プリヤ世界に姉を入れてみた件 (メルトリリス可愛いよメルトリリス)
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1話

プリヤを読んでいたのと、ぐだ子の容姿=TS士郎だと言うことを思い出し、連想ゲームの如く思い付いたので取り敢えず投稿しましたw



「シロウ……強くなりましたね……」

 

 

 

 

渾身の一撃が黒く染まり在り方さえも反転したセイバーを捕らえる。

そして、彼女に致命傷を与えることができた。だが、自分に許されたのはそこまでだった。

限界を超えた魔術の行使、移植されたアイツの腕の解放に自分の身体が先にガタが来てしまっている。

目の前に居る致命傷で動けないセイバーに止めを刺し、たった一人で桜と対峙している遠坂を助けなければならない。

だが、己の身体は鉛のように動かず意識は徐々に遠退いていくばかりだ。

 

 

 

「……いえ、それは違いましたね。貴方は、初めから強かった」

 

 

 

 

それは違うと反論したかった。セイバーが居てくれたからここまでやってこれたのだ。未熟な自分だけなら直ぐにでも死んでいたはずだ、と。

薄れ行く意識のなかでもそれだけははっきりと言える。

 

 

 

 

 

 

セイバーは俺が既に終わっていることを理解し、背を向ける。

 

 

 

 

「……ではシロウ。私の勝ちですね」

 

 

 

 

そして、大聖杯のある大空洞へ向かっていった。

 

 

 

 

あぁ……そうだ。今回も勝てなかった。この身は捨て身の特攻でようやくセイバーに届きはした。しかし越えることは出来なかった。

そんなセイバーを傍目に見ながら俺は深い闇のなかに沈み込むように意識を手離した。

 

 

======

 

何れぐらい時間が経っただろうか。

 

 

 

 

時間の感覚さえ曖昧になってしまう程に何処かで漂っていた様な記憶がある。そこで常に感じていたのは『死』だった。

そんな感覚に浸っていると大切な何かが削ぎ落とされていく感覚と共に思い出せない事が多くなっていく。

自分がエ■ヤシ■■だと言うことさえも。

だが、失われていく物の中でも忘れない物は確かに有ったんだ。

セイバーの事や未来の自分(あいつ)から受け継いだもの。

そして、自分と言う存在さえ曖昧になりそれしか思い出せない程に磨耗した頃、突如そんな世界に光が差し込んだ感覚と共に何処かに強く引っ張られていく。

そして、何処かに浮上していく感覚と共に意識が一旦途切れる様な感覚を覚えた。

 

=====

 

身体が重く、微かな消毒液のアルコールの匂いが鼻を刺激する。

久々に生を感じさせる感覚がそれだった。ここが現実なのだと確信を持って目を開く。

 

 

 

「……ぁ」

 

 

 

そこは予想通り何処かの病院の一室だった。

良くある個室の病室で誰かが定期的に見舞いに来てくれているのか花瓶にはまだ枯れていない花が活けてあった。

たったそれだけの風景。

それを見て思わず涙が溢れてきた。自分が居たあの死に満ちた空間から出れただけでこんなにも世界が美しく見える。

そして、しばらく涙を流しながらドアの開く音と共に誰かが入ってくる気配がした。

 

 

 

「……っ。嘘……士乃ちゃんが起きてる?た、大変!先生とご家族に連絡しなきゃ!」

 

 

 

 

看護師と思わし女性がそう叫びながら病室を慌ただしく出ていく。

 

 

 

はて……士乃?自分の名前はそんな名前だっただろうか?あの空間に居たせいで曖昧だが自分の名前は似てはいたが違う名前だったような気がする。

 

 

 

 

そう思い、ベッドに有った名札を見てみるとそこには『氏名:衛宮士乃 性別:女 年齢:10歳』と記されていた。そして、ドアの横に有った水場の上に有った鏡で自分の姿を見てみると少し痩せすぎだが何処か親近感のある茶髪の少女が写っている。

 

 

 

「あははは……なんでさ……」

 

 

 

そんな自分の姿を見て自分の口から自然とそんな言葉が漏れていた。

 

 

 

そして、暫くしてから医者や看護師がたくさんやって来て脈拍やら初歩的な検査を受けている。

医者や看護師は奇跡だと口々に言っているおり、時折良く頑張ったねと涙ながらに声を掛けてくれる。ただ、自分がどんな状況に有ったのか全く知らないので愛想笑いで感謝を言う位しか自分には出来なかった。

一通り検査が終わったあと、看護師の一人が医者に何かを耳打ちしていた。

その後、直ぐに医者や看護師が病室から出ていく。

どうやら、自分の家族が面会に来るそうだ。

 

 

 

「しかし……家族なんて……死んだ爺さんしかいないのにな……」

 

 

 

不意にそう口から言葉が出る。

しかし、今の自分にはその爺さんが誰の事かさえも思い出せない。

とても尊敬して憧れていた誰か、そしてその人の夢であった正義の味方になると言う夢を受け継いだとしか分からない事に苛立ちを覚えるほどに。

 

 

 

そして、複数の足音が此方に向かってくる。

 

 

 

「姉ちゃん!」

 

 

 

そんな声と共に飛び込んできた今の自分と同年代の少年。私はその姿を見て頭を鈍器で殴られた様な感覚を覚えた。

その少年は何と言うか……かつての思い出せないはずのセイバーと出会う前の自分だと確信を持ててしまう。

そして、自覚する。

目の前の少年(自分)がこの世界のかつての自分で、今の搾りかすの様な自分はこの世界では少年(自分)の姉と言う立場なのだと。

それを自覚した瞬間、この身体の本当の持ち主だった衛宮士乃の記憶が流れ込み、削ぎ落とされた空っぽの自分を埋めていく。

補充された記憶が自分をかつての■ミ■■ロウから衛宮士乃へと変えていく。

 

 

「うん……久しぶりだね、士郎? ()としての感覚は一眠りしてただけなんだけどね……」

 

 

 

 

気が付けばいつの間にか自身の一人称まで変わっていることに気が付き内心苦笑する。

 

 

 

この身体の元の持ち主である衛宮士乃は目び前に居る士郎ともう一人の大切な妹を助けるために身を挺して暴走車から護ったのだ。

そんな背景が有るのか士郎は泣きながら謝ってくる。

 

 

「姉ちゃん! ごめんなさい! 俺のせいで!」

 

「ううん、私は士郎達のせいだと思ってないよ。寧ろしくじったのは私。」

 

「でも、姉ちゃんは俺のせいでっ!」

 

「士郎。私は自分がしたことに対して後悔はしてないの。寧ろ……貴方達を助けれて安堵してる位だしね」

 

「………。 はぁ……姉ちゃんは何時もそうだ」

 

 

 

そんな士郎に流れ込んできた今は亡き本物の士乃の想いを告げる。

そして、士郎に遅れてよく知った人達が病室に入ってきた。

 

 

「士乃っ!!」

 

 

その中の一人、私と士郎の義理の母親であるアイリお義母さんが私を優しく抱き締める。

 

 

 

「アイリお母さん。ただいま……」

 

「えぇ、おかえりなさい……」

 

 

アイリお母さんはそんな自分に対して涙を流しながらも笑ってそう返してくれた。

そして、そんな私たちを微笑ましい表情で見ていたお父さんの切嗣も私に声をかけてくれた。

 

 

「士乃、お帰り。良く戻ってきてくれたね……。事故の報せを聞いた時に僕もアイリも生きた心地がしなかったんだぞ。 こんな遅い時間だからイリヤは連れてこれなかったんだ。すまないね」

 

「ごめんなさい……じ……お父さん。それはしょうがないよ。イリヤはまだ小さいから……」

 

 

 

ん?今私はお父さんの事を別の言い方で言いかけたような?もしかしてだけども前の自分がそう呼んでいたのかもしれないが今は思い出せない。

改めて、今の自分は幸せものだと思う。義理ではあるが両親がいて双子の弟の士郎と義理の妹のイリヤが居る。

前の自分は家族なんて居なかったような気がするしね。

 

 

そして、しばらくの間みんなと話をして体力を使い果たしたのか私は倒れ込むように意識を手離した。




腕士郎inぐだ子。クラスカード回収に介入するためにはこれぐらいしないとダメかなと思ってやってしまった……。


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2話

士乃の状況説明回なのでちょっと短目です。


カーテンの隙間からこぼれ落ちる太陽の光で目が覚める。そして、昨日と同じ病室に居ることに安堵する。

 

 

「良かった……。夢じゃなかったんだ……」

 

 

 

士郎やお父さん達と話しているときもこれは夢ではないか。

あの世界に居すぎて頭がおかしくなって見ている妄想の類なのではないかと考えてしまう程に私はあの場所に戻ることが怖かった。

そんな事を考えているとやはり、視界に薄くだが黒い点と線が浮かび上がる。

それを意識して視るとどんどんその色が濃くなっていき、私の視界は継ぎ接ぎの世界になった。

 

 

 

 

「あははは……。私はやっぱり彼処からは逃げられないんだね……」

 

 

 

 

黒い点と線の正体。それはあの場所に充満していた『死』その物だ。

どうやら、私はあの場所をイメージするとそれがスイッチとなり死を視ることが出来るのだろう……。

あと、恐らくだがこの体に霊体を視ることの出来る力が元々備わっていたのも大きな要因の一つだろう。

『死』を視る魔眼に変質したとは言えどその力は残っており時折、この病院で亡くなり成仏出来ていない霊が見えるのがその証拠だ。

 

 

 

 

「っ……。ぐうぅ……」

 

 

 

 

その状態が1分ぐらい過ぎた頃、徐々に頭痛がしてきて直ぐに無視できない頭痛に変わる。

そして、死の点と線から意識を外すと徐々に視界から消えていくと同時に頭痛が引いていく。

どうやら、あの場所とは勝手が違い『死』を視ると脳に負荷が掛かるようだ……。

まさか、こんな化け物染みた魔眼を習得してしまうとは……人生って解らないものだね。

 

 

 

 

 

この際のなので物は試しに今自分が記憶している事を何処まで行使することが出来るのか試してみる。

すると、一般的な魔術師としてはへっぽこだったはずの自分でさえ動揺してしまう事実が判明してしまう。

一応、自分の記憶はほぼ無くなってしまっているが知識は確りと覚えている。だからこそ、自分の異端さが解ってしまう。

 

 

 

「これは……バレたらヤバいね……」

 

 

 

 

そう、この魔眼の存在を魔術師連中に見付かってしまったら何をされるか解らないのに、私は更に厄介事を抱え込んでしまっていたのだ。

この身は不慮の事故が原因だが未来の自分が英霊化した存在の力を引き継いでいる。さらにはそれを扱う術まで持ち合わせているのだ。

その証拠に以前と変わらないように魔術回路は開けるし、やろうと思えば今すぐにでも干将・莫耶程度ならば投影することさえできるはずだ。

それにだ……なんと元々の魔術回路に加え、更に別の魔術回路まで存在し、合計して倍の54本もある……。

これがバレたら確実に私はホルマリン漬けにされてしまうだろう。

そして、私がこれから先どう身を振っていこうかあれこれ考えていると病院のドアが開き、昨日の士郎と同じく我が妹が飛び込んできた。

 

 

 

「士乃お姉ちゃん!」

 

 

 

プラチナブロンドに近い銀髪を持つ10人中10人が美少女と答える程の容姿を持つ我が妹、イリヤスフィール。明るく元気な私の妹だ。

 

 

 

「あぁ……おはよう、イリヤ。ごめんね、イリヤに心配かけちゃって……」

 

「ううん!違うの!私があの時士郎お兄ちゃんを引っ張ってなかったら……」

 

 

 

そう言ってイリヤは俯いてしまう。どうやら、士郎と同じように私に怪我をさせてしまった事に対して罪悪感を持っているようだ。

 

 

 

しょうがないな……。妹を慰めるのも姉の役目か……。

 

 

 

私は弱まった筋肉にむち打ち、必死に上半身を起こす。そして、倒れ込むような形になってしまうがベッドの横にいたイリヤを抱き締める、頭を優しく撫でる。

 

 

 

「イリヤ、私は怒ってないよ。士郎にも言ったけど……私はイリヤは無事で心底安心したんだ」

 

「うん……」

 

「だから、イリヤももう気にしてほしくないんだよ。イリヤはやっぱり笑ってる方が可愛いしね」

 

 

そうして、私はイリヤ泣き止むまでずっとそうしていた。途中でアイリお母さんやうちの家政婦であるセラとリーゼリット(以降リゼ)が入ってくるがこの光景を暖かい目で見られてしまう。特にセラはなんか感極まった表情で涙を浮かべていた。

イリヤが泣きやみ、私の元から離れていく。

 

 

 

「あらあら、イリヤは士乃が起きたらいっぱいお話するんだーって言っていたのに出来なかったわねー」

 

「ま、ママ?!ち、違うよ!!士乃お姉ちゃんに会えて嬉しかっただけだもん!!この後いっぱいおしゃべりするんだから!!」

 

 

流石、アイリお母さん。イリヤを弄る事に掛けては右に出るものはいないね……。そんなからかわれているイリヤは顔を高揚させながら文句いっている。

 

 

 

「士乃お嬢様、おはようございます。士乃さんがお目覚めになられて私は本当に安心しました……」

 

「おはよー、士乃。目覚めて良かった良かった」

 

「セラとリゼもありがとう。それに心配してくれてありがとうね」

 

 

 

と、タイミングを見計らいセラとリゼが話し掛けてした。そんな何時もと変わらない接し方に嬉しさを覚えてしまう。

そして、その後は医者と今後のリハビリの計画を聞きにアイリお母さんとセラは病室を出ていき、残されたイリヤとリゼと他愛のない話をしていた。

 

 

 

「でねでね、いっぱいお友達出来たんだよ!」

 

「そう、良かった……。イリヤ、友達出来るか心配してたもんね……」

 

 

 

と、イリヤが私が眠っていた1年間の事を色々と教えてくれる。リゼ?なんか来客用のソファーで寝てるよ……。

そして、アイリお母さんとセラが医者を連れて戻ってくる。どうやら、説明が終わったのだろう。

 

 

「イリヤ……そろそろ帰るわよー」

 

「えー、もうちょっと居たい……」

 

「ダメですよ、イリヤさん。士乃さんもお目覚めになったばかりで色々と疲労が溜まっている様ですし……」

 

 

 

流石、セラ。どうやら、私の状態を見抜いているようだ。思った以上に体力が無くなっていたのか疲労は溜まって正直眠いです……。

 

 

「みゅ……?もう、帰るの?」

 

「こら、リーゼリット!あなたはメイドでありながら何ですか!」

 

「セラ、うるさーい」

 

 

 

昼寝していたリゼも目を覚まし、これまた何時も通りの説教が始まる。

そうして、何時も通りの雰囲気で終始流れていきイリヤたちは帰っていった。そのあとは医者から今後のリハビリを子供でも解るように説明され一日が終わったのであった。




我がカルデアに快楽天ビーストこと殺生院キアラが来ました。


まだ育てきれていないBBやリップ、ヒッジがいるのに快楽天ビーストに使える種火が無いのですが……どうしよう……


C.C.C.であれの実態を知っている身としてはマジで育てるのを躊躇ってしまいますね……。おや、こんな時間に誰か来たようですね。うわっ、おおお前は……や、やめっ……あ、あっーーー



キアラ様に種火もフォウくんも聖杯も全部捧げます……(虚ろな表情)


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3話

プリヤの劇場版が公開されましたね。自分は休みを勝ち取ったら直ぐにでも観に行く予定です。


「問おう、貴方が私のマスターか?」

 

 

 

あぁ、私は夢を見ているのだろう。これは私が何度も見ている夢だ。

戸が完全に開ききり月明かりが差し込む土蔵。そこに一人の少女が立っていた。

それは()にとても大切な出会い。()になってしまった今でもそれは鮮烈に思い出せる。

凛々しい表情、美味しそうに食事を取る彼女の表情、彼女の清廉潔白さを具現したような剣捌きを。そして……目の前に立ち塞がった黒く染まり反転した彼女。

それら全ての彼女との思い出が色褪せずに全てを思い出せる。

 

 

 

「召喚に従い参上した。これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。――ここに、契約は完了した」

 

 

 

あぁ、彼女とはこんな感じで出会ったんだっけ。

 

 

 

「……ぱい、先輩起きてください!」

 

 

 

私が感傷に浸っていると声が聞こえたと思うと私を現実に戻していく。

 

=====

「士乃先輩!また、居眠りしてたんですね……」

 

 

 

目を開けるとそこには発育の良くスタイル抜群、片目が隠れるボブカットがよく似合う私の後輩が机の横に立っていた。

 

 

 

「おはようマシュ。なんかとても懐かしい夢を見ていた気がするんだ」

 

「もう……全く先輩は……。イリヤちゃんや士郎さんが探しているの見て探しに来たら眠りこけていたので驚きましたよ……」

 

 

 

そう言いながら若干頬を膨らませ私怒っていますとアピールしているのは私のかわいい後輩であるマシュ・キリエライトだ。

彼女はイギリスからの留学生で半年前に知り合った。

ちなみに知り合った切っ掛けは不良に絡まれているところで士郎と一緒に買い物をしている際に出くわし、士郎の何時もの癖であるお節介で不良とマシュの間に割って入って一緒に逃げ出した事から始まる。

 

 

 

「ごめんね、埋め合わせは何か奢るからそれで許してね」

 

「そう言うのは良いので早く二人の元に向かってください。特にイリヤちゃんが怒っていましたよ」

 

「うげぇ……それはちょっとやだなぁ。これ以上イリヤを怒らせないように直ぐに行くね」

 

「はい、そうしてあげてください。イリヤちゃん達は校門前に居ますよ」

 

「ありがとう、マシュ!!」

 

 

 

私は部活があるマシュに見送られながら私は士郎とイリヤの居る校門に急いで向かうのだった。

 

 

 

余談だが穂群原学園の一部男子生徒達からは百合ップルだの百合夫婦だの言われていた。

が、言い始めた三枚目の某ワカメが二人に粛清されたのを切っ掛けに滅多なことでは言われなくなったらしいが今なお百合愛好家やレズぅな女子には根強い人気があるとか無いとか……。

 

======

 

「士乃お姉ちゃん、おっそーい!!」

 

「士乃ねぇ……また居眠りしていたのか……」

 

 

 

私が校門に着くと案の定イリヤはご機嫌ななめで、士郎は若干呆れていた。

 

 

 

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよーイリヤー」

 

「や、やめてよ……恥ずかしいしよぉ……」

 

 

 

私はイリヤを帽子の上から撫でながらそう言う。

ご機嫌ななめなイリヤの態度は一変し私の猫可愛がりに頬を赤らめながら恥ずかしがる。

 

 

 

「士乃ねぇ、いい加減にしないとイリヤにまた一週間位口聞いて貰えなくなるぞ……あと、居眠りは大概にしなよ」

 

「それは困るね。イリヤを弄れなくなるし。

あと、居眠りはねぇ……体質なんだろうけど唐突に吐き気を催すレベルの睡魔が襲ってくるから」

 

 

 

 

正直、居眠りは意識した対象に対して魔眼が発動するせいで何をするにも脳を必要以上に酷使しているからなのだが……如何せん私の特殊すぎる魔眼を封じれる魔眼殺しは中々ないと思うので現在は解決策なしだ。

 

 

 

「あははー……どの道私は弄られるんだね」

 

 

 

 

そんな私達双子の会話を聞いていたイリヤは遠い目で空を眺めている。

 

 

 

「さて、帰るとしましょうかね……。

イリヤ、今日は私が晩飯の当番だから好きなもの作ってあげるから機嫌治してくれる?」

 

 

 

そう、イリヤに問いかけるとさっきまでの暗い顔が一変し太陽のように眩しい笑顔に変わる。

 

 

 

「本当に!!じゃあねっ、ハンバーグ食べたーい」

 

「ほいほい、じゃあ冷蔵庫にはひき肉無かったはずだから買って帰ろうか。あ、士郎は手伝いなさい」

 

「はぁ……。分かったよ、志乃ねぇ」

 

 

 

そんなやり取りをしながら私達は何時のように帰り道を3人で帰るのだった。

 

 

=======

 

 

士郎とイリヤ、そしてセラやリズとで夕食を取り片付けが終わった後、私は何時もの日課である魔術の鍛練をするため郊外にある林に居た。

もちろん、家族にすら自分が魔術使いであることは伝えていないので家で鍛練をするわけにはいかない。

何故か、昔の自分の残滓が家で魔術を行使してはいけないと訴えているのだ。

だから、ランニングすると言って夜の二時間程度ここに来て鍛練を続けているのだ。

 

 

 

同調開始(トレース・オン)

 

 

 

十分に準備体操を終え魔術回路を開く。基礎中の基礎である強化魔術を身体に念入りに施す。

そして、その状態で徒手格闘のシャドーを繰り返す。強化魔術を施した状態で素振りをしているので、腕や脚を振るう度にまるでプロ野球選手が全力でバットを振った様に空気が揺さぶられた音が鳴り響く。

 

 

 

そもそも私は昔の自分の事を殆んど覚えていない。

だけども、受け継いだものは多い。

それは基礎的な魔術の知識であったり、特殊すぎる私固有の投影魔術であったり、それの大本である魔術の最奥である大禁呪。更にはそれを運用する方法。

そして……もっとも重要な事である最強の自分のイメージと自身の完成形。

目指すべき場所が分かっていてそこまでの道のりが示されているのなら少しずつでも進めばいいのだ。

 

 

 

そして、20分程で徒手格闘を一通り終えるとここからが本番だ。

 

 

 

 

投影開始(トレース・オン)

 

 

 

 

私やアーチャーが扱う夫婦剣、干将・莫耶を投影すると両手に馴染みある重みが加わる。

双剣をしっかりと握り締め、振るう内にどんどんと理想の動きと自分の動きが重なっていき、無駄の無い洗練された動きに変わっていく。

無論、イメージするのは完成形であるアーチャーだ。

何せまえの自分は奴の腕を移植されてアイツに侵食されていたのだから手に取るように分かるし、アイツは()()はアイツだ。

今はアイツの動きとの差が無くなる様にするだけ。いずれは追い越してやるけど。

そして、しばらく剣を振るうと腕時計のアラームがなり帰る時刻を告げる。

 

 

 

 

「ふぅ……今日はここまで。さて、帰るとしますか」

 

 

 

=======

 

 

冬木市を二分するように流れる未遠川に掛かる冬木大橋。私は何時もの通り家に戻るのだが普段とは様子が全く違った。

なんと……その上空で二人の魔術師?が激しい戦いを繰り広げていたのだ……。

 

 

 

「………なんでさ。あの格好ってイリヤが好きな魔法少女って奴?そ、そう言う礼装かも知れないけど……。しかも……あの紅い猫耳は凛じゃないか?」

 

 

 

目を強化して何処のバカか確認した私は非常に後悔した。

その正体の片割れが中学まで同級生で卒業と同時にイギリスに留学した遠坂凛。

彼女の趣味とは思えない猫耳装備の紅い魔法少女姿。それさえも個人的には衝撃だったのに自分の容姿に余り関心が無い私でさえ殺意を沸くぐらいスタイルの良い金髪美女(狐耳装備の蒼い魔法少女)と常識はずれの死闘を繰り広げていたら誰だって絶句すると思うんだ。

 

 

 

 

「うん、これは夢だ。そうだ……これは悪い夢なんd……っ?!」

 

 

 

 

友人が魔法少女の格好をしながら殺し合いを繰り広げている現実から目を反らし絶賛現実逃避をしている状況かた私を現実に戻したのは二人が懐から取り出したカード状の礼装だった。

 

 

 

間違えない……私はアイツの腕を移植されていた身だ。そんな私だから断言できる。遠坂が持っていたカードは……

 

 

 

「どうして……どうしてあのカードからアイツの霊基が感じられるんだ……」

 

 

 

 



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