カルデア~帰るべき場所~ (Atene)
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第1話

本編だと立香の功績はカルデア内でしか知られてないですが、このSSでは全世界に知られているという設定ですのでお見知りおきをm(__)m
時々日本語がおかしい場合もありますので何度か確認しますがコメントでも教えていただけると幸いです



人理継続保障機関カルデアーー

近未来観測レンズ「シバ」によって人類は2016年で滅び行くことが観測された

 

魔術王を名乗ったモノの計画

 

それは人類最後のマスターによって人理焼却事件は解決された

 

人理継続保障機関カルデアのマスター

その名は藤丸立香。

 

数々のサーヴァントと契約し指揮する、そのマスター適合率の高さ、魔力量に世界は注目した

 

 

 

ーーカルデア内部ーー

 

今日はいつもの空気とは違い、重く冷たかった

外は吹雪、晴れることのない空は見慣れていた

立香は目を覚まし、ホールの方へ向かうと黒服の男が5人ほどいた、そのうちの一人とダヴィンチちゃんとで何か話しているようだった。

 

 

「藤丸立香を政府に渡せと?」

 

「えぇ、人理焼却事件を見事に解決したカルデアのマスター、藤丸立香を調べさせてもらいたくてね」

 

「なぜそんなことする意味がある?」

 

「藤丸立香の魔術回路や、数々のサーヴァントと契約するほどの魔力量に上の方が調べる必要があると判断しましてね」

 

「悪いが断らせてもらおうか」

 

ダヴィンチの返答に黒服の男は小さく微笑んだ

 

 

 

「あの、どうかしましたか?なんか俺の話をしてたみたいですけど...」

 

 

「おぉ、もしや君が人理焼却事件を解決した藤丸立香君かね?

君に政府の上層部の方がお呼びでね。少し私たちと来てもらいたい」

 

黒服の男は怖いほどの笑みを浮かべ立香に話しかけてくる。

 

「俺が?」

 

黒服の男がうなずくと立香の左腕を引っ張ってきた

 

「待て、さっき言った通りお断りさせてもらう。今の状況で立香君を下手に外に出すわけにはいかない」

 

確かに人理焼却事件の解決を終えた今、藤丸立香という人物は世界中に知れ渡っている。

彼を利用し悪事を働くものがいないとは限らない。彼を殺そうとしているものもいるかもしれない。

 

「大丈夫ですよ、これは政府とカルデアだけの秘密です。外に漏れるなんてことは絶対にありませんから」

 

「私もダヴィンチちゃんの言う通り行かないほうがいいと思います先輩」

 

「マシュ!」

 

「言っておきますが、これは任意ではなく義務なんです。行く行かないの問題ではないのですよ」

 

「ですが...」

 

マシュがゆっくりうつむくき、しばし沈黙が続くと立香がおもむろに口を開いた

 

「俺、行ってくるよ」

 

「先輩!!」

 

「なぁに、ちょといってちゃちゃっと終わらせてすぐ帰ってくるからさ」

 

「流石だ藤丸立香君、君はよくわかっているようだ」

 

黒服の男はさらに微笑む

 

「先輩が行くなら私もついていきま..」

 

 

 

グワッ!と一瞬、黒服の男の顔が歪んだような気がした。先程の微笑みからは連想できないほどの、今にも人を殺しそうな殺気のようなものにマシュは何も言えなくなってしまった

 

「私達は藤丸立香君だけに用があってね、君が来ても迷惑なだけなのだよ。それでは行こうか立香君」

 

黒服の男は立香の右腕を強く引っ張り連れて行こうとする。

 

 

 

だが、

 

 

 

それよりも強くもう一方の腕を掴んだものがいた

 

 

 

「必ず帰ってきなさい、ここがあなたの家なんだから」

 

 

 

ダヴィンチがそう言うと立香は安心したようにこう言った

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

 



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第2話

「ここだ」

 

連れてこられたのは高層ビルの最上階。

いかにも偉い人がいますと言わんばかりの木の扉の前。

 

「言っておくがこの建物の中では一切の魔術行為は禁止だ。勿論その令呪を使い、君のサーヴァントをここに呼ぶこともできない」

 

そう言うと男は立香の令呪のある腕を掴み片手だけの手錠のようなものを立香の手首に着け鍵をかけた。

 

「あの...別にこんなことしなくても魔術や令呪が禁止なら使いませんけど」

 

「いや念のためだ、君なら使う可能性があるからな」

 

「え、それはどうゆう...」

 

立香はどうゆう意味なのか聞こうとしたが黒服の男は無視して木の扉をノックした

 

「例の者を連れてきました」

 

すると中から聞こえたのは若い男の声。荒々しい声で入れと言った。

 

黒服の男は、失礼しますと言い扉を開けると中には1つの大きな机にデスクトップパソコンが置いてある、その席に座っているのは銀髪をオールバックにし、黒いYシャツに黒いスーツを着ている若い男性。

 

 

「初めまして、藤丸立香君。君の功績は聞いているよ」

 

そう言うと銀髪の男は立ち上がり、机に手をついて続けて話した

 

「私の名前はマルスビリー・アニムスフィア」

 

「...!」

 

 

アニムスフィア...

 

 

その名前を聞いて立香は記憶の中から何か違和感を感じた

 

 

「気づいたようだな、人理継続保障機関カルデア所長のオルガマリー・アニムスフィア。いや元所長と言った方がいいか、私はその兄にあたる」

 

所長に兄がいたなんて初耳だ。というか初めて会ってすぐに最後の別れとなってしまったから忘れてい...

いや忘れてはない

 

「所長にお兄さんがいたんですね」

 

「フッ、あの出来損ないの妹(・・・・・・・)などの兄なんて名乗りたくないのだがね」

 

「...」

 

その言葉が心に引っ掛かったが立香は口にはしなかった

 

「俺を調べるためにここへ連れてきたみたいですけど、具体的には何をするんです?」

 

「調べる...か...まぁあながち間違ってはいないが、本題は違う」

 

「なんとなくわかってましたよ、ただの調査ならここまで強引に連れてきませんからね」

 

「流石はカルデアのマスターと言ったところか、伊達に世界を救ったわけではないようだ」

 

「それで俺に何の用なんですか?」

 

そうだな、とマルスビリーはそう言うと改めて覇気のある言葉を発した

 

 

 

「率直に言おう人理継続保障機関カルデアのマスター藤丸立香」

 

 

 

マルスビリーは目を細め不気味に微笑むと立香にとって思いもしない言葉が発せられた

 

 

 

 

 

「今すぐカルデアのマスターをやめたまえ」

 

 

 

 

 




ちなみに本編では所長に兄はいません(たぶん)。
自分が勝手に考えたオリキャラですm(__)m

EXTLAコラボ終わる気がしない(;o;)


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第3話

「.....な、なんでですか?」

 

わからない

なぜそんなことをいきなり告げられるのか立香には理解できなかった

 

「人理焼却事件を終えた今、カルデアが存在している意味がないのだよ」

 

「で、でも魔術王ソロモンの企み以外にも特異点は発生するし、まだカルデアの存在意義はあるはずです」

 

「私たち政府がカルデアを設立させた理由の一番の目的は魔術王ソロモンの人理焼却の計画を失敗に終わらせることだ。それ以外に特異点が発生したとしてもこの世界とは切り離された無関係の世界、いわば救わなくてもいいモノ(・・・・・・・・・・)ということだ」

 

 

なっ、

そんなの間違っている

この世界には影響がなくても、助けを求めている者がいるならば......そんなの助けなきゃいけないに決まっているじゃないか

 

「救わなくてもいいモノなんて...ありません」

 

「フッ、正義感の強いのだな藤丸立香君は。だが君がいくら願ったところでカルデアを廃止することにはかわりはない」

 

「カルデアを廃止する...?!」

 

「あぁ、何度も言うが私達の目的は果たされた。いらないものは棄てる。ただそれだけだ」

 

 

カルデアを廃止するなんて...マシュやカルデアのみんなはどうなる...?

 

 

「そして今日ここへ君を連れてきたのは他でもない、この政府への勧誘だ」

 

「......?」

 

「君のような優秀な人材を棄てるほど私達もバカではないのではないのでね、藤丸立香君、君は特別に私達の元で仕事をするといい。君のしたい仕事も物も人も全て用意させよう」

 

 

 

それは俺だけカルデアから引き抜き、カルデアを見棄て、のうのうと生きろと...?

そんなのふざけてる...!

 

「人理焼却事件を見事解決させた優秀な君なら正確な判断を下すことは容易なことだろう?」

 

カルデアには多くのスタッフやダヴィンチちゃん、マシュ、それに俺と契約してくれたサーヴァントのみんながいる。

それを裏切るなんて...

 

 

 

 

「そんなこと俺にはできません」

 

その返答にマルスビリーから表情が消え、小さく眉をひそめた

 

「カルデアを廃止するのは嫌です、ですがもし仮にカルデアが無くなるならば......

俺はカルデアのみんなとその運命を共にします。

それにみんな人理焼却を解決したマスターと言っていますが、俺一人がやったわけじゃないんです、カルデア(みんな)の力で達成したことなんです。俺が優秀だと言うのならあなたの見解は間違っていますよ」

 

 

「フッ...」

 

マルスビリーは立香の話を聞くと手を目に当て大きく笑いだす

 

「フハハハハハハハハッ!!藤丸立香!やはりお前は良い!棄てるにはもったいないモノだ」

 

「...」

 

「フッ、君にもう一度チャンスをやるとしよう、明日までに決断してこい。今日はゆっくり休んでよく考えてくるといい、くれぐれも私を失望させないでくれよ?」

 

 

そう言うとマルスビリーは黒服の男に、行けと言うと立香を連れて部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 



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第4話

マルスビリーの部屋を後にした立香は黒服の男と共にエレベーターに乗った

 

「気にいらないか」

 

突然黒服の服の男が話しかけてくると立香は少し驚いた

 

「あのお方はカルデアが少し嫌いでね、いや嫌いというより憎んでおられる」

 

「.....?」

 

立香はなぜ?と言おうとしたが先に黒服の男が話し出した

 

「さっき聞いた通りマルスビリー様はアニムスフィア家の長男で世界有数の魔術師でもある」

 

「それがカルデアとなんの関係が?」

 

「カルデアのマスター候補の一人として君が選ばれたならば、当然魔術師であるマルスビリー様も選ばれる」

 

「俺と同じくマスター候補だった....?でも俺以外のマスター候補のみんなはあの日全員死んで...」

 

「あの日マルスビリー様はあの場にいなかった。いや、すでにカルデアにはいなく、マスター候補からも外れていた」

 

「な、なぜ?俺よりも魔術師である人の方が選ばれる確率は断然に高いんじゃ...それも高位の魔術師なら特に」

 

「それはあの人には、いや....あまり話すと私が怒られる、この話はやめておこう」

 

黒服の男はその話の続きをするのをためらい、話すのをやめた

 

そんな事を話しているとエレベーターは止まり扉が開くと、さらに廊下が続いており、しばらく歩くいていると、とある部屋に案内された

 

「今日はここがお前の部屋だ、一晩考えて明日またマルスビリー様にお前の意向を言え、お前の意向次第でカルデアが存続するという可能性はなくはない」

 

「...ッ!それは俺がカルデアのマスターをやめればカルデアは助かるということですか?」

 

「あくまでもあのお方が判断されることだが、少なくともマルスビリー様は君を気に入っているようだ、機嫌がよければお前の要望も受け入れてくれることもあるだろう」

 

「一つ聞いていいですか」

 

「なんだ」

 

「カルデアが廃止になったらマシュやサーヴァント、カルデアのスタッフ達はどうなるんですか」

 

「君がカルデアのマスターをやめればカルデアは存続する可能性はある、もし君が断ったならカルデアは廃止、カルデアの人員は一人残さず消されるだろう」

 

「け、消される?」

 

「殺されるということだ、カルデアという存在を跡形もなく消し、君が行なった人理焼却事件の解決もすべてただの嘘、噂となる。逃げようとしても国家反逆罪として指名手配犯となり永久に世界から追われることになるだろう」

 

「んな,...」

 

「すべては君の判断に委ねられる、たったの二択問題だ、答えなど明らかだろう?」

 

俺がカルデアをやめればみんな助かる、マシュやダヴィンチちゃん、俺と契約してくれたサーヴァント達がカルデアにいられるなら俺はそれで...

 

一晩考える前に立香の中の答えは一つとなってしまった

 

そして立香は案内された自分の部屋へと入っていく

 

 

 

 

 

 



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第5話

・・・・・・・・・

 

カルデアをやめる

みんなと会えなくなるのは嫌だけど

俺がマスターをやめれば何事も無く終わるんだ

 

立香は部屋にあるベッドに腰掛けながら目を瞑り只々ずっとカルデアの事を考え続けていた

 

「もう俺はカルデアにはいられない....か」

 

今までの人理焼却の長い旅路はとても辛いものだったけど、それでもサーヴァントやその時代の人達と会えたのはとても嬉しかったし楽しかった

いつかは終わるとは分かっていたけど、それでもずっとこのままがいいなんて、自分の勝手な都合で甘い考えだったのかも知れない

 

「みんな......ごめん」

 

立香は自然と目が熱くなっていた

自分の目から涙がこぼれるのがわかると両手で目元を抑えた

 

 

「謝らないでください、マスター」

 

 

 

ふと気がつくと立香の顔は何かに包まれていた

暖かくて何かいい香りがする

自分を守ってくれているような感覚に立香は深い安堵を感じた

涙でかすれた目を開けるとそこには薄く黒い肌があり、見上げると紺色の髪の毛をした少女が立香の顔を両手で包み込んでいた

立香はその人物が誰なのか一目で理解した

 

 

「せい.....ひつ?」

 

「マスターがカルデアにいちゃいけないなんてことはありません、マスターがいなきゃ私達の存在してる意味がありませんから」

 

「俺がいてもいいなんて...」

 

「マスターは私を.....私達を守ろうとしてくれているのですね」

 

「守る....俺は今までずっとみんなに守られ続けてきた、だから次は俺が守りたい、だから...」

 

「守るために、私達から離れるのですか?」

 

「.......」

 

立香は黙る

離れる、それが唯一のみんなを守る方法

それしかない.....

 

 

だけど......

 

 

 

 

「守るなら、堂々と私達の前で守ってください!」

 

 

 

.........ッ!

 

 

 

守るという事ががどうゆうモノなのか

みんなにとって幸せが何なのかも全て忘れてしまっていた

 

「みんなが幸せでいられるカルデアを守るためにマスターは決断していた、でも、そこにマスターがいなければ意味がないんです、みんな(・・・)がいなきゃ幸せじゃないんです」

 

静謐....

俺はマスター失格かも知れない

自分の大切な者を守る方法さえわからなくなってしまっていた

失いたくないのなら自分の手で守る、守りたいんだ

 

「静謐、ありがとう教えてくれて」

 

「いえ、マスターが私達の側に....私の側に居てくれればそれでいいんです」

 

 

立香は心に決意する

俺は俺なりのやり方でみんなを守りたい

 

 

 

たとえそれが政府を裏切る行為になるとわかっていても....

 

 

 

「あと静謐、一つ聞いていいかな?」

 

 

立香は今一番の疑問に思っていることがあった

 

 

 

「なんでしょうマスター?」

 

 

 

 

「なんでここにいんの?」

 

 

 

「.........」

 

 

 

静謐は少し黙り込むとニコッと笑顔で

 

 

「ついてきちゃいました☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第6話

「ついてきたって、サーヴァントを維持するための魔力はカルデアから供給されてるけど、それはカルデア内の話で外に出たら数分で消滅してしまうんじゃないのか?それに今は令呪を封印されてるから俺からの魔力供給もできないし」

 

「私のクラススキルに単独行動Aがありますから、一週間は魔力供給なしで現界し続けることができます、いざとなったらマスターにアッチの方で魔力供給してもらうつもりですので...」

 

静謐は頬を赤らめると立香は無視して話を続けた

 

「でもよくここまでついてこられたね」

 

「私はアサシンですので、気配遮断はもちろん人の目を欺くことなんて余裕です、マスターのためなら例え火の中水の中どんなとこでもついていきますので」

 

「静謐がいるなら清姫もいるかと思ったけど、清姫はいないみたいだね」

 

「清姫さんならダヴィンチさんやカルデアのみなさんが全力で止めていましたよ」

 

 

確かに、清姫には単独行動のスキルがないからカルデアから出ればすぐ消滅しちゃうしな...

 

「抑えられてる清姫さんにドヤ顔で見送ってあげました」

 

清姫のやつ、静謐のことだいぶ恨んでそうだな...

 

「単独行動、気配遮断と兼ね備えた私が一番最適だと言われ今マスターの元へいるというわけです、カルデアのみなさんからの公認です、これは明日からでも式をあげるべきかと」

 

静謐はマスターと二人っきりだからなのか質問にはちゃんと答えてくれるがいつもよりは少し暴走気味のようだった

 

「とりあえずここから脱出しなくちゃだ、あと俺のこの令呪の錠もなんとかしないとだしな」

 

「そうですね、この部屋の鍵は開けときましたんで、いつでも行く準備はできています」

 

「あ、開けといたってどうやって...?」

 

「先ほどのマスターと一緒にいた男から鍵を取っておきました」

 

「さ、流石ですね」

 

「いえアサシンですのでこれくらいは出来ないと初代に首持ってかれるんで」

 

「そ、そうか」

 

立香と静謐は部屋の扉を開け廊下を見ると誰もいないことを確認すると部屋を後にした。

 

「私はマスターの令呪の鍵を探しに行ってきます、マスターは出口へ向かって行ってください。この先にある階段を降りて左の通路を真っ直ぐ行けば裏口の方は出られます。マスター一人でも大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だと思うけど...、さっきの男から令呪の鍵も盗むことは出来なかったのか?」

 

「探ってみたのですが、あの男からは部屋の鍵しか出てきませんでした」

 

「うーん変だな、あの男が令呪の鍵持っていると思うんだけど...まぁいいか、とりあえず俺は裏口の方は向かうよ」

 

静謐は、はいッと言うと霊体化して鍵を探しに行った

今は静謐との契約が無効にされているため霊体化すると立香にも姿が見えなくなるようだ

 

 

 

立香は隠れながら慎重に進んで行く

不自然なのかこれが普通なのかわからないが今のところ誰一人出会っていない。少しぐらい警備員とかいてもおかしくないはずなんだが

 

もうすぐ階段のあるところで立香はすぐ右にある部屋の存在に気づいた。

扉のない部屋、いや扉が開いている。不自然に思ったが立香は覗いてみた。

中は暗く、奥の方に何か薄暗く光る物があるようだ、その中心に人影らしきものも見える。

 

立香は自然と体が引き寄せられるように部屋に入って行った

しばらく進むと奥にあった薄暗く光るものの正体があらわになっていく

 

 

そこには巨大な培養器のようなものに一人の少女が入っていた

 

「え.....?」

 

白い肌に金色の髪、整った顔立ちで

薄暗く青白い培養器にどこか神秘的な雰囲気を感じさせた

目を閉じていて生きているか死んでいるかもわからない

 

囚われているのなら助けてあげたいけど....

 

 



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第7話

ドクン.....

 

なん....だ?

 

体が動かない....

 

金縛りのような感覚に突如襲われた立香は巨大な培養器の前で立ったままだ

 

ドクンドクンドクン....

 

心臓の鼓動が早くなる

 

なんだこれ...何かに威圧されているような....

 

視線?誰かに見られている....?

 

立香はこの感覚の原因を探すため、目だけで辺りを見渡す

 

誰もいない

 

人間の視野の広さは左右約120度程度といわれている

視界で範囲では誰もいない

 

なら後ろか?

いや、違う、後ろじゃない

背後からは何も感じない

 

ならどこだ?

 

その正体を立香はようやく理解した

 

培養器

 

目の巨大な培養器に入っている少女、さっきまで眠っていた少女の目が開いている。その視線の先は真っ直ぐに立香を凝視している

 

やばい....

 

立香は直感で感じた

少女から放たれている異様な空気に体が痺れる

今すぐにここから逃げなきゃ....

 

逃げなきゃ....

 

 

 

顔から

体から

ツーっと冷たい汗が全身を滴る

 

ーーーーーいー

 

 

逃げなきゃ.....

 

 

「ハァ.......ハァ....」

 

 

息が荒い

無意識に呼吸が乱れている

 

 

ーーーーぱーーいー

 

 

逃げられな....

 

 

「先輩!!」

 

 

ッ!

 

 

突然の掛け声に立香の金縛りのような感覚がようやく解かれる

 

「はぁ.....はぁ.....え?マ、シュ...?」

 

「助けに来ました先輩!」

 

今自分の目の前にいるのはマシュ

 

「さぁすぐにカルデアに帰りましょう!正面の入り口から逃げられますので(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

正面の入り口?

 

 

 

「で、でもまだ静謐が...」

 

 

「せい....ひつ?、あぁー静謐さんならカルデアで待っていますよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

マシュは立香の手を引っ張る

 

立香はすぐに気づいた

 

 

手を引っ張られるも立香はその場で立ち止まる

 

「どうしましたか先輩?」

 

「..........」

 

立香は質問する

 

 

「今、静謐がどこにいるかわかる?」

 

 

「静謐さんならカルデアで先輩の帰りをずっと待ってます」

 

違う、今静謐はカルデアにはいない

それにさっきマシュは正面の入り口から逃げるって言っていたど静謐からは裏口からだと聞いている

 

どちらからか逃げるってことはどちらかが危険ということだ

 

 

マシュと静謐、どちらかが嘘をついている

 

マシュは静謐はカルデアで待っていると言った

それは違う

静謐はカルデアのみんなに託されて俺の元へ来ている

それをカルデアの一員であるマシュが知らないはずがない

それを知らないってことは....

 

だけど

そんな理屈がなくても立香には一瞬でわかった

 

「君はマシュじゃない...」

 

 

マシュは黙ったまま立香を見続けている

そしてわずかに微笑むとマシュは暗闇へと消えていった

 

 

「なんだ、今の....」

 

立香はハッと思い、培養器の方を見ると中にいる少女は目を閉じたままだった

 

「幻覚....だったのか?」

 

立香は培養器に入っている少女を助けようと思っていたけど、今はすぐにここを立ち去るべきだと判断した

 

立香はその部屋からすぐに出て行く

 

 

さっきのあの体が痺れるような感覚とマシュの幻?は一体なんだったのか

わからないけど最後に見た培養器に入っている少女の顔は薄っすらと微笑んでいるような気がした

 

 

 

 



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第8話

白く吹き乱れる一面の銀世界

大粒の雪が容赦なく地面へ叩きつけられる。

決してやむことのない、その吹雪は圧倒的な冷たさを感じさせた。

しかしカルデアの窓から眺めるマシュ・キリエライトにその寒さはない

 

 

「マスターが心配か?」

 

不意に背後から声を掛けられる

振り向くとそこには全身青い装いの男が腕を組みながら壁に寄りかかっていた。組まれた腕に持っているのは突けば必ず心臓を貫く呪いの朱槍ゲイボルグ。

 

 

 

「クーフーリンさん」

 

 

クーフーリンはマシュの顔を見ずにそのまま話し始めた

 

「マスターなら大丈夫だろう。根拠があるってわけじゃねぇが、あー見えて肝の座っている男さ。伊達に世界を救ってるわけじゃねぇんだ。そんなん嬢ちゃんが1番わかっていることだろうよ?」

 

クーフーリンの問いかけにマシュは答える

 

「......確かに先輩は今まで人理修復の為、数々の時代を旅してきました、それは決して容易な事ではなく、とても過酷なものでした。先輩は一人でもきっと大丈夫だと思います」

 

マシュにとって藤丸立香という人物はマスターとサーヴァントの関係として守らなきゃならない存在というものでは無くなっていた

 

藤丸立香を守りたい

 

藤丸立香を失いたくない

 

藤丸立香と居たい

 

主従関係なんてない、そうしたいと思うマシュ自身の願いがそこにあった

 

「でも....私は先輩の側で先輩を守りたいんです!」

 

クーフーリンは何か安心したかのようにふっと笑いながら言う

 

「肝が座ってるのはマスターだけじゃねぇな、どうやら心配してんのは俺の方だったようだ」

 

マシュのこの思いは今後決して揺らぐ事はない

それは恐らく藤丸立香も同じなのだろう

どれだけ離れていても、この二人の絆は離れる事なく硬く結ばれていた。

 

クーフーリンはマシュに背を向けるとその場を去ろうとした

 

「邪魔したな、俺は部屋に戻るぜ」

 

 

「クーフーリンさん!その、ありがとうございました。励ましてくださり...」

 

 

クーフーリンは背中を向けたまま小さく片手を上げ歩いて行った

 

クーフーリンさんはきっとマスターだけではなく、私をも心配してくださってくれていたのですね

 

マシュは静かに微笑んだ

自分の中で張り詰めていた緊張が少しほぐれていた

 

しばらくすると突然館内放送が流れ始める

 

『緊急ミーティングを行います。以下の人は直ちに管制室へ来てください』

 

マシュの足は動いている

わかっていた

自分が行かなくてはと

焦るようなその早い足取りは既に管制室へ向かっていた

 

 

『マシュ・キリエライト』

 

 

 

 

 

 




投稿かなり期間空いてすみません
最近忙しくあまり書けていませんでした
また少しずつ書いていこうと思うのでよろしくお願いします


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第9話

管制室の扉が開く。

管制室にはダヴィンチと数人のカルデアスタッフがコンピューターを操作していた。

 

「おや、早いねマシュ。まだ5分も経ってないよ」

 

ダヴィンチはにこりと笑っているが管制室の雰囲気はかなり張り詰めている。

 

「ダヴィンチちゃん、緊急ミーティングということは先輩の事についてでいんですよね」

 

「あぁその通りだとも。早速始めたいところなんだけど、まだ他のサーヴァント達が来てないからね、まぁ少しゆっくりしたまえ、その様子だとちょっと走ってきたみたいだしね?」

 

「す、すみません、いても経ってもいられなく...」

 

マシュは一息つくと横から話しかけられた。

 

「そんな急いで来るほどマスターが恋しいのかしら?」

 

そこにいたのは黒い鎧に白く長い髪をなびかせた女性だった。

 

「ジャンヌオルタさん」

 

「マスターだって私たちに何も言わずにすぐ出て行ったのよ?

人理修復だって終わったのだからもう私たちは用済みなの、私達がどうなろうとマスターにはもう関係ないでしょう?

 

「た、確かに人理修復は終わりましたが、先輩はまだ...」

 

「なに、まだ一緒にいたいとか?フン、それはアナタの願いでしょう?マスターがどう思っているかなんてわからないわよ」

 

マシュは下を向き考える。

先輩が私達の事をどう思っているかはわからない。

『きっと私達の事を求めているに違いない』はず。

そんなの自分の勝手な思いだった?

もし先輩が自分達の事を拒否したら.....?

わからない。そしたら自分でもどうすればいいかわからなくなる.....。

 

「.........」

 

 

「そこまでにしておけ突撃女、みっともないぞ」

 

そこへ漆黒のドレスを身に纏った騎士王がジャンヌオルタのマシュへの一方的な言葉の止めに入った

 

「セイバーオルタさん.....!」

 

するとセイバーオルタはマシュに近づき小さく話した

 

「気にするな、あぁ言っているがなんだかんだアイツが一番乗りだ、余程マスターが心配なのだろう」

 

セイバーオルタは小さな声で言ったがジャンヌオルタに聴こえていたらしく(聴こえるようにし)すかさずジャンヌオルタは反発する。

 

「んなッ!ちょっとなに言ってるのよ、別に心配なわけないし、ここへ最初に来たのもたまたま管制室に近い場所にいたからだけど?」

 

「管制室の扉の前でウロウロして待機してたくせによく言う」

 

「ちょっと、なんでわかるのよ!」

 

「そらボロがでた」

 

「ぬぐぐ、それがわかるってことは見てたってことよね?ってことはアナタも近くにいたって事じゃない、私だけに言えることかしら?」

 

ジャンヌオルタは平静を保とうとしているが顔が引きっている。

 

「フ、まぁ私はマスターが心配だからな」

 

「へ、へぇ、冷徹女のくせにそんなにマスターが好きなのかしら?見るに耐えないからやめてちょうだい、あー寒い寒い」

 

二人の喧嘩腰の会話にマシュは止めに入る

 

「ま、まぁ二人とも.....もうすぐミーティング始まりますし、ここら辺で....」

 

そんな話をしている間に管制室には召集されたサーヴァント達がぞくぞくと集まっていた。

するとダヴィンチが全員集まったことを確認して話始める。

 

 

「さて、みんな集まったことだし早速、ミーティングを......いや」

 

ダヴィンチは一拍置き、改めて話す。

 

 

 

「作戦会議といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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