幻想の摂理に挑む者たち (マナティー)
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夢見るままいたりb

 

「ア■■■スーーーー!!」

 

地球のどこでもない、世界のどこでもない虚無の世界。極限の光と、無限の闇が激突する。

 

幾多の世界が終わり、また幾多の世界が始まる。無限の闇へと、光の弾が襲った。

 

光が、叫ぶ。

 

「イ■ーーーー■ェブ!!ティ■■ロ■■■犬!!」

 

さらに、六つの光が生まれ闇へと襲う。光は弾丸となり、物理法則を無視した動きで、襲いかかる。しかし、闇はその光を容易く消し去ってしまう。

 

「ア■■■■ンス■■■カー!!」

 

巨大な光が、闇へと突撃する。辺りの闇を昇華させ、消滅させ、消失させ光の尾を帯びて無窮の闇を翔ける。

 

激突、スパーク。さらなる衝撃が空間を揺らす。しばらく拮抗したのち、光は弾かれた。

 

極限な光は、二つ存在していた。その二つーーーー二人は、人であった。その二人は、闇を祓う光を放ちながら闇の攻撃を避ける。

 

だが、完全には避けられず、二人の光の翼が抉れた。だが、行動に支障はない、ためらう、惑うことはない!

 

巨大な剣を持った人が、闇へと襲いかかる。それでも闇は祓われない。2丁拳銃を持った人が、幾多の光の弾丸を闇へと撃ち込む。

 

闇は、怯むことなくその二人を弾き返した。闇は、二人を飲み込むような黒い奔流を放つ。

 

地獄よりも黒い業火が、二人を襲う。

 

光が、二人を守るように広がり奔流を止めた。が、二人の表情は険しい。いくら巨大な力を持っても所詮は人である。人では、■には勝てない。その事実が、二人に突きつけられている。

 

「ははははは、はははははハハハハッ!!!!その程度か、その程度かその程度かその程度か!アイタス・ロータ、アルハザード・ラクティー!」

 

二人を、嘲笑う。

 

「その程度で、その程度で!よくこの我を祓うと、滅すると言えたな!!自惚れも甚だしいぞ!」

 

所詮、人は闇に、■に勝てない?■には■でしか勝てない?そんなことがーーーーそんなわけがーーーー

 

「あるわけねぇだろド畜生がぁぁぁぁ!!」

 

ここで死ぬ運命、その運命から逃れる術はない?ふざけるなーーーーふざけるなーーーー!

 

「ふざけるな、そのような運命などーーーー俺を縛る理由に値などせん!!」

 

それでも二人の目からは光が消えない。幾ら弾き返しされようとも、幾ら叩かれようとも、幾ら傷を負っても、幾ら死にかけようとも。

 

負けるわけには、いかない。

 

誰に、闇、■、自分。

 

違う。どれも違う。二人が絶対に負けるわけにはいかない存在。それはーーーー

「まだ、行けるんだろうな?」

 

「当たり前だっ、俺がこの程度でへばるかよ!」

 

両手で握る大剣に力を込める。まだ、尽きていない。まだ、全てを燃やしていない。

 

心を、魂を、体を燃やす。勝つために。既に体は限界のはずなのに、倒れてもおかしくはないのに。

 

それでも、力尽きることはない。逆に、力が奥底から湧いてくる。光が、さらに輝く。魂が、昂ぶる。

 

負けなど、存在しない。目の前にあるのは、勝利の二文字だけである。敗北など、ありえないーーーー

 

そして、旧神の印が結ばれ、目の前の闇を屠るための、最大の、最強の、極限の希望を呼び覚ます。

 

そのために、自らかに内臓している魔導書へと入り込む。

 

 

ーーーーーーーーーーーージーーーージジジーーーー

 

アイタス・ロータ。■■イ■■本最深部、接続(アクセス)完了。

 

魔力供給、安定。

 

封印、解除条件を確認、了承。

 

一号二号三号封印一斉解除。

 

抽出。

 

輝■■■■■へ■■ン、発動承認。

 

解放。

 

「最終封滅兵葬『輝■■■■■へ■■ン」

 

匣が、匣が、匣が開かれる。闇を屠るために、闇を祓うために、極限の光がその先へと加速する。

 

天へと登るその光は、まるでお伽話に出てくる龍そのものであった。こんなにも強いのに。こんなにも輝いているのき。

 

感じるのは、暖かさであった。

 

「開け、『■の■』」

 

鍵を、取り出す。闇を滅するために、己の半身を取り出す。

 

アルハザード・ラクティー。■コ■写■、最深部接続(アクセス)完了。

 

抽出、召喚承認。解錠。

 

使用許可申請。了承。

 

ク■■■ラ、起動。

 

扉が開く。闇を滅するために、そのための武器を手に執るために。

 

魔法陣ーーーー旧神の印ーーーーエルダーサインが描かれる。

 

そこから、巨大な銃ーーーー大砲が召喚される。究極の対滅兵葬でありーーーー己の■である、それを。

 

「貴様らーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

闇が叫ぶ。が、その叫びは二人の耳に入らない。闇は、既に二人へ干渉することは不可能となっていた。何故か?語るまでもない。

 

「あんまり人間を舐めんじゃねぇぜ、カミサマよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

大剣を光が包み、光の柱となる。その光は、なによりも輝いていた。天にまで昇るような光の柱。魂の鼓動。それをーーーー

 

「人間を舐めるなよーーーーたかが神の分際で!」

 

引鉄に右手を掛け、銃身を左手で支える。最早、銃ではないーーーー大砲と呼称するほどの大きさを持つ闇を滅する兵器。それをーーーー

 

放つ。

 

光の鉄槌を振り下ろし、光の激流が走る。

 

二つの巨大な光は、闇を飲み込みさらに強く輝いた。

 

輝きは、二人を包み込む。

 

二人は、その輝きの中でただ嗤っていた。何に対してかは不明だが、とても、満足げな顔だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「人として生き、人として戦い抜いた。その果てが、この結果なわけね。

 

浅はかだったわ、私の考えも。人に、ここまでの可能性があるなんて。

 

だからこそ、なのかしらね」

 

何もない、虚無の場所で金髪の女性は、閉じた扇子を口に当て笑みを浮かべる。まるで、物語の続きを楽しみにしているような子どものように。

 

「戦わなければ、生きている実感を掴めない者。戦いたいから戦い、潰したいから潰す。

 

面白いじゃないの。もしかしたら、■になる可能性もあったのかもしれない」

 

■ーーーーそれになる可能性。それは、万が一の可能性なのか。それとも、今回がただの例外なのか。

 

「招待してあげるわ、この世界に。幻想郷に。勿論、力は制限させてもらうけれどーーーー些細な問題よね、貴方達に限っては」

 

フフッ、と女性は笑みを浮かべる。

 

「せいぜい私を楽しませることね。ねぇ?アイタス・ロータにアルハザード・ラクティー」

 

女性ーーーー八雲紫は、その空間から姿を消す。

 

これから何が始まるのか、何が起きるのかは誰にもわからない。その果てに、何があるのかも。

 

これが、幻想郷に何をもたらすのかも。

 

 

 

 

 

 

 

 



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目覚め

 

木々のざわめく音がする。その音を、目覚まし時計にし起きる。

 

ーーーーここは

 

「ここは……どこだ?俺は……あの後……」

 

目を覚ますと、そこは森の中だった。戸惑いながらも体を起こし、手を軽く握ったり離したりする。

 

頭が痛い、体の節々も痛い。が、それほど酷くはなかったため問題ないと判断する。

 

ふと自分の体を見ると、服はボロボロ血がいたるところに滲んでいた。

 

よくあることだから、特には気にしないがあの戦いのあとであるからもっと酷い怪我をしているかと思ってはいたが……

 

「問題はねぇな……で、どうして俺はここにいるんだ?」

 

記憶を遡る。ア■■ー■と戦いーーーー輝■■■■■■ロ■と、ク■■■ラの二つの極限の光と闇が激突し一ーーー

 

その後の記憶が曖昧だ。こちらの敗北なのか?それとも、勝利なのか?一切不明だ。もしかしたら、ここはあの世なのか。極楽浄土に行けるとは思っていないが、ここが地獄だとしても穏やかすぎる。これでは、ただの迷子の子猫ちゃんだ。

 

ともかく、現状を確認し自身の能力も確認する。

 

ル■■エ■本、接続(アクセス)ーーーーーーーー魔力供給、40%まで安定。

 

ロイガー・ツァール、召喚可能。

 

ノーデンス、specを下げた状態で召喚可能。

 

アラオザル・ブラスト、60%の出力で安定。

 

アルデバラン・ストライカー、出力50%で安定。

 

■く■■■ゾ■■ロ■、接続不可。確認、不能。

 

シャンタック、発動不可。

 

ーーーー散々、だな。

 

散々としか言いようがない。あの時の戦いで、かなりの無茶をしてしまったようだ。無理もない、その戦いが全てを燃やし尽くした戦いだったのだから。

 

■く■■■ゾ■■ロ■の召喚も、本来ならばもっとしっかりとした手順を踏まなければならなかったのだがーーーー

 

これで、ア■■■スが滅んだと言うのなら何も、文句はない。だが、邪神とは理不尽なものであるため、何があってもおかしくはない。

 

「さて、こっからどうするかな……」

 

頭を掻く。

 

辺り一面は木で埋め尽くされている。ここがどこかなど、わかる筈もない。

 

一度でも来たことのある地域なら魔力の質で覚えているのだがーーーー知っている魔力と、どこかが違っている。何か、別物のような。

 

こうなれば、自分の目で確かめるまでである。一度木の上まで登ってみるか、と考える。見る限りでは、そこまで高くはない。

 

「んじゃ、一度のぼるか」

 

適当な木の幹に、足の裏を合わせる。そして、力を込め体を一気に上まで持ち上げる。

 

跳躍。木の枝に体が当たるが気にせず一気に木の天辺まで昇る。

 

そこで見たものは。

 

「んだぁ?空が紅い……?」

 

青ではない、紅い空だった。

 

見渡す限り一面、紅い空。それに、霧のようなものまででていてそれすら紅い。

 

自分の知る空はこんな色だったか?と記憶を疑う。

 

「全く、どうなってんだ……と、アレは……」

 

視界の中に入った、大きな建物。城とまではいかないが、館くらいだろうか。

 

詳しくはわからないが、あの館から魔力の波動を感じる。それも、かなり大きなーーーー。

 

この空を紅くしたのもあそこに原因あるのだろうか。

 

「そういやぁ、あいつの姿がねぇな。くたばったか?」

 

共に戦った、あの男の姿を浮かべる。2丁拳銃を扱い、襲い来る有象無象を砂煙のように打ち払う、鬼のような男。

 

くたばったのだろうか?それはない。根拠はないが、わかるのだ。生きていると、今も暴れていると。

 

「俺も甘くなったモンだ……これも、制御が完全になりつつあると言うことなのかね」

 

本当に、甘くなった。情け容赦ない自分はどこ行ったのかと疑いたくなる。

 

ともかく、行動をしよう。このままじっとしていても無駄なだけだ。

 

「あー……服も直さねぇとなぁ……ボロボロのままじゃあんまりだ」

 

魔力構築。

 

魔力を束ね、服を再現し身なりを整える。

 

それにしても、ここはどこだろうか。少なくとも知っている場所ではない。

 

ならば、別世界か。それも有り得る。

 

あらゆる場所へ繋げるというヨグソトス。それが、あの戦いの余波で開きそれに飲み込まれた可能性が高い。

 

と、なれば元の世界に戻るためにはヨグソトスを再度開かなければならないが……そのためにはアレが安定して使えなくてはならない。

 

「さーて、行くとすっか」

 

非常に目立つことになるが、木の上を跳躍しながら向かうことにする。こういう時に、シャンタックが使えればどれだけいいかと思う。

 

「チッ、無いもの強請ってもしょうがねぇ。行くか」

 

そしてーーーーアイタス・ロータは駆ける。館へ向かって。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どう?″霧″の調子は」

 

紅い館にあるとある一室。そこでは、二人の少女がそれぞれ異なる椅子に座り言葉を交わしていた。

 

「間違いなく、この幻想郷全土に渡っているわ。これで、吸血鬼でも昼間に行動することが可能になる。でも、これで貴女は何をするつもりなの?」

 

紫色の髪をした女が、幼女体型ともいえる少女に問う。少女の親友である彼女でさえ、今回のことは少女が何を意図してやっているのか理解出来なかった。

 

「ただの気まぐれ、余興よ?せっかくこんな自由な世界に来たのだから、楽しまなければ損じゃない」

 

「随分と余裕じゃない」

 

「この紅魔館の主なのだから、常に優雅であらないと。それに、もし私を止めに来てもそれはそれでよし。私を止められないなら、所詮その程度という話よ」

 

なんという自信だろうか。しかし、ここまでの気持ち、心持ち、器がなければこの紅魔館の主としては有ってはいけない。

 

「あと、もう一つーーーーあの男は?」

 

「今は、封印を掛けた部屋に閉じ込めているわ。彼の体内から、とてつもない魔力を感じたのは間違いない。

 

それも、最上級の魔導書の魔力。今回のことが終わったら、詳しく話を聞きたいところよ」

 

「そんなに?興味深い。ふふ、この世界は私を思った以上に楽しませてくれそうだ……」

 

物語は動く。今回のお話の題材は吸血鬼ーーーーどうぞ、ご覧観あれ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 



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存在意義

今回、ネタ要素が少しばかり入ってます。


邪に逢うては邪を祓い、闇に逢うては闇を滅する。

 

我に敵無し、極限の光をもって世界を紡ぐーーーー闇には無限を、光には極限を。今宵の我が魂は血に飢えているーーーー

 

それは、ある二人にのみ赦された聖句。

 

人として戦い、人として生き、人として魂を燃やした極限の光。

 

誰のためでもなく、自分のために。ただ、目の前の敵を叩き潰す、それだけのために魂を燃やす。

 

もしかしたら、人を超え、■になっていたのかもしれない、しかし、もし、彼らが■になったとしてもその本質は変わらないだろうーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここだな」

 

スタッ、と館の門の前に飛び降りる。館は、思った以上に大きく感じる。

 

その場にあるだけで、存在感が違う。外見は赤一色と言っていいほどだ。趣味が悪い。

 

そして、この館の中から感じられる魔力の波動。この紅い空から感じる同種の波動。

 

ーーーー当たりだ。

 

自分の中で、そう確信する。ふと、門の前に目を移すと誰かがうつ伏せで倒れていた。赤い長い髪の毛に、中華服を着た女性……なのだろうか。

 

別に、起こしてもよかったのだが起こしたら起こしたで面倒な気がするのでやめた。

 

結果、放置して門をくぐり館の領内へ。心が汚い者ならば、ここでーーーーなこともするだろう。

 

だが、そんな趣味はない。そんなことで快感を得ても、心は満たされない。魂は昂らない。

 

戦いの中でしか、生きている実感を持てない。

 

昔、そんな事を言ったら「悲しい」と言った人がいた。そいつは、「世の中にはもっと楽しいことが沢山ある。戦いだけが楽しいだなんて、戦いが楽しいだなんて間違っている」と。確かに、「普通」の人間からしたらこの生き方は酷く間違った物だと思うだろう。

 

だが、そんな物はただの押し付けだ。自分の主観の、自分の意見の、自分の正義をただ押し付けただけにすぎない。

 

ーーーー俺には、俺だけの生き方がある。

 

それだけは、誰にも譲る気はなかった。俺は、自分の生きたいように生きる。

 

館の扉に近づくたびに中から爆発音が聞こえてくる。あの女性ーーーー門番?を倒した者が暴れているのだろうか。

 

右手に光が集める。集まった光は、大剣の形を成し実体化する。大剣【ノーデンス】である。

 

身の丈と同じくらいの刀身を持ち、峰には深い凹凸がありソードブレイカーの役割を持つ旧神の名を冠した大剣。

 

絶対に折れることはなく、切れ味も普通の剣や刀のそれとは比較にもならない。

 

しかし、前の戦いの影響からか現在は強度切れ味も幾らか衰えている。それでも充分ではあるが。

 

空いてる左手で、扉を開ける。

 

「思った以上に広いな」

 

館の中は、外観に比べてかなり広く感じる。それに、真っ赤である。目に悪い……一体、この館の主はどんな趣味をしているんだ。

 

ますます、顔が見たくなった。これだけの館の主だ。期待が持てる。

 

内装を眺めながら、爆発音のする方向へと歩く。

 

そして、見えてきたのは宙に浮きながら戦っている二人の女だった。一方はメイド服を着た、銀髪の女。

 

もう一方は、紅白の巫女服を着た黒髪の女。

 

巫女のほうは、札のような物を体大量に投げつけて……と言うか発射?している。

 

メイドの方は……一瞬で居場所を変えながらナイフを投擲している。目で追えない速さで動いているのかそれともーーーー

 

メイドのほうは、この館側だと判断出来る。では、巫女は?おそらく、空を元に戻しに来たのだろう。

 

自然に、口元がゆがむ。

 

まぁ、取り敢えずここで見てるだけなのもあんまりなのでーーーー

 

挨拶として、閃光の一撃を放つ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーー中々手強いっ!

 

ナイフと札が交錯する戦場の中、博麗の巫女と戦いながら、紅魔館のメイド長十六夜咲夜は思った。

 

ナイフと、札がぶつかりハゼる。博麗の巫女に、時を止め四方八方にナイフをばら撒いても一向な当たらない。

 

逆に、巫女は咲夜の行動を読みその先へ札を放って来る。巫女にやられた紅魔館の番人、紅美鈴のことを笑えない。

 

十六夜咲夜の能力は時を止める能力である。それは、戦闘において多大なアドバンテージとなるのだが此度の戦闘では全くそれが感じられない。

 

それだけに、博麗の巫女が手強いと言うことだろう。しかも、咲夜は内心焦っていても博麗の巫女は涼しい顔をしている。ポーカーフェイスが上手いのかもしれないのだがそれでも出来すぎだ。

 

時間を小刻みに止めつつ、考える。このままでは、能力の使いすぎによる疲労でこちらが負けてしまう。

 

ジリジリと、追い詰められていくのを感じる。

 

弾幕ごっこ、と呼ばれる決闘法がこの世界にはある。

 

それは、美しさを競う物でもある。そのおかげで死ぬ可能性自体は低いが、ここで負けたら紅魔館のメイド長の名折れだ。

 

しかし、現段階で不利な感は否めない。本音を言えば、「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」と言いつつ軽くあしらいたい。メイド長だってストレスは溜まる。

 

「そこか!逃がさない!」

 

札が襲いかかる。向かってくる札を、ナイフで迎撃しつつ巫女に近づく隙を探す。

 

近づくのは、非常にリスクが高いがこのままではジリ貧。攻めなければ、勝ちは見えない。

 

「雑魚は消えろー!」

 

「巫女が言う台詞かぁぁぁぁぁ!?」

 

巫女に相応しくない台詞にツッコミを入れる。この巫女は、色んな意味で規格外だ。

 

「今よ、霊符『夢想封印』!」

 

ツッコミに気を取られたせいで、スペルカードを発動させる隙を与えてしまった。それぞれ、色が違う7つの光球が出現し咲夜へと襲いかかるーーーーが、その光球は咲夜の元までは辿り着かなかった。

 

なぜならば、一筋の青白い閃光が、咲夜と博麗の巫女の間を轟音をたてながら通り過ぎた。夢想封印の光球を飲み込み。

 

博麗の巫女と咲夜がその光景に呆然とするなか、一人の男の声が聞こえた。

 

「邪に逢うては邪を祓い」

 

その男は、黒いロングコートを身に纏い

 

「闇に逢うては闇を滅する」

 

右手には巨大な剣を持ち

 

「我に敵無し、極限の光をもって世界を紡ぐーーーー」

 

その目は、無邪気な子供のような

 

「闇には無限を光には極限を。今宵の我が魂は戦に飢えているーーーー」

 

口は咲夜と博麗の巫女を嘲笑うように歪んだ

 

「面白いことしてるじゃねーか……俺も混ぜろよ」

 

溢れんばかりの力を感じさせる、黒いロングコートを着た狂気を孕む青年だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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開戦

初の戦闘シーン。やけに一方的になってしまった……反省します。

ギャグ入れようにも滑る気しかしない。


ただ、ただ、呆然としていた。

 

何も考えられなかった。目の前にある存在と対峙して、向かい合って、何も考えられなかった。頭が、考えることを否定した。

 

一目見ただけでわかる。この男は、危険だ。普通ではない……異常を遥かに通り越した、むしろ向こう岸のような存在だと。

 

「アンタ、誰よ。あいつの使い?」

 

「あいつ?誰のことだか知らねーが俺はただの迷子だぜ?」

 

「アンタのような迷子がいるか」

 

博麗の巫女の問いに、ただの迷子と答える男。迷子?乗り込む気満々な気をして何を言っているのだろうか。

 

「迷子?なら、すぐにお引き取り願います。ただいま、立て込んでおりますので」

 

「あぁ?こんな楽しいことしてて帰れだなんてヒデーこと言うじゃねーか」

 

無駄だと思いつつ言ってみたが、やはり無駄だった。それに、博麗の巫女との戦いを見て楽しい?この戦場狂め。

 

「なら、一つだけ答えて頂戴。アンタは、私の味方になるの?それとも、メイドの味方になるの?」

 

「どっちの味方?ーーーーどっちでもねーよ!」

 

男が、大剣を振るう。

 

そこから放たれる魔力が三日月の形を成し、轟音を立て襲いかかる。あの男がそのつもりならば……

 

「襲いかかるのならば、容赦はしません!」

 

三日月の形をした衝撃波を避け、ナイフを構える。あっちは一人、こちらは博麗の巫女とで二人。数ではこちらが有利ーーーーと思った矢先であった。

 

「あ、足止めよろしく。私先行くから」

 

は?

 

「がんばんなさいねー」

 

博麗の巫女は、この戦場から逃げた。

 

博麗の巫女が逃走したのである……空いた口が塞がらないと言うのは、このことだろうか。しかも、逃走方向はお嬢様の部屋。最悪だ。

 

これが博麗の巫女がすることかぁっー!と言いたいところだが我慢する。

 

その代わりに、心の中で思いっきり愚痴る。この世界の巫女は一体なんなのだろうか。たしか、パチュリー様の図書館で拝借した本の中には「巫女は清く正しく、神に仕える存在」と書かれていたが……あの巫女は全く違うではないか。

 

時を止めて、巫女を追いたいところだが……

 

「アーッハッハッハァァッ!!中々肝が据わってる奴じゃあねぇか、あの巫女さんは!」

 

こちらにとっては笑い事ではない。

 

とっとと片付けて、巫女の後を追いたいというのが本音だが目の前の男がそうはさせてくれないだろう。時を止めて追いかけても、2:2or1:1:2になるのは個人的に避けたい。

 

悪態をつきたくなる衝動を抑え、目の前の男に集中する。

 

こうなったら今ある最善の策を取るまでである。目の前の敵を早急に駆逐し、巫女を止めに向かうこと。

 

しかし、目の前の男がそれをたやすくさせてくれるかどうか。

 

ーーーー無理だろう。

 

見るからにやる気満々である。そして、男から感じられる強大な力。

 

勝てないことはないだろうが、主ーーーーレミリア・スカーレットの所へ参るのは時間が掛かるのは明白である。

 

しかし、どれだけ不利な戦いだろうと無謀な戦いであろうとーーーー紅魔館のメイド長は、一歩も退かない。退くわけにはいかない。

 

それが、メイド長としての誇り。

 

十六夜咲夜としての誇り。

 

たった一つ、守り続けた誇りは消せはしない。その誇りを胸に、十六夜咲夜は戦う。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「俳句を詠みなさい、介錯してあげるわ!」

 

十六夜咲夜がナイフを構え。

 

「俳句?詠めねえよそんなん!」

 

アイタス・ロータが剣を握る。

 

「さあ、覚悟しやがれ!今からここが地獄の一丁目だァ!!」

 

アイタスが、十六夜咲夜に向かい駆け出す。

 

そのアイタスの目の前に、ナイフが広がる。そのナイフ一本一本の標的は、たった一人。鳥葬するかの如く、無数のナイフが襲いかかる。

 

ノーデンスを、強く握りーーーー振るう。

 

轟音と共に、襲いかかったナイフは全て弾かれた。しかし、安心する暇などない。

 

次の瞬間に背後からもナイフが襲いかかった。

 

そのナイフすらも、叩き落す。迫る無数のナイフ。命を穿ちに襲う、無数のナイフ。それら全てを叩き、払い、砕き、斬り、壊す。

 

メイドのくせして強い、とは思う。アイタスは、十六夜咲夜がどのようにしてナイフを展開しているのかは知らない。

 

しかし、一撃を与えさせないためにナイフを展開し続け相手わや消耗させる戦い方については苛立ちながらも中々やると思った。

 

アイタスを近づけさせないよう、ナイフによる面の攻撃。そして、特有の能力による回避行動。これらが合わさり、アイタスは必殺の一撃を振れずに待つしかなくなっていた。

 

それでも、アイタスの魂は萎えるどころかさらに闘志を昂らせる。アイタスは、自分が劣勢に陥れば陥るほどさらに戦う力が湧いてくる。

 

そして、待つのは好きではないのがアイタス・ロータと言う男。ここで、攻勢に転じるためある武器を召喚する。

 

「調子こいてられんのも、ここまでだぜ!」

 

ノーデンスを、一度消す。その変わりに、両手に握られた二本の長さ、太さが異なる双剣。

 

軽く湾曲した剣、双子の剣、二刀一対の剣ーーーーロイガー、ツァールである。

 

二本の剣を比べ、長い剣がロイガー。

 

太い剣がツァールである。

 

この二本も、ノーデンスと同様にただの剣ではない。この二本には、ある特性がある。

 

「おぅぅりやぁあ!!」

 

ロイガー、ツァールの二本を十六夜咲夜に向け投擲する。その二本は、弧を描きながら十六夜咲夜へと襲う。

 

武器を手放すとは、正気かーーーーと十六夜咲夜は思うが、ノーデンスを召喚、消去したことをすぐさま思い出す。

 

この二本は劣り、牽制だーーーー十六夜咲夜はそう判断する。

 

二本の剣を回避し、ナイフを展開するーーーーが、風切り音が顔の横を通り過ぎた。

 

「ーーーーッ!!」

 

突然のことに動揺する十六夜咲夜。何せ、一度完全に避けた筈のロイガー、ツァールが自分を一人でに追撃してきたからだ。

 

ロイガー、ツァールの特性の一つに投擲した際の追尾性があると言うことだ。一度投擲すれば、その目的に命中するまで、追い続ける。止める術は、完全に砕くかロイガー、ツァールを受け止めるしかない。

 

飛翔するロイガー、ツァールに気を取られたのが十六夜咲夜の失態だった。

 

「アトラック・ナチャ!!」

 

アイタスの両手の指先から、糸が現れる。その糸は、十六夜咲夜の四肢へとまとわりつく。

 

「ーーーー捉えられたッ!?」

 

「ぶっ飛びやがれぇぇぇぇ!!」

 

糸を強く握り、ハンマー投げの如く十六夜咲夜を振り回す。そして、博麗の巫女が向かった方向へ十六夜咲夜を投げる。

 

放り投げられた十六夜咲夜は、孟スピードで扉へとぶつかり扉が砕けた。

 

アイタスは、自らの元に戻ってきたロイガーツァールをキャッチし消す。

 

「ちっとは楽しめたぜ」

 

そういいつつ、歩を砕けた扉の方へ進める。

 

十六夜咲夜を従えるほどの力を持つ主。それと出会えるのが、今のアイタスの楽しみであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……この感じ、あいつか」

 

紅魔館地下、のとある一室にて、そう呟く男が一人いた。

 

アルハザード・ラクティー。アイタス・ロータと共に戦った男。

 

「全く、この程度で俺を縛れると思ったら大間違いだ。わざと、捕まってやったと言うのに」

 

アルハザードが目覚めたのは、この紅魔館であった。だが、目覚めた直後にいきなり封印魔法をかけられ、この地下の一室に閉じ込められた。

 

目覚めた直後であったために封印魔法を食らってしまったがいつでも力技で解除できる程度ではあった。しかし、ここで無闇に行動しても損しかないと考え捕まり、情報を得られる時を待ったのだ。

 

「だが、あいつが来たのならば話が別だ」

 

両手に掛かっていた封印魔法の証である魔方陣を力を込め砕く。

 

捕まっていたところを見られたら、何を言われるか……

 

「……短期間だけとはいえ、縛られたのはかなりイラつくな」

 

扉へと、体を向ける。

 

「ナグ、イェブ」

 

右手に12mm口径の大型自動小銃が。

 

左手には9mm口径の6発式リボルバーの銃が召喚される。

 

二つの銃を扉に向け、発砲する。轟音を立てて、扉は破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……キチ○イじゃないよ?ただ戦いが大好きなだけだヨ?お願いです信じてください!


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本能と理性

 

十六夜咲夜とアイタス・ロータが戦闘を始めるのと同じ頃。その場から逃亡(戦略的撤退)していた博麗の巫女、博麗霊夢は今回の異変の首謀者とご対面していた。

 

「あんたが今回の黒幕?」

 

「そうだとしたら?」

 

博麗霊夢の問いに答えるのは、おおよそ幼女と言っても刺し違えない容姿を持つ、背中に翼を生やした吸血鬼。

 

今回の空を紅くした首謀者、レミリア・スカーレット。

 

椅子に座るレミリアは、また霊夢へと問いを投げ返す。

 

「力づくで、止めさせてもらうわ。力こそが正義、いい時代になったものね」

 

「止める側が言うセリフか、それは」

 

やれやれ、と言った顔で指を眉間に当てゆっくりと首を振る。

 

「ところで、うちのメイドは殺してないだろうな?うちはこれでも人材不足なんだ、殺られては困る」

 

「そうなの。私の知ったことじゃないけどね。

 

あのメイド?弾幕ごっこなら死ぬことはないんだけど……」

 

「釈然としないな」

 

「途中、見知らぬ乱入者が来てね。そいつに押し付けたから知らない」

 

悪びれる様子もなく、霊夢は言った。実際、霊夢にとって十六夜咲夜はどうでもいいのだ。

 

「押し付けた……だと?おい。お前の仲間じゃないのか、その乱入者は」

 

「見知らぬって言ったでしょ、私とは何の関係もないわ」

 

いかにも面倒くさいといった表情をする霊夢。その表情を見たレミリアは、椅子から立ち上がる。

 

「……なら、とっととやるか。そのほうが、お前にとってもいいだろう?」

 

「あら、話がわかるじゃない。吸血鬼のくせに」

 

くせに、とはなんだとレミリアは顔をしかめる。

 

ーーーーパチェは、ついさっき黒白の魔法使いと戦闘を開始するとあったからな……そうやすやすと負けることはないと思うが。

 

レミリアは、一つ問題に思うことがあった。

 

ーーーーこの巫女は、おそらく強い。勘に近い感覚であろうが、わかる。いや、それではない。問題はーーーー

 

先程から感じる、知らない魔力の波動。

 

それが、博麗の巫女が咲夜を押し付けた相手だろう。近くには、咲夜の力も感じる。もうすぐ、戦闘が始まると言ったところか。

 

だが何故だろうかーーーー咲夜と対峙している男の気を感じると、戦う気持ちが湧いて来る。

 

本能が、戦えと頭に呼びかけて来る。

 

随分と久しく忘れていた感情であった。幻想郷に来るまでにも、この紅魔館に挑んで哀れにも爆発四散した輩もいたが、その時はこの気持ちはなかった。

 

魂が、昂らなかった。

 

しかし、今はどうだろうか。目の前にいる、今回の異変を止めに来た巫女。

 

そして、ここからでも感じる見知らぬ男の闘気。

 

久しぶりにーーーーいい戦いができそうだ。

 

「さぁ、やりましょう。博麗の巫女ーーーー存分に、戦いあいましょう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーーー脱走した?」

 

「はい。妖精メイドから報告がありました。あの男の部屋の扉が破壊されていたという……」

 

「おいおい、どうしたんだぜ?パチュリー」

 

紅魔館にある図書館で三人の少女が話をしていた。

 

普通の魔法使い、霧雨魔理沙とこの図書館の主パチュリー・ノーレッジとその使い魔である。

 

三人とも、服が多少ボロボロになっており疲れた様子でいた。

 

その中、パチュリーは使い魔である小悪魔から男ーーーーアルハザード・ラクティーが脱走した報告を受けた。

 

アルハザード・ラクティー。突如となく、この紅魔館に現れた男。それだけならば、ただ奇妙な出来事で終わったのだがパチュリーが気になったのはその男の中から感じられる魔力だった。

 

その魔力の質は、魔導書の魔力に酷似していた。それも、とても危険な部類の魔力に。

 

確か、この図書館で厳重に保管していた本にーーーー

 

「さっき、私が話したわよね?」

 

「ああ、あの突然現れたから一応とっ捕まえたって話か」

 

「重要な所が抜けてるわよ……その男から、魔導書の魔力を感じたの。それも、とても強力な魔導書の魔力を」

 

「なら、とっとと話を聞けばいいんじゃないかーーーー」

 

その時、不思議なことが起こった。

 

ある本が光り、この図書館から飛び去ってしまったのだ。

 

あまりの突然なことに、言葉を失うパチュリーと魔理沙。しかし、パチュリーはすぐに我にかえった。

 

「魔理沙、行くわよ!あの魔導書を追わないと!」

 

「言われなくてもわかってるぜ!」

 

魔理沙とパチュリーは、魔導書を追う。

飛び去った魔導書、その名はーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ……お姉様はまた楽しそうなことをしてるんだろうなぁ……」

 

そう、いつもの見慣れた天井を見ながら言葉を出す。ああ、ホントに何回みただろうか、数える気も起きない。

 

ずっと、ずっと、何年も何年もこの地下に幽閉されてきた。

そのため、外の様子など何もしらない。時々、咲夜とかが外の話をしてくれるけどやっぱり自分で見てみないと面白くない。

 

耳を澄ませば、衝撃音などが聞こえてくる。おそらく、お姉様達の誰かが戦っているのだろう。

 

ああ、羨ましい。私も、お姉様みたいに遊びたいーーーー

 

勿論、それが叶わない願いということはわかっている。私、フランドール・スカーレットの力は強過ぎたのだ。

 

その強過ぎる力故に、相手を簡単に壊してしまう。そして、私自身細かくコントロールもできない。

 

だから、私が無闇に他人を壊してしまわぬようこの地下に幽閉されたのだ。

 

しかし、それだけならばまだ耐えられた。たまには皆とも食事できたりするし、談笑することもできる。

 

問題は、私自身にある闘争本能だった。

 

時折、遊び相手と称しては見知らぬ人が入って来るけどもすぐ壊してしまう。これでは、私の、吸血鬼特有の闘争本能は満たされない。

 

そのせいか、時々溜まりまくったソレを晴らすために何も考えず暴れてしまうのだ。

 

お姉様は抑えれてるようだけどさ。

 

ああ、私ももっと楽しいことしたい。卑猥な意味じゃなくて。

 

そんなことを思ったとき、扉が凄い勢いで開けられた。それにびっくりして、思わず飛び上がっちゃった。

 

開けられた扉から来たのは、一冊の本だった。黒い本だった。

 

私はそれを手に撮る。タイトルは……

 

「無名ーーーー祭祀書?」

 

その瞬間、私の視界はブラックアウトした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文字数少な過ぎてやばい。

二話に分けようとしていたのを一話に纏めたほうがいいかな


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