ギルド神楽へようこそ!! (ギルド神楽広報担当)
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ギルド神楽始動
プロローグ


初めまして モンスターハンターの小説は初めてですが 長い目でみてやってください
第1話は早い内に投下します


ハンターと呼ばれる職業がある。モンスターと呼ばれる生物の狩猟からおつかいまでなんでもこなす職業。

特にモンスターの脅威は凄まじく、それを討伐するハンターという職業は引く手あまただ。

そのモンスターにもランクがあり、下級、上級、G級とランクによって同種でも強さが段違いに異なる。

上級のモンスターをあらかた倒せるようになればそこそこ裕福な生活が出来るようになり、G級にもなれば一生遊んで暮らせる。

大なり小なりハンターがいる中で、大多数の人間が金を求める奴らだろう。

そして……

 

 

 

 

大陸中央にあるドンドルマから西に向かい、大陸に4つあるG級地区の内の1つ、シュレイド山脈の麓にある街、ミナガルデ。

 

G級モンスターや他にもモンスター生息域が近いこの土地でミナガルデの街が発展出来たのは、一重に豊富なハンターの数にあるだろう。

一山当てようとミナガルデの街に来るハンターたち。そんなハンターたちが集まって出来たのがミナガルデの街なのだ。

街は街でもモンスター生息域が近く、しかも超危険なG級区域に隣接しているだけあってモンスターの襲撃も凄い。

それ故にある程度、モンスターを撃退できる装備もあり城塞都市としての役割も果たしている。

 

 

 

 

もう1つ。ミナガルデの街には独特のルールのようなものがある。

他の街や村ではハンターが依頼人から依頼を受けるにはギルドと呼ばれるドンドルマにあるギルド総本部からの仲介を通す必要がある。

 

が、ミナガルデでは依頼の量もさることながら、ハンターの人数も街の人数の実に8割を超えるほどに存在している。

そのため、個人個人にクエストを割り振っていたらギルドの負担が大変なことになる。

実際に大変なことになり、不満が爆発寸前になったハンターとギルドの間で一触即発の事態になった時、ギルドの元締めが放った一言

 

「ハンターにギルド作らせて、そこに管理させればよくね」

 

つまりは元締めは変わらずギルドで、その下にハンターたちでギルドを作ってもらえばいいんじゃないかと。

ギルドのハブ化である。

 

 

 

 

ハブギルドは基本、ある程度の資金と拠点。そしてギルドと連絡を取り合える受付と2人以上の上級ハンターがいれば設立可能となっている。

その他にも面倒な審査などがあるが、それはまた別の機会に。

そしてここにまた、1つのギルドが出来上がろうとしていた。

 

 

 

 

「なにか違う。なにかが違う」

 

ハンター装備と呼ばれる初心者御用達の装備を身に纏った男が建物の前で頭を抱えていた。

その建物は先日出来上がった新しいギルドとしての建物なのだが……

まず見た目が真っ赤である。比喩ではなく。きっとこの建物に色を塗った人間は気狂いでもしていたのではないかと疑いたくなるぐらいの赤。

そしてデカデカと掲げられた看板には『天下御免!!』と達筆な字で書かれている。

そんな周りの人間からしても目で見て苦笑いをしそうな建物の前で大きく笑っている人もいて……

 

「わはは!! 余も遂に城持ちか! 見よこの赤を! まさに余の城よ!!」

 

凛装備と呼ばれる装備を装着した赤髪の女性が高らかに笑っている。

 

「流石お姉さまです!! こんな素晴らしいデザインの城を考えるなんて!!」

 

そしてこちらは妹の方だろうか。姉とお揃いの赤髪に160cmにも満たない体にレイア装備を身につけている。

 

「あはは……」

 

そしてメイド装備を身に着けたお姉さんは苦笑いをしている。

 

一癖も二癖もあるこの4人がこの街で色々と騒ぎを起こすのは今後の話。



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第1話 出陣

完全に遅くなりましたねごめんなさい
とりあえず三人称でやっていこうと思いますが、見辛かったら遠慮なく言ってください


 

ミナガルデにあるギルド神楽。3人のハンターと2人の事務員で構成されたこのギルドでこれからなにが起こるのだろうか?

 

 

 

ギルド神楽の内部は案外広い。受付に2つの机にキッチンまで完備している。新参ギルドには少し過ぎた施設である。

普通ならば小さい拠点を作って、稼いでからどんどん拠点を大きくしていくものなのだが。

 

 

 

ギルド結成から2日目。早朝からギルドに呼び出されたこのギルドただ1人の男であるライブラは頭を抱えて机で唸っていた。

彼が頭を悩ませる理由は2つある。

 

 

 

1つ目は自分を朝早くから呼び出しておいて時間に全く間に合っていないこと。2階に居住区があるのだから早く来いよと。

 

「ただ起こしに行ったら俺が死にそうだ。色々な意味で」

「どういうことですか?」

「あぁ受付さん。いたんですか?」

「いましたよ!! さっきからずっといました!!」

 

”もーっ”っと顔を膨らましながら怒る彼女に、きっとこの先もこの人の可愛い態度に癒されるんだろうなと考えて余計に泣けてくるライブラ。

 

「それでどういうことですか? 普通に起こしに行ったらいいじゃないですか」

「あのですね。俺も数日しか一緒にいないのであまり彼女たちのことを知らないんですけど。妹の方は起こしに行ったら間違いなく殺されます」

 

あぁそうですねと受付さんは苦笑いをする。

 

「姉の方は起こしにいったらそのまま添い寝を要求されそうです」

 

あぁそうですねと再び苦笑いをする受付さん。なんせあの2人はギルド間でも”かなりの有名人なのだ”

 

 

 

 

「そういえば聞いてなかったんですけど」

 

机に突っ伏して動かなくなったライブラを見て話題を変えにくる受付。

 

「どうしてこのギルドに入ったんですか? というよりどうやってこのギルドに入れたんですか? 結構競争率高かったみたいですけど」

 

受付も昨日のギルド設立祝いで初めて彼のことを知らされたので、実はマトモに話すのは今回が初めてだったりする。

彼女が知っている情報は彼が上位のギルドにいること。そして上位にいるのにハンター装備と呼ばれる、低級の装備をしていることぐらいである。

そして明らかに望んでこのギルドに入った態度をしていないことぐらいか。

 

「あのですね。俺はつい先日この街に来たんですよ」

「つい先日ですか?」

「それでこの街でギルドに入らなきゃってことは事前に知ってて。そこでウロウロしている俺に声をかけられてそのまま……」

「あぁそういうことですか」

 

納得したように頷く受付さん。確かに自分と同じ上位のハンターの中でも、G級に近い位置にいる2人がいることがわかれば普通についていくだろう。

更に新しくギルドを作ってそこのメンバーに誘われたとなれば、新しく人間関係も築きやすい。

 

(でもあの人が同レベルのハンターって程度の理由で誘うのかな?)

 

受付も割りといい加減に選ばれた手前、あまり偉いことはいえないのだが。

 

 

 

 

受付とライブラが話していると、ドカドカという足音と共に誰かが降りてくる。というよりこんな足音をさせて降りてくる奴は1人しかいないと2人してため息をつく。

 

「受付さん。もうお昼ですよね」

「えぇ。少し小腹が空いてきました」

 

涙さえ出てくる我らがリーダの登場。そしてそれを見た瞬間、2人は口に含んでいた飲み物を思い切り吐き出した。

 

「なにを吐き出しておる。汚いではないか」

「ききききたないのはそっちだよ!!」

「なにが汚いか。余の裸は常にうつく――」

「そういう意味じゃありません!! どうして裸で出てくるんですか!!」

 

受付さんとライブラが椅子から立ち上がり講義する。

2人の言うとおり、彼女は生まれたままの姿。いわゆる全裸で降りてきたのだ。一体なにを考えているのかと。

 

「ふむ。本日は活動初日であるから裸体で朝の日の出を見ておったのだが……」

「まず裸体で見るって発想がおかしいよ」

「そのまま寝てしまっておったわ!! わはは!!」

 

このギルドに入って猛烈に後悔している理由の2つ目はこれだ。リーダーの底抜けた馬鹿さ加減。

馬鹿は時に予想外の動きをするから怖い。例えば今みたいに。

 

「うむ。それではまずはどのクエストに行くか決めようか」

「まず服を着ろよ」

「面白くないのー。少しは欲情して襲ってくるぐらいせんか」

 

ブーたれる姫様を華麗に受け流すライブラ。ってかこの男。我らがリーダーの名前すら知らなかったりする。

尻を振りながら階段を昇っていく姫を見てまたため息。

 

「ウチの姫にも困ったもんだ」

「あの性格がなかったらもっといいんですけどねー」

 

 

 

 

2人が雑談しながら姫を待っていると、今度は控えめな足音が聞こえてくる。

 

「おねえさまーどこー」

 

目をごしごしと擦りながら今度は妹が降りてくる。姉と違ってレウスがプリントされた可愛い? パジャマを着ている妹にほっこりする2人。

 

「この子は姫様みたいになってほしくないですね」

「全く。残念ながら裸で寝てるよって教えたら裸で寝そうだけど」

 

まだ寝惚けているのかフラフラしている妹を支えるライブラ。

 

「おねえさま?」

「はいはい。お姉様じゃないから早く着替えに行こうねー」

「うぅ~おねえさまと一緒じゃなきゃヤダー」

 

駄々をこね始める妹に対して助けを求めるように受付さんに視線を寄せるのだが。

 

「頑張ってくださいお姉様!!」

「ちょっと〆られたくなかったら早く連れて行ってくれませんか?」

 

拳を握りながらニコニコと微笑んでいるライブラになんらかの危険意識が湧いたのか、受付さんは飛ぶような速さで妹を連れて二階へ突撃していく。

 

「全く。あの受付さんも一癖ありそうだよね」

 

マトモなのが自分だけじゃないのかと考えて頭を振るライブラ。

 

「きっとこれから良心が入ってくれるきっとそうだ……」

 

ブツブツと次に入るのは癒し系の巨乳だのなんだの呟いている怪しい男が1人。

 

 

 

 

そんな男の耳にドタドタと五月蝿い足音が聞こえてくる。恐らくまた姫なんだろうと思い顔を上げると……そこには視界一杯に広がる靴底があった。

 

「どっせーい!!」

 

謎生物の蹴りが顔面にヒットしてギルドの壁まで吹っ飛ぶライブラ。しかし普段からモンスターを相手にしているからか、気絶だけはギリギリしていない。

ただし、既に顔がギリギリアウトなのだが。

 

「なにするのさレンちゃん!?」

「なにをするのではない!! お姉様の裸を視姦したのは知ってるんだぞ!!」

 

キッとこの騒動の元凶である受付さんを睨み付ける。

 

(言っちゃいましたてへぺろ☆)

 

後でぶん殴ってやろうと心に誓い、ライブラはレンに近づいていく。

 

「いきなり蹴りつけたら駄目だろ」

「お前がお姉様の裸を舐め回すように見るからだ!!」

「舐め回すようには見ていません。それと年上には敬語を使うように」

「お前の方が年下だろうが! それと頭を撫でるな!!」

 

年齢はよくわかっていないが、身長が遥かに下なので頭を撫で回すライブラ。どちからというと妹みたいな感じで接しているのだろう。

 

「ヤダ。犯罪臭がする」

 

あのメス豚は後で処分するとして。

 

「姫はまだ降りて来ないの?」

「まあ待て。今来る」

 

スタスタと階段を降りてくる姫。凛装備と呼ばれる装備に身を包んだ姫は確かに外見だけは姫らしい。

 

「さて受付よ! なにか我らの初陣に相応しい任務はあるか!?」

「それならリオレイアの討伐が一件。ってこれしか来てないんですけどね」

 

えへへと笑う受付さん。信頼も実績も無いギルドに回ってくるクエストは少ない。それでも上位のレイアならばまあいい方だろう。

 

「ふむ。全員の連携を確認するという意味でも丁度いいか」

 

そもそもライブラは姫やレンの実力を知らない。ギルドカードのモンスター討伐数と上位ハンターという理由だけでギルドに入るのを決めたのだ。

今ではそれが間違いだったと後悔しているのだが。

 

「ならば出陣するぞ!! 目指すはリオレイアの首だ!!」

 

 

 

 

アルコリス地方シルトン丘陵。ミナガルデが狩猟場としているエリアの1つで、丘のような地形が特徴的である。

断崖絶壁があったり視界が悪い森があったりと散々なエリアだったりするのだが……

 

「まずは飛龍の巣でも攻めるんですか?」

 

どんな地方、狩場でも必ずあるのが龍の巣である。基本的に龍たちはそこを拠点に活動していく。

広いエリアを無闇やたらと探索するよりも、そういう確実な場所から調べるなり待ち伏せするなりが鉄則なのだが。

 

「問題ない! 余が勘にて探して見せるわ!!」

 

ずっこけそうになった。ライブラが今まで生きてきたハンター人生で、勘で生きてきたハンターは沢山みてきたがここまで堂々という人物も珍しい。

というより、勘で全エリアを虱潰しに探すのだろうか?

 

「お姉様はアンタたち凡人が考えつかないような考えを持ってるの。わかったら黙ってついてくる」

「はいはい」

 

基本狩りはチームプレイ。まだまだ新参の自分が意見をして衝突しても仕方ないと黙って着いていくことにする。

 

 

 

 

ギャオギャオ!!

 

そんな彼らの前に3匹のランポスが現れる。青と黒のストライプが特徴的な肉食の鳥竜種であり、群れで襲ってくると危ないのだが、単体では大して強くない種でもある。

 

「じゃあ早速」

 

ガチャリとライブラが背中から愛用のガンランスを抜こうとするのだが、それを手だけで静止する姫。

 

「一番槍を逸る気持ちはわからぬでもないが。此度の戦。一番槍は余がもらおう!!」

「そうですかどうぞどうぞ」

 

正直、言っている意味が全くわからないので素直に譲る。

それに快くしたのか、姫は背中から自分の身長より一回り大きい太刀を抜く。全体的に蒼がかった太刀。

 

「では行くぞ双炎!! 我らが初陣である!!」

 

飛竜刀【双炎】。上位のリオレウスを倒さないと作れない装備であり、作るまでの道程は決して楽なものではない。

だがライブラが目を見張ったものはそれだけではない。

 

「わはは! その程度か雑兵よ!!」

 

笑いながらランポスを蹴散らしていく姫。

モンスターを倒す際に笑いながら攻撃するハンターは珍しくない。大体が恐怖を笑いで押し殺すか、心底殺しを楽しんでいるのかの2つ。

だが姫はそのどちらでもない。

 

明らかに楽しんでいるのだがその笑顔はまるで玩具で遊ぶような子供のように清清しい。

そしてその太刀による攻撃には一種の芸術のように、まるで舞を踊っているようにも見えてくる。

 

「見たでしょ。あれがお姉様の戦い方よ」

「驚いた。あんなハンターがいるなんて……」

 

少なくともあんなハンター。他を探しても絶対にいないだろう。

普段からの自信が戦いに繋がっているのならば。とんだ姫様だとライブラは思う。

 

「惚れたら殺す」

「普段の態度を見てたらない」

 

レンがギロリと睨んでくるがそれを華麗に受け流す。

あんな舞が踊れるのならば普段からお淑やかにしていればいいのにと涙せずにはいられない。

 

「見たか我が勇姿を! わはは!!」

 

どうやらあっちはあっちで終わったようで。しかもその防具には血の一滴もついていない。

マジでパネェと漏らすライブラ。

 

 

 

「ふむ。”槍”も此度の戦で十分に戦果を見せるがよいぞ!!」

「あの……槍って俺のことですか?」

「他に誰がおる? 名前を覚えて欲しかったら功績をあげるのだな!!」

 

わははと笑われるライブラ。まあこの人の態度は今に始まったことではないと早々に諦める。

 

「そもそも……」

「……むっ。静かにせよ」

 

そう言われて静かになる3人。耳を澄ますと微かにだが羽音が聞こえてくる。

そして暫くして空に現れるのは1匹の竜。

 

雌火竜リオレイア。雄のリオレウスとは違い、翼よりも脚の方が発達していることから陸上戦を得意とする陸の女王。

緑の甲殻に身を包み、その凶悪な目は既に3人を補足している。

 

ギャオオオオオオオオオオオオオ!!

 

咆哮で3人を怯ませようとしているリオレイアだが、対照的に1人を除いて2人は笑みさえ浮かべている。

 

「この世に王と呼ばれる者は2人もいらぬ! レン! まずは砲を上げ奴を引き摺り落とせ!!」

「わかった!!」

 

レンはカチリと手馴れた手つきで自身の獲物でライトボウガンの”ヴァルキリーブレイズ”を天に目掛けて展開させる。

 

「墜ちろ!!」

 

祝砲と共に陸の女王との開戦が告げられた。




第1話はこれで終わりです 受付さんは今の名前のままいこうと思い、姫様はまたいずれ名前が出る予定です
次回から本格的な戦闘になるので待っていてください


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第2話 初陣勝利とごほうび

夏休みマジなにしてるんだろうとか
もう後1話位投下できればよかったけど


 

レンが撃った拡散弾をその身に受けて墜落してくる緑色の体。

下敷きにならないように急いで緊急退避する姫とレン。しかし、その場に1人の男が残っている。

 

「次は俺の番ってことね」

 

着地点より少し離れたところでライブラが己の武器、ガンランスを構えて立っている。

そのランスからはバーナーを着火するような独特の音が響いている。

 

「これがガンランス特製……竜撃砲だ!!」

 

耳をつんざくような爆音と共に雌火竜の眼前で爆発が起こる。

ランスに近い構造のガンランスには一撃必殺の竜撃砲がある。威力はすべての武器の中で圧倒的に高い。

ただし、発射するまでに時間がかかる上に一度使えば刃が毀れる。更に次に使うまでに冷却期間を置かなくてはいけないなどの理由であまり使い手がいない武器だったりもする。

 

タイミングは完璧だった。だれが見ても命中したと思った一撃だったのだが。

 

グォオオオオオオオ!!

 

「外した!?」

「まあ気を落とすな。そういうこともある!!」

「だっさ。次は誰の番だって?」

 

欲張って頭を狙おうとしたのが駄目だったのだろう。倒れた瞬間に頭を上げてくれた為に避けられたのだった。

ハンターをやっていれば今みたいなイレギュラーな事態は日常茶飯事である。ようはそこで直ぐに立ち直れるかなのだが。

 

「よし! やるか!!」

 

案外直ぐに立ち直った。まあ上級レベルのハンターならば普通に出来ることなのだが。

 

 

 

 

side ライブラ

 

凄いなぁ2人とも。俺は戦いながらも2人の戦いを見ながら感じたのはそんな普遍的なものだった。。

姫様は相変わらずの戦い方。どちらかというと大型モンスターと戦う方が良くわかる。

まるで舞を舞っているようにみえてそれでいてしっかりと戦っている型。まさに美しい戦い方なんて言葉はあの人のためにあるんじゃないかと。

むしろあんな風に戦っていてよく戦えるなって不思議だよ本当に。

 

「おっと危ない」

「おぉ! すまんな!!」

「いえいえ」

 

舞に夢中になりすぎて偶にこちらに刃が飛んでくるのが問題なんだけど。ってか危ないなこれ。

そんなことを考えていたら今度は背後から弾が飛んできてレイアの顔面に直撃する。

 

「アンタちょっと危ないわよ!!」

「そりゃごめん」

 

レイアの攻撃を潰すように弾丸を放ってくるレンの方も中々の腕前だな。2人の実力が上手く噛み合っているけど。

今日は微妙にタイミングを合わせられない俺がいるのが問題と。

ガンランスは機動力が低いからどうしても敵にくっついて攻撃しないといけないしな。

逆に離れると今度は接近するのが難しくなってくる。そのクセの強さが面白い武器でもあるんだけど。

 

「中々やるなお主! しかしまずは尻尾を貰う!!」

 

うぇええええええ!? マジなにしてんのあの人!? レイアが尻尾振った先で待ち構えるとか。

死ぬよ。普通に死ぬよ!! 

 

「だが余の方が一歩上なり!!」

 

しかも平気な顔してぶった切ってる。ドヤ顔はしなくていいよ。本当に恐ろしいなこの姫。切れなかったら肋骨の1,2本は吹っ飛んでいただろうな。

こんな無茶するのは……他にもいるか。

 

「ボーッと突っ立ってるそこの馬鹿!!」

「はいはい! 追撃するよ!!」

 

尻尾を落とせたってことは恐らくもう直ぐ倒れるハズだ。それまで防御を堅くしてと。

 

 

 

 

side 姫

 

まっこと詰まらん。詰まらんのはあの男のことなのだが。

槍の奴は余自ら引っ張ってきた男だ。もちろん、余といえ適当に選んだのではない。なにやら光るものがあると思い、直感で選んだのだ。

確かに光るものはある。位置取りも余が今まで見てきたガンランス使いにしては一番いいし、急造チームとはいえよく着いて来られている。

 

特徴といえば奴のハンター装備か。ガンランス使いは皆、重量装備をしておる。それは竜撃砲の威力に負けないようにということなのだが。

一昔前に流行った軽量ガンランス使いか。機動力があまりないガンランス使いの機動力を少しでも上げて、手数を叩き込む型だったか。

ただし、それならばランスでも良いし、肝心の竜撃砲の命中率を下げるという意味で廃れた型であったはずだ。

 

それに、そういうものならば上位のハンターならば誰もが出来て当然のことなのだ。

上位のハンターまでならば努力や才能でなんとでも出来る。逆にどちらかが欠けると上位に上がれぬというのが余の持論だ。

しかしその上。Gクラスとなるとまた話は別になってくる。

余がこのギルドを設立したのはG級クラスに入れるハンターを1人でも多く入れるため。ならばGクラスに求められるハンターとはどんな者か?

それはなにか他のハンターにはない突出した能力を持っておることだと思っておる。

 

余やレンの直観力然り。それはハンターをやる内に育てられるものであり、余はそれを持つハンターが欲しい。

槍よ。この場でそれが見せられなければお主はここで終わりだぞ。

 

 

 

side out

 

 

なにやら誰かさんが散々いわれていたような気がするが。戦いが始まり数時間。既にリオレイアの体はボロボロであった。

逆に姫やレンは汗はかいているものの殆ど無傷の状態。ライブラは多少傷ついてはいるものの、それは盾役にならなくてはならないガンランスの辛いところだろう。

 

「このまま彼奴を逃がさぬように仕留めるぞ!!」

「わかったわ!!」

 

レイアは追い詰められているとわかっているのか、空に飛び上がるのに邪魔な周りの物目掛けて我武者羅に暴れまわる。

人は人語を喋られない獣を時に舐める傾向がある。それが何度も殺したことがある相手なら尚更そういうことに陥る。

それが飛んできたのは突然だった。

 

「――なっ!?」

「レン! 危ない!!」

 

がむしゃらに暴れているように見えたレイアの狙いは、自身の切り下ろされた尻尾を投げ飛ばして後方にいたレンを狙うこと。

ただし、直観力が高いレンにとっては……

 

「甘いわよ!!」

 

回転しながら飛んでくる尻尾の軌道を見切り、体を捻ることでそれを避ける。

”ただそれだけでは駄目だった”

それに気づいていたのはただ一人であり

 

「頭を下げろ!!」

「きゃっ!? なにすんのよ!!」

 

体を捻っているレンの体を無理やり掴み地面に叩きつけるライブラ。そして遅れるように構えた盾から聞こえてくる銃弾を当てられたような金属音。

その音を聞いた後に自分が攻撃されそうになったのを気づいたのだろう。レンは顔を真っ青にして叫びだす。

 

「なに!? 今のタイミングなら避けられたハズなのに!!」

「レイアは顎の棘から獲物の肉を出して子供に餌を与えてるって。たまに飛ばしてくるから気を付けた方がいいよ」

 

そんな行動をとるレイアなんて知らないわよと愚痴るレン。

それを見て一番驚いたのは姫だろう。

 

(確かあやつのレイア討伐記録は余たちよりも少なかった記憶があるが……偶然か?)

 

とまあ各々がそんなことを考えている内に攻撃役2人がいなくなったのを見てレイアが空へと飛び上がる。

 

「お姉様ごめんなさい」

「ふむ。これはもう仕方ないの。次で挽回せい!!」

 

明らかに油断していたレンは気まずそうな顔をして姉に謝っている。

ただし1人だけ諦めていない男が1人。

 

「諦めるにはまだ早いよ」

 

なにを思ったのかライブラは自身が持っている盾の取っ手部分をランスの先端に取り付ける。

普通ならばなにをとち狂ったのかと思うのだが、取り付けた様を見るとまるで”最初から盾はランスの延長線上につける補助具のようにしっくりくる”

 

「槍。貴様は余になにを見せてくれる」

「炎の槍」

 

脇に支えたそれをフラフラと飛んでいくレイアへとあわせる。

 

「射出準備」

 

ガンランスが竜撃砲を撃つ際独特の音が周囲に鳴り響く。しかしレイアとの距離は既に離れていて、ボウガンですら届くかどうかわからない距離となっている。

しかし、それは普通ならばだ。

 

「射程距離50m。レーヴァテイン発射!!」

 

強烈な爆発音と共に槍が射出される。普通のガンランスでの竜撃砲と違い、それは真っ直ぐ伸びていった。

例えるならばグラビモスが出す熱線に近いもの。

真っ直ぐに伸びていった槍は飛んでいたレイアを貫き、レイアは力なく墜落していく。

 

「討伐完了。これで良かったかな」

「大金星ではないか! よくやった!!」

 

姫がライブラに抱きつき頬ずりする。傍目から見ればかなり恥ずかしい行為なのだが、男は既に諦めているのか。

 

「ってか崖下に落ちたレイアの死体どうすんのよ」

「それはもちろん! これから剥ぎ取りに行くぞ!!」

「面倒臭いわね」

「だが奴も我らと戦った歴戦の猛者! このまま死体を放ったらかしにするわけにもいくまい!!」

 

ウキウキと上機嫌で崖下に下りていく姫と違い、面倒なことをしてくれたなと言わんばかりにライブラを睨み付けてくるレン。

確かに格好付けずにそのまま巣まで追えば良かったと少しだけ後悔するライブラであった。

 

 

 

 

それから死体を片付けて2日程で拠点である神楽まで戻って。

 

「ギルド設立初クエストどうもお疲れ様でした。私が腕を揮って料理を作ったので食べてくださいね」

「はーい!!」

 

現在は武具を降ろして料理を食べている3人と受付さん。クエスト中は簡単なものしか食べられないので、食が進む進む。

 

「ところで槍。本日の大金星はお主だ。なにか褒美をとらせよう」

「いや別にいらな――いたっ!?」

「お姉さまがくれるっていうんだから貰っておきなさいよ。本当は私が欲しいぐらいなのに」

 

ブツブツとなにかを呟きながら机の下でライブラの脛を蹴りつけているレン。

それを知らずに満足顔で喋りだす姫。

 

「ふむ。なにが良いか悩んだのだがな。お主には余と一晩だけ添い寝する権利を――」

「それじゃあお疲れ様でした~~」

 

いつの間にか立ち上がったライブラが2階へ逃げようと早足で歩いていくのだが。それは受付さんの手によって止められる。

 

「どうして逃げるんですか?」

「逃げたくもありますよ。あの人きっと本気で言ってるんですから。ってか離してください」

「嫌です。間違って爛れた関係になってください。そっちの方が面白いので」

「知らないですよ。殴られたくなかったら早く退いてください」

「へっへーん。あなたが女の人を殴れないことぐらいおみとお――いったー! 見ました!? この人今、私を殴ったんですよ!!」

 

いい加減に鬱陶しいので頭に拳骨を食らわすライブラ。もうこの人はどうしてこうなのかと。

レンは馬鹿を見る目で2人を見ていたのだが姫は愉快そうに笑い2人に近づいていく。

 

「うむ仲が良いな! だが今宵は余に譲れ」

「はいいいですよ。連れて行ってください」

「ちょっと待って。冗談でしょ? 冗談ですよね。止めて! 無理矢理連れていかないでおかされ――」

 

 

 

姫の部屋。そんなに部屋に帰ってくることがないため、あまり散らかっていない自分の部屋と比べて結構散らかってるなという感想を漏らすライブラ。

なぜか彼は今、女性の部屋にいる。しかも泊り目的で。

彼にしても別に女の部屋に泊るのが初めてというわけではない。そこに家族という括りがつけばの話だが。

当事者本人は水浴びをしてくるといい、ライブラを自身の部屋に置いて外出中である。

 

「帰っていいかな……帰ったら今度は俺の部屋に直接乗り込んでくるか」

 

既に諦めが入っているライブラ。既にこの年にして諦めが肝心だという真理に達している彼である。

 

「なんだ逃げなかったのか」

「逃げても無駄だしね。それと服を着てください」

 

頭を抱える彼の前には全裸の姫がいる。せめて年相応の恥じらいを持って欲しいと思う自分は既に年だなと1人愚痴る。

 

「なんじゃお主は。襲って来いとは言わんがもう少しねっとりと観察してもいいのだぞ」

「まあ十分に綺麗だとは思うようん」

「どうにも棒読みな気がするの。まあ良い」

 

いそいそと着流しを着る姫。それでも帯をしないのだから裸よりは少しマシというレベルなのだが。

それとライブラが綺麗と言ったのは別にお世辞でもなんでもない。

ハンターをやっている以上、女性とはいえ体に傷がつくのは普通なのだが姫にはそういった傷が全く無い。

そういうハンターもいるにはいるが、総じて傷がつくのが嫌で戦闘を避けるハンターが殆どで。

そういった意味では尊敬に値するといってもいいだろう。

 

「ほれ、早く寝るぞ」

「はいはい」

 

2人して布団に入る。つーか距離が近い。しかもそれに対して2人とも全く動じてないのが更に凄い。

 

「今回のクエストではお主の実力を測らせてもらった」

「なんとなくそんな気はしてた」

「十分に合格だな。余たちと共に戦うに相応しい」

 

ナデナデと頭を撫でられながら言われる。この時になってようやくライブラは恥じらいのようなものを見せる。

少なくともこの年になり、女性からここまで優しくされるのは初めてであったからなのだが。

 

「それとだ。今回は妹を助けてくれて感謝する」

「いや。それは仲間だからいいんだけど」

「それでもだ。余たちはあまり他人と一緒に戦ったことがないからな。こうやって助けられるのは新鮮でな」

 

それはどういう意味ですか。そんな意味合いのことを聞こうとしたライブラなのだが。

 

「くぅ……すぅ……」

「寝るの早いな。まあいいや。おやすみなさい」

 

そういってライブラも眠りに落ちる。眠りに落ちるのがいつもより早かったのは誰かさんと添い寝をしていた為とは気づかず。

 

 

 

後日談になるのだが。翌日ライブラは姫の部屋の前で起床した。

 

「姫の寝相が悪かったのか俺の寝相が悪かったのか。本命はレンが無理矢理俺を外に出したのだが」

 

恐らくそれが一番確率としては高いと思いため息をつく。とりあえず早く起きられたことを前向きに考え今日は武器屋に行こう。

とまあそんな感じで彼の初夜(意味深)は終わった。

 

 

 

武器解説

 

種別:ガンバスター

 

ギルドで実験的に作られたガンランスの上位武器の1つ。最大の特徴は盾に装備されている着脱式の砲身を装着することによるレーヴァテインだろう。

空を飛んでいる敵を追撃する目的で作られ、竜撃砲の爆撃を一点に集めて熱線のような形で撃ち出す事が出来る。

代わりに盾の方の砲身が一発でイカれてしまうため、砲身が使い捨てになってしまうのが欠点。更に打ち出す際の反動も普通のガンランスよりも強い。

そういう欠点があったため、実験段階で廃棄処分となった一品である。




そんなわけでタグにもあるようにオリ武器登場です まあガンランス自体がロマン装備とか言われてるぐらいだし こんな装備があってもいいよね(チラッ
レイアの肉噴出攻撃は書いてから気づいたけど、そんな勢い良く噴出しないよねと まあなんとかなる
次回は日常話と絡めながら次のクエストの前フリへといけたらと思っています では


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