SCP財団で職員をしている (ゼノモフ)
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SCP-173

どうもこんにちは。
なんとなーく書いてみた物です。


この世には、あらゆる怪奇が溢れている。

例えば、生きた石像。 絵の中の女性。 不死身の爬虫類。

これだけじゃない、たくさん、もっとたくさんだ。

しかし、これらを一般人の目に触れさせるわけにはいけない。 ただの人間がこいつらの存在を知ってしまったら、気が狂ってしまう。 それどころか放っておくだけで地球が滅亡しちまう奴だってザラにいる。

 

だから、俺たちはそいつらを隠している。

Secure(確保)Contain《収容》Protect《保護》、略してSCPだ。

それを行う俺たちはSCP財団、それを行われたものたちはSCPと呼ばれる。

 

さて、俺はSCP財団の職員だ。 それも、かなり特殊な立場の。

 

「ジン・アサムラさん! 173が脱走しました!」

 

「あ!? ヘマやらかしたのは何処の誰だ!?」

 

「Dクラス3人です!」

 

「そいつは三日間デザート抜きだ! 俺は173の確保に行く!」

 

「Dクラス達はもう死んでます!」

 

「そうか! じゃあ行ってくる!」

 

すまないな、話を打ち切ってしまって。 だが、これから仕事だ。

そう、俺は逃げ出したSCPや非常に危険なSCPを確保するためにここにいる。

SCP-173、彫刻-オリジナル。

人に見られているうちはただの彫刻だが、人の視界がなくなると途端に活動を始め、近くの人間の首を折ったり絞め殺したりする。

オブジェクトクラスはEuclid(結構ヤバい)、下手したら死人が2桁に登る!

 

さて、報告に来た職員にミスをしたDクラス職員への処置を言い渡し、部屋を飛び出る。

ああ、Dクラス職員ってのは、このSCP財団で最も地位の低い職員で、死刑囚が一ヶ月だけDクラス職員になり、その後記憶消去を受ける。

 

「173! 何処行きやがった!」

 

あいつは人の視界がなければ、途轍もないスピードで移動する。

瞬きでもアウト、瞬時に間合いを詰めて首をへし折る。

 

-ゴリゴリゴリゴリ…-

 

通路を走っていると、不意に石臼を引くような音が聞こえてきた。

間違いない、173の足音だ。

 

「いいぜ、来いよ。」

 

-ゴリゴリゴリ…-

 

石臼を引くような音が止まり、俺が瞬きをすると同時に目の前のドアが開く。

目の前には一つの不気味な彫刻…SCP-173がいた。

そして、俺はもう一度瞬きをする。

本来こいつの前で一瞬でも視界を閉ざすのは自殺行為、だが俺は…

 

-ガンッ!-

 

瞬時に間合いを詰めて、首を折ろうとしてくる173の腕を止める。

 

『…あ、ジンくんじゃん。』

 

「ジンくんじゃん… じゃねえ! また脱走しやがったのかこの問題児! Euclid野郎!」

 

『いやあ、しょうがないか。 つい、ついへし折っちゃうんだよ?』

 

「知るか! お前のせいで残k… Dクラスがどんどん減ってくんだよ! 新職員の育成がどんだけ面倒くさいのか知ってんのか!」

 

『ごめん、ごめんよ! だから引きずるのはやめて!』

 

「…ったく。」

 

人の目があるところでは、こいつは身動きを取れない。

しょうがないから173を担ぎ上げて、閉じ込めていたコンテナまで運ぶ。

 

『…ねえねえ。』

 

「…んだよ。」

 

『今度コンテナに会いに来てくれない?』

 

「ああ、暇があればな。」

 

ほざく173をコンテナの中に投げ入れて、扉を閉めるボタンに手を添える。

 

「んじゃな。」

 

『うん、それじゃあまたね。』

 

173に別れを告げて、コンテナの扉を閉めた。

 

あ、申し遅れた。 俺の名前は浅村仁、または… SCP-001だ。



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SCP-106

「ふわぁ…」

 

昨日、SCP-173の脱走を取り押さえた後、直ぐに寝た俺は翌日の6:00ぴったりに起床した。

俺が寝ている時間に仕事がない限り、基本的には六時起きだ。

日によっては仕事が全く無く、仕事があるとしてもちょっと走り回るだけ。 月によっては三日間仕事をすれば終わりだ。 その上給料も良く頼めば頻度は少ないが休暇もくれる。

なんというホワイト企業だろうか。

 

しかし、そんなホワイト企業でもきつい日は存在する。

 

「…あのジジイ…」

 

目の前には黒い穴が開いていた。

その穴の周りには腐食が見られる。 間違いなく、SCP-106、オールドマンのポケットディメンションだ。

106は触った全ての物を腐食させる。 そして達が悪いことに、簡単に脱走しては職員をさらったり俺に面会に来たりする。

だから最近は、俺の部屋に直接、あいつの能力であるポケットディメンションを出すように言っている。

ポケットディメンションってのはわけのわからない不思議空間で、あいつがとらえた若い職員と遊ぶ… もちろんやばい意味の遊びをするために使う空間だ。

 

「…行かねえと脱走するよな、あいつ。」

 

意を決して、ポケットディメンションの中に飛び降りる。

ここは嫌いなんだよな。 体に負担はかからないが、臭い。

しばらく灰色のレンガが作る細道を歩くと、上に出口が見つかった。

 

「よっ。」

 

その穴から這い上がると、目の前にはエグい色の肌をした爺さんがいた。

そう、こいつがSCP-106だ。

 

『おお、来てくれたか、ジンさん。』

 

「来てくれたか、ってもお前俺が来ねえと脱走騒ぎ起こすだろうが。 職員の研修の度にブライト博士がSPC(シャーク・パンチング・センター)の説明始めたり、SCP-682と同じ濃度の塩酸の中に入れようとしたり、SCP-920に案内させようとすんだよ。」

 

『そいつはブライト君に言っとくれや。』

 

「お前が新人を殺らなければ済む話なんだよ。 俺がブライト博士に注意をしてないと思ったか? あの人の部屋一面に禁止リストのコピーを張っていないと思ったか?」

 

あ、今出てきた単語については今度教えてやろう。

とりあえずはこの腐れジジイとの話を終わらせなければ。

 

「んで、なんで俺呼ばれたの?」

 

『いやいや、大したことでもないんだけども… 最近、職員の連中が要望を通してくれないんだわ。』

 

「へえ… おい待てどうやって要望出してんだ。」

 

『そりゃあちょっとだけ顔出して頼むんだよ。』

 

「…この部屋から出んなよ? んで、要望は?」

 

『若い男の人肉を…』

 

「ん。」

 

SCP-106の要望に、自分の左手を引っこ抜いて渡すことで答える。

これでしばらくは大人しくするだろう。

 

『おお! これだこれ! いやぁ、毎度すまないねジンさん。』

 

「ったく、腕ぐらいまたやるから脱走は控えろよ?」

 

『おう、また今度頼むわ!』

 

腕から滴る血を嬉しそうに舐める爺さん。

あ、白衣が血で染まっちまったな…

 

「んじゃ、俺は帰るわ。」

 

『助かったぜ、ほれ、出口だ。』

 

「ん、あばよ。」

 

SCP-106の開けたポケットディメンションに飛び降りる。

暫く歩くと、先ほどと同じように出口が見つかった。

ジャンプをして這い上がると…

 

目の前にはガラスで蓋をされた塩酸の風呂と、その風呂に浸かるトカゲがいた。

 

『お! ジン! 久しぶりじゃねえか!!』

 

「あんの… クソジジィィィィィ!!」

 

そのトカゲはSCP-682、俺が…めちゃくちゃ嫌いなSCPだ。



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SCP-682

『よおジン〜、会いたかったぜぇ〜?』

 

ガラスの蓋を叩き割って塩酸の中から出てきて、うざったく絡んでくるSCP-682こと、不死身の爬虫類。

お前はトカゲだろうが! 犬じゃねえはずだ!

 

「ええい! やめろ鬱陶しい! ってか塩酸ついてるから溶けるんだよやめろ! 白衣の着替え用意してねえんだよ!」

 

『いいじゃねえかよジン〜、遊ぼうぜ〜?』

 

「だぁぁ、もう!」

 

一層絡んでくる682の尾を掴み、塩酸風呂の中に落とす。

 

-ジャバァァァン!-

 

音とともに、塩酸が辺りに巻き散らかされる。

SCP-682が浮上する前に、収容室の扉が開いて武装した職員達が駆け込んでくる。

 

「…あれ、ジンさんじゃないですか。 おーい、皆んな、撤収だ。 ジンさんなら大丈夫だ。」

 

「おう、任せとけよマック。」

 

武装した職員… マックは拍子抜けといった表情をした後に周りの職員を率いて扉から出て行った。

その際に周りの職員も「なんだよジンさんか…」だの「絶対手懐けるマン」だの言いながら帰っていく。

 

…てかあいつら、SCP-682の迎撃とかほぼ死に確なんだが。

 

『ジ〜ン〜、なんで左手がねえんだぁ〜?』

 

「今更? 今更かこの野郎? さっき106に差し出したんだよ! そんで帰ろうと思ったらポケットディメンションでここに送り込まれたんだ!」

 

『おぉ、爺さんナイスだなぁ〜、ジン、礼言っといてくれぇ〜。』

 

「意地でも断る!」

 

這い出してくる682の頭を引っ叩き、左手を生やす。

 

『でもよぉ〜ジンさぁん。 俺はわかってんだぜぇ〜?』

 

「あぁ? 何がだよ。」

 

『あんたぁ、喜んでるだろぉ〜? 嬉しいんだろぉ〜? 俺たちに必要とされんのがよぉ〜。』

 

「チッ! んなわけが…」

 

『知ってんだぜぇ〜? あんたがここに来る以前どんな奴だったかぁ〜。』

 

「ッ!」

 

挑発するように言った682を蹴り飛ばす。

 

『あんたぁ、相変わらず精神は弱えなぁ〜。 まぁ、そんなところも含めて大好きだぜぇ〜? 愛してるぜぇ〜?』

 

「…うるせえよクソトカゲ。」

 

『誰にも必要とされなかったあんたがぁ、ここじゃあ最高に人気者だぁ〜。 嬉しいだろぉ? 楽しいだろぉ?』

 

「…へいへい、そうだな682。」

 

這いずって来る682の頭を抱き寄せる。

 

「いいか? お前が何を持ってそれを知ったのかは追求しない。 でもな、それを必要以上に言いふらすんなら… 俺にはお前を破壊することができるぞ?」

 

『あんたに殺されるならぁ、本望だぁ〜。 にしても、抱きしめるなんて嬉しいなぁ〜。』

 

ふざけたことを抜かす682の頭を強く締める。 ミシミシという音が俺の耳にも聞こえてきた。

 

『あぁ〜、ストップぅ〜! よしてくれぇ〜!』

 

途中で力を緩め、682を地面に置いたところでマックがまた入ってきた。

 

「あ、ジンさん。 そこの塩酸プール直るまでの間そのクソトカゲ預かっといてくれませんか?」

 

それは… 俺にとっては地獄の宣言だった…

 

『やったぜぇ〜。 ジンさんと一緒だぁ〜。』

 

うるせえだまれ!



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SCP-999とSCP-682

『ジン〜、おはよぅ〜。 ってかなんでこのリード切ねぇのぉ〜?』

 

自室で目覚めた俺の耳に、悪夢が飛び込んでくる。

SCP-682、収容室の修理が終わるまでの間俺が預かることになったクソトカゲだ。

その682の首には、黒いリードが巻かれている。

 

「そりゃあそうだ。 俺の髪を編み込んで使ったからな。」

 

『なぁるほどぉ〜、そりゃあ切ねぇわけだぁ〜。』

 

682はそのリードを弄りながら床をゴロゴロと転がった。

あ、馬鹿野郎絡まるだろうが馬鹿。

 

『絡まったぁ〜。』

 

案の定絡まったリードを解き始める。

 

『ジン〜、今日は何するんだぁ〜?』

 

「あぁ、SCP-999がお前に会いたがっていてな。 丁度いいから要望を通してやろうと思ったんだ。」

 

『嘘だろぉ!? ジン〜! 俺があいつ嫌いなの知ってんだろぉ?』

 

「おう、それが何か問題か?」

 

『ジン〜!!』

 

滅多に聞くことのできない、爬虫類の悲鳴が廊下にこだました。

 

♢♦︎♢

 

『あっ! やめっ! あひゃひゃっ!? やめろクソスライムゥ〜!』

 

『ジンちゃんありがとう! 682ちゃんと遊びたかったんです!』

 

目の前にいるオレンジのスライムはSCP-999。

以前俺が実地した【SCP財団内人気SCP投票】において余裕の一位を勝ち取った超人気SCPだ。

ちなみに682は一票だけ票を得ている。 ちなみに投票者はブライト博士。

 

「おう、周りの職員は避難してるから存分に遊べ。 あ、だが気絶はさせるなよ?」

 

『やったぁ!』

 

『ジン〜!!』

 

前回の実験の際には酷い結果になったので、前日にしておいた俺の申請は通らないかもしれないと思ったが、周りの職員を避難させることを条件として簡単に実現した。

しかしオレンジのゼル状の生物に体をくすぐられる巨大トカゲってのも… シュールだ。

 

転げ回る682と楽しむ999を見ていると、俺の心も癒される。 主に後者のお陰で。

 

『ああ、やめてくれぇ! あひゃっ!』

 

『ふぅ、くすぐりは満足しました…』

 

くすぐり()、それはまだこの遊びが終わらないことを意味している。

無様だな、682。

 

『止めてくれぇぇぇぇぇ〜!!』

 

♤♠︎♤

 

『あぁ… 死んじまうぅ〜。』

 

「そうか、死ね。」

 

『ひでぇ〜。』

 

俺たちは999との遊びを終え、俺も少し遊んだ後に682のリードを引いて部屋に戻っていた。

いや、やっぱり999は最高だな。

ちなみに、あいつが人の頭にくっついた時にはその人が一番好きな味がするらしい。 俺の時は自分の部屋の匂いがした。

 

「なあ、お前って999の匂いはどんなのになるんだ?」

 

『うん? そりゃあジンの匂いに決まってんだろぉ〜?』

 

「そうか。」

 

喉を鳴らしながら足にすりよってくる682を無視して、人気のない廊下を進んだ。



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Dクラス職員とブライト博士

さて、今日は特別な日だ。 なぜかわかるか?

今日は新しい職員(記憶処理を施されたDクラス)が補充される日だ。

Dクラス職員は死刑囚から選考され、一ヶ月間ここで働かされる。

ちなみに減刑されると言われているが、そんなことはない。 というよりも記憶処理をしているのでここで勤務していた記憶は一切なくなる。

 

目の前にいるのは部屋に通されて、パイプ椅子に座った60人の死刑囚。 突然これだけではSCPを管理するのには足りない。

何箇所かに分けて研修を受けさせているので、本当はこの十倍以上の数がいる。

 

「さて、就任おめでとうクズ野郎ども、君たちにはこれから一ヶ月間、ここSCP財団で働いてもらう。 ご存知の通り、一ヶ月間きちんと働けば減刑するし、その一ヶ月間の中で特に素晴らしい才能を見せたものはここSCP財団で雇用して、罪を無かったものにして働くことができる。」

 

俺の発言を受けて、部屋の中がガヤガヤと騒がしくなる。

そして、その内1人、黒人のスキンヘッドの、ガタイのいい男が立ち上がる。

 

「今、お前をぶっ倒して逃げりゃあ仕事なんぞしなくても良いんじゃないか?」

 

「…確か、お前はジェイクだったか? 止めておけ、職員にはお前たちを射殺する許可が常時出ている。 それに…何故俺がお前らに手錠を付けなかったと思う?」

 

「知るか、よっ!!」

 

ジェイクはパイプ椅子を畳んで、武器にして殴りかかってくる。

特に何の感動もなく、パイプ椅子を頭に受ける。

 

「へっへっへ… え?」

 

ジェイクが目を見張った。 そりゃあそうだ。 俺の頭をぶん殴ったはずのパイプ椅子が大きく凹んでいるのだから。

 

「さて、理解したか? 俺は特別優しいから一回は許してやる。 次からは命の危険を…」

 

そこまで言ったところで、ガタンと音を立てて扉が開く。

その先にいたのは… 赤いネックレスをかけた猿だ。

 

「やあ諸君! 私がブライト博士だ!」

 

「帰れマッドサイエンティスト! 新人研修には絶対乱入すんなっつっただろうが!!」

 

叫んでブライト博士を叩き返す。

しかし猿は諦めずに扉から顔を出して、新人に向けて口を開く。

 

「オーケー、諸君。椅子にケツを沈め、汚い口を閉じろ。俺にはこのあと行くところがあってだな、おまえらより重要な人物に会わn…」

 

「ここはSPC(シャーク・パンチング・センター)じゃなくてSCP財団だっつってんだろうが!」

 

今度こそ猿を叩き出して、扉を閉める。

 

「あー、取り乱してすまない。 では、研修を続けよう。」

 

☆★☆

 

「というわけだ。 諸君は命の危険を感じる仕事をすることもあるが、できる範囲で俺が助ける。 では、解散だ。 諸君の部屋には俺が案内しよう。 部屋に着いたらまずゆっくりと休め、10時間越えの護送を受けたやつもいるだろ?」

 

最後に、新人たちをそれぞれの部屋に送って、新人研修は終了だ。

さて、新しい職員を迎えて、新しい月を迎えた。

今日からAprilだ。



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SCP-049

どうもこんにちは、ジンだ。

今は682を引き取って暫くして、修理が完了したので682を塩酸プールにぶち込んで帰る途中だ。

あ、ちなみに俺の仕事はSCPの取り押さえと、一部のSCPと月一で会うこと。

SCPの中でも高度な頭脳を持つ奴らは狭い場所に閉じ込められてうんざりしてるだろうからな。 ストレスで暴れ出さないようにたまに面会をすることになっている。

今日の面会はSCP-049、ペスト医師だ。

049はペストマスクから人間と同じような目だけを露出させ、他の体の全てを黒いローブで覆ったSCPだ。

049には全ての人間がペスト患者に見えるようで、手術と称して健常な人間を改造、ゾンビにしてしまう。

 

まあ、俺は049はあまり嫌いではないが。

 

「邪魔するぞ。」

 

『…ん、ああ。 ジンじゃないか。』

 

独房の中に入った俺を迎えたのは、鉄の首輪を二本の柱に固定された049だった。 その状態でも特に答えた様子はなく、こちらを見て右手を上げて挨拶をしてくる。

取り敢えず預かった鍵で首輪を外す。

 

『悪いな。』

 

「気にすんなや、んで、先生。 調子は?」

 

『よくも悪くもないね。 ジンの方は?』

 

「少なくともペストは患ってねえな。」

 

『そうかい、それは結構。 …しかし、相変わらず不健康的だな。 隈はいつ見ても取れないし、煙草も止めていないだろう?』

 

「いくら不健康でも、体調は崩さねえよ。 お前らがそれを望まねえ限りな。」

 

『そうだった。 君はそんな存在だったな。』

 

立ち上がった049は身長が190センチ以上あるので、さすがに威圧感がある。 俺も185センチと日本人にしては高い方だが。

 

「そんで、何か要求はあるか?」

 

『特に、かな。 君が月一で来てくれるならそれで十分だ。』

 

「そうか、そいつは重畳。」

 

他のSCPよりかは格段に理性的で、話を理解してくれるので049との会話は楽しい。

999程ではないが、こいつも好きなSCPの1人だ。

 

「まだ、周りはペスト患者に見えるか?」

 

『見える、じゃない。 彼らは悪疫を患っているのだよ。 ジンは違うようだが。』

 

「そうかい。」

 

ただ一点、周りの人間を全員ペスト患者と考えて、おかしな手術をしだすところは嫌いだが。

 

「んじゃあそろそろ時間だな、また会いに来るぞ。」

 

『もうか、残念だな… まあ、待っているよ。』

 

小さく手を振る049に鉄の首輪を掛け、柱に固定し直す。

 

「あばよ。」

 

部屋から出て、独房の扉を閉めて自室に向かう。

さて、明日から日本に出張だな…■■県の旧■■村か。



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