え、お前の轟雷起動しねぇの? (ししゃも丸)
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1機目 実を言うと轟雷は作ってない……
「メガミデバイスなんかも好きだ」
「メガミデバイスがお好き? 結構、ますます好きになりますよ!」
ここは日本にある東京都立川にあるちょっとお高そうなマンション。その一室に一人の男が住んでいた。
男の名は鎧明人。今年で20代後半に突入する社会人である。今日は金曜日、現在はもう午後の19時を過ぎたあたりである。
一人暮らしをする彼はもちろん自炊をしなければならない。今もこうして台所に立ち、夕ご飯を作っている最中である。
何を作っているかって?
こいつは一人暮らしで、料理が好きではない……つまり、作れるモノは決まっている。
炒飯、そう男の炒飯である。具はハムだけだ。まさにシンプル。
「撫子、皿」
「と、言うと思ってこちらに用意しておきました」
「さすが、撫子。さす撫」
「はいはい」
明人が呼んだ撫子という少女……というより小さな小人は、コトブキヤから発売されている『FA・G(フレームアームズ・ガールズ)』というプラモデルである。二度いうがプラモデルである。
『フレームアームズ・ガールズ バーゼラルド』それが撫子の本来の機体名である。ちなみにこのバーゼラルドことバゼ子は限定盤であり、色が赤で、髪の毛が黒。赤バニーではるのだが、明人は大和撫子を連想したらしく『撫子』というニックネームをつけた。
さすがに素体のままでは皿をもつことはできないので、武装を展開し、両腕のハードポイントにお兄さんというべき存在のフレームアームズの『アーキテクト』の腕をつけて皿を運んだのだ。
なんでバーゼラルドじゃないかって? アーキテクトは安いからね! カラバリも一杯あるよ! みんな“は”買ってみてね!
出来上がった炒飯を食べながらテレビをみる明人。そんな彼に充電くんに座り一息ついていた撫子が突然なにかを思い出したかのように声をあげた。
「あ、忘れていました!」
「ん、ふぁにを?」
「お行儀が悪いですよ。今日ファクトリ-から荷物が届いていたのを忘れていました」
「ファクトリー? ああ、コトブキヤからなんかメールが届いていたな。なんだっけ……そうだそうだ。会員に轟雷が送られてくるんだったな。ほんと、今更感あるよなあ」
『フレームアームズ・ガールズ 轟雷』は本来一番最初に発表、発売されたのだが、今現在発売されているFAガールのAIを搭載することになったので、初期ロットに発売された
轟雷を除き、現在標準装備のAIを搭載した轟雷は発売されていないのだ。
さらに付け加えると、この頃のFAガールの知名度は低く、コトブキヤのプラモを買っていない者達からすればなにそれ? 状態だったのである。有名なジャンルと言えば、アーマードコアやゾイドといったブランドの方が知名度があった。
しかし、AIを搭載したFAガールが発売されたことで一気に『FA.・G』というブランドは有名になった。発売された順番で行けばスティレットが最初に発売されたことになっているので、ただのというか普通のプラモデルである轟雷は貴重であり、オークションなどでは高値で取引されているという。
ちなみに明人は買ったはいいが作るのが面倒で積んであるので作ってはおらず、スティレットを購入して初めてFAガールを作った。一応本体より少数生産された轟雷のオプションパーツも買ってあるが、こちらも積んでいるのであった。
ご飯を済ませたアキトはさっそく送られてきたダンボール開けて中身を取りだした。
「おお! なんだかいつもと違うぞ!」
「そうですね。いつもでしたら、私達が描かれているパッケージですよね」
「フミカネの新規描き下ろしを期待していたんだけどなあ。ま、いっか。では、ご対面!」
箱の中央に素体の状態で轟雷が収納されており、その下に充電くんがあった。周りには轟雷の装甲と武装のランナーに説明書があった。
中身は発売中の他のFAガールと左程変わりはなかった。
明人は轟雷を手に取っていじくり始めた。
「ふむ、特にプラモの轟雷とはあんまり差がないな。色がちょっと違うくらいか」
「明人、まずは起動してみてはどうです?」
「それもそうだな。えーと、どこだっけ」
「起動のスイッチは胸の辺りですよ」
「そうだっけ? まあいいや。ポチっとな」
『……』
しかし、轟雷は起動しなかった。
「撫子、起動せんぞ」
「おかしいですね。取説にもちゃんと書いてありますのに」
自分の倍はある説明書を箱からだしてページを開くその姿はどこか可愛い。
「充電されてないのか?」
そう思った明人は充電くんを取りだして後ろの腰の部分にコネクタを指し込んだ。それから再度起動スイッチを押す。
それでも轟雷は起動しない。
我慢の限界を迎えたアキトは、
「動けこのポンコツが! 動けってんだよ! ふん! ふん!」
「そんな乱暴な扱い方はいけません!」
撫子が明人を止めようとしたその時である。轟雷の目が開いた。
「ふ、この手に限る」
「それしか知らないんでしょうが。でも、よかったで……」
轟雷は突然小刻みに動き出し始め、明人は思わず轟雷をテーブルに落としてしまう。水揚げされた魚のようにぴちぴちと体を動かしている。
『くぁwせdrftgyふじこpl』
「バグった――!!」
「もう、明人が乱暴にするからですよ」
「撫子、あとは任せたZE!」
サムズアップして明人はすべて投げ出した。撫子は人間でいうため息をつきながら、他の子が持っているサムライソードを手に持った。
「あの……撫子さん? 撫子さん?!」
ソードを構え、高く掲げ、振り下ろした!
「……覇!!」
『くぁwせ―――――』
「……峰打ちです」
「おいぃ! これはどうみても逝ったよ! 完全に逝ったよ?!」
「大丈夫です。峰打ちですから」
「んなもん、ドラマとかゲームだけだからな?! あーあ、これは返送しな――」
すると、倒れていた轟雷が突然立ち上がった。身体は明人の方を向き、ゆっくりと目を開いた。
「轟雷、起動完了しました」
「どやぁ」
「ちっ!」
「マスター、何故か首のあたりにダメージが蓄積されているようなのですが、起動した際に何か問題でもあったのですか?」
「……ちら」
「……ぷい」
明人が撫子に目を向けると、撫子は明後日の方を向いた。
「お二人ともどうかしたのですか?」
『いや、なんでも』
「そうですか。起動したばかりでこんなことをいうのも気が引けるのですが、装甲と武装を作ってほしいのです」
「積んであるガンプラを消化する予定だったが仕方あるまい。新しい同居人? の頼みが優先だもんな!」
「貴方の積みプラを数えろ!」
「今更数えきれんなあ!」
「お二人は仲がよいのですね」
「そうでしょうか?」
「撫子とはいつもこんな感じだけどな」
明人がそう言うと撫子も肯定したのか頷いた。
「撫子? それがバーゼラルドの名前なのですか?」
「あ、そうなのよ。うちにはもう一人、一体? のバーゼラルドがいるんだよ。そっちはバゼ子な」
「そうなのですか。よろしくお願いします、撫子」
「よろしくお願いしますね、轟雷」
「ちなみに、他にもFAガールが?」
「いるよ。描写が面倒だから出てないだけで、この部屋にいるよ」
「メメタァ」
「は、はあ?」
「さて、さっさと作るか。とりあえず、部分塗装とつや消しだけしとこ」
「明日は土曜日ですから、時間はたっぷりありますね。よかったですね、轟雷」
「はい!」
それから数時間後。轟雷の装甲と武装は完成した。
翌日になって、この轟雷が起動しないという報告をネットで見るまでは驚いたものだが、まさか隣の住人の轟雷も起動したとは思いもよらなかったのである。
基本短いですが、こんな感じで不定期でやっていきます。
え? プラモに名前をつけるのはおかしい?
またまた、貴方だって服を着せたり、色々と弄ってるんでしょ?
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2機目 近所のFA:Gが狩られていてないんですけどぉ
「(スッ)」
「――! 静かに素早くか。変わらんな」
「それで? 一体どうしたんです?」
「迅雷、マテリア・クロ、シロの劇中デザインシールが現れた」
「なんですって?!」
「対象商品を一個買うたびに一枚貰える。私は買った。次はキミの番だ」
今日は日曜日である。社会人にとって、休日がしっかりとある人間にとってはとても貴重なものである。
それは明人とて例外ではなく、日曜日はゆったりするのが日課である。土曜日に平日にはできない掃除などをしなくてはならないのが悩みの種であるが、一人暮らしをしている彼の使命とも言えた。
これが本当の意味で一人暮らしだったら「明日、明日やろう」と引き延ばすが、人間ではない同居人……ではなく、家族のような存在――FA;Gが、明人を堕落させないでいられる理由でもあった。
日曜日の午前中、明人は特に当てもなくテレビを見ていた。友人はちゃんといるし、会社の同僚と飲みにいくことだってあるが、今日は平凡な日を過ごす予定であった。というよりも、平凡な日の方が多いのだから当然である。
明人は立ち上がると押入れを開けた。そこには箱がずらりと小さな商品棚のように同じ箱同士が綺麗に重なっていた。バンダイのプラモデル、HGやMG、プレバン限定のプラモデルからコトブキヤのゾイドやアーマード・コアがある。その内の一つを手に取ると、しばらく眺めては戻して襖を閉めた。
そんな彼の様子を見ていた撫子と通常版のバーゼラルドことバゼ子、そして新入りの轟雷(現在改修中)。撫子はバゼ子に呆れながら声をかけた。
「まったく、いつもああなんですから。ね、バゼ子」
「仕方ないよ、撫子。減るより増えていくんだから」
「そう、なんですか? お姉さま方」
「そうなんですよ、轟雷」
「その内轟雷も色々明人の駄目なところに気づくよ」
轟雷は明人が所有しているFA;Gたちを「お姉さま」と呼んでいた。同型機を複数所有している明人のFA;Gの呼び方は決まっているが、轟雷がそう呼んでいるのもマスターである明人の影響が大きいのだろう。
これは明人に限らず、所有している一人一人色んな呼び方をさせているのが普通だ。FA;Gの学習機能の賜物かなのか、それともマスターによる調整と言う名の“調教”の成果なのかは人それぞれである。
「お前らマスターであるオレに酷い言い草だよな。傷つくわ-」
『はいはい』と二人のバーゼラルドが言うと轟雷が「あはは」と困った顔をしていた。
そんな時、呼び鈴がなった。
「はーい、今行きまーす! オレ、尼で何か買ったっけ?」
首を傾げながら明人は扉を開けた。そこにはよく知った顔の女性がいた。
「やあ、明人!」
「明人さんだ! で、どうした。またゴキブリでも出たのか?」
「違うよぉ!」
隣の住人で、現役女子高生の源内あお。それが彼女の名前だ。ポニーテールが似合う可愛い子だ。
二人の関係は簡単に表すならお隣さんであるのだが、これがなんとも奇妙なもので。あおは明人を兄のように思っているのかはわからないが、意外と二人の関係は良好であった。明人としては、自分の立場を考えれば女子高生と頻繁に接触しているのは、些か社会的に不味いのではと危機感を抱いていた。
「じゃあなんのようだ? 今日はカレー作ってないぞ」
「だから違うって!」
カレーは作ってみれば意外と簡単である。2.3日はご飯を作らなくていいので月に1、2回は作っているのだが、匂いを察知してあおはカレーをたかりに来る。
カレーが目当てではないとなると何の用なのだろうか。
「明人ってよく玩具を作ってるよね?」
「プラモデルな。まあ、ジャンルとしては一緒だが。それで?」
「工具貸して」
「急にどうした。お前そんな趣味なかっただろ」
「作るのに必要だって言うんだもん」
言う……?
どこか引っかかるような言い方するあおに疑問を感じたが、気になっても仕方がないと思って考えるのをやめた。
待ってろと伝えて居間に戻る。いつも使っているニッパーを持っていく。デザインナイフも渡してやろうかと思ったが、素人には危ないと判断してやめた。
「ほれ、ニッパ―」
「ありがと―!」
「はいはい。使い終わったら返せよな―」
「うん! じゃあ借りてくね―!」
あおが自分の部屋に入るのを確認して明人も扉を閉めた。彼が戻ると、轟雷が首を傾げながら聞いてきた。
「明人、彼女は誰なんですか?」
「隣に住んでるあおって子」
「遠目からですが、明人は好かれているように見えました
「轟雷もそう感じるのね」
「やっぱそうなるよねぇ」
「お姉さま方も私と同じことを?」
「ええ」
「といっても、私達も直接会ったことないんだ」
「どうしてです?」
「だって、あの子をここに入れられるわけないですし」
「その逆も然り」
「ああ、成程」
ぽんと轟雷は手を叩いて二人の言うことに納得した。
「それにしても……あおの奴がプラモをねぇ。珍しいこともあるもんだ」
「何を作っているのでしょうか?」
「ん―、意外と私達と同じFAガールだったりして!」
「まあ、素体は完成品で装甲と武装だけ作るだけでいいから、素人には優しいと言えばいい優しいな」
「そうですね。では、明人。サボっていた私の装甲と武装を作ってください」
そう言うと轟雷はジッと明人を見つめた。轟雷本来の装甲と武装は完成したのだが、明人は積んでいたFAの装甲と武装をつけようと考えていた。いたのだが、一部を作成しただけであとは疲れて放置したままであった。
「まあ……暇だしやるか。って、あおの奴にニッパーを貸したばっかじゃねぇか」
「あ、そうでした。私としたことがうっかりしてました」
「撫子、前に使ってたニッパーなかったけ?」
「そうでしたよね。ありましたよね、ヘビーニッパー」
「コトブキニッパーにしてからどっかにしまったきり見てねぇぞ」
コトブキニッパー。それはすごいニッパーなのだ。詳しくはアニメを見て欲しい。
たぶん、いつか買うので使ってる人は感想を教えてほしいぐらいだ。
「とにかく探してみましょうか」と撫子は武装を展開し「たぶん押入れの中にある箱のどこかに……」
「あ、私もいくよ。轟雷は待っててね―!」
「はい、お願いします。お姉様方」
「お前、飛べないからね。しょうがないね」
M.S.Gシリーズを使えば飛べなくもないのだろう。が、轟雷は陸戦が似合うと思うので、轟雷が飛ぶのはちょっと違和感がある。
やはり轟雷ならば陸戦仕様もとい、重装備なゴテゴテした感じが似合う。
そのためのコレなのだが……。
視線の先にはランナーが入った箱がある。ところどころ空いているのは組み立て途中だからだ。
しかしそれはFA;Gではなく、兄貴的な存在FA。パッケージには榴雷・改とあった。
その日の夜。
呼び鈴がなり玄関を開けると、案の定そこにはあおが立っていた。
「や、明人! こんばんは―、ニッパー返しに来たよぉ」
「おう。で、何を作ったんだ?」
実の所明人もあおが何を作ったのか気になっていた。プラモデルを玩具と言うほどの彼女だ。彼女のことを考えると、難易度的にはやはりガンプラのHG辺りが妥当だろうか。いや、旧キットという線も考えられるが。
「えへへ! 見よ、これが私の作った――」
ひょんとあおの肩に現れたのは見慣れたモノであった。
「どうも始めまして。私、轟雷と言います」
「轟雷なのだ! えっへん!」
年齢に見合った豊なモノを強調するように胸を張るあお。しかし明人の視線は彼女の肩にいる轟雷に釘つけだった。
なぜなら轟雷は、起動していないはずなのだ。
家の“元”轟雷を除けばだが。
明人も轟雷が来てから気になってスレを除いたりまとめをみたりしたのだが、世界中に轟雷の試作品を送ったはいいがほぼ全員が起動できない報告が上がっていた。
ここで不可解なのがうちのは起動したはずなのに、向こうから連絡の一つもない。ファクトリー側では起動したFA;Gは特殊なシステムによってすべて把握しているはずなのだ。なのに連絡の一つもないとなると……。
(やはり、撫子のアレが……)
頭が痛くなる。
明人は試に轟雷に尋ねた。
「なあ、もしかして今問題になっている試作品の轟雷の一体だったりしない?」
「そうなのですか? よく御存じですね。あおとは大違いです」
「まあ、よく作ってるからな」
「アレ? わたし、さりげなくディスられた?」
あおとを蚊帳の外に一人と一機は会話を続けた。
「作っているということは、明人の所にはFAガールが?」
「そうさ。ちなみに、キミと同型機もいるぞ。おーい、榴雷――!」
「榴雷?」
明人が呼ぶと部屋の奥からテクテクと歩いてやってきた小さな小人がやってきた。明人の轟雷改め、榴雷である。彼はしゃがんで手を差し伸べると榴雷は手に乗って肩に上った。
あおの轟雷と違い髪はセミロング、髪の色は緑、服装の装甲は赤で、装甲部分は茶色に近い色だ。見た目は似ているように見えるが、ところどころ違うのがわかる。
「初めまして、私。元は貴方と同じ轟雷ですが、今は榴雷と名乗っています」
「こちらこそ。よろしくお願いします、榴雷」
なんで榴雷かって? 同じ轟雷だと紛らわしいからだ!
その内本当の榴雷や漸雷やウェアウルフだって出るって信じてるよ!
「アレ、明人も持ってたの!?」
「まあな。オレはお前が持っている事に驚きだぞ。轟雷は会員限定に試作品である轟雷をテストするために送られたんだが、お前は会員じゃないだろうし……。なんでなんだ?」
「え、たぶんパパが入学祝にくれたんだと思うよ?」
「娘の入学祝にプラモって……」
頭を抱えたくもなる。だが待てよ……? ということは、あおの親父さんはそういうことになるのか?
明人が頭の中で色々と思い悩んでいると、轟雷が嬉しそうに告げた。
「しかし、明人がいるなら私も安心です」
「どうしてだ?」
「あおでは色々と心配でしたから。それに、コトブキニッパーを持っている明人の腕前……信用に値すると思ったからです」
「あおじゃな……。どうせ、パーツをどっかになくしたり、番号を間違えたりしたんだろ?」
「なんでわかるの?!」
「その通りです」
「ねえ、他にも明人持ってるんでしょ?! 見せて見せて!」
「断る」
「はや!」
「それは何故ですか?」
轟雷も他のFAガールが気になるのだろうが、明人としてはその願いは受け入れられるわけがなかった。
「一人暮らしの男の部屋に、現役女子高生を入れるわけないだろうが」
「いいじゃん、私と明人の仲なんだからぁ!」
「ただのお隣さんだろうが。それじゃ、お休み―」
「あ、明人ぉ!」
扉を閉めて施錠をしっかりとする。居間に戻ろうとするとドンドンと、何やら叫び声が聞こえるが無視をする。
だがしかし、あおの進撃は止まることはなく……。
翌日、まさかあんな事体になるとは思いもよらなかったのである。
先週の土曜日にはあったはずのアーキテクトとバーゼが、多分五話放送後消えていたんだよ!
なぜかサークルにビーストマスターソードにリボルビンバスターもな!
なんだろ、嬉しいのに嬉しくない。
上でも書きましたけど、漸雷とか榴雷早くFA;Gにならないかな~。
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3機目 轟雷、今度は私が確かめてやる!
「貴様っ……塗りたいのか?!」
「へっ、冗談だよ」
あおが轟雷を見せに来た翌日のこと。明人は仕事を終えて真っ直ぐ自宅へと帰ってきた。
(にしても、不思議な話もあるもんだよなあ)
自分の元轟雷を含め、試作品として世界中に轟雷が送られたのにも関わらず、起動出来たのはたったの二機。現実には一機という不可解なことになっている。
撫子のアレが効いたんだろうな、
発売されているFA:Gのすべてはファクトリーアドバンスを通して、コトブキヤは全機把握している、と会社側は発表している。
FA:Gはプラモデルながら人と同じように動き、自我を持ち、常に学習を続けている現代のオーパーツと言っても過言でない。しかし別の言い方をするならば、小さな隣人ともいえる。よく映画である人間とロボットの関係に近いものがある。
明人もネットの片隅で目にしただけだが、FA:Gを違法改造して法を犯す者もいるらしい。他にも現代兵器に転用などと言った空想までもある。
けれど、それは現実に在り合えるのだ。
ガンプラバトルはそういう話があるって聞いたことがあることを明人は思い出した。つまり、FA:Gも例外ではない。
「ま、そんな映画みたいなことが身近で起こるはずもないよな」
気付けばすでに自宅の玄関の前。
笑いながら明人は自宅の玄関のドアノブに鍵を刺す。しかし、開ける筈の方向に回らない。
おかしいな。鍵しないで出たのか?
疑問に思いながら明人は玄関を開けた。
「ただいま……?」
違和感の正体はすぐにわかった。それは、見覚えのない靴だ。我が家には通勤用の靴と普段靴にサンダルが一足ずつある。それなのに、どう見ても女物の靴がある。それも、見たことがあるやつだ。
ドスドスとわざとらしく歩き、居間に出ると、
「や、明人。仕事お疲れ―。お邪魔してるよ―」
「こんばんは、明人。お邪魔しています」
「なんでお前がいる?!」
「撫子ちゃんが入れてくれたよ。ね―」
「ねー」
可愛らしく答えるバーゼラルドこと撫子。
「ね―、じゃない! 撫子、何を考えてる! アレほどあおは入れるなと言いつけてあるだろ!」
「え、そうだったの?」
「まあ、明人の言いたいこともわかるのですよ? ただ、外に女の子を放置しておくのは些かどうしたものかと思いまして」
「自分の部屋に待たせればいいだろうが」
「いいじゃん、私と明人の仲なんだからさ。あ、大丈夫だよ。部屋は漁ってないから!」
ぐっと親指を立てるあおに明人は頭を抱えた。彼は諦めたのか、バッグを置いてあおの対面に腰を下ろした。
「で、何の用だ」
「いや―、新しい子が来たから紹介しようかと
「はあ?」
するとまたまたよく見ているFA:Gが現れた。
「初めまして、スティレットよ」
「バーゼラルドでーす!」
「……なんだ、追加で買ったのか」
「それがさ、送られてきたんだよぅ。なんでも、轟雷とバトルするためだって」
「なんで」
明人が尋ねると、スティレットとバーゼラルドが代わりに答えた。
簡単に言えば、世界中で一機だけ起動した轟雷にファクトリーアドバンスが興味を示し、当初の予定通り様々な形で轟雷をテストすることになったらしく、その方法がバトルということらしい。
「いやあ、バトルするだけでバイト代が入るのはいいんだけど、今日は学校に遅刻しちゃったよ」
「あっそ。頑張れよ、学生。社会人に遅刻なんて許されんからな。一杯遅刻しろ」
「ぶぅ、酷いぞ、明人ぉ―!」
明人はあおを無視してスティレットとバーゼラルドと再び話を始めた。
「あっちの思惑は理解したが、うちにも轟雷はいるんだがな」
「え、そうなの?!」
「いや―、世間は狭いですなあ」
「正確にはちょっと弄って現在は榴雷と名乗っているが。榴雷」
「はい、明人。お呼びですか?」
どこから現れたのか、緑を基調とした轟雷に似た轟雷が現れた。
「わ、本当に轟……雷? 姿は似てるけど……」
「色々と違うね―。でも……」
バーゼラルドは榴雷とデータリンクして彼女のデーターを照合した。
「たしかにファクトリーにある個体番号とも一致しているね。でも、向こうは起動を確認していないのはどうしてなんだろう?」
「なんでですかね。ね、撫子さん」
「あらやだ、明人さん。私が知るわけないではありませんか」
「おぉ―」
「仲がいいのね。明人と撫子って」
「うーん、これもマスターの差ってやつですな」
「あれ、さりげなくまた私ディスられてる?」
「明人はいいマスターのようです」
「はい。私が保証します」
明人の撫子の関係は、あおや轟雷のようなそれと違う。友人でもないし、ましてやそれ以上とも思えない。
しかしこれが、二人の当たり前な光景なのだ。
「ねえ、スティレット。明人のFAガールとバトルしてもさ、バイト代って入るのかな?!」
あおは急に大声で言いだした。
「え、それは……。そこんところ、どうなのかしら。ね、バーゼ」
「ん―、バトルして轟雷のデータを取ることが目的なんだから……入るんじゃない?」
「よしやろう、早速バトルだ、明人!」
「……素直にバイトしろよ」
「ふ、分かってないな明人は。こんなにいいバイトがあるんだから、他のバイトなんてできるわけないじゃん」
「……お前の将来が心配だよ、オレは」
そういうわけで、轟雷と榴雷がバトルすることになった。
「負けてもバイト代は変わらないんだろ?」
明人はバーゼラルドに尋ねた。
「うん、そうだと思うよ―!」
「なら手加減なしでやるか。榴雷、装備Bで準備」
「了解」
「うわ、なんだかカッコイイ!」
「じゃあ、オレベランダ行くわ」
「え、なんで?」
「支持を出すんだから、情報を与えるわけないだろう? 武装の追加はしなくても問題はないだろうし」
それを聞いた轟雷がむっとしながら反論した。
「それは、私が簡単に負けるということですか?」
「だってよ、オペレーターがあおなら楽勝だろう」
「くっ、言い返せません!」
「酷い、さっきから私の扱いが酷い!」
「ソンナコトナイヨ」
明人はベランダに行き、そしてバトルは始まった。
バトルフィールドに降り立った轟雷の目には、身に覚えのなる光景が広がっていた。
ここは、砂漠ですね。
スティレットと対戦したときと似たようなステージだ。ここはまさに砂漠といったようなステージで、黄砂が舞っている所為か少し視界が悪い。天候も昼というよりは夜と夕方の間ぐらいだ。それがさらに視界を悪くしている。
「状況はいいとは言えませんが、それは榴雷も同じはず」
『轟雷、頑張って―!』
「はい、あ――!」
警報。
上空に熱源反応。ミサイルがこちらに向かって接近中。榴雷の固定装備にはミサイルはない。つまり、明人が言っていた装備Bの武装の一つということか。
しかし、ロックオンはされていない。脅しだろうか。
『轟雷!』
「大丈夫です、あお。これは当たりません!」
その通りにミサイルは轟雷を中心に囲うように少し離れた場所に弾着。その衝撃で爆炎や砂が舞いさらに視界が悪くなる。
「くっ、相手の動きが分からない!」
『とりあえず、撃ってみたら?』
『アンタ馬鹿ぁ? いま撃ったらこちらの位置がわかっちゃうじゃない!』
『八方塞がりだね―』
『さっきから辛辣な言葉が胸に突き刺さるぅ』
「しかし、このままでは……!」
接近警報。
同時に轟雷の目がそれを捕えた。自分の前方、榴雷を確認。ただ、不思議と変な風に見えた。
ゆらゆらと左右に揺れてそれはこちらに向かってくる。何よりも、ある物が目立っている。それだけが認識できる。
赤い、赤い肩が迫ってきている。
バトル開始直後、ベランダ。
『榴雷、状況は?』
「開始位置は互いに離れているようです。現在、レドームを起動して……いま来ました。轟雷はここから少し離れた位置二いるようです」
『よし、なら発射可能領域になったらミサイルを発射。背部のバスーカ破棄してもいいな、あとは練習でやったアレだ』
「アレですね。了解です」
そして、榴雷は移動しミサイルを発射。予測通り轟雷は足を止め、その場で動きを止めた。
『轟雷を目視で確認!』
「よし、撃て」
「了解!」
榴雷のバイザーが下がり、3つのレンズがついているターレットが周る。榴雷はその手に持つアサルトライフルを斉射し、その間にも轟雷との距離を縮める。
「轟雷が回避行動を取ります」
『させるな。グレネード発射』
「グレネード発射」
アサルトライフルに装備されているグレネードを発射。回避を使用とした轟雷の動きをさらに止めさせた。
『榴雷、ターゲットを中央に固定!』
「――そのまま一気に集中砲火!」
轟雷の周りにぐるぐると周りながら集中砲火。
「そして最後は――」
『中央突破だあ!』
ライフルを破棄、榴雷は真っ直ぐ轟雷に向けて突貫。
ジャックパーツで作成した電磁式パイルバンカーを構え、
「これで、終わりです!」
「きゃあああああ!!」
轟雷を貫いた。
『榴雷 WIN』
「いやあ、飽きれるほど有効な戦術だぜ」
やはり男の子。勝って嬉しいのか、満面の笑みでベランダから戻ってきた。
『……』
「な、なんだよその目は」
「明人、大人気な―い! ていうか、何アレ」
「榴雷レッドショルダー仕様だ」
「れっど……なに?」
「ボトムズを見てから出直してこい」
「ジーンズかなんだか知らないけど、うちの轟雷になにしてくれてんのさ!」
「はあ?」
あおが指さす方をみる。そこには……。
「くる、赤い肩をしたやつがくる……。レッドショルダーが来るんですぉおおお!!」
「……トラウマっていう貴重なデータが取れただろ」
「そういうことじゃな――――いっ!!」
一話完結だけど、もうちょっとだけ続くんじゃよ。
FA:Gが放送してからなんとかマテリアのシロ以外が我が家に勢ぞろい。買うか迷っているが、消費するペースよりも積んでいくペースのが早い昨今。
ただ、普通のフレズヴェルクは買ってなくて、アーテルは限定と通常版を予約してます……。
まあ、コトブキヤ以外にもガンプラも欲しいのが一杯あるし、今日もプレバンでザンライザー予約しちゃったし、積みプラが0になる日は来るのだろうか……。
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4機目 我が家のスティ子は四人います
「レッドショルダー怖い、レッドショルダー怖い、レッド―――」
「うわあ、これは重症だよ」
テーブルの端で膝を抱える轟雷は、まるで念仏のように同じ言葉を繰り返していた。あおも頭を抱えたが、何を言っても反応はないのでとりあえず放置した。
「にしても、明人……じゃなくて、榴雷は強いんだね!」
「明人の指示があってこそですよ、あお」
「いやいや、明人より榴雷が凄いんだよ」
「まあ、それほどのこともありますが」
「榴雷よ、お前はどちらの味方なんだ……。って、お前もいい加減自分の家に戻れよ。こっちは夕飯もまだなんだ」
「ええぇー、まだ用事が残ってるんだもん」
「なんだそれは」
「うちのスティ子がバトルしたいって」
「そうなん?」
明人はスティ子に目を向けた。
「ええ。私としても、他のマスターが所持しているFAガールとバトルしてみたいし。それに、貴方も持ってるんでしょ? 私を」
「それはまあ……そうだが」
はっきりしない言い方をしながら頬を指で掻く明人。スティ子はなんでと素直に尋ねた。
「言うより見てもらった方が早いか。スティレット全員集合―」
『全員?』
明人が号令を出すと、シュパッとどこからか四人のスティレットが現れた。しかし、どれも特徴があって同じ個体というのはいない。
そして、自己紹介が勝手に始まった。
「私が最初のスティレット! 至って普通のFAガールにして、スティレット姉妹の長女!」
「私が次女のだぶるお―スティレットこと、スティコーよ!」
「続いて三女の私、セブンソードスティレットことセブン!」
「お待たせいたしました! 最後のスティレットにして航空自衛隊とコラボしたブルーインパルスことインパルス!」
『私達、スティレット四姉妹!』
ドーン! と後ろで爆発が起きた。それぞれの充電くんが演出をしたらしい。
「はい、それじゃあインパルスだけ残って撤収」
『わー』
「なんで、その子だけ?」
「描写が面倒だから」
「相変わらずメタイですわ」
明人の肩に乗っていた撫子がツッコミを入れた。
「で、明人。私はこの……すごく弄られ属性満載のスティレットと戦えばいいの?」
「ちょっと、なによそれ?!」
「そうみたいだぞ」
「え、無視?!」
「なんだろう。いま私、スティ子にシンパシーを感じている」
「じゃあやるか。インパルス準備してくれ」
「了解」
「あ、スルーですか。そうですか」
インパルスとスティ子のセッションベースを接続。互いに違うのはカラーリングのみで、充電くんにつけている装甲、装備はどれも似たようなものだ。
そんな時、あおはあることに気付いた。
「あれ、今回は中にいるの?」
「インパルスはちょっと大変なんだよ」
「大変? なにが?」
「見てればわかる」
明人はそういうと一旦離れて何かの箱を開けて漁っている。同時にバトルが始まった。
『同じ私だからって負けないわ!』
『スティレット ブルー・インパルス、行きます!』
フィールドが展開。
場所は先程の砂漠から一転し、海の上だ。しかも吹雪が舞っている。
「わあ、こんなステージもあるんだ。ちょっと綺麗」
あおは始めてみるステージに見惚れていた。
「あ、よっこらせ」
ガシャ、と何や最近聞きなれた音がした。あおがそれに目を向けると、見たことないプラモデルがあった。明人の私物だ。
「明人、なにそれ」
「今にわかる。ほれ、始まったぞ」
「お」
『このぉ!』
『……!』
互いに機体は同じ、装備も一緒。勝負の命運を分けるのは自身の力量。そう見れば、あおのスティレットは戦闘経験は少ない方になるが、今の所どちらが劣っているとは思えない戦いだ。
『当たれ――!』
『甘い!』
スティ子は左腕のミサイルを発射。インパルスはそれを難なくと回避し、スティ子に迫る。サムライソードを展開し、振り下ろした。
『っ!』
ワンテンポ遅れてスティ子もサムライソードを展開、インパルスの攻撃を防いだ。互いに斬り合うが拮抗したまま以前と変わらない。
ステイ子はどうすべきなのかと焦りが見始めた頃、インパルスに異変を起きたことに気付いた。
『ハァ、ハァ、ハァ』
息が荒い。なぜ? とスティ子は違和感を覚えた。
FAガールに疲労という概念はない。充電がなくなるという一種の危機感はあるが、それは人間でいう空腹に近いものだ。
なのに目の前のインパルスはどこかおかしい。
『ハァ――』
『! そこよ!』
突撃。
一瞬の隙をスティ子は見逃さなかった。インパルスに体当たり。そのまま逆噴射をかけることもなくインパルスは海へ向けて落下。すかさず右腕のガトリングガンを斉射。弾は街がなくインパルスに直撃した。
『……やったの?』
そのまま海に落ちたインパルスを上から見下ろすスティ子。しかし、バトルがまだ終わっていない。
「明人のスティレットやられちゃったよ」
「そろそろかな……」
「え、何が始まるの?」
「大惨事スティレット大戦」
「へ?」
突如、海から何かが飛び出した。インパルスだ。
『おぉおおお――――!!』
『ええぇええ?!』
『明人! フォースシルエット!』
「えーと、撫子。今度はどれだ?」
「多分これですよ。スティレットようの追加パーツのエクシードバインダー」
「二個買ってそれっぽくしたやつか。転送っと」
インパルスのブースタが消えてエクシードバインダーが装着される。お前けに足のジョイントにブースターも装着。腕にはビームシールドもある。
『はぁああああ!!!』
『ちょ、いきなり人格変わりすぎでしょ?!』
スティ子は驚きながら反撃するが、攻撃はシールドによって防がれてしまう。さらに動きを止めたため、インパルスの攻撃が命中。直撃ではないが、インパルスにはそれだけで十分だった。
『次、ブラストシルエット!』
「ブリッツガンナーのことか」
「そうでしょうね、たぶん」
今度はブリッツガンナーを転送。
ガンナーモードに設定し、インパルスは容赦なく発射。片方は外れたが、もう片方が命中。
『ソードシルエット!』
「撫子、お前だったらどっちにするよ」
「ユナイトソードも捨てがたいですが、ここはあえて新作のアーセナルアームズでいくのはどう?」
「じゃあ、そっちを転送」
いくつものパーツが集まり、巨大な大剣となったそれはアーセナルアームズ。今月発売するレイファルクスの装備である。純粋にカッコイイ、デカい、つおそうと満足のいくキットだ! しかし、金がないので両方とも買えないのであった。
『貴方はここで倒すんだ! 今日、ここでぇ!!』
『ちょ、まっ――』
一閃。
今度はスティ子が海へと落ちていく。
『インパルスWIN』
『……あ、終わったの?』
少しして、スティ子は明人に怒鳴りつけていた。
「ちょっと、何よアレ?! おかしいにも限度があるわよ!」
「オレにも言われても困るゾ。バトルしていたら急にああなっちまうようになったんだからよ。オレは悪くねぇ!」
「んー。二重人格ってやつなのかな?」
「人格プログラムに異常があるのでは?」
轟雷が言ってきたが、明人は否定した。
「違うな。たぶん、違う」
「ええ、たぶん違います」
撫子も明人と同じ意見を言うが、あおと轟雷にはさっぱりである。
その横でインパルスはスティ子に色々と謝罪をしているのを明人は目にした。
(やっぱ、インパルスだからって種運命見させたのが悪かったのかな……)
FAガールも色々と影響を受けるんだと、改めて思った日であった。
レイファルクス欲しいけど金ないので買えないなあ。
白虎はデザイン嫌いじゃないけど、FAぽくないんだよなあ。
最近コトブキヤが再販一杯してくれるのは嬉しい。でも、金が足りないぜ!
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