ソードアート・オンライン 死神と妖精 (ミルクチョコ)
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プロローグ
アスカside
「はあああああっ!!!!」
目の前のゴブリンの攻撃をかわしつつ相手の胴体に片手剣の下級ソードスキル、【ソニック・リープ】を放つ。そしてそれを喰らったゴブリンは悲鳴を上げてポリゴンとなり消えた。
それを見て俺は一息吐いてアイテム欄の整理をする。しばらくして整理が終わると俺は青い空を見上げて呟いた。
「今見ているこの空も本物じゃないんだよな…」
この言葉、聞いている人によっては「何言ってんだ?こいつ」というような反応になるだろう。だが俺、いや、俺達にとってはこの言葉は特別な意味を持つのだ。
「この世界に居るのももう半年か…」
そう、ここは現実の世界ではない。俺の目の前に咲いている花も綺麗な空も、すべて現実ではないのだ。
では何故俺が現実の世界に居ないのか?
それは半年前の2022年11月6日に遡る……
「……ええっと…もう一回言ってもらっていいかな?」
俺、浅木飛鳥は目の前の友人にそう問いかける。
「はあ~…だから、コレ!お前の分も一緒に買ってきてやったから一緒にやろうぜって言ってるんだよ」
「…………俺前断らなかったっけ?」
目の前の友人、桐ヶ谷和人はあるものを俺に向けて頭を下げてくる。
「な?お前のために2本も買ってきてやったんだからな?あの長い行列を…ダメだ…もう思い出したくない…」
「おい何があった」
青い顔をして下を向く和人から目を離し、和人の持っているゲーム、【ソードアート・オンライン】を手に取る。手に取ると前から「おお!やる気になったのか!!」といった声が聞こえるが一度その声から意識を外す。
実は俺も和人も、以前このゲームのベータテストを経験している。なのでこのゲームがどういったものなのかは大体知っているし思いっきり楽しんだこともあるのでやりたくないと言えば嘘になるのだ。」
「だったら良いじゃないか、やろう」
「あれ?声に出てたのか?」
「ああ、やりたくないと言えば嘘になるんだろ?」
「……いや、そうだけど……でも考えてみろよ、このゲームにはまりすぎた結果現実の方の体が運動不足になったりしたらどうする?」
「あ……い、いや~だから現実でうまく動けない分仮想世界でたくさん動けば良いじゃないか!!」
「その結果が今のお前みたいな廃人になるわけだ」
「ひ、否定できない…」
そう、俺が和人の誘いを断った理由のひとつが現実の体のことである。実際に自分もVR世界にどっぷり浸かりすぎて現実の方で体が重く感じたこともあったからな。
「でもさ、頼む!!!」
和人は目を瞑り手を合わせて俺に頼んでくる。
…………まあ…良いか……
「ん、分かった。やろうか」
「頼むッ!!ログインしたらレベル上げとか手伝ってやるか………え?マジで?」
「ああ、マジだ。それにお前がVRの方でコミュ障出さないか心配ってのもあるしな」
「コミュ障は余計だ」
そういう和人からSAOのソフトを手に取り俺は部屋の時計を見る。今は12時15分。正式サービス開始まで少し時間があるな…
「そういえばこの事スグちゃんには言ってるの?」
「ああ、もう伝えてある」
スグちゃんこと桐ヶ谷直葉は和人の妹である。俺と和人が関わり始めたくらいのときに彼女とも出会っているので付き合いはもう数年は経つ。
「それじゃあ俺は家に戻るわ」
「ああ、次はSAOの中でな」
「おう」
俺はそう言って和人の部屋を出る。そしてそのまま家を出てすぐ隣の自分の家に入り軽く軽食を食べてから自室へと戻る。部屋に入ると机の上にあるナーヴギアを取り頭にかぶる。そのまま布団の上に横になり時計の針が1時になったのを見て俺は目を瞑りその言葉を発した。
「リンク・スタート!」
その瞬間、俺の意識はあの世界へと消えた
はい、どうもミルクチョコです。もう一つの小説の連載が止まっていますがしばらくはこちらの小説を投稿しようと思います。もちろんもう一つの方もまた必ず投稿しますのでお待ちください。
それではまた次回!
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終わる現実と始まる世界
アスカside
ゲームを開始すると目の前にいくつものウィンドウが開いた。それから目を離すと目の前に『ベータテスト時に登録したデータが残っていますが、使用しますか?』という文字が出たのでYESを選択する。すると視界が光に包まれる。
そして目を覚ますとそこは広い広場、《はじまりの街》で既にたくさんのプレイヤーがいた。それを見て俺は自分の姿を確認する。体格は現実よりも男らしい体となっており髪も耳くらいまでの長さになっている。そんな自分の姿を確認し終えると横から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「なあ、アスカだよな?」
「うん?……ああ、お前かずt…いや、キリトか」
目の前に現れたのは現実では見たことも無い人物であった。だが、声と名前を見てその人物が誰かすぐにわかった。その相手とは幼馴染とも言える関係をもつ友人、桐ヶ谷和人ことキリトである。どうせなら可愛い女の子の幼馴染が欲しかったがある意味もう居るようなものなのでここは我慢しておくことにしよう。スグちゃんは可愛い。
「よく俺のことが分かったな」
「ベータテストのときとほとんどアバターが変わってないんだからすぐにわかるさ」
話の流れから分かるとおりキリトもベータテスターである。ベータテスターとは簡単に言うと実際にゲームを発売する前にテストとして期間や人数を制限して実際にそのゲームをプレイしてもらいその中で何か問題や異常が無いかチェックしたりすることをベータテストといいそれに参加した人のことをベータテスターというのだ。まあ俺もコイツもたった1000人限定の抽選に当たったんだから相当な運の持ち主だろうな。
「さてと、それじゃあ早速行くか?モンスター狩りやらなんやらと」
「ああ、そうしよう!!」
「現実と違って明るいなお前」
「そういうこと言うなよ…」
落ち込むキリトを軽く慰めてフィールドへ向かおうとすると後ろから方を叩かれた。後ろを振り返ると赤い髪の男性が俺達に話しかけてきた。
「どうした?」
「その迷いのない動きっぷりあんた達ベータテスト経験者だろ。俺今日が初めてでさ、序盤のコツ、レクチャーしてくれよ。」
キリトの問いかけに男性はそう答える。俺はキリトにどうする?と目線で言うとキリトはこう言った。
「ああ、わかった」
「よっし!!俺はクラインだ!よろしくな」
「俺はアスカだ。よろしく頼む」
「俺はキリトだ。よろしく」
俺達はお互いに自己紹介を済ましフィールドへと向かった。
「うおおわあああっ!!!」
「あらあら……」
少し時間が進んで俺達は草原にいた。そこでクラインはフレンジーボアを相手に戦っているのだが…
「なあ…キリト……」
「なんだ?」
「あいつって確かこのゲームで最弱のmobだったよな?」
「ああ、そうだな」
「それにしてはアイツむっちゃ吹き飛ばされてない?」
「そうだな…助けてやるか……」
キリトはそう言うとクラインにアドバイスを与える。え?俺は何もしないのかって?アイツには他人とのコミュニケーションをとらせた方が良いと思うんだ。俺はコミュ障じゃないから大丈夫。
「なんだろうな…こう、スキルが立ち上がるのを感じたらこんな感じでスパーン!!といくんだよ。分かったか?」
それで分かったら俺クラインのこと天才だと思うよ。そう思いクラインを見ると手に持っている曲刀にエフェクトが出て…いるだと!?
「おらあああああああああ!!!!!」
クラインは曲刀の下級ソードスキル【リーパー】を発動させフレンジーボアを倒した。マジか…コイツあの擬音だけでスキルの発動の仕方が分かったってのか?天才かよ。そう思いながら見ているとクラインは両腕を腕に上げ雄たけびを上げる。
「よっしゃあああああああああああああああ!!!!!!」
うん、嬉しいのは分かるけど……
「今の、ド〇クエとかで言うところのスライムだからな」
「なにぃ!?俺ぁてっきり中ボスくらいだと思ってたんだが……」
「始めのフィールドで中ボスとか出たらゲーム成り立たないから。勇者次の村行けないから」
キリトが俺の思っていたことを言ってくれる。それに驚いたクラインに俺がもう一言かける。まあさっきのコイツの戦いを見たらそう思っても仕方が無いのかもしれないが…
「まあ、そういうことだ。こんなのよりも強いのがこのゲームにはもっと居るからな」
キリトはそう言うと目の前で新しくポップしたフレンジーボアに対し下級ソードスキル【ソニック・リープ】を発動させる。それを喰らったフレンジーボアはHPを0にしてポリゴンとなって消えた。クラインもそれを見て負けじとソードスキルを繰り出す。俺もそれを見てキリトたちと共に日が暮れるまで戦い続けた。
「ふう~、疲れた…」
俺はそう言って日が暮れている空を見上げる。その景色は本当にここが仮想世界なのか?と思わせるほど綺麗な光景だった。
「しっかし、未だに信じらんねぇよな、ここがゲームの中だってことが」
「ああ、その意見には同意だ。現実じゃあこんな景色はあまり見ないよ。なあ?キリト」
「まあな……でも不思議だよな」
「ん?何がだ?」
キリトはそう呟くと俺達にこう言った。
「現実じゃいろんなしがらみがあるだろ、でもこの世界はコイツ一本でどこまでも上に上っていける………仮想空間なのにさ、現実より”生きてる”って感じがする」
確かにコイツの言うことには同意だ。現実のことを忘れて楽しむのもこのVRゲームの醍醐味だろう。実際にベータテスト時のコイツのことを思い出すと共感できる。
「なんてな。どうする?まだこのまま狩りを続けるか?」
キリトは照れくさくなったのか話題を変えてこれからどうするのかを聞いてくる。録音でもしておきたかったよ今の言葉。
「あったりめぇよ!……って言いてぇところなんだが、いったん落ちてメシ食うわ。五時半にピザの出前とってんだよ」
まさかの夜間プレイとは…コイツこのゲームにはまりすぎて現実で体調崩したりとかしないよな?
「キリトはどうだ?」
「俺は大丈夫だ、妹にも言ってあるしな。アスカは?」
「俺も同じくだ、両親共に出張だしな」
「そうかそうか……って、ん?キリト、お前妹さんがいるのか!?」
「え、あ、ああ…そうだが……」
「なんだと!?うらやましいなあ!!!」
「お前に妹はやらん」
「やっぱお前シスコンだな~」
そんな会話をしているとクラインは立ち上がり俺達に向き直りこう言った。
「まあそれは置いといてだ、二人ともサンキューな。おかげで今日は楽しめたぜ」
「ああ、こちらこそ」
俺はそう言ってクラインと握手をする。すると俺に続いてキリトにも握手を求めた。キリトはその手を見て同じように手を出して握手を交わした。クラインはキリトから手を離すと俺達に背を向け手を振りウィンドウを開きこう言った。
「あれ?ログアウトボタンがねえぞ?」
キリトはその言葉を聞くとクラインにこう言った。
「いや、そんなわけないだろ。もっとよく探してみろよ」
俺もキリトの言葉を聞き右手を振ってウィンドウを開く。そこにはクラインが言ったとおりログアウトボタンが消えていた。
「ああ…クラインの言ってることは本当みたいだな」
キリトは俺の発言に驚くと自分もウィンドウを開きログアウトボタンを探す。だが反応は俺達と同じでログアウトボタンが無いことを俺達に言った。
「まあ、正式サービス初日なんだからバグもあるだろ。今頃運営側は半泣きだろうけどな」
「そうだな……あれ?今何時だ…?」
俺がそう言うとキリトとクラインはお互いに時間を確認する。キリトは時間を見て「あらら」とでも言いそうな顔をしてクラインの方を見ており当のクラインは…
「あああああっ!!!俺のピザたちがあああああああああ!!!!」
クラインは悲鳴を上げると腕と膝を地面につきotzの状態になる。なんかこいつの周りに紫のオーラが見えるのは気のせいなのか?そうだと信じよう。ていうか…
「なあキリト。おかしいとは思わないか?いくら初回サービス初日とはいえどログアウトできないバグだなんて今後の運営に関わる大問題だぞ?俺としてはすぐに俺達プレイヤーを強制ログアウトさせたりする必要があると思うんだが…」
「そうだな…念のためにGMコールをしてみよう。クライン、頼む」
「あ、ああ…それがさっきから何度も掛けてるんだがよ…全然つながらねえんだよ」
……なんだろう…嫌な予感がするな……
ゴーン、ゴーン、ゴーン
「うおっ、何だ!?」
「これは…鐘の音…?」
「ああ……ッ!!何だ!?」
キリトはそういうと光に包まれこの場から姿を消した。それに驚き隣を見ると同じようにクラインも消え、そして__
「なっ、何だこれっ!?」
俺もキリトたちと同じように光に包まれる。強い光のせいで目を開けていられなくなるがその光もすぐに収まり俺は目を開いた。そこで見たものは_
「んんっ………ここは…はじまりの街…?」
そう、そこは俺がこのゲームにログインして初めて目にした場所、《はじまりの街》だった…
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デスゲーム
アスカside
「ここは…はじまりの街…?」
目を開けるとそこは俺が始めてログインしたときに見た場所、はじまりの街であった。何で俺はここにいるんだ?ええっと…確かログアウト出来ないことに気づいてGMにコールするが全くつながらなくて…それで鐘の音が聞こえたらクラインとキリトが消えて__
「そうだ、あの二人は何処に!?」
二人のことを思い出し周りを見渡す。そこには俺と同じようにこの場所に転移されたのであろうプレイヤー達が一人、また一人と増えていっていた。
「あっ、おーい!アスカ!!」
「キリト!!」
後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえたのですぐに後ろを振り返る。そこには俺のほうに走ってきているキリトとクラインがいた。
「良かった…二人とも無事だったんだな」
「まあな、特に変わったことはねえよ」
「それにしても…これはいったい……」
キリトは一人そう言うと周りを見渡して「分からない」といった表情をする。確かに俺もそう思う。ログアウトさせてくれるのなら嬉しいんだが…
「おい!何だあれ!?」
近くに居た一人のプレイヤー空をが指を指し声を上げる。何事かと思い自分も空を見るとそこには《Warning》という文字が浮かんでいた。するとその文字は空を赤く染めると血のような赤い液体が流れ出しローブを着た人型の何かを作り出した。その時_
『ようこそ、プレイヤーの諸君。私の世界へ』
そのローブから男性の声がはじまりの街に響き渡った。それと同時に周りのプレイヤーの声も消えた。
『私の名は、茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』
茅場晶彦、ソードアート・オンラインの開発者の名前である。だが何故その設計者が…この事態についての謝罪か…?そう考えていると次に彼はこう言った。
『プレイヤー諸君は、すでにログアウトボタンが消滅していることに気付いているだろうが…それはゲームの不具合ではない。』
「………なんだって…?」
思わず俺の口からそんな言葉が出てしまった。ゲームの不具合ではないだと?それはつまりこれがこのゲームの本来の仕様だとでも言いたいのか…?
『そして諸君らによる自発的なログアウトは一切できない。また、外部によるナーヴギアの強制ログアウトも出来ない。もしも外部の人間の手によってナーヴギアが停止、あるいは取り外しが行われた場合……』
ログアウトできない…現実に帰れないということか?でも本当にそんなことが出来るのか?あれやこれやと混乱しながら考えていると茅場は俺達に言った。
『ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる』
何を言っているんだ…コイツは…?さっきまで止まっていた体が急に震えだし、その場に座り込んでしまった。脳を破壊するだと…?その先に待っているのは死だけだ。何故そんなことを…
「脳を破壊する…?アイツなに言ってんだよ!頭おかしいんじゃねえか?なあキリト?これはただのゲームだぜ?そんなこと出来るわけねえよな!そうだよな!?」
キリトが悲痛な声でキリトに言う。だがそんなクラインにキリトが返した答えは…
「いや…出来る…」
YES、だった…
「ナーヴギアってのは原理は電子レンジと同じなんだよ。だからリミッターさえ外せば脳を破壊することはできる。それに内臓バッテリーも付いているから電源を抜かれようが問題ない…」
「そんなっ…マジかよ……」
クラインは腰が抜けたのかその場に座り込んでしまった。そんな様子に関係なくさらに茅場は話を続ける。
『具体的には、十分間の外部電源の切断、二時間以上のネットワーク回線の切断、ナーヴギアの停止、解除または破壊の試みのいずれかが実行された場合、ナーヴギアの脳破壊シークエンスが開始される。実際に警告を無視したプレイヤーの家族友人等がナーヴギアを解除しようとした例が少なからずあり、その結果…』
少しの間を作ると茅場はさらに絶望的な一言を俺達に伝えた。
『既に二百十三名のプレイヤーが、現実世界から永久退場している』
茅場がそういうとその周りに茅場のいったとおりナーヴギアにより脳を焼ききられて死亡した人たちのニュースの画面が幾つも表示される。
『現在あらゆるメディアが、多数の死者が出ていることを含めて繰り返し報道している。よって、諸君らのナーヴギアが強引に解除される危険性は既に低くなっているだろう。諸君らは安心して、ゲーム攻略に励んでくれ』
「この状況を楽しめ…?なに言ってんだよこいつ…」
俺の近くからそんな声が聞こえる。こんな状況で楽しむだなんてできる訳がない。
『しかし、充分に留意してもらいたい。今後、このゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅する。それと同時に、諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
その言葉を聞いた瞬間ベータテスト時のことを思い出した。あの時は何度死んでもやり直すことができたが今回はその”何度”が無い。一度だけなのだ。ふと自分のHPゲージを見てしまう。今の色は緑。これが黄色、赤、そしてゲージが空になった瞬間、俺は茅場が言ったとおりこのゲームからも、現実からも消える。
『諸君らが解放される条件はただ一つ。このゲームをクリアだ。現在諸君らがいるのはアインクラッド最下層。そこから迷宮区を攻略し、その最上階にいるフロアボスを倒せば、次の層が解放される。それを繰り返し、第百層にいる最終ボスを倒すことができれば、その時点で生存している全プレイヤーのログアウトを約束しよう』
「なっ、ひゃ、百層!?お、おいキリト!アスカ!お前らベータテストのときは何処まで行ったんだ!?」
クラインが俺達に問いかける。キリトはクラインの言葉を聞き口を開く。
「二ヶ月で十層のボスを倒して終わりだ……」
「まあ…それも何十回も死に戻りを繰り返したうえでの十層到達だったけどな……」
「おいおいマジかよ………そんなんできる訳がねぇだろ!」
俺とキリトがそう言うとクラインはできる訳が無いと叫んだ。そんなクラインの声など関係ないと言う様に茅場はまだ話を続ける。
「では、最後に一つ。諸君らのストレージに、私からのプレゼントを入れておいた。確認してくれたまえ」
その言葉に俺もキリトも、その場にいた全員がストレージを開けた。中に入っているのは…手鏡?手に持ってみると特に変わった事は無く、何処にでも売っていそうな普通の_
「なっ!」
そう考えていると俺やキリト、他にもその場に居たプレイヤーすべてが光に包まれた。また転移か?そう考え光が収まるのを感じると目を開けるが特に景色は変わっていなかった。
「おい、キリト、クライン、二人とも大丈夫…か?」
「ああ、俺はだいじょ…うぶ…」
「俺もだ…お前ら怪我は……」
俺は二人に声を掛けようと後ろを向きながら問いかけるとそこには先ほどとは違う人物が二人いた。一人はおそらくキリトだろう。現実の容姿と同じで体の線も細く女顔の少年、桐ヶ谷和人だった。もう一人は野武士のような人物で頭にバンダナを巻いていた。
「「「いや、お前(ら)誰だ!?」」」
俺達の声が綺麗に重なる。いや、キリトこと和人は知り合いだから分かる。だがそこのバンダナ、お前は誰だ!?
「えっ、え!?ええっと……これどういうことだ!?」
「お、お前女の子って嘘だったのかよ!?」
「お前だって17って嘘かよ!?」
「何故だ!?ハーレムが一瞬にして男だらけの世界になってしまった!?」
周りでも俺達と同じようなことになった人たちが「これはどういうことだ!?」と叫んでいる。最後の奴には突っ込まないからな。
「えっと…つまりお前はクラインか?」
キリトは目の前の状況が理解できたのか野武士面の男に問いかける。
「ああ、そうだよ!じゃあ…お前は……キリトか!?そんで横のお前はアスカか!?」
クラインもこの状況を理解したようで俺達の方を方を指差しそう言う。っていうか…
「何で現実の体になってるんだ…?」
「ナーブギアは信号素子で頭をすっぽり覆っているから、顔の輪郭とか把握できるんだ」
キリトが俺の疑問に答えるようにそう言う。それを聞いたクラインも思いついたように問いかける。
「で、でもよぉ。身長や体格はどうなるんだ?ナーブギアじゃ測れないだろ?」
「あ、ほら!ナーヴギアを最初に被った時に…ええっと…あれだ…何だったっけ?」
「キャリブレーションだろ?あれをして体のあちこちを触ったからだろう」
クラインの質問にまたキリトが答える。茅場は俺達の姿が変わったのを見ると健闘を祈りその場からその姿を消した。あまりにも突然すぎる出来事にプレイヤーはただ空を見上げ、呆然としていた。そんな中…
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
一人の少女の叫び声が聞こえる。その叫びが引き金となり先ほどまで無音だったこの広場に一瞬にして不の感情が溢れ出した。
「いやだ…いやだいやだいやだいやだああああああ!!!!!」
「ねえ出して!ここから出してよ!!!」
「妻が現実に居るんだよ!早く返してくれよ!!」
「ふざけんなよ!!何で俺がこんな目にあわなきゃならねえんだよ!!」
嫌だ嫌だと叫ぶ声、出してくれとせがむ声、待っている者に会いたいと叫ぶ声、どうして俺がと叫ぶ声…そんな言葉ばかりが聞こえる中キリトは何かを思い立ったように俺とクラインを呼び、広場を離れて路地裏へと向かった。
「二人とも、俺はすぐに次の村へ向かう。二人も一緒に来い」
キリトは俺達に言う。この世界で生きていくには自信の強化、つまりレベルアップが必須となるだろう。しかし、VRMMORPGのモンスターのポップ率は決められているため、得られる経験値、金も決まってくるのだ。そうなるとすぐにこのはじまりの街周辺に居るモンスターはすべて狩りつくされることになるだろう。確かに俺もキリトの意見には同意だ。俺もキリトもベータテスターだからこの先の最短ルートなども把握している。
…コイツ本当にお人よしだな……こんな状況になってまで他人の心配、か……いや、こんなときだからこそなのかもな………
「でもよ…オレは前のゲームでダチだった奴らと徹夜で並んでこのゲームを買ったんだ。多分あいつら、今広場にいる筈なんだ。悪いがここで置いていくわけにいかねえよ……」
クラインはキリトの提案に申し訳なさそうにそう答えた。コイツもお人よしだったよ。会ったときから分かってはいたがこいつ、絶対に仲間を見捨てることはできない奴だな…凄いやつだよ…本当に。
「そっか…アスカ…お前はどうする?」
「俺は……俺はついていくよ…まだ頭が落ち着いてないみたいでな、正しい判断が分からん…」
「そうか…分かった」
キリトはそういうとクラインのほうを見る。クラインはキリトの顔を見て笑顔を作りこう言った。
「じゃあなお前ら、次に会うときはお互いどれくらい強くなっているか楽しみだぜ」
「ああ、それは俺も同じだ……またな、クライン」
「ああ、またな…キリト、アスカ…お前ら…死ぬなよ」
俺とキリトはその短い会話を終えるとクラインから背を向け走り出す。その時、俺は何かから逃げているような気がした。走っていると途中でキリトの足が止まり後ろを振り向いた。何だと思い後ろを振り向くとそこには既にクラインの姿は無かった。もう既に他の仲間のところへ行ったのだろう。少し不安があるがアイツならうまくやれる。死んだりなんかしない。そう確信していた。
「……行こう、キリト」
「…………ああ、行こう」
短い会話を終えると俺達はまた走り出した。はじまりの街をでると既に日が暮れており綺麗な夕焼けが出ていた。だが、こんなこんな綺麗な景色も現実ではない…いや、もうひとつの現実なのだろう……
そう考えていると目の前で新しい狼のようなモンスターがポップした。そのモンスターはこちらに気が付くと勢い良く走り飛びかかろうとしていた。俺とキリトはそれを見るとお互いにソードスキル、【バーチカル】を繰り出し目の前のモンスターをのHPを削りきり、モンスターはポリゴンと化し、消えていった。
「うああああああああああああああああああああああああ!!!!」
夕日がくれる草原でキリトの叫び声が響いた…
それから一ヵ月、第1層もクリアできないまま約2000人のプレイヤーがこの世界から永久退場していた
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取り憑く想い
アスカside
「で、これからどうするよ?」
アスカは目の前で黒パンを勢い良く食べているキリトに問いかける。俺も先ほど同じものを食べたが正直俺の好みの味ではなかった。というかほとんど食べれなかった。このパン恐ろしいくらいに固いのだ。初めて食べたときは破壊不能オブジェクトなんじゃないかと思ったよ。
「ん、何がだ?」
「何がって…これからの予定だよ。次の街に行ったり装備を整えたり回復アイテムを補充したりとか、いろいろあるだろ?」
言い忘れていたが俺達は今始まりの町を出て次の村である《ホルンカ》に居た。どうやらここに付いたのは俺達が始めてのようで、見渡す限り周りにはNPCしかいなかった。俺達はそこにつくとある一つのクエストを受けた。確かクエストの名前は逆襲の雌牛だったと思う。そしてそのクエストが終わると俺達は一旦ホルンカに戻り、近くにあったベンチに座り今の状況に至るわけだ。
「そうだな…とりあえずアスカの言ってる回復アイテムの補充などをしたらもう一つクエストを受けたいと思ってる」
「えっ、何のクエスト?」
「リトルネペントが_」
「OK理解した行きたくない」
「俺まだモンスターの名前しか言ってないんだが…」
キリトが発したリトルネペントと言うモンスター。そいつは俺が虫系モンスターの次に嫌いなモンスターである。単純に気持ち悪い。白い肌にたらこ唇が付いたまさに歩く植物。俺にはどう考えてもエ〇ァ量産型にしか見えなかったよ。ああ…トラウマが…よみがえる…
「一人で行って来てください」
「いや、こんなデスゲームの中なんだから協力プレイをだな…」
「人の嫌がることを強制させないでください!!」
「必死か!!」
ついには涙目で土下座してしまった俺を見てキリトはため息をつきながら苦笑いをする。いや、確かにキリトの言いたいことも分かるよ?こんな事態になったんだ、そりゃあ助け合っていかないとまずいと思うよ。」
「なら一緒に行こう」
「……また声に出てた?」
「こんな事態になったんだ、ってところから声に出てたよ」
「…………チッ」
「舌打ちされた!?」
まさか声に出ていたとは…現実でも同じことがあったがこれからは気をつけないといけないな。うん。でも俺は絶対に行かないからな!絶対にリトルネペントがでるクエストなんて行かないからな!!!
と、思ってた時期が僕にもありました…
「うわああああああああああああああああああ!!!!!」
「……………バーサーカーだな…」
キリトの言葉に耳を傾けることなく俺は目の前の量産型もといリトルネペントを切り刻んでいく。俺はあの後キリトの説得に折れてしまいクエストについて来てしまったのだ。まあ理由としてはキリトが俺を説得してるときについさっきホルンカに来たのであろうプレイヤーの一人が
「一緒に行ってやれヨ、キー坊が可愛そうだロ」
と言ってきたので仕方なく付いて来たのだ。だれが来たのかは皆さんの想像にお任せする。
「ぽわあああああああああああああああああ!!!!!!」
「いやすごい叫び方だな」
そして俺がこんな風に叫びながらリトルネペントを切り倒して行ってる理由だが…簡単に言うと囲まれたのである。その光景を見た俺はベータ時のトラウマを思い出し早くリトルネペントの大群を消すために剣を手に走り出したのだ。
「貴様らあああああああ!寄るんじゃねええええええ!!」
「「「シャアアアアアアアア!!!!」」」
「おおっ、一気に釣れたな」
「嬉しくねえよおおおおおおお!!!」
何故かキリトの近くにはこいつらあまり近寄らないんだよな…ベータ時と一緒で。そう考えてキリトのほうを見ると明らかに周りに居るリトルネペントの数がおかしい。俺3体もいるのにあいつ1体ってどういうことこれ?
「ふっ!はああああっ!!!」
キリトは直線状に重なったリトルネペントを見て【レイジスパイク】を発動させ攻撃する。それを喰らったリトルネペント達はポリゴンとなり消えていく。俺も同じように【ソニックリープ】を発動させ残ったリトルネペントを倒していく。そして最後の一匹を倒し終わると俺は剣を地面に落とし腰を下ろした。
「ハアッ…ハアッ…ハアッ……疲れた……」
「ああ…なかなかの働きぶりだったぞ」
「腹立つわ~…」
キリトの顔から目を離しふと横を見ると奥の方に花つきのリトルネペントの姿が見えた。
「なあキリト…あれじゃねえの?」
「ん?……おお、あれだあれだ」
俺が指差した方に居る花つきを見てキリトは「やっと見つけた」と言わんばかりに嬉しそうにする。いや、俺としては全く嬉しくないんだけどね。
「よし、それじゃあ……いや、そこに隠れてる奴出て来いよ」
キリトは立ち上がると後ろを見てそう言う。隠れてる奴?いったい誰が…と思い後ろを見ると片手剣と盾を装備したプレイヤーがいた。彼を見てキリトは問いかける。
「あんたもベータテスターなのか?」
「う、うん。そうだよ…花つきに反応したって事は君達も森の秘薬のクエストをしてるんだろ?」
「ああ、そうだが…」
「僕もそのクエスト手伝って良いかな?」
キリトにそういうと言われた本人は俺にどうする?と目で聞いてくる。いや、俺に聞くのかよ…
「別に俺は良いよ…俺にあいつらの姿を見せずに終わらせてくれるって言うんなら大歓迎だ」
「アスカ、諦めろ」
「………仕方が無いか…はあ~…ここは諦めるよ、それで?聞いてなかったけどお前名前は?」
「あ、僕はコペルだよ。宜しく」
「俺はアスカだ。宜しく頼む」
「俺はキリトだ…宜しく」
俺達は自己紹介を終えると先ほどから遠くの方でうろついているリトルネペントたちを狩ろうと歩き出した。するともう一体別のリトルネペントが出て来た。
「あれは…実つきか…?」
キリトがそれを見て言う。その実を破壊すると周囲に大量のリトルネペントが集まってしまう実つき。恐らくこの場で一番警戒すべきモンスターである。
「どうする?流石にキツイと思うんだが…」
キリトがそう言うとコペルが一つの案を出した。
「なら僕が実つきを引き付けるからその間に二人は花つきを倒して」
「…分かった。それで行こう」
「ああ、俺も賛成だ」
俺とキリトはその案に賛成し俺とキリトは花つきを、コペルは一人実つきの方へと向かう。目の前に立つと俺達の存在に気づいたのか花つきが俺達に襲い掛かってくる。キリトは花つきの触手をかわすと【バーチカル】を放つ。それと同時に俺も背後に回り【ホリゾンタル】を放つ。HPゲージを見るとあと半分、それを見ると花つきは先ほどと同じように触手を俺達に飛ばしてくる。それを回避して俺はバックステップをとる。
「お前今の良くできたな」
「うん。俺も出来ると思わなかったわ…っていうかそんなこと話してる場合じゃないな!」
呑気に話しているとまたも触手が俺達に飛んでくる。キリトは剣でそれを斬ると【スラント】を発動させ花つきのHPを残り二割まで下げる。俺はそれを見ると【レイジスパイク】を発動させ花つきはHPを空にしポリゴンとなり消えた。そして下にはドロップアイテムの胚珠が落ちていた。
「よし!終わったな」
「ああ、コペルの方は…」
キリトがそう言いコペルの方を見るとコペルは俺達の視線に気づいたのか俺達の方を見て_
「ごめん…」
「………え?」
そう言うとコペルは【バーチカル】を発動させ実つきについていた実を斬りながらHPを空にさせた。すると待っていたかのように周りからリトルネペントがポップしてきた。
「コペル…アンタ一体何を!?」
「ごめん!本当にごめんっ!!」
コペルはそう言うと俺達から背を向け逃げていきカーソルを消した。隠蔽スキルを使ったのだろう。今思えばコペルが俺達の前に姿を現したのは良いタイミングだったと思う。花つきが出て来た途端に彼は俺達の前に姿を現した。前から機会を伺っていたのだろう。そして実つきの登場。そして今の状況から考えると…
「MPKってことか…」
キリトも思いついたように言う。MPKとはモンスタープレイヤーキルのことである。簡単に言うとモンスターを使いプレイヤーをキルすることである。コペルは俺達に花つきを倒させてドロップした胚珠を手にさせた後俺達をMPKにより殺し最終的に俺達から胚珠を奪うつもりだったんだろう。
「アイツ…初めから!!」
「落ち着けアスカ!今はこの場を切り抜けるぞ!!」
俺とキリトはリトルネペントへと立ち向かう。だがやはり戦っていると限界が見えてくる。数が多すぎるのだ。倒しても倒しても減っているように思えない。むしろまだ増えているんじゃないか?無限にわいているんじゃないかとも思った。
「くそっ!終わりが見えないぞ!アスカ!あと何体だ!?」
「さあな、少なくとも俺達の終わりが近いのは事実かもしれないぜ?」
「それが冗談であって欲しいな!」
俺達は軽口を叩きながらリトルネペントを倒していく。俺のHPを見ると既に黄色ゲージへと入っていた。キリトも黄色にはなっていないものの俺とゲージの量はほぼ同じである。小さくしたうちをすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「う、うわああああああああああああ!!!い、いやだ!助けて!誰か助けてええええええええ!!」
「ッ!…この声…コペル?でも何で…」
その声を出していたのは実つきを倒し、この状況を作り出したコペルであった。だが何故彼は狙われている?隠蔽スキルを使ったなら狙われていないはずだ。何故だと考えているとキリトが俺の考えについて答えてくれた。
「リトルネペントは視覚でプレイヤーを認知するんじゃないんだよ。それに隠蔽スキルってのは視覚以外で相手を探すmobに対しては意味を成さないんだ」
「そんな…じゃああいつのやったことは……」
「ああ、自分から自殺しに行った様な物だ」
そう話している間にもリトルネペントたちは俺達を攻撃してくる。自分の命で手一杯だというのにここでコペルの命まで危ない。どうすれば…そう悩んでいるとキリトが俺に提案をしてきた。
「…アスカ…ここは逃げよう…このままじゃ俺達が死ぬ」
「でも…それじゃあコペルが……」
自分の中で葛藤が始まると俺達の会話が聞こえていたのかコペルの声が聞こえる。
「ご、ごめんなさい!!お願いします!お願いだから…お願いだから助けてえええええ!!!!」
「…………くっ…」
どうすれば良い?確かにキリトの言うとおりここで逃げれば俺達の命は助かるだろう。きっと死なないためにはそうしなければならない。だがそっちを取れば恐らく、いや、確実にコペルは死ぬ…俺はどっちをとればいい?自分のために他の人の命を見捨てるのか?
「アスカ!!」
キリトの呼ぶ声が聞こえる。
「お願いします!!お願いだから!嫌だ!助けてええええええ!!!」
コペルの叫ぶ声が聞こえる。
俺は………
「………ごめん…」
俺はコペルから背を向けキリトと共にホルンカのほうへと走り出した。
「お、お願いだから待って…待って…あ、あ、ああああっ!嫌だあああああああああああああああ!!!!」
その叫びと共に、後ろから何かが割れる音がその場に響いた
「ハアッ…ハアッ…ハアッ……アスカ…生きてるか……?」
「…………ああ……生きてるよ……」
俺とキリトはホルンカの街の前で倒れていた。幸いにも回りに他のmobの姿は見えない。ここに来るまで何度後ろを振り返っただろうか?何度剣を振っただろうか?そしてなんどmobが割れる音を聞いただろうか?そんなこと全く思い出せない。ただその時あったのは『死にたくない』という恐怖だけだった。
「…キリト……」
「どうした?…」
息を整えてキリトに聞く。気になっていたことがある。そのことについてキリトが知っているか分からないが…
「コペルは……どうなった?」
「……走っている途中で何かが割れる音が聞こえた…あいつはもう……」
「…そうか…分かった……」
俺はキリトからコペルのことを聞くと立ってホルンカの街へと歩き出した。
「…何処に行くんだ?」
「……今日は宿屋に泊まって寝るよ…もう疲れたからな」
「…分かった…俺もアイテムの補充などを済ませたら寝ることにするよ」
「ああ……分かった…また明日な…」
俺はそう言ってキリトから背を向けて街の中へと入り宿屋へと入りNPCから部屋の鍵をもらい指定された二階の部屋へ入る。入るとそのままベッドに横になりすぐに眠りの世界へ入ろうとする。
『助けてええええええ!!!』
「ッ!!」
寝ようとするとコペルの声が聞こえた気がした…俺が見捨てることしかできなかったアイツの声が。アイツは最後どんな顔だったのだろう?泣いていたのか?恐怖に顔をゆがませていたのか?…いや、もう…
「もう…考えたくないな……」
俺はその言葉と共に涙を流し意識を手放した
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ファーストコンタクト
キリトside
「…行ったか…」
そう呟くと俺は自分のHPゲージを見てポーションを飲んだ。今この場所にいるのは俺一人である。アスカは先ほど先に戻ると言って宿屋へと向かった。俯いていたので表情は見えなかったが、あんな戦いの後だ。とても暗い表情をしているのだろう。
「あいつ…大丈夫なのか…?」
あいつとはアスカのことである。ホルンカに戻る前のリトルネペントとの戦いで、俺とアスカはプレイヤーを一人見殺しにしている。
「あの時の俺の選択は…やっぱり間違いだったのかな」
あの状況では俺たち全員が生き残るということは不可能だと思った。だから俺はコペルのことを見捨ててアスカに逃げる選択を迫ったのだ。だがその結果はコペルを死なせ、アスカの心に傷を作ってしまった。
「とりあえず明日またアスカと話してみるか」
そう言うと俺は立ち上がり宿屋へと向かった。
アスカside
「……んんっ…あれ?…」
目を覚ますと知らない天じょ……いや、知ってる天井が見えた。ベッドから起き上がり自分の姿を確認する。姿を確認するとある疑問が頭に浮かんだ。
「あれ?俺そういえばどうやってここに来たんだったっけ。ええっと…確か昨日はキリトと一緒にリトルネペントを狩りに行って…そこで……」
そこまで思い出すと目から何かが出ていることに気が付いた。これは…涙?どうして涙が…
「……あ……ああっ………そうだ、そうだった…俺はコペルを…」
自分の涙を見てすべて思い出した。俺とキリトは昨日リトルネペントの大群から逃げるためにコペㇽを見捨てて逃げたのだ。後ろから聞こえるアイツの悲鳴を無視して。
「くそっ…ごめんな…」
俺はそう言うとそのあと準備を整えて宿屋を出た。外に出るとすでにホルンカに到着したプレイヤーが何人かおり、この街に着いたときのような静けさは無くなっていた。
「おはよう。アスカ」
外を眺めていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。後ろを振り向くとそこにはキリトが黒パンを食べながら俺に手を振っていた。
「ああ、おはよう…ほんとよくそんな物食えるよな」
「このパンそんなに嫌いか?俺は結構好きだけどな」
そんな会話をするとキリトが俺に言う。
「昨日の件…もう大丈夫か?」
「…ああ、大丈夫だ。ありがとな」
そう言うとキリトは「そっか」と言って安心したように笑う。
「それで、この後はどうするんだ?」
キリトにこの後の予定を聞くと既にこの後の予定が決まっていたようですぐに答えが返ってきた。
「今日は迷宮区に行ってみようと思う」
「マジか…今日もきつくなりそうだな」
「そうだな。でもいつかは行かなきゃいけないんだからいいだろ」
キリトの言うことは確かである。各層のボスをクリアするためにはフィールドボスを倒し、結局は迷宮区を通ってボス部屋まで行かないといけないから今のうちにマップデータを取っておくことは大切だろう。
「それもそうか…そんじゃあ行くか!」
「あ、まだパン食べてるから待って」
「いつまで食ってんだよ!?」
???side
「はあっ…はあっ…はあっ…」
私は休む暇もなく目の前に何度もポップするmobに対し何度も攻撃をしていく。ポーションも飲まず、何も飲まず、そんなことをずっと続けていたからだろうか?視界がぐらりと揺れて意識が遠くなってきた。
「くっ……」
手から剣を離してしまいその瞬間をmobに狙われ壁に叩きつけられる。ふとHPゲージを見るといつの間にかゲージが赤くなっておりあと一撃喰らえばすぐに死ぬくらいのHPしか残っていなかった。
ああ…私、死ぬんだ…
そう考えている間にmobは私の前に立っていた。
こんなところで死んじゃうんだ…
まだ現実に戻ってやらなきゃならないこと沢山あるのに…
でもまあ…良いかな……
「諦めるのはまだ早いぞ」
その言葉を聞いた後、私はそのまま意識を手放した。
キリトside
「おい、大丈夫か?」
俺はフードをかぶっている女性に声をかける。どうやら既に意識を失っているようで俺たちが声をかけてもまったく反応を示さない。返事がない。ただのしかば…いや、これ以上は言わないでおこう。
「迷宮区に入ったらすぐにこれかよ…キリト、取り合えずそいつを連れてここを出るぞ」
「ああ…と言いたいところだが…」
俺は女性を背負い迷宮区から出ようとすると既に目の前にmobが二体ポップしていた。彼女を壁に下ろすと俺とアスカは素早くmobを倒し来た道を戻って迷宮区の外に出た。
外に出ると俺は女性のHPゲージがすでに赤いことに気づきポーションを取り出し口に含ませた。色が緑になるのを確認すると口に含ませた感覚で意識が戻ったのか目を覚ました。
「…ここは?」
目を覚ますと周りをキョロキョロと見回している。俺はそれを見て彼女に声をかける。
「君…大丈夫か?」
「え…私は…死んで……」
「大丈夫だ、HPを見てわかる通りお前は死んでねえよ」
アスカがそう言うと彼女は自分のHPを見た。すると彼女は下を向き小さい声でこう言った。
「なんで……そのまま殺してくれなかったの……」
「え?」
「…………」
彼女はそう言うと立ち上がり俺たちに背を向けて立ち去って行った。
「……なあ、キリト」
「何だ…」
「アイツってさ、死ぬために迷宮区に入っていたのか?」
「…そうなのかもな」
正直考えたくはないがアスカの言う通り彼女はきっとあの場所で死のうとしていたのだろう。俺たちが来なければボロボロになるまで戦い続けて、そしてあのまま死んでいたのだろう。
「だとしたらきっと、ほかにもアイツみたいに死んでいくやつがいるんだろうな」
アスカは暗い顔でそう言う。確かにアスカの言う通りだろう。デスゲームとなってしまったこのゲーム。しかも終わりの見えないゴール、HPが無くなったら現実でも死んでしまう。そんな状況でここに閉じ込められた一万人のプレイヤーすべてが勇気を持ち、強く生きるだなんてそんなことできるわけがないだろう。
「……俺は死なない…絶対に…」
アスカがこぶしを握り締めてそう言う。俺も同じだ。こんなところで死ねるわけがない。
「ああ、生き延びて戻らないとな…」
俺は剣を握り締めそう言った。
お久しぶりです。ミルクチョコです。
更新おくれてすいませんでした!!!
パソコンがぶっ壊れたり高校生活に忙しかったり書く暇がなくて遅くなってしまいました!!
次の投稿も遅くなると思います。来月には…出せたらいいな
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