理不尽壊しのリインカーネイション外伝 〜大切な人を守る物語〜 (橆諳髃)
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プロローグ 大切な者を失った悲しみ

「まずは自己紹介をしておこう。俺の名前はガエリオ・ボードウィン。鉄血のオルフェンズで特務三佐という役職についていた。だが幼馴染の裏切りで殺されてしまった。その時助けてくれたのが愛護颯也だ。俺はあいつに返せない恩がある。まぁそれとは別に、あいつの理想と生き方に惹かれ、ついていく事を決めた。まぁそんなところだ。

さて、自己紹介はこの辺にして、早速物語が開幕するぞ」

あ、あれぇ……ほとんどガエリオさんが言っちゃってる?


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯也が世界を淡々としている時、暇そうにしていた俺にも声がかかった。まさか神という存在と話す事になるとは思ってもみなかったが、とりあえずその時言われたのは、俺に行って欲しい世界があるとの事だった。

 

聞けばその世界には、魔法があるようだ。それも女の子にしか使えないと……しかし、20歳を過ぎるとその能力は失われるらしい……が、稀に死ぬまでその能力を持てる人達もいるで、個体差があるようだ。

 

そこまで聞けば……まぁ普通のサイエンスフィクションに聞こえる。だがそれには続きがあった。

 

20世紀前半……人類は突如として現れたネウロイという存在に襲われ、何人もの人の命が無くなり多くの国も占領されたと聞く。

 

それに対抗する者達の存在もいるとは聞いたが、それは直接その世界に行ってみた方が早いと言われた。

 

……ん? この話の流れ……もしかしなくとも俺は行く事前提か? まぁそれはそれで良いのだが……

 

そしてその世界に行く前に、何か特典を授けると言われた。一応3つまで要望は叶うらしい。ならばという事で、俺は自分の愛機であったキマリスを所望した。

 

まぁその世界に行くときはパワードスーツ扱いで、しかも何か特別な感情を抱かなければ最初は使えない様だ。最初に使えたならば、後は自由に使う事が出来る様だ。また自動で機体を整備できる能力も付いている様で、使っていない間はその機能が働き、傷ついた箇所や消費し弾薬は元どおりになる様だ。

 

因みにこれは余談だが……俺がいた元の世界にはガンダムフレームというのが存在し、そのキマリスも1つに数えられる。まぁ簡単にいうと、ガンダムという存在は他の機体よりも強いという事だ。

 

そして後残りの2つはと聞かれた時……俺は欲しいものはないと言った。キマリスがあれば何とかなると思ったからだ。例えパワードスーツ扱いでも、俺は軍人だ。対人戦闘もそれなりに積んで、元の時代では特務三佐という地位に上り詰めた。……多分親の影響も少なからずはあるだろうが……

 

それはさておきとして、後残り2つは神様がランダムで選んでくれるらしい。まぁ行って着いた時に確認するか。

 

そして……いよいよその世界へ行く時になった。まぁ表現としては転生と言った方が近いな。

 

(まぁ何はともあれ……颯也に救われたこの命だ。あいつのためだと思って頑張るとするか……)

 

俺は眩い光に照らされて、その世界に旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4年後

 

 

 

 

 

その世界に行き着いた時……俺は孤児として協会で住んでいた。幼少の頃に顔に大きな傷を作るほどの大怪我をし、それが醜いからと言って捨てられていた所を協会に拾われた様だ。まぁこれは、俺がマクギリスに殺された時と同じ様な傷だから気にはしないが……

 

まぁ協会での生活も悪くはないと思った。なにせこの世界で自我が芽生えたのはつい最近だ。寧ろ普通とも思える。だが前世と比べると……どうしても物足りないとは思わなくもないがな?

 

そんな生活を1年していると、俺はとある男の人に引き取られた。名前はクルト・フラッハフェルトといって、年は30歳ぐらいだったが、それよりも若く見えた。ひょんな事ではあるが……俺はその人物とこの世界で暮らすこととなったんだ。因みに俺を引き取ったのは、俺の青みがかった紫色の髪が綺麗だという理由がおもだった様だ。

 

それからすぐの事……俺はある女の子と逢った。名前はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ……赤髪が綺麗な女の子だった。そして俺達はよく会う様になって、終いには家族ぐるみの付き合いをするほど仲が良くなった。

 

気付けば、その出逢いが恋にまで発展していて、彼女のことをミーナと呼び捨てで呼び合う仲にまでなっていた。因みに俺のことはガエリオで2人きりの時は俺の事をガッキーと呼んでくる。まぁ……ガッキーと呼んでくるのは気分がいいとかぐらいの様だがな。

 

勿論、彼女が魔法を使える事は知っている。初めて見た時は驚きを隠せなかったが、そういえば俺がここに来る前に神様がランダムで後2つの能力を与えると言っていたが、それは一体何なのだろうか?

 

転生する前に確か……俺の内を探れば分かると言っていた。精神統一をしろということだろうか? まぁせっかくもらったのなら、遠慮なく使わせてもらおう。

 

そして分かったことは……俺には固有魔法が備わっているという事だ。後は……薄っすらと見えたが、俺が死んだ後の世界が見えた。

 

俺を殺した幼馴染……マクギリスが何らかのガンダムフレームを駆使してアリアンロッド艦隊に1人で特攻している所と、それに対して……

 

(あれは……キマリス……か? だが装備や姿も違う様な……っ⁉︎)

 

そこで見えてしまった。そのキマリスの様な機体に乗っているのは俺で、マクギリスと戦っている場面を……。

 

これが最後の1つの特典だというのだろうか? だとしたら神様は意地悪に思える。だが……

 

(俺を殺したはずのマクギリスとあぁも互角に戦い合っている……という事は、あの世界で生きている俺は成長したということか……なら!)

 

俺もうかうかとはしていられない。あの世界で俺が生きていようと、死んだはずの俺を助けてくれた颯也について行こうと決めた。だから俺も頑張らないとな。

 

そしてその日から、俺は自分の固有魔法を使いこなす訓練を始めた。

 

俺の固有魔法は螺旋力……つまり回転力とも呼ばれるもので、簡単に言うと、投げたボールを自由に回転させてコントロールできるというものだ。

 

まぁその訓練自体他の人にバレると厄介だから、日に日に場所を移しては訓練した。

 

まぁ、それだけをやっていたわけじゃない。俺には、元いた世界でやっていなかった趣味をやっている。それは、おじさんから習ったピアノや、それ以外の楽器を演奏する事だ。

 

ミーナが歌を歌うのが上手いから、俺もそれに触発された感じでおじさんに教えてくれと頼んだ。おじさんも元々ピアノや他の楽器を演奏する奏者として有名だったこともあり、そこは基礎からしっかりと教わった。

 

今ではしっかりと演奏できる様になって、ミーナが歌う度に演奏している。

 

俺は、戦い以外でこんなにも楽しい生活を送れるとは思っていなかった。そんな生活を過ごしていたために、俺が何故かの世界に来たのか……その理由を忘れてしまっていたんだ。

 

だが俺とミーナの歳が15になった時……異変が起きたんだ。

 

ネウロイ……そう言われる存在が突如として現れ、人々の生活を脅かし始めたんだ。俺とミーナは、空軍に入る事を決意した。そしておじさんも……軍の整備士に志願した。

 

俺は……恋人であり大切な存在であるミーナと、俺を育ててくれたおじさんには正直入って欲しくなかった。俺は前世で軍属だったこともあり、軍に入る事は怖くなかった。

 

だが……俺はあの時の様に……大切な存在が目の前で死んでしまう所は見たくなかった。だから、俺にとって大切な人達であるミーナとおじさんには軍に入って欲しくなかった。

 

だが現状として、唯一魔法を使うことができる女性がネウロイに対する手段だ。だからミーナは逆にその力で、俺とおじさんを守るといって聞かなかった。そしておじさんもミーナと、自分の息子として育ててきた俺だけを戦場に行かせるわけには行かないといって聞かなかった。

 

結局は3人とも軍に入った。ミーナはウィッチとして、おじさんは整備士として……そして俺は戦闘機のパイロットとして……

 

それから数ヶ月が経った。ネウロイの進行は、いよいよガリアを占領しようとしていた。そこで軍は、一般市民をガリアやガリアに隣接する国に住まう市民達を避難させる作戦に出た。その避難が終了するまで、俺達軍属はネウロイの進行を少しでも長く止まらせる事が、作戦の主な概要だ。

 

だが俺もこの数ヶ月の間……訓練兵としていたわけじゃない。確かに最初は訓練兵だったが、俺はもう努力して、入隊した1週間で前線に赴き、ネウロイ達と戦っていた。

 

正直ビーム攻撃は驚いたが、そんな事で墜ちる俺ではない。この数ヶ月の間に、何体もネウロイを撃破してきた。それが功を奏して、その作戦では前線の1部隊長を務めることになっている。

 

そして市民の避難作戦が決行される数時間前……

 

「ミーナ……そのドレス……」

 

「えぇ。このドレスを持っていると未練が生まれそうで……だからここで燃やそうと思うの」

 

「だがそれは……君が昔から貯めてきたお金で初めて買ったものだろう? そんな大切な代物を……」

 

「うぅん。いいのよこれで。それにドレスなんて、また買おうと思えば買えるわよ」

 

「……そうか。分かった。ミーナがそう言うのなら、俺はこれ以上何も言わない。だが1つだけ……この避難作戦が終わって無事にまた会えたなら……渡したいものがある」

 

「渡したいもの?」

 

「あぁ。だから……また無事に会おう。俺とおじさんとミーナのこの3人で」

 

「っ! えぇ!」

 

そしていよいよ作戦が始まった。俺は1つの部隊長として、ネウロイと戦った。勿論その舞台に属する奴らも守りながらだ。だが……時間が経つにつれ1機また1機と堕とされ、最後には俺と3機だけとなった。だから俺はそいつらには撤退命令を出して、おじさんがいる戦闘機の整備基地まで避難させた。後の判断は自由だと言ってある。

 

だがこちらも消耗している。燃料は残り3割で、弾薬も残り2割……さてどうするかと思っていた時だ。

 

俺と交戦していたネウロイが、数発の弾丸を浴びて撃破されたのだ。俺は銃弾が撃たれた方向を見る。するとそこには……

 

「ガエリオ! 1人で突出し過ぎよ‼︎ ここは私達に任せて、貴方は基地で補給を受けて!」

 

それは、ストライカーユニットと呼ばれる装備を付けたミーナと、他のウィッチ達だった。

 

「す、すまない。助かった」

 

「良いのよ。それに約束したでしょ? また無事に会うって」

 

「っ! あぁ! その通りだ! すまないが、少しだけ持ちこたえていてくれ‼︎」

 

そして俺はその中域から離脱して、おじさんのいる補給基地へと行った。だが……そこで思いもよらぬ展開を知ってしまったんだ。

 

基地についた時、そこはほぼもぬけの殻となっていた。ただ……

 

「ガエリオ、無事でよかった」

 

「お、おじさん⁉︎」

 

そこにはおじさんが1人いた。状況を聞くに、既に一般市民の避難は完了しており、残すは軍属の俺達が撤退すれば作戦は終了となる。だが軍は思いもよらぬ事を思いついたようだ。

 

それは、ウィッチ達を囮として使い残りの軍属を撤退させると言うものだった。その通達はウィッチにはされておらず、彼女達は知らずに戦っていると言う事だった。

 

まぁ残りの軍人が撤退を終えたらウィッチ達にも撤退命令が降ると言う事なのだが……

 

「それだと……ミーナはどうなる⁉︎」

 

「あぁ、ミーナちゃんも囮として利用されたんだろう。だがそこは大丈夫だ。君がここにきた時にはウィッチ達にも撤退命令が下されているはずだよ」

 

「そ、そうか……だ、だったら何でおじさんがここに?」

 

「そんなことは決まっているよ。息子1人を残すわけにはいかないからね」

 

「おじさん……」

 

「さて、話はこのぐらいにして整備を始めるよ。それとこのインカムを持って行きなさい。近くの人と簡単に通信ぐらいはできるから」

 

俺はおじさんからインカムを受け取り耳につけた。そして整備が始まって数分後の事だ。インカムから通信士の声が聞こえる」

 

『ネウロイがウィッチ達の包囲を一部突破した! 避難していない者達は速やかに避難せよ‼︎ 繰り返す!』

 

(なっ⁉︎ ネウロイがもうここまで来るのか⁉︎)

 

「ガエリオくん!」

 

「は、はい!」

 

「整備はあらかた終わった。君はミーナちゃんを迎えに行くんだ!」

 

「あ、あぁ。だがおじさんはどうするんだ⁉︎ ここにネウロイが来るまで時間がないぞ⁉︎」

 

「そんなのはこっちで何とかする! それよりも君はミーナちゃんを迎えに行くんだ‼︎」

 

その言葉で俺はエンジンを入れる。徐々に戦闘機の振動を強く感じた。だがそれと同時に、この基地の近くにネウロイが現れた。俺は戦闘機の窓を解放しておじさんの方に手を伸ばした。

 

「おじさん! ネウロイが近くまで来てる! ここが攻撃されるのも時間の問題だ! だから……」

 

「そんな事したら戦闘機が重くなる! それよりも君はミーナちゃんの元に行け‼︎」

 

「で、でも‼︎」

 

「つべこべ言わずにとっとと行けぇ! ガエリオ・ボードウィン‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

その言葉が引き金で……俺はその基地から飛び立ってしまった。

 

『そう……それで良いんだ、ガエリオくん。君は……ミーナちゃんと幸せになるんだよ……』

 

おじさんの声がインカム越しに聞こえた後、基地はネウロイに攻撃されてしまった。俺がさっきまでいたところも……ネウロイのビームで焼かれ、さっきまでいたはずのおじさんの姿も……そこにはいなかった。

 

「うぅ……ぐぅっ……うぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

 

目から涙が溢れてきた。この感じは……あの時と一緒だ。カルタを失ったあの時と一緒の感情だった。俺は……許せない……俺には……キマリスが託されたはずなのに、未だにその力を使えない……それがあれば……その力を使えさえすれば……

 

「……許さない」

 

俺はたちまち、怒りの感情に飲み込まれた。

 

「許さないぞネウロイ‼︎」

 

俺は固有魔法を発動して、ありったけの弾丸をネウロイに撃ち込んだ。そいつはコアを破壊され散った。だが……この怒りは収まらない。収まらないが……

 

「……ミーナと合流しよう」

 

おじさんの最後の言葉これを違える事だけはしたくなかったから、一時的ではあるな怒りを抑えてミーナの元に向かった。

 

それから数分でミーナの元に合流はしたが、既に魔法力も底をつきかけていた。

 

「聞こえるか⁉︎ ミーナ!」

 

「っ⁉︎ ガエリオ⁉︎」

 

「軍からの撤退命令が出ているはずだ! ミーナ達も早く戻れ‼︎」

 

「で、でもネウロイがまだこんなに……」

 

「そいつらは俺が食い止める! だから早くミーナ達は行け!」

 

「……分かったわ。でも……必ず帰ってきて……」

 

ミーナはその言葉を俺に告げてその場から去った。さぁ……ここからは俺の復讐だ。

 

「おじさんの仇……取らせてもらうぞ‼︎」

 

それから時間がいくら経ったか分からない……あれだけいたはずのネウロイも残りわずかとなったが……こっちも満身創痍だ。それに弾薬も1割を切って残り数発……どう見ても倒せそうにない。

 

(くそ……ここまでなのか……せっかくミーナにも生きて帰るように言われたのに……。それに、これも渡すつもりだったのに……)

 

後ろの席には、無事に帰ったらミーナに渡すと約束した品が入っている。これは何としても渡したかったが……どうやら渡せそうにない。

 

そんな時、ある風景が頭を過ぎった。ミーナと楽しく過ごしたあの時間……ミーナの笑った顔、嬉しそうな顔、怒った顔、涙を流した顔、ふくれっ面の顔、いじけてる顔……そして俺の事を大切に想っている顔……

 

(そうだ……こんな所で諦めれる訳がない‼︎)

 

颯也だって、こんな事じゃ諦めない! なのに俺が諦めてどうする‼︎

 

俺は懐から拳銃を取り出した。そして戦闘機の窓を開けて、一体のネウロイに向けて撃つ。するとそれは、ネウロイを貫通して核も壊した。

 

(よし……まだ俺は戦える! 生きて帰る事ができる‼︎)

 

しかし、その思いが油断を生じさせたのか、ネウロイから放たれたビームが戦闘機の翼に直撃した。

 

「くっ⁉︎ 制御が効かない‼︎」

 

目の前にはネウロイがいて、このまま行けば衝突は免れない! だが制御が効かない! また銃で撃って攻撃し核を壊すか? いや、間に合いそうにない……

 

これは……いよいよ詰んだか……

 

(ミーナ……すまない……)

 

そう想った途端……視界が暗くなった。俺は……いよいよ死んでしまったのかと……そう思った。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おい……我が主人よ、起きろ】

 

その声は聞いた事がなかった……だが、身体が勝手に反応して目は開いた。するとそこには……巨大なシルエットが佇んでいた。

 

【ようやくここに来たか……随分と遅かったな、我が主人よ】

 

「お、お前は誰だ? そしてここは……」

 

【ここは主人の深層心理……主人が諦めかけ、心が折れる寸前にここへと来たのだ。そして我が名はキマリス……主人と共に戦場を駆け抜けた者だ】

 

「き、キマリス⁉︎ お前がか⁉︎」

 

【そうだ。だが……ここでいつまでも話している余裕はない。そこで単刀直入に聞かせてもらおう……我が主人よ……力を欲すか?】

 

「……あぁ。お前の力が必要だ」

 

【即答だな。では……何のためにだ?】

 

「俺は……さっき大切な家族を失った。正直お前の力は……復讐として使いたい。だが……俺にはまだ大切な存在がいる。だから俺は……その人を……ミーナを守るためにその力を使う‼︎」

 

【良かろう! 我が主人ガエリオ・ボードウィン! 汝に我の力を授けよう‼︎】

 

その声で俺は正気に戻った。状況は以前変わらずネウロイに追突しようとしている……

 

だが……俺はもう諦めない! 挫けない‼︎ 俺はもう……力を得たんだ‼︎

 

「俺の想いに応えろ! キマリス‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日……ウィッチーズ隊の撤退を支援したガエリオ・ボードウィン少尉は、ガリア上空に佇んでいた最後のネウロイに突貫……結果、ネウロイは撃破されたが、ガエリオ少尉は戻ってこなかったという。

 

その少尉の勇姿を讃え、軍はガエリオ少尉を二階級特進として大尉の称号を与え、盛大に追悼した。そこには……ガエリオの父親的存在であったクルト・フラッハフェルトの遺影と、ガエリオの笑みが映った写真を抱えながら泣いているミーナの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……一方は……

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……やっとこの戦闘機も直ったな」

 

そこには、死んだはずのガエリオが自分の愛機である戦闘機を直していた。

 

しかも体もピンピンしていた!

 

「正直あの後、すぐにミーナには会いに行きたかったが……」

 

その途中……軍が何かを回収している場面に遭遇した。それはネウロイの核の破片だった。そこで俺は……軍が何か良からぬ事をしようとしていると考え……そのまま身を隠した。

 

軍の方では、どうやら俺は戦死扱いになっているようで……ミーナにも悲しい想いをさせていると考えると心が痛かった。

 

だが……軍の事も放ってはおけない。だから俺は、ネウロイに占領されたと思い込まれているガリアの地にて身を隠しつつ、軍の動向を探った。

 

(この世界……どうやら最終的には一部の人間が事を起こすという事か……)

 

どこの世界でもそれは変わらないのかと思いながら、俺はこの世界で生きていく。ミーナと再び再開するために……




ふぅ……やぁっと書けました!

という事で、ここで燃料切れ……続きはまた後日という事で‼︎


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原作1期介入
1話 名を偽った男


「今回はちゃんとした戦闘シーンが入るようだな」

えぇ、前回は結局キマリスの戦闘シーンを描いていませんなでしたので、見てくださった読者の皆様はすこしがっかりしたとは思います。ですが、今回はちゃんと描写も描いているので安心してください‼︎

「あぁ、なら俺も楽しみに読み進めるとしようか」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから3年ほど経ったか……俺は、軍に自分が生きていることがバレないように名前を偽った。ヴィダール……それが今の俺の名前だ。そして素性もバレないように仮面もつけている。

 

ん? どうやって入手したか、だと? そうだな……これは自らが創り出したものだ。俺の記憶にあるものは、想像すればいくらか作れるようだ。これが俺の3つ目の能力と言ったところだ。ただし記憶にあるものだけだ。記憶にないものはできないし、大きなものであれ小さなものであれ、作った後は疲労感が重くのしかかる。

 

なに? ヴィダールの記憶がないくせに何故その仮面が作れるか? か……

 

そうだな……この3年の間、寝ていると夢を見る。それは、俺がガエリオとして幼馴染に殺された後の世界のことだと思う。

 

夢の内容は……俺が顔に大きな傷を負い、そこからラスタル・エリオンという男の元でこれまでの身分と名を隠し、俺を殺した幼馴染の動向を探るというものだった。

 

勿論、ラスタルという男から下された命令には従ってはいた。それが……俺と俺が好きだったあいつを殺した幼馴染への仇に通じると思いながら……

 

そんな理由もあって、その夢は3年も経てば俺の記憶として定着した。勿論俺には身に覚えのない事だ。だが……それでも他人事には思えない。そんな実感が、俺にはある。まぁそんな理由もあって、ヴィダールとしての記憶もある。これで説明になっているか?

 

そんなわけでだ……無から有を創り出すというのは、それなりに代償が必要だということだ。これを颯也は普通にしているところを見ると、やはり只者ではないなと思ってしまう。俺も負けていられない。

 

そして今俺がやっていることといえば、補給部隊を襲おうとしているネウロイを撃破し、その代わりとしていくらかの物資と情報をもらっている。

 

俺は颯也のような慈善家ではない。まぁ、命があるからこそ明日を生きることができる……用は、彼らの命を守っているのだからそれぐらいの報酬があってもおかしくはないという事だ。

 

だが、その他にばかりに留まっているわけではない。幾らかの情報は自分自らが動いて収集している。そうしなければ、信憑性というものが無いからな……それに、留まるばかりだと身体が鈍る。だからキマリスを使い、身体能力の向上にも務めていた。

 

そして様々な土地に赴き、情報収集しつつその土地の風土を肌で感じた。文化の違いというものには酷く驚かされるところがあるが……それを身近に感じる事は、俺にとってもいい影響を及ぼしたと思う。

 

だからこそこの世界を守らなくてはという思いにもかられる。だが……俺が1番に願う事は……ミーナが無事で元気にいて欲しいという事だけだ。俺が仕入れた情報によれば、第501という部隊で隊長をしているようだ。しかも階級は中佐だ。あれからまだ3年しか経っていないというのに、凄いものだ。それほど努力をしたという事だろう。ミーナにも負けてはいられないな。

 

そして今日は、勝手ながら哨戒任務についていた。俺が得た情報からすると、扶桑国から赤城という母艦がブリタニアに着くらしい。その時に何事もなく着いてくれたなら、俺としてもありがたい。その理由としては、扶桑国で物凄い腕を持つウィッチがブリタニアに帰還するというものだ。そしてそのブリタニアにには501部隊の前線基地がある。勿論ミーナもそこにいる事は分かっている。

 

キマリスなら、ここからひとっ飛びで行くことができる距離ではあるのだが……今はまだ早い。軍が何をしようとしているのか突き止めるまでは、俺はミーナの元に顔を出すわけにはいかない……

 

なに? 顔を出さなかったら良いと? いや、声でバレてしまう可能性がある。だからこそ、俺は行きたくてもいけない。ただ……陰ながらではあるがサポートぐらいならできる。まぁそれがどうやるかは想像に任せるがな?

 

そして、赤城が通るであろう周辺の海域を哨戒していると、キマリスのレーダーに敵が映った。この方角は……まさに赤城が航行しているルートだな。だがブリタニアの方からも時期に援軍は来る。だから今回は大丈夫そうだな……

 

(いや待て……この方角にもう1機ネウロイがいるな。しかもブリタニアの前線基地に近い……まさかここで部隊の分断を図ってきたか?)

 

赤城の方にいるネウロイの元に、501の本隊がやっと到着したところだった。そこから基地に戻るには、早くても10分はかかる……その間にネウロイが前線基地を破壊してしまうかもしれない。ならここは……

 

「俺が行ってネウロイを撃退する」

 

俺はブリタニアの方にいるネウロイの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

 

 

 

 

 

まさかネウロイが私達を分断する作戦を取るなんて思わなかったわ。私達が美緒の援軍に駆けつけたと同時に、前線基地の方にもネウロイが現れたまと報告が入ったの。

 

美緒の方は何とかなるとしても、基地の方はこれから急いでも10分はかかってしまう。

 

今取れる最善の策は、シャーリー中尉の固有魔法で基地に向かっているネウロイと単騎で戦闘をしてもらい、その後私達が全速力で戻るまで持ちこたえてもらう事かしら……

 

でもそうするとシャーリー中尉1人だけに負担がかかってしまいかねないわ……そうなると、ルッキーニ少尉にも着いて行ってもらって、2対1の戦闘に持ち込む……えぇ、これが1番良さそうね。

 

「シャーリー中尉、ルッキーニ少尉、あなた達には今から基地の方に現れたネウロイの元に行って下さい。そして私達が戻るまで基地にはできるだけ近づけさせないようにお願いできるかしら?」

 

「おう! それなら任しとけ‼︎ 行くぞルッキーニ!」

 

「お〜う! 私達2人に任せておけ〜‼︎」

 

そしてシャーリーがルッキーニを抱えて基地に戻ろうとした時……

 

「ま、待って下さい!」

 

「? どうかしたの、サーニャ中尉?」

 

「基地の方向に……超高速で向かう存在をキャッチしました……っ⁉︎ いえ! 今は音速の域にまで加速しています‼︎」

 

「ね、ネウロイか⁉︎」

 

「いえ! ネウロイではありません。これは……人? でも、今のストライカーユニットでは、ここまでの速度は出せません‼︎」

 

「と、とにかくシャーリー中尉とルッキーニ少尉は基地のネウロイの方へ向かってちょうだい! 私達も後で向かいます!」

 

「お、おう! 行くぞルッキーニ!」

 

そしてシャーリー中尉達は先に基地へと戻って行ったわ。

 

(それにしても……ストライカーユニットもなしに人が空を飛ぶなんて……しかも音速の域まで加速する……どういう事なの?)

 

ミーナはそれが気がかりでならない。だがミーナは知る由もない。今音速の域で基地のネウロイに向かっている者が……あの時いなくなってしまったと思い込んでいる恋人だという事に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ……音速にも慣れてきた。音速の世界……後ろを見れば、音速によって生じた空気の衝撃が下の海にまで影響を及ぼし、少し割れたような様相を描いている。だが……のんびり楽しむ余裕はない。

 

基地の方に現れたネウロイと接敵するまで後数秒……俺は右手に構えているデストロイヤー・ランスを前方に向けて、いつでもネウロイに突撃できる態勢をとる。

 

その態勢をとるのに1秒……その時には目の前にネウロイが目視で確認できた。距離的には後700m程あるが、この距離からでも射撃は当たる。

 

デストロイヤー・ランスに搭載されている140mmの機銃でネウロイを狙い撃つ。俺よ固有魔法で、大体い1kmほど離れていても攻撃力は変わらない。寧ろ今は距離が近づいているから、逆に威力は増して行くだろう。

 

そしてデストロイヤー・ランスから放たれた初撃がネウロイに命中し、表面の装甲を削り取る。そこを中心として、次々と撃った弾は命中していき、表面どころか奥まで貫き、最終的には貫通した。

 

そしてあちらも漸く射程に入ったのか、俺に向けてビームを放ってくる。元々ガンダムフレームにビームはそれほど通用しない。まぁ、俺が元いた世界では、ビーム兵器に対抗する手段はほぼ確立されていたからな……ガンダムフレーム以外の機体にも、ビームはそれほどききはしない。

 

だが……俺はこんな柔なビームに当たってやろうなどと考えていない。全て避けきる! でないと……いつまでたっても颯也の背中に追いつけそうにないからな……

 

前方から迫り来るビームを次々と交わし、デストロイヤー・ランスの先っぽがいよいよネウロイに触れた。

 

「ネウロイを貫け! キマリス‼︎」

 

俺はそう叫びながらランスでネウロイを貫通する。そしてネウロイの内部を一瞬通った時、右側に核が見えた。ネウロイを貫通した後、俺は急旋回してネウロイの核に突貫した。

 

だが、ネウロイもそれを黙って見過ごす事はない。再度俺に向かってビームを放つ……が、そんな攻撃はお見通しだ。突貫しつつも、各所にあるブースターで少し噴かしてビームを避け、狙いを調整するためにまたある所のブースターを噴かす。

 

そしてランスによる2撃目で、そのネウロイの核を壊した。その時、赤城がいるであろう方角から2人のウィッチが接近していたために、俺はその場を離脱した。

 

まだ俺は……俺だいう存在は知られてはならない。軍の動向を見極めるまでは……

 

 

 

 

 




「ふむ……この作品で俺が使う固有魔法……中々強く見えるな」

そうですね。まぁ今回はそこを踏まえて解説しようと思います。

「あぁ、頼んだぞ作者」




解説

螺旋の固有魔法

その名の通り、回転力に関する固有魔法ですね。これは対象の回転力を自由にコントロールできるというもので、例えばストレートを投げても、回転力を自由自在にコントロールできるため、回転数を上げたり下げたりできて、変化球が簡単に投げる事ができます。終いにはナックルも投げれたり、上に曲がる変化球も投げる事が可能です。

今回は、キマリスが所持している武器、デストロイヤー・ランスから放たれる銃弾にその能力が付与され、範囲ギリギリに離れていても威力はそこまで変わらない。逆に近づけば近づくほど威力を増す鬼畜設定となっています。


ガンダムキマリス トルーパーver

ガンダムキマリスを主に地上で戦えるように設定された装備で、脚部部分が変形する事でケンタウロスの様な形になり(これは例え)ホバーで移動する事ができます。また、キマリスは高速下での攻撃を得意としており、そこから放たれるランスの一撃は侮れません。

武装

・デストロイヤー・ランスは
・140mm機銃
・キマリスシールド
・キマリスサーベル
・機雷

となっています。

それでは、またお会いしましょう!


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2話 実質調査という名のストーカーに見られても仕方がない……

「……このタイトルはなんだ作者?」

それは見ればわかりますよ?

「……腑に落ちない箇所が山ほどあるが……見て見ればわかるな」

と言う事でどうぞご覧ください。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近……ブリタニアの前線基地に新しいウィッチが配属された様だ。確か名前は……宮藤芳佳だったか? ん? 宮藤?

 

(確か……ウィッチ達が使っているストライカーユニットを作った研究者の名前だったな。関係者か?)

 

まぁ、その詮索は今は良い。今はその宮藤芳佳なる女の子についてだ。

 

俺が今のところ調べた情報によれば……その子は医療魔術が使える家系で、魔法力も普通のウィッチよりもずば抜けて高い素質を持っている様だ。そしてその子にも医療魔術が使える。また最初から調べた時、普通なら20歳に近づくにつれて魔法力が衰えていくというのが、この世界に来て改めて分かった。だがその宮藤の家系は、大人になっても魔法力が衰えない極めて特殊なものだという事が調べた結果分かった事だ。

 

ともかく宮藤芳佳という女の子には、強大な魔法力と医療魔法を持っている事が分かった。だが……その力を持っているからといって、その女の子がネウロイとの戦闘に向いているかどうかは分からない。実際にこの情報は、自分で調べたわけではなく人伝いに聞いた話だ。

 

だから今……実際のその女の子がどんな子なのか見に来ている。

 

……お前はミーナに姿を見られるのはマズイのではないのか? だと? あぁ、確かにマズイ。この姿……そもそも仮面をつけている時点で怪しまれる。

 

だが、生の情報というのはリスクを覚悟しなければ手に入らないこともある。だから今俺は、直接501がある前線基地の敷地内にいる。

 

まぁ、宮藤芳佳を見るついでにミーナの様子も見れれば良いなと思っている。

 

は? 俺がストーカー……だと? そして見つかってお縄になれと? ふん……俺をそんな下賎な輩と一緒にされては困る。それにこれは情報収集の一環だ。だから断じて……それがストーカー行為だと? そうか。まぁどちらにせよ情報収集は大事だ。

 

さて、戯れはここまでにして早速宮藤芳佳がどれほどやるのか見せてもらおうか……

 

ん? まずは基礎訓練の様だな。その証拠に、もう1人の女の子と滑走路を使って走り込みをしている。あっ、倒れ込んだな。

 

ふむ……回数にして往復10回に満たないか。それに続いて腕立ても回数も少ない……これだけ見ると体力が少ない普通の少女に見えるな。

 

次に飛行訓練に入ったな。格納庫まではさすがに近づけないから遠くから見るしかないが……

 

実際は、ストライカーユニットを履いて起動する瞬間を見るのが魔法力が強大かどうか確かめるのに手っ取り早いのだが……格納庫に近づいてまでリスクを負う必要はない。今回も遠くから見守らせてもらおう。

 

そして結果を合わせてもらおう……飛び方はまぁ当然ながら素人だった。俺はユニットなど履いた事がないために、その飛び方で魔法力があるかどうかは分からないが……制御はまだできていないのだろう。

 

何故分かるか? 俺が軍属なのを忘れたか? 前線に出る際、ウィッチ達も一緒に編隊を組んでいたからな。だから、良し悪しぐらいは大体分かる。

 

(それにしても……飛行訓練の際、あの芳佳という子に見られた気がしたが……まぁ気のせいだろうな)

 

この気のせいが……後ほど面倒な事を引き起こすとは、ヴィダールことガエリオさんはまだ知りません。

 

 

 

 

 

 

side 宮藤

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふぅ……午前中の訓練でこんなに厳しいなんて……)

 

あっ! 初めまして‼︎ 私、宮藤芳佳って言います! ここに来た理由は、お父さんから手紙が届いて……私が学生になった時以来会ってなかったから、この手紙にある住所を訪ねるのが目的でした。

 

でもそこには建物の跡があるだけで、お父さんはいなかったの。だけどこのまま帰る訳にもいかないって……私思ったの。だから、坂本さんに頼んでこの501部隊に入れてもらって、今は基礎から訓練中です。

 

でも午前だけで身体中が痛いです……

 

午後からも座学が入って、それが終わったらまた訓練って流れです。座学の方は、ストライカーユニットや武器についてって聞きました。

 

正直ストライカーユニットについては、私のお父さんが作ったものでもあるから興味はあるけど……武器についてはまだ怖いかなってところで……そもそも戦争自体嫌いだから、できるだけ武器は取りたくないかな。でも、皆を守るためならネウロイとだって戦います!

 

その意思もあって、私は初日だけど訓練を頑張っています‼︎ ただ、午前中の授業で少し気になった事がありました。それは、飛行訓練中……基地の建物から誰かが私を見ていたと思うんです。

 

顔だけしか見えなかったけど……仮面を被っていたことは分かりました。でも、あんな人がいたら昨日入隊した時点で気がつくはずなんだけどなぁ……座学の時にミーナさんに聞いてみよっと。

 

そして座学の授業も終わって、ミーナさんと話す機会ができました。

 

「ミーナさん、少し聞きたい事があるんですけど良いですか?」

 

「何かしら? 宮藤さん」

 

「その……この基地に仮面を被った人はいますか?」

 

「えっ? 仮面を被った人? いえ、そんな人はいないわよ?」

 

「でも、飛行訓練の時に確かに見たんです! 建物の影で体全体は見えなかったんですけど、それでも見えたんです‼︎」

 

「……分かりました。少し周囲を探って見ましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮藤さんに座学の後にある事を聞いたわ。飛行訓練中に人影を見たと。身体全体の特徴は建物の陰で見えなかったようだけど、仮面をつけいるのは見えたようなの。だから、私の固有魔法を発動させてこの基地周辺を探ってみたの。そしたら……

 

(基地の外……確かに建物の陰に誰かいる? ネウロイ……ではないわね。でも、ここの基地の人でも無さそうね……だとしたら、他の国のスパイ? でも、他の地域でもネウロイの侵攻で、それどころではないはず……なら一体この人は……)

 

午後の訓練でもこの周辺にいるのなら、こちらからも動いてみましょうか。

 

そして宮藤さんの午後の訓練が終わった時、もう一度周囲を探ってみたわ。すると、さっき探知した時と同じ人が、今度は基地の敷地内に入っていたわ。

 

見張りの兵士はそれなりに優秀な人達で構成されてるはずだけど……それを掻い潜ってこの基地の敷地に入るなんて……

 

(只者ではない……という事よね)

 

私は誰にも怪しまれないように急いでそこに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日1日……宮藤芳佳について実際に見て調べるつもりだったが……そのついでに色々と他の子達も見た。いや……正確には見てしまったというところか?

 

特にあの背が小さくて活発なツインテールの少女とか、どれほど驚かされただろうか……一応俺としては上手く隠れているつもりなのだが、彼女の野生の勘……というやつはどうやら侮れないらしい。

 

俺が行く先行く先で何故か出くわしそうになる。まぁすんでのところで躱しているのだが……こちらも精神力を余分に使ってしまった。

 

まぁそれ以外は何も起こらなかったから、良かったといえば良かったか。

 

ん? やはりストーカーではないか? と? 何度も言うがこれは情報収集だ。断じてストーカーではない。まぁ……お前達がそう思いたいなら勝手に思うが良い。さて、今日やる事は終わった。気付かれないうちに早々に退散するとしy「待ちなさい!」……この声は……

 

(……あぁ、彼女の固有魔法をすっかり忘れていたよ)

 

「この基地の人ではないわね? それと、怪しい動きは控える事をすすめるわ」

 

ミーナはヴィダールに対して銃を向けてそう言った。しかしながら彼女はまだ気づいてはいませんが、銃を突きつけられているヴィダールさんはしまったと思いながら内心嬉しく思っていたようです。




「……俺のこの扱いは一体なんだ?」

そうですねぇ……まぁ書いていたらいつのまにかこうなっていましたが……

「あらぬ疑いをかけられた気分とはこんな気分なのか……だが作者よ……俺をこんな扱いにしてタダで済むと……む?」

『三十六計逃げるに如かず……と言う事この場は全力で逃げさせていただきます‼︎』

「……まぁ良い。今度会った時に今回の制裁は取っておくか。では読者の皆、気が向けばまた見に来て欲しい」


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3話 奇跡的な再会を果たしたようです

「ふむ……やっとミーナと会話ができる。3年ぶりだな……」

「それと、今作者は前話の制裁でここにはいない。だからこの物語の進行も俺1人で進めさせてもらおう。早速だが、物語を読み進めてほしい」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは一体何者なの? この基地に何の用かしら?」

 

俺の背後にいる女性がそう問うてくる。

 

確かに基地の敷地内にこんな格好をした者がいたなら誰だってそうするだろう。

 

「今武器を隠し持っているなら地面に捨てる事を勧めるわ。それと怪しい動きを少しでもしようものなら、タダでは済まないという事も頭に入れておく事ね」

 

「……生憎だが、“今の”私には武器を持っていない。それに私は、君が思うような他国のスパイでもない」

 

「それは私が判断する事よ……それよりも、武器を出さないというのなら、私があなたを調べるまでよ。もし武器が見つかった場合は、私と一緒に来てもらいます。良いですね?」

 

「あぁ、そこは好きにしてくれ」

 

彼女に俺の体に触れる事を許した。何故許したか? それは、聞いてきたお前達でさえも答える事は一緒だと思うが? その答えで納得がいかないというのなら……プライベートな答えになりそうだから言わない。また気が向けば語ってやらんでもない。

 

そしてヴィダールさんに対する軽めの持ち物検査が始まりました。その結果……

 

「う、うそ……何も持っていないなんて……それに身分を証明するものも無いなんて……」

 

「だから言っただろう? 武器の類は持っていないと。それに、他国からのスパイですらないから、盗聴器や連絡手段も持ち合わせてはいないし、メモの類も持ってはいない」

 

「……いえ、まだ調べてない箇所があったわ。あなたの仮面……取ってもらえるかしら?」

 

「仮面……か……だが、こんなちっぽけな空間に何が入ると思う?」

 

「それは限られてくるのではないかしら? 確かにあなたのポケットや服の中には通信機の類は無かったわ。でも耳に取り付ける事ができる小型の通信機ぐらいなら付けれるでしょう?」

 

「ふむ……確かにそれは正論だな。だが良いのか?」

 

「な、何がかしら?」

 

「私の素顔を見るのなら、それなりの覚悟が必要だという事だ。特に君は……な」

 

「な、何を言っているの⁉︎」

 

「そのままの意味だ。それに私は、とある理由から軍の上層部とそれに属する者には顔を晒すわけにはいかない。そこでもう1回君に問いたい……いや、正確に言うなら……もう1回問うついでに条件を言いたい。君は軍の上層部に属する者か? もしそうではなく、私の仮面に隠れている素顔を見る覚悟があるというのなら、私は君に顔を見せよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮藤さんの言った通り、仮面の人は基地の敷地内にいたわ。それに、やけにあっさりと接触もできた。声からして男の人の声だってわかったけれど、なんというか……どこか抜けている感じがするわね。

 

(確かあの人もそんな感じだったわよね……)

 

あの人は普段からやる事はちゃんとやって、そしてとても優しかった。自分の事より他の人の事を優先して……でも時々買い物とかを頼んだ時に違う物を買ってきたりして……その度に笑ったっけ……

 

(だけど……もうあの人はいない。あの人の笑った顔も見る事も……そしてあの人の楽器の音色を聴く事ももうできない……)

 

こんな時に、なんであの人の事を思い出してしまうのかしら……なんとなく? なのかしら?

 

(いえ、今はこの仮面の人が何者なのかを探るべきよ……)

 

そして彼の承諾を得て、何か怪しい物を持っていないかどうか確かめたわ。でも……何も見つからなかった。コートやズボンのポケットには何1つ怪しい物は無かった。ただ出てきたものといえば、ハンカチただ1つ……

 

(あ、あり得ないわ⁉︎ 宮藤さんの話が本当なら、午前からこの基地の周辺にいたという事になるわ。でも彼からはハンカチしか出てこなかった……携帯食料もその食べた跡も出てこないなんて……いえ、まだ調べてないところがあったわね)

 

私は仮面を外すように言ったわ。彼を見た時1番怪しいのは、彼が被っている仮面の中……多分誰でもそう思うでしょうね? だから私は仮面を外してもらうように言った。

 

でもその返答はおかしなものだった。私に、この仮面の下にある素顔を見る覚悟があるか……って。

 

正直その返答が来た時は、どう答えていいか分からなかった。だって初対面の私に、仮面の下の顔を見る覚悟があるかどうかを言ってきたのよ? 正直直ぐに肯定的な返事なんてできなかったわ。

 

その返答に困っていた時に、彼は補足してきた。自分は軍の……それも上層部やそれに連なる人達に素顔を見られるわけにはいかないって……昔に軍に所属していた事もあったのかしら?

 

その詮索は後にするとして、彼が言った事を簡単にまとめると、軍上層部に密接に関わってない且つ私に仮面の下を覗ける覚悟があるなら仮面を外して素顔を私に晒すというもの……

 

答えるのに少しの間でもあったら怪しまれると感じた私は、その問いに直ぐに答えた。

 

「確かに私は役職柄、軍の上層部と連絡を取る時はあるわ。でも、密接な関係があるほど上層部と仲が良いと感じた事はないわ。それと、私にはあなたの素顔を見る覚悟があるわ」

 

「……分かった。なら少し場所を変えよう。今日は満月で辺りも少し明るいのでな……あの岩陰なら、君以外に見られる心配もないだろう」

 

そして彼は岩陰の方へと歩き出した。正直これが罠かもしれないという考えもあったわ。でも彼からは……敵意を感じなかった。仮面越しだからという理由もあるのでしょうけど、何故か私の中で……彼はそんな卑怯な真似をしないと思った。

 

(でも念のためにいつでも対応できるようにしないとね……)

 

岩陰に私も入ったのを確認して、彼は1度私に背を向けて仮面に手をかける。この岩陰でも、今日は満月だからここでも少しの光量はある。

 

彼が仮面に手をかけた時、私は少し緊張感を覚えていた。目の前の彼が誰かも分からないのに、何故かその感覚に少し囚われていたわ。例えるなら、子供が誕生日やクリスマスの時に、もらったプレゼント箱の中身はなんなのかを楽しみにしながら開ける感覚かしら。

 

仮面が少しずつ上がり始める。上がり始めたと同時に、彼の髪が少しずつ見えてくる。その髪の色は……今は暗くて正しい色合いが判別できないけれど、青い色……

 

(ま、待って……こ、この髪の色は……)

 

ミーナが驚きの思考に少し陥っている中、それを知らない仮面の男は仮面を徐々に頭から外していく。そしてようやく仮面が男の顔から離れた。

 

(その……髪の色……そしてその髪型……いえ、でもあの人はもうこの世には……)

 

「ふぅ……こんな天気のいい日に1日中この仮面を被っているというのも、息が詰まるというものだ」

 

「そ、その声は……あなた……まさか……」

 

「本当なら……君と会うのはもう少し後のはずだったんだが……バレたなら仕方がない」

 

その懐かしい声と響き……特徴がかった青みを帯びた紫色の髪と髪型……そして……

 

(昔から顔にあるその大きな傷……)

 

「間違い……ない……」

 

そう、その人物こそは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、ミーナ。ガエリオ・ボードウィン少尉、君の元に帰って来たよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3年前の作戦で命を落としていたと思われたガエリオその人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は岩陰でミーナに自分の正体を明かした。バレたものを下手に隠そうとすると……追求はその分強くややこしくなって、しまいには不利益を生じさせる。

 

だから俺は……まだミーナに顔を出すべきではなかったんだろうが、顔を見せた。

 

ミーナに仮面を外した俺の顔を見せた時……彼女は目を見開いて口を両手で隠していた。その時は体も震えていた。

 

ミーナには……長い間寂しい思いをさせてしまった。あの時におじさんだけでなく、俺まで失ったと思ってしまったのなら無理はない。

 

それでもミーナは、生きてくれた。酷い思いをしてでも生きてくれた。俺は……それを嬉しく思う。だからお礼を言わないとな……

 

「ミーナ……君にずっと寂しい思いをさせてしまった。謝って許されるものじゃない事は分かっている。だが俺は君に謝りたい。そして……君にお礼も言いたい。この瞬間まで生きてくれてありがとうって……」

 

ミーナはそれを聞いて、さらに目を大きく見開いて潤ませていた。そして俯いてしまった。

 

(さすがに急すぎてしまったか……)

 

俺がそう思っていた時だ。

 

「……い」

 

ミーナが俺の方にゆっくりと近づいて来た。そして俺の一歩手前で止まると……

 

「許すわけないじゃない! この馬鹿っ‼︎」

 

俺は頰をミーナに強く引っ叩かれた。その時の彼女の顔は……目に大粒の涙を作りながら怒った顔をしていた。だが、どこか安心したような……そんな表情も垣間見得た。

 

俺を引っ叩いた彼女は、その後俺に抱き付いてきた。そして顔を俺の胸のあたりに押し付けてくる。まるで……迷子になった子供が親を見つけて合流した時、もう親から絶対に離れないというように……

 

「私が……私がこの3年間……どんな思いで過ごしたと思っているの⁉︎ 貴方と貴方のおじさんを、あの作戦で同時に失くしてしまったって思って……それから、こんな思いをするんだったらあんな関係にならなければ良かったって……私……」

 

「……すまなかった。君に……そんな思いを抱かせてしまって……」

 

「うぅっ……私……寂しかった……ずっとずっと……貴方が隣にいなくて……貴方の笑顔を見ることができなくて……貴方の体温も感じることができなくて……」

 

「あぁ……俺も、君に会えなくて寂しかった。でも俺にも……やるべき事があったから……だからこうして世間から俺という存在を隠すしかなかったんだ。でも……結局は君を傷付ける形になってしまった。本当に……すまなかった」

 

「もぅ……もう良いの……貴方が、貴方だけでも無事でいてくれたならそれで良いの。だからもう……私から離れないで……ずっと一緒にいてほしい」

 

「分かった。もう俺は……君から離れたりはしない。約束だ」

 

「えぇ、約束よ。もしこの約束を破ったら……針千本飲んでもらうんだから……」

 

「……あ、あぁ。分かった、約束する……」

 

「うん……‼︎」

 

ガエリオさんの胸から離れた彼女の顔は、涙は浮かべていても素敵な笑顔を見せていたといいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「今回の終わり方は……前回とは比べ物にはならないほど良かったのではないか?」

まぁ……いちおう纏まっていたかなと思います。

「あぁ、次回もそうしてほしいものだ」

が、頑張ります……


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4話 R-15 ガエリオさんが第501統合戦闘航空団に配属されるようです

「作者……サブタイトルが普通なのは良いんだが……」

ハイなんでしょうか?

「何故あの指定が付いている?」

それはですね……読んでからのお楽しみです。という事でご覧下さい‼︎

「そのまま流さないで欲しいんだが……」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーナに会った翌日……俺は前々から計画していた事を実行に移した。

 

それは……軍上層部の研究施設に侵入し、何を企んでいるのかを探る事……

 

そして今俺はその研究施設に忍び込み、誰にも見られる事なく深部へと進んでいた。勿論カメラの類にも写ってはいない。本来ならば、もう少し計画を練ってから実行に移したいところではあったが……

 

(昨日ミーナに約束したからな……それに今の計画でも、軍の上層部は俺の存在には気付かない……)

 

度々補給艦を助けたとこの前言ったとは思うが、その時にはパワードスーツを着て顔を見られないようにしている。そして機体も、俺がキマリスに乗る前に使用していたグレイズだ。

 

グレイズといってもただのグレイズではない。指揮官用だから、普通のよりも性能は高い。だから普通にネウロイと戦うこともできる。グレイズで事足りるのだ。

 

なに? 何故キマリス以外にも使えるのかだと? あぁそうか。確か言い忘れていたな。俺は確かに最初……俺が死んだとされている戦場ではキマリスをこの世界で初めて使った。

 

だが最初、キマリスを使った後は体力の消耗が激しかった。そこでキマリスに、他の機体を使う事が出来るかと聞いた。そしたら、俺が乗ったことのある機体なら纏うことができると聞いた。それに付け加えて、俺の記憶にある兵器も呼び出すことは可能だ。しかもこれは、生成するのに疲れないというメリットが生じる。

 

そんなわけで俺は、最初の頃は指揮官機のグレイズを使用してパワードスーツの感覚に慣れるよう訓練した。そして身体が対応してきた頃にキマリスを使えるようになった。まぁ、相変わらずそれでも身体に負担はかかったがな……

 

その生活も3年経てばもう慣れる。今では疲れもしない。いささか半分人をやめているのではとすら思う。だがこうしなければ、あいつの足元に到底届かない。

 

(それに、守る者のためならば……俺は人の限界を超えてでも強くなる)

 

そうこうしているうちに、どうやら目的地に着いた様だな。研究員達が忙しなく働いている様だが、誰一人として俺には気づいていないか。それはそれで好都合だ。手っ取り早く済ますとしよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果はというと、軍上層部がネウロイの核を使った兵器を作っているということが分かった。まだ試験段階ではある様だが、実戦に投入されてしまえば相手がネウロイといえど戦力バランスは簡単に覆るだろう。

 

だが、果たして人間が未知の存在を御しえるのだろうか? 俺には到底そうは思えない。何せ俺は……その前例を知っているからだ。

 

(ほとんど記録扱いだが、俺が生きていた世界でモビルアーマーと人類が戦っていた。だがモビルアーマーも人類が生み出した兵器の1つ……それなのにその2つの間で争いが生じるという事は、人がモビルアーマーを御しえなかったのに他ならない)

 

人が作り出した兵器ですら御しえないのに、未知の存在に手を出すのは阿呆のする事だ。しかも、俺のいた世界より技術力が劣ると見えるのに……

 

(まぁどこの世界に行っても、研究には犠牲がつきものだと考える思想を持った連中がいるという事だな……)

 

さて、もうここには用はない。調べる事も大抵すんだ。後は昨日約束した通り、ミーナに合流しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日皆さんに集まってもらったのは、この部隊に新しく入ってくる仲間を紹介するためよ」

 

作戦室にミーナの声が響く。この場に集まっているのは、勿論501統合戦闘航空団の面々だ。ある者はキリッとした表情で、ある者は笑みを浮かべ、ある者は緊張した面持ちで、ある者に限っては枕を抱いて寝ている者もいた。

 

この場面だけを見れば、全く統率が取れていない様に見えてしまうだろう。だがあえて言おう……これがいつもの光景であると。

 

「ミーナ、それで今日入ってくる新人はどんな奴なんだ?」

 

「えっ⁉︎ 坂本さんも知らないんですか?」

 

「あぁ、さっきミーナから聞いたばかりでな。詳しい事は私にも分からないんだ」

 

坂本の発言で少し場がざわつく。

 

「はい皆静かに。それじゃあ早速呼ぶわね。入ってきてちょうだい」

 

ミーナがそう合図すると、ドアを開く音が聞こえ、そこからとある人物が入ってきた。それを見た面々は、一応に固まっていた。

 

「紹介するわ。今日から私達の部隊に入るヴィダール少尉よ」

 

「こんななりで失礼する。さっきミーナ中佐から紹介されたヴィダールだ。階級は少尉だが、そんなものは気にせずに呼んでもらいたい。なにぶん慣れない環境にある事は確かだから、迷惑はかけてしまうがそれを込みでよろしく頼む」

 

501の面々から見たら正に異様な光景だ。何せ、仮面を被った者が律儀に頭を下げてそう言っているのだから。ある意味シュールな光景だ。

 

「お、男……なのか?」

 

「あぁ、私は男だ。この部隊は女の子だけの編成だと聞いている。だから、私がこの場にいる事は場違いだと自分でも思っている。そして、この部隊の掟もな」

 

「それでなんだけど……今回を機に男女の仲を解禁しようと思うの。今までは、必要最低限の事でしか関われなかったと思うけど、これからは自由に接して構わないわ。でも、羽目だけは外しすぎない様にお願いするわね」

 

ミーナが飛び切りの笑顔でそう言った。それは稀に見れない笑顔だったと言います。

 

「ま、まぁヴィダール少尉がこの部隊に配属されるというのは理解したが……しかし軍の上層部もよく許したな……」

 

「あら美緒、ヴィダール少尉がこの部隊に配属された理由……気になるかしら?」

 

「あぁ、物凄く気になる。それも、ミーナに自分で作った掟を変えさせる事もな?」

 

「そうね……まず最初の質問から答えようかしら。簡単に言うなら、軍の上層部は彼に途轍もないほど大きな借りがあるのよ」

 

「「「えっ⁉︎」」」

 

それを聞いた501の面々は皆一応に驚いていた。若干マイペースな子もいたが……

 

「ふふっ……上層部のあの顔を見たときは、久々に私もスカッとしたくらいだもの。今思い出しても笑いが出るくらいよ」

 

「み、ミーナがそこまで言ってしまうものって……」

 

501のほとんどの子がとても気になっている様子……なので数時間前までに遡ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間前〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が彼の報告書になります」

 

「ふ〜む……ミーナ中佐、君は本気でこの者を501に迎え入れると言うのか?」

 

「はい。私は本気で彼を私達の部隊に引き入れたいです」

 

「だ、だがこれだけではどうにも判断が……」

 

「そう言うと思い、今回彼をこの場に呼んでいます。入ってきてちょうだい」

 

ミーナがそう言うと扉が開かれた。そこからフルフェイスの仮面を被り、その者が着ていた服装も軍部さらにはこの世界では見られないものだった。これには上層部も呆気にとられる。

 

「お初にお目にかかる。先程紹介されたと思いますが、私がヴィダールと申す者です。この度は、書類だけではあなた方が困ると思い、直々に参上した次第です」

 

「う、うむ……それはご足労を……」

 

ヴィダールの言にたじろいだ様子の上層部……

 

「して、私は501の部隊に配属されるのは可能でしょうか?」

 

「そ、それはだな……」

 

「そうですか……では私も少し強硬な手段を取りましょう」

 

「きょ、強硬な手段……だと?」

 

「えぇ。私は、その日にやった重要な事をメモする性質でしてね……それも一言一句、私がやった事と相手から引き出した情報は小まめに書き連ねているのですよ。それがこちらに……」

 

ヴィダールが取り出した物……それは数百ページからなる分厚い容姿の束だった。それをヴィダールは上層部に渡した。それを見た上層部の表情は……

 

「な……なんだこれは⁉︎ そ、それにこの情報をどこで⁉︎」

 

「ご存知ありませんか? 度々……ネウロイに襲われた補給艦や部隊を助けた存在の事を……」

 

「た、確かにその報告は受けてはいたが……ま、まさか⁉︎」

 

「御察しの通り……私があなた方の補給艦を救援した者です。それと1つ言っておきますが……あなた方の手元にあるその記録用紙は、いらないものだから渡したに過ぎません。何せ……データのバックアップは私の手の元にありますから」

 

「くっ……」

 

「それで……どうでしょう? 私を501の部隊に配属は可能でしょうか?」

 

「……良いだろう」

 

「元帥⁉︎」

 

「彼がいなければ、我々に補給は届かぬどころか、兵達の命も犠牲になっていただろう。それを考えるなら、彼を501に入れても問題はない。逆にこちらの方にお釣りが帰ってくるほどだ。彼を501への入隊を許可する。階級は、この資料から見るに既に大尉クラスを与えても遜色ないとは思うが……」

 

「いえ……私はその階級に相応しくないと思っています。少尉でお願いしたいのですが……」

 

「? 何故だ? 入隊早々大尉の階級の何が不満なのだ。いや、なぜ逆にそれより下の少尉の階級を欲する?」

 

「私の……過去と関係している事です。これはプライベートな話になるのでこれ以上は申しませんが……どうか少尉の階級を頂きたく」

 

「……分かった。ではそのようにこちらも手配しよう」

 

「ありがとうございます」

 

これでヴィダール……ガエリオが私達の部隊に入る事が決まったわ。

 

(ふふっ♪ これでガエリオと昔のように過ごせると良いのだけど)

 

正直ミーナさんがガエリオを501に入れるのはこんな理由からだと言います。

 

そしてヴィダールとミーナが会議室から出た。そのままなんの会話もなく、輸送機の方に向かう。そして2人とも輸送機の中に入り、搭乗口の扉が閉まって輸送機が飛び立った。その頃を見計らってか……

 

「この日が……貴方とまた一緒に過ごせる日が来るなんて……思ってもみなかった」

 

潤ませた瞳をガエリオに向けながら、ミーナは切なそうに言う。それに対しガエリオはミーナの手を握り、ミーナを安心させようとする。

 

「俺は……また君と、ミーナと暮らせるようにこの3年間戦ってきた。そして今、それが叶ったんだ。まだネウロイはいるし、例えネウロイがこの地球上からいなくなったとしても……大きくなり過ぎた軍が何をするか分からない。だが今は……俺も君とまた一緒に暮らせる事を嬉しく思う」

 

「えぇ……えぇ……今は私も、それが嬉しい」

 

2人は抱き合う。昨日の真夜中再会した時と同じように……

 

「ところでなんだけど、あの記録用紙を元帥達に渡しても良かったの? 元帥はともかく、もう1人のマロニー対象という人は、あの用紙を無かったものとしてするような気がするんだけど……」

 

「あぁそんな事か……それならここに」

 

ガエリオは懐から1枚のSDカードを取り出してミーナに見せる。しかしながら……

 

「そ、それは何かしら?」

 

ミーナの頭にはハテナが浮かぶ。それは当然の事だ……なにせこの時代にSDカードなるものは存在しないのだから……

 

「これはだな……この時代から随分後に開発された記録媒体の1つでな……専用の機器がないと見れないものだ。そしてこれはSDカードという」

 

「SDカード?」

 

「そうだ。そしてこれは、パソコン……パーソナルコンピューターがないと見れないし記録もできない。まぁ軍部がそれをもし持っていたなら見る事は出来るかもしれんが、まぁこれがなくてもさらにこれがある」

 

次にガエリオが取り出したものはスマートフォンだった。

 

「え、えぇっとぉ……それも何かしら?」

 

「これはスマートフォンといってな……SDカードが作られた後に作られた代物だ。そしてこれにはSDカード同様記録容量に限りはあるが、SDカードの様にパーソナルコンピューターが無くとも記録する事ができる。現にさっきの会話も……この様に」

 

ガエリオはスマホのマイク録音機能を使ってさっきの会話も流した。そこからは、先ほどの会話が寸分違わず入っていた。

 

「こ、これは……凄いわね⁉︎ でも、どうして貴方がそんな便利な物を?」

 

「……そうだな。俺ももうそろそろ、その辺りの話をしようと思っていたところだ。だから、驚かないで聞いて欲しい……と言っても無理があるかもしれないが……」

 

「良いわ。貴方の本当の事、話してもらえる? 私は……貴方の事を信じる。ただそれだけよ。だから話して」

 

「……わかった。聞いて欲しい。俺の全てを」

 

そしてガエリオは語ってくれたわ。自分が、本当は自分達とは違う世界で生まれて、そこで暮らして大人になって、今の様に軍属となっていた事。ただ私の世界と違うのは、ガエリオは元の世界で所謂、お金持ちの家系に生まれて、その親の威光もあって上の立場に昇りつめる事が出来た事。そこからは、いろんな人達と巡り合ったり、そして昔からの幼馴染と一緒に頑張っていたそうよ。

 

でも……ある時悲劇が起きたの。昔から好きだった幼馴染が亡くなられて、そして自分の大切な部下も禁忌を使わなければ生きる事も出来なくて……それでも結局はその人も最後には死んでしまった。

 

(そして最後には……幼馴染だった1人に裏切られて殺された……)

 

全部その幼馴染が仕組んだ事だったって聞いた。今でも心の奥底では許せないって言ってたわ。でも、ある人と会ってからそれも薄れて、そしてその人と一緒に歩もうと決めたらしいの。そこには、死んだはずの部下の人もいるらしくて、昔の日々の様にはいかなくても、満足だって言ってたわ。

 

そんな時に、私に見せてくれた物をその人が見せてくれたって。でもそれだけじゃ、なんでガエリオがそれ出せたのかの説明にならないわ。それも、今の時代よりも進んだ記録媒体を……

 

それについても教えてくれたわ。ガエリオがこの世界に来た時、とある3つの力を手に入れたそうなの。1つが、自分の記憶にあるものを生成する能力……それが私に見せてくれた力。後の2つは……戦う時に見せると言ってくれたわ。

 

「これが俺の全てだ。信じては……もらえないかもしれないが……」

 

全てを語った時、彼は悲しそうな顔をしていると思った。仮面を被っているけれど、そう感じた。自分でもどこか絵空事の様に思っているのかもしれない。相手に信じてもらえないかもしれないって思っているのかもしれない。でも私は……

 

「私は……貴方の事を信じるわ。貴方が本当は別の世界で生きていたのだとしても……私達は巡り会えた。だから私は、貴方を信じる」

 

「ミーナ……」

 

「だから、そんな顔しないで? 貴方には、笑顔が1番だもの」

 

「……俺は仮面を被っているというのに、君には今の俺の顔が見えるのか?」

 

「ずっと……ずっと一緒にいたんだもの。少し離れたからって、貴方が仮面を被って素顔を隠したって……今貴方がしている顔ぐらい分かるわよ」

 

「……ミーナには全てお見通しの様だな。ははっ……俺もまだまだか」

 

「ううん……貴方も、頑張って来たんだから。だからこの場で少し甘えたって良いの。いいえ、甘えるべきなんだから」

 

私はガエリオの事を抱き締めた。彼はそうされて一瞬躊躇っていたけれど……少しして私の事を抱き締め返してくれた。

 

(あぁ……昨日こうして抱き締め合ったばかりなのに、いつまでもこうしていたいと思うわ)

 

「ガッキー……」

 

「ん? どうしたミーナ?」

 

「ううん、なんでもないわ。ただ呼んでみただけ♡」

 

「そうか」

 

航空機の中では、そんな若干の甘々展開があった様です。そして時は501の面々にガエリオさんことヴィダールさんを紹介している時に戻ります。

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな事があったのか……」

 

「えぇそうなの。あんな顔はなかなか見れないわ。坂本少佐にも見せてあげたかったわね。まぁそれはともかくとして、これからはヴィダール少尉も501に配属されます。それもあって、私が作った異性と必要限定的にしか接する事ができない……その掟を撤回することにしたわ。まぁさっきも言った様に、男の人と話せるからと言って羽目を外しすぎない様にしてね? それじゃあ今日は解散して、各自自由行動でお願いします」

 

「その前に1ついいだろうか?」

 

「なにかしらバルクホルン大尉?」

 

「多分他の奴も思っているだろうが……ヴィダール少尉のその名前は偽名……なのか? それと……」

 

「この仮面の事か?」

 

「そ、そうだ。服装も、私達が今まで見た事もない……そこも気にはなるが、やはり私としては同じ部隊に所属しているのだから、仮面を外して欲しいという思いがある」

 

「……ヴィダール少尉、どうしますか?」

 

「……分かった。バルクホルン大尉の質問に答えよう。まず私の名前の方だが……確かに今名乗っているヴィダールという名は偽名だ。今この場で本名を晒すわけにはいかない。名を隠すほどの理由を、今は持っている。そしてこの仮面についてだが……素顔を晒すことはできない。不信感を煽ってしまうことは……申し訳なく思う。だが、この仮面の下にあるこの顔も……今は晒す事ができない。それ以前に、私の顔には昔からの大きな古傷があってね……まだ初対面の君達には中々見せる事ができそうにない。こんな答えで申し訳ないが……どうかこの場では了承して欲しい」

 

「……分かった。この場ではこれ以上聞くことはしない」

 

「すまないが、それでよろしく頼む」

 

「はい。まぁバルクホルン大尉からの質問はそれで終わりとして、他に聞きたい事がある人は、各自で聞きに行く様に。じゃあヴィダール少尉、ここの施設は私が案内します。付いてきてくれるかしら?」

 

「あぁ、お願いする」

 

そしてその場はミーナのその言葉で解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからこの施設をミーナに案内してもらった。食堂、ストライカーユニットの整備施設、浴場にサウナなどだ。そして最後に俺にあてがわれる部屋に案内されたのだが……

 

「ここがガエリオの部屋よ」

 

ミーナに促されて部屋の中に入った。入る前に若干の違和感は感じたが……まぁ気のせいだろう。だがその違和感は正しかった。

 

何故なら中に入ると、俺の私物では無いものが置かれていたからだ。というより、俺は今日入隊したばかり……必要な物は揃っているからと昨日ミーナに言われて何も持ってこなかったのだが……いや、流石に着替えの部類は持ってきたが……

 

(何故こんなにも生活臭がしている? これは聞いた方が良いな)

 

「なぁミーナ……案内されて悪いんだが、この部屋はd〈カチャッ……〉……さっきの音はなんだ?」

 

そう聞きつつ振り向くと、ミーナが顔を俯かせてドアを閉めていた……とするとさっきの音は……

 

「もぅ……良いわよね?」

 

未だに顔を俯かせてそう聞いてくる。そして徐々に俺の方に近付いてきた。何が良いのか分からないが、何故かそのミーナの今の様子に威圧感があり、後退りしてしまう。それでもミーナの歩みは止まらない。

 

そして俺は何かに躓いて後ろに倒れた。倒れた時の感触は柔らかかった。ついた手で何かを探りながら、後ろに視線を向けた。どうやら俺が倒れ込んだのはベットだったようだ。だから柔らかい感触がしたのかと、そう思っていたら今度は前から何かが倒れ込んできた。視線を前に戻す。すると……

 

「私……この3年間寂しかった。貴方にもう会えないと思って……」

 

「ミーナ……」

 

「でも、また会う事ができた……そしたら今度は、何だか耐えられなくなってきたの。身体中が熱いの……だから……」

 

ミーナは俺が被っている仮面を外した。そこには、両者の視線を遮るものは無い。少し動揺した俺の視線と、ミーナの儚げな視線がぶつかる。それで俺は……ミーナがこの3年間ずっと苦しかったんだと……そう思い知らされた気がした。

 

こんな事なら……手紙でも送ってやれば良かったと、そう思った。そうしたなら、ミーナの苦しみも悲しみも少しは緩和できたんじゃないかと……

 

だが今そんなたらればを述べた所で変わらない。重要なのは今だ。だから俺は……

 

「ミーナ……俺は今からもこれからも、もう何も言わずに離れたりなんてしない。そして今の俺は……いや、これからの俺もだが……君の事を全力で愛する事を誓う。もう我慢なんて無しだ。全力で受け止めてやる! だから……今まで溜め込んできた物を吐き出して欲しい」

 

「っ⁉︎ ガエリオ‼︎♡」

 

ミーナは俺の首に両腕を回して抱き締めた。そして俺の唇とミーナの唇が繋がり……ミーナは今まで溜め込んできた物を吐き出すかのように、俺はそれを全力で受け止めるようにキスをした。その後……

 

「うふふ♡ いっぱいキスしちゃった♡」

 

「お、俺もこれまで生きてきた中であんなにキスをされたのは初めてだ……」

 

「あら? でも貴方だって後からとても積極的だったわよ? とても嬉しかったけどね♡」

 

「っ⁉︎/// そ、その顔は反則だ……」

 

「うふふ♪ 偶に可愛くなるところがあるんだから」

 

「う、うるさい……」

 

「ねぇガエリオ……私達……この戦いが終わった後も、ずっとこうして一緒に生活していけるかしら……」

 

「また離れてしまう事は……あるかもしれない。それでも俺は……もう君の前から突然いなくなったりなんてしない。さっきも言ったが……俺はそれを誓う。もう俺もミーナと離れるのは……いや……だからな」

 

「うん……うん! 私ももう、貴方を見失わない! ずっと……ずっと一緒よ♡」

 

その後少し疲れたのか、ミーナとガエリオさんはお互いに抱き合って眠ったようです。




色々と設定的におかしいところはありますが……そこも感想などで受け付けますし、すぐ直せるところは直しますので……では今回はここで「おい待て」っ⁉︎

「作者よ……今回もだが、よくもまぁこんな事を思い付くものだ。それはさておき……今回はこの前のようには逃さん。さぁ、色々話してもらおう」

えっ? ちょ何を⁉︎ ぎゃー⁉︎ キマリスを出さないでぇ⁉︎ いやぁー⁉︎




作者の運命やいかに……次回へ続く


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5話 R-15 バルクホルンは見た!

1ヶ月ぶりです……作者です。

あれから忙しかった……と言う訳ではありませんが、何故が活力が湧かずちまちま書いていました。本当に申し訳ないです。

「だか少しずつ進めていたのだろう? ならばそれで投稿できたら十分だ」

が、ガエリオさんが私に優しい……だと?

「作者の暴走行為を(暴力という名で)諌める事はあるが、私は鬼ではない。偶には優しい言葉もかける」

あぁ、ありがとうございます。これからも頑張ります……

「その意気だ。読者には遅くなって申し訳ないが、今回の話を読み進めて欲しい」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は既に夕方の5時を回っていた。俺はあの後ミーナと一緒に眠ってしまっていて、気付けばこの時間になっていた。

 

俺は別に長く寝ていたとしても、身体が鈍る訳ではない。何しろ今日入ったばかりだからな……咎められる事は……ないと思いたい。

 

だがミーナは違う。ミーナは俺と違って中佐でありこの部隊の隊長だ。戦闘以外にも書類仕事は多いだろう。今日も本当は、俺を案内した後書類仕事をしていたに違いない。

 

そう考えたなら……俺にも責任がある。俺に書類仕事の類ができるか分からんが……今度手伝わせてもらおう。にしても……

 

「これでは身動きが取れんな……」

 

今の状況を簡単に説明するとしよう。ミーナが俺を抱き枕のごとく抱きしめながら眠っている。それに付け加えて下着姿で……だ。

 

俺からすれば……いつの間にその姿になったのか疑問に残るが……

 

「んん……ガエリオ……」

 

寝言で俺の名を呼ぶミーナの顔は笑っていた。俺が傍にいるだけで彼女が笑顔になるのなら……俺は喜んでいくらでも傍にいよう。

 

だが今はやらねばいけない事がある。ミーナの寝顔をまだ見ていたい気持ちはあるが、今回は我慢しよう。そう思ってミーナからそっと離れようとしたのだが……ミーナな抱き着きが異様に強く簡単に抜け出せなかった。

 

仕方がなく少し……ほんの少し強引に抜け出したが……

 

「うぅ……ガエリオ……」

 

今度は目の端に涙を浮かばせ、悲しそうな顔になっていた。ミーナの顔は……正直どんな顔をしていても綺麗だ。だがはやり……

 

「君には……笑顔が1番だ」

 

親指の腹でミーナの涙を優しく拭い、ミーナの部屋から静かに退室した。

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく歩いた時、

 

「あっ……あなたは確か」

 

「ん? 君は……リネット軍曹、で良かったかな?」

 

「は、はい! あの、なんで私の名前を?」

 

「ここに来る前に、501にいる者達の名前と特徴を全て覚えたに過ぎない。ただそれだけの事さ」

 

「そ、そうなんですか⁉︎」

 

「あぁ。それと大まかな出身地も一応な。確か君はブリタニアの出身なのだったな」

 

「は……はい。そうですね」

 

リネット軍曹のその時の顔は少し複雑そうに見えた。そうなってしまう大体の見通しはつく。今まで人類はネウロイに自分達の国や住んでいた町を奪われた。この部隊にはその者が多い。

 

そして彼女はここの出身……いつ自分の故郷がそうなってしまうか分からない。だからこそ、果たして自分はこの故郷を守り通す事ができるのか……故郷の話が出る度にその考えが頭をよぎるのだろうな。今回は私の落ち度だが……

 

(これに関しては本人が乗り越えなければならない事だ。俺がどうこう言っても何も解決しないだろう……だが……)

 

「君は訓練の時の様な力を本番では半分も引き出せてはいない……違うかな?」

 

「えっ⁉︎ な、なんでそれを……」

 

「そうだな……ここでは私の勘とだけ言っておこう。それと戦場で訓練の半分の力を出せない件だが……それは誰しも最初はそうだ。私もそうだった」

 

「ヴィダール少尉も……ですか?」

 

「あぁ。最初は……頭の中でのイメージトレーニングや訓練では上手くいく。だが、いざ実践に出てみると私も思う様な成果は得られなかったんだ。だがそんな中でも今の様な力をつける事が出来たのは……身近にいた大切な存在や、ライバルの様な友の存在だ。だからこそ今の私がいる」

 

「大切な存在や……友の存在?」

 

「そうだ。大切な者な存在がいるから、私はその者を守るために命を張って戦う事ができる。ライバルの様な友がいるからこそ……己を高める事ができる。そうしていくうちに自分なりの答えを見出せた。だから……今の私がいるんだ」

 

「その……答えって……」

 

「それ自身、自分で見つけるしかない。確かに今は目の前の事で中々前に進めないかもしれない。だが……近いうちに自分の中で答えの一端は……見えてくるかもしれないな。少し長話が過ぎたか……私はここで失礼してもらおう」

 

俺がリネット軍曹の側を通り過ぎようとした時、後ろから大きな声で感謝を言われた。俺らしくない事をしただろうかと思ったが……それでも他人からの感謝の気持ちというのは中々に心地が良いものだ。

 

こんな気持ちを……颯也はどんな想いで受け止めているのだろうか? ただ、自分が普通の事をしたまでと思っているのか、それともこの心地良い想いをする事ができるから率先して人助けを行なっているのか……

 

(いや……心地良いからであいつが人助けなどしない。何せあいつは根っからのお節介焼きだからな……)

 

そう考えるとつい笑ってしまう。俺は……どっちなのだろうな……

 

リネット軍曹と別れた後、俺は食堂に向かう。時間的にはそろそろ夕食が準備される頃だろうと思った。ミーナに案内された時に係の者が作るとは聞いたものの、時たま501の者が厨房に立って郷土料理を振る舞う事がある様だ。

 

「ふむ……私が今日は作ってみるか」

 

係の者には悪いが……今日眠ってばかりで何もしていないのでな。遠慮なくつかせてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

それから2時間後……

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……こんなところだろう」

 

主に俺がこの世界で住んでいたカールスラントに伝わる料理だ。まさか俺が炊事をするとは……前世の俺が見たら驚くだろう。この世界に来ておじさんに引き取られてからは代わりばんこで炊事をしていた事もあって苦ではないな。さて、501に所属している子達も来たようだ。

 

「おっ⁉ 今日も美味しそうな匂いがするな‼ 誰が作ったんだ⁉」

 

「何だか懐かしい香りだな……これはカールスラント料理だな。しかも盛り付けも綺麗だな。だが本当に誰が作ったんだ? ミーナが作った場面は見た事がないが……」

 

「あら? 懐かしい香りがすると思ったら……」

 

「ん? ミーナ? 今日はミーナが作ったんじゃないのか?」

 

「そうね……私はさっきまで書類を片付けていたから……」

 

「だとすると……」

 

「今日は僭越ながら私が作らせてもらった」

 

「ヴィ、ヴィダール少尉⁉」

 

うん、予想通りの反応だな。

 

「が……んん! ヴィ、ヴィダール少尉が作ってくれたのね。まさかここまで料理ができるなんて……」

 

「まぁな。昔から炊事はしていた方だからな。さぁ、冷める前に召し上がってくれ」

 

それからは部隊の子が全員集合して夕食を食べた。その時隣の席がミーナだったのは……嬉しかった。ミーナ本人は嬉しかったのか、それとも恥ずかしかったのか落ち着かない様子だったが……

 

そんな時間も過ぎて、洗い物も全て終わらせた時だ。

 

「ミーナ中佐、少しいいだろうか?」

 

「あら? 何かしらヴィダール少尉」

 

「私は今日配属されたばかりではあるが……正直料理を作っただけでは今日の役目を果たしたとは思えなくてな。だから……2時間だけで構わない。夜間の偵察に向かわせて欲しい」

 

「えっ……でも……」

 

「心配……だと思う。だが俺は……」

 

「……はぁ~。貴方は昔から変わらないわね。自分の言った事は曲げない……」

 

「……すまない」

 

ミーナが少しだけだが悲しそうな顔をしていた。俺は……いつもそうだった。危ない事にあまり首を突っ込む事は無かったが、そこにミーナが絡んでしまうと別だ。自分の身なんて後回しだった。その度にミーナには心配をかけた。今回も……ミーナを悲しませてしまった……な。

 

「でも……私は貴方のそんな所に惚れたのよ?」

 

ミーナが俺の仮面を外し、俺の瞳を見ながらそう言ってきた。その瞳には……悲しみの様相はあった。だがそれとは別に……俺を慈しむといった、そんな感情を向けられていたと思う。

 

「ヴィダール少尉……今から約2時間ほどの哨戒任務にあたってもらいます。装備の方は……」

 

「問題ない。装備は既に準備できている。それとこれを」

 

「これは……?」

 

「当初のネウロイからそうだが、最近ではジャミングで味方同士の連絡が取りにくいという事象が起きやすくなっている。だがそれならば、奴らはジャミングで情報の寸断はできない。そしてそれからは、俺からの主観が常に送られる様になっている。リアルタイムでな。最初は分からないと思うが……そのうち慣れるから心配はしないでくれ」

 

「わ、分かったわ。じゃあ私からは……」

 

「ん? ミーナ……」

 

俺はミーナに手で顔を固定されて、呆気に取られている隙にキスをされていた。

 

「行ってらっしゃいのキスと、おまじないをかけたわ。貴方が無事に帰ってくる様に……ね」

 

「……ありがとう。では、行ってくる」

 

「えぇ。行ってらっしゃい」

 

ガエリオさんはミーナから仮面を受け取り、その場で被って出撃した。そんな中……

 

(み……みみみミーナがヴィダール少尉とあんなに仲良く⁉︎ しかもあれ……き、きききキスをしていたのか⁉︎ 入隊初日で⁉︎ ど、どういう事だ⁉︎ ヴィダール少尉の顔は見えなかったが……これは本人に直接聞いた方が早いな)

 

家政婦ならぬ……バルクホルン大尉は見ていた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーナと別れた俺は、ウィッチ達が出撃する際に使用する滑走路に来ていた。今の時期は春だが、夜の7時を過ぎると暗い。だがその代わりに空は快晴で、暗い地面を月明かりが照らしていた。さて行くか……その前に、

 

「私をさっきからつけているのは分かっている。それに対して文句は言わないから、素直に出てきて欲しい」

 

「……バレていたか」

 

ふむ、バルクホルン大尉か。昼の続きをしようというのだろうか……まぁ今は周りに私達2人以外の気配は感じられないから良いが?

 

「バルクホルン大尉……で良かったかな?」

 

「あぁ。自己紹介をした覚えはないが、それで合っている」

 

「配属される前に、部隊に所属しているもの達の簡単な資料を見て覚えた。それで? 私に何の用かな? 昼の続きだろうか?」

 

「いや、確かに昼の事が気にならないと言えば嘘になるが、今はそれを聞きに来たんじゃない。さっきミーナとヴィダール少尉が親しげに話しているところを偶々見てしまってな……」

 

「なるほど……それが気になるのか?」

 

「あぁ。だから単刀直入に聞く。ミーナとはどんな関係だ? ミーナは3年前のある事から男との接点は必要最低限持たない様にしていたし、それを私達にも規律として守らせていた。それほどミーナはそちらの方面に関して厳しかった。だが……」

 

「入隊初日である私が来てからはその態度も一変し、自分が作った規律も緩めた……それ自体おかしいが、それをさせた私という存在が気になる……と?」

 

「あぁ……その通りだ。だから……貴様が誰なのか……私は知りたい」

 

「……残念だが、私の詳細な事、正体について答える事はできない。だが強いていうなら……ミーナ中佐と私は昔馴染みだという事だ。これ以上は言えない。もし知りたいのなら……先ずは君が未だに引きずっている未練……それを断ち切ってからだ」

 

「私の……未練だと?」

 

「そうだ。私からの話は以上だ。では、私は今から任務があるのでな……そろそろ行かせてもらおう」

 

俺は滑走路の先に立ち、そして海に身を投げた。

 

「ヴィ、ヴィダール少尉⁉︎」

 

背後からバルクホルン大尉の驚きの声が聞こえるが、私はそれを気にする事なく、

 

「行くぞ、キマリス」

 

そう静かに唱えて、キマリスの脚部、腕部、背のブースターを装着する。そしてトルーパー形態に変形して暗い海の上を平行に進んで行く。ある程度行くと、上昇して哨戒任務についた。

 

それから数分後の事だった。ブリタニアの南東でネウロイを発見した。どうやらあちらも哨戒中らしい。だが俺には気づいてはいない様だ。俺は気付かれる前にミーナに連絡を取る。

 

「こちらヴィダール。ブリタニアの南東にネウロイを補足。まだ気付かれてはいない。敵の進行方向は西……哨戒中だと思われる」

 

『こちらはミーナ中佐です。ヴィダール少尉、こちらからは距離的に援軍は送ったとしても30分ほどかかると思います。今他に哨戒任務に当たらせてるサーニャ中尉を向かわせたとしても最低で20分はかかると思うわ』

 

「分かった。だが俺は援軍には期待をしてはいない。寧ろ昼間に頑張っていた皆には休んでいて欲しいと思う。だから援軍はいらない」

 

『ヴィダール少尉……』

 

「そんな悲しそうな声をしないでくれ……俺は帰ってくる。約束しただろ?」

 

『えぇ……えぇ。そうね。待っているから……』

 

「あぁ。では戦闘に入る」

 

俺は手元にグレイズの斧を呼び出す。そしてそれをネウロイに向かって投げる。もちろんその時に固有魔法をかけるのを忘れない。俺の手元から離れた斧は、前方向に回転しながらネウロイに向かう。それはネウロイに気付かれる事なくネウロイの装甲を貫通した。

 

ん? 斧がネウロイの装甲を貫通する事はおかしい? 銃弾でも貫通する事はないのに? だと? 俺の魔法を忘れたか?

 

俺の魔法は螺旋力……言い換えれば回転力だ。その回転はどの方向にもかける事が可能だ。例えばさっきネウロイを貫通した斧……あれはそのまま行けば海に落ちてしまうだろう。だがおれの魔法は、手元から離れた物でさえ回転の方向、速さを変える事は可能だ。だから……

 

ネウロイを貫通した斧は、前方向にかかる回転が遅くなる事なくネウロイの方にカーブして戻った。そして再びネウロイの装甲を貫通する。ネウロイからすれば何が起こっているのか分からない。

 

「このまま1つでするのも良いが……」

 

俺は両手に1つずつ斧を出し、それらに螺旋の魔法をかけて投擲する。合計3枚の斧がネウロイに襲いかかり、やがて1つの斧が核を割ってそのネウロイは消滅した。

 

「こちらヴィダール、ネウロイを撃破した」

 

『こちらはミーナ中佐です。私の方でも確認しました。続けて任務を続行して下さい』

 

「了解。任務に戻る」

 

それから哨戒任務に戻ったが……俺の行く先々でネウロイと遭遇……2時間のうちに計4体のネウロイを撃破してきたに戻った。

 

そしてこれは余談だが……ガエリオが戦っている勇姿をミーナさんはうっとりした表情で見つめていたが、その隣で興味本位で覗いていた坂本少佐はガエリオの戦闘力に驚きっぱなしだったという。




「……俺がネウロイ相手に無双か」

「えぇ‼︎ とても良かったと思うわ。私は貴方が戦う姿……とてもかっこいいと思うわよ♡」

「み、ミーナ///」

「うふふ♡ 照れてるガエリオ……可愛い♡」

「か、からかうな///」

さて、いちゃついている2人は放っておいて……多分次も前半あたり2人はいちゃつくと思うので、そこら辺よろしくお願いします……リア充どっか行け(ボソッ)

「ん? なんか言ったか?」

「多分私達が目の前でいちゃついているから嫉妬しているのよ。そっとしておきましょう?」

うわぁーん‼︎ ミーナさんのいけずぅ〜(びゅ〜ん)

「あらあら……私悪いことしちゃったかしら?」

「……そっとしておこう」


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6話 違和感ある案内

今回はまともな前書きが思いつかなかったのでこのまま行きたいと思います! では物語の始まりです!




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間の哨戒任務を終えた。その時に遭遇したネウロイは4体……全て倒して帰投した。ん? もう人間をやめてると? それは……うん。俺もそう思っている。だが誤解はしないでほしい。俺は私利私欲のためにこうなったわけじゃない。全ては俺の大切な物を守るため……そのために得た力だ。俺はこの力を……それ以外には使わない。

 

まぁともかくとして……今俺が何をしていると言うと……

 

「もぅ……あんまり心配させないで」

 

「あ、あぁ……すまない」

 

さっきからそんなやりとりをしながら、今回の哨戒任務の結果を書き留めている。任務から帰って来た際は、いつもこの作業をする様で……まぁ昔と変わらないな。

 

「よし、これで問題ないか?」

 

「少し待って……えぇ。これで大丈夫よ」

 

さて、書類も書き終わった。なら後することといえば……

 

「ミーナ、他の子達はもう体は洗ったか?」

 

「えっ? えぇ。多分だけど、洗い終わったと思うわ」

 

「そうか。それなら良い。俺は今から湯に浸かってこようと思う。さすがにこのままで寝るのは嫌だからな……」

 

「そ、そうね。じゃあ、ゆっくりと浸かってくると良いわ。今日配属されたばかりなのに、貴方は夕食を作ってくれた他に哨戒任務までしてくれて……本当に助かったわ。でも……」

 

「あぁ、分かっている。無理は禁物……だろ?」

 

「分かってるなら良いの。まぁ貴方の場合は……」

 

「……返す言葉が見つからない」

 

「ふふっ……まぁとりあえず、今日の疲れをとってちょうだい」

 

……子供扱いされているのは気のせいか? まぁミーナにならそうされても良いが……

 

なに? 前世の威厳はどこに行ったか……だと? ミーナの前でそれは必要か? 好きな人の目の前でそれは邪魔でしかない……と俺は思っているんだが? まぁ、好きな女性の目の前でも威厳を持って振る舞いたいと思っているなら好きにすると良い。俺は……素直が1番だと思うがな?

 

ガエリオさんはそう思いながらお風呂に向かったといいます。そしてそのお風呂場で……

 

「ほぅ……初めて見た時も思ったが広いな」

 

タオルを腰に巻き、顔には仮面の代わりにお面を被っていた。

 

(一応誰かが来るのはまずい……中央のオブジェクトの陰に入ろう)

 

まぁその前に体を洗ってからな? 先に湯船に浸かって身体を洗ってしまうと……皮膚に負担をかけてしまう。だから先に身体を洗って湯船に浸かる。これが世間一般で正しいか分からないが……

 

そして風呂に浸かった感想だが……前世よりもゆっくり入れた気がする。あれから俺以外に誰も入ることはなかったのもあり、気にせずに入ることができた。風呂から出る時も誰も来なかったし、着替えも気にすることなく出来た。

 

さて、後は歯を磨いて寝るだけだな……

 

(……いや、問題が1つだけある)

 

これは重大な問題だ。別に歯を磨くについてはなにも問題はない。問題なのは……

 

(俺の部屋はどこだ?)

 

ミーナからこの基地の大まかな設備や部屋は案内してもらった。だが……俺の部屋だけはどこにあるのか案内してもらってない。

 

(さて……どこで眠るか……)

 

別に床で寝ても構わない。次の日は身体が痛くなるのは仕方ないが、休息は取れる。まぁ今回の事は俺にも非がある。だから別に床で寝てm「あぁ、いたわ。ガエリオ」ん? ミーナ?

 

「もうそろそろあがる頃だと思っていたわ」

 

「迎えに来てくれたのか?」

 

「えぇそうよ。結局貴方の部屋を案内できてなかったなって思ったから」

 

「それは助かる。俺も、今日はどこで寝ようかと思っていたところだ」

 

「丁度良かったかしら?」

 

「あぁ。君は昔から、俺が困っていた時にいつも助けてくれたな」

 

「ふふっ。それだったら……私も貴方に沢山助けられたわ。出会った時からずっと……」

 

「だが俺は……この3年間……君をくるs「良いのよ」……ミーナ」

 

「貴方がこの3年間、なんの意味もなく私の目の前から離れたわけではないって……分かってるから」

 

「そう……か」

 

「えぇ。だから大丈夫よ。もぅ気にしなくても良いの。だって私達……また会えたんだから。さっ、話は貴方の部屋についてからにしましょう?」

 

「あぁ。じゃあ案内頼む」

 

それから俺はミーナに案内される。ミーナの後ろをひたすらとついて行く。俺はこの時必然的に後ろにいるからな……だからミーナの後ろ姿も収めてしまうわけで……

 

(後ろ姿も……綺麗だ)

 

だが……何故か違和感を覚える。ミーナにではない。ミーナが案内してくれるこの道にだ。

 

「なぁミーナ……少しこの道に違和感を覚えるのだが……」

 

「えっ? そう?」

 

「あぁ。まぁ……私の気のせいだろうが」

 

「多分そうよ。きっと疲れているんだわ。部屋に着いたらゆっくりと休むと良いわよ」

 

「そうだな。そうさせてもらおう」

 

多分きっとそうだ。珍しく昼間から寝てしまったが、その後は部隊の子達の夕食を作り、それから2時間ほど哨戒任務につく。そこで4体のネウロイを撃退した。1日に4体撃破は多いだろうか? まぁ普通なら大人数でネウロイを撃退するのだが……そう考えると俺は異常だな。

 

まぁ良い。俺がこう考えている間にもミーナは俺の部屋に連れて行ってくれている。違和感は……気のせいだと思いつつやはり気になる。そして着いた部屋は……

 

「さぁ。ここが貴方の部屋よ」

 

そして開かれた部屋の扉……ミーナに促されて中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違和感が現実になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔カチャリ〉

 

その音が聞こえたと同時に俺の背中に重みが伝わって来た。

 

「ごめんなさい……私貴方と離れて……随分甘えん坊になったみたいで」

 

「……それで良い」

 

「えっ……?」

 

「昼間にも言ったろう? 俺は君を……ミーナを全力で愛すると。だから、俺は君をいつだって全力で愛する。今この瞬間でさえも……君を愛するよ」

 

「っ‼︎ ガッキー‼︎♡」

 

その夜……結局はミーナの部屋に案内された形になったが、俺は構わないと思っている。ミーナと一緒にいられる。それが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガエリオさんは……その夜ミーナさんに激しく抱かれながら眠ったとかなんとか……




「……作者。最後の終わり方は何だ?」

書いてたらこうなりました。

「そうか……だがなさくs「良いじゃない」ミーナ……」

「作者が私とガエリオのそんなシーンを描きたいと、心の奥底から想っている証拠よ。だから良いと思うわ」

「ミーナが……そう言うなら」

……なにこの扱いの差……


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7話 R-15 基礎訓練という名のテスト

今回は意外と早く投稿できましたよ! やったね‼︎

「それは良いが……またあのタグが付いているぞ? 何故だ?」

( ˙-˙ )

「おい……なんだその真顔は?」

いや……分からないのかなぁと思ったので……

「分かるわけないだろう? そもそも私がなにか良からぬ事をする奴に見えるのか?」

見えますけど?

「即答か……何だ、この俺に対する作者の評価は……」

まぁこの話を読んだら分かりますって。では、読み進めてください! どうぞ‼︎


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夜明けた。ミーナに背後から抱きつかれて少し話した後眠りについた。

 

その話は俺の部屋についてで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡潔に言うと俺の部屋はミーナの部屋……と言うことだ。

 

俺としては……一緒にいれる時間が多くて嬉しい。その一言に限る。ここ3年間……俺も内面変わってしまった。俺も……ミーナを求めている。ミーナの様に分かりやすく外に出るわけではない。だが俺も……

 

「んん……ガエリオ♡」

 

こんな風に無防備で可愛い寝顔を見ていると、ついその無防備な唇にキスをしたくなる。

 

「うっん……ふぁ〜……ガエリオ?」

 

「あぁ、起こしてしまったか?」

 

「うぅん……そんな事ないわ。おはよう、ガエリオ♡」

 

「おはよう、ミーナ」

 

「それで……ね、ガエリオにして欲しい事があって……」

 

「……大体して欲しい事は分かる」

 

「ダメ……かしら?」

 

「いや? そんな事はない。それに……」

 

「っ⁉︎ んっ♡」

 

「俺も……そうしたいと、思っていたところだよ」

 

「ガエリオ……大好きよ♡」

 

「あぁ、俺も大好きだよ。ミーナ」

 

「ガッキー……あっ……んっ♡」

 

つい……ついつい2回もした。それほどに……俺もミーナを求めている、という事だ。

 

その後準備をしてミーナの部屋から出る。だが普通に扉から出てしまえば、偶然鉢合わせた者に何故? と思われるに違いない。だから……

 

「ほ、本当にそこから出るの?」

 

「あぁ。俺がミーナの部屋の扉から出てしまうと、おかしいと思うだろうからな。だから大丈夫だ。では、また午前のミーティングで会おう」

 

そう言い終わり、俺は窓から飛び降りる形でミーナの部屋から出た。

 

なに? そんな事をしたら、いくら魔法を持っていても死んでしまう……と? 心配ご無用だ。何故なら……

 

「えっ……えぇっ⁉︎」

 

「ん? どうしたミーナ?」

 

「だ、だって貴方……足場のない宙に立って……」

 

「あぁ……それはだな、足の裏側に脚部ブースターを展開しているからな。ミーナからは見えないが、それで制御して宙に立っている様に見えるという事だ。まぁ魔法を使って空に立っていると思えば良い」

 

「そ、そうなのね?」

 

「あぁ。じゃあ俺は行くぞ。昨日の夕食の後に坂本少佐に来る様言われたのでな……」

 

「坂本少佐が?」

 

「その通りだ。要件は聞いてないが……まぁ重要な事だろう。という訳だ。行って来る」

 

俺は……未だに驚いている顔のミーナをまだ見たいと思いながらその場を去った。理由? 可愛いからに決まっているだろう? いちいち分かりきった事を問うな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 坂本

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自分の朝稽古を終わらせて少し休んでいた。今年で20歳だが、まだまだヒヨッコどもには負けられない。だから初心を忘れず朝から訓練をしている。雨の日も風も日な!

 

敵との戦闘の際……チームで行動する時はチームワークを欲する。上官になれば素早い状況判断に周りを見る洞察力が大事となる。だがそれ以前に個人の戦闘能力が無ければ話にならん‼︎ だからまず1に訓練2に訓練! 3も訓練で4、5、6も訓練だ‼︎

 

っと、そうしているうちに来たな。

 

「おはよう、坂本少佐。少し遅れてしまったか?」

 

「いや、指定した時間の15分前だ。問題ないぞ。それで早速だがヴィダール少尉には基礎的な訓練をしてもらう。まぁこれは君がどれほどできるかのテストみたいなものだ。できうる限り本気出して欲しい!」

 

「分かった。それでまずは何をすればいい?」

 

「そうだな……ならこの基地の外周を10周ほどしてもらおう! 勿論タイムは測るからそのつもりでな‼︎」

 

「分かった。ではパワードスーツを着させてもらおう」

 

「あぁいい……ん? なんと言った?」

 

「いや、パワードスーツを着て走ると言ったのだが……」

 

ぱ、ぱわーどすーつ? それを着て走る?

 

どうやら坂本さんは少し混乱している様です。

 

「あぁ……そうだな……私はここ数年、雑事以外でパワードスーツを着て行動する事が多くてね。生身のままだとどうにも……体を動かした実感を得られなくてね」

 

「そ、そうなのか……だがうちの基地にパワードスーツは置いていないぞ?」

 

「いや、それは構わない。それは俺自身が既に持っているものだし、今から着るので時間もかからない」

 

と、ヴィダール少尉は言っていたがどういう意味だ? そう思っていると、なんと彼の体が光り始めた。多分魔法によるものなのだろうが……そんな僅かな思考の間に彼の外観は変わっていた⁉︎

 

(な、なんだ⁉︎ と、トリックかマジックの類か⁉︎)

 

※いえ、魔法です。

 

「驚く様だが、これは私の固有魔法みたいなものだ。気にするな」

 

「そ、そうか……では、今から10周してもらおうか」

 

「分かった。こちらは準備も整っている。いつでも良いz「では10周始め‼︎」……」

 

(……強引なスタートだがまぁ良いだろう)

 

ガエリオさんがそう思って始めの一歩を踏み出した時間は僅か0.8秒! とっくに人間を辞めていた‼︎

 

(ほぅ……私の強引な合図でも動じずに一歩踏み出すか……流石は少尉の位を要求するだけはある。それと状況判断の早さもな)

 

それを坂本少佐が思った20分後には……

 

「坂本少佐、外周10周終わったぞ」

 

「……」

 

彼女の前で涼しい顔(仮面で見えないが……)をしてそう言っているガエリオさんがいたそうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあと俺は坂本少佐に言われるがまま基礎訓練という名のテストをした。外周10周から始まり……腕立て腹筋、遠泳に素振り、後は坂本少佐と模擬戦を行なった。全てパワードスーツを着て行なっていたのだが……何故か坂本少佐が躍起になっていた。何故だ?

 

それで模擬戦の結果だが……

 

「……私は訓練官失格だ」

 

地面に体育座りをして落ち込んでいた。何か悲しい事でもあったのだろうか? 模擬戦が終わってこの調子なのだが……

 

「何故重たそうなパワードスーツを着てあんなに動けるのだ……それに模擬戦でもあんな動きを……」

 

……どうやら先程の模擬戦の結果が響いたらしい。下手な慰めは……その相手に対して侮辱をされていると、そう捉えられることもあって、どう言葉を投げかけて良いかわからん。このまま立ち去るのも吉だが……放っておく訳にもいかん。そう思った俺の行動は早かった。

 

「坂本少佐……」

 

「うぅ……なんだヴィダール少尉……こんな惨めになっている私を慰めるつもりか? そんなものはいらない……そんなもの……ずずっ……武士の恥だ」

 

うん……これは相当ひどいな。既に泣きそうな顔をしている。だがもう行動に移したのだ。こっちも引き下がらん。

 

「坂本少佐……今の君に対する私の行動をどう受け取っても構わない。だが……私は負けを……悔しさを経験する事は人の美徳だと思っている」

 

「……な、何が言いたい……」

 

「人は競争する生き物だ。そこには……必ずと言って良いほど勝ち負けは存在する。引き分けというのもあるが……それは置いとく。それで何が言いたいかについてだが……負けたのならば、まだ成長できるという事だ。特にこの様な模擬戦では……な」

 

「せい……ちょう?」

 

「そうだ。私は今回のテスト……手を緩めた気はない。むしろ本気でやった。だからこそのこの結果だ。しかしな……私もここに至るまでに相当な時間と努力を費やした」

 

「勝つ時は勝つが、その分次に気を引き締めた。負けた時は悔しいが、その時は何が悪かったのか分析した。そして次に活かせる様に直す所は徹底的に直し、良い部分は伸ばした。その繰り返しだ。それは何にだって言える。日常に暮らす人々もそうだし、私達の様な軍属も一緒だ。皆……何かに足掻きながら日々を生きているんだ」

 

「まだ若い若人が何を言ってるんだと、私以上に生きている者に言ったらそう言われそうだがな。まぁそれはともかくだ……新参者で階級も低い私にどうこう言われて腹をたつかもしれないが……君のこの言葉を送ろう」

 

「負けるのは悔しい事だと思う。だからそれで泣いても構わない。だが……負けるからこそまだ成長ができる。自分を高められる。これは私の持論に過ぎないが……俺はそう思っている。だから君も……1回、10回、100回模擬戦で負けたからと言って諦めないでほしい。では、私はここで失礼する」

 

自分でも生意気な事を言っているのは承知している。ただ……放ってはおけなかった。

 

(前世とは違い……今の俺はお節介かもな)

 

まぁそんな俺も悪くない。そう思いながら俺は朝食の準備に取り掛かった。さて、今日は何にしようか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで余談ですが、ガエリオさんと坂本さんのこのやり取りを偶然遠くから見守っていたミーナさんは嫉妬したと言います。




「……何だこれは?」

えっ? 何って……その通りですけど?

「……そうか。作者はよほど……





















制裁が欲しい様だな……」

えっ? what? ど、どういうk「それはな……」へっ?

「こういう事ダァ‼︎」

イヤァーッ⁉︎ デストロイヤーランスで撃たないでぇー⁉︎


第7話……完


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8話 R-15 九死に一生を得るとはまさにこの事だ……






やったぁー! 久々に投稿できたぁー‼︎ 皆々様お待たせしました! 今回もガエリオさんとミーナさんの熱い展開を書いてしまいました!

皆さん! コーヒーの準備はできてるか⁉︎ 俺はでk「タグに無い事を入れようとするな!」ゴンッ‼︎ ギャァー⁉︎

「全く……読者の皆にはいつも苦労をかける。とりあえず、今回の話を読み進めて見てくれ」





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂本少佐と模擬戦をやった後の事……俺はキッチンへと赴き朝食の準備を始める。さて今日は……扶桑料理でも作ってみるか。材料は確認した所ある様だし、1週間に最低1度は来る様だ。だから、何らかの事が起こらない限り食糧難になる事はまずないだろう。それはそうと始めようか……

 

それからガエリオさんは1時間程で大体作り終え、501の皆が来る頃には食後のデザートも用意していたと言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これは……まずいわね……)

 

ミーナは内心焦っていた……。何に焦っているのか?

 

書類仕事に対して……ではない。最近ではいつもよりも少ない作業量だ。締め切り間近の物は無い。

 

ネウロイの出現するタイミングが狭まっているので、それについての対応……という訳でもない。確かにネウロイが出現するタイミングが狭まっているのは事実ではあるが……今でも十分に対応できている。

 

では何に焦っているか? それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ガエリオがこんなに料理上手なんて……)

 

 

 

 

 

そう……それは炊事能力だ。確かにミーナもある程度の料理をこなす事は可能であるし、カールスラントの郷土料理も勿論作れる。だが……幼馴染であり恋人、しかも男であるガエリオの料理技能がこんなにも高いとは思ってもみなかったのだ。

 

まだ軍属に入っていない頃の話にはなるが、ガエリオが料理を作れる事は知っていた。なにせガエリオは当時クルト・フラッハフェルトという名の男と2人暮らしであり、家事は日に日に当番でやっていた。そんな事情を知っているからこそ、ミーナはガエリオが料理を作れる事を知っている。

 

だがそれはカールスラントに伝わる郷土料理ぐらいを作れる腕前であり、今目の前で出されている扶桑料理をガエリオが作れるとは知らなかった。それに見栄えも良く、実際に口にしてみると、炊事係が作るよりも美味しいときた。これには……

 

「おぉ! これはまさしく祖国の味だ!」

 

「た……大した腕前ですわね……」

 

「これは……‼︎ 美味い! もっと食べさせろ‼︎」

 

「私も私も〜! おかわり〜‼︎」

 

順に坂本、ペリーヌ、バルクホルン、ルッキーニの発言である。(その中には某有名なゲームに登場する蛇のような発言をしている人もいるが……)ともかくとして501の皆の舌を虜にしたのは間違いない。

 

(……ガエリオに直接教えてもらおうかしら。えぇ! それが良いわ‼︎ そうしたら……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇガッキー、ちょっと味見してくれないかしら?』

 

『ん? どれどれ……うん、とても美味しいよ』

 

『っ! 良かったわ‼︎ これも貴方が教えてくれたからよ』

 

『いや、俺はそこまで教えてはいないさ。ミーナの場合は最初の基礎が出来ていたからな、応用も難なくこなせていた』

 

『そ、そんな事……』

 

『謙遜する必要はない。それに俺は……毎日ミーナの手料理が食べれると思うと、とても幸せだ』

 

『ガッキー……』

 

『ミーナ……』

 

チュッ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(えぇ‼︎ とても……とても良いわ‼︎)

 

以上、ミーナさんの脳内妄想でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ミーナからの視線を感じる……)

 

朝食に扶桑料理を作ったのだが……結果としては良かった。そして今日もミーナの隣で食べていたのだが……その際ミーナの方から物凄い視線の圧を感じた。

 

あれは……どう表現して良いやら俺には分からん。だが……多分悪い意味ではないと思う。

 

(なにせ目が蕩けているように見えたからな……それも周りの皆には気付かれないような……)

 

皆の目があるあの中で、誰にも気付かれずに俺にだけあんな視線を送る事ができる……器用だと思うが、他の奴らがそんな場面を見てしまうと恐ろしいと感じてしまうかもしれない。俺か? 何故俺がミーナを恐れる必要がある? そんな事は万に1つもない。……なに? この前部屋で迫られた時は後ずさりしていたのに……だと? あぁ……確かにあの時もミーナからの圧を物凄く感じた。あの時はいきなりという事もあったからな……人が昔から備えてきた本能……言い換えれば野生的本能が働いたからだろうな。言い訳をするな? 俺としてはその時の状況を考察したに過ぎないのだが……まぁそう思いたいなら勝手にすると良い。

 

それはともかくだ……今日は他の子達も含めての訓練をした。所謂編隊飛行という奴だな。元飛行機乗りという事もあって、実戦では近くでウィッチ達の編隊は見ていたし、ここに来る前に粗方復習はしてきた。だからすぐに順応した。

 

しかしやはりというか、ストライカーユニットも履かずに空を舞う事ができる俺を見て皆驚いていたし、休憩の際にちょっとした質問責めにもあった。まぁ俺の固有魔法だとその時は誤魔化したが……

 

後は……俺が携行している武器についても驚かれていたな。なにせ腰にシングルアクションアーミー1挺と、手には普通よりも長さがある斧……ハルバートまではいかないが、それを常時握っている。

 

ネウロイに対しての格闘戦は……あまり推奨はされてはいないが問題なくできる。だが最初から手に持つ事はない。近づいてやっと使用する……当然だがな。

 

だが俺の場合は……これを投擲する。斧に螺旋力をかけて、回転を鈍らせる事なく敵の装甲を貫く。そんな戦闘スタイルはどこを探しても俺だけだろう。だからそれについても少し質問ぜめされた。それもなんとか誤魔化したが……

 

そんなこんなで訓練も終了した。あぁ後、午前に行われたミーティングについては、今までにネウロイを撃墜した数の確認と、今後のネウロイが現れるであろう予測時期についてだ。撃墜した数の確認は、近々ミーナがブリタニア本部に赴いて報告するための確認も兼ねて行われた事だ。俺は昨日入隊したばかりだというのに既に4機程落としている。それがミーナからの言われた時の皆の反応は……いつの間に⁈ という顔がほとんどだった。まぁそんな反応をされて当然であるし……尚更俺について気になった事だろう。

 

今はまだ……過去等詮索されてもはぐらかすがな?

 

そして昼食夕食についてだが……俺が意外にも料理が出来たせいで他の子達がやる気を出して作っていたな。それが今後の生活においてプラスになるか分からないが……そうなるのであれば、お手本になる様な生活を心掛けていきたいものだ。

 

そして今日も夜は更けていった。今日も夕食後に哨戒任務に着こうとしたのだが……今回はミーナに止められてしまった。心配で仕方ないのだろう。だから俺は素直に従って、皆が風呂に入ったのを見計らって入浴した。

 

今日も体を動かしたためか、湯がとても心地いい。そんな気持ちが良い感覚に陥りながら入っていた時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(っ⁉︎ い、今のは戸の開く音か⁉︎)

 

幸い身体は洗っていたため後は出るだけなのだが……これはマズイ……。

 

顔を見られない様にお面は付けている。問題はそこじゃない! 俺がウィッチ達が普段使用する浴場を利用している事だ。確かに全員が入った事は確認したし、誰も使っていない深夜帯の時間なら使用していいとミーナに言われた。だから使っているわけだが……

 

こ、これは……非常にマズイ……。

 

幸いにもオブジェクトの影に入っているから最初は気づかないだろうが……それも時間の問題だ……

 

 

 

チャポンッ……

 

 

 

 

 

相手が湯船に入ってきたか……ど、どうする? このままでは……

 

 

 

 

ザブ……ザブ……ザブ……

 

 

 

 

(ちっ、近づいてくるだと⁈ まさか相手の特等席か⁉︎)

 

どうにか対策を立てなければ……こ、ここは仕方がない‼︎

 

ガエリオさんは大きく息を吸い、静かに湯の中に入る。まるで忍者の様に相手に気取られる事もなく身を潜めるように……

 

(不測の事態に対処できるように、息を長く止める訓練もしておいて正解だったな。だが問題は……)

 

自分が入っている事を気付かれる事なく、尚且つ息が相手がこの湯船から出るまで息が持つかである。今の所のガエリオさんの最高記録は5〜6分程……正直心許ない数字である事は確かである。

 

(息がもちそうにないのなら、オブジェクト沿いの相手に見えない位置に行ければ……)

 

だがそれも相当のリスクを伴う。湯船の中で動くという事は……当然体が動くに伴って湯水も揺らぎとなって伝播してしまう。相手が動く瞬間を捉えそれに合わせて動くのであれば、相手に気付かれる確率は少なくなる。しかし相手が動くタイミングを見計らなければならない。非常に難しく、精神を多く使う作業なのだ。

 

そんな考えを巡らせながら、今自分に近づいている相手がどう動くのか伺う。

 

一方の相手は、着実にガエリオに近づく。一歩ずつ一歩ずつ……

 

そしてガエリオが潜んでいる湯船の中に、相手はあろうことか手を入れて来た。

 

(なっ⁉︎ まさか最初から俺がここにいる事が分かって⁉︎)

 

ガエリオは……まだこの部隊に入って日は浅いものの、死と似たような感覚がした。

 

そんな絶望的なガエリオの状況とは裏腹に、湯船に入って来た手は正確にガエリオの顔を両手で優しく掴み、ゆっくりと湯船の中から引っ張り出す。そして……

 

「もぅ……何をやっているの? ガエリオ」

 

「み、ミーナ……だったのか……」

 

その時にガエリオさんは、九死に一生を得るという諺の意味を実際に体感したといいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さっきのは心臓に悪かった……」

 

「ふふっ、ごめんなさいね? でも、私もガエリオと一緒に入りたくて……」

 

「そ、それならそうと、入って来た時に呼びかけてくれれば良かったと思うのだが……」

 

「貴方の驚いた顔が見たかったのよ。でも……まさかお風呂の時でも自分の顔を晒さないなんて」

 

「備えあれば憂いなし、だ。万が一に他の子とここで出くわしたとしても、顔はばれない」

 

「用心深いわね……」

 

「当たり前だ。俺はまだ……自分の存在を公にされるわけにはいかない。それに……」

 

「それに?」

 

「俺は……大切な者を……君という大切な存在を守るためなら、どんな苦難にも立ち向かって見せる。今の俺がどれだけ姿を偽ろうとも……それだけは変わらない」

 

「ガッキー……」

 

ガエリオさんのその言葉に、ミーナさんは自分の身体をガエリオさんに体重を乗せて寄りかかる。いきなりの事でガエリオさんは困惑した。その隙にミーナさんはガエリオさんの顔を覆っているお面をずらし、彼の顔が見えるようにした。

 

「ミーナ……」

 

「ガッキー……甘えても……良いかしら?」

 

「……何を言うかと思ったら……そんな事、当然だろ? 俺はミーナの事を全力で愛する。俺にめいいっばい甘えてくれ。いつだって俺は……君の事を受け止めるから」

 

「っ‼︎♡ ガッキー‼︎♡」

 

その日……ガエリオさんとミーナさんは、お風呂から出た後……夜が更けてもその2人は互いに自分達の愛を確かめ合ったといいます。








うぅ……ガエリオさんに拳骨された所が痛いよぉ〜……

「あらあら? 大丈夫?」

み、ミーナさん⁉︎

「ガエリオも、もう少し作者さんに対して加減するべきじゃ無いかしら? それはまた今度言うとして、とりあえず作者さん、頭を出してもらえるかしら?」

えっ? い、良いですけど何するんですか?

「ふふっ、それはね……」

「痛いの痛いの飛んでけ〜♪」ナデナデ……

い、痛いのが無くなった⁉︎ ありがとうミーナさん‼︎

「ふふふ、良いのよこれぐらい。じゃあ読者の皆さん、また見てくれると嬉しいわ♪」

また見てくださいねー‼︎











一方のこの方は……





「あいつ……次会った時はどうしてくれようか?」ピキピキッ

手にかけていた壁にヒビを入れながら、ガエリオさんは作者に怒りを向けていた。


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