平安武闘伝~安珍の拳~ (ゼルガー)
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プロローグ

リメイクしました。

念願のアサシンパライソ、ゲットだぜ


今日から日記をつけることにした。和尚から字を習ったので、俺の人生をココに書き記そうと思う。

 

まず、俺には前世が存在する。ただし、それが本当に前世の記憶なのかはわからない。

 

なぜなら、俺が今生きている世界は前世から遥か昔の世界だったからだ。

 

いつの時代かわからん。それでも明らかに昔というのはわかる。周りの暮らしを見ればな。

 

見窄らしい着物を着た農民に、現代ではありえない程の手が加えられていない大自然。妖怪や武家が存在しているから明らかだ。

 

 

最後に、俺の名前は安珍という。和尚から貰った名前だ。実の両親から貰った名前は

 

百姓の息子に生まれ、山賊の被害で両親を殺されて寺で暮らす孤児だ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

よく考えたら、今の年月日はおろか日本の何処なのかすら知らない。自分の年齢は辛うじて冬を6回目迎えたから数えで6歳だと思うが。

 

仕方ないので、日記の日にちは書かないことにした。

 

和尚は人がいい人物で、俗にいうお人好しだった。

 

だが、和尚は人に騙されやすかった。そのせいで、見るからに怪しい奴に食料を分け与えていた。去り間際に怪しい笑みを浮かべていたのを俺は知っている。

 

そして俺の他にも孤児は5人いた。血の繋がりは無いがみんな兄弟同然に育った。

 

やんちゃな兄貴分のキスケ。厳しいけど優しい姉のカナエ。同い年でよくケンカするカズ。よく甘えてくる妹分のナナ。一番年下で大人しい弟分のフウ

 

だから俺はそんな和尚と兄弟を守るために拳を鍛え始めた。

 

生前、俺はある人物の弟子として武術を学んだ。

 

再び幼少の身となったのであれば都合がいい。生前では極めることが出来なかった師匠の魂を今こそ受け継ごう!

 

 

 

 

流派東方不敗は

 

王者の風よ

 

全新系裂

 

天破侠乱

 

見よ東方は赤く燃えている!

 

 

 

見ていてください師匠!時代を超えて、俺は貴方の流派を極めて見せましょうぞ!今の家族を守るために

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

あれから三年の時が流れた。

 

濃厚な修行の日々に日記を書くのを忘れてしまった。アホか俺は。

 

大岩を砕けるようになったし、布術で滝を割れるようになった。崖から落ちても普通に着地できる等になった。

 

うん、ここまでは生前と同じだな。

 

基本的な技である光輝唸掌はあと少しでモノに出来そうだ。

 

問題はここからだ。灼熱掌(サンシャインフィンガー)は手に気を集中させ、高温のエネルギーを相手に叩き込む奥義

 

兄弟子や師匠はソレの上位技を習得しているのに下位であるこの技を未だに使えない自分が恥ずかしい

 

よし、まずは気のコントロールからだ。

 

 

 

◆◇◆

 

 

一年後、予想外の形で俺は奥義を開眼してしまった。

 

灼熱掌の修行の為に寺を留守にしていたのが仇になった。

 

野盗が寺を襲い、和尚と俺と同じ孤児たちを皆殺しにしたのだ。

 

修行を終えて目に入ったのは、和尚の首を切り裂く野党の姿。死体となり血塗れとなった兄弟たち。

 

 

その姿を見て俺は、キレた。

 

 

後で思えば、兄弟子は怒りのスーパーモードと言っていた状態になっていたのだろう。

 

怒り狂った俺は、野盗たちを殺戮した。守るために鍛え上げた東方不敗の拳で。

 

気が付くと、俺は返り血で真っ赤に染まり、足元には肉塊となった野盗たちの死体。

 

 

家族を殺されて、活人拳の為の東方不敗を殺人拳に変え、すべてを失った悲しみと後悔で心を潰されて、俺は泣き叫んだ。

 

 

 

和尚・・・・・・キスケ兄・・・・・・カナエ姉・・・・・・カズ・・・・・・ナナ・・・・・・フウ・・・・・・

 

ゴメン、ごめんよ。俺が修行で寺から出て無ければ。畜生、畜生っ!

 

俺は、何のために強くなろうとしたのかわからなくなってしまった。




ども、ゼルガーです


と言う訳で安珍の拳をリメイクしました。

この作品の安珍はリメイク前同様に転生者ですが、神様転生ではなく純粋な転生です。

ですが、前世が異常でして、平行世界の同位体である東方不敗マスターアジアの弟子になってます。兄弟子はドモンです。

しかし、主人公は物覚えが悪く、フィンガー系の技はもちろん、他の東方不敗の奥義を習得出来てませんでした。しかし、長い年月見続けてきたので習得方法や修行方法、東方不敗の奥義の全ては知っています。知ってるだけですが。

つまりこの物語は、安珍の流派東方不敗成長物語でもあります。

リメイク前ほどチートではなくなりましたね。







え?清姫に向かって「お前が好きだ!お前が欲しい!」って言わせたいだけだろって?当り前じゃないですか~


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壱ノ拳

まだ主人公は僧になって無いのでハゲでもないですし僧でもないです。故にまだ【安珍】ではありません。

主人公の外見のイメージは、デジモンセイバーズの大門大です。


あれから俺は荒れた。自分の東方不敗の誇りも守りたい対象も失い、いろんな場所を放浪しながら喧嘩を売りまくった。今の俺には容赦がない。返り討ちにして殴り殺した。

 

その所為で、野盗や盗賊などの悪党どもに対しては有名になった。鬼と恐れられた。ふざけんな、むしろお前らが鬼だろ!

 

何時しか京の都から俺が鬼と言う噂を聞いて討伐隊が来た。陰陽院の陰陽師だった。

 

有名な安倍晴明ではなく、まったく知らない無銘の陰陽師が俺の討伐に来た。

 

奴は俺を鬼と思っていたが、鬼ではなく人間だと気が付き、俺のこれまでの経緯を話すと勘違いであることが分かったそうだ。

 

で、俺は奴に陰陽院にスカウトされた。なんでも、ヤツが作る術の開発の実験体に俺が必要だとか。

 

生きる意味を失っていた俺にとって、実験体になる事はどうでも良く。むしろ楽になれるのであればと引き受けた。

 

 

「喜ぶがいい。君はこの私の実験体になるのだからなぁ!」

 

「君の肉体は素晴らしい!私の脳細胞が刺激され、次々と術の案が浮かんでくる。恐ろしい、私の才能がぁ!」

 

「ヴァーッハハハハハハハ!やはり私は神の才能を持っている!いや、むしろ私がぁ神だぁーーーーー!ハーッハッハッハ!!」

 

と、こんな感じで変な男だ。檀黎斗という陰陽師は。

 

 

俺は奴に聞いた。何のために術を開発しているのかと。

 

そしたら奴は

 

 

「ふむ。陰陽術は開発者の私にとって生き甲斐だ。妖怪を倒す事も、天皇や貴族を守る事もどうでもいい。多くの者に私が開発した術を知らしめる。そして、私は死を超越し、神となるのだ!」

 

 

奴はロクデナシのクズだ。だが、そんなクズでも奴が開発した術は多くの人間を救った。

 

ロクデナシである奴ですら人を救えるのに、俺は敵を殺すことしか出来ない。まさにクズ以下だ。

 

 

俺は未だに自分の死に場所を求めている。

 

 

◆◇◆

 

 

地獄を見た

 

地獄を歩いた

 

地獄を見た

 

地獄を離れた

 

地獄を

 

見た

 

暴力で人は救えない

 

拳で飢えを凌げない

 

力では病魔から救えない

 

いつからだろう。死にたいと思っていたのに

 

死に場所を求めていたのに

 

死にたくないと、思ってしまったのは

 

 

 

 

地獄を見た

 

 

 

 

陰陽院から離れて目の当たりにしたのは、この時代の現実

 

人が飢えで死んでいた

 

飢えで自殺していた

 

病魔に侵されて村一つ滅んでいた

 

人が共食いしていた

 

 

 

なんだこれは

 

野盗や妖怪に殺されたならわかる。それなら俺が、戦えばいい

 

なんだこれは

 

俺は、誰と戦えばいい

 

前世の記憶にはこんな光景は見たことがなかった

 

なんだこれは

 

例え強くなっても、これでは誰も救えない

 

なんだこれは

 

誰か教えてくれ

 

地獄を見た

 

死にたくない

 

誰か教えて地獄をなんだこ死にたく誰教え地獄死にたく

 

 

あ、ああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺は僧になった




次回は、彼が安珍を名乗る僧になった話。
そして、妖怪相手にヒャッハーします


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弐ノ拳

 

 

俺は壊れかけていた。

 

 

 

 

 

あのクロトの依頼で付近の村の様子を見る護衛を突き合わされた。

 

何でも、都の貴族が税を上げ、その影響がどれほど酷くなっているのか知りたいそうだ。

 

正直、クロトが偽善でそんな真似をするとは思えなかった。しかし奴曰く「私自身が外道でロクデナシなクズなのは自覚している。実験体にした君に許しを請う気はないしな。私も周りの人間がどうなろうと知ったことではないと思ってはいるよ。だが、私の才能を知る人間は一人でも多い方がいい。私の父のような命の冒涜者にだけはなりたくはないのだよ。何故なら、いずれ神となる私を崇めるのだからなぁ!ハーッハッハッハ!」

 

成程、実にクロトらしかった。

 

だが、その村の光景は想像を絶するほど酷かった。

 

税で食べるものをすべて奪われ、飢えていた村人だった。

 

共食いしている人がいた。

 

土を食べてる人がいた。

 

苦しみで自殺している人がいた。

 

死んだ人間の死体が散乱していた。

 

 

気が狂いそうだった。辛うじて、クロトが術で俺の正気を保った。

 

 

「酷いものだ。私は贅沢は嫌いだから最低限の生活しかしていない。贅沢する暇があるなら術の研究と開発をするからだ。だが、都の連中はお構いなしに贅沢をし、肥えている。見るに堪えないほど醜かったな」

 

 

だが、それは・・・・・・仕方ないことだ。奪うものと奪われるもの。そうなってしまうのは自然の摂理なのかもしれない。

 

だが、これは余りにも・・・・・

 

俺に彼らを救うことは出来ない。無力だ、俺は

 

 

「君は救世主にでもなる気か?まあいい。ならお勧めの寺に行くと良い。水晶のように純粋な君はあの寺がお似合いだろう。ああそれと、実験にはもう付き合わなくていい。安倍晴明や芦屋道満と言った術士を超える手立てはもうできているのでな」

 

 

そう言ってクロトは俺を置いて都に帰っていった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

クロトに進められて向かった先にあったのは、大きな寺だった。

 

 

「君がクロトさんが言っていた武闘家かな?僕は聖命蓮。この寺の僧だよ」

 

 

寺から出てきたのは、年若い青年だった。

 

ん?かすかに人間以外の気配を感じる?でもコイツからじゃない。

 

 

「ああ。この寺はね、姉さんの希望で妖怪と共存しているんだ。と言っても、毘沙門天様の弟子と使い。修行僧となった女性の妖怪がいる程度だよ」

 

 

・・・・・・なんなんだよここは。クロトの奴、一体何を考えて俺をここに紹介したんだ。

 

 

「さて、彼の話だと君はここの僧になりに来たんだよね?じゃあ、頭を丸めようか」

 

 

え?は?ちょ、ちょっと待て何の話だ?てか、アンタは頭を丸めてないだろ!

 

 

「姉さんに止められてしまったから無理なんだソレ。じゃあ、行こうか」

 

 

は、放せ!やっ止めろぉーーーーーーーーー!!外見の優男とは思えない怪力で俺は強制的に奥に連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は髪を失った。

 

 

 

 

 

 




今回のゲストは聖命蓮。東方プロジェクトの聖白蓮の弟(故人)です

次回、修行編。


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参ノ拳

 

 

 

小さい頃、まだ和尚や義兄弟たちが生きていた頃の話だ。

 

俺は身体を鍛えながらも和尚の手伝いをしたりして生活していた。

 

5歳の頃だ。和尚に教わった薬の材料を取る為に山で薬草を探していた時だった。

 

鳴き声が聞こえたんだ。それも女の子の。

 

気になった俺は声の場所に向かってみた。そこには、同い年位の幼い女の子が川岸で泣いていた。

 

 

「足を怪我したのか?」

 

「・・・・・・うん。ひっく・・・・・・痛いよぉ」

 

「一人?」

 

「・・・・・・父様(ととさま)と母様(かかさま)とはぐれたの」

 

 

 

俺はその子の怪我の具合を見てみた。幸いにもただ足を擦りむいただけで他に異常はなかった。

 

採取した薬草をその場で調合し、傷薬を作って傷口に塗ってあげた。よっぽど痛いのは泣き出してしまった。まあ、この薬は染みるから痛い。でも、治りは早いしよく効く。

 

 

「これで治療は良しっと。ほら、おぶってやるから行こうぜ。お前の親も探してるだろうし」

 

「ぐす・・・うん」

 

 

 

その後、この子を探しに来た夫婦と出会い、父親にあの子は背負われた。

 

改めて見ると、身綺麗できっと良い所のお嬢様だったんだろう。

 

あの子の両親は今の時代の貴族とは思えないほど善人で、こんな小汚い子供の俺に頭を下げてお礼を言ってくれた。いい両親を持ってて羨ましいなぁと思った。

 

 

「もう迷子になるなよ」

 

「うん。ありがとう」

 

「娘を助けてくれて感謝するよ。本当はお礼をしたいけど」

 

「気にしないでください。和尚の教えで見返りは求めてないので」

 

「そうか。だけど、清を救ったことは忘れないよ」

 

「ええ。何時かまた会ったらその時こそお礼をしますわ。ねえ、清?」

 

「うん!」

 

 

あの子は清って名前なのか。俺も名乗るべきだろうか?流派東方不敗として、名乗りは重要だし。

 

いや、止めよう。もし次に出会うことがあったらその時に名前を教えよう。

 

 

「またな」

 

「うん!またね!」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「・・・・・・夢か。懐かしい夢だな」

 

 

聖命連の弟子となって早3年。もう14歳か。

 

何と言うか、前世に負けないほど物凄く濃い人生を送ってる気がする。

 

命連や白蓮は僧でありながら武闘家でもあるらしく、俺に毎日稽古をつけてくれる。

 

気のコントロールも前世以上に上達し、基本技である光輝唸掌、必殺の灼熱掌はもちろんのこと。

 

 

十二王方牌大車併という分身技も習得し、帰山笑紅塵も習得したことで技の消費も軽減できた。

 

超級覇王電影弾の習得には苦労したけど、なんとか

 

一番の課題である最終奥義の為の超奥義。超級覇王日輪弾は今も苦労している。

 

一応使えないことも無いが、一度使うと消耗が激しいので動けなくなってしまう。

 

マスターアジア師匠やドモン兄はコレの完成版である石破天驚拳を良く使えるよ。本当に。

 

 

師匠は布術を、ドモン兄は剣術を心得ていた。俺も拳以外も会得したいがシックリくる武器が無い。

 

クロトの奴に符術を教わっているので多少陰陽術の心得はあるがな。

 

 

 

「おーい安珍。僕はしばらくお経を唱えているから、悪いけど姉さんと裏の山で悪さしている妖怪を懲らしめてきてくれないかな?」

 

 

ああ、安珍って言うのは今の俺の名前だ。

 

僧に出家して髪を(強制的に)剃ろ、僧としての名前を与えられた。

 

まあ、以前の名前には未練は無いし、安珍って名前も悪くないって思った。

 

 

「白蓮さんと?別に構いませんが、他の皆さんは?」

 

「星とナズは毘沙門天様に呼び出しで留守。一輪は雲山と山籠もりしてるよ」

 

 

ちっ、雲山も留守か。拳の速さ比べをまたやりたかったな

 

 

「で、今回はどんな妖怪ですか?」

 

「えーっとね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼だよ。

 

鬼かよ。

 




ども、ゼルガーです。

次回、VS鬼ですが、酒吞童子一行ではありません。伊吹の山では無いので。



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人物紹介

やっと主人公が安珍の名前になったので、軽く人物紹介


【安珍】

 

今作の主人公。転生者で前世は東方不敗マスターアジアの弟子で、ドモンの弟弟子。しかし、覚えが悪く、技の知識は有れど基本技すら習得できなかった。それでも逸般人だった。

前世の死亡理由は食中毒。自分で釣ったフグの毒で死んだ。

転生後、食糧難で生まれて直ぐに両親に捨てられる。育ての親である和尚に拾われ、血のつながりのない孤児の兄弟とすくすく成長した。5歳から体を鍛え始め、9歳までに本格的な修行をしていた。

元々正義感が強く、弱者を見捨てられない優しい性格だったが、和尚と兄弟たちの死。貧困による地獄と多く現実を目の当たりにして擦れて荒れていき暴力的になっていった。

11歳で聖命連に弟子入りし僧となる。ただし強制。荒れていた性格も次第に収まり、穏やかになっていく。

現段階で最終奥義である石破天驚拳と明鏡止水以外の奥義は会得している。それでも、前世のマスターアジアのとドモンの足元にも及ばない。

 

 

 

【清】

 

安珍が幼少時代に出会った女の子。実はヒロインの清姫。お金持ちの商人のお嬢様。

この世界では安珍とは同い年。幼女なので成長後とは違い子供らしい性格で、泣き虫だった。両親はこの時代では珍しく人情溢れる人で、安珍を差別しなかった。

 

 

 

【和尚】

 

故人。主人公の育ての親で老人。お人好しで善人だが騙されやすい性格で、安珍や義兄弟に心配されていた。

彼の最後は、野盗から子供たちを守ろうと立ちふさがったが、あっけなく切り捨てられた。

 

 

【キスケ】

 

安珍の義兄。故人。

一番年上で14歳でこの世を去った。和尚の後を継ぐ為に僧の修行をしていた。

修行前はやんちゃで兄弟たちを引っ張っていた頼り甲斐のある兄貴分。

彼の最後は、下の兄弟を守るために勇敢に立ち向かったが、返り討ちで斬首された。

 

 

【カナエ】

 

安珍の義姉。故人

13歳で、皆の母と姉を兼任していた。包容力もあり優しいので兄弟は全員懐いた。

料理上手で台所も任されていた。そして、近くの村に住む幼馴染の少年と恋に落ち、結婚の約束をしており、家族に祝福されながらも結婚を控えていた。

しかし、それもむなしく敵わなかった。近くの村は例の野盗の所為で全滅しており、彼女もその野盗の手によって死亡した。

彼女の最後は、弟と妹と逃がすために逃げていたが、あっけなく捕まってしまい、犯されてから殺された。死に間際、婚約した相手に助けを求めていたが、彼は既に亡くなった後だった。

 

 

【カズ】

 

安珍の義弟。故人

安珍とは同い年でしょっちゅう喧嘩していた。しかし、喧嘩は安珍の方が強いので泣かされている。

それでも負けず嫌いなので、誰も見てないところで鍛えていた。

彼の最後は、捕まったカナエを助けようとし、野党を数人倒したが、人質を取られてしまい殺された。

 

 

【ナナ】

 

安珍の義妹。故人

5歳の甘えん坊でお兄ちゃん子。安珍に一番くっ付いていた。将来は安珍のお嫁さんと言うほどブラコン。

彼女の最後は、野盗に捕まり、カズを殺すための人質となってしまい、用済みでフウ共々殺された。最後まで安珍に助けを求めて叫んでいた。

 

 

【フウ】

 

安珍の義弟。故人

3歳の末っ子で、口数が少ない大人しい子だった。殆ど眠っており、誰かしらの背中にいた。

彼の最後は、ナナの背中におぶられていたので、人質にされてから一緒に殺された。

 

 

 

【檀黎斗】

 

仮面ライダーエグゼイドからのゲスト。この世界ではゲームマスターではなく陰陽術師。性格がアレなのも父親が正宗なのは変わりなし。

陰陽術の開発に夢中となっており、あちら同様に神になろうとしている。

水晶のように純粋な安珍を気に入っており、知り合いの僧である命連の寺に彼を紹介した。

同僚に晴明や道満がいるが、性格的に気に食わない(同族嫌悪とも言う)

 

 

 

【聖命連】

 

安珍の師匠となった僧。20歳。

僧なのに髪は剃ってない。故に破戒僧と言われているが気にしてない。髪を剃ってないのは姉の指示なので諦めている。本人は坊主頭になりたい。

僧でありながら一流の武人でもある。姉の方針で、妖怪との共存を目指している。



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肆ノ拳

今日のクロト



奴が都を去って大分経つ。奴がいない所為で術の開発が捗らん。

オノレェエエエエエ安倍晴明ェェェエエエエエ!!私が開発した術を無断に使用しただけでなく、自分が開発したようにしたのは断じて許せん!!!

やはり、陰陽術だけでは限界があるのか。私が神に至るには、私の才能をもっと輝かせる必要がある

そういえば、異国の地には魔術という陰陽術とは違う系統があると聞いた。

ふむ。ならばもうこの都に用はなぁい!例え異国の地であろうと、私を止める事など出来ないのだぁ!ヴェハハハハハハハ!!!

そうと決まれば長居は無用。彼に合ってから異国の地に向かうとしようか。


命連の寺から旅に出て数日。

 

俺は一人の僧として各地を旅していた。

 

死んだ育ての親の和尚とか、命連や白蓮たちに薬の調合を各地の病人を救ったりしている。

 

僧になったとはいえ、俺は元来の武闘家。肉も食うし魚も食べる破戒僧だ。それでも、一人でも多くの人間を救いたい。そんな風に願っていた。

 

 

旅の道中、俺はある化け物に出会った。そう、俺が倒すべき宿敵と。

 

 

 

 

 

 

―――わかってたんだ。アレが人の手じゃないってことは。

 

 

村が焼かれている。人が人を殺している

 

 

―――不可解過ぎた。何故、何もない寺を野盗が襲ったのか。何故、野党は何も盗まなかったのか

 

 

そう、ただ殺しているだけ。本来、盗むべき食料も女も取らずに殺戮を楽しんでいる。

 

 

 

「くひっ、くひひ。くひゃひゃ!」

 

 

嘘だって言いたかった

 

感情が同様している

 

心が泣き叫んでいる

 

俺の拳が、震えている

 

頭がどうにかなりそうだった

 

なんで?どうして?

 

もう、何が何だかわからない

 

だが、一つだけ。そう、たった一つだけ

 

 

「お前が・・・・・」

 

 

―――今なら分かる

 

 

そう、今なら分かる

 

 

 

 

「お前が殺したのかよ!!!」

 

 

 

 

コイツが全ての元凶だってな!

 

 

 

 

 

 

 

 

俺にとって、新しい家族は何物にも代えがたい宝物だった。

 

前世では、最後まで守るべきものを見つけられなかった。

 

だけど、新しい人生の俺には守るべき家族が出来た

 

 

 

 

―――ったく、お前って全然ガキらしくねーよなぁ。ま、それでも俺の可愛い弟分なんだけどさ。ほら、しっかり俺に付いてきな

 

 

 

キスケ兄は頼り甲斐のある兄貴だった。年下の俺達を守る為に体を鍛え、和尚の弟子として僧になった。

なのに・・・・

 

 

―――ガハッ・・・・・情けねぇ。鍛えたってのにこの程度かよ・・・・・・悪い、皆。弱い兄ちゃんを・・・・・ゆるし・・・・・・

 

 

最後に見たキスケ兄は、首を斬首されていた。

 

 

 

 

―――まったく、兄さんも君も無茶しすぎ!はぁ、私がお嫁に行ったら誰がこの二人を止めるのかしら?

 

 

カナエ姉は姉でもあり、母でもあった。13と言う若さでの結婚だったがこの時代では珍しくなかった。

旦那となる人も良い人で、俺から見ても好印象だった。

 

 

―――いや、いやああああああ!助けて!逃げてみんな!殺さないでぇぇえええええ!!

 

 

最後に見たカナエ姉は、酷かった。とてもじゃないが、口に出せない。女としての尊厳を奪われていた。

後で知ったが、結婚相手の旦那も無残に殺されていた。

 

 

 

 

―――へっ。今は弱いけど、何時か追いついてやるから覚悟しとけよ兄貴!

 

 

カズは同い年の弟。しょっちゅう喧嘩を仕掛けてきては、俺に負けていた。喧嘩の後は姉に叱られて飯抜きにされた。馬鹿だけど、一番気が許せるヤツだった。

 

 

 

―――畜生・・・・・ヘマしちまった・・・・・ナナ、フウ・・・・・・兄ちゃんが助けてやれなくてゴメンな・・・・・・

 

 

 

カズは強かった。死ぬ前までに何人もの野盗を倒していた。だけど、ナナを人質に取られてしまい、抵抗できない様に殺された。

 

 

 

 

―――えへへ~お兄ちゃんだーーーいすき!大きくなったら、ナナがお嫁さんになってあげるね!

 

 

俺に一番ベッタリで甘えん坊だった妹のナナ。いつもカナエ姉から料理を学んでいた。

 

泣き虫の癖に、一番末っ子のフウの前だけでは絶対に泣かなかった。

 

 

―――お兄ちゃん・・・・・どこ?・・・・・眠いよ・・・・・・寒いよ・・・・・・痛いよ・・・・・お兄ちゃん

 

 

ナナは人質に取られた後、背中におぶっていたフウ共々殺された。

 

 

 

 

―――あう?にーた?

 

 

フウは一番末っ子の弟。まだ3歳の子供だった。

 

せめてもの救いは、眠ってる時に殺されて苦しまなくて済んだって事だ。

 

 

 

 

 

そして最後。和尚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンタだったんだな。元凶は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいたのは、野党に惨殺されたはずの親代わりだった和尚なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、ふひっ。クヒャハハハハハハハハハハハハ!今更気が付いたのか?あー、今は安珍って名前だっけ?いい具合に成長したなぁ!まあ、一番見込みのあった餓鬼だったし当然かぁ」

 

 

 

ソイツは、俺の知ってる和尚の顔じゃなかった。額から角が生え、口は三日月のように裂け、両手の爪が鋭く伸びていた。

 

 

 

「ああそうだ。野盗どもを操って糞餓鬼どもを始末し、近くの村を滅ぼしたのはこの私だ。とても見ごたえのあるお遊戯で楽しかったなぁ?お前が激情して、野盗どもを皆殺しにするまで全てな」

 

 

その言葉に、俺はプッツンした。

 

そこからの記憶がない。

 

気が付けば俺は、何処かの洞窟の中でミイラ状態で寝ていた。

 

そして思い出した。ああ、俺はアイツに負けたんだ。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、異国の地に向かう前に君を助けるとは思わなかったぞ我が友よ」

 

 

 

 

次回に続く



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