題名は未定 (俺だよ俺)
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01話 prologue
トランスバール暦412年6月
惑星トランスバール軌道上、人工天体白き月の周辺に展開するエンジェル隊とそれを包囲する形で展開する黒き月と正統トランスバール皇国軍。
白き月を攻め落とせずにいた正統トランスバール皇国軍の背後にはついにトランスバール皇国軍が現れ挟み撃ちをする形で戦闘が再開されていた。
トランスバール皇国軍暫定最高司令官シグルド・ジーダマイア大将他多くの上級将校を失い、ローム星系での戦いで壊滅していたトランスバール皇国軍は臨時皇帝シヴァ・トランスバールの勅命を受けたルフト・ヴァイツェン准将が立て直したトランスバール皇国軍によって挟撃する形になっていた。
そして、エルシオールのクロノ・ブレイク・キャノン発射により正統トランスバール皇国軍の御旗であるエオニア・トランスバールは自分の旗艦ごと消滅した。
以降の正統トランスバール皇国軍の残存艦隊は大きく分けて2通りの動きをしていた。エオニア直轄艦の残存や黒き月の直轄制御下にあるAI搭載の無人艦は戦闘を継続。エオニア・トランスバールに与していた士官や貴族達の乗る従来艦を黒く染めていただけの艦は自分達の配下艦有人無人問わず戦線より離脱を開始していた。
『正統トランスバールはもう終わりだ!!』
『逃げろ!!逃げろ!!』
『逃げろって!!何処へだ!?』
数少ない、正統トランスバール皇国軍の無人AIではない士官達が動揺している。
旗頭であるエオニア・トランスバールを失い、軍の支柱であるシェリー・ブリストルを失い、精鋭部隊であるヘル・ハウンズを失い、黒き月が指揮所の命令を受け付けず沈黙している。
正統トランスバール皇国軍の崩壊の始まりであった。
そして、黒き月の中央指揮所に配置されていた正統トランスバール皇国軍の上位将校である私ルル・ガーデンもその混乱の波に飲み込まれそうになっていた。
「・・・・・・・・」
「准将!!ガーデン准将!!エオニア陛下並びに上位将校の方々が戦死した今、現状での最高指揮官は准将、貴女です!!御命令を!!」
副官であるシュール・リー少佐が焦りを隠さずに指示を求めてきているけど、私にだってどうすればいいかは解らない。
「そ、そんなこといわれても・・・そ、そうね。とりあえず連絡が取れる艦にはこの戦域から離脱するように指示を出しましょう。それと・・・」
彼女がそう指示を出している最中に黒き月全体が大きく揺れだす。
「な、なに!?なんなの!?どうなってるの!?」
「おい!状況を報告しろ!!」
ルルとシュールの二人の言葉に管制官達が答えるがそれは悲鳴に近いものであった。
「た、大変です!!黒き月の形状が変化し白き月へと接近を開始!!また、黒き月のインターフェイスが我々の把握するノア殿ではなく別の男性インターフェイスに変わっており我々の呼びかけに一切応じません!!」
「うわぁああ!?黒き月内部の形状変化を確認!!こっちの事なんてお構いなしだ!!こちらの人員を巻き込んで形状変化をしています!!」
「第三発着口形状変化にて潰れています!!第三発着口管制室寄りの通信途絶!!」
二人は顔を見合わせると大声で叫ぶ。
「「要塞を放棄して脱出よ(だ)!!」」
トランスバール皇国軍と無人艦が激戦を繰り広げ轟沈する艦艇、黒き月の外壁が開き白き月を飲み込もうとしてそれに巻き込まれて爆散する艦艇、正統トランスバール皇国軍の多くの有人艦が離脱して行く。
「カスタード爆散!!ゼライス大破!!救難信号です!!」
「無視しろ!!何としても離脱するんだ!!」
正統トランスバール皇国軍所属ザーフ級戦艦カルメルの艦長サンゲリア少佐は後悔していた。黒き月などと言う得体のしれないものをあてにしてトランスバール皇国に反旗を翻したのが間違えだったのだと、元々最初の反乱でただ偶然に正統トランスバール皇国のエオニアの側近中の側近であったシェリー・ブリストルの下にいて周りの殆どがエオニア派で決起に巻き込まれただけだったのだ。
「前方にトランスバール皇国軍です!!」
そのシェリー・ブリストルが死んでエオニアも死んだ時点で正統トランスバール、いや賊軍に付き合う必要はなかったのだ。自分の直属の上官になっていた不平貴族の士官のせいで降伏するタイミングを失ってしまっただけだ。その目の上の瘤だった貴族士官も先ほど戦艦カスタードと共に宇宙の塵となった。
「前方の皇国軍艦隊に降伏すると伝えてくれ・・・」
サンゲリアは艦長席に沈み込むように腰を下ろし部下たちに告げる。
「了解しました。前方の皇国軍艦に降伏するt」
サンゲリアの指示を受け降伏する旨を前方の皇国軍艦に伝えようとしたがそれはかなわなかった。なぜなら、形状変化によって剥がれた黒き月の外壁が彼らの乗るカルメルに直撃したのだから・・・
ルル達は形状が変化していく黒き月の中を進み何とか潰れていない発着口にたどり着いていた。
発着口では自分達と同じ結論に至った別の指揮所に配置されていたであろう別の士官達が脱出の指揮を執っていた。
ルルはその中で中心的に動いている女性士官に声を掛ける。
「私は中央指揮所のルル・ガーデン准将よ。あなたは?それと現状の報告をお願いできるかしら?」
「はい、私は第二近衛集団のバファリン・エクステリア中佐です。現在はエオニア陛下の遺命に従い要人の脱出の指揮を執っている所です。」
「わかったわ。とりあえずここの指揮は私が執ります。中佐、暫定旗艦に案内して頂戴。」
「っは」
ルル達はバファリンの案内でザーフ級の改良艦の艦橋に案内された。
艦長の座るシートの他に要人用のシートが3つそのうちの一つに3・4歳の少女と言うより幼女がちょこんと座っていた。
「この子は?」
「御存じないのですか?私から問答無用で指揮権を奪ったのでてっきりご存知なものかと?」
ルルの問いにバファリンは意外そうな顔をして応じ、それに答えた。
「この方は、エオニア陛下とブリストル閣下の間に生まれた御子。正統トランスバール皇国軍現状唯一の後継者ヴィシュヌ・トランスバール陛下に在らせられます。」
「えっ」
今も読んでたりするんですが火葬戦記の影響でモブの話を入れたりしてチョイチョイ脱線します。
オリキャラは酒とかお菓子から取ってたりしてWikipediaの一覧なんかを見てたのを思い出します。今でもWikipedia普通に読んで時間潰したりしてます。あれ読み物としてもそれなりに面白かったりするんですよね。
これを晒したきっかけは中古屋でGAⅡの未プレイだった永劫回帰の刻を購入してプレイ中で、たまたまこれを見つけたからなんですよね。
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02
クロノ・ブレイク・キャノンの第2次発射により黒き月が破壊され、正統トランスバール皇国軍は滅んだ。
クーデター終結後はシヴァ皇子もとい皇女が皇位に就きトランスバール皇国の再建が始まった。しかし、エオニア派は完全に滅んだわけでなく、残党が戦後も暗躍したり、決起したりした。エオニア戦役からヴァル・ファスク戦役、ABSOLUTEへシフトが成功して他世界繋がるクロノゲートが無数に発見された頃まで、そう言った残党軍との戦闘が何度か繰り返された。代表的な物はレゾム・メア・ゾム率いる真・正統トランスバール皇国軍の決起が代表的であるが、それ以外にも辺境貴族連合の反乱、スプマンテ紛争と続き、最後に新生正統トランスバール皇国の襲来へと続くのである。
それ以外にも海賊化したエオニア派の有人艦や自立行動を続ける無人艦など雑多なものを含めるときりがない。これら残党やその協力者による紛争を総じてエオニア残党戦役と呼ぶ。エンジェル隊のもう一つの戦いが始まろうとしていた。
エオニア戦役終結より半月、残党軍内において最も高い階級にあったエスプモーソ・スプマンテ中将の提供した安全宙域カマラポイント、ここ残党軍の多くが集結していた。
黒き月崩壊後、ある程度の数の無人艦の指揮権を取り返すことが出来たこともありここに集まった残党軍の数は200近くいた。
スプマンテ中将の乗艦のツインザーフ級双胴戦艦の1室で会議が開かれた。有力な将校達の間で今後の方針が話し合われ、残党軍としての方針を協議したのであった。
「私の呼びかけに、集まったのは200程度の艦か。人間の数は上位下位隔てなく数えても僅かに20人程度・・・。どこかにもっと大勢集まってくれるものと思ったのだが・・・。」
この会議では主に3人の人物が中心になって話し合いを行っていた。1人はこの会議の主催であるエスプモーソ・スプマンテ中将で彼は残党軍内全体の兵士において5割を掌握し、そのすべてが職業軍人たちで構成されており、残党軍内では最も精強であるとされた。
「他の者達は承知のうえでどこかに隠れ潜んでいるか、単に通信を聞いていなかったのででしょう。スプマンテ閣下、とりあえずここにいる面々で話し合いを始めましょう。」
2人目はレゾム・メア・ゾム大佐であり彼は最終決戦に合流するために援軍を率いていたが到着前に終戦。単純な保有艦数であれば彼は最大勢力でもあった。
「さっそくですが、我々の選択肢はトランスバール皇国勢力圏より脱出し力を蓄える脱出。トランスバール皇国勢力圏にとどまり戦闘を継続する抗戦の2つです。まず先に私の意見を申し上げさせていただきますとここは脱出を選択するのが最適と判断します。」
3人目は脱出すべきと宣言したルル・ガーデン准将で最終決戦時は黒き月内におり脱出時に黒き月のデータを持ち出しており技術的には最も優位にあった。
「ほぉ?かつては共にエンジェル隊を攻撃したガーデン准将とは思えない弱腰お言葉ですな。」
「あら?ただイタズラに戦力をぶつけるだけぶつけて結局失敗してしまった貴方じゃあ今の状況が理解できないのかしら?猪だってもう少しマシですわ。」
「な、なんじゃと~!?エンジェル隊追撃は貴様だって失敗したくせに何という言い草じゃ!!これだけの戦力があるなら今一度再戦して、疲弊した皇国を潰せばよいのだ!!」
「無能、無能極まりないわ。私達敗残軍が戦って勝てるほど今の皇国軍は弱小じゃないわ。」
「き、貴様・・・」
会議が始まってすぐにルルとレゾムの口論が始まる。エンジェル隊を追撃していた頃からこの二人の折り合いは悪い。あっという間に険悪な空気になり足並みの不揃いが露呈した。残党軍の人間たちはレゾムの様な意地になっての抗戦か、ルルの様な後ろ向きな脱出を選択した。
二人の口論が激しさを増したためスプマンテ中将が一時休憩を挟むように提言し二人は矛を収めた。
休憩中のスプマンテ中将は下士官からコーヒーを受け取りそれを飲みながら、艦橋の指揮所で外を眺めていた。
「閣下、まもなく会議が再開されます。会議室にお戻りください。」
側近のガラシュ・レーリュッケン少佐が呼びに環境に入って来た。ガラシュ少佐の呼びかけには応じずにスプマンテ中将は外の様子を見続けていた。ガラシュ少佐も視線を動かしスプマンテ中将に外の様子をうかがう。
ルルの艦隊が離れていくのが見える。
「ガーデン准将の艦ですな。」
「彼女は黒き月の技術を多く持っているゆえ、こちらに引き入れたかったが頑なでな。結局、頭を縦に振ることはついになかった。」
「我々とは志が違うのでしょう。閣下の崇高な理想はあのような女狐には分かりはしないのでしょう。しかし閣下、ルル・ガーデンはまだしもレゾム・メア・ゾムの様な志無き輩や海賊傭兵上がりを引き入れようとされるのは・・・」
「そうではない、お前は真の皇国を興す為、エオニア太子に従った。その心こそ大儀・・・。大儀を生まんとするものが、小事にこだわってはならん。エオニア陛下の大志を継ぐためにも、我が艦隊戦力の充実が不可欠だ。レゾムの様な輩も含めて私が導く。」
「閣下・・・!!」
会議が再開されるとルル・ガーデンや海賊首領の様な者達の姿はすでに無くなっていた。彼らはスプマンテ中将の呼びかけには応じず独自に動くようであった。
そして、残った者達と協議を重ねトランスバール皇国勢力圏で連携して戦闘を継続することを決定したのであった。
「うむ、では各々今回の協議で示された方針に従って行動するように・・・。レゾム大佐、辺境部にはエオニア陛下が追放された際に身を寄せ戦力を整えたとされる秘匿工廠が存在するらしい、これを手に入れられれば我々の艦隊の強化にもつながる。ゆえに無人艦の扱いに長けている貴官にはこれの探索を行ってもらいたい。」
「お任せくだされ、スプマンテ閣下。必ずやエオニア陛下の残された遺産を見つけてまいりましょう。」
カマラポイントでの会合より3・4カ月ほど経過したルル・ガーデンを中心とする脱出派は一時脱出予定を遅らせてレゾムと合流して辺境保秘匿工廠の探索に協力した。その甲斐あって秘匿工廠を発見することが出来た。
秘匿工廠では管理人のネフューリアの指揮の下、兵力の再建が行われていた。
それを確認したルル達脱出派はそのままトランスバール皇国勢力圏を脱出して行った新たな安住の地を探しに旅立った。
しかし
「准将!!周囲の無人艦のクロノストリングエンジンが暴走ぉおお!!このままでは爆発します!!」
オペレーターの悲鳴交じりの報告が聞こえる。
「ネフューリア、あの女やってくれたわね。ヴィシュヌ姫殿下を最優先に避難させなさい!!」
ルルは何とかしようと指示を出すが・・・
「だ、ダメだ!!巻き込まれるぅうううう!!た、助けてくれぇええ!!」
冷静さを失い喚き散らしているオペレーター。
「ガーデン准将・・・!!」
副官のシュール・リーの呼び声を最後に真っ白な眩しすぎる光に飲み込まれた。
徐々に光が晴れてしょぼつく目を瞬かせて周りを見る。
周囲の無人艦は全て消えてなくなっていた。少ない有人艦からは損傷無しもしくは警備の報告が上がってきている。
周囲の状況を確認すると先ほどと天体の位置情報が違っている。
「これは・・・いったい?」
「前方より艦影!!通信が来ていますがどうしますか?」
「映しなさい。」
ルル達が状況を把握する前にレーダー所属不明の艦影が多数映り通信画面が開く。
『こちらは銀河帝国軍シュパーラ星系駐屯艦隊第3警備隊隊長ラガバルド大尉だ。そちらの艦の所属と目的を名乗られたし。』
書いてた当初はギャラクシーエンジェルと銀河英雄伝説のクロスオーバーとなっていたんですが、書いてた時期にハマってたアニメや漫画の影響をもろに受けてしまっているのが分かりますね~。
スプマンテ艦隊はぶっちゃけ劣化デラーズフリートです。一応銀河帝国とは接触しますけど、この脱線の影響でしばらく銀英伝とギャラクシーエンジェルの絡みはないんです。銀英伝クロスを期待している皆さんごめんなさい。
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03
トランスバール暦412年9月
エオニア軍残党の活動が無人有人問わず活発化していた。
皇国の輸送船や民間の商船が襲われ物資が強奪される。皇国軍のパトロール艦隊が攻撃を受けた等、情勢は安定しなかった。
それどころか、無人艦の出現情報が増えて一部の星系からは不安の声が上がり始めていた。
トランスバール暦412年10月
正統トランスバール皇国ことエオニア軍が滅亡して3ヶ月が経過した頃からトランスバール皇国各地で無人艦による襲撃事件が多発、これの調査のためにエンジェル隊が駆り出されることとなった。
そのエンジェル隊は奇しくもテオ星系でミルフィーユ桜庭と共に船を下りていた皇国の英雄タクト・マイヤーズと再会し彼の指揮の下、新しいエンジェル隊の隊員烏丸ちとせを加えて幾度となく襲撃を重ねてくる残党軍を退けて、背後にいた存在と直接戦うことになるのであった。
「宇宙クジラが正体不明の通信をキャッチしたんです。エルシオールの通信記録からも確認済みです。それでその通信の中にEDENと言う言葉が出て来たんです。」
『EDENじゃと?あの大昔の文明の事か?』
「おそらくはロストテクノロジーに関係した何かが発しているものと思われます。そこで、調査期間を延期してさらなる調査を行おうと思うのですが、許可を頂けますか?」
『よかろう・・・・。可能な限りの援軍をだそう・・・・・。』
「おや?急に映像が?おかしいな?」
ルフト将軍たちとタクトの通信が突如として途絶えてしまう。
副官のレスターやオペレーターのアルモが通信を再度つなげようとしたが反応はなかった。
キュインキュインと警報アラームが作動してもう一人のオペレーターのココが正体不明の艦隊のワープアウトを知らせる。
「本艦正面に、艦隊がワープアウトしてきました!」
「なんだと!?」
「識別信号該当なし!皇国軍でも民間船でもありません!こちらの呼びかけにも応じません!」
「レスター!」
「わかっている!総員!第2戦闘配備だ!」
「ココ、敵艦隊の構成は?」
「前方に大型戦艦と思われる艦が1、戦艦級が1、巡洋艦級が4、駆逐艦級が5あります。」
「敵艦から通信です!」
「通信だと?では、あれは無人艦ではないのか?」
「さっそく敵の招待が判明したな。アルモ、メインモニターに回してくれ。」
「はい!」
『あーあーウォッホン!!旧体制に尻尾を振る犬どもに告ぐ!ただちに・・・・・・んなぁ!?き、貴様は!?』
エオニア軍残党の一人レゾムであった。タクトは彼の事はほぼ完全に忘れていてそれが原因で相手を激昂させるに至ったが現在無人艦隊を率いているのが彼で、その後ろにはミステリアスな美女ネフューリアと言うことまでは解った。タクトの「あの美人相手ならもうすこし話しても良かったかな?」発言でフォルテに窘められるなどいつものエンジェル隊の通常運行で戦闘に突入するのであった。
『今こそ真・正統トランスバール皇国軍が世に躍り出るのだぁ!!』
『ではレゾム閣下、我々の力を彼らに見せてあげましょう。』
『うむ!全軍!かかれぇ~!!』
レゾムの号令で無人艦隊が前進を開始する。だが、先の戦いでもそうなのだが彼の戦い方は猪突猛進で読みやすいのだ。
フォルテとちとせだけで全員が集まっているわけじゃないエンジェル隊でもなんだかんだで対処可能な敵であった。
「親玉が自分から飛び出してくれるなんて好都合だね。」
「うまくすれば、ここで一気に敵組織を壊滅できるかもしれません。」
等とフォルテとちとせが言えるくらいには雑魚なのだ。
「敵の攻撃かわしたよ!ちょろいちょろい!」
レゾムの艦隊は馬鹿なのか艦隊を横隊に広げていた為にネフューリアの乗るザーフ級戦艦を躱してしまえばレゾムの艦にすぐに突き当たるのだ。
「いくよ!ストライクバースト!!」
「行きます!フェイタルアロー!!」
2人の機体はミサイルや対空砲火を躱していき・・・
レゾム瞬殺である。
『ぎゃぁああああ!!艦が燃えている!早く消化しろ!!えぇい!撤退じゃあ!!』
むしろ、レゾムが下がった後に指揮を引き継いだネフューリアの方がだいぶ強かった。
「敵の旗艦が後退していきます!」
ココの報告を聞き舌打ちするレスターと手持ちの戦力不足を認め素直にあきらめるタクト。
「ちっ、逃げ足の速いやつだ。」
「しかたがない、今回はあきらめよう。こちらも離脱する。」
ミルフィーユが力を失っており、2機しかいない紋章機でやっていくのは流石に思うところがあるタクトであった。
戦いは始まったばかりである。
そして、エンジェル隊に撃退されたレゾム達は・・・
「くそー!忌々しいエンジェル隊めぇ!!宣戦布告記念・レゾム特製スペシャルグレートミサイルを姑息にも躱し、無人艦隊も撃破するとは・・・・・!ネフィーリア、増援を呼べ!奴らをぎゃふんと言わせてやるのだ!」
「いいえ閣下、今は引くべきです。」
「な、なんだと!?尻尾を巻いて、おめおめと逃げろと言うのか!?」
「今回は、あくまで小手調べ。深追いは禁物ですわ。それに、スプマンテ中将の意向に逆らうことになりますわ。」
「ぬぅううう、じゃが・・・連中に一泡吹かせてやりたいのじゃ。」
「でしたら、中将閣下とは距離を置き独自に動いてはどうでしょうか。皇国最強と謳われる紋章機と渡り合って来たレゾム閣下です。多少の独断は許されるでしょう・・・それだけの功績はお持ちです。」
「そ、そうか。うははははははは!!そうじゃな!!その通りじゃ!!ネフューリアよ!!」
「それでこそ、レゾム閣下ですわ。」
「よし、引きあげだ!ネフューリアよ!あとは任せる!」
「っは!」
そう言ってレゾムが部屋から出て行くのを見送ってから・・・
「・・・・・・そう、今は早い・・・気は必ず熟するわ。もうすぐ・・・もうすぐよ。うふふふ・・・・」
惑星ナンタケットの暗礁宙域で様々なスペースデブリを寄せ集めて作られた正統トランスバール皇国の残党軍の基地、通称【蔓の園】。スプマンテ中将の艦隊を軸として多くの残党兵が糾合され大きな勢力となっていた。
「閣下、レゾムより連絡です。『エンジェル隊と交戦、計画通り小黒き月を持って、エンジェル隊を撃破する。』とのことです。」
「流石は猛将レゾム。自ら囮を買って出るとは見上げた男よ、かの者の忠義に報いる意味でも我々は我々の計画を完遂せねばならん。」
「閣下・・・・差し出がましい様ですが、レゾムの動向にご注意ください。レゾムの手持ちの戦力、本人の報告よりも明らかに過大です。なにかしらの企みがあるのやもしれません。」
「お主が言いたいのはネフューリアとか言うレゾムの横にいた女のことか?」
「はい、その通りです。閣下、我々とて軍内では高位に居ました。秘匿基地の管理人などと言う重要な存在が我々の知らぬところとは思えません。特に閣下は今は亡きブリストル閣下に並ぶ重鎮。その様な方が知らぬとなると・・・」
「ネフューリアとか言う女が、我らの手の及ばない黒き月のインターフェイスのような存在なのではないかと疑っておるのだな。」
「・・・・・・・・・」
「そうだな、警戒はしておこう。レゾムがあのような女に誑かされてエオニア様に引き立てられた恩を忘れるとは思わんが、我らも警戒することにしよう。」
レゾムとの戦いが本格化していくのを感じるクルー達、それを感じて自分の愛する人のためにミルフィーユは先の戦いで失った力を取り戻そうとフォルテのまねをして銃を撃ってみたり、ランファのまねをしてトレーニングをしてみたりして、いろいろなことに挑戦したが結局取り戻すことは出来ず。思い詰めた彼女は独断で紋章機『ラッキースター』で出撃してしまったのだ。強運を持っていた頃の様に高速でラッキースターを手足のように動かせているわけでもなく、出力が安定せず通常速度よりすこし劣る程度の速度で敵の攻撃衛星に進んでいく、通信がつながらないミルフィーユの乗るラッキースターを止めるためにタクトはシャトルに乗り込む。
「目の前に攻撃衛星がいる。すぐにエルシオールに戻るんだ。」
「敵がいるのはわかってます。だから、あたしがやらなくちゃ!」
「タクトさんこそ先に帰ってください!ここは危険です!!」
「できるわけないだろう!?どうして勝手なことばかり言うんだ!・・・・・・・・ミルフィー、頼むから戻ってくれ。」
すれ違うふたり
「イヤです!」
「なんでわかってくれないんだ!?君を危険な目に遭わせたくないんだ。聞いているのか、ミルフィー!勝手なことをしないで言うことを聞いてくれ!」
男の意見を押し付けるような言い方、緊急事態であるがゆえにタクトもミルフィーを りつけるような一方的な形になってしまう。そうやって責められた彼女も追い詰められ感情が爆発してしまう。この流れは場合によってはカップルが破局に向かう喧嘩が勃発する流れにもなるのだが、今回はお互いの気持ちを吐露し合うことで良い方向に向かって行く。
「あたしはタクトさんのために、ケーキを焼きたいんです!ケーキを焼いて、お茶を淹れて、タクトさんと一緒に過ごしていたい・・・・・・。ふたりで笑って、タクトさんがケーキをおかわりして、それをあたしが切り分けて・・・・・・・・・そうやって、普通に過ごしていたい。・・・・でも今は戦争だから、ふたりでおしゃべりすることも、一緒にごはんを食べることも出来なくなって・・・・・・。そばにいる事も出来なくって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「早く平和が戻ってきて欲しい。みんな、ニコニコ笑えるようになって欲しい。タクトさんと、また遊園地に行って、お弁当を食べて一緒に過ごしたい。あたしの作ったケーキを食べて、「おいしいよ、ミルフィー」って言って欲しい。タクトさんに・・・・・・笑って欲しい。だからあたし、この戦いを終わらせたいんです!そのために、何かしたいんです!タクトさんのために・・・みんなのために役に立ちたいんです!!・・・だってあたしは、タクトさんの事が好きだから!ずっと一緒にいたいから!・・・・・・一緒に・・・・いたいです・・・!いつだって一緒に・・・・。タクトさんと・・・・・一緒にいたいよう・・・・・・!うぅ・・・・・・ひっく。」
「ミルフィー、すまなかった。ミルフィーを守りたいって気持ちは本当だ。でも・・・・・いつの間にか俺は君の気持が見えなくなっていた。ちゃんと見ようとしていなかったんだ・・・。ごめん、ミルフィー。本当に・・・・・・すまない。一方的に守ったり、守られたりするのは、本当の好きなんかじゃない。お互いに守り合い、支え合うのが好きってことなんだ。」
タクトの本当の心からの気持ちに触れたミルフィーは胸に手を寄せ「好き」と復唱する。その顔は気恥ずかしさなのか、自分の気持ちを吐露する時に泣きはらしたからなのか桃色に朱が差していた。
「ミルフィー、俺には君が必要だ。だから・・・・一緒にいて、力を貸してくれ。一緒にケーキをたべたり、いっしょにおしゃべりしたり、ためにはケンカなんかしたりして・・・。そして・・・・・・ふたりで一緒に力を合わせて生きて行こう。だって俺は・・・。ミルフィーが、大好きだから。」
「タクトさん・・・」
「これからは、どんなときでもふたり一緒だ。」
「はいっ!あたしも好きです!タクトさんのこと、だいだいだ~い好きです!!」
「ミルフィー」
『おい!聞こえるか!?タクト、応答しろ!』
タクトの乗るシャトルとミルフィーのラッキースターの両方の警報装置が作動して敵の接近が伝わり、レスターからの緊急通信が繋がる。
「レスター!通信が回復したのか?」
『それどころじゃない!攻撃衛星がミサイルを発射した。逃げろ!』
レスターからの通信でかなり切迫した状況が伝わる。
「タクトさん!ミサイルがいっぱい飛んできます!」
『タクト!ミルフィー!あたしたちが行くまで辛抱しておくれ!』
『で、でも、フォルテ先輩、間に合いそうにありません!』
フォルテとちとせの紋章機がふたりの救援に向かおうとするも間に合いそうになかった。
「ミルフィー!ミルフィー!!逃げるんだ!!」
タクトの叫びがこだまする、一巻の終わり。だが、奇跡は起きたのだ。
「大丈夫です!タクトさん!いまのあたし体中に暖かい力がどんどんみなぎってくるみたいなんです!」
ミルフィーの言葉に反応するかのように紋章機が淡い光に包まれて、光の羽が発現する。
「ラッキースター、シールド全開!」
天使の羽が包み込むように機体を守り、殺到するミサイルを全て防ぎきる。
白い翼を生やした幸運の女神に傷をつける事なんて出来ないのだ。
「いっけぇええ!!ハイパーキャノン!!」
放たれたハイパーキャノンは今までため込んでいたミルフィーの強運を吐き出すかのように高威力で期待を旋回するとまるで鞭のようにビームが波を打って周りの敵を撃墜して行く。
「タクトさん、あたし・・・ラッキースターを動かせます!」
「ミルフィー・・・・・まさか!強運が戻ったのか!」
「タクト、ミルフィー!よかった・・・・・・無事だったんだね。」
「だいじょうぶですか、タクトさん!ミルフィー先輩!?」
「フォルテさん、ちとせ!」
「まったく、ヒヤヒヤさせるんじゃないよ!寿命が縮むったらありゃしない。」
「す、すいませ~ん・・・」
フォルテに少し怒られて申し訳なさそうにするミルフィー。
「しかし・・・・・・本当に、ラッキースターを動かしちまうなんてねぇ。」
「フォルテ先輩、ミルフィー先輩。敵が接近してきます!」
「追っかけてきたか・・・・。打って出るよ、ちとせ!」
「フォルテさん、あたしもいきます!」
「いけそうなのかい、ミルフィー?」
「はい!どうにもこうにも絶好調です!」
「どうするんだい、タクト?」
フォルテは一応確認のためにタクトに許可を求めてきたがそんなことはもちろん決まっている。
「もちろんOKに決まってるさ。」
「タクトさん・・・」
「それじゃあ、俺はエルシオールに戻って指揮を執る。ミルフィー、あてにしてるからね。」
「はい、任せてください!バーンってやっちゃいます!」
タクトの言葉に明るい調子で答えるミルフィーを見て、タクト達はミルフィーの完全復活を確信した。
「はーい!ミルフィーユ、いっきま~す!」
その後の戦闘も完全復活したミルフィーをもってすればもはや何の問題もなかった。
しばらくはオリジナル及びクロス要素なしで進みます。地味ですね・・・
当たり障りのないオリジナル要素はちょいちょい出てますけど、ちなみに残党軍内でのレゾムの評価が高いですがあまり意味はない。レゾムはネタキャラとして結構好きでした。そして、劣化デラーズフリートはネフューリアさん退場までほぼ出番なしです。オリキャラ埋もれる・・・・
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04
「ドライブアウトしました、周辺のスキャンを開始します」
「敵艦なし、金属反応なし、ガス反応なし……オールクリアです」
成れた様子で報告するココとアルモ。
「通信障害は、どうなっている? 」
「現在は見られません」
「よし、ルフト将軍に繋げ」
レスターの指示に従ってアルモが通信を繋げようとする
「あ、ちょっと待った。俺にちょっと考えがあるんだ。次のクロノ・ドライブで第二方面軍と合流するだろ?せっかく援軍が来るんだから、なるべくそれを有効活用したくてね。ただし暗号変換はしないで通信してくれ。敵からすれば、俺達が援軍と合流するのは阻止したいだろう。当然、こちらの動きをつかみたいはずだ。」
「は、はい。でも・・・・」
何か思いついたのか、タクトが「いい事を考えた」と言わんばかりの表情でアルモに暗号通信の使用をやめるように言う。アルモもこれまでの信頼関係から疑問を持ちつつも命令に従う。
「タクトさん?それは規定違反です!作戦行動中に、暗号化もせずに通信を行うなんて!」
その言葉に反応したのちとせだった。生真面目な性格から多少興奮気味に軍規違反だと訴えるちとせをいつもの調子でなだめるタクト。
「大丈夫、大丈夫、まぁ、見ててよ。」
「まあ、あいつにも何か考えがあるのだろう。アルモ、オレが許可する」
ちとせの言葉を聞いて通信を繋げるべきか否か迷っているアルモにレスターがタクトの肩を持つことで後押しする。副指令であるレスターの後押しもあってちとせは「はい…わかりました。」と後ろに下がる。アルモも一連の流れを受けて通信を繋げることにする。
「了解しました。・・・・・・通信繋がりました、ルフト将軍です。」
「よし、メインモニターに回してくれ。」
『おお、タクト!無事だったか。通信が途絶えたきりになって、心配しておったんじゃ。』
スクリーンにルフトの顔が映る、かわいい教え子に会えたからか喜んでいるようだが、やはり激務なのか疲れが見える。軍の最高司令官と国家宰相の二足の草鞋はやはり相当に厳しいのであろう。特にまだ前回の戦いの傷跡が残る今の皇国においては、大きな重圧が襲いかかっているのだ。
「お久しぶりですルフト先生、敵に通信を妨害されてたんですよ。でも、このとおり、われわれは無事です。予定どおり、目標宙域に向けて航行中です。それより、我々が追っている敵の正体が判明しました。」
『なに、本当か!いったい何者じゃ?』
「エオニア軍の残党で、首謀者はレゾム・メア・ゾムです。」
『レゾム? あの男、生きておったのか。』
タクトと違いルフトの方はレゾムの事をちゃんと覚えていたようだ。
「はい。レゾムは【真・正統トランスバール皇国軍】を名乗り、皇国に宣戦を布告してきました。ですが、問題はそこではありません。なぜ、あいつが無人艦隊を・・・・それも、あれだけ大量に保有しているかです。」
とりあえず、本題から切り出すタクト、わざわざ暗号をかけないで通信をしているのだ。怪しまれないようにする必要があろう。
『ふむ・・・・・・・確かに、先の戦いで温存していたにしても、各方面に出没しておる敵艦は、ちと数が多すぎるな。』
「はい、いくら紋章機があるとはいえ、戦力に不安があります。前回の援軍の件どうなりましたか?」
『むぅ・・・・・・・それなんじゃが、第5方面軍の意思が固くてな。あまり大規模なものは送れん。第5方面軍は先の動乱で日和見を決め込んだ故に軍内では風当たりが悪い。そう言った理由で彼らの観艦式に対する熱意は並々ならぬものがある。それに観艦式成功の暁には無人艦隊は別としてエオニア派の士官達の投降も促せるとして賛成する者も多いのじゃ。酷な言い方になるが先に送った増援だけで戦って欲しいと言うのが本音じゃ。』
申し訳そうにそう返すルフト、しかしながら、ないものないというのも絶対的な事実だ。
「そんなことだろうと思いました。わかりました、なんとかやってみますよ。」
そう、ここからが重要なのだ。
「ただ、ちょっと困ったことが・・・・紋章機にトラブルが起きて、今は戦力が半減しちゃってるんですよね。」
タクトの発言にちとせが疑問を口にしようとしてレスターに止められる。
「え?あのタクトさん?紋章機は・・・」
「しっ。とりあえず、黙って聞いてろ」
『なんじゃと?それは弱ったのう。』
「でも、心配はいりませんよ。幸い、敵の姿もありませんし、合流ポイントまでは心配ないでしょう。ところで、ちょっと個人的な話になるんですけど。」
『おいおい、タクト。今は作戦行動中じゃろう?』
「それはわかってますけど。ほら、「ここまで出てるのに~」って思い出せなくてむずむずするんですよ。気になってこのままじゃ作戦に手中出来そうにないんですよ~。」
『わかった、わかった。で、何が気になっとるんじゃ?』
ルフトの許可を得たので、一息ついてからタクトは尋ねる。
「ほら、先生が教官だった時のスペースボール士官学校リーグ決勝戦。」
『おお、もちろん!悲願の初優勝を果たした時のことじゃな。お前のサイン入れ替え作戦が功を奏して、イリノア校の連中は、てんてこ舞いじゃったな。昔からお前は、自分が楽に勝つことにかけては、知恵の回る男じゃったよ。』
「いやぁ、それほどでも~。あはは」
「褒めてないぞ、タクト。」
タクトとレスターがルフト教官の下で一緒に汗を流した良き思い出である。楽しかったななどとレスターもルフト同様に感傷に浸って懐かしんだ。
「えっと、それであの決勝戦で逆転ゴールに使ったフォーメーションって、フォーメーションがどうしても思い出せなくて・・・。あれって、フォーメーションいくつでしたっけ?0でしたっけ6でしたっけ?なんか、妙に気になっちゃて・・・。」
「なぜ今のその話を・・・・?はて、フォーメーション0。おお、おお!フォーメーション0か!!」
「あ、やっぱりフォーメーション0でしたよね?」
タクトは、内心で自分のたくらみが上手く行ったことにガッツポーズをしていた。もちろん表情は一切変えずにいつものどこか抜けたような笑みを浮かべている。
同時にレスターもタクトの意図することが分かったようで、口元を僅かに歪めた。
『うむ、そのとおり。フォーメーション0はここぞという時に効果的じゃ。』
「そうですよね。いやぁ、これですっきりしました!ありがとうございます。そうだ、またスペースボールの試合をしましょうよ。俺の得意なフォーメーション0なら290対0で勝てますよ!」
『ははははは、290対0とは大きく出おったな、こいつめ。もちろん、ワシが監督じゃろうな。スケジュールを空けて必ず行ってやるぞ。』
「楽しみにしています。」
「おお、そうじゃ。その話、ラークにもしておこう。」
「ラーク・・・・ですか。」
『ラークじゃよ、ラーク覚えとるじゃろ?』
「ああ・・・あのラークですか!確かに、俺たちのチームには欠かせない存在ですよね!了解しました。ラークにもよろしく伝えておいてください!」
ルフトの発言に一瞬詰まってしまうものの、彼の意図するところと理解すると、すぐにタクトは、「全くその通りですねー」と言うポーズを続けつつ同意した。
『うむ、それでは貴艦の無事を祈る。』
そういって通信は切れる。タクトはブリッジの面々へと振り返る。それと同時にタクトの意図を理解していたレスターは、アルモに指示を出した。
「さて、これで良しと・・・レスター。」
「ココ、ポイントYMf290へ進路をとれ。」
「え? 指定されたポイントはYMf288ですけど?」
「いや、YMf290だ。」
「りょ、了解しました。」
「さて、引っかかってくれるといいがな。」
「たぶん、いけると思うよ。」
「あのー、タクトさん。ひとつ聞いてもいいですか?ルフト将軍とお話しされてた、フォーメーション0って、なんですか?」
ミルフィーが頭に?を浮かべて尋ねてくる。その横のちとせもうんうんと頷いている。
タクトはミルフィー達の疑問に答えて今の通信にどのような意味があったのかを説明し始めた。
「まず、フォーメーション0はスペースボールの時、サインによってパスを受け取るメンバーを変更するもので、内容を知っている人なんてそうはいない。そして、通常レスターがパスを受け取るのだが、フォーメーション0において、そのパスを受け取るのが手前の味方ラークだった。パスを受け取ったら手薄になった敵陣を一気に突破すると言う作戦なんだ。ちなみに290対0なんてスコアは普通にあり得ないスコアだよ。つまり、今回の場合で言うと囮役は本来の合流ポイント。手前でパスを受け取る味方が、これから向かうポイントになるのさ。」
「つまり、合流ポイントの手前で待ち伏せて、やって来た敵を叩く・・・・・・と言う事ですか。すみません、タクトさん。そう言う意図がおありだったとも知らずに、私・・・・」
「気にしない、気にしない。正規の手続きを無視したのは事実だし。そういうとき、ちゃんと注意してくれる人がいるのも大切な事さ。」
「でも・・・・勝手に合流ポイントを変えちゃったら、増援部隊と合流できないんじゃないですか?」
「それも問題ない。今頃ルフト将軍を通じて伝わっているはずだ。将軍がラークに伝えるって言っただろ?ラーク=増援部隊だ。」
そう心配したアルモにレスターが補足説明する。
「じゃあ、そろそろお開きにしようか。みんなは、ドライブ・アウト後の戦闘に備えて、ゆっくり休んでくれ。」
そうしてタクトは、その場で解散を命じて、ココとアルモも、次のクロノドライブの準備をして、ドライブに入ったらそれに合流すべく、コンソールに向き直った。
ほぼ、原作通りの流れ。
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05
「・・・・間もなく、ポイントYMf290に到着します。」
エルシオールが合流地点にドライブアウトする。
「長距離レーダーに反応あり!敵の艦隊です。ポイントYMf288に停止中。こちらには気が付いていません。」
「大漁だな。見ろ、レゾムの旗艦もいる。どうする。今すぐ、しかけるか?」
「いや、まだだ。先手を打てるとは言え、この戦力だとさすがにつらい。ここは素直に、後続の増援が来るのを待とう。あの通信の後、暗号文で増援艦隊にはエンジェル隊のみんなが来てくれるらしい。それと、増援艦隊の司令官本当にラークらしいよ。」
「お?本当か。ルフト先生も粋な計らいをしてくれるな。」
タクトとレスターが雑談混じりの会話をしていると、格納庫から通信が入る。
「1番機ラッキースター、準備完了です。」
「ハッピートリガー、準備よろし。出番はまだかい?」
「同じくシャープシューター、出撃準備整いました。」
「ブリッジ了解。もう少ししたら出撃だから、それまではリラックスしてていいよ。さて、みんなはいつ頃到着するかな?」
警報音が鳴り響く
「ココ、状況を知らせろ。」
「はい、レーダーに多数の艦影を捉えました!」
「多数?援軍か?」
「い・・・いえ!敵です!」
「なんだと!?」
「小惑星の陰に潜んでいた模様です!一斉にこちらへ移動を開始しました!」
レスターとココが話し合っているとアルモが通信を受信する。
「敵艦より通信です!」
『すこしは知恵を働かせたようだけど、残念だったわね。』
「いきなり、ごあいさつだね。君は確かネフューリアだっけ?レゾムの副官の。」
『そう、ネフューリアよ。ちゃんと覚えていたようね。感心だわ。それに、目の付け所も悪くないわ。わざと情報を漏らして、こちらを誘導するとは・・・・・・・けど、詰めが甘かったようね。』
「手厳しいな。しかし、よく俺の行動が読めたね。」
『簡単よ。あなたはサインの入れ替えなんかで敵を混乱させるのがお得意なんでしょう?ならば、こちらは裏の裏をかくまで。造作もない事だわ。』
「なるほど。君も、一筋縄じゃないみたいだね。感心、感心。」
『ふふ、愉快な人間ね。』
「それにしても、解せないな。俺の手が読めてたなら、最初から全軍をこっちに回しても良かったのに。」
『罠に引っかかったと確信しない限り狩人は姿を現しはしない・・・。違うかしら?』
「・・・・・伝えてないのか。自分のところの大将を囮に使うなんて大胆だね。」
『これぐらいには役に立ってもらわないと、困ってしまうわ。』
「君、友達少ないでしょ?」
『友達?・・・・あぁ、あなたたちが、自分と近しいと錯覚する対象の事ね。あいにくだけど、そんな幻想は私には必要ないの。ふふふ、おしゃべりはここまでにしましょう。ここからは楽しい楽しい殺戮の時間よ。・・・・・・レゾム閣下、エルシオールを発見いたしました。至急、こちらに軍勢を。』
『なんと!?でかしたぞ、ネフューリア!今すぐそちらに向かう!』
レゾムはそう応答して通信を切り軍勢を動かし始める。
『さあ、こちらの手を打ったわ。あなたたちは、どう出るのかしら?』
「敵本隊、こちらに急速接近!」
「タクト、まずいぞ!」
「大丈夫。そろそろ来るはずだから。」
「あ!レーダーに新たな反応多数確認!急速に接近中!この識別信号は・・・・・・・・・・・・紋章機です!!」
「各紋章機から通信が入りました!」
増援部隊に組み込まれていた残りのエンジェル隊から通信が入る。
『ハァ~イ!お待たせ~!タクト、ひさしぶり!本当に司令官に戻ったんだ!』
「ランファ!みんな!」
『ミルフィー!アンタ、なんで紋章機に乗ってんの!?』
「また乗れるようになったの!」
『再会のごあいさつも、よろしいのですが・・・・・。あまりノンビリできる雰囲気ではありませんわね。』
『・・・・・今は、敵を撃退するのが先決です・・・・・。』
「ミントにヴァニラもひさしぶり~」
「遅かったじゃないかい。あんたたち待ちわびたよ。」
エンジェル隊の隊員同士で再会を喜んでいる中、仲間外れ感を少し感じたタクト。
「来てくれて心強いよ。さっそくひと仕事、頼む。敵に勝ったら、その後でゆっくりと再会を祝おう!」
『言われるまでもないわ。軽くかたづけてやるわよ!』
『水くさいですわ。さぁ、私たちの力を見せて差し上げましょう。』
『・・・・・問題ありません。それが、私たちの任務です。』
「そういえば、ちとせが加入してからは、初めてのエンジェル隊そろい踏みだな。」
「はい、先輩たちの足手まといにならないように精一杯がんばります。」
「リラックス、リラックス。肩に力が入ってちゃ、実力は出せないよ。」
『変わってないわねぇ、タクトも。』
『よろしいんじゃありませんか?そのほうが、エンジェル隊らしいですし。』
『・・・私たちらしいです。』
「そういうこと。」
『なるほど、別動隊による挟撃作戦とはね。』
「あれだけわざとらしい通信を送ったら、当然気づくやつが出てくるさ。例えば、君の様に頭が切れる人がね。なら、こっちは裏の裏の裏をかくまで。造作もない事さ。」
『ふふふっ・・・・・!あなたは本当に愉快な人間ね。タクト・マイヤーズ。あなたに敬意を表して、本気で遊んであげましょう。』
タクト達とネフューリアの会話が途切れる瞬間、通信に割り込む声が・・・。
『俺たちのチームの軍師殿はお断りだそうだ!!とっとと失せな病人顔のねーちゃん!!』
ネフューリアの艦隊が攻撃を受ける。
「ラーク遅いじゃないか。」
『あのねーちゃんが、勝手にエンジェル隊だけだと勘違いしてくれたからな!!フォーメーション2を使わせてもらったぜ!!』
「フォーメーション2・・・・時間差攻撃か!!」
『そうだ!久しぶりだな!!レスター、タクト!!募る話もあるだろうが、まずはあいつらをどうにかしてからだ!!』
「そうだね。ラーク、それにみんな!!やるぞ!!」
「「「「「「了解!!!」」」」」」
『っく、まだ増援がいたの!?だけど、こちらも合流すれば五分、いいわまとめて相手になりましょう!』
「攻撃準備!ふたつの艦隊を、それぞれ迎え撃つ。」
「よし、こっちの紋章機も全機発進だ!」
『戦闘機部隊全機発進!!全艦一斉射撃!!』
ラークの増援艦隊が一斉射撃をレゾムの主力艦隊へ放ち、ゼム級戦闘母艦からシルス型高速戦闘機が次々と発艦して行く。
「正規軍の意地を見せてやれ!」
「エンジェル隊だけにいいかっこさせるかよ!」
「エオニアの残党にあの時と違うところを見せてやるぞ!」
正規軍の士気も旺盛でレゾムの艦隊に襲い掛かる。
「よ~し、バーンとやっちゃいます!」
「あら、正規軍のみなさんもやる気じゅうぶんですわね。」
「・・・・私たちも負けてられません。」
「いっくわよ~!!」
「よし、エンジェル隊もハデにやって、いいところ見せようか!」
「私も皆さん方に負けないように頑張ります!」
もちろん、エンジェル隊の士気も旺盛だ。
「ミサイル全弾命中!とどめは任せる!」
「あいよ、任された!いくよ!ストライクバースト!!」
戦闘機部隊が敵の戦艦にミサイルを打ち込んで、そのとどめにフォルテのハッピートリガーの必殺技が決まる。
「撃て!敵を引き付けろ!」
「その隙、逃しません!」
正規軍の艦が敵艦と一進一退の打ち合いをして引き付けて、その背後からちとせのシャープシューターが狙い打った。
ヴァニラのハーベスターと味方の戦闘機部隊が敵の駆逐艦を同時射撃で沈め、味方艦隊の中に潜りこんだ敵戦闘機部隊をミントのトリックマスターのフライヤーが撃ち落とし、ランファのカンフーファイターが投げた敵を正規軍が撃ち落とす。押された敵軍をダメ出しの一撃にとミルフィーのハイパーキャノンでとどめを刺した。
「敵艦隊、2時方向に退却していきます!皇国軍の勝利です!」
この戦い、エオニア動乱の時からエンジェル隊任せの雰囲気が強かった空気を完全に払しょくさせ、エンジェル隊と正規軍の部隊が本当の意味で足並みをそろえることが出来ていた。まさに皇国軍無双であった。
レギュラーもしくは準レギュ級のオリキャラが出てきましたが、残念なことにキャラが偶にぶれます。キャラの書き分けが出来てないです。本当にオリキャラでSS書いてる人たちってすごいですね。ちなみにオリキャラのフルネームはラーク・メンソール(タバコ)です。
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06
皇国軍無双の挟撃戦が終わってからタクトとレスター、増援艦隊参謀長ラークと増援艦隊の司令官の4人で話し合いの場が持たれていた。
「まさか、本当にラーク、君が来るとは思わなかったよ。」
『俺もお前の一言が原因でルフト先生から引っ張り出されるとは思わなかったぜ。』
「しかし、敵も侮れないな。今回はお前たちが来たからよかったようなものの、あと少しでも遅れていたら・・・・。」
『ま、それも計算済みだったんだろう?我らが軍師様はな。』
「まぁね。」
「おいおい、ラーク。あまり、タクトを調子に乗せるな。後でオレが苦労するんだぞ?」
「「『ハハハハハ!』」」
「どうしたのアルモ?指令たちの方ばっかり見て?」
「なんかいいなぁ~、男同士の友情っていうの。なんかカッコイイ」
「そうねぇ。」
ココとアルモはタクト、レスター、ラークの3人を見てそんな話をしていた。
ちなみに増援艦隊の司令官はタクト達3人が学友であると言う事でこう言った流れになることはある程度予想していた為、ただ黙って陰に徹していた。
「だけど、あれだけの無人艦を、どうやって手に入れたんだろうな。謎のメッセージのことといい、やはり、まだ俺達の知らない何かがあるのかもしれないな。」
『確かに敵の数が多すぎだ。皇国情報局の見立てと違い過ぎる。』
「今回の件でオレもメッセージのことを信じる気になって来た。」
「それに、あの声どっかで・・・・・・・ん、通信だ。誰からだろう?」
「タクトさん、よろしいですか?」
『動物の飼育係が割り込んで・・・・!?失礼しました。』
ラーク横にいた別の参謀がクロミエの割り込み通信を非難しようとしたが、エルシオールの特殊性をある程度理解しているラークはそれを手で制した。
『悪い続けてくれ。』
「どうしたんだい、クロミエ?」
「宇宙クジラが、ひときわ強い思念波を感じたそうなんです。例の声です。それも、かなり切実な様子だと言っていました。」
『じゃあ、言っている内容が増えたか変わったかしているのか?』
「いえ、そこまでは・・・。ですが、思念に含まれる感情の波に変化があったのは間違いないようです。」
「クロミエ、方向や距離はわかるかい?」
「はい、距離まではわからないようですが、方向は・・・・・。艦隊の進行方向の右斜め前からだそうです。」
「右斜め前・・・・・・・2時の方向か!」
「ココ、2次の方向って、もしかして・・・・・。」
急な問いかけではあったがココはきちんと対応して見せた。
「はい、レナ星系のある方向です。」
『敵が引き上げていった方向か・・・』
「やっぱり・・・・・・クロミエ、ありがとう。また宇宙クジラが何か感じ取ったら、すぐに教えてくれ。」
「わかりました。では、失礼します。」
クロミエからの通信が切れ、彼ら(ほぼ3人)は改めて向き直る。
「・・・・・・やっぱり、これは何かあるな。」
「ああ、そう思って間違いなさそうだ。」
『これはやっかいそうだな。』
『はい』
タクト達が少し沈んでいるとエンジェル隊のみんなが帰還を報告にブリッジに入ってくる。
「失礼します。エンジェル隊、ただいま帰還いたしました。」
「やあ、ちとせ。みんなも一緒か。」
「今日は絶好調だったわ!まぁ、これが本当の実力ってやつよね!」
「ああ、ランファのおかげで、楽に戦えたよ。」
『そういえば、フランボワーズ中尉。アンカークローは2つしかついてないのに何で3隻同時に倒せたんだ?』
「あ、それはですね~。敵をつかんだ反動を利用して~ 」
会議は中断して雑談モードに入る。
「タクトさんの指揮のおかげで、安心して戦えましたわ。ありがとうございます。」
「おだてないでくれよ。ミントこそ、大活躍だったじゃないか。」
「お疲れさん、タクト。やっぱ、あんたの指揮はやりやすいよ。」
「ありがとう。オレの方こそ、フォルテのおかげで助かったよ。」
「・・・・・お役に立てましたか・・・・・?」
「ああ、もちろん。ヴァニラのおかげで、助かったよ。」
「エンジェル隊の皆さんの前で、これだけの戦果をあげられるなんて。自分でも信じられません!」
「ちとせも、もう立派なエンジェル隊員だな。よくやってくれた。」
「タクトさん。あたし、今回も絶好調です!」
「ミルフィー、お疲れさま。ずっと君のことを見ていたよ。」
エンジェル隊のみんなとタクトの会話を聞いてラークは一言。
『タクト、お前スゲーな。(ほとんどハーレムじゃないか!?)』
「あ・・・あははは。」
エンジェル隊の面々がスクリーンの方向を向くと彼女達が驚いてラークじゃない方の画面の人物に話しかける。
「って!?ウォルコット中佐じゃないか!なんでこんなところに!?」
『いやはや、予備役になる前日にルフト将軍に呼び出されましてね。まさか、こんな形で皆さんと再会する形になるとは・・・・。世の中わかりませんな~。』
「中佐、いたの!?ひさしぶり~!元気してた?」
「あー、ウォルコット中佐だー!やっほー!」
『ランファさんにミルフィーユさん、相変わらずお元気そうで何よりです。』
「いたんですの?気が付きませんでしたわ。ウォルコット中佐、お久しぶりでございますわ。」
「・・・・中佐、お久しぶりです・・・・」
『ミントさんも相変わらずそうですな。ヴァニラさんは・・・・・少し変わりましたかな?しかし、ここまで気が付いてもらえなかったのは少々悲しいような気もしますね。それと私、この度、准将に出世しました。』
懐かしい顔を見てワイワイしだすエンジェル隊のメンバー達。仲間に入れないちとせは少し寂しそうだ。そんな彼女を見てラークが思い出したように口を開く。
『お、そうだったそうだった。烏丸少尉にも会わせたい人たちがいたんだ。』
「え?私にですか?」
『ああ、そうだ。コアントロー少佐、航宙戦技教導団に繋げてくれ。』
『はい。』
ラークは先ほどの参謀に通信を繋げるように指示する。
『ちとせ!久しぶり!あたしツインスター隊の隊長になったんだよ!』
『烏丸少尉お久しぶりです。』『よぉ!ちとせのねーちゃん!』
「わかば!それにマリブくんにココモくんも!」
ちとせの表情がパァっと明るくなる。
「ねぇねぇ ちとせ、あの子たちは誰なの?」
ミルフィーの質問にちとせが答える。心なしか嬉しそうだ。
「彼女は山櫻わかば少尉、わたしの親友でセンパールの同級生です。」
『センパール士官学校卒、ツインスター隊隊長山櫻わかば少尉です!エンジェル隊の皆さん!どうかよろしくお願いいたします!』
「そして、あの2人はわたしがエンジェル隊に所属する前の部隊のメンバーのココモ・ペイロー曹長とマリブ・ペイロー曹長です。」
『皆さん、よろしくお願いします。』『みんな、仲良くしてくれよな!』
ちとせの方もだいぶにぎやかになって来た。
「・・・・・・オレ達の関係者勢ぞろいか。ルフト先生も手の込んだことしたもんだな。タクト」
「そうだね。でもこれだけ賑やかならエンジェル隊のみんなのテンションはうなぎのぼりだね。」
『違いないな。流石はルフト先生だ。』
「これより、クロノドライブに入ります。」
ココの報告と共にクロノドライブに入り緑色の光がスクリーンに映る。その周囲には皇国軍の艦も見える。
「よし、これでしばらくは、敵襲の心配はないな。レスター、このクロノドライブが終わったらルフト将軍に連絡を取るように準備しておいてくれ。例のメッセージのことを、報告しないとな。できれば、白き月でも分析してもらおう。それに今回のことのお礼も言わないと。」
「そうだな。送信すべきデータは揃えておく。しかし、ルフト将軍も相当な人事をねじ込んだもんだ。しばらくは頭が上がらないな。」
「まったく、その通りだね。それじゃあ、ツインスター隊の面々をラークの艦に移乗させてから、増援艦隊の旗艦をエルシオールに接舷させるから、その後は各自旧交や親交を深めよう。」
しばらくの間はエルシオールは大変賑やかになりそうだ。
不穏分子の反乱鎮圧や宇宙海賊の討伐で名を馳せ「白き超新星の狼」の異名を持つエオニア動乱以前の英雄ウォルコット・O・ヒューイ准将。タクトとレスターの学友で士官学校を次席で卒業した秀才参謀長ラーク・メンソール中佐。エンジェル隊に次ぐ実力を持つツインスター隊、そのツインスター隊を従える航宙戦技教導団も皇国の優秀な戦闘機乗り達を抱える精鋭だ。増援艦隊の各艦長たちもルフトの第1方面軍とペールエールの第2方面軍から選抜された優秀な艦長たちだったりする。タクト自身もエオニア動乱後から英雄と呼ばれる存在である。
タクト率いるこの艦隊は皇国の最精鋭艦隊だったりするのだ。
エルシオール艦内ティーラウンジ
「しかし、これだけの人数が集まるとすごいにぎやかだな。ほとんど、お祭りみたいだ。」
エンジェル隊やツインスター隊の面々+αがミルフィーの作った特大ケーキを囲んで楽しそうにお茶している。
「それにしてもビックリしたわよ、ミルフィー。」
「え?なにが?」
「「え?なにが?」じゃないわよ!アンタのエンジェル隊への復帰!」
「タクトさんとミルフィーさんがエルシオールにいらっしゃるなんて、予想を裏切られる展開ですわ。」
「ほんと、アンタたちって目が離せないわ。」
「・・・・ミルフィーさん、タクトさん、お帰りなさい。」
「ただいま、みんな。」
「えへへ・・・ただいま。それと・・・・これからもよろしくお願いしますね。」
「しっかし、タクトさんよォ!こんなかわいい子といい仲になって羨ましいねかぎりだぜ!俺はてっきりレスターの方が先に彼女ができると思ってたんだがなー。」
「あはは、ラーク羨ましいか?羨ましいだろ?ミルフィーはとっても魅力的なんだぞ。」
「っくそー、こいつめ!こいつめ!」
「やーめーろーよー。」
じゃれあうタクトとラーク。
「マイヤーズ大佐のところにミルフィーユさんが、なんだか娘が巣立っていったようで寂しいですな。」
「あら、中佐?娘だなんて・・・でしたらまだ私たちと言う可愛い娘たちが残っていますわよ?・・・・・ところでタクトさん?ひとつ、お聞きしたいことがあるんですけど・・・・・よろしいですか?」
「ああ、なんでも聞いてくれ。」
「ミルフィーさんとのファーストキスはいつどこでいたしましたの?」
ミントの質問に思春期の少年であるペイロー兄弟は聞いていないふりをしながらも耳をそばだてている。そんな二人を見てちとせとわかばはくすくすと笑い合って見ていた。
「ブッ」
「きたないねぇ、タクト。鼻から紅茶が出ているよ。」
「ファ、ファーストキスだって!?」
「あっ、それアタシも聞きたかったの!」
「いやはや、若いですな~。」
「ねぇねぇ、ミルフィー、どんなシチュエーションだったの!?」
「ランファ姉ちゃん、一撃目から飛ばしてるなぁ。」
「僕としても今後の参考のためにぜひ。」
「えっ?そ、それは・・・・」
「やっぱりムードが大切よね~!夕日が沈んでいく浜辺?それとも満天の星空の下?」
「いやいや、ランファさん。摩天楼からの綺麗な夜景もありえますよ!」
「「きゃ~」」
勝手に盛り上がるランファとわかばの乙女二人。
「いや、それは・・・・・。」
「なんだい、もったいぶらないで教えてくれよ。今更隠すようなことじゃないだろう?」
「全くだ、シュトーレン大尉の言う通りだぞ!タクト、キリキリ白状するんだ。」
「あの、フォルテ先輩。タクトさんもミルフィー先輩も、お困りの様ですけど・・・・。」
「と、ちとせは言ってるけど。ほんとは興味津々なくせに~、士官学校時代は私の少女漫画結構勝手に読んでたくせに~」
「ちょっ、わかばさん!?やめて~。」
「いいの、いいの!ファーストキスの思い出くらいは、当然の権利だわ!なんせアタシは、ミルフィーの親友だもの!」
「そして、俺はタクトの親友だぜ?親友2人がいいって言ってるんだから何の問題もないぜ!」
「それにタクトさんは「なんでも聞いてくれ」とおっしゃいましたわ。質問が許可されている以上、聞くのは当然じゃありませんこと?」
「そうですよ。烏丸少尉、野暮なことは言わないでください。」
「そうそう、野暮なことはいうなよぉ」
「うぅ・・・ふたりとも・・・ひどい」
「ご、ごめん!ちとせ姉ちゃん!」
「そ、そんなに悲しそうにしないでください。」
「ふふ、いいですよ。許してあげます。」
「ウソ泣きかよ~ずるいぜぇ」「ぶーぶー」
エンジェル隊では後輩キャラが板についたちとせだが、ペイロー兄弟に対してお姉さんオーラを出している、今の姿はなかなかに新鮮だ。だが、そんなことを考える余裕は今のタクトにはない。
「さて、タクト。言わないなんて野暮なことはなしだよ。」
「多勢に無勢、しくじった・・・・」
「若いうちはいろんな経験をしておくべきですぞ。マイヤーズ大佐」
「ウォルコット中佐まで・・・・」
「で、どうなんだい?ミルフィー?」
「え、ええと・・・・。」
「もう、顔真っ赤にしちゃって!このこの!どーせアンタのことだから、「2人だけの大切な思い出だからないしょ。」とか言ったりしちゃうつもりでしょ?もう、ロマンチストなんだからぁ!」
「大切な、思い出・・・・・。」
「・・・・あのさ、逆に聞きたいんだけど。」
「なんですの?」
「やっぱりふつうは・・・・キスって、するものなのかな?」
「・・・・・はい?」
「するものなのかって・・・・・どういうこと?」
「タクト・・・・お前・・・・」
「いけませんなぁ、これはいけませんな。健全な男子の言葉とは思えませんぞぉ」
「それはそれで不健全な気がしますわ。ウォルコット中佐・・・・」
「すみません・・・・」
ウォルコットはさすがに言い過ぎなのでミントに軽く窘められたが、ウォルコットの言っていることも間違いではない。
「あの、キスってしないと変ですか?」
「ちょっと待ってくれ。まさかあんたたち・・・・。」
「俺たち、キスなんて考えたことないよ。」
「なんですってぇ~~~~!ちょっと、それってどういうこと!?」
「タクト、お前は修行僧か仙人なのか。」
「驚きましたわね・・・・・。」
「あ、あぁ。こいつは予想外の展開だよ。」
「衝撃の事実・・・・。」
驚愕の視線がタクトとミルフィーに注がれる。
「タクト!まさかアンタ、ミルフィーのことは本気じゃないっていうんじゃないでしょうね!?」
「そうだとしたら、同じ女として、ちょっと許せないわね。」
「それはあんまりだとおもうぞ。タクトのにーちゃん。」
「ぼくもそう思います。」
「タクトさん・・・・」
「そ、そんなわけないだろう!俺は宇宙一ミルフィーが好きなんだ。」
「あたしも、タクトさんのこと・・・・・宇宙で一番大好きです。」
「え、そう?ならいいいんだけど・・・・・。」
「愛の形は人それぞれということですかな?当人たちがそれでよいと言っているのですから部外者が口をはさむことではないのでしょう。」
「ですが、好き合っているのにキスをしないなんて、ずいぶんと個性的なカップルなんですのね。」
「・・・・不可思議カップル・・・・」
「きっとそれも、ひとつの愛の形なのですね。さっそく日記に書き留めておかなくては。」
「ま、あんたたちがそれでいいいなら、いいさ。人の恋路に口を挟むほど野暮じゃないしね。」
「ちょっと、タクト!顔貸しなさいよ!」
「な、なんだよ、ランファ!?うわっ!引っ張るなって!」
「あ、タクトさん!」
急にランファに通路へ連れていかれるタクト。
「いい!?ミルフィーを悲しませたり、寂しがらせたりしちゃ、ダメだからね。」
「もし、そんなことがあったら、「秘奥義・一文字流星乱れ撃ちキック」を、お見舞いしてあげるわ!」
「わ、わかってるさ。・・・・・俺は絶対にミルフィーを悲しませたり、寂しがらせたりしない。約束する。」
「本当に本当?」
「本当に本当だ。」
「・・・・・いいわ、信じてあげる。」
「あの子の支えは、アンタにしかできないの。だから、これからも・・・・ミルフィーのこと、よろしくね。」
「・・・・・・ランファは優しいんだな。ミルフィーの為に、そこまで真剣に怒ったり、お願いできたりするんだから。」
「しょ、しょうがないでしょ!?ほ、ほら、あの子ってボケ~っとして利から、アタシがしっかりしてないとダメなのよ!」
「ミルフィーも、ランファみたいな親友を持って幸せだよな。」
「タクト・・・・・」
「俺からも、お願いするよ。ミルフィーと、いつまでもいい友達でいてくれ。」
「頼まれなくったって、アタシとあの子は、ず~っと親友よ!」
「ランファ~、タクトさ~ん!いつまで話してるんですかぁ?」
ミルフィーの呼び声が2人の耳に入る。
「戻りましょ、タクト!」
「ああ。」
お茶委の席に戻ると、ラークにも
「あんないい子を悲しませちゃダメだ。お前なら大丈夫だろうがな。」
って言われた。そんな誤
オリキャラ、アニメキャラ結構出してしまった回です。出し過ぎた、誰が誰だかわからなくなる・・・。自分自身かき分けきれないので彼らの大半はチョイ役や準レギュ未満です。
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07
『これより、第4方面軍所属第11戦隊は輸送隊より離脱、調査任務艦隊へ合流します。』
「了解した。補給作業が終わるころには編成表を改めて送るので待っていてもらいたい。」
『了解しました。』
通信が切れる。
「輸送艦接舷完了、これより積み込み作業を開始します。」
「今回の補給部隊。護衛にしては規模が大きいような。」
「無人艦隊の増加だ。追加の部隊もついて、軍も重視しているってことだな。なんにしても、味方が多い事はいいことだ。」
「俺にとっては、補給の間はゆっくりできるしね。」
「補給部隊への挨拶が済むまでは休みはなしだぞ。司令官のお前が行かなくて、どうするタクト。」
「だから、もっとまじめな顔をだな・・・・」
タクトとレスターは補給部隊への挨拶に格納庫まで顔を出す。
シャトルのドアが目の前で開き、中から幼くも凛々しい高貴なる雰囲気を漂わせた、少女が降りてきた。
若くして国を率いることになった、歴代でも最年少で即位した女皇。シヴァ・トランスバール女皇陛下である。
タクトが目録を見るのを後回しにしたために、かなり大慌てで対応することになってしまった。
ラーク達も慌てて連絡用シャトルで集まって出迎えたのであった。
『エルシオール』が騒然としたのは言うまではないが、驚くのはこれだけでは早い補給品の項目の中に、こういった1文があったのだから
────クロノブレイクキャノン 一門と
「うむ、出迎えご苦労。ひさしいな、タクト・マイヤーズ。息災だったか?」
「そうですね。まさかシヴァ女皇陛下がいらっしゃるとは思ってもいませんでしたよ。」
「そ、そうです。なぜ、こんなところまで?いらっしゃったので?」
「なぜも何も、ルフトからの土産を運んできたからに決まっておろうが。それに気がかりなこともある・・・・」
「それは、いったい・・・・。
」
タクトとレスターがシヴァ陛下と話しているので、侍女との事務的会話はラークとウォルコットで行うことにした。
「御無沙汰しております、マイヤーズ大佐、クールダラス少佐。それにウォルコット・O・ヒューイ准将、ラーク・メンソール中佐にも御高名はかねがね耳にしております。」
「ああ、そりゃどうも・・・・」「昔のことですよ。ほっほっほ。」
「こちらが補給品の追加リストですご確認ください。」
「確かに受け取った。では、中を改めさせてもらってと・・・って!?おい!!タクト!!レスター!!受領品の中にクロノブレイクキャノンがあるぞ!!」
ラークの叫びが響き、それにタクト、レスターが続く。
「な、なんだって!?」
「クロノ・ブレイク・キャノンーーーー!!?」
「ルフトと私が話し合って、そなたが一番欲している物を持ってきた。」
「このような、過分な御心遣い。感謝いたします。」
混乱する若い衆とは違い、ウォルコットは動揺を隠して応対する。
「いや、まさか、クロノドライブキャノンが来るとは・・・」
「シャトヤーン様の了承も頂いた。さっそく取り付け作業にかかると良い。」
「りょ、了解いたしました。すまん、ラークそっちからも作業員を回してもらえないか?」
「あ、あぁ。とりあえず10人程すぐに送る!後続もすぐに用意する。シヴァ陛下自分達はこれで・・・。ウォルコット准将いいですね。」
シヴァ陛下が小声でタクトに話しかける。
「そなたに話がある。二人だけで話せる場所はあるか?」
「でしたら、シヴァ女皇陛下が先の戦いのときにお使いの部屋が開いています。」
「では、すぐにお部屋のご用意をいたします。准将失礼します。」
「後のことはお任せください・・・。」
「ウォルコット准将?」
「マイヤーズ大佐、私はエンジェル隊の前任者ですぞ。その関係上エルシオールのこともある程度は把握していますのでご心配なく。」
「准将、お願いします。」
「はい、任されましたぞ。」
「よしなにたのむぞ。・・・ときにタクトよ。その女皇陛下と言う呼び方はよせ。形式ばった言い方は我らには不要ぞ。」
「では、シヴァ様とでもお呼びしましょうか?」
「それでよい。」
「では、参ろうか。マイヤーズ」
エルシオール内、謁見の間
「懐かしいな、ここにいたのが半年前とは思えぬ。もう何年も昔のことのようだ。」
「シヴァ様も、即位されたから、」ご苦労が多かったでしょう。」
「そうでもない。ルフトが、よく補佐してくれるので、私などはすることがなくて困る。」
「ルフト先生、いえ将軍は皇国に2人といない有能な方ですから。」
「そうだな。・・・・・・・でだ。今回、私自ら来た訳だが。」
シヴァ様は先ほどまでの懐かしむ顔をやめて女皇としての真面目な顔に変わる。
「先日、そなたがルフトに送ったメッセージの一節に『今、時を超え大いなる災いが再来した。白き月よ。今こそ有限と無限を結び、古より定められた使命を果たせ』・・・・と。」
「はい、それが警告を意味するものだと言うことはわかったのですが、その言葉の持つ意味まではつかめていません。」
「あれはな、マイヤーズ。とある詩の一説なのだ。」
「・・・・詩ですか?」
「白き月には代々聖母が受け継いできた伝承がある。」
『番人たる双子、楽園を囲み輪舞を踊る。漆黒は確か、されど有限。真白は不確か、されど無限。』
「有限と無限・・・それは、あのメッセージと同じ・・・・!」
「そう。そしてさらに、この後に続く一節が・・・・。『双子は断つ者。時を越えて災厄を断つ者』『双子は待つ者。時の果ての結びを待つ者』・・・・というものだ。」
「確かあのメッセージにも、「時を越えて災いが再来した」とありました。」
「間違いなく、あのメッセージは本物だ。しかも、発信者は白き月に深く関わりのあるものに間違いない。なにしろ、その伝承は白き月の聖母しか知らんのだからな。」
「ですが、シヴァ様。なぜ聖母だけしか知らないことをシヴァ様がご存じなのですか?」
「・・・・・・あの詩は・・・・・母上が、教えてくださったのだ。」
「母上・・・・・・?」
「我が母、シャトヤーン様から教わった。先代の皇王ジェラール・トランスバールが、ひそかにシャトヤーン様との間にもうけた子供・・・・・。それが私なのだ。」
「えっ!シャトヤーン様が、シヴァ様の・・・・・!?」
「驚くのも無理はない。私も最初は驚いた。だが、同時に嬉しかった。幼いころから、母は死んだ・・・・そう言い聞かされてきた。だが、母上は生きていた。私にとっては、それだけで、もう十分なのだ。」
「そうでしたか。」
皇王と月の聖母と言う立場では親子とは公表できるはずがなかったか・・・
「ですが、シヴァ様なぜ俺にその事を・・・?」
「私はトランスバール皇国の王であると同時に月の聖母の娘なのだ。そして、そなたは、クロノブレイクキャノンを搭載できるエルシオールと、皇国最強の戦力であるエンジェル隊
を率いる司令官。つまり、皇国に何かあったときには、私は皇王としても、白き月の代表としても、そなたを頼らなくれはいけない。だから、知っておいてほしかったのだ。それと、そなたを驚かせてみたかったと言うのもある。」
「はい・・・・・・?」
「そなたはいつも、しれっとした顔をしておるからな。うむ、いいものを見せてもらった。」
「は、はは・・・・。」
真面目だ顔で冗談みたいなことを絡めて来たシヴァにタクトも普段の様な飄々とした態度ではなくぎこちない笑いになって、自分のささやかなイタズラの成功を感じて軽く笑ったが、すぐに真面目な顔に戻り話を続ける。
「ともかく、私は『白き月』を動けぬ母上に変わって、事の次第を見届ける義務があるのだから、ここへ来たのだ。」
「・・・・と言うことは、クロノブレイクキャノンを使うような事態もあり得る、と・・・・そうお考えなのですか?」
「可能性はないとは言い切れない。白き月にも関わる話となれば、何らかのロストテクノロジーが絡んでいるかもしれないからな。」
「だからといって、シヴァ様が自ら来られなくても・・・・・・。」
「国のことは信頼できるものに任せている故、問題ない。エオニア動乱の後、各省庁で改革が進んでな風遠しが良くなっからな。・・・・・それとも、私が来て迷惑だったか?」
「とんでもない、俺もエンジェル隊も大歓迎ですよ。」
「そうか、それはよかった。では、さっそく艦内を見て回りたい。行くぞ、マイヤーズ。」
「はい、お供します。」
ティーラウンジではちょうどエンジェル隊がお茶をしているところだった。
タクトがエンジェル隊の皆に声を掛けて注目が集まるのだが、シヴァはさりげなくタクトの陰になる配置に移動して、エンジェル隊の皆を驚かすつもりらしい。年相応の少年のいたずら心からか、少女の茶目っ気から来るものなのか。彼女の行動に思わず笑みがこぼれそうになったタクトであるが彼女のイタズラ成功のために表情は変えないことにした。
「ちょうどよかった。タクトに聞きたいことが・・・・・・ってシヴァ女王陛下!?」
「じゃあ、やっぱり本当でしたのね。シヴァ陛下がいらしたと言う噂は。」
「でも、どうしてこちらにいらしたんですか?」
「ちょうど、タクトさんにお聞きしようと話していたところです。」
「おひさしぶりです~」
シヴァ陛下とエンジェル隊の面々は気兼ねなく会話を楽しんだ。ミルフィーなどは結構フランクな軽い感じであった。
「・・・・ん?そなたは、見かけぬ顔だが・・・・。」
シヴァ陛下の視線を受けたちとせはガチガチに固まって緊張していた。
「は、はい!このたびエンジェル隊に配属されました烏丸ちとせ少尉であります。」
「そんなに、かしこまらずともよい。皆と同じように振舞ってくれればよい。」
「いえ、ですが、その、あの・・・・!も、もったいないお言葉、恐縮です!で、ですが!シヴァ女皇陛下のお言葉とあらば、私、普通に・・・・しまっす!!・・・・・・・きゅう~」
ちとせが・・・ふつうに、倒れた。
「・・・・・マイヤーズ、あの烏丸とか言う隊員は、本当に大丈夫なのか?」
他のエンジェル隊メンバーに介抱されるちとせを見てシヴァ陛下は少し心配そうに小声でタクトにシヴァ陛下が尋ねる。「ふつうは、ああなりますよ」と言う言葉を飲み込んでタクトは答える。
「彼女はもう立派なエンジェル隊の仲間ですよ。」
間違いなく本心からの言葉であったし、ちとせもすぐに復活して会話に戻ってくる。
「いえ、私なんて、まだまだ未熟です。」
言葉こそ、弱めの言葉だがすでに緊張してガチガチしている様子はなく。普通に会話をしている。
「タクトさんの言う通りよ。ちとせのおかげで、助かってるもん。」
「タクトもアタシもアンタが大事な仲間だって思ってるわよ。」
ミルフィーやランファの言葉を聞いてシヴァは
「うむ、すでにお互いに信頼を置ける友になっているのだな。烏丸少尉、少々から買い過ぎた。エルシオールには烏丸少尉の様な反応をしてくれるものがおらなかったのでな。すまんな許せ。」
「もったいない、お言葉でございます!」
ちょっとしたハプニングはあったもののシヴァ陛下とみんなの再開は上手く言った様である。
「ミルフィーユ・桜庭はそなたを良く補佐しているようだな。」
「はい。いつも元気で明るくて、ミルフィーの笑顔を見ると疲れなんてどっかに行っちゃいますよ。」
「幸せそうだな。あの者の話をしている時の、そなたの顔はとても幸せそうだ。」
「い、いやまぁ、おかげさまで。あはは・・・・・。」
タクトに淡い恋心を抱いていた彼女はどこかで自分の入り込める余地が無いかを探していたが、そう言ったものが全くない事を理解して、我が儘なことと思いながらも少し寂しい気持ちになった。
「・・・・・・そなたが幸せなら、私もうれしい。」
シヴァ陛下が小声で小さくつぶやく。彼が幸せなのは自分も確かにうれしいのだが目の内にたまり始めた涙を見せるわけにもいかない。だから、気恥ずかしさと共に歩き出す。「こんな姿を見せるのはカッコ悪いし」と思いながら・・・
「はい?何か、おっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない。いくぞ、マイヤーズ。」
「ちょっと!早いですよ!どうしたんですか?シヴァ様!」
「なんでもない。・・・・なんでもないと言っておろうが!」
シヴァは自分の気持ちを胸にしまい込み、速足で歩きだす。自分の初恋が終わったことを理解しながら・・・・
おおよそ、原作通りの流れですが原作より若干援軍が多いです。
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