鬼巫女に憑依する幻想郷ライフ (寿司三昧)
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プロローグ

初投稿です。
キャラ崩壊等をスルーできる人だけ見てください。


俺は巫女である。

 

雨の降る音で目覚めたとき、俺は巫女服を身に纏っていた。

 

最初は見間違いかと思った。意識がはっきりしてきたのでもう一度見る。しかし見えるのは巫女服。俺にコスプレをする趣味は無かったはずなのでこんな服を着る筈がない。それに普通の巫女服では無く、腋が出ている巫女服なのだ。巫女服と言っても良いのか分からないが。

 

それだけならまだよかった。

この巫女服、血を浴びたみたいに真っ赤なのである。赤黒い。所々薄いところや濃い部分もあるので本当に血かもしれない。血だとすると、自分に傷がないので完全に返り血である。これでは殺人を犯した様に見えそうなので着替えようと服を探すことにする。

 

 

 

服がない。

そう、この巫女服以外に服がない。

自分が眠っていたらしきこの家には服どころか、生活に必要なものすら殆んど無かった。

仕方ないのでこの血塗れの巫女服で我慢する。

あったものと言えばお祓い棒…しかもこれにも赤い液体が付着している。

これは不味い。どうやらこの家の主はやらかしていた。

家主が戻ってきたらどうなるかわかったものではない。

そう思い外に出ようと思った。

 

不意に自分が巫女服を着ていることが頭を過った。

まさかと思い、体を触ってみる。

男である自分に本来ならあるはずのないものがそこにあった。体つきも変わってしまっている。

頭を触ったとき、リボンが付いているようだった。

 

鏡を探したい。この現実を否定したかった。

しかしこの家には鏡がない。

そういえば外は雨が降っていた。音で目が覚めるほどの量なのだ。水溜まりが出来ているかもしれない。

そうして外に出る。

 

外には森が広がっていた。その中を脇目も振らずに走っていく。途中、躓きそうになったりもしたが関係なしに走り続けた。

そして森をも抜け、目の前には湖が見えた。

覗き込む。水面に映ったのは整った顔立ちの女性であった。

まだ15歳位の、赤い瞳で茶髪の少女が存在した。

それを目にしたとき一瞬思考を放棄した。その後、再起動を果たすと沸き出てくるのは何故、何故という疑問と

現実の否定であった。

体が雨に晒され服も濡れるが、それをも気にもならないほどだった。

何とか落ち着きを取り戻し、現実を受け入れることにする。

 

この顔立ちは見たことがある…。

東方projectという作品の主人公のひとり…だったはずだ。俺は興味が無かったので良くは知らなかったが…。

しかし血濡れなのは何故なのか。

だが俺には思い当たる節があった。

恐らく俺は、MUGENというツールで製作されていた、鬼巫女と呼ばれるキャラに"憑依"もしくは"転生"したのだろう。

鬼巫女とはMUGENで幾つか種類が存在し、それにより神~論外とランクが変わる、俗に言うチートキャラ。

俺がMUGENで好きだったキャラの一人だ。

 

 

自分が血濡れだった理由を理解した。

俺が鬼巫女になっていたと理解をすると、鬼巫女の記憶が少し浮かび上がってきた。

どうやら殺害はしていないようで、あれは妖怪からのものであったらしい。記憶、人ではなくとも妖怪の最後を見てしまったので少し吐き気がした。

何故鬼巫女になってしまったかはわからない。

それにここが何処なのかもわからないのでは不安ばかりだった。

少し寒気がした。雨に晒されていたのを忘れていた。

風邪…引くのかは分からないが先程の家に戻ることにする。帰ってから替えの服が無いことに気付き、少しへこんだ。

 

 

 

 

次の朝

 

昨夜は布団がなかったので床で寝た。お陰で体が痛い。

やはり夢では無かったようだ。思い切り背伸びをしながら今日の事を考える。鬼巫女の記憶からして、此処には妖怪がいるらしい。鬼巫女の能力ならば負けることはないだろうが、俺の場合に使えるかはわからない。

しかもこの家には生活必需品も食料もない。

 

「どうしたものか…。」

 

……取り合えず食料は確保すべき、後は人に会うことが出来たら上出来。そう考え、出掛けることにする。

 

「湖の方には人が居なさそうだったな…今度は反対側に行ってみるか…。」

 

昨日は気づかなかったが、湖の方面には霧が出ているようだ。

遠いはずなのに湖の状態が見れた。鬼巫女の体のスペックに驚かされる。

 

「この体…神キャラだから仕方ないけど、人間やめてんなぁ…。」

 

そう思いながら進むことにする。

こっちに進むと少し整備された道に出れるみたいだ。

田畑が見えるため、人も居そうである。

 

 

徒歩で森を抜けていく。

抜けた頃には昼近くになっていた。

 

「しかし、腹が減っても良い頃なんだが…全く食欲が湧かないな。」

 

そう、食欲が無いのである。

昨日からなにも食べていない。

それなのにだ。

 

「まさか…食事が必要ないのか…?」

 

それならば鬼巫女…恐るべし。

かなりハイスペックだ。

これだけハイスペックならば力も強いのでは?

鬼巫女なんだし、MUGENであれほどの力を振るっていた。

 

試しに手に持っていたお祓い棒を素振りしてみる。

風を切る音がしたと思ったら近くにあった木が消滅していた。

木が倒れるくらいを想像していた。

しかし現実は木が根本から消え去ったのである。

 

「これは酷い…。」

 

軽く素振りでこれなのだ。

全力を想像し、むやみやたらに力を振るわないでおこうと心に決めた。

 

歩いていると遠目に人里らしきものが見えてきた。

どうやらこの世界にも人は居るらしい。

それには安心した。しかし人と言っても宇宙人みたいな外見かもしれないし、想像できないものかもしれない。

 

しかしそれは杞憂だったようだ。

門らしき所に門番が居り二人とも男、服装以外は見慣れた外見だったからだ。

 

「良かった…。でもあの服装は…?随分昔の日本、時代劇みたいな感じだな。」

 

現代ではまず着ている人が居ないような服装だった。

つまり自分は逆行したのだろうか。

そうなると、昔の話し方が分からないのでかなり怪しいヤツになってしまいそうだ。

しかし、外にいてはいつ妖怪が来るかも分からないので意を決して近づくことにする。

外見が外見なので口調も変える。

 

「すいません。此処って人里…であってますか?」

 

人里という確証も無かったのでまずはそれを聞くことにした。通じると良いのだが…

 

「…あぁ。外来人の方ですね?ええ、合ってますよ。」

 

「外来人…?」

 

話し方は現代と同じな様だ。

しかし聞きなれない単語が聞こえた。"外来人"。

どういう意味なのだろう。

 

「外来人というのは、外から来た人のことですよ。妖怪に襲われたみたいですね。里で怪我を見て貰うといいですよ。」

 

「…あぁ、ありがとうございます。」

 

服に付着している血の事を勘違いしたようだ。

しかし中に入れるので訂正する必要もない。

ついでにここに詳しい人についても聞いておく。

 

「それなら慧音先生に聞くといいですよ。」

 

そう言われたので慧音先生とやらを探すために人里に入った。

里の中はまさに時代劇みたいな所だった。

本当に逆行したみたいである。

近くにいた里の人間に慧音先生について聞く。

 

「先生なら今の時間帯だと、寺子屋に居るんじゃないかな。」

 

「そうなんですか?」

 

「用があるならもう少し時間を潰してから行くといい。」

 

ホントに先生だったらしい。

時間を潰す、といっても特にやることもなさそうなので寺子屋に向かう。

 

 

寺子屋は思っていた通りの外見で、外からは障子でよく見えないが声を聞くからに授業をして居るらしい。

どうやら内容は歴史…らしく、"幻想郷"、"妖怪"といった単語が聞こえる。

"幻想郷"とはなんなのだろう。ここの地名なのだろうが、日本にそんなファンタジー感溢れる地名は無かったはず。

俺は考えても仕方ないと、授業が終わるのをずっと門の前で待っていた。

 

回りから見たら怪しく見えるようだ。

通りすがる人からの視線が痛い。

 

「早く終わってくれ…。」

 

そう言いながら、別の所で時間を潰せば良かったと後悔した。



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働き口が見つかりました。

おもに幻想郷、主人公の働き口についてです。

鬼巫女と霊夢の区別をつけるために髪の色を茶髪にしています。


 

寺子屋の授業が終わったようだ。

子供たちが次々と門から出てくるなか、

少し変わったものを被っている身長が少し低い女性が出てきた。

彼女は白い中に少し青が混ざった髪の毛をしており、他の人達とは違う感じがした。

恐らく件の慧音先生であろう。

 

子供たちが全員帰ったことを確認したときに、こちらに気付いたようで近付いてくる。

 

「こんにちは。」

 

「あ、こんにちは。貴方が慧音先生ですか?」

 

挨拶を返し、本人確認をとる。

彼女は此方をまじまじと見ると

 

「外来人の方ですね?貴方は?」

 

と言われた。

ここで初めての自己紹介だ。

正直、鬼巫女の本名は知らない。

恐らく博麗 霊夢なのだろうが、

それを名乗ると後々主人公たちと鉢合ったときに問題が起きそうだ。

鬼巫女 …と名乗っても怪しまれそうだ。

かといって男の時の名前も…

 

待たせると悪いと焦って咄嗟に"霊夢"と言ってしまった。

 

「霊夢…さんですか。宜しくお願いします。自己紹介もしましたし、どういったご用でしょうか?」

 

霊夢になってしまった。しかしまだ希望はある。

漢字を変えれば良いのだ

取り合えず用を伝える。

待っている間に考えた用件は三つ。

 

幻想郷とはどういった所なのか、

ここに居住することは可能か、

最後は働き口だ。

 

ひとつ目は基本として、人が住んでいる所に居たいということと、現在無一文ということで下二つを考えた。

 

「ふむ…まず幻想郷についてですが…」

 

曰く、妖怪、神といった現代では忘れられたものが住み、博麗大結界によって外と隔てられているらしい。

更に魔力、神通力等も存在するらしい。

 

本当に名前の通り、ファンタジーだった。

神も居るとなると、鬼巫女でも生き抜くのは難しいかもしれない。

 

「居住については可能ですが、郊外に近いところになりますよ?働くといっても…何処も事足りてると思いますが…」

 

働き口は無さそうだが、家はありそうだ。

これで人里に来るために森を抜けなくてよくなる。

あの家には特に何もなかったし引っ越しも必要ないな。

 

働き口について、本当に何もないのか粘ってみる。

先生は考え込み、ハッと何かを思い出したようだ。

 

「そういえば甘味処の店主がもう歳で人がほしいと仰っていましたね。」

 

どうやら俺は甘味処とやらで働くことになりそうだ。

 

 

 

 

自宅になるであろう場所を確認し、慧音先生もとい、

上白沢 慧音さんに甘味処の場所を教えてもらった。

 

自宅は思ったより広かった。

何故誰も住んでいないのか聞いてみると、

何と前に住んでいた人は里に妖怪が来たときに美味しくいただかれたらしい。

妖怪が来るとき、真っ先に襲われるのが郊外近いここであり、大変危険らしい。

どうりで誰も住もうとしないわけである。

 

まぁ、人里に住めるだけマシと考えるべきか。

 

 

 

 

甘味処は里の中心からそう離れてはいないらしい。

そこの店主はかなりの歳の老婆であり、

息子はここを継がない、だから自分が生きている間はまだやるつもりらしい。

人員募集の理由は、ひとりで回せなくなったから。

接客を頼みたいらしい。

 

基本的に注文を聞き、伝えるだけの簡単なお仕事。

早速仕事を覚えようと張り切りながらやり方を聞こうとする。

しかし、慧音さんに止められる。

 

「どうしました?これからお仕事を覚えにゃならんのです。」

 

「貴方…そんな格好でやるつもりなんですか?」

 

そう言われて、自分の格好を見る。

成る程、これはない。

今まで忘れていた。

自分が血濡れの巫女服(脇が出てる)を着ていたことを。

 

「…これしか、着るものが無かったもので。」

 

そう言うと、慧音さんは

 

「そういえば、その血はどうしたんだ…?」

 

と少し恐ろしい顔になって聞いてきた。

丁寧な言葉から一転した口調で。

 

取り合えず、門番に言ったことに付け足して

妖怪に襲われたから反撃したときに付いた血だ、と言っておく。お祓い棒を見せることも忘れない。

 

慧音さんは

 

「そうだったんですか…。自衛出来るなら心配はいりませんね。…それで本当に替えが無いんですか?」

 

後半は信じられないといった感じだった。

仕方ないじゃない。本当に無いんだから。

 

店主のお婆さんが割烹着を貸してくれた。

巫女服とはしばしお別れである。

割烹着を着た俺を見て、

 

「もう少し…着るものに気を使ったらいいのでは?」

 

慧音さんからの一言。

 

「おr…私は服装とかは割とどうでも良かったんで…」

 

俺…と言ってしまった。

今は女なので俺はちょっと違和感がある。

慣れるようにしなければ。

 

暫く慧音さんとお婆さんに教えてもらったりしながら仕事を覚えていた。

 

「それじゃ…宜しくお願いしますね。」

 

慧音さんが帰ったあとお婆さんにそう言われ、

客を待つことにした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

射命丸 文。

妖怪の山に住む鴉天狗で新聞屋をやっている妖怪である。

 

鴉天狗は主に報道を担当としている。

現在彼女は、自身が出版する「文々。新聞」のネタ探しを行っている。

彼女の新聞の内容は人里を含めたかなり幅広いもので、

今回も人里上空で里を見渡している。

 

「…ふぅむ、人里で何かありそうな感じがしたのですが。」

 

数十分前、突然自分の第六感らしきものが人里へ向かえと囁いたので来てみたは良いが…。

今回は外れなようだ。

 

「大会まではまだ猶予がありますし、また後日としましょうかね。」

 

最近は吸血鬼騒動以降、特になにも起きていない。

裏のとれないことは記事にしないポリシーなので、デタラメは書くつもりはない。

別の所で移動しようとした時、ふとあるものが目に入った。

 

それは二人の女性。ひとりは上白沢慧音。人里ではよく知れた人物。

文が注目したのはもうひとりの女性だ。

 

「あれは…神社の博麗の巫女…?いや、それにしては…。」

 

その女性は博麗の巫女に瓜二つであったのだ。

血縁者…というわけでもないだろう。

本人かとも思ったが、

 

「いや…瞳の色が違う。それに髪の色も黒ではない…

妖怪が化けている訳でもないでしょうし。…これは調べてみる必要がありそうですね。」

 

そうして私は、甘味処の前に立っている者の前に降り立つことにした。

 

 

◇◇◇

 

 

 

客に対して、上手く対応はできていると思う。

あとお婆さんに笑顔の方がいいと言われて、営業スマイル擬きで頑張ってはいるが笑えているか不安だ。

基本的に客は人間だが、極稀に妖怪が混ざっていたりする。

 

「妖怪にも人間みたいな姿をしてるやつが居るんだな。」

 

妖怪といえば本でよく見る姿だと思っていたが、実際にはそれは下級位の妖怪で上になると殆んど人型らしい。

因みに慧音さんも半獣らしい。聞いたときは驚いた。

現在時間は夕刻。客足も途絶えてきた。

お婆さんも片付けを始めているので、あと少しらしい。

それまで頑張って笑顔を絶やさないようにする。

 

ふと視線を感じたので空を見上げる。

…人が浮いていた。

人って浮けるんだなぁ。

そんな現実逃避をする。恐らくあれも妖怪なのだろう。

だってよく見ると羽が生えてるし。

鬼巫女の視力で見ていると大体容姿がわかった。

 

黒髪、赤い瞳に赤い帽子を被っている。

服装は比較的シンプル。巫女服とは大違いである。

高い下駄らしきものを履いているので、イメージ的には天狗。どうやら鼻は長くない模様。

 

そんな天狗さんはこちらをずっと見ている。

ちょっと恐ろしいので、目をそらす。

すると丁度、慧音さんがやってくる。

 

「仕事はちゃんとこなせそうですか?」

 

どうやら見に来てくれたようだ。

これで暫くは天狗さんを意識からはずせそうである。

 

「慧音さん!仕事はやっていけそうです。仕事紹介もですが、住む許可まで下さってありがとうございます。」

 

「いえいえ、いいですよ。でも本当に宜しかったので?彼処を勧めたのは私ですが…その…」

 

「大丈夫ですよ。こう見えて結構力には自信ありますから。」

 

体が鬼巫女だからこんなことが言えるが、元の体なら無理な自信がある。

鬼巫女万々歳だ。

 

このまま慧音さんと話してそのまま帰りたい。

あの天狗さんはまだ居るのだろうか。

そう思い、空を見上げる。

慧音さんも釣られて見上げる。

 

しかし天狗さんはいなくなっていた。

安心した。

しかしあの天狗さんはなんだったのだろう。

そう思った時だった。

 

 

 

「どうしました?空なんか見上げて。」

 

 

 

そんな声が聞こえたのは。

 

 

 

 



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鬼巫女、初戦闘をする

主に文視点です。
戦闘描写はかなり下手です。
ご注意下さい。


 

Side 射命丸

 

「どうしました?空なんか見上げて。」

 

そうやって甘味処の前に居た二人に話しかける。

きっとさっきまで私の居た所でも見ていたのでしょう。

 

「上白沢さん。こんにちは、珍しいですねぇ。こんなところに居るのは。」

 

「え、えぇ。こんにちは。 」

 

この人は挨拶を重んじていたはずだから一応しておきましょう。

それよりも…。

 

「…………」

 

先程から顔色ひとつ変えずに此方を見ている女性。

見れば見るほどあの巫女にそっくりですね。

今は割烹着ですが…。

妖怪が化けている…わけでもなさそうですね。

妖力を感じませんし。上白沢さんが気付いているはずです。

まずは名前を聞いてみますか。

 

「おや…そちらの女性は?初めて見る顔ですね。お知り合いで?」

 

「彼女は霊夢さんです。昼頃に人里にいらっしゃった外来人の方ですね。」

 

外来人…ですか。

外来人が人里に辿り着くのは珍しい…。

霊力すら感じられないのに無縁塚から…?

血の臭い所か木っ端妖怪の臭いもしません。

…ますます怪しいです。

何かありそうですね。

 

「霊夢さんですか。初めまして。私は射命丸 文、新聞屋をやっています。」

 

「あぁ、初めまして。新聞屋をやってらっしゃるのですか。…情報が得られるかもしれないし、購読してみようかな…。」

 

おや…購読してくれるかもしれないのですか。

これは高評価ですよ。

名前までも同じ…。妖怪の賢者が関与しているかもしれません。

そろそろ聞いてみることにしましょう。

 

「霊夢さんは何処からここに来たんです?」

 

「えーと…。湖の近くの森…です。」

 

「森…ですか。そりゃまた。そこに住んでらっしゃった?」

 

「えぇ。そうですね。」

 

湖の近くの森…。魔法の森ですかね。

彼処は毒素が蔓延して、妖怪も住み着いてるはずですが…。

これはますますきな臭いです。

一般人…という線は薄くなりました。

それに頭のリボン…。血らしきシミが見えますね。

しかもかなり鉄臭い。

随分と"殺ってるみたいですね。"

その割には本人に覇気がありませんがね。

 

「その森に住んでいた、では。幻想郷に入ってから森に辿り着けたんですねぇ。凄いことですよ。因みに妖怪等には?」

 

「妖怪ですか…。森にいた頃までは多少居ましたが、ここに来るまでには一度も会いませんでした。」

 

一度も会わない。あり得ないことではないです。

木っ端妖怪の活動時間は基本的には夜。

鉢合う可能性も高くはないですから。

しかし森に居た頃はそれを撃退できていた。

外来人ながらかなりの実力を有しているわけですね。

これが本当の話だと確証が持てれば新聞に出来るんですがねぇ。

 

「それは運が良かったですねぇ。基本的に外来人はここにたどり着く前に死んでしまいますから…。」

 

「…ッ!?」

 

おや…。反応しましたね。

読み取りづらいですが僅かに顔をしかめました。

こういうことにはまだ馴れていないわけですか。

しかしそれでは、あの血の臭いが説明できません。

かなり複雑そうです。

 

「そうですね。外来人が人里に来れるのは珍しい。人里についた外来人の行動は基本的に元の世界に帰る。後は永住ですか。」

 

上白沢さんが会話に入ってくる。

最近も居ましたね。永住した方。

今度取材してみましょう。

おっと、それよりも。

この人がどういう存在なのか、手っ取り早く確認できるやり方があるにはあるんですが…。

人里ですし。なにより私…、戦闘は好きではないんですよね。

元上司達は好きだったみたいですが。

思い出すと身震いがします。あれは勘弁願いたいです。

 

「霊夢さんは永住の様ですが…。そうです!此処に住むのであればある程度ルールを知るべきですね。」

 

上白沢さんが何か思い付いたみたいです。

容易に想像できるのがちょっと…。

 

「文さん。霊夢さんに教えて差し上げられませんか?」

 

「私からもお願いします。」

 

霊夢さん本人からも頼まれてしまいました。

上白沢さんも忙しいのでしょうねぇ。

本来ならば断るところなのですが…。

彼女の実力を見れるいい機会ですね。

 

「そうですね。明日なら良いですよ。霊夢さんの家に迎えに行きます。」

 

「おぉ、助かります。霊夢さん、頑張って覚えてくださいね。」

 

弾幕ごっこ…でもいいのですが。

あれ、まだ上司が認めてないのですよね。

賢者が根回しをしているようですが。

正直、彼女は弾幕を撃てないでしょう。

つまり実践形式。嫌ですねぇ。

 

「霊夢さん。明日は少し戦えるような準備をお願いします。」

 

「は、はいっ!」

 

霊夢さん…ですか。

神社の巫女と顔は同じですが、性格はまるで違いますね。

 

この時の私は知らなかった。明日の事を私はずっと後悔することになる。

 

 

Side out

◇◇◇

 

Side 鬼巫女

 

仕事も終わり、自宅に帰る途中。

今日の事を振り返っていた。

 

かなり濃厚だったと思う。女性の知り合いが出来たのも初めてな気がする。

外では居なかったからな。言ってて悲しくなるが。

 

射命丸さん。彼女は本当に天狗であったらしい。

新聞を発行しているらしいので、情報源として購読したいと思っている。

人となりは少し違和感を感じたりしたが、いい人…?なのだろうか。

 

明日は何かと戦うらしい。

まさか妖怪とであろうか。正直怖い。

幾らチートボディであったとしてもだ。

不安でいっぱいのまま、布団に入った。

 

 

心臓の鼓動が早い。今日は寝れそうにない。

 

 

これが恐怖からのものではないとは、

 

 

俺は気付くことができなかった。

 

 

 

Side out

 

 

◇◇◇

 

 

Side 射命丸

 

朝早く。霊夢さんを起こしに行ったが、

既に起きていた。割烹着で、ではなく巫女服で。

完全に神社の巫女だ。

何故昨日は巫女服ではなかったのかを聞きました。

すると彼女は

 

「割烹着は彼処で貸してもらった。巫女服は血まみれだったからね。」

 

とのこと。

しかし血は完全には落ちなかったようで、

元は白かったのだろう袖は、今も赤い。

それは置いておいて、説明にはいる。

 

「幻想郷では現在、弾幕ごっこと呼ばれるルールがあります。内容は…。」

 

弾幕ごっこについては省くことにする。

今回は弾幕ごっこではないですから。

 

「しかし、今回は実戦形式でやりましょう。」

 

「?…なんでです?」

 

それは簡単です。

 

「貴方には弾を作り出す霊力、妖力等と言ったものが感じられませんから。」

 

霊夢さんはかなりがっかりしていますね。

弾幕ごっこは今度見せてあげることにしましょう。

 

「では、まず貴方がどれだけ強いのか見ることにします。」

 

まずは小手調べから。

 

私は地を這うような風を使った攻撃をしてみる。

 

風を使っているため速度は早いが、避けられないことはないと思いますね。

 

 

 

 

と、思っていたがまさか直撃するとは思いませんでした。

あれは本当にそこらに居る人間と同じくらいですね。

手加減していたとはいえ、あれは一応妖力が使われている。

重症で済めば良いのですが…。

 

まだ直撃時の煙が昇っている。

 

「やっちゃいましたかね…。」

 

そう思った瞬間でした。

霊夢さんの居た方向から、

 

今までとは全く違う、殺気と同時に、

 

感じるはずのない…

 

 

"神力"を感じたのは…。

 

 

◇◇◇

 

 

風の塊のようなものが飛んでくる。

 

 

 

体は強くても、中身がダメだったようだ。

 

 

 

かなりスローに見える。

 

 

 

今の今まで実戦所か、ろくに訓練もしたことがない。

 

 

 

そんな素人がどれだけ性能のいいものを持っていても

 

 

 

付いていかない。そんな感じだった。

 

 

 

目では見えている。考えれもする。しかし、

 

 

 

体は動かなかった。

 

 

 

そして攻撃が当たる寸前。

 

 

 

 

「ーどいてろ。」

 

 

 

そんな声が聞こえた気がした時には

 

 

 

 

意識が暗転した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

煙が晴れたとき、そこに居たのは無傷の、霊夢さんの姿をした

 

 

 

"なにか"でした。

 

あの甘味処で働いていた霊夢さんからは全く感じられなかった、鬼と相対しているかのような圧力。

 

目付きも鋭くなっている気がする。

 

 

仮にも天狗の妖力で練った風をまともに食らったのだ。

 

普通ならば重症のはずだ。

 

先程までの彼女とは違いすぎる。

 

そう思った時、目の前から霊夢さんが消えた。

天狗の視力でも見えなかった。

 

ー後ろから衝撃が走る。

 

「ッ!?嘘でしょう…?」

 

いつの間にか後ろに回り込み、霊力弾を打ち込まれていた。

 

直ぐに振り向き、妖力弾で反撃する。

このときには加減なんて考えていなかった。

 

 

霊夢さんの姿が消えた。

 

いや…穴のようなものに入っていった。

 

あれは…亜空穴!?

 

亜空穴は博麗の巫女が使う技のひとつだ。

簡単にいえば瞬間移動である。

 

「あの巫女の技が使えるの…!?」

 

亜空穴からの行動は予想しやすかった。

恐らく自分の後ろからッ!

 

予想は的中し、斜め上から霊夢が蹴りを放った。

そして驚愕する。地面が陥没したのだ。

 

「に、人間があれほどの脚力を持てるというの…!」

 

そう言いながら着地した霊夢に攻撃をする。

 

当たりはするが効いた感じはしない。

 

そうしてスペルカードを取り出そうとし、

 

「宣言なしで撃たなきゃ当たらないわね。」

 

と考え、やめる。

宣言なんてしてたら間違いなくやられると思ったから。

スペルカードはただの紙なのだから…。

 

霊夢が放つ弾幕は基本、自分狙いの弾幕。

威力は間違いなく殺傷可能なレベル。

亜空穴も搭載している。

何故かこちらからの攻撃が効かない。

 

「神力…。まさか本当に神だとでも言うのですか…。」

 

弾は霊力ではなく神力で作られている。

範囲もバカにならない。

 

考え事をしているうちに霊夢が目の前にやってくる。

 

「ッ!お祓い棒を振るだけでもこれなのね。」

 

お祓い棒の連撃を回避する度に余波で皮膚が裂けたりする。

これは不味い。

 

お祓い棒を回避すると同時に全力の蹴りを叩き込む。

 

…これならっ!

 

大妖怪の力での蹴りだ。これですこしくらいは…

 

 

 

霊夢は怯みもしない。足を掴まれ、地面に叩きつけられる。

そこに更に弾幕の追撃。文は既にボロボロなのに対し、

 

霊夢は未だ無傷。圧倒的であった。

 

「妖怪の賢者は何を考えて、こんな…奴を…。」

 

息もしづらい。

 

…まさかこんなことになるなんてね。

霊夢が、まさかこんな変貌するとは思わなかった。

 

もう力も底を尽きそうな状態。

 

「スペル…カード…ルが必要な…のも…わかり…ますね。」

 

そして目の前の敵を見据える。

全く疲れていない。まだ本気も出していないようだった。

 

意識を保てそうにないので、最後に聞きたいことを聞くことにした。

 

「貴方は…何者…なんですか?」

 

すると霊夢さんは恐ろしい笑みをして

 

「私か?…私の名前は」

 

 

 

 

「…鬼巫女だ。」

 

それを聞いた瞬間、わたしの意識は途切れた。

 

 



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妖怪の賢者

感想、誤字指摘ありがとうございます。

今回は慧音視点から、
紫の身長は東方香霖堂位です。


 

Side 慧音

 

射命丸さんと霊夢さんが戦ったらしい。

らしいというのは、私が実際に見ておらず、

射命丸さん本人に聞いただけだから。

 

射命丸さんはその日、実戦形式…と弾幕ではなく本当に攻撃をしたらしい。何をやっているんだ…。

私がもっとも驚いたこと。それは、

 

夕刻、霊夢さんがわたしの家に射命丸さんを肩に担いで来たからだ。

あれには本当に驚いた。方や射命丸さんはボロボロ。

霊夢さんは土埃を被った程度だったから。

何があったかを聞いても、

 

「そいつに聞け。」

 

の一言。今思うと、前あったときよりも印象が大分違った。

目付きも鋭く、口調も荒々しい。

霊夢さんは私に雑に射命丸さんを寄越すと、

そのまま帰っていった。

…とりあえず射命丸さんが起きるのを待つことにした。

 

 

 

Side out

 

 

◇◇◇

 

目が覚めると、先日紹介されたばかりの自宅で眠っていた。

いつの間に戻っていたのだろう。

 

「文さんが運んでくれたのか…?」

 

昨日、文さん…(本人がそう呼んで欲しいと言っていたので呼び方を変えた。)と模擬戦をしたところまでは覚えているので、

きっと倒れた俺を運んでくれたのだろう。

傷もないので手当てまでしてくれたのかもしれない。

今度会ったらお礼を言っておこう。

 

…先程からずっと視線を感じる。

気のせいではない。辺りを見回す。

 

自分の背後を見ると

 

 

そこには…

 

 

 

謎の空間から上半身だけを覗かせている、

 

 

 

金髪の少女…?が居た。

 

 

「あら、おはよう。着替えはここにありましてよ。」

 

 

…幻覚か?昨日のがそんなに響いてるのか。

 

 

「幻覚ではありませんよ。」

 

 

てか着替えなんて持ってたっけ…。

 

そう思いながら渡された着替え…真っ白な袖、"青い"巫女服に着替える。

 

 

「ごめんなさいね。2Pカラーの奴しか残って無かったの…。」

 

 

と笑いながら言われる。

どういうことなの…。

 

 

 

 

 

 

女性は八雲 紫…と名乗った。

この幻想郷のしがない妖怪であるらしい。

 

「"鬼巫女"さん。幻想郷はどう?」

 

 

「そうですね。今のところは…ん?」

 

 

あれ?今、鬼巫女…って。

まさかこの人は…

 

 

「あら?違いましたか?鬼巫女…いえ、平行世界の博麗の巫女さん。」

 

 

 

鬼巫女の事を知っている…!?

 

 

「まぁ、鬼巫女は鬼巫女でも…中身は別物の様ですが、あぁ、何故そんな事を知っているのか…は昨日の一部始終を見ていましたから。貴方が何故、昨日の事を覚えていないのかは、思い出してみると分かると思いますよ。」

 

 

まさか憑依のことまで知ってるとは…。

かなり怪しいが、思い出してみることにする。

 

頭のなかに知らない記憶が浮かんでくる。

自分が文さんと戦う記憶、その後慧音さんの家まで運ぶ記憶。

 

どういうことだ…。なんでこんな記憶が…

 

ふぅ…と紫さんがため息をついて

 

「まさか天狗がスペルカードルールを守っていないなんて…これは少し早める必要がありそうですね。あぁ、此方の話ですよ。」

 

その後、

 

「そんな記憶がある理由は…貴方にはまだ鬼巫女の人格の残骸が残っているからです。平行世界の霊夢は随分と規格外なのねぇ。戦闘行為をするとスイッチが入るみたいで…。それに、あの子もあなたの見聞きしたことを共有しているようね。」

 

 

とんでもないことを言われた。

鬼巫女の精神が生きている。

残骸…ではあるが、次第に恐ろしくなってきた。

幾つもの不安が浮かび上がってくる。

 

「心配は要りません。基本的には出てくるつもりはないでしょう。今度、あの子と話す機会があれば話してみるのもひとつです。…あの子も聞いていることだから、こちらからひとつ。ルールを覚えて、守ってくださいな。幻想郷にもバランスはあります。」

 

MUGENでは鬼巫女が話すことは無かったから、会話が出来るとは思っていなかった。

ここはゲームではなく、現実。そりゃ話すか。

もしも機会があったら憑依していることなどについて、聞かねぇとな。

 

スペルカードルールなるものも覚える必要があるそうだ。

確かに、鬼巫女の力で暴れられたらたまったものではない。

並のキャラなら即死だったからな。

 

紫さんの言葉に頷く。

 

「それは重畳。宜しくお願いしますね。ところで…」

 

何かあるのだろうか…。

 

 

「他にもそちらの"霊夢の世界"から…来ている方、居たりするのかしら?」

 

 

少し青い顔で紫さんが聞いてくる。口調も崩れている。

霊夢の世界…。つまり鬼巫女の居た世界だろうか?

 

「俺は見てませんが…。霊夢に聞いておきます。」

 

憑依していることもバレているので口調も戻す。

実際、見ていないし、どんなやつなのかもわからないのでそうしか言えなかった。

 

「…そうですか。もしも見た場合は連絡してくださいな。」

 

ホッとした顔で言ったあと、紫さんは謎の空間に消えていった。

 

…連絡ってどうすんだろ。

 

 

 

 

 

 

紫さんから貰った2Pカラーなる巫女服を着て、

慧音さんの家に向かう。

鬼巫女の記憶ではここに文さんを運んだはずだったから。

というか何故慧音さんの家を知ってたんだろうか…。

 

慧音さんの家に到着する。

戸を叩き、慧音さんを呼ぶ。

 

 

「はい、どちら様…ッ!霊夢さん!?」

 

 

慧音さんは出て来てとても驚いた顔をした。

そして、

 

「丁度良かった!聞きたいことがあったんです!文さんもまだ居ますから、上がって貰えますか?」

 

文さんが居るらしい。

昨日の事を鬼巫女の記憶で大体見ているので、

ちょっと躊躇うが、入ることにする。

 

客間に通され、慧音さんが障子を開けると

文さんが居た。所々包帯を巻いていたりするが、記憶で見たより傷が少なかった。

 

「あ、霊夢さん。おはようございます。」

 

「あ、おはようございます。」

 

 

普通に挨拶された。かなり元気そうである。

曰く、妖怪だから治りも早いらしい。

その時に昨日について謝ると

 

 

「あれくらいならぜんぜん平気ですよ。昔はもっと酷かった頃もありますし。それに…かなり手加減していたでしょう?」

 

あれでまだマシって、どんなことがあったのだろう。

文さんの言葉から、鬼巫女は基本的な攻撃しかしてなかったらしい。

らしいというのは、記憶で見ても早すぎて分からなかったからだ。

 

「それで…、昨日の変貌ぶりはどういうことなんです?」

 

文さんが聞き、慧音さんの顔が変わる。

 

「大体予想はついてますが…、教えてもらえます?」

 

どうするべきか迷ったが、少し嘘を混ぜて説明することにした。憑依については言わない方がいい気がしたから。

 

自分は二重人格…ということにした。

戦闘行為をすると変わることも言った。

 

「…そういうことでしたか。道理で…。」

 

慧音さんは納得したようだ。

 

 

文さんは…少し考え、

 

「あの血はあちらが原因でしたか。それにしても二重人格… 初めて見る部類ですね。今度取材させて貰いますね!今は仕事がありますので、これで失礼します。聞きたいことも聞けましたし。」

 

と言って、飛び去っていった。

 

「玄関から出ていけ…。玄関から。」

 

と散らかった部屋を見て慧音さんが呟いていた。

 

 

 

 

慧音さんの家の玄関で雑談をし、帰宅しようとする。

 

「それでは慧音さん。私も失礼します。」

 

「ええ、気を付けてくださいね。」

 

あれ?なんか視界が悪くなったような…。

なにか、視界が赤くなった気がした。

慧音さんも同じらしい。

回りも少し暗い。今は昼近く。雲も無く快晴だったはず…と空を見ると、

 

 

 

 

赤いモヤモヤしたものが空を覆っていた。



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憑依の原因、そして始まる紅霧異変

長文、独自設定あり
別のMUGENキャラが登場します。




 

空が真っ赤になっていた。

夕方…というには赤すぎる。

慧音さんも驚いているようなので普通ではないんだろう。

 

色からして体によくない気がする。

慧音さんの提案で、人里の人々に家からでないように伝えていく。

慧音さんとは別方向に向かい、呼び掛ける。

 

そうして回っている内に後ろから声をかけられた。

 

 

「…随分と懐かしい顔ですね。」

 

 

聞き覚えのない声にそう言われたので、

警戒しながら振り向く。

 

 

「鬼巫女…。いや、鬼巫女に憑依しているんですね。少しは鬼巫女の断片が残っているようですが…。」

 

 

紫さんの次はメイドさんだった。

鬼巫女に憑依していると見破られ、少しあせる。

しかし俺はそのメイドさんに見覚えがあった。

鬼巫女のような赤い瞳、銀髪ではなく白髪。

 

「S咲夜…さん。」

 

 

「私をご存じとは、嬉しい限りです。まぁ、私もこの世界の私の体を拝借しているだけなのですが。」

 

 

そう、MUGENで神の上位以上のランクに入っている"S咲夜"だった。

鬼巫女以外にも来ているとは思わなかった。

 

 

「知り合いに似ていたのでもしやと思って話しかけただけだったのですが…。当たりとは。」

 

 

この人ならもしかしたら何故、俺が鬼巫女に憑依したのか分かるかもしれない。

そう思って聞いてみた。

 

 

「貴方は…なぜ俺が鬼巫女に憑依したのか、分かりますか?」

 

 

「えぇ、大体予想がつきます。何故、憑依したのかを教えて差し上げても良いのですが。条件として、八雲紫に私が居たことを伝えないでいただけますか?」

 

 

紫さんには申し訳ないが、条件をのむ。

そうしてS咲夜さんは話してくれた。

 

「そうですね。まずそこに残っている鬼巫女は本当に、残りカスです。本人ではありません。憑依することで鬼巫女の人格を潰してはいません。そこは罪悪感を感じる必要はありませんよ。そもそも本人でしたら、乗っ取れるわけがありませんし。」

 

 

「本人ではない!?でも紫さんは…」

 

紫さんは対話できると言っていた。残りカスなら会話すら出来ないと思うんだが…。

 

 

「対話は出来ますよ。まずは話してしまいましょう。貴方のその体は、言うなれば"旧鬼巫女"です。

鬼巫女は一度アイツに負けた。そこからでしたね。力を求め始めたのは…。鬼巫女は強くなるために自分に不要な感情や記憶といったものを全て捨て、生まれ変わる儀式をしました。その時に残った体とその中の捨てられたものが貴方のその体と、残りカスです。その残りカスは、なにもかも捨てる前の、まだ精神が安定していた頃の鬼巫女のものなのです。人格も残っていたのは意外でしたがね。そこで漂っていた、欠けた鬼巫女の魂よりも貴方の魂が良いと判断、メインの魂として肉体が選んだのでしょう。」

 

 

「そうだったんですか…。」

 

まだ人としての感情を捨てていない頃の鬼巫女。

その人格が残っていた。

 

「捨てた鬼巫女はどうなったんです?」

 

そう聞くとS咲夜の顔に少し影ができた。

 

 

「鬼巫女は…私たち最上位をも越えて、論外に踏み入りました。もはや別人と言ってもいいでしょう。彼女は三回ほど肉体を変えている。幸運でしたね。もしも肉体が旧でなければ貴方は生きづらくなっていたでしょう。旧ですらこの世界では論外のようなもの。零、と名乗っていた頃の鬼巫女であれば戦う必要すらない。その場に居るだけで回りの生命は死滅します。ここに存在していたならこの世界の生命は5分と持たずに絶滅していたでしょうね。」

 

 

衝撃だった。

俺はMUGENで論外は見たことがなかった。

聞いたことがあるくらいだ。殺傷能力ではなく、死ぬ気がないヤツが多い…という部類だった気がする。

 

ゲーム内ではなく、現実ではS咲夜さんが言ったようになると思うと、身震いがした。

自分以外の命が何もせずとも死んでいくのだ。

俺なら発狂ものだ。

 

 

「ですからその肉体を返す必要はありませんよ。もう必要ないですし。でも…そちらの鬼巫女は楽しそうですね。それを見れて安心しました。まさか私も、鬼巫女が人里で人に紛れているとは思いませんでしたよ。」

 

とクスクス笑いながら言う。

 

 

確かに。鬼巫女がまさか人里で働いているなんて、彼女を知る人達なら思わないのだろう。ポトレ的にもそんな感じしなかったし。

 

「おっと、そろそろ時間ですね。この体の仕えている主人にバレてしまいます。無いでしょうが、また会えるといいですね。」

 

 

そう言った頃には目の前から消えていた。

 

 

 

少し、自分の胸がすくような気がした。

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

未だに赤い霧が出ている。

こういった、異変と呼ばれるものは博麗の巫女が解決するらしいが動いていないらしい。

鬼巫女の記憶だと直ぐに動いていた。動機が解決ではなく、戦闘目的でなければ更によかったのだが。

 

 

今日は香霖堂と呼ばれるところに来ている。

元住んでいた森、魔法の森の入り口に建っているそこは、ここで唯一外の世界のものを扱っているらしい。

 

俺は元外の住人なので気になっていたのだ。

外から見るだけでも、標識が立っていたりしたので本当に扱っているらしい。

 

 

「おや、霊夢…ではないみたいだね。客かい?」

 

 

入って目があったとき、そう言われたので

 

 

「客ですね。商品見てもいいですか?」

 

と返す。

 

許可は貰えたので探り始める。

ここに来る客は基本、博麗の巫女か白黒魔法使いらしい。

 

「キミ…もしかして新聞に載ってた子かい?」

 

 

あん?…新聞…?

 

 

そう言われ、渡された新聞を見る。

 

 

あぁ、前に文さんに取材されたやつだ。

 

あの事件の数日後、紫さんの来る前。

突然取材された。まぁ、OKはしていたので受けたのだ。

 

どれどれ…内容はっと。

 

人里で働いてることとプロフィール位か。

因みに名前は靈夢にしてもらった。

巫女と全く同じたとあれだからな。

 

 

「それにしても本当に似てるねぇ。」

 

 

「そんなに似てるんですか?」

 

 

「瓜二つだね。」

 

 

 

そんな会話をしながら物色する。

 

そんな中、ある瓶に入った液体が目にはいる。

 

 

こ、これは!コーラじゃないかッ!

 

憑依する前に飲んだっきりである。

店主さんに聞く。

 

「これ…!おいくらですかね。」

 

「あぁ、それは外の飲料水だね。うーんこれくらいかな。」

 

 

給料で買えたので即購入。久しぶりである。

その他にも気になるものがあったが、金がないので諦める。

布団がかなり高かった。あれは高い。

今は布団がないので畳で寝ている。お陰でかなり体がいたい。

 

 

 

外に出て、コーラの瓶を開けようとするが、

 

あ…栓抜きないやん。

 

 

栓抜きがないのだ。仕方ないので指で外す。

 

歩きながら何処から外そうと考える。

鬼巫女のパワーでやると蓋が弾丸みたいに飛んできそうだからだ。

 

丁度赤い館の前についた位で諦めて、前に向けて外す。

 

 

指でコインを弾くみたいにしてみた。

すると、瓶の手で持つ部分から弾け飛び、持ち手部分が前に吹っ飛んでいく。

 

やっぱこの体あかんわ…。

 

口調が変になったが、それは置いておく。

瓶の持ち手部分が物凄い速さで飛んでいく。

 

そこには門が破壊され、ボロボロの状態で立ち上がった、武術家の様な人がいた。鬼巫女の記憶に似た様な人がいた気がするが、気のせいだろう。

 

その武術家の人はその瓶に反応することができずに頭に直撃、何故か持ち手部分は粉微塵に弾けとんだ。

 

武術家らしき人沈黙。

 

 

 

 

「あ、やっちゃった…?」

 

 

取っ手部分の無くなったコーラを持ったまま。

 

 

 

 

 

 

俺は殺人をしてしまったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




恐らく、これ以降は別のMUGENキャラはでないと思います。
リクエスト等がある場合は出すかもしれません。

※5/7追記。S咲夜は論外に部類されていました。すみません。しかしこの小説では最上位くらい、として進めさせていただきます。


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異変が解決しました。

鬼巫女の口調は独自です。

今回も独自設定、キャラ崩壊などが含まれます。




 

「これは不味い。非常に不味い。やっちまったか…?」

 

 

持ち手部分が頭に当たって弾けとんだ。

見た感じボロボロだった人?に止めを刺してしまった。

これは故意じゃないからな!見た感じ妖怪みたいだから…もしかしたらまだ息があるかもしれない。

 

…良かった。ギャグ漫画によくあるたんこぶで済んでいる。

門の前に…柵なんて吹き飛んでるが、門なのだろう。

それの前に守るように立っていたのだから門番…だろう。

うん。殺ってしまってたら恨まれてたかもしんない。

 

持ち手部分は弾けとんでるので証拠はない。

相手も気がついてないので可哀想だが放置する。

ついでにコーラも飲み干し、瓶は粉々にしておく。

 

…それでも見た目が人間なので結局放置できなかった。

鬼巫女の記憶では、治療効果のある札が一応、あったはず。…あった。ポケットに入っていたそれを頭に張り付けて、館から離れることとする。

 

他人の家に入るのには勇気がいるのだ。

 

…中でドンパチしてる音なんて聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 

 

「こんな赤い館に住んでるんだ。ちょっとなぁ…。」

 

 

真っ赤。本当に真っ赤。ろくな感じがしない。

 

すると頭の中に声が響く。

 

 

(おい。その館に入るのはやめろ。いいか、特に図書館にだけは入るんじゃねーぞ。)

 

 

んん?誰の声だ?

 

誰かは知らないが意見が合うようだ。

 

 

(あのメイドがこっちに居たんだ。…つまり"アイツ"…あの魔法使いが居てもおかしくない。アイツに会うのだけは勘弁だ。そのまんまあのメガネの奴の所に戻ることを勧めるぜ。)

 

 

あぁ、Cパッチェさんのことか。あれには確かに会いたくは。…パッチェさんのことを知ってる?つまりこの声は…。

 

 

(あん?私の名前?手前はよく知ってんだろうが。私の体を使っといてよく言うぜ。)

 

 

鬼巫女だった。ホントに会話できるとは…。

 

 

(まぁ、悪くはなかったな。あっちではあんな生活したことなかったし。というか、良いのか?そろそろ離れた方がいいぞ。戦いたいなら別だがな。)

 

 

へ?どゆことですかね?

 

 

(…あー。出てきちまった。あのメイドはもとに戻ってるみたいだが。あれがこっちの世界の私か、頑張っても狂位だな。あれは。)

 

 

振り返ると、館を派手にぶっ壊し赤い巫女と、ちっさい少女が出てきた。

少女には羽が生えてる。

 

なんだあれ。

 

(ありゃあ吸血鬼…って、あーあ。気づかれちまった。)

 

 

そういわれて、吸血鬼と巫女の方を見るとこちらを見て固まっている。

あ、あの巫女。店主さんに見せてもらった人だ。

鬼巫女もいってた通り。博麗の巫女のようだ。

 

 

「博麗の巫女が二人…?どういうこと?」

 

 

「そりゃこっちが聞きたいわよ。吸血鬼。」

 

 

よし。逃げよう。これはめんどくさくなる。

特に博麗の巫女。

一部の人(主に文さんからの情報)によると、話の前にまず喧嘩吹っ掛けてくるらしい。

 

 

(負けはしないだろうがな。逃げるのには賛成だ。なんせあの胡散臭いチビ妖怪が見てる。関わらない方がいい感じだ。)

 

 

鬼巫女も賛成のようなので、全力で地面を蹴りここから離脱を試みる。

地面が物凄い陥没する。それと同時に体が新幹線にてでも引っ張られているように吹っ飛んでいく。

 

 

(ちょっと体借りるぞ。)

 

 

と、鬼巫女と入れ替わったと同時に鬼巫女が体を反転し、ムーンサルトを放つ。

 

俺の進行方向に、ワープでもしたかのように待ち構え、攻撃体制に入っていた博麗の巫女がいた。

後ろには吸血鬼が追いかけてくる。

 

その巫女はお払い棒で防御する。

 

鬼巫女はそれを狙っていたようで、足でお払い棒を引っかけ巫女ごと一回転。位置を入れ換える。

 

巫女は追撃をしようと迫っていた吸血鬼とぶつかる。

 

二人がもつれている間に空気を足場にしたかのように空中で跳躍し、鬼巫女は手に武器を召喚する。

 

 

 

 

その武器は………、賽銭箱であった。

 

賽銭箱が迫ってくる様子を二人は唖然とした顔のまま見ているしか出来なかった。

 

まさか賽銭箱が降ってくるとは思わなかったのだろう。

 

 

後で鬼巫女に何故賽銭箱なのかを聞くと、

 

 

(メイドは弾幕ごっこにナイフ使ってたし、別にいいだろ。)

 

 

とのことだった。

 

 

 

賽銭箱を振り下ろす直前、文さんが見えたのは気のせいだと信じたい。

 

 

 

(やっぱ手応えねぇなぁ。あ、体返すぜ。)

 

 

賽銭箱に当たると基本的に即死してた気がするが、二人は気を失ってるだけだった。

 

 

これ…どうしよう。

 

 

(こっちの私が弾幕ごっこしてたってことは、コイツがこの異変の原因だったわけだ。あとはこっちの私がなんとかすんだろうさ。ほれ、さっさと帰ろうぜ。)

 

 

そういうもんだろうか…。なんか後から厄介ごとが起こりそうだなーと思いながら人里へ戻る。

 

ついでに賽銭箱の出し入れの方法を聞いて、回収することを忘れずに帰った。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

Side 文

 

 

「いやぁ。この異変がこんな形で終わるとは思いませんでしたね。まさか靈夢さんがやらかすとは…。それでも恐らく、スペルカードルールは広まるでしょうね。この異変がそれで解決したわけですし。」

 

 

靈夢さんが人里から出るのを見掛けたので着いてきましたが、異変に関われるとは。

 

賢者も帰ったようですし、あの吸血鬼と博麗の巫女に詳しい話を聞くことにしましょう。

 

久々に良い新聞が書けそうです。

 

そう思い、二人に近づいていく。

 

 

 

まぁ、目が覚めた瞬間に攻撃されたのは驚きましたがね。

 

お二人はあの後、靈夢さんのことを私に聞いてきたので人里の住民ですよ。と伝えた。

吸血鬼、レミリア・スカーレットが人里の人間を勘違いしたり、博麗の巫女が妖怪の類いではないかと疑っていたりしていましたが。

 

この異変はレミリア氏が霧を晴らすことで解決となった。

 

 

後日、宴会を開くそうなので新聞で広告をする。

 

 

 

…靈夢も誘ってみましょうかね。

 

 

 

 

そうして新聞配りのついでに寄ることした。

 

 

 

 

 



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宴会やるそうです

MUGENキャラについてですが、出してほしくないとの意見がありましたので出さない方針で行きたいと思います。




 

 

赤い館でのことから一日経った。

 

 

あの巫女と吸血鬼は人里にまではこなかった。

 

 

今は少しビクビクしながら仕事をしている。

 

 

そして、やっと俺は布団を買えたのだ。これで畳で寝る必要はなくなった。

 

 

(やっと布団で寝られるぜ。畳も悪くはなかったが、体に痕がつくからな。)

 

 

だよなぁ。畳で寝ると身体中が痛くて仕方ない。

 

 

最近、俺のことが人里に広まっている。それで少し博麗の巫女なのかーやら、色々聞かれる。

 

 

文さんの新聞が原因らしいが、博麗の巫女とは顔が似ているだけと分かると普通に接してくれる。

 

 

あの巫女の神社は"妖怪神社"とか言われてるらしい。

 

 

なんでも、神社には妖怪がよく来ていて巫女となにかをしているから…だそうだ。

 

 

(まだいいじゃねぇか。こっちなんて妖怪すら来なかったぞ。…年明けと同時に賽銭箱担いで稼ぎに行ったりもしたな。)

 

 

稼ぎに行く…というのがどういう意味なのかは聞かない。絶対ヤバイ。

 

 

そうやって鬼巫女と念話みたいなので会話してると、

 

 

「靈夢さーん。こんにちわー。」

 

 

文さんだ。

 

 

(げっ。鴉天狗じゃねぇか。これは厄介ごとを持ってきた感じがする。断っとけ。なんか頼まれても。)

 

 

えぇ。文さんが?それは無いと思うぞ。厄介ごとなわけが…。

 

 

「今日の夜って空いてます?博麗神社で宴会が…。」

 

 

すまん。鬼巫女。厄介ごとだわ。

 

 

(…博麗神社っつーことはだ。こっちの私と鉢合うことになる。昨日のこと問い詰められたり、下手すりゃ襲ってくるな。)

 

 

出来れば断りたいな。よし、この見た目のことを言って、断るか。

 

 

「あー、すんません。博麗神社はちょっと…。」

 

 

「あ、見た目のことでしたら、新聞に載せてますし大丈夫ですよ。私からも言いますし。」

 

 

(そ、外堀から埋められてたか。慧音も知り合いとどっか行くって言ってたしなぁ。)

 

 

これは逃げられそうにないな。絶対なんか起きるわ。

 

 

よし、宴会に行く前にスペルカードでも作るか。

 

 

(そういや作ってなかったな。弾飛ばしてただけだもんな。)

 

 

おう。美しさを競うとか書いてあったからな。…そういえば俺の霊力弾って。

 

 

(あん?見てなかったっけ?赤黒い弾だぞ。美しさ?無理じゃねぇかな。)

 

 

そういやそうだった。俺の霊力は赤黒いらしい。恐らく、二つの魂が同時に存在するからじゃないか?

 

 

(まぁ、そうかもな。でもスペルカードねぇ。私の技使うか?)

 

 

技?と言うと?

 

 

(例えば…必然「キングクリムゾン」とかか?)

 

 

それ…即死じゃないですかー。

 

 

(あぁ、そうか。もうあそこじゃねぇんだもんな。なら殺傷能力は必要ないか。手加減すりゃいけんことも無さそうだが…。)

 

 

因みに手加減すると?

 

 

(…相手が意識不明になる位じゃねぇかなー。)

 

 

 

 

 

 

「えーと。大丈夫ですか?」

 

 

文さんまだ居たのかー!?

 

 

(…ずっと居たぞ。)

 

 

「考え事してたみたいですが…。つまりOKってことでいいんですね?なら夜にまたこっちに迎えに来ますねー。」

 

 

と、すごいスピードで飛んでいく。

 

 

天狗って早いんだなー。

 

 

(あ、布団買うときに耳に挟んだんだが。妖怪とか詳しく書いてある本があるらしいぞ。)

 

 

どこで聞いたそんなこと!?

 

 

(ん?どこだっけな。里の…紫色の髪の毛したヤツが同じくらいのちっさいやつに言ってたぞ。紫色のヤツが書いてるらしいな。)

 

 

へー。そりゃ役立ちそうだな。

 

 

(ま、そんなもんに使う金はもうないんだがな。)

 

 

…仕方ねぇだろ。布団は高かったんだ。

 

 

(布団の他にも色々買ってただろうが。買ったと言えば…外のもんだったが、あの茶色い水は旨かったな。)

 

 

あぁ、コーラか。ここじゃ飲めそうにないしな。

 

 

もっと味わっとけば良かった。

 

 

(お。客が来たみたいだぞ。)

 

 

おっと、仕事に戻らねぇとな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

Side 霊夢

 

 

あの私擬きを知ったのは、鴉天狗の新聞が初めてだった。

 

 

人里に博麗の巫女らしき人物が居たらしいという内容で、写真付き。

 

 

最初はガセだろうと思ってた。

 

 

でもあの吸血鬼の異変の時に実物を見てしまった。

 

 

髪の毛と目の色以外は殆ど私だった。

 

 

あまりにも似すぎではないだろうか。

 

 

妖力は感じなかったので、化けている…というわけではないんでしょうね。

 

 

アイツは強かった。

 

 

昔から博麗の巫女として、最低限の修行はしていた。

 

 

そんな事しなくても大体のことは出来たのでサボってはいた。

 

 

負けたことはなかった。

 

 

自分が地面に倒れることははじめての経験で、

 

 

気がついて、負けたと理解したとき、何とも言えない気分になっていた。

 

 

「途中で急に雰囲気も変わったし…、何者なのかしらね。」

 

 

そう。突然、雰囲気が変わったのだ。

 

 

それだけではない。人間ではありえない脚力。

 

 

不思議と私の中では私擬きのことしか浮かんでこなかった。

 

 

まあ、めんどうさえ起こしてくれなきゃどうでもいいんだけどね。

 

 

 

そして私は宴会の準備をする。

 

費用は全部あっちが負担してくれるらしいのでちょっとした会場作りだけで済むのは楽だった。

 

 

…そうして宴会の時間に近づいていった。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

遂に宴会の時間が来てしまった。

 

 

スペルカードも考えた!お払い棒も用意した!

 

 

後は心の準備だけだ。

 

 

(…大丈夫だろ。こっちの私も多分淡白だ。…多分だがな。)

 

 

多分じゃダメなんスよ!根に持つタイプとかだったら怖いじゃないですか!

 

 

(口調が安定してねぇぞ。…落ち着け。あのブン屋がなんとかすんだろうさ。吸血鬼には不干渉で居ればいいだろう。S咲夜ももう帰っただろう。)

 

 

そうだな。あ、でもあの門番さんには謝っといた方が…。

 

 

(…あー、居たなぁ。そういや。それくらいはしとけ。)

 

 

 

「靈夢さん。待たせました?仕事が長引いてしまって。」

 

 

 

「いや。大丈夫ですよ。んじゃ、行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

「博麗神社に着いて思ったこと。」

 

 

(…私も思ったことがある。)

 

 

 

「(殆ど女じゃねぇか!)」

 

 

 

 

まさかの妖怪や妖精が全員女性とは…。

 

 

ハーレム系を目指すやつなら喜ぶところだろうが、俺は生憎そういうのはちょっとな。

 

 

元男だからな。ちょっと辛い。

 

 

(私の所でも男は結構いたんだがなぁ。よくわからん世界だ。)

 

 

 

本当に人間より人外の方が多い。妖怪神社ってのは本当だったか。

 

 

「あやー。皆さん既に出来上がってますね。靈夢さんはお酒。大丈夫ですか?」

 

 

 

酒…。俺は未成年だったが、こっちでは年齢制限なしなのか…。

 

 

(やめとけよ。酒は。)

 

 

ん?何故だ?

 

 

(お前…この体で出来上がって暴れてみろ。私は実際ヤバかったぞ。)

 

 

…うん。やめよう。酒は。

 

 

 

「そうですか。苦手なんですねぇ。なら料理とか摘まみます?私は飲ませてもらいますが…。」

 

 

そうさせてもらおう。

 

 

(…巫女が来たぞ。)

 

…なんですと?

 

 

 

「アンタ…。少し話があるんだけど。」

 

 

ヤクザみたいな顔してるわ。これはあかん。

 

 

(…私に変われ。対応してやるよ。)

 

 

はい。お願いします。

 

 

今回も入れ替わりに問題はなかった。

 

 

鬼巫女は普段こんな感じで見てるんだな。

 

 

自分と同じ視点で見てる感じだ。

 

 

本当に共有してるらしい。

 

 

 

「……………」

 

 

鬼巫女は博麗の巫女をジロジロと見る。

 

 

巫女さんは少し困惑してる。

 

 

「これがこっちの私か。ふーん。浮く能力…って所

か。」

 

 

「!?…本質に気付くなんて!いや、そもそも何故能力が分かったの!?」

 

 

 

「言っただろ?"こっちの私"だって。」

 

 

ば、バラしたー!?平行世界だってバラしたぞ!?

 

 

 

「…成る程。道理で。似てるわけだし、能力も知ってるわけね。でも…、私と少し違うわね。」

 

 

 

「当然だな。因みに能力は"あらゆる干渉を否定し我を通す程度の能力"だ。平行世界の私同士。仲良くしようぜ?」

 

 

現実すら葬ったもんなぁ…。鬼巫女。

 

さて、あっちの反応は?

 

 

「ふーん。まぁ種はわかったわ。めんどうさえ起こしてくれなきゃなんでもいいわ。んじゃ。話は終わりよ。」

 

 

…マジか。こういう人なんだな。

 

 

そして体の感覚が戻る。

 

 

 

(これでいいだろ。あっちも干渉してこなさそうだしな。)

 

 

 

特になにもなかったことに驚きだ。

 

 

後は門番さんに謝るだけだな。

 

 

 

 

 

 

門番さんには普通に許してもらえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご感想ありがとうございます。
お陰でモチベーションも上がりました。



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雪が止まない里

ご感想ありがとうございます。
次回は今回より遅くなってしまうと思います。すみません。
それと、もしかしたら番外編を書くことがあるかもしれません。鬼巫女以外のMUGENキャラが出たり主役になる可能性があります。
鬼巫女だけがいい方や、苦手な方は番外編は見ないで飛ばして貰っても大丈夫です。ストーリーには関係しませんので。

あくまで予定ですので、やめて欲しいなどの意見が多い場合はやめると思います。



あの紅霧異変から一年近く経った。

 

 

私、靈夢は人里の自宅の屋根雪下ろしをしている。

 

 

もう春になり、雪も溶け始める頃なのに…。

 

 

 

「なんで雪がこんなに降ってるんだろ…。」

 

 

(昨日も雪掻きしたばっかだよな。)

 

 

そう、昨日も雪掻きしたはずなんだ。

 

 

屋根雪下ろしの仕事なんかを始めて人里で仕事を探すと、あら不思議。どんどんと仕事が入ってきた。

 

 

それはいい。金も稼げるし、人里の人達とも交流できる機会になるし。

 

 

でも、この雪はおかしい。一日でこんなに積もったら体は持つが、精神的にキツイ。

 

 

一日中仕事してたこともあった。無心になって雪掻きしてたよ…。

 

 

(見てる私も暇で仕方なかったな。これも"異変"ってやつなんじゃねーか?)

 

 

多分そうだろう。もう4月中旬ですもの。桜が咲いてないとおかしい頃だ。

 

 

「靈夢ー!手は空いてるか?こっちも雪掻きを頼みたいんだが…。」

 

 

この声は慧音さんだな。

 

 

一年も経つと慧音さんの口調も崩れた。呼び方も変わったしな。結構仲良くなれたと思う。

 

…俺がそう思ってるだけかもしれんが。

 

 

(あの感じは大丈夫だろ。友人と話すみたいな雰囲気だしよ。)

 

 

鬼巫女がそう言うならそうなのかね?そうだと良いんだ

が。

 

 

「へーい。空いてますよ。今日はどの区域で?」

 

 

口調といえば俺も変わった。慧音さん曰く、

 

 

「私が崩すならお前も崩してくれ。私だけというのもあれだからな。」

 

 

とのことらしい。俺も楽なので助かる。

 

 

「今日は稗田家周辺だ。なんでも手が足りないらしいぞ。」

 

 

「稗田ってーと、あの?」

 

 

(あの幻想縁起書いてるヤツの家だろうよ。お偉いさんって所か。)

 

 

「お前の思ってる通りだ。準備をしてくれ。」

 

 

「拒否権はないんですねー。分かりました。待っててくれ。」

 

 

 

仕事だから仕方ない。店長のお婆さんは今休業してるからな、雪掻きして稼がねば。

 

 

 

(あの家の雪掻きねぇ…。ちょっと面倒だな。)

 

 

 

あの家デカいからな。そこ周辺もとなると辛い。

 

 

そういえば、文さんの新聞で見たがあの吸血鬼に妹が居たらしい。あの宴会の後、色々とあったらしい。

 

 

(金髪で羽が宝石みたいなヤツだったな。…いつの間に写真撮ったんだろうな。)

 

 

弾幕回避しながら撮るって凄いよね。

 

前に聞いたことがある。なんで自分の弾撃たないんですか…って。

 

 

(理由も理由だったな。"自分の弾が写真に写るのが嫌"…だったな。しかもあのカメラ、弾幕を消すことも出来るんだってな。)

 

 

 

チートアイテムではなかろうか…。あのカメラ。

 

 

鬼巫女と話しをしながら、マフラーと手袋を用意する。

 

さっきまではしてなかったんだが、慧音に見られると怒られるからな。

 

 

「なんて格好でやってるんだ!せめて何か羽織るなりしろ!」

 

 

だったか。んで香霖堂まで探しに行ったんだったな。

 

 

 

(あんときの慧音は恐ろしかったな。子供へ頭突きするとこを見てからだと尚更な。)

 

 

慧音の頭突きの前には何故か、鬼巫女の硬さすら無意味らしい。

 

 

ギャグ補正というヤツだろうか。

 

 

ついでにいくつか上に着込んでおく。脇なんか出してると更に怒られそうだ。

 

 

「すまん。待たせた。」

 

 

「かまわんさ。それよりも急ごう。龍神様の像によると、昼からまた吹雪らしいからな。吹雪のなかやりたくはないだろう?」

 

 

それは嫌だな。よし、急ごう。

 

 

(異変自体を解決しようって考えはねぇのか?)

 

 

それするとまた、なんかありそうだからな。

 

それに、博麗の巫女はまだ動いてないらしい。でも、香霖堂で会った白黒さんは解決するみたいだぞ。

 

 

(…あー。あの死ぬまで借りるって言ってたやつか。)

 

 

 

白黒さん…魔理沙は俺のことを博麗の巫女と間違ったみたいだがな。

 

 

そしてすぐに偽物とか言われたんだった。

 

 

(メガネの店長が止めなきゃ、弾幕ごっこが始まってたな。)

 

 

鬼巫女は少し楽しみだったらしい。暫く戦闘行為はしてないからか。

 

 

 

(なぁ。お前さん、今回は異変に参加しないか?)

 

 

 

「…そりゃどうして。わざわざ面倒事に首を突っ込むことは…(胸騒ぎがするんだ。)…え?」

 

 

胸騒ぎ?鬼巫女の…?それってかなりヤバいかもしれないじゃないか。

 

(私には特になんもないだろうが、幻想郷にとってかなり不味いことが起こる気がするんだ。)

 

 

 

…そこまで言うなら、行くべきか。なら…。

 

 

 

「慧音さん。ちょっと…。」

 

 

「む?どうした。…まさかとは思うが、異変を解決しに行くと言うんじゃないだろうな?」

 

 

「うっ!?」

 

 

当たってます。行こうとしてます。

 

 

「どうやら当たりか…。全く。お前は確かに強い。それも天狗とタメを張れるくらいには。しかしだな、異変解決は巫女の仕事だぞ?お前には一緒に里を守ってもらいたいんだがな…。」

 

 

 

「でも…なにか胸騒ぎがするんだ。それに、解決するなら早い方がいいだろ?」

 

 

 

「む、確かに…。老人達には辛いだろうし、…そうだな。行ってくるといい。幸いにも妖怪はあまり里の近くには最近は出てないしな。」

 

 

 

「あぁ、すんません。じゃ、行ってきます。」

 

 

「気を付けてな。それと、仕事を私に押し付けるんだ。今度こっちの頼みも聞いてくれよ?」

 

 

 

「うっ、…分かりましたよ。」

 

 

 

そして俺は異変解決に向かうことにした。

 

 

(情報もないのにどうすんだ?)

 

 

 

…忘れてた。情報全くないじゃないか。

 

 

(おいおい…。雪が多いってことはそれ関係が怪しいんじゃねぇか?例えば冬にしか居ないヤツとか…。)

 

 

 

一旦家に帰り、鞄に幻想縁起を突っ込んで出発する。

 

 

縁起によると、レティ・ホワイトロックという妖怪が怪しい、と分かった。

 

 

 

取り合えず出没地域に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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レティさんは黒幕らしい。



遅くなりました!すみません。


相変わらずの駄文ですが、それでも良い方はどうぞ!





 

 

時間帯は昼頃。俺達は一面雪景色の中を飛んでいた。

 

 

「確か、レティ…さんの出没地域ってここらだったよな?」

 

 

(合ってるとおもうぜ。特徴は白っぽい服だな。)

 

 

…まだレティさんが黒幕だって決まったわけではないんだが。こんなこと起こせそうな能力してたからなぁ。

 

 

(黒幕をちゃっちゃと倒して帰ろうぜ。慧音に仕事押し付けたようなもんだからな。もう一回くらいは謝っとけよ。)

 

 

 

「そうだよな。それじゃあ、戦闘は頼むわ。」

 

 

 

(お前が戦うのもありなんだぜ?後々役に立つかもしんねぇぞ。)

 

 

 

…いつまでも鬼巫女に頼ってたら不味いか。

 

 

鬼巫女に頼れないって状況がないとは言えないから…。

 

 

 

(私の体が覚えてるだろうから、もしかしたら戦いかたがわかるかもな。)

 

 

 

「スペルカードは増やしては来た。各宣言の攻撃方法も聞いた。だがなぁ。あれを再現できるかって言われると…。」

 

 

 

(なるようにはなるだろうさ。あーあ。黒幕が自分から来てくれたらいいのにねぇ。)

 

 

 

「それはありえんな。黒幕は大抵自分の根城に籠ってるもんだろ。部下とか全滅させてやっと来る感じだ。」

 

 

ゲームでは大体そうだったからな。テンプレ通りなら根城まで行かないといけない。

 

 

 

「でも確かに、黒幕が来てくれたら直ぐに解決できるな。」

二人で会話をしていると…

 

 

 

「く~ろ~ま~く~。」

 

 

 

なんて声が聞こえた。

 

 

 

「(ん?…黒幕…?)」

 

 

 

そこには件のレティ・ホワイトロックが居た。

 

 

 

(…やったな!ラスボス登場だぞ。)

 

 

「自分から黒幕だって名乗るとは…。」

 

 

この二人。少し頭が残念である。

 

あちらはまだこちらに気付いていない。

 

 

鬼巫女はお払い棒を構え…、

 

 

 

「貴様が黒幕かぁぁぁぁ!!」

 

 

レティ・ホワイトロックに突っ込んでいく。

 

 

 

 

「今日も一面雪景色…。」

 

 

 

「食らいやがれぇ!"煉獄「アマテラス」!!"」

 

 

 

「ぇ?ウワァァァァァァァァ‼?」

 

 

 

レティ・ホワイトロックは後に語る。

 

 

 

 

あれは正に鬼巫女だった…。

 

 

 

 

その話をしたのが霊夢に対してだったため、

 

 

 

更に不幸が襲うのだが、それは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

(これで異変も解決だろ。雪も明日には無くなってるんじゃねぇかな。)

 

 

 

 

「レティさん、吹っ飛んでいったね。オーバーキルなんじゃ…。」

 

 

 

(手加減はした。)

 

 

 

そうですか…。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「…………って感じで解決してきました!」

 

 

と、慧音さんに異変について報告している。

 

 

里について慧音さんを見かけたからだ。

 

 

伝え終わると慧音さんは…

 

 

「この…馬鹿もんがぁぁぁ!」

 

 

と頭突きをされた。

 

 

 

その頭突きから10分は経つが一向に痛みは引かない。

 

 

 

(まさか私の耐性をぶち抜いてくるとは思わなかった。)

 

 

 

神ランクの耐性をぶち抜く頭突きとは一体…。

 

 

 

現在俺は説教をされている。

 

 

 

正座って辛い。内容は、いきなり襲いかかるとは何事だ、やら もしも黒幕だったとして雪を降らせるのをなめろと言ったのか…云々だ。

 

 

 

色々と怠ったのは認める。でも、黒幕だって自分で言ってたからね。黒幕なら攻撃するしかないじゃない。そう思いません?

 

 

 

 

…思いませんか。そうですか。

 

 

 

 

「というか真面目に聞いてるのか貴様はぁぁ!」

 

 

 

 

本日2発目。的確に同じ位置に頭突きを食らった。

 

 

(…頭へこむんじゃねぇかな。これ。)

 

 

 

この後3時間ほど続いたのだった。

 

 

 

 

 

「やっと解放された…。」

 

 

 

(……………。)

 

 

 

 

説教されたのっていつぶりだろうな。

 

 

 

こっちに来てからはそんなことなかったなぁ。

 

 

 

あっちの皆はどうなってるんだろうか…。

 

 

 

そう思い、思い出そうとして気づく。

 

 

 

「あれ?皆の顔は分かる。名前も分かる…なのに。」

 

 

 

自分の本名と顔が思い出せない。

 

 

他は覚えてる。しかし自分についてだけはポッカリと忘れていた。

 

 

 

どういうことだよ。なんで思い出せないんだ…。

 

 

 

(…自分のことが思い出せないか?)

 

 

 

鬼巫女…?何か知ってるのか?

 

 

 

鬼巫女は少しトーンの下がった声で教えてくれた。

 

 

 

(二つの異なった魂が融合するんだ。どうなるかわかったもんじゃない。恐らく融合するときに消えちまったんだろうな。私の魂がそこを上書きしたのか…、それはわからんがな。)

 

 

 

…わかんないけど、向こうで実は俺はなんかで死んだとして鬼巫女に憑依することで助かったなら、確かに安いと思えてしまう。

 

 

 

今は鬼巫女なんだから。

 

 

 

(…そうだな。んじゃこの話は終わりだとして。飯にしようぜ。)

 

 

 

「家になんかあったっけ…。」

 

 

(香霖堂で買った菓子類位だろ。今は冬場。春が来ないから作物も微妙。久しぶりに外食なんてどうだ?)

 

 

「菓子類しかないのは辛いな。外食って言ってもよ。そばくらいしか近くにないぞ?」

 

 

 

(そば…ね。この雪のせいで休んでないといいねぇ。)

 

 

「休んでたら菓子で凌ぐしかないのか…。」

 

 

(どのみち明日からは菓子類になるぜ。家になんもないんだから。)

 

 

「ぐっ…。買い込まなかった俺が悪いな。これは。」

 

 

 

(私はなんであんなに菓子を買ったのかが不思議だぜ。)

 

 

「外の菓子なんて食えないと思ってたからな!店に並んでたら買っちゃうんですぅ!」

 

 

 

(因みに賞味期限は?)

 

 

 

 

「……お察しだよ。」

 

 

 

(忘れられて流れ着くほどのやつだからな。わかってたよちくしょう。)

 

 

 

「いや…あの菓子は紫さんの提供らしいぞ。」

 

 

 

(流石にないわな。賞味期限がとんでもなく前のやつなんて。)

 

 

 

「うわっ!雪深ッ!?」

 

 

 

(足ハマったな。あーあ。靴下が濡れたな。)

 

 

 

 

そんな会話をしながら俺達は蕎麦屋を目指していった。

 

 

 

 

 

 



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番外:Cパッチェさんは異世界に行きたい。


番外編となります。


これを見ずとも本編に影響はありません。



 

 

オッス!我はパッチェさんことCパチュリーだ。

 

 

 

「パッチェさん!準備できたわよ!」

 

 

 

 

「おぉ!では早速やろうじゃないか!」

 

 

 

 

現在、Nアリス…アリスさんと実験の準備をしている。

 

 

実験内容は異世界。さくよさんが異世界から上機嫌で帰ってきたからな!

 

 

気になって調べたんだが…どうやら鬼巫女の残りカスが異世界で生きているらしい。

 

 

 

今ではもう此方には何も反応もしなくなったヤツだが、旧ならば別だ。

 

 

 

「まさか旧鬼巫女が生きてるなんてね!これはあれを実行しなきゃ!」

 

 

 

「ククク…。最後にやったのは賽銭隠しだったな。アリスさん!頼むぜぇ?」

 

 

 

 

「分かってるわよ!…それよりも大丈夫なの?アイツらに気づかれないでしょうね?」

 

 

 

 

「…安心しろ!レミ姉さんもさくよさんも今は出掛けているはず!今回ばかりは邪魔されるわけにはいかんなぁ!」

 

 

 

 

レミ姉さんとさくよさんの話では…幻想郷と呼ばれる場所に居るらしい。

 

 

 

しかも別の精神が入っている…!これならば多少は弱体化しているはずだ。

 

 

 

 

「この作戦は完璧よ!我を讃えるがいい!」

 

 

 

「嫌よ。讃えるわけないじゃない。自爆させるわよ。」

 

 

 

「アリスさん!?それはないぜ!…だがなぁ!今回は対策をしているのだよ!」

 

 

 

 

「へぇ…。どんなの?」

 

 

 

「レミ姉さんの部屋からこのサポートシステムを回収しておいたのだ!」

 

 

 

「ちっ!"今回は"念を入れてるじゃないの。」

 

 

 

「今舌打ちしたよね!?なんで!?ねぇ!」

 

 

 

 

「してないわよ。ほら、さっさとしましょ。」

 

 

 

「そうだな!レミ姉さんが…「私がなんだって…?」……え?」

 

 

 

「私を呼んだでしょう?何かしら?」

 

 

 

「ゲェッ!?レミ姉さん!なんでここに!?」

 

 

 

「なんでって…ここは私の家でしょう?何言ってるのよ。」

 

 

 

「そういうことじゃなくてね!?」

 

 

 

「貴方…幻想郷に行こうとしてたでしょう?」

 

 

 

「!?…な、なんの話かなー?」

 

 

 

「それと…、アリスならもう帰ったわよ。」

 

 

 

「う、裏切ったなぁぁぁ!?」

 

 

 

「貴方を行かせるわけがないでしょう?取り合えず死ね。」

 

 

 

「く、ククク…今回の我はそう簡単に自爆するほどやわではないぞ!」

 

 

 

「なんですって!?」

 

 

 

「既にサポートシステムは使えん!故に我を止めることは出来ぬのだ!フハハハハ!」

 

 

 

 

「…なんてね。実はもうひとつ貴様専用のジェノサイドスイッチがあるのよ。」

 

 

 

「なん…だと…。待て!レミ姉さん!待ってくれ!」

 

 

 

 

「なにぃ~?聞こえんなぁ。というわけで死ね!」

 

 

 

「あ、あっれぇ~?こ、こんな筈じゃあ…」

 

 

 

 

レミ姉さんはそしてスイッチを押した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1回目 失敗

 

 

 






多分続かない


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文さんが家に来る話

ご感想、及び評価ありがとうございます。

元からですが、これから異変などにはあまり関わらない感じで進んでいくと思います。

異変はやった方がいいんでしょうかね?


「……さん。れ…むさん!」

 

 

 

朝から誰か来たみたいだな。でも起きたくない。

 

 

布団から出たら絶対寒い。

 

 

 

「靈夢さーん!起きてください!雪が止んでますよー。」

 

 

 

 

雪が止んでてもなぁ。道に塊が残ってそう。雪掻きはもう御免ですわ。

 

 

 

…ん?雪が止んでる…?

 

 

 

体を起こすと、障子を開けて文さんがこちらを見ていた。

 

 

「玄関から入ってきてほしかったですね~。」

 

 

 

「いえ、ちょっと急用だったもので…。」

 

 

 

急用…?なにかあったんだろうか。

 

 

 

(それほど大したことでもないと思うがな。)

 

 

 

鬼巫女。なんか知ってるのか?

 

 

 

(まぁ、本人から聞いた方がいいだろ。)

 

 

 

そうだな。

 

 

 

「今、号外を配ってるんです。内容はもちろん今回の異変についてですよ。」

 

 

 

「あー、この雪のやつ?犯人は誰だったんだ?」

 

 

 

(私、レティ以外に一票。)

 

 

んじゃ俺はレティだな。

 

 

 

「犯人ですか?…教えてもいいんですが、タダで教えるというのも…ねぇ。」

 

 

 

「新聞は購読してますし、何か要望が?」

 

 

 

文さんは少しニヤついて、

 

 

 

「靈夢さんのもうひとつの人格さんと話させてください!」

 

 

 

(…は?)

 

 

 

鬼巫女。ご指名ですぞ。

 

 

 

(なんで私?アイツからしたら嫌なイメージしかないと思うがな。)

 

 

 

「で、どうです?話せますかね?」

 

 

 

どうしようかな。鬼巫女ー別にいいか?

 

 

 

(話すくらいは構わねぇぞ。賭けの結果知りたいし。)

 

 

 

「んじゃ、変わりますね。」

 

 

 

 

「あやや?人格の入れ換えが可能になったんですか?」

 

 

文さん、悪い顔してるわ。

 

 

これはなんか…やばい。

 

 

 

「ちょーっと、詳しく聞かせてもらえますかね。」

 

 

 

嵌められたぁぁぁぁ!

 

 

(…勘鈍ったかな。一時的に思考レベルが下がった気がする。)

 

 

 

 

 

 

「成る程。その鬼巫女さんとは上手くやれてるんですね。」

 

 

 

「そうですね。相棒みたいな感じですよ。」

 

 

 

(…相棒か。)

 

 

 

どうした?鬼巫女。

 

 

 

(いや。なんでもない。)

 

 

 

…ちょっと声が変だったが、まぁいいか。

 

 

「鬼巫女さんと入れ換わるのもいいですが、二人の会話も聞いてみたいですね。」

 

 

 

鬼巫女とこの、テレパシーみたいなの以外でも話せるようになる…か。

 

 

出来るならやってみたいな。いちいち入れ替わらなくてもいいし、鬼巫女も他人と会話できるしな。

 

 

 

「鬼巫女さんと靈夢さん。別人だから意見も違いますし。記事としても面白なりそうですしね!」

 

 

 

「でも、そんなこと出来るとは…。」

 

 

 

幾らここがファンタジー溢れる世界でも流石にないわな。

 

 

 

「地底に居る覚り妖怪は論外として…、賢者辺りに頼むのが最適解ですかね。」

 

 

 

(あん?論外?こんな世界で生きていけたヤツが居たのか?)

 

 

 

お、おかえり。でもその論外じゃないと思うぞ。

 

 

 

「覚り妖怪…ですか?確か、心を読む…。」

 

 

 

心を読む云々の妖怪だったような。

 

 

 

(曖昧だな。縁起には載ってなかったか?)

 

 

 

無かった気がする。うろ覚えだけどね。

 

 

 

「えぇ、大体あってますよ。…何故論外と聞きたそうな顔ですね。」

 

 

 

文さんはちょっとため息を吐いてから

 

 

 

 

「その妖怪…、言いましたが地底に居るんです。地底は地上との制約で現在相互不干渉なんですよ。…ま、覚り妖怪にわざわざ会いに行くような人なんて居ませんよ。」

 

 

 

地底…か。色々とありそうだが。聞かない方が良さそうだな。

 

 

 

(…マジでさっきの案を実現すんの?)

 

 

 

ん?鬼巫女が話せるようになる話?やりますとも!

 

 

 

 

(………はぁ。でも口はひとつなんだぜ?どうするつもりだ?)

 

 

 

「…………。」

 

 

 

文さんに聞こう!

 

 

 

 

(えぇ。カッコつかねぇなぁ。)

 

 

 

「それで、賢者についてはいい話がありますよ。」

 

 

 

「紫さんは神出鬼没と聞きましたが…会えるんですか?」

 

 

 

 

「…えぇ。会えはしますよ。場所が場所ですが。」

 

 

 

 

「まさか?場所って…。」

 

 

 

 

「宴会があるんですよ。博麗神社で。」

 

 

 

 

(あの酒とか飲んでたあれか。異変解決したからやんのか。)

 

 

 

 

「巫女さんは別にいいんですよねー。問題は…」

 

 

 

 

(…吸血鬼か?それともレティか?)

 

 

 

 

吸血鬼だね。あんときやっちゃったからね。

 

 

 

 

「あやややや。レミリアさんの事が不安で?」

 

 

 

 

「うっ!?何故バレた…。」

 

 

 

「顔に出てますよ。…大丈夫です。宴会の場で物事は起こさないでしょう。」

 

 

 

「…うーん。なんかヤダなぁ。」

 

 

 

「しかし、随分と変わりましたねー。来たころは丁寧語ばかりでしたし。」

 

 

 

 

多分慧音さんのせいだな。違いない。

 

 

 

「なんでしたら…、私と貴方の仲ですし、約束を取り付けてきても良いですよ?」

 

 

 

文さんとも仲良くなった気がする。

 

 

 

最初の頃はこんなに会話することも無かったし。

 

 

 

慧音さんと同じくらい大切な友人…そう思ってるのが俺だけじゃないとイイナー。

 

 

 

 

「仲…といえば。慧音さんとは崩した口調で話してましたね。…私もあやかろうかしら。私達も折角なんで気楽にしましょう!」

 

 

 

「う、うーん。いいんですけど…。口調がなぁ。」

 

 

 

 

「たまに男っぽくなることですか?別にいいと思いますよ。」

 

 

 

(いいんじゃねぇか?こっちも堅い言葉は苦手なんでな。)

 

 

 

「わかり…わかった。そうしよう。」

 

 

 

「それで、話を戻すけど。宴会どうする?一緒に行く?」

 

 

 

(折角誘われてんだ。行こうぜ?もしものときは派手にやってやんよ。)

 

 

 

派手にはやめよう。派手には。穏便にすませましょ。

 

 

 

 

そうして俺は了承の返事を返した。

 

 

 

二回目の神社だ。少し武装していこう。

 

 

 

(なぁ。)

 

 

 

おぉ?鬼巫女よ、どないした?

 

 

 

(…そろそろ布団を薄くしようぜ。直ぐに夏が来るぞ。)

 

 

 

んなアホな。だって今は…

 

 

 

(雪のせいで忘れてたろ?もう5月だぞ。)

 

 

 

あっれ~?感覚狂ってきたなぁ。

 

 

 

「あや?布団は片付けないの?出しっぱは流石に…」

 

 

 

 

忘れてました。すんませんね!

 

 

 

「それで、黒幕ですが…レティさんじゃないわよww。」

 

 

 

「え?」

 

 

(やったぜ。私の勝ちだな。)

 

 

 

「レティさん…流れ星になってたわねw。黒幕は幽霊だったわ。」

 

 

「…Oh。」

 

 

レティさんを吹っ飛ばしたことを後悔した瞬間だった。

 



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