ファイアーエムブレム Echoes ~たった一人の竜騎士~ (ユキユキさん)
しおりを挟む

ー序章・アルムとセリカと俺ー
第1話 ~俺達の関係


俺の系譜を考えつつ、筆休め的にクロノを書き、懲りずに新作。

読者の皆さん、ごめんなさい。


ー???ー

 

やぁ皆さん、こんにちは。突然ではあるけれど、俺は転生者なわけです。神様っぽい人に選ばれ、よく分からぬままに特典は何がいいかを聞かれ、何処へ転生するのかを聞いた上で高望みせずに、

 

・クラスは竜騎士

 

・・・これだけを希望しました。すると神様っぽい人が俺を褒めまして、

 

・鍛えれば鍛える程に強くなる身体

 

・・・この特典をオマケでくれました。とても優しい神様?ですね、感謝です。

 

因みに転生場所は、ファイアーエムブレム外伝のリメイク版。リメイクがどんなものかは知らないけれど、外伝には無いクラスなので目立つことでしょう。・・・あ、俺ってば外伝の知識は多少・・・ありますよ?うろ覚えですが。まぁリメイク版みたいなんで、そのうろ覚え知識が役立つかは分かりませんが、・・・何とかなるでしょう。

 

そういう流れで転生したのですが、・・・リメイク版は色々と違うみたいです。この先俺はどんな道を辿るのでしょう?不安と期待でお腹一杯です。

 

『・・・・・・キ、・・・キ、・・・ユキ!!』

 

・・・ん~?誰かが俺を呼んでいますね。じゃあ、戻ることにしますか。名も知らぬ人よ、・・・さらば!

 

────────────

 

ーエフィー

 

「アルム、アルムー・・・!いないなぁ・・・、どこにいっちゃったの?」

 

私は今、幼馴染みのアルムを探しているの。でも、色々と探したんだけどいない・・・。何処に行っちゃったんだろう?

 

「なんだよ、エフィ。またアルムをおっかけてんのか?」

 

アルムを探す私に声を掛けてくる男の子、彼の名前はグレイ。同じく幼馴染み、・・・グレイなら知っているかなぁ?

 

「あ、グレイ!ねぇ、アルムを見なかった?どこにもいないの。」

 

私の問いに肩を竦めるだけ、・・・グレイも知らないかぁ。グレイってば、・・・役に立たないなぁ~。そんな私の視線を受けて、グレイはムッ!となるけどどうでもいいよね?・・・グレイだし。グレイよりもアルムだよ!そんな私に、

 

「アルムなら、探してもムダだよ。」

 

そう声を掛けてきたのは、やっぱり幼馴染みのクリフ。彼は聞き捨てならないことを言ってきた。

 

「さっき、セリカといっしょに森の方に行ったから。僕、見たもん。」

 

セリカと・・・、そう・・・・・・。アルムは、またセリカと一緒なんだ・・・。

 

「またセリカとかよ。セリカなんてこの間、村に来たばっかりなのにな。あーあ・・・友情なんて、ハカナイもんだぜ。」

 

グレイも唇を尖らせて不満顔だ、・・・グレイは友情よりもセリカとのって思っているのだろう。

 

「そ、そんなんじゃないわ。アルムとセリカはいとこ同士だもの。仲が良くて当たり前よ。」

 

私はグレイの思っていることを否定する、・・・ただのいとこ同士だと。でもクリフは、

 

「それは違うよ。アルムはマイセンさんの孫だけど、セリカは違うよ。どっかから引き取ったんだって母さんが言ってた。」

 

と言った。え・・・?アルムとセリカっていとこ同士じゃないの?・・・じゃあアルムはセリカと?

 

「お前の母ちゃん、そういう話好きだなぁ・・・。でも、そっか。セリカにもジジョーがあるんだな。ユキ兄と同じだ。」

 

・・・セリカとユキ兄はどうでもいいけど、・・・セリカは違う意味でどうでもよくないけど、

 

「・・・じゃあアルムは大きくなったら、セリカをお嫁さんにしちゃうのかな・・・・・・。」

 

そう思うと、何だか悲しくなって涙が零れる。

 

「お、おい!それはちょっと、ヒヤクしすぎじゃねぇの?」

 

グレイが私を見て慌てるけど、・・・涙が止まらなかった。

 

グレイとクリフが慰めてくれて涙が止まった時、

 

「あっ。いたいた!みんな!!」

 

村の入口の方から、幼馴染みのロビンが走ってきた。・・・どうでもいいけど、幼馴染みが多いよね。

 

「なんだよ、ロビン。どうしたんだ?」

 

「森のあたりに、お城から騎士が来てるんだって!なぁなぁ、見に行こうぜ!」

 

グレイの問いに、ロビンが興奮気味にそう言ってきた。・・・騎士様?

 

「えっ、騎士!?こんな田舎になんの用だ?・・・クリフ、エフィ!早く行こうぜ。騎士なんて、めったに見られないぞ。」

 

グレイにもその興奮が移り、そして私にも・・・。私はグレイとロビンの後を追う、騎士様を見る為に。

 

「あっ、待ってよ・・・!」

 

置いていかれそうになったクリフの慌てた声を背に、私達は村の外へと駆け出した。

 

────────────

 

ーユキー

 

「アルム、ユキさん。ねぇ、二人とも!こっちに来て!」

 

花畑の奥から、俺とアルムを呼ぶ声が。・・・まぁ声の主はセリカなんだけどね、とりあえず・・・、

 

「セリカは元気がいいねぇ~、お転婆ってヤツ?少しはエフィみたいに・・・、なっちゃダメだな。」

 

元気が良すぎるセリカに俺も疲れるわけで、エフィを思い浮かべるもヤンデレっぽいわけで、・・・更に疲れる。

 

「・・・もう疲れた、・・・帰ってもいいですかねぇ~。・・・かったるいわ、・・・じゃあそういうわけで。」

 

踵を返して帰ろうとするけど、

 

「帰っちゃダメだよユキ!・・・ここで帰ったら、セリカが大泣きするよ?後・・・、僕の身のことも考えて?」

 

弟分であるアルムが引き止めてくる、・・・そんな子犬のような目で見られたらなぁ~。

 

「・・・・・・面倒なことじゃなければいいけど。」

 

「・・・あははははは。」

 

渇いた笑いをするアルムを伴い、俺は嫌々ながらセリカの下へ。

 

 

 

 

 

・・・で、セリカの下へと行った俺の第一声は、

 

「・・・なぁに?セリカさんや。」

 

めっちゃ気の抜けた声の俺、やる気ナッシング。セリカは一瞬、ムッ!となったがすぐに笑顔になって、

 

「お花で冠をつくったの。ねぇ、かぶってみて。・・・アルムのもあるよ?」

 

ついで感ハンパないアルムは置いといて、・・・花冠をかぶれか。

 

「えっ?いやだけど。」

 

俺のモットーはストレート、当然のことながら拒否します。俺には似合わんよ、誰得?ってヤツですわ。そんな俺の拒否にアルムも同調するも、セリカはニコニコしながら、

 

「あら、どうして?きっと似合うわよ。アルムはどうだか分からないけど。」

 

さらりとアルムは似合わない、遠回しにそう言うセリカ。アルムが似合わないなら、なおのこと俺にはね・・・。

 

「男の俺が似合うとかって、無理がないかな?・・・ほら、俺は特に悪党顔なわけだし。」

 

そう、俺は所謂悪党顔。鋭い目付きがヤバいとよく言われます、それに頬の傷も一役買っている。そんなわけで気味が悪いだろ、・・・絶対!

 

「もう・・・そんなことないのに、ユキさんのいじわる。せっかくつくったのに・・・、この花冠・・・どうしようかな?」

 

セリカは可愛らしく腕を組んで考え出す。

 

そして・・・、

 

「そうだわ!おじい様のおみやげにしましょう。」

 

私、名案を思い付きました!と言わんばかりのドヤ顔だ。それに対して俺達は、

 

「「ええっ、じいちゃんに?」」

 

見事にハモるわけでして。戦慄する俺達とは違いセリカは、

 

「そうよ、きっと喜んでかぶってくれるわ。うふふ・・・・・・。」

 

大変嬉しそうである。・・・が、セリカにもきちんと想像してもらいたいものである。じいちゃん、・・・堅物であるマイセンさんが花冠をかぶる、・・・悪夢でしかない。・・・夢に出てきて魘されるまであるのは確実だ、絶対にやめてもらいたい。

 

「ふふっ・・・うふふふっ・・・・・・!」

 

というかセリカの奴、めっちゃ笑っとる。セリカなりに想像して、マイセンさんを笑い者にしているのだろう。可愛い顔してババンバン、・・・ってヤツだな!

 

そんなセリカを、何だかんだで優しく見守る俺ってばマジ兄貴分!

 

「・・・なぁに?ユキさん。私の顔をジッと見て。」

 

そんな俺の視線に気付いたセリカは、やや嬉しそうにそう言う。俺は・・・、

 

「いや、ただ・・・な。セリカがよく笑うようになって良かったなと思って。出会った当初は暗い顔で、ずーっと黙っていたしな。マイセンさんが仲良くしてやれって言っていたけど、・・・面倒だなぁ~と思ってたっけ。」

 

「いやユキ、それはないんじゃない?もうちょっとこう・・・、言い方ってあると思うんだ。」

 

面倒事はイヤなんですよ俺は、人に押し付けられる系のヤツはさ。セリカは俺のそんな発言に対して、

 

「・・・私が笑えるようになったのは、二人のおかげだよ。私がだまっていても、メンドくせぇ~って言いながらいつも話しかけてくれて。お花をつんできてくれたり、森に連れていってくれたり・・・。たくさん、たくさん優しくしてくれたから。」

 

昔を懐かしむように、とても優しい顔でそう言ってくる。それを聞いた俺は、ふーん・・・って感じ。アルムは、

 

「そ、そんな・・・。・・・おおげさだよ、・・・あははははは。」

 

アルムの奴、恥ずかしがっていやがる。・・・エフィに言い付けてやるからな、アルム。

 

「でも・・・それなのに、私・・・二人に酷いことばかり言ったわ。」

 

しゅん・・・とするセリカに俺は、

 

「ああ、あの『小汚い無礼者!』ってヤツだな?・・・あったなぁ~、そんなこと!そのお陰で一時期人間不信に・・・。」

 

・・・今となっては良い思い出ですね?・・・昔のセリカは今以上にお転婆で高飛車気味だったからな。

 

「ご、ごめんなさい・・・!歳上のユキさん、それに同じ年のお友達とあそぶなんてはじめてで・・・。どうすればいいか、分からなかったの。」

 

分からないから『小汚い無礼者!』はねぇべよ、転生後初めての大ダメージよ?・・・外伝のヒロインが口悪い少女だったとは・・・ってね。リメイク版恐るべし!

 

「ううん。僕は、おもしろい子だなぁって思ったよ。」

 

はいはい、とても良い子ですねアルム君は。俺は『クソガキャァ~・・・!』と思っていました。

 

「・・・ねぇ、二人とも。どうして二人は、そんなに私に優しくしてくれるの?」

 

「えっ?ど、どうしてって・・・。僕も、父さんも母さんも兄弟もいなくてさびしかったし、じいちゃんのいいつけで一度も村から出たことがないから、セリカにいろんな話を聞けて楽しかったし・・・。ええっと・・・それから・・・、それから・・・・・・。」

 

・・・セリカの純粋な疑問に、アルムは模範的な回答を。俺は・・・、

 

「・・・将来的に恩返しを期待してかなぁ。・・・セリカは将来、大物になりそうな予感。お礼をもらって楽に生きたいと思っている、ぐ~たら人生万歳・・・!」

 

最低な回答をする、大事なのは最終的に自分だぜ?そして楽に生きたいっていうのは、みんな等しく持っている・・・と信じている。そんな俺の答えに、アルムは半眼であきれ顔。反対にセリカは・・・、

 

「・・・将来的にどうなるかは分からないけど、・・・お礼というか私というか。・・・・・・うまくいけばぐ~たらな人生を。」

 

何か赤い顔でもごもごしている、入れ歯を無くした年寄りのマネ?

 

何か微妙な空気になったところでアルムが、

 

「・・・あっ!ほら、これ・・・仲良しのしるし!」

 

そう言って、左手の甲を見せてくる。そしてセリカも・・・、

 

「ああ、これね。アルムの左手と、私の右手、ユキさんの額・・・。」

 

右の手の平を見る。俺はバンダナで隠している額を触る、・・・仲良しのしるしか。アルムとセリカは、まぁ・・・分かるんだけど。・・・俺のコイツは知らない、突然変異ってヤツ?忌々しい、・・・コイツのせいでバンダナを巻いてさ、悪党率+20%装備だコノヤロー。

 

「うん!これがあるからさ。」

 

「ふふふ・・・でも、本当にふしぎね。どうして私達、同じようなあざがあるのかしら。」

 

二人して微笑ましく話していますがね、俺はイヤなんですよ。外伝とは違う知識が訴えてくるのです、額にバッテンが疼くんです、『我、顕現!』とか叫びたくなるんです!どこの金持ち一族だよ!

 

「きっと、特別なしるしなんだよ。僕達三人がずっと一緒で、ずっと仲良しっていう・・・。だから僕もユキも、これからもずっとそばにいてセリカを笑わせてあげるからね。」

 

「・・・いや俺はたぶん、世界を飛び回る旅人に・・・「アルム、ユキさん・・・!本当に?ずっと一緒?」・・・俺は約束出来・・・「うん、約束する。・・・セリカは?僕達と、ずっと一緒にいてくれる?」・・・おいコラ、お前達・・・「うん、もちろん!私も約束する。アルムと、そしてユキさんとずっと、ずっと・・・。」・・・何なのお前達、どんだけ言わせたくないの?流石のユキさんも、本腰を入れてだな・・・。」

 

この俺を邪険に扱う二人に、文句の一つを利子付きで返そうとしたのだが・・・、

 

「きゃあっ!!」

 

遠くから悲鳴が聞こえた為に、俺はソレをのみ込むハメになる。この声は・・・、

 

「今のは・・・、エフィの声だ!」

 

「何かあったのかしら・・・?」

 

「森の方からだ、・・・エフィが心配だ行ってみよう!!」

 

余程エフィが心配のようで、咄嗟にセリカの手を掴み走っていった。そんな二人の背を俺は見詰め・・・、

 

「・・・年長者として、俺がやらなきゃならんわな。じいちゃん、・・・マイセンさんが来るとも限らないし。・・・・・・潮時かね?・・・俺の存在はこの大陸で唯一、故に姿を見せたらこの村には居られない。・・・これもまた一つの道、守る為には仕方がないかな?さて、・・・相棒の下へと行きますか。」

 

そう呟き俺は、二人が走っていった方向とは逆に駆け出した。




うーむ、考え無しで書きました!


続きは・・・どうだろ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 ~エフィ達の危機

クリストミスさん、感想ありがとうございます!


ーエフィー

 

「や、やめて・・・。はなして・・・!」

 

どうしてこんなことに?私達は騎士様を見に来ただけなのに。どうして私は捕まっているの?

 

「へへっ、スレイダー様。こいつはツイていましたね。何もないシケた田舎かと思ったら、ガキがうろちょろしてやがる。・・・どうやら、この森の何処かに村がありそうですぜ。」

 

恐い顔で私を見る騎士様、その中でも一番偉いと思われる騎士様は私達を馬の上から見ているだけ。物語の騎士様達は、とても優しいのに・・・この人達は違うの?捕まっている私は勿論のこと、グレイ達も震えている。逃げたくても逃げられない、私が捕まっているから。・・・助けを求めに行くことが出来ない、・・・私達はどうなっちゃうの?

 

震える私達に騎士様が・・・、

 

「いいか?よく聞け、ガキ共。」

 

物凄く恐い顔で、とても大きな声で、

 

「この!栄えある国王リマ四世陛下にお仕えする、騎士たる我々が!お前達平民共の村で辺境任務の疲れを癒し、歓待を受けてやろうと言っているのだ。・・・これ以上の栄誉はあるまい?さぁ、さっさと案内しろ。」

 

最後には不気味な笑みで、・・・私達に命令をする。本当なら、とても嬉しいことなんだろうけど。・・・癒しじゃなくて、・・・とても酷いことをするんじゃないかと思う。・・・だって、癒しを求めるだけなら私を捕まえたりしないもん。もっと優しい感じがする筈だもん、・・・でもこの騎士様達は全然違うよ!

 

「それは・・・、その・・・。村に、勝手によその人を連れてきたら父ちゃん達に怒られるし・・・。」

 

騎士様の振るまいに恐がりつつも、ロビンは言葉を発するけど声は小さい。騎士様がギロリと睨むと、ロビンは顔を青くして黙りこんだ。

 

どうしよう・・・?このままじゃあ私達・・・と思った矢先、

 

「き、騎士様!」

 

グレイが一歩前に出てきて、恐がりながらも・・・、

 

「俺達の村は森の中の、ちっぽけなところです。騎士様に来ていただいても、満足してもらえるようなものはありません。だから・・・。」

 

一生懸命、村への案内を断ろうとするけど、

 

「おい、貴様。・・・お前に姉はいるか?」

 

騎士様がそんな質問をしてくる、・・・突然の質問に驚きつつもグレイは、

 

「・・・えっと、姉ちゃんはいますけど・・・。二人・・・。」

 

素直にそう答えると、騎士様は大きく顔を歪めて笑う。

 

「はーっはっはっは!素晴らしい!!・・・それと酒と、食い物くらいはあるのだろう?お前達の食事など、私にとってはブタの餌同然だが・・・。まぁこの際、我慢してやろう。」

 

・・・騎士様の様子を見て、自分が失言をしたということに気付いたんだろうグレイは、顔を歪めて悔しがる。・・・私にも分かってしまったもの、この騎士様達は私達の村を・・・!

 

私達も我慢していたけど、

 

「・・・うぅっ、・・・ぐすっ。うぇぇ・・・・・・。」

 

恐怖に負けて、クリフが泣き出してしまった。

 

「ば、ばか!泣くな、クリフ!!」

 

グレイも泣きそうだけど、まだ・・・頑張ろうとしている。ロビンも視線をさ迷わせながら、必死に考えようとしている。

 

「・・・こんな奴らを村に?・・・そんなのはイヤだ!・・・ちくしょう、王様の騎士がこんな連中だったなんて・・・。」

 

グレイは悔しがる、・・・そんなグレイの言葉を聞いた上で、

 

「・・・何をいつまでも揉めている。私は気が短いのだ。・・・案内したくないと言うのなら、それもよかろう。・・・お前達の首を一つずつ、斬り落とすまでだ。」

 

玩具を見るような目で、ニヤつきながらそう言ってきた。流石のグレイも・・・、

 

「えぇっ!?そんな・・・!」

 

目から涙が零れている、酷い・・・酷すぎるよ。

 

泣き出す私達の様子を騎士様達は、・・・ニヤつきながら眺めている。そして・・・、

 

「さぁ、小娘!まずはお前からだ。」

 

捕まっている私に目を付けた。私は顔を青ざめて・・・、

 

「い、いやっ・・・・・・!」

 

私はここで死んじゃうの?そんなの・・・イヤだよ・・・。ここで死んじゃうのもイヤだけど、・・・アルムに会えなくなるのはもっとイヤだよ・・・。視界が涙で遮られる、こんなことって・・・。もうダメだって思った時、

 

「やめろ!!」

 

聞き覚えのある声が聞こえた、この声は・・・私の大好きな・・・。

 

「ああん?何だ、またガキか。」

 

・・・アルム、・・・アルムの声だ!

 

「みんなから離れろ!お前なんか、僕達の村に一歩も入れたりしないぞ!」

 

・・・・・・アルム!!

 

────────────

 

ーアルムー

 

エフィの悲鳴がした方へ走ると、騎士に捕まっているエフィが!グレイ達も囲まれている!一体、何故こんなことになっているんだろうか?それよりも・・・!

 

「やめろ!!」

 

そう叫んで、騎士達の前へと出る。状況がよく分からないけど、コイツらは悪い奴らだ!

 

「みんなから離れろ!お前なんか、僕達の村に一歩も入れたりしないぞ!」

 

僕はそう叫んで、騎士達を力一杯睨み付けた。そんな僕に対し、

 

「何だと?口の聞き方を知らん奴だ。・・・ん?」

 

エフィに剣を向けていた騎士が、僕を見てそう凄むが・・・僕の陰にいるセリカに目を向けた。

 

「・・・・・・っ!」

 

セリカはその視線に身体を強張らせ、顔を伏せようとするも、

 

「おい、そっちのガキ。よく顔を見せてみろ。」

 

エフィに向けていた剣を鞘に戻し、馬から下りた騎士は手を伸ばして、僕の陰にいるセリカの顔を自分に向けさせる。

 

そして・・・、

 

「・・・間違いない、こいつは・・・!ふふん、何故こんな所にいるのか分からんが・・・、これはドゼー様に良い土産が出来たぞ。」

 

セリカの顔を確認した後、喜色を浮かべた顔で何かを呟く。そして、凶悪な笑みに変わり、

 

「さぁ、来い!」

 

そのままセリカを掴みあげたのだ!当然、そのようなことをされたセリカは、

 

「いやっ、離して・・・!」

 

騎士の腕の中でもがき、どうにかして逃れようとする。許せない!そう思った僕は、

 

「セリカに触るな!!」

 

じいちゃんとユキに教わっていた体術で、セリカを掴みあげた騎士の股間を蹴り上げる。背の低い僕にとってはいい的だ、突然の一撃に流石の騎士も、

 

「ぐぁっ・・・!何て・・・ことをするのだ貴様はぁっ・・・・・・!!」

 

セリカを手離し、目を剥いて股間を押さえる。・・・いい気味だ!他の騎士達もつられて、股間を押さえる。

 

「ア・・・アルム!お前、ヤバいって・・・!!」

 

セリカを助けることが出来た僕に、半泣きになっていたグレイが慌てて駆け寄ってきた。・・・グレイの言いたいことは分かる、でも・・・セリカを助ける為には仕方のないことなんだ!それにエフィ達もこの隙に、僕の所に集まっているし。

 

僕が急ぎ過ぎたせいでユキとははぐれた、ユキがいない今・・・僕が動かなくちゃいけないんだ!僕はみんなをまとめて逃げようとするが、

 

「くっ・・・おのれ、平民のガキが!この私に手をあげるとは・・・もう許さんぞ、死をもって償え!」

 

苦しんでいた騎士が立ち直り激昂する、剣を抜き放ち・・・一歩一歩・・・。他の騎士達も同じように・・・、

 

「・・・・・・っ!」

 

・・・クソッ!このまま打つ手なしなのか!・・・僕がしたことは怒らせるだけだったのか?でも・・・ああしなくちゃセリカが、・・・エフィ達だって、

 

「・・・っははははは!さぁ、祈るがいい!」

 

僕の前に来た騎士が、剣を振り上げて・・・、

 

「やめて!アルムーーーーッ!!」

 

僕はその瞬間、目を閉じたけど・・・、

 

キィン・・・ッ!!

 

甲高い音がしただけで衝撃はこない、・・・何故?おそるおそる目を開けてみると、

 

「え・・・・・・?ユ、ユキ?・・・じいちゃん!?」

 

騎士の剣を受け止めているユキ、エフィ達に迫っていた騎士達と対峙するじいちゃんがいた。

 

 

 

 

 

僕を殺そうとした騎士は狼狽える。

 

「な、何者だ・・・貴様は!それに・・・お前はマイセン・・・!?何故こんな所に・・・。」

 

ユキに受け止められていた剣を退き、騎士は何かに勘づいたようで・・・、

 

「・・・いや、なるほど。そういうことか。・・・・・・ちょうどいい。あの火事の夜以来だな、マイセン。」

 

したり顔でそう言い、流れるように馬へと騎乗する。

 

「お前には、借りを返したいと思っていたのだ。・・・私は律儀な男なのでね。」

 

そう言って剣から槍に持ち変え、今から襲い掛かろうと構える。その流れを見ていたユキが視線だけ向けて、

 

「・・・お前ら、この先の墓地まで走れ。・・・死にたくないのなら、・・・・・・走れ!!」

 

いつもとは違うユキの迫力に、僕達は顔を頷き合って・・・墓地へと駆け出した。




次回は、ユキの相棒登場!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 ~見とけよ?

葵柳さん、名前#任意の文字列さん、エコーズクリア記念さん、感想ありがとうございます!

ボチボチ更新、とりあえず思い付く限り!


ーユキー

 

アルム達が墓地の方へ走っていったのを確認した俺は、

 

「・・・マイセンさん、アルム達は墓地へと行った!」

 

そう、マイセンさんに叫んだ。マイセンさんはそれを聞いて頷く、後はコイツら・・・、

 

「ちぃっ、ガキ共は逃げたか!・・・まぁいい、お前達二人を殺してからゆっくりと探してくれる!」

 

・・・俺とマイセンさんを殺す?・・・なかなかに面白い冗談だ。数の有利に勝ちを確信しているようだが、子供に対しての態度を見るに個の力はそうでもないと見る。所謂威張り散らすだけの無能騎士、・・・相手にもならないが当初の作戦通りにやる。・・・こうなってしまった以上は、アルム達には戦いというものを、現実を知ってもらわなくてはな。

 

俺とマイセンさんは、襲いくる騎士達を捌きながら墓地へと誘導する。そして墓地の中へと入った時、何処かに隠れているであろうアルム達へと叫ぶ。

 

「・・・いいか、お前ら!今から俺とマイセンさんは戦い、アイツらを撃退する!・・・特にアルムとセリカ、お前達には色々と教えてきた。・・・深くは言わない、だが!その目に焼き付けろ、守る為とはいえ・・・これが戦いだ!そして、・・・今から見せる姿こそが俺なのだと!!」

 

俺はそう叫ぶと、

 

ピィィィィィィィィィッ!!

 

指笛を鳴らす。それを合図に上空から竜が舞い降りてくる、俺の相棒である黒竜イドゥンが。俺は颯爽とイドゥンに騎乗し、

 

「・・・・・・俺の大切な者達を傷付けようとするならば、容赦はせんぞ貴様ら!自分達の愚かさをその身に刻み込んでくれる!」

 

「ピュィィィィィィィィィッ!!」

 

俺の叫びとイドゥンの嘶きが辺りに響く。そして俺はイドゥンと共に空を舞い、騎士達へと襲い掛かった。やらせはしないんだよ、クソッタレ共め・・・!

 

────────────

 

ーセリカー

 

私の居る場所がバレてしまった、・・・どうしよう。それにエフィ達も危険な目に、これは私のせいではないと思うけどそれでも・・・。ただ分かっていることは、・・・もうここには居られないってことだけ。私が生きていることが知られてしまったからには、いずれ・・・私の命を奪う為に軍がラムの村へと・・・。そんなことになったら、村の人達が、アルム達が、そしてユキさんが・・・!みんなみんな、殺されてしまう!目の前が真っ白になってしまうのを何とか堪えて、私は・・・アルム達と逃げる。アルムが殺されかけた時にユキさんとおじい様が助けてくれて、その時に・・・、

 

「・・・お前ら、この先の墓地まで走れ。・・・死にたくないのなら、・・・・・・走れ!!」

 

ユキさんがそう叫んだから、私は・・・何とか堪えて走っている。

 

 

 

 

 

・・・息を切らせながらも、みんな無事に墓地へと辿り着いた。でもまだ、安心は出来ない。ユキさんとおじい様が戦ってくれているのだろうけど、多対二で・・・相手の方が数で勝っているのだから。でも、二人が負けるとは思わない。二人はとても強いから、あんな人達になんか・・・負ける筈がない。

 

今の私達に出来ることは一つだけ、二人の足手まといにならないようにすること。さっきはアルムのお陰で逃れることが出来たけど、次に捕まったら・・・最悪の事態になるであろうと予想がつく。私は自分達の為、ユキさんとおじい様の為に、

 

「みんな、疲れているだろうとは思うけど・・・隠れましょう!私達じゃあ、どうにも出来ないから・・・!」

 

そう、みんなに提案した。私の提案にアルムも、

 

「セリカの言う通りだ、悔しいけど・・・僕達は足手まとい。邪魔にならないようにするんだ!」

 

そう言って賛成してくれる。みんなも死にたくはないから、ブンブンと大きく頷いて隠れる為に散る。散る姿を確認した私も、大急ぎで近くにあった墓石の陰に隠れる。息を潜めて少し経つと、遠くから馬の蹄の音が・・・。その音を聞きながら、ユキさんとおじい様の無事を祈る。信じているけど、そうでもしないと私が、・・・堪えられないから。

 

私が祈っていると、遂に墓地へと戦いの場が移ったらしい。激しい音が辺りに響き、自然と身体が強張る。そんな中、ユキさんの叫びが耳に届く。

 

「・・・いいか、お前ら!今から俺とマイセンさんは戦い、アイツらを撃退する!・・・特にアルムとセリカ、お前達には色々と教えてきた。・・・深くは言わない、だが!その目に焼き付けろ、守る為とはいえ・・・これが戦いだ!そして、・・・今から見せる姿こそが俺なのだと!」

 

そして笛の音が響くと、大きく羽ばたく音が・・・。ペガサスとは違うその音の主を求め、空を見上げると・・・黒い竜が舞い降りてきた。

 

「・・・・・・っ!・・・竜!?」

 

私は驚いた、物語や伝説でしか聞いたことがない竜が、今・・・目の前に現れたのだから。私は隠れていたことを忘れ、身を乗り出して竜を見詰める。黒い竜・・・、威圧感があるけれど何処か優しい、そして何より美しいと思う。そんな竜が舞い降りた場にはユキさんが、・・・ユキさんが黒い竜に乗り、

 

「・・・・・・俺の大切な者達を傷付けようとするならば、容赦はせんぞ貴様ら!自分達の愚かさをその身に刻み込んでくれる!」

 

「ピュィィィィィィィィィッ!!」

 

ユキさんの叫びと竜の嘶き、空に舞う竜の姿に畏怖を覚え、それと同時に憧れを感じた。そんな竜と共にあるユキさんの姿、私は胸が高まった。その雄々しき姿に夢で見た騎士を重ね、・・・ただ熱く見詰めるだけ。

 

 

 

 

 

・・・戦いは圧倒的だった、私達に襲い掛かってきた騎士達は成す術もなく蹴散らされる。それは当然のことと言える、伝説の存在と思われていた竜が相手なのだから。馬は暴れ、騎士達も腰が引けて士気が下がっている。そんな彼らを一方的に蹴散らすユキさん、竜を巧みに操り致命傷を避けて戦う。並みの腕前ではないことが分かる、・・・凄い。

 

そんなユキさんに対し、おじい様も負けてはいない。同じように馬を巧みに操り見事な槍さばきで相手を薙ぎ払う。流石は王国一と称されるおじい様、相手の騎士との格の違いが分かる戦いぶりだ。

 

二人の戦う姿を見て、先程のユキさんの言葉を思い出す。私とアルムに見ろ・・・と、その目に焼き付けろと。・・・深くは言わないとも言っていた、そこにどんな気持ちが籠められているのだろうか?今の私にはよく分からないし、戦いは嫌い・・・ってことだけ。でも、ユキさんもおじい様も私達を守る為に戦っている。・・・守る為の戦い、・・・私にも分かる日が来るのだろうか?

 

────────────

 

ーユキー

 

「な、何なのだぁ・・・っ、貴様は!化け物を従えて・・・一体、何者なんだ!」

 

リーダー格の騎士が喚いていますがどうでもいいですね、俺は事務的にただ蹴散らすのみ。竜に、イドゥンに怯える騎士など相手にはならないからな。ただ一方的に戦うのみ、・・・虐殺じゃー!といきたいところではあるが、撃退すると言ったわけだし手加減せねば。それに色々と教えたわけだが、アルム達は実戦未経験。子供だから当たり前と言えるだろうが、良い機会ではあるからな。空気だけでも感じてもらいたい、リメイク版とはいえ外伝である。二人はいずれ・・・・・・、いや・・・やめよう。今はただ・・・俺の戦いを、マイセンさんの戦いを、アルム達に見せるのみ。見て学べ・・・、お子達よ・・・!

 

 

 

 

 

俺とイドゥンの急襲に、騎士達は・・・、

 

「「「「ひぃぃぃぃぃっ・・・!!」」」」

 

情けない声を上げて逃げ惑う、それを見逃さずに無力化させていくマイセンさんは流石である。俺も負けじと混乱中の騎士達へ突貫、槍で奴らの武器をぶっ飛ばし、その後に奴らを尻尾で薙ぎ払うイドゥン。手加減しているとはいえ竜の一撃、食らった奴らは堪ったものではないだろう。呻き声を上げて倒れていく、・・・巻き込まれた馬達よすまん。悲しいけどこれ、戦いなのよね。そんなわけで、俺は粛々と奴らを無力化させていく。

 

俺とマイセンさんの無双に、リーダー格の騎士が、

 

「な、何をしているのだ!相手はたかが二人、数では我々が勝っているのだぞ!・・・えぇい、逃げるなお前達!それでも栄えある・・・!!」

 

そんな風に部下達を怒鳴るわけだが、みんな・・・聞いていませんね?まぁ・・・そんなに言うのなら、見本という形で自分が前へ出ればいいのに。それもせずに後方からっていうのが小者、戦場を治めることの出来ない無能騎士ってことですな!そんな奴には此方から、・・・迫ってみるのも面白そうだ。

 

そして、逃げ惑う奴らを蹴散らしながら俺は、

 

「そう怒鳴り散らす程の元気があるのなら、お前が相手をしてくれよ。・・・マイセンさんに借りを返すのだろう?それに見合った実力、・・・当然あるのだろう?・・・なぁ、騎士様よぉ!」

 

その言葉と共に、リーダー格の目前まで迫った。俺が自分を標的に定めたと知ったリーダー格は、

 

「わ、私に槍を向けるということは、栄えある国王リマ四世陛下に向けるも同じ!い、今ならば許そう。それどころか、この私が取り成してやる故!悪い話では・・・「そのよく動く口を、・・・閉ざしてやろうか?」・・・ま、待ってくれぇぇぇぇぇっ!!?」

 

イラッときたので、面前に槍先を向けたのは仕方のないことだよね?少しでも馬鹿なことをやったり、言ったりしたら即死亡。無能でもそれぐらいは分かるよね?

 

まぁ一応、

 

「俺の言いたいことは分かるよな?・・・ん?」

 

笑みを浮かべてそう言うと、リーダー格は・・・、

 

「わ、私達の負けでございます!・・・撤退、撤退の許可を!」

 

とか言ってきたので俺は、

 

「・・・まぁいいだろう。・・・無力化した味方を回収してから退くといい、・・・馬鹿なマネはするなよ?」

 

と言い、この場から退くことを許す。リーダー格を含めた騎士達は、倒れている仲間を回収した後、慌ててこの場から退いていった。

 

 

 

 

 

・・・何とも情けないが、見事な退き様である。・・・今の脅威は退けたわけだが、追撃をしなくちゃならんわな。・・・呆気なかったが、アルム達にも戦いの空気というものが分かったであろうと思う。・・・後のことはマイセンさんに任せればいい、俺には俺のやるべきことを・・・ってね。




相棒登場もチョイとだけ。

名前が名前だけに、人型はアリなのか?マムクート的な?

妄想が止まらない!

因みに軽く、アカネイアに出張予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 ~さらば、お子達よ

フォーグルさん、クリストミスさん、架空摂理さん、感想ありがとうございます!


ボチボチ投稿!


ーアルムー

 

僕は見惚れてしまった、じいちゃんの戦いぶりを、ユキの戦いぶりを。・・・じいちゃんが強いのは分かっていた、僕の師匠でもあるから当然だ。ユキが強いのも分かっている、たまに稽古をつけてくれるから。あからさまに手抜きで、テキトーに教えてくるけど・・・強いってことは分かっていたんだ。

 

・・・でも、墓地で戦っている姿は稽古の時とは違う。獰猛な笑みを浮かべているユキが、普段のやる気がないユキとは似ても似つかないのだから。そして何より、ユキと共に戦う竜。伝説上の生物である竜と共にあるユキ、・・・一体ユキは何者なのだろうか?僕は勿論のこと、たぶんセリカも、エフィ達も知らない。ユキは、その竜は、どういう存在なのか?・・・じいちゃんは知っているのかな?

 

それと戦う前に叫んだユキの言葉、・・・目に焼き付けろ。・・・言われなくてもそのつもりだった、・・・僕はまだまだ弱い。命の危機に面した時、恐怖で身体が動かなかった。そしてユキに助けられた、・・・僕は自惚れていたのだ。それが分かったんだ、・・・僕は弱い。ユキの言う守る為の戦いをするにも強さが必要。そして何より、心を強くしていなければならない、それが何となく分かった。

 

・・・竜のことが凄く気になるけど、今は二人の戦いぶりを見なくちゃ。今の僕にはそれが必要なんだ、言葉では教えられない何かを感じること。この戦いで少しでもいいから学ぶんだ、そうしなくちゃ強くなれない。エフィを、セリカを、グレイ達を、村のみんなを守れない。守る為の力を僕は手に入れる、・・・今日この日から、この目の前の戦いを前に誓う!僕は・・・、強くなる!!

 

 

 

 

 

一方的な戦いの中、アイツらは逃げていった。ユキとじいちゃんが勝ったんだ、数をモノともしないで!

 

「やったぁ!ユキ兄とマイセンさんの勝ちだ!!」

 

グレイとロビンが飛び出してきて喜んでいる、ユキとじいちゃんも僕達の下へと戻ってくる。

 

「ユキ、じいちゃん。アイツら逃げていくよ!・・・やったね、ユキ、じいちゃん、セリカ!」

 

「「「・・・・・・・・・。」」」

 

僕はそう言って三人の反応を見たんだけど、・・・黙ったままだ。どうしたんだろう?嬉しくないのかな?グレイにロビン、クリフははしゃいでいるし、エフィも安堵の表情を浮かべて僕の隣にいる。セリカも無事だし、ユキとじいちゃんも無傷。とても喜ばしいことだと思うんだけど、どうかしたのかな?

 

「どうしたの?元気ないね。ユキとじいちゃんは、アイツらから僕達と村を守ったんだよ!・・・嬉しくないの?」

 

守る為の戦い、それに勝って守ることが出来たんだよ?どうしてそんな顔をしているの?

 

僕が怪訝な顔をしていると、

 

「違うの、アルム。そうじゃないの・・・。」

 

セリカが悲しそうな顔をして小さく呟く。セリカ・・・、どうしてそんな顔をするの?そう思っていると、

 

「アイツらに、ここに居ることを知られてしまったからには万が一を考えて、セリカはこの村を出てゆかねばならん。」

 

今まで黙っていたじいちゃんが、そんなことを言ってきた。

 

「・・・・・・えっ?ど、どうして?何でそうなるんだよ。・・・嘘だよね?セリカ。」

 

じいちゃんの言葉に動揺してしまう。聞こえていたんだろう、グレイ達も動きが止まり、エフィも僕の袖を掴んでくる。きっと浮かれている僕に、僕達を諌める為の嘘だよね?そんな望みを込めて、セリカに聞くも・・・、

 

「・・・・・・ごめんね、アルム。約束、守れなくてごめんなさい・・・。」

 

聞きたくない答えが返ってきた。

 

僕はセリカの答えを聞き、

 

「そんな・・・謝らないでよ、セリカ。まるで、本当に出ていくみたいじゃないか。」

 

僕は狼狽える、信じられないと。しかし・・・、

 

「さぁ、ぐずぐずしている暇はない。村へ戻り、支度を整えるのだ。セリカ。」

 

「はい、おじい様・・・。」

 

じいちゃんとセリカはそう言って、村へと戻ろうとする。そんなこと・・・!

 

「待ってよ!待ってったら!!ねぇ、じいちゃん。ちゃんと教えてよ!!何でセリカが村を出ていかなきゃいけないの!?・・・ユキ、ユキからも何か言ってよ!セリカが・・・、セリカが・・・!!」

 

さっきから何も言わないユキ、ユキなら・・・きっと!

 

でも・・・、

 

「そうか、セリカはこの村を出ていくのか。なら、丁度いいのかも知れない。」

 

そんなことを言う、・・・何を言っているのさユキ!セリカが出ていこうとしているんだよ?何でそう冷静に・・・、

 

「・・・俺もこの村から出ていこうと思う、今すぐに。」

 

ユキの発言に僕は固まる、グレイ達も目を見開く。セリカも振り返る、泣きそうな顔で・・・、

 

「えっ・・・?今、何て・・・?」

 

何が起きているの?セリカだけではなくユキも?何で・・・?

 

───────────

 

ーセリカー

 

とても悲しいけど、おじい様の言うように・・・私は村を出なくてはいけない。これ以上みんなを、村を危険な目には遭わせられないから。みんなとは会えなくなる、アルムと、・・・何よりユキさんと。それはとても悲しいこと、でも・・・このことはおじい様と決めていたことだから。もし見付かったら出ていくと、・・・決めていたから。

 

約束をしたけれど仕方がないことなんだ、・・・みんなと離れ離れになるのは。でも、私が村から出ていっても、みんなはここに居る。そう考えれば、我慢は出来る。遠く離れてしまっても、ラムの村を思い浮かべれば、そこにアルム達が、ユキさんが居ると思えば・・・。短い間だったけど、素敵な出会いがあった、大切な友達が出来た、大切な・・・想いを私に与えてくれた人がいた。その繋がりは消えないよね?・・・繋がり続けるよね?私達はこのラムの村を通して繋がっているよね?村を想えば、大切な人達が居る、私にとって・・・とても大切な場所。

 

おじい様に促されて、みんなに背を向ける。出ていく準備をしなくちゃ、そう思いおじい様に続こうとしたんだけど、

 

「・・・俺もこの村から出ていこうと思う、今すぐに。」

 

背中越しに聞こえた言葉に、私の心が凍りつく。・・・この村の思い出が、この村を思ってこそ・・・そこに居るであろう人の姿が、すがりたい姿・・・心に刻んだ情景からその人の姿が、消えてしまう。・・・ユキさんが、・・・消えてしまう。

 

何故かそう思い、何とも言えない感情の渦が心を乱す。何が何やら分からない、分からなくなっちゃうよ。・・・分からないまま、泣きそうな心のまま、私は振り返る。そして・・・、

 

「やらなくてはならないことが出来た、・・・この村を守る為に。まぁ、面倒ではあるんだがな。それに、お前達の目に映ることが全てだ。俺という存在を知られたからにはな、・・・留まることなど出来る筈がない。」

 

ユキさんはそう言った。

 

村を守る為に、目に映ること、ユキさんの存在・・・。ユキさんと共に、竜の姿が目に映る。そして先程、ユキさんは騎士達を退けた。・・・ユキさんは私と同じ?私が見付かったから?守る為に戦ったから?ユキさんの、竜の存在を知られたから?

 

・・・私、・・・私のせいだ。私のせいでユキさんが、・・・村から出ていかなくちゃいけなくなったんだ。私の目から涙が零れ、気付いた時にはユキさんの胸に飛び込んで泣いていた。泣きながら見上げてみれば、ユキさんはとても困った顔をしていた。

 

────────────

 

ーユキー

 

村を出ていく、俺はそう言った。あの騎士達を追い払ったはいいが、報復・・・それとセリカの命を狙って軍を差し向けるかもしれない。あのリーダー格、やりそうな気がするんだよね。今から追撃して、何かしらの手・・・釘を刺さねばならない。最後まできっちりやらんと、面倒だが守る為だ。

 

それと、俺の存在が知られたからには・・・、このことについても口止めというか釘を刺さないと。竜を操る騎士なんざ、アカネイアには居るけど、この大陸にはいないからな。まぁアカネイアの竜騎士とも違うがな、特に竜が。

 

・・・アルム達にも知られたな、そういえば。アルム達にも口止めしないとな、普通に口止めしても効果は無いと思うが。・・・普通に口止めをして村に留まっても、俺が近くに居る安心感からポロリ・・・っていう展開になりそう。そうなるとやっぱり、村を出るのが一番だよな。詳しい理由を言わずに出ていけば、自分達の行動のせいでは?と思い至って、罪悪感やら後悔やらで話すことは無いだろうと俺は読む。・・・まぁある意味、無言の圧力か脅迫か、褒められる行為ではないっていうのは確実だが、・・・しゃーなしと思うしかないよな。

 

そう考えての発言で、セリカが村を出るって状況に便乗するか、・・・っていう軽い気持ちで言ったんだけどね。何ていうか、アルムの呆然とした顔、グレイ達の悲しそうな顔、そして・・・俺の胸で泣くセリカに、俺の方が先に罪悪感を覚えましたよ、・・・俺はタイミングを盛大に間違えたらしい。・・・セリカのことだから、絶対に自分のせいだって思っているよね?この状況。

 

・・・さて、どうするか。そう考えたところで特に何も思いつかず、予定通り・・・詳しいことを言わずに強硬しましょう、許せ・・・お子達よ。

 

 

 

 

 

・・・実際、騎士達を追い払ってからそこそこ経つ。追撃せにゃならん俺には時間がない、だから俺は、

 

「このまま慰めてやりたいんだが、・・・セリカ。」

 

そう言ってセリカの肩を優しく押して、俺の胸から離す。そして・・・、

 

「仕方がないにしても俺達は、今日この日から違う道を歩む。だがなセリカ、別々の道を歩んだとしても、俺達の道は繋がっているんだぞ?お前が自分の足で、自分の意志で、しっかりと歩んでいけば、きっとその道は俺達に繋がる。」

 

そう言って頭を撫でるも、不安の色を消せずにいる、涙も止まらない。・・・どうすれば?と内心焦り、思い付く。お気に入りだけど仕方がない、物でどうにかしようとする俺マジでダメ男!とか思いつつも、常に装備をしていたこの首飾り、外してセリカに着けてあげる。

 

「・・・ほら、これをやるから泣き止め、・・・な?・・・俺の相棒であるイドゥンの鱗で作った首飾り、所謂御守りってヤツだ。そうだな・・・、約束の証って思えばいいんじゃないか?・・・再会の証。・・・ったく、泣き虫セリカにだけ特別だからな?」

 

これで泣き止んでくれよ?・・・ダメなら知らん、お手上げである。

 

・・・マジで時間がない故に、セリカからアルム達に向き直る。

 

「アルムにグレイ達、世話になったな!なかなかに楽しい生活だった、メンド~なことが多かったけどな!・・・セリカにも言ったが、お前達も自分の足でしっかりと歩めよ?そうすれば、また会うことも出来るだろう。」

 

アルム達にそう言いながらも、逃げるようにイドゥンへと騎乗する。アルム達にまで引っ付かれたら、・・・追撃が出来なくなるからな。

 

「本当ならこのまま別れて、これから先・・・再会することがないっていうのが一番なんだが。これは・・・神のみぞ知るってところになるだろうか?」

 

そう言って、イドゥンと共に空へと舞い上がり、

 

「俺の借り受けていた家にある物は、お前達が好きにしてくれればいい。セリカ、アルム、・・・まぁ頑張れよ?グレイ、ロビン、クリフ、エフィ、・・・壮健でな?・・・さらば、お子達よ!!」

 

とか言って、この場を名残惜しむことなく後にする俺でした。

 

 

 

 

 

セリカとアルム達には悪いと思っている、けれど時間がないってことも事実なわけで。特に泣いていたセリカには・・・な、気の利いた言葉の一つも言ってやれてないし。最終的には物で何かしようとかって、ダメダメっすね?俺。・・・気の利いた別れすらも、俺にはハードルが高いぜよ。お子達よ、自分達で何とか纏めてくれ。




因みにユキさんの容姿は、

幻想水滸伝2のルカ・ブライトにフリックみたいにバンダナ巻いて、頬に大きな傷が付いている姿を思い浮かべてください。


・・・かなりの悪党顔ですねw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 ~セリカとアルム、そして・・・

業○さん、名前#任意の文字列さん、感想ありがとうございます!

返信は後程!


ーセリカー

 

・・・ユキさんは行ってしまった、きちんとした別れの挨拶も出来ずに。ユキさんらしく、明るく・・・いつもの調子で飛び去っていったのだ。胸の中で泣く私を慰めようと言葉を掛けてくれたけど、私の涙は止まらなかった。止まらなかったけど、ユキさんの言いたいことは分かったつもり。私が前を向いてこの先を進んでいけば、いつかは再会出来るってことだよね?ユキさんはきっと、気の利いたことを言えなかったと、空の上で思っている筈だ。ユキさんはそう思っているとは思うけど、その言葉で私の不安は消えた。逆に希望が出てきたよ?私が私のやるべきことをやれば、きっと会うことが・・・巡り会うことが出来るって。

 

涙を拭ってユキさんの飛び去った方を見詰める、そして・・・首もとに感じる温もりを手で優しく握り締める。視線を空から戻しそれを見てみると、黒く輝く竜の鱗がキラリと光った。

 

「再会の証、・・・前を向いていけば道は繋がる。」

 

自分に言い聞かせるように呟く、・・・・・・うん!この出来事は私に対する試練なんだ、きっと乗り越えることが出来る。この先も同じように、色々な苦難が待っているかもしれない。それを乗り越えて成長をすれば、私はきっと大きな人間になれる。この御守りがあれば、きっと・・・・・・。

 

 

 

 

 

ユキさんのお陰で、私は何とか持ち直すことが出来た。何故か分からないけど、とても気分がいい。これも御守りの効果なのかな?心がぽかぽかして、とてもくすぐったい。・・・えへへ♪

 

────────────

 

ーアルムー

 

「・・・何それ?意味が分からないよ。一方的に別れを言って、守ったのに居なくなって、僕の進む道がどうのって!・・・僕、嫌だよ!ユキが居なくなって、セリカとまで離れ離れだなんて・・・!」

 

ユキが居なくなった理由、本当は分かっているんだ。・・・この村を守る為に必要なことで、ユキ自身も自分の身を考えた末のことだってことを。そして、僕の・・・、僕達の成長に必要なことなんだって。ユキが居たら甘えてしまう、ユキが居るから大丈夫だって。僕達のことを真剣に考えて、僕達の為に出ていったんだって。

 

分かっている、・・・分かっているんだけど嫌なんだ!ずっと、・・・ずっと一緒に居られると思っていたんだ。それなのに、ユキが・・・、そしてセリカまで・・・!どうして・・・、どうしてこうなるんだ!他に方法があったんじゃないか?出ていかなくてもいい方法があったんじゃないか?考えれば、きっと・・・・・・!

 

「いつまで聞き分けのないことを言っている!!ユキは村とお前を、お前達を思って立ち去った。セリカだって覚悟を決めているのだぞ?」

 

じいちゃんの言葉に何も言えない、・・・沈む気持ちのままセリカを見る。さっきまでの姿が嘘のように、僕を見て微笑んでいた。

 

・・・セリカは強いな、でも僕は・・・。セリカから視線を逸らそうとしたけど、セリカは微笑みながら僕に何かを差し出してきた。

 

「・・・アルム。これ、もらってくれる?」

 

差し出された物を見てみると、これは・・・・・・、

 

「・・・セリカがいつも着けている御守りじゃないか、これを僕に・・・?」

 

それはとても綺麗な御守り、・・・セリカの大切な物じゃないの?

 

「うん、アルムにあげる。私だと思って、大切にしてね。お母様にもらった物なの、覚えてはいないけど・・・。」

 

やっぱり大切な物じゃないか、そんな大切な物・・・もらえないよ。そんな僕の心をよそに、セリカは・・・、

 

「アルムに持っていてほしいの、きっとアルムを守ってくれるわ。・・・私には、ユキさんからもらった御守りがあるから。再会の証、・・・アルムには私からあげる。また会う日まで、お互いの道を力一杯歩みましょう?ユキさんも、きっとそう望んでいるわ。」

 

セリカはユキからもらった御守り?を、握り締めて微笑んでいる。

 

・・・御守り、再会の証。僕もセリカを真似て、もらった御守りを優しく握り締めてみる。・・・・・・どうしてだろう?こうしていると、心が温かくなる。さっきまでモヤモヤしていた心が、とても軽くなって・・・何とかなるって思ってくる。この別れは意味のある別れで、この先どうなるかは分からないけど、きっと巡り会えてそこから・・・。

 

・・・僕は立ち止まっちゃダメなんだ、あの時誓ったじゃないか!強くなるって!・・・じいちゃんの言う通りだ、僕には覚悟がなかったんだ。覚悟を決めて、笑顔でセリカを見送らなきゃ・・・!僕達は繋がっている、そしていつか・・・再会する。その時に胸を張って会えるよう、・・・僕は強くなる。ユキもセリカも驚くぐらい、大きな男になってみせる!・・・・・・うん、そうだ。これこそが僕の道、歩むべき道なんだね!

 

 

 

 

 

さっきまでの気持ちが嘘のようだ、自然と笑顔になる。僕の持ち直した姿に、セリカも嬉しそうだ。・・・僕達は笑う、・・・エフィ達はきょとん・・・としているけどね!・・・そして僕達は、

 

「・・・・・・元気でね、アルム。」

 

セリカが笑顔で別れを言う、僕は・・・、

 

「・・・セリカ!・・・うん、元気で!」

 

笑顔で別れを言えたと思う。

 

────────────

 

ーセリカー

 

「もういいのか?セリカ。」

 

おじい様が私に確認の声を掛けてきた、それに対し私は、

 

「・・・はい!ユキさんのお陰でアルムとは、笑顔で別れの挨拶が出来ました。だから、・・・大丈夫です!」

 

お互い、びっくりするぐらい明るく別れた私達。これもユキさんのお陰、ユキさんが勇気をくれたから。

 

「おじい様。私、次は何処へ行くのですか?」

 

それはいいとして、私が向かう場所って何処かしら?そう思っておじい様に聞いてみれば、

 

「・・・うむ、わしの古い知り合いに心当たりがある。そこなら、今度こそヤツらに見付かることもあるまい。すまぬな、セリカ・・・いや、姫様。ずっと、このマイセンがお傍でお守りするつもりだったが、それも叶わぬものとなってしまった。・・・しかし、わしはこの村を離れるわけにはいかぬのだ。」

 

おじい様・・・、マイセンが謝罪をしてきた。傍で守れないこと、村から離れられないことを。

 

別に気にしなくてもいい、私は素直にそう思う。逆に、私の大切な場所となったこの村を、マイセンが守り続けてくれる。これ程安心出来ることなどない、むしろお礼を言いたいぐらいだ。だから、

 

「謝らないでください、マイセン。私ね、この村でマイセンとユキさんとアルムと、一緒に暮らせてお友達もたくさん出来て、本当に楽しかった。だから・・・ねぇ、マイセン。これからも、おじい様って呼んでもいいでしょう?」

 

私がそう言うと、・・・今日初めてマイセンが笑みを浮かべて、

 

「セリカ・・・。ああ・・・、勿論だとも。」

 

噛み締めるようにそう言った。

 

 

 

 

 

さぁ、新天地へ行こう。そう思って歩みを進めようとした時、

 

「セリカーーーーッ!!」

 

遠くからアルムの声が。振り向くと、アルムが居て・・・、

 

「セリカ!!・・・セリカ、待ってて!僕、もっともっと大きくなって、強くなって・・・。そうしたら、必ずセリカに会いに行くよ!セリカがどこに居ても、絶対に見付けてみせるから。そしてその時、二人でユキに会いに行こう!二人で・・・、ユキを探しに行こう!だからセリカ、僕のこと忘れないで・・・!」

 

そう言って、手を振って見送ってくれた。アルム・・・・・・!

 

「分かったわ、アルム!私、待ってる!!アルムと会える日をずっと待ってるから・・・。だから・・・、さようなら・・・!」

 

私も大きく手を振って、改めてアルムと別れる。お互い、見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 

 

 

 

アルムが見えなくなってから、

 

「・・・・・・・・・ねぇ、おじい様。」

 

共に居るおじい様に聞いてみる。

 

「私とアルムは・・・いつか、また会えますよね?そして・・・、ユキさんともまた・・・。」

 

何だかんだでやっぱり、やっぱり少し不安だったから・・・。そんな私の問いに、

 

「ああ、会えるとも。それがお前達の運命ならば・・・。」

 

そう答えてくれた。

 

・・・・・・運命、私と・・・アルムの・・・、そして・・・ユキさんとの・・・。そういえばユキさん、最後に呟いていたな。『神のみぞ知る。』・・・って。

 

────────────

 

一方その頃・・・。

 

ーユキー

 

セリカ達と別れた俺はアイツらを追っかけたんだが、簡単に捕捉しました。逃げるヤツらの前に降りた時、・・・顔が面白かったな!・・・まぁ何だかんだで話しまして、その結果、

 

「き、貴様ら!私が死んだら六代先まで祟ってやるからな!・・・覚えておくといい!・・・・・・そういうわけなので、アイツらと私の為にも・・・お手柔らかに、お手柔らかに頼みますぞ!」

 

「「「「スレイダー様のことは忘れません!・・・お達者で!」」」」

 

俺は、スレイダーとかいうリーダー格を拉致ることにした。辺境任務で死亡ということにして、・・・一応のことを考えてドゼーだっけ?奴に土産として宝玉を渡すようにも言ったし、大丈夫だろう。スレイダーだっけ?・・・コイツは帰したらダメだと思うが、部下は俺にビビりまくりで大丈夫。イドゥンが岩を砕いたら、顔を青くして俺に頭を下げてきたんで。その後色々ありまして、スレイダーの拉致が決まったわけなのです。

 

最後にもう一度脅し・・・、釘を刺してから俺達は空へ。スレイダーは必死にしがみついている、・・・まぁ落ちたら死ぬしね。そんなスレイダーは、

 

「おおおお落ちたら死ぬ!・・・ユキ殿、・・・これからどうするのですかぁっ?一体私は何処へぇぇぇぇぇっ・・・!?」

 

スレイダーの顔が面白い!面白いが・・・この後か、うーむ・・・・・・。

 

うーんと考えて思い付いた、・・・アカネイアへ行こう!俺の外伝知識によると、このバレンシアにペガサス三姉妹が後に来る!・・・確か。ってなことは、近くにアカネイアがあるということでしょう。そうと決まれば全速前進!いざ、アカネイアへ!

 

凄い悲鳴を上げている奴がいるけど、俺は気にしない。




後で後書きを書きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ー第1章・暗黒竜と光の剣、そして俺ー
第1話 ~救出しちゃいました


昆布さん、さーくるぷりんとさん、勝手な白熊さん、名前#任意の文字列さん、感想ありがとうございます!


アカネイア編に入ります、どうなるかは謎。

時系列は気にしちゃいけない。


ーユキー

 

バレンシア大陸から飛び出した俺は、相棒と拉致ったスレイダーと共にアカネイア大陸へと来た。何もない海をイドゥン任せで飛んだ結果、

 

「「「「「ワァァァァァァァァァッ!!」」」」」

 

辺り一面、争乱中。・・・所謂戦争中ってことですな!そんな中を俺達は飛んでいるわけで、

 

「・・・スレイダーよ、どうしてこうなった。」

 

「私が聞きたいわぁっ!」

 

飛んでいるというか何というか、イドゥンの闘争本能に火が着き、

 

「・・・殺らなきゃ殺られるな、スレイダーよ。」

 

「・・・な、何なのだぁっ!この大陸はぁっ!!」

 

現在、二人と一頭で戦争に参加中です。因みに相手は、俺達に襲い掛かってきた竜の居る軍団なわけで・・・。

 

・・・・・・うーむ、前世の知識がちらりとよぎったんだが、俺達の相手ってばドルーアですかね?・・・竜、・・・火竜が居るし。・・・・・・暗黒戦争ですかね?この戦い。

 

 

 

 

 

 

イドゥンてば、何故にこんな戦場を最初の目的地としたんだ?俺的に何処かの街か村にて、一服してから大陸巡りと・・・そう思っていたんだがなぁ。バレンシアではあまり暴れることが出来ず、アカネイアに来る前はずっと海の上。・・・欲求不満ってヤツ?それとも同族嫌悪?まぁ理由はどうあれ、戦争介入ってわけだからな。しかも相手はドルーアに決まりでしょう、・・・マムクートが居たし、あの火竜は絶対にマムクートだ。

 

・・・ぶっちゃけ多勢に無勢、戦力差が激しいんですよね。イドゥンはまぁ、・・・そういう竜なんで大丈夫だと思う。俺も久々に本気を出して槍を振るっているし、スレイダーもとりあえずは頑張っている、・・・半泣きだけど。このまま戦っても、最終的に疲れて・・・ってなことになるだろう。故にある程度暴れてストレス解消した後、戦線離脱をするのが吉とみた!

 

・・・・・・・・・おぅ、イドゥンが火竜を殺りました。相手の軍が浮き足立ちましたな、・・・今がチャンスでしょう!イドゥン、そろそろ逃げようぜ!スレイダーも忘れずに回収だ!

 

 

 

 

 

 

スレイダーを回収し、イドゥンに騎乗。空から逃走を図るも、竜騎士と天馬騎士に襲われました。俺が竜騎士だからか、『裏切り者!』という言葉をぶつけられるが俺は気にしない。俺は相手の軍に属していないわけだから、その言葉は間違っているのだよ。最初から裏切っていないわけで、ただの通りすがりのはぐれ竜騎士だ。それに俺の竜はただの竜ではない、マムクー・・・お前達よりも上位である偉大な竜なのだよ!そういうこと故に、強行突破をさせてもらうぜ?

 

「・・・竜がたくさん、・・・私は物語の中に迷いこんだのかぁっ!?・・・夢なら早く覚めてくれぇぇぇぇぇっ!!」

 

スレイダー、叫ぶのはいいが・・・舌を噛むんじゃないぞ!

 

 

 

 

 

 

竜騎士に天馬騎士、あれがマケドニア軍ってとこか?天空を統べる者達とはいえ、この俺のイドゥンに勝てる筈がない。格が違うのだよ、格がな!そうだろう?イドゥン。逃げながらもイドゥンを撫で、イドゥンも嬉しそうに鳴く。スレイダーは、未だにブツブツ言っている。天馬騎士はともかく、バレンシアには竜騎士なんていないからな。彼には刺激が強かったんだろう、さっきは火竜も居たし。

 

マケドニア軍を蹴散らしながら空を飛んでいると、眼下には立派な城が。・・・この城はどの国所属か?そう考えようと思ったが、ドルーア連合に攻められているといえばアカネイア聖王国。じゃああちこちから煙が上がるこの場所は、・・・王都パレスってことだな?・・・何か城の近くで見たことがある、・・・記憶にある女性が一人居ますし。記憶違いでなければニーナ王女・・・だよな?護衛の兵も全滅しとるみたいだし、脱出失敗ってとこかね。うーん・・・、アカネイア聖王国の滅ぶ戦いに介入していた、そういうことですね?・・・・・・どうすべきだろうか?

 

俺が助けなかった場合、王女は敵に捕らえられる。他の王族は全て処刑されるも、彼女はグルニアのカミュに守り続けられるんだよな?その後はチョビヒゲのオレルアンだっけ?よく覚えてないけど、彼女の命は助かる筈だ。・・・筈なんだけど、本当にそうなのか?俺達の存在によって、その結末が変わってしまうってことはないだろうか?

 

・・・・・・よし!もうどうにでもなれってヤツだな!目の前でピンチになる人がいるのなら、助けてやらなきゃ気分が悪い。この先どうなろうと今更知ったことかよ!

 

・・・暗黒戦争に介入したからには仕方がないよな、暴れまくったわけだし。十中八九、指名手配になると思うし。だったら・・・彼女を助けて敵対してやろうではないか、ドルーア、マケドニア、グルニアの連合にな!

 

「・・・そういうわけでスレイダー、振り落とされるなよ!」

 

「どういうわけぇぇぇぇぇっ!?」

 

俺はイドゥンの手綱を巧みに操り、囲まれるニーナ王女らしき女性の下へと急降下をした。

 

───────────────

 

ーニーナー

 

アカネイア聖王国が、王都パレスが陥落するのも時間の問題。その状況下に父王から、『このままこの城に居たら処刑されてしまう、故に一か八か・・・護衛と共に脱出せよ。』、そういう命を・・・父として国として生きてほしいから、私にそのような命を・・・賭けに出られたのだ。そして父王は、父上は最後まで戦うつもりなのだろう。私は別れの挨拶をきちんと言えずに父上と別れた、母上達にも会えずに・・・。まだ泣くまい、泣くのは上手く脱出が出来た時。それか脱出が・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

敵の攻勢が思ったより激しかったようで、脱出の際・・・ほどなくして私達は敵兵に囲まれてしまった。護衛は奮戦し、私も魔導の心得がある故に応戦はしたのだが・・・、

 

「・・・これまでというわけですか。・・・父上の最後の賭けは、・・・不甲斐なき私をお許しください。敵の精強さの前に無力でした・・・。」

 

護衛は全滅し、私の魔力も底を尽き、私はここで殺されてしまうでしょう。・・・いえ、その前に私は凌辱される、それが戦場における常識。下劣な笑みを浮かべる敵兵を見れば、・・・嫌でも分かってしまう。・・・そう思うと、・・・我慢しようと思っていた涙が零れる。私はここで・・・、最低な最後を迎える・・・。

 

絶望に染まりかけた時・・・、

 

「生きる希望が残っているのなら、空へその手を上げるのだ!自らの手で、希望を掴み取れ!!」

 

・・・何処からか、そんな言葉が私の耳に入ってきた。・・・希望、・・・私には父上に託された想いがある。まだ、・・・諦めたくはない。私はすがるように、自身の手を空へと上げる。その時に、自然と視界も空へ・・・。そして目に映ったのは、黒き竜を操る竜騎士・・・。獰猛な笑みを浮かべる竜騎士が、私に向けて・・・、

 

「その希望・・・!この俺が掴み取ってやる!・・・さあ!!」

 

手を差し出すように伸ばしてきた。マケドニアの者?そう思ったのだが、それならば私に救いを与える筈がない。そう思い至って、差し出された手を握る。そのまま引き上げられた私は、獰猛な笑みを浮かべていた竜騎士の腕の中へ。私は自然と、その竜騎士にしがみついてしまう。救われた安堵の為か、それは分からないけれど、身体が熱くなる。そしてそのまま、竜騎士の腕の中で泣いてしまった。

 

────────────────

 

ーユキー

 

よし!ニーナ王女らしき女性の救出に成功だ!敵兵諸君、突然の来襲に固まっているな。戦場でそれは命取りだぜ?だがまぁ運がいい、本来なら刈り取る場面ではあるが、今は救出だけ故に見逃してやる。彼女が俺にしがみつくのを確認し、直ぐ様イドゥンに指示を。瞬く間に俺達は大空へ舞い上がり、この場を離脱する。・・・今頃奴ら、騒いでいるだろうな。

 

・・・さて、後は、

 

「マケドニア兵が俺を追撃してきたようだ、・・・愚かなことを。力の差が、まだ分からぬようだ。・・・先程と同じように蹴散らしてくれる!スレイダー、強行突破を再び仕掛ける。・・・落ちるなよ!」

 

「ちょっ、ぬぁぁぁぁぁっ!二度目ぇぇぇぇぇっ!?」

 

スレイダーの悲鳴をBGMに、救った彼女が落ちぬよう強く抱き、強行突破を開始する。当然のことながら成功し、・・・マケドニア兵を撒きましたとも。さて、撒いたはいいが休める場所を探さねばな。いくら俺達が強くとも、疲労は危険。それに彼女も休ませてあげたい、そして色々と聞きたいしな。後は大陸の情勢が気になるところ、とりあえず・・・大陸本土が戦乱中と考えて、・・・何処ぞの島にて休むとしよう。そういうことでイドゥン、何処ぞの島を目標に飛んでくれ。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・で、見知らぬ島へと到着。こちとら竜騎士なんで、ひっそりとした森の中へとね。ラムの村で鍛えた飛行テクニックが役に立った、問題なく森の中へ着地出来たさ。そこで俺達はイドゥンから降り、一息ついてから救出した彼女に色々と聞いてみた。

 

聞いてみて、やっぱり・・・と思ったのは俺だけだろう。やはり彼女はアカネイア聖王国の王女ニーナ、俺の知識という名の記憶に間違いはなかった。そして先程の戦いは、ドルーア帝国の侵攻によるもの。相手方にはマケドニアとグルニアも加わっており、抵抗してきたがものの見事に敗戦の連続。遂に王都パレスまで攻め込まれ、父王の賭けで王女は脱出を試みるも窮地に陥る。そこに俺が現れ彼女を救出、今に至ると。王女は出来る限り噛み砕いて、分かりやすくこれまでの顛末を話してくれた。・・・とても良い方ですね、うん。

 

彼女の知ることを聞いた後、改めて救出のお礼を言ってきた。せっかく言ってくれたのだから、素直に受け取ったぞ?こんな悪党顔の俺やスレイダーに、これ程丁寧にお礼をする王女はマジ女神!美人さん故に、俺はちょいと照れてしまったよ。逆に、スレイダーは苦虫を噛み潰したような顔をしとる。何故に?と思ったのだが、その発言により納得しました。

 

「・・・貴女の命はユキ殿が救ってくれたが、貴女以外の王族は全て・・・根絶やしでしょうな。そしてそこから暗黒の時が始まる、人々は蹂躙されるだろう。私もソフィアで・・・いや、・・・貴女はこれからどうするつもりか?我らにお聞かせ願いたい。」

 

起こりうることを言った上で、今後のことを彼女に問うスレイダー。・・・そういえばコイツ、ドゼーに従いソフィアを裏切り、王族を全て処刑したんだっけ?・・・セリカのことも知っていたし。アレに関わっていたからこそのあの顔か、今回のことと重なったんだな?・・・今回は逆の立場に属しているが。この俺に拉致られ、数日の間に俺の実力を知り、幾度も命の危機に陥った彼は、そのショックで多少の改心をした模様。流石の俺も驚いてしまったよ、・・・このままでいってほしいわな。まぁスレイダーのことはいいとして、彼の問いに彼女は何と答えるだろうか?・・・傷付いている彼女には酷なことだが、重要なことである。

 

・・・しばらくの沈黙の後、

 

「父王、・・・父上より使命を頂いています。そして・・・一族の者がどうなるのかも、・・・覚悟はしています。父上の最後の賭け、見事に成功し私は生きている。父上に託された使命はただ一つ、ドルーア帝国の打倒。まずはそれに向けて行動し、大陸解放を目指したいと。祖国復興は最後でいい、まずは人々に希望を、そして脅威を打ち破ることこそが私のやるべきこと、願いであると言わせていただきます。」

 

決意の表情で宣言し、彼女の言葉に笑みが零れる、スレイダーも感心した模様。

 

「自身の感情よりも、託された使命を語るか。消え行く祖国よりも人々を救う道、王女の決意・・・ユキ殿と私に伝わりました。・・・立派ですな、・・・・・・我らの王も彼女のように高潔であったなら・・・。」

 

最後の呟きは聞かなかったことにする。それ以外は俺も同じ、ニーナ王女は強いね。その強さに敬意を、そしてその命を救った者としてのけじめを。俺の道は決まった、寄り道もまた俺の道。・・・王女の辿る道に同道しますか!




急な展開で、ニーナ王女のカミュフラグをへし折る。

ちょいと無理があるだろうか?


スレイダー改心中、恐怖に負けた。

因みにスレイダー、主人公より譲り受けた竜の盾(イドゥン)を装備、タフネス!


悪党顔コンビ&ニーナはどうなるのか?

作者にも分からない!そして・・・新たな仲間は誰になるのか?

男装少女が有力か!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 ~王女に仕えます

昆布さん、勝手な白熊さん、ユウさん、感想ありがとうございます!


ボチボチ。


ーユキー

 

ニーナ王女の決意を聞き、俺は打倒ドルーアに協力することにした。スレイダーも多少の葛藤があったようだが、最終的には協力することにしたみたいだ。まぁ協力しなければ、見知らぬ大陸にて一人ぼっちになるからな。・・・選択肢が無かったというのが正しいか、共に行くというのなら・・・見捨てはしないから安心するといい。・・・俺とスレイダーは、こそこそとそんな感じで今後の方針を決めた。

 

・・・で、ニーナ王女は俺達にきちんと名乗ったのに俺達ときたら、・・・名乗っていなかったことに気付いた。俺達二人は、ニーナ王女の前にて片膝をつき、

 

「私の名はユキ、他大陸より来ました竜騎士です。王女を救い出会ったことは一つの縁、そして貴女の決意を聞きその心に感銘を受けました。我が武を貴女の為に振るいたい、そう思った次第にて・・・。ニーナ王女、我が剣を受け取ってもらいたい。」

 

「私の名はスレイダー、同じく他大陸より来訪した騎士であります。貴女の高潔さに心打たれました、以前の私を殺す為に貴女の下で働きたい。我が剣を貴女の為に。」

 

それぞれニーナ王女に礼を尽くす。頭を垂れている為その表情は分からないが、雰囲気からして驚いているっぽい。まぁ他大陸の悪党顔が、『配下にしてください!』と言っているのだから当たり前だろう。・・・さて王女様、この返答は如何に?

 

──────────────────

 

ーニーナー

 

私が大陸の情勢を分かりやすく教え、その後改めて救出の礼を言った。私を救ってくれた方は口元を緩めて微笑を返してくれたが、連れの方は何やら複雑そうであった。どうしたのだろうか?私はそう疑問に思ったのだが、彼の言葉を聞いてその表情の意味を知った。・・・アカネイア聖王国の末路、そして大陸の未来について。それを語った後に、『貴女はどうするのか?』と問い掛けてきた。その言葉に私は口を閉じ、自身の心に問い掛けた。

 

その結果、私は自身の心より託された使命を、大陸と人々を救うことを決め、努めて冷静にお二人へと答えた。私の答えを聞いたお二人は、互いに顔を見合わせ幾つかの言葉を交わした後に、私に向けて剣を差し出してきた。私はお二人の行動に驚く、名と共に他大陸出身と語ったその口で、私の力になると・・・そう言われたのだから。滅び行く国の王女に、使命しか持ち合わせていない元王女に、力無きただの女に剣を捧げるというのだ。そんなお二人の気持ちに涙する、無関係であるお二人が私に・・・。

 

これから先、打倒ドルーアに向けて行動をしなければならない。その道はきっと長く険しく、苦難の連続だと安易に想像が出来る。私一人に何が出来るかと考え始めた矢先の申し出に、嬉しさと共にお二人を巻き込んでもいいのか?そういう気持ちの葛藤が心の中で起こる。しかし私一人では実現出来ぬ現状に、ありがたくその剣を受け取ることに決めた。私は、

 

「お二人の剣、ありがたく受け取らせていただきます。大きな使命を持ちながらも、何もない私はお二人の手にすがる他・・・道がありません。これから先、お二人には多大な苦労を掛けるでしょう。今は頼りない私ですが、それでも私と共に歩んでくれますか?」

 

そう涙しながら・・・お二人に言った。お二人は声を揃え・・・、

 

「「我ら二名、王女と共に歩むと誓いましょう!」」

 

・・・そう、返してくれた。不甲斐なくも私は、溢れる涙を止められない。本当に・・・、私は情けない・・・。

 

──────────────────

 

ーユキー

 

・・・王女の言葉を待っていると、王女に向けていた剣が手から離れる。そして、王女からの言葉に俺達は誓いの言葉を言った。剣を再び王女の手から渡され頭を上げてみれば、・・・王女が泣いているではないか。何故に涙するのかは分からない、分からないが・・・俺達の最初の任務は、王女を宥めることに決まりだな。

 

王女を落ち着かせた後、これからどう動くかを考える。考えると言っても、まずは大陸の現状・・・情勢を知る必要がある。王女から聞いた情勢は、侵攻中盤付近までのもの。アカネイアが王都まで侵攻され始めた時点で、同盟国や友好国がどうなったのかは王女も知らないと言う。故に、それらの国の情勢を中心に調べなければならない。まぁこれについては俺がやるべきであろう、空を飛ぶ竜騎士なのだから。目立ちはするが、やりようはあるのさ。何ていったって、イドゥンは・・・。

 

情報収集はそれでいくとして、身を潜める場所はどうするか?という話になったのだが、俺的に此処でいいのでは?と思った。戦時中の今、人の集まる場所は危険と言える。特に王女のオーラがハンパない、一発でバレること間違いなしだ。故に人里離れたこの場所がいいと考える、島に降り立つ際・・・水場が近くにあることを確認済みであるし。食事に関しても肉に魚、野菜に果物、乳製品の他に酒もある。ラムの村に居た時、秘密の場所にて集めまくった物を袋に沢山詰めておいたのだ。この袋が凄い物で、どんなに物を詰め込んでも溢れることがないのだ。たぶんだが、神様の贈り物であると思う。・・・しかしながら、武器・防具の類いが一つしか入らないのが欠点と言える。食料は大丈夫なんだけどね、・・・本当に不思議な袋だ。

 

王女とスレイダーとはこれから先、一蓮托生の間柄となるのだからこのことを教えた。二人は驚いていたがこれならば、ここをとりあえずの拠点にしようっていうのに賛成してくれた。因みに、他言無用ということを二人に言っておいた。勿論、言わないことを約束してくれたよ。後、この袋の名は『ミラの無限袋』という。この名でこの効果、流石である。この名についての二人の反応は、

 

「大地母神ミラ様からの・・・!?ならば納得である、・・・ユキ殿であれば悪用することもない。」

 

スレイダーはミラの名に驚きつつも、俺が持つことに納得。出会いは最悪なれど、今は信頼関係がしっかりとしている。濁っていた目もキリッ!としているし、そんなスレイダーにびっくりだよ。

 

「貴方達の故郷にて信仰を集める女神の名でしたか?偉大な女神の遺物を持つ、・・・ユキは女神に愛されているのですね?」

 

王女にミラのことを教えた後、そう言われました。俺が女神に愛されている、・・・違うなきっと。俺を転生させた神が、都合上にて付けた名であるに違いない。そのお陰で説明が楽である、気遣いの出来る神様・・・マジリスペクト!

 

そんなわけで、まずは寝泊まりが出来る小屋を作りたいと思う。当然、王女とは部屋を分けますが。さて、斧を取り出して大工の真似事でもしますか。ラムの村で学んだDIYが輝く瞬間だ、助手はスレイダー。王女に野宿をさせるわけにはいかぬからな、気合を入れろよ!

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・そして幾日も経った、俺達は一体・・・何をやっているのか?たまにそう思う。王女に不自由がないようにと、最初は簡易的な小屋を。これでは駄目だということで、改修を重ねて別荘的なコテージに。その結果、何だか貴族の避暑地的になってしまった。食事に関しては俺がいる為に問題がなく、湯浴みも王女の魔法がある為に問題ない。・・・安定感がハンパない、元からこの地に住んでいるのでは?と思うぐらいである。まぁそんな感じで過ごしていても、俺はきちんとやることやってますよ?大陸の情勢をしっかりと調べている、そこの辺りは抜かりないのだ。

 

俺の調査によると、王女を救出して幾日・・・大陸の情勢は、最悪と言ってもいいだろう。アカネイア聖王国は滅亡し、王族全てが処刑されている。予想は出来ていたとはいえ、その事実に王女はとても悲しんだ。

 

そして、アリティア王国も滅亡が時間の問題であるという事実に、王女は項垂れた。精強なるアリティア軍は、メニディ川にてグルニアのカミュと対峙。両軍入り乱れての乱戦に一進一退の攻防を演じていたが、同盟国であった筈のグラが裏切り背後を突かれ挟撃される。この戦いでアリティア軍は全滅、軍を率いていたコーネリアス王は戦死。そのままの勢いでグラがアリティア王国に侵攻を開始、アリティア王国は僅かな兵にて抵抗をしている模様。

 

オレルアン王国はハーディン率いる狼騎士団が奮戦するも、マケドニアに大半の国土を奪われてしまっている。だが諦めることなく、今も抵抗を続けている。

 

カダインはガーネフに支配されており、ドルーアに与しているようで味方ではない。他の小国や各地域も、この混乱にて賊達が台頭しており危機的状況にある。

 

 

 

 

 

 

大陸の危機的状況に俺達はまだ、何も出来ていない。出来なくて当然だ、俺達は三人と一頭しかいないのだから。打倒ドルーアを掲げているとはいえ、動けずにいる。同胞と呼べる者達が戦っている中、俺達はこのまま機を窺うだけでいいのか?答えは否!と俺は言いたい。

 

王女はいずれ、アカネイア解放の檄を飛ばさなくてはならない。立ち上がることもせずに隠れているだけの王女の檄に、誰が従ってくれるというのか?最悪、見捨てられる・・・という結末もあり得る。小さな狼煙でもいい、上げなくては打倒ドルーアなど夢のまた夢。セリカやアルム達に失望されてしまう、・・・情けないと。故に俺は進言する。反抗の機を自らの手で作り出す為に、滅び行くアリティアに救いの手を!・・・と。

 

俺は王女に言った。

 

「全てを救うこと等出来はしないのは分かっています、ですが・・・アリティアの者を救おうとした事実は我らには必要です。少なくとも、アリティアの王族だけでも救ってみせましょう。さすれば彼らは我らに感謝をし、檄を飛ばした時に立ち上がってくれる筈。今の情勢ではアカネイアの威光だけではなく、情も必要と考えます。」

 

王女は目を閉じて聞いている、・・・考えているのであろう。俺はその後押しをする。

 

「この私にお任せください。必ずやこの任を成功させ、ニーナ様のご健在という報を大陸に知らしめてみせます。その希望が、人々の光となることを信じて・・・!」

 

たとえ潜伏している身とはいえ、存命を知らせることは重要と考える。いずれ立ち上がってくれる、そう思ってくれたのなら各地の反ドルーア勢力は頑張ってくれるだろう。逆に、命を狙われるというデメリットもあるが、目指すは打倒ドルーア。そして大陸解放を掲げるのなら、それは覚悟の上。王女も分かっている筈だ、今のままでは駄目だと。

 

・・・長い沈黙の後、

 

「・・・分かりました、アリティアへ向かうことを許可します。アリティアのコーネリアス王には恩義があります、ですので・・・リーザ王妃、エリス王女、マルス王子を出来る限り救ってください。」

 

その言葉に疑問がある、何故・・・、

 

「ニーナ様、何故・・・必ず救えと命じられないのか?私の力を信じては下さらないのですか?」

 

何故・・・そう言わないのか?俺とイドゥンの力を持ってすれば、助け出すことが可能であると言い切れる。俺が行った時に陥落していない、その前提が必要ではあるが。俺の疑問に王女は、

 

「貴方には無理をしてほしくないからです、・・・貴方が思っている以上に貴方は想われているのです。もし・・・救う為に無理をして怪我、もしくは戦死ということになったのなら、悲しむ者がいると知りなさい。・・・分かりましたね、・・・ユキ。」

 

・・・言われて初めて気付く、俺が無理をしてそのようなことになれば悲しむ者がいる・・・か。脳裏にセリカやアルム達が思い浮かぶ、イドゥンにスレイダー・・・もか?分からんけども、王女も悲しんでくれるだろうな。・・・そう考えると、王女の言葉に納得は出来る。出来るのだが、

 

「ニーナ様の優しさは嬉しく思います、・・・ですが!無理をせずして打倒ドルーアは叶わない。故にそのお三方は必ず救い出してみせます。ニーナ様、どうか私を信じてください。このユキ、必ずや・・・貴女の下へ生きて戻ると!」

 

力強くそう宣言するも、王女の顔から心配の色は消えなかった・・・。




ニーナ王女のオーラに、ユキは敬語になっております。心の言葉は普段通りですが・・・。


現時点でニーナ王女の味方は、ユキとスレイダーのみです。


ユキのいう秘密の場所は、所謂ダウンロードダンジョンのことです。星の神殿にでも行っていたんでしょう。


異世界転生モノでありがちな袋の登場、島を少しだけ開拓する三人。話が変わらないか心配である。

・・・で、アリティアへ。

次の話は所謂原作での序章、起・承・転・結辺りかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 ~アリティア脱出《前編》

名前#任意の文字列さん、クリストミスさん、感想ありがとうございます!


舞台は原作の起・承・転・結のところです。


ーユキー

 

最後まで王女は俺のことを心配してくれたが、俺の考えは変わらずにアリティア王族を救うことを第一に行動しようと思う。王女のことをスレイダーに頼み、俺はイドゥンと共に島を発つ。飛び立つ際に見た王女の顔が忘れられない、・・・俺に死ぬ気はない。だが多少の無理はする、王女・・・俺は約束を守りますよ。生きて貴女の下へと戻ります、・・・アリティア王族を連れてね。・・・俺を含めて四人になるが、イドゥンに乗ることが出来るよな?そこが一番の心配だったり。

 

 

 

 

 

 

情報収集時に調べておいたルート、海上ギリギリを飛んでアリティア国内に侵入してみれば、多くの兵がアリティア城へ向けて進軍している。・・・グラ軍だよな?これ程の兵数を揃えて進軍している軍隊は。ということはアリティアは最早、風前の灯という状況ではないか!少数精鋭といっても、数の前には無力。グラは本気でアリティアを滅亡させる気だな?・・・これは不味いぞ、悠長に構えている暇はない。

 

俺は見付からぬように海上を飛んでいた、イドゥンの実力で音も無く。しかしこの状況下で隠密行動をしていては、辿り着いた時には手遅れとなろう。すまないなイドゥン、これまでの苦労を無にする俺を許してくれ。そんな俺の気持ちにイドゥンは、気にするなと言わんばかりに大きく嘶く。そのまま最大速度で海上を滑るように飛び、目の前にそびえる崖に沿って急上昇。一気に空へと舞い上がる、・・・グラ兵の驚く顔が目に入った。突如として現れた俺達に驚いたのだろうが命取りだな、目標を眼下のグラ軍と見定めて急襲するのみ!

 

勢いのままに急襲した俺達は、グラ兵を薙ぎ払って混乱させる。ある程度の打撃を与えた後、アリティア城へ急行した。この行いにより、アリティア城へ向かうグラ軍の行軍速度が落ちればいいのだが・・・。そう思いながらアリティア城を目指す、グラ軍に打撃を与えながら・・・。

 

──────────────────

 

ーマルスー

 

僕は姉であるエリスの言葉に従い、臣下であるアベルとフレイを伴い城を脱出する。途中、ジェイガンとカインの二人とも合流を果たした。しかし少数である僕達とは違って、対するグラ軍の包囲陣が厚い。多くのグラ兵が僕達に襲い掛かり、徐々に追い詰められてしまう。

 

母上と姉上、二人を犠牲にしてまで脱出したというのに、僕はこのまま終わってしまうのか?裏切り者のグラによって、何も出来ないまま討たれてしまうのか?そんな想いが僕の中を駆け巡る。そんな僕の心情を読み取ったのか、

 

「弱気はいけませんぞ、王子!強く心を保つのです、諦めなければきっと・・・道が拓ける、そう信じて前へと進むのです!城に残られたお二人の想いを、無駄にしてはなりませぬ!」

 

ジェイガンが僕にそう言って、活を入れてくれる。・・・その通りだ、僕は生きなければならない。母上と姉上は、僕を決死の覚悟で脱出させてくれたのだから。

 

僕は弱気になっていた心を奮い立たせて突き進む、このアリティアから脱出する為に。祖国を捨てることになるけれど、それでも僕は生きなければならないんだ。生きてさえいれば、この屈辱はきっと返すことが出来る、母上と姉上を救うことが出来る、・・・父上の仇が討てる、・・・そう信じて!

 

 

 

 

 

 

僕はみんなと協力し、グラの包囲を突破する為に戦うがやはり敵の数が多い。はっきり言って旗色が悪い中、臣下の一人であるフレイが、

 

「マルス様、ここは私が囮となり敵兵を引き付けます。その隙に、その隙に皆を率いて離脱を・・・!」

 

決意をある表情で進言してくる、・・・何てことを!

 

「フレイを囮にだって!?そんなこと、・・・僕に出来る筈がないだろう!誰一人欠けることなくこの包囲を突破し、共にこのアリティアを脱出するんだ!」

 

僕は直ぐ様フレイの言葉を否定する。しかし、フレイも頑なで食い下がってくる。

 

・・・フレイの言うことも分かる、この状況を打破する為には誰かが囮になる、今の僕達にはそれが最善の一手だろう。しかし、それは囮役の死を意味する。多くの敵兵が展開しているこの状況下で、囮となり飛び出してしまったら・・・確実に・・・。そんなこと・・・、僕が臣下に死んでこいと言える筈がない!僕はみんなと共に脱出すると決めたんだ、一人を犠牲になんて・・・!他に何か、何かある筈だ・・・!

 

そんな僕の想いが通じたのか、僕達を包囲している敵方が何かに慌てだし、包囲に乱れが出てきた。僕はそれを見逃さず、みんなに命じる。

 

「敵の包囲に乱れが出た今が好機!一点突破を仕掛ける、誰一人遅れることなく突き進むんだ!」

 

乱れの理由は分からないが、この機を逃すわけにはいかない。包囲を突破してみせる、絶対に!

 

ジェイガンを先頭に、その包囲を食い破る勢いで突撃を!決死の覚悟で臨もうとした時、

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」

 

敵兵の混乱が更に深まった、一体・・・何が?そう思った時にアベルが、

 

「マルス様、あちらを・・・!」

 

アベルが指差す方へ視線を向ければ、敵兵に襲い掛かっている一人の竜騎士が。その竜騎士は、突撃と離脱を繰り返しながら敵の包囲を乱していく。・・・凄い、僕にはその言葉しか思い浮かばない。

 

「突撃と離脱を繰り返すことにより、弓兵に狙われずらい状況を作っている。それと同時に歩兵をかき乱し、弓兵にそれさえもさせないように立ち回っている。一騎当千の竜騎士とでも言いましょうか・・・。」

 

厳しいジェイガンですら感嘆の声を上げる程、一体・・・何者なんだ。

 

その竜騎士の来襲により、

 

「・・・おのれ!・・・退け、退くのだ!・・・新手が現れたと、ジオル様への一報も忘れるな!」

 

部隊長らしき者がそう叫び、混乱する兵を纏め上げて退いていった。決死の覚悟が無駄になったけど、助かったことは事実。態勢を整えることが出来る、僕は安堵の息を吐いた。そんな僕達の前に件の竜騎士が舞い降りてきた。大きな黒竜に騎乗する目付きの鋭い男、頬に刻まれた傷が彼の凄みを高めている。その圧倒的存在感は、今は亡き父上を感じさせる程である。そんな彼が、僕の顔をジッと見詰めてくる。その視線を受けた僕は、無意識の内に息を飲んだ。

 

そして・・・、

 

「騎乗したままで無作法ではありますが・・・、貴方はアリティア王家のマルス王子ではありませんか?」

 

そう問い掛けてきた、彼は僕を知っているのか?彼の問いに、ジェイガンを含めたみんなが一瞬身構えるも、

 

「お初お目にかかります。私の名はユキ、アカネイア聖王国が王女であるニーナ様の命により、王族の方々を救出する為に参りました。」

 

次の発言でその構えを解いた。アカネイアが滅亡し、王族の全てが処刑されたと聞いていたけど、ニーナ様は生きておられたのか!僕は驚き、慌てながらも、

 

「救援感謝します、ユキ殿。貴方の言う通り、僕がマルスです。貴方のお陰で当面の危機は去りました、貴方の主であるニーナ様に感謝をお伝えください。」

 

そう返すのがやっとだった、彼は頷き・・・僕達を見回した後、

 

「必ず伝えると約束致します。・・・して、リーザ王妃とエリス王女は何処に?」

 

僕達の中に母上と姉上の姿がない、それが気になったのだろうユキ殿が僕に聞いてきた。それに対し僕は・・・、

 

「母上と姉上は・・・、僕を逃す為に・・・。」

 

僕はこれまでの経緯を掻い摘んで、竜騎士の彼に話した。

 

──────────────────

 

ーユキー

 

グラ兵に打撃を与えながら城を目指す俺の視界に、遠目故に断言は出来ないがグラ兵に抵抗をしていると思われる一団が。城から誰かが脱出してきたのか?それを確認する為に,その一団の下へと向かう俺。勿論邪魔なグラ兵は、問答無用でかき乱しながら向かっている。そうでもしなければ、弓兵に狙われてしまうからな。

 

・・・で、練度の低いグラ兵を蹴散らし退却させた俺。包囲されていた一団を助けることが出来たのだが、・・・中心人物に見覚えがある。可愛い顔の男の子、・・・見れば見る程女の子にしか思えない程の可愛らしさを持つこの男の子はまさしく、・・・マルス王子に違いない!とりあえず、名乗ってから王女の命で救援に来たことを話した結果、自分がマルス王子だと言いましたよ!・・・やっぱりな!これ程の男の娘がマルス王子じゃないわけがない!

 

内心で興奮する自身を抑え、王子に付き従う者達に視線を向ける、・・・記憶にある顔を見ることが出来て俺感動!だがしかし、何かが足りない。・・・ここに女性が一人もいないのだ、・・・一人も。王族はマルス王子の他にいないのか?リーザ王妃とエリス王女は何処にいる?その疑問にマルス王子が答えてくれた、・・・とても辛そうに。

 

 

 

 

 

 

・・・俺は間に合わなかったのか?三人を助けると王女に言ったというのに。・・・思いの外、グラの攻勢が強かった。・・・くだらん言い訳だわな、実際そうだとしても。だが、俺はまだ諦めはしない。少しの可能性があるのなら、足掻いてみせるのがこの俺さ。無理だと判断するのは、自分の目で全てを見た後だ。

 

そんなわけで、俺はマルス王子に言った。

 

「・・・なるほど、リーザ王妃とエリス王女は城におられると。分かりました、ならばこの私が急行しましょう。まだ間に合うかも知れぬ故・・・。」

 

俺は城へ行くぞ、彼女達はまだ抵抗をしているかもしれないしな。そんな俺の発言に驚くマルス王子、

 

「アリティア城内も、そして城外も敵で溢れ返っていますよ!?たとえ貴方が強者だとしても、たった一人では危険です!お気持ちは嬉しいのですがその身に何かあったら、僕はニーナ王女に何と言えば・・・!」

 

脱出してきたマルス王子だからこそ、現状での救出はかなりの危険を伴うと知っている。故にこの俺を止めようとするのだが、

 

「多少の無理は承知の上、私は行きますよ・・・マルス王子。アカネイア救援の為に出陣してくださったコーネリアス王は、その途中のメニディ川で戦死なされた。・・・我らには恩義がある、せめて・・・コーネリアス王のご家族だけでも救い、その恩に報いたいのです。故にマルス王子、私に対しての心配は無用です。私のことよりも、マルス王子達は今すぐにこの場から離脱を、敵兵は私がかき乱してきました故に今ならば・・・。」

 

俺はマルス王子の忠告を聞き入れない、行くと決めたのだからな!

 

これは王女の、ニーナ王女の為なのだ。王女が使命を果たす為の布石、アリティアに恩を売るのが俺の役目。たとえ間に合わずとも、行動した事実が重要なのだ。生きていれば上々、亡くなっていても俺の行動によって好印象、遺体をマルス王子の下へと運ぶことが出来たらなおのこと、・・・損はないのだ。そんな内心を知らずにマルス王子は、

 

「・・・ユキ殿、貴方のお気持ちは分かりました。僕は無力だった、・・・その為に母上と姉上は!・・・貴方のことを頼る不甲斐ない僕ですけど、・・・母上と姉上のことをよろしくお願いします。どのような結果でも、・・・僕は受け入れてみせます。・・・ですが!その為に命を無駄にするのだけはお止めください、絶対に生きて帰ると・・・約束してください!」

 

・・・マルス王子って良い人だよね?色んな感情が入り乱れている筈なのに、俺の心配をするなんて。内心ではそこそこ黒い俺を、俺なんかを心配してくれるマルス王子が眩しい!・・・汚れなきマルス王子の目が!・・・直視出来ねぇ、・・・居たたまれないっていうのはこのことを言うんだな!?

 

「・・・約束しましょう、マルス王子。出来る限りのことはやるつもりです、そして・・・生きて帰ります。マルス王子、そちらもお気を付けて。」

 

そう言ってから、逃げるようにその場を後にした。・・・こうなれば、是が非でも結果を出さなきゃ駄目だな!リーザ王妃にエリス王女、・・・無事でいてくれたら!




主人公の強さはステータスMAXの影の英雄クリス級です、序盤の雑魚は相手にならないのです。

強すぎですが、敵も強くする予定なんで何とかなるでしょう。それに強い人がいた方が、他の方々も影響されて強くなる筈。

マルス王子の可愛さに主人公びっくり、その汚れなきオーラに浄化されそうになり逃走。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 ~アリティア脱出《中編》

フォーグルさん、名前#任意の文字列さん、感想ありがとうございます!


他の作品も考えなきゃならん(汗


ーユキー

 

マルス王子一行と別れた俺は、アリティア城を目指しながらも目に付くグラ兵に攻撃を加え続ける。直ぐにアリティア城へと向かい、リーザ王妃とエリス王女の生存を確認することが一番なのかもしれないが、脱出を図るマルス王子が最優先になるのは当たり前である。

 

前者は俺が出遅れたせいでもあり、思いの外・・・侵攻の早いグラ軍が優秀だったせいか、生存の可能性はやや低い。マルス王子が言っていたように、城内にも侵入されているみたいだしな。それを考えると後者であるマルス王子、この目で確認したのもあるが生きている。そして、アリティアからの脱出の為に行動をしている。これだけ言えば分かるだろう、彼らを追撃させぬように攻撃をするのは最重要事項である。生きているか分からぬ二人よりも、生きているマルス王子の為に行動するのは間違っていないだろうと考える。

 

敵の矛を俺に向けさせ、マルス王子一行の下へと行けぬようにする。危険ではあるが俺だからこそ出来ること、そして生存率を上げて欠けることなく脱出してもらいたい。マルス王子のカリスマ、経験豊富なジェイガン、忠誠心の高いフレイ、アベル、カイン、その他の兵士達。俺がかき乱し混乱させたグラ軍など、マルス王子一行を止められずに脱出を許すだろう。その為の援護、良い仕事をしているぜ・・・俺ってばよ。

 

 

 

 

 

 

兵を攻撃され、大打撃を受けるグラ軍ってところか?これぐらい痛め付ければ、追撃に出せるのは小隊程度になるだろう。自分の仕事に満足した俺は、攻撃を切り上げてアリティア城へと向かうのだが、その途中でやっぱり見付けてしまう。・・・重装兵を中心に編成されている一部隊を、その中心にいる偉そうな親父を。グラ軍の指揮官ってところか?

 

・・・ふむ、挨拶の一つでもしてやろうかね?もしかしたら追撃部隊かもしれないし、アイツらが出撃したらマルス王子一行がピンチになるのは確実。・・・何というかすまないな、リーザ王妃にエリス王女。なかなか救出に行けない俺を許してくれ、でも・・・それと同時に感謝もしてくれ。マルス王子に迫るグラ軍を蹴散らす俺に・・・さ!

 

──────────────────

 

ージオルー

 

メニディ川にて邪魔者であったコーネリアスを討ち、そのままの勢いでアリティアに侵攻。疾風が如く進軍し、城に籠るリーザら王族の悉くを討つつもりだったのだが、思った以上に・・・抵抗が激しい。それでも数の有利で攻め続け、アリティア城を制圧したのはいいが・・・マルスとかいう小僧がおらぬ!聞けば既に脱出しているというではないか!小僧を逃すわけにはいかぬ故、追撃の部隊を出せば新手が現れ蹴散らされたという。・・・たった一騎、たった一騎の竜騎士にだ!何と不甲斐なき部下達よ!その竜騎士とは何者なのか?マケドニアは友軍故にないとは思うのだがな・・・。

 

 

 

 

 

 

思案の末にリーザ達を使い、小僧を誘き出す作戦を思い付くも・・・、

 

「・・・この地は我が治める、貴様はグラへと帰れ。・・・人間臭くて不快である。」

 

ドルーアよりマムクートであるモーゼスが派遣されてきた。

 

・・・・・・・・・!?何故だ!何故こうも早く・・・!それにこのアリティアはワシが欲する地、それを奪うというのか!自然とモーゼスを見る目が厳しくなる、この化け物風情が・・・!そんなワシの顔を見て、モーゼスは邪悪に笑い、

 

「元よりこの地は我が治めると決まっていた、貴様如きにはくれてやらぬ・・・。それとも、我に逆らい奪ってみるか?もしそうなれば愉快よな、・・・貴様も、貴様に従う虫が如き兵も、貴様の国に住まう塵同様の民達も、・・・このようになるのだからな!」

 

ワシに向かって投げ出されたモノに戦慄を覚えた、それは・・・、

 

「リーザ・・・・・・!!」

 

この国の王妃であるリーザの首。その表情は恐怖に歪み、その目は虚空・・・。

 

「見せしめの為にな、・・・その身体を八つ裂きにしてくれたわ。今頃城の中庭にて、烏の餌となっていることだろうよ・・・。もう一人の女はなかなかに美しい、ある程度楽しんだ後にでも・・・。クカカカカカ・・・!!」

 

牙を剥いて笑うその顔は醜悪、ワシの目に再び映るはリーザの首・・・。

 

「・・・この城はモーゼス殿にお任せする、・・・ワシは自国に戻る!」

 

そう言うしかなかった。踵を返し王座の間を退室するワシの背後から・・・、

 

「それでいい、・・・それがお前達人間の在るべき姿だ!・・・ククククク、クカカカカカッ!!」

 

おのれ、おのれ、おのれおのれおのれおのれぇぇぇぇぇっ!!

 

 

 

 

 

 

逃げるように城を出たワシは、部下に命ずる。

 

「アリティア各地に派遣している部隊に知らせよ、これ以上の進軍・制圧は無用!各部隊速やかに本国へと撤退せよ!・・・よいな、速やかに撤退だぞ!従わぬ者は捨て置け・・・!!」

 

ワシ自身も速やかに親衛隊を纏め上げ、撤退の準備を整える。最早マルスの小僧を追撃する気もない、暇もない。長居してリーザのように殺されては堪らぬ、・・・あのような惨たらしい死など迎えてなるものか!・・・しかし、そんなワシの心情を嘲笑うように、

 

「「「「「ウワァァァァァッ!?」」」」」

 

突如、兵達の間に悲鳴が上がった。

 

悲鳴が上がった方へ視線を向ければ、一騎の竜騎士が目に入る。ワシの目の前で、兵達を蹴散らすその姿は報告にあった通りだ。・・・強い!直感的にそう感じた、・・・この場で戦うのは得策ではない。あの竜騎士は、ドルーアのマムクート達、グルニアのカミュ、マケドニアのミシェイル、カダインのガーネフ、そして死んだコーネリアスと同等かそれ以上の化け物だ。ワシでは太刀打ち出来ん、ましてやアリティア侵攻で疲弊している我が軍では・・・!

 

しかしあの竜騎士はワシを狙っている、そう分かるのだ。この場に拡がる殺気に喉が渇く、先程のモーゼスより濃厚ではないにしてもな。・・・このアリティアは死地なのか?どうにも死が見え隠れする。アリティアは求めてはならん地なのだろうか?分からん、分からんが・・・一刻も早く本国へと戻らねばならん、それだけは分かる。

 

・・・が、そんなワシの前に立ち塞がったのはあの竜騎士。・・・もうここまで辿り着いたというのか!

 

「・・・お前がグラ軍の指揮官か?」

 

上から見下ろされ、槍の穂先がワシを指す。動くことの出来ないワシではあるが、

 

「・・・そうだ!ワシこそがグラ国王のジオル、アリティアを裏切り滅ぼした男よ!」

 

そう簡単には引けぬ、ワシは王なのだからな!怒鳴るようにそう言い放つワシに、

 

「・・・お前がグラ国王、・・・アリティアを滅ぼした男か。こうも簡単に対面出来るとは思いもよらなかった、・・・ふむ。ならば丁度いい、リーザ王妃とエリス王女を解放しグラへと帰れ。さすれば、この場は見逃してやる。王としての誇りが許さぬのなら、この場に限り捨てろ。少なくとも、・・・自国を想う心はあるのだろう?」

 

その竜騎士は、ワシの目を見詰めながらそう言ってきた。・・・この竜騎士は、・・・この男はワシを見逃すというのか!?コーネリアスを討ち、アリティアを滅ぼしたこのワシを!

 

ワシの心中は荒れ狂っている。手中に治める筈のアリティアをモーゼスに奪われた、そしてワシの命は目の前の竜騎士に握られている。・・・これ程の屈辱を一日で!王である誇りがこの屈辱を返せと訴えてくるが、それ以上に・・・自国にて待つ娘の顔が思い浮かぶ。荒れ狂う心の中に娘が浮かぶのだ、・・・何ということか!・・・自身の死を前にして浮かぶのが娘とは、・・・・・・ぐぅ~・・・っ!おのれぇ~・・・っ!

 

「・・・元より自国へ帰るところよ、アリティアは諦めたわ!」

 

吐き捨てるようにそう言った。竜騎士の男は一瞬驚くも直ぐに、

 

「ならばリーザ王妃とエリス王女を解放しろ、・・・それとも既に処刑をしたとでも?」

 

槍を握る手が、殺気が・・・強まるのを感じたが、ワシは言ってやる。

 

「もうワシにはどうにも出来ん、・・・城はドルーアのマムクートに奪われたわ!・・・リーザ、・・・貴様の言う王妃は無惨にも八つ裂きにされ殺された!・・・その娘エリスはまだ生きているみたいだが、奴の口振りから察するに・・・長くはないだろうな!同じように惨たらしく、いや・・・それ以上に辱しめを受けてから殺されるだろう!・・・ワシにはどうにも出来ぬわ!」

 

ドルーアの者に王妃は殺され、王女もその命が風前の灯と竜騎士に言ってやった。

 

吐き捨てるように言ってやったワシは、目の前の竜騎士を睨み付ける。ワシの無念さをぶつけるように、しかし・・・竜騎士は全く動じずにワシを見続ける。そして・・・、

 

「・・・嘘は無いようだな、・・・しかしそうか。リーザ王妃は・・・助けられなかったが、エリス王女は助けてみせる。それにしてもマムクートがねぇ・・・、堕ちた者もいるようだな。」

 

ワシに向けていた槍を退き、その視線はアリティア城へ。ワシに向けていた視線とは違う、・・・何か異質さを含んでいるような。

 

「・・・グラ国王ジオル、いずれその身に裁きが降る。その時まで精々生きろ、そして忠告だ。そのまま進むのも良し、だが・・・身内のことも考えてやれ。それが出来れば、腐っても王であると俺は声高らかに称賛するだろう。」

 

アリティア城から視線を外さずに、ワシに対してそう言ってきた。ワシがした行いを否定せずに、腐っても王で在れ・・・だと!?罵倒であれば返せたものの、これでは言い返せぬ。この男・・・、底が知れぬわ・・・!

 

──────────────────

 

ーユキー

 

グラ軍の指揮官を見付けたと思ったら国王だし、既にリーザ王妃は殺されてしまったらしいし、エリス王女も命の危機に瀕しているみたいだし、・・・とりあえず俺の目的は果たせぬモノとなってしまった。まさか既に、ドルーアの者がアリティア入りしていたとは。予想外だよ全く・・・、だが!リーザ王妃のことは無念ではある、・・・しかしながらエリス王女はまだ生きている。彼女だけでも助けたい、・・・マルス王子の為に!

 

イドゥンも怒っている、堕ちたマムクートに・・・!これは一撃を食らわせなければ、イドゥンが落ち着かない・・・ってヤツだ。一応情報をくれたジオルは見逃そう、本当ならばその首をもらい受けるところなんだがな。名前を聞いて思い出したが、コイツの娘は美人さんである。名前は忘れたが、その美人さんの父をここで討ってはな・・・。とりあえず、美人な娘のことを考えろと言ってやったぜ。せめて娘孝行の一つでもしてやれ、おっさん。

 

・・・そういうことなんで、いざエリス王女救出の為にアリティア城へ!と思い、飛び立とうとする俺に、

 

「エリス王女は城の北にある塔に幽閉されておる、・・・城の主であるモーゼスには気を付けることだな!」

 

どうにでもなれ!っていう感情の籠ったジオルからの情報、まさかこの俺に提供してくるとはな。ただの野心家ではないらしい、・・・律儀な野心家ってヤツだな!そんなことを思いながら、俺はアリティア城へと突撃する。エリス王女を助けつつ、モーゼスとかいうマムクートにキツい一撃を!俺の相棒イドゥンが張り切っているぜ!




リーザ王妃が・・・ごめんなさい(涙

ジオルの親父、ツキがない。

主人公、ジオルを見逃しその娘に想いを馳せる。

そして、エリス王女救出に全力を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 ~アリティア脱出《後編》

次こそは、系譜の方を・・・!





ーユキー

 

ジオルが撤退する様を横目で確認しつつ、アリティア城へと・・・正確には北の塔へと向かう。途中・・・湧き出た飛竜が数匹、俺に襲い掛かってきたが撃ち墜としましたとも。俺の鍛え上げた槍術の一つに、離れた敵を攻撃する戦技がある。変わった槍を入手し、練習して編み出したこの技の前に飛竜など羽虫も同然。その技の名はアルクバリスタ、俺の鍛え上げた膂力が繰り出す空圧の一撃。それを食らった飛竜は、アルクバリスタの圧を食らって地に墜ちていく。竜の鱗に阻まれて傷は付かないけど、その衝撃の前に内部は悲鳴を上げたことだろうよ。・・・地に墜ちた時、打ちどころが悪ければ死ぬかもね。

 

因みにこのアルクバリスタ、本来の威力はこんなものではない。この戦技の本領発揮は専用武器、サウニオンを使い放った時だ。ぶっちゃけ先程の飛竜程度なら、風穴開けつつ二匹は殺れる。・・・マジで。

 

 

 

 

 

 

飛竜達の襲撃を難なく退け、辿り着いたアリティア城。そして目に入るは北の塔、この塔にエリス王女が幽閉されているわけか。さて、どうすべきかって考えるまでもない。塔の何処に囚われているか分からんからな、地道に下から登っていくのが安全確実だな。なかなかに高い塔だが、ラムの村周辺の森やら山やらで鍛えた俺には苦にもならん。サクッと登って助けるとしようか、うん。イドゥンの一撃で壁を破壊すれば楽なんだろうが、加減を間違えて崩壊したらヤバイからな。やっぱり地道に行かんと・・・、ああそれと、

 

「イドゥン、この場はお前に任せるよ。俺の合図があるまで、この塔を死守してくれ。」

 

そうイドゥンに指示をする、イドゥンは・・・、

 

「キュイ、キュイ・・・。分かった・・・、気を付けて・・・。」

 

言われなくとも気を付けるさ、・・・塔を壊さないようにな。

 

・・・・・・・・・ん、何だ。・・・イドゥンが喋った?そりゃあ喋るさ、・・・俺の相棒イドゥンはマムクートなんだから。

 

──────────────────

 

ーイドゥンー

 

私はイドゥン、ユキの相棒でありマムクートであり、・・・魔竜でもある。ユキが私に、塔を守って・・・とお願いしてきたから守る、・・・ただそれだけ。ユキが喜んでくれると、・・・私も嬉しい。だから私は、・・・この塔を守る。

 

・・・・・・ユキは塔の真ん中ぐらいまで行ったのかな?そんなことを考えながら、迫りくる人間を薙ぎ払う。・・・鬱陶しい、・・・虫みたい。ちょっとイライラしてきた私の前に、・・・数人の男がやってきた。・・・その男達が視界に入った時、・・・イライラが・・・怒りが増した。この男達はマムクート、・・・それも同じ魔竜。

 

「・・・この黒き竜が侵入してきた者の騎竜か、・・・クカカカカカ!・・・哀れなものよな?」

 

その中でも一番強いと思われる男が、この私を蔑んだ目で見てくる。・・・何様だろうか?・・・少し強いだけで調子に乗っている、・・・力を抑えている私に気付かない癖に。

 

「・・・お前のご主人様は塔の中か?・・・あの女を助けにか、・・・これは好都合。・・・女を痛めることが出来ぬのは残念だが、・・・お前もろとも塔を滅してくれよう。・・・ご主人様と一緒に滅されるのだ、・・・哀れな騎竜には過ぎた褒美になるか?・・・クカカカカカ!まぁその前に、・・・我らの玩具となってもらおう!」

 

下品な笑みを浮かべた男とその他の男も身体が光る、・・・光と共に身体も大きく変形していく。

 

・・・それが治まった時には、私よりも大きな身体の竜が佇んでいた。

 

「・・・小さき哀れな竜よ、我らの遊戯に付き合ってもらうぞ。」

 

・・・弱き者を痛めることが遊戯か、・・・マムクートの風上にも置けない者達。・・・それ以前に、・・・ユキを殺すと言った。・・・許せない、・・・私の相棒は殺らせはしない。・・・私が守るんだから、・・・絶対!・・・そう決意した私に対して、対峙した竜達が一斉に攻撃を仕掛けてきた。・・・・・・どれ程のものか、・・・見せてもらう。

 

──────────────────

 

ーエリスー

 

「・・・マルス、貴方は無事にこのアリティアから逃れることが出来ましたか?」

 

囚われた私は、この部屋にある小さな窓から外を眺め・・・そう呟く。鉄格子のはめられたこの窓から外を覗く度、ああ・・・私は囚われており、いずれはこの身に死が与えられる、・・・そう思い悲しくなる。思い浮かぶは母の死、竜に痛められながら引き裂かれたのだ。目の前で行われた惨劇に、私はあまりの恐怖に気絶。気付いた時には、この何もない・・・部屋の中であった。

 

惨たらしく殺されるであろう恐怖に怯えながらも、私は可愛い弟のマルスの無事を祈る。死を待つ私には、それぐらいしかないのだから。・・・マリクは何をやっているのかしら?あの子も私にとっては可愛い弟みたいな存在、・・・あの子のことも祈らなくてはね。まぁあの子・・・マリクは魔導馬鹿だから、お師匠様やお友達を巻き込んで何かをしでかしてそうだけど。ウフフ・・・、マリクのお陰で少しは気が紛れたかしらね。

 

 

 

 

 

 

囚われてからそんなに経っていないけれど、・・・私はいつまで生きられるのかしら?そんなことを考えていると外が騒がしくなり、それと同時に地響きと大きな揺れが私を襲う。

 

「・・・きゃあっ!」

 

私はその揺れによって倒れ込み、揺れ続けている為に・・・しがみつくように這いつくばる。・・・・・・一体、外で何が起きているの?

 

揺れ続ける現状に、少なからず恐怖する。そんな私の耳に、

 

「ぎゃあっ!」

 

「ぐばあっ!」

 

私の囚われている部屋の前から悲鳴が、・・・私の身が強張る。悲鳴は監視の兵だとは思うけれど、安心は出来ない。・・・もしかしたら、私を暗殺しようとする誰かかもしれない。警戒する私の前で、運命の扉が開かれる。

 

──────────────────

 

ーユキー

 

塔を駆け上がる途中、大きな地響きと揺れが襲ってくるが気にも留めずに歩を進める。外でイドゥンが何者かと戦い始めたのだろう、まぁイドゥンだから大丈夫。信頼度MAXだからな、俺はイドゥンを信じてエリス王女を助けるだけさ。

 

そんなわけで歩を進める中、敵兵の多い階層に到着。この階層にエリス王女が囚われていると確信し、塔の揺れる中で敵兵を薙ぎ払い進む。そして辿り着いた扉を前に、中から人の気配が・・・。戦う意志の無い弱々しい気配、エリス王女に違いない。・・・間に合った、安堵と共に扉を蹴り破る俺。乱暴だって?・・・そうは言われてもな、鍵が無いわけだし仕方なしだろ。

 

 

 

 

 

 

扉を蹴り破った俺の目に映ったのは、こちらを見て・・・というか俺?を見て震える美女が。えーと・・・、マルス王子にどことなく似ているから彼女がエリス王女だよな?・・・俺が一歩進むと彼女も後ずさる、・・・一歩進むと後ずさる。・・・マジか、俺ってばビビられてるっぽい。・・・ニーナ王女は俺にビビらずにいてくれたが、・・・まぁ俺の顔がアレだからな、・・・これが普通の反応だろう。・・・がしかし、泣けてくるぜ。

 

普通に話し掛けてもダメそうだ、・・・どうすればいいか。・・・マルス王子ネタから救出に来たと言えばいいか?・・・というか、それしかない。

 

「・・・エリス王女でしょうか?・・・そう警戒なさらないでください。・・・私はマルス王子と約束しましてね、エリス王女を助けると。・・・リーザ王妃は間に合いませんでしたが、・・・無念です。」

 

マルス王子の名が出た瞬間、彼女の顔から怯えの色が消えた。そして・・・、

 

「・・・貴方はマルスを、弟を知っているのですか!?あの子は・・・、あの子は無事なのですか・・・!」

 

逆にすがりついて、俺にマルス王子のことを聞いてくる。当然俺は・・・、

 

「私が救援に来た時には、臣下と共にご健在でしたよ。手助けとなったか分かりませんが、追撃のグラ軍を撤退させました。無事であれば、・・・このアリティアから脱出していることでしょう。」

 

なるべく穏やかに、そして優しく答える。それを聞いたエリス王女は安堵の色を浮かべ、

 

「そうですか、・・・マルスは無事である可能性が高いということですね。」

 

そう呟いて、すがりつく力が強まった。すがりつく=抱き着く、みたいなもので・・・俺は今、エリス王女に抱き着かれているわけです。

 

よく分からん流れで、俺に抱き着き・・・何か静かに涙するエリス王女。役得ではあるが、時間が無いので失礼ではあるけど、

 

「この塔より脱出せねばなりません、・・・失礼ではありますが。」

 

一応・・・、そう断りを入れてからエリス王女を抱き抱える、俗にいうお姫様抱っこというものだ。

 

「・・・きゃっ!・・・え、・・・あ。」

 

突然のことに戸惑い、そして気付いたエリス王女は顔を赤くして俯く。・・・何というか、可愛い反応ですね?

 

「落ちぬよう、首に手を回してください。・・・それを確認しましたら、脱出の為に行動を開始します。」

 

顔を俯かせたまま、無言で俺の首に手を回すエリス王女。俺はそれを確認し駆け出す、・・・目標は塔の最上階。敵兵がいたとしても、俺の俊足で撒いてくれるわ!

 

──────────────────

 

ーモーゼスー

 

この黒き竜は何なのだ!・・・その一言に尽きる。痛めて遊ぶつもりが、我が・・・我らが遊ばれている。自慢の爪で引き裂こうとすれば尾で弾かれ、強靭な顎で噛み砕こうとすれば翼で払われる。巨体で押し潰そうとすれば、その小さな身体で平然と受け止めてみせる。何をやろうにも、この黒き竜には効かぬ・・・!たかが騎竜の分際で・・・!

 

・・・・・・騎竜?

 

・・・・・・そうか!この竜には主人がいる。目の前にそびえる塔の中に、この竜の主人がいるではないか!・・・クカカカカカ!主人を消せばこの黒き竜もきっと・・・!黒き竜の悲しき嘶きを想像し、頭の中が愉悦に染まる。見ているといい、我のブレスで塔と共に・・・貴様の主人が消える様を!

 

身体中から闇の力を放出し、それを口に集約させる。黒き竜が我のやることに気付いたようだが遅い!集約させた闇を、塔に向けて吐き出す。・・・これで全てが滅せられる、・・・む!・・・馬鹿め!自らの身体で防ごうとするか!・・・愚かなことを、・・・主人と共に消えよ!

 

 

 

 

 

 

・・・勝利を確信した我の目には、跡形もなく消えた筈の塔が映る。そして・・・、

 

「ああ・・・、弱い・・・。私の同族は何と脆弱なことか・・・、堕ちるところまで堕ちたみたい・・・。」

 

心臓を鷲掴みにするような冷たい女の声、我のブレスにより発生した闇の中に輝く赤い眼光。霞に浮かぶ、威圧的な姿・・・。こ、この姿は・・・。このお方は伝説の・・・、

 

「・・・命拾いをしたね、・・・本当ならば殺したい。・・・でも呼んでいるから、・・・今度また会う時が最後。」

 

・・・感じていた圧倒的な闇は幻のように消え去った。あの黒き竜の姿も無い、・・・・・・想像もしたくない。我は、メディウス様と並ぶ・・・いや、それ以上かも知れぬお方に牙を剥いた。知らなかったとはいえ、何と畏れ多い・・・。

 

「・・・魔竜姫イドゥン、・・・古の神竜族が一人。」

 

・・・そう口にした瞬間、我の意識は闇に包まれた。




何とイドゥンはマムクートだった!?

・・・え?知ってた?

封印の剣にて登場するイドゥンを想像してください。心はあります。

何故騎竜になっているかは今はまだ謎。

主人公、戦技を自身が編み出した技だと勘違い。

その後、サウニオンを装備した者が覚えたことに驚愕することになる。

エリス王女、初めてお姫様抱っこされる。

マリクは魔導馬鹿、ただの幼馴染みの予定。




というか、自分でいうのも何だけど雑かね?

何ともいえないけど、ユルユルいきますよ。

評価はあまり気にしないww



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。