架空の現代にポケモンが出現したら (kuro)
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序章

完結するまで次作は書かないという誓いを立てていたのですが、進まない筆への焦りと怒り、脳内をちらつく設定からつい書いてしまいました。
続くか続かないかは分かりません。

そして大事なこと。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 転生。意味として一つは生まれ変わることという意味である。某百科事典サイトの概要では『生あるものが死後に生まれ変わること、再び肉体を得ること。』などと書かれていたりもする。

 ヒンドゥー教や仏教から端を発するこの言葉は現代日本、特にインターネット界隈では、やれトラックに轢かれて死んだり、通り魔に刺されて死んだり、中には架空の神様の不手際によって死んだりした後に異世界でまた新たな生を受けるというテーマが非常に流行りだ。無論、僕もそういったものが好物で、某サイト等で読み耽っていたこともある。ちなみにその際は強力な異能であるとか、天性の才能なんかのチートが付与されていたりして「俺TUEEEE」的なことをやっていくのがトレンドであるように思える。

 さて、そんなことをツラツラと述べてきたけれど、今僕を取り巻く状況というのはこの『転生』というものに該当するだろう。尤も、別に現世で死んだわけでもないし、神様に出会ったわけでもない。付け加えれば、異世界ということでもない。チートなんてものはもちろん存在しない(いや、あるにはあるのかもしれないが、その世界では何の役にも立たないだろうことは後から分かった)。

 

 そう。僕が陥っている状況、それを端的に言い表すならば、現世に限りなく近いが現世とは異なる現代に転生した、というものである。

 

 それに気がついたのは、21世紀になってすぐの現代日本。当時は中学生だった。そのときはえらい往生したし、錯乱したしで、家族や友人、学校等にもえらく迷惑をかけていたと記憶している。周りからの励ましや援助で落ち着きを取り戻していけたことは今でも感謝に堪えない。

 そうして落ち着いたことで周囲に目をやって気を配っていくと、僕が生きて記憶していた現世とよく似ているということがわかったのだ。仮にも現世では社会人として生きてきたので、自分の状況を認知して、そしてそれが過去に体験した事象と似ていることが分かれば、そこからの順応は早かった。高校や大学で出来た友人なんかは僕の中学時代の話を聞いても、最初は皆が皆一様に信じてくれず、「今日はエイプリルフールじゃないだろうが」なんて言われてしまうことすらもあった。

 さて、そんなこんなで一度は経験した人生。中学、高校、大学と可もなく不可もなく、そこそこ順調にクリアしていって今では2回目の社会人。前の人生と同じかほんの少し充実した生活を送れていると感じている。ちなみにいくら2回目だからといっても頭脳チートや身体チートなんかないし、世間には才能の塊みたいな連中がゴロゴロいるんだから、そうそう人生バラ色ハッピーとはいかないものだ。

 

 さて、この世界は現世と似ているけど現世とは違うということを述べてきたけど、それは大小様々。政治、経済、自然環境、人の名前といった大きなものから、小さなものではお菓子や漫画、アニメなど。

 中でも個人的にショックだったのは、ポケットモンスターというゲームが存在しなかったことだ。ポケットモンスター、略してポケモンとは、ポケモンという不思議な生き物が生息する世界において、彼らを自分のパートナーとして、「ポケモン同士のバトル」を行う「ポケモントレーナー」たちの冒険を描くロールプレイングゲームだ。このゲームはポケモンの収集、育成、対戦、交換を柱として爆発的なヒットを遂げて、さらにはアニメ、カードゲーム、キャラクター商品などのポケモン関連商品を含めると世界中で6兆円以上売れている世界的なタイトルである。

 このポケモンが存在しないと言うことに僕は本当にショックを受けた。全シリーズをプレイしてきた身としてはポケモンはもはや人生の潤いの1つでもあったからだ。ショックの大きさとしては中学生だった当時、回復傾向にあった精神状態が一時期だいぶ悪化してしまったといえば僕の受けた衝撃の大きさというものがわかってくれるかと思う。

 そんなポケモンという概念が存在しない世界。僕は前の現世――いや前世としておくか――でのポケモンのことについて決して忘れまいと、ポケモン一匹一匹の絵を描くことを始めた。

 最初は『画伯(笑)』なんて称されるだろうミミズののたくったような汚い絵だったが、1年間毎日欠かさずに絵を描き続けた人のビフォーアフターという前世でのネットニュースを思い出して、自分の下手さに半泣きになって打ちのめされながらも、「リハビリにも良いだろう」という主治医の指導もあって、僕は毎日ポケモンの絵を描き続けた。

 高校生の終わり頃には早くもスマートフォンの登場も相まってインターネットが広く浸透しており、前世でも有名だったイラスト投稿サイトに似たものにその絵を投稿したりといったこともしていた。架空であり、今の世界にとっては全くのオリジナルの生き物だったので、かなり細々とした反応だったと思う。

 ただ、僕にとってはポケモンというものを頭の中ではなく、目に映る形で残しておきたかったものであり、もうすっかり完治したとはいえ、ルーチンワークの一つと化していたことだったので、他からの反応なんていうものは大して気にはならなかった。

 そうそう。先で「チートがあるのかも」的なことを述べたが、それはこのポケモンに関しての全ての知識だ。容姿、能力、技などなど、ポケモンに関してのそれらは多岐にも(わた)る。ただ、これは現実で生きるには必要のないものであるし、()してやポケモンというものが僕以外は感知していないこの世界では、あっても意味のないものだろうといったところは明々白々であることは想像に難くない。

 日常生活を滞りなく送りつつ、絵を描いて、あるいは設定などを表にまとめて、それをイラスト投稿サイトにアップロードし、ポケモンの空想に浸る。それが今の僕のルーチンワークであった。

 

 

 そんな最中、事件は起こる。

 

 

 

 

 そして僕は後々思った。

 

 

 この生きる上ではムダとも思えたコレも、実は全くそんなことはなく、寧ろ大いに僕自身を支えてくれた。

 

「『芸は身を助く』とはよく言ったものだなぁ。活かせないから人生の無駄というのではなくて、活かせるよう立ち回れてないだけで人生で無駄とも言えるものはないってことなんじゃないかね」

 

 ある日を境に変わってしまったこの世界で、こんな独り言みたいなことが今でも僕の口から不意に出てくる。人生何があるかはわからないものだ。

 




見やすさ親しみやすさ重視で算数字と漢数字を混ぜて使ってみましたが、いかがでしたかね?
不評であれば漢数字に統一します。


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あ! ポケモンが現れた!

続くか続かないかは分かりません。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


「…………ぅ。……うー、ん。ねむ。ふあああ」

 

 けたたましいスマートフォンから流れる目覚まし時計のベルが眠りからの覚醒を促す。今日は土曜日。昨日までは会社だったが、幸いにも土曜日は休み。生活リズムを崩さないためにも、休みの日も平日のときほどとはいわないけれども、そこそこ早く起きる習慣をつけている。起きれなかったら500円貯金という罰ゲームを付けて始めたことだが、最初は毎週枕元の貯金箱の体重が増えていったことも今は昔。片手の指で数えるほどの小銭しかないので、貯金箱の重量も増えておらず、きっと彼(?)も自分の体重が増えずに喜んでいることだろうことは想像に難くない(?)。

 さて、これからは軽く朝食を作って食べて着替えてマッタリしつつポケモンの絵でも描いていこうか。とりあえずはいつも通りの土曜日の始まりだ。

 

「――ラル!」

 

 そう、いつも通りの土曜日――

 

「――えっ?」

 

 ふとまだぬくもりの残るベッドに腰掛ける。空耳かと思ったが念のため、その音がする方を見やった。

 

「ラル。ラルラ!」

 

 そこには真っ白い服の裾を引きずっている人間の幼児がいた。いや、ウソ。如何せん青い帽子をかぶっている幼児ならまだしも、青の頭部から2本の赤い突起状の角が生えているなんて人間にはあり得ない。

 

「ていうか、そもそも幼児がウチにいるわけねえだろうが! ワイはまだ独神ならぬ独身や! いたら犯罪だわ!」

 

 一人セルフ突っ込み、しかも関西弁になってしまうほどの衝撃が駆け抜けた後、今一度その物体を見る。

 

「ラルー?」

 

 ……コテンと首を傾げる姿がなんとも愛らしい……。

 

「ってそれも違う! えっ!? なに!? どういうこと!?」

 

 駆け抜けた衝撃は第二波第三波として未だ身体中を巡っている。

 そこには、10年以上僕が恋い焦がれたもの、いや生き物。

 ポケットモンスター。

 彼らの中の一匹、エスパー・フェアリータイプを持つラルトスの姿があった。

 

 ちなみに超珍しいことに色違いだ。 

 

「ラルー」

 

 上目遣いで此方を見やるため、青い頭部から僅かに覗く赤いつぶらな瞳が見え隠れする様に僕は第四の衝撃を味わった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 このラルトス、実に人懐っこい。

 脇の下辺りに手を入れて軽く持ち上げてみるとキャイキャイと楽しそうな様子を見せるのだ。試しに下ろしてみたらどうなるかと思い、それを実行してみる。

 

「ラル! ラル!」

 

 すると「もっとして! もっとして!」といった感じで両腕を上げてせがむのだ。

 

 もうホント、かわいいったらありゃしない。

 

 だから、何度かそれを繰り返した。ただいつまでもそうしているわけにもいかないので、ラルトスを下ろすとお勝手に向かい朝食の支度をし始める。

 ラルトスは僕の後ろをヒョコヒョコと付いてきた。まるでカルガモの子が親に遅れまいと必死に追いかけるかの様子に僕はまた心を射貫かれた。

 

「ラルトス、よかったら僕の肩に乗る?」

 

 少し左肩を下げるようにして問いかける。

 

「ラル! ラッル!」

 

 するとラルトスはこれまた花が咲いたような笑みを浮かべて嬉しそうに()()()()()

 

「ん? お~!」

 

 そう、()()()()だ。羽もないのに、またラルトス自体そんな身軽でもないのにどうやってということだが、何てことはない。

 ラルトスはエスパータイプであり、『ねんりき』という技は早い段階から習得するラルトスの基本技といってもいい存在だ。つまり、ラルトスは自身に『ねんりき』を使い、僕の肩に飛び乗ったのだ。

 

「これがポケモンの技かぁ。いやー、すごいなぁ」

 

 ものを動かすなんてことはない、しかも基本威力も低い技かもしれない。それでも僕は前世を含めた今までの人生においてポケモン、そしてポケモンの技というものを、液晶画面越し以外での、生のこの(まなこ)で実際に見たことなどはない。喜びという言葉で表すのが適切なのかどうか定かではないけれども、陳腐な言い方をすれば僕は全身を這う鳥肌と共に感動に打ち震えていた。

 

「ラル、ラ、ラル」

 

 僕からはよく見えないけど、頭に触られている感じからどうやら、ラルトスは僕の肩と支えとなる両手を置くための頭のベストポジションを探しているらしい。その様子にさらに僕の心がキュンキュンと鳴る。

 

「でもこれ明らかに軽いけど子供なのかな」

 

 ラルトスの重さはたしか6.6kgだったはず。しかし、肩に感じる重さはそれよりも圧倒的に少ない。荷物の入った肩掛けのバッグをかけたぐらいの重さしか感じない。思えば、6.6kgの物体がいきなり肩に飛び乗ったら、脱臼か最悪鎖骨辺りが骨折していてもおかしくない。これは前世の「オレにボルテッカーだ!」に浸食されすぎていた認識を早々に改めないとまずい。

 

「ラル!」

「え? お、おおおお!」

 

 ちょっとした浮遊感とそれまで感じていた足の裏ごしでの床の感触がしなくなったので、思わず足元を見てみれば、なんと僅かではあるが宙に浮いている!

 

「く、空中浮遊だ! うおおおお! すげえええ!!」

 

 体感したことのない無重力に僕はまたまた初めての感動を覚えた。

 

「あ、そうか。これラルトスの『ねんりき』?」

「ラル!」

 

 そうかそうか! 何だか不思議の力というか感覚につかまれている気がする感じ。これだったら、たまにはやってもらいたい気もする。思えばコレがあれば階段とか楽に昇れるし、空も飛べるんじゃないか?

 

「ラル!」

 

 すると、目の前にラルトスがふよふよと浮かぶ。

 

「ラルラル!」

 

 そして力強く胸を叩いて頷くようなことをしてくれた。それの理解するところといえば。

 

「それってもしかしてやってくれるってこと?」

「ラル!」

 

 ほー! いやいや! そいつは是非ともやってほしい!

 ……ん? でも僕、今そんなこと口に出したっけ?

 

「うーん……あ、ひょっとして」

 

 たしかラルトスは頭の角で人の気持ちを感じ取るという設定があったはずだ。イラスト投稿サイトにアップしたときに基本的な情報としてそのことも書き加えていたような気がする。

 

「ラル!」

 

 するとラルトスは「当たり!」と言っているのか、その小さな腕を賢明に使って(マル)を形作ってみせた。

 

 いやはや、どうしてあなたはそんなにも僕の心を射貫いてくれる仕草をしてくるのでしょうか。

 あざとい。流石ラルトスあざとい。

 

 そんなことをツラツラ考えているとスマートフォンが鳴り出した。おっと、この着信音は電話か? もうすぐ7時というこんな早い時間にいったい誰が掛けてくるのやら。

 

「あ、先生」

 

 スマートフォンのディスプレイに映る名前はカウンセリングで僕の主治医だった先生、新出先生だ。完治した後でも、たまに伺って診察という名目の近況報告なんかをやっている。ちなみに男性のイケメンさんで、美人な奥さんと娘さん2人という円満な家庭を築いている。一応断っておくけど、僕に彼に対する恋愛感情はない。

 

「ラルトス、ちょっと待っててね。あとできれば静かによろしく」

 

 ラルトスが「うん」と頷くのを確認して僕はスマートフォンのディスプレイの応答部分をタッチして耳に当てた。

 

「はい、御子神です。おはようございます、先生。どうかされました?」

『おはよう、御子神くん。とりあえずテレビをつけてくれないか。君に確認したいことがあるんだ』

 

 やや威圧感を覚えるような味のある渋い声が耳に届く。しかしそれ以上に、常には感じられない焦りが含まれるような声の調子に、僕は違和感を覚えた。

 

「テレビ、ですか。えーと」

 

 居間に移動してリモコンを探す。テーブルの上に投げ出されていたそれを取り上げると、電源ボタンの上に指を置いた。

 

「――! なんだこれ?」

 

 そこには今までとは決定的に違うものが映されていた。




見やすさ親しみやすさ重視で算数字と漢数字を混ぜて使ってみましたが、いかがでしたかね?
不評であれば漢数字に統一します。

新出先生のCVは中田譲治さん(ボソッ


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世の中では

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


「うわぁ。こりゃすごい」

 

 僕は電話で新出先生に言われてテレビをつけた。

 

『ご覧ください! この既存の生き物とは一線を画す謎の生物! いえ、生物と言ってもよいものかどうかも定かではありませんが――!』

 

 とりあえず公共放送のチャンネルに切り替えたが、どのチャンネルも緊急特番なのか町中の様子を映していた。あのテレ東さえもだ。

 画面に映っていたもの、ラルトスで慣れたものの、それはやはり驚きを持って受け止めることとなった。

 

 空を映せば、そこを飛ぶ、ピジョンやハトーボー、ケララッパを始めとする鳥ポケモンたち――

 川を映せば、コアルヒーやトサキント、ハスボーなどの水ポケモンたち――

 海を映せばメノクラゲにキャモメやマンタインなどの海にいそうな水ポケモンたち――

 町中では街路樹なんかにキャタピーやコフキムシといった虫ポケモンたち、ゴミ捨て場にはベトベターやコラッタ、ヤブクロンなんかのポケモンたち――

 

 画面にはこの世界を平然と闊歩するポケモンたちの様子が映っていた。

 テレビが言うにはこの事態は日本全国で確認されているらしい。一方で海外では一切確認されていないのだとか。

 

『御子神くん、これは、ひょっとして君が描いていた――』

「ポケットモンスター、ですね。間違いなく」

『やはりそうか』

 

 受話口から聞こえてくる新出先生の言葉を余所にテレビに視線を向ける。

 あ、今の湖の中継画面でちょうど、一部では話題のYahoo!にすら載った金のコイキングが水面を跳びはねたのが見えた。他にも町中の大通りでは、両腕にはどうやらMの字でお馴染みのハンバーガーショップのバーガーがいっぱいに抱え込んでのっしのっしと練り歩くカビゴンの姿が映る。カビゴンはそれらを徐に全て口の中に放り込むと、今度は匂いに誘われてか、牛丼チェーンの一つに入っていく様子が映っていた。直後、店から退避してくる客や従業員の姿が映し出される。

 その姿を撮影して現地でリポートを行っているだろう記者たちは頭にヘルメットを被り、野球のキャッチャーが使う胸や腕、脚を覆う防護具をつけている。そして発泡を飛ばしながら興奮した様子で今も実況を行っている。

 

『みなさん! この生き物たちに近づいて怪我を負ったという方もいらっしゃるようです! 不用意に絶対に近づかないようにしてください!』

 

 なるほど、それであんな格好をしていたわけか。

 そして中継が終わると同時に今度は違う場面に切り替わった。

 

『いやー、怖いですよ! なんですか、あの大きな芋虫っぽいの!』

『困りますね。これから出張なんですが、飛行機の再開がいつになるかわからないんです』

 これは町中でのインタビューか。たしかに全く知らない人が町中で高さ30cmの体長50cm弱の芋虫(ケムッソやクルミルなど)と出会(でくわ)したら普通はビビるわな。

 他にも道路や線路上にもポケモンが出現していたりして、高速道路や鉄道にも影響があるそうだ。ちなみに海や空にもポケモンが出現している影響で、衝突を回避するために船便や空の便は今のところ全便欠航なんだとか。

 

『御子神くん。君に聞くのはどうかと思うが、あれは君が生み出したものか』

「いえ、僕は絵を描いただけです」

『しかし――』

「僕は空想上の生き物の絵を書き起こしただけですよ? 絵に描いたものが現実になるなんて、それじゃあ僕が神様か何かみたいじゃないですか。そんなことはあり得ない。そうでしょう?」

『まあそうだな。すまなかった』

「いえ」

 

 正直、どうしてこの現実世界にポケモンが出現したのかなんてさっぱり分からない。ただポケモンの絵を描いていただけでポケモンを生み出したなんて思われたら堪らないし、これは何とか身バレを防ぐ方向で行かないと。あとで僕の伯父さんと相談しよう。ちなみに僕の伯父さんはちょっと変わってるんだけど、間違いなく力にはなってくれることだろう。

 

『なら話を変えよう。これを何とかうまく収束させる方法はないか?』

「どうですかね。ポケモンの力は人間を遙かに上回る上、特殊な力も使います。正直……」

『そうか……』

 

 ポケモンを御するには通常はモンスターボールに入れる必要がある。そしてそのポケモンで野生のポケモンを蹴散らせて混乱を収束させるというのが一番手っ取り早く簡単だと思うが、肝心のそのモンスターボールが手に入らない。テッカグヤの999.9kgの重量を(ウルトラ)ボールに入れただけで10代前半の少年少女がラクラクと持ち運びが出来るような、質量保存則を無視した超科学のシロモノなんか現代の科学で作れるわけなんかないのだ。

 

『また、さらには町中にはあの生き物以外にも不思議なものが出現しているようです』

 

 そんなことを考えていたときに、ふと画面の向こうのキャスターの声が聞こえた。

 

「んー……ん? !? なっ!? え、ええええっ!?」

 

 キャスターの声と共に映し出されたもの、ラルトスが目の前に現れたときと同様、つまりは町中でポケモンが出現という情報以上に僕は驚きを隠せなかった。

 それはなにやらホログラムのようなものらしく、腕がそれの中を通過している。形状は全てが青で統一されたおしゃれなカフェのテーブルの上に大きな円、そしてその中にモンスターボールが描かれた意匠の――

 

「な、なんでポケストップがあるッ!?」

 

 ポケストップ、それはやはり前世でのポケモンGOにあった機能だ。

 ポケモンGOとはナイアンティック社と株式会社ポケモンによって共同開発されたスマートフォン向け位置情報ゲームアプリであり、このポケモンGOは、ゲームの中でしか登場しなかったポケモンがスマートフォンのディスプレイ越しとはいえ、現実世界に現れるとあって、世界的規模での社会現象を巻き起こしたゲームアプリだ。

 その中でポケストップとはモンスターボールや回復アイテムなどの道具、ポケモンの卵や経験値などが無料でもらえる拠点だ。主に名所旧跡や有名なモニュメント、ナイアンテック社と提携した店舗等に配置されており、そこには常に人集りが出来るようなところだった。

 

 で、ポケストップがある。つまりはモンスターボールが手に入る可能性がある。モンスターボールがあれば先の案を実行することも出来なくはない。

 

「先生、ひょっとしたらうまくいくかもしれません! ちょっと出てきます!」

『ああ、よろしく頼む。私もその何とかストップとやらを探してみる』

「そうですね。また後で連絡します!」

 

 そうして僕はテレビを切ってラルトスにリュックの中に入ってもらい、急いで外に出ることにした。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ポケストップ探し。前世であればアプリを起動してマップが表示されれば、ポケストップがどこにあるかなんて一発で分かった。でも、今のスマホにポケGOが入ってるなんてことはない。それなのにどう探すかなんだけども――

 

「ひょっとしたらポケストップの設定自体は同じかそれに近い仕様なのかもしれない」

 

 テレビで紹介されてたポケストップがあった場所は711のコンビニと皇居前和田倉門交差点だった。前世でもあのコンビニはナイアンテック社と提携してたからポケストップが設定されている店舗多くが存在していたし、和田倉門も名所旧跡の一つだったからやはりポケストップが存在していた。名所旧跡とコンビニという僅かな共通点しかないけど、とりあえずはその可能性に掛けて、今いる場所からほど近いコンビニに向けて足を向けることにした。

 そして――

 

「……やっぱり」

 

 それは実在した。コンビニ入り口のほど近く、赤いカラーコーンと警戒色を塗られたポールで規制線が張られていた先にアプリ画面で見慣れたポケストップがあったのだ。

 直にこの目で見れたことに対する感慨もそこそこにポケストップに近づく。規制線の周囲には人集りが出来ている。

 

「あー、でもどうすればいいんだ?」

 

 ポケGOではポケストップにタッチしてそこに映し出された写真を横にスワイプ(画面に触れ、その指先をスライドさせる)するか、その下に表示される×ボタンをタップすればよかった。

 

「あー、どうするッ?」

 

 ここにはスマートフォンはあれど、ポケモンGOのアプリはない。

 しかし、これはどう見てもポケストップ。元ネタがスマホアプリなら何かしらスマホに関連した操作で何とかなるのではないか。

 そう思い、構わずに規制線を跨いでスマホを取り出してポケストップに対してフリック(画面に触れ、その指先を素早く払う)やスワイプ、ピンチ(2本の指でつまむように操作すること)をしてみるが何も起こらず。

 

「おい! 規制されてんだぞ! 外に出ろ!」

 

 周りの野次馬からはそんな声が届いたけど、別に危険なものではないし、ここからモンスターボールが得られなければこの社会の混乱が収まらない。だから、それらを無視していろいろ、挙げ句はポケストップに向けて写真を撮ろうとしたりもしてみたが、状況に変わりはなかった。

 

「ちょっと! お客さん危険ですから近づかないでください!」

 

 誰かが店員さんを呼んだらしく、僕は外に摘まみ出されそうになった。

 

 それはほんの偶然だった。

 店員さんにスマホを持つ腕とは反対の腕をつかまれたときに、思わずバランスを崩してスマホごと腕をポケストップに突っ込んでしまったときだった。

 

「えっ?」

 

 僕の目の前に半透明のホログラムが表示される。

 

「ええ?」

「うそ? なにあれ?」

「どうなってんだ?」

 

 それは周囲の人にも見えたようで、脇を見れば僕を引っ張っていた店員さんも驚きから僕の腕を持ったまま硬直していた。

 

 しかし、それは置いておこう。今重要なのは目の前のこのホログラムに表示された内容だ。

 

 おめでとうございます!

 あなたは記念すべきポケモントレーナーとしての第一歩を歩み始めました!

 その始めの記念としてあなたのスマートフォンにポケットモンスターをダウンロードします!

 またポケストップ初回利用特典として以下のものを差し上げます!

 

 モンスターボール 2個

 キズぐすり    3個

 ポケモンフーズ  4袋

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 

 そう表示されていたのだ!

 



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初めてのゲット

ポケストップの設定を少し付け足しました。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 おめでとうございます!

 あなたは記念すべきポケモントレーナーとしての第一歩を歩み始めました!

 その始めの記念としてあなたのスマートフォンにポケットモンスターをダウンロードします!

 またポケストップ初回利用特典として以下のものを差し上げます!

 

 モンスターボール 2個

 キズぐすり    3個

 ポケモンフーズ  4袋

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 これが今僕の目の前に表示されたホログラムの内容だ。

 そして一番下に表示されているOKボタンをタップするとそのホログラムが閉じる。

 しかし、まだホログラムは消えずに表示されていた。

 一番上には『総歩数』という項目が別枠で設けられ、そこから下にはポケモンに登場するアイテムのリストがず~っと続いていっている。スクロール出来る分を見るに結構ありそうだ。

 気になるのは最上部付近に表示されているリストは白く書かれ、少し下に行くと灰色で書かれていること。アイテム名の横の数字に『歩』が書かれていることだ。例えば『モンスターボール』の横には100歩、キズぐすりの横には50歩、などだ。下にスクロールしていって例えばスーパーボールには1000歩などと書かれている。また、ポケモンフーズ(一番低くて20歩であり、50歩や70歩、600歩やそれ以上なんてものもある)なんてアニメ限定のものすらあった(ちなみに初回特典のはこの一番低いやつだった)。あとは例えば『でんきだま』や技マシンなんかの項目もあったが、そこは灰色でかつ歩数のところは棒線で書かれている。

 

「待てよ? もしかしてこれってこの表示されてる歩数でアイテムを買うってことなのか?」

 

 現在の総歩数が327歩なので、試しにどくけし(75歩)を買ってみようと思い、どくけしという項目にタッチした。するとそこだけ抜き出して拡大したような感じで『アイテム名』、『歩数』、個数表示と『購入』というが項目が出てきた。個数を2個にするとそれに合わせて歩数が150歩へと変わる。そのまま購入をタップしてみると総歩数が327歩から177歩に減った。

 

「なるほどなるほど! こうするのか!」

 

 そのままポケモンフーズはそこそこあるみたいだから、回復系のまひなおし(75歩)と捕獲用のモンスターボールをそれぞれ1つずつ購入し、残りの歩数が2歩になったところで買い物を終了した。ちなみに現状買えそうなのは初期のボール系と回復系のみで、きのみや持ち物、技マシンなんかはエラーで買えなかった。ハイパーボールやすごいキズぐすりなんて歩数が4桁半ばから後半ととても手が出そうではない。

 さて、今も目の前に広がるこのホログラム、いったいどうやって消すのかをいろいろ考えていると、ホログラムの右上に×ボタンを見つけた。

 

「これはあれか、PCのプラウザやソフトみたいな感じなのか?」

 

 気になったのでそれをタップしてみると、案の定表示されていたホログラムが消えた。今目の前にはポケストップが鎮座するのみである。

 

 今度はピロリンという音が左手の中のスマホから鳴った。液晶画面を見てみると【ダウンロード 終了!】というようなことが表示されている。

 それを消すと前世で見慣れた、しかしこの世界では影も形もなかった青地にモンスターボールが描かれたポケモンGOのアプリのアイコンが現れた。

 

「ま、マジか……」

 

 震える指でそのアイコンをタップしてアプリを起動させる。

 そこには今度はアプリではなく、“図鑑”、“ポケモン”、“道具”などのゲームでよく見かけたメニュー画面のようなものが表示されていた。中には“ポケリフレ”なんて項目もあった。

 とりあえずそれらはいったん後回しにして僕は“道具”の項目をタップする。すると初回特典とやらや購入したアイテム類がモンスターボール、キズぐすり、どくけしといった具合に手に入った順でリストに並んでいた。

 

「各項目分けで整理されるわけじゃないっぽいな」

 

 どうやらここに関しては初代ポケモン仕様のようである。

 さて、手に入れたアイテムはどうやって出せばいいのか。

 

「やっぱりこういうのってトライアンドエラーだよな」

 

 とりあえず、モンスターボールの項目をタップしてみる。

 

「お、お、おお!」

 

 すると目の前に野球ボールかややそれより大きいような赤と白に塗り分けられたモンスターボールが現れた。

 

「おっと!」

 

 急に目の前に現れたので落ちないように慌てて空いている右手で受け止めた。

 

「お、おい、なんだよ、あれ?」

「どういうこと? 何もないところから急にボールみたいなのが出たわよ?」

「どうなってんんだ?」

 

 ――し、しまった! ここってば外だったのうっかり忘れてた!

 どうする!? ここで逃げるか? いやでもここで逃げても事態はあまり良くはならない気がする。第一ポケストップの使い方が広まらなければ社会は混乱したままだ。ニュースでもあったが、ポケモンに怪我を負わされた人もいるという。そうでなくても毒や火傷なんかを食らって仮に死んでしまう人がいれば、ポケモンが有害生物とされるかもしれない。そうなれば国家非常事態宣言発令、そのまま治安出動や、可能性はないとは思うけど最高レベルの防衛出動なんかがくればポケモンたちにも大きな被害が出る。人が傷つくのはいやだけど、ポケモンが傷つくのもやはりいやだ!

 それに考えてみれば、ピクシブーンにアップしたのが僕じゃないっていうのが最悪バレなければいいだけだ。しかもこれも時間が稼げればいいだけで、ポケモンが完全に世の中に浸透すれば非難する声は世の大多数の声にかき消されるハズだ。

 

 ならば――!

 

「みなさん! 今、世間では不思議な生き物が溢れかえっていることを知っていますよね!?」

 

 僕はポケストップを背に群衆に問い掛けた。

 ポケストップの周りで僕の行動を見ていただろう人は、皆が皆、僕に注目の視線をくれている。中にはスマホを(かざ)している人もいた。たぶんあれで動画撮影をされているんだろう。うまい具合に事が運べるかもしれない。

 

「この奇妙なホログラムをうまく使えば、こんなアイテムが手に入ります!」

 

 そうして僕はモンスターボールを右手ごと天に突き刺した。

 

「そしてこのアイテム、こんな風に使います!」

 

 そこまで言うと僕は心の中でラルトスにお願いした。

 

――リュックの中から外に出てきてほしいと

 

「ラルー!」

 

 するとラルトスは「待ってました!」と言わんばかりにリュックの中から勢いよく飛び出して僕の前に、僕と目線を合わせるように着地した。

 周囲がどよめく中、僕とラルトスは見つめ合う。

 

――僕の友達になってくれる?

 

――うん、いいよ!

 

 なんとなくアイコンタクトでラルトスとそんなやり取りが出来たと思う僕。その後、僕ラルトスに向かって優しく下手(したて)でモンスターボールを投げた。

 ラルトスはそのまま腕を突き出す。すると突き出された腕の先の手にモンスターボールが触れた。

 その瞬間、モンスターボールの口がボールスイッチのところで大きく開き、その中にラルトスが赤い光とともに吸い込まれていった。

 ボールはその大口を閉じて地面に落ちる。今度はそのまま小刻みに揺れ始めた。ボールスイッチの部分が赤く点滅している。モンスターボールはそれを繰り返しながら、1回、2回と大きく揺れた。そしてその揺れが3回となったとき、とうとう揺れは収まり、スイッチの点滅もなくなった。

 それを確認すると僕はボールに歩み寄る。そして同時に思った。

 

――あのアニメの登場人物たちはこんなような感覚を味わっていたんだなぁ。

 

 それは何者にも代え難いほどの高揚感。何かを成し遂げたときに感じる達成感。捕まえられたという満足感と幸福感。それらが一挙に押し寄せて自分を飲み込むのだ。

 なんと気持ちの良いことか。

 

「サトシとかが叫ぶ理由も分かるわな」

 

 僕は口の中だけで聞こえるような小声で独り言ちた。

 しゃがみ込み、ラルトスの入ったモンスターボールを手に取る。

 ズシリと重みが増したような感覚を覚えた。

 

「出てこい、ラルトス! キミに決めた!」

 

 立ち上がると同時にそのままボールを持った腕を振り上げる。手が直上に上がると同時にモンスターボールを手放した。ボールはさらに上まで上がり、やがてその口を先ほどと同じく大きく開けた。違うことは開けた口から白い光とともに現れるもの――ポケモンだ!

 

「ラル! ラッルー!」

 

 その光が地面に落ちると、つい今し方までそこにいたラルトスが現れた。ラルトスは御丁寧に右手を胸に当てお辞儀をしている。中々のエンターテイナーなように思われる。

 

「ご覧のようになります!」

 

 そして大きな歓声が上がった。

 おそらくだけど、今まで訳も分からず、混乱していた状態だった。それに一筋の光が見えたような気がしたからだろう。

 

「ん? あれは」

 

 見ればこれまた明らかに1匹のポケモン。なぜだかこちらに向かってきている。

 ショーはまだまだ続くようだ。



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初バトル

もっとストックたくさん作ってから公開すればよかったと後悔。
ストックが切れそうです。


さて、今回はいろんな意味での初バトルになります。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 現在の状況だけど、ポケモンの初ゲットをショーみたいな感じにしていて、ゲットし終えたところで閉幕かと思ったら、続けざまになんと第2部が開始されたような、そんな状況である。

 空を見ればなぜかまっすぐこちらに向かってくるポケモン。両手とお尻には大きな針を持ち、腹部に黄色と黒の警戒色が施された蜂型のポケモン、スピアーのご登場である。ちなみにあの針は毒針であり、刺さるととても危険だ。

 

「みんな! しゃがめ!」

 

 僕のその声に何事だと、僕の視線の先を見やる群衆。そしてそれを理解した瞬間にパニックに陥った。まあ、1mはあるオオスズメバチなんて見たら普通は発狂してもおかしくはない。僕もあれがオオスズメバチであれば発狂する自信はあるが、あれはポケモンである。ならば話は別だ。丁重にお帰り願おう!

 

「ラルトス、『ねんりき』以外で遠くを攻撃する技ってあるか!?」

「ラル!」

 

 ラルトスは力強く頷き返す。直後ラルトスの陰が動き出し、それが超スピードと言うべき速さでスピアーに向かっていった。

 

「まさかあれって『かげうち』!?」

「ラルル!」

 

 そうだと言わんばかりのラルトス。

 スピアーは『かげうち』と自身スピードによる相対速度のために『かげうち』をよけることが出来ず、僕たちは計らずもクリーンヒットを先制で与える形になった。

 

「ラル!」

「今度は『あやしいひかり』か!」

 

 何色と表現していいのか分からない不気味な光がラルトスから放たれる。それは『かげうち』によって結構手痛いダメージを負ったのか、片手を頭にやって首を振っていたスピアーにもろに突き刺さる。そしてそのまま自分を殴り始めた。

 

「よし! 『あやしいひかり』の影響で混乱したな! ラルトス、トドメの『ねんりき』だ!」

「ラ、ルールルー!」

 

 混乱による自傷ダメージと弱点を突かれたことによる効果抜群のダメージ。今の『ねんりき』の攻撃によって混乱が回復したのか、スピアーは一目散に逃げていった。尤も、飛んでいく姿はフラフラで現れたときの俊敏さは見るべくもなかったが。

 

「ふう、やれやれ。なんとか追い払えたか」

 

 そう思ってるとラルトスが淡い光に包まれた。

 

「ラルトス?」

「ラ、ラルラ!」

 

 疑問に思って問い掛けたら、ラルトスがこちらに向き直って両腕で力瘤を作るような状態を作った。

 

「それってー……あ! 強くなったってこと?」

「ラルラル!」

 

 すると「伝わった!」とばかりに強く何度も頷いてくれるラルトス。

 なるほどな。今のがレベルが上がったって合図か。そういやゲームとかでも似たようなエフェクトを出してた世代もあったような気がするな。スピアーならそこそこ経験値もらえるはずだからコイツはおいしい。

 

 なにはともあれ。

 危険な虫ポケモンも追い払ったので周囲を見渡してみると、誰もが口を呆然と開けて僕を見入っていた。これは解決したってことをわかりやすく示した方がいいか。

 

「みなさん! 今みたいに危なくなっても、この子たちがいればこんな感じで追い払ってくれるんです! とても頼もしい子たちなんですよ!!」

 

 その声で静寂だった周囲が、止まっていた時が一気に動き出したかのような爆発的な歓声に包まれた。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「――ええ、はい。そうです。わかりました。ありがとうございます。じゃあまたあとで」

 

 ポケストップを見つけたらしい新出先生と再度電話をしていた間に家路についた僕たち。

 とりあえずまだ何も食べていないので、コンビニに行ったついでに適当にいくつか買っておいたそれを居間のテーブルに置く。

 

「うーん」

 

 他に何かなかったかと冷蔵庫の扉を開けた。

 

「ラル」

 

 ラルトスが興味深そうに僕の肩に乗りながら、僕と同じように冷蔵庫の中を覗き込む。

 

「ラル!?」

 

 身を乗り出していたからか、冷蔵庫の冷気を急に浴びてしまったようで、いきなり寒くなったことにラルトスはピクリと体を跳びはねさせた。

 

「食材とかを保存しておくために冷やしてるんだよ。ちょっと冷たくてビックリしちゃったね~」

「ラル~」

 

 ラルトスも一度分かれば、「あ、そうなんだ」といった感じで驚くことなく、むしろより興味深そうに中を見やる。

 う~ん、とりあえず昨日の夕食の残りを。

 

「ラル! ラル!」

「うん?」

 

 ラルトスが何かを見つけたのか、「これ! これ!」と指差している。

 

「ああ、イチゴジャムね」

 

 小瓶に苺の絵が描かれたジャム瓶を取った。

 

「ラル! ラルラル!」

 

 精一杯腕を伸ばして「貸して! 貸して!」とやる様にホッコリとしつつも、ちょっと迷う。

 

「人間の食べ物をそのままポケモンが食べても大丈夫なのか?」

 

 人間には問題なくても、例えば犬にはネギやカカオ類はダメだし、猫もネギや乳製品、塩分の多い物はダメなんてこともある。ジャムなんか糖分が相当高い。果たしてそのまま与えて良い物なのか。

 ポケモンの食事関係はポフレなんかの菓子系以外はアニメでポケモンフーズが登場しただけで、ノータッチだ。知らないで食べさせて何かあったらまずいだろう。幸い、ポケモンフーズは手に入ってるんだし。

 

「ゴメンね。ちょっとコレは食べさせてあげられないかな」

「ラ!? ラルー……

 

 うっ! そんな目に涙が浮かんでるのが分かるようなそんな声を出すのはやめてほしい……! こっちは万が一を考えての苦渋の判断なんだから……!

 ――あっ。

 

「そっ、そうだ!」

 

 そうして代わりに野菜室から違うものを取り出す。

 昨日の安売りで買っておいて本当によかった……!

 

「なあ、ラルトス。あれはダメだけど、これなんかどうかな?」

 

 取り出した物は苺パックに入った、瑞々しいばかりの赤い苺。

 

「ラ? ~~~! ラル、ラルッ!」

 

 良かった。少しは機嫌が良くなったみたいだ。

 

 そしてとりあえずラルトスはポケモンフーズとデザートとして苺を何粒か。僕は買ってきたパンを頂いて、朝食を済ますことにした。

 食べた後はちょっと伯父さんと相談しよう。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「――なるほど。やり方はわかった。なにか分かったらこちらからも連絡を入れる」

『ありがとうございます。じゃあまたあとで』

「うむ」

 

 電話の音が途絶え、眼前の光景に意識が持って行かれる。

 駅から徒歩1分にあるこの噴水公園、そこにはポケストップとやら囲むようにして警察官が2名立って警戒を行っている。駅に近いことからおそらくは交番の警察官を応援に派遣したのだろうか。そしてその周囲を野次馬が取り囲んで見守っている。

 

「パパどうなの?」

 

 隣には小学校に上がったばかりの次女。私に付いてきたいとどうしても愚図るので仕方なしに連れてきたのだ。他の子たちは家にいる妻が見ていてくれている。

 

「ああ、何とかなりそうだ」

「ホント!?」

 

 嬉しそうな声を上げる娘だが、しかし、これだけは言いつけておかなければなるまい。私は娘の視線の高さに合わせるために膝をついた。

 

「もう一度だけ言う。パパが「いい」というまで決してパパから離れずに、パパの言うことに絶対に従うこと。いいかな?」

「パパしつこい!」

「これだけは絶対に聞きなさい。でなければ私は帰るぞ。もちろんお前を連れてだ。決してあそこには連れていかない」

 

 私はポケストップを指差しながら、娘に告げる。

 何度も言い聞かせてきたおかげか娘は渋々ながらもきちんと返事をしてくれた。

 

「よし」

 

 御子神くんからは安全だと聞いてはいたが、私は何があっても娘だけは守る気概を再度確認するために声を上げた。

 

「やったぁ!」

 

 娘はどうやら違うように解釈したらしいが。

 

 そうして私たちは手をつなぎながらポケストップに歩み寄った。

 

「ああ、危ないですから下がってください」

 

 警察官から制止の声が掛けられる。

 

「問題ない。そもそもこれは人体に全く無害なシロモノであり、現状の混乱を収める唯一と言っていい鍵となる物だ」

 

 御子神くんの方でも動画撮影をされたというから、私の方でもそれをやってもらおうか。御子神くんのいい避雷針になるだろう。

 

「ここにいる諸君に告げておきたい。私がコレの――名をポケストップというが――使い方を説明しよう。ああ、動画を撮影する場合は娘を絶対に映さないようにしてくれ」

 

 すると野次馬連中は慌ててスマートフォンを構える。フフ、どうやらほぼ全員だったようだ。

 

「では始める」

 

 

 そして私は御子神くんから聞いたやり方をそのまま実践する。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「いかがだったかな? これがこのポケストップの使い方だ。続けて――」

 

 そうして私は自分のスマートフォンを操作して手のひら大の大きさになったモンスターボールとやらを取り出す。

 

「こいつ、このモンスターボールの使い方を説明しよう」

 

 さて、モンスターボールは今世間に溢れているポケットモンスターなる生き物を捕獲するための道具であるらしい。不思議な生き物ということらしいので、ここらでは見たことがない生き物ならば、まず間違いなくポケットモンスターであろう。

 とりあえず遠距離で攻撃出来るよう小石をいくつか拾う。

 

「ふむ、あれでいいか。ああ、警察の方、少しの間娘をよろしく頼む」

 

 そうして私は娘を彼に預けた後、ちょうど空を旋回している1匹の鳥に狙いを定めた。そしてモンスターボールをスイッチを押してポケットに放り込むと、右手に持つ小石を振りかぶる。

 

「ピジョ!?」

 

 私の投げた小石は狙い違わず、あの鳥に直撃した。

 鳥は墜落してくる。貫通はしないように手加減は加えた上、見たところ1m以上の大きさなので、生命力もそれなりなハズだ。死んだということはないだろう。

 

「ピジョ! ピジョジョジョ!」

 

 鳥は地面に激突することは避けられたようだが、どうやら激しくお怒りらしい。かつ誰が攻撃したかも分かっているようだ。鳥らしく中々目がいい。おまけに思った以上に元気が良いようだ。手加減を少々誤ったやもしれん。

 

「来い」

 

 私は左手を軽く突き出して右手を同じように緩く胸の前に構える。脇はきっちりと締めた。

 

「ピジョジョー!」

 

 鳥は翼を広げて突進してくる。

 私は右手の内の小石の1つを指先で弾いた。すると小石は鳥の右の翼に当たったようで、突進のスピードが失速する。

 そして時期を見計らう。ここぞというところで右足を引いて半身になった。鳥は急に視界が開けて避けられたことに動揺しているだろうが、私はそれに構わず、左手の人差し指と中指の2本を立てて、その手刀を鳥の後頭部に落とす。

 

「ピゲッ!?」

 

 鳥は今度こそ、目を回しながら土の地面に墜落した。

 

「ポケットモンスターの捕獲にはこうして弱らせるのが確実らしい」

 

 そのまま私は左のポケットにしまってあったモンスターボールを丸いスイッチを押しながら取り出す。500円玉くらいの大きさだったそれが一気に野球ボール大の大きさにまで変化した。

 

「ぬん!」

「グゴッ!?」

 

 勢いよく振り抜いたそれは見事一直線にあの鳥に突き刺さる。変な声を上げた気がしなくもないが、まあ仕方ない。捕獲、たしかゲットだったか、をするためだ。捕まえたら詫びとして後でキズぐすりと妻のおいしい手料理をくれてやる。

 

「ふむ、こんなものか」

 

 ボールの揺れとスイッチの点滅が収まったことを確認し、私はボールを回収した。

 

「諸君、このようにしてポケットモンスターの――縮めてポケモンというらしいが――捕獲、ゲットを行うのだ。そのままこのモンスターボールを投げてもゲット出来るらしいが、弱らせると捕獲率が上がるそうなのでな。今回はこんな感じでやらせてもらった。さて諸君いかがだったかな?」

「うわぁ! パパかっこよかったよー!!」

 

 ――ふむん。娘の賛辞しかないのが些か解せんが、まあ良かろう。

 さて、家路につくとしようか。ボディーガードとしても情操教育としてもポケモンは優秀らしいから、家族のために早めにゲットしてやらねばな。

 




次女「パパかっこいい! パパ大好き!」


※新出先生のCVを中田譲治さんにしてたから、愉悦道に落っこちる前のどっかの神父にすっごい似てきた気がする。
てかやってることはガチでZeroのときのあの神父並みなのでは(^_^;)

てかポケモン初ゲットってもっと感動する場面だと思うんですけどねー
先生のインパクトが強すぎて「え?」という感じになってしまう……


次回、一度やってみたかった掲示板回です。


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某匿名ちゃんねる掲示板1

某匿名ちゃんねるネタ、顔文字が登場します。
ご注意ください。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


【世の中】何か周りに知らない生き物がいるんだが【どうなってんだ?】part1

 

1名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 このスレッドは身近に起こった摩訶不思議な生き物について報告試合うってスレです

 情報交換の場として使いましょう

 

2名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1

 スレ立て乙

 サンクス

 

3名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1乙!

 

4名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1乙!

 しかし、その後時は何とかならんかったのか

 

5名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 オマエモナー

 

6名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ( ´∀`)<オマエモナー

 

 

7名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 見逃してやれもまえらwww

 

 とりあえず報告一発目

 なんか庭に超でっかいネズミがいたんだけどwww

 窓開けた瞬間、キッて睨まれて思わず慌てて閉めたわwww

 

 なにあれちょうこわいたすけておねがいきっとたべられちゃう

 

8名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 うちは外飼いのクサガメちゃんがなんかでっかいカメになってた

 あれクサガメって二足歩行しないよね、甲羅赤くないよね

 

 まあお手とかやってみたらササってしてきて超絶かわいかったんですが

 

9名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おれんとこは部屋にこれまたでっかいネズミがいた

 

 目が覚めたらネズミと目が合うんだもん

 思わず悲鳴上げて部屋から飛び出したわ

 とりあえず部屋の前にはバリケード築いたぜb

 

10名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>7と>>9の修羅場差の間に挟まれる>>8にすっごい癒しを感じるんだけど

 

11名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ネズミって何色?

 おれんとこは紫だった

 

12名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 7だけど明るい茶色だったよ

 

13名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 9だけど黄色

 

14名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 きいろ!!?

 

15名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 黄色いネズミとか気色わるいwwww

 

16名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいい東京ディスティニーの夢の国でも黄色いネズミとかねえぞww

 

17名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 てか黄色もそうだけど、紫!?

 自然界にそんな色のネズミがいるとかありえんのか!?

 

18名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おそとすげーーーーー

 スズメだけどスズメじゃない鳥がいっぱいいるw

 

19名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 日本語でおk

 

20名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 うーんw

 これは日本語でおkですぞw

 

21名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 んんww愚か者めがwwwww

 草の生やし方が足りませんぞwwwwwww

 

22名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 いやいや、ほんとほんと!

 みんな外見てみろよ!

 

23名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 んんww

 我はそんな餌に釣られほげぇえええええええ

 

24名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ファーwwww

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

47名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 たのむ!

 友達が虫っぽいの蹴っとばしたら急に苦しみ始めたんだ!

 どうすればいい!

 

48名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 救急車

 

49名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 とりあえず救急車呼べ

 あとどんな虫を蹴った?

 

50名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんか緑と紫のちょっとカラフルなやつだ!

 

51名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい

 なんでそんな警告色っぽい色の生き物に近づいたんだよ

 あほか?脳なしか?頭パッパラパーか?

 

52名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 同意だが、そいつは毒かなんか食らったんだろ

 とにかく二次被害を食い止めなきゃまずい

 その虫はどうした?周囲の状況は?

 

53名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 虫は逃げてったよ!

 周りに変な生き物はいない。助けてくれ!

 

54名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 救急車来るまで待機。決して毒を吸い出そうとするな。何の毒か分からん

 救急車来たらそのことを救急隊の人に(つまび)らかに報告

 あとは病院付いていって祈れ

 それしかない

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

201名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 しっかし、何だってんだこりゃ

 

202名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 世の中大混乱だわな

 

203名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいこれみてみろ!!

 

 https://www.youtube.com/watch?v=~~~

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

264名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 つまりあれか

 >203の動画の奴はあの不可思議な生き物を完全に御してると?

 

265名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 みたいだな

 

266名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 わたしこの現場時価でみたわw

 すごかったし、わたしもできた

 

267名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ほほう266kwsk

 

268名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 kwsk

 

269名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 kwsk

 

270名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ksk

 

271名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 kskしてどうするバカたれwwww

 

272名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんかね、あのモニュメントにスマホ突っ込むとホログラムがでるのよ

 それでわたしもなんかボールっぽいのと薬とポケモンフーズ?なんてのもらったの

 

273名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 う~んこれは

 日本語でおk

 

272名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 つれますか

 

273名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 いやいや、今の日本の技術でホログラムとかありえないでしょ

 

274名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 お嬢ちゃんSFに夢見るのはやめときな

 

275名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 と思うじゃん?

 

 http://i.imgur.com/~~~

 

276名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ホントなんだってば!

 あとわたしは男だ!!ちゃんと下生えてるんだからね!!

 

277名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいサラッと爆弾ブッコむなwww

 

278名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんか>>275の衝撃が星の彼方に吹っ飛んでった

 

279名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 やめろ

 かわいい声で想像してたのにネカマとかやめろ

 

280名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ぱんつぬいだ

 

281名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ぱんつはいた

 

282名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいなんだここ

 変態しかいないぞ

 

 

 

 

 

 

291名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ガチでホログラムだ・・・

 

292名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいおい

 どーなっとるんだ

 

293名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 IT土方として言わしてもらうがこんなことはありえない

 んな技術はまだないぞ

 

294名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 203じゃないけど、こっちにはもっと詳しいのがあった

 https://www.youtube.com/watch?v=~~~

 

 こっちはあの生き物の捕まえ方な

 https://www.youtube.com/watch?v=~~~

 

295名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ・・・

 

296名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ・・・

 

297名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 無言は書かなくていいんだよw

 

298名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なるほどたしかに

 しかしこっちはこっちで気になることがある

 

299名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 もしかして:愉悦麻婆

 

300名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 声ソックリだろ愉悦神父にwww

 

 え 

 ガチの中の人?

 

301名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 いや、イベントで見たことあるけどな艦人とは違う

 声はクリソツだけど

 

302名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 上はなんていってるの

 

303名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 たぶん中の人と書きたかったんだろうさ

 

304名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 てか動画2つめwwww

 

305名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 wwww

 

306名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 wwwwwww

 

307名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい、中の人じゃなくて実はホンマモンのガチの人じゃないだろうなwwww

 

308名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 愉悦部開講?w

 

309名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 近寄りたくねぇww

 

 

310名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんやあれ

 ( ゚д゚ )

 

 なんやあれ

 

 ( ゚д゚ )

 

311名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 こっちみんなwww

 

312名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 飛んでる鳥に石当てて、手刀でぶっ倒すとかwww

 あのおっさん何者なんだよwwww

 

313名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 最後ボールみたいなのぶつけてたけど、あのオジサマならあれで倒せると思うの

 

314名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 あの鳥変な鳴き声上げてたしなww

 あれは絶対どこかおかしいwww

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

504名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おいこれ見てみろよ

 https://www.pixiboon.net/member_illust.php?id=~~~

 

505名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ファッ!?

 

506名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 え

 ていうかなにこれ

 

507名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい、ここに載ってるネズミうちの庭にいたやつだぞ

 

508名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 あ、うちのカメもいる

 へぇゼニガメっていうんだ

 子亀のときの愛称みたいだね

 あ、図鑑みたいなのが載ってるね

 助かるなー

 

509名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 いや、てかガチでどういうことよ

 なんでこいつがこのポケモン?とかいう生き物のこと知ってるわけ?

 

510名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 まさかこいつがこの生き物を広めたとか?

 

511名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そんな馬鹿な話あるか

 ニュースでは日本中に広まってるし、昨日までは全くなんともなかったんだ

 仮にそうだったとしたら何人の仲間が必要なんだよ

 ありえんだろ

 

512名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 でも仮にこいつは科学者か何かでこのポケットモンスター?とかいうい着物を生み出せたとしたら?

 

513名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 着物?

 

514名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 まじめにやれ

 

515名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おれこのサイトのID持ってるからガチでこいつにメッセ送った

 そこら辺のことも聞いてみたよ

 

516名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 みんないろんなSNSで拡散しよう

 

 

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949名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 コンビニとかマックとかにある変なモニュメント含めていろいろ出そろったな

 

950名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おれもようつべのやり方通りにやったらこのポケモンとかいうのゲット出来たわ

 

951名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 Me too

 

952名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なぜ英語?

 

953名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 てかもうヨウツベバー出てんのな

 商魂たくましいというかなんというか

 

954名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい、なんかこのポケモンのことで政府が会見するみたいだぞ

 

955名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 昼からか

 あと10分ぐらいだな

 みんな実況いくぞ

 ついでに次スレ立てといた方が良くないか?

 

956名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 じゃあ960がスレ立てで

 

957名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おk

 

958名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おk

 

959名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ksk

 

 

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1001 名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 このスレッドは1000を超えました。新しいスレッドを立ててください。

 

 




はじめて2ちゃんねる形式やってみましたが、結構楽しかったです。
ちなみにそれっぽい感じになってましたかね?

次回は少し時間が戻って御子神君サイドの話になります。


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親戚に頼ったら実はもっと大変なことになった

うほほほーい!
ウルトラサンウルトラムーン発売決定☆
楽しみです!
でも去年SM出てもう次が出るとか早いわw
あとVC金銀が出るということですが、初代は赤緑青黄と一遍に出したのに、なぜ今回はクリスタルが省かれたのか。クリスタルやってみたかったんだけどなー。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


「さて、もうそろそろか」

 

 僕は今部屋で人待ちをしている。

 僕とラルトスは出かける準備は万端だ。

 

 ピンポーン

 

 インターホンが鳴らされた。

 僕はそのまま玄関に出て扉を開ける。

 

「おはよう、彰くん」

「おはようございます、三枝さん」

「とりあえずすぐ移動しましょう。下に車停めてるから乗って」

「はい」

 

 そうして僕は彼女の後に付いていく。

 僕より数年年上なこの女性は三枝さんといって伯父さんの私設秘書をしている人物の一人だ。伯父さんの従姉妹の人で年末年始やお盆とかで親類が集まったときなんかに顔を合わせることもある、僕からすると少し遠い親戚の人だ。

 アパートの前にハザードを焚いて停められていた車に乗り込むとすぐさま走り出す。

 

「ラル!」

 

 ラルトスがボールから飛び出してきた。物珍しいのか車内を見渡し、その後、流れていく車窓に釘付けとなる。ルームミラー越しに珍しそうに三枝さんがラルトスに視線を見やる。

 

「それが、ええっと?」

「ポケットモンスター、略してポケモンです。この子はその中でもラルトスって言う種族ですね」

「そうそれ! ちなみにどっちの方がいいのかしらね?」

「どっちでも。個体名ならラルトス、生き物としての総称なら『ポケモン』とか『ポケットモンスター』でしょうね。言いやすい方がいいと思いますよ」

「じゃあ『ポケモン』ということにしておきましょうか」

 

 走らせていた車が赤信号によりゆっくりとスピードを落とす。

 その間にチラリとほぼ通信アプリ専用にしているスマホを見てみる。なんとなくいやな予感がしたので電源を落としていたので見ていなかったのだが、電源を入れた瞬間に「ポンポンポン」と加速度的にメッセージが届く音がする。それからつぶやきやピクシブーンのコメント通知やメッセ通知も同じような感じで来ている。

 

「それは?」

 

 バックミラー越しに三枝さんと視線が合う。

 僕は先のことを話した。

 

「そっか。本格的に身バレを警戒しないとまずいわね。とりあえず電源落としといて流しておきなさい。今あなたの話を受けて先生がいろいろ動いてくれているみたいだから。もちろん私たちも出来る限りで全力サポートするつもりよ」

「ありがとうございます。ところで」

 

 窓の外を見やると幹線道路に出たが、途端に車の流れが悪くなる。ラルトスも止まることが多くなったためか、ちょっとつまんなそうな様子だ。

 

「事務所着くまでまだ時間ありそうですよね?」

「この調子じゃそうね。土曜日なのに結構渋滞が激しいわ」

「じゃあちょっと確認したいことがあるので、スマホいじりますね」

 

 ということで、今朝から一連の騒動があったが、先程ダウンロードしたポケットモンスターのアプリを開く。

 

「それは?」

「ポケットモンスターのアプリです」

「ああ。私はまだなのよね」

「ポケストップでダウンロードしておくといいですよ。たぶんこれからは否が応でもポケモンとつきあっていかなきゃいけなくなりそうですし」

「そうなのかしらね。あとで先生と一緒に行くわ。そのときは案内お願いね?」

「もちろん」

 

 さて、アプリの方だが、まずはザッと見ていくことにしようか。

 今はあのゲームのようなメニュー画面になっている。

 項目は“図鑑”、“ポケモン”、“道具”、“ポケリフレ”、“トレーナーパス”となっている。ただ何か埋まりそうな空白がいくつかあるので、後々追加されるような感じになるのか。

 

「アップデート? あるいは何か条件を満たしたら追加される?」

 

 とりあえず判断材料がなさ過ぎるからこの件は保留にしておくか。

 次は各項目を見てみよう。

 “道具”は一度見たから、まずは“図鑑”から。

 タップしてみると、見つけた数、捕まえた数など、ゲームのときとほぼ変わりはない。捕まえたポケモンの数は1でこれはラルトスだろう。ちなみに見つけた数は加速度的に増えていっている。これは町中にポケモンが溢れているからだろう。ちなみにどのくらいの距離までこの図鑑が探知出来るのかはまだ未知数である。

 続いて“ポケモン”。これも開くとポケモンのレベル表示、色で表示された大まかな体力、オスとメスの表示がある。ちなみに、僕のラルトスはメスでレベルは11だった。このようにしてとゲーム画面と大体同じような感じだ。そう、細かい差違はあれ()()()()。つまりはポケモンゲーム同様、ここには6匹分までのスペースはある。しかし、7匹以上になった場合、果たしてどのようになるのかが分からない。パソコンに転送? ハハ、ナイスジョークw

 んで、今度は手持ちにいるラルトスのところを開く。すると特性や性格、薄青いバーで示された次のレベルまでの大凡の経験値表示、技、持ち物、出会った日時、場所など、ゲームからは少し抜けはあれど大体が同じだ。これは助かる。特に技や特性は調べるのが大変なので、本当にアプリ様々である。

 ちなみに特性は相手と同じ特性になる『トレース』。なかなか強力な当たり特性である。そして技を見てみれば、驚きだが、4つ縛りはない。レベル11までの技に、今朝方使ったタマゴ技があった。さっきのスピアー戦でタマゴ技が基本技に組み込まれてたりするのかと思ったが、どうも違うらしい。本当に遺伝なのか検証……できるかなあ(汗)。ゲームのときみたいにポンポン生ませてたらシャレにならないことになりそうだし。とりあえずタマゴ技については保留で。

 “ポケリフレ”はゲームではポケモンの世話をするやつだったはず。ならばもう少し腰を据えてやりたいのでここではパスしよう。

 んで最後に“トレーナーパス”。これはトレーナーとしての歩みと、お、あとはこのアプリの説明書になってるな。これなら全くゲームの下地がなくても使いやすいかもしれない。ちなみに。トレーナーパスの第一項目目には年月日と共に「キミはポケモントレーナーとしての第一歩を踏み出した!」というのが大きく書かれている。言っておくけど僕はそんなことは一切書いてない。たぶんだけど勝手に記録されていくんだと思う。なんてハイテクな!

 

「あ、もう着くわよ」

 

 これらをちょうど見終わったときに声を掛けられた。ポケリフレ見てたらたぶん途中で終わってたな。

 とりあえずは目的の場所に着いたので、車を降りる。

 目の前にはちょっとしたオフィスがあるのだが、あるところで他とは一線を画しているところが、ここが普通とはやや違うという佇まいを呈していた。

 

 にいたか義雄

 

 そう看板には大きく書かれ、ポスターなどもペタペタと貼られている。

 

 新居高義雄。現衆議院6期目にして地方分権改革・国家戦略特別区域担当の内閣府特命担当大臣、さらには前総務大臣を歴任した人だ。こんな人が親戚にいるのは僕のちょっとした自慢である。そこ、人間が小さいとか言わない。僕は小市民なのですよ?

 

「やあ、待っていたよ。彰君」

「ご無沙汰です、伯父さん」

 

 伯父さんが事務所の中で出迎えてくれた。議員さんなんだから忙しくはないのだろうかとも思っていたけど、ちょうど週末で地元周りをするために戻ってきていたようだ。いわゆる金帰火来(きんきからい)というやつらしい。尤も今回それはキャンセルしたという話だが。

 

「昭津君、三上さんここは任せた。さ、我々は奥へ行こう」

「了解です」

 

 たしか伯父さんの私設秘書の一人の昭津さんとあとは事務所責任者だったか、2人をおいて僕たちは事務所の奥、公にしたくはないという人のための応接スペースへとあがった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「ふむん、なるほどなぁ。ポケットモンスター、ね」

 

 今僕の正面には伯父さん、三枝さんがテーブルを挟んで向かい合って座っている。伯父さんの前にはノートパソコンが、三枝さんの前にはタブレットとノートパソコンがそれぞれ1台ずつ置かれ、伯父さんと三枝さんはそれらを覗き込みながらウンウンと唸っている。尤も三枝さんだけは同時に一心に手を動かしてタッチタイピングしているけど。

 ただまあ、それだけならまだいい。ここには問題が1つあった。

 それは応接室のちょうど議長席に当たるところにおかれた1台のノートパソコン。そしてそのノートパソコンにはスカイプのようなソフトが立ち上がっている。つまり僕たちはここと、スカイプの向こう側の人間と会話をしているのだけど、その会話をしている人間というのが問題だった。

 

『新居高さんが官邸に来られないと聞いてどうしたのかと思いましたが、ハハ、なるほど。これはそちらとのつなぎ役のために残って頂けたこと感謝に堪えませんね』

 

 現衆議院議員(8期)であり、現自由保守党総裁であるお人。しかし、何よりもこの人を表すにはふさわしい言葉がある。

 ()()()()9()8()()9()9()()()()()()()()、瑞樹康宏。それが一番に彼の人をわかりやすく表したものだ。

 つまり今この状況、ディスプレイ越しとはいえ、現職の総理と面と向かって会話を行っているのである。

 

「総理、対策室の面々はまだいますよね?」

『はい。未だ会議中です。緊急かつ策があるということで私だけ抜け出してきました』

「そうですか。では一時中断してもらってウチのが今作ってる資料送ったら改めて対策会議というのは? 正直申し上げて根本的な解決策等なにもないでしょう?」

『まあ私が退席するまではそうでしたね』

「ならば、そういうことにしましょう。それでこちらも今から官邸に彼を連れていくのも時間が惜しいので、Web会議的な形でその対策会議に出席してもらいます。そこで改めて今回のことのプレゼンといいますか、現状我々の陥っている状況について説明をしてもらうというのは」

 

 おい。おい。おいぃ! なんやそれはぁぁ!

 プレゼン? いや、プレゼンとかはまあ会社でやったことはあるよ? でも場所とかやる相手とかを考えて? 総理とか内閣関係者?ら辺にとかばかじゃないの? 一般小市民にそりは重すぎるわぁぁぁ!

 

『わかりました。御子神くん、現状今の日本国は混乱に陥っています。円の値段も乱高下して週明けの株価の数字も私自身あまり見たくはない状況なんです。外交もこの混乱を機に我が国の足元を掬おうと謀略を巡らす動きが出てきてもおかしくはない。今回の一件でどれほどの国益が失われるか。しかし、そこに一筋の糸が見えた。暗中を模索する我々にはまさにそれは光明だった。ならば我々はそれを辿って行きたいと思う。人間は光を見て安堵を覚える生き物だからね。だから、申し訳ないけど……了承、してくれますね?』

 

 一国の総理にそこまで言われてしまっては、僕には首を縦に振るしか返答は出来なかった。

 

 そうして僕たちはネット会議設備が備わっている近くにある市役所本庁舎に移動する。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ちなみに、今の僕の心境はまさしくこんなAAだった。

 

 




次回、掲示板話の続きに戻って政府記者会見+αをお送りします。

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総理官邸記者会見

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ちなみに私は関東圏に住んでいるので、他の地方でどうなってるのかいまいちわかりません。なので関東基準で行きます。



 201云年 〇月△日土曜日 12:00

 

 春にしてはやや肌寒さを感じる今日日。

 日本国総理官邸記者会見室。日の丸が立てられたこの一室は今日もたくさんのマスコミによって席が温められている。いや、今日は常以上がそこに押し掛けて(ひし)めき合っていた。

 理由は主に2つだ。1つは官房長官ではなく、総理自身が会見を行うこと。そしてもう1つ、決定打となったのは、今日になって突然巷に溢れ出した奇妙な生き物について、政府の調査により判明したことを発表するということを事前情報として伝えられたことだ。

 未だ発見後丸一日とて経過していない上で果たしてどの程度の情報が齎されるのか。マスコミ各社各人は疑問に思うものの、今の政府は極めて正確な情報しか発信しないことは日頃現政権に対して批判的なメディアでさえも十二分に承知しているので、それはそれで自分たちや読者視聴者たちから集めた情報の補完程度にはなると考えていたりする。

 ちなみにこの会見、昼のニュースや再放送ドラマを取り止めて放送するところもあれば、会見の情報をL字型画面やワイプ(テレビ画面の小窓)で映して通常の放送もやっているところなどもある。もちろん、それらを一切『我関せず』とばかりに通常放送を通常通りに流すという我が道を行くスタイルを貫く放送局もある。主にテレ東とか。

 

 さてここで「みなさまの公共放送」がスローガンであるNHKをクローズアップしてみる。当該チャンネルの画面には左上に時刻、右上に大きく字幕で【総理記者会見中継】と映し出されていた。

 個人の自宅から家電量販店、ワンセグやカーナビに至るまで、多くのテレビがこの会見に視線を注ぐ。

 

『えー、時間になりました。これより瑞樹内閣総理大臣による記者会見を始めます。冒頭、総理から発言がございます。総理お願いします』

 

 その会見の進行係の案内が響き渡ると、総理が壇上に上がって国旗に一礼、併せてカメラのフラッシュが焚かれ始める。

 

『……えー、本日未明より日本各地で確認された未確認生物につきまして……国民の皆様におかれましては……心胆寒からしめる事態も起きているということで……この度政府調査により判明した事実を……国民の皆様に対して、ご報告申し上げます……』

 

 はきはきと、通常より心なしゆっくりとしたスピードで総理は話す。それは国民すべてに語り掛けるような、そして国民すべてに安寧を齎したい、そんな思いが透けるような語り口であった。

 

『……まずこの未確認生物につきまして……既存のどの生物とも異なる全く未知の生き物である、ということがわかりました……これは……緊急で開かれた有識者会議、また連絡の取れた有識者等からの意見の聴取を行った結果……その全員が、全会一致の結論を得たことから……間違いはないものといえます……』

 

 その発言に集まった記者らからは「やはり」という思いに駆られると共に、それを一国の総理が断言したことで、フラッシュの量が一段と多くなる。この総理の一言で、それは紛れもなく公式見解となり、日本政府の見解となったのだ。

 果たしてこれが世界にどれだけの影響を齎すのか。記者たちはそれに身震いを起こした。

 

『……私ども政府としましても、この度のことは前例のない事態であり……また、被害の報告もあり……予断を許さない緊急事態と認識し、事態の収拾に奔走しておりました』

 

 ふとここで瑞樹が壇上の水差しからコップ1杯の水を手元に備えられていたコップに注ぎ、それを半分ほど呷る。

 

『……その最中、我々政府はこの緊急事態に対し……我々よりも深い知識で以て……今回の件に対処可能であると、判断するに足る人物と……接触することに成功、しました……』

 

 その発言に会場は大きくどよめいた。

 

「おいおい、どういうことだよ?」

「あんなのを解決ってどういう?」

「……ひょっとしてアレか?」

「なんだよ、アレって」

 

 そんな囁きが聞こえる中、瑞樹は構わずに進める。

 

『……記者の皆さん、そして国民の皆様におかれては……既にご存知の方もおられるとは思いますが……実はインターネット上にて、この未確認生物について非常に詳しく書かれた記事がございます……』

 

 瑞樹のその言葉に「やっぱりアレか!」という小さな声が所々で上がる。知らない記者もいたようで、声を上げた記者の近くでは彼らに耳を寄せる記者らの姿が散見された。

 

『……(くだん)の人物はそれを書き上げた人物であり、我々よりも遥かに……この未確認生物に対しての理解を示しており……実際の対処の仕方についても我々に教授してくれました……』

 

 そうして瑞樹は懐から丸い物体を取り出す。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「あ、瑞樹総理がモンスターボール持ってる。ってことは何かポケモンをゲットしたんですかね?」

「一応そうした方が会見での説得力が増すから、できるだけ捕獲を試みるとは仰ってはいたな」

 

 今僕たち、僕・ラルトス・伯父さん・三枝さんの4人は、三枝さんの運転する車で首相官邸に向かうために首都高速を走っている。テレビ会議もそうだが、身振り手振りや実際に見ながら伝えたいこと、また何かの事態が発生したときにすぐさまが初動が取れるようにと、総理に要請されて向かっているのだ。ちなみに今やっている会見は後部座席のカーテレビで伯父さんと2人で見ている形だ。ラルトスはというとさっきとは比べ物にならないほどの速さで後方に流れていく景色にもう夢中で、さっきから窓に噛り付きっぱなしである。

 

『これをモンスターボールと言いまして……あの生物を捕獲するための道具となるものです……』

 

 ゲームでいうアイテムみたいなものですとか付け加えるとかあの人って意外とオチャメなんだな。

 

『さて、このモンスターボールですが……』

 

 そうして瑞樹総理が軽くモンスターボールの説明をする。ピンポン玉くらいの大きさから野球ボール大の大きさに変化させたときなんかは、記者たちの驚きとノートパソコンをタイピングする音がより大きく聞こえてきたほどだった。

 

『……さて、このモンスターボール……この中には今まさに、わたしが捕まえた――かの人物が表現するには『ゲットした』というそうですが――あの未確認生物が入って、おります……』

 

 どよめき、フラッシュ、タイピング音といった会場内のボルテージが駆け上がっていっているだろう中で、総理は満を持してモンスターボールの口を開けた。

 

 

『シャン! リー、シャン!』

 

 

 それは丸い鈴の形に小さな手足を持ったポケモンだった。後頭部に太くて紅白模様の鈴紐がある。

 

『リー、シャン♪』

 

 宙に浮遊し、跳ねるたびに綺麗な鈴の音のような音を響かせる。

 

「へえ! リーシャンを捕まえたのか!」

 

 一国の総理がリーシャンとかなかなか面白い気もする。それにリーシャンも進化形のチリーンもなかなかカワイイし。

 

「ほう、あのポケモンはリーシャンというのかい?」

「ええ。リーシャン、エスパータイプですね。特性は『ふゆう』で、十分に懐いている状態で夜にレベルアップするとチリーンに進化します」

「ふむ。中々複雑だな」

「確かに。懐きに指定時間帯での成長ですか。細かい条件もあるものですね」

「まあ最初はそうかもしれませんが、慣れちゃえばなんてことないと思います」

 

 そう返した僕の言葉に伯父さんと三枝さんは一様に苦笑いを浮かべた。

 その間にも画面内では目が眩むほどにフラッシュが焚かれている。その様は総理自身が白く発光しているのではないかと見紛うほどの有様であった。テレビの画面には『フラッシュの光にご注意ください』とのテロップが流れるが、最早注意するどうこうの話ではない気もする。

 

『すまないね、一度戻ってくれるかい?』

『シャン!』

『ありがとう』

 

 そうして総理はリーシャンに向けてモンスターボールを翳すと、モンスターボールのボールスイッチから赤いレーザー光がリーシャンに向かって伸びる。それが一瞬でリーシャンを包み込むとアッサリとリーシャンの姿が消え去った。モンスターボールにリーシャンが収納されたからだ。今の様子を見た限りでは、総理とリーシャンの間の関係は中々に良好なようだ。

 

 そして『ええええええ!?』なんていう記者の声が聞こえてくる。まあいきなり20㎝くらいの生き物が突然現れて、そして突然消えたらばそういう反応にもなるだろう。

 

『静粛に! 静粛に願います!』

 

 流石にそれらは看過できなかったのか、進行係の人からの注意が入った。

 そしてややあって、また総理が話し出す。会見場はまだガヤガヤしているようだが、総理自身はそれが許容範囲内に収まったと判断したのだろう。

 総理がさっきのモンスターボールをボールスイッチを見せるように改めて顔の横に掲げた。

 

『……さて、我々政府としましては……このような道具で以てこの生き物をゲットして制御することに成功、しました……もちろんこれらは、どなたでも出来ることにございます……彼らは、とても理性的で、とても賢く、そして、とても優しい……彼らと接して私はそれを強く実感しました……また彼らは進んで私たちの力になってくれようともしました……ですので、わたしは思いました……彼らが私たちと一緒にいてくれれば……私たちは更なる幸福を享受できる……私は、そう確信するにも至りました……!』

 

 総理の言葉に段々と力強さが増してくるのを感じる。

 ポケモンを排除することは難しい。人間にはない力を持つ彼らを武力で以てそれを行おうにも限界はあるし、後々大変なしっぺ返しが来ることに間違いはない。

 

 ならば共存共栄を図っていこう

 

 そうした思いを強く感じるような言葉だと僕自身は思った。

 

『……そしてこの生き物はゲットしてしまえば、どんなに大きなものでもポケットにすら入ってしまう生き物です……我々は、かの人物が提唱した言葉、それをそのままこの生き物に当てはめることに、しました……』

 

 そうしてここで、総理はコップに残っていた水をすべて飲み干した。

 そして一息入れて間を取る。

 

 

 ――我々はこの不思議な不思議な生き物を

 

    ポケットモンスター

 

    縮めて ポケモン

 

   そのように呼称することを決定しました!――

 

 総理がそう力強く断言したことに、僕は不覚にも目頭が熱くなる思いを抱いた。

 




この会見により『ポケットモンスター』の存在が公式見解となりました。
それにしても記者会見結構難しかった。
稚拙な表現で申し訳ありません。

次回はまた御子神くんサイドに戻ってあれやこれやです。

※ニックネームと現実にポケモンがいたら何が起こるかのアンケートを活動報告で実施しています。
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皆様の公共放送実況掲示板

掲示板ネタを書いてたらあまりに長くなったので、こちらだけ切り離し。
時系列的には官邸記者会見と同じなので、予定を変えてこちらをここに投稿しました。

某匿名ちゃんねるネタ、ネットネタ、顔文字が登場します。
ご注意ください。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


NHK総合を常に実況し続けるスレ 135113 なんなんだこいつらは©2ch.net

 

1 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 NHK番組表        http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/index.cgi

 NHK教育実況      http://nhk2.2ch.net/liveetv/

 NHK BS実況.      http://nhk2.2ch.net/livebs/

 実況勢い観測       http://tv2ch.nukos.net/tvres.html

 NHK総合実況汎用スレッド part53 (自治・議論 他)

 http://nhk2.2ch.net/test/read.cgi/nhk/~~~~~

 

 前スレ:NHK総合を常に実況し続けるスレ 135112 UMA出現だじょ 2ch.net

 http://nhk2.2ch.net/test/read.cgi/livenhk/~~~~~~

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

224 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 さて次は東京都心のポイント予報ザマス

 

225 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 天気予報より会見が楽しみ

 

226 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あ、そういや12時からはニュースじゃなくて会見か

 

227 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 えー、俺たちのふんわりたけしー

 

228 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 今日柳川さん見れないのか

 さんねん

 

229 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 東京都心とはどこなのか。。。(´・ω・`)

 

230 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 千代田区の皇居・北の丸公園ザマス

 

231 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 お昼になりもうした

 

232 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 12時

 

233 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

234 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 瑞樹ちゃんキタ━━━━(๑・я・)و━━━━ッ!!

 

235 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 さあ会見始まりました!

 

236 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 wktk

 

237 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 

【挿絵表示】

 

 

238 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 wktk

 

 

 

 

 

『……まずこの未確認生物につきまして……既存のどの生物とも異なる全く未知の生き物である、ということがわかりました……これは……緊急で開かれた有識者会議、また連絡の取れた有識者等からの意見の聴取を行った結果……その全員が、全会一致の結論を得たことから……間違いはないものといえます……』

 

 

251 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うわーやっぱマジかー

 

252 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 新種?こんなに?

 

253 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 生物学者はヒャッハー間違い無しだな!

 

254 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 たぶん失禁しながらフィールドワークしてると思うw

 

255 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 いやいやwwなんでだよwww学者ってのは変態の集まりか?

 

255 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 そうだよ!よくわかってんじゃん!!

 いまこそはわがよのはるだぜ!!

 ひゃっふううううううううううううう!!!!!

 

256 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 てめえ!こんなところで書き込んでないでおめーも手伝え

 

257 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ( ´∀`)<オマエモナー

 

258 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 つ鏡

 

259 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うわ

 なんか変態って言うのが分かったわ

 

260 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 これはかなり変態でつね

 

261 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 まあ分野違うけど事情はわかる

 

 なんでも生物学の分野は誰も研究してない生物を存分に研究できるケースなんて普通はない

 ありえないレベルだから

 それがそこいら中にゴロゴロいるんだから発狂しても不思議じゃない

 

 それにうまくいけば

 助成金もドバドバ、ちょっと大きなことを発見すれば権威ある雑誌への掲載がワンチャンと、いろんな意味でゴールドラッシュな状況だし

 

262 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ん?それがどうしてゴールドラッシュなん?

 

263 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 学者の世界では書いた論文がどんな雑誌に掲載されて、何回引用されたかが評価のすべて

 わかりやすくいえば、ツイッターで言う閲覧数とリツイート数みたいな感じ

 

264 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ほー!

 

265 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 へぇへぇへぇ!

 

266 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うは!おいちゃん263に20へーやるわ!

 

267 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 つかたとえ古いなオイwww

 

 

 

 

 

『……その最中、我々政府はこの緊急事態に対し……我々よりも深い知識で以て……今回の件に対処可能であると、判断するに足る人物と……接触することに成功、しました……』

 

 

273 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ん?

 

274 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ファ?

 

275 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 どーゆーことだってばよ瑞樹ちゃん

 

 

 

 

 

『……記者の皆さん、そして国民の皆様におかれては……既にご存知の方もおられるとは思いますが……実はインターネット上にて、この未確認生物について非常に詳しく書かれた記事がございます……』

 

 

279 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え、なにそれ

 

280 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あーあれ

 

281 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あーあれかーあれだよなー(で、なんだよアレって?

 

282 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 おまえ知らないの?ださ(さっさと教えろくださいあくしろよ)

 

283 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 教えてやろうと思ったけどきさまの態度が気にくわない

 

284 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 まあいいだろ

 ほいよ

 つhttps://www.pixiboon.net/member_illust.php?id=~~~

 

285 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ふぁ!?

 

286 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 をいい!?

 なんやねんこれえええ

 

287 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え

 てかなにどーゆーこと?

 

288 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 それが午前中からネットの一部で駆け回ってるナゾよ

 なんでコイツが事細かにこの生き物のことを知っているのか

 

289 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ついでにいえばコイツの初投稿は10年以上前な

 

290 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え、なにそれ

 

291 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 こいつだけ時空歪んでんの?未来人?

 

 

 

 

 

『……(くだん)の人物はそれを書き上げた人物であり、我々よりも遥かに……この未確認生物に対しての理解を示しており……実際の対処の仕方についても我々に教授してくれました……』

 

 

295 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え、ええええええええええええ

 

296 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 はいいいいいいいいい!???

 

297 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ちょ、え、な

 

298 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ファ!?

 

299 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ちょ、瑞樹ちゃんなによその特大の爆弾っっっっっw

 

300 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 

【挿絵表示】

 

 

301 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ミッちゃーーーーーーん!!!!

 

302 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ミックンなんやねんそれ絵ええええ!!

 てか297AA貼るのはええよwwww

 

 

 

 

『ではこちらをご覧ください……これをモンスターボールと言いまして……あの生物を捕獲するための道具となるものです……いわばゲームでいうアイテムみたいなものですね……さて、このモンスターボールですが……』

 

 

315 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え、え、えええええええええええ

 

316 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なにあれ!なにあれ!!!!

 

317 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なんじゃそりゃあああああああ

 

318 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え

 なんであの丸い玉急にデカくなってんの?

 

319 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 おいおい

 なんだよあの技術・・・

 今の日本にあんなのあるのか?

 

320 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 いやいやないだろ

 まんまドラえもんのスモールライト系だろ

 

 

 

 

 

『……さて、このモンスターボール……この中には今まさに、わたしが捕まえた――かの人物が表現するには『ゲットした』というそうですが――あの未確認生物が入って、おります……』

 

 

331 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工

 

332 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うっそーん

 

333 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ミッちゃーん

 もう驚き疲れたよ

 

334 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 瑞樹ちゃんほんと何個爆弾仕掛けてんのよww

 

335 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 てかもういいや

 とっとその生き物見せろや(゚Д゚)ゴルァ!!

 

336 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 たしかに

 どんなのか見てみたいよな!

 

337 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ミックン頭切れる&有能だから同じく頭良さそうなやつかな

 

 

 

 

 

『シャン! リー、シャン! リー、シャン♪』

 

 

346 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うおおおおおお!!!!

 

347 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 すっげえええ!なんだこれなんだこれえええええ

 

348 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 待って!いろいろ待って待ってまってえええええええ

 

349 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ねえあんな小さなボールからあんな大きさの生き物出るとかどうなってるの?

 

350 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 たしかに

 質量保存則とかどうなってるの?

 教えてエロい人!

 

351 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 すまんエロくないからわからない

 

352 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うそだ!!

 

353 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うそだ!!!(雛見沢並感

 

354 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うそだ!!!!

 

355 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なにこの一体感w

 

356 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 !がだんだん増えるのも草w

 

357 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 とりあえずドMなワイが言及してやるがわからんンゴ

 

358 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 そんな性癖は機器等なかった

 

359 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 どないなってんねん、工藤

 

360 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 いや、もうええっちゅうねん工藤

 せやかて工藤

 

 あれ、めっちゃかわえないか

 

361 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なんで唐突にコナン恥じまっテンスかね

 

 いや実際アレはなんかかわいいな

 

362 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なんだろう

 鈴っぽい生き物?

 無機物みたいなのにめっさかわいいなおい

 

363 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あれどこでどうやって捕まえンのよ

 

364 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 とりあえずお外出よ!

 みんなであの生き物捕まえよ!!

 

365 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 んなこといったってどうやってだよ?

 

366 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 瑞樹ならその辺の方法とかも話してくれるっしょ

 

367 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ああ、まあそれもそうか

 よっし外出準備して待機してよ

 

368 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 全裸で正座?

 

369 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 これから外出よーってときになんで全裸なんだよwww

 

368 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あああああ

 あの生き物ハイエースしたいんじゃあああ

 

369 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ちょwおまww

 

370 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 wwww

 

371 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 でダンケダンケすんのかwww

 ケモナーわかんねえなwww

 

372 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 そもそも毛がない件

 おまえらみたいに

 

373 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 よーしパパその喧嘩高く買っちゃうぞ☆

 

374 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 逮捕しちゃうぞみたいなノリのとこがまさにおっさんwww

 

375 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 372 374

 屋上

 

376 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 つ鏡

 

377 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 てか374がそれを知ってること自体が自爆してるぞ

 

 

 

 

 

『すまないね、一度戻ってくれるかい?』

『シャン!』

『ありがとう』

 

 

384 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 うっそ・・・

 

385 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え

 消えた?

 

386 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 チャドの霊圧が・・・消えた・・・

 

387 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 いやいやwww

 

388 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 てかおれらは何度瑞樹ちゃんに驚かされればすむのか・・・

 

389 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ミッチャンの言動から察するにあのボールの中に戻ったことでFA?

 

390 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 あーそういうことか

 

391 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 え

 てかあのボールほんとどういう理屈なの?

 

392 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 マジあのボールには超科学詰まってるくさくね?

 

393 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 夢が詰まってるってことでつね

 

394 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 胸の中には?

 

395 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 将来の希望が詰まってるんだよ!!

 

396 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 395

 おまえ貧乳馬鹿にした路

 屋上

 

397 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 だが断る

 胸は大っきい方がいいのだ!

 大きいは正義!大きいはjustice!大きいはGerechtigkeit!

 

398 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 なんでそこでドイツ語が出てくんだwww

 

399 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ハイエースが出てきたからじゃないの?

 

400 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 てか「ハイエースし」で「ハイエースしてダンケダンケ」が出てくるのもなぁwww

 

401 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 はいはいその話はやめやめ

 でとりあえずワイあの生き物を絶対捕まえると決意ンゴ

 

402 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 かわいいのがいいよね

 

403 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 私なにがいいか物色するわ

 たしかどっかにそのサイトのURLあったよね

 誰か貼って

 

404 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 284見ろ

 

405 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 よっしゃ俺もなに捕まえるか考えよ!!

 

406 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 んんwww

 この波に乗り遅れることなどありえないwww

 我も突撃しますかなwww

 

 

 

 

 

『……さて、我々政府としましては……このような道具で以てこの生き物をゲットして制御することに成功、しました……もちろんこれらは、どなたでも出来ることにございます……彼らは、とても理性的で、とても賢く、そして、とても優しい……彼らと接して私はそれを強く実感しました……また彼らは進んで私たちの力になってくれようともしました……ですので、わたしは思いました……彼らが私たちと一緒にいてくれれば……私たちは更なる幸福を享受できる……私は、そう確信するにも至りました……!』

 

 

414 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 んー、あんまり危険はないってことなのかなー

 

415 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 いや生態とか一切わかんないんだからまだそこら辺もわからないでしょ

 

416 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 でも瑞樹さん上手く御してるみたいだし

 

417 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ていうか今後この生き物と必然的に付き合っていくしかないんだから受け入れる方向で行きましょう的な感じなんじゃないの?

 瑞樹が未知のものにここまで断定的に言い切るなんてつまりはそういうことでしょ

 

418 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ああそういうこと

 

419 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 それに使い方次第なんじゃない?

 包丁だって料理に使えれば人殺しにも使えるし

 つまりはそういうことでしょ

 

 

 

 

 

『……そしてこの生き物はゲットしてしまえば、どんなに大きなものでもポケットにすら入ってしまう生き物です……我々は、かの人物が提唱した言葉、それをそのままこの生き物に当てはめることに、しました……』

 

――我々はこの不思議な不思議な生き物を……ポケットモンスター……縮めて、ポケモン……そのように呼称することを決定しました!――

 

 

428 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 【速報】

 新生物の名称はポケットモンスター

 略してポケモン

 

 【速報】

 新生物の名称はポケットモンスター

 略してポケモン

 

429 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ポケットモンスター

 うん、なかなか小洒落た名前じゃない

 

430 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ポケットモンスター

 

 長いし書きにくい言いにくい

 

 これはポケモンだな

 

431 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 よーし、ポケモンつかまえにいくぞー!

 

432 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 ついにこの私も外の日差しを浴びるときが来たようだな

 

433 公共放送名無しさん 201*/**/**(*)~

 

 だからひきこもってないではたらけwww

 

 




ちなみにこの官邸記者会見、実は相当すごいですw
詳細は次の掲示板話で触れていく予定です。

それからいくつかお知らせ
1,掲示板話については誤字も掲示板の魅力の1つ(?)なので、掲示板話での誤字は直しません。ただレス番とかがミスってたら直しますのでよろしくお願いします。
2,活動報告で書いて頂いたアンケートの中から採用OKになっている一部ネタをチョイスさせて頂きました。提供してくださいました方ありがとうございます。
※アンケートは「締め切ります」とアナウンスするまで続いていきますので、よろしければどうぞ。


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機能更新と技マシン

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 瑞樹総理の会見はまだ続いている。今は質疑応答の時間だ。

 

『朝陽放送の松永です。総理の仰ったそのポケットモンスター?について詳しい人物についてもう少し詳細な情報をお願いします』

『はい……かの人物につきましてですが、この方は公人ではありません……プライバシー等も加味しまして詳細な情報は差し控えたいと思います』

『にっこにっこにー動画の森田といいます。総理、総理が捕まえたその、ポケットモンスター、ですか、それはどうやって総理は捕まえられたんですか?』

『はは……この子はですね……ちょっと会議を中座して私の執務室に戻ってきたときに私の執務机の上にいたんですよ……それでどうもこの子、非常に人懐っこいようでして仲良くなっちゃいましてね……それで秘書のモンスターボールを借りて捕まえた……いえ、ゲットしたわけであります』

『日日新聞の竹井と申します。話は戻りますが、総理。総理の仰るその人物がポケットモンスターを生み出したということはありませんか?』

『それはございません……その方は普通の会社に勤める普通の一般の方ですから』

『しかし、我々の取材ではその人物だけがポケットモンスターが出現した今日よりもずっとずっと前にそのポケモンのことを知っていたんです。これは如何にもおかしいとは思いませんか?』

『確かに腑に落ちないこともあるかもしれません……しかし、その方は科学者でも何でもない……それに今日になって突然日本全国に現れたということは、それまでどこかで生み出してそれを僅かな時間で全国に解き放ったことになる……そんなことが人間に可能でしょうか』

『しかし』

『あなたばかりが質問を独占するわけにもまいりません……ほかの方どうぞ』

 

「大丈夫だ、彰君。我々はキミに無理を強いた。しかし、だからこそ我々はキミを全力でサポートしたいと思う。それが政治家の責任でもあり、このようなことに巻き込んでしまった我々の贖罪でもある」

「伯父さん……」

 

 総理が、伯父が、そして他にも様々な人が僕のことを思って庇ってくれる。それだけでも僕は胸の温まる思いを抱いた。

 

「とりあえず一度下りますね」

「よろしく頼む」

 

 そうして僕たちは会見もそこそこに、かつ官邸に向かう前に寄り道をすることにしたのだ。

 というのもそれは先程先生から来た一報が関係している。

 

『妻がポケモンを2匹ゲットしたのだが、なんだかポケストップに少し変化が出たらしい。恐らくだが1匹捕まるごとに何らかの変化が出てくる物と思われる。私の方でもポケストップが少し変わったのを確認した』

 

 こういった内容の連絡をつい先程もらったのだ。

 確かめるためにもポケストップがありそうなところに向かう。ついでにポケモンも捕まえられればいうことなしだ。

 高速は元々川沿いを走っていたので、下りたところも川沿い。ちょうど水タイプのポケモンとかもゲットしたかったから、ちょうどいい。

 そうこうしているうちに、川の河川敷と洪水時の被害に備えた調節池でできた自然公園の駐車場に車を止める。この公園は川沿いなのに、木々も生い茂っているエリアがある。つまりは、うまくいけば、川、(調整池)、森、草原といったところに縁のあるポケモンにお目にかかれる機会もあるかもしれないということである。

 そして前世と同じく当然ながら、こういうところにもポケストップはある。というよりもこういう大きなところはいくつもポケストップがあるので助かる。

 というのも……――

 

「そこそこ人がいますね」

 

 三枝さんの言葉通り、10人は居ずとも、5人程度の人がポケストップの周りに集まっている。朝からの騒ぎに、今やってる記者会見の影響が既に出ているということだろうか。

 

「仕方ありません。とりあえずまずは2人のトレーナー登録とモンスターボールを受け取りましょう」

「そうだな。よろしく頼むよ」

「お願いね」

 

 そうしてポケストップにて2人のモンスターボール等を手に入れた。

 

「先生は何を捕まえます?」

「そうだねぇ。中々悩むな」

「私はかわいい子がイイですね。あ、この子なんて素敵かも!」

 

 2人は楽しそうにタブレットを片手に相談している。たぶんあれって僕が描いてアップしてたサイトだよね。

 そして最後に僕もポケストップにアクセスする。んんっ、まあかっこいいこと言ってみたけど、ただ単にスマホ持ってポケストップに通しただけなんですが。

 

「おっ?」

「ラル?」

 

 僕の反応に、僕の頭に手を置いて右肩に乗っていたラルトスが首を傾げる(ちなみに彼女の奮闘により、定位置はそこに決まったらしい)。

 

 

 おめでとうございます!

 あなたは共に歩めるポケモンを1匹をゲットすることに成功しました!

 そのお祝いとしまして技マシンをランダムで1つ進呈します!

 またそれに伴いポケットモンスターの一部機能の更新を行いました!

 アプリポケットモンスターにてご確認ください!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 

 おめでとうございます!

 ポケモンを所持するポケモントレーナーの総人数が100人を超えました!

 そのお祝いとしまして商品の値下げを行います!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 

 おめでとうございます!

 ポケモンを所持するポケモントレーナーの総人数が1000人を超えました!

 そのお祝いとしまして商品の値下げ、並びに一部商品の制限の解除を行います!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 

 まるで履歴のような感じのホログラムが目の前に表示されている。

 

「ほう。まるでスイッチを入れたときに出るスマートフォンのお知らせみたいな感じだな」

「ですね」

 

 僕の声に反応してか脇から覗き込んでくる2人。三枝さんは記録用にとスマホでパシャリと記録を撮っている。

 それにしても制限の解除に値下げに技マシンが貰えると。中々に興味深い。

 

「とりあえず値下げと解除ってなんだ?」

 

 ということで、購入画面に移る。

 

「お、なんか全体的に必要歩数が下がってるな」

 

 『モンスターボール』が90歩、『キズぐすり』が45歩などとなっていて最低限必要そうなものは全体的に大凡10%ほど割り引かれている。『いいキズぐすり』とか『スーパーボール』なんかはそれでも800歩や1000歩とそれでも中々手が出しづらい歩数だ。

 そして制限解除、つまりは新規開放だが、これはどうやらきのみが該当するらしい。『オレンのみ』や『モモンのみ』とかが灰色や棒線表記から白色や歩数表示がなされて開放されている。歩数は『どくけし』などよりも少し高めに設定されていて、ここはゲームとの逆転現象が生じている。

 あれか。考えられるとすれば、ゲーム内では道具は人の手で作っていたから人件費等の面から道具の方が高かったが、ここではポケストップが自動で生成してくれるから(?)それは発生しない。おまけに道具は人間にしか使えないが、きのみはポケモンでも使えるからという理由もありそうな気もする。

 

「ふーむ、我々のときとは違うな」

「ですね。彰くんのログから判断してポケモンの数、ポケモンを所持するトレーナーとやらの数、制限されている機能を解放するには他にもいろいろな条件がありそうですね」

 

 覗き込んだり、スマホでパシャパシャ記録を撮る2人。とりあえずわかったことは、それらのために今後はポケモンのゲットとポケモントレーナー数の拡大が急務だろう。僕ももっとポケモンをゲットしようか。……世話が大変かもしれないけど。

 

 そうして今回は何も買わずにポケストップを閉じて、今度は技マシンの確認だ。アプリで確認しろとのことなので、自分のスマホで『ポケットモンスター』を起動する。すると“道具”の項目に『New』と表示されている。

 

「ん? 技マシン貰っただけでなんでこんな表記があるんだ?」

 

 ともかく“道具”の項目をタップする。するとそれの意味がようやく分かった。

 

「なるほど! カテゴリが分けられたのか!」

 

 初代では『じてんしゃ』や『かいふくのくすり』、『ハイパーボール』などアイテム類は全てごちゃ混ぜになって表示されていた。金銀以降からそれらのアイテムのカテゴリ分けがされていったのだが、それと同じことが起こったようである。

 新たに出来たのが『きのみ』と『技マシン』の項目らしく、『きのみ』には何も表示されていなかったが、『技マシン』には1つ、表示があった。

 

「ほうほうほう! いいなこれ。こんな初っぱなでこれか!」

 

 当たったのは『わざマシン24』のようだった。『わざマシン24』には『10まんボルト』という技が収録されている。『10まんボルト』は電気タイプの特殊技で威力命中共に高い水準にある技だ。ゲームならこの技マシン入手は早くても中盤以降なので、ポケモン1匹しかいない最序盤で手に入れたら無双も容易なほどのポテンシャルを秘めている。廃人施設なら電気タイプ最強技の『かみなり』よりは十中八九ほぼ確実にこちらが選ばれるだろう。

 そしてこの技はラルトスもしっかり覚えられるので、今ここで覚えさせようか。

 

「ラルトス、ちょっと降りて」

「ルラ」

 

 ラルトスも僕が何をしようとしたのか分かるのか、ピョンと僕の前に飛び降りてこちらを見やる。

 

「えーっと?」

 

 モンスターボールを出したときみたく、『技マシン24』の項目をタップ。すると、DVD -ROMのような物体がスマホを持つ方と反対の掌に収まった。

 その様子に三枝さんはタブレットを慌てて操作した後、それを僕に近づける。

 

「あの?」

「録音よ。念のためにね。で、彰くん、これはなに?」

「えーっと、これは技マシンと呼ばれる物です」

「ふむ、技マシン、かね」

 

 初めて聞くだろう言葉にやや首をひねる2人。技マシンについてはさっきのログで初めて見かけたような言葉だから、これは説明が必要か。

 

「ポケモンが技を覚えるのはある一定のレベルに上がったときなんです。レベルが上がったから常に覚える物ではないんです」

 

 ホントは進化したときなんかも覚えることがあるけど、これらは後に回しておこうか。進化について話してたら、本題から外れることになるし。

 

「一方、この技マシンというのは、使えばそういうのは一切関係無しに直ぐさま技を覚えさせることが出来るんです。その技が覚えさせようとしているポケモンに適合すればの話ですが」

 

 第5世代、いわゆるブラックホワイト以降はそれまでの使い切りではなく、無限使用可能なものに変わったので、それまでのように慎重にタイミングを見定めるのではなく、取ったらすぐ使うというのが主流になったと思う。これもアイテム欄に回数指定がなかったからたぶん無限タイプのやつだろう。

 

「んー。しかし、どう使うか。あ」

 

 何気なくヒョイッと裏返してみたら【使い方】というものが御丁寧に書かれていた。

 

「うわ、なんかアナログだな」

 

 ちなみに後から分かったが、“トレーナーパス”がきちんとそこら辺も解説付きで説明されていた。この言は後に撤回することになる。

 

「じゃあコレ通りにやってみますか」

 

 使い方は結構簡単。

 

  DVD-ROMをポケモンの頭上に(かざ)

 

 ただコレだけらしい(苦笑)。

 

「いやいや、お手軽すぎでしょ!」

「というよりも、DVDがポケモンの頭上に浮いてることが信じられんのだがね」

「しかもなんかキラキラ光ってますし」

 

 そう。ラルトスの頭上に独りでに浮かぶDVD-ROMから何だかキラキラとした光がラルトスの上にシャワーのように降り注いでいく。ラルトスはそれを上を見上げながら不思議そうに見やっていた。

 やがて、ひときわ大きな光が一筋ラルトスの脳天に突き刺さる。それによってそのシャワーは止むことになった。

 

「これで、いいのか?」

 

 不思議に思いながらも、技マシンを回収してそれをスマホに(かざ)す。アイテム類をしまうときはこの動作でOKなのだ。すると、一瞬の発光と共に手の中の技マシンは忽然と消え失せる。

 ちなみにスマホの画面にはきちんと『わざマシン24』と記載されている。ゲームでは世代が上がれば技名や威力命中なんかも表示されてたけど、ここではそれがない。ただ、今回みたくアップデートで何かしら変化が出てくるのかもしれないが。

 

「相変わらず不思議な現象だな。」

「ポケモンもそうですが、これも質量保存の法則を完璧に無視してますからね。仕組みが解明出来ればノーベル賞ものですよ」

「そして恐らく他にもブレイクスルーが起こるだろうな」

 

 そんなことを言っている2人はそこそこにラルトスの方はというと。

 

「ラル、ラ。ラル!」

 

 手を開いたり閉じたりした後、うんと頷いた。

 そして周囲の適当なところに狙いを定める。

 

「ル、ラル、ラー!」

 

 両手を思い切り開いて胸を張るとすさまじいまでの黄色い電撃がラルトスから立ち上った。それはそのまま、Uの字を描くようにして草の地面に突き刺さる。

 

「す、すごい……!」

 

 僕も含めて3人とも着弾地点に釘付けだった。そこはちょっとした落雷があったかのように焦げ付いている。その周囲には微かにまだ放電現象が走っており、微かに焦げ臭いのとオゾンのような臭気が漂っていた。

 

「……とんでもないですね」

「ああ、こりゃあポケモンを犯罪にでも使われたりでもしたら不味いぞ」

「早急な対策を講じる旨を加えておきましょう」

 

 ……できればそんなことは起きてほしくはないな。ポケモン好きとしてはそんなのあまりにも悲しいし。それにそれはポケモンのせいではなくて結局はトレーナーの責任なのだし……。

 

「ラル♪」

 

 ラルトスが胸を張ってドヤ顔を披露している間にそんな胸中にもなった僕たちだったが――

 

「クラ! ナックッ!」

 

 地面から這い出てきたソレによってそれらは強制的にお開きとなった。

 




ニックネームについてですが、「つけた方が良い」という意見が多かったのでつけることにします。
私はニックネームをつけるセンスが皆無だと思うので、アンケートを取りたいと思います。栄えある1匹目はラルトス。サーナイトでも通じるようなものをお願いします。案がありましたら、活動報告の「ニックネームのアンケート1」の方にコメントお願いします。
よろしくお願いします。

次回、おっさんの初ゲット回。おたのしみに?


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ポケモンゲットのお手伝い!

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

顔文字が一か所出ます。ご注意ください。


「えー!? なんでナックラーがこんなところに!?」

 

 ラルトスの『10まんボルト』によって一部焼け焦げたところから這い出てきたのは、ありじごくポケモンという分類の割にはカメのようにしか見えないポケモン、ナックラーだった。

 

「あ、そういえば」

 

 この世界、ポケストップがあるからポケGO要素的になにかあるのかもしれないと思ってスマホをナックラーに向けてみた。するとどうだろう。ポケGOでポケモンが出現したときの画面と似た感じの画面が表示されていたのだ! 大きく違うところといえば、CP(Combat Power)(戦闘力)の代わりにレベルが表示されているところか。どうやらあのナックラーはなんとレベル15のようである! ラルトスよりも高い!

 

「あれもポケモンかい?」

「そうですッ」

「んー、あ、これじゃないですか?」

 

 三枝さんがタブレットで操作して伯父さんに見せる。2人してタブレットとナックラーを交互に複数見やる。

 

「ほうほう。なるほどなるほど」

 

 感心するように声を上げているが、ナックラーはやる気満々のようだ。さっきの『10まんボルト』で怒ったのか? でも、キミ地面タイプで電気無効だよね?

 

「ラル!」

 

 ラルトスが前に躍り出る。サートシ君がアルセウスの映画で言ってた「売られたバトルは買うのが礼儀」というやつだろうか。……何となく売っちゃったのはこっちのような気もしないでもないけど。

 

「ナックル! ナックルー!」

 

 ナックルが70cmくらいあるその体でラルトスに迫ってくる。しかし、如何せん、ナックラーの素早さ種族値は驚きの10。素早さ種族値ランキングで下から数えた方が圧倒的に早いこの数値。レベル差はあれどこれでは技は当てられ――

 

「クラッ!」

「ラル!?」

「うそぉ!?」

 

 なんといきなりナックラーがラルトスの目の前に出現、そのままの勢いでラルトスに衝突した。

 

「あ! そうか! 『でんこうせっか』か!?」

 

 そういえばナックラーはタマゴ技に『でんこうせっか』がある。それを使ったのだろう。

 

「こりゃ油断出来ないな。ラルトス、大丈夫か!?」

「ラ、ラル!」

 

 ラルトスは首を振るっていた。思ったよりもダメージがあったのか。

 

「そういや、ナックラーって素早さ激遅のわりに攻撃が結構高かったよな」

 

 たしか攻撃種族値は100だったはずだ。タイプ不一致+威力もそんなに高くはない技とはいえ、レベルは上な上、ナックラーの攻撃の高さとラルトスの防御とHPの低さならいいダメージが入ったのかもしれない。

 

「よし! 気合い入れていかないとな!」

「ラル!」

 

 自分に言い聞かせたつもりがラルトスからは力強い返事が返ってきた。

 僕もラルトスもやる気十分! 野生とトレーナー、違いをとくと味わわせてやる。

 

「ラルトス、まずは『あやしいひかり』だ!」

「ラル!」

 

 そうして放った技はは再度同じこと(でんこうせっか)をしようとしてきたナックラーに見事に命中。

 

「ナック、ナックラ~」

 

 ナックラーは見事に混乱した。

 

「よっしゃ! そのまま『ねんりき』や『かげうち』で攻撃! 混乱が解けそうならもう一度『あやしいひかり』だ!」

「ラッル!」

 

 そうして混乱状態でフラフラなナックラーに向かってラルトスの攻撃技が飛んでいく。

 ターン制? 交互に技を出し合う? ここはゲームじゃないんでそんなのは関係ない。ついでにいえば野生戦と対人戦の違いは状態異常や補助技などを使った搦め手の有無だ。野生戦は、使ってくれば「そのターンたまたまダメージを受けなくて運がいいね」レベルの頻度でしかないが、対人戦ではほぼ全ポケモンにそれが搭載されていてそれらが頻繁に飛び交うのだ。そんな対人戦を「お前は、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」並に前世で(こな)してきたんだ。バトルがなくて腕が鈍っていようが、こんな程度は朝飯前であるわけで。

 

「い、意外にえげつないのね、彰くん」

「攻めるときは一気に行くのがコツですよ」

「ふむ、それはよくわかるよ。ところで彰君、物は相談なんだが、いいかね?」

 

 やや引き気味の三枝さんを余所に伯父さんがススッと前に出る。

 

「あのポケモン、私がほしいのだが構わないかね?」

 

 え? あのナックラーを? え、いやぁそりゃあ――

 

「あー、元々僕は捕まえる予定がなかったので、別に構いませんけど……」

「そうかそうか!」

 

 すると伯父さんのテンションがみるみる上がっていったのがわかった。

 

「あの、新居高先生?」

「三枝君、さっき色々と2人で見ていただろ? あの中で私はあのナックラーが一番最後に変化するという姿がいいと思ったのだよ」

 

 あー、フライゴンね。うん、まあジラーチの映画ではかっこよかったし、いいかもね。バトル性能はどうなのかわかんないけど。

 

「フライゴン目当てなら、ナックラーはいいかもですね。ただ、進化までは大変ですよ? そこまで育てきれますか?」

 

 ナックラーの進化レベルはレベル35、そこでビブラーバに進化する。そしてレベル45で目標のフライゴンに進化する。進化レベルが高い上に、いい技はナックラー時代に覚える、さらにはナックラーの素早さが低すぎるので、初心者にはなかなか厳しいポケモンだろうに思う。

 

「大丈夫だ。私は飼った生き物については常に彼らを看取ってきた。その生に恥じないだけの幸せを彼らに感じてもらえるように尽くしてきた。そういう自負があるのだよ」

 

 ……まあそれは知ってるんですが、果たして頑張れるのか。

 いや、これは僕も支援していくしかないか。

 

「わかりました。ではナックラーは伯父さんということで。モンスターボールを出してください」

「うむ。む、これか」

 

 そうして伯父さんの手に赤白のボールが収まった。

 

「伯父さん、僕がいいと言ったらそのモンスターボールを投げてください」

「了解だ」

 

 そうして伯父さんはいつでもボールを投げられる態勢を整える。

 一方ナックラーの方はラルトスの攻撃でかなりのダメージを負っているようで、混乱無しでももうフラフラだ。

 

「ラルトス、引いて! 伯父さん、いま!」

 

 その合図でラルトスはレベルアップの光に体が包み込まれながら、テレポートで僕の元に戻る。その代わりとして伯父さんの投げたモンスターボールが弧を描くようにしてナックラーの元に飛んでいく。

 ナックラーはそれを避ける素振りを見せず、ボールがナックラーに当たった。

 赤い光と共にナックラーがモンスターボールに吸い込まれる。

 

「よし!」

「先生やりましたね!」

「まだです! まだ動かないで!」

 

 聞けば官房長官は一度このときにノーコンしたらしいので、そうならなかったのは良かった。ただ、ボールに入ったことだけで喜びを露わにした2人には悪いが、まだ全然安心は出来ない。

 そのまま雑草生い茂る地面に落下したモンスターボールはボールスイッチを赤く点灯させながらも小刻みに揺れ続けている。

 手で制された2人は僕の雰囲気に当てられたのか、固唾を呑むようにして揺れ続けるモンスターボールを見守る。

 

 一度。

 

「まだです」

 

 二度。

 

「まだ」

 

 三度。

 

 そして四度目の揺らぎが始まろうとしたときに、ボールスイッチの点灯が収まった。同時に揺らぎも起こらない。

 

「……よし、OKです!」

 

 伯父さんはそれを聞いて走ってモンスターボールに駆け寄るとそれを拾い上げた。

 

「いやー! 緊張したけど実にいいな! ポケモンの捕獲というのは!」

「伯父さん、ゲットです」

「うむ! ゲットだったな!」

「ついでに、「○○、ゲットだぜ!」って叫ぶと気持ちいいですよ?」

「うむ! たしかナックラーと言ったかな?」

「そうです」

「では

 

     ナックラー  ゲットだぜ!Θ(^O^)v

 

                              」

 

 ボールを突きだしてピースサインまで決める伯父さんの顔には眩しいばかりの笑顔をのぞかせていた。やっぱ、年齢とか関係なくポケモンっていい物だと思うよ。ゲームやアニメの世界で大人もポケモンに夢中になっているのが分かる気がするよ。

 

 そんなことを思っていたら、肩をチョンチョンと叩かれる感触を覚える。ラルトスかと思ったがラルトスは僕の足元から頭の上に移動していたので、違う。伯父さんは今あそこでルンルン気分ではしゃいでいる。

 とすると――

 

「んーん♪」

 

 振り返ると超ニッコニッコな笑みを浮かべて三枝さんが佇んでいた。てか距離が20cmも離れてなくて超近いんですけど。

 

「みーこーがーみー、くん?♪ らーるーとーすー、ちゃん?♪」

 

 さらに一歩近づかれて距離が詰まる。一歩下がろうとしたら、いつの間にか両腕をつかまれていて下がるに下がれない。てかなんか知んないけど力強いよ、力! 超痛いんだけどいやマジで!

 

「わ・た・し・も、ポケモン、ほしい、なぁ~あ?」

 

 び、美人に凄まれては嫌とはいえませんなあ……(震え声)

 

「よ、よろこんで……」

「ラ、ラルラ……」

 

 ……元々協力するつもりだったけど、改めて僕とラルトスは彼女のポケモンゲットに協力することを誓わされた。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 ナックラーの回復を終えて次のポケモンを探しに行こうとする僕たち。

 

「私たち、意外に注目の的だったみたいですね」

 

 三枝さんが言うのも、僕たちのバトルは周囲の人たちに結構見られていたらしい。ナックラーゲット後、僕たちに声を掛けてきた人たち、とりわけ伯父さんが国会議員だと知って声を掛けてきた人たちから話を聞くには、ポケモンを見つけたはいいが、モンスターボールを投げても弾かれてしまい、ゲットが出来なかったという。

 

「ああ、それはですね」

 

 ポケモンは弱らせてからゲットするという僕が事前にレクチャーしていた話を、さも知っていたかのごとく周りに話し聞かせていたりしていた。そんな様子を「議員ってこういう強かな部分がやっぱり必要だよなぁ」なんて思ったりしながら眺めていたりしたけども。

 ちなみに伯父さんはラルトスがボールから出ているのを真似してみようとしたが、ナックラーは歩くのが遅かった。「じゃあ抱えてみようか」と言って抱えようとして、持ち上げることは出来ても、フラフラで持ち歩くことは到底無理そうな感じであった。結局泣く泣くモンスターボールにしまっていたりした。

 まあ、ナックラーって15kgぐらいあるから50をとっくに超えた伯父さんの年齢くらいだと厳しいと思うんだ。……やり手の国会議員のハズだったんだけど何だか妙に子供っぽいところが出始めている気がする。

 そんなこんなで有権者へのアピールを振りまきつつも回復も終えてポケモン探しを再開する僕たち。

 

「そういえばさっきはナックラーがいることに不思議がったようだが」

 

 ゲットしてみたいなぁというポケモンを伯父さん以外の2人で物色しながら辺りを見回していたところで、伯父さんが問い掛けてきた。

 

「ああ、ナックラーは本来砂漠みたいな乾燥した地域にしかいないポケモンなんです。鳥取砂丘とかならまだ分かる感じがしますけど、こんな東京の、雑草生い茂る広場で姿を現すようなポケモンじゃないんですよ。しかもここ、一応川沿いですし」

 

 ゲームではホワイトフォレストを除いて砂嵐吹き荒れるエリアや砂漠エリアにしか生息していないポケモンだった。それがこんな水に近いところにいるのが不思議でならない。

 ……あれか。ポケモンGOだと「いや水辺関係ないじゃん」ってところに水系ポケモンがいたりしたこともあったから、そこまでは節操がなくても、ある程度元の生息地とは違うようなところでも出てくるポケモンがいるということだろうか。

 

 

「ねえ、あれ!」

 

 三枝さんが声を張り上げた先に見えるもの。

 

「うわ! ありゃあマズいかも!」

 

 辺りには「ブブブブブブブブ」と不快気な翅音が響き渡る。その正体はなんてことはない。ポケモンだ。空を飛ぶはどくばちポケモンのスピアー。だが、違うのはここから。今朝僕が倒した単独ではなく、集団。1mを超える見た目スズメバチの群れ、それが10匹以上、ある一角を中心に飛んでいるのだ。

 僕たちはその一角を見やった。

 

「あれは大変だぞ!」

 

 スピアーが囲んでいる一角、そこには大小3匹のポケモンが佇んでいた。彼らはあのスピアーの大群と相対しているようだ。

 この状況は伯父さんの言うとおりで、3対10以上など多勢に無勢もいいところだ。しかもマズいことに、今そのうち1匹のポケモンがグッタリと体を横たえ始めた。あれはスピアーのことだから毒状態かあるいは戦闘不能のどちらかか。

 

「彼らを助けましょう!」

 

 ポケモンとはいえ自然の摂理には逆らえないとアニメではあった。自然の摂理とは弱肉強食。ここで僕たちが介入するのは間違いかもしれない。でも、こんな、こんな!

 

「そうしよう!」

「彰君、私はどうすればいい!?」

 

 伯父さんはモンスターボールを取り出し、三枝さんはポケモンを持ってないので、補助をするつもりのようだ。伯父さんはもちろんのこと、三枝さんにもやってもらうことはたくさんある。

 

「伯父さん、ナックラーの技確認したいからスマホ出して! 三枝さんは今から僕が出すアイテムを渡すから!」

 

 そうして僕は伯父からスマホを引ったくるようにして奪い、その間に僕のスマホから出した回復アイテムを三枝さんに投げ渡した。

 

「――……よし、わかった!」

 

 僕はスマホをザッと眺めるとナックラーの今覚えている技、そして一応さっきバトルをしたので、ラルトスの方も頭に叩き込んだ。正直訳分からない不思議なことが起きているが、この際それは後にしよう。

 

「作戦を立てます! 指揮は僕が執るということでいいですね!?」

「任せる!」

「了解!」

「ラル!」

 

 2人の力強い返事を背にザッとの流れを思い浮かべると、それを指示して僕たちはあのバトルの中に駆けだしていった。




Q.なんでスピアーって敵役チョイスが多いん?
A.それはねポケモンアニメの伝統なんだよ

スピアーのファンの皆さん、申し訳ありません。

あと50代半ばの中年おっさんのゲットシーンは楽しんで頂けましたか?(ゲス顔)

そしてナックラーと瑞樹総理のリーシャン(チリーン)のニックネームも、よろしければお願いします。
例によって活動報告の方へ。


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群れと群れのバトル

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

※熱中症による体調不良でダウンしてまして推敲が十分でなかったようです
ポッチャマの記述は訂正はさせていただきましたが、なにかまた不備がありましたら感想や誤字報告等でお願いします
感想等でご指摘くださった皆さま、ありがとうございます



 さて、群れと群れのバトルへの乱入戦。当然奇襲になるので、それを存分に活用させてもらう。

 

「ラルトス、『ミストフィールド』!」

「ナックラー、『どろかけ』だ! あの蜂の顔面に向かって連射!」

 

 そうして辺りにピンクの霧が立ち込め、さらにナックラーの大口から発射された泥の塊がスピアーを襲う。

 

「スピ!?」

「スッピ!?」

 

 スピアーたちは突然の奇襲に訳も分からず、されるがままの状態となった。

 そのまま僕たちはスピアーと相対していたポケモンたちの前に躍り出る。

 

「手を貸すよ!」

 

 突然のことにこちら側も惚けていたが、敵対していたスピアーたちへの攻撃。

 

「大丈夫!? いま治療するからね!」

 

 倒れているポケモンへの手当て。それで彼らはこちらを味方と判別してくれたようだった。

 

「モグッ!」

「カゲ!」

 

 後ろで倒れているポケモンほどではないけど傷ついている様子の2匹には元気が宿ったように思えた。

 

「よおし! みんなでここを乗り切ろう!」

「モッグウ!」

「カゲッ!」

「ラルッ!」

 

 ここで4人の息がぴったりと合う。

 

「我々も頑張ろうじゃないか、ナックラー」

「ナックナック!」

 

 伯父さんの言葉にナックラーが泥を吐きかけながら答える。『どろかけ』はスピアー全員に決まっていた。

 ミストフィールドの効果で状態異常を防げて、相手の命中が著しく落ちた。

 

「よっし! まずは第一段階成功! 続いて第二段階! 伯父さん!」

「任せなさい! ナックラー、『いわなだれ』だ!」

「ナック! ナックナックナックーーーー!!」

 

 続けては恐怖の効果抜群範囲技タイム。

 スピアーたちの頭上に岩の塊が現れるとそれらが豪雨のごとくスピアーたちに降り注ぐ。

 

「よし! ラルトスは『ねんりき』!」

 

 つづけてラルトスの『ねんりき』によるスピアーのビリヤード大会。ソケットはないけど適当に動かしてぶつけまくればいいという至って簡単な競技です(笑)。そして他の2匹のポケモンも攻撃に加わる。

 それを見て、僕は後ろの倒れているポケモンを見やった。

 

「どうですか、三枝さん!」

「うん! 何とか大丈夫そうよ! 彰くんの薬が効いたわ!」

 

 見れば、三枝さんの身長を軽く超える大きなポケモンが身体を起こし、甲羅がついた首長竜のような優美な姿を見せつける。

 

「ファゥア!」

 

 そのポケモンは三枝さんを気に入ったのか、そのポケモンはかわいらしい角を持つ頭をグリグリと三枝さんに押しつけていた。

 

「こーら、あ、ちょっと」

「ファゥア!」

「そのポケモン、ラプラスっていうんですよ。すごく頭のいい子で人間の言葉も軽く理解出来るようですし、そのラプラスが三枝さんに感謝の意を示しているんじゃないですか?」

「そっかぁ。そうなの、ラプラス?」

「ファァゥ」

 

 ラプラスは大きく頷いて見せた。それに三枝さんは嬉しそうな様子を見せる。

 

「カゲ!」

「モーゥリュ!」

 

 すると、最初の2匹のポケモンがラプラスたちの様子を見ていた。

 

「ヒトカゲ」

「カゲ」

 

 とかげポケモンのヒトカゲ。

 

「モグリュー」

「モッグ」

 

 もぐらポケモンのモグリュー。

 ヒトカゲは御三家と呼ばれる、ゲームスタート時に最初のポケモンとして貰うことが出来るポケモンで、モグリューは基本的にはイッシュ地方に生息するやや特殊なレアポケモン。

 

「なあお前たち」

「カゲ?」

「モグ?」

 

 一時的に攻撃の手を止めてこちらを見上げる2匹。

 

「僕は君たちを仲間にしたいんだ。どうすれば仲間になってくれる?」

 

 別にこんなことを聞かなくてもバトルしてモンスターボールを投げればゲットは出来る。でも、ポケモンが現実に現れた世界。一度僕はやってみたかったことがあった。

 

「カゲ! カゲポゥ!」

「モッグ! モググリュー!」

 

 2匹はスピアーたちを指差してそして振り払った。

 

「スピアーたちを撃退したら仲間になってくれる?」

 

 それに2匹はうんと頷き、そして違うと首を振った。

 

「カゲ! カゲゲカゲポゥ!」

「グモ! モッグリュー!」

 

 モグリューはうんと腕を広げて回してみせ、ヒトカゲはシャドーボクシングみたいなことをした後、片腕を強く突き上げた。

 

 …………やべぇ。何が言いたいのか分かんねぇ……。

 あー、どうするか。

 ここはもうノリと勢いとテキトーに任すか(オイ

 

「えーと、僕の仲間になってくれたら滅多にお目にかかれないバトルを見せてあげるよ。協力してくれるか?」

「カゲ!? カゲ! カゲ!」

「モグモッグモッグ!」

 

 うわーテキトーぶっこいちゃったよ。どうしよ。

 ええい、ままよ!

 

「よっしゃ! いくぞ2人とも!」

「カゲ!」

「モグ!」

「まずはヒトカゲ、『りゅうのまい』! モグリューは相手を阻害するよ! 『どろかけ』だ!」

「カゲ!?」

「グリュー!?」

 

 あれ? 2人とも首を傾げている。

 

「ひょっとして出来ないか?」

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 2匹はこの人間は何を言っているのだろうと思った。

 相手にダメージを与えるには攻撃を仕掛けるしかない。だからモグリューへの指示は分かる。しかし、ヒトカゲへの指示は分からなかった。

 

「ひょっとして出来ないか?」

 

 その人間はそう問い掛けてきた。

 

――いや、出来る

 

 その意思を表すために、2人は首を横に振って技を発動させた。

 

「よしよし」

 

 その人間はウンウンと満足げに頷いた。

 

――滅多にお目にかかれないバトルを見せてくれる。そう言ったのは間違いだったのか。

 

 2匹は鎌首を(もた)げる。

 だが、そうこうしているうちに相手のスピアーたちの動きが鈍ってきているように思えた。

 

――はて、何か特別なことがあったのか。

 

 2人は内心首を傾げた。『いわなだれ』や『ねんりき』、『どろかけ』。特に何ら相手を阻害する技は使ってはいない――いや、待てよ? なんで『どろかけ』は相手を阻害する――

 

「やばっ!」

 

 その人間の声に反応して前を見やれば前線のラルトスに向かって1体のスピアーが狙いを定めて突撃をかましているのが見える。

 

「ラルトス、サイドチェンジ! ヒトカゲと入れ替われ!」

「ラル!」

「カゲッポゥ!?」

 

――この人間は何を言っている!?

 

 そんな思いにヒトカゲは駆られた。ヒトカゲとラルトスの距離、それは数秒あれば走って入れ替わることも可能だ。だけど、そんなことをしている時間はない!

 そんなこと考えが頭を()ぎると――

 

――あれ? ここは?

 

 自分が今までいたところと違う景色が目に映る。そして――

 

――!?

 

 いきなりスピアーの姿が目に飛び込んできた。

 

――これは!? まさか!?

 

 『入れ替われ!』

 あの人間は確かにそういった。そしてどんな手を使ったのか知らないが確かに自分とラルトスの位置が入れ替わった、のだろう。後ろを見ていないが反射的にそう感じ取った。

 

「ヒトカゲ、そのまま『ひのこ』!」

 

 相棒のモグリューの驚く声、そして眼前のスピアーの驚愕を前にヒトカゲは反射的にあの人間の指示通りの技を撃った。

 

――身体がいつもより早く動ける!?

 

 技の出が常よりも早いその様にヒトカゲは体感的にそう判断した。

 そして突如現れたヒトカゲに対してスピアーの方は驚愕から何も対処ができずに、効果抜群である『ひのこ』の攻撃を受ける。

 カウンター気味に入った一撃でスピアーは力を失い、墜落していく。その様をヒトカゲは地面に着地するまで見届けた。

 

「スッピー!」

「くるぞ、ヒトカゲ! 避けろ!」

 

 すると今度はまた別のスピアーが自身に向かって飛んでくるのが目に入った。

 復讐に駆られるスピアーをヒトカゲはその場を上に飛んで宙返り。直後、スピアーの両腕の針がヒトカゲのいた地面に突き刺さった。

 

――なんて遅い

 

 ヒトカゲにはスピアーのあまりの遅さにいったいどうしたことかと首を捻っていた。それほどヒトカゲには余裕があった。

 

「そのまま勢いをつけてひっかくだ!」

 

 それを聞いてその通りに身体を動かす。

 

――ついでだから、もう少しやってみよう。

 

 ヒトカゲは冷静に今の自分に出来そうなことを試してみた。

 いつもより少し身体を反らす。

 いつもより少し左腕を高く上げる。

 いつもより少し手に力を入れて。

 いつもより少し爪を立てて。

 

「右腕を引くと同時に行け!」

 

 反射的にそれに従って繰り出す攻撃。爪を立てていた方と反対の腕を引いたと同時に『ひっかく』攻撃が繰り出される。

 

 それはヒトカゲにも予想外な結果をもたらした。

 

「スッ……ピ」

 

 なんと僅か一撃。たったの一撃でスピアーがダウンしたのだ。

 

――これは……――!

 

 そのときヒトカゲは理解した。いや、すべてを理解したわけではないが理解した。

 

――この人間の言うことに間違いなんかなかった!!

 

 ヒトカゲの心に迷いはなかった。

 あるのは将来自分がどれだけ強くなれるのか。

 その道筋が明るい光明として見えていたのだ。

 

「さあ、ラプラス! あなたも頑張っちゃって!」

「フォォォァァァ!」

 

 そしてここで戦線離脱していたラプラスの参戦。

 

 この勝負、結果はすでに火を見るよりも明らかなのは確かであった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 スピアーを追い払うことに成功した僕たち(なお本日2回目)。ラルトスはさすがに疲れたのかモンスターボールに戻って休憩している。

 そして、とりあえずはこれで3匹と話ができる環境が整った。

 

「なあ、お前たち、僕と一緒に来ないか?」

 

 ほかの2人は僕のすることを見守ってくれている(三枝さんはカメラ片手だけど)。

 

「カゲッ!」

「モリュー!」

「ファゥア!」

 

 すると3匹は喜んで頷いてくれた。そのまま3匹は僕たちに駆け出してきた。

 

「カゲッ♪」

「モッグ♪」

 

 この2匹は僕に。

 

「ファゥア!」

 

 ラプラスは三枝さんに。

 

「……私のところには来てくれないのかね……?」

 

 ……伯父さんはまずナックラー育てることに専念してください(汗)。

 

「彰くん、これって?」

 

 三枝さんはラプラスに頬擦りされて、困ったようにこちらを見てくる。

 それに僕は万感の思いで以て答えた。

 

「ポケモンゲットにはいろいろあります。バトルを通してゲットするというのがメジャーです。しかし――」

 

 僕はモンスターボールを2つ取り出すと、それらを両手に持ってコツン、コツンと2匹に当てた。

 すると行われるは先程ナックラーをゲットしたときのような光景。ボールに吸い込まれた2匹と揺れるモンスターボール。モンスターボールは一度揺れただけでボールスイッチの点灯が消えて、揺れも治まる。

 地面に落ちた新しい仲間が入ったそれらを、ずっしりとした重みを感じながら拾い上げた。

 

「こんなふうにポケモンと誼を交わすことでゲットできる場合もあるんです」

 

 アニメでもよく取り上げられていたゲット方法。

 

 

「これ、友情ゲット、っていうんですよ」

 

 

 ゲームではできなかった憧れの方法。それを実践できたことに僕は改めてここがゲームではなく現実であり、現実にポケモンが現れたことを再認識するのであった。




モグリューは特殊なレアポケとしましたが、洞窟内の特殊エフェクト(砂煙)でしかエンカウント出来ないので、そう表記してあります。

【NGシーン1】

「よしよし」

 2匹は僕の期待通り、技を発動させる。
 ヒトカゲの『りゅうのまい』で攻撃と素早さが上がり、範囲攻撃であるポッチャマの『こごえるかぜ』の影響で動き回ろうとするスピアーのスピードが下がっていくのが分かった。
 だが、その中の1匹がラルトスに狙いを定めているのが目に見えた。

「やばっ! ラルトス、サイドチェンジ! ヒトカゲと入れ替われ!」」
「ラル!」
「カゲッポゥ!?」

 ヒトカゲとラルトス。2匹の対称的な声が聞こえてくる。ヒトカゲの「それはムリだろ!?」的なやつは、ラルトスならやれるだろうし、ヒトカゲだって土壇場なら腹くくってやってくれるだろうと思う。
 そしてラルトスの姿が一瞬ぶれる。同時にヒトカゲもそれは同様だった。そしてヒトカゲのいた位置にラルトス、ラルトスのいた位置にヒトカゲという具合に、サイドチェンジは無事成功! 2匹の位置がそっくり入れ替わった。

「ポポチャ!?」

 ポッチャマの驚くような声が聞こえるがそれは相手方のスピアーも同じだったようだ。

「カゲ! カー、ゲェェェ!」

 ヒトカゲも驚いていたようだが、予め言われていたためか立ち直りは早く、そのまま効果抜群の『ひのこ』を見事スピアーに命中させた。
 そのスピアーは墜落したが、今度は別のスピアーがまたヒトカゲに向かって飛んでくる。

「くるぞ、ヒトカゲ! 避けろ!」
「カゲッ! カゲッ?」

 ヒトカゲはスピアーの攻撃をあっさりと回避する。まあ相手の素早さは下がって自分の素早さは上がっているのだから当然だろうと思う。

「そのままひっかくだ!」
「カゲ? カ、カゲッ!」

 自分の動きに驚いていたようなヒトカゲは慌てて今の指示を聞こうとする。
 ヒトカゲは振り上げた爪を振り下ろした。


→なんか面白くないので何となく却下。最初はポッチャマの予定でしたが故あって変更。
 ちなみに推敲してないので雑です。



【NGシーン2】

「よっし! まずは第一段階成功! 続いて第二段階! 伯父さん!」
「任せなさい! ナックラー、『じわれ』だ!」
「ナック! ナックナックナックーーーー!!」

 続けては恐怖の一撃必殺技タイム。
 地面に亀裂が入って割れるようなじわれエフェクトが出るとそこに何匹かのスピアーが巻き込まれていった。


→これやっちゃうとマジヤバい。
 具体的に亀裂に水が流れ込んで川の水位と折角固めた土手の地盤がヤバスw
 堤防にもおそらく亀裂が入って周辺大迷惑&川増水時の決壊確率100%ww
 しまいにゃ国交省ガチギレ&内閣崩壊www
 という感じで後始末が非常に厄介なので没にしました。



次回、廃人には非常に縁のあるものが登場します。ポケGOでも課金した人はいるのではないかと。ちなみに私はDLCは購入するけど課金とかはしない主義です。


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ポケモンのタマゴ

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。



「さって、そういうことなら私もゲットしようかな」

 

 そうして三枝さんはスマホをいじってモンスターボールを取り出した。

 

「フォァァゥ」

 

 ただ、ラプラスの方は三枝さんの服の肩の部分の端を加えるとどこか引っ張るような合図をしている。

 

「え、え? ラプラス、なに?」

「ひょっとして付いて来てほしいと言ってるんじゃないかな」

 

 伯父さんの言にコクリと頷いたラプラス。

 ならばということでラプラスを先頭にほんの少々歩く。

 するとラプラスは草むらに頭を突っ込み何やらごそごそとやっている。

 やがて、ラプラスはそれを止めて、頭を出した。そこには先程まではなかったあるものが口に銜えられている。赤や青の三角や四角模様が描かれた30~40㎝くらいの楕円形のようなシロモノ――

 

「って、まさかそれ、タマゴか!?」

 

 思わぬものの登場に僕は驚きから声を張り上げてしまった。

 

「タマゴ?」

「いったいなん、まさか?」

「ええ、ええ! あれ、ポケモンのタマゴです! だよなッ、ラプラス? それにそのタマゴって君のか?」

 

 その言葉にラプラスはそれを口に銜えたまま、タマゴを地面に落下させないためにか、それまでと違って軽く首を縦に揺らしてその後横に振った。ということはラプラスが親ではなく、どこかにあったヤツをこのラプラスが世話していたということなんだろうか。

 

「まさか、ポケモンって卵生だったの?」

「ううむ。哺乳類みたいなものかと思っていたので意外だな」

 

 あ、そこ疑問に思うんだ。

 正直ポケモンがタマゴ産むのなんか当たり前すぎる感覚で、一切疑問に思わなかったわ。

 

「ポケモンのタマゴ、これも貴重ね」

 

 三枝さんはボールをポケットにしまって代わりにスマホでパシャパシャと画像を撮っている。

 

「フォァァ」

 

 ラプラスは三枝さんに歩み寄るとそれを突き出すような格好で保持する。

 

「え? ひょっとしてこれ、私に?」

 

 するとラプラスはコクリと頷いた。

 

「……そのスマートフォンを貸したまえ。記録は私が撮ろう」

「そうですね。ラプラスが受け取ってほしいと言っているわけですから、三枝さんが受け取るのがいいと思います」

「でも……」

 

 三枝さんは視線をラプラス、タマゴ、そして僕たちにやっていまだに逡巡している。

 

「おそらくですが、スピアーはこのタマゴを狙ってたんじゃないかと思います。で、ラプラスがこのタマゴを守っていた。そしてヒトカゲたちがラプラス側に加勢した」

 

 あるいは、最初からヒトカゲやモグリューがラプラス側だったのかもしれないが、大まかな感じでは間違ってはいないはずだ。実際ラプラスを見やれば先程と同様軽く首肯している。

 

「三枝さんがラプラスをゲットすればこのタマゴの守り手が居なくなります。ラプラスはそれを嫌っているのでしょう」

「それにポケモンをタマゴから孵すというのもなかなか貴重な資料になるだろう。臭い話で済まないが、是非に受けるべきだ」

「そうですよ。ポケモンのタマゴが今後も出てくることは大いにあり得ますから」

 

 むしろ廃人にしてみれば多々産ませるなんて、人がトイレに通うことと同意義なほど当たり前な事象であった。まあ、さすがにここでそんなことをやるつもりはないが、タマゴグループが合致したオスとメス、あるいはメタモンがいればタマゴが産まれることはもはや必然だ。タマゴを現実で孵すにはどういうことをすればいいのか、その貴重なサンプルとなるだろう。

 

「僕も少しはお役に立てるかもしれませんし、どうですか? タマゴの世話、やってみませんか?」

 

 とりあえず、ポケモンを連れ歩く以外には人間の胎教みたいな感じでいいか。たしかアニメでもそれと似たようなことをやっていた気もするし。

 

「わかりました。不肖、この三枝幸香、全力で頑張ります!」

 

 こうして三枝さんはラプラスゲット、そして併せてタマゴもゲットという事態となった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 全員がポケモンをゲットしたし、もうそろそろ戻ろうかということで、ポケモン探しを切り上げて一度ポケストップに寄ることにした僕たち。ポケモンのゲット数でポケストップのアップデートが行われるというのは条件として確立されたようなものなので、一人ずつ記録を取りながら行っていくことにした。

 

「あら、これは」

 

 2人目、三枝さんのときに何やら変わったログが現れた。

 

 おめでとうございます!

 あなたは初めてポケモンのタマゴをゲットしました!

 そのお祝いとしましてタマゴ孵化装置を進呈します!

 アプリポケットモンスターにてご確認ください!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください

 

 ほうほう! 孵化装置か! ポケモンGOでもあったやつみたいだな。

 

「孵化器いいですね。すぐ出してもらえます?」

「そうね。あ、ちょっとタマゴ持っててもらえる?」

「あ、了解です」

 

 そうして三枝さんはいったんポケストップを閉じてタマゴを僕に預けると、スマホを弄りだす。すると次には彼女の腕の中にポケGOで見慣れたあの孵化装置が現れた。尤も、きちんと自立できるように土台がしっかりしているところに少し違いが出ているが。

 

「おわっ、っと!」

 

 いきなり大きなものが現れたので、落としそうになったところを慌てて抱え直す三枝さん。

 

「あ、あんまり重くないのね」

「それは他の女性でもそうですかね?」

「そうなんじゃないかしら。あと彰くん、今の質問、どーゆー意味、なのかなー? かなー?」

「あはははー」

 

 うん、どうやら重さとしても女性でも問題なく持てるものらしい。

 

「彰君、三枝くんにあまり迂闊な物言いをしてはダメだぞ? もちろん他の女性に対してもだ」

 

 タマゴをゲットしてから記録係が変わっている伯父さんに小声で注意されてしまった。しかし、小声で言ってくるなんて伯父さんも彼女に対して何か身に覚えはあるのだろうか。

 

「お2人ともなにか?」

 

 うっわ、花が咲き誇ったかのような満面の笑みがチョー素敵な笑顔ですね!

 

「いえいえ、なあんにも」

「ですです。あ、その孵化器にタマゴを入れましょう」

「……まあいいでしょう。で、どこを開ければいいのかしら?」

 

 ……よし!

 

 で、三枝さんは孵化器の上蓋を取ろうと回したり引っ張ったりしているけど、ビクともせず。

 

「うーん、あ、ひょっとしてこう?」

 

 今度は上蓋についている大きなボタンのようなものポチッと押してみた。すると、ガラス側面と上蓋がセットでわずかに動いたのが見えた。三枝さんは要領を得たと言わんばかりに側面ごと取り外す。孵化器は土台とそれの2つのパーツに分かれた。

 

「これ、上蓋とセットのようですね」

 

 土台は置いておいて、もう一方を持ち上げたり透かして見たりと観察している。

 

「じゃあ、このタマゴいれますね」

「ええ、お願い」

 

 そうして僕は当たり前だけど、タマゴの頭部を上にして丁寧に孵化器の土台の方にタマゴをのせる。土台の方に敷かれている何かがほのかに暖かかったのが「ああ、これが孵化器なのか」と実感が持てた。

 そして三枝さんが手にしていた上のパーツを土台にかぶせる。

 

「んー?」

 

 すると、カチッという音が孵化器の方から鳴った。三枝さんが孵化器の蓋を持ってみると、土台までしっかりと付いてきて全体が持ち上がる。

 

「今のは?」

「被せた後ちょっと押しただけよ」

 

 なるほど。案外簡単なシロモノであるらしい。

 

「それで? 孵化装置とやらはどのようなものかはわかったが、一体どうやってこのタマゴを孵化させるのかね?」

 

 たしかに伯父さんの言う通り。あとはどうやって孵化させるかなんだけど。

 アニメなら孵化器に入れてしばらく様子見したりでも孵ることはあるみたいだが、大抵はポケモンを連れて持ち歩くことでの孵化になる。孵化歩数なんて言葉があったぐらいだしね。

 

「一応確認してみましょうか。三枝さん、アプリ起動して“トレーナーパス”って項目を開いてください。そこが取説にもなってるらしいんで、確認できるんじゃないかと」

 

 ということで、探してもらうことに。そこは初めて開いたせいか、『New』のマークがやたらと表示されていたらしいが、ようやっとお目当てのものを見つけることに成功する。

 

 ~タマゴの孵化に関して~

 タマゴは、あなたがタマゴと共に元気なポケモンを連れ歩いているとき、その元気なポケモンからパワーをもらうことで孵化します。

 たくさん歩いて元気なポケモンを孵化させましょう。

 また特性『ほのおのからだ』『マグマのよろい』を持つポケモンと一緒に歩くといいことがあります。

 

 

「えー……」

 

 この解説初めて見たんだけどさ。

 いや、動画付きの解説があるのは結構なんだよ?

 でも、どうしてポケモンがSD絵で人間がヨダ絵なのか。そして頭とおんなじぐらいの大きさのタマゴ片手で抱えて、サイホーンに括りつけられたリードに引っ張られるというアニメーションはどうにかならなかったのか。これ、『タマゴと共に元気なポケモンを連れ歩く』を表現しているんだろうけど、もうちょい何とかならなかったのかねぇ。

 

 ま、まあそれは一先ず置いておくか。

 これはあれだな。説明文からすれば、孵化歩数なのか距離なのかはさておき、ゲームと同じ感じと見て間違いないだろう。どちらかといえばゲームよりなのか? というのも特性『ほのおのからだ』『マグマのよろい』が関係するのはゲームのことであり、ゲームではこれらの特性によって孵化歩数が半減するという効果があったからだ。尤も、ポケGOとゲームが程よくミックスしている有様なので検証の必要性も十分にあるだろうが。

 

「なるほど、常に携帯するのか」

「えぇ、これ持ち歩くのは難儀ですよぉ」

「仕方ないだろう。諦めなさい」

 

 うん。そこは諦めてもらうしかないね。しかし、ゲーム内とかだったらどうやっていたのか。ここと同じだったとしたら自転車に5個孵化器括りつけて走ってたりとかしたのだろうか。……ちょっとシュール(笑)。

 

「とりあえずこれでタマゴの問題も一通り目途が立ったか」

「ですね。あ、でもこれ何が孵るんだろ? 彰くんわかる?」

「いやいや、親がわからんのに何が生まれるかなんてわかるわけがないだろう」

 

 いやまあ伯父さんの言うことの方が正しいっちゃ正しい。解説動画のタマゴは、ゲームやポケGOで見たのと同様、薄い黄色地に薄い緑の丸い模様が描かれていたものだったので、たぶんこれがタマゴのデフォルトなんだろう。

 それでいま三枝さんの手元にあるタマゴ。その模様だけど、これは先の模様ではない。あるポケモンと同じ模様のタマゴである。

 だから、こと今回に限っていえば『何が生まれてくるかわからない』ということの例外に当たるだろうなと。

 

「そうですね。おそらくって言葉をつけておきますが、トゲピーじゃないですかね」

「「え?」」

 

 2人はまさかわからないだろうという態で話していたようで、僕のその言及に思わず2人して互いを見合った後、こちらを見据えてきた。

 

「わかるのか?」

「ホントに?」

「ええ。でも、今回だけの特別ですよ」

 

 そうして僕は自分のスマホで絵をアップしたサイトを呼び出して見せる。

 

「ほら、このポケモンです。タマゴの柄とかソックリでしょう?」

 

 2人にグイッと見せる。2人はそれを覗き込み、そして三枝さんの手元を覗き込む。

 

「本当だ」

「え、この子が生まれるの?」

「おそらくですがね。ちなみに最終進化形はこの子ですよ」

 

 そうしてまたスマホを操作、今度はトゲキッスのページを見せる。

 

「個人的には結構かわいい上に強い。そしてフライゴン同様、空も飛べる。水上を移動できるラプラスと併せて、三枝さんのポケモンは相当当たりなんじゃないですかね」

「……私、お世話と歩くの頑張るわ。絶対トゲピーを孵化させる。そしてこのトゲキッスに進化させるのよ!」

 

 拳を天高く突き上げて叫ぶ三枝さんなんだけど……。

 あれー、この人こんな面白い性格してたっけなー?

 

「うーむ、三枝君が羨ましいな。しかし、私もナックラーを育て上げてフライゴンにしなければならない。むむむ」

 

 そして彼女を羨みながらも悶々と考え込む伯父さん。

 とりあえず僕はそんな2人を置いてポケストップでアップデートを行うことにした。



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アップデート

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 おめでとうございます!

 あなたは2匹目のポケモンをゲットしました!

 そのお祝いとしまして商品の値下げ、並びに一部商品の制限の解除を行います!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください

 

 

 おめでとうございます!

 あなたは3匹目のポケモンをゲットしました!

 ポケモンを多くゲットしてくださるあなたのような方のためにポケストップユーザインターフェースを改善いたします!

 さらにお祝いとしましてアプリポケットモンスターに新たな機能を実装、並びに既存機能の強化を行いました!

 ポケストップ、並びにアプリポケットモンスターをご確認ください!

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 ポケストップにてアップデート作業(?)を行った僕の前にはこんなホログラム履歴が表示されていた。

 うん、いろいろと気になる。さて、まずはどっちから手を付けていくか。

 

「せっかくまだポケストップ閉じてないんだからそっちから見ていくべきじゃないかしら?」

 

 という三枝さんの指定を受け、僕はそのまま履歴を消してポケストップ購入欄をタッチ&スクロールしていくことにした。

 

「んー、おっ! こりゃあいい!」

 

 ポケストップの購入画面。

 総歩数や値段等の表示の仕方は変わりはないが、一番の変わりどころ、それはアイテム類のカテゴリ分けであった! ボール類は“ボール”、キズぐすり等は“回復”、木の実系は“きのみ”といった具合にだ。ちなみに技マシンとかの未解禁系は“未解禁”と名を打たれたカテゴリにカテゴライズされている。

 正直このカテゴリ分けはありがたい。

 

「え、どうして?」

「いえね、三枝さん。ポケモンのアイテム数って500以上あるんですよ。それをポケストップで欲しいアイテムを一々探すのは非常にかったるいので」

「なーるほど。ある程度カテゴライズされていればその手間も省けると」

「確かに一々スクロールして探すのは手間だな。それに年を重ねてくると、仕事以外で目に来る作業はなるべくなら避けたいものだ」

 

 というわけでまずはボール、回復、木の実といったところをざっと見ていく。ラインナップは変わらず、されど必要歩数は5%ほど低下しているといったところ。尤も、元々高く設定されていたものはそれ以上の値下げ幅なようだが。

 続いて、新設された“道具”カテゴリを見てみる。

 

「えーと? まずはスプレー系、それと進化の石にするどいキバ、アップグレード、マグマブースターにおこう系……ああ、進化とベビーポケモンに必要なやつか。それと――ブッ!?」

 

 おい! おい!! なんやねん、これぇ!

 

「おい、どうした?」

「なにかあったの?」

 

 いや、「なにかあったの?」どころの騒ぎじゃないわ!

 

 

   かいのカセキ  250,000歩

   こうらのカセキ 250,000歩

   ひみつのコハク 280,000歩

   ツメのカセキ  250,000歩

   ねっこのカセキ 250,000歩

   ずがいのカセキ 250,000歩

   たてのカセキ  250,000歩

   ふたのカセキ  250,000歩

   はねのカセキ  250,000歩

   アゴのカセキ  250,000歩

   ヒレのカセキ  250,000歩

 

 

「いやいやいや、なんでカセキまであるんだよ!? しかもバカ高えし! しかもプテラ(ひみつのコハク)だけ他と値段ちげぇし!」

 

 思わず吹き出して周りや2人の心配も気にせず叫んでしまったけど、僕の行動は正当化されるべきだと思うんだッ……!

 

――なんやねんカセキって……

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

「本当に大丈夫か? それに化石とは?」

 

 あー、いい加減2人の方にも説明しないと付いてけないか。つっても僕自身もまだ落とし込めてないんですけどねえ、あまりに予想外過ぎて。

 

「あー、えー、なんと言いましょうか。ポケモンって中には太古に絶滅した種もいるんですよ」

「え? でも「と・に・か・く!」」

 

 三枝さんも「昔にポケモンなんかいなかったでしょ?」とかいう疑問を抱くのはわかるけど、正直ごちゃごちゃ言われても敵わないので、ここはとりあえず強引に押し切ろう!

 

「そうした大昔に絶滅したポケモンもいるんです。で、これはそのカセキです」

「ふむ、それはそれでまた貴重だな」

「そうですね。絶滅したポケモンもいるなど、その筋の人間にとっては実に興味深い話だと思います」

 

 2人はうんうんと頷いて面白そうに興味を示してるけど、このカセキはそんな単純なものじゃないんだよ。

 

「で、ここからが話の本題なんですが……」

 

 ここで話を溜めて、2人の注意を僕の方に促す。マジヤバな話なので。

 

 

「おそらくですが、このカセキ、

 

     然るべき手順を踏めば、  復活します

 

                                」

 

 

「「…………は?」」

 

 

 その言葉で思わず凍り付いた2人。

 いやね、気持ちはわかるよ。僕もゲームやってたときこの技術があれば、「リアルジュラシックパークじゃん」って思ったりもしたことあるし。でも、それはあくまで空想上の話だったから「フフン♪」って流してたけど、ここではそうもいかない。

 

 まだ、方法は見えてこないけど、でも、なんとなくだけども。

 

 ――カセキを復元できる何かが存在する。

 

 そう思えて仕方がない。ポケストップはタマゴ孵化装置なんてくれた訳だから、何かしらカセキの復元方法が提示されてもおかしくない。

 そしてそれらが提示されたならば……。

 太古の生物を甦らせるためにこの仕組みの研究が始まって、そして――

 

「えええええええええええええ!?」

「なにいいいいいいいいいいい!?」

 

 そんなことをツラツラと考えていたときにフリーズしていた2人に再起動がかかった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

「うわあぽけもんやばいすげえぽけもんやばいすげえぽけもんやばいすげえ」

「うむうう、これは本当にシャレにならんぞ……。行き着くところは死んだ人間の復活すらあり得る話になってしまうのではないかね……?」

 

 三枝さんは再起動したはいいけどまだバグがあるらしい。その点、伯父さんの方は順応できたようだ(違 これが亀の甲より年の劫というやつか。伯父さんの最後の言葉? きゅうにみみがとおくなっちゃたみたいできこえません……。

 

 

 うん。とりあえずは後で考えよう! 何のための対策会議だ! そこでお偉いさん方に考えてもらいましょう!

 

 

 ……んで。……それでっ!

 その後だけど、残りの方を見ていくとディフェンダーやスペシャルアップ、ピッピにんぎょうなんかのバトル中に有効なアイテム、ハートのうろこやかけら系、みつ系なんかなど。カセキに比べれば、まあまあ至って平凡なアイテムだ。……思い出しの人いないのにハートのうろこなんてどうするのかは意味不明だが……。

 

「……いやいや。まさか、ね……」

 

 とりあえず、首を横に振って自分の想像を頭の中から追い出して、次を見る。

 

「次は“もちもの”カテゴリか」

 

 2つ目に新設されたそれをざっと見回す。

 

 ……

 

 ……

 

 うん。至って普通だ。『こだわりスカーフ』『きあいのタスキ』といったものや『でんきだま』のような特定ポケモン専用のもの、あとはジュエル系や『もくたん』なんかのタイプ別の威力上昇系ものなど、プレート系やメモリ系、メガストーン以外のアイテムが揃っている。とりあえずこれで道具系はほぼ解禁されたも同義と考えて問題はないだろう。至って普通、常識の範疇だ。

 …………ポケストップが現実に存在するのはもう極めて常識的で当たり前の現象だから(震え声)。

 

 それはそうと、プレートやメモリはともかく、メガストーンがないのはやや残念に思う。

 

「メガシンカ、見てみたかったな」

「ん? 何か言ったかね?」

「いいえ、べつに」

 

 僕のつぶやきは伯父さんには拾われなかったようだ。

 しかしまあ、無いのなら仕方がない。せっかくラルトスやヒトカゲが居るんだからサーナイトか、あるいはリザードンか、メガシンカをこの目で見てみたかった気もする。

 ……ちなみにZ技は、どうだろう? あのポーズはやるのがちょっとなぁ……。いや、威力はバカ高いから、受けようとして出てきたポケモン吹っ飛ばせるの好きだったんだけどね。

 

 さて、とりあえずは歩数と相談してそろそろなにかアイテムが欲しい。

 やすらぎのすず(1,020歩)、しんかのきせき(2,550歩)、しあわせタマゴ(4,250歩)、たべのこし(2,550歩)当たりが良さげなんだけど、その中でも一番低いやすらぎのすずですら全然足らない。足踏みする? ん~、ないかな。

 仕方ない。今回は諦めよう。そしてなるたけ歩数稼いで、どれも取りに行く。最優先はしあわせタマゴか。そこまでがんばろ。

 

「んじゃ、確認も終わりましたそろそろ行きます?」

「ん? まだアプリの確認が終わってないんじゃなかったかね?」

「あ」

 

 そうだった。たしか既存機能強化と新機能実装とかあったな。わすれてたわ。

 

 くっ。これもカセキの衝撃が悪いっ。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 そうして三枝さんもようやっと復帰したところでアプリの方の確認も行う。

 

「お、結構『New』マーク付いてるな」

 

 “図鑑”以外のアイコン全てにこのマークが付いている。尤も、“ポケリフレ”は触ってないし、“トレーナーパス”は何かがアプデされたときには付く(取説みたいなもの)ようなので、実際は“ポケモン”“道具”が機能の強化だろう。()()1()()()()()()()()()()()()()()は後回しにする。

 まずは“ポケモン”をタップ。

 変わったところとしては体力がHPとして具体的な数字で示されたことか。見る限り、ゲームのポケモン画面と同じ感じになっているようなので、持ち物持たせたらアイコンとかも出るんだろう。ラルトスたちは今お休み中なのでそれは後で確認してみるとして。

 次に“道具”。

 変わったところとしてはカテゴリがさらに細かく区分分けされている。具体的にはポケストップのときの区分分けに近い(つまり、“もちもの”と“道具”が登場)。さらに新規で“大切なもの”と“フリースペース”が登場している。

 大切なものはゲームでは技マシン以外の個数表示がされないアイテム類がこれに分類されていたが、これがあるということはいずれ入手できる可能性があるということか。……具体的にはポケストップで。

 そして“フリースペース”はよく使うアイテム類なんかを別に分けておいて使いやすくするためのやつだ。今はそんなにアイテム類は持っていないので使う機会はあまりないだろうが、増えてくればゲームのときのようにお世話になるかもしれない。

 

 にしてもなんでもかんでもポケストップでとか、ポケストちょっとガバガバ過ぎね?

 

 そして最後。新規登場のアイコン。ガラケーなんかで表示される電波の絵柄が描かれているこのアイコン、その名も“通信”。タップしてみれば“PSS”に“トレーナーちゃんねる”とある。

 ……あれか? “トレーナーちゃんねる”とかまんま2chな気がする。

 で、“PSS”の方だけど、これは要はポケモンXYとかポケモンORASであったプレイヤーサーチシステム(PSS)とほぼ同等のようだ。交換とか対戦、さらにはGTSやミラクル交換なんてものすらあった。……GTSとかミラクル交換とか、正直どういったものなのか想像もつかないのだが。ただ、あの黄色い地の画面が妙に懐かしく思えた。

 

 

 さてさて。あれだ。なんかゲームのときの感覚と同じような感覚でスイスイーッといけてるけどそろそろ“トレーナーパス”(取扱説明書)に詳しく目を通すか。元々僕は一応取説は最初に読む派だ。ただ、今日はあまりのことでそんなのは後回しにしてたんだけど、これからは対策会議もあることだし、他者にプレゼンとかする上でより詳しく把握しておく必要があるからね。

 

「あ、先生! そろそろ行かないとマズいかもですよ!」

「ふむ。一応事情は説明しておいたが、あまり向こうを待たせるのも悪いか。いや、待たせてる間に資料とかは作っているのだろうけど、はっきり言って我々以上の物は中々ないだろう。早めに届けるべきか。では行こうか。車を頼む」

「はい! 彰くんも車の中で今の話聞かせてね」

「了解ですよ」

 

 そうして僕たちは河川敷の自然公園を後にして、首相官邸へと向かうことになった。




一応カセキについては他にも手に入る方法がありますので、高額に設定しました。(むしろそっちがメイン?)


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某匿名ちゃんねる掲示板2

なんとか間に合った……

某匿名ちゃんねるネタ、顔文字が登場します。
ご注意ください。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


【世の中】何か周りに知らない生き物がいるんだが【どうなってんだ?】part2

 

1名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 このスレッドは身近に起こった摩訶不思議な生き物について報告試合うってスレです

 情報交換の場として使いましょう

 

 どうやらこの生き物捕まえられるみたいです!

 捕まえた人は是非報告を!

 

 記者会見他テレビ実況は実況スレへGO!

 

 前スレ

 【世の中】何か周りに知らない生き物がいるんだが【どうなってんだ?】part1

 http://~~~

 

 

2名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1

 スレ立て乙

 サンクス

 

3名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1乙!

 しかしその誤字はまたなのか?またなのか?

 

4名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>1乙!

 なのか?

 

5名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 次続いたら伝統にしよう!

 

6名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 それはともかく記者会見ですよー

 

 

7名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 しかし昼のミックンの会見ってなにすんの?

 

8名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんか今朝から現れた新生物について判明したことを発表するらすぃ@んhk

 

9名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 

【挿絵表示】

 

 

10名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 マジか!

 でも出始めって今日の朝だろ?

 んで昼って数時間も経ってないのにいったい何が分かるんだ?

 

11名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そこんとこNHKの解説の人も疑問視してたな

 

12名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 報捨て局の方は超胡散臭いとかほざいてたなww

 

13名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おまえんとこのが胡散臭いのになww

 

14名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 さすがマスゴミ

 

15名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 しかし日朝戦隊は許せる(キリッ

 

16名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい!プリキュアが入ってねーぞ!!

 

17名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 やだやだ

 これだから大きなお友達は┐( ̄ヘ ̄)┌ ヤレヤレ・・・

 

18名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そういうお前も大きなお友達だろ

 

19名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ていうかここにおおきくないおともだちなんていないだろ

 

20名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 大きいお友達挙手!

 

 ノ

 

21名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ノ

 

22名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 (^^)ノ

 

23名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ノ

 

24名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ノ

 

 さ! バカやってないで会見行くぞ

 

25名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おれたちはバカをやるのが仕事なんだぞ!

 

26名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 つまりはニートってことですねわかります

 

27名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>26

 テメーはおれを怒らせた

 

28名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ハイクを詠めカイシャクしてやる

 

29名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そげぶしてやry

 

30名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おおめーらあ、とくに26と29おちっちつけwww

 

31名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 オマエモナー

 

32名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>30の方がダメージでかいんじゃないの?

 

 

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

 

201名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 しっかし、怒濤のような会見だったな

 

202名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ホント、ここまであんな短時間で驚かされたことはないわ

 

203名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ポケストップだっけ?

 そのモンスターボールとか言う捕獲器貰えるやつ

 

204名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そそ

 スマホ以外でもガラケーやタブレットでもいけるらしい

 

205名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 てか半日経たずでこれだけ情報集積出来るとかほんと現政権は有能だな

 

206名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ミズキは売国奴!!

 ミズキは売国奴!!

 即刻辞任すべし!!!!

 

207名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 みんな206は無視な

 

208名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 アレな連中ってカタカナ本当好きだよなww

 

209名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 今はそんなことよりポケモン捕まえに行きたくてしょうがない

 

210名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 今北

 会見見てなかったミーにおせーてプリーズ

 

211名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ポケモンかー。いろいろいるんだよなー

 

212名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 うちのマンションペット禁止なんだけど

 

213名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 でも総理も言ってたけどポケモン持ってて損はないし、手間も既存のペットより全然ラクみたいなこと言ってたぞ

 

214名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 予防接種とかはないみたいな感じだったな

 病気になったら保険適用はあるんだろうか

 

215名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 その前にどこの病院につれてきゃいいんだ

 

216名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 でも普段はボールの中に仕舞っておけるってのはスペースの問題が一気に解消されるよな

 

217名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 それはある

 だから既存のペットよりは間違いなくハードル下がる

 餌だって歩数稼いでポケストップで買えるらしいし

 

218名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>209

 会見要約

 

 新生物登場

 新生物はモンスターボールとやらで捕獲出来る

 新生物名はポケットモンスター(海外呼称はPOKEMONにする)、 略称ポケモン

 モンスターボールはスマホなんかのアプリを起動出来る携帯機器をポケストップという町中に出現したホログラムに突っ込めば入手可能

 ポケモンの飼育は非常に容易(必要物資は無料ポケストップで/スペース取らない)

 ポケモンは非常に賢い

 『国民の皆様におかれましては今後ポケモンとともに生きていくために是非ともポケモンをゲットしてみてください』

 

219名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 216サンクス

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 今僕は車の中で許可をもらってタブレットをいじっているんだけど、まあまあいい感じに2chではスレが乱立してるし、まとめサイトやNAVERやTogetterなんかにもまとめが乱立している。

 そこらには町中や海、森に現れたポケモンたちのこと以外にも、何やら動物園や水族館の生き物が軒並みポケモンに変わってしまった様子が画像付きでupされていた。ライオンはシシコ、ワニはワニノコ、アザラシやオットセイなどはパウワウやタマザラシ、キリンはキリンリキ、カニはクラブなんかだ。猿はいろいろあるらしく、マンキーやエイパムになるのもあればヒコザルやイッシュの三猿(ヤナップヒヤップパオップ)他などいろいろとあがっている。……パンダは多くはヤンチャムになったみたいだけど、これはめんどくさくなりそうな予感。パンダって確かレンタルで所有権は全部中国なんだよな……。

 

「うわあ、これはすごいですね」

「どれどれ? あー、うーん」

 

 とりあえずそこらは脇に置いておいて、伯父さんにそれらを見せる。すると伯父さんは唸って考え込んでしまった。

 

「これはひょっとすると日本の生き物が全てポケモンに変わってしまった可能性もあるのではないか」

「とすればまさに由々しき事態ですね。生物調査や環境調査はもとより食料の供給にも滞りが発生してそうです」

「うむ。まあそこらは農水省や環境省あるいは経産省次第だろうが、いい報告であることを願うしかないな」

「はい」

 

 ……うわぁ。それはマジやばい。肉とか魚が食えなくなるってホントにやばい。

 ポケモン食う? ヤドンのしっぽとかシンオウ神話とかマケンカニのハサミとか、4世代や7世代ではそんな描写をよく見かけるけど正直食いたくはないぞ。ポケモンを食べるとか考えられない考えたくない。

 

 そんなことをツラツラと考えつつ、気分転換にさっき見ていた2chのスレを漁ってみた。

 

「お?」

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

275名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ほっほほーい!

 ポケモンゲットしたった

 

 http://i.imgur.com/~~~

 

 やっべーポケモンかわええンゴ

 

276名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おー!

 なんだなんて名前のポケットモンスターだ?

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「プフ。これはw」

 

 いかん、思わず吹いてしまった。このポケモンを見て金銀やってた頃の気持ちを思い出してしまった。

 あんなかわいいポケモンがああ進化するとかショックだったわ……。

 

「どうかしたの、彰くん?」

「いえ、なんでもないです」

 

 ……ちょっとからかってみようか。

 ……うん。考えてみれば進化する前にある程度情報与えておいてショックを緩和させてあげるのも大事だしな!

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

277名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そのポケモンはヒメグマというポケモンですね

 https://www.pixiboon.net/member_illust.php?id=~~~

 

 ちなみに成長して進化するとリングマというポケモンになります

 https://www.pixiboon.net/member_illust.php?id=~~~

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「さあ。これでどうなるか」

 

 愉悦愉悦と思いながらリロードを何回か繰り返す。

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

278名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい

 

 

 

 

 おい

 

 

279名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 wwwww

 

280名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 はらいてえwwww

 

281名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 かわ・・・い・・・い・・・?

 

282名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 やめろ

 

 

 

 

 

 

 

 やめろ

 

 

283名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 かわいいっつーよりゴツいなwwww

 

284名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なにこの愉悦www

 ちょっと神父の気持ちが分かったわwwww

 

285名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

286名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 笑うのはやめて差し上げろ

 

 

 

 

 ごめんやっぱムリwwww

 

 m9(^Д^)プギャー

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「wwww」

 

 こみ上げてくる笑いを必死に我慢しながらスレを読んでいく。

 まあかわいそうだから一応進化しなくなる『かわらずのいし』のことも教えておく。

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

294名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 そういやあのヒメグマとやらがリングマに変わるというがどういうことなんだ?

 

295名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 進化って言ってたな

 でも進化って意味違くない?

 

296名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 たしかに

 進化って世代を通じて起こる遺伝的性質の変化

 でも、277の言い分だと生物学的に極めて短期間で起こる変化っぽい(少なくとも世代交代はなさそうな言い方)からこれはちょっと違う

 すると『変態(短期間で起こる、その個体における形態の変化)』

 こっちの方が意味は合ってる

 

297名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おまえらやっぱ変態だな

 あ、もろちん上の意味で使ってますよ( ´艸`)ムププ

 

298名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 297みたく変な言い方を使う輩も多いから進化でもいいんじゃない?

 進化だって広い意味で『事物が一層すぐれたものに発展すること』なんて意味もあるんだから

 

299名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 社会の「変態」に対するイメージは悪いから「進化」でいいんでない?

 

300名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 一般的に痴態やらそういうイメージが大きいし

 おれらみたく

 

301名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おま一言余計

 

302名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おれたちの精神安定的にも「進化」でいいな!

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

321名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんかよくわかんないんだけど変なのみつけた

 http://i.imgur.com/~~~

 

322名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ?

 

323名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ん?何かの石?

 てかけっこう大きいな

 重くないのか?力持ち?

 

324名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 珍しい形した石だな

 

325名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 表面なんだろう

 盾っぽい感じなのかな

 

326名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ああ

 いわれてみればなんかそうっぽいな

 

327名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 昔剣闘士がコロッセオで戦ってたときに持ってたやつみたいな?

 

328名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい

 

 

 おいまかさ

 

329名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ??

 

 

330名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 321はどこで見つけたの?

 

331名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>323

 そんな力ある方じゃないと思う

 てか思った異常に軽い

 

 あと、こんなのも見つけた

 http://i.imgur.com/~~~

 

332名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 >>330

 うちの近くの海岸の砂浜

 

 ポケモン捕まえようとしてみたんだけどクラゲっぽいのばっかでちょっとなーと思ってたところに見つけたのがこれ

 正直こんな石こんな場所で見つけたのは初めてだわ

 

333名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 え

 これいわゆるアンモナイトみたいな感じじゃない?

 

334名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 やっぱりそうだ

 

 おいその2つたぶんなんかの化石だぞ

 

335名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 は?

 

336名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 派?

 

337名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 え、これ化石?

 いやまあこのアンモナイトっぽいのはそうかもしれないけど

 てかこれ海岸にふつうに転がってたけど

 いくつかあったうちの1つ

 

338名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 あーいわれてみれば化石って気がしないでもないな

 

339名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 国立科学博物館しょっちゅう行くけど確かに化石ってこんな感じのもあるな

 

340名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんでそんなとこ足繁く通ってんだ?

 

341名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 いや常設展示は高校生以下タダだし

 学校帰りちょくちょく行っててそれが今も習慣化してます

 あと夜の天体観望もタダだったから女の子連れてくとけっこう好評だった

 

342名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい

 唐突にリア充自慢かコラ

 

343名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 リア充はしまっちゃおうね~

 

344名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 リア充消え路の流れには賛同するガスまん

 

 ひょっとしてこれも化石?

 http://i.imgur.com/~~~

 http://i.imgur.com/~~~

 

 ちなみに見つけたのは矢作川の名鉄名古屋線鉄橋と国道1号矢作橋のちょうど中間辺り

 

345名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ちょいまち

 矢作川のあの辺って河原っつーか砂ばっかじゃん

 あの辺石あるの?

 

346名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 んなこと言われてもあったとしか言い様がない

 

346名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おい、そんなローカルネタ言われても分かんねーよ

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「マジか。カセキその辺に転がってるのか」

 

 これは初耳な話だ。これも報告事項にあげておこうか。……画像はあれど自分で確認したわけじゃないから検証をお願いすることになりそうだけど。

 しかし、砂浜にオムナイトになる“かいのカセキ”があるのはわかるけど“たてのカセキ”もあるとかなぁ。ついでに川で拾ったって言うのは“ヒレのカセキ”だし。タテトプスもアマルスもとてもそんなところに住んでいたとは思えないんだけどなぁ。

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

464名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 泣けるんだけど・・・

 おれのくるま・・・

 http://i.imgur.com/~~~

 

465名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 うはw

 これはひでぇ

 前ぺしゃんこやン

 

466名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ワイ外車が潰れるの見てほくそ笑む

 

467名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 てかそんだけの事故起こしてよく無事だったな

 

468名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ちゃうねん

 なんかよくわからんいきものにとっしんされてつぶされたねん

 

469名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 はい?

 

470名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 どういう・・・

 あ、まさかポケモンか?

 

471名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ぽけもん?

 なんやそれぇ

 

472名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 とりあえずどんな生き物だったのかうpしろ

 

473名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おし、特定班解析準備しとけ

 

474名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 つっても今回はラクそう

 ここで調べりゃいいんだし

 https://www.pixiboon.net/member_illust.php?id=~~~

 

475名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 ばっちりスタンバってまーす

 

476名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 スタバいってまーす

 

477名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 スタバ関係ねぇwww

 

478名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 wwwww

 

479名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 おま帰れよwww

 

480名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 とりあえずおれのくるまをぶっこわしたあんちくしょう

 http://i.imgur.com/~~~

 てかいまもおれのくるまにたいあたりまじやめqあwせdfrtgyふじこlp;

 

481名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 なんか見てるとFXで有り金全部溶かした顔してそうだなぁww

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「ああ、サイホーンね。まあ図鑑とかじゃ単細胞単細胞ってこき下ろされてるしなぁ」

 

 でも、これも一種のポケモンによる被害にカウントされる感じか。ポケモンと融和はなかなか難しいかもしれない。

 ていうか、そもそもどうしてこういうことになったんだか。

 ん? それを気になって聞いてくれたやつがいるな。

 で、返答は……。

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

499名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~

 

 道ふさいでてちっとも退きやがらねえから罵倒して水ぶっかけたらこうなった

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「おいそれどう考えてもあんたがちょっかいかけたからだろうが」

 

 単細胞とか脳みそ小さいとか評されているやつに罵詈雑言浴びせて、挙げ句サイホーンの苦手な水を浴びせられたらサイホーンだって切れるだろうよ。

 

「どうかしたかね?」

「え? ああ実は――」

 

 ということで隣の伯父さんに今し方のことを話した。

 

「それってアレじゃないかしら? そのポケモンのことをその人が知らなかったからそういうことになったんじゃないのかな?」

「うむ、私もそう思うぞ」

 

 運転席の三枝さんの意見に伯父さんが相槌を打った。

 

「我々はキミを除いてポケモンを知らない。そしてそのことがポケモンと人との不幸な行き違いを生んでしまった。これは今後の大きな課題だろうな」

「しかも出来るだけ早急に改善を促していかなければならないものになるかと」

「うむ、そうだな」

 

 そうか。そうすると如何にポケモンについての理解を広めていくかということも必要なのか……。

 なかなか頭が痛いと思いつつ、でも排除することなんて不可能なこと。

 

「ポケモンと人間との融和。なんとしても進めていかないといけませんよね」

 

 そんなことを独り言ちつつも、僕たちの乗った車は走り続ける。目指すは内閣総理大臣(首相)の職務遂行の拠点となる建物、総理大臣官邸である。



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ポケットモンスター対策本部

お久しぶりです。
数話書き溜めが出来ましたので、こちら行きます。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 内堀通りを曲がり、左右に国交省や外務省、内閣府などを見やる。そうして三枝さんの運転する車に揺られ、やってきたのは、内閣総理大臣の執務の拠点、総理大臣官邸だ。東口正門で一時止められはしたものの、ほぼスムーズに中に通される。

 

「ほえ~」

 

 うん。前も含めて自分の人生とは一切由縁(ゆえん)のない建物に連れてこられて思わず口をボケッと開けてしまい、その後はキョロキョロと田舎から上京してきた人みたいな感じに辺りを見回すのは仕方ないことなんだ☆

 

 そうして通される一室。『未確認生物対策本部』と達筆な字で書かれた看板が立てられているその一室の中では、すでに会議が開かれている最中のようであった。

 

「やあやあ来ましたね、新居高さん」

「遅くなりましてすみません、総理」

 

 総理が立ち上がって、2人が軽く挨拶を交わす間に軽く様子を見やる。

 

 実は午前中だが、Web会議という形でだけど僕たちも参加していたのだ。そこでここに集まるメンツをチラリと紹介されたのだけど、まあ大物揃いもイイトコ。瑞樹総理はもとより、副総理兼外務大臣を務める眞柴肇、財務大臣兼金融担当大臣・中河庄一のエース級閣僚2人に始まり、与野党政策部会会長または会長代理、防衛省制服組背広組も含めた各省庁や警察の関係者、現場自衛官(ただし肩の階級章から相当上の方)や内閣官房参与、学者やトップ企業の経営者などなど、はっきり言って経歴なんかを比べれば僕とは住む世界の違うお歴々の方々である。

 

「そうだ。御子神さん、一度こちらへ」

 

 そうして僕は総理の下に招き寄せられ――

 

「皆さん、改めて紹介します。彼がこの度内閣官房参与を引き受けてくれた御子神彰さんです。何分急なもので正式名はまだ決めていないのですが、本日未明より現れた未確認生物、ポケモン担当になります」

 

 ――とこのように紹介される。

 ちなみに僕が引き受けた役職である内閣官房参与とは、首相に直接任命され、首相の“相談役(ブレーン)”にあたる存在である。ちなみに日当は2万7000円と言われた。

 

「皆様、改めて自己紹介させて頂きます。この度内閣官房参与の役職を賜りました御子神彰と申します。まだまだ浅学非才の身であり、皆様の足を引っ張ってしまうことも往々にしてあるかと思われますが、精一杯精進して参りますので、よろしくお願いします」

「とまあこんなことを言っている彼ですが、ことポケモンに関しては我々よりも遙かに知見の優れる方です」

「わはは、総理。そんなことは午前中の会議の席でわーってるよ!」

「ですね、総理。今は何よりも情報が必要です。それをもたらしてくれる彼は値千金の人材ですよ」

「あ、そーいや対策本部の名前変えないといけねーな」

「『ポケットモンスター(ポケモン)対策本部』、でいいんじゃないですか?」

「あ、じゃあ眞柴さん、それでお願いしますよ。私より上手く綺麗に書いてくださいね」

「お、総理も言うじゃねーか! 任せなって! とびっきり上手く書いてやるわなぁ!」

 

 出来るだけ自分が考え得る限りの、失礼のないような挨拶をしてみたんだけど、眞柴副総理の豪快な発言と彼の隣に座る中河さん、あるいは瑞樹総理がそれを追認するような発言で一気に議場が弛緩した気がする。実際この議場にいる人間はニコニコと笑みを浮かべたり、『然り』という具合に頷いてくれる人間が多い。ついでに総理も含めてこの3人は実に仲がいいらしい。

 

「はは。ああ、御子神さん、まあこういうことです。今は国家の非常事態。我々は忌憚のない意見を求めています。ここでは年齢や経験を気にせず、発言してください」

「あ、え、ええ。わ、わかりました!」

 

 うん。そう言われてもこんなメンツを前にしてそれは中々に厳しいだろうに思うのよ。

 

「とりあえず、ここに来るまでの間に新たに判明したこともあると聞いています。我々の方で見つけた情報と摺り合わせまして、ここをより良いものにしていきましょう。あなたも内閣やこの対策本部の一員なのですからそう緊張せずに。ね?」

「は、はい!」

 

 うー、とりあえず、しばらく時間ください! あるいはちょっとトランスするまで待って!

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 とりあえず他の会議の列席者の話に耳を傾けているうちに落ち着くことができた。

 で、今は渡された資料も読み込んでいるところなんだけど……うーむ。

 ざっと眺めてみたところ、ポケモンポケストップ関係は完全に僕たちが集めてきたものの方が多い。まあ完全手探りよりかはある程度知識がある上でのそれの方が集められるそれの量が格段に違うと思うからそれも致し方ないのか。

 ただ、その分既存の生物がポケモンに置き換わったことや、ポケモンが現れたことによる被害等については格段に情報量は多い。その辺は政府や省庁の強みと言ったところか。

 あ、それで気になったことがある。

 

「うーん、レベルか」

 

 これは僕たち(というよりかは三枝さん)ではなく各省庁が作成した時系列資料にあったんだけど、だんだんとポケモンのレベルが僅かずつとはいえ上がってきている傾向が見られるらしい。

 思えば今日見てきたのはほとんどが未進化のポケモンだった。スピアーは最終進化形だけど最終進化レベルは10と、レベル進化ではポケモンの中で一番低い部類だ(新出先生のピジョンは進化形だけどレベルは9と規格外に低いからこれはほぼ例外に位置するだろう)。

 とすると、レベルが上がっていく傾向がみられるということは今後は進化形のポケモンの出現も十分にありうる。だいたいのポケモンはこちらから危害を加えなければ大丈夫な部類だろう。問題は……――

 

 今の議場を見やる。

 

「――水産物や畜産関係が既存のものからポケットモンスターと思われるものに変わったため、食糧事情が大いに懸念されます。また海上はポケットモンスターの往来が激しく、漁業にすら出られないという報告も上がっています」

「――ポケモンを犯罪に使うことやポケモン自体による治安の悪化が懸念されます」

「――空と海上ともにポケットモンスターの往来が多く、現状では事故防止のために航空機の欠航や船舶の往来の制限を設けております。それに伴いましてすでに莫大な経済的損失が発生しております」

 

 今はこのように各省庁で現在も含めた今後の懸案事項を述べているところだった。

 なら、僕のこれもそれに沿う形なのだから問題はない、ハズ。

 

「……あの、よろしいでしょうか」

 

 僕は初めて自主的にこの場で意見を述べることを決めた。

 

「構わないよ。どうぞ」

 

 総理からGOサインをもらい、席を立つ。

 緊張はあるけど、今はそれを置いてとりあえずは言いたいことを言おう。

 

「今懸案事項を述べられているところ、恐縮ですが、まずは1つ言わせてください。乳製品、及び農産物の一部に関してですが、これは代用品があります」

 

 うん、これには皆が「えっ?」っという表情を浮かべた。農水省関係者だけはその後に鬼気迫る表情で見つめてくるのだけど。

 

「あー、まず乳製品についてですが、ミルタンクというポケモンがいます。で、このミルタンクの乳としてモーモーミルクというものが採取出来ます。相当美味しいらしく恐らく人間が摂取しても問題はないものと思われます」

 

 するとポケモンの資料から「ミルタンクミルタンク」と探しながらペラペラと紙を捲る音が支配する。

 

「このポケモンは各地の牧場で乳牛から置き換わったものと同じですね。としますと――」

 

 実際アニメやゲームでは普通に人間も飲んでたからたぶん問題はないはず。

 あときのみについても味の差違はあれど問題はなかったはずだ。味についても甘いの他に辛い苦いとかもあったはずだから香辛料にもなる……かもしれないし? 少なくともオレンのみとモモンのみは相当美味しいらしいし。

 ということでこれらを速やかに分析解析してもらい、流通に乗せられるように動くという結論を出させてもらった。

 

「では次です。少し確認を行いたいのですが、まずは警察関係者の方、あるいは省庁の方でも構いません。このポケモンの姿は確認されましたか?」

 

 そうしてたらこ唇に王冠のような背びれと腹びれが描かれた、コイキングが印刷された資料を見せる。

 

「足が生えてりゃタンノくんにソックリだな」

「いや、南国少年パプワくんじゃないですよ、眞柴さん」

 

 いや、僕的にはアニメとかサブカルに詳しい眞柴さんならまだしも、中河さんがそういうこと言うとか意外すぎるんだけど! あれか、中河さんが眞柴さんに毒された感じなのか。

 

「それ大分古いですよね。一番若い御子神くんは分からないんじゃない?」

 

 そして総理も知ってることにビックリ。てかこの3人ホントメチャクチャ仲いいんだな! ネットで言われてた以上だよ! ビックリだよ! ……実際(くだん)の漫画とアニメは名前くらいしか知らないんだけど。

 

「そのポケモンについては確認されています」

 

 やっぱりそうか。とするとやっぱり。

 

「そうですか。では治安に関して申し上げます。近い将来大混乱が起こる可能性があります。ですので、関係各所、特に警察ですね、あるいは自衛隊も含まれますでしょうか。何はともあれ速やかに、いえ今日明日中にでもポケモンの所持を進めてもらいたく思います」

「それはまた穏やかではありませんね。どういうことです?」

「そうだな。政府としてはポケモンの所持を進めていくことはほぼ決定事項だが、かなりの急な話だな。どういうこったい、御子神君よ?」

「そうですね。君の所見を是非聞きたい」

 

 さっきまでの朗らかさとは一変しての鋭い眼光(特に眞柴さん。昔クレー射撃でオリンピックに出ただけのことはある)の3人が見据えてくる。こういうところはこの3人が本当に政治家なんだということを実感させられる。

 

「ではポケモン資料のうちのギャラドスの項目を開いてください。コイキングの次のはずです。それから各省庁の集めてくださったポケモンの出現情報の方もご参照願います」

 

 そうして室内はページを捲る音に支配される。

 

「このギャラドスというポケモンなんですが、非常に凶暴な性格をしているとされています」

 

 ポケモンの各個体の資料は僕のpixiboonにアップしたものから取ってきているようなので、そこにはポケモン図鑑に当たるような簡単な説明文を載せていたりしている。

 

「おいおい、こりゃあマジかい?」

 

 ちなみにそこには『非常に凶暴な性格』だとか、『野蛮』だとか『一度暴れ出すとすべてを焼き尽くす』だとか、凡そマイナスなことしか書かれていない。てか『全て焼き尽くす』とかどこのゴジラだとも思う。誰だ、こんなの書いたの。

 

(あ、僕ですね。いやぁ、ここまで書かなくてもよかったかなぁ。……いやいや、ポケモンがない世界にポケモンを残すというのには必要だったし、ポケモンが現実に出現するとか予想できねーよ)

 

 なんて少々悶々としていたが、会議は進む。

 

「総理、これはまずいかもしれません」

「うーむ、しかし……。御子神さん、あなたはなぜそのようにお考えなのです?」

 

 ちょっとマイナス寄りに振り切れてしまったか。でも、一応はすべての情報を挙げて判断してもらわないとまずいからこのまま行くしかない、か。

 

「このギャラドスについてはまだ確認されていないと思いますが――」

 

 ここで一度止めて警察庁自衛隊防衛省職員の方を見やると、その意図を理解してくれてか、彼らは頷いてくれた。

 

「ありがとうございます。今現状は確認されていませんが、近々出現の可能性は十分にあります」

 

 そうして僕は出現情報を胸に掲げた。

 

「コイキングというポケモンはレベル20になるとギャラドスというポケモンに進化できます。ああ、すみません、今ここでは『進化』というものは置いておいてください。簡単に言えばコイキングはレベル20でギャラドスになる可能性があります。そしてこの出現情報ではざっと見てみると最高でレベル15ですが、じわじわと出現するレベルが上がっていっているとわかります。そして、このコイキングがそこら中で確認されたとしますと――」

 

――そこいら中で凶暴なギャラドスが暴れまわる可能性がある――

 

 そうして僕の言う懸念が理解できたのかズーンと重くなっていく議場内。

 

「ま、さか……」

 

 総理は顔を青ざめてしまっている。自らの失策、ひいてはそれが国民の命に直結するものという認識に陥ってしまったのか。

 正直ここまで雰囲気を重くするつもりはなかったんだけどなぁ。ここから上手く雰囲気をアゲアゲしていかないと。

 

「ただ、そのための対策です。このギャラドスですが、電気に非常に弱いんです」

 

 ここからは考えさせないで一気に捲くし立てていく。

 

「ポケモンには必ずタイプというものがあります。そしてそのタイプには必ず弱点、“有効打”があります。これはどんなポケモン、それこそ世界の安定を司るディアルガ、パルキア、ギラティナ、大地の化身や海の化身のグラードンやカイオーガ、宇宙を創造した創造神アルセウス、並行世界につながるウルトラホールという異世界に住むウルトラビーストも例外ではありません。そしてギャラドスも当然のごとく弱点があり――「ちょっ、ちょっと待ってください!!」――うぇい?」

 

 びっくりした。総理あんな大きな声出すんだもん。思わず変な声が出たし。 

 

「ど、どういうことですか、今の話……?」

「オレぁなんか聞いちゃいけないもん聞いた気がするぞ……」

 

 見れば全員が今度は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべていた。ほぼほぼ口まで開けているので、本当に豆か何か放り込めそうなほどだ。意図してやったこととはいえ、効果ありすぎだろ。

 

「キミ、宇宙を創造した創造神?というのは本当かね?」

「それに並行世界とは? シュレーディンガーの猫のパラドックスが」

「世界の安定とはどういうことかね」

 

 ……やっばい。なんか変な先生方の火がついたっぽい。「と、とりあえずは落ち着いてください教授」なんて諫められてるからどっかの大学の権威なんだろうなとは思う。

 

 ただこれでさっきまでの重苦しい空気は完全に消し飛んだと思う。

 

「先生方、時間があればその話はまた後程。で、ギャラドスについてですが、当然弱点があります。しかも超有効打となりそうなものが」

 

 そうして僕はギャラドスが水・飛行タイプであり、その2つがどちらも電気タイプが極めて有効であることを述べる。

 

「そういうわけですので、出来れば早急に電気タイプのポケモンまたはその技の習得を急がれるのが有効だと思います」

「ふーむ、なるほど、話はよく分かった。防衛省? 警察庁?」

「早急に取り組みます」

「同じく。ちなみに他にも有効なポケモンはないかな?」

「ギャラドスについては電気技が一番です。ギャラドス以外の危険なポケモンはまだ出現する可能性は低いでしょう。ちなみにそんな彼らには格闘タイプやフェアリータイプがいいかと思われます」

「なるほど。いずれキミとはウチに招いていろいろご教授いただきたいものだ」

 

 そして。

 そんな感じで穏やかな話をしていたところで、風雲急を告げる知らせが会議室の扉が開け放たれた大きな音と共にやってきた。

 

 

「首都高速都心環状線代官町インター付近、千鳥ヶ淵にて正体不明の生物が暴れています!」

 

 




書くかどうか分からなかったので、一部感想返しでネタバレしてしまった形ですが、御子神くんは内閣官房参与の役職を引き受けました。人事院上の登録は内閣官房参与ですが、名前の方は好き勝手決められるんですよね。一応ポケットモンスター担当官なんてしましたが、はてさてどうするか。


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フラグ回収早くね?

やや短くてスミマセン。
長くなったので分割したらこの分量になりました。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


『信じられません! こんなことがかつてあったでしょうか!? 巨大な未確認生物が東京都千代田区千鳥ヶ淵に現れました! 幸い近くを走る首都高速都心環状線に被害は出ていませんが、危険な状態です!』

 

 テレビでは『未確認』って呼称されてるけど、まだまだポケモンが一般的ではないので、あれがギャラドスだとはまだまだ認知されていない。

 そう。

 先の一報、そして今テレビに映し出されているそれは、空に向かって凶悪そうな顔で吠える()()ギャラドスであった。

 今「ん?」と思われた方、その疑問は正しい。

 そう、()()、つまりは色違いなのである。通常のギャラドスの色は青なので、ラルトスのように色違い。赤いギャラドスがいるとかHGSSのいかりのみずうみイベントみたいだ。第一報の暴れているというのとは違ったようだが、このままでは危ないことに変わりはない。

 

「自衛隊の出動を」

「市ヶ谷に連絡します!」

「いえ! 総理、僕が行きます! 行かせてください!」

 

 相手はポケモン。自衛隊の銃器を向けるというのは気が引ける。それにポケモンにはポケモン。真っ向からあのギャラドスをねじ伏せる。それに今後はこういったこともあるだろう。テストケースとして披露する必要もあるだろう。

 

「何とかできるのかい?」

「あれはポケモンです! 未確認生物でもゴジラでもない! ポケモンにはポケモンがベストです! ですので、僕たちが必ず何とかします!」

 

 幸い僕のラルトスは電気技も覚えているし、相手のレベルも現状ではレベル20以上とは考えづらい。レベル9のピジョンがいたんだから規定レベルよりも低いギャラドスの可能性だってある。それにこちらはラルトスを含めて3匹のポケモンがいる。

 

「わかった。警察の車両に先導させる。見事あのポケモンを押さえてみせなさい」

「はい!!」

 

 そうしてこの部屋からは僕、それから三枝さんも付いてきてくれることになった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「御子神さん!」

 

 首相官邸玄関を出たところで、数台のパトカーが停まっているうちの後部座席ドアの開いた1台の前に立っていた男性から呼び止められた。

 

「こちらに乗ってください! そちらの方も!」

 

 それに僕たちは迷わずに滑り込んだ。最後にその男性が乗り込んでシートベルトを締めたところで、クラクションが鳴らされてパトカーが発進する。

 

「こんなんで申し訳ないですが、警視庁公安部の武藤といいます。助手席のが香取、運転席のが久内です。以後、御子神さんの警護に付きます」

「あら、公安さんが名乗るなんて珍しいわね。それに香取さんは女性ですか」

「お陰様で配属されることになりました」

「香取は警視庁警察学校を歴代トップの成績での卒業と大変優秀でしたからね。それに適性もありましたから。それから、本来は仰る通り、そういうことはしないんですが、特別な協力関係を結びたい、もとい既に我々の仲間でありますからね。そういうことですよ、新居高義雄衆議院議員私設秘書で新居高議員の従姉妹の三枝幸香さん?」

「あら、さすが公安さんですね」

「いえ、礼を言われるほどでは。これも仕事ですから」

 

 なんとなく険悪なものを感じたのは気のせいですかね。てか今の皮肉の応酬だよな。

 とりあえずは空気を変えたい。

 

「千鳥ヶ淵まではどのくらいなんですかね?」

「正確にはボート乗り場の方なので戦没者墓苑の方ですね。まあサイレン鳴らしてますから、5分もしないうちに着きますよ」

 

 たしかに、赤信号を通過する際にはスピードを落とすが、それ以外はビュンビュン飛ばしている。

 

「そうだ。一度何処かのポケストップに寄ってください。戦力を整えます」

「わかりました。おい」

「はい。『護送中の各車へ。こちら1号車香取、――』」

 

 武藤さんの合図で助手席の香取さんが車内に備え付けの無線機を取り、今の内容の連絡を入れている。『了解』の声とともに先頭の車が大きく左へ曲がった。

 

 

 

『こちら先頭2号車。ポケストップ発見。墓苑入り口交差点右折後すぐ右手側の銅像にあります』

 

 ということで、一旦はそこで車を停車してもらい、ポケストップでサイコソーダ、ふっかつそう、それから水タイプの捕獲率がアップするネットボールを1つずつ購入。ちなみにこれで歩数はほぼスッカラカンになった。

 

「特殊ボールたっかいな……」

 

 大半がこれに消えていったので、げんきのかけらではなく、安いが懐き度が下がる苦いふっかつそうになったという事情がある。ポケストップは捕まえたポケモンの数とかの何らかの条件によって割引が効いているみたいだけど、それが効いていてすらギリギリだったのだ。

 

「準備OK?」

「はい!」

「んじゃ、行きましょうか」

 

 ということでそのまま乗車。桜の名所として有名な千鳥ヶ淵緑道を北上。千鳥ヶ淵戦没者墓苑やボート乗り場を過ぎて駐日インド大使館や靖国通り方向へと進む。桜のシーズンもほぼ終わりとはいえ、自衛隊員や警察官以外は人っ子一人おらず、かつ駐車車両もないここら一帯は現在は通行規制がされて一般人、車両共に立ち入れない状況になっているらしい。

 

「にしてもボート乗り場って聞いてましたけど移動したんですかね?」

「我々はそのように聞いております。ああ、あれですね」

 

 見ればテレビ画面で見た赤いギャラドスそのものが自分の眼で確認出来た。赤いギャラドスはあの凶暴そうな顔に大口を開けながらも、悠々と花筏を引き連れて北上していた。

 

「あのポケモン……私のラプラスに比べても随分と大きいわね」

「たしかギャラドスという生物でしたか。画像を拝見しましたが、色が違いますね?」

「……ちょっとちょっとちょっと、あれはまさか……」

 

 降車した後、三枝さんや武藤さんが大きさや色違いについて言及しているけど、あのギャラドスにはたぶんそれ以上の厄介さがある。

 

 1,普通のギャラドス(高さ6.5m)より()()()()()()()

 2,湯気が立ち上るような()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさかあれ、ぬしポケモンか?」

 

 SMで登場した初見で何の対策もしていない場合、苦戦必須のポケモンたち。あとはサポートポケモンが出てくればもうぬしポケモン確定なんだけど、それはバトルしてみないと分からない。

 もしあれがぬしポケモンだったとすれば、彼らはウルトラホールのエネルギーを浴びたという設定だったからやっぱりウルトラホールとウルトラビーストの存在はほぼ確実か。

 

なんて言ってる場合じゃないな。皆さん、あのギャラドスに仕掛けます! いいですね!?」

 

 念のため確認を入れたが、周りの皆はすでに準備万端というところであった。

 

「いい()を期待していますね」

 

 三枝さんはタブレットのカメラで動画撮影も行っているみたいだ。ホント、図太い神経している。

 

「なにか?」

「いいえぇぇ! なあ、ギャラドス! 僕とバトルしよう!」

 

 ラルトスの入ったモンスターボールを突きつけてバトルに誘う。

 

「――ギュオオオ!」

 

 するとギャラドスはこちらを振り向いた後、嘶いた。そしてもう一声嘶いたと同時に現れるは――

 

「――トッサキーントトサキーント!」

 

 頭に鋭い角が生えた見た目金魚のようなポケモン、トサキントだった。

 

「うっわ、これってサポートポケか? とするともうホントにぬしポケ確定か。ていうかトサキントがサポートって、おいおい、まさか……」

 

 トサキントは水タイプのポケモンで、弱点は草と電気。しかし、このポケモンの場合、問題は特性の方で、特性が『ひらいしん』だった場合、厄介極まりない。というのも、『ひらいしん』は電気技を吸収して特攻をアップさせる効果があり、ダブルで来られると、ギャラドスに撃った電気技がトサキントに吸われてどっちにもダメージ無しという状況に陥るからだ。サポートとして呼んだなら弱点を補える『ひらいしん』の可能性が高い気がする。

 そして相手のレベルだけどギャラドスはレベル14、トサキントはレベル11でどっちも僕の手持ち3匹よりは低い。水タイプに弱いのが2匹いるのは気にかかるけど、このレベルならば大した水技は持っていないと思われる。まあトサキントのタマゴ技はともかくだけども――

 

「とりあえずどっちも試してみるか! まずは行け、ラルトス、ヒトカゲ! キミたちに決めた!」

 

 ゲームでは1対2だったけど、別にここではそんな縛りはないし、向こうの方が数が多くてこっちが1匹っていうのは昔から気に食わなかったんだよね。群れバトル、特にお前だよ(努力値稼ぎ以外)。特に特に『がんじょう』イシツブテとココドラ、お前らだよ。

 

「いいよな、ギャラドス?」

「グゥウウ」

 

 まあそこはさておいて、ギャラドスの方も了解してくれたので、いざバトル開始だ!




ちなみにネットボール等を調達したポケストップですが、実際に峯田義郎 作『髪結い』という髪を結う裸婦を模した彫像があります。

「ギャラドス+ひらいしんトサキント」とか「ギャラドス+ひらいしんガラガラ」並にガチな構成……。でも雨ママンボウヨワシ、晴れポワルンラランテスとか見てるとぬしポケってこんなもんですよね。


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ポケモンバトルの資料映像(ゲットまで)

by撮影はわたくし、三枝幸香でございます!

皆様にご忠告を。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

以上のこと念頭に置いてくださいね!


「まずは挨拶だ! ラルトス、ギャラドスに向かって10まんボルト!」

 

 彼が懸念していたギャラドスというポケモン、その一戦がとうとう始まった。私は今は公安の人と共に彰くんを守る立場にいる。ついでにポケモンについてより多くの資料を得るべく、動画も撮るように依頼されている。それは公安の方でもそうなのか、官邸からここまでの運転を担当していた久内と言った彼も同じことをしていた。

 

「ラプラス、私たちを守って」

 

 私はさっきゲットしたラプラスを外に出した。彰くんは『ポケモンはボディーガードにもなる』ということも言っていたので、今はその役割を果たしてもらうためだ。

 

「フアアウゥゥ」

 

 ラプラスも『了解した』というばかりに、彼らをまっすぐ見据えつつ、私の前に背を向けて立ちはだかってくれている。

 

「これは?」

「この子もポケモンなんですよ。ラプラスって言います」

「へぇ。かなりかわいいですね。私も欲しいなぁ」

「頭もいいらしいし、人を乗せて泳ぐのが好きらしいので、今度の休みのときに川か海に連れて行って、乗せてもらおうかと思っています」

「うわぁ!素敵ですね!」

 

 同じ女性ということなのかこの子により魅力を感じてくれただろうと思われる香取さんとの趣味は合いそう。お友達になれないか後で聞いてみようかな。

 

「ソイツがポケモンですか」

「ええ。おそらく警察や自衛隊は即座にポケモン所持をするよう言われますから、武藤さんもどんなポケモンがいいか考えておいた方がいいですよ」

「そうですか。ところで市ヶ谷へは?」

「ええ。すでに総理は連絡済みです」

 

 それを受けて武藤さんはコクリと頷いた。

 先程総理は「やってみろ」と彰くんに仰っていたけども、市ヶ谷からの自衛隊出動待機命令はすでに出ていて、いつでも出動可能状態にある。彰くんが失敗したときの保険だ。彼もそれが分かっているのか、顔色には楽しさもあるけれども、緊張感の色も窺えている。

 

「ちっ! やっぱトサキントは避雷針の方かよ! ラルトス、ヒトカゲ避けろ!」

「ラル!」

「カゲ!」

 

 見ればなんとあのラルトスというポケモンから放たれた攻撃がグイとねじ曲がり、あの新しく現れた金魚のようなポケモン?に当たったのだ。いや、吸収されたと言ってもいいのかもしれない。なぜならば、あのポケモンは攻撃を受けても苦しそうな素振りを見せずに全く平気な顔をしていたからだ。

 そしてその隙を突いて、金魚のポケモンにギャラドスが水面から飛び上がってあの2匹に攻撃を仕掛けていた。尤も、それを悠長にもらう彰くんたちではなく、しっかりとタイミング良く躱していたけど。

 

「あの赤いギャラドスではない方のポケモンはトサキントというらしいですね」

 

 香取さんがスマホで彰くんが描いた絵を表示させた。見比べてみれば、形や色はまんまスマホの中の絵と一致している。

 

「なるほど。正しくトサキントですね。しかし、どういうことなのかしらね」

 

 トサキントは水タイプらしい。見た目金魚っぽいからそれも納得の話。しかし、確か水タイプは電気に弱いということだったけど、あのトサキントは先程の電気技を無効化してみせた様子からして、とてもそうは見えない。

 

「ヒトカゲ、トサキントにりゅうのいかり! ラルトスはギャラドスにあやしいひかりだ!」

 

 ヒトカゲが青紫っぽい色の炎のようなものを吐き出し、ラルトスは7色に明滅しながらフヨフヨと漂う光を作り出した。魚なのに陸に向かって攻撃を放ったために、陸上でピチピチと跳ねているだけのトサキントにはその青い炎がジャストミートした一方、ギャラドスはその巨体をうねらせて水中に戻ったためにその光と接触することはなかった。

 

「トッサ……トサ、キー……」

 

 するとどうだろうか。

 あの炎に当たったトサキントは目を回して倒れてしまった。

 

「うそ? すごそうな技とはいえたった一撃で」

「彼は本当に何者なのか。今日現れたポケモンをあそこまで使い熟すとは」

 

 それはたぶん聞いちゃいけないし、知らなくてもいいことだと思うんだけどね。

 

「よっし! これで10まんボルトが効くはずだ! ヒトカゲはえんまくで補助! ラルトス、10まんボルトだ!」

 

 すると今度こそラルトスの放った攻撃がギャラドスに命中する。

 

「ギュグュオオオオンン!」

 

 赤いギャラドスは目を固く閉じてあの大きな体躯を大きく左右に振っている。これはひょっとして?

 

「あれは嫌がっている仕草ですかね?」

「そうだろうな。どうやらあの攻撃はあのギャラドスには相当の効果があるらしい」

 

「ええ!? ラルトス、中止だ中止!」

 

 私たちのこのままいけば倒せるだろうと思ったそこでなぜか彰くんはそこで攻撃の手を止めるような指示をしていた。

 いったいなぜ?

 そんな思いが胸中に宿る中、答えが文字通り()()()()()浮かんできた。

 

「なるほど」

「まあこれは仕方ないか」

 

 なんというか、あのラルトスの攻撃の余波と言うべきか。ラルトスは水中にいるギャラドスに向かって電気攻撃を撃った。そしてその電気がギャラドスの身体を伝って水中に流れたためか、この千鳥ヶ淵にいたのであろう他のポケモンたちにもそれが伝ってしまったのだろう。ラッコ?のようなポケモンにオタマジャクシ?のようなポケモン、他にもカメやペンギン、アシカ、カニや貝、ワニ、カモノハシ、魚など様々。コイキングもいる。そんな様々な――皆に共通して目に×マークの入っている状態の――ポケモンたちが水面に浮かび始めたのだ。ていうかアシカっぽいのとかペンギンがなんでこんなお堀の中にいるのか。そして、ワニとかカモノハシがなんで(ry 謎は深まるばかり。

 

「ギュオオオオン!」

 

 電気が止んで、ギャラドスはあの凶悪そうな顔をさらに歪めて怒りを表しているように私には見えた。

 

「ラルトス、ねんりきでギャラドスを水中から引き釣り出せ!」

「ラル!」

 

 あんなのに睨まれたら身体が竦んでしまいそうなものだけど、彰くんはそれを物ともしていないらしい。

 

「なるほど。水から出してしまえばまたあの電気攻撃を繰り出せる、か」

「他のポケモンに危害を加えることを良しとせず、あのギャラドスだけを相手する。彰くんらしいと思いますよ」

 

 先程総理に啖呵を切った様子が思い出される。自衛隊の武器を絶対にポケモンに向けさせないという意思を。それが形が変われどこうして目の当たりにすると彼はポケモンのことを知っているだけではなく、もっと他の、いや深い何かを感じ取れる。

 

「もう1回だ! ヒトカゲ、えんまく! ラルトス、10まんボルト!」

 

 そして緑道の車道に乗り上げさせられたギャラドスに向かって再度2匹から攻撃が通る。

 

「ギュオオオ、オオ、オ……」

 

 苦しそうな声を上げながら、ギャラドスはそのまま身体を横たえた。尤も、頭だけはまだ起きて彰くんを睨み付けているのだけど。

 

「ものは試しだ! いっけぇ、モンスターボール!」

 

 もうほぼ終わりかと思っていたところで、彰くんはスマホからモンスターボールを取り出すとそれをギャラドスに向かって投げつけた。

 

「彰くん、ゲットするつもりなの!?」

 

 回転がかかったボールはそのままギャラドスに当たる。するとボールの口が開き、ギャラドスの身体がモンスターボールに吸い込まれた。

 

「失礼、ゲットとは?」

「ポケモンを捕まえることです。ああしたモンスターボールを使って」

 

 武藤さんの質問に答えながらもモンスターボールの揺れを見つめる。一度これは新居高先生がゲットするところを見たけど、他人のことでもやっぱり固唾を呑んでしまう。

 だけどここで予想外なことが起きた。

 

「うそっ!? 失敗!?」

 

 なんと一度モンスターボールに入ったギャラドスが外に出てきてしまったのだ!

 

「あ」

 

 

  ――「まだです!」

 

  ――「まだ!」

 

 

 そういえば先生がナックラーをゲットしたときもそうだった。ボールに入った後も、彰くんはナックラーの入ったボールを注視していた。

 

『ボールの揺れとスイッチの点滅が消えて初めてポケモンがモンスターボールに入ったことになります。それまでは油断出来ません』

 

 あの後、移動の車中で聞いたところ、こんな答えが返ってきた。なるほど、あれはこういうことを意味していたのか。

 

「失敗。こんなこともあるんですか。興味深い」

 

 武藤さんを尻目に彰くんはどうするのかと見ていれば、スマホをいじって新たなボール?を取り出した。

 

「なにかしらあれ? モンスターボールじゃないわ」

 

 モンスターボールの赤い部分が水色っぽくなっていてさらにそこに網目模様が描かれているボールだ。

 

「ボールは弾かれるかと思ってたけど、まさかボールに入るとはな。ということはお前はゲット出来る! 失敗したのはボールの捕獲率とポケモンの捕捉率が上手く噛み合わなかっただけだ! ならコイツで決める! 頼むぞ、ネットボール!」

 

 彰くんはまだギャラドスゲットを諦めていなかったらしい。手に持つそのボールを1投目と同じ要領でギャラドスに投げつけた。そして1投目と同じくギャラドスはボールの中に入る。

 

「頼む!」

 

 彰くんは手を組んで祈るような仕草を見せているけど、私とて今は彼と同じ心境だ。

 

 一度。

 車道の石畳の上に落ちたボールは、小刻みな揺れとスイッチの点滅を伴いながらも、まずは1回大きく揺れる。

 

 二度。

 2回目、大きく揺れる。

 

「お願いよ……!」

 

 私も彰くんと同じく祈るような面持ちでそれを見つめる。拳に力が入る。雰囲気で周りもその空気に当てられてか食い入るようにボールを見つめているのが分かった。

 

 三度。

 3回目の大きな揺れが来た。

 これで何も起こらなければ――

 

 

 ――カチッ

 

 ――ポォン

 

 

 小さいはずのその音が周囲に響き渡った。

 

 

 彼、私、そしてさらに遅れて周囲の順に歓喜が爆発した。




御子神君はひっかくなどよりは定量的ダメージを与えられるりゅうのいかりの方がダメージが高いと判断して、りゅうのいかりを指示してます。ちなみにレベル11トサキントはゲーム仕様ではりゅうのいかり一撃で昇天します。

今回はストーリーの都合上、三枝さん視点になりましたが、他の人の視点でのストーリーも執筆中ですので、しばらくお待ちください。

題名通り録画されてますので、これがいずれ官房長官辺りの会見にて解説付きでマスコミに流されるという。


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掲示板住人の話 秋草心陽の場合

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 私の名前は秋草心陽。心陽と書いて『こはる』と読ませる。初対面の人だとまず読めない。心に太陽のようなあたたかさをという意味でつけられたみたいなんだけど、ちょっとDQNネームと同じような扱いをされるのはひどく納得いかない。ATOKなら“こはる”で一発変換出来るんだゾ☆

 そんな私も現在は神奈川県立杉田高校に通う高校2年生。制服がコムサ・デ・モードのブランド制服で、このシックで大人っぽいデザイン制服に惹かれてこの学校を選んだ口だ。

 そして今日は土曜日。授業は休みだけど朝からバトミントン部の部活動がある。だから休みにしては自室で早起きしたのだけども――

 

「ピッチュ!」

 

 え?

 

「ピチュ?」

 

 なにそれ?

 

「ピッチュピチュー!」

 

 こんなの聞いてない――

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「お、おとうさん! おかあさん!」

「どうした、心陽?」

「姉ちゃんどうしたのさ?」

「ていうかさっき部屋でなにかどったんばったんやってたでしょ? 朝から近所迷惑になるんだからやめなさい」

 

 朝起きてからあまりのことで呆然とした後に扉を閉鎖して、そのまま2ちゃんに突撃。なんかそれっぽいスレをザッと掘って書き込むと、急いでダイニングに駆け込んだ。

 出迎えたのは家族である私の両親に弟の雅照の3人。何事もなくいつもの土曜日のような感じで朝食のひとときを過ごしていたと窺える。いや、1つ違うとすればテレビの中に映る映像か? いつもは芸能関係が主だったこの時間なのに何やらニュース原稿を読むアナウンサーの声が聞こえてくる。

 

「わ、私の部屋」

「部屋がどうしたのよ?」

「お、おっきくて、変な生き物がいるの!」

 

 すると3人は顔を見合わせる。

 

「大きいってどのくらいだ?」

「たぶん2,30cmくらい!」

「「「でかっ!」」」

 

 ほんの一頻り驚くも、直ぐさまおとうさんが席を立った。

 

「父さんが行こう」

 

 そして何か武器になるようなものはないかと探しに行った。

 

「あ、ひょっとしてコレとか?」

「うーん、どうなのかしらね?」

 

 弟はテレビを指差しておかあさんは頬に手を当てている。

 

「ちょっとお父さんの後を見に行ってみる?」

「賛成!」

 

 ということで私も一緒に部屋にUターンすることになりました。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「ん? 何か聞こえるな」

 

 私の部屋のドアの前で佇むおとうさん。

 

「ピチュ、ビチュウゥ」

 

 ドア越しにくぐもった声が聞こえる。

 なんだろう、これ?

 

「ピッチュ、っビッチュ」

 

 ひょっとして泣いてる感じ……なのかな?

 

「なんだ結局全員来たのか」

 

 おとうさんは呆れた様子でため息をつくも私の部屋のドアに向き直った。

 

「みんな父さんの後ろにいるようにな」

 

 そうしてドア前に置かれたものをどかして、ゆっくり、ゆっくり、それこそ水滴が溜まってから滴り落ちるぐらいのスピードでドアを僅かに開ける。そのままその隙間から片目だけで室内を覗く。

 

「…………」

 

 おとうさんが部屋の中を覗いてるときはさっきドアの外に聞こえた声が大きくなった以外は静かだ。でも、やっぱりこの声。私にはどう聞いても泣いてるようにしか聞こえない。

 

「……たぶん大丈夫だ。みんな開けるぞ」

 

 そして驚かせないようにという配慮か、音が鳴らないように気を配りながらも普通にドアを開け放った。

 

「ピッチュ、ビッチュビチュウゥゥ」

 

 やっぱりそうだ。あの子の目からは涙がポロポロと流れ落ちている。それを小さな手で拭おうとするも、止めどなく湧き出ているという感じだ。

 

「……なぁ、姉ちゃん、あの子に何やったのさ?」

「え、いや、だって……」

 

 見れば3人ともシラーッとした目で私を見ている。

 

「だって仕方なくない!? 部活だーって起きたら、いきなり訳わかんない生き物がそこにいるんだよ!? 普通は驚くでしょ!?」

「で? その後は何をしたのよ?」

「とりあえず飛びかかってきたから、その勢いを利用して巴投げぶちかましちゃった後、部屋出てドアの前を封鎖しました」

「「「ハァァァ~」」」

 

 うわ。確かに今の様子を見ると思うところはあるけど、そんな大きなため息をつかれるのは心外なんですけど。

 

「心陽。父さん、高校入って少しはお前にもお淑やかさが出てきたかと思ったのに」

「やんちゃなのは昔のままねー」

「姉ちゃん、あの子かわいいじゃん。それを巴投げって、女子力低っ」

「う、ちょ、ちょっとは反省します。でも、雅照てめぇはちょっと待てこっちこい」

「うあだだだっ! だから、そこがダメなんだよ~! 離せよ、筋肉バカ! ゴリ姉!」

「失礼ねっ!? そこまで腕太くないし! 第一、男のあんたが私より弱いとか情けないと思わないの!?」

「柔道全中ベスト8に勝てるか、バカ!」

 

 とりあえず弟の言は聞き流せなかったのでキツ目のアイアンクローやってたら、背中にドンという衝撃が来た。

 

「ピッチュ!? ピッチューー!!」

 

 振り返ればあの泣いていた子が私の肩に飛び乗っていたのだ。白いハイライトの光るそのまんまるの黒い目には涙が浮かんでいたが、それ以上に嬉しそうに私にすり寄るその姿を見て、私はそれまでこの子に取ってしまった行動を大いに反省した。

 

「ピッチュ?」

「ううん、何でもないよ。さっきはゴメンね」

 

 そうして私はこの子の頭に片手を乗せると軽く撫で回した。

 

「ピチュ? ッ!? ピチュピッッチュ!!」

 

 するとキョトンとした後、次には嬉しそうに目を細めながら頭を私の掌に擦りつけてきた。

 

「うわ、ちょ、やばっ」

 

 私はその光景に思わず胸がときめいた。変わらず、彼?彼女?は自身の頭を私の掌に擦り付けている。

 

「うわぁ、何この子超かわいいんですけど」

「でも、そんな子にあなたがしたことは?」

 

 アッハイ、スミマセン。

 とりあえず、謝罪も込めて喉元をちょっと擽るように撫でさすってみた。

 

「ピチュ? ピッチュピチュチュー!」

 

 するとこの子は嬉しそうな声を上げながらも、「もっと! もっと!」とせがんでくるような仕草を見せる。

 

「そういえばあなたは男の子? それとも女の子なのかな?」

 

 ネコっぽいようなネズミっぽいようなこの生き物。たぶん動物なんだと思うんだけど、ならば雌雄の別があってもよさげなもの。

 

「ピッチュ?」

 

 多分だけど、この子は賢い。非常に賢い。振る舞いから、恐らく私たちの言葉も何となく分かっているような気がする。

 ならば、試しに本人に聞いてみるのが一番だと思う。

 

「男の子?」

「ピ」

 

 すると首をプイッと反らす。心なしか唇も尖らせているように見受けられる。

 

「じゃあ、女の子?」

「ピッチュ!」

 

 すると今度は満面の笑みを浮かべて頷いた。

 

 やっぱりだ。この子は人間の言葉をきちんと理解している。今までこんなに人間の言葉を理解する生き物なんていたんだろうか。

 

「ちょっ! 姉ちゃんん!!」

「心陽、そろそろ雅照を離してあげなさい」

 

 あ、素で忘れてたわ。

 

 とりあえずは弟は解放してあげた。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 その後どうなったかというと。

 

 

   とりあえず家族会議開催

       ↓

   この生き物を飼っていくことを決定

       ↓

   「でもこの子のこと何にも知らんベ?」

       ↓

   各自で情報収集 ←今ココ

 

 

 つーことで今私は部屋で2ちゃんに張り付いてる。部活は中止、学校からは「家から出るな」的な連絡が来たから、ちょうどいいっちゃちょうどいいわけだけども……。

 

「なに、これ……」

 

 とあるスレを開いていたときに見つけたURL。主に自身で描いた絵を投稿するサイトのそれを「すぐ見てみろ!」なんてことで書かれてたから、開いてみたら……。

 

「え、えー……。てかコレさっきチラッとテレビに出てたやつじゃん……」

 

 そこにはなんとテレビで『不明生物!』と言われていた生き物が名前付きで描かれていたのだ。

 

「……うそ?」

 

 訂正。試しにどれか1つのページ――何となくこの子に似てる気もしなくもないチャーミングな見た目の生き物、ピカチュウ?――のを開いてみたところ、名前どころか身長や体重、他にもよく分からない何かの項目や説明書きが書かれたページが現れたのだ。

 掲示板住人の戸惑いもよく分かる。私もそうだ。

 

「なん……なんなのよ、これ……」

 

 そうして隅々にまで目を通していく。かわいいけど電気が強力みたいらしい。

 

「ん?」

 

 ページのリンクが貼ってあることに気がついた。

 

「進化前:ピチュー、進化後:ライチュウライチュウ(リージョンフォーム)……ピチュー!?」

 

 おいちょ待てや。ピチューっておま……!

 

「ピッチュ?」

 

 家にあったテニスボールがお気に入りなのか、後ろでコロコロ転がして遊んでいるあの子を見やった。

 

「ピチュー……鳴き声が同じ……いやよく似ている? とにかく確かめてみないと」

 

 そうして意を決して ピチュー の項目にカーソルを合わせてダブルクリック。

 

 

 

 

 その後?

 

 そのページと、あと2chスレに張り付きながら本日2度目の家族会議じゃわい。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

『我々はこの不思議な不思議な生き物を……ポケットモンスター……縮めて、ポケモン……そのように呼称することを決定しました!』

 

 全員ダイニングでNHK視聴なう。

 

 総理の手元には紅白模様のボール、モンスターボールが置かれている。()()()()()()()()

 あれから、家族総出であのスレに張り付き、あのピクシブーンのページを(ひた)漁り、ヨウツベやツィッター、インスタ等に張り付き、情報を漁った。結果、この子、ピチューも含めて彼らはポケットモンスター、縮めてポケモンといい、既存の生物とは全く異なる生き物であるということがわかった。なぜなら、普通の生き物がピンポン球~野球ボールサイズに変化するモンスターボールという謎のシロモノに入るか否かはバカでも想像がつくと思う――仮に入るなんて言えば「あなた疲れているのよ。一度お眠りなさい」とか「病院行く? 頭の」なんて言われること間違いなし――

 そしてヨウツベ動画で見たポケストップとポケモンの捕まえ方を参考に私、それからなんとおとうさんもポケモンを捕まえ、いや、もう言い直そう、ゲットした。私は当然のことながらピチュー、そしておとうさんはなんとイーブイをゲットした! あんなキュートでチャーミングなポケモンをゲット出来るなんて超羨ましい! 

 

「……ピッチュ」

「うぇい? ああご、ゴメンねミギー(ピチュー)ちゃん。あなたも十分可愛らしいからね!」

「チュー♪」

 

 あぶな。この子、頬の電気袋から電気が迸ってたから、慌てて(なだ)(すか)した。もう、嫉妬深いんだから。

 何はともあれ、親父、ハゲr

 

「あ゙? なんか言ったか、心陽?」

 

 なんでもないですサーセン。

 とりあえずおとうさんは今家族の中の嫉妬を受けること間違いn

 

「何言ってるのよ。あなたのミギー(ピチュー)ちゃんだってピカチュウやライチュウになるんでしょ? 十分かわいいじゃない。羨ましいわ!」

「そうだぜ、姉ちゃん。それにそのピチューかなり珍しいんだろ? ならレアリティは姉ちゃんの方が上じゃん。ま、俺はどっちかっつーとかっこいい系の方が欲しい気もするな」

 

 でもなかった。むしろおかあさんの嫉妬がこっちにも降りかかってきてます……。

 

「にしてもお父さんもミギー(ピチュー)ちゃんのように名前決めないの?」

「いやぁ、なかなかに難しくてな(作者がNN募集するの忘れててな)

「そうなの。まあ、私もイーブイちゃんやミギー(ピチュー)ちゃんのようなかわいい子を捕まえないと!」

 

 握り拳作ってるその姿はなんだか炎を纏っているような幻視が見えた。

 

 あ、そうそう。

 雅照が言ってた「レアリティが上」ってやつだけど、私のピチューは左耳の先っぽがギザギザになっているのだ。あのピクシブーンのピチューの説明書きには『あれはくせっ毛』らしい。あれで毛とはいったい・・・うごごご! そして『ピチュー自体も珍しく、さらにギザみみなのは“非常に”という言葉を幾つも重ね掛けしても良いほど稀』ということらしい。やったね!

 

「にしても思ったんだけどさ」

「どうした、雅照?」

「いやさ、ネット漁ってたら、日本にいる普通の生き物がほぼ全部ポケモンになったみたいだしさ?」

 

 そういや、NAVERとかでそんなまとめも見たなぁ。

 

「それがどうしたのよ?」

「いやさ、姉ちゃん、考えてみろよ。例えば魚とか牛とか豚がポケモンに変わったんだろ? てことはだ――」

 

 ダンッ――!!

 

 するとダイニングのテーブルを叩き付けておとうさんが立ち上がった。あまりに急だったためか、その拍子に、座っていた椅子すらも倒れてしまっている。

 

「まさか! そういうことなのか!?」

「じゃ、ないかなぁ」

 

 

 ――動物とかいなくなったんなら俺らなに食べてけばいいわけ?

 

 

「「あ……」」

 

 私とおかあさんの声がシンクロしてしまった。

 

 オイちょっと待てよ。これガチでヤバい事態じゃないのかよ……!

 

「全員今すぐ車に乗り込め! 買い出しに行くぞ!」

 

 おとうさんのその一言で我が家の今日午後の行動予定が決まった。

 




ピチューのニックネームは『かそくしまーす』さんの『ミギー』とさせていただきました。
ニックネームアンケートにご協力してくださった皆様、ありがとうございます。


シリアスにしたくなかったのにそれっぽくなってしまった。
何度か申し上げてますが、この世界は現実よりも「優しい」世界です。「ふわっとした」世界です。よろしくお願いします。

それから伝説系については『ほとんどはまだ』条件未達成なので、出現しません。存在していることは間違いありませんが。

また一部設定が変わっているポケモンがいます。例としてはアローラカプ神4体(アローラそれぞれの島を護っているのではなく――)。
ちなみにどっかの某国連中が空から海から日本にちょっかい掛けてくれば――


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ぬしポケモンバトルの報酬

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


「出ておいで、ギャラドス!」

 

 ゲットしてボールに収まったギャラドスを今一度外に出す。

 

「ギュウオオ」

 

 今さっきバトルしたばかりでダメージが残っているので、些か元気がない。

 

「ギャラドス、今後ともよろしくな」

 

 とりあえずはまず挨拶だろと思ってやってみたら素直にコクンと頷いてくれる。どうやら言うことを聞かないという事態にはならなそうでホッとした。ゲームだと自分でゲットしたポケモンは必然的にミュウツーだろうがアルセウスだろうが言うことを聞いてくれたが、ここでもそれが通用すると楽観は出来ないように思える。コイキングから育てていたら大丈夫だろうけど、ギャラドスは気性は荒いからそういうことになってもおかしくはないと思っていたのだ。これなら回復しても大丈夫そう、かな。

 

「ギャラドス、お前を回復させたいんだけどいいかな?」

 

 すると、ギャラドスは僕が思ったのと正反対の反応――首を振って拒否をした。

 

「えっ?? うっそ?」

 

 こんなことってあるのか?

 

 そんな思いに囚われていると、ギャラドスは顔を僕の前に近づけてきた。

 

「ラル」

「カゲ」

「グモ」

 

 すると外に出たままの2匹にさらにモグリューまで出てきて警戒を表すが、ギャラドスはそれに気にせず、僕の足元に向かって何かを吐き出した。

 

「んー? なんだこ、れぇぇぇぇ!?」

 

 おいちょー待たんかい!

 拾い上げてみると、この半透明の菱形みたいな形をした四面体、中心部に浮かぶ紋様、そして何より()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なあ、ギャラドス、これってZクリスタルか?」

「ギュオ」

「しかも2つ。これは……水と飛行のZクリスタル、ミズZとヒコウZか?」

「ギュ」

 

 ミズZヒコウZ共に青系統のクリスタルだけど、ゲームではお世話になっていたので、確認も込めて聞いてみたら、やはりそうらしい。

 

「これは僕がもらってもいいやつなんだよな?」

 

 ギャラドスはこれに頷きで以て返答した。

 

 アニメやゲームではぬしポケモンとZクリスタルは切っても切れない関係だし、アニメではぬしポケモンが直接Zクリスタルを手渡す場面もあった。

 今になって思えばコイツをゲットして良かったのだろうか。Zクリスタルくれるぬしポケって貴重なんじゃ……。

 

「なあ、お前の他にぬしポケモンって結構いるのか?」

「ギュオ」

「そいつらはお前のように、勝てばZクリスタルをくれる?」

「ギュ」

 

 首を縦振りの全肯定。なら問題ないか。なるほどなるほど。

 いや、でも待てよ? ということは結構そこらにぬしポケモンがいるってことになるような……? それはそれでどうなのよ?

 

「あ、ちなみにZリングくれたりは?」

「ギュギュ」

 

 ああ、それについてはくれないのね。自力で探せと。まあそこまで甘くはないわなぁ。

 でも、手がかり無しは流石に厳しすぎやしませんかね? せめてヒントになりそうなものを……。

 

「ぐ、おああぁぁぁ」

 

 そんなことを考えていると、ギャラドスは大きな、まるで欠伸をしたかのような口を大きく開ける動作をする。その後、目を閉じて脱力して横たわると(いびき)をかいて眠りだした。思えばZクリスタルを渡すときに目をショボショボとさせていたので、相当眠かったのか。今は、まるで役目は果たしたとばかりに眠りこけている。

 あれ、これってねむるって技? ならばひょっとして回復アイテムいらない?

 

「彰くん、もう大丈夫なのよね?」

「ええ」

「わかった。ラプラス、護衛ありがとう。戻って」

「クアア」

 

 そんなことを考えていたら、ラプラスをボールにしまいながら三枝さんが現れた。

 

「とりあえずこれでギャラドスは押さえました。自衛隊の出動はありませんよね?」

「ええ。先生を通して総理にもお伝えしたし、自衛隊の方からも偵察は出ていて、それ越しに防衛大臣、総理と連絡が行ったはずよ。おつかれさま」

 

 そうして三枝さんは右手を差し出してきた。

 

「ありがとうございます」

 

 僕の方も右手を取って握手で返す。

 

「やあやあ、御子神さん、お疲れ様です」

「武藤さん、ありがとうございます」

 

 今度は武藤さんの方だ。

 そういえばギャラドスをゲットした後、一時姿が見えなかったけど?

 

「いやぁ、なんと言いますか、棚ぼたですね」

「は?」

「ほら、御子神さんのポケモンでこのお堀のポケモンにダメージがいって技を中断したときがあったでしょ? で、上の方からも「ポケモン持て」みたいな話があるだろうし、なら折角だから今浮かんじゃってるポケモン捕まえちゃおうって指示出してたんですわ」

 

 そう言って武藤さんの指差す先を見ればボートに乗ってる背広を着たオッサンたち。それらが浮かんでいるポケモンに近づいていってモンスターボール当ててゲットしまくっている。他にも自衛隊の制服を着てる隊員もいて、彼らも同じようなことをやっていた。

 

「あ、私も1匹欲しいポケモンがいるんですけど、後でもらってもいいですか?」

「ええ、どうぞどうぞ。捕まえた中からいきます? それともご自身で?」

「んー、まだゲットされてないみたいですから、自分で行きます。ラプラス、ゴメンね、もう1回お願い!」

 

 そうしてラプラスを水面に出すと三枝さんはラプラスに乗りたい旨を告げる。

 

「クア? クアア! コアアァ♪」

 

 するとラプラスは嬉しそうに陸地スレスレにまで寄り、三枝さんも柵を乗り越え斜面を降りてラプラスの背中の甲羅に飛び乗った。立っているのは安定性に欠けるのかあのややゴツゴツとした甲羅に腰掛ける。

 

「じゃあラプラス、私の指差す方に進んでもらえる?」

「クアアァァ♪」

 

 するとラプラスは見るからにご機嫌な様子で水面を渡り始めた。人間ならば鼻歌交じりだろうなと想像出来るほどだ。

 

「ふーん、ラプラスって本当に人を乗せて泳ぐのが好きなんだな」

 

 ラルトスとかもそうだったが、ラプラスも図鑑通りの設定が反映されているように思える。とするならば、やはり今後は凶暴とされるギャラドス、バンギラス、ボーマンダ、サザンドラ、キテルグマ辺りも図鑑説明が反映されてそうである。ゴースト? 毒? 近寄らなかったり刺激しなければ何とかなるっしょ(震え)

 やっぱり官公庁もそうだけど一般にも早く広がってほしい。1人最低1匹、もっと多くてもいいよ。そうすれば、何かあったときとかも対処出来るし。

 

「おーい! そっちにも浮かんでるぞー!」

「了解でーす!」

 

 ……にしても思うんだけど、こう、一網打尽(?)にゲットするのってなんだかロケット団とかポケモンハンターの手法に似てない? 官公庁がそんなようなことやっていいんすかね? あ、誰にも文句は言われない? まあそうだよねぇ。

 

「コイキングどうしますかー!?」

「一応捕まえとけー! 育てればあんな強そうなポケモンになるみたいだからな!」

「あーい! りょうかーい!」

 

 その後、ポケモンゲット祭りはしばらく続いていた。

 

 ちなみにその間僕は何をしていたかというと、捕獲に失敗したモンスターボールを回収していた。ゲームでは失敗したボールは消滅扱いになっていたけど、ここでは当たり前だけど、そうはならない。

 

「うーん」

 

 大きくなっていたままだったので、小さくするために中心のボールスイッチを押す。

 しかし、カチ、カチと音が鳴るだけで、ボールはウンともスンとも反応しなかった。

 

「あー、こりゃあ完全に壊れたのかなー」

 

 とりあえずこのボールはもう使えそうもないというのが分かった。

 

「でもこれどうするか。嵩張るからしまえないかな」

 

 ポケモン由来の道具だし、元はスマホから取り出した道具なのだ。スマホにしまえてもおかしくはない……はず。

 ということでボールをスマホに当てて試してみると、すっと消えていった。どうやら、それは成功したらしい。

 

「でも、これ、どういう扱いになっているんだ?」

 

 ゲームにもない仕様、気になってアプリを操作してみてた。すると、“道具”の項目にまた『New』という表示されている。

 

「ほお! 『壊れたもの』、ねぇ」

 

 そこには新たにそのカテゴリが出来ていて、そこに今スマホに消えていった『壊れたモンスターボール ×1』という表記がなされている。

 この初めて見る仕様に“トレーナーパス”のヘルプ機能を参照してみると、きちんとした説明が載っていた。

 

 

 捕獲に失敗したモンスターボールや使い終わった道具・技マシンなどは“道具”の『壊れたもの』フォルダに収納することが出来ます。これらは一見使い道がないように見えますが、ポケストップにて僅かばかりではありますが、歩数と交換をいたします。トレーナーの皆様にはそれらを道端には捨てずに回収していただき、エコにご協力いただきますよう(笑)お願いします。

 

 

 なるほどなるほど。所謂これは一種の換金アイテムという訳ね(ちなみに技マシンは1回使用で使い捨てタイプと永久に使えるタイプがあり、使い捨てタイプの方が安いという事情がある)。

 

「でも、現状ではこの壊れたモンスターボールって貴重そうだから、なにかの研究用?のために取っておいた方がいいのかな」

 

 その辺は対策会議の面々と相談だろうと思う。

 

 そうこうしているうちに千鳥ヶ淵ポケモンゲット祭りも終わったらしく、ボートに乗っていた人員はほぼほぼ引き上げていた。

 

「ほほう。結構あるな」

 

 公安の方で確保したモンスターボールを久内さんが持っている。ボールが小さくなっていないとはいえ、ちょっとしたごみ袋一杯分はありそうである。これらは公安に持ち帰って人員に振り分けるそうだ。

 

「我々はゲットに貢献した特権といいますか、既に選んでいます」

 

 そう言って見せたモンスターボールを香取さんは放る。中から飛び出してきたのは、シンオウ御三家、ペンギンポケモンのポッチャマだった。

 

「あら! かわいい子ですね!」

「ええ。それに中々いいポケモンを選びましたね」

「ありがとうございます。かわいさでアシカの子と迷ったのですが、直感でこちらにしました」

 

 女性同士似たものを感じるのか、2人はポッチャマのかわいさ、魅力について語り合っていた。

 ちなみに、久内さん、武藤さんも紹介してくれ、久内さんがコダック、武藤さんがニョロモとコイキングをそれぞれ選び取っていた。

 

「コイキング、育てるのは大変ですよ?」

「しかし、あのギャラドスは魅力的です。かっこいいですよね」

 

 なんだか頑張って育成するみたいなやる気だったので、武藤さんにはゲーム的育成論(バトルに出してすぐ交代とがくしゅうそうちの存在)を教えといた。

 

「そういえば三枝さんは何をゲットしたんですか?」

「むふふ、この子!」

 

 それから、戻ってきた三枝さんはそう言ってポンとボールからポケモンを出す。

 

「ワニ! ワニワニワー!」

 

 それはジョウト御三家の一角、おおあごポケモンのワニノコだった。かわいさと陽気さがゲットの決め手だったらしい。本当はルリリをゲットしようとしていたらしいが、雑巾臭いから止めたそうだ。




ギャラドスのヒコウZは事故(と割り切った)。
といいつつ私も使ったりしてました。
マリルが雑巾の臭いがするということでマリル系統を雑巾の臭いにしました。ただし、きちんと洗ってあげて懐いてくれば臭いはなくなります。


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ポケモンの道具は

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 プオオオオオオ! プオオオオオオ!

 

そろそろ官邸に戻ろうかといったところで、SLの汽笛のような音声が辺りにつんざいた。

 

「あ、僕のスマホですね」

 

 ポケットから取り出して液晶画面を見るに、新出先生からの本日3回目の着信。周りに一言断ってから電話に出てみると――

 

「お疲れ様です、先生。どうしました?」

『御子神くん! 助けてくれ!!』

 

 なにやら穏やかでない状況のようだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「いっけぇ、モンスターボール!」

 

 目の前には下の方の我が娘汐莉が両手で2つのモンスターボールを投げている。辿々しさが妙に愛らしい。それと両方の手で同時に投げたこともあって投げたボールは5mも飛んではいないが、それらはきちんと2匹のポケモンに当たる。小刻みに揺れた後、スイッチが消灯して無事に我が娘はポケモンをゲットできたようだ。

 

「やったぁ! パパ、ママ、お姉ちゃん、やったよ!」

「うんうん良くできたね~、汐莉ちゃん」

「汐莉ぃ、すごいぞ~」

 

 妻の美波に上の娘の朱莉が『よしよし~』と頭を撫で褒め称えると、汐莉もニコッと年相応の笑顔を浮かべる。実に微笑ましい光景だ。

 

「これであとはママだけだね~、ポケモン持ってないのは」

「そうねぇ。出来れば朱莉の子よりもかわいい子がいいわ」

「えー、お母さん、私のポケモンかわいいじゃん」

「いや、お母さん朱莉のその美的センスは女の子としてはどうかと思うのよね」

 

 娘よ、実は私も少なからずそう思っているぞ?

 

「お姉ちゃんのポケモンなんだっけー?」

「んっふっふー! この子よ!」

 

 そういった心持ちは朱莉に伝わることはなく、当の朱莉は喜々として自分のゲットしたポケモンを外に出した。

 

「モン、モンモジャ」

 

 青い草の蔓で全身を覆われているポケモン。蔓の影で目元もハッキリとしない中、真っ赤な靴がアクセントとして際立つポケモン。

 

「モンジャラ~♪」

「モ、モジャ~♪」

 

 朱莉はガシッとモンジャラに抱き寄り、モンジャラも自身を覆うその蔦を幾重も伸ばして同様の行動を取る。

 

「うわぁ、なんかエイリアン系の映画で人が取り込まれて吸収される絵面にしか見えないわ……」

 

 妻の言い分は非常にわかる。正直その通りにしか見えないのだ。下手に他人が見たら警察とか呼ばれる事態にもなり得るかもしれん。

 

「ん~、なんかお姉ちゃんポケモンと仲良さそう。汐莉もポケモン出すー!」

 

 まあ仲が良いというのはよく見て取れるので、汐莉も真似をしたくなったのだろう。汐莉は朱莉に結構懐いているからな。

 そうして汐莉は先程ゲットした2つのボールを投げ上げる。

 

「ニド、ニドー!」

「ニードー」

 

 出てきたのは兎のような2匹のポケモン。片方は角が長くて体色が全体的に紫、もう一方が角はないに等しく、体色は薄い青。まだモンジャラというポケモンよりはかわいらしい。あー、名前は――

 

「ニドランですって。オスとメスのペアみたいよ」

「早いな。どうやって調べたのだ?」

「“図鑑”って機能があるでしょ? それでよ」

「なるほど」 

 

 そうして我々が目を離した隙だった。

 

「ちょっ!? 汐莉どうしたの!?」

 

 朱莉の切羽詰まったような声に思わずスマホ画面から顔を上げた。

 

「汐莉!? どうしたの汐莉!!」

「汐莉!!」

 

 駆けつけてみれば先程までとは一転して力なく俯せに倒れ込む娘の姿。

 抱き起こして顔を見れば額は玉のように発汗して血の気も失せ、呼吸もやや浅い状態。なのに脈は明らかに早い状態。このままでは非常に拙い。

 

「美波! 救急車だ! 急げ!」

「わ、わかったわ!」

「朱莉! AEDの場所分かるか!?」

「う、うん! おとうさんがいつも言ってる『日本全国AEDマップ』だよね!」

「そうだ! 頼むぞ!」

「任せて!」

 

 そうして妻と娘が駆け出していく音が聞こえた。

 

「さてどうする? 毒っぽい症状だがどういう毒なのかが見当もつかん」

 

 心臓はどうやら動いており、心臓マッサージは必要なさそうだ。呼吸も一応はしているので、一先ずは横向きに寝かせ窒息を防ぐ。尤も止まる可能性もある。そして呼吸困難の症状だが、うちの娘は心身共に健康でアレルギーも喘息もない。つまりは持病ではない。原因は――

 

「ニ、ニドー……」

 

 ――申し訳なさそうにしているニドランの様子が視界に入った。

 

「そうか! ポケモン! ならば!」

 

 私はすぐさまこの事態に一番に対処出来そうな人物にコールを入れた。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「なるほど。状況は分かりました」

 

 新出先生の下の娘さん、汐莉ちゃんがニドランに接触して、おそらくだが毒状態になったようだ。そしてこの通話の内容は三枝さんの指示でスピーカーとテレビ電話状態にして聞いていた。

 朱莉ちゃんや汐莉ちゃんとは新出先生のお宅にお邪魔したときには必ずと言っていいほど遊んであげた仲だ。是が非でも助けてあげたい!

 

「先生!」

 

 人間にポケモンの道具が効くのかはわからない。しかし、試してみなければ何も始まらない。そこでダメ元とばかりに、毒状態を治すことの出来る道具を片っ端から挙げてみることにした。

 

『どくけしなら持っている!』

「なら、それを出してください! 見た目はどんな感じですか!? スプレー式ですか!? それとも別の何かですか!?」

『オレンジのスプレータイプだな! 中は……液体が入っている! どうする!?』

 

 やっぱゲームと同じスプレー式! ポケモンだったらたぶんそれを吹きかければ……いや待て、どこに吹きかけるんだ? 毒だったら全身を蝕んでるだろうし。口から飲ませるのか?

 

『待て! 容器の外に使い方が書いてある!』

 

 そういわれて僕も実際にどくけしを取り出してみることにした。

 容器はどこかにありそうなスプレーボトルのデザイン。スプレー部分が白っぽい以外は半透明のやや薄いオレンジの塗色で、中の液体が揺れ動いているのが、鮮明にではないけど見て取れる。

 で、その使い方とやらは確かにボトル部分に書いてあった。

 

「飲ませても全身に吹きかけても良いようですね!」

『そのようだ! ならばまずは飲ませてみることにする! 幸いどくけしはもう1本ある! こちらは万が一の全身用にするとしよう!』

 

 スマホは地面に置かれたようで、映像は見られないので、僕たちは向こう側の音声に注意を払う。受話口からは焦らず落ち着いた声で汐莉ちゃんにどくけしを飲ませているだろう先生の声と弱々しいながらも汐莉ちゃんの声が聞こえる。意識ははっきりとしているようだ。

 

『どうだ? 汐莉?』

『……うん、なんかさっきよりラクになったかも……』

「先生、汐莉ちゃんの様子は!?」

『ああ、今見せる』

 

 そうして急に液晶画面が明るくなり、汐莉ちゃんの様子が映し出される。

 見れば疲れは見せているものの、先程の苦しそうな息継ぎは影も形もなく、僅かだが笑顔も浮かんでいるようであった。

 

「うっそ」

「マジかよ……。さっきまで重病人みたいな感じだったのに」

 

 周りの反応に大いに頷きたいところもあるが、何にせよ、無事っぽそうな感じが見て取れた。

 

『呼吸も落ち着いたし、顔色も赤みが差している。脈拍もさっきよりは大分正常に戻った。念のため検査してもらうが、一先ずは大丈夫だろう』

 

 

 ――ありがとう、御子神君。汐莉は助かった

 

 

 精神科医とはいえ医者であるし、直に見ている先生のその安堵したような声と言葉で思わず僕も緊張からか力んでいた力が抜けた。思わずアスファルトに尻餅を付いてしまったほどだ。三枝さんたちの纏う緊張感も呼吸で肺から空気が抜けていくように霧消していった。

 

「いやー、良かったです。モモンのみか、あるいは食べやすさ的にいかりまんじゅうやミアレガレットなんかの食べ物系でもあれば良かったんですが。実は正直な話結構賭けだったんですよねー」

 

 まあアニメでは人間がどくけしで毒が回復していたけど、それが果たしてこっちでも大丈夫なのかはわからなかったわけだし。

 

「あ、そうだ。ついでにキズぐすりも飲ませるかスプレーしてあげてください。一応体力を回復させる効果があるので」

「わかった。それに賭けとはいうが君はそれに勝ったではないか。運も味方したということもあるだろうが、ギャンブルなど勝てばよかろうなのだよ」

「いやまあそういうの宝くじぐらいしかやったことはないので」

「今度一緒に行こうじゃないか。なんにせよ、今回は本当に助かった。ありがとう」

 

 救急車のサイレンも聞こえてきて、これから念のため病院に行くそうだ。ちなみに電話を切る直前に、キズぐすりを飲ませてもらって疲れも消え失せたのか、汐莉ちゃんにも「彰にーちゃんありがとう」と礼を言われたりもした。

 

 

 

「さて、彰くん、今のこと総理始め関係各所に報告するけどよろしい?」

 

 周りは公安に自衛隊。テレビ電話にスピーカー状態だったので、当然それを只聞いているだけでなく、録音録画したり、メモに取っている状態であったりする。というか断ったところで無意味な話だ。

 

「もちろんです。むしろ今みたいな、ポケモンの被害に遭った人たちを助けることにも繋がりますし。できれば早急に会見開くなり何なりで積極的に広めてほしいですね」

「OK! そういう要望も含めて報告しとくわよ」

「人助けになりそうなのは結構ですが、変な勢力に流れると厄介そうで、公安としてはポケモン以外も懸案事項が増えた気がしてなんともはやですな」

うち(自衛隊)もそうなりそうな気もしますね」

 

 武藤さんとあと自衛隊の人が軽くため息もつくも、雰囲気的にはそれが本心というわけでもないだろう。なんにせよ、ポケモンの道具が人間にも効くということが分かったのは行幸だろう。

 

 ちなみに今回のは毒だったが、他にも状態異常は麻痺と火傷、睡眠もある。まあ睡眠はさておき、他の2つの対処法も併せて伝えておいたのは言うまでもない――

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

『……ポケモンの被害に遭われました国民の皆様方におかれましては……お近くのポケストップにて……――』

『……この方法にて疾患者1名の治療に成功いたしました……――』

『……またこれらの薬には、全く未知の……新たなる治療薬の可能性も感じております……そういった意味も踏まえまして……今後関係機関と協議を重ねていくことといたします……――』

 

 ということでそれから少しの時間を置いて。

 こんなような会見が的井吉乃内閣官房長官(女性初の内閣官房長官)によって行われることになる。




ということでポケモンの道具が人間にも効果があるという状況。
これ毒はどんな毒でも毒消し1つで治り、どんなにひどい火傷でも火傷治し1つで治り、身体の麻痺も麻痺治し1つで治るとてつもない状況なのでは?

AEDの場所がわからない場合、「日本全国AEDマップ」で検索かけるとお近くのAED設置場所が地図でわかるサイトに繋がります。知っていて損はないと思います。AEDマップでもそのサイトがトップに出ます。


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登場人物紹介

半分は自分のために載せてます。
随時書き加えていきます。
近日中に最新話をあっぷします。


御子神彰

本作主人公。この世界にて唯一ポケモンのことを知る人物。

この世界にはポケモンがないと知り、一時は精神不安定に陥っていたが、今はなきポケモンの絵を描いてネットにアップしていく中で徐々に回復していった。

瑞樹康宏総理の求めに応じ、ポケモン担当として内閣官房参与の役職を受理する。

[手持ちポケモン]

色違いラルトス(2話)

ヒトカゲ(12話)

モグリュー(12話)

色違い主ギャラドス(18話)

 

神定若菜

主人公付きとなる内閣府大臣官房総務課秘書室所属の女性。Ⅰ種(総合職)入府のエリートで若手内では優秀と評判だが、やや変人チックなために嫌厭されている節がある。公で主人公を支える(作者的にも)大切な存在。

[手持ちポケモン]

アシマリ(29話)

ラルトス(30話)

 

新出史宏

精神科医。主人公の元主治医。某麻婆神父に声も含めてそっくり。

[手持ちポケモン]

ピジョン(5話)

 

新出朱莉

新出家長女。やや美的センスがおかしい。ママは頑張っているが治らない。

[手持ちポケモン]

モンジャラ

ヨマワル(30話)

 

新出汐莉

新出家次女。ニドラン♂の角に刺されて毒状態になるもどくけしで回復。

ポケモンの道具が人間に効果があるということを発見するのに一役買った。

[手持ちポケモン]

ニドラン♂(21話)

ニドラン♀(21話)

 

新出美波

新出史宏の妻。長女の美的センスにいつも頭を悩ます。

[手持ちポケモン]

ニャスパー♂(10話)

ニャスパー♀(10話)

 

三枝幸香

国会議員新居高の私設秘書。怒ると怖い。力も強い。

新居高義雄の従姉妹。

[手持ちポケモン]

ラプラス(12話)

トゲピーのタマゴ(13話)

ワニノコ(20話)

 

新居高義雄

衆議院議員(6期目)大臣経験あり。主人公の伯父。

[手持ちポケモン]

ナックラー(11話)

 

瑞樹康宏

衆議院議員(8期目)日本国第98・99代内閣総理大臣。現自由保守党総裁。

眞柴の影響でサブカルチャーにも明るくなる。

眞柴、中河の2人は盟友で仲の良さは国会内外でも評判。

[手持ちポケモン]

リーシャン(8話)

 

眞柴肇

衆議院議員(14期目)副総理兼外務大臣。

サブカルチャー好き 元オリンピッククレー射撃日本代表。

瑞樹、中河の2人は盟友で仲の良さは国会内外でも評判。

[手持ちポケモン]

 

 

中河庄一

衆議院議員(12期目)財務大臣兼金融担当大臣。

眞柴、瑞樹の2人は盟友で仲の良さは国会内外でも評判。

眞柴の影響でサブカルチャーにも明るくなる。

[手持ちポケモン]

 

 

的井吉乃

女性初の内閣官房長官。有能だと有名。

[手持ちポケモン]

チルット(24話)

 

武藤

警視庁公安部所属。武藤、香取、久内チームのリーダー。

千鳥ヶ淵騒動の際、公安部としてポケモン大量ゲットに取り組む。

[手持ちポケモン]

ニョロモ

コイキング

 

香取

警視庁公安部所属。警視庁警察学校を歴代トップの成績での卒業した女性。

[手持ちポケモン]

ポッチャマ

 

久内

警視庁公安部所属。

[手持ちポケモン]

コダック

 

秋草心陽

高校一年生。柔道全中ベスト8。高校ではバトミントン部所属。

[手持ちポケモン]

ギザみみピチュー

 

心陽の父

かわいいポケモンをゲットして心陽の母の嫉妬心を一心に集めている。

[手持ちポケモン]

イーブイ

 

心陽の弟

いつも姉に余計なことを言って姉からアイアンクローを貰う。

食料についてなかなか早めに言及出来た人。

[手持ちポケモン]

 

 

 

 



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ジャパテレ系情報番組 イブニングサタデー

さて、今回はテレビ番組風にやってみました。
テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》で行きたいと思います。

一応ですが断らせていただきますと、この世界の日本における北方四島は名実ともに日本のものとして進めていきますので、御了承ください。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 テレビの左上の隅の時間表示には3:58と表示されていた。

 

『こんにちは!』

 

 マイスタ前広場と呼ばれる広場にて2人の男性と1人の女性の挨拶からその番組は始まる。彼らはこの番組のメインMCであり、1人は『アイドルは副業(笑)』といわれるアイドルユニット内で「リーダー」の愛称でも知られる男性、そして他の男女はジャパンテレビ所属のアナウンサーである。

 

『イブニングサタデーのお時間です! さて今日は何やらいつもと勝手が違うようですね、増子さん、出水さん?』

 

 ()のアイドルに話を振られたアナウンサー2人にカメラのズームが合わせられる。

 

『そうなんですよ垣島さん。普段ですとまずは1週間を軽く振り返り、どんなことがあったのかをご紹介するのですが、本日は番組内容を大きく変更して放送してまいりたいと思います』

『今回はオープニングトークも無しで番組に移りたいと思います』

 

『『『それでは、どうぞ!』』』

 

 3人が開いた掌を突き出すような感じ、番組がスタートした。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

 夜。暗闇の中をナトリウム灯の暖色系の明かりが辺りを照らす国道沿いの歩道が映し出された。

 

《【――本日未明頃】》

 

『こちらは港区汐留です。こちら、ご覧ください』

 

 そうしてリポーターの指の先にカメラの視線が移る。

 

《『フクロウ(ホーホー)です。しかも2匹ですよ。ホー、ホー、と鳴いていますね』》

 

《都心のど真ん中、オフィス街の一角にフクロウが出現した。しかし、それだけではなく――》

 

『あれ、こんなフクロウっていたんですかね? なんか自分のフクロウのイメージとちょっと違うような? 大きさも50cm以上はあって結構大きいですよね?』

 

【この後調べてみれば】

 

 ここで室内で何冊もの図鑑が開かれ、その1つをリポーターが手に取って調べている映像に変わった。

 

【《なんとこのフクロウ、一切の図鑑に載っていなかったのだ――》】

【《その後、複数の専門家にも確認を取り――》】

 

 受話器を置いたリポーターがカメラの方に振り返る。

 

《『どうやら我々が発見したフクロウは完全なる新種のようですね』》

『都会のど真ん中に現れた新種のフクロウ、これは大発見になるのではないでしょうか』

 

 そう締めくくり、そのリポーターのリポートは終わりとなった。

 

【《しかし――これは列島各地で発生した異変の始まりに過ぎなかった――》】

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

 カメラの映像は再び夜の外場面に切り替わる。

 

《カメラマン『うわっ、なんだこりゃ!? 気色わる!?』》

【仙台宮城放送の《カメラマンが声を上げた理由、それは――》】

 

《カメラマン『見てください! クモ(イトマル)です! それにネズミ(コラッタ)も! こんなでっかいクモもネズミも絶対日本にはいないだろ!? うわっ!? こ、今度はコウモリ(ズバット)!?』》

 

 街灯も少ない郊外を走る車の中からの映像には路上を挟んで向かい合う、黒や紫のネズミと緑や黄色の警戒色のクモが複数見て取れた。さらにその頭上には同じく数頭のコウモリらしきものが飛ぶ。

 

【《同じく日本では見たことのないクモやネズミ、コウモリの姿》】

 

 すると。

 

【《車のヘッドライトに当てられたせいか――》】

 

 彼らは一斉にこちらに振り向く。

 

『ひっ!? た、退避します!』

 

【危険を感じたカメラマンはこの後すぐに逃げ去った。なお、数匹のコウモリに追いかけられたのだった】

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

 これ以後も、日が昇ってからの突如現れた不可思議生物についての映像が流れていく。

 なお――

 

 

【しかし、この生物については助けられた一面もあり――】

 

 場面は車同士の交通事故現場が映された。衝突した車は正面衝突した状態で、前面部分がペシャンコに凹んでいる。

 

【今日午前11時頃、北海道中川郡池田町付近を走る道東自動車道の池田インターチェンジ付近で自動車同士の正面衝突事故が発生しました。この事故では死者が出ても不思議ではないほどの事故だったのですが、《なんと幸いにも死者負傷者共にゼロ――》でした】

 

【《この事故の目撃者は――》】

 

 すると若い女性2人が映る。

 

『なんか路側帯に小っちゃい子供(ラルトス)とかあと(ケンタロス、ミルタンク)とか子馬(ポニータ)とか他にいろんな変な生き物がいたんですよね。それで、「おかしい」と思ってブレーキ踏んでたら事故現場に遭遇しまして。そこにはまだ消防も救急も警察も来てなくて。ただ、その生き物たちが車の周りにワラワラ集まってたんですよ』

『そうそう。それで何してるのかなって見てみたら、なんかその生き物が事故の被害者たちを救出してたんですよ!』

 

 そしてここでこの目撃者たちが撮った映像が流れる。

 

『相方が警察と救急に連絡してる間に撮ってたんですけど――』

 

 そこには小さな女の子や小さな筋肉質の男の子(ワンリキー)大きな虫(コロトック、ストライク)石の怪物(イシツブテ)のようなものが車を押さえつつ、中から被害者を救い出す場面が流された。

 

【その映像に映っていたものには驚くべきこと、なんと彼らが事故の被害者を協力して助け出していたのだ】

 

『もうそれだけでビックリだったんですけど、その後がまたすごくて――』

 

 そして外に出された被害者たちを離れた場所に横たえさせた後、小さな子供とタマゴのようなピンクの丸っこい生き物(ラッキー)が何かをし始めると――

 

【そしてさらになんと驚くべきことに《その被害者のキズが回復し始めた》のだ】

 

『《いや、私たちもビックリで、そのことを救急の人に伝えてたときも「何言ってんだ、この人?」的なことを言われててあれだったんですけど、現場に来てもらって動画見てもらったら「ありえない……」とか言いながら一応信じてくれたんですけど》』

 

【そうしてこの謎の生き物の介抱により死傷者ゼロでこの事故は済んだのだ】

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

【《さらには変化はこれだけではなかった――》】

 

 すると画面内からヘリコプターの飛ぶけたたましい音と共に上空から地上を撮影した映像が流れ始める。

 

『こちらは富士山上空です! 眼下には富士山の最高峰、剣ヶ峰があります! 岩と土と断崖で囲われたこの地に今、我々には見慣れないものが出来上がっています!』

 

【舗装もされていない険しい道であるはずの登山道、それが《 白色の岩盤を敷き詰められたなにか》に変わっていた】

【《 傾斜のある部分は階段状に、段差のない平たいところはタイルのように》、規則正しく敷き詰められている】

 

『岩の状態は時間と風雨で侵食されたものではなく、《 まるで新しく拵えたかのような様相です》!』

 

 そしてカメラの映像が拡大されたかと思うと、今度はその横の方に焦点が合わさった。

 

『そしてさらにこの見慣れない建築物です! 富士山特別地域気象観測所の周囲を囲むように、《大理石らしき石造りの白い柱》が富士山山頂からさらに天を突かんばかりにそびえ立っています! 長く、そして大きなものです! まるで槍か何かでしょうか!』

 

 

 そうして画面内はヘリからの空撮とは一転、地上からの撮影に切り替わった。

 

 

『こちらは《北海道蘂取(しべとろ)蘂取(しべとろ)村のカムイワッカ岬です。》ここは交通困難地、つまり郵便物や宅配物が届く日本の最東端として知られる場所で、通常は多くの観光客で賑わう場所です。《 しかし、今は封鎖されています。》それはなぜか。答えはあちらです』

 

 そうしてリポーターの指差す先にカメラの視線が移動する。するとそこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があった。

 

『ご覧ください。あの、人の身長など比べるべくもないほどの巨大な岩石の物体。まるで遺跡かあるいは儀式を行う祭壇のようにも見えますね』

 

【《高さおよそ20mの岩石に規則正しく刻まれた白線模様》。それは《 何かの祭壇のようにも――》】

 

【さらに驚くべきことに《 この構造物と同じものが他の場所にも》出現した。】

 

 そして画面には1枚の画像が表示される。

 

【こちらはツィリッターの投稿された画像。《先程のものと全く同じに見える》が、こちらは最東端とは正反対の、《 日本最西端の場所 沖縄県与那国島西崎西埼灯台》だ】

 

【日本最東端と最西端に全く同じ構造物が一夜にして出現した。この異変は今朝から発生している謎生物との関連はあるのだろうか?】

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

【そして政府は今日12時に――】

 

 そこで瑞樹総理が会見室に入り、日の丸に一礼する。その後会見場の壇上でアップの映像が映し出される。

 

《『本日未明より日本各地で確認された未確認生物につきまして 国民の皆様におかれましては 心胆寒からしめる事態も起きているということで この度政府調査により判明した事実を 国民の皆様に対して、ご報告申し上げます』》

《『まずこの未確認生物につきまして 既存のどの生物とも異なる全く未知の生き物である ということがわかりました』》

《『我々はこの不思議な不思議な生き物を ポケットモンスター 縮めて ポケモン そのように呼称することを決定しました』》

 

【このように全国各地で現れた新生物の全ての総称をこのように定めました】

【《そしてさらにこの会見ではいろいろと気になることが――》】

 

《『我々政府はこの緊急事態に対し、我々よりも深い知識で以て今回の件に対処可能であると判断するに足る人物と接触することに成功しました』》

《『既にご存知の方もおられるとは思いますが、インターネット上にてこの未確認生物について非常に詳しく書かれた記事がございます』》

《『(くだん)の人物はそれを書き上げた人物であり、我々よりも遥かにこの未確認生物に対しての理解を示しており、実際の対処の仕方についても我々に教授してくれました』

 

《【いったいなぜその人物はこの生き物について詳しいのか】》

《【なぜ政府はそんな人物と早々に接触出来たのか】》

《【謎は深まるばかりだ】》

 

 

【しかしこの政府はこの会見以後、すさまじいまでの情報発信を行う】

 

【《ポケストップの利用方法について――》】

【《ポケモンの捕まえ方、以下これをゲット方法としましては資料映像をつくりましたので――》】

【《ポケストップにて入手できるアイテムについて――》】

【《ポケモンにはタイプというものがあり、それに付随してそれぞれのタイプに相性というものがあります――》】

 

【的井吉乃内閣官房長官の怒濤のような会見が2時間にも及び続いた。因みに《この間的井官房長官が会見場を離席することなく》、秘書官が代わる代わる会見場に入り、報告。それをほんの僅かの時間で咀嚼して発表するという、的井官房長官の凄さもさることながら、政府の情報公開に対する熱意も凄まじいものである】

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 

 画面はさらに切り替わり、今度は緑生い茂る外の様子が映し出される。

 画面下部中央には《松田祐希》という案内と共に、画面中央には胸元にピンマイクをつけた女性リポーターが現れた。

 

『《 こちらは東京都新宿区と渋谷区に跨る新宿御苑です。》こちら普段は様々な様式の閑静な庭園が広がるのですが、ご覧ください。《 今ではそこら中、大勢のポケモンたちで埋め尽くされています。》』

 

 確かに草原や水辺、木々の上、頭上も含めた空には、見渡す限り、町中よりも多くのポケモンたちの姿が見える。しかし、なにも足の踏み場もないほど埋め尽くされているわけでもない。少々彼女の言葉選びが大げさのようだ。

 

『ここに来たのはですね。試しに《 我々も政府の発表通りポケモンを捕まえられるかということを検証してみる》ためですね。あっ。あれは確か《 ポケストップ》とかいうものですね。ホントにホログラムっぽい感じなんだ。何だか不思議ですね』

 

 そうして彼女、それから取材クルーもポケストップでポケットモンスターのダウンロードからのトレーナー登録、モンスターボールの受け取りなどを済ます。

 

『さあ、これで我々も《 ポケモントレーナー》とやらです。このモンスターボールというボールを投げて捕まえ、失礼《 ゲットする》のですね』

 

 彼女は野球ボールを掴むようにしてモンスターボールを掴んで、カメラの前に見せる。赤い面が上部のボールスイッチが正面を向く、正しい構図だ。

 

『それじゃあポケモンゲットに参りましょう!』

 

 そうして始まるポケモン探索。途中、ディレクター、カメラマンがポケモンを捕まえ、その様子が流れるも女性リポーターは中々ゲットしようとしない。

 

『《ごめんなさい。やっぱかわいらしいポケモンが欲しくて! かわいらしいポケモンが欲しくて!》』

 

【ディレクターやカメラマンのポケモンゲット後の仲睦まじい様子を見ていた中で、松田リポーターは仕事を忘れて本気の本気モードでポケモンを厳選してゲットしていくようだ】

 

『ん? なんか《 いい香りがしません?》』

『そういえばなんかするね』

『《 ちょっとこの香りの元を辿ってみましょう》』

 

【そうしてこの匂いの元を探ること数分――】

 

『マジィ、マッジィマジマジ』

 

 すると(へた)部分が緑で身の部分がやや黒っぽい赤という、“果物の女王”という異名を持つマンゴスチンにも似たポケモンがいた。

 

『あ、見てください、あのポケモン! 多分ですけど《 このあまーい香りはあのポケモンが発していると思います!

 

 そうして彼女はこのポケモンを無事に捕まえることが出来たのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

※(テレビ内で喋る人『』、ナレーション【】、字幕《》でお送りします)

 

 ここでスタジオ内にカメラの映像が切り替わるどうやら今まで流れていたVTRは終わったようだ。

 

『さあ、今日は今ご覧になってもらったようにポケットモンスター、略してポケモンという生き物が突如町中に溢れて大変な混乱に見舞われたんですよね』

『そうなんですよねぇ。その辺のことも併せてリポートしていただきましょう。松田さーん!』

 

 スタジオ内で男性アナウンサー増子から受け継いだ垣島が、外の中継に呼びかけるように答える。

 

『はーい、松田でーす!』

 

 画面は外の中継に切り替わった。右下に小さな四角でワイプが表示され、スタジオの様子も見られるようになっている。

 場所は先のVTRと同じような場所だった。違いといえば、日が落ちてきて少し暗さが増しているということだろうか。

 

『こちらは先程のVTRにもあった新宿御苑です。まずはリポートの前に私のかわいいかわいいポケモンちゃんを見てください!』

 

 そして松田リポーターは取り出したモンスターボールを開けた。

 

『マッジ!』

 

 すると飛び出たポケモンは嬉しそうに松田リポーターの右肩に飛び乗った。

 

『見てください! かわいいでしょ~!』

 

 ワイプ内はウンウンと皆相槌を打っている。

 

『このポケモン、調べてみるとアマカジという草タイプのポケモンなんだそうです。非常にいい香りがするのも特徴なんですが、もう一つ、この子には大きな特徴があります。それはですねぇ――』

 

 そうするとスタッフからコップに入った水が渡されて。

 

アマカジ(アマ)ちゃん、ちょっとココにアマカジ(アマ)ちゃんの汗入れてくれる?』

 

 するとアマカジはフルフルと震えだし、そして水滴が何滴か飛び出した。それがコップの中の水に入っていく。

 と、ここでワイプの中が何やらドタバタと騒がしくなっていた。

 

『これ非常に甘いんですよ!』

 

 松田リポーターは気にせず、そのコップの水を飲み干し、リポートを続けている。

 

『すみませーん、松田さーん!』

 

 ここで垣島からの鋭い呼び声。ここで初めて松田は垣島の雰囲気が変わり、顔が緊張で強張っていることに気がついた。

 

『はい? どうかしました?』

『ちょっと緊急で臨時ニュースが入ったのでいったんスタジオにお返しください』

『あ、はい。わかりました』

 

 そして画面はスタジオ内に戻される。増子も垣島と同じく硬い表情を浮かべていた。

 

『えー、ここでたったいま入ったニュースをお伝えします』

 

 それを伝えようとする女性アナウンサー出水もそれまで浮かべていた笑みは消え失せ、硬い表情で視線を手元の原稿と正面のカメラとを行き来させていた。

 

『つい先程、つい先程のことですが、尖閣諸島日本の領海内にて中国海軍艦艇4隻が沈没しました。またロシア空軍の戦闘機2機が北海道オホーツク海の日本の排他的経済水域と接続水域の境界にて墜落しました』

 

『繰り返します』

 

『つい先程午後3:40ごろ、中国海軍艦艇4隻が尖閣諸島日本の領海内にて沈没しました。また、同じく午後3:40ごろ、ロシア空軍の戦闘機2機が北海道オホーツク海の日本の排他的経済水域と接続水域の境界にて墜落しました。詳しい情報が入り次第また改めてお伝えします』

 

 画面下のテロップには

 

《中国海軍艦艇が尖閣諸島で沈没》

《ロシア空軍の戦闘機が墜落》

 

 という文字が躍っていた。




伝説「おっ、ワイらの出番か? みんなとびだせーコッコ^^」
伝説「レッレ、レレレ^^」
伝説「よろしくブルニキー^^」
伝説「テテテテー(ベートーベン運命風に)」
他国「帰ってくださいおながいしまつ」
某国「やべぇよやべぇよ」


事故現場の話がありますが、この辺はちょうどシンオウ地方の209、210番道路付近でラッキーやキルリア、イシツブテ、ポニータ、ミルタンク、ケンタロス、コロトック、ストライクなどが出現します。ただキルリアは進化後なので、進化前のラルトスに出張ってもらっていますが。あとそこにワンリキーさんに特別出現願いました。

なんのポケモンが出たのかを分かりやすさ重視でルビを振ったところがありますが、名前はまだ判明していない(したことになっていない)ので。

さて、今後はしばらく伝説のポケモン編になります。
てかテレビ番組風は多分もうやらない……
かなり大変だった……


ちなみにこんな感じにいろんな史跡が出現してますが、他にもどこに何を配置しようか考え中です。
伝説系が出現するのも含めた(しなくても大丈夫です)史跡で何かいい案がありましたら、活動報告までよろしくお願いします。
(実力不足でストーリー内で全て生かし切れない可能性は高いですが、名前だけは出そうと考えています)
ちなみにあとはヒャッコクシティの日時計とアニメの舞台から2つだけは決まっています。


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引き起こされる異変

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 満月の浮かぶある夜。

 いつもはもう少し遅い時間に一度は目が覚めるのだが、その日はたまたまそれが満月がちょうど南中に浮かぶ頃合いだった。

 

「ああ。素晴らしい。綺麗ですね」

 

 その日は心なしか満月の大きさも普段よりは大きく見えた気がした。いや、思い違いではなく、実際本当に大きく見えていたのだ。

 その様子に思わず、窓を開けて天を見やる。弄月をしようにも、4月の真夜中は春とはいえど、まだまだ身に震えるほどの気温。

 早々に肌が粟立つ感覚を覚え、開けた窓を閉めて寝室に戻ろう。

 そうして窓に手をかけたときだった。

 

「おや? 何でしょう?」

 

 ひらり ひらり ひらり

 

 そんな擬態語で表されるかのごとく、舞い落ちてくるものが視界の端に映る。

 思わず、両手を差し出してその舞い落ちるものを受け止めた。

 

「これは……」

 

 それは今まで見たこともないシロモノだった。

 自身が魚類学者であるから、他の生物学においては不案内ではあるが、それでも学会誌には目を通すことを常に続けてきた身としては、こんなことはあり得なかった。

 

「……七色の……羽? いや、抜けた羽であるのになぜ温もりを感じるのでしょう……? それになぜこの羽は自発的に光を放っているのだ……?」

 

 もはや普段の口調も忘れてこの不可思議な羽をまじまじと見つめてしまう。

 

「……明日は時間の許す限り、書庫に篭もりましょうか」

 

 明日の公務、いや、もう既に今日となってしまった日付の公務を思い浮かべ、もう一度寝直そうと思いながら、目覚めた後のことを思い浮かべた。

 

 

 このとき、だれもが気づくことはなかったが、空には夜なのに、虹が浮かんでいた。

 

 

 それは日本列島に異変が起きた当日未明のことだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「で、状況はどうなっていますか?」

 

 ここは総理大臣官邸の地下にある内閣危機管理センター。シン○ゴジラでもちょくちょく出てきていたアレだ。

 そして、その幹部室の末席の一席を汚させてもらっている僕がいる。

 

(いやいや、どう見てもここにいちゃ拙い系なんじゃないの!?)

 

 秘書官の1人と思わしき女性に案内されてここに座らされたんだけど、ここってマジモンのマジに日本の中枢でしょ!? そんなところに一介の一般人がいるのはおかしいと思うんだですのよさ?

 

「まず沈没した中国船籍の船舶についてですが、中国人民解放軍の軍艦です。残骸はまだ一部漂っているようですが、大抵は沈んでしまったようです。しかし、乗組員全員は海上保安庁および近海の漁船員に救助されています。大多数が意識が混濁としている重体のようですが、死者行方不明者はおりません」

「そうですか。それでは彼らの回復に全力を挙げてください。それからロシア空軍の方はどうなっていますか?」

「こちらも同じく海保が4名全員を救助しています。こちらは4名とも怪我等もないそうです。現在、いずれの当該海域も海上保安庁と海上自衛隊が警備に当たっています」

「そちらも結構。まずは無事で良かったです。そして日本国を守るその行動、大変ご苦労様です」

「ついでに日本国の人間が救助したこともね。これが中国ロシアの救助だと、少し厄介なことになっていた」

 

 その間に、マイクで発声される報告を的井官房長官が聞き、中河財務兼金融担当大臣が相槌を打つ。

 そして今後ろから小声で説明してくれている女性の方(さっき僕をここに連れてきた女性)。耳元で囁かれている感じなので、ちょっと幸せ(*´︶`*)

 ちなみに内容は救助の名目で尖閣に上陸されたりなどの不逞行為をされないようにするためらしい。ちなみに今、瑞樹総理は会見の準備、眞柴副総理兼外務大臣は駐日中国大使を呼び出してその辺のことをきっちり釘刺しているらしい。

 

「船員の治療および引き渡しについては後程にしましょう。で、原因は何だったのか、わかりましたか?」

「ロシア戦闘機につきましてはまだ不明ですが、尖閣につきましては見慣れない飛行物体が付近を徘徊していることがわかりました。おそらくこの物体が原因に関わっているものと推測されます。正面モニターの方をご確認ください」

 

 会議室正面中央に備え付けられている大型モニターには分割して様々な映像が映し出されているが、その一言でモニターいっぱいの映像に切り替わった。

 

 映し出された映像。

 

 そこには揺れる海面。船舶の残骸。救助の船やヘリコプター。そこまでは不自然さは全くない。しかし、その中で1つだけ、圧倒的にその場にあってはいけないものが底に存在していた。

 

「なんだあのピンクのやつは……?」

 

 そう。今誰かが言ったモノ。もっと具体的にいえば、幾何学模様の描かれた蓋付きの壺の中に全身が真っ黒な少女が入ったような姿のようなナニカである。少女と表現したのは蓋を被った頭部のところから長めの髪のようなものが出ているからだ。

 

「……まさか、カプ・テテフ?」

 

 思わず呟いてしまった言葉に後ろにいた女性がピクリと反応した。

 すぐさまその女性は僕の前に乗り出すと、(おもむろ)に僕の目の前のマイクのスイッチを入れた。

 

「官房長官、発言失礼いたします」

「ええ、どうぞ」

「ここにいる彼、御子神彰さんがその映像に映っている飛行物体に心当たりがあるそうです」

 

 ちょっ!?

 

(この人なにしてくれてんのーーーーー!?)

 

 内心そう絶叫してしまうも、その場にいた全員の視線が自分に注目ししてしまったのがわかった。

 

「御子神君、あなたはこの物体が何だかわかるのですか?」

 

 全員の疑問を代表してか、的井官房長官が問い掛ける。

 正直、カプ・テテフが今回の件に関係しているのかはさっぱりわからない。だけど、あのポケモンに関しては知っているし、一日本国民として現状の緊迫した状況を何とか出来る手伝いが出来るならその一助を行いたい。

 

「……はい。あれはポケモンです」

 

 その一言に議場内がざわざわとしだした。

 何人かが慌てて外に出て行く。

 

「あれも私のチルッチちゃんと同じポケモン、ですか」

「はい? あ、はい」

 

 は? チルッチちゃん?

 

「あ、私が捕まえたチルットです。今度ゆっくりお話ししましょうね」

「あ、はぁ」

 

 何だか微妙に力抜けたな。で、どこまで話したんだったか。

 

「ああ。えー、あのポケモンですが、厄介といいますか、面倒といいますか」

「というと?」

 

 正直伝説とか幻とかウルトラビーストとかはもっと世間が落ち着いてから詳細を話そうと思っていたが、もう今現在いるのであれば、言うしかない。

 

「あのポケモンの名前はカプ・テテフ。“伝説のポケモン”というものにカテゴライズされているポケモンです」

「かぷててふ? 伝説のポケモン?」

「はい」

 

 するとここで先程出て行った人たちが何やら書類の束を抱えて戻ってきた。それらを議場内にいる全員に1部ずつ配っている。

 

「伝説のポケモンは世界そのものに様々な影響を与えて、あるいはそれらを司る特別なポケモンのことです。神話や伝説に登場するようなポケモンばかりですので、強さや能力なんかが非常に強力なんです」

「神話や伝説というがキミ、そんなものは今まで聞いたこともないぞ」

「ですな。そのポケモンなるもの自体今日初めて世の表に出たモノばかりだ。その発言には理解出来かねるよ」

 

 数人の閣僚がそんなことを言ってくるが、そう言われても設定的にはそうなんだからどうしようもない。

 

「まあまあ皆さん、今はそのことはおいておきましょう。それで、続きをお願い出来るかしら?」

「はい。で、その伝説のポケモンであるこのカプ・テテフなんですが――」

 

 的井官房長官の助けに乗って、とりあえずのカプ・テテフの説明だけはしきる。

 

「無邪気で残酷な守り神――」

「面白半分に自らの特殊な鱗粉を撒き散らす――」

「鱗粉は体を活性化させて、怪我や病気を治す効果を持つ――」

「一方で、浴びすぎると体がその変化に耐えきれなくなり、逆に危険――」

「大昔に起こった戦争で争いを鎮めるために、鱗粉で治癒を行い和解させたという伝承があるが――」

「しかし、実は鱗粉の力で暴走した人々が全員死んでしまったために争えなくなった――」

 

 とりあえずわかっている範囲での僕のカプ・テテフの説明は終わったが、議場では僕の説明と、渡された資料(僕にも来たので見てみたら、自分でサイトにアップしていたポケモンのデータのコピーだった)に書かれていることを比べて唸っている人が多い。

 

「官房長官、ひとまず今のことを現場に伝えて不用意にそのポケモンに近づかないようにさせましょう」

「同感ですね。これは海保や海自隊員の命に関わることです。総理にも至急お伝えしておきますので、それで動くようお願いいたします」

「はい」

 

 そうして上村防衛大臣と官房長官のやり取りの後に秘書官?が1人出て行き、防衛大臣は隣に座る自衛隊の制服を着た人間(おそらく統合幕僚長?)に向き直る。

 

「では」

「ええ」

 

 その短いやり取りで統幕長は後ろに座る人間に声を掛け――

 

「総理、入ります!」

 

 突如議場内にその声が響き渡った。

 すると全員が椅子を引いて立ち上がる。

 

「周りと同じくお願いします」

 

 僕もそう言われて同じようにして立ち上がる。

 すると瑞樹総理に続き、眞柴大臣や秘書官ら、さらには自衛隊の制服姿の人も2人、入室した。

 そのまま総理が着席すると、併せて周りも座り始め、自分もそれに倣う。

 

「どうされましたか、総理?」

「ああ、会見を一時中断しました。いろいろと状況が変わってきたみたいですのでね。じゃあ、改めて報告お願い出来ますか?」

 

 すると総理は今入って幕僚長の後ろの座席に座った自衛隊員2人の方に顔を向ける。

 

「はっ。報告いたします! 北海道オホーツク海沖での墜落事故についてですが、まず墜落した残骸は海流に乗って我が国の排他的水域内に流れ込んでいます。続いて、撃墜の原因と思わしき飛行物体をこちらでも確認致しました」

 

(アレ? 何だろ? 何となくこの状況、既視感を覚えるぞ?)

 

 そう思っているのは僕だけではないようで、この議場内の大体が僕の方に視線をくれている。

 

「映像出します。ご確認お願いします」

 

 そして出た映像。

 そこには()()()()()()()()()()――

 

「総理失礼します」

「どうぞ、的井さん」

「御子神君、アレがなんなのか、知っていますね?」

 

 うわぉ。今の明らかに疑問系じゃなくて確認系のトーンだったな。

 映っている物体とやらの特徴は、黒い身体と2本の角に、砂漠でサボテンが被ってそうな赤柄の帽子、手の蹄、白い鼻輪、尻尾の部分の黄色いカウベル。

 間違いなく――

 

「カプ・ブルルですね」

「かぷぶるる? 何だかカプ・テテフと似てますね。ということは?」

「お察しの通り、カプ・テテフと同じく伝説のポケモンです」

 

 物臭な性格で、尻尾の鈴を鳴らして自分の存在を周りに伝えて無駄な接触や争いを避けるのが常だが、敵と見做した者には一切容赦無く徹底的に攻撃を加えて叩き潰す激しさも兼ね備えている守り神。攻撃方法としては大木を引き抜いてブンブン振り回したり、草木を操って敵を縛り付けて、自身の角で一突きなど。

 

「なるほどなるほど」

「しっかし、またポケモンかい。こりゃあ今後何か問題ごとが起こったときは全部ポケモンに関係してそうだねぇい」

「はは。それも困りものですが、我々には強力な助っ人がおりますから。ねえ?」

 

 ……総理と眞柴大臣の期待の視線のプレッシャーがデカいです。

 

「それと気象庁と自衛隊の連名で報告があるそうですね。お願い出来ますか」

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「うーむ……」

「そんなバカな……」

「こんなことがありえるわけがない……」

 

 議場はまたもやざわざわしている。それだけ先の報告にも劣らないインパクトが今のものにはあったのだから。

 

「気象庁、国土交通省、念のため聞いておきますが、何もない海洋上にほぼ()()()()()()()()()()()()なんてありえますか?

 

 そう。太平洋の南鳥島と沖ノ鳥島を結ぶ線を三角形の底辺とする直角二等辺三角形の頂点に当たる付近(日本本土側ではなくパプアニューギニア側)に4つの島が、そしてその三角形の重心付近にもう1つの島が突如出現したのだ。気象庁の5分刻みで天気を記録するレーダーで見ても5分前には影も形もなかったところに、突如島が出現している。

 総理に問われた2人の回答は当然――

 

「ありえません」

「前例のないことです」

 

 きっぱりと否定する。まあ総理も当然わかっていたと言うべき苦笑いの状況だ。

 航空自衛隊の偵察機によると、重心の方の島は分厚い悪天候の雲に覆われていて、詳細はわからないが、他の4つの島は周囲が晴天に恵まれていて偵察映像がはっきりと撮ることが出来たようだ。それによって判明したことで、さらに驚くべきこととは――

 

「見たところ島の植生がもはや意味不明です」

「たしかに。現代の植生では考えられないようなものです」

 

 報告の2人が口にした植生。それは何と――

 

「いやはや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ですか」

「非常に興味深い」

 

 農水大臣は呆れ果て、環境大臣は興味津々という視線でモニターに映る映像を見ている。いや、その2人だけでなく議場内の全員が同じ空気を醸し出している

 

「御子神さん、何か心当たりは?」

「御子神くんよぉ、あれどう思う?」

 

(すいません。なんで2人はそんな楽しそうに聞いてくるんですかねーえ)

 

 いや、ぶっちゃけると確証が持てないのよ。

 仮にこれらがポケモンに関係していたとする。

 

 上空2万5千メートル以上にも昇るほどの異常な大きさの積乱雲が島の周囲を囲う。しかもそれが地球の自転による偏西風に乗らずに1ヶ所に滞留し続ける。

 とするとこれって……ニューアイランド?

 

 つまりは――ミュウツーの逆襲?

 

 扇子の要部分に1つの島、そして両親骨(おやぼね)の先端と天の中央をそれぞれ、炎に包まれている島=火の島、電気に包まれている島=雷の島、氷に閉ざされている島=氷の島と見立てれば――

 

 要部分の島はアーシア島であり、つまりは――ルギア爆誕?

 

 といった仮説を立てることも出来るのだけども――

 

 

(確証が持てない……)

 

 

 どれもそれっぽいと言えるだけで、さっきのカプ神のように断言は出来ないのだ。

 とりあえず、今回は苦笑いでお茶を濁すことにしたが、その前に特大の爆弾が落とされることになる。

 

 

「失礼します! ただいま皇居御所にて正体不明生物が出現! 陛下の御前にて出現しました! 両陛下は無事とのことですが、予断を許しません!」

 

 




この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


ということで、どっかが引き金を引いてしまったせいで一気にカオスになってしまった伝説のポケモン編。
それと一応南鳥島と沖ノ鳥島の位置関係です。
何となくこんなところに4つの島があるんだなとイメージしていただければ。
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次回も続きます。


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起死回生の秘策

 この度はオーキド博士を始め、様々な役柄を演じていた石塚運昇氏がお亡くなりになり、誠に残念です。
 私自身の中ではオーキド博士とポケモンのナレーションは氏であり、氏はオーキド博士とポケモンのナレーションでした。ED曲『ひゃくごじゅういち』のオーキド博士の歌とピカチュウがモンスターボールでヘディングしたり玉乗りしていた頃から始まり、この声で育ってきたようなものです。映画冒頭の「ポケットモンスター、縮めてポケモン」から入る運昇氏のくだりは今でも大好きであり、これこそがポケモン映画の始まりだとも思えるものでした。去年から始まったラストでの語りもこれはこれで非常に味がありました。
 心よりご冥福をお祈りします。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 窓から入り込む夕日の光を浴びて赤色灯を光らせ、サイレンを鳴らしながら、さっきも乗った公安の車は、赤信号も何のそのと進んでいく。

 

 

『外見だけでもいい! 映像は!? 写真は!? 何かないのか!?』

 

 

 そういえば、総理のあれだけ激しい様子は初めて見た。普段穏やかな人って(この場合は違うかもしれないけど)怒らせると怖いというのは本当だ。

 

 そして見せられた写真。ブレは酷いけど判別は簡単だった。

 

 

『まさかホウオウにエンテイ、ライコウ、スイクンの三犬、それからセレビィにマーシャドーにフィオネだって!? どーなってんだ!?』

 

 

 正直、あのときは思わず立ち上がって大声で叫んでしまったが、それも仕方がないと思う。

 だってあんな伝説に幻のオンパレードとかゲームでも中々ないのに(第5世代後半以降はある種のバーゲンセール状態だったけども)、それがデータではなく、現実のこの世界で目の前の生き物として起こるとかねぇ。

 しかもだけど、何だか、戦うという雰囲気も見られなかった。これは完全なイメージで全ての鳥に当てはまるものではないっていう前提だけど、鳥って相手を威嚇するときは羽を広げるか、鳴き声で威嚇すると思うんだよね。だけど、あのホウオウは羽を閉じているし、三犬も伏せって戦闘体勢というわけでもない。直ぐさまその後、リアルタイムの映像も届き、それらに加えてセレビィは周囲を無邪気に飛び回っている感じでフィオネはそれを追いかけている感じだし、マーシャドーはホウオウの足元に隠れるようにして佇んでいて、これからバトルしますという風にはやはりどうしても見えなかった。

 だから、こちらが仕掛けなければおそらくは何もしないだろうと踏んで、絶対に手を出さずに監視に留めるよう進言して、僕はまた先程と同じく車に乗せられ皇居に向かっていた。

 ただそれとは別に気になることが――

 

「まもなく皇居に着きます」

 

 三枝さんの代わりに隣に乗っているこの女性なんだけど、いったい誰なんですかね? この女性、さっきっからずーっと一緒なんだよね。

 いったいどゆこと?

 

「まさか神定さん、自己紹介されていないのですか?」

 

 それを察してくれてか、左隣りの武藤さんに呆れ顔をされる。

 うん、正直僕もそう思う。たまに余計なこととかもしてくれるし。

 

「はい。まだ正式な辞令が下りているわけではないので。とりあえず、神定若菜と申します。前は内閣府大臣官房総務課秘書室にいましたが、週明けには急遽異動しますので、そのときに正式にご挨拶すればいいかなと」

 

 つまり、そんときまで黙ってるつもりだったんかい。まあ、そんなに深い付き合いになることもなさそうだから、それでもまあいいけど。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 そうして皇居の御所の御車寄(みくるまよせ)とかいうところで下ろされてボディチェックだなんだかんだ終わった後、庭に通される。ここまで来ると陛下の御前近くに立つというガチガチの緊張感に包まれてきた。

 そこにはやはりというか先程の映像と同じような光景が目に飛び込んできた。

 

 いや、2つ決定的に異なる。

 三犬がおとなしいのは変わらないが、なんと、あのホウオウが今上陛下に身体を寄せているのだ! そして陛下はホウオウの首をなで上げている! さらに、セレビィとフィオネは陛下のお隣の皇后陛下の両肩に座り、楽しそうに笑っていたのだ!

 周囲のSPは警戒を怠っていないが、これなら別にそんな必要はないんじゃないかとも思う。

 

『ふわぁ、すごいすごいのネ。2人はすごいのネ』

「まあ。うふふふ」

 

 ていうかフィオネって喋れるのかよ。そっちも驚き、いや?

 

「両陛下が無事そうで一安心というところでしょうか。というかポケモンって日本語話せるのですね」

「いや、話せるポケモンは滅多にいないはずで、フィオネが特殊なんだと思う。それにあれは口が動いていない。これはテレパシーだ。相手の脳や心に直接言葉を伝えるっていうアレの」

「……なるほど、それはすごい。エスパーみたいですね」

 

 まあ、エスパーはさておき、エスパータイプはきっといっぱいいるだろうな。

 ていうかそれも驚きなんだけれども――

 

(うん、てかホウオウもセレビィもフィオネも手懐けるとか、流石天皇皇后両陛下としか言いようがないわ)

 

 伝説や幻って大抵初期懐き度低い上、ゲットしてもいないのにああもいともあっさりと、そんなことを思っているとお2人がこちらに向き直った。

 

「あなたがお噂の御子神さんですか」

 

 へっ……?

 

 あれ……?

 

 今ひょっとして陛下に話かけられた?

 

「たっ……、はっ、はい! み、御子神彰と言います!」

 

 ほげっとしてたら神定さんの肘でつつかれて、慌てて再起動。最敬礼でご挨拶申し上げた。

 

「そこまで固くならず。それでどのようにすべきだと思われますか?」

 

(……これは今のこの状況をどう打開すべきかということか……?)

 

 ホウオウやセレビィ、フィオネを手懐け、ホウオウに付き従う?三犬と、彼らを見守り相対する両陛下、そしてそれらを監視するSPたち。この状況を動かさないと事態は収束しないということだ。

 

(……あれ?)

 

 ふと、陛下が手に持つ羽が目に止まる。

 そこには赤・オレンジ・黄色・緑・水色・青・紫と七色に輝く羽があった。

 

(まさか、にじいろのはね?)

 

 仮にそうなら。いや、ホウオウに会えている時点でその可能性は非常に高いし。てか、もうこの際それでいいや☆

 

「……陛下、よろしいでしょうか」

「何でしょう?」

「はい。陛下にはこちらのポケモン、全て捕獲――ゲットしていただければと思いまして」

 

 その言葉にこの場の空気がザワッと変わる。両陛下も目を見開いて驚かれているが、これが一番後腐れなく円満に終わる解決方法だと思うから、是非とも飲んでいただきたい。

 

「そちらのポケモン、名はホウオウといいます。ホウオウは中国神話の霊鳥鳳凰やエジプトの伝説の霊鳥フェニックスにも通じる――」

 

 とりあえず半分適当なことも混ぜてつつも、

 

・ホウオウは『生命の蘇生』や『火の鳥』といった太陽の化身、太陽神としての資質がある

・太陽神は天照大神にも通じ、皇室は天照大神を皇祖神として宮中三殿の賢所では天照大神を祀っている

 

 以上から

 

・ホウオウ=太陽神≒天照大神≒皇祖神として皇室がホウオウを手にするのにはこれ以上ないというほどの正当性がある

・そのお手元のにじいろのはねは、ホウオウが『自身に会う資格がある』と認めた場合に落としていくものである

・何より、ホウオウ自身が陛下に懐いている

 

ということで捕獲が望ましいことを進言する。

 ついでにライコウ・エンテイ・スイクンの三犬はホウオウに蘇らせてもらって誕生した経緯から、ホウオウの眷属のようなものなので、ホウオウとセットが望ましいし、マーシャドーもホウオウが下した判断が本当に正しいのかを見定める役割もあるので、やはりホウオウとセットが望ましい。セレビィやフィオネはどうして一緒にいるのかは不明だが、楽しそうな様子を無理に引き離すのはよろしくないのでセットが望ましいということも付け加える。

 

 三犬はともかくホウオウやマーシャドーにそんな話が付くかはこの際知らないが。

 

「最後に。ここでゲットしないで、可能性は低いかもしれませんが、良からぬ輩にゲットされた場合、災いが引き起こされる場合も考えられます。是非とも、ホウオウらが陛下を認めた以上、陛下が彼らのパートナーになるのが相応しいのです」

 

「…………わかりました。あなたの言うとおりに致しましょう」

 

 

 ということで、ホウオウと三犬、マーシャドーは今上陛下が、そして今上陛下の希望により、皇后陛下がセレビィとフィオネを捕獲する運びとなった。ちなみに陛下らはボールを投げるのではなく、コツンと当てたり、あるいは三犬の方からボールに入ってきたりと、半端なさの格が違った。

 とりあえずこれにて、御所での騒動は収束した。

 

 

「ショオーッ!!」

 

 

 と思ったんだけど、ゲットされたホウオウがモンスターボールから出てきて僕に近寄ると、頭を下げたと共に光を吐き出し、それが僕の手の中であるアイテムへと変わっていった。

 

 それを見て、まだまだ一連の騒動は終わらないという思いと共に、諸外国対応も含めてこの国で起こった混乱を鎮めうる一発逆転の秘策にもなるのではないかとも思い立った。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「御子神君、先の千鳥ヶ淵に続き、今回もご苦労様でした」

「いえ、お気遣いありがとうございます。中河大臣」

 

 ということで戻ってきました、官邸へ。

 

 危機管理センター内では、安堵と共に少しあった「何コイツ?」みたいな空気も霧消していた。

 一応、認めさせた感じでいいのかな。

 

「君らが席を外している間に関してだけどね」

 

 そう言って大臣自らが聞かせてくれた。二度手間になる感じで本当に申し訳ないでありますな。

 

 で、その内容についてだけど、まず総理は米国大統領との臨時電話会談、官房長官は再三記者らにせっつかれての会見中、眞柴大臣は各国の大使との緊急面談なんだそうだ。

 いろいろと無茶ぶりだの難癖だの付けられてそうで実に大変そうだ。

 

 そして太平洋上に突如出現した島についてはやや面倒な事態になっているらしい。

 というのも、現状は公海上に出現したためにこの5つの島はどの国の領土でもないということのようだ。領土とするには発見することと管轄すること必要だが、5つの島とも管轄が出来ていないらしい。何でも、何やら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだとか。なので、各国が領土とするべく船舶を出しているが、一向に近づけずにおろおろとしていて、島の周囲は非常に国際色豊かになっていきそうだということらしい。眞柴さん情報では、特に中国が鼻息荒く、米国もそれを阻止せんと色々と動き出しているとか。

 ぶっちゃけ、バリアが張られてて上陸出来ないとか、意味わからないです……。

 ただ、これもやっぱりポケモンが関係していて云々ということであれば、ポケモンによる事象ということで僕も何かしらの理由で関わるかもしれないということだそうだ。

 いやまあ、そんなこと出来そうなのって伝説のポケモンだけだろうし、そんなことが出来ちゃいそうなのがいそうだから、たぶん100%関わると思うけどね。

 他にはテレビで紹介されていた巨大構造物の異変(富士山のやりのはしら、択捉島・与那国島の日輪の祭壇・月輪の祭壇)の他にも、香川県東かがわ市引田の女郎島と奈良県の法隆寺に巨大構造物が出現したらしい(映像資料を見たところ、造形的には完璧にヒャッコクシティの日時計とセッカシティの北にあるリュウラセンの塔だった)。

 概ねこんなところだったけど、ぶっちゃけここでああだこうだ考えるより、さっきも言った、ここは一つ、一発逆転になりそうな策に賭けてみることを提案してみたい。してみたいんだけど、正直この場でいうより出来ればいっそ誰かと相談もしてみたいような――

 

「なにかありましたか、御子神さん」

 

 ……神定さんってタイミングがいいというか人の顔色を伺うのが上手いというべきなのか。

 何にせよ、それを相談してみたところ、1通のメモ用紙を渡された。

 

「ここにそのことを書いてください、私が直接現議長の中河大臣に渡してきます」

 

 ということ、サラサラと書いたメモを彼女に渡す。彼女は中腰で素早く移動すると、中河大臣の肩を叩いてそれを渡した。

 中河大臣はそのメモに目を落として『なんだこれ?』と眉を顰めるも、その後一瞬して、ハッとした顔を上げる。

 

 

「みなさん! 総理に至急お伺いしなければならないことが出来ました! 一度この会議は中断します!」

 

 

 その発言で議場内は一気にざわざわとし始めた。

 

 

 

 さて――

 

 説明すると、僕が書いた内容というのはこの一言だ――

 

 

  創造神に会いに行きましょう

 

 

 僕は先程ホウオウに託されたアイテム――

 

 ――てんかいのふえ――

 

 それが収められた自身のスマートフォンの入ったポケットをそっと外から撫で上げた。

 




この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

フィオネは喋らせないと後がきついので無理矢理喋ってもらいました。
ちなみにフィオネが喋るのでマナフィも喋ります、テレパシーですが。

それからハーメルンの機能についての疑問なんですが、斜体タグが使えなくて困ってます。
 斜体 ←きちんとタグ使ってますが、表示されず。
原因がわかる方いらっしゃいませんか?


そういえばヒロイン的な人が出ていましたね。ちょっと変人?ですが。イメージ的にはシンゴジラの尾頭さんを筆頭にして森課長が言っていたはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、異端児を相当マイルドにして詰め込んだ感じ。


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2人の夜(前編)

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、この小説に特定の宗教宗派を貶めるという要素はありません。


アルセウス関連の没イベントが元になっている部分があります。
没イベントの詳細は「てんかいのふえ アルセウス」辺りで検索かければ上位に動画がヒットしますので、そちらでご確認お願いします。

あと今回は作者の地頭の悪さと引き出しのなさがモロに出ている回です。
テーマは大きいのにこんな表現しか出来なくて申し訳ないくらい……。


「ふぅー」

 

 執務室で付いた溜め息の大きさや長さから、彼の今日の執務が如何に神経に重圧の掛かるものであったかを物語っている。

 

「総理、もうお休みにならないと明日に差し支えが出ますよ」

「吉乃さんの会見は終わったのかな?」

「はい。それで、官房長官から『予定通りのことまでお伝えしました』との言付けが先程ありました。それから今日はもう上がられるそうです」

「そうか。上手くやってくれたんだな。ではそうだね、我々も彼女に倣おうか」

 

 目頭や眦を揉みほぐしながら秘書官のそれに答えると、帰りの身支度をする。官邸玄関フロアで待機している記者を正直鬱陶しいともこんな時間までご苦労様とも思いつつも、玄関前に横付けされた公用車に乗り込む。

 

「出してください」

 

 そうして公用車はそのまま官邸を出発。運転手も慣れたものと、行き先は瑞樹の私邸である。

 

 『総理大臣ならば首相官邸の隣にある総理大臣公邸に住まうべきでは?』

 そんな話が出ており、またそれに関する質問主意書まで出されて内閣で答弁の閣議決定をしたこともある。実際にここ40年以上、総理になって公邸に住まなかった総理大臣はいない。というのも一度自由保守党は政権の座から転落し、その後、民主善良党という党が政権を担ったのだが、そのときに暴力団や公安調査庁の“調査対象団体”などの非社会的組織を始め、韓国や中国の駐在武官が頻繁に公邸に出入りして、改装工事を指揮していた。

 そのため盗聴器を始めとした様々な危険があり、それらが3年近くの間じっくり仕込まれたと思われるため、『もはや全て発見、取り除くのは無理』という安全上の観点で私邸から出勤しているのだ。

 

「で、創造神とやらと会うためのスケジュール調整はどうなっていますか?」

「はい。総理と眞柴大臣の調整、並びに陸自のヘリとパイロットの手配は終わりましたが、地上支援に少々時間がかかるということで、週明け火曜日ということになりました。当日は官邸屋上よりヘリで御殿場の富士駐屯地へ、そこでヘリを乗り換えていただき富士山頂上へ向かうという行程です。ただ、天候により変更となる可能性も多分に含まれてはいますが、まあ大丈夫でしょう」

「そうでしょうねぇ」

 

 隣に座る秘書の言葉に感慨深げに頷き、瑞樹は先程のことを思い浮かべていた。

 

「神に値するポケモンですら、あれほどの威圧感だった。ならば、全てを生み出した神とはいったいどれほどのものか」

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「さて、緊急かつ重大な案件とのことで早めに切り上げてきましたよ」

「オレもだな。てか中国大使から「貸したパンダはどうなってんだ?」的なこと聞かれたから、ちょっとしたら「返せ」って言われるんじゃねぇの?」

「はは。でも眞柴さんも適当にあしらったんでしょう?」

「まあな。にしても総理よぉ。総理こそアレにぞんざいな対応を取ってもよかったのかい?」

「彼と実りのある話が出来るのは現状では世界中で私だけですよ。そして彼も国外首脳への伝手は半ば私に頼らざるを得ない。逆もまた然りです。私は各国首脳とはそれほどの関係を構築してきたという自負があります。それにポケモンについての情報を他国より少し厚くしていけば問題もないでしょう、日米同盟的にもね」

「なっはっは。まあ、それもそうか」

 

 仲睦まじい様子で瑞樹と眞柴が着席しながらそう話し始めているこの場所は、先も開かれていた未確認生物対策本部改め、ポケモン対策本部。ちなみに今集められた面々は瑞樹の特に信がおける仲の閣僚数人と先の対策本部で与野党関係者以外の学者、あるいは実務を担う面々であった。

 なぜこのような制限を設けたかといえば、内閣危機管理センター内の閣僚の中には自保党内での瑞樹の敵対派閥に属する閣僚や官僚も含まれる。況してや野党はという状況。不利益を被る可能性は十分にあった。

 そして何より中河は先のときに御子神より『創造神』という単語を聞いていたのを思い出した。『宇宙を創造した』とも言っていた覚えもある。選択肢をミスれば即Dead Endにもなりそうな案件を最高責任者の総理抜きでは拙いとの判断だった。ついでに学者らによる何らかの取っ掛かりも期待してのこともあった。

 

「遅くなりました」

「いやいや、大丈夫ですよ。さ、会議に移りましょうか」

 

 最後に記者会見が長引いていた的井官房長官が入室して謝罪するも、瑞樹は笑ってそれを軽く流して、会議はスタートした。ちなみに一番遅くなった理由は、時間制限やルール等を一切無視して、かつ、毎回要領を得ない演説じみた質問をしてくる某新聞の女性記者に『お前毎回毎回本当にいい加減にしろよ?』とカチンときたので、散々揚げ足とってケチョンケチョンにこき下ろしながらあしらってこれでもかと凹ましてきたという事情もあったりした。瑞樹もそれは察しているし、瑞樹自身も思うところが多分に含まれているので良しとしている。

 

「さて。御子神くん、創造神に会うということでしたが、どういうことか説明してもらえますか」

 

 瑞樹のその言葉で、議場内の視線はただ一点、どこにでもいそうな普通の青年に移る。

 彼は瑞樹に指名されるとその場で立ち上がって、自身のスマートフォンを操作するとオカリナのような、しかし、色や形態などから気色悪さを残す何かが現れ、それを前のテーブルにコトッと置いた。

 

「できれば、疑問を挟まずに『そういうものなんだ』との理解の元で聞いてください。答えられる質問ならば、後で答えます」

 

 そうして彼は語り出す。その様は一瞬前までの自信なさげな、あるいはこの空気にどこか萎縮した様子から、何かのスイッチが切り替わったかのようにそれらが欠片もなく消え失せ、希代の扇動者(アジテーター)のごとく語り出す。

 

 その内容は主に以下のようなことだった。

 

――今この日本にはポケモンがいるが、ポケモンの中にはまさに神と称されるポケモンもいる。

――その中に、今回の肝である創造神アルセウスがいる。

――アルセウスは、宇宙が宇宙の体をなしていないただの混沌のうねりだった頃に生まれたポケモンで、アルセウスが時間と空間の概念、そしてそれによって生じた反転世界(反物質)の存在を司るそれぞれのポケモンを生み出したことによって、宇宙の概念(バランス)は定まり、そして宇宙は始まった。

――アルセウスは文字通りの全てを超越した神だが、問答無用で話の通じない神ではない……はず。なぜなら、そのようなポケモンであっても人間と契約を結んで、力を与えたこともある。人間の危機を救い、力を貸し与えたこともある。尤も、その人間たちは約束を違え、世界が滅ぶ寸前に至ったこともあったが。

――そして肝心のアルセウスの存在だが、間違いなくこの日本国内にいる。

 

「その場所が富士山の頂上なんです。正確にはあそこのてっぺんに出来たやりのはしらというところのさらに上層、はじまりのまです」

 

――そしてそこに行くためにはある道具が必要である。

 

「そのアイテムこそがこのてんかいのふえなんです」

 

――場所も条件もクリアしているのなら、会ってみるのはどうだろうか。

 

 

 その笛を掲げるようにして、彼の演説は締めくくられた。

 

「ふーむ……」

 

 場には違う空気も流れるが、一番多く横たわるのが困惑のそれだった。

 

「正直な話、会ってどうする? 何をする?」

 

 誰かがその困惑の正体を代弁した。

 

「平たくいえば、日本に上手い具合にいくようにアルセウスの言を引き出すんです。そうすれば『このポケモンは全てを生み出した神様であり、その神様がこう言ってんだ。神様の発言にまさか文句はないよな?』的な感じに各国に圧を掛けることも出来るんじゃないですかね。伝説のポケモンの力は十分に見せつけられているわけですし。それにぶっちゃけどの宗教系神様でも比べるべくもないほどの、しかも実際に顕現されている神様ですし」

「まあ、それを言われちゃあなぁ」

 

 眞柴は自身の信仰している宗教の件も含めて苦い顔をする。

 

 そうして意義と意味を見出した彼らだが、1つ大きな問題が立ちはだかった。

 

「4月の富士山は危険です。季節的にはまだ冬真っ盛りで、春とはとても思えない気候です。おまけに気温も低い」

「仮に当日晴天だったとしても、4月は天候が崩れやすい時期です。危険度は他の季節よりも断然上です」

「陸自の地上支援にしても隊員の安全確保があまりに不十分です。我々も毎年八甲田山で雪中行軍を行いますが、それはルート選定や気象予測、装備、経験から来る知識等の前準備をしっかりと行っているからです。しかし、富士山は違います。通信や気象予報は何とかなるにしても他が不十分です。八甲田山で使用している装備が富士山でも通用するかはわからない。下手をすると旧日本軍の八甲田山遭難事件の二の舞になりかねません」

 

 環境省や気象庁、さらに防衛省、特に陸上自衛隊からの大きな反対の声が上がる。ちなみに八甲田山遭難事件とは、日清戦争で冬季寒冷地での戦いに苦慮したため、さらなる厳寒地での戦いとなる日露戦争における冬季訓練を目的とした雪中行軍だったが、貧弱な装備に極端な情報不足と認識不足、加えて未曾有の大寒波により、200人近くが死亡するという痛ましい大事故だ。

 地上支援を行う現場を知る者が大反対となれば、御子神の案は流れるものも当然だと思われた。

 

 

 

『その件についてはボクたちもお手伝いするのネ!』

 

 

 

 そこに突如、瞬間移動したかのごとく(実際テレポートを使って)現れたのは、セレビィとフィオネ、それからホウオウにエンテイだった!

 

『ホウオウはこう言っているのネ。「お前たちが創造神に謁見するというのならば我々もそれに同行する用意がある」とのネ。だから、ホウオウたちなら寒いのなんか大丈夫なのネ。ねっ、ホウオウ?』

「ショオオ」

『「我が眷属に親友セレビィ、それと蒼海の王子の皇子(みこ)の力もあれば、その程度の苦難など苦難とは言わん」って言ってるのネ。あはぁ、ボクなんだか照れるのネ』

 

 フィオネはどこかほわわんとしていたが、ホウオウ、そしてエンテイの放つ熱気と威圧感に部屋にいた一同は微動だに出来ず、感じ取っていた。

 

 

――これが伝説、いや、神にも等しいと言われるほどのポケモン!――

 

 

 それが自身の肌で体感した()のポケモンたちの存在感だった。

 そして彼らは同時に思う。

 

――彼らがいてくれればすんなりと上手くいく――

 

 そうした安心感をも彼らに抱かせていた。

 

 それからはアルセウスに会うことに何の憂いもなくなり、アルセウスにどうやって話を付けるのか等を含めて詳細を詰めていく。

 

 結果、陸支援に陸上自衛隊の他、ホウオウとフィオネ以外の伝説のポケモンが付き、陸自の所持するUH-1Jに御子神彰、瑞樹康宏、首相補佐官と秘書官1人ずつ、学識者3人、自衛官4人、フィオネで乗り込んで、ホウオウと編隊飛行して富士山頂に向かうことになったのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「あー、今日はいろいろあったから、なんかようやっと帰れた気がする」

 

 激動だった1日も日が落ちて今は真っ暗な状態。

 数日はスケジュール調整云々があり、また明日は日曜日でもあるため、僕は総理らから休みをもらった。ちなみにそれを横で聞いていた神定さんに速攻で「なら、明日私に付き合ってください」と言われてすぐさま予定は埋まったけど。

 適当に外食で済ませて(ポケモンたちも食べさせるんだけど、ギャラドスがいるから家の中じゃデカすぎて食べさせられない)公安の武藤さんたちの車で僕は自宅アパートに帰ってきた。

 

 尤も自宅に帰ってきていざ寛げるかというと――

 

「引っ越しかー。ちょっと面倒というかなぁ」

 

 武藤さんらから是非とも引っ越しをするように頼まれていたのだ。なんでも、護衛をするのにここでは色々と不向きだから、最低でもオートロック式のところに引っ越してほしいということらしい。ちなみに候補は渡されており、その中からある程度選ぶ形のようだ。

 

「決まったら教えてください。そのマンションの上下階と同階の全室を借り受ける必要がありますので」

 

 香取さんにこんなことを言われたときには、「そこまでやるか」ということと「そこまでやってくれるのか」ということに、マジで度肝を抜かれた。

 

「ラル」

「カゲ」

「モグ」

 

 とりあえずギャラドス以外の3匹をボールから出してから、資料を検分……したはいいものの、何となくそういう気分じゃなくなったので、すぐに投げ出した。明日でいいや明日で。

 

「カゲ♪カゲポゥ♪」

「モッグモッグ♪」

「ラッルー!」

 

 3人はどうやら鬼ごっこ的なものに興じ始めているようだ。今はラルトスが鬼になった……はいいんだけど。

 

「ラル!」

「カゲェ!?」

「ラ!」

「モグモォ!?」

 

 テレポートで背後に移動して捕まえたり、ねんりきで拘束して捕まえたりとか、そんなんありなんか? なんか2匹ともビックリしてるし。

 

「おーい、とりあえず喧嘩しないで楽しくやれよー」

 

 あ、そういえばさっき送ってもらったときポケストップに寄ってみたら、更新通知がされていろいろとなんか更新されていたっぽいんだよな。ポケストップの方は明日確認するとして、スマホのアプリの確認はしておかないと。

 まず、“図鑑”、“ポケモン”、“道具”、“ポケリフレ”、“トレーナーパス”の項目は変わらない。トレーナーパスには“New”の文字が付いているがこれはまだ見ていない説明もあるからだとも思う。

 

 尤も、それだけでは間違いなくないだろう。

 

「んな゛ッ!?」

 

 今僕の中ではそんなことも気にもならない、今日の最大級の驚きに匹敵するぐらいの衝撃が駆け回っていた。

 それは“New”の文字が付いている新設された4項目のうちの2つだ。

 

 

“ポケモンセンター(改)”

“通信交換(改)”

 

 

 この2つの項目に目が釘付けだった。

 

「ま、まさか……!」

 

 思わず震えてしまっている指で画面をタップする。

 まずは“ポケモンセンター(改)”だ。(改)ってのが謎だけど。

 

 

 伝説のポケモンがゲットされました!

 付きましてはアプリポケットモンスターの特殊機能、ポケモンセンター(改)機能を全トレーナーに解放します。

 これは、あなたのポケモンをお手持ちの携帯端末でも全回復出来る機能です。

 またポケモンセンターでの回復は無料になります。

 バトルで疲れてしまったポケモンや傷ついてしまったポケモンを是非回復してあげてください。

 なお、ポケモンセンターは引き続きポケストップでもご活用出来ます。

 詳細はトレーナーカードの説明をご確認ください。

 

 

 ついに、ついにこの機能が来た!!

 ポケモンって言ったらやっぱこれがないとダメでしょ!

 これで育成もグッとやりやすくなるし、回復がラクになるということは敷居が下がって一般にもポケモンもさらに広がる!

 ていうか移動式ポケセンとかヤバい。説明読む限り、いきなりバージョンアップ版を解放出来てしまったっぽい感じだし、ひょっとしたらこれが(改)とやらの効果かもしれない。

 それに回復アイテムとかもいらない系になった?

 あ、でも、野生のポケモンとかには使えなさそうだし、バトル中は無理そうだからそうでもないか。おまけに人間にも効果あるし。

 それにひょっとしたら、トレーナー同士のバトルとかも出来るかもしれない。

 

(ただ、今は決闘罪とかに引っかかる恐れがある。それに勝った後、現金巻き上げるのはやっぱ良くないよな)

 

 おまもりこばんとおこづかいポンやおこづかいパワー併用して荒稼ぎしてたなんて外道なことなんて現実ではやったことないし~(;・3・)~♪

 

 ま、まあとにかく次を見てみよう!

 今度は“通信交換(改)”だ。

 

 

 伝説のポケモンがゲットされました!

 付きましてはアプリポケットモンスターの特殊機能、通信交換(改)機能を全トレーナーに解放します。

 これは、あなたのポケモンをお近くのトレーナーの他に、全国のトレーナーともポケモン交換が出来るようになる機能です。

 交換によりポケモンには様々な影響が与えられます。是非いろいろとご活用ください。

 また手持ち複数匹によるポケモン交換だけでなく、道具の交換も出来ます。

 なお、通信交換は引き続きポケストップでもご活用出来ます。

 詳細はトレーナーカードの説明をご確認ください。

 なお、通信交換は手持ちポケモン3匹以上でないとご利用出来ません。

 ご注意ください。

 

 

 これもうほぼほぼポケモンのゲーム機能完備してね?

 1匹ずつじゃなく、何匹かでまとめて交換出来るとか道具だけ送れるとか、もはや本家よりバージョン上だから、多分これが(改)機能だろう。

 てかこれはあれか? 通信進化のフラグが立ったのか? ぶっちゃけユンゲラーとかゴーストなんか通信以外どうやって進化させるか皆目見当付かなかったから、これならまあ安心。

 通信出来る相手がいない? ダイジョブダイジョブキットイルッテ。

 

 ていうか思ったけど、これって説明見るに両陛下が伝説のポケモンゲットしたから、この機能実装されたんだよな。

 ていうことはやっぱり、

 

「両陛下ありがとうございます! 両陛下万歳!」

「ラルラ!?」

「カゲカ!?」

「モグモ!?」

 

ということかしらん。

 そして3人とも驚かしちゃってゴメン。

 

 

 ちなみに残りの2つは“不思議な贈り物(改)”と“掲示板”だった。

 

 




この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、この小説に特定の宗教宗派を貶めるという要素はありません。




ということで伝説と幻が捕獲されたので、特殊機能(ご褒美)解禁。豪華特別機能が実装されました。
本来ならば
・トレーナー数50万人以上+手持ち所持数3匹以上で近場の人との通信交換解禁(1on1での交換/持ち物なし)
・トレーナー数100万人以上+手持ち所持数3匹以上でポケモンセンター解禁(歩数による有料方式、ポケストップでのみ)
・トレーナー数150万人以上+手持ち所持数4匹以上で全国の人との通信交換解禁(1on1での交換/持ち物あり)
的な感じに設定。以後、トレーナー数+全トレーナー諸条件(イメージ的にはポケモンGOやBW2XYのメダル獲得条件的なもの)をクリアすると共にバージョンがアップしていきます。

ちなみに伝説が懐くというのは他国だったら多分ならなかったでしょう。強いて言えばデンマーク王室がワンチャン?


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2人の夜(後編)

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


「ラル?」

「カゲカ?」

「モグモ?」

 

 どうやら大声を出してしまったようで3人には心配をかけてしまったようだ。

 胡坐状態で頭にラルトス、両膝にヒトカゲとモグリューが乗っかってきた。

 ラルトスはねんりき使ってないみたいで、頭に6kg、両膝にそれぞれ8kg以上の重さがかかる。

 

「重い……」

 

 思わずそう呟いてしまった。てかやっぱりアニメのサトシはおかしいわ。ラルトスですらこうだったのにヒポポタス(50kg)乗せたり、ヨーギラス(72kg)抱えて走るとかバケモンですわ。

 

「ラ、ラルッ」

「カゲッポッ」

「モッグ」

 

 それに慌てた3人はそれぞれ両膝から降りたり、あるいは頭にかかる重量が減った。

 

「ありがとうな。それに心配してくれたんだろ?」

 

 その心意気に嬉しくなり、順番に頭を撫でさする。ヒトカゲとモグリューは両手をそれぞれの僕の膝上に乗せて、気持ちよさそうに頭を擦りつけてきた。

 

「ルゥゥゥッ」

 

 ラルトスがグリグリと頭を擦りつけてくるんだけど、正直突起が擦れていたいです。仕方ないから、モグリューに置いていた手を頭の上の方に伸ばしてラルトスを探り当てる。

 

「モグー……」

「ラルー♪」

 

 手を放した方と置いた方の正反対の反応に苦笑しながらも、ふと思った。

 

「あれ? ひょっとして心配してくれてたのか?」

 

 思えば近くにいる親しい人とか家族が急に声を上げたら「どうした?」ぐらい声かけするし。

 

「ラル」

「カゲ」

「モッ」

 

 すると3人とも首を縦に振ってきた。

 

「そっか。ありがとう、みんな。でも、僕は大丈夫だからさ」

 

 ちょっとホッコリ温まる感覚とみんなの感触を覚えながら、つづきを見ていくことにした。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 さて、“ポケモンセンター(改)”、“通信交換(改)”と見てきて、残りは2つ。

 “不思議な贈り物(改)”と“掲示板”だ。

 

「まず先に“掲示板”の方を見てみるか」

 

 ゲームにも一切なかったこちらの方を先にタップしてみる。

 

 全国とのトレーナーとの通信交換機能が解禁されました

 よって、双方のトレーナーとコミュニケーションが取れるよう、掲示板機能を解禁します。

 情報交換、ポケモン交換等様々な用途として是非ご活用ください。

 

 見てみるといわゆる某大手掲示板サイトみたいな感じのスレッドフロート型掲示板で、左に交換対戦地域などのカテゴリとジャンル分け(板)がなされ、スレッド等もいくつも立っている。試しに一つクリックしてみれば、「ポケモン交換しようず(36)」「ポケモンじまん!(40)」「ポケモン情報交換1(69)」などのスレッドのタイトル(スレタイ)が並んでいる。

 

「んー、2○ゃんみたいな感じか。いずれ利用するかもしれないけど一先ずは置いとこうか」

 

 そして最後の項目、“不思議な贈り物”を見てみる。

 

「はて、ね?」

 

 ゲームでのふしぎなおくりものは起動画面のときに選択してWi-Fiやローカル通信などを通してアイテムやポケモンを受け取るためだけの機能だったのだが?

 

 伝説のポケモンがゲットされました!

 付きましてはアプリポケットモンスターの特殊機能、不思議な贈り物(改)機能を全トレーナーに解放します。

 これは、12時間に1回無料にて、アイテムや技マシン、きのみからポケモンのタマゴ(タマゴ未発見除く)などの、ポケモンに関するありとあらゆるものの中から1点を選んであなたにお送りする機能です。

 あなたのトレーナーライフに彩りを添えることになるでしょう。

 なお、ポケストップでは引き続き、歩数支払いによるくじ引きを実施しております

 それぞれ是非ご活用ください。

 

 ふーむ。これっていわゆる、『12時間に1回の無料ガチャ』ってやつか。てかポケストップにガチャ機能なんかあったんか。今度しっかり見てみよう。

 

「さて、じゃあ早速だけど、引いてみるかな」

 

 えーと? あ、なんかポケモンGOの捕獲画面みたく、手前にモンスターボール、奥にポケモンではなく横に高速でスクロールしている何かが現れた。よくよく見てみればたまにポケモンのタマゴらしきものもある。

 

「ははーん、このモンスターボールを当ててゲットするって感じなのか」

 

 その直後、やはり思ったのと同じ説明画面が出てきた。ただ、ザッと目を通して見たところ気になるものが目に入った。

 

 モンスターボールにてのゲットは失敗する場合もあります

 よりゲット確率をあげたいという方はスーパーボールやハイパーボール、またはダークボール等の特殊ボールをご活用下さい。また必ずゲットできるマスターボールもございます。併せてご活用下さい。ただし、マスターボール以外は捕獲確率を上げるのであって必ずしもゲットできる保証があるというわけではございません。

 以上の点につきましては御了承お願い致します。

 なお、モンスターボール以外のこれらのボールは全て有料(歩数)です。ご注意下さい。

 

 いやまあ確かにポケGOでボール当たらないとか当てても出てくるとかあるけど、ガチャにもそれを適用するのか(愕)。無料で外れるならまだしも、ハイパーボール(有料)投げて失敗とかマジカワイソスなんだけど(;`・ω・)ノ

 まあ救いは現金じゃなくて歩数で支払うというところか。これなら現金突っ込んでの破産なんてことも起こり得ないし、金持っているのが有利ということにもならないだろう。

 

 んで、投げ方はやっぱりポケGOと一緒。ということで的は何でもいいからとりあえず外さないよう、あとついでにカーブボールも決める。

 

「よし!」

 

 Excellent!の表示と共に何かがゲットされた。

 

「おっ?」

 

 どうやらポケGOと同じく、ボーナスが貰えるっぽい。ただ、ここでは経験値ではなく歩数のようだ。内訳はゲットで100、エクセレントスロー200、カーブボール50ということだった。ワンショット(一発ゲット)はなかったが、元々一回挑戦なんだからないのもまあ当然だろう。

 

「さて、いったい何がゲットできたかですよ」

 

 獲得ボーナスの画面を消すと、「ゲットしたものがお手元の画面から飛び出します。よろしいですか」にOKを押して、少し液晶から体を離す。

 すると、その通りに「ポンッ」という音と共にモンスターボールが飛び出してきた。

 

「カゲッ?」

 

 ヒトカゲが思わず自分の方に飛んできたモンスターボールをキャッチした。

 

「カゲ。カゲッポー」

「ありがとうヒトカゲ」

 

 そのモンスターボールを受け取り、はてとここで疑問に思った。

 

「これどうやって開けるんだ?」

 

 ポケモンの入ったモンスターボールなら投げればいいけど、アイテムとかが入ってる可能性のあるやつなんて投げて開けられるのか。

 

「そういえばゲームとかで落ちてる道具って大抵モンスターボールみたいなのに入ってるけどどうやってんだろな?」

 

 とりあえず適当にそれっぽそうなところ(最初はボールのボタン)を弄ってみた。

 

「ええ!?」

 

 するとまあビックリ。急にそれが野球ボール大からバスケットボール大くらいにまで大きくなり、そして口がパカッと開いたのだ。開け方自体はあんまり深く考えることでもなかったけど、この変化には驚きも然りだ。

 

 ちなみに当たったアイテムはチカチカ光るランプが付いているヘッドギアみたいなもの――

 

「これががくしゅうそうちか! これがあればバトルに出てなくても経験値入るからかなりラッキーって感じだな!」

 

 ちなみに6世代以降、がくしゅうそうちは仕様が変わってかなり有用なアイテムに変わったが、僕はスイッチを切らずにずっと使う派なので、これは非常にありがたい。これで育成や進化までの道のりはラクになるだろう。スマホに戻してみると、どうやら“道具”の大切なもの扱いになっているので、6世代以降の仕様が反映されていると思われる。

 

「明日のガチャもいいのが当たればいいな」

 

 そう思いつつ、その夜はポケモンたちと戯れて過ごしたのだった。

 ちなみにいつの間にかバスケットボール大になっていたモンスターボールは消えてなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

「ビリ。ビリリ」

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

『――と、以上のようになります』

 

 演台の上と記者席とを交互に視線をやりながら、会見を行っていた女性、的井吉乃官房長官はその言葉を句切りにして記者席の隅から隅までを一望した。

 

『――えー、それでは続きまして、質疑応答に入ります。記者の皆様は会社名とお名前を名乗ってからの質問をお願いします。また、質問は簡潔にお願い致します。』

 

 会見の進行係はそのいつものルーチンを確認してから、質疑応答の時間へと移る。

 すると一斉に上がる手。

 

『どうぞ。前から二列目のお座りの向井さん」

 

 それを一瞥した的井は、大抵すぐに覚えてしまう名前で以て指名している。

 

「共時事新報の向井です。長官、本日はいつにもまして会見を開いておられて大変お疲れ様です」

『ありがとう。ですが、国民の皆様に一刻も早く正しい情報を発信しなければと思い、こうして頑張らせていただいています。皆さんも、社会の公器として()()()()、そしてスピーディーな情報発信をお願いしたいものです』

「はは、で、質問なのですが――」

 

 和やかなムードが流れる中でも、彼女は大きな釘を刺すことは忘れない。そして今の会見は一層平和であった。

 

 

『はい、次。あら、渡部さん、お久しぶりです。官邸付きに戻ったのですか。あ、指名は渡部さんで』

「どうも。ありがとうございます、的井長官。あ、東都新聞の渡部です。急遽呼び出されてこちらに参りました。先程は芳澤が大変失礼をしたようで」

『毎回毎回失礼してるんですけどね、あの方は。いったいお宅の社員教育はどうなっているんです? あの方のせいでここにいる他の皆さん全員に迷惑が被っているんですよ? 中には「あの会社だけ官邸への出入りを禁止してくれないか」とまで言ってくる記者さんもいて、こちらも困っているんです』

「はい、はい。本当に大変に申し訳ない。彼女と彼女の上司、それから部署には徹底してそれらの通告をします」

『本当に頼みましたよ? で、ご質問は?』

「あ、はい。では質問ですが――」

 

 と、このように先にコテンパンにやり込められた女性記者がいたためだ。皆、「自分もああはなりたくない」という思いで、いつも以上にルールに則って紳士淑女的に会見は進行していた。

 

 

『では次、そこの女性の方。たしか、ツツジテレビの平中さんでしたか?』

 

 ここで、パリッとしたスーツに初々しさを感じさせる若い女性が指名された。

 

「は、はい! ツジジテレビの平中です! 的井長官、覚えていただき光栄です!」

『いえいえ、つい先日に初めてお見かけしたものですから、4月になって新しく配属になったのでしょう? 頑張ってくださいね』

「はい! ありがとうございます! あ、それで質問の前に、たしか長官はチルットってポケモンをゲットされていますよね?」

「ええ、ええ。もうもう本当にかわいいんですよ。それに成長して進化とやらをすればチルタリスになって空も飛べるらしいですから、ますますいい子過ぎて」

「実は私も先程キャモメをゲットしまして。同じく進化?をすれば、ペリッパーになって空を飛べるみたいなんです」

『そうですか。ならばお互い進化して飛べるようになったら、それぞれポケモンに乗ってドライブでもしませんか?』

「是非ともお願いします! あ、で質問なのですが」

 

 ちなみに進化については先に開いた会見、並びに政府広報にて先程から公開されており、報道されていけば、今後一般にも広まっていくことは確実な状況である。

 それはさておき、この年若く一番経験の浅い女性が、記者たちにしてみれば、本日一番のファインプレーをして見せた。

 

「長官はポケットモンスターのアプリかポケストップはご確認になられましたか?」

『いえ。生憎と会見続きなものですから』

「では、今私のスマホのポケットモンスターのアプリからの案内が出ているんですが――」

 

 そうして彼女はアプリ上でポケモンセンター(改)、通信交換(改)などの機能が解禁されたということを話す。それを聞いていた記者たちは一斉に自分のスマホ画面を確認し始める。そして彼女の話すことが事実であったと知り、そしてさらにそこに気になる文面があったことを確認した。それは的井長官、引いては秘書官らもそうであった。

 

 

「で、その案内に『伝説のポケモンがゲットされました!』とありますよね。この『伝説のポケモン』とはいったい何を指すのでしょうか?」

 

 

 的井吉乃は頭の回転が速く、非常に優秀な人物だ。正直彼女が首相でもおかしくはないと思っている人物は大勢いる。しかし、彼女は瑞樹総理の下で官房長官の職に就いている。それは瑞樹にとっても、あるいは彼女にとっても、お互いがお互いのことを筋を通す人物として信頼し合っていると共に強い絆があったからだ。

 例えば、彼らは負けるとわかっている自保党の総裁候補を、しかし、自分の信念と同じであり、その後は党の人事で干されて冷や飯を食わされるということがわかっていても、彼を応援し、そしてわかりきった結果後の時を乗り越えた。その後も与党から転落した後も同じく、時の党首を献身的に支えた。そして瑞樹が党総裁候補に名乗りを上げたときも眞柴、中河と同じく真っ先に支持表明をして以後、自保党が与党を奪還し、瑞樹の長期政権が発足して以降も彼を支えている。

 瑞樹と的井の間、あるいは中河や眞柴もそうだが、彼らの間には男女の関係の垣根を乗り越えたものが存在していた。

 

「んー、そうですねぇ」

 

 このほんの僅かな時間、彼女は必死に考えを研ぎ澄ませる。敵の多い自分たちや引いては瑞樹にとって何が一番最善であるかを。

 

 そうして彼女は結論に達した。

 

(まあ、今思ったけど、こんなの考えるまでもないわよね。はー、ムダに考えて糖分使っちゃったから、家帰ったらアイス食ーべよ)

 

 そして彼女は語り出した。




ストック切れました上、身の回りに余裕が全くないので、しばらくアップ出来ません


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海外の反応

更新遅くなりまして申し訳ありません。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 その日、日本で起きた衝撃と混乱は瞬く間に世界中に拡散していった。そしてそれに引き摺られる形で世界は等しく、それらの渦に巻き込まれた。

 

「日本からの船が出ないだと!?」

「日本への出航が出来ないの!?」

 

 日本は突如発生したとしか思えない未確認生物により、安全確保のために国内あるいは国外とを結ぶ全ての交通便を、貨客問わず、運休や欠航を決めていた。各国の空港や港湾には日本行きのキャンセル等々の手続きにより、長蛇の列が出来上がる。また逆に、

 

「何としても日本まで飛行機を飛ばしてくれ!」

「あるいは釜山まで飛ばせませんか!? あとは船をチャーターするか泳ぐから! だから何とか日本かあるいは釜山までのチケットを売ってください!!」

 

といった輩もおり、それらも含めて空と船のターミナルは大混乱だった。

 そして飛行機、あるいは船が出ないということは日本と各国との物流が止まるということを意味する。

 今の時代どの国もグローバル化が進展し、製造業等のその国の技術の基幹産業となるもののほぼ全ては原料を海外から輸入し製造、輸出し、あるいは海外で製造されたものを輸入し、販売するという経済活動が行われている。日本も当然そのブロックに組み込まれており、そしてこの場合仇となってしまったのが、日本国内にはそういった分野で知名度は低いが、世界シェア断トツの1位を突っ走っている企業が数多く存在しているのだ。

 つまり、これらの生産物の物流が滞るということは、世界的な経済活動の停滞を引き起こすことになる。

 

「なんだこの株価の乱高下は!?」

「こんなのは『the financial crisis of 2007–2008(リーマンショック)』以来だぞ!?」

「いや、あのときは下がるばかりだったが、今回は突如予想もしないものも上がったりもしている。まあそれもすぐ下がるようだが」

「とにかくこうも乱高下していてはマズイ! 顧客に説明がつかないぞ! 予測はどうなっている!?」

「ダメです! 何度やっても毎回違う結果が出てきます!」

「クソがッ!」

 

 そうなればこのような事態に発展し、リーマンショック以上の混乱が世界中に波及する。

 

「為替相場も無茶苦茶だ! どうする!? いつもの日本円買いか!?」

「いや、ここはアメリカドルだろ!?」

「いや、地理的にも貿易規模的にもここはユーロ一択じゃないか!?」

「終わった……。全財産融けた……」

 

 経済活動停滞、下落傾向の強い不安定株価と来れば、為替相場も当然乱れ始める。しかも今回に限っては何かあったときの安牌(アンパイ)の日本円への信頼がぐらつく事態だ。

 そして各国の物流、株価、為替の乱れは各国の経済政策にも大きな影響を及ぼす。現在、どこの国も中央銀行総裁も交えた金融・財政政策会合を行っている。しかし、未だ解決策の目処は立たない。

 日本は世界第3位の経済立国。その一国が盛大に躓く、いや、転倒したのだ。こうなってしまうのは宜なるかなということだろう。

 

 そんなときに日本の総理である瑞樹が発表した内容。

 

 

「我々はこの不思議な不思議な生き物を

 

 ポケットモンスター、縮めて ポケモン

 

 そのように呼称することを決定しました」

 

 

 当初は「名前何てどうだっていいだろ」という言論が流れたが、少しして詳細な内容が入ってくると、

 

「新生物なのにもうここまで内容がわかったのか」

「『詳細を知る人物』っていったい誰なんだ?」

「ミズキ総理はいったいどうやってそんな人物を見つけ出したんだ?」

 

 といった具合に瑞樹無能論は近隣のほんの一部の国と特定野党を除いて吹き飛んだ。

 そして彼らは思った。

 

「ミズキなら何かしら対策を講じられるのでは?」

 

 と。

 すると、株価に関してはほんの気持ち復調傾向が見られ始めたのだ。

 正直そんな思いは憶測に過ぎないが、株価はその憶測に基づいて動く気位(きらい)が多分にある。

 それに極めて緩くだが比例して、世界的に暗い雰囲気から徐々に脱却していくものと思われた。

 

 ある二国が日本の領海や排他的経済水域で問題を起こすまでは。

 そして以後、各国の首脳陣を筆頭に新生物自体に注目の視線が注がれ始めることになっていく。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 そういった世界の混乱とは無縁のところもまた存在する。

 

 

・Anonymous

ひゃっはー! ニッポンはファンタジーだぜ! Foooooooooooo!!!!

 

 

 その一例が日本に旅行に来ている外国人たちだ。

 彼らは現状、自国に自由に帰れない状態であり、そのことにはやや悲嘆にくれていたが、それ以上の不思議生物の発生に沸き立っていた。外国人御用達の掲示板を始め、ツィッターやフェイストーンブック、イスタグラム等のSNSにも画像や動画がアップされるようになる。

 そうなれば今世界がより一層の関心を寄せる日本での出来事。更には日常では絶対にお目にかかれない摩訶不思議な光景に普段よりも一段と早いレスポンスがつく。

 

 

・Anonymous(アメリカ)

えっ、えっ、なにこれナニコレなにこれーーーーーーーー!!???

 

・Anonymous(フィンランド)

ひょわーーーー!!メッチャかわいいいいい!キューーートじゃない!!

 

・Anonymous(スペイン)

待て!いろいろ待て!これが今の日本なのか!?

 

・Anonymous(カナダ)

なんだこの生き物!?今まで見たことないぞ!新種か!?

 

 

 現実での混乱は、このネットの一部とでは隔離されていた。ほとんどがその物語然とした、しかし、現実の出来事に心踊らせる。

 

 

・Anonymous

見てみろよ、コイツを!

ゲットしちまったぜ~!!

 

 

 そんな最中に投稿される1レス。画像も併せてアップされたそこには、灰色の厳つい鎧のような皮膚を纏ったサイのようなポケモン、サイホーンとそれに跨がった白人男性の姿があった。

 

 

・Anonymous(アメリカ)

SUGEEEEEEEEEEEE!!!!

 

・Anonymous(ドイツ)

やばっっ!ナニソレ!?アンタCOOLすぎんぜ!!

 

・Anonymous

メチャクチャかっこいいいいいいいいいいああああああああああああ

 

 

 とこのようにお祭り騒ぎ。

 

 

・Anonymous

それだけじゃないわよ!私のも見て!

 

 

 そしてそのサイホーンに跨がった一人を皮切りに次々とポケモンと写った外国人の姿がアップされていく。手乗りのポッポやムックルから子馬の火の馬ポニータ、肩乗りイーブイやププリン、パチリス、胸の前に抱えたロコンやガーディ、ウパーなどカッコいい系からカワイイ系まで様々だ。

 ちなみに特に好評だったのが、この2つの動画だ。

 

 

・Anonymous

イヤッハー!ボクってば宙に浮かんでるよ!メチャクチャ感激だ!!!

 

 

 黒人の男性がユニランのサイコパワーにより空中浮遊している動画。

 

 

・Anonymous

見て見て!キレイでしょ!?

 

 

 アジア系の女性がリージョンフォームロコンに白く輝く息(こなゆき)を吐かせている動画。

 

 これらは、前者は人類の夢と呼ぶべきことを機械の助けもなしに成し遂げたこと、後者は見栄えが非常に美しいことから大きな反響を巻き起こしていた。

 そしてゲットした様子をアップしていることから当然御子神や新出の動画も貼られており、そしてそれをもとにゲットを実践した動画をアップするヨウツベバーも現れ、活況に満ち満ちたカオスな状況に陥っていた。いわゆる『祭り』というやつである。

 

 

・Anonymous(ブラジル)

うっはー!ちょー日本行きてーーーーーーーーーー!!!

 

・Anonymous(ニュージーランド)

何で日本行きの船も飛行機も動いてないのよぉぉぉぉぉ!!!

 

・Anonymous

理由は理解できるよ?でもさぁ、何とかしてくれよ!

 

 

そうして日本に行けない彼らは液晶画面の前で大いに地団駄を踏んでいた。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 そして世界は、ポケモン出現による影響は混乱だけでなく、希望の光をもたらすことにも気づき始めた。

 

「なんてすごい! こいつは素晴らしいぞ!!」

 

 彼はフランスのとある大学病院の勤務医である。

 彼の受け持つ患者の中には現代医療では治療が厳しい患者もいた。彼はその若い命の灯火を絶やさぬために日夜研究論文を漁り、適用可能な治療法を模索していた。そして、そんな彼の同類は世界中におり、絶えず連絡を取り合っていた。そんな中、日本にいる仲間からのメールが届いた。その内容は簡潔にこう書かれていた。

 

『我々の追い求めて止まなかった治療法

 それが見つかった!!

 しかも、寛解(かんかい)ではない。完治だ!

 この闘い、我々の勝利だ!!!        』

 

 最初にその文言をみたときはただただ頭が真っ白だった。やがてそれの理解が及んでくると、疑問が湯水のごとく溢れ出てくる。

 詳しく問いただそうとしたとき、新しいメールが届く。あの日本にいる仲間からのそれだ。内容は動画ファイルがいくつかと電子カルテを共有ネットワークに鍵付きであげたから確認しろとのことだ。

 まず動画ファイルの方を見てみれば、ほぼほぼベッドの上で寝たきり一歩手前だったはずの患者が上体を起こして会話をしている。痩せ細っているが至って元気そうだ。

 

「まっ、まさか……!」

 

 彼は震える手でマウスを動かし、電子カルテを解錠する。

 そこにはまだ途中経過でしかないものも多いが、一般の人間と代わりないバイタルが記録されていた。

 

「ほ、本当に……!?」

 

 続けてメールが入る。今度はどうやらそこに至るまで過程のことが書かれていた。

 

 

「……なんて……なんてことだ……!」

 

 遠い日本のことはニュースで聞き及んでいた、不思議な生物が出現したと。

 そのときは「へー、そう」と思っていただけで彼自身は流していただけだったが、その後、彼らに関係する道具とやらが人間にも効果があるらしいと判明。仲間は家族の了解を得て、その道具の使用を試みた。するとどうだろうか。見る間に血色が良くなり、回復していったという。

 

「ははっ……なんて……なんてこった!」

 

 彼は歓喜の渦に包まれていた。

 一刻も早く(くだん)の薬を手に入れたい。

 何でもその薬は日本にのみ出現したホログラムでしか手に入らないらしい。

 

「…………クソッ! 何としても日本に行かなくては!」

 

 すぐさま日本行きを手配しようしたが、現在日本と世界を結ぶ全ての交通手段が運休している状況。それはつまり貨物輸送も滞っているということだ。

 

「送ってもらうってのもダメなのか、クソッ!」

 

 彼はその状況に項垂れてしまった。デスクに叩きつけた握り拳の痛みも今は気にならない。

 

 

「あー! 日本に行きたい!!」

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「なんだと!?」

 

 彼はアメリカにあるとある大手流通宅配便会社の社長。代替わりして間もないが、その確かな戦略眼とともに打たれる一手により、社長就任前より会社規模拡大に大きく貢献してきたことから、社内では先代以上のやり手、社外では今最も勢いのある社長の一人とマスメディア等に目されていた。

 

「なんたることか……! いやしかし……!」

 

 彼は、今このときが会社存続の岐路に立たされていると感じていた。

 

「またしても、『ポケモン』か」

 

 彼は今日一日頭を悩まされていた。日本国がポケモンの影響により、日本国外との交通手段が全てシャットアウトされてしまい、大手取引先の一つである日本国内との流通取引が出来なくなったのだ。

 まだ24時間も経過していないが、すでに大きな損失額が発生している。しかもこれが何日続くかもわからないのだ。先の見えない下降要因に加え今回判明したコト――

 

「まさかスマートフォンのやり取りのみで物品の交換が可能、それもノータイムでとは」

 

 通常こうした小口の商流貨物の輸送便は荷主の戸口から届け先の戸口までの迅速な配達を謳い、その対価を受け取ることで成り立つ業種だ。しかし、今回のコレは――

 

「何とかしなければ、我々のような業種は消滅もあり得るぞ!」

 

 タダでそれまで以上のサービスを使えるのならいったい誰が既存のそれを利用するというのか。

 そんなものは火を見るよりも明らかである。

 

「いや、まだ手はあるハズだ」

 

 そして彼の優れたところは、これをピンチと捉えると同時にチャンスとも捉えているところだ。

 

「聞けばポケモン関係のものだけで他が送れるかはわからない。いや、そもそも本当に物品を送れているのかも確かめないことには……」

 

 通信交換(改)とやらの機能の仕様を現地からの報告でなく、彼自身で体感、現地での指示出しが必要であるとの思いに到り始める。

 

「よし! 何としても日本に行くぞ!」

 

 こうして日本行きを希望する人間が現れるのである。

 

 そしてこのようなことは医療・福祉・流通に限らず、直接あるいは間接でも()()()()()()玉突き連鎖のごとく発生していた。そう、いわゆる日本標準産業分類で分けられる()()()()()()だ。

 そしてそれはポケモンに関する情報量が増えていく度に加速度的に増えていく。そして多くがポケモンという存在に価値を希求していく。渡航乃至はポケモンの情報を請う声は加速度的に増していった。それは何も民間ばかりではなく政府としてもだ。

 

『日本にはポケモンに関するあらゆる情報を開示することを要請したい』

 

 早いところでは政府首脳がそのように公の場で発言し、またそれ以外でも様々な形での対応が取られた。

 

 そして極めつけが尖閣諸島とオホーツク海沖での出来事だった。

 当初は原因不明とされたが、米軍等の解析により、それはどうやら生物が原因であるとわかったのだ。

 それに世界は衝撃だった。何せ生身の生物が現代兵器の最先端をいく産物を鎧袖一触にしたのだ。

 突如発生した生物とそれを行った正体不明の生物がニアリーがつけど、イコールとして結び付くのに時間はいらなかった。

 

『ヤスヒロ(ミズキ)が話してくれることを願うばかりだね』

 

 日本の一番の同盟国の大統領もSNSでの発信を行い、それらのうねりは見えない圧力となって押し寄せていた。

 

 

 そしてそれに対するある種の返答。

 それが日本国の官房長官から発信された。

 

【今からお話することについて、多くの疑問があるかと思われます。しかし、これらは『そういうもの』と認識して聞いていただきたく思います】

 

 その会見内容は第二次ポケモンショックというべきに、世界中を駆け巡った。

 

 

 

 ちなみに世界中で宗教関係者が荒ぶったのは言うまでもない。




航空機と船舶の往来が再開したらたぶん日本行きのチケットは超プレミアになりそうですね。
Youは何しに~~は「ポケモン捕まえに来た!」が大多数を占めることになりそう。

なお、この時点で日本にいる外国人はいつも以上にハッスルしすぎている模様。
ちなみに邪な考えを持つ人間に対してポケモンも塩対応になるんじゃないかな。
一応ポケモンの『故郷』は日本なので、郷里を荒らすつもりがある人間に対してはそれはまぁ……ね


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日が変わって

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 明けて翌日。今日は日曜日。窓の外の天気は昨日に引き続いての晴れである。

 

「ラル!」

「カゲ!」

「モッグ!」

 

 隣にはもう起きていたのか3匹の僕のポケモンたちがいた。

 

「みんな、おはよう!」

 

 そうして挨拶を返してくる3匹を見ながら、ふと思った。

 

(そういや、ポケモンが出現し始めたのは昨日からだし、こいつらとギャラドスの4人も昨日たった1日でゲットしたんだよなー)

 

 ゲームならいざ知らず、まさか現実でこんなハイペースで捕まえていくことになるとは思いもよらなかった。

 

(陛下がトップだとしても僕って結構トップクラス走ってたりして)

 

 少なくとも知識的にはトップ大独走は間違いない。

 ただ――

 

(やっぱり名実ともに1位ってのには憧れるよなぁ)

 

 前のときゲームではどんなに頑張っても対戦レートでトップに立つことは出来なかった。ただここでは周りのレベルが低くなったとはいえ、それを狙うには十分な圏内にいると思う。

 

(ま、それはひとまず置いといて、とりあえずトイレ行ってこいつらの朝飯を――)

 

 そうしてスマホを持って立ち上がったところで。

 

 ピンポーン

 

 そんな寝起きの時に鳴らされた呼び鈴。

 今時計を確認したら、まだ朝の6時半過ぎだった。

 

「ったく誰だよ、こんな朝っぱらから」

 

 今日は、創造神と会うために総理らのスケジュール、ヘリや人員の手配その他諸々の件で休みをもらった。で、それを隣で聞いていた神定さんに「(今日の)用事に付き合ってください」と言われていたので、今日は彼女と、あとは表で見張っている公安さんとも一緒に出かけることになっている。

 

 とりあえず、まだそんな時間だから彼女が来るはずもないと思うのだが、相変わらずピンポンピンポン鳴り続けるので、「ちょっと待ってて」とポケモンたちに断ってから、仕方なしに玄関の扉を開けた。

 

「おはようございます」

 

 そこにはまさかの、昨日と同じくレディーススーツに身を包んで背中に大きめのリュック、手にビニール袋を下げた神定さんがいた。

 

「ああ、えーと、おはようございます。てかなんでこんな朝早くに?」

「はい。いえ、とりあえずその前に確認したいのですが、お付き合いされている女性はいませんね?」

 

(オイ、なんで確認口調なんだよ? そこは疑問調で聞けよ)

 

「いや、まあいないけど」

「では問題ありませんね。朝ご飯まだなので上がらせてください」

「いや帰れよ」

「大丈夫です。私が食べる分は持ってきましたから。何だったら、御子神さんの分もありますよ?」

 

 とりあえず、こんな朝っぱらから入れて入れないで押し問答しても仕方ない上、自分の分があるというならと、結局仕方なしに上げて、2人と3匹で朝食を食べることになった。

 ちなみに神定さんの朝食だった、フルーツグラノーラヨーグルト和えには3匹全員興味津々だった。とりあえずギャラドスは大きすぎるので、あとでご飯(あ、みんなポケモンフーズです)あげることにしよう。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「で、こんな朝早くからいったいどうしたんです?」

 

 一応お客様なんおで、食後の一服で濃いめの緑茶を出しながら聞いてみる。

 

「はい。実は今日は御子神さんに私のポケモンを一緒にゲットしていただきたくて」

「でも、そのために今日予定を空けてたでしょう? もっと後から来ても良かったのでは?」

「そうですね。しかし、折角ポケモンをゲットするわけですから――」

 

 そう言って彼女はリュックの中から小型のノートパソコンを取り出した。

 

「以後私は御子神さんの補佐といいますか、秘書的な立場に付きます。で、御子神さんは内閣官房参与ポケットモンスター担当官です。近日中に役職名は変わるそうですが。それで、ポケモンに詳しい方の秘書がポケモンに無知では話になりません。いえ、仮に話になったとしても、私の矜持がそれを許しません。ですので、私がポケモンをゲットするのと同時に、私にその知識をご教授いただきたく、このような朝から参りました」

 

 あれ、なんだろう。

 非常識というか変人だけど出来る人ってイメージだったんだけど、なんか実は結構真摯な人なんだろうか。いや、不良が猫救っているところを見て「実はいい人」と勘違いするってのと同じ感覚、なんだろうか。ちょっとわからない。ただ、すっごい目力を感じるから真剣なことに間違いはないだろう。

 

「……。わかりました。とりあえずある程度の基礎と思われるものについては話しておきましょう。で、その後は」

「はい! 念願のポケモンゲットです!」

 

 

 というわけで、ポケモンとはどういう存在かから始まり、タイプ、相性、ステータス、性格、特性、技、アイテムなどの知識をこれでもかと詰め込んだ。

 尤も、途中で時間が全然足りなくなって一旦保留になったのはある意味必然だったが。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「ギャウギャアーウ♪」

 

 御子神さんの講義はひとまず置いておいて、今我々は車で15分近く走ったところにある公園に来ています。公園と言っても、ここは平田川という荒川水系の一級河川の調節池を元に緑地整備された公園なので、大きな貯水池が複数存在しています(ちなみにフィールドワークのようなものですので、スニーカーにパンツに上は寒さ対策もかねたパーカーと動きやすい服装を選んで意識しています)。

 で、御子神さんはそこの一つで今、昨日ゲットしたギャラドスを出してあげてポケモンフーズとやらをギャラドスに食べさせています。ポケモンフーズとはどうやらペットフードに似たようなものらしく、いろいろな種類があるそうですね。御子神さん自身もどれくらいの数や種類があるのかは把握していないそうですが。

 

「で、とりあえずどういった系をゲットしたいんです?」

 

 他にも3匹のポケモンを出して遊ばせていた御子神さんが聞いてきましたが、やはり思います、『御子神さんの話、聞いておいて良かった』、と。

 なんでもポケモンには必ずタイプというものがあるそうですね。水辺に生息するから水タイプ、空を飛ぶから飛行タイプ、炎を吐くから炎タイプなどなど。タイプがないポケモンはないと言っても過言ではなく、どれか1つ乃至2つのタイプを持っているとか。

 そして、それぞれのタイプには相性というものがあり、得意とするものもあれば苦手なものもある。そしてトレーナーはポケモンを数匹持ち歩くと。要はパーティを組めるというわけですね。

 ならば、例えばドラゴン○エストやファイナル○ァンタジーでパーティを組む場合、同じタイプで固めるのではなく、バラバラのタイプで組み合わせますが、ポケモンにもそれと同じ事が言えるのではないでしょうか。つまり、なるべくならばタイプをばらけさせた方がいい。しかも、2タイプずつ持つポケモンで組めれば、より多くのタイプに対抗出来るのではないでしょうか。

 

「そうですねぇ」

 

 加えて出来ればかわいい系か美しいあるいはかっこいい系でもいい。これらのポケモンがいれば最高です。例えば水に関係する――!!

 

 

「あれ! あれがいいです!!」

 

 

 大きいけど小さいという、我ながら結構器用な声でアピール。

 

 何あの黄色いモモンガっぽいのちょーかわいい! 絶対ゲットしちゃる! フンスッ!

 

「うわぁ。お目々グルグルだー。あーはいはい。エモンガね」

 

 なるほどなるほどエモンガちゃん。今の水を飲んでる姿もめっちゃキュート! 安心してください、今すぐお迎えに行きますからね! 大丈夫! ガチャは出るまで回すから外れなんてないんです! それに私って自慢ですが、運もいいんですよ!

 

「で、神定さんはポケモン持ってます?」

「ええ。ええ。持ってますよ!」

 

 昨日公安さんに手を回して1匹頂戴したポケモン。これで、あのエモンガちゃんをゲットですよ!

 

「おいでませ、My Steady アシマリちゃん!」

「えっ、ちょ」

 

 ということで飛び出したるはアシマリちゃん。アシカっぽいのですが、ピンク色の丸鼻と首元がとってもチャーミングなポケモンです。これであの子もゲットしますよ!

 

「神定さん、アシマリでエモンガにはちょっと「さあ、御子神さん! 確か最初は攻撃して弱らせるんでしたよね!」いやまあそうなんですが「ならばいきますよアシマリちゃん! エモンガちゃんに向かってみずでっぽうです!」ダメだ。目がハートでグルグルだから全然聞いてない」

 

 何か言ってますが、よく聞き取れなかったので、このままいっちゃいましょう。

 アシマリちゃんのみずでっぽうが先制でエモンガちゃんに当たりました。ジャストミートです。エモンガちゃんはようやっとこちらに気がついたようで、頬をプクーッと膨らませて臨戦態勢に入りました。両腕と両脚をつなぐ黄色い飛膜のある両手を握りしめるその怒っている姿もやっぱりかわいいですね。

 

「しかし! 動かないのであればチャンスですよ! アシマリちゃん、もう一回みずでっぽう!」

「え、ちょあれって」

 

 そしてもう一度みずでっぽうが当たりました。これは提出された千鳥ヶ淵の映像通りにいい感じにゲット出来そうです!

 

「エンモ~~~~!!」

 

 と、ここで思わぬ反撃が! エモンガちゃんの大きな黄色い攻撃がアシマリちゃんへすごいスピードで向かっていきました!?

 

「あsysysysyシャマママママmっmmm!? ……マ……」

「アシマリちゃん!?」

 

 その攻撃が当たるとアシマリちゃんは黒焦げになって倒れ込んでしまいました!?

 

「エモ! エーモ!」

 

 その隙にエモンガちゃんは飛膜を使って飛び去ってしまいました……。

 

「じゅうでんからのでんげきはなんて、低レベルの水ポケモンじゃ、そりゃ耐えられんわなぁ」

 

 こうして私のポケモン初ゲットは失敗に終わりました…………。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「ラルー♪」

「カゲ! カゲッポゥ♪」

「モーグ♪」

「ギャオギュウウオ♪」

 

 4匹のポケモンが水辺で遊んでいる。といっても、赤いギャラドスの頭に青いラルトスと、通常色のヒトカゲ、モグリューが乗って水面をスイスイと進んでいただけだが。しかし、それでも5匹は楽しそうに遊んでいた。

 

 

 

 ん?

 

 

 

 5()()

 

 

 

「ラルーラ♪」

 

 いつの間にか4匹が5匹になって彼らは水面をスイスイと進む遊びを楽しんでいた。

 

 

「ラルラ。ラ、ラルーラルート♪」

 




だけどもたまにゃ ありゃ?
うっかり すっかり がっくり
なかま逃ゲーット!


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はじめてのゴーストタイプ

令和元年の初日に記録を付けてみたいと思いまして更新です。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 傷ついたアシマリをモンスターボールに戻してもらってポケモンセンターの機能で回復させる。そのままじゃアシマリがかわいそうだからね。ちなみにどんな感じだったかというと、

 

  スマホでポケットモンスターからポケモンセンター起動

       ↓

  モンスターボールを翳すと、スマホに吸い込まれる

       ↓

  ティンティンティリリーン

       ↓

  スマホからモンスターボールが吐き出される

 

 とまあこんな感じだった。

 しかし、1匹ずつしか回復出来ないのはやや面倒な気もする。アップデートで改善、あるいはポケストップでの回復は上位互換なのか、気になるところだ。あとで試してみたい。

 

 あ、それと、アシマリのトレーナーである当の神定さんはというと。

 

「……失態よ……あんなの撮られるとか本当に失態よ……黒歴史よ……」

 

 陰ながらの護衛?だったらしい公安の武藤さんたちに先程の様子の動画を撮られていたらしく、しかもそれを資料映像ということで政府に提出されるらしく、しかもそれが何やらあの痴態?も含めて永遠に失敗例として残りそうなので落ち込んでいる。

 

「まあ元気出して。ね?」

 

 武藤さんも指示した手前、申し訳なさそうにしている。尤も、撮った動画は絶対に消させようとはしていないが。

 

「一応、我々も以後ご一緒させていただきます」

 

 久内さん曰く、あの技が万が一僕に当たっていれば無事では済まないので、近くに付いていた方がいいと判断したらしい。

 

「とりあえずさ、神定さん。今の反省をしよう? しないとまた同じ轍を踏んじゃうかもしれないよ?」

「……ふぁい……」

 

 と、そこで少し驚いたことがある。

 

「え?」

「「「!?」」」

 

 なんと1匹のポケモンが神定さんの肩に現れたのだ。それは僕にもよく馴染みのあるポケモン。いや、この世界で一番始めに出会ったポケモンだったのだ。

 

「……うんうん。……ありがと」

 

 そのポケモンはそこから短い腕を伸ばして神定さんの頭を撫でる。まるで大人が子供に「よしよし」と撫でさするかのごとくだ。

 僕たち4人はその光景をしばらく眺めることになった。

 

「ラル」

「カゲ」

「モグ」

「ギャウ」

 

 そしてそんな声が聞こえて見てみれば、僕の手持ちの4匹が腰に手を当てて「エッヘン」といった感じに胸を反らしていた。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「というわけでね。神定さんが拙かったのはタイプ相性がすっぽりと抜け落ちてたことなんですよ」

 

 やや回復した様子を見せているが、それでも気落ちした様子を見せている彼女に説明している御子神さんの話を我々も傍らで聞く。

 我々にも初耳な話も多く、その点について聞いてみたら分かりやすく説明してくれた。ポケモン関連はどんな些細なことでも報告するようにとのお達しが出ているので、この内容についても公安ひいては政府にもいくことになるだろう。特に、タイプについては既に周知されているが、タイプ相性などはほぼ初耳に等しい。

 

「武藤課長」

「わかっている。しかし、現状はシロだ。今のところはという枕がつくが」

 

 久内の言いたいこともわかる。

 なぜ彼がこれほどまでの知識を有しているかだ。

 彼の経歴を洗ってはいるが、現状でわかっていることでは『一部を除いて極めて普通である』ということだ。彼が出た大学は理系だが生物学系とは無縁の学科だったし、生物実験等も含めてそういったところとの関係は親族一切がなかった。

 一部としたのは中学生のときに精神科に掛かっていたことがあるというところがあったためだ。彼の主治医だったという新出史宏に部下が聞き込みに行ったところ、守秘義務ということですげなく追い返されたらしい。中学生のときに精神科に掛かり、そしてほぼ同時期にポケモンの絵を描き始めた。これはどう見ても偶然ではない。此方もただでは引き下がれないので食い下がったところ、

 

「本来我々は患者とプライベートの付き合いをするということはない。家族ぐるみなど尚更だ。しかし、そんな私が彼とはそういった関係を築けている。これが彼を認める理由でもあるし、彼が不逞な輩ではないと信用しているし、信頼もしている。彼がそういう道に入り込みそうになったら、殴ってでも止めるさ。それが親友だし、あるいは親でもあるし兄でもある」

 

そうした返答をされてきたらしい。

 新出史宏自体、元々は大病院の精神科に勤めていたが、独立して開業医をしている。繁盛しているようで、金銭に困っている様子もなく、大学病院での同僚や周囲の関係者からは『あらゆることを他人の数倍の努力をもって身につけて、さらにそれまでに得た経験を生かして次の新しいことに挑む』というある種の超人みたいな人間だが、『周囲への気配りや根回しを絶やさずに好かれていた』ともいう。

 まだ調べは尽くしてはいないが、新出史宏は過激思想は持たずにシロ。そしてその彼が全幅の信頼を置いているのが、()の御子神彰であり、先のことも含めて彼もシロと判定出来る、というのが今のところの認識だ。

 

 と、ここで何やら奇妙な音が鳴り響いた。

 

「SLの汽笛、ですかね?」

 

 そういや久内は鉄オタ系だったな。

 

「あ、僕のスマホの着信です」

 

 なるほど。これは彼の着信音か。

 

 ひとまず彼は話を中断して電話に出た。

 

「おはようございます、新出先生!」

 

 おおう。噂をすれば影がさすとやらか。彼の声も幾分弾んで聞こえるな。

 

「ええ。はい。あ、今ですか? 今は平田川坂峰公園です。そこの第一調節池のところです。ええ。あーはい。あ、ちょっと待ってもらえます?」

 

 そして通話口を押さえて今の話を伝えてくる。

 なんでも、これから家族連れて御一緒したいがよろしいかということらしい。

 正直我々としては護衛対象の幅が増えてしまうので遠慮願いたいところだが、

 

「ぐるルル」

 

あの赤いギャラドスが周囲に目を見張っているようなので、まあありとしよう。

 ということでOKは出した。あとは彼がどうするかだが、答えはもう決まっているだろう。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

「皆さん、途中参加してすみませんな」

「おはようございます、新出先生! 皆さん!」

 

 待つこと、30分弱。新出先生とその家族の合流である。

 

「彰くん、昨日はありがとうね」

「彰にーちゃんありがとう」

 

 出会って第一声が美波さん(奥さん)はいいとしても、汐莉ちゃんのお礼とか先生の家ってしっかりしてるなぁ。汐莉ちゃんまだ小学校あがる前なのに。

 

「いえいえ。汐莉ちゃんの一大事でしたから、こちらも必死になりますよ。お気になさらず。汐莉ちゃんも元気になって良かったねー」

「うん!」

 

 とりあえず、そんな感じで軽く流してあとはお互いの紹介を済ます。

 

 さて、新出先生たちが合流したのは新出先生と朱莉ちゃんの2匹目のポケモンをゲットしようとしてのことだったんだけども――

 

「え? 私2匹目ゲットしたよー」

「「「はい?」」」

 

 ちょっと待った聞いてた話と違うんですけど。

 

「どういうことです?」

「いや、私も訳がわからんのだが」

「昨日今日、文字通りずっと一緒にいたけど、そんな様子は見掛けなかったわよ。ていうかあの子がどんなポケモンをゲットしたのか気になって仕方ないんだけど」

 

 美波さんの言う通り、人がどんなポケモンを持っているかって確かに気になるものだよね。まあ美波さんの心配はもっと違ったところにありそうだけど……。

 とりま小声で話し合っていても仕方がないので、

 

「朱莉、パパたちにそのポケモン見せてもらえるかな?」

 

新出先生の一言で先を促す。「うん、いいよー」と、取り出したモンスターボールからポワンと出てきたポケモン。

 

「ヨマー、ワール」

 

「ほうほう」

「ふーむ」

「んげ」

 

 美波さんは若干お気に召さなかったみたいだが、ローブをまとった骸骨のような姿をしていて、そこそこかわいい系な気もしなくもないんだけど。

 

「あのポケモンは……?」

「初めて見るタイプの……あれもポケモンなのか?」

 

 神定さんも武藤さんたちも朱莉ちゃんの出したポケモンの関心があるようで、手元のスマホやカメラで映像を撮っている。

 

「朱莉ちゃん、このポケモンの名前、知ってる?」

「ううん、知らないよ。彰にーさんは知ってるの?」

「うん、そうだよ。じゃあ今知っちゃおう、この子の名前はね、ヨマワル、って言うんだよ」

「へえ、ヨワマルっていうの?」

「ううん。()()()()ね、()()()()

「ヨマワル?」

「そうそうそう。大切にしてあげてね」

「うん!」

 

 なんてことを朱莉ちゃんと話してたら周囲はスマホで一生懸命調べていた。

 

「『ヨマワル、ゴーストタイプ。分厚い壁を通り抜ける能力を持っている。ごくたまに子供の泣き声を聞くために子供を驚かせ、泣かせることがある。一つ目に睨まれると大人でもすくんで動けなくなる』」

 

 淡々と読み上げる神定さん。

 

「『一度でも狙われると朝日が昇るまで追いかけまわされることになる』?」

 

 剣呑な雰囲気になり始める新出先生。

 

「『言いつけを守らない悪い子供は、ヨマワルに連れさらわれるという言い伝えがある』……ああ、私が付いていながらなんたることッ」

 

 悲壮感を漂わせる美波さん。元の図鑑説明を繋ぎ合わせながらもほぼそのまま載せたとはいえ、追いかけまわされるとかとか連れさらわれるとか心配させるようなことを書いてごめんなさい。たぶんそういう記述は一種のなまはげ的な感じだから大丈夫です(進化形? ナンノハナシデショ)。

 

「しかし、これまで見てきたのはだいたいが自然の生き物とかがモチーフなのが多かったのに今回は違うのだな」

「ああ、それはですね、武藤さん。あのポケモンは一種の幽霊がモチーフですからね」

「幽霊?」

「はい。まあタイプがゴーストタイプなのでそういう系もポケモンにはいるんですよ」

 

 ちなみにヨマワルは夜に出現する可能性が高いポケモンだ。いつ出会ったのか聞いてみれば、

 

「うんとね、寝てるときのお部屋! なんか壁からスーって来てワッてなって面白かったから仲良くなったの」

 

とのこと。

 あー、たぶん、子供の泣き声を聞くために子供を驚かせるつもりで侵入したところで驚くんじゃなくて仲良くなってゲットに至ったと。

 前から思ってたけど、朱莉ちゃんて神経図太いよね。普通幽霊っぽいものが暗い部屋に侵入してきたら怖くて泣き出してお父さんお母さんに引っ付きそうなものなのに(自分だったら絶対それやってる自信があるわ)。

 まあ、美波さんにはご愁傷様って感じだけど、本人らが納得してるなら周りがどうこう言ってもしょうがないからね。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 ということで、2匹目ゲットしなければならないのは新出先生のみとなった模様なので、新出先生2匹目ゲットに向けて移動しようと思う。

 ちなみに本来ここに来た目的である神定さんについてはバトル&ゲットではなく、友情ゲット的な感じで既に仲間になっている。先程から彼女の左肩に乗っているラルトスだ。なんでも、僕のポケモンたちと遊んでいたところ仲良くなったようで、付いてくるためとゲット失敗した彼女がかわいそうになったので、彼女の手持ちに加わったらしい。

 

「ラールちゃん?」

「ルラ?」

「んふふ」

 

 ちなみにオスらしい。本人はすごいキャッキャウフフしているので、暫くは放っておいても問題はなさそう。

 ということで、汐莉の手を引く先生に聞いてみる。

 

「どういった系が目当てなんですか」

「そうだな」

 

 どうでもいいけど顎に手をやって渋い声を上げてるだけなのに超ダンディです。

 

「お父さんカワイイ系がいいよ」

「ん? うーむそうだなぁ」

 

 どうやらまだイメージが付いていないらしい。

 

 とりあえず、ブラブラしながらそれっぽいのを探していくか。

 

 

 と、思っていたところで、僕たちは足を止めざるを得なかった。

 というのも寸胴なヤシの木に足を生やして実に顔が付いたような外観のポケモンと、さらに首がものすんんんごく長いポケモンが行く手を塞いでいるからだ。

 

 

「なんだ、あれは?」

 

 武藤さんら3人の公安の人の雰囲気ががらりと変わり、新出先生や神定さんもそれまでの雰囲気を排してマジな感じを醸し出していて、2人の娘は美波さんに抱き着いていた。

 

「……うっわ、なんかガチでやる気出しちゃってない、あの主ポケモン()()

 

 そう。

 目の前にはオレンジのオーラを纏った主ポケモンが2()()。しかも「戦え」とばかりにこっちを威嚇をしてきていた。

 僕のポケモンたちも彼らに威嚇し返していて、特にギャラドスとかは結構マジな感じでメンチを切っている(気がする)。

 

「皆さん、どうやら彼らは自分たちとバトルしろと言いたいらしいので、僕が戦います」

 

 そう言って僕は一先ず、モグリュー、それからギャラドスをボールに戻した。

 

「しかしだね、御子神くん」

「武藤さん、ポケモンに対抗するにはポケモンです。そしてあの2匹に対抗するためには少なくともタイプ相性的には僕のヒトカゲの炎タイプ、それからラルトスのフェアリータイプが良い。たぶんレベルも今ここにいる面子の中では高い部類でしょう。ならば僕が行くべきです」

 

 ついでにバトルからは逃がしてくれなさそうな雰囲気がプンプンしている。

 

「ナッシーたち、僕が君たちに主バトルを挑む。それでいいかい?」

「「ナッシ~~」」

 

 高低のビブラートが微妙にかかった声で応答してくる2匹。

 

 

「それじゃあ、ヒトカゲ、ラルトス、キミたちに決めた!」

「カゲ!」

「ラル!」

 

 ということで、昨日に引き続き、しかも両方が主ポケというわけわからん仕様で、僕の主バトル2戦目が始まった。




ちなみに裏設定として、元主ポケのギャラドスがいたので
「お、なんだなんだ」
的な感じで主ナッシーたちに興味を持たれた模様。
しかもギャラドスがガンつけたことで、ナッシーたちもケンカを売られたと感じ、バトルに発展。
なので、ギャラドス出していなければこのイベントはスルーされていました。


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