GOD EATER~神々の黄昏~ (ヤトガミ・レイナ・マリー・エクセリア)
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全ての終わりと全ての始まり

どうも、更識蒼です!

漸く、GOD EATERを書き上げられました。
前作を打ち切りにして約3ヶ月………読者の皆様と再び、GOD EATERでお会いできるのを楽しみにしてました!
これからも私、更識蒼をよろしくお願いします!



 

 

 

 

 

 

西暦2066年 ロシア支部 郊外

 

 

 

 この日…ロシア支部 郊外の一件の家から出火した……それは偶然ではなく一人の少年を殺すためある男達に仕組まれた物だった

その少年が全てを知るのは五年後……すべての始まりの年……西暦2071年……大切な親友を殺されかけてからだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2067年  蒼氷の峡谷(そうひょうのきょうこく)

 

 

 

 雪に覆われた廃墟……アラガミが出現する前まではダムとして機能していたのかこの廃墟はアラガミ装甲壁と同じかそれ以上に巨大で分厚かった……が、今ではダムとしての機能は無く……アラガミの巣窟となっていた

 

 

 

 

 

 

 

「クチュン……何時来てもここは、寒いな…」

 

 アラガミの巣窟………蒼氷の峡谷(そうひょうのきょうこく)に独り……銀髪・サファイアのような透き通った青色の眼をした少年が巡回しているに近いアラガミ達に見つからないように隠れながら目的地までゆっくりと進んでいた

 

 

『おかあさぁん!』

「ッ!」

 

 隠れ歩いていた少年は女性の叫び声を聞いて足を一瞬止めると直ぐに走り出した

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 数分走った少年が見た光景は………黒髪の少女が泣きながら倒れている女性を揺すっていた………

 

「………ヨシノさん!?」

 

 少年は倒れていた女性の顔を見たことがあった………香月(こうづき)ヨシノ……四年前の2063年にMIA(作戦行動中行方不明)となっていると情報端末《ノルン》に記載されていたからだった

そして、さらに厄介な事に……情報端末《ノルン》にも記載されていなかった、新種の人型アラガミ群が少女とヨシノに集まっていた

 

「………」

 

 少年はこの世界では珍しいリボルバーを片手にゆっくりと歩いていく………コツ、コツ、コツと音を立て歩いていく

その場の何もかも時が止まったように動かなく、泣いていた少女ですら、時が止まったように泣き止み動かなかった

 

「………消えろ」

 

 

 

 少年は少女達に近い六体のアラガミに向かって引き金を引いた

 

 

 

「……大丈夫だ…もう、大丈夫だよ」

 

 それから……数分、少年は少女の前に片膝を地面に付け、少女を強く抱きしめていた……少年の後ろには数十体のアラガミが絶命していた

 

「……お母さん……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」

 

 抱き締められている少女は再び泣き出してしまう

 

「……辛いよな…本当に辛いよな……今は泣きな……大切な人を失う辛さは俺もよくわかってる……だから、今はお泣き………お兄ちゃんが…これからは守から……君のお母さんに誓って守から……」

 

少年が少女に優しく声をかける中……少年の後ろから…先程、少年が倒したアラガミと似たアラガミが複数、ゆっくりと近づいていた

 

「……」

「……(いっちゃやだよ)

 

少年が立ち上がりアラガミの居る後ろを向いて歩こうとすると少年の服の袖を少女が掴み離そうとしなかった

 

「大丈夫だよ……お兄ちゃんはどこにも行かないよ……必ず戻るから待っててね」

 

 少年は少女の頭を撫でながら優しく言うと少女の手を袖から離してアラガミの方に歩きだした

 

「………俺はもう、後悔はしたくない……去年のあの日からそう…だった…大切な……幼なじみの心を助けられなかった……それが…それが一番の後悔だ……」

 

 少年は少し低いトーンで語り始めた

 

「お前ら…アラガミに語っても仕方ないだろうな………」

 

 少年の手には何時の間にか剣先が金色に輝き、柄は漆黒の黒が覆う大剣が収まっていた

 

「全てを……終わらせよう…………奏でて見せろよ……終焉の歌…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

requiem(レクイエム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年が大剣を一振りすると蒼氷の峡谷(そうひょうのきょうこく)は光と闇の渦に呑まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2071年 極東東部

 

「……ふわぁぁぁ~」

 

 少年は車の荷台で目を覚ます。ゆっくりと起き、目を擦りながら外を見るが見えるのは岩や砂だけ…すると、助手席から黒髪で髪で作られてるであろう猫耳、白いノースリーブにピンクのカーディガンを着た少女が顔を出した

 

「おはよう!お兄ちゃん!」

「…おはよ、ナナ。」

 

 助手席から顔を出した少女の名は…呪神(オオカミ)ナナ……旧姓香月ナナ……四年前、少年…今では兄のように慕っている少年…呪神ヤマト…旧姓旧名、ヤトガミ・レイナ・マリー・エクセリアに助けられてから直ぐに引き取られ、今は運転席に座るもう一人の計、三人でこの先の支部に戻る途中だった

 

「おはよう、ヤト!よく寝てたね?」

「おはよう、おーちゃん。少し、夢を見てたんだ……ナナと初めてあった日の夢をね……」

「……そうなんだ…あ!見えてきたよ!」

 

 車の空気が一瞬重くなるが運転席に座る銀髪でナナと同じく白のノースリーブに肌色のカーディガンで黒のワンピースの少女……おーちゃんことオレーシャ・ユーリ・エヴナ・ハザロヴァが正面に見えた巨大な壁に持ち前の元気で意識を向けさせた

 

 

「ヤト……あそこにいるんだよね?」

「うん……間違いないよ。あそこに俺たちの()()()()を奪った()()が………そして……直に()()()()()も来る筈だし……あの()()()()()も来るはずだ……」

「……()()()…彼奴は何が何でも()()……」

 

 ヤマトとオレーシャは目の前に見える壁の中にいる『奴』に向かって強く殺気を放っていた

 

「……お兄ちゃんもお姉ちゃんも怖いよ……」

 

 その場にいた、ナナはヤマトとオレーシャの殺気に涙目になっていた

 

「……ごめん、ナナ」

「……ごめんね、ナナちゃん」

「……うん!お兄ちゃんもお姉ちゃんも笑顔がいいよ!」

 

 二人が頭を撫でながら謝るとナナは笑顔で喜んでいた

 

 

「……待っていてあーちゃん……必ず助けるから……」

 

 ヤマトは荷台の椅子に座りながら遠くを見ながらつぶやいた

 

「ヤト、なんか言った?」

「お兄ちゃん、なんか言った?」

「うんん、何でもないよ」

 

 そのつぶやきは誰にも聞こえず、言った、ヤマトの心の底に刻まれるだけだった

 

 

 

 

 

 

続く









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極東の地

 

 

 

 

◇ 西暦2071年 極東支部

 

 

 この日……大きなアラガミ装甲壁に囲まれた東の最端に位置する元日本…現在のフェンリル極東支部の中心建つ建物……通称アナグラは別の慌ただしさに包まれていた 

 

「おい、〝彼奴ら〟が帰ってきたってほんとかよ!?」

「ええ!本当みたいよ!」

「早く、見に行こうぜ!」

 

 男女問わず、アナグラ内を走り、この極東支部に戻ってきた〝彼ら〟を出迎えに動いていた

 

「どうしたの?みんな、こんなに慌てて……」

 

 そんな中、黒短髪の女性と茶色い服を着た男性、紺色のフードを被り、紺色のコートを着た男性がエレベーター降りてきた

 

「リンドウさん、ソーマさん、サクヤさん、ミッションお疲れさまです」

 

 その三人に受付の赤い髪の女性が声をかけた

 

「……ヒバリ、何があったんだ?」

 

紺色のコートを着た男性……ソーマさんと呼ばれた男性が受付の女性……ヒバリと呼ばれた女性に現在のこの、見幕について聞いてきた

 

「あ、はい。数分前のことです、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「「「!!!???」」」

 

 ヒバリの言葉に三人は驚愕してしまう……三人とも……いや、この極東支部の一部を除き皆、ヤマトとナナの存在は大きかった

 

「五月蠅いぞ!一体何の騒ぎだ!」

 

 別のエレベーターからどなり声とともに黒髪で白い服を着た女性が降りてきた

 

「あ、ツバキさん!実はですね、ヤマトさんとナナさんが戻ってきたんですよ!」

「……そうか…アイツ等がな………ヒバリ、皆に伝えておけ〝()()()()()()()()()()〟な」

「了解しました」

 

 ヒバリにツバキさんと呼ばれた女性は少し笑みをこぼすとエレベーターに乗り、どこかに行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対アラガミ装甲壁を超えて内部居住区を車で進むヤマト達…

 

「お兄ちゃん!私たち、戻ってきたんだね!」

「……ナナ……そうだな!俺達は帰ってこれたんだよ」

 

 助手席に座るナナの喜びの声に複雑な顔をするヤマト……だが、ナナの笑顔には勝てず、この一時だけは目的を忘れ楽しもうとした

 

「…おーちゃん、初めての極東はとうかな?」

 

 極東支部に入ってから運転を変わり、後ろの席に座るオレーシャに運転しながらヤマトが聞いた

 

「ロシアとあんまり、変わらないかな……でも……ここが最前線だってわかる……数ヶ月でも私は【GOD EATER】だったんだから…」

 

 オレーシャはどこか悲しそうに…そして、どこか懐かしむように外を見ていた………でも、外部居住区に住む住人を見ると微笑んでいた

 

 

 

だが………この一時の平和は爆発音と共に消え去った

 

「老朽化してたはずの第八外壁が破壊されたのか……おーちゃん、ナナ……どうする?」

「もちろん、私は行くよ……この極東支部には初めてくるから……私には関係ないと言えば……そう、かもしれない…でも、私は戦うよ…そのためにここまで来たんだから」

「私も戦うよ、お兄ちゃん…そして、守るよ。戦えない人たちを…」

「……フフッ…そうだな」

 

 ヤマトは微笑んでから車を発進させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡り、第八外壁 近郊

 

 

 

「…みんな酷いよ……エリックがいなくなったって……」

 

 顔を俯かせながら第八外壁近郊の狭い路地を一人、黒い服を着た少女がとぼとぼ、と歩いていた

 

「エリック……私のこと…嫌いになったのかな……」

 

 少女に優しく、何時もいろんな物を買ってくれていたエリック……エリック・デア=フォーゲルヴァイデ…彼はここ極東支部の【GOD EATER】だった……だったとはつい先日、彼は任務中に戦死……この世から去ってしまっていた……その事は少女にも伝えられていたが……少女は彼の死を受け入れることができていなかった……

 

「……ナナちゃんもヤマトお兄ちゃんとどこかに行っちゃっていないし……独りぼっちは…やだよ……」

 

 少女の目から大粒の涙が一滴、零れ落ちる……と、同時に直ぐそばで爆発音と共に何かが崩れ落ちる音が聞こえた

 

「キャアア!」

 

 少女は爆発音と何かが崩れ落ちる音に驚き、尻餅をついてしまう

 

「いったいなに………アラガミが壁を破壊したの?」

 

 少女の頭に過ぎったのはアラガミによってアラガミ装甲壁が破壊して外部居住区に侵入している、というもの……

 

「早く…逃げなきゃ……あれ……足が動かない」

 

 少女はこの場から逃げようとするが尻餅をついた影響か、足が動かなかった…

 

[ガアァァァッ!]

 

「ひぃ!」

 

 アラガミの雄叫びを聞いた少女から悲鳴がもれ、少女は必死に立とうとするがピクリとも足が動かない……すると、少女の耳に足音らしき音が聞こえて少女の顔は恐怖に包まれていく…

 

[グルルルルッ]

 

「ひぃ!」

 

 建物の影から出てきた足音の正体は二本足で頭が白い物に覆われた化け物……二匹のオウガテイル…アラガミの中で最も数が多いアラガミだった

 

「いやだ…来ないで……来ないでよ……」

 

 二匹のオウガテイルは少女にゆっくりと近づいていく……少女は泣きながら必死に立とうとするが変わらず立ち上がることはできなかった……

 

「誰か……助けて……助けてよ……エリック……」

 

 少女は亡きエリックに助けを求めるが……エリックは助けに来ない………二匹のオウガテイルが少女を補食できる距離に後、一歩の所で建物が崩れ落ち一台の車が二匹のオウガテイルを当て飛ばした

 

「ナナとおーちゃんは少女を安全な場所に!それから、リッカに持ってきたコアを!こいつらは俺がやる!」

「わかったよ、ヤト!」

「わかったよ、ヤマトお兄ちゃん!」

 

 ナナとオレーシャは二匹のオウガテイルをヤマトに任せて少女の方に向かう

 

「君、だいじょ……て、エリナちゃん!?」

「ナナちゃん……?ナナちゃん……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 少女……エリナは助けられたのと目の前の親友ナナにあえて溜まっていたのが一気に押し寄せてナナの胸で泣きじゃくる

 

「よしよし、怖かったね…もう大丈夫だよ……後は安全な場所に向かうだけだからさ」

 

 そう言うとナナはエリナを抱きかかえて車に入り、オレーシャも運転席に座り、車を発進させて中心部に向かった

 

 

「さて……俺の妹分を泣かせた罪は重いぞ?…」

 

 車を見送ったヤマトは一人、オウガテイル二匹に静かだが激しい殺気と冷たく凍り付きそうな鋭い目を向けた……

 

「……絶望のこの世を果てさせろ…世果(よのはて)!」

 

 ヤマトが唱えるように叫ぶと青白い光と共に右手に封印されるように大きな鞘に収まってる刀が現れ、握られていた

 

「……果てろ!」

 

[グガアァァァァァァァ!!]

 

 ヤマトはオウガテイルが捕らえきれない程、早く動きオウガテイル一匹に鞘に収まった状態で【世果】を上段から振るうとオウガテイルの頭をかち割り叩き潰してしまった……そこで、漸くもう一匹のオウガテイルがヤマトを捉え、補食しようと口を開き襲いかかってくるが……

 

「……らぁ!」

 

 ヤマトはオウガテイルが届く前に下段からクリティカルヒットさせた………ヒットしたオウガテイルは装甲壁にぶつかり、地面に落下する……体は潰れ絶命していた……

 

「こいつらは本職に任せるとして………」

 

 ヤマトは絶命したオウガテイル二匹に背を向け、歩いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 



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彼らの帰還

どうも、更識蒼です!

神々の黄昏3話目です!


 

 

極東支部 食堂

 

 

「先日の防衛戦成功とヤマト、ナナの帰還に乾杯!」

「「「「「乾杯!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 ヤマトとナナの帰還とオレーシャが初めて極東支部に来たのと第八アラガミ装甲壁が破壊され、アラガミが外部居住区に侵入した翌日……第一部隊隊長 雨宮リンドウの音頭で食堂にてパーティーが行われていた

 

「しっかし、お前が戻ってきてくれて助かったぜ!しかも、複数の新種コアのお陰でその日の内に装甲は治せて整備班も喜んでいたぞ?」

「被害が少なくてよかったです。集めていたコアもリッカに渡す予定だったので……でも、助けられなかった命も沢山……ありました」

「あ~、やめやめ!せっかくのパーティーなんだから、湿っぽい話はなしだ!」

「あははは、そうですね」

 

 リンドウはそう言うと別のグループに行ってしまう……ヤマトは辺りを見渡すと先の防衛戦で助けた少女…エリナと話すナナの後ろ姿を見つけた

 

「やあ、ナナ。エリナちゃんは久し振りかな?」

「「ヤマトお兄ちゃん!」」

 

 後ろからヤマトが声をかけるとナナとエリナは凄い勢いで椅子から降りてヤマトの前まで来た

 

「ヤマトお兄ちゃん……あの……そのね…エリックさんのことなんだけど……」

「うん…昨日、ツバキさんから聞いたよ…エリックのこと……」

 

 ナナが聴きずらそうにヤマトにエリックのことを聞いた

エリック……エリック・デア=フォーゲルヴァイデとはヤマトも顔見知りで良く、妹の事で話をしていた事もある仲であった………ヤマトは彼の死を昨日の内に極東支部教官の雨宮ツバキから聞かされていた

 

「ごめんね、エリナちゃん……そんなときに側にいれなくて……」

「……うんん、心配してくれてありがとう、ヤマトお兄ちゃん……ナナちゃんも……二人のお陰で少し…元気になれたと思う……それに、エリックの事も………大丈夫……多分……でも、今回で決めたことがある……聞いてくれるかな?」

 

悲しそうに話すエリナ……だが、その瞳には小さな体には大きすぎるほどの覚悟が写っていた

 

「私……【GOD EATER】になる…【GOD EATER】になってアラガミがいない世界を作りたい!そうなれば、誰も私みたいに悲しまないし、誰も戦わなくていいはずだから……私は…もっと、強くなりたい!」

「いい覚悟……うんん、俺から言えば、良い意志だ……その、意志を…………想いを忘れないで……その、想いがいつか()()するときが来るからさ」

 

 決意を…意志を現すエリナ…ヤマトはエリナの頭から帽子越しに撫でる

 

「……うん!」

 

 エリナはわけがわからなそうだったが笑顔で頷き、ナナと一緒にパーティーに戻っていった

 

「護らないとな……彼奴の為にも……」 

「そうだね、ヤト」

 

 エリナの後ろ姿を見ながら呟くヤマト……直ぐに第三者の声が隣から聞こえてきた……ヤマトが顔だけ向けるとそこにはオレーシャが立っていた

 

「……おーちゃん」

「私はエリックって人は知らないけど……エリナちゃんだっけ?エリナちゃんの想いはよくわかるよ……私も似たような経験があるから……だから……」

 

 オレーシャはロシア支部にいたころの事を思い出して顔を俯かせてしまう……

 

「護ろうね!」

 

 オレーシャは精一杯の笑顔をヤマトに向けた……ヤマトは笑顔につられて微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極東支部 ラボトリ

 

 

 

「やあやあ、久し振りだね」

「そうですね、サカキ博士」

 

 パーティーの後、ヤマトは一人、ペイラー・サカキの研究室に来ていた

ペイラー・榊……フェンリル極東支部の技術開発部門を統括するオラクル技術研究者でアラガミ研究の第一人者であり、オラクル細胞の技術利用を可能にした【偏食因子】の発見者……簡単に言えば全神機の生みの親なのである

 

「まずは、礼を言うよヤマト君。君やナナ君、オレーシャ君の活躍で被害は最小に止められた、ありがとう」

「よしてください、博士。ここは俺にとって、第二の故郷でツバキさんや博士は俺の命の恩人なんです。故郷であり、恩人がいる……この場所を護るのは当たり前です」

 

 礼を言う博士にヤマトは〝当たり前〟と答える……そんな、ヤマトにサカキ博士は残念そうな顔をしため息を吐いた

 

「〝アレ〟を使う前の君はもう少し喜怒哀楽や考え方が豊かだったんだがね」

「………壊世錫杖レクイエム……俺が初めて具現武装として具現した武器ですね」

 

 壊世錫杖レクイエム……四年前にヤマトがナナを救った時に初めてヤマトが具現した武器だったが……具現されたレクイエムの力が強すぎ、具現した代償としてヤマトは【()()()()()()()()()()()()()()()()()】のだ

 

「それで、サカキ博士……今回、呼んだのはどういう理由ですか?」

「おっと、そうだったね。本題に移らせてもらうよ………ヤマト君…君達………

 

 

 

 

 

 

 

【GOD EATER】になる気はないかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命の歯車が回り始めた

 

 

 




ほんと、誰だよここのエリナちゃん!?

えっと……はい、エリナは作者の私が【GOD EATER】で好きなキャラの一人でかなり優遇されると今の内に言っておきます……後、作者はロリコンではないので悪しからず


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新人でも無い新人

 

 

 

 

極東支部 ラボトリ

 

 

 

「やあ、待っていたよ」

 

 翌日……ヤマトはオレーシャとナナを連れてサカキの研究室に来ていた。

サカキ博士に【GOD EATER】にならないかと誘われたヤマト達は1日考える時間を貰え、こうして再びサカキ博士の研究室に答えを伝えるために来ていた

 

「早速、本題に移らせてもらいますが……三人で考えた結果……俺達、三人は【GOD EATER】にならせていただきます」

「本当かい!?それは、よかった……でも、一つだけ聞かせてほしい……なぜ、ここ極東支部で……いや、()()()()()()()()()で…【GOD EATER】になると決めたのだい?」

 

 サカキ博士は喜ぶが直ぐに疑問をヤマトにぶつけてきた

 

「簡単なことです、サカキ博士。()()()()()()()()()()()()()()()【GOD EATER】としてでもそうでなくても戦う事ではもっとも良い戦術ですから…」

 

 サカキ博士の問にオレーシャが口を挟む、この問いと答えがわからないのはナナだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セィ!」

 

 サカキ博士の研究室を後にしたヤマトは訓練所で一人、ダミーアラガミを〝世果〟で切り刻んでいた……ヤマトの右手には今朝まではなかった赤い腕輪がついていた

 

『そこまで!』

 

 上から女性の声が聞こえ、ヤマトは声に従い〝世果〟を消して深呼吸をした

 

『剣術は申し分ないな…』

「ありがとうございます、ツバキさん」

『基礎体力なども、十分と言える……だが、精進を忘れるな』

「わかっています」

『ならば、いい……これにて訓練を終了する』

「ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇極東支部 ヤマトの部屋

 

 

「……ただいま」

 

 ヤマトは訓練所から真っ直ぐ、割り当てられた部屋に戻ってきた……ナナとオレーシャの部屋は両隣なので真っ直ぐ戻って来ても問題は無かった

 

 

 

 

「……」

 

 ヤマトは戻ってきてから直ぐに部屋の変化に気がついた……誰も居ないはずの…何もおいていないはずのベッドが膨らんでいた

 

「……おーちゃんもナナも何してるんだ?」

「……あははは、バレちゃった?」

「……てへへ、バレちゃった」

 

 掛け布団を剥がすとオレーシャとナナが顔をほんのり赤くして丸まっていた

 

「それで、どうしているの?」

「ヤトと一緒に居たくて…来ちゃった」

「オレーシャお姉ちゃんと一緒で、ヤマトお兄ちゃんと一緒に居たくて…来ちゃった」

 

 オレーシャとナナは可愛く甘い声で言ってきた…ヤマトは軽く溜め息を吐いた

 

「…はぁ……今度からは普通に待っていて……色々と……な」

「「はーい」」

 

 二人とも反省の色を見せてい無いことにヤマトは大きなため息を吐くしか無かった

 

 

 

 

 

 

 

◇贖罪の街

 

 

 建物が並び立つ廃墟街……建物には大なり小なり穴が空いていた…勿論、人の気配など無く、あるのは獲物に飢えて周回する無数のアラガミと武器を持たずに佇む、少年と少女二人だけだった…

 

 

「よお、新入り……でも、無いか…」

 

 少年少女達の後方から大きなチェーンソーのような武器………神機を担いだ青年が歩いてきた

 

「まあ……一応、僕達は新人扱いなので…新人扱いでお願いしますね、リンドウさん」

 

 青年…リンドウにナナ、オレーシャは苦笑いしており、ヤマトはいつも通りに受け答えをする

 

「……」

「?どうかしましたか?」

「あ……いや、なんでもないが……ヤマト…お前、何か変わったか?」

 

 受け答えに疑問を感じたのかリンドウはヤマトを見つめていた……

 

「……そうですね…変わったと思います……僕の運命を知った…から、ですからね」

 

 ヤマトの答えの意味を知らない、リンドウは首を傾げ、ナナとオレーシャは俯いていた

 

「そ、それより、早く実地訓練を始めようよ!()()()()()()()()!!」

「…そうだな……命令は三つ、【死ぬな】、【死にそうになったら逃げろ】、【そんで隠れろ】、【運が良ければ不意を付いてぶっ殺せ】……これじゃあ、四つか……」

 

 緊張感無いリンドウにナナとオレーシャは苦笑いするが、ヤマトは気にせずに頷いてから高台から降りていった、ナナとオレーシャも続くように降りていき残されたのはリンドウだけだった

 

「……リンドウおじさんか……」

 

 残されたリンドウは先程、ナナのおじさん発言に少なからずショックを受けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 



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彼らの神器Ⅰ

 

 

 

極東支部 エントランスロビー

 

 ヤマト、オレーシャ、ナナが極東の【GOD EATER】になって一週間……ヤマト達、三人は見る見るうちに【GOD EATER】として力を付けていき、既に新人の枠を超え、下手なベテラン神機使いより強く、ここ最前線の極東支部内の第一部隊、第二部隊、第三部隊の面々に一目置かれていた………だが、彼らの活躍を良しとしない神機使いも少なからず存在していた

 

「チィ!アイツ等、目立ちすぎなんだよ!!」

「こっちの方が先輩なのに生意気なんだよ!」

「神機すら使えない《エセ【GOD EATER】》のくせに!!」

 

 彼らが極東支部を離れていた頃に増えた神機使いから批判されることが多く、また彼らを知る神機使いからも少なからずそのような声が聞こえてたりもするが……

上からそれを見ていた第三部隊の面々は酷く呆れていた

 

「バカな奴らだ、ヤマト達を妬んでもなににもならない。それをわからないのか?」

「どーでも、よくね?ヤマトの事を知らない奴らなんてさ」

「そうね、私はアラガミを打てれればそれで、いいわ。でも、彼をああ言えるときは幸せ物よ。アラガミより、恐ろしい()()()()を相手にしなくてはならないのだから……」

 

 第三部隊の少年一人、青年一人、女性一人はそんなことを話すと出撃エレベーターに乗りどこかに行ってしまった……直後、エントランスロビーにヤマト達の文句を言っていた神機使いの悲鳴が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ 鎮魂の廃寺

 

 

「何時来てもここは寒いね」

「そうだね、おーちゃん。ナナは大丈夫?」

「うん!大丈夫だよ、ヤマトお兄ちゃん!!」

 

 以前は隠れ里として使われていたお寺……今では当時の面影はなく、雪が振りつもり、あちこちにアラガミが捕食または破壊した穴が空いていた……そこに、何時もの服を着た、ヤマト達三人は来ていた……ヤマト達三人の後ろから神機を持った少年が二人歩いてきた

 

「俺、コウタよろしく!」

「第一部隊所属、神薙ユウです。よろしくお願いします」

 

 青いジャケットで茶髪の少年……ユウはキッチリとした挨拶をしてくるが黄色と茶色の毛糸のしま帽子を被った少年……コウタは簡易すぎる挨拶をしてきた

 

「僕は第六部隊所属の呪神ヤマトです」

「同じく第六部隊所属のオレーシャ・ユーリ・エヴナ・ハザロヴァです」

「同じく第六部隊所属の呪神ナナでーす」

 

 ヤマト達三人も挨拶を返すとコウタが〝ニヤニヤ〟と頬が緩んでいた

 

「チェ……同じ部隊じゃ……「時間です、行きます」…って!おい!」

 

 コウタを無視してヤマトが待機エリアから降りていく……ヤマトに続きオレーシャ、ナナと降りていきユウはコウタに苦笑いしながら降りていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ……こんな物か…おーちゃん、ナナ大丈夫だった?どこか怪我ない?」

「うん、大丈夫だよ」

「どこも怪我ないよ!」

 

 オレーシャとナナの二人を心配しながら声をかけるヤマトの後ろには中型アラガミグボロ・グボロ2体が倒れ、絶命していた

 

「…この三人なんなんだよ………無茶苦茶つえーじゃん…」

「……だね」

 

 ユウとコウタはヤマト達の強さに驚愕し動揺していた

 

「それじゃあ帰投……」

『緊急事態です!』

 

 帰投しようとするとインカムからオペレーターのヒバリの荒々しい声が聞こえてきた

 

「こちらヤマト……どうかしまたか?」

『緊急事態です!作戦エリア内に中型アラガミが 侵入……待ってください……そんな!作戦エリア内に次々と中型アラガミが侵入してきます!』

「…こちらヤマト……侵入した中型アラガミを視認…コンゴウが集まってきています……」

 

 ヤマト達の視線の奥にはゴリラ型のアラガミ……コンゴウが三~四体がいた……

 

「極致型……」

 

 続々と通常種のコンゴウが歩いていく中には寒い地に適応した白いコンゴウ……コンゴウ堕天種も複数体確認できた

 

[ガアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!]

 

「……最悪だな」

 

 通常種と堕天種の二種類だけならと……誰もが思った事だったのだろう……だが、現実はそう甘くはなく……ヤマト達の目の前に金色のコンゴウ……接触禁種のハガンコンゴウが三体現れた

 

『現在、第一、第二部隊に救援を要請中……両部隊ともに20分はかかるとのことです…』

(チィ)……了解しました……」

 

 ヤマトは周りに聞こえないように舌打ちしインカムから手を離した

 

「……ユウさんとコウタ……さんは今すぐに戦線から離脱してください…退路は直ぐに開きますから…」

「待てよ!この数を三人でなんて無茶だ!俺たちも……「あんた達が居ても足手纏いなの!」…ぅ」

 

 ヤマトに反論したコウタはオレーシャに怒鳴られて肩身を狭くする

 

「神機に漸く慣れ始めた新兵が居ても足手纏いなの!邪魔なの!敵が一体で通常種なら話は別だけど今はそんな悠長な状態じゃないよ!私達が囮になってあげれるから早く逃げなさい!」

「……はいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 コウタは怒鳴るオレーシャに恐怖を覚え少しだけ震えていた

 

「話は纏まったな……早く行け」

「ありがとう……帰ったら奢ります」

 

 ユウはそう言うとコウタを連れて初期の待機エリアに向かって走り去っていった

 

「さて…ゴリラ狩りの始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言ったヤマトとヤマトの後ろで構えているオレーシャとナナの眼の色が赤く染まっていた…

 

 

続く



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彼らの神器Ⅱ

 

 

 

 

「さて…ゴリラ狩りの始まりだ」

 

 

 

 そう言ったヤマトとヤマトの後ろで構えているオレーシャとナナの眼の色が赤く染まっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ 鎮魂の廃寺

 

 

 

[グルルル]

 

「……ほんと集まりすぎだな」

 

 ヤマト達三人を包囲するようにコンゴウ種が大量に集まっていた

 

「…でも、私の【誘引】を使ってるからコウタやユウさんは無事に戻れてるはずだよ!」

 

 誘引……ナナに眠っていた特殊能力で周囲のアラガミのヘイトを全てナナに向ける事ができる能力なのだが暴走してしまうとどんどんアラガミを引き寄せてしまう両刃の剣でもある

 

「わかってるよ、ナナ。さて……ゴリラ共も痺れを切らしそうだし狩るか」

 

 コンゴウ達は今にでも襲いかかってきそうなほどにヤマト達を睨んでいた

 

「……神々を朽ち果てさせろ…世果!」

「……継ぎし者に光の加護を…クラリッサ!」

「……全てを無に帰せ…ラビュリス!」

 

 ヤマト達が唱えると青白い光と共にヤマトの右手に封印されるように大きな鞘に収まってる〝世果〟が現れ、ナナの両手にナナの身長の倍はある両刃斧が現れ、オレーシャの周りにはコアと思われる青い部分の周りにいびつな形の破片が散らばる純白の長杖と純白の長杖と同じコアと思われる紫部分の周りにいびつな形の破片が散らばる禍々しい黒い長杖、そして…流線型の物質が淡く光っている長杖の計三本が現れた

 

『すごい数だね、オレーシャ?』

「そうだね、シャオ。でも、関係ないよ……障害になる奴は全て倒すだけだよ」

 

 流線型の物質が淡く光っている長杖から少年の声が聞こえてきた

 

『それもそうだね、オレーシャ……いや、()()()クラリスクレイス』

「ふふ、それじゃいこうか…ヤトやナナちゃんに任せるのは駄目だからね」

 

 オレーシャが話していた中、ヤマトとナナは目の前のコンゴウ等を根絶やしにしていた

 

「四代目クラリスクレイス……援護砲撃行きまーす!」

 

 三本の長杖……クラリッサ三本からブラスト使いが放つ〝メテオバレット〟と良く似た砲撃が放たれコンゴウ達を次々と消し積みにしていき、ヤマトとナナは砲撃を難なく回避しながら次々、コンゴウを狩っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、お前ら無事か?」

 

 そのころ、安全エリアに退避していたユウとコウタ達に救援に来た第一部隊と第二部隊が合流していた

 

「リンドウさん!サクヤさん!」

「……はい、僕達は無事なんですけど……」

 

 ユウが現状説明をしようとしたとき……お寺の奥で爆発音が聞こえその場の全員が振り向くと爆発音がしたところから黒い煙が上がっていた

 

「話は後だ、俺達第一部隊は左から進む、第二部隊は右から進んでくれ」

『『了解!』』

 

 第一部隊隊長のリンドウの指示の下、第一部隊は左の道、第二部隊は右の道から進み始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなの……これ?」

 

 左の道から奥に進んだ第一部隊……お寺の奥にたどり着いて直ぐにその場のコンゴウ種の大量の死体に女性スナイパーのサクヤが声をもらした

 

「……これ全てヤマト達が殺ったのかしら?」

「だろうな……ヤマトたちの戦いが続いてるはずだ、行くぞ」

「まって、リンドウ!」

 

 

 リンドウ達、第一部隊はヤマトたちを探し更に奥へと進んで行こうとすると、コンゴウが一体、此方側に走って来るのをサクヤが気づいた

 

「先にアイツを片づけるぞ!サクヤ、コウタバックアップ!俺とソーマで……」

『これで終わり!三連クラリッサバースト!』

 

 迫るコンゴウを向かいうとうとすると神機を構える第一部隊……すると、声が聞こえて直ぐに迫ってきていたコンゴウに三つの火の弾丸が直撃し跡形もなく消し飛んでしまった

 

「……い、今のはブラストのかしら?」

「詮索は後だ、ヤマト達を直ぐに探すぞ」

『りょ、了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後直ぐ、コンゴウの血で血まみれのヤマト、オレーシャ、ナナが発見され救助されたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 



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衰えた少年

お久しぶりです!
スランプになってはや一年近くの時が‥‥‥‥
はい、更新できずすみませんでした!!
それから短く雑ですみません!!
それでは最新話どうぞ!!


 

 

◇贖罪の街

 

 

「…これでラスト!」

 

〔グギャアアアア〕

 

世果と同じ見た目で鞘が青と水色の剣を空からオウガテイルに叩きつけた少年……ヤマトは周りを警戒しながら地面に着地した

 

「…ふぅ~」

 

『『お兄ちゃーん!(ヤトー!)』』

 

一息付き、世果と類似の剣をしまうと遠くからヤマトを呼ぶ声が聞こえ、ヤマトが振り向くと手を振るオレーシャとナナの姿があった

 

「…此方、ヤマト。これから帰投する」

 

『お疲れさまです。お帰りをお待ちしてます』

 

二人に手を振り、イヤホン型通信機で極東に連絡しながら二人の方に歩くヤマト…

 

ヤマトとオレーシャ、ナナが大量のコンゴウ種と戦ってから既に一週間……ヤマト達は三日前から任務にでられる用になり、いつもの生活に戻っていた

 

 

「お兄ちゃん、お疲れさま!」

 

「ヤマト、おつかれ!」

 

オレーシャとナナの二人が走ってきてその後ろから赤い帽子に銀髪、アクアブルーの瞳、学生服風の赤と黒い服に赤いスカートの美少女が周りを警戒しながらついてきた

 

「……」

 

「…もう、アリサったら警戒しすぎだよ!」

 

「私は当然のことをしているだけです!貴方達は警戒しなさ過ぎです!!」

 

美少女の名はアリサ。アリサ・イリーニチナ・アミエーラ。ロシア支部から二日前に赴任してきたばかりの新人でこの二日間で既に極東支部の神器使いからは嫌われていた

 

「別に警戒してない訳じゃない…ただ、俺達3人は気配に敏感でこのくらいの警戒度でも補足される前に身構えることができる……それだけ」

 

ヤマトがそう言うがアリサは全く理解できない見たく何も言わずにその場を去っていった

 

「……俺たちも戻ろう」

 

「うん、お兄ちゃん!」

 

「う、うん…そうだねヤト…」

 

ヤマトの言葉にナナは元気良く頷くがオレーシャは先を歩くアリサを表情を暗くしながら見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極東支部 エントランスロビー

 

「ただいま、帰還しました」

 

「お疲れさまです、ヤマトさん、オレーシャさん、ナナさん。あちらにエリナさんが来てますよ」

 

ヤマト達が極東支部に戻るといつも通りにヒバリが出迎え、更にはヤマト達に客…エリナが来ていることを伝えてくれた

 

「ありがとうございます、ヒバリさん」

 

 

 

「あ!お兄ちゃーん!」

 

「お、おっと」

 

ヒバリからエリナが来ていると聞きエントランスの階段を上るとエリナがヤマトに向かって走りながらジャンプして抱きついてきた

 

「エリナちゃん、階段で飛び込んでくるのは危ないよ」

 

「エヘヘ、ごめんなさい」

 

エリナはヤマトに謝りながらも反省しているようには見えていなかった

 

「お前達、戻ったか‥‥その様子だとお前達三人に三日間熟して貰った任務はリハビリにもならないようだな」

 

「ツバキさん、お疲れ様です。そうでもないですよ‥極東からロシアの間で野良狩りしてたよりは大分鈍ってましたし具現の練度も少なからず二割近く落ちてました‥‥今の僕ではスサノオやウロボロスなどの大型禁忌種は倒せないと思いますよ」

 

「それほどまでに落ちているのか?‥‥‥早めに全力を出せる様にしておけ‥‥何かが起きてからでは遅いからな」

 

「勿論分かっています。なるべく早くこの鈍りを取り除きます」

 

「期待している」

 

ツバキは少し微笑むとヤマトと別れエレベーターに消えていった

 

 

「ねぇ、ヤマトお兄ちゃん?具現ってなに?」

 

ツバキと話してる間ずっと静にヤマトに抱きついていたエリナがツバキとの会話で聞こえた「具現」について聞いてきた

 

「具現ってのは想いの力を形にしてこの世界に顕現させる‥‥‥自分のイメージを形にして奇跡を起こすってことだよ」

 

「うっ、ヤマトお兄ちゃん‥なに言ってるか分からないよ~難しいよ」

 

「エリナちゃんには難しかったね。でも、エリナちゃんにはいつか必要になるかも知れないから今は頭の隅にでも置いとけばいいよ」

 

「う、うん」

 

ヤマトの話を理解できないでいたエリナ‥‥そんなエリナの頭を撫でるヤマト‥‥エリナの頭を撫でるヤマトの顔はレクイエム使用後からナナやオレーシャ、エリナの前でしか見せない程の微笑みだった

 

 

 

 

 

 

 

続く



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ヴァジュラ

5年も待たせてしまい申し訳なかったです
これからたまに更新を再開します


  

 

 

 ◇

 

「ヴァジュラですか‥‥」

 

 極東支部に第二の新型神機使いアリサ・イリーニチナ・アミエーラが来てから少したった頃、ヤマト達、第六部隊はツバキにエントランスロビーへと集まる指示を受け三人が集まると【鎮魂の廃寺でヴァジュラ討伐】を言い渡された

 

「そうだ。ここ最近ヴァジュラの出現が増えて、偵察部隊や新人に被害が出ていてな。先程も第一部隊のソーマ、サクヤ、コウタ、ユウの四人が贖罪の街に出現したヴァジュラを討伐に行かせたところだ」

 

 ツバキの話にヤマトは何か不安を覚えた‥‥‥それは贖罪の街に第一部隊を送った事なのかそれ以外なのかはヤマトはわからなかったが今日はよからぬ事が起こるとヤマトは感じていた

 

「わかりました‥‥準備ができ次第、出発します」

「ああ、よろしく頼むぞ」

 

 ツバキはそう言いエントランスロビーからエレベーターに乗り居なくなった

 

「ナナ、オーちゃん‥‥嫌な予感がする‥‥ミッション中、何時もよりも警戒を怠らないで」

「うん、わかってる。私もなんかわからないけど【フォトン】がザワついてるから良くないことが起きるかも知れない」

「うん、わかってるよ、お兄ちゃん。私も今朝からずっとチクチクしてるんだ」

 

 二人とも今朝から何かしらの異変を感じておりヤマトの言葉に軽く頷いた

 

 

 

鎮魂の廃寺

 

 

「‥‥いた」

 

 大量のコンゴウ種と戦ってから数週間しか経っていない鎮魂の廃寺にヤマト達、3人はミッションで再び訪れていた。

鎮魂の廃寺に来て直ぐにヤマト達は今ミッションのターゲットのヴァジュラを見つけていた

 

「オーちゃん、ここからナナキで狙撃できるか?」

「うん!任せて!全てを撃ちぬけ!戒剣(かいけん)ナナキ!!」

 

 オレーシャが名前を呼び新たな具現武装を具現した

紫の長生き銃身に黒と紫の四枚羽の銃がオレーシャの手元に具現した

 

「まずは、左前足!!」

 

 オレーシャが引き金を引くとオラクルが圧縮された弾丸がヴァジュラに向かって放たれた

 

[グギャッ!?]

 

 ヴァジュラは不意打ちで左前足を撃たれた事でバランスを崩して倒れ込んだ

 

「今!」

「了解!」

 

 ヤマトの合図でナナの身長の倍はある両刃斧、閻斧(えんぶ) ラビュリスを持ったナナと封印されるように大きな鞘に収まってる世果(よのはて)を持ったヤマトの二人がヴァジュラに急接近する

 

「ぶっ叩け!!」

「砕けちゃえ!」

 

[……グォォォォ…]

 

 倒れ込んでいるヴァジュラの正面から世果(よのはて)を振るうヤマトと閻斧(えんぶ) ラビュリスを振り下ろすナナ…パワーがあり過ぎた為にヴァジュラに当たると同時に地面がエグレ、大きめなクレーターを作り出してヴァジュラはなすすべも無く力尽きた

 

「ふぅ~。ヴァジュラは呆気なかったな」

「そうだね、お兄ちゃん」

「無事、任務完了だね」

 

 具現武装を解くヤマトとナナに同じく具現武装を解いたオレーシャが合流する

 

「私も折角ナナキの斬モードがあるから近接戦も出来るようになろうかなぁ~」

「いいんじゃないか?剣の扱いなら俺も少しなら教えてあげられるよ」

「嘘だ~。ヤトが少しなら誰も教えられないよ~。ヤトって元師範代なんだからさ」

 

 そう言うオレーシャにヤマトは何も言わずに俯いてしまう

 

「あっ、ごめん」

「いいさ、気にしないでくれ。もう何年も前のことだから」

 

 そう言って笑顔を見せるが、ヤマトの笑顔には感情が籠もっていなかった

 

「それじゃあ、帰ろ!私おなかすいたよ~」

「はは、ナナは食いしん坊だからな。」

「そうだね、それにここは寒いから早く帰りたいかな」

 

 話を変えようとナナはいつもの笑顔で2人に言うと、ヤマトは少し微笑み、ナナの頭をなでる

 

「そうだ、コアを採ってと」

 

 ヤマトの右手の機械が音を立て起動すると神機の捕食形態(プレデターフォーム)と酷似した口が機械から飛び出しヴァジュラを捕食した

 

「いつ見てもすごいよねぇ~、お兄ちゃんの発明品」

「ありがとう、ナナ。技術者として嬉しいよ。」

 

 捕食特化型神機〝アバドン〟、出現頻度が激レアで倒すとレアな素材を落とすと言われているアラガミ〝アバドン〟から由来されたそれは、高い偏食因子を持つ者しか扱えないため、現状、現役の神機使い、引退した神機使い、そしてヤマトくらいで、現在使っているのはヤマトだけであった

 

「こちらヤマト、ヴァジュラを討伐。帰投する」

『ヤマトさん!?ちょうど良いところに…あ、いえ…済みません』

 

 帰投するためにヒバリさんに連絡を入れると慌てているのか何かを隠しているのか驚かれた

 

「ヒバリさん。()()()()()?緊急事態だろ?」

『その…実は……え?はい。わかりました、ツバキさんに変わります』

『私だ…先程、第一部隊のソーマから連絡があり、贖罪の街にて別任務中のはずのリンドウとアリサと遭遇、その後二手に分かれて探索中にヴァジュラの新種と遭遇、教会内でリンドウとアリサが戦闘。戦闘中にアリサがバレットを誤って天井に撃ち込んでしまい、リンドウが孤立、救助を試みるもヴァジュラの新種と戦闘になり、リンドウの指示でセーフティーエリアまで撤退したとのことだ』

「そうですか………ツバキさん、()()()()()()()()()()()()ありませんか?」

『ッ………リンドウを…弟を頼む』

 

 いつもは冷静で物事を考えているツバキさん、そんな彼女が普段見せることのない、言葉を口にした

 

「勿論です、第六部隊は第一部隊隊長の雨宮リンドウの救助活動を始めます。」

『待って下さい!ヤマトさん達の位置からでは!』

「安心してくれ、ヒバリさん。方法ならある。」

 

 ヤマトはそう言うと通信を切り、ナナとオレーシャに振り返る

 

「2人とも話は聞いたと思うが……」

「うん!リンドウおじさんを助けに行こう!」

「既に座標はセットしてあるよ。戦闘も考えて、空中に設定してるから跳んでからは気を付けて」

「2人ともありがとう。それじゃあ……」

 

 3人はそれぞれの具現武装を掲げる

 

「六芒均衡、1呪神ヤマト」

「六芒均衡、3呪神ナナ!」

「六芒均衡、5オレー……ううん、4代目クラリスクレイス・アナスターシャ・レオンノヴァ!」

「「「六芒の輝きにかけて!アラガミを殲滅する!」」」

 

 3人の足下に六芒星が輝くと3人の姿が消えてしまった

 

 

 

 

 

 

続く



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蒼穹の月

 

 

 

 

 ◇贖罪の街 上空

 

「あれは、プリティヴィ・マータだな?」

「うん、マータだね」

 

 鎮魂の廃寺から消えた3人は贖罪の街上空にいた

ツバキから聞いていた〝新種のヴァジュラ〟とは、ユーラシア大陸で確認されていたとされる、ヴァジュラ神属の接触禁忌種のプリティヴィ・マータ。ヤマトは独自の情報網でフェンリル本部からの情報を入手し、ロシア支部と極東支部の往復で何度か討伐していた

 

「おーちゃん!」

「任せて!クラリッサ!!」

 

 ヤマトの声にオレーシャ……アナスターシャは頷くと3本の杖がアナスターシャの回りを浮遊するように現れた

 

「ロックオン!手加減なんてしないよ!クラリッサ、イル・フォイエ!」

 

 イル・フォイエ、アナスターシャが使う火属性最大技。クラリッサにより隕石を炎で作り出し、ターゲットに向けて落下するこの技はたとえ接触禁忌種であろうと火属性が効かない限り一発で絶命させてしまう

 

「ナナ!」

「OK!お兄ちゃん!」

 

 勢い良く着地した3人は平然とプリティヴィ・マータの死体の間を走り抜け、アリサが誤射した瓦礫で塞がれた入り口にたどり着くと、ヤマトはナナに声を掛ける

ナナは兄でもあるヤマトの考えを即座に理解し、ラビュリスに力を込める

 

「うおオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 叫ぶナナに呼応してラビュリスが光り出し、ナナはそのまま振り下ろした

振り下ろされたラビュリスは瓦礫を破壊して入り口が開かれる

 

「うおぉ!?ヤマト達か!?」

「ツバキさんからの指示で救出しに来ましたよ、リンドウさん」

 

 教会の中では複数のプリティヴィ・マータを相手取るリンドウが瓦礫が吹き飛んだことに驚いて声を上げていた

 

「おーちゃん、ナナはマータを頼む。俺はあの親玉を狩る」

「うん、了解」

「は~い!」

 

 教会内にはプリティヴィ・マータだけでは無く、教会の高い位置の外に通じる穴にボスの風格を持つ〝黒いヴァジュラ神属〟が高みの見物をしていた

 

「情報でも見たこと無いアラガミだな………いや、どこかで聞いたことがあるか? 誰の話だったか? 話、トラウマ……ヴァジュラのトラウマ……そうか、思い出した」

 

 ヤマトは目の前の〝黒いヴァジュラ〟をどこかで聞いたことがあると記憶を思い出していく、そして、思い出すと怒りをあらわにした

 

「お前()()()()()()()()()()()()()()()()だな?!」

「ッ!!」

 

 怒りをあらわにしたヤマトが叫んだことにプリティヴィ・マータを殲滅していた、アナスターシャが驚きの表情をする

 

「漸く見つけたぞ!」

 

 ヤマトは世果を構えて走り出した

 

[GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!]

 

 黒いヴァジュラは吼え、ヤマトに向きって雷球を複数放つ

 

「ヤマト!」

「おらぁ!!」

 

 後ろのリンドウがヤマトに叫ぶが、世果・封にサーフボードのように乗り、そのまま雷球を封殺して黒いヴァジュラに突貫した

ライドスラッシャー……ヤマトが突貫するときによく使う技で武器をサーフボードの変わりにして突撃する技だが、もちろんのこと、武器をサーフボードにするため自分より高い位置の相手には無防備を晒すことになる

 

「随分硬いな、その鱗」

 

 世果・封を黒いヴァジュラに叩きつけるが、あまりダメージを受けていなかった

 

「あぁ、わかってるよ。お前も骨のある奴を相手にしたかったよな、世果。お前の封印解いてやる!存分に力を振るえ!」

 

 武器と喋るヤマトにリンドウは困惑していたが、ヤマトが鞘を外すと光り輝く刀身があらわになる

 

「いくぞ!」

 

 ヤマトはそのまま黒いヴァジュラに向けて走り出した

 

「おい、ヤマト!」

「大丈夫だよ、リンドウさん」

 

 ヤマトを制止しようとするリンドウはアナスターシャに止められた

 

「ヤトが世果の封印を解いた時、それはヤトの本気なの」

「ヤマトの本気?」

「はい、ヤトのお父さんはある剣の流派を継いだ人でした。ヤトも幼い頃からその流派を教わり、師範代にまで上り詰めてました」

 

[GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!]

 

 話の途中、黒いヴァジュラの咆哮が聞こえ、アナスターシャがふり向くとヤマトが高くジャンプしていた

 

飛天御剣流 (ひてんみつるぎりゅう)………龍槌閃(りゅうついせん)!!!!」

 

 高くジャンプしたヤマトはそのまま重力に逆らわず落下する

落下地点では黒いヴァジュラが口を開け今にも跳びかかろうとしていたが、ヤマトは構わずに落下したまま剣を振り下ろした

振り下ろされた剣は落下速度も合わさり重い斬撃になっていた

 

「飛天御剣流、何人も教わりましたが技まで継承しているのはヤト1人だけです」

 

 ヤマトが着地と同時に黒いヴァジュラも崩れ落ちたが、誰一人警戒を緩めていなかった

 

「仕留め切れなかったか」

 

 ゆっくりと起き上がる黒いヴァジュラ……ヤマトの一撃で左目と幾つかの牙が結合崩壊して地面に落ちているだけだった

 

「逃げた?」

 

 黒いヴァジュラは立ち上がると高みの見物をしていた穴から外にでていった

 

「ヤト、追いかける?」

「いや、深追いは辞めよう。一先ず、リンドウさんの救出には成功したからな。帰投しよう。ヒバリさん、ヘリの手配をお願いします」

『は、はい!至急手配します!』

 

 通信機越しに慌てるヒバリの声にヤマトは微笑んでいた

 

 

 

続く



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六芒星

 

 

 

「お前達、よく戻った」

 

 ヤマト達、四人がアナグラに戻るとアリサを除く第一部隊のメンバーと第二、第三部隊、そして教官のツバキが待っていた

 

「救助任務は成功しました、ツバキさん」

「ああ、よくやってくれた。リンドウとヤマトは後ほど報告書を提出するように」

「わかりました、それからあー、アリサはどうしてますか?」

「アリサは主治医の元、現在医務室で治療中だ。面会も禁止されてる」

「そうですか、おーちゃんついてきてくれ。リンドウさんも」

「ん、了解!」

「俺もか?」

 

 ヤマトはアナスターシャとリンドウに声をかけ歩き出そうとすると、ツバキに止められた

 

「待て、アリサへの面会は禁止されている」

「これは俺とおーちゃん、あーちゃんの問題です。面会禁止だろうと関係ないです。それに……」

 

 ヤマトの次の言葉には憎悪が滲み出ていた

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ツバキはヤマトの初めてみるその顔に一歩引いてしまう

 

「……なら、私も行こう。私なら少なからず融通が利くからな」

「……わかりました、お好きにどうぞ」

 

 ヤマトはツバキにそれだけ言うと歩き出した

 

 

「イヤアァァァァァァァ」

「失礼するぞ、オオグルマ先生」

「おや、雨宮教官?アリサの面会は禁止したはずです………!!??」

「どうしたオオグルマ先生?リンドウの顔を見て驚かれてる様子だが?」

 

 医務室にツバキを先頭に入っていくとアリサの悲鳴が響き渡る中、ツバキがオオグルマに声をかけた

オオグルマはリンドウの顔を見るや驚愕していた

 

「い、いや!何でもない。用が無いなら出てってくれ!」

「出て行くのはお前だろ、ヤブ医者?」

 

 話を切ろうとするとオオグルマに普段よりも低い声でヤマトが言い、前に出る

 

「なんなんだ、君は?いきなり私をヤブ医者呼ばわりして?」

「ヤトガミ・レイナ・マリー・エクセリア。お前にはそう言えばわかるだろ?」

「!!!???」

 

 〝ヤトガミ・レイナ・マリー・エクセリア〟、オオグルマがそれを聞いた途端に先程よりも驚愕し、悪魔を見ているようだった

 

「さっさと、出て行きお前のご主人様にでも報告するんだな。さもなければ、医務室を赤く染めるぞ?」

 

 普段見せないヤマトの顔に後ろのツバキたちも一瞬震えるが、ヤマトの殺意を向けられているオオグルマは顔色を青くして医務室を飛び出していったのだった

 

「ヤブ医者が居なくなったから、後は錯乱しているアリサですね」

「あぁ……だが、どうするつもりだ?鎮静剤などは彼奴しか打つことが出来ないぞ?」

 

 普段通りの無表情で話すヤマトに少し反応が遅れるツバキ

そんなツバキを気にせず、未だに錯乱しているアリサの元に歩くヤマト

 

「いい加減にしろ、馬鹿アリサ!!」

 

 珍しく叫び、アリサの頭を殴りつけるヤマトについてきたリンドウとツバキが驚き、口を開けていた

 

「……い、痛いじゃないですか!?いきなり殴るなんて酷いですよ!?」

 

 先程まで錯乱していたアリサが殴られた痛みで我に返り、ヤマトに苦情を言ってきた

 

「そんなことより、周りを見ろ」

「そんなことってなんですか!?そんなこと………リンドウさん」

「よお、アリサ。元気そうでなによりだ」

 

 ヤマトに怒るアリサはリンドウの顔を見て顔が強張ったが、リンドウは普段通りに話していた

 

「アリサ、今回のことは気にするな。誤射なんてよくあることだ」

「ですが私は……リンドウさんをアラガミと一緒に……」

「閉じ込められたがヤマトに助けられた、それでいいじゃないか。それに、俺は隊長だからな、部下は全員生きて帰させる。隊長の使命だ」

「それで、お前が死んでは意味がなかろう」

 

 アリサにそう言うリンドウ、普段は不真面目であるが第一部隊を任されている者としての覚悟はリンドウは持っていたのだった

 

「まあ、そんなわけだ。俺がこうしているのもヤマト達のおかげだ」

「気にしないで下さい、リンドウさん。リンドウさんは俺の家族みたいなもんですから」

「そうか……、アリサ。邪魔したな、取り敢えずゆっくり休め」

「……はい」

 

 リンドウとツバキはそれだけ言うと医務室を後にし、医務室にはヤマトとアナスターシャ、病院服のアリサの3人となった

 

「ねぇ、アリサ?私とヤトにどこか……多分ロシアで会ったことない?」

「…何言ってるんですか?あるわけないじゃないですか」

「……そう、だよね。ごめんね!変なこと聞いて」

「いえ……でも、ロシアにいたとき、新型GOD EATERに選ばれる少し前…両親が殺されてから入院していた病院でよく取り乱して、私と同年代くらいの少年に殴られたことがありました」

 

 普通なら問題であるその行動だったが、結果的にアリサは落ち着きを取り戻して一般レベルの生活に戻れるまでに回復したのだった

 

「そうか……すまなかったな。心身ともに疲れているのに邪魔したな。明日また来る」

「アリサ、ゆっくり休んでね!」

「あ……はい、ご迷惑をおかけしました」

 

 ヤマトとアナスターシャはアリサを気遣い医務室を後にした

 

 

続く

 

 

 



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具現武装

 

 

 

 

「やあ、アリサ。しっかり休めているか?」

「あっ、ヤマトさん」

 

 翌日、その日の任務を終えたヤマト、アナスターシャ、ナナの3人は医務室のアリサの元を訪れていた

 

「どうも」

「ああ」

 

 ヤマト達の前に先約としてユウがアリサを見舞いに来ていた

 

「あの、ヤマトさん……」

「僕達に答えられるの物なら答えてやる」

 

 近くの椅子に腰を掛けるヤマトにアリサは何かを聞きたそうにしていた

 

「ヤマトさん達の神機は何なのでしょうか?」

「僕達3人のは神機じゃない。あれを俺達は〝具現武装〟と呼んでいる」

「具現武装……ですか?」

 

 聞き慣れない言葉にアリサとユウは困惑していた

 

「ああ、この具現武装は未だに発現者が少なく俺の研究の一つでもあるんだが、幾つか分かっていることがある。具現武装の特徴の一つとして()()()()()()()()()()()

「そんな!?それじゃあ、どうやってアラガミを倒してるんですか!?アラガミはオラクル細胞でないと倒せないはずです!」

 

 ヤマトの言葉にアリサもユウも驚きを隠せなかった

 

「原理は僕も理解し切れていない。周囲のオラクル細胞をアラガミを攻撃する瞬間にだけ纏うのか、体内の偏食因子が「フォトン」に反応して活性化してアラガミを倒せるのか、研究には困らない物なのは確かだな」

「あの、フォトンとは?」

 

 初めて聞く言葉、「フォトン」にアリサは聞き返してきた

 

「"大気中に存在する万物を司るエネルギー“が「フォトン」。僕達3人はこのフォトンを使用して武器を具現させて、アラガミと戦っている。フォトンの使い方はまだまだ試験段階ではあるんだが、属性攻撃は勿論、バレットのような銃撃やメテオから近接では斬撃を飛ばしたりチャージクラッシュのように剣に纏わせて威力を高めたりすることもできる。後は、身体強化やテレポートも可能だな。テレポートは現状アナスターシャだけだけが」

「それは適材適所だよ。私は遠距離からの補助がメインだからね~」

 

 アリサとユウは、ヤマトとアナスターシャの話についていけないでいた

「フォトン」と言う未知な力にオラクル細胞のアラガミを同じオラクル細胞以外で倒す力にありえないテレポートまでできるのだから

 

「フォントは誰にでも扱える物なのでしょうか?」

「理論上は。だが、何かしらのきっかけが必要みたいだ。そのきっかけも個人差があって特定できていない。僕の場合は世界への復讐心」

「確か私は弱い自分への後悔と強くなりたい願い」

「私もお姉ちゃんと同じで弱い自分への後悔。それから自分への恐怖」

「恐怖…ですか?」

 

 ナナがフォトンを扱えるようになった理由にアリサが聞き返してきた

 

「うん。私に眠る力……【誘引】っ呼んでるけど、この力は昔コントロールできなくて、悲しいこととかあったときにこの力を暴走させてお兄ちゃんと出かけていたときとかこの支部にいた時とかにアラガミを引き寄せて沢山の人に迷惑をかけたことがあって………お兄ちゃんもリンドウおじさんも気にするなって言ってくれたけど……力の制御ができない自分が怖かった」

「僕達3人に共通するのはそれぞれ異なるトラウマを持っていることだ。でも、それがフォトンを扱えるようになるきっかけになるかは不明だな。それにフォトンが扱えても具現武装を具現できるかはまた別の問題にもなる」

 

 ヤマトはそう言っているが実際の所は「フォトン」を扱えるのがヤマト達3人だけで、その3人が全員、具現武装を発現していて分からないのだった

 

「一つ分かっているのは具現武装を具現するには自分の意志を待つことだ」

「意志…」

「ああ、意志が強ければ強いほど具現武装も強くなり力を持つ。その力をどう使うかも意志になる」

 

 意志の力、後に「血の力」とも呼ばれることもあるが、ことあるごとにヤマトは否定するのはまた別のお話である

 

 

 

「アリサもユウも自分の意志を持っていれば何れ、フォトンを扱えるようになるさ。感だけどな」

 

 ヤマトはそう言うとナナとアナスターシャを連れて医務室を後にした

 

続く



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復帰

 

 

 

 

 

「なあ、アリサって確か今日、復帰するんだよな?」

「そうだな」

 

 あの日から2週間したころ、第一部隊のユウとコウタはロビーで待機していた

今日は一通りの検査を終えたアリサが復帰することになっていた

 

「……アリサ、大丈夫かな」

「どうだろうな……」

 

 問題は幾つもあり、その一つが第一部隊隊長で極東支部の顔とも言われているリンドウをアラガミと一緒に閉じ込めてしまったこと

二つ目はロシアから転属してきてからあの事件までアリサが周りを見下していた態度を取っていたことだった

 

「……っと、来たか」

 

 噂をすれば、とはよくいったものだった、エレベーターからロビーにアリサが降りてきた

 

「……本日より、原隊復帰となりました。また宜しくお願い致します」

 

 アリサが目線を下げながら言う。最初とは大違いにコウタとユウは少しだけ驚いていた

 

「…実戦にはいつ復帰するの?」

「それは……まだ分かりません………」

「そうなんだ………」

 

 以前とまるで違うアリサに少し戸惑う、ユウとコウタ

 

「……焦らずに頑張ればいい、アリサ」

「……はい」

 

 ユウはアリサに優しく声を掛けた

 

「おいおい、聞いたか? 例の新型の片割れ、やっと復帰するみたいだぜ?」

「………!」

 

 突然下から声が聞こえ、アリサがビクリと反応する

 

「ああ。リンドウさんを、新種のヴァジュラと一緒に閉じ込めた奴だろ」

「ところが、あんなに威張り散らしてたくせに結局戦えなくなったんだってさ」

「ハハハ!結局口ばっかりじゃねぇか!」

 

 何も言えないままアリサが俯いてしまう

 

「貴方たちも笑えばいいじゃないですか」

「俺達は笑わないよ……いや、笑えないよ」

「そうだよ、アリサ。それに……そろそろ来ると思うよ」

「来るって…」

 

 ユウとコウタはなぜか冷や汗をかきつつアリサにそう言っていると、ロビー内が急に寒くなる

 

「人のことを笑ってる暇があるなら訓練か任務でもやろうとは思わないのか?」

 

 外部と繋がるエレベーターから少年少女3人が降りてきて、少女二人……ナナとアナスターシャの前に立つヤマトが低い声でそう言うと、アリサのことを噂してきた二人は、ヤマトを軽く睨む

 

「ヤマトさん、任務お疲れさまでした。凄いですよ!接触禁忌種計20体を3人で討伐してしまうなんて!!」

「「はぁ!!??」」

 

 オペレーターであり、任務などの受付嬢でもあるヒバリがヤマトに声を掛け、任務を終えてきた3人を絶賛すると、アリサのことを笑っていた二人組は目を丸くして口を半開きにしていた

 

「最近はあまり禁種を狩ってなかったからいい運動になった。暫くはここら一帯のアラガミの活動は抑えられる。だが、黒いヴァジュラは見つからなかったから、ヴァジュラ神属の活動には注意するように調査班に言っておいてくれ」

「はい、承りました。お疲れさまでした」

 

 ヒバリにそう報告するとヤマトはナナとアナスターシャを連れてアリサ達に向かって歩き出した

 

「復帰おめでとう、アリサ」

「お姉ちゃんおめでと!」

「おめでとう、アリサ!!」

「はい……ありがとうございます」

 

 ヤマト達3人はアリサに声を掛けるとアリサは余り元気がなかった

 

「そ、そうだ!ヤマトさん達が禁種を討伐していたって!」

「ん?あぁ、ハガンコンゴウにスサノオ、テスカトポリカ、セクメト、アイテール、ラーヴァナ、ウロヴォロスを片っ端から狩ってきた。禁種を狩っていけば黒いヴァジュラに会えると思ったんだがな。尻尾はつかめなかった」

「そ、そう!黒いヴァジュラ、欧州でも目撃されたって!ここに来て新種の目撃例が増えてて何かの予兆なんじゃないかって……」

 

 コウタが黒いヴァジュラに関して話し出すと、アリサの顔色がどんどん悪くなっていった

 

「……スマン、後は頼んだ」

 

 コウタはユウにそれだけ言うと逃げるようにロビーから出て行ってしまった

 

「あの……私に戦い方を教えてほしいんです!もう、あんなことが無いように強くなりたいんです!!」

 

 ユウとヤマト達にそう言ってきたアリサの瞳に強い意志が感じられた

その意志を感じ取ったヤマトは口元を緩ませ右手を前に差し出す

 

「俺が教えられることなら教えてやる。ユウ、お前はどうする?」

「僕もお願いします」

 

 ついて行くことを決めたユウの瞳にも強い意志をヤマトは感じ取った

 

「わかった、だが、俺達も禁種討伐明けで疲れてるから明日からで構わないな?ツバキさんにも許可は取っておかないと行けないからな」

「分かりました」

「了解しました」

 

 ヤマトがそう言うとアリサもユウもうなずき、その場で解散することになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

「おはようリッカ、あれはできてるか?」

「おはよう、ヤマト!もちろん準備はできてるよ」

 

 翌朝、ヤマトはタンクトップにオーバーオールをはいた、リッカと呼ぶ女性に会いに来ていた

楠リッカ、神機の整備士兼神機の開発などを技術主任のペイラー・榊から任されていて、技出者としてアナグラにいた頃のヤマトを知る人物でもあった

リッカがハッチを開けるとそこには一台のトレーラー置かれていた

 

「注文されていたヤマトが使っていた車を応用して造った対アラガミ装甲車だよ。サバイバルミッションや遠征でも使えるように荷台は寝床として利用できるようにして、シャワーを常備、神機のメンテナンスやコアの保管もできるようになってる。最大6人までなら余裕を持って生活できるようにしてある。ガソリンはクアドリガをベースに実験的な自己精製システムを組んであるけど、あんまり作れないから気を付けて、電気はバッテリーとヤマト考案の太陽光での発電、風の力を用いた風力発電を実験として積んであるよ」

「ガーデンクローシュは?」

「本体はある程度作れるけど、土がまだまだ研究段階だから三つはしか積んでないよ」

「ガーデンクローシュは俺がほぼ完成させていたが、太陽光発電と風力発電はよく形になったな?」

 

 ガーデンクローシュ、ヤマト考案の野菜の栽培専用機械だ

元はヤマトが極東支部の研究員の頃に主に扱っていた研究テーマが「食」に関してであり、その中でも力を入れていたのが「昔の野菜を再現し安定供給できるように」だったのだ

ガーデンクローシュもその中で作り出された機械で種と土、水を用意してあれば半自動で野菜を作り続けてくれる

だが、ガーデンクローシュにも欠点があり、まず種が問題になる

昔の野菜などの種などあるわけも無く、ヤマトが駆けずり回り、ノルンのデータを血眼になって閲覧して野菜の再現が出来上がった

次の問題は野菜で、種は再現できたが思い通りにいかず、美味しい野菜になるのに数千回の試行錯誤が行われた

 土……土壌が最大の問題であり、ガーデンクローシュが利用されていない理由でもあった

土はアラガミによって踏み潰され、環境の変化により土に眠る栄養は無くなり、汚水により汚染されるなど野菜などを育てるには全くもって適さなかった

そのためヤマトは研究に研究を重ねて土壌を作り上げた……だが、この土壌も数回の収穫で栄養を全て使い切ってしまい、野菜の安定供給はめどが立っていなかった

 

「太陽光発電と風力発電は昔からあったみたいだからね、それを再現しただけだよ。このトレーラーは研究段階の物を詰め込んで実験するおもちゃ箱だね」

「まあ、基本俺が考案しているからな、俺が被験体になるさ……どうかしたか?」

 

 ヤマトがそう話すとき、リッカは不思議そうにヤマトをみていた

 

「ヤマト、変わった気がするよ。昔はもう少しかわいげあったのにね」

「いろいろ背負う物を背負ったからかな」

「そっ、でも無茶はしないでね。ヤマトは親友で師匠でもあるんだから」

「安心しろ、俺はそう簡単に死なないさ」

 

 ヤマトはリッカにそう言うとトレーラーを動かして行ってしまった

 

 

続く



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アリサとユウの特訓 Ⅰ

遅くなりました


 

 

 

「サバイバルミッション……」

「聞いたことありませんよ?」

 

 対アラガミ装甲車で移動中、今回の任務についてヤマトがユウとアリサに説明を行っていた

 

「サバイバルミッションとはアラガミを同部隊がアナグラに帰還せずに討伐する連続任務の事を言う。二人が知らないのは無理も無い、極東でもこの任務を受注できるのは本当に一握りだ。ツバキさんがこの任務の受注を禁止しているのもあるがな」

「どうして教官が?」

「このサバイバルミッションは通常任務よりもかなり危険度が高くなる。その理由は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ」

 

 アナグラに帰還せずに連続で任務をこなす、ユウとアリサはアナグラに帰還できないだけで危険度が高くなり、教官のツバキが禁止にする意味がわからないでいた

 

「アナグラに帰還できないってことは消費アイテムの補充、神機のメンテナンスができない。その上、コアなどの素材も持ち歩かないと行けない分、アラガミに狙われやすくなる」

「でも、お兄ちゃんがいるから神機のメンテナンスは問題ないんだよ!!」

 

 この場で最年少のナナが元気良く、そう言うとヤマトがナナの頭を軽く撫でる

 

「俺はこう見えても技術者でな。少し前までは極東支部の技術部の部長でもあったんだ。メンテナンスから始め、強化なども出来る。その上、この対アラガミ装甲車で休息も取れるから今回のサバイバルミッションの許可が下りたんだ」

「まあ、今回のサバイバルミッションは形だけで三つのミッションを連続で熟すだけだけどね~」

 

 対アラガミ装甲車を運転しているアナスターシャがヤマトの捕捉としてそんなことを言う

そう、今回の任務はヤマトが近場のミッションを三つ選んできた物であり本来のサバイバルミッションではなかった

 

「それと、今回のミッション中の戦闘には俺とナナ、アナスターシャは基本的に参加しない。ターゲット外のアラガミの作戦エリアへの侵入、お前達がピンチに陥ったときは勿論助けるから気軽に戦ってくれ…いいな?」

「「はい!!」」

 

 ヤマトの言葉に力強く返事をするユウとアリサ、だが、ユウは兎も角アリサは復帰して直ぐ、今回のミッションであまり成長は出来ないだろうとヤマトは考えていた

 

 

 

 

 

「まず最初はアリサの感覚を取り戻すために軽めにオウガテイル20体の討伐だ」

「「いやいやいや、多過ぎ(ですよ)!?」」

 

 アラガミの中で最も討伐回数が多い小型アラガミ〝オウガテイル〟

討伐回数が多いが、オウガテイルを複数体相手はベテランゴッドイーターでも喰われてしまう可能性がある、そんな相手をヤマトは20体の討伐をまだまだ新人の二人にやらせようとしていた

 

「お前達二人が実力を発揮出来ればこの位は簡単だと思うぞ?俺達3人も後ろにいるから心おきなく戦ってくれ」

「(鬼だ)」

「(お、鬼がいます)」

 

 ユウとアリサは内心、ヤマトのことを鬼だと思ったが直ぐに切り替え嘆きの平原に降り立ち、オウガテイルを捉える

「アリサは後方から支援して!僕が前衛を務めるから!」

「り、了解です!」

 

 ユウとアリサはオウガテイルとの戦闘に入るが、復帰してから初めての実戦のためかアリサの動きがぎこちなく、ユウが何度もフォローに入りなんとかオウガテイルを20体の討伐を二人で熟すことが出来た

 

「あの、す、すみませんでした」

 

 戦闘終了後、対アラガミ装甲車で二人が休憩しているとアリサがユウに謝まった

 

「気にしないでアリサ。本調子じゃないからフォローに入るのは当然だよ」

「謝るのも大事だが、先の戦闘で思うことがあるなら同じことを繰り返さなようにしろ」

「はい……」

「それからユウ。お前は各形態への切り替えが遅すぎる。小型や中型なら問題ないだろうが、第一部隊は遊撃部隊だ、もう少ししたら接触禁種などを狩るようになる。今のままなら間違いなく死ぬぞ、各形態への切り替えをもっと速くできるようにしろ」

「…了解です」

 

 先のミッションで上手く立ち回れなかったため元気があまりないアリサ、先の戦闘でのダメ出しを受けたユウ

先の戦闘で何もしなかった人が何を言っているのかと普通なら言っててしまうかもしれなかったが二人はヤマトの強さを知って戦い方を教わろうとしているのもあり何も言わなかった

 

「まあ、でも…オウガテイルに20匹狩りを新人脱け始めた二人がよく頑張りました」

 

 ヤマトは先程の厳しい口調ではなく優しく二人に言いつつ頭を撫でる

 

「もう!子供扱いしないで下さい!」

「あ…すまない。つい癖でな」

 

 頭を撫でられ子供扱いされて怒るアリサに謝るヤマト。

ユウの目には二人が兄妹のように見えた

 

「と、取り敢えず今日の任務はこれで終わりだ。神機のメンテは俺がやっておくから女性陣は先にシャワーでも浴びな」

「シャワーもあるのですか!?」

「ああ、後部の左側のドアの先に浴槽は作れなかったが少し広めにシャワールームと脱衣所を用意してある。アナスターシャとナナに頼まれてな。女性はその辺を気にするだろ?」

「ほらほら、アリサ行こ!」

「ち、ちょっと引っ張らないで下さい!」

 

 アナスターシャに引っ張られ連れて行かれるアリサにユウは微笑んだ

 

 

 

続く



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アリサとユウの特訓 Ⅱ

今月はこっちを更新します


 

 

 

 

「なんだ、眠れないのか?」

「女の子達の話し声が聞こえてきて中々…」

 

 対アラガミ装甲車の屋上で夜の見張りをヤマトがしているとユウが登ってきた

 

「アナスターシャとナナには後で言っておかないとな……それで、神機無しに外に出て何か聞きたいことか?」

 

 ヤマトの言葉にユウは驚いた表情をしていた

ヤマトの言うとおりユウは自分の神機を持ってこずに外を出歩いていた

それはこの世界でアラガミに食べて下さいと言っている物であり神機使いではありえないことだった

 

「アリサとは知り合いですよね」

「どうしてそう思った?」

「アリサと話しているとき懐かしんでいるような表情をしてるのが一つ、初めて会ったにはアリサのことを特別気にしているのが二つ、アナスターシャさん……オレーシャさんがたまに〝昔のアリサは〟って小声で言っているのを聞いたのが三つ目です」

 

 ヤマトはユウの観察眼を内心褒めていた

今、ユウガ言った三つの内一つ目と二つ目はアリサに似た知り合いがいたからと思うこともある

三つ目も聞き間違いや顔だけを知っている可能性だってあったのだが、ユウの眼差しは真剣そのもの、知り合いだと確信を持っていた

 

「バレる人にはバレるか……ユウ、お前の質問の答えはYESだ。アリサがGOD EATERになった理由は知っているな?」

「アリサから直接聞きましたから」

「アリサの両親がアラガミに殺されてからアリサは小さな病院にいたんだ。俺はそこの院長家族……と言っても姉妹なんだが、姉妹とは知り合いでな。ちょくちょく手伝いとして患者のケアを行っていたんだ……アリサはその時の患者の一人だ」

「ですが、アリサは病院のことや主治医だったのは男の子って覚えていてヤマトさんのことは……」

「まあな……これ以上は話すつもりはない…いや、これ以上お前を巻き込むつもりはない」

 

 ヤマトは巻き込むつもりはないと言ったそれはヤマトとアリサの間には何かしらの闇が潜んでいること、これ以上関わればその闇に狙われかねないと意味していた

 

「分かったのなら速く寝ろ。明日は今日よりもハードな任務が待っているぞ」

「……分かりました」

 

 ヤマトの言葉に頷くとユウは屋根から降りていった

 

「そうだ、これ以上は誰も巻き込まない……巻き込んじゃダメなんだ。」

 

 ヤマトの言葉は誰にも聞こえるわけも無く星々が輝く夜空に吸い込まれるように消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 翌朝、ヤマト達5人は嘆きの平原の近くに車を止め、セーフティーエリアで最終確認を行っていた

 

「今回のターゲットはコンゴウ二体のはずだったのだが……」

 

 平原ではターゲットの赤と茶色いサルことコンゴウが二体と赤と金色のコンゴウ……コンゴウ神属接触禁忌種のハガンコンゴウがターゲットのコンゴウ二体を引き連れていた

 

「ハガンコンゴウは2人には荷が重い……俺が狩るから2人はハガンコンゴウを狩るまで待機」

「ヤマトさんの実力は知ってますが危険すぎます!!アナスターシャさん達も……」

「必要ない、今回はこれを使うから」

 

 ヤマトはそう言うと腰に備えられたリボルバーを取り出した

 

「それは?」

「俺が研究開発していた神殺銃(ゴッドスレイヤー・ガン)

そのプロトタイプの リボルバー銃 S&W M19 コンバット・マグナムだ」

 

 神殺銃(ゴッドスレイヤー・ガン)、ヤマトが極東支部で技術者として生活していた頃、一般人の対アラガミ用の護身用として研究開発されていた一つ、開発中に()()()()()()()()()を持っていなければ対アラガミ用として使用できないことが発見されてヤマトの持つプロトタイプ以降の開発は凍結されてしまった

 

「コンゴウ原種は適度にあしらっておくからいつでも動けるようにしておけ」

 

 ヤマトはそれだけ言うとセーフティーエリアから飛び降りてしまった

 

「2人ともよく見ておいて、お兄ちゃんは技術者だけど具現武装を使えなくても1人でアラガミを討伐して素材集めができるほど強いから」

 

 ナナの言葉に信じられないと顔に出ていた2人はハガンコンゴウとコンゴウに向かって走り出すヤマトを見てナナの言葉が真実だと思わされた

 

「遅い!」

 

 ヤマトはハガンコンゴウ達が気がつく前にハガンコンゴウの懐に入り込み、顎にリボルバーの引き金を引いていた

余りにも速い動きにユウとアリサには追い切れていなかった

 

「フォトンでの身体強化。私達がアラガミと戦うときには必ず使用してるけど身体強化に関しては私もナナちゃんもヤトには追いつけないの」

「お兄ちゃんの身体強化は凄い滑らかで使いたい筋力……今みたいに脚力に極振りさせたりするんだ~」

 

 〝フォトン〟、ユウとアリサは事前に聞かされてはいたが改めて驚かれていた

自分たちGOD EATERが神機使いとして定期的に投与されてる偏食因子、〝P53偏食因子〟。これを定期的に投与しなければ自分の神機に捕喰され〝アラガミ化〟と言う爆弾を抱えなければいけないのに対し、〝フォトン〟は補喰されるという危険性が無い上、自分たち以上の力を持っているのだから

 

「そのホーミング性能は見切ってんだよ」

 

 コンゴウ神属の回転アタック…何人もの神機使いを葬ってきたこれはホーミング性能が非常に高く距離を取って安心したところを狙われる

その回転アタックを二体のコンゴウとハガンコンゴウが同時に回転アタックでヤマトを狙うがヤマトは幾度もコンゴウ神属を狩ってきたのもあり空中に飛び上がり回避、ハガンコンゴウに向かってリボルバーの引き金を四回引いた

 

「特注品だ、受け取れ」

 

 口でピンを抜き手元のものをハガンコンゴウ目掛けてスタングレネードのような物を投げつけるとハガンコンゴウに当たった瞬間、爆発がハガンコンゴウを襲う

 

「接触禁忌種にもそこそこのダメージを確認。爆発範囲は狭いから速い奴らにはあまり効果は望めないな」

 

 ハガンコンゴウ達と対峙しているヤマトは今投げた物の評価を行っていたが、ハガンコンゴウの怒りの咆哮で考えるのを辞めた

 

「さて、後どれくらい耐えてくれるかな?」

 

 ヤマトはそう言うと再びハガンコンゴウ目掛けて走り出した

 

 

 

「もう、お兄ちゃん!実験は良いけど程々にしてよ!」

「はは、すまん。久々にこれを使ったから疼いてついね」

 

 ヤマトがコンゴウ達と戦いだして30分近く経過した頃、ヤマトはセーフティーエリアでナナに怒られていた

 

「ハガンコンゴウだけ倒せば良いのにコンゴウ一体を倒しちゃうし、クレーター作りすぎだよ!?」

 

 ナナの言うとおり平原には無数のクレーターができており、ヤマトの実験対象にされたハガンコンゴウとコンゴウ二体の死体がクレーターの中に捨て置かれていた

元々はハガンコンゴウのみをヤマトが討伐する予定だったが、実験に夢中になったヤマトによってコンゴウ一体は討伐され、残りの一体も実験に巻き込まれて溺死の状態でユウとアリサに引き継がれものの数分で討伐されてしまった

 

「お兄ちゃんは罰として今日も夜の見張りをすること!良いよね?」

「ああ、悪かったな。2人とも」

「気にしないで」

「いえ、見てるだけでも何か掴めた気がしますので」

 

 ユウとアリサに謝るヤマトだったが二人は気にしてはいなく、アリサに関してはヤマトの戦闘を見て何かを掴んでいた

 

「それなら良かった。このまま次のミッション行くか?それとも、休むか?」

「「次のミッションで」」

 

 ヤマトがほぼ一人で討伐してしまい体力が残ってる二人はヤマトにそう回答した

 

続く



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この間入ったばかりの新人二人は数日でベテランになってました

 

 

 

 ヤマト達がアリサ、ユウの特訓を行って暫くした頃、第一部隊とヤマト達3人はエントランスに集まっていた

集まっているがヤマト達は第一部隊を呼び出した教官のツバキに呼ばれたわけでは無く、任務の間なだけだったりする

 

「説明は以上だ。何か質問はあるか?」

 

 第一部隊に今回の任務の説明が行われていた

任務のターゲットは〝ヴァジュラ〟、あの日ど同種のアラガミだった

説明を終えたツバキにコウタがおずおずと手を挙げる

 

「あの…アリサを今回の任務に出してほしいなって…あれからずっと頑張ってるみたいだし…なんて」

「お前もか……他の者はどうだ?」

「…賛成です」

「俺も賛成だ」

 

 ツバキの言葉に無口なソーマは何も言わなかったがリンドウを含め全員が賛成していた、後はアリサ本人の意志だけである

ツバキが少し考えるような仕草をしてからアリサの目を見ながら問い掛ける

 

「…アリサ、今回の相手はこの間と同種だ。大丈夫か?」

「………行きます、行かせてください!」

「よろしい…無理はするなよ」

 

 自分の意見が通って嬉しいのか、思わずコウタがガッツポーズをする

 

「よっしゃ!俺達がいるから大丈夫だよ、な!」

 

 コウタがそう言うがアリサは無反応で、後ろで寛いでいるヤマト達の方に歩き出した

 

「ありがとうございます…ヤマトさん、貴方たちのお陰でここまでこれました……」

「俺は別に何もしていない。アリサ自身が自分の〝意志〟を持っていたからだ」

「そうだよ~、それにアリサはここからが〝始まり〟だから全員生き残ること!」

「お姉ちゃん頑張ってね!」

「アナスターシャさん、ナナちゃん……はい!」

 

 アナスターシャの言葉に元気をもらったアリサは力強く頷いた

 

「アナスターシャ、ナナ。俺たちも時間だ、行くぞ」

「は~い」

「わかった!アリサ、頑張って!」

 

 アリサ…第一部隊に背を向けヤマト達3人は任務へと歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマト、お前達も無事で何よりだ」

 

 ヤマト達3人が任務から戻ってくるとソーマを除く第一部隊の面々がエントランスのソファーで座っていた

 

「お疲れ様です、リンドウさん。そちらも……無事、ヴァジュラを討伐できたんですね」

「まあな…ところでお前、ユウとアリサをどんな鍛え方したんだ?二人の動きがベテランレベルだったぞ?」

「そうね、私も聞きたいわ」

 

 欠員無しで帰ってきた両部隊をそれぞれ労うとリンドウがヤマトが鍛えたユウとアリサのことを聞いてきて、同じく気になっていたサクヤもリンドウに同意するように聞いてきた

 

「連日任務に連れ回して二人で熟してもらっただけですよ」

「本当のような嘘言わないで下さいよ!?連日連れ回されたのは本当ですけど、何度死にかかったと思ってんですか!?」

「どういうことだ、ヤマト?」

 

 アリサの〝死にかかった〟を聞いたからかリンドウが普段よりも低い声でヤマトに聞こうとした

 

「大げさだな、アラガミも数もお前達二人を正確に評価して二人なら熟せる範囲で集めたんだ。それにハガンやテスカみたいな二人に荷が重いのは俺が処理しただろ?」

「それでも、オウガテイル20体やグボロ・グボロ3体は多過ぎだよ、僕達まだ新人ですよ?」

 

 リンドウもサクヤもオウガテイル20体と聞いて顔色を少しだけ変えた

オウガテイルはアラガミの中でも出現率が高く、新人が実戦として最初に討伐するアラガミでもある

だが、オウガテイルは年に何人もの神機使いを喰らい殺している

この極東支部でも記憶に新しく中堅のエリックもその一人だった

 

「唯の新人なら最初の任務で俺達が手を貸してるからな?アリサが復帰直後とはいえ二人で熟せたんだ。ユウに関しては隊長になるのも近いかもな?隊長格なんて何人居ても足りないからな。ここは特に」

「いくらなんでも、早すぎません?」

「そうでもないだろ?ユウくらい優秀なGOD EATERは各地でほしい。隊長になれる素質を持つのも多くは無いからな。優秀な新人は早めに隊長にして経験を培ってほしいと思ってる奴もいるからな」

 

 冗談のようにユウの隊長になれるかもしれないとヤマトは言うがユウ本人もそんなことは無いと思っていた

 

「ヤマトさんも隊長になれるのでは?接触禁種のアラガミを3人でかなりの数倒してますよね?」

「俺は隊長になる気は無いがな。それに俺はやることを終えれば神機使いを辞めて技術者に戻るつもりだ」

【え?】

 

 ヤマトの「技術者に戻る」と言う言葉に第一部隊の面々は驚きを隠せなかった

 

「俺は根っからの技術者なんだ。アリサとユウは知ってるだろ?」

「そ、そう言えばそうでしたね」

 

 アリサとユウはヤマトに連れて行かれた任務のことを思い出して苦笑いするしか無かった

 

「まあ、技術者に戻っても戦闘はできるからな、たまには素材狩りに出ることになるだろうし、有事の際は極東支部の守りにはなるさ」

 

 アラガミを素材呼びできるのはこの世界何処を捜してもヤマトただ一人だけだろうとこの場の全員が心の中で思っていた

 

 

 

続く



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パーティー

 

 

 

 

「おい、ソウ」

「ソーマさん?珍しいですね、そっちから声をかけてくるなんて」

「そんなことはどうでもいい、お前達は外で…特に寺院で視線を感じたことないか?」

 

 ミッション終わり、自室に戻ろうとしたヤマトにソーマが珍しく声をかけてきた

 

「アラガミ以外のってことですよね?確かにリンドウさんを救出時の黒いヴァジュラ…ディアウス・ピターの戦闘から視線を感じることはありますね。敵意じゃなく、興味みたいな視線を」

「やっぱりお前もか…そいつは彼奴がオレを使ってずっと捜している〝物〟かもしれない……誰にも…」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼奴と聞いて普段はあまり表情を変えないヤマトが変貌を遂げ、普段〝さん〟付けするソーマに対して呼び捨てにしていた

 

「ッ……そうだったな、邪魔をした」

 

 ソーマも変貌したヤマトに後ずさりし一言謝り帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりだな」

 

 10日後、ヤマト達3人はいつも通りにミッションを終わらしていた

ヤマト達の周りにはシユウ神族が10体、切り捨てられていた

 

「そう言えばお兄ちゃん聞いた?今極東支部周辺でアラガミの目撃数が減っているんだって」

「時期的に私達が極東に来てからだから私達が原因じゃ無いかな?」

「原因なんて失礼な。禁種を相当数狩ったのは事実だけどな」

 

 そう、ヤマト達が極東支部に来てから数ヶ月、アラガミの目撃数が徐々に減っており、民間、神機使い問わず死亡数がかなり減っていたのだった

それもそのはずでヤマト達3人が接触禁忌種を片っ端から狩り、アラガミの活性化が起こりづらくなる中、第一部隊に優れた新人が配属されたからであった

 

「それよりも早く帰って支度するぞ。今日は〝特別〟な日でもあるんだからな」

「「はーい」」

 

 3人は何か急ぐように極東支部に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、なぜか音頭をとることになりましたが……ユウ!隊長昇格おめでとう!乾杯!」

【カンパーイ!!】

 

 数時間後、ヤマトの部屋でちょっとしたパーティーが行われていた

ヤマトの部屋には第一部隊の面々とナナ、アナスターシャが揃っており、意外にもソーマも参加していた

ヤマト達がミッションを終えて直ぐに極東支部に戻ったのはこのパーティーの準備をするためだった

 

「ヤマトが作ったお菓子はサクサクしてうまいな、配給品と段違いじゃ無いか?」

「ありがとうございます、リンドウさん。大昔にここが〝日本〟と呼ばれていた頃の〝ポテトチップス〟を再現してみました。まだ、栽培が安定して無くてあまり量は採れてないですが近いうちに〝ジャガイモ〟だけは極東だけでも配給できるように改良をするつもりです」

「そ、そうなのか……あまり無理をするなよ?」

「程々にしておきますよ」

 

 ヤマトがテーブルに並べた御菓子はこの荒廃した世界で作れる人は作るクッキーやパンケーキ以外にも今回のために再現した〝ポテトチップス〟に〝ポップコーン〟にいろんな種類のケーキが並べられていた

 

「それにしてもヤマトさんは凄いですよな!、ユウが隊長になるのを預言していたみたいに!」

「ユウの実力があれば近いうちになるのは予想が付くからな。あの話から二週間もしないうちになったのは予想外だがな」

 

 このパーティーが開かれたのはヤマトがアリサと一緒に鍛えたユウが第一部隊第二隊長に任命されたからだった

本当であれば新たに別部隊を編成しユウをその部隊の隊長にするのではあるがユウは隊長になったとしても数ヶ月前に入隊した未だ新人で指揮の経験など無いのと他、中堅神機使いが嫉妬などで問題が起こる可能性を上層部(ツバキ教官、サカキ博士、支部長)で検討し一先ず第一部隊の第二隊長としてリンドウに指揮のノウハウを教えてもらうことになった(byツバキ教官)

 

「ですが、リンドウさんに指揮のノウハウをって大丈夫なんですか?サクヤさんに教えてもらった方がいいのでは?」

「あら、確かに言えてるわね。リンドウ、隊長として頼りないものね」

「ヤマトもサクヤも酷くないか?」

「それなら報告書を俺に書かせないで下さい。」

「書類仕事私もよく押しつけられるのよね」

 

 ヤマトとサクヤの二人に報告書をそこそこの頻度で書かせていたことを第一部隊とナナ、アナスターシャの前で暴露されリンドウはバツの悪そうにお酒を飲むのであった

そして、アラガミの出現での呼び出しも無くパーティーは二時間で終わりを迎え、各々部屋を後にする

 

「ユウ、少しいいか?」

 

 ユウも帰ろうとしたところをヤマトに止められ、アリサとコウタを先に戻るように伝える

 

「隊長になったお前に言っておきたいことがある。()()()()()()()()()()

「支部長を……?」

「そうだ、理由は話せないし話すつもりは無いが、それだけは覚えていてほしい」

「……わかりました」

 

 ヤマトが話さないと言うことはアリサとの過去にも関わる大事なことだと悟ったユウは頷くと部屋を後にした

 

 

続く



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少女と名前と重荷

想いを爆発させし者達が白き少女と出会うとき
運命の歯車が回り出し運命の時を刻む

時の分岐はまもなくかの者達をふるいにかける

人が神になるが先か神が人に墜ちるが先か

それは神すらも知らず


 

 

 とある日、ヤマト達3人は第一部隊のリンドウとソーマと共にサカキに呼ばれ、ラボに着いた途端に鎮魂の廃寺までの護衛として連れて行かれ、ミッション終了直後の残りの第一部隊の面々と合流、ミッションのターゲットアラガミであるシユウのコアを取らずにそのまま隠れると色白の少女が現れシユウを補喰し始める

色白少女に接触し極東支部のラボまで連れてくるとサカキから爆弾が投下される

 

「あの…博士………今なんて……?」

「何度でも言おう。彼女はアラガミだよ」

 

 サカキから投下された爆弾は色白少女の正体は〝人に近づいたアラガミ〟であり、以前から支部長とサカキはそれぞれ別に捜していたことだった

 

「〝アレ〟が捜しているってことはこの子のコアは碌でもない代物なんだな?」

「そうだね。君の想像通り向こうに確保されたら大変なことになるね」

 

 〝アレ〟や〝向こう〟と言葉を濁すヤマトとサカキの意図に気がついたのはアナスターシャとリンドウ、ソーマの3人だけだった

 

 それから数日後

 

 

「オハヨウ!」

「ああ、おはよう」

 

 極東支部のアラガミが大分減っているためヤマト達や第一部隊の面々は非番が多くなりその分、サカキのラボに浸りつつアラガミの少女と頻繁に接触していた

アラガミの少女は言語をこの数日で大分吸収しかなりの成長を見せていた

 

「サカキ博士、大分この子も人らしく言葉を覚えましたね」

「君たちが毎日ここに通ってくれたからだろうね。私も彼女の成長速度には驚愕しっぱなしさ」

 

 そんなことを言っているサカキの眼は研究意欲からかギラギラしていたのをヤマトは見逃さなかった

 

「それで、俺たちと第一部隊の勢揃いで呼んだのは何か理由が?」

 

 今までは暇があれば来ていたところを今回はサカキに全員呼ばれていたのだった

 

「この子の名前をつけて欲しいんだよ。いつまでもこの子、あの子では可愛そうだからね」

「ふっ……オレ、こう見えてもネーミングセンスには自信あるんだよね……」

「……嫌な予感しかしないんですけど…」 

「同じく」

 

 アリサの予感はヤマトやユウ、アナスターシャも感じて、ユウは止めようと試みるが、コウタには意味を成さず…少し溜めを入れてから、自分が考えた名前を口にしてしまう

 

「そうだな、たとえば……ノラミとか」

「…………」

 

 コウタがドヤ顔で名前を口にした瞬間、部屋の温度が氷点下まで下がった

その場に居た全員が「それはない」と言おうとし言い止まったそんな時……

 

「……どん引きです」

「……それはなさ過ぎ」

 

 コウタに容赦がないアリサとアナスターシャだけは、絶対零度の冷たさを孕んだ声で、言い放った

 

「何だよー!!じゃあアリサとアナスターシャは何か良い名前でも思い付いたのか!?」

「な、何で私がそんな事を………!」

「……」

「ははーん…さては自分のセンスの悪さが露見されるのが恐いんだろな?」

 

 コウタの反撃開始、先程とは立場が完全に入れ替わり、アリサとアナスターシャは慌てふためき考えようとする

 

「え、えーと……ユウとリンドウさんは何かいい名前とかありますか!?」

「えっ?」

「おっ?」

「ヤトも何か無いかな!?」

「?」

「こらー何逃げてるんだよ!!」

「に、逃げてませんよ。私はただ部下として隊長であるリンドウさんとユウの意見を訊こうと思っただけです!」

「いや、あきらかに逃げじゃんそれ!!ってかリンドウさんは兎も角、ユウに押しつけただけじゃん!?」

「コウタ、俺なら兎も角とは酷くないか?」

 

 部下のコウタに若干ディスられ肩を竦めるリンドウをサクヤがなだめる中、部屋の隅にいたソーマに近づく小さな影…

 

「…なんだ」

「ソーマお兄ちゃん、何か隠してるよね?」

「そんなわけねえだろうが!!」

「うん、嘘。ソーマお兄ちゃん、嘘つくと声荒げるってお兄ちゃん言ってたよ?」

「ヤマト、テメェ……」

 

 この場での最年少のナナに嘘を見抜かれたソーマ、ソーマの嘘を見抜く方法をナナに教えたヤマトを睨み付けた……そんな時だった

 

「シオ!!」

 

 アラガミの少女が自分の名前ぽいのを元気に口にした

 

「それが君の名前かい?」

「ソーマがつけてくれた!!」

「お、おいお前!?」

 

 既にソーマによって名前がつけられていたアラガミの少女、シオがソーマが隠そうとしていた爆弾を破裂させた

 

「そっか、シオちゃんって言うんだね!私はアナスターシャ、ターシャと呼んでね!」

「ターシャ!よろしくな!」

 

 ソーマをアリサとコウタが茶化そうとする前にアナスターシャがシオに話しかけて自己紹介するとアナスターシャにシオが抱きついた

 

「ここに来てからアナスターシャに異様に懐いてるよな?」

「そうですね、ヤマトさん達はシオちゃんに会ったことが?」

「いや、視線を感じたことはあったこの子……シオに会ったのはあの時が初めてだ……」

 

 ラボに来てから毎日のように誰かどうか来ておりそれぞれさほど頻度が変わらなかったがなぜかソーマとアナスターシャの二人には他のメンバーに比べて早く、アナスターシャに限っては会ったその日に懐いているようだった

 

「多分、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからじゃないかな?」

「「ッ!!」」

「「え……」」

「どういうことだ?」

「アナスターシャ君のデータだけ毎回ヤマト君がとっていたからね、何かあると思い極秘裏に調べさせてもらったら、驚くことにアナスターシャ君の()()()()()()()()()()()していたんだよ。それに詳しく調べたら()()()()()()()()()()()していることもね」

 

 サカキの言葉にこの場の全員が静まり返った、ヤマトとアナスターシャ、ナナの中でも秘密にしておいたほうが良かったことをサカキは平然と語る

 

「博士、あまりその辺のことを言わないで下さいよ。私の中でも極秘中の極秘なんですから」

「すまないね、気になったら調べたくなる研究者の悪い癖でね」

「まあ、いいですよ、何れは話さないといけないとは思っていましたから……バレたから話しますけど誰にも言わないでね?」

 

 研究者の悪い癖はアナスターシャもよく知っていたからか溜息1つでサカキは許されたのだった

アナスターシャは第一部隊の面々に一言言うと話し出した

 

「私はほんの半年くらい前までみんなと同じ神機使いだったんだ。何処の支部かは言わないけど、日々アラガミを倒すための力を培っていた。ある日のミッション中に想定外の大型種に出くわして仲間を逃がそうとして……」

「囮になったと…………」

「うん。そして、戦闘中に腕輪を破壊されてアラガミ化が始まって激痛で動けない私を目の前のアラガミが補喰しようとしたときにその場に居合わせたヤトが助けてくれたんだ」

 

 アナスターシャは一部を隠して本当のことを話し出した、ここで嘘をついても余り意味が無いからでもあったがここにいる面々には信頼を寄せていたからでもあった

 

「大型種からは助かったけど、アラガミ化は止められて無かった。その頃、ヤトが研究、開発していた()()()()()()()()()()布で今もこうして()として生きてるんだ…布は抑制するだけだから博士が言ったように少しずつアラガミ化は進行してる」

「布の効力も今では1週間続くが最初の頃は1時間くらいしか保たなかった。アラガミ化に遭遇するなんてことも普通はありえない、アナスターシャを助けたのと同時に人体実験のモルモットにした、それは今も変わらないが…」

 

 ヤマトとアナスターシャは平然と話していたが第一部隊の面々にサカキは耳を疑うような話がチラホラあった

 

「黙っていたのは簡単に信用信頼の問題では無くてあまりいい話じゃ無いからなのとおいそれと人に話せないから……いや、話したくないからかな。アナスターシャが…」

「うん。ヤトとナナちゃんに背負わせてる重荷を他に背負わせたくないなら……」

「重荷……ですか?」

 

 黙って聞いていたアリサが〝二人に背負わせた重荷〟と聞いて聞き返した

アナスターシャは深く頷いてこう言った

 

「アラガミ化は止まっていない。いつか必ず私はアラガミになって周りを襲う……だから私は、ヤトとナナちゃんに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って重荷を背負わせた…」

「「「……ッ!!」」」

「……」

 

 〝アラガミ化した自分を殺せ〟言うことは簡単だろう。だが、もしその時がきたらどれくらいの人が言われた通りに出来るだろうか……家族と言って差し支えない人をアラガミ化したからと殺せるだろうか……だからこそアナスターシャは〝重荷〟と言っていたのだった

 

「みんなには出来る?アラガミ化した私を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()

 

 

 

 

 

続く



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服と包帯

 

 

 

 

 

 

 

「呼び出してすまない。私ではどうにもならない問題が発生してね…… 彼女に服を着させてくれないかい?」

 

 アナスターシャの話をしてから数日後、ヤマト達と第一部隊の面々はサカキに呼び出されていた

呼び出された理由は、シオの服装だった。シオの服装は何処から拾ってきたのか知らないボロ着れ、アラガミでも見た目は女の子で、サカキもこのままではいけないと思ったらしい

 

「僕も様々なアプローチを試みたんだど、ことごとく失敗に終わってしまってね」

「きちきちちくちく、やだー」

「という事らしい。是非女性の力を借りたいと思ってね」

「なら何故俺を呼ぶんだ…… 戻るぞ」

「俺も役に立てそうにもないし…… ちょっと今バガラリーがいいとこだったんだ。任せたよ!」

「俺も居ても邪魔そうだな。何かあったら呼んでくれ」

 

 ソーマもコウタもリンドウも部屋を去って行き、男組で残ったのはヤマトとユウだけとなった 

 

「まったく…… 薄情な男達ね」

 

 サクヤが呆れるように呟くが去っていった3人は放っておくようでサカキに声をかけた

 

「博士、奥の部屋を借りていいですか?とにかく着せてみます。シオ、ちょっとおいでー」 

「ん?なーにー?」

 

 シオは、サクヤの元へ歩き出し、アリサとアナスターシャもその後ろをついて歩いて行く

 

「アリサとアナスターシャも手伝ってくれる?」

「わかりました!」

「はーい!」

「大人数も邪魔だろうし私はこっちで待ってるよね!」

 

 奥の部屋はこじんまりとしていて五人も入ればぎゅうぎゅうになってしまうためにナナは外で待つことになり、奥の部屋に四人が姿を消すとサカキが話し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、お前も捜索に行きたかっただろ?」

「うん。でも、仕方ないよ、もう少しで包帯の効力無くなるのは分かっていたから」

 

 シオに服を着せようとしたサクヤ、アリサ、アナスターシャだったが、サカキが言ったように嫌がり部屋の壁を破壊して外に逃げてしまった

直ぐにユウ、アリサ、サクヤ、ナナの四人と音を聞きつけたのかそれともずっと部屋の前に居たのかソーマの五人でシオの捜索にでた

ヤマトとアナスターシャも捜索に協力したかったが、間の悪いように今日はアナスターシャの生命線でもある〝包帯〟の交換予定があり、アナスターシャはヤマトから今日一日戦闘を禁止されていた

 

「前にも説明聞いたけどこれってどういう原理なの?」

 

 対アラガミ装甲車の中で上半身裸のアナスターシャの後ろからヤマトが包帯の交換をゆっくり行っているとアナスターシャがヤマトに聞いてきた

 

「オラクルソードの原案を使ってオラクル細胞からオラクルを吸収して包帯に溜め込んでるんだ。本当なら放出まで出来れば交換せずにすむがまだそこまで出来上がってない未完成品なんだ。アナスターシャ…オレーシャが具現武装に目覚めてくれたから溜まったオラクルを〝フォトン〟に変換して使用できるから包帯の交換も減らせている。この包帯もあまり作れないからな」

「確か特殊なアラガミから採れた細胞を使ってるんだっけ?」

「うん、研究に行き詰まっていた時に偶然出くわした黒に赤いラインの身体、白い毛に9本の尻尾を持った4足歩行のアラガミ。そいつと出くわして逃げ切れないと悟った俺は建物に隠れながら戦闘を続けていた時にそのアラガミが球体を打ち出してきてドーム状に広がったそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()させる。俺は昔の書物を調べたときに見つけた情報から〝殺生石〟と名付けた。〝殺生石〟を模倣し、オラクルソードの原案を利用したのがこの包帯なんだ。出会ったアラガミから持ち帰って来れた素材を利用してるからそろそろ心許なくなってきた」

「もし、もしも、私がアラガミ化したら……ヤトはどうする?」

 

 アナスターシャは後ろのヤマトの方に体の向きを変え、少し前に第一部隊の面々にも聞いたことをヤマトに再度聞いてきた

 

「答えは前と変わらない、アラガミ化を戻す方法を死んでも捜して、それでも無理なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 静かな車内にヤマトのドスの聞いた声が響いた

 

 

 

 

 

 

なお、シリアス展開はここまででアナスターシャが上半身裸だったのを思い出してヤマトを顔を真っ赤にして殴ったのである



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黒き皇帝と白き女王 1

 

 

 

 シオの脱走事件から数日後、ヤマト達第六部隊と第一部隊の面々はサカキのラボラトリに呼ばれた

ラボラトリの中ではドレス風な服を着たシオが居て、隣にはリッカが嬉しそうにシオを見ていた

ヤマトとサカキの二名は秘密裏にリッカにアラガミ素材の服を依頼、その時に説明もとい共犯者になってもらった(リッカは面白そうに二つ返事だったとか)

 

 シオの脱走事件と新衣服披露から半月後、第一部隊とヤマト達第六部隊はツバキに呼ばれエントランスに集まっていた

 

「全員いるな?今回の任務は黒いヴァジュラ……ディアウス・ピターの討伐だ」

 

 黒いヴァジュラと言うこと言葉に全員が緊張を高め、アリサは何時もにまして顔が強張った

 

「ディアウス・ピターは複数のプリティヴィ・マータを従え行動しており、マータの増援も予想できる」

 

 帝王の名を冠するだけあり、臣下はたまた側室のプリティヴィ・マータを複数連れていたのだった

 

「今回も非常に厳しい戦闘を余儀なくなるだろう。そのため、今回の任務は第一、第六の合同で行うことになった」

 

 第一と第六の合同任務と言われ、初めてここに両部隊が呼ばれた理由が明らかになったが、同じエリアでの作戦はベテランのリンドウでもあまりなかった

 

「第六はマータの討伐と援護、第一がディアウス・ピターの討伐してもらう。なお、今任務の第一は全員で行ってもらう」

 

 ツバキの言葉に衝撃が走った

普段であれば最大4人での作戦行動、同エリアで2部隊が活動するのも支部防衛を除けば珍しいことだったが、第一部隊全員を投入しての1体のアラガミに対しては異例だった

 

「了解だ、姉上」

「わかりました」

「リンドウ、ここでは姉上は辞めろと言ってるだろ?」

 

 リンドウとヤマトが返事をするとツバキがリンドウに注意をするも少しだけ嬉しそうにもヤマトには見えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確認するぞ?俺とソーマが前衛、コウタとサクヤは後衛、アリサとユウは遊撃だ。まあ、なんだ気楽に行こうぜ?」

 

 出撃時間になりアナスターシャが運転する対アラガミ装甲車の荷台で作戦を説明していく中、ディアウス・ピターと因縁があるアリサの表情が強張っていくのをリンドウが見抜き、何時もの頼りなさそうに言った

 

「僕とアナスターシャ、ナナの3人はピターの取り巻きのプリティヴィ・マータを殲滅。殲滅後はみなさんの援護に徹します」

「怪我の手当や手当中の人の役割に入るし、神機の応急処置もお兄ちゃんがいるからなんとかなるよ!」

 

 そう、普通ならヘリで空の移動を態々陸の対アラガミ装甲車での移動にしたのも最悪の想定をして神機の応急処置を出来るようにするためにとヤマトからの提案でもあった

 

「マータなら100や200来ても討伐可能ですので、皆さんも焦らずにディアウス・ピターの討伐をお願いします」

「いや、100も討伐してたら普通、体力持たないだろろ!!」

「一撃必殺を心掛ければどのアラガミも大して変わらないぞ?」

「貴方たちくらいよ、そんな無茶できるの」

「無茶も通せば無茶じゃ無くなりますよ」

 

 冗談のつもりなのか冗談にも聞こえないヤマトのそれは第一部隊の面々を呆れさせるがヤマトの特訓を受けたユウとアリサは本当にやりそうと感じて苦笑いしていた

 

「みんな、話してるところだけど付いたよー」

 

 対アラガミ装甲車が止まり、運転席から荷台に移ってきたアナスターシャが一言言うと、全員の顔が強張り各々神機を担ぎ上げる

 

「命令はいつも通りだ。全員死ぬな」

「僕からも…自分の意志を信じ、意志を貫け」

 

 意志を信じ、意志を貫け…この言葉はヤマトが具現武装を発現させてから常にヤマトが意識し、アナスターシャやナナに教えてきたことでもあった

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

 これから始まるのは【皇帝】と【女王】の名を冠するアラガミ達とフェンリル極東支部主力部隊の第一部隊並びに3人のみで接触禁忌種の討伐数を既に100を超えた極東支部現最強部隊の第六部隊の混合部隊による死闘だ

 

 

 

 

続く



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