群狼戦記〜ブリッツ・フリート〜 (ヨシフ書記長)
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協商連合(オースフィヨルド上陸戦)
スカゲラク海峡(プロローグ)


ワンピースを書いてるヨシフです!
幼女戦記にハマったので書いてみました
駄作ですがどうぞ
時系列ではターニャがノルデンに現れたところ


1923年ー6月

北方ノルデン

ースカゲラク海峡ー

 

どんよりとした天気の中

海峡を進む輸送船団の姿があった

 

「帝国の連中共め!俺達が着いたら、蹴散らしてやる!」

 

軍の広報を読みながら、協商連合の兵士は声を張り上げた

すると、周りの兵士達も口々に帝国への言葉を叫んだ

 

「そうだ!そうだ!祖国を踏みにじる帝国に死を!」

 

「帝国の首都に俺らの旗を掲げてやる!」

 

「戦争はすぐに終わるさ、俺達の勝利でな!」

 

協商連合の兵士達は騒ぎながら

士気を高めていた

 

「…………」

 

その様子を見ながら、タイソン少佐は騒ぐ兵士達を見ながら

壁に腰かけて煙草を吸っていた

吸う度に短くなる煙草を咥えながら

舌打ちにしながら、兵士達を心の中で嘲笑った

 

「チッ!(何が"俺達は勝てる!"、"戦争はすぐに終わる"だ!クソが!政治屋共の戯言に騙されやがって!そんなに練度もないお前らを戦地に向かわせるって事は、うちの国が帝国に惨敗して兵士が足りないからに決まってるだろうが!クソが!)」

 

タイソン少佐は咥えていた煙草を捨てようと海の方を見た。すると遠い島の影に何かがいた気がした

 

「あん?何だあれ?」

 

タイソンは目を細めながら、島影を見ていると…

突然!島影から発砲煙が見え、輸送船団に砲弾が降り注いだ!

 

「うおおおおお!?」

 

輸送船の近くに着弾したせいで、船体が大きく揺れタイソンは転んでしまった

 

「いてててて…糞が!何が起きた!」

 

タイソンは手すりを支えに立ち上がると海の方を見た!

そこには、1隻の軍艦がこちらへ向かってきていた

 

「あれは!帝国の巡洋戦艦じゃねぇか!不味い!沈められるぞ!!艦長の所に行かねぇと!」

 

慌ててタイソンは操舵室に向かって走り出した!

タイソンが操舵室に着くと、輸送船の船員達が慌ただしく動いていた

 

「おい!艦長!あの船からどうにかして逃げきれねぇのか?

このままだと沈められちまうぞ!」

 

「こんな遅い輸送船では無理だ!逃げきれん!…そうだ!

おい!通信手!」

「ハッ!何でありますか?」

「他の船にも伝えろ!煙幕を張って逃げるぞ!」

 

「ハッ!了解しました!」

 

艦長の命令を通信手が他の船に伝えようとしたその時!

爆発音がすると左側を航行していた味方の船が、轟音を立てて沈没していった!!

 

それを見たタイソンは叫んだ

 

「畜生!味方の船が!砲撃音もしなかったのに!!」

 

「艦長!先ほど、沈んだ近くの船から通信です!どうやら、先程の味方の船が沈んだのは雷撃を受けたようです!」

 

「何だと!もしかすると、潜水艦までもいるというのか!」

 

「…!!!敵の巡洋戦艦より、通信です!」

 

「…!!何だと!なんと言ってきている?」

 

「停船セヨ…!サモナクバ沈メル…だそうです!」

 

「…!!!!くそぉ!」

 

タイソンと艦長は敵の通信に憎々しげに顔を顰めた。

 

「この船で逃げようにも逃げきれんし…このままだと八方塞がりだ…。仕方ない…相手に信号を送るのだ…降伏する…。」

 

「了解致しましたッッ…!」

 

こうして…協商連合軍の輸送船団は戦地につく前に拿捕され兵士の輸送任務は失敗した。

 

「くそぉ…屈辱だ!」

 

タイソンはほかの兵士達とともに救命ボートに乗りながら先程まで自分たちが乗っていた船を睨んだ

 

すると、付近の海域から1隻の潜水艦が浮上してきたのを見ると、タイソンは叫んだ

 

「畜生!あんな近くに潜んでやがったのか!U・ボートめ!」

 

輸送船の近くに、潜水艦が寄ると艦橋のハッチが開き、中から兵士達が出てきて備え付けてある88mm砲を輸送船に向け始めた

 

さらにハッチからある人物が現れた

 

それは……!

 

「なんだ……?ありゃ…?子供?」

 

 

タイソンは目を白黒させた。

なんとハッチから出てきたのは小学生くらい子供だった。

頭には制帽を被り、目には黒い眼帯、首に赤いスカーフを巻き、青色の軍服に身を包んだ男の子だった

 

すると、その子供は叫んだ

 

「敵の輸送船を砲撃し、処分せよ!」

 

「ヤー!了解!」

 

「よーい…!てっ!」

 

子供の号令とともに88mm砲が火を噴き、輸送船の喫水線に当たった…!

 

すると、着弾した所から水が流れ込み始め大きく傾き出した!

 

「良し!もう一発撃て!」

 

また砲が火を噴き、砲弾が当たったところが爆発した

 

「良し!諸君!潜行するぞ!艦内に戻れ!」

 

子供はそう言うと、ハッチの中に入っていった。

甲板にいた兵士達も走って艦内に入っていくと、ハッチを閉め、ゆっくりと潜航していった

 

「帝国は…あんな子供にも戦わせているのか…!」

 

タイソンは先程見た事に動揺を隠せなかった

 

しかし、タイソンは知らなかった

 

あの子供が共和国又は連合王国の震撼させる

人物になろうとは…

 

 

 

 




何となくなのでつづくかは不明です
感想をお待ちしております


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カール軍港

最近忙しくて死にそう


協商連合の輸送船団が拿捕されて2日後

海中を進む1隻の潜水艦…

エンジンの音がうるさい船内の中で、一人の男の子は潜望鏡の前の椅子に座っていた

 

「ふぅ…なんとか…。協商連合の輸送船は叩けたけど…。怖かったぁ!何で!乗組員に輸送船の下に潜り込めとか言ったんだろう…。あの輸送船が武装してたら、俺らおしまいじゃんか!」

 

頭を抱えながら男の子が声を潜めて体を揺らしていると

 

「艦長!クレッチマー艦長!」

 

航海長が狭い艦内をかき分けながら、近づいてきた

 

「何だ?航海長?(ほかの人には何故か普通に喋れないんだよなぁ…)」

 

「もうすぐカール軍港です!準備してください!」

 

「うむ…わかった」

 

そう言うと、クレッチマーは制帽を被り、伝声管に口を近づけると言い放った

 

「我らが戦友諸君!我々はカール軍港に帰還する!

此度の戦果で帝国海軍の存在を世界に知らしめること出来た!

カール軍港では我々を祝おうとする人々で溢れかえってるだろう!

さぁ…諸君!帰還するぞぉ!」

 

 

「「「「うおおおおおおおお!」」」」

 

クレッチマーの声が艦内に響くと、艦内の至る所から歓声ががあがった

 

「潜望鏡をあげー!」

「了解!」

 

 

クレッチマーが潜望鏡を覗き込むと、カール軍港がうっすら見え始めていた

 

「バラストをあけろ!浮上するぞー!」

「了解!バラストの水を抜けー!」

 

乗組員達が基盤のスイッチを押しながら、バラスト用のバルブを回して、バラストを開放した。

 

艦内が少し斜めになると、水飛沫を散らしながら浮上した!

 

「総員!甲板上に並べ!」

 

クレッチマーが叫ぶと、乗組員達が慌ただしく動き出した

 

ハッチを開けて、乗組員たちが外に出ると駆逐艦が近づいてきた

 

「英雄の帰還だ!」

「おーい!」

 

駆逐艦の乗組員達が潜水艦に向かって手を振ってきていた

 

「総員!整列!」

 

クレッチマーの言葉に潜水艦の乗組員達が整列をして並び始めた

 

「軍旗を掲げよ!」

 

乗組員の1人が軍旗を掲げた。

そうして、カール軍港に潜水艦が近づくと、軍港の桟橋には凄い数の人々が歓声を上げながら、潜水艦の方に手を振ってきた。

 

「総員!敬礼!」

 

クレッチマーの言葉に乗組員達は一斉に敬礼をした。

 

そうして、潜水艦はカール軍港へと入港をはたした…。

 

 

「ロープを投げろ!潜水艦を係留するぞー!急げ!」

 

港の海兵達が慌ただしく動いていた。

そうして、潜水艦にかけ橋かけられると、クレッチマーは港に降り立った。海軍将校を連れた一人の軍人が近づいてきた

 

「良くやってくれた!クレッチマー少尉!

大戦果だ!君のお陰で陸軍共の鼻を明かすことが出来る!」

 

「ええ…ありがとうございます…デーニッツ准将閣下」

 

「早速だが…少尉

元帥閣下がお呼びだ…付いてきてくれ!」

 

 




中途半端ですが
感想をお待ちしております


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帝都ベルン

やっと続きがかけました



クレッチマーは軍用列車の個室の中で揺られながら、帝都ベルンへと向かっていた

 

「ふぅ…帰ってきた途端、参謀本部に出頭かぁ…大変だなぁ…」

 

そう、頬を掻きながら、目の前の机の上に積み上げられた計画書の束を

一つ一つ目を通しながらそう呟いた。

 

「ふむふむ…新しいUボートの基地開発か…。デーニッツ准将も気の早いことを…」

 

クレッチマーは苦笑いを浮かべながら、その書類をテーブルの上に置いた。クレッチマーは少し座席にもたれかかると、壁にかけてある内線用受話器を手に取りこう言った

 

(はい?御用はなんでしょうか?)

「…給仕室か?済まないが紅茶を持ってきてくれ…」

(了解致しました!紅茶には何をお入れなさいますか?)

「あぁ…砂糖は入れないでくれ…。代わりにレモンを入れてな…後、レモンタルトも頼む」

(分かりました!すぐにそちらへお運びさせていただきます!)

「あぁ…頼んだよ…」

 

受話器を壁にかけると、クレッチマーは頭を掻きながら、壁に頭をぶつけて叫んだ

 

「何故、普通に喋れないかなぁ!」

 

そしてまた座席にもたれかかると呟いた

 

「あぁ…風呂に入りたい…。ここ数日シャワーすら浴びてない…カール軍港で浴びてくればよかった」

 

ボヤいていると、個室の扉がノックされた

 

「失礼します!ご注文の品をお届けに参りました」

「あぁ…待ってたよ」

 

クレッチマーは立ち上がると扉を開けて、トレーにのせられたものを受け取った。しかし、持ってきた給仕係はクレッチマーの姿を見て呆然としていた

 

「…何か?」

「いっいえ!ごゆっくりどうぞー…」

 

クレッチマーは上目遣いで給仕係を睨むと、給仕係は慌てて戻って行った。

クレッチマーは扉を閉めると、折りたたみテーブルの上にトレーを置き

ティーポットから紅茶をカップに注ぐと、鼻をくすぐる紅茶の芳醇な香りを楽しみながらカップに口をつけた。

 

「ふぅ…いい味だ…。潜水艦じゃあ…紅茶じゃなくあのクソ不味い代用珈琲だからなぁ…。タンポポで出来てるんだったかな?あの代用珈琲…」

 

クレッチマーは代用珈琲の味を少し思い出して、眉間にシワを寄せながら紅茶をすすった。そして、皿の上に置いてあるレモンタルトをフォークで切り分けると口に入れた…。

その瞬間、レモンの香りが口の中に広がり、甘酸っぱい風味が鼻を抜けた

 

「うんうん…やはり甘いものは良いな!こっちの世界に来てからどんな食べ物も美味しくなかったがやはり甘い物は安定だ!」

 

レモンタルトの味に顔をほころばすとまた紅茶をすすった。

そしてティーカップを置き、、クレッチマーはまた書類を読み出した…

 


 

クレッチマーは書類を読むのに没頭していると、軍用列車は帝都ベルンに到着した様で汽笛共にガタンっと揺れた。

 

「む?もう着いたか…」

 

そして、クレッチマーは軍用列車を降りると、人混みをかき分けながら進み駅から出た。

駅の前には海軍省の車が止まっており、クレッチマーはそれに乗り込むと、参謀本部へと車は走っていった

 

「すまないが…。運転手君…?参謀本部に着いたら、シャワーか何か浴びさせてくれないか?ここ数日潜水艦に乗っててな…。シャワーを暫く浴びてないんだ」

 

運転手は、バックミラーでクレッチマーを見ると、ニコッと笑いながら言った

 

「それは存じております。長官からの命令で参謀本部に着いたら、大浴場にお連れしてあげるようにと命令を受けております!」

「そうか!流石は長官閣下だ!」

 

運転手の言葉にクレッチマーは笑いながら、参謀本部へと向かって行った

 

 

 

 




少し飯テロを挟みました
感想をお待ちしています


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参謀本部1

なかなか続きが思いつかなくて
やっとかけました



海軍省の車は、参謀本部に向かう道路を進んでいた

 

 

クレッチマーは、まだ読み残していた書類を読んでいたが、何気なしに車内から外の風景を見た。

 

立ち並ぶ建物には帝国の国旗が掲げられ、ある店の前ではラジオの戦果情報を聞いて市民達が歓喜の声を上げていた。

そして、街頭や色々な所にブロパガンダのポスターや兵士募集の張り紙があった。その様子を見て、クレッチマーは思った。

 

 

(この国はまだ勝ち続けていられるだろう…。でも、負けだしたらまずい…。まだ協商連合は海軍国家ではないから…だから、なんとか今はやっていられる…。協商連合を倒したら、必ず共和国や連合王国と戦争をするハメになる…。そうすると、連中はこの国を倒すために海上封鎖をするだろう…。その瞬間、この国は瞬く間に崩壊を始める…。この国は資源を輸入するしか、手に入れる方法がない。

石油とかが無ければ、艦は動かないどころか…工場も動かない。

そうすれば、この国は亡びてしまうだろう…。さぁて、ここからどうするか…それが問題だな)

 

クレッチマーはもう一度書類に目を向けると

少し溜息を吐いて、書類を見始めた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

クレッチマーが書類を読むのに没頭していると、車は参謀本部に到着した。

神殿の様に立派な建物で大きな階段と柱と至る所に掲げられた軍旗…そして、参謀本部の前の大きい広場には凱旋の塔があった

 

運転手は車のエンジンを止めると、慌てておりてきて、クレッチマーのいる方のドアを開けた。

 

「クレッチマー少尉殿!参謀本部に到着致しました!」

 

クレッチマーはその声を聞いて、書類をブリーフケースに入れると、軍帽を被り直し車を降りた。

 

「うん。ご苦労様…」

「これにて失礼致します!ここからは…そこにいるものが案内しますので!では!」

 

運転手はクレッチマーに敬礼すると体の向きを変え、車に向かいドアを開けて乗り込むと、エンジンをかけて帰っていった。

 

クレッチマーから車が離れていくと、兵士が近づいてきて言った

 

「クレッチマー少尉殿ですね!お待ちしておりました!ささ!こちらへ!参謀本部の大浴場へと御案内させて頂きます!」

「うむ…!ありがとう!」

 

そう言うと、クレッチマーは兵士と共に参謀本部へと入っていった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レルゲンside

 

 

「むむむむ…。ぬぅ…」

 

書類に囲まれたデスクの真ん中で、レルゲンは新しい作戦の案を出すのに悩んでいた

 

「くっ…!いかん!この案では駄目だ!もっと…!何かが必要だ…!」

 

レルゲンは顔を上げて、上を見上げながら目頭を押さえると、眼鏡を外した。そして、ふと時計を見ると言った

 

「このままでは…埒があかんな!少しは気分転換でもしてみるか…」

 

そう言うと立ち上がり、書類の山を崩さないように避けながら、部屋の中から出るとこう言った。

 

「シャワーでも浴びれば…気分転換になるだろう。良し…!大浴場にでも向かうとするか…」

 

レルゲンはそう言うと、大浴場へと歩いていった

 




中途半端ですが
次回はシャワー室


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参謀本部2

だいぶ期間が空いてすみませんでした!
クレッチマーくん…レルゲンに出会うの巻


この国…。バスタブという物はあれど、帝国では風呂に入るという習慣は無く基本はシャワーかサウナの二択である

 

 

 

それは、参謀本部とて同じであり、参謀本部の大浴場とはシャワー室の事である。そこは、まるで海外の刑務所の様にシャワーヘッドが沢山壁にならんであり、部屋の隅にはサウナ室の扉がある所だった

 

クレッチマーはシャワーの前に立つと、レバーを捻った。ザァーっとシャワーから熱い湯が出始め、その中でクレッチマーは、久しぶりの熱いシャワーに身体を震わせていた。

 

(これだよ!これ!潜水艦の中じゃあ!味わえないこの暖かい湯の有り難さ!寒い中、荒波にもまれながら見張りをしても、シャワーは浴びれないからな!嗚呼…。なんて気持ちいいんだろう・・・。でも…欲を言えば、風呂に入りたいな…。湯船につかれればスッキリするだろうなぁ…)

 

 

クレッチマーはそう心で思いながら、頭を洗いながら、身体を固形の石鹸を付けたスポンジで洗い出した。

 

 

そして、クレッチマーが身体を洗い終わろうとした瞬間…。

シャワー室の扉が開かれた…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

レルゲンside

 

「ふぅ…。何が足りん…。何かが…!ああー、駄目だ…。何もいい案が浮かばん…。よし!シャワーを浴びよう!浴びれば、スッキリして思いつくかもしれんな」

 

そう言いながら、私はシャワー室の扉を開けた。大浴場には誰か先客がいたようだ

 

シャワーの音がするが…眼鏡が曇って何も見えん!

クソ!この湯気のせいか!

 

私は手探りながらシャワー室に入っていった

 

「シャワーのレバーはどこだ?曇ってて見えん…。」

 

私は眼鏡を吹いたりしてみたが、少しマシになっただけで変わりはなかった。すると、湯煙の中から声が聞こえてきた

 

「こちらですよ…?レバーは」

 

「済まない」

 

私は声が聞こえてきた方を向き、霞んだ視界でレバーを見つけた…

熱いシャワーが頭にかかり始め、曇ってた眼鏡が見えるようになり始めた

 

「ありがとう…。助かっ…?」

 

私は先程の声の主の方を見た。

そこには、銀色の髪をした少年が立っていた。少年の片目には火傷のあとのような跡があり、見えていないようだったが…もう一つの目は、ひどく綺麗な蒼色をした目だった。すると、少年は私の顔を見ると怪訝そうに言った

 

 

「何か?私の顔についていますか?」

「いや…!何でもない…」

「そうですか…。それではごゆっくり…」

 

少年はそう言うと、シャワー室から立ち去ろうとした。

しかし、私はとっさに声を出した

 

「まっ!待ちたまえ!」

「はい?」

 

少年は立ち止まると私の方を向いた

 

「君!名前は?」

「名前ですか?何故名乗られてもいないのに名乗る必要が?」

「済まない!私の名はレルゲンという者だ!君の名は?」

「ハァ…。僕の名は、クレッチマー…。それでは、レルゲンさんごゆっくり…」

 

少年は、少し敬礼をするとまた立ち去ろうとした。そして、私はまた声をかけた

 

「クレッチマー君!君はどこに所属しているんだ?」

 

クレッチマーは私を見て少し深いため息をつくと言った

 

「そこまで言わないと行けないでありますか?レルゲンさんそれにはお答えできかねますな…。それでは」

 

クレッチマーは答えることなく、シャワー室を出ていった。

私は、クレッチマーという少年とあのデグレチャフ少尉を何処と無く

重ねて見てしまっている自分がいた…。シャワーの音が虚しくシャワー室に響いていた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シャワー室から出たクレッチマーは、軍服着て身だしなみを整えると略帽を深く被り、元帥の部屋の前に立つとドアをノックした

 

ドアの向こうから声が聞こえてきた

 

「誰かね?」

「ギュンター・アルノー・クレッチマーであります!」

「おお!遠慮をせずに入りたまえ」

「失礼致します!」

 

クレッチマーが扉を開けると、整理整頓された部屋の真ん中に大きな机があり、そこの椅子に腰掛けながら、こちらをニコニコしながら見ている。あごひげをたくさん蓄えたこの人こそ…!

 

この帝国海軍最高指揮官であり、最高司令長官…!

 

アルフレート・フォン・ティルピッツ元帥である

 

ティルピッツは椅子から立ち上がると、ニコニコ笑いながら、クレッチマーに近づいてきた。そして、クレッチマーに抱きつくと言った

 

「今回の作戦は良くやってくれた!!クレッチマー少尉!

いや…我が息子よ…!」

 

 

 




感想をお待ちしております

次回!え?海兵隊を編成?


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ティルピッツ元帥

幼女戦記の本読んで海軍をどう介入させるべきか
考えてますので少し更新は遅いですが
申し訳ありません


クレッチマーはティルピッツ元帥に急に抱きつかれた事に、目をぱちくりしていたが、大きくため息をつくといった。

 

「お戯れはおやめ下さい…。元帥閣下

私生児の私に対する嫌味ですか?」

 

クレッチマーの言葉にティルピッツは

クレッチマーの肩をガシッと掴むと言った

 

「何を言うか!お前は私の息子だとも!その証拠に!お前の首にかけてあるペンダントはワシがエリカにあげたものだ!」

 

ティルピッツはクレッチマーの顔を見ながら泣きそうな声を出した。

ティルピッツの言葉にクレッチマーは首に下げてあるペンダントを弄びながら言った。

 

「確かにこのペンダントは私が赤子の頃からあったそうですが…」

 

クレッチマーがさらに言おうとしたその時…クレッチマーの顔が濡れた。クレッチマーはティルピッツの顔を見ると、ティルピッツは目にいっぱいに涙を貯めて泣いていた。

 

「済まない…!済まない!エリカ!うっ…くくく…!」

 

クレッチマーはティルピッツの様子を見て、ため息を吐くと制服から白いハンカチを取り出し、ティルピッツを顔を拭いた。

 

「お辞め下さい…。御父様

お父様の涙がほかの誰かに見られたら

兵の士気に関わります…」

 

「今…!今、ワシのことを父と…!」

 

「今回…だけですよ…。」

 

「うむ!済まない…!」

 

クレッチマーのハンカチでティルピッツは涙を拭き、鼻をかむと机に戻り座った。

 

その瞬間…!顔つきが変わった。先程の好々爺のような表情ではなく、帝国海軍の最高指揮官に相応しい顔つきに…。

 

「今回の作戦は本当によくやってくれた!クレッチマー少尉!潜水艦による輸送船団襲撃作戦は成功したようだが…。少尉…貴官は今回の戦果をどう分析する?」

 

「ハッ!協商連合の輸送船団を襲撃するのはとても効果的と言えます。輸送船団を破壊出来れば補給でき無くなり、兵站戦も維持出来ないと思われます。協商連合は戦闘を続けづらくなるでしょう」

 

「ふむ…。それと…新型の潜水艦の使い心地はどうかね?」

 

「とても良い艦だとは思いますが…。しかし…一々バッテリーを充電するのに、浮上しなければならないのは中々不便ではあります。後は、潜行している間の速度が遅いぐらいであります」

 

「そうか…その不便な点や改善点をあとで渡す書類に事細かく書いておいてくれたまえ…。その報告書を海軍工廠に渡せば工廠の連中も喜ぶだろう」

 

ティルピッツは机に置いてあった葉巻入れから葉巻をとり、葉巻の両端切ると火をつけて吸い始めた。

 

「一つ…報告したいことがあります。元帥閣下…」

 

「何だ?」

 

「拿捕に成功した輸送船の中にこのような兵器がありました」

 

クレッチマーは机に写真を4枚並べた

 

「む…?」

 

その写真には野戦砲と戦車が写っているのもあれば…分解された戦闘機の写真もあった。その写真を指さしながらクレッチマーは言った

 

「この兵器は前線に運ばれようとしていましたが……この兵器は協商連合が持っているものでは無いのです」

「というと?」

「この兵器はフランソワ共和国製の兵器です」

 

ティルピッツはクレッチマーの言葉に眉間にシワを寄せると写真を睨みつけながら言った。

 

「なるほど…。協商連合の後ろにいるのはフランソワ共和国か…。合点がいったな…。帝国より工業力ない協商連合のどこにこれだけ戦争を続けられる力があるのかと思えば…」

 

「元帥閣下…。今回の戦争は何も協商連合との戦いでは済まないかも知れません…。下手をするとフランソワいや、連合王国などを巻き込んだ大戦に発展するものと私は推理します」

 

クレッチマーの言葉にティルピッツは少し驚いた顔をしながら言った

 

「大戦…列強国を巻き込んだ戦争か…。つい2ヶ月前に協商連合との戦争が始まったと思えば…。その次はフランソワとも戦わねばならんか…

早めに協商連合との戦いを終えなければ…。このままでは、我が祖国は二正面で戦わねばならんの…。さてと…どうしたものか…」

 

「でしたら、上陸作戦などはどうでありましょうか?」

 

クレッチマーの言葉にティルピッツは目を見開くといった。

 

「上陸作戦だと?」

「ええ…協商連合の首都は嬉しいことに海に面しております。そこを上陸さらに空挺で襲撃し首都を陥落させるのであります」

 

「不可能だ…。あそこにはハリネズミの様に建設された沿岸砲台や要塞島が沢山ある…。さらに陸軍にそれを要請するのは不可能だ」

 

「確かに沿岸砲台や要塞のあるところを上陸艇では進めません…。しかし、潜水艦ではどうでありましょうか?潜水艦で兵士を輸送し上陸させます。そして、橋頭堡を築きそこから侵攻していくのであります」

 

「しかし、そんな潜水艦を作る事は…。それにその上陸部隊は陸軍からの了解も得られるかどうか…わからんぞ?」

 

「上陸部隊が無ければ我が海軍で作ればいいだけの話であります。。輸送潜水艦が無ければ元帥閣下が技術局に命令すれば動くでしょう?」

 

クレッチマーの言葉に息大きく吸い…葉巻の煙を吐くと呻いた。

 

「ぬぅ…。」

 

「我々の目標としている敵は共和国海軍いや…連合王国海軍であります…。まだ我が帝国海軍の主力艦はまだそれ程目立った損害はないですが…しかし、それは協商連合が海軍国家ではないからです…。

これから、もしも戦うことになる連合王国などは海軍国家です。

早めに協商連合を片付けなければ…このまま泥沼になる可能性もあります…。どうか、お考えください。それと、私が士官学校の卒業論文に書いたものですが…これを」

 

クレッチマーは鞄から論文の束を机に置くとそう言った。

ティルピッツは片手に葉巻を持ったままうつむき加減で論文を見ると

 

「うむ…。分かった」

 

「それと、元帥閣下…。私の考えた新戦術なのでありますが…」

 

「ほう…?新戦術?」

 

「ええ…潜水艦同士で無線で連絡し合い連携を取り…。もしも敵の船団を襲う時などには…まるで狼の集団のように襲いかかる戦術であります」

 

「ほう…」

 

「しかし、私はこの作戦いや戦術にもう一つ何かが足りないと思っているのであります」

 

「というと?」

 

「潜望鏡だけだと…どうしても分かりにくい部分もあります。

もしも、輸送船団だと思って襲撃したら駆逐艦がいるかも知れません」

 

「なるほど…確実性にかけるというわけか…」

 

「ええ…そうです…」

 

「ふむ…空からはどうかね?」

 

「空でありますか?」

「ああ、そうだとも」

「空ですか…。しかし、潜水艦は止まれますが…

航空機は留まってはいられません…旋回させるのがせいぜいです。航空魔導師なら可能かも知れませんが…航続距離を考えると…」

 

「なぁに…。何も空は航空機や魔導師のものでは無いぞ?少尉?」

 

ティルピッツは机の引き出しを漁ると、一枚の書類を取り出し判子を押してクレッチマーの前に出した。それを見てクレッチマーは言った

 

「クルスコス陸軍航空隊試験飛行場?」

 

「そうだ…。何もそこは陸軍だけのものではない。海軍も間借りさせて貰っているのだよ…。そこにお前の求めてる答えがあるかもしれんぞ?そこで少し艦の改装が済むまで見てきたまえ」

 

「分かりました!有難く見させていただきます」

 

クレッチマーは敬礼すると、その書類をカバンに突っ込んだ

 

「それで?少尉…その戦術をなんと名付けるかね?」

 

「私はこの戦術いや、作戦を群狼作戦と名付けます」

 

「なるほど…ウルフ・パックか…。いい作戦名だ」

 

ティルピッツはポケットから懐中時計取り出して見ると、先程の好々爺の顔に戻り言った

 

 

「おおっと!いかんいかん!こんな時間か…。息子よ…忘れていたがお前に贈りたいものがあるのだ!付き合ってくれ!」

 

ティルピッツは立ち上がると扉の方に向かって歩き出した

 




感想をお待ちしております
ティルピッツ元帥のの人間性のモデルとしたのはダンブルドア校長です
優しい時は優しく、軍人の時は軍人らしく
切り替えのあるスイッチのような人物です


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勲章授与式

なかなか更新出来ず申し訳ありません
最近は、色々と忙しく実習などに行く機会が多く忙しいです

また更新が遅れそうです
すみません!

クレッチマーの階級を大幅に変えました


クレッチマーは椅子に座りながら困惑していた

 

(何で?何でなんだ?何でこんな場所に俺はいるんだ?)

 

クレッチマーは俯いていた顔を前に向けると

そこには帝国軍の有力者が座っていた

 

右横に座っているティルピッツの前には

帝国陸軍元帥・ヒンデンブルク

帝国の軍人というイメージを絵で書いたような人だ

立派なカイゼルひげがティルピッツ元帥と同じくあるが…

目つきが怖い…。すっごい睨んでる…。

さらに、ヒンデンブルクの横に座っているのは

参謀本部参謀次長・ゼートゥーア准将…。

目が細く髪を真ん中で分けてる初老の人だが…

何処と無く狐のようにずる賢そうな人だ

 

(さっきから…チラチラとゼートゥーア准将に

顔見られてるがなんなんだろう…。)

 

ゼートゥーアはクレッチマーを見るたびに

細い目をさらに細めてこちらを見ていた

 

(目を合わせない様に…しておこう)

 

クレッチマーは前を向きながらゼートゥーアの横を見た

そこにはゼートゥーアと同じく参謀次長のルーデンドルフが片目を閉じながらもう片目でこちらを見ていた

 

(気づいていないフリ…。気づいていないフリ…。)

 

クレッチマーの横には

大洋艦隊司令官・エーリッヒ・レーダー提督

いつもニコニコ笑っているおじさんのような人だ

そして、レーダー提督の横には空白の席があった

 

クレッチマーは思った

(何で?誰も喋らないんだ!物凄く気まずい!

喋らない上に人の顔を値踏みする様に見やがって!

喋ろうぜ?気まずい!この険悪なムードを誰か止めてくれぇ!)

 

そう考えていると、ヒンデンブルクが喋り出した

 

「おい!ティルピッツ!カナリスの奴はまだ来んのか!」

 

「仕方ないだろう?彼にだってやる事があるのだ…

色々と役職についておるしな!」

 

「それにしても遅すぎる!いつもそうだ!

海軍は何かと問題を起こす!」

 

「問題?いつ?我々がか?問題を起こすと言えば

この戦争を安請け合いで始めた陸軍の方にも

問題があるのではないか?」

 

「なんだと!大した活躍もお前の海軍はしていないくせに!」

 

「いいや?今回は、ちゃんと活躍したぞ?パウル?」

 

「名前で呼ぶな!名前で!」

 

からかう様にティルピッツは

ヒンデンブルクと机挟んで罵りあっていた

その様子を見てクレッチマーは思った

 

(やっぱり…この狸ジジイについて来るんじゃなかった)

 

「大体活躍とはどんな活躍だ?

ただ協商連合国の民間船を沈めたごときでは活躍とは言えんぞぉ?」

 

ヒンデンブルクはティルピッツを蔑むように言うと

ティルピッツは嘲笑の表情を浮かべながら言った

 

「ほう…。この船は民間船と言えるのかのぅ?

ヒンデンブルク?」

 

ティルピッツはヒンデンブルクの前に写真束を出した

そこには協商連合の輸送船団が沈みゆく写真だった

 

「こ…これは!」

 

「そうじゃのう…。

そこに沈んでいっている輸送艦の数はざっと12隻ぐらいじゃのぅ…!

兵員と兵器合わせて一個師団以上じゃろ?」

 

ティルピッツの言葉にヒンデンブルクは写真を

持つ手がプルプル震えだした

 

「パウル?どうじゃ?今回は、それなりに手を貸してやったぞ?」

 

「ぐっ!グゥぅぅぅ!」

 

「これは一つの貸しじゃの?パウル?」

 

ヒンデンブルクはティルピッツを睨むと

今にも険悪なムードを漂わせた

 

(何処の世界でも陸軍と海軍は相容れない仲か…。)

 

「ティルピッツ元帥…。それまでにしておいてください」

 

っとレーダー提督がティルピッツを制した

ヒンデンブルクもゼートゥーアに宥められていた

鼻息荒くビスマルクはクレッチマーを見ると言った

 

「ふぅー!ふぅー!

そこに座っているあいつは何者だ?ティルピッツ!」

 

「む?誰のことかね?」

 

ティルピッツはわざと誰のことか分からないような表情

浮かべて周りを見渡した

ヒンデンブルクはその事にさらに腹を立てティルピッツに叫んだ

 

「おまえがこの会議に遅れてきた時から一緒に入ってきた!

貴様の横に座っている子供のことだ!」

 

ティルピッツは勿体ぶるようにクレッチマーの方を見ると言った

 

「おお!クレッチマー少尉のことか!いいだろう

紹介しよう!この子こそ、貴様の軍を助けた張本人だ」

 

ヒンデンブルク達はクレッチマーの正体に目をぱちくりさせると

クレッチマーをさらに見た

 

「まさか…。輸送艦を沈めたのが…。

そんな子供だとは言わんよな!?」

 

「その通りだ…!こう見えてもこの子は

最年少で潜水艦の艦長しているのだ」

 

ティルピッツは誇らしげにヒンデンブルクに言うと

ヒンデンブルクはさらに顔を歪めた

 

「ほら、お前も挨拶せんか…!」

 

ティルピッツは笑いながらクレッチマーをつつくと

挨拶をするように促した

 

(てんめぇ!この狸じじい!絶対自慢したいから連れてきただろ!)

 

クレッチマーは椅子から立ちがあると言った

 

「おくればせながら挨拶をさせて頂きます!

北方艦隊所属U-426の艦長をしている

クレッチマー少尉であります!」

 

クレッチマーがヒンデンブルクに向かって敬礼をすると

ヒンデンブルクはクレッチマーを見ながら言った

 

「貴様…歳はいくつだ?」

「本官は今年で12であります!」

 

「12だと?まだ子供ではないか!」

 

ヒンデンブルクはティルピッツを睨むが

ティルピッツは飄々と笑うと言った

「だが、才能はある。

そこらの士官学校を卒業した者と違ってな。

あのカナリスもそれを評価してこのわしに推薦してきたのだからな!」

 

「ふん!」

 

「この子はワシの虎の子なのじゃよ…。分かるか?

パウル?この子は切り札なのだ!」

 

ヒンデンブルクとティルピッツのムードが

また険悪な雰囲気になりかけた頃…。

 

急に扉の外が騒がしくなった

 

『へ…!陛下!お待ち下さい!』

 

『そちらは!ただ今会議中でして!』

 

次の瞬間!

扉が勢いよく開かれた!

 

そこには金色の髪でオールバックにし、口にはカイゼル髭を蓄え

白い軍服に身を包み、軍帽をかぶった男が立っていた

 

その人こそ、帝国の最高指導者にして国家元首

帝国皇帝・ヴィルヘルム二世だった!

 

ヴィルヘルム二世の姿を見た

ヒンデンブルクやティルピッツ達は立ち上がり最敬礼をした

 

ヴィルヘルム二世はその様子をニコニコと笑いながら

敬礼に答えると言った

 

「よいよい…。そう固くなるな!余はただ見に来ただけぞ!」

 

ヴィルヘルム二世はクレッチマーの前に近づくと言った

 

「ほう…。敵軍の輸送艦隊を撃滅させた男にしては小さいのぅ?

じゃが、余は嬉しいぞ!

こんな小さい子供でもこの帝国の為に働いてくれとるとは!」

 

クレッチマーはこの状況に混乱していた

 

(アイエエエエ! コウテイ!? コウテイナンデ!?)

 

「皇帝陛下…。お会いできて光栄であります!」

 

クレッチマーは混乱しながらも最敬礼のままそう呟いた

ヴィルヘルム二世はクレッチマーの言葉にさらに笑うと言った

 

「ティルピッツ!今回、この者に授与する勲章を持っておるな!」

「ハッ!持っております!」

「余に寄越せ!」

「ハッ!」

 

ティルピッツは胸ポケットから赤い箱を出すと

ヴィルヘルム二世に差し出した

 

「小さな英雄よ…。この度の活躍…見事であった!

その活躍にこの1級騎士鉄十字章を与えよう!

これからも帝国に尽くしてくれたまえ!」

 

「ハッ!ありがとうございます!皇帝陛下万歳!」

 

(あぁ…もう疲れた…帰らせてくれ)

 




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プロパガンダ

これが今年最後です。



クレッチマーは自分の置かれている状況に心底うんざりしていた。

軍の広報に載せるためとはいえ、長い時間表情を固定するのはあまりにも苦痛だった。

 

「クレッチマーさん!もう少し顔の緊張を解いてください!もう少し自然に!」

 

カメラの後ろでは、黒い髪をオールバックにした小男が、こちらに向かって、指示を出していた。

この小男の名はヨセフ・ゲッベルス…軍の宣伝部長を務める男である。

 

(海軍の戦意高揚の為だが…本当に俺でいいのかねぇ…?他にもいたろうに…)

 

クレッチマーはそんなことを考えながら、写真のレンズに向かって笑顔を浮かべた…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

クレッチマーはプロパガンダの撮影とインタビューを終えると

逃げる様に参謀本部から駅へと向かった。

 

 

「ふぅ…。帰りの車も用意してくれるとは…いやはや

流石は参謀本部と言いたいところだが…。」

 

クレッチマーは揺れる車内の中で

そう呟きながらブリーフケースから出した号外の新聞を読んだ。

 

そこには、フランソワ共和国軍の越境ニュースだった。

 

「やはりか…。これで帝国は二正面作戦を強いられるな…。

参謀本部は想定してたみたいだな…。」

 

クレッチマーは眉間に皺を寄せながら思考を巡らせた

 

(俺の知ってるシュリーフェン・プランと同じ様な作戦みたいだが…。

やはり、補給線と兵站が上手くいかないだろう。まぁ…列車での兵士の移動が上手くいったのは唯一の救いだな…。)

 

「ライン川の工業地帯近くで膠着したみたいだが…。

いったいどれだけの兵士が死ぬ事やら…」

 

(電撃戦…いや、浸透戦術を使えば膠着状態を打破できるかもしれんが…。そんな事より共和国海軍だ…。相手がどう動くかだな…。

まぁ…そのお陰で俺は休日を残り三日にされたがな!試験飛行場の見学もあるのに!)

 

クレッチマーは目を伏せながら

新聞を握り潰すとブリーフケースに押し込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

クルスコス陸軍試験飛行場

そこは、数少ない文献などから魔導技術の研究などを行っている試験場である。そんな試験場の片隅に大きな蒲鉾型のシェルターが二つある。そこが海軍飛行試験場なのだ。

 

クレッチマーは兵士が運転するオートバイのサイドカーに乗りながら向かっていた。

 

「うぅ…。酔いそうだ…。」

 

クレッチマーがそう弱音を漏らすと

運転している兵士は言った

 

「ハハハ…!海軍さんは船に乗ってるから乗り物酔いをしないと思ってましたが意外でありますな!」

 

クレッチマーはその言葉に顔を青くしながら言った

 

「残念ながら…私は潜水艦乗りなのでね…。

列車なんかはいいのだが…こういうのはね?」

「へへへ…。おっ!そうこうしてるうちに着きましたぜ!」

 

オートバイは止まると、クレッチマーは青い顔しながら立ち上がり

サイドカーを降りると軍帽をかぶり直した。

すると、建物から作業着姿の男が出てきた。

その男はクレッチマーを見るとニコッと笑いながら言った

 

「ややや!よ〜うこそ!クレッチマー少尉殿!試験飛行場へ!

私は所長のノイマンと申します!宜しく!」

 

ノイマンは手を差し出すとクレッチマーに握手をした。

クレッチマーは青い顔でニコッと笑いながら言った

 

「こちらこそ、よろしく頼む。ノイマン所長」

「それで?どんなものを見に来たのでしょう?」

「あぁ…。これ何だが…?」

 

クレッチマーはそう言うとポケットから

ティルピッツから貰った紙を渡した。

ノイマンはそれを見ると目を輝かせながら言った。

 

「これは…!例のアレを見に来たんですね?成程!了解しました!

私に付いてきて下さい!」

 

クレッチマーはノイマンについて行こうとすると上空で爆発音が聞こえた!

 

「ん?何の音だ?」

 

クレッチマーは辺りを見渡していると、クレッチマーに向かって

空から無線機器のような物が落ちてきていた!

 

「…?何だ…?…!」

 

クレッチマーは避けようとしたが間に合いそうにもなかった

ヤバイっと目を閉じたその時…!

 

「早くよけんか !馬鹿者!!」

 

という怒号が聞こえたかと思うと、

クレッチマーの襟首が何者かに掴まれ投げ飛ばされた!

 

クレッチマーはそのまま思いっきり地面とキスをする羽目になった。

クレッチマーはフラフラになりながらもなんとか立ち上がると後ろを振り返った。

そこには、パラシュートを背中に付けた飛行服姿の幼女が立って居た

 

これは、後に白銀のターニャと海狼のクレッチマーと呼ばれる。

幼女と少年の最悪の出会いであった。

 




ターニャと出会ったクレッチマー…
しかし、あまり仲が良くないようで?
ティルピッツがクレッチマーにわざわざ飛行場に向かわせた秘密とは?

次回「浪漫飛行」

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犬猿の仲

主人公はターニャと同じ世界から来てる為
幼女戦記の小説の事を知りません


飛行場の片隅に設営されたテントの下で

クレッチマーとターニャは机を挟みながら座っていた。

 

「まさか貴様も来てるとはな…。」

 

ターニャは目の前に座るクレッチマーを睨むと顔を顰めた。

クレッチマーは軍医に傷だらけの顔を消毒してもらうと顔を引きつらせながら言った。

 

「それはこちらのセリフだ…ターニャ」

「ふむ…。随分とボロボロだな?火傷顔?」

「これは、お前のせいだろう?アホ毛女?」

「おやおや…それは貴様が避けきれないのが悪いのだろう?ちび白髪?」

 

ターニャの一言にカチンっときたのか…。クレッチマーは大きく笑うと皮肉を込めて言った。

 

「ハッハッハ!済まないね!こちとらお前の様に魔導師ではないんでね!それにお前みたくちびで小さければあんなのを避けるのは簡単だろうよ!分かったか?アヒル口!」

 

「あぁ…そうだったな。お前は魔導師ではないし…。それに、背を高くするためにわざと厚底ブーツを履いてるんだったな?それで動きづらいのか?この厨二男!」

 

ターニャの言葉にクレッチマーはニコッと笑うと言った。

 

「フッ…!確かに俺は厚底ブーツを履いてるが…。背を高くするためでなくて、U・ボートの潜望鏡を見るのに丁度いいからさ?要らぬ事言うと…お前のそのアンテナむしり取るぞ?冷徹女」

「ほう…貴様がこの私にそんな事が出来るのか?それは、楽しみだ!海軍バカ」

「ハッハッハ…。そう言えば聞いたぞ?ノルデンで敵兵巻き込んで自爆したんだってな?流石は狂犬・ターニャだ!恐れ入ったよ!」

 

クレッチマーは机を叩きながらターニャを笑った。ターニャは目を細めながら、クレッチマーをじっと見るとクレッチマーを殴り飛ばした。

 

「グッ!おうおう…。とうとう手を出したな?アホ毛女!何でてめぇが試験場なんかにいるんだ!お前は最前線でも飛んでたらいいんだ!このクソ女!」

 

クレッチマーはそう言うとターニャと取っ組み合いの喧嘩になった。

 

「そう言いたいのはこっちのセリフだ!なんで貴様もこの試験場にいる?お前の所属は北方艦隊の筈だろう?ここは陸軍の管轄だぞ?貴様は海軍だろう?貴様は早く冷たい北方海域にでも戻って!潜水艦にでも乗ってろ!この優男!」

「バーカ!ここの試験飛行場は海軍の管轄でもあるんだ!チビ女!」

 

「そこらへんにして下さい!また傷を増やす気ですか!クレッチマー少尉殿!ターニャ少尉もです!」

 

軍医に怒鳴られてターニャとクレッチマーはピタッと動きを止めると、両者は離れて服装を正した。

 

「命拾いしたな?クソ男?」

「それは、こっちのセリフだ!クソ女!」

 

ターニャとクレッチマーは吐き捨てる様にそう言うとテントから出ていった。

 

 

 

クレッチマーはイライラしながら思い出していた。

 

クレッチマーとターニャは士官学校の同期(陸軍と海軍で所属が違うが)であり、ターニャとは前から何かと腐れ縁だったが…士官学校時代にある事が原因でこの険悪な仲になった事を…。

 

「フン…!こんなに腹が立ったのは久しぶりだ!あいつに会うとろくな事が無いな!」

 

クレッチマーはそう言いながらの所長の待つ格納庫へと歩いていった…

 

 

格納庫の前に着くと大きな鉄の扉が少し開いていた。

クレッチマーはそこへ横向きになりながら入っていた。

 

格納庫の中は薄暗く、奥ははっきりと見えなかった。

入口から差し込む太陽光が入口の近くにある航空機用のエンジンの存在を写し出した。

 

「ん…。このエンジンは…どこかで…。帝国軍の戦闘機のエンジンにしては…形が違うな?」

 

クレッチマーはエンジンを見ながら何かを思い出そうとしていた。

 

「液冷エンジンのようだが…何馬力あるんだ?複葉機に載せれるものでは無いな?爆撃機用か?」

 

クレッチマーがそのエンジンを見ていると所長が近づいてきて言った。

 

「クレッチマーさん!無事だったんですね!怪我をされてないようで何よりです!」

「…!あぁ…心配かけて済まなかった…。それよりもこれは?」

 

「おっ…!それに気づかれるとは!それは最新の飛行機に載せる試作エンジンですよ!今のHe51のエンジンよりも300馬力でかいエンジンです!」

 

「ほう…!1000馬力の航空機エンジンですか…!それにしても?新型機?海軍用ですか?」

 

「ええ!海軍の新型機開発をせよとの命令ですから!」

「へぇ…それは誰の命令です?」

ヴィルヘルム・カナリス(・・・・・・・・・・・・)中将の命令であります!」

 

所長の言葉にクレッチマーは口をあんぐり開けて唖然としたが…

慌てて表情を戻すとボソッと呟いた。

(フフフ…カナリス中将…流石だ。ここまで進めてくれてたとは…)

クレッチマーはニヤッと笑うと言った。

 

「それで?所長?このエンジンを積む飛行機は複葉機ですか?」

 

クレッチマーの言葉に所長は首を横に振ると言った。

 

「いいえ?新型機は最新の技術をつぎ込み単翼機にしようかと…

しかし、何分まだ技術に不安があるので脚は引き込めませんが…。」

 

「飛行機の脚を引き込む事が出来るでありますか?」

「ええ!技術が完成すれば出来ますが…まだ不安が残っています。」

「それは…また…!」

 

所長の言葉にさらにクレッチマーは笑みを深めながら言った。

所長はクレッチマーの顔を見ながらなにかに気づくといった!

 

「そう言えば…!言っておられた物をお見せするのを忘れておりました!」

 

所長はクレッチマーにここで待つようにいうと格納庫の内の電灯のスイッチを付けに行った。クレッチマーは暗い闇の中キョロキョロ辺りを見渡していると、急にバチンっと音がして入口から奥にかけて電灯が点灯始めた!

 

クレッチマーは闇の中からゆっくりと見え始めたものを見て愕然とした!

 

「こっ…これは!まさか!」

 

電灯が全てつきその存在があらわになった物を見て叫んだ!

 

 

「ツェッペリン硬式飛行船…!」




ターニャさんとはクレッチマーはクソ仲の悪いです。
飛行船って夢ありますよね…一次大戦何か首都爆撃に使われてたとか
なぜ飛行船は海軍所属なのかは最初に運用始めたのが海軍だったかららしいですよ



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浪漫飛行

お久しぶりです。皆さん!
今回は飛行船についてです。
次からはフランソワ海軍との戦いです。



クレッチマーは目の前にある大きな飛行船を見ながら

口をあんぐりと開けたまま固まっていた。

すると、所長は笑いながらクレッチマーに近づいてきた。

 

「どうです?素晴らしい物でしょう?ツェッペリン伯爵閣下の最後の作品です。」

 

所長はクレッチマーに笑いかけながら言うと少し悲しそうな顔をしながら言った。

 

「しかし…とても悲しい事ですが。魔導師の技術発達や飛行機の発達でこれも時代遅れの産物と化してしまいました。」

 

所長はクレッチマーに下に降りる階段に案内した。

クレッチマーは更に飛行船の近くに近づくと目をパチクリさせた。

 

(ティルピッツ元帥が俺に見せたかったものはコレか!確かに飛行船なら船の上に留まる事も出来る…!

しかし…飛行船には弱点がありすぎる…。速度の遅さ、離着陸の困難さ、被弾性能の悪さ、内部のガスの引火性、天候にも弱い…etcこれらを考えると衰退するのは分かるが…。

しかし!飛行船にもまだやれる事がある!この世界の飛行機の発達はすごく遅れている!陸は回転砲塔の戦車を使っているに対して…空は未だに複葉機だ!海軍にも未だに空母という艦艇は無いからな!航空魔導師というものおかげでだ…飛行船ならこの時代の爆撃機の載せれる倍の爆弾を搭載できる…!)

 

クレッチマーはニヤリと笑うと所長を見て言った。

 

「所長…この飛行船のエンジンを先程のエンジンに換装する事は可能か?」

 

所長はクレッチマーの言葉に少しギョッとしながら言った

 

「ええ…。可能ですが…それが何か?」

 

「この飛行船をまた空を飛べる様にして欲しい…!離着陸の困難さを改善する為…エンジンを上や下、後ろや前に向けるように頼む。」

 

「…!!!す…少しお待ちください!」

 

所長は慌ててポケットからメモ帳と書くものを出すと、クレッチマーの言葉を書き記し始めた。

 

「装甲は…海軍が最近開発したジュラルミンかアルミ合金で頼む。武装は…40ミリ機関砲と20ミリ2連機関銃だ。中身のガスは…水素ではないもので安全性の高いもので頼む。」

 

「こんな感じで宜しいですか?」

 

所長はクレッチマーの言葉通りにスケッチを取るとクレッチマーに見せた。クレッチマーはそれを見ると言った。

 

「うむ…。これでいい。」

「し…しかし!これほどの改造するにはどれだけの資材と金がいるか…」

 

所長はクレッチマーに不安そうな顔をした。クレッチマーは飛行船を眺めながら言った。

 

「安心したまえ…。これを改造費は軍の予算でどうにかしてもらう様にティルピッツ元帥に進言しておく。」

「は…はぁ」

「カナリス提督にも相談はするつもりだよ?この飛行船は海軍の航空戦力が整うまでのものにしたいと思っている。」

 

クレッチマーは所長を見ながらそう言った。そして、腕時計を見ると言った。

 

「済まないが…所長。知っての通り…今わが国はフランソワに宣戦布告されたばかりだ。私は明日にはカール軍港に帰らなければならない。

この飛行船の案件は新型機開発と同時並行で進めて欲しい。頼んだよ?」

 

クレッチマーは所長を見上げながら、可愛く首を少しかしげるとそう言った

所長は嬉しそうに笑いながらこう言った。

 

「ええ!了解致しました!指令が出たらすぐにでも取り掛かります!」

 

クレッチマー達は階段を登り、格納庫の外に出ようとした時!

バイクに乗った兵士が慌てて近づいてきた!

 

「…!!!クレッチマー少尉殿でありますか?」

「ん…?確かにそうだが?」

「緊急電報であります!」

 

バイクに乗った兵士はクレッチマーを見ると口早にそう言った。

クレッチマーは怪訝そうな顔をしながらこう言った。

 

「緊急電報だと?」

「ハッ!北方艦隊司令本部よりであります!」

「…!?電報をくれ。」

「ハッ!これであります!」

 

クレッチマーは北方艦隊司令本部からの緊急電報という言葉に驚きつつも電報を受け取って見た。

 

「フランソワ オスロ二 ムケテ コウコウチュウ…!?

オスロフィヨルドにフランソワ海軍だと!?まさか!帝国海軍を港からフランソワ沖合にまで出さないつもりか!機雷原でも仕掛けられたら厄介だぞ!」

 

クレッチマーは叫びながら電報を見た。クレッチマーは伝令兵を睨むと言った。

 

「何故だ?北方に出てくる前に西方艦隊は何をしていた!」

 

「それが…西方艦隊は戦力温存で未だに軍港に停泊しています…。

今回の緊急電報を打ったのは北方艦隊側です…。」

 

伝令兵の言葉に更にクレッチマーは眉間にシワを寄せて怒った!

 

「何が!戦力温存だ!戦艦が出撃しないで何をしている!戦艦はこのような時のためにあるのだろうが!フランソワは陸軍だけの国だと思っているのか!奴らは協商の比にはならんほどの艦艇を持っているんだ!どれだけ舐めているんだ!」

 

クレッチマーは電報を握り潰すと怒気を篭った声でそう言った。

 

「もういい…!急いで参謀本部にこう伝えろ!"フランソワ海軍は何処なりや?西方艦隊は知らんと欲す!"それと北方艦隊にはこう伝えてくれ!"出撃可能の高速艇を準備されたし!"以上だ!急いで伝えろ!」

 

クレッチマーはそう叫ぶと伝令兵は慌ててバイクに跨り帰っていった

所長は慌てた様子でこういった。

 

「クレッチマー少尉殿…?大丈夫ですか?」

「まずい事態になってしまったよ…。所長…何か列車よりも早くカールに向かえるものはないかね?」

 

クレッチマーはそう言うと所長は少し考えこういった。

 

「…!。クレッチマー少尉!私についてきて下さい!」

 

小走りで走る所長について行くと滑走路の近くには一機の飛行機があった。クレッチマーはそれを見ると言った。

 

コウノトリ(シュトルヒ)…。」

 

クレッチマーの知っている史実ではある独裁者の救出作戦にも使われた飛行機があった。

所長は飛行帽を被り飛行機に乗り込むと言った!

 

「この飛行機は私が運転します!早く乗って!」

 

クレッチマーは所長を見ながら少し笑うと慌ててシュトルヒに乗り込んだ!




はい…次はフランソワ海軍との戦いです。
残念ながら潜水艦では追いつかないのでSボードでの活躍となります。



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索敵掃討1

大分遅れてしまいました。
すみません…


サイレンが鳴り響くカール軍港では海軍兵士達が大慌てで動き回っていた。

 

「急げ!出航の準備を早くしろ!」

「錨を上げろー!」

「索敵部隊からの連絡はまだか!」

 

北方艦隊司令室ではデーニッツがほかの司令官と話し合っていた。

司令官の一人が声を荒げながら机を叩きつけるとこう言った

 

「フランソワは何の為にオスロに!」

「もちろん…我々をこの軍港から出さないようにする為でしょう」

「それに、オスロにフランソワの艦艇が停泊するだけでも、我々への脅威となります」

「確かに…我々への十分な牽制にもなる」

「カール軍港の沖合を機雷原でもされたら他の艦艇の修繕も出来なくなる」

 

司令官達が話し合っていると司令室に伝令兵が入ってきた。

 

「失礼致します!クレッチマー少尉殿がもうすぐ到着すると連絡が!」

「何?もうか?先程電報が送られてきたところだぞ?」

「流石は鉄十字勲章をとったものだ…。行動が早い…」

「しかし…試験飛行場からここまで数マイル離れているぞ?」

「何で来る気だ?」

 

司令官達がそう話し合っていると外が騒がしくなっていた。

それに気づいたデーニッツは窓から外を見ると空に1機の飛行機がカモメの様に飛んでいた。

 

「あれは一体…」

 

《tr》

 

 

「クレッチマー殿!カール軍港に到着しましたぞ!」

 

エンジンの音が激しい中…ノイマンは大声を出しながら、横にいるクレッチマーにそう言った。クレッチマーは背中に何かを背負いながらこう返した。

 

「ありがとう!所長…着陸してくれと言いたいが…!飛行場はだいぶ遠くにあるからな…!」

 

クレッチマーはそう言うとゴーグルをつけた。

 

「そこに着陸いたしましょう!」

「いや、結構だ!ありがとう!所長!」

 

クレッチマーは横の扉のレバーに手をかけると扉を開け放ちそう言った。ノイマン所長は驚愕の表情を浮かべながらこう叫んだ!

 

「ク…!クレッチマー少尉!何をする気ですか!」

「何…!ここから飛び降りるだけだ…!」

 

クレッチマーはそう言うとシュトルヒから飛び出した!

クレッチマーは瞬間的に後ろを向くとノイマンに敬礼しながらこう言った。

 

「さらばだ!ノイマン所長!送ってくれた事に感謝する!」

 

そのままクレッチマーは落ちていった。

 

 


 

 

作業する海兵がふと空を見やげると、空から軍服を着た少年が落ちてきていた。

 

「な、なんだ?」

「誰か落ちてきてるぞ!」

「敵か?」

 

海兵達はとっさに身構えたが、少年は途中でパラシュートを開き、上空を少し旋回した後…パラシュートを切り離し海兵の目の前に着地した。

 

パラシュートの布がその少年の背中に落ちてくると…まるで少年は天使の様に見えた!

少年は立ち上がると周りを見渡すと叫んだ!

 

「私の名はクレッチマー少尉である!高速艇の準備は出来ているか!」

「は…!はい!Sボートは今にも出撃可能です!」

 

クレッチマーの目の前に立つ、海兵は敬礼をしたままそう答えた。

 

「よろしい!Sボート部隊員は揃っているのか!」

「はい!すでに乗船しております!」

「よろしい!貴官の名は?」

「はっ!ヨセフ・タルコフスキーであります!」

「よろしい!ヨセフくん!着いてこい!」

 

クレッチマーは早足でS ボートの停泊する桟橋へと向かうのだった…。

 


 

〜フランソワ海軍・協商連合支援艦隊〜

 

 

「周りに敵影を確認したらすぐに報告しろ!いいな!」

 

見張り台で周りを確認している海兵達を叱責しているのは支援艦隊指揮官・ペリーヌ中将である。

 

「ペリーヌ中将!」

「なんだ!」

 

慌てて近づいてきた副官にペリーヌは眉間に皺を寄せながらそう返した。

 

「先程…!無線室が帝国の無線を傍受し!我々の存在が帝国にバレたようで!」

「ふん!今更気づいても遅いわ!あと少しでオスロフィヨルドだ!フィヨルドにさえ入れば!あとはこちらのもの!機関最大!速度をもっと上げろ!」

 

ペリーヌに対し、部下はこう返した。

 

「いえ!これが機関いっぱいです!」

「なんだと…!これで最大なのか!」

「ええ…!何分旧式なもので…!」

「クソったれ!」

 

ペリーヌは悪態をつくと手すりを握りしめながら海を眺めると心の中でこう思った。

 

(おのれェ!ド・ルーゴめェ…!何が…!支援艦隊を協商連合へと送るだ?ただの見栄では無いか!

何が!この私を栄誉ある支援艦隊の指揮官に任命するだ?

この艦隊の主力は、旧式の巡洋艦に新型の駆逐艦…!旧式の巡洋艦は速度が出ず、新型の駆逐艦は練度不足!

この様な寄せ集めの艦隊でよくオスロに行けと言ったものだ!まるで自殺行為そのものでは無いか!!

いくら戦意高揚の為とは言え!この様な艦隊では!帝国の北洋艦隊とも渡り合えん!逃げるだけで精一杯だ!

ド・ルーゴ!覚えておれ!ワシが本国に帰還したら!お前を元帥の座から引きずり下ろしてやる!)

 

ペリーヌは忌々しそうに顔を歪めながら海を眺めるのだった。

 


 

 

 

「魚雷装填急げー!」

「エンジンを早く動かせ!」

 

帝国海兵達は慌ただしくSボートを早く発進させようと動き回っていた。クレッチマーはその海兵達を見回すとタルコフスキーにこう言った。

 

「タルコフスキー君…ピストルを持っているか?」

「ピ…ピストルですか?」

 

タルコフスキーは、クレッチマーの言葉に困惑した表情を浮かべながらも腰のホルスターからピストルを抜くと、クレッチマーに手渡した。

クレッチマーはピストルを受け取ると暫し…それを眺めるとピストルを空に向け発砲した。

その発砲音と共に作業していた海兵達は全員手を止め、クレッチマーの方に注目する。

クレッチマーは近くにあった台の上に立つと叫んだ!

 

「諸君…手を動かしながら聞きたまえ…!勇猛果敢な帝国海兵諸君!私の名はクレッチマー少尉である!帝国海軍はたった今!危機的状況にある!愚かにも西方艦隊はフランソワ艦隊を取り逃し!フランソワ艦隊は今にもオスロフィヨルドへと向かおうとしている!事態は一刻を争う!この北海の覇者は我々帝国海軍だと言うことをあの共和国軍の連中に思い知らせてやれ!さて…!」

「クレッチマー!」

 

クレッチマーが言い切る前に司令部からデーニッツが慌てて走ってきた。クレッチマーは台の上から降りると敬礼しこういった。

 

「デーニッツ中将…私はこれからSボートに乗り、直接共和国艦隊を沈めてきます。御命令して下さい」

「う…うむ!」

(何という…!愛国心!流石は皇帝陛下に気に入られることだけの事はある!)

 

デーニッツはクレッチマーを見ながらそう思うと…返礼しながらこう言った。

 

「クレッチマー少尉!貴官をSボート特別部隊司令官に任命する!必ずや共和国海軍をオスロに入らせるな!」

「ハッ!」

 

クレッチマーはデーニッツの言葉にビシッと敬礼をすると…Sボートの近くにいる海兵たちを見ながらこう言った。

 

「さて…諸君!司令官としての最初の命令は出撃だ!礼儀知らずのフランソワの連中にこの海の支配者は誰かを教えてやれ!さらに!連中をこの冷たい北海の漁礁にしてやるのだ!必ずや…!我らが皇帝陛下に勝利を!」

 

クレッチマーがそう言い切ると海兵達は歓声を上げるのだった。

クレッチマーはさらにこう言った!

 

「よろしい!各艦の艦長は私の所に来てくれ!渡すものがある!」

 

クレッチマーは鞄からなにやら紙を出すとそれをヒラヒラとさせながら見せた。

 

「他の兵士は一刻でも早く出撃できるよう!整備を急げ!無線機も周波数を合わせろ!いいな?よし!急げ!」

 

クレッチマーの言葉に海兵達は慌てて動き始めるのだった。




帝国(ライヒ)兵器資料〜Sボート〜

S ボートとは…帝国(ライヒ)海軍が開発した魚雷艇である。
木製で出来た船体に高性能エンジンを搭載しており、速力は30ノットを超える事が可能である。武装は魚雷発射管を2基並びに37cm連装高射砲と20ミリ機関銃を装備している。木製の船体にした事により、速度が出るのはもちろんだが機雷による被害を受けないというメリットもあるのである。

感想をお待ちしております。


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索敵掃討2

お久しぶりです。皆様、年号も代わり、1年間も更新しなかった私を許してくださいませ。
暫く入院しておりまして中々更新は出来ませんでしたが
ほかの作品も結構溜まってますので更新していきたいも思います。


波をかき分け進むフランソワの協商連合支援艦隊…。

旗艦『プリモゲ』の艦橋でペリーヌはほくそ笑みながらこう言った。

 

「もうすぐだぞ…。あの諸島を抜ければ、オスロフィヨルドだ!」

 

そんなペリーヌの元に慌てた様子で海兵がやって来た。

 

「どうした?そんなに慌てて」

「そ、それが!」

 

海兵はペリーヌにある紙を見せるとペリーヌは勿体ぶりながらこう言った。

 

「タダの敵の通信記録では無いか!こんなものを私の所に持ってくるな!」

 

ペリーヌはその紙を突き返すとさらにこう続けた。

 

「最早、我々はオスロフィヨルドに到着するというのに!帝国艦隊などおそるるに足らずだ!」

「しっ…!しかし!先程までの通信が嘘のように止んだのです!代わりに…こんな文が…!」

 

通信兵はペリーヌに電信文を見ると、彼は少し見ながらこう言った。

 

「H-4 ルーク?B-2 ピジョップ?まるでチェスの駒を動かす様だな?」

 

ペリーヌは笑いながらそういうとこう続けた。

 

「こんな文を送る所を見ると…余程暇なのだろうな?帝国通信兵は!ハハハ…!」

 

ペリーヌは嘲笑うと心配する部下を無視して視線の先を見つめる。

 

「見たまえ!あの小島を!あれを抜けてしまえば…!オスロなど目と鼻の先だ!」

 

ペリーヌはニンマリと笑みを浮かべそう言った

 


 

しかし、この通信兵の忠告をペリーヌがしっかり聞いていれば…

フランソワ海軍史に残る失態は残らなかったのかもしれないー

 


 

統一西暦1967年~連邦共和国~首都・ベン~

 

アンドリューはメモをチラチラと見ながら、古びたアパートの立ち並ぶ通りを歩いていた。そして、あるアパートの前で歩みを止めると、階段をのぼりベルを鳴らす。

暫くすると…アパートのドアが音を立ててゆっくりと開けられ、その間からアンドリューを見る目が向けられた。アンドリューは帽子を取るとお辞儀をしながらこういった。

 

「ワールド・トゥディ・ニュースのアンドリューと申します。あなたがマイクル・ゼーバッハさんですか?」

 

アンドリューが微笑むと、ドアは完全に開け放たれた。

そこには包帯で顔をぐるぐる巻きにした怪しい男が立っていた。

男はしわがれた声でこう言った。

 

「よく来てくれた!Mr.アンドリュー!私があの手紙を送ったマイクルだ!よろしく!」

 

ゼーバッハはアンドリューに握手をしながらハグをすると、なんとも言えない消毒液の匂いが鼻についた。

 

「おっと!済まない。ハグは余計だったかね?さぁ、中に入ってくれ。話は中でしよう!」

 

ゼーバッハの促されるままに、アンドリューはアパートの中へと入っていった。

 

通された部屋の中には沢山の紙の山が出来ており、足の踏み場がない様に思えた。ゼーバッハは机に乗っていた書類をどかすと、古びたポットからコーヒーを入れながらアンドリューにこう言った。

 

「少し散らかっているが我慢してくれたまえ!そこのソファーなら座れるだろう」

 

ゼーバッハの指す先には紙の山に埋もれたソファーがあった。アンドリューは少し紙の山をどかすと座った。

ゼーバッハはコーヒーの入ったマグカップを、アンドリューに手渡すと

前のソファーに腰掛けた。

 

「お手紙ありがとうございます。ゼーバッハさん、貴方がお作りになった物は幾つか拝見させていただきましたが…どれも素晴らしい物でした!」

「辞めてくれまえ!お世辞は!私はただ『真実』を元帝国民である連邦共和国民に知らせてやりたいだけだ!」

 

興奮気味に喋るゼーバッハは、コーヒーを少し啜ると息を吐きながらこう言った。

 

「Mr.アンドリューは…あのライン戦線で従軍記者をしてたそうだね?」

「ええ…貴方は?」

「私は…従軍記者では無かったが!一兵士としてはあの戦場に居たよ。そのお陰でナパームにやられてね?このザマだ!」

 

ゼーバッハはそう言うと、顔の包帯を少し外して見せると、ケロイド状になった皮膚が顔の大半を占めていた。

アンドリューはそれを見て、眉を顰めながらもこう言った。

 

「そうでしたか…。それよりもあの大戦を調べれば…調べる程に…。我々の知らなかった事が沢山出てくる。一体…あの大戦の裏で何があったんでしょうか?」

 

アンドリューの質問にゼーバッハは少し黙りながらもこう答える。

 

「あの大戦…いや、世界を巻き込んだ大戦争にはまだまだ我々が知りえない『真実』がある。しかし、それは!東西分断で全て闇へと葬られてしまった!」

「確かに…東西分断によって殆どの資料が失われてしまいました。しかし、それだけではないと思えてきて」

「あぁ…その通りだ!Mr.アンドリュー!明らか意図的に抹消された『真実』があるのだよ!その内の一つが君の調べている『十一番目の女神』という訳だ!」

「ええ…貴方は何を調べておられるのですか?」

 

アンドリューの言葉にゼーバッハは、またコーヒーを飲むとこう言った。

 

「君は戦中のUボート艦隊の恐ろしさぐらいは耳にした事はあるだろう?」

「ええ…連合王国を未だに震え上がらせるデーニッツ提督が率いたUボート艦隊…」

「その通りだ!未だに連合王国はUボート恐怖症から抜けきれていない!その証拠に新造艦の殆どには対潜装備をつけるほどにな!」

 

ゼーバッハはグイッとコーヒーを飲み干すと、服の袖で口を拭った。

 

「その中でも…!Uボートによる群狼戦術は今までの潜水艦運用論をガラリと変えた!あの頃じゃ…潜水艦など予備艦程度だと思われていたのにだ!」

「ええ、その通りです」

「だが、Mr.アンドリュー?この戦術を考えたのが一人の士官候補生だった…としたらどうするね?」

 

ゼーバッハはチラリとアンドリューを見つめながらそう聞いた。

 

「群狼戦術をですか!?あれはデーニッツ提督が考案したのでは?」

「いいや…違うとも!彼はただの名目上の指揮官に過ぎないのさ!」

 

ゼーバッハはそう言うと、紙の山から古びた書類を取り出した。

 

「これはその原本だ…群狼戦術となる前のな?」

 

ゼーバッハの言葉に、一瞬…呆気に取られたアンドリューも慌てて書類を受け取ると読み始めた。

 

「それはかつてベルンにあった旧海軍士官学校の資料室に隠されていたものだ!」

「た…確かに!インクのかすれ具合といい、紙の経年劣化も当時のものですね!一体これをどこで?」

「何処だと思う?Mr.アンドリュー?」

「元海軍軍人…それも階級が上の…?」

「その通りだ!これはあの()()()()()()で手に入れたのだよ!あの()()()()からね!」

「それって!あのヒュパンダウ戦犯刑務所ですか!」

 

ゼーバッハの言葉に前のめりになりながら、アンドリューはそう言った。

 

「そうさ!戦勝国が開いた政治ショーの殉教者達が入れられた墓場さ!」

 

そう言うとゼーバッハはある一枚の写真を取り出す。

 

「これは…?」

「これはベルハニア号事件の時にとられた写真だが…」

「ベルハニア号事件…!」

 

アンドリューはベルハニア号事件を思い出す。

 

(協商連合の避難民を乗せたベルハニア号が帝国海軍に強制臨検を受け、そこから連合王国に亡命しようとしていた十人評議会の1人を逮捕した事件か…)

 

「この写真を撮ったご婦人は、帝国海軍にも臆さず勇気を出してその様子を撮ったそうだが…」

 

その写真は船の縁から撮られたのだろう…。

下を見下ろすように取られた写真にはUボートが接舷して、こちらへと乗り込んで来ているようだった。

 

「ここをよく見たまえ」

 

ゼーバッハが指さした所を、アンドリューは見つめると目を大きく開きながらこう言った。

 

「これは…子供…?」

 

人混みの多いUボートの艦橋に立っている軍服を着た子供だった。写真には背を向けているので、顔はわからないが明らかに子供だった。

 

「そうだよ…その子供こそが…君の追っている『十一番目の女神』と同じく…あの大戦の裏にいたひとりだ!」

 

ゼーバッハは愉快そうに笑みを浮かべるとまた写真を取り出す。

 

「その子供は何故か色々な事件の裏に現れる…!あの大戦で起きた出来事の裏には必ずね!」

「これは…!」

 

色々な角度から取られているが明らかに軍服を着た子供の姿が写っていた。

 

「しかし、彼の記録は旧海軍省には何も残っていない!まるで、消されたようにね!まるで()()()()()()()()()の様だがァ…?」

 

ゼーバッハはまたある文書を見せてきた。

 

「これは一体?」

「これは元皇宮関係者から手に入れたものだ」

「皇宮ですか…!」

「元メイドの1人からね…。これはある冬宮で行われたパーティーの招待客名簿だよ」

 

その名簿の中には名前ではなく、『サラマンダー旅団団長』と『セイレーン艦隊司令』と書かれた項目があった。

 

「サラマンダーにセイレーン…」

 

アンドリューが興味深く呟くとゼーバッハはこう答えた。

 

「そう!そのふたつの名は大戦後半に沢山の機密文書などに出てくる!君の求める答えも多分この名前の中に隠されてるような気がするのだよ!」

「これは何かの秘匿名でしょうか?」

「多分そうだろう…!さらに、もう1つキーワードがある『白銀』と『黒金』だ…!これらは大戦初期によく出てきている!特に!私が目星をつけている『黒金』の始まりはこれだ!」

 

 

ゼーバッハが見せてきた文書に、またアンドリューは目を丸くするのだった!

 


 

統一西暦1923年

カール軍港〜最高司令部〜

 

ひとつの机に広げられた海図をデーニッツ達は囲みながら、無線機の連絡を待っていた。

 

 

「Hー4 ビジョップ…」

 

無線機から聞こえてくる連絡を聞くと、デーニッツは海図にピンをさした。

 

「作戦開始の諸島まであと少しです!」

 

横にいる副官はデーニッツにそう言うとまた海図に目を写す。

海図には縦や横に線が引かれ、線の交差しているところには赤や青のピンが刺されていた。

 

(クレッチマー…。この様なものまで考えていたとは…流石はあのカナリスが推薦してきた子だ…。普通では考えのつかんことをする。彼の様な人間を天才と呼ぶのかもしれんな…)

 

デーニッツは海図を見つめながら、心の中でつぶやくのだった。

 


 

一時間前…

 

Sボートの出撃を急がせようとする港の端にある建物…

そこに集められたSボートの船長達は怪訝な表情を浮かべながら、クレッチマーを見ていた。

 

「先程…!デーニッツ閣下よりSボート特別隊司令に任命されたクレッチマー少尉である!君達の中には私よりも位の高いものも中にはいるかもしれない!しかし!そんな事は今はどうでもいい!今はカエル共をこの海から追い出す事が先決だ!」

 

クレッチマーは机を力強く叩きながらそう言う。

 

「もしも…!連中を取り逃がせば…!我が帝国海軍は諸国からの笑いものになることだろう!我が領海に入ったハエを追い払えない間抜け共とな!それは何がなんでも阻止せねばならない!連中を!オスロフィヨルドに入らせてはならんのであります!」

 

クレッチマーは興奮した口振りでそういうとタムエフスキーに合図を出し、各船長達に海図を渡し始めた

 

「しかし…!奴らはオスロフィヨルドに向かっているとはいえ、奴らを探し出すのは砂漠の中から針を見つけるほど難しい…!なので、今から配る海図は私の秘策だ!これを使えば連中を必ずや補足し叩くことが出来る!」

 

クレッチマーがそう言うと、ヨセフは例の海図を手渡し始めた。

 

「我々はそれを使い、暗号無線で連携をしながら…カエル共を追い詰める!この中にチェスを嗜む者はどれ程いる?」

 

クレッチマーがそう聞くとチラホラ手が上がった。それを見たクレッチマーは溜息をつきながらこう言った。

 

「よろしい…。その海図に引かれた縦や横の線が引かれてるだろう?その海図はチェスの盤面と同じだと、思ってくれればいい!縦線の上に書かれた文字と横線に書かれた数字を使い、敵を補足することが出来る!理解したかな?」

 

クレッチマーの言葉に不服ながらも、頷くSボートの隊長達…。しかし、1人の士官は進みでるとこういった。

 

「吾輩は少尉風情の貴様に指示されるなぞ!我慢ならん!吾輩は由緒正しきゲーレン男爵家の出だぞ!臨時司令になったかは知らんが!貴様の様な少尉くずれのお子ちゃまに従う義理はない!」

 

クレッチマーは面倒そうに溜息をつきながら、相手の階級を確認するとこう言った。

 

「Mr.ゲーレン〜大尉?そんなに不満かね?」

「ああ!不満だとも!戦場は貴様の様な子供が来るようなところではない!さっさとさりたまえ!」

 

ゲーレンの言葉にクレッチマーは、眉をピクリと動かすと近づいて行った。

 

「ゲーレン大尉…。貴官の出撃回数をお教え頂きたい。無論…実戦ですが…」

「ふん!貴様の様な輩よりは出撃しておるわ!」

「おや?その言葉通りなら…。その胸に何故、出撃勲章が無いのでしょう?私でさえ、Uボート戦闘章が有るというのに…」

 

クレッチマーは、ワナワナと震えるゲーレン大尉の目の前に立つと…。目を細めてこう言った。

 

「もしや…訓練しかしておられんのですかな?階級が上がったのもただ…時間と共に上がっただけの物ですね?」

 

ゲーレンはその言葉に顔を真っ赤にさせると、クレッチマーを睨みつけるとこう叫んだ!

 

「貴様ァァァァ!少尉風情がァァァ!この我輩に向かってぇぇ!」

 

拳を振り下ろしてきたゲーレンを面倒くさそうに見ながら、振り下ろしてきた腕を絡めとるとクレッチマーは背負い投げた!

ゲーレンはそのまま勢いづき、机を破壊した!

 

「ぐあぁぁぁ!」

 

ゲーレンの悲痛な悲鳴が響くと、周りの隊長達は呆然としながら見ていた。クレッチマーは倒れているゲーレンの背中を勢いよく踏みつけると、頭にピストルを突きつけ冷たくこう言い放った。

 

「おい…。いいか?クソ野郎…実戦も何も経験してないヤツが。でしゃばって来るんじゃねぇよ。由緒もクソもねぇんだよ!今は戦争中だ…。由緒だ!何だとほざくのなら、今ここで殺してやるよ…。ゲーレン大尉…」

「き…貴様!吾輩をここで殺せば…貴様は軍法会議にかけられ死刑だぞ!」

 

「命令を無視され、私を襲ってきたので、危うく発砲したとでも言うさ…。貴様が最初に手を出したんだからな…。それに安心しろ。貴様の家には、ちゃんと戦闘で死んだ事にしてやるさ…。お前の死体はそうだな…Uボートで深海にでも捨ててやろうか?お前は1回も浮いてくることなく、深海のおぞましい蟲共に骨の髄まで食われて、無くなっていくのさ!」

 

ゲーレンの後頭部にさらに力強く銃口を押し付けると、ゲーレンは絞り出すようにこういった。

 

「よ…よせ!やめろ!だ…誰か!このキチガイを止めてくれ!」

「さようなら…大尉。天国(ヴァルハラ)には行けんだろうが…達者でな…」

「い…嫌だ!し…死にたくないぃぃぃ!」

 

その言葉を叫ぶとゲーレンは気を失った。クレッチマーはまるで汚物を見るかの様にゲーレンから目を離すとこう呟いた。

 

「ヨセフ君…。このゴミを懲罰房にでも入れておけ…。さて、諸君!」

 

クレッチマーはSボートの艦長達を見回すとこう言った。

 

「さぁ!出撃だ!共和国のカエル共を北海の荒波の藻屑にしてやれ!」

『はっ!』

 

艦長達は敬礼をすると足早にSボートへ向かっていくのだった。

 


 

~フランソワ・協商支援艦隊side~

 

「ペリーヌ閣下!あの島を通過すれば!予定より早くオスロに到着致します!」

「そうか!もはや帝国海軍は追いつけんだろう!オスロに着いたら、美味い酒を飲もうじゃないか!ウハハハハ!」

 

水平の報告に艦橋は沸き立ち、ペリーヌはそれを見て上機嫌に笑う。

しかし、その瞬間!

 

ズドーーン!

 

プリモゲの左舷から水飛沫が上がると艦橋は大きく揺れた!

 

「ぬあああ!?」

 

ペリーヌ達はあまりの事にもんどり打って倒れるとこう叫んだ!

 

「なんだ!何が起きた!」

「ペリーヌ閣下!敵の魚雷です!左舷に雷撃を受けました!」

「何だと!帝国海軍は我々に追いつけんはずだ!何処からだ!」

「分かりません!敵影は見えませんでした!」

 

ペリーヌの絶叫がこだまする中、通信兵が何かを聞き取った

 

「ペ!ペリーヌ閣下!これをお聞きください!」

「なんだ!」

 

ペリーヌは無線機を強引に奪い取ると、ヘッドフォンからは声が響いてきた。

 

(よ~こそ、共和国のカエル諸君…困りますなぁ。協商連合に行きたいのなら、まずは我々を通して頂かないと…)

「何者だ!貴様!帝国海軍か!」

(名を名乗る物ではありませんよ…。なぜなら、貴方達はここで沈むんですからねぇ!)

 

無線機の声が終わる瞬間!水兵が叫んだ!

 

「さ、左舷より!多数の高速艇が接近中!」

「島影に隠れていた模様!」

「く…駆逐艦に攻撃させよ!」

「はっ!」

 

2隻の駆逐艦はSボートを狙い撃とうしたが、練度不足と初動が遅れたのもあり、Sボートを撃沈する事はできなかった!その間にSボート部隊は駆逐艦に目掛け迫撃砲を発射した!海面に着弾したが…そこから白い煙が発生し始める。

 

「クソっ!煙幕だ!」

「連中が消えたぞ!」

 

駆逐艦の海兵達が慌てていると…2隻の駆逐艦の左舷から大きな水柱が上がった!

 

「く、駆逐艦が雷撃を受けた模様!」

「何だと!何をしてるのだ!」

 

ペリーヌがそう怒鳴ると、煙幕の中から4隻のSボートが戦艦『プリモゲ』に向かってきた!ペリーヌは双眼鏡を覗きこみながら指示を出す。

 

「全砲門をあの魚雷艇共に向けろ!斉射してやるのだ!」

「はっ!」

 

ペリーヌが艦橋でそう叫んでいると、四隻のSボートはプリモゲ目掛けて迫撃砲を発射し始めた!空中や海上で砲弾は破裂すると、また煙幕を張った。

 

「小癪な真似を~!副砲を撃ちまくれ!」

 

ペリーヌはそう憎々しそうに言った瞬間!

煙幕の中から4隻のSボートが直進してくると、プリモゲの艦橋へ向かって高射機関砲を撃ちまくり始めた!

 

「ぬお!」

 

艦橋の防弾板を激しく当たる音が響き渡ると、何発かが艦橋のガラスを突き破り中で跳弾し始めた!赤い曳光弾が艦橋内部を血に染め始めた!

『ぎゃあああ!』

「こ…こんな所で!死んでたまるものか!」

 

ペリーヌは足に銃弾を受けながら、何とか立ち上がると周りを見渡した。周りの水兵はまるで死屍累々の如く、誰一人として無事な物はいなかった。

 

そんな状況を我関せずとも言わんばかりに、Sボートはさらに距離を詰めると、プリモゲの甲板に向かって迫撃砲を発射した!

弧を描くように放たれた砲弾は甲板に着弾すると炎上し始めた!

 

「うぎゃあああ!アツいい!」

「早く火を消せ!」

「クソっ!消えねぇ!白リン弾だ!」

「火薬に引火するぞぉ!」

 

甲板もまるで地獄絵図と化していたが…!それにお構い無しに迫撃砲を撃ちまくるSボート!

 

プリモゲの左舷に集中して火災が発生し始め、収集がつかない状態になっていた。4隻のSボート達はギリギリまでプリモゲに迫ると反転して煙幕の中へ戻り始めた!しかし、それと同時に煙幕の中から入れ替わりで、6隻のSボートが凄い速さでプリモゲに向かい始めた!

 

6隻のSボートはある程度まで近づくと、魚雷を投下した!

 

 

「さ…左舷より…!魚雷4!」

 

血塗れの水兵が叫ぶとペリーヌは絶叫する!

 

「回避だ!取舵いっぱい!」

「ま、間に合いません!」

 

次の瞬間…ペリーヌが見たのは、主砲砲塔付近から甲板を捲り上げながら起きる。大きな火柱だった…。

 

ペリーヌはそれを見ると目を瞑りながら、心でこう呟いた。

 

(おお…神よ…)

プリモゲは誘爆を起こしながら爆沈した




無能なフランソワ海軍のお知らせ~

次の話はクレッチマー目線です

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