二次元大好き豚くんに憑依した件。 (どぅるるるるん)
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第一話
ちす。
はじめに言っておこう。
漫画のとあるキャラに憑依した。
前世でトラックに轢かれ死んだわけでもない。というかそもそも自分が死んだのかも分からない。
憑依した日のことはよく覚えている。自分の部屋で寝ていた筈なのに、目を覚ますと全く見知らぬ場所にいた。パソコンのモニターと数多のフィギュアに囲まれている部屋。
そこでもう既に何となくは分かっていたが、自分の姿を見た瞬間に確信に変わった。
あぁ、俺、
****
ミルキに憑依したと分かった俺は、一先ずダイエットをすることにした。ミルキ君は太っていたから弱いと思われがちだけどあの体型で暗殺は出来る人だし痩せればもっと強くなると思うんだ。
そんなことを思い、ダイエットすること約一年。
「随分と変わったな」
自分の姿が写っている鏡を見る。
そこにはあのぶたくんと呼ばれていたミルキではなく、まるでリヴ〇イ兵長みたいになった俺がいた。
声もどことなく兵長に似ている。
「うーん、やることやったし、次何やるかな…」
自分の記憶を探り次に何をするか頭の中で考えていると扉が叩かれた。
(来客か?)
「兄貴、俺だけど訓練付き合ってくれない?」
キルアの声が扉の向こうから聞こえてくる。皆には言ってないと思うが、最近キルアが俺に甘えすぎて怖い。
「おう、いいぞ」
扉を開け、外に出ようとする。すると、扉が開いた途端俺の腹にキルアが抱きついてきた。
「うお…またか?」
白色の髪を優しく撫でると、キルアは嬉しそうに声を漏らす。ほらね?まあ甘やかしている俺もダメだと思うがこれが毎日のようにある。
「兄貴ぃ…ふへへ…」
だらしなく頬を緩ませているキルアをおんぶし、いつも体を鍛えている場所に向かった。
****
「ほいっ!」
そんな掛け声と共にキルアが俺の右腹を狙い回し蹴りをする。蹴りをバックステップで避けると、お返しに右足を軸に左回し蹴りを放った。
「んぐっ!」
キルアは少し反応が遅れたようで、防いだことには防いだが威力を完全に緩和することは出来なかったようだ。
だが、キルアは直ぐ様呼吸を整え再びこちらに走ってくる。
(だいぶキルアも強くなったな)
「そらっ!」
右、左、左、右、左。
どこからどう攻撃が来るのか手に取るように分かるため、全ての攻撃を受けることなくステップだけで回避する。
「なんで、当たんないの!」
「さあ?何でだろうな?」
「むぅ…まあいいや!兄貴が強いってのは充分知ってるし!」
あれだけ動いたのにケロッとした様子で、こちらに近づいてくる。
「ん!兄貴!ご褒美頂戴!」
ほら撫でろ。と言わんばかりに差し出された頭を撫でる。一番最初キルアと一緒に訓練をした時に冗談半分でしたことが今まで続いている。もしかしてこれのせいでキルアは甘えるようになったのか?
「はいはい」
「兄貴ってさ、なんでそんなに強いの?」
「何でなんだろうな…分かんねえや」
「そっかー、でもいつか絶対に兄貴より強くなってやるからな!」
「おう、楽しみにしてるぞー」
最後に頭を乱暴に撫でる。キルアは嫌そうにやめろ!と叫んでいたがだるんだるんに緩んでいる頬で嬉しがってるのバレバレだぞ。
***
『ミルキ、少し頼めるか?』
「ん?どうしたの?親父」
『これを俺の代わりにやってきてくれないか?』
そう言って携帯に送られてきたのは暗殺の依頼だった。内容はとある貴婦人の殺害。
「はいはい、金ははずんでくれよ?」
『ああ、分かってる』
じゃあ行きますかね。
クローゼットから無地の黒色のパーカーを出す。それを無駄に格好つけて羽織り、目的地へと向かった。
***
「あらまあ!こんなにたくさん!」
ホテルの一室にいる貴婦人はとても上機嫌だった。それもそうだろう。何故なら、目の前に大金があるからだ。
その金を差し出してきた男は、スーツ姿にサングラスという怪しい格好。見るからに『裏』の取引だ。
(ったく、めんどくせえな)
一方、ミルキはその様子をビルの屋上から眺めていた。頭を掻きながらため息をつく。
ホテルでの取引が終わり、スーツ姿の男性が出ていく。
(チャンスは今だな)
するとミルキはその場から消えるように移動した。
「こんばんは死ね」
随分ご機嫌な貴婦人の首を掻っ切る。その細い首からは真っ赤な血が流れ出てくる。
「あっ……」
貴婦人は何が起こったのかも分からず、横へ倒れ込み、目を瞑った。
「ふう、任務完了っと」
ミルキは貴婦人が受け取っていた大金の入ったスーツケースを手に取ると、再びその場から消えるように去っていった。
***
「親父ー、依頼こなしてきたぞ」
『そうか、よくやった。金はいつも通り口座に振り込んでおく。次も頼んだぞ』
「へいへい、その代わり…分かってるよな?」
『ああ、キルアをハンター試験に行かせる、だったな。約束は守ろう』
「あ、それと俺もハンター試験行くから」
『分かっている、それじゃあな』
電話を切り、膝の上で寝ているキルアの頬を撫でる。キルアはくすぐったそうに身を捩った。
「おやすみ、キルア」
おす。
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