ラブライブ!ウルトラ伝説!私たちの光! (海神アグル)
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プロローグ

ごゆるりとお楽しみにください
ちなみに第三者視点はこれで→◎、表します

尚、この小説は台本形式です。



◎side

 

 

暗い夜道を一人の少年が歩いていた。

 

その少年の見た目は、かなりのイケメンだが髪が真っ白で、瞳は血のように赤く、左目は眼帯をしている。

 

髪型は若干パーマがかかっている。

 

「ああ、すごく眠い…」

 

少年は愚痴を言いながら、左手にはコンビニで買ったと思われる苺牛乳の入った袋を下げて歩いていた。

 

しばらく歩いて少年は自分の家の前につくと、おもむろに顔を上げた。

 

「今夜は荒れてるな……さっさと家の中に入ろう」

 

そう言って少年は自分の家に入った。

 

彼の名は、「天青竜司」

 

この家の主である。

 

竜司の言うとおり、今夜の天気はおかしかった。

 

空にはブラックホールのようなものが渦巻いていた。

 

まるで、近い未来に不吉なことが起こるのを予言しているかのように。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

翌日。

 

「ふああぁぁぁ~~~。よく寝た」

 

俺は小鳥の囀ずりが聞こえるなか、大あくびしながら起きた。

 

朝日の光が俺を照らす。

 

「鬱陶しいほどに眩しいなぁ~」

 

俺は忌々しいそうに言う。

 

朝に強い奴はそうでもないのだろうが、俺みたいに弱い奴にとっては鬱陶しい。

 

「さて…、二度寝するか…」

 

そう言って俺は、もう一度瞼を閉じる。

 

今日は学校だが、そんなのは俺の眠気の前では無意味だ。

 

どれくらい無意味かというと、どこかの怪盗の兄が「いい台詞だ。感動的だな。だが無意味だ」っていうくらい無意味だ。

 

それに今日はどうせ始業式だけだし、別にいいだろ…。

 

そう思って夢の中にダイブしようとしていると、

 

「りゅーーーーちゃぁぁぁあああん!!」

 

ドタドタと騒がしい声と音が、一階から聞こえてきた。

 

こんな事する奴は、あいつしかいない。

 

しばらくすると、バンッ!! という音ともに俺の部屋のドアを開けてきたのは、明るい茶髪を右にちょんまげのようにサイドテールにした、俺の幼なじみの女の子。

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂の制服に身を包んだ「高坂穂乃果」がいた。

 

 

 

 

「竜ちゃん、おっはよ~う!」

 

そう言いながら、俺の上にダイブしてきた。

 

「グハッ!?……おい…何しやがる…穂乃果?」

 

「えっ?何って、竜ちゃんを起こしに来たんだよ」

 

「そうか……。それは分かった…。だが、なぜ俺の上にダイブしてきた?」

 

「うーーーん?」

 

俺の質問に考える穂乃果。

 

「………その場の勢い…?…………テヘペロ☆」

 

ブチッ!!

 

その瞬間、俺のなかの何かがぶちギレた。

 

ガシッ!と、右手で穂乃果の頭を掴み、力を入れる。

 

「よう…穂乃果。やって良いことと、悪い事があるのは分かるよな…」

 

「ごめんなさいゴメンナサイごめんなさい!!!!」

 

ギリギリという音がするほど力をいれると、穂乃果は必死に謝ってきた。

 

なのですぐに離す。

 

「うぅぅー…。頭が痛いよぉー」

 

穂乃果は頭を抑えながら泣き言を言うが、それに構わず俺は「お前が悪い」と言う。

 

だが穂乃果は、

 

「でも、穂乃果が起こさないと、竜ちゃん今日は二度寝する気だったでしょ」

 

と、涙目の上目遣いで聞いてくる。

 

それに対して俺は全くその通りなので反論出来ない…。

 

仕方ない。

 

こうなった以上、二度寝は諦めよう。

 

「はぁ~~~。分かった分かった。起きて学校行きゃあいいんだろ?行きゃあ」

 

そう言うと穂乃果は「うん!!」と元気よく返事する。

 

全くこいつは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、俺は穂乃果と一緒に登校している。

 

俺達が通う音ノ木坂は、数年前までは女子高だったのだが、少子化に伴い共学になった。

 

しばらく道を歩いてると、見覚えのある四人の男女を発見した。

 

同じく穂乃果も気づいたようで大きな声で挨拶する。

 

「おーーーい!! 海未ちゃぁぁぁん!ことりちゃぁぁぁん!恭弥くーーーん!盾くーーーん!」

 

「あっ♪穂乃果ちゃん!おはよう」

 

「おはようございます穂乃果」

 

「あっ…おはよう…穂乃ちん」

 

「………」

 

四人それぞれの反応をする。

 

最初に穂乃果に反応したのは、「南ことり」

 

ベージュの髪で甘々な脳トロボイスが特徴の美少女。

 

次に、「園田海未」

 

青いロングの髪で、凜とした雰囲気の大和撫子な美少女。

 

3番目に、「土方盾」

 

紫色の髪で身長が2mもある男。

 

最後に、「朱雀恭弥」

 

線の細い黒髪の美少年だが、これでも中学の時は最強の不良と呼ばれていた。

 

しかも、音ノ木の風紀委員長。

 

その証拠に上から羽織っている音ノ木の上着の腕部分に腕章を付けている。

 

朱雀曰く、「面白そうだから」という理由でなった。

 

ちなみに俺含めて全員幼なじみだ。

 

「竜司もおはようございます」

 

「おはよう♪竜くん」

 

「おう…」

 

「おはよう…竜ちん。なんか相変わらず眠そうだね」

 

「いつもの事だ。…つーか、朱雀。お前挨拶くらいしろよ」

 

「やだ」

 

「コイツ……」

 

一瞬、朱雀にイラつきを覚えたが、すぐにことりが注意する。

 

「ダメだよ、キーくん。ちゃんと知ってる人ぐらいには挨拶しなきゃ」

 

「ふん…」

 

プッ!

 

ザマァ。

 

昔から、何故かことりには甘い朱雀。

 

何故かは知らんが、俺や盾、穂乃果と海未にはツンとした態度なのに、ことりには態度が軟化する。

 

あれか…?

 

「ことり」と「朱雀」。

 

どちらも鳥繋がりだからか?

 

「天青竜司…。今失礼な事考えてた?」

 

「いや、そんな事はない」

 

ヤベェェ…。

 

思い切り考えバレてるし…。

 

コイツ…変に勘がいいんだよなぁ~。

 

そんな会話をしていたら、学校に着き、教室に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のSHR

 

担任の話を半分聞き流し、始業式のために講堂へ。

 

そこでことりの母親、もとい理事長から聞かされたのは、来年度で音ノ木坂を廃校にするという話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジで……?

 

 

 

 




いかがでした?
ちなみに、まだウルトラマンたちは出てきません
多分、穂乃果がUTXへ行くときかな。


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キャラ設定



キャラ紹介です。



天青竜司《てんじょう りゅうじ》

 

モデルは「サーヴァンプ」のクロ。

 

身長は170㎝

左目に眼帯をしていて、右目の瞳は赤で髪が白い。

口調がどこぞの一方通行っぽい。

ヒロインは穂乃果。

性格はかなりの面倒臭がり屋で無責任。

だが自分に無いヒーロー像を持っているウルトラマンや仮面ライダーに憧れている為、困っている人をついつい助けてしまう。

穂乃果の最初にできた友人にして、初恋の人。

姉が6人、妹が3人いる。

 

CV:福山潤

 

 

 

 

土方盾《ひじかた しゅん》

 

見た目は「黒子のバスケ」の紫原敦。

 

身長は210㎝

竜司と同じくらい面倒臭がり屋。

海未が唯一初対面で怖がらなかった希有な人物。

お菓子大好き

ヒロインは海未。

 

CV:鈴村健一

 

 

 

 

 

朱雀恭弥《すざく きょうや》

 

見た目は「家庭教師ヒットマンREBORN」の雲雀恭弥。

 

身長は170㎝

性格は、モデルとなった雲雀と同じ。

でも群れ嫌いではない。

ことりに甘い。

ヒロインはことり。

 

CV:近藤隆

 

 

 

 

 

雨崎蒼燕『あめさき そうえん』

 

見た目は「ブリーチ」の一護の髪の色を蒼黒くした感じ。

 

身長は190㎝

性格は大雑把だが頭は良く、何気に成績は絵里を超えるほど。

海が好き。

絵里の幼馴染み。

絵里をからかうのが趣味になりつつある。

 

CV:森田成一

 

 

 

緋村茜『ひむら あかね』

 

見た目は「黒子のバスケ」の赤司を絵里より若干短いポニーにした感じ。

 

ヒロインは希。

 

身長は169㎝

希とは中学以来の友人で、孤独だった希にめげずに話しかけた事が切っ掛けで友人になり得た。

絵里とは、蒼燕を通じて知り合う。

将棋が得意で、その腕前は一流の棋士レベル。

後のマネージャー組の裏リーダー。

怒ると絵里や海未よりも恐い。

 

CV:神谷浩史

 

 

 

 

氷川 氷麗(ひかわ ひょうら)

 

見た目は「僕は友達が少ない」の小鷹。

 

身長は187㎝

髪の色は水色を基調に、側面が金髪。

性格はバカ&無鉄砲。

真姫の幼馴染み。

両親をそれぞれの仕事場の事故で失い、真姫の家で厄介になっている。

 

CV:木村良平

 

 

 

 

寺獄嵐助《じごく らんすけ》

 

見た目は「家庭教師ヒットマンREBORN」のGを茶髪にした感じ。

 

身長は170㎝

凛と花陽の幼馴染み。

料理上手。

凛のストッパー役で、そのせいで凛と花陽からは兄のように慕われる。

 

CV:小野友樹

 

 

 

 

 

火神イクス

 

見た目は「家庭教師ヒットマンREBORN」の10年後XANXUSそのもの。

 

身長は190㎝

嵐助と同じ、凛と花陽の幼馴染み。

顔に大きな傷があり、凶悪そうに見えるが、その実、花陽に対し異常に過保護。

よって嵐助同様に2人から兄のように慕われる。

 

CV:池田政典

 

 

 

 

地白虎亜《ちしろ こあ》

 

髪型がDEATH NOTEのニアで、目はパッチリ二重瞼の碧眼。

 

身長は170㎝

面倒見が良く、頭の回転も早いので、空気もそれなりに読める。

ニコとは小学校からの幼馴染みで、良き理解者。

 

CV:KENN



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1st Season Battle 叶え!私たちの夢――#1



アニメ一期の1話と2話に当たる部分をリメイクしてなかったので書き直しました。

加筆修正している部分はキャラの台詞ですね。



「廃校」

 

 

 

そう書かれ印刷され、掲示板に貼られたプリントの前にいるのは、俺、天青竜司と穂乃果、海未、ことり、盾の五人。

 

朱雀は風紀委員の書類とかを片付けるためにいない。

 

穂「う、嘘……」

 

こ「廃校って……」

 

海「つまり学校が無くなる、という事ですね……」

 

廃校のプリントを見た三人は驚愕に顔を染める。

 

まあ仕方ないか。

 

俺や盾はともかく、この三人はこの学校が好きだからな…。

 

すると突然穂乃果が後ろに倒れてきた。

 

竜「うおっ!? おい、どうした穂乃果!?」

 

たまたま後ろにいた俺が穂乃果を受け止める。

 

海「穂乃果!?」

 

こ「穂乃果ちゃん!?」

 

海未とことりも驚いて穂乃果に心配げに声をかける。

 

すると穂乃果は、

 

「わ…私の……私の輝かしい高校生活がぁぁぁ~!!」

 

と言って、気を失った…。

 

おい……ちょっと待て。

 

これどうすんだ?

 

海「気を失ったようですね……。すみませんが竜司。穂乃果を保健室に運んでくれませんか?」

 

竜「あァ?何で俺?」

 

わかっていてもつい聞いてしまう。

 

こ「竜くんが穂乃果ちゃんを丁度支えてるからだよ♪」

 

糞っ!!

 

予想通りの答えが返ってきた。

 

つーかことり、語尾に♪が付くくらいのトーンで言わないでくれ…。

 

竜「別に盾でもいいんじゃあ…」

 

そう思って隣を見るが………いない。

 

海「盾なら、お菓子を買いに行くと先程メールが来ましたよ」

 

クソッタレ!!

 

あいつ逃げやがったな!?

 

こ「それじゃあ竜くん♪お願いね」

 

竜「ウソダドンドコドーン」

 

クソッタレがァァァァ!!

 

何で俺がこんな面倒くさいことを!?

 

おかげでついオンドゥル語が出てきちまった!!

 

俺は穂乃果を抱えたまま、膝をついて項垂れた。

 

するとことりが耳打ちしてくる。

 

「それにね、竜くんに運んでもらった方が、きっと穂乃果ちゃん、喜ぶと思うの」

 

竜「はぁ?なんだそれ?」

 

疑問に思った俺はことりに聞くが、ことりはただ微笑むだけだった。

 

海「それじゃあ竜司。お願いしますよ」

 

こ「お願いね♪」

 

竜「はぁ……分かった。連れていきゃいいんだろ?」

 

仕方ないので、穂乃果を保健室に運ぶ。

 

お姫様抱っこで……。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

保健室に穂乃果を送り、ベッドに寝かせた後。

 

俺は教室に戻り、そのまま授業を受け、今は休み時間。

 

しばらく海未とことりと駄弁ってると、穂乃果が戻ってきた。

 

しかし何だか落ち込んだ様子だ。

 

そんなに廃校がショックだったのか?

 

いや待て……。

 

あの穂乃果だ。

 

それもあるが、他にも理由がありそうだ。

 

こ「あ……ほ、穂乃果ちゃん。大丈夫?」

 

穂乃果が帰ってきた事に気づいたことりが声をかけるが、そのまま気づいてないのか、はたまた聞こえてないのか知らんが、スルーして自分の席に座る穂乃果。

 

次の瞬間、顔を手で覆い「学校が無くなる…」とブツブツ言っている。

 

あぁ…これは。

 

おおよその察しがついた。

 

こ「穂乃果ちゃん、凄い落ち込んでる。そんなに学校好きだったなんて…」

 

竜「いや、違うな…」

 

海「竜司の言うとおりです」

 

こ「ふぇ?」

 

どうやら海未も俺と同じ考えのようだ。

 

竜「多分、廃校が夢だと思ってたのに気がついて教室に戻ろうとしたら、廃校のプリントが大量に貼ってあるのを見てしまい、現実を突きつけれた。さらに廃校がすぐだと思い、編入試験の事に頭を悩ませている。ってところだ」

 

こ「ふぇぇ~。すごいね竜くん」

 

海「すごいです竜司!寸分違わず私と同じ考えです!」

 

竜「こいつほど考えの分かりやすい奴はいない」

 

俺がそう海未とことりに自分の考えを披露してると、突然穂乃果は頭を上げ、

 

「どうしよぉぉぉぉう!? 全然勉強してないよぉぉぉおお!! うう~…!!」

 

と言う。

 

突然の事にことりは「えっ?」と面食らう。

 

そして穂乃果は続けざまに言う。

 

「だって、学校無くなったら別の高校入らなくちゃいけないんでしょ!? 受験勉強とか、編入試験とか!?」

 

とまあ、わんわん泣きわめく。

 

そんな俺の考えが見事に的中した穂乃果に対して俺は「ほらな…」という目線を向け、ことりは苦笑い、海未は「やはり…」と呆れに近い溜め息。

 

こ「穂乃果ちゃん落ち着いt…」

 

穂「ことりちゃんと海未ちゃんと竜ちゃんはいいよ!! そこそこ成績いいし…。でも私はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ことりが落ち着かせようとするが、穂乃果は逆にさっきよりもわんわん泣きわめく。

 

なんか捨てられた仔犬みたいだ。

 

竜「俺はともかく、海未やことりはかなり成績いいだろ。後、朱雀も。ああ見えて盾もなかなかいいしな」

 

海「竜司も今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ!!」

 

何故か海未に怒られた…。

 

解せぬ。

 

するとことりが俺に耳打ちする。

 

「あのね竜くん。穂乃果ちゃんを落ち着かせる方法だけど…コショコショ…」

 

竜「はぁ…?そんな方法で本当に落ち着くのか?」

 

こ「いいからいいから♪やってみて♪」

 

ことりは俺に穂乃果を落ち着かせるための方法を伝えてきた。

 

ただ、それでいいのか?とは思う作戦だが…。

 

こうしている間も穂乃果はわんわん泣き喚いている。

 

俺は穂乃果に近づき、穂乃果の肩を持ってこちらに向かせる。

 

今、俺と穂乃果の顔はすぐ間近。

 

キスをしようと思えばできる距離。

 

そのせいか、穂乃果の顔は若干赤い。

 

海未は「ハレンチです!」とか言いそうな雰囲気で顔を手で覆い、ことりはニヤニヤしている。

 

そして俺は、ことりから言われた作戦の言葉を言う。

 

「穂乃果。大丈夫だ。ずっと俺が面倒見てやるから。何も心配するな」

 

それを真顔で言った。

 

その瞬間、穂乃果は顔を真っ赤にしながら辿々しく言う。

 

「す、す、末長くお願いします……うへへへ///」

 

それを見て海未は「ハレンチです!」とのたまい、ことりは相変わらずニヤニヤしている。

 

というか穂乃果。

 

何故嬉しそうに笑うんだ?

 

そして海未に至ってはついに「ハレンチです!」って言っちゃった。

 

やはり色々と解せぬ…。

 

盾「ナニコレ……?どういう状況?」

 

やっと盾が帰ってきた。

 

遅いぞ…。

 

 

 

 



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叶え!私たちの夢――#2



キャラの台詞以外にも、蒼燕sideになってからの会話も加筆修正してます。



穂「は~む!」

 

こ「学校が無くなるにしても、今いる生徒が卒業してからだから、早くても3年後だよ」

 

穂「よかった~。いや~、今日もパンが旨い!

 

そう言いながらラ〇〇〇ックなるものを食べている穂乃果。

 

あの後なんとか廃校の詳細を詳しく教えたら落ち着き納得した。

 

ただ、あれから妙にくっついてくる。

 

ナジェナンディスカ!?

 

そして今は中庭の大きな木の下のベンチで昼食中。

 

竜「お前またパンなのか?太るぞ?」

 

穂「だって美味しいんだもの!竜ちゃんも食べる?」

 

そう言って一つ渡してこようとする。

 

竜「いらねぇよ」

 

穂「そっかぁ…残念」

 

俺にはカップ焼きそばがあるからな。

 

ちなみに電気ポットを持参して湯を沸かしている所を見た穂乃果たちは、「そこまでして食いたいか?」という目線を向けてきたが、そんな事は知った事ではない。

 

こ「でも、正式に決まったら、次から1年生は入ってこなくなって、来年は二年と三年だけ……」

 

海「今の1年生は、後輩がずっといない事になるのですね……」

 

穂「そっかぁ……」

 

悲観的な空気が漂うその時、「ねぇ」と声をかけられた。

 

そこには、

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっといい?」

 

 

 

 

 

 

美しい金髪をポニーテールにした、上級生と思われる女生徒がいた。

 

途端に「は、はい!」と言いながら慌てて立ち上がる穂乃果達女子3人。

 

誰だこいつ……?

 

そう思っているのは俺だけじゃないみたいで、穂乃果と盾もそんな顔をしていた。

 

金髪の人の後ろには、盾と同じ紫髪でお下げっぽいツインテールをした女生徒と、身長が180㎝もある青っぽい黒髪の男子、そして赤い髪を金髪の人と同じくポニーテールにした男子の3人がいた。

 

赤髪のヤツは165㎝くらいか…?

 

なんか目付きがどこぞの天帝みたいだ。

 

つーか……女生徒の方はともかく、男子は二人とも知ってる奴だ。

 

むしろ知り合いだ。

 

穂「誰?」

 

海「生徒会長ですよ」

 

小声で海未に質問する穂乃果。

 

なるほど、この金髪が生徒会長か…。

 

「南さん」

 

こ「はい!?」

 

「あなた確か、理事長の娘よね?」

 

こ「は、はい……」

 

「理事長、何か言ってなかった?」

 

こ「いえ。私も、今日知ったので……」

 

「そう。ありがとう」

 

「ほな~」

 

質問するだけして生徒会長はその場を去ろうとする。

 

しかし穂乃果が呼び止めて質問する。

 

「あの!本当に学校、無くなっちゃうんですか?」

 

「……あなた達が気にする事じゃないわ」

 

そう言って今度こそ去ってゆく。

 

なんかかなり厳しい人だな。

 

そして一番面倒なタイプだ。

 

「「「…………」」」

 

三人は落ち込んだ。

 

それもそうか。

 

自分達もこの学校の生徒なのに、ああ言われたらな…。

 

すると、この場に残っていた赤髪の男子が近づき、

 

「気にしないでくれ。絢瀬も気が動転してるんだ」

 

と言ってきた。

 

続いて青黒髪の男子もフォローしてきた。

 

「本当はすごく優しい奴だから、悪く思わないでやってくれ」

 

穂「あ、いえ、大丈夫です」

 

赤髪の男が微笑んで言う。

 

「ん、なら良いんだが…」

 

竜「それより何でお前らがここにいるんだ?」

 

穂乃果達に対するフォローが終わったのを見計らい、声をかける。

 

竜「なぁ……蒼燕、茜」

 

穂「知ってるの?竜ちゃん」

 

竜「まぁな…。盾と朱雀もこの二人と知り合いだ」

 

海「そうなのですか?盾」

 

盾「まあね」

 

俺の問いに答えたのは、赤髪ポニーテールの男子『緋村茜』だ。

 

茜「何でって…俺達二人も生徒会の人間で、この学院の生徒だからだ」

 

竜「はぁ?お前ら違う高校に行くんじゃなかったのか?」

 

俺の高校への質問に答えたのは、青黒髪の男子『雨崎蒼燕』だ。

 

蒼「それなんだが、絵里…あっ、生徒会長の名前な。絵里に誘われてな……」

 

なるほどな。

 

蒼「ちなみに虎亜もいるぜ。一年の方は、寺獄や火神に氷川がいるぜ」

 

竜「そうか…あいつらも」

 

盾「へぇ~、すごい偶然だね~」

 

いや、偶然すぎるだろ。

 

まさかあのメンバーのうち六人もいるとは。

 

蒼「じゃあそろそろ俺達も「蒼えーん!何してるの!? 早く来なさぁぁぁい!!」…呼び出しだ。じゃあな」

 

竜「ああ…」

 

茜「また」

 

盾「じゃあね~」

 

別れを告げると、2人はそちらに行った。

 

穂「竜ちゃん…あの先輩達とはどこで知り合ったの?」

 

竜「………とあるネトゲのオフ会」

 

「「「……へっ?」」」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

竜司達と別れた後、急いで緋村と一緒に絵里の元へ戻った。

 

絵里はこの学院の生徒会長をしている俺の幼なじみだ。

 

絵「何してたの?蒼燕」

 

戻るとなんか不機嫌になっている。

 

というか……膨れっ面?

 

何故?

 

すると副会長の東條が言ってくる。

 

「蒼燕くんが、あの子達と仲良く話してたから、エリチ嫉妬してるんよ」

 

なるほど。

 

すると絵里は慌てて弁明してくる。

 

「ち、違うの!違うのよ蒼燕!! べ、別に嫉妬とかしてないから!! そんなんじゃ無いから!! もう!希もなんて事言うのよ!!」

 

蒼「大丈夫だ絵里。俺は全部分かってるから」

 

「蒼燕……」

 

絵里は若干頬を赤くしている。

 

俺はそんな絵里の頭に手を乗せ、撫でながら言う。

 

「寂しい思いさせちまったみたいだな?お前は昔からそういう所あるしな」

 

絵「ち、違っ!!」

 

黒歴史的な事を暴露すると、絵里は先程以上に顔を真っ赤にして否定してきた。

 

ちょっと面白いな。

 

蒼「そんな絵里に朗報だ。朝まで隣のホテルで語り明かそうか?」

 

絵里の肩を組んでそんな冗談を言うと、絵里は真っ赤な顔を俯かせてプルプル震え、次の瞬間…

 

 

 

「蒼燕のバカ!エッチ!エリチカもうおうち帰るぅぅうううう!!!!」

 

 

 

と言って逃げ出した。

 

蒼「………何故だ?」

 

何故逃げる?

 

まさか真に受けたのか?

 

相変わらず可愛いやつめ。

 

絵里が逃げた先を微笑ましく見ていると、緋村と東條から憐れみの視線を向けられているのを察知した。

 

おい、なんだその視線は?

 

茜「蒼燕。今のはアウトだぞ」

 

希「そうやね。下手したらセクハラやね」

 

なん…だと…?

 

 

蒼燕side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

穂「入学希望者が定員を下回った場合、廃校にせざるを得ないって発表にはあったよね?って事は、入学希望者が集まれば、廃校にはならないって事でしょ?つまり、この学校のいい所をアピールして、生徒を集めればいいんだよ!」

 

という穂乃果の発案で廃校を阻止するために音ノ木坂のいいところを探しだして、今は教室。

 

とりあえず各々でいいところをそれぞれ挙げようという所だ。

 

竜「いい所ってどこだよ?」

 

穂「えーと、歴史がある!」

 

竜「なるほど」

 

海「他には?」

 

穂「他に!?………伝統がある!」

 

海「それは同じです…」

 

穂「えー!? じゃあ、じゃあ……えーん!ことりちゃ~ん!」

 

こ「うーん?強いて言えば~、古くからあるって事かな~?」

 

朱「ことり、園田海未の話、聞いてた?」

 

ことりの天然スキルボケに朱雀のツッコミが入る。

 

あの後、学校内のいいところを探すために探索してる内、風紀委員の仕事が終わった朱雀を発見した。

 

そして無理矢理、俺達のパーティーに加えた。

 

露骨に不機嫌な顔になったが、ことりが涙眼の上目遣いで胸元を強調した、通称:ことりのお願いを受けて、かなり悩んだ挙げ句、渋々協力してくれた。

 

ちなみに、これの余波を受けた海未が気絶したが、盾のおかげで無事復活した。

 

こ「あ、でもさっきキーくんと一緒に調べて、部活動では少しいいとこ見つけたよ」

 

穂「本当っ!?」

 

朱「まぁ……ね」

 

なんだか朱雀にしてはやけに歯切れが悪く、ことりも苦笑いしている。

 

こ「といっても、あんまり目立つようなのは無かったんだ~。うちの高校の部活で最近一番目立った活動と言うと……」

 

そう言って資料を取り出す。

 

こ「珠算関東大会6位」

 

穂「失礼かもしれないけど…」

 

竜「微妙過ぎだろ」

 

こ「合唱部地区予選奨励賞」

 

海「もう一声欲しいですね…」

 

こ「最後は~、ロボット部書類審査で失格」

 

盾「そんな部があったんだ~」

 

穂「だぁめだぁ~……」

 

朱「そもそも目立つ部活があれば、廃校になんかならないよ。それに共学になっても全校生徒あわせて男子はたったの九人だよ」

 

こ「そうだね……」

 

確かにそうだと言える。

 

部活関係ならアピールになると思ったが、良い所があるなら最初から生徒はもう少し入ってくるはずだ。

 

何も出来ないという不甲斐なさからかは知らンが、穂乃果がしゃがみ込ンでしまう。

 

あれだけ張り切ってこれだもンな。

 

こ「家に戻ったら、お母さんに聞いて、もう少し調べてみるよ」

 

ことりが心配そうに穂乃果に言うが、あまり好感触ではないようだ。

 

穂「……私、この学校好きなんだけどな…」

 

こ「……私も好きだよ」

 

海「私も……」

 

そう言って落ち込む三人。

 

…ったく、仕方ねぇな。

 

竜「なあ、穂乃果」

 

穂「ん?」

 

竜「元気出せよ。俺に出来ることあるなら手伝ってやるから。だからな、そんなに落ち込むな。俺もこっちの方で何か無いか調べてみるから…」

 

メンドクセェけど、穂乃果の笑顔を守れるならやるしかない。

 

穂「竜ちゃん…。竜ちゃああああああん!!!!」

 

竜「ウオッ!? 急に抱きつくなよ…」

 

穂「えへへ~ごめぇぇん」

 

よほど感動したのか抱きついてきた穂乃果。

 

海「相変わらずですね、この二人の仲は」

 

こ「そうだね~」

 

微笑ましそうに見てんじゃねぇ!!

 

朱「じゃあ、そろそろ僕は帰るよ」

 

盾「俺も~」

 

こ「そうだね」

 

海「時間も時間ですし」

 

竜「そうだな。穂乃果、俺達も帰るぞ」

 

穂「うん!わかった!!」

 

とりあえず今日の所は全員帰ることになった。

 

そして六人とも、それぞれの帰路につく。

 

といっても、俺と穂乃果は家が真正面。

 

海未と盾はお隣さん。

 

朱雀とことりも一緒なもんだ。

 

なので、結果的に俺達男子組が女子組を送る事になった。

 

 

 



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叶え!私たちの夢――#3






その夜。

 

俺は晩御飯を食べて、風呂にも入り、後は寝るだけなのだが、まだ時間的にも早いために再放送のウルトラマンを観ていたのだが、途中で俺のスマホが鳴り響いた。

 

しかも丁度いいところでかかってきたので、不機嫌さ丸出しで出てしまった。

 

竜「あ゛ぁ゛…もしもしぃ…?」

 

『ひっ!?』

 

穂乃果からだった。

 

ただ、俺の不機嫌な声を聞いて、小さく悲鳴を上げたが…。

 

竜「なんだよ穂乃果?」

 

『あっ…あのね竜ちゃん。今いい?』

 

竜「…どうしたんだ?」

 

『うん…あのね…』

 

穂乃果の用件はこうだ。

 

穂乃果はあの後、家に帰ったのだが、穂乃果の妹雪穂が音ノ木ではなく最新の進学校UTXを受けることにショックを受けて、雪穂に音ノ木を受けるように言うが、雪穂曰く「廃校になる学校を受けてもしょうがない」との事。

 

まあ、そりゃそうだな。

 

穂乃果の母親である、夏穂さんもそれを認めているとのこと。

 

しかし夏穂さんもやっぱり自分の通っていた母校が無くなるのはちょっと悲しいみたいで、アルバムを懐かしそうに、でも悲しげに見ていたこと。

 

それで穂乃果の廃校を阻止したい気持ちがますます上がったとの事。

 

で、ここからが本題。

 

『竜ちゃん、明日UTX行ってみない?』

 

竜「はっ?」

 

『UTXがどうやって生徒を集めているのか、行けば何か分かるかもと思って…』

 

竜「なるほどな…」

 

穂乃果の考えはいいと思う。

 

UTXは最近建てられた私立校だが、何かしらの人気のある事をしなければ、あそこまでの人気にはならない。

 

見学すれば何かしらヒントを得られ、そこから解決策を見いだせるかもしれない。

 

俺は了解の旨を伝える。

 

竜「いいぜ…穂乃果。明日行ってみるか?」

 

『いいの!?』

 

竜「ああ」

 

『やったぁぁぁ!! 竜ちゃん、ありがとぉぉぉ!!』

 

竜「わかったから、耳元で叫ぶな…」

 

『うん!じゃあ、おやすみ竜ちゃん!!』

 

竜「ああ…」

 

そう言って穂乃果は電話を切った。

 

さて……明日はどうなることやら?

 

あっ……ウルトラマン……終わってんじゃん…。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

海未たちに先に行ってて欲しい旨を伝えて、UTXに来た。

 

来たはいいが、これは本当に学校なのか…?

 

見た目はただのでかいビルだ。

 

さすが、人気の進学校。

 

金かけてるな……。

 

しかも設備も充実している。

 

中に入るのに学生証を切符みたいに翳して入るみたいだ。

 

これで部外者は簡単に入れないな…。

 

その凄さに穂乃果は顔をくっつけ凝視している。

 

………とりあえずみっともないので引き離す。

 

竜「おっ?穂乃果ちょっと来い」

 

穂「ヘッ?なに?」

 

竜「あれ……」

 

俺は穂乃果を連れて、UTXの入り口についてる大画面のモニターを見るよう促す。

 

そこには、UTXにようこそ的にアピールしている三人の女の子が映っていた。

 

この学院が大人気になった大元…スクールアイドルのA-RISEが映っていた。

 

しかし穂乃果は「何あれ?」的な感じで俺を見る。

 

こいつ…なにも知らないのか…?

 

俺でもそれなりに調べて来たんだか……。

 

そう思っていると、沢山の人だかりが歓声を上げる。

 

どうやらA-RISEが新曲を披露するようだ。

 

すると穂乃果の隣に春先とはいえ暑いはずなのに、コートにグラサン、マスクをした小柄なツインテールの女の子が来た。

 

 

 

 

 

……ナニコレ?不審者?いや、確実に不審者だ。

 

正直怖い。

 

穂乃果も絶句している。

 

しかしそんな不審者少女に穂乃果は、

 

「あ、あのぉ~…」

 

と話かけやがった。

 

嘘だろ穂乃果。

 

話かけられた少女は「何!? 今忙しいんだけど」と不機嫌に返してくる。

 

それに対し穂乃果は質問する。

 

「ぁ、あの、質問なんですけど……あの人達って芸能人とかなんですか?」

 

すると少女は「はぁ!?」と驚きの声をあげ、穂乃果は思わず「ひぃ!?」と怯えた声をだす。

 

「アンタそんな事も知らないの!? そのパンフレットに書いてあるわよ!どこ見てんの!?」

 

穂「す、すみませぇーん!」

 

「A-RISEよ、A-RISE」

 

穂「A-RISE?」

 

「スクールアイドル」

 

穂「アイドル?」

 

不審者少女の言葉に穂乃果は不思議そうに首を傾げた。

 

その行動に俺は思わず、

 

「穂乃果。お前本当になにも知らないんだな」

 

と言ってしまった。

 

それを聞いた穂乃果は「竜ちゃん知ってるの?」と聞いてきた。

 

仕方ないので簡単に説明する。

 

竜「まあ、要するに学生で結成されたアイドル、それがスクールアイドルだ」

 

そう教えると穂乃果は「へー」と感心の声をあげ、A-RISEのPVを観る。

 

しばらく観ていると隣でパサッという音がした。

 

見ると隣の穂乃果がパンフレットを落としたらしい。

 

その顔が衝撃に彩られていた。

 

俺は「穂乃果?」と声をかけるが返事が無く、代わりに聞こえてきたのは穂乃果の「これだ」という声…。

 

次の瞬間、穂乃果は俺に向かって、

 

「見つけた!! 竜ちゃんこれだよ!?」

 

と、見惚れる程の満面の笑顔で言ってきた。

 

この時、俺は悟った…。

 

ああ…絶対メンドクセェ事に巻き込まれるな、と。

 

そう思ってたのも束の間。

 

 

 

 

ズドン!!

 

 

 

 

という何かが落ちた音の後に、地面が激しく揺れる。

 

その揺れの大きさに俺だけではなく、穂乃果も不審者少女も、他の人達も皆立つことが出来ず、倒れる。

 

竜「うおっ!」

 

穂「キャッ!」

 

しばらく続いたが、やっと収まる。

 

少し様子を見てから穂乃果に声をかける。

 

竜「穂乃果、大丈夫か?」

 

穂「うん、何とか」

 

幸い怪我はないみたいだ。

 

不審者少女も「なんなのよ、もう!!」と言って立ち上がる。

 

「かよちん、嵐兄、イクス兄、大丈夫?」

 

「ああ、何とか」

 

「大丈夫だよ。凜ちゃんは?」

 

「大丈夫にゃ!!」

 

という声もする。

 

……なんかさっき知り合いの名前が聞こえたが……まあいい。

 

穂「一体何が『ギギィィィィイイ!!』……えっ?」

 

穂乃果が周囲を確認しようとすると突然聞こえた謎の鳴き声。

 

それに他の人達も固まる。

 

ゆっくりと俺は鳴き声が聞こえた方向、後ろを確認する。

 

ここから数キロの地点。

 

落下地点と思われる場所に、

 

 

 

 

 

ヤツはいた…。

 

 

 

 

 

 

頭から背中にかけて、無数の突起物。

 

腕は脚に比べて、極端に短い。

 

凶暴な顔つきの巨大な生物。

 

 

 

 

 

 

 

いわゆる怪獣がいた。

 

 

 

 

 

穂「な…何で怪獣がいるの!?」

 

穂乃果は唖然としている。

 

穂乃果の気持ちも分かる。

 

怪獣は空想の産物。

 

テレビの中だけの存在。

 

それがこうして現実にいるわけだから。

 

しかもあれは。

 

竜「宇宙怪獣…ベムラー」

 

そう、空想の特撮ヒーロー「ウルトラマン」に出てきた最初の怪獣・ベムラーだった。

 

「ギギィィィィイイ!!」

 

ベムラーは再び叫ぶ。

 

その声に我に返った人達が一斉に逃げ出す。

 

たちまちUTXの前は悲鳴と怒号の嵐になる。

 

しかもベムラーはよりにもよって、こっちに向かってきた。

 

それがより人々に混乱を招く。

 

「どけぇぇぇ!!」「押さないでよ!!」「早く行けぇぇ!」

 

などと荒れ狂う状況に。

 

俺も穂乃果の手を引っ張り逃げようとするが、なかなか前に進めない。

 

穂「うぅ……竜ちゃぁぁん……。やだよぉぉ…怖いよぉぉ…」

 

竜「穂乃果……。大丈夫だから。俺がずっとそばにいる……」

 

涙目の穂乃果を気休め程度だが、元気づける。

 

そんな時、俺は後方に中学生くらいの女の子が転んでいる姿を発見した。

 

しかもベムラーとは1キロの距離。

 

竜「糞っ!!」

 

穂「竜ちゃん…?」

 

俺の様子に疑問を持った穂乃果が聞いてきた。

 

女の子の事は誰も構わない。

 

皆ただ逃げ続けている。

 

分かってる…皆、死にたくないから…。

 

俺だってメンドクセェし、できれば穂乃果だけを守る方に費やしたい。

 

でも……

 

 

 

 

 

 

「お母さーん!どこぉ!? お母さーん!!」

 

 

 

 

 

見過ごす事なんてできない。

 

 

 

 

竜「はぁ~、最悪にメンドクセェ…」

 

穂「竜ちゃん…?」

 

竜「穂乃果。お前は先に逃げてろ。俺はあの転んでる子を助けに行く」

 

俺は穂乃果に先に逃げるよう伝える。

 

穂乃果は俺が顔を向けてる方に同じく顔を向けると、状況が分かったのか強く反対してきた。

 

「ダ、ダメだよ竜ちゃん!! もう怪獣がすぐそこまで来てるんだよ!? 今行ったら竜ちゃんが死ぬかもなんだよ!?」

 

「それでも!!……助けられる命があるなら、俺は助けたい」

 

「竜ちゃん……」

 

俺の決意を聞き黙ってしまう穂乃果。

 

竜「大丈夫だ…。言っただろ?お前のそばにいるって。必ず帰ってくるから…。約束する」

 

穂「…………分かった…。絶対だよ。約束だよ」

 

竜「ああ」

 

穂乃果は最後まで心配そうな顔で見ていたが、なんとか納得してくれた。

 

穂乃果のためにも約束守らないとな…。

 

俺はすぐさま全力疾走で女の子の元へ走る。

 

 

竜司side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 

穂「竜ちゃん…」

 

私は女の子を助けるために怪獣ベムラーの近くへ行く、白い髪を靡かせる大切な幼なじみの背中を見送る。

 

竜ちゃんは昔からそうだ。

 

人一倍面倒臭がり屋なのに、困ってる人を見過ごす事ができない人。

 

私も昔から何かあると、竜ちゃんに助けてもらってた。

 

私は、そんな竜ちゃんにいつの間にか恋心を抱いていた。

 

でもいざ告白しようとすると、なかなか言い出せなかった。

 

今はまだ大丈夫。

 

必ずちゃんと伝えよう。

 

そう思ってずるずる引っ張っていたら、こんな事になっちゃった。

 

そして今度は竜ちゃんをわざわざ死に向かわせるような事をしてしまった。

 

穂「私ってホントダメだなぁ~…」

 

そんな事を思い、ネガティブ思考になるけど、

 

穂「って、こんな事じゃダメだよ私!! 必ず竜ちゃんは帰ってくるって約束してくれたもん!!」

 

すぐに自分を鼓舞して、前向きになる。

 

大丈夫。

 

竜ちゃんなら大丈夫。

 

信じよう。

 

そう思い、私は竜ちゃんに言われた通り、先に避難する。

 

 

穂乃果side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

竜「はぁはぁ…いた!!」

 

俺は全力疾走して、中学生くらいの女の子の元へたどり着く。

 

女の子は膝を抱えて泣きじゃくっていたが、俺が来た事で顔を上げる。

 

顔立ちは、将来美人になる事が約束された可愛い顔。

 

髪はワインレッド色のストレート。

 

俺は膝を着きながらその子に質問する。

 

「はぁはぁ…お前、大丈夫か?」

 

「うん…。お兄さんは?」

 

「俺は天青竜司。お前は?」

 

「梨子…。桜内梨子です…」

 

女の子は梨子というらしい。

 

俺は梨子を立たせる。

 

竜「んじゃあ梨子。ここは危ないから向こうへ避難するぞ」

 

梨「はい!」

 

梨子は俺が来た事によって安心したのか、笑顔になる。

 

良かった。

 

俺は梨子をお姫様抱っこで抱える。

 

その際彼女は「ええぇぇ!!!?////」と顔を赤くして恥ずかしがるが、俺は気にせず言う。

 

竜「んじゃあ行くぞ」

 

梨「は、はい!」

 

そしていざ避難しようとしたら梨子が、

 

「お兄さん危ない!!」

 

と言って、俺の後ろを指差す。

 

何だ?と思って振り向くと、そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

ベムラーの吐いた熱線が迫ってきていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

竜「糞っ!!」

 

俺は咄嗟に梨子の体を制服の上着で包み、熱線が当たらないビルとビルの隙間に放り込んだ。

 

これで彼女に怪我を負わせる事はない。

 

後は……………。

 

振り向いた俺の目の前に熱線の光が映る。

 

ごめんな………穂乃果。

 

約束守れそうにない。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

ベムラーが竜司と梨子に向かって熱線を吐いた時、竜司達の真上遥か上空に、ソレはいた。

 

ソレは赤い光の球だ。

 

赤い球はまっすぐ梨子を突飛ばした竜司に向かっていた。

 

『なんて勇敢な少年なんだ…。このまま彼を見殺しにはできない!…それに、彼ならば私と共に戦ってくれるかもしれん』

 

そして赤い球はベムラーの熱線が、竜司に到達する前に竜司を包み込んだ。

 

 

◎side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 

穂「竜ちゃん!!!!!?」

 

私は焦っていた。

 

竜ちゃんに向かってベムラーの熱線が迫ってきていた。

 

もうダメだ……。

 

私のせいで竜ちゃんが死んじゃう。

 

こんな事になるなら、私も竜ちゃんについていけば良かった。

 

ううん…………。

 

例えついていっても、竜ちゃんなら私をどんな手を使っても守ろうとしたと思う。

 

穂「竜ちゃん……」

 

もう諦めかけていた、その時。

 

私の目に赤い輝きが入ってきた。

 

穂「あれって……………?」

 

他の避難していた人達も唖然としている。

 

それを見た時、私の心は希望に満ちた。

 

 

 




さて、後書きの時間だ。

今回で第1話は終わらせるつもりだったが、



スマン…無理だ。

なので次回に持ち越します

それでは、サラバ!!

あっ、何か質問があるなら、気軽にどうぞ


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叶え!私たちの夢――#4






竜司side

 

 

「……あン?何処だここ?」

 

もしかして遂に俺は死んだのか?

 

そう思いながら周りを見渡すと、一面真っ赤な空間が広がっていた。

 

時折、光の瞬きもある。

 

まァそんな事はどうでもいい。

 

あの子は、梨子は大丈夫なのか?

 

穂乃果は無事なのか?

 

俺の頭にはそれしか浮かばない…。

 

そんな事を考えていると、誰かに声をかけられた。

 

「やあ、気がついたみたいだね」

 

その方向を見ると、ある意味有名人な存在がいた。

 

「無事で何よりだ」

 

赤と銀の二色のシンプルカラーで、人の目にあたる部分は乳白色に輝き、何より一番目を引くのは円形の青い水晶のようなものがついてる。

 

言わずと知れたヒーローで、俺が今でも憧れている存在。

 

「ウルトラ…マン…?」

 

俺は思わず思考が停止した。

 

なんせ現実にいない筈のヒーローが、それっぽい空間でこんな俺に話しかけていたから。

 

「まずは落ち着いてくれないか?竜司」

 

「えっ?あっ…おう…」

 

ウルトラマンの一言で落ち着いた俺。

 

何で名前知ってるの?とか、何であんたがここにいるの?とか、色々言いたい事があるが、そんなのどうでもいいくらいに落ち着けた。

 

さすがは歴戦の勇士ってところか?

 

「まずは私の事を知っているようだが、改めて自己紹介をさせてほしい。私はM78星雲・光の国からきたウルトラマン。よろしく」

 

「天青竜司だ……」

 

「うむ。では次に、君の力を貸してほしい。頼めないか」

 

「それって、要するに戦わない時は俺と一体化して、エネルギー消費を抑えるってヤツか?」

 

「その通りだ。どうだろう…?」

 

「……いくつか質問があるんだが、何でテレビの中だけの存在であるアンタがこの世界にいるんだ?それと、何で俺なんだ?」

 

俺はそう質問する。

 

自慢じゃないが、俺はヒーローに憧れていても決してヒーローにはなれないと思っている。

 

何故なら俺は極度のものぐさで、無責任な性格だから。

 

だからこその問いだった。

 

「まず1つ目の質問だが、確かにこの世界では我々は存在しない、テレビの中だけの存在だ。だが、この平和な世界にバルタン星人が多くの怪獣や宇宙人を連れて、侵略しにきた。それを我々は次元の壁を越えて来たのだ。二つ目の質問だが、君を選んだのは、君のベムラーを相手にしても全く怯まず、勇敢に女の子を助ける勇気に感動したのだ!」

 

右腕を立てて、力説するウルトラマン。

 

そこまで俺を買ってくれているのか?

 

「なァ……ウルトラマン。俺はかなりの面倒臭がり屋で、無責任な人間だぞ?それでもいいのか?」

 

「大事なのは、誰かのピンチにすぐさま動ける勇気だ」

 

ウルトラマンはそう言ってきた。

 

チッ……こんな俺がヒーローになるなんて土台無理な話だと思ってたんだが……。

 

「……いいぜ、ウルトラマン。俺は俺の力をアンタに貸す。だから、アンタもアンタの力を貸してくれ」

 

「交渉成立だな」

 

そう言って、ウルトラマンは何かを光に載せて俺に送ってきた。

 

それはカプセルのようなものだ。

 

「これは……ベーターカプセルか?」

 

そう…ウルトラマンの変身アイテムを、わざわざウルトラマンは俺に渡してくれた。

 

「私から君への信頼の証だ」

 

「そうかよ……」

 

そして俺はベーターカプセルを上に掲げ、ボタンを押す。

 

瞬間、100万ワットの輝きが溢れた。

 

 

竜司side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 

穂「竜ちゃん…どうなったの?」

 

竜ちゃんの上に赤い光の球が到達して早数分。

 

依然としてなんの変化もない。

 

ベムラーは自分の放った熱線が途中で赤い球に遮られ、しかも自分に跳ね返ってきたので地面に揉んどり打っていたけど、すぐに立ち上がり、後ろに下がって様子を見ている。

 

でもなんの変化もないから、ついに叫び声を上げて突進しようとする。

 

「ギイィィィィィイ!!」

 

危ない!!

 

そう思った時、赤い球が徐々にその形を人型に変える!

 

もしかして!?

 

「ギ!? ギギイィイ!!」

 

ベムラーは驚いて突進を中断する一方で、赤い球から出てきたのは、赤と銀の二色のシンプルカラーで、右腕を上に伸ばし、左腕を曲げて頭の横につけてる、誰しも知ってる光の巨人。

 

 

 

 

「ヘァッ!!」

 

 

 

 

 

『ウルトラマン』が現れた!

 

穂「すごい……本物のウルトラマンだぁぁ!!」

 

私は思わず興奮して叫んでしまう。

 

でもそれは私だけじゃなく、他の人達もそれぞれみんな、興奮の言葉や感動の言葉、安心の言葉を叫んでいる。

 

ウルトラマンは構えを解くと、おもむろにとあるビルとビルの隙間に手を突っ込み、何かを握っている。

 

そして、こっちに来て何かを握っている右手を地面につけ、その手を開く。

 

そこには中学生くらいの女の子がいた。

 

穂「あの子…竜ちゃんが助けに行った……」

 

すると、その女の子の母親と思われる女性が走って来て、

 

「梨子!!」

 

「お母さん!!」

 

女の子を抱き締める。

 

良かった。

 

あの女の子、無事だったんだね。

 

穂「あっ!そうだ!」

 

竜ちゃんは大丈夫かな!?

 

私は竜ちゃんの事をウルトラマンに訊ねる。

 

穂「ウルトラマ~ン!! 竜ちゃんは!?」

 

それに対し、ウルトラマンは大丈夫という感じに頷く。

 

良かったぁ~。

 

竜ちゃん無事なんだ…。

 

ウルトラマンはすぐにベムラーのいる方へ体を向けて数歩ほど歩き、腰をどっしり落とした前傾姿勢のポーズをとる。

 

ついにウルトラマンの戦いが始まるんだ…。

 

ウルトラマン、頑張って!

 

「ヘァッ!!」

 

「ギイィィィイ!!」

 

 

穂乃果side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

(BGM:ウルトラマン戦闘曲『勝利』)

 

「ヘァッ!!」

 

「ギイィィィイ!!」

 

ウルトラマンとベムラーは睨みあう。

 

そして両者同時に走る。

 

二体はそのまま力士のように取っ組み合いの戦いを始める。

 

「ダァァッ!!」

 

「ギイィィィイ!!」

 

二体はその場で一回転してから、ウルトラマンは攻撃に出る。

 

ウルトラマンは右手、左手、両手合わせてのチョップをする。

 

「ヘァッ!ヘァッ!ダァッ!!」

 

「ギイィィィイ!!」

 

ベムラーは痛がり、長い胴を生かしてのタックルをしようとするが、ウルトラマンに抱え込まれ、その場で三回ほど回され、UTXとは逆の方向へ投げ飛ばされる。

 

「ダァァァ!!」

 

「ギイィィン!!」

 

ウルトラマンは追撃に移ろうとするが、ベムラーの吐いた熱線をまともに食らい、後ろに倒れる。

 

「ホエァァ!!」

 

ベムラーは立ち上がり、ウルトラマンにそのままのし掛かる。

 

「ギイィィン!!」

 

そして頭突きや熱線を吐いて、攻撃する。

 

「ギイィィィイン!!」

 

「ホエァァ!!」

 

ウルトラマンは何とか頭を抑えつけ、抵抗するが拮抗状態に入り、なかなか反撃できない。

 

竜『糞っ!このままじゃ、時間切れになっちまう!!』

 

ウルトラマンに変身している竜司は焦る。

 

そう、ウルトラマンは地球上では3分間しか活躍できない。

 

それを過ぎれば、二度とウルトラマンは戦えなくなる。

 

竜司は考える。

 

どうすればいいかを。

 

その時、竜司の耳に穂乃果の声が聞こえた。

 

「頑張ってぇぇぇ!! ウルトラマーーン!!」

 

穂乃果に感化され、他の人達も応援する。

 

その声は、ウルトラマンに力を与える。

 

ウルトラマンはベムラーの首に両手チョップを3発入れる。

 

「ダァァ!! ヘァッ!ダァッ!!」

 

そして、ベムラーの腹に右足を添えて、上に一気に押し上げる。

 

「ダァァァァァ!!」

 

「ギイィィィイン!!」

 

ベムラーは吹っ飛ばされ、地面に落下する。

 

すかさずウルトラマンは立ち上がり、両腕を十字に構える。

 

そこから水色の光線が発射される。

 

ウルトラマンの必殺技『スペシウム光線』だ。

 

ベムラーにスペシウム光線が見事に当たり、ベムラーは爆発。

 

ウルトラマンの勝利だ。

 

穂「ありがとぉぉー!ウルトラマーン!ありがとぉぉー!」

 

穂乃果はウルトラマンに礼を言う。

 

他の人々も感謝の言葉を口々に言う。

 

ウルトラマンは人々に頷き、ベムラーによって壊された街を復元する光線を発射。

 

街はみるみる内に元に戻る。

 

それを見届けたウルトラマンは大空へ飛び上がる。

 

「シュワッチ!!」

 

こうしてウルトラマン、もとい竜司は初の戦闘を勝利で飾った。

 

 

◎side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

あの後変身を解き、穂乃果のところへ戻ったのだが、思いっきり穂乃果に抱き付かれ泣かれた。

 

「穂乃果がどれだけ心配したと思ってるの!!!? 竜ちゃんのバカァァァァァ!!」

 

とまあ、こんな風に怒られている。

 

竜「チッ……悪かった」

 

穂「グス…ホントに悪いと思ってる?」

 

竜「あァ……」

 

何とか早くこの場を治めないと、さっきから視線が痛い。

 

多分、穂乃果という美少女を泣かしている俺は相当悪いヤツに映っていると思う。

 

美少女っていいよなぁ~。

 

色々と。

 

さっきまで俺はみんなを守ったヒーローなのに……。

 

穂「聞いてるの竜ちゃん!!!? ちゃんと反省しているの!?」

 

竜「分かってる分かってる。ちゃンと反省してるっつーの」

 

穂「もう…………」

 

竜「まあ、心配させて悪かった…」

 

穂「っ!! えへへへ~♪」

 

俺は穂乃果の頭を撫でる。

 

こうしていたら大体穂乃果は機嫌を治してくれる。

 

楽でいいぜ。

 

そういえば何か忘れてるような………あっ。

 

竜「穂乃果。学校」

 

穂「あっ!? ヤバいよ竜ちゃん!! 早く行こう!!」

 

竜「おい引っ張んな!!」

 

俺は穂乃果に手を引かれ、音ノ木に向かった…。

 

途中で穂乃果が色々なスクールアイドルの雑誌を漁っていたせいで、着いたのは2限目の始まりだった。

 

担任の先生や海未たちには事情を話すと大いに心配された。

 



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叶え!私たちの夢――#5







あの怪獣騒動の後、何とか音ノ木に着き、今は休み時間。

 

俺は穂乃果や海未たち幼馴染み6人で集まって話していた。

 

こ「それにしても穂乃果ちゃんも竜くんも災難だったね~」

 

海「ですね。本当に怪我はしてないのですね?二人とも」

 

穂「大丈夫だよ~。海未ちゃんもことりちゃんも心配性だなぁ~。確かに怪獣が現れた時はびっくりしたし、怖かったけど、ウルトラマンが来てくれたからね♪全然だよ!!」

 

こんな風に過保護ともいえるくらいの心配の言葉をさっきからかけられている。

 

正直耳にタコだ。

 

ちなみに本物のベムラーやウルトラマンが現れた事は早速ニュースで取り上げられていて、テレビでもスマホのチャンネルでも、全部ウルトラマンの事ばかりだ。

 

まあ、とてもありえない奇跡だとは思うが、何も全てのテレビ局がウルトラマン一色にしなくても…。

 

穂「それよりも解決策見つけて来たんだよ!見て見て見てぇぇ!!」

 

ジャーン!! とか言いそうな顔で机の上に広げたのは、登校途中にあるだけ持ってきたスクールアイドルの雑誌やチラシだ。

 

盾「何これ?」

 

穂「アイドルだよ!アイドル!!」

 

正確にはスクールアイドルだがな。

 

すると嫌な予感でもしたのか、海未が俺に訊いてくる。

 

「竜司、もしかして穂乃果の考えた解決策というのは……?」

 

「お前の考えてる通りだ」

 

「なら少しは止めてくださいよ!?」

 

こいつの性格を知っている以上、そンなめンどくせェ事するかよ。

 

穂「こっちは大阪の高校で、これは福岡のスクールアイドルなんだって!! スクールアイドルって、最近どんどん増えてるらしくて、人気の子がいる高校は入学希望者も増えてるんだって!それで私、考えたんだ!!」

 

とまあ、しゃべくりまくる。

 

盾「何て言うんだっけ、この話し方」

 

朱「マシンガントーク?」

 

盾「あっ、それそれ」

 

この二人は二人で余裕な態度。

 

自分たちには関係無いと思ってるな。

 

しかし、ここで穂乃果が急に話を止め、

 

「あれ?海未ちゃんは?」

 

と訊いてくる。

 

あン?

 

確かにいない。

 

こ「あれ?ホントだ」

 

ことりも周りを探すがいない。

 

が、ここで盾が、

 

「ああ…海未なら廊下に出て行ったよ」

 

海未の行方を暴露。

 

アイツいつの間に…?

 

穂「海未ちゃん!!」

 

海「ひっ!!」

 

穂「まだ話は終わってないよー!!」

 

海未は振り向くと、露骨に嫌な顔をしている。

 

まあ、海未の性格を考えれば分かるが。

 

海「わ、私はちょっと用事が……」

 

穂「いい方法を思い付いたんだから聞いてよー!!」

 

海「はぁ、『私達でスクールアイドルをやる』とか言い出すつもりでしょう?」

 

穂 「うわ!? 海未ちゃんエスパー!?」

 

海 「誰だって想像つきます!!」

 

だよな…。

 

穂「だったら話は早いね~。今から先生の所へ行ってアイドル部を…」

 

海「お断りします!」

 

穂「なんで!?」

 

盾「まあ、そうなるよねぇ~」

 

海「思いつきで始めたところで、状況が変わるわけが無いでしょう!」

 

あーあ、喧嘩おっ始めやがった…。

 

穂「だってこんなに可愛いんだよ!? こーんなにキラキラしてるんだよ!? こんな衣装、普通じゃ絶対着れないよ!?」

 

チッ、めンどくせェな。

 

朱「……ねぇ、ことり」

 

こ「なぁに~?」

 

朱「 風紀の仕事があるから、もう行くよ」

 

こ「うん♪頑張ってね、キーくん」

 

朱雀は呆れたのか自分の用事をしにこの場を去る。

 

それにことりはエールを送る。

 

一方の海未は穂乃果に正論をぶつけていた。

 

「そんな事で本当に生徒が集まると思いますか!」

 

「そ、それは…。人気が出ればだけど……」

 

「その雑誌に出ているようなスクールアイドルもプロと同じくらい努力し、真剣にやってきた人達です。穂乃果みたいに、好奇心だけで始めても、上手くいくはず無いでしょ!!」

 

「うぅぅぅ…」

 

穂乃果は唸る。

 

まァ海未のはかなりの正論だしな…。

 

しかしここで盾が言う。

 

「まあまあ、落ち着きなよ海未。俺は穂乃ちんの案いいと思うよ~」

 

海「なっ!? し、盾!本気で言ってるんですか!?」

 

盾が穂乃果の味方に付いたことで戸惑う海未。

 

当の穂乃果も驚いている。

 

盾「うん。本気だよ~。確かに、穂乃ちんの案は、半分は失敗の可能性がある。でも、もう半分は当たりの可能性がある。確立は50/50《ヒフティーヒフティー》。要は乗るか反るかじゃん」

 

海「ですが……」

 

盾「海未。そんな考えじゃあ、当たるものも当たらないよ…」

 

海「…………」

 

盾の言い分に黙り込む海未。

 

思うところがあるのだろう…。

 

こういう時の盾は凄い。

ふつうに海未を言い負かしてしまう。

 

盾「まあ、好きな方を選びなよ。別に今すぐ答えを出せってわけじゃないからさ。ことちんも…。後悔しない道を選びなよ。じゃあね~」

 

そう言って、盾は去ってゆく。

 

 

竜司side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 

穂「あ~あ、いい考えだと思うんだけどな~」

 

放課後、私は屋上で肩を落とす。

 

海未ちゃんとことりちゃん、竜ちゃん達に一緒にアイドルをやろうって言ってみたけど…5人ともなんか余り乗り気じゃなかったな……。

 

そんな事を考えていると、屋上の扉が開く。

 

出てきたのは竜ちゃんだった……。

 

竜「ンだァ?ここにいたのか?」

 

穂「竜ちゃん……」

 

私は思いきって訊ねてみた。

 

「ねぇ竜ちゃん…。竜ちゃんはスクールアイドルをやるのは反対………?」

 

正直、竜ちゃんだけには賛成してほしい。

 

海未ちゃんやことりちゃん、盾くん達よりも最初に友達になって……私が初めて好きになった人。

 

そんな竜ちゃんには賛成もしてほしいし、積極的に応援もしてほしい。

 

竜ちゃんは暫く考えていたみたいだけど、ポツポツと話し始める。

 

「ンなもン、穂乃果の好きなようにしたらいいだろォが。スクールアイドルになるって言っても、要は本人の頑張り次第だろ?盾も言ってたが、まさに博打。半分半分の確立だ。その半分の当たりを確実にするには、やっぱり本人の頑張りなンだよ」

 

そっか……そうだよね。

 

「まァ結論でいえば、俺は穂乃果が本気でやるってンなら、めンどくせェけど応援くらいはしてやる」

 

「……うん。やっぱり竜ちゃんは頼りになるよ。ありがと…」

 

「礼なンざ要らねェよ」

 

「もう……素直じゃないな~」

 

そんな事を竜ちゃんと話していたら、

 

「~~♪~~~♪」

 

音楽室からピアノの音が聴こえた。

 

穂「ん?」

 

竜「あン?」

 

私と竜ちゃんは気になったので、階段を下りて音楽室に向かった。

 

 

穂乃果side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

俺と穂乃果は歌声が聞こえてきた部屋、音楽室にきた。

 

そこには一組の男女がいた。

 

女子の方は赤髪で勝ち気なつり目。

 

ピアノを弾いて歌っていたのはコイツか…。

 

男子は水色の髪に、左右の方に少しだけ金髪があるヤツ…。

 

あっ…コイツ知り合いだ。

 

氷川氷麗《ひかわ ひょうら》。

 

それがコイツの名前だ。

 

氷麗は、赤髪の女子が弾いているピアノを楽しげに聞いている。

 

ピアノの演奏が一段落したところを見計らい、穂乃果が滅茶苦茶早い拍手をしていた。

 

音デカイしうるせェ!

 

それに気づいた赤髪の女子は「ヴエエエェェェ!?」と言いながらビックリしている。

 

ンだァ?

 

その変な悲鳴はァ?

 

氷麗はなンかキョトンとしている。

 

穂乃果はその中に堂々と入り、赤髪女子を誉めちぎる。

 

「すごいすごいすごい!! 感動しちゃったよ~!!」

 

「べ、別に……」

 

「歌上手だね~!ピアノも上手だね~!それにアイドルみたいに可愛い!!」

 

「っ~~!!」

 

かなり照れ臭かったのか、髪がブワッと舞い上がるほどに顔を真っ赤にする赤髪女。

 

竜「よォ…氷麗」

 

氷「久しぶり。何の用なんだ?」

 

竜「いや……いい歌声が聞こえてきたからな」

 

氷「フフーン♪だろう!? 真姫の歌やピアノは一流だからな!!」

 

そう自分の事のように自慢する氷麗。

 

成る程…この赤髪女子は「真姫」って言うのか。

 

名字は知らンが。

 

すると唐突に真姫は椅子から立ち、そンな真姫に穂乃果はこれまた唐突に訊ねる。

 

「あの!! いきなりなんだけど……あなた!! アイドルやってみたいと思わない!?」

 

「……ナニソレ?イミワカンナイ!!」

 

そう言って音楽室を出て行った。

 

そりゃそうなンだろ。

 

初めて会ったヤツにアイドルにならないかって言われて「はい!やります」って言うヤツなンかいない。

 

断られた穂乃果は、

 

「だよね……あはははは……はぁ~」

 

と落ち込ンでいた。

 

そンな穂乃果に氷麗がフォローを入れる。

 

「真姫はちょっと素直じゃ無いだけなんで、気にしないでください」

 

氷麗はそう言って、真姫を追いかけるように出ていく。

 

残った俺は穂乃果に取り敢えず声をかける。

 

「スクールアイドルになるなら、それの練習でもするか?」

 

穂乃果は「うん……そうだね…」と言って音楽室を出る。

 

 

竜司side off

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未side

 

 

私は弓道場に来ているのですが、今一つ集中できません。

 

原因は穂乃果がスクールアイドルを一緒にしようと言ってきた事。

 

それともう一つ……。

 

『そんな考えじゃあ、当たるものも当たらないよ』

 

盾に言われた事が頭から離れません。

 

ごく稀に的確な言葉を言ってくるんですから…。

 

盾は私が、穂乃果やことり達と友達になる前の最初の友達で、男性が苦手な私が、初めて会ってすぐに仲良くなった特殊な男性です。

 

何故だか盾は、他の男性ほど怖くないのです。

 

何故でしょう……?

 

「はぁ~……集中しましょう」

 

 

 

『みんなのハート打ち抜くぞぉ~♡ばぁ~ん♡』

 

 

 

何を考えているんです、私は!?

 

「外したの!? 珍しい!」

 

「あ、いえ!! た、たまたまです!!」

 

集中です、園田海未!!

 

 

 

『ラブアロ~シュ~ト♡』

 

 

 

「あぁ~…いけません!余計な事を考えては!!」

 

結局、一度もできなかった…。

 

すると…

 

こ「海未ちゃ~ん、ちょっと来て~」

 

ことりと盾がやって来ました。

 

 

 



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叶え!私たちの夢――#6






今私は、ことりと盾と一緒に穂乃果がダンスの練習をしている場所へと向かっています。

 

海「穂乃果のせいです。全然練習に身が入りません」

 

盾「やっぱアイドルに興味あるんだ~?」

 

海「いえ、それは………やっぱり上手くいくなんて思えません」

 

こ「でも、いつもこういう事って、穂乃果ちゃんが言い出してたよね?私達が、尻込みしちゃう所を、いつも引っ張ってくれて」

 

海「そのせいで散々な目に何度も会ったじゃないですか」

 

盾「主に尻拭いで竜ちんが苦労してたね~」

 

こ「そうだったね……」

 

海「穂乃果はいつも強引過ぎます」

 

こ「でも海未ちゃん……後悔した事ある?」

 

海「…………」

 

私は考えます。

 

確かに穂乃果は、私やことりだけじゃ尻込みしてしまう場所でも無理矢理連れていってくれます。

 

そしてその素晴らしい景色を見せてくれます。

 

そして今回も………。

 

こ「見て」

 

ことりの視線の先には、穂乃果が竜司に見守られながらダンスの練習をしていました。

 

穂「ほっ、うぅっ!……はっ、ほ、ふっ、はっ!」

 

竜「またステップ間違えてンぞ」

 

穂乃果……どうしてあなたはそこまで。

 

しかしやはりそこは素人。

 

回る一瞬にバランスを崩し、

 

穂「うぅ、ぅうわぁああっ!!」

 

ドテンッっと、穂乃果は強くお尻を打ちました。

 

穂「あいったぁぁい!」

 

竜「チッ……大丈夫かよ?」

 

穂「ありがとう……ふわぁ~。ホントに難しいやぁ。みんなよく出来るなぁ。よし、もう1回!せーっの!!」

 

やったとしても成功するかどうかも怪しいのに、どうしてそこまで出来るんです?

 

いえ、そんなの穂乃果には関係ありませんでしたね。

 

こ「ねぇ、海未ちゃん」

 

海「?」

 

こ「私、やってみようかな……」

 

海「っ…」

 

こ「海未ちゃんはどうする?」

 

そう言って優しく微笑んでくることり。

 

私はもう一度考えます。

 

スクールアイドルは簡単に出来る事じゃありません。

 

曲や歌詞、振り付けも衣装も全て1から自分達で作り上げないといけない。

 

出来ても成功するとも限らないし、人気が出ないといけないし、注目されないといけません。

 

何より生徒が集まらなければ何の意味もない。

 

それでも……きっとあなたなら。

 

ここで私の答えは決まりました。

 

 

海未sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

穂「うわあっ!?」

 

穂乃果がまた転ンだ所に海未とことり、盾がやって来た。

 

穂「あいったったったったっ……くぅ~~!」

 

尻を押さえて痛がる穂乃果に海未は手を差し出した。

 

穂「ん?海未ちゃん……」

 

海「1人で練習しても意味がありませんよ?やるなら3人……いえ、6人でやらないと」

 

穂「海未ちゃん……」

 

よォやく覚悟が決まったみたいだな。

 

竜「良かったな穂乃果……あァ?6人?」

 

海未とことりが入るから3人だろ?

 

それは盾も疑問に思ったみたいで海未に訊ねる。

 

「ねぇ海未?なんで6人なの?」

 

すると海未から衝撃的な言葉が。

 

「それは私と穂乃果とことり、盾と竜司、そして恭弥の6人に決まっているじゃないですか?」

 

はっ?

 

はァァァァあああ!?!?

 

竜「おい海未!ンだよそれ!? 聞いてねェぞ!?」

 

海「今言いましたからね」

 

竜「ふざけンなァァァ!! おい!穂乃果もことりも何か言え!!」

 

穂「いいねそれ!じゃあ竜ちゃん達はマネージャーかな?」

 

こ「そうだね♪」

 

竜「クソッタレが!!」

 

ここには俺の味方は……あれ?

 

そォいや盾は?

 

海「おや?盾は………って、盾!! 何帰ろうとしてるんですか!?」

 

みると盾は、足音を消してこの場から去ろうとしていた。

 

しかし海未に見つかってしまった。

 

見つかった盾は、

 

「帰ってもいいよね?答えは聞いてない!!」

 

若干下の方を向いた人差し指を突きつけて言う。

 

海「あなたはどこのリュウタロスですか!? って、こら!! 待ちなさい盾!!」

 

海未は呼び止めるが、盾はその巨体からは考えられないほどのスピードで走り去る。

 

盾のヤツ、滅茶苦茶リュウタロスに声似てたな。

 

しかし盾がいなくなった事で標的が再び俺に向く。

 

穂乃果達は口々に説得という名の文句を言う。

 

「竜ちゃん言ってたよね!! 私の事応援してくれるって!! あの言葉は嘘だったの!?」

 

「ひどいよ竜くん!!」

 

「あなたはそれでも男ですか!?」

 

「ああクソッタレ!! 分かった分かった!! 入ればいいンだろ入れば!?」

 

結局、俺が根負けして入る事になった。

 

3人は「やったね!!」とハイタッチしていた。

 

チッ、クソウゼェ。

 

『竜司、君も大変だな…』

 

ウルトラマンがテレパシーで話かけてきた。

 

下手な同情は要らねェよ。

 

穂「じゃあ4人で申請書を提出しに、生徒会室に行こっか」

 

穂乃果は満面の笑顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

現在、生徒会室。

 

絵「これは?」

 

穂「アイドル部設立の申請書です」

 

対面する生徒会長とバカ。

 

本当に性格が真反対な2人だよな。

 

絵「それは見れば分かります」

 

だろォな。

 

穂「では認めていただけますね?」

 

絵「いいえ。部活は同好会でも、最低5人は必要なの」

 

穂「えぇ!?」

 

海「ですが、校内には部員が5人以下の所もたくさんあるって聞いてます!」

 

海未、そいつは反論にすらならねェよ。

 

絵「設立した時は、みんな5人以上いた筈よ」

 

そう、設立した時に5人以上いれば、あとは誰かが辞めても活動はしていける。

 

とりあえずは今は人数確保が最優先か。

 

蒼「裏を返せば、5人揃えれば設立できるな」

 

茜「あと1人だな」

 

それなら盾か朱雀辺りに名前だけでも貸してもらうか。

 

穂「後1人………分かりました。行こ」

 

穂乃果がそう言って退出しようとすると、会長が止めてくる。

 

その顔を何処か気にくわなさそうに歪めて。

 

絵「待ちなさい。どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?あなた達2年生でしょ?」

 

穂「廃校をなんとか阻止したくて!スクールアイドルって今すごい人気があるんですよ?だから…」

 

絵「だったら、例え5人集めて来ても、認める訳にはいかないわね」

 

「「「えぇっ!!!」」」

 

竜「あァ?なンでだよ?」

 

絵「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思いつきで行動したところで、状況は変えられないわ」

 

そして申請書を穂乃果達に突き返す。

 

出直して来い、ではなく、もう申請書を出してくるなという意味だろう。

 

絵「変な事考えてないで、残り2年自分の為に何をするべきか、よく考えるべきよ」

 

変な事?

 

こいつらはそれなりの覚悟を決めてやってる事なンだぞ?

 

それをこのアマは……!

 

竜「おい穂乃果、もう行くぞ」

 

穂「え、竜ちゃん?」

 

竜「いつまでもここにいる理由はねェ。俺達は俺達で勝手に行動するぞ」

 

そう言って踵を返し、スタスタと扉に向かおうとすると案の定、勝手に行動されるのは嫌なのか、生徒会長がまた呼び止めてくる。

 

「待ちなさい!さっきも言ったでしょ!? 絶対に認めない「あ゛ァ!?」…っ!?」

 

俺の怒声と目付きに怯ンだのか、生徒会長はビクリと体を震わせ硬直した。

 

竜「おいクソアマァ、こっちはテメェのクソみてェな理由に苛ついてンだ。これ以上俺の勘に障ってンじゃねェよ」

 

そう捨て台詞を吐いて、今度こそ俺は生徒会室を出た。

 

穂「あ、待ってよ竜ちゃ~ん!」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

絵「……はっ!? なんなのよあの子は!?」

 

穂乃果達が去ってから数秒、ようやく我に帰った絵里は、先程の竜司の発言に腸が煮えくり返っていた。

 

敬語を使うどころかクソアマ発言という、とても先輩に使う言葉では無いのだ。

 

自業自得とは言え、絵里が憤慨するのも仕方ない。

 

蒼「気にするな絵里。竜司はああいうヤツだ。それよりもさっきのお前の言葉。誰かさんにブーメランだぜ」

 

希「そうやね。ホンマ誰かさんに聞かせたい台詞やったな~」

 

絵「いちいち一言多いのよ、蒼燕も希も」

 

希「ウフッ♪ それが副会長の仕事やしぃ」

 

蒼「幼馴染みの特権だ」

 

絵「まったく…」

 

竜司たちが出た後、3人はこんな会話をしていた。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

言いたいことを言って少しだけスッキリした俺は、後ろを歩く穂乃果達と共に校門まで歩いていた。

 

ふと振り返ると、3人の顔は暗かった。

 

まだあの金髪に言われた事が頭から離れないのだろう。

 

ことりが穂乃果に話しかけた。

 

「ガッカリしないで。穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから」

 

それと同時に全員の足が止まる。

 

あァそォだ、お前は何も悪くない。

 

ただ廃校をどうにか阻止したいと思っている生徒なだけだ。

 

海「生徒会長だって、気持ちは分かってくれているはずです」

 

竜「ハッ!どォだかなァ…」

 

こ「竜くんっ」

 

俺の発言にことりがやんわりとしつつも強く注意してくる。

 

海「でも、部活として認められなければ、講堂は借りられないし、部室もありません。何もしようがないです……!」

 

こ「そうだよね……。これから一体どうすれば……」

 

海「どうすれば……」

 

神妙な面持ちで海未とことりが悩む中、穂乃果だけがずっと黙っていた。

 

こいつはもうやるべき事を分かってるのだろう。

 

竜「ンなもン決まってンだろ。俺達は俺達のやりたいようにする。なァ?そォだろ穂乃果ァ?」

 

俺がゲスっぽく笑いながら同意を求めると、穂乃果は不敵な笑みをもってして答えた。

 

「うん!生徒会長に言われた事は仕方ないと思う。でもそれが諦める理由にはならない。だって可能性を感じたんだよ!だったら後悔したくない!竜ちゃん!私、やっぱりやる!やるったらやる!」

 

あァ……それでこそ穂乃果だァ。

 

海「全く、仕方ありませんね」

 

こ「私も頑張るよ!!」

 

竜「いひっ♪」

 

 

 

 

 

 

ンじゃまァ……始めるとすっかなァ♪

 

 

 

 

 



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アイドルを始めよう!#1





今、俺達はもう一度校内に戻り、とある空き教室にいる。

 

そこには、生徒の風紀に関する書類をまとめている朱雀がいる。

 

生徒会長に言われた通り、最後の1人を入れるため、まずは朱雀のところへ訪れた。

 

朱「ふーん…スクールアイドルやるんだ…。3人共」

 

ここでいう朱雀の3人とは、俺、海未、ことりの事だ。

 

穂乃果に関しては言い出しっぺなので、除外している。

 

こ「そうなの。だからキーくんにもマネージャーとして入ってほしいの」

 

説得には、ことりが担当している。

 

人の話を聞かない朱雀も、ことりの言葉には耳を貸すからな。

 

相変わらずことりには甘い。

 

朱「ことりはともかく、園田海未と天青竜司が入るなんてね…。意外だよ」

 

海「はい…」

 

竜「まァな…」

 

まァ海未は恥ずかしがり屋だし、俺は面倒臭がり屋だからな。

 

朱雀が意外に思うのも無理もない。

 

こ「それで、どうかな…?キーくん」

 

朱「うん。別にいいよ」

 

こ「ホント!? ありがとう~、キーくん!」

 

穂「やったね!! ことりちゃん!!」

 

朱雀はあっさり了承。

 

穂乃果とことりは、ハイタッチして喜ぶが、

 

朱「ただし、条件があるよ」

 

こ「ふぇ?」

 

朱雀の条件という言葉に?を浮かべることり。

 

俺も海未も、穂乃果も同じ気持ちだ。

 

朱雀は大体、ことりのお願いは損得抜きで引き受ける。

 

だからこそ意外だ。

 

朱雀がことりに見返りを求めてくるのは…。

 

朱「アイドルになるなら、ライブをいつかはするんだよね?」

 

こ「うん」

 

朱「なら、そこで良い結果を見せてよ」

 

穂「良い結果?」

 

朱「そう。分かりやすく結論を言えばライブを必ず成功させること。これが最低条件。分かるよね?それが出来ればマネージャーとして協力してあげる。それまでは、精々助言くらいかな」

 

コイツ…。

 

穂乃果達を試してやがるな…。

 

朱「要するに、君たちの覚悟を見せてほしいの。スクールアイドルをやるうえでのね…」

 

朱雀の挑発じみた言葉に穂乃果達は、

 

穂「分かった!! 必ず成功させるから!」

 

こ「だから、その時はキーくんも必ず約束守ってね!!」

 

海「首を洗って待っててくださいね、恭弥!!」

 

威勢よくそう言って、3人はやる気のある笑みを浮かべる。

 

それを見た朱雀は、

 

「期待してるよ」

 

同じく笑みを浮かべる。

 

3人は教室を出て、俺も出ようとすると、朱雀が声をかけてくる。

 

「天青竜司」

 

「なんだ?」

 

「ことり達をお願いするね」

 

「……ああ。乗り掛かった舟だ。最後まで面倒みてやるよ」

 

そう言って今度こそ俺も出る。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱雀side

 

 

朱「ふぅ~」

 

天青竜司が出ていった後、僕は溜め息をつく。

 

本当なら、すぐに協力してあげたいけど。

 

やっぱりね……不安だからね。

 

途中で投げ出さないか。

 

僕もそれなりにアイドルの事は知ってる。

 

アイドルの世界は残酷な格差社会。

 

弱肉強食。

 

それに彼女達が耐えられるかどうか…。

 

そんな思考に耽っていると、後ろから気配がする。

 

誰だ?

 

ことり達は今出ていったし、その後は誰も入って来てない…。

 

僕の後ろには少し離れているが窓がある。

 

だから余程のバカじゃない限り、そんなアクロバティックな入り方はしてこないはず。

 

そう思った僕は後ろを振り返る。

 

するとそこには…

 

 

 

 

 

 

光の球が空中に浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………えっ?

 

 

 

 

 

その光の球は喋りだす。

 

『おかしい…。確かにここにマン兄さんの気配があったのに…。あっ、君。もしかして私の事が見えているのかい?』

 

そう聞いてきた。

 

朱「まあね。それより君誰?」

 

『すまない、紹介が遅れたな』

 

光の球は、その姿を人形に変えてゆく。

 

完全に変えた時、そこに立っていたのは、赤と銀の二色で構成された身体で、頭に前方へ伸びているトサカ。

 

そのトサカには穴が空いている、ウルトラマンらしき存在がいた。

 

『私の名は、ウルトラマンエース。M78星雲・光の国から来たウルトラ兄弟No.5の戦士だ』

 

 

 

らしきじゃなくて…ホントにウルトラマンだった……。

 

 

朱雀sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

翌日。

 

俺と穂乃果、海未、ことりの4人はまた生徒会室にいる。

 

今度は講堂の仕様許可を取りに来てる。

 

生徒会長の顔が昨日と同じ顔になってるのに、デジャブを覚えた。

 

そう思ったのは俺だけじゃないみたいで、蒼燕が呟く。

 

「なんかデジャブだな…」

 

絵「………朝から何?」

 

穂「講堂の仕様許可を頂きたいと思いまして」

 

海「部活動に関係なく、生徒は自由に講堂を使用出来ると生徒手帳に書いてありましたので」

 

希「新入生歓迎会の日の放課後やな~」

 

そう。

 

あの後、4人でいつするか話合い、新入生歓迎会の時にやろうと決めた。

 

ちなみに盾には海未が電話をかけてマネージャーに誘ったのだが、『少しだけ考えさせてほしい』との事。

 

絵「何をするつもり?」

 

海「それは…………」

 

穂「ライブです!3人でスクールアイドルを結成したので、その初ライブを講堂でやることにしたんです!」

 

このア穂乃果……。

 

生徒会長に色々言われるかもしれないから、ライブの事は伏せて許可を求めに行こうって話たのに……。

 

あっさり暴露しやがった。

 

海「穂乃果……!」

 

こ「ま、まだ出来るかどうかは分からないよ?」

 

穂「えぇぇぇ!! やるよぉぉ!!」

 

海「待ってください。まだステージに立つとは…!」

 

絵「出来るの?そんな状態で……」

 

見かねたのか、会長がいかにも怪しいといった感じの目で見てくる。

 

ごもっとも…。

 

穂「えっ!? だ、大丈夫です……!!」

 

絵「新入生歓迎会は遊びではないのよ」

 

しかしここで蒼燕と副会長が助け船を出してくれる。

 

蒼「まあ落ち着けよ絵里。4人は講堂の使用許可を取りに来たんだぞ?」

 

希「部活でもないのに、生徒会が内容まで、とやかく言う権利はないはずやん?」

 

絵「それは……」

 

たじろぐ生徒会長。

 

結局承認され、俺達は生徒会室を後にした。

 

「「「失礼しました」」」

 

穂「いやったー!!」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

竜司達が出ていった後、絵里が俺と希に言ってくる。

 

「蒼燕も希も、何故あの子達の味方をするの?」

 

蒼「味方をした覚えはないがな…」

 

これは本心だ。

 

俺の気持ちは昔から何一つとして変わらない。

 

絵里の為ならなんでもやる。

 

それが例え、絵里に恨まれることであっても。

 

東條は席から立ち、窓に近づいて開けながら言う。

 

「何度やっても、そうしろって言うんや」

 

ふと絵里は机に置かれているタロットカードをみる。

 

「カードが……」

 

その瞬間、突風が部屋の中に吹き流れ、東條はカッと目を見開き、

 

 

 

 

 

「カードがウチにそう告げるんや!!」

 

 

 

 

 

と叫ぶ。

 

カードは風のせいでバラバラと壁の方へ散らばるが、一枚だけ表を見せて緋村の顔面に当たる。

 

パシンッ!! という音を立てて。

 

うわ、痛そう。

 

こりゃ温厚な緋村でも怒るな。

 

緋村はカードを顔から取り一言。

 

 

 

 

 

「希……窓を閉めろ」

 

「あっ……うん」

 

 

 

 

 

緋村の表情はいつも通りだが、逆にそれが怖い。

 

東條は勿論、俺も絵里も何とも言えない雰囲気になった。

 

 

蒼燕sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

休み時間。

 

中庭に移動し、穂乃果に海未からの説教が始まっていた。

 

海「ちゃんと話したじゃないですか!アイドルの事は伏せておいて、借りるだけ借りておこうと!」

 

穂「ふぁんでぇ?」

 

穂乃果がパンにかぶりつきながら、海未の方に振り向いた。

 

海「……またパンですか?」

 

穂「うち和菓子屋だから、パンが珍しいの知ってるでしょ~?」

 

竜「こいつのパン好きは今に始まった事じゃないだろ」

 

まだ昼休みにはなってねェがな。

 

海「……お昼前に太りますよ?」

 

穂「そうだよねー」

 

と言いながらもかぶりつく。

 

没収してやろォか。

 

そンな時、穂乃果達に声をかける者が。

 

「3人とも、掲示板見たよー」

 

クラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカのヒフミトリオだ。

 

「スクールアイドル始めるんだってぇ?」

 

海「えっ?」

 

間抜け面を晒す海未。

 

つーか掲示板だと?

 

このバカ、何か貼ったのか?

 

「海未ちゃんがやるなんて思わなかったぁー」

 

海「掲示板に何か貼ったのですか!?」

 

穂「うんっ!ライブのお知らせを!」

 

海「うぇ……!?」

 

もう降りていいかァ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

海「勝手過ぎます!!」

 

廊下に海未の声が響き渡る。

 

無理もない。

 

こォも勝手に動かれると、一緒にやってる身としては疲れる。

 

海「あと1か月しかないんですよ?まだ何1つ出来てもいないのに、見通しが甘すぎます!」

 

竜「おい穂乃果。なァンでこォ言う事は俺に一言相談しなかった?報連相は社会に出たら嫌でも必要になるンだぞ?」

 

穂「ホウレン草は好きだよ?」

 

竜「…………スクラップの時間だクソバカ」

 

海「気持ちは分かりますが落ち着いて下さい竜司。それと穂乃果。報告、連絡、相談。これを報連相と呼ぶのです」

 

狂った笑みを浮かべる俺を海未は宥めてから、代わりに説明してくれた。

 

穂「そうなんだー!もうっ!略さずに言ってよ竜ちゃん!」

 

竜「……よォ、そろそろ脳ミソのネジを直しとくかァ?」

 

穂「ひっ!? 竜ちゃん顔が怖い!!」

 

竦み上がって海未の背中に隠れる穂乃果。

 

こっちも堪忍袋ってのがあンだよ。

 

海「これは穂乃果が悪いですよ」

 

穂「でも、ことりちゃんは良いって言ってたよぉ?」

 

あァ?

 

ことりがァ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に教室につく。

 

教室ではことりが何かを描いていた。

 

こ「こう、かな?」

 

自分の席で何やら描いていた。

 

竜「なにしてンだ?ことり」

 

こ「……うんっ、こんなもんかなぁっ!見て、ステージ衣装を考えてみたの!」

 

そう言ってことりは、俺達にも見えるようにイラストをこちらに向けてきた。

 

見るとアイドルらしい可愛い衣装のイラストが描かれていた。

 

相変わらず凄いな、ことりのアイディアは。

 

穂「ぉぉおおお!! 可愛いー!」

 

こ「ホント!? このカーブのラインが難しいんだけど、何とか作ってみようかなって」

 

穂「うんうんうん!」

 

2人のやり取りを見ていると、俺の隣にいた海未が浮かない顔をしていた。

 

どうしたンだ?

 

海「こ、ことり?」

 

おい海未、歯切れ悪いぞ?

 

こ「海未ちゃんはどう?」

 

海「えっ……と……」

 

穂「可愛いよね?可愛いよね!?」

 

笑顔で聞くことりと穂乃果と違って、海未の表情は困惑していた。

 

あァ、成る程。

 

この大和撫子にとって、この衣装は恥ずかしいのだろう。

 

海「こ、ここの、スーッと伸びているものは?」

 

こ「足よ♪」

 

海「っ!?……素足にこの短いスカートって事でしょうか?」

 

こ「アイドルだもん♪」

 

海未の疑問の声に当然と言わんばかりのことり。

 

海未はしきりに自分の足を見てモジモジしていた。

 

……トイレに行きたいのか?

 

穂「大丈夫だよ!!」

 

海「ひゃあ!?」

 

穂「海未ちゃん、そんなに足太くないよ♪」

 

あっ、そォいう事。

 

海「人の事言えるのですか!?」

 

穂「えぁ!? うーん……ふん、ふんふんふん……」

 

海未に反論され今度は穂乃果が自分の足を触ったりして確認している。

 

男の前でそォいうことするのやめろや。

 

穂「よし!! ダイエットだ!!」

 

ガッツポーズして言う穂乃果に、ことりは苦笑いしている。

 

竜「大丈夫だろ?お前ら全員、どこからどう見ても美少女だ。問題無いだろ?」

 

そう言うと、ことりと海未は顔を赤くし、穂乃果に至っては気持ち悪いくらいのニヤケ顔で、

 

「エヘヘへへ、竜ちゃんに褒められたぁ~///」

 

と、手を頬にあてて身体をくねらせていた。

 

竜「チッ……ンな事より他にも決めなきゃいけない事あンだろ?」

 

穂「だよね~。サインでしょ?町歩く時の変装の方法でしょ?」

 

竜「そンなもン今は必要ねェよ」

 

チッ、こいつ何も分かってねェなァ。

 

曲に歌詞、振り付けにグループ名も必要なのに、妄想ばかりが先を行ってやがる。

 

こ「それよりぃ……」

 

穂「へ?」

 

ことりが少し言いにくそうにしていたが、数秒置いて、意を決したように言って見せた。

 

「グループの名前、決めてないしぃ……」

 

「「おおぉ!?」」

 

穂乃果はともかくお前もかよ、海未。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、図書室。

 

ここで俺達は名前を考えていた。

 

穂「う~ん……なかなか思いつかないよね~」

 

こ「何か私達に、特徴があればいいんだけど……」

 

海「3人共性格はバラバラですし……」

 

が、難航している。

 

穂「じゃあ単純に3人の名前を使ってぇ、『穂乃果!海未!ことり!』」

 

 

《少女想像中》

 

 

穂乃果たちはスーツを着て、三味線の音に合わせて名乗る。

 

「「「どうも~」」」

 

「穂乃果!」

 

「海未!」

 

「ことりでぇ~す!」

 

 

《終了》

 

 

竜「どこの漫才トリオだよ」

 

即座に却下。

 

穂「だよね~。あ、そうだ!『海未ちゃんは海!ことりちゃんは空!穂乃果は陸!名付けて!陸・海・空!』」

 

竜「『守れ!市民の平和を!』ってかァ?いつからテメェらは自衛隊になったァ?」

 

こ「全然アイドルっぽくないけど……」

 

再び却下。

 

穂「もう!竜ちゃんも考えてよう~」

 

まァ、さっきから却下してばっかりだしな。

 

そう思い、俺は考えて意見を言う。

 

「………ツナ義ーズとか」

 

穂「竜ちゃんこそ有り得ないよ!!!?」

 

海「穂乃果よりも酷いですよ!?」

 

こ「竜くん真面目に考えてよ~」

 

大バッシングを食らった。

 

まァ確かに「夜は焼肉っしょー!?」とか叫ぶアイドルは応援したくないな。

 

穂「うぅ~……じゃあ、じゃあ~……あ、そうだ!!」

 

頭を抱えていた穂乃果だが、何かを閃いたのかパァーっと明るい笑顔を咲かせた。

 

 



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アイドルを始めよう!#2







穂「これでよし!!」

 

穂乃果は廊下に置いてある机の上の投票箱を見て頷く。

 

竜「結局丸投げか…」

 

海「ですね…」

 

穂乃果が閃いた案とはこの事だった。

 

まあ、これでいいかもな。

 

穂「こっちの方がみんなも興味持ってくれそうだし!」

 

こ「そうかもね……」

 

穂「よーしっ!次は歌と躍りの練習だー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言え練習場所などそう簡単に見つかる筈もなく、グラウンドも体育館もダメだったので、空き教室を借りるべく職員室に行って担任にその事を伝える。

 

「空き教室を?なんに使うんだ?」

 

穂「スクールアイドルの練習に…………」

 

少し言いづらそうに穂乃果が説明すると、担任は穂乃果達を見て、

 

「お前等が、アイドル?」

 

首を傾げたあと「フッ」と鼻で笑った。

 

穂「あぁ!? 鼻で笑った!?」

 

竜「ま、そりゃそうか…」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

結果、空き教室は借りられず、屋上で練習する事に。

 

穂「で……」

 

海「ここしかないようですねぇ……」

 

こ「日陰もないし、雨が降ったら使えないけど、贅沢は言ってられないよね……」

 

穂「うん、でも、ここなら音も気にしなくてすみそうだね」

 

確かに広さも練習するには申し分ないし、音を気にしなくてもいいのは大きい。

 

穂「よぉーし!頑張って練習しなくっちゃ!!」

 

いよいよ練習が始まる。

 

穂「まずは歌の練習から!!」

 

「「はい!」」

 

そして穂乃果、海未、ことりは先ずは歌の練習をするために3人並ぶのだが………。

 

「「「……………」」」

 

沈黙が屋上を襲った。

 

当たり前だ。

 

歌う曲が無いのだから。

 

こ「………曲は?」

 

海「……私は知りませんが?」

 

穂「……私も」

 

竜「俺もだが?」

 

完全に詰ンだ。

 

最初からこれとは幸先悪ィなァ。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土方side

 

 

どうも~、久しぶりの盾だよ~。

 

ここからは俺視点で進めるね。

 

そっちに答えは聞いてない!!

 

海「何やってるんです?…盾」

 

なんか海未が変な人を見るような目で見てくるけど、そんなのは気にしない!

 

盾「別に」

 

海「はぁ~、それじゃあ穂乃果の家に行きますよ」

 

俺と海未は今から穂乃ちんの家に行くところだ。

 

なんかスクールアイドルのことで作戦会議をするみたい。

 

それに俺も何故か呼ばれた。

 

ホントは嫌だったんだけど、海未が「来てくれますよね?盾?」と凄い顔で迫ってきたから頷くしかなかった。

 

海「盾、まだ決めてくれないのですか?」

 

盾「………ごめん」

 

海「いえ…別に責めているわけではないんです。これは私の我が儘ですから…」

 

そう言って海未は俯く。

 

ええ~……なにこの罪悪感?

 

海未がスクールアイドルをやる事になり、俺も海未に入るよう誘われるけど何だかなぁ~……気乗りしないんだよねぇ~。

 

そう思っていると、穂乃ちんの家につく。

 

穂乃ちんの家は老舗の和菓子屋で『穂むら』という。

 

海未はここの和菓子が好きなのだ。

 

盾「お邪魔しま~す」

 

「あら、いらっしゃ~い。盾君も久しぶり」

 

つまみ食いしながら出迎えてくれたのは、穂乃ちんのお母さん。

 

いつ見ても二人の子持ちとは思えないほど若い。

 

まあ、それはことちんと海未のお母さんもだけど。

 

海「こんばんは、穂乃果は?」

 

「上にいるわよ。……そうだ、お団子食べる?」

 

穂乃ちんのお母さん、もとい夏穂さんが団子を薦めてくるが、海未は断る。

 

「いえ、結構です。ダイエットしないといけないので」

 

盾「え?海未ダイエットしてんの?」

 

「はい!穂乃果たちもやってますよ」

 

盾「ふ~ん…。でも、ダイエットするほどじゃないと思うよ。海未、相変わらず綺麗だし」

 

そう言うと海未は熟れたトマトみたいに顔を赤くして「盾はずるいです……」と呟き、夏穂さんは「青春ね~」と言っている。

 

何が…?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

海未と一緒に穂乃ちんの部屋に入ると、そこでは思いっきりお菓子を食べている穂乃ちんとことちん、そして竜ちん。

 

「「練習お疲れ様~」」

 

穂「お団子食べる~?」

 

こ「今、お茶淹れるね~」

 

盾「ねぇ~海未。ダイエットしてんじゃなかったっけ?」

 

そう俺が訊くと、海未は二人を睨みながら訊ねる。

 

「あなた達、ダイエットは?」

 

「「……ぁぁああああ!!」」

 

忘れてたんだ…。

 

竜ちんはそんな二人に「バカなやつら…」って言ってるけど、海未に、

 

「あなたもですよ竜司!! 何で二人を止めないんですか!?」

 

と怒られた。

 

海「はぁ……努力しようという気はないようですね……」

 

盾「あったらこんな事にはならないでしょ~」

 

海未の愚痴にそう返しつつ、俺は穂乃ちんに訊ねる。

 

「それで、ライブするのは分かったけど、曲や歌詞はどうするの?」

 

穂「うん、1年生にすっごく歌の上手い子がいるの!ピアノも上手で、きっと作曲も出来るんじゃないかなぁって。明日、聞いてみようと思うんだ」

 

へぇ、1年でそんな凄い子がいるんだ~。

 

こ「もし作曲をしてもらえるなら、作詞は何とかなるよねってさっき話してたの!」

 

盾「え?」

 

海「何とか、ですか?」

 

作詞?

 

まさか穂乃ちんの友達に詩人か何かに伝がある人がいるの?

 

穂「うん!ね?」

 

こ「うん!」

 

海「ん?」

 

何て考えていると、穂乃ちんとことちんはテーブルに手をついて身を乗り出し、海未に詰め寄っていた。

 

海「んっ!?」

 

「「んふふふ~♪」」

 

海「な、な、何ですか!?」

 

あっ……このあとの展開読めたわ。

 

けど分からないフリしっとこ~う。

 

面白そうだしぃ~。

 

穂「海未ちゃんさぁ……中学の時、ポエムとか書いたことあったよねぇ~?」

 

海「えぇっ!?」

 

穂乃ちんが海未の中学時代の黒歴史を掘り起こそうとしていた。

 

海未のポエムか…。

 

昔はよく見せてくれてたなぁ~。

 

最近めっきりだけど。

 

こ「読ませて貰ったことも、あったよねぇ~?」

 

ことちんが超ブラックな微笑みで徐々に海未を追い詰めていく。

 

海「あ、ぁ、あっ……うッ!!」

 

穂「逃げたっ!!」

 

穂乃ちんとことちんの口撃に耐えきれなくなった海未は、襖を猛スピードで開けて逃走した。

 

穂「盾くん!捕獲して!」

 

盾「はいはい♪」

 

面倒臭いけど、もっと面白いことになりそうだから捕まえてくるか。

 

海「離してください!! 盾!」

 

盾「やだよ」

 

海未は逃げようとジタバタするが、俺とは体格がかなり違うし、海未を後ろから抱っこしている形なので、すぐに部屋に戻れた。

 

 

土方sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

盾が海未を部屋に連れ帰って来てすぐに海未が、

 

「お断りします!!」

 

と拒否。

 

まァ気持ちは分からなくはない。

 

黒歴史を掘り起こされてなお、作詞してくれなんて頼まれちゃ誰だってそうなる。

 

俺だってそうすると思う。

 

穂「えー!? 何でなんでー?」

 

海「絶対嫌です!中学の時のだって、思い出したくない位恥ずかしいんですよ!」

 

盾「えぇ~。海未のポエムは好きだよ~。例えば~」

 

海「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 言わないでください盾!!!」

 

盾が暴露しようとすると、慌てて盾の口を塞ぐ海未。

 

穂「アイドルの恥は掻き捨てって言うじゃない」

 

海「言いません!!!」

 

俺も初めて聞いた。

 

こ「でも、私衣装作るので精一杯だし……」

 

確かにことりにこれ以上仕事増やしたら負担はでかいわな。

 

海「穂乃果がいるじゃないですか!言い出したのは貴方なんですよ?」

 

穂「いやー…私はー…」

 

海未の抵抗に穂乃果は頬をポリポリと掻きながら、余所見をする。

 

きっとあの時の事を思い出しているのだろう。

 

俺も鮮明に覚えている。

 

あれは小学2年生の国語の授業参観の時だった。

 

先生に当てられ、作文を読み始めた穂乃果。

 

その第一声がこうだった。

 

『おまんじゅう、うぐいすだんご、もう飽きた』

 

あれにはメチャクチャ吹いて、俺と盾は笑い転げた。

 

あの後、穂乃果は夏穂さんにメチャクチャ怒られ、泣きながら俺の家の部屋に籠城して挙げ句の果てに、

 

『穂乃果はもう竜ちゃんの家の子になるぅぅぅううう!! 竜ちゃんのお嫁さんになるぅぅぅううう!!』

 

とまあ、天青家と高坂家の両家を巻き込んだ大事件になった。

 

こ「無理だと、思わない?」

 

海「……それは……」

 

思い出したのか、押し黙る海未。

 

しかしめげない海未は今度は俺に振る。

 

「では竜司が……!!」

 

「俺がやると適当な歌詞になるが、それでもいいのなら」

 

「っ……」

 

自分で言っといてあれだが、こういう事に関してはかなり適当になる。

 

最悪、一文字で終わる可能性もある。

 

海「では盾!」

 

盾「お菓子の歌でいい?」

 

海「っ……」

 

八方塞がりとはまさにこの事だ。

 

これで嫌が応にも海未が作詞を担当しなければならなくなった。

 

こ「おねがぁい、海未ちゃんしかいないの~!」

 

穂「私達も手伝うから!何か、元になるようなものだけでも!」

 

竜「俺もある程度は手伝ってやる」

 

盾「海未が力を貸してほしいなら俺も貸すよ」

 

海「うぅぅぅぅ…!!」

 

まだ渋る海未。

 

しかしここで、ことりが目に涙を貯め、頬は少しだけ赤くし、握られた小さな右手を自分のふくよかな胸元に持っていく。

 

おいおいまさか……あれを繰り出す気か?

 

朱雀ですらも頷くしかない、ことりの奥義。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海未ちゃん……おねがぁいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海「んはっ!? もう……ずるいですよ。ことり……」

 

海未はやっと頷いた。

 

これがことりの奥義、通称ことりのお願いだ。

 

受けた者は強制的に何でも言う事を聞く。

 

それがどんな堅物でも。

 

それは余波でも凄い威力だ。

 

どれくらいかというと…

 

竜「ヤッダナ!! ハノケ!!」

 

穂「うん!! でも竜ちゃん。ちょっと何言ってるか分かんない…」

 

竜「ナジェナンディスカ!?」

 

強制的にオンドゥル語になるくらいだ。

 

海「ただし…」

 

「「ん?」」

 

おもむろに立ち上がる海未。

 

何か条件でもあンのか?

 

海「ライブまでの練習メニューは私が作ります」

 

「「練習メニュー?」」

 

海未はポカンとしてる穂乃果達にノーパソの画面を見せる。

 

画面にはA-RISEの動画が映っている。

 

海「楽しく歌っているようですが、ずっと動きっぱなしです。それでも息を切らさず笑顔でいる。かなりの体力が必要です」

 

確かにこンなにも激しく踊って、しかも笑顔でずっと歌い続けている。

 

なのに息を全く切らせていないし、まだまだ余裕があるようにも感じさせている。

 

こいつは余程ハードな練習をこなしてるかもな。

 

海「穂乃果、ちょっと腕立て伏せしてもらえますか?」

 

穂「え?」

 

そう言って穂乃果は腕立て伏せの態勢になった。

 

ここまでは普通の腕立てだが……。

 

穂「こーう?」

 

海「それで笑顔を作って」

 

穂「こーう?」

 

腕立ての態勢のまま穂乃果が笑顔を見せる。

 

海「そのまま腕立て、出来ますか?」

 

そう言われて穂乃果はやるが、次第に笑顔が歪んでくる。

 

穂「え……あ……っ、うぉわぁぁ!!」

 

遂には体勢が崩れ、床に顔からダイブ。

 

痛そう。

 

穂「いったぁーい!? 痛い痛い痛い痛い!! 竜ちゃん痛いよぉ~!!」

 

そう言った穂乃果は俺に泣きついて来たので、痛みの原因である鼻を擦ってやると、何故か幸せそうな顔をした。

 

海「弓道部で鍛えてる私はともかく、穂乃果とことりは、楽しく歌えるだけの体力をつけなくてはなりません」

 

竜「必要なピースが全て揃ったとしても、それをこなせるだけの体力がなければ話にもならねェからな」

 

こ「そっか。アイドルって大変なんだね」

 

海「はい。ですから……」

 

そう言った海未が提案したのは朝からの練習だった。

 

まァ時間も無いし、その手しか無いよなァ。

 

こうしてひとまず会議は終了した。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

穂乃果の家での作戦会議が終了して、盾はことりと海未を送っていた。

 

その帰り。

 

盾は道端で妙なオーパーツを拾う。

 

「これって…ティガの変身アイテムに似てるなぁ~」

 

盾の言う通り、そのオーパーツはティガに変身できるアイテム『スパークレンス』の閉じた時の形に似てる。

 

何故似てるという表現なのか?

 

それは石化した状態だからだ。

 

「まあ…一応拾っておこう」

 

盾はそう言って持ち帰る。

 

それが自分が戦う運命にさせるとは知らずに。

 

 

 

 

 



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アイドルを始めよう!#3







竜司side

 

 

翌日。

 

穂乃果、ことり、海未は神田明神で朝練をしていた。

 

そこで俺はストップウォッチを持ち、測定していたが……まあ二人の体力の無さ。

 

海未は部活やらなんやらで体力は付いてるが、やっぱり二人はダメだった。

 

神田明神の無駄に高く長い男坂を走り終えて、穂乃果は地面に大の字で寝転び、

 

「ひぃー……もう、キツイよぉ……!」

 

ことりも尻をつけて、

 

「もう足が動かないっ……!」

 

と弱音を吐くが、海未は容赦なく告げる。

 

「これから毎日、朝と晩、ここでダンスと歌とは別に、基礎体力をつける練習をしてもらいます」

 

穂「1日2回もぉーー!?」

 

「そうです。やるからにはちゃんとしたライブをやります。そうじゃなければ、生徒も集まりませんから」

 

穂「……はぁ~い」

 

文句を言う穂乃果とことりに、俺は水筒を渡しながら言う。

 

「まあ、頑張れ」

 

穂「うぅ~…竜ちゃんは他人事だと思ってぇ~」

 

「実際他人事だからな」

 

穂乃果の言葉を一蹴する。

 

海「よし、じゃあもう1セット!」

 

穂「よぉっし!」

 

海未の掛け声と共に、穂乃果が気合いを入れる。

 

ことりはまだ疲れが見えるが、立ち上がる位には回復したのだろう。

 

そこへ、

 

「君たち」

 

副会長が話かけてきた。

 

巫女服を着て。

 

何故?

 

こ「副会長さん?」

 

希「ウフフっ♪」

 

穂「その格好……」

 

希「ここでお手伝いしてるんや。神社は色んな気が集まる、スピリチュアルな場所やからね。4人共、階段使わせてもらっているんやから、お参り位してき」

 

副会長の言葉を聞き、穂乃果たちはお参りする。

 

穂「初ライブが上手くいきますように!」

 

「「上手くいきますように」」

 

かなり真剣にお参りしてる。

 

俺?

 

する訳ねェだろ。

 

穂乃果達の後ろでボーッとしてる俺に副会長が話かけてくる。

 

「あの3人、本気みたいやな」

 

「そりゃそォだろ。本気じゃなきゃ朝練なンてしねェし、俺だって付き合わねっつーの」

 

「君はしないの?」

 

「悪ィが俺は無神論者なンだ」

 

「もう、バチ当たるよ?」

 

そう言い残し副会長は去ってゆく。

 

さて、本番はどうなることやら………。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

真「お断りします!!」

 

初めらこの第一声。

 

状況が理解できない奴の為に説明タイムだ。

 

朝練を終えた俺たちは学校に着き、俺と穂乃果たちは別行動をしていた。

 

穂乃果、海未、ことりの三人は一クラスしかない1年の教室へ行き、目当ての生徒、つまり今目の前にいる赤髪女、西木野(生徒名簿で調べてみた)を探していたのだが見つからず、帰ろとしたところで丁度西木野が入ってきたので、屋上に連れてきて作曲をしてくれるよう説得をしているという状況だ。

 

ちなみに俺はそれまで屋上でブラック缶コーヒーを飲ンでいたが、穂乃果に一緒に説得してくれるよう頼まれた。

 

クソめンどくせェ。

 

穂「お願い!あなたに作曲してもらいたいの!」

 

真「お断りします!!」

 

頑なに断る西木野。

 

因みにこの押し問答、かれこれ3分は経っている。

 

ウルトラマンかよ。

 

竜「もしかして歌うだけで曲は作れねェンじゃね?」

 

真「っ、出来ない訳ないでしょう!」

 

俺が煽ると見事に反応した。

 

こういうタイプは一番これが楽な方法だ。

 

真「ただ、やりたくないんです。そんなもの」

 

そんなものって、何か理由があるのか?

 

穂「学校に生徒を集めるためだよ!? その歌で生徒が集まれば…」

 

真「興味無いです!!」

 

穂乃果の言葉は遮られ、そのまま西木野は屋上を出た。

 

穂「お断りしますって、海未ちゃんみたい…」

 

海「あれが普通の反応です」

 

まあ、そう事は簡単にいかないって事だ。

 

穂「はぁ~、せっかく海未ちゃんがいい歌詞作ったのに…」

 

海「なっ!? ダメです!」

 

穂「うっ!なぁんで~!曲が出来たらみんなの声で歌うんだよぉ!?」

 

海「それはそうですがー!!」

 

穂乃果と海未が歌詞が書かれた紙を巡って争っている。

 

海未が歌詞担当に決まったその日に完成したらしい。

 

流石ポエマー。

 

そう思っていると屋上のドアが再び開き、出てきたのは生徒会長だった。

 

穂「……生徒会長」

 

絵「ちょっと、いいかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

授業中、俺の前の席に座る穂乃果は考え込ンでいた。

 

穂「逆効果か……」

 

ふと漏れた穂乃果の独り言を不覚にも聞いてしまった俺も、さっきの出来事を、会長に言われた事を思い出してみる。

 

 

 

『スクールアイドルが今までなかったこの学校で、やってみたけどやっぱりダメでしたとなったら、みんなどう思うかしら?』

 

 

 

『私もこの学校が無くなって欲しくない。本当にそう思っているから、簡単に考えてほしくないの』

 

 

 

それは会話というより、一方的に意見を押し付けているかの様な言い回しでもあった。

 

相手に言い返させない、反論をさせない。

 

その上で、遠回しに今やっている活動を止めろという意思が見て取れた。

 

チッ、やっぱ気に喰わねェ。

 

穂「そうかもなぁ……私、ちょっと簡単に考えすぎだったのかも……」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

休み時間。

 

いつもの中庭で、穂乃果は先程の気付いた気持ちを海未達に話していた。

 

海「やっと気づいたのですか?」

 

穂「でも、ふざけてやろうって言った訳じゃないよ?海未ちゃんのメニュー、全部こなしているし……おかげで足は筋肉痛だけど」

 

海「確かに、頑張っているとは思いますが、生徒会長が言ったことは、ちゃんと受け止めなくてはいけません」

 

穂乃果も会長も、どちらも学校を守りたくて行動して、だからこそぶつかってしまう。

 

片や感情論で、片や合理性で動いてる。

 

なンだろなァ……まるでガイアとアグルみたいな2人だよなァ。

 

思いは同じなのにやり方は平行線ってな。

 

穂「そうだよね。あと1か月もないんだもんね…」

 

こ「ライブをやるにしても、歌う曲位は決めないと…」

 

海「今から作曲者を探している時間はありません。歌は他のスクールアイドルのものを歌うしかないと思います」

 

こ「そうだよね……」

 

穂「うん……」

 

こいつは苦渋の決断だろう。

 

自分達のオリジナルが、時間がないという理由でこうもあっさりと白紙にされる。

 

それは決して気持ちよくはないだろう。

 

チッ………ままならねェなァ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

海「入ってた!?」

 

こ「本当!?」

 

穂「あったよー!! 1枚!!」

 

教室に戻った後、穂乃果は一人グループ名投票箱のところへ行ってたみたいで、紙をひとつ手に持って帰ってきた。

 

竜「何が書いてる?」

 

穂「えっとね~…」

 

俺の問いに穂乃果は折り畳まれた紙を広げ、俺達に見せてくる。

 

穂「ユー…ズ?」

 

紙にはμ’sと書かれている。

 

何なンですかァこれはァ?

 

海「多分、ミューズじゃないかと」

 

穂「ああ!石鹸?」

 

海「違います」

 

言うと思ったよ。

 

そろそろ本気で勉強させるかァ?

 

海「恐らく、神話に出てくる女神からつけたのだと思います」

 

何でそンな事知ってンだよ?

 

穂「へぇー……」

 

こ「良いと思う!私は好きだな!」

 

ことりの好感触に、穂乃果は紙を天井の光に透かせてじっと見る。

 

穂「……μ's……うん!今日から私達は、μ'sだ!!」

 

こうしてグループ名が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今俺と穂乃果は西木野にもう一度作曲を頼むために、1年の教室に来ているのだが、既に放課後ということもあり、教室には誰もいなかった。

 

穂「あぁ~、誰もいない」

 

竜「一足遅かったかもな」

 

すると穂乃果と俺の後ろから「にゃん?」という声が聞こえ、振り返った。

 

そこには、オレンジの短髪少女と眼鏡をかけた少女。

 

さらに、茶髪でどこぞのタコヘッドみたいな髪型の男子と、顔を横断するぐらいの傷を負っている180㎝ぐらいの黒髪の男子がいた。

 

またもや男子二人は知り合いだ。

 

茶髪は『寺獄嵐助』で、凶悪犯面の方は『火神イクス』だ。

 

世間は狭いとはよく言ったものだ。

 

穂「ねぇ、あの娘は?」

 

「あの娘?」

 

するとオレンジ少女の後ろにいた眼鏡少女が穂乃果の質問に答える。

 

「西木野さん、ですよね?歌の上手い」

 

穂「そうそう!西木野さんって言うんだ!」

 

「はい。西木野……真姫さん…」

 

穂「用があったんだけど、この感じだともう帰っちゃってるよね?たは~っ」

 

問いかけると今度はオレンジ少女が答える。

 

「音楽室じゃないですか?」

 

穂「音楽室?」

 

「あの娘、いつも氷川君としか喋らないんです。休み時間はいつも図書館だし、放課後は音楽室だし…」

 

確かに氷麗しか友人いなさそうだしなァ。

 

穂「そうなんだ……2人共、ありがとう!」

 

礼を言って穂乃果は去ろうとするが、眼鏡少女に「あの!」と呼び止められる。

 

穂「うん?」

 

「が、頑張ってください……アイドル……」

 

かなり聞き取りにくい小声だが、それでも力になる応援を貰う。

 

穂「っ!……うん!! 頑張る!!」

 

ガッツポーズしてから、今度こそ去る。

 

俺も行こうとするが、嵐助に声をかけられる。

 

「竜司」

 

「何だ?」

 

「何で面倒臭がりのお前が積極的にあの先輩の活動を手伝ってんだ?」

 

まァ知ってるヤツからしてみれば、そう思うか。

 

竜「……あいつの幼馴染みだからだよ。他に理由がいるか?」

 

嵐「………」

 

そう言い残し、俺も穂乃果のところへ行く。

 

穂「竜ちゃあぁぁぁぁぁん!はやくぅぅぅぅ!!」

 

竜「分かってる」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷麗side

 

 

俺、氷川氷麗は今日も今日とて真姫のピアノを聴く為に音楽室にいる。

 

真姫のピアノをいつもみたいに聴いてる時だ。

 

突然いつかの凄い拍手の音が聞こえた。

 

真姫もそれに気づいたようで、廊下側の窓の方を見て「ヴェエエェ!?」と昔からの癖みたいな驚きを口にする。

 

そこにはいつかの茶髪サイドテールの先輩と、竜司がいた。

 

もしかしてまたアイドルの勧誘かな?

 

って真姫、そんなあからさまに嫌そうな顔にならない。

 

それでもこのままじゃ帰れないと悟ったのか、その美しい美脚を組みながら訊ねる我が幼馴染み。

 

「何の用ですか?」

 

穂「やっぱり、もう1回お願いしようと思って」

 

「しつこいですね!」

 

穂「そうなんだよねぇ、海未ちゃんにいつも怒られるんだー」

 

苦笑いする先輩。

 

自覚はあるんだ……。

 

真「私、ああいう曲一切聴かないから。聴くのはクラシックとか、ジャズとか」

 

穂「へぇー、どうして?」

 

真「軽いからよ!なんか薄っぺらくて………ただ遊んでるみたいで」

 

それを聞いた俺は、確かに真姫からしてみればそう思うのは仕方ないかなと思う。

 

なまじ彼女の育った家が家なだけに。

 

でもな真姫、アイドルだって大変なんだぞ?

 

それを代弁するように、高坂先輩はその思いを打ち明ける。

 

「そうだよねぇー」

 

真「え?」

 

「私もそう思ってたんだ。何かこう、お祭りみたいにパァーっと盛り上がって、楽しく歌っていればいいのかな~って。……でもね、結構大変なの」

 

そっか、先輩もそう思ってたのか。

 

でもこの様子だとその裏の努力に気づいたみたいだな。

 

穂「ねえ、腕立て伏せできる?」

 

唐突にそんなことを言われ、真姫は「はぁ!?」と声をあげるが高坂先輩に、

 

「できないんだ~」

 

とニヤけ顔で言われ、それにイラついた真姫は、

 

「うえぇ!? で、出来ますよ!そのくらい!」

 

と言って上着を脱いで腕立て伏せをすることに。

 

この先輩…真姫の扱い心得てるなぁ~。

 

真「1、2、3…これでいいんでしょ!!」

 

そして腕立て伏せをする真姫を見て高坂先輩は、

 

「おぉー凄い!私より出来る!」

 

と感心の声をあげ、真姫も自慢げな表情を見せる。

 

「当たり前よ、私はこう見えても…」

 

穂「ね、それで笑ってみて?」

 

「えっ?なんで?」

 

穂「良いから!」

 

言葉を遮られ、しかも急に訳の分からない事を言われた真姫の表情は、不服だと感じさせた。

 

でも俺は何となくその意味が理解できた。

 

真「……ぅ、うぅ……うぅううっ……」

 

仕方なく言われたままの通りに、笑顔のまま腕立てを始める真姫。

 

だけどその表情は確実に硬かった。

 

それが全てを表していた。

 

穂「ね?アイドルって大変でしょ?」

 

真「なんのことよ!?」

 

やっぱりな。

 

まだ分からない様子の真姫だが、俺は分かった。

 

これはアイドルの大変さを身を以て知らせた行為だと。

 

真「ふぅ……全く!」

 

立ち上がって袖の埃を払う真姫。

 

どうでもいいがちょいちょい敬語外れてるぞー。

 

穂「はい、歌詞」

 

真「ん?」

 

穂「一度、読んでみてよ」

 

高坂先輩の手から出されたのは、言葉の通り、歌詞が書かれた紙だった。

 

真「だから私は……」

 

穂「読むだけなら良いでしょ?今度聞きに来るから。その時ダメって言われたら、スッパリ諦める!」

 

真「…………答えが変わることはないと思いますけど」

 

そう言いながらも、確かに真姫は歌詞を受け取った。

 

さっきまで頑なに拒否してたのにな。

 

穂「だったらそれでもいい!そしたら、また歌を聴かせてよ!私、西木野さんの歌声大好きなんだ」

 

竜「まァ確かに綺麗な歌声だったな」

 

穂「だよね!あの歌とピアノを聴いて感動したから、作曲、お願いしたいなぁーって、思ったんだ!」

 

最後に高坂先輩は「毎日、朝と夕方に階段でトレーニングしてるから、良かったら遊びに来てよ」と言い残して、2人は音楽室を出て行った。

 

真「……………」

 

真姫は2人が出て行ったのを確認するとジッと歌詞が書かれた紙を見つめていた。

 

真「ねぇ…氷麗。あなたはどう思う?」

 

「そうだな……」

 

俺は考える。

 

作曲するかどうかは真姫の気持ち次第。

 

俺がどうこう言える事じゃない。

 

それでも俺は、真姫が作曲したアイドルの曲を聴きたい。

 

でもそれは俺の我が儘だ。

 

真姫の意思を無視してる。

 

そこまで考え、それを鑑みて、俺は答える。

 

「真姫の好きなようにしたらいいと思う」

 

「……そう……」

 

真姫は難しそうに考える。

 

そんな真姫に「とりあえず帰るか?」と促し、真姫も「そうね…」と言い、帰る準備をした。

 

 

 



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アイドルを始めよう!#4







真姫の家への帰り道。

 

俺は真姫と一緒に帰っている。

 

俺には両親がいない。

 

母さんは婦警だったのだが、犯人の凶弾に当たり死に、父さんは空軍のエースパイロットだったのだが、謎の光の中に消え行方不明になった。

 

どちらも俺が幼い時で、家族ぐるみで付き合いのあった西木野家に引き取られた。

 

最初の頃は部屋の中に引き込もっていたが、それを見かねた真姫が得意のピアノをよく弾いてくれた。

 

その甲斐もあって、俺は立ち直る事ができた。

 

ホントに真姫には感謝してる。

 

だからこそ…真姫には楽しい高校生活を送ってほしい。

 

俺は音楽室での話を再び振る。

 

「なぁ真姫。作曲の話だけど…」

 

「何よ?」

 

「俺はしてもいいんじゃないかなと思ってる」

 

「はぁー?あなた…さっきは私の好きにしろって…」

 

「言ったけど、やっぱり個人的には真姫の作曲した曲が聞きたいんだ」

 

(BGM:邂逅)

 

「だって俺は真姫の曲が一番好きなんだ。どんな一流の作曲家よりも、俺にとっては真姫の曲が一番なんだ」

 

「氷麗……」

 

「それにほら、俺……昔は引き込もってばっかで、録に学校生活送らなかったから楽しい思い出なんか無いし。ネトゲで友人は出来たけど……。でも、真姫はそんな俺を救ってくれた。だからこそ、真姫には楽しい思い出を……学校生活を送ってほしいんだ」

 

「……別に私は……」

 

御大層な事はしてない。

 

お前はそう言うのだろう。

 

でも俺にとってはそれくらいの恩があるんだよ。

 

「なあ真姫、先輩たちの活動見てみないか?それで決めてもいいんじゃないか?」

 

「……ちょっとだけよ?」

 

「ああ」

 

そう言って、先輩たちが練習している神田明神へ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

神田明神へ着き、先輩たちがどんなアイドルの練習しているのか、こっそり陰から見る俺と真姫。

 

そこでは階段の上でへばっている二人の先輩と、それに渇を入れる長い髪の先輩がいた。

 

穂「もぉぉぉぉダメぇぇ~~~……!」

 

こ「もう……動かない……」

 

海「ダメです。まだ2往復残っていますよ!それとも諦めますか?」

 

穂「もぉ、海未ちゃんの悪代官!」

 

こ「それを言うなら、鬼教官のような……」

 

竜「おらよ…」

 

盾「とりあえず水飲みなよ~」

 

そして三人に水筒やタオルを渡す竜司と、紫髪の背がかなり高い男子…あれ?

 

土方?

 

何で土方も?

 

まあそんな事よりも……先輩たちかなり真剣なんだな。

 

真姫もその様子を見ていたが、突然その真姫が大声をあげる。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

氷「うぉっ!? どうした真姫!?」

 

後ろを振り向くとそこでは、

 

 

 

 

副会長が真姫の胸をわし掴んでいた………。

 

 

 

 

なんで………?

 

希「まだ発展途上といったところやな」

 

氷「いや、あんた何してんだよ?」

 

思わずツッコム。

 

階段の方で先輩たちが「ん?何?」と言っていたが、そんなのが気にならないくらい目の前の衝撃的光景に呆気にとられた。

 

真「ホ…ホントに……何すんのよ!?」

 

と言って、真姫が自分の胸を抑えながら俺の後ろに隠れる。

 

希「でも望みは捨てなくて大丈夫や。大きくなる可能性はある」

 

真「なんの話!?」

 

希「恥ずかしいんなら、こっそりという手もあると思うんや」

 

真「っ……だから何…」

 

希「わかるやろ?」

 

真姫が再び訊こうとするが、副会長はそれを遮り諭すように言うと、階段の方へ行く。

 

真「…………何なのよ……」

 

そう呟き考える真姫。

 

これはもう見学どころじゃないな…。

 

氷「帰るか?真姫」

 

俺がそう訊いた時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きく地面が揺れて、遠くの街の方で大きな土煙が上がった次の瞬間。

 

 

 

 

 

「グビャアアァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

怪獣が地面から這い出てきた。

 

 

氷麗sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

真「ヴェェェェ!? なっ、何よあれ!? 怪獣!?」

 

真姫は驚き叫ぶ。

 

氷麗も絶句している。

 

階段の上にいる、穂乃果、海未、ことり、盾、希も唖然としている。

 

その怪獣は手足はヒレになっており、身体の色は黄、黒、クリーム色に彩られている。

 

何より特徴的なのは、鼻先にドリルがある。

 

希が呟く。

 

「深海怪獣・グビラ…」

 

希の言う通り、その怪獣は初代ウルトラマンに出てきた敵怪獣…グビラだ。

 

グビラが出てきた事により、街の人々は逃げ惑う。

 

グビラは鼻先のドリルを回し暴れまわる。

 

竜司はこっそりとその場から離れ、神社の林の中へ入る。

 

竜「行くぞウルトラマン……」

 

『うむ』

 

竜司はベーターカプセルをポケットから取りだし、ボタンを押して、ウルトラマンへ変身する。

 

そしてグビラの前に地響きを立てて、舞い降りる。

 

(BGM:ウルトラマン戦闘『勝利』)

 

「へァ!!」

 

「グビャアアァァァァァ!!」

 

ウルトラマンはグビラの前に立ち、前傾姿勢の戦闘ポーズをとる。

 

穂「ウルトラマンだ。ウルトラマンが来てくれた!」

 

海「あれが……本物のウルトラマン……」

 

こ「大きい~」

 

ウルトラマンの登場に穂乃果は喜び、海未は唖然、ことりはその大きさに感心している。

 

「ダァッ!!」

 

「グビャアアァァァァァ!!」

 

ウルトラマンはグビラの突進を抑え、背中に連続チョップする。

 

「へァ!! ダァッ!! へァ!!」

 

さらに背中に跨がり、グビラの身体にパンチを叩き込む。

 

「ダァッ!! へァ!! へァ!!」

 

「グビャアアァァァ!!」

 

グビラはウルトラマンを背中に乗せたまま、その場で暴れまわる。

 

「グビャアアァァァ!!」

 

「へァ!!」

 

なんとかウルトラマンを身体から振り落とすグビラ。

 

グビラは振り落としたウルトラマンに向かってドリルを回転させながら突進する。

 

ウルトラマンはそれを右へ地面に転がりながら避ける。

 

そして両腕を胸の前で水平にし、右腕を後ろに回し、一気に降りおろす。

 

その腕から、光の回転ノコギリがグビラに向かう。

 

希「八つ裂き光輪や!!」

 

希は興奮気味に叫ぶ。

 

『八つ裂き光輪』はグビラに真っ直ぐ向かうが、グビラのドリルで弾かれる。

 

ウルトラマンは立ち上がり様子を見るが、その瞬間ウルトラマンの背中に光線が当たる。

 

「ホエァァ!?」

 

驚愕に包まれ、倒れながら後ろを振り返るウルトラマン。

 

そこにはもう一体の怪獣がいた。

 

全身岩のようにゴツゴツした岩そのものな怪獣。

 

『ネオダランビア』がいた。

 

「グルルル……」

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 

海「そんな…もう一体いたなんて!?」

 

こ「2対1だなんて……無理だよぉ~!? どうしよう穂乃果ちゃん!!」

 

海未ちゃんは愕然とし、ことりちゃんは悲観するが、私はそうは思わない。

 

穂「大丈夫だよ!! 海未ちゃん、ことりちゃん!! ウルトラマンは絶対負けない!!」

 

私はそう信じてる。

 

穂「ねっ?そうでしょ竜ちゃん!!………あれ?竜ちゃん?」

 

後ろを振り返ると、竜ちゃんはいなかった……。

 

どうして……!?

 

 

穂乃果sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷麗side

 

 

俺は真姫と一緒にウルトラマンの闘いを見ていたが、もう一体現れて、挟み撃ちにされた。

 

最初はウルトラマンも二体の攻撃をかわし、チョップやパンチ、キックを叩き込んでいたが、次第に劣勢になっている。

 

氷「糞ッ!! このままじゃ、ウルトラマンが…」

 

歯噛みする俺。

 

そんな時、俺の耳に、

 

『氷麗………氷麗………!』

 

不思議な声が聞こえた。

 

氷「誰だ…!? どこにいる!?」

 

俺は叫ぶ。

 

それを不審に思った真姫が訊ねてくる。

 

「どうしたの、氷麗?」

 

「いや、今声がしたんだ。真姫には聞こえないのか?」

 

「?……いえ、全然」

 

真姫はそう言うが、まだ声が聞こえる。

 

俺にしか聞こえないのか?

 

『氷麗………氷麗……』

 

今度はハッキリ聞こえた。

 

氷「………っ!」

 

俺は声の聞こえる方角……怪獣のいる方へ行く。

 

真「ちょっと氷麗!! どこ行くの!?」

 

真姫がそう言ってくるが、無視して走った。

 

 

氷麗sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫side

 

 

真「氷麗!? ああもう!!」

 

氷麗が突然走り出した。

 

しかも怪獣のいる方へ!

 

私は放っておけるはずもなく、彼の後を追う。

 

しばらく走ると、やっと氷麗を見つけた。

 

怪獣とは離れてるけど、はやく離れないとここも危ない。

 

真「氷麗っ!!」

 

氷「真姫っ!? 何でついてきた!?」

 

真「氷麗のこと放っておけないからよ!!」

 

氷「っ!まあいい。とにかくこの子を助けるのを手伝ってくれ!!」

 

そう言われて見ると、瓦礫の中に一人の幼い男の子が埋まっていた。

 

それを氷麗は一つ一つ瓦礫をどかしていた。

 

真「分かったわ!!」

 

そう言って私も瓦礫を退かし始める。

 

多少時間はかかったけど、何とか助けて出せた。

 

男の子の状態を見ると、怪我はあまり無かった。

 

真「大丈夫。気を失ってるだけね」

 

氷「そうか!よし、はやくここから非難しよう!!」

 

真「ええ」

 

そう言って非難しようと走り出した時、

 

氷「真姫っ!! 危ない!!」

 

真「ッ!!!?」

 

突然、氷麗に男の子共々突き飛ばされた。

 

 

 

 

その後、ドグシャッ!!という音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

真「いたた……ッ!? 氷麗ッ!? 氷麗ッ!!」

 

私が振り返ると、そこには男の子の上にあった量の倍以上の瓦礫の下敷きになった氷麗がいた。

 

氷「へへ……っ!見たか?俺の超ファインプレイ…」

 

氷麗は弱々しいけど、私に心配させないように笑顔で言う。

 

真「そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ!? 待ってて!今助けるから!!」

 

私はそう言って氷麗を助けようとするが、

 

氷「いいから先にその子を連れてはやく逃げろ!!」

 

氷麗の怒声に足が止まる。

 

真「でも……ッ!!」

 

氷「いいから!! 俺は必ず生き延びるから……だから逃げろ!!」

 

私は氷麗のその目を見て、そして上を見上げる。

 

そこには岩の怪獣が迫って来てた。

 

真「ッ!!…分かった!! 後で必ず助けに来るから!! だから必ず生きてて!! 死んだら許さないから!!」

 

そう言い残し、私は俺の子を抱えてその場を離れる。

 

氷麗、待ってて…!!

 

 

真姫sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷麗side

 

 

真姫が非難した後、俺は自分で動ける範囲で動き、上を向く。

 

そこには岩そのものな怪獣ネオダランビアがいた。

 

どうやらグビラ一匹でもウルトラマンを倒せるところまで追い詰めたのか、街を破壊する行動に移ったみたいで、俺のすぐ目の前にいる。

 

(BGM:邂逅)

 

氷「悪いな、真姫。俺はもうダメみたいだ」

 

ああ……どうやらここが俺の死に場所みたいだ。

 

俺はそう悟った。

 

ネオダランビアはもうすぐ側にいる。

 

恐らく簡単に踏み潰されて終わりだろ…。

 

でも…どうせなら…最後に。

 

氷「父さん…俺も光が見たいぜ………。」

 

父さんの同僚から聞いた話じゃあ、父さんの操縦する戦闘機の前に、突然キレイな光の渦が現れたらしい。

 

同僚の人は避けるように言ったが父さんは、

 

『あの光は俺を呼んでいる。きっとこの先、この光は人類の救世主になる』

 

と言い、自ら突っ込んで行ったらしい。

 

俺は自分の死を受け入れる。

 

もう俺にやりたい事はないから。

 

俺は目を閉じる。

 

 

 

 

真『氷麗!』

 

 

 

 

 

だがその瞬間、脳裏に真姫の笑顔がよぎる。

 

そうだ……。

 

俺には、まだやりたい事がある……っ!

 

真姫がこの先やる事を見届けたい。

 

それまで…っ!

 

氷「それまで死ねるかぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

俺は右手を伸ばす。

 

その瞬間、光の柱がネオダランビアを破壊して俺に降り注ぐ。

 

俺は光の柱に包まれる。

 

そして目の前に琥珀石みたいなのが素材で、人面の彫刻がされたアイテムが浮いていた。

 

俺はそれを躊躇なく手に取り叫ぶ。

 

 

 

氷「ダイナァァァァァァ!!」

 

 

 

瞬間、俺は光と共に巨大化する。

 

 

氷麗sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫side

 

 

私は氷麗に言われて男の子を抱え、非難していた。

 

しばらく走ると後ろが急に明るくなった。

 

今は夕方なのに、昼間みたいに明るくなっている。

 

真「今度は何よ!?」

 

私は勢いよく後ろを振り返る。

 

そこには大きな光の柱があり、すぐ側にいたはずの岩の怪獣が粉々に破壊されていた。

 

その光の柱は徐々に萎み、そこから現れたのは、

 

 

 

 

 

 

 

「ダアッ!!」

 

 

 

 

 

赤と青と銀の身体で、背中から恐らく胸にも走る金のライン、頭の方には菱形のクリスタルが付いてる光の巨人がいた。

 

真「ウルトラマン………ダイナ……?」

 

そこには本物の『ウルトラマンダイナ』がいた。

 

嘘でしょ…?

 

イミワカンナイ……。

 

 

 



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アイドルを始めよう!#5





※雪穂がCDを渡す所からリメイクしてます。

それまでのシーンはあまり変わってません。



◎side

 

 

ウルトラマンは苦戦していた。

 

グビラだけなら普通に戦えた。

 

手の打ちようもあった。

 

だが、突如現れたもう一体の怪獣ネオダランビアが出現したことにより状況は一変。

 

二体の猛攻にあう。

 

ネオダランビアの光線に怯んだところを、グビラの突進を受け、再び転ぶ。

 

「ダァッ!!」

 

すぐさま立ち上がりスペシウム光線を撃つが、

 

「シュワッチ!!」

 

ネオダランビアのバリアーに阻まれ防がれる。

 

そしてなんと、グビラが鼻先のドリルをミサイルのように撃ってきた。

 

普通のグビラなら、こんな能力はない。

 

唖然としたウルトラマン、もとい竜司はまともに食らう。

 

「アーーーーッ!!」

 

後ろに吹っ飛ぶウルトラマン。

 

そのままドリルを次弾装填したグビラは再び放ち、ネオダランビアも光線を撃つ。

 

避ける間も無いまま受け続けたウルトラマンは遂にカラータイマーが赤に点滅し、倒れる。

 

「ホエァァ…」

 

竜『チッ、どォいうことだ?グビラにあンな能力は無いはずだ』

 

『恐らくバルタン星人に改造されて、あの力を手に入れたんだろう』

 

ウルトラマンがそう説明する。

 

そう、ウルトラマンの言うとおり、バルタン星人はグビラの鼻先だけを改造し、送り込んできたのだ。

 

神田明神にいる穂乃果が叫ぶ。

 

「ウルトラマン!! 頑張って!!」

 

海「立ち上がってください、ウルトラマン!!」

 

こ「頑張れーー!!」

 

海未とことりも応援する。

 

希と盾も声には出さないが、同じ気持ちだ。

 

しかし、

 

竜『クソッタレ!力が入らねェ…』

 

カラータイマーが点滅している事により、なかなか立ち上がる事が出来ないウルトラマン。

 

それを見たネオダランビアは、後の事はグビラに任せるように背中を向け、街を破壊するため歩き始める。

 

竜『チッ!待ちやがれ!!』

 

竜司、もといウルトラマンは手を伸ばすが届くはずもない。

 

その時、竜司とウルトラマンの耳に、

 

「それまで死ねるかぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

という声が聞こえた。

 

次の瞬間、ネオダランビアの真上に極太の光の柱が降り注ぎ、ネオダランビアは断末魔をあげる暇もなく粉々に破壊された。

 

そして光の柱が次第に萎み、そこにいたのは赤と青と銀の体色の光の巨人。

 

『ウルトラマンダイナ』がいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

(BGM:ヒーロー登場!)

 

「ダアッ!!」

 

本物のウルトラマンダイナが現れた。

 

この事実に人々はどよめき、歓声をあげていた。

 

一方、神田明神の方でも穂乃果たちがそれぞれの反応を示していた。

 

穂「ダイナだ……本物のウルトラマンダイナだ!!」

 

海「これで形勢逆転ですね!!」

 

こ「うん!!」

 

穂乃果たちは大いに喜んでいる。

 

一方、ダイナになっている氷麗はとても驚いていた。

 

『うおっ!? マジか……俺ダイナになってる!!』

 

グビラやウルトラマンも驚いていた。

 

「グビャアアアアアア!!」

 

グビラはダイナに威嚇するも、ダイナはそれを無視し、ウルトラマンの近くに行くと自分のエネルギーを分け与える。

 

エネルギーを与えられたウルトラマンのカラータイマーは赤から青に戻る。

 

竜『力が戻ったか。一応礼は言うぜ』

 

氷『いいっていいって。困った時はお互い様って……その声竜司か!?』

 

竜『あァ?お前氷麗か?』

 

氷『そうだけど……何で竜司がウルトラマンに?』

 

竜『ベムラーが現れた時に出会って、その成り行きだ。そォいう氷麗は?』

 

氷『俺はさっきの光の柱の中で……』

 

竜『そォかよ……』

 

こうやって互いを指で指しながら会話しているが、穂乃果たちや人々には会話の内容が聞こえないので、?を浮かべていた。

 

「グビャアアァァァァァ!!」

 

そうこうしている内に、グビラが威嚇しながら此方へドリルを回転させながら突進しようとしてきたが、粉々に破壊されたネオダランビアの破片がグビラの身体を覆い始めた。

 

「グビャアアァァァァ!!」

 

苦しむグビラ。

 

その状況に困惑するウルトラマンとダイナ。

 

氷『な、何だ!?』

 

竜『合体か……?』

 

竜司の言うとおり、二体の怪獣は合体しようとしていた。

 

と言ってもネオダランビアが一方的にだが…。

 

そして完成したのは、ネオダランビアの身体にグビラのドリルが鼻先に付いただけの姿。

 

いわば『ネオグビラ』の誕生だ。

 

「グオオォォォォォン!!」

 

ネオグビラは産声をあげる。

 

だが、竜司と氷麗はそんなものには怯まない。

 

氷『はっ!たかがさっきの岩石野郎にドリルが付いただけだろ?全然問題無いぜ!!』

 

竜『とっと終わらせンぞ』

 

『二人共。油断はするな』

 

ウルトラマンは二人に釘を刺す。

 

竜『あァ……』

 

氷『本当の戦いはここからだぜ!!』

 

そう言って、二人のウルトラマンは構える。

 

「ダアッ!!」

 

「へァッ!!」

 

(BGM:光の巨人、ふたたび)

 

先ずはダイナが仕掛ける。

 

ネオグビラに向かって走り、前蹴りを入れる。

 

「ダアッ!!」

 

「グオオォォォン!!」

 

ネオグビラは後退し、右の鎌を入れるがウルトラマンに止められ、逆に右パンチを叩き込まれる。

 

「へァッ!!」

 

見事にヒット。

 

ネオグビラは左右の鎌を交互に振るうが、右はウルトラマンに、左はダイナに止められ、逆にパンチやキックの反撃を許す。

 

「へァッ!! ダアッ!! へァッ!!」

 

「ダアッ!! ハッ!! ショワッ!!」

 

「グオオォォォン!!」

 

最後に二人同時のドロップキックを受け、後ろに吹っ飛ぶネオグビラ。

 

氷『よし!決めるぜ!!』

 

そう言った氷麗もといダイナは、両腕を弧を描きながら、素早く十字にクロスして放つ必殺技『ソルジェント光線』を射つ。

 

光線は真っ直ぐネオグビラに向かうが、ネオグビラが尻尾を上に振り上げると、ネオダランビアの時よりも強力なバリアーに阻まれる。

 

氷『えっ?マジか…』

 

光線は当たらず、バリアーの前で霧散する。

 

呆然とする、ダイナとウルトラマンにネオグビラはドリルミサイルを放つ。

 

それを受けたダイナは後ろに吹っ飛ぶ。

 

「グワァッ!!」

 

ウルトラマンも爆発の余波で吹っ飛ぶ。

 

「アーーーッ!!」

 

更にネオグビラは目から光線を放つ。

 

「グオオォォォン!!」

 

「へァッ!!」 「グワァッ!!」

 

光線が当り、膝をつくダイナとウルトラマン。

 

二体の巨人のその様を見て、バカにするように鳴き声をあげるネオグビラ。

 

「グオ!グオ!グオ!グオ!」

 

氷『っの野郎!! バカにしやがって!!』

 

ダイナは右手を左の掌に添えて、素早く前に伸ばして射つ『ビームスライサー』を放つ。

 

「ハッ!!」

 

しかしバリアーに阻まれる。

 

諦めず、今度は両腕を水平に胸の前で重ね、前に素早く拡げて放つカッター状の光線『フラッシュサイクラー』を射つ。

 

「ショワ!!」

 

またもやバリアーに阻まれる。

 

その間、ウルトラマンはネオグビラを観察していた。

 

竜『アイツ…バリアーを張る時に尻尾を上に振り上げてる……だったら!!』

 

そしてウルトラマンは、上空に回転しながらネオグビラの後ろへ回り込み、素早く八つ裂き光輪を放つ。

 

「へァッ!!」

 

見事にネオグビラの尻尾を切り裂き、ネオグビラはバリアーを張れなくなった。

 

「グオ!? グオオォォォン!?」

 

竜『今だ!殺れ!』

 

氷『ああ!!』

 

ダイナは再びソルジェント光線を放つ。

 

今度は命中し、ネオグビラは断末魔をあげ、爆発した。

 

「グオオォォォン!!」

 

ウルトラマンはダイナの前へ行くと、互いに頷く。

 

下を見ると、人々が歓声をあげていた。

 

穂乃果たちも手を振りながら礼の言葉を言う。

 

「ありがとーーッ!! ウルトラマーーン!ダイナァァァ!!」

 

海「ありがとうございまーーす!」

 

こ「ありがとーーッ!!」

 

希「やっぱり凄いな、ウルトラマン達は……」

 

希はそう言って、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

この後は例の如く、街を治して飛び去るウルトラマンとダイナ。

 

竜司は神田明神に、氷麗は真姫を探し、その近くに降り立つ。

 

穂「竜ちゃん!! 今度はどこ行ってたの!?」

 

竜「チッ、コーヒー買いに行ってただけだ」

 

穂「竜ちゃんのバカァァ!! 穂乃果がどれだけ心配したと思ってるの!? また危ない事をしてるんじゃないかって、ハラハラしたんだから!!」

 

竜「あァ……悪かった」

 

涙目でガミガミ言う穂乃果に、竜司は後頭部を掻いてバツの悪そうな顔をするしかなかった。

 

一方、盾は前に拾った石化状態のスパークレンスが光っている事に戸惑っていた。

 

「何で…光ってんの……?」

 

海「盾……?」

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷麗side

 

 

「おーい!真姫ぃ~~!!」

 

「氷麗!!」

 

俺は真姫を見つけ合流していた。

 

「真姫、あの子は?」

 

「無事に親御さんのところへ送ったわ…。それより氷麗は大丈夫!? どこも怪我してないの!?」

 

真姫がそう訊ねてきたので元気良く返した。

 

「当たり前だろ?俺は不死身の氷麗様だぜ?」

 

これで真姫も安心するだろ。

 

そう思ってたら、真姫に怒鳴られた。

 

「バカ!! 私が……私がどれだけ心配したと思ってるのよ!? 先に逃げろって言われて、どれだけ自分の力の無さに私が悔しくなったと思ってるのよ!? そういう無鉄砲で後先考えない行動するのやめてよ……バカァァ……」

 

真姫は泣いていた。

 

泣きながら、俺に抱きついてきた。

 

あぁ……ホント、俺はバカだな。

 

一番守りたい幼馴染みの女の子の笑顔を守れなかった。

 

「ゴメンな、真姫。ゴメン……」

 

「グスッ、ホントよ……バカ…」

 

その後、真姫が泣き止むまでずっと抱き締めていた。

 

真姫が泣き止んだ後は、そのまま家へ帰っていた。

 

無言で………。

 

俺はその雰囲気に耐えられなくなり、明るく真姫に話しかける。

 

「しかしあそこまで真姫が心配してくれるとは。感謝感激だな」

 

「なっ!? 元はと言えば誰のせいよ!! だ・れ・の!?」

 

顔を真っ赤にして真姫は俺に詰め寄ってくる。

 

「ハイハイ、申し訳ありません…」

 

「まったく……。ねぇ、氷麗。私……アイドルの……あの先輩たちの曲を作曲してみようと思うの」

 

「いいんじゃない?俺は応援するぜ」

 

「うん……だからね、氷麗も手伝ってよ」

 

「えっ?けど、俺ギターは弾けるけど作曲は出来ないぞ?」

 

「分かってる。だから、あなたはただ意見してくれればいいの。何がいいか、どうすればいいかをね…」

 

「……分かったよ」

 

俺は真姫の願いを叶え、真姫のやりたい事を精一杯応援しよう。

 

そう決めた。

 

 

氷麗sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

竜「……チッ、穂乃果ァァ!まだかァァ!?」

 

穂「もうちょっと待ってて~~」

 

二回目の怪獣騒動の日から翌日。

 

俺は穂乃果の家の前で待っていた。

 

朝のニュースは早速ウルトラマンの事で何処のチャンネルもウルトラ一色だった。

 

まあ…ウルトラマンに続きダイナも現れたからな…。

 

ちなみに、ウルトラマンの玩具やDVDがここ最近バカ売れしているらしい。

 

本物のウルトラマンの力すげェ。

 

穂「行ってきま~~す!お待たせ、竜ちゃん。行こう!」

 

竜「あァ…」

 

いざ行こうとしたら二階にいる雪穂が呼び止めてきた。

 

「お姉~ちゃ~ん!」

 

穂「ん?」

 

「これお姉ちゃんのー?宛名がないんだぁ。μ'sって書いてあるけどー」

 

穂「……え?」

 

あァ?

 

それって?

 

竜「おい雪穂ォ!! それこっちに投げて寄越せ!!」

 

雪「うん、分かったよ竜兄ぃ~~!!」

 

雪穂から投げられたのは、なんかのCD。

 

穂「これって………」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の屋上。

 

授業も終わり、いつもの4人で真ん中を陣取り、目の前のパソコンにCDをセットする。

 

穂「いくよ」

 

画面に表示された再生ボタンをクリックする穂乃果。

 

流れてきたのは言わずもがな、音楽だ。

 

イントロから始まり、歌声が聴こえる。

 

穂「ぁ……この歌声!」

 

穂乃果が俺の顔を見てくる。

 

意図が分かり、肯定の意味で首を縦に振る。

 

あの赤髪、やってくれたな。

 

穂「すごい……歌になってる」

 

こ「私達の……」

 

海「私達の……歌……」

 

そう言いながらも、誰もが歌に聴き入っていた。

 

つーか西木野のやつ、これを昨日の今日で完成させるなンてな……ツンデレの癖して末恐ろしい女だ。

 

だがこれで一通りは揃った。

 

なら後は振り付けと、歌の練習のみ。

 

穂「わぁぁ~……」

 

その時、ピピッという音がした。

 

「あっ…」と四人同時に声を上げ、音源の先を見ると、そこにはスクールアイドルのランキング表示があった。

 

海「票が入った……」

 

これで嫌でも他のスクールアイドルと同じ土俵に立った。

 

今は当然最低ランク。

 

だがここから上位に食い込めば知名度も上がり、釣られて音ノ木の注目度、人気度も変わってくる。

 

つまりここがよォやくスタート地点だ。

 

俺は気持ちを引き締めて切り替えさせる為に穂乃果達に言う。

 

「ンじゃまァ……練習すっかァ?」

 

「「「うん!」」」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

ダイナが初めて現れたその日の夜。

 

火神イクスは奇妙な夢を見ていた。

 

周りはジャングルが生い茂り、その中にイクスはいた。

 

暫く進むと、目の前に変わった形の遺跡みたいなのがあった。

 

火「何だ?これは?」

 

すると遺跡が光り、イクスを包み込んだ。

 

火「ぐっ!?」

 

イクスはあまりに眩しいため、腕で目を隠す。

 

光が収まり、イクスが腕を退けると、

 

そこには…

 

 

 

 

 

赤いY字の結晶が胸にあり、頭は兜のような形、両腕には鋭い刃の付いた籠手を装着した銀色の巨人がいた。

 

火「ウルトラマン……?」

 

イクスが疑問に思ってると、その巨人は右腕をイクスに向け、何かを差し出した。

 

それは巨人と同じく赤いY字の結晶と青い水晶が付いた白い短刀のようなもの、名を「エボルトラスター」という。

 

イクスはそれを受け取り、巨人の方へもう一度、顔を向けたが、そこにはもう巨人はおらず、代わりに自分の部屋の天井が映っていた。

 

火「何なんだよ…?……ったく……」

 

イクスも光の戦士として選ばれた瞬間であった。

 

 

◎sideoff

 

 

 



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ファーストライブ#1



これより、この作品をリメイクする事を重点的に活動していきます。

勿論、再開するに当たってちゃんと新話も投稿していくので、どうか見捨てないで!!



竜司side

 

 

俺達はいつも通り朝練をしていた。

 

今は階段ダッシュをしており、俺が計測担当をする。

 

その後はダンスの練習。

 

俺はそれをぽけーっと見ながら、

 

「なあ…ウルトラマン」

 

『何かな?』

 

「お前らって、別の世界から来たンだよな?」

 

『ああ、そうだが…?それがどうかしたのかい?』

 

ウルトラマンと心の中で話し合いをしていた。

 

気になる事があるから。

 

「前にダイナが現れたよな?お前だけじゃないのか?」

 

『そうだ』

 

「ぶっちゃけ…誰が来てンだ?」

 

『私とセブン、A、マックスだ』

 

「はっ…?たった四人?じゃああのダイナは?」

 

『分からん…。もしかしたら、私や君たちが知らないだけでこの世界にもウルトラマンはいるのかもしれないな…』

 

そういうウルトラマンの話で、俺はどうにも引っ掛かる事が出来た。

 

「ならマックスやセブン、エースはどこにいる?」

 

『それも分からん…。だが、近くにいることだけは分かる』

 

成る程、じゃあもしかしたら、いずれそのうち現れるという事か?

 

「最後に一つ。お前らは一体どうやってこの世界に来れたンだ?」

 

これが核心的な質問だ。

 

俺の知る限りウルトラシリーズのなかでも、平行世界を自ら行き来出できるのは、ゼロ、コスモス、ネクサス、そしてダイナだ。

 

ガイアもしてたけど、あれは機械の力でやってたから除外。

 

つまり、光の国の戦士で唯一平行世界を行き来できるゼロがいないのに、どうやって来れたのか?

 

それが大きな疑問だ。

 

『うむ。実は光の国のすぐ近くで灰色のオーロラのようなものが現れたんだ』

 

「灰色のオーロラ?」

 

『ああ。我々ウルトラ戦士総出で調べていたんだ。何せ今までに無い現象だったからな。そしたら急にそのオーロラは動き出し、私とセブン、エースとマックスを取り込んだのだ』

 

「成る程……」

 

大体分かった。

 

灰色のオーロラか……俺の知ってる限りアレしか無いが、まさかな……。

 

そんな風にウルトラマンの話を聞いていたら、穂乃果たちが来た。

 

俺は水筒とタオルを三人に渡す。

 

「お疲れ」

 

穂「うん。ありがと、竜ちゃん。ふぅー。終わった~」

 

海「まだ放課後の練習がありますよ」

 

こ「でも、随分できるようになったよね♪」

 

海「二人がここまで真面目にやるとは思いませんでした」

 

竜「あァ。穂乃果は寝坊ばっかりすると思ってたンだが」

 

穂「大丈夫!! その分授業中ぐっすり寝てるから!!」

 

穂乃果はそう言って寝転ぶ。

 

竜「いやダメだろ…?」

 

それじゃあ本末転倒だろ。

 

そう思ってると、階段のところに西木野と氷麗がいるのを視界に捉えた。

 

なんか「ほら、行かないのか」とか、「ちょっ!? 押さないでよ!!」という会話が聞こえた。

 

かなり小声で言い合っているが、バッチリ聞こえた。

 

これもウルトラマンと一体化した影響か?

 

穂乃果も気付いたようで、急いで氷麗の腕を引っ張って逃げようとした西木野に声をかける。

 

穂「あっ!! 西木野さーん!真姫ちゃ~ん!!」

 

そこフルネームで言う必要あるか?

 

まぁそれはともかく、穂乃果の声がデカくて恥ずかしいのか、当の西木野は顔を険しくしながら階段を上がってきた。

 

真「大声で呼ばないで!!」

 

ま、そうなるな。

 

赤い髪に負けず劣らず顔も真っ赤な事で。

 

穂「ほぇ?どうして?」

 

うわーお、あざといなァ穂乃果ちゃんよォ?

 

ほぇ?とか、あざとい。

 

後、普通なら分かるだろ?

 

真「恥ずかしいからよ!」

 

穂「そうだ!! あの曲……三人で歌ってみたから、聴いて!」

 

スルーかよ。

 

穂乃果はイヤホン付きの音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンの片方を西木野に渡す。

 

真「は~?何で?」

 

穂「だって、真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」

 

真「っ!!」

 

どうやら図星のようだ。

 

氷麗が小声で西木野に「バレたな♪」と愉快そうに言う。

 

真「うっさいわよ氷麗!……だから!私じゃないって何ど…」

 

海「まだ言ってるのですか?」

 

否定しようとしたが海未に遮られる。

 

すると突然、穂乃果が「クカカカカ…」と言いながら身体を震わせ、次の瞬間。

 

「ガオーーーッ!!」

 

と叫びながら西木野に抱きつき、耳元に顔を近づける穂乃果。

 

そのせいで西木野は恐怖を覚える。

 

真「はぁ!? 何やってんの!?」

 

穂「うっひっひっひっひっひっひ……」

 

悪い笑顔で笑う穂乃果。

 

真「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

叫ぶ西木野だが次の瞬間、穂乃果にイヤホンを耳につけられ「えっ!?」と呆気にとられる。

 

そしてその時の顔を氷麗にスマホで撮られていた。

 

穂「よぉし!作戦成功!!」

 

真「っ!?……?」

 

穂「結構上手く歌えたと思うんだ。いくよ~~」

 

海「μ’s…」

 

こ「ミュージック…」

 

「「「スタート!!」」」

 

そう言って、プレイヤーの音楽を再生する穂乃果。

 

西木野は暫く聞き、音楽が終わった後、

 

真「まだ若干ズレがあるわ…」

 

と言い残し、氷麗と共に立ち去った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

朝練が終わった後、学校に登校。

 

穂「ふぁぁぁ~~…」

 

海「眠る気満々ですね…」

 

正直俺も眠い…。

 

すると後ろから「ねぇ?あの子達じゃない?」という声が。

 

後ろを振り向くと、先輩二人がいて、

 

「あなた達って、もしかしてスクールアイドルやってるっていう…」

 

と、質問をされる。

 

それにことりが答える。

 

「あっ、はい!μ’sっていうグループです」

 

「μ’s…?ああ~石け…」

 

海「違います!」

 

海未が即座に否定。

 

反応がハエーイ!

 

「そうそう。ウチの妹がネットで、あなた達の事見かけたって…」

 

穂「ほんとですか?」

 

「明日ライブやるんでしょ?」

 

こ「はい!放課後に」

 

「どんな風にやるの?ちょっと踊ってみてくれない!?」

 

こ「えっ…!? ここでですか…?」

 

戸惑うことり。

 

まあ、ここは校門。

 

生徒も沢山いる。

 

恥ずかしいだろうに…。

 

隣を見ると、海未が凄い顔になってる。

 

しかしここで穂乃果が、穂むらの看板娘としての実力を遺憾なく発揮する。

 

グーにした手を頬につけ、若干ムカつく笑みを浮かべて言う。

 

「うふふふふふふふふ……いいでしょう。もし来てくれたら、ここで少しだけ見せちゃいますよぉ~~。お客さんにだけ特別に~…」

 

こ「お友達を連れてきて頂けたら、さらにもう少し………」

 

「ホント!?」「行く行く!!」

 

穂「毎度ありぃ~~!!」

 

飛び跳ねる穂乃果。

 

こいつのこういう所は素直に尊敬するよ。

 

穂「じゃあ、頭のところだけ…」

 

そう言って踊ろうとする穂乃果とことり。

 

しかしここで先輩が「あれ?もう一人は?」と訊いてくる。

 

「「ほぇ?」」

 

見ると海未がいない。

 

アイツ……逃げたな…。

 

穂「……あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

海未は屋上で座り込んでいた。

 

竜「こンな所にいやがったか、海未」

 

海「竜司……やっぱり無理です……」

 

弱々しい声で言う海未。

 

穂「えぇ!? どうしたの~?海未ちゃんなら出来るよ~!」

 

そう穂乃果が励ますと、

 

海「出来ます……」

 

「「「えっ?」」」

 

予想外の返答が返ってきた。

 

海「歌もダンスもこれだけ練習してきましたし……。でも、人前で歌うのを想像すると…」

 

こ「緊張しちゃう…?」

 

海「…………」

 

海未は力なく頷く。

 

穂「どうしよう?竜ちゃん…」

 

竜「どうするって、荒療治してみるかァ?」

 

穂「でも………そうだ!! そういう時はお客さんを野菜だと思えって、お母さんが言ってた!!」

 

海「………野菜?」

 

そして海未は想像する。

 

 

《◎視点想像》

 

 

かなり大きめの野菜たちに囲まれ、その中で海未が叫ぶ。

 

「みんな~、いっくよ~!!」

 

その瞬間、海未の真上にジッパーのようなものが開き、そこから色々な野菜をくっつけたような物が海未の頭に落ちる。

 

そしてこんな音声が鳴った。

 

『野菜アームズ!花道・栄養・オンステージ!!』

 

 

《終了》

 

 

海「私に一人で歌えと!? そして何するんですか!?」

 

穂「そこ!? ってか何言ってるの海未ちゃん!?」

 

竜「一体何想像したンだよ……」

 

意味不明な事を口走る海未。

 

海「大体何ですか!? 野菜アームズって!? オンステージって!?」

 

穂「ホントに何想像したの!?」

 

ホントにな。

 

野菜アームズって……鎧武じゃねェか。

 

穂「はぁ~、困ったなぁ~…」

 

こ「でも…海未ちゃんが辛いんだったら、何か考えないと…」

 

海「ひっ、人前じゃなければ大丈夫だと思うんです!! 人前じゃなければ……」

 

頭を抱えて蹲る海未。

 

竜「人前じゃなければって……人前じゃないと意味ねェだろォが?」

 

海「ですが…!!」

 

海未が俺に反論しようとすると、穂乃果が海未の手をつかみ立ち上がらせた。

 

「色々考えるより、なれちゃった方が早いよ!………じゃあ行こ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

そしてやってきたのは秋葉原。

 

ここで海未にチラシを配りをさせて、慣れさせようという作戦だ。

 

まあ、それは分かる。

 

だがなァ……。

 

竜「おい穂乃果。何で俺までやらなきゃならン?」

 

「だって竜ちゃん、穂乃果たちのマネージャーでしょ?だったら当然だと思うんだけど」

 

竜「………チッ」

 

こいつ正論言いやがって。

 

竜「クソめンどくせェ…」

 

穂「お願い竜ちゃん。ね?」

 

穂乃果に上目遣いで手を合わせてお願いされる。

 

チッ……しょうがねェなァ。

 

竜「分かったよ。ただ…」

 

穂「?」

 

俺は後ろのガチャガチャに指を向けた。

 

穂乃果もその方向に顔を向ける。

 

竜「海未がな……」

 

海「……あっ、レアなの出たみたいです……………」

 

そこには現実逃避気味にガチャガチャをしている海未。

 

ことりは苦笑いをしている。

 

穂「海未ちゃぁぁぁぁん!!」

 

穂乃果が呼びかけるが海未は、

 

「無理です………無理です………無理です………」

 

どこぞの自虐ネタ芸人みたく、「無理です」を連呼している。

 

こ「さすがにハードルが高過ぎたんじゃ……」

 

穂「はぁ~、そうだね……。ほら、海未ちゃん行くよ」

 

ことりの意見に穂乃果は納得し、海未を連れて行こうとしたその時。

 

突然地面が激しく揺れ、アスファルトにヒビが入る。

 

そして、次の瞬間遠くの方でアスファルトの地面が割れ…

 

 

 

 

「ゴガアァァァァァァァン!!」

 

 

 

 

地底から怪獣が現れた。

 

白いとぐろのような物に頭を覆われ、ゴツゴツとした白と藍色の肌の怪獣。

 

『古代怪獣ゴルザ』だ。

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

海「ひっ!? か、怪獣!?」

 

ゴルザの登場にさすがの海未も現実に戻る。

 

竜「ちっ!とにかく逃げるぞ!! 穂乃果、ことり、海未。早くしろ!!」

 

穂「う、うん!!」

 

こ「海未ちゃん早く!」

 

海「はっ、はい!!」

 

俺は三人を連れて逃げる。

 

ここは人が沢山いるから、ウルトラマンに変身するわけにはいかない。

 

だから今は逃げることに専念しよう。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

土方盾は、穂乃果たちが秋葉原でチラシ配りをしている頃、同じく秋葉原にいた。

 

秋葉原の裏路地にある駄菓子屋に来ていたのだ。

 

買い物を済ませ、表通りに出ようとしたところ、突然地面が揺れた。

 

「うおっ!? 何だ何だ!?」

 

盾はすぐ近くの壁によりかかる。

 

「いってぇな~。何だ『ゴガアァァァァァン!!』……はぁ?」

 

突然の雄叫び。

 

表通りを見ると、大勢の人が逃げていた。

 

その中には長年の付き合いである幼馴染みの海未に、穂乃果やことり、竜司がいた。

 

「一体…何が?……うそん…」

 

盾がビルの陰から覗くと、遠くの方で古代怪獣ゴルザが暴れていた。

 

盾はしばらく茫然としていたが、制服のポケットが光っていることに気づく。

 

中を探って取り出し見てみると、石化しているスパークレンスだった。

 

「何で……何なんだよこれ!?」

 

盾の脳内はキャパオーバーしていた。

 

いつか海未を家に送った帰りに拾った変わった形の石。

 

………石だったはずのスパークレンスが、ゴルザに呼応するように光る。

 

まるで自分に変身してゴルザと戦えと言ってるかのように。

 

「俺は………どうしたら……」

 

盾がそんな風に迷っている時だ。

 

海「キャッ!?」

 

盾「っ!?」

 

盾の目の前で海未が転んだ。

 

逃げてる途中に小石につまづいたようだ。

 

しかし、海未の声は周りの人々の悲鳴にかき消され、竜司たちが気づいたのは、しばらく進んだ後だった。

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

ゴルザはその場に転び、蹲ったままの海未に狙いを定めて、頭から破壊超音波光線を撃つ。

 

穂「海未ちゃん!?」

 

こ「海未ちゃん!!」

 

竜「海未!」

 

急いで三人は戻ってくるが、間に合わない。

 

死刑宣告のように迫り来る光線を見た海未は

 

「すみません…。穂乃果、ことり、竜司」

 

そう呟き目を閉じる。

 

それを見た盾は、

 

「あーもう!! めんどくさいなぁ!!」

 

やけくそ気味に石化しているスパークレンスを天に掲げる。

 

その瞬間、スパークレンスの石は砕け散り、本体が姿を表すとカバー部分が開き、盾は光に包まれた。

 

 

 



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ファーストライブ#2

もう基本は地文の加筆か、変更ですね。



海未side

 

 

海「キャッ!?」

 

怪獣が現れ逃げてる内、私はアスファルトの小石につまづき、転んでしまいました。

 

穂乃果たちは気付かずに逃げ続けていましたが、やっと気づいたくれたようで、こちらに戻ってきています。

 

穂「海未ちゃん!?」

 

こ「海未ちゃん!!」

 

竜「海未!」

 

私も起き上がろうとしましたが、どうやら足をくじいたようで、立ち上がる事が出来ません。

 

ふと怪獣の方を見ると、怪獣の光線が私に向かって吐かれました。

 

私は自分の死を覚悟しました。

 

脳裏に今日までの事が再生されます。

 

アイドルを始めた事…。

 

穂乃果たちに出会った事…。

 

なにより…盾に出会えた事…。

 

これが走馬灯なのでしょうか?

 

私は穂乃果たちの方へ向いて懺悔します。

 

「すみません。穂乃果、ことり、竜司」

 

あなた達とアイドルをする事が出来ない私を許して下さい。

 

そして盾………出来ることなら、あなたにもう一度会って伝えたかった…。

 

好きです、と。

 

この瞬間になって気付くとは、私もまだまだですね…。

 

私はゆっくりと目を閉じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

盾「あーもう!! めんどくさいなぁ!!」

 

えっ?

 

なぜ盾の声が………?

 

すると私の後ろに綺麗な光の柱が現れ、光線を弾き返していました。

 

(BGM:ティガ!)

 

そこから現れたのは、赤と紫と銀の体色に、二本の金のラインがある光の巨人でした。

 

穂乃果とことりが私に近づき心配の言葉をかけてくれます。

 

穂「大丈夫!? 海未ちゃん!!」

 

こ「ごめんね海未ちゃん!! 気づけなくて……」

 

竜司は包帯を出し、私の足首に巻いてくれます。

 

竜「海未!大丈夫か!? 足は捻っただけか……」

 

こ「ホント!? よかったぁ……」

 

竜司が私の足を見てそう診断し、ことりが安堵します。

 

海「すみません三人共…」

 

穂「ううん!いいよいいよ!! 海未ちゃんが無事でよかったよ♪……それより…」

 

穂乃果は私の後ろを見て、その顔を輝かせます。

 

「本物のウルトラマンティガだぁ~!」

 

私も竜司におんぶされ、上を見ます。

 

そこには特撮に詳しくない私でもよく知ってる、平成ウルトラシリーズ初のウルトラマン。

 

右腕を上に伸ばし、左腕は曲げて頭の横につけて、背筋を伸ばして立っている……

 

 

 

 

 

『ウルトラマンティガ』がいました。

 

 

 

 

 

 

 

海未sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

「チャッ!」

 

ティガは登場時の構えを解き、海未たちの方へ顔を向ける。

 

『よかった。海未は無事みたいだ』

 

ティガに変身している盾は安堵する。

 

海未に光線が当たる前にティガに変身した盾が、その身を呈して海未を守ったのだ。

 

ティガの顔を見た海未は、

 

「盾……なのですか?」

 

と、何故か盾の名前を口にした。

 

それが不可解だと思ったのか、首を傾げた穂乃果は海未に尋ねる。

 

「海未ちゃん、どうしてティガが盾くんだと思うの?」

 

「あっ、いえ……何となくそう思っただけです」

 

それは盾と一番付き合いが長い幼馴染み故の直感なのかもしれない。

 

『相変わらず凄い勘の良さだな。まあそれより……』

 

盾はティガの中で海未の勘の良さに舌を巻いたが、すぐにゴルザの方へ顔を向ける。

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

ゴルザは因縁のある敵と出会えた事で、歓喜の雄叫びをあげる。

 

「チャッ!!」

 

ティガは、右手をチョップの形に握り、左手はグーに握る戦闘ポーズをとる。

 

(BGM:光を継ぐもの)

 

ティガはゴルザに向かって走り、手始めに右手のチョップを繰り出す。

 

「チャッ!!」

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

すかさずティガはゴルザの頭部にもう一度チョップ。

 

「チャッ!!」

 

さらにゴルザの胸部にもう一発チョップ。

 

「ハッ!!」

 

ゴルザが怯むと、ティガはゴルザの頭を押さえて膝蹴りを叩き込んだ。

 

「チャッ!!」

 

「ゴガアァァァン!!」

 

ゴルザはティガに超音波光線を放とうとチャージするが、ティガに光線を出す部分と口を閉じられ、発射出来なかった。

 

「ゴガアァァァァァ!!」

 

ゴルザはティガの腕を解き両手を掴むと、自前のパワーでティガを抑えこむ。

 

『なっ!? なんてバカ力だよ!!』

 

盾は毒づくが、ゴルザはそれがどうしたと言わんばかりに、ティガを左右に振り回し、投げ捨てる。

 

ティガは遠心力により背中から地面に落ちる。

 

「ヂャアア!!」

 

ゴルザはすかさずティガに超音波光線をはなち、ティガは膝立ちで起き上がったところにまともに食らう。

 

「ヂャアアッ!?」

 

ティガは座り込み、肩で息をしている。

 

『ヤバいな……。まだ時間も体力もあるが、あの怪力をなんとかしないと…』

 

盾は打開策を考えるが、なかなか思い付かない。

 

そんな時、海未が声を張り上げて応援した。

 

「ティガ!頑張ってください!!」

 

『海未……』

 

それを聞いた盾、もといティガはゆっくり立ちあがる。

 

その様子を見たゴルザは一瞬ビクつく。

 

そしてティガは、額のクリスタルの前で腕をクロスさせる。

 

「ンンンンン……ハッ!!」

 

瞬間、クリスタルが赤く光り、ティガの体が赤と銀に変わる。

 

(BGM:甦る巨人)

 

「チャッ!!」

 

穂「赤くなった!!」

 

竜「パワータイプか。成る程…」

 

穂乃果は驚き、竜司は納得している。

 

ティガの『パワータイプ』はスピードが下がる代わりに、パワーがかなり上がる。

 

これでゴルザとも充分やり合えるだろう。

 

「ハッ!!」

 

ティガは構え方を両方とも拳に握る形に変える。

 

ゴルザは構わず光線を撃つが、ティガのウルトラバリアで防がれる。

 

「ハッ!」

 

「ゴギィァァァァァ!」

 

ティガはゴルザにタックルを叩き込む。

 

「チャッ!!」

 

すかさずゴルザの背中を掴むと相手の背骨を折る『ウルトラバックブリーカー』でゴルザの背骨を折る。

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

ゴルザはあまりの痛さに叫び、ティガはゴルザの頭部を掴むと、背負い投げをして、ゴルザを地面に叩きつけた。

 

「ゴガア……ァァァン」

 

ゴルザはもう立ちあがる事が出来ない。

 

ティガは再び、赤と紫と銀の体『マルチタイプ』に変わり、両腕を腰に当ててから体の前でクロスさせて、左右に拡げてからL字にして放つ『ゼペリオン光線』を撃つ。

 

「チャアァァァァ!!」

 

「ゴガアァァァァァン!!」

 

光線は見事にゴルザに当たり爆発。

 

ゴルザは後ろに倒れてから消滅した。

 

穂「ティガァァ!! ありがと~!」

 

こ「ありがと~!」

 

穂乃果とことりは大きな声で礼を言う。

 

海未は小さな声で、でも確かに思いを込めて礼を言う。

 

海「ありがとうございます。ティガ…」

 

ティガは頷き、上空に浮かぶと街を治してから飛び去っていった。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾side

 

 

ティガの変身を解いた後、俺は海未たちの方へ向かっていた。

 

盾「おーい、海未!みんな!」

 

海「盾!」

 

「「盾くん!!」」

 

竜「盾か?」

 

俺の姿を視認した竜ちんは、ゆっくり海未を背中から下ろした。

 

下ろされた海未は足を挫いてるのか、ひょこひょこ歩きながらこっちに来る。

 

海「盾、なぜここにいるんですか!?」

 

盾「まあ、ちょっとね。それより海未、聞いて。穂乃ちんと竜ちん。ことちんも」

 

ティガになっている間に決めた事を四人に言う。

 

盾「俺もμ’sのマネージャーになるよ。いいかな?」

 

それを聞いて海未は、

 

「はい!! よろしくお願いしますね、盾!!」

 

笑顔でそう言うと俺に抱きついてきた。

 

穂「よかったね、海未ちゃん!!」

 

こ「海未ちゃん、おめでとう!!」

 

とまあ、穂乃ちんとことちんは海未を祝う。

 

何で…?

 

こ「あのね、盾くん。海未ちゃん、盾くんが入らないって、ずっと寂しがってたんだよ」

 

海「ちょっ!? ことり!!」

 

疑問に思ってるのが分かったのか、ことちんが俺に海未の秘密を暴露してくる。

 

成る程、海未がね~…。

 

俺がニヤニヤと海未を見てると、海未は顔を赤くし、両腕をワタワタ振りながら弁解する。

 

「ちっ…違うんですよ盾!これはですね……!あーもう!! そう言うことりだって、恭弥がちゃんと入ってくれるかどうか不安がってたじゃないですか!?」

 

こ「うっ、海未ちゃぁぁぁん!? それは言わないでよぉぉぉ!!」

 

思わぬ反撃にことちん赤面涙目。

 

これをザクちんに見せたらどう反応するかな~?

 

穂「ほらほら!! 喧嘩しないで、一回学校に戻ろう!! チラシ配りもあるし、今度は5人でね?」

 

そう言う穂乃ちんの言葉により、音ノ木に戻った。

 

 

 



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ファーストライブ#3



※校門の所でのビラ配りをちゃんと書いてなかったので、書き直しました。



竜司side

 

 

竜「ここならやれンだろ」

 

海「まぁ、ここなら……」

 

5人になってやってきたのは音ノ木坂学院の校門前。

 

いや、戻ってきたと言った方が正解か。

 

ここなら海未もやりやすいかもしれない。

 

穂「じゃあ、始めるよ!μ's、ファーストライブやりまーす!」

 

そう言って穂乃果はチラシ配りをし始めた。

 

「よろしくお願いしまーす!ありがとうございまーす!」

 

ことりも穂乃果に続いて行動に出ている。

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

盾「ほらほら海未も~」

 

海「ちょ、ちょっと盾…!?」

 

盾は海未の背中を押して歩き出す。

 

一緒に配る為だろォな。

 

その方が海未も幾分か安心するだろ。

 

と思ったが、

 

海「あ、あ……」

 

穂乃果とことりは結構順調そうに出来ているが、やはり海未はまだオロオロしている。

 

声を掛けようとはしているが、1歩踏み出せずにいる。

 

盾「海未、頑張れ~」

 

最早盾が海未を見守る父親になりつつあるな。

 

海「お願いします!」

 

ようやく声を掛けたか。

 

相手は黒髪ツインテのチビ。

 

あの背丈、本当に高校生かァ?

 

「……いらない」

 

しかし無情にも拒否られた。

 

憐れ海未。

 

盾「海未、次だよ次」

 

海「は、はい…」

 

まァちゃンと盾がフォローするし、そンな心配する事は無いがな。

 

穂「ダメだよそんなんじゃー!」

 

海「穂乃果はお店の手伝いで慣れてるかもしれませんが、私は……」

 

海未の失敗を見た穂乃果が海未に駆け寄る。

 

確かに穂乃果は店の手伝いで他人に接する事も昔からよくやっていた。

 

だから慣れがある。

 

対して海未は重度の恥ずかしがり屋であり、臆してしまうのも無理はない。

 

穂「ことりちゃんだってちゃんとやってるよ?」

 

何故か矛先はことりへ。

 

こ「μ'sファーストライブでーす!」

 

見ると元気ハツラツとした笑顔でチラシを配ることりがいる。

 

ことりがあンなにも余裕そうなのが驚きだ。

 

穂乃果と同じくらい堂々としている。

 

まるで接客に慣れているような……。

 

穂「ほら、海未ちゃんも。それ配り終えるまでやめちゃダメだからねー!」

 

中々キツイ事を言うなァ。

 

海「えぇ!? 無理です!!」

 

穂「海未ちゃん、私が階段5往復出来ないって言った時、何て言ったっけ?」

 

ありゃささやかな仕返しだな。

 

穂乃果の海未を見る目がいかにも挑発しているかのような目だった。

 

海「っ……分かりました!やりましょう!」

 

でもそれが良い薬になったのか、海未もよォやくやる気になった。

 

海「よろしくお願いしまーす!μ'sファーストライブやりまーす!」

 

声にも覇気が出てきた。

 

そンな時、

 

「あの……」

 

穂「ん?」

 

穂乃果に声を掛けた人物がいた。

 

それは例の眼鏡少女で、隣にはイクスがいた。

 

穂「あなた達はこの前の!」

 

「は、はい………ぅ、ライブ、見に、行きます……」

 

それはとても弱々しい声ではあったが、穂乃果達を元気づけてくれるような声でもあった。

 

穂「ほんとぉ!?」

 

こ「来てくれるのぉ!」

 

ことりも海未もいつの間にやら横にいた。

 

聞き付けるの早くね?

 

海「では、1枚2枚と言わず、これを全部……」

 

穂「海未ちゃん……」

 

おい、さっきのやる気は何だったンだよ。

 

放り出すの早すぎだろ?

 

海「分かってます……」

 

珍しく穂乃果に睨まれて萎縮して、か細い声で沈み込む海未。

 

竜「イクスも来るのか?」

 

火「多分な……」

 

曖昧な言葉だなァ。

 

火「じゃあそろそろ行くぞ。花陽」

 

花「う、うん…」

 

何気に初めてこの眼鏡少女の名前を知った。

 

そして2人が帰っていくと、3人共、特に海未が照れながらもよく頑張っていた。

 

ちゃンと3人共チラシを全部配り終えたのだ。

 

すると盾は海未の頭を撫でて誉める。

 

「よく頑張ったね~海未~」

 

「あ、あう~……恥ずかしいです盾……」

 

顔を真っ赤にしてモジモジする海未だが、別に嫌そうではない。

 

むしろ嬉しそうにニマニマしてるくらいで、気分屋な盾が手を退けると、「あっ…」と小さく声を漏らして残念そうにする程だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し経って、ここは穂乃果の家。

 

俺と穂乃果、盾と海未の4人は今、穂乃果の部屋でパソコンを開いている。

 

ランキングチェックと他のスクールアイドルの動画を見るためだ。

 

穂「う~ん…やっぱり動きのキレが違うよねぇ~…」

 

A-RISEの動画を観ていた穂乃果は立ち上がり、

 

「こう?こう?……こう!?」

 

とか言いながら色々ポーズを取る。

 

なンかバカみたいだな。

 

するとパソコンの画面に変化が現れた。

 

それに最初に気づいたのは穂乃果。

 

「あっ!?」

 

海「どうしました!?」

 

穂「ランクが上がってる!!」

 

なンだと?

 

興味を持った俺と盾も、横から覗き見る。

 

盾「ホントだ…」

 

確かに順位が上がっていた。

 

登録した時は最底辺だったのにな……。

 

穂「きっとチラシで見た人が投票してくれたんだね♪」

 

海「嬉しいものですね!!」

 

こういう地道な努力が評価されている。

 

コイツらの頑張りは無駄ではないのだ。

 

そこで、ガララッと部屋の引き戸が開かれる音がした。

 

こ「お待たせ~」

 

ことりが衣装の入った袋を持って入って来たのだ。

 

穂「あっ!ことりちゃん!」

 

それに気づいた穂乃果は、自分達のランクが上がってる事をことりにも見せる。

 

「見て見て!!」

 

「わっ!凄い!!」

 

盾「あれ?それ衣装?」

 

「うん♪さっき、お店で最後の仕上げしてもらって」

 

そう言いながらことりは、折り畳まれた衣装を袋から出す。

 

この前ことりに見せてもらった衣装のイラストがあったが、気になるのはそれをどこまで再現出来てるかだな。

 

穂「ワクワク♪」

 

穂乃果も早く見たいのか感情を思いっきり口に出している。

 

分かり易過ぎだろこいつ。

 

逆に海未はゴクリと喉を鳴らす。

 

こ「じゃーん♪」

 

ことりの声と共に明らかにされた衣装の全貌は、十分アイドルとして可愛らしい、桃地のミニスカートの衣装だった。

 

流石は裁縫が得意なだけはある。

 

穂「わぁ~!!」

 

海「なっ…」

 

「「ほぉ~」」

 

穂「可愛い!! 本物のアイドルみたい!!」

 

穂乃果の言う事ももっともだった。

 

ホントによく出来てる。

 

アイドルが着ているものと言われたら即信用してしまうくらいに。

 

それ程までの完成度だった。

 

こ「本当!?」

 

竜「相変わらず手先器用だなァ」

 

穂「凄い!凄いよことりちゃん!!」

 

穂乃果は手を振って喜んでいるが、海未はなンか口が開きっぱだ。

 

盾「どうしたの~海未?」

 

それに逸早く気づいた盾が尋ねると、海未はことりに対して指を指しながら尋ねる。

 

「ことり」

 

「ん?」

 

「そのスカート丈は?」

 

「ん?……あっ…」

 

成る程…大体分かった。

 

あれは衣装を決める時だ。

 

 

 

海『いいですか!? スカートは最低でも膝下でなければ履きませんよ!! いいですね!?』

 

こ『はっ…はいぃぃぃぃぃぃ!!』

 

盾『ちょっと落ち着きなよ海未』

 

朱『そうだよ。ことりが怯えてるからやめて』

 

盾と朱雀に止められていたが、ことりの肩を掴ンで顔を近づける海未の顔には、鬼気迫るものがあった。

 

そしてそれはここでも、

 

海「言った筈です……!! 最低でも膝下までなければ履かないと!!」

 

再開されていた。

 

これが噂のデジャブか……。

 

穂「だ、だって、しょうがないよ。アイドルだもん!」

 

“だもん”って何だよ……。

 

可愛いからいいけど。

 

海「アイドルだからといって、スカートは短くと言う決まりはないはずです!!」

 

盾「海未、落ち着き「盾は黙っていてください!!」……はい…」

 

弱ェなァ…。

 

もうちょっと足掻けよ。

 

穂「それはそうだけど…」

 

海未の言う通り、アイドルだから絶対にスカートは短く履かなければならない、という決まりはない。

 

別にちゃンと歌って踊ればズボンでも構わないのだ。

 

まァ、アイドルは短めなスカートが印象的なのは否めないが、海未の言う事も筋は通っている。

 

しかしだ。

 

こ「でも、今から直すのは流石に…」

 

穂「うん!!」

 

もう衣装は完成している。

 

今さらチェンジは無駄なのだ。

 

時間的にも間に合わないだろうしな。

 

穂乃果とことりが説得すると、海未は立ち上がり言う。

 

「そういう手に出るのは卑怯です!! ならば、私は一人だけ制服で歌います!!」

 

竜「それはそれで恥ずかしいだろ…」

 

滅茶苦茶浮くぞ。

 

こ「えぇ!!」

 

穂「そんなぁ!?」

 

海「そもそも四人が悪いんですよ!! 私に黙って結託するなんて…!!」

 

盾「待って海未。俺今日入ったばっかりなんだけど?」

 

竜「俺も衣装に関しては何も聞いてないンだが?」

 

あまりにも理不尽すぎる言葉に2人でもう抗議する。

 

これで黒と決めつけられるなンざ理不尽すぎる。

 

穂「だって……絶対成功させたいんだもん」

 

何やら真剣な思いを口に出すかのような表情で、穂乃果は口を開いた。

 

「歌を作ってステップを覚えて、衣装も揃えて、めんどくさがりの竜ちゃんも手伝ってくれて、ここまでずっと頑張ってきたんだもん…」

 

竜「なあ…俺今軽くDISられたよな?」

 

「五人でやってよかったって、頑張ってきてよかったって、そう思いたいの!!」

 

盾「俺つい最近だけどね…」

 

しかし俺達二人の文句は女子三人にスルーされる。

 

いい加減泣くぞ?

 

すると穂乃果は何を思ったのか、部屋の窓を開けて叫ぶ。

 

「思いたいのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

竜「うるせェ!近所迷惑だろォがァ!!」

 

海「何をしているのですか!?」

 

叫ぶのは結構だがな、時間帯考えろ。

 

そして後の事を考えろ。

 

怒られるのはお前だからな?

 

俺は知らンぞ。

 

こ「それは、私も同じかな……」

 

海「えっ?」

 

俺と海未の言葉を流すかのように、ことりから呟きが聞こえてきた。

 

彼女は続ける。

 

「私も、五人でライブを成功させたい!!」

 

ことりも、本音を言った。

 

衣装を作ったのだから、一緒に着たいのは当たり前の考えだろう。

 

海「ことり……」

 

続行派は2人、拒否派は海未一人、ンで無回答なのが俺と盾な訳だが、もう答えは決まってるようなものだ。

 

盾は海未の頭に手を乗せると、やんわりと言う。

 

「まあ、こうなるのは分かってたでしょ?海未」

 

俺もそれに続く。

 

「腹ァ決めようぜ」

 

海「盾、竜司……はぁ~、いつもいつも……ズルいです」

 

多数決で完全敗北し、根負けした海未は穂乃果の方へ顔を向ける。

 

海「分かりました」

 

肯定の意味での言葉を、口に出した。

 

それを確かに聞いた穂乃果は、途端に満面の笑顔になって、

 

「海未ちゃん……!だぁい好きぃぃぃ!!」

 

海未に勢いよく抱きつく。

 

「ひゃあ!?」

 

こういう百合展開……嫌いじゃないわ!

 

でも2人を見てると分かる。

 

そこにはもう、何もわだかまりはなかった。

 

明るい笑顔が、その場を包ンでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

今俺たちは神田明神で神頼みをしている。

 

と言っても、してるのは穂乃果とことりと海未の三人だが……。

 

穂「どうか、ライブが成功しますように!いや、大成功しますように!!」

 

海「緊張しませんように……」

 

こ「みんなが楽しんでくれますように」

 

穂「よろしくお願いしまーーーーーす!!!!」

 

穂乃果は元気よく真剣に、海未もことりも真剣にお願いしている。

 

そンな中、俺と盾は穂乃果たちの後ろで明日のライブについて話していた。

 

「竜ちんは明日のライブ、どう思う?」

 

「…………成功はしないだろうな」

 

「何で?」

 

「よく考えてみろ。つい最近出来たばかりのグループだぜ。そンな奴らを見に来ると思うか?」

 

「……………」

 

盾は黙ってしまった。

 

盾も内心思うんだろう。

 

竜「けど、俺はそれでいいと思う。片手で数えられるほどしか来ないと思う。……最悪0もあり得る。でも……失敗する事で得られるものもあると俺は思う」

 

盾「……そっか」

 

そう言って、俺と盾は夜空を見上げる。

 

満点の星空だ。

 

穂「竜ちゃん!! いよいよ明日だね!!」

 

そうこうしている内に、穂乃果たちが来た。

 

竜「……ああ。明日頑張れよ」

 

穂「うん!!」

 

さて、どうなることやら。

 

 

 



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ファーストライブ#4





竜司side

 

 

絵「これで新入生歓迎会を終わります。各部活とも体験入部を行っているので、興味があったらどんどん覗いてみてください」

 

歓迎会の時間が終わり、今俺たちは講堂の前でチラシ配りをしているのだが、昨日に比べたら数段に落ちている。

 

穂「お願いしまーす!このあと、午後4時から初ライブやりまーす!」

 

こ「是非来てくださーい!」

 

手に取る人もかなり減ってきている。

 

「吹奏楽部への入部希望の方、こちらに集まってくださーい」

 

俺達の後方にいる吹奏楽部への希望者が多くなっている。

 

おそらく高校に入った時から入ろうと決めていたのだろう。

 

そのせいで俺達のチラシが減る確率が低くなっていく。

 

吹奏楽部を尻目に見ていた俺と同じく、穂乃果も一緒に見ていたようで、一層に熱心にチラシを配ろうとするが、

 

「ねえねえどこの部活にする?」

 

「演劇部とかどう?」

 

「いいね演劇部ー!」

 

穂乃果の張り上げる声は空しくも、会話に花を広げる新入生の声によって憚られた。

 

穂「うぅ~……他の部活に負けてられないよ!ねっ!竜ちゃん!!」

 

竜「ああ…」

 

穂「もう!! もうちょっと元気出していこうよ!! ほら海未ちゃんだって…」

 

穂乃果がそう言って、講堂の入口を指差す。

 

そこでは海未が昨日のチラシ配りの時とは別人みたく、堂々と元気にチラシを配っていた。

 

「お願いしまーす!! 午後4時からでーす!! お願いしまーす!!」

 

穂「ねっ!」

 

竜「仕方ねェだろォが。俺は元々こういうテンションなンだ」

 

常にローテンションのヤツに、はっちゃけて元気に配れと言うのは無理があるンだよ。

 

盾「それより、そろそろ講堂に行ったら~。リハーサルとかもあるでしょ?」

 

確かに盾の言う通り、時間も押し迫ってるし、リハーサルはかなり大事な事だ。

 

ライブをするのはコイツらなンだから、チラシ配布をするのはここらで切り上げて貰うか。

 

穂「そうだね!じゃあ竜ちゃん、盾くん。後はお願いねっ!海未ちゃん、ことりちゃん、講堂に行こう!!」

 

海「はい!」

 

こ「うん♪」

 

そう言って、穂乃果たちは行った。

 

さて、もう少し頑張るか……。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして、ヒフミトリオの一人ミカが来た。

 

どうやら自分たちも手伝うとの事。

 

なのでチラシ配りをミカに任せ、俺と盾も講堂に向かう。

 

アイツらだけじゃ心配だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果たちのいる更衣室に着いた俺たち。

 

礼儀正しくノックをする。

 

穂「はーい!!」

 

竜「入るぞ穂乃果ァ」

 

穂「うん!いいよ!!」

 

穂乃果からの返事をもらったので、更衣室に入る俺と盾。

 

そこには、アイドル衣装を身にまとった穂乃果とことりがいた。

 

穂乃果はピンクの衣装で、ことりは緑色の衣装だ。

 

穂「どう?竜ちゃん。似合ってる!?」

 

穂乃果はそう言いながら、その場でくるりと回る。

 

竜「……ああ。とてもよく似合ってる。可愛いぜ、穂乃果」

 

俺は柄にもなく素直な誉め言葉が出た。

 

それくらい、今の穂乃果は可愛いかった。

 

俺に誉められた穂乃果は、頬を赤くして、手を足のところでモジモジさせながら「えへへ~♪」とはにかむ。

 

そんなに俺に誉められたのが嬉しいのか?

 

こ「よかったねっ!穂乃果ちゃん!」

 

穂「うん!……えへへへ~♪」

 

ことりに誉められ、さらにはにかむ穂乃果。

 

頬緩みすぎだろ。

 

そこへ扉をノックする音が。

 

朱「入っていいかい?」

 

やって来たのは朱雀だった。

 

こ「キーくん!来てくれたの!?」

 

途端に顔をパーッと輝かせることり。

 

本当に朱雀のこと好きだよな、この娘。

 

朱「まあ…暇だったしね…」

 

こ「そっかぁ~。あっ、ねぇねぇキーくん。私の衣装どう?似合う?」

 

そう言って、ことりも穂乃果と同じように、その場でくるりと回る。

 

朱「うん…可愛いよ。よく似合ってる。天使みたいだ」

 

朱雀はいつも不機嫌な顔が嘘のように、優しく微笑んでそう誉める。

 

こいつ、天使っていう誉め言葉使うンだな。

 

一方、誉められたことりは、

 

「えへへへ~♪。キーくんに誉められたぁぁ~//////」

 

赤くなった頬に手を当てて、体をくねらせる。

 

穂乃果以上にデレデレだった。

 

朱「じゃあ…先に席にいるよ」

 

竜「ああ…」

 

朱雀はそう言って席に行った。

 

盾「あれ?そう言えば海未は?」

 

確かに、海未の姿だけが見えない。

 

穂「あっ、海未ちゃんはね~……海未ちゃん!」

 

海『はい!』

 

カーテンが閉まったドレスルームにいるようだ。

 

穂「もう、私達しかいないんだから、早く着替えちゃいなよ~」

 

いや私達って、男の俺や盾もいるからな?

 

海『分かっています!』

 

シャッとカーテンが開き、穂乃果とことりが「おおっ!?」と期待する中、青い衣装に身を包んだ海未が出てきた。

 

 

 

 

スカートの下にジャージを履いて……。

 

 

 

 

「「おお~…えっ?」」

 

直後に呆気に取られる穂乃果とことり。

 

これは仕方ない。

 

俺だって呆れてる。

 

海「ど、どうでしょうか?」

 

ポーズを決めて誤魔化すも多分無理だ。

 

竜「どうでしょうかじゃねェよ。往生際悪すぎンだろ……」

 

穂「そうだね……」

 

ジト目で海未を睨む俺と穂乃果。

 

海「竜司に盾!? いるならいると言ってください!! それにやっぱり恥ずかしいです!!!!」

 

いやいやいや…。

 

俺や盾、朱雀と穂乃果とことりの会話くらい聞こえるだろ。

 

海「やっぱり制服で踊ります!」

 

そう言って、再びドレスルームに入ろうとするが、盾に肩を掴まれ振り向かされる。

 

海未の顔を真正面から捉えた盾は、真顔でこう言った。

 

「大丈夫。よく似合ってるよ海未」

 

ドストレートな感想。

 

誉められた海未は顔を赤くした次の瞬間、

 

「あうぅぅ……し、盾に誉められました……グヘへへへへ♪」

 

とまあ恥ずかしがりながらも、普段の海未からは想像つかない気持ち悪い笑い声をあげる。

 

一方盾は、

 

「じゃあ、穂乃ちん。後は頼むねぇ~」

 

手を振りながらそう言って、海未から離れる。

 

コイツ策士だな。

 

穂「分かった!海未ちゃん!! さあ脱ぎなよ!!」

 

盾からのバトンタッチを受けた穂乃果は、海未が履いてるジャージを脱がそうとする。

 

オイ、ここに男子高校生二人いること忘れるなー?

 

海「何するんですか!? やめてくださいぃ!」

 

遂に穂乃果にジャージを脱がされる海未は、

 

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

とか叫ぶ。

 

穂「隠してどうするの!? スカート履いてるのに…」

 

海「で…ですがぁぁぁ!!」

 

こ「海未ちゃん、さっき盾くんも言ってたけど可愛いよ」

 

海「…えっ?」

 

穂乃果は海未を鏡の前に連れていき、自信を持たせる為の言葉を紡ぐ。

 

「ほらほら!! 海未ちゃん、一番似合ってるんじゃない?」

 

「え、えぇぇ?」

 

さらに穂乃果は海未の後ろから隣に移動する。

 

穂「どう?こうして並んで立っちゃえば、恥ずかしくないでしょ?」

 

海「……はい。確かにこうしていると……」

 

穂「じゃあ、最後にもう一度、練習しよう!!」

 

こ「そうね♪」

 

そう言って、穂乃果とことりはステージへ走る。

 

海未も行こうとするが、鏡の前で立ち止まり、

 

「やっぱり恥ずかしいです……」

 

と呟く。

 

それを見かねた盾が海未の手を取り、赤子をあやすようにやんわりと言う。

 

「大丈夫だよ海未。自信持って?俺が可愛いって思ってるんだから」

 

それを聞いた海未は頬を赤くしながらも、盾に感謝の気持ちを述べた。

 

「………何だか盾に言われると安心します。ありがとうございます盾!…では行ってきます!!」

 

海未よ……お前チョロすぎじゃね?

 

主に盾がらみになると。

 

盾「うん。いってらっしゃい…」

 

手を振り、見送る盾。

 

以外と面倒見がいいのかもな。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

生徒会室。

 

そこには、絵里、希、蒼燕、茜の四人がいた。

 

絵里は窓から外の景色を見ていた。

 

何を思って窓の外を見ているのだろうと思うなら、それは絵里にしか分からないだろう。

 

気になる事があるから。

 

気に食わないが、どうしてもそれが頭から離れないから。

 

こうやって物思いに耽る。

 

自分は否定した。

 

でも彼女達はやろうとした。

 

そして今日という日がやってきた。

 

彼女達の結果がどうなるかなど、絵里は分かっていた。

 

分かっていたからこそ、敢えて止めなかった。

 

非情な現実を理解して貰うために。

 

希「気になる?」

 

絵「希……」

 

希の質問の意味を考える。

 

考えなくとも、意味は分かっていた。

 

恐らくはμ'sの彼女達の事だろう。

 

彼女達がどうなるかは予想はできている。

 

ただそれを、その結末を絵里が見に行くか、そうでないかという事を希は聞いているのだろう。

 

希「ウチは帰ろうかな…」

 

茜「俺も帰ろう」

 

そう言って、希と茜は生徒会室をあとにする。

 

最近の希は思考が読めなくなっている、というのが絵里の正直な感想だった。

 

元々分かりにくい所も多々あったのだが、最近ではそれがどんどん大きくなっていく。

 

彼女だけでは無い。

 

茜も、自分の幼馴染みである蒼燕も、絵里に内緒で何処かコソコソ動き回ってる節が感じられた。

 

その事に絵里は心の片隅に寂しさに似た何かを燻らせていた。

 

そんな絵里に蒼燕が声をかける。

 

「俺は行くけど…絵里も一緒に行くか?」

 

これは蒼燕なりの救済措置である。

 

何かに意固地になり、自分に素直になれない、面倒な幼馴染みの少女に対する救済の手。

 

それを知ってか知らずか、絵里は席を立ち、相変わらず剣呑で冷たい顔のまま、こう言った。

 

「……最後のライブになるかもしれないしね」

 

絢瀬絵里は、静かに足を進ませる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果たちがリハーサルをしている頃、竜司と盾はミカと一緒にチラシ配りを再開していた。

 

朱雀もついでで手伝っていた。

 

竜「そろそろ時間だ。俺たちも行くか?」

 

「そうだね」

 

盾「うん」

 

朱「…………」

 

朱雀は一人、チラシを見ながら黙りこんでいた。

 

その頭で考えてるのは、彼女達のライブの安否。

 

もうすぐライブの時間は開始間近。

 

だと言うのに、チラシを手に取る人は減り、講堂の方に足を進める生徒を朱雀は一人も見ていない。

 

何となく、嫌な考えが朱雀の頭に浮かんだ。

 

何処か思い詰めたようなその表情に気づいた竜司が声をかける。

 

「どうした朱雀?」

 

「いや……何でもないよ」

 

朱雀はそう言って嫌な思考を無理矢理振り払うと、講堂に向けて足を進めた。

 

 

 



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ファーストライブ#5






結果から言うと、講堂に着いた竜司達は落胆と達観の狭間に立っていた。

 

何故なら観客席に……講堂には竜司達以外に誰もいないから。

 

時刻はライブ開演定刻。

 

にも拘らず誰もいない。

 

竜「…………やな予感的中…」

 

盾「竜ちんの言った通りになっちゃったね…」

 

竜司はうんざりした感じで呟き、盾は落胆したように言う。

 

朱雀も僅かにあった胸騒ぎの正体がこれなのだと認識すると、静かに瞑目した。

 

しかし時は残酷に進み、ステージの幕が上がる。

 

観客席を見た穂乃果たち三人は、茫然としていた。

 

非情とまで言える静寂に支配された講堂のステージにポツンと立っている3人。

 

この場に置かれた状況を目の当たりにした3人は徐々に困惑し始めている。

 

瞬きをして、嫌でも自分が置かれている状況を理解した。

 

いや、理解せざるを得なかった。

 

そして理解した真実を受け入れざるを得ない状況に追い込まれた。

 

「ゴメン……頑張ったんだけど……」

 

謝るフミコの言葉も、今の彼女達の頭には入らない。

 

三人の胸の中には、いろんな感情がごちゃ混ぜになっていた。

 

無関心という毒、無音という凶器。

 

それらが悲しみにうちひしがれる3人に追い討ちをかける。

 

我慢の限界なのか、遂にはことりと海未の目に涙が滲む。

 

こ「穂乃果ちゃん……」

 

海「穂乃果…………」

 

声をかけられた穂乃果の脳内に、今までこの日の為に練習を頑張ったことが再生される。

 

真姫が曲を作ってくれ、花陽も必ず見に来ると言ってくれたのに……結果はこうだ。

 

竜「…………」

 

竜司もかける言葉が見つからないのか、静かに無言で穂乃果を見つめる。

 

当の穂乃果も俯いてはいたが、この空気を破るように顔を上げて笑顔で叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃそうだ!! 世の中そんなに甘くない!!」

 

 

 

 

 

 

 

だがそれは、誰がどう見ても空元気なのは明らかだった。

 

次第に穂乃果の目にも涙が滲む。

 

ことりと海未も言葉にこそ出さないが、いつも以上に細く華奢に見えた。

 

悔しそうに唇を噛みしめる穂乃果に、遂に見かねた竜司が声をかける。

 

「……なあ、穂乃果。歌ってくれないか?」

 

穂「……………へっ?」

 

盾「竜ちん?」

 

朱「?」

 

竜司の言葉に疑問を浮かべる、穂乃果と盾と朱雀。

 

海未やことり、ヒフミトリオの三人もだ。

 

竜司は元々この結果を予測していた。

 

だけどifの可能性を考慮して、敢えて止めなかった。

 

それが起きなくてもいいこの不幸を招いた。

 

ならそのケジメを着けるのは自分だと竜司は考え、このような発言をしたのだ。

 

竜司は階段を下りながら言う。

 

「確かに客は一人も来なかった…。それは変えようのない事実だ。だったら俺が………俺たちが客になる。だから、俺たちの為に歌ってくれないか?」

 

穂「竜ちゃん…………」

 

穂乃果は驚きの顔になる。

 

それはただの自己満足かもしれない。

 

なんの解決にもならないありふれた言葉なのかもしれない。

 

それでもそれは、心が壊れかけていた少女の心に僅かな炎を灯した。

 

徐々に涙に濡れた穂乃果の瞳に光が挿す。

 

盾や朱雀も言う。

 

盾「俺も聞きたいな、海未たちの歌。だって、正式に入ったのはつい最近だから。そんなに詳しく知らないし。やっぱり曲がかかってる中で踊るのは、練習の時とは一味違うと思うし」

 

海「盾………」

 

朱「これでも今日まで楽しみにしてたんだよ?なのに僕の期待を裏切るの?……それに、僕を絶対マネージャーにするって息巻いてたのは何処の誰だっけ?ことり」

 

こ「キーくん…………」

 

盾と朱雀の言葉で、海未とことりの瞳にも光が挿す。

 

そしてトドメに、講堂の入口がバァン!! と勢いよく音を立てて開く。

 

花「はぁ、はぁ………」

 

現れたのはいつぞやの眼鏡少女、小泉 花陽だった。

 

穂「花陽ちゃん……」

 

花「あ、あれ?ライブはぁ~~!? あれ~?あれぇ~!?」

 

息を切らす花陽はまだ状況が理解できず、困惑しているようだ。

 

竜「さァ穂乃果………こっから先は、お前達のライブの一方通行だァ!!」

 

“やりきれ”という意味を含んだその遠回しな言葉は、穂乃果の心に強く突き刺さる。

 

先程とは違う。

 

ちゃんと理解できる。

 

心がザワつく。

 

高揚感に襲われる。

 

いつの間にか、震えは止まっていた。

 

そして、いつもの高坂 穂乃果が舞い戻る。

 

穂「っ!!…やろう!!」

 

こ「へっ?」

 

穂「歌おう!! 全力で!!」

 

海「穂乃果……」

 

穂「だって、そのために今日まで頑張って来たんだから!! 竜ちゃん達だって、一生懸命手伝ってくれたんだから!!」

 

その目は、いつもの輝きを放っていた。

 

「「は…っ!!」」

 

それに感化された海未とことりの2人も、ハッとしたような顔をする。

 

穂「歌おう!!」

 

こ「穂乃果ちゃん……。海未ちゃん!」

 

海「……ええ!」

 

ことりの声に呼応するように、海未も反応を表した。

 

もうそこには、絶望に暮れるか弱い少女達の姿はなかった。

 

穂乃果も、ことりも、海未も、来てくれる誰かにこの歌を届けるための声を発していた。

 

 

(♪:START:DASH!!)

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果たちのパフォーマンスを一生懸命見ている花陽。

 

その横に、凛、嵐助、イクスが並び、一緒に見る。

 

途中から来た、三人も見入っている。

 

火「これは…………」

 

嵐「すげぇぇ…」

 

講堂の入口から少し離れたところに希と茜。

 

真姫も氷麗と一緒に来ていた。

 

音響室には、蒼燕と絵里…。

 

他にも、いつかの不審者少女と、その近くに立つ、若干ウェーブのかかった銀髪碧眼の少年。

 

 

 

 

 

 

今ここに、近い未来に『9人の女神』と呼ばれる少女たちと、彼女たちを支え、守っていく『9人の光の戦士』たちが集った…。

 

 

 

 

 

曲がラストに入る頃、ウルトラマンが話しかけてくる。

 

『素晴らしいものだな……竜司』

 

竜「だろ…?なンせ俺の自慢の幼馴染み達だからな」

 

竜司は穂乃果たちを見ながら、

 

(なァ穂乃果。これから先も、辛いことや苦しい事がある。でもそンな時は必ず俺が、お前のところへ駆けつけて助けてやる…)

 

心にそう決めた。

 

面倒臭がりの竜司が少しだけ変わった瞬間だった。

 

そして曲が終わり、パチパチと少ないが、今の講堂にはよく響く拍手が鳴る。

 

穂乃果たちは肩で息をしているが、満ち足りた表情だ。

 

拍手が鳴りやんだ後、絵里と蒼燕が降りてくる。

 

穂「生徒会長…」

 

絵「どうするつもり?」

 

穂「続けます!」

 

穂乃果は迷いも躊躇いもなくハッキリと続行を宣言した。

 

海「穂乃果……」

 

絵「何故?これ以上続けても、意味があるとは思えないけど……?」

 

氷のような冷たい言葉は鋭さを増して穂乃果に襲い掛かる。

 

穂「やりたいからです!」

 

絵「っ!?」

 

即答だった。

 

氷の鋭さを含んだ言葉を吹き飛ばす程に。

 

あまりの即答ぶりに、絵里は少々面食らっていた。

 

穂「今、私もっともっと歌いたい!踊りたいって思ってます。きっと海未ちゃんも、ことりちゃんも……。こんな気持ち、初めてなんです!やってよかったって、本気で思えたんです!!」

 

穂乃果の純粋で無垢な気持ち。

 

技も飾りもない、ドがつくほどストレートな言葉。

 

純白とも言えるそれを、この広い空間に響かせながら絵里にぶつける。

 

穂「今はこの気持ちを信じたい。このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。応援なんて全然貰えないかもしれない。でも、一生懸命頑張って、私達がとにかく頑張って届けたい!! 今、私達がここにいる……この想いを!!!」

 

それに共感した者は少なからずいただろう。

 

穂「いつか……いつか私達必ず、ここを満員にしてみせます!!」

 

そう穂乃果は断言した。

 

絵「でも結果は…「やめろ絵里」ッ!?」

 

絵里がまだ何かを言おうとすると、蒼燕が腕を出してそれを止める。

 

絵「な…何よ蒼燕!?」

 

絵里は蒼燕に食って掛かるが、それを蒼燕は意に返さない程に据わった目で言う。

 

「これ以上言えば、お前の評価に関わる」

 

「でも私は……!」

 

「俺たちがこいつらの気持ちを……覚悟を壊す権利は何処にもねぇよ…」

 

「っ!!」

 

口論で口をつぐむのは敗北に等しい。

 

蒼燕の言うことに一理あることを感じた絵里は歯噛みし、苛立ちをぶつけるように講堂を出る。

 

それを見送る蒼燕は溜め息を1つ吐く。

 

「ふー……邪魔したな?じゃあな…これからも頑張れ」

 

そう言い残し、蒼燕は絵里を追いかけるように出る。

 

こうして、μ’sのファーストライブは決して成功とは言えないが、ある意味成功した。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

穂「ええぇぇぇぇ!? 恭弥くん、入ってくれるの!?」

 

朱「うん」

 

あの後、ライブが終わり、穂乃果たちが着替え終わった後に、朱雀から正式にμ’sのマネージャーになる旨を伝えられた。

 

海「ですが…恭弥はライブが成功したら、入ってくれるんですよね?今回のライブはお世辞にも………」

 

成功とは言えない。

 

そう海未が言おうとすると、朱雀はそれに便乗するように自分の気持ちを述べた。

 

「確かに、成功とは言えないね。むしろ失敗だ。でも……」

 

朱雀の言葉に、一瞬落ち込む三人だが、朱雀の次の言葉で笑顔になる。

 

「個人的には、入ってもいいかなって思うくらいよかった。それに、失敗しても続けるという覚悟。あれに惹かれたからかな?」

 

その言葉を聞いた三人は、顔をパーッと輝かせて大きく喜ぶ。

 

特にことりが。

 

こ「ありがとーー!! キーくん!!」

 

朱「おっと…。危ないよ、ことり」

 

朱雀に抱きつくくらいに喜ぶ。

 

こいつら三人が三人共、すぐに抱きつく癖があるな……。

 

穂「やったぁ!! これで六人だよ!! 六人♪やったぁぁぁ!!」

 

穂乃果は跳び跳ねて喜ぶ。

 

それを横に、朱雀はことりを自分から離れさせて俺と盾に近づき、ボソリと耳打ちしてきた。

 

朱「ちょっと、話があるんだけど…」

 

「「?」」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

穂乃果たちから離れた場所にて、俺と盾は驚いていた。

 

何故かって?

 

それは……

 

『エース!! こんなところにいたのだな!!』

 

『はい!心配をかけて申し訳ありません!! 兄さん』

 

ウルトラマンと、ウルトラマンエースが光の球状態で再開の喜びをあげていた。

 

竜「しかし…。朱雀にエースがついていて、盾がティガとはな…」

 

盾「だね~、驚きだね~」

 

朱「僕も君たちがウルトラマンとは思ってなかったよ」

 

俺達は朱雀の中からエースが出てきた事により、互いの近況を話していた。

 

どうやら朱雀は穂乃果たちにマネージャーに初めて誘われたその日に、エースと出会い体を貸していたらしい。

 

ちなみに氷麗がダイナという事も伝えている。

 

朱「まあ、とりあえずは怪獣が出た時、その怪獣と戦った事のあるウルトラマンが戦う。これでいいね」

 

竜「そうだな…」

 

盾「うん」

 

そういう取り決めをして、穂乃果たちのところへ戻った。

 

あれ?

 

もしかして今俺が抜けても大丈夫じゃね?

 

ンな事を少しだけ、頭の片隅で考えた。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

蒼「おい絵里!待てって!おい絵里!!」

 

絵「……何よ」

 

俺が講堂から出ていった絵里に声をかけると、不機嫌な感じで返して来た。

 

「何そんなに怒ってんだよ?」

 

「別に、怒ってないわよ…」

 

「いや、明らかに怒って…」

 

「怒ってないわよ!!」

 

「………怒ってんじゃん…」

 

講堂から出てきてから、ずっとこの調子だ。

 

何度聞いても、「怒ってないわよ」の一点張り…。

 

本当にめんどくさい幼馴染みだ。

 

俺が少しだけ憂鬱になっていると、

 

「ねぇ……蒼燕は一体どっちの味方なの…?私?それとも……」

 

突然絵里はそう尋ねてきた。

 

その顔は物凄く不安そうだ。

 

多分、自分の拠り所が無くなると焦ってるのだろう。

 

自分で言うのもなんだが、絵里は少しだけ俺に依存してる所がある。

 

コイツは無自覚だろうがな……。

 

「安心しろ。俺は昔から何一つとして変わらない。お前の味方であり続ける。そう約束しただろ?」

 

昔から絵里が落ち込んだ時や、不安になった時に、言っている言葉を言う。

 

「でも……だったらどうしてあの時、私の言葉を遮ったの?」

 

なんだ……そんな事で拗ねてたのか?

 

「そんなの決まっているだろ?あのままじゃ、お前が悪いやつだと思われる。そんなの、お前の事が好きなヤツとしては嫌だからな…」

 

俺がそう言うと、絵里は顔を真っ赤にして尋ねてくる。

 

「そ、それって…どういう意味なの?もしかして……異性としてなの?」

 

「………さぁな♪自分で考えて見ろ」

 

そう言って俺は絵里の横を通り過ぎる。

 

「えっ?ちょ、ちょっと待ってよ蒼燕!! 蒼燕ってばぁ~~!!」

 

絵里は手を伸ばしながら、俺を追いかけて来る。

 

今の俺に出来るのは、こうやって絵里をリラックスさせてやることだけだ。

 

今はな…。

 

 



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まきりんぱな#1

多分お気づきの人もいるかもしれませんが、少しだけ台本形式なのを止めてます。

例えば台詞の前に、それを誰が話しているのか明確にしている場合は、「」の前に名前は付けていません。

それ以外は代わらず台本形式ですけどね。



朱雀side

 

 

ファーストライブから翌日。

 

僕、朱雀恭弥が正式に入り、今は校舎の裏側にあるアルパカ小屋に来ている。

 

何故ここにいるのかと言うと、理由は目の前の状況にある。

 

こ「うわぁ~。ふぇぇぇ~♪」

 

モッサモッサと草を食っているアルパカに見惚れていることりがいるのだ。

 

穂「……アルパカだよね」

 

そう、ことりは最近毎日ここに来てはこのアルパカに夢中になっているのだ。

 

休み時間に来ては、こうして見惚れに来る。

 

高坂穂乃果と園田海未は微妙な顔してるけど。

 

朱「ちなみに白いアルパカがオスで、茶色のアルパカがメスだよ」

 

穂「えっ!? 恭弥くん性別分かるの!?」

 

朱「直感」

 

海「直感で分かるものなんですか?」

 

朱「なんとなく茶色のアルパカからメスの匂いがする」

 

竜「メスの匂いって何だよ……?」

 

天青竜司が難しい顔で訊ねてくるが、知ったことでは無い。

 

実際にそういった感じの匂いがするのだから。

 

穂「ことりちゃん、最近毎日来るよね?」

 

竜「そうだな…」

 

海「急にハマったみたいです」

 

穂「ねぇ、チラシ配りに行くよ~」

 

高坂穂乃果がことりの肩を揺さぶって声をかけるが、

 

こ「後ちょっと~♪」

 

ことりは頑なに動かない。

 

はぁ~ダメだね。

 

これは動かないパターンだ。

 

穂「もう~…」

 

海「5人にして部として認めてもらわなくては、ちゃんとした部活は出来ないのですよ」

 

うん…?

 

確か僕も入れて6人になってるから、部として認めて貰えるのでは?

 

そう思っているのは僕だけ?

 

こ「う~ん。そうだよねぇ~」

 

盾「海未。聞いてないパターンだよ、これ…」

 

海「はぁ~。困りましたね…」

 

園田海未が嘆息する。

 

まぁ気持ちは分かるよ?

 

竜「オイ朱雀、お前の嫁だろ?何とかしろよ」

 

朱「うるさいよ?咬み殺すよ?」

 

僕は鋼鉄製のトンファーを取り出して脅す。

 

そういう冗談は嫌いなんだよね。

 

ことりが嫁と言うのは、悪くないけどね。

 

穂「可愛い……かなぁ?」

 

言いながら高坂穂乃果も、園田海未も、奥の方にいる茶色いアルパカを見る。

 

すると、

 

「ンィィィーッ!」

 

茶色のアルパカが反応し、威嚇なのか唸る。

 

「「ひっ!!」」

 

高坂穂乃果と、園田海未が一瞬ビクつく。

 

見事に怒られたね。

 

ことりが高坂穂乃果の言葉に抗議する。

 

「え~!? 可愛いと思うけどな~。首の辺りとかフサフサしてるし~♪」

 

「「う~ん……?」」

 

やっぱり納得出来ない二人。

 

因みに僕と、天青竜司と土方盾は興味がないので、虚空を見て暇潰し。

 

アルパカより、この空の方が個人的には落ち着くよ。

 

こ「はぁ~。幸せ~♪」

 

そう言いながら、アルパカの首をなで回すことり。

 

うん、その緩んだ顔が可愛いから撮らせてもらうよ。

 

そう思った僕はスマホでことりの横顔を撮る。

 

穂「ことりちゃんダメだよ!!」

 

海「危ないですよ!?」

 

こ「大丈夫だよ~はぁう!? ふわあぁぁ~!?」

 

しかしそう言った側からアルパカがことりの頬を舐め、舐められた事に驚いたことりは尻餅をつく。

 

ビキッ!

 

落ち着け……落ち着くんだ僕。

 

相手は動物畜生。

 

なんかムカつくから咬み殺したいなんて考えちゃダメだ。

 

ことりを舐めた上に、尻餅つかせた事に殺意が湧いたなんて認めないよ。

 

穂「ことりちゃん!?」

 

海「あぁ!? どうすれば……あっ!ここは一つ弓で…」

 

穂「ダメだよ!!」

 

盾「落ち着いて海未」

 

パニックになったら本当に何しでかすか分からないね、キミは。

 

でも本音で言うとそのまま殺してよ。

 

しかしここでまた茶色のアルパカがさっきより大きく唸る。

 

「ブルルルルルルルルル!!!!」

 

穂「ほら!変な事言うから!!」

 

ことりは舐められた所を拭いてるし、高坂 穂乃果も園田 海未もパニック状態になっている。

 

仕方ないね。

 

ここで僕が目の前に出る。

 

口の端をつり上がらせ一言。

 

「………咬み殺すよ…?」

 

「ブルゥゥゥ!?」

 

瞬間、茶色アルパカは小屋の端へ下がり、体を震わせる。

 

別にキミに恨みは無いけど、白アルパカの分まで存分に恨みと嫉妬をぶつけさせて貰ったよ。

 

海「恭弥…?何をしたんですか?」

 

朱「さぁね…」

 

僕は飽くまで笑顔で『宥めた』だけだよ。

 

花「よぉし、よぉし……うふふ…」

 

そこへ体操着を着た眼鏡の少女、確か小泉花陽だっけ?が来た。

 

茶色のアルパカを優しく宥めている。

 

穂「大丈夫?ことりちゃん」

 

こ「う、うん。嫌われちゃったかな~?」

 

ことりを嫌うヤツがいるなら僕は即咬み殺そう…。

 

花「あ、平気です。楽しくて遊んでただけだと思うから……あ、水」

 

そう言ってアルパカの水を替えている。

 

穂「アルパカ使いだね~」

 

花「あっ、私、飼育委員なので…」

 

穂「ふーん………ん?おー!? ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!!」

 

竜「今気付いたのかよ?」

 

ホントね。

 

遅すぎるよ。

 

花「ふぇ?あ、いえ……」

 

こ「駆けつけてくれた一年生の!」

 

ことり、君もなの?

 

花「ふぇ、あっ、はい…」

 

しかしこの子……声小さいな…。

 

正直、聞き取りにくい。

 

すると高坂穂乃果が彼女の肩を掴み、

 

「ねぇ、あなた!」

 

花「は、はい!」

 

「アイドルやりませんか?」

 

こ「穂乃果ちゃん、いきなりすぎ……」

 

いきなり勧誘した。

 

あっ……小泉花陽が怯えてる。

 

高坂穂乃果はそれにも関わらず、顔を近づけながら勧誘する。

 

「君は光っている!大丈夫!悪いようにはしないから!」

 

竜「悪いことするヤツの言葉だよ…」

 

確かにね。

 

一言一句違わず、詐欺とかで使われてる文句の1つそのものだよ。

 

穂「でも、少し位強引に頑張らないと…」

 

花「あ、あの……」

 

『ん?』

 

花「に、西木野さんが……」

 

穂「あーごめん。もう一回いい?」

 

どうやら高坂穂乃果は小泉花陽の声が聞こえづらかったようだ。

 

かくいう僕も聞こえなかった。

 

花「に、西木野さんが、いいと思います。す、すごく、歌、上手なんです」

 

穂「そうだよね!私も大好きなんだ!あの娘の歌声!」

 

竜「だったらスカウトしに行けよ?」

 

穂「行ったよ~。でも絶対やだって。っていうか、こういうのは竜ちゃんたちの仕事でしょ!!」

 

へー、行ったんだ。

 

竜「ああいうタイプは苦手なンだよ…」

 

確かに、天青竜司にとって西木野真姫は面倒なタイプだろう。

 

花「え?あ、すみません……私、余計な事を……」

 

穂「ううん!ありがとっ!」

 

そう言って高坂穂乃果はいつもの、誰もが見惚れてしまうような、誰をも陰から輝かせそうな笑顔を小泉花陽に向けていた。

 

彼女もその笑顔をずっと見ていた。

 

凛「かーよちーん!早くしないと、体育遅れちゃうよー!」

 

声がしたほうを見ると、オレンジ短髪の少女が同じく体操服を着て、小泉花陽に手を振っていた。

 

あれは彼女と同じく一年の星空凛だね。

 

花「あ、失礼します」

 

そう言うと、そそくさと小泉花陽は星空凛の元に行った。

 

朱「僕達も教室に戻ろう…」

 

こ「そうだね」

 

こうして僕達も午後の授業に向かった。

 

 

朱雀sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

凛「かーよちーん!決まった部活?今日までに決めるって、昨日言ってたよ?」

 

時は放課後。

 

凛が帰りの準備をしていた花陽に質問する。

 

花「あ、そ、そうだっけ?………明日、決めようかな?」

 

凛「そろそろ決めないと、みんな部活始めてるよ?」

 

花「う、うん…」

 

凛の言葉に花陽は狼狽える。

 

周りはもう既に何かしらの部活に入っていたり、決めてたりするのだが、花陽だけは未だに決めあぐねていた。

 

いや、正確にはあるにはある。

 

それはこのオトノキで生まれたスクールアイドル、μ'sの仲間になること。

 

花陽はアイドルが好きで、アイドルに憧れている。

 

しかしどんくさい自分では無理だと決めつけ、いつも諦めてきた。

 

それでも諦めきれないものがあった。

 

今回もその類だった。

 

そこへ、後2人の幼馴染みの少年である、嵐助とイクスがくる。

 

嵐「凛、余り急かしてやるな」

 

火「花陽には花陽のペースがあるんだ…」

 

凛「嵐兄。イクス兄。でも早めに決めないと、かよちんだけ遅れちゃうよ!」

 

嵐「それはまあ、分かるけど…」

 

火「花陽は何かやりたい事はないのか?」

 

花「う、うん…。え、えっと…凛ちゃんはどこ入るの?」

 

イクスの質問を何気なく反らし、凛に質問する花陽。

 

その事にイクスは、ムッと顔をしかめる。

 

「凛は陸上部かな~?」

 

花「陸上…かぁ~。イクスお兄ちゃんたちは、どこに入るの?」

 

「「帰宅部一択」」

 

花「そ、そうなんだ…」

 

二人同時に同じことを言われ、若干顔がひきつる花陽。

 

中学の時でもこの2人は帰宅部だったが、ここでも帰宅部になることに、花陽は2人の将来に一抹の不安を覚えた。

 

そこへ凛が閃いたように花陽に質問する。

 

「あっ、もしかして~。スクールアイドルに入ろうと思ってたり?」

 

花「ええぇぇぇぇ!?」

 

図星をつかれ、慌てる花陽。

 

花「そ、そんな事……無い…」

 

指先を合わせる花陽。

 

しかしそれは花陽が嘘を吐く時の癖なので、それを見たイクスは、

 

「花陽………」

 

と呟き、眉を潜めて何処か悲しそうにする。

 

凛もそれに気づき、追い込みをかけに来る。

 

「ふーん…やっぱりそうだったんだね~」

 

花「そんなこ…」

 

「ダメだよかよちん。嘘つく時、必ず指を合わせるから。すぐ分かっちゃうよ~」

 

花陽の口を人指し指で塞ぎ、花陽の本音を言う凛。

 

凛「一緒に行ってあげるから、先輩たちのところに行こう!」

 

花「ええぇぇ!?」

 

花陽の腕を引っ張り、連れて行こうとする凛。

 

しかし心の準備が出来てないのか、花陽は必死に抵抗した。

 

「あっ、ち、違うの!ホントに……私じゃ…アイドルなんて…」

 

凛「かよちんそんなに可愛いんだよ?人気出るよ~」

 

火「そうだぜ花陽。やるだけやってみろよ」

 

そう言ってイクスは後押しし、凛は連れて行こうとする。

 

だが花陽は足に力を入れ、

 

「で、でも待って………待って!!」

 

強めに叫んで凛を止める。

 

その理由が分からない凛は首を傾げた。

 

「ん~?」

 

花「あっ、あのね……三人に我が儘、言ってもいい?」

 

凛「しょうがないな~。何?」

 

火「花陽の頼みなら」

 

嵐「無理な頼み意外なら」

 

あの花陽が我が儘を言うことが珍しいのか、それぞれの理由を述べて3人は快諾した。

 

花「もしね……私が……あ、アイドルやるって言ったら、一緒にやってくれる?」

 

それは花陽の道連れに近かった。

 

一人では何も出来ない、臆病な花陽の我が儘に似た道連れ。

 

凛「ん…?凛が?」

 

火「それ、俺たちも?」

 

花「うん…」

 

嵐「俺たちは無理だろ~?凛ならいけるだろ?」

 

そう言って嵐助は凛に話を振るが、凛は手を素早く振って拒否する。

 

「ムリムリムリムリ!! 凛はアイドルなんて似合わないよ~!ほら…女の子っぽく無いし~、髪だってこんなに短いし~…」

 

嵐「そうか?俺は凛も充分可愛いと思うぜ」

 

凛「そんな事無いよ!ほら昔も…」

 

凛がそう言うので、四人は朧気ながらも昔の事を思い出す。

 

 

《回想中》

 

 

それはまだ四人が小学生の時だ。

 

花「うわぁ~!可愛いよ~!凛ちゃんスカート凄い似合うよ!」

 

凛「そうかな?」

 

嵐「俺の言った通りだったろ?凛」

 

凛「えへへへへ……ありがと、嵐兄♪」

 

頬を赤くして、恥ずかしそうに後頭部を掻く凛。

 

この頃から凛と花陽は、嵐助とイクスの事を兄のように慕っていた。

 

同い年なのに、何故だか兄みたいだ、という理由で。

 

その時、後ろから来たクラスメイトの男子に、

 

「あっ!? スカートだぁ~!」

 

「いっつもズボンなのに!!」

 

「スカート持ってたんだぁ~!」

 

スカート姿をからかわれた。

 

嵐「オイお前ら、ちょっと顔貸せや?」

 

嵐助は凄味のある声音でクラスメイトにブチ切れる。

 

そもそも凛にスカートを履いてくるように勧めたのは嵐助なのだ。

 

本気で凛に似合うと感じた嵐助だからこそ、それが冗談だとしても許せなかった。

 

嵐助はクラスメイトの一人に殴りかかろうとしたが、それは被害者である凛本人に止められた。

 

「やめて嵐兄!!……や、やっぱり、凛、着替えてくるね?」

 

そう言って、凛は家に帰った。

 

嵐「凛ッ!!」

 

花「凛ちゃん!?」

 

火「凛ッ!!」

 

 

《回想終了》

 

 

凛「アイドルなんて……凛には絶対無理だよ…」

 

凛は頭をかきながら言う。

 

花「凛ちゃん……」

 

凛もまた、花陽と同じ自分の殻を破れない少女なのかもしれない。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷麗side

 

 

この日、俺は真姫とは別行動で学院を歩いていた。

 

そこに何か辺りを見回している不審な少女を見つけた。

 

…って、あれは同じクラスの小泉花陽さんじゃん。

 

ちょっと話しかけてみよう。

 

「小泉さん」

 

「は、はい!? って、なんだ氷川くんか~。ビックリした~」

 

「酷いな~…。で、どうしたの?」

 

「あ、あのね…これ…」

 

そう言って、小泉さんは手に持ってるのを見せてくる。

 

「これは……真姫の生徒手帳…」

 

小泉さんが持っていたのは、真姫の生徒手帳だった。

 

どうやら落としたらしい。

 

しかもμ’sのポスターが貼ってある場所で…。

 

もしかして真姫は……。

 

いや、それよりは今は生徒手帳だ。

 

「小泉さん。小泉さんが良ければ一緒に真姫に届けに行かない?」

 

「え、ええぇぇ!? で、でも私じゃ…」

 

「いいからいいから!ねっ?お願い!」

 

俺が手を合わせて頭を下げてお願いすると、彼女はビックリしたのか慌てふためく。

 

「え、ええぇぇ!? あ、あの、氷川くん!頭を上げて。ねっ?」

 

「じゃあ、一緒に来てくれる?」

 

「うん……分かったよ…」

 

よし!!

 

落ちた!

 

ここで小泉さんを真姫と会わせて、会話すれば、真姫の友達になってくれるかもしれない。

 

常々真姫に俺しか友達がいないのは、どうかと思っていたからな。

 

真姫にその事を尋ねると、真姫は、

 

『別にいらない。欲しくもないし、それに私には氷麗さえ……ゴニョゴニョ…///』

 

顔をトマトのように赤くしてこう言っていた。

 

最後の方は聞き取れなかったが。

 

ともかく、俺は彼女を連れて真姫の家に向かった。

 

歩くこと数分。

 

やっとこさ真姫の家の前に着いた。

 

花「ふぇぇぇ…! 大きい……」

 

小泉さんが真姫の家の大きさに驚く。

 

まあ、それが普通の反応だよな。

 

真姫は『別に普通じゃない?』とか抜かしてたが、これが普通の反応なんだよ。

 

氷「ここだよ。真姫の家は…」

 

花「へ~。氷川くん、迷う事なく着いちゃったよね?よく来てるの?」

 

小泉さんがそう訊ねてくる。

 

「まあ、幼馴染みっていうのもあるけど……俺さ…ガキの時に親無くして、今は真姫の家に世話になってんだ…」

 

俺が暗い経緯を伝えると、彼女はワタワタと慌てて謝ってきた。

 

「え…あっ…!?……ごめんね…」

 

「いいよいいよ!もう吹っ切れたし。じゃあ、入ろっか?」

 

「……うん」

 

優しい子だな、小泉さんは…。

 

そして俺はインターホンを鳴らす。

 

するとすぐに若い女の人の声がした。

 

真姫のお母さんの美姫さんだ。

 

『は~い』

 

氷「美姫さん、ただいま帰りました。それと…」

 

花「同じクラスの小泉花陽です……」

 

『あら、氷麗くん。お帰りなさい。ちょっと待っててね』

 

インターホンが切れると門が開く。

 

「じゃ、入ろうか」

 

「は、はい」

 

そうして俺と小泉さんは家に入った。

 

 

 



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まきりんぱな#2

こうしてリメイクでもμ'sの奇跡をもう1度書けてる。

少しだけ楽しくて、思い出すと目が潤む。

皆さんはどうですか?



氷「ただいまー」

 

花「お邪魔します……」

 

「いらっしゃい」

 

出迎えてくれたのは、美姫さん。

 

相変わらず若いよな、この人。

 

俺や真姫がガキの時から全然見た目が変わってない。

 

美姫さんは「さ、入って入って」と上がらせてくれた。

 

花「トロフィーとか沢山あるね…」

 

氷「それ全部真姫のだよ」

 

花「え!? そうなの!?」

 

氷「うん」

 

まあ…驚くのも無理ないか…。

 

そう思いながら、リビングのソファーに座る。

 

すると美姫さんが紅茶を入れてくれる。

 

氷「あ、有り難うございます」

 

花「……すみません」

 

「いいの、いいの♪でも良かったわ♪あの子、高校に入ってから全然友達一人連れて来なかったから、心配してたのよ。氷麗くんがいるから、一人になる事は無いと思ってたのだけど」

 

真姫のヤツ……美姫さんにも心配されてんじゃん…。

 

そうこうしている内に、真姫が帰って来た。

 

真「ただいま~」

 

「あら。真姫おかえり」

 

真「誰か来てるの……って」

 

真姫はアホ面に近い、驚いた顔をしていた。

 

これは結構珍しい。

 

真姫の驚いた顔はよく見るが、ここまでのは無い。

 

小泉さん、礼を言うぜ!

 

氷「真姫、おかえり」

 

花「こ、こんにちは……」

 

「真姫の紅茶淹れてくるわね?」

 

美姫さんはそう言ってキッチンの奥に消えた。

 

さて……。

 

花「ごめんなさい、急に……」

 

真「何の用?」

 

真姫の鋭い目線が小泉さんに突き刺さる。

 

やだ怖い♪

 

見てる俺すらもチビりそうだよ。

 

氷「真姫。そんな言い方はダメだぜ。せっかく落とし物を拾ってくれたんだから」

 

真「落とし物?」

 

花「これ、落ちてたから、西木野さんの、だよね?」

 

そう言うと小泉さんは真姫に生徒手帳を手渡す。

 

それを見た真姫は初めて生徒手帳を落としたことに気付き、驚きの表情を見せる。

 

真「な、なんであなたが?」

 

花「ごめんなさい……」

 

真「なんで謝るのよ。あ、ありがとう………」

 

氷「おお…。あの真姫が素直にお礼を言えるとは…」

 

真「氷麗……私をバカにしてるの?」

 

俺が本気で驚いてると、真姫に凄まれる。

 

怖いよ真姫ちゃん!

 

胃に穴が空くから止めて真姫ちゃん!

 

花「μ’sのポスター…」

 

真「っ!?」

 

花「見てた、よね?」

 

氷「え?そうなの?」

 

真「私が!? 知らないわ!人違いじゃないの?」

 

花「でも、手帳も、そこに落ちてたし」

 

小泉さんは更に追い打ちをかけるように、真姫の鞄から覗いてるモノを指摘する。

 

「それμ’sのチラシだよね?」

 

「えっ!? ち、違うの!ち…!」

 

小泉さんに攻められムキになり、ソファーから立ち上がろうとしたが勢いが強すぎて膝をテーブルにぶつけてしまった。

 

真「えっ!? いっ…!ああっ……うわぁぁああああっ!?」

 

更にバランスを崩して後ろへソファーごと倒れこんだ。

 

氷「あーあ、何やってんだよ真姫。ほら、大丈夫か?」

 

俺は倒れた真姫に手を差し出す。

 

真「へ、平気よ。ありがと…」

 

素直に俺の手を取ったので引き上げると、真姫は「全く!変な事言うから!」と言いながら小泉さんを睨む。

 

花「プっ……クスクス……」

 

見ると小泉さんが笑ってた。

 

真「笑わない~!!」

 

花「プっ……クスクス……」

 

真「むぅ~」

 

なんか二人の距離が近づいたようだ。

 

で……やっとこさ小泉さんの笑いが止んだところで、別の話題に切り替える。

 

それは真姫がスクールアイドルに興味があるかどうかの話。

 

真「私がスクールアイドルに?」

 

花「うん。私、放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌、聴きたくて」

 

真「私の?」

 

花「うん。ずっと聴いていたいくらい……好きで……だから……」

 

真「私ね……大学は医学部って決まってるの」

 

花「そうなんだ…」

 

真「ふ~……だから、私の音楽はもう終わってるってわけ…」

 

確かに、真姫の家は大病院を経営している。

 

だから真姫がその後を継ぐのは道理ではあるが……だからってそれがやらない理由になるとは俺は思えない。

 

真「それよりあなた……アイドル、やりたいんでしょ?」

 

真姫は自分の話題を打ち切り、小泉さんの話に移る。

 

花「ふぇ?」

 

真「この前のライブの時、夢中で観てたじゃない」

 

花「え?西木野さんもいたんだ…」

 

真「あぁ!? いや!私はたまたま通りかかっただけだけど」

 

氷「たまたまで通りがかる道じゃないんだが…」

 

真「煩いわよ氷麗!!」

 

氷「このような台詞で、大変申し訳ありません(^∪^)」

 

真「ム~カ~ツ~ク~!!」

 

花「お、落ち着いて…西木野さん。氷川くんもダメだよ」

 

俺がニーサン顔で真姫の揚げ足を取ると、真姫は足をジタバタさせて文句を言い、小泉さんがそれを宥める。

 

真「はぁ~…まあいいわ。あなた、やりたいんならやればいいじゃない。そしたら……少しは応援、してあげるから」

 

花「……クス、ありがとう」

 

ッたく、このお姫様は相変わらず素直じゃない。

 

氷「俺もそれは思う。やりたい事があるなら積極的にやった方がいい。やらずに後悔より、やって後悔の方が断然いい」

 

花「…氷川くん」

 

氷「それにさ……俺にはやりたい事や、夢って物がないからさ……正直、真姫や小泉さんが羨ましいんだよ…」

 

恥ずかしい話だが、俺は両親を失ってから自分のやりたい事や、夢を持つことに意義を見出だせなくなっちまったからな。

 

真「……氷麗…」

 

事情を知っている真姫は悲しみに満ちた瞳で俺を見る。

 

なんか気ぃ遣わせちまったな……。

 

氷「だから真姫も小泉さんも。二人が心の底からやりたい事があるなら、俺はそれを全力で応援するよ」

 

真「氷麗……ありがと♪」

 

花「ありがとう、氷川くん♪」

 

俺がそう言うと、真姫は微笑み、小泉さんははにかんで礼を言ってくれた。

 

 

氷麗sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

花「色々あるんだな~。みんな」

 

真姫の家からの帰り、花陽は考える。

 

真姫の事情を知り、自分はどうしたいかを今一度考える。

 

しかし答えはやはり見つからず、現実逃避気味になっていた時、目の前に老舗の和菓子屋『穂むら』を見つける。

 

花「お母さんにお土産買って行こうかな…」

 

ここは気分を変えて和菓子でも買っていこう。

 

そう思った花陽は、いかにも和風と感じさせる看板の下にある引き戸をガラガラッと開ける。

 

中に入ると、ほんのりと和菓子特有の優しい甘い香りが漂ってくる。

 

そんな優しい匂いに気を取られながらも奥へ進むと、そこにいたのは、

 

穂「あっ、いらっしゃいませ~!」

 

花「あっ!……先輩……」

 

割烹着姿の穂乃果と、

 

竜「つーかよォ、なンだって俺がこンなクソめンどくせェ事しなきゃいけねェンだァ?穂ォォ乃果ちゃんよォ~」

 

花「天青先輩も……」

 

ダランと、カウンターに身体を預けてだらけている竜司だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

穂「いらっしゃい♪」

 

何故か家の中へ通された。

 

花「お、お邪魔します…」

 

穂「私、店番あるから、上でちょっと待ってて~」

 

そう言って穂乃果は上にある自分の部屋を指す。

 

花「は、はい」

 

そう言って上がったはいいものの、花陽は穂乃果の部屋を知らない。

 

と言うか母へのお土産を買うはずが、何故か家にお邪魔してる事に、花陽は戸惑いを隠せなかった。

 

大人しすぎるのが裏目に出てしまった。

 

階段を上がれば見えたのは2つの引き戸。

 

しかし、どっちの部屋かまでは聞いていなかったため、ここで花陽は止まってしまう。

 

花「えっと……」

 

迷った挙げ句、一番近い部屋の入口を開ける。

 

そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっにににににに!! こ、このくらいになれれば……!」

 

 

 

 

 

 

裸の上にバスタオル一枚の雪穂がいた。

 

顔にパックを付けて胸をよせながら……。

 

 

 

 

 

 

その状況認識が出来た瞬間の花陽の行動はとても素早かった。

 

ただシンプルに素早く引き戸を閉めた。

 

花「はひっ!? う、っ……あっ!?」

 

やらかしてはいけない間違いを引き当ててしまう自分の不運さに少しだけ頭を悩ませつつも、花陽は気分を切り替えて隣にある部屋を見る。

 

「ララララ~♪」

 

そこからは誰かの歌声が聞こえる。

 

必然的にその部屋に行かなければならないので、花陽はさっきと同じようにそっと引き戸を開けた。

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

海「ラララララ~ン♪……ジャーン!! ありがと~~♪」

 

 

 

 

 

 

 

姿見の前で歌い、アイドルの決めポーズまでしていた海未がいた。

 

 

 

 

 

 

花陽は引き戸をバッと閉める。

 

花「ど、どうしよう……?」

 

あまりの光景にパンク寸前の花陽。

 

その花陽に追い打ちをかけるように、閉めた引き戸の奥からダダダッ!と何かが迫ってくるような音がして、次の瞬間にはダンッ!と勢いよく引き戸が開いて海未が出てきた。

 

隣の部屋からは一拍置いて、雪穂が勢いよく出てきた。

 

花「ヒィィィィィィィ!?」

 

怯える花陽に二人は揃って訊ねてくる。

 

「「見ました?」」

 

花陽はあまりの威圧感に腰を抜かし、座り込む。

 

花「あわわわわわわわ……」

 

二人揃ってゆらゆら揺れながら迫りくる光景は、かなりのホラーだ。

 

そこへ文字通り天の助けが来る。

 

 

 

竜「ンだァ?この状況はァ?」

 

 

 

しかめっ面をした天青竜司がやって来た。

 

後ろには盾もいる。

 

盾「何してんの?海未………」

 

盾のジト目付きの言葉に二人は我に返ったのか、そそくさと部屋の中へ戻っていった。

 

 

 



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まきりんぱな#3






花「ご…ごめんなさい…」

 

穂「ううん良いの。こっちこそごめん…」

 

竜司と盾が来たことで、穂乃果も戻り、今花陽を含めた5人は穂乃果の部屋にいる。

 

穂「でも、海未ちゃんがポーズの練習してたなんて~♪」

 

海「ほ、穂乃果が店番でいなくなるからです!」

 

竜「いや穂乃果のせいにしちゃダメだろ…」

 

海未の文句に正論を言う竜司。

 

花「あっ、あの…」

 

こ「お邪魔しま~す♪」

 

花陽が何かを聞こうとした時、引き戸を開けてことりと朱雀が入って来る。

 

花「あっ!お、お邪魔してます!」

 

こ「えっ!? もしかして、本当にアイドルに!?」

 

ことりが花陽のことを見つけ、花陽が軽く頭を下げるとキラキラした表情で詰めよってくる。

 

それを朱雀が止める。

 

「ことり、落ち着いて…」

 

穂「たまたまお店に来たから、ご馳走しようかと思って。穂むら名物:穂むら饅頭。略して『穂むまん』!美味しいよ?」

 

穂乃果が穂むまんを差し出し、花陽も穂むまんを食べようとするが、ことりが何かを取り出すのを見て動きが止まる。

 

こ「あっ、穂乃果ちゃん、パソコン持ってきたよ」

 

穂「ありがとう!肝心な時に限って壊れちゃうんだ~。竜ちゃんも直せないって言うし…」

 

竜「あァ?俺が直せる訳ねェだろうがァ」

 

海「そんな威圧気味に言うことでは無いのでは?」

 

言いながらも各々がテーブルを片付けていく。

 

花陽もそれに従うかのように自身の目の前に置かれている穂まんと煎餅などが入っている皿を両手で持ってどかせる。

 

こ「あっ、ごめん…」

 

花「いえ……」

 

海「それで、ありましたか?動画は?」

 

こ「まだ確かめてないけど、多分ここに~…」

 

海未の問いにことりは答えながらも、起動したPCを慣れた手付きでどんどん操作していく。

 

カチッカチッと、マウスの音が続いてしばらくすると、

 

穂「あった~!」

 

竜「おっ…ホントだ」

 

海「どこですか!?」

 

様々な反応をしながら、花陽以外の全員がことりの周囲に集まっていく。

 

花陽も一応画面が見える位置にまで移動し、同じく画面を凝視する。

 

そこには紛れもないμ'sのファーストライブの動画が映っていた。

 

穂「わぁ~…!」

 

こ「誰が撮ってくれたのかしら?」

 

海「すごい再生数ですね!」

 

盾「だね~」

 

穂「こんなに見てもらったんだ~。ここのところ、綺麗にいったよね!!」

 

こ「何度も練習してた所だったから、決まった瞬間ガッツポーズしそうになっちゃった~!」

 

穂乃果たちはファーストライブの動画を見て、感想を言う。

 

再生数もそれなりに多く、好調な出だしだった。

 

一方、花陽はそんな彼女達の言葉など耳に入らないのか、画面を集中して見ていた。

 

器用に両手で穂まんと煎餅の入った皿をバランス1つ崩さず持ちながら。

 

穂「あっ、ごめん花陽ちゃん。そこじゃ見辛くない?」

 

それに気付いた穂乃果が慌てて声をかけるが、花陽には聞こえてない。

 

その様子に6人は数秒の間だけ思考に耽てから、アイコンタクトをとる。

 

海「小泉さん!」

 

花「あっ!? は、はいぃっ!?」

 

海未が声をかけ、花陽の意識はパソコンから現実に引き戻される。

 

穂「スクールアイドル、本気でやってみない?」

 

穂乃果が花陽にアイドル活動の誘いをかける。

 

しかし、引っ込み思案な花陽はやんわり断る。

 

「えっ!? でもぉ私、向いてないですから……」

 

自分の気持ちに嘘を吐き、言い聞かせ、蓋をする。

 

こんな事をするのももう慣れた。

 

いつだってそうだった。

 

いつだって自分の気持ちに蓋をしてきた。

 

地味な自分には程遠い場所、臆病でどんくさい自分が入っても迷惑なだけ、足を引っ張るだけだと。

 

だけど、

 

海「私だって、人前に出るのは苦手です。向いているとは思えません」

 

こ「私も歌を忘れちゃったりするし、運動も苦手なんだ」

 

穂「私は凄いおっちょこちょいだよ!」

 

竜「穂乃果は何で自慢気味なンだ?」

 

彼女達は自らの欠点をさらけ出した。

 

他ならぬμ'sである彼女達が。

 

花「でも…」

 

朱「小泉花陽」

 

ここで今まで静かだった朱雀が唐突に口を開いた。

 

朱「もし彼女らがプロのアイドルなら、きっと失格の烙印を押されてるだろうね。でも、スクールアイドルなら自分がやりたいという気持ちがあれば、誰だってやることができる。それがスクールアイドルってやつなんじゃないかな?」

 

穂「だから、やりたいって思ったら、やってみようよ!」

 

朱雀に続くように、穂乃果がもう一度誘う。

 

海「もっとも、練習は厳しいですが」

 

穂「海未ちゃん!」

 

海「っ…失礼」

 

自分には向いてない。

 

それは彼女達も思っていた事だった。

 

それでも尚、彼女達はあのライブをやり遂げた。

 

やりたいという気持ちが強かったから。

 

だからこそ、それを聞いた花陽の心中にも少しだけやりたいという気持ちが強まった。

 

穂「ゆっくり考えて、答え聞かせて?」

 

こ「私達は、いつでも待ってるから♪」

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花陽side

 

 

先輩たちの言葉を聞き、私は考えながら、夜の帰り道を歩いてました。

 

花「やりたいっていう気持ち…か~」

 

穂乃果先輩たちの躍りはA-RISEに比べると色々と拙いですが、それでも何故だか引き込まれました。

 

確かに朱雀先輩の言う通り、プロのアイドルとしては失格かもしれません。

 

ですが、スクールアイドルなら。

 

花「やって……みようかな……」

 

そんな気持ちになっていた時でした。

 

花「キャッ!?」

 

私は何かにつまづきました。

 

花「うぅ~~、なぁに?」

 

つまづいた場所を見ると、私の足に何かが絡まっていました。

 

それは大人の男性の腕くらいはある触手でした。

 

花「へ…?何…これ?」

 

私は恐る恐る触手の元を見ました。

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

「クギシュォォォォォォォォン!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫色の体全体が膿みたいに膨らんだ、生理的嫌悪感を催す、気持ち悪い生物……いえ、怪物がいました。

 

花「ひっ!?」

 

私は慌てて近くにあった街灯に掴まりました!

 

「クギシュオォォォォォン!!!!」

 

その瞬間、怪物は触手を引っ張って、私を引っ張ります!

 

花「いっ…嫌!! だっ…ダレカタスケテー!!!!」

 

私は精一杯助けを呼びますが、誰も来ません。

 

うぅーっ、こんな事なら朱雀先輩が送ってくれるって言う言葉に素直に甘えれば良かった。

 

そんな事を思っても、後の祭りだというのは分かってます。

 

花「あっ!」

 

ついに私の腕に限界が来て、街灯から手が離れてしまいました!

 

このままじゃ、あの怪物に食べられる!

 

私の本能がそう告げます。

 

でも、他に掴まるものも無いし、人も周りにいません。

 

怪物はわざと触手を遅く引っ張ります。

 

それが私に益々恐怖を植え付けてきます。

 

怪物の後ろを見ると、鞄や靴などの荷物が所々に散乱しています。

 

まさか、他の人もこの怪物に……!?

 

私…ここで死んじゃうの?

 

まだやりたい事だってあるのに…。

 

やだよ……誰か……凛ちゃん、嵐助お兄ちゃん……イクスお兄ちゃん!!

 

助けて!!

 

私は目を瞑って、死を覚悟しました。

 

せめて死ぬなら、怖い思いはしたくないから。

 

そう思ったその時でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めるな!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花「えっ?」

 

聞き覚えのある、安心できるような声が聞こえました。

 

瞬間、私の後ろでズドン!! という音がしました。

 

その後には私を引っ張る力が無くなり、私は何があったのか気になって後ろを振り返ると……そこには、

 

(BGM:NEXUS.encounter)

 

鋭い刃がついた籠手をつけた腕でさっきの怪物を殴って、圧死させたと思われる銀色の巨人がいました。

 

その目は乳白色で、頭は兜を被ったみたいな形。

 

胸には、赤いY字の結晶があるその姿は、まるで…

 

 

 

花「ウルトラマン…?」

 

 

 

紛れも無いウルトラマンがいました。

 

そのウルトラマンは、私の方を向き、じっと見つめた後、蜃気楼のように消えました…。

 

 

花陽sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

花「一体あのウルトラマンは?」

 

花陽が銀色の巨人、ウルトラマンネクサスの事を考えていると後ろから、

 

火「オーイ、花陽~!!」

 

イクスがやって来た。

 

「イクスお兄ちゃん!!」

 

「何してんだ!? こんな暗いところで!心配したんだぞ!?」

 

「ご…ごめんなさい…」

 

「まあ、花陽が無事ならそれでいいんだ。帰るぞ」

 

「うん……」

 

そう言って、花陽の左手を掴んで帰るイクス。

 

一方、花陽の手を掴んでない左手には、赤く光る白い短刀のようなものがあった……。

 



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まきりんぱな#4






「輪郭をぼやかせていた靄も――」

 

翌日の最後の授業中の事だった。

 

他の生徒が教科書を読んでいるのにも関わらず、小泉花陽は授業とはあまり関係ない事を考えていた。

 

(やりたいって思ったらやってみる。そうだよね……)

 

昨日の事を思いだしていた。

 

勧誘されて、悩んで、親身になって考えてくれて、後押しをされて、後は自分で決める。

 

あれから色々考えた。

 

ずっと憧れていたアイドル。

 

そんなものにはなれないと分かっていながらも今まで焦がれてきた。

 

でもスクールアイドルなら自分でも出来る。

 

そう言ってくれた人達がいた。

 

何より花陽にとって身近な、人に誤解されがちな古傷を持つ少年はいつも、自分を応援し、励ましてくれた。

 

この間だって、彼は『花陽なら出来る』と励ましてくれた。

 

であれば、花陽はその想いに応えたいと思った。

 

思い始めたその矢先。

 

「――じゃあ次を、小泉さん」

 

花「え?は、はい」

 

不意に先生から教科書を読めという意味での指名を受ける。

 

「読んで」

 

花「は、はい」

 

ここ数日は声が小さかったから、読んでいる途中に止められる事もあった。

 

でも今は違うはずだ。

 

少なくとも心境に変化はあったのだと自分でも分かる。

 

それを確認する為に、今一度己を奮い立たせる為に、彼女は一歩踏み出す。

 

花「遠い山から、この一文が示す芳郎の気持ちはい、一体なんでぁ、あぅ……」

 

クスクスと周りのクラスメイトの笑い声が聞こえる。

 

それが、花陽が決めた決意を揺るがすには十分だった。

 

やってしまった。

 

決意は失意に変わり、自信は危惧に変わり、自らが自らの評価を落としていく。

 

一度深みに落ちてしまえば、あとは戻る事を知らずに沈んでいくだけだった。

 

だがそれを良しとしない者も、確かにいた。

 

火「花陽……」

 

少なくとも一人は……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

火「花陽のやつ、何処に行った?」

 

火神イクスは今、授業が終わって早々に教室から逃げ出した花陽を探していた。

 

授業中、珍しく花陽が大声を出そうと張り切っていたのは、幼馴染みで後ろの席に座っているイクスには良く伝わっていた。

 

だけどそれが失敗して、またいつもの花陽にマイナス方向で萎縮したのも、痛いほどに伝わっていた。

 

だからこそ花陽を元気付ける為に、イクスは学院を奔走していた。

 

イクスは花陽を溺愛している。

 

花陽が守りたくなる程の庇護欲オーラを出してるのもあるが、それが拗れに拗れて竜の逆鱗になるほどに、イクスの中の花陽は大きい存在になっていた。

 

それに昨日、花陽はヤツに襲われた。

 

その恐怖は未だに花陽に根付いており、厄介な事にヤツはその恐怖を喰らう。

 

どんな時でも目を離したくないのが、イクスの正直な心境だった。

 

そんな事を思ってると、イクスは中庭のベンチの所で花陽を見つけた。

 

だが誰かといる。

 

特徴ある赤髪に、勝ち気そうなつり目。

 

(アイツは……西木野か…)

 

花陽と一緒にいたのは真姫だった。

 

イクスはそこへ近づき、声をかける。

 

「花陽ッ!!」

 

花「あっ!イクスお兄ちゃん!」

 

見なくても分かるほどに、花陽は満面の笑みをイクスに向ける。

 

火「花陽、何してんだ?」

 

花「西木野さんに声を大きくする方法を教えてもらってたの」

 

火「そうか……ありがとな、西木野」

 

真「べ、別に!そんな礼を言われる程じゃ……」

 

礼を言われるのが照れくさいのか、真姫は顔を赤くして、髪の毛をクルクル回して弄る。

 

その様子にイクスが真姫をツンデレ属性の持ち主なのかと疑問に思ったのは、仕方ない事なのかもしれない。

 

真「はい、もう一回…」

 

照れ臭い気分を紛らわすために、もう一度真姫が発声を繰り返そうとしたその時だ。

 

新たな訪問者がやってくる。

 

凛「かーよちーん!イクスお兄ちゃーん!」

 

今度は少女の声。

 

振り返ると凛だった。

 

凛「西木野さん?どうしてここに?」

 

いつも1人か、氷麗としかいない真姫を知っているからか、何故自分の親友である花陽やイクスと一緒にいるのかという当然の疑問を凛はぶつける。

 

花「励まして貰ってたんだ」

 

真「わ、私は別に…」

 

花陽の言葉に何故か反射的に腕を組んで、否定するかのような自然なツンデレを無意識にやってしまう真姫。

 

火(あ、コイツはツンデレだな)

 

そしてこの瞬間に、イクスは真姫をツンデレ少女と確定し、そう認識した。

 

凛「それより、今日こそ先輩のところに行って、アイドルになりますって言わなきゃ!!」

 

そう言って、花陽の右腕を引っ張る凛。

 

花「う…うん」

 

真「そんな急かさない方がいいわ。もう少し自信をつけてからでも…」

 

しかしそれを看過できない真姫が止めにかかる。

 

凛「何で西木野さんが凛とかよちんの話に入って来るの!?」

 

敵意剥き出しで言う凛。

 

火(また凛の悪い癖が出たな……)

 

凛は余り親しく無い者には、無意識に壁を作る癖がある。

 

それにイクスは溜め息を吐き、真姫は一瞬驚くが、すぐに言い返す。

 

「っ!? 別に!歌うならそっちの方がいいって言っただけ!!」

 

凛「かよちんはいっつも迷ってばっかりだから、パーッと決めてあげた方がいいの!! ねぇイクス兄!!」

 

火「俺に振るな…」

 

イクスはこういう口論による揉め事には弱い。

 

それはイクスが揉め事を肉体的に解決するのが得意で、無口がそれを助長させているからだ。

 

真「そう?昨日話した感じじゃそうは思えなかったけど?ねぇ…あなたもそう思うでしょ?」

 

火「だから俺に振るな…」

 

この女は自分の話を聞いていたのか?

 

僅かながらにイクスの中にイラつきと呆れが貯まる。

 

凛「むっ…!!」

 

花「あの…喧嘩は…」

 

間に挟まれた花陽が止めるが、

 

凛「むーっ!!」

 

真「んっ!!」

 

花「ああぁぁぁ……」

 

無意味に終わる。

 

流石に花陽が可哀想と思ったのか、イクスは助け船を出しにかかる。

 

「おい、お前ら喧嘩は止め…」

 

「「イクス兄(あなた)は黙ってて!!」」

 

「テメェら……ッ」

 

散々意見を求めてきた癖に、止めようとしたら蚊帳の外扱い。

 

これには元々沸点の低いイクスも遂にぶちギレそうになる。

 

しかしそんなイクスの事など露知らず。

 

凛は花陽を引っ張りながら言う。

 

「かよちん行こう!先輩たち帰っちゃうよ!!」

 

花「えっ…でも…」

 

真「待って!」

 

が、反対の手を引っ張って止めた真姫がそれに反論する。

 

「どうしてもって言うなら私が連れて行くわ!音楽に関しては私の方がアドバイス出来るし、μ’sの曲は私が作ったんだから!!」

 

花「えっ!? そうなの?」

 

「んぇ!!……いや…えっと………」

 

そこで真姫は正気に戻る。

 

わざわざこれを言う必要はなかった。

 

墓穴を掘ってしまった彼女だが、無理矢理それを振り払うと花陽を引っ張っていく。

 

真「っ!! とにかく行くわよ!!」

 

負けじと凛も。

 

「待って!連れてくなら凛が!」

 

真「私が!」

 

「凛が!」

 

火(コイツら自分が連れてく言い合いしているが、肝心な花陽の意思はどうした?)

 

イクスは無駄な論争を繰り広げている2人を冷やかに見つめるが、その間にも花陽はズルズル引っ張られて行く。

 

花「イクスお兄ちゃーーん!! タスケテーーっ!!」

 

最後の希望と言わんばかりに、花陽はイクスに助けを求めて来た。

 

イクスはそれに溜め息を吐き、花陽を助けようと一歩踏み出すが、ふとある考えに至る。

 

(待てよ?この状況使えるんじゃ?)

 

イクスは前々から花陽の気持ちを知っていた。

 

花陽がどれだけアイドルに憧れ、アイドルが好きなのか。

 

それを夢見る度に、どれだけ自分の弱さを突きつけられ、絶望に打ちのめされたのかを。

 

それを知っていたからこそ、イクスはあえて、

 

「先に行ってろ。寺獄と氷川も連れて行くから」

 

彼女の夢を叶えさせる為に、彼女を突き放した。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イクスside

 

 

現在、屋上。

 

俺は花陽達を見送ると、校内に戻って寺獄と氷川を見つけ出し、この2人も連れて花陽たちの後ろにいる。

 

屋上に行くと、まだμ'sのメンバーは残ってたので丁度いい。

 

現在、花陽は両腕を掴まれて『宇宙人、ついに捕獲!』みたいな感じになっており、そんな花陽の腕をそれぞれ凛と西木野が掴んでいた。

 

嵐「なぁ?何があった?」

 

火「見てりゃ分かる」

 

いちいち説明すんのも面倒だ。

 

こ「つまり、メンバーになるってこと?」

 

凛「はい!かよちんはずっとずっと前から、アイドルやってみたいと思ってたんです!」

 

真「そんな事はどうでもよくて!この子は結構歌唱力あるんです!」

 

凛「どうでもいいってどうゆう事!?」

 

真「言葉通りの意味よ!!」

 

テメェら一体何をしに屋上に来た?

 

氷「ちょっ、落ち着けって真姫!」

 

嵐「凛もだ。頭を冷やせ」

 

話が進まないと判断した寺獄と氷川が、二人をそれぞれ宥める。

 

花「わ、私はまだ、なんていうか…」

 

花陽のヤツ、ここまで来てまだ決心できてなかったのか…。

 

花陽とは長い付き合いだし、花陽の性格も理解しているが、そこまで優柔不断なのもどうかと思う。

 

凛「もう!! いつまで迷ってるの!? 絶対やったほうがいいのっ!!」

 

真「それには賛成!やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ」

 

確かにそうだ。

 

やらないで後悔するよりも、やって後悔した方が断然良い。

 

花「で、でも…」

 

真「さっきも言ったでしょ!? 声出すなんて簡単!あなただったらできるわ!」

 

「凛は知ってるよ!かよちんがずっとずっと、アイドルになりたいって思ってたこと!」

 

花「凛ちゃん、西木野さん…」

 

火「俺からも一つ…」

 

俺はそう言って、振り向いた花陽に近づく。

 

花「イクスお兄ちゃん…?」

 

花陽は首をかしげている。

 

凛も西木野もだ。

 

それを無視して、俺は花陽の目を見て言う。

 

「花陽……諦めるな」

 

花「あっ……」

 

この言葉に聞き覚えがあったのか、花陽は目を驚きに見開く。

 

まぁそうだろう。

 

なんせ俺はこの一言を、昨日も花陽に送ったのだから。

 

火「花陽、そろそろもういいだろ?いい加減すぐに諦めるのはやめろ。お前はやれば出来る娘だ。俺はそれを知っている。だから諦めるな、花陽」

 

花「イクスお兄ちゃん……」

 

火「今からお前は生まれ変わる。大丈夫だ。花陽なら出来る」

 

そう言って花陽の頭を撫でると、花陽は嬉しそうな顔になる。

 

相変わらずいい触り心地だ。

 

凛と西木野も思ったことがあるのか、更に花陽に言う。

 

凛「頑張って!凛がずっとついててあげるから!」

 

真「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ?」

 

そう言って2人は花陽の腕を解放する。

 

俺も花陽の頭から手を退かす。

 

頑張れ、花陽。

 

花「えっと……私、こ、小泉…」

 

 

 

 

 

 

トンッ…

 

 

 

 

 

下を向いてモジモジしていた花陽の背中を、俺と凛と西木野の三人で優しく押した。

 

言葉のないエールは花陽の決意をより強固なものとした。

 

花「……っ!私!小泉花陽と言います!1年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものも何も無いです。でも……でも!アイドルへの想いは、誰にも負けないつもりです!! だから……μ'sのメンバーにしてください!!!!」

 

想いの言葉を言い切った。

 

花陽、変われたな…。

 

穂「こちらこそ」

 

高坂先輩たちは花陽のもとに歩み寄り、代表して高坂先輩が手を差し伸べた。穂「よろしく♪」

 

花陽は高坂先輩の手を握り、握手を交わす。

 

凛「ぐすっ…。かよちん、偉いよ~…」

 

真「何泣いてるのよ?」

 

凛と西木野の瞳は涙で潤んでいた。

 

凛「だって……って、西木野さんも泣いてるー!」

 

真「だ誰が!? 泣いてなんかないわよ…!」

 

涙目でツンデレしてても説得力ねぇよ。

 

けどまぁ……もう大丈夫だな。

 

俺はそう思い、その場からゆっくり立ち去った。

 

 

イクスsideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嵐助side

 

 

花陽が無事にアイドルになり、それを見届けたイクスは屋上から去っていった。

 

あいつは自分のやるべき事をした。

 

俺たちも自分のやるべき事をしよう。

 

俺は氷川とアイコンタクトをする。

 

こ「それで、2人は?」

 

真「えっ?」

 

南先輩が後ろ手を組んで凛と西木野を見る。

 

こ「2人は、どうするの?」

 

「「え?どうするって……ええぇぇ!?」」

 

海「まだまだメンバーは、募集中ですよ?」

 

こ「うん♪」

 

南先輩と園田先輩も凛と西木野に手を差し伸べる。

 

「凛はその……髪も短いし、女の子っぽくないし…」

 

真「わ、私は別にアイドルなんて…」

 

この期に及んで…この二人は。

 

嵐「凛」

 

凛「にゃ?」

 

嵐「やってみても、いいんじゃね?」

 

俺は軽い感じで言う。

 

凛「な、何言ってるの嵐兄!? 凛じゃ…」

 

嵐「そんな事は無い!!」

 

凛「っ!?」

 

俺が急に怒鳴ったから凛はビクッとする。

 

でもこれも凛の為だ。

 

俺はそれを無視して続ける。

 

「俺はずっと凛のことを可愛いと思っていた。大丈夫だ!凛の事をバカにするヤツがいるなら俺が黙らせる。だからアイドル……やってみろよ」

 

彼女を勇気づけるように、俺は両手を優しく凛の肩に乗せる。

 

凛「………ホントに?凛の事、可愛いと思ってる?」

 

嵐「俺が今まで凛に嘘ついた事、あったか?」

 

凛「ううん…。無い」

 

嵐「なら、もう分かるよな?」

 

そう聞くと、凛は不安げな顔から一転、何かを決心した顔に変わった。

 

凛はもう大丈夫みたいだ。

 

一方、氷川の方では。

 

「真姫…」

 

「何よ…」

 

「もう、素直になってもいいんじゃないか?」

 

「な、何の事よ?」

 

「惚けるなよ。俺が気づいてないと思ってたのか?何年お前の幼馴染みをやってると思ってんだ?スクールアイドルやりたいんだろ?」

 

「氷麗……」

 

「言ったろ?お前が心の底からやりたい事があるなら全力で応援するって。親父さんは俺が説得しとくから」

 

氷川はそう言うと、西木野の頭を撫で、その直後に花陽の方に振り向かせた。

 

俺も凛を花陽の方に振り向かせ、氷川と同じタイミングで背中を押した。

 

二人が数歩ほど歩いたところに花陽が来て、

 

「凛ちゃん、西木野さん。一緒にスクールアイドル、しよ?」

 

微笑んだ。

 

「「………うん」」

 

凛と西木野はとても優しい笑顔で頷いた。

 

二人ももう大丈夫だな。

 

俺と氷川も、火神みたいに屋上を去ろうした瞬間。

 

ヤツは来た。

 

 

 

 

 

 

「クギシュオォォォォォォォォン!!!!」

 

 

 

 

 

 

紫色の膿だらけの体に、触手を両腕に数本ずつ持つ、生理的嫌悪感を覚える怪獣が、音ノ木から少し離れたところにいた。

 

 

嵐助sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イクスside

 

 

俺が屋上から去って数分。

 

突然、懐のエボルトラスターが光った。

 

この反応があるという事は、昨日の怪物…正しくは『スペースビースト』が近くにいるという事だ。

 

それは正しかったようで、音ノ木から少し離れたところに、昨日のスペースビースト『ペドレオン』が現れた。

 

「丁度いい。花陽を襲ったテメェだけは絶対に殺す」

 

俺はそう言って、エボルトラスターを鞘から一気に引き抜き、青白い光に包まれた俺は外に飛び立った。

 

 

 



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まきりんぱな#5

昨日が花陽ちゃんの誕生日だったのに、それ相応の新話を投稿するのを忘れたバカです。

海未ちゃんの誕生日には必ず投稿します!



◎side

 

 

ペドレオンが現れた事により、屋上は騒然となっていた。

 

真「ヴェェ!? 何よ、あのキモチワルイ怪獣は!?」

 

真姫がペドレオンの見た目に文句を言う。

 

凛「気持ち悪すぎにゃ~…」

 

凛も同じ感想のようだ。

 

しかし2人がそんな感想を漏らしても誰も責めはしない。

 

文字通りペドレオンは気持ち悪い姿をしているのだから。

 

海「とにかく、ここから逃げないと!」

 

こ「うん!」

 

穂「そうだね。ねぇ竜ちゃん。あの怪獣って…」

 

穂乃果が竜司に質問する。

 

ペドレオンに思うところがあるのだろう。

 

竜「ありゃスペースビーストだな。他の怪獣よりも質の悪い怪獣で、人間の恐怖を餌にしてるヤツらだ」

 

竜司の簡単で簡潔な説明に、穂乃果はペドレオンに畏怖の視線を向ける。

 

ペドレオンに限らず、スペースビーストという存在は他の怪獣とは一線を隠す生命体。

 

他の生物を捕食する事によって成長・進化を行う性質を持ち、特に人間などの知的生命体を捕食する事を好む。

 

つまり人間にとっては普通の怪獣よりもおぞましく、天敵の部類に入る存在なのだ。

 

しかしそれよりも、一同は花陽の方が気になった。

 

気にせざるを得なかった。

 

花陽が床に尻餅を着き、身体を抱き締めて震えていたのだ。

 

異常なくらい。

 

花「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…!?」

 

しかも軽く過呼吸になりかけてる。

 

ペドレオンに殺されかけた恐怖が甦ってきたのだ。

 

凛「かよちん!? 大丈夫!? かよちん!!」

 

真「しっかりして!! どうしたの!?」

 

凛と真姫が呼びかけるが、花陽の状態はさらに悪化する。

 

花「やだ……やだよ……死にたくない!!」

 

その症状に感づいたのは朱雀だ。

 

「まさか……スペースビーストに一度襲われかけたの?」

 

それに凛と真姫が驚く。

 

「「ええぇぇぇぇぇ!?」」

 

朱雀の考えは的中していた。

 

何故ならこのペドレオンは、花陽の深層意識にある恐怖から復活した存在だからだ。

 

竜「ちっ!! とにかくここから逃げるぞ穂乃果!」

 

穂「うん、分かった!!」

 

竜司が判断し、穂乃果が実行に移そうとしたその時!

 

突然、ペドレオンの前に青白い光が降り立った。

 

真「何?」

 

凛「光にゃ?」

 

氷「あれは…もしかして?」

 

11人の前で、その光は徐々に小さくなり、そこから現れたのは、

 

(BGM:ネクサス.Appearance)

 

「シェア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸に赤いY字の結晶がある銀色の巨人、ウルトラマンネクサスが降臨した。

 

ネクサスは右手と右膝を地面に着け、左膝は立てている立ち方をしていた。

 

穂「ネクサスだ!ウルトラマンネクサスだよ!!」

 

海「これで助かりましたね!!」

 

こ「うん♪」

 

二年生組はネクサスの登場に喜ぶ。

 

『何と…!ネクサスまで来ていたのか!?』

 

竜司の中にいるウルトラマンは驚く。

 

M78星雲出身のウルトラマン達からすれば、ネクサスがいることはかなり稀少な事なのだ。

 

なまじ彼の正体が伝説のウルトラマンなだけに。

 

そして花陽は、

 

「あの時のウルトラマン…!来てくれたんだ!」

 

ネクサスが現れたことにより笑顔を浮かべ、それを見た凛と真姫も安心する。

 

ネクサスは立ち上がり、花陽たちの方を見る。

 

花陽達が無事なのを確認すると頷き、今度はペドレオンの方を見て、左手を握り拳にして前に出し、右手は手刀にして胸の前に持ってくる戦闘ポーズをとる。

 

「シェアッ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!!!」

 

今ここに、ウルトラマンネクサスVSペドレオンの戦いの火蓋が切って落とされた!

 

(BGM:ネクサス.heroic)

 

「シェアッ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

ネクサスとペドレオンは互いに睨み合い、その場から90度ほど動く。

 

暫しの睨み合い、先に仕掛けたのはペドレオンだ。

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

頭の短い触手から火球を放つ。

 

それを見たネクサスはジャンプ!

 

「ヘェアッ!!」

 

ペドレオンの頭に強烈な飛び蹴りを叩きこむ。

 

「シェアァァッ!!」

 

ズドン!! というヒット音と共にペドレオンは倒れこみ、ネクサスはそのペドレオンに跨がると追撃に右のパンチを3発いれる。

 

「ヘェアッ!! デェヤァ!! シェアァ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

ペドレオンはネクサスの攻撃から抜け出そうと、左の触手を振り回す。

 

「フワアァァ!?」

 

それはネクサスの背中に当たり、ネクサスはペドレオンから退かされる。

 

ペドレオンは追い討ちをかけるように立ち上がり、火球を3発放つが、ネクサスは膝立ちになって腕の籠手アームドネクサスで防ぐ。

 

「ハァァァァァァ……ヘェアッ!!」

 

アームドネクサスで最後の火球を切り払うように防いだ後、ネクサスは空中に浮かび、左のアームドネクサスに右手を添えて放つ『パーティクルフェザー』を撃つ。

 

「シェアァ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!?」

 

見事ペドレオンに当たり、ネクサスは空中で左手を左腰に、右手は左手の上に少し間を空けるようにして置く。

 

すると両手の間にエネルギーが迸る。

 

「ハァァァァァァ……」

 

ネクサスはその両手を十字にして撃つ、『クロスレイ・シュトローム』を撃とうとしたが中断した。

 

いや……中断させられた。

 

「フワアァァ!?」

 

ネクサスの背中に三日月状の光線が当たったのだ。

 

それによりネクサスは空中から地上に落とされる。

 

花「ネクサスさん!?」

 

花陽がネクサスを心配して叫ぶ。

 

「フアアァァ……」

 

ネクサスは倒れ伏しながらも、そちらを見る。

 

そこには…

 

 

 

 

「キィィィィィィィィィン!!」

 

 

 

目の部分に黒い三日月状のアンテナ、身体は黒い稲妻の模様が走るクリーム色。

 

尾は相手の身体に巻き付けられるくらい長い。

 

放電怪獣・エレキング

 

その名を持つ怪獣がそこにいた。

 

竜「あァ…?なんでエレキングがここに居やがる?」

 

竜司は忌々しそうに、不思議そうに言う。

 

恐らくネクサスに光線を当てたのはエレキングなのだろうが、それでもこのタイミングで現れるのは疑問に思う所である。

 

「ハッ!?……シェア…」

 

ネクサスは立ち上がり、エレキングとペドレオンの二体を見る。

 

「キィィィィィィン!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

いくらネクサスとはいえ、二体同時に相手は難しい。

 

不利なのは免れない。

 

穂「あわわわ……! どうしよう竜ちゃん!?」

 

海「落ち着きなさい穂乃果!」

 

穂乃果が慌てて竜司に訊ねるが、海未に抑えられる。

 

竜(………行くか、ウルトラマン)

 

エレキングならなんとかなる。

 

竜司はネクサスを助けに行こうとしたが、ウルトラマンに止められる。

 

『待て竜司。何かもう一体の気配がする。これは……セブンか!?』

 

(はァッ!?)

 

テレパシーでそう言われた竜司は慌てて、周りを見る。

 

すると空の方から何かが来ている。

 

竜「あれは………」

 

竜司の呟きに全員が竜司の方へ向き、その視線を追うように続いて空を見る。

 

「キィィィィィィン!!」

 

エレキングはネクサスを攻撃しようと、歩きだしたその瞬間。

 

 

 

 

 

 

「ナアァァァァァ!!」

 

「キィィィィィィン!?」

 

背後から誰かの飛び蹴りをくらい、ペドレオンの方へ吹っ飛ぶ。

 

「デュワ!!」

 

先程までエレキングがいた場所に着地したのは、赤い身体に銀のライン、胸や肩にある光を集めやすくするプロテクター、そして頭にブーメランが備わっているボクシングのような構えをした戦士だった。

 

 

 

ウルトラセブン

 

 

 

彼の巨人がそこにいた。

 

穂「ウルトラセブンだ!!」

 

凛「すごいにゃ!本物のウルトラセブンにゃ!」

 

凛と穂乃果が興奮しながら喜ぶ。

 

ウルトラシリーズの事をあまり知らないものでも、初代ウルトラマンとウルトラセブンは知っているくらい、この二人のウルトラ戦士は有名だ。

 

ましてや穂乃果と凛は、どちらも竜司ほどではないが殆どのウルトラ戦士は知っている。

 

本物のセブンを目にしたことで、二人の目が輝きまくっている。

 

セブンはネクサスに近づき頷く。

 

共に戦おうという合図だ。

 

「デュワ…」

 

ネクサスもそれに応える。

 

「シェア…」

 

二人の戦士は、二体の怪獣と向かい合う。

 

「シェアッ!!」

 

「デュワ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

「キィィィィィィン!!」

 

ネクサスはペドレオンに、セブンはエレキングと相対する。

 

そして4体とも同時に走り出す。

 

タッグマッチ戦として、第2ラウンドが開始された。

 

(BGM:ウルトラセブン戦闘曲)

 

セブンはエレキングと取っ組みあいをして、その場で回り続ける。

 

「デュワ!!」

 

そして遠心力を利用してエレキングを思いッきり投げ飛ばす。

 

「キィィィィィン!?」

 

投げられて倒れ伏すエレキングに近づき、その身体を掴むと背負い投げをする。

 

「デュワッ!!」

 

叩きつけ、さらにもう一回背負い投げ。

 

「デュワッ!!」

 

さらにもう一回。

 

「デュワッ!!」

 

「キィィィィィン!!」

 

セブンは一度離れるが、それが仇になり、エレキングの尾に巻かれる。

 

そして尾から高圧電流を流される。

 

「デュワァァァァ!!!!」

 

高圧電流に苦しむセブン。

 

その隙にエレキングは立ち上がり、さらに強める。

 

凛「セブン!?」

 

凛が心配するが、セブンはその場で自ら倒れて転げ回り、エレキングの尻尾から離脱する。

 

そしてすぐさま立つ。

 

エレキングは振り返り、口から何発か光線を放つが、セブンはバク転しながら避ける。

 

そして片膝立ちになり、右腕は右の腰に、左腕は胸の前に持ってくる。

 

その体勢のまま頭のビームランプから『エメリウム光線』を撃つ。

 

エメリウム光線はエレキングのアンテナを破壊し、その活動を停止させる。

 

その瞬間を狙ってセブンは頭のブーメラン『アイスラッガー』を放つ。

 

「フッ!!」

 

アイスラッガーはエレキングの尻尾、胴、首を切り裂き、爆発させる。

 

アイスラッガーを頭に戻したセブンは、ガッツポーズを決めた。

 

一方ネクサスは、

 

(BGM:ネクサス.Heroic)

 

ペドレオンに走って近づき、牽制の飛び蹴りを食らわす。

 

「ヘェアッ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

そしてその場からバク転して離れ、左腕を胸の前に持ってきた後、降り下ろす。

 

瞬間、ネクサスの身体を青い波紋が覆い、赤い姿に変わる。

 

戦闘形体『ジュネッス』だ。

 

「ヘェアッ!!」

 

再び戦闘ポーズをとるネクサス。

 

走ってペドレオンに近づくと、強烈なパンチを連続して打つ。

 

「ハァァァァァァァァァ!!」

 

最後にその場でジャンプし、後ろ回し蹴りを放つ。

 

「シェアッ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!?」

 

着地すると仰け反ったペドレオンに対してサマーソルトキックを叩きこむ。

 

「デェヤァ!!」

 

「クギシュオォォォォォン!!」

 

吹っ飛ばされ、地面に倒れ伏すペドレオン。

 

しかし立ち上がり直ぐ様火球を連発する。

 

だがネクサスは空中に浮かび、それらを避ける。

 

何度も出される火球を空中を飛びながら避けまくる。

 

穂乃果たちは、ネクサスの華麗な空中機動に呆けていた。

 

余りの凄さに舌を巻いてるのだ。

 

ペドレオンは火球を一旦撃つのを止める。

 

その隙にネクサスは、両腕を胸の前に水平に重ね、左右に広げて放つ『ボードレイフェザー』を撃つ。

 

それはペドレオンの頭の触手を切断する。

 

「クギシュオォォォォォン!?」

 

攻撃手段の1つを失ったペドレオンは動揺する。

 

その隙にネクサスは地上に降り立ち、両腕を身体の前で左、右の順に重ねる。

 

そしてガッツポーズをすると、両腕の間に強力なエネルギーが充満する。

 

「ハァァァァァァ……」

 

万歳するように上に上げた後、L字にして撃つジュネッスの必殺技『オーバーレイ・シュトローム』を撃つ。

 

「フッ!デェヤァァァァ!!」

 

ネクサスの光線はペドレオンに見事に当たり、ペドレオンは、

 

「クギシュオォォォォォン!?」

 

断末魔を上げながら爆発した。

 

それを見届けていたネクサスに、セブンが近づいて1つ頷く。

 

その後、二人の戦士は飛び去った。

 

 

 



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まきりんぱな#6



※多分これを読んでる方は「なんだよ~」と思うかもしれませんが、個人的事情によって前の話が長いと思ったのと、一年組が朝練に行く時の会話を変えたので、再投稿しました。

ついでにこれ以前の話でも、μ'sキャラに関してのみ、台詞をアニメ基準寄りに変えました。



イクスside

 

 

火「ふぅー」

 

俺は校舎裏でネクサスの変身を解いて夕焼けを見ていた。

 

初戦闘とは言え、ホントに疲れた。

 

何も考えずにポーッと夕焼けを見ていると、誰かの足音がする。

 

火「誰だ?」

 

俺がそちらに振り向くと、そこにいたのは寺獄だった。

 

火「寺獄……お前なんでここに…?」

 

持って当然の疑問をぶつけると、寺獄は予想外の答えをしてきた。

 

嵐「連れねぇな。さっきまで一緒に戦ってた仲だろ?」

 

そう言って、寺獄は懐から赤い縁取のサングラスのようなものを出した。

 

火「ッ!! お前がウルトラセブンだったのか?」

 

嵐「そうだ。まあ、今日は帰ろうぜ。疲れた」

 

火「その前に一ついいか?」

 

嵐「なんだ?」

 

火「どこでセブンの力を手に入れた?」

 

俺がそう聞くと、寺獄はしばし考え、アホな回答を口にした。

 

嵐「コンビニの帰りに出会って、その時にな……」

 

火「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

俺は凛を叩き起こした寺獄と共に、神田明神の階段を登っていた。

 

因みに花陽は先に出ていたみたいで、迎えに行った俺は無駄足を喰らった。

 

氷川もここにおり、どうやら西木野に叩き起こされたらしい。

 

すごく眠そうだ。

 

凛も眠いのか、瞼を擦る。

 

凛「ふわぁあ~……朝練って毎日こんなに早起きしなくちゃいけないのー?」

 

真「このくらい当然よ」

 

凛「当然なの~?」

 

真「そ、当然よ」

 

氷「つーか、何で俺まで連れてこられてんの?」

 

相当不満なのか、氷川は西木野に文句を垂れる。

 

対して西木野はあっけらかんとして言う。

 

「あら、私の事を全力で応援してくれるんでしょ?私は氷麗が私のマネージャーをするのが、全力の応援だと思うのだけど?」

 

氷「ええ……」

 

極論とも言える西木野の言葉に押し黙る氷川。

 

下手な口約束するからそうなるんだよ。

 

尚、俺は自分の意思でここにいるし、寺獄も凛が心配なのか、自らの意思で凛のマネージャーになった。

 

そんな事をしている内に、神田明神の境内の入り口に着く。

 

真「あっ」

 

凛「かーよちーん!」

 

凛が先にいた花陽に手を振って挨拶する。

 

その挨拶で振り向いた花陽は、

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!」

 

なんと眼鏡を外し、コンタクトにしていた。

 

凛と西木野は驚きを隠せない表情になった。

 

それもそうだ。

 

俺たちだって驚いている。

 

凛「あ、あれ!? メガネは!?」

 

花「コンタクトにしてみたの………変、かな?」

 

凛「ううん!全然可愛いよ!すっごく!」

 

嵐「いいんじゃね?」

 

火「可愛いぞ。花陽」

 

もうな、天使だよ。

 

ガチの天使!

 

真「へぇ~…いいじゃない…」

 

花「あ、西木野さん、氷川君も」

 

すると西木野が、何やらエナメルバッグの肩ベルトをキュッと掴み、顔を赤くする。

 

何を言い出す気だ…?

 

真「ねぇ、眼鏡取ったついでに……名前で呼んでよ」

 

これには俺達5人とも思わず「えっ?」と訊ね返してしまう。

 

真「私も名前で呼ぶから。花陽、凛」

 

そんな西木野の言葉に氷川が、

 

「真姫がデレた…だと……!?」

 

衝撃を受けていた。

 

そんなに意外か?

 

いや、結構意外だな。

 

そして余程嬉しいのか、花陽も凛も笑顔を見せて、西木野の名前を呼ぶ。

 

花「真姫ちゃん!」

 

凛「まーきちゃーん!真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃーん!!」

 

何故か凛は名前を連呼しながら西木野に近付く。

 

真「な、何よ!?」

 

凛「真姫ちゃん!真姫ちゃ~ん!!」

 

西木野に近付いたと思ったら、西木野の頬を猫がじゃれるように頬をスリスリする。

 

真「う、うるさい~っ!」

 

西木野も恥ずかしがりながら、でも満更でもないような表情で顔を赤く染めながら、凛を引き剥がす。

 

凛「照れてる照れてる~♪」

 

真「照れてない~!」

 

花陽はその様子を微笑んで見ていた。

 

俺はそんな花陽に近づき、話しかける。

 

「花陽」

 

「何?イクスお兄ちゃん?」

 

「勇気出して入ってよかっただろ?」

 

そう訊くと花陽は満面の笑みで、

 

「うん!!」

 

答えた。

 

ああ……花陽マジ天使。

 

この後、竜司たちが来たので、俺と寺獄は花陽たちが練習している間に離れたところで自分たちの正体を明かした。

 

竜司たちはビックリしていたが、

 

竜「まあ、頑張ろうぜ」

 

この一言で終わった。

 

まあ、竜司や氷川たちもウルトラマンっていうのは寺獄の中にいるセブンから教えてもらってたので、俺と寺獄はさほど驚かなかった。

 

 



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にこ襲来#1







◎side

 

 

メンバーが6人から12人になってしばらくたった日。

 

境内の中でことりは準備体操をしていた。

 

朱雀は本殿の柵に寄り掛かり、それを見ていた。

 

こ「んっ!…んっ!…んしょ……」

 

朱「頑張るね…ことり」

 

こ「うん、だってメンバーが増えて、これからだもん!頑張らなくちゃ♪」

 

朱「そう…」

 

朱雀は優しげに微笑む。

 

普段は無愛想な朱雀だが、ことりに対してのみ、普通に笑ったり、心配性を発揮する。

 

それはことりと一番付き合いが長いからかもしれない。

 

そんな時、ことりが不審そうに後ろを見る。

 

朱「どうしたの?ことり」

 

こ「なんか視線を感じたんだけど…」

 

朱「視線?」

 

言われて朱雀はことりが向いていた方を見るが、

 

「……なにもいないけど?」

 

「う~ん…?」

 

そこには誰もいない。

 

そこへ穂乃果と竜司が来る。

 

穂「ごめんごめ~ん、待った~?」

 

こ「ううん、私達もさっき来た所だから。海未ちゃんは弓道の朝練があるんだって♪盾くんは海未ちゃんの付き添いだよ♪」

 

穂「あは~、そっかぁ~」

 

こ「…!?」

 

ことりはまた嫌な視線を感じたのか、再び後ろを向く。

 

穂「ことりちゃん?」

 

こ「穂乃果ちゃん、さっき後ろに誰か居なかった?」

 

穂「後ろ?」

 

そう言うと穂乃果は忍者みたいに壁に背をつけて、誰かが居ると思われる場所に行く。

 

「さっ!…さささっ!………さっ!」

 

そして顔だけ見せるが、そこには誰もいない。

 

「あれ?」

 

頭に疑問を浮かべつつも穂乃果はしばらく歩く。

 

その瞬間、誰かに足を掴まれる。

 

「うわっ!? あわわわわーー!?」

 

穂乃果は転げそうになるが、腕立て伏せの要領で踏みとどまる。

 

しかしそれは手首に負担がかかり、痛みを誘発する。

 

「んぐ……ッ!! いったーーーい!!!?」

 

穂乃果は痛みに手を振りながら、ふと横を見てギョッとする。

 

それはもう間近だった。

 

自分のすぐ目の前に迫ってきており、穂乃果はやがて来る衝撃に目を瞑る。

 

しかし、いつまで立っても衝撃が来ない。

 

目を開けると、デコピンの形にされた誰かの手。

 

そしてそのデコピンの衝撃が今度こそ、穂乃果を襲う。

 

「ふがっ!ふああぁぁぁぁぁぁ………」

 

たった一撃で穂乃果はドサッと倒れる。

 

こ「穂乃果ちゃん!!」

 

竜「穂乃果ッ!?」

 

慌ててことりと竜司、朱雀が来る。

 

朱雀は穂乃果の様子を軽く診察し、判断を下す。

 

「気絶してるみたい」

 

そうしてると、三人の前に誰かが立つ。

 

竜「あァ?」

 

そこにいたのは、今日は暑い気温なのに厚着のコート、サングラスにマスク、そしてツインテールの不審者少女がいた。

 

余りの不審者ぶりに、ことりは怯え、竜司は唖然とし、朱雀は考えることを放棄していた。

 

そんな三人に不審者少女はマスクを取り、こちらを指差した。

 

「あんたたち…」

 

こ「は…はい!」

 

「とっとと解散しなさい!!」

 

そう言って、そこから去っていった。

 

こ「……今の、誰?」

 

竜「さぁ…?」

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

時は淡々と進み放課後になった。

 

授業中の記憶はあまりない。

 

いつも通り興味の無い所は寝てたから。

 

さて、俺達マネジャーとμ'sのメンバーは練習着に着替え廊下に立っている。

 

穂「それでは!メンバーを新たに加えた、新生スクールアイドル、μ'sの練習を始めたいと思います!」

 

海「いつまで言ってるんですか?それはもう2週間も前ですよ?」

 

確かに、この2週間ずっと穂乃果は飽きもせずに練習のある日は絶対にこれを言っている。

 

流石にしつこいンじゃないですかねェ?

 

穂「だってぇ、嬉しいんだもん!」

 

まァ、こいつの気持ちが全く分からないって言う訳でも無いがな。

 

穂「なのでいつも恒例の!1」

 

こ「2!」

 

海「3!」

 

真「4!」

 

凛「5!」

 

花「6!」

 

それぞれ番号を言う。

 

これが穂乃果の言っている『恒例のやつ』というものだ。

 

俺たちもこれにいつも付き合わされてる訳だが、今日は絶対に言わねェぞ?

 

穂「もう!竜ちゃんたちも言ってよー」

 

竜「はァ?今日もかよ?」

 

穂「当たり前だよ!」

 

穂乃果は当然という感じで言うが…

 

盾「もうやだ~」

 

朱「意味が分からないね」

 

火「バカみてぇ…」

 

嵐「パスで…」

 

氷「もう勘弁してください」

 

盾たちは穂乃果にそれぞれ文句を言う。

 

まァ同じ事を毎回やられたら愚痴の1つでも出てくるわな。

 

それを聞いた穂乃果は、

 

「ぐす…竜ちゃぁん………」

 

涙目で俺にすがりつくような顔になる。

 

ああもう、メンドクセェ……。

 

竜「なァ穂乃果。番号を言うのはスクールアイドルであるお前達だけだ。本来マネージャーである俺達は関係ないンだよ。だから今日から気持ちだけありがたくくれ」

 

頭に手を置いて言ってやる。

 

穂乃果を説得する際はこれが1番効果がいいのだ。

 

すると穂乃果は途端に頬を少しだけ赤くして、はにかむ。

 

「えへへ♪竜ちゃんがそう言うなら、そうするね?」

 

よし、これで面倒な事をしなくて済む。

 

なンか周りから微笑ましいものを見るような視線を感じるがな。

 

さて、機嫌を直した穂乃果は体をくねらせる。

 

「くぅぅ~~!12人だよ12人!メンバーが6人で、マネージャーも6人!! アイドルグループみたいだよね~!いつかこの6人が、神6《シックス》とか、仏6《シックス》だとか言われるのかな~?」

 

花「仏だと死んじゃってるみたいだけど…」

 

火「やっぱこの人バカだろ?」

 

小泉がツッコミ、イクスが穂乃果に確信の言葉を送る。

 

確かに話が飛躍しすぎだし、どンだけ年を重ねれば神だとか仏になれるのか聞きたい。

 

凛「毎日同じ事で感動できるなんて、羨ましいにゃ~」

 

星空がそこはかとなく穂乃果をバカにする。

 

対する穂乃果は指を数えながら言う。

 

「私、賑やかなの大好きでしょ?それに、沢山いれば歌が下手でも目立たないでしょ?後、ダンスを失敗しても…」

 

海「穂乃果…」

 

穂乃果の途中からさぼろうとする言葉に、海未がツッコミを入れる。

 

穂「うぐ、冗談冗談…」

 

こ「そうだよ。ちゃんとやらないと。今朝言われたみたいに怒られちゃうよ」

 

穂「ああ……」

 

ことりの言葉に穂乃果は今朝の事を思い出す。

 

 

 

『解散しなさい!!』

 

 

 

海「って、言われたんでしたっけ?」

 

盾「何様なんだろうねぇ~、その人」

 

凛「でも、それだけ有名になったって事だよね!」

 

まァそれもあるかもな…。

 

真「それより練習……どんどん時間なくなるわよ」

 

凛「おー!真姫ちゃんやる気満々!!」

 

真「べ、別に!私はただとっととやって早く帰りたいの!」

 

何だ何だよ何ですかァ!!

 

生ツンデレって最ッ高じゃねェか!

 

凛「またまた~、お昼休み見たよ~?1人でこっそり練習してるの」

 

真「あ、あれはただ!この前やったステップが格好悪かったから、変えようとしてたのよ!あまりにも酷すぎるから」

 

あ、西木野のやつ地雷踏ンだ……。

 

海「そうですか……。あのステップ、私が考えたのですが……」

 

髪をいじりながら、そして表情も軽くいじけている海未だった。

 

真「ヴェェッ!?」

 

盾「ダメだよ~真姫ちん。海未はこれでも一生懸命考えてたんだよ」

 

あまりに情けないいじけ方だからか、見かねた盾が海未の頭を後ろから撫でながら注意する。

 

一方、撫でられている海未は盾に抱きついている。

 

なンだか「盾…盾…盾…ウフフ……」って言う声が聞こえるが。

 

氷「すいません、園田先輩。真姫はちょっと素直じゃないだけなんで。ほら真姫…」

 

氷麗がフォローしながら、西木野に謝るよう促す。

 

真「わ、分かってるわよ!ご、ごめんなさい…」

 

そンな時、朱雀がふと呟いた。

 

「雨……」

 

朱雀の視線を追って外を見ると、確かに雨がかなり降っていた。

 

穂「どしゃ降り~…」

 

こ「梅雨入りしたって言ってたもんね」

 

穂「それにしても降りすぎだよ~。降水確率60%って言ってたのに~」

 

竜「その確率だったら降ってもおかしくねェよ」

 

むしろそういう中途半端な方が高確率で降るンだよォ。

 

穂「でも、昨日も一昨日も60%だったのに、降らなかったよ~?」

 

竜「だからって今日も降らないとは限らないだろォが」

 

少し考えりゃ分かる事だろうが。

 

こ「あ、雨少し弱くなったかも」

 

穂「ホントだ!!」

 

ことりの呟きに、穂乃果は屋上のドアを開ける。

 

穂「やっぱり確立だよ~、よかったー」

 

凛「このくらいなら練習できるよ~」

 

海「ですが、下が濡れていて滑りやすいですし、またいつ降り出すかも……あっ!」

 

海未の説得も聞かず、穂乃果と星空は「大丈夫大丈夫!練習できるよ~!」と言いながら外に飛び出して行った。

 

凛「うー、テンション上がるにゃ~!」

 

おー…星空のヤツ凄いアクロバティックな動きしてやがる。

 

すげェな。

 

そして星空がポーズを決めた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザーッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

また降ってきた。

 

そのタイミングの良さに俺とイクスは、腹を抱えて笑ってやる。

 

「「アハハハハハハハハハッ!!!!!!」」

 

朱「今日は帰ろう。その方がいい」

 

そんな朱雀の一言から、それは次々と続いていった。

 

真「私も朱雀先輩に賛成」

 

花「わ、わたしも今日は…」

 

こ「そうね。また明日にしよっか?」

 

西木野、小泉、ことりに合わせて、盾、氷麗、嵐助も帰ろうとする。

 

穂「えぇー!! 帰っちゃうのー!?」

 

凛「それじゃ凛達がバカみたいじゃん!!」

 

海「バカなんです」

 

嵐「バカなんだよ」

 

嵐助と海未がツッコミを入れる。

 

いい感じにハモってたぞ?

 

海「ですが、これからずっと雨が続くとなると、練習場所をなんとかしないといけませんね…」

 

花「体育館とかダメなんですか?」

 

海「講堂も体育館も、他の部活が使っているので…」

 

ホント…練習場所をどうするか…。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

真姫が階段を下りた廊下の角に、希はいた。

 

希は階段とは反対方向から来た一組の男女に言う。

 

「どうやらあの子ら……辞めるつもりはないようやで?ニコっち、虎亜っち」

 

女子の方は今朝の不審者少女こと、矢澤ニコ。

 

男子の方は、銀髪碧眼で毛先にウェーブがかかった男子、地白虎亜だ。

 

虎「へぇー、意外と根性あるじゃん」

 

ニ「…………フン!」

 

虎亜はニヤッと笑って感心し、ニコは不満気に鼻を鳴らした。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

某ハンバーガー店にて。

 

俺の隣で穂乃果が不満気な顔でポテトを食べている。

 

それを海未に注意される。

 

「穂乃果。ストレスを食欲にぶつけると、大変な事になりますよ?」

 

穂「雨…なんで止まないの!?」

 

「私に言われても……」

 

まあ、そうだな…。

 

ふと横を見ると、席と席を分ける壁の上にピンクのウ〇〇があった。

 

…………いや、みたいなのか…?

 

どちらにせよ何だあれ……?

 

ウルトラマンの聴覚で聞くと、「ちょっと今日は派手すぎたかしら?」という台詞が聞こえた。

 

どンな服装なのか見てみたいな、逆に。

 

しかも近くに来たガキに「ウ〇〇ウ〇〇」って言われてるし…。

 

食べ物屋でそンな発言してンじゃねェ。

 

「うるさい!!」

 

穂「ん~?」

 

穂乃果も気になったのか隣の席を見る。

 

すると丁度、ことりと朱雀、小泉とイクスが戻って来た。

 

こ「穂乃果ちゃ~ん。さっき予報を見たら、明日も雨だって」

 

穂「えー!」

 

穂乃果はことりの言葉に落ち込む。

 

………おい、隣の客、今穂乃果のポテト取ったぞ。

 

穂「はぁ~」

 

しかし穂乃果は気づかずに残念そうにポテトを食べる。

 

穂「あれ?…………無くなった。海未ちゃん食べたでしょ!!」

 

ポテトが全部無くなってから気づく穂乃果。

 

しかも海未のせいにしてる。

 

海「自分で食べた分も忘れたのですか!? って、穂乃果こそ!」

 

隣の客、今度は海未のポテトを取る。

 

いい加減注意した方がいいか?

 

穂「わ、私は食べてないよ!」

 

竜「ほら、落ち着け穂乃果。俺のやるから」

 

盾「海未も。俺のあげるから」

 

穂「えへへ♪ありがと、竜ちゃん!」

 

海「すみません、盾」

 

俺と盾がそれぞれのポテトを穂乃果と海未にやる。

 

隣でやいのやいの騒がれるよりかはマシだからな。

 

真「そんな事より練習場所でしょ?教室とか借りられないの?」

 

こ「うん、前に先生に頼んだんだけど、ちゃんとした部活じゃないと、許可できないって」

 

すると朱雀が言う。

 

「ねぇ、ことり」

 

「なぁに?キーくん」

 

「僕らマネージャーも部員として数えてるんだよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

「なら、今は12人いる訳だけど?」

 

「…………ぁ」

 

朱雀の言葉でことりが気づく。

 

そういえばそうだよ。

 

忘れてた。

 

すると穂乃果も気づいたのか、ガタッと勢いよく席を立つ。

 

穂「あ!そうだ!忘れてた!部活申請すればいいんじゃん!」

 

「忘れてたんかーい!」

 

『えっ?』

 

なンか隣から声が聞こえた。

 

気になったのか穂乃果が「今のは?」と言いながら隣を覗き込み、ことりと小泉も後に続く。

 

真「それより忘れてたってどういう事?」

 

穂「いや~。メンバー集まったら安心しちゃって」

 

真「はぁ~…朱雀先輩以外ダメかも……」

 

西木野はそう言いながら頬杖をついた。

 

返す言葉もない……。

 

穂「よぉし!明日早速部活申請しよう!そしたら部室が貰えるよ!はぁ~、ホッとしたらお腹減ってきちゃった~、さぁて……?」

 

穂乃果のハンバーガーを取ろうとした隣の客が、みんなに目撃される。

 

はい、現行犯。

 

そして何事もなかったように去ろうとする。

 

穂乃果は追いかけ、その客を捕まえる。

 

穂「ちょっと!!」

 

「か、解散しろって言ったでしょ!?」

 

花「解散!?」

 

小泉が驚く。

 

穂「そんな事より、食べたポテト返して!!」

 

花「そっち!?」

 

小泉のキレのいいツッコミが入る。

 

お前にとってはポテトが大事なのかよ…。

 

穂乃果のポテトを食べた女は「あーー」っと口を開けて見せる。

 

その服装は見たいと思ってたが前言撤回。

 

やはり見たくなかった。

 

穂乃果は女の頬を引っ張って言う。

 

「買って返してよ!!」

 

まだポテト食べたいのかよ…。

 

「あんた達ダンスも歌も全然なってない!プロ意識が足りないわ!!」

 

スクールアイドルにプロ意識って必要なのか…?

 

穂「へ?」

 

変な服装の女は穂乃果の手を払いのけ、

 

「いい!? あんたたちがやってるのは、アイドルへの冒涜…恥よ!! とっとと辞める事ね」

 

そう言い残し、その場を逃げようとしたが、

 

「はいストップ。ニコ、お前は一体何をしてんだ?」

 

「ひっ!? こ、虎亜…」

 

目の前に現れた銀髪碧眼の男に、肩を掴まれ止められる。

 

あいつは……。

 

竜「虎亜…」

 

またもや知り合いだった。

 

虎「よう、竜司。久しぶり。盾も嵐助も朱雀も、イクスも氷麗も久しぶり」

 

盾「あっ、虎亜ちんだ。久しぶり~」

 

火「雨崎からいるって聞いていたが…ホントにいるとは…」

 

虎亜の再開の挨拶に、盾とイクスが返す。

 

朱雀と氷麗、嵐助も呆然としている。

 

穂「竜ちゃん、知ってる人?」

 

竜「まぁな…」

 

虎「それより……ウチのニコが迷惑を掛けたみたいで済まないな…」

 

虎亜が謝る。

 

因みに、女の方は力いっぱい虎亜から逃げようとしたが、虎亜の方が力が強かったみたいで、バテていた。

 

 



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にこ襲来#2


ここは割かし変わってません


虎亜side

 

 

ハンバーガー店での一件から現在。

 

俺、地白虎亜とニコは雨の中、傘をさして一緒に帰っていた。

 

隣を見ると、ニコは頬を膨らませている。

 

まだ拗ねてるのかよ。

 

ニコは俺から逃げようとしていたが、断然俺の方が力が強いので、バテたところを見計らって竜司や高坂たちμ’sの前で謝罪させた。

 

主に人のポテトを盗み食いした件について。

 

解散云々はニコの気持ちなので、そこは謝らせてはいない。

 

因みに、あのセンスの悪い服は脱がせて、制服に着替えてもらった。

 

あの服装で一緒に帰るのは勘弁願いたいから……。

 

虎「なぁ、ニコ。まだ拗ねてんの?」

 

ニ「別に……」

 

虎「どうみても拗ねてんだろ?」

 

そう言ってニコの頬を突く。

 

すると、プスーという音と共に空気が抜けて、ニコが「何すんのよ!?」って言ってきたが俺は構わず、

 

「人のポテトを食べたニコが悪い」

 

と言って黙らせる。

 

ニ「だって、解散しろって言ったのに、解散しないあの子たちが悪い」

 

虎「それとこれとは関係ないだろ?」

 

ニ「むぐっ…」

 

俺が正論を言うとニコは押し黙る。

 

全くこいつは……。

 

虎「なぁニコ。お前もμ’sに入れよ。あの子たちなら、お前の理想にも着いていける筈だぜ」

 

俺はμ’sに入るように言う。

 

俺はニコとは小学校2年からの付き合いだ。

 

だから、こいつがどれだけアイドルへの思いが強いのかを知っている。

 

しかしニコは、

 

「嫌よ。あの子たちはプロ意識が足りないわ。虎亜も観たでしょ?あの子たちのパフォーマンスを…」

 

頑なに断る。

 

はぁ……変なところで頑固なやつだ。

 

俺が溜め息をついてると、突然誰かが、

 

「お、おい!! 何だあれ!?」

 

と叫ぶ。

 

周りにいた人たちも、俺もニコも、その方向を見る。

 

そこには上空から青い繭のような結晶が降りてきていた。

 

ニ「何よあれ!?」

 

ニコも驚いている。

 

だが俺は大体検討がついてたので、

 

虎「ニコ、早くここから逃げろ!!」

 

ニコに逃げるよう促す。

 

ニ「え、何でよ!?」

 

虎「いいから早く!!」

 

俺の必死な態度に戸惑うニコ。

 

だが俺は構わずニコの背を押して、ここから逃げる。

 

その瞬間、青い結晶が割れて中から、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシャオォォンキシャオォォンキシャオォォォン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

両手が鎌になっていて、金と茶色の体、腹の辺りに青い宝石がついている怪獣、

 

 

 

 

 

『宇宙戦闘獣・コッヴ』が現れた。

 

 

 

 

「逃げろぉぉぉぉ!!」

 

「いやぁぁぁぁ!! 怪獣よー!!」

 

誰かの大声を皮切りに、たちまちその場は混乱の渦になる。

 

コッヴはそれを楽しむように暴れ回る。

 

鎌を振り回し、近くのビルを壊す。

 

「キシャオォンキシャオォンキシャオォォォン!!」

 

俺はニコを連れ、遠くへと避難する。

 

ニコが毒づく。

 

「もう何なのよ、今日は!?」

 

まあ、気持ちは分かるぜ。

 

そんな時、

 

「ママ!どこ!? ママ!」

 

と叫ぶ子供がいた。

 

幼い女の子だった。

 

ニコは女の子を見つけると、躊躇なくその子の元へ走り出した!

 

虎「おい、ニコ!?」

 

くそ!!

 

こんな時に!

 

……………いや、こんな状況だからか。

 

あの子を助ける為にニコは自分の身の危険も省みず、一直線に向かったのだ。

 

虎「ったく!」

 

俺もニコを追いかける。

 

近づくと、ニコが丁度女の子を立ち上がらせていた。

 

ニ「大丈夫!? どこか痛くない?」

 

「……うん…」

 

女の子はぐずりながらもニコの質問に答える。

 

虎「ニコ!!」

 

ニ「虎亜!この子をお願い!」

 

虎「分かった」

 

まあ、ニコの身長と力じゃ無理か…。

 

すると女の子が俺とニコに質問をする。

 

「ねえ、どうしてウルトラマンたちは来てくれないの?ねえ、どうして?」

 

その質問に、ニコと俺は俯き、答えることが出来ない。

 

どうしてって言われても……。

 

するとニコが顔をあげ、

 

「大丈夫。きっと来てくれるから。大丈夫よ」

 

母性を感じさせる笑顔で言う。

 

「ホント!?」

 

ニ「うん!ホント」

 

ニコの言葉に女の子は笑顔になる。

 

さすが、人を笑顔にする事が出来るアイドルへの思いが強いだけの事はあるな。

 

その時、俺のズボンのポケットが光る。

 

俺は女の子を下ろし、ニコたちに背を向け、こっそりとポケットから『それ』を取り出す。

 

それはウルトラマンガイアの変身アイテム『エスプレンダー』だ。

 

これは玩具ではない。

 

正真正銘の本物だ。

 

俺がエスプレンダーを手にしたのは、中学2年の時。

 

家族と山へ遊びに行った時、山で遭難し、途方にくれていた時だ。

 

突然、俺が立っていた地面が円形に抜けて、俺はそのまま落下していった。

 

普通ならすぐに底へ着くのだがそうはならず、代わりに俺の目に飛び込んできたのは広大な空間で、そこに本物のウルトラマンガイアがいた。

 

巨人サイズで。

 

ガイアは無言のまま、俺に両手を伸ばしてきた。

 

何となくその意思を察した俺もガイアに両手を伸ばす。

 

その瞬間、俺はガイアと一体化した。

 

その後は覚えてない。

 

気がついたら両親と妹の前にいた。

 

妹に聞いたら『突然、お兄ちゃんが空から降ってきた』と言われた。

 

それはともかく、俺はガイアと出会い、力を手にした。

 

だったら俺がやることは1つ。

 

俺がコッヴと戦う。

 

それだけ。

 

俺はニコの方に振り向き言う。

 

「ニコ、その子を頼む。俺は俺のやるべき事をしに行く」

 

「ちょ!? 何言ってんのよ虎亜!怪獣がすぐ近くにいるのよ!?」

 

ニコは当然止めてくるが俺は構わず、

 

「大丈夫。この世界は滅びたりしない」

 

そう言って雨の中、コッヴに向かって走る。

 

ニ「ちょ!? 待ちなさい虎亜!虎亜ぁぁぁ!!」

 

 

虎亜sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

虎亜がコッヴに向かっていた後、ニコは悲しそうな顔で呟いた。

 

「何で行っちゃうのよ…バカ…」

 

しかしすぐに気を引き締め、女の子を連れてそこから逃げる。

 

一方、虎亜はコッヴの前につき、右手にはめたエスプレンダーを左肩に当ててから上に伸ばして叫ぶ。

 

 

 

「ガイアァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

瞬間…虎亜は赤い光に包まれる。

 

その体が赤い巨人に変わっていく。

 

赤い光は上空に舞い上がり、やがて人のシルエットを形成しながら土煙を上げて地面に着地する。

 

コッヴは突然の事に、後ろへと後ずさる。

 

土煙が止んだ後、そこにいたのは赤と銀の体に、金縁の黒いプロテクター。

 

乳白色の瞳に、頭には金のラインが4本ある光の巨人。

 

赤い大地の巨人『ウルトラマンガイア』が降り立った。

 

 

 

 

「ジョワッ!!」

 

 

 

右手は開手にして、左手は握り拳にして腕を立てる戦闘ポーズをとる。

 

「ウルトラマンガイアだ!!」

 

ニ「………嘘…」

 

女の子は喜び、ニコはガイアの登場に驚く。

 

「ディア!!」

 

「キシャオォンキシャオォォンキシャオォォォン!!」

 

虎『行くぞ!!』

 

虎亜は気合いを入れ、ガイアとしてコッヴに向かって走る。

 

(BGM:逆転のクァンタムストリーム)

 

「ディア!!」

 

ガイアはコッヴにぶつかり、後ろへと押し戻す。

 

「キシャオォォォォォォン!!」

 

コッヴも突っ張ろうとしたが、ガイアの力には敵わない。

 

ある程度押し戻したガイアは、コッヴに連続パンチを打つ。

 

「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」

 

さらに右回し蹴りを放ち、

 

「ディア!!」

 

そこから勢いをつけた右キックを繰り出す。

 

「ジョワァ!!」

 

「キシャオォォォォン!!」

 

コッヴは吹っ飛び、地面にうつ伏せで倒れる。

 

しかしすぐに起き上がり、鎌を合わせて頭から光線を連続で撃つ。

 

ガイアはそれを腕で弾くが、四発目を防げず、胸に当たり吹っ飛ばされる。

 

「ディアァァァァァァ!!」

 

ドズン!と倒れるガイアに覆い被さり、両手の鎌で攻撃するコッヴ。

 

「キシャオォンキシャオォンキシャオォォォォォン!!」

 

そこに頭突きもいれてくるコッヴ。

 

ガイアはコッヴの頭突きを両手で捕まえ防ぐ。

 

「グゥオォォォォォ……」

 

徐々に押されるガイア。

 

そこへ…

 

ニ「ガイア!! 頑張って!!」

 

「ガイアー!! 頑張れー!!」

 

ニコと女の子から声援をもらう。

 

それを聞いたガイアは腕に力を入れ、コッヴの頭を押し戻す。

 

「オォォォォォォォォ……」

 

そしてコッヴの腹に左足を添えて吹っ飛ばす。

 

「ディアァァァァァァァァァ!!」

 

コッヴは空間をアーチ型に飛んでいき、地面に突っ伏す。

 

その隙にガイアは腕の力だけで起き上がり、戦闘ポーズをとる。

 

「ジョワァ!!」

 

コッヴは再び頭から光線を撃つが、ガイアはウルトラバリヤーを張って防ぐ。

 

「ディアッ!」

 

コッヴが何発か撃ち終わったのを見計らい、走って近づく。

 

そしてパンチを再び連続で打つ。

 

「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」

 

「キシャオォォォォォン!!」

 

さっきより威力の上がったパンチに怯むコッヴ。

 

ガイアはその隙を見逃さず、強烈なキックを見舞う。

 

「ディアァァ!!」

 

再び後ろに吹っ飛ばされるコッヴ。

 

すでにグロッキー状態だ。

 

「キシャオォ…オォ……ン」

 

ガイアは両腕を胸の前に水平に合わせてから左右に拡げ、頭に両腕を立てる。

 

すると赤い光が集まり、光のムチとなる。

 

ガイアはそれをしならせ、コッヴにぶつける。

 

ガイアの必殺技『フォトンエッジ』だ。

 

「ディアァァァァァァァ!!」

 

フォトンエッジがコッヴに当たると、赤い刃のエフェクトが現れる。

 

「キシャオォンキシャオォンキシャオォォォォン!!」

 

コッヴは断末魔を上げながら爆発した。

 

人々はガイアが勝ったのを確認すると、大声で喜んだ。

 

ガイアはそちらに振り返ると頷き、壊された街を治してから、

 

「ジョワァ!!」

 

大空へと飛び立った。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎亜side

 

 

翌日。

 

ガイアの変身をといた後、ニコのところへ戻ると『どこに行ってたの!?』とか『心配したのよ!!』とか言われ怒られたが何とか宥め、その日は帰路についた。

 

で、今現在。

 

何故か俺とニコの前に、μ’sのメンバーがいた…。

 

何で……?

 

ニコも予想外なのか口をひくつかせている。

 

竜「虎亜……何でここに?」

 

虎「それはこっちの台詞なんだが?」

 

竜司の問いに答えてると星空と高坂がいきなり驚きの叫びを上げやがった。

 

凛「ああああああ!!!」

 

穂「じゃあ…もしかして…お二人が……お二人がアイドル研究部の部長と副部長!?」

 

いや、うるさっ!!

 

けど大体分かったぜ。

 

めんどくさい事になりそうだが…。

 

 

虎亜sideoff

 

 

 



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にこ襲来#3

ここまで読んでくれた皆さん、お気づきでしょうか?

竜司の口調に変化があることを。



竜司side

 

 

今、俺たちはアイドル研究部の前にいる。

 

そこで昨日の変な服装を着ていた女と虎亜がいた。

 

さてと、ここまでの経緯をざっと説明してやる。

 

さっき生徒会に部活申請書を出しに行ったところ、拒否されてしまった。

 

理由を聞くとこんな理由だった。

 

穂「アイドル研究部?」

 

絵「そう、すでにこの学校には『アイドル研究部』という、アイドルに関する部が存在します」

 

希「まぁ、部員は2人やけど」

 

じゃあ何で最初に言わなかったこのクソアマァ。

 

結果、アイドル研究部と話をつけてくれば?と東條副会長に言われた訳で現在、アイドル研究部部室前。

 

虎「さて…どうする?ニコ」

 

虎亜がアイドル研究部部長にどうするか質問している。

 

すると部長は、

 

「フニャアアアアアアアアア!!!!!!」

 

と猫みたいな声で威嚇しながら拳を勢いよく縦に振り回し、その隙に虎亜の手を引いて部室の中に入る。

 

虎「うおおおお!?」

 

虎亜が突然のことで驚いていたが。

 

部長は部室に入った後、鍵を閉めやがった。

 

蹴ってぶち壊すか?

 

穂乃果がドアを叩きながら、

 

「部長さん、開けて下さい!!」

 

と言ってる。

 

何かドアの向こうで荷物を重ねてる物音がする。

 

虎『何してんだよニコ……』

 

ニ『いいから!虎亜も何でもいいからドアを塞ぐのよ!!』

 

虎『そんな事しても無意味だと思うが…』

 

そンな会話が聞こえてくる。

 

確かに虎亜の言うとおり無意味だ。

 

なンせ窓から入ればいいだけだからなァ。

 

まァ…それよか蹴ってぶち壊す方が手っ取り早いが。

 

そンな事を思ってると、

 

穂「部長さん!開けて!開ーかーなーいー!!」

 

凛「外から行くにゃ!」

 

星空が外へ出る。

 

中もそれに合わせてガタガタ音がしている。

 

多分窓から逃げたンだろうな。

 

しかしそれも束の間。

 

少ししてゴソゴソという音がしばらくした後、ドアが開いた。

 

中から虎亜が出てきて促してくる。

 

「とりあえず入れ」

 

穂「えっ!? いいんですか?」

 

穂乃果が当然の質問をする。

 

それもそうだ。

 

部長が閉めたのを虎亜が勝手に開けたのだから。

 

虎「いいんだよ。俺はここの副部長だし……しばらくしたらニコも帰ってくるさ」

 

と言って入らしてくれた。

 

つーか、虎亜ってアイドル研究部の副部長なんだ。

 

クソ似合わねェな。

 

虎「さて……じゃあ俺はニコを迎えに行くわ」

 

そう言って部室を出て行った。

 

しばらくすると虎亜が部長を肩に乗せて、星空と一緒に戻ってきた。

 

穂乃果たちはその光景に苦笑いしていたが……。

 

後、アルパカ臭い……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

現在、アイドル研究部部長は上座に座り、不満そうな顔で頬杖をついていた。

 

虎亜はその左に座っている。

 

で、俺たちはそれぞれ部室の中をキョロキョロ見回している。

 

竜「あァ?何だ何だよ何ですかァこれは?」

 

さすがアイドル研究部という名前の事はある。

 

見渡す限りアイドルグッズでいっぱいだ。

 

凛「A-RISEのポスター!」

 

真「あっちは福岡のスクールアイドルね」

 

星空でも流石にA-RISEは知ってるか。

 

つーか西木野、お前も結構詳しいな。

 

海「校内にこんなところがあったなんて…」

 

盾「すげぇ…」

 

朱「ここまできたら逆に感心物だよ」

 

朱雀たちがそれぞれの感想を言っている。

 

ニ「勝手に見ないでくれる…?」

 

虎「嫌でも目につくんだから、それは無理な相談だろ?」

 

ニ「うっさいわよ虎亜!あんたが勝手に部室を開けなければこんな事には……」

 

虎「体力尽きて、アルパカ小屋に突っ込んだヤツには言われたくない」

 

ニ「ぬぁんですってーーー!?」

 

部長が立ち上がって虎亜に怒鳴るが、虎亜はどこ吹く風だ。

 

花「こ…これは…!?」

 

隅の方では何か小泉の様子がおかしい。

 

その手には、何かのボックスを持っている。

 

不意に部長の方に向くと、興奮した感じで言う。

 

花「伝説のアイドル伝説DVD全巻ボックス!!」

 

そしてズカズカと部長に近づく。

 

花「持ってる人に初めて会いました!!」

 

おいおい……キャラ変わりすぎじゃね?

 

部長も引いてるぞ。

 

ニ「そ、そう……?」

 

花「すごいです!!」

 

ニ「ま、まぁね…」

 

穂「へぇ~そんなに凄いんだ~」

 

穂乃果が能天気に言うと小泉は穂乃果に詰めより勢いよく訊ねる。

 

「知らないんですか!?」

 

穂乃果は詰め寄られて驚いている。

 

ああ……コイツは自分の大好きな趣味の事となると途端に饒舌になるタイプか。

 

言うや否や、小泉はササッとパソコンを起動し、カタカタと操作しながら流暢に説明していた。

 

「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校等が限定生産を条件に歩みより、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDボックスで、その稀少性から伝説の伝説の伝説、略して伝伝伝と呼ばれる、アイドル好きなら誰もが知ってるDVDボックスです!!!!」

 

穂「は……花陽ちゃん?キャラ変わってない?」

 

笑えるくらいキャラ変わりすぎだ。

 

見ろよォ……イクスと嵐助は顔に手を当てて溜め息ついてるし、朱雀と虎亜は口が開いてるぞ。

 

何気に珍しい光景だな。

 

花「通販でドンと盛り瞬殺だったのに2セットも持っているなんて……尊・敬☆」

 

ニ「家にもうワンセットあるけどね」

 

そう自慢する部長に虎亜が文句を言う。

 

「それ俺が徹夜で落としたヤツ……」

 

花「ホントですか!?」

 

類は友を呼ぶってなァ。

 

穂「じゃあ皆で見ようよ」

 

穂乃果がそう言うが、

 

ニ「ダメよ!それは保存用」

 

花「がーん……!」

 

部長が一蹴し、小泉がテーブルに突っ伏す。

 

保存用って……これがオタクっていうヤツか…。

 

花「で……伝伝伝……グス……」

 

小泉は本気で落ち込ンでいた。

 

凛「かよちんがいつになく落ち込んでいるー!」

 

火「そんなに見たかったのかよ……」

 

イクスはげんなりしていた。

 

ふと、ことりの方を見ると上の方に顔を向けている。

 

ニ「ああ…気づいた?」

 

こ「あっ…ふっ…!!」

 

……何か様子がおかしい。

 

それは朱雀も気づいたようで、ことりをじっと見ている。

 

ニ「秋葉のカリスマメイド・ミナリンスキーさんのサインよ」

 

朱「ことり?知ってるの?」

 

こ「あ……いや……」

 

ニ「ま、ネットで手にいれた物だから、本人の姿は見たこと無いけどね…」

 

虎「それも俺が落としたヤツだろが!」

 

若干キレてる虎亜。

 

こ「あ……ふぅ~」

 

一方のことりは胸を撫で下ろして、安心している。

 

朱「ことり?」

 

朱雀は益々疑惑の目を向けている。

 

少し気になるが、ことりの事は朱雀に任せよう。

 

こ「と、とにかく、この人、凄い…!」

 

ニ「それで……何しに来たの?」

 

その言葉で全員席に着く。

 

アイドル部部長から見て、右に穂乃果、俺、海未、盾、ことり、朱雀。

 

左に、小泉、イクス、星空、嵐助、西木野、氷麗の順に座っている。

 

穂乃果が切り出す。

 

「アイドル研究部さん!」

 

「……ニコよ」

 

「ニコ先輩!実は私達、スクールアイドルをやっておりまして…」

 

「知ってる。どうせ希に、部にしたいなら話つけてこいとか言われたんでしょ?」

 

「おお!話が早い!」

 

「ま、いずれそうなるんじゃないかとは思ってたからね」

 

「なら…」

 

「お断りよ」

 

「えっ?」

 

「お断りって言ってるの」

 

「いや…あの……」

 

はっきりと断られた。

 

何でだ……?

 

海「私達は、μ’sとして活動できる場が必要なだけです。なので、ここを廃部にしてほしいとか言うのでは無く……」

 

ニ「お断りって言ってるの!!」

 

にべもなく断り続けるニコ先輩。

 

ニ「言ったでしょ!あんた達はアイドルを汚しているの!」

 

穂「でも!ずっと練習してきたから、歌もダンスも…」

 

ニ「そういう事じゃない」

 

ニコ先輩の言葉に全員が首を傾げる。

 

するとニコ先輩は真剣な顔で訊いてきた。

 

「あんた達、ちゃんとキャラ作りしてるの?」

 

…………はァ?

 

キャラだと?

 

穂「キャラ……?」

 

ニ「そう!お客さんがアイドルに求めるものは、楽しい夢のような時間でしょ!だったら、それに相応しいキャラってものがあるの!! ったくしょうがないわねー……いい?例えば…」

 

ニコ先輩が後ろを向いて何かをしようとした時、虎亜が急に立ち上がって、

 

「おいやめろニコ!絶対滑るから!」

 

そう言ってニコ先輩を止める。

 

……滑る?

 

ニ「ちょっ、滑るって何よ!? 私はいつものを…」

 

虎「それをやめろって言ってんの!!」

 

ニ「そんなのやんなきゃ分かんないじゃない!!」

 

虎「やらなくても分かるよ!!」

 

おい、何なンだこの夫婦漫才は?

 

ニ「ああもう!いいから黙って見てなさい!」

 

そう言って虎亜を座らせるニコ先輩。

 

虎「どうなっても知らねぇぞ……」

 

虎亜は苦い顔をして座る。

 

ニコ先輩は気を取り直して再び後ろを向き、次の瞬間。

 

ニ「にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこに~♪笑顔届ける矢澤にこにこ~♪にこに~って、覚えてラブにこっ♪♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごいのをぶっこンできた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室の空気が氷河期みたく冷たくなる。

 

俺は唖然とし、虎亜は頭を抱えている。

 

ニ「どう?」

 

憮然と訊ねるこのツインテに対して穂乃果たちの反応は、

 

穂「…………あ」

 

海「これは……」

 

こ「キャラというか……」

 

真「私無理」

 

凛「ちょっと寒くないかにゃ~?」

 

花「ふむふむ……」

 

火「花陽、何でメモってんだ?」

 

このように様々。

 

因みに、盾はお菓子を食べ、氷麗と朱雀と嵐助は無言でスマホを弄っている。

 

見ることすらしてねェ…。

 

ニ「そこのあんた、今寒いって……」

 

星空の言葉を、目敏く聞きつけるニコ先輩。

 

それに慌てる嵐助と星空。

 

嵐「バカ、凛!早く謝れ!!」

 

凛「ああっ、いや、スッゴい可愛いかったです!最っ高です!」

 

朱「もう遅いでしょ…」

 

こ「あ、でもこういうのいいかも!」

 

海「そうですね!お客様を楽しませる為の努力は大事ですー!」

 

花「素晴らしい!流石ニコ先輩!」

 

穂「ぃよぉしっ!そのくらい私だ「出てって」…え?」

 

他のメンバーも必死にフォローするが結局。

 

ニ「とにかく話は終わりよ!とっとと出てって!!」

 

この一言で追い出された。

 

穂「あ~ニコ先輩~」

 

穂乃果がすがるように言うが返事はこない。

 

そこへ副会長がきた。

 

希「やっぱり追い出されたみたいやね」

 

竜「おい……テメェこうなる事分かってただろ?」

 

希「さあ?」

 

この女狸がァ!!

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎亜side

 

 

ニコが竜司や高坂たちを追い出した後の部室。

 

俺はニコに質問をした。

 

「何であいつらを追い出したんだ?上手くやれば、もう一度アイドルになれたのに。お前が満足出来ないなら、満足できるレベルになるまで教えてやればいいじゃん」

 

「そんな事……私が一番分かってるわよ……」

 

全く……この幼馴染みはめんどくさい。

 

特にこういうことに関しては物凄く。

 

「まあニコの好きにしろ。お前が決めたことなら文句は言わないし、そこに俺が必要なら、付き合うからさ」

 

ニコの家庭は複雑だ。

 

それ故にこの娘は何かと一人で背負い込むような性格になってしまった。

 

俺はそれを緩和してやりたい。

 

それが俺がニコの側にいる理由。

 

「虎亜……ありがと。こんな私にいつも付き合ってくれて……」

 

俺の言葉を聞いたニコは微笑んで礼を言ってくる。

 

……こいつ、普段は子供っぽいのにこういう時は大人っぽいんだよな。

 

「どういたしまして……そろそろ帰るか?」

 

「そうね…」

 

そう言うと、俺とニコは部室を後にする。

 

 

虎亜sideoff

 

 

 



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にこ襲来#4

リメイクと言いつつ、なんら変わりない流れですいません。



竜司side

 

 

まだまだ梅雨の時期は終わらず、今もこうしてザーザーと振り続ける雨を眺めながら、今日は解散して1年生だけを先に帰してから俺達は副会長の話を聞いていた。

 

穂「スクールアイドル?」

 

海「ニコ先輩が?」

 

希「一年生の頃やったかな。虎亜くんと一緒に、同じ学年の子と結成してたんよ。今はもうやってないんやけどね……」

 

そして副会長は語り出す。

 

矢澤ニコの過去を。

 

こ「辞めちゃったんですか?」

 

希「ニコっちと虎亜くん以外の子がね……。アイドルとしての目標が高すぎたんやろうね。虎亜くんはともかく、他の子はついていけないって一人辞め、二人辞めて……。だから、あなた達が羨ましかったんじゃないかな?歌にダメ出ししたり、ダンスにケチつけたりできるって事は、それだけ、興味があって、見てるって事やろ?」

 

副会長はそう言って、戻っていった。

 

俺と穂乃果、盾と海未、朱雀とことりの6人は傘をさして帰る途中、話し合っていた。

 

こ「なかなか難しそうだね、ニコ先輩」

 

朱「そうだね……」

 

海「先輩の理想は高いですから……。私たちのパフォーマンスでは、納得してくれそうもありませんし。説得に耳を貸してくれる感じも無いですし…」

 

盾「だよね~」

 

海未やことりたちは悲観的な中、穂乃果だけは、

 

「そうかな~?ニコ先輩はアイドルが好きなんでしょ?」

 

そうでもなかった。

 

竜「そうだなァ」

 

穂「それでアイドルに憧れてて……私達にも、ちょっと興味があるんだよね?」

 

こ「うん……」

 

穂「それって、ほんのちょっと何かあれば、上手く行きそうな気がするんだけど…」

 

海「具体性に乏しいですね…」

 

穂「それはそうだけど…………ん?」

 

竜「どうした?」

 

穂「竜ちゃん、あれ…」

 

そこには、階段のところに見慣れたツインテールが急いでその場を去る光景が……。

 

穂「今の……」

 

こ「多分……」

 

海「どうします?」

 

穂「う~ん……」

 

こ「声かけたら、また逃げちゃいそうだし…」

 

朱「そうだね……」

 

穂「う~ん…。あっ…フフ」

 

穂乃果は唸っていたが、すぐに何かを思いついたのか、不敵に笑う。

 

竜「何か解決策でも出たか?」

 

穂「うん!これって、海未ちゃんと一緒じゃない!?」

 

そう聞いてきた。

 

いや、さっぱり意味が分からン…。

 

海「ん…?」

 

穂「ほら、海未ちゃんや盾くんと知り合った時…」

 

穂乃果がそう言うので、思い出してみた…。

 

あっ…あれか?

 

あれは俺たちがまだまだ小さなガキの頃、公園で鬼ごっこをしていた時だ。

 

 

《過去回想》

 

 

穂『いえ~い、今度はことりちゃんが鬼~』

 

こ『悔しいぃ~!』

 

ことりが地団駄を踏んで悔しがる。

 

穂『竜ちゃん、逃げよう!!』

 

竜『うん!』

 

穂『あはは!……ん?』

 

竜『どうした?穂乃果』

 

穂乃果が急に立ち止まって、木の方を見る。

 

『ひゃう!?』

 

そこから誰かが見ていて、すぐに隠れる。

 

隣には俺らと同い年くらい紫髪の少年がいた。

 

木に隠れているのは、これまた俺らと同い年くらいの少女がいた。

 

この少年と少女が、現在の盾と海未だ。

 

 

《終了》

 

 

盾「あー、あったね」

 

盾も思い出したみたいだ。

 

対する海未は分からないようで、首を傾げる。

 

海「そんな事ありましたっけ!?」

 

穂「海未ちゃんスッゴい盾くんにべったりの、恥ずかしがり屋さんだったから~」

 

穂乃果がからかうように言う。

 

盾も続くように言う。

 

「今はもうべったりじゃ……あっ、そうでもないか…?」

 

海「盾っ!!」

 

海未が恥ずかしがって盾に怒鳴る。

 

海「それが今の状況と何か関係があるんですか!?」

 

穂「うん!! ねっ!? ねっ!?」

 

穂乃果が俺とことりに同意を求めてくる。

 

こ「んん?………あ!あの時の!?」

 

穂「そうそう!!」

 

二人して笑う。

 

海未は?を浮かべているが。

 

まあ、何か解決策見つけたみたいだし、明日まで待ってみるか……。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

その日も雨だった。

 

虎亜は荷物をまとめてるニコに声をかける。

 

虎「ニコ、部室行こうぜ」

 

ニ「分かってるわよ!そんな急かさないで」

 

ニコと虎亜は教室を出て、部室に向かう。

 

そして部室の前に着いてドアを開けると、

 

 

 

 

「「「「「「「お疲れ様でーす!!」」」」」」

 

 

 

穂乃果たちμ’sのメンバーがいた。

 

昨日無理矢理追い出して、本来ならもう来ないはずの彼女達がだ。

 

急な展開についていけないニコと虎亜。

 

それを無視して穂乃果は口を開く。

 

「お茶です。部長!」

 

ニ「部長!?」

 

次にことりが。

 

「今年の予算表になります、部長」

 

ニ「なっ!?」

 

凛が机に大きく両手を添えてトントン叩きながら口を開いた。

 

「部長ー、ここにあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきましたー」

 

ニ「こら!勝手に!」

 

ニコの声を遮るように、真姫が何の気なしに手を差し出し呟いた。

 

「さ、参考にちょっと貸して。部長のおすすめの曲」

 

今度はニコが反応する前に、花陽が『伝伝伝』をこれ見よがしに喋り出した。

 

「な、なら迷わずこれを!!」

 

ニ「あー!? だからそれは…!!」

 

目を剥いて身を乗り出すニコ。

 

虎亜はなんとなく察したみたいで、竜司に訊ねる。

 

「ずいぶんと強引だな…」

 

「言っとくが、発案者は俺じゃないからな…」

 

「成る程な…高坂か?」

 

「あァ…」

 

こういう時に突破口を開くのは、いつだって穂乃果だった。

 

その穂乃果はニコの肩に手を乗せて言う。

 

「ところで次の曲の相談をしたいのですが部長!」

 

海「やはり次は、さらにアイドルを意識した方がいいかと思いまして~」

 

こ「それと~、振り付けも何かいいのがあったら~」

 

穂「歌のパート分けもよろしくお願いします!!」

 

ニコはしばらく口を開けて呆気にとられていたが、彼女達の目論見が分かったのか睨むように見つめながら訊ねる。

 

「こんなことで押し切れると思ってるの?」

 

きっと、彼女達は強引に押し切る事で合併を成功させようとしている。

 

ニコはそう思っていた。

 

昨日追い出して、もうダメかもしれないなら一層の事強引にいってやろう。

 

そう思ってこんな事をしているに違いない。

 

だがそんなニコの思いは、次に発せられた穂乃果の発言で杞憂として終わる事になる。

 

「押し切る?私はただ、相談しているだけです。音ノ木坂アイドル研究部所属の、μ'sの7人が歌う、次の曲を!」

 

ニ「………7人?」

 

穂乃果たちから笑顔を向けられたニコは、一瞬で頭の中の思考が真っ白になった。

 

あまりにも予想外で、虚を突かれたような錯覚に陥る。

 

ニコはしばらく穂乃果たちを見回していたが、虎亜に肩を叩かれ、正気に戻る。

 

虎亜は言う。

 

「ニコ、今ここにはニコと同じ意識を持ってる奴らしかいない。もう我慢なんかしなくていいんだ。自分のやりたいように自分のアイドル像を掲げればいい。それが出来る場所なんだろ?ここは」

 

ニ「虎…亜……ッ」

 

別に虎亜と2人っきりでも楽しかった。

 

それでも何処か空虚だった。

 

ずっと、同じ志を持つ者が欲しかった。

 

ずっと、もう1度アイドルとして活動したかった。

 

ずっと、賑やかさのある雰囲気が欲しかった。

 

それが今叶いそうになっている。

 

だから涙が出そうになったのは仕方の無いこと。

 

穂「ニコ先輩!」

 

穂乃果が声を漏らす。

 

しかし、その前にどうしても言っておかなければならない事がある。

 

ニ「……………厳しいわよ」

 

穂「わかってます!アイドルへの道が厳しいことぐらい!」

 

ニ「わかってない!」

 

確かに仲間に入る事はもう決めた。

 

しかし、それとこれとは話が違う。

 

新しくμ'sに入ったからこそ、言っておかなければならない。

 

ニ「あんたも甘々、あんたも、あんたも、あんた達も!」

 

そう言って、ニコはμ'sの面々の1人1人の顔を見ながら真っ直ぐと言い放つ。

 

何故か竜司たちまで指差して。

 

竜「何で俺たちまで…」

 

虎「それは言うな、竜司」

 

文句を垂れる竜司にフォローをする虎亜。

 

ニ「いい?アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの!それをよーく自覚しなさい!」

 

それを聞いて、穂乃果達は微笑んだ。

 

ニコの表情が今まで見た事もない活気に満ち溢れていたから。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室。

 

アイドル部が1つになった紙を見て、渋い顔をする絵里。

 

そんな絵里に、窓から外の景色を眺めていた希は言う。

 

「エリチ」

 

絵「ん?」

 

「……見てみ」

 

それに絵里は振り向き、蒼燕と茜も何気なく振り返る。

 

希「雨……止んでる♪」

 

疎ましく降り続けていた雨はいつの間にか止んでいた。

 

立ち塞がっていた問題が崩れるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ニコと虎亜を加えたμ’sは現在、屋上にいる。

 

穂乃果たちはとある特訓中。

 

竜司たちマネージャーは柵に寄りかかり見ていた。

 

ニコは穂乃果たちに指を差す。

 

ニ「いい!? やると決めた以上、ちゃんと魂込めてアイドルになりきって貰うわよ!分かった!?」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

ニ「声が小さい!!」

 

「「「「「「はい!!!!」」」」」」

 

そしてニコが後ろを向いて喋っている中、穂乃果たちはコソコソ話す。

 

こ「上手くいって、よかったね♪」

 

穂「うん!」

 

海「でも、ホントにそんな事ありましたっけ?」

 

こ「あったよ!あの時も、穂乃果ちゃんと盾くんが……」

 

 

《過去回想》

 

 

小さな頃の盾が、木の影に隠れた海未に話かけてる。

 

盾『ほら、あの子たちなんでしょ?海未が仲良くなりたいって言ってたのは。話かけないと…』

 

海『で、ですが~』

 

半泣きで盾にすがる海未。

 

そんな時、穂乃果が海未に声をかける。

 

『あー!!』

 

『ひゃう!?』

 

『みーつけた!』

 

『あうあう……』

 

海未は涙目になり、無意識に盾の服の裾を掴んでいる。

 

そんな海未に穂乃果は笑顔で誘う。

 

『次…あなた鬼だよ!!』

 

『え!?』

 

『へへ♪ 一緒に遊ぼ♪』

 

海未はポカンとし、盾の方を見る。

 

盾は『行ってきなよ』と微笑みながら言う。

 

海未は穂乃果と盾を交互に見ていたが、次第に笑顔になり、『はい!』と元気に頷いて穂乃果と一緒に行った。

 

盾『よかったね…海未』

 

そう言って帰ろうとした盾に、今度は竜司が話しかける。

 

竜『なあ…お前も一緒に遊ぼうぜ』

 

盾『……………え?』

 

今度は盾が唖然としていたが、そこへ海未が来て、

 

『盾も一緒に遊びましょう!!』

 

笑顔で誘う。

 

盾『…………うん』

 

こうして、幼馴染み6人組ができた。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎亜side

 

 

今、屋上で高坂たちがニコの特訓を受けているのだが、その内容がなんとも……。

 

ニ「にっこにっこにー!……はい!」

 

「「「「「「にっこにっこにー!」」」」」」」

 

ニ「全然ダメ!もう一回!! にっこにっこにー!……はい!」

 

「「「「「「にっこにっこにー!!」」」」」」

 

ニ「つり目のあんた!気合入れて!!」

 

「真姫よ!!」

 

この「にっこにっこにー!」の練習ばかりしている。

 

いい加減アイドルのダンスとか、歌の練習をしろよと思うが、ニコが楽しそうならそれでいいかと思う放課後だった。

 

 



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センターは誰だ?#1






竜司side

 

 

穂「あ、あの~…」

 

希「はい、笑って♪」

 

穂「えっ!? えへ…」

 

穂乃果は副会長の指示に従い、笑う。

 

星空にビデオカメラを向けられて…。

 

今俺たちが何をしているかというと、部活動紹介のPVを作るために、中庭に出て、撮影されている。

 

メンバーは俺、穂乃果、海未、盾、ことり、朱雀、星空、嵐助、副会長だ。

 

凛「じゃあ、決めポーズ!!」

 

穂「ええええ!?………んじゃあ…」

 

星空に言われ、律儀に決めポーズをする穂乃果。

 

希「これが、音ノ木坂学院に誕生した、μ’sのリーダー…高坂穂乃果。その人だ」

 

ナレーターは副会長だ。

 

凛「はい!オッケー!!」

 

星空のOKテイクにポーズを解き、ため息を吐く穂乃果。

 

こ「あの~…これは?」

 

凛「じゃあ次は~……海未先輩ね!」

 

海「え……な、何なんですか!? ちょっと待ってください!! 失礼ですよいきなり!!」

 

星空にカメラを向けられて、慌てる海未は盾の背中に隠れる。

 

盾「ちょっ、海未?」

 

凛「おっ、その恥じらう姿もいいね♪」

 

星空のやつ、ノリノリだな…。

 

希「ごめんごめん。実は、生徒会で部活動を紹介するビデオを製作する事になって、各部の取材をしている所なん」

 

穂「取材?」

 

成る程な…。

 

事情は分かった。

 

凛「ね!ね!面白そうでしょ!?」

 

希「最近スクールアイドルは流行ってるし、μ’sとして悪い話や無いと思うけど?」

 

副会長はそう言うが、海未はまだ盾の背中に隠れたまま、顔だけを出して言う。

 

海「わ、私は嫌です!そんなカメラに映るなんて…!」

 

すると穂乃果が、

 

「取材……なんてアイドルな響き…」

 

心を踊らせている。

 

まあ、こいつはこういう反応するだろうな。

 

海「穂…穂乃果!?」

 

海未が盾の背中から出て、穂乃果に異議を申し立てる。

 

穂「オッケーだよね!海未ちゃん!これ見た人がμ’sの事覚えてくれるし」

 

こ「そうね、断る理由は無いかも!」

 

海「ことりぃ!?」

 

二人の賛成にうろたえる海未。

 

凛「取材させてくれたら、お礼にカメラ貸してくれるって」

 

希「そしたら、PVとか録れるやろ?」

 

穂「……PV?」

 

凛「ほら、μ’sの動画って、まだ3人だった時の奴しか無いでしょ?」

 

あ、言われてみれば…。

 

あれから全然撮ってないな……。

 

穂「あ~!あの動画、撮ってくれたの誰か分からないままだし」

 

こ「海未ちゃん、そろそろ新しい曲をやった方がいいって言ってたよね?」

 

海「ぁ……」

 

ことりの言葉に目を泳がせる海未。

 

詰ンだな。

 

穂「決まりだね!」

 

盾「海未。観念しなよ」

 

盾の言葉に海未は、

 

「あぁ~……もぉう!」

 

自棄になったように叫ンで観念した。

 

穂「よーし!じゃあ他のみんなに言ってくる~!」

 

そう言って、穂乃果はことりと海未と一緒に走っていった。

 

チッ、また面倒な事になりやがった、クソッタレ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

現在、部室にて、ことりが隠し撮りをした穂乃果の動画を見ていた。

 

しかしまあ、何ともだらしない事で。

 

ビデオカメラには、穂乃果が授業中だと思われる時間に涎を垂らして眠っているシーンが写し出されていた。

 

『スクールアイドルとはいえ、学生である。プロのように、時間外で授業を受けたり、早退が許されるような事はない。よって……こうなってしまう事がある』

 

そのシーンに乗せるように副会長のナレーションもついていた。

 

『昼食をしっかり摂ってから、再び熟睡』

 

今度は堂々と寝ている。

 

しかも午前中と同じで机に伏せてまた涎を垂らしながら寝ていた。

 

『そして、先生に発見されるという1日だ』

 

先生に肩を叩かれ、驚いた拍子にイスから転落したシーンで一旦映像は終わっていた。

 

希「これがスクールアイドルとは言え、まだ若冠16歳、高坂穂乃果のありのままの姿である」

 

穂「ありのまますぎるよ!?」

 

竜「自業自得だろうがァ…ア穂乃果」

 

穂「竜ちゃん酷い!? 慰めてよ!!」

 

竜「いや何でだよ?」

 

意味が分からン。

 

穂「っていうか何時の間に撮ったの!?」

 

どうやら穂乃果もこれは初見だったようで、驚いていた。

 

誰が撮ったか…。

 

凛「上手く撮れてたよ~ことり先輩!」

 

こ「ありがと~。こっそり撮るの、ドキドキしちゃった♪」

 

朱「ことり……変な扉、開かないでね…」

 

ことりがうっとりしながら言うもので、朱雀が釘を刺す。

 

っていうか、犯人ことりだったのかよ。

 

穂「えぇぇ!? ことりちゃんが…!? 酷いよ~!!」

 

海「普段だらけているから、こういう事になるのです」

 

海未が注意するが、穂乃果はそんな事はお構い無しに、

 

「流石、海未ちゃん♪」

 

海未のビデオを見ていた。

 

ホント穂乃果は犬っぽいなァ。

 

何て思っているとビデオカメラは教室から弓道場に移り、弓道着に身を包んだ海未が真面目に練習しているところだった。

 

バシュンッ!という音と共に矢を放った。

 

穂「真面目に弓道の練習を…」

 

しかし次の瞬間、海未は矢を発射した後、鏡に向かって笑顔の練習をし始めた。

 

穂「これは~?」

 

こ「可愛く見える笑顔の練習?」

 

そこまで見たところで顔を真っ赤にした海未の手によって止められた。

 

海「プライバシーの侵害です!!」

 

盾「海未のそういうところ、嫌いじゃないよ」

 

海「そういう問題ではありません!!」

 

盾がフォローするが、効果はなかった。

 

穂乃果は席を立ち、

 

「よぉし!こうなったら~」

 

ことりの鞄を漁る。

 

穂「ことりちゃんのプライバシーも……ん?なんだろこれ?」

 

こ「ひう!?」

 

穂「ああっ!?」

 

穂乃果が何かを見つけた瞬間、ことりは一瞬で鞄のジッパーを閉めて鞄を背に隠し、部室の隅に逃げる。

 

なンかヤバイものでも入ってたか…。

 

穂「ことりちゃん、どうしたの?」

 

こ「何でも無いのよ」

 

穂「え、でも…」

 

こ「何でも無いのよ何でも」

 

メチャメチャ早口だな…ことり。

 

穂「ふーん…そう言えば、竜ちゃん達のは?」

 

穂乃果が聞くと、ことりは残念そうに言う。

 

「それが、竜くんも盾くんもキーくんも、いたり居なかったりするから、撮れなかったの…」

 

穂「えぇーー!?」

 

俺達のも撮ろうとしたのか…。

 

まァ、俺達はその授業に遅れたら、仮病使ってどっかで暇潰ししてるくらいだしな。

 

そして穂乃果、お前は残念がるな。

 

希「完成したら、各部にチェックはしてもらうようにするから、問題あったらその時に…」

 

穂「でも、その前に生徒会長が見たら…」

 

 

『困ります。あなたのせいで音ノ木坂が怠け者の集団に見られてるのよ』

 

 

穂「ううぅぅぅ…」

 

涙目になる穂乃果。

 

まあ、あの生徒会長なら言いそうだな。

 

希「まあ、そこは頑張って貰うとして」

 

穂「えぇー!? 希先輩、何とかしてくれないんですか!?」

 

希「そうしたいんやけど、残念ながら、ウチが出来るのは、誰かを支えてあげる事だけ」

 

穂「支える…?」

 

なンか訳有りだな…。

 

希「ま、ウチの話はええやん。 さあ、次は…」

 

副会長がそう言った瞬間ドアが開き、そこから、

 

ニ「はぁ…はぁ…」

 

虎「ニコ、大丈夫か?」

 

ニコ先輩と虎亜が入ってきた。

 

穂「あー、ニコ先輩!」

 

ニ「取材が来るってホント?」

 

こ「もう来てますよ。ほら!」

 

ことりが副会長を手のひらで示す。

 

するとニコ先輩は、

 

「にっこにっこにー♪みんなも元気にニコニコニーの、矢澤ニコでーす!えっと~、好きな食べ物は~」

 

ぶりっ子しながら、そう言ってくる。

 

しかし副会長に、

 

「ごめん、そういうの要らないわ」

 

バッサリ止められる。

 

穂乃果たちも頷く。

 

ニ「ええ…」

 

凛「部活動の生徒たちの素顔に迫るって感じにしたいんだってー」

 

ニ「素顔……。ああぁ!OKOK。そっちのパターンね」

 

竜「どォいうパターンだよ?」

 

ニ「ちょっ~と待ってね~」

 

そう言った瞬間、ニコ先輩は後ろを向き、しゃがンで頭のリボンを解き始めた。

 

なンか嫌な予感がした俺は穂乃果たちに言う。

 

「先行くぞ穂乃果ァ」

 

穂「え、でも……」

 

竜「この後の展開分かるだろ?」

 

穂「……そうだね。じゃあ、みんな行こっか?」

 

「「「「「「うん…」」」」」

 

そう言って部室を出る。

 

後から「って、いないし!?」というツッコミと、「みんな先に言ったぞ」という虎亜の冷静な台詞が聞こえた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

花「た、助けて…」

 

アイドル研究部の部室から場所を変えて中庭にやって来て、今度は西木野、星空、小泉、イクス、嵐助、氷麗の1年生組だ。

 

そして1年生組のトップを勤める小泉のインタビューが始まって、開口1番の言葉が助けを求める台詞だった。

 

ちなみにカメラマンは俺。

 

火「花陽?別に緊張しなくても大丈夫だ。インタビュアーの質問に答えるだけでいいからな」

 

さすがに不憫だと感じたイクスが小泉に助け船を出す。

 

希「編集するからどんなに時間かかっても大丈夫やし…」

 

イクスに続いて副会長も援護する。

 

花「で、でも!」

 

「凛もいるから、頑張ろっ!」

 

隣にいた星空も小泉を励ましながらカメラに写り混む。

 

凛「真姫ちゃんもこっち来るにゃー!」

 

渡り廊下の手すりに肘をつけて髪の毛先をクルクル回している西木野にカメラのレンズを向ける。

 

真「私はやらない」

 

氷「そんな事言わずに、行けばいいじゃん」

 

真「嫌よ」

 

凛「もぉ…」

 

真姫が断ると氷麗は促し、星空は不満そうな声を出す。

 

希「ええんよ。どうしても嫌なら、無理にインタビューしなくても」

 

副会長は俺にウインクをしてくる。

 

何となく副会長の考えを察した俺は、無言で録画ボタンを押した。

 

希「真姫だけは、インタビューに応じてくれなかった。スクールアイドルから離れれば、ただの多感な15歳。これもまた、自然な」

 

真「何勝手にナレーション被せてるの!」

 

副会長がノリノリでナレーションを被せてきたのだが、西木野が撮られているのに気付き、撮影をストップさせられた。

 

氷「よし、真姫も来たところで、改めて1年生組を撮り直そうぜ!」

 

氷麗の一言で諦めたかのように溜め息をついてから、小泉の隣に立った。

 

星空はカメラに向かって「イエーイ♪」とか言いながらピースをしてる。

 

希「まず、アイドルの魅力について聞いてみたいと思います」

 

やっとこさインタビューらしいインタビューができる。

 

希「では、花陽さんから」

 

花「えっ!? えぇっと……その…」

 

副会長が小泉に話を振り、緊張した顔で答えようとした時、

 

凛「かよちんは昔からアイドル好きだったんだよね~」

 

花「は、はい!」

 

星空のアシストのお陰で詰まりながらも答えた。

 

希「それでスクールアイドルに?」

 

花「あ、はい。えっと…」

 

続く副会長の質問に答えようとカメラに向いたが、質問の答えではなく、何故か堪えるような笑いが返ってきた。

 

小泉と同じ方向を向いていた星空と西木野、側で見守っていたイクス、嵐助、氷麗も何故笑い出したのか原因が分かったようで、星空も小泉と同じように笑い出してしまった。

 

イクス達は溜め息を吐いている。

 

何だ?

 

俺の見えないところで何が起きてンだァ?

 

真「ちょっと止めて!!」

 

西木野はそんな2人とは対称的に、少し怒った表情を露にしてカメラのレンズを手で覆い隠した。

 

竜「西木野ォ?一体どうしたァ?」

 

真「天青先輩…後ろ」

 

いきなりカメラのレンズを覆い隠されたので、カメラから顔を外してから聞くと、西木野は俺の後ろを指差した。

 

それを見た俺が後ろを振り向くと、そこには口をεにした穂乃果が立っていた。

 

穂「いやぁ~緊張してるみたいだから、ほぐそうかなぁと思って」

 

真「ことり先輩も!!」

 

こ「頑張っているかね?」

 

この学校のどこにあったのか、ひょっとこのお面を被ってることりの姿があった。

 

元女子校でひょっとこは無いだろう…。

 

真「全く、これじゃあμ'sがドンドン誤解されるわ!」

 

穂「おぉー!? 真姫ちゃんがμ'sの心配してくれた!?」

 

真「うっ…!べ、別にぃ、私は………」

 

おっ、生のツンデレありがとうございます。

 

珍しかったので、カメラに収めようとしたら、

 

真「あ、撮らないでっ!!」

 

数秒で止められてしまった。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

あの後、だらしないところばかりだという事で、練習風景を撮ってもらった。

 

竜「ほら、穂乃果、レモンの蜂蜜漬けだ。海未とことりとニコ先輩も食べろ」

 

嵐「凛も。たんとお食べ。花陽と西木野も」

 

穂「ありがとう竜ちゃん♪ん~、美味しい!」

 

海「流石ですね…」

 

こ「ん~、疲れが抜けるよー」

 

凛「やっぱり嵐兄の料理は美味しいにゃ!!」

 

真「料理……なのかしら?」

 

花「モグモグ…」

 

ニ「あんたたち、凄いわね…」

 

俺と嵐助が作ってきたレモンの蜂蜜漬けを、それぞれ感想を言いながら食べるメンバー。

 

そこへ副会長が、

 

「天青くんも寺獄くんも料理出来るんやね…」

 

驚きながら声をかけてくる。

 

竜「俺は簡単な料理は出来るけど、嵐助はもっとすごいぜ」

 

嵐「ご要望とあらば、凝った料理も作れますよ」

 

希「へぇ~、凄いな~」

 

副会長は感心している。

 

かと思えばその態度をコロッと変えて、

 

「なあ…リーダーって誰なん…?」

 

と訊いてきた。

 

それに対し全員押し黙る…。

 

そこへ触れてきたか…。

 

 

 



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センターは誰だ?#2

この次の話はリメイクせずに、その次の話に行きます。



その日は解散し、俺と穂乃果と星空と副会長で、穂乃果の家へ行き、部屋でインタビューの続き。

 

途中で夏穂さんの化粧中の姿や、雪穂の見てはいけないものを見ちゃったりしたが…。

 

副会長に歌詞は海未と盾が、衣装と振り付けはことりと朱雀がしているのを言うと、「じゃあ、貴女は何してるの?」と訊かれ今現在、リーダーを改めて決める会議をしている。

 

ニ「リーダーには誰が相応しいか。大体私が部長についた時点で、1度考え直すべきだったのよ」

 

真「リーダーね」

 

こ「私は、穂乃果ちゃんでいいけど~」

 

ニ「だめよ!今回の取材ではっきりしたでしょ?この子はリーダーにまるで向いてないの」

 

真「それはそうね」

 

ことりは穂乃果を推すが、ニコ先輩と西木野が却下する。

 

海「ですが……」

 

ニ「そうとなったら、早く決めた方がいいわね。PVだってあるし」

 

朱「それもそうだね…」

 

海「PV?」

 

ニ「リーダーが変われば、必然的にセンターだって変わるでしょ?次のPVは新リーダーがセンター」

 

真「そうね」

 

花「でも誰が?」

 

ニ「虎亜!」

 

虎「はいはい…」

 

ニコ先輩の指示に虎亜が渋々立ち上がり、ホワイトボードに手をかける。

 

そこには『リーダーとは?』について書かれたリーダー論が。

 

そしてニコ先輩は語り出した。

 

「リーダーとは!まず第一に、誰よりも熱い情熱を持って、みんなを引っ張っていけること!次に!精神的支柱になれるだけの懐の大きさをもった人間であること!そしてなにより!メンバーから尊敬される存在であること!この条件を全て備えたメンバーとなると!」

 

なんか自分しかいないみたいな感じで言ったぞ。

 

しかし星空が、

 

「海未先輩かにゃ?」

 

虎「ブハッ!!」

 

ニ「なんでやねーん!!」

 

海未を推し、ニコ先輩がそれにツッコミを入れる。

 

そのコントみたいなやり取りに虎亜が吹いて、笑いまくる。

 

虎「アハハハハハハハハハハハハハ!!!! ニコ、残念だったな!ブハハハハハハハハハハハ!!」

 

ニ「うっさいわよ虎亜!しかも笑いすぎ!!」

 

海「私がっ!?」

 

虎亜たちは放っといて、海未か…。

 

向いてないってことは無いだろうけど…。

 

穂「そうだよ海未ちゃん!向いてるかも、リーダー」

 

なンか乗り気になっている穂乃果。

 

おい、それでいいのか発起人よ。

 

海「それでいいのですか?」

 

穂「えっ、なんで?」

 

海「リーダーの座を奪われようとしているのですよ?」

 

穂「ふぇ?それが?」

 

また自然にあざとい返事しやがって。

 

これだから穂乃果はやめられねェ!

 

海「……何も感じないのですか?」

 

穂「だって、みんなでμ’sやってくのは一緒でしょ?」

 

花「でも!センターじゃなくなるかもですよ!?」

 

穂「おー!そうか!ん~……まぁ、いっか!」

 

「「「「「「ええーー!?」」」」」」

 

結論出すのハエーイ。

 

竜「穂乃果はこういうヤツだ」

 

海「そんな事でいいのですか!?」

 

穂 「じゃあ、リーダーは海未ちゃんということにして」

 

海「ま、待ってください!」

 

海未がリーダーに決まろうとした瞬間、海未自身がストップをかける。

 

「無理です……///」

 

だろうな。

 

練習でよく指導してはいるが、いざ自分がリーダーという立場になってそういう風景を想像でもしたのだろう。

 

空回って屋上の隅で体育座りしてるのが目に浮かぶ。

 

真「面倒な人」

 

やめろ西木野。

 

そういう事言うとコイツ拗ねるから。

 

海「うぅ……盾~…」

 

盾「よしよーし、海未は悪くないよー」

 

隣に座っている盾の膝に顔をうずくめるようにしてグスグスと軽く泣いている海未。

 

ほら見ろ、いじけちまっただろうがァ。

 

最近の海未は少しいじけると、すぐ盾のとこにすり寄って行き、その度に盾が海未の頭を撫でてやるのがセオリーになりつつある。

 

花「じゃあ、ことり先輩?」

 

こ「ん?私?」

 

朱「ことりはリーダーってより、副リーダーでしょ」

 

確かに朱雀の言うとおりだ。

 

ことりは熱血と言うより、おっとりとしている娘だ。

 

ことりの脳トロボイスで『みんな~♪気合い入れて行こ~♪』なんて言われたら気合いなんて入らない。

 

むしろ力が抜けていく。

 

凛「じゃあ、天青先輩?」

 

星空が俺にふってくる。

 

竜「あのなァ、マネージャーがリーダーっておかしいだろうがァ」

 

盾「俺も」

 

朱「同じく」

 

盾と朱雀が予防線を張る。

 

凛「じゃあ、虎亜先輩!」

 

今度は虎亜にふる。

 

虎「星空、竜司の話ちゃんと聞いてたか?ダメに決まってんだろ」

 

虎亜もあっさりと却下する。

 

花「でも、一年生でリーダーって言う訳にもいかないし……」

 

ニ「仕方ないわね~」

 

こ「やっぱり、穂乃果ちゃんがいいと思うけど~?」

 

ニ「仕方ないわね~!」

 

真「私は海未先輩を説得した方がいいと思うけど?」

 

ニ「仕方ないわね~!!」

 

氷「投票にする?」

 

ニ「し~か~た~な~い~わ~ね~!」

 

虎「ニコうっさい」

 

ニ「なっ…!?」

 

こいつら…ワザと無視してんのか?

 

ニコ先輩、ついに拡声器まで使い始めたぞ。

 

虎亜に注意されたが。

 

凛「……で、どうするにゃ?」

 

嵐「どうする?」

 

結局、放課後に秋葉でリーダーを決めようって事になった。

 

メンドクセェ……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

そして放課後。

 

やって来たのはカラオケ店。

 

ニ「分かったわよ!! じゃあ、歌とダンスで決着をつけようじゃない!」

 

こ「決着?」

 

凛「みんなで得点を競うつもりかにゃ?」

 

あァ、そォいうことか。

 

ことりと星空の疑問に、

 

ニ「その通り!一番歌とダンスの上手い者がセンター。どう?それなら文句ないでしょ?」

 

ニコ先輩はマイクを手にし、歌う気満々である。

 

海「でも、私カラオケは……」

 

真「私は特に歌う気はしないわ」

 

しかしこの2人はあまり乗り気ではない。

 

そんな二人にニコ先輩は言う。

 

「なら歌わなくて結構。リーダーの権利が消失するだけだから」

 

その後ニコ先輩は後ろに向いてしゃがみこみ、腹黒発言をした。

 

「クックックッ……こんなこともあろうかと、高得点が出やすい曲のピックアップは既に完了している。これでリーダーの座は確実に……」

 

聞こえてるンだが?

 

虎亜もニコ先輩に近づき、その肩を叩いて言う。

 

「ニコ?どういうことかなぁ…?」

 

草加みたいなスマイルを浮かべてやがる。

 

それを見たニコ先輩は、

 

「さ、さぁ!始めるわ!」

 

冷や汗をかきながら言う。

 

しかし他のヤツらは「カラオケに来るのは久しぶりだよね~」とか、「なに歌おうかな~」とか話していた。

 

ニ「あんたら緊張感無さ過ぎ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

そして全員歌い終わる。

 

得点を記録しているのは朱雀だ。

 

穂「海未ちゃんも93点!」

 

朱「全員90点以上だね」

 

こ「みんな毎日レッスンしているものね♪」

 

花「ま、真姫ちゃんが苦手な所、ちゃんとアドバイスしてくれるし…」

 

凛「気づいてなかったけど、み~んな上手くなってるんだね~!」

 

みんなが楽しそうにしてる中、ニコ先輩は口をひきつらせ、

 

「こいつら……バケモノか…!?」

 

戦慄していた。

 

竜「じゃあ、次行くか?」

 

俺がそう言って席を立ち、盾や朱雀も立とうとした瞬間、穂乃果が、

 

「ええ!? 竜ちゃんたちも歌おうよー!!」

 

爆弾を投下してきやがった。

 

竜「………あァ?」

 

俺は口をひきつらせ、穂乃果の方に向く。

 

盾や朱雀も珍しく冷や汗をかいている。

 

イクスや嵐助、虎亜と氷麗は絶賛苦笑い中。

 

そンな俺達の気も知らず、穂乃果たちは話に花を咲かせる。

 

海「いいですね!」

 

こ「キーくん!一曲だけ歌って♪」

 

凛「凛も賛成にゃ!」

 

真「私も久し振りに氷麗の歌を聴きたいし、天青先輩たちの歌も聴きたいわ」

 

ニ「マネージャーにも歌唱力は必要よ!」

 

とか言ってくる。

 

つーか、最後のニコ先輩の言葉だけは意味が分からン。

 

小泉も言葉には出さないが、チラチラ俺たちを見てくる。

 

人前で歌うとか冗談じゃない。

 

穂乃果のヤツ、余計な事言いやがって…。

 

ふぅー、こうなったら仕方ない。

 

俺は虎亜や嵐助、盾にアイコンタクトをする。

 

盾たちも理解したようだ。

 

そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

竜「Go!!」

 

 

 

 

 

俺の合図に、朱雀がドアを蹴破り、俺たちマネージャー組は一斉に逃げた。

 

穂乃果たちは呆気にとられていたが、すぐに、

 

穂「逃げたよ!! 追おう!!」

 

という穂乃果の言葉で、μ’sのメンバーも追いかけてきた。

 

この逃走劇は、丁度ダンスゲームのある店で終わった。

 

ちなみに金は俺が払いました。

 

あー、天は遂に俺を見放したか…。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

あの後、逃げた事について軽く説教された。

 

チッ、これもゴルゴムの仕業に違いない…。

 

そンな事はさておき。

 

今度はダンスゲームの得点で競うことになった。

 

ニ「次はダンス!今度は歌の時みたいに甘く無いわよ!使用するのはこのマシン、アポカリプスモードエキストラ!!」

 

ニコ先輩がダンスゲームの機体の説明をしているみたいだが、そんな事は耳に入らず、俺と穂乃果と朱雀とことり、嵐助と星空はクレーンゲームをしていた。

 

穂「竜ちゃんそこ!そこだよ!!」

 

竜「分かってる!あはぎゃはッ!俺の計算式に狂いはねェ!」

 

一通さんやってる内に見事モフモフしてるドラゴンのぬいぐるみをGET!

 

穂「やったー!!」

 

こ「やったね♪穂乃果ちゃん、竜くん!」

 

俺はドラゴンのぬいぐるみを手に取り、それをことりとハイタッチしてる穂乃果に投げる。

 

竜「おらよ……」

 

穂「おっと……えへへ♪ありがとう。竜ちゃん♪」

 

穂乃果は嬉しそうな顔でそう言って、ぬいぐるみを頬擦りする。

 

そこまで喜ばれるとは驚きだな。

 

凛「凄いにゃ~」

 

嵐「竜司はクレーンゲームが得意だからな」

 

朱「ある意味誇れるよ」

 

ニ「あんたら緊張感持てって言ってるでしょー!?」

 

あァ、何だよ?

 

「凛は、運動は得意だけど、ダンスは苦手だからなぁ~…」

 

花「これ、どうやるんだろう?」

 

各々がどこか不安を感じながらおそるおそるプレイしていく。

 

ニ「プレイ経験ゼロの素人が挑んで、まともな点数が出る訳ないわ。くっくっ……カラオケの時は焦ったけどこれなら…」

 

また黒にこ先輩が出てきたよ…。

 

そしてまたもや虎亜が草加スマイルでニコ先輩の肩をたたく。

 

「ニコ…よくないなぁ…こういうのはぁ…?」

 

凛「なんか出来ちゃった~」

 

ニ「………えっ!?」

 

星空が何気なくやると、最高ランクのAAAの1つ下のAAを叩き出していた。

 

いや、これはマジでスゲーイ。

 

カラオケ店から脱走した詫びとして、何故か俺たちまで参加させられ、ダンスゲームは終わった。

 

結果は、

 

穂乃果 A

海未 A

ことり B

小泉 C

星空 AA

西木野 B

ニコ先輩 A

 

俺B

嵐助、朱雀、イクス、氷麗 A

虎亜 AA

盾 AAA

 

という事になった。

 

盾が一番すげェ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次はチラシ配りになったのだが、これについては、ことりが圧勝。

 

何故か、俺たちマネージャー組もやることになったのだが、俺、朱雀、虎亜は配ってもないのに、するする減っていった…。

 

なんか向こうから、取りに来てくれた。

 

ふとニコ先輩を見ると、その背中に哀愁を感じた…。

 

虎「ニコ……ドンマイ…」

 

虎亜がニコ先輩の肩に手を置いて、慰める。

 

そンなこンなで一旦解散することに。

 

 



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センターは誰だ?#3

この話は今回で終わります



再び部室にくると再び会議。

 

朱「はい、集計結果」

 

朱雀が穂乃果たちに結果を書いたノートを見せる。

 

穂「はぁ~…結局みんな同じだ~…」

 

海「そうですね…。ダンスの点数が悪い花陽は歌が良くて、カラオケの点数が悪かったことりは、チラシ配りの点数が良く…」

 

要するに、お互いがお互いをカバーしてるような結果だ。

 

こ「結局、みんな同じって事なんだね♪」

 

凛「ニコ先輩も流石です。みんなより全然練習してないのに同じ点数だなんて!」

 

ニ「……ハハハハ……当たり前でしょ……」

 

渇いた笑いを出すニコ先輩。

 

顔…ひきつってるぞ。

 

真「でも、どうするの?これじゃあ決まらないわよ?」

 

花「う、うん。で、でも、やっぱりリーダーは上級生の方が……」

 

ニ「仕方ないわね~」

 

「凛もそう思うにゃ~」

 

真「私はそもそもやる気無いし…」

 

ニ「……あんたたちブレないわね…」

 

虎「ニコ、あきらメロン…」

 

虎亜がふざけながら、ニコ先輩に言う。

 

竜「おい、どうすンだァ?このままだと無限ループになるぞ」

 

俺がそう言うと、穂乃果が衝撃的な事を言った。

 

「じゃあ、いいんじゃないかな?なくても」

 

「「「「「ええぇっ!?」」」」」

 

海「無くても?」

 

竜「穂乃果?」

 

こいつ、もしかして……。

 

穂「うん。リーダー無しでも、全然平気だと思うよ。みんなそれで練習してきて、歌も歌ってきたんだし」

 

海「しかし……」

 

ニ「そうよ!! リーダー無しなんてグループ聞いたこと無いわよ!?」

 

真「大体…センターはどうするの?」

 

海未たちの戸惑いの言葉に穂乃果は言う。

 

「それなんだけど、私考えたんだ!みんなで歌うって、どうかな!?」

 

「「「「「「ん?」」」」」」

 

ニ「みんな?」

 

穂「家で、アイドルの動画とか見ながら、思ったんだ~。なんかね、みんなで順番に歌えたら、素敵だなって!そんな曲、作れないかなって」

 

花「順番に?」

 

穂「そう!無理かな?」

 

穂乃果はメンバーに訊ねる。

 

海「まあ、歌は作れなくはないけど…」

 

真「そういう曲、無くはないわね!」

 

穂「ダンスは、そういうの無理かな?」

 

こ「ううん、今の7人なら出来ると思うけど」

 

穂乃果はそれを聞くと、立ち上がり両手を上げながら言う。

 

「じゃあ、それが一番いいよ!! みんなが歌って、みんながセンター!! 竜ちゃんはどう思う?」

 

俺にふってくるか…。

 

まあ、答えは決まっているが。

 

竜「俺はそれで構わない。 お前らはどうだ?」

 

盾「別にいいけど…」

 

朱「どちらでも…」

 

火「面白い」

 

嵐「賛成」

 

氷「俺も…」

 

虎「斬新でいいんじゃないか?」

 

こ「私、賛成♪」

 

真「好きにすれば…」

 

「凛もソロで歌うんだ~」

 

花「わ、私も!?」

 

海「やるのは大変そうですけどね…」

 

ほぼ満場一致。

 

ニコ先輩以外から了承を得る。

 

そして俺たちはニコ先輩をみる。

 

ニコ先輩はため息を吐いて、

 

「仕方ないわね……。ただし、私のパートは格好よくしなさいよ」

 

こ「了解しました♪」

 

了承してくれた。

 

全くよォ、穂乃果はいつも面白い事を言ってくれる。

 

穂「よぉし!そうと決まったら、早速練習しよう!」

 

こうして屋上への階段を勢いよく駆け上がって行く穂乃果の後ろをついて行きながら、俺達は話す。

 

竜「でもまあ、やっぱりリーダーは…」

 

真「不本意だけど」

 

海「何にも囚われないで、1番やりたいこと、1番面白そうなものに怯まず真っ直ぐに向かっていく。それは、穂乃果にしかないものかもしれません」

 

盾「そうだね~」

 

穂乃果はこちらに振り返り言う。

 

「じゃあ、始めよう!」

 

そして俺たち全員が屋上にでた時、街の方で何かが落ちてきた。

 

その場所からは土煙が上がっている。

 

ニ「な、何!?」

 

海「もしかして、また…」

 

真「怪獣?」

 

海未と西木野とニコ先輩が身構える。

 

しばらくして、そこから出てきたのは……

 

 

 

 

 

 

「キシュウオオォォォォォォン!!」

 

 

 

 

 

茶色の肌に、両手の大きなハサミ、海老のような体。

 

『宇宙海獣・レイキュバス』がいた。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

「キシュウオオォォォォォォン!!」

 

レイキュバスが現れた直後、穂乃果たちμ’sの後ろにいた竜司たちの行動は早かった。

 

氷麗がテレパシーで竜司に伝える。

 

(竜司!俺が行く!)

 

(分かった。 気をつけろ、レイキュバスは火炎と冷気を自在に操る)

 

(分かった!)

 

コクリと、アイコンタクトで頷いた氷麗は、ゆっくりと屋上から出て行く。

 

階段の踊り場にきた氷麗は、内ポケットからダイナの変身アイテム『リーフラッシャー』を取り、上に掲げる。

 

「ダイナァァア!!」

 

瞬間、氷麗は光に包まれダイナになる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

レイキュバスは依然、暴れている。

 

こ「どうしよう穂乃果ちゃん、キーくん!!」

 

ことりが穂乃果と朱雀に慌てたように訊ねる。

 

穂「大丈夫だよ!! きっとウルトラマンがすぐに来てくれるよ!! ねっ、竜ちゃん!」

 

竜「ああ…」

 

穂乃果の言うとおり、レイキュバスが現れてから数十秒たった頃に、光の柱がレイキュバスの前に出現。

 

(BGM:ヒーロー登場!)

 

そこから、ウルトラマンダイナが現れた。

 

「ダァッ!!」

 

真「ダイナ!」

 

ダイナの登場に、真姫が柄にもなく喜ぶ。

 

本来なら真姫はこの態度についてからかわれるのだが、生憎、穂乃果たちもダイナの登場に真姫同様安堵していたりするので、そんな暇は無い。

 

「ダァッ!!」

 

ダイナは、初代マンと同じ戦闘ポーズだがやや腰が高めのポーズをとる。

 

「キシュウオオォォォォォォン!!」

 

レイキュバスはハサミを振り上げ威嚇する。

 

(BGM:光の巨人、ふたたび)

 

「ハッ!!」

 

「キシュウオオォォォォォォン!!」

 

ダイナはレイキュバスに向かって走り、それに合わせてレイキュバスは右ハサミを振るう。

 

「キシュウオオォォォォン!!」

 

ダイナはそれを受け止め、右キックを当てる。

 

「ハッ!!」

 

そのまま連続で右キックを3発入れる。

 

「デヤァ!! ハッ!! ダァッ!!」

 

レイキュバスは怯み、火炎を吐いてくるが、ダイナはバク転して避ける。

 

何発もダイナの側に当たるが、ダイナは上手く避ける。

 

レイキュバスからかなり離れた場所に立ち、さらにそこから側転し、レイキュバスにビームスライサーを撃つ。

 

「ハッ!!」

 

全部で3発の光弾がレイキュバスに向かうが、レイキュバスは上手く火炎弾を放ち、相殺する。

 

ダイナはそこから体をひねりながらジャンプし、

 

「ダァッ!!」

 

レイキュバスの後ろに立つ。

 

そしてレイキュバスの体を掴み、後ろへ思いッきり投げる。

 

「デヤァ!!」

 

「キシュウオオォォォォン!!」

 

レイキュバスは地面に叩きつけられ、ゴロゴロしながらダイナから距離をとる。

 

「ハッ!!」

 

ダイナはレイキュバスを追いかけ、サッカーのように蹴り続ける。

 

「ハッ!デヤァ!ダァッ!ハッ!ダァッ!!」

 

レイキュバスは蹴られながらも何とか立つ。

 

そこへダイナがレイキュバスの体を掴んで肩に持ち、後ろへ倒れる。

 

「ダァッ!!」

 

「キシュウオオォォォォン!!」

 

頭から落ちたレイキュバスはフラフラだ。

 

ダイナはそこからバク転して、一定の距離を空ける。

 

そして腕を十字に組み、ソルジェント光線を放つ。

 

「ショワ!!」

 

その時レイキュバスの目が赤から青に変わる。

 

ダイナはそれを知らずにソルジェント光線を放ち続け、そこへレイキュバスが冷却ガスを吹き掛ける。

 

「ハッ!?」

 

ダイナは驚くが、ソルジェント光線がそのまま凍らされ続けている事に危機感を感じ、そこから側転する。

 

レイキュバスは再び目を青から赤に変え、ダイナが避ける場所を予測して、そこに火炎弾を吐く。

 

そこへダイナが見事につき、火炎弾があたる。

 

「グワァ!!」

 

ダイナは吹っ飛ばされる。

 

そこへレイキュバスが近づき、ダイナの首をハサミで挟み、絞め上げる。

 

「グワァ!!」

 

絞められ、苦しむダイナ。

 

そうしている間にカラータイマーが赤に点滅し、鳴り響く。

 

危うしダイナ!

 

穂「あわわわわわ!? どうしよう竜ちゃん!?」

 

竜「……………」

 

パニクり竜司に訊ねる穂乃果。

 

それに竜司はしばらく黙り混んでいたが、屋上の隅に行ってダイナに指示する。

 

「ダイナ!タイプチェンジしろ!」

 

それを聞いたダイナは竜司に顔を向けて頷くと、レイキュバスの体に足を添えて、巴投げをする。

 

「ダァッ!!」

 

「キシュウオオォォォォン!!」

 

ダイナは起き上がり、腕を胸の前でバツ字にクロスさせる。

 

「ウゥゥゥゥゥゥゥン……ハッ!!」

 

それを左右に拡げると、ダイナの額のクリスタルが輝き、ダイナの体が青と銀に変わる。

 

超能力の『ミラクルタイプ』である。

 

(BGM:ミラクルタイプのテーマ)

 

ダイナ・ミラクルタイプはレイキュバスに光弾を当てる。

 

「ダァッ!!」

 

光弾が当たり、レイキュバスが目を赤から青に変える。

 

再びレイキュバスはダイナに冷却ガスを吹き掛けるが、ダイナはバリアで防ぎ、レイキュバスに押し返す。

 

「キシュウオオォォォォン!?」

 

自身の冷却ガスが返ってきた事により、氷漬けになるレイキュバス。

 

ダイナは頭の前で腕をクロスさせる。

 

するとダイナの右手にエネルギーが集まり、それを右腰に収束させたダイナは一気に放つ。

 

「ダァッ!!」

 

ダイナミラクルの必殺技『レボリウムウェーブ』だ。

 

レイキュバスに当たると、後ろに疑似ブラックホールが現れ、レイキュバスを吸い込み、圧殺した。

 

ダイナはレイキュバスを倒したのを確認すると、穂乃果たちの方に顔を向け、サムズアップをする。

 

「ダァッ!!」

 

穂乃果たちも釣られてサムズアップする。

 

ダイナは上空を見上げ、飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

レイキュバスの事件から数日…。

 

新生μ's7人のPVが完成した。

 

曲名は「これからのSomeday」。

 

 

 

その後。

 

部室で竜司は、穂乃果、海未、ことり、朱雀、盾、凛、嵐助と共に集まっていると、真剣な表情をした花陽が駆け込んで来た。

 

穂「ん?どうしたの花陽ちゃん?」

 

花「た、た、助けて!」

 

穂「助けて?」

 

花「じゃなくて!大変!大変です!」

 

 



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エリーチカ#1




初めて読む感覚で読んでいくと、ちょっとはマシかもしれません。



竜司side

 

 

花「大変です!ラブライブです!ラブライブが開催される事になりました!!」

 

部室に駆け込ンで息切れしながらも確かな言葉を放つ小泉。

 

助けてじゃ無いのか。

 

良かったなと言いたい所だが、紛らわしいわ。

 

それよりも小泉の気になるこの一言、ラブライブ。

 

遂に来たかァ……スクールアイドルの甲子園とも言えるイベントが。

 

穂「ッ!!!? ラブライブ!? ……って何?」

 

コイツは……ッ。

 

竜「お前……何で意味深な驚き方したンだよ…?」

 

俺は呆れながらツッコミを入れる。

 

火「花陽、出番だ」

 

花「うんっ!!」

 

イクスが言うと、その意味を理解した小泉はいつもの大人しくて控えめな態度とは打って変わってとてつもない声の張りと素早さに変わり、パソコンを起動した。

 

というかたった一言で意味を理解するとは、流石は幼馴染み。

 

花「スクールアイドルの甲子園。それがラブライブです!エントリーしたグループの中から、このスクールアイドルランキング上位20位までがライブに出場。ナンバーワンを決める大会ですっ。噂には聞いていましたけど、ついに始まるなんて……!」

 

穂「へぇ~」

 

海「スクールアイドルは、全国的にも人気ですし…」

 

凛「盛り上がる事間違いなしにゃ~!」

 

スクールアイドル自体は世間的に有名だが、こうやって公式に一番を決めることは初めてだ。

 

花「今のアイドルランキングから上位20組となると、1位のA-RISEは当然出場として……2位3位は…。ま、正に夢のイベント…!チケット発売日はいつでしょうか!? 初日特典は…」

 

等と行く気満々の小泉。

 

そンな小泉に穂乃果が質問する。

 

「って、花陽ちゃん。見に行くつもり?」

 

その瞬間、小泉の目付きがカッ!! という擬音がつくくらいに変わった。

 

勢いよく椅子から立ち上がった小泉は、

 

「当たり前です!! これはアイドル史に残る一大イベントですよ!?……見逃せません!!」

 

穂乃果に顔を近づけながら言う。

 

相変わらずのキャラ崩壊っぷりだな。

 

真「アイドルの事になると、キャラ変わるわよね…」

 

氷「『アイドル大好き小泉さん』だな」

 

「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」

 

西木野は頬杖をつきながら言い、氷麗は苗字繋がりだからか何処ぞのラーメン巡りマンガみたいに言い、星空はいつもの事みたいで慣れた感じだ。

 

穂「なぁんだ。 私てっきり出場目指して頑張ろうって言うのかと思った…」

 

花「えええぇぇぇぇぇ!? そ、そ、そそ、そんな、私達が出場なんて恐れ多いですー!!!!」

 

穂乃果の言葉に小泉は部室の隅に瞬時に移動して、慌てて否定する。

 

真「キャラ変わりすぎ…」

 

「凛はこっちのかよちんも好きにゃ!」

 

嵐「凛、業が深いぞ…」

 

火「俺だってどっちの花陽も好きだ」

 

星空、お前小泉なら何でも好きだろ?

 

後イクスはサラッと告白するな。

 

こ「でも!スクールアイドルやってるんだもん!目指してみるのも悪くないかも!」

 

穂「っていうか目指さなきゃだめでしょ!」

 

真「そうは言っても、現実は厳しいわよ」

 

朱「西木野真姫の言うとおり。上位20っていうのは、簡単そうに見えて簡単じゃないよ」

 

真姫と朱雀がその厳しさを説く。

 

出場できるのは上位20組。

 

そこにμ'sが入るのが前提条件なのだ。

 

しかし前回見た時はかなり下位の所だった筈。

 

海「ですね……。確か、先週見た時は、とてもそんな大会に出られるような順位では……」

 

海未も思ったのか、パソコンで順位を調べる。

 

しかし次の瞬間、海未が穂乃果たちを呼ぶ。

 

「あっ!穂乃果、ことり、盾たちも来てください!」

 

呼ばれて穂乃果たちがパソコンを覗くと、

 

穂「あっ!凄い!」

 

こ「順位が上がってる!!」

 

竜「マジで…?」

 

順位が上がってる事に驚く。

 

コイツはスゲーイ。

 

モノスゲーイぞ。

 

真「ウソ!?」

 

凛「どれどれ…?」

 

そう言って西木野と星空も覗く。

 

イクスたちも後ろから覗く。

 

花「あっ……!」

 

こ「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!!」

 

穂「ホントだ!! ほらコメントも!『新しい曲格好よかったです。』『7人に増えたんですね。』『いつも一緒懸命さが伝わってきて大好きです!』」

 

穂乃果がコメントを読み上げる。

 

凛「うわあ~、もしかして凛たち人気者!?」

 

嵐「だな…」

 

真「そのせいね…」

 

凛「えっ?」

 

真「最近、氷麗と帰ってると…」

 

そう言って西木野は話してくれた。

 

 

《◎視点回想》

 

 

学校の帰り、真姫と氷麗が一緒に帰ってると、

 

「あの!写真いいですか!?」

 

真「えっ!?」

 

そう声をかけられた。

 

所謂、出待ちだ。

 

声をかけられた真姫は言い淀む。

 

「い…いや…」

 

真姫が断ったと思ったのだろう…。

 

声をかけた音ノ木中学の女の子は目に見えて落ち込む。

 

真「……あー……」

 

真姫はそれを見て罪悪感で気まずくなる。

 

見かねた氷麗が音ノ木中学の女の子に、「携帯貸して」と言って女の子から携帯を取る。

 

そして真姫に指示する。

 

「真姫はそこに立って」

 

「ヴエエェェ!? な、何でよ!?」

 

「いいから」

 

そう言って真姫と女の子を並ばせ、氷麗は写真を撮る。

 

そして携帯を返す。

 

氷「はい、どうぞ」

 

「あっ、ありがとうございます!! あの!お兄さんも一緒に撮っていいですか!?」

 

氷「えっ?」

 

まさか自分に来るとは思わなかったのだろう…。

 

間抜けな顔になり、真姫の方へ向く。

 

真姫は何故か焦った顔になり、

 

「ダメよ!氷麗だけは絶対にダメ!!」

 

と言って氷麗の手を取り、早足でその場を去る。

 

その顔は少し赤くなっていた。

 

残された女の子たちはポカーンとしていた。

 

勿論このくだりは穂乃果たちには言わず。

 

 

《終了》

 

 

こ「出待ち!?」

 

穂「ウソ!?」

 

屋上でことりは驚き、穂乃果はショックを受ける。

 

穂「私、全然ない…」

 

花「そういう事もあります!アイドルというのは残酷な格差社会でもありますから」

 

これは驚いた。

 

まさか出待ちまで発生しているとは。

 

まァ西木野のあの容姿に美声ならなくはないか。

 

それ言ったら穂乃果たちも何だがな。

 

にしてもこの落ち込みよう……仕方ねェな。

 

竜「大丈夫だ穂乃果。俺だけはお前のファンで居続けるから」

 

穂「うぅ…竜ちゃぁん…」

 

あからさまに元気無くしてる穂乃果を不憫に思ってフォローすると、穂乃果は俺に抱きついてくる。

 

なので頭を撫でてやる。

 

竜「よしよし」

 

あ、意外と大きい……。

 

何処がとは言わない。

 

一方、これを見た西木野がことりに訊ねる。

 

「この二人って、いつもこんな感じ?」

 

「たまに……アハハ……」

 

苦笑いして答えることり。

 

文句あっか?

 

凛「でも、写真なんて真姫ちゃんも随分変わったにゃ~」

 

再び西木野の話題に戻る星空。

 

真「わ、私は別に…!」

 

凛「あっ!赤くなったにゃ!」

 

真「むう……」

 

からかわれた西木野は腹いせに星空にチョップを食らわせ、その威力に星空は尻餅をつき頭を押さえる。

 

凛「にゃあ!? 痛いよぉ~…ふえぇぇぇん!」

 

嵐「よしよし凛。傷は浅いぞ」

 

軽く泣く星空の頭を撫でながら宥める嵐助。

 

真「あんたがいけないのよ」

 

暴力はダメだぞ西木野ォ。

 

そンな時、バンッ!! とドアが思いっ切り開いたので、穂乃果たちが振り返ると走って来たであろうニコ先輩がいた。

 

その後ろから虎亜がゆっくり姿を現す。

 

ニ「みんな!聞きなさい!重大ニュースよ!」

 

穂「あっ、ニコ先輩…」

 

ニ「ふっふっふ、聞いて驚くんじゃないわよ。今年の夏、ついに開かれることになったのよ!スクールアイドルの祭典!」

 

こ「ラブライブですか?」

 

ニ「……あ、知ってんの」

 

ことりにラブライブの事を言われ、テンションが下がるニコ先輩だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

今、俺たちは生徒会の前にいる。

 

ラブライブに出るための許可を貰うためだ。

 

………なのだが。

 

穂「……………」

 

真「どう考えても、答えは見えているわよ」

 

穂乃果がノックしようすると、西木野がそう言う。

 

確かに、あの生徒会長は首を縦にふらないだろうな。

 

凛「学校の許可ぁ?認められないわぁ」

 

嵐「なにげに似てるぞ、凛」

 

そこまで似てねェだろ?

 

なンなら本人に見られたら即逃げるレベルだな。

 

穂「だよね~…。 でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うんだけど…」

 

穂乃果がそう言うと、後ろの空き教室のドアが開き、ニコ先輩が顔を出す。

 

ニ「そんなの…あの生徒会長には関係無いでしょ。私らの事、目の敵にしてるんだから」

 

花「ど、どうして私たちばかり……」

 

火「だな…」

 

ニ「それは………。あっ!もしかして学校内での人気を私に奪われるのが怖くて…!」

 

真「それは無いわ」

 

虎「ああ、無いな」

 

ニコ先輩の見当違いな言葉に、即ツッコミを入れる西木野とそれを肯定する虎亜。

 

ニ「ツッコミ速ッ!!」

 

二人を指さし叫ぶニコ先輩を無視し、西木野はドアを閉めた。

 

無情だな。

 

真「もう、許可なんて取らずに勝手にエントリーしてしまえばいいんじゃない?」

 

氷「俺もそっちの方が早いと思うぜ」

 

西木野と氷麗がそう提案するが、

 

花「ダメだよ!! エントリーの条件に、ちゃんと学校に許可を取ることってあるもん!」

 

小泉に却下される。

 

アイドルとは言ってもスクールアイドル。

 

めンどくさい事に学校の許可がいるらしい。

 

真「じゃあ、直接理事長に頼んでみるとか?」

 

穂「えっ!? そんなこと出来るの?」

 

西木野の提案に穂乃果が質問する。

 

それは俺も気になる。

 

海「確かに、部の要望は、原則生徒会を通じてとありますが、理事長のところに直接行くことが禁止されているという訳では……」

 

成る程……。

 

ならそれも手だな。

 

真「でしょ♪何とかなるわよ。親族もいる事だし…」

 

西木野はそう言ってことりを見るので、自然と俺たちもことりの方を見る。

 

こ「ほぇ?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

現在、理事長室。

 

穂乃果はそのドアを前にし、生唾をごくりと飲み込む。

 

穂「さらに入りにくい緊張感が…!」

 

竜「ンな事言ってる場合じゃないだろ?」

 

そう言って俺がドアに手をかけ開けようとすると、向こう側からドアが開き、

 

ガンッ!!

 

竜「グハッ!!!?」

 

穂「竜ちゃん!?」

 

ドアが無慈悲に顔にぶつかってきて俺は倒れる。

 

希「あれ?お揃いでどうしたん?…って…ごめん…」

 

副会長が謝ってくるが、正直それどころではない。

 

不意討ちで来たので痛すぎる。

 

穂「うわぁぁ!? 生徒会長…!」

 

何だァ?

 

生徒会長もいるのか?

 

ニ「タイミング悪っ」

 

後ろでニコ先輩が呟く。

 

絵「何の用ですか?」

 

真「理事長にお話があってきました」

 

西木野が前に出て、絢瀬会長に強気な発言をする。

 

っていうか、俺の心配は誰もしてくれないの?

 

絵「各部の理事長への申請は、生徒会を通す決まりよ」

 

真「申請とは言ってないわ!ただ話があるの!」

 

氷「真姫。気持ちは分かるけど、相手は上級生だ」

 

真「うぅ…」

 

西木野がタメ口を聞いたのを、氷麗が肩に手を置き宥める。

 

そこにコンコンと、ドアをノックする音が。

 

「どうしたの?」

 

理事長が微笑みながら立っていた。

 

こ「お母さん…」

 

「話は中で聞くわ。それと、天青くんの心配もしてあげなさい」

 

「「「「「「「「あっ……」」」」」」」」」

 

穂「ご、ごめん竜ちゃん!!」

 

理事長の言葉で全員が俺の方へ向く。

 

未だに俺は痛みに悶絶していた。

 

竜「く…か……くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかかーーーーーーッ!!!!」

 

穂「竜ちゃんが壊れたッ!?」

 

そうは言うが穂乃果ちゃんよォ、それくらい痛かったンだぞ。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

理事長室には、俺達2年生組6人と、会長と副会長と蒼燕と茜の生徒会組、ニコ先輩と虎亜が入った。

 

1年生6人は外で待機。

 

「へぇ~。ラブライブね~」

 

理事長は映像を観て驚いた表情だった。

 

海「はい、ネットで、全国的に中継されることになっています」

 

こ「もし出場できれば、学校の名前を皆に知ってもらえる事になると思うの!」

 

絵「私は反対です」

 

案の定というか、生徒会長が反対してくる。

 

蒼「おい絵里…」

 

蒼燕が宥めるように言うも、生徒会長は止まらない。

 

絵「理事長は、学校のために、学校生活を犠牲にするような事はすべきではないとおっしゃいました。であれば」

 

「そうねぇ~、でもいいんじゃないかしら?エントリーするくらいなら」

 

穂「本当ですか!?」

 

「えぇ」

 

それに喜ぶ穂乃果たち。

 

やけにあっさりだな?

 

絵「ちょ、ちょっと待って下さい!どうして彼女達の肩を持つんです!?」

 

「別にそんなつもりはないけど?」

 

絵「だったら、生徒会も学校を存続させるために活動させてください!」

 

「ん~…それはダメ」

 

絵「意味が分かりません!!」

 

「そう?簡単な事よ?」

 

絵「……………」

 

生徒会長はしばらく理事長を見るが、やがて部屋を後にする。

 

希「エリチ…」

 

蒼「ったく…アイツは…」

 

蒼燕がその後を追いかける。

 

ニ「ふん!ザマァ見ろってのよ」

 

虎「ニコ…」

 

虎亜がニコ先輩の肩に手を置きたしなめる。

 

そンな中、唐突に理事長が言う。

 

「ただし、条件があります!」

 

条件?

 

なンだ?

 

「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で、1人でも赤点をとるような事があったら、ラブライブへのエントリーは認めませんよ?いいですね?」

 

それを聞いた穂乃果は、

 

「ふえぇぇぇぇぇ!?」

 

と驚く。

 

……いや、こいつの場合焦っているな。

 

こ「まぁ、流石に赤点はないから、大丈夫かと~……。あれ~…?」

 

ことりが呟いた瞬間、ズーンという効果音が似合いそうな程に、穂乃果と星空とニコ先輩が暗い雰囲気で床に突っ伏していた。

 

それを見た朱雀が、

 

「一年、二年、三年それぞれから見事にバカが排出されたね」

 

呆れの目で見ながら言った。

 

 

 



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エリーチカ#2


後半がガラリと変わっています。



穂「大変申し訳ありません!」

 

凛「ません!」

 

現在、部室の机に三つ指をついて謝る穂乃果と星空のバカ二人。

 

海「小学校の頃から知ってはいましたが……穂乃果…」

 

穂「数学だけだよ!ほら小学校の頃から算数苦手だったでしょ?」

 

竜「自慢気に言うな…」

 

今は算数じゃなくて数学だぞこのアホ。

 

花「4×7?」

 

穂「……26?」

 

穂乃果の答えに全員、(≡‐≡)←こんな顔になる。

 

朱「壊滅的だね」

 

全くだ…。

 

呆れて物も言えねェな。

 

花「凛ちゃんは?」

 

凛「英語!凛は英語だけはどうしても肌に合わなくて~」

 

嵐「肌に合わないってなんだ、肌に合わないって…」

 

火「化粧品じゃねぇんだぞ…」

 

花「た、確かに難しいよね」

 

凛「そうだよ!だいたい凛達は日本人なのにどうして外国の言葉を勉強しなくちゃいけないの!」

 

星空が屁理屈を訴えると、西木野がイライラして机を叩いて立つ。

 

真「ふん!! 屁理屈はいいの!」

 

凛「にゃ~。真姫ちゃん怖いにゃ~……」

 

そンな星空にこンな言葉を送ってやる。

 

世界共通語だからと。

 

それに付け加えて成績に関わるぞ?

 

氷「真姫、落ち着けって…」

 

真「これでテストが悪くてエントリー出来なかったら、恥ずかしすぎるわよ!!」

 

凛「そうだよね~…」

 

まァ、あれだけ息巻いて点数悪かったからエントリーできませんでした!なンて確かにクソダセェわな。

 

真「やっと生徒会長を突破したって言うのに~…」

 

ニ「ま、全くその通りよ」

 

ニコ先輩の方に全員顔を向けるが、すぐにその目は全員ジト目になる。

 

なンせ持ってる教科書を逆に持っているからだ。

 

ニ「あ、赤点なんか絶対取っちゃダメよ~」

 

虎「ニコ、教科書逆だ」

 

海「動揺しすぎです…」

 

愉快に素敵に3バカ決定おめでとう。

 

海「とにかく、試験まで私とことりは穂乃果の。花陽と真姫は凛の勉強を見て、弱点教科を何とか底上げしていく事にします」

 

真「まー…それはそうだけど……ニコ先輩は?」

 

虎「ニコに関しては俺が担当するよ」

 

希「それとウチがな……」

 

虎「東條……いつの間に」

 

あァ、確かにいつの間にだな。

 

気配すらしなかったぞ。

 

ともあれ、ニコ先輩には虎亜と副会長がつくようだ。

 

穂「いいんですか?」

 

ニ「い、言ってるでしょ!にこは赤点の心配なんてな…」

 

すると副会長は両手をあげ謎の構えをとり、ニコ先輩の胸を掴ンだ。

 

ニ「ひっ!」

 

希「嘘つくとワシワシするよ?」

 

ニ「……わかりました。教えてください……」

 

希「はい、よろしい♪」

 

盾「もはや脅迫だね…」

 

竜「ああ…」

 

これも力技の一つか。

 

そンな事を思ってると穂乃果が、

 

「竜ちゃん達の成績はどうなの?」

 

と訊いてきた。

 

俺達も巻き込もうと考えているのだろうが、甘いな。

 

竜「いつもどの教科も70点台」

 

盾「同じく」

 

朱「オール100点」

 

嵐「少なくとも赤点は採った事がないな…」

 

火「ああ…」

 

氷「俺も分からない所は真姫に教えてもらってるから問題なし」

 

虎「言わずもがな」

 

俺たちマネージャー組がそう言うと、穂乃果と星空は項垂れる。

 

ザマァ見ろ。

 

しかしすぐに穂乃果は顔を上げ、ハツラツと言う。

 

「よし!これで準備はできたね!明日から頑張ろー!」

 

凛「おー!!」

 

海「今日からです!」

 

「「うぅぅぅ……」」

 

この二人、やる気あるのか……?

 

いや……無いだろうな…。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾side

 

 

さて、只今試験勉強中なのだが…。

 

凛「うぅ~これが毎日続くのかにゃ~」

 

真「当たり前でしょ!」

 

星ちんの愚痴に真姫ちんが怒鳴る。

 

すると凛ちんは窓を指さして言う。

 

「あ~!白いご飯にゃ!!」

 

花「ええっ!?」

 

火「花陽……」

 

星ちんの逸らし攻撃にまんまと嵌まるカヨちん。

 

火神がそれに呆れる。

 

真「引っ掛かると思ってる?」

 

真姫ちんは星ちんに軽くチョップを入れてた。

 

カヨちんはまだ探しているし……。

 

一方、穂乃ちんの方を見てみると、数学の教科書と睨めっこしていた。

 

穂「ことりちゃん……竜ちゃん……」

 

こ「何?あと1問よ。頑張って!」

 

竜「何だ?」

 

穂「おやすみ……」

 

こ「ああっ!? 穂乃果ちゃん!穂乃果ちゃぁぁん!!」

 

竜「チッ…起きやがれア穂乃果ァァァ!!」

 

寝たふりだね穂乃ちん。

 

竜ちんが怒鳴ったり、ことちんが起こそうとするが起きる気配はない。

 

すると海未が席を立ち上がりながら言う。

 

「全く。ことり、竜司。後は頼みます。私は弓道部の方に行かなければならないので」

 

こ「分かった!起きて~」

 

竜「ほら起きろ穂乃果!」

 

ニコちんはというと、

 

希「じゃあ、次の問題の答えは?」

 

ニ「えっとぉ~、に、にっこにっこに~?」

 

虎「………東條」

 

希「了解…にっひっひっひっひっ♪」

 

ニ「やめて!やめてぇ……虎亜助けて…!嫌ァァああああああ!!」

 

やっぱり2人と同じ結果に終わった。

 

この状況に俺は海未に言う。

 

「カオスだね?」

 

「そうですね……」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

あれから、鞄の中を漁るとお菓子の残量が無かったのと、帰るかという気持ちで部室を出て校門に向かうと、弓道帰りの海未が立っていた。

 

盾「どったの?海未」

 

海「あっ、盾…」

 

俺に気づいた海未は、無言である方向を見る。

 

そこには金髪の中学生が門に寄りかかっており、音楽プレイヤーを片手にリズムを取りながら、くちずさんでいた。

 

その曲は、μ'sのファーストライブ曲『START:DASH』だ。

 

しかも音楽プレイヤーに映っている動画はネットにアップされていないシーンが殆どだった……。

 

海「サイトに上がってない所の映像まで……」

 

プレイヤーを覗き込む海未。

 

そんな海未に気づいたのか、金髪ちゃんは「うわぁ!?」と驚き、海未も「わっ!?」と驚く。

 

海「ごめんなさい!」

 

「あ!園田海未さんですよね!? μ'sの!そしてそのマネジャーの土方盾さんですよね!?」

 

急にそんな事を訊いてきた。

 

海未はともかく、何で表舞台にいない俺の事まで?

 

海未はいきなりだったのかパニクり…

 

「えっ!? いえ!ひ、人違いです!」

 

そう答えた。

 

するとその中学生は見るからに悲しそうに落ち込む。

 

盾「海未、落ち着いて。後、嘘ついちゃダメ絶対」

 

海「は、はい。すいません。本物です……」

 

「ですよね!?」

 

海「うぅ……いえ、そ、それよりその映像…」

 

「はい!ライブの映像です!亜里沙は行けなかったんですけど、お姉ちゃんが撮影してきてくれて!」

 

元気よくそう答えられた。

 

海「お姉ちゃん?」

 

「はい!」

 

へぇ~、この子……亜里沙こと、アリちんのお姉ちゃんか~…。

 

なんか遺伝的に一人だけ思い当たる人物がいる。

 

その予想は正しかったようで……。

 

「亜里沙!」

 

「あ!お姉ちゃん!」

 

アリちんが向いた方向を見ると、そこには…

 

絵「っ………あなた達」

 

海「……生徒会長」

 

生徒会長がいた。

 

 

盾sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未side

 

 

話がしたいということで生徒会長に連れられ、私と盾は近くの公園にやってきました。

 

ベンチに座ると、生徒会長は亜里沙ちゃんにお金を渡して自販機に向かわせました。

 

亜「お待たせしました!」

 

4人分の缶を抱えながら走ってくる

 

亜里沙ちゃんから缶を受け取り、礼を言う。

 

盾「ありがとね」

 

海「ありがとう」

 

そして缶を見てみると私と盾は驚いた。

 

海「……おでん?」

 

盾「何で……?」

 

何故これを選んだんでしょう……?

 

盾も苦い顔をしていました。

 

絵「ごめんなさい、向こうの暮らしが長かったから、まだ日本に慣れてない所があって」

 

海「向こう?」

 

絵「えぇ、祖母がロシア人なの。亜里沙、それは飲み物じゃないの」

 

亜「えっ?…ハラショー」

 

これまで見せた事のないような顔つきで、自分の妹を諭していました。

 

それは、普段の生徒会長ではなく、1人の姉としての優しさに溢れた顔でした。

 

絵「別なの買ってきてくれる?」

 

「はい!」

 

元気に返事して再び自販機に向かう亜里沙ちゃん。

 

しばらくしてから生徒会長から口を開きました。

 

「それにしても、あなた達に見つかってしまうとはね」

 

私も疑問に思ったことがあったので尋ねる。

 

「前から、穂乃果達と話していたんです。誰が撮影してネットにアップしてくれたんだろうって。でも、生徒会長だったなんて……。あの映像がなければ、私達は今、こうしてなかったと思うんです。あれがあったから、見てくれる人も増えたし、だから…」

 

感謝しようと思った瞬間でした。

 

絵「やめて」

 

海「え?」

 

絵「別にあなた達の為にやったんじゃないから。むしろ逆。あなた達のダンスや歌が、いかに人を惹きつけられない物か、活動を続けても意味がないか、知ってもらおうと思って。だから、今のこの状況は想定外。なくなるどころか、人数が増えるなんて」

 

その言葉に、私は胸が痛くなります。

 

絵「でも、私は認めない。人に見せられるものになっているとは思えない。そんな状態で、学校の名前を背負って活動してほしくないの。話はそれだけ」

 

私は何も言う事ができなかった。

 

何故そこまで言われなきゃならないのだと…。

 

そんな事も気にせず鞄を手にかけ、ベンチから立ち上がった生徒会長が去ろうとした次の瞬間……

 

 

 

 

 

盾「分からないな~」

 

 

 

 

 

今まで黙っていた盾が、そう言いました。

 

絵「何ですって…?」

 

その言葉に生徒会長は立ち止まります。

 

盾「だってそうでしょ~?そりゃ、最初は俺だって無理だろと思ってたよ。けど今は人気になっている。着実に成果は出てんだよ…?あんたがどう思うと勝手だけど、俺から言わせればただの嫉妬にしか聞こえないんだよね~」

 

絵「あなたに…………あなたに私の何が分かるのよ!!!!」

 

盾の言葉に生徒会長は激昂します。

 

昔から盾はそうです……。

 

無自覚に人の心の本音を言い当て、そのくせ無邪気に人の心を抉る言葉を吐く。

 

私もそれに救われた事もありましたが、同時に傷つけられた事もあります。

 

それが何とも心地よく……ゲフンゲフン。

 

ともかく、盾の言葉に生徒会長は怒り、盾を睨み続けます。

 

盾は構わず言います。

 

「は?分かる訳無いじゃん。俺はあんたじゃ無いんだから」

 

「「……えっ?」」

 

その言葉に、私も生徒会長も呆気にとられます。

 

盾「何?理解して欲しかったの?しないよそんな事。面倒臭い…」

 

絵「なっ……なっ……なっ……」

 

生徒会長は何かを言い返そうとしますが、言葉が出ません。

 

続けて言葉を紡ごうとした盾ですが、

 

「大体……ッ!? 危ない海未!!」

 

「えっ?……キャッ!?」

 

急に私を抱え、生徒会長の方に飛んで避けます。

 

すると今まで私たちがいたベンチが強烈な突風により吹き飛びました!

 

ベンチはそのままガシャン!! と近くにあった建物にぶつかり、地面に落ちていきました。

 

一体……何が?

 

突然の事に、私も生徒会長も、自販機から帰ってきた亜里沙ちゃんも口を開けて驚きます。

 

しかし不意に、私達の上に巨大な影が被さりました。

 

私も生徒会長も自然と上を向き、そして仰天しました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、翼竜のような怪獣がいたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クゥエエエェェェェェェン!!」

 

 

 

 

 

盾「メルバ……」

 

不意に盾がそう呟きました。

 

あの怪獣の名前でしょうか?

 

盾は私を地面に下ろすと、生徒会長に言います。

 

「生徒会長…」

 

「なっ…何?」

 

「海未とアリちんを連れて、ここから逃げて。俺はアイツの気を引く」

 

なっ!?

 

何を言ってるんですか盾はッ!?

 

勿論、私は盾を止めます。

 

「何言ってるんですか!? 盾も一緒に逃げましょう!!」

 

亜「そうですよ!明らかに危ないですよ!」

 

亜里沙ちゃんも一緒に止めてくれますが、盾はイラついたような大きな声で、

 

「いいから逃げろつってんの!! 死にたいの!?」

 

そう言ってきました。

 

その言葉に、私も生徒会長も亜里沙ちゃんもビクッとします。

 

しかし盾はすぐに微笑み、私の頭を撫でながら、

 

「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから…」

 

そう言います。

 

もう……盾はズルいです。

 

そんな事を言われたら、頷くしかないじゃないですか。

 

海「わかりました。必ず帰ってきて下さいね…」

 

盾「うん。じゃあ、生徒会長」

 

絵「分かったわ。あなたには色々思うところがあるけど、とにかく無事でいなさい…」

 

生徒会長が言い残し、私たち3人は公園から出ます。

 

その後、すぐに爆発音が鳴り響き、私は公園の方に振り向きます。

 

海「盾ッ!!」

 

私が盾の名前を叫ぶと、盾のいた地点から光の柱が現れそこから、

 

 

 

「チャッ!!」

 

 

 

ウルトラマンティガが現れました。

 

 

 

 

 



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エリーチカ#3







◎side

 

 

盾「行ったな…」

 

盾は海未たちが公園を出たのを確認すると、メルバに視線を移し言う。

 

「じゃあ来なよ…」

 

そう言った瞬間、メルバは目から放つ『メルバニックレイ』を3発放って来た。

 

「うおっ!?」

 

なんとか全弾避けた盾はスパークレンスを掲げる。

 

「ティガァァァ!!」

 

その瞬間、スパークレンスのカバーが開き、盾は光に包まれ、巨人へと姿を変える。

 

(BGM:ティガ!)

 

「チャッ!!」

 

ウルトラマンティガの登場だ。

 

海「ティガ!!」

 

亜「ハラショー!」

 

絵「あれが……今確認されている6体のウルトラマンの内の一人、ティガ……」

 

海未はティガの登場に歓喜し、亜里沙は驚き、絵里は驚きつつも冷静に状況を確認している。

 

ティガはメルバに向かっていつものファイティングポーズを取る。

 

「ハッ!」

 

「クゥエエエェェェン!!」

 

そして両者は激突する。

 

(BGM:光を継ぐもの)

 

最初に繰り出したのはティガ。

 

牽制に前蹴りをメルバの胸に当てる。

 

「チャッ!」

 

後退するメルバ。

 

更にティガは右回し蹴りを3発当てる。

 

「チャッ!チャッ!ハッ!」

 

そこから回転しながらジャンプしての右後ろ回し蹴りをメルバの首に当てる。

 

「チャァァッ!!」

 

「クゥエエエェェェン!!」

 

倒れるメルバ。

 

元々メルバはスマートな体型をしている為に防御力や耐久力が弱い。

 

ゴルザと比べると遥かに戦い易いだろう。

 

しかしその代わり、メルバはある一点に優れている。

 

メルバは起き上がると、大きな翼を広げて飛び立つ。

 

遥か高くまで飛んでいくと、そこから下に向かってターンし、ティガに向かってメルバニックレイを連発してきた。

 

「ヂャッ!?」

 

雨霰のように降ってくる光弾にティガは体を丸めて防御に徹する。

 

背中や肩から火花が散りまくる。

 

メルバはメルバニックレイを撃ちながらティガに近づくと、ティガのすぐ頭上で再び空高く飛んでいく。

 

ティガは光弾が止むのと同時にメルバを見据え、ファイティングポーズを取る。

 

「チャッ!」

 

そんなティガにメルバは猛スピードで向かって行き、ティガが上段回し蹴りを繰り出すと、それを容易に避ける。

 

そのまま通過するとUターンして、また真っ直ぐ猛スピードで向かって行く。

 

ティガも待ち構えて再び上段回し蹴りするも、やはり容易に避けられた上に、Uターンしてきたメルバのメルバニックレイを3発胸に貰う。

 

「ヂャッ!?」

 

背中から倒れるティガ。

 

メルバが優れているもの、それは空中機動力だ。

 

大きな翼で飛翔し、空から光弾を撃つ。

 

それがメルバの得意とする戦法である。

 

膝をついて、肩で息をするティガは、未だに大空を飛翔するメルバを睨みつける。

 

盾『うっざいな~もう』

 

盾はメルバの空中機動戦法に悪態を吐く。

 

そんな時だ。

 

海「ウルトラマンティガ!負けないで下さい‼」

 

海未の声援が聞こえた。

 

海未だけでは無い。

 

絵里や亜里沙の声援も聞こえる。

 

絵「ウルトラマンティガ!頑張って!!」

 

亜「頑張れ!!」

 

それを見たティガは1つ頷いて立ち上がる。

 

そして両腕を額のクリスタルの前でクロスさせ、

 

「ンンンン……ハァッ!!」

 

一気に降り下ろしたその瞬間、額のクリスタル部分が青紫に輝き、ティガの体は紫を基調とした姿『スカイタイプ』へと変わった。

 

亜「姿が変わった!」

 

海「今度は紫ですか…」

 

地上から戦いを見ていた亜里沙と海未がタイプチェンジしたティガに驚きを隠せなかった。

 

ティガはマルチタイプとは違う両手を手刀にした戦闘ポーズを取ると、高く飛び上がり、強烈な飛び蹴り『ティガ・スカイキック』を喰らわせた。

 

「チャアァァァァァ!!!」

 

「クゥエエエェェェン!!」

 

それを頭に受けたメルバは地面に落下、粉塵を巻き上げる。

 

逆にティガは宙返りしながら着地した。

 

ティガはすぐに立って振り向くと、両手をカラータイマーの前で水平に重ねてから左右に広げ、頭の上に両手を持っていきながら光エネルギーを集めて左腰に収束させ、一気にメルバに放つ。

 

「チャッ!!」

 

スカイタイプの必殺技『ランバルト光弾』だ。

 

ランバルト光弾は真っ直ぐメルバに当たり、メルバを粉々に爆発させた。

 

亜「やったぁ!!」

 

絵「ハラショー…」

 

海「やりました!!」

 

3人はそれぞれの反応をし、喜ぶ。

 

ティガも一息つき、飛び去ろうとしたが、突如ティガの周りに金属の槍が数本降ってきて、ティガを取り囲む。

 

盾『何だ、これ?』

 

盾、もといティガは驚き、槍を壊そうとするが電撃が走り、ティガは膝をつく。

 

「グワァ!?」

 

海「ティガ!!」

 

海未がティガを心配して、声を上げる。

 

電撃は走り続け、ティガにダメージを蓄積させていく。

 

「グワァァァァァァァ!?」

 

スカイタイプは素早さが上がる代わりに、パワーや耐久力がかなり下がるのだ。

 

やがてティガのカラータイマーが赤に点滅する。

 

そんなティガの前に銀色の泡がたち、それが集合すると、

 

「ギュウイイィィィィィンン!!」

 

金属が擦り合うような鳴き声を上げながら、金属生命体『アルギュロス』が現れた。

 

絵「もう一体いたの!?」

 

亜「ティガが危ないよ!」

 

絵里は驚き、亜里沙はティガの身を案じる。

 

アルギュロスは右手に槍を作り、ティガに降り下ろそうとする。

 

盾『うわ、ヤベェ……』

 

盾は逃げようとするが、エネルギーが少ないため、避ける気力も無い。

 

海「ティガ、逃げてー!!」

 

海未が叫ぶも、ティガは動けない。

 

その槍の穂先を見据えるばかりだ。

 

そしてアルギュロスは、槍をティガに向かって降り下ろす。

 

海未たちはその後に待つ凄惨な光景を見たくないために目を瞑る。

 

盾自身も、もうダメだと思ったその時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青色の光弾が、アルギュロスを直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルギュロスは断末魔を上げる暇もなく、消滅した。

 

絵「一体、何が……?」

 

突然の爆発音に、絵里たちは顔を上げる。

 

ティガ自身も、周りにある槍をどけながら、周りを見る。

 

ふと、後ろに気配を感じたティガは後ろを振り返る。

 

そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼い巨人がいた。

 

(BGM:アグル降臨)

 

海「青いウルトラマン……?」

 

海未が呟く。

 

絵里と亜里沙も呆然とする。

 

そこにいたのは全身鮮やかな青と銀の体色で、胸には金縁の黒いプロテクターをつけ、頭に菱形の青いクリスタルがついたウルトラマン。

 

ガイアと対をなす青き海の巨人『ウルトラマンアグル』がいた。

 

アグルは左手は握りこぶしにして腰につけ、右手は振り払うように下ろしたポーズをしていた。

 

アグルはその構えを解くと、ゆっくりティガに向かって歩く。

 

ある程度の間を開けて、ティガをしばらく見た後、絵里たちの方に顔を向ける。

 

海未も絵里も呆然としていたが、亜里沙だけは輝いた目で見ていた。

 

アグルはすぐに後ろを向いて歩き去り、やがて光になって消えていった。

 

盾『何なんだよ……?』

 

盾も呆然としていたが、すぐにティガの変身を解いた。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾side

 

 

ティガの変身を解いた俺は、何食わぬ顔で海未たちのところへ戻る。

 

盾「海未!」

 

海「盾!」

 

俺が戻ると海未がその綺麗な顔を心配そうに歪めて駆け寄ってくる。

 

海「大丈夫なんですか!? 怪我はしてませんね!! もう!心配したんですからね!!」

 

海未が俺の体をベタベタ触りながら聞いてくる。

 

本当に心配性だな~。

 

盾「大丈夫だよ。ティガが助けてくれたからね」

 

まあ、ティガは俺なんだけど…。

 

絵「土方くんも無事みたいだし、私たちは先に行くわね」

 

俺がそんな事を思っていると、生徒会長がそう言って背を向ける。

 

その背中を、黙って見送る俺と海未。

 

するとアリちんが駆け寄ってきて、「飲みますか?」と訊きながら『おしるこ』を渡してくれる。

 

「あの、亜里沙、μ’s、海未さん達のこと、大好きです!へへっ♪」

 

そう言い残し生徒会長を追いかけていった。

 

だからさ……何でおしるこ…?

 

 

 



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エリーチカ#4

後編です。

すこし駆け足になるかもです。



盾side

 

 

あの後、海未と話し合い、副会長の東條希こと、のんたん先輩のところへ行く事に。

 

のんたん先輩なら、生徒会長の事を何か知っていると思ったからだ。

 

ホントなら雨ちんが生徒会長の幼馴染みだから、雨ちんに訊けばいいと思うが、生憎電話に出なかった。

 

なので消去法でのんたん先輩になった。

 

何故生徒会長が、あそこまで海未たち……ひいてはスクールアイドルを嫌うのかを知りたいから。

 

ついたのは某ハンバーガー店。

 

ここにいるらしい。

 

店内を捜すまでもなく、すぐ近くにいた。

 

ニ「ニッコニッコニー♪」

 

希「だから次ふざけたらワシワシMAXだって言ったはずやん」

 

虎「お前も学習しないな~」

 

ニ「待って!違う!ふざけてるんじゃなくて、こうすると答えが思いつくの!」

 

希「本当に?」

 

ニ「そ、そうなの!キャラチェンジすると、脳が活性化するって言うの?ニコで~す♪よ~し、今日はこの問題を解いちゃおっかな~♪えーと、ここにこれを代入して~ーー……」

 

そう言ったきり、机に突っ伏すニコちん。

 

相変わらずバカやってるね~。

 

希「…して?」

 

虎「どうした?解かないのか?(^∪^)」

 

ニ「えっとーそれでこうだから~……ニコ分かんないよ~」

 

そう言った瞬間…

 

ニ「ひぃぃっ!?」

 

のんたん先輩に胸をワシワシされ始めた。

 

希「お仕置きやね♪」

 

ニ「嫌!! 嫌ぁぁぁああああああ!!!!」

 

何やってんの?

 

ホント……。

 

虎亜ちんも止めずに、その光景をスマホで撮影してるし。

 

するとやっと気づいたのか、こっちを見る3人。

 

海「聞きたい事があるのですが…」

 

そう言った海未に何かを感じたのか、のんたん先輩は席を立ち、

 

希「虎亜っち、ニコっちの事、お願いね…」

 

虎「任された」

 

そう言って俺達の所へ来ると微笑む。

 

希「場所…変えようか…」

 

そう言われたので、大人しくついていく俺と海未。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、神田明神。

 

希「そう………エリチにそんな事言われたんや」

 

俺達はのんたん先輩に公園での出来事を話した。

 

因みにのんたん先輩は巫女服にチェンジしてる。

 

盾「ごめんね~。急に…」

 

希「ええんよ、別に。それよりもエリチについてやったっけ」

 

海「はい…」

 

希「エリチならそう言うやろね」

 

盾「はい?」

 

どういうこと?

 

希「そう言えるだけの物が、エリチにはある」

 

海「……どういうことですか?」

 

希「……知りたい?」

 

意味深な問いに海未はコクリと頷き、それを見たのんたん先輩が巫女服の袖口から取り出したのは1つのミュージックプレーヤー。

 

その中の動画ファイルの1つをタップし、俺と海未に見せてくれた。

 

そこに写し出されたのは1人の小柄な金髪の少女。

 

バレエの衣装を着て無邪気に笑い、縦横無尽に踊る姿が写し出されている。

 

これが生徒会長だということをすぐに理解できるのに、そう時間もかからなかった。

 

希「これで分かったやろ?」

 

海「……はい」

 

海未は相当ショックを受けたみたいだ。

 

盾「海未。今日はもう帰ろうか…?」

 

海「……はい」

 

ダメだ。

 

かなり来てるな…。

 

まあ、今まで手探りでながらも一生懸命ダンスを考えてきた海未にはキツイかな。

 

盾「じゃあ、今日はこれで…」

 

希「うん、じゃあね」

 

俺は海未を連れて帰路についた。

 

 

盾sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

竜「おかしい……」

 

太陽がカンカン照りの真夏日。

 

俺は現在部室にいる。

 

他にもことり、西木野と小泉、そして虎亜がいる。

 

昼休みの間は、俺とことりと海未で穂乃果を、星空には小泉と西木野が、ニコ先輩には虎亜と副会長が勉強を教える事になっているのだが……。

 

竜「なァンで来ねェンだァ?……そう思わねェか?ことり」

 

こ「あはは……」

 

俺の問いに、ことりは苦笑いを返す。

 

勉強が出来ない3バカに勉強を教えようと思ってここに来たのに、一向に来ない…。

 

海未と副会長も来てないが、まァあの二人は何か用事があるとして……。

 

虎「逃げたな……あいつら…」

 

虎亜が呟く。

 

西木野に至ってはイライラしてる雰囲気がまあ、こっちにもよく伝わる。

 

小泉はそれに怯えてる。

 

すると部室のドアが開き、そこから穂乃果たちが現れる。

 

竜「何やってンだ穂乃…果?」

 

俺は言葉に詰まる。

 

ドアを開けて入ったきた穂乃果、星空、ニコ先輩の3人が何やら疲れきった様子でやってきた。

 

西木野も小泉もことりも虎亜も、その様子に唖然としている。

 

後から海未と副会長が入ったきたが、何か副会長の肌がツヤツヤしてる。

 

これは聞かない方がいいな……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

希「今日のノルマはこれね♪」

 

そう言って、副会長は机にドスン!! という音がするほどの大量の課題を出してきた。

 

多すぎだろ?

 

「「「………鬼」」」

 

それを見た、穂乃果と星空とニコ先輩がジト目で副会長を見る。

 

副会長は手をワシワシと動かしながら、

 

「あれ?まだワシワシが足りてない子がおる?」

 

そう穂乃果たちに訊いてきた。

 

これに対しバカ3人は、

 

「「「まっさか~…♪」」」

 

と同時に言う。

 

ホントに何があった…?

 

その時、海未が立ち上がり、

 

「ことり、竜司…。穂乃果の勉強をお願いします…」

 

こ「ヘ……?うん…」

 

竜「あ?ああ…」

 

そう言って部室を出る。

 

何かあったのか?

 

やけに思い詰めてたが?

 

真「海未先輩、どうしたんですか?」

 

こ「さあ…?」

 

竜「それより俺達は俺達のやるべき事をやるぞ。ほら穂乃果、やるぞ」

 

穂「は~い…」

 

俺は穂乃果の勉強を見る。

 

西木野たちもそれぞれのやるべき事にとりかかる。

 

ふと周りを見ると、副会長がいない。

 

…………どこ行った?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると部室のドアが勢いよく開き、そこから海未が来た。

 

何か吹っ切れた顔で穂乃果を呼ぶ。

 

海「穂乃果!!」

 

穂「……海未ちゃん…?」

 

さっきより疲れきった様子で海未に答える穂乃果。

 

まあ、さっきまで俺がペース配分考えずに穂乃果に勉強を叩き込ンだからな。

 

ことりが止めるのも聞かずに…。

 

ニコ先輩と星空も似たようなものだ。

 

さっきより疲れ果てている。

 

そンな事にも構わず海未は穂乃果を指さし、

 

「今日から穂乃果の家に……泊まり込みます!!」

 

そう宣言した。

 

それを聞いた穂乃果は驚く。

 

「ええっ!?」

 

「勉強です!!」

 

「鬼ぃ~…」

 

涙目になりながら、指をツンツンする穂乃果。

 

何か分からンが、取り敢えず穂乃果を応援しよう。

 

竜「穂乃果、ファイトだぜ!」

 

穂「えええぇぇぇ!? 竜ちゃん助けてよ!! っていうかそれ私のセリフ!!」

 

竜「知るか…」

 

こうして、海未による地獄の猛特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

それから数日。

 

今日ですべての試験結果が帰ってくる。

 

結果は穂乃果以外は今のところセーフ。

 

後は穂乃果だけだ。

 

そう思ってると、穂乃果が俺たち全員が集まっている部室にくる。

 

真「どうだった?」

 

海「今日で、全教科帰ってきましたよね?」

 

花「…………!」

 

こ「穂乃果ちゃん!!」

 

海未たちがそれぞれの言葉を穂乃果にかける。

 

「凛はセーフだったよ!」

 

そう言いながら、星空はピースする。

 

ニコ先輩は席から立ち上がり、

 

「あんた!私たちの努力を水の泡にするんじゃないでしょうね!?」

 

穂乃果に食い付き気味に言う。

 

最後に全員で声を揃えて訪ねた。

 

「「「「「「「「「どうなの!?」」」」」」」」

 

それに対し穂乃果は鞄から試験用紙を出しながら、

 

「う…うん……もうちょっといい点だとよかったんだけど……じゃーーん!!」

 

ピースして笑う。

 

その点数は53点。

 

赤点ギリギリセーフだった。

 

それを見た全員は喜び、俺は目を細めて、

 

「ゴミみてェだ……」

 

心の声をついつい出してしまった。

 

穂「酷いよ竜ちゃん!!」

 

竜「あっ…悪ぃ…。そォいう意味じゃないンだ」

 

語呂合わせ的にな…。

 

それはともかく、穂乃果たちは練習着に着替える。

 

その瞬間、俺たちマネージャー組は一気に外に出る。

 

女子が着替えてる中で平気でいれる程、俺たちは肝が座ってない。

 

穂「よ~し、今日から練習だー!!」

 

花「ラ…ラブライブ!」

 

真「まだ目指せるって決まっただけよ」

 

火「そうだぜ花陽。俺たちはまだ始まってすらいないんだぜ?」

 

そう言いながら、理事長のところへ走って行く。

 

赤点回避の報告をするためだ。

 

そして着いた瞬間、

 

絵「そんな!説明してください!」

 

切羽詰まった会長の声がした。

 

気になった俺と穂乃果が室内を覗く。

 

「ごめんなさい、でもこれは決定事項なの。音ノ木坂学院は、来年より生徒募集をやめ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃校とします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

what?

 

理事長、今なンつった?

 

穂「今の話、本当ですか!?」

 

穂乃果が声をあげながら理事長室に入って行く。

 

絵「あなた…!」

 

会長が俺たちの入室に驚いていた。

 

中には蒼燕もいた。

 

穂乃果は真っ直ぐに理事長の机の前に立った。

 

穂「本当に廃校になっちゃうんですか!?」

 

こ「穂乃果ちゃん……」

 

「……本当よ」

 

こ「お母さん!そんな事全然聞いてないよ!!」

 

ことりも理事長に詰め寄った。

 

穂「お願いします!もうちょっとだけ、待ってください!! あと1週間…いや!あと2日でなんとかしますから!!」

 

穂乃果の必死なお願いを聞いて、理事長が目をパチクリさせていた。

 

それを見た蒼燕が穂乃果を落ち着かせにかかる。

 

「落ち着け高坂!そんなすぐにって訳じゃない」

 

「そうよ高坂さん?廃校にするというのは、オープンキャンパスの結果が悪かったらという話よ?」

 

穂「っ!? オープンキャンパス……?」

 

理事長の言葉にピンと来なかった穂乃果は首を傾げた。

 

竜「要するにあれだ…。見学に来てもらった近隣の中学生にアンケートを取ってもらって、結果が芳しくなかったら廃校にするって事だろ?」

 

「そういうことよ」

 

俺が言ったことに異を唱えず、理事長は肯定する。

 

穂「なぁんだ……」

 

絵「安心してる場合じゃないわよ?オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこで結果が悪かったら本決まりって事よ?」

 

成る程、そこで結果を残せなかったら、本当の意味での終わり。

 

穂乃果たちはどうしようと慌てている。

 

穂「竜ちゃん!! 何かいい考え無い!?」

 

こ「キーくん!!」

 

朱「落ち着いて、ことり」

 

竜「そンなすぐに出る訳無いだろ?」

 

絵「理事長!! オープンキャンパスの時のイベント内容は、生徒会で提案させて頂きます!」

 

俺たちがそンな事を言っている間に、会長が理事長の真っ正面に立ち、目を見つめながら言った。

 

会長も廃校から守ろうと必死なのだが、どうも俺からすれば、その行動が本心からの行動には思えない。

 

「……止めても聞きそうにないわね」

 

理事長が折れ、会長に許可を出した。

 

絵「失礼します。蒼燕、行くわよ…」

 

蒼「ちょっ…!? 待てよ絵里!」

 

会長は小さくお礼を言ったあと、蒼燕と共に理事長を出た。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里side

 

 

まさかオープンキャンパスの結果で廃校になるかどうか何て聞かされるなんて思ってもみなかった。

 

あの子たちはホッとしていたけど、オープンキャンパスの話になった途端どうしようと取り乱していた。

 

やはりあの子たちには、生徒を集めることなんて出来やしない。

 

だからこそ、私が何とかしなくちゃいけない…。

 

そんな事を思っていると蒼燕が

 

蒼「なぁ…絵里」

 

絵「何?蒼燕」

 

蒼「お前……今、自分に正直か?」

 

絵「えっ…?」

 

そんな事を訊いてきた。

 

どういうこと?

 

自分に正直か……ですって…?

 

蒼燕が言った言葉が頭から離れてくれない。

 

何を言っているのか意味が分からなかった。

 

私は今『音ノ木坂学院から廃校の危機を守る』ために動いているつもりだし、実際、現に動いている。

 

なのに何故、蒼燕の言葉がこんなにも突き刺さるのだろうか…。

 

見ると、蒼燕は私に悲哀の目を向けてくる。

 

やめて……。

 

どうしてあなたがそんな目を、顔をするの?

 

私はあなたに…蒼燕にそんな顔をしてほしくない!!

 

あなたには……いつも笑顔でいてほしいのに…!

 

希「どうするつもり?」

 

絵「……!」

 

そんな考えをしていると、突然声をかけられる。

 

そこには希と茜がいた。

 

希はいつも彼女が持ち歩いているタロットカードのうちの1枚を私に見せた。

 

星の逆位置…。

 

いろんな意味があるけれど、総括するなら『考えすぎ、不安』だったかしら…。

 

そんなの決まっている。

 

絵「決まってるでしょ」

 

私が音ノ木坂学院を守ってみせる。

 

廃校を阻止してみせる。

 

そう決意し、ふと蒼燕の方を見ると、いつものヤル気のない顔をしていた。

 

さっきの……あの悲しそうな表情は何だったのかしら?

 

 

 




どうでしたか?

駆け足すぎたでしょうか?

まあ、そんな事より、次回は絵里加入編。
そしてアグルが本格参戦します。

では…


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やりたいことは#1






◎side

 

 

穂「なんとかしなくっちゃ!!」

 

そう言った穂乃果であったが、実際穂乃果たちに出来ることは2週間後に控えたオープンキャンパスに向けてベストなパフォーマンスをするための練習をすることぐらいだ。

 

そして竜司たちは穂乃果たちが円滑に練習出来るためのサポートをするぐらいだ。

 

穂乃果たちは一年生組にこの事を言う。

 

花「そんな…」

 

凛「じゃあ、凛達やっぱり下級生がいない高校生活!?」

 

ニ「そうなるわね…」

 

ニコの答えに愕然と危機感を持ったのか、2人は「あっ…」と息を呑んで顔を見合わせる。

 

真「まっ、私はそっちの方が気楽でいいけど」

 

このお嬢様は良くも悪くも平常運転だった。

 

穂「とにかく、オープンキャンパスでライブをやろう!それで入学希望者を少しでも増やすしかないよ!」

 

竜「そォだな。それしか今のところ方法が無いしな」

 

穂乃果の意見に賛同する竜司。

 

一方、生徒会では。

 

絵「これより生徒会は独自に動きます。なんとかして廃校を食い止めましょう」

 

絵里がそう言うが、少し言いにくそうな生徒会メンバーたち。

 

希「ん?」

 

絵「何か?」

 

「あっ…いえ…」

 

希「言いたい事あったら、言った方がいいよ」

 

茜「今はどんな意見も貴重だからね」

 

「はい…」

 

希と茜が促すと、徐々に言い始める生徒会メンバー。

 

「あの、これって、この学校の入学希望者を増やすために、何をするかの話し合いですよね?」

 

絵「ええ」

 

「だったら!楽しい事を一杯紹介しませんか!? 学校の歴史や、先生が良いって事も大事だと思うんですけど、ちょっと、今までの生徒会は堅苦しい気がしていて」

 

蒼「それもそうだな」

 

後輩の言葉に絵里をチラ見しながら言う蒼燕。

 

絵「っ…!」

 

それに対して蒼燕を睨む絵里。

 

しかし蒼燕はどこ吹く風の態度。

 

「例えば、ここの制服って、可愛いって言ってくれる人多いんですよ!」

 

「それいい!そういうのアピールしていきましょうよ!」

 

「スクールアイドルとかも人気あるよね!?」

 

「いいね!うちらの学校にもいるし!μ'sだっけ?」

 

「その子達に頼んで、ライブやって貰おうよ!」

 

「「「いいねぇ!!」」」

 

そう言って盛り上がった後輩メンバー達だが、

 

絵「他には!?」

 

絵里のピシャリとした一言で黙り、「……他には?」と口を揃える。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして来たのはアルパカ小屋。

 

それを見た絵里は、

 

「これ……ですか?」

 

と芳しくない反応。

 

蒼「アルパカね~」

 

蒼燕はあまり興味の無い態度。

 

「はい!他校の生徒にも、意外と人気あるんですよ!」

 

絵里はアルパカを見続けるが、

 

「ちょっと、これでは………」

 

という却下的な言葉を漏らす。

 

それに茶色のアルパカが反応、唸って絵里に唾を吐く。

 

蒼「うわぁ~…」

 

「あわあわあわあわあわあわ…」

 

蒼燕は引いて、後輩たちが絵里を懸命にハンカチで拭く。

 

そこへアルパカの餌を持ってきた花陽と凛が来る。

 

花「生徒会長……さん?」

 

蒼「おっ…」

 

絵「あなた達…」

 

「ああ!? スクールアイドルの!!」

 

花「は…はい」

 

他のメンバーも花陽たちに気づき、声をかける。

 

「丁度良かった!今度オープンキャンパスがあるんだけど、よかったらライブとか…」

 

絵「待ちなさい!」

 

生徒会の一人が花陽にライブをして貰おうと頼もうとしたが、絵里がそれを止める。

 

絵「まだ何も決まって無いでしょ!?」

 

「………はい」

 

蒼「絵里、落ち着け…」

 

そう言って蒼燕が絵里を止め、この場を去る生徒会たちだった。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

今、穂乃果たちはオープンキャンパスに向け練習をしている。

 

海未が手でリズムをとり、穂乃果が声を出してダンスの練習をしている所だ。

 

「1、2、3、4、5、6、7、8……よし!」

 

そしてラストの決めポーズが決まり、ガッツポーズをする穂乃果。

 

穂「おー!! みんな完璧ー!!」

 

こ「よかった!これならオープンキャンパスに間に合いそうだね♪」

 

そこへ真姫が手で汗を拭きながら訊ねる。

 

「ふぅ……でも、本当にライブなんて出来るの?生徒会長に止められるんじゃない?」

 

客観的に見ても悪くない動きだった。

 

確実にこいつらは成長している。

 

こ「それは大丈夫。部活紹介の時間は必ずあるはずだから。そこで、歌を披露すれば…」

 

海「まだです…」

 

しかし暗い顔をした海未が遮る。

 

その言葉に穂乃果たちメンバーも、俺達マネジャー組も海未の方を向く。

 

海「まだタイミングがずれています」

 

穂「海未ちゃん……分かった!もう一回やろう!」

 

穂乃果は頷き、もう一度やる。

 

その間の海未は、ただじっとダンスを見ているだけで何も発さない。

 

しかしその顔は決して良い表情とは言えなかった。

 

穂「かぁんぺきぃー!!」

 

真「そうね」

 

ニ「やっとニコのレベルにみんな追い付いたわね!」

 

確かに先程より踊りも合っていた。

 

今の踊りでも注目を集めるには十分だとは思われるが……。

 

海「まだダメです……」

 

海未の口から告げられたのは、またしてもダメ出しだった。

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

盾「海未……」

 

凛「うぅ……もうこれ以上は上手くなりようがないにゃあ……」

 

あまり弱音を吐かない星空が思わず弱音を吐いてしまった。

 

海「ダメです……それでは全然…」

 

それに対して西木野が海未の所に歩み寄った。

 

真「何が気に入らないのよ!? ハッキリ言って!!」

 

氷「真姫……」

 

氷麗が西木野の肩に手を置き、諌める。

 

竜「何がそンなにダメなンだ?教えろ海未」

 

その質問に海未は言う。

 

「感動できないんです……」

 

真「えっ?」

 

「今のままでは……」

 

穂「海未ちゃん……」

 

感動できない、ねェ……。

 

確かに穂乃果達の歌や踊りは決して上手いと言える程のものじゃねェ。

 

だが何か魅せられるものがあった。

 

そう思っていた。

 

だけどそれじゃダメだっていうのか?

 

その日は結局、解散となった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

その夜、俺達はラインの電話機能を使い、話していた。

 

因みに俺を含めた2年生組は穂乃果の家に集合している。

 

その中で突如浮上した穂乃果の言葉に、一年女子3人が驚く。

 

「「「えええ!? 生徒会長に!?」」」

 

穂乃果は続ける。

 

「うん。海未ちゃんがダンスを教わろうって」

 

海「はい…」

 

そして海未は会長が昔バレエをしていた事を語る。

 

そのダンスが如何に凄かったかを。

 

「あの人のバレエを見て思ったんです。私達はまだまだだって…」

 

ニ「話があるって、そんな事?」

 

どうにも俺達の知らないとこで、海未と盾は生徒会長の事を俺達よりも先に色々と知った。

 

それ故の提案だった。

 

花「でも、生徒会長……私達の事……」

 

凛「嫌ってるよね~絶対!」

 

ニ「つーか嫉妬してるのよ嫉妬!」

 

この3人の口から出るのはどれも会長への苦手意識や嫌悪感。

 

確かにあンだけ目の敵にされたり、頑なに認められなかったりしたンだ。

 

そう思うのも無理はないが、盾が言う。

 

「俺もさ~、そう思って生徒会長に言ったんだ~。でもあの人のダンスを見たらなんかね……」

 

こ「そんなに凄いんだ…」

 

「うん」

 

生徒会長のダンスを実際に見て、いつも穂乃果達のダンスを見てきた盾がそう言うぐらいだ。

 

そンだけの実力が会長にはあるのだろう。

 

それなら練習中に海未があンだけ異常にダンスを極めようとした気持ちも理解できる。

 

真「私は反対!潰されかねないわ」

 

シンプルな理由ありがとォ。

 

こ「……うん」

 

ニ「そうね。3年生はニコや虎亜が居れば充分だし」

 

虎「俺も入ってるんだ…一応…」

 

花「生徒会長、ちょっと怖い……」

 

「凛も楽しいのがいいなぁ~…」

 

海「そうですよね……」

 

口々に反対意見をいうメンバーだが、穂乃果だけは違う事を言う。

 

「私はいいと思うけどな~…」

 

『えぇっ!?』

 

ニ「何言ってんのよ!?」

 

穂乃果の発言に1年生6人とニコと虎亜は驚いた。

 

竜「どうしてだ?」

 

俺は分かっていても訊いてしまう。

 

普通なら大多数に流されるものだが、穂乃果は違う。

 

こいつはいつだって自分の中に確固たる芯を持っているから、こういう事を言える。

 

そして俺の思考を肯定するように、穂乃果は至って普通の顔で言い放った。

 

「だって、ダンスが上手い人が近くにいて、もっと上手くなりたいから教わりたいって話でしょ?」

 

竜「そうだな…」

 

「だったら、私は賛成!」

 

こ「穂乃果ちゃん…」

 

「頼むだけ頼んでみようよ!!」

 

ニ「ちょっと待ちなさいよっ!!」

 

こ「でも~…」

 

ニ「ん?」

 

このまま頼もうとする姿勢だった穂乃果を止めようとニコさんが制止の声を出すが、それを止めたのはことりだった。

 

こ「絵里先輩のダンスは、ちょっと見てみたいかも♪」

 

花「あっ、それは私も!」

 

人間的な苦手意識はあれど、それとこれとは話が別なように、やはり興味があるようだった。

 

穂「よぉし!じゃあ早速明日訊いてみよう!竜ちゃんもそれでいい!?」

 

竜「お前らの問題だろ。勝手にしろ」

 

ニ「……どうなっても知らないわよ」

 

 

 



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やりたいことは#2




※ここでのリメイクは絵里が指導する辺りから台詞の部分で目立ちます。



蒼燕side

 

 

俺…雨崎蒼燕は、今絵里の部屋でオープンキャンパスの時に絵里が話す音ノ木の説明文を聞いている。

 

しかしまあ……正直言って眠いくらいつまらない。

 

俺の他に、亜里沙やその友達の高坂雪穂ちゃん、竜司の妹の天青 華ちゃん、計3人が聞いている。

 

絵里の説明に亜里沙は不満顔。

 

雪穂に至っては居眠りをしている。

 

だが俺は責めない。

 

それが当然だ。

 

それに気づかず絵里は、

 

「このように、音ノ木坂学院の歴史は古く、この地域の発展にずっと関わってきました。さらに、当時の学院は音楽学校という側面も持っており、学院内は、アーティストを目指す生徒に溢れ、非常にクリエイティブな雰囲気に包まれていたと言います」

 

とまあ長ったらしい文章を長々と言う。

 

その間、雪穂が段々と頭を後ろに傾け、今にも転げ落ちそうだ。

 

正直こっちを見てる方が断然面白い。

 

そうやって見続けていた次の瞬間。

 

 

 

雪「わあっ!! 体重増えた!!!!」

 

 

 

そう叫んで起きた。

 

どんな夢見てたんだ?

 

雪穂は今が説明の途中だということに気づき、

 

「あっ……すいません……」

 

顔を赤くしながら謝る。

 

絵「……ごめんね?退屈だった?」

 

雪「いーえ、面白かったです!後半凄い引き込まれました!!」

 

席を立ち言うが、無意味だろ。

 

絵「オープンキャンパス当日までに直すから、遠慮なく何でも言って」

 

絵里がそう言うと亜里沙が立ち上がり、

 

「亜里沙はあまり面白くなかったわ…」

 

はっきりと言う。

 

その物言いに雪穂が「ちょっと!?」って言って驚いている。

 

「何でお姉ちゃん……こんな話しているの?」

 

絵「学校を廃校にしたくないからよ…」

 

「私も音ノ木坂は無くなってほしくないけど………でも」

 

亜里沙は一旦区切り、次に絵里の顔色を変える一言を放つ。

 

「これがお姉ちゃんのやりたいこと?」

 

絵「っ……………」

 

流石は妹。

 

姉の事をよく分かっている。

 

俺も絵里に、あの時言った問いをもう一度投げかける。

 

「絵里、もう一度訊くぞ。お前は今……自分の心に正直か?」

 

俺がそう訊ねると、絵里は顔を俯かせた。

 

……ちょっとやり過ぎたか?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺と茜が生徒会室に行くと、竜司や高坂たちがいた。

 

蒼「入るぞ…」

 

茜「同じく」

 

そう言って入る。

 

竜「あァ…蒼燕と茜か…」

 

蒼「どういう状況?」

 

そう聞くと朱雀が「まあ見てなよ」と言うので、隅の方で茜と共に見守る。

 

穂「生徒会長!私達にダンスを教えてください!お願いします!」

 

絵「私にダンスを?」

 

穂「はい!教えて頂けないでしょうか!? 私達、上手くなりたいんです!!」

 

6人を代表して高坂が用件を切り出し、頭を下げた。

 

成る程…バレエをやっていた絵里にダンスを教われば、確かにμ’sのパフォーマンスは飛躍的に上昇するだろうな……。

 

そう考えてると、絵里がこっちを見てた。

 

その目は俺に意見を求めているような感じだった。

 

おいおい……自分に頼まれたことだろ……ったく。

 

蒼「教えてやれよ。それで、お前自身の目で見極めてやれ」

 

そう俺が答えると、絵里は息を一つ吐き言う。

 

「……分かったわ」

 

穂「本当ですか!?」

 

「あなた達の活動は理解出来ないけど、人気があるのは間違いないようだし、引き受けましょう」

 

高坂や南は、絵里からダンスを教われることに対して喜びの表情を浮かべる。

 

絵「でも、やるからには私が許せる水準まで頑張って貰うわよ!いい!?」

 

穂「はい!! ありがとうございます!!」

 

希「んふっ♪ 星が動きだしたみたいや」

 

東條がそう呟いていたが、意味が分からんのでスルーする。

 

 

蒼燕sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里side

 

 

私は今、屋上で彼女たちμ’sのダンスを見ているところなのだけど……。

 

凛「どわわわわわっ!?」

 

嵐「チッ、おい凛!大丈夫か!?」

 

凛「いった~い!!」

 

ダンスを教えるに当たってどのくらい踊れるのか見る必要があったので、踊ってもらっている途中で1年生の星空さんって言ったかしら、オレンジ色のショートカットの子が転んでしまい、そこに茶髪の男子、寺獄君が駆け寄る。

 

何よこれ、全く基礎ができてないじゃない。

 

絵「全然ダメじゃない!よくこれでここまで来られたわね!!」

 

穂「すいません……」

 

凛「昨日はバッチリだったのにー!」

 

昨日はできたのに今日はできない。

 

そんなものは勝負の世界では通用しない。

 

そう蒼燕が言っていたわ。

 

私もその考えには賛同ね……。

 

絵「基礎ができてないからムラが出るのよ。足開いて?」

 

凛「こーお?」

 

星空さんが座って開脚の姿勢をとったのを確認した私は、星空さんの背中を押した。

 

凛「うぎっ!? 痛いにゃー!!!!」

 

星空さんは恐ろしいくらい身体が固かった。

 

それを見ていた地白君達マネージャーの男子たちが引いていたが、そんな事は関係ない。

 

絵「これで?少なくとも足を開いた状態で、お腹が床につくようにならないと」

 

凛「えぇー!?」

 

絵「柔軟性を上げる事は全てに繋がるわ。まずはこれを全員できるようにして。このままだと本番は、一か八かの勝負になるわよ!」

 

ニ「嫌な予感的中……」

 

それぞれがダンスを中断し、屋上の床に座って柔軟体操を始めた。

 

みんな比較的に身体が固い。

 

合格ラインを上回っているのは、

 

こ「ほっ」

 

穂「おー!! ことりちゃんすごーい!!」

 

こ「えへへへ~」

 

照れくさそうに笑っている南さんくらいね。

 

高坂さんは南さんを見て、感心していたがそんな場合ではない。

 

絵「感心してる場合じゃないわよ。みんな出来るの?ダンスで人を魅了したいんでしょ!? このくらい出来て当たり前!!」

 

人によっては意地悪を言ってるように聞こえるかもしれない。

 

でも、学校を救うということを知るためにはこのくらいでないと伝わらない。

 

絵「残り10分!!」

 

『は、はい…!!』

 

筋力トレーニングを挟み、片足平行立ちをやらせる。

 

絵「筋力トレーニングも、もう一回しっかりやり直した方がいいわ!! ラストもうワンセット!!」

 

最初こそよかったものの、今はみんなが苦しそうな表情を浮かべていて、みんなの足が笑っている。

 

この中で一番体力があると思われる園田さんでさえ苦しそうな顔をしている。

 

であれば……。

 

花「あっ!?」

 

言い方は悪いけど体力の無さそうな小泉さんがバランスを崩して倒れるのも時間の問題だった。

 

凛「かよちん!!」

 

火「花陽!?」

 

倒れた小泉さんに星空さんと顔に大きな傷のある男子、火神くんが駆け寄る。

 

凛「かよちん大丈夫!?」

 

火「しっかりしろ花陽!!」

 

花「だ、大丈夫…」

 

……もうこれで分かったはずよ。

 

絵「もういいわ。今日はここまで」

 

「「「えっ!?」」」

 

あなた達では人を惹き付けることはできない。

 

音ノ木坂は救えない。

 

火「おいテメェ…!!」

 

ニ「ちょ、何それ!?」

 

真「そんな言い方無いんじゃない!?」

 

絵「私は冷静に判断しただけよ。自分達の実力が少しは分かったでしょ。今度のオープンキャンパスには、学校の存続がかかっているの。もしできないって言うなら早めに言って……時間が勿体ないから」

 

それだけ言って私は戻ろうとする。

 

何故、蒼燕が彼女たちに期待してたのか見極めようとしたけど……時間の無駄みたいだったわね。

 

穂「待ってください!!」

 

ドアに手をかけたところで高坂さんが私を呼び止める。

 

恨み言を言われるのかと思い、後ろを振り返ると実際に歌って踊る高坂さん達メンバーが横に整列していた。

 

穂「ありがとうございました!!」

 

絵「……へっ?」

 

穂「明日もよろしくお願いします!!」

 

「「「「「「お願いします!」」」」」」

 

私に向かって一礼をした。

 

だけど、私はメンバーの人に何の言葉も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

私は自宅で考えていた。

 

まさかお礼を言われるなんて思ってもいなかった。

 

正直言ってかなり厳しめに指導したのに、自分達の実力を嫌でも理解させたのに、あんなに辛く当たったのに、それでも礼を言われた。

 

そのせいで余計どうしたらいいのか分からなくなった。

 

そんな時、妹の部屋から歌が聞こえたので行ってみると、亜里沙がイヤホンを耳に挿して鼻唄を歌っていた。

 

「亜里沙」

 

「お姉ちゃん!」

 

「貸して」

 

私は亜里沙からイヤホンを借りて、耳に挿した。

 

確かこの曲は『これからのSomeday』だったかしら…?

 

音楽を聞いていると、亜里沙が口を開いた。

 

「私ね、μ'sのライブ見てると、胸がカーッて熱くなるの!一生懸命で、目一杯楽しそうで!!」

 

「……全然なってないわ」

 

私は亜里沙の言葉を即座に否定する。

 

「あ………お姉ちゃんに比べればそうだけど……でもすごく元気がもらえるんだ!!」

 

亜里沙は笑顔でそう言った。

 

でも、私の目から見れば、まだまだだと思った。

 

 

 

 




※「μ'sミュージックスタート!#3」の、穂乃果が海未と対話している部分の台詞を大幅に変えたので、よければどうぞ。


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やりたいことは#3






私は今日も屋上へ行く。

 

でもなかなかドアを開ける事が出来なかった…。

 

何故だか分からないが、日が経つにつれてこのドアを開けるのに躊躇いを感じてしまう。

 

真「覗き見ですか?」

 

後ろから西木野さんと氷川くんがやって来た。

 

絵「あっ……いえ……」

 

凛「あぁーー!!」

 

私が躊躇っていると、星空さんたちにも見つかってしまった。

 

凛「そんなところにいないで早く行っくにゃー!!」

 

星空さんが有無を言わさずに私の背中を押した。

 

凛「にゃんにゃにゃんにゃにゃーん♪」

 

絵「ちょっと!!」

 

押し込まれるように入った屋上では、メンバーが歓談しながらウォーミングアップをしていた。

 

竜「なンだ生徒会長か…」

 

穂「おはようございます!」

 

こ「まずは柔軟ですよね?」

 

天青くんが私に気づき、高坂さんが私に挨拶をし、南さんが練習内容の確認を取ろうと私に訊いてきた。

 

絵「……辛くないの?」

 

「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

私が溢した呟きに全員が反応した。

 

絵「昨日あんなにやって、今日また同じ事をするのよ?第一、上手くなるかどうかも分からないのに……」

 

穂「やりたいからです!!」

 

高坂さんは間髪入れずそう答えた。

 

絵「っ……」

 

答えた彼女の目は一点の曇りもなく、澄んでいた。

 

穂「確かに、練習は凄くキツいです。竜ちゃんがマッサージしてくれても身体中痛いです!! でも、廃校を何とか阻止したいと思う気持ちは、生徒会長にも負けません!! だから今日も、よろしくお願いします!!」

 

「「「「「「お願いします!!」」」」」」

 

高坂さんが言うと、他のメンバーも私に頼んでくる。

 

亜『私ね、μ'sのライブを見てると胸がカーッて熱くなるの!一生懸命で、目一杯楽しそうで!』

 

亜『お姉ちゃんに比べればそうだけど……でも、すごく元気がもらえるんだ!!』

 

あぁ、亜里沙が言っていた意味がやっと分かった。

 

何故彼女たちがここまで人気があるのか…。

 

何故、蒼燕が期待しているのか…。

 

その真っ直ぐな気持ちに私は何も言えず、屋上を黙って出た。

 

穂「生徒会長!?」

 

 

絵里sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

屋上を後にした絵里は早歩きで廊下を歩いていた。

 

何故こんなにも早歩きなのか自分でも分からない。

 

いや、分かってはいても分からないフリをしているのかもしれない。

 

とにかく、先程μ'sのリーダーである少女の言葉を聞いてから胸がずっとざわついている。

 

そんな時だった。

 

絵里の氷のような心にスッと聞きなれた親友の声が染みてきたのは。

 

希「ウチな……」

 

絵「っ、希……」

 

希「エリチと友達になって、生徒会やってきて、ずーっと思ってた事があるんや。エリチは、本当は何がしたいんやろって」

 

絵「え…………」

 

希「一緒にいると、蒼燕君程じゃないにしろ、分かるんよ。エリチが頑張るのは、いつも誰かのためばっかりで、だから……いつも何かを我慢してるようで……全然自分の事は考えてなくて……!」

 

絵「っ……!!」

 

ここしかチャンスはない。

 

今ここで彼女を救わなければ今までの全てがダメになる。

 

だからここで一気に畳みかける必要がある。

 

希「学校を存続させようって言うのも、生徒会長としての義務感やろ!? だから理事長は、エリチの事、認めなかったんと違う!?」

 

何故自分の提案がことごとく断られたのか。

 

何故生徒会が動くのを認められなかったのか。

 

何故自分達生徒会ではなく、μ'sの活動は認められるのか。

 

それがずっと引っかかっていた。

 

もしかしたらμ'sに理事長の娘がいるから、ただの身内贔屓なのかと思っていた事もあった。

 

しかし蓋を開けてみれば実際は単純だった。

 

片や義務感で動こうとし、片ややりたいという単純な気持ちで動いていた。

 

そんな些細な違いに過ぎなかった。

 

希「エリチの、エリチの本当にやりたいことは?」

 

2人の間に沈黙が生まれた。

 

絵里は戸惑っていた。

 

ここで言うべきか否か。

 

しかし言った所で何になる?

 

今更何が変わる?

 

そんなマイナス思考はメビウスの輪のように延々と繰り返され、更に絵里を追い詰めていく。

 

やがて沈黙を破ったのは、絵里だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なによ………なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!」

 

その言葉には、明確な否定の意が込められていた。

 

絵「私だって!好きなことだけやって、それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよ!自分が不器用なのはわかってる。でも!今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う?」

 

絵里は涙を流していた。

 

涙で震えながら、何かを諦めたかのような笑みで言った。

 

それは、希の心を抉るのには十分すぎるほどだった。

 

希「あっ!!」

 

走り去って行く絵里を追いかけて行く事すら出来なかった。

 

気付けば、希は俯きながら体を小刻みに震わせていた。

 

彼女は思う。

 

自分は一体何のためにここまでしたのか?

 

穂乃果達に密かに助言して、影から支え、色々と人気が出たり上達していくμ'sに目くじら立てるようにも仕向けた。

 

全ては親友である絵里のために。

 

だがその努力は、親友の涙でいとも容易く崩れた。

 

助けたかった。

 

親友の幼馴染みをしている少年のように。

 

自分の手で大切な親友を救いたかった。

 

手を差し伸べてあげたかった。

 

親友をちゃんと理解している少年のように。

 

なのに、自分自身の手で親友を泣かせてしまった。

 

自分は彼のようにはなれない。

 

その真実が、親友を追いかけようとする足を動けなくしてしまっていた。

 

もう、どうする事もできないのか。

 

それを考えた瞬間。

 

俯いていた少女から落ちたのは、涙だった。

 

そしてその涙に呼ばれるように、背後から2つの足音がやって来る。

 

蒼「東條…」

 

最初に声をかけたのは、絵里の幼馴染みで、希が密かに尊敬していた少年。

 

茜「よく頑張ったな?」

 

労うように声をかけたのは、希にとって最初の友人にして、東條 希という少女をよく理解している少年。

 

希は彼らの方に振り向き、すがるように2人の名を呼ぶ。

 

「雨崎くん。茜くん……」

 

名を呼んだ瞬間、堰を切ったように涙はポロポロと流れていく。

 

希「ごめんね……。ウチじゃ、エリチを説得出来なかった。逆に……っ」

 

話すその声は笑っているかにも聞こえるが、ずっと震えていた。

 

必死に泣くのを堪えているかのように。

 

希「ウチじゃ無理だったのかな……やっぱりウチじゃ…」

 

その先を言おうとした希の肩に蒼燕は手を置き、無理矢理止める。

 

お前のやったことは無駄じゃないと言わんばかりに。

 

蒼「そんな事はない。少なくともお前は絵里の心の鎖を引きちぎって、扉をこじ開けた。だから、後は俺に任せてくれないか?」

 

そう訊くと希は頷く。

 

「うん……ウチの代わりに、エリチを助けて……!!」

 

それを見て、聞き届けた蒼燕は息を1つ吐く。

 

「じゃあ行ってくるか。茜」

 

「分かってる。希、俺達は俺達のやるべき事をしよう」

 

「やるべき事?」

 

首を傾げる希に茜はにこやかに笑う。

 

実はこの2人の少年、2人の少女の口論を隠れて聞いており、その中で絵里の本音をしかと聞いた後、2人で軽く作戦を立てていたのだ。

 

だからこそ迷うことなく、自分達のやるべき行動を取れる。

 

茜「ああ。高坂たちを絢瀬の元に連れてくる。それが俺達のやるべき事。じゃあ雨崎……それまでに」

 

蒼「分かってる」

 

茜の言葉に蒼燕は示し合わせるように頷く。

 

そして蒼燕は絵里の元へ、茜と希は竜司たちの元に行った。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

「おっ、いたいた」

 

さっそく空き教室で絵里を見つけ、近づく。

 

絵里は席に座り、頬杖をつきながら外を見ている。

 

「なーに黄昏てんだ?」

 

「蒼燕……」

 

俺が話しかけると、絵里はこちらを振り向く。

 

「何故蒼燕があの子達に期待してたのか、よく分かったわ」

 

「ほー、というと?」

 

「あの子達は好きでスクールアイドルをやっている…。だからこそ、あんなに人気があるんだって分かったわ…。同時に……蒼燕が期待している事にも」

 

「そうか…」

 

絵里はそう言うと俯く。

 

「なあ、絵里。何で理事長が高坂たちの活動は許し、絵里の活動は許してくれなかったか、今のお前なら分かるだろ?」

 

高坂たちの心に触れ、東條の言葉に気づかされた、今の絵里なら分かるはずだ。

 

そう思い俺は訊ねる。

 

「私が……生徒会長としての義務感でやってたから?」

 

「そうだ。ならもう一度聞くぞ…絵里。今のお前は、自分の心に正直か?そして、今のお前は何がしたい?」

 

俺は二度聞いた質問に付け加え、新たに今の絵里が何をしたいかを訊く。

 

すると絵里は途切れながらも答えた。

 

「私は……今の私は……スクールアイドルをやりたい。あの子達と一緒にアイドルを………やりたい」

 

「なら」

 

「でも!」

 

俺がやればと言おうとしたら、絵里が遮る。

 

「私、生徒会長なのよ?学校の責任は……」

 

「んなもん、理事長にあると思うぜ?生徒会長はあくまで生徒の代表。だから絵里まで責任を感じることはない」

 

「生徒会と部活動、両立できるかしら……?」

 

「そのために俺や茜、東條がいるんだろうが…」

 

「今さらアイドルやりたい、仲間に入れてくださいって言ったら、あの子たち怒るかしら……?」

 

「あいつらはそんなに心は狭くない。だってほら…」

 

そう言って、教室の入口を指さす。

 

そこには高坂たちがいた。

 

高坂たちμ’sのメンバーはこっちにやって来る。

 

竜司たちマネージャー組は、教室の外で待機。

 

空気を読んでくれたのだろう。

 

高坂が絵里の前に来て、手を差し出す。

 

もう大丈夫だな。

 

俺はそう思い、教室を出ていった。

 

 

 



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やりたいことは#4






絵里side

 

 

蒼燕が指さした方には、高坂さんたちμ’sのメンバーがいた。

 

そして高坂さんが私に手を差し出し、

 

「生徒会長。いえ、絵里先輩!お願いがあります。μ'sに入ってください!!」

 

そう言ってきた。

 

それに対し私は、

 

絵「あの………今までごめんなさい!! あなたたちにキツイ態度ばかり取ってきて…。こんな私でよければ、入れてくれないかしら?」

 

席を立ち、彼女たちに謝る。

 

穂「はい!! こちらこそよろしくお願いします!!」

 

それに対し高坂さんはそう言って、許してくれた。

 

こ「これで8人♪」

 

希「いや………9人や。ウチを入れて」

 

南さんが喜ぶが、希が自分を入れて数え直す。

 

穂「えっ?希先輩が?」

 

希「占いで出てたんや。このグループは9人になった時、未来が開けるって。だから付けたん。9人の歌の女神……μ’sって…」

 

「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」

 

希の言葉にみんなが驚く。

 

穂「じ、じゃあ、あの名前付けてくれたのって、希先輩だったんですか!?」

 

高坂さんの問いに、希は「ウフフ」と笑う。

 

絵「希……全く、呆れるわ…」

 

そう言っても、私の顔は自分でも分かるくらい笑っていた。

 

そして私はみんなの横を通りすぎる。

 

海「どこへ…?」

 

園田さんの質問に私は笑顔で答える。

 

絵「決まってるでしょ!練習よ!」

 

それに高坂さんたちも笑顔で喜んだ。

 

「「「「「「「「やったぁー!!」」」」」」」」

 

地白くんや天青くんたちマネージャー組のみんなも、静かに笑っていた。

 

そんな時、遠くの方でズドン!! という何かが落ちる音がした。

 

希たちは慌てて外を見る。

 

私も窓際に駆け寄ってみると、そこには昨日の金属の怪物が立っていた。

 

絵「そんな!?………あの怪物はあの時に青いウルトラマンが倒したのに!?」

 

私は驚いていた。

 

隣の園田さんも同じ表情だ。

 

 

 

 

「ギュウイィィィィィィィン!!」

 

 

 

怪物は、金属が擦り合うような鳴き声をあげる。

 

希「金属生命体……アルギュロス…」

 

希が忌々しそうに言う。

 

そうしてる間にも、金属の怪物……アルギュロスは、右腕を銃のような形に変えて、私たちの方に向かって撃ってきた。

 

絵「みんな逃げて!!」

 

私はそう叫んだが、もうアルギュロスの撃ってきた光弾はすぐそこまで来ていた…。

 

あっ……もう、ダメ…。

 

私がそう諦めた時、突然青い光が現れ、光弾を弾いた。

 

 

絵里sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

俺は高坂たちが絵里のところへ来たのを確認すると、黙って教室を出るが、実は入口の陰で立ち聞きしていた。

 

結果は、絵里が加入するということで万々歳のはずだったんだが…。

 

突然現れた、この前の金属の怪物がやって来たことでその雰囲気がブチ壊される。

 

俺は隣の空き教室に入り、金属の怪物アルギュロスを見る。

 

蒼「行くぞ…アグル…」

 

俺は右手首に着けたブレスレット型の変身アイテム『アグレイター』を展開する。

 

俺はそのまま腕を立てると、アグレイターが回転して俺を青い光で包み、外へ出る。

 

 

蒼燕sideoff

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

(BGM:アグル降臨)

 

絵里たちの前に現れた青い光は徐々に消え、代わりにそこから現れたのは、前にティガを救い、絵里たちを助けた青い巨人『ウルトラマンアグル』がいた。

 

絵「あの時の………ウルトラマン…」

 

絵里や他のメンバーはアグルの神々しさに呆然となっていた。

 

だが穂乃果だけは大きく喜んでいた。

 

「アグルだ……アグルが来てくれた!! しかもV2だよ!? 格好いい!」

 

竜「ガイアが現れたから、もしかしてとは思っていたが……」

 

竜司は表情は変わらずダルそうだが、内心は凄く驚いている。

 

アグルは片膝立ちで両腕を立てた、お馴染みのポーズをしていた。

 

そしてアグルは顔を穂乃果たちの方へ向ける。

 

穂乃果たちを……正確には絵里を見ていた。

 

絵里は首を傾げていたが……。

 

その後、ゆっくりと立ち上がり、アルギュロスの方へ体を向けて、右腕を真っ直ぐアルギュロスの方へ向ける。

 

そして青い光弾『アグルスラッシュ』を放つ。

 

「ギュウイィィィィィン!?」

 

アグルスラッシュはアルギュロスに当たり吹き飛ばす。

 

それを見たアグルは手でかかってこいという挑発をする。

 

それにアルギュロスはまんまと乗り、右腕を強く振るった後、アグルに向かって駆け出す。

 

アグルも同じく駆け出す。

 

(BGM:アグルの戦い)

 

アグルとアルギュロスは互いに接近し、素早い攻撃を繰り出す。

 

アルギュロスの左パンチを、アグルが左腕で弾き、アグルの右回し蹴りを、アルギュロスはしゃがんで避ける。

 

アルギュロスの右蹴りに、アグルも右蹴りで合わせる。

 

アルギュロスは今度は左の蹴りを繰り出すが、アグルも左蹴りで防ぐ。

 

アグルは右の裏拳を繰り出すが、

 

「ディア!!」

 

それをアルギュロスはしゃがんで避ける。

 

アグルは続いて右蹴り、

 

「オワッ!!」

 

そこからの左蹴り、

 

「オワッ!!」

 

最後に右裏拳を繰り出すが、

 

「ディア!!」

 

アルギュロスはそれら全てを腕を使って防ぐ。

 

そしてそのまま腕を互いに押し合い膠着状態に入るが、突然アルギュロスに変化が起きる。

 

アルギュロスの体が目の色が赤意外、アグルV2そっくりに化けたのだ。

 

そして口をニヤリと笑わせる。

 

「フッフッフッフッ…」

 

その現象にアグルは驚き、その隙を突かれ、右パンチを顔に食らう。

 

「オワァァァ!!」

 

絵里たちもアルギュロスの変化に驚く。

 

絵「嘘でしょ!?」

 

花「ソックリニバケチャッタノォ!?」

 

希「あれがアルギュロスの厄介な能力なんや…」

 

穂「希先輩…凄く詳しいですね…」

 

希「ウチ、ウルトラファンなんよ♪」

 

ニ「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!! アグルは勝てるの!?」

 

ニコが焦り気味に訊くと虎亜が、

 

「大丈夫だ。アグルなら勝てる」

 

そう言って、ニコを落ち着かせる。

 

一方、アグルの方は防戦一方だった。

 

アルギュロスの右、左のパンチに交互に合わせて防ぐアグルだが、左パンチを腹に食らう。

 

「オワァァァ!!」

 

さらにアルギュロスは右蹴りを決め、左蹴りでアグルを吹き飛ばす。

 

「ウオワァァァァァ!!」

 

背中から倒れるアグル。

 

そこへアルギュロスが、アグルの技『リキデイター』を放つ。

 

立ち上がったアグルに次々と当たり、爆発する。

 

「ウオワァァァァ!!」

 

絵「アグルゥゥ!?」

 

思わず絵里は窓から身を乗り出し叫ぶ。

 

「ギュウイィィィィィン!!」

 

アルギュロスはガッツポーズをしながら雄叫びを上げるが、すぐにその顔が驚愕に変わる。

 

煙が晴れたそこには、無傷で悠々と立っているアグルがいたから。

 

しかも手でクイクイと挑発までしてる。

 

これにはアルギュロスも悔しがり、すぐに手を頭のところでクロスさせて、右腕は上に、左腕は下に拡げる。

 

アグルも同じく頭のクリスタル…ブライトスポットで両腕をクロスさせて、右腕は上に、左腕は下に拡げる。

 

「オワァァァァ………ディアァァァァ!!」

 

「ギュウイィィィィィン!!」

 

そして、両者同時に頭からの必殺技『フォトンクラッシャー』を撃つ。

 

互いのフォトンクラッシャーが激突した瞬間、物凄い勢いでアグルのフォトンクラッシャーがアルギュロスのフォトンクラッシャーを押し返し、アルギュロスに直撃。

 

木っ端微塵に爆発させる。

 

「「「「「やったぁー!!」」」」」

 

それを見た穂乃果たちは喜び、アグルも胸の水晶『ライフゲージ』を光らせ消えた。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

アルギュロスの一件から数日。

 

俺と茜は、絵里と東條に半ば強引にマネージャーにさせられ、μ’sの練習に付き合った。

 

そして今はオープンキャンパス当日。

 

アイドルの衣装に着替え、『9人』になったμ’sがグラウンドに立てたステージの上にいる。

 

穂「皆さん、こんにちは!私たちは音ノ木坂学院のスクールアイドル…μ’sです!! 私たちは、この音ノ木坂学院が大好きです!この学校だから、このメンバーと出会い、この9人が揃ったんだと思います!そして、私たちを支えてくれる人が同じく9人も揃いました!これからやる曲は、私たちが9人……いえ、18人になって初めて出来た曲です!!」

 

高坂が、それなりに来ている来賓に説明している。

 

俺たちマネージャーは隅の方で見守る。

 

穂「私達の、スタートの曲です!!」

 

そう高坂が締め括ると、メンバー全員で曲名を言う。

 

『聞いてください。「僕らのLIVE 君とのLIFE」!!』

 

 

 

 

(♪:僕らのLIVE 君とのLIFE)

 

 

 

 

絵里たちが歌い、踊っている間、黙って聞き続ける。

 

そしてライブが終わった後には来賓から盛大な拍手を貰った。

 

結果は火を見るより明らかだ。

 

成功を通り越し、大成功だ。

 

絵里たちは肩で息をしているが、その顔は全員満ち足りた表情だ。

 

蒼「よかったな。絵里」

 

俺は静かに呟く。

 

その時、アグレイターが一瞬だけ光ったような気がした。

 

 

 



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ワンダーゾーン#1



ここをリメイクするに当たっての注意事項です。

5パートに分けることになるかもです。



竜司side

 

 

翌日の放課後だった。

 

オープンキャンパスが終わった翌週の月曜日。

 

退屈な授業が終わり、今日はμ'sの練習があるからそのまま部室へ行こうとした時、

 

穂「竜ちゃーん!!」

 

竜「あァ?ぐっ……何しやがンだ穂乃果ァ」

 

後ろから穂乃果が飛びついてきた。

 

痛いし重いしそして柔らかい。

 

ヤベェよヤベェよ!!

 

興奮するじゃねェかァ!!

 

穂「まあまあ!海未ちゃんとことりちゃん達とも合流して、部室に行ってからのお楽しみだよー!」

 

竜「だったら退きやがれ」

 

後、周りの視線が痛い。

 

何だか「またあの2人か~」とか「いつもの光景だね~」とか聞こえるのは気のせいだろうか。

 

穂「あっ!2人共いたっ」

 

俺の文句を気にしない穂乃果は、海未とことりを見つけたらしく、俺から離れて2人の元へ駆けていく。

 

タイミングが良いのか、側には盾や朱雀もいた。

 

穂「ことりちゃーん!海未ちゃーん!」

 

穂乃果は2人の肩を抱きながらくっつく。

 

穂「すっごいよー!ビッグニュース!!」

 

いいから早くそのビッグニュースってのを言えや。

 

大体の予想はできてるけどよォ。

 

竜「いいからとっとと部室に向かうぞ」

 

穂「うわわわ、分かったから押さないでよ竜ちゃ~ん!」

 

穂乃果の背中を押しながら、俺は残りの四人と共に部室に向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

花「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからとなったそうです!」

 

部室に花陽の明るい声が響き渡る。

 

海「それって……!」

 

こ「見に来てくれた子達が、興味を持ってくれたって事だよね!」

 

穂「うん!……でも、それだけじゃないんだよ~!」

 

盾「そうなの?」

 

廃校延期は予想してたけど、他に何かあるとは思ってなかった。

 

何やら穂乃果がニマニマしながら部室の奥の方の扉へ歩いて行く。

 

穂「じゃじゃーん!部室が広くなりましたー!!」

 

竜「ほォー……ホントに広いな…」

 

俺はその広さに感心する。

 

雨の日とかの練習には丁度いいんじゃないか?

 

俺がそンな事を考えていると、

 

絵「安心してる場合じゃ無いわよ」

 

蒼「そうだぜ」

 

絢瀬先輩と蒼燕がやって来た。

 

海「絵里先輩、蒼燕先輩…」

 

絵「生徒がたくさん入ってこない限り、廃校の可能性はまだあるんだから、頑張らないと」

 

蒼「確かにオープンキャンパスは上手く成功したが、それはあくまで廃校を延期するという意味でだ。生徒が入って来なければ廃校の確率はまた上がる事になるぞ?」

 

言われてみればそうだな。

 

ちなみに、絢瀬先輩と東條先輩の二人がμ'sに入った時に、二人から役職呼びをやめてほしいと言われ、この呼び方に変えた。

 

そう思っていると、突然海未が泣き始めた。

 

一体どうした?

 

海「……ひっく。ぐすっ」

 

盾「海未、どうしたの?」

 

盾が若干慌てながら訊ねる。

 

すると海未は絢瀬先輩と蒼燕に顔を近づけながら言う。

 

「嬉しいです!まともな事を言ってくれる人達がやっと入ってくれました!!」

 

絵「えぇ!?」

 

蒼「そんなに酷かったのか?」

 

あー、絢瀬先輩どうしていいか分からないぐらい戸惑ってるし、蒼燕は引いていた。

 

悪かったな……まともじゃなくて…。

 

これには星空や嵐助も同じ意見みたいで愚痴を溢す。

 

凛「それじゃあ凛達まともじゃないみたいだけどー」

 

嵐「園田先輩から見れば、俺たちはまともじゃないんだろ……」

 

まァ、グループ全体で見ても絢瀬先輩と蒼燕がまともなのは明白だわな。

 

希「ほな、練習始めようか」

 

東條先輩がそう言った時、

 

こ「あ、ごめんなさい。私ちょっと……。今日はこれで!」

 

ことりはそれだけ言うと帰ってしまった。

 

穂「どうしたんだろ?ことりちゃん、最近早く帰るよねー?」

 

海「ええ、オープンキャンパスも終わって、今までずっと練習ばかりしていましたから。何か用事が溜まっていたりしてたのかもしれませんね」

 

すると朱雀が不機嫌そうに呟いた。

 

「気に入らない…」

 

「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

穂乃果たちはこれに首を傾げる。

 

朱「ことりが僕に隠し事をしているのが、気に入らない」

 

出たよ……朱雀のことりにのみ発揮される過保護属性。

 

絵「そんな……ことりにだって、秘密の1つや2つはあるでしょ?」

 

絢瀬先輩がそう言うと朱雀は、キッと睨んで、

 

「あなたには分からないよ…」

 

突き放すように言う。

 

絢瀬先輩はムッとするが、それを蒼燕がフォローする。

 

「朱雀はああ見えて独占欲が強いんだ」

 

海未も絢瀬先輩に言う。

 

「特にことりに関しては過保護って言えるくらいですから……」

 

そんな時に小泉が爆弾発言をする。

 

「ことり先輩…彼氏でも出来たんじゃ…」

 

その発言に朱雀は、人を射殺すような目で小泉を睨みながら言う。

 

「縁起でも無いこと言わないで。そんなヤツがいたら全力で咬み殺せる自信があるね」

 

花「ひっ!? ご、ごめんなさい!!」

 

睨まれた小泉はイクスの背中に隠れる。

 

あれはまァ、仕方ないわな。

 

気弱な小泉からしたら怖いわな。

 

イクスはそんな小泉の頭を「よしよし」と撫でながら、

 

「おい朱雀。花陽を泣かせてんじゃねぇぞ……かっ消すぞ?」

 

これまた射殺すような目で朱雀を睨みながら、ドスの効いた声で言う。

 

朱「やれるものならやってみなよ…」

 

朱雀も朱雀でトンファーを出して殺る気満々の様子。

 

たちまちその場は緊迫した空気になる。

 

穂乃果と海未、星空と小泉は怯え、絢瀬先輩と東條先輩はガタガタ震えながら冷や汗をかいている。

 

俺と盾と嵐助と蒼燕は、とばっちりを受けたくないのでスルーしながら見守る。

 

さっき来たばかりの西木野とニコ先輩、氷麗と虎亜は本能的にドアを閉めて外へ出る。

 

待てや!!

 

ここでウルトラマンがテレパシーで俺に言う。

 

『竜司!彼らを止めるんだ!さっきからエースも朱雀にやめるよう言ってるんだが、聞かないみたいなんだ』

 

やだよめんどくせェ…。

 

それに下手に関われば死ぬって。

 

『何を言ってるんだ!彼らは君の友人で、同じウルトラマンなんだぞ!第一、怪獣と戦っているぐらいなのにこの程度で怯えてどうする!?』

 

怪獣と一緒にするな!!

 

あれより怖いンだぞ!!

 

俺が断固拒否していると、今まで静観していた茜が止めに入る。

 

「お前たち、そろそろやめろ。こんな所でムダな争いはするな」

 

しかし朱雀とイクスは聞かず、逆に茜に矛先を向ける。

 

朱「緋村茜は黙っててくれない?咬み殺すよ?」

 

火「俺は今機嫌が悪いんだ。関係無いヤツはスッこんでろ!!」

 

二人がそう言ったその瞬間、茜の雰囲気が変わる。

 

茜「これ以上続けるようなら、『僕』もそれ相応の態度を取らなければならない……」

 

そう言った茜の手には、いつの間にか鋏が握られていた。

 

雰囲気もいつもの穏やかな茜から一変して、無慈悲で冷酷なオーラが感じ取れる。

 

それを真正面から向けられたイクスと朱雀は、一気に殺気が引っ込む。

 

その顔からは冷や汗が垂れていた。

 

そういや初対面の時も、こンな茜を見たことがあったな。

 

一体どっちが本当の茜なンだ?

 

希「茜……くん?」

 

ふと、恐る恐る東條先輩が呟く。

 

多分東條先輩もこンな茜を見るのは初めてなのだろう。

 

茜はすぐに雰囲気をいつもの穏やかな雰囲気に戻す。

 

茜「さあ…早く練習するよ」

 

その一言で、俺たちマネージャー組は先に屋上に行き、穂乃果たちは練習着に着替えて来た。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

穂「ふわぁ~あ、50位!? なにこれ!? 凄い!!」

 

屋上での練習の休憩中、穂乃果がノーパソの画面を見ながら興奮したように叫ぶ。

 

どうやらランキングのランクが上がったようだ。

 

花「夢みたいです!!」

 

穂「20位に大分近づきました!!」

 

絵「凄いわね」

 

海「絵里先輩が加わったことで、女性ファンもついたみたいです!」

 

絵「えっ?」

 

穂「確かに…」

 

穂乃果は絢瀬先輩の頭から、つま先までを見ながらうっとりする。

 

「背も高いし、足も長いし、美人だし、何より大人っぽい!流石三年生!!」

 

絵「やめてよ…///」

 

穂乃果に褒められ、照れる絢瀬先輩。

 

にしても女性ファンもついたのか。

 

まあ絢瀬先輩くらいの容姿なら男子だけじゃなく女子のファンもつくか。

 

世に言う、同性からも憧れの的として見られる理想的な女の子なのだろう。

 

蒼「そりゃ、絵里くらいの美人になると女の子のファンも増えるだろ?」

 

絵「ちょ、蒼燕まで何言ってるのよ……」

 

蒼「事実だろ?実際お前は“超絶”綺麗で可愛いんだ。スタイルも抜群だしな」

 

絵「も、もう!////」

 

公然と俺達の前でいちゃつく2人。

 

多分爆発しろと思ったのは俺だけじゃない筈。

 

不意に、俺と穂乃果の視線はニコ先輩に向く。

 

この人はまァ……アレだな。

 

ニ「ん?………何?」

 

穂「えぇ……何でも」

 

ニ「フン!!」

 

コメントしづらいわな…。

 

虎亜は口を押さえて笑ってるし…。

 

希「でも、おっちょこちょいな所もあるんよ♪この前なんて玩具のチョコレートを本物と思って食べそうになったり…」

 

何それ、その瞬間チョー見たい…。

 

絵「希!」

 

絢瀬先輩が止めるが、蒼燕がスマホをこちらに向けて見せてくる。

 

蒼「これが丁度録れたその瞬間」

 

絵「蒼燕やめてーー!!」

 

しかし絢瀬先輩が蒼燕からスマホを取ったので、見ることは叶わなかった。

 

蒼燕は多分アレだな……絢瀬先輩の恥ずかしがる顔が見たいだけなンだろうな。

 

さっきの称賛もそれだろう。

 

穂「でも、ホントに綺麗!よし、ダイエットだ!!」

 

凛「聞き飽きたにゃ~」

 

穂乃果のダイエット宣言に星空がげんなりしながら言う。

 

確かに何かと言ってるからな。

 

俺も正直うんざりだ。

 

一時期、ダイエットに協力してやった時があったが、物の見事にすぐに辞めたからな…。

 

あれには殺意が沸いてキレそうになった。

 

そこへ校舎の中からヒフミトリオが話かけてくる。

 

「オーイ、穂乃果ー!」

 

穂「ん?」

 

穂乃果と星空と海未が、何事かと思い柵越しに教室を見る。

 

「頑張ってね~!」

 

「ファイト~!」

 

「μ's応援してるよ~!」

 

見るとヒフミトリオが、教室から手を振りながら応援の言葉をくれていた。

 

あの三人…見るの久し振りだな…。

 

穂乃果は手を振りながら「ありがとー!!」と返す。

 

絵「知り合い?」

 

穂「はい!! ファーストライブの時から、応援してくれてるんです」

 

ホントにあいつらには助けられた。

 

ファーストライブの時だってそうだ。

 

本当にあいつらには感謝しないといけない。

 

いつも裏方を手伝ってくれてるからな。

 

真「でも、ここからが大変よ」

 

西木野が突然そんな事を言うので、全員西木野の方に向く。

 

真「上に行けば行くほど、ファンも沢山いる」

 

穂「そうだよね~……20位か~…」

 

茜「それならば、何か思いきった方法を取るのが一番だな」

 

思い切った手。

 

それが何なのか思案する。

 

パフォーマンス?

 

場所か?

 

どれも必要そうだな。

 

印象に残って、且つファンも増やせそうなアイデア。

 

それを思案していると、唐突にニコ先輩が言う。

 

「その前に、しなきゃいけない事があるんじゃない…?」

 

「「「「「「ん?」」」」」」

 

ニコ先輩の言葉に全員首を傾げる。

 

しなきゃいけない事…?

 

 

 

 



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ワンダーゾーン#2



今回は地文以外にもキャラの台詞を変えたり、追加したりしてます。



現在秋葉原の通りに、サングラスにマスク、この暑い中でコートとマフラーをした集団がいる。

 

実はこれ穂乃果たちだ。

 

ニコ先輩のしなきゃいけない事とは街中での変装であった…。

 

だがこれでは逆に目立ちまくる。

 

正直あまり側にいたくないし、何だか泣けてくる。

 

すると虎亜が手を叩き、穂乃果たちを向かせる。

 

虎「はい注目!ニコの考えた変装が『暑い』『逆に目立つ』『バカバカしい』の一つでも思ったヤツは遠慮無く脱いでいいからな!」

 

虎亜の言葉で、ニコ先輩以外全員すぐに脱いだ。

 

躊躇ねェな。

 

まァ、俺が逆の立場でも即脱ぐがな。

 

ニ「ちょっと!? 何で脱ぐのよ!?」

 

ニコ先輩が抗議するが、虎亜がニコ先輩に近づき言う。

 

「いいかニコ。この変装では一般人に紛れる所か、逆に目立つ。最悪、不審者として警察に通報されても可笑しくないレベルだ」

 

「ぐっ…!」

 

虎亜の説明に詰まるニコ先輩。

 

ぐぅの音も出ないとはこの事だな。

 

虎「それに変装するなら、髪型を変えるとか、ウィッグを被るとか、そういうちょっとの小細工で意外とバレないもんなんだぜ」

 

ニ「…………」

 

虎亜の懇切丁寧なアドバイスで、ニコ先輩も不審者コーデを辞める。

 

そンな時だ。

 

凛「凄いにゃぁぁ!!」

 

遠くの方から星空の声がした。

 

いつの間にか勝手に移動して店の中に行ってたみたいだ。

 

ホント猫みたく自由だな。

 

周りを見てみれば小泉とイクスと嵐助もいないし、おそらく星空と一緒にいるとは思うが。

 

とりあえずイクス達の方へと向かうと、そこにあったのは色々なアイドルのグッズだった。

 

花「うわああぁぁぁぁぁぁ!! …うわあああふわぁぁぁぁ!!」

 

小泉があまりの喜びように凄い声を出している。

 

凛「ふわぁぁぁぁ!! かよちん!これA-RISEの!?」

 

A-RISEのグッズか。

 

つーか、よくよく見れば周りのグッズの全てがテレビに出ているアイドルとかのグッズではなく、スクールアイドル限定のグッズだという事に気付いた。

 

差し詰、スクールアイドルの専門店ってところかァ?

 

穂「何ここ?」

 

そういうことに疎い穂乃果が疑問を発すると、ニコ先輩が食い付き気味に説明する。

 

「近くに住んでるのに知らないの!? 最近オープンした、スクールアイドルの専門ショップよ!」

 

なァンでそンな物が出来てンだよ。

 

絵「こんなお店が……」

 

希「ラブライブが開催されるくらいやしね」

 

蒼「つくづくすげぇな、スクールアイドルってのは」

 

スクールアイドルの甲子園とも呼ばれるラブライブがあるからこそ、こういう専門の店が出来たのかもなァ。

 

ニ「とは言え、まだ秋葉に数軒あるくらいだけど」

 

虎「えっ?ここだけじゃねぇの?」

 

ニ「私、虎亜には前に説明した筈なんだけど?」

 

虎「そうだっけ?」

 

軽く記憶喪失してる虎亜にニコ先輩はジト目を向ける。

 

早くも耄碌してンのかァ、天才科学者さんよォ。

 

しっかし、見るからにA-RISEだらけじゃねェか。

 

何処もかしこもA-RISE、A-RISE、A-RISE。

 

けどよォ、これなら穂乃果達のもあってもおかしくねェよな?

 

なンせ50位にいるくらいなンだからなァ。

 

凛「ねぇ、みてみて~!この缶バッジの子可愛いよ~!! まるでかよちん!そっくりだにゃ~!」

 

急に星空がこれ見よがしに缶バッジを見せてきた。

 

そこにはある人物がプリントされていた。

 

嵐「つーかそれ……」

 

火「花陽だよ…」

 

嵐助とイクスが指を指しながら言う。

 

確かにそこに写っているのは小泉みたいではなく、小泉そのものだった。

 

凛「ええぇ!?」

 

いやお前幼馴染みなンだろ?

 

何故気づかない…?

 

で、そのコーナーを見るとやっぱりあった。

 

竜「ここμ’sのコーナーみたいだな…」

 

俺がそう言うと、全員「ええぇぇぇ!?」と驚く。

 

穂「嘘っ!? う、うううう海未ちゃん!こ、ここここれ私たちだよ!!」

 

海「お、おおお落ち着きなさい!!」

 

盾「まず海未が落ち着いて…」

 

竜「動揺し過ぎだろ……」

 

穂「ミュ、ミュミュミュμ’sって書いてあるよ!! 石鹸売ってるのかな!?」

 

竜「何でアイドルショップで石鹸売らなきゃならねェンだよォ」

 

俺達がそんな会話をしているとニコ先輩が、

 

「退きなさーーい!!」

 

と言いながら俺たちを掻き分けて前に出る。

 

身長低いから今まで見えなかったのか。

 

ニ「あれ!? 私のグッズがない!! どういうこと!?」

 

そう言いながらグッズを掻き分けて漁るニコ先輩。

 

必死すぎだろ。

 

虎「落ち着けニコ。ほら、ここにあるぞ」

 

ニ「あ、あった!!」

 

虎亜が落ち着かせながら、ニコ先輩に自分のグッズを指差す。

 

ニコ先輩はそれをスマホで撮りながら、目に涙を貯めて喜んでいる。

 

まァ、この人はアイドルに憧れて、途中で挫折したンだ。

 

感極まるのも無理はねェな。

 

虎「良かったな、ニコ。Get chance&lack♪」

 

ニ「ええ…!でも今それを歌う必要は無いと思うわ」

 

夢を取り戻せたっていう意味では合ってンじゃね?

 

それに虎亜のイニシャル『T.K』だし。

 

穂「ん?………ことりちゃんの写真?」

 

上の方を見上げていた穂乃果が急にそンな事を言った。

 

竜「どうした穂乃果?」

 

穂「竜ちゃん、これ……」

 

そう言いながら、穂乃果はある写真を指差す。

 

俺と朱雀がそれを見ると、そこに写っているのは、メイド服を着たことりだった。

 

竜「あァ?……何だこれ?」

 

朱「どうしてことりの写真が?でもとりあえず……」

 

疑問に思う俺と朱雀だが、すぐに朱雀はスマホの写真機能でメイド服を着たことりの写真を撮る。

 

写真になっているものをまた写真撮影するっておかしくねェか?

 

朱「値段は……買えるね」

 

50000円を買えるとか、相変わらずのボンボンだな。

 

海「こうやって注目されているのが分かると、勇気付けられますよね!!」

 

絵「ええ…」

 

花「うぅ……嬉しいねぇ」

 

凛「かよちん、また泣いてる!泣き虫だにゃ~」

 

普段はこういうのにクソうるせェ海未まで素直に喜び、最近入ったばかりの絢瀬先輩も本当にそう思っているようだ。

 

小泉と星空はニコ先輩同様にうっすらと涙を見せながらも喜んでいる。

 

そンな時だ。

 

 

 

 

 

こ「すみません!!」

 

 

 

 

 

その甘ったるい、周波数が高い声で、店内にいるメンバー全員の視線が外へと向く。

 

外で商品の整理をしている店員に、たった今写真で見たばかりのメイド……ことりが話し掛けている。

 

「あの!ここに写真が、わたしの生写真があるって聞いて。あれは駄目なんです。今すぐ無くしてください!」

 

朱「ことり?」

 

朱雀が声を発した瞬間、ことりは「わぁひゃっ!」と奇声に似た短い悲鳴をあげて硬直した。

 

海「ことり……何してるんですか?」

 

海未が戸惑い気味に尋ねるも、ことりはこちらに背を向けて硬直したまま。

 

やっと振り返ったと思えば、ことりは両目にガシャポンのカプセルを当てて笑顔を取り繕っている。

 

こ「コトリ? ホワッツ? ドーナタディスカ?」

 

おいおい……それで誤魔化す事が出来ると思ってるなら愉快通り越して哀れだぞ?

 

凛「うわ!外国人?」

 

嵐「んな訳ねぇだろ…」

 

訂正。

 

どうしようもねェバカがいた。

 

穂乃果はことりに歩み寄る。

 

「ことりちゃん……だよね?」

 

こ「チガイマース」

 

ことりは目にカプセルを当てたまま、ぎこちなく歩き出す。

 

こ「ソレデハ、ゴキゲンヨウ。ヨキニハカラエ、ミナノシュウ………さらば!」

 

そしてスカートを掴んで走り出した。

 

穂「ああっ!?」

 

穂乃果と海未が後を追いかける。

 

だが穂乃果はすぐに立ち止まり、振り返る。

 

穂「竜ちゃんたちも追いかけて!!」

 

竜「あァ?それなら朱雀がすぐに行ったから、直に連れてくるだろ…」

 

穂「へっ?」

 

ことりが地面を走るのに対し、朱雀はビルの屋上を飛び移りながら移動してたからな。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

ことりは裏路地をジグザグに進みながら逃げていた。

 

こ「はぁ…はぁ……脱出ルート決めておいてよかった…」

 

ことりは後ろを振り返りながら言うが、すぐ上のビルの屋上では、朱雀がことりを見下ろしながら追っていた。

 

そして、ことりが裏路地の出口で立ち止まり、一息ついた所にバサッ!! という音ともに朱雀が舞い降りた。

 

こ「ひぃ!?」

 

朱「見つけたよ……ことり」

 

朱雀のニヤリ顔に、ことりはびくつき怯える。

 

ことりの心境は、さながらホラー映画で逃げ切って安心したところに、不意討ちで襲われた人そのものだ。

 

こ「キ、キーくん……?どうやって……?」

 

朱「ビルとビルの隙間を飛びうつりながら追いかけてたんだ。さあ……話してくれるよね?」

 

こ「アハ……アハハ……はい…」

 

渇いた笑いを浮かべていたことりだが、すぐに観念した。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

朱雀がことりを連行して来ると、俺達はことりが働いているメイド喫茶に場所を変え、そこでことりから事情聴取していた。

 

因みに朱雀のヤツ、あのメイドことりの写真マジで買いやがった。

 

それはともかくだ。

 

ことりはこのメイドカフェでバイトしていることを白状し、店で使っている源氏名を明かすと、メンバー達が「えー!」と驚愕する。

 

花「こ、ことり先輩が……この秋葉で伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですか!?」

 

小泉が興奮気味に問うと、「そうです…」とことりは対照的に沈んだ口調で返した。

 

メンバー達の反応が怖いのか、俯いた顔を上げようとしない。

 

穂「酷いよことりちゃん!そういう事なら教えてよ!」

 

こ「うう~……」

 

穂乃果がそう言うと、ことりは顔を更に俯かせる。

 

穂「言ってくれれば遊びに来て、ジュースとかご馳走になったのに!」

 

竜「お前はそこしか頭にねェのかよ……」

 

たかるつもりだったとは……。

 

穂乃果の能天気さは、これ以上突き詰めないことにしよう。

 

すると、コルクボードに貼られている写真を見ていた絢瀬先輩がことりに訊ねる。

 

「じゃあ、この写真は?」

 

「店内のイベントで歌わされて………撮影…禁止だったのに………」

 

俺達にバレた事がダメだったのか、撮影禁止だったのに撮られて、しかもそれが店で売られていた事に怯えていたのか、それは俺には分からない。

 

肩を落とすことりの隣に穂乃果が座る。

 

穂「なんだ。じゃあ、アイドルってわけじゃないんだね?」

 

こ「うん、それは勿論」

 

すると朱雀がこのタイミングでメイド写真の事を訪ねた。

 

「じゃあ、この写真は捨てた方がいいのかな?」

 

ピラッと写真を見せる朱雀に、ことりは首を振る。

 

「ううん。キーくんさえ良ければ、持っててもいいよ?」

 

「いいの?」

 

「うん♪ 知らない人の手に渡るより、キーくんに持っておいてもらった方が安心だし、キーくんがお金払ったんだし、それに……私の写真持っててくれたら……私も嬉しいし……」

 

そう言って顔を赤らめることりに、朱雀は「そう…」とだけ返して、写真を内ポケットに仕舞った。

 

チッ、リア充爆発しろ。

 

海「でも何故です?」

 

海未が尋ねると、ことりは所在なさげに答える。

 

「丁度4人で、μ’sを始めた頃……」

 

 

 

『そ、そんな……私、アルバイトなんて…』

 

『うわあ!! 可愛い!!』

 

『おかえりなさいませ♪』

 

 

 

断るつもりがメイド服の可愛さに負け、働くうちに伝説にまでなっていたらしい。

 

チョロすぎだろ。

 

それを聞いた朱雀も俺と同じ事を思ったのだろう。

 

朱「ことり……チョロすぎるよ……」

 

声に出して呆れと憐れみの目で見ていた。

 

ことりは「うぅ…」と言うだけ。

 

こ「自分を変えたいなって思って。私、穂乃果ちゃんや海未ちゃん、キーくん達と違って、何もないから………」

 

さっきとはまた違う暗い表情。

 

まるで自分だけその場に取り残されているような、そンな寂しそうな表情をしていた。

 

穂「何もない?」

 

こ「穂乃果ちゃんみたいに皆を引っ張っていくこともできないし、海未ちゃんみたいに、しっかりもしてない。キーくん達みたいに強くもないし…」

 

穂「そんなことないよ!! 歌もダンスも、ことりちゃん上手だよ!」

 

海「衣装だって、ことりが作ってくれているじゃないですか」

 

朱「ことりがいるから、衣装も何とかなってるんだよ?」

 

穂乃果と海未と朱雀が立て続けに言う。

 

ことりのμ’s への貢献度は高い。

 

それは誰の目から見ても明らかなんだが…。

 

真「少なくとも、2年の中では一番まともね」

 

竜「あからさまにクソめンどくせェツンデレ女だけには言われたくないなァ…」

 

真「ちょっ!? 何なんですかそのアダ名は!?」

 

俺と西木野がケンカになるが、

 

茜「落ち着け、二人とも」

 

茜に止められ、落ち着く俺と西木野。

 

チッ、いけすかねェ後輩女だ。

 

朱「ことり……どうやっても自分に自信が持てないの?」

 

こ「私はただ、5人に着いていってるだけだよ」

 

ことりはそう答え、もどかしそうに唇を結んだ。

 

それを聞いた朱雀は、

 

「そう……なら、とことんやってみれば?」

 

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

そう提案した。

 

その言葉にことりも含め、全員が朱雀の方に向く。

 

意外だな。

 

朱雀はことりに過保護だから、てっきり『こんなところでバイトなんて許さないよ』とか言うもンだと思ってたンだが……。

 

ことりも意外に思ってたようで、朱雀に訊ねる。

 

「いいの?キーくん…」

 

「別にいいよ。ことりがやりたいなら、とことんやってみればいいよ。それで答えが見つかって自信が持てるならいいし、出来なかったら仕方ない…。ただ、今度からは隠し事はしないでね」

 

そう言って、朱雀は優しく微笑む。

 

それを見たことりは笑顔で元気よく「うん!」と頷いた。

 

茜「じゃあ…今日はもう帰ろうか?」

 

茜のその言葉で全員、外に出る。

 

そして出た時だ。

 

突然空がガラスのように割れ、そこから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キゴォォォォォォォン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭や背中に赤い房を沢山つけた怪獣……いや、超獣が現れた。

 

竜「ミサイル超獣・ベロクロン…」

 

それがこの超獣の名だ。

 

ベロクロンは、街中に降りて身体中からミサイルを飛ばす。

 

ミサイルは周りのビルにあたり、連続した爆発を起こす。

 

たちまち周りは悲鳴の渦に巻き込まれた。

 

 

 



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ワンダーゾーン#3


エースの戦闘後を主に大きく変えています。



◎side

 

 

ベロクロンが現れてからの穂乃果たちの反応は様々だった。

 

ニ「また怪獣!?」

 

穂「違いますよニコ先輩!あれは超獣ですよ!!」

 

ニ「そんなの違いが分からないわよ!!」

 

穂乃果の指摘にニコは叫ぶ。

 

確かに素人目からではどっちもどっちだろう。

 

希「ニコっち、超獣っていうのは怪獣よりも強い存在で、異次元人ヤプールに作られた生物兵器なんよ」

 

ニ「そうなの?」

 

希がニコに説明する中、朱雀はテレパシーで竜司や盾、イクスたち一年生のマネージャー組に自分が行くことを伝える。

 

(超獣なら、エースである僕が行くよ)

 

竜(分かった)

 

盾(気をつけてね~)

 

(誰に言ってるの…)

 

そう残し、朱雀はその場からゆっくり離れる。

 

丁度一番後ろにいたので、離れやすかった。

 

ビルとビルの隙間に朱雀は入っていく。

 

しかし、それを見ている者が一人。

 

茜だ。

 

茜は口元を意味深にフッと笑わせていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

朱雀は周りに誰もいない事を確認してから、エースに呼び掛ける。

 

「行くよ…エース」

 

『よし!行くぞ恭弥!』

 

朱雀は腕をクロスし、斜め上に万歳してから、外側へ腕を回しながら、体の前で両方の握りこぶしを合わせる。

 

その瞬間…朱雀の両方の中指に填められたAの文字が型どられた指輪『ウルトラリング』が輝き、朱雀を光に包み『ウルトラマンエース』に変身させる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ベロクロンが秋葉の街を破壊しながら、突き進んでいた時、突然ベロクロンに誰かの飛び蹴りが炸裂した。

 

「テエェェェェン!!」

 

「キゴォォォォォォン!?」

 

ベロクロンは倒れこんで転がる。

 

穂乃果たちは竜司たちの指示で逃げていたが、別の声が聞こえた為にそちらを振り向く。

 

そこには『ウルトラマンエース』が立っていた。

 

こ「穂乃果ちゃん…あれって…」

 

穂「うん!ウルトラマンエースだよ!!」

 

「トワァァァァァァァ!!」

 

(BGM:ウルトラマンA)

 

エースは側転しながらベロクロンに蹴りをいれる。

 

「トワァァァァァ!!」

 

「キゴォォォォォォン!!」

 

再び倒れるベロクロン。

 

そんなベロクロンに、エースは馬乗りになり、容赦なく殴り倒す。

 

何度も何度も執拗に……。

 

「テエェェェェン!! トワァァァァァ!!」

 

ドゴッ!! ドゴッ!! という鈍い音が何回も鳴り響く。

 

20発ほど殴ったあと、エースはベロクロンを掴んで起き上がらせた後、膝蹴りを叩き込む。

 

「テエェェェェン!!」

 

そして頭を抱え込み、3回ほど回転した後ブン投げる。

 

「トワァァァァァ!!」

 

「キゴォォォォォォン!!」

 

ベロクロンは地面に落ちて転がり、立ち上がるが、フラフラだ。

 

苦し紛れにミサイルを手から撃つが、エースは胸をはり、平気な様子を見せる。

 

そしてエースはベロクロンに向かって走り、ドロップキックをかます。

 

「トワァァァァァ!!」

 

「キゴォォォォォォォン!!」

 

ベロクロンは再び転がる。

 

エースは両腕をクロスし、右手を上にあげる。

 

そこからエース専用の刀『エースブレード』が出る。

 

エースはエースブレードをベロクロンに投げ、見事エースブレードはベロクロンの胸に突き刺さる。

 

「キゴォォォォォォン!?」

 

ベロクロンは余りの痛さに蹲る。

 

その隙にエースは体を左に大きく回して、両腕をL字にして撃つ必殺技『メタリウム光線』を放つ。

 

「テエェェェェン!!」

 

メタリウム光線はベロクロンに直撃!

 

「キゴォォォォォォン!!」

 

ベロクロンは断末魔を上げて後ろに倒れると、爆発した。

 

ドガァァァァァァァァン!!

 

人々は両手を上げて喜ぶが、穂乃果たちはエースの荒々しい戦い方に疑問を感じていた。

 

穂「エースって、あんな感じの戦い方だっけ…?」

 

こ「さあ…?」

 

希「なんか……どこぞの赤い通り魔を思い出すな~」

 

そして竜司は頭を抱えていた。

 

ウルトラマンたちの戦い方は、変身している者の戦い方に直結する。

 

朱雀の容赦のない戦い方が、ダイレクトにエースに反映されたのだ。

 

エースはそんな事は露知らず、街を治し飛び去っていった。

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

エースが戦いを終えて朱雀に戻った後、茜から大事な話がマネージャー組にあるとのことで、穂乃果たちには先に帰ってもらった。

 

穂乃果が最後まで「一緒に帰ろうよ~!」と駄々をこねていたが、手作りのプリンを奢ってやると言ったら即答して帰った。

 

あいつ、俺の手作り料理全般が好物なんだよな。

 

それはともかく、俺たちは裏路地に入り、茜の話を聞く。

 

茜「さて……回りくどい話は嫌いだから単刀直入に言おう。朱雀、お前がエースだな?そして竜司やイクス、蒼燕たちもそれぞれウルトラマンだな?」

 

そう訊ねてきた茜に俺たちは一瞬ビクリとしたが、続けて言った茜の言葉に耳を疑う。

 

「隠さなくていい。俺もウルトラマンだからな」

 

竜「どういう事だァ…茜?」

 

蒼「何で俺たちがウルトラマンだって言える?」

 

茜「それは簡単だ。俺は『ウルトラマンマックス』と一体化している。それにどうしてお前たちがウルトラマンだと言えるのか……?それはオーラで分かる。一度ウルトラマンに変身した者が発する独特のオーラでな……」

 

茜は小さな子供に説明するように、丁寧にそう言った。

 

それは本当か?

 

俺はそンなオーラ検知出来てねェぞ?

 

鎌かけてンじゃねェだろうなァ?

 

そう思ってるとウルトラマンがテレパシーで伝えてくる。

 

『竜司。彼の言ってる事はすべて本当だ。彼からマックスのオーラを感じる』

 

チッ……そうかよォ。

 

竜「………分かった。茜、確かにお前の言う通り、俺たちはウルトラマンだ」

 

俺の肯定に嵐助たちは異論を言わない。

 

こいつらも、セブンやエースから肯定の言葉を言われたのだろう。

 

蒼「それで?わざわざ自分の正体を明かして、俺たちのもう1つの姿も暴いたんだ。何か理由があるんだろ?」

 

蒼燕の言う通りだ。

 

茜は無意味にこんな事を言わない。

 

茜は頷き、次の瞬間には俺たちの度肝を抜く言葉を言う。

 

「そうだ。今ここにいる、俺たち全員がウルトラマンだ。これは偶然じゃない。必然だと俺は思う」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

はァ?

 

必然だと?

 

続いて茜は氷麗に問う。

 

「氷麗。俺たちの共通点は何だと思う?全員ウルトラマンやネトゲで知り合った以外で……」

 

「えっと……μ'sのマネージャー…?」

 

氷麗が恐る恐る言うと、茜は肯定した。

 

「そうだ。全員付き合いの長さはあれ、それぞれがμ’sのメンバーとそれぞれ深い交流がある。俺が思うに、こうして俺達が1ヶ所にウルトラマンとして集められたのは、誰かの思惑があると踏んでいる」

 

竜「誰かって誰だよ?」

 

茜「そこまでは分からないさ。ただ、前にマックスに訊いた事があるんだ。何故俺を選んだのかと……。そしたらマックスはこう言ったよ。『何故か君じゃないといけない気がした』ってな……」

 

竜「……はァ?」

 

なンだよその曖昧な理由は?

 

俺の中にいるウルトラマンが、茜の中にいると思われるマックスに問う。

 

『それは本当か?マックス』

 

『はい。自分でも分かりませんが、何故か彼じゃないといけない気がしたのです。セブンやエースはどう思います?』

 

嵐助の中にいるセブンが言う。

 

『私もだ。何故か嵐助じゃないといけない気がしたのだ』

 

エースが答える。

 

『私もです。上手く説明が出来ないのですが、何かに吸い寄せられるように、そこへ行くと恭弥と出会い、本能的に恭弥と一緒に戦いたいと思ったのです』

 

おいおい……ますます訳が分かンねェぞ。

 

何かに吸い寄せられたって、その何かが分かンねェと不気味過ぎンぞ。

 

『竜司、実を言うとだな、私も最初から君に目をつけていたんだ。ベムラーでの成り行きや、君の精神面もあるが、君の中にある何かに第一に惹かれたのは確かだ。例えるなら……こことは違う何処かで、一緒に戦っていたような……そんな感じだ』

 

おいおい……いつからお前はそンなロマンチストになったァ?

 

少しばかりウルトラマンの言葉に引いたが、それよりもだ。

 

俺達が自覚出来てない“何かに吸い寄せられた”か………。

 

確かによくよく考えりゃ、何故俺なのか?

 

何故氷麗や盾までウルトラマンに選ばれたのか?

 

気になる点は確かにある。

 

言っちゃなンだが、他の奴等はヒーロー気質でもねェし、俺も憧れちゃァいるが、そこまででは無い。

 

………茜の言う通り、誰かの思惑が絡んでるのか?

 

茜「まぁ、もしかしたら俺の考えすぎかもしれないしな。今日はここでお開きにしよう」

 

茜がそう言ったので、結局その日は各々帰路に着いた。

 

けど、心の中にあるモヤモヤは晴れないままだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

茜から衝撃的な事を言われてから翌日。

 

俺、穂乃果、盾、海未、朱雀は廊下からある教室を覗いていた。

 

何故俺達が廊下から教室の中を覗いてるかと言うと、ことりを見ているからだ。

 

教室にはことり1人だけが残っている。

 

授業でヘマをやらかして宿題を出された訳でもなく、ただ一心不乱にノートとにらめっこをしていた。

 

そして急に目を開けたかと思うと、

 

こ「チョコレートパフェ、おいしい……生地がパリパリのクレープ、食べたい……ハチワレの猫、可愛い……五本指ソックス、気持ちいい……キーくんの匂い、最高……」

 

朱「ねえ…意味が分からないんだけど?」

 

竜「安心しろ。俺も分からン」

 

この意味不明な単語の羅列。

 

なンかの呪文かァ?

 

こ「うぅ……思いつかないよ~!」

 

そう言って、机に突っ伏すことり。

 

何故こうなったかと言うと、それは昼休みにまで遡る。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

絵「秋葉でライブよ!」

 

それは部室内での絢瀬先輩の一言から始まった。

 

穂「えっ…それって…」

 

こ「路上ライブ?」

 

絵「ええ!」

 

路上ライブね~。

 

斬新っちゃ斬新か?

 

ニ「秋葉と言えば、A-RISEのお膝元よ!?」

 

希「それだけに面白い!」

 

真「でも、随分大胆ね…」

 

絵「秋葉はアイドルファンの聖地。だからこそ、あそこで認められるパフォーマンスが出来れば、大きなアピールになる!」

 

成る程…。

 

確かにそれもそうだな…。

 

この提案に勿論、穂乃果とことりは賛成する。

 

穂「良いと思います!!」

 

こ「楽しそう!!」

 

穂乃果とことりは顔を見合わせて笑うが、

 

海「しかし、凄い人では……」

 

恥ずかしがり屋の海未が乗り気じゃない。

 

最近ライブで緊張する事が少なくなってきたようにも見えるが、それはあくまで校内でのライブ。

 

今回は校外で、それも秋葉のど真ん中。

 

海未が臆してしまうのも無理はない。

 

ニ「人がいなかったら、やる意味ないでしょ?」

 

盾「そうだよ、海未。尻込みしてちゃダメだよ」

 

けど、こういう時に頼りになるのがニコ先輩と盾だ。

 

ニコ先輩はアイドルへの思いが強いからこそ、こういう場面でハッキリと意見を言う事ができるし、盾は海未専用のリーサルウエポン。

 

盾が説得すると大体海未は落ちる。

 

流石にこれは正論だと思ったのか、海未は「それは…」と唸るだけだった。

 

「凛も賛成!!」

 

花「じ、じゃあ私も!」

 

朱「いいんじゃない?」

 

茜「賛成だ」

 

蒼「俺もいいぜ」

 

絵「決まりね!!」

 

続々と賛同し、絢瀬先輩が締める。

 

穂「じゃあ、早速日程を…」

 

絵「と、その前に」

 

穂乃果の言葉を絢瀬先輩が遮る。

 

まだあるのか…?

 

絵「今回の作詞はいつもと違って、秋葉の事をよく知っている人に書いてもらうべきだと思うの」

 

そう言って、ことりの方を向く。

 

絵「ことりさん…どう?」

 

こ「えっ!? 私?」

 

絵「ええ」

 

絢瀬先輩はことりに作詞ノートを渡し、それをことりは戸惑いながら受けとる。

 

絵「あの街で、ずっとアルバイトしてたんでしょ?きっと、あそこで歌うのに相応しい歌詞を考えられると思うの」

 

穂「それいい!! 凄くいいよ!!」

 

こ「穂乃果ちゃん…」

 

これはことりの成長を促す為のものなのだろう。

 

だからこそ強制はしないし、ことりがそれを断るなら無理強いはしない算段だな。

 

そんな事をしても成長にはならないから。

 

海「やった方がいいです!ことりなら秋葉に相応しい良い歌詞が書けますよ…」

 

「凛もことり先輩の、甘々な歌詞で歌いたいにゃ~!」

 

こ「そ…そう?」

 

ニ「ちゃんと良い歌詞作りなさいよ」

 

真「期待してるわ」

 

希「頑張ってね♪」

 

こ「う…うん!」

 

見事にみんなから応援され、ある意味逃げ場を失ったことり。

 

星空に関しては煽りに近いがな。

 

ことりは不安そうだが、朱雀が顔を近づけ、

 

「ことり。一人でダメだったら、僕も手伝ってあげるから」

 

「キーくん……うん!分かった!!」

 

手伝いを申し出たことで、完全に引き受けた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

そして現在。

 

こ「ふ~わふ~わし~たも~のか~わい~な、ハイ!あとはマ~カロンた~くさ~ん並べたら~、カラ~フル~で、し~あ~わ~せ~!ル~ル~る……うふぅ!やっぱり無理だよー!」

 

書いては消し、言っては嘆きを繰り返して大いに苦戦中。

 

海「なかなか苦戦しているようですね…」

 

穂「うん…」

 

竜「まあ、今までやったことの無い分野だからな…」

 

盾「仕方がないよ」

 

こ「うう……ひっく…ぐすっ…キーく~ん、穂乃果ちゃ~ん…」

 

余りの苦戦さに泣きながら、穂乃果と朱雀の名前を呼ぶことり。

 

朱「ッ……!」

 

ガンッ!ガンッ!という音が後ろからする。

 

穂「竜ちゃん、恭弥君が無言で壁殴ってるよ……」

 

竜「無視しとけェ…」

 

無言で壁をトンファーで殴ってる朱雀。

 

ガンガンガンガンうるせェなァ…。

 

どうせ今すぐことりの元に行って、助けてやりたい衝動にでも駆られてンだろ。

 

それを我慢してる結果がこれだァ。

 

こ「うぅ~……そうだっ、今日は帰りにクレープ食べて帰ろうっ。そしたら何か浮かぶかもしれないもんね!」

 

 

 

 

 

……………ダメだこりゃ。

 

 

 

 

 

 

 




茜の意味深な言葉。

多分正体分かってる人は分かってると思います。


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ワンダーゾーン#4





ことりの作詞活動は苦戦を強いられていた。

 

例えば授業中の時。

 

「じゃあこれを……南さん」

 

「はぁ……」

 

先生に当てられた筈のことりは、それが聞こえていないのか、ずっと俯いたまま溜め息を吐いていた。

 

「南ことりさん!」

 

「は、はいっ!えっと~…」

 

ようやっと先生の声に気付き慌てて立つことり。

 

そこにはいつもの余裕さはなくなっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

例えば体育の時。

 

こ「ふえ~ん……何書いていいのか分かんないよぉ~……」

 

穂「考え過ぎだよー。海未ちゃんみたいにほわんほわんな感じで良いんじゃない?」

 

誰か1人とペアになって準備運動をしている時に、ことりは嘆いた。

 

因みに俺は盾とペア、朱雀は欠席。

 

海「それ、褒めてるんですかぁ!?」

 

穂「褒めてるよ~!」

 

竜「褒めてねェだろそれ……」

 

何だよほわんほわんって。

 

バカにしてるとしか思えねェ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

その後もことりは図書室に行っても難航、授業中でも歌詞作りに悩んでいるのか、終いには山田先生に呼び出されて注意を受けていた。

 

そして現在とある空き教室。

 

そこでことりは一人、作詞に没頭していた。

 

しかしいい単語が浮かばないのか、ことりはここまで「うんうん」唸ってるばかりだった。

 

そろそろ助けねェと不味いかもな。

 

これではいつまで経ってもライブができない。

 

西木野だって作詞が来ないと作曲はできないし、ダンスの振り付けも決められない。

 

こ「やっぱり私じゃ……」

 

そう言って、ことりはノートを閉じる。

 

もう今日はダメだと思ったのだろう。

 

朱「はぁ~…」

 

しかしここで、ついに朱雀がことりに助け船を出す。

 

朱「ことり」

 

こ「うう……ぐす……キーくん…?」

 

朱「言ったでしょ?困ったら手伝ってあげるからって。忘れたの?」

 

朱雀はことりの前に来て言う。

 

穂乃果もことりの所に行き、

 

「そうだよことりちゃん!! 一緒に考えよう!とっておきの方法で!!」

 

共に作詞を考えることを提案してきた。

 

とっておきの方法?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

穂乃果が言ったとっておきの方法。

 

それは、

 

こ「お帰りなさいませっ♪ご主人様っ♪」

 

穂「ぅお帰りなさいませ!ご主人様!!」

 

海「お帰りなさいませ……ご主人様…」

 

穂乃果の考えたとっておきの方法とは、実際にメイド喫茶で働きながら考えると言うことだった。

 

そして俺と盾と朱雀はと言うと、

 

竜「お帰りなさいませェお嬢様ァ。チッ」

 

盾「帰ってきたね。お茶でいい?答えは聞いてない!」

 

朱「お帰り……」

 

何故か執事服を着せられ、一緒に働かせられている。

 

なンでこうなった?

 

俺たちは最初こそ丁重に断ったのだが、ここの女性店長がしつこいのと、穂乃果たちに無理矢理着せられ、店に立たされている。

 

故に俺は舌打ちしながら、盾は紫のイマジンみたいな事を言いながらふざけていて、朱雀に至ってはタメ口。

 

何でメイド喫茶に執事服があるンだよ……。

 

まァいい。

 

そンなことより、それぞれのメイド服を着ている穂乃果たちの様子を紹介しよう。

 

まずはことり。

 

メイド喫茶でアルバイトをしているだけあって、様になっている。

 

『メイド服』という史上最強の装備の1つを身に付けていると言うこともあって、可愛さがかなり増している。

 

あの朱雀も無言で写メっている。

 

続いて穂乃果。

 

何だか江戸っ子みたいな居酒屋の店員さんみたいなしゃべり方だ。

 

まァこっちの方が穂乃果らしいし、むしろ…ッエーイ☆……俺好みだ♪。

 

おいコラ、今「元気っ娘萌え主人公」つったヤツは誰だァ!?

 

そして最後は海未。

 

恥ずかしがりやな海未が、精一杯振り絞った『お帰りなさいませ』。

 

今もメイド服の裾をギュッと握り締め、恥ずかしさのなかにある、どこかそそられる危険なギャップ…。

 

それを見た盾は、無言で海未の頭を撫で、海未もされるがままになっている。

 

その光景を見た穂乃果は俺に、ことりは朱雀にそれぞれ自分にもしてほしい的な目を向けてくる。

 

朱雀は無視しようとしたが、ことりが朱雀の執事服の裾を掴み、涙目の上目遣いで見てきたため、あえなく朱雀は轟沈。

 

ことりの頭を無言で撫で、一方のことりは満足そうな笑みだ。

 

一方、俺の方にも穂乃果がすりよってきて無言の撫でてアピール。

 

おいやめろ。

 

そンな期待に満ちた目で見てくるな!

 

俺はせめてもの抵抗として顔を背けるが、その方向に回り込んで見てくる始末。

 

結局、俺もあえなく轟沈。

 

竜「チッ…」

 

舌打ちしながら穂乃果の頭を撫でる。

 

するとまあ……それはそれは嬉しそうにする。

 

「えへへ…」と口に出しながら。

 

それを見ている男性客は嫉妬の目で、女性客は羨ましそうな目で見てくる。

 

はァ、めンどくせェ…。

 

そこへカラーンッと、店の来店音がすると同時に見た事のある面子がやってきた。

 

凛「にゃ~!」

 

穂「おっ!」

 

凛「遊びに来たよー!!」

 

花「えへへへ♪」

 

絵「秋葉で歌う曲なら、秋葉で考えるってことね」

 

メイド服を着た3人を見て、絢瀬先輩が納得したように言う。

 

蒼「何でお前らも執事服着て働いてんだ?」

 

竜「好きでやってンじゃねェよ…」

 

こっちは今すぐにでも辞めたいンだ。

 

東條先輩は面白そうに穂乃果たちメイドや、俺たち執事にビデオカメラを向けてくる。

 

希「ではではー、早速取材を」

 

海「やめてください!」

 

顔を赤くした海未がレンズに手をかざす。

 

海「何故みんな……」

 

穂「私が呼んだの」

 

だろうな。

 

穂乃果が言うと、海未の文句は穂乃果へと移る。

 

それを遮るように、席で頬杖をつくニコ先輩が憮然と言った。

 

「それよりも早く接客してちょうだい」

 

虎「そうだそうだ!! こっちは腹がへってんだ!」

 

ニコ先輩の隣に座る虎亜が机をバンバン叩いて言う。

 

こいつ……面白がってるな……後で殺す!

 

仕方がないので働く俺たち。

 

俺や朱雀、盾、穂乃果はそれなりにやれてるが、海未は狼狽して視線を店内のあちこちへと泳がせている。

 

接客業の経験はないらしい。

 

まあ、恥ずかしがり屋の海未だからな。

 

その内に、キッチンに引っ込んだ。

 

すっかり仕事に慣れていることりは、新しく来た客に対応している。

 

その仕事ぶりの一部がこちら。

 

 

「いらっしゃいませ。お客様、2名様でよろしいでしょうか?」

 

「それでは、ご案内いたします♪」

 

「こちらのお席へどうぞっ」

 

「メニューでございます♪」

 

「ただいま、お冷をお持ちいたしますっ。失礼いたしました」

 

 

以上をお送りしました。

 

感想、完璧かよ!

 

花「さすが伝説のメイド………」

 

凛「ミナリンスキー………」

 

見ろよォ、小泉と星空までことりに尊敬の眼差しを向けてるくらいだ。

 

店は混んできたのだが、慌てることなく仕事をこなすことりは楽しそうだ。

 

ことりが客に向ける作ってない笑顔がそれを証明していた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

太陽が夕日に変わる頃、ようやく忙しかったのが落ち着き、他のみんなも帰っていった。

 

海未と盾はフロアでテーブルを拭き、俺と穂乃果がキッチンで皿を拭いていると、ゆるりとコップを拭きながら朱雀が口を開く。

 

「ことり、ここにいると楽しそうだね」

 

こ「え?そうかな……?」

 

すると近くにいた穂乃果も会話に加わってくる。

 

「うん!別人みたい!いつも以上に活き活きしてるよ!」

 

少しだけ驚いた顔の後、ことりは「うん」と穏やかな笑みを浮かべる。

 

こ「何かね、この服を着ていると、できるっていうか……この街に来ると、不思議と勇気が貰えるの。もし、思い切って自分を変えようとしても、この街なら、きっと受け入れてくれる気がする。そんな気持ちにさせてくれるんだ。だから好き!」

 

ことりの楽しんでいる様子が嬉しいのか、穂乃果も楽しそうに笑う。

 

朱雀も珍しく微笑みを浮かべる。

 

さっきまで無愛想だったのに……。

 

まあ、それは俺もか……。

 

つーかことり、そんなにハッキリと言えるなら、もう心配する必要は無いよな?

 

穂「あ、ことりちゃん!今のだよ!」

 

こ「え?」

 

穂「今ことりちゃんが言ったことを、そのまま歌にすれば良いんだよ。この街を見て、友達を見て、色んなものを見て、ことりちゃんが感じたこと、思ったこと。ただそれを、そのまま歌に乗せるだけで良いんだよ!」

 

流石は穂乃果…。

 

歌詞の問題はなンとかなりそうだな…。

 

さてと……あとはお前次第だぞ、ことり?

 

 

 

 

 



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ワンダーゾーン#5


ラストが衝撃だった♪(U.S.A.並感)



海「本当にやるんですか?」

 

明るい街の喧騒の中、不安げな海未の声が小さく呟かれる。

 

絵「もちろん。次の日曜日、この場所で!」

 

対して張り切った声で返したのは絢瀬先輩。

 

そう、今週の日曜日、ライブをする事が決まったのだ。

 

海「ですが、人がたくさん…」

 

こ「面白そう!」

 

海「えぇ…!?」

 

ごねてる海未の言葉を遮るように声を張ったことり。

 

どうやらもう悩みは昨日の件があったおかげで大丈夫のようだ。

 

茜が海未に言う。

 

「園田、人が多いからこそやるんだろ。そうじゃないと思い切った手とは呼べないんだ」

 

「うう……分かってます、分かってはいるのですが……」

 

まァ、今までのように学校内でやっていたライブとは違い、本当の意味で知らない人達の前でライブをするのは今回が初めてだ。

 

オープンキャンパスの時ともまた勝手が違う。

 

初見も初見。

 

そりゃ海未が不安がるのも仕方ない事だ。

 

それでもやるしかない。

 

穂「うん!やろう!!」

 

穂乃果の声と共に、他のメンバーの声も上がる。

 

海未も諦めたようだ。

 

毎回何だかンだ言いながらもやってのけるンだ。

 

今回も大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

花「この衣装で秋葉にっ!?」

 

穂「うん!ことりちゃんのお店の人に言って貸してもらったんだ!」

 

翌日の屋上。

 

教室で作詞をしていることり以外の女子メンバーは全員メイド服を着ていた。

 

小泉の言った通り、メイド服という『衣装』でライブをするのだ。

 

朱雀が言う。

 

「ことりの店で思いついた事なんだ。ことりが秋葉で、働いている店で思った事や感じた事を歌詞に乗せる。だったら衣装もそれに関連したものが合っているんじゃないかと思ってね」

 

そういう訳でのメイド服か。

 

穂「うんうん!みんな似合ってるよー!!」

 

穂乃果の言う通り、元の素材が良いからか、メイド服を着た彼女達はとても可愛い。

 

ニ「にっこにっこにー!! どう?似合ってる?」

 

虎「おー、いいじゃんニコ。いいじゃんいいじゃんスゲーじゃん!」

 

ニ「でしょー?ふふん、流石は虎亜ねっ♪」

 

あのバカップルは放っておいてやる。

 

穂「おー……!!」

 

絵「そ、そんなに見ないでちょうだい……」

 

穂乃果の感嘆とした声と、絢瀬先輩の照れた声でそちらを振り向くと、金髪超絶美少女がメイド服を着て恥じらっていた姿がそこにあった。

 

蒼「目線!目線ください!!」

 

そしてそれをパシャパシャと撮っているバカがいた。

 

絵「も、もう!こんな所でやめてよ蒼燕!……帰ったら、たくさん撮らしてあげるから……」

 

蒼「なん……だと……!?」

 

絢瀬先輩の照れながらの素敵発言に、某死神代行みたいに固まった蒼燕。

 

ここにもバカップルがいたか……。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

それから事は順調に進んでいった。

 

相変わらず授業中は歌詞を書く事に変わりはなかったが、以前のように悩む事はなく、歌詞を書く手も止まる事はなかった。

 

そのおかげもあって真姫&氷麗による曲作りも開始され、難なく完成に至る事もできた。

 

振り付けも曲に合わす事がスムーズにでき、今までにないほど手際よく進ませる事ができた。

 

そして、当日の日曜日がやってきた。

 

夕焼けの中に佇むメイド喫茶の前方で、俺と虎亜とイクスは、ビデオカメラでライブの様子を撮影し、他のマネージャーメンバーは遠目から離れてライブを見守っていた。

 

そしてセンターを務めることりが歌い始める。

 

 

(♪:Wonder Zone)

 

 

 

 

 

 

 

 

作詞したことりならではの、可愛らしくも元気が貰える曲に仕上がった。

 

普段は海未が作詞をしているが、ことりのような可愛らしい詞も嫌いではない。

 

曲名だが、みんなで話し合ってもなかなか決まらなかったのだが、朱雀がふと漏らした言葉にみんな賛成し、この曲名に決まった。

 

『Wonder Zone』……不思議な場所……と。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

神田明神。

 

夕日が静まりかけた階段の上で、俺と穂乃果たちの幼馴染み6人はいた。

 

ライブが成功したのは言うまでもなかった。

 

これでまた知名度が上がったな。

 

盾「よかったね~ライブ成功に終わって」

 

穂「そうだね~、ことりちゃんのお蔭だよ!」

 

こ「ううん、私じゃないよ。みんながいてくれたから、みんなで作った曲だから…」

 

ほんのりとだけ夕日の赤みが顔に差し掛かる中、穂乃果の言葉にことりは謙遜の意味でそれを返す。

 

朱「いいや、ことりのお蔭だよ。ことりがありのままの気持ちを歌詞に乗せたから、あの曲…『Wonder Zone』が出来たんだ。それは胸を張って、誇ってもいいくらいだよ」

 

こ「キーくん。そ、そうかな…」

 

朱雀に褒められ、照れることり。

 

もうお前ら付き合っちゃえよ。

 

こ「ねぇ、こうやって3人並ぶと、あのファーストライブの頃、思い出さない?」

 

穂「うん」

 

海「あの時はまだ、私達だけでしたね……」

 

こ「竜くんに盾くん、キーくんがいなかったら、穂乃果ちゃんがやろうって言ってくれなかったら、あそこで終わってたかもしれないもんね」

 

1度挫折しかけたあの日。

 

でもあれを乗り越えたからこそ、今のμ'sがある。

 

クソッタレな壁を壊して、前に進んだからこそ、今のメンバーが集まって来たのだ。

 

こ「あのさ…」

 

穂「うん?」

 

こ「……私たちって、いつまで一緒にいられるのかな?」

 

不意に、ことりが言葉を漏らす。

 

穂「どうしたの、急に?」

 

こ「だって、後2年で高校も終わっちゃうでしょ?」

 

海「……それはしょうがないことです」

 

ことりの言いたい事は分かる。

 

高校を卒業したらどうするかなんて、まだ考えていない。

 

考えてないから、分からない。

 

誰がどのような道を選ぶかなんて分かる訳が無い。

 

現に俺だって将来どうしたいのか、それすら曖昧なのだ。

 

なのに、穂乃果はことりに抱きついて、

 

「大丈夫だよ~!ずーっと一緒!だって私、この先ずっとずっとことりちゃんや海未ちゃん、竜ちゃんや恭弥くん、盾くんと一緒にいたいって思ってるよ!大好きだもん!」

 

そンな心配なンていらないと言わんばかりに、明るく言ってのけた。

 

こ「……穂乃果ちゃん……うん!私も大好き!」

 

なかなか嬉しいことを言ってくれるな…。

 

ウルトラマンもテレパシーで、

 

『彼女たちの友情は素晴らしいな』

 

そう言ってきた。

 

その後は自然に穂乃果達女子3人が手を繋ぎ、俺達はそれを後ろから見守る。

 

こ「ずっと一緒にいようね!」

 

穂「うん!」

 

海「ええ!」

 

だが、その考えは甘かったことを思い知ることになるとは、この時はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

海未と盾、ことりや朱雀と別れて、俺は穂乃果と一緒に帰っていた。

 

丁度いい。

 

俺は前から穂乃果に聞いてほしい事があったので、穂乃果に訊ねる。

 

竜「なあ…穂乃果」

 

穂「なぁに、竜ちゃん?」

 

竜「俺にも……夢や、やりたいことって見つかるかな?」

 

ずっと思っていた。

 

俺は穂乃果のやりたいことに付き合っているばかりで、俺のやりたいことは一切無かった…。

 

その内、いつしか穂乃果のやりたいことが、俺のやりたいことになっていた。

 

このままじゃ俺はダメになるンじゃないか?

 

ずっとそう思っていた。

 

穂乃果は微笑みながら答える。

 

穂「大丈夫だよ。竜ちゃんならきっと見つけられるよ」

 

竜「何でそう思う?」

 

穂「だって、私の自慢の幼馴染みだもん!!」

 

向日葵が咲くような、満面の笑顔で答えられた。

 

竜「………チッ、何だよそれ……」

 

口ではそう言ったが、俺の顔は少し笑っていた。

 

なンか穂乃果にそう言われると、本気でいつか見つかりそうだな。

 

そう思っていると、穂乃果が顔を赤くしながら、

 

「そ…それに……もし見つからなかったら、穂乃果と……その………ずっと一緒にいない…?」

 

指をツンツンしながら、そう訊いてきた。

 

俺は意味がよく分からなかったが、取り合えず「ああ、その時は頼むな」と答えた。

 

その瞬間、穂乃果は頭から湯気を出して顔を真っ赤にした。

 

穂「ふええぇぇぇぇぇっ!?」

 

そして終いには俯き、何やらブツブツ言っている。

 

竜「おい穂乃果?どうした?おーーい!」

 

大声で呼び掛けるが、穂乃果は幸せそうな顔でニヤニヤしたまま無反応。

 

おいおい、マジかよ……。

 

『竜司……君も鈍感だな…』

 

はァ?

 

どういう意味だよ?

 

『いや……こればっかりは、君自身で気づかなければならない』

 

ウルトラマンがそう言ってくるが、全く分からん。

 

仕方がないので、穂乃果をだっこしようとしたその時だ。

 

ふと視界の隅に、誰かを見つけた。

 

そいつは全身黒ずくめだが、頭は肌色でハートのような形をしていた。

 

こいつは……バド星人かっ!?

 

俺は一瞬で警戒したが、それも無意味に終わった。

 

「お前がウルトラマンと一体化してる人間か。悪いがここで死んでもらおう」

 

そう言ってヤツは、その手に持っている黒光りする拳銃の引き金を弾いた。

 

そしてバンッ!! という音の直後、俺は頭に響いた痛みと共に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に穂乃果が泣き叫ぶ顔を見てから……。

 

 

 

 

 

 

 




最初に言った通り、ちゃんと新話投稿しますよ?


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堕ちた竜


本当に正真正銘、新話です。



穂乃果side

 

 

穂「い…いやぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!?」

 

私の目の前で、竜ちゃんが撃たれた。

 

その変えようの無い事実に、私は辺りに響くほどの悲鳴を轟かせた。

 

頭を抱えて震える私の足元にまで、赤黒い血の池が広がる。

 

紛れもない竜ちゃんの血だ。

 

いつもの日常だったのに、平凡な会話だったのに、変わらない家路だったのに、ちょっといい雰囲気漂う一日の最後だったのに、最後の最後で突然現れたこの宇宙人のせいで、全て最悪の悲劇に変わってしまった。

 

穂「竜…ちゃん…しっかりして竜ちゃん!! 死んじゃ嫌だよ!!」

 

私は無意識の内に涙を流しながら、長年片想いしていた人の体を揺する。

 

でも……返事は無い。

 

それが認められなくて、夢だと信じたくて、尚も私は叫んだ。

 

「目を開けてよ竜ちゃん!! お願いだから!!……お願い……だから……もう……迷惑かけないから……いい子になるから……だから……死なないでよ…ぐすっ」

 

必死のお願いを私は届けた。

 

届けようとした。

 

でも、現実は無情だった。

 

「感動的だな~。でももうソイツは死んでるよ。なんせ脳をぶち抜いたんだ。まず助からねぇよ」

 

目の前の宇宙人は嘲笑うようにそう言うと、今度は私にその拳銃を向けてきた。

 

「ひっ…!?」

 

「悪いな~地球の嬢ちゃん。目撃者は全員殺せと依頼されてるんだわ」

 

それだけで全てを悟った。

 

ああ……私も死ぬんだって。

 

恐怖は感じる。

 

でもそこまで強くはない。

 

欲を言えばもう少し、ううん、もっともっと海未ちゃんやことりちゃん達と一緒にスクールアイドルしたかった。

 

でも、竜ちゃんのいないそこに意味はあるのかなって、やっぱり考えちゃって、でも未練はあって……。

 

結局、私はどっちも捨てきれなかった。

 

それでも時は止まらない。

 

「じゃあな?」

 

そして引き金が弾かれた。

 

パァンッ!! という音がした。

 

何故か弾がゆっくり見える。

 

確かな死がそこまで来てるのに、思い出すのは雪穂やお母さんとの思い出、海未ちゃんやことりちゃん達との思い出、そして竜ちゃんとの思い出。

 

これが走馬灯なのかな?

 

そんな事をぼんやり考えながら、目を閉じて竜ちゃんの所に逝くのを待っていた。

 

…………。

 

…………………。

 

…………………………。

 

でも、いつまで経っても痛みは来ない。

 

流石に疑問に思ってたら、「ぎゃあぁぁああああっ!?」という宇宙人の叫び声が聞こえた。

 

驚いて目を開けると、私の目の前には誰かの左腕。

 

そして更にその向こうに、弾が当たって苦しんでるのか、痛みに転げ回っている宇宙人がいた。

 

一体何があったの?

 

逆に怪我した宇宙人は、その左腕の主に叫ぶ。

 

「な、何故生きている!?」

 

生きている?

 

その言葉に疑問と微かな希望を持って、左腕の付け根を目で追っていくと、死んだ筈の竜ちゃんが右手で額を押さえて立っていた。

 

血は止まってないのか、ポタッ、ポタッと滴り落ちている。

 

穂「竜……ちゃん?」

 

未だに信じられなくて、私は思わず声をかけた。

 

だって確かに頭を撃たれたのに。

 

確かに血を流してピクリともしなかったのに。

 

私は絶望してたのに、それでも彼は、それを鼻で笑うように、私の方を向いてこう言ってくれた。

 

「お前を守るのが今の俺がやるべき事だ。お前を残して死ねるかよォ…」

 

その言葉に、私はまた涙を流した。

 

今度は悲しみの涙じゃない。

 

嬉しさから来る涙だ。

 

「良かった……良かったよぉ……竜ぢゃぁん……」

 

「あァ?ひでー顔だなァ?」

 

相変わらずの憎まれ口だけど、今はそれすらも嬉しい。

 

竜ちゃんは私から顔を背けると、目の前の宇宙人を睨み付けた。

 

「よォ……スクラップの時間だぜ?クソ野郎……」

 

「なっ、何故だっ!? 何故動けるっ!?」

 

「あァ?知らねェなァ……」

 

竜ちゃんはそう言うと、一歩一歩確実に宇宙人に近づいていく。

 

「くっ、来るなっ!!」

 

宇宙人は拳銃を乱射するけど、竜ちゃんはユラユラ動いて弾を全てかわしきった。

 

す、すごい…!

 

その内、空になったのかカチカチという音がする。

 

それを見た竜ちゃんは左拳を握りしめた。

 

「よォクソ野郎ォ……俺を殺すならまだ分かる。けどなァ……こいつは関係無いだろ!? 俺はめんどくさがり屋で、割りと無責任な人間だ。とてもじゃねェがヒーローには向いちゃいねェ…」

 

そんな事無い……そんな事無いよ竜ちゃん。

 

「あァ分かってる。そンなヤツが今更ヒーロー面なンて、バカバカしいって事ぐらいはよォ。全く……甘過ぎンだよなァ……自分でも虫酸が走る」

 

今竜ちゃんは、立派なヒーローだよ?

 

「でもだからってなァ、今ここでこいつを見捨ててのうのうと死んでいい筈がねェンだ!あァ、綺麗事だってのは分かってる……。でも違うンだよ。例え俺がどれほどの無責任な人間だとしても、どンな理由を並べても、それでこいつの笑顔が消えていい事には、ならねェだろうがっ!!」

 

穂「竜ちゃん………!」

 

ズルいよ……そんな事言われたら私……ますます好きになっちゃうじゃん……。

 

そして竜ちゃんは、その左拳を宇宙人の腹に食い込ませ、そのまま貫いた。

 

「げぶっ!?」

 

一瞬だけ宇宙人は硬直して、すぐに光の粒子になった。

 

竜ちゃんはそれを見届けると、すぐに後ろに倒れそうになった!

 

「竜ちゃん!!」

 

私はそれを支えようと走り出し、なんとか竜ちゃんを受け止める。

 

改めて見ると酷い傷だった。

 

私を守るためにこんな……。

 

「竜ちゃん大丈夫っ!?」

 

「うるせェ……とりあえず……病……院……」

 

「竜ちゃん?竜ちゃん!!」

 

力尽きたのか、竜ちゃんは意識を手放してしまった!

 

マズイよどうしようっ!?

 

と、とにかく救急車呼ばないとッ!!

 

私は急いでスマホを取り出して救急車とお母さん達に電話した。

 

詰まりながらも何とか説明し、その場にいるように指示された。

 

数分後、救急車が来ると竜ちゃんは運ばれ、私も現場に来たお母さんや、竜ちゃんのお母さん、竜ちゃんの一番上のお姉さんの『天青 環』さんと一緒に西木野総合病院に向かった。

 

 

穂乃果sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未side

 

 

竜司が突然現れた宇宙人に頭を撃たれた。

 

私は盾とお茶をしていましたが、その事実を聞いて盾と共に事情を説明した上で母に運転して貰って、搬送された西木野総合病院へ向かいました。

 

海「竜司ッ!!」

 

私が行く頃にはメンバーの全員が、脳外科の診察室の前にいました。

 

海「竜司はっ!? 竜司はどうなったのですかっ!?」

 

穂「海未ちゃん待って!竜ちゃんは大丈夫だから」

 

盾「そうだよ海未。ちょっと落ち着こう?」

 

気が動転してメンバーの誰かに状況を聞き出そうとしましたが、穂乃果と盾に諭されました。

 

何とか落ち着いてイスに座ると、そのタイミングでト字トンファーのような現代的デザインの杖をついた竜司が、彼のお母様と姉である環さんと一緒に出てきました。

 

穂乃果のお母様が、竜司のお母様や環さんと話してる間、穂乃果が竜司に駆け寄ります。

 

穂「竜ちゃん!ごめんね?私のせいで……」

 

竜「なァンでお前が謝るンだよ?気にすンな」

 

私達も続いて竜司に近づき、容態を確認します。

 

海「竜司、大丈夫なんですか?」

 

竜「一応はな?」

 

盾「頭撃たれたって~?」

 

凛「でも傷跡見当たらないにゃ」

 

凛の言う通り、確かに竜司の額に銃痕は無く、それどころか包帯を巻いてすらいませんでした。

 

花「回復凄いね……」

 

ニ「それで済む問題なの?」

 

絵「ハラショー……」

 

希「スピリチュアルやね……」

 

確かにこれは異常です。

 

そう思ってたら、ふと視界の隅で真姫と氷川君が、担当医である真姫のお母様と話していました。

 

耳を澄ませるとこんな内容でした。

 

「ねぇ真姫ちゃん、氷麗君。彼の頭を調べたんだけど、確かに撃たれた痕が彼にはあった。でも自然治癒力がすごいのよ。彼は前頭葉を傷つけられている。本来なら言語機能、運動機能、計算機能は全て絶たれてる筈なのに、それを問題なく行使できるくらいに。おまけに撃たれた痕が綺麗サッパリ消えてるのよ」

 

真「じゃあ、天青先輩は問題なく生活出来るってこと?」

 

「一応はね?でも僅かな後遺症がまだ残ってて、しばらくは杖が必要になるかもね」

 

氷「ふむ……」

 

そこまで聞くと氷川君は顎に指を当てました。

 

何か思い当たるものがあるのでしょうか?

 

そんな時、緋村先輩が手を叩き、みんなの注意をひかせました。

 

茜「どうやら竜司も大事には至って無いようだし、俺達はここらで帰ろう。後は竜司のご家族にお任せして」

 

環さんも言います。

 

「そうよ。後は私達に任せて?竜くんが心配かけてごめんね?」

 

絵「いえそんな……」

 

環さんのほんわか口調に絵里先輩が手を振って謙遜します。

 

結局、この日は解散になりましたが、気にかかることがあります。

 

ここまで盾達が無言だった事。

 

そして竜司の異常な回復力。

 

何か隠されてる。

 

私にはそう思えてなりませんでした。

 

 

海未sideoff

 

 

 

 




簡単な感想でもいいので、是非ください。

じゃないと作者は泣きそうです。


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先輩禁止!#1



素直に申し上げますと、これ以降の昔の話はあまり当てにしない方がいいと思います。



竜司side

 

 

あの一件から数日が過ぎた。

 

穂乃果を守る為に俺は頭を撃たれ、杖が必要な生活に陥った。

 

本来なら死んでる所だが、ウルトラマンによって内側から治療され、今も生きている。

 

それでも完治はしておらず、言語機能やその他諸々はウルトラマンに任せっきり。

 

完治には四年かかるそうだ……クソッタレ。

 

逆に言えば、それまでの間にウルトラマンがいなくなれば、俺は言語機能や運動機能を失うという事だ。

 

ともあれ、この数日は穂乃果にベッタリつかれていた。

 

余程俺の事が心配だったのか、泊まりに来るほどだった。

 

そンな日々を過ぎた現在。

 

陽が暮れても暑さの抜けない季節になった。

 

ニュースの天気予報は連日猛暑を伝え、今年に入ってからの熱中症患者の数を伝えるのに忙しい。

 

炎天下の中、夏休みに入ったにも関わらず屋上で練習するμ’sメンバー達の熱中症リスクは高い。

 

いくら俺たちが効率よく練習出来るよう、サポートしても暑さが拭え無いのでは意味が無い。

 

ニ「あっつ~い……」

 

穂「そうだね~………」

 

ニコ先輩と穂乃果が屋上の入口で、余りの暑さに引きつった笑みで猫背になっている。

 

ニ「っていうかバカじゃないの!? この暑さの中で練習とか!?」

 

ニコ先輩が最もな文句を言う。

 

まァ、確かな文句だな。

 

絵「そんな事言って無いで、早くレッスンするわよ!!」

 

室内じゃ大きな音量までは出せないから、結局外になるンだよなァ。

 

花「は…はい……」

 

そンな絢瀬先輩の言葉に反応したのは、ニコ先輩ではなく、イクスの後ろに怯えながら隠れる花陽だった。

 

何故怯える?

 

絵「あ………花陽、これからは先輩も後輩もないんだから。ね?」

 

花「はい…」

 

そうは言っても、そういうのは中々抜けきらないもの。

 

俺達マネジャー組みたいにはいかないもの。

 

まあ、そもそも俺たちは先輩後輩の概念が曖昧だからな。

 

呼び捨てでいいって言われたら即呼び捨てで呼べるぞ?

 

にしても、怯える花陽を見て少しショックを受けてる絢瀬先輩も不憫だなァ、おい。

 

蒼「絵里、ドンマイ」

 

絵「うう……」

 

蒼燕に肩を叩かれた絢瀬先輩は余計に惨めになった。

 

穂「そうだ!! 合宿行こうよ!!」

 

ニ「はぁ?何急に言い出すのよ?」

 

突然の提案だった。

 

ホントに何を急に言い出してンだこいつはァ?

 

いや、いつものことか。

 

穂「ああ!! 何でこんな良いこと早く思いつかなかったんだろ~!」

 

手を合わせながら言う穂乃果。

 

つーかよォ、まず思いつかねェぞそンなの。

 

せめて夏休みに入ってからだろうがァ。

 

凛「合宿か~…。面白そうにゃ~!」

 

希「そうやね」

 

茜「この連日炎天下じゃ、体調にも関わるからな。いい案なんじゃないか?」

 

意外と賛同意見多いな。

 

花「でも、どこに?」

 

穂「海だよ!夏だもの!!」

 

即答かよ。

 

まァ無難っちゃァ無難か?

 

海「費用はどうするのです?」

 

穂「それは…………っ」

 

海未のお金の問題に対する問いには詰まってしまい、目を背ける穂乃果。

 

竜「お前……考えて無かったのか?」

 

相変わらずその場の勢いだけのヤツだなァ。

 

呆れの目で見ると、穂乃果はことりの手を掴んで隅へ連れていくと、ことりに小声で訊ねる。

 

「ことりちゃん。バイト代いつ入るの?」

 

「ふぇぇぇ!?」

 

竜「ことりにたかってンじゃねェよ……」

 

朱「大体バイト代じゃ、合宿は無理だよ」

 

ことりのお金を当てにする発言をするが、俺と朱雀で却下する。

 

氷「あっ、真姫なら別荘持ってるし、いけるんじゃないですか?」

 

真「ヴェェェ!?」

 

ここで氷麗が代替案を出し、矛先を向けられた西木野は特徴的な驚きの声を出す。

 

別荘持ってるなンて、とことン規格外なお嬢様だな。

 

穂乃果はすぐさま西木野の所へ行く。

 

「えっ!? ホント!? 真姫ちゃんお願~い」

 

西木野に頬擦りしながら言うアホ。

 

真「ちょっと待って!何でそうなるの!?」

 

がめつい、がめついぞ穂乃果。

 

どンだけ合宿行きたいンだよ。

 

絵「そうよ。いきなり押し掛ける訳にはいかないわ」

 

流石は会長。

 

今や立派なまとめ役でありストッパー役だな。

 

しかし何処かに電話をかけていた氷麗が、そのブレーキを簡単にぶち壊す。

 

「おじさんに聞いたら良いってさ」

 

「「やったぁ(にゃ~)!!」」

 

氷麗が西木野の父親から許可を貰い、それを聞いた穂乃果と星空が喜ぶ。

 

真「ちょっ!? 何勝手にやってんのよ氷麗のバカ!!」

 

氷「そうは言うけど、ほら……」

 

抗議をあげる西木野に、氷麗は穂乃果の方を指差す。

 

そこには、捨てられた子犬のように目をウルウルさせている穂乃果が。

 

これは穂乃果お得意の諦めに見せた遠回しの懇願攻撃。

 

しかもよく周りを見たら、他の奴等も何気に期待している目ェしてるぞ。

 

あの絢瀬先輩まで、少し気が引けるけどお願いできないかしら的な視線を送っているぞ。

 

それを見た西木野は遂に、

 

「うぅ~……もう!分かったわよ!!」

 

観念した。

 

哀れなり、西木野。

 

絵「フフ♪ そうだ……これを機に、やってしまった方がいいかもね♪」

 

その言葉を聞いた全員が、絢瀬先輩の方に向くが、絢瀬先輩はただ「フフ♪」と微笑むだけだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

旧い時代を感じさせる赤煉瓦造りの東京駅丸の内駅舎は、中に足を踏み入れれば雰囲気が外装とは様変わりする。

 

自動券売機や自動改札機といった日々進歩していく技術が詰め込まれ、古めかしさは一切感じない。

 

そんな奇妙なドームの中で、俺たちは集まっていた。

 

穂「えぇぇぇぇ!? 先輩禁止!?」

 

穂乃果がうるさいくらい叫ぶ。

 

いやホントうるさい。

 

もうちょっと声を抑えろや。

 

他の人に迷惑だろうがァ。

 

絵「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩は勿論大事だけど、踊っているときにそういうことを気にしちゃ駄目だから」

 

海「そうですね。わたしも3年生に合わせてしまうところがありますし」

 

まァ、部活をやっている以上はそうなるだろうな。

 

この上下関係は中学、高校、大学、社会と上がるにつれて重要な事になってくる。

 

だが、スクールアイドルにとっては少し障害でもある。

 

歌って踊っている最中にもそれを意識してしまえば、先輩に当たらないようにとか、そういう変な気遣いのせいで集中力が乱れる場合もある。

 

特に1年は3年に気を遣ってしまうだろう。

 

ニ「そんな気遣い全く感じないんだけど?」

 

凛「それはニコ先輩が上級生って感じじゃないからにゃ~」

 

ニコ先輩の不満に、星空がさらりと言ってしまう。

 

せっかく皆が今まで口に出さなかったというのに。

 

当然その言葉はニコ先輩の癇に障る。

 

ニ「上級生じゃなきゃ何なのよ?」

 

「んー」と考えた後に星空は答える。

 

「後輩?」

 

穂「ていうか、子供?」

 

希「マスコットかと思ってたけど」

 

虎「アハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

その言葉に虎亜は腹を抱えて笑う。

 

つーかよォ、穂乃果も東條先輩も容赦ねェなァおい。

 

ニ「どういう扱いよ!っていうか虎亜は笑いすぎ!!」

 

言いたい放題言われ、しかも笑われたニコ先輩は当然のごとく怒る。

 

絵「じゃあ早速、今から始めるわよ。穂乃果」

 

上手い感じに本題を戻しつつ、それを実施させる絢瀬先輩。

 

1番の上級生からの振りなら、穂乃果もやりやすいだろう。

 

穂「あ、はい!良いと思います!え、え……絵里ちゃん!」

 

そう言った穂乃果は、おそるおそる目を絢瀬先輩に向ける。

 

絢瀬先輩は「うん♪」と満足そうに笑った。

 

それに対して穂乃果は、

 

「はぁ~…何か緊張……」

 

胸を撫で下ろす。

 

竜「穂乃果でも緊張するンだな。初めて知った」

 

穂「失礼だよ竜ちゃん!!」

 

だってお前はいつだってポジティブ溢れだすヤツだからよォ、そンなのに無縁だと思ってたンだよ。

 

別にバカにはしてない……してない筈。

 

凛「じゃあ凛も!」

 

挙手した星空は深呼吸する。

 

凛「ことり……ちゃん?」

 

こ「はい、よろしくね。凛ちゃん。……真姫ちゃんも」

 

真「えっ?」

 

ことりが言うと、メンバー全員の視線が西木野へと集中する。

 

西木野は気恥ずかしそうに顔を紅くしながら腕を組む。

 

「べ、別に、わざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ?」

 

強気な口調が苦し紛れに聞こえる。

 

それもそうだが、だからと言ってそこまで呼ぼうとしないとか照れてンのかよ。

 

相変わらずのクソめンどくせェツンデレっぷりだな。

 

ここで無理強いはしないようで、絢瀬先輩の視線は西木野から離れて俺たちへと移る。

 

絵「じゃあ、天青くん達も。苗字でも名前でも、どっちでもいいわよ?」

 

チッ、俺達もかよ。

 

竜「チッ、絵里ィ…」

 

絵「えっ?なんで私今舌打ちされたの?」

 

一々気にすンなよめンどくせェ……。

 

盾やイクスも言う。

 

「絵里ちん?」

 

火「カス絵里……」

 

絵「なんで私『カス』って呼ばれたのっ!?」

 

おー、中々のツッコミだな。

 

地味に動揺する絵里を蒼燕が宥める。

 

「まぁ落ち着け絵里。お前の聞き間違いだ」

 

「いや聞き間違いじゃないわよね!? 明らかにカスとか舌打ちされたわよね!?」

 

「お前は疲れてるんだよ間抜けエリーチカ」

 

「今『間抜け』って言った!! 絶対言った!!」

 

いい反応だ。

 

感動的だな。

 

蒼燕がからかうのもよく分かる。

 

しばらくムスッとした顔で蒼燕を睨んでいた絵里だが、やがて諦めたのか溜め息を吐いてから咳払いする。

 

「んっん……では改めて、これより合宿に出発します。部長の矢澤さんから一言」

 

ニ「えっ!? ニコ!?」

 

仕切り直した絵里からの予想外な一言で、自身を指差して固まるニコ。

 

一応部活の合宿なんだから、部長が何か言わないとな。

 

虎亜はそんなニコの背中を押す。

 

「ほらニコ……」

 

ニコはとぼとぼと中心に歩いてきた後、

 

「しゅ、しゅっぱーつ!!」

 

それだけ言って、後は黙った。

 

数秒、俺達のいる空間だけ、時間が止まったような沈黙が生まれた。

 

穂「……それだけ?」

 

ニ「考えてなかったのよ!」

 

だろうな…。

 

こンな感じで電車に乗り込ンだ。

 

 

 



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先輩禁止!#2



書けば書くほどお気に入り登録してくれた方が逃げていき、リメイクってダメなのかな~と、後悔してます。

でもそんな事は気にせずどうぞ。



電車に揺られ数時間。

 

別荘に着いた感想だが、でかい……。

 

とにかくでかい。

 

他のメンバーも同様で、唯一氷麗が驚いてなかった。

 

西木野……真姫の家で居候してるって話だし、馴れたンだな。

 

「「「「「「「おぉ~」」」」」」」

 

氷「相変わらずすげぇよな…」

 

穂「すごいよ真姫ちゃん!」

 

凛「さすがお金持ちにゃー!」

 

真「そう?普通でしょ?」

 

真姫は穂乃果と凛の賞賛を何でもないと言わんばかりに返す。

 

何でもなくはないだろ…。

 

目の前にプライベートビーチがある別荘なンて、そうそうお目にかかれるもンじゃねェぞ。

 

氷麗も思ってるようで、

 

「何が普通だよ?こんな別荘は普通じゃあり得ねぇよ……」

 

とぼやく。

 

真「何言ってるのよ。昔はよくパパとママと私とあんたの四人で一緒に来てたんだから、もう馴れたでしょ?」

 

氷「そりゃそうだが…」

 

幼馴染みだからこそ出来る体験か。

 

ニ「ぐぬぬぬぬぬ……」

 

ニコは何故かぐぬぬっていた。

 

そンなに悔しがる必要ないンじゃね?

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

次に来たのは寝室。

 

しかしまァなンつーか……ベッドがでかい。

 

とにかくでかい。

 

無駄にでかい。

 

そのでかさに穂乃果と凛と海未は思わず「わぁ~!!」という声を出していた。

 

何でもかンでも大きくすればいいってものじゃねェだろうがァ。

 

穂「こことーった!!」

 

そう言ってベッドに勢い良く飛び込ンだ穂乃果。

 

オイオイ、愉快にケツ振りやがって!

 

誘ってンのかァ!?

 

そしてそンな穂乃果に続くように、凛もベッドにダイブする。

 

「凛はこっち~!」

 

竜「お前ら……」

 

盾「ふかふかだし、広そうだね~」

 

盾や海未はともかく、このバカ2人はよくこンな事ではしゃげるな。

 

オイ穂乃果、ベッドの上でゴロゴロしてンじゃねェ!

 

凛「海未先輩たちも早くとった方が……あっ」

 

海「やり直しですね」

 

あの絵里がいきなり言った事だ。

 

急に先輩禁止と言われても中々慣れないのが普通か。

 

凛「うんっ!海未ちゃん、盾君、竜司君、穂乃果ちゃん」

 

1年でもノリが軽い凛なら、慣れるのに時間はそうかからないだろう。

 

穂「竜ちゃん!一緒に寝よ!」

 

竜「ほざいてろアホが」

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嵐助side

 

 

竜司達は二階に行ったが、俺は西木野の別荘に着くとすぐにキッチンの方に向かった。

 

理由は俺が恐らく料理当番になると思うから。

 

側には南さんや西木野、ニコさんもいる。

 

そんな彼女達に構わず、俺は調理器具やら調味料の場所を確認していく。

 

って………あれ?

 

思ったより少ない……。

 

包丁とか最低限のものはあるみたいだが……。

 

そんな時だ。

 

ニ「りょ、料理人っ!?」

 

ニコさんの仰天声が聞こえた。

 

そちらに振り向くと、西木野にニコさんと南さんが向かい合っており、それを遠目から朱雀と氷川が見ていた。

 

真「そんな驚く事?」

 

こ「驚くよ~。そんな人が家にいるなんて……凄いよね!」

 

朱「一般家庭に料理人がいる事自体が普通におかしいんだよ……」

 

西木野の家には料理人とかがいるらしい。

 

何故こういうお金持ちお嬢様は一般の人と少し感覚がズレているのだろうか?

 

ニ「っ……へえ~、真姫ちゃん家もそうだったんだ~!にこん家も~専属の料理人、いるのよねえ~!だからにこぉ、ぜ~んぜん料理なんかやった事なくて~」

 

こ「へえ~!ニコ先輩もそうだったなんて~!」

 

ニ「にこにーでしょ」

 

こ「え?」

 

ニ「ニコ先輩じゃなくて、にこにー!」

 

こ「あ……うん!!」

 

………なんかいい感じに終わろうとしてるけど、ニコさん、あんた絶対それ見栄だろ?

 

まぁ、後で虎亜に聞けばいいか。

 

 

嵐助sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司side

 

 

全員が練習着に着替え、外に集合したところで練習メニューを考えてきた海未の説明が始まった。

 

「これが!合宿での練習メニューになります!」

 

海未は窓に貼った練習メニューを指しながら言う。

 

希「おー…」

 

こ「凄い……こんなにびっしり…」

 

練習メニューには遠泳10kmにランニング10km、精神統一や腕立て腹筋20セットと書かれていた。

 

何ですかこれはァ?

 

トライアスロンの選手の練習メニューかァ?

 

遠泳10kmって何だよ…。

 

穂乃果と凛とニコはそれぞれ水着に着替えていて、既に海で遊ぶ気満々。

 

まさかこれから練習するなんて思っても見なかった3人の表情は実に不服そうだ。

 

穂「って海はぁ!?」

 

海「……私ですが?」

 

穂乃果の言葉に海未がキョトンとした顔で返す。

 

ナニイッテンダ!! フジャケルナ!!

 

盾が海未のボケにツッコム。

 

「違うよ海未。海未じゃなくて海ね…」

 

海水の海を指差しながら言う盾。

 

海「あ~、それなら……ほら♪」

 

手を合わせて納得した海未は満面の笑みで遠泳10kmと書かれているところを指差した。

 

穂「遠泳、10キロ……!?」

 

ニ「その後ランニング10キロ……!?」

 

それを見た穂乃果とニコは10kmという数字と、その後に書いてあるランニング10kmに顔を引きつらせていた。

 

そりゃそうなるよな。

 

俺だって絶対やだ。

 

朱雀やイクスすら、顔を引きつらせていた。

 

海「最近、基礎体力をつける練習が減っています。折角の合宿ですし、ここでみっちりとやっといた方が良いかと」

 

盾「それ……みんなの体力は持つの?」

 

海「大丈夫です!熱いハートがあれば!!」

 

竜「お前はどこの超熱血テニスプレイヤーだ」

 

何?練習中誰かがへばっていたらその人そっくりに応援するの?

 

いくら大和撫子の海未でも暑苦しいこと極まりない。

 

正直ンな事をされたらイラッとくる。

 

ニ「やる気スイッチが痛い方向に入ってるわよ……。何とかしなさい」

 

穂「う、うん……凛ちゃん!」

 

凛「分かったにゃ!」

 

3バカトリオは何やら相談して、海未を説得しようとしていた。

 

すると凛は海未の手を引き、

 

「あー!海未ちゃんあそこー!」

 

「えっ!何ですか!?」

 

そう言って空を指差していた。

 

穂「今だー!」

 

ニ「行っけー!」

 

その間に穂乃果とニコ、ことりに花陽は砂浜の方へ走っていった。

 

海「あ、あなた達ちょっとー!?」

 

絵「まぁ、仕方ないわね~」

 

海「えぇ…?良いんですか絵里先輩………あ」

 

先輩禁止に気づいた海未に、絵里はウインクしながら人差し指を立てて言う。

 

「禁止、って言ったでしょ?」

 

海「すみません……」

 

「μ'sはこれまで、部活の側面も強かったから、こんな風に遊んで、先輩後輩の垣根を取るのも、重要な事よ?」

 

盾「それにまだ合宿は始まったばかりだよ。1日くらい許してあげよう?海未」

 

絵里の言葉に海未がイマイチ納得いってない表情をしていたが、盾が海未の頭をポンポンと撫でると、海未はコロッと「分かりました」と態度を変えた。

 

朱「まあ……遊ぶなら勝手にして。僕は寝てるから」

 

朱雀が昼寝をしようとしたので、俺とイクスも便乗する。

 

竜「じゃあ…俺も…」

 

火「俺も…」

 

そう言って俺たち3人は別荘の中に入る。

 

絵「あっ、コラ!3人とも待ちなさい!!」

 

絵里が止めにくるが、

 

蒼「好きにさせてやれ。あいつらには、あいつらのペースがあるんだ」

 

蒼燕が絵里を止める。

 

絵「でも……」

 

蒼「第一、先輩後輩の垣根を取るのは、お前らμ’sのメンバーの方だろ?」

 

それでも絵里はまだ不服そうだ。

 

蒼「俺と虎亜と茜、寺獄と氷川と土方で充分だろ?」

 

蒼燕がそう言うと、絵里は渋々納得した。

 

それを聞いた俺とイクスと朱雀の3人は今度こそ、昼寝をしにいく。

 

つーか、杖を使ってるヤツが海で遊べるかよォ。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼燕side

 

 

竜司と朱雀と火神の3人が昼寝をしている間、俺たちは水着に着替えて、ビーチに出る。

 

絵里たちμ’sのメンバーは、海ではしゃいだり、水鉄砲で遊んでいた。

 

虎亜と茜がカメラで、その様子を録っていた。

 

なんでも次のPVで使うとか……。

 

唯一、西木野……真姫がパラソルの下でイスに座って読書をしていて、氷川は隣でだらけている。

 

寺獄と土方は、スイカ割りの用意をしている。

 

俺はというと、砂浜に座り海を静かに見ていた。

 

そこへ絵里が来た。

 

ロシアのクォーターっていうだけあって、スタイルは抜群で、水着になると色気が溢れ出る。

 

絵「何してるの?蒼燕」

 

そう言って俺の隣に座る。

 

蒼「いや、ちょっとな……。昔の事を思い出してた……」

 

絵「そう……」

 

それだけ呟くと、絵里も俺と一緒に海を見る。

 

しばらくの静寂が流れたが、不意に絵里が口を開く。

 

「あの時はすごく心配したのよ?」

 

「そういや、あの時の絵里はめちゃめちゃ泣いてたな」

 

「も、もう!茶化さないで!! ホントに心配したのよ!? 私のせいで蒼燕が死ぬんじゃないかって……」

 

顔を赤くしながら睨む絵里だが、すぐにその顔を暗くする。

 

ああ、よっぽど心配かけてたみたいだな。

 

蒼「悪かったよ…」

 

俺は茶化した詫びに絵里の頭を撫でる。

 

まだ幼い時、絵里の家族と俺の両親で海に行った事がある。

 

その海はとても綺麗で、絵里が物凄くはしゃいでいた。

 

それが仇になったのか、準備体操をしなかった絵里は足をつり、溺れかけた。

 

それにいち早く気づいた俺が絵里を担いで助けたのだが、今度は俺が急に来た大波にさらわれ溺れた。

 

何とか火事場のバカ力で絵里だけでも浅瀬に放り込めたが、急な事だったので息を満足に吸えず、深いところまで溺れた。

 

このまま死ぬんだなって、その時やけに冷静だったのを覚えてる。

 

諦めていたその時、海の底から青い光が俺にせまり包み込んだ。

 

そこで俺はアグルと出会った。

 

その後の事はよく覚えてない。

 

気づけば絵里が俺に抱きついて、泣きわめいていた事だけは覚えている。

 

両親に聞くと、俺が青い光に乗って現れたとの事らしい。

 

そしてその時から、俺の右手首にはアグレイターが装着されていた。

 

絵「あの時の青い光って、結局何だったのかしら?もしかして、あれってアグルなのかしら!!」

 

絵里は目をキラキラさせながら聞いてくるが、俺はそれを「さぁな……」と言ってあえてぼかす。

 

こいつをこっちの危険な世界に踏み入れさせる訳にはいかないからな……。

 

その時、穂乃果と希が大声で呼んでくる。

 

穂「おーーい!! 絵里ちゃーん!蒼燕さーーん!!」

 

希「二人ともー!そんなとこでイチャついてないで、こっちに来なよーー!!」

 

絵「イ、イチャついてなんかいないわよ!!」

 

大声で否定する絵里。

 

俺は立ち上がり、絵里に言う。

 

「行くか?絵里」

 

そして歩き出すと、

 

「あっ、待ってよ蒼燕!!」

 

絵里も手を伸ばしながら慌てて俺の後を着いてくる。

 

俺と絵里は並んで歩くがその途中、俺は不意打ちで絵里の水着を褒めた。

 

「あっ、絵里。その水着よく似合ってるぞ」

 

「っ~~~~!?///」

 

すると絵里は面白いくらいに顔を真っ赤にしながら俯く。

 

やっぱ可愛いな、絵里は。

 

 



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先輩禁止!#3






竜司side

 

 

竜「あァ?」

 

しばらく昼寝をしていた俺が現代的デザインの杖をつきながら下に降りると、どうやら全員海での遊びを終えてリビングに集まっているが、何やらお困りの雰囲気だった。

 

ちなみに、朱雀やイクスはとっくに起きていて、俺が最後だったみたいだ。

 

俺は近くにいた穂乃果に話し掛けてみた。

 

「どうかしたのか?」

 

「あっ、竜ちゃん!! 何で海に来なかったの!? 穂乃果ずっと待ってたんだよ!!」

 

「いい歳して誰が海ではしゃぐかよ……。それより何があった?」

 

それにこっちは杖ついてンだぞ?

 

遊べる訳ねェだろうがァ。

 

穂乃果の文句を一蹴すると、穂乃果は「むー」と頬を膨らませていたが、やがて訳を話してくれる。

 

どうやら厨房にいる嵐助の話だと、何でも買い出しに行かないといけないらしい。

 

竜「食材が足りなくなったのか?」

 

希「無いことはないんやけど、どうしても今日の晩御飯だけで無くなっちゃうみたいで……」

 

希が近くにきて、説明のフォローをしてくれる。

 

希「そんでな?真姫ちゃんの話やと、ここからスーパーが遠いらしくて……」

 

あー…成る程な……。

 

真「別に、私一人で行ってくるからいいわよ」

 

穂「えっ?真姫ちゃんが?」

 

真「私以外、お店の場所分からないでしょ?」

 

何故か真姫一人で行くと言い出す。

 

何も一人で行かなくても……。

 

希「じゃあウチがお供する!」

 

真「え?」

 

希「たまにはいいやろ?こういう組み合わせも」

 

希は少々強引ながらも真姫に提案した。

 

真姫は少し戸惑いつつも、小さく頷いた。

 

希「それじゃ、行ってくるね」

 

氷「ちょい待ち。俺も行くぜ!」

 

茜「荷物持ちくらいにはなるだろ?」

 

氷麗と茜が席を立ち、提案してくる。

 

真「なっ!? 氷麗たちも来るの?」

 

氷麗と茜も着いていこうとするとしたら、希が行くと言った時よりも驚いていた。

 

氷「当たり前だろ?いっぱい買い込まなきゃいけないんだから、荷物が重くなるだろ?それに、女の子だけで行かすのは不安だ」

 

真「……勝手にすればっ」

 

顔を赤くして一足先に玄関へ行ってしまった。

 

希「もしかしてウチ、お節介?」

 

氷「いえいえ、そんなことは。あれは好意の裏返しってやつです」

 

希「幼馴染が言うんやったらそうなんやね……。あと敬語」

 

氷「あー…善処します…」

 

氷麗と希は話をしながら、茜と共に素直じゃない後輩の後を追いかけた。

 

 

竜司sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茜side

 

 

希「おぉ~!! キレイな夕日やね~」

 

茜「そうだな」

 

スーパーから別荘への帰り道。

 

俺は買い物袋を持って希と並んで歩く。

 

氷麗と真姫は俺達よりも少し後を歩いていたが、突如真姫が訊ねてきた。

 

「どういうつもり?」

 

希「別に?真姫ちゃんは面倒なタイプだなぁって…」

 

「……氷麗や茜先輩は、なんでそんなに私に構うの?」

 

真姫は隣にいる氷麗と、斜め前にいる俺に訊ねてきた。

 

茜「何でだと思う?」

 

氷「俺は昔真姫に助けられたから、その恩返しがしたいだけ。要するに、自己満足かな」

 

俺は質問に質問で返し、氷麗ははっきりとその理由を言う。

 

希「本当はみんなと仲良くしたいのに、中々素直になれない」

 

真「……私は普通にしているだけで」

 

希「そうそう。そうやって素直になれないんやね……」

 

真「っていうか!どうして私に絡むの!?」

 

希に立て続けに攻められ、反撃と言わんばかりに言葉を荒げた。

 

希「ん~……ほっとけないわよ。よく知ってるから。あなたに似たタイプ」

 

絢瀬……絵里のことか。

 

真「……何それ」

 

まさかのカウンターを喰らった真姫は、何も言えなくなってしまった。

 

希「まっ!たまには無茶してみるのもいいと思うよ。合宿やし♪ なっ、茜くん?氷麗くん?」

 

氷「えっ!?」

 

ここで俺たちに振るか…。

 

氷麗なんか突然のことで驚いてるぞ。

 

茜「そうだな…」

 

氷「まあ……偶になら………」

 

残念ながら、歯切れ悪くしか答えられない。

 

だが希は満足したようで、伸びをしながら言う。

 

「立ち話もこの辺にして、そろそろ戻ろっか。もしかしたら、みんなお腹空かせて待ってるかもしれんしな?」

 

氷「俺たちも行こっか…真姫」

 

真「………うん」

 

夕日のせいもあってか、心なしか顔が赤い真姫。

 

そんな真姫に優しく声をかける氷麗。

 

俺も「フッ」と微笑して一歩歩み出したその時。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

突然地響きがして、後ろから大きな獣の咆哮が聞こえた。

 

「グゴオオオオオオ……!!」

 

希「あれは……」

 

真「また怪獣!?」

 

俺たちの遥か後方に現れたのは、四足歩行で溶岩のように煮えたぎった体を持つ怪獣だった。

 

希は見覚えがあるのか顔を険しくさせ、真姫は嫌気が差したような声を出す。

 

まぁ真姫の気持ちも分かる。

 

合宿に来てまで怪獣の脅威に晒されるのだから、堪ったものじゃない。

 

とは言え、ここにいたら危ない。

 

茜「とにかくここから逃げるぞ!!」

 

希「そうやね!」

 

真「あーもう!! 最悪!」

 

氷「確かにな……」

 

俺はすぐに指示を出し、3人を先頭にして走らせる。

 

しばらく走ると俺は徐々に3人から距離を取り、横の路地に入る。

 

周りに誰もいないのを確認すると、懐から『マックススパーク』を取り出す。

 

茜「マックス……力を貸してくれ」

 

そう言って俺はマックススパークを掲げ、左腕に装着。

 

瞬間、俺は胸から徐々に変わっていき、完全にウルトラマンマックスになると巨大化した。

 

 

茜sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

溶岩怪獣・グランゴンは未だに暴れていた。

 

辺りの林を踏み潰し、前進する。

 

しかしそんなグランゴンの前に一体の光の巨人が降り立つ。

 

「シュワッ!」

 

ウルトラマンマックスだ。

 

(BGM:ウルトラマンマックス2)

 

マックスはボクシングのようなポーズをとる。

 

「ゴオオオオオオ……!!」

 

グランゴンは威嚇すると真っ直ぐマックスに向かってくる。

 

しかしマックスはそれを瞬間移動で後ろに回り、グランゴンの尻尾を掴み、持ち上げる。

 

「シュオォォォォ……!!」

 

そして三回ほど振り回し、海の方に投げる。

 

「シェヤァァァァァァ!!」

 

グランゴンは海面に顔から突っ込み、一瞬沈むが直ぐに浮上した。

 

「ゴオオオオオオ……!!」

 

グランゴンは口から火炎弾を乱射する。

 

マックスは頭に付いてる武器『マクシウムソード』を取り、正確にグランゴンの火炎弾を切り裂いて防ぐ。

 

それでもグランゴンはめげずに火炎弾を吐くが、マックスは余裕で切り裂いて防ぐ。

 

その時だった。

 

希「茜くん!何処!? 何処におるん!!」

 

茜がいないことに気づいた希がここまで戻って来ていた。

 

しかも運の悪いことにマックスが弾いた火炎弾が希に降り注いでいた。

 

希「あ……っ」

 

「フッ!?」

 

それに気づいた希は襲い来る衝撃に備えて両腕で頭を覆い、目を瞑るが、いつまで経っても痛みはおろか衝撃も来なかった。

 

なので希はおそるおそる目を開くと、そこにあった光景に驚愕で目を見開いた。

 

希「………ウルトラマンマックス……」

 

そう、マックスが希を火炎弾から庇っていたのだ。

 

マックスは希に頷くと、立ち上がりながらグランゴンの方に振り向く。

 

そしてマックスは左腕を胸の前に持っていき、天に掲げる。

 

すると左腕のマックススパークに光が集まる。

 

そして逆L字にして撃つ、『マクシウムカノン』を放つ。

 

「シュワァァァァ!!!!」

 

「グゴオオオオオ……!!」

 

マクシウムカノンはグランゴンに当たり、グランゴンを爆散させる。

 

それを見届けたマックスはゆっくりと構えをとき、希の方に顔を向け頷く。

 

希「ありがと。マックス」

 

希は微笑む。

 

それを見たマックスは、上空に飛び去る。

 

「シュワァァ!!」

 

 

◎sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茜side

 

 

マックスの変身を解いた俺は、希の元に向かう。

 

茜「希ぃーー!!」

 

希「茜くん!!」

 

茜「希!何でここにいるんだ!? 危ないだろ!?」

 

俺がそう言うと、希は俯きながら言う。

 

希「だって……急に茜くんいなくなって…それで……」

 

茜「そっか……すまない…」

 

結果的に俺が希を危険な目に合わせたのか…。

 

最低だな……俺は。

 

希「えっ?……あ、茜くん!?」

 

希は驚いたような上擦った声を上げる。

 

俺が頭を撫でているからだ。

 

茜「心配かけてすまない。後、怒鳴って悪かった」

 

希「………ん~ん。ええんよ……////」

 

そう言ってはにかんだ希の頬は赤くなっていた。

 

普段大人っぽいのに、こういう所では年相応な女の子だ。

 

そう思いつつ、俺は話題を変える。

 

茜「そう言えば、氷麗と真姫は?」

 

希がいるのに、あの二人がいないので希に訊くと

 

希「あっ!! しまった!! あの二人待たせとんや!!」

 

はっとしたように言う。

 

どうやらここにいるよう指示して待たせていたようだ。

 

茜「なら早く行かないとな…」

 

希「そうやね!」

 

そう言って俺と希は、並んで真姫と氷麗の元へ走った。

 

 

 



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先輩禁止!#4




※寝る場所を決める所から台詞の加筆があります。



竜司side

 

 

嵐「もう少しで完成するから、もうちょい待ってろよ~」

 

茜たちが買い出しから帰ってきたちょうどに、嵐助による夜メシの準備が整ったようだった。

 

こ「ごめんね~。私が料理当番だったのに、モタモタしてたから…」

 

嵐「いいっていいって。料理は俺の得意分野なんで♪」

 

ことりの謝罪に気にすることも無く、踊るように料理を作っている嵐助。

 

ニ「………なかなかやるわね…」

 

ニコが爪を噛みながら、悔しがる。

 

何でだよ?

 

ちなみに今日の夜メシの献立はカレーライスとサラダ。

 

お好みでシーザードレッシングやゴマだれドレッシングのボトルがテーブルの上に置かれていた。

 

ただ、花陽だけはカレーとご飯が別々で装っていた。

 

絵「な、何で花陽だけ、お茶碗にご飯なの?」

 

花「気にしないでください」

 

蒼「いや気にするだろ…」

 

花陽の気にしない発言にツッコム蒼燕。

 

穂「それじゃあ!みんな手を合わせてー!!」

 

穂乃果が号令を出すようで、他は穂乃果に従って手を合わせる。

 

『いただきまーす!!!!』

 

嵐「御上がりよ!!」

 

全員で礼儀正しく声をそろえた後、嵐助がどうぞ的なことを言うと全員目の前のカレーを口にした。

 

穂「美味しい!」

 

希「嵐助くん、これホントに美味しいんやけど!」

 

凛「当然にゃ!! 嵐兄にかかれば、ラーメンだって朝飯前にゃ!」

 

嵐「フッ……次の飯も期待しとけ!」

 

2人が嵐助を褒めると、何故か凛が胸を張る。

 

嵐助も誇らしげだ。

 

確かにめちゃくちゃ美味い。

 

すると虎亜が不思議そうにニコに訊く。

 

「そういえばニコも料理上手いんだが、ニコは作らなかったのか?」

 

瞬間、ニコはギクッとする。

 

こ「あれ?でも昼に、料理なんてしたことないって言ってましたよ?」

 

虎「は?どういうことだ?」

 

ことりの答えに虎亜が眉を潜めると、さらにニコの顔が引きつる。

 

真「言ってたわよ」

 

と真姫がことりの証言を補足する。

 

真「いつも料理人が作ってくれるって」

 

あっ、察した。

 

虎亜も同じようでニコに憐れみの目を向ける。

 

どうせ真姫の家に料理人がいるっていうことに、便乗したとか、そんなところだろう…。

 

ニ「いや……」

 

一瞬歯切れ悪くなったニコは、膝元に降ろしたスプーンを両手で握る。

 

ニ「ニコ、こんな重いもの持てなーい」

 

虎「何言ってんだお前」

 

虎亜だけではなく、俺も含めたメンバー全員がニコに呆れたような困ったような視線を送っている。

 

虎亜の言葉が癇に触ったのか、目つきを鋭くして立ち上がる。

 

顔の横には、重いとかほざいていたスプーンが片手で掲げられている。

 

ニ「これからのアイドルは、料理のひとつやふたつ作れないと、生き残れないのよ!」

 

穂「開き直った!」

 

ニ「大体!虎亜が余計な事を言うから!!」

 

責任を擦りつけようとするニコに対し虎亜は、

 

「フッ…。嘘をついた…お前が悪い……」

 

と何時もイライラしてる、どこぞの蛇男みたいな感じで言う。

 

そンなこンなで食事が終わり、すぐに穂乃果はソファに横になる。

 

穂「はぁ~……食べた食べた~」

 

それを見た海未が言う。

 

「いきなり横になると牛になりますよ?」

 

穂「も~、お母さんみたいな事言わないでよ~」

 

文句を垂れる穂乃果。

 

凛「よーし!じゃあ花火をするにゃー!」

 

2人目のバカ、凛がおもむろに立って何を言いだすかと思えばこれだ。

 

花「その前に、ご飯の後片付けしなきゃ駄目だよ」

 

花陽がそう言うと、ことりが控え目に挙手をする。

 

「あ、それならわたしやっとくから、行ってきていいよ」

 

花「え、でも………」

 

朱「ダメだよ」

 

絵「そうよ。そういう不公平は良くないわ。皆も、自分の食器は自分で片付けて」

 

朱雀はともかく、花陽も絵里もやはりそういう事は気にしてしまう傾向があるらしい。

 

誰か1人に押し付けるのは良くないのだと。

 

蒼「なら片付けは俺達がしとくよ」

 

絵「でも蒼燕……」

 

蒼「絵里、ここはマネージャーである俺達に任せてくれ」

 

虎「こういうのも俺達の役目だろ?」

 

確かに練習じゃ殆ど役に立たないしな、俺達。

 

いや、茜や朱雀は別か?

 

海「ここは雨崎さん達のお言葉に甘えさせてもらうとして、まず花火よりも練習です」

 

このムードにとンでもない爆弾を落としたぞこの熱血娘。

 

夜に練習とか正気かよ。

 

ニ「うえ……これから?」

 

ニコが眉を潜め、凛が口をとがらせる。

 

海「当たり前です。昼間あんなに遊んでしまったのですから」

 

こ「でも……そんな空気じゃないっていうか……特に穂乃果ちゃんはもう………」

 

おそるおそる意見したことりが目配せした先で、ソファに座る穂乃果が寝返りを打つ。

 

穂「竜ちゃーん、お茶まだー?」

 

竜「ふざけンな。自分で淹れろ」

 

何で俺が淹れなきゃならン……。

 

寝言かもしれないが。

 

海「家ですか!?」

 

真姫は自分の食器を持って立ち上がる。

 

「じゃあ、これ片付けたらわたしは寝るわね」

 

凛「え?真姫ちゃんも一緒にやろうよー花火」

 

氷「そうだぜ。やろうぜ」

 

海「いえ。練習があります」

 

ニ「本気……?」

 

どンだけ練習したいンだこいつ。

 

体力あり余ってンのかァ?

 

凛「そうにゃ。今日は皆で花火やろう?」

 

海「そういうわけにはいきません」

 

凛「かよちんはどう思う?」

 

この討論に花陽を参加させるのは酷だろう。

 

花陽は気まずそうに主張する。

 

「わ、わたしは……お風呂に」

 

ニ「第三の意見出してどうするのよ」

 

この意見のぶつかり合い、いつ終わるンだ?

 

穂「竜ちゃーん、お茶ー」

 

竜「あー、分かった分かった…」

 

穂乃果は本当に寝ているのだろうか。

 

俺がそう思っていると、希が第四の意見を投じる。

 

「じゃあもう今日はみんな寝ようか。みんな疲れてるでしょ?練習は明日の早朝。それで、花火は明日の夜する事にして」

 

凛「そっかぁ!それでもいいにゃ」

 

海「確かに、練習もそちらの方が効率が良いかもしれませんね」

 

ようやく凛と海未は納得し、ニコは安心したのか胸を撫で下ろした。

 

あのストイックな海未を説得できるのは、盾とこの人くらいだろう…。

 

穂「お茶ー」

 

竜「うるせェぞ!いい加減にしないとお茶ぶっかけるぞ!!」

 

俺の怒鳴り声に全員苦笑いする。

 

場を総括した希は言った。

 

「じゃあ決定やね」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

μ’s組が風呂に入っている間にマネージャー組で食器を洗って片付け、交代でお風呂に入って上がるとリビングに布団が敷かれていて、その上で穂乃果と凛とニコがコロコロ転がっていた。

 

朱「なにこれ?」

 

こ「今日はみんなでここで寝ようってことになったんだー」

 

朱雀が訊ねると、ことりがこの状況を説明してくれた。

 

布団はきっちり18枚敷かれていた。

 

チッ、これは逃げられないな。

 

穂「竜ちゃんは私の横ね♪」

 

竜「寝言は寝て言いやがれ」

 

穂「えぇー!? 何で何でー!?」

 

何でじゃねェよ。

 

いつの話してンだァ?

 

それは小学生の時だろ。

 

俺達もう高校生だぞ。

 

真「どうして全員同じ部屋じゃなくちゃいけないの?」

 

絵「合宿だからね」

 

真姫のクッションを抱きながら疑問をぶつけ、それに髪を下ろした絵里が答える。

 

希「まあ、こういうのも楽しいんよっ」

 

絵「じゃ、寝る場所を決めましょ」

 

穂「私ここー!」

 

ニ「えぇー!? そこはニコでしょ!?」

 

「凛はかよちんのとーなりっ!」

 

次々と寝る場所が決まっていく。

 

希「真姫ちゃんはどうする?」

 

真「……どこでもいいわ」

 

相変わらずつれねェツンデレお嬢様だな。

 

ンで寝る場所の結果は窓側から見て、

 

ニコ ことり

凛 穂乃果

花陽 海未

希 絵里

真姫

 

真姫の下に、嵐助、イクス、氷麗、盾、俺、朱雀、虎亜、蒼燕、茜が1列に並んで寝ることとなった。

 

蒼「電気消すぞー」

 

蒼燕が電気を消す。

 

あァー……疲れた。

 

昼寝したけど、意外と疲れが残ってたりするンだな。

 

そう思い、その身の疲れをそのままに委ねようとする。

 

ドンドン深みに沈んでいく。

 

そして遂に………夢の中へダイブした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………。

 

…………………………。

 

………………………………………。

 

モフッ。

 

………あァ?

 

何故か顔にモフッとした衝撃を感じた。

 

枕を取り、目を開ける。

 

海「何事ですか……?」

 

どうやら海未も俺と同じ状況になったようだ。

 

こ「えっ!? えぇっとぉ……」

 

ことりがこの惨事を誤魔化そうとしていた。

 

海「どういうことですか……?」

 

ゆっくり立ち上がり見渡すと、盾、朱雀、イクス、嵐助、茜は寝ていた。

 

逆に起きてるのは、虎亜と蒼燕、氷麗。

 

後は穂乃果たちμ’sのメンバーか……。

 

竜「チッ……こンな夜遅くになにやってるのかなァ?氷ィィィィ川君よォォォ!!」

 

氷「えっ!? えっと……うぷっ!?」

 

とりあえず氷麗を処刑。

 

竜「あは……ッエーイ☆」

 

虎「………マジかよ。後ろ、見えてんのかよBA☆KE☆MO☆NO☆」

 

真「ち、違っ……!ね、狙って当てたわけじゃ……!!」

 

穂「そ、そうだよ!! そんなつもりは全然なかった……っ!」

 

俺の容赦のない行動に虎亜は青ざめて木原みたいな事を言い、真姫と穂乃果が言い訳をし始めた。

 

海「明日、早朝から練習すると言いましたよね……?」

 

こ「う……うん……」

 

ことりが声を震わせて、返事をする。

 

竜「さァてェ!スクラップの時間だぜェ!!」

 

穂「えっと……竜ちゃんもしかして涙ぐんでる?」

 

竜「涙ぐンじゃいねェェェ!!」

 

検討違いな事を言った穂乃果を怒鳴る。

 

決定、こいつを先に伸ばす!

 

人の眠りを妨げやがって!

 

穂「待って竜ちゃん!お願い待って!」

 

穂乃果が命乞いをしてくるが知ったことかァ。

 

海「それをこんな夜中に……フフッ……」

 

絵「お、落ち着きなさい、2人共……」

 

竜「いっひィ…♪」

 

穂「不味いよ、これぇ……」

 

こ「海未ちゃん、寝てる時に起こされると、物凄く機嫌が……」

 

俺は足元に置かれている枕を2つ拾い、その1つを微動だにしない海未にパスする。

 

すると虎亜がこっちに駆け寄ってくる。

 

虎「待て竜司!! 話せば分か………ぐは!!」

 

そンな虎亜の顔に、ウルトラマンの筋力を上乗せした枕を思いっきり押し当てて、気絶させる。

 

蒼「虎亜っ!? ぐはっ!!」

 

続いてその枕を蒼燕にもぶつけて気絶させる。

 

一方、パスを受けた海未は枕をキャッチし、ニコが寝ていた方向に向かって投げつけた。

 

ニ「ぐぁぁっ!?」

 

凛「ニコちゃん!?……ダメにゃ。もう手遅れにゃ……!」

 

花「超音速枕……」

 

絵「ハラショー……」

 

凛や花陽、絵里が戦慄する。

 

海「うっフフ……覚悟は出来ていますね……?」

 

こ「どうしよう、穂乃果ちゃん!?」

 

穂「生き残るには戦うしか……あう!!」

 

龍騎のキャッチコピーを言いながら迎撃しようとした穂乃果に、海未の枕が当たる。

 

こ「ピィッ!?」

 

絵「ごめん海未、竜司……むぐぅっ!?」

 

絵里には俺が蹴った枕が当たる。

 

残るは4人か……。

 

竜「あはぎゃはっ!! ヤベェよヤベェよ!楽しすぎンぞォォォォ!!」

 

俺の顔はさぞかし恐ろしいぐらいに笑っているだろう…。

 

凛と花陽は海未に任せ、真姫と希を仕留めにかかる。

 

真「くっ…!!」

 

希「ヤバイやん……」

 

花「り、凛ちゃん……」

 

凛「かよちぃん……」

 

「「助けてー!!」」

 

海「ぐっ!?……ぬぅ」

 

あァ?

 

なンだァ?

 

助けが来たのか、海未が俺の後方から投げられた枕を受け、海未が呻き声を上げて倒れた。

 

そこで振り返ったのが運の尽きだった。

 

俺にも枕が当たり、強引に寝かされた勢いで夢の世界へと誘われた。

 

最後に見たのは、緋色の髪だった。

 

 

 

 



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先輩禁止!#5






希side

 

 

希「ヤバイやん……」

 

ウチと真姫ちゃんは、竜司くんと海未ちゃんに挟まれて反撃出来ない状況に陥った。

 

切っ掛けは、真姫ちゃんのためにウチが始めた枕投げ。

 

でも、それが海未ちゃんと竜司くんに当たり、絶対に起こしてはならない者を起こしてしまった。

 

さながら、鬼と竜。

 

二人には悪いけど、化け物に挟まれて状態だ。

 

凛ちゃんと花陽ちゃんが助けを求めてるけど、今のウチらには無理や。

 

そんな時に、

 

海「ぐっ!?……ぬぅ」

 

海未ちゃんに誰かの枕が当たり、海未ちゃんを沈めた。

 

続いて竜司くんも。

 

誰が投げたんやろうと思って振り返ったそこには、

 

茜「全く、お前たちは何をやっているんだ……」

 

呆れた目で見てくる茜くんが立っていた。

 

「「茜くん!!」」

 

真「茜……先輩…」

 

希「どうして?どうして……茜くんが……?」

 

ウチは戸惑いを隠せなかった。

 

だって茜くんは、さっきまで寝てたのに…。

 

そんな茜くんは溜め息を吐きながら言う。

 

「あんなに騒がしければ誰でも起きるだろう?まあ、それが功を成したようだが………で?誰が始めたんだ?」

 

凛「それは真姫ちゃんにゃ!!」

 

茜くんの質問に凛ちゃんが素早く答える。

 

茜「ほぅ……」

 

真「ち、違うわよ!!」

 

真姫ちゃんは慌てた様子で言う。

 

けど、茜くんはすべてお見通しみたいで、隣に立っているウチを見ると、

 

「君もまだまだだな」

 

と笑いながら言う。

 

真「だから違うって言ってるでしょ!! あれは希が…」

 

希「うちは何にも知らないけどね」

 

真「あんたねえ……!」

 

希「えい」

 

ウチは文句を続けようとする真姫ちゃんの顔面に枕をぶつける。

 

顔の枕を退けた真姫ちゃんは噛み付くように言う。

 

「って何するの希!」

 

希「自然に呼べるようになったやん。名前」

 

「えっ…?」

 

希「本当に面倒やな♪」

 

「べ、別に……そんなこと頼んでなんかいないわよ!」

 

真姫ちゃんの投げた枕が、ウチの顔面に直撃した。

 

希「いたた……」

 

真「フン!!」

 

そっぽを向いた真姫ちゃんは、そのまま布団に入ってしまった。

 

茜「希も随分と荒っぽい方法をとるね」

 

ウチの側に来て、耳打ちする茜くん。

 

希「これが最適やと思ったんや…。それより茜くん、さっきはありがと」

 

茜「何がだい?」

 

希「何がって…。分かってる癖に…。状況も分からんのにウチに合わせてくれたり、ウチらのピンチを助けてくれたり…。ホントにありがと♪」

 

ウチが礼を言うと、

 

茜「どういたしまして。希が助けを求めるなら、いつでも駆けつけるよ」

 

茜くんは微笑みながらそう言ってきた。

 

その言葉に、自分でも分かるくらい赤くなるのが分かる。

 

希「う、うん……その時はお願いな?」

 

茜「ああ……じゃあ俺も寝るよ。おやすみ」

 

希「う、うん……おやすみ」

 

茜くんはそう言って布団に入る。

 

気づくと、凛ちゃんと花陽ちゃんとことりちゃんも布団に入っている。

 

ウチも電気を消して、布団に入る。

 

けど、ウチの顔はまだ赤いままだった。

 

ウチ……もしかして茜くんの事が……?

 

そんな事を考えながら、ウチも眠りについた。

 

 

希sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茜side

 

 

「…………ん?」

 

目覚ましが鳴る前に目が覚めた。

 

このままもう少し寝ようとも思ったが、完全に目が覚めてしまったので、朝に吹く心地よい風を浴びようと外に出ていく。

 

しかし砂浜の方には先客がいた。

 

希「お、茜君も来たやん。早起きは三文の徳、お日様からたーっぷりパワー貰おうかっ」

 

茜「……早起きは誉められた事だが、女の子が2人で砂浜にいるのは少し危険だぞ」

 

真「ここは別荘で私達の私有地だから、他に人は来ないわよ」

 

茜「それもそうか」

 

この辺一帯が私有地らしい。

 

まあ西木野病院は日本有数のトップレベルで、しかも世界でも誇れる最新医療技術があると聞いている。

 

不思議でも何でも無いな。

 

真「で、どういうつもり……?」

 

ここで話を無理矢理切り替えんばかりに、真姫が希に話しかけた。

 

希「別に真姫ちゃんのためやないよ」

 

ここからは希と真姫の話になるだろう。

 

だから俺はこのまま黙っておく。

 

希「海はいいよね~。見ていると大きいと思ってた悩み事が、小さく見えてきたりする」

 

この言葉の意味が何を指しているのか。

 

考えなくても分かる。

 

これは真姫の事だ。

 

希は人の感情を読み取るのに優れている。

 

しかも真姫なんかは結構顔に出やすいタイプだから尚更の事。

 

希「ねえ真姫ちゃん」

 

真「ん?」

 

希「ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの」

 

これは紛れもない希の本音だ。

 

いつもの似非関西弁ではない標準語。

 

それが全てを表していた。

 

希「確かに、μ'sを作ったのは穂乃果ちゃん達だけど、ウチもずっと見てきた……。何かある事に、アドバイスもしてきたつもり。それだけ、思い入れがある……」

 

そうだな。

 

君は何かある度に、彼女達に入れ知恵をしていたね。

 

希のアドバイスがなかったら、彼女達はここまで来る事はできなかったかもしれない。

 

希がいたから、『μ's』という名前にもなった。

 

それだけ希はμ'sが大好きで、思い入れがある。

 

当然の事だった。

 

もしかしたら、穂乃果達よりも愛着があるかもな。

 

希「……ちょっと話し過ぎちゃったかも。みんなには秘密ねっ」

 

真「……めんどくさい人ね、希」

 

この後輩は柔らかい笑みでそう言った。

 

真姫、君の考えは大当たりだよ。

 

これだけ思っていて尚、希は表立ってアドバイスしようとしていないのだから。

 

μ'sに入ってもそれは変わらなかった。

 

意見する事はあっても、誰かを支えようとする時は、決して前面には出さない。

 

希「あ、言われちゃったッ」

 

それを言われて希も笑みを零す。

 

希「それで、茜君は何も言う事ないんかな?」

 

茜「ふむ……そうだな」

 

言いたい事は全て希が言ってくれたし、そうだな……。

 

瞑目して思考した俺は、簡単に、簡潔に言う。

 

「真姫、人はいずれ変わる。だから無理に今すぐじゃなくていいんだ。ゆっくりでいい。一人で無理そうなら、氷麗に頼ってみればいい。君の事を一番理解してくれてる幼馴染みなのだろう?」

 

真「………茜先輩って、何処か達観してますよね?いつも」

 

「おや、手厳しい反応だね」

 

まさかそういう反応が来るとは。

 

予想外だったよ。

 

穂「真姫ちゃーん!希ちゃーん!