GOD EATER THE FUTERE OF CALDEAS (黒木龍牙)
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第1話 旧人類最後の足掻き
吹雪の中。
あるヘリがヘリポートに着陸しようとしていた。
昔の神話に出てくる怪物。
神をも噛み殺すという牙を持つオオカミ、フェンリルをモチーフとしたマークが付いている軍用ヘリだ。
着陸し、ドアがスライドして、人が四人、降りてくる。
黒髪ロングで美麗な出で立ちの女性、雨宮ツバキ。
黒髪で男としてはまあ、長い方の髪で長身、さらにタバコを吸っている青年、雨宮リンドウ。
金に近い銀髪で不機嫌そうな顔を崩さない西欧人の少年、ソーマ・シックザール。
蒼色の長い髪を後ろで一つくくりにして、腰に和傘を持っている青年、アクィラ・ゾルダ・シザーズ。
すると、そのヘリポートのある施設、ユーラシア大陸旧ロシア地区連合軍作戦司令基地の職員であろう制服を着た職員の男が出てきた。
「“フェンリル極東支部”の方々ですね!!お待ちしておりました!!!」
ヘリの機械音と吹雪の音でかき消されないように大声でそう言った職員はその四人を案内する。
その様子を見ていた男は電話をしている。
「どういう事ですかな?シックザール極東支部支部長?この大切な計画のため、極東支部から派遣されたのが、たったの四人だと本部に報告しろと言うのですかな?」
この基地のリーダー。
ダガズ大尉。
スキンヘッドと無精髭という何ともインパクト的に言えば、千と千尋の神隠しの頭(かしら)の様だ。
軍服を着た彼は窓から、ヘリポートから降りる四人を見ながら、そう言った。
電話の相手をしているのはその四人を送り出した本人、フェンリル極東支部支部長であるヨハネス・フォン・シックザールは淡々と答える。
『落ち着いてください。彼らは一人で一個大隊の戦力を保持していると自負しています。それに、これはあなた方の計画だ。うちのものは、あなた方の後始末をするだけですよ。』
「しかし!」
『それに……、うちの愚息の初任務なのでね。よろしく頼みますよ?』
そう言い、シックザールは電話を切ってしまう。
クソッと電話を投げ、机に叩きつける。
通信アンテナ部分が折れ、もう使えはしないだろうが、関係ない。
怒りは相当なものだ。
「“あれ”がアラガミに唯一対抗できるゴッドイーターだと?ただの子供じゃないかっ!!」
「非常に遺憾ですね。あの様な奴らに取って代わられるなどと……。」
同じ部屋で書類を読んでいたもう一人の上官。
細い彼は確実にこの実験の統括役だろう。
「認めさせはしない……、この作戦が成功すれば……。」
ダガズはそう呟き、部屋を後にするのだった。
「本相当作戦は、ユーラシア地区のアラガミを戦略地点である核融合炉に誘導し、爆発させるという、今まで前例のない大規模な作戦だ。この作戦のために、フェンリル支部から派遣されたゴッドイーターの諸君には、アラガミを原子炉付近まで導く……、いわば羊飼いの役割をやってもらう。」
この軍隊のリーダーであるダガズ大佐がそう言うと、兵士は顔を向ける事なく、目線だけをこちらによこす。
皆、眼光は鋭く、怪しい行動をしただけで銃を乱射されそうだ……。
「チッ」
「こら、アキラ、舌打ちをするな。」
「おおっと、おいおい、どうしたんだ?アキラ、らしくねえぞ?」
アクィラは言いにくいため、アキラと呼ばれている。
「ごめん、寝不足なんだ」
「「なるほど」」
それで納得するのは、大丈夫なのだろうか?
三人はそういった感じで話しているが、ソーマは口を開かない。
「おい少年、今日が初任務なんだろ?リラックスしていけよ?」
リンドウがソーマに気をかけて話しかける。
だが、ソーマは淡々と
「少年じゃねぇ………、ソーマだ」
そう言って睨み返す。
「おっと、これは失礼。もう一人前らしい」
「からかうのはよせ、リンドウ」
そう言ってツバキは持っている資料に目を通していく。
リンドウは少し頭をかく。
アキラは壁にもたれ寝ている。
するとソーマが息を呑み、立ち上がる。
ドガンッ!
大きな爆発音とともに警報が鳴った!
「来やがった」
ソーマはそう呟きつつ、ヘリに走る。
リンドウはタバコをくわえ、ツバキは資料を取り落としそうになりつつ、アキラはそのツバキを抱え上げ、肩に乗せて走る。
待て、どうしてそうなった!?
ツバキは赤面。
固まっている。
「おい、ツバキ、いけるな?」
「あ、ああ………」
「?どうした?」
ヘリについた時はリンドウとソーマは頭上にはてなマークを浮かべていた。
ヘリが離陸し、原子炉上空に来た。
ドアを開け、下を見る。
多くのアラガミが見える。
オウガテイル、ザイゴート、コンゴウ、シユウ、ウコンバサラ、ヴァジュラ、サリエル、グボログボロ、ボルグカムラン、クアドリガ、ウロボロス………。
うお………、面倒くせえ……
「うじゃうじゃいやがる!」
「ごちゃごちゃ言っても始まらねぇ!!行くぞ!!」
俺はヘリの床を蹴って、地上二百メートルから飛び降りる。
昔の高所恐怖症だった俺からすると玉ヒュンものだが、今じゃもう慣れた。
俺は真下にいたサリエルを蹴って地面に落とし、クッションのようにして降りる。
頭の目ん玉潰して俺は走り出す。
俺の右神機は紅いショートブレード・クリムゾンドラグーン、左神機は白いショットガン・バルバトス。
俺の神機は第零型神機と第一型神機の間に位置する試作型神機だ。
神機はアラガミであり、自分以外を食らうものだ。
オラクル細胞の偏食を使い、自分を食べたくないものと認識させ、使っているのだが、俺の神機は使用者を神機と同じ細胞にすることで食べさせないようにすると言う方法だ。
試作のため、多くの神機が作られたが、全て同じ神機の細胞なので、俺はどれでも使うことができるし、今のように2つ使うことができる。
俺はクリムゾンドラグーンを起動する。
クリムゾンドラグーンは高周波ブレードなので甲高い振動音が出始める。
バルバトスのラッシュファイアで目の前のウコンバサラに後部から近付いて、左の足を斬る!
そして顔面にショットガンで散弾を打ち込み絶命させる。
俺はバルバトスを肩から背中にかけ、背負っていたもう一本の神機、白いショートブレード・イノセントアルビオンを左手で握る。
そして、跳ぶ!
地面にクレーターを作りつつ、上空でのさばっているサリエルを斬る!
斬り殺し、屍となったアラガミを足場としてさらに跳ぶ!
ザイゴートとサリエル(幼体)を斬って跳んでを繰り返す!
うお!?
目の前が一気に暗くなり、地面に叩きつけられる!?
「ぐっ……」
見上げるとウロボロスがいた。
俺はすぐに立ち上がり、逃げる!
さっきはでかい触手で叩き落とされたのだろう。
俺は銃型をバルバトスしか持って来てねぇ!!
ドッッ!!
後ろで爆音とともに、地面が破裂した!?
違う!
ウロボロスの触手が地面に叩きつけられたのだ!
「チィッ!!!」
俺はすぐに後ろへ跳んで振り返り、ウロボロスへ向かう!
跳んでくる触手を避け、目の前に叩きつけられた触手の上を走って頭の部分に駆け上がる!
ウロボロスのコアは目の裏、つまり頭の部分にある。
なんとか頭部に到着し、バルバトスでぶち抜いた。
一時間ほど経っただろうか。
量が一向に減らない。
むしろどんどんと増えて来ている。
キィィィィィン
「っ!」
「あっ!おいっ!」
ヘリが一般兵たちを連れ、俺ら4人を置いて離陸してしまった!
「見捨てる気か!!?」
ツバキが吐き捨てるようにそう言った。
だが、
「まだ来る」
ソーマの言う通り、原子炉の周りにはまだぞろぞろとアラガミが集まって来ている。
「くっそ!このままじゃもたねぇ!!」
リンドウがそう吐き捨てた。
このままだと、確かにリンドウの言う通りだ。
さて、どうするか。
俺は1人で思考を加速させる。
原子炉爆破まで約二時間。
おそらくこのままだと壊滅し、計画は破綻。
なら、俺がリーダーならどうだ?
っ!
俺がリーダーだったなら、もう、爆破させる!!!
「おい!リンドウ!ツバキ!ソーマ!原子炉から離れるぞ!計画はほぼ破綻しているなら原子炉を爆破させてアラガミの殲滅をするつもりだ!!」
「「っ!!」」
「っ!了解!」
そして走り出そうと踏み込んだ瞬間だ。
キィィィィィン!
ズガンッッ!
髄を揺らすような衝撃と爆発音、それと光が俺らを包み、熱が身体中を焼こうと必死に皮膚をこがそうとしている。
だが、そんな中、爆音の中に声を聞いた。
それは優しく、耳に残る声。
それはまるで、“少女が歌うような”声。
願いを閉ざす世界の怒り
怒りを制す誓いは永遠
未来へ続く、道は生きている
それを護るは私の想い
顕現せよ
吸強不滅の籠城(ドレイン・オブ・ザ・キャメロット)
詠唱?
しかも、この感じは宝具?
キャメロット……。
円卓か?
すると光が一瞬なくなり、爆発が食われていく。
大きな黒い、神機の捕食状態のようなアラガミのアゴ。
それが爆発を喰らい、空中で一気に小さくなったかと思うと、爆風が俺らを襲った。
俺は吹っ飛ぶ瞬間、英霊を見た。
肌はひび割れ、黒い鎧、生き物のような赤いコードのようなものが鎧の間を繋いでいる。
右腕に槍、左腕に盾が壊れ、基盤の赤い金属がのぞいているもの。
目は赤色、髪は白、右目が隠れる形の髪型。
そう、その少女は
気絶していたか。
仰向けで寝転がっていた俺は多くの瓦礫の下敷きになっていた。
なんとか瓦礫をどかして、起き上がる。
すると、ツバキに抱きつかれた。
「い、生きているな!」
「お、おう」
全く、心配性だな。
俺は立ち上がり、ツバキとヘリまで歩く。
神機は二本背負って左腕に持っている。
「それにしても、私たちの被爆はどうなっているのだろうか?」
「ああ、おそらくだが、あのでかい黒いアラガミが放射線を食っちまったんじゃねぇかって理論。俺らの偏食因子もおそらく放射線を吸収しているらしい。榊と俺の実験でも放射線を食っちまうってことはわかってるしな」
「なるほどな……」
「アキラ、姉上」
リンドウが報告に来た。
「軍の奴らはアラガミに襲われて全滅、だそうです」
「…………そうか………」
ツバキは悲しげにそう呟いた。
俺は少し行ってくると伝え、爆発によってできたであろう穴の中心に向かう。
すると、中心にたどり着いたと同時に、中心に何かが刺さっていることに気がついた。
これは………
ヘリが離陸して、極東に向かう。
俺は拾ったもの………、ブローチを見つめていた。
その中の写真には、若い茶髪の少女と顔がかすれ、わからなくなっている白衣姿の少女が写っている。
だが、その周囲にも人が2人いるらしく、少女の横には茶髪の男性が、そして少女の横には蒼色の髪の男性が立っている。
その茶髪の男は髪が長いらしいが、顔の直前で切り取られている。
そして蒼色の男の顔はギリギリ写っている。
それは、俺だ。
そして少女と蒼色の髪の男性の右手の甲には独特のマークが形成されている。
令呪………。
「おい、どうしたんだ?そのブローチ」
リンドウが気になったのか聞いて来た。
「ああ、“宝物”だよ」
「?」
リンドウは首をひねるばかり。
まあいいだろう。
帰ったら、これを飾ろう。
もしかしたら、“彼女が落としたことに気がついて追って来てくれるかもしれない”からな。
君をここに招待しようと思う。
来てくれよ。
“じゃないと、俺も過去に戻れないからな………マシュ?”
反省と後悔なんかあるわけがない。
さて、次回からはほとんどフェイト関連のことは出て来ません。
ゴッドイーター頑張って書くぞ!
世界観で言うなれば、この世界はゲーム、ゴッドイーターリザレクションの世界です。
次回はOVAの話から少し飛んで、三年後、防衛班結成時の話となります。
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