ソードアート・オンラインが半分異世界転生ぽくなったら (黒天使)
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一話 ソードアート・オンライン


今更ですがオーディナルスケール面白かったですね。

個人的感想で出てくるのはどいつもこいつも身体能力ハイスペック過ぎると思いました。


 

2022年11月6日日曜日午前12時50分 パソコンに写っている日付と時間をトントンと指で机を叩きながらせっかちな人のように俺は一時になるのを待っていた。

 

その理由はただ一つ、今日の午後一時に世界初のVRMMORPGである《ソードアート・オンライン》の正式サービスが開始される為である。

2022年の現在、VRの黎明期とも呼べるこの時代に一つの大きな革命とも言えるこのゲームは存在が公表されてからずっとゲーマー達を熱狂させていた。かくいう俺、桐ヶ谷和人もその内の一人なのだが。

《ソードアート・オンライン》、通称《SAO》の情報が徐々に段階的に発表される度にゲーマー達の熱狂は燃え盛る業火のようになっていた。

そんな折に《SAO》のクローズドβテストに参加するテスターの募集が始まった。その募集人数は《ナーヴギア》の初回生産数の約半分の10万人に及んだそうだ。その細く、小さな門を俺が潜り抜けたのは奇跡か僥倖以外の何物でもなく、そして俺はたった1,000人という《SAO》の初回生産数の一割という壁を越え、一足早くその《SAO》の舞台である《浮遊城アインクラッド》に俺は降り立った。

そして、二ヶ月のベータテスト期間が終了し、一から創り上げた《キリト》という本名をモジっただけの安易なネーミングのアバターがリセットされた時、なんとも言えない悲しさに心打ちひしがれたものだ。

 

12時55分、あと五分で正式サービスが開始される。クローズドβテストに合格した特典としてもらった《SAO》の初回生産プロットの購入優先権を使い、届いた《SAO》のデータが詰まったチップを《ナーヴギア》へと挿入する。

そして、仮想現実の世界へと潜る為に自分のベットに仰向けで横になり力を抜く。

 

午後一時を《ナーヴギア》のゴーグル部分に搭載されている電子時計が指したのと同時に。

 

「リンク・スタート…!」

 

と、仮想現実に魂を飛翔させる為の《音声コマンド》を俺は少し、力を込めて吐き出した。

 

その瞬間、視界が急激に青く染まった。俺の頭に装着されている《ナーヴギア》が俺の五感をその内部から発せられる無数の電子信号にリンクさせようとする。一つ一つの項目がクリアされる度にベットの柔らかい感触が消えて無くなっていく。

 

そしてβテスト時代から長年愛用していた、といっても二ヶ月の間だが…最早指が覚える位に使用していたβテスト時代での俺のアカウントのパスワードを打ち込む。

そして最後に《βテストのデータが残っています。使用しますか?》というアナウンスが出現する。勿論、YESの欄を即答で選択する。そして、作業を終えると《WELCOME TO SWORD ART ONRLIN》の文字が大きく表示される。

 

そして光が俺の視界を覆った。

 

その時にまだ、薄っすらと感じていた自室のベットの感触がこれで最後になることを俺はまだ知らない。

 

 

 

 

 





ふう…順調!とは言えないですねぇ〜……どうしたもんか…次からは流石にもう少し長くしたいと思います。

誤字脱字報告、文章の感想よろしくお願いします。そしてもし宜しければお気に入り登録をよろしくお願い致します。


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二話 ゲームが現実になった日


どうも黒天使です。二話は後半部分以外は原作とあまり変わりません。ご了承下さい


 

薄っすらと感じていたベットの感覚が消えるまで感じていた俺はスタリと床に降り立った足の感覚で少しボーッとしていた浮遊感から目が覚めた。

 

胸いっぱいに仮想の空気を吸い込み、心の中で「この世界に帰ってきた」と呟き、まずはβテストと正式サービスの違いを確かめる為にこの《SAO》の最初に降り立つ街である《はじまりの街》というわかり易い名前の広大な街の路地裏にある通常の武器屋と比べて若干の安い価格で武器を販売している店へと足を進めた。

 

パッと見た所、あまり大きな変化は見られない為、恐らくはβテスト時代と同じなのだろう。少なくともこの《はじまりの街》には無いだろう。

 

武器屋へと足を進めていると、いきなり肩を叩かれた。

 

俺はβテストどころか、他のMMORPGですら余り他人と関わった事がない。その為か思わず背中に吊り下げている鞘から剣を抜剣しそうになったが流石にそれは思いとどまった。

 

後ろを振り向いて見た、そこにいたのは赤い髪を下ろしている美形の成人男性のアバター姿だった。MMOである《SAO》は当然、アバター機能を搭載しており、道ですれ違うプレイヤー達の容姿は現実とは違い一から創り上げられた美形の集まりである。それに、声さえも変更できる《ボイスエフェクタ》と呼ばれるシステムを導入している為により深くゲームに入り込む事が出来るのはこの《SAO》だけだろう。

 

「その迷いのない足………兄ちゃん、元βテスターだろ?俺、VRゲーム初めてでさ、ちょいレクチャーしてくれねぇか?」

 

「この通り!」と頭を下げる男を見て俺は、なんとまぁ豪快というか人が良いというか……と、目の前の男のコミュ力に脱帽していた。

 

「あ、ああ……じ、じゃあ武器屋にでも行く?」

 

まるでそこらに突っ立っているNPCかよ、と自虐しながらも俺は目の前の男……《クライン》と出会った。

 

 

「へぶぁ!!」

 

情け無い、声を上げながらクラインが吹っ飛ばされ、地面に突っ伏す。

 

今、俺たちは《浮遊城アインクラッド》の第一層の《圏外》の草原フィールドにいる。あれからクラインの武器選びを終えてから、さらにポーションなどの戦闘アイテムの補給を経て今に至る訳だが………。

 

どうも戦闘の仕方が身につかないのか、はたまた俺のアドバイスが下手くそなのか、クラインは先程から某国民的RPGでいうところのスライムクラスの敵である青いイノシシ、《フレンジーボア》に斬りかかっては吹き飛ばされというのを繰り返している。

 

「くっそー……何で《ソードスキル》がきまんねぇんだ……?」

 

《ソードスキル》とはこのゲームの大きな特徴の一つである。この《SAO》では弓矢や魔法といった遠距離攻撃の代物は全てカットされている。その代わりに搭載されたのが《ソードスキル》である。その数は無数に存在し、通常の攻撃と組み合わせることでかなり多くのバリエーションの戦い方が出来る。クラインはさっき武器屋で《曲刀》選んでいる。《曲刀》はその名の通り、刀身が曲がっている剣の事で、その《ソードスキル》はなかなかにユニークな物もある。

 

「ちがうちがう、もっとシステムに動くことを任せるようにもっとこう……ズバーン!と」

 

数時間前とは違い、だいぶ俺はこのクラインという男とくだけて話す事が出来るようになった。これもこの男の人の良さが成せる業なのだろうか。

 

「ズバーンて、お前なぁ……」

 

呆れ顔で俺を見るとクラインは愛剣を杖代わりにして立ち上がった。それと同時に《フレンジーボア》が再びクラインに向かって突進する。

 

クラインは今度こそと体を下げて、剣を構えた。すると、漸く《曲刀》の初期《ソードスキル》の《リーパー》の初動モーションがシステムに認識され、クラインの剣はオレンジ色のライトエフェクトを描き、青いイノシシに体を引き裂いた。

派手なポリゴンの飛散音が一つ響いた。これがこの世界における《死》である。

 

「お、おお!できた!できたぜ!」

 

「おお、やっとできたな」

 

「おう!これもキリの字のお陰だありがとうな!」

 

この成功が勢いに乗るキッカケになったのかこの後クラインと俺は互いにモンスターを狩りまくり、気づくとレベルがお互いもうそろそろ上がりそうだった。

 

午後一時にログインして、その後直ぐにクラインと出会い気づくともう午後五時半前になっていた。

 

 

「………ふう」

 

お互いに愛剣を鞘にしまいモンスターがポップしない大樹の根の近くに座り込んだ。

 

「結構狩ったな……どうする?俺は一回街に戻って防具とか見て回るけど」

 

「ああ…悪いな俺、五時半にピッツァの予約してるから一回落ちるわ」

 

クラインのそのある意味見事な用意周到さに俺は呆れて、少し笑いが込み上げてきたがどうにか堪えた。

 

「わかった、じゃあ一回別れよう。何かあったら連絡くれ」

 

俺とクラインは互いに狩りを始める前に《フレンド登録》をしていたのた。フレンド登録を行うとそのプレイヤーにメッセージを送れたりするので何かと便利である。

 

「おう、わかった。世話になったなキリの字またな!」

 

「ああ」

 

そしてクラインは《ログアウト》しようと右手を振り、システムメニューを開けた。

 

その間俺は改めてこの風景を眺めていた。アインクラッドは基本的には上から太陽の光が差し込むことはないが、横からの光がよく差し込むように設定されているのか俺の真上や地平線にも思える向こう側には金色の光を浴びて輝く白い雲の流れが漂っていた。

 

サーッと流れる初冬の涼しい風が足元の草を揺らす。俺は改めてこの世界の広大さとこの世界を創造したある一人のゲームプログラマーに偉大な尊敬を抱いた。

 

 

その瞬間だった

 

 

「あれ?……」

 

「どうした?クライン?」

 

 

世界はその在り方を《二度》変えた。

 

 

「《ログアウトボタン》がねぇぞ………」

 

 

「はぁ?」

 

 

 




中途半端ですがここまでです。あまりにも長くなりそうだったので。一回の話の長さはどれぐらいが良いんでしょうね。誤字脱字報告や感想を書くついでに教えてくれると幸いです。

では、また。


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三話 残酷な啓示

どうも黒天使です。最近ひたすらキングダムハーツをしているせいか常に眠いです。


「そんな訳ないだろ、ちゃんと探してみたか?」

 

右手を振ると出現するシステムメニューの一番下に《ログアウト》のコマンドが存在し、本来ならそれを押すことで即ログアウト出来るのだが………。

 

「ホントだって!お前も見てみろよ」

 

そんなバカな…と疑いながら右手を振り、俺もクラインと同じシステムメニューを開ける。一番左上に名前の英語表記、その下にアイテムやオプションメニューなどが連なり、その右側には今の自分のステータスが表示されている。そして左側の一番下には《ログアウトボタン》が………

 

「……………」

 

 

無い

 

 

「な、無いだろ?」

 

「確かにな……」

 

「はぁ〜何かのバグか?キリの字よぉ〜ベータテストの時もこんなのあったのか?」

 

クラインの言葉を聞き、βテストの時の記憶をほじくり倒してみる。が、しかし幾ら記憶をほじくり倒してもバグのバの字も出てこない。それほどこの《SAO》の基礎プログラムの性能は凄まじい。その証拠にβテストの時点でバグが存在しなかったのだから。

 

「……いや、俺の知っている限りじゃあバグの一つも聞いたことがないな」

 

「マジかぁ……ったくよぉ…サービス初日にこんなポカやってたら運営も涙目だわな」

 

クラインの運営という単語を聞き、ある事をクラインへと聞いてみた。

 

「GMコールしてみたか?」

 

GMコールとは非常時にプレイヤーが運営に連絡できる唯一の手段である。今、現在殆どのプレイヤー達が恐らく《ログアウトボタン》が消滅していることに気がついているだろう。運営には今頃コールが殺到し、対応しようとしている筈だ。

 

「コールしたけど、何も反応無いんだよ」

 

「そういえば、そんな呑気してて良いのか?ピザ頼んでるんだろ?」

 

すると、クラインは何とも情けない表情になり

 

「あ、ああ!そ、そうだった!お、オレ様のピッツァとジンジャーエールがぁぁ!!?」

 

大袈裟に崩れ去るクラインを内心で合唱してから俺は改めてこの騒ぎが致命傷どころでは無いことについて考えていた。この《SAO》というゲームはVRMMORPGというジャンルの最前線に位置することになるゲームで、運営だって実質のログアウト不可の今の状況を想定していないハズが…

 

「くっそー!オレ様のピッツァがぁぁぁ!アンチョビがぁぁぁ!!」

 

俺の隣でアンチョビピッツァとジンジャーエールへと愛のコールを捧げているクラインを横目に俺はある仮定を立てた。

 

そうだ、こんなバグあり得ない。あってはならないハズなのだ、それにこの世界を創った会社の《アーガス》にはあの天才もいるのだ、こんなバグが発生する訳は無い。

 

開発者の意志が無ければ

 

そこまで辿り着いた時決してこの仮想の肉体には流れるはずが無い冷や汗が流れた気がした。いや、もしかしたら現実の俺の体に流れているのかもしれない。

 

その時だった

 

 

突然視界が青く染まり出した。その青い光は俺を囲うように輝き、その光の中には白い粒子が舞っていた。

 

この現象には覚えがある。βテスト時代に何度も経験した《転移》だ。しかし、俺は今《転移》アイテムを使っていない。クラインの方を振り返るとクラインにも同様の現象が発生していた。だんだんと青い光が濃くなっていき、周りの風の音や景色がシャットアウトされた。

 

 

 

厚い光のヴェールが薄れていくと俺の耳に人の声が聞こえてきた。その声の出どころは先程までクラインといた《はじまりの街》の中央広場だ。

 

俺たち二人が…いや、一万人のプレイヤーが《転移》された場所はその《はじまりの街》の中央広場だった。円錐を削ったような形をしている《アインクラッド》は勿論、下の層ほど広い設計なため、この第一層の最も広いこの《はじまりの街》がアインクラッドの中で最も大きい街となる。その広さは相変わらずのデカさで、中央広場に一万人がスッポリと入ってしまう。

 

草原の草では無く、石畳の床に街路樹、《SAO》にありがちな中世的な建物にその奥には巨大な黒光りする宮殿が見える。「どうなっているんだ」「GM出てこーい!」等、GMへの文句を垂れるプレイヤーが多かったが、俺たち二人は、は?と口を開けていた。

 

 

転移してから十数秒、突然耳が張り裂けそうになる程の大ボリュームの鐘の音が鳴り響いた。リンゴーン、リンゴーンと鳴り響くその音にプレイヤー達は皆、意識を音に向ける。

 

その時だった、スカイブルーの色をした仮想の空の色がクリムゾンの色に変わった。それと同時にプレイヤー達の上空、約5メートルあたりに黒い渦巻きが現れた。渦巻きは次第に形を成していき、形成されていく。ボロボロの巨大な赤いローブがまず出現した。しかし、その赤いローブには中身の体が入っておらず、思わずその威圧感に圧倒された。形を成したローブの先に白い手袋が両手分、同時に出現した。

 

これではまるで赤い死神だ。そして、その死神の口にあたる部分から衝撃的な発言がなされた。

 

 

『諸君、私の世界へようこそ』

 

その言葉の意味は少なくとも俺は直ぐには分からなかった。どういうことだ、と内心で呟き続ける。

 

『私の名前は茅場晶彦、この世界をコントロール出来る唯一の人物だ』

 

 

それを聞き、ここにいるほぼ全てのプレイヤー達が驚愕した。

 

 

茅場晶彦ーー数多く存在する弱小ゲーム会社の《アーガス》を最大手まで大きくのし上らせた若き天才ゲームプログラマーであり、《ナーヴギア》の基礎設計者、《SAO》の開発ディレクターでもある。

 

俺は一人のゲーマーとして茅場晶彦には密かな憧れを抱いていた。茅場が出ている番組は現在までずっと録画してあるし、雑誌の中のインタビューなどは暗記するほど繰り返し読んだ。

 

そんな男がーーこの《SAO》の創始者がどうしてーー

 

『まずは、ここにいるプレイヤー達に告げる。諸君らはもうすでにメインメニューから《ログアウトボタン》が消滅している事に気がついている事だろう。しかし、それはこの《ソードアート・オンライン》の仕様である。繰り返す、《ソードアート・オンライン》の本来の仕様である。』

 

 

そこでようやくどよめきの声が上がる。横にいるクラインも

 

「し、仕様だと……」と開けていた口をどうにか動かして発していた。

 

滑らかなその低音アナウンスの声は淡々と驚く事を口にしていく。

 

 

『諸君は今後、この城の頂を極め、攻略するまではログアウトできない。』

 

 

頂ーーその言葉を聞いて俺は辺りを見回した。城なんて何処にも無いじゃないか……。

 

 

『また、外部からのナーヴギアの停止などもあり得ない。もし、外部からの干渉を受けた場合。または諸君のヒットポイントが0になった時ーー』

 

 

その次の言葉が一番プレイヤー達を絶望へと落とし込んだ。

 

 

『ナーヴギアの信号素子から放たれる高出力マイクロウェーブにより、諸君らの脳を破壊するーーー』

 

クラインと俺は思わず情けなく開けた口を気にせず向かい合った。

 

その言葉には最早狂気…などという言葉では当てはまらないほどの何処か金属的な冷たさを帯びていた。

 

「は、はは…何言ってんだ……そんなことできる筈ねぇだろ……ナーヴギアはただのゲーム機だ!そうだろ……キリの字……」

 

後半は掠れた声だった。クラインは縋るような目で俺を見てきた。が、クラインの望むような答えを出すことは出来なさそうだ。ナーヴギアは信号素子から発せられる微弱な電磁波で脳細胞そのものに擬似的感覚を与えるというウルトラテクノロジーなのだ。それだけを聞くとナーヴギアを凄いと感じるが、実際にはナーヴギアは身近にあるモノのある原理が元になっている。

 

それは電子レンジだ。つまり充分な出力さえあればナーヴギアは俺たちの脳細胞中の水分を利用し、摩擦熱により脳を蒸し焼きにして焼き殺すことはできる。

 

「原理的には出来ないことも無い……けど、あり得ない。ナーヴギアの電源コードを引き抜けばそんな高出力のマイクロウェーブなんて出せない筈だ……大容量のバッテリーでも無い…限り…」

 

クラインと同じ、掠れた声で俺も必死にこれがハッタリだと言い切ろうとしたが、自分の言葉で気づいたことに今日何度目か、再び絶句した。

 

「内臓……してるぜ…!ナーヴギアの重さの三割型はバッテリセルだってナーヴギアの取説に書いてた……でも、でもよう!なんで、なんでこんな……」

 

全プレイヤーが思っているだろう疑問に対し、茅場晶彦を名乗る赤い死神は即答した。

 

『諸君らは今、こう考えている。茅場晶彦は何故こんなことをするのだろうと。身代金目当ての凶悪なテロか、何かなのかと。』

 

一拍間を置いて、その軋んだような低い声で死神は言い切った。

 

『それは、違う。私は自ら創造したこの世界を観察するためにナーヴギアを創り、《SAO》を創り上げた……よって、私の目的は既に達せられている。』

 

 

「観察だと………」

 

思わず呟いてしまう。そんな事の為にあの男は仮想世界を創り上げたというのか………。これまで抱いていた茅場晶彦への憧れと尊敬が音を立てて崩れ、チリとなって消えた。

 

『諸君らの脳の破壊プログラムの具体的な条件は、二時間以上のネットワーク回路の切断。十分以上の外部電源切断、ナーヴギアのロック解除、及び、ナーヴギアの本体の分解、破壊。そして、諸君らのヒットポイントが0になる。以上の条件の内、いずれかでも当てはまった時。破壊シークエンスは執行される。』

 

『そして、よく覚えておいてほしい。これはもうただのゲームでは無い。諸君らにとってこの《ソードアート・オンライン》はもう一つの現実である。』

 

---------現実

 

先程、茅場晶彦が言った『この城の頂ーー』というのは間違いなく百層あるこのアインクラッドのことだ。五、六時間前まで、母の作った昼飯を食べて、妹と短い会話をし、母と妹二人に「行ってらっしゃい」と言われてこの世界に来た。

 

 

その二人ともう会えない?

 

この城を極めるまで?

 

 

そう認識した途端、自分の現実世界がどんどん遠くなっていくような浮遊感に襲われた。

 

 

『最後に、私から諸君らにプレゼントをしよう。これはこのよう世界が現実だということを実感させてくれるだろう。』

 

 

茅場の言葉が終わると同時に俺は無意識に右手を振っていた。周りのプレイヤー達、クラインも同じのようで。一万人分のサウンド音が鳴り響く。メインメニューが開き、見慣れたウインドウが目に入る。

 

そして、その無意識のまま……いや、これはこの世界の神たる茅場晶彦がアバターを操っているため無意識ではないのだが。

 

その右手が《アイテムウインドウ》の所へと運ばれ、タップする。

 

 

「?なんだこれ」

 

その中には、先程クラインと狩りをしていた《フレンジーボア》の肉と皮。そしてポーションなどの戦闘アイテムなどが並んでいるが、その一番上に《手鏡》という謎のアイテムが出現していた。

 

その《手鏡》をオブジェクト化させる。そこには紫色の縁で囲まれたシンプルな丸型の鏡だった。

 

「…………」

 

おそるおそる鏡を覗き込んでみる。そこに映るのは俺が必死で考えぬいた美青年アバターの顔だけだ。

 

「?」

 

 

何も起こらないかと思い、横のクラインに話しかけようとした、するとその隣のクラインを鏡から発せられた光が包んだ。

 

慌てて、クラインに声をかけようとしたが俺も鏡の光に包まれた。

 

 

 

一万人もの光が《はじまりの街》の中央広場を埋め尽くし、晴れていくと再び鏡と顔が向き合う。その時俺が目にしたのは、先程までの俺のアバターの超美青年………ではなかった。

 

齢14の俺が未だに姉妹に間違われ、コンプレックスの一つである中性的な顔が写り込んで来た。

 

 

「うお、俺じゃん……」

 

 

それは紛れも無い、現実世界の《桐ヶ谷和人》の顔だった。

 

《ボイスエフェクト》が無くなり、自分の声まで先程とは大きく違ったがそれに気付か無いほど驚愕していた。

 

手から《手鏡》が滑り落ち、ポリゴンの粒子となって消えた。

 

 

周りを見回すとそこに居たのは、美男美女だらけのアバター達ではなかった。平均的な横幅が広くなり、何と男女比まで大きく変化していた。

 

 

「……!クライン!どこだ!」

 

「……!キリト!どこだー!」

 

 

綺麗にハモったその声の主である俺とクラインは声の相方の方へと首を向ける。

 

そこに居たクラインはバンダナがさっきより似合ってるんじゃないかと思うぐらいの山賊じみた顔をしていた。

 

 

「お前がクラインか!?」 「オメェがキリトか!?」

 

お互いを見合い、驚愕した。

 

それにしても信じられないほどの再現度である。まるでスキャンにでもかけたような……

 

 

スキャンーー

 

 

「!そうか……《ナーヴギア》は頭を丸々覆ってるからこんなことが……」

 

俺がこの再現度の理由に気づくと、今度はクラインがまた一つ疑問を出してきた。

 

「で、でもよう……体つきとかはどうすんだよ。」

 

 

虚を突かれた。確かに顔の再現には納得できるが、体つきに関してはどうしようもできないはずだ。

 

そんな疑問を解決したのは意外にも、疑問を投げつけたクラインだった。

 

「ん?まてよ……オレェ《ナーヴギア》買ったの最近だから覚えてる……最初にダイブする時…き、キャリブレーション?だっけ?それでやたら体をベタベタ触らされた……もしかして、アレか?」

 

「ああ……なるほど。」

 

《キャリブレーション》とはつまり《どれだけ手を動かしたら体に触れるのか》を測る設定のこと。その設定は《現実の体の体格をデータ化する》ことに等しい。

 

「現実……」

 

わざわざ現実の顔や体格を再現したのは茅場晶彦からの啓示だ。

 

《この世界は既にゲームでは無く。もう一つの現実である》という

 

残酷な啓示

 

 

『………以上で《ソードアート・オンライン》の正式チュートリアルを終了すr……』

 

 

その時だった。

 

 

突然、《はじまりの街》の風景が色とりどりのポリゴンのカケラへと変わり始めた。

 

「なっ!」

 

信じられないほどの速さでカケラとなり、朽ちていく。

 

 

《はじまりの街》どころか空までがバラバラとガラスのように砕け散り、残った闇へと消えていく。

 

その闇は俺たちプレイヤーがいる《中央広場》をジワジワと追い込むようにして迫っている。

 

「……くそっ……」

 

悪態を一つ吐く。寧ろ悪態一つで閉じた自分の口を褒めたい。

 

プレイヤー達はこの突然発生した現象に恐れ、悲鳴と怒号、泣き声をあげている。

 

隣にいるクラインは口と目をこれでもかと開けて、絶望していた。

 

そして等々、闇がプレイヤー達のいる所の空間を侵略して来た。

 

 

次々とプレイヤー達が巨大な大落とし穴のような闇に溺れていく。

 

 

そして、俺も……………

 

 

 

 

 

溺れる寸前、クラインが必死に伸ばしていた手に掴まろうとしたが。

 

 

 

 

まるで神様に「終わりだよ」と言われたように俺の手は、虚しく空を切った。

 

 

 

ーーーー消えていく。

 

 

 

 

 

 




投稿遅れてごめんなさいm(_ _)m

理由は新しい生活になって諸々忙しかった為です。

これからはこんなこと無いようにします。

次回、オリ主がでます。多分。

誤字脱字報告、感想よろしくお願いいたします。


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四話 現実





 

沈んでどれぐらい経ったのだろう。

 

ーー何も見えない。

 

目を開けても映るのは暗闇だけだ。

 

「……………」

 

海に溺れたような浮遊感だけが今の俺の意識を繋ぎとめていた。

 

一体いつまで………

 

そう思ったその時。

 

「?」

 

どこか懐かしい感覚を覚えた。その感覚に惹かれるように体が軌道修正されて滑り込むように沈む。

 

約100メートル程沈むと、まだ胸当てしかしていない為、インナーの背にヒンヤリとしたガラスのような物に当たる。

 

「………………」

 

不思議とこうやって仰向けになって寝転んでいるだけで、先程までの《茅場晶彦》からの理不尽で残酷な啓示に対する怒りや、それに対しての泣きそうになるこの締め付けられるような苦しみが熱を引いて落ち着いていく。

 

 

このまま、闇に溶けるのもいいかもしれない。

 

 

しかし、そうは問屋かおろさないようで。俺の背についていた透明な床が正体を表すように光輝く。その光り方は花が咲くようだった。

 

光が収まり、咄嗟に閉じていた仮想の瞼をゆっくりと、目がくらまないように開ける。

 

立ち上がり、自分が立っている場所が現実性のカケラも無いことに驚いた。

 

分かりやすく言うならばーー宇宙空間のような暗闇に平行に浮いている蓋が無い筒の上に立っている。と言えばいいのだろうか。

 

立っている地面はステンドグラスのように光輝いている、半径100メートル程の円形で、仄かな光が暗闇を優しく照らしてくれている。

 

「………………」

 

ボーッと立ち尽くしていると突然に俺の前方に緑色の0と1の二つの数字が大量に出現し、何かを形作るようにうごめいた。

 

「!!」

 

驚く、俺を他所に0と1が円柱状にまとまり始め、何かを形作った。

 

それは……ヒトだった。

 

といっても下顎あたりまであるジッパー付きの大きな黒いコートを体つきを隠すように着込んで、更には同色のフードを深く被っているため顔が全く見えない。

 

「…………誰だ、アンタ。」

 

 

男性か女性かもわからないその《謎の人物》に対して俺の脳内が赤信号のランプをチカチカさせている。

 

 

ー何故、お前なんだ。

 

 

不思議な感覚だった。その《謎の人物》から発せられたであろう声は、声というより耳を通って伝わるモノでは無く、まるで頭に直接響くようなノイズだった。

 

男性と女性の声が混じっているようなそのノイズでは、ますます目の前の人物が男か女かわからなくなる。

 

「………何をいってる。アンタが俺をここに?」

 

その質問はビンゴらしく

 

ー……君は知らなければならない

 

ー……闇を知らなければならなかった

 

何をいってるんだコイツは、と率直な感想を胸の中に留めているとまたまた突然、目の前の人物の右手が黒い一筋の光が一瞬迸る。そこには黒と紫の二色で彩られた片手剣が握られていた。

 

そして、今度は剣を握っている右手では無く左手を上げる。

 

すると、今度は俺の右手に白い閃光がさっきの黒い剣と同じように一瞬の閃光を迸りながらジェネレートされた。

 

俺は目を見開き、その片手剣を見る。デザインや色の配色の仕方は目の前の人物の剣と全く同じだ。しかし、あの黒い剣とは違い白と青という正反対の明るい色があしらわれている。

 

あの黒い剣が闇ならこの白い剣は光と言えるくらいの正反対な二本の剣が向かい合う。

 

ーーー教えてくれ……君が選ばれた訳を

 

 

黒コートが腰を下げた、その構えはβテスト時代に散々見せつけさせられた対人戦のデュエルでの構えだった。片手剣の構えは腰を中腰の姿勢に落とし、剣を相手の方へ切っ先を向けるというのが理想だ。

 

その構えから一気に俺との距離をなくしてくる。

 

「うっ……」

 

一瞬、その勢いに怯んでしまったがβテスト時代に何度もデュエルをしていたお陰か半自動的に右腕が動き剣と剣を交差させる。

 

剣がぶつかり合った瞬間、弾けるような金属音が耳を通り抜ける。

 

火花が視界を覆い、黒コートの姿を隠す。火花が消えると黒コートは俺の視界から消えていた。

 

「っ……」

 

どこだ……。

 

辺りを見渡しても何処にもあの摩訶不思議な雰囲気は消滅していた。

 

「…………………」

 

思わず言葉と思考が停止した。それは何が何だか分からない異常な事態が余りにも多く発生し、うるさく騒いでいたのが突然静けさを取り戻したからだろう。ここまでこの時の事を思い出し、冷静に考える事が出来たのはかなり後の事だ。

 

 

……………ト

 

何処からか声が聞こえた。

 

耳を澄まして聞いてみる。

 

 

………リト……!

 

………キリト……!

 

「!クライン!」

 

この世界に来て初めて出来た友の名前を叫ぶと俺の意識は暖かいひかりに包まれ、急速に飛翔した。

 

 

 

 

…………ト

 

 

………リト

 

 

………キリト…!

 

 

 

胃がかき混ぜられるような不快な感覚で意識が無理矢理起こされた。

 

14年間生きていて最悪の覚醒だった。

 

不快な感覚のせいだろうか目を開けてもどうにも視界がぼやけてしまう。

 

 

「おい!キリト!お前いい加減に起きろ!」

 

 

そのヤケにデカイ声と一緒にぼやけていた視界が晴れていく。

 

無精髭が生えた山賊のような顔ーークラインの顔だった。

 

 

「クライン!」

 

俺は思わず感極まって思い切り体を起こし上げた。

 

後々思い出すとまるで漫画の様に俺とクラインは頭を思い切りーー

 

「へぶわぁ!!」

 

「ぶっ!!」

 

ーーぶつけた。

 

 

「いっつ……」

 

ポリゴンで出来たアバターは石頭なのだろうか?頭の芯を貫く様な衝撃が先程まで残っていた不快な感覚が吹き飛んだ。

 

「ってぇ………キリトてめぇ……めっちゃ元気じゃねぇか……」

 

「悪かったな……。!クライン、茅場は!?」

 

「まぁまぁ、落ち着けよ…説明してやっから」

 

 

クラインから語られたのは驚きを与える話というより摩訶不思議、という話だった。

 

 

茅場晶彦を名乗る死神のアバターによる《ソードアート・オンライン》の正式チュートリアル終了が宣言された際にこの《アインクラッド》を襲った後に《侵食》と呼ばれる現象。その《侵食》はこの世界に存在している一万人の全てのプレイヤーを襲った。

 

一万人のプレイヤーは全員揃って気を失っていたらしい。クラインは他のプレイヤーより起きるのが遅かった俺をひたすらさっきまで起こし続けてくれてたらしい。

 

プレイヤー達の意識が戻った時には死神アバターは既に消えていたらしい。

 

 

「…………………」

 

 

周りを見回すと多くのプレイヤー達が茅場晶彦に対する怒りや『ここから出せ!』などの大声が山彦の様に響いている。

 

……………何か大事な事を忘れている気がした。しかし、今はそれどころでは無いと、自分に言い聞かせた。

 

「……………クライン、俺は今から次の街に行く。お前はどうする?」

 

「お、俺は…………」

 

まだ状況に頭が混乱しているクライン。さっきから目の焦点や手がメチャメチャに動いている。

 

…………俺も混乱しているはずなのだが自分でも怖いくらいに冷静だ。不思議と冷静な事に感謝し、俺は慌てふためくクラインの肩に手を置いた。

 

「…落ち着いて聞いてくれ、MMOってのはプレイヤー同士のリソースの奪い合いなんだ、もしも、茅場の話が全てが本当なら直ぐに他のプレイヤーがリソースを奪おうとそこらじゅうのモブを狩ろうとするだろう。だから俺と一緒に来い。」

 

「………俺にゃあ徹夜まで一緒にしてナーヴギアとゲームを買った、ダチがいるんだ…さっきアイテム買いに行く時にいったろ……」

 

「……………そっか……」

 

このクラインというプレイヤーと何時間か接していて分かった。この男は初対面の俺にとても人懐っこく話しかけ、優しく接してくれた。彼は面倒見が良く人ができている。

 

本音はもちろんクラインの友人達も一緒にこの街から連れ出してやりたかった。しかし、いくらβテスターだからといってこの数をカバーして次の街へ連れて行くのはいくらなんでも無理がある。

 

そんな俺の心中を察してくれたのだろう。クラインはニッと笑いながら優しく言ってくれた。

 

「わあってるよ。どっからどう見ても年下のお前にそこまで頼る訳にはいかねぇよ。これでも昔はギルドの頭張ってたんだ、お前から教わったテクだけでどうにでもしてみせらぁ。だからお前は一人で次の街に行ってくれ」

 

「………わかった。何かあればメッセージ飛ばしてくれ、すぐ行く」

 

「おう、色々ありがとな。………ほら早く行け、またな」

 

「ああ……」

 

この世界での唯一の友に背を向けて俺は街の出口ーー《圏外》への道を歩き出す。

 

「……!キリト!」

 

呼ばれて振り返る

 

「お前案外カワイイ顔してんのな!俺の好みだ!」

 

「っ!お前もその山賊顔の方が100倍似合ってるよ!」

 

腕を振り上げ、別れを告げると俺は今度こそ出口へ向けて足を早めに運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街を出て直ぐに俺の眼前で狼型のモンスターがポップした。青黒い毛色のその狼は俺へと《ヘイト》を向けて牙を向けてくる。

 

………あの白銀のように輝く鋭い牙に噛み付かれ、ポリゴンでできているこの仮初めの体が砕けたその瞬間俺の命は終わる?

 

………ふざけやがって…!

 

今更込み上げてきた怒りを背中に背負っている《スモールソード》と駆け出すための右足にこめる。

 

それと同時に狼型モンスターがこちらに向かって疾走してくる。

 

「…!!」

 

俺と狼型モンスターの距離がゼロに近づいてくる。

 

その距離が10メートル辺りに迫ったその時、勢い良く《スモールソード》を火花を散らしながら引き抜く。

 

後5メートル

 

剣を握っている右手のフォームを整える。白色の刀身が水色に輝き出す。

 

「……っ!!!」

 

狼型のモンスター《ワーウルフ》の急所である喉元に向けて片手剣ソードスキル《スラント》を叩き込む。

 

右斜めに振り下ろされた水色の閃光が《ワーウルフ》喉をすれ違い様に切り裂く。

 

それと同時に攻撃されたのか鈍い痛みが俺をーーーー

 

痛み……?

 

それに気づいた時だった

 

やけに耳障りで明らかに1オクターブ高い声が響いてきた。聞いた瞬間にわかる。これは断末魔だ。β時代からこのモンスターの断末魔なんて何度も聞いている、だからこそ俺はこの違和感を覚えることが出来た。《リアリティが高すぎる》そんな気がしたのだ。

 

違和感を確かめようと振り向いた時、剣を持っていた右手がやけに暖かく感じた。

 

生暖かい右手に視線をやる。そこにはダメージエフェクトとして発生する赤いポリゴンの液体が被っていた。が、一部分だけがどこからどう見てもーーーー紛れも無い本物の血液が付着していた。

 

思わず地面に勢いよく尻餅をつくように後ろに倒れ込む。

 

が、血液だった部分はすぐにポリゴンの液体に変化していき、そして右手に残った生暖かい感触が消えた。

 

「………………」

 

クラインと一緒に《ゲームだった》この世界で狩りをしていた時と変わらない夕日が俺の体を照らし始める。

 

その夕日は美しいというよりはプレイヤー達を見下すように見えた。

 

首筋を冷や汗が流れる。冷や汗など仮想世界では決して流れることは無い。それらの事から俺はこの世界が最早《茅場晶彦》の想定の範囲外で、何かもっと大きな意思のようなものが《茅場晶彦》さえも見下しているような気がした。

 

2022年11月6日、この世界はただの《仮想世界》でも《茅場晶彦》が作ろうとしたデスゲームでもない。一万人のプレイヤーたちの《新たな現実》となった。

 

 

 

 

 





遅れてしまい申し訳ございません。さまざまな事情でかなり遅れてしまいました。今後はこのようなことが無いように努力したいと思います。


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五話 機関

本来、どのMMORPGでも普通はリリースからある程度の年月が経つといくつかのグループにプレイヤー達を分けることが出来るように出来ている。

 

が、このSAOでは別である。その事実が分かったのは《茅場晶彦》がデスゲームを宣言してすぐだった。

 

ゲームでの死=現実での死という突然で、残酷なルールの啓示があの赤い死神から下されて僅か数十分、そのルールに絶望、困惑したプレイヤー達の一部が叫びながら有ろうかとか安全圏である《圏内》から地獄と化した《圏外》へと激走。

 

当然それを見逃せず逃げ出したプレイヤー達を街へと連れ戻しにそれなりの人数の善良なプレイヤーが後を追って行った。

 

が、しかしそこでプレイヤー達が見たのは正に地獄絵図であった。

 

 

この《ソードアート・オンライン》は最先端の技術と狂気の天才《茅場晶彦》という世界に誇る開発者と技術が組み合わさって誕生した限りなく《リアル》に近い《仮想世界》だがそれでも、かなり現実である生理現象などの様々な物が排除されている。

 

例えば《圏外》に《PoP》するモンスター達の唾液や血液である。

 

モンスター達の血液はよく見たら赤い網目のあるしゅん色の液体だし、唾液は出てきた途端にポリゴンのカケラとなって蒸発する様に消えていく。これは勿論プレイヤーにも当てはまる。

 

が、一層でプレイヤー達が見たのは狼の様な野獣達が先に逃げ出したプレイヤー達を漫画でしか見た事ない様な《本当の血液》を辺りにばら撒きながらプレイヤー達の肉を貪り合うモンスター達だった。

 

それはもう仮想現実でできることのラインを大きく超えていた。

 

《人がモンスターに喰われた》

 

この情報はある情報屋の協力もあり瞬く間に《はじまりの街》全体に広まった。

 

そして、ゲーム開始から約一ヶ月、その間に約2500人が死亡し、その名前に横線が入れられた。

 

が、人間というのはそんな絶望な状況下の世界でも徐々に慣れていくもので、ある程度、この世界の異変についての情報も纏まっていった。

 

そして、遂に第一層のボスが攻略された。そしてそのボス攻略の結果一名のプレイヤーが死亡。更に一人のプレイヤーの発言によりある造語が生まれた。ベーターテスターにチーターを足した《ビーター》。

 

彼等の存在はこの後にもプレイヤー達に忌み嫌われる事になる。

 

第一層が攻略されて以来、はじまりの街に篭っていたプレイヤー達の大部分が攻略組に鼓舞される様に圏外へ飛び出した。

 

それでもなお、はじまりの街には2000のプレイヤーが怯え、居座っていた。

 

ゲーム開始から一年。今現在、攻略組の中で一つ、大きな悩みの種が存在している。

 

攻略組の役目の一つとして《オレンジプレイヤー》。いわゆる犯罪行為を犯したプレイヤー達の《黒鉄宮》収監があり、犯罪行為を犯したギルドの《オレンジギルド》も同義である。

 

 

が、ここ最近。そのオレンジギルドを攻略組より先に潰して回っている集団がいる。

 

その集団が複数の《集団》だと分かったのもかなり最近で、分かっているのは複数の、それもかなり少数。そしてメンバーの全員がかなりの実力者という事だけだ。

 

彼らの存在は中層プレイヤー辺りから広まってはいたが、攻略組が手こずるレベルの《オレンジギルド》に手を出し始めたことから、攻略組を超えるレベルの情報収集能力や実力があると判断され《集団》から《機関》と呼ばれるようになり、オレンジ達からは死神扱いされる程にその名を一瞬にしてアインクラッド中に広めた。

 

2023年11月6日

 

ゲーム開始から一年が経った節目の日。《圏内の迷宮区》と言われている《アインクラッド第十層》の主街地である《アルト》の路地裏。

 

路地裏といっても街全体の五割以上を占めているため、路地裏というよりはテーマパークにある巨大迷路に近いものである。

 

巨大すぎる路地裏のお陰で街の居住スペースは路地裏と店などに潰され、かなり少ない。ので、この街に住んでいるプレイヤーは数十人程度の物で、静かな街となっている。

 

そして、街の端から何重もの壁になっている路地裏のある一点に黒い人影が。

 

先程述べた《機関》の実質的なリーダーであり、この異世界の中でも《死神》と恐れられ、《アインクラッド》を時折騒がす原因であるプレイヤー《red》、《レッド》

 

もう既に空こそはまだ暗闇だが、あと一時間もすればその暗闇に薄っすらと夜明けの光が刺そうかと時間に彼はふらりと《帰ってきた》

 

「………………」

 

彼が赤土色のレンガ造りの壁を撫でる。そして、ある一つのレンガに触れたその時、触れられたレンガを中心に人一人分の四角い入り口のようなものが組み立てられた。

 

レッドは《索敵スキル》を使い周りに誰もいない事を確認し、黒い入り口へと消えていった。

 

そして入り口を抜けると同時に入り口がたちまち閉じていく。

 

目の前にはこんな一日中薄暗い場所には不釣り合いな二階建ての建物が見えている。

 

一階の入り口にはお帰り、と言われているような淡いオレンジ色の光が灯っているランプが木製の茶色いドアに吊り下げられている。

 

ドアを開けると優しい波の音のような鈴の音が優しく耳に入ってくる。

 

一階が喫茶店、そして二階が居住スペースというこの異世界ではかなり珍しい物件。たまたま《弟》が隠しスイッチのようなあのレンガを見つけた時は幼馴染二人がギャーギャーはしゃぎ、弟の頭をくしゃくしゃと撫でていたものだ。

 

カウンター内への仕切りを軽く手で引いて通る。キィという音が鳴り、一瞬不快な気持ちになるがそれよりも早く寝たいという欲求に負けて二階への扉を通り、階段を上がる。

 

自分の部屋に戻るべく廊下を歩いていると、一つの部屋に薄っすらと灯りが灯っている事に気がついた。

 

その部屋のドアノブをゆっくり回して開ける。

 

その部屋の中身は至極薄っぺらい物で茶色のクッションがひかれた木製の椅子と机、それにベッドの三つ以外にはクローゼット程度しかなく、酷く殺風景になっている。

 

机の上の灯りによってしゅん色に光っている白い髪の持ち主に近づく。

 

「………うん……む…」

 

その持ち主はいい夢でも見てるのだろうか、時折はにかみながらこちらが気が抜けるほど心地よく寝ている。

 

……少し呆れながらも起こさないように寝ている《弟》をゆっくり横抱きにしてベッドに置く。

 

「………んにゅ……」

 

弟を寝かせていると薄っすらとだが窓から仄かな明かりが見える。

 

そろそろ寝なければ自分が机に突っ伏して寝ることになってしまう。

 

レッドはドアノブを開けた時よりもやや早足でこの部屋とあまり変わらない殺風景な自分の部屋に戻り、ジッパー式の黒コートをクローゼットに戻し、明日……というよりは今日の《以来》に備え、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると自分がベッドにいる事に少し戸惑った。自分の昨日の記憶は風呂上がりに机に座り、何か新しい食材の活かし方や料理レシピが無いか考えて、考えて、あともう少しで何か出てきそうな所でプッツリ消えている。

 

誰かが……いや、自分の《義兄》が移してくれたのだろう。

 

「……話したかったな………」

 

《義兄》とは昼夜逆転のスケジュールなためほとんど話すことができない。それはとても寂しくてたまらないが、《義兄》は自分の店の食材費用や生活費のために依頼に奔走してくれているのだ、我儘を言ってはいられない。

 

「………はぁ…」

 

感謝とそれとはまた違う何か別の感情が混ざり合いモヤモヤとした気持ちになり、吐き出すようにため息を吐く。

 

ため息を吐くと今度は何故か少しイラつきに似た何かが渦巻き始めた。

 

「………兄さんのバカ……」

 

八つ当たり気味に今はぐっすり寝てるであろう兄に対して思わず飛び出した愚痴。そしてそのまま《ライキ》はふて寝を………

 

 

ライキーー!起きろー!

 

 

……………もう一人の義兄がドア越しでも鼓膜に響く声で怒鳴り起こしてきた。

 

……ああ、もう!

 

ゲーム開始から一年の日が終わり、その翌日の朝は《機関員》ライキにとってとても憂鬱な目覚めになった。

 

 

 

 



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六話 キッカケ

上を見上げると灰色の巨大な円盤の様で蓋にも見える上の層の地面が自分を見下ろしている。

 

「………………」

 

最近、こうして自分の店の屋根の上で空を見上げる日が増えた。

 

「………」

 

目を閉じてみると得体の知れない漠然とした何かが襲いかかってくる。

 

一体自分はいつからこんなに孤独に弱くなったのだろう。

 

いや、もともと弱かったのかもしれない。

 

常に自分の周りには二人の義兄と一人の義姉がいた。

 

緑の義兄はいつも軽く、チャラチャラしているが実は一番頭のキレが良い。

 

青の義姉はサバサバとあっさりしているがよく自分を甘えさせてくれた。

 

赤の義兄は……常に無口で無表情でこの《SAO》だった世界でも現実でも変わらず、突然フラッと何処かへと何日も消えて、また突然フラッと帰ってくる。

 

そのため一緒にいる時間は三人の中でも一番短いはずだが、一緒にいて一番安心して、一番好きな人でもあった。

 

まだ年がギリギリ一桁の時にそれを緑の義兄に言うと「拾われたヒナかよw」と笑われた。

 

だが実際、行き場のない《孤独》と言う名の籠から鍵を開けてくれたのはその赤い義兄なのだ。

 

つい最近、その義兄が帰ってきてくれた時は自分でも恥ずかしくなるぐらいベッタリだった。

 

最新の情報記事をスライドさせながら見ていた義兄の肩に頭を乗せていた。そして眠気を加速させるように時々頭を撫でてくれていた。

 

そして眼が覚めると義兄がいたソファーで寝ていて、義兄はまた消えていた。

 

「…………」

 

目を開けると薄っすらだが黄金色に近い夕日の光が射し込んでいた。

 

それがまた孤独の恐怖を煽る。

 

自分には過去が無い。気付いた時には兄達といて白い家からは《アルビノ》という縛りのせいで出れなかった。

 

今の名前の《ライキ》もただ自分の横に落ちていたというネックレスから赤い義兄によりつけられたもので、つけられてからもう《4年》がたつ。

 

なのに……それなのに………

 

未だ自分が何なのか何も分かっていない。

 

贅沢すぎるほど救われている自分だが、《今の》自分のパーツの前にある巨大な虚無だけはどうしても埋められない。

 

前の自分のパーツはどれだけ探しても無い。

 

怖い、怖い、怖い

 

膝を情けなく三角に曲げて顔を膝と膝の間に埋める。

 

《前の自分》

 

それは今、自分が動かしている体の本来の持ち主。拾われてからその存在を意識しなかった日は無い。

 

《思い出せ》という上手く言語化できない本能めいた思いに対し、思い出せば《今の自分》が消えて無くなってしまう、《思い出したくない》。この二つの相反する自分の気持ちが一人でいるときに突然、時折襲いかかってくる。

 

顔を埋めた膝と顔の間に何か暖かい液体の感触が

 

「………」

 

なんだこれ?

 

それが《今の自分》が見た最初の涙ということに気づくのには時間がかかった。

 

ーーーーー

 

自分が一桁の年の時からそれは始まった。

 

《エイズ》

 

自分の人生を崩したソレは幼い自分の体を急速に蝕み、あっという間に意識を失うレベルなっていった。

 

気がつけば6つの年から9の年と三回、一年を越してきた。

 

その間の記憶はボンヤリとしているが、姉が泣きじゃくったことは確かに覚えている。

 

そして年が10になると頭に何かつけられ、無菌室に移された。

 

頭につけられた物を通して自分の意識は飛ばされた。

 

そう、この《仮装世界》に

 

後で聞いたところによると自分が日本で初めて《仮装世界》に病に侵された人として入ったらしい。

 

そして、その《仮装世界》に自分は溺れた。

 

現実にさえも無いその美しい景色に超人的な身体能力。

 

様々な仮装世界のテストを受けたが、そのどれもが輝いて見えた。

 

そして年が12になると。

 

ーーー《奇跡》が起きた。

 

病から解き放たれ、過酷なリハビリを超え、約半年の時をかけてあの白い無菌室から出ることが出来た。

 

しかし、退院した後も仮装世界への熱意は冷めることなく、マグマの様に高まっていった。

 

そして退院から一年も経っていないあの日。

 

熱意を燃やしていた仮装世界にその先のいくらかの人生を姉と共に囚われた。

 

しかし、それでも仮装世界への熱意は折れず、その結果

 

最強の《騎士団》の分隊長にまで登りつめた。

 

 

だからこれからも《ボク》は前に走り続ける。この世界を終わらせるまで。

 

 

ーーーー

 

離れた二人が自分を思い返し、自分の記憶に葛藤している時。

 

一方、その頃

 

《アインクラッド》の現在最前線の50層迷宮区の最下層。

 

ここは既にマッピングが完了し、プレイヤー達にとってはあまり用がない場所となったためプレイヤー数はかなり少ない。

 

しかし、今現在この人の気配が薄い場所にある集団が緊張した顔で突入した。

 

《血盟騎士団》

 

プレイヤー達に知らないものは居ない最強ギルド。

 

その中の最精鋭のプレイヤー11名。さらにそれを従えているのは、《血盟騎士団》に二人いる分隊長の片割れの《剣姫ラン》というこれ以上は無いであろう布陣がある場所を目指し慎重に足を進めて居た。

 

しばらく暗い通路を歩いて行くとある行き止まりに当たった。

 

「……行きますよ」

 

ランが一声かけると行き止まりの壁に手を伸ばし、ある一点を押す。

 

押すとその壁がポリゴンとなって消え、その奥には更に下へと向かう階段が現れた。

 

その階段を下ると更に暗い空間に出た。

 

その空間に足を置いた瞬間。

 

「…………っ!…」

 

尋常じゃない何かを感じた。殺気、悪寒、憎悪をぐちゃまぜにしたような不快なものだった。

 

思わず探索スキルで《目標》を確認した。

 

「え……?」

 

が、《目標》のオレンジ色のカーソルは一つもなく代わりにグリーンのカーソルが一つ立っていた。

 

その時、足を踏み入れたことを部屋が認識し、壁にかかっていた灯篭に青い火が次々と道を作るようにともっていく。

 

グリーンカーソルがあった場所にも火がともる。そこにいたのは青い火とは相反するようなプレイヤーが立っていた。

 

下半身の服を隠すように全身を覆っている真っ黒なフード付きのロングコート。

 

そのフードの下の顔に青い火の光が重なる。

 

その中性的な顔に思わず女性かと勘違いしてしまいそうだが放っている威圧感はとても女性には放てないほどの物だったため男だと早く認識できた。

 

男にしては少し小さい顔に神が考えた理想的な場所に顔のパーツがあり、それは神が作り上げた何かに見えてしまうほどのものだった。

 

長いまつ毛の下の目が最もランの印象に残った。それは何百カラットのルビーのように透明な《赤》だった。その目を際立たせるようなダークレッドの髪。

 

そこにいたのはどこからどう見ても日本人離れ…というかどこか人間離れした容姿の青年だった。

 

「………………………」

 

こちらに気づいた青年が鋭い眼光を向けてくる。そこでランは思い出す。

 

《赤い死神》《オレンジプレイヤーを狩るギルド》《目が合うと確実に潰される》《残酷冷徹》

 

さまざまな言葉と情報がランの頭を駆け巡り、理解した。目の前の青年こそがアインクラッドを騒がせている《死神》なのだと。

 

「っ…………ここにいたギルドをどうしたんですか…」

 

いつもより自然と小さくなる言葉で問いかける。

 

ゆっくりと青年の口が開く

 

「…………さぁ…」

 

あっけらんとどこか機械的な言葉にランの思考に怒りがともる。

 

「……確かに彼らは犯罪行為を犯した悪人です。それでもあなたのやっていることはただの暴力です!」

 

「………興味ないね」

 

その冷徹な答えにラン以外のプレイヤー達が後ずさりすると同時にランが手を震わせながら剣を抜き、突進した。

 

何故彼女がここまで激昂するのか。

 

今まで彼女は目の前の青年に潰された人たちを見てきた。その人たちは自分がしてきた事を確かに懺悔し、悔いていた。しかし、それと同時に青年の恐怖が残っていたのか手足を抑えて叫んでいた。

 

一体どれほどの事をすればああなるのか、その姿はどれも悲惨だった。

 

少なくともあそこまでの事をやれるのは人間ではない、と思うほどに。

 

その悲惨さがランの心に住み着き、今それが彼女の体を動かした。

 

「分隊長!!」

 

団員のその叫びは届かず目の前の死神に向かい、《剣姫》は風のように走り出し、剣を抜いた。

 

 

 

ーーーーー

 

その突然の突進にも皮肉かと思うほど《死神》、レッドは冷静だった。

 

迫り来るその青いライトエフェクトを浴びた片手剣を剣で迎え撃つのでは無く

 

「…!」

 

右手の人差し指と中指でその光を断ち切った。

 

「っ!そんな…」

 

一瞬、あまりの事態に驚いたランは剣を指と指の間から抜こうと引くが

 

その剣はまるで巨大な岩石が乗っているかのように重かった。

 

そしてレッドの方を睨んだランだが

 

「………あ…」

 

ランか見たのは自分を見下す赤い双眼だった。

 

そしてその双眼にはどこか機械的な虚ろなナニカが宿っていた。

 

そして、一言死神が呟いた

 

「…………………つまらない…」

 

思わず足の力が抜けた、その一瞬を死神は逃さずランを持っている剣ごと突進してきた方へと投げ飛ばす。

 

壁に激突し、ランのヒットポイントか僅かに減る。

 

ランが体の痛みを無理やり振り切り顔をあげると

 

「あ…」

 

死神は青い《転移》の光を纏い消えていた。

 

それが《機関》と《攻略組》を結びつけたキッカケだった。

 

そして、帰ったレッドが《攻略組》に見つかったことに対して文句を《機関》全員に言われたのは言うまでもない。

 

 

 



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