「安心しろ、峰打ちだ」

 

「・・・・いってぇじゃねえか!?」

 

「ほう、あれをモロに食らって起き上がるか・・・・ライダーシステムの強度が高いのか、それとも万城龍我の耐久値が高いのか・・・・」

 

「てめぇこそ余裕ぶっこいてんじゃねぇ!!」

 

雪兎がまだ起き上がる龍我に感心していると、龍我は手に持ったビートクローザーを雪兎に投げつける。

 

「甘い。というか、これはそうやって使うもんじゃねぇだろ・・・・」

 

しかし、雪兎にそんな不意打ち紛いの手が通用するはずもなく、ビートクローザーは受け止められてしまう。

 

「もうちょっと道具は大事にだな・・・・」

 

「隙有り!!」

 

『レディー・ゴーッ!ドラゴニック!フィニッシュ!』

 

だが、龍我の目的はビートクローザーを囮にし、雪兎の視線を逸らす事であった。雪兎がビートクローザーに気を取られている隙にベルトのハンドルを回し必殺技を発動させた龍我が蒼い龍のオーラ纏った拳を放つも雪兎はそれが判っていたかのようにネオフォートレスに切り換え、大型シールドビット・アイギスでそれを受け止めた。その一撃はアイギスの装甲を大きく凹ませる事は出来たが、雪兎に届かせる事はおろかアイギスを破壊する事すら叶わなかった。

 

「30点、そんな攻撃が俺に通用すると思うな」

 

「畜生!なら!」

 

すると、今度は雪兎に止められたビートクローザーを拾い柄の下にあるレバーを引くのだが・・・・

 

『ヒッパレー!ヒッパr「バキッ」』

 

「えっ?」

 

何と龍我が勢い良く引き過ぎたのか、そのレバーが折れてしまったのだ。

 

「何だか知らんがそれはもう使えないみたいだな・・・・だからと言って容赦する気はないが」

 

唖然とする龍我に雪兎はいつの間にか切り換えたネオストライカーの大型シールドを振りかぶる。

 

「もっかい壁とお友達になってこい!」

 

勢い良く叩きつけられたそれを龍我はビートクローザーでガードするも、続けて放たれたシールド内蔵バンカーによってビートクローザーの刀身は真っ二つに折られ龍我自身も再び壁に叩きつけられ変身が解除されてしまう。

 

「勝負あったな」

 

変身が解け、アリーナの地面に倒れる龍我に雪兎がISを近付くと、龍我はまだ意識があったのかフラフラと起き上がる。

 

「頭は冷えたか?」

 

「うるせェ、てめぇにシャルは渡すかよ」

 

龍我はまだやる気のようだ。

 

「おい、やめろ!お前の身体はもうボロボロなんだぞ!」

 

「知るか!だりぁあああ!!」

 

龍我を止めようとする雪兎の顔面に龍我の渾身の一撃が炸裂し雪兎を2メートル程吹っ飛ばすと、龍我はそのまま崩れ落ちるように気を失った。

 

「・・・・ったく、今の俺じゃなかったら本気でヤバかったぞ」

 

吹っ飛ばされた雪兎は勢いを殺す為にあえて後ろに跳んでいたようで、すぐに文句を言いながら起き上がった。

 

「雪兎!大丈夫!?」

 

「ああ、何とかな・・・・それにしても、コイツは本当に一体何者なんだ?」

 

仮面ライダーに変身する事といい、先程の一撃といい、万城龍我の謎は深まるばかりであった。




とりあえず勝負は雪兎の勝ちとなりました。
まだアドヴァンスドとか使ってない分、手加減はしてたんですがね・・・・

珍しくストライカーがフィニッシャーになりました。


次回予告

龍我との勝負に勝った雪兎は龍我の持ち物を調べるうちに龍我が平行世界からやってきたと確信を持つ。また、龍我の持ち物の中にあったUSBメモリから雪兎はあるデータを発見し・・・・

次回

「ライダーシステムと万城龍我の謎 兎、解析する」


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115話 ライダーシステムと万城龍我の謎 兎、解析する

~前書きあらすじ劇場~

雪兎「今回もやるよ、前回のあらすじ!」

龍我「やっぱやんのか・・・・」

雪兎「不審者・万城龍我を指導室へ連れて行こうとしている途中、帰りが遅い"俺"を心配して見にきたシャルに驚く万城龍我」

龍我「だから不審者じゃねぇ!!」

雪兎「その後何だかかんだといちゃもんをつけてくる龍我を黙らせるべく俺は龍我をアリーナへと連れ出した」

龍我「いちゃもんって、お前がシャルに何かしたんだろ!」

雪兎「その辺は向こうサイドでシャルに聞け。てっきり専用機を持ってるものと思ってた俺に対し龍我が取り出したのはまさかのライダーシステム・・・・そう、万城龍我は仮面ライダーだったのだ」

龍我「仮面ライダークローズだ」

雪兎「し~か~し、天災(誤字にあらず)たる俺に敵うはずもなく龍我はフルボッコに」

龍我「だけど、最後に一発入れてやったぜ!」

雪兎「あれ、俺じゃなきゃヤバかったからな?そんじゃ、アレ、いくぞ?」

雪・龍「「さてさてどうなる第115話!」」

雪兎「この掛け合い、面白いな・・・・」


気を失った龍我を医務室に運び、雪兎は龍我の持っていたベルト・ビルドドライバーとフルボトル、そして折ってしまったビートクローザーを回収する。ベルトに填まっていたクローズドラゴンも大人しく雪兎についてきている事からこのクローズドラゴンがそこそこ賢いと雪兎は理解した。

 

「シャル、悪いんだがアイツ(龍我)の事見張っておいてくれないか?」

 

「うん、それはいいんだけど・・・・龍我って一体何者なの?僕の事も知ってるみたいだったけど」

 

「多分だが、アイツは平行世界から来たんだと思う」

 

「平行世界?異世界とは違うの?」

 

「ああ、アイツの言動から推察するにアイツの世界もベースはISの世界なんだろう。違いがあるとすれば俺の代わりにアイツがいて、仮面ライダーが実在するってとこだな」

 

「仮面ライダー・・・・試合中にも言ってたけど仮面ライダーって何なの?」

 

「仮面ライダーってのは俺の前にいた世界で流行ってた特撮ヒーローでな、こういうベルトとアイテムを組み合わせて変身するんだ」

 

そう言って雪兎はビルドドライバーとフルボトルを取り出す。

 

「アイツが変身したところを見るにベルト、ドライバーのこの穴にボトルをセットする事でそれに対応したハーフボディを精製させるタイプのライダーだな」

 

「でも、龍我はそこのドラゴンにボトルを差してたよ?」

 

「それは多分このドラゴンのボトルのエネルギーが凄まじいんだろ・・・・それをあのドラゴンで二倍に薄めて左右のハーフボディにする事で制御してるってとこか?」

 

一度戦っただけだというのに雪兎はビルドドライバーの概要をある程度理解したようだ。

 

「おそらくドラゴンを介さずに二本のボトル使うとバックファイアが酷いんだろう」

 

「そんな小さなボトルにそんな力が・・・・」

 

「話を戻すと、アイツはその仮面ライダーであり、二人目のIS操者として学園に通ってたんだろう。それが何らかの理由でこの世界に跳ばされてきた」

 

「ふーん」

 

「そこでだ、どうも向こうのシャルと関係があったっぽく、シャルの話なら聞いてくれそうだから龍我に色々説明してやってほしい。勿論、シャル一人だとアイツが何するかわからんからレヴィもつける」

 

「ん?呼んだ?ご主人~」

 

「ああ、ちょっとシャルの護衛を頼む。あと、龍我ってやつにこれ渡しといてくれ」

 

そう言うと、雪兎はレヴィにドラゴンフルボトルを渡す。

 

「いいの?」

 

「そいつのデータはさっきあらかた取ったからな。俺は織斑先生にアイツの事話してコイツの解析をする。ライダーシステムだからよっぽど大丈夫だとは思うが念の為にな」

 

「・・・・雪兎、解析したいだけじゃないの?」

 

「・・・・それもある」

 

生のライダーシステム等、そうそうお目にかかる機会が無いので一技術者としては解析したくて堪らないのだ。

 

「それに・・・・コイツも直してやんなきゃな」

 

そう言って雪兎は折ってしまったビートクローザーを掲げる。

 

「改造は程々にね?」

 

「・・・・わかった」

 

「よし、行こっか、レヴィ」

 

「うん」

 

雪兎に釘を刺したシャルは龍我の元へと向かい、雪兎は千冬に事情を説明すべく職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、大体の事情は理解した」

 

あれから千冬に事情を説明しに行ったのだが、雪兎という前例がいたおかげか千冬はすんなり雪兎の説明を理解した。

 

「あと、お前が出会ったというブラッドスタークとかいうやつもその万城とやらと同じ世界の住人だと?」

 

「ええ、チラッとでしたが、アイツの持ってた銃にこれと似たボトルが刺さってたのを見ましたので」

 

「だろうな・・・・で?お前はどうするつもりだ?」

 

「と、言いますと?」

 

「万城の事だ。どうせお前の事だ、面倒を見るつもりなのだろう?」

 

「・・・・ええ、おそらくですが、万城の世界にいた怪人がこの世界にも現れる可能性がありますので」

 

これはかつて雪兎が見たライダー作品にあった展開で、ライダーがいない世界にライダーが現れると、その敵もしくは新たなライダーがその世界にも生まれるというものだ。

 

「デュノアを説明役にしたのはその為か・・・・」

 

「多分、アイツがこの世界で心を許してるのはシャルでしょうから」

 

「まあいい、面倒を見るのであれば責任はお前が取れ、いいな?」

 

「了解しました」

 

千冬からはとりあえず龍我をIS学園預りにするよう呼び掛けてもらい、雪兎は一度自室へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そういう事か・・・・」

 

ビルドドライバーを解析するうちに雪兎は先程シャルロットに語った推測が正しかった事と、ハザードレベル、ネビュラガスの性質等の情報を得た。

 

「確かライダーの力は敵の持つ力の応用だってどっかの敵が言ってたな・・・・」

 

それは仮面ライダーウィザードの最終回である特別編にて敵のアマダムが言っていた「ライダーは悪の存在があるからこそそこから生まれる事ができた」と言う言葉だ。

 

「それはいいとして・・・・問題はこっちだな」

 

それは龍我が持っていたUSBメモリに記録されていたデータだ。

 

「これ、スタークの野郎だろ?クローズの強化アイテムとか何考えてやがんだアイツ・・・・」

 

龍我が脳筋だと半ば確信している雪兎はそのデータを作ったのが龍我で無いと気付いており、あの意味深発言をしていたスタークの仕業だと見抜いていた。

 

「だが、渡す相手を間違えたな、スターク・・・・俺がそのままきっちり同じもん作るなんてつまらん真似する訳ねぇだろうに」

 

それをスタークからの挑戦状と受け取った雪兎はその強化アイテムのデータの改造を始める。

 

「ぜってぇ一泡吹かせてやる・・・・」

 

自分を利用しようとしたスタークに雪兎は犬歯を剥き出しの笑みを見せ必ず驚愕させる事を誓う。

 

「第二の天災と呼ばれた俺の力、見せてやんよ!」




ドライバーに関する考察は私個人の考察です。
そして、雪兎が早くも暴走モードに・・・・スターク、何やってくれてんのよ。



次回予告

帰る手段が見つかるまで学園にお世話になる事になった龍我。自分の世界と勝手の違いに戸惑いながらも持ち前の前向きさで溶け込んでいく。一方、雪兎はそんな龍我の為にあるものを作成していた。

次回

「龍我の平行世界での日常 兎、龍に何かを作る」


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116話 龍我の平行世界での日常 兎、龍に何かを作る

~前書きあらすじ劇場~

雪兎「定番化してきたあらすじ劇場!今回はオーズっぽくやるか」

龍我「オーズ?」

雪兎「まあ見てろって・・・・1、気絶した万城龍我を医務室に運び、シャルとレヴィに平行世界の説明を任せる」

龍我「ああ、この前のあっちの話だな?」

雪兎「2、織斑先生に事情を説明してしばらく万城龍我を学園で預かる事にした」

龍我「先公に話つけてきたのか・・・・」

雪兎「そんな呼び方したら出席簿、最悪斬艦刀食らうぞ?3、スタークが持たせたとおぼしきUSBメモリからクローズの強化アイテムらしきものの設計図を手に入れる」

龍我「ざ、斬艦刀?何かヤバそうな名前だな・・・・」

雪兎「さて、前回のあらすじも説明したし、いつものいくぞ?」

龍我「ほんとだ、3つで説明済んでる」

雪兎「せーの」

雪・龍「「さてさてどうなる第116話」」


「はぁ!?お前と同室!?」

 

「こっちだってしたかないがお前を学園で預かる条件がそれなの!」

 

ドライバーの解析を終えた雪兎が医務室に赴くと、既に事情の説明を終えたようで、龍我とレヴィがじゃれていた。そこに雪兎が龍我が学園に滞在する条件を説明しているところだ。

 

「何で雪兎なの?」

 

「こいつは男だし、何かやらかした時に取り押さえれるの俺くらいだし、連れて来たのも俺、な?俺以外に適任いねぇだろ?」

 

「「「確かに」」」

 

シャルロットと龍我はわかるが何故かレヴィまで頷いている。

 

「あと、ほれ、これは返しとく」

 

そう言って雪兎はビルドドライバーとロックフルボトル、そしてクローズドラゴンを龍我に返却する。

 

「アーッ!?忘れてた!」

 

「ドライバーとドラゴンも結構ダメージあったから直しといたぞ。ってか、定期的にメンテしとけよ。自分の相棒だろうが」

 

「ウグググッ」

 

雪兎の言葉に正論故に言い返せない龍我。

 

「あと、あの折っちまった剣・ビートクローザーだったか?あれも修理してっからもう少し待て」

 

「直せるのか!?」

 

「俺を誰だと思ってやがる。天災・篠ノ之束が一番弟子、あんま好きな呼び名じゃねぇが兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)なんて呼ばれてる」

 

「龍我が戦った雪兎のIS・雪華も雪兎が設計したんだよ?」

 

「マジでか!?……つっても、どのくらいスゲェんだ?」

 

「僕を作ったのもご主人なんだぞ」

 

「エッ!?お前、人間じゃねぇの!?」

 

「レヴィはロボットだ・・・・で、話は戻すが、ついでに強度とか上げておいてやる。そのまま修理してもまたぶっ壊しそうだからな、お前」

 

この時、龍我は篠ノ之束という名前に聞き覚えがあったのだが、シャルロットの言葉が衝撃的だったらしくそんな事は頭から抜けていた。

 

「お前を元の世界に返す方法も一応心当たりがある。準備出来るまでこっちでゆっくりしてけ」

 

「オ、オウ・・・・すまねぇがしばらく世話になる」

 

「それじゃあ改めて自己紹介だ。天野雪兎、こっちでの二人目の男性IS操者でIS技師だ」

 

「万城龍我、仮面ライダークローズをやってる」

 

多少すれ違いはあったが、無事に二人は和解し雪兎は龍我が元の世界に帰る手伝いをする事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、雪兎はいつもの朝練ついでに皆に龍我を紹介する。

 

「へぇ~、平行世界から来たのか・・・・」

 

「あちらにも私達がいるのか」

 

「しかも、6月というと・・・・あの頃ですわね」

 

「まあ、悪い奴には見えないわね」

 

「うむ、身体つきを見るにそれなりに鍛えているようだな」

 

「りゅ~が~、お菓子食べる?」

 

「雪兎に聞いたけど、仮面ライダーって本当!?」

 

とりあえずは一夏、箒、セシリア、鈴、本音、簪の龍我がよく知るメンバー。

 

「万城君ですか・・・・よろしくお願いします」

 

「簪ちゃん、落ち着いて」

 

「格闘技を嗜むと聞いた。一度手合わせを願いたいものだ」

 

「アキラは相変わらずね・・・・」

 

「アキラだしね」

 

「・・・・ライダーシステム。後で師匠にデータ見せてもらおう」

 

「新しい仲間と聞いたが、女子では無いのか・・・・」

 

「むむ、ポニーテールは慣れない」

 

「きゅ」

 

『でも似合ってるの』

 

続いて龍我が知らない聖、楯無、晶、エリカ、アレシア、カロリナ、ロラン、ちょっと正体がバレると面倒なので髪型をポニーテールにしたマドカ、そして兎のミュウだ。

 

「ウ、兎!?」

 

「きゅ」

 

『よろしくなの、リューガ』

 

「こ、これはご丁寧にども・・・・って、兎っ!?」

 

流石の龍我もミュウには度肝を抜かれたようで、開いた口が塞がらないようだ。

 

「そいつはミュウっていってな。ちょっと変わった兎なんだ」

 

「イヤイヤ!?普通、兎がプラカードで挨拶しねぇだろ!?」

 

「龍我、現実は小説より奇なり、だ」

 

色々あったが、やはりミュウに全部持っていかれたようだが、このおかげで龍我の妙な緊張は解けたようだ。

 

「ついでだし、こいつらも紹介しとくか・・・・」

 

そう言うと、雪兎はレヴィと似たような三体を呼び出す。

 

「お呼びでしょうか、マスター」

 

「やっと我らの出番か」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「順にシュテル、ディアーチェ、ユーリだ。それぞれルシュフェリオン、エルシニアクロイツ、スピリットフレアの能力が使える」

 

「シュテル達完成したんだ」

 

「あっ!シュテルン!王様!ユーリ!」

 

元より開発しているのを知っていたシャルと、元ネタの関係でその存在を知っていたレヴィが三体に近付く。

 

「レヴィ、ようやく会えましたね」

 

「これからは我の左腕として力を振るうがいい!」

 

「よろしくです、レヴィ」

 

きゃっきゃっと戯れる四体に皆の表情がほっこりしたものになる。

 

「アレ、本当にロボットなのか?」

 

「ああ、俺の自信作だ」

 

龍我は未だにレヴィ達がロボットだとは信じれないらしい。

 

「ね、ねぇ、あの娘達、今夜だけお持ち帰りしちゃダメ?」

 

「本人達がいいって言えば構わんぞ、アレシア」

 

可愛いもの好きのアレシアはマテリアルズ(雪兎命名)にすっかり心を奪われたらしく、目が凄い事になっていた。その後すぐにマテリアルズに突撃したアレシアだったが、目がアレだったせいでユーリに泣かれてしまい、お持ち帰りどころではなくなってしまった。

 

「ね、ねぇ、龍我」

 

そして、もう一人、我慢が出来なくなっている娘がいた。

 

「変身するところ、見せてもらってもいい!?」

 

特撮ヒーロー大好きな簪である。

 

「オ、オウ、いいぜ」

 

一応、雪兎に目配せして許可を取ってから龍我は簪の頼みを聞き入れた。

 

(ワクワク)

 

「やっぱ、世界は違っても簪は簪だな・・・・」

 

「あっちでもこのパターンあったのか」

 

その後、龍我の変身シーンを動画に収め、あちらこちらから写真を撮りまくられた龍我はすっかり疲弊してしまう。

 

「戦って無いのにこんなに疲れた変身は久しぶりだぜ・・・・」

 

「恐るべし、特撮オタク・・・・」

 

色々あったものの、無事に龍我は皆に受け入れられたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。ピッピッと投影式キーボードを叩く雪兎を龍我は筋トレをしながら眺めていた。

 

「雪兎、こんな時間に何やってんだ?」

 

「ん?これか?こいつはお前用のISだ」

 

「へっ?」

 

「お前、クローズには変身出来ても専用機ねぇんだろ?」

 

「ああ、俺にはコイツがあるからな」

 

そう言って龍我はビルドドライバーを取り出す。

 

「だが、クローズが使えないって状況もこの先あるだろ。そんな時にお前が使えるISがあった方が便利だろ?」

 

「言われてみればそうだな」

 

医務室での一件の後、雪兎は龍我に龍我がいた世界での日時を確認しており、それがあの銀の福音との戦闘がある臨海学校の前と知り、急遽龍我の専用機を設計し始めたのだ。

 

「勿論、クローズに変身してる時もお前をサポート出来るようにしてある」

 

「自分のIS設計したとは言ってたが、そんな事まで出来んのかよ!?」

 

「俺にかかれば簡単な事だ・・・・で、何かつけて欲しい機能とかあるか?」

 

「あんましごちゃごちゃしてんのは合わねぇから拳一つで戦えるやつがいいな」

 

「あ~、なるほどな。確かにそんな複雑な機構積んでもお前じゃ扱い切れんか」

 

「お前、今俺を馬鹿にしたろ!?」

 

「少なくとも俺よりは馬鹿だろ?」

 

そんな話をしながら雪兎は龍我の専用機を形にしていく。

 

「名前を付けるとしたら、そうだな・・・・【蒼龍】ってとこかな?」




という訳でコラボオリジナルIS登場!?

スペックについてはまた今度ということで。


次回予告

龍我の生活必需品が必要になり、買い出しに出かけた龍我と案内に同行する聖と晶。しかし、その途中にこの世界にはいないはずのスマッシュが現れ・・・・一方、雪兎はとある調べものをしており・・・・

次回

「異邦からの襲撃者 兎、龍とは別行動」


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117話 異邦からの襲撃者 兎、龍とは別行動

~前書きあらすじ劇場~

聖「前回までのあらすじです」

龍我「あれ?今回は雪兎じゃねぇのか!?」

聖「何か本編の方が忙しいとかで・・・・あっちも晶が代わりにやるって言ってたよ?」

龍我「ふーん」

聖「前回は皆と万城君の顔合わせとレヴィちゃんのお友達の紹介だったね」

龍我「あのチビ達が人じゃねぇのには驚いたが、あの兎にはもっと驚かされたぜ・・・・」

聖「あ~、ミュウちゃんね・・・・でも、あの程度で驚いてたらねぇ・・・・」

龍我「・・・・あいつ、まだ何かあんの!?」

聖「それはまたそのうちわかるんじゃないかな?」

龍我「・・・・俺、大丈夫か?」

聖「それでは今回もいきますよ?」

聖・龍「さてさてどうなる第117話!」


「しまった。龍我の生活必需品がねぇぞ」

 

「あー、確かにそうだな」

 

龍我が滞在し始めた翌日、雪兎はそんな当たり前な事に気付く。

 

「お前が今着てた寝巻きも今着てるジャージも俺のヤツだしな。サイズ合ってないし。てかどこから出したんだよ」

 

「お前の鞄の中に決まってんだろ」

 

「・・・・もういい」

 

雪兎はため息をつくと、端末を弄って誰かに連絡を始める。まずは特訓メンバーのグループチャットで今日暇な人を探し、そのメンバーに龍我の生活必需品の買い出しの付き添いを頼む。

 

「・・・・頼むぞ」

 

雪兎はそう言って通話を終えると、端末をポケットにしまう。

 

「龍我。晶と聖が朝練をしていたらしいから、その2人と一緒に買い物行ってこい。金は貸してやるよ」

 

「あ?買い物?それと金はあるから大丈夫だ」

 

「生活必需品だよ。昨日は歯ブラシは旅館でよくあるアレを貸したし、タオルも俺のものを使ったけど……いつまでもそうする訳にはいかねぇからな。それと、お前の世界の金は使えねぇよ。紙幣ナンバー知らないのか?」

 

「しへいなんばー?」

 

紙幣にはそれぞれシリアルナンバーが振られており、一つとして同じナンバーのものは存在しない。もし、龍我が持ち込んだ紙幣と同じナンバーのものが揃いでもしたら偽札だのと面倒な騒ぎになるのが目に見えている。

 

「・・・・コレを持っていけ」

 

そこで雪兎は無言で自分の財布から万札を何枚か取り出し、手短にあった封筒にそれを入れると龍我に渡す。

 

「だから、金は持ってるって!」

 

「使えないって言ってるだろ!」

 

雪兎は封筒を龍我に押し付ける。

龍我も途中で折れてそれを渋々受け取るとジャージを脱ぎ捨て、Tシャツを着てスカジャンを羽織り、ポケットに封筒をねじ込む。

 

Tシャツもジーンズは前日に雪兎が洗濯に回していたので清潔だ。しかし・・・・

 

「・・・・寒くないのか?」

 

「寒いけど、そんな言う程でもねェな」

 

「そうか。もう少し季節感のある服を買ってこいよ」

 

「おーおー。で、どこに行けばいいんだ?」

 

雪兎の言葉に龍我が適当に返事すると、雪兎は適当に返した事を気付き深いため息をつく。

 

「はぁ・・・・まあいい。晶と聖はシャワーを浴びて着替えたら校門に行くらしいから、お前もシャワー浴びて行け」

 

「シャワー浴びる必要ねェだろ」

 

「お前なぁ・・・・デリカシーが無いにも程があるぞ。晶も聖も女の子だぞ?筋トレして汗臭いお前がそのまま行ったらどうなる?」

 

「分かった!分かったよ!」

 

龍我はそう叫びながら雪兎が投げ渡してくるタオルを受け取ってシャワールームに入る。

 

(これは、龍我にちゃんと教育しとく必要がありそうだ・・・・)

 

そんな龍我に雪兎は頭が痛くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖side

 

その日、私は晶に誘われた朝練を終え、雪兎さんに頼まれて晶と一緒に例の万城龍我君の買い物に付き合う事になった。何でも生活必需品や服が足りないとの事。そう言えばTシャツにスカジャンでしたね、彼・・・・

 

「よう、待たせたな」

 

「「えっ!?」」

 

そんな事を考えていると突如背後から私達の肩に手を置かれ、ビクッとしながらも振り返るとそこに万城君かいた。

 

「あー、万城君だっけ」

 

「おう。お前は・・・・宮本聖で合ってるな?」

 

「そうだよ。一度自己紹介したけど、もう1回するね。宮本聖です。それでこっちが・・・・」

 

「神宮寺晶だ。よろしく頼むぞ、万城龍我」

 

「ああ。今日は悪ィな。俺の買い物なんかに付き合わせちまう事になってよ」

 

改めて自己紹介すると彼は頭をポリポリかきながらそう言う。

 

「いや、全然大丈夫だよ。万城君」

 

「うむ、そうだな。その代わりと言ってはなんだが、今度手合わせをしてくれないか?仮面ライダーの素の実力を知りたいし・・・・格闘技を嗜んでいるのだろう?」

 

「もう、晶ったら・・・・」

 

晶の瞳の奥が、ぎらりと光った気がした。どうも晶は実力が近い人がいると戦闘ky・・・・もとい好戦的になら傾向がある。

 

「いいぜ・・・・つっても、俺が格闘技をやってたかは覚えがねェんだけどな」

 

「覚えが・・・・」

 

「ないだと?」

 

「ああ。俺、記憶喪失でさ。4月よりも前の記憶がさっぱりねーんだよ」

 

「え・・・・それって、大丈夫なの?」

 

私が心配そうな声色でそう聞く。晶も何も言わないながらも、難しそうな顔をしている。

 

「あー、大丈夫だ。そんな深刻そうな顔すんなって。どうせ俺の過去なんざ、大した事ねーよ。忘れた物を気にしても、仕方ないしな。それより早く買い物行こうぜ!」

 

何となく重苦しくなった空気を払拭するために万城君は駅の方に親指を向ける。

 

「そうだな。万城の言う通りだ。早く行くぞ、聖」

 

「え、いいの!?記憶喪失だよ!?」

 

「本人が気にしてないのだから、いいんだろう。万城も、何かあれば私たちに遠慮なく聞いてくれ」

 

「おう、ありがとよ」

 

「うーん・・・・ならいいかな。それじゃあ万城君は、ついてきてくれる?」

 

私も仕方なく納得し、駅に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が向かった場所は、いつも私達がいくレゾナンス。すると、万城君の様子が少しおかしい事に気付く。

 

「ボケっとして、どうしたのだ?」

 

「いや、こっちのココは無事なんだなって・・・・」

 

「まるで万城君の所のショッピングモールが、破壊されたみたいな言い方だね」

 

「おう。破壊した」

 

「いやどうやったら破壊できるの・・・・」

 

私はそう軽くとんでもない事を口にする万城君に呆れている。その目線が耐えられなかったのか、万城君はそうなった経緯を話してくれた。

 

「俺の世界に『ローグ』っていう敵がいてな。そいつをブッ殺すために、このショッピングモールの天井ごと爆発させた」

 

「やる事が馬鹿のそれだな・・・・」

 

「誰が馬鹿だ!」

 

「なんか、この話で1日を使っちゃいそうだね。早く買い物に行こっか」

 

話が長くなりそうだったので、私はその話を遮り先導してショッピングモールに入って行く。

 

「えーっと、万城君はどんな服がいい?」

 

「そうだな。万城はどんな服がいいのだ?」

 

「ンー・・・・雪兎が、『季節感のある服を買ってこいよ』って言ってたな」

 

「それは、万城が半袖Tシャツにスカジャンの格好だからではないのか?」

 

「うん。そう思う」

 

「そもそも、季節感のある服って何だよ?」

 

その万城君の言葉に私達二人は同時にため息をついた。

 

「・・・・なんか、万城君の事が分かってきたよ」

 

「奇遇だな、聖。私もだ」

 

「よく分かんねェけど、馬鹿にされてる?」

 

「・・・・とりあえず行こっか」

 

「そうだな」

 

私達そう納得すると、近くの店に入って行く。

 

「お、おい!待てよ!」

 

店内に入ると私達は早速万城君に似合いそうな服を探し始める。

 

「う~ん、万城君は素材は良いから色々似合うと思うんだよなぁ」

 

以前、ラウラの私服をシャルロットさんと探しに行った事を思い出しながらとりあえず万城君に似合いそうな服を片っ端から手に取っていく。そして、両手が一杯になったところで私達を探しているとおぼしき万城君に声をかける。

 

「ねぇ、万城君」

 

だが、万城君は私が持つ服の山を見てかつてのラウラのように逃げようとする。

 

「逃げないで」

 

だけど逃がしはしない。私は万城君の前に回り込むとニッコリと笑う。

 

「万城君、案外格好いいから似合うと思うよ?」

 

私がそういうと、万城君はガックリと項垂れつつもしばらく私の着せ替え人形と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっかれた……」

 

あの後着せ替え人形にさせられた万城君は、ぐったりしながら買った服の入った紙袋を手に下げている。

 

「あれ?晶、どこ行ったんだろう……」

 

気が付けば晶の姿が無い。

 

「万城君、晶見てな・・・・って万城君までいなくなった!?」

 

慌ててキョロキョロと周りを見回すと、女物の服屋のショーウィンドウの前で話している二人を見つけた。多分、晶がまた可愛らしい服見てて万城君が何か言ったのだろう。晶も可愛いんだからもっとオシャレすればいいのに・・・・

 

「あ、晶に万城君!ここにいたんだ」

 

小走りで近付くと既に話は終わったようで、万城君は手に持っていたペットボトルの麦茶を飲み干し、近くのゴミ箱に投げ入れる。空のペットボトルは綺麗な放物線を描きゴミ箱にスッポリと入る。

 

「ナイッシュ!」

 

それを見てガッツポーズをする万城君を見て、私は子供っぽいなぁと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからお昼をファミレスで食べ、私達はまた服屋の近くに戻って来た。

 

「次は生活必需品だな」

 

「タオルは買ったし、あとは・・・・歯ブラシとかだね」

 

「パンツもな」

 

「えっ・・・・とそれは万城君にやってもらわないとね・・・・」

 

「そ、そうだな」

 

万城君は何気なく言っているが、それは男性に女性ものの下着エリアに行けと言ってるのと同じだと思うのは私だけだろうか?あっちのシャルロットさん、苦労してるんだろうなぁ・・・・

 

「では、私が歯ブラシなどを見に行こう。聖は万城について行ってくれ」

 

「うん。分かったよ。いこ、万城君」

 

「おう。頼むぜ」

 

とりあえず売り場の近くきた。

 

「うーん、さっきも言ったけど、流石に下着は万城君にやってもらわないとね……」

 

「おう。とりあえずパンツを買ってきたらいいよな?」

 

万城君はタッタと店の奥へと向かい、必要な分の下着を買い終えるとすぐに戻ってくる。

 

「買った?」

 

「おう。バッチリだぜ」

 

「そう。なら・・・・」

 

その時だった。

 

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

「「!!!」」

 

どこからか女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「宮本!」

 

「うん!」

 

万城君はそう言うとポケットからベルトを取り出し、腰に当てながら走り出す。

 

悲鳴のしたショッピングモールの1階に来ると、そこでは見たことも無い黄色の蠍のような怪物が暴れていた。

 

「チッ……何でここに怪物がいやがる!」

 

『ギャーオ!』

 

「いくぞ、ドラゴン!」

 

万城君はフルボトルをクローズドラゴンの背中に挿入する。

 

『ウェイクアップ!』

 

そしてそれを、ベルトに装着する。

 

『クローズ・ドラゴン!』

 

「宮本、離れてろ!」

 

私が離れると万城君はベルトのハンドルを回し、その前後に半分ずつの蒼いアーマーを生成する。

 

『Are You Ready?』

 

「変身ッ!!!」

 

『ウェイクアップバーニング!ゲットクローズ・ドラゴン!イエーイ!』

 

万城君の掛け声に合わせて前後のアーマーが万城君に装着され、前に見せてもらった仮面ライダークローズに変身する。

 

「ッしゃあ!ここからは俺の喧嘩だ!」

 

「いいえ、万城君。私達の喧嘩です!」

 

万城君は一人で戦うつもりだったみたいだけど、私もそう言って自身の専用機【ウェーブライダー】を展開する。本当ならISの無断使用になるが緊急事態だ。

 

「私もだ!」

 

そう思ったのは私だけではなく晶も同じようで、晶も専用機【白牙】を纏って私達の傍に降り立つ。

 

「しゃ、お前ら、行くぞ!」

 

万城君はそう言うと、怪物に突撃する。

 

「オラァ!」

 

そして助走の勢いそのままにドロップキックを食らわせ怪物を転がす。

 

「援護は任せた!」

 

「分かったよ!」

 

「任せろ!」

 

私はバイザーボード【ソードダンサー】を展開し、晶は徒手空拳の構えを取る。万城君のドロップキックを受けた怪物は特にダメージなどなかったかのように起き上がるが、万城君は何故か逆にテンションが上がっているのが仮面越しにも判る。

 

「いいじゃねェか。燃えるなァ!!!」

 

万城君そう言いながらは再び突撃すると、拳を突き出す。だが、その拳は避けられ逆にカウンターの一撃を顔にもらってしまう。

 

「痛ってェな!」

 

しかし、万城君も只でやられる気は無いらしく、その腕を掴むと逃げられないようにした上で無防備な脇腹に蹴りを入れるのだが・・・・

 

「痛っでェェェ!?」

 

どうも無防備とは言えど硬かったようで蹴った脚に逆にダメージが入り、足を抑えてうずくまっていた。

 

「だ、大丈夫?」

 

「当ッたり前ェだ!」

 

万城君はすぐに起き上がるとベルトに手をかざし何かを取り出そうとするも・・・・

 

「しまった、壊れてたんだった・・・・」

 

どうやらそれは壊れていて今は使えない事を思い出したようだ。その隙を逃さないとばかりに怪物が万城君に突進してくるが

 

「マズッ!?」

 

「そうはさせないよ!」

 

私はすかさずソードダンサーに乗って怪物の横からタックルして吹き飛ばす。

 

「助かった」

 

「万城君、戦闘中に余所事は駄目だよ」

 

「はぁっ!」

 

怪物が吹き飛ばされた先では晶が怪物を殴り飛ばしている。時折、掌底を放ち掌から衝撃砲も食らわせている。それでも怪物には大したダメージを与えられていないみたいで、怪物は立ち上がると唸り声をあげた。

 

「硬いな・・・・」

 

「そうだな。でもな・・・・」

 

晶がポロッと漏らした一言に答えながら、万城君は怪物に近づく。

そして怪物のパンチをダックアンダーで潜り抜け、背後からフルネルソンで締め上げる。

 

「その自慢の角のついた頭は耐えきれるかよッ!!!」

 

そしてそのまま腰を逸らし、投げっぱなしのドラゴンスープレックスを決める。

怪物の首が変な方向に曲がり、目に見えて動きが鈍くなった。

 

「ドラゴンスープレックス!生では初めて見た!」

 

晶が興奮しているが、万城君は容赦無く投げ飛ばした怪物に素早く近づき、立ち上がる前にその顔をサッカーボールキックで蹴り飛ばす。

 

「やれ!お前ら!」

 

「うん!」

 

「分かった!」

 

万城君の合図で再びソードダンサーで怪物をまた吹き飛ばし、その先で待機していた晶が脚についたブレードで連続で斬りつける。

 

「よし、いけるぞ!」

 

万城君がそう言った瞬間だった。

 

バァン!

 

「「「!!!」」」

 

ショッピングモール内の電灯が全て消え、真っ暗になる。窓にはシャッターが下りているので、外の光も入って来ない。

 

「万城君、大丈夫?」

 

「すまん、何も見えねェ……」

 

ISを纏っている私達はハイパーセンサーで見えているけど、仮面越しとはいえ全て肉眼で見ている万城君には何も見えていないようだ。

 

「危ない!万城!」

 

そんな晶の声が聞こえた瞬間、万城君のお腹に蠍の尻尾が刺さり、そして液体のようなものが注入されズボッと抜ける。

 

「がぁぁぁ……」

 

毒を打ち込まれたらしく、万城君は立っていられないのか膝をついてしまう。

 

「万城君!」

 

「だ、大丈夫だコノヤロー……」

 

万城君はフラフラと立ち上がり、なんとか拳を構えるが万城君にもう長時間戦える力は残っていない。その間も私と晶が攻撃を加えるも怪物の装甲は硬く、レゾナンスの中とあって私達が今使える攻撃方法ではトドメを刺すのは無理だろう。でも、万城君にならそれが出来る。そんな確信が私にはあった。

 

「晶、私が合図したらあいつを万城君の前に飛ばせる?」

 

「それくらい御安い御用だ」

 

「「はぁっ!」」

 

そして、怪物の隙を見つけて私が合図を出し、二人同時攻撃を食らわせ怪物を転がし万城君の脚元へ。

 

「すまない、私達ではトドメは刺せなかった」

 

「だから、万城君!お願い!」

 

「・・・・っしゃ!やってやるぜ!」

 

私達の考えが伝わったようで万城君は苦しいのを我慢しながらハンドルを回し蒼いドラゴンのオーラを出した。

 

『レディー・ゴーッ!ドラゴニック!フィニッシュ!』

 

そのドラゴンは万城君の周りを旋回し、万城君の右脚に蒼いオーラとなる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

それを軽く助走をつけて怪物に迫り、

 

「だァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

ドラゴンを纏った蹴りを怪物の土手っ腹にお見舞いする。

 

『ガァァァァァァァァッ!!!』

 

万城君の必殺の蹴り怪物は大爆発を起こし倒れる。しかし、我はその満身創痍の身体でも逃げようとするが、

 

「宮本!神宮寺!頼む!」

 

「「了解!!!」」

 

私が三度ソードダンサーのタックルを食らわせ、それを晶が万城君へと蹴り返す。

 

「うおッ!?こっち来んな!」

 

万城君は当たるギリギリの所で蹴り飛ばし、激突を回避する。そしてベルトの腰についている白いのボトルを開け怪物に向けると怪物は光の粒となってボトルに吸収されていった。すると、ショッピングモール内の電灯が復活した。

 

「漫画みたいなタイミングだな・・・・」

 

万城君は変身を解除し、地面にへたり込む。顔色は青く苦しそうだ。

 

「万城、大丈夫か?」

 

「だ・・・・大丈夫だ。毒を盛られただけだから・・・・」

 

「それ、絶対大丈夫じゃないよね!?」

 

万城君の言葉に私達慌てふためくが、万城君は途切れそうな意識をなんとか保ちながら指示を出す。

 

「ベルトの・・・・ドラゴンを・・・・外してくれ・・・・」

 

「こ、これか?」

 

『ギャーオ!』

 

晶が万城君の指示通りにするとクローズドラゴンが万城君の腹に牙をたて、身体の中から毒を吸って吐き出す。

 

「わあ、このドラゴン、解毒も出来るんだ・・・・」

 

解毒は出来たものの、奪われた体力までは回復出来なかったようで万城君は少しフラつきながらも立ち上がる。

 

「何でこの世界に怪物がいやがるんだよ・・・・」

 

「万城、一度IS学園に戻ろう。必要な物も粗方買ったしな」

 

万城君によればあれはスマッシュという万城君の世界にいた怪物らしい。何故、そのスマッシュがこちらの世界にいたのだろう?それが気になりはしたが、万城君の治療の方が先だ。私達は万城君を連れ学園へと戻った。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・なるほど、そういうことかよ」

 

スマッシュの毒を受け龍我が医務室に搬送されたと聞き、医務室に駆け付けた雪兎はその際に龍我のとある秘密を知る。そして、それまでに得た情報からスタークの正体とその目的についてある推測が浮かんだ。

 

「ハザードレベル4.8・・・・あいつに聞いた話じゃこっちに来る前は4.7だったと言っていた。ならばスタークがこの世界にあいつを送り込んだ理由は本人の言う通り龍我の成長で間違いない・・・・」

 

ハザードレベルはネビュラガスを調べる過程で測定する方法を雪兎は見つけていた。何故スタークは敵対する龍我にそんな事をするのか・・・・雪兎も最初は疑問に思っていたが、その目的を知れば納得である。

 

「・・・・【クローズナックル】、完成を急いだ方がよさそうだな」

 

雪兎の視線の先にはケーブルに繋がれた灰色のナックルガードのようなものがあった。




今回は聖にメインやってもらいました。
聖であんな長文初めてやわ・・・・


次回予告

この世界に存在しないはずのスマッシュの登場に動揺する龍我。そんな龍我を一喝せんと晶が龍我に模擬戦を挑む!?一方、ブラッドスタークの思惑に気付いた雪兎は龍我の、クローズの新装備を完成させる。


次回

「交差する拳とクローズナッコォ! 兎、龍に新・装・備を与える」


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118話 交差する拳とクローズナッコォ! 兎、龍に新・装・備を与える

~前書きあらすじ劇場~

雪兎「前回までのあらすじ~」

龍我「だんだん適当になってきたな・・・・」

雪兎「買い物に行った龍我がスコーピオンスマッシュにボコられたり、毒食らわされたり、聖達に助けられたりしてた、まる」

龍我「マジで適当だ・・・・」

雪兎「仕方ないだろ?前回あんまし出番無かったんだから」

龍我「いや、尺余るだろ!?」

雪兎「なら雑談するか」

龍我「だな・・・・そういや、お前が尊敬してる人っていんのか?」

雪兎「それは束さん除いてって意味か?」

龍我「そうそう」

雪兎「そうだな・・・・奈落から這い上がった神殺しの魔王様とか、魔法で動くロボットある世界で王様に国家機密を知りたい理由を趣味と答えたロボオタとか、実力者の国って呼ばれてる国の魔王って呼ばれてる第二王子の黒猫って呼ばれてる魔導師の三人かな?」

龍我「それ、雪兎んとこの作者が雪兎の性格ベースにしたとか言ってた三人だよな!?あと、三人目の説明長っ!?」

雪兎「三人とも名前わかったら凄いと思うぞ、俺は」

龍我「うちの作者はちんぷんかんぷんだったらしいが」

雪兎「あとがきにお知らせがあるのでちゃんとチェックしてくれよな」

龍我「よし、尺は稼いだ。いつものいくぜ!」

雪・龍「「さてさてどうなる第118話!」」


いきなりだが、龍我達がレゾナンスに出掛けた頃まで遡る。龍我が出掛けた後、雪兎は雪兎で開発の息抜きに前にマドカと入った喫茶店にやってきていた。

 

「うん、ここのコーヒーはやはりいいな」

 

普段ならシャルロットも誘うところではあるが、今日は珍しく午前中は都合が合わないとの事で雪兎は一人・・・・いや、一人と一体でここを訪れていた。

 

「流石はマスターの行きつけの店です。この紅茶も素晴らしい」

 

「それは良かったな、シュテル」

 

雪兎と同行していたのはシュテル。アドヴァンスドのルシュフェリオンのベースとなったシュテル=デストラクターを模して作られたチヴィットで、マテリアルズの中でも普段は大人しい部類だ(戦闘となると熱くなるが)。

 

「龍我が来てから色々あり過ぎたな・・・・」

 

龍我に聞いた話では、スタークの目的は龍我の成長らしく、その舞台としてこの世界が選ばれたとのこと。

 

(何故この世界を?それにスタークは俺の事をイレギュラーと呼んだ・・・・スタークは一夏以外の男性操者がイレギュラーと知ってる?って事は俺や他の平行世界いると思われる一夏以外の男性操者について知っていた?だが、そんな事を調べられる人なんて限られてるはず・・・・)

 

そこで何か引っ掛かりを覚える雪兎。

 

「何だ?あれ?」

 

「烏?それにしてはデカイような・・・・」

 

だが、そんな事を考える雪兎の耳にそんな話声が聞こえる。

 

「ん?」

 

それを聞き、雪兎もその客の視線の先を目で追うと、そこには電信柱の先に立つ烏のような外観をした怪物がいた。

 

「シュテル」

 

「心得ました」

 

シュテルは雪兎にそう返事をすると姿を消した。すると、烏の怪物は電信柱の上から喫茶店目がかけて両腕代わりの翼を振るい黒い羽状のダガーボムを放つ。それは扉に当たり店を爆破したかに思えたが・・・・

 

「マスターの行きつけの店を攻撃するとは愚かな」

 

その爆破は全て店に当たる前にルシュフェリオンを展開したシュテルの障壁に阻まれていた。

 

「シュテル、どうせろくな理性も無い怪物にそんな事を言っても無駄だろ?」

 

雪兎もすぐに外に出てきたようで、すぐに雪華を展開する。

 

「こいつが龍我の言ってたスマッシュってやつか・・・・だが、俺と出会った不幸を呪え」

 

そう言うと雪兎は近接戦闘を意識した新型アドヴァンスド【SG:ソウルゲイン】を纏う。

 

「せっかくだ・・・・スマッシュとやらのデータ、収集させてもらうぞ!」

 

その一言の間に雪兎はクロウスマッシュとの距離を一気に詰め、両手に集めた気のようなエネルギーをクロウスマッシュの腹部に叩き込む。

 

「虎の咬みつきだ!」

 

集めた気が腹部で炸裂し、クロウスマッシュは上空へと打ち上げられる。

 

「これも持っていけ!【玄武剛弾】!」

 

続けて雪兎は右腕の腕輪のようなパーツを高速回転させ右腕に空気を渦を作ると、それをクロウスマッシュに向かって腕ごと飛ばし更にクロウスマッシュを高く打ち上げた。クロウスマッシュもやられるだけではなく、再び翼を振るいダガーボムを放つも、雪兎は両手から拡散型の気弾を放ち全て撃ち落としてしまう。

 

「もうそれ以上の芸は無いようだな・・・・ならば終いだ。【コード・麒麟】」

 

雪兎がそう告げると装甲に付いている緑の宝玉が赤に染まる。そして、拡散型の気弾【青龍燐】を放ちクロウスマッシュの動きを止め突撃、拳や膝等の連携を撃ち込み再度クロウスマッシュを打ち上げると、雪兎は肘の突起をブレードのように変形させクロウスマッシュへと迫る。

 

「でぃぃぃやっ!!」

 

伸ばした肘の突起でアッパースイングに斬られ、クロウスマッシュはそのまま地面に叩きつけられた。

 

「さて、倒した事だし、成分をいただいて帰るか」

 

いつの間にか複製していたエンプティボトルを使い、雪兎はクロウスマッシュの成分を抜き取る。すると、パン、パン、パンと手を鳴らす音がした。

 

『いや~、お見事お見事!やはり普通のスマッシュ程度じゃ相手にもならないか』

 

音のする方を見ればブラッドスタークの姿があった。

 

「やっぱりお前仕業か、スターク」

 

『悪いね、今お前さんを自由にしとくと都合が悪いんでね』

 

「何だと?まさか龍我か!?」

 

『大、正、解!』

 

そこで雪兎はスタークの狙いが雪兎と龍我の分断であると気付く。

 

『ああ、安心しな。こっちの目的は万城龍我の成長だ。殺しはしない』

 

「それは龍我に聞いた。だが、何故このような回りくどい真似を!」

 

『いや~、あいつの成長が思ったより早くってねぇ~。向こうじゃハザードレベルの上昇効率が悪いのさ』

 

そうおどけて話すスターク。

 

『おっと、そうこうしてる間に向こうも終わったみたいだ』

 

「逃がすか!」

 

『こっちもまだまだやる事があるんでねぇ・・・・チャオ!』

 

そう言ってスタークは黒い銃・トランスチームガンで黒い煙を放ち前と同じように黒い煙に呑まれるように姿を消した。

 

「ちっ!また逃がしたか」

 

「半径数キロに渡ってサーチしましたが、既に反応ありません」

 

「そうか・・・・ん?通信?」

 

その時、雪兎の元に龍我がスマッシュとの戦いで毒を受けたと聖から通信があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い回復力ね……」

 

連絡を受けた雪兎はすぐさまIS学園まで戻ったが、毒はクローズドラゴンによって取り除かれた後らしく、怪我ももうほとんど塞がっていた。一緒にいた聖と晶は心配そうな様子で龍我の事を見ており、保健医の先生もその回復力に感心していた。しかし、雪兎は先程見た龍我のカルテからその異常性を知り険しい表情をしている。

 

「おい雪兎、何難しそうな顔してんだよ」

 

「ん?ああ、悪いな・・・・」

 

そのカルテの内容は雪兎、保健医の先生、千冬、楯無の四名だけにしか明かされていない。それ故に雪兎は龍我の問いに曖昧な返事を返す。

 

「・・・・龍我。お前、いつもそんなに傷の回復が早いのか?」

 

「あ?まァそうだな・・・・今回は少し遅いくらいだな」

 

逆に雪兎がそう問えば、龍我はなんてこと無いとばかりそう答える。

 

「そうか……分かった」

 

「何なんだよ。気になるな」

 

「龍我に説明して理解出来るとは思わないからな。それに・・・・いや、何でもない」

 

理解出来るとは思わないのも事実だが、それ以上にその内容は普通では無い為、雪兎は顔を背けそれ以上を口にしなかった。龍我は納得がいかないのか今にも雪兎を問い詰めようとするが、そのタイミングで医務室にシャルロットが入って来た。

 

「万城君、大丈夫?」

 

「ああ、シャルロットか。大丈夫だぜ」

 

「毒を盛られたって聞いたけど・・・・」

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

龍我はシャルロットを落ち着かせると、雪兎との話に戻ろうとする。

 

「・・・・あれ?何を話してたっけ?」

 

「プロテインについてだろ」

 

「そうそう、プロテインはやっぱバニラ味・・・・って、ンな訳ねェだろ!」

 

龍我がそうツッコむも、雪兎は無視してスタスタと医務室から出ていく。

 

「あの回復力・・・・ハザードレベルってのはそういう意味かよ」

 

自室に戻る途中、雪兎はそう呟く。雪兎が手にするカルテにはこう書かれていた「万城龍我は通常の人間とは異なる遺伝子を持つ存在である」と・・・・

 

「ハザードレベル・・・・特殊な遺伝子・・・・そうかよ、そういう事かよ!」

 

そこで雪兎はスタークの最終的な目的に気付いた。

 

「気付いたところで俺に出来るのはアレくらいか・・・・」

 

だが、雪兎が出来る事にも限界はある。

 

「コイツがどれだけアイツの手助けになるかはわからんが、やれる事はやっておくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し経ち、医務室に残っていたシャルロットから武道場に来てほしいと連絡を受けて駆けつけると、そこでは龍我と晶が対峙していた。

 

「オイオイ、どういう状況だ」

 

「それが雪兎、かくかくしかじかで・・・・」

 

雪兎が訊ねると、慌てた様子のシャルロットが雪兎に状況説明をする。

 

「大体分かった」

 

「どっかで聞いた事あるぞ、それ」

 

どこかの世界の破壊者が言ってたような台詞を吐く雪兎に、龍我は軽くツッコミを入れる。発端は龍我が自分がスマッシュをこの世界に連れて来てしまったと抱え込み、それを晶が気に食わないと突っかかったらしい。

 

「まあいいんじゃないか?晶もそんな簡単にやられる程弱くないと思うし・・・・というか、晶の方が強いかもしれないしな。龍我の怪我を悪化させなければ何でもいいだろ」

 

「まあ雪兎がいいならいいけど・・・・」

 

雪兎がそう言うとシャルロットが渋々引き下がる。その間に龍我は肘につけたサポーターをつけ直し、晶を真っ直ぐに見据える。

 

「ルールは?」

 

「戦闘不能、もしくはギブアップでいいだろう。急所攻撃はナシだ」

 

「分かった。雪兎、開始の合図」

 

「了解。それじゃあ、どっちも準備はいいな?」

 

「私はいいぞ」

 

「俺もだ」

 

「それじゃあ・・・・ファイッ!」

 

雪兎が掲げた手を下ろすと同時に、晶が突っ込んでいく。最初は様子を見るかと思っていた龍我は虚をつかれその拳をモロに肩口に喰らう。

 

「チッ・・・・」

 

「逃がすか!」

 

龍我は一旦引こうとするも、シャツを掴まれて下がれない。そのままもう一発逆の肩に喰らい、ダメージを受ける。

 

「どうした、そんなものか?」

 

「ンな訳ねーだろ」

 

肩をクルクル回し、全然平気アピールをする龍我に晶はニヤリと笑ってみせた。

 

「面白い・・・・」

 

「晶、もう戦いたいだけだよね・・・・」

 

遠くで見ていた聖が、そうポツリと漏らす。おそらく、晶以外の全員が同じ事を思っただろう。

 

「はぁっ!」

 

右脚での鋭いハイキック。しかし、今度はさっきと違って不意打ちではないので龍我は冷静に回避する。

 

「はぁっ!だぁっ!どりゃあ!」

 

左ミドルキック、その回転を活かして右の後ろ回し蹴り、そして左ローキック。龍我はそれらを全て紙一重で回避し、一歩引く。

 

「・・・・何故攻撃をしてこない?私が女だからか?」

 

そんな龍我に晶が不機嫌そうにそう言う。

 

「まさかな。お前が女であろうと、やる時はやるぜ。俺は」

 

「なら・・・・何故やらないのだ?」

 

「さァな。自分で考えたらどうだ?」

 

龍我はそう言いながら、ニヤッと笑う。

 

「へぇ~、アイツ、挑発とかちゃんと考えた行動も出来るんだな」

 

「えっ?どういう事ですか?」

 

「アイツが攻撃してなかったのは全部この状況に持ち込む為の布石ってことさ・・・・ほれ」

 

雪兎がそう言うと、晶が突き出していた腕をとり、飛びつきながら腕ひしぎ十字固めに移行する龍我。

 

「うぐっ!?」

 

苦しそうな声を出す晶。

 

「ギブアップするか?」

 

「する訳ない・・・・ぐぁぁ!?」

 

ギブアップする気がなさそうなので龍我は更に強く締め上げる。

 

「くぅっ・・・・ハッ!」

 

「なっ!?」

 

龍我は仰向けにして関節をキメていたが、晶が後転してスルリと抜け出す。そしてそれに動揺した龍我の脚をとると、そのまま四の字固めをかけた。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅッ!?」

 

「ギブか?」

 

「するか!」

 

今回は龍我が力ずくで抜け出し、距離を取る。

 

「痛ッてェな・・・・」

 

「そりゃあな」

 

「まさか、挑発してくるとはな・・・・まんまと乗ってしまった」

 

「あ、バレた?」

 

晶は熱くなり易く、挑発は確かに有効。だが反面頭が冷えるのも早いし、頭の回転も悪くはない。

 

「そんじゃあ・・・・本気でいかさせてもらうぜ」

 

「そうだ。それでこそ、私の望む闘いだ」

 

そこからは双方激しい攻防を繰り広げたが、勝利したのは龍我だった。決め技はドラゴンスクリュー、またの名を飛龍竜巻投げだ。相手の片足を両腕で取り、足首を脇腹に押し付けるようにクラッチ。その体勢から自ら素早く内側にきりもみ状態で倒れこむことで、相手を回転力で投げ飛ばす技。一見すると単純な崩し技だが、足首を固定し捻ることでヒールホールドを極めるプロセスを含んでおり、無理に堪えれば膝関節を負傷する可能性がある。また、適切に受身を取らなければ頭部や腰などを強打する技。藤波辰爾が考案し、武藤敬司が必殺技へと昇華させたとされる。と、かなり危険な技だ。というか、この技を知っていた晶でなければ大変な事になっていただろう。

 

「ハア……疲ッかれた……」

 

気の抜けた龍我はその場に尻餅をつくと、右膝を立ててそこにもたれかかる。

 

「晶!大丈夫?」

 

「ああ、ありがとう、聖。……万城」

 

聖が氷の入った氷嚢を持って、パタパタ走っている。晶はそれを受け取ると、痛めた膝に当てながら龍我に話しかける。

 

「何だよ?」

 

「これで分かったか?」

 

「あ?あー……」

 

龍我は忘れていたようだが、この模擬戦は晶が『根性を叩き直してやる』と言い出して始まった。

 

「責任を感じるのも分かるが、万城が好んで来たわけではないのだろう?なら、責任を感じる前に全部自分で背負おうとするのではなくて、私達を頼ったらどうだ。男の万城といい試合が出来るくらいに、私達は強いのだからな。いざとなれば、雪兎だっている」

 

「あー・・・・アホくさ」

 

「なっ!?」

 

そんな晶の話を聞き、龍我の言った一言に晶がショックを受け、膝に当てていた氷嚢を手からポロリと落ちている。

 

「俺が成長しないからアホくさいって言ったんだよ。向こうでも同じ事を言われたなって」

 

「・・・・ふっ、そうか。なら龍我は馬鹿だな」

 

「誰が馬鹿だ!・・・・って、龍我?」

 

「もうわざわざ苗字で呼ぶ必要もあるまい。なら、龍我でいいだろう。私も晶でいい」

 

「そうか。なら・・・・晶。悪かったな」

 

「分かればいい」

 

どうもこの流れは夕方の川原での殴り合いを終え分かり合った不良にしか見えない。

 

「・・・・っと。もういいか?」

 

そこへ話が一段落したと判断した雪兎がやってくる。

 

「何だよ」

 

「いや、聖から聞いたけど、龍我お前レゾナンスでの戦いの時、ビートクローザーがなくて苦労したらしいな?」

 

「ああ。誰かさんが盛大にぶっ壊してくれたおかげでな」

 

「お前のメンテ不足もあるだろ」

 

龍我が雪兎をジト目で見ると、雪兎は更に強いジト目で龍我を睨む。整備不良を人のせいにはされたく無いらしい。

 

「・・・・ま、壊した俺にも責任がないわけじゃない。だから、龍我にピッタリの装備を作ってきた」

 

「え!?マジで!?」

 

「お前、本当に単純だな・・・・」

 

雪兎の肩を揺さぶり興奮する龍我に、雪兎がため息をつく。

 

「スグに出す。えーっと・・・・」

 

雪兎はstorageを操作し、蒼いナックルガードを取り出す。

 

「ホラ、コレだ」

 

「これは?」

 

「それはな・・・・」

 

雪兎はそう言うと、一瞬タメを作る。

 

「【クローズ・ナックル】だ。とあるデータを参考に作らさせてもらった」

 

「クローズ・ナックル・・・・いいじゃねェか!」

 

龍我はクローズ・ナックルを手に取ると早速手にはめている。そのフィット感に龍我はナックルを着けてシャドウをし始めた。

 

「そーいや、ビートクローザーは?」

 

「アレは酷い壊れ方だし、お前がメンテナンスしないせいでボロボロだから、もう少し俺が預かる。それよりビルドドライバー貸せ。そしたらナックルのデータをインストールしてやるよ」

 

「びるどどらいばー?いんすとろーる?」

 

ビートクローザー同様ビルドドライバーに連動させようとドライバーを要求するが、龍我はベルトがビルドドライバーというのを知らなかったようだ。

 

「OK。とりあえずベルト貸せ」

 

『悲しいものを見る目』をする雪兎に龍我はスカジャンのポケットからベルトを取り出す。

 

「・・・・ってか、ビルドドライバーって名前だったんだな」

 

「まあな。解析している時に、ついでに色々と調べたからな」

 

雪兎はそう言いながら端末を操作し、投影式キーボードを出すと、クローズ・ナックルをビルドドライバーにコードで繋ぎ、カタカタとキーボードを叩き始める。

 

「なあ雪兎、そのナックルは何か特性あンのかよ?」

 

「特性という特性はない・・・・があえて言うならば、挿入したボトルの力を120%引き出す事くらいだな」

 

「ほうほう・・・・」

 

「お前が使う武器だ。あんま特性つけても扱えないだろ」

 

「・・・・あれ?俺、馬鹿にされてる?」

 

「「馬鹿にされてる()」」

 

聖と晶の声が重なる。龍我は馬鹿されたと知るや否や雪兎に掴みかかろうとするも、背後から2人に羽交い締めにされる。

 

「・・・・よし、終わったぞ」

 

雪兎はキーボードを仕舞うと、ナックルとビルドドライバーを繋いでいるコードを外し、龍我に渡す。そこで、雪兎は前々から疑問だった事を訊ねる。

 

「お前今、フルボトル2本しか無いんだろ?もっとフルボトルを沢山作る気はないのか?」

 

「あー・・・・」

 

しかし、龍我の顔が険しくなるのを見て雪兎は大体の事情を察した。

 

「作る気は・・・・ねェな」

 

「そうか。龍我にも事情があるんだろうから詳しくは聞かないが・・・・なら、まだフルボトルになっていないヤツを貰ってもいいか?持ってるんだろう?」

 

「ああ、持ってるぜ」

 

そう言うと龍我はショッピングモールでスコーピオンスマッシュを倒した時に回収したフルボトルをスカジャンのポケットから取り出し、雪兎に投げ渡す。

 

「コレコレ。貰っていいんだな?」

 

「いいぜ。俺が持ってても、使わねーしな」

 

「サンキュー。これを解析したら、また色んな幅が・・・・」

 

そう言って雪兎は笑みを浮かべて出て行った。

 

「ああなった雪兎は・・・・」

 

「もう駄目みたいだな」

 

シャルロットと聖、それと晶が苦笑いをしている。こうなった雪兎は基本的に止まらないのをよく知ってるからだ。ちなみに、龍我が元々持っていたカメレオンスマッシュのボトルや雪兎が撃退したクロウスマッシュのボトルも雪兎が持っているのを龍我達は気付いていなかった。




今回登場したアドヴァンスド【SG:ソウルゲイン】はその名の通りソウルゲインをモデルにしたアドヴァンスドです。BGMはDark Knight推奨
また、オリジナルスマッシュとなるクロウスマッシュは以前に私が余所に投稿したクロウフルボトルから生まれたスマッシュです。


雪兎「よし、それじゃあ、前書きで言ってたお知らせだ!」

シャル「ー兎協奏曲ー一周年と今回のコラボ企画を記念して」

龍我「第二回?キャラクター人気投票をやるらしいぜ」

雪兎「活動報告に第二回人気投票ってのを作るからそこに投票してほしい」

シャル「え~っと、投票条件は『ー兎協奏曲ーで一言でも台詞があったキャラクター』らしいよ?」

龍我「それ、すげー人数にならね?」

雪兎「だな・・・・期限は七月末までで、一位になり50以上の票をもらったキャラの短編をやるんだとさ」

シャル「前回は企画倒れになったからね」

雪・シャ・龍「「「皆の投票待ってます!」」」


次回予告

セシリアの料理オンチが改善されている事を疑う龍我に対し、セシリアはお弁当会を提案するのだが・・・・そして、スタークは龍我の更なる成長の為、ある人物へと接触する。

次回

「ランチボックスパニックと復讐の毒蜘蛛 兎、龍を連れ出す」


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119話 ランチボックスパニックと復讐の毒蜘蛛 兎、龍を連れ出す

~前書きあらすじ劇場~

ユーリ「前書きあらすじ劇場です!」

レヴィ「あれ?今回は僕達?」

シュテル「どうやら龍我に何かトラブルがあったようです」

ディアーチェ「あの脳筋の事だ。変なものでも口にしたのだろう」

レヴィ「よし!見てくる」→前書きの枠を飛び出し本編を覗くレヴィ

シュテル「・・・・レヴィ、戻ってきて下さい」

レヴィ「はいは~い!見てきたよ~。何かね、リューガがーー」

ディアーチェ「ネタバレはやめんか!」

ユーリ「前回のあらすじは?」

シュテル「そうでしたね。前回はマスターと喫茶店に行った後、烏のスマッシュを撃退しました」

レヴィ「その後、リューガがアキラとガチンコバトルして」

ユーリ「マスターさんが龍我さんに新しい武器を作ってあげたんでしたね」

ディアーチェ「あの脳筋がアレを扱い切れるか、不安ではあるがな」

ユーリ「それでは最後はあれで締めますよ~」

ユ・レ・シュ・ディ「「「「さてさてどうなる第119話」」」」

レヴィ「あっ!人気投票もよろしくね」


「それでは、えっと・・・・万城君、この数式を解いてください!」

 

休みが明けた最初の平日。一応IS学園の生徒扱いになっている龍我は特別に雪兎と同じ1組で授業を受けている。こちらにいる間に龍我の脳筋が悪化しないようにという雪兎の計らいではあるが、特訓メンバーはいいとしてもクラス再編で龍我の知る面子が減っているせいか龍我の居心地は悪そうだ。

 

「万城君?聞いてますか?」

 

「ああ、悪ィ悪ィ。えーっと・・・・?」

 

何か考え事をしていたのかボケッとしていた龍我に真耶が目の前で手を振り、それに気付いた龍我が黒板の方を見る。しかし、龍我にはそこに書かれた文字を理解する事は出来なかった。

 

「・・・・それって、火星の言葉?」

 

「?日本語ですよ?」

 

「あ、じゃあ分かンねェわ」

 

「えぇ・・・・一学期の内容ですよ・・・・?」

 

「分からんものは分からん。しゃーねーだろ」

 

休み明けとあって一学期の復習程度の内容だったが、龍我はシャープペンシルをくるくると回しながらそう答える。質問し易いようにと一番前に座っていた龍我に雪兎達は呆れを含んだ視線を向けていた。

 

「これは・・・・酷いな・・・・」

 

「龍我・・・・ここまで馬鹿だとは思わなかったぞ」

 

「龍我って馬鹿なんだな」

 

右から雪兎、箒、一夏。その視線に堪えかねて龍我が左を向くと・・・・

 

「アンタ、バカなのね」

 

「可哀想なお猿さん・・・・」

 

「馬鹿だな」

 

今度は鈴とセシリアとラウラの視線が・・・・

 

「ば、万城君。ファイトだよ!」

 

「りゅーがは、おばかさんなんだね〜」

 

「脳筋ライダー・・・・悪くない・・・・」

 

「万城君・・・・」

 

「龍我・・・・お前という奴は・・・・」

 

そして後ろのシャルロット、本音、簪、聖、晶。その他クラスメイト達もそんな愛すべき馬鹿(龍我)に苦笑している。

 

「えっと、万城君。大丈夫ですよ!まだ始まったばかりです!」

 

そう麻耶は笑みを浮かべてフォローするが、その笑みが引き攣っている。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「それでは、午前中の授業は終わります。午後はISの操作なので、皆さん遅れないようにしてくださいよ?」

 

チャイムが鳴り、真耶はそれだけ言い残すと教室から出ていく。

 

「俺、やる事あるから今日は1人で食うわ」

 

すると、雪兎は鞄からタブレットを取り出し、机の上に投影式キーボードを出して作業を始める。こうなると雪兎は並みの事では動かない。

 

「それじゃあ僕は、一夏達と食べるね。いい?みんな」

 

「賛成。龍我も食いに行こうぜ」

 

「おう。そーするか」

 

龍我は一夏達と一緒に食べるらしい。※龍我の弁当は雪兎製です。するといつものメンバーも手に弁当の入った袋を持って集まってきた。

 

「みんな弁当か。それじゃあ、屋上行くか」

 

「そうね。あたしはそれに賛成だわ」

 

「私もですわ」

 

だが・・・・

 

「私、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのセシリアの一言で龍我の表情が凍りつく。

 

「へぇ、そりゃあ楽しみだな」

 

一方、雪兎のおかげでセシリアの料理がか・な・り改善されている事を知る一夏や他のメンバーは特に変化は無い。

 

「龍我さん?大丈夫ですの?」

 

「!?!?!?」

 

そんな龍我を心配してセシリアがその顔を覗き込むと、龍我は慌てて後退る。

 

「く、来るな!メシマズ!」

 

「なっ!?め、メシマズ!?どーゆー意味ですの!?」

 

「俺は死にたくないんだ!」

 

「「落ち着け!龍我!」」

 

一字一句同じセリフで、ラウラと晶が龍我を取り押さえるが龍我は火事場の馬鹿力でその拘束を解き、逃げ出そうとする。

 

「待って、万城君。落ち着いて」

 

「そうだ。落ち着け」

 

だが、教室のドアに聖とシャルロットが立ち塞がり、逃げ道が塞がれる。

 

「龍我の言いたい事は何となく分かる。向こうの世界で、何かトラウマがあるんだろ?」

 

そんな龍我の狼狽ぶりを感じ取った雪兎は画面から目を離さないままそう言う。

 

「ビーフストロガノフを作るのにケチャップとコチュジャンとチョコレートと生クリームを入れるんだぞ・・・・」

 

どうやら龍我の世界のセシリアはやはりメシテロ(飯の不味さがテロ級)のようだ。

 

「私、そんな事はしませんわ!」

 

「「「「いやしてただろ(でしょ)(よね)!」」」」

 

セシリア以外全員のツッコミが重なる。全く同じでは無いが、同レベルの事はやっている。しかも雪兎がどれだけメシマズなのかと興味本位で口にし、気絶するレベルのだ。

 

「やっぱしてたんじゃねェか!嫌だ!俺は絶対に食べないぞ!」

 

皆のツッコミを聞き龍我は聖とシャルロットの間をすり抜けると、教室から抜け出した。

 

だが、そこで終わりはしなかった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、協力していただけませんか?」

 

その翌朝、雪兎はセシリアに呼び出され『龍我にセシリアの料理を認めさせよう大作戦』という頭の悪そうな作戦に協力する羽目になっていた。

 

「いや、もうセシリアは普通に料理出来るだろ?」

 

「それでは龍我さんをギャフンと言わせれないではありませんか!」

 

「帰っていい?」

 

「お願いですから~!雪兎さんだけが頼りなんです!」

 

「いや、こういう時こそ一夏に頼めよ・・・・」

 

二人の共同作業かつ、料理の腕も磨けるという一石二鳥の機会を棒に振ってまでセシリアは龍我にギャフンと言わせたいらしい。

 

「時間もそんなに無いし、サンドイッチでいいか?多分、龍我一番納得しそうなのはコレだろう」

 

おそらくセシリアの殺人サンドを食していると踏んだ雪兎はそのイメージを覆すべく、今回サンドイッチを提案した。

 

「サンドイッチですか?」

 

「教えるからには絶対に龍我に美味いと言わせてやんよ・・・・さぁ、料理を始めようか?」

 

そこから雪兎の知る絶品サンドイッチの作り方講座が始まり、セシリアのサンドイッチは雪兎も認める絶品サンドへと変貌を遂げた。

 

「ゆ、雪兎さん!」

 

「セシリア、サンドイッチに関してはもう俺が教える事は何も無い。自信を持て」

 

「はいっ!」

 

たかがサンドイッチで何故この二人はこんなに盛り上がっているのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍我さん!食べていただきますわよ!」

 

その日の昼休み、セシリアが龍我の机に大きめのバスケットをドン!と置きながらそう言い放つ。今回も龍我は椅子を蹴飛ばして逃げ出そうとするが、雪兎と一夏に両腕を羽交い締めにされ、晶が龍我の肩を押し込んで無理矢理椅子に座らせる。

 

「お、お前ら・・・・オンドゥルルラギッタンディスカー!?」

 

「うーん、このままだとセシリアが可哀想だしな・・・・」

 

「そうだな。一夏の言う通りだ」

 

「あと、俺の沽券に関わるからな」

 

そう三人が告げると、龍我の表情は絶望に染まっていく。龍我がゲートなら容易くファントムが生まれているだろう。

 

「まあまあ龍我、食べちゃいなさいよ!」

 

「そうだ。食べず嫌いは駄目だぞ」

 

「そうですわ。まあ一口どうぞ」

 

セシリアがバスケットを開ける。何故かその瞬間、龍我が何かを幻視しているように見えた。

 

「ほら、普通だろう?」

 

「そうだね。ラウラの言う通り、普通のサンドイッチだね」

 

バスケットの中にはサンドイッチが雪兎が伝授した絶品サンドが詰まっている。しかし、龍我はセシリアの料理が見た目だけはまともなのを知っているせいか、まだ手を出すのを躊躇する。

 

「さあどうぞ。あーん」

 

セシリアはサンドイッチをひとつ手に取ると、龍我に差し出す。龍我は皆に助けを求めるかのように周りをぐるりと見るが、全員がニコニコと笑っているだけだ。そして、とうとう観念したのか龍我はそのサンドイッチを口にした。

 

「ぱくっ・・・・あれ?美味しい?」

 

ちなみに龍我が食べたのはカツサンドだ。

 

「ほらみなさい!」

 

「コレ、ホントにセシリアが作ったのか!?」

 

「正真正銘、セシリアだ。まあ俺も少し手を貸したがな」

 

そう言って雪兎もサンドイッチを一つ取り、齧る。それに釣られて一夏達もバスケットの中からサンドイッチを取っていく。

 

「ち、ちょっと待てよ!俺にも食わせろ!」

 

龍我も慌ててバスケットに手を伸ばし、サンドイッチを手に取る。あっという間にサンドイッチはなくなり、空のバスケットだけが残る。

 

「悪かったな、メシマズなんて言って」

 

「いいですわ。私も、昔は下手くそでしたから・・・・」

 

本当に変わるものである。しかし、セシリアはそこまで言うと、手のひらをポン!と叩く。

 

「そうだ!私、デザートも作ってきたんですわ!」

 

そう言いセシリアは小さめのタッパーを出してくる。その中には杏仁豆腐のようなものが入っていた。

 

「ん?それって・・・・」

 

その時、雪兎は何故か悪寒のようなものを感じた。「アレは食べてはいけない!」というかつてセシリアの料理から発せられたあの悪寒だ。

 

「さあ龍我さん、どうぞ!」

 

「おう。いただきまーす」

 

しかし、龍我はサンドイッチで安心してしまっていた為、それに気付く事なく、それを口にした。

 

「ゴハァッ!?」

 

そして、吐血した。

 

「あーあ。だから言おうと思ったのに・・・・」

 

一時は成功に見えた『龍我にセシリアの料理を認めさせよう大作戦』は結局失敗に終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『確かここだったな・・・・』

 

その頃、スタークはとある場所を訪れていた。

 

『特別独房No.は・・・・ビンゴ!』

 

特別独房。それは雪兎達に敗れ囚われの身となった亡国機業の面々が捕らえられている独房だ。そのうちの一つにスタークは近寄ると扉の鍵をトランスチームガンで破壊し、中へと入っていく。

 

『よっ、亡国機業のオータムさん』

 

「・・・・てめぇ、何者だ?」

 

中には鎖に繋がれ痩せこけたオータムの姿があった。

 

『ブラッドスターク、そう名乗ってる。まあ、そんな事はどうでもいい』

 

スタークはそう言うとその仮面の上からでも分かるように声を弾ませてオータムにこう訊ねた。

 

『お前さん・・・・復讐させてやるって言ったらどうする?』




という訳で久しぶりの料理回でした。
えっ?最後に何か不穏な雰囲気がなかったかって?
気にすんな。

前書きでレヴィも言ってましたが、人気投票もよろしくお願いいたします。

次回予告

龍我を更に成長させるべく、スタークはついに大それた行動に出た。それは捕まったオータムと女性権利主義者によって冤罪にされ投獄されていた者達を唆しスマッシュにして暴れさせるというものだった。かつてないスマッシュの大量動員に龍我は雪兎達の手を借りる。


次回

「毒蛇の策略と憤怒の鮫 兎、龍と共闘する」


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120話 毒蛇の策略と憤怒の鮫 兎、龍と共闘する

~前書きあらすじ劇場~

龍我「ぜ、前回のあらすじ・・・・」

雪兎「大丈夫か?」

龍我「何とかな・・・・酷い目にあったぜ」

雪兎「という訳で前回はセシリアが龍我に料理を認めさせようとしてサンドイッチは上手くいったんだが、その後にセシリアの創作料理食って倒れたって感じだな」

龍我「この世のものとは思えない味だったぜ・・・・あとはスタークの野郎が何か誰かと接触してたみてェだが」

雪兎「オータムか・・・・何度も出てきて恥ずかしくないのか?」

龍我「知り合いか?」

雪兎「まあな、お前もそのうち会うかもな」

龍我「よし、それじゃあいつものーー」

レヴィ「さてさてどうなる第120話!」

雪・龍「「・・・・」」

雪兎「レヴィ、後でお仕置きな?」

レヴィ「そ、そんなぁ~!?」




「なァ雪兎。俺、本当に帰れるのかな?」

 

授業の無い日曜日。ベッドで寝転んでいた龍我はぼんやりと天井を見上げながらそう口にする。無理も無い、この世界に来て早くも1週間。スタークによる襲撃も特になく、授業を受ける毎日が続いている。本当に帰れるのか?不安に思うのは普通な事だ。

 

「何とかしてやるよ」

 

そんな龍我に雪兎は手に入れたデータ等から龍我の世界の座標を割りだそうとしていたが、あまり上手くはいっていない。

 

「まァ雪兎がそう言うなら大丈夫か・・・・?」

 

「それより龍我、お前テストは大丈夫なのかよ?そっちにもテストくらいあるだろ?」

 

「あー・・・・ま、補習受ければいいらしいし、深く考えなくて平気だろ」

 

「いや、それじゃあ駄目だろ・・・・」

 

「平気だって。俺、一回目のテストの点数全部足しても100点いかなかったしな」

 

「・・・・8教科合わせてか!?」

 

雪兎のキーボードを叩く手が止まり、ワンテンポ置いてディスプレイから顔を上げる。

 

「おう」

 

「お前、どんだけ馬鹿なんだよ・・・・」

 

「そーゆーお前は何点なんだよ!」

 

「満点だ」

 

「嘘だろ」

 

「本当だ」

 

雪兎はそう言うと机の引き出しを漁り、中からテストを取り出す。ちなみに全教科満点である。

 

「ほら」

 

「凄ェ・・・・100点って、本当に出るんだな・・・・」

 

「逆に0点を見てみたいよ」

 

「うっせェ」

 

そう言うと龍我は話題を変えるためにテレビの電源をつける。

 

「そーいや、俺の部屋テレビないんだよな」

 

「そうなのか?なら、龍我はどうやって自己分析してるんだ?タブレットか何かを持ってる訳でもないんだろ?」

 

「セシリアの部屋のテレビ使うな」

 

「シャルロットじゃあないのか?」

 

「セシリアの部屋に行けば、上手い茶と菓子が出るからな」

 

「最低だな・・・・」

 

そんなやり取りをしながら、テレビのチャンネルを次々に変えていく。日曜日の朝という事もあってか、やはり子供に向けた番組が多い。

 

「お、これIS学園の近くじゃないか?」

 

すると、丁度IS学園の近くの大きな公園が映った。生放送のようで女子アナが色々と喋っている。

 

「可愛いな、この女子アナ。胸が大きい」

 

「龍我、シャルロットに怒られるぞ・・・・」

 

龍我が女子アナに鼻の下を伸ばしていたので雪兎が後ろから頭をハリセンではたく。しばらく見ていると、龍我がテレビに映る空に小さな黒い影を発見する。その影はどんどん大きくなっていく。

 

「・・・・おい、コレ怪物じゃねーか?」

 

「そんな事あるわけ……本当だ。しかもかなりの数が・・・・!?」

 

公園は突如現れた怪物によりパニックに陥り、テレビ画面にはノイズが走る。

 

「雪兎!」

 

「分かってる!」

 

雪兎はポケットから携帯を取り出し、素早く連絡を入れる。二人が寮を飛び出すと、一夏達も続々と集まってきた。

 

「本当はISを勝手に使うのは駄目だが・・・・今はそんな事を言ってる場合じゃないしな!」

 

(まあ、連絡はしておいたし、緊急事態だ)

 

念の為、千冬に連絡をした雪兎はそう言うとISを展開する。それに続いて一夏達もISを展開し、飛び立つ。

 

「・・・・っておい!俺を置いてくな!」

 

「悪い!忘れてた!」

 

「クッソ〜!来い!ドラゴン!」

 

『ギャーオ!』

 

途中、変身し走って追いかけてきた龍我を拾い現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に到着すると、既にそこは戦場と化していた。

 

「ちっ、お前ら、こいつを持ってけ」

 

そう言うと雪兎は複製しておいたエンプティボトルを一夏達に渡す。

 

「これは?」

 

「あのスマッシュとかいう怪物は一定ダメージを与えてそのエンプティボトルを向けるとその成分を回収して人間に戻せる」

 

「龍我が持っていたボトルだな」

 

「いつの間に量産したんだよ・・・・」

 

「それより手分けしてスマッシュを何とかするぞ」

 

手分けしてスマッシュを撃退せんと雪兎達が動こうとしたその時、雪兎達を青いヒレのようなものが襲う。

 

「全員、乱数回避!」

 

何とか全員回避し、放たれた方を向くとそこには鮫のようなスマッシュがいた。

 

『ちっ、外したか・・・・』

 

だが、そのスマッシュは他のスマッシュと違い言葉を発した。しかも、雪兎達がよく知る声で。

 

「お前・・・・オータムか!?」

 

『ヒャッヒャッヒャッ!久しぶりだな、クソガキドモ!』

 

そう、それは捕まっているはずのオータムだった。

 

「何でお前が・・・・それに、何故お前だけ意識が」

 

『そんな事どうでもいいだろォ?なんたってお前らは死ぬんだからなっ!今!ここでェ!!』

 

そう言ってシャークスマッシュとなったオータムは真っ先にシャルロットを狙い襲い掛かる。

 

「くっ、何、このパワー・・・・」

 

『ヒャッヒャッヒャッ、あのコブラ野郎には感謝しねェとな!』

 

「またスタークの仕業かよ!」

 

「シャル!」

 

『おっと、そうはいかないな』

 

雪兎はオータムをシャルロットから引き離そうとするが、それを阻むように雪兎が狙撃される。

 

「くっ!」

 

「お前はスターク!」

 

狙撃手の正体はやはりというかスタークだった。

 

『何やら楽しそうじゃないか、混ぜてくれよ』

 

スタークはそう軽口を言いながらスマッシュを引き連れ近付いてきた。

 

「数が多いな・・・・」

 

しかも、シャルロットはオータムと彼女が支配下においているスマッシュによって皆から引き離されてしまった。

 

「龍我、シャルを頼む」

 

「雪兎?」

 

こいつ(スターク)は俺が足止めしておく」

 

「だが・・・・」

 

「心配するな、俺は簡単には死なんよ」

 

「わかった」

 

「ああ、それと」

 

雪兎は一度言葉を区切ると不敵な笑みを浮かべてこう言った。

 

「足止めするのはいいが、倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍我には一夏、鈴、聖、晶、セシリアが同行し、避難誘導には簪、本音、エリカ、アレシア、カロリナが向かい、雪兎の援護には箒、ラウラ、マドカそしてマテリアルズが残った。

 

「ディアーチェ!箒達の管制指揮は任せる」

 

「ちぃ、この中でその手に長けた者は我だけか、仕方あるまい・・・・皆の者!我が指示を出す。有りがたく思え!」

 

雪兎はディアーチェ達に箒達のサポートを任せると漆黒の剣士のようなアドヴァンスド【ヴァイサーガ】を展開しスタークと対峙する。

 

「今度は逃がさねぇぞ、スターク」

 

『それじゃあ、お手並み拝見といきますか、イレギュラー!』

 

両者はお互いに一気に距離を詰めると雪兎は手に持つ大剣【五大剣】を、スタークはスチームブレイドで切り結ぶ。

 

『また新しい装備か・・・・そんなにホイホイと装備を変えるISは見た事が無いな』

 

「珍しいか?そうだろうなスターク、いや・・・・あちら側の篠ノ之束」

 

『ほぅ』

 

雪兎のその言葉にスタークは少しだけ驚いたようだ。

 

『何故そう思った?』

 

「俺はこっち側の束さんの弟子でね、あの人が作った設計図の癖と龍我の持ってたUSBメモリのデータが一致してね」

 

『ありゃりゃ・・・・束さんとした事がそんな凡ミスするとはね』

 

自身を束と認めたスタークは雪兎のよく知る束の声と口調に戻し、雪兎を見据えた。

 

『本当にお前は面白いよ、イレギュラー・・・・名前、何だっけ?』

 

「天野雪兎・・・・好きに呼べ」

 

『それじゃあ、ゆーくんで』

 

「うわぁ、あえてそのセレクトかよ・・・・本当に世界は違えど束さんだわ」

 

どの世界の束であろうと興味を持たれるのは雪兎の宿命らしい。

 

その娘(雪華)の事とか色々聞いてみたくはあるけど、今は敵同士だから』

 

『スチィィィムブレイク、コッブラ!』

 

そう言い、スタークの束・・・・面倒なので束スタークと呼称、がトランスチームガンから紫の光弾を放つが、雪兎は五大剣でそれを切り払う。

 

『やるねぇ~、ならこれは?』

 

『エレキスチーム!』

 

今度はスチームブレイドのバルブを回し、刀身に電撃を纏わせ斬りかかると、雪兎は左手で背面のマントを掴んでそれを盾にしガードしてみせる。

 

『それもただの布じゃなくて特殊合金繊維だね?さっきの大剣も実体剣じゃなくてエネルギーを物質化した剣みたいだし』

 

「ちっ、本当に束さんはやり難い」

 

流石は天災とあって、雪兎のヴァイサーガの装備を一目で見抜かれるせいか次第に雪兎が押され始めていた。

 

『ほらほら、まだまだいくよ!』

 

『ライフルモード』

 

「地斬疾空刀」

 

スチームブレイドとトランスチームガンを合体させライフルモードにした束スタークが射ち、雪兎は衝撃波を飛ばす斬撃でそれを相殺する。

 

「今度はこっちからだ!烈火刃!」

 

お返しに雪兎はクナイを数本取り出し束スタークに投擲する。

 

『そんなの当たらないってって、うわぁ!?』

 

そのクナイを分離させたスチームブレイドで切り払うと、切り払った瞬間にクナイが爆破し束スタークは少し仰け反る。

 

『爆薬仕込みのクナイだったか、失敗失敗』

 

「まだ終わりじゃないぞ?水流爪牙!」

 

烈火刃が生んだ爆煙に紛れて接近した雪兎は両手に鈎爪を展開し、その乱舞を叩き込むが。

 

『アイススチーム』

 

束スタークも氷の蒸気を纏った刃でそれを捌く。

 

(やっぱり見切られてやがる!)

 

判っていたとはいえ、やはり束のスペックは異常だ。そこにトランスチームシステムを纏ったともなればIS相手だろうとそう簡単には負けはすまい。

 

(この分だと風刃閃や光刃閃も通じるかどうか・・・・)

 

『ねえねえ』

 

今の雪兎の実力では束スタークに勝つのにこのヴァイサーガでは不利と察した雪兎がパックを切り換えようとした時、突然、束スタークが話し掛けてきた。

 

『どうして本気を出さないの?』

 

「本気?」

 

『そうそう!あの聖剣(エクスカリバー)だっけ?あれを吹っ飛ばしちゃったアレ!』

 

おそらくEXCEEDの事を言っているのだろう。束スタークは雪兎にそれを使う事を要求した。

 

「・・・・あんた、あの戦いを見てたのか?」

 

『そうだよ~、アレを見たから私はこの世界を万城龍我の成長の舞台に選んだんだから!』

 

それを聞いて雪兎は歯噛みする・・・・今回の件は自分にも発端の原因があったと知り。

 

『早く早く~・・・・それとも、理由が必要かい?』

 

「理由、だと?」

 

その時、雪兎の脳裏に最悪の可能性が浮かんだ。

 

『うん、あのシャルロット=デュノアだっけ?あの娘を殺そうか!あっちでは万城龍我と付き合ってるみたいだし、万城龍我のハザードレベルも上げられて一石二鳥かな?』

 

「・・・・れ」

 

『うん?』

 

「・・・・黙れと言ったんだ」

 

束スタークは知らない。シャルロットを害するという発言が雪兎の最大の地雷ワードであるという事を。

 

「そんなに見たきゃ見せてやるよ・・・・【EXCEED・No.2 RAISING】セットアップ」

 

そして、EXCEEDシリーズでもキワモノと称されるトンデモパックが降臨する。

 

「・・・・少し、頭冷やそうか?」




ガン=ザルディ以来の雪兎ブチギレモード降臨・・・・
束スターク、お前ってやつは・・・・

人気投票は感想欄でも投票出来るようにします。
運対されないように「人気投票」と書いて下さいね。


次回予告

雪兎をブチギレさせてしまった束スターク。そして、ついに登場した3つ目のEXCEED・・・・束スタークの運命や如何に?そして、龍我の方も決着が・・・・


次回

「雪兎、怒りのEXCEED(白い魔王) 兎、龍の援護をする」


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121話 雪兎、怒りのEXCEED(白い魔王) 兎、龍の援護をする

~前書きあらすじ劇場~

レヴィ「ひどい目にあったよ~」

ディアーチェ「アレはお前が悪い・・・・ところで、また我らか?」

シュテル「ええ、何でもマスターと作者の機嫌が悪いそうで」

ユーリ「マスターさんは本編で、作者さんは何かあったみたいですね」

ディアーチェ「全く、塵芥の事など無視しておけというのに・・・・」

レヴィ「二人とも、触れちゃ駄目なとこに触れられたみたい」

ユーリ「という訳で、前回は街にスマッシュが出現。その対応に出たマスターさん達でしたが・・・・」

シュテル「ブラッドスタークを名乗っていたあちらの篠ノ之束こと束スタークがマスターの地雷を踏み抜きました」

ディアーチェ「感想でも言われていたが、もうどうしようもないな」

シュテル「あのEXCEEDが出た以上、ただでは済まないかと」

レヴィ「O・HA・NA・SHI、だね」

ユーリ「私達にも出番あるそうなので、そろそろ行きますよ~」

レ・ディ・シュ・ユ「「「「さてさてどうなる第121話!」」」」


「・・・・少し、頭冷やそうか?」

 

白をベースとし、所々に青のハードパーツを装備したとある世界で『管理局の白い魔王』や『ACE OF ACE』などの呼び名を持つ魔導師を模したEXCEEDであるそれを纏い、雪兎がそう言うと、周辺の気温が三度程下がったような気がした。

 

『え、え~、や、やだなぁ~、冗談だよ、冗談!』

 

束スタークは本能的に不味いと察して雪兎を宥めようとするが、それは逆効果だった。

 

「・・・・アクセルシューター・ジェノサイドシフト」

 

すると、雪兎の周囲に無数のピンク色の光弾が出現する。

 

「いけ」

 

そして、雪兎の号令と共に一斉に束スタークへと向かっていく。

 

『ちょっ!?ちょっとちょっと!?これは洒落にならないって!?』

 

何とか回避し続けている束スタークだが、仮面の下は既に涙目だ。しかし、光弾は遠隔操作による誘導弾である為、打ち消さないと永遠と追ってくる。そのため束スタークは必死にスチームブレイドやトランスチームガンでそれらを打ち落としていく。

 

『ぜぇ、ぜぇ・・・・やっと抜けーー』

 

「ディバイン、バスターッ!」

 

それをやっとの事で弾幕を切り抜けたと思ったら今度は直射砲で吹っ飛ばされる束スターク。だが、まだ雪兎の攻撃(ターン)は終わらない。カシュン、カシュンと音がして先程直射砲を発射したビーム砲(ストライクカノン)から薬莢(カートリッジ)が排出され、エネルギーがチャージされる。

 

『えっ?まさか、連射可能?』

 

「正解だ。景品はこいつだ、2連打!」

 

ディバインバスターの連射を食らいピンボールのように吹っ飛ぶ束スターク。カートリッジが切れればマガジンを交換して容赦無く射ち続ける雪兎。そして、束スタークは気付けば公園の近くの海に叩き落とされる。

 

『ぷはっ!何なんだよあのIS!こんなの束さん聞いてないっ!』

 

「敵にそう簡単に明かす馬鹿がいるかよ・・・・さて、この辺ならいいか」

 

雪兎は周囲に被害が出ないと確認すると束スタークの四肢を光のリング(バインド)で拘束する。

 

『えっ?このっ!えいっ!取れないっ!?』

 

「コードSLB起動」

 

すると、ストライクカノンが変形し、霧散したエネルギーを収束し始める。

 

『・・・・そ、それ、ISが使っていい火力じゃないよね!?』

 

「何を言ってるんだ?まだこれからだぞ?」

 

『え”っ!?』

 

「サテライトシステム起動」

 

雪兎がそう言うと、とある目的の為に雪兎とこの世界の束が作成した人工衛星【月の兎(ムーンラビット)】からマイクロウェーブ送信により雪華に更なるエネルギーが供給される。その際、背面のウイングが変形し、四枚のリフレクターとなってエネルギーを増幅する。ちなみにその余剰エネルギーは機体外に放出され収束砲にチャージされるという地味に無駄の少ない仕組みをしている。

 

「こいつはちょっとばかし火力が高過ぎてまだ試し射ちしてねぇんだわ・・・・本当にいいタイミングだったぜ」

 

『それ死んじゃう!?そんなの食らったらいくら細胞単位でオーバースペックな束さんでも死んじゃうから!?』

 

「安心しろ、非殺傷設定(御都合主義)だ」

 

『それでも安心出来る要素が0なんだけどぉおおおおお!!』

 

物凄く激しくもがく束スタークだが、バインドによる拘束は外れない。そうこうしている間にストライクカノンの前には雪華の全長の二倍以上のピンク色のエネルギーが渦巻いている。

 

「いくぞ、これが俺の全力全()!スターライトォォォ、ブレイカァァァアアアアア!!」

 

『いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

その瞬間、IS学園付近の海にて凄まじいピンク色の光が轟音と共に弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人、派手にやってるなぁ・・・・」

 

その頃、レヴィ達マテリアルズはディアーチェの指揮の元、スマッシュの撃退をしていた。

 

「さてと、そろそろ僕も遊んでないで本気出さないとご主人や王様に怒られちゃうな」

 

そう言うと、レヴィは自分に合わせて小型化されたバルニフィカススラッシャーを大剣に変形させる。

 

「という訳でまとめてぶった斬るけどいいよね?答えは聞いてない!」

 

何処ぞの紫のやんちゃ坊主のような事を言いながらレヴィはスラッシャーを振るいスマッシュを一掃する。

 

「うん、僕ってやれば出来る子だもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、マスターの方も終わったようですので、私も終わらせるといたしましょう」

 

シュテルもレヴィと同じく雪兎が束スタークを倒したと確信し、目の前の数体のスマッシュを見る。

 

「心火を燃やして参ります・・・・ディザスター、ヒート!」

 

こちらも小型化したルシュフェリオンドライバーでスマッシュを黒焦げに変えていく。

 

「やはりこの程度では物足りませんね・・・・おや、王からですか・・・・わかりました。すぐに向かいます」

 

元になったキャラの影響か、若干戦闘狂な節があるシュテルはディアーチェの指示で別のメンバーの援護へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、この程度の相手ならば我らが出るまでもなかったのではないか?」

 

「ディ、ディアーチェ」

 

「わかっておるわ、ユーリ。ふん!」

 

ディアーチェとユーリのコンビもディアーチェが重力操作でスマッシュを拘束、それをユーリが攻撃して着実にスマッシュを減らしている。

 

「こっちも終わりましたよ、ディアーチェ」

 

「よくやった、ユーリ。他の者共も片付けたようだな」

 

「次に行きましょう、ディアーチェ!」

 

「そうだな、レヴィとシュテルも終わらせたようだ。合流するぞ」

 

その後、合流したマテリアルズはそのまま箒達とも合流し、シャルロットを追っていった龍我達の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、スマッシュとなったオータムと戦っていた龍我はボロボロだった。理性も無くただ暴れ回るスマッシュでも十分に厄介なのにオータムは自分の意識を保っており、かつオータムは雪兎達にこそ連敗しているが、並みの代表候補生などでは相手にもならない実力を持っているのだ、いくらクローズの力を持っている龍我とて苦戦するのは当然だった。

 

「ま、まだだ・・・・」

 

『雑魚のくせにしつけェなァ』

 

その持ち前の頑丈さのおかげで致命傷こそは避けているが、正直なところいつ変身が解けてもおかしくはない。それでも龍我は諦めてはいなかった。

 

『まだこっちはメインが残ってんだ・・・・前座はさっさとくたばれっての!』

 

そう苛立つオータムがトドメとばかりに腕の鰭を巨大なブレードに変え、龍我に振るおうとしたその時、龍我とオータムの間に一振りの剣が飛来し地面に突き刺さる。

 

「これは、ビートクローザー?」

 

それは折れてしまい雪兎に修理を頼んでいたビートクローザーだった。

 

『ちっ!誰だ!』

 

「ちょいと邪魔するぜ」

 

そこに現れたのはパックをトライアルに切り換えた雪兎だ。

 

「雪兎・・・・」

 

「わりぃな、少してこずった」

 

「スタークの野郎は?」

 

「倒すには倒したんだが、逃げられた・・・・まあ、色々お土産は残していってくれたがな」

 

そう、あのスターライトブレイカーで束スタークを倒す事は出来たのだが、束スタークは雪兎がEXCEEDの反動で動けないうちにすたこらさっさと逃げ出したのだ。その際、束スタークも余裕がなかったのか色々な物を落としていったのでそれをマテリアルズに回収させ、慣れてきて多少動けるようになった雪兎は苦戦しているであろう龍我の元へと駆けつけたのだ。

 

「って訳だ」

 

『ちっ、あのコブラ野郎も使えねぇな』

 

「他のメンバーもシャル達と合流してる頃だろう。ってことでオータムはお前に任せるわ」

 

「『は?』」

 

しかし、雪兎のその言葉で龍我とオータムが声を揃えて驚いた。

 

『お前、この状況がわかってんのか?』

 

「そこのサメ野郎に同意するのは癪だけどよ、お前、本気で言ってんのか?」

 

「大真面目だとも・・・・ってか、RAISINGの反動で今の俺はまともに戦えねぇからな」

 

よく見れば雪兎の動きはどこかぎこちない。よくビートクローザーをあのタイミングで投げられたものだ。

 

「それに、もうお前の勝ち筋は見えてるんだ・・・・決め台詞風に言うなら、勝利の法則は決まった、って感じかな?」

 

「何だよそれ」

 

龍我は呆れつつも雪兎の言葉を聞いてビートクローザーを杖代わりに立ち上がる。

 

「まずはそいつ(ビートクローザー)のもう一つの機能の説明かね・・・・それ、鍔のとこにボトル差す穴あるだろ?」

 

「あっ、本当だ」

 

どうやら龍我は雪兎に言われるまでそれに気付いていなかったようだ。

 

「試しにロックボトル差して下のレバー引いてみ」

 

「こうか?『スペシャルチューン!』うおっ!?何か鳴った!?」

 

「あとは最大三回までレバー引けて、引く回数で効果変わるんだが」

 

『私がいるってのに何暢気にくっちゃべってやがるっ!!』

 

「とりあえず今回は二回引いてトリガー押せ」

 

「おう」

 

『ヒッパレー、ヒッパレー』

 

『くたばれェ!』

 

『ミリオンスラッシュ!』

 

するとビートクローザーから金色の鎖が放たれオータムを拘束した。

 

「おー!」

 

「次は三回引いてみ」

 

「おう!」

 

『ヒッパレー、ヒッパレー、ヒッパレー』

 

「うりゃ!」

 

『メガスラッシュ!!』

 

今度は金色の光弾が飛び出しオータムを吹っ飛ばした。

 

「多分、差すボトルで効果が違うんだと思う。ロックフルボトルだから鎖ってとこなのかね?」

 

『くっ・・・・よくもやってくれたなァ!!』

 

まだ鎖が残っているのにも関わらず起き上がり吼えるオータム。しかし、雪兎と龍我の頭にもう負けるイメージは無かった。

 

「そ・し・て!俺の新・発・明!【属性(エレメンタル)ボトル】!」

 

そう言って雪兎が取り出したのは赤い炎のマークが付いたフルボトルだった。

 

「何じゃそれ?普通のフルボトルと違うのか?ってか、どうやって浄化したんだよ・・・・」

 

「こいつは厳密に言うと浄化されたボトルじゃないんだわ。こいつは少量のネビュラガスと属性力を強引に複合させて、これまた無理矢理ボトルに詰めた結果出来たボトルでな。無理矢理詰めたもんだから一度使うとエンプティボトルに戻っちまうんだわ。だから基本的に使い捨てだと思ってくれ」

 

「お前、本当にとんでもない事を平然とやるよな・・・・」

 

雪兎から属性ボトル【ブレイズボトル】を受け取りながら龍我は改めて雪兎の非常識さを痛感する。

 

「ついでだからナックルも試しとけ。そのブレイズボトル差してみ」

 

「こうか?」

 

『ボトルバーン!』

 

「うおっ!?」

 

ビルドドライバーからナックルを呼び出しブレイズボトルをナックルにセットすると迫力のあるボイスがした。例えるならとある英雄殺しの男ボイスだ。

 

「その状態でナックルの正面のボタンを長押し」

 

「ふむふむ」

 

言われるがまま龍我は右手に持ったナックルの正面を左手で押さえボタンを長押しする。ボタンを押すと、激しいチャージ音が鳴り響き、ナックルは蒼炎を纏う。

 

「あとはボタン放して叩き込め」

 

「おおっ!ビートクローザーより分かり易いな!」

 

そう言うと、龍我はボタンを放しナックルをオータムに向けて叩き込む。

 

「食らいやがれっ!」

 

『ドラゴニック、フィニッシュッ!!ブゥラァアアア!!』

 

『ぐあぁあああ!!』

 

そして、ナックルに纏われていた蒼炎がドラゴンのように変化しオータムを貫き、オータムを数十メートル吹き飛ばし意識も飛ばしてしまう。

 

「す、すげェ・・・・」

 

そのあまりの威力に龍我は暫し放心してしまう。だが、セットしたブレイズボトルは中身を使い果たしたのかエンプティボトルに変わってしまっていた。

 

「属性ボトルの方はもう少し改良が必要か・・・・龍我、そのエンプティボトルでオータムのスマッシュ成分抜いとけ」

 

「おっと!忘れるとこだった」

 

ナックルから抜いたボトルに成分を回収すると、囚人服姿のオータムが残った。

 

「さてと・・・・終わったみたいだな」

 

「ああ、助かったぜ、雪兎」

 

龍我が変身を解き、雪兎に礼を言うと、雪兎も雪華の展開を解除するが・・・・

 

「そい、つは・・・・よか・・・・った」

 

「雪兎?」

 

「悪い・・・・限界みたい、なんで、あとは・・・・任せた」

 

それまで気合いで意識を保っていた雪兎も意識を失い、龍我がそれを慌てて支える。

 

「お、おい!?あとは任せたって・・・・どうすりゃいいんだよ」

 

突然の事に戸惑う龍我。

 

「とりあえずシャルロット達と合流するか・・・・まっ、たまにならこういうのもいいか」

 

その後、雪兎を背負い龍我はシャルロット達と合流する為に歩き出すのであった。




クローズナックルはクローズマグマナックルとは少し違います。なので、音声も少しだけ異なります。

コラボシナリオも次くらいで終了。コラボ後はオリジナルシナリオに突入する予定です。

これからもISー兎協奏曲ーならびにINFINITE・CROSS-Zをよろしくお願いいたします。


次回予告

束スタークによるスマッシュ騒ぎも一段落し、龍我が帰る時がやってきた。別れを惜しむ一夏達は龍我の為に送別会を開く事に・・・・


次回

「送別会と龍我の帰還 兎、龍との別れと再会の誓い」


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122話 送別会と龍我の帰還 兎、龍との別れと再会の誓い

~前書きあらすじ劇場~

雪兎「はい、毎度お馴染みのあらすじ劇場だ」

龍我「今回でコラボは終了らしいな」

シャル「ようやく帰れるんだね、龍我」

龍我「ああ、やっとだぜ」

雪兎「まあ、それも前回俺が束スタークぶっ飛ばして龍我の世界の座標データゲットしたからなんだがな」

シャル「そういえば一夏達が龍我の送別会をするって言ってたね」

龍我「俺としては向こうにも一夏達はいるから送別会と言われても何か微妙な感じなんだがな」

雪兎「だわな・・・・まあ、向こうにはいないメンバーもいるし、いいんじゃないか?」

龍我「それもそうか」

シャル「じゃあ、今回は僕達三人で」

雪・龍・シャ「さてさてどうなる第122話!」


「デジャヴュだけど、本当に凄い回復力ね。これだけの大怪我を負ってなお雪兎君を背負ってIS学園まで歩いて帰って来て、更に傷が塞がり始めてるなんて・・・・医者の存在意義が無くなるわ」

 

医療室の先生がX線の写真を見てため息をつく。あの後シャルロット達と合流した龍我は雪兎を背負ってIS学園まで歩いて帰って来ていた。そこで皆も手当てを受けていたのだが、龍我の回復力はやはり異常だった。

 

「で?俺の怪我はどーなんだよ」

 

「大きいものだけ挙げるなら、右肩と左肘の脱臼と、右膝の打撲よ。擦り傷とかをカウントしてたらキリがないわ」

 

「ふーん。で、雪兎は?」

 

「雪兎君はタダの疲労よ。少し寝れば治るわ」

 

「そうか。なら良かったぜ」

 

雪兎は現在、シャルロットの膝の上で寝ている。そして、龍我はそれを羨ましそうに見ていた。

 

「龍我、お前怪我は大丈夫なのかよ?」

 

「お?全然平気だぜ」

 

「ならいいけどな……」

 

そう言いながら龍我が左腕をグルグル回すと、一夏は呆れてものも言えない。

 

「つーか、お前らの方こそ怪物を倒したのかよ。スゲーな」

 

「シャルロットが、新しい装備を解禁したんだ」

 

そこで龍我は気になっていた事を訊ねると晶がシャルロットの方を親指で指し示しながらそう言う。するとシャルロットは少し照れたように笑ってみせた。

 

「へー。分からん」

 

「う・・・・ん・・・・?」

 

「あ、雪兎。目が覚めた?」

 

そんな話していると、雪兎が目を覚ました。

 

「ここは・・・・医療室か」

 

「そうだよ。雪兎、EXCEEDを使ったでしょ?」

 

目を覚まして早々、雪兎はシャルロットに問い詰められる。

 

「まあな。あの野郎に腹が立ったからな」

 

「どうして腹を立てたの?」

 

「あの野郎、シャルロットを殺すとか言いやがったからな。本気で頭にきたぜ」

 

「雪兎・・・・」

 

「だーっ!イチャイチャすんなテメーら!」

 

そんな雪兎の答えにシャルロットが顔を赤く染めて照れると、龍我が見ていられないとばかりに吼えた。

 

「シャルロット!その顔でイチャつかれると、なんか複雑なんだよ!」

 

「あ、ご、ごめんね・・・・」

 

そこで、もし別の世界の雪兎が別の女の子とイチャイチャしていたらと龍我の立場になって想像したシャルロットが涙目になる。

 

「しょーかく、サイテーだぞ!」

 

すると、そこにレヴィがやってきた。

 

「えーっと、テメー誰だっけ?」

 

「忘れたのか!?酷いぞじゅんよー!」

 

仲がいいのか悪いのか、レヴィと龍我は毎度こんな感じだ。

 

「レヴィ、回収は終わったのか?」

 

「終わったぞ、ご主人!」

 

レヴィはビッ!と敬礼をすると、雪兎に雪兎から預かっていたstorageを渡す。それを受け取った雪兎はレヴィ達に回収させていた束スタークの忘れ物をチェックする。

 

「どうやら、かなり焦ってたみたいだな・・・・ん?これは、フルボトル?」

 

その出現させた物の中から銀色のフルボトルを手に取ると、雪兎はその場で解析を始める。それはとある装置で生成した特殊なガスを納めたボトルだった。

 

「これか、龍我が言ってたスタークが使った世界を渡るガスってのは」

 

それに付与された座標データもあり、これで龍我を元の世界に返す算段が整った。

 

「龍我、これで元の世界に・・・・って、寝てんのかよ」

 

「まあまあ、倒れた雪兎を背負ってきてくれたのは龍我なんだから・・・・」

 

「そうか、それは仕方ないな・・・・」

 

そう言って眠る龍我を見ていると、

 

「なあ、雪兎」

 

「ん?」

 

「龍我はもう元の世界に帰るんだよな?」

 

「ああ、こいつの事だ。帰れると知ればすぐにでも帰るって言うぞ」

 

「なら、龍我の送別会をやらないか?」

 

「面白そうだな。のった」

 

こうして、急遽、龍我の送別会の準備をする事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、雪兎と一夏で簡単に準備出来る料理を多めに用意し、空き教室を借りて送別会の準備を終えると、医務室で眠る龍我をレヴィに起こしに行かせた。しばらくするとドアの前が騒がしくなる。

 

「さ! 入れりゅーが!」

 

「やっと龍我って呼んだか。んじゃ、入りますかね・・・・」

 

ドアを開けた龍我はテーブルに並ぶ料理を見てポカーンとしている。

 

「龍我、いつまで寝てたんだ?まだ成長期なのか?」

 

「晶もそう言わず。万城君、座って座って!」

 

そんな龍我に晶がそう言い、聖が龍我を席に案内する。送別会をやると言ったら案の定いつものメンバーが揃ったのだ。他にも龍我の送別会に参加したいというクラスメイト達もいたが、そんな人数の料理は用意出来なかったので別れの言葉を書いた色紙だけの参加となってしまったが。

 

「それじゃあ龍我も来たことだし、送迎会始めるか」

 

バタバタとしていた一夏や箒が椅子に座ると、雪兎がコップを持って立ち上がる。

 

「いや、何?コレ?」

 

「レヴィから聞いてないのか?」

 

「全く」

 

「レヴィ・・・・」

 

龍我が未だに困惑している様子を見て、雪兎が龍我に訊ねるが、レヴィは送別会の事を伝えた忘れたようだ。雪兎がレヴィを睨むと、レヴィは居心地悪そうに目を逸らし鳴りもしない口笛を吹く。

 

「はぁ・・・・まあ簡単に言えば、龍我が帰れるんだよ。元の世界にな」

 

仕方がないので雪兎が理由を説明する。

 

「マジでか!?」

 

それを聞いて龍我が椅子を蹴飛ばしながら立ち上がった。

 

「おう。スタークが落としていった物の中に、お前の世界の座標が入ったフルボトルがあったんだよ。ディケイドみたいな銀色の煙と一緒にな・・・・って、お前にディケイドって言っても分からんか」

 

「ディケイドなら知ってるぜ?門矢士の野郎だろ?会った事もあるぜ?」

 

「嘘だろ!?」

 

どうやら龍我はディケイドこと門矢士と面識があるらしい。

 

「嘘じゃねーよ。いちいち鬱陶しいヤローだったぜ」

 

「やっぱりか?」

 

「やっぱりって・・・・お前こそ、何で知ってんだよ?」

 

「お前に説明しても分からんと思うぞ?」

 

「じゃあいいわ」

 

ややこしい話になるとわかると龍我は椅子を直し座り直す。

 

「・・・・で、何の話だっけ?」

 

「だから、お前が帰れるって話だよ。お前が持ってきたUSBメモリに色々なデータが入ってたから、それを活用して俺が次元転移装置を作ったんだよ」

 

さらっと雪兎がまたしても問題発言をする。

 

「意味分からんぞ。俺、ゆーえすびーめもりなんて持ってきてねーし」

 

「あー、そう言えばお前には説明してなかったな。お前のポケットにいつの間にか仕込まれてたみたいで、お前が俺に負けて気を失った時に俺が拾ったんだよ」

 

「それで?」

 

「察しの悪い奴だな・・・・だから、お前が帰るために必要な座標成分の入ったフルボトルをゲットしたから、お前は帰れるの。理解したか?」

 

「・・・・おう!」

 

雪兎が出来るだけ噛み砕いて説明するが、龍我は少し間をおいて返事をする。絶対に判ってない。

 

「あ、理解出来てねぇな、こりゃ」

 

「いいんだよ!それより早く食おうぜ!」

 

「それもそうだな。それじゃあ、龍我の送迎会を始めるぞ。龍我、何かあるか?」

 

「このヒレカツ美味そうだな!」

 

「そうじゃなくてだな・・・・」

 

龍我にスピーチなんて振ったのが間違いだったと雪兎は思い、送別会の開始の音頭を取る。

 

「もういい。いただきます!」

 

「「「「いただきまーす」」」」

 

雪兎の音頭が終わると、全員が食べ始める。

 

「あっ、待てよ!俺も食う!」

 

ワンテンポ遅れで龍我も箸を手に取ると、目の前に置かれたヒレカツを頬張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ龍我。お前の専用機が完成したぞ?」

 

「あ?」

 

食べ始めて30分が経った所で、シャルロットと食べていた雪兎が突如そう言った。

 

「えっ、雪兎いつの間に作ってたの?」

 

「そりゃあ部屋でだが・・・・そう言えば、最近は龍我と同じ部屋だったな。完成したのを知らなくて当たり前か」

 

「むう、僕の知らない所で色々して・・・・」

 

「悪いな。今度何かで埋め合わせするから」

 

「ならいいけど」

 

「だ・か・ら!イチャイチャイチャイチャすんなッ!!!」

 

龍我に嫉妬するシャルロットを宥める雪兎を見て、ピンク色の空気を感じ取った龍我が再び吼える。

 

「ちょっと待ってろ。今出してやるからな」

 

そんな龍我にやれやれと雪兎は首を振り、storageから龍我の専用機【蒼龍】を呼び出す。

 

「雪兎はまた作ったのか・・・・」

 

「今回もどうせ自重してないのでしょう?」

 

「ホント規格外よね・・・・」

 

「・・・・っと、コレだな。その名も【蒼龍】だ!」

 

空き教室に、蒼いISが現れる。そのISは肩のパーツが大きく、胸にドラゴンの頭部、背面には龍の翼を模したウイングと折り畳まれた尻尾のようなパーツのあるISだった。

 

「雪兎、今回はどんなコンセプトで作ったの?」

 

「今回は使うのが龍我だからな。バカでも使える簡単設計だ」

 

「・・・・ひょっとして、馬鹿にしてるのか?」

 

「ひょっとしなくてもな」

 

「・・・・アレ?馬鹿にされてるのか?されてないのか?」

 

「考えるのを辞めろ。それじゃあ、フィッティングをするぞ」

 

それからフィッティングやフォーマット作業を行い、蒼龍は正式に龍我の物になった。

 

「・・・・ふぅ。完成だ。コアは新規の束さんから貰ってぶちこんでおいた」

 

「雪兎、新規のコアって・・・・」

 

「龍我の世界が混乱するって?知らんなそんな事だ。無人機のコアとかあるし、テキトーに誤魔化しとけ」

 

元々はコアだけ向こうで用意してもらうつもりだったが、色々と面倒になったので雪兎は新規で用意したコアをそのままセットしている。

 

「よく分かんねェけど、俺にも専用機が出来たんだな!」

 

「良かったね」

 

初期設定を終えた雪兎は蒼龍を龍我用に用意していたstorageにしまい、龍我にとある事を確認する。

 

「そうだ龍我。お前、向こうでは何月の何日だったんだ?」

 

「何でだよ」

 

「来た日に帰りたいだろ?話に聞く所じゃ、シャルロットとのデートの予定だったんだろ?」

 

「おお、来た日に帰れるのか・・・・」

 

それは龍我が転移した日付だった。

 

「・・・・6月の28日だな」

 

「OK。6月28日・・・・何時だ?」

 

「朝の8時半くらいだな」

 

「午前8時半と・・・・入力完了だ。一応まだ居る事は出来るが?どうする?」

 

「今すぐ帰るに決まってんだろ!」

 

「そう言うと思ったよ・・・・装置はここでは展開出来ないから外に移動するぞ・・・・残った料理はタッパーに入れて持って帰っていいから」

 

「おっ、サンキュー」

 

すぐに帰ると言う割には料理に未練タラタラな龍我に雪兎がそう言ってタッパーを出すと、龍我は遠慮無く気に入った料理をタッパーに詰め始めた。これも後でstorageにしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここならいいかな?」

 

外へ出ると、雪兎は再び自分のstorageを操作し始めた。

 

「よし、出すぞ」

 

そう言って雪兎が出したのは巨大な金属の輪っかだった。

 

「こいつが次元転移装置・クロスゲートだ」

 

「でっか・・・・」

 

「だから言ったろ?教室じゃ展開出来ないって」

 

そして、雪兎はまたstorageを操作してクロスゲートを起動させる。

 

「これで龍我のいた世界と繋がったはずだ。一応、俺も確認の為について行くからな」

 

「・・・・ホントに帰れるのか?」

 

「お前、俺を疑ってるのか?」

 

「いやそうじゃねェけどよ・・・・」

 

「まあ、ちゃんとお前の世界と繋がったか確認する為に俺がついて行くんだ。龍我一人送って別の世界でした、は洒落にならんからな」

 

アフターサービスも仕事のうちだと、雪兎は龍我と共にゲートの前に並ぶ。

 

「じゃあな、お前ら」

 

「じゃあな。また会えたら会おうな!」

 

一夏達に別れを告げた龍我と共に雪兎はゲートをくぐり抜けるが・・・・

 

「やっぱ僕も行く~」

 

「こら、レヴィ!」

 

レヴィが雪兎達の後を追ってゲートに飛び込んた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・レヴィ、何か弁明はあるか?」

 

ゲートをくぐり終えた雪兎達は無事?に世界を移動した。しかし、雪兎は勝手についてきてしまったレヴィにお怒りの様子。

 

「・・・・ありません」

 

「何とか無事に転移出来たが、場所が少しズレたみたいだな」

 

雪兎が言うにはレヴィが飛び込んだ影響で龍我のいた世界ではあるが、転移座標が微妙にズレて跳ばされてしまったらしい。

 

「ここは、あんときの雑木林じゃねェか・・・・」

 

しかし、龍我にはこの場所は見覚えがあるらしく、龍我の世界で間違いないらしい。

 

「よし、時間も8時半だ!」

 

「・・・・まあ、いいか。龍我、これを持ってけ」

 

すると、雪兎は龍我用に作ったstorageを龍我に投げ渡した。

 

「これは?」

 

「storageって言ってISの拡張領域を応用した道具で・・・・お前に分かり易く言うなら某青狸の四次元バックだ」

 

「あー、何かこっちのラウラがそんなアニメ見てたっけ?ちょっと待て?四次元バックって、まさか!?」

 

「蒼龍とかもそれに入れてある。ビルドドライバーとかもそれに入れれば嵩張らないし、入れとけば簡易的にではあるがメンテもしてくれる優れものさ・・・・俺はもっぱらエコバックとして使ってるがな」

 

一応、このstorageはビルドドライバーなどのメンテ用に用意していたもので、デザインは裏にクローズのマークが付いた蒼いタブレット型だ。

 

「ほれ、行くんだろ?」

 

「ああ・・・・って、ついてくる気かよ!?」

 

「一応、保護者にちゃんと送り届けないとな」

 

「シャルは俺の保護者か!」

 

その後、レヴィも転移してきたせいか帰るのに使うエネルギーが微妙に足りず、暇だった雪兎は龍我を学園まで送る事にした。ちなみに雪兎は制服だと色々面倒だからとTシャツにダメージジーンズ、上にジャケットを羽織っている。

 

「あっ!龍我!?」

 

校門までいくと龍我を見つけたシャルロットがこちらに駆け寄ってきた。

 

「おう、待たせたな、シャル」

 

「待たせたな、って、丸一日何処へ行ってたのさ!」

 

「えっ?」

 

何事もなかったかのように告げる龍我にシャルロットはお怒りの様子だ。どうやら座標だけでなく日付が一日ズレたらしい。

 

「あちゃ~、そうきたか」

 

「おい、雪兎!どうなってんだよ!?」

 

「レヴィだ・・・・あいつが飛び込んできたせいで位置座標だけじゃなく時間もズレたっぽい」

 

「マジかよ・・・・」

 

そうこうしているうちに龍我を探していたらしいこちら側の一夏達まで騒ぎを聞きつけ集まってきた。

 

「よかった、無事だったんだな、龍我・・・・」

 

「心配かけさせるんじゃないわよ!」

 

「私達がどれだけ心配したと思ってる!」

 

「この際、首輪を着けておいたらどうだ?」

 

「それは名案ですわね」

 

「龍我、首輪意外と似合うかも」

 

(そりゃあ、二人しかいない男性操者いなくなりゃ騒ぎにもなるわな・・・・)

 

そんな一夏達とのやり取りを見て雪兎はそんな事を考えていた。

 

「ところで龍我、彼は?」

 

一通り龍我への罵倒が済むと、皆の注目は雪兎へと移る。それは当然だろう。雪兎も龍我を不審者扱いしていたのでこれは当然の反応だ。

 

「ん?俺はただの通りすがりの天災だが?」

 

「いや、通りすがりって・・・・」

 

雪兎の返しに一夏達がズッコケるが、雪兎はそんなのお構い無しに自分の役目は終わったとばかりに背を向ける。

 

「さてと、保護者への引き渡しも済んだし帰るか」

 

そこで龍我へ別れの言葉を告げていなかった事を思い出し、雪兎は龍我に向かってこう告げた。

 

「またな、龍我・・・・もしもまた道が交わる事があればまた会おう」

 

「ああ、色々と世話になった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍我と別れ、再び雑木林に戻った雪兎はクロスゲートを起動させて自分の世界へと帰還する。

 

「あっ、雪兎!大丈夫だった?」

 

「一応な・・・・こいつ(レヴィ)のせいで少し場所と時間はズレたがな」

 

レヴィを猫のように掴みながら雪兎は要調整だ、と言ってクロスゲートをしまう。

 

「また会えるかな?」

 

「さあな?こればっかしは俺には何とも言えないが・・・・会えないと思うよりは、また会えるって思ってた方が再会出来る気はするな」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々に刺激的な出来事だったなぁ」

 

部屋に戻った雪兎は龍我との日々を振り返りながらそんな事を思っていた。ちなみにシャルロットは雪兎が龍我の面倒を見る間移っていた仮の部屋から荷物を移す準備をしている。

 

「そういやこのメモリ差しっぱなしだったか」

 

すると、雪兎は束スタークのものと思われるUSBメモリが部屋の端末に差しっぱなしになっていた事に気付いた。

 

「何かまだ他にも色々データ詰まってんなぁ・・・・ん

?」

 

そこで、雪兎はあるデータに目をつけた。

 

「HAZARD TRIGGER?」




これにてINFINITE・CROSS-Zとのコラボは閉幕です。
麦ちゃさん、コラボありがとうございました。

次回より平常運転かつ、新規オリジナルシナリオとなります。


次回予告

不思議な交流を終えて日常へと戻る雪兎達。そんなある日、雪兎達は束の頼みでとある違法研究施設へと乗り込む事になるのだが・・・・

次回

「織斑計画と月の落とし子 兎、拾い物をする」


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十五章 兎と学年末トーナメント
123話 織斑計画と月の落とし子 兎、拾い物をする


コラボ明けて新規オリジナルシナリオです。
コラボでは色々やりましたが、楽しんでいただけていたら幸いです。

今回のメインキャラは一夏とラウラ、それとマドカです。原作12巻の話題をオリジナルとしてまとめてみました。

それではISー兎協奏曲ー第十五幕開幕です。


龍我という平行世界の住人との遭遇から数日が経ち、雪兎達は平穏を取り戻していた。そんなある日、雪兎達は束に呼び出されていた。

 

「よくぞ集まってくれた、我が精鋭達よ!」

 

「ネタに走るなら帰りますよ、束さん」

 

「待って待って!最近出番無かったからちょっとふざけただけだから!」

 

回れ右をする雪兎の腰にしがみつき呼び止める束。

 

「で、俺だけじゃなくて一夏達まで集めた理由は何ですか?」

 

「うん、実はちょっと違法な研究してる施設を見つけてね。そこへのカチコミに協力してほしいんだよ。あっ、勿論、ちーちゃんから許可はもらってるよ」

 

詳しく話を聞けば、どうもその研究施設は国家では手が出せないものらしく、だからといって放置すれば今後の計画の支障になるという事で雪兎達にお鉢が回ってきたとの事。

 

「それで、その施設ってのは何処にあるんです?」

 

「それはね・・・・ドイツだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでドイツまでフライング・ラビットでやってきた雪兎達。

 

「よく許可降りたよな・・・・」

 

「まあ、それだけこの研究施設の研究がヤバいって事なんだろう」

 

雪兎と束が同時に投入されるという段階でヤバい研究なのは確かだ。

 

「それと、ラウラのレーゲンにVTSを入れたのもこの連中らしい」

 

「そうか、あの時の借りも直接返せるのだな」

 

「ほどほどにな」

 

だが、この時はまだ雪兎も知りはしなかった。何故、束が雪兎達を使ってまでこの研究施設を襲撃したのかを・・・・それが一夏やラウラ、そしてマドカとも深い関係にある事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究施設の制圧自体は簡単なものだった。まあ、代表候補生クラスが21人も投入され、束に引率としてナターシャまでおり、クロエに電子戦まで仕掛けられたのだ。違法研究施設とはいえこのメンバーには戦力不足過ぎた。

 

「呆気なかったな」

 

「雪兎、スピリットフレアとユーリで問答無用にエネルギー吸い尽くしといてそれは・・・・」

 

「だ、駄目でした?」

 

「ううん、ユーリは悪くないよ。おかげであっさり制圧出来たし。ありがと」

 

「は、はい」

 

研究施設には亡国機業が関わっていたのか、各国から盗難されたISや機械戦乙女等もいたのだが、ある地点ではディアーチェにより重力操作で封殺。またある地点では一夏の白式が夕凪燈夜でISコアを片っ端から初期化して無力化。そして、雪兎達は雪兎とユーリの二人で機体のエネルギーをエネルギードレインで吸い尽くすという戦闘にすらならない始末である。

 

「さてと、束さんが問題視する違法研究とやらを確認させてもらいますか」

 

そう、意気揚々と研究施設に入っていく雪兎だったが、研究施設を進むうちにその研究が何であったのかを知り、その表情は憤怒に染まっていた。

 

「ふざけんなっ!!こいつら、人を何だと思ってやがる!!」

 

そう、その研究とは人体実験。人工的に調整された人間が調整用のカプセルで薬品漬けにされていたのだ。その研究の目的は人工的にISの男性操者を産み出す事。そんな悪魔の研究だった。

 

「科学は・・・・技術は・・・・こんなものを産み出す為にあるんじゃないっ!!」

 

「雪兎・・・・」

 

「しかも、この子達は・・・・」

 

どうやら雪兎達が襲撃してきたのを知った研究員が逃げるのに邪魔だと彼らの生命維持装置を切ったようで、そのほとんどが死んでいた。

 

「マスター!このカプセルの子はまだ息が!」

 

「何!?」

 

その時、シュテルがまだ息をしている少年を発見し、雪兎に報告する。

 

「シュテル!カプセルを破壊しろ」

 

「御意!」

 

雪兎の命令でシュテルはその少年のカプセルを破壊し、中の少年を救助する。

 

「げほっ・・・・」

 

その少年を雪兎はstorageからバスタオルを取り出し包み込む。

 

「ユーリ!フライング・ラビットに連絡!」

 

「はい!」

 

雪兎はユーリに連絡の指示を出しながら少年に生命維持装置を装着し、安堵の息を漏らす。

 

「よかった・・・・生きててくれた」

 

そんな雪兎を少年は虚ろな瞳で見ていた。

 

「お前は絶対に俺が助ける」

 

そして、雪兎がそう告げると目を閉じ、そのまま眠り始めた。

 

「眠っただけか・・・・」

 

「良かったね、雪兎。助けられる人がいて」

 

「ああ、だが、この研究をしていた奴らは一体・・・・」

 

その後、少年を一度フライング・ラビットまで運び、雪兎達は再び研究施設を調べ始めた。研究員達は既にラウラがドイツ政府に頼んで黒兎隊を手配しておいてくれた為、彼女らが捕らえてくれたそうだ。

 

「それにしても何でこんな研究を・・・・」

 

雪兎は不思議に思っていた。何故こんな研究がされていたのか?その答えは研究施設のメインサーバに保管されていたとあるファイルにあった。

 

「・・・・織斑計画、だと」

 

それは雪兎にとって衝撃的なものだった。その狼狽っぷりは先程とは比べものにならないものだ。

 

「・・・・なんだよ、これ・・・・究極の人類を創造する?織斑計画試作体1000番ってこれ・・・・」

 

「ゆ、雪兎・・・・これって」

 

「そうかよ・・・・そういう事かよ・・・・やっと全部繋がった」

 

そのデータを全て閲覧し終えた雪兎は前世から疑問だった事の全てを知った。

 

「そりゃあ、こんな研究するよな?過去に成功例が存在するんだからなっ!」

 

織斑計画のファイルにはこうあった。「究極の人類としては既に篠ノ之束という成功例が存在した為、計画は凍結。成功例試作体1000番と特例1番の扱いは・・・・」と、その試作体1000番とは千冬の事で、彼女が写る写真に彼女に抱えられてもう一人赤子・特例1番が写っていた。その特例1番こそ雪兎達がよく知る人物・織斑一夏だったのだ。そして、ラウラはこの織斑計画の一部を利用して作られた事も判った。

 

「束さん、何でこれを俺に見せた?」

 

「ゆーくんは知っておくべきだと思ってね」

 

雪兎が振り返るといつもと同じ笑みを浮かべた束がいた。

 

「今はもう私もこの事は気にしてないよ。でも、これが世間に知られれば色々と厄介な事になると思ってゆーくんに見せたのさ」

 

「・・・・束さん、これ、全力で叩き潰すけど構わないよな?」

 

「いいよ。これ以上ちーちゃんやいっくん、それとマドっちみたいな子が生まれないようにして」

 

束の頼みを聞いた雪兎はその研究施設の設備を使い織斑計画のデータを全世界(・・・)から抹消する。

 

「あと、この施設は【NEO】で消します」

 

「あれ、完成したんだ・・・・四番目のEXCEED」

 

「ええ、試運転には丁度良い」

 

その後、その研究施設は雪兎の手で完全消滅した。巨大なクレーターだけを残して・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・雪兎、その話、本当なのか?」

 

「ああ、束さんや千冬さんにも確認を取った」

 

IS学園に戻ってから雪兎はいつものメンバーを召集した。それは一夏の真実を伝える為だ。

 

「そんな、一夏が・・・・」

 

「それであの施設をあんなにしたのね」

 

その話を聞いて一夏達は一夏の出自に驚く者と雪兎が研究施設を過剰なまでの力で消し飛ばした理由に納得する者に分かれた。

 

「でも、一夏君は一夏君だよ」

 

そんな重い空気を変えたのは意外にも聖だった。

 

「聖・・・・」

 

「だって、生まれはどうあれ私達は仲間じゃない!」

 

聖にとって出自なんてものは関係無いのだ。何故ならば既にラウラという出自が普通で無い親友がいたからだ。

 

「よく言った聖!流石は私の親友だな」

 

「そうだったな、生まれはどうあれ一夏は一夏だ」

 

聖からラウラ、箒がその真実を受け入れると次第に皆もいつもの表情に戻っていく。

 

「皆・・・・」

 

「こいつらがそんな程度でお前から離れる訳無いだろ?無論、俺もだがな・・・・ってか、俺みたいなやつを受け入れた連中だぞ?」

 

「雪兎・・・・」

 

この出来事によりメンバーの絆はまた一層深まっていった。

 

「良かったね、ちーちゃん」

 

「まったく、余計な真似を・・・・」

 

「あっ、ちーちゃんが照れてる」

 

「ほんとだ」

 

「束、雪菜・・・・お前達、最近太ったのではないか?良かったら運動に付き合え」

 

「ち、ちーちゃん!?」

 

「いいよ~、そろそろ束さんとしてはちーちゃんとも決着つけておきたかったし」

 

「束ちゃんまで!?」

 

「「よし、いこうか、雪菜(いこっか、ゆっきー)」」

 

その裏でこんな事があったとかなかったとか。




という訳で色々暴露&フラグブレイカー回でした。

救助した少年についてはまた何れ・・・・


次回予告

メンバーの絆を再確認した雪兎達。そんな雪兎達を待っていたのは学年末の総決算とも言える学年別トーナメントだった。雪兎はEXCEED禁止という条件で再び一夏達と激突する。

次回

「学年末恒例!学年別トーナメント!! 兎、はりきる」


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124話 学年末恒例!学年別トーナメント!! 兎、はりきる

今章はこのトーナメントがメインの話となります。

果たして一夏達は雪兎に勝てるのか?


「学年末学年別トーナメント?」

 

例の研究施設での一件を終えた雪兎達を待っていたのは学年末の総決算とも言える学年別トーナメント。今回はタッグではなく個人戦であり、一年生は専用機持ちとその他でトーナメントを分けて行うらしい。

 

「今回は完全に個人戦なのか」

 

どうやら今まで個人戦のトーナメントの機会が無かった事から専用機持ちのトーナメントが急遽企画されたらしい。上手くいけば恒例行事するつもりらしい。

 

「リヴァイヴⅡとこいつ(・・・)のいい宣伝になりそうだな」

 

「まさか、新しい量産機を作ってるなんてね」

 

「ほんと、いつの間にそんな物を・・・・」

 

実は雪兎はリヴァイヴⅡだけでなく、IS学園産というべき量産型ISを開発していた。その名も【(ハガネ)】。打鉄シリーズや雪華のデータを流用して開発されたISで、当然、装甲切換を組み込んでいる。打鉄の素直な操作性と装甲切換による多様性の融合でリヴァイヴⅡに劣らぬISとなっている。その性能はテストに協力してくれた更識の人間にも好評で、バリエーション機で作られた【黒鉄(クロガネ)】が既に何機か配備させている程だ。IS学園にも【白銀(シロガネ)】というバリエーション機が教員用に作られている。学園内のリヴァイヴと打鉄も随時リヴァイヴⅡと鋼にアップデートされて、専用機を持たない一般生徒はこの二機に加え後二種類他の企業で開発された新型量産機の中から選んで使う事になっている。雪兎曰く、他の企業の新型にも雪兎が関与しているらしく、性能は高いとのこと。

 

「他にもいくつか余所と共同開発してるのもあるが?」

 

「雪兎、あんた最近ますます自重しなくなってきたわね」

 

「新しい機体を開発するのが俺の趣味みたいなもんだからな」

 

「IS開発してる企業が聞いたら血涙流すわよ?」

 

「・・・・」

 

「シャルロット、その沈黙は何?もしかして既にやらかしたの!?」

 

そんな風に騒いでいると、

 

「静かにしろ」

 

ホームルームが始まったのか千冬が前に立っていた。

 

「もう知っているようだが、近々、学年末トーナメントが開催される事になった。専用機持ち以外の生徒は期日までに使用機体の申請を出しておくように」

 

千冬はそこで話を一度切ると、雪兎達専用機持ちを見渡す。

 

「今年の専用機持ちは特別多い・・・・その過半数はそこのIS馬鹿(雪兎)の仕業だがな」

 

「IS馬鹿とは俺にとっては褒め言葉です!」

 

「威張って言うな、馬鹿者」

 

雪兎の脳天に久しぶりに千冬の出席簿アタックが炸裂する。

 

「痛い・・・・」

 

「今のは雪兎が悪いと思うよ」

 

「そこの馬鹿はさておき、午後から体育館で専用機持ちのトーナメントの抽選会がある。IS馬鹿以外は遅れず来るように」

 

「あれ?俺は?」

 

「人数の関係でお前はシード確定だ。一回戦でお前と当たる等、相手からしたら悪夢だろうに」

 

「「「「うんうん」」」」

 

千冬の言葉に専用機持ち全員が頷く。

 

「ひ、酷い・・・・」

 

しかし、その後に千冬はとんでもない事を告げた。

 

「その代わり、今回はアドヴァンスドまでは解禁してやる」

 

「な、何ですと!?」

 

そう、前回はタッグが相手だったから解禁されたアドヴァンスドが個人戦でも解禁されたのだ。

 

「尚、あまりにも成績が悪かった者は春休みは無いと思え。私が直々に鍛え直してやる」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

それはある意味死刑通告に等しいものだった。

 

「天野、お前はこいつらの成長を確認する意味でも全力でやれ、いいな?」

 

「いいんですか?俺としてはまだデータ取りたいアドヴァンスドがあったので丁度いいんですが」

 

「構わん。あれだけの修羅場をくぐり抜けておいて手も足も出んようなら鍛え直す必要がある」

 

「わかりました。ってことで、悪く思うなよ?」

 

「「「「不幸だ・・・・」」」」

 

「私の真似しないで!」

 

多くの専用機持ちが雪兎のアドヴァンスド投入に絶望する中、静かに闘志を燃やす者もいた。

 

(限りなく本気に近い雪兎と戦える機会・・・・これを逃す気はねぇな)

 

一人は一夏。ずっと雪兎を親友兼ライバルと思ってきた一夏にとって、このトーナメントは降って沸いたチャンスだ。そして、もう一人は・・・・

 

(僕だって雪兎と肩を並べて戦えるって証明するんだ!)

 

シャルロットだった。シャルロットもずっと雪兎の隣で戦う事を目標にしてきた。少しずつだが、アドヴァンスドも扱えるようになってきたシャルロットにとってもこのトーナメントは是が非でも勝ち残る必要がある。

 

(へぇ~、あの二人・・・・これは色々面白くなりそうだ)

 

そんな二人の闘志を感じ取り、雪兎も不敵な笑みを浮かべる。そして、トーナメントの組み合わせはこうなった。

 

一回戦

雪兎ー一回戦シード ①

第一試合 シャルロットVSラウラ ②

第二試合 ロランツィーネVS聖 ③

第三試合 本音VS晶 ④

第四試合 鈴音VSエリカ ⑤

第五試合 箒VSカロリナ ⑥

第六試合 セシリアVSアレシア ⑦

第七試合 簪VS一夏 ⑧

 

二回戦

第一試合 ①VS② A

第二試合 ③VS④ B

第三試合 ⑤VS⑥ C

第四試合 ⑦VS⑧ D

 

準決勝

第一試合 AVSB

第二試合 CVSD

 

そして決勝という流れだ。

※トーナメント表が上手く作れなかったので文字表記です。

 

「最初はシャルロットか」

 

「負けないよ、ラウラ」

 

「私の相手は聖か」

 

「うわぁ、ロランさんだ」

 

「負けないわよ、エリカ」

 

「鈴さんこそ、お覚悟を」

 

「私はカロリナか」

 

「紅椿、強敵・・・・」

 

「アレシアさんですか、良き試合にしましょう」

 

「ええ、よろしくね、セシリア」

 

「一夏が相手・・・・」

 

「悪いが、今回は負けられねぇぞ、簪」

 

皆、気合い十分といった感じだ。

 

「試合は一週間後、新たに建造された特殊アリーナで行う。それぞれ、ちゃんと準備しておけ」




短いですが、今回はここまで。

次回よりトーナメントスタートです。


次回予告

第一試合はシャルロットとラウラの対戦。お互いに譲れない想いを胸に激突する。

次回

「金と黒、譲れない想い 兎、解説する」


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125話 金と黒、譲れない想い 兎、解説する

トーナメントスタート!

一回戦第一試合
シャルロット=デュノアVSラウラ=ボーデヴィッヒ

ファイッ!


そして、トーナメント当日。

 

「何、あれ・・・・」

 

一同は新設された特殊アリーナを見て言葉を失っていた。

 

「はっはっはっ!これぞ大天才・束さんの叡智を結集し、ゆーくんに手伝わせて完成したAR(現実拡張)バトルフィールドが展開可能なスペシャルアリーナさ!」

 

「ARとはいえ、投影されたものは全部実体があるのと変わらないよう調整してあるから限りなく実戦に近い訓練が可能だ」

 

束と雪兎は自信満々に特殊アリーナの説明をする。

 

「これがトーナメントの舞台だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『始まりました~、専用機持ちの学年末スペシャルトーナメント!実況は私、黛薫子と』

 

『一回戦はシードで暇な解説の天野雪兎でお送りします』

 

アリーナの観客席には既に全校生徒や教員、各企業や各国の重鎮も集まっており、このトーナメントの注目っぷりが判る。

 

『それでは一回戦第一試合のカードを紹介しましょう!青コーナー、シャルロット=デュノア!専用機はラファール・リヴァイヴⅡRC!』

 

薫子の紹介で、まずはシャルロットがリヴァイヴⅡRCで登場する。

 

『続きまして赤コーナー、ラウラ=ボーデヴィッヒ!専用機はシュヴァルツェア・レーゲン・インレ!』

 

続けてラウラもインレを展開して登場する

 

「ラウラ、悪いけど、僕は最初から本気でいくよ!」

 

すると、シャルロットはいきなりアンジュルグとネオイェーガーに換装する。

 

「それは・・・・あの時のアドヴァンスドか」

 

「そうだよ」

 

「ならば私も本気でいこう」

 

そう言うと、ラウラも大型化したシールドブースターキャノンに搭載されたヒートブレードを交差して構える。

 

『バトルフィールドは・・・・市街地か』

 

ARプログラムが作動し、バトルフィールドが生成される。それは本物と見間違うレベルの再現度で生成された市街地だ。

 

『それでは第一試合、試合開始!』

 

「市街地か・・・・だが、このビグウィグには関係は無い!」

 

試合開始直後、ラウラはインレに搭載された超大型ビームキャノン【ビグウィグ】を展開し、建物ごとシャルロットがいた地点目掛けて砲撃を開始する。

 

『いきなりビグウィグかよ・・・・』

 

『解説の雪兎君、あれは?』

 

『超大型ビームキャノン【ビグウィグ】と言って、インレに搭載された最大級の砲撃装備です。火力はネオバスターライフルの数倍を誇り、通常のアリーナのシールドなら一発で貫通するヤバいやつですね。あっ、このアリーナのシールドなら最大出力でも耐えられますからご安心を』

 

『・・・・本当にヤバいわね、それ』

 

そんなヤバいものをラウラはただ撃つのではなく撃ちながら旋回し、凪ぎ払うように市街地を破壊していく。

 

『市街地の意味ねぇ・・・・ラウラのやつ、遮蔽物全部凪ぎ払う気だな』

 

ラウラのインレはその装備の関係でかなり大型で、市街地のようなフィールドではその真価を発揮し辛い。そこでARなのをいいことにまずは障害物の除去から手をつけたのだ。ついでにシャルロットにダメージを与えられれば儲けものくらいの感覚だろう。

 

「さあ、出てこい、シャルロット!」

 

「じゃあ、遠慮なく!」

 

それに対しシャルロットはまだ残っているビルや破壊された瓦礫の影から一斉に(・・・)姿を現す。

 

『シャルロットちゃんが分身した!?』

 

『アンジュルグの【ミラージュ】ですね。多分、最初の砲撃に合わせて使ったな』

 

『ミラージュ?ってことは・・・・』

 

『簡単に言うと質量を持った残像ですかね?それを操作出来る機能です。レーダーにも全部本物と同じ反応がしますから見分けるのは至難の技ですよ』

 

「面倒な機能を!」

 

「「「「いくよ、ラウラ!」」」」

 

ラウラはヒートブレードとワイヤーブレードで迎撃するが、ミラージュを幾つか潰しはしたが、何度かミラージュソードの斬撃を食らってしまう。

 

「くっ、残像の方にも攻撃判定があるとは」

 

「「「「攻撃可能な残像、それがミラージュなのさ!」」」」

 

『え、えぇえええ!?な、何で残像が攻撃出来るの!?』

 

『ミラージュはアンジュルグのウイングに搭載された特殊な粒子を利用して作られていて、その粒子はミラージュソードと同じもの。つまり、残像に触れる事自体がダメージになるんです』

 

『・・・・アドヴァンスドって、本当に常識外れね』

 

『まあ、インレも十分常識外れなんですがね』

 

『えっ?』

 

雪兎のその言葉を証明するようにラウラはインレの機能を解き放つ。

 

「ゆけ、キハール!」

 

ラウラの命令で背面に装着されていた六つの黒い円盤のようなものがインレから分離し、変形して小型のロボットへと姿を変えた。

 

『えっ?』

 

『二次移行した時に俺のデータベースからデータ引っこ抜いていったみたいで、レヴィとかのプロトタイプのビットロボット生成してんですわ』

 

その姿はまるで黒い兎のようで、ラウラを象徴するような装備だ。そのキハール達がシャルロットのミラージュを次々と撃ち落としていく。

 

『しかも、あれは有線制御だからウィザードのジャックとかジャマーが効かないんですよね』

 

『あれだけ大型なのにはそれ相応の機能があったんですね・・・・』

 

しかし、ミラージュを全て撃破したのにも関わらずシャルロットの姿は無い。

 

「シャルロットはどこに・・・・上か!」

 

慌ててラウラが頭上を見上げると、再度ミラージュを展開し、全員でイリュージョンアローを構えるシャルロットの姿があった。

 

「イリュージョンレイン!」

 

「うぐっ」

 

実体エネルギー矢の雨が降り注ぎ、インレのシールドエネルギーを削っていく。キハール達のエネルギーシールドとシールドブースターキャノンでガードはしているが、着弾と同時に爆発するイリュージョンアローが相手ではあまり意味がなかった。

 

「まだいくよ!コード・ファントムフェニックス!」

 

それでもシャルロットは決して攻めを緩めることはなく、身動きがとれないラウラに必殺の幻影の不死鳥を放つ。

 

「キャストオフ!」

 

だが、ラウラはシールドブースターキャノンの外装と追加装甲をパージし、それを囮にしてファントムフェニックスを逃れる。そう、インレが大型なのは本機に多くの追加装甲を纏っているからであり、それらは全てパージ可能なのだ。

 

「やっぱりラウラは一筋縄ではいかないね」

 

「それはこちらの台詞だ。こうも早くモード・ハイゼンスレイを晒すことになろうとはな」

 

シュヴァルツェア・レーゲン・インレには追加装甲装備形態のモード・インレと軽装の高機動形態のモード・ハイゼンスレイの二形態が存在し、必要に応じて切り換えが可能なのだ。

 

『もう、何でも有りね・・・・』

 

『まさか趣味でデータベースに記録しといたウーンドウォートのデータ持ってくとは思わなかったわ』

 

ちなみに、鈴の煌龍やセシリアのガブリエルも雪兎のデータベースから自機にあったデータを引っこ抜いており、とんでもないパワーアップを遂げている。

 

「でも、勝つのは僕だよ!」

 

そう言うと、シャルロットはアンジュルグから切り換え初公開となるアドヴァンスドを展開する。

 

「【CC:クロスキャリバー】!」

 

それは両腕に腕と一体化したビームキャノンとブレードの複合武装でアドヴァンスド名と同じ名の【クロスキャリバー】を装備し、背面のサブアーム四本にも同様のものを持つ遠近両用の超攻撃型アドヴァンスドだ。その代わり、防御・運動性はかなり低く、他のパックでそれを補う事を前提とした極端なパックでもある。

 

『また何か極端そうな装備を・・・・』

 

『シャルのやつ、ガチで勝ちにいく気だな』

 

シャルロットはネオイェーガーとの併用で使っており、機動力を強化している。

 

「受けて立つ!」

 

クロスキャリバーをブレードモードで使うシャルロットにラウラも両腕のヒートブレードで迎え撃つ。シャルロットの六刀流を両腕だけで捌くラウラ。だが、途中でシャルロットの動きが止まってしまう。そう、ラウラのISに元から備え付けられている第三世代兵器AICだ。

 

「これの存在を忘れてもらっては困るな」

 

「ふっ」

 

しかし、シャルロットはそんなラウラに対して雪兎のような不敵な笑みを浮かべる。

 

「何がおかしい?」

 

「ラウラこそ忘れてない?僕のISがリヴァイヴⅡRCがどんなISか」

 

そこでラウラは気付いた。シャルロットの、リヴァイヴⅡ"S"背面に【コスモス】の姿が無い事に。

 

「しまった!?」

 

「もう遅いよ!」

 

その瞬間、ラウラの頭上からコスモスがネオイェーガーのネオバスターライフルを発射し、ラウラをアリーナの床に叩き付けた。

 

『あーっと!シャルロットちゃん、いつの間にやら背面のコスモスを分離してラウラちゃんの頭上を取っていた!』

 

『接近戦になった直後だな。その後は気付かれないようにサブアームも使って畳み掛けてラウラから離れないようにして機動力の不利をカバーしてやがった』

 

「くっ、忘れていた・・・・コスモスは分離して単独行動が可能だったな」

 

「気付かれないようにするのは大変だったよ」

 

「イェーガーを選んだのも私に機動力を印象付けさせて至近距離での斬り合いに持ち込むための布石か・・・・一本取られたな」

 

『試合終了~!激戦を制したのはシャルロット=デュノア!二回戦進出です!』

 

最初の試合を制したのはアドヴァンスドを上手く使い、コスモスという隠し玉を用いたシャルロットだった。

 

「次は負けんぞ」

 

「ううん、次も勝つよ」

 

そう言ってシャルロットは実況席の雪兎の方を見る。

 

「だって、僕は雪兎の隣に立つんだから」

 

それはシャルロットの雪兎への宣戦布告であった。




という訳で第一試合の勝者はシャルロットでした。

ラウラのインレは元ネタとなった機体と大体同じ事が出来るのでかなり強いのですが、他のISに比べて大型です。並みの相手ではデメリットにならないのですが、今回は相手がシャルロットだったので敗れてしまいました。

シャルロットの新アドヴァンスド【CC:クロスキャリバー】はかなり極端なアドヴァンスドで、他のパックとの併用が前提というクセが強いアドヴァンスドです。


次回予告

シャルロットとラウラの試合はシャルロットが試合を制した。続いての試合はロランと聖の対決。オランダ製のオーランディ・ブルームと兎製のウェーブ・ライダーというこのカードは一体どんな対決になるのか?


次回

「女貴公子VS天空の支配者 兎、女の底力を知る」


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126話 女貴公子VS天空の支配者 兎、女の底力を知る

続いて第二試合です。

一回戦第二試合
ロランツィーネ・ローランディフィルネィVS宮本聖

ファイッ!


『いや~、第一試合から白熱した試合でしたね』

 

『正直、俺もうかうかしてられませんね』

 

第一試合が終わり、雪兎と薫子が試合を振り返りそうコメントするうちに、第二試合の準備が整ったようだ。

 

『さてさて準備が出来たようなので次の試合です。第二試合はこの二人!』

 

『青コーナー、転入生かつ、白百合の貴公子・・・・ロランツィーネ・ローランディフィルネィことロラン』

 

専用機、オーランディ・ブルームを纏い演劇の主役のように登場する。

 

「ふっ」

 

『赤コーナー、親友の仇を取れるのか!?宮本聖』

 

一方、聖もウェーブ・ライダーを纏い入場する。

 

「が、頑張ります」

 

聖が今回初期装備としてセレクトしたバイザーボードは新型のクルセイドディフェンダー。防御に秀でた性能のバイザーだ。

 

『さてと、今回のバトルフィールドは・・・・こちら!』

 

ARプログラムが起動し、バトルフィールドが生成される。そのフィールドは何と海上だった。

 

『あー、これは臨海学校の時の海だな』

 

『これって海の中も再現されてるの?』

 

『されてますよ。その調整には結構てこずりましたが、自信作です』

 

「海上かぁ・・・・私はあの時は専用機持ってなかったから関わってないんだよね」

 

「むむ・・・・臨海学校なんてステキイベントを逃していたとは、不覚」

 

「いや、ロランはいなかったでしょ」

 

海と聞いて箒の水着イベントを逃した、と本気で悔しがるロランに聖はいつも通りツッコミを入れる。

 

『それでは、第二試合、試合開始!』

 

そうこうしているうちに試合が始まる。

 

「ならば!このトーナメントで優勝して箒に惚れ直して貰わねば!」

 

控え室で箒が「誰が惚れ直すか!というか惚れない!」と叫んでいたとかいないとか・・・・

 

「気合い十分なところ悪いけど、まずは一撃もらうね?」

 

「えっ?」

 

そんな邪な事を考えていたせいか、ロランは聖のバイザーボードの突撃という先制攻撃をモロに食らい吹っ飛ばされる。

 

『先手を取ったのは聖ちゃん!あのボードタックルは痛そう』

 

『クルセイドは硬いからな・・・・』

 

防御型というだけあってクルセイドは重くて堅い。そんなのが高速で突っ込んできたら普通は痛いでは済まない。

 

「くっ、油断した」

 

「油断はいけないよ?雪兎君とかそういうの本当に容赦しないから、こんな風に、ねっ!」

 

体勢を立て直したロランに海中からクルセイドをアーマードモードにした聖が今度は右腕の大きな楯をアッパースイングで叩き込む。

 

『上手いな・・・・今のはボードタックル時の波を使って姿を隠し、アーマードに変形させて海中から奇襲か』

 

『あの娘、タッグトーナメントから本当に化けたわね』

 

しかし、ロランもそのままでは終わらない。打ち上げられた空中ですぐにリカバリーすると同時に狙撃用ライフル【スピーシー・プランター】を展開して聖へと反撃する。だが、聖もそれくらいは読んでいたのか楯の表面に防御フィールドを展開してそれを防ぐ。

 

「くっ、これも防ぐか」

 

「プランターは被弾後の内部炸裂が危険だからね」

 

スピーシー・プランターは弾丸が被弾後に花咲くように炸裂するのが特徴で、貫通はしなくても、被弾して弾丸が装甲に貼り付くと危険なのだ。聖はそれを警戒して防御フィールドを展開したのだ。

 

『これはロラン様も相手が悪いか!?』

 

『いや・・・・ロランはそこまで甘くはねぇぞ』

 

『それはどういう事で?』

 

別にロランはスピーシー・プランターを当てる事が重要だったのではなかった。ロランの真の目的は聖の足を止める事。

 

「これは、ヴァイン・アームズ!?」

 

動きを止めた聖をオーランディ・ブルームに搭載された触手状兵器【ヴァイン・アームズ】が襲い、クルセイドの装甲に巻き付く。

 

「しまった!?」

 

「その楯は厄介そうだからね、いただくよ?」

 

すると、クルセイドは聖から強制パージされ、ロランがボードモードにして乗り移る。聖はすぐに次のバイザーボードとしてソードダイバーを展開して飛び乗る。

 

「本当にロランのそれは私のウェーブ・ライダーと相性悪いよ・・・・」

 

ヴァイン・アームズはただの触手ではない。何とこの触手、接触した相手を浸食・融和して意のままに操る事が出来るのだ。

 

『何と!ロラン様は聖ちゃんのクルセイドを奪ってしまいました!?』

 

『あれ、本当に質の悪い装備だよな・・・・』

 

『雪兎君、君のスピリットフレアも人の事言えないんじゃない?』

 

『フレアはエネルギーだけだ。ロランみたいに人の物まで拝借しない』

 

どっちもどっちだと思う。

 

「クルセイドが盗られたのは痛いなぁ」

 

クルセイドは防御に優れたバイザーだ。それ故に他のバイザーも奪われないようにシャープガンナーで遠距離攻撃を仕掛けてもクルセイドで防がれ、策もなくソードダイバーで突っ込めばソードダイバーまで奪われかねない。

 

「これはミスったなぁ・・・・」

 

「ふふ、私だけ雪兎の手が加わったISではないのでね。その分相手の分析には力を入れていたのさ」

 

「みたいだね・・・・これはもう少し取っておきたかったんだけどなぁ」

 

「ん?」

 

そう言うと聖は再びバイザーを換装した。だが、それはシャープガンナーでもソニックレイダーでもソードダイバーでもなかった。

 

「いこっか、【ソードダンサー】」

 

それはなんとアムドライバーの世界で回収していたネオボードバイザー【ソードダンサー】に酷似したバイザーボードだった。それもそのはず、このソードダンサーはネオボードバイザー【ソードダンサー】をウェーブ・ライダー用に改修したもので、ウェーブ・ライダーもそれに合わせてチューブチャージシステムを搭載機にバージョンアップされていたのだ。

 

『せっかく貰ってきたんだから使わない手は無い、と改造してみました』

 

犯人は当然雪兎である。

 

「あっ、最初に言っておくね・・・・これ、アムエネルギー使うからロランのオーランディ・ブルームじゃ使えないから」

 

「それはいくらなんでも卑怯じゃないかい!?」

 

「先にクルセイド奪っておいて卑怯も何もないよ?」

 

「というか、そんなの食らったらクルセイドもただでは済まないだろう!?」

 

ロランはクルセイドを楯に聖を思いと止めようとするが、聖は目の笑っていない笑みを浮かべてソードダンサーにチューブを繋ぎチャージを開始する。

 

「クルセイドは壊れても雪兎君に直してもらえば済むし」

 

「わ、わかった!クルセイドは返すから!」

 

そう言いロランは慌ててクルセイドを投げ出すが・・・・

 

「うん、これで全力でいけるね」

 

聖、手加減する気0である。その間にもチャージは進み、ウェーブ・ライダーに合わせてライムグリーンに輝くソードダンサーの刃がロランを襲う。

 

「ジェット、スラッシャー!」

 

大剣に装備されたブースターで一気に加速した聖はその勢いを利用してロランを海面に叩き付ける。

 

「まだ負ける訳にはいかない!フラワーレイ!」

 

それでもロランはまだ諦めない。横の非固定浮遊部位のフラワーレイを起動して反撃を試みるが、その片方をソードダンサーの大剣が貫く。なんと、聖は大剣を投擲したのだ。

 

「やっと捕まえた」

 

そして、大剣にはチューブが繋げられたままだ。

 

「ま、まさか!?」

 

(ニヤリ)

 

聖は笑みを浮かべたまま大剣に繋がったチューブを掴む。

 

「ふんっ!」

 

チューブを掴んだ聖はそれを振り回しながら回転してロランを海面と上空に上下させる。

 

『な、なんつう使い方を・・・・』

 

これには雪兎の顔もひきつる。

 

「は、離せ!」

 

「えっ?いいの?・・・・はい」

 

バチンッと大剣からチューブを取り外し、遠心力の加わったロランは再び海面に強く叩き付けられ巨大な水柱を上げる。

 

『あ~、ロラン様のオーランディ・ブルームのシールドエネルギーが尽きたわね』

 

『勝者、宮本聖!』

 

「よし!ラウラ~、私勝ったよ~」

 

この時、多くの一般生徒達は思った「やっぱりこいつも兎一味だ」と・・・・




という訳で第二試合は聖が勝ちました。
ロランが弱いのではなく兎一味が非常識なだけです。


次回予告

第三試合は本音と晶の試合。本音はかなりピーキーなISであるナインテイルで晶の白牙にどう挑むのか?


次回

「目覚める九尾と吼える白虎 兎、爆笑する」


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127話 目覚める九尾と吼える白虎 兎、爆笑する

今回は色々ツッコミどころが多い回になると思います・・・・主にナインテイルがやらかす。


第三試合

布仏本音VS神宮寺晶

ファイッ!


『さぁ、どんどんいきましょう!第三試合はこのカード!』

 

『青コーナー、見た目通りのネタIS!布仏本音』

 

「いくよ~、ナイちゃん」

 

ナインテイルを纏った本音が尻尾をフリフリしながらアリーナに入場・・・・相変わらずユルい。

 

『赤コーナー、白虎は九尾を破れるか!神宮寺晶』

 

「むぅ、やり辛いな・・・・」

 

相手がほとんど武装を持たないナインテイルとあって、晶はどこかやり難いようだ。

 

『それでは今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』

 

ARプログラムが今回選んだフィールドは・・・・柱のように天に向かって伸びる岩山が乱立し、下は標高が高い設定なのか雲海が広がっている。

 

『まるでアニメとかの仙人の修行場みたいなフィールドだな』

 

『両者のISも九尾と白虎だし、ちょうどいいんじゃない?』

 

「あまあま、本当にすごいの作ったねぇ」

 

「本音、悪いがこちらは本気でいくぞ?」

 

「ジンジンもやる気だねぇ~、でも、私とナイちゃんだって簡単にはやられないよ」

 

いつになく真面目な表情をする本音に晶も本音を本気で戦うべき相手と認める。

 

『それでは、一回戦第三試合、試合開始!』

 

最初に動いたのはやはり晶だった。近接格闘戦に特化した白牙は短距離であればイェーガーに匹敵する機動力を発揮出来る。その機動力で一気に距離を詰めて一撃を叩き込むつもりだった晶だが、放たれた拳はふんわりと受け流される。

 

「何っ!?」

 

「言ったよ?私とナイちゃんは簡単にはやられないよって」

 

何と、本音はナインテイルの尻尾で晶の拳を逸らし受け流したのだ。しかも、その際に白牙のシールドエネルギーを少しではあるが奪っている。

 

「これぞあまあまに教えてもらったナイちゃんの特性を活かした戦術、名付けて!【奪気の型】!」

 

この奪気の型、晶の白牙のような近接格闘型には恐ろしく刺さる。一種のカウンター技のため逆に遠距離型には一切通用しない。

 

「それは完全に私へのメタではないか!?」

 

『文句はトーナメントの抽選に言え、俺だってこんな刺さるとは思わなんだわ!』

 

ナインテイルはそもそも戦闘メインのISではない。しかし、戦場に出る事も考慮して防御性能は兎印のISの中でも上位に位置し、それを活かした奪気の型はハマると厄介極まりないのだ。まあ、攻略法が無い訳でも無いのだが。

 

「くっ、与えるダメージと奪われるエネルギーの割が合わん」

 

「はっはっは、思い知ったかぁ」

 

『本音のやつ、調子に乗ってやがるな・・・・』

 

そして、晶はとうとう奪気の型の攻略法に気付いた。

 

「虎咆穿!」

 

直接(・・)触れなければいいという単純な攻略法に。

 

「ぎゃふん」

 

『お馬鹿・・・・』

 

そこからは一方的に晶が攻め続けた。一度体勢を崩されれば普通に追撃出来てしまうのも奪気の型の欠点だった。

 

『先程までとは違い晶ちゃん、一方的に攻め続けます!』

 

『これは決まったか?』

 

会場の皆が雪兎と同じ事を考えたその時、ナインテイルが突如輝き始めた。

 

『はっ?ちょっと待て!?このタイミングで二次移行(・・・・)だと!?』

 

そう、それは二次移行の光だった。ナインテイルはこの土壇場で二次移行という事をやらかしたのだ。展開的には物凄く美味しい展開だ。

 

『これは面白い展開になってまいりました!』

 

光が治まり、姿を現したナインテイルは本音のトレードマークとも言えるだぼ袖に羽衣を身に付けていた。

 

『ん?これ、本当に二次移行したのか?』

 

雪兎はあまり姿を変えていない事に違和感を感じるが、その正体が掴めない。

 

「ふっふっふ、あまあま、これ(・・)を見てもそんな事が言えるのかな?」

 

そう思わせ振りに本音はある装備を展開(・・)した。二次移行前は背面の九尾に拡張領域を食い潰されていたナインテイルが、だ。

 

『ちょっ!?ナインテイル!お前もか!?』

 

本音が取り出したのは二段重ねのアイスに三枚の帯状の鞭が生えた何か。一見、ただのネタ装備にしか見えないそれは雪兎が愛読していたとある漫画に登場するアイテムで、雪兎はそこで違和感の正体に気付いた。そう、ナインテイルも二次移行時に雪兎のデータベースに無断アクセスしてデータを引っこ抜いていたのだ。

 

『雪兎君?何でそんなに驚いてるの?』

 

『よりにもよってそのスーパー宝貝(・・・・・・)持ってくとか何考えてやがる!』

 

その一見ネタアイテムにしか見えないそれはIS用にダウングレートしているとはいえとんでもない装備だった。

 

「いくよ【雷公鞭(・・・)】!」

 

それは宝貝(パオペイ)という仙人が使う特殊なアイテムの中でも使い手を選ぶ、スーパー宝貝と呼ばれる物で、更にそのスーパー宝貝の中でもトップの攻撃力を誇るチート宝貝【雷公鞭(らいこうべん)】だった。手加減して放っても中国を雷で覆ったとすら言われるレベル。何でそんなデータがあるのかって?雪兎の趣味だ。IS用にダウングレートしたそれでもバトルフィールド全域を覆うには十分な威力を持っていた。

 

「ぐっ!」

 

その威力はかすっただけでも白牙のシールドエネルギーを大幅に削った程だ。直撃していればその瞬間に終わっていただろう。しかし、そんなものを攻撃装備をろくに扱っていなかった本音がいきなり扱い切れるかと言われると、それは否だ。

 

「あばばばば!?」

 

制御出来なかった雷撃がナインテイルに当たり、そのまま残り少なかったシールドエネルギーを0にする。

 

『・・・・え~っと』

 

『本音の自爆だな。勝者、神宮寺晶』

 

「な、納得いかねぇええええ!」

 

勝ったのにも関わらず、晶の絶叫がフィールドに響いた。尚、試合終了後、雪兎は大爆笑していたらしい。




盛大にネタに走りましたw


ナインテイル・仙狐
ナインテイルが二次移行した姿。
二次移行で増えた拡張領域に雪兎のデータベースから宝貝のデータをいくつか拝借して搭載している。
雷公鞭以外特別強力な宝貝は搭載されていない。というかまた雷公鞭でほとんど拡張領域を食われており大したものを増やせなかっただけ。

雷公鞭
藤崎竜版封神演義に登場した申公豹のスーパー宝貝。最大出力は不明。だが、小惑星クラスなら平気で覆える非常識さを誇るチート宝貝。見た目は非常にアレ。
ナインテイルのものはこれを参考にした雷撃武装。当然本家とは威力が大幅にダウンしており、一度の使用で武装エネルギーの八割を消費してしまう燃費の悪い装備。


次回予告

第三試合は本音の自爆というあれな結果になってしまった。そして第四試合は鈴とエリカの対戦。ここはまともな試合が期待されるが・・・・


次回

「鈴の本気とエリカの意地 兎、笑い疲れてお休み」


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128話 鈴の本気とエリカの意地 兎、笑い疲れてお休み

今回は真面目にやります。

今回で第四試合、一回戦の丁度真ん中です。

一回戦第四試合

凰鈴音VSエリカ=ピーリ

ファイッ!


『え~、雪兎君は笑い疲れて倒れてしまったので今回はマドカちゃんに解説をお願いしました』

 

『どうも』

 

『それじゃあ次の試合にいきましょうか!第四試合はこのカード!』

 

『え~っと、兄さんの台本には・・・・あ、青コーナー、セカンドなんて返上だ!凰鈴音!』

 

「雪兎、余計な事を・・・・」

 

雪兎が自作したと思われる台本にこめかみに青筋を浮かべつつ、まずは鈴がフィールドへ。

 

『赤コーナー、セシリアより料理も狙撃も上手い!エリカ=ピーリ!』

 

「セシリアさん・・・・すみません」

 

謝りはするが、否定しないところからもエリカの腕前が判る。実際、セシリアは実弾の反動が苦手で、エリカはどっちも得意だ。

 

「ガト・グリスは狙撃メインの射撃型だったわね。言っとくけど、私はセシリアをよく相手にしてたから簡単に当たるとは思わないでよ?」

 

「私の射撃をセシリアさんと一緒だと思ってますと、痛い目を見ますわよ?」

 

『何故だろう・・・・二人の背後に猫が見える』

 

『あ~、二人ともタイプは違うけど、猫っぽいものね』

 

『縄張り争い?』

 

『マドカちゃん、結構ストレートに言うわね』

 

マドカも雪兎に保護されて自身の存在価値を見出だしてからは外観年齢相応の少女っぽいところも出てき始めたのか、結構ストレートに言う事も多い。ミュウや蘭の影響だろうか?

 

『さてさて、今回のフィールドは・・・・ぷっ』

 

ARプログラムが今回選んだフィールドは・・・・巨大な家具の置かれ、まるで自分達が小さくなったように感じるステージだった。

 

『兄さん手製の資料によると、自身が玩具になったように感じるステージだそうです』

 

『雪兎君、なんて今回の試合にベストマッチなステージを・・・・』

 

狙っていたのではないだろうが、えらくピンポイントなステージセレクトだ。

 

『と、とにかく、それでは一回戦第四試合、試合開始!』

 

「このステージ、やり難いわね・・・・」

 

どうやらISも玩具扱いになるのか、障害物になりそうな家具や他の玩具は攻撃をしても破壊する事は出来ず、崩したり動かす程度しか出来ない設定のようだ。つまり、ラウラがやったような障害物の除去は出来ないステージらしい。そして、障害物が多いとなれば・・・・

 

「エリカが有利なステージね」

 

エリカのガト・グリスはこういう障害物が多いステージからの不意討ちを得意とするISで、各部に装着しているミサイルポッド等を取り外して設置し撹乱したり、レーダーを阻害するチャフスモークを撒いたり、トラップを設置したりと嫌がらせに関しては流石は兎製なISだ。そんなガト・グリスに破壊不能な障害物があるステージなど、水を得た魚のようなものだ。

 

「ちっ、もう準備完了ってわけ!」

 

すると、ステージの所々からチャフスモークが撒かれ、あちらこちらからミサイルが鈴目掛けて発射される。チャフスモークの影響を受けるのは鈴だけでエリカのガト・グリスは高性能レーダーを装備しているため鈴の姿は丸見えなのだろう。

 

「でも、この煌龍を嘗めるな!」

 

鈴はそう言うと、龍咆を自分の真下に向かって放ちチャフスモークを吹き飛ばす。だが、その為に足を止めてしまったのは不味かった。

 

「がっ!?この弾丸はアルテミス!」

 

「私とて皆さんの一員。このガト・グリスを任された以上はこのくらいこなしてみせますわ」

 

その後もエリカは障害物を巧みに利用し、鈴に位置を把握させぬようにステージを動か回りながらチクチクと鈴のシールドエネルギーを削っていく。

 

『あれは鈴もやり難くかろう』

 

『ある意味今回のステージはガト・グリスの為にあるステージよね』

 

『煌龍も強力なISだが、相手を捉えれねば無力だからな』

 

そんな中、チクチクと攻め立てられ続けたせいかとうとう鈴がキレた。

 

「あ~もう!まだるっこしい!視えないなら手当たり次第攻撃するまでよ!四聖龍っ!」

 

四聖龍を呼び出した鈴はステージ全域への攻撃を指示。自身も拡散放射龍咆で辺りを攻撃し始めた。そう、鈴はまさかのローラー作戦を決行したのだ。

 

「オラオラオラオラ!」

 

いくら障害物が破壊出来ないとはいえ、この飽和攻撃には流石のエリカも驚き動きを止めてしまう。それを発見した四聖龍がガト・グリスに襲い掛かる。

 

「そんなゴリ押しとかありなのぉ!?」

 

『ルール上の不備は無い。有効だ』

 

エリカの悲痛な叫びはマドカの一言でバッサリ。それからはまるでネズミを追う猫のように鈴がエリカを攻め立てていく。

 

『あれは煌龍のパワーがあって成立する戦術だ。他の皆さんは決して真似はしないように』

 

『マドカちゃん、意外と律儀ね』

 

「トドメの覇龍咆哮ォ!」

 

そうこうしている間に鈴の覇龍咆哮が炸裂し、エリカのシールドエネルギーが底をついた。

 

『そこまで!勝者、凰鈴音!』

 

「おっしゃー!!」

 

『力こそ正義!な試合だったわね』

 

『ん?どうした、ミュウ・・・・雌猫にしては上出来だ、だって?』

 

「覚えとけよ!バグ兎ィ!!」




真面目に書いたつもりが半分ギャグに・・・・

やっとまともにガト・グリスの戦闘描写出来たのにこんな結末なんて・・・・


次回予告

続いての対戦は箒とカロリナ。今まであまり接点がなかったこの二人の試合。雪兎の弟子になったカロリナは全く予想の出来ない行動で箒を惑わすが・・・・

次回

「兎妹VS小兎、武士道とビックリ箱 兎、解説を譲る」


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129話 兎妹VS小兎、武士道とビックリ箱 兎、解説を譲る

今回は試合だけじゃないよ。

一回戦第五試合

篠ノ之箒VSカロリナ=ゼンナーシュタット

ファイッ!


『え~、雪兎君は何やら二回戦の準備との事で、解説は引き続きマドカちゃんにお願いする事になりました』

 

『兄さんの代役のマドカだ。引き続きよろしく頼む』

 

『今回はちょっと意外な組み合わせ。青コーナー、元祖天災の妹!篠ノ之箒!』

 

「うん、もう慣れたな、その呼ばれ方」

 

もう呼ばれ方の訂正を止めた箒は紅椿で入場。明らかに疲れている感が出ている。

 

『続いて赤コーナー、三人目の天災候補!カロリナ=ゼンナーシュタット!』

 

「頑張ります」

 

こちらはむしろそう呼ばれた事を誇っているようにも見える。そんなカロリナはリリコンバージュで入場。

 

「そう言えばカロリナと一対一というのは初めてだな」

 

「師匠の師匠の妹が相手・・・・でも、負けない」

 

「・・・・何だろう、雪兎を相手にしているようなこの感覚は」

 

アムドライバーの世界にて既に変態的メカニックの片鱗を見せつつあるカロリナに、箒は雪兎が重なって見えた。

 

『さてさて、今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』

 

『ポチッとな』

 

毎度の如くARプログラムがバトルフィールドを生成するのだが、今回は一風変わったステージだった。

 

『おっと、これは谷かな?』

 

『兄さんの資料によれば、グランドキャニオンを模したキャニオンステージとの事。このステージにはちょっとしたギミックがあるそうだ』

 

『ふーん、それは試合が始まってからのお楽しみで・・・・それでは一回戦第五試合、試合開始!』

 

「はぁ!」

 

試合開始直後、瞬時加速並みの速度で一気に距離を詰めた箒が雨月・空裂で斬りかかるが、カロリナはそれは読めていたとばかりに背面のブラート・ストールと左腕のグスタフのシールドで両方を受け止める。

 

「くっ、やはり堅いな、そのISは」

 

「箒こそ・・・・流石は紅椿の加速力。流石は師匠と大師匠」

 

カロリナもリリコンバージュでなければ間に合わなかったと自覚しており、改めてそのリリコンバージュを開発した雪兎と、紅椿を開発した束を称賛する。だが、カロリナも受けるだけでは無い。

 

「バリアバースト」

 

カロリナはバリアフィールドを形成すると同時にバリアを弾けさせ紅椿を弾き飛ばす。

 

『今のは?』

 

『リリコンバージュのバリアバーストだ。近接戦闘で密着してきた相手をバリアを一瞬だけ広範囲拡げさせて弾き飛ばす技。格闘ゲームなどで使われるバリアバーストまんまな技だ』

 

『仕切り直しとかには便利な技ね』

 

『リリコンバージュは防御を主において開発されたISで、シールドやバリアを利用した攻撃も行える攻勢防御型とでもいうタイプだ。防御性能だけなら兄さんの開発したISでもトップクラスの堅さを持っている。あれの攻略は中々面倒でな』

 

『・・・・ほんとに雪兎君の作るISって既存の概念を覆すISばっかね』

 

実況と解説がそんな話をしている間も箒は遠近問わず攻めるものの、リリコンバージュの防御を破れずにいた。

 

「堅い・・・・ここまで攻めきれないとは」

 

「箒こそ、その剣術は流石」

 

一方のカロリナは右手のショットランスやグスタフ等も使いしっかり箒に食らいついてくる。近接で攻められそうになればバリアバーストやブラート・ストールのブースターで緊急離脱をしたり、逆に遠距離で攻めようとすればバリアを展開したままのブーストタックル等、多彩な攻撃で箒を翻弄してくる。そんな時、突然バトルフィールドに警告音が鳴り響く。

 

「何だ!?」

 

「・・・・箒、あれ」

 

一度戦闘を中断した二人が見たものは崩れて塞がっていく谷だった。

 

『始まったようだな。このキャニオンステージは時間が経つと崖が崩れていくギミックが仕掛けられている』

 

『ちなみに、崩落に巻き込まれたら?』

 

『即失格だそうだ。よくスクロールアクションゲームにある迫ってくる壁や崩落していくステージを意識したらしい』

 

「・・・・崩落から逃げつつ戦闘をするって事?」

 

「そうらしいな」

 

迫り来る崩落から逃げながら箒とカロリナはお互いを見て一度距離を取って仕切り直す。

 

『相手を攻撃して崩落に巻き込むもよし、二人で逃げ切ってから仕切り直すもよし、だそうだ』

 

だが、二人の答えは最初から決まっていたようで、崩落から逃げながら互いへの攻撃を再開する。

 

『あっ、一応アリーナ内部を一周する感じで崩れるんだ』

 

『ああ、崩れた場所は後でちゃんと再構成されるらしい』

 

そこからはキャノンボールファストさながらのレースバトルが展開された。時には相手の進路上の崖を崩して妨害したり、または直接相手を崩落している方へ弾き飛ばそうとしたり、白熱した試合が繰り広げられている。

 

「穿千!」

 

「バンカー!」

 

「これはどうだ!」

 

「シールドアクセラレーター!」

 

箒は絢爛舞踏がある為出し惜しみなく、カロリナは防御と回避を上手く使い分ける。

 

『意外に接戦!これは熱い試合になってきました!』

 

『普通ならば紅椿が絢爛舞踏を持つせいでリリコンバージュは不利だが、このステージならば崩落に巻き込まれた段階で失格。十二分に勝ち目はある』

 

そんな中、箒の瞳が一瞬だけ真紅に染まったのに気付いたの者は誰もいなかった。

 

「私は勝つ!」

 

「私だって負けない!」

 

「「はぁあああ!!」」

 

何度目かも分からない激突の末にとうとうリリコンバージュのエネルギーが尽きた。

 

『試合終了!勝者、篠ノ之箒!』

 

その白熱した試合に観客席の生徒達の歓声がフィールドを包む。

 

「・・・・負けた」

 

「良い試合だった、カロリナ。また手合わせしたいものだ」

 

「・・・・次は私が勝つ」

 

箒が再戦を願うと、カロリナは悔しそうにそう告げる。そんなカロリナに箒は少しだけ驚いた。

 

「どうかした?」

 

「意外と負けず嫌いなのだな、カロリナは」

 

「向上心を失った技術者はただの生産者」

 

「なるほど・・・・確かにカロリナは雪兎の弟子だな」

 

カロリナの言葉を聞き、箒は微笑みながら彼女が本当に雪兎の弟子なのだなと再認識する。

 

「次の相手は鈴か・・・・」

 

そして、箒も負けられない次の対戦相手を思い浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎は・・・・

 

「全く、今日はお呼びでないお客様が大勢だな」

 

アリーナの外・・・・いや、正確にはIS学園近海で雪華を纏い、学園に迫る所属不明のISやEOSを見下ろしていた。

 

「さてさて、準備運動くらいにはなってくれよ?」

 

そう言うと、雪兎は不敵な笑みを浮かべてその軍勢へと突撃した。




第五試合の勝者は箒でした。

そして、最後に雪兎が対峙した所属不明機は一体何処の軍勢なのか?


次回予告

第六試合はセシリアとアレシアの対戦。二次移行によってパワーアップしたブルー・ティアーズ・ガブリエルの力とは?その頃、雪兎はIS学園に迫る所属不明機達と交戦を開始し・・・・


次回

「蒼穹の支配者と紅き荒鷲 兎、準備運動開始」


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130話 蒼穹の支配者と紅き荒鷲 兎、準備運動開始

今回もおまけな話がつくよ。

一回戦もあと二試合。

一回戦第六試合

セシリア=オルコットVSアレシア=ロッタ

ファイッ!


『一回戦も残すところあと二試合!』

 

『今回のカードはこちら』

 

『一回戦第六試合!青コーナー、英国貴族の誇りをここに!セシリア=オルコット!』

 

その紹介と共に優雅に現れたのはブルー・ティアーズ・ガブリエルを纏うセシリア。その姿はガブリエルの名に恥じぬ蒼き天使。

 

「まだ、まともな紹介で良かったですわ」

 

今までと違い変な紹介で無い事に安堵するセシリア。

 

『赤コーナー、イタリアの紅き荒鷲!アレシア=ロッタ!』

 

セシリアと違い、雄々しく飛び登場するアレシアの姿は確かに荒鷲だ。

 

「この子の名前もロッソ・アクイラだし、間違ってはいないわね」

 

アレシアも、専用機の和名呼びなのでそこまで拒否感は無いようだ。

 

『さあ、この二人が対戦するステージは・・・・これだ!』

 

『ポチッとな』

 

ARプログラムが二人の対戦の舞台に選んだステージは・・・・少し緑色の入った空に大小様々な島々が浮かぶ幻想的な浮島ステージだった。空賊や武器に変身する女の子が出てきそうな気がする。

 

『これはまたファンタジーなステージが・・・・』

 

『何でも兄さんが好きだった漫画の世界観を投影したステージなんだとか』

 

『よくよく思えば今までのステージも雪兎君が手掛けてるのよね?』

 

『システム的な方面は束さんが、ステージ設定は兄さんがやっていたそうです』

 

そんなステージではあるが、空戦をメインとするこの二人にはピッタリなステージである。

 

「このステージでしたらお互いに持ち味が活かせますわね」

 

「確かに」

 

『それでは一回戦第六試合、試合開始!』

 

試合開始と共にセシリア、アレシアの双方は槍と剣を構え一気に距離を詰める。すれ違い様に互いに一撃を受けたが、アレシアはセシリアの行動に驚きはしたが、すぐにその場を離れた。何故ならセシリアがいつの間にか展開していたビットがアレシアを狙っていたからだ。

 

「突撃しながらビットを展開するとか随分と器用な事を」

 

「私だって昔のままではありませんわ」

 

入学当初はビットを飛ばしている間はビットの制御に集中せざる得ず、本体が無防備になってしまいがちという欠点を抱えていたセシリアだが、この一年で雪兎の改修によるハイパーセンサーの強化という補助がありながらもビットの制御と他の行動を同時にこなす並列思考(マルチタスク)を習得したセシリアは本当に厄介な射撃手へと変貌した。

 

「あ~もう!本当にやり難いんだから!」

 

ビットとライフルからの同時攻撃を紙一重で回避しつつ、アレシアは蛇腹剣【ヒートウィップ】を自在に振るいビットを牽制する。

 

「それは私への称賛と受け取らせていただきますわ」

 

だが、セシリアのビットは止まらない。むしろ逆にビットはビームの刃を展開してヒートウィップに向かってきたのだ。

 

「げっ」

 

ビットにヒートウィップの軌道を逆に制限され出来た安全圏から残りのビットが狙い射ってくる。しかも、その射撃は偏向射撃。これにはアレシアも堪らずその場を離脱する。

 

『うわぁ・・・・偏向射撃については聞いてたけど、セシリアちゃんのガブリエルだっけ?あれ、えげつないわね』

 

『まだあんなものではない。あのISの本気は』

 

『えっ?そうなの?』

 

『私も以前似たようなISを使った経験があるから言わせてもらうが、今のセシリア=オルコットは蒼穹の支配者という名が相応しいだろう』

 

すると、セシリアはランパードランチャーの穂先を開きボウガンのような形に変形させる。その穂先の内側にはライトニングアサルトのガングニール同様無数の砲口が存在した。

 

『えっ?まさか・・・・』

 

『そのまさかだ』

 

「スプレッドイレイザー、いきますわよ!」

 

ビットを含む全砲門から放たれたビームが四方八方からアレシアのアクイラを追う。そう、今のセシリアは動きを止めればこの拡散ビームの全てを偏向射撃で操る事が出来るのだ。

 

「こんなのカロリナのリリくらいの防御性能無いと凌げないってぇ~!」

 

そんな泣き言を言うアレシアだが、今のところはそのビームを回避し続けている。それが可能な時点でアレシアも立派に兎一味の仲間と言える。

 

「流石はアレシアさんですわ。でも、これで終わらせますわ・・・・私とこのブルー・ティアーズ・ガブリエルの葬送曲(レクイエム)で!」

 

セシリアはそんなアレシアに追い討ちとしてビームブレードを展開したビットを偏向射撃の合間を縫うように飛ばす。

 

「ちょっ!?それは流石に無理だって!?A・(アレシア・)S・(スーパー・)P(ピンチ)!A・S・P!!きゃああああ!?」

 

『・・・・まるで鳥籠(バードケージ)ね』

 

『勝者、セシリア=オルコット』

 

「優雅に華麗に大胆に、ですわ」

 

成長したセシリアは思った以上にとんでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎は自分の(・・・)担当区画に侵入した所属不明機の軍勢をほとんど行動不能にしてしまっていた。無人機だったEOS等は原型を留めていないレベルで斬り刻まれスクラップと化している始末だ。

 

「なんだ、準備運動にもなりゃしねぇな」

 

そう言って雪兎は手に持つウィザードのハルパーでもバルニフィカスのスラッシャーでもない禍々しいデザインの大鎌を肩にのせ、所属不明機達を見下ろす。

 

「ば、化け物め・・・・」

 

「その化け物の根城に手出したんだ・・・・当然覚悟は出来てんだろうな?」

 

いつになく冷たい表情を見せる雪兎に所属不明機の搭乗者達は冷や汗が止まらない。

 

「さてと、次は簪と一夏の試合だし、さっさと片付けるか」

 

すると、雪兎の左腕にオレンジ色の光のパーツが出現し、砲身を生成する。

 

「お前達のISコア、いただくぞ」

 

「「「「うわぁあああああ!!」」」」

 

そして、その砲身から放たれた光が所属不明機を貫き、外傷を与える事なく(・・・・・・・・・)そのコアを奪い雪兎の手へと回収されていく。

 

「ひ~、ふ~、み~、よ、っと大量大量」

 

「あ、悪魔だ・・・・」

 

その雪兎を見てEOSを纏っていた一人がそう呟くと、雪兎はチッチッチッと指を振り訂正する。

 

「悪魔じゃねぇ、こいつは・・・・憑神(アバター)だ」




はい、雪兎君、蹂躙してました。
彼らの正体については次回。

セシリアもガブリエルのスペックならあれくらい余裕です。アレシアはちょっと相性が悪かった。
ちなみに、雪兎やカロリナならあの弾幕も強引に突破してきます。


次回予告

一回戦最終試合は簪と一夏の対戦。共に同じ場所で開発が始められ、兎の手で完成したという経緯を持つ二機がここに激突する。


次回

「ヒーローの条件 兎、観戦する」


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131話 ヒーローの条件 兎、観戦する

一回戦も最終試合です。

今回は試合前に前回の続きがあります。

一回戦最終試合

更識簪VS織斑一夏

ファイッ!


その日、IS学園を襲撃したのは亡国機業の部隊の一つ・シャドウズと呼ばれる者達で、モノクロームアバターやゾディアックノワールのように秀でた者はいないが、数は多い部隊だ。各国に潜入している工作員の過半数がこのシャドウズのメンバーなのだ。そのシャドウズに今回下された命令は「トーナメントでアリーナに人手が集中している隙にIS学園に忍び込み様々なデータを盗み出す事」。だが、それも兎達には筒抜けで、当日はあえて警備を少し手薄にしてシャドウズを学園に誘い込んだのだ。なお、アリーナは完全防音の為、シャドウズの事を知るのは一部の者だけだ。

 

「この程度の戦力で私を抜こうとは笑わせる」

 

「こんなものですか」

 

雪兎はユーリをお供に東を担当していたが、他の区域を担当していたのは北が千冬と真耶の教師コンビ。

 

「ふん!口ほどにも無い」

 

「やっぱ僕達は強い!」

 

「ほとんどを王とレヴィに狩られてしまいましたね」

 

西にはユーリを除くマテリアルズ。

 

「う~ん!久しぶりに思いっきり動いたなぁ」

 

『全く、弟が弟なら姉も姉だな』

 

南には雪菜と正体を隠す為にボイスチェンジャーを使ったイヴァン、とそれぞれ雪兎と変わらぬ状況を作り出している。ちなみに一番数が少なかったのは東らしい。

 

「天野、後始末は教員がやっておく。お前はそろそろアリーナに戻っておけ」

 

一回戦の終わりも近付いてきたので、雪兎は一度アリーナに戻らせ、代わりに引き続きユーリ残りが、そしてもう一人アリーシャが東の担当に付くことになっている。

 

「それじゃあ、アリーシャさん、後は任せます。ユーリも頼む」

 

「よろしくね、ユーリ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎がアリーナに戻ると、丁度一回戦最終試合が始まるところだった。

 

『一回戦最終試合のカードはこちら!青コーナー、私は守られる側じゃない!守る側だ!更識簪!』

 

簪は今回、剣山を装備していた。白雷も暴風も今の白式には効果は薄いと判断したのだろう。

 

「私だってヒーローになってみせる!」

 

『赤コーナー、友と戦う為には負けられない!織斑一夏!』

 

対する一夏は入学当初の頃と比べ雰囲気が変わりつつあった。もう、零落白夜に頼りきりだった頃の一夏はいない。

 

「悪いが簡単には負けられないぜ、簪。俺は勝ち抜いてあいつとどこまでやれるのか試したい。だから・・・・最初から全力だ!」

 

エナジーウイングを全開に開き、煌月白牙と雪片参型を構える一夏。

 

「それは私も同じ・・・・あの日、私達を助けてくれた彼に、私もここまで出来るようになったって証明する!」

 

一方の簪も、全身の追加総合からブレードを展開し、ミサイルもすぐに発射出来る体勢を取る。

 

「だったらなおのこと恥ずかしい試合は出来ねぇな」

 

「うん、私も一夏に全力で挑む」

 

『今回のステージは・・・・これだ!』

 

『ポチッとな』

 

今回ARプログラムが生成したステージは二人もよく知るステージだった。そこは前に雪兎達が迷い込み、己の正義の為に戦っていた友と出会った場所・・・・そう、ジェナス達アムドライバー達と出会ったあの廃墟だった。

 

『ほう、懐かしいステージが出たな』

 

『そうなの?』

 

『ああ、ある意味この二人にはうってつけのステージだ』

 

「マドカの言う通りだな」

 

「うん、彼らはヒーローだった」

 

「強い信念を持ってた」

 

ジェナス達アムドライバーは二人にとっても大きな影響を受けた者達だった。

 

『それでは一回戦最終試合、試合開始!』

 

「「GET RIDE!」」

 

そして、二人は示し合わせたかのようにジェナスのいつも言葉を真似て激突した。

 

「はっ!」

 

「ていっ!」

 

すれ違い様に放たれた一夏の斬撃は弐式の肩に装着されたシザーズユニットの右側によって阻まれ、逆に左肩のシザーズユニットによる攻撃はエナジーウイングによって防がれる。

 

「山嵐!」

 

「させるか!白凰!」

 

『任された!』

 

簪が距離を取って山嵐を放てば、一夏は白凰のエナジーウイングによる拡散弾でそれを迎撃する。だが、簪が放ったミサイルはスモーク弾で、視界を奪われた一夏に簪が砲撃槍に改修された夢現・夢幻で斬り掛かるが、一夏もそれを読んでいたのか雪羅弐型のシールドでそれを防御した。

 

『ここでスモーク!?』

 

『エナジーウイングでの迎撃を予想してあえて中身を替えていたのか』

 

「まだ!春雷!」

 

それは簪も予想済だったようで、瞬時に0距離で春雷を叩き込み一夏を吹っ飛ばした。

 

『おっと、一夏君が吹っ飛ばされたが・・・・簪ちゃんのシールドも削れてる!?』

 

「くっ、でも、ちゃんとお返しはしたぜ?」

 

咄嗟にエナジーウイングでガードしたものの、完全には防げなかったようで、一夏のシールドエネルギーが削られていた。しかし、一夏もただやられてはいなかった。射たれた直後に雪羅を砲撃モードにして荷電粒子砲を食らわせていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつらほんと強くなったなぁ・・・・」

 

アリーナの観客席の入り口付近から一夏と簪の試合を眺めつつ、雪兎はそう呟く。少し上から目線なのは今まで指導側だったのでしょうがないとはいえ、雪兎から見ても一夏達は最初に比べて一回りも二回りも強くなっている。おそらく、シャルロットだけではなく、一夏達でもオータムを完封出来る実力があると雪兎はみている。

 

「これならもう俺が保護者面する必要ももう無いな」

 

そう、今まで雪兎は一夏達を何処か守らねばならない対象としてみていた節があった。雪兎が何かと一人でやってしまうのはそういうところに原因があったのだ。だが、先のシャルロットからの宣戦布告や一夏や簪の言葉を聞いて雪兎は彼らが自分のいるステージまで上がってこようとしているのを感じたのだ。もう転生者だという秘密もこれから起こる事へのアドバンテージ(原作知識)も無い今、雪兎はようやく天野雪兎という一個人として一夏達に向き合えると思っている。

 

「だから、勝ち上がってこい・・・・一夏」

 

そして、一夏が雪兎との戦いを渇望しているように、雪兎も一夏との戦いを心待ちにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるな、簪」

 

「一夏こそ」

 

その後も全力でのぶつかり合いを繰り返し、一夏と簪のISは双方共にもうボロボロだった。しかし、二人の闘志は尽きるどころか未だに燃えている。それはお互いのISも同じだった。白式と打鉄弐式は共に倉持技研で開発され中途半端になっていたのを兎師弟が完成させたという経緯を持つ姉妹機のような関係にある。そのせいか、白式と弐式は張り合う事がある。今回もお互いの主の為に普段以上の力を発揮している。

 

「白式や白凰もやる気だな」

 

「弐式も同じ」

 

そこからは刀と刃のぶつかり合いが続く。

 

『激しい近接戦!あれ?打鉄弐式って高機動砲戦型だったわよね?あれ?砲戦型?』

 

『考えるな、感じろ』

 

だが、徐々に簪が押され始めてきた。原因は白式が白凰とのデュアルコアである故の機体出力の違いだ。それに弐式は機動力を主とした砲撃型として調整をしたISである為、近接戦をメインとする白式にはどうしてもパワーは劣るのだ。

 

「でも、もう私は諦めない!」

 

簪の脳裏を過るのはいつも見ているヒーロー達の勇姿。彼らは途中で挫折する事はあれど誰一人として諦めはしなかった。ならば、そのヒーローを志す簪も諦める訳にはいかない。

 

「お願い!打鉄弐式!」

 

そんな簪に応えようと弐式は限界まで出力を上げるも・・・・

 

「エナジーウイング、出力最大!」

 

一夏もエナジーウイングの出力を上げ、簪を強引に推しきる。

 

「くっ!」

 

「今だ!蒼焔の太刀!」

 

そして、簪の夢幻を跳ね上げ、零落白夜を纏わせた煌月白牙を一閃し、シールドエネルギーを削り切った。

 

『試合終了!勝者、織斑一夏!』

 

「・・・・負けちゃった」

 

ARプログラムが解除され、普通のアリーナに戻ったその地面にゆっくり着地しながら簪は悔しそうに涙を流す。

 

「簪・・・・」

 

一夏はそんな簪に近付くとISを解除し、手を差し伸べる。

 

「いい試合だったぜ、簪」

 

「一夏・・・・」

 

簪には一夏はやはりヒーローに見える。どんな時でも絶対に諦めない簪が理想とするヒーローに。

 

「簪の分も、絶対に勝ってみせるから」

 

最初は弐式の事で一夏を逆恨みしていた簪だが、雪兎が弐式を完成させてくれ、一夏が逆恨みの件を打ち明けてもすぐに謝罪をしてくれた為、原作のような拗れた出会いではなかった。そのおかげか、簪は素直に一夏への憧れを抱くようになっていた。まあ、箒達が既に壮絶な争奪戦を繰り広げていた為、そこに加わる勇気は持てなかったが、異性としてではなく目的としての憧れは今も続いている。

 

「うん、絶対だよ?」

 

「おう!」

 

そう言って二人は互いの拳を静かにぶつけ合う。その姿はアニメのヒーローのようで簪は自然と笑みを浮かべていた。




簪がインファイター化してた・・・・まあ、ヒーローに憧れてる娘だし、近接のいけるよね?という訳で一夏と近接でドンパチしてもらいました。


次回予告

一回戦も終わり、二回戦が始まる。その第一試合は雪兎とシャルロットの対決。その解説には何と束が!?そして、束は解説をする傍ら、ある事について語り出し・・・・


次回

「恋人対決!雪兎VSシャルロット! 兎、解説される」


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132話 恋人対決!雪兎VSシャルロット! 兎、解説される

今回は雪兎VSシャルロットの恋人対決。これも文化祭以来のガチバトルです。

そして、束は解説中に何を語るのか?

二回戦第一試合

天野雪兎VSシャルロット=デュノア

ファイッ!

少し前話を編集しました。


『一回戦の全試合が終了しました』

 

『二回戦は明日からだが、明日の試合の対戦表だ』

 

二回戦

第一試合 天野雪兎VSシャルロット=デュノア

第二試合 宮本聖VS神宮寺晶

第三試合 凰鈴音VS篠ノ之箒

第四試合 セシリア=オルコットVS織斑一夏

 

『第一試合から激戦の予感ね』

 

『あの二人の全力か・・・・いかん、背筋が』

 

一回戦が終了した段階でその日の日程も終わり、それぞれ傷付いた専用機は一度メンテナンスの為に学園が預かる事に。メンテナンスの担当は束なので翌日には元通りになっている事だろう。

 

「明日、だね」

 

共に寮へと帰る雪兎とシャルロット。そんな中、シャルロットは明日の試合の事を口にする。

 

「手を抜いたら僕、雪兎の事嫌いになるから」

 

「そんな事しなくても手は抜かねぇよ・・・・そもそも今のシャル相手に手抜くとか無理だ」

 

「そ、そっか」

 

「彼女だろうが、相手なら俺は容赦はしねぇ・・・・ついてこれるか?」

 

「絶対に食らいつくよ」

 

雪兎がシャルロットの意思を確認すると、シャルロットは改めて雪兎に宣言する。必ずそこに辿り着くと。

 

「楽しみにしてるぜ、シャル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

『本日もお集まりいただきありがとうございます!実況は本日も黛薫子がお送りします。そして、今回の解説者は・・・・』

 

『はろはろ~、天才の束さんだよ~』

 

実況は昨日と同じく薫子が担当する事になったが、解説席にはこのような場をあまり好まないはずの束の姿があった。

 

『束博士、本日はどうしても話しておきたい事があるとおっしゃってましたが・・・・』

 

『それは第一試合の途中に話すよ』

 

『それでは早速二回戦第一試合を始めます。青コーナー、優勝候補筆頭!誰が呼んだか兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)!天野、雪兎!』

 

薫子のコールで登場したのは最初からアドヴァンスドのコールド・フレイムを纏った雪兎。その姿に雪兎の本気具合が伝わる。

 

「やっと俺の試合だぜ・・・・ってか、昨日の準備運動無駄になったな」

 

他の試合が思いの外白熱した為、日程がズレたらしい。

 

『赤コーナー、兎あるとこ彼女在り!学園公認カップルの片割れ!シャルロット=デュノア!』

 

対するシャルロットも最初からライトニング・アサルトで登場。だが、若干顔が赤い。明らかに薫子の紹介のせいだ。

 

「が、学園公認って・・・・いつの間に」

 

これに関しては付き合い出した当初からだ。そして、文化祭やキャノンボールで全国レベルで知れ渡ったらしい。

 

『さあ、この二人のバトルフィールドは・・・・これだ!ポチっとな』

 

今日もARプログラムがバトルフィールドをランダムで決定する。そのバトルフィールドは・・・・

 

『な、なんじゃこりゃ!?』

 

それはステージ一面に巨大な水晶がいくつも生えた幻想的なステージだった。

 

『水晶ステージだね。あ、この水晶は光学兵器を乱反射させる性質があるから上手く活用してね』

 

つまり、下手に光学兵器を使うと、自分もダメージを負うリスクがあるステージらしい。セシリア辺りが一番困るステージだろう。

 

「水晶は破壊出来るからそれで反射パターンを変える事も出来るステージだったな・・・・自分で作っておいてなんだが面倒なステージに当たったもんだ」

 

「でも、雪兎は光学兵器メインのパックそんなに使わないよね?」

 

「光学兵器っていうとこのビームガンにこいつ(ソードライフル)とイェーガーのバスターライフル、ガンナーのビームガトリングにフォートレスのハルバートカノン、それからそのライトニング・アサルトのガングニールくらいか?そういや」

 

「クロスキャリバーにもあるね」

 

ルシュフェリオンは熱エネルギーだし、アンジュルグのイリュージョンアローは物質化しているので反射しないそうだ。

 

『それでは二回戦第一試合、試合開始!』

 

試合開始直後、雪兎とシャルロットはいきなり装甲切換を使い、それぞれ白月とコスモスにパックを展開。雪兎はネオウィザード、シャルロットはネオガンナーだ。

 

「いくよ、雪兎!フルブラスト!」

 

シャルロットはいきなり全武装を起動させビームと実弾、ミサイルを乱れ射つ。

 

『ええ~!?説明聞いてましたよね!?確認してましたよね!?』

 

『にゃははは!流石はゆーくんが見初めた娘だねぇ~』

 

水晶の説明をしたばかりだというのに行われたシャルロットの行動に薫子は驚愕、一方の束はその真意を知ってか笑っている。ステージは実弾とミサイルで砕かれ飛び散った水晶にビームが反射し、その閃光と硝煙で何も視えなくなってしまう。しかし、閃光と硝煙が晴れ現れたのは自身を氷の球体で覆いグラスパーでビームを凌ぎ切った雪兎と、全弾発射後にパックをネオフォートレスの重複展開に切り換え防ぎ切ったシャルロットの姿だった。

 

「初っぱなから飛ばすなぁ、シャル」

 

「これくらいしないと雪兎の意表は突けないからね」

 

『あれで無傷とか・・・・もう、このカップル何でも有りね』

 

その二人に戦慄する薫子。会場にいる観客達も同じ気持ちだろう。一夏達からしてみれば「やっぱりな」と呆れるだけだが。

 

「だったらこっちはこれでいくか」

 

すると、雪兎はステージの上に移動し、コールド・フレイムからルシュフェリオンに切り換え、熱エネルギーの誘導弾・パイロシューターを無数に展開する。

 

「パイロシューター・ジェノサイドシフト」

 

『出た、殺意高いやつ』

 

『相手彼女ですよね!?』

 

「fire」

 

その瞬間、絨毯爆撃も比にならない飽和攻撃がシャルロットを襲う。しかも、パイロシューターが一つ放たれる毎にすぐ新しい弾が展開する為、ほぼ隙の無い爆撃が可能。だが、雪兎がこれで終わる訳が無い。

 

「ディザスタァアアアア、ヒィイイイトッ!!」

 

そこにドライバーで極太のディザスターヒートをぶっぱなす。手加減はするな、とは言われたがやり過ぎな気がする。

 

『アリーナが普段のより頑丈だからってやり過ぎだろ!』

 

※普通のアリーナだったら観客席のシールドぶっ壊れて吹き飛んでます。

 

『でも、試合は終わってないよ?』

 

『えっ?あっ、本当だ』

 

いくらシャルロットととはいえあれでは無事では済まないと思われていたが、試合終了のコールが鳴らないのでシャルロットは無事らしい。しかし、下にはシャルロットの姿は視えず、地面があまりの高温で結晶化しているのが見えるだけだ。

 

『シャルロットちゃんはどこに?』

 

雪兎は何かに気付いたらしく、咄嗟にドライバーを盾にして上から(・・・)奇襲してきたシャルロットの攻撃を防いだ。

 

「惜しい!いけると思ったんだけどなぁ」

 

「そういう事か・・・・まさか、それ(バルニフィカス)までものにしてたとはな」

 

「レヴィに特訓付き合ってもらったんだ」

 

てっきり下にいるものだと思われたシャルロットは何とバルニフィカスを纏いいつの間にやら雪兎の上に移動していた。どうやらバルニフィカスのスピードであの弾幕を掻い潜り、いつの間にか上に移動していたらしい。

 

「レヴィのやつ、いつの間に・・・・」

 

「雪兎があの龍我って男子と一緒だった時だよ」

 

「シャル、地味に根に持ってたのな、それ・・・・」

 

そんな会話をしつつもスラッシャーとドライバーをぶつけ合う。

 

『まさか!シャルロットちゃん、あの鬼のような弾幕を回避していたぁ!』

 

『バルニフィカスは瞬間速度ならアドヴァンスド最速だからね、ネオイェーガーも併用してるみたいだし、アレくらいは当然かな』

 

「当たったら一発で終わったかもしれないってのによくやる」

 

「レヴィ曰く、当たらなければどうってことない、だよ」

 

「だったらこいつはどうだ?【SK:ストームカイザー】」

 

超高速で動き回るシャルロットに対し、雪兎も隠し玉であった新型アドヴァンスド・ストームカイザーで対抗する。

 

「そ、そのアドヴァンスドは・・・・聖のウェーブ・ライダーの」

 

「ああ、それにあっち(アムドライバーの世界)の蓄積データもな!」

 

ストームカイザーは聖のウェーブ・ライダーのバイザーボードと同じくボードと簡易アーマーで構成されたアドヴァンスドで、ベースになっているのはジェナスが最初に使ったバイザーのボードバイザー【ワイバーン】だ。そして、当然ボードモードとブリガンディモードに切り換えが可能だ。性能はスピード重視でライトニング・アサルトと被るが、ライトニングは射撃、ストームカイザーは近接寄りに調整されている。またネオシリーズからチューブチャージシステムを採用している。また、ボードモードでは他のアドヴァンスドとの複数装備でも負担が少なくなるようになっている

 

「くっ、本当に雪兎は敵に回すと厄介だね」

 

「それは褒め言葉として受け取っておくさ」

 

そんな激しい空中戦を見て、観客の一人が「チートだ」と呟いた。

 

『ん?今、聞き捨てならない言葉を耳にしたね?ゆーくんがチート?』

 

それを束は聞き逃しはしなかった。

 

『これは私が話したかった事とも関係あるし、ここで話しちゃおっか』

 

そして、威圧感のある笑みを浮かべながら束は話し始めた。

 

『ゆーくんは確かに私の弟子だし、ちーちゃんの教えも受けてるから強いよ?でもね、決してチートなんて呼ばれる存在じゃないよ』

 

その束の言葉に観客達は疑問を抱く。無理も無い。雪兎は普段から色々な事をやっており、その存在が皆からすればチートみたいなものだったからだ。

 

『チートってのはね、大した苦労もせずに力を得た奴らの事だよ。ゆーくんはね、元々頭こそ良かったけど、強くなんて全くなかったんだから』

 

そう、雪兎は束の言う通り篠ノ之神社にある道場に通うまではただの前世持ちというだけでしかなかった。

 

『白鳥って知ってる?あれ、優雅に泳いでるように見えて水面下では必死にばた足してるんだよ?』

 

『つまり、雪兎君はあの力を人知れない努力で得たと?』

 

『そうだよ。ゆーくんの元々の才能はあの鋭い観察眼とそれに対する対応を瞬時に導く判断力、それとそれを上手く活用する高速切替だけ。後は全部ゆーくんが自分で文字通り血反吐を吐いてまで習得したものだよ』

 

『な、なるほど・・・・』

 

『あと、ゆーくんは確かに強いけど、それは一流として・・・・同じ分野では束さんやちーちゃんみたいな超一流には絶対届かない。あっ、剣術だけは別だよ?ちーちゃんが直々に仕込んだんだから』

 

『超一流には届かない?』

 

『そっ、人間には許容量ってのがある。束さんやちーちゃんみたいな例外を除けば人間の許容量なんてたかが知れてる。ゆーくんはね、その限界ギリギリのところにいるのさ』

 

束が雪兎を評価するのは前世知識からくる発想力もだが、この限界ギリギリまで自身を磨き続けた事だった。自分()には届かないけれども決して諦めななかったその点において束は雪兎を他の凡人とは違う括りにカテゴリーしている。

 

『そして、超一流に同じ分野で届かないとしたらどうすればいいと思う?』

 

『それは別の分野で勝るしか・・・・あっ!?雪兎が相手のメタを張るのは!』

 

『おっ、凡人にしては察しがいいね。その通り。ゆーくんは超一流に勝つ為の手段として相手の弱い部分で勝つ。そのために剣術以外の他の戦い方も多く習得したんだよ』

 

超一流になれないなら、その超一流が一流以下の分野で勝てばいい。雪兎の基本戦術はここから生まれたのだ。

 

『まだわかってない凡人どもにと・く・べ・つに分かりやすく説明するよ?とりあえず苺に例えようか、束さんは天然物の生でも美味しい苺、ちーちゃんは遺伝子組み換えとかで出来た束さんと同じくらい美味しい苺。そして、ゆーくんはね・・・・生では勝てないから色々と調味料とか使ってジャムにしてやっと束さん達の足元くらいの苺ってこと』

 

その例えで多くの観客はようやく納得した。雪兎も好き好んでメタ戦法を使っているのではなく、超一流と呼ばれる者達に並ぶべくそれを使っていたのだと。

 

『あと、本当のチート・・・・よく二次小説とかである神様転生ってやつ。神様に力貰って俺TUEEEEしてるアレ。アレをさっきの例えに当てはめるなら苺の味比べしてるとこに最高級ステーキ持ってくる感じ。判る?完全に別物なの。貰い物の力でそんなのしてて恥ずかしく無いのかな?あのカスどもは』

 

全てを自分の手で得てきた束からすれば特典持ち転生者は非常に不愉快な連中らしい。

 

『さてと、長々と話してる間にゆーくん達は決着がつきそうだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎とシャルロットの戦いは機動力戦からパックを目まぐるしく換える読み合いに変わっていた。

 

「イリュージョンアロー!」

 

「風刃閃!」

 

シャルロットがアンジュルグで矢を放てば、雪兎はヴァイサーガの風刃閃でそれを切り払いつつカウンター。

 

「まだだよ!」

 

それを読んでいたネオフォートレスのアイギスを身代わりにし、クロスキャリバーの砲戦モードで砲撃。

 

「甘い!」

 

それすら読んでいた雪兎はネオウィザードのグラスパーでそれを反射し、ソウルゲインに切り換えて瞬時に距離を詰める。

 

「触れれば切り裂く!」

 

放つのは肘のブレードを伸ばし切り裂く技・舞朱雀。

 

「くっ!」

 

そのブレードにクロスキャリバーのサブアームと腕の武器を切られ、シャルロットはすぐにバルニフィカスに切り換え距離を取るも玄武剛弾でフォートレスのパーツを砕かれてしまう。

 

「やっぱり雪兎は強いや」

 

「これだけ善戦しといてよく言うよ・・・・本当に強くなったな、シャル」

 

雪兎と違いまだ使えるアドヴァンスドに限りがあるとはいえ、ここまで善戦された事に雪兎は笑みを浮かべる。

 

「だから、こいつ(・・・)を使うよ・・・・来い、俺はここにいる!」

 

そして、雪兎はそんなシャルロットに敬意を評しとあるアドヴァンスドを展開する。

 

「【AtS:憑神(アバター)typeスケィス】」

 

それこそ、シャドウズの一部隊を壊滅に追いやったあの禍々しい大鎌を持つアドヴァンスドだった。

 

「ア、バター?」

 

「呆けてる暇はねぇぞ?」

 

そのアドヴァンスドに驚くシャルロットだったが、背後(・・)から聞こえた雪兎の声に慌ててスラッシャーで防御するも、あっさりと雪兎の大鎌に吹き飛ばされる。

 

「つ、強い・・・・」

 

「スピードはバルニフィカスに劣るが攻撃力はこっちの方が上だから、なっ!」

 

距離を置くと左手から球状の雷撃弾を放ち、距離を詰めれば大鎌による攻撃。しかも、慣れないバルニフィカスで戦うシャルロットに雪兎はスケィスを完全に操り追従してくる。

 

『シャルロットちゃん、いくつかのパックを破壊され一気に不利な状況に!』

 

「まだ、まだ僕は負けてない!」

 

それでもシャルロットは諦めずスラッシャーで反撃するが、雪兎はスラッシャーよりも巨大な大鎌を難なく操りそれを受け流す。

 

「悪いが今回は俺が勝つ」

 

必死に食らいつくシャルロットを雪兎どんどん追い詰めていき、とうとうスラッシャーも耐えきれず砕け、大鎌の一撃がシャルロットのシールドエネルギーを削り切った。

 

『し、試合終了~!勝者、天野雪兎!激闘を制したのはやはりこの男だった!』

 

ダメージレベルが大きかったのか、試合が終わるとリヴァイヴⅡは解除され、シャルロットは空中に放り出されるが、雪兎がちゃんとキャッチする。お姫様抱っこで。

 

「よっと」

 

「あ、ありがと、雪兎・・・・」

 

最初はお姫様抱っこに顔を赤くするシャルロットだったが、次第に試合に負けた悔しさが滲み出してくる。

 

「負けちゃったね・・・・」

 

「そんな顔するなよ、シャル」

 

「でも・・・・」

 

「シャルは十分強かったさ・・・・俺が安心して背中を任せられるくらいには」

 

「雪兎・・・・」

 

聞きたかった言葉を雪兎に言われ、シャルロットの目に涙が滲む。

 

「でも、もっと強くなれ、シャル・・・・何時か俺を倒せるほどに、な」

 

「うん!」

 

シャルロットは雪兎に更なる成長を約束し、二人はピットへと戻っていった。お姫様抱っこのまんまで。そのせいでしばらくの間はシャルロットがそれをネタに弄られる事になるのであった。




という訳で恋人対決は雪兎が制しました。
パックの切り換え多くて死ぬかと思った・・・・描写考えるので。

なお、束が色々言っていますが、別に神様転生のアンチでは無いのでご了承下さい。


次回予告

雪兎とシャルロットの激戦に触発され気合いが入る晶と聖。そんな二人はどんな戦いを見せるのか?


次回

「晶VS聖、流星煌めく 兎、彼女と観戦」


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133話 晶VS聖、流星煌めく 兎、彼女と観戦する

少しお待たせしました。
色々とやる事増えて書く時間が・・・・沖田オルタ無課金十連一発!あとは以蔵さんやな

今更ですが、活動報告の人気投票もよろしくお願いします。感想欄でも一応投票は受付ております。詳しくは活動報告か118話のあとがきを参照して下さい。


二回戦第二試合

神宮寺晶VS宮本聖

ファイッ!


『え~、篠ノ之束博士は都合により退席され、新たな解説者としてこの方においていただきました』

 

『用務員のイヴァン=ニルギースだ・・・・何故私が』

 

束の後釜として解説席に着いたのはイヴァンだった。

 

『いや~、イヴァンさん、生徒から人気ですし』

 

『ここはISの操縦者を育成する学園だろうに・・・・』

 

そんな呆れた声を出すイヴァンだが、千冬の罵倒すらご褒美にするような生徒がいるこの学園の生徒にイヴァンのようなイケメンの罵倒もご褒美にしかならない。

 

「イヴァン、苦労してんな」

 

「うん、僕も転入してきた時は本当にビックリしたからイヴァンさんの気持ち判るなぁ」

 

観客席に戻ってきた雪兎とシャルロットはイヴァンの苦労を何となく理解し、やれやれという顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では、二回戦第二試合を始めます。青コーナー、今回もその手に勝利を掴めるか?神宮寺晶!』

 

「相手は聖だ・・・・本音のような消化不良な試合にはならんだろう」

 

やはり本音の自爆は晶としては不満だったようだ。

 

『赤コーナー、一回戦の勢いに乗り二回戦も制するのか?宮本聖!』

 

「晶かぁ・・・・あの万城君とやりあえる近接戦闘能力は危険だよねぇ」

 

何かと龍我と接する機会が多かった聖はそんな龍我と生身で互角だった晶を警戒する。

 

『そして、今回のバトルフィールドは・・・・これだ!ポチっとな』

 

いつものようにARプログラムがバトルフィールドを生成する。生成されたのはマングローブの水没林ステージだった。

 

「私、水のステージに縁あるのかな?」

 

前のステージが海上ステージだった聖がそんな事を考える一方、晶は苦い顔をしていた。

 

「何故かは知らないが嫌な予感がする」

 

そう、何故かこのステージを見た時、晶の第六感とも言うべき何かが警鐘を鳴らしていたのだ。まるで先の本音戦のような何か(・・・・・・・・・・・)が起きるような予感が・・・・

 

『それでは二回戦第二試合、試合開始!』

 

試合が始まると、両者は迷路のようになっているマングローブの水没林に入っていく。水没林を無視して空中戦という選択肢もあったが、それは二人とも選ばなかったようだ。

 

『それにしてもこのARシステム、何ステージあるんでしょうか?』

 

『聞いた話では136通りあると聞いたな。ありとあらゆる状況を想定し、おまけでネタステージも作ったと言っていた』

 

『恐るべし、兎師弟・・・・』

 

すると、水没林から戦闘音が響く。どうやら晶と聖が遭遇し激突したようだ。

 

「やはりそれできたか!」

 

「だって、晶に近付かれるの嫌だし」

 

聖が今回セレクトしたバイザーはシャープガンナー。近接戦闘メインの晶を近付けさせないためのセレクトだ。それをいきなりアーマードモードにしてぶっぱなしているのを見て観客席の生徒の一部が苦い顔をしている。それも無理は無い。何故なら彼女達は体育祭での弾幕を間近で見ていたのだ。そこにセシリアのビットと簪の山嵐・・・・トラウマになっていても不思議は無い。

 

『出ました!トラウマ量産弾幕!』

 

『あれにはジェナス達も引いていたな・・・・』

 

あちらでの事を思い出し遠い顔をするイヴァン。酷い時はそこに簪やタフトも加わり、イヴァンすら敵に同情した程だ。

 

「くっ」

 

「ほらほら!逃げてばっかじゃ勝てないよ!」

 

晶はマングローブの林に隠れながら機を窺うも、聖は両手のヒートチャクラムで次々と林を伐採してはミサイルで爆撃してくる。

 

『マングローブを伐採とはな』

 

『ARだから出来る事ですね』

 

マングローブはエビの養殖場のためや家畜の飼料として伐採され減少が問題視される植物で、海の水質浄化や津波被害の軽減等の事からも再生に力を入れている。そのため現実でそんな事をすれば問題になりかねないのだ。

 

「だが、広くなれば!」

 

周りのマングローブが伐採された事で十分に広さを確保出来た事を確認し、晶は瞬時加速でチャクラムを回避しつつ聖に接敵し、

 

「虎咆穿!」

 

右手の掌から圧縮空気砲を放ち、まずは両腕のガトリングガンを破壊する。

 

「しまっ!?」

 

「まだだ!」

 

更に追撃として足のブレードや両手のクローを展開しての連続攻撃をお見舞いする。だが、聖も一方的にやられるばかりではない。

 

「パージバースト!」

 

装備の過半数を失ったシャープガンナーを勢いよくパージして晶を怯ませ、その隙に聖は新たに呼び出したバイザーに飛び乗りその場を離脱する。

 

「ふぅ、間一髪だよ・・・・ん?」

 

晶から逃げ切り一息ついていた聖だったが、一瞬だけウェーブライダーが光ったかと思うと形状が変わっていた。そう、ここにきてウェーブライダーもナインテイルと同じく土壇場で二次移行したのだ。これで晶達新規組を除く二次移行していないISはそもそも二次移行を想定していない紅椿と打鉄弐式だけになった。

 

『あーっと!ここで聖ちゃんのウェーブライダーまで二次移行してしまった!』

 

『・・・・二次移行とはこんなにポンポンとするものなのか?』

 

『しませんって!兎印のISがおかしいんです!』

 

元々世界でも十機程しか存在しなかった二次移行機だが、雪兎の雪華を筆頭に白式、リヴァイヴⅡ、甲龍、ブルー・ティアーズ、シュヴァルツェア・レーゲン、ナインテイル、そしてウェーブライダーと今年だけで八機ものISが二次移行をするという異常事態が発生している。その全ISが何らかの形で雪兎の手が加わったISである。

 

「やっぱり二次移行か!」

 

試合前から何となくこうなるのを予感していた晶は「どうして私の試合ばっかり!」と絶叫しているが、観客席でも一人絶叫している人がいた・・・・雪兎だ。

 

「毎回毎回モニター用の回線使って人のデータベースからデータ引っこ抜いてんじゃねぇええええ!!」

 

そう、今回もウェーブライダーの二次移行に雪兎のデータベースのデータが利用されたのだ。今回使われたデータはマドカのフッケバインにも使われたヒュッケバイン系のデータとアムドライバーのデータの二つ。二次移行後のウェーブライダーは本体は背面に小型のアクティブブースターが追加され、全身に小型のスラスターが付いた程度なのだが、新たに生成されたバイザーが今までとは大きく違ったのだ。

 

「これって、シーンのエッジバイザーに似てる」

 

そう、今まではボード型で上に乗るだけだったバイザーボード。今回の新バイザーボードは乗り込める(・・・・・)のだ。しかも、そのバイザーボードは先程晶に破壊されたシャープガンナーの後継機と思われ、エッジバイザーを代表する双剣デュランダルの部分がバスターソードを縦に割ってそこに砲身を挟んだかのようなエッジブラスターになり、他にも左右にダブルガトリングガンやミサイルコンテナ等の火器を詰め込んだもう戦車のようなバイザーだった。

 

『もう、何でもありね、兎印のISは・・・・』

 

『あれはもうISと言っていいのだろうか?』

 

もうISというよりビークルである。だが、驚くのはまだ早かった。

 

「うわぁ・・・・流石の私もこれはドン引きですよ」

 

『え~、せっかくマスターの為に選んだのに・・・・』

 

「・・・・」

 

『マスター?』

 

「えっと、もしかして、ウェーブライダー?」

 

『うん!やっとお話できたね、マスター』

 

「雪兎君や一夏から話には聞いてたけど、まさか私もISと話せるようになるなんて・・・・」

 

何と聖は雪兎や一夏ですら三次移行後からしか出来なかったISコアの人格との自由な意識疎通まで出来るようになっていた。

 

「まあ、細かい事は試合が終わってから雪兎君に相談しよ」

 

『マイスターと?』

 

「そっ、だから早く試合終わらせよっか、ライダー」

 

『合点承知!』

 

その後の試合はアーマードモードになった新バイザー【ブラストガンナー】でマングローブの水没林ごと爆撃し、晶が水没林を脱する前に晶のシールドエネルギーを削り切り勝利した。

 

『・・・・勝者、宮本聖・・・・この娘、やっぱり怖い』

 

『あの火力、流石は二次移行機だな』

 

ブラストガンナーの火力はシャープガンナーを大きく上回るもので、観客達は新たなトラウマ製造マシンの誕生に戦慄する事となった。




締まりませんでした。
という訳でウェーブライダーが二次移行しました。
二次移行後の描写をはしょったのは何かぐだぐたしそうだったので・・・・

ブラストガンナーはデュランダルを外したエッジバイザーにあれこれ火器を満載したバイザーボードです。アーマードモードのシルエットはエッジバイザーのブリガンディモードとあまり変わりません。


次回予告

二回戦第三試合は箒と鈴の一夏の幼馴染同士の戦いとなった。最初は二次移行で大きくパワーアップした甲龍改め煌龍に押される箒だったが・・・・


次回

「真の幼馴染決定戦!?箒対鈴! 兎、見守る」



活動報告に質問コーナー作りました。


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134話 真の幼馴染決定戦!?箒対鈴! 兎、見守る

今回はタイトル通り箒と鈴の幼馴染対決。
原作ではこの二人のバトルって意外にもないんですね・・・・タッグはあるのに。

質問コーナーへの質問、人気投票それぞれお願いします。

二回戦第三試合

凰鈴音VS篠ノ之箒

ファイッ!


『さて、第三試合も興味深い組み合わせになりました!青コーナー、中国からやって来た男子コンビのセカンド幼馴染!凰鈴音!』

 

コールと共に入場する鈴の表情はいつにも増して真剣だ。無理も無い。何せ相手は・・・・

 

『赤コーナー、ぽっと出には負けられない!ファースト幼馴染!篠ノ之箒!』

 

対する箒もこの対決が決まった時から、いや、初めて会った時からいつか決着をと思っていた相手。お互いに今までも何度か特訓等で相手をする事はあったが、一対一での真剣勝負というのは意外にも無かった(雪兎が騒ぎを防ぐ為にそうならないよう誘導していたのもあるが)。

 

「「・・・・」」

 

そのせいか、二人とも入場してから一言も発していない。

 

『え~っと・・・・滅茶苦茶空気重いんですが』

 

『先程の君のアナウンス通り二人とも負けられない試合とあって気が張っているのだろう』

 

『こ、今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』

 

イヴァンの指摘が辛かったのか、それともこの重い空気を何とかしたかったのか、薫子はARプログラムを起動させる。今回生成されたステージは風が吹く山々に囲まれた高原だった。

 

『今回は割りと普通なステージですね?』

 

『・・・・ARプログラムも空気を読んだのだろう』

 

相変わらず鈴と箒は無言を貫いているが、確かに重い空気はなくなっている。

 

『それでは二回戦第三試合、試合開始!』

 

試合が開始すると、二人はお互いに両手に剣を握り真っ向から激突する。力では鈴の煌龍の方が上だが、箒はその力押しの剣術を舞のような受け流しで捌き、一瞬の隙を見ては雨月の突きを放つが、鈴も咄嗟に圧縮した空気の壁【嵐壁】を発動し突きを逸らす。そして、その嵐壁を破裂させ広がる風圧を利用して多少のダメージは気にせず鈴は一度箒から距離を取ると左右計八門の龍咆から圧縮空気弾を乱れ射つ。だが、箒も慌てず空裂を数回振るい直撃コースの空気弾だけを相殺する。

 

『何、これ・・・・』

 

『予定調和の演舞のような動きだな。お互いにこれくらい出来て当然と思っているのだろう』

 

『えっ?何その高度な読み合い・・・・』

 

「準備運動は終わったか?鈴」

 

「ええ、ここからが本番よ!」

 

そこでようやく言葉を交わしたかと思えば、今の攻防はただの準備運動だと口にする両者。

 

「いくわよ、炎龍!氷龍!」

 

その声と共に鈴は両手の双刀に炎と氷の龍を纏わせ箒に斬り掛かる。

 

「ならば!」

 

対する箒は雨月と空裂、更に足の展開装甲から光刃を出し変則的四刀流で応戦し、超高熱と超低温の連撃をまともには受けず、双龍が纏われていない腕や煌龍本体を狙う箒だが、鈴もそれを知ってわざと双刀を間に挟むように立ち回り直撃を避ける。

 

「くっ」

 

「この炎龍と氷龍を警戒するのは判るけど、そんな消極的な攻めじゃこの煌龍は破れないわよ!」

 

そう言うと、鈴は双刀の柄同士を繋げ双刃剣にし、それをバトンのようにクルクルと回転させる。すると、それに合わせて剣が纏っていた炎と氷の龍がその外側を回り始め熱気と冷気が渦巻き出す。

 

「食らいなさい!【双龍乱波】!」

 

「うわぁあああ!?」

 

熱気と冷気が高速で渦巻く事で生まれた乱気流の竜巻を発生させる鈴の大技に箒は避ける事は叶わず、そのまま山の一つに叩き付けられる。

 

『鈴音ちゃんの大技が炸裂!』

 

『私はもう天候操作が出来ると聞いても驚かん』

 

※別の平行世界には疑似的にではあるが、天候操作出来るISが存在する模様。

 

「・・・・くっ、やはりパワーは煌龍の方が上か」

 

ここで言うパワーとはただの腕力等の力ではなく、瞬間的に発揮出来る最大出力の事だ。紅椿は絢爛舞踏のおかげで長期戦には強いISではあるが、白式や煌龍のように一撃で勝負を決してしまうようなISとは相性が悪い。それに、シールドエネルギーは回復しても箒本人の疲労等は回復しないという欠点もある。

 

(やはり私がまだ紅椿を使いこなせていないという事か・・・・)

 

紅椿は無段階移行という一種のリミッターのようなもので能力を制限しており、箒の能力が一定を超えるとその制限が解かれ様々な装備や機能が使えるようになるIS。絢爛舞踏という単一仕様能力こそ得たものの、箒の紅椿の解放率は未だに40%程で、紅椿が真価を発揮しているとは言い難い状態だ。

 

(私がまだ未熟なのは認める・・・・だが!この試合は!鈴にだけは負ける訳にはいかんのだ!)

 

よろめきながらも雨月を杖に立ち上がる箒の眼がカロリナ戦の時のように真紅に染まると、紅椿から新たな装備が解放される。

 

「これは・・・・【刃衣(はごろも)】?」

 

背面のユニットをビットとして浮遊状態にし、背面から鋭い刃のようなパーツで構成された羽衣のようなアーマーを纏った形態に変形した紅椿に困惑する箒。雨月と空裂もこの形態では使えないようだ。

 

「ええい!こうなったら、穿千!」

 

使えない双刀の代わりに両腕の穿千を展開しようとすると、左腕だけに普段より大型穿千が展開された。

 

「へぇ~、この煌龍と撃ち合おうっての?いいわ!乗ったげる!」

 

それを見た鈴は八基の龍咆を前面に揃え連動させ、肉眼でも見えるくらいに空気を圧縮し空間を歪ませる。

 

「大型化したということは威力も上がっているはず・・・・」

 

箒もそれに対抗して実態化エネルギーの弦を引くと、紅椿のシールドエネルギーが物凄い勢いで減っていく。

 

「何だこの大食らいは!?絢爛舞踏!」

 

慌てて絢爛舞踏を発動するが、シールドエネルギーは少しずつしか回復せず、そのほとんどを大型化した穿千に持っていかれる。そして、そのエネルギーと比例するように穿千の光の矢は槍と見間違う大きさになる。

 

「これで!決めたげる!覇龍咆哮!!」

 

「千矢を超える一矢となれ!穿千・極!」

 

両者フルチャージで放ったその一撃は双方共に凄まじい威力を誇っていたが、その勝敗はその性質の差で決まった。

 

「嘘っ!?」

 

勝ったのは穿千・極だった。覇龍咆哮も確かに強力ではあるが、要は圧縮した空気を方向性を持たせて解放する技。対して穿千・極は一点にエネルギーを集中させた高密度エネルギーであり、その一撃は覇龍咆哮を貫通して霧散させ、その射線上にいた煌龍に命中する。溜め込んだエネルギーを開放し煌龍の残っていたシールドエネルギーを全て奪い去った。

 

『し、試合終了!勝者、篠ノ之箒!』

 

「・・・・負けた?」

 

試合終了のブザーと共に箒の勝利が告げられ、まだ信じられない鈴は受けたダメージよりもその事実に唖然としていた。

 

「鈴・・・・」

 

「な、何て顔してんのよ!あんたが勝ったんでしょうが!」

 

そこに箒が近付いてくるが、鈴は顔を背けてそう告げる。

 

「・・・・私に勝ったんだから、簡単に負けるんじゃないわよ?」

 

「ああ、約束する」

 

箒にそう言うと鈴はピットに戻り煌龍を解除するとそのまま廊下に出てその場に座り込み涙を流す。

 

(負けちゃった・・・・全力で挑んだのに、負けちゃったよ)

 

勝ちたかった。だが、それよりも負けたくなかった。同じ幼馴染として、一夏を慕う同士として、鈴は箒にだけは負けたくなかった。それが悔しくて、鈴は一人泣いていた。だが・・・・

 

「鈴、大丈夫か?」

 

「一夏・・・・」

 

丁度そこへ次の試合の為にピットへ向かっていた一夏が通りかかった。鈴としては今は会いたくないけど会いたかった人。それが目の前にいる。気付けば鈴は一夏に抱きついていた。体格差の関係で一夏の胸の中にすっぽり収まってしまう鈴だが、今はそれが都合が良かった。

 

「鈴・・・・」

 

「ごめん・・・・ちょっとだけ、こうさせて」

 

いつも強気な鈴の弱々しいその言葉に一夏は黙って鈴を抱き締めてその胸を貸す。

 

「ああ、今だけは俺は何も聞かないし、聞こえないから」

 

「う、うわぁああああん!!」

 

一夏のその言葉で鈴の我慢は限界を迎え、恥も何もかも忘れて鈴は泣いた。おそらく、鈴がこれほどまでに泣いたのはIS学園に来て初めてだろう。一夏は鈴が泣き止むまでそっと鈴を抱き締め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私は、何をしているのだろうな・・・・)

 

鈴の様子が気になり反対側のピットから駆けつけた箒が見たのは一夏に抱き締められながら泣く鈴の姿だった。それを見た箒は二人に気付かれないよう慌ててその場を離れたが、その胸は今まで感じた事が無い程に締めつけられる感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、観客席では・・・・

 

「雪兎・・・・さっきのあれって」

 

「箒の眼、赤く(・・)なってた・・・・あれは一体」

 

他の観客は箒の大逆転劇に気を取られて気付いてはいなかったが、雪兎とシャルロットはモニター越しではあったが確かに見ていた・・・・箒の瞳が真紅に染まっていたのを。




今回の勝者は箒でした。

そして、とうとう箒の眼の変化に雪兎達が気付きました。
この変化は一体何を意味するのか?



次回予告

二回戦最終試合はセシリアと一夏というクラス代表決定戦を思い起こさせる一戦。以前は雪兎の特訓で何とか勝利した一夏は進化したセシリアを下せるのか?


次回

「蒼と白の再戦! 兎、調べる」


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135話 蒼と白の再戦! 兎、調べる

special1こと質問回は設定集の下に移動させました。

二回戦最終試合はセシリアと一夏、この一夏にとって初めての試合と同じ組み合わせはどんな結末を迎えるのか?

二回戦最終試合

セシリア=オルコットVS織斑一夏

ファイッ!


『さて、二回戦も最終試合となりました!この試合の組み合わせも私は大変興味深いです。まずは青コーナー、かつてのリベンジなるか!?セシリア=オルコット!』

 

まず入場したのはセシリア。その表情はいつになく真剣だ。

 

『対する赤コーナー、今回も勝利することが出来るのか!?織斑一夏!』

 

蒼き天使と白き騎士がアリーナで向き合う。

 

「この組み合わせ、懐かしいな」

 

「ええ、クラス代表決定戦を思い出しますわ」

 

あの時は雪兎の入れ知恵で何とかセシリアに勝利した一夏。しかし、今回はセシリアもかつてとは比べものにならない成長を遂げており、一筋縄ではいかない事が一夏にも理解出来ていた。

 

「でも今回ばかりは誰が相手でも譲れねぇ」

 

「一夏さん・・・・」

 

そう、一夏にはどうしても超えなければならない(雪兎)がいる。先ばかり見て今の相手(セシリア)を見れないような状態にはなってはいないが、一夏は既に先を見据えている。

 

「であるならば、まずは私を超えてみせなさい!」

 

『今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』

 

ARプログラムが生成したフィールドは火山地帯。

 

『今回は火山ステージですね』

 

『酷環境下でのテスト用のフィールドだそうだ』

 

「エレガントとは言い難いステージですが、全力で行かせていただきます!」

 

「ああ、俺も全力で行くぜ!セシリア!」

 

『それでは二回戦最終試合、試合開始!』

 

「お行きなさい!ブルー・ティアーズ!」

 

開始早々セシリアはビットを展開し、ランパードランチャーと合わせて波状攻撃を仕掛ける。

 

「そうくると思ってたぜ!」

 

一夏もそれを予想しエナジーウイングで防御しながら雪羅弐型を砲撃形態にし、新しく追加された攻撃パターン・拡散砲でビットを迎撃しようとするが、ビットは三基ずつ集まって防御フィールドを生成、本体の方はシールドブースターが展開し拡散砲を防いでいた。

 

「効きませんわ!」

 

「なら、これはどうだ!」

 

防がれはしたが、一夏の本当の目的はセシリアとビットの動きを止める事。動きを止めたセシリアに煌月白牙を突きの構えで持ちエナジーウイングを使った変則機動で突撃する。しかし、セシリアはそれをシールドブースターを一基犠牲にすることでその場を逃れ再び一夏との距離を取る。

 

「シールドブースターを身代わりにするなんて、思い切った事を」

 

「このくらいでその刀の直撃を避けられるのでしたら安いものですわ」

 

何の躊躇いなくシールドブースターを身代わりにしたセシリアに一夏は内心舌打ちと称賛の言葉を溢す。以前の、一夏達と出会う前のセシリアならそんな無様を晒すくらいなら素直に負けていただろう。だが、異世界とはいえ実際の戦場を生き抜いたセシリアにそのような小さなプライド等残ってはおらず、先程は「超えてみせろ」と口にしたにも関わらず負ける気等微塵も考えてはいない。そんなセシリアに一夏は思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「・・・・俺はどうやらとんだ果報者らしい」

 

「今更気付きまして?」

 

「ああ、姉に親友(ライバル)に、そして仲間達に・・・・俺は本当に恵まれてる」

 

そして、一夏は一度煌月白牙を鞘に納め、抜刀の構えを取る。

 

「八葉一刀流、初伝。織斑一夏・・・・推して参る!」

 

「さあ、踊りなさいませ・・・・私とガブリエルの天の旋律で!」

 

目まぐるしく位置を変え、刀と槍がぶつかり、羽とレーザーが交差する。その戦いはまるで白と蒼の天使の舞のようだった。

 

『め、目が追い付かない激しい攻防!』

 

『また腕を上げたな、二人とも』

 

そんな中、セシリアは一度ビットを自分の側に呼び戻すとランパードランチャーを変形させ一斉掃射する。

 

「いきますわ!レイストーム!」

 

「くっ、白凰!」

 

一夏は咄嗟にエナジーウイングで防御するが、光の奔流は次々と一夏を襲い、最後に放たれたミサイルビットで一夏は爆炎に包まれた。

 

『おっと!ここでセシリアちゃんの容赦無い攻撃が命中!これは流石に決まったか!?』

 

『いや、まだだ』

 

爆炎が晴れ、一夏が居たはずの場所を見れば、残っていたのは分離した白凰のみ。そこに白式と一夏の姿が無い。

 

「身代わり!?一夏さんは何処へ?」

 

「俺はここだ」

 

すると、セシリアの背後から一夏の声が聞こえ、セシリアの背に煌月白牙が突き付けられる。

 

「やられましたわ・・・・白凰を囮にして背後に回っていたんですわね?」

 

「ああ、白凰にもコアがあるから反応は誤魔化せる。それにあれだけの爆炎で目をそちらに向けさせて、エナジーウイングでセンサーをジャミングする事で背後を取ったのさ」

 

「・・・・私の負けですわね。本当に雪兎さんと戦い方が似てきましたわ」

 

「あははは、それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 

『試合終了!勝者、織斑一夏!』

 

最後は一夏の咄嗟の判断が勝敗を決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、雪兎とシャルロットは束の元を訪れていた。理由は勿論箒のあの紅く染まった眼の事だ。

 

「束さん、箒のアレは一体・・・・」

 

「ゆーくんも気付いたんだ、アレに」

 

「俺も?って事は・・・・」

 

「やはりそういう事か、束」

 

「織斑先生!?」

 

そこに千冬も姿を現した。

 

「篠ノ之のアレはやはりあの時のアレか」

 

「さっすがはちーちゃん、お見通しなんだね」

 

「織斑先生もアレが何か知ってるんですか?」

 

「・・・・暮桜、あのISの凍結と何か関係があるんですね?」

 

束同様、千冬も何か知っていると知り、千冬に訊ねるシャルロットに対し、雪兎もそれに気付く。

 

「その通りだ。おそらく篠ノ之の専用機、紅椿は」

 

「そうだよ。ちーちゃんが暮桜で戦った暴走したIS【赤月】をベースにして開発したISだよ」




今回も短めですみません。

次回からは準決勝となります。
そして、紅椿の前身となったIS・赤月とは?これは箒VS一夏戦で。



次回予告

ついにトーナメントは準決勝に突入。束から聞かされた紅椿の秘密に衝撃を受けた雪兎だが、その相手は二次移行を遂げた聖。シャルロットと同じく同様のコンセプトで開発されたウェーブライダーに雪兎はどう戦うのか?

次回

「波乱の準決勝! 兎、秘密を知る」


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136話 波乱の準決勝! 兎、秘密を知る

いよいよ準決勝。

今回は最初の方ネタバレ+独自解釈の強い会話が入ります。

新型アドヴァンスドも登場します。

準決勝第一試合

天野雪兎VS宮本聖

ファイッ!


「赤月?」

 

「そう、この束さんが白騎士の次に開発した箒ちゃんの専用機だよ」

 

白騎士事件後、束はずっとISコアの作成をしており肝心のISは作っていなかった。そして、467個目のコアを作成後、束は行方を眩ませ、束の二機目のIS・赤月が開発された。

 

「これはさっきもチラッと言ったけど、箒ちゃん専用に作ったISでね。でも、いざ箒ちゃんに乗ってもらったら予想以上に箒ちゃんとコアの相性が良くてね」

 

「・・・・暴走したと?」

 

「そうだ。そしてそれを知った私は篠ノ之を止めるべく暮桜を無断で持ち出した」

 

「そのせいで暮桜は凍結。赤月も一度封印して、箒ちゃんの記憶も箒ちゃん自身の願いで書き換えておいたんだけどね」

 

「その後、その赤月を紅椿という枷を着けて再び箒にって訳か・・・・なるほどな、道理で紅椿のプロテクトが厳重な訳だ」

 

つまり無段階移行システムは赤月を箒に馴染ませる為に設けられた補助輪のようなもの。だが、それではあの箒の紅い瞳の説明にはなっていない。

 

「多分、原因は京都でのアレだね」

 

「!?ISコアへの直接ハッキング!」

 

そう、その原因は京都での剥離剤を使ったハッキング。それにより赤月のロックが緩んだのではないかと束は言う。

 

「あの後、ロックは掛け直したんだけど、どうも箒ちゃんの方にバックドアを仕掛けてたみたいで」

 

「それで発見が遅れたのか」

 

こればかりは束にも予測出来なかったことらしく。本当ならトーナメントを中止して調べておきたかったが、そうなった場合、一夏との試合を心待ちにしていた箒のストレスから赤月がバックドア経由で何を仕出かすか判らなかったのでトーナメント後に調査をする事と、万が一暴走した場合は雪兎や千冬が拘束し再度夕凪燈夜の使用が決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え~ここで準決勝の前に解説者の増員として新たに初代ブリュンヒルデにして我が校の教員・織斑千冬先生におこしいただきました。織斑先生、お願いします』

 

『よろしく頼む』

 

このサプライズに観客席から黄色歓声が上がる。いつもの事だ。

 

『まずは青コーナー、優勝候補筆頭!その戦いはまさに変幻自在!相手に合わせて装備を変え圧倒する奇才、天野雪兎!』

 

『引き出しの多いアイツ(雪兎)の事だ。また何か新しい手を繰り出してくるだろう』

 

雪兎のやり口を熟知している千冬からすれば雪兎がここで何かしらの手札を切ってくると思っているようだ。

 

『対する赤コーナー、まるで波に乗ったような快進撃を続けるダークホース!宮本聖!』

 

『宮本か、宮本は他の連中に隠れがちだが優秀な生徒だ。それに宮本の専用機は天野並みに手が読めん厄介さがある。それをどう活かすかが勝敗の決め手になるだろう』

 

『なるほど。今回のバトルフィールドは・・・・これだ!ポチッとな』

 

今回、ARプログラムが生成したステージは氷の海で構成された氷河ステージ。そう、また海関係ステージだった。

 

「あっ、また海ステージだ」

 

「三連続海関係ステージって、どんな運だよ・・・・」

 

『モチーフがサーファーなウェーブライダーがいるせいか、聖ちゃんの出る試合は海ばっかりですね』

 

『これもISの特殊環境テスト用のステージか・・・・』

 

先程の火山と対になっている氷河ステージ。他にもこのような過酷環境ステージはいくつかあるんだとか。

 

「このステージならアレが使えそうだな」

 

そう呟くと、雪兎はあるアドヴァンスドに換装する。それは白と赤のカラーリングに紫のクリアパーツを持つ重装備型のアドヴァンスド。

 

「【AA:アメイジングアルケミスト】二次移行したそいつの実力、見せてもらおうか!」

 

「うわぁ、またやばそうなのが・・・・なら、こっちもブラストガンナーで」

 

雪兎の新アドヴァンスド・アメイジングアルケミストに対し、聖もブラストガンナーを展開する。

 

『それでは準決勝第一試合、試合開始!』

 

「さあ、祭りを始めようか!」

 

先手は雪兎。挨拶代わりに全身に備えたミサイルを一斉発射する。

 

「げ、迎撃するよ!ライダー!」

 

そう言ってミサイルを聖も全身の銃器で迎撃するが、雪兎が放ったミサイルは普通のミサイルだけでなく、黒褐色のクリスタルのようなものが混ざっており、それが聖の周りに散布される。

 

「ジャミング用のチャフじゃない?じゃあ、これは・・・・」

 

『これは・・・・マスター!逃げて!』

 

ウェーブライダーが聖に警告するも既に遅く、雪兎は聖に向けて今度はビーム兵器を展開し一斉総射する。だが、それは聖を正確に狙ってはおらず、散布されたクリスタルの範囲を狙った攻撃だった。

 

「どこを狙っーーえっ?」

 

しかし、その理由は直ぐに判った。なんと、雪兎の放ったビームはクリスタルに命中するとそれを乱反射し聖に襲いかかる。

 

「これってシャルロットさんとの試合の時の!?」

 

「大・正・解!」

 

クリスタルの正体は光学兵器を反射する特殊鉱石で作られた物で、先程の攻撃はそのクリスタルを利用した攻撃なのだ。

 

「これぞ、光と闇の舞さ。ほれ、次いくぞ!」

 

すると、今度は別の装備を展開し追撃する雪兎。

 

「この、弾幕、性能!ガンナーの強化タイプ!?」

 

「ガンナーだけじゃねぇよ!」

 

雪兎の言葉に合わせて背面の四つのユニットが分離する。

 

「ビット!?まさかウィザードも!?」

 

「またまた正解!」

 

そう、アメイジングアルケミストはガンナーとウィザードの特性を併せ持つアドヴァンスドなのだ。ビットはガトリングタイプとビームキャノンタイプがおり、本体と連携して聖を攻撃する。

 

『う、うわぁ~・・・・またえげつないのが出てきましたね』

 

『あれだけの装備の同時制御となるとやはり動きは鈍くなるが・・・・あの弾幕がある以上関係あるまい』

 

『そうだな。一見隙に見える距離もビットで完全にカバーしている。まあ、あれだけではなさそうではあるがな』

 

聖も今はなんとかブラストガンナーで相殺しているが、雪兎はまだ余裕があるように見える。一方、バトルフィールドの氷河は雪兎の放つ攻撃で粉々になっていく。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

そして、雪兎は勝負を決めるべくアメイジングアルケミストの全武装を展開する。実弾兵器にビーム兵器、全身の装甲に内蔵されたミサイルにバーストバイザーが装備していた大型ミサイルまで多種多様の武装が現れる。

 

「死ぬなよ?全武装一斉掃射(アメイジングフルブラスト)!!」

 

「ちょっ!?」

 

ガンナーの一斉掃射が鉄の豪雨だとするなら、このアメイジングアルケミストの全武装一斉掃射は大嵐。聖は逃げる事も迎撃する事も叶わず、その嵐に呑まれてしまう。その後も一方的に雪兎が放つミサイルの爆音や銃撃音が響き聖の姿も爆炎で見る事が出来ない。だが、聖のシールドエネルギーが尽きた事はアリーナのモニターで確認出来た。

 

『・・・・何、あれ?』

 

『相手に何もさせぬ圧倒的な火力・・・・雪兎のやつ、あのアドヴァンスドを纏ってから一歩も動いてないとはな』

 

『高機動型で一気に近付けばチャンスはあっただろうな。あれはデュノアが使ったクロスキャリバー以上に機動力を殺している』

 

『ほ、本当にえげつないアドヴァンスドですね、あれ・・・・それはともかく!試合終了ォ!勝者、天野雪兎!』

 

薫子の試合終了コールと共に爆炎が晴れると、目を回した聖が海に漂っている。観客席もあまりの光景にしーんと静まりかえっている。

 

「きゅ~・・・・」

 

「少し、やり過ぎたか?」

 

こうして、雪兎はあまりにもあっさりと決勝への切符を手にするのだった。




遅くなった割に短くてすいません。

そして、アメイジングアルケミスト・・・・新たなトラウマ製造機アドヴァンスドです。


次回予告

雪兎が決勝進出を決め、次の第二試合は箒VS一夏の試合。互いに全力でぶつかり合う中、箒の紅椿に異変が生じ・・・・


次回

「大暴走!?赤月現る! 兎、見守る」


遅れましたが、本日は箒の誕生日。ファース党の皆様を筆頭にお祝いしましょう。


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137話 大暴走!?赤月現る! 兎、見守る

大変遅くなって申し訳ありません・・・・

サブタイ通りあのISが登場しますが、設定に幾つか違いがあります。これは平行世界の設定という事でご了承願います。

準決勝第二試合

篠ノ之箒VS織斑一夏

ファイッ!


『え~、続きまして準決勝第二試合を行います』

 

第一試合の雪兎の蹂躙劇の衝撃から観客席が落ち着いたのを見計らい薫子が第二試合の選手紹介を始める。

 

『青コーナー、前の試合では逆転劇を見せてくれた武士道ガール!篠ノ之箒!』

 

『・・・・紅椿は数少ない第4世代機だ。その能力は未知数。油断は禁物だな』

 

『前回の刃衣だったか?あれと通常形態の使い分けが今後の課題だろう』

 

その箒は少し緊張した表情でアリーナに現れる。箒は元々専用機持ちではなかった。だが、一夏と共に在りたいが為にそれまで嫌悪していた姉・束に専用機・紅椿を求め、その初陣である福音戦では一夏や雪兎に多大な迷惑をかけた。更に京都では油断からオータムに剥離剤改で暴走させられ再び一夏に救われた。そんな自分が一夏の隣に立つ為に挑んだこのトーナメントだったが、前の試合の後の一夏と鈴の姿を見て酷く胸が締めつけられる感覚を覚えた。それが醜い嫉妬だと箒も気付いており、そのせいで心が曇っているのを箒は自覚していた。

 

(・・・・こんな私に一夏と並ぶ資格があるのか?)

 

そんな迷いを抱える箒だが、試合は待ってはくれない。

 

『赤コーナー、この試合を制しライバルの元へ辿り着けるのか!?織斑一夏!』

 

『ISを知り、初めて触れたのが一年前とは思えない成長だな』

 

『まだまだあいつはひよっこだ』

 

やはり千冬は一夏には厳しい。

 

「ははは・・・・やっぱ、千ふ、織斑先生は厳しいぜ」

 

そんな千冬のコメントに苦笑しながら入場する一夏だが、内心では先程雪兎から聞かされた言葉が頭を離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一夏、もしかすると次の試合で箒が・・・・いや、紅椿が暴走する可能性がある』

 

『えっ?』

 

『前に京都で暴走した際に束さんが掛けてたリミッターの一つがぶっ壊れちまったらしい』

 

『でも!あれは俺が夕凪燈夜で!』

 

『・・・・紅椿の、ISの方はそれで何とかなった』

 

『なら何で・・・・まさか!?』

 

『ああ、問題は()の方なんだよ』

 

その後、一夏も紅椿の真実を聞かされた。まさか自分の知らないところでそんな事が起きていたとは知らず、一夏はショックを受けたが、箒の成長次第では何れは赤月もちゃんとコントロール出来るとも聞かされ、トーナメント中に暴走しなければ今後はそのコントロールの為の訓練に移行するとも雪兎は言っていた。つまり、問題なのはこの試合が最も暴走する可能性が高いという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(箒・・・・)

 

『今回バトルフィールドは・・・・これだ!』

 

二人が思い悩む中、ARプログラムによってバトルフィールドが生成される。生成されたのは無数の桜に囲まれた幻想的なフィールドだった。

 

『・・・・これはまた絵になるフィールドが』

 

『白式と紅椿で桜というわけか』

 

『・・・・このランダム設定、本当にランダムなんだろうな?』

 

こうもピッタリなフィールドが選ばれたことに千冬はが疑いの目を向けるが、間違いなくランダムである。

 

『そ、それはさておき、準決勝第二試合、試合開始!』

 

千冬の視線にビビりながらも試合開始を告げる。

 

「・・・・箒、いくぞ!」

 

「こい!一夏!」

 

まだ吹っ切れてはいないが、一夏は試合に集中する事にし、煌月白牙と雪片参型を手にする。それに対し箒も雨月と空裂を手にした。

 

「はぁ!」

 

「ふん!」

 

白と紅の刃がぶつかり合う度にその衝撃で桜の花が舞い散る。が、箒の方が若干押され気味であった。

 

「くっ・・・・(一夏はまた腕を上げたというのか)」

 

そう!これは雪兎との特訓で一夏が剣の実力を取り戻し、技を学んだ事で腕を磨き、白式の強化で更なる力を得たからだ。対して箒はまだ紅椿の能力を十全に使えているかと言えば実はまだ五割も満足に使えておらず、紅椿に振り回されているのが現状だ。

 

(それに比べ私は・・・・これではもう一夏にとやかく言う資格は無いな)

 

入学当時に剣道を離れていたと聞き憤慨した箒だったが、その実力は既に越えられたと思ってもいいだろう。それが箒には嬉しくもあり、悔しくもあった。

 

(力が欲しい・・・・一夏と共に戦う力が、一夏と並ぶ力が!)

 

その時、箒の内から何か、錆び付いた鎖が砕けたような音と共に再び箒の瞳が真紅に輝き力が溢れ出す。

 

「はぁ!」

 

「くっ、箒の力が・・・・」

 

突然箒の力が増した事に困惑する一夏。力だけではない。その技のキレやスピードも格段に上がっている。

 

「そうだ!この力があれば私は!」

 

『マスター!箒さんの瞳が』

 

「紅い瞳・・・・これが雪兎が言っていた」

 

「一夏ぁ!今のお前の相手は私だ!私だけを見ろ!!」

 

だが、次第に力に飲まれ始めた箒は一夏が自分以外の誰かを思い浮かべる事すら許さない苛烈さを見せる。

 

「やめろ箒!その力は!」

 

「五月蝿い!うるさい!ウルサイ!」

 

それでも一夏の防御を破れない事に苛立ち、更なる力を欲する。

 

「もっとだ!もっと力をよこせ!紅椿!いや・・・・【赤月】!」

 

そして、箒にその名を口にした。雪兎達が最も警戒していたその名を。すると、紅椿を覆っていた装甲がパージされ、紅椿とは似て非なるIS【赤月】が姿を現す。

 

「あれが・・・・赤月」

 

真紅の装甲であった紅椿とはまた色合いの違う深紅の装甲を持つ赤月。

 

「これが私の力だ!」

 

「箒!」

 

『ちっ、完全に飲まれやがったか・・・・あの馬鹿が』

 

「雪兎!」

 

その時、一夏に雪兎から通信が入る。

 

『予定通り俺や織斑先生達で突入して赤月を止める。その後、一夏は夕凪燈夜でーー』

 

「その事なんだが・・・・俺一人でやらせてくれ」

 

雪兎は赤月が暴走した際の作戦を改めて伝えるが、一夏はそれを一人でやりたいと言い出した。

 

『一夏、お前は状況が判ってるのか?』

 

「判ってる!でも、これは俺がやらなきゃダメなんだ!」

 

『・・・・はぁ、お前は一度言い出したら聞かねえからな。無理だと判断したら勝手に介入する、いいな?』

 

「ああ!」

 

おそらく言っても無駄だと雪兎は判断し、本当に危なくなったら問答無用で介入すると告げた。

 

『邪魔されたくなかったらさっさとあの馬鹿を叩き起こしてこい』

 

 

「おう!」

 

迷いの晴れた一夏は赤月とも対等に渡り合うも、赤月には絢爛舞踏がある。更に時間を掛ければ雪兎達が介入してきてしまう。

 

「何か、何か手は・・・・」

 

『マスター、彼女を正気に戻せればいいのですね?』

 

「手があるのか?白式」

 

『ええ、赤月とコアネットワークを繋いでまとめて精神世界(アンダーワールド)に取り込めば』

 

「アンダーワールド?」

 

『以前にマスターがラウラさんや私達が話したあの場所です』

 

白式が言うには、至近距離に接近できればその精神世界に箒と赤月を連れ込む事が出来るのだと言う。

 

「それを使えば箒を助けられるんだな?」

 

『はい・・・・しかし、精神世界で私達が敗れればマスターが無防備になるか、最悪マスターも・・・・』

 

「箒と同じ状態になる、か」

 

『はい』

 

そんな一か八かの手ではあるが、一夏は笑みを浮かべてこう答えた。

 

「やってやるさ。一か八かなんて今更だぜ、白式」

 

今までも雪兎のお膳立てはあったとはいえ、何度もそんな状況をくぐり抜けてきた一夏にとって、そんな事に今更であった。

 

「それに、俺が失敗しても雪兎や千冬姉達がいるんだ。なら、俺は何も怖れず前だけ見ていられる」

 

『はぁ・・・・マイスター達の気持ちがよくわかりますね』

 

『白式お姉ちゃん、今更だよ』

 

「頼む二人とも、俺に力を貸してくれ」

 

『当たり前だよ、私達はお兄ちゃん(マスター)のISなんだから』

 

『行きましょう、マスター』

 

そこからはエナジーウイングで高速移動を繰り返し、隙を探し回避を続ける。

 

「避けてばかりかっ!一夏ぁ!」

 

そんな一夏に暴走し、気持ちが昂っている箒は次第に攻撃が単調かつ大振りになっていく。

 

『マスター!』

 

「ああ!今だ!」

 

そして出来た一瞬の隙を突き、光を纏わせた左腕を箒に突き出した。

 

「いけぇええええ!!」

 

その瞬間、一夏と箒を白い光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付けば一夏はバトルフィールドと同じ桜の舞う場所にいた。違いがあるとすればそれはここが夜のように暗い事だ。

 

「ここが・・・・」

 

『赤月とリンクした精神世界です、マスター』

 

「なら、ここに箒が・・・・」

 

『はい』

 

『こっちだよ、お兄ちゃん(マスター)!』

 

白凰に導かれた先にいたのは今より少し幼い箒だった。その箒は自分の殻に閉じ籠るように踞っていた。

 

「箒・・・・」

 

一夏が声をかけるも箒には反応が無い。

 

『マスター、おそらく赤月に関する記憶を取り戻して、その罪悪感から閉じ籠ってしまったのでは?』

 

「箒、いつもの強気な箒はどこにいっちまったんだよ?」

 

「・・・・」

 

一夏が再び呼び掛けると、無言ながら箒に少しだけ反応があった。

 

「赤月の話は雪兎から聞いた。でも、だからってずっとこのままでいるつもりかよ!」

 

「・・・・お前に、何が分かる」

 

やっと一夏の言葉に返事を返した箒だが、その声にいつもの覇気は無い。

 

「私は思い出したんだ・・・・紅椿の時が、あの時、お前に庇われた時よりも前に・・・・私は、とんでもない失態を犯していたんだ」

 

箒が言っているのはおそらく赤月が暴走し、千冬がそれを止めた一件の事を言っているのだろう。

 

「私には、私にはやはりISに乗る資格などなかったのだ!あの時も!福音の時も!そして、今回も!私がISに乗ったばかりに起こった事だ!」

 

「箒・・・・」

 

そんな箒の慟哭に一夏も言葉が続かない。

 

「軽蔑したろう?これが私だ・・・・都合の悪い事は忘れてのうのうと生きていた私にISを扱う資格、ましてやお前といる資格など・・・・」

 

「そんな事はない!」

 

だが、続く箒の言葉に一夏はすぐさま言い返す。

 

「誰かと一緒にいたいのに資格なんているか!そもそも箒は俺の幼馴染だろうが!」

 

「幼馴染なら鈴もいるであろう!私がいなくなったところで誰もーー」

 

そう箒が言いかけたところで一夏は箒の頬を叩いた。

 

「えっ?」

 

「誰も悲しまないとか言うつもりか!?そんな訳ねぇだろうが!!」

 

「・・・・いち、か?」

 

叩かれるとは思っていなかった箒が唖然としつつ一夏を見上げると、一夏は酷く悲しそうな顔をしていた。

 

「だったら何で俺はここにいる!?いなくなっても構わないようなやつの為に命を張る訳ねぇだろうが!この大馬鹿野郎!!」

 

「だが、私は・・・・」

 

「間違ったってんなら謝ればいい!償えばいい!だから、そんな寂しい事言うなよ、箒」

 

「私、は・・・・また、やり直して、いいのか?」

 

「ああ!」

 

「お前の、そばに、いて、いいのか?」

 

「ああ!だから帰ってこい!箒!」

 

一夏が伸ばした手を箒が恐る恐る握ると、暗かった空間に陽の光が射し込み、箒の姿も幼い姿から元の箒へと戻っている。

 

『やれやれ、手の掛かる主な事だ』

 

すると、そこに巫女装束姿の箒によく似た少女が現れる。

 

「君はあの時の!」

 

「お前は・・・・紅椿、いや、赤月なのか?」

 

『そうだ。私は赤月であり紅椿でもある』

 

それは赤月及び紅椿のコアの管理人格であった。

 

『織斑一夏、主が世話になったな』

 

「箒の姿でそう呼ばれると違和感が凄いな」

 

『では私も一夏と呼ばせてもらおう。一夏、改めて礼を言う』

 

「礼なんていいよ。俺はこの馬鹿な幼馴染を叩き起こしにきただけなんだから」

 

「ば、馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!」

 

「やっといつもの箒に戻ったな?」

 

「はっ!?」

 

『・・・・夫婦漫才は帰ってやってくれ』

 

そんなやり取りをしていると、一夏と箒の姿が薄れ始める。

 

「これは」

 

「もう帰れってことかな?」

 

『そういう事だ・・・・一夏、主を頼む』

 

「ああ、任された」

 

一夏の返事を聞き、赤月は笑みを浮かべたところで一夏と箒の意識が現実へと浮上した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精神世界にいたのは現実ではほんの一瞬だったらしく、現実では丁度二人を包んでいた光が消えたところであった。

 

「戻って、きたみたいだな」

 

「・・・・すまない、一夏。また迷惑をかけた」

 

赤月も再び紅椿の姿に戻っており、暴走は止まったようだ。

 

「気にすんなよ、幼馴染だろ?」

 

「・・・・そこは、もう少し踏み込んだ関係でも」

 

「何か言ったか?」

 

「何でも無い!」

 

鈍感は治ったものの、鈍感主人公に有りがちな難聴は治っていないようだ。

 

「それよりも試合はどうするか・・・・」

 

「それに関しては私の棄権でいいだろう。ここで仕切り直しをするのはちょっとな」

 

「いいのか?」

 

「ああ、その代わり・・・・次の試合、勝てよ」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、試合は箒の途中棄権で一夏の勝ちとなった。また、箒の暴走は感情が昂り過ぎたせいという事にされ、箒は念のために精密検査を受けることになり試合後に束らに連れて行かれた。

 

「全く一夏のやつめヒヤヒヤさせやがって・・・・でも、箒も紅椿と対話して制御出来るようになったか」

 

暴走していたとはいえ赤月の猛攻を耐えていた一夏と紅椿を制御出来るようになった二人の試合を見て雪兎はぶつくさ言いつつも二人の成長を喜んでいた。

 

「これは明日の決勝も期待出来そうだな」

 

思った以上の一夏の成長に雪兎は笑みを浮かべて明日の決勝戦を心待ちにするのだった。




難産だった・・・・
少し書いてる期間に空きあったのでおかしいところがあったら感想とかで指摘して下さい。

次はやっと決勝戦・・・・今回程はお待たせしないつもりですが、どうかお付き合い下さい。


次回予告

とうとうトーナメントも決勝戦!これまで圧倒的な力を見せてきた雪兎と一回戦毎に成長を遂げてきた一夏。そんな二人が決勝戦という大舞台で遂に激突する!

次回

「決勝戦!雪兎VS一夏! 兎、ちょっぴり本気出す」


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138話 決勝戦!雪兎VS一夏! 兎、ちょっぴり本気出す

決勝は色々あって前後編となっております。



箒の暴走は特に大きな被害もなかった為、少しのお説教と反省文で済んだ。そして、アリーナのメンテナンスの為に決勝戦は翌日になった。

 

「明日か・・・・」

 

準決勝のあったその夜、一夏は一人屋上で空を見上げていた。

 

「一夏、ここにいたか」

 

そこにラウラがやってくる。

 

「ラウラか、どうしたんだ?」

 

「明日は雪兎との決勝戦だろう?その前に一つ指南をしてやろうと思ってな」

 

そう言うとラウラはいつもの早朝訓練のようにゴムのナイフを構える。

 

「なるほどな、それじゃあ胸を借りさせてもらうよ」

 

「む、胸だと!?」

 

「ん?何か変な事言ったか?」

 

「い、いや、すまん、私が過剰反応しただけだ」

 

言葉の意味は知っていても、意中の相手から言われると変に反応してしまうラウラ。だが、流石は軍人と言うだけあって動き始めればそんな素振りは見せない。

 

「くっ」

 

「大分反応が良くなってきたではないか?」

 

「ああ、ラウラや晶、それに雪兎とも散々やったから、なっ!」

 

ラウラの攻撃を受け流しながら一夏も手にしたゴムナイフでラウラに反撃する。朝の訓練を開始した頃の一夏は反撃はおろか防御すら満足に出来ていなかったのを考えれば、今の一夏は随分と成長したと言える。しかし、まだラウラの方が上手なようで、その反撃の繰り出した腕を掴まれて逆に投げ飛ばされてしまう。

 

「まだまだだな」

 

「いってぇ・・・・やっぱラウラには敵わないな」

 

「当たり前だ。始めて間もないお前にそう簡単に敗れるようであれば私の立つ瀬がなかろう」

 

「それもそっか」

 

その後、ラウラは「負けるなよ」とだけ言い去っていった。

 

「さてと・・・・汗かいたし、部屋でシャワーでも浴びるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラとの組手でかいた汗を流そうと一夏が部屋に戻ろうとすると、部屋の前に鈴がいるのを見つけた。

 

「鈴?こんなとこで何してんだ?」

 

「わ、わわぁ!?な、何だ、一夏か・・・・もう!いきなり後ろから声かけないでよ!」

 

「いや、そんな事言われてもなぁ」

 

「それはそうと、こんな時間にどこ行ってたのよ?それに何か汗臭いし」

 

「ちょっと屋上にな、そしたらラウラが来て少し組手をしてたんだ」

 

「くっ、先を越されてたか!」

 

ラスボス(雪兎)前の決戦前夜の語らいという絶好のシチュエーションで遅れを取ったことに歯噛みする鈴だったが、気を取り直して一夏と部屋に入る。

 

「で、鈴はどうしたんだよ?」

 

「私は・・・・これよ」

 

一夏がそう問いかけると、鈴は自分のstorageを操作して机の上に小ぶりの丼を出した。

 

「・・・・丼?」

 

「そっ、夜食にと思って。運動してきたなら丁度良かったわ」

 

そう言って鈴が丼の蓋を取ると中身は卵とじカツ丼だった。

 

「カツ丼か」

 

「ちょっとした願掛けよ、あいつ(雪兎)が相手なんだし少しでも勝てるようにって」

 

「ありがとな、鈴」

 

「どういたしまして」

 

カツ丼の匂いを嗅いでいたら小腹が空いてきた一夏が丼に手を伸ばそうとするが、鈴はその丼を一度storageにしまってしまう。

 

「その前に!シャワー浴びてきなさいよ。いつまで汗だくでいるつもり?・・・・私は別に構わないけど

 

「おっと!そうだったな」

 

最後の部分は小声で聞き取り難く、一夏には聞こえなかったようだ。

 

「storageに入れとけば冷めないし、早く行ってきなさいよ」

 

「おう」

 

そう言うと一夏は着替えを持ってシャワールームへと入っていった。だが、鈴は自分のやらかした事に気付き赤面していた。

 

(一夏のstorageにしまわせれば良かったのに何で自分のstorageにしまっちゃったのよ、私!)

 

そう、鈴は自分のstorageにカツ丼をしまってしまったために部屋を出られなくなっていたのだ。

 

(い、一夏のシャワーシーン・・・・ゴクリッ)

 

そして、シャワーの音と一夏の鼻歌が聞こえ、その想像をしてしまう鈴。

 

(はっ!私は何を想像してんのよ!)

 

恥ずかしい想像をしてしまった鈴は恥ずかしさのあまりに壁に頭を打ち付け「心頭滅却!心頭滅却!」と呟き出す。

 

「ふー、スッキリした・・・・って、何やってんだ、鈴?」

 

「あ、あははは・・・・何でもない、何でもないわ!」

 

「変なやつだな」

 

そんなやりとりをしていると、コンコンコンコンと部屋の扉をノックする。ちゃんと4回ノックしている事から国際マナーはしっかりした人物のようだ。

 

「い、一夏さん、いらっしゃいますか?」

 

それはセシリアだった。

 

「ちっ」

 

舌打ちをしつつも冷静さを取り戻した鈴。

 

「一夏!これ置いておくね!丼はまた今度でいいから!」

 

鈴はそう言って丼を置いて部屋を飛び出していった。

 

「り、鈴さん!?」

 

「今度はセシリアか」

 

飛び出していった鈴に驚くセシリアだったが、すぐにシャワー上がりの一夏に視線を奪われる。

 

「い、一夏さん、シャワーを浴びてらしたのですか?」

 

「ああ、ラウラとちょっと組手をしててな、その後に鈴が来たからちょっとシャワー浴びせてもらったんだが」

 

「そ、そうでしたか」

 

鈴と何かあったのでは?と疑っていたセシリアだが、裏表の少ない一夏が嘘をつくとは思えずそれが本当だと誤解を解いた。

 

「皆、明日の決勝戦に向けて気を使ってくれてな」

 

鈴が置いていった丼を示して一夏は苦笑する。

 

「夜食ですか?」

 

「ああ、日本の験担ぎさ」

 

「では、私のはその後で」

 

「・・・・セシリアも、食べ物なのか?」

 

改善されたとはいえ、不安が無いとは言えないのがセシリアの料理なのだ。一夏に悪気は無い。

 

「だ、大丈夫ですわ!ちゃんとディアーチェさんに見てもらいましたから!」

 

「ディアーチェに?それなら安心だな」

 

実はディアーチェも料理が得意で、一度一夏達にも振る舞ってくれたのだが、かなりの腕前だった。そのディアーチェのお墨付きなら大丈夫だろうと、一夏はホッと息を吐く。

 

「それで、セシリアは何を?」

 

「紅茶とクッキーですわ」

 

「それは楽しみだ」

 

その後、一夏は鈴のカツ丼を食した後、セシリアから紅茶とクッキーを振る舞われた。カツ丼も紅茶とクッキーもとても美味しく、お礼を言うとセシリアも顔を真っ赤にして帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリアが部屋を出てしばらくすると、コンコンコンと再び扉をノックする音がした。

 

「はい」

 

「・・・・遅くにすまない」

 

一夏が扉を開くと、そこには箒の姿があった。

 

「箒?どうしたんだ、こんな時間に」

 

「あ、明日は雪兎との決勝戦だろう?だから私も何か力になれる事は無いかと・・・・」

 

「なんだ、箒もか」

 

「私”も”?ということは・・・・」

 

「ラウラは決勝前最後の組手、鈴はカツ丼、セシリアは落ち着く紅茶とクッキーを作ってくれてな」

 

くっ、出遅れたか・・・・

 

「箒?」

 

「な、何でもない!それより部屋に入れてもらっても?」

 

「ああ」

 

部屋に入ると、箒は少し緊張した面持ちで話し始める。

 

「私も色々と考えたのだがな、結局は大したものは浮かばなかった。そこで紅椿と相談したのだが・・・・」

 

「そっか、箒も紅椿と話せるようになったんだったな」

 

今までは雪兎の雪華と一夏の白式に白凰に聖のウェーブライダーぐらいしか話すことの出来るISはいなかったのだが、今日の一件で箒も紅椿と対話が可能性になったのだ。

 

「紅椿は・・・・を貸してやれ、と」

 

「えっ?」

 

紅椿が箒に提案した内容は一夏も驚く内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!今日は長らく続いたこのトーナメントの決戦戦!実況は本日も私、黛薫子がお送りします!』

 

翌日、決勝戦の客席は生徒や試合を見にやってきた各国の重鎮やらで今日も満員状態。それも無理は無い。何故なら決勝戦のカードは両者共に未だに数少ない男性操者なのだ。また、お互いに前代未聞の三次移行IS同士でもあり、そして、その操者自身も織斑千冬の弟であり最初の男性操者の一夏に、篠ノ之束の弟子にして【兎の皮を被った災害(ラビットディザスター)】の二つ名で知られる雪兎の二人。これは正に全世界の注目を集める一戦と言えた。

 

『解説は昨日に引き続き織斑千冬先生とイヴァン=ニルギースさんにお願いします』

 

『よろしく頼む』

 

『引き受けた』

 

『それでは選手に入場していただきましょう!まずは青コーナー!今まで圧倒的な力を見せつけ勝ち上がってきた天災!何でこんなに強いのか!?天野雪兎!』

 

紹介と共に入場した雪兎が今回最初に使用するパックはヴァイサーガ。どうやら一夏に合わせて斬撃戦で戦うようだ。

 

『この天災に挑むは赤コーナー!まるで今までの試合はこの決勝戦の為の砥石!その研ぎ澄まされた刃は届くのか!?織斑一夏!』

 

対する一夏は既に煌月白牙と雪片参型を手に臨戦態勢で入場する。

 

「やっとだな、一夏」

 

「ああ、やっとだ・・・・やっとお前と戦えるぜ、雪兎」

 

雪兎は勝ち上がってきた一夏を、一夏はその場に君臨する雪兎を、互いに待ち望んだ一戦。そこにいつものフザケ合っている二人の姿は欠片も感じられない。

 

『今回は決勝戦という事で普段通りのこのアリーナが舞台!つまり!小細工抜きの真剣勝負です!』

 

今までは様々なフィールドで戦ってきたが、決勝戦とあってノーマルのアリーナが舞台に選ばれた。だが、この二人にはそんな事は大した問題では無い。

 

『それではっ!正真正銘のラストバトル!決勝戦!ファイッ!!』

 

「はぁあああ!!」

 

カーン!というゴングと共に最初に仕掛けたのは一夏。両手の双刃で連撃を放つが、雪兎はそれを回避しつつ、回避出来ない攻撃は五大剣の抜刀で捌いていく。

 

「そんなものか!一夏!」

 

「まだまだぁ!」

 

その目にも止まらぬ斬撃の応酬は音を置き去りにして加速していき、客席には音がズレて聞こえ始める。

 

『の、のっけから凄まじい剣撃の応酬!もう私には二人の手元が見えません!』

 

『ふっ、やっと昔の教えが身に付いたか』

 

『だが、雪兎あの連撃を剣一つで捌くとはな』

 

すると、一夏のスピードが更に上がり、雪兎も抜刀ではなく抜いたままの状態で迎撃しだし、マントまで防御に使い始める。

 

「うぉおおおおお!!」

 

「まだ上がるか!ならば!」

 

雪兎はマントをドリルのように変形させ、一夏を弾き飛ばすとバルニフィカスとネオイェーガーを展開し、武器をスラッシャーに持ち替える。そして、今度は雪兎の方から仕掛けた。

 

「今度はこっちからいくぞ!一夏ぁ!」

 

そのスピードは手元はおろか雪兎自身が捉え切れないスピードで一撃離脱の斬撃を繰り返し、一夏を防戦一方に追い込んでいく。

 

「それがここまで勝ち上がってきたお前の力か!?まだ足りない!」

 

「くっ!」

 

「お前に足りないものは、それは情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そしてぇ何よりもぉおおおお速さが足りない!!」

 

防戦一方になる一夏に雪兎は某速さを愛する文化的兄貴のセリフを引用し挑発する。

 

『よ、よく噛まないであの長セリフ言えますね、彼・・・・』

 

実は雪兎はこのセリフを昔からいつか言おうと猛特訓していたとは誰も思うまい。

 

「白式!」

 

その挑発に一夏も防御を捨ててスピードを上げ、二人の戦いは高速戦闘へと移行する。

 

「やれば出来るじゃないか!」

 

「はぁあああ!!」

 

最早客席を取り残した白と水色の軌跡しか見えぬ高速戦闘。一夏のシールドエネルギーの減りが目立つが、雪兎も決して無傷とは言えず、徐々にシールドエネルギー残量を減らしていた。

 

「雪兎ォオオオオオ!!」

 

「一夏ァアアアアア!!」

 

そして、両者のトップスピードの一撃がぶつかり合い甲高い激突音がアリーナに響いた。

 

「くっ!」

 

「ちっ!」

 

その衝突はほぼ互角だったようで、お互いに弾き飛ばされてしまう。

 

「やるじゃねぇか、一夏。この俺の最速のパックの組み合わせにここまで食らい付いてくるなんてな」

 

「ぜぇ、ぜぇ、知ってはいたが、ここまで速いとは、思わなかったよ」

 

「だが、まだ全速力じゃねぇだろ?お互いに」

 

「ああ!その通りだ!」

 

一夏がそう言うと、一夏の姿がブレて消え、雪兎は咄嗟に背後にスラッシャーを回す。すると、刃がぶつかり合う音が響く。

 

「ったく、危ねぇな・・・・」

 

「くそ!せっかく上手く出来たのに!」

 

『あぁっと!?今のは!?今のは対戦相手の雪兎選手特有のムーブだ!?この土壇場で、一夏選手が掟破りという新たな引き出しを開けてきた!?』

 

そう、一夏の動きは雪兎がダリル・フォルテペアとの試合で見せた瞬時加速の連続使用による移動法。今まで何度も練習を繰り返し磨き続けながらも雪兎にその完成を一度も見せていなかった一夏の奥の手だったその技は雪兎の直感によって防がれてしまった。

 

「もうものにしてやがったのか、それ」

 

「ものにするのに苦労したけど、なぁ!」

 

だが、一夏の奥の手はそれだけではなかった。何と、一夏は左手で持った雪片参型を雪兎に投擲したのだ。

 

「ちょっ!?お前それってあの脳筋(万城龍我)のーー」

 

まさか一夏が特別な思い入れを持つ雪片を投擲するとは思ってもいなかった雪兎が初めて隙を見せ、一夏はその一瞬の隙を逃さず雪羅弐型をクローモードにし再び瞬時加速で一気に距離を詰めると雪兎のスラッシャーの柄を握り潰し破壊する。

 

「なっ!?」

 

これには流石の雪兎も驚愕するが、それが致命的な隙となってしまう。

 

「はぁああああ!!」

 

スラッシャーが破壊され体勢を崩した雪兎に一夏は上段の構えから零落白夜を発動させた煌月白牙を一気に振り下ろし、雪兎は大きく吹き飛ばされアリーナの地面に激突、シールドエネルギーも一気に削り取られてしまった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・やったのか?」

 

その光景にアリーナ中の全ての者が言葉を失った。無理も無いだろう。今まで圧倒的に優位を崩さなかった雪兎がここまで追い詰められる姿など誰にも想像出来なかったのだから・・・・




前編はここまでです。
続きは後編で・・・・ん?「前編って事はまだ決着はついてないんだろう?」って?
それは・・・・待て、次回!という事で



次回予告

複数の奥の手で雪兎を追い詰めた一夏。だが、理不尽が人の姿をした雪兎がこれで終わるはずがなく・・・・


次回

「決着!決勝戦 兎、新たな札を切る」


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139話 決着!決勝戦 兎、新たな札を切る

はい、後編です。

さて、色々予想はついてるとは思いますが、雪兎反撃回です。


ハーメルンの仲間の一人が知らぬ間にユーザー登録消されてたそうです。皆さんもお気をつけて


誰もが目を疑っていた。それもそのはず、今まで雪兎がこのようにやられる姿を見た者はいない。それ故に、この一夏の奮闘は誰も予想だにしていなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・やったのか?」

 

しかし、勝利を告げるブザーは鳴っていない。つまり・・・・

 

「・・・・全く、一杯食わされたわ。おかげでこいつ(・・・)を使う事になるとはな」

 

砂埃の中から声が響き、それは姿を現す。

 

「【AtM:憑神typeメイガス】、こいつの特殊能力【増殖】が無かったらやばかったわ」

 

そのアドヴァンスドは腕や脚に葉のようなフィンが付いた黄色と黄緑の発光装甲を持ったどこか植物を彷彿とさせる変わった姿をしていた。

 

「増殖?」

 

「ああ、こいつはエネルギーを増殖させる事に特化したアドヴァンスドでな」

 

「それって箒の絢爛舞踏!?」

 

「いや、流石にあれ程無茶苦茶じゃねぇよ、その証拠に全快してないだろ?」

 

確かに雪兎のシールドエネルギー残量はイエローゾーンのままだ。

 

「つまり劣化版の絢爛舞踏ってとこだ・・・・でも、その分応用は効くぜ?」

 

雪兎はお喋りはここまでだと両手を一夏に向け、その掌からエネルギー弾を放つ。

 

「これくらい!」

 

弾速がそこまで速くないと一夏がそれを回避するが、雪兎はそれを見てニヤリとほくそ笑む。

 

『!?マスター!』

 

すると、回避したはずのエネルギー弾は一夏の傍を漂いつつも急速にエネルギーを増大させていく。

 

「はい、ボン」

 

「うわぁああああ!?」

 

そして膨れ上がったエネルギー弾は爆弾のように爆発し一夏を吹き飛ばす。

 

『な、何が起きたのでしょうか!?』

 

『おそらくあのエネルギー弾のエネルギーを【増殖】で増大化させて爆破したのだろう』

 

『エネルギーであれば見境無しか、また厄介なものを』

 

そうこうしている間に雪兎は自身の周りに無数のエネルギー弾を機雷のように滞空させ、一夏が近寄れない結界を形成する。

 

「対一夏用戦術その1、光爆陣、ってな」

 

高速移動からの近接戦闘を主とする一夏には厄介な戦術だ。しかも、所々に抜け道のようなものはあるが、雪兎がそれを知らぬとは思えない。つまりは何らかの罠である可能性が濃厚なのだ。

 

「ははっ、ガチで俺対策じゃん、これ」

 

この上無いピンチのはずなのに、一夏は笑みを浮かべていた。だが、それも無理は無い。何故なら、雪兎が対策をしてくるという事は、一夏はちゃんと雪兎が対策すべき対象と認識されているという事。つまり雪兎に認められている証拠なのだ。

 

「いいぜ!こんなの突破してやるよ!」

 

「そう来ると思ってたぜ!一夏!」

 

そう言ってあえて罠と思われる道を突き進む一夏。そんな一夏に雪兎も専用武器である銃剣を手にし狙撃するが、一夏はそれも回避し雪兎へと迫る。

 

「まだだ!」

 

その狙撃の雨を最初は雪羅のシールドで防いでいた一夏だが、シールドエネルギー残量が少なくなってきたため、直撃コースのものだけを切り払い強行突破を始めた。煌月白牙だけでは切り払えないと判断するや否や一夏は左手にとある武器を呼び出した。

 

「箒、使わせてもらうぞ!来い!”空裂”!」

 

そう、それは箒の紅椿の刀の一振り空裂。あの決勝戦の前夜に紅椿が箒に提案したのは一夏に空裂を貸す事だったのだ。

 

「空裂だと!?」

 

これには流石の雪兎も驚愕した。今まで散々他の武器を使う事を拒んでいた白式が他のISの武器を使っているのもそうだが、その武器が空裂だった事にも雪兎は驚かされていたのだ。

 

「お前のそんな顔が見られたなら苦労して白式を説得した甲斐があったな!」

 

一夏は空裂を器用に使い、雪兎の設置した機雷を破壊しながら徐々に距離を詰めてくる。そして・・・・

 

「雪兎!これが俺がこの一年で培ってきた全てだ!」

 

一夏は瞬時加速と零落白夜を発動し、ついに雪兎を捉えるが

 

「残念、それは残像だ」

 

一夏が切り裂いたのは雪兎の姿に似せた機雷の集まりだった。一方、本体の方は先程とは別のアドヴァンスドを追加装備して少し離れた場所にいた。

 

「えっ?」

 

「【AtI:憑神typeイニス】・・・・一夏、俺にこれだけの手をトーナメントで使わせたのはお前だけだ、誇っていいぜ」

 

イニスは幻覚を操るアドヴァンスドで、機雷のエネルギーを増殖で増大化し幻影を被せて自身に偽装、自身は不可視化して隠れていたのだ。

 

「悪いな、空裂は流石に予想外だったが、お前がそこまで辿り着くのは計算の内さ」

 

「畜生、まだ届かねぇのかよ」

 

「そんな簡単に追い付かれてたまるかよ・・・・でも、この試合は中々に楽しめたぜ、一夏」

 

雪兎がそう言い終えると、一夏が斬った機雷が爆破し一夏のシールドエネルギーを削り切り試合終了のブザーが鳴った。

 

『決着ぅ~!!激闘を制したのはやはりこの男!天野雪兎だぁああああ!!』

 

シールドエネルギーを失いボロボロの一夏の白式を雪兎の雪華が支えながらゆっくりアリーナの中央へと降り立つ。

 

「届いたと思ったんだがなぁ」

 

「憑神シリーズ2つも使わせといて贅沢な奴め」

 

「というか、その憑神シリーズってどんだけあるんだよ」

 

「ん?あと5つはあるぞ」

 

「まだそんなにあんのかよ!?」

 

「一夏ぁ~」

 

そんな雪兎の言葉にげんなりしているといつものメンバーが二人に駆け寄ってくる。

 

「ごめんな、箒。空裂まで借りたのに勝てなかったよ」

 

「いや、お前は頑張った!他の誰も認めてくれなくても私が認める!」

 

「そうよ。あの雪兎(バグキャラ)にあれだけやったんだから十分な成果よ」

 

「そうですわ!あの戦いを見て一夏さんを馬鹿にする方なんていませんわ!」

 

「確かに敗けはしたが、恥ずべき戦いでは無い。胸を張れ」

 

箒、鈴、セシリア、ラウラの四人がそれぞれ一夏に称賛の言葉を贈る。

 

「雪兎、結構手こずったみたいだね?」

 

「ああ、あの短い時間で俺の予想以上に成長してやがったわ。おかげで隠し札二枚も晒す羽目になったぜ」

 

「その割には随分嬉しそうだけど?」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

一方で雪兎もシャルロットと共に一夏の成長を喜んでいた。そこに楯無もいつものように「お疲れ様」と書かれた扇子を片手にやってきた。

 

「二人共、良い試合だったわ」

 

「ありがとうございます!」

 

楯無も二人の試合に称賛の声を贈ると、一夏はISを解除し楯無に頭を下げた。

 

「お勤めご苦労様、会長」

 

雪兎もISを解除し、裏方に回っていた楯無を労う。初日以降は雪兎が試合に出る回数が増える事から警備は楯無達更識が主導で行われていたのだ。まあ、初日に散々やっておいたので二日目以降は特に大きなトラブルは無かったようだが。

 

「一夏君、よく頑張ったわね。お姉さんは嬉しいわ」

 

しかし、ストレスは溜まっていたようで、楯無はその鬱憤を晴らすかの如く一夏を抱き締める・・・・一夏の頭を自身の胸に押し付けるように。

 

「た、たた楯無さん!?」

 

これに一夏は戸惑い、箒達は殺気立つものの一夏がいるのとまだ観客がいる事から流石に手出しは出来ない。楯無もそれがわかっていてやっているのだろう。やはりこの女は侮れない。だが、放ってはおけないので雪兎が一夏を楯無から引き離す。

 

「ぷはっ!」

 

「全く、わざわざこいつらに見せつけるようにやらんでくれ・・・・火消しが面倒だ」

 

「ごめんなさい」

 

「やりたきゃ二人きりの時にしろ」

 

「あら?やるな、とは言わないのね?」

 

「「「「うんうん」」」」

 

楯無の言葉に箒達は言ってやれ!と言わんばかりに頷くが・・・・

 

「純粋にこいつを好いての行動なら何も言わねぇよ。一夏が誰と付き合おうが俺には関係無いからな」

 

四人の期待とは裏腹に雪兎は楯無が一夏にアプローチするのは構わないと告げる。

 

「お、お前は誰の味方なのだ!」

 

「そうよ!この泥棒猫の肩持つ気!?」

 

「知らん。一夏争奪戦は俺の管轄外だ」

 

幼馴染二人の言葉をばっさり切り捨てる雪兎。そんないつもの光景に皆は誰となく笑い出す。

 

「さて、馬鹿騒ぎはこのくらいにしてそろそろ行くぞ・・・・あちらで我らが担任がお待ちのようだ」

 

雪兎がそう言って指差す方を見れば表彰式の準備を終えた千冬らが彼らを待っていた。それを見て皆は慌てて千冬の元へと駆け出す。そんな中、シャルロットが雪兎に訊ねる。

 

「雪兎、楽しかった?」

 

「ああ、とってもな」




これにて学年末トーナメント編は閉幕です。
次が一応第一部の最終シナリオ春休み編です。
春休み編が終了したら一先ず兎協奏曲はお休みして新作を書く予定です。そちらも良ければ応援よろしくお願いいたします。


次回予告

トーナメントも終わり春休みに入ったIS学園。そんな中、雪兎の元に例の研究所から救出された少年が目を覚ましたと連絡があり・・・・


次回

「春休みと新たな仲間 兎、名付ける」


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十六章 兎と春休み
140話 春休みと新たな仲間 兎、名付ける


今回からは第一部の最終章となる春休み編。春休み編とは書いてますが、色々な事を詰め込んだ章になると思います。第二部のキャラの顔出しもあります。


それではISー兎協奏曲ー第十六幕にして第一部完結章開幕です。



少々トラブルはあったものの、無事にトーナメントを終え春休みに入った雪兎達。IS学園では長期休暇は主に母国へ成果を報告に帰る生徒に配慮して長めの休暇が設けられている。

 

「ふぅ」

 

そんな中、雪兎は一般の部のトーナメントで得た量産機のデータをまとめたり、とある合同プロジェクトで開発され、試作したはいいが乗れる者がおらず、結局はプロジェクト・フロンティアに押し付けられたとある試作機の改良をしたりしていた。

 

「雪兎、そろそろ一度休憩したら?」

 

「ああ、丁度一区切りしたところだしな」

 

そんな雪兎にシャルロットは紅茶を差し入れ休憩を促し、雪兎の見ていた画面を覗き込む。

 

「それが例のじゃじゃ馬?」

 

「欧州イグニッションプランとプロジェクト・フロンティアの共同開発した新型【黒雷】。加速性能がちょっとぶっ壊れてて並みのパイロットじゃGに耐えきれずに意識が飛ぶんだとよ」

 

そこに映っていたのはイグニッションプランとプロジェクト・フロンティアが持てる技術を注ぎ込んで開発した次世代機【黒雷】。このIS、そのじゃじゃ馬っぷりからテストパイロットの半分以上を病院送りにしたというとんでもISなのだ。

 

「ISにはパイロット保護機能あるのに?」

 

「それ以上のGが掛かるらしい。調べてみりゃトップスピードはライトニング・アサルトやバルニフィカスに劣るが、トップスピードに至るまでの時間はその半分以下。ほぼ一瞬でトップスピードまでいっちまうから掛かるGがとんでもない事になってる」

 

「なるほど・・・・確かにその加速じゃパイロット保護機能もまともに機能しないね」

 

「よっぽどの耐G適性なきゃ使いこなせんさ、こいつは」

 

「なら加速性能に制限を掛けてみたら?」

 

「そしたら今度はまとも動かねぇときた」

 

「うわぁ、なんて極端な・・・・というか、どうやって減速するの、それ」

 

「AIC」

 

「えっ?」

 

「自身に一瞬だけAICかけて無理矢理停める」

 

「・・・・馬鹿なの?それ思い付いた人」

 

「今回ばかりはシャルに同意するよ」

 

最終的に他の技術者達もお手上げ状態になり、雪兎に預けられたのだが、雪兎を持ってしてもその改良はあまり進んでいないという規格外のISだった。

 

「多少は加速Gを軽減は出来たが、正直俺でも意識飛ぶかもしれん」

 

「それ、人間が乗れるの?」

 

「・・・・人間辞めねぇと乗れないかもな」

 

「というか、よくこんなIS作ったよね」

 

「・・・・まあ、原因は俺が提供したデータのせいなんだがな」

 

おそらく、某一角獣シリーズと某玉璽のデータが使われたのだろう。その目の付け所に関しては是非とも直接話してみたいと雪兎は考えていた。

 

「あとはこの前のトーナメントで使われた量産機の稼働データ?」

 

次にシャルロットが見つけたのは量産機の稼働データだ。PF産の鋼、フランスのリヴァイヴⅡ、イギリスのブルー・アクシス、ドイツのハイゼの4種だが、既に配備済みのリヴァイヴⅡや打鉄と操作性の変わらない鋼と違い、ブルー・アクシスとハイゼの2種は今回のトーナメントが初の表舞台という事もあって選んだ生徒は少なく稼働データも少ないようだ。

 

「来年度からは中国の新型量産機やアメリカの量産機も加わるらしいから一般生徒にも戦術バリエーションが増えてくるだろうな」

 

「専用機持ちだからって気が抜けなくなってくるね」

 

今までは打鉄とリヴァイヴの二択だったのに比べると、来年度から入学してくる生徒はかなり恵まれた環境で学べるだろう。そんな事を話していると、雪兎の端末に通信が入る。

 

「・・・・はい・・・・えっ?本当ですか!?」

 

「雪兎?」

 

雪兎の驚きようにシャルロットが首を傾げると、雪兎は通信を終え、その理由を説明する。

 

「前に研究所で助けた子いたろ?あの子が目を覚ましたらしい」

 

「えっ!?ほんとに!」

 

「今から面会してこようと思うんだが、シャルはどうする?」

 

「一緒に行く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が支度をして保護した少年がいる病院へと向かうと千冬、束、雪菜の三人が病室の前にいた。

 

「来たか」

 

「織斑先生達も彼の様子を?」

 

「ああ、少し気になる事があってな」

 

「気になる事?」

 

「それはこの束さんが説明しよう」

 

それに質問答えたのは束だった。

 

「彼は色々と特殊だからね、自我や知識の有無の確認、洗脳や暗示等が掛かっていないかとかの確認だよ。結果は自我はあるし知識も会話は出来る程度にはあるし、洗脳や暗示、危険思想とかもなさそうだね。というか、あの子は色んな意味でかなり真っ白だよ!」

 

あの研究所がどういう施設だったかを考えればこれらの調査はされても仕方あるまい。

 

「でも、問題が一個だけ」

 

「問題?」

 

「・・・・あの子、IS適性あるみたい」

 

「「・・・・えっ?」」

 

「皮肉だよねぇ~、私に嗅ぎ付けられて放棄した実験体の一人がその成功例だったなんて」

 

そう、保護された少年は奇しくもあの研究所で行われていた「人為的に男性のIS適性者を産み出す」という研究の成功例だったのだ。

 

「・・・・おいおい、とんでもない爆弾じゃねぇか」

 

「ああ、だから今後は病院から学園に移す事になる」

 

「あの子の保護と教育の為ですか?」

 

「その通りだよ、シャルちゃん」

 

三人目の男性操者を保護するというのと、ほぼ真っ白な彼をマドカのように裏組織に利用されないようにする必要がある。千冬達はその移送計画を話していたらしい。

 

「あの~、誰かいらしたのですか?」

 

すると、病室から雪兎達の話し声を聞いた少年と思われる声がした。

 

「ああ、お前の会いたがっていたやつが来た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず詳しい話は帰ってからという事となり、雪兎とシャルロットも少年と対面する事に。二人が病室へと入ると、薄紫色の髪をした見た目より少し幼い印象を受ける少年がベッドから身体を起こしていた。

 

「あっ!」

 

その少年は雪兎を見た途端、嬉しそうな笑みを浮かべる。どうやら助け出された時の事を覚えていたらしい。

 

「その様子を見るに俺の事を覚えていてくれたみたいだな」

 

「は、はい」

 

それでもまだ話す事には慣れていない様子だ。

 

「無理はしなくていい。まだ目が覚めたばかりで本調子じゃないだろうしな」

 

「うん、ゆっくりとでいいよ・・・・ええっと」

 

そこでシャルロットは少年の名前を知らない事に気付いた。

 

「あっ、すみません、僕には名前と呼べるものが無いので君でもお前でもお好きに呼んで下さい」

 

そして、少年は何という事もなく、当たり前のようにそう告げる。

 

「なるほど、”真っ白”ってのはこういう事か」

 

確かに受け答えは出来る知識はあるのだろう。だが、自分の名前が無い事を嘆く様子が無い。きっと「そういうものだ」と思っているからなのだろう。

 

「名前が無いのは不自由だろう・・・・よし、なら俺が付けてやる」

 

「えっ?」

 

雪兎の突然の言葉に少年は驚く。

 

「い、いいですよ!そんなの!助けてもらっただけでも感謝しきれないのに、いてっ」

 

「黙っとけ・・・・そんでもって人の好意は黙って受け取れ、”紫音(しおん)”」

 

慌てる少年をデコピンで黙らせ、雪兎は彼に”紫音”という名を贈る。

 

「し、おん?」

 

「ああ、その髪の色から連想しただけの安直な名前だけど、無いよりはマシだろ?」

 

「しおん・・・・しおん、僕の名前・・・・」

 

少年、いや紫音はその名前を噛み締めるように何度も口にする。

 

「良かったね、雪兎。気に入ってくれたみたいで」

 

「ならあだ名はしーくんだね!」

 

すると、そこに束が乱入してくる。それにつられ千冬と雪菜も病室へと入って来た。

 

「名前を決める手間が省けたな」

 

「しおんってどんな字を書くの?」

 

「紫の音って書いて紫音」

 

「音?何で音?」

 

「・・・・こいつを助け出した時にさ、心臓の鼓動を感じたんだ。それがやたら印象に残ってたと言いますか、何と言いますか」

 

雪菜に訊ねられ、少し恥ずかしそうにそう答える雪兎。

 

「心臓の鼓動、生きている”音”を感じたから”音”って事?」

 

「文句あんのか?」

 

「いいや、良いんじゃないか?本人も気に入っているようだしな」

 

普段から色々と心労を味わわされてきた仕返しなのか、千冬もニヤニヤとしている。

 

「よし!紫音君、いや!しーくんはウチで預かる!そもそもゆーくんが拾ってきた子なんだからウチで面倒見るのは当然だよね!」

 

「おいこら馬鹿姉!犬猫みたいに簡単に決めんな!」

 

「だってまーちゃん(マドカの事)だってゆーくんが拾ってきたんじゃない!」

 

「拾った言うな!確かに引き取るの決めたのは俺だけど、あれはマドカが決めた事であって」

 

「ならしーくんがウチが良いって言えばいいんだね?しーくん、しーくん、ウチの子になる気はあるかい?」

 

「えっ?あ、あの、どうしたらそんな話に?」

 

雪菜に訊ねられ、ようやく正気に戻った紫音が再び困惑する。

 

「そこの馬鹿(雪菜)がお前の名を決めたのは天野なんだからウチで引き取ると言い出してな」

 

「そういう事。で、どうかな?」

 

「えっと・・・・」

 

そう訊かれ、紫音は一度雪兎を見てから再び雪菜の方を見て告げる。

 

「・・・・よろしくお願いします」

 

「やった~!!いたっ!?」

 

「はいはい病室で騒ぐな、馬鹿姉」

 

喜びを露にするいい大人(雪菜)に紫音の時と違い容赦の無いデコピンを食らわせ黙らせる雪兎。

 

「・・・・迷惑でした?」

 

そんな雪兎に紫音が恐る恐るそう訊ねる。

 

「ちげぇよ、あの馬鹿姉が勝手に話を進めるから怒っただけだ・・・・お前がそれでいいなら好きにしろ」

 

「はい!」

 

「あ~、あと、家族になるんだ。今後は敬語とか要らん気遣いは不要だからな?」

 

「じゃあ、雪兎兄と呼んでも?」

 

「・・・・既に好きに呼んでる義妹もいるから好きに呼べ」

 

「うん!雪兎兄」

 

こうして、雪兎に新たな家族が増えた。

 

「問題はマドカにどう説明すっかなぁ」

 

「それなら問題ナッシング!」

 

「弟が出来たと聞いて!」

 

丁度そこにマドカがやってくる。どうやら雪菜がメールで連絡していたらしい・・・・この到着の速さから最初から雪菜は紫音を家族にするのを狙っていたようだ。

 

「マドカも随分ウチに染まってきたな・・・・どうしてこうなるのやら」

 

「そういう割りには楽しそうだよ?雪兎」

 

「シャルも随分と馴染んできたようで何よりだよ」

 

こうして、紫音は天野家の一員となり、話し合いの結果、春休みに基礎教育をした後にマドカと共に新一年生としてIS学園に入る事が決まるのであった。




という訳で今回は前に募集した新型の話と新キャラにして第二部のメインキャラ紫音のお話でした。

黒雷のベースとなった案を投稿してくれたムリエル・オルタさんには改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

他の募集ISは春休み編か遅くても第二部の序盤には出す予定です。

春休み編では次回予告は無しにさせていただきます。
まあ、ほとんど短編集みたいなものと思って下さい。


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141話 マテリアルズ、パワーアップ? 兎、準備する

今回は前半がマテリアルズ回、後半はとある準備回です。
マテリアルズがとあるパワーアップ?をするらしいですよ?



紫音が学園に保護されてから数日が経ったある日、雪兎はフライング・ラビットの開発室にてとあるものを開発していた。

 

「ご主人ご主人、まだ出来ないの?」

 

「落ち着いて下さいレヴィ、そんなに急かしては余計に時間が掛かります」

 

「シュテル、お前も楽しみにしておるのか・・・・」

 

「そういうディアーチェだってさっきからそわそわしていますよ?」

 

「ユーリ!?」

 

「気が散るから完成するまでどっか行ってろよ、お前ら・・・・」

 

今回雪兎が作っているのはマテリアルズに関するもので、それをマテリアルズは楽しみにしており、さっきから雪兎の傍をうろちょろしていたのだ。

 

「でもでも!僕達も楽しみにしてるんだもん!」

 

「だからって、人の周りでうろちょろすんな!」

 

そんな雪兎達の前には4つのカプセルがあり、その中にはそれぞれマテリアルズを人間サイズにした身体が入っている。そう、雪兎が今作っているのはマテリアルズ用のニューボディなのだ。何故こんなものを作っているのかと言うと、紫音の入学に際し、そのボディーガードとしてマテリアルズも同じように入学させてしまおうと考えたのだ。なお、このニューボディ、人間に限りなく近く作られており、ちゃんと成長もするし、鍛えればそれも反映されるようになっている。

 

「これで皆様ともっと対等な勝負が・・・・」

 

「シュテル、ほどほどにしておけよ?」

 

「ディアーチェ、完成したらまたお料理しましょうね?」

 

「ふん、ユーリの頼みとあらば仕方あるまい・・・・塵芥共にも特別にまた振る舞ってやるか」

 

「・・・・よし、これで完成だ!」

 

そうこうしてる間に雪兎は最終調整を終え、ニューボディが完成する。

 

「「「「おー!」」」」

 

「よし、新しい身体に移すから準備しろ、って早いな」

 

雪兎がそう言うとマテリアルズはすぐにカプセルの前の装置へと移動する。

 

「そんじゃ、始めるぞ?」

 

雪兎が装置のスイッチを入れるとマテリアルズはそれぞれのニューボディに取り込まれていき、それぞれのカプセルの中で目を覚ます。だが、レヴィはカプセル内の培養液を飲んでしまい、カプセル内でもがき始める。

 

「レヴィ・・・・」

 

そんなレヴィに呆れつつ、雪兎はカプセル内の培養液を抜く。

 

「ゲホゲホッ」

 

「何やってんだか・・・・着替えはそっちに用意してあるからシャワールームで着替えてこい」

 

カプセルの中ではISスーツ姿だったマテリアルズ。そのままでうろちょろされては敵わないと、雪兎はシャワールームに用意した服に着替えてくるよう指示する。

 

「う~ん」

 

しかし、レヴィはその場で何やら首を傾げている。

 

「どうかしたのか?レヴィ」

 

「うんとね、服ってご主人が用意したんだよね?」

 

「・・・・ああ」

 

「なら下着もーー」

 

「それはシャルに頼んだわ!!男が女物の下着買いに行くとか変態か俺は!!」

 

「わぁ~!ご主人が怒った~」

 

レヴィの言葉につい怒鳴る雪兎。そんな雪兎からレヴィは慌てて逃げようとするが・・・・

 

「ふべぇ!?」

 

突如バランスを崩してレヴィがビターン!という音と共に転倒する。

 

「馬鹿者、慣れない身体でいきなり走るからだ」

 

「うう、痛かった」

 

「大丈夫ですか?レヴィ」

 

「うん、何とか」

 

てとてとと近付いてきたユーリの手を借りて起き上がるレヴィ。

 

「マスター、後日アリーナの使用許可申請をお願いします」

 

「後日?てっきり俺は今日いきなりやるとか言い出すと思ってたが」

 

「レヴィを見て考えを改めてました。まずはこの身体に慣れるところから始めます」

 

「ちょっ!?それどういう意味!シュテルン!」

 

「そのまんまの意味だろう」

 

「そのまんまだな」

 

「・・・・そのまんまですね」

 

「王様にユーリまで!」

 

その後、着替えを終えたマテリアルズを一夏達に御披露目したり、ディアーチェがニューボディのお祝いに料理をしたり、レヴィが食べ過ぎて倒れたり、シュテルが倒れたレヴィを部屋に連れ帰ったり、アレシアがまたしてもユーリをお持ち帰りしようとして泣かれたり、と毎度の如く騒がしく時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雪兎は各種点検を行っていた。雪華は勿論、その他に作った発明品の数々の点検となればそこそこ時間が掛かるので、何組かに分けて月に一度点検をしているのだ。

 

「これはこれでよし、と。次は・・・・こいつか」

 

その日点検していた物の中には前に一度使った異世界転移装置・クロスゲートも含まれていた。

 

「こいつは誤作動なんかしたらマズイし、ちゃんとメンテしとくか」

 

そのメンテは約一時間程で終わり、最後に座標を指定せずに起動させ、ちゃんと起動するかどうか確認することに。

 

「起動っと・・・・ん?」

 

すると、座標データを入力するコンソールのモニターに見知らぬ座標が表示される。

 

「こんな座標入力したか?でも、あの馬鹿(龍我)の世界の座標に近いな」

 

表示された座標データの軸のいくつかが以前遭遇した万城龍我の世界と同じ値だった。つまり、この座標の世界は彼の世界と比較的近い平行世界なのだろう。また、雪兎のいる世界と龍我の世界とも一致する軸もある。

 

「ふむ・・・・これはIS系にライダーもしくは龍我関係がクロスした世界という事か?」

 

異世界の座標には様々な軸が存在し、雪兎はその軸を以下のように定義している。

 

①ベースとなる世界

これは地球か全くの異世界か等を示す軸。

②その世界の方向性

剣と魔法のファンタジーかロボや戦隊等の科学技術系等の方向性を示す軸。

③クロスオーバー等の追加要素の有無

これはAの世界にBの世界の要素が含まれている割合やクロスした世界数を示す軸。

④乖離率

ベースとなった世界との歴史等の乖離の度合いを示す軸。

etc…

 

今回はこの①②の数値が極めて龍我の世界に近い事が判明したのだ。

 

「何か罠っぽくはあるが、調べてみる価値は有りそうだな・・・・丁度テストしたかった装備もあるし」

 

そう言って雪兎は作業台の上に置かれた少しゴテッとした黒い銃のようなものを手に取る。他にも紅いメリケンサックに似たものや蒼いパスケース、黒と金の装飾がされた指輪に4つのスイッチが取り付けられた白い装置等がある。

 

「誰だか知らんが、その招待、受けてやろうじゃねぇか」




はい、という訳で次回はコラボ第二弾となります。
お相手は次回をお楽しみに、ということで。
今度は雪兎とそのお供が何やら新しい装備(オモチャ)を引っ提げて異世界に行く事になります。

そして、マテリアルズもニューボディを得てパワーアップ!
尚、従来のボディにも任意で戻れます。


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142話 戦闘中の説得は割りと通じない 兎、勘違いされる

コラボです。
お相手については後書きで・・・・

~帰ってきた前書き劇場~

雪兎「ん?またやんのか前書き劇場・・・・」

シュテル「そのようですね」

雪兎「シュテル達のニューボディの作成や各機械のメンテをしていたらクロスゲートに謎の座標データが現れる」

シュテル「罠と疑いつつもマスターと私が先行偵察に向かう事になったのですが」

雪兎「・・・・なあ、シュテル。今回志願した理由って」

シュテル「勿論慣れたこの身体での実戦を経験するためですが」

雪兎「だわな・・・・まあ、俺もアレ(・・)の実戦データ欲しかったしな」

シュテル「アレ(・・)ですか、私も試してみたかったところです」

雪兎「という訳で」

シュテル「さてさてどうなる142話」

雪兎「・・・・シュテル、地味にこの前書き劇場楽しみにしてた?」

シュテル「・・・・はい」


クロスゲートに表示された謎の座標データ。その調査の為、雪兎は一度その世界に行ってみる事にしたのだが・・・・

 

「何で僕は一緒に行っちゃダメなのさ!」

 

「だから言ったろ?向こうはおそらくここ(IS)と限りになく似た世界で、もしシャルが向こうのシャルと接触したらややこしい事になるんだよ」

 

「むぅ~」

 

珍しく雪兎とシャルロットが言い争いをしていた。原因は座標データの世界がISをベースにした異世界だという事で、雪兎がシャルロットの同行を認めなかったのだ。

 

「その分、今回の一件が片付いたらデートでもなんでもしてやるから」

 

「絶対だからね!」

 

また、雪兎一人では何かやらかしかねないと、サポート要員としてマテリアルズからシュテルも同行する事になった。

 

「シュテル、雪兎をよろしくね」

 

「わかりました、シャルロット」

 

ちなみに二人とも今回は私服である。これは下手にIS学園の制服で行って要らぬ誤解を発生させない為だったのだが・・・・

 

「そんじゃ、行ってくるわ」

 

「いってまいります」

 

そう言って二人はゲートをくぐり座標データの世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが問題の世界か」

 

以前の龍我の件からIS学園から離れた場所に雪兎達。一見普通の世界に見えるのだが・・・・

 

「ん?あれは」

 

回りを見渡していると、シュテルは学園方面からやってくる人影を発見する。だが、それは人ではなく白い装甲と鋭い嘴、他にも身体のあちこちに針のような鋭い刃を生やした異形の姿だった。

 

「あれは、もしや・・・・」

 

その異形の者にシュテルは前に遭遇した怪物・スマッシュを思い出す。すると、そのスマッシュはシュテルに向けて嘴から針を射ち出す。

 

「早速コレ(・・)を試す機会に恵まれましたか」

 

シュテルは紅のナックルを右手に、素早くベルトのようなものを腰に巻き、掌にナックルを当てる。

 

『Ready?』

 

「炎装」

 

そして、ナックルをベルトへと填める。

 

『Fist On』

 

電子音に合わせ熱風が吹き、シュテルの姿が私服から紅の鎧へと変換される。シュテルを狙った針も熱風にはじかれてしまい、それを見ていたスマッシュは困惑する。

 

「レプリカライダー・エグザ、炎と燃えて参ります!」

 

その隙に一気にスマッシュの懐に潜り込んだシュテルは腹部に容赦の無いボディーブローを叩き込み、よろめいたスマッシュの顔面をナックルを装備し直した右の拳で撃ち抜く。

 

「!?!?」

 

その流れるような連続攻撃にスマッシュは対応出来ず、切りもみ回転をしながら10M程吹っ飛んでいった。そして、そのスマッシュはそのまま動かなくなった。

 

「おー、結構飛んだなぁ・・・・どうだ、エグザは?」

 

その様子を静観していた雪兎はシュテルにレプリカライダーシステムtypeエグザの使い心地を訊ねる。

 

「問題ありません、マスター。ただ、少々相手が物足りなかったです」

 

「だよなぁ・・・・瞬殺だったし」

 

レプリカライダーシステムとは?雪兎が龍我のクローズから得たデータを元に開発した特殊パワードスーツシステムで、シュテルが使ったエグザはイクサをベースにアレンジを加えたものだ。見た目はシュテルに合わせてヘルメットパーツを廃し、シュテルのバリアジャケットにイクサのアーマーを装着したような姿だ。色もシュテルカラーに変更されている。

 

「何でスマッシュがこんなとこにいたかは兎も角、成分は戴いておくか」

 

そう言って雪兎は前に作った残りのエンプティボトルをスマッシュに向け成分を回収する。回収を終えるとスマッシュは以前とは違い変身者を残さずそのまま消滅してしまう。

 

「消えた?って事は普通のスマッシュじゃねぇな」

 

普通であればスマッシュに変異した者が残るはずだ。それはハザードレベル1でも変わらない(戻ってから消滅する)。だから何も残らないのは普通ではない。そこから雪兎はスマッシュについて考察するのだが・・・・

 

「ドォラァアアアア!!」

 

そこへ突如金色のパワードスーツを纏った何者かが雪兎に殴り掛かってきた。

 

「させません!」

 

しかし、それはシュテルが間に入りナックルを装備した一撃で相殺される。

 

「ちっ、防がれたか」

 

「おいおい、いきなり何すんだよ」

 

「は?お前があのスマッシュを使って葛城さんのパラレルボトル奪わせたんだろうが!」

 

「パラレルボトルだと!?」

 

噛み合わない会話の中、雪兎は謎のパワードスーツの男が言った「パラレルボトル」に反応する。実は雪兎、束スタークからパラレルボトルを奪ったまま持っているのだ。尚、その名前も龍我が持っていたメモリにデータがあったので知っている。

 

「ちょっと待て!話をだな!」

 

「パラレルボトルを返しやがれ!!」

 

「マスター、ここは私が」

 

若干興奮しているのか話を聞かず向かってくる男にシュテルは迎撃態勢に入る。

 

「「「カシラァ~!!」」」

 

更にそこへ赤青黄のカラーリングをした三体のスマッシュが現れる。

 

(こいつら、オータムの時と同じ意識を保ったスマッシュか?)

 

厄介な増援に雪兎も黒い銃のようなものを取り出し警戒する。

 

「シュテル、俺はあっちの三体をやる。そっちは任せていいか?」

 

「ええ、先程の不完全燃焼な相手よりも楽しめそうです」

 

「あんましやり過ぎんなよ?後で色々と聞かなきゃならねぇからな」

 

「はい」

 

そう小声で話し、シュテルは金色の男へと向かう。

 

「よし、俺達もカシラの加勢にーー」

 

そして、雪兎は金色の男へ加勢しようとした三色スマッシュの足元に銃を連射し牽制する。

 

「おっと、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ?三色トリオ」

 

「誰が三色トリオだ!」

 

「そーだそーだ!僕達には三羽烏ってちゃんとした通り名があるんだ!」

 

雪兎の三色トリオ呼びが気に食わなかったのか、三色トリオ改め三羽烏が反論する。

 

「三羽烏?どう見ても烏はいねぇし、鳥は黄色いお前だけじゃねぇか」

 

「「「うぐっ」」」

 

「その造形からして・・・・赤いのは(キャッスル)、青いのはクワガタ(スタッグ)、黄色いのは(オウル)だな?烏要素0だな」

 

「「「ぐはっ」」」

 

今までまともに突っ込まれた事が無かったのか、三羽烏達はまるで射ち抜かれたように胸を押さえてよろめいた。

 

(うん、何かすげー芸人臭いな、こいつら・・・・)

 

その様子を見て雪兎は彼らが悪人では無いと察する。だが、先程三羽烏にカシラと呼ばれた金色の男が止まらない以上、戦闘は避けられそうに無い。

 

「仕方ない。コイツ(・・・)の実戦テストがてら相手にしてやるよ、三羽烏」

 

そう言うと雪兎は手に持つ銃【クロストリガー】の横に付いているボタンを押し、銃を上に向ける。

 

『Operation Start』

 

「装着」

 

トリガーを引くと、雪兎の頭上と足元にリングが出現、それぞれ腰の所まで上下するとそのままベルトのように雪兎に装着され、雪兎を黒いパワードスーツが覆う。

 

「へ、変身した!?」

 

「レプリカライダーtypeクロス。クロスとでも呼んでくれ」

 

「あ、あんたもカシラと同じ仮面ライダーなのか!?」

 

「仮面ライダー?なるほど、アイツがこの世界のライダーか」

 

「仮面ライダーグリス!俺達のサイコォ~にカッコイイカシラだ!」

 

金色の男はグリスと言うらしい。三羽烏、そんなにあっさり情報バラしていいのか?

 

「まあいい、こっちも始めるとするか!」

 

手始めに雪兎は三羽烏に向けてクロストリガーを連射。対して三羽烏はすぐさま散開しそれを回避するが、唯一空へ飛んだオウルを見て雪兎は少し厚めのカードキーのようなものをベルトのスロットに射し込む。

 

『AnchorArm Activate』

 

すると、左腕に三本爪のアンカークローが展開する。

 

「そらよ!」

 

「えっ・・・・うわぁ!!」

 

射出されたアンカーは見事にオウルの脚を掴む。

 

「黄羽!?」

 

「なろぉ!」

 

黄羽ことオウルが捕まった事に驚くキャッスル。一方のスタッグはオウルを解放しようと雪兎に迫るが。

 

「頭上注意だぜ?」

 

「何?」

 

「青ちゃん!そこどいてぇええええ!!」

 

雪兎はアンカーのワイヤーを巻き上げながらオウルを頭上からスタッグに叩きつける。

 

「「がはっ!」」

 

「この野郎!」

 

「よっ」

 

その間に雪兎に接近していたキャッスルが手に持つ盾でシールドバッシュを放つが、雪兎は更にワイヤーを巻き上げて自身をオウル側に引き寄せてそれを回避する。

 

「お次はこれだ」

 

『SpiralArm Activate』

 

その後、すぐさま新たなカードキーに差し換え、今度は右腕にドリルの付いたアームに換装しキャッスルの右側の盾を貫く。

 

「なっ!?」

 

「ん?結構硬いな、抜けないわ」

 

だが、その硬さにドリルが抜けなくなってしまう。

 

「今だ!青羽!黄羽!」

 

「おうよ!」

 

「任せて!」

 

その隙に起き上がったスタッグとオウルが動けない雪兎に襲い掛かるが・・・・

 

「なんちゃって」

 

「うおっ!?」

 

雪兎はカードキーを抜きSpiralArmを解除、そこで体勢を崩したキャッスルの後ろに回り込み、スタッグとオウルの攻撃への盾にする。

 

「ぐわぁあああ!!」

 

「赤羽!?」

 

「ご、ごめん!赤ちゃん!」

 

「・・・・うん、やっぱ使えるな。浅倉式ガードベント」

 

「てめぇ!!」

 

『LauncherArm Activate』

 

「冷静さ欠いたら隙だらけだぜ?」

 

「がぁっ!?」

 

盾にしたキャッスルを投げ捨てる雪兎に激昂したスタッグが両手のブレードで切り掛かるが、今度は左腕にランチャーを展開し、スタッグの腹部にロケット弾を撃ち込み吹っ飛ばす。

 

「青ちゃん!?」

 

『RollerLeg Activate』

 

「動揺すんのはいいが、敵から目離すなよっと!」

 

「ぎゃふん!?」

 

あっという間にスタッグも蹴散らされ動揺するオウル。だが次はローラーブレードのようなパーツを装備し後ろに回り込んだ雪兎が容赦無くオウルの後頭部を掴んで地面に叩きつける。

 

「これでおしまいか?」

 

「まだだ!」

 

やれやれといったポーズをとる雪兎にやられたフリをしていたキャッスルが頭を上げてビームを発射するも、雪兎はあっさり回避し、素早くキャッスルとの距離を詰めるとドライブシュートの要領でキャッスルを蹴り、スタッグとオウルの傍へ飛ばした。

 

「ぐぐ・・・・つえぇ」

 

「俺らが三人係りでも無傷かよ・・・・」

 

「何、あの化け物・・・・」

 

「うーん、連携は悪く無いんだが、手数やテンポがいまいちかな?あと、味方がやられた時に動揺し過ぎ」

 

全く手も足も出なかった三羽烏が悔しげに雪兎を見ると、雪兎は今の戦闘を振り返り三羽烏をそう評した。しかも、割りと言い返せない評価に三羽烏もぐうの音も出ない。

 

「ほら、まだまだやれんだろ?」

 

そんな三羽烏に雪兎は手をクイクイとさせて挑発する。

 

「あんにゃろう!」

 

「そこまでだ!」

 

「おっと!」

 

だがその時、上空から雪兎目掛けて無数の弾丸が降り注ぎ、三羽烏と雪兎の間にオレンジとガンメタカラーのパワードスーツが降り立つ。

 

「今度は何だ?」

 

「僕は仮面ライダービルド。『創る』、『形成する』って意味のビルドだ」

 

それは仮面ライダービルド。この世界に存在するもう一人の仮面ライダーだった。

 

「以後、お見知り置きを……正体不明(アンノウン)くん」




はい、という訳で今回のコラボは眠らない聖剣さんの『INFINITE・GREASE』です!
グリスこと一海君が熱く活躍する作品にお邪魔致しました。

尚、雪兎とシュテルがISを使っていないのはISを使うと余計な混乱を招く恐れがあったからです。まあ、そのせいで別の混乱と誤解が生じましたが・・・・

春休み編ではありますが、ここから数話はグリス編となります。その為、次回予告を一時復活させます。そして、グリスsideはどうやら葛城ビルドメインのシナリオなようです。そちらも是非御覧下さい。


次回予告

三羽烏を軽くいなした雪兎の前に現れた仮面ライダービルド。誤解は解けぬまま雪兎とビルドの第2ラウンドが始まる。

次回

天災(ディザスター)VS天才(ジーニアス) 兎、天才とバトる』


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143話 天災(ディザスター)VS天才(ジーニアス) 兎、天才とバトる

~前書き劇場~

雪兎「さてと今回も行きますか」

シュテル「それではーー

葛城「お邪魔するよ」

雪兎「あっ、前回最後に乱入してきた・・・・」

葛城「ああ、僕は天ぇ才物理学者にして仮面ライダービルドの葛城巧だ」

雪兎「ま、また濃い人が・・・・」

葛城「前回、僕はブラック企業・難波重工のブロス兄弟にパラレルボトルを奪われ、その関係者と思われるアンノウン君達と戦う一海君達に合流。そのまま三羽烏君達と戦うアンノウン君の前に立ち塞がるのだった」

雪兎「難波重工?」

葛城「ん?君達は難波の手先じゃないのかい?」

雪兎「違います」

葛城「なら何で一海君、グリス達と戦ってるんだい?」

雪兎「いや、あんたらが一方的に仕掛けてきたんじゃないですか!?」

葛城「・・・・詳しくは本編で」

雪兎「おい!・・・・ん?」

シュテル「・・・・」→無言でルシュフェリオンを構えてチャージ。

雪兎「・・・・」→無言で退散。

葛城「さてさてどうなる143話、ってあれ?」

シュテル「ルシュフェリオンブレイカー!!」

葛城「えっ?・・・・みぎゃああああ!?!?」


仮面ライダービルドを名乗る新しい仮面ライダーの出現に雪兎は警戒を強くする。

 

「君の相手は僕だ。これ以上、一海くん達の学校で暴れられても困るからね。それに・・・・パラレルボトルを何故狙ったのかも知りたいし」

 

(パラレルボトルを狙った?それにあのドライバーはビルドドライバーだよな?)

 

ビルドの言葉に雪兎はいくつかの疑念を抱く。

 

「マスター!」

 

「大丈夫だ。俺が相手をする」

 

シュテルが加勢しようとするが、雪兎はそれを止め、見覚えのあるベルト・ビルドドライバーについて訊ねる。

 

「そのドライバー、ビルドドライバーだろ?」

 

「難波の人間である君が、わざわざ確認するかい?」

 

どうやら難波とかいう連中の組織の一員と勘違いされているようだ。それでもビルドドライバーである事を遠回しにだが肯定してくれる辺り人が良いのだろう。

 

「さて、行かせてもらうよ!」

 

「良いぜ。来い!」

 

『GatlingArm Activate』

 

やる気満々のビルドに対し、雪兎もカードキー型のツール・ガジェットキーをスロットに差し左腕にガトリングガンを展開する。

 

「「ッ!!」」

 

ビルドも手に持つガトリングガンで応戦しお互いの弾を相殺し合う。

 

「くっ、埒が明かない!コレで!」

 

『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!』

 

「ベスト・・・・マッチ!?そんなのがあったのか(というか、あれが本来のビルドドライバーの使い方という訳か)」

 

2本差しのドライバーにボトルの組み合わせ、そして、数ある組み合わせの中に存在するベストマッチ。雪兎の頭の中でピースが揃い、その脅威度を上方修正する。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

『輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェイ!』

 

ゴリラモンドというフォームに変化したビルドは見た目通り動きが鈍いのか、攻撃を仕掛けてくる気配が無い。

 

「パワータイプなのに攻撃してこない・・・・確かめる価値はあるな。フッ!」

 

何かを狙っているのは判ったが、その手が読めない為、雪兎は危険も承知でガトリングガンは放つ。

 

「狙い・・・・通り!」

 

ビルドが弾丸に手を掲げると、弾丸は当たる前に全てダイヤモンドへと変化する。

 

「カウンター狙いか!」

 

「ご明察!」

 

すると、ビルドはゴリラの右腕でダイヤモンドを砕き、拡散弾のように雪兎に放った。

 

(ダイヤモンドによる防御性能と、それを攻撃に転用出来るだけのパワーのゴリラの組み合わせってか)

 

これだけでゴリラモンドの性能をおおよそ把握した雪兎は別種のガジェットキーをスロットに装填し装備を換装する。

 

「回避は難しいか・・・・なら!」

 

『ShellBullitt Activate』

 

右腕がオレンジのガンドレットとなり、右肩には3枚の特徴的な羽を持つシェルブリットを展開、そしてすぐさま1つ目の羽を分解しエネルギーに変換する。

 

「特攻上等!衝撃の、ファーストブリットォォォォォ!!」

 

そのエネルギーはガンドレット内で荒れ狂い排気口から一気に噴き出す。その勢いを使い雪兎はダイヤモンドの猛攻に自分から突っ込んで行く。

 

「くっ、特攻ってやはりそう言う事か!」

 

『Ready、Go!』

 

それを見たビルドは慌ててドライバーのレバーを回す。それに合わせ雪兎は2つ目の羽を分解し、独楽のように回転を加えた2撃目を放つ。

 

「当たれ!撃滅の、セカンドブリットォォォォォォォ!!」

 

『ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

「喰らうかァァァァァ!!」

 

お互いの必殺の拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃と共に両者は弾き飛ばされる。だが、すぐに二人共起き上がる。

 

「セカンドが防がれたか・・・・」

 

「思った以上に強い・・・・だけど!」

 

(ちっ、今のでシェルブリットがイカレちまったっか・・・・ってか、どんな威力してやがんだあの腕!)

 

すると、ビルドはまたしてもボトルを差し換える。

 

「今度は何が来るんだ?」

 

「見てからの、お楽しみさ!」

 

『ローズ!ヘリコプター!ベストマッチ!』

 

ビルドがレバーを回すと、ドライバーからガラス管がランナーのように伸びてハーフボディを形成する。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

『情熱の扇風機!ローズコプター!イェーイ!』

 

それは赤い薔薇とヘリコプターの組み合わせだった。

 

「どんだけ飛ぶ形態が好きなんだよ!」

 

「適材適所と呼んでくれ!ハッ!」

 

そう言うとビルドは背中のプロペラを回転させ、浮遊による飛行を行う。そのまま雪兎の上を取ったビルドは右手から黒い茨を出して攻撃を行う。

 

「クッ、装備を変える隙を与えないつもりか!」

 

「これ以上厄介なものを使われると嫌だからね!」

 

茨による連撃に防戦となる雪兎。だが、雪兎も負けじとクロストリガーを取り出し茨を弾く。

 

「なっ!?」

 

「今だ!」

 

『MissileArm Activate』

 

その隙をついて雪兎は左腕にミサイルアームを展開。すぐさま射程距離から離脱を図るビルドだが、その前にミサイルが放たれて命中してしまう。

 

「うわああああああああ!!」

 

空中から落下し、地面に堕ちるビルド。

 

「空飛ぶんだから対策されるのは当然だろ?」

 

「だからって、ここで負ける訳にはいかないんだ!」

 

『Ready、Go!』

 

だが、ビルドはすぐに起き上がると再びレバーを回す。そしてバラの茨をブレードに巻き付けて再び空を飛んで突進を仕掛ける。

 

「予想通りの攻撃だっての!」

 

雪兎は突進を避けると、お返しに再びミサイルを放つ。ミサイルを避けようとするが、追尾式のミサイルだったが故に回避出来ず命中してしまう。

 

「グアアッ!!」

 

ミサイルに迎撃されるビルドだったが、それでもビルドは諦めず背面のブレードを掴むと雪兎に向かって振り下ろす。

 

「取り外し、可能ォォォォォォォ!!」

 

「そんなのアリかよ!?グアッ!」

 

見事ブレードは雪兎に命中し、大きく仰け反らされてしまう。

 

「まさか、プロペラが武器だったとはな・・・・」

 

「ビルドを、舐めないで欲しいね・・・・」

 

(ほんと、厄介だな・・・・だが、引き出しの多さに反してパワーはクローズやグリスには劣る。となれば、まだ厄介な手札を持ってる可能性が高い)

 

どちらかと言えば優勢なのは雪兎の方ではあるものの、雪兎は冷静にビルドを分析していた。

 

「逆転の法則は・・・・決まった!」

 

『キリン!扇風機!ベストマッチ!』

 

ビルドがそう告げて取り出したのはキリンと扇風機のボトル。

 

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ・・・・!」

 

『嵐を呼ぶ巨塔!キリンサイクロン!』

 

それは右腕と一体化した槍のようなキリンの首と左腕に大型のファンを持つフォームだった。

 

「また空でも飛ぶのか?」

 

「さあね・・・見れば分かるさ」

 

様子見でミサイルを放てばビルドは左手のファンをミサイルに向け、ファンを高速回転させてミサイルを吹き飛ばした。

 

「嘘だろ、なんつー風力なんだ!?」

 

思わぬ方法でミサイルを返された雪兎だったが、避ける事を予測していたビルドはファンを雪兎に向ける。

 

「グゥッ、この風力は・・・・まずい!」

 

「風だけがキリンサイクロンと思わない方がいいよ!」

 

そしてビルドはキリンの首のようなアームを構えると、首を伸ばして雪兎を攻撃する。

 

「結局叩かれるのかよ!」

 

「呑気な事言ってる暇は無いと思たまえ!」

 

風圧で思うように近付けない雪兎を一方的に攻撃するビルド。雪兎にこの状況を脱する手は無くは無いが、それは相手も承知の上であろう。そして、明らかにそれを誘うべく、ビルドはまたレバーを回す。

 

「クッ、やるしかないか・・・・!」

 

『SpiralArm Activate』

 

罠と判っていても左腕にドリルを装備した。そうする他にこの状況を打開する手が今の雪兎には無かったのだ。なのでせめても引き分けに持ち込もうと雪兎はスパイラルアームのスロットにスパイラルのガジェットキーを差し込む。

 

『SpiralArm FullDrive』

 

『Ready、Go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

すると、ドリルとブースターが巨大化し、突風を切り裂いてビルドへと突き進む。ビルドもそれと同時にキリンアームを突き出しドリルとキリンの槍が衝突する。

 

「ぐわあっ!」

 

「グッ!」

 

互いに攻撃を相殺した両者は吹っ飛ばされてしまうが、雪兎は何とか空中で体勢を立て直した。

 

「やはり、使うしかないか・・・・!」

 

それを見たビルドは赤いアイテムを取り出した。

 

「やめろ、葛城さん!」

 

「構わない!・・・・ここでコイツらを、倒すんだ!」

 

それを見てグリスが焦ったように叫ぶが、気持ちは雪兎も同じだった。何故なら雪兎もビルドが取り出したアイテムに見覚えがあったからだ。

 

「ハザード、トリガー・・・・!?まずい、止めろ!」

 

「敵の制止を、聞くと思うかい!」

 

『ハザードオン!』

 

雪兎やグリスの静止を無視しビルドはハザードトリガーの蓋を開けてボタンを押す。ドライバーにセットしているボトルを引き抜くと、トリガーをドライバーにセットして2本のボトルを装填する。

 

『ウルフ!スマホ!スーパーベストマッチ!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』

 

ビルドはレバーを掴むと、回しだした。

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』

 

そして、ビルドは覚悟決めて告げる。

 

「・・・・ビルドアップ!」

 

展開された金属のプレートがビルドを挟み込むと、その姿を変える。そこから現れたのは目の部分以外が漆黒に塗り潰されたスマホウルフ・ハザードフォームである。

 

『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

「トリガーはヤバいっての!」

 

『RollerLeg Activate』

 

そう言いながら雪兎はローラーレッグに換装する。

 

「時間が無い・・・・短期決戦で行かせてもらおう!」

 

「それはこっちも同じだ!」

 

雪兎は全速力で後退しながらクロストリガーで射つもアプリのアイコンのようなものでブロックされ、ほとんどダメージは無い。

 

「やっぱりハザードはレベルが違うな・・・・なら!」

 

『ShieldArm Activate』

 

ならばとローラーレッグからシールドへ換装し、勢いよく迫ってくるビルドを迎え撃つ。

 

「これでも食らってろ!」

 

放ったのはシールドバッシュ。しかし、ビルドは遅いとでも言わんばかりシールドをガッチリと掴む。

 

「だよなぁ・・・・!」

 

「ハッ!」

 

「グフッ!」

 

シールドを掴んだビルドはそのまま雪兎を殴り飛ばす。だが、これは雪兎にとっては想定通りの結果だ。その勢いを使いビルドから距離を取るのが目的だったのだ。

 

「コレで、どうだ!」

 

着地と同時に牽制目的でシールドをブーメランの要領で投げるが、ビルドはそれをあっさり掴み、投げ捨てる。

 

「これで武器はない。今なら畳み掛け・・・・ヅッ!?」

 

ビルドが攻撃をする為に迫ろうとした瞬間、雪兎が恐れていた事態が起こってしまう。

 

「まずい、暴走か!」

 

ハザードトリガーはビルドを大幅に強化するアイテムではあるが、致命的な欠陥を抱えているのだ。それこそが暴走だ。ハザードトリガーは使用者の脳を大きく刺激し、最悪の場合自我を失い見るもの全てを破壊する狂戦士と化すリスクがあるのだ。

 

「葛城さん!!」

 

グリスがビルドの変身者の名を呼ぶも、ビルドはガックリと動きを止めて項垂れる。

 

「これはちょっとどころじゃなく不味いな・・・・」

 

ゆっくり顔を上げるビルド。だが、そこにさっきまでの知性は感じられない。

 

『MAXハザードオン』

 

そして、災厄の軛は解き放たれる。




結局、誤解が解けぬままハザード戦に続きます。


次回予告

ビルドが暴走し、雪兎達だけでなくグリス達にまで襲いかかる中、雪兎はグリス達と休戦し、暴走したビルドへと挑む。


次回

『ハザードを止めろ 兎、賭けに出る』


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144話 ハザードを止めろ 兎、賭けに出る

~前書き劇場~

雪兎「あ~、だからやめろって言ったのに」

一海「元はと言えばお前が!」

雪兎「それより先に何も聞かずに仕掛けてきたのお前だからな?」

一海「うぐっ」

雪兎「そんな事より今はあの暴走してる天才様を何とかする方が先だろ?」

一海「わかってるよ!」

雪兎「とは言え、どうやって止めたもんか・・・・あっ」

一海「何か思い付いたのか!?」

雪兎「まあな。詳しくは本編で」

シュテル「それではー兎協奏曲ー第144話、始まります」

一海「突然持ってかれた!?」

雪兎「・・・・今回はリリなの風なのね」


『オーバーフロー!・・・・ヤベーイ!』

 

明らかに不吉な音声と共に漆黒のモヤを纏うビルドが雪兎に迫る。そのスピードも先程とは段違いに速い。

 

「ちっ!」

 

シールドを失いガンドレットだけになったシールドアームでそのモヤを纏ったパンチを受けるも、パワーも上がっているようで雪兎はあっさりと吹き飛ばされる。また、パンチを受けた部分のガンドレットはまるで装甲を溶かされたように拳型の跡が残っている。

 

「マジで洒落になってねぇぞ、これ」

 

ガジェットキーを抜き、使い物にならなくなったガンドレットを消すが、ハザードと化したビルドは止まらない。

 

「オォリャァァァァァ!!」

 

そこにシュテルとの戦闘で疲弊していたはずのグリスが乱入した。しかも、グリスが仕掛けたのはビルドの方。つまり、ハザードトリガーによる暴走を止めようとしているのだろう。だが、割り込んだ事で今度はグリスがビルドの標的になってしまう。

 

「グリス!?」

 

「勘違いするなよ!俺は葛城さんを止める為に割って入っただけだからな!」

 

どう聞いてもツンデレな発言をしながらグリスはビルドに向かって左腕のバンカー・ツインブレイカーを振るう。しかし、それでもハザードフォームとなったビルドには通じない。自身へのダメージも気にせずグリスの顔面を殴り飛ばす。

 

「がっ!」

 

グリスの装甲は同じネビュラガスを利用してるからかハザードに耐性が僅かばかりあるようで装甲は溶けてはいなかった。だが、ビルドはすぐにグリスへと追撃に移ろうとしていた。

 

「させません!」

 

そこにシュテルがパイロシューターを放ち妨害する。

 

「シュテル!そのモヤを纏った攻撃には当たるな!溶かされるぞ」

 

「なるほど・・・・では前衛はお任せします」

 

妨害された事で今度はシュテルにターゲットが移るが、それを雪兎が再び攻撃する事でビルドのヘイトを自分に向けタゲを取る。そして、起き上がったグリスや三羽烏に向かって叫ぶ。

 

「呆けてねぇでお前らも手伝え!」

 

「えっ?」

 

「何で難波の手先の言う事をーー」

 

「だ・か・ら!俺はそんな連中知らねぇっての!どいつもこいつも人の話聞きやしねぇ」

 

改めて雪兎がそう言うと、グリスと三羽烏は暫しポカーンとしていたが、慌てて円陣を組む。

 

「な、なぁ・・・・これって、もしかして・・・・やっちまった?」

 

「あ、あいつの言葉を信じるなら、ですが」

 

「それよりも今は葛城さんを正気に戻す方が先決だな」

 

「さっさとしろ!取り返しのつかない状態になっても知らんぞ!」

 

「おい!それはどういう事だ!」

 

悠長に話し合いをしているグリス達に雪兎がそう告げると、そこにグリスが食いついた。

 

「説明してやるから俺と代われ、三羽烏!但し、接近戦はするなよ」

 

「「お、おう!」」

 

「わかった!」

 

そう言って三羽烏と交代した雪兎はグリスへと説明を開始する。

 

「まず、あのハザードトリガーってのは時間経過と共に一時的にではあるがハザードレベルを徐々に引き上げていく特性がある」

 

「ハザードレベルを?」

 

「ああ、そんでもってハザードレベルの数値は高くなればなる程に力を増すが、当然デメリットも存在する」

 

「デメリットだと?」

 

「まずはレベル1.0以下、スマッシュ化したら例え成分を抜いたとしても消滅する。レベル1.1以上2.0未満、スマッシュ化する。このレベルなら成分を抜きゃ助かる。レベル2.0以上、スマッシュ化せず人間の姿保てる。ライダー予備軍だな。レベル3.0、ビルドドライバー使用可。そんで少し飛ばしてレベル6.0、人間の限界。これを超えたら人間辞めてる。レベル7.0、普通に変身出来る許容値。そして、これ以上は人体の方が持たん。下手をすれば変身しただけで消滅しかねない」

 

「でも!それなら葛城さんはまだ5.0にもなってないし大丈夫なはずじゃ」

 

「但し、例外もある」

 

「えっ?」

 

「ハザードトリガー等の外的要因で急激にハザードレベルを上昇させた場合、上昇値にもよるが、肉体がハザードレベルに耐えられず消滅しかねない。こいつに搭載したハザードレベルスカウターによるとビルドの現在のハザードレベルは5.4、上昇値は1.1ってとこか。ハザードトリガーによる一時的な上昇とはいえかなり上昇してる。上昇値が2.0を超えたら危険域だと思え」

 

これは雪兎との戦闘での上昇値も込みの数値だ。だが、このまま上昇し続ければ危険な事には変わり無い。

 

「な、なら早く止めないと!」

 

「ちょっ!?」

 

それを聞いて焦ったグリスがビルドへと突撃するが、ハザードレベルの上昇したビルドにはグリスの攻撃は通用せず、再び弾き飛ばされてしまう。

 

「アホか!今のお前のハザードレベルじゃ5.0超えたビルドに通用する訳ねぇだろ!」

 

「だったらどうしろってんだよ!」

 

雪兎とグリスがそんな言い争いをしていると、ビルドは弾き飛ばされたグリスが落とした2本のボトルを手に取る。

 

「あっ!」

 

「やばっ!」

 

『フェニックス!ロボット!スーパーベストマッチ!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』

 

そして、ビルドはウルフとスマホから拾ったフェニックスとロボットにボトルを変更する。

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』

 

そのまま無言でレバーを回し、ボディを生成するプレートを出現させ換装。

 

『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

フェニックスロボハザードへと変貌する。

 

「また新しいベストマッチかよ」

 

「気を付けろ!フェニックスは炎を操り、ロボットはパワーと防御に優れてる!」

 

「うわぁ・・・・一対多にはベストマッチなフォームじゃねぇか」

 

すると、ビルドは黒いモヤの混じった炎弾を放ってくる。

 

「これで遠距離も安心出来なくなった訳だ」

 

炎弾以外にも火炎放射を使い、近付けば重い打撃を放てる厄介なフォームになったビルドに雪兎達は攻める事が出来ない。

 

『MAXハザードオン』

 

だというのにビルドはダメ押しとばかりにハザードトリガーのスイッチを押しレバーを回す。

 

『オーバーフロー!・・・・ヤベーイ!』

 

「ハザードレベル5.9、本気で余裕ねぇぞ、これ」

 

上昇値が1.6を超え危険域に近付いてくる中、雪兎は覚悟を決める。

 

「グリス!一瞬でいい、隙を作れ!」

 

「何か手があんのか!?」

 

「一か八かだがな」

 

『BlendTonfa Activate』

 

そう言い、雪兎は可変式のブレード内蔵トンファーを装備する。

 

「行くぞ!お前らぁ!」

 

「「「おう!」」」

 

雪兎の言葉を信じる事にしたグリスが三羽烏と共にビルドへと仕掛ける。まずはオウルが両手の球体【フォレストシーカー】を飛ばして撹乱、そこにスタッグが双剣【ラプチャーシザーズ】で切りかかる。そこでよろけたビルドがすぐに右腕をスタッグに向けて火炎放射を放とうとするが、シュテルのパイロシューターに妨害され、キャッスルの無事な左の盾【グランドランパード】のシールドバッシュで弾き飛ばされる。

 

「うおらぁぁぁぁぁ!!」

 

そこにグリスのツインブレイカーが炸裂しビルドは大きくよろける。

 

「今だ!」

 

「・・・・少し我慢しろよ!」

 

『BlendTonfa FullDrive』

 

グリスの合図に合わせ、雪兎はブレードトンファーのスロットにガジェットキーを差し込む。さらにクロストリガーを左手に構えて跳躍。上からエネルギー弾を乱れ射ち、防御態勢になったビルドの懐に潜り込みラッシュを放つ。

 

「おらおらおらおらっ!!」

 

拳打、膝打ち、踵落とし等を含めたラッシュを浴びせ、ビルドを浮かせると回し蹴りで大きく弾き飛ばす。

 

「コード麒麟!」

 

そして、ブレードトンファーのブレードを展開。

 

「でぃぃぃやっ!!」

 

一気にビルドへと近付きアッパースイングの一撃を叩き込む。その一撃がクリーンヒットしたビルドは地面に倒れ伏すと変身が解けた。

 

「・・・・やった、のか?」

 

「生体反応を確認。気を失っただけのようです」

 

倒れたビルド・葛城に近付きシュテルが脈を確認するが、ただ気を失っただけのようだ。

 

「変身解除ギリギリのダメージを狙ったが、上手くいったか」

 

葛城の無事を確認し、グリス達へ敵意が無い事を示すべく雪兎も変身を解除する。それを見たグリス達も雪兎に敵意が無いと判りそれぞれ変身を解除する。

 

「さてと、そこの兄さんも休ませんといかんし、お互いに情報交換もしたいんでどこか落ち着ける場所まで案内してもらえないか?」




まるっとハザード戦でした。
フェニックスロボハザードはちょっとしたノリで出しましたが、かなり厄介なフォームだと思われます。

雪兎がやった麒麟は元ネタのスパロボシリーズでアクセルがラミアとアシェンを救った時のやつを参考にしております。
BGMは『Dark Knight』か『限りなく近く果てしなく遠い世界』推奨


次回予告

何とかハザードフォームの暴走を止め誤解を解いた雪兎とシュテル。二人は彼らの世界のIS学園にてグリスこと一海達から事情を聞くのだが・・・・


次回

『巡り会う者達 兎、奇妙な縁を感じる』


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145話 巡り会う者達 兎、奇妙な縁を感じる

~前書き劇場~

雪兎「何とかハザードフォームとなったビルドを止めた俺達はグリスこと猿渡一海の案内でこちらの世界のIS学園へとやってきた」

一海「葛城さんは三羽烏に任せてきたからとりあえず織斑先生に相談だな」

雪兎「やっと交流パートだよ・・・・ある意味脳筋(龍我)の時より酷いわ」

一海「ん?お前もアイツ(龍我)の事知ってるのか?」

雪兎「あ~、やっぱりか・・・・パラレルボトルでなんとなく察してはいたんだがな」

一海「そうなのか?」

雪兎「詳しくは本編でな」

一海「という訳で」

雪・一「「さてさてどうなる145話」」

雪兎「やっとまともにやれた気がする」

一海「そうだな」


「うん、わかってはいたが・・・・やっぱりIS学園か」

 

グリスに案内されて雪兎達がやってきたのはこの世界のIS学園だった。三羽烏は葛城を医務室に連れて行ったらしく、雪兎とシュテルはグリスが事情を説明してくれたおかげでトラブルなく(ある意味トラブルは既に済んだとも言える)学園へと入る事が出来た。その後、雪兎達は一先ず会議室へと通され、この世界の織斑千冬と山田真耶、そしてグリスこと猿渡一海に事情を説明する事になった。

 

「・・・・なるほどな。それで調査に来てみれば、いきなりスマッシュに遭遇し、猿渡に絡まれ一悶着あったと?」

 

「そうなりますね」

 

尚、一海は話も聞かずに攻撃を仕掛けた件で出席簿アタックの餌食になって頭を押さえながら雪兎と千冬の話を聞いていた。

 

「それにしても別の世界とはいえ、あの馬鹿()の弟子とはな」

 

「俺自身もちょっと色々やり過ぎて兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)なんて呼ばれてますけどね」

 

「や、やり過ぎたとは?」

 

「・・・・キャノンボールファストで専用機持ちを過半数撃墜しました・・・・一人で」

 

真耶の質問に雪兎がそう答えると、千冬は額を押さえながら「確かにアイツの弟子だな」と納得し、真耶はその非常識さに固まる。

 

「キャノンボールファスト?」

 

そんな中、一海だけはキャノンボールファストを知らないのか首を傾げる。

 

「ISを使った妨害有りのレース競技の事だ。IS学園じゃ9月にそういう催しがあるんだよ」

 

「へぇ~・・・・って事はお前はこっちより先の時間から来てるのか?」

 

「こっちは3月だったからな」

 

「へぇ~、龍我(・・)のやつの時はそんなに離れてなかったが、平行世界毎に差でもあんのか?」

 

「シュテルからチラッと聞いてはいたが・・・・アイツこっちにも来てやがったのか」

 

聞けば雪兎達と出会った後の、具体的には福音戦後辺りの龍我がこの世界を訪れたらしい。おそらくまた束スタークに連れて来られたのだろう。そして、雪兎の話が受け入れられたのも龍我という前例があったからのようだ。

 

「なるほどなるほど、実に興味深い」

 

「か、葛城さん!?」

 

すると、医務室に運ばれたはずの葛城がいつの間にかそこにいた。

 

「い、いつからそこに!?」

 

「龍我の話を始めた辺りからいたぞ?」

 

一海や真耶は驚くが、雪兎、シュテル、千冬は気付いていたようだ。

 

「さて・・・・先程はすまなかったね、アンノウン君」

 

「雪兎、天野雪兎だ。天の野原の雪の兎と書く」

 

「シュテル=スタークスと申します。シュテルとお呼び下さい」

 

「僕はてぇん才物理学者の葛城巧だ。葛の城に巧いと書く」

 

誤解も解けたようで、葛城が伸ばした手を雪兎は握り握手する。

 

「改めて言うよ、先程はすまなかった。あと、暴走を止めてくれてありがとう」

 

「事情はさっき大体聞きました。状況が状況なのでこちらも勘違いされても仕方ないですよ」

 

葛城が合流したのは丁度雪兎が三羽烏と戦っていた時、あれだけ見れば十分に敵対されても無理は無い。

 

「つまりは猿渡の勘違いが原因という訳か」

 

「うぐっ」

 

それも大元を正せば話を聞かずに仕掛けた一海が悪い。

 

「ところで君達が使っていたツールは自作なのかい?」

 

「ええ、以前に龍我のビルドドライバーを解析した時のデータを使って作った物ですよ」

 

「良ければデータを取らせて欲しいのだけれども」

 

「何ならデータお渡ししましょうか?」

 

「いいのかい!?」

 

一方、雪兎と葛城は共通の趣味?からか初対面の時の事が嘘のように意気投合している。

 

「そういえばシュテルが使ってた変なボトルは何だ?スプレッドとか言ったか」

 

ライダーシステムの話のついでとばかりに一海がシュテルが使った謎のボトルについて訊ねる。

 

「ん?ああ、属性元素(エレメント)ボトルの事か」

 

「エレメント?」

 

「ボトル?」

 

「ああ、こっちの世界じゃボトルの浄化する仕組みが判んなくてな、だったらとエンプティボトルに少量のネビュラガスと属性エネルギーを無理矢理詰め込んで作ったボトルだ。まあ、無理矢理詰め込んだせいで一回使うとエンプティに戻っちまうんだがな」

 

そう言って雪兎は以前にも使ったブレイズの他にスプレッド、ストーム、ボルテックのボトルを机に並べた。

 

「お、おー!!ベストマッチやハードスマッシュのボトルとは違うフルボトルだって!まさかそんな物が作れるなんて!盲点だった!」

 

これには葛城も大興奮だ。

 

「元々はクローズナックル用に作ったもんなんだけど、結局は未完成のままでな」

 

「クローズナックルの?という事は・・・・」

 

「クローズナックルも俺の作品だが」

 

「な、何だって!?」

 

「その証拠に・・・・ほれ」

 

続いて雪兎がstorageから取り出したのは試作品のナックルmarkⅡ。まだ塗装されていないのかガンメタカラーの無骨な印象を受ける。

 

「属性元素ボトルの試験運用の為に作ってたやつだ。まあ、シュテルのエグザとかにはもう実戦レベルで使えるシステムがあるから不要になっちまった代物だけどな」

 

すると、葛城が雪兎の手をガシッと握る。

 

「雪兎君、後で僕の研究室に来ないかい?」

 

「是非!俺も葛城さん、いや、巧さんの作品と研究には興味がある」

 

「おほんっ」

 

「その話は後にしてもらえませんか?」

 

すっかり仲良くなった二人に千冬が咳払いし、シュテルが話を戻す。それは難波重工の目的だ。

 

「難波重工がパラレルボトルを奪ったのと天野がこの世界に来たのは偶然では無いだろう」

 

「でしょうね。大方、龍我の世界のスタークが情報をリークして難波会長が興味を持った、というところでしょう」

 

「難波重工ねぇ・・・・聞いてる限りだとろくな企業ではなさそうだな」

 

おそらく雪兎のクロスゲートが受信した座標データは難波重工の発したものと見て間違いないという見解となり、パラレルボトルを取り戻すまではクロスゲートも安易にしようしない方がいいという結論に至った。

 

「ボトルの奪還には俺も協力しよう。俺の専用機はちょっと使うのは自重するが、クロスや他の装備で十分カバー出来るだろう」

 

「マスターがそうおっしゃるなら私も微力ながらお手伝いさせていただきます」

 

その為、雪兎達もパラレルボトル奪還に協力する事になった。

 

「そういや気になってたんだが、なんでシュテルは雪兎をマスターって呼ぶんだ?」

 

そこで一海がシュテルが雪兎をマスター呼びする理由を訊ねた。

 

「それはシュテルが人じゃなくて俺が作った超高性能アンドロイド?いや、今は人造人間か?」

 

「えっ?」

 

「アンド、ロイド?」

 

「人造人間!?」

 

「はい。とは言いますが、限りなく人と同じ事が可能なアンドロイドと思って下さい」

 

「正確に言うと、元々はミニサイズのロボットだったのを、骨格とかを金属フレームで強化した強化人間ボディに意識を移したものとでも言えばいいのかな?」

 

サラリととんでもない事を告げる雪兎。

 

兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)・・・・なるほど、そう呼ばれるだけはあるという事か」

 

「あわ、あわわわわ!?」

 

「山田先生!落ち着いて!」

 

「・・・・やはりアイツ()の弟子か」

 

そんなこんなあって雪兎はしばらくの間、葛城の元で世話なる事になった。




という訳で雪兎、天才物理学者と意気投合してしまいました。
おそらく、またとんでもないものを作り出しかねない予感が・・・・


次回予告

事件が解決するまでこの世界に滞在する事になった雪兎達。まだパラレルボトル奪還作戦には時間があるという事で一海達や葛城と交流する事にしたのだが・・・・


次回

『兎式異世界交流と新・発・明 兎、交流する』


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146話 兎式異世界交流と新・発・明 兎、交流する

~前書き劇場~

雪兎「で、今回は交流パートとの事だが」

シュテル「ようやくこの世界の一夏達とご対面ですね」

雪兎「となると、やっぱりいるんだろうな・・・・この世界のシャルロットが」

シュテル「やはり複雑ですか?」

雪兎「そりゃな・・・・まあ、別人とは理解してんだが」

シュテル「なるほど」

雪兎「そんな事より!巧さんの研究室への訪問だ。出来る限り吸収して帰らねば」

シュテル「・・・・これは私以外のストッパーが必要ですね」

雪兎「という訳で146話、スタート!」


「ってな訳で、当分こっちの世界でいる事になった天野雪兎だ。雪兎って呼んでやってくれ。で、こっちはシュテル」

 

「いや、何でお前が・・・・いや、そう呼んでもらうけどよ」

 

「よろしくお願いします」

 

話し合いの後、一海の案内で食堂を訪れた雪兎達。そこでこの世界の一夏達と遭遇し、一海が雪兎とシュテルを紹介する。この世界の一夏達は龍我の1件もあってか、平行世界からの客人というのに慣れているようだ。

 

「平行世界って事は、雪兎くんは僕達の事を知っているの?」

 

「あ、あー・・・・おう、そうだな」

 

「今の間はなんだよ」

 

「気にすんな。少し戸惑っただけだ」

 

この世界のシャルロットの問いに雪兎は気まずそうにそう答える。同じ顔をした別人というのは理解しているが、複雑なものは複雑なのだ。すると、早速この世界のセシリアが気になっているだろう事を訊ねる。

 

「む、向こうの世界の私達は何方かとお付き合いをしているのでしょうかッ!?」

 

「あー、そうだな。一部の奴以外はアイツにゾッコンだな。多少改善されているとは言え、鈍感だけど」

 

セシリアの質問に雪兎がそう答えると、この世界でも一夏にゾッコンと思われる数人が残念そうに肩を落としている。

 

「向こうの皆の恋愛事情を聞いても、別に得する事ないだろ?」

 

「「「「ある!!!」」」」

 

一夏の鈍感発言にシャルロット以外が反応して反論する。この光景に雪兎は少し呆れていた。

 

「頑張って治してみる」

 

「おう、頑張れよ・・・・」

 

この世界でも一夏はやはり一夏らしい。

 

「カシラは向こうの世界にもいるのか?」

 

「カシラ・・・・あぁ、一海は会ってはいないな。もしかしたら何処かにいるかもしれない」

 

意外な人物(ラウラ)からの意外な質問に雪兎は少し驚きながらも正直に返答すると、ラウラもしょんぼりとする。なので今度は雪兎が皆に質問する。

 

「ラウラと一海ってどんな関係なんだ?」

 

「どうと言われてもな・・・・憧れの対象?」

 

「ただ単に懐いてるだけじゃないの?」

 

(なるほど、こっちでいう聖のポジションに一海がいるわけな)

 

その質問には箒と鈴が曖昧に答えた。その答えで雪兎も大体の事情を察した。そんな時、雪兎は見慣れぬ少女の姿を見つける。

 

「そう言えば、一海。コイツは?」

 

それは青羽の後ろにまるで雛のように引っ付く少女だった。

 

「コイツか?コイツは小羽。色々あって俺達が面倒見ることになったんだよ」

 

初対面である雪兎にも小羽が警戒しているのが判った。

 

「初めまして、天野雪兎って言うんだ」

 

なので、雪兎は小羽に視線を合わせるようにしながら近づいて挨拶をする。すると、小羽の視線から警戒が解かれ、雪兎に興味を持ち始める。

 

「ユキトは、カシラや青羽の友達?」

 

「友達っつても、今日が初対面だけどな」

 

「ユキトは敵じゃない?」

 

「おう、お前に酷いことはしない」

 

ここまでの会話で雪兎は小羽に何らかの虐待のような事情があった事を察し、内心怒りを抑えた。小羽も今の会話で雪兎が自分を傷付ける人間では無いと理解し、青羽の前に立って手を差し出した。

 

「よろしく、ユキト」

 

「おう、よろしく」

 

小さな手を握手する。青羽はそれを嬉しそうに見ていた。

 

「初めまして、小羽。私はシュテルと申します」

 

「・・・・シュテルは、ユキトの友達?」

 

シュテルも小羽の元へ行くと、挨拶をする。小羽はすぐに雪兎との関係を聞いてきた。

 

「はい。マスターは私達のマスターです」

 

「・・・・マスター?」

 

小羽はシュテルのマスター呼びのせいか、誰の事が理解出来ていないようだ。

 

「俺の事さ。三羽ガラスや小羽が一海の事をカシラって呼ぶみたいなもんさ」

 

雪兎が小羽にそう教えると、小羽はすぐに理解したのか、コクコクと頷く。

 

「よろしく、シュテル」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

警戒を完全に解いた小羽はシュテルと握手をする。

 

「雪兎くん!」

 

そこへ部屋の片付けに行っていた葛城がやって来た。

 

「巧さん」

 

「待たせてしまったね。部屋の片付けをしていたんだ。さて、早速僕の研究室へ行こう!」

 

どうやら、葛城も早く雪兎と色々と技術的な話をしたいらしい。そこで雪兎はある事を思い付き、一海に声をかける。

 

「あ、そうだ。一海、お前も一緒に来てくれないか?」

 

「え?どうしてだよ」

 

「ストッパーが欲しくてな」

 

「?」

 

疑問符を頭上に浮かべる一海が雪兎のその言葉の意味を理解するのはもう少し後の事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城の研究室へと向かう途中、雪兎達はこの世界の楯無と仲良く談笑する女子生徒とすれ違う。

 

「彼女は?」

 

「ん?楯無さんはそっちにもいるんだろ?」

 

「いや、もう一人の方。知らない顔だったから少し気になっただけだ」

 

雪兎がそう言うと、突然一海の様子が変わる。

 

「お前、みーたんを知らないのか!?」

 

「み、みーたん?」

 

「今話題のネットアイドルみーたんを知らないとはっ!」

 

「いや俺、この世界の住人じゃないし」

 

「シャラップ!」

 

そこからは一海がみーたんについて熱く語り出すが、当のみーたんこと石動美空は若干引き気味だ。一方、雪兎はそんな一海に違和感を覚えた。

 

(何だ?この違和感は?)

 

「聞いてるのか?雪兎」

 

「す、すまん、少し考え事を」

 

「あ”!?」

 

「ほらほら、そのくらいにしとかないと雪兎君達が引いてるわよ?」

 

そこで助け船を出してくれたのは楯無だった。

 

「そもそも異世界の雪兎君達に美空の事言ってもしょうがないでしょ?」

 

「うっ、言われてみれば・・・・」

 

「ごめんなさいね。彼、美空の事になると少しおかしくなるから」

 

「これが俗に言うドルヲタというやつですか」

 

シュテルのその言葉で雪兎は違和感の正体に気付いた。

 

(あっ、一海の反応がまんま典型的なドルヲタなんだ)

 

そう、一海の謎のみーたん推しはまるでこうあるべきだ(・・・・・・・)と言わんばかりのドルヲタっぷりだったのだ。そしてもう1つ雪兎には気になった事があった。

 

「一海、お前ってもしかして会長の事ーー」

 

「さ、さあ!早く研究室へ行こうぜ!」

 

楯無の静止を素直に受け入れた一海の様子から色々察した雪兎がそれを口にしようとすると、一海は慌てて雪兎の背を押し研究室へと向かおうとする。

 

(これ、当たりっぽいな)

 

その様子から考えが正しいのが証明され、雪兎はからかうネタが出来たとほくそ笑む。そうとは知らず、一海は雪兎を連れて研究室へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが僕の研究室さ!」

 

学園内にある葛城の研究室へと案内された雪兎達。そして、雪兎は早速研究室の物に興味津々のようだ。

 

「巧さん巧さん!これは?」

 

「良いところに目を着けたね、それは僕が開発した・・・・」

 

あっという間に雪兎と葛城はシュテルと一海を置き去りに趣味(メカと研究)の話に没頭している。

 

「・・・・この様子だとしばらくは帰ってきませんね」

 

「だな」

 

葛城の発明品の後は雪兎の今まで蓄積していた開発データを閲覧し、葛城が狂喜乱舞している。

 

「あっ、そうそう一海君、グリスコートを出してくれないか?」

 

すると、意外にも早く葛城が復帰し、一海に専用機(グリスコート)を出すように指示する。

 

「えっ?あ、はい」

 

「うん、そこにメンテナンスモードで展開してくれたまえ」

 

葛城の指示に従い一海がIS用の作業台にグリスコートを展開する。

 

「これがグリスコート、確か巧さんが開発した2.5世代機だったか?」

 

「その通り!当時は難波重工で作成したから予算の関係でそれが限界だったのさ」

 

「ふむふむ・・・・ここの構造は・・・・なるほどなるほど」

 

雪兎は早速メンテナンスモードのグリスコートにアクセスし、色々調べ始めた。そして、とんでもない事を告げる。

 

「巧さん、これ(グリスコート)弄っていい?」

 

「ちょっ!?『弄っていい?』ってお前ーー」

 

「いいよ」

 

「葛城さん!?」

 

「では、早速!」

 

そう言うと、雪兎の背中から複数のサブアームが展開する。

 

「って、えぇええええ!?」

 

いきなり現れたサブアームに驚く一海だが、雪兎はそれを無視してグリスコートのデータをEVOLsystemへと送り、いくつかの改造プランを投影モニターに表示させる。

 

「うーん、そのプランは難しいかな?」

 

「あっ、やっぱりそう思います?」

 

「まず一海君に合っていない事と、そもそもコンセプトが・・・・」

 

「なるほど、ならこっちのプランは?」

 

「ほうほう、そう来るか。なら・・・・」

 

葛城と話しながらも既に決定している部分はサブアームで作業を進める雪兎。これには一海も唖然となる。

 

「うーん、でもこのプランのこれも捨てがたい」

 

「でも、それをするなら大掛かりな改修が必要だよ?」

 

「・・・・もう、いっそうの事腕も全部取っ替えてしまおうか?」

 

「ちょっと待てや、こらぁ!」

 

半分くらいバラされ、何やらとんでもない改造がされそうになったところで一海が正気に戻り雪兎を止めようとするが、作業に夢中な雪兎に逆にサブアームで拘束されてしまう。

 

「・・・・雪兎君、それはちょっと」

 

「・・・・巧さんがそう言うなら」

 

そこで葛城は一海の意見を尊重し、雪兎を止める。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 

そこで拘束されていた一海も解放される。その手にはいつの間にかスクラッシュドライバーとロボットゼリーが握られており、その必死さが伺える。

 

「すみません、マスターは重度のメカヲタクでして・・・・弄りがいのある物を前にするとああなってしまうんです」

 

「・・・・ストッパーって、そういう意味だったのかよ」

 

そこからは一海自身の意見も取り入れつつグリスコートを改修していった。

 

「ところで雪兎君、そのサブアームユニットも自作したのかい?」

 

「ええ、マルチツールユニット【魔ルチアームズ】と言いまして」

 

「おい、今、『魔ルチ』とか言わなかったか?」

 

「おそらく、魔改造マルチを略したのでは?」

 

「魔改造・・・・間違いないな」

 

「・・・・それ、僕にも作ってくれない?」

 

「葛城さん!?」

 

こうして一海はしきりに雪兎と葛城にツッコミ続ける羽目になり、夕食の為に研究室を出る頃にはすっかり憔悴しており、一夏達がギョッとする事になるのであった。




はい、雪兎が相変わらず暴走しております。
強化されたグリスコートについては次回となります。


次回予告

無事にこちらの世界の面々とも仲良くなった雪兎達。グリスコートに続いて雪兎の標的となったのは葛城の研究していたとあるもので・・・・


次回

『フルフルとピキピキ 兎、遭遇する』


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147話 フルフルとピキピキ 兎、遭遇する

少し遅くなって申し訳ありません。リアルの方がドタバタしていました。


~前書き劇場~

雪兎「やっぱりメカ弄りはいいなぁ」

??「ほう、ここが前書き劇場か」

雪兎「えっと・・・・どちら様で?」

??「ふっ、名乗る程でも無い者だ」

Tシャツに「俺が氷室幻徳だ!」と書いてある。

雪兎「・・・・いや、Tシャツにおもいっきり書いてあるが」

幻徳「はっ!?」

雪兎「・・・・前回、俺と巧さんはグリスコートの改修をしたんだが」

幻徳「えっ?普通にあらすじいくの?」

雪兎「本編でちゃんと相手してやるから!」

幻徳「はい・・・・」

Tシャツの後ろに「(´・ω・`)ショボーン」と書いてある。

雪兎「後ろにもあんのかい!?」


???side

 

その日、通路を歩いていた俺は興味深い話を聞いた。

 

例の男(・・・)がこちらに来たようだ」

 

「それでは例の計画を?」

 

「その為の鍵は既に我々の手にある」

 

声がする方を見ると、少しだけ開いた扉から内海とクロムの姿が見えた。内海の手には先日ブロス隊が奪取したパラレルボトルなるボトルが握られている。

 

「天野雪兎でしたか?それほどまでの人物なのですか?彼は」

 

「何でもあちら側のスタークが手痛いしっぺ返しを受けたそうだ」

 

「ああ、あのスタークにですか・・・・なるほど、それは確かに優秀な人物のようですね」

 

天野雪兎・・・・その名前には少しだけ聞き覚えがあった。何でも平行世界において「兎の皮を被った天災(ラビットディザスター)」なる2つ名を持つ技術者にして男性IS操者で、その世界の篠ノ之束の弟子らしい。難波会長(老害)はどうやら彼の持つ技術を欲しているようだ。

 

「別の世界と言えどスタークに痛手を負わせた人物か・・・・」

 

二人の話を聞くに、一筋縄ではいかない人物のようだが・・・・俺はそこである事を思い付いた。

 

「これは利用出来るかもしれんな」

 

俺の想像通りの人物ならば味方に出来るかもしれない。そう思った俺は早速彼と接触すべく行動を起こす事にした。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、楽しかった!」

 

グリスコートの改修の後、一段落着いた一海はフラフラと足取りがたどたどしい状態で帰っていった。

雪兎と葛城はコーヒーを、シュテルはココアを飲んで休憩している。

 

「久しぶりに弄りがいのある機体と出会えました。ありがとうございます」

 

「いやいや!僕もとても面白くて参考になるものを見せてもらった!一海くん、ISを使う時だけ1度以外白星あげれなかったからねぇ」

 

雪兎が頭を下げると、手を振りながら笑顔で感謝し返す。すると、葛城は立ち上がって自身の机へと歩く。

 

「・・・・ねぇ、雪兎くん」

「はい、どうかしましたか?」

 

葛城は机に置いてあるハザードトリガーを持つと、雪兎の方を向いて問いかけた。

 

「どうして、ISを創ろうって思ったんだい?」

 

「どうして、ですか・・・・」

 

葛城の言葉に雪兎は葛城の雰囲気が少し変わったのを感じ取る。

 

「この先、誰かが君の事を裏切るかもしれない。君の開発したISを、利用する奴が現れるかもしれない。それでも、ISを創ろうと思えるその『理由』が知りたいんだ」

 

ダイナマイトが掘削用から兵器としての爆弾に、宇宙への足掛かりとなるロケットが敵陣を攻撃するミサイルに、多くの技術の発展や発明の裏にはそのような平和的理由で生まれた技術の「悪用」がある。葛城はライダーシステムを平和を得るための兵器として開発した。しかし、彼のかつての雇い主たる難波はその研究を単なる兵器としてしか価値を見出ださなかったのだろう。だからこそ、葛城は知りたいのだ。自分と同じ技術者である雪兎がどうしてISの開発に携わっているのか、どのような思いでそれを行っているのかを・・・・しかし、雪兎の答えは意外なものだった。

 

「理由、ですか・・・・俺にとってISの開発は趣味みたいなもんですからね・・・・そこまで深く考えた事無いですね」

 

「しゅ、趣味、かい?」

 

何処ぞの生まれ変わってもメカヲタクを貫いた騎士団長と同じく、雪兎はそれを「趣味」だと告げる。

 

「そりゃあ、初めのうちはそんな事も考えましたけど・・・・そんな下らない理由で後で後悔したくないんで」

 

「後悔したくない?」

 

雪兎は転生者としてたまたま(・・・・)人生をやり直す機会を得た。だからこそ雪兎は今世は躊躇わないと決めた。

 

「やらずに後悔するより、やって後悔した方がよっぽどいいじゃないですか。・・・・それに、見ていみたいんです」

 

「?何をだい?」

 

雪兎が天井をーーーその先を見る。葛城も雪兎同様天井を見るが、まだ理解出来ずにいた。

 

「俺の師匠・・・・篠ノ之束が目指した場所、宇宙に行ってみたいんです。まあ、その邪魔をするってんなら全力で排除しますが」

 

それを聞いた葛城はハッと理解する。ISの本来のあり方、それを雪兎は成し遂げようとしているのだと・・・・最後の物言いは少し物騒ではあるが。

 

「ふ、フフフ、ハハハハ!!」

 

「え、なんでそこで笑うんですか!?」

 

「ハハハッ、フフフフ・・・・いや、すまない!君のISに対しての思いがあまりにも素晴らしすぎて・・・・適わない訳だよ」

 

雪兎の答えに葛城は思わず笑ってしまう。それは葛城が忘れかけていた様々な思いを思い出す切っ掛けになった。

 

「でも、思い出せたような気がする。大切な事を・・・・ありがとう、雪兎くん!また1つ成長出来た!」

 

「・・・・お力になれて良かったです」

 

何か憑き物から解き放たれたような感覚を感じる葛城。葛城はその手にあるハザードトリガーを見た。

 

「僕も、目指してみるよ。たった一つの思いや夢に・・・・たった一つ・・・・たった、一つ?」

 

ピコーン!とアニメのエフェクトが出そうな顔で何か思い付いた葛城は慌ててホワイトボードに駆け寄る。

 

「巧さん?どうしたんです?」

 

「そうか、そうだったんだ!何で僕は今まで見落としていたんだ!」

 

ホワイトボードにスラスラと数式を書き殴る葛城。その数式を見た雪兎はそれが何なのかを直ぐに理解した。

 

「巧さん、コレって龍我の・・・・」

 

「あぁ、クローズドラゴンの出力の出し方を数式にした物だ。ドラゴンフルボトルは他のボトルよりも強力が故に適正のある人間でない限り扱えなかった」

 

クローズドラゴンはドラゴンフルボトルの制御不能な程の力を二分割し、それを2本分の出力として扱う事で制御可能にする装置だ。つまり・・・・

 

「クローズはあまりに強い力を分散させる事でスペックをそのままで変身者に悪影響を与えないようにしていたんだ」

 

「そうか!ハザードフォームは2本のボトルを使って変身する。ハザードトリガーが2つの成分の出力を無理矢理同時に上げるから暴走するのか」

 

「あぁ、だから使う成分を1つに限定させる事で、ハザードトリガーのコントロールをすればーー」

 

「1つの成分をハザードトリガーが増長させ、成分を2つ分にできるから、暴走を防げる」

 

「その通り!最ッ高だ!」

 

クローズドラゴンと同じ方法で暴走を抑制しよう。そういう事だ。

 

「それに、これならオーバーフロー状態で運用が可能だ」

 

「作れそうですか?」

 

「勿論!僕は、天ッ才物理学者だからね!」

 

数式を1度消した葛城は新たに数式を書き始める。葛城の目はとても輝かしいものになっていた。

 

「そう言えば巧さん、一海の・・・・グリスの強化はしなくて良いんですか?」

 

葛城はハザードトリガーを安定して使える装置の開発に忙しくなるだろうと考え、その間にやれそうな事を思い付き、葛城に話してみる。すると、葛城はさっきまでの明るい表情を曇らせる。

 

「一海くんは・・・・そのままで良い方が気がするんだ」

 

「・・・・アイツが抱えてる歪みが理由ですか?」

 

雪兎が一海に感じていた違和感を口にすると葛城はコクリと頷く。

 

「一海くんは、見る人の『何か』を見ているような気がする。危ない、いや、異常な何かを・・・・」

 

「成程・・・・俺より長くアイツを見てきた貴方がそう言うなら無理にとはいいませんよ。また何かあったら言って下さい」

 

「あぁ、ありがとう。話を聞いてくれて」

 

「科学者同士、助け合いですよ」

 

雪兎は葛城の研究室から出ると、端末に表示したグリスに酷似したライダー(・・・・・・・・・・・・)とある試作型のボトル(・・・・・・・・・・)のデータを見つめる。

 

「一応は用意してみたが、コイツの出番は当面無さそうだな」

 

それはグリスのデータとビルドドライバーのデータ、そして属性元素ボトルのデータをEVOLsystemで掛け合わせた際に提示された新たなグリスだ。

 

「巧さんはああ言ってたが、保険くらい用意してもバチは当たらないよな?」

 

そう言いながら雪兎は厳重なロックを施した上でそのデータをグリスコートの改造の片手間に八割程まで完成させたナックルに組み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雪兎は外出許可を貰い、1人街へと出ていた。グリスコートの改修機、グリスコート・ヴォルフのテストはシュテルに任せてきた・・・・雪兎の雪華では過剰性能でテストにならず、双方がちょっとやり過ぎればこの世界のアリーナでは吹っ飛ぶ可能性も否定出来ない。そして、雪兎がわざわざ外出した理由とは・・・・

 

「まさか、あの店があるとはなぁ」

 

それは雪兎の世界にもあったとある喫茶店(44話や118話に出てきた喫茶店)を訪れる為だ。「平行世界なんだし、同じ店くらいあるだろ?」と思うかもしれないが、この喫茶店に関しては別だ。その店は色々と特殊なのだ。

 

「とりあえず、行ってみるか」

 

そう言って雪兎が店内に入ると、

 

「いらっしゃいませ~、お一人様ですか?」

 

雪兎の世界と同様にオレンジ色の髪をしたアルバイトの少女が出迎える。

 

「ああ」

 

「では、ご案内しますね」

 

そう言って雪兎が案内されたのは、あちらでは半ば雪兎の指定席となっている席だった。

 

「それではごゆっくりどうぞ」

 

雪兎がその席に着き、注文を終えると、周りの席を確認してみる。どの客も雪兎がよく知る常連客ばかり。雪兎の疑念は確信へと変わる。

 

「やっぱりか・・・・」

 

すると、顔馴染みの青髪のウエイターが声を掛けてきた。

 

「よぉ、兄ちゃん。今日は1人かい?」

 

「ああ、今日はちょっとな」

 

ウエイターの反応からやはりこの店が雪兎のよく知る店であると判る。

 

「ふーん・・・・まあ、ごゆっくりな」

 

そう言ってウエイターの男は仕事に戻っていった。

 

(この店が本物って事は・・・・あそこにいる常連達も本物って事だよな?)

 

「○郎、もう一品注文しても?」

 

「したらセ○バーの晩御飯のおかず抜きな?」

 

何やら晩御飯のおかずがどうので揉めてる金髪アホ毛付きとブラウニー。

 

「良いお店でしょう?」

 

「いや、何であのナマモノが店員してんのよ!?」

 

「あっ、青いラ○サーさんもいますよ!大人の私」

 

三姉妹に見える三人の聖女。

 

「見つけましたよ、兄さん」

 

「げっ、秋○!?」

 

義妹に引き摺られて店を出ていく眼鏡ボーイ。

他にもコーヒーのカッコイイ飲み方を試行錯誤する男や、ふくよか・白衣・アラフィフの黒幕トリオ、次のライブの打ち合わせをする暴君と竜嬢、ネタの打ち合わせをしている幸の薄そうな女芸人トリオまでいる。

 

「・・・・俺はいつから型○時空に迷い込んだんだ?」

 

そんな事を考えている間に雪兎の注文したコーヒーを猫っぽい何かが運んできた。

 

「お待ちどう様、ご注文のモーニングセットです」

 

「お、おう」

 

雪兎もそこそこここには通っているが、やはりこの猫っぽい何かは見慣れる事はない。すると、猫っぽい何かは雪兎の顔を見て周りをキョロキョロし出す。

 

「シュテルなら今日はいないぞ」

 

「そ、そうですかい・・・・あのお嬢さんにはあっしらが逆らえない何かがありまして・・・・」

 

「そういや、この前公園で読書してたら猫まみれになってたな」

 

この猫っぽい何かも、シュテルが放つ謎の猫吸引物質には逆らえないらしく、前に連れてきた時は猫っぽい何か達が揃って使い物にならなくなった程だ。

 

「今日のシフトにはバブルスとディスティニーもいるから大変な事になるところでしたぜ」

 

「シュテルはお前らの事気に入ってたし、またそのうちに連れてくるか」

 

「せ、殺生な!?」

 

そんな事を話していると、新しい客が来店してきたようで、丁度暇だった猫っぽい何かが対応したのだが・・・・

 

「いらっしゃいませ~、お一人様ですか?」

 

「!?あ、ああ」

 

どうやら常連では無い客のようで、グレーのスーツに黒のコート姿の彼は猫っぽい何かに酷く驚いている。

 

「空いてる席は・・・・では、こちらへどうぞ」

 

常連客では無い彼に常連客の席の近く(混沌とした場所)へ案内するのは酷だと思った猫っぽい何かは雪兎のすぐ後ろの席へと彼を案内した。

 

「ご注文はお決まりで?」

 

「で、ではコーヒーを頼む」

 

「かしこまりました~」

 

猫っぽい何かが注文を聞き終え去っていくと、彼は安堵の息を吐く。

 

「・・・・まあ、初見じゃアイツらはインパクト強過ぎるわな」

 

そんな彼に雪兎は声を掛けた。

 

「!?あ、ああ・・・・」

 

一方で、彼は声を掛けられるとは思っていなかったようで、声に少し動揺が見える。

 

「そんな固くなんなよ・・・・元々俺に用があったんじゃないのか?」

 

「なっ!?」

 

「どうやったかは知らんが、姿は見えなかったのに気配は駄々漏れだったぞ?」

 

雪兎は彼が学園の外に出てからずっと尾行していた事に気付いており、気付いてはいたが敵意はなさそうなので見逃していたのだ。

 

「まあ、背を向けたまま話すのも面倒だ。こっちの席にこいよ・・・・少なくともこの店の中でなら聞かれる(・・・・)事はないぜ?」

 

「・・・・わかった」

 

こんな回りくどい接触をしてきた事から何らかの事情持ちだと判断した雪兎はマドカの時と同様にジャミングフィールドを展開して話を聞いてみる事にした。が、丁度そこへ猫っぽい何かが彼の注文したコーヒーを持ってきた。

 

「お待たせいたしました~って、お二人ともお知り合いで?」

 

「まあ、朝からの長い付き合いってやつだ」

 

「?とりあえずご注文のコーヒーになります」

 

猫っぽい何かの問いかけに某メダルクラッシャーのような言い回しで返す雪兎。

 

「で、俺に何の用かな?氷室幻徳君?」

 

「!?何故それを・・・・」

 

あっさりと正体を見破られた幻徳は先程よりも動揺した素振りを見せる。そんな幻徳に雪兎は理由を説明する。

 

「理由は3つ・・・・1つ、俺の事を知っているのはIS学園か難波重工関係者に限られているから」

 

これは雪兎が異世界人であるという事から。

 

「2つ、学園のデータベースでお前さんの顔を見たから」

 

これはグリスコートのデータを解析していた際に偶然見つけた臨海学校での幻徳が写った写真から気になって調べたものだ。その際、この世界のシャルロットと良い雰囲気だったのには少し思う所が無い訳では無いが・・・・

 

「3つ、俺の勘と推測から」

 

その他諸々のデータや考察の末に雪兎は何となくではあるが、幻徳が自分に接触してきた理由についてもある程度は察していた。

 

「・・・・流石は天災だな」

 

「俺への接触理由はここ(胸部)に仕込まれた異物の処理と難波由来じゃない力・・・・ってとこか」

 

そう言って雪兎は自身の胸部を示す。

 

「一を知りて十、いや百を知る・・・・なるほど、あの老害が欲するわけだ」

 

あっさりと目的を看破された幻徳も改めて雪兎の規格外っぷりを理解する。そして、「やはりこの男ならば」と自身の口から目的を伝える。

 

「その通りだ・・・・俺に仕込まれたこの装置を無力化するものと、俺にISを1つ用意して欲しい」

 

「それは構わんが、対価は?」

 

「・・・・これでどうだ?」

 

幻徳が取り出したのは記憶媒体。それに保存されているのは・・・・

 

「隙を見て盗み出した難波の研究成果と研究施設に関するデータだ」

 

「いいだろう。引き渡しの時に交換といこうか」

 

「どのくらいで用意できる?」

 

「IS自体は丁度良いのがいるから、そいつの調整とジャミング装置の取り付けで・・・・2日後だな」

 

「わかった」

 

「引き渡し場所はここがいいだろう・・・・ここなら下手にちょっかい出されても客に撃退されるだけだし」

 

「彼らは只者ではないとは思っていたが、それほどなのか?」

 

「・・・・下手すれば都市1つぶっ飛ばせる」

 

「・・・・尾行には十分注意しよう」

 

雪兎の顔が真顔だったので幻徳はそれを冗談とは思わなかった・・・・いや、幻徳自身も感じ取っていたのだろう、ここの常連客達の異常さを。

 

「さてと、そろそろ帰るか・・・・お前さんの専用機の調整もしないといけないしな」

 

「そうか」

 

「あっ、あと早めに抜け出してやれよ?」

 

「?」

 

「待たせてるんだろ?彼女(シャルロット)

 

ここ数日ではあるが、この世界のシャルロットは時々遠い目をしている事があるのを雪兎は知っている。その理由も・・・・

 

「・・・・善処しよう」

 

雪兎の言葉にそう答え、二人は会計を済ませて店を出る。

 

「きゃああああ!!」

 

すると、突然女性の悲鳴がした。

 

「あれは・・・・」

 

「ちっ、スマッシュか」

 

声がする方を見ると、そこには分厚い装甲を持つストロングスマッシュが暴れていた。

 

「さて、どうしたもんかねぇ」

 

「待て」

 

そう言いつつもクロストリガーを取り出した雪兎だったが、幻徳がそれを制する。

 

「どういうつもりだ?」

 

「・・・・例のジャミング、まだ続けられるか?」

 

その事について咎めると、幻徳は意外な事を聞いてきた。

 

「ああ、まだしばらくはもつが・・・・って、まさか!?」

 

「そういう訳だ」

 

幻徳が取り出したのはスクラッシュドライバーと紫色の特殊な形状をしたボトルだった。

 

『デンジャー!クロコダイルッ!』

 

そのボトルのキャップを正面に向け、腰に装着したスクラッシュドライバーにセット。

 

「見ていろ・・・・これが俺の今の力だ。変身」

 

そして、スクラッシュドライバーのレンチを下げてビーカー型とファクトリーを生成。そこに紫色のボトル成分が満ち、左右から鰐の顎のような物が現れビーカーを咬み砕く。

 

『割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグゥ!オォラァ!』

 

ビーカーが完全に砕け散ると、中から紫色のライダーが姿を現し、女性の悲鳴のようなサウンドが響く。

 

「やっぱりお前も仮面ライダーなのか」

 

「ローグ・・・・仮面ライダーローグだ」

 

ローグの姿を見つけたストロングスマッシュはローグを脅威と認識したのか真っ直ぐローグへ向かって走り出し、自慢の拳を振るう。しかし、ローグは微動だにしない。

 

「効かんな」

 

そして、お返しにとローグが拳を叩き込むとストロングスマッシュはあっさりと吹き飛ばされていく。

 

「ほう、その装甲は・・・・なるほどな」

 

一方で出番のなくなった雪兎はローグの装甲を見てその防御力の秘密に気付いた。

 

「面白い事考えるやつがいたもんだ・・・・それに、これならあのISを任せても良さそうだな」

 

雪兎が先程言っていたISとは、とある理由から黒雷と同様に一般人にはとても扱える代物では無いISなのだ。だが、ローグの戦いっぷりを見て雪兎は幻徳ならばそれを扱えると確信する。

 

「これは思ったよりいいデータが取れそうだ」

 

その後もローグは終止ストロングスマッシュを圧倒し、あっさり行動不能にしてしまった。

 

「うっは、これはグリスやビルドじゃ苦戦しそうだな」

 

そんな事を考えながらさりげなくストロングスマッシュの成分を回収していると、騒ぎを聞き付けた一海やシュテル達がやって来た。

 

「雪兎!?お前こんな所にいたのかって、そいつは・・・・!?」

 

そこでローグの存在に気付いた一海が警戒しスクラッシュドライバーとロボットゼリーを取り出すが、ローグは興味が無いと言わんばかりに一海らに背を向ける。

 

「ま、待て!」

 

それでも一海はローグを追おうとするも、ローグは紫色の銃を取り出し銃口から煙を放ち姿を眩ませた。

 

「マスター、彼は?」

 

逃げられた事に悔しそうな顔をする一海を余所にシュテルは雪兎にローグについて訊ねる。

 

「ああ、ちょっとそこで知り合ってな」

 

「お怪我は?」

 

「問題無い・・・・少なくともあいつは俺の(・・)敵では無いみたいだ」

 

「なるほど・・・・そういう事ですか」

 

雪兎の表情から大体の事を察したシュテルはやれやれと首を振る。

 

「ちょっとした興味本位で来てみたが・・・・この世界は俺を随分と楽しませてくれるみたいだ」

 

一海達には気付かれ無いように片手で顔を隠しつつ、雪兎は楽しそうな笑みを浮かべた。




かなり長くなりました。
一海より先にローグの正体を知った雪兎ですが、正体は明かさない模様。
そして、幻徳の専用機はどうなることやら・・・・
喫茶店は型月ファンなら知ってるあの店です。


次回予告

幻徳との接触から2日後。雪兎は専用機を完成させ、それの引き渡しに再びあの喫茶店を訪れる。そして、パラレルボトル奪還作戦が目前に迫り・・・・

次回

「誓いと決意 兎、ホクホクする」


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148話 誓いと決意 兎、ホクホクする

~前書き劇場~

雪兎「前回も結局ちゃんとあらすじやれなかったな」

幻徳「・・・・」

気にするな!という文字のTシャツ。

雪兎「だから喋れや!」

幻徳「・・・・」

ジャケットに隠れていた「だから」という文字を見せる。

雪兎「・・・・もう、やだコイツ。何で前書きだとこんなんなの?」

幻徳「・・・・」

気にするな!を強調してアピールしている。

雪兎「だから「・・・・」じゃないっつうの!」


仮面ライダーローグこと氷室幻徳との接触から2日が経ち、雪兎は再びあの喫茶店を訪れていた。店内には既に幻徳の姿があり、雪兎もその席に着く。

 

「よぉ、幻ちゃん。待たせたな」

 

「げ、幻ちゃん?」

 

妙にフレンドリーな雪兎に少し困惑しつつも、幻徳は雪兎に訊ねる。

 

「それはともかく、例の物(専用機)は?」

 

「そう急かしなさんなって・・・・ほら」

 

そう言って雪兎が取り出したのは(ローグカラー)カード型端末(storage)

 

こいつ(storage)に収納してある。学園に残ってたデータである程度はフィッティングとかの調整は済ませてあるから直ぐにでも使えるだろうよ」

 

「それは助かる」

 

紫のstorageを受け取ると、代わりに幻徳は先日提示していた記憶端末を雪兎に渡す。

 

「データを確かめても?」

 

「構わん」

 

端末からデータを呼び出してサラッと確認した雪兎はそれが本物である事を確かめると端末を懐にしまった。

 

「確かに、これで取引成立だな」

 

「ああ」

 

「なら少しだけその専用機の説明をしておこうか」

 

そう言って雪兎は幻徳にだけ見えるように空間投影ディスプレイを展開する。

 

「全身装甲・・・・フルスキンというやつか」

 

「ああ、コンセプトは『重装甲による敵陣の強行突破と突破し切れなくとも1対多数で戦い抜ける戦闘力』だ。装甲は表面に対光学兵器コーティングを施し、耐物理攻撃の為に複層構造になってる」

 

そのISは重厚な全身装甲に肩のシールドブースター、背面に大型のスラスターを二基装備している。

 

「肩と背面のユニットにはそれぞれサブアームが内蔵してあり、最大6本腕になる。武器もそれぞれ6本分ある」

 

「なるほど・・・・このメインアームのやけにナックルガードは?」

 

「そいつはインパクトナックルと言って、殴った際に内蔵した弾薬を炸裂させて追加ダメージを発生させるものだ」

 

「ほう・・・・うん?このメイスは?」

 

「バイトメイスの事か?こいつはこうやって相手を挟んで締め付けたり、内部に仕込んだ(バイト)をチェーンソーみたいに高速で動かして切断したり継続ダメージを与える装備だ。勿論、メイスとしても使える」

 

「面白い」

 

バイトメイスの元ネタは勿論あの鉄血のオルフェンズに登場したあの鬼畜武器レンチメイスである。

 

「このIS、名は?」

 

「決めてない。というか、試作した段階で普通の人間じゃ扱えない事が判ってな・・・・直ぐにお蔵入りしたもんだから名前決めてないんだ。好きに名付けてやってくれ」

 

「そうか・・・・」

 

そう言われ、少し考えた末に幻徳が付けた名は・・・・

 

「【バルドローグ】そう呼ばせて貰おう」

 

こうして、幻徳は兎印の否常識IS【バルドローグ】を手にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、学園に戻った雪兎は葛城に幻徳から入手したデータをコピーして提供し、食堂にてシュテルの事を待っていると、たまたまこの世界の楯無と遭遇した。

 

「あら?雪兎君じゃない」

 

「ども」

 

「ごめんなさいね、色々巻き込んじゃって」

 

「いえ、俺もトラブルには慣れてますから」

 

この時、雪兎はとある事を思いつく。

 

(そういや向こうの楯無さん用に作ってたアレ(・・)があったな)

 

自身の世界にて一夏らが大幅にパワーアップをしてしまった影響で実力差が埋まりつつある楯無用に雪兎はとあるものを開発していた。そして、丁度その試作品と言えるものを持っていたのだ。

 

「そういえば楯無さんのIS、拡張領域(バススロット)の空きあります?」

 

「拡張領域?少しなら余ってるけど」

 

「是非とも楯無さんに試してもらいたい装備があるんですよ」

 

せっかくなのでそのテストをこちらの楯無にして貰おうというのだ。その後、楯無の了承を得た雪兎はシュテルとも合流し、アリーナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが試してほしい装備?」

 

それは長い柄の石突きの部分に飾り布を持ち、複数のパーツで構成された大型の刃を持つ変わった形状のランスだった。

 

「ええ、試作武装・メリクリウス。そのミステリアス・レイディの機能を強化する目的で開発した装備です」

 

このメリクリウスは以前にあちらで開発したパッケージ・ミストラルにも使用したアクア・クリスタルの強化版とも呼べるアクア・スフィアを搭載しており、その内部の拡張領域にアクアナノマシン入りの水を大量にストックしており、水分の少ないフィールドでも存分に力を発揮出来るようになっている。また、アクア・スフィアによりアクアナノマシンの制御能力が向上し、アクアナノマシン入りの水をまるで生き物のようにコントロールする事も可能にしてしまうという装備なのだ。また、刃のパーツは複数に分離し、それらをアクアナノマシン入りの水で繋ぐことで蛇腹剣のように伸ばしたり、刃全体を覆って巨大な刃にしたりする事も可能なんだとか。飾り布もただの飾りではなく、特殊な合金繊維で出来ており、防御や相手の拘束にも使えるのだ。

 

「なるほどね・・・・でも、こんな装備、本当に貰ってもいいの?」

 

「あくまで試作品ですし、データ収集に協力してもらうお礼ですよ」

 

当然それだけではない。楯無のミステリアス・レイディは一夏達より実戦経験豊富なIS。それがメリクリウスのアクア・スフィアという外的要因によって刺激を受ければ二次移行の発生がし易くなる。それにより二次移行したミステリアス・レイディの能力がどうなるのか?そのデータが欲しいのだ。要は「同じISに同じような武装を与えた場合、同じような進化をするのだろうか?」という平行世界ならではの貴重なデータを取るつもりなのだ。

 

「まあいいわ、パラレルボトル奪還作戦も近い事だし、有効利用させて貰うわね」

 

楯無は雪兎に何らかの思惑があるのは察したものの、損は無いと判断し有り難くメリクリウスを戴く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、葛城が例のデータを精査した結果、現在難波重工が拠点にしていると思われる研究所を特定する事に成功した。その後、主要メンバーを集め、パラレルボトル奪還作戦の作戦会議が行われた。

 

「雪兎君が提供してくれたデータにより、難波重工がパラレルボトルの解析を行っていると思われる拠点が判明した」

 

「そこで我々はパラレルボトル奪還の為、この拠点へ突入する事を決定した」

 

奪還作戦に参加するメンバーは葛城、一海、三羽烏、一夏達専用機持ち、楯無、そして雪兎とシュテルの14名の突入部隊とサポートに更識の暗部や千冬や真耶が加わる事になる。

 

(・・・・雪華は奥の手として温存しておいて、俺は引き続きクロスでいくか)

 

既にグリスコート・ヴォルフのテストでシュテルがルシュフェリオンを使用しているが、あれはジャミングフィールドをアリーナに展開していたからであり、未だに雪兎達がISを実戦投入するのは不味い。また、雪兎自身もまだ雪華を使うタイミングでは無いと判断し、引き続きレプリカライダー・クロスを使用することにした。

 

(となると、もう少しくらい戦力を増強してもバチは当たらんよな?)

 

作戦会議後に雪兎は一海を1人呼び出した。

 

「で?わざわざ呼び出してどうしたんだ?」

 

「ちょっと渡しておくもんがあってな」

 

「?」

 

首傾げる一海に雪兎はグリスと同じ黒と金のカラーリングのstorageを手渡した。

 

「そいつには完成させた新型ナックルと成分の定着に成功した属性元素ボトルが一式入ってる」

 

「えっ!?」

 

「もしもの時の備えってやつだ。武器は多いに越した事ねぇだろ?」

 

「それはそうだな・・・・」

 

試しに一海がナックルを取り出すと、カラーリングや中央のマークがクローズナックルとは異なるナックルが現れる。

 

「取説はstorageで確認出来るようにしてある。どう使うかはお前次第だ」

 

「サンキュー」

 

「それと、こいつはオマケだ」

 

そう言って雪兎はもう1つクリアブルーのフルボトルを一海に投げ渡す。

 

「おっと・・・・これは、フルボトル?」

 

そのフルボトルにはロボット、キャッスル、スタッグ、オウルのマークが描かれている。

 

「ちょっとした御守りみたいなもんさ、無くすなよ?」

 

「御守り、ねぇ・・・・」

 

御守りなんて雪兎らしくないと思いつつも、一海はそのフルボトルを胸ポケットにしまう。

 

「さて、用も済んだし、食堂でカツカレーうどん定食でも食うか」

 

「お前、好きだな、あのメニュー・・・・俺なんて雪兎が頼むまであんなメニューあるなんて知らなかったぞ」

 

「俺もこっちにもあるとは思わなんだわ」

 

そんな事を話しながら二人は食堂へと向かうのであった。




色々とフラグ蒔いて次回、ようやく奪還作戦です。


次回予告

ついに始まったパラレルボトル奪還作戦。しかし、雪兎が正面から襲撃なんてする訳もなく・・・・


次回

『パラレルボトル奪還作戦・序 兎、やっぱりやらかす』


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149話 パラレルボトル奪還作戦・序 兎、やっぱりやらかす

~前書き劇場~

雪兎「フッフッフッ」

一海「や、やけに楽しそうだな、雪兎」

雪兎「ちょっとな、今回は色々とサプライズを用意してるのさ!」

シュテル「もちろん、貴方達に得となるサプライズも」

一海「(ナックルや属性元素ボトル以外にも何か仕込んでやがる)・・・・そのサプライズってのは?」

雪兎・シュテル「それは本編を読んでのお楽しみ」

一海「うがぁあああああ!そう聞くと余計に気になる!」

雪兎「という訳で」

シュテル「第149話をどうぞ」

一海「俺にだけ内緒で教えて?」

雪兎「・・・・だが断る!」


作戦当日、雪兎は一足早く外で準備を行っていた。ちなみにシュテルは学園に住み着いている猫の餌やりに行っている。そこへ一海がやって来た。

 

「お、一海か」

 

「雪兎」

 

「ついに作戦が始まるな。機体の確認はしておいたか」

 

「おう。スラスターの調子も全部しておいたぜ」

 

挨拶がてらISの調子を聞いておく。どうもこの前シュテルとの模擬戦で【共鳴型瞬時加速(レゾナンス・イグニッションブースト)】なる瞬時加速の応用をしてせっかく新調したスラスターをオシャカ手前にしていたのだ。確かに数回分の瞬時加速の力を溜めて放つその加速力は凄まじいがスラスターへの負担を度外視したものなので、スラスターを改良して一度だけなら問題無く使用出来るようにはしておいた。

 

「・・・・なぁ、雪兎」

 

「ん、どうした?」

 

すると、一海が改まって雪兎に訊ねる。

 

「お前ってシャルロットの事が好きなのか?」

 

「おう」

 

「そっかって即答!?」

 

全く悩んだ様子も無く即答する雪兎に驚く一海だが、雪兎にとっては自身の世界でほぼ世界中に知られている事なので隠す必要が無いのだ。

 

「逆に聞くが悩む必要ってあるか?」

 

「あー、確かにそうだな」

 

雪兎のその言葉に一海はつい頷く。言われてみればという感じだろう。

 

「そーゆーお前だって、楯無さんのこと好きだろ」

 

「え、なんで確定事項!?」

 

今度は逆に雪兎にそう断言されて一海が焦った顔する。どうも一海は考えが顔に出易いようだ。

 

「だってみーたん?よりも楯無さんの方が反応がアレだし」

 

「いや、そうかもしれねぇけど!聞くなよ恥ずかしい!」

 

「それさっきの質問思い出しながら聞けるのか?」

 

雪兎が気付いた理由を説明すれば、一海は顔を真っ赤にして反論する。

 

「で、実際どうなんだよ」

 

「そ、そりゃあ好きだけどよ・・・・何か問題でもあったか?」

 

その答えを聞き、やはりあのボトル(・・・・・)を渡しておいたのは正しかったと確信する雪兎。

 

「いや、『問題』は無いな。お守りを渡しといて正解だったと思っただけだ」

 

「え、あのボトル恋愛祈願のお守りなのか!?」

 

「うーん、どちらかと言うと縁結び?」

 

具体的な効果は暈し、誤魔化すように次の質問を投げ掛けた。

 

「で、何処が好きなんだ?」

 

「全部って言っちゃダメか?」

 

「逆に言わなかったら許さなかった」

 

全部と返した一海にこれなら大丈夫そうだ、と雪兎は安堵する。

 

「一応言っとくが・・・・一海、絶対にその気持ちを忘れるなよ。それがきっとお前の 原点(オリジン)だ」

 

「原点・・・・おう、分かった。なんでそんな事を言ったのかは分かんねぇが」

 

「取り戻そうぜ、パラレルボトル」

 

「おう」

 

二人が拳を合わせるとそれを朝日が照らす。そして、2つの世界の命運を賭けた戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして作戦決行の時となり、葛城はビルドフォンをバイクに変形させ、雪兎とシュテルはかつて渡った異世界から持ち帰ったライドボードを取り出し、他のメンバーはトレーラーで移動する事になったのだが。

 

「一海、バイク持ってねぇの?」

 

「ああ、夏休みの始めに免除は取ったんだがな」

 

ちなみに、雪兎は既に夏休みに中型免許を取得している。

 

「免除はあるのか、だったら・・・・」

 

ライダーでありながらバイクを持たないと聞き、雪兎はstorageから大きめの錠前のような物を取り出し一海に投げ渡す。その表面の蓋のようなパーツには蘭の絵柄が描かれている。

 

「そいつを使え」

 

「これは?」

 

「ロックビークル・ランクルーザー、横のスイッチを押して投げてみ」

 

「えっと、こうか?」

 

『Lock Off!』

 

錠前が開き、音声が鳴ったの確認した一海がそれを投げると、錠前が変形しながらビルドフォンのように巨大化し、一台のバイクへと早変わりした。

 

「お、おおー!バイクに変形したぞ!」

 

「ライダーがバイク無いのは名折れだからな、やるよ」

 

「ありがとな」

 

「じゃあ、行こうか」

 

「ところで皆はあのボードには突っ込まないの?」

 

そこで黄羽が中々聞き出せなかった事を口にするが・・・・

 

「「「「まあ、雪兎だし」」」」

 

ここの皆もいい感じに兎に毒されつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エネルギー研究所近辺まで近付くと流石に警備のガーディアン等が見られ、正面突破は難しくはないが、こちらにも相応の被害が出ると雪兎は計算する。

 

「・・・・仕方ない、アレを使うか」

 

そこで雪兎はとあるものの使用に踏み切る事に。

 

「アレ?まだ何かあるのかよ」

 

「ちょっと正面突破は割に合わないんでな、プラン変更で」

 

「つってもどうやって侵入するんだよ?」

 

「ほう?天野には正面突破よりもマシな作戦があると?」

 

「ええ、シュテル」

 

「なるほど、そういう事ですか」

 

雪兎がシュテルに目配せすると、シュテルもそれが何なのか察したようだ。

 

「・・・・セオリーってのは無視するもんなのさ!」

 

すると、シュテルがエグザを展開し、紅いショベルカーのような物が描かれたボトルをベルトに装填する。

 

『Powerd EXA』

 

現れたのは恐竜のような真紅パワーショベル・パワードエグザ。この瞬間、その場にいた全員が雪兎達のやろうとしている事を察した。

 

「ま、まさか!?」

 

「壁をぶち抜く気!?」

 

そんな一同を置いてきぼりにし、パワードエグザに搭乗したシュテルはバケットをドリルへと換装し、研究所の外壁をぶち抜き、そのまま研究所の壁までぶち抜いてしまう。

 

「よし、ショートカット成功」

 

その後ろを平然と進む雪兎に少々毒されてきた一海らも流石に唖然となる。

 

「まさかホントに突入に成功するとは・・・・」

 

「言ったろ?セオリーは無視するもんだってな」

 

無視するとしてもやり過ぎである。

 

『侵入口は私が守ります。皆さんは進んでパラレルボトルの奪還を』

 

「頼んだぞ、シュテル」

 

侵入口を退路としても使うべく、シュテルとパワードエグザに任せ、雪兎と正気に戻った一海達。

 

「一気に最深部まで行ってボトルを取り返すよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

更に葛城さんの一言で行動を開始する。ISやライダー、ハードスマッシュは目立つ為、雪兎が持ち込んだスタンロッド等を使い警備を無力化しながら進む一行。

 

「結構簡単に進むな」

 

「一夏、気を抜くなよ。ここは敵地だからな」

 

「分かってる」

 

一夏の一言にラウラが念を押すと、一夏が頷く。だが、雪兎がクロストリガーを引き抜いて一夏の方を・・・・正確にはその後ろにある空間を射つ。突然の行動に一同は驚くが、雪兎が意味も無くそんな事をするはずもなく。

 

「キャッ!?」

 

すると、一夏の背後から蝶のようなスマッシュ・バタフライハードスマッシュが姿を現した。ちなみに弾丸はハンドアックスのような物で防いだ模様。

 

「なんで分かったの!?」

 

「教えると思うか?まぁ天災だからって事で完結してくれ」

 

一同がバタフライに身構えるが、それを楯無が手で制する。

 

「楯無さん・・・・?」

 

「ここは私に任せて皆は先に行って」

 

楯無はミステリアス・レイディを展開し、バタフライハードスマッシュと一海達の間に立つ。

 

「だったら俺も・・・・!」

 

「ダメよ一海くん。貴方は先に行って、ボトルを取り返さなきゃ」

 

「だったら楯無さんも・・・・」

 

「一海くん」

 

よくアニメ等にもある「ここは任せて先に行け!」なシーンである。

 

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。私には秘策があるから」

 

「楯無さん・・・・行くぞお前ら!」

 

そんな一幕を見て、雪兎は何故か安堵していた。それは雪兎が一海に懐いていたとある問題の糸口は既に用意されていると知ったからだ。

 

「そう簡単には行かせないよ!」

 

バタフライがそう言うと、ガーディアンやハードガーディアンが通路からワラワラと現れる。

 

「もう隠す必要がないか」

 

「ですね」

 

葛城と雪兎がそう呟くと、専用機持ちは待機状態のISを、三羽ガラスはボトルを、一海と葛城さんはそれぞれのドライバーを、雪兎はクロストリガーを構える。

 

「来るよ!」

 

専用機持ちはISを纏い、三羽ガラスはハードスマッシュになるが、残る雪兎達三人は近場にいたガーディアンを葛城はボトルを、一海はゼリーを握った拳で殴打。雪兎はクロストリガーで撃ち抜いた。

 

『トラ!UFO!ベストマッチ!』

 

『ロボットゼリー!』

 

『Operation Start』

 

そして、変身の為の隙を作り、変身シーケンスを開始する。だが、その前に雪兎は一海に声を掛ける。

 

「・・・・一海」

 

「・・・・んだよ」

 

「誰かを愛する事って、信じる事なんだぜ」

 

「ッ・・・・そうだな。すまねぇ、少し取り乱した」

 

「それでこそ一海だ・・・・行くぜ」

 

楯無の事で少しテンションの低かった一海に発破をかけ、三人は横並びになって最後の行程を終える。

 

「「変身!」」

 

「装着」

 

『未確認ジャングルハンター!トラUFO!イェーイ!』

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボット・イン・グリス!ブラァ!』

 

三人は同時に変身を終えると、それぞれ駆け出した。

 

「楯無さん・・・・後ろは任せたぜゴラァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラァァァァッ!!」

 

雪兎が弾丸で耐久値を減らした硬い扉を一海がその拳で突き破り、一同が一斉に部屋になだれ込む。そこはこれまでの道や部屋と比べて一段大きな部屋だった。

 

「ここは・・・・」

 

「最深部なんだけど・・・・コレは一体、何なんだ?」

 

その部屋には明らかに人為的に作り出されたであろう黒いエネルギーの渦があった。

 

「これは・・・・ワームホールか」

 

「その通りだ、 兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)

 

雪兎が渦の正体を言うと、いかにもインテリ眼鏡な男・内海が突然現れて雪兎が正解である事を告げる。

 

「ようやく分かったぜ。狙いは俺じゃなくて俺の手掛けたもん(ISや発明品)だったんだな」

 

「貴方が我々の言う事を聞かない事なんて既に分かり切っています。ならば作ったものを我々の手で解析して利用すればいい」

 

それを聞き、雪兎は拳を握り締める。つまり内海とやらはこう言ったのだ「本人が言う事を聞かないだろうから、その周りにいる者達から奪えばいい」「(雪兎)の成果を無断で利用(おそらく兵器転用)する」と・・・・これが雪兎の世界の人間ならばどれだけ愚かな行為か知っており、余程の度胸が無ければ行えない行為なのだが。

 

「アンタら、俺の仲間や恋人を狙うだなんていい度胸してるな」

 

「今から大人しく技術提供をしてくれれば考えますよ」

 

それを聞いた雪兎は下を向いて呆れたように首を横に振った。

 

「残念だが、アンタらみたいな奴らにくれるヤツなんて1つもないぜ」

 

「それは、残念だ」

 

『バット・・・・!』

 

雪兎の返答を聞いた内海は以前にも遭遇したブラッドスタークが使っていた黒い銃・トランスチームガンにバットフルボトルを装填すると、トリガーを引いた。

 

「蒸血」

 

『ミストマッチ!バット・・・・バッバット・・・・!ファイア!』

 

トランスチームガンから放たれた煙を纏うと内海はブラッドスタークに酷似した、しかし、その姿はブラッドスタークとは違う蝙蝠をモチーフにした姿・ナイトローグへと変貌する。

 

「お前達にはここでいてもらおう。ワームホールも直に開く」

 

「そんな事させない!科学の力を悪用させてたまるか!」

 

葛城がそうはさせまいと走り出すが、それを阻むように右半身が白い歯車で覆われたパワードスーツと、それとは反対に左半身が緑色の歯車で覆われたパワードスーツが立ち塞がる。葛城から事前に貰った情報によると白いのがエンジンブロス、緑の方がリモコンブロスというらしい。

 

「愚かな科学者如きが、我々の邪魔など!」

 

「大人しく他人事で終わらせておけば良かったものを!」

 

ブロス達は葛城と戦闘を始め、一海達が加勢に向かおうとすると、チェスルークのようなスマッシュが8体とそれを従えるチェスハードスマッシュが現れた。

 

「今度はお前かよ!」

 

「そう簡単に通すとでも?内海、貴方は3人組のハードスマッシュを」

 

「分かった」

 

更にはハードガーディアンも駆けつけ雪兎達はあっさり分断されてしまったのだが・・・・先程とは真逆に今度は雪兎がテンションを下げてしまう。それも氷点下というレベルの謎の寒さと共に。

 

「・・・・何、アレ?風竜、雷竜のパチモン?」

 

そう、雪兎はブロス兄弟の姿を見て、ショボさにガッカリしていたのだ。

 

「「「「えっ?」」」」

 

これには流石に皆、一度動きを止めた。ブロス兄弟までもが、だ。

 

「今、聞き捨てならない言葉を聞いた気がしましたが?」

 

「俺達、難波重工の最終兵器がパチモンだと!?」

 

「うん、そのデザインからして左右で合体すんだろ?しかもパーツ構成からして片方にその歯車っぽいパーツ移すだけの合体とも呼べねぇ駄作、パチモンと呼ばずに何と呼ぶ?プロトタイプかモデルに赤いの(炎竜)青いの(氷竜)でもいるんじゃねぇか?」

 

初見でその機構をほぼ察した雪兎からしたらパチモンにしか見えなかったのである。

完全に余談だが、ブロスの元となったカイザーシステムには確かに赤いの(カイザーリバース)青いの(カイザー)がいたりする。なのでこの指摘は当たっているのだが・・・・言いたい放題過ぎる。

※雪兎はエグゼイド以降のライダーを知りません。

 

「き、貴様!!」

 

「許さんぞ!!」

 

言いたい放題の雪兎にキレるブロス兄弟だが・・・・

 

「で?余所見してていいのかい?パチモン兄弟」

 

「「はっ!?」」

 

慌てて2人が後ろを振り返ると、そこにはいつの間にかゴリラモンドへとビルドアップし、拳を振りかざしたビルドの姿が・・・・そう、雪兎は本音も交えた挑発でブロス兄弟の隙を生み、その隙にビルドに奇襲させたのだ。

 

「さて、次はこのうざったいチェス野郎か」

 

「分かってはいたが、やっぱコイツは敵にしたくねぇ・・・・」

 

言葉だけでブロス兄弟をあっさり翻弄して見せた雪兎に一海は改めて味方で良かったと思った。

 

「・・・・三羽烏も何かヤバそうだし、これでいっか」

 

「何!?」

 

三羽烏のピンチと聞いて一海が慌てて援護に向かおうとするが、正気に戻ったチェスがルークを差し向けてそれを妨害する。

 

「クソ硬ぇ!このままじゃアイツらが・・・・!」

 

「任せろ!」

 

雪兎はクロストリガーのスロットにとあるガジェットキーを挿し込み、その姿を大きく変化させる。他のガジェットキーとは違い、音声は無く、それは逆三角形のような銃身に3つの銃口を持った大型の銃。それを構えると雪兎は呟く。

 

「モード・魔銃・・・・解凍」

 

おそらく、その時の雪兎の顔を見た者がいればこう言った事だろう・・・・「何か知らんがアレはヤベー!」と。

そして、それは始まった。

 

「お前達に相応しいソイルは決まった!」

 

「「ソイル!?」」

 

雪兎のセリフに一海と葛城が反応するが、雪兎は気にも留めずに腰のベルトからまずは真紅のソイルが詰まった弾丸をセレクトする。

 

「『湧き上がる血の滾り』ヒートクリムゾン!」

 

雪兎がそれを指で弾くと、それは綺麗な放物線を描きながら銃身のシリンダーへと納まる。

 

「『大空を超える無限』スカイブルー!」

 

次に空色のソイルが詰まった弾丸をベルトから引き抜き、先程と同じ手順でシリンダーへと装填する。

 

「そして・・・・『闇を貫く閃光』ライトニングイエロー!」

 

最後は少しだけ溜めを作ってから黄色のソイルが詰まった弾丸を引き抜き指で弾く。この間、何故か誰も妨害する事が出来なかった。それはまるでヒーローの変身バンクのような一種の強制力があったのだ。もし、ここに雪兎の世界の簪がいれば大興奮物だったろう。3つの弾丸が装填されると、魔銃へと変貌したクロストリガーは凄まじい音を発し、明らかに強力なエネルギーを感じされる。ここでチェスがいち早く復活し、妨害を試みるが、既に時は遅い。

 

「再誕せよ!三羽烏!」

 

雪兎がそう告げて引き金を引くと、銃口から3色の光で螺旋の軌道を描き、正面に向けてそれを放たれた。3色の弾丸はそれぞれ三羽烏へ、赤はキャッスル、青はスタッグ、黄色はオウルに命中した。

 

「ちょ、お前らぁ!?」

 

まさかのフレンドリーファイアに戸惑いを隠せない一海だが、すると、三羽烏の命中点から赤、青、黄色の煙が放たれて全身を覆った。

 

「う、うおー!?何だコレ!?スゲー力が漲る!」

 

「少し寒くねぇか?」

 

「うわ、凄いパチパチするよコレ!ほら、パチパチー!」

 

キャッスルは身体中から炎を、スタッグは冷気を、オウルは電気を放つ。

 

「こ、コレは・・・・」

 

ソイル()状に変化させた属性元素ボトルの成分を三羽烏にぶち込んで強化したのさ」

 

唖然とする一海に自慢げに説明する雪兎。どうやら最近伸び悩んでいた三羽烏の話をシュテルから聞き、密かに用意していたものらしい。三羽烏の方はもう大丈夫だと判断した雪兎はチェスの方へと向き直る。

 

「次はお前だ」

 

チェスを指差してそう言い、再び弾丸をセレクトし始める雪兎。その様子にチェスは感じた事の無い未知の恐怖を覚え、今度はさせまいとルークを差し向けるが、今度は一海がそれを阻む。

 

「雪兎!」

 

「おう!お前に相応しいソイルは決まった!『死を包む眠り』スチールグレー!」

 

最初に取り出したのは灰色の弾丸、それを装填する。

 

「『湧き上がる血の滾り』ヒートクリムゾン!」

 

次に取り出したのは先程も使った真紅の弾丸。

 

「そして・・・・『闇を貫く閃光』ライトニングイエロー!」

 

最後に選んだ弾丸も先程と同じ黄色の弾丸だった。

 

「くっ、一体何を」

 

「見てればわかる・・・・唸れ!召喚獣(・・・)!イクシオン!!」

 

再び引き金を引き、3つの光が交差すると、そこには装甲に身を包み、尋常では無い稲妻を纏った一角獣がいた。

 

「何だ、あれは!?」

 

「ソイル化したネビュラガスは一定の組み合わせと特殊な力を加える事で実態を持った存在を一時的に顕現する事が出来る。それが召喚獣さ・・・・まあ、この造形になるように少し調整はしたがな」

 

尚、使用した弾丸は再利用不可能らしく、完成な使い切りなので多用は出来ないとの事。

 

「やれ!イクシオン!」

 

イクシオンと呼ばれた一角獣は嘶きと共に翼を広げチェスと配下のルーク達に向かって雷撃を放つ。咄嗟にルークを呼び戻しガードするも、雷撃が収まり、イクシオンが消滅する頃にはルークは全滅していた。

 

「くっ・・・・こんなハズでは・・・・!!」

 

丁度同じタイミングで内海も三羽烏に破れたのか、悔しさを顔に浮かべながらトランスチームガンから煙を巻いて逃走。

 

「クッ、このままではまずいですね・・・・ハードガーディアン!」

 

チェスもイクシオンによってルークが全滅した事に焦りを感じ、ハードガーディアンを増援として呼び出した。

 

「この調子ならゲートの解放を防げる。行くぞ!」

 

『おう!』

 

しかし、難波重工のしぶとさはこんなものではなかった。




魔銃、やってしまいました。
元ネタ判る人は何人いるかな?

色々とオリジナルな物が乱立しておりますが、解説はまた何れやります。


次回予告

ナイトローグとチェスの手駒を倒し、優位に立ったかに見えた戦況だが、それを覆す新たな敵が出現する。その正体とは?そして、ブロス兄弟の命運は?


次回

『パラレルボトル奪還作戦・破 兎、ブロスを弄る』


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150話 パラレルボトル奪還作戦・破 兎、ブロスを弄る

~前書き劇場~

雷「こ、ここは?」

風「どうやら妙な場所に迷い込んだようですね」

雪兎「その声・・・・お前ら、ブロス兄弟か?」

風「天野雪兎!?何故ここに!?」

雪兎「いや、ここ、前書き劇場という本編外の謎空間だから」

雷「ま、前書き?」

雪兎「とりあえず自己紹介からな」

雷「え、えっと、エンジンブロスの鷲尾雷だ」

風「リモコンブロスの鷲尾風です。これで構いませんか?」

雪兎「あ、ああ・・・・前回にノリで言ってた風竜・雷竜ネタがまさかニアピンとは」

雷「そういや、前回はさんざんパチモン扱いしてくれたな!」

風「その風竜・雷竜とは?」

雪兎「ん?勇者ロボシリーズに出てくる合体ロボの一種で、資料が確かこの辺に・・・・あった!」

⊃風竜・雷竜の設定資料

風「こ、これは!?」

雷「え?マジ?」

雪兎「これと比べると、ブロスはなぁ・・・・」

雷「へ、へんっだ!ヘルブロスの方が強いに決まってる!」

雪兎「いや、サイズ比考えろ?普通に潰されるぞ」

風「恐るべし、ラビット・ディザスター・・・・」

雪兎「いや、だから俺が作ったんじゃないんだが・・・・まあ、似たようなのはいくつか作ったけど」

風「今、サラッとトンでもない発言しなかったか?」

雪兎「真実はその目で確かめな・・・・という訳であらすじないけど第150話どうぞ・・・・ん?150話?知らぬ間にまた大台突入してた」




雪兎達がワームホールのある最奥の部屋で戦いを繰り広げていた丁度その頃、シュテルの元にも一体のハードスマッシュが現れていた。

 

「おや?新手ですか」

 

しかし、その場に現れたクラッシュハードスマッシュこと黒川解製は困惑していた。

 

(何だ、これは?)

 

それは先行していたハードガーディアン達が巨大なパワーショベルによってスクラップにされ、これまたどこから出したのか巨大なコンテナに箱詰めされていたのだ。しかもハードガーディアン達はそれぞれ破壊されている部位が異なるので、数機分で一機のハードガーディアンが組めるようになっている。つまり・・・・

 

(コイツ、持って帰る気か!?)

 

そう、シュテルは何もただ出口を確保するだけの為にこの場に残ったのではなく、あわよくばハードガーディアン達を回収するつもりだったのだ。

 

「ちょっと好き勝手が過ぎないか?」

 

「おや?これ異なことを・・・・最初にマスター(雪兎)を利用しようとしたのはそちらでは?ならばやり返されるのは道理かと」

 

「うぐっ」

 

シュテルの言葉に言い返す事が出来ないクラッシュ。そうこうしている間にもハードガーディアンは次々とコンテナに詰められていく。

 

「こうなったら実力行使だ」

 

そう言うと、クラッシュはそのハードスマッシュの特性を利用し、未回収のハードガーディアンの山を操り自身の元へと呼び集め巨大なパワーローダーのようなものを作り上げた。

 

「ほう、貴方の能力は残骸を操る事でしたか」

 

「そのパワーショベルもスクラップにして我らの力にしてくれる」

 

「出来るとお思いで?」

 

「ただの重機と巨大兵器、差は歴然だろう?」

 

ただの重機(・・・・)、ですか」

 

だが、クラッシュにとっての誤算はパワードエグザがただの重機(・・・・・)ではなかった事だ。

 

「では見せて差し上げましょう・・・・このパワードエグザの真の姿を」

 

シュテルはそう言いながら運転席から降りてパワードエグザのバケット部分へと飛び乗る。

 

「な、何をするつもりだ!?」

 

「・・・・剛力合体(ごうりきがったい)

 

すると、パワードエグザの上部が半分に割れ後方へと移動し、無限軌道より上のパーツが起き上がる。その真ん中のハッチが開くと中から頭部のようなものが現れ、空いたスペースにシュテルがバケットから再び飛び移る。そして、ハッチが閉じると無限軌道も起き上がり、頭部のツインアイが輝きを放つ。

 

「ま、まさか、それは・・・・」

 

『せっかく残りのスクラップを一纏めにしてくださったのですから、丁重におもてなしさせていただきます』

 

「冗談は隊長だけにしてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ!ドラァッ!」

 

ナイトローグとチェスを破った事で勢いつく一海達はワームホールが開くのを阻止すべくハードガーディアンと戦っていた。

 

「この調子なら、行けそうだな」

 

「どうだ!俺達を舐めんじゃねぇ!」

 

状況は確かに有利ではあるが、雪兎からすればまだ危ういと感じていた。丁度そこへ以前遭遇した紫のライダーが姿を現す。

 

「あの時の、仮面ライダー・・・・!?」

 

「アイツ・・・・(ふーん、まだソッチなのか)」

 

既に難波に従う理由のいくつかは無いのだろう幻徳が扮するローグを見る雪兎。ローグも一瞬だけ雪兎の方を見るが「手出しするな!」と言っているような気がした。

 

「あのライダーって・・・・」

 

そのライダーを見たこちらの世界のシャルロットは何かを感じ取ったようだが、ローグはその白い指を動かして一海らを挑発する。

 

「へぇ、大人数でも勝てる自信があるって事ね」

 

「カシラが相手する前に倒してやろう!」

 

そこからは鈴とラウラや一夏が挑むもあえなく撃沈。特に一夏はビルドのキードラゴンフォームで挑むが、ローグの両足から繰り出されるデスロールで壁に叩きつけられ変身解除され、その側に箒達が駆け寄る。その間にローグはベルトからボトルを引き抜き、その姿を顕にする。

 

「やはり、お前だったか・・・・!」

 

それは黒と赤のスーツを着た氷室幻徳。

 

「なん、何で、お前・・・・!」

 

「嘘・・・・」

 

声を上げているのは一海とシャルロットの二人だが、雪兎を除く他のメンバーも何も言わないだけで驚いていた。

 

「・・・・久しいな」

 

「幻徳・・・・何で、何で難波なんかに!」

 

関係が深いと思われるこちらの世界のシャルロットがいち早くそう叫ぶが・・・・

 

「俺の目的を達成するにはこうするしか無かった。ただそれだけの事だ」

 

幻徳は雪兎にしか分からないレベルで表情を歪ませながらそう返した。

 

「目的だと・・・・!?その為にお前はシャルロットを裏切ると言うのか!!」

 

(あー、裏事情知ってるとややこしいなぁ、これ)

 

幻徳が難波に逆らえない理由を知る雪兎は、ラウラの発言を録音し、後で事情を知ったラウラに聞かせようかなぁ・・・・とか不謹慎な事を考えるくらいにはこの場で一番余裕があった。なのでソイツが現れた事にもすぐに気がついた。

 

『お取り込み中すまないが、感動の再開は終わりだ』

 

そう、毎度お馴染みブラッドスタークである。

 

「スターク・・・・!」

 

『殺される予定だったコイツを、仮面ライダーにしてやったのさ。感謝してくれよ〜、生き延びさせる為にあの手この手を使ったからな』

 

そのあの手この手が心臓の爆弾とは皮肉なものだ。

 

『それに、『門』は開かれた!』

 

そして、スタークの宣言と共に、ワームホールが遂に時空を貫いた。

 

「雪兎くん、あのIS学園は・・・・」

 

「はい、俺のいる世界のIS学園です」

 

「クソ、開かれちまったのか・・・・!」

 

それを待っていたかのように新たなハードガーディアン達が隊列を組んで現れ、その『門』を潜っていく。

 

『ブラボー!素晴らしいねぇ。じゃ、俺も行くとしますか』

 

「待て、スターク!」

 

「させるか!」

 

スタークもそれに続こうとし、葛城がそれを阻む為に駆け出すも、ブロス兄弟がそれを見逃す訳が無い。しかし、フリーになっていた雪兎がブロス兄弟の足元に弾丸を撃ち込み阻止する。

 

「巧さん、このパチモン兄弟は任せてください」

 

「任せたよ!ビルドアップ!」

 

『ラビットタンク!』

 

ビルドへと変身しつつスタークへと向かう葛城を見送ると、雪兎はブロス兄弟へと向き直る。

 

「またパチモン呼ばわりとは!」

 

「余程死にたいらしいな!」

 

ちゃっかり再び自身にブロス兄弟のヘイトを向けさせる雪兎。

 

「なら見せてみろよ?そのブロスとかいうやつの力を」

 

「「舐めるなぁああああ!!」」

 

激昂した二人がそれぞれネビュラスチームガンとスチームブレードで襲い掛かるが、ブレードトンファーとクロストリガーでなんなく防ぎ切る雪兎。

 

「連携の練度は高いが、これくらいウチの連中ならやれて当然だな」

 

「くっ」

 

「これならどうだっ!」

 

「想定内だっての!」

 

ならばと、今度は二人揃って腕の歯車を巨大化させて飛ばしてくるが、雪兎に蹴り返されお互いの歯車を食らい吹っ飛んだ。

 

「うわぁああああっ!!」

 

丁度その時、スタークの猛攻を受け、葛城がその場に膝をついて倒れてしまう。

 

「巧さん!」

 

雪兎が葛城を呼びかけるが反応は無い。見たところダメージ自体はそこまで大したものではない。つまり、スタークの言葉による精神的ダメージの方が深刻だった。なので、雪兎はとあるセリフを引用し、葛城に強く呼び掛ける。

 

「巧さん!俺が信じる貴方が信じる、科学を、正義を捨てないでくれ!!」

 

それを聞いた葛城はピクリと反応する。ゆっくりと雪兎の方を見てから、他の仲間達を見た。そして、両手に力を入れて踏ん張ると、立ち上がった。

 

「この力は、ビルドは!僕一人だけじゃ創れなかった。皆で作り上げてきたんだ!それを間違っているだなんて言わせない!」

 

立ち直った葛城は仲間達を背にハザードトリガーを取り出す。

 

「この力は、愛と平和の為の希望!僕は……僕を超えてみせるッ!」

 

『マックス!ハザードオン!』

 

だが、今までとは違い、葛城はボタンを二度押し自らオーバーフローモードを起動させてハザードトリガーをベルトにセットする。

 

『超えるだァ?ハザードレベルの足りないお前が、ハザードトリガーを使っても何も変わらないのにか?』

 

それで終わりではない。葛城にはまだ新たな力がある。そう、フルフルラビットタンクボトルが。

 

『ん?何だソレは……?』

 

葛城がそれを振ると、ピョン!ピョン!と兎の跳ねる音が鳴る。5回振ったところで金色の方の蓋を回転させ、緑の無地だったアイコンが赤いウサギへと変わる。

 

『ラビット!』

 

葛城はフルフルR/Tボトルを折り曲げると、ドライバーに装填した。

 

『ラビット&ラビット!』

 

「ビルドアップ」

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』

 

葛城がレバーを回すと、ハザードフォーム同様プレートに挟まれてまずはラビットタンクハザードフォームへとビルドアップする。そこに赤いウサギが彼方からやって来て5つのパーツに分裂すると、葛城の方へと飛んでいってビルドにアーマーのように装着される。

 

『紅のスピーディージャンパー!ラビット!ラビット!ヤベーイ!ハエーイ!』

 

その姿は単にラビットハーフボディを両側にしただけでなく、ハザードフォームを制御する真紅の拘束具にして強化アーマーを纏い、兎の耳を模したマフラーのようなものがヒーローっぽさを強調している。

 

「アレが、ギュインギュインのズドドドドドド・・・・!」

 

葛城からその概要として聞かされていた擬音がやたらしっくりくる。

 

「さて、巧さんの方はもう大丈夫そうだな」

 

そう言って雪兎は再びブロス兄弟の方に向き直る。

 

「まだ奥の手あんだろ?自称・難波重工の最終兵器さん?」

 

「どうなっても知らんぞ!雷!」

 

「分かった、兄貴!」

 

雪兎の挑発に乗り、リモコンブロスがエンジンブロスからギアエンジンを受け取り、ネビュラスチームガンにギアエンジン、ギアリモコンの順でセットする。

 

『ギアエンジン!』

 

『ギアリモコン!』

 

『ファンキーマッチ!』

 

「潤動っ!」

 

『フィーバー!』

 

すると、エンジンブロスから歯車が外れリモコンブロスへと向かい、リモコンブロスの歯車も一度外れてエンジンブロスの歯車と一緒に装着されていく。

 

『パーフェクト』

 

「ヘルブロス、参上」

 

そうして姿を現したヘルブロス。だが・・・・

 

「うわぁ・・・・想像してたより残念だわ、これ」

 

雪兎はヘルメット越しにも判るくらいガッカリしていた。

 

「な、何だと!?」

 

「だって、見た目は予想通りもいいとこだし、弟君は変身解除されてるし、何より強そうに見えない」

 

「これじゃ劣化版撃龍神だわ」と雪兎はそれはもう誰が見ても判るくらいガッカリしている。確かにクロスのバイザーに仕込まれた計測器によれば計測上のスペックは大きく上昇しているが、そのスペックすら雪兎の想像を超えていなかったのだ。

 

「これが最終兵器?そりゃ俺のデータ狙うわな・・・・」

 

雪兎からしたら残念過ぎる最終兵器(ヘルブロス)に、雪兎は自身の技術が狙われた理由を察した。確かにこのレベルの技術しか扱えないなら雪兎の技術はオーパーツに等しいだろう。

 

(だが、それを扱う者達(・・・・・・・)から簡単に奪えると思ってんのかね?こいつら)

 

残念兵器(ヘルブロス)が量産されているならいざ知らず、ハードガーディアンレベルならあちらのシャルロット達でも十分対応出来る範囲だ。念のために門が開いた直後に連絡はしてあるので今すぐにどうこうなっているとは思わないが、早急に帰る必要があるだろう。

 

「時間が惜しい、さっさと終わらせるか」

 

『ShellBullitt Activate』

 

「ふっ、その武器のデータは収集済み!そんなものがヘルブロスに通用するとでもーー」

 

「馬鹿か?一度破られた武器をアップデートしてねぇ訳無いだろうが」

 

「えっ?」

 

「その威力は自身で確かめな!衝撃のぉ!ファーストブリット!!」

 

「がぁ!?」

 

ゴリラモンド戦のデータから改修されていたシェルブリットのアッパーカットで打ち上げられるヘルブロス。

 

「まだまだ!撃滅のぉ!セカンドブリット!!」

 

続けてそれを回転運動を加えながら凄まじい勢いで追い抜き、真下に向けて叩き落とす。

 

「ごぁっ!!」

 

そして・・・・ゴリラモンド戦では使えなかった最後の一撃が放たれる。

 

「抹殺のぉおおお!!ラストブリットォオオオオ!!」

 

3つ目の羽を砕き、落下エネルギーも加算した彗星の如し一撃が炸裂し、それまでの戦闘で傷一つ付かなかった床にヘルブロスをめり込ませる。

 

「あがぁ・・・・」

 

当然その直撃を受けたヘルブロスがただで済むはずがなく、許容ダメージを超えて強制変身解除された上にスーツ越しにダメージを軽減しきれずあばら骨を数本折られ戦闘不能になっていた。

 

「う、嘘だろ・・・・」

 

あれだけ自信満々に出したヘルブロスがたった三撃で撃沈され、エンジンブロスに変身していた雷は今更ながら自分達が何に喧嘩を売っていたのかを理解する。

 

「ば、化け物だ・・・・」

 

「ん?なんだ、まだいたのか」

 

ヘルブロスへの落胆ぶりからすっかり忘れていた雷の事を思い出した雪兎は怯える雷へとゆっくり近付いていく。

 

「く、来るなぁ!!」

 

エンジンブロスへ変身しようにもネビュラスチームガンもギアエンジンも兄である風の元にある為、雷は完全に無防備だった。

 

「ヘルブロスだっけか?あれの欠陥の一つだな、こりゃ」

 

片方がヘルブロスになると、もう片方は完全に無防備になるなんて雪兎からしたら狙って下さいと言ってるようなものだ。最早完全に心折られた雷が慌てて逃げようとするも、その雷の足を赤い輪が拘束する。

 

「・・・・バインド、シュテルか」

 

「はい、あちらはもう粗方片付きましたので、織斑女史に任せてきました」

 

「なるほど」

 

「くそっ!何なんだこれは!!」

 

バインドを必死に外そうとする雷だが、それは全く外れる気配が無い。そうこうしてる間に雷に雪兎が追い付いた。

 

「ひ、ひぃ!?」

 

そんな雷を見て、雪兎は何故か変身を解除する。

 

「へ?」

 

そんな雪兎の行動に疑問を感じる雷だったが、そんな暇があるなら逃げる為にもがくべきだった。何故なら雪兎は満面の笑顔を浮かべたままとある構えをとっていたからだ。

 

「覇王・・・・断・空・拳!」

 

全身の筋肉をバネのように、足先から拳に全ての力を伝える覇王流(カイザーアーツ)の基礎にして最奥の一撃が雷の顔面を捉え、バインドのせいで逃げ場を失っていた事も相まって歯が数本折れてしまう。

 

「・・・・ちょっとやり過ぎたか?」

 

しかし、雷は既に白目を向いて気を失っていた。

 

『ぐあああッ!グッ・・・・おのれ、おのれおのれおのれ・・・・!!まぁいい。今の目的はワームホールだからな・・・・!』

 

同タイミングで葛城もスタークを破ったようだが、スタークは胸からコブラのようなエネルギー体を放つと、それに連れられるようにワームホールの中へと消えていった。

 

「しまった!」

 

「大丈夫ですよ、巧さん。向こうの皆は簡単にはやられません」

 

結局あちらにスタークを逃がしてしまった事に焦り出す葛城を雪兎が止める。それを見ていた幻徳はいつの間にやら姿を消していた。

 

「敵は向こうの世界に行ってしまったか。後は俺に・・・・って、言っても聞きませんよね」

 

「勿論。一海くん、付き合ってくれるかい?」

 

「分かりました・・・・お前らはこっちの世界で待機してくれ。頼むぞ」

 

「「「了解!」」」

 

ここまできて後は任せた!とはいかないのは雪兎も承知のようで、仕方ないとばかりに葛城と一海の同行を認めた。

 

「・・・・行くよ!」

 

「「はい!」」

 

そして、戦場はあちら(雪兎)の世界へと移るのであった。




パワードエグザの真の姿に関しては言わなくても大体の人は勘づいてるよね?
勿論、レヴィ、ディアーチェ、ユーリにもおんなじようなメカがあります。

そして、ヘルブロスのファンがいたら申し訳ない。雪兎からしたらヘルブロスって劣化撃竜神にしか見えないので・・・・


次回予告

ワームホールを開いた事で雪兎達の世界へと侵攻を開始した難波重工。しかし、兎に鍛えられた他の面々がそう簡単に屈する訳もなく・・・・


次回

『侵攻!難波重工! 兎、本領発揮する』


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151話 侵攻!難波重工! 兎、本領発揮する

~前書き劇場~

シャル「あれ?今回はこっち?」

ディアーチェ「そのようだな」

シャル「あっ、雪兎からメールだ。何々・・・・」

何か難波重工とかいうアホどもが俺の技術狙って侵攻してくる。こっちのアレコレ片付けたらすぐに戻るからそれまで迎撃頼む。

PS
敵戦力の大まかなデータ添付しとくから活用してくれ。

シャル「・・・・」

ディアーチェ「また面倒事に巻き込まれて盛大にやり返しておるようだな」

シャル「・・・・そっか、雪兎の技術狙って・・・・うん、大体の事情は察したよ」

ディアーチェ「いかん、これはシャルロットの入れてはいけないスイッチが入ってしまった!?」

シャル「難波重工・・・・ただで帰れると思わないでね?」

ディアーチェ「これ(雪兎)!はよ帰ってこぬかぁああああ!!」

ユーリ「だ、第151話、どうぞ・・・・(ガクガクブルブル)」


雪兎達が難波重工と争っている頃。

 

「雪兎のやつ、また面倒事を・・・・」

 

「ははは・・・・いつもの事だろ?」

 

「それに、今回はどっちかというと雪兎が狙われてたみたいだし、仕方ないんじゃない?」

 

雪兎から連絡を受けたシャルロットの召集で集まったいつものメンバーは学園のピンチかもしれないというのに緊張感はほとんどなかった。まあ、以前に迷い込んだ異世界での戦いに比べたら自分達のホームで迎撃出来るだけ気が楽なのかもしれない。

 

「我々が丁度学園に戻っているタイミングとは・・・・敵も運が無い」

 

「ホントね」

 

更に言えばセシリアや鈴、ラウラ達も春休みの一次帰国から戻ってきたばかりで進級前の旧1ーAの全員が揃っている状況なのだ。

 

「さて、相手はあのIS馬鹿(雪兎)に喧嘩を売った大馬鹿共だ。ましてやこの学園に攻め込もうとしている以上、迎撃はやむ得まい」

 

「ついでにまだいるだろうこの世界のお馬鹿さん達にも私達に手を出したらどうなるか、今一度思い知ってもらおっか?」

 

「そうだな・・・・ついでに他の小娘共(旧1ーA)にも実戦を経験させてやるか」

 

「だね、せっかくだしゆーくんがデータ足りないって言ってたあの娘達(新型量産機)のテストもしちゃおっか?」

 

千冬と束の言葉を簡略化するとこうなる「持てる力全てを使って難波を潰せ」と。

 

「これは、難波重工とやらに同情するよ」

 

「雪兎君を敵に回すとか、何考えてるんだろう?」

 

「それに、師匠がいなければ何とでもなると思われてるなんて不服」

 

そう、難波重工は忘れている。この世界で厄介なのは雪兎だけではないという事を。

 

「やる気は十分のようだな?それでは作戦を開始する!」

 

「「「「はい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワームホールを越えて難波重工が辿り着いた場所はIS学園から少し離れた雑木林。海を挟んだすぐ向こう側にはIS学園が見える。

 

「転移座標が少しズレたか・・・・まあいい、これより作戦を第二段階に移行する!」

 

現場指揮を任されたチェスがハードスマッシュを分隊長とし部隊をいくつかに分けて学園へと侵攻させる。

 

「この世界に恨みはないが、我々の目的の為だ」

 

「何故かとてつもなく嫌な予感がするのだけれどね、僕は」

 

部隊A・ジュラシック、スイーツ

 

「別の世界って言ってもほとんど変わんねぇんだろ?」

 

「ええ、変わりませんとも。断罪すべき対象であるのは何も変わらない」

 

部隊B・マッドドッグ、ジャッジメント

 

「何だろうな・・・・嵐の前の静けさってやつか?これは」

 

「そうだな・・・・何か致命的な見落としをしている気がする」

 

部隊C・セイルフィッシュ、ハザード

 

それ以外にもハードガーディアンとスマッシュの混成部隊を学園に向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は難波重工の面々は上手くいっていると思っていた。しかし、それを撃ち砕いたのは一発の弾丸だった。

 

「な、なんだ!?」

 

「センサーの範囲に反応は無かったはず!」

 

完全なレンジ外からの攻撃に困惑するマッドドッグとジャッジメント。だが、当然攻撃は一発だけでは終わらない。続けて飛来したのは高密度エネルギーの矢。それが寸分の狂いなくマッドドッグを襲う。

 

「がぁ!?」

 

咄嗟に回避しようとしたのが幸いし、かすった程度で済んだものの、ダメージはどう考えてもかすった程度のものでは無い。

 

「くっ、発射先の特定をーー」

 

狙撃ならば場所を特定すればと、ジャッジメントが指示を飛ばそうとするも、それを遮るように三、四度目の狙撃がジャッジメントを襲う。

 

「別方向からだと!?一体どれだけの狙撃兵がいるというんだ!?」

 

しかもその狙撃は全てレンジ外。その精密射撃の精度の高さから相手にはこちらが丸見えなのは明白だ。そうこうしている間にも弾丸とエネルギー矢が飛来し、ハードガーディアンが大破していく。

 

「ちくしょうっ!隠れてねぇで出てきやがれ!!」

 

「何故狙撃ばかり・・・・まさか!?」

 

そこでジャッジメントは気付く。何故自分達の部隊がこのような多角的狙撃を受けているのかを。

 

「私とマッドドッグの力を知られている?」

 

そう、彼らの能力は近くにいればいる程効力を得るもの。敵は何らかの方法で知り、狙撃によるなぶり殺しという戦法を取ったのだ。

 

「ここは一度退いてーー」

 

不利と察し、チェス達の元へ一度戻ろうとするも、そこを狙ったかのように今度は光の雨が降り注ぐ。

 

「今のはイギリスのBT兵器!?だが、威力がデータにあるものと違い過ぎる!」

 

「もしかしたら敵の狙いは俺達の分断!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『気付くのが遅過ぎましてよ?』

 

「セシリア、そのまま鳥籠の維持を・・・・あの二人はこちらで仕留めよう」

 

『お任せしましたわ、箒さん、エリカさん』

 

狙撃を行っていたのはアルテミスとスナイパービットを使うエリカと刃衣装備の箒だった。ジャッジメントの予想通り、雪兎からもたらされたハードスマッシュ達のデータからマッドドッグとジャッジメントの能力を知った面々はレンジ外攻撃と、セシリアの制空権確保による隔離戦法というえげつない戦法で彼らを封殺していたのだ。

 

「さて、最近はあまり活躍出来ていませんでしたし、私も頑張りませんと」

 

「・・・・実戦ではエリカを敵には回したくないな」

 

アルテミスとスナイパービットの射程は兎印の中でもダントツで、ガト・グリスの高性能レーダーやエリカの精密射撃の腕も相まって恐ろしい命中率を誇る。箒も彼女のレーダーとコアネットワークを通じたリンクによって超精密射撃を可能としている。

 

「トーナメント後に付けられた2つ名は【魔弾の灰猫】だったな」

 

「ええ、それなりに気に入っていますわ」

 

そんな軽口を交わしながらハードガーディアンをまた一体射ち貫くエリカに、箒は戦慄しつつもマッドドッグへと穿千・極を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ジュラシック、スイーツの部隊は突如上空から爆撃を受けていた。

 

「うおっ!?何だこりゃ!?」

 

「そ、そんな事より僕を助けたまえ!!」

 

爆撃の犯人はというと・・・・

 

「今ので3割か・・・・脆いな」

 

「だね、このままやっちゃおっか」

 

インレの各所からマイクロミサイルをお見舞いしたラウラと、ブラストガンナーによる砲撃を放った聖だった。

 

「・・・・ラウラ=ボーデヴィッヒ、と知らぬ少女?しかし、あのISは・・・・」

 

ラウラは知ってはいるものの、そのISがあまりにも様変わりしているせいかすぐには判らず、聖の事は知らない難波重工の面々。その為、二人の非常識なまでな重武装ISに言葉を失う。

 

「キハール起動」

 

「弾薬補充完了」

 

「「fire!」」

 

有線式小型端末キハールとインレの射撃と弾薬を補充し終えたブラストガンナーが再び火を吹き、ジュラシックとスイーツの部隊を襲う。

 

「ちょっ!?オーバーキルじゃないのか!?それ!」

 

「そんな事を言ってる暇があるなら逃げろ!」

 

「逃がさないよっと」

 

「お前達は既に鳥籠の中だ」

 

すぐさま後退しようとする彼らだったが、聖がバイザーをビークルモードに切り換え回り込み逃げ道を塞ぎ、キハールで左右から囲い込み包囲するラウラ。

 

「ハードガーディアンがあっという間全滅だと・・・・!?」

 

「嫌な予感の正体はこれだったのか・・・・」

 

「不幸だなんて言わせないよ?だって、これは貴方達が攻めてきたからなんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、セイルフィッシュ、ハザードの部隊は海上で立ち往生させられていた。

 

「海で俺が逃げ切れないだと!?」

 

「その程度でこのロッソアクイラからは逃げられないよっと!」

 

水中戦を得意とするセイルフィッシュだが、アレシアのロッソアクイラは水中でも速度があまり落ちない。しかも、水中には楯無がスタンバイしており、深く潜ろうとすればアクアナノマシンによる爆撃を食らわされ海面まで打ち上げられる始末。ボートで移動中だったハザードとハードガーディアン達は本音の新装備の1つ【番天印】のホーミングレーザーによりボートを沈められ、ハードガーディアン達も頭部を撃ち抜かれて水没、翼があった為に空へと逃げ延びたハザードは待ち構えていた晶に海面に落とされアクアナノマシンに拘束されていた。

 

「な、何だ、これは!?」

 

「それは楯無先輩のアクアナノマシンによる水の拘束具。簡単に抜けられると思うなよ?」

 

ご丁寧に手足だけでなく武器になりうるものは全て封殺されている。そんなハザードに晶は容赦無く蹴る殴るの乱撃を叩き込み、最後に虎咆穿でハザードを海に沈める。

 

「ゴボゴボ!?」

 

だが、それで終わりではなく、アクアナノマシンによる拘束によって再び海面へと引き戻される。

 

「プハッ!」

 

「よし、ラウンド2!」

 

「ちょっ待っ!?」

 

その後も沈んでは浮上を繰り返しボコボコにされるハザード。

 

「フィッシュ!」

 

「ぎゃああああ!!」

 

セイルフィッシュもアレシアに蛇腹剣を巻き付けられて一本釣りされ、高い所でリリースして海面に叩き付けてもう一度という有り様だ。

 

「うん、これ、私いらなかったよね?」

 

何となくだがハードガーディアンはアレシアと晶がいればどうにでもなった気がする本音。

 

「かんちゃん達は大丈夫かなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弐の型、疾風!」

 

「ふっ飛びなさい!」

 

その他のハードガーディアンとクローンスマッシュの混成部隊には一夏達が対応していた。ハードスマッシュがいない分数だけは多い部隊だが、一夏や鈴にとっては数の多い的に過ぎず、無双ゲーのような有り様になっているが・・・・

 

「遅い!」

 

「きゅ!」

 

『ホームランなの!』

 

その一角にはマドカとミュウの姿もあった。統率タイプをマドカが仕留め、残りをミュウがハンマーでまとめて一掃する。雪兎からハードガーディアンは十分数は確保したから遠慮無く破壊していいと伝言を貰っていたせいか、ここのハードガーディアン達は原形をほとんど残してはいない。

 

「何体か飛んでる個体が抜けたようだが・・・・」

 

「あれはわざとよ・・・・あっち(量産機)の的にするんだって」

 

何体かのクローンフライングスマッシュがその包囲網を抜けたようだが、それはわざとで、学園で防衛ラインを任されているクラスメイト達の練習台にされているらしい。

 

「きゅきゅ!」

 

『次が来たの!』

 

「あーもう!数だけは多いんだから!」

 

「数だけだ」

 

「それに、あっちよりはマシさ」

 

一夏の言うあっちとは別ルートを進む混成部隊の対応をしている真耶やカテリナ、そして忍の所の事だ。真耶とカテリナがそれぞれヘキサフォートレスとG型装備と重火器装備で敵を薙ぎ払い、抜けた個体を忍が着実に仕留めるフォーメーションで凄まじい数の残骸の山を築いていた。ヘキサフォートレスはクアッドファランクスを雪兎が真耶仕様に完全改修したもので、従来の身動き不可のものをインレの応用で動きは鈍いものの身動きが可能になり、超大型ガトリングガンも6門に増設させ、サブアームで保持した大型シールドで防御も堅くなった化け物のような装備だ。他にも打鉄・弐式と同じマルチロックミサイルまで搭載しているせいでインレ並みの大型外装と化している。千冬曰く「現役の時よりヤバいだろ、あれは」との事。

 

「・・・・山田先生、絶対に怒らせちゃ駄目だな」

 

「「うんうん」」

 

「きゅ」

 

『人は見かけによらないの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ、これは・・・・!?」

 

遅れてこちらにやってきた内海はこの惨状を見て思わずそう言わざる得なかった。雪兎以外は自分達の世界と大差無いものだと思えばこれである。ハードスマッシュの部隊は学園へと上陸も出来ず、残る部隊もほとんど壊滅させられた上で数体のクローンスマッシュは見たこともない量産機の試験運用に使われる有り様。

 

「これを(雪兎)がもたらしたものだというのか」

 

雪兎は自分のみならず、一夏達やクラスメイト達の大幅な底上げを行っており、各企業にも協力的であった為に難波重工とは大きな戦力差が生まれていたのだ。

 

「何故こんな計算違いを・・・・!?スタークか」

 

そこで内海は気付く。この可能性を知っていたであろう(ブラッドスターク)の事を。

 

「お取り込み中申し訳ないけど、君達が難波重工の指揮官でいいのかな?」

 

そんな内海の元にも兎の手の者が現れる。

 

「くっ、この世界のシャルロット=デュノアと更識簪か」

 

「私は向こうにはいない?」

 

現れたのはシャルロット、簪、カロリナの三名。シャルロットと簪はあちらのIS学園にいた頃に調べたものの、明らかに使用しているISが違う。そして、カロリナについては全く知らない生徒であり、使うISもどのような戦い方をするのかもデータが無い。

 

「仕方がない、あちらのデータが役に立たないなら収集するまでだ!クロム!」

 

「駒がまだ補充できていないというのに・・・・わかりましたよ」

 

『バット・・・・!』 

 

『チェス・・・・!』

 

「蒸血」

 

『ミストマッチ!バット・・・・バッバット・・・・!ファイア!』

 

二人は即座にナイトローグとチェスハードスマッシュに変身する。

 

「僕はあの黒い方を相手にするから二人はあっちのチェスの方を」

 

「わかった」

 

「うん」

 

対してナイトローグにはシャルロットが、チェスには簪とカロリナが対峙する事に。

 

「こちらの世界でもシャルロット=デュノアの相手をするとはな」

 

「それは別の僕でしょ?同じだと思ってると痛い目見るよ?」

 

「そのようだな」

 

シャルロットが現在展開しているのはアンジュルグとネオウィザードの2つ。ナイトローグにとっては完全に未知の装備だ。

 

「はっ!」

 

最初に仕掛けたのはシャルロット。最早お馴染みのミラージュを展開してナイトローグを包囲すると左腕の楯から光の短槍・シャドウランサーを放ち面制圧攻撃を開始する。

 

「これは!?」

 

回避、撃ち落とし、切り払いで何とか凌ぐものの、少しずつシャドウランサーがアーマーを掠りダメージを蓄積していく。

 

「くっ、エネルギーを物質化した槍か」

 

「まだまだいくよ、イリュージョンアロー!」

 

「今度は矢か!」

 

あと同時にシャドウランサーよりも高密度のエネルギー矢を放ちながら、その合間をミラージュソードで切りつけていくシャルロット。

 

「ぐっ、忍者フルボトルの分身とは違い、触れただけでもダメージになる上に、やられた消えるだけでなく、固めたエネルギーを解放して自爆まで可能とは・・・・思った以上に厄介ですね」

 

「もうミラージュの特性を把握したんだ・・・・腐っても技術者みたいだね」

 

その頃、チェスと対峙する簪、カロリナコンビはチェスの繰り出したチェスの駒と戦っていた。呼び出したのは最初は8つ全てポーンの駒だったが、すぐに半数のポーンは成り上がり(プロモーション)で2体は騎馬のようなナイトに、もう2体は魔術師のようなビショップに変異しており、ポーンと合わせてバランスの良い配置をしている。

 

「ルークがいない?」

 

「ルークは貴様らのところの白兎にやられたんだよ!何なんだあの非常識なやつは!」

 

「あー、やっぱり否常識な事やってたんだ、雪兎」

 

「師匠が帰ってきたら聞かなきゃ」

 

「・・・・今、もの凄く不穏な単語が聞こえたんだが」

 

そうこうしている間にナイトが簪に槍を突き放つが、カロリナがそれをブロックして弾き返し、今回は白雷装備できた簪が大型荷電粒子砲【白雷】で反撃し、ナイトの一体がその半身を撃ち砕かれ粒子に還る。

 

「ちっ、こいつらも非常識か!」

 

そうは言いつつも、チェスは後方で何かを操作していた。それはシャルロット達が強襲してくる前から準備していたとあるものを起動させる為のもの。つまり、ナイト達はその為の囮なのだ。簪達もそれには気付いているものの、ナイトの機動力とビショップの魔法のような援護攻撃、その隙を埋めるような動きをするポーンに阻まれ、チェスに攻撃出来ない。倒したナイトもポーンの内の一体が再びプロモーションでナイトに成り、減ったポーンが補填された為、数は減っていない。それでもプロモーション出来る数と一度に展開出来る数に限りがあるようだ。

 

「地味に、厄介」

 

「うん、それにまだ【クイーン】が未知数」

 

ルークはチェスの話を信じるなら雪兎に全滅させられたせいでインターバルが開けていないらしく不在だが、未だに出してこないクイーンの存在が簪とカロリナを警戒させていた。そうやって手をこまねいていると。

 

「さっさと起きろ!クローンヘルブロス!」

 

チェスの背後に置いてあったコンテナから量産仕様のヘルブロスと言うべき存在であるクローンヘルブロスが4体姿を現した。その内の2体はシャルロットとナイトローグの方へと向かっていく。

 

「これが私のクイーン、クローンヘルブロスだ!」

 

「・・・・何、あれ?撃龍神擬き?」

 

「カロリナ、それは言っちゃダメ」

 

「またその名前かっ!?」

 

「あ、既に雪兎に言われたんだ・・・・」

 

何故か緩いノリのまま、2体のクローンヘルブロスが簪とカロリナの前に立ち塞がるが・・・・

 

「はっ!」

 

突如そこへ紅の仮面ライダーが乱入し、その手に持つ大剣でCヘルブロスを押し返す。

 

「あ、あれはっ!?」

 

その姿を見た簪は思わず興奮してしまう。それも無理は無い。何故なら目の前に現れたのは憧れのヒーローの1つ【仮面ライダー】なのだから。

 

「ちっ、葛城巧!という事は!?」

 

「当然俺達もいるぜ?チェス野郎」

 

「追い付いたぞ!難波重工!」

 

そこに久しぶりにISを纏った雪兎とグリスに変身済みの一海も参戦する。

 

「も、もう一人仮面ライダー!?」

 

これには簪が再び大興奮。

 

「天野雪兎、助っ人引き連れ只今帰還っと」

 

「お帰り、師匠」

 

「おう、何かまたパチモン野郎もいるな?」

 

「やっぱりパチモンだった」

 

雪兎達の参戦で数的不利は解消されたものの、クロムは笑みを浮かべる。

 

「ふふ、それで勝ったつもりか?残念だったな!クローンヘルブロスには既にお前達の最新データがインプット済みなんだよ!」

 

「俺、お前らにまだIS見せてないんだけど?」

 

「・・・・そこの非常識以外のデータは全てインプット済みなんだよ!」

 

「・・・・言い直した」

 

「うるさい!勝てばいいんだよ!勝てば!」

 

「ふふ、ふはははは!」

 

何故か自棄になり始めているチェス。だが、葛城が突然笑い出す。

 

「そのくらいこの僕が想定していないと思っているのかい?」

 

「何だとっ!?」

 

すると、葛城はフルフルR/Tボトルを一度ベルトから外して棒状態に戻し、再びそれを振り始める。先程はピョンピョンという音が鳴った段階で止めたが、今回は更にボトルを振りドン!ドン!という砲撃のような音がしたところでキャップを回転。

 

『タンク!』

 

今度は青い戦車の絵柄に変わったそれを折り畳む。

 

『タンク&タンク!』

 

「ビルドアップ」

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』

 

そして、レバーを回すと何処からともなく青い小さな戦車が現れクローンヘルブロスやチェスへと砲撃を開始する。

 

「くっ!小癪な!」

 

その隙にビルドはラビットラビットアーマーをパージし、戦車型のタンクタンクアーマーを装着していく。

 

『オーバーフロー!鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!』

 

「名付けて、仮面ライダービルド・タンクタンクフォームさ!」

 

「か、格好いい・・・・」

 

尚、簪はその様子は全てハイパーセンサーも総動員して録画していた模様。

 

「さて、後は俺達に任せろ、簪」

 

「・・・・ううん、私にやらせて」

 

「ほう」

 

クローンヘルブロスにデータがインプットされていない雪兎が簪に変わろうかと声を掛けるも、簪は何かを決意したかのように雪兎の前に進み出る。

 

「憧れのヒーローの隣でただ見ているだけなんて・・・・私には出来ない!」

 

その簪の決意に応えるかのように打鉄・弐式が光輝き出す。

 

「えっ?」

 

「その光は!?」

 

「あー、ここできたか」

 

そう、打鉄・弐式は二次移行を開始したのだ。光が消えた時、簪の打鉄・弐式の姿は大きく変化していた。その最大の違いは弐式の時は様々な装備を付けていたのだが、その多くが小型化されよりスリムなシルエットに変化しており、各部にハードポイントが増設されていた。

 

「【烈鋼(れっこう)】それがこの子の新しい名前・・・・」

 

だが、変化はそれだけでは無い。

 

「来て、撃龍!蒼燕!穿甲!」

 

そう言って簪が展開したのは砲撃装備をした龍、蒼いクリアパーツの翼を持つ燕、2つのドリルを持つ戦車の自律型追加補助外装・・・・つまり雪兎の白月や一夏の白鳳、シャルロットのコスモスと同じものを呼び出したのだ。

 

「・・・・今度はそれかよ」

 

またしても雪兎のデータベースに無断アクセスした形跡を見つけ、雪兎はもうこれは避けられない事だと察した。すると、ビルドは簪の隣に立ち簪に耳を貸すように言う。ビルドは近づいた簪に耳打ちをすると、簪はコクリと頷いた。

 

「よし、準備は良いかい?」

 

「は、はい!」

 

ビルドと簪はほぼ同じタイミングでポーズを取った。

 

「「勝利の法則は、決まった」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナイトローグと対峙していたシャルロットの方はというと・・・・

 

「何者だ、お前は・・・・」

 

『・・・・』

 

増援としてやってきたCヘルブロスと共にシャルロットへ反撃しようとしたところに思わぬ乱入者が現れたのだ。それは全身装甲(フルスキン)の強固な装甲を持つ紫色のISだった。

 

「あれは、前に雪兎が作ってた・・・・」

 

シャルロットはそのISに見覚えがあった。何故なら、それは黒雷と同様に普通の人間には扱えない、と雪兎が封印したはずの試作機・・・・そう、雪兎が氷室幻徳に譲り渡したバルドローグだった。




皆さんの予想通りの結果になったかな?
帰って来てそうそう簪の弐式がやってくれました。
烈鋼、その実力は・・・・待て、次回!


次回予告

追い詰められる難波重工にダメ押しとばかりにタンクタンクフォームが現れたり、簪の打鉄・弐式が進化を遂げる。一方、シャルロットの元に現れたバルドローグの目的とは?


次回

「簪、決意の力! 兎、サポートに回る」



そして、以前アカウントが消えてしまった麦ちゃさんが、ムギというアカウントでICをリメイクし始めたそうです。良ければそちらも読んでみて下さい。


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152話 簪、決意の力! 兎、サポートに回る

~前書き劇場~

簪「今回は私達みたいだね、レヴィ」

レヴィ「何か珍しい組み合わせだね」

簪「作者曰く、水色・ヒーロー好きコンビだって」

レヴィ「あ~!なるほどなるほど」

簪「レヴィもヒーロー好きだもんね」

レヴィ「格好いい動きの参考にしてる」

簪「なら、この前貸したアレはもう見た?」

レヴィ「電光超人グリッドマン、だっけ?今アニメでやってるやつの元のやつ。僕はあのサンダーグリッドマンってのが好きだなぁ」

簪「わかる!合体はやっぱりロマン!」

レヴィ「パワーアップした簪の烈鋼もアレのデータ使ってるんだっけ?」

簪「他にもシンケンジャーの折神とか戦隊ロボも参考にしてるんだよ!他にも・・・・」

レヴィ「へぇ~(簪ってご主人と同じで趣味(ヒーロー関係)の話になると饒舌になるよね)」

簪「それに、前回は憧れの仮面ライダーと一緒に決めセリフも言えたし」

レヴィ「それはズルイ!僕もやりたかった!」

簪「サインはレヴィの分もお願いしてあげるから」

レヴィ「約束だよ!」

簪・レヴィ「「それでは152話をどうぞ!」」

雪兎「仲良いな、お前ら・・・・」


「「勝利の法則は、決まった」」

 

流石はヒーローオタク、葛城に一発でポーズとセリフを完全に合わせてみせた簪は既にやりきった表情だ。しかし、すぐに気持ちを切り替えてCヘルブロスへと攻撃を開始する。

 

「きて!撃龍!」

 

簪の呼び声に応え、撃龍が烈鋼に近付くと、撃龍は幾つかのパーツに分かれ烈鋼へと装着されていく。その姿は白雷を元にした砲撃型で、頭部と長い首から構成される大型ランチャー【雷撃砲】、翼が変形した背面のツインリニアレールキャノン、尾が蛇腹剣となっており、追加された装甲には内蔵ミサイルポッドとかなり攻撃的である。

 

「また簪らしい進化したなぁ、あれ・・・・あれなら簪に任せても大丈夫だろ」

 

烈鋼から送られてきたそのデータからその無茶苦茶っぷりに呆れる雪兎。しかし、そのデータから簪がCヘルブロスに負けるとは思えなかった雪兎はチェスを止めに行った一海の方に向かう事にした。

 

「fire!」

 

雷撃砲の一撃を何とか両腕をクロスしてガードしたCヘルブロスだが、その威力は凄まじく、両腕のギアパーツが融解しかけている。CヘルブロスがISとは違い元々シールドを張っていないせいもあるが、その威力が白雷を凌駕しているのも理由の一つだろう。砲撃に耐え反撃に移ろうとしたCヘルブロスだが、今度は撃龍と共に呼び出された蒼燕がその刃のような翼ですれ違い際で切りつけ、よろめいたCヘルブロスの装甲を地面から飛び出してきた穿甲がドリルで抉る。

 

切換(チェンジ)、穿甲!」

 

その隙に簪は撃龍を分離させ、代わりに穿甲を纏う。穿甲を纏った烈鋼は両腕にドリルを装備し、背面の大型ブースターを点火させ接近すると、ドリルを高速回転させながら振るいCヘルブロスの装甲を削り切り、Cヘルブロスを弾き飛ばす。

 

「これも・・・・いけ!スパイラルブーストパンチ!」

 

再び距離が開いたところで右腕のドリルを再び高速回転させながらCヘルブロスへと向け、右腕のドリルを含む一部を射出し、対するCヘルブロスも歯車を飛ばして対抗するも歯車の歯が少しずつ削れていく。

 

「ぶち抜けぇえええ!!」

 

そしてとうとう歯車を撃ち砕き、そのせいで少し狙いが逸れたもののCヘルブロスの右肩の装甲を破壊した。

 

「これがドリルの力よ!」

 

すると、丁度そこへ葛城と戦っていたCヘルブロスが吹っ飛ばされてきて簪と戦っていたCヘルブロスと並ぶ。

 

「おっと、ちょっと飛ばし過ぎてしまったかな?」

 

そのCヘルブロスを追って何故か脚部が戦車のようになった葛城もやってた。

 

「どっちももうちょっとみたいだし、ここは二人で決めるとしようか」

 

「はいっ!」

 

そう言うと、葛城はフルフルR/Tボトルをフルボトルバスターにセット、簪は再び撃龍を纏う。

 

『フルフルマッチデース!』

 

「雷撃砲、チャージ!」

 

「いくよ?簪ちゃん」

 

「はい!」

 

『フルフルマッチブレイク!』

 

「メガライトニングバーストッ!!」

 

フルボトルバスターと雷撃砲から放たれた強力な砲撃が二体のCヘルブロスに直撃し、既にボロボロだった二体はそれに耐えられず爆散してしまった。

 

「うん、やはり僕の発明品はサイコーだね!」

 

「カッコ良かったです!」

 

「そうだろう!そうだろう!」

 

簪の素直な褒め言葉に気分を良くする葛城。

 

「あとは・・・・一海君は雪兎君が一緒だから大丈夫だろうけど」

 

「大丈夫、あっちにはカロリナが向かったから」

 

「ああ、あの大きな盾を装備したISの娘か・・・・なら、大丈夫かな?」

 

何となくではあるが、この世界の彼女らならば何とかなると思った葛城はこれ以上の増援を阻止すべく、簪を連れてワームホールの方へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、チェスと再戦していた一海は劣勢を強いられていた。その理由はチェスが本来のクイーンを解禁し、雪兎にやられたルークの再使用時間(リキャストタイム)が過ぎて万全の状態だったからだ。

 

「くっ・・・・」

 

「いくらライダーシステムといえど一人で私の駒達を相手にするのはキツイだろう!」

 

本体であるチェスを狙おうにもルーク二体のガード、素早いナイトに援護射撃のビショップ、替えが効くポーンに・・・・そして、それ単体でハードスマッシュ並みの能力を持つクイーン。強力な駒程再使用時間は長いものの、これらを効果的に操るチェスは一海をしても強敵であった。

 

「よく粘る・・・・だが、それもここまでだ!」

 

クイーンの斬撃を後ろに跳んで回避した一海をそれを見越して配置されたポーン二体が羽交い締めにし、ポーンもろともビショップの火炎弾が襲う。

 

「ぐぁああああ!?」

 

「まだだ!」

 

追撃に大きく跳び上がったナイトが一海を踏み付ける。

 

「があっ!」

 

「どうした!そんなものか!猿渡一海っ!」

 

今までの雪辱を晴らさんとばかりに畳み掛けるチェス。そして、変身解除されてしまった一海にトドメを刺さんとクイーンが一海を切りつけようとしたその時、突如クイーンが横から射たれ吹っ飛んだ。

 

「な、何だと!?」

 

「・・・・ゆ、雪兎?」

 

その射撃を行ったのは白と蒼白い装甲に、左腕全体を覆う巨大な拘束具を装備し、右手で長身のソードライフルを構えた雪兎だった。

 

「また貴様かっ!」

 

チェスにとってはもう怨敵と言っていいほど邪魔をしてきた雪兎の登場にスマッシュの姿でも分かる程チェスは激昂する。

 

「おうおう、随分と嫌われたもんだな、俺は」

 

そう軽口を言いながら邪魔なナイトやポーンを射ち抜きながら雪兎はゆっくり一海へと近付く。

 

「よっ、また派手にやられたな?」

 

「うるせぇ・・・・ここから大逆転するとこだったんだよ」

 

「そうか、それは悪い事をしたな」

 

すると、雪兎は何か思い出したかのように一海に手を差し伸べる。

 

「そういやまだ言ってなかったな、一海・・・・welcome to the world(ようこそ、この世界へ)

 

「ンだよそれったく……おう、お邪魔させてもらうぜ」

 

その手を掴んで起き上がる一海。再び変身する為に一海がロボットゼリーを手にすると、雪兎が栄養ドリンクの瓶に似た物を手渡した。

 

「これは?」

 

「再変身の負荷を抑える薬だ・・・・まあ、後からまとめて負荷くるから負荷をツケにするもんだと思え」

 

「今戦えるなら問題ねぇ」

 

そう言って一海はそれを一気に飲み干す。

 

「お、おう・・・・それ、かなり不味いんだが、一気とはな」

 

「そういうのは先に言え!」

 

「さて、あちらさんもお待ちのようだし、変身したら?」

 

「後で覚えとけよ、変身!」

 

『ロボット・イン・グリス!ブラァ!』

 

文句を言いつつも再度グリスへと変身した一海。

 

「ついでだ。お前にやったナックル、ここで試しとけ」

 

「あっ、忘れてた」

 

『ブリザードナックル!』

 

「な、何だそれは!?よく分からんが、あれは使わせてはいけない気がする!」

 

ブリザードナックルを見たチェスは本能的にそれが雪兎の手が加えられた物だと気付き、一海を止めるべく駒を差し向けようとするが・・・・

 

「まあ、そう焦らさんなってっ」

 

雪兎がソードライフルの正確無比な射撃で弾き返す。

 

「一海、ナックルにあるボトルスロットに何でもいいからボトル挿してみろ」

 

「ボトルを?ならまずはこいつだ!」

 

『ボトルキーン!』

 

「次はナックル正面の真ん中のボタンを押してチャージ」

 

挿したのはロボットフルボトル。そして、雪兎に言われるがまま一海はナックルの正面にあるグリスのライダークレストが付いたボタンを長押しする。

 

「あとは手を離しておもいっきり振り抜け!」

 

「はぁっ!!」

 

『グレイシャルナックル!カチカチカチカチカチーン!』

 

すると、冷気で出来たロボットアームが一海に迫っていたナイトを一発で打ち砕く。

 

「ナイトがたった一発だと!?」

 

「お、おおっ!こりゃすげぇ・・・・」

 

その威力二人が驚いていると、

 

「驚くのはまだ早いぜ?一海、次は属性元素ボトルだ」

 

「なら、こいつだ!」

 

『エレメントスプラッシュ!』

 

続けて一海が選んだのはスプラッシュエレメントボトル。

 

「あとはさっきと一緒だ」

 

「ボタンを長押しして、離して・・・・打ち抜く!」

 

『エレメンタルナックル!ザバザバザバザバザバーン!』

 

再びライダークレストを長押しして放ったナックルの先から渦巻く水流が放たれ、直撃したビショップはそのまま視界の外まで飛んでいった。

 

「属性元素ボトルとフルボトルを連続して装填すれば、その属性を得た攻撃も放てるし、エレメンタルナックルをしなきゃその属性のまま通常攻撃も可能。便利だろ?」

 

「またとんでもないもん作ったな、雪兎・・・・」

 

自慢気に語る雪兎に、一海は呆れながらもナックルを握り直しチェスへと向かっていく。対する雪兎はチェスと一海の邪魔をしないように駒達の前に立ちはだかる。

 

「ここから先は通行止めだ。どうしてもってんなら俺を倒していくといい・・・・倒せるもんならな」

 

そう言うと、雪兎は左腕の拘束具の錠前に右手を翳す。

 

「せっかくだから見ていくといい・・・・アドヴァンスド【AtC:憑神typeコルベニク】モード2」

 

すると、錠前が外れ、左腕を覆っていた拘束具が弾けるように解かれ、隠されていたその姿を現す。それは他の部分の装甲の蒼白さとは真逆の赤黒い肩から生える先端が鉤爪のような第三の腕。更に左手にも禍々しいデザインの短剣が握られている。

 

「さあ、その目に焼き付けろ!」

 

ソードライフル、短剣、左腕の第三の腕、この3つが連動し駒達を3つの斬撃が襲い、地面に3つの焼けついた爪痕を残す。

 

三爪痕(トライエッジ)、中々イカすだろ?」

 

その問いにバラバラに切り刻まれた駒達は答える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ・・・・何処まで強くなるんだ、お前は!」

 

「仲間の為なら、幾らだって強くなってやるよ!」

 

『エレメントストリーム!』

 

一海は先程と同様にライダークレストを長押ししてナックルを構える。

 

「あとな・・・・カッコつけてぇんだよ。別世界だろうが、会長の前ではなぁ!」

 

『エレメントナックル!ビュンビュンビュンビュンビューン!』

 

一海がナックルを前に突き出すと、ナックルから吹雪が放たれ、チェスの体を氷漬けにする。

 

「トドメだ!」

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

一海が跳躍すると、グリスの肩アーマーが90度後ろに回転してゼリーを噴出。チェスを蹴り飛ばした。

 

「グハアアアアッ!!」

 

氷が砕け、蹴りが当たったチェスは見事に吹っ飛ばされる。

 

「クッ、駒も全て消されましたか・・・・もうここまで来ると諦めるしか道は無さそうですね」

 

チェスはあまりのボコボコのされようのせいか逆にクールになると、キングからナイトへと姿を変えて逃げていった。

 

「ヘッ、ザマア"ッガァァァァァッ!」

 

すると、一海の体に電撃が走って変身が解除される。

 

「雪兎が言ってた変身の反動ってヤツか・・・・結構イテェ・・・・!」

 

一海はあまりの痛さに膝をついて苦しむが、完全に動けない訳では無いのでゆっくりと立ち上がる。

 

「終わったか」

 

「雪兎。あぁ、カッコ良くぶっ飛ばしておいたぜ」

 

「楯無さんにいい所見せたいからか?」

 

雪兎がニヤニヤしながら言うと、一海は吹き出して顔を真っ赤にする。

 

「ちょ、聞いてたのかよ!てか忘れろ、今すぐ忘れろ!」

 

「スマン録音済みなんだわ。どっちの楯無さんに聞かせようかなぁ〜」

 

「頼むから止めろ!分かった金払う、払うから止めてくれ!」

 

雪兎と一海が周りを気にせずに追いかけっこを始める。戦場とは思えない程の緩さだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、シャルロットとナイトローグの戦いはCヘルブロス2体とバルドローグの

 

「何でそのISが・・・・」

 

『・・・・今は余計な詮索をしている場合ではあるまい』

 

「雪兎がそれを託したって事は、信じてもいいんだよね?」

 

『・・・・少なくともお前の敵になるつもりは無い』

 

そう言うと、バルドローグは長柄の鈍器【バイスメイス】を手にCヘルブロスへと向かっていく。

 

「僕も!」

 

シャルロットもアンジュルグからネオイェーガーの重複装備に換装し、両手にネオバスターライフルを展開する。

 

「君を破壊する」

 

重複装備ネオイェーガーの速さに対応出来ないCヘルブロスは移動しながら精密射撃を行ってくるシャルロットに防戦一方。バルドローグの方もISにあるまじき重装甲でCヘルブロスの攻撃をものともせず、バイスメイスで殴打を繰り返しヘロヘロになったCヘルブロスにトドメを差すべく、バルドローグはバイスメイスの真の姿を解放する。

 

『さあ、存分に喰らえ』

 

それはまるで鰐が鰓を開いたような形をし、Cヘルブロスを挟み込むと内部の上下2列ずつの刃の付いたチェーンが高速で回り始める。

 

『!?!、?!?!?、!!?!?、!!!!?』

 

これには流石のCヘルブロスも警告音を鳴り散らすが、バイスメイスは止まる事は無く、そのままCヘルブロスを挟み込んだ場所からまるで食い千切られたように削られ両断されてしまった。

 

『・・・・これは、対人戦では加減する必要があるな』

 

今回はCヘルブロスだったから良かったが、普通の人間もしくはシールドエネルギーを失ったISだったならば、間違いなく殺していただろう。

 

『死にはせずとも、これはトラウマ確定だな』

 

バルドローグに乗る幻徳は一人そう呟くのだった。

 

「あっちも終わったみたいだし、こちらも行くよ!」

 

バルドローグがCヘルブロスを倒したのを横目で確認すると、シャルロットは背面からエネルギーチューブを2本伸ばし、それぞれをネオバスターライフルに接続する。更に左右のそれを銃口が並ぶように接続し、計4門のツインネオバスターライフルへと変貌させる。

 

「これが今回のとっておきだよ!ターゲットロック・・・・ツインネオバスターライフル、フルバーストッ!!」

 

4門の銃口から放たれたオレンジ色の閃光がCヘルブロスへと向かう。そのあまりの熱量に回避しようとするCヘルブロスだが、脚部の損傷が酷く回避する事は叶わずそのままその閃光に呑み込まれ姿を消した。残ったのはその余波で出来たクレーターだけである。

 

「・・・・やり過ぎちゃった」

 

いくら無人機相手とはいえ、雪兎と会えなかったフラストレーションを爆発させてしまったシャルロットは文字通り塵すら残さぬ自分の諸行に「最近、雪兎に戦闘スタイルが似てきたなぁ」と、苦笑するのだった。

 

「あっ、あのISは!?」

 

そこでバルドローグの入手経路の事等を訊ねばとバルドローグを探すが、既にバルドローグの姿は無かった。

 

「結局助けてもらったのにお礼も言えなかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、サイボー・・・・もとい、ナイトローグ内海はというと、

 

「くっ、この堅さはシールドエネルギーとは別口でバリアフィールドを展開しているのか?」

 

「この蝙蝠、思ったよりしぶとい・・・・」

 

簪が援護不要になった為、念の為にシャルロットの援護をしに来たカロリナ相手に苦戦していた。通常のISならばナイトローグでもダメージを与える事は容易なのだが、カロリナのリリコンバーシュはこと防御に関しては兎製ISの中でもトップクラスであり、雪兎との模擬戦にて、あのアメイジングアルケミストの全力爆撃を一度は凌げるというレベルなのだ。箒がトーナメントで苦戦したのも当然である。

 

「ブレイクフィールド展開」

 

「またそれか!」

 

リリコンバーシュの最大の攻撃手段、それはバリアフィールドを展開したまま相手に突撃しバリアフィールドで押し跳ばすシールドアクセラレーター。この技を使う時には機体前面に更にブレイクフィールドという部分展開型バリアを展開する為、正面からの攻撃はほぼ通用しなくなる。バルドローグとは別方面の「防御こそ最大の攻撃」という言葉を体現するISなのだ。

 

「シールドアクセラレーター!」

 

「ぐあっ!」

 

トランスチームシステムで保護されていて尚、生身で全速疾走のトラックに撥ね跳ばされるようなダメージを負う一撃に幾つものアラートがナイトローグのバイザーに表示される。

 

「・・・・非常に遺憾だが、こちらの戦力を見誤っていたようだ」

 

「・・・・帰るの?」

 

撤退を考えていた内海にカロリナは攻撃の手を止めて少し寂しそうにそう訊ねる。

 

「何故攻撃を止めた?」

 

「貴方からは私や師匠達と同じ匂いがしたから」

 

「・・・・なるほど、君も一人の技術者なのか」

 

自身の分析能力から同じ技術者と見抜かれたと気付いた内海は納得の表情を浮かべる。

 

「それに、私の役目は足止め、もう役目は果たした」

 

「つまり私以外全滅という訳か・・・・それならば私一人取り逃がしても痛手では無いか」

 

「その蝙蝠も面白かったけど、今度は貴方の作品と戦ってみたい」

 

「・・・・それは叶わぬ願いだな」

 

カロリナの突然の惜しみ無い称賛の言葉に一瞬だけ呆気に取られるも、内海はすぐにそう告げた。

 

「そう・・・・」

 

「・・・・だが、君との戦い(実験)は実に有意義なものだったよ」

 

悲しげなカロリナにそう言い、トランスチームガンから黒い煙を放ちながら姿を消した。

 

「私も、楽しかったよ、蝙蝠さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Cヘルブロスが全滅する頃には他のハードスマッシュの部隊も制圧され、結果を見れば雪兎達の完勝という結果に終わった。

 

「・・・・話は聞いてはいたが、ここまでとは」

 

「ほとんどのメンバーが二次移行済みとは恐れ入るね」

 

その戦果に一海は勿論、葛城も驚いていた。

 

「まあ、雪兎の理不尽さに比べたら、な?」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「うん、知ってた」

 

一夏が皆を代表してそう言えば、一海も納得の表情を見せる。

 

「ワームホールも消したし、これでこの一連の事件は解決だな」

 

「あっ!ワームホール無くなったら俺達どうやって帰んだよ!?」

 

難波からの増援を阻止する為とはいえ、世界を繋いでいたワームホールが閉じられてしまった事で元の世界に帰れなくなったと一海が慌てて葛城に掴みかかる。

 

「まあまあ、落ち着きなって、一海君」

 

「いや、帰れなくなったんですよ!?」

 

「一海君、僕がそれを考えずにいたと思うかい?」

 

「それに一海、私達がどうやって貴方達の世界を訪れたか、忘れましたか?」

 

「あっ・・・・」

 

葛城とシュテルに言われて初めて一海はその事(クロスゲート)を思い出した。

 

「で、そんなに動いて大丈夫なのか?一海」

 

「何が大丈ーーって、ぎゃああああ!?!?」

 

「言わんこっちゃない・・・・」

 

未だに再変身の負荷が抜けきれていない一海は葛城に掴みかかった動きのせいで再び全身に激痛が走り悲鳴をあげる。

 

「どのみちあんな馬鹿デカいワームホールを開けたせいでクロスゲートは2・3日使えないんだ」

 

クロスゲートやパラレルボトルとは違い、ワームホールは直接世界と世界を無理矢理繋いだらしく、そのせいで次元の境界があやふやになっており、よくて数日のズレ、最悪何処か別の世界に跳ばされるとの事。

 

「一海も休ませる必要があるし、数日休んでけよ」

 

「いいのかい?」

 

「こちらはまだ幸いにも春休みなんで大丈夫でしょう。それに、巧さんのだけ見せてもらって俺のを見せないのはフェアじゃないでしょ?」

 

雪兎が言っているのは自身の工房の事だ。あちらでは葛城の研究室を見学させてもらったので、そのお返しのつもりらしい。

 

「何だって!?それは是非ともお願いしたい!」

 

「では早速、の前に・・・・レヴィ、一海を医務室まで連れてってやってくれ」

 

「わかった!さあいくよカズミン!」

 

「お、おう、って腕引っ張るなぁあああああ・・・・」

 

レヴィに勢いよく引っ張られて悲鳴をあげながら医務室へと一海は去っていった。

 

「狙って彼女に頼んだね?」

 

「はて?何のことやら」




あとがきが抜けておりました。

コラボシナリオも次で最後となります。コラボでがっつり戦闘やったので当面は戦闘は無いと思います。



次回予告

難波重工を退けた雪兎と一海達。空間の安定を待つ中、雪兎は葛城と、簪は一海と、それぞれ言葉を交わし・・・・


次回

「議論する兎と誓いの(ナックル) 兎、送迎する」


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153話 議論する兎と誓いの(ナックル) 兎、送迎する

~前書き劇場~

雪兎「前書き劇場も今回で見納めだな」

一海「普段やってない分、ここのは色々と強烈だったぜ・・・・」

シャル「でも、楽しかったでしょ?」

雪兎・一海「「確かに」」

シュテル「あちらの皆さんへのお土産も色々ありますのでお願いしますね?」

ドスンッ

一海「・・・・ドスン?ドサッじゃなくてドスンッ?」

シュテル「ええ、(ディアーチェ)が『我が右腕が世話になったのだ、これくらいは当然だろう』と」

雪兎「一海、storageあってよかったな」

一海「だな」

レヴィ「そういえば今日は学園の入学試験の日だよね?」

一海「あの襲撃の翌日に入試って・・・・この世界は学園まで図太いな」

雪兎「・・・・何故かモーレツに嫌な予感がする」

シャル「それよりも今回はアレ、皆でやらない?」

シュテル「いいですね」

レヴィ「アレだね!」

雪兎「アレか」

一海「いいな!それ」

葛城「何だか楽しそうだね?僕も参加しても?」

一海「うおっ!?葛城さん、いつの間に!?」

雪兎「よし、せーのでいくぞ?せーの!」

「「「「さてさてどうなる153話!」」」」

雪兎「決まったな」


一海達と別れ、雪兎と葛城は学園の一角にあるプロジェクト・フロンティアの研究施設の雪兎のフロアを訪れていた。

 

「・・・・プロジェクト・フロンティア、思っていたより大掛かりなプロジェクトみたいだね」

 

ここまでの道中にプロジェクト・フロンティアの説明を受けた葛城はその規模の大きさに軽く驚いていた。

 

「それよりも聞きたい事があるのでは?」

 

「やはり一海君を引き離したのは狙っていたんだね?」

 

そう言い、葛城は一海から預かっていたブリザードナックルを近くの作業台に載せた。

 

「一海君から君に貰ったと聞いたけれど、これはどういうつもりだい?」

 

ブリザードナックルがただのグリスの強化武器であれば葛城もこんな追い詰めるような事をする必要は無かった。だが、このブリザードナックルには武器として以外にもとある機能が内包されていた。それに気付いたからこそ、葛城は雪兎に問わねばならなかった。

 

「このブリザードナックルにはビルドドライバー(・・・・・・・)と接続して変身アイテムとして使用出来る機能が、クローズドラゴン(・・・・・・・・)を元にしたシステムを内蔵しているね?」

 

「流石は巧さん、この短時間でよく気が付きましたね?」

 

「雪兎君!君は自分がどういうモノを作り出したのか理解しているのかいっ!」

 

「一海のやつに何れ必要になると思ったから作った、それだけです」

 

「だがっ!」

 

「巧さん、俺だって必要なければこんなもの作ったりしませんよ!貴方はまだ(・・)必要無いと言う!だが、それはいつだ!?本当に必要な時に間に合うんですか!?」

 

「うっ」

 

「前にも言いましたが、俺はやらずに後悔するくらいならやって後悔する道を選びます!何もせずに一海(ダチ)を死なせるような事になったら、俺は一生、いやいくら後悔してもしたりねぇ!」

 

そう言う雪兎の気迫に葛城は圧倒される。

 

「・・・・すみません、少し熱くなり過ぎました」

 

「いや、こちらこそすまない・・・・君の覚悟を少し見誤っていたようだ」

 

言いたいだけ言った雪兎がクールダウンし謝ると、葛城も雪兎の真意を知り謝り返した。

 

「一応、もう1つ保険をかけてますし、そもそもあれを使うには今の一海ではハザードレベルが足りません。それに肝心なビルドドライバーを一海は持っていない」

 

「そうだったね・・・・」

 

雪兎の言葉を聞き一安心する葛城。

 

「さて、真面目な話はこれくらいにして技術交流といこうか、巧さん」

 

「見せてもらうよ、君の本来の技術力を」

 

その後、二人は深夜に戻って来ない雪兎を心配したシャルロット来るまでハイテンションのまま技術交流を続けていたそうな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な事があった翌朝、それでもきっちり時間通りに起きてきた雪兎は多少回復した一海に学園を案内していた。尚、一海には世話役としてユーリが同伴している。

 

「色々とこっちとは違う部分はあるが、基本的な部分は変わんねぇんだな」

 

「あはは・・・・その色々の大多数にマスターが絡んでますけどね」

 

「雪兎ェ・・・・」

 

「これでも自重はしてるぞ?師匠がその気になってたら面影も無いレベルで改築されてるんだから」

 

「多少性格がマイルドになってもあの人はあの人か」

 

今朝、この世界の多少性格がマイルドになった束と遭遇した一海と葛城が驚愕しているのを見るに、あちらの束は原作通りかそれ以上に取っつき難い性格のようだ。

 

「そういや表の方が騒がしかったが、何かあんのか?」

 

「ああ、今日は学園の入試でな」

 

「あ~、入試ね・・・・って、あんな事あったのに普通に入試すんの!?」

 

「一海、色々あって、マスター()のせい、と言えば大抵納得されるんですよ、この世界は」

 

「なるほど兎の皮を被った災害(ラビット・ティザスター)の2つ名は伊達じゃねぇって事かよ」

 

改めて雪兎の無茶苦茶っぷりを痛感する一海だが、そこでふと疑問が浮かぶ。

 

「あれ?学園の入試って外の会場でやってなかったか?」

 

「あっ、それは一夏が原因だ」

 

原作の冒頭で、主人公である一夏がIS学園の試験会場に迷い込んだのがそもそもの発端になっており、同じようなトラブルを避けるべく、試験会場はIS学園に限定したのだ。海外の受験者は交通費が国から支給されたり、宿泊先は学園が一括管理しており、大きなトラブルは今のところ起きてはいないとのこと。

 

「へぇ~」

 

「あと、今年は四人も男子が見つかったらしい」

 

「そうなのかぁ~・・・・って、えぇえええ!?」

 

「驚くのは無理もねぇとは思うが事実だ」

 

一人は紫音の事なのだが、それとは別に全国一斉調査で三人もの適性者が見つかった。これは世界的にも大きなニュースになっていた程だ。

 

「束さん曰く、俺や一夏っていうサンプルがいたせいか、ISコアが徐々にだが男を受け入れ始めてるんだとよ」

 

これには世の女性権利主義者達が大いに反発したものの、束の公式発表の場でそんな発言をしたが故に、束に徹底的に言葉で叩きのめされたらしい。だが、その男子三人が何らかの手段で襲われる事を懸念し、学園が保護に動いているとの事。

 

「っつう訳で、今年は学園で試験をやるって訳だ」

 

「なるほど」

 

そこに丁度筆記試験が終わったと思われる受験生達が廊下に出てき始めた。

 

「あれが未来の後輩候補かぁ・・・・って!?」

 

その中に雪兎は見覚えのある人物を発見した。

 

「・・・・雪兎先輩?雪兎先輩ですよね!?」

 

その人物は雪兎を見つけるや否や瞬歩と見間違うレベルのスピードで雪兎の目の前までやってきた。

 

「お久しぶりです!雪兎先輩!!」

 

「お、おう、久しぶりだな、日向」

 

「雪兎、こいつは?」

 

「あっ、初めまして!雪兎先輩の中学の後輩で紫陽日向(しよう ひなた)と申します!」

 

その人物の正体は雪兎や一夏の中学の後輩である紫陽日向だった。その日向だが、雪兎はとある理由から彼女を苦手としていた。

 

「そして、先輩の一の妹分です!」

 

そう、日向は猛烈な雪兎の妹分(信者)の一人なのだ。一海は雪兎にじゃれつく日向に嬉しそうにピコピコする犬耳とブンブンと振られる尻尾を幻視した。

 

(こ、濃い・・・・)

 

まるで三羽烏を凝縮したかのような濃さに流石の一海も少し引き気味だ。

 

「だぁー!!いい加減に離れろ日向!」

 

「あっ、はい」

 

どうやら一年振りの雪兎との触れ合いで興奮していたようだ。

 

「・・・・まさかお前にもIS適性があったとはな」

 

「A判定でした!」

 

「・・・・来年から更に騒がしくなりそうだ」

 

日向をよく知る雪兎は、適性さえクリアしていればIS学園の入試程度なら日向の苦にならないと思い至り、少し遠い顔をしていた。

 

「日向さん、でしたか?そろそろ実技の時間では?」

 

「そうでした!!それでは先輩!またです!」

 

ユーリに時間を指摘され、日向はまた弾丸のように去っていった。

 

「・・・・嵐のような娘だったな」

 

「あれの相手を毎日だぞ?まあ、落ち着けば普通に良い後輩なんだが・・・・」

 

雪兎が絡むと度々ああなるらしい。

 

「何故か少しだけアイツにシンパシーを感じた」

 

「はぁ!?・・・・あっ、そういう事か」

 

一海のシンパシー発言に雪兎は驚くが、すぐにその理由を察してニヤニヤし始める。

 

「お前、楯無さん大好きだもんなぁ」

 

「ちょっ!?お前!!」

 

「か、一海さん、ここは皆さん見ていますから!マスターも煽らないで下さい」

 

雪兎の指摘に顔を真っ赤にして拳を握る一海をユーリが慌てて宥める。

 

「仕方ない、一海弄りは後にするか」

 

「くっ、厄介な奴に知られちまった・・・・」

 

多少のトラブルはあったが、一海への学園の案内は無事に終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、試験会場では一人の少女がおろおろとしていた。

 

「ど、どうしよう・・・・」

 

その理由は年末に一時帰国していた代表候補生から受験のお守りにと預かった大切なブローチを人とぶつかった際に落としてしまったのだ。もうすぐ実技の試験も始まってしまう為、早く見つけねばならないのだが、焦っているせいか中々見つからない・・・・そんな時だった。

 

「もしかして、探してるのはこのブローチかい?」

 

少女の前に少女の探すブローチを持った淡い紫色の髪の少年・紫音が現れた。

 

「は、はい」

 

「良かった。綺麗なブローチだったからなくして困ってるんじゃないかと思ってたんだ」

 

そう微笑む紫音に少女は思わず見とれてしまう。

 

「良かったね、大切なものだったんでしょ?」

 

「はい、私の尊敬する方が受験のお守りにと貸して下さったもので」

 

「そうなんだ・・・・でも、そのブローチ、君に良く似合うと思うよ」

 

「えっ?」

 

「そのブローチを選んだ人はセンスがあるんじゃないかな?」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

紫音の素直な感想に少女は頬を赤く染める。

 

「あっ、そろそろ実技の時間じゃないのかな?」

 

「そ、そうでした!!」

 

「距離的にまだ時間に余裕があるから落ち着いて、君ならきっと合格出来るから・・・・僕が保証する」

 

「は、はい!」

 

「それじゃあ僕はここで・・・・来年、また会えるといいね」

 

「えっ?それはどういう・・・・」

 

紫音が残した最後の言葉に、少女・イクス=シアハートは困惑するが、すぐにとある可能性に気付いた。

 

「セシリアお姉様のご学友の織斑一夏さんと天野雪兎さんの二人以外にこのIS学園に男性がいるとすれば・・・・新しく見つかった四人の男性適性者の方ですわよね?」

 

そして、イクスは決意する。必ずこの試験に合格して(紫音)に改めてお礼を言うのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、姉さんも過保護だなぁ・・・・いや、年末のアレがあったのだから仕方ないか」

 

ここにも一人、来年度IS学園へと入学する男子がいた。彼の名はルーク=ファイルス。名前から判る通り福音の操者・ナターシャ=ファイルスの弟である。そして、年末のアレとは聖剣事変においてナターシャを利用するべくルーク達家族が人質に取られた事だ。あのときは雪兎の手配した影狼隊に救助されたが、あのとき程ルークが己の無力さを悔いた事は無い。

 

「でも、これからは僕だって・・・・」

 

自身を助けてくれた影狼隊の隊員達やそれを手配してくれた雪兎にはルークは一種の憧れに近いものを抱いており、自身にIS適性があり、雪兎の側で学べると知った時ルークは歓喜した程だ。

 

「そう言えば僕の他にも三人、男子がいるのだったな・・・・」

 

ルークの他にも各地で男性適性者が現れ始めており、開発者の束曰く「そのうちISは女性だけのものではなくなる」との事。ルークは自分以外の適性者がどんな人物なのか?出来ればお互いを高め合える相手であれば良いと思いつつ、実技試験へと挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その2日後、雪兎から次元の歪みがなくなったとの報告を受け、一海と葛城が元の世界へと帰る事となった。

 

「色々と世話になったな」

 

「気にすんな、俺も今回の件は色々と得るものがあったからな」

 

「それもお互い様だよ」

 

「送別会が出来ないのは少し残念だけどね」

 

今回は一海が早く帰って皆を安心させたいと言うので送別会は行わず、ちょっとしたお土産を渡すだけに留める事になった。

 

「お土産もたくさん貰ったし、これ以上は申し訳ないよ」

 

「難波とかパンドラボックスとか何かとそっちは物騒みたいだけど、あっちの俺達にもよろしく言っといてくれ」

 

「カズミン、あっちのお姉ちゃんをよろしく」

 

「ああ、必ず!」

 

いつの間にか仲良くなった一夏と簪と握手を交わす一海。

 

「巧さん、またお互いの作品見せ合おう」

 

「ああ!是非ともまたやろう、カロリナちゃん」

 

一方の葛城も技術者の卵であるカロリナとも交流を深めていたようだ。

 

「そんじゃ、ゲートを開くぞ?」

 

「ああ」

 

「お願いするよ、雪兎君」

 

別れの挨拶を終えた二人を連れ、雪兎は再び一海達の世界へと跳ぶ。

 

「ほい、到着」

 

「・・・・本当に一瞬だな」

 

「改めて世界間の技術差の違いを感じるよ」

 

難波重工が必死になってワームホールを開いたのに対し、雪兎のクロスゲートは本当にレベルが違い過ぎた。

 

「それ、お出迎えがきたぞ?」

 

すると、一海達の反応を察知してこちらの皆が駆け寄ってくる。それを見て一安心すると、雪兎は再びクロスゲートを起動する。

 

「もう帰るのか?」

 

「生憎こっちにはまだやる事が山積みでな」

 

「そうか、わざわざ送迎してくれてありがとう、雪兎君」

 

「では、また道が交わる事があれば」

 

そう言って雪兎はクロスゲートをくぐり帰っていった。

 

「また道が交わる事があれば、か・・・・」

 

「きっとまた会えるさ」

 

ふと二人が見上げた空には白い兎のような形の雲が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一海達を送り届けた後、雪兎は一人でとある場所を訪れていた。

 

「よっ、待たせたな」

 

「いや、問題は無い」

 

そこにいたのは氷室幻徳とその仲間のこちらに来ていたクロコダイル隊の面々だった。

 

「ブロス隊だっけか?アイツらもコンテナに箱詰めにして送り返してたもんでな」

 

そう、行方がわからなくなっていたハードスマッシュ達は雪兎達に捕らわれゲートが使えるようになるまで監禁されていたのだ。まあ、ブロス隊はともかく、クロコダイル隊は幻徳の要請で幻徳預りになっていたが。

 

「さて、お前らも怪しまれないよう箱詰めされてもらうぞ?」

 

「うっ、確かに怪しまれない為には必要な処置なのだろうが・・・・」

 

「諦めろ、ブロス隊のように今日までミノムシにされなかっただけ我らの方が扱いがマシだ」

 

「確かに・・・・」

 

「すまないな、こちらに非があるというのにこのような事まで」

 

「みなまで言うなよ。俺だってお前らから色々データ取らせて貰ったんだから」

 

そう、クロコダイル隊は一時開放される条件として、雪兎の実験の手伝いを色々してもらっていたのだ。

 

「向こうに戻ったら色々大変だとは思うが、上手くやれよ?」

 

「ふっ、誰にものを言っている」

 

幻徳と別れの言葉を交わしてからクロコダイル隊をコンテナ詰めにしてブロス隊と同じ座標へと転送する。

 

「じゃあな、幻徳」

 

「ではな、雪兎」

 

それとは別に幻徳をあちらの世界に帰し、漸く一連の事件は幕を閉じた。

 

 

ライダー達との物語はこれにて閉幕・・・・これから先は彼らの物語、それを語るのはまた道が交わった時としよう。




という訳でIGコラボ編はこれにて閉幕です。
何とか年内に終わる事が出来ました。
これからも眠らない聖剣さんのINFINITE・GREASEの方もよろしくお願いします。

次回の兎協奏曲はいつものメンバーが学園を飛び出して色々するようですよ?(次回予告は次回から)


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154話 雪舞う町を訪ねて 兎一味、旅行する

コラボも終わりましたのでちょっと戦闘はお休みし、旅行編です。
行き先は兎一味が一人・聖の故郷となります。

その聖の故郷が何処であるかは本編でのお楽しみに・・・・多分、一部の方は色々と察してくださるかと。


『雪兎くん、僕は君に多くを教えてくれた。大切な思いを、覚悟を忘れない事を学べた。

 

もしかしたら、この先争いが起きて、誰かが悲しむ出来事が起きるかもしれない。

 

だが決して忘れないでほしい。皆が愛と平和を胸に生きていける世界を創るのは、僕達なんだと・・・・ありがとね、雪兎くん。また会おう。

 

 

明日を 創る(ビルドする)科学者、葛城巧より』

 

葛城が残していったメッセージをシャルロットとイヤホンを片方ずつ着けて聞きながら、雪兎は電車に揺られていた。一緒にいるのはいつもの特訓メンバー+α・・・・俗に言う兎一味である。

 

「へぇ~、葛城さんがこんなメッセージを・・・・」

 

「あの人らしいっちゃらしいけどな」

 

さて、何故雪兎達兎一味が電車に乗っているのかというと、数日前まで時間を遡る・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旅行?」

 

一海達との邂逅から2・3日が経ったある日、「皆で旅行に行かない?」と聖がそんな提案をしてきたのだ。

 

「うん、旅行と言っても私の故郷に皆を招待しようかなぁ、ってだけなんだけどね」

 

「聖の故郷というと、北の田舎町だって言ってたな?」

 

冬休みは両親も不在だったとかで里帰りを延期した聖だったが、今回はそうもいかなかったらしい。

 

夜間瀬(よませ)って言うんだけど」

 

「・・・・夜間瀬?」

 

その名前に雪兎は聞き覚えがあった。

 

「聖、つかぬことを聞くが・・・・こはるびより、という店を知ってるか?」

 

「あれ?雪兎さんもあのお店知ってるんですか?」

 

「・・・・OK、大体わかった」

 

この質問で雪兎は自分が知る「夜間瀬」が聖の故郷だとと確信した。

 

「こはるびよりとはどんな店なのだ?」

 

すると、ラウラが興味深そうに聖に訊ねる。

 

「和菓子のお店だよ。こはちゃ、友達の家でね、本当に美味しいんだよ」

 

「ほう!和菓子か」

 

和菓子と聞いて目を輝かせるラウラに対し、この時、雪兎は飲んでいたコーヒーを吹き出しかけていた。

 

(やっぱり出てくんのかよ、あの人ら(・・・・))

 

こはるびよりの段階で覚悟はしていたが、もろにその関係者とは思っていなかった雪兎にとっては完全な不意打ちだったのだ。

 

(この分だと他にも別の作品が混ざっててもおかしくないな・・・・てか、プロジェクトに参加してる企業にそれっぽい名前あったが、あれも限りなく俺の知ってるそれに近い可能性もあんのかよ)

 

まさかこんな事でこの世界が純粋なISの世界ではなく、色々な世界の複合世界だと知るとは雪兎も思っても見なかった。

 

「それでね、せっかくだし里帰りも兼ねて皆で旅行しない?って事なの」

 

「いいな、それ」

 

「先日も色々あったしな、ここらで息抜きしてもバチは当たるまい」

 

聖の誘いに一夏達は乗り気のようだ。他の面々も乗り気である。

 

「雪兎さん達はどうします?」

 

「・・・・ここで乗らなかったら空気読めねぇやつじゃねぇか」

 

「「「「やった!」」」」

 

実質選択肢等あって無いようなものであったが、雪兎がそう答えると皆から歓声が上がった。

 

「どうせなら弾達も誘ってやるか」

 

「となればお姉ちゃん達にも声かけなきゃね」

 

「・・・・となると、旅館はあそこかな?」

 

そんなこんなあって気付けばかなり大所帯での旅行になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。千冬達教員は入試の関係で忙しいとの事で、今回は総勢29名の生徒達だけの旅行となったが、雪兎や虚、カテリナがいれば大丈夫だろうと許可はあっさりと降りた。フライング・ラビットではなく電車で移動しているのは「旅行なのだからその旅路も楽しんでこそだろ?」と雪兎が言ったからである。

 

「へぇ、スキー場もあるんだ」

 

「あの辺は雪が結構残るから今もやってるんじゃないか?」

 

「なら皆で行きたいね」

 

事前に聖が用意していた旅のしおりやパンフレットを見てウキウキしているシャルロットとそれを微笑ましく見ている雪兎。

 

「芙蓉亭っていう洋菓子店もあるのか」

 

「あそこのケーキも絶品だよ」

 

「お姉ちゃん、行ってみる?」

 

「是非とも!」

 

聖のオススメ店から芙蓉亭を見つけるラウラと我が事のように言う聖。アレシアも興味があるようで、カテリナを誘っていた。

 

「高社神社か」

 

「結構歴史のある神社みたいだな」

 

「そのようだ」

 

「行ってみましょうよ、一夏」

 

「鈴さん、抜け駆けは許しませんわよ!」

 

神社の娘として高社神社に興味を持つ箒と一夏を中心としたいつもの面々。他にも皆思い思いに夜間瀬を観光しようと話している。

 

「とりあえず、今日は旅館で休んで、明日はグループ行動にするか」

 

「ですね。とりあえず行き先だけ聞いておけば夜間瀬は私がよく知ってますので」

 

「・・・・ところで聖」

 

「はい」

 

「もしかして宿泊先の旅館って縁嬉(えんぎ)か?」

 

「そうですけど・・・・雪兎さん、もしかして夜間瀬って」

 

「前世でISとは別の作品だが舞台になったゲームがあってな」

 

「そういう事でしたか・・・・という事はこはちゃん達も?」

 

「全く同一人物かは判らんが、限りなくそのゲームの登場人物に近いだろうな」

 

そう、雪兎もそのゲームをプレイした経験があった。友人に勧められて購入してみたゲームだったが中々に面白かった為にファンディスクや続編まで購入してしまった程である。

 

「ところで、どんなゲームだったんですか?」

 

「・・・・れ、恋愛系かな?」

 

「雪兎さんもそういうゲームやるんですね?」

 

「前世だと全く女っ気なかったんだよ」

 

なんでも、前世ではあまりそういう縁がなかったとの事。

 

「ふ~ん」

 

それを聞いてシャルロットが不機嫌そうな顔をする。どうやら恋愛ゲームと聞いて、そのヒロインと遭遇したら鼻を伸ばすのではないか?と疑っているようだ。

 

「いや、それは昔の話だからな!?今更シャル以外にデレデレするかっての!」

 

「・・・・ほんとに?」

 

「何でそんなに疑うのさ!?」

 

「・・・・だって雪兎、手出してくれないし」

 

「それはちゃんと理由説明したよな!?」

 

「相変わらず仲がいいよね、あの二人」

 

「というか、雪兎はまだ手出してなかったのか」

 

雪兎は意外にもそういうところはきっちりしており、「そういうのはちゃんと責任持てる年齢になってから」とシャルロットに言い聞かせているらしい。

 

「僕はもう大丈夫だって言ってるのに・・・・」

 

「アルベールさんにもこの前『孫はいつくらいに見られるんだい?』って急かされたし、この世界はちょっとそういうの緩すぎないか?」

 

「ははは、雪兎、ドンマイ」

 

「他人事と思いやがって・・・・」

 

そうこうしているうちに電車は夜間瀬駅へと到着する。

 

「着いたか」

 

すると、聖は先に駅のホームに立ち、雪兎達にこう告げた。

 

「ようこそ夜間瀬へ!」




という訳で、兎一味は夜間瀬に旅行に行きました。
次回からはあちらのキャラもちらほら登場する予定です。

次回予告

夜間瀬へと旅行にやってきた兎一味。到着したばかりという事でその日は旅館でゆっくりする事になったのだが・・・・


次回

『雪と兎と温泉旅館 兎、遭遇する』


あと、年内の更新はこれが最後になると思います。年始はこれとは別に短編を1つ書きたいなと思っています。それでは皆様、よいお年を・・・・


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155話 雪と兎と温泉旅館 兎、遭遇する

新年明けましておめでとうございます。(遅い気もしますが・・・・)
今年も兎協奏曲をよろしくお願いいたします。





夜間瀬町。東京に比べると雪の多いぐらいの田舎町でしかないこの町はその日軽いパニックに陥っていた。何故ならば半数以上が外国籍(しかも国はバラバラ)の集団が突然来訪したからだ。更に言えば、その集団は最近有名になりつつある兎一味なのだ。

 

「結構騒ぎになってるね」

 

「まあ、過半数が元々代表候補生でそれなりに知名度はあったのに、俺を筆頭に今年は色々やらかしたからなぁ」

 

「・・・・一応、やらかしてる自覚はあったのね、あんた」

 

鈴のジト目を軽く流しつつも、一行は本日の宿である縁嬉へと到着し、聖を先頭に雪兎達兎一味は縁嬉へと足を踏み入れた。

 

「こんにちは~、予約していた宮本ですが」

 

「いらっしゃいませ~、あっ!宮本先輩!」

 

(やっぱり知り合いかよ!)

 

一行を出迎えてくれたのは車イスの少女・沓野奏(くつのかなで)。この縁嬉を営む祖父母の元に湯治を兼ねて長期滞在している少女だ。そして、雪兎は半ば予想していた事が的中し、額に手を当てやれやれとため息をついた。

 

「あっ、この娘は沓野奏ちゃんといいまして、この縁嬉のおじいちゃんとおばあちゃんのところに湯治に来てる娘なの」

 

「く、沓野奏と申します!どうぞよろしくお願いします!」

 

聖の紹介で少し緊張した様子で話す奏。無理も無い、まさかかつての先輩が連れてきたクラスメイトが超が付く有名人集団だったのだから。

 

「そんなかしこまらんでもいいぞ、年の1つか2つしか変わらねぇし」

 

「そうですか?・・・・あれ?私、自分の年言いましたっけ?」

 

「外見と聖を先輩って呼んでたからそこからの逆算さ」

 

「そうでしたか!」

 

奏とのやり取りでうっかりボロを出し掛けた雪兎だが、咄嗟に言い訳を思いつき、何とかその場しのぐ・・・・もっとも、シャルロットを筆頭に気付いているのも数名いたのだが。

 

「それではお部屋に案内しますね」

 

その後、自己紹介を終えた一行は数名ずつ部屋へと案内されていく。部屋割りはこうだ。

 

①雪兎、一夏、弾、数馬、紫音

②シャルロット、マドカ、蘭、クロエ

③箒、簪、本音、カロリナ

④セシリア、エリカ、アレシア、ロラン

⑤鈴、聖、ラウラ、晶

⑥楯無、虚、忍、カテリナ

⑦ディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリ

 

雪兎とシャルロットを同室にしようという案もあったが、「そういうのは二人っきりの時で十分だ」と雪兎が却下したそうな。

 

「本当に彼女と一緒じゃなくて良かったのか?」

 

「普段から同室なんだ。こういう時くらい離れてもいいだろ?」

 

「でもあの娘、すげーむくれてたぞ?」

 

「・・・・正直に言うと、今のシャルと二人っきりが怖い」

 

「あっ、そういうことか」

 

学園の外であるこの旅館で二人っきりという状況と到着前のシャルロットの態度から危険だと雪兎の直感が告げているらしい。

 

「それに俺だって久しぶりに男子とワイワイ騒ぎたいんだよ」

 

「あー、それわかる!」

 

「そうゆうもんか」

 

「そうゆうもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、部屋に荷物を置いた後、夕食までの空き時間に女性陣は縁嬉にある温泉に入る事にし、男性陣は少し町を散策する事にした。

 

「ほんと、如何にも温泉街って感じだな」

 

「まあな、確かこの辺には縁嬉以外にもいくつか温泉宿があるって話だし」

 

「ねぇ、雪兎兄、あそこにあるお店って」

 

そんな話をしながら通りを歩いていると、紫音がある店を見つける。そこには『こはるびより』という看板があった。

 

「ここって、雪兎が前に話してた和菓子屋だっけ?」

 

「ああ、そういやこの通りだったな、この店あるのは」

 

雪兎もゲームの知識しかなかった為、この店の正確な位置は把握していなかったようだ。

 

「確か、縁嬉のお茶請けの菓子もここの和菓子だったはずだが」

 

「包装に書いてありましたね、こはるびより、って」

 

「よく見てんなぁ」

 

「今は夕食前だし、寄るのはまた今度でいいだろ」

 

「それにそろそろいい時間だしな」

 

という訳で縁嬉へと戻ろうと通りを引き返していると、前方に緑の着物のような服装で何やら大きな荷物を抱えた少女を見つけた。

 

「・・・・噂をすればなんとやらってか、どういうエンカウント率だよ」

 

その少女に見覚えがあった雪兎がそう呟くと、着物の少女は未だに残る雪に足を捕られて転びそうになる。

 

「あわわわ!?」

 

「ったく!」

 

それを黙って見ている事が出来なかった雪兎はすぐに少女に追い付くと、少女を片腕で支えてもう片腕で落としそうになっていた荷物を掴んだ。

 

「無事か?」

 

「は、はい・・・・あ、ありがとう、ございます」

 

突然の事に驚く少女だったが、すぐに雪兎から離れると頭を下げてお礼を告げる。

 

「おーい雪兎!そこの娘も大丈夫か?」

 

「ああ、間一髪だったがな」

 

「は、はい。私も大丈夫です」

 

そこに一夏達も追い付き、一夏が少女の安否を確認すると、少女は改めて雪兎に礼を告げる。

 

「危ないところを助けていただきありがとうございました」

 

「・・・・見過ごせなかっただけだ」

 

「ふふ、良い人なんですね」

 

雪兎が素っ気なくそう返すと、少女は何かを思い出すかのように優しくそう笑う。

 

「ところでそんな大きな荷物を持って何処へ行くつもりだったんだ?」

 

「あっ!?そうでした!私、配達の途中なんでした!」

 

「配達?」

 

「はい、私の家はこはるびよりって和菓子屋さんで、その和菓子を配達していたんです」

 

(やっぱりこの娘、『星川こはる』だったか)

 

そう、その少女は奏と同様、雪兎が知るゲームの登場人物の一人である星川(ほしかわ)こはるだったのだ。

 

「そんな大きな荷物を?この先なんだったら俺達が持つぜ?」

 

「そんな、悪いですよ」

 

「俺達、この先の縁嬉って旅館に泊まってんだ。だからついでにだよ、ついで」

 

「えっ?縁嬉にですか?偶然ですね、私、その縁嬉に配達するところだったんです!」

 

そして、数馬がそう提案すると、こはるから行き先が同じだった事が告げられた。

 

「まあ、その物量からしてそんな気はしてたが・・・・ドンピシャかよ」

 

「どんな確率だよ」と雪兎が思っているうちに、行き先も同じだからと、こはるも一緒に縁嬉に向かう事となった。

 

「へぇ~、じゃあ、紫音君以外は皆同い年なんですね・・・・それに一夏君と雪兎君はあのIS学園の・・・・あれ?私、もしかして物凄い有名人と一緒にいるんじゃ?」

 

「あははは・・・・今はオフの旅行中だし、普通に接してくれるとありがたいかな?」

 

「あー、なんとなくわかります。私の先輩にも同じような悩みを抱えてた先輩がいましたから」

 

そんな事を話していると、あっという間に縁嬉に到着する。

 

「荷物を持ってもらってありがとうございました。お土産を買う際には是非ともこはるびよりをよろしくお願いしますね?」

 

「店のアピールも忘れないとは・・・・まあ、土産を買う際には寄らせてもらうよ」

 

すると、

 

「あれ?こはちゃんに雪兎さん達?」

 

たまたまエントランスに出ていた聖と遭遇した。

 

「聖ちゃん!久しぶり!」

 

「うん、久しぶり・・・・で、何で皆が一緒に?」

 

「あはは、実は配達中に転びそうになったところを雪兎君達に助けて貰いまして・・・・」

 

「あ~、こはちゃんらしいというか、何と言うか・・・・」

 

その後、他のメンバーも合流し、すっかり仲良くなった一行は滞在中のどこかでこはるびよりに立ち寄る約束をしてこはると別れるのであった。




という訳で、今回は奏とこはるに出演していただきました。
次回は別の二人が登場予定です。


次回予告

一晩明けていくつかのグループに分かれて夜間瀬を観光する事になった兎一味。そんな中、神社を訪れた一夏達はそこでとある少女と出会う。


次回

「巫女姫と旦那様 兎、危険を感じる」


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156話 巫女姫と旦那様 兎、危険を感じる

今回は色々とネタな回になりそうです。
まあ、このシナリオの元ネタを知る方からすればタイトルである程度お察しかと思いますが・・・・彼女と箒達の接触、これがこのシナリオで一番やりたかった事です。


旅行2日目。特に大きな問題もなく、その日はいくつかのグループに分かれて夜間瀬を観光する事になったのだが、その前に皆で高社神社へ参拝する事となった。

 

「高社神社・・・・何故だろう、嫌な予感がしてならないんだが」

 

「ただの神社なんだろ?そこまで気にする必要も無いさ」

 

「・・・・だよな」

 

雪兎の知る限り、高社神社に神様が出ただの、不可思議現象が起きただのという話は無いはずだ。なので一夏の言う通り気にし過ぎだと雪兎は気を持ち直す。しかし、雪兎は失念していた・・・・今が時期的に1作目と2作目の間に該当するという事は、1作目の主人公・須賀川勇希(すががわゆうき)※1が既にどのヒロインかと付き合っているという事を※2。

(※1 デフォルト、変更可なのでこの世界の彼がこの名前かは不明)

(※2 昨日の様子から星川こはるではないと確定しているので残り二人のどちらか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一行が高社神社に到着すると、一人の巫女服姿の少女が楽しげに境内を掃除していた。

 

「あっ!紗雪先輩!」

 

だが、聖が声を掛けるとその手を止めて聖へ微笑みかけた。

 

「あら、聖さん、お久しぶりです」

 

「おいおい、巫女姫さんまで知り合いかよ!?」

 

その巫女服の少女の正体はヒロインの一人である高社紗雪(たかやしろさゆき)。名前から判るようにこの神社の娘で、地元では『巫女姫』と呼ばれている。

 

「聖ちゃんは妹の雪静(ゆずか)のお友達なんですよ・・・・貴方は聖ちゃんの新しいお友達ですか?」

 

「あっ、申し遅れました。自分は天野雪兎、聖のクラスメイトです」

 

「あら、そうでしたか・・・・あれ?あいえす学園は女性の学校だと聞いていましたが?」

 

「例外の男性適性者が二人いたんだよ。だろ?天野雪兎君」

 

そう紗雪が小首を傾げると、社務所の方から一人の男性が現れ紗雪の疑問に答え、雪兎に声掛けた。そして、雪兎はその男性を見て固まった。その理由は・・・・

 

「旦那様!」

 

「「「「えっ!?旦那様!?」」」」

 

(紗雪ルートかよ!?)

 

そう、紗雪が旦那様と呼ぶその男性こそ1作目の主人公・須賀川勇希その人だったのだ。

 

「あの、紗雪先輩がお付き合いを通り越して旦那様って・・・・」

 

「ははは、それにはまあ色々あってね」

 

その後、改めて自己紹介した面々(やはり名前は須賀川勇希であった)は、主に女性陣(特に箒達一夏狙いの者達)が二人の馴れ初めについて色々と質問をし始めた。

 

「何かすみません、勇希さん」

 

「あはは、婚約した当初は俺の周りもこんなだったよ」

 

一つしか歳が変わらないのに、勇希の対応は慣れたものである。だが、話を聞いているうちにどんどん箒達の様子が暗いものになりだした。

 

「・・・・負けた」

 

「・・・・こ、これが本物のヒロイン」

 

「・・・・正に大和撫子ですわ」

 

「・・・・」

 

そう、日頃から何かと手が出がちだった箒達は大和撫子を絵に描いたような紗雪のあまりの女子(ヒロイン)力に打ちひしがれてしまったのだ。特に同じ神社の娘たる箒には特攻ダメージだったらしく、既に真っ白になっている始末だ。

 

「死屍累々だな、これ・・・・」

 

「まあ、自分達から聞いたんだから自業自得といいますか」

 

それを他人事のように見ていた雪兎だが、次の瞬間には青ざめる事となる。

 

「こ、婚約って事は、その・・・・キスの先までしたんですか?」

 

それは紗雪同様に雪兎と婚約に近い状態にあるシャルロットの質問である。その答えを知る雪兎は旅館での嫌な予感の原因が何だったのかを察する。

 

「それは・・・・その・・・・」

 

質問された紗雪も恥ずかしさから流石に口にはしないものの、顔を真っ赤にして照れている様子から答えは明白である。シャルロットが笑顔で雪兎を振り返り、つられて一行が雪兎を見ると・・・・雪兎は幼馴染の一夏達すら見たこともない滝のような冷や汗を流し思わず後退る。

 

「だって、雪兎♪」

 

「・・・・疾風ダッシュ!」

 

「逃がさないよ!」

 

雪兎はかつてない速度で高社神社から逃げ出した。しかし、シャルロットも雪兎達の早朝特訓で鍛えた脚力を活かして雪兎を追って行き、それを「面白そう!」とレヴィも追いかけていった。

 

「・・・・大丈夫かな?雪兎兄」

 

「シャルロット、恐ろしい娘」

 

雪兎の事になると恐ろしいアグレッシブさを見せるシャルロットに戦慄する一行だが、「雪兎なら大丈夫だろう」と勇希や紗雪と別れてそれぞれのグループで観光を始める事にした。尚、箒が立ち直るまで一夏のグループだけは高社神社に残り続けたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!あんなところに伏兵(紗雪と勇希)がいたとは!」

 

念の為にと登山等の滑り止め完備のブーツで夜間瀬を疾走する雪兎。今のシャルロットに捕まるとどうなるか分からない為、正真正銘の全力疾走だ。

 

「ゆぅ~きぃ~とぉ~!!」

 

対するシャルロットは精々市販の滑り止め程度の靴なのに滑る事なく雪兎を追走している。尚、レヴィは逆に滑りながら二人を追っている。こうして、雪兎の平穏な旅行のかかった逃走劇が幕を開けた。

 

「今回ばかしは何が何でも負けられねぇ!」

 

何とかしてシャルロットを撒こうと、雪兎は某逃走劇番組の様に角を利用してシャルロットの視界から逃れようとするが、曲がった先にいたオッドアイの女性とぶつかりそうになってしまう。

 

「えっ!?」

 

「やべっ!?」

 

だが、履いていたブーツのおかげでブレーキが間に合い、正面衝突を回避する。

 

「あ、危ないじゃない!」

 

「す、すみません!?少し急いでるものでっ!」

 

手短に謝罪をすると、雪兎は再び走り出し去っていく。するとそれほど間を空けずシャルロットもその女性の横を通り抜けていった。

 

「・・・・一体何だったのかしら?」

 

残された女性こと、1作目の最後のヒロイン・上林聖(かんばやしみずき)は首を傾げるのであった。

 

「う~ん、二人共速すぎるよぉ~!見失っちゃったじゃないか!」

 

そんな聖の前に次はレヴィがやって来る。

 

「というか、ここ、どこ?」

 

完全に雪兎とシャルロットに撒かれて見失ってしまったようだ。

 

「あら?この辺りでは見ない顔の娘だけど、迷子?」

 

「うん、そうみたい」

 

「素直でよろしい。どこか分かる場所の名前は?」

 

「エンギって旅館とこはるびより!」

 

「あらあら、なら案内してあげるわ。お姉さんも丁度こはるびよりに行くところだったのよ」

 

そんなこんなでレヴィは聖に助けられ、こはるびよりにてディアーチェ達と無事に合流する事が出来たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、雪兎は一先ずシャルロットを撒く事に成功し、一息ついていた。

 

「・・・・今日もエンカウント率やべぇな、これは」

 

紗雪、勇希に続いて聖ともエンカウントした事で雪兎は「この旅行中にこの時期に夜間瀬にいる主要キャラと全員接触するのでは?」と疑い始めていた。そんな時だった。

 

「最悪だ・・・・何でこう簡単にはぐれるのかねぇ、あの筋肉馬鹿は」

 

「戦兎、ポテトもいない」

 

「アイツは方向音痴でしょうが・・・・」

 

どこかで見たようなトレンチコートの男性と革ジャンの男性が誰かを探しているようだった。

 

「・・・・似てる」

 

トレンチコートの男性は葛城巧に似ているが、革ジャンの男性の言葉から戦兎という別人のようだ。

 

「もしかしたらこの世界の巧さんに相当する人なのか?」

 

雪兎がそんな事を考えていると、その二人が雪兎に近付いてきた。

 

「ちょっと君!」

 

「お、俺ですか?」

 

「ああ、この辺りで如何にも頭の悪そうなエビフライのような編み込みをしたやつと、モッズコートを着たドルオタみたいなやつを見なかったか?」

 

「(龍我と一海だろ、そいつら・・・・)い、いえ、俺は見てないですね」

 

「そっか・・・・幻さん、あっちの方を見に行ってみよう!」

 

戦兎のその言葉に幻さんと呼ばれた男性は革ジャンの下に着た「急ぐぞ!」と書かれたTシャツを見せて頷くとあっという間に去っていった。

 

「・・・・なるほど、あれは幻徳ポジか」

 

「あっ!見つけたよ雪兎!」

 

「やばっ!?」

 

Tシャツでの会話で彼が幻徳に相当する人物だと察したところで、雪兎も追っ手(シャルロット)に見つかりその場を走り去っていく。そして、問題の龍我と一海に相当する人物達はというと・・・・

 

「戦兎ぉ~、何処にいっちまったんだよぉ~」

 

「きっと戦兎達はこっちだ!」

 

「そっちはさっき俺達が来た道だってのぉ!方向音痴なんだから大人しくしやがれ!このドルオタ!」

 

「何だ?やんのかエビフライ!その頭にソースぶっかけんぞ、コラァ!」

 

迷子になっているというのに喧嘩を始めていた。その後、たまたまそこを通り掛かったレヴィと聖に助けられ、無事に戦兎達と合流出来たそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ・・・・こんなに、全力で、走ったの、いつ振りだよ、全く・・・・」

 

何とか再びシャルロットを撒いた雪兎だったが、シャルロットの猛追跡に流石の雪兎も疲労を隠せない。

 

「ってか、ここ、何処だよ・・・・」

 

そして、逃げるのに必死過ぎて雪兎も現在地が何処か分からなくなっていた。

 

「えっと、何か目印になるもんは・・・・ん?」

 

そこで雪兎が見つけたのは「山ノ内荘」という看板だった。

 

「・・・・何で俺、彼女に追われながら聖地巡礼(作品の名所巡り)してんの?」

 

そう、この山ノ内荘は勇希や聖が下宿している場所なのだ。

 

「まあ、ここが山ノ内荘なら道は大体判ったようなもんだがーー」

 

その時、雪兎は一人のお婆さんが荷物を持って歩いているのを見かけた。

 

「大丈夫か?お婆さん」

 

「おや、この辺では見ない顔だね?観光かい?」

 

「ええ、そんなところです。ところでその荷物は?」

 

「これかい?これはウチの孫の忘れ物でね。お爺さんがぎっくり腰で動けないから私が届けてやろうと思ってね」

 

「へぇ、何処まで?」

 

「高社神社は分かるかい?孫は今そこの手伝いをしててね」

 

「・・・・お婆さん、そのお孫さんの名前、勇希だったりしません?」

 

「おやまあ!孫を知っているのかい?」

 

「ええ、丁度今朝知り合いまして・・・・」

 

その後、雪兎はお婆さんの荷物を持って高社神社まで同行し、無事に勇希に忘れ物を届ける事が出来た。

 

「ありがとうね、お兄さん」

 

「俺からも礼を言うよ」

 

「たまたま通り掛かっただけですよ」

 

ここで終われば良い話で済んだのだが、そうは問屋が卸さなかった。二人と別れ再び逃走を開始しようとした雪兎の肩をガッシリと掴む手があったからだ。

 

「やっと捕まえたよ?雪兎」

 

「い、いつの間に追い付いたんだ、シャル・・・・」

 

そう、その手の持ち主はシャルロットさんである。

 

「ちょっと待て、話せば判る!ってか、勇希さん!?何合掌してんですか!?グルか!グルなんだな!?」

 

どうやら勇希から(ひじり)経由でシャルロットに情報がリークされていたらしい。

 

「さあ、雪兎・・・・二人で色々と話し合おっか?」

 

その日、縁嬉の部屋が新しく一部屋埋まった。




という訳で、箒達ヒロインズの完全敗北と、雪兎がシャルロットに捕まるお話でした。
今回登場したヒロインは紗雪と(みずき)でした。
箒達の完全敗北の為にこの世界では紗雪ルートとなりました。おかげでもう一人敗者が増えましたが・・・・
他にも様々な人物が登場しましたが、今後登場するかは未定ですw


次回予告

旅行3日目は雪兎もようやく普通の観光が・・・・


次回

「和菓子VS洋菓子 兎、巻き込まれる」


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157話 和菓子VS洋菓子 兎、巻き込まれる

旅行編はあと2、3話で終わる予定です。
そしたら後は少し1話完結の話を少しして兎協奏曲の一年目を終了したいと思います。
その後は年始に書き始めた短編や新規の作品を少しやってから別タイトルで兎協奏曲二年目を始めようと思っています。

それはさておき、今回は時期的に夜間瀬にいるだろう残りのヒロイン達が登場する予定です。
他にもサブキャラが数名、タイトルで大体予想出来るとは思いますが・・・・


「・・・・この、薄情者共、め・・・・」

 

翌朝、上機嫌なシャルロットとは正反対にげっそりとし、一夏達を怨めしい顔で現れた雪兎に一行は昨夜に何があったのかを察する。しかし、一夏達も観光ついでに雪兎の位置情報をシャルロットに伝えていたので雪兎からすれば売られたようなものと思っても無理は無い。

 

「いや、すまん・・・・こっちもこっちで大変で」

 

「けっ!優柔不断のハーレム野郎が」

 

「うぐっ」

 

「お、落ち着きたまえよ、雪兎」

 

「お前は黙ってろ、塚ヤロウ」

 

「はい・・・・」

 

「雪兎がやさぐれた!?」

 

思った以上に雪兎の精神的ダメージは大きかったようで、一夏達に発する言葉には強烈な棘が含まれていた。そこで数馬が無理矢理話題を変えようとする。

 

「き、今日はこはるびよりに寄るんだったよな!?」

 

「・・・・らしいな、俺とシャルがいないうちに決めやがって」

 

「頼むから機嫌直してくれよ、雪兎!」

 

「ふん」

 

「やべぇ・・・・ガチで怒ってやがる」

 

「まあ、私達もデリケートな問題に面白半分で首突っ込んだものね」

 

「だから止めようって言ったのに」

 

まさか雪兎がここまで怒るとは思っていなかった一夏達はどうしたものかと途方に暮れる。そこで手を挙げたのはシュテルだった。

 

「では、もう一つの菓子店・芙蓉亭に向かう組とこはるびよりに寄る組に分かれてみてはどうでしょう?」

 

全員一度ではこはるびよりは手狭では?という事から今回の騒ぎに関与した面々とそれ以外で分かれてはどうかという提案だ。

 

「・・・・なら俺は芙蓉亭に行く」

 

その提案に雪兎が折れ、一行は二手に分かれて午前と午後で入れ替わる形で行動する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芙蓉亭。夜間瀬でこはるびよりと人気を二分する洋菓子の老舗で、夜間瀬でケーキといえば芙蓉亭というぐらい有名なんだとか。こちらにやってきたのは雪兎、シャルロット、簪、本音、エリカ、アレシア、カロリナ、カテリナ、マドカ、蘭、マテリアルズ、紫音のメンバーである。

 

「・・・・で、何とかならんのか、アレは」

 

ディアーチェの言うアレとは、不機嫌オーラ全開の雪兎と、その雪兎と腕を(無理矢理)組んで幸せオーラ全開のシャルロットの事だ。

 

「まるで氷河期と春が同時に来たような居心地の悪さね」

 

「あまあま、あそこまで不機嫌なの初めてだよね?」

 

大抵雪兎が不機嫌になっても一過性というかすぐにやり返して発散していたのだが、今回に至ってはそれが出来ずにやさぐれてしまった訳だ。

 

「ふへへ~♪」

 

そして、シャルロットは不安だった点が解消されたせいか幸せそうに雪兎に甘えており、雪兎もシャルロットに当たるつもりは無いようで、させたいままにしている。

 

「とりあえずお土産のケーキを確保しましょう」

 

という事で仕方なく雪兎達の問題は先送りにしてケーキを物色していると・・・・

 

「・・・・ん?あれは確か」

 

店内で雪兎がとある人物を発見する。その人物とは先日遭遇した高社紗雪の妹である高社雪静だった。

 

「・・・・あっ、昨日の」

 

あちらも雪兎達に気付いたようだ。するとシュテルが雪静に話し掛ける。

 

「ユズカでしたか、どうしてここに?」

 

どうやら雪兎とシャルロットがいなくなった後に読書が趣味という者同士意気投合したらしい。

 

「お姉ちゃん達と食べようと思ってケーキを買いに来たの」

 

「そうでしたか」

 

「それで、そっちの二人が?」

 

「ええ、私のマスターである雪兎とその婚約者のシャルロットです」

 

本来ならば雪静は人見知りが激しい性格なのだが、シュテルは普通に話している。余程本の趣味が合ったのだろう。そうこうしていると、店の奥から同年代と思われる男性が現れ、ショーケースにケーキを並べ始めた。

 

「そっか、もうすぐ帰っちゃうんだね」

 

「ええ、でも必ずまたここに来ますから」

 

「この後はどうするの?」

 

「この後は昼食を取ってこはるびよりに寄る予定です」

 

「こはる、びより、だと?」

 

すると、ケーキを並べていた男性の手が止まる。

 

(あっ、こいつもしかして幕岩か)

 

幕岩とは二作目に登場した主人公のクラスメイトの一人で、この芙蓉亭の息子なのだ。そのせいか、こはるびよりに対抗心を持っているキャラだったと雪兎は記憶している。

 

「店員さん、ちょっといいか?」

 

なので雪兎は幕岩が暴走する前に彼に声を掛けた。

 

「あっ、はい。何でしょう?」

 

「そこのショートケーキとチーズケーキ、レアチーズにガトーショコラにそこのとあれも・・・・各20くれ」

 

「に、20!?」

 

雪兎の大量注文に驚く幕岩。まあ、一度に20も注文する客は普通いないだろう。しかも、合計ではなく、各種ケーキを20ずつだ。

 

「心配しなくてもちゃんと持って帰れるから安心しろ」

 

「は、はぁ、分かりました」

 

その後、支払いはカード一括払い、更に大量のケーキを一瞬でstorageに収納して芙蓉亭の面々を驚愕させた。

 

「あっ、ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件は雪兎達がこはるびよりに向かう前に昼食を取っていた時に起こった。簪の端末に楯無から連絡があり、何やら芙蓉亭で問題が発生したらしい。

 

「どうしてそんな事に?」

 

『それが、お店でこはるびよりの話をしたら店員さんが・・・・』

 

「・・・・やりやがったか」

 

どうやら一夏達も幕岩の前でこはるびよりの話題を口にしてしまったらしい。地元出身の聖がいても止められなかった事から余程こはるびよりと比較されるのが嫌らしい。そして、幕岩は一夏達に凄い剣幕で洋菓子について語り出し、止まらなくなったとのこと。

 

「どうするの?」

 

「聖がいて止まらんとなれば俺が行っても無駄だろ・・・・予定通りこはるびよりに行くぞ」

 

だが、雪兎はあっさり一夏達を見捨ててこはるびよりに向かう事を決めた・・・・のだが。

 

「今日という今日ははっきりとさせようではないか!」

 

「ええ、挑むところです!」

 

雪兎達がこはるびよりに到着すると、何故か幕岩がおり、こはるとお菓子作り対決に発展していた。

 

「・・・・なんでさ」

 

「あはは、なんかごめんね?」

 

「ごめんなさい、雪兎さん」

 

また、雪兎と聖、そして偶然こはるびよりで出会した硯川(すずりかわ)ユーフラジー涙香(るいか)の三名がその審査員に抜擢されてしまった。

 

「というか、何故この面子なんだ?」

 

「涙香先輩は常連客、私は両親がそれぞれのお店で修行してた関係で、雪兎さんはお料理に厳しい方という事で」

 

「そういう事か・・・・ならば半端なものが出てこようものなら某毒舌絵本作家の如く扱き下ろしてくれる」

 

「うわぁ・・・・」

 

そんなこんなで始まったお菓子作り対決なのだが・・・・二人が作ったのはショートケーキと大福だった。

 

「なるほど、二人とも季節の果物を選んだのね」

 

涙香はただ美味しそうと、その2つを眺めるも、雪兎と聖の表情は何故か険しい。

 

「どうしたの?二人とも」

 

「ええっとですね、もうこの段階で私達二人の結論が出たといいますか」

 

「星川こはるの勝ちだな」

 

「な、何故だ!?食べてもいないのに何故そんな事が判る!?」

 

雪兎の予想外の宣言に幕岩が声を上げるが・・・・

 

「このショートケーキに使われた苺・・・・"完熟のやよいひめ"だろ?」

 

「あ、ああ!そうだ!それがなんだとーー」

 

「やよいひめは甘味が強く酸味が低い苺、完熟ともなれば当然そのその甘味や酸味の強弱も相応のものになるだろう」

 

「ですけど、ショートケーキに使う苺としてはダメですね」

 

「なっ!?」

 

「ショートケーキの苺はショートケーキ自体の甘さと苺の甘さでくどくならないように酸味の強い早摘みの苺を使うのが正しい。更に言うならば完熟の苺は痛み易いから持ち帰りには向かない・・・・つまり、幕岩。お前のこのショートケーキは苺選びの段階でアウトって訳だ」

 

「し、しまった!?」

 

幕岩はこはるへの対抗心から普段ならしないような致命的なミスをしていたのだ。

 

「い、苺一つでそんな事まで!?」

 

一方の涙香は苺一つでそこまで見抜いた二人に絶句する。

 

「はむ・・・・こはちゃんのいちご大福の苺は"紅ほっぺ"かな?」

 

「だな。いちご大福も苺が中で発酵(糖分を分解)して発生した炭酸ガスでピリピリまたはシュワシュワとして好みが分かれしまうからそれを避ける為に鮮度が良いものを使い、早めに食べてもらうのが好ましい。こはるのいちご大福はそれを見越して早摘みの鮮度が良いものを使っているな」

 

対してこはるのいちご大福は十分合格点らしい。

 

「・・・・ショートケーキの苺が何で酸っぱかったのかよくわかった」

 

「いちご大福のあのシュワシュワとした感じって発酵だったのね」

 

ギャラリーとなっていた一行も二人の解説になるほどと頷く。

 

「まあ、幕岩のショートケーキも不味い訳じゃない。ただ、評価するとなればああ言わざる得ない」

 

「まだまだ勉強が足りないという訳か・・・・すまない、菓子作りに私情を込めてしまった俺の不徳か」

 

「料理は総じて"誰かに食べてもらう事"を念頭に置かないといけないって事だ」

 

「私も偉そうな事言ったけど、負けてられないなぁ」

 

こうして唐突に始まった菓子作り対決は幕を閉じるのだった。




今回は雪静と涙香と幕岩の三人が登場しました。
ショートケーキといちご大福の苺に関してはあくまで一般論なのでこれが必ずしも正しい訳ではありません。なので好み次第だと思います。


次回予告

今度はスキーをする事にした兎一味。果たして今度こそ普通に過ごせるのか?

次回

「スキー場の兎達 兎、雪ではしゃぐ」


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158話 スキー場の兎達 兎、雪ではしゃぐ

旅行編は次辺りで切りがつきそうです。

それと、1ヶ月以上放置になってしまい申し訳ない・・・・


お菓子対決の翌日。兎一味は近くのスキー場を訪れていた。

 

「ヒャッハー!」

 

その日の雪兎は先日までの鬱憤を晴らさんとばかりにスノーボードでゲレンデを疾走していた。

 

「何だあの白髪!?コークスクリューを平然と決めたと思ったら次はロデオ!?」

 

その様子を常連客達は唖然としながら見ていた。

 

「よっぽどストレス溜まってたのね、あいつ・・・・」

 

「ご主人楽しそう!ボクもやる~!」

 

「ねえねえゆーたん(ユーリの事)、私達は雪だるま作ろっか?」

 

「はい、目指せ35体!」

 

「6世帯も作る気か!?」

 

他の面々も好き勝手しているようだ。

 

「皆~、お昼には麓に集合だよ~!」

 

「「「「は~い」」」」

 

そこからはスキー、スノボー、上級、中級、初心者で分かれ滑り始めた。

 

「ええっと、こう、かな?」

 

「そうそう、上手だよ、紫音」

 

「えへへ、シャル姉の教え方が上手いからだよ」

 

スキー初心者の紫音に色々教えているシャルロット。

 

「でも、僕についててよかったの?シャル姉、本当は雪兎兄のとこ行きたかったんでしょ?」

 

「それはそうなんだけどね・・・・」

 

「ワッフー!」

 

「あれにはついていけないよ」

 

「・・・・確かに」

 

シャルロットも雪兎についていきたかったが、ストレスのせいか普段より飛ばしている雪兎に追い付けないと察し、こうして紫音に手解きをしているのだ。

 

「イナズマ~ジャンプ!」

 

そして、そんな雪兎に追従するレヴィも何やら複雑な動きで跳んだり回転している。

 

「スキーなんて久しぶりだな」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、弾達と前に行った事があってな・・・・それよりも、またフォームが崩れてきてるぞ」

 

一方、一夏はスキーの経験があるらしく、初心者の箒に指導していた。いつもとは真逆の状況に二人共楽しそうである。それを悔しそうに見る三人がいた。

 

「うぐぐ・・・・スキー経験がここで仇となるなんて」

 

「不覚ですわ」

 

「初心者を偽ったところで、このようなものは直ぐに動きに出てしまうからな」

 

鈴、セシリア、ラウラの三人だ。

 

「三人共、そんな事してないで滑ろうよ」

 

「あと、ここで割って入ろうとすれば逆に好感度が下がりますわよ?」

 

「そうね・・・・ここは雪兎みたいに楽しみましょ!」

 

「・・・・師匠のあれはやりすぎだと思うけど」

 

しばらく二人を眺めていた三人だったが、聖やエリカの言葉で今は楽しむ事を優先することにしたようだ。

 

「そういや、シュテルやユーリ達は?」

 

「あそこ」

 

カロリナが指差す方を見ると、そこには雪まつりも真っ青な雪像がいくつか出来上がっていた。

 

「・・・・何やってんのよ、あの子」

 

しかも、他の客に写真を撮られまくっており、オーナーらしき人物がシュテルに頭を下げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの雪像、やっぱりシュテルのだったか」

 

「申し訳ありません、やりすぎました」

 

「結果的にはお礼言われたんだろ?なら俺がとやかく言うつもりはねぇよ」

 

夕方、集合する頃にはストレスを発散し切ったのか、雪兎の機嫌は普段のものへと戻っていた。

 

「もう旅行も明日で終わりかぁ」

 

「もう?やっとの間違いだろ」

 

そんなこんなでその日も縁嬉へと戻っていく一同。しかし、この日も雪兎はシャルロットに二人部屋へと引き摺られていく。

 

「あの~、シャルロットさん?」

 

「・・・・今日はずっと構ってくれなかったから夜は一緒がいい」

 

どうやら昼間ほったらかしにされた事を少し根に持っているようだ。

 

「・・・・わかったよ」

 

だが、雪兎もそれを自覚していたようで今回は大人しくしている。

 

「ねぇ、雪兎」

 

「何だ?」

 

「いつか二人っきりで来ようね」

 

「それはいいかもな」




という訳でお待たせした割には短くてすみません。
次で旅行編はラストになります。
新しく書く予定の作品も準備しているのでまた遅くなるかもしれませんが、エタらないよう頑張ります。


次回予告

夜間瀬の滞在期間も終わり、学園へと戻る兎一味。そして、騒がしかった一年が過ぎ・・・・

次回

「桜舞う季節 兎一味、帰還」


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159話 桜舞う季節 兎一味、帰還

またしても時間が空いて申し訳ありません。
そして、今回と次回の断章で兎協奏曲は一旦幕を下ろさせていただきます。
シーズン2はまた別作品として投稿しますので気長にお待ち下さい。


「わざわざ見送りしてくれてありがとな、奏ちゃん、小春」

 

「いえ、これも立派なお仕事なので」

 

「皆さんにはたくさん買っていただきましたからね」

 

夜間瀬での滞在期間が過ぎ、雪兎達が学園へと帰る日がやってきた。その見送りに奏とたまたま縁嬉で顔を合わせた小春が駅まで付いてきてくれたのだ。

 

「お世話になりました」

 

「またお越しの際は是非また縁嬉をご利用下さい」

 

「こはるびよりも是非」

 

「商売上手だな、この娘らは・・・・」

 

「ユズカにもよろしく伝えておいて下さい」

 

そんなこんなで二人に見送られながら雪兎達は学園へと帰っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の辺りまで戻ってくると、周りには桜が満開になっていた。

 

「桜か」

 

「夜間瀬はまだ寒かったからな」

 

「そうだ!」

 

雪の残る夜間瀬との違いに皆が桜に目を奪われる中、シャルロットがある提案をする。

 

「皆でお花見しない?」

 

「お花見?」

 

「そうか、紫音は知らないのか・・・・」

 

「お花見ってのは桜を見ながらその下で騒ぐ宴みたいなもんだ」

 

「楽しそうですね!」

 

話を聞いて目をキラキラさせる紫音に一同は思わず笑みを浮かべる。

 

「となると料理がいるな・・・・シャル、一夏、箒、鈴、ディアーチェ、シュテル、手伝え。他は場所取りと飲み物の買い出しだ」

 

「「「「おー!」」」」

 

その後、一度学園に戻った一同はお花見の準備の為に動き出す。途中で別れた弾達や旅行には同席出来なかった千冬達も呼んでお花見は大宴会となった。

 

「綺麗ですわね」

 

「去年はドタバタしててやれなかったけど、やっぱり日本の春はこうでなくっちゃ」

 

「桜の下で食べる桜餅は格別だ」

 

紫音と同じく初めの花見であるセシリアはその花弁が舞う光景にうっとりとし、鈴は久しぶりの花見を楽しんでいた。また、ラウラは花より団子というべきか、桜餅をハムハムと頬張っている。

 

「これは・・・・箒にも迫る美しさだね」

 

「うるさいぞ、ロラン・・・・一夏、この玉子焼きは上手くできたと思うのだが」

 

「ああ、また腕を上げたな、箒」

 

ロランは花より箒のようだが相手にされず、その箒は玉子焼きを一夏に褒められ密かにガッツポーズを取る。

 

「綺麗ですね」

 

「王様達の料理も言うこと無しだし、最高だね」

 

「褒めても料理しか出ぬぞ、レヴィ」

 

「私も微力ながらお手伝いさせていただきました」

 

「僕も料理覚えようかな?」

 

マテリアルズと紫音もちゃんと楽しんでいるようだ。

 

「かんちゃん、ひじりん、これ美味しいよ~」

 

「あっ、本音、口元に付いてる」

 

「そんなに慌てなくてもたくさんあるから」

 

「簪ちゃんとまたお花見できるなんて・・・・」

 

更識姉妹と本音に聖は同じシートで集まっているようだ。

虚は?それは・・・・再び呼ばれた弾と一緒に良い雰囲気になっていた。

 

「まさか、私が花見をする日が来るとはな」

 

「なら来年も、その次も皆でやろ、マドカ」

 

「・・・・そうだな」

 

マドカと蘭は毎年花見をしようと約束する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆楽しんでるね」

 

「だな・・・・後で酔いどれ集団も回収しないといけないけどな」

 

そんな皆の様子を見ながら雪兎とシャルロットは二人で桜を見上げる。

 

「ほんと、色々あり過ぎた一年だったが、思い返せば楽しかったもんだ」

 

「雪兎と一緒にいた一年は思った以上に濃密だったよ」

 

ふと、そこで雪兎が少し影のある顔を見せる。

 

「けど、ここからは俺にも全く想像がつかない領域だ。何が起こるのかさっぱり予想が出来ない」

 

「大丈夫だよ。雪兎は一人じゃないんだから・・・・皆が一緒ならきっと」

 

「・・・・ありがとな、シャル」

 

シャルロットの言葉で迷いが晴れたのか、雪兎は立ち上がるとstorageから色々ともの取り出し始める。

 

「よし、お前ら!本番のバーベキュー始めるぞ!」

 

「「「「おーっ!!」」」」

 

「えっ!?まだ食べるんですか、皆さん!?」

 

「何だ?真耶は食わんのか?」

 

「ゆーくんの厳選お肉だよ!絶対美味しいって」

 

「ふっ、飛騨牛の直卸店の肉だ・・・・存分に味わえ!」

 

こうして、お花見はいつしかバーベキューパーティーとなり、日が暮れても明かりを灯して続けられたのであった。

※お花見でバーベキューをする際はちゃんとやって良い場所か確認し、許可を取って行いましょう。




これにてISー兎協奏曲ーは一先ず閉幕です。
この後少ししたらオマケというか、雪兎と次の作品の主人公となる人物に関する断章を出しますので、そちらもよろしくお願いいたします。


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断章ーとある前日談ー

はい、断章でございます。
これはタイトルにある通り雪兎の生前・転生前のお話になります。

文章の書き方が兎協奏曲とは少し違う書き方をしておりますのでそこはご注意下さい。


とある前日談

 

某県●●市、都会とも田舎とも言えない変哲もない地方都市。これはそんな●●市に住むとある人々の話。

 

「おはよ~、兄貴」

 

「おはようさん、八雲。直に朝飯出来るから顔洗ってこい」

 

「はいよ」

 

村上家。両親は既に亡く、既に社会人で少し年の離れた長男・雪人が高校生の弟(八雲)と妹(時雨)を世話しているシチュエーション的には少し特殊だがありふれた一家だ。

 

「……おはよ」

 

そこに末っ子の妹・時雨が眠そうにリビングにやってきた。

 

「おはようさん、時雨。また衣装作りで徹夜か?」

 

「うん……次のイベントで着るやつだから急いでて」

 

衣装というのはコスプレの衣装の事で、時雨は衣装から小道具まで自作で揃えている(主に金銭的な都合で)。しかもクオリティも割りと高い為、その手の業界では有名人らしい。

 

「そうか。手伝ってやりたいところだが、ここのところ忙しいからなぁ」

 

「お兄ちゃんこそ忙しいんだったら無理して皆のお弁当まで作らなくていいのに……」

 

両親がいない為、村上家では朝食と昼のお弁当は雪人。夕食は時間があれば雪人、雪人が遅い日は八雲が作るかお惣菜コーナーの見切り品になる事が多い。

 

「まあ、半分趣味みたいなもんだから気にすんな………食費も浮くしな」

 

「お兄ちゃん、いい主夫になりそう」

 

「はいはい、時雨もさっさと顔洗ってこい」

 

「は~い」

 

八雲と丁度入れ替わるように洗面所に向かった時雨を横目に雪人は今日の朝食の準備を終える。メニューはチーズオムレツに焼いたウインナーと付け合わせのレタス、そして雑穀ご飯にマグカップに入ったコスソメスープである。

 

「いただきます」

 

「「いただきます!」」

 

三人揃ったところで朝食を開始する。雪人も下二人の面倒を見るために朝に余裕のある会社に勤めており、このように三人揃って朝食を取る事が当たり前になっている。

 

「二人共、今日は帰りが遅くなりそうだから昨日の残りのシチューで晩飯は済ませてくれ」

 

「はいよ」

 

「らじゃ」

 

朝食を終えた二人はそれぞれ部活の朝練の為に弁当を持って家を出る。八雲はテニス部、時雨は演劇部に所属している。当初二人は部活には入らずに家計の為にバイトをしようとしていたのだが、雪人に「親父達の遺産も残ってるし、お前らにそんな心配される程火の車じゃねぇっての」と、言いくるめられ青春を満喫している。

 

**********

 

家を出てしばらくすると、二人の幼馴染で八雲のクラスメイトの森園慎一が二人を待っていた。

 

「時間通りか、流石は我が相棒だな」

 

「オッス、慎。そう言うお前も毎朝早いよな」

 

「おはよ、慎くん。あとお兄ちゃんから今日のお弁当」

 

「いつもすまんな……本当にあの人には頭が上がらないぜ」

 

森園慎一……先も説明したが、二人の、というか村上三兄弟の幼馴染であり、 三兄弟同様両親が不在の為、雪人が弁当等ちょくちょく世話を焼いているのだ。雪人曰く「もう一人の弟みたいなもん」とのこと。

 

「で、また危ない橋渡ってねぇだろうな?慎」

 

「……少なくとも雪人さんに迷惑掛けるような事は何も」

 

「お兄ちゃん、怒ると怖いよ?」

 

「安心しろ……あの時のようなのは俺ももうごめんだ」

 

慎一は趣味兼特技の情報収集を使って情報屋のような事をしており、以前に危ない橋を渡りかけて雪人に助けられた挙げ句にキツいお説教を受けているのだ。

 

「まあ、何かあったらちゃんと俺達にも相談しろよ?」

 

「わかってるよ……というか、お前は俺の母親か!」

 

「兄さんが母親だとしたら……お兄ちゃんは父親?」

 

今更だが、時雨は二人の兄の呼び方をお兄ちゃん→雪人、兄さん→八雲、という風に区別している。

 

「……全く違和感ねぇな」

 

「おいっ!俺は男だ!」

 

「そんな事より早くしないと朝練遅れるよ?」

 

「ちっ……そんじゃまた後でな、慎」

 

「じゃあね、慎君」

 

そう言うと、二人は風のように学校へと走り去っていった。

 

「……相変わらず嵐のような兄妹だな」

 

二人と違い部活には所属していない慎一は受け取った弁当を鞄にしまい、ゆっくりと学校へ向けて歩き出した。

 

**********

 

そしてあっという間に放課後。部活が職員会議の為に無かったその日は幼馴染三人で下校していた。

 

「雪人さん、最近忙しそうだな?」

 

「まあな、何でも『やる仕事の範囲が一気に増えた』とか何とか」

 

「顔には出して無いけど、かなり疲れてそうなんだよね、お兄ちゃん……」

 

そう、ここ数ヶ月雪人は帰りが遅い日が増えていた。雪人は「朝の時間を融通してもらってるんだから当たり前だろ?」と言って平気そうな顔をしているが、実際には趣味のプラモを作る暇が無いくらいに疲れているのを二人は知っていた。

 

「もう少ししたら一区切りつくとは言ってたんだが……」

 

そんな時だった。突如八雲の携帯が鳴り始めたのだ。

 

「うん?寺川さん(雪人の同僚)から?何だろう?」

 

『あっ、八雲君!?』

 

珍しい人からの電話に首を傾げながら通話ボタンを押すと、切羽詰まった様子の声が聞こえた。

 

「ど、どうしたんですか、寺川さん……」

 

『ごめんなさい。でも、落ち着いて聞いて……君のお兄さん、雪人君が交通事故で搬送されたの』

 

「………………えっ?」

 

**********

 

「悪いな、寺川。こんな事に付き合わせて」

 

「そう思うなら少しは休んだらどうなの?雪人君」

 

時は少し遡り、仕事の関係で社外に出ていた雪人とその同僚の寺川恵の二人。同僚以前にこの二人は中学時代の同級生で、偶然にも入社した会社が同じで、雪人は腐れ縁のようなものだと思っている。その寺川は連日遅くまで仕事をしている雪人を心配してこうして同行していたのだ。

 

「今の仕事に区切りが着いたら溜まった有休でも使うさ」

 

「そういうところ、中学から本当に変わってないのね?」

 

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」

 

幸い大した用ではなく、既に用は済ませて後は社用車で会社に戻るだけだった。しかし、とある交差点を通過しようとした時に悲劇は訪れた。

 

「えっ?」

 

「くっ!」

 

二人の乗る社用車に信号を無視したトラックが右側に激突し、車は数十M程弾き飛ばされてしまったのだ。

 

「……うぅ………」

 

助手席側の寺川には不幸中の幸いというべきか怪我は大したことはなかった。だが……

 

「はっ!雪人君!?」

 

運転席にいた雪人の方は血まみれになっており、呼吸も細い危険な状態だった。それから近くの人の通報で駆けつけた救急車で雪人と寺川は病院まで搬送され、緊急手術となった雪人の事を報せるべく、寺川は八雲へと電話を掛けたのだった。

 

**********

 

「兄貴!」

 

「お兄ちゃん!」

 

それから慌てて病院へと駆けつけた八雲達だったが、そこで待っていたのは泣き崩れた寺川と辛い表情の医者の姿だった。

 

「ご遺族の方ですか?」

 

「ご遺族って、まさか……」

 

「我々も手を尽くしたのですが……」

 

聞けば雪人はつい先程に息を引き取ったのだと言う。

 

「嘘、だよね……」

 

未だに雪人の死が受け入れられない時雨が寺川や医者を見るが、二人は首を横に振るだけで、時雨もとうとう泣き崩れてしまう。

 

「……事故の原因は?」

 

「相手のドライバーの居眠り運転だったそうだ」

 

「急ぎの荷物だったそうで、徹夜で運転していた疲れで眠ってしまったそうよ」

 

一方で慎一はその事故原因を医者と看護師から聞き、拳を強く握り締め壁を殴りつけようとするが、寸前で八雲に止められる。

 

「落ち着けよ、慎」

 

「落ち着けられるか!ってか、何で相棒はそんな冷静なんだよ!?」

 

「俺だって頭ん中ぐちゃぐちゃで訳がわかんねぇよ!」

 

もし、この場にそのトラックのドライバーが居れば八雲もすぐさま殴りかかっていただろう。それくらい八雲とて悔しさが滲んでいた。

 

「……わりぃ、俺よりもお前らの方が辛いよな」

 

それを察し、慎一も怒りを鎮める。

 

「……兄貴、いえ、兄の遺体は?」

 

「こちらです」

 

幸いな事に雪人の遺体は怪我は酷かったものの見れない程酷い損傷はなかった。また、雪人は自身に何かあったらと、少し高めの生命保険も加入しており、雪人の貯金や両親の遺産に加えて多くの保険金が二人に遺されていた。そして、両親の遺産に至っては八雲と時雨の為にしか使われておらず、未だに多くの金額が残っていた。

 

「バカ兄貴……少しぐらい楽しても罰なんざ当たらなかっただろうに」

 

それを知り、八雲は怒りよりも呆れが先にきたと言う。

 

一方、時雨の方はショックのあまり数日自室に引きこもってしまった。

 

**********

 

時雨が何とか立ち直り、雪人の葬儀を終えた八雲と時雨。葬儀には多くの人が駆けつけてくれ、雪人の交友関係の広さを実感していた。特に寺川は何かと二人の心配をしてくれ、時雨が立ち直る切っ掛けにもなってくれていた。

 

「もしかして寺川さんって……」

 

「だと思うよ」

 

雪人はただの腐れ縁の友人と言っていたが、彼女の方は違ったのだろう。

 

そして、数ヶ月が経つ頃には八雲も時雨も何とか以前と同じように笑う事が出来るようになっていた。

 

**********

 

一方で、慎一は表面上は変化が無いように見えていたが、ある日を境に学校へ姿を見せなくなった。八雲への最後の連絡では詳細は語らず「ヘマやった」とだけメールしていた。

 

「……ったく、あんなヘマするとは俺も焼きが回ったわ」

 

その慎一が今いるのはとある下水道の通路。たまたま収集していた情報にとある"ヤ"のつく者達に関するもの混じっており、流失したその情報を揉み消そうとする過激派から慎一は狙われてしまったのだ。

 

「いたぞ!」

 

そして、一週間にも及ぶ逃走劇の果てにとうとう慎一は追い詰められてしまう。

 

「……一高校生が一週間も逃げ延びれればよくやった方か」

 

この一週間で慎一も随分と参ってしまったようで、最早逃げるつもりはなかった。

 

「やるんなら出来るだけ痛くないように頼みますわ」

 

「ふん、一週間も逃げ延びたくせに最後は随分と潔いではないか」

 

「ただ単に逃げるのに疲れたんですわ……おたくらしつこすぎますって」

 

「……最後に確認だ。他にあの情報は洩らしていないだろうな?」

 

「あんな情報、俺の手に余りますって……誰に流してもガキの悪戯扱いされると思って手つけてませんよ。それくらいおたくらなら調査済みだろ?」

 

「確かにな……まあいい、ならば望み通りにしてやろう」

 

「……感謝します」

 

**********

 

それから更に数ヶ月が経った。兄に続き、幼馴染が行方不明となった事で八雲は少しずつ部活をサボるようになった。元々レギュラーでもなかった事もあって部員や顧問もあまりとやかく言ってくる事はなかった。一方、時雨は部活の無い日等の放課後は特に宛もなく町をうろうろするようになった。もしかしたらフラッと幼馴染が現れるのではないかと期待しているのだろう。そんなある日、その日も時雨は特に宛もなく町をうろうろしていた。

 

「……やっぱりいないか」

 

普段なら近付かない路地裏等も回ってみたが収穫はゼロ。情報収集を得意とする慎一と違い、時雨はどちらかと言うと直感で動くタイプの為にこのような地道な作業は向いていないのだ。

 

「……あんまし遅くなるとまた兄さんに怒られるし、帰ろっか」

 

なんとなく今日はこれ以上の収穫は無いと察し、回れ右をして帰ろうとしたその時だった。薄暗いはずの夕方の路地裏が何故か明るくなったのだ……しかも、時雨の足下から。

 

「ん?って、なんじゃこりゃ!?」

 

光を放っていたのは時雨を中心とした"魔法陣"のようなものだった。

 

「ちょっと待って、これってもしかしたらもしかしてもしかするの!?」

 

その間にも光はドンドン強くなりあまりの眩しさに時雨が目を閉じると、次の瞬間には路地裏に少女の姿はなくなっていた。

 

**********

 

それから一ヶ月。妹まで行方不明となり、八雲はとうとう一人になった。慎一と時雨の捜索は一応続けられているが、八雲はなんとなく二人は見つからないような気がしていた。

 

「……流石にここまで立て続けに色々起これば作為的なもん感じるよなぁ」

 

某学園都市の不幸自慢ならば「不幸だぁー!」と叫んでいるところだろう。

 

「というか、何でいきなり豪雨なんだよ……天気予報じゃ一日晴れだったじゃん」

 

その日も部活をサボり、見晴らしの良い高台の上でのんびりしていたのだが、突然の豪雨で高台にある小屋の屋根下に避難する羽目になり、八雲は今朝のニュースの天気予報を思い出し悪態をつく。

 

「というか、止む気配ゼロだな……」

 

それどころか雷まで鳴り出している。

 

「うわぁ……最悪だな。これは風邪引くの覚悟で走って帰った方がいいかもしんないな」

 

そんな事を考えていた八雲だったが、その時、一際大きな雷鳴が響く。

 

「……あれ?これ、かなり近くね?」

 

そう思って上を見上げると、丁度八雲の真上の雲がやけに蒼白い光が灯る。

 

「あっ、やべ」

 

次の瞬間、先程よりも更に大きな雷鳴と共に八雲のいた小屋目掛けて雷が落ちた。




これにて本当にISー兎協奏曲ーは一先ず閉幕となります。

それでは次の作品でまたお会いしましょう。


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