やはり材木座が書くラノベは間違っている (ターナ)
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1話

はじめて投稿します。駄文です。


木枯らしが吹く季節、今日の部活は私1人しかいないわ。

 

由比ヶ浜さんは三浦さん達と遊びに行き、比企谷君は小町さんが風邪を引いたらしく、奉仕部を休んでいる。受験は大丈夫なのかしら、まだ一ヶ月ほどあるから今のうちに体調を整えれば問題ないと思うのだけれど。

 

不思議なものね。2年に上がる前までは私1人で本を読んで過ごすのが当たり前だったのだけれど、彼ら2人に出会ってから1人で部室にいるのが寂しく感じられるわ。

こんな日は早く部活を終らせて家に帰ればいいのだけれど、家に帰っても1人なので私は部室で読書をし時間をつぶしていた。

 

一色さんでも遊びに来ればいいのだけど、彼女も生徒会で忙しそうだし毎日は来れないのね。そんなことを考えていると、部室の扉をノックする音が聞こえたわ。

 

「どうぞ」と返事をすると、見覚えのある男子生徒が1人騒がしく入ってきたわね。

「八幡、我の最新作が出来上ったので読ませて進ぜようぞ。特と味わえい。....あっあれ、八幡は?今日八幡はいないのであるか」

「今日は由比ヶ浜さんと比企谷君はお休みなので私1人よ。今、最新作が出来上がったと言っていたけれど、また小説を持ってきたの?今日は奉仕部には私しかいないのだけれど私1人で十分よね。読ませていただけるかしら」

 

ちょうどいい暇つぶ…依頼が来たので先ほどまで読んでいた小説に栞を挟み机の上においたわ。

 

「あ、いや今回は八幡に読ませるために持ってきたので結構です。それでは失礼しましゅ」

「待ちなさい、私には読ませられないの?批評をしてあげるのだから、読者は誰でもいいのではなくて?」

「い、いや、その...」

「はっきりしなさい」

「わ、分かりました。で、ではよろしくお願いしましゅ」

「じゃあ、そこにかけて少し待っていて」

「えっ、結構なページがあるので、今日中には読めないと思うんですが」

「大丈夫よ、数ページ見させて貰って感想を言わせてもらうわ。もしあなたの本が店頭に並んだとして、読者は冒頭を読んでから購入するか検討すると思うの。だから数ページ確認して、それ以降も読みたいと思わせることが必要よ。まずは冒頭で読者を引き付けられるかの判断を行わさせてほしいの」

「....は、はい」

 

そういうと私は材木座君から小説を受け取り読みだしたわ。

 

**************************

 

「はあ」とため息を吐きながら私はこめかみに手を当て、どう指摘すればと検討していた。彼の小説を数ページ読んでみたが、何も頭に入ってこない。いや覚えることが多いため、どうしても面白いと思えなかった。これについては材木座君の頭の中で考えているのだから、彼にしてみれば予備知識もなくて問題ないのだろう。

 

ただ、初めて読む側にしてみれば、設定から判りづらいためこの小説を手にとってもレジに向かうことはないと、容易に想像がつくわ。

 

「冒頭しか呼んでいないから内容についてはともかく、情景や設定などの説明が多く、また人物像とか想像しにくくて、どうしても引き付けられなかったわ。あなたの中では判りきったことでも読者にしてみれば、初めて触れる小説なのだからもう少しそのあたりを考慮してはどうかしら。ただ最初から説明をくどくど行っていては、どうしても取っ付きにくくなってしまうのだけれど」

 

「で、でもこういうファンタジー系は冒頭のインパクトが必要と思いますし」

 

「今書いている小説は販売するわけではないのでしょ。小説を書きたいだけであれば、もっと身近な設定にしてはどうかしら。私たちに馴染みのあるもの...そうね、例えば学園物とか」

 

学園物といったとき、私の中で比企谷君と部室でお喋りしている情景が頭に浮かんだ。いえ私が比企谷君とどうこうなりたいわけではなのだけれど、学校で彼とイチャイチャしているのは簡単に想像がつくわ。毎日寝る前に考えて......

 

いえ、今はそういうことではないわね。

 

でも私が想像できない話を材木座君が考えてくれるかも知れないし.....

 

私が比企谷君とイチャイチャしたいわけではないの。あくまでも材木座君の文章力を上げるためよ。

 

「そうよ。学園物でよくある恋愛ものやラブコメなんかが良いのではないかしら」

「い、いや。我はラブコメとかは書いたことがないので、どう書けばいいのかわからないのだが」

「書いたことはなくても、読んだことぐらいはあるでしょ。身近な人をモデルにして書いていけば、私でも簡単に情景を頭に思い浮かべることができるわ。なんだったら私をモデルに使ってもらっても良いのだけれど」

「失礼なことを書くかもしれないので.....」

「あまり卑猥なことでなかったらいいわ。今回書くものを公表するわけではないのでしょ。私だけに見せてくれれば指摘等行えるのではなくて」

「......じゃあ、書いてみます」

「パソコンならこれを使ってもらってもいいわ。後、私とのやり取りにはメールを使いたいのだけれど、あまり人には教えていないの。どうすればいいかしら」

「それならフリーメールを使用すれば」

「それはすぐに用意できるの?」

「じゃあ、今から作るのでIDとパスワードを考えてください」

 

........

 

「ではパソコンで冒頭だけ書いてみるので、ちょっと借ります」

「どうぞ」

 

そういうと、彼はすごい速さでキーをたたき出したわ。さすがに小説をよく書いているだけのことはあるわね。キータッチに慣れているようだし。

 

私は材木座君の邪魔になってはいけないので紅茶を入れるためポットにお水を汲みにいったりし、極力彼の邪魔にならないようにしていたわ。

 

「冒頭だけ書いたのだが、チェックしてもらってもいいでしゅか...ただ内容については、矛盾しているとこや怒らせる内容があるかも知れないが」

「いいわよ、見させてもらうわ。紅茶を入れておいたから休憩してて」

 

そういうと材木座君からパソコンを受け取り私はワードで書かれた小説を読み始めたわ。

 

 

**************************

 

ここから材木座の小説。

 

日本全国の学校では能力を持った強い学生が学園を支配していた。ここ総武道高校でも四天王と言われる女性が支配しており、朝から校門前で喋っていた。

 

二色「今日、転校前の学校を潰した生徒が来るってことですけどぉ、どうゆう人なんですかぁ?」ぽよん

四浦「あーしと一緒で2年生らしいよ。詳しくはあんたのほうが知っているんじゃない?生徒会長でしょ」ぼよーん

二色「それがよくわかんないんですよねぇ。名前は比企谷八万。ただ以前の学校が潰れているので問い合わせようにも何処に確認すれば良いのか判らなくてぇ」ぽよん

四浦「まあ、あーしらの敵ではないでしょ。男だからあんたには敵わないでしょうし。また奴隷にしてしまうんでしょ」ぼよーん

二色「奴隷ではなくて、知り合いですぅ。みんな協力してくれているだけですしぃ」ぽよん

 

二色いろは....彼女は男を手玉に取り奴隷と化して召喚する。学園の男子生徒半数を占める300人以上が彼女の奴隷と化している。総武道高校ナンバー4であり1年生ながら生徒会長を務めている。別名「人形遣い(ドールマスター)」と恐れられている。

 

四浦優美子....総武道高校ナンバー3。彼女の綺麗な金髪ドリルは女王様を思わせるが、彼女が怒った際はドリルに纏められた髪がのび、半径10メートル内を血の海と化す。金髪に返り血を浴び、赤色と金色が乱れ動くため、彼女は「獄炎の女王」と呼ばれている。

 

結衣浜「優美子。どうも私たちと一緒のクラスらしいよ。ひき..ひきたに?..ヒッキーと」ぼよよーん

四浦「そうなん結衣。じゃあ、あーしらヒキオをクラスで待っていればいいじゃん。」ぼよーん

結衣浜「まあそうなんだけどね、でもいいじゃん。どんな人か早く見ておきたいし」ぼよよーん

雪ノ上「そうね、結衣浜さん。私はクラスが違うので、ぜひ見ておきたいわ。」ぺたん

塚塚「そうだな、私も以前の学校関係者に聞いてみたのだが、みな要領の得ない説明しかできないのだ。『学校には来ていたはずだが、思いだせないとか。そんな人いたっけ』とか。学校を潰せるほどの能力があるのにそう言われると気になるではないか」だらーん

 

結衣浜結衣....総武道高校ナンバー2。彼女が作り出す物質はこの世のものとは思えない臭気を誇り、また食べ物でも攻撃を行えたり様々な能力を付加できたりと彼女にとっては万能な物質を作成できる。ただし、それを食したものには混沌が訪れ精神が現世に帰ってこられないと言われている。別名「ダークマター」

 

雪ノ上雪乃....総武道高校ナンバー1。彼女の口撃は毒を浴びせながら氷つかせ、その眼差しからは絶対零度の氷結魔法を駆使する。別名「氷地獄(コキュートス)

 

塚塚静....総武道高校ナンバー0。先生を勤めているため、四天王にはカウントされていないが、総武道高校の実質最高支配者。もともと彼女の拳に抗えるものは居なかったのだが、三十路を超えてから彼女の体には変化が現れ「肉体言語」を駆使できるようになっていた。

 

八万「校門前に騒がしそうなのがたむろっているな。面倒なんでスルーさせてもらうか」ステルス能力発動

 

女性たちが校門前で喋っているなか、比企谷八万は独り言をつぶやき、他の者が彼女たちに目を付けられないよう目を合わせず挨拶していく中、悠々と校門をくぐり抜け職員室へと向かっていた。

 

 

ここまで材木座の小説。

**************************

 

「.............................」

「どうであるか、まだ冒頭部分しか書いていないのだが」

「....」

 

私は比企谷君に貰った眼鏡をはずした後、材木座君が机の上に伸ばしていた左手を取った。

 

「なn、何で我の手を掴むんです ぎゃ!!」

 

たぶん私の目は比企谷君以上に淀んでいると思う。材木座君の左手首の関節を極め、彼からの呻き声が聞こえていても私は何も考えられなくなっていたわ。

 

「ご、ごめんなさい!!て、手を離して!!」

 

彼は私の前で蠢いているのだけれど私にはなぜだか分からない。だた左手首を掴んでいるだけなのに。

 

....

 

「じゃあ批評を行いましょう。まずこれの何処が恋愛ものなの?地の文については、誰か一人称になるようにしたほうが読みやすいわ。あと、オノマトペ?って言うのかしら。由比ヶ浜さんの言葉後にある『ぼよよーん』とか『ぺたん』について説明をしていただけるかしら」

「....これからバトルが始まって戦っていくうちにラッキースケベが有る予定でそこからの恋愛ものを考えていたんです。あ、あのその前に左手を離してもらえないでしょうか」

「まだ、オノマトペについて説明してもらえてないのだけれど...」

「....い、いやどういう女性か分かりやすくするため、オノマトペを使ってみただけで、今後バトルになれば胸とか細かい描写でもっと って、い、痛い!!痛い!!」

 

....

 

ひとしきり合気道の関節技を極め私の頭も冷静になってきたのだけれど、もうすぐ下校時間のため、新しい小説を書かせるには時間がなくなってしまったわね。遠回りな言い方では彼には伝わらないと思ったので、私は彼に要望する内容を伝えたわ。

 

「材木座君、あなたに宿題を出します。今日の22時までに私と比企谷君だけが出演する恋愛小説を書きなさい。それであれば少しぐらいの失礼な内容は見過ごすわ。書いたら先ほどのメールアドレスに送りなさい。短くても良いので完結していること。分かったかしら?」

「今日はこの後、ゲーセンに行って22時まで遊ぶ予定だったのですが....」

私の目からハイライトが消え、材木座君を一瞥し手首を掴むため手を伸ばしていくと彼から「わ、分かりました」の回答が得られたので、今日の部活は終わりにしたわ。

 



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2話

材木座君が奉仕部に訪れた翌日、由比ヶ浜さんと比企谷君が部活に参加したわ。一色さんも部活開始直後からいるのだけれど、生徒会は大丈夫なのかしら。

 

「比企谷君、小町さんの風邪は大丈夫だったの?」

「ああ、鼻風邪だったんだが昨日は念ため、病院に連れて行っただけだ。薬のおかげか今日の朝には元気に学校にも行っているしな。まあ、しばらくは夜更かしはしないように注意しておいたが」

「そう、体調管理に気を使ってあげてね」

「小町ちゃん風邪だったんだ。ヒッキー今日はいいの?」

「今日は母親が早く帰ってこれるんで、問題ない」

「先輩、私まだ妹さんに会わせてもらってないですよ、いつ会わせてくれるんですか」

「なんで、会わすことになっているんだ。今は受験勉強で忙しいし、ここに入ればいやでも会うことになるだろ」

 

他愛のない会話をしていたのだけれど、一区切りついたところでお悩み相談室をみるため、パソコンを立ち上げたわ。

 

「比企谷君、あなた宛にメールが来ているから返信してもらえないかしら」

「どうせ材木座だろ、削除してくれれば良いのに」

「あ、私にも見せてください」

「良いから返信しておいてね、私はポットにお水を汲んでくるわ」

 

私は席を立つと、ポットを片手に水のみ場のほうに足を運んだ。材木座君は昨日遅くまで小説を書いていたのに他にも書いていたのかしら。昨日届いた小説は世間一般から見たらどうとでもない内容でしょうけど、私の中では本当にあってほしいことも書いてあったから彼からのお悩みメールについては無碍にはできないわ。水のみ場でポットに水を入れ部室に戻るとなぜか空気がおかしい気がするわね。比企谷君、由比ヶ浜さん、一色さんの目が淀んでいるように見えるわ。いいえ比企谷君はいつもどおりね。

 

「何かあったのかしら?」

 

私が声をかけてもみんなパソコンから目を離そうとしない。そう思っていたが比企谷君は教壇のほうを指差し声をかけてきたわ。

 

「雪ノ下、正座」

 

?彼はなんと言ったのだろう、いえ正座と聞こえたし理解もしているのだけれど、なぜ私が正座を強要されなければならないのかしら。

 

「比企谷君、どうして「ゆきのん、正座」私が....」

 

由比ヶ浜さんが声を重ねてまた正座を強要してきたわ。私が何かしたのかしら。どうすれば良いのかあたふたしていると

 

「雪ノ下先輩、黙って正座してください」

 

3人に正座を強要され、反論しないほうが良いと思い仕方なく比企谷君が指差したところに正座したわ。

 

「どうして、正座させられているのか、説明してもらえないかしら」

「....」

 

だれも返事をしてくれない。色々考えていたが私が正座させられてから、すぐ扉をノックする音が聞こえたわ。

 

「八幡、我を呼び出すとはなにごとか!!」

「材木座、正座」

 

材木座君が現れたと同時に私のときと同じように、今回は私の隣を指差し正座を強要していたわ。

 

「中二、正座」

「木材先輩、正座してください」

 

材木座君も空気に押され、ぶつぶつ何かを言っているのだけれど、素直に私の隣に正座したわ。そうすると一色さんが話し始めたわね。

 

「まず雪ノ下先輩。多分雪ノ下先輩のメールだと思うんですが、勝手に見てしまってごめんなさい」

「メール?お悩み相談室のこと?それは私のではなく部活のメールなので見ても問題ないわよ。一色さんは奉仕部ではないので余り好ましくないとは思うのだけれど」

「あー、そっちじゃなくて「nyannyan-paradise(にゃんにゃんパラダイス)」ってアドレスのほうです」

「えっ、あ、あのそれってもしかして」

「ええ、検索サイトのトップページにログイン状態になっていたので見てしまいました」

「そ、それは昨日、材木座君に作ってもらったアドレスよ、まだほとんど使っていないわ」

「でも昨日、木材先輩とメールのやり取りを9時半ぐらいからしてますよね」

「え、ええ、彼の小説を批評するためにアドレスを作ってもらって、そこでやり取りを始めたの。あくまでも小説の批評をするためよ」

「へぇ、じゃあ私たちが読んでも問題ありませんよね」

「あ、あのまさか読んだのかしら」

「えぇ、ワードが添付されていましたから3人で読ませていただきました。」

「....ゆきのん、これ面白いね....」

 

由比ヶ浜さんが目のハイライトを消しながら私に問いかけてくるわ。比企谷君については何を考えているのか分からない。ただパソコンの画面を見つめている。私は彼らと目を合わせられず下を向いていた、顔が赤面しているのが分かる。耳も真っ赤だろう。

 

「木材先輩、小説の批評であれば私たちも参加して良いですよね。よかったら音読してみましょうか。声に出したほうがより誤りとか探しやすいと思いますし」

「一色、それはやめてくれ、この内容だと俺にもダメージが来る」

「どうしてですか、どうせならみんなで批評してあけたほうが良いじゃないですか」

「いやいや、これって雪ノ下もだが俺にもかなりなダメージがくるぞ、書いた材木座じゃなくて俺と雪ノ下の黒歴史になっちゃうよ」

「先輩の黒歴史が増えるのは問題ないですね」

「いや、問題だらけだよ、今日帰ったら枕濡らしちゃうよ」

「ヒッキー、中二からは小説を読んでほしいって依頼なんだから声に出して読んであげようよ」

「材木座、いやだろ声に出して読まれるのは」

「.........確かに」

「今、何を考えた?」

「いや、素人でも我のラノベに声優を付けてもらえるのはちょっと嬉しいと思っただけ....」

「中二の許可も取れたし今から音読をしようよ」

「待ってくれ。せめて俺のいないところでやってもらえないか」

「ヒッキーも奉仕部なんだから少しぐらい協力してよ」

「絶対やだ」

「じゃあ、結衣先輩が雪ノ下先輩で、私が先輩と地の文等を担当しましょうか」

「聞いてた?ねえ、俺の話、聞いてくれてた?」

 

そのとき、部室の扉がいきなり開かれたわ。

 

「邪魔するぞ」

「先生、本当に今は邪魔なんで帰ってください」

「比企谷、そう邪険にするな。ん?、何で雪ノ下と材木座が正座しているんだ?」

「先生、今から結衣先輩と私で小説の音読するんでその間は静かにしててください」

「由比ヶ浜さん、一色さんごめんなさい。もう許して」

 

私はなんとか声に出して彼女たちに許してもらおうと思ったのだけれど、彼女たちは容赦なかったわ。

 

「じゃあ、皆さん黙って聞いててくださいね」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

戸塚を眺めながら昼飯をベストプライスで食べる時間が至福であり、このままここで午後も過ごしていたいと考えているとき、俺の思考を邪魔する校内放送が聞こえてきた。

 

「2年F組比企谷八幡、今すぐ職員室まで来なさい」

「平塚先生か、なにかしたっけかな、作文とか提出はなかったし。まあ、仕方ないか三十路に後で怒られるのも面倒だし」

 

*****

「まてまて、何で私が三十路とか言われないといけないんだ。まだ三十路ではないぞ」

「先生、さっき静かにしててくださいってお願いしましたよね。批評はあとでお願いします。では続きを読みますね」

*****

 

「きゃ!!」

「うわっ!」

学校の校舎の中を早足に歩いていると、曲がり角でいきなり女子生徒とぶつかってしまった。彼女が後ろ向きに倒れ掛かっていたので、俺は彼女の後頭部に右手を回し何とか頭だけは守ろうとしたが、お互いもつれていたため、彼女を下に押したおす形で倒れてしまった。

倒れた瞬間、俺の唇になんともいえない柔らかいものに触れた気がしたが、一瞬のことだったので、何処に触れたかは分からなかった。ただ彼女(雪ノ下だったのだが)の鼻が俺の鼻とくっつくぐらいの位置にあったため、慌てて顔を離すため、左腕に力を込めた。

 

ふにゃ。

 

「あんっ」

「えっ!!」

 

左手を確認すると何故か雪ノ下の胸に手があり、先ほど力を込めた際、揉んでしまったようだ。体制を建て直し、すぐに雪ノ下から離れたが今度は彼女のスカートがまくれ上がっており、純白にリボンのワンポイントがあしらってある可愛いパンティが目に飛び込んできた。彼女は即座にスカートを直し何も言わず顔を真っ赤にし、こっちを睨んでいる。

 

「大丈夫だったか、すまん雪ノ下。職員室に行くため急いでいたんだ」

「ええ、大丈夫よ。廊下は走らないで、今回はなんともなかったけれど、怪我したら大変だから」

「すまなかった。じゃあ、また放課後」

「....ええ、待っているわ」

 

俺は恥ずかしさから、すぐにその場を離れたかったため、謝罪し雪ノ下と別れた。

職員室に向かう途中、先ほどのことを考えていた。

揉んでしまった胸、思わず左手を確認してしまった。見た目より結構あったな。いつも部活で一緒にいるが、あんなに顔を近づけたことは今まで一度もない。

透き通る肌、潤んだ瞳、長いまつげ、ほとんど化粧もしていないのに、全てがとても綺麗だった。

そして俺の唇に触れたもの。顔の位置から考えるともしかして唇か?

また赤面してしまう前に職員室前に着いたため、気持ちを落ちつかせ、職員室の扉をノックした。

 

放課後

 

今日は由比ヶ浜が遊びに行ったため、雪ノ下と2人の部活となった。気まずい、ただもう一度謝っておいたほうが良いと思い2度目の謝罪を行った。

 

「昼は本当に申し訳なかった」

「良いのよ本当に、お互い怪我がなかったのだから。平塚先生の呼び出しは問題なかったの?」

「ああ、ただクラスに配るプリントを運ばさせられただけだ」

「平塚先生もそれぐらいなら学級委員にでもお願いすれば良いのに」

「まあ、そうなんだがな。「比企谷は暇そうだからお願いした」とか言っていたし」

「1人でご飯を食べているのだから、そう思われたのかしらね」

「さあ、どうなんだろうな」

 

雪ノ下はぶつかった時のことは、なんとも思っていないのだろうか。俺はどうしても唇が触れたところを確認したい。でも彼女にしてみたら何とも思っていない男に事故であっても唇を奪われたとしたら、無かったことにした方がよほど良いのだろう。

 

「ねえ、気がついてる?あなた私の唇をずっと見ているわよ」

「....すまん。どうしても気になって」

 

このまま悶々とさせられるぐらいなら、嫌われても良いので確認しよう。

 

「何が気になるの?」

「倒れたとき、俺の唇がどこかに触れたと思うんだ。それが何処だったのかずっと気になって」

「では確かめてみる?」

 

そういうと雪ノ下は立ち上がった。俺もつられて立ち上がり雪ノ下に近づいた。

 

「あなたの唇が何処に触れたか、だったわね。そう私の唇も何処かに触れたの。お互い触れたところをまた合わせて確認してみましょ」

 

そして雪ノ下は目を閉じ、顔を少し上げた。

俺は、雪ノ下の肩を抱いて顔を近づけ、

 

「雪乃、好きだ。」

 

そして二つの影は一つになった。

 

 

 

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

 

私は放心していたわ、多分比企谷君も一緒だろう。

放心している私の隣で材木座君がやっぱり声優はこうとかどうとか言っているわ。

 

「ゆきのんずるい!!こんな毒を吐かないゆきのんはゆきのんじゃない!!」

「何が『二つの影が一つになった。』ですか!!どこのパクリですか!!」

「あと胸が結構有ったとか、全てが綺麗だったとか、ゆきのんが書かせてるよね!!」

 

「なあ、この小説は材木座が書いたものなのか」

「ええ、先生。それを雪ノ下先輩が批評をしていたらしいです」

「でも中二って以前はまったく違うものを書いていたよね」

「材木座、どうしていきなりラブコメを書こうと思ったんだ?しかも雪ノ下や比企谷を使って」

「それは雪ノ下殿にファンタジーだと設定とか色々説明するのが大変なので学園物で登場人物も知っている人であれば簡単に情景が分かりやすいと」

「まあ、確かにそうだな。色々説明不足があっても知り合いが登場人物であれば脳内補完が簡単に行えるからな。内容についての批評は色々あるが知り合いからしてみれば分かりやすいしな。情景も簡単に補えるし。まあ面白かったのではないか。」

「は、八幡!!我の小説が面白い!!と初めて言ってもらえたぞ!!」

 

何故か材木座君が私の隣でうれし泣きをしているわ。どうして私がこんな辱めを受けて彼は褒められているのかしら。

 

「ねえ一色さん。パソコンのMyドキュメントにある、昨日材木座君が書いた小説があるの。そっちについても批評していただけるかしら」

「え、え、雪ノ下殿?それ見ちゃらめーーーーー!!!」

 

**************************

 

みな昨日、材木座君が書いた総武道高校の物語を読んでいて、肩を震わせているわね。

比企谷君だけがニヤけているわ。隠そうとしているのだろうけど隠せておらず、でも声に出してしまうと隣で目が死んでいる3人にどんな目に合わされるか分かったものではないから必死に笑いを堪えているようね。胸のことで私と平塚先生が辱めを受ける内容だけれども、それ以外の内容がもっと酷いのでよしとしましょう。

 

「....」

 

「材木座、私と1時間ほど話合わないか。肉体言語で。」

「中二、この『ぼよよーん』とかどういうことなの?」

「私こんな喋りかたじゃないですね、どうして全部語尾を延ばしているんですか?」

「い、いや、それは皆さんではなく、二色さん、四浦さん、由比浜さん、雪ノ上さん、塚塚さんでありまして....」

「○△××!!」

 

私は正座から解放されたが材木座君は今、女性3人に囲まれている。さすがに先生も手は出してはいないようだけれど。

 

「比企谷君、勝手に小説に出してしまって申し訳なかったわ。ごめんなさい」

「いや、まあそっちについては良いんだが...いや良くないか。まあ、今後はやめてくれって事で」

「ええ、分かったわ」

 

彼は赤面しながら会話をしてくれるわ。私の顔もかなり赤くなっているのだろうけど。彼からしてみればどうして自分と私とのラブコメを書かせたのか等、気になっていると思うわ。ただ私からそれを切り出すことはできず、また彼からも聞いてくることはなかったわ。

 

「なあ、雪ノ下どうしてこんなバトル物なんて書かせたんだ?」

「これについては、材木座君に学園物で登場人物を知り合いにすれば分かりやすいのでは、と助言しただけよ。内容については私も読むまではまったく知らなかったわ。でもあなた、ちょっと面白いと思っていたでしょ。笑いを堪える姿が滑稽だったわ。」

「設定はともかく登場人物の特徴が出ていたからな。ちょっと続きが気になったし」

「これの続きは絶対書かせないわ」

「....まあ、今色々言われているから、さすがに書けないだろ。ちょっと残念だけど」

 

**************************

 

「じゃあ、明日までに私たちをヒロインにした物語を1部づつお願いします。もちろん先輩との恋愛もので」

「待て待て、何で俺なんだ。葉山で書いて貰えば良いだろ」

「こんなことに葉山先輩は巻き込めませんよ」

「ヒッキー。これは奉仕部の仕事だから私たちで登場人物が賄えるならわざわざ頼まなくてもいいでしょ」

「いやでも三浦とか勝手に出されていたぞ。あとよく賄えるって言葉知っていたな」

「ヒッキーバカにしすぎ。でも優美子のこと言ったら私もヒッキーもいろはちゃんも先生だって勝手にだされてたじゃん。やっぱり自分の知らないところで勝手に使われるのってあんまり気分よくないよ」

「俺は知っていても出されるの嫌なんだけれど」

「あのーーー。今日こそはゲーセンに行きたいので明日まではとても無理なんでしゅが」

 

「「はぁ?」」

 

「じゃあ、今から副会長召喚して校舎内では手袋とコートの着用禁止にしますね」

「私はダークマター(クッキー)焼いてくるから中二、全部食べてくれるよね。それといろはちゃん、ここに今から優美子も召喚しようよ」

「いや、まっ、まってくれ。判りました。二人分書いてくれば良いんですね」

「私が含まれて居ないようだが?」

「「「「「先生も!?」」」」」

「ちょっと憧れるだろ、ヒロインとか」

「「「「はぁ」」」」

「先生の歳でヒロインっておかしいんじゃ」

 

今、平塚先生からパンチが繰り出されたようだけど見えなかったわ。比企谷君の右頬を掠めたようで髪の毛が揺れており比企谷君が動揺しているわね。やはり平塚先生は肉体言語を使えるのかしら。

 

「比企谷、女性に年齢のことを言ってはいけないと教えなかったか」

 

「は、はいぃ」

 

「じゃあ材木座、明日楽しみにしているぞ」

「木材先輩、よろしくですぅ」

 

そういうと先生と一色さんは部室から出て行ったわね。多分職員室と生徒会室に戻ったのね。

 

「材木座、俺を出すなよ」

「待ってくれ八幡。それだと我が殺される」

「殺されはしないだろ、半殺し程度だ」

「良いじゃんヒッキー。奉仕部内だけなんだから」

「やだよ、俺の黒歴史が増えちゃうだろ」

「その黒歴史も共有できれば良いじゃない。私は今日の夜、眠れないと思うわ」

「いや、それは俺も同じだぞ」

「頼む八幡、今回だけ出させてくれ、今後はもう書かないから」

「....判った。まあ、今回はしょうがないしな」

「中二、よろしくね」

 

こうして材木座君のラノベ騒動は二日目を終了したわ。

 



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3話

奉仕部に昨日の顔ぶれが集まっていたわ。由比ヶ浜さん、一色さん、平塚先生は期待しているのか、にこやかな表情を浮かべているわね。

対して材木座君については、かなり疲労が溜まっているのだろうか、眠そうな顔をしているわ。

 

「このUSBメモリにそれぞれのラノベを書いてきたので後はお願いしていいですか、もう帰りたいんで」

「材木座、お前の書いた小説なら自分なりに評価してみろ」

「ねえ、俺は居なくても良いんじゃない?お前たちは一回ずつの黒歴史で良いけど、俺はこの後3回黒歴史が追加されるんだけど」

「良いじゃない、あなたの黒歴史が100個から103個に増えても3パーセント増えるだけよ。私なんて初めてだったからあなたの比じゃないぐらいだわ」

「いや、お前は自分から作成した黒歴史だから良いじゃん!!」

 

そう言われ昨日の出来事を思い出し赤面していると、比企谷君の顔も徐々に赤くなっていくのが分かったわ。

 

「何でゆきのんもヒッキーも見つめ合ってんの!!」

「先輩!!、きもいです、きもいです!!」

「ねえ、きもいって大事なことだから2回いったの?」

「まあ良いじゃないか。今から私たちにも黒歴史が作成されるのだし」

 

「では誰のラノベから発表するのかしら」

「最初は私が良いです!!先輩が読んでくれるのが一番良いんですけど、さすがにやってくれないと思いますので、雪ノ下先輩お願いします。で、私の声は結衣先輩お願いします」

「ええ、分かったわ」

「いいよ、いろはちゃん」

「やっぱり、帰っちゃだめ?」

「駄目(よ)(です)(だ)!」

「じゃあ、始めましょうか」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

奉仕部が終り下駄箱で上履きを片付けていると、突然目の前が真っ暗になった。

 

「だーれだぁ」

「その声は一色だろ、何してるんだ」

「何してるかって、目隠ししているんですけど」

「いや、名前当てたんだから手を離してもらえないか」

「えーー、かわいい後輩に触れられているんですよ、ほかに言うことはないんですか」

「はいはい、かわいいかわいい」

「なんですか、その棒読み、もうちょっと愛情をこめて伝えてください。って、きゃあ!!」

 

そういうと一色は手を離して俺との距離をとった。だが一色の後ろに段差があり、躓いて尻餅をついていたのだが俺のほうに脚を向けていたため、M字開脚しており青白の縞々パンティが丸見えになっていた。

 

「いや!!先輩見ないで!!」

「すっ、すまん!!」

「痛っ!!」

 

一色はすぐ足を閉じ、立ち上がろうとしているが、足を痛めたようで苦悶の表情を浮かべていた。

 

「一色、動けないんだろ。保健室に連れて行ってやるから俺の背中に乗れ」

「ええ、でも恥ずかしいです」

「でも動けないだろ、良いから乗れって」

「...先輩、すみません。じゃあ失礼します」

「おう」

「......」

 

お互い、恥ずかしさで無言になっているが、俺の精神がかなりまずいことになっている。一色をおんぶして保健室に連れていくだけなのだが、やばい!!

何がやばいかって俺の背中に当たる感覚が!!それと俺が手で支えている太ももの感覚がもっとやばい!!

思わず手を動かしてスベスベな太ももを堪能したいが、それをやると俺は警察の世話になってしまう。なんとか自分の欲望と戦い理性を保ちながら保健室に連れて行った。

 

「軽くひねっただけだと思うけど、無理しないでね。明日腫れが引かないようだったら病院に行ったほうが良いわね。家までは大丈夫?私が送っていければ良いのだけれど、この後職員会議があって何時になるか分からないの」

 

保健医の先生がそういうと一色はお礼をいい、帰り支度を始めたが歩くのが辛いのか、ひょこひょこ歩いていた。

 

「なあ、一色帰れるのか」

「大丈夫です、これ以上先輩に迷惑を掛けるのは悪いですし」

 

そういうと一色は俺の横を通り過ぎようとしていたが、無理しているのが解った。どうすればいいんだ、これ。まあ恥ずかしいが肩を貸してやればいいか。俺は一色の腕をとり自分の首に回した。一色は一瞬ビクっとしたが、拒否されることもなく無言で2人、下駄箱まで歩いていった。

 

「一色、ここで待っててくれ」

「ここまで連れて来てもらってありがとうございます。先輩は帰ってもらって良いですよ。あとは何とか1人で帰りますから」

 

俺は一色と一旦離れ自転車を取りに行き、下駄箱まで向かったが一色の姿はなかった。ただ、校門のほうを見ると一色が一人、無理して歩いているのが見えた。俺は一色を追いかけ声を掛けた。

 

「無理するな」

「いえ、先輩にこれ以上ご迷惑は掛けれないので」

「良いから自転車の後ろに乗れって」

「..でも」

「そんな調子で歩いていたら家に何時間かかるか分からないだろ、俺のことは気にするな」

「....じゃあ、お願いします」

 

そういうと一色は素直に自転車の後ろに跨ったので、俺はゆっくり自転車を漕ぎ出した。

 

「....」

 

また無言だ。たまに一色が方向を指示するぐらいでお互い何も喋らない。俺は喋れないんだけどね。腰に手を回しているんで背中に当たる感覚がとても気持ち良い。いやいや注意して運転しないと。そんなこと考えていると一色家に着いたようだ。

 

「ありがとうございます、先輩。お礼がしたいのでお茶でも飲んでいってください」

「いや、悪いだろ。別にお礼なんかいらないし」

「いえ、このまま帰したら私がお母さんに怒られます」

「....分かった。じゃあお言葉に甘えようかな」

「はい、あがってください」

「お邪魔します」

 

家に上がると電気が消えており、誰もいないことが分かった。いやこれ不味いんじゃないの?一色は問題ないの?まあ俺のこと男として意識していないだけかも知れないけど。なにそれ悲しい。リビングに入りソファーにとりあえず2人腰を下ろした。

 

「ごめんなさい、先輩。お母さんがいると思っていたんですけど出かけているみたいで。でもお茶ぐらい飲んでいってくださいね」

「いや、じゃあ帰ろうかな。勝手に男が上がりこんでいるとか、よろしくないだろ」

「待ってください、すぐお茶を出しますから」

 

そういうと一色は立ち上がり動こうとしたが足の踏ん張りがきかず、俺のほうに倒れ掛かってきた。

 

「きゃ!!」

 

俺の胸元に一色は顔をうずめ、一色は呟いた。

 

「....どうして先輩は私にこんなに優しくしてくれるんですか。今日みたいなことされたら、先輩の事がもっと好きになっちゃいます」

「一色それは勘違いだ。よく言う吊橋効果みたいものだ」

「私の気持ちを一時の気の迷いみたいに言わないでください」

 

そういうと一色は俺の胸から顔を離した。

 

「先輩、ずっと好きでした。私じゃ駄目ですか?」

「いっし...いや、いろは。俺は何時も俺のそばに居てくれる、いろはが好きだ」

 

そういうといろはは、目を潤ませ顔を近づけてきた。そしてお互いの唇を重ね合わせた。

 

 

「ごめん、いろは。お母さん昼寝して....あ、あなたたち何しているの!?」

 

昼寝していたいろはの母親にキスしているところを見られた。なにこれ恥ずかしい。

この後、いろ母から質問攻めを受けたが、初めて俺に彼女ができた記念すべき日となった。

 

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

 

「....」

「いや、これ一色じゃないだろ、こんな謙虚な一色、見たことないし」

「私、謙虚ですよ!!おしとやかですし!!」

「はいはい、『謙虚』と『おしとやか』を辞書で調べてこい」

 

ギャーギャー!!

 

2人顔を真っ赤にして照れ隠しなのか言い合っているわ。確かにこんな一色さんは見たことないわね。

 

「私の時も思ったのだけれど、どうしてショーツを見せるの?その次の文章に繋がっている訳でもないのだから、不要と思うのだけれど」

「いや、ラッキースケベはラノベの基本なので必ずどこかには入れたいんです」

「まあ、あなたにも拘り(こだわり)があると思うのでいいのだけれど」

「ねえ、中二。その、キ、キスをした後、すぐに終っちゃうんだけれど、お互いの考えや感想とか入れたらどうかな」

「我に経験のないものは書けん!!」

「そんな、言い切られても....」

「でも他の小説を読めば参考に出来るのではなくて?」

「いや、どうしても八幡がイチャコラしているのは腹の虫が治まらなくなりますし」

「おなかがすくの?」

「はぁ、由比ヶ浜さん『腹の虫が治まらない』とは怒りがおさまらないってことよ」

「へぇ」

「でも由比ヶ浜殿のラノベは接吻後も少し続いておるぞ」

「じゃあ、期待しちゃおうかな」

「まあ、私は後二つ聞き終わった後、感想を言わせてもらうよ」

 

材木座君は段々なれてきたのか、最初のころのような変な敬語はあまり使わなくなっているわ。でも私に対してはどうしてか、抜けきらないようだけれど。

 

こうして一色さんのラノベは終了したわ。

 



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4話

「次は由比ヶ浜さんでいいかしら?」

「うん、いいよ」

 

比企谷君は『我関せず』って感じで本を広げだしたのだけど、耳は真っ赤で本の内容はまったく読めてないようね、先程からページをめくっていないし。言葉は発しないのだろうけど、聞き耳だけは立てているようね。

 

「じゃあ、由比ヶ浜さんを私が、比企谷君を先生がやってもらえますか」

「私も入れてもらえるのか、面白そうだしいいぞ」

「じゃあ、先生、ゆきのんお願いします」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

誰かが俺の肩を揺さぶって起こそうとしてるようだ。まどろみの中にいると気持ちよく俺は枕に顔を埋めるために引き寄せた。『ヒャゥっ』と聞こえた気がしたが、なんだか今日の枕はすごく良い匂いがする。また手触りがすごくいい。手をスリスリし手触りを楽しみ、匂いをもっと嗅ぐ為顔を擦り付けていると、突然声を掛けられた。

 

「ヒ、ヒッキー、起きてよ!!」

 

目を開けると家のベッドではなく、教室にいることが解った。おかしい。じゃあ、俺はさっきから何を抱いて匂いを嗅いでいるんだ?枕から少し顔を離し確認すると上のほうに由比ヶ浜が顔を真っ赤にして立っていた。え、どうなっているんだ。俺がさっきまで匂いを嗅いでいたところは、由比ヶ浜のお腹あたりに顔を擦り付けていたらしい。また手触りを楽しんでいた手はスカートの中に入り込んでいる。一気に覚醒した俺は手を引っ込めた。ただ気になったのはお尻の手触りは直接肌を触っていた気がする。もしかしてTバック?いやそんなことより謝るほうが先だろ、八幡。そう自分に言い聞かせ、由比ヶ浜に謝罪した。

 

「す、すまん!!」

「うーーー、恥ずかしいよ。」

「本当にすまん!!寝ぼけていて枕と思って抱きついてたんだ」

 

俺は謝罪しながらも周りを見渡すと教室には他の生徒はいないようだった。

 

「申し訳ない、由比ヶ浜。いくらでも謝罪する。ただ、こんなこと頼めた立場ではないが他の人には黙っててくれ」

「こんなこと言いふらさないよ、私だって恥ずかしいし」

「いくら謝っても謝りきれないんだが」

「....じゃあ、今からカラオケに行こうよ、それでチャラで良いよ」

「そんなのでいいのか、でも部活はどうするんだ」

「あ、そうだ。さっき、ゆきのんから体調不良なんで今日の部活お休みにしたいってメール着たんだ。それでヒッキーに伝えに起こしに来たらいきなり抱きつかれて....」

 

そこまで言うと由比ヶ浜はまた、顔を赤くしだした。

 

「ありがとう伝えに来てくれて、じ、じゃあ早く行こうぜ」

「うん」

 

照れ隠しのため、俺はすぐ返事をし早く行くよう促した。駅近くのカラオケ屋までお互いさっきのことは触れず、他愛ない会話をしながらカラオケルームに移動した。

 

「ねえ、ヒッキー。教室でのこと聞いていいかな」

「え、ぶり返すの?恥ずかしいんだけど」

「私も恥ずかしいよ。でも寝言で『良い匂い』とか言われたら気になるじゃん」

「....そんなこと言っていたか、その本当に良い匂いだった。落ち着くって言うのか休まるって言うのか。とにかく何時までも嗅いでいたいって思ったんだ」

「じゃあ、今からもう一回嗅いでみる?」

「それは不味いだろ、こんなところで」

「別に服を脱ぐわけじゃないんだしさ、防犯カメラでもイチャイチャしているだけに見えるって」

「良いのか?由比ヶ浜」

「うん、いいよ」

 

由比ヶ浜は太ももをぽんぽん叩いて俺に催促してきた。俺は由比ヶ浜のお腹のほうに顔を向くよう、ソファーに寝転がり膝枕をしてもらった。

 

「ねえ、ヒッキー。ちょっと離れていない?」

「いや、かなり恥ずかしいんだが」

「じゃあ、えい!!」

 

10cmぐらいは空いていたと思うが、由比ヶ浜が一声賭けると自分の手で俺の頭をお腹のほうに引き寄せた。

 

「どう、ヒッキー。良い匂いする?」

「お、おう。すごく落ち着くし気持ち良い」

「そうなんだ、じゃあ、このままでいいよね」

 

そういうとお互い無言のまま時間だけが過ぎていった。由比ヶ浜は俺の頭を撫でていたためか、俺は何時しかリラックスして由比ヶ浜に全身を預けていた。

 

「....」

 

「なあ、ちょっと頭の手をどけてくれないか」

「もういいの?」

「いや、ちょっと話したいことがあるんで」

「うん、どうぞ」

 

俺は一旦由比ヶ浜から離れ、ソファーに座りなおした。そして由比ヶ浜に正面に向き合った。彼女がこんなに恥ずかしいことを俺にしてくれたんだ。俺の素直な気持ちを受け入れてもらえても、もらえなくても今思っていることを伝えたくなった。

 

 

「....由比ヶ浜結衣さん。好きです。俺と付き合ってください」

「えっ、...ヒッキー。ううん、比企谷八幡さん。私も好きです。お付き合いしてください」

 

そういうと彼女のほほを一筋の涙が流れた。俺は手で彼女の涙を拭い、顎に手を掛けると由比ヶ浜は目を閉じたので口付けを交わした。

 

「へへ、しちゃったね」

「ああ、ありがとな」

「それはこっちの台詞だよ」

 

そういうと俺は彼女の首元に顔を埋めるように抱きしめた。

 

「ヒッキーくすぐったいよぅ」

 

首筋の匂いを嗅いだあと、ちょっと悪戯したくなり、キスマークが付くよう吸い付いた。

 

「ん、ヒッキーだめぇ」

「結衣、お前は俺のものだから」

「じゃあ、私も」

 

そういうと彼女は俺の首筋に吸い付き、キスマークを付けてきた。

 

「へへ、ヒッキーにマーキングしちゃった」

「ああ、これでお互いのものになったんだな」

「じゃあ、今度チョーカー買いにいこうよ、首輪の代わりに」

「えっ!?目立っちゃうからせめてネックレスにしない?」

「ううん、良いよお揃いにしようね」

「ああ」

 

そして俺たちはカラオケ屋を出て駅のほうに歩いていった。もちろん手は恋人つなぎで。

 

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

「ごめん今日はTバックじゃないんだ、でもヒッキーが喜ぶなら明日履いてくるよ...。ヒッキーそんな胸の間にキスマーク付けたらめだっちゃうよぅ。ううんいいよ。でもこっちは今度....あぁ..」

 

由比ヶ浜さんは目を閉じ、自分の世界にトリップしているようだわ、かなり恥ずかしいことを言っているのだけれど多分無自覚ね。比企谷君も顔を真っ赤にして由比ヶ浜さんのほうをチラチラ見ているし。

 

「木材先輩、何でいきなりイチャイチャから始まるんですか?全部イチャラブじゃないですか!!」

「いや、特に決めて書いているわけではないので、こうなってしまったのだが」

 

一色さんはぶつぶつ文句を言っているが、内容についてはしょうがないわ。特にこちらからシチュエーションを指定しているわけではないし、全て材木座君任せなのだから。私から言わせたら一色さんのラノベも最初からイチャイチャしていたように思うのだけれど。

でも私も比企谷君にいろんな所をマーキングされたいわね.......って、何を考えているの!!そんなの出来るわけないじゃない。でも何時かしてもらえたら....。

 

「なあ材木座、幾ら寝ぼけていたといってもお尻と枕を間違えることはないだろ」

「お主は女子(おなご)の臀部を触ったことがあるのか!?」

「いや、ないけど幾らなんでもわかるだろ?」

 

「お尻はだめだよぅ、ヒッキィ....」

「由比ヶ浜、戻ってこい」

「....あ、あれ、ヒッキーは?」

 

先生が由比ヶ浜さんに声を掛け、現実世界に連れ戻した。確かにあれ以上の発言は不味かったのでこれでよかったのだろう。

比企谷君は恥ずかしさからか由比ヶ浜さんのほうを見ないようにしているのだけれど、由比ヶ浜さんは顔を赤くしがらずっと比企谷君のことを見つめいているわね、大丈夫かしら。

 

とりあえず、由比ヶ浜さんのラノベもこれで終了ね。

 



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5話

「ようやくオオトリの出番だな、材木座頼むぞ」

「ここで切り上げて、もう帰りませんか。俺、かなりやばいんですけど」

「もう最後じゃない。週末なんだから少しぐらい遅くてもいいでしょ?」

「いや、帰りの時間を気にしている訳じゃなくて、俺の心臓が持ちそうにないんですけど」

「大丈夫ですよ先輩、私が癒してあげますから」

「いろはちゃん、ヒッキーは私の匂いが好きなんだから、私が癒すんだよ!」

「いや、その匂いの設定ってラノベの中だからね!?」

「じゃあ、雪ノ下、一色よろしく頼む」

「ねえ、なんで毎回、俺の言うこと聞いてくれないの?」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

今日は久しぶりに膝丈のスカートを履き、気晴らしにららぽまで買い物に来ていた。最近学校で気になることがある。比企谷が私のことを避けているような気がするのだ。

何かあったわけではないと思う。奉仕部では特に依頼があったわけではないし、私には思い当たる節がなかった。

ただ、廊下ですれ違っても部活に顔を出しても目を合わせようとしないのだ。釈然としないままウィンドウショッピングし、ららぽの中をぶらぶらしていた。

 

本屋の前に差し掛かると、見覚えのあるアホ毛を揺らしながら本を物色している男性を見かけたので、声を掛けた。

 

「めずらしいな比企谷、1人か?」

「!?先生!?どうもっす。」

 

比企谷は私の姿を見ると動揺しているのがわかった。

 

「そ、そのスカート似あっていますね」

「学校ではスーツしか着ていないからな、どうだ?大人の女性の魅惑を感じるか?」

「ええ、とても綺麗です」

 

比企谷の口からは聞いたことがない言葉が発せられ、私は思わず動揺してしまった。

 

「な、何を言っているんだ!?女性をからかうんじゃない!」

「いや、正直に言ったつもりですけど」

「そ、そうか。そのありがとう」

 

私は照れてしまい顔を赤くしていたが、比企谷とこのような会話を出来たのが嬉しく思え、先ほどまで考えていた私を避けているのは誤りであったと認識したが、何故か違和感があったので、この後すこし話をしたいと考えていた。

 

「なあ比企谷、もしよかったらこの後ラーメンでも食べに行かないか?」

「ええ、いいですよ」

 

まただ、何時もなら「あれがあれなんで」と言い、すぐには賛同しないはずなのに、今日は変に素直なところがある。

 

ラーメンを食べるため、私の車でららぽを後にした。食べ終わり比企谷に話を聞くため、海が見える公園の駐車場に車を止めた。

 

「なあ比企谷、最近悩んでいることはないか?」

「何でそう思うんですか?」

「なんだか私を避けているような気がしてな」

「....それは、勘違いじゃないですよ」

「私が何かしのたか?気に障ることをしていたのなら、正直に言ってくれ」

 

私がそういうと、比企谷は助手席から体を乗り出し、私のほうに体を向けてきた。

 

「ど、どうしたんだ?」

「俺、先生のことが好きです」

「な、なにを言って キャ!?」

 

比企谷はリクライニングシートのレバーを操作し、私ごとシートを押し倒した。そして上半身を私の上に被せてきた。

 

「静さん、今からキスします。受け入れられないんだったら、俺を払いのけてください」

 

そういうと比企谷は顔を近づけてきた。教師と生徒、受け入れられるはずがない。でも私の体は言うことを聞かず、そのまま比企谷の唇を受け入れた。

 

「先生、いや静さん。これからお願いしますね」

「でも教師と生徒。世間が認めてくれるはずがない」

「後1年もすれば俺は卒業です。そすれば世間がどうとか考えなくていいんです」

「でも、比企谷の将来を潰す可能性も」

「じゃあ、静さんと付き合ったら必ず不幸になるんですか、付き合わなかったら必ず幸せになるんですか」

「....本当に私でいいのか」

「静さんじゃなきゃいやです!!」

 

また私は唇を奪われた。今度は長く舌と舌を絡めあうキスを味わった。

 

「....」

「そ、そろそろ帰らないと不味いな」

「俺、静さんとなら泊まりでもいいですよ」

「う、嬉しいんだが、それはまた今度にしてほしい」

「わかりました、じゃあ帰りましょうか」

 

帰宅するため車を走らせたが、信号で止まると比企谷は声を掛けてきた。

 

「静さん」

「どうした?」

 

私が比企谷のほうに顔を向けると彼はキスをしてきた。

 

「あ、危ないじゃないか!?」

「大丈夫ですよ、車が止まっている時にしますし」

 

比企谷は信号で止まるたび、キスを求めてきた。

 

「静さん、気づいています?今は自分から求めて来てますよ」

「....いじわる」

「いじわると言うのはこういう事を言うんですよ」

 

車が走り出すと、彼は肘掛に置いていた私の手を恋人繋ぎしてきた。これの何処が意地悪かと思っていると、もう片方の手で下着が見えるかどうかの際どい所までスカートを捲り上げられた。

 

「ひ、比企谷!恥ずかしい!!」

「駄目ですよ、ハンドル放したら。静さんエロイですね、黒いガーターベルトに黒のパンティですか。白い肌がより際立っていますね」

「お願い、許して」

「いやです俺のことを名前で呼んでくれないし」

「....は、八幡、許して」

「名前で呼んでくれましたね、でも直しませんよ。綺麗なものは何時までも見ていたいし」

 

信号で車が止まり、私はすかさずスカートを直した。そのとき八幡はキスをしてくれなかった。また車が動き出すと、またスカートを捲り上げられた。前回と違うのはもうパンティが丸見えになっていることだ、そして手で太ももを撫でてきた。

 

「この下着、横はシースルーになっているんですね」

「は、八幡。ごめんなさいぃ。もうゆるしてぇ」

「家に着くまではこのままですよ」

 

私は車の中で虐められ続けた。今まで自分がMだとは思っていなかったが、八幡に虐められるのが心地よく思ってしまっている自分がいることに気づいた。

 

ようやく八幡家に着くころには、私の身体はかなり火照っていたが、今日はおとなしく帰ったほうが良いだろう。付き合い始めて高校生が初日から外泊では私が誘っているようなものだし。

 

「それじゃあ、八幡。今度はその、あ、余り虐めないでね」

「それは静さんしだいですよ、でも少しは虐められたいんですよね?」

「....少しはね、それじゃまた」

「ええ、また」

 

最後に口づけをし、私は車を走らせた。

八幡が見送ってくれているなか、ブレーキランプを5回光らせるのを忘れずに。

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

「....」

 

今回は比企谷君と先生だけでなく、読んでいた私や一色さん、聞いていた由比ヶ浜さんも含め全員、顔を真っ赤にしている。私はこのラノベを読んでいる時、途中で放り投げそうになったわ。

 

「中二、エロすぎ!!なんでこんなの書いてんだし!?」

「いやこれぐらいラッキースケベのあるラノベでは当たり前だぞ」

「結衣先輩、知り合いだから余計にエッチに感じるんですよ、多分」

「そうね、平塚先生で容易に想像できてしまうものね」

「や、やめて!!私で想像なんて!!」

「いや、先生を登場人物にしているんだから当然でしょ。黒歴史になるからやめようって言ったのに聞かないからですよ」

「うぅ、比企谷の言うとおりだったぁ」

 

先生は目を潤わせて項垂れて(うなだれて)いるわね、でも何で何回もキスをしているのかしら、エッチなキス(DeepKiss)もしているし。私のラノベにはなかったのに、今度また書いてもらおうかしら。

 

「大体、先生のキャラが途中で変わりすぎですぅ、段々言葉遣いが変わってってますよね?」

「それは八幡に段々染められていっているという設定で書いてるんで」

「でも最後なんて乙女みたいですよ」

「いや、先生が乙女だなんて」

 

そういうと比企谷君は身体を守るように手を前にかざしたが、平塚先生は手を出そうとせず、比企谷君のほうを潤んだ目で見ていた。

 

「なあ比企谷、私がラノベにあったような言葉遣いだと変かな?」

「い、いやおかしくないとは思いますが....」

「っていうか先生、すでに言葉遣い変わってるし!?」

 

「でも以外でした。木材先輩なら先生のラノベは絶対コメディにすると思っていましたし」

「あ、それ私も思った」

「先生のラノベを考えるのが一番つらかったのだ。どうしてもギャグに走るか18禁になるかになってしまっていたんだが、ギャグだと我に鉄拳が降り注ぎそうだし、18禁だとお主たちに声優を担当してもらうのが、どうしても申し訳なくてな」

「....たしかにそんなの声に出しては読めませんよね」

 

**************************

 

「私としては、なぜ比企谷がそれぞれの女性を好きなのか、過去に何があって好きになったのか、もっと細かい心理描写を書いたほうがいいと思う」

「先生、それを聞くと俺が誑しみたいじゃいですか、せめて主人公とか男とかにしてもらえないですか」

「確かにそうね、私のときも比企谷君が「雪乃、好きだ」って言ってくれたんだけど、いきなりだったものね」

「私のときは「俺は何時も俺のそばに居てくれる、いろはが好きだ」でしたね、先輩!!」

「「由比ヶ浜結衣さん。好きです。俺と付き合ってください」ってヒッキーがちゃんと付き合ってくれるって言ってくれたもん!!」

「私のは「俺、先生のことが好きです」って言って最初は比企谷に名前で読んでもらえなかった....」

「何を争っているの!?ねえ、だから俺の名前出さないでくれる?」

「あと、私のラノベなら比企谷、雪ノ下たちのラノベなら女性陣の心理描写も書けると良いかもな」

「一人称ではなく、二人称にするということですか?」

「まあ、何処で切り替えるとか難しいがな、もっと長い話であればそれも可能だろう」

 

「材木座、今回の小説はそれぞれの特徴が出ていて面白かったぞ。自分なりにキャラクターを考えていけばもっと話が膨らむと思うので、これからもがんばってみたまえ。いつでも相談に乗るぞ、今回は時間のない中よく書いてくれた。ご苦労様」

「そうですね、木材先輩、ありがとうございました」

「うん、中二ありがとう」

「私からもお礼を言わせて、材木座君ありがとう」

 

こうして材木座君のラノベ騒動は一旦終わりを迎えた。

 

一旦?

 



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第6話

この前に書いた「 IF 総武道高校ラノベを考えるのは間違えている。」とは繋がっていません。第5話の続きとなります。

今回はさがみんを出したかったのでかなり強引かも知れませんがよかったら読んでください。


「先輩、私正直言って黒歴史を侮っていました、後から色々と来るんですね。とくに一人で過ごしていると不意に思い出して悶えちゃうんですけど」

 

一色さんは部室に入ってくるなり文句を言っているわ。でも一色さんだけではなく、私、由比ヶ浜さん、そして比企谷君も同じみたいね。

 

「俺もだわ、お前たちが作ってくれた黒歴史のおかげで!!しかも雪ノ下の分が癒えないうちに3つ追加されるなんて自己最高記録だわ!!」

「よかったじゃないですか、自己記録更新できて」

「でも比企谷君、私たちは初めての黒歴史なのよ、あなたのように大量生産していないから、慣れていないのよ」

「うんヒッキー。私もかなりヤバかったよ、布団から出れなかったもん」

「黒歴史に慣れるってなんだよ。そこまではまだ行ってないよ」

「ヒッキーも土日ほとんど部屋から出なかったんだよね、小町ちゃんからメールで聞かれたけど答えられなかったから、知らないって言っちゃった」

「いや、それで助かる。小町にラノベのこと喋ると絶対面倒なことになるし」

「うん、ヒッキーもバラさないでね」

 

コンコン

 

私たちがそれぞれ土日をどのように過ごしていたか話していると、扉をノックする音が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

「ひゃっはろー!!」

「姉さん...。何しにきたの?用事がないのであれば帰ってちょうだい、まだ部活中なのよ」

「比企谷君、雪乃ちゃんが冷たい!!」

「雪ノ下さん、なにしにきたんすか」

「「こんにちは」」

「うん、こんにちは」

 

コンコン

 

姉さんが来て挨拶をしていると、また扉をノックする音が聞こえてきたので私が「どうぞ」というと城廻先輩が女子生徒を連れて入ってきたわ、どうして城廻先輩と彼女が一緒に来たのだろう?この部室に余りいい印象を持っていないと思うのだけれど。

 

「城廻先輩...相模さん、こんにちは」

「めぐり、委員長ひゃっぱろー!!」

「....うす」

「「...こんにちは」」

「うん、こんにちは」

「....おじゃまします」

 

「今日は突然ごめんね、雪ノ下さん。あ、はるさんが居るんであれば出直したほうがいいかな?」

「いいえ、姉さんは無視してもらって構いません、よろしければ御用をお伺いしますが」

「雪乃ちゃんがひどいよぉ」

「じゃあ、相模さんいいかな?」

「...は、はい」

「実は相模さんに相談されてね、一人で奉仕部に行きづらいと言うので連れてきたんだ。ここからは相模さん、一人で話さないとね」

 

「は、はい、...き、今日は雪ノ下さんに文化祭のことを謝罪しに来ました。うちが、周りの人たちと違うって思われたくて、でも雪ノ下さんに仕事を押し付けて遊んでばかりいました。...雪ノ下さんの仕事ぶりを見て勝手に嫉妬して雪ノ下さんが体調を崩しても、うちは遊んでばかりで最後までみんなに迷惑を掛けて本当にすみませんでした!!」

 

相模さんは泣きながら最後まで自分の言葉で謝罪を行い、最後顔を涙でくしゃくしゃにしながらも私にお辞儀をして謝罪をしてきたわ。彼女のこんな姿を見たことがない。文化祭の時はいつも遊んでいて仕事だというと嫌そうな顔ばかりしていたもの。

 

「いいえ、相模さん。本来はあなたの仕事の補佐をおこなう約束だったのに、私が仕事を抱えてしまったのがいけなかったわ。私の方こそごめんなさい」

 

「..ゆ、雪ノ下さん...ありがとう」

 

「....そ、それから比企谷、あんたにも謝罪させてほしい」

「まて、俺は何もしてないぞ」

「うん、あんたはそう言うって思ってた。文化祭の最後、うちは比企谷に助けられたの。でもそのことを謝罪にきたんじゃない、あれはわざとやったんでしょ?雪ノ下さんのため、ううんそれも違う、雪ノ下さんが倒れても成功させようとした文化祭のため、それを謝罪したいんじゃない。せっかくうちは助けてもらったのにその後、比企谷の悪口を言いふらしていたの。今思い返すとうち本当に最低でした。謝っても許してもらえなくてもいい。でも謝罪させてほしい。だからここに来ました....比企谷、本当にすみませんでした。それと、ありがとうございました」

 

相模さんは涙を流しながら謝罪すると比企谷君に深々とお辞儀をし、また泣き出してしまったため城廻先輩に胸を借りていたわ。彼女が比企谷君に謝罪するとは思っていなかったのだけれど、彼女にとっては良い方向にすこしでも変われるきっかけになってくれればと思うわ。

 

「あー、その相模、こちらこそ暴言を吐いて申し訳なかった、後、なんだ、そのありがとうな」

 

少し泣き止んだ相模さんに比企谷君は声を掛けていた。相模さんも「うん、ありがとう」と言いながら頷いていた。

 

私は紅茶を配り、みな相模さんに気を配っていたのか他愛もない会話をしていたので読書でもしようと思っていたところ、姉さんが話し出した。

 

「じゃあ、私の用件を言っていいよね。私土曜日に静ちゃんと飲みに行ったの。その時静ちゃんがかなり酔っていたんだけど、変なこと言い出したんだ。『黒歴史がぁ』とが言っていたんだけどね。比企谷君・・・・『八幡、許して』とか『雪ノ下の胸を揉んだ』とか『由比ヶ浜のお尻触った』とか『一色と抱き合った』とか、どういうことか説明してくれるよね。事と場合によっては....潰すよ....」

「....」

「何も喋らないってことは本当のことって思っていいんだよね?」

「え、比企谷君。君って最低だね」

「....比企谷、いくら何でもそれは....」

 

比企谷君は俯いて何も喋らない。私たちのために、また自分を犠牲にするつもりね、私は由比ヶ浜さんと一色さんに目配せし彼女達が頷いたのを確認した。

 

「姉さん、その件は私から説明させてもらうわ」

「雪乃ちゃんは黙ってて」

「いいえ、言わせてもらうわ。その件は比企谷君はまったくの濡れ衣よ」

「じゃあ、どういうことか説明してもらえるの?雪乃ちゃん」

「ええ、実は作家希望の生徒から小説の批評を行ってほしいと依頼があったの、そして私たちが主役の恋愛小説を書いてもらったのよ」

「小説の批評からどうしてみんなが出ている小説の話になるの?」

「言葉で言うより見てもらったほうが早いわね、私の分だけ見せてあげるわ、それでいいでしょ」

「ゆきのん、私のも見せていいよ。ヒッキーの濡れ衣が晴れるなら、いくらでも見せてあげて」

「雪ノ下先輩、私の分も見せてあげてください。私たちのせいで先輩が疑われているのは耐えられません」

「....その..すまん」

「比企谷君、その言葉は違うのでは?」

「....そうだな、雪ノ下、由比ヶ浜、一色、その、ありがとう」

「ヒッキー!」

「先輩!」

 

比企谷君がお礼を言ってくれた、かなり照れているようだけれど。私はパソコンを立ち上げ、それぞれのファイルを開くと姉さんにパソコンを渡したわ。私たちは顔を真っ赤にしながらも比企谷君をみんなで守れたことがすごく嬉しく感じられた。姉さん、城廻先輩、相模さんはパソコンの画面に釘付けになって読んでいるわ。

 

ヘエー、イイナー。

ワタシモ スキダツテ イツテホシイ。

イジメラレタイ。

....

 

なんだかおかしな感想が聞こえてくるのだけれど、とりあえず比企谷君の濡れ衣は晴れたようね。

 

「比企谷君、雪乃ちゃん、ガハマちゃん、一色ちゃん、ちゃんと謝罪させて。疑ったりしてごめんなさい」

「私もごめんなさい。特に比企谷君には失礼なこと言って」

「比企谷、私もごめん!!」

 

「その今回のは勘違いされてもしょうがないのでいいですよ..先生だけは許せないけど」

「ラノベの内容を一部だけ聞くと比企谷君がみんなを誑かしているものね」

「私には誠実でしたよ。断っても家に送ってくれましたし」

「うん、ヒッキーが付き合ってくれって言ってくれたもん」

「いや、今内容を言わないでくれる?そっちに話が行ったら面倒なんだけど」

「ねえ、雪乃ちゃん。私もその...小説を書いてもらうことはできないのかな?」

「私もお願いしたい!!」

「うちも比企谷との和解の意味を込めて....」

「何を言っているのかしら、あなたたちは。そんなことお願いできないわ」

「じゃあ、比企谷君からお願いして!!」

「いやですよ、そんなの」

「でも、これ書いたのって材木座君だよね?体育祭の時、作家目指しているって言っていたような。相模さんさっき図書館に居なかったっけ?」

「うん、居たと思います。うち呼んで来ますね!!」

「私も行く!!」

「私も!!」

 

そう言うと私たちが停めるまもなく、3人で部室を出て行ったわ。私たちはため息をついて呆れ返っていた。

 

**********

 

「は、八幡!!こ、これはどう言ったことでごじゃるか!?」

 

材木座君は城廻先輩と相模さんに手を引かれ連れて来られていた。かなり言葉使いがおかしくなっているわね、いきなり女性に手を引かれて連れてこられたのだから。顔を真っ赤にしてかなり戸惑っているようだし。

 

「ねえ、材木座君。私たち3人にも恋愛小説を書いてくれないかな?」

「....あの、どちらさまでしゅか?」

「あ、ごめんね。私は雪乃ちゃんの姉、雪ノ下陽乃よ」

「私は覚えているかな?3年城廻めぐりです」

「うちは2-F相模南です」

「でも書こうにも皆さんのことよく存知あげませんし...」

「それは奉仕部のみんなに聞いて書いてよ」

「失礼な事書くかもしれませんし、男はどうすんでしゅか?八幡には以前もう俺を使うなって言われてましゅし」

「比企谷君、ダメなの?」

「比企谷君...」

「比企谷...」

「お、俺?嫌ですよ、何でわざわざ黒歴史をこれ以上増やさないといけないんですか」

「比企谷君、私の卒業記念に駄目かな..」

「うちも比企谷への謝罪記念に...」

「なんだよ謝罪記念って」

「これから比企谷と仲良くしたいなと思って、二人で恋愛小説を共有できたら楽しそうじゃん」

「何言ってるの?そんなの共有なんてできないぞ!!黒歴史ってだいたい一人のとき、襲ってくるんだぞ!!」

「でも材木座君の小説の批評のためにやっていたんだよね。材木座君どうかな」

 

そういうと姉さんは惚れ惚れする笑みを浮かべ材木座君に問いかけていたわ。

 

「あ、あの、そのお願いしましゅ...」プシュー

「じゃあ、後は比企谷君だけだよね」

「騙されるな!材木座!!魔王に良いように洗脳されているだけだぞ!!」

「へぇ、誰が魔王...か.な...」( º言º)

「ヒェ!!....ごめんなさい」

「じゃあ、いいよね?」

「八幡、いいのか?」

「わかった、わかった、好きにしてくれ!!」

 

ついに比企谷君も折れて、姉さんたちのラノベを書くことになったようね。材木座君の小説の批評が目的なはずなのに....でも比企谷君が「好きにしてくれ」って言っていたから私もまたお願いしようかしら。

 

「我からも一つお願いがありましゅ...音読を本人にお願いしたいのでしゅが...」

「どういうこと!?音読するの!?」

「ええ、私たちは交代で読んだわよ」

「読んでもらえたのは嬉しかったのですが、やっぱり素人ですので。本人であればもっと感情移入して貰えるかなと...」

「どうする?めぐり、委員長」

「私はいいよー」

「....うちもいいですよ」

「じゃあ、決まり!!材木座君、「「よろしくお願いします!!」」」

 

こうして比企谷君の黒歴史が新たに追加されることになったわ。



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第7話

アニメしか見ていないので文化祭のことで書いています。

よろしければ読んでください。



姉さんたちが材木座君にラノベを依頼した週の終わり、またみんなで奉仕部に集まったわ、これで比企谷君の黒歴史が増えるのね。それは良いのだけれど彼の周りに女性が段々増えていっているのね。城廻先輩と相模さんなんて今まで余り接することがなかったのだから。今日、比企谷君が逃げようとしていたらしいけど、相模さんが捕まえて腕を絡ませ連れてきていたし。どうして腕を絡ませる必要があったのかしら...

 

「なあ相模、お前本当に良いのか?今週末悶え苦しむことになるぞ」

「うちなら大丈夫、文化祭委員長っていうすでに黒歴史があるんだから」

「それとはまた異なると思うんだがな」

「このUSBに入っているんで、パソコンに移してもらえますか」

 

材木座君がそういうとUSBメモリを手渡してきた。私はパソコンにファイルを入れたのだけれど、読んでしまうといけないのでファイルは開かずにいた。

 

「比企谷、よく許可をだしたな」

「誰のせいと思っているんですか!!先生が余計なこと言わなければ、こんなことになってないですよ!!」

「....八幡、ごめんなさい。もう許して...」

「....やめてください、先生」

「静ちゃんずるいよ。でも飲んでいる時、すごく嬉しそうに話していたよね。『八幡に虐めらるのスキ』とか言っていたし」

「陽乃!!黙ってくれ!!」

 

多分先生はわざと言ったのだろうけれど、姉さんに言われてみるみるうちに顔が赤くなっているわね、恥ずかしいのなら最初から言わなければ良いのに。

 

「最初に言っておきたいことが。相模殿のことを取材しても八幡との繋がりが文化祭の話になってしまうのだ、その後日談って設定で書いたのだが、問題ないか」

「材木座、取材って奉仕部に話しを聞きに来ていただけじゃないか」

「我にとっては取材なのだ!!」

「うん、いいよ」

「後、相模殿の友人として他の女子も少し出てくるのでそちらにもお願いしたいのだが」

「そちらについては、私が担当するわ、比企谷君はやってくれないので姉さんお願いできるかしら」

「わかったよ、比企谷君の台詞を言えばいいのね」

「じゃあ、始めましょうか」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

うちは文化祭が終ってから、どうしても考えてしまうことがある。文化祭の最終日、うちに酷い事を言い放ったアイツのこと。なんであんなことを言ったのか今では何となくわかる。でもアイツに助けられたと思いたくないので文句の一つでも言ってやりたかった。だから今こうして屋上に呼び出して対面している。

 

「相模、いきなり呼び出して何かようか」

「比企谷、アンタ文化祭の時、なんであんなひどいこと言ったの?」

「あ、ただお前の身勝手さにムカついただけだ」

「....うちのためだよね、アンタがあんなこと言っても何にもメリットないじゃん!!」

「..謝罪してほしいのか?じゃあ、済まなかったな。これで良いだろ」

「アンタ、うちのこと馬鹿にしすぎ!!アンタが何であんなことやったか、うち判ってる!!」

「判っているならワザワザ呼び出して言うことねえだろ、じゃあこれで帰るわ」

 

そういうと比企谷は帰ろうと扉のほうに身体を向け歩き出そうとしていた。コイツは何も分かっていない!!うちの考えも何でここに呼び出したかも。うちは比企谷を追いかけ正面に回り込むと比企谷に言ってしまった。

 

「アンタのことが好き!!自分のことを犠牲にしてでも、うちのこと守ってくれたアンタが好き!!」

 

うちは文句を言うつもりだったのに何言っちゃってるの!?その次には自分でも考え付かないことをやってしまっていた!!比企谷の頭に手を回し、思いっきりうちのほうに引き寄せ、キスしてしまった。勢いが付きすぎて歯と歯がぶつかりあったけど、うちは気にせず比企谷の頭に回している手に力をいれ、ファーストキスを味わった。

 

「お、お前なにしてんだ!?」

「う、うち何やってんの!?比企谷!!ゴメン!!」

 

そういうと、うちは扉に向かって走りだしていた。でもかなり動揺していたのか前のめりにずっこけてしまった。

 

「相模!!大丈夫か!?」

「うう、痛いよ」

「あ、あのそのスカート直してくれ、捲れ上がってるぞ」

 

うちはうつ伏せで倒れているので見えていないが、どうもスカートが捲れ上がっているらしい。た、確か今日はローライズのパンティを履いていたはず、後ろからだとお尻の割れ目が見えちゃうやつ!!私は急いで立ち上がろうとしたが、足が縺れ比企谷の胸にもたれかかってしまった。

 

「お、おい相模!!離れてくれ!!」

「....やだ!!」

「やだって、なに言ってるんだ」

「返事を聞かせてくれないとヤダ!!」

「....返事って何のとこだ」

「分かっているくせにそんなこと聞くんだ。じゃあもう一回ちゃんと言うね...アンタが文化祭でうちの事守ってくれたことを考えているうちにいつの間にか比企谷のことばっかり考えていた...うちアンタの事が好きでたまんないの!!」

 

うちは比企谷の胸に顔を預けながら言ってやった。

 

「だから返事を聞かせてほしい。一週間後の放課後、ここで待ってる」

「....分かった」

 

そう言うとうちは比企谷から離れた。比企谷は「それじゃ」といい屋上から出て行った。うちは今になって恥ずかしくなったため、そのまま屋上に1時間以上、座り込んでいた。

 

***********八幡視点

 

やっべー!どうなってんのこれ?何で相模が?何であいつキスしてくるの?好きって言ってくるの?頭の中でさっきのことを思い浮かべては顔が赤くなるのがわかる。今日は部活には行けないな。明日からどうすればいいの?相模と顔を合わせれないよ。

 

相模からの告白後。数日たった休み時間、聞きたくなかったけど相模たちの会話が聞こえてきた。

 

「ねえさがみん、何か良い事あったの?ここ数日にやにやしているよね」

「にやにやって....好きな人に告白出来たんだ、返事はまだ貰っていないけど」

「え、それって比企谷?」

「ど、どうして知ってるの!?うち何も言ってないよね」

「そんなの見てれば分かるよ、この間も戸部くんが「ヒキタニ君、ヤッベーわ」とか言っていたとき、わざわざ説明しに行ってたでしょ。私たちにも比企谷のこと誤解だって説明してくれたし」

「うう、そんなにバレバレだった?」

「うん、今もチラチラ比企谷の方見てるし」

「ななな、何言ってるの?私、比企谷のことなんて見てないですし...」

「さがみん、自分のこと「私」って言ってるよ。いいねえ恋する少女だね」

 

何やってんのアイツ!?寝たふりしているけど、これバレているよね。自分でも分かるぐらい耳が熱いんだけど!!でも相模も変わったんだな。友達にも俺の事説明したようだし。って言うか「好き」とか何で教室で喋っちゃってるの?他の奴にも聞こえているでしょこれ。

俺も何で相模のことばかり考えているんだろ、相模のせいで最近ろくに寝れてないし。

 

***********相模視点

 

うちは屋上で比企谷のことを待っている。もしかしたら来てくれないかもしれない、でもうちの気持ちは伝えられた、うん大丈夫。今日は縁起の良い下着履いてきたし。あの日比企谷に見られたパンティ。恥ずかしかったけど、あの日からうちは変われたと思う。そんなことを思っていると屋上の扉が開いた。

 

「ありがとう、来てくれて」

「そういう約束だったからな」

「....じゃあ、聞かせてくれるかな、比企谷の返事」

「ああ、そのなんだ、南しゃん、よろしくおねがいしましゅ」

「....なんでそこで噛むかな、でも嬉しい。こちらこそよろしくおねがいしましゅ...」

「お前も一緒じゃねえか、へたれ委員長」

「アンタも一緒じゃん、へへ、ヘタレどうし仲良くしてね」

「ああ、よろしくな」

 

そして私たちはキスをした。今度は歯がぶつかり合うことはなかった。

 

(ここまでが材木座の小説)

**************************

 

「....うぅ」

 

相模さんは読み終わったのだけれど、かなり恥ずかしそうね。顔はかなり赤面しており読んでいる最中も言葉にならない呻き声を出していたわ。

 

「材木座、今回は二人の視点でやってみたんだな、まあ解りやすくて良いんじゃないか」

「はい、以前指摘して貰った点を少しでも入れてみようと思いまして」

「さがみん、うまかったよね、ビックリマークあるところ、大きな声、出していたし」

「由比ヶ浜さん、それを言うなら感嘆符と言った方がいいわよ」

「いいじゃん!!ビックリマークでも通じるし!!」

「でも相模先輩かなりヤバかったですね「アンタの事が好き!!」って言ったとき、本当に告白しているように聞こえましたもん」

「うぅ、辞めて、それ以上言わないで。ひきがやぁ助けて....」

「....」

 

「後、以前下着を見せる意味がないって指摘があったので、今回は縁起物として出してみたのでしゅが、どうであった?」

「「「....」」」

 

比企谷君は何も喋れないようね、まあこういうことになるのは分かっていたのだけれど。後、材木座君が下着がどうこう言っていたのだけれど、誰も何も言わないわね。

 

「....はるさん、ヤバくないですかこれ」

「うん、聞いているだけでも結構来るんだけれど、自分の分を読むともっとなんだろうね」

「じゃあ、ここでお開きにしましょうよ、自分から恥ずかしい思いする必要ないですから」

「「それはイヤ(ダメ)!!」」

「それでは次に移りましょうか」

 

これで相模さんのラノベは終了ね、でも本人が読んでいるので本当に比企谷君に告白しているように思えたし。なんだか先が思いやられるわ。

 



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第8話

「城廻先輩、もう辞めませんか。わざわざ黒歴史を作る必要ないでしょ?」

「えぇ、比企谷君。私との恋愛小説そんなにいや?」

「そういうことではなくて、恥ずかしいじゃないですか。材木座にデータだけ貰って後で一人で読んだ方がよくないですか」

「比企谷君、それでは批評にならないわ。みんなで評価を行わないと」

「お前たちは終わったから良いけど、こっちについてはこれから黒歴史が生産されるんだぞ」

「まあ、そう言うな比企谷、楽しめば良いじゃないか」

「楽しめませんよ、この土日また涙で枕を濡らさないといけないじゃないですか」

「元生徒会長殿のラノベについては、相模殿のような感情的なことはないので読みやすいと思いましゅ」

「うん、相模さんみたいに大きな声で告白しなくて良いんだね」

「いやぁ、うちのこと掘り返さないでぇ...」

 

「じゃあ、始めましょうか」

「城廻先輩、比企谷君役は誰がいいですか?」

「比企谷君はだめなんだよね?」

「絶対イヤです」

「じゃあ、一色さんお願いできるかな」

「はい、良いですよ」

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

お昼前、私は通い慣れた道をゆっくり散策中。今日は平日だけど大学への推薦をすでに貰っており自由登校なので、高校までの道のりをゆっくり歩いていた。こうやって歩いて高校生活を振り返っていると色々と思い出す。私は生徒会長をやらせて貰ったので色々なことを体験できた。行事のことを思い浮かべると何時も1人、後輩の男子生徒の顔を思い浮かべてしまう。自分を犠牲にしたり、捻くれた方法で助けてくれたり。その時、一台の自転車が私の横をとおり過ぎていった。

 

キキーッ!!

「城廻先輩じゃないですか、どうしたんですかこんな時間に」

「私は自由登校なんで、ゆっくり歩いてるだけだよ。比企谷君こそ遅刻じゃないの」

「俺はまあ、起きるのが遅かったんで」

「ふふ駄目だよ。授業はちゃんとでないと。ねえ比企谷君、どうせ遅刻なんだしそこの公園でコーヒーでも飲まない?」

「いいですよ、今から行っても先生に怒られるのは一緒ですからね」

「じゃあ、お茶しようね」

 

「よかったんですか、俺なんかが一緒して」

「私が誘ったんだよ、比企谷君とお茶したかったんだ」

「何が良いですか、これぐらい出しますよ」

「じゃあ紅茶をお願いできるかな」

 

そういうと、彼は自動販売機で私のための紅茶と黄色い缶のコーヒーを買ってきてくれた。

 

「ありがとう、いただくね」

「どうぞ、城廻先輩ももう卒業ですね。おめでとうございます」

「うん、ありがとう。でも高校生活も終わりだね。比企谷君、色々助けてくれてありがとう」

「俺は何もやってないですよ」

「比企谷君がいなかったら色々どうなってたか判らなかったし」

「逆にめちゃくちゃにしていただけな気がしますけどね」

「そんなことない!!今考えると比企谷君が一番状況を正確に把握してたじゃない!!私なんて生徒会長なのに何も出来なかった..」

「なに言っているんですか、俺が色々出来たのも城廻先輩、あなたが居てくれたおかげです」

「....それ、どういうこと?」

「いや、そ、それは」

「ねえ、正直に言って」

「..俺は城廻先輩に憧れています、俺はこんなだから捻くれた考え方しか出来ません。そんな俺にも城廻先輩はみんなと同じように接してくれた。先輩にしてみたら何人もいる中の1人の後輩かもしれません。でも俺には憧れてる唯一の先輩なんです」

「何人もいる中の一人なんかじゃないよ、私の中で一番の後輩だよ。比企谷君、ありがとう」

 

私はベンチから立ちあがって彼の前に立った。そして前かがみになって彼と唇を合わせた。

 

「城廻先輩....」

「比企谷君、ううん八君、私のことはめぐりって呼んで」

「判りました、めぐりさん」

 

そういうと私たちはまた唇を合わせた。

 

**********

 

卒業式。今一色さんが送辞の挨拶をしている。彼女の時も八君が頑張ってくれてたな。私は自分の卒業式なのに八君のことばかり考えている。1年前の送辞のときは私が泣いてしまって前生徒会長を困らせてしまったんだよね。そんなことを考えていると答辞のスピーチのため私が呼ばれた。

 

「校庭の桜の蕾も膨らみはじめた春の良き日。私たち三年生一同・・・・」

 

私は答辞を読みながら、八君のことをまた考えていた。彼との高校生活が終ってしまう。そう考えていると涙が溢れ出した。

 

「....私ごとで申し訳ありませんが私には大好きな人がいます。その人とも離れないといけません。でも八君、私はあなたのことを愛しています。これからもよろしくお願いします....」

 

最後、私の答辞のおかげで騒がしくなってしまったけど、八君と学校で合えなくなってしまうのは悲しくてつい言ってしまった。

 

**********

 

「....めぐりさん、何ですかあの答辞は。いつでも合えますよね?」

「そんなことないよ、八君。学校ではもう会えないでしょ」

「でも家庭教師してくれているんだから何時でも合えるじゃないですか」

「でも...1年後、私が通っている大学に来てね」

「....善処します」

「善処しますじゃなくて、そこは「大好きなめぐりが通っている大学に受かって毎日ラブラブチュッチュしてやる!!」って言ってほしいな。」

「...なんですか、ラブラブチュッチュって」

「学校でもイチャイチャしたいでしょ?」

「....はい」

「でもその前に」チュ

「...じゃあ、がんばりますか」

「うん、がんばろー!!」

「..おーーー」

 

(ここまでが材木座の小説)

**************************

 

「..なんだか卒業式にこの小説を思いだしちゃいそうだね。一色さん一緒に読んでくれてありがとうね」

「いえいえこちらこそ楽しんで読めてますし」

「今回は視点を変えずにお互いの気持ちを台詞で書いたのか?」

「はい、なかなか難しかったんですが」

「良いではないか、色々試してみたまえ。評価は彼女達の顔を見れば分かると思うが、概ね好評を経ているのではないかね」

「中二、でもさっきのさがみんのラノベと全然違うんだね、やっぱり人で考えを変わるものなの?」

「そうだ、元生徒会長殿については、他にもヤンデレ系とか本人の印象とは逆に隠れS設定とか考えていたんだが、今回は始めてだし我の知っている元生徒会長殿に合わせようと思ったのだ」

「...隠れS設定って」

「辞めろ材木座、城廻先輩が困ってるだろ」

「いや、考えただけで書いておらんぞ」

「...でもちょっと興味があるかな」

「....城廻先輩」

 

「そういえば城廻先輩については、下着を見せてないんですね、木材先輩」

「元生徒会長殿はどんなパンティを装備しているのか想像つかなかったのだ」

「想像って、私たちの時も....」

「あ、いや...」

「「「....」」」ジィィー (;¬_¬);¬_¬);¬_¬);¬_¬);¬_¬);¬_¬) (‥;)

 

「はいはい、じゃあ今度は私の番だね、よろしくね材木座君」

「そ、そうね、次は姉さんのラノベに行きましょうか」

 



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第9話

「比企谷君、これが終わったら一緒にお茶でも飲みにいかない?内容について議論しようよ」

「いやです、お断りします」

「どうしてそんなこと言うかな、小説の内容を再現してみるのも面白いと思うよ」

「まだ読んでもいないのによく言えますね、後悔しますよ」

「そんなことないよね、材木座君?」

「いや、まあ、その....それは人によると言いますか...」

「..ふーん、まあいいや」

 

「..雪ノ下殿の姉上のラノベについては、八幡の台詞を先生にお願いしたいのでしゅが」

「どうして指定するのかしら?今まではそんなこと言わなかったのに」

「..今まで聞いた中で八幡の台詞は先生がうまいな。と、思っただけでしゅし...」

 

由比ヶ浜さんと一色さんは何か察したようね、私も以前材木座君が言っていた台詞から何となく察することは出きるのだけれど。

多分姉さんも分かっているようね。でもこれぐらいでこの人は動じないでしょうけど。比企谷君については、携帯を触って話に加わろうともしないわ。

 

「..ふーん、じゃあ静ちゃんお願いするね」

「ああ、じゃあ始めようか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

私は公園のベンチで一人うなだれていた。今まで母親に逆らったことはない。でも今回お見合いの話が来たとき私は母親の意向に背いていた。自分でもどうしてか分からない。なぜその時、比企谷君の捻くれた顔が浮かんだのかも。いいえ、分かってはいるの。でも彼は雪乃ちゃんが好きなはずだから、私にはどうしようもない。そんなことを考え私は1人ベンチに座っていた。

 

***

 

「雪ノ下さん?」

「..比企谷君、どうしてこんなところに」

「いや、通りかかっただけなんですけどね、雪ノ下さんが見えたので声を掛けただけです」

「そうなんだ、ありがとうね」

 

俺が声を掛ける前、雪ノ下さんの顔はいつもと違い、仮面を付けていなかったように見えた。何時も俺と会っているときは仮面を被った表情しか見せない。そんな雪ノ下さんに俺は何時しか惹かれていたが、今日の雪ノ下さんは横顔しか見えていなかったが顔は儚く脆い印象を受けた。

 

「どうしたんですか、雪ノ下さん」

「ううん、なにもないよ。しばらく1人にしてほしいな」

「....そうですか、じゃあ帰りますが気をつけてください」

「ぁ....」

「本当にどうしたんですか?」

「本当になんでもないの、なんでも...」

「...雪ノ下さん、俺には雪ノ下家の陽乃ではなく、雪ノ下陽乃の素顔を見せてください」

「....なにを言っているの?比企谷君....あなたには雪乃ちゃんがいるでしょ」

「俺が好きなのは陽乃さんあなたですよ」

「....」

「俺には陽乃さんの本当の顔を見せてください」

 

私は今、かなり動揺してしまい俯いている。今彼の顔を見てしまうと私が作り上げてきたものが全て崩れさってしまうような錯覚に捕われてしまった。このまま彼の前に居るのは不味いと思い彼から逃げようと走り出したが、壁に押し付けられ両方の手首を押さえつけられていた。

 

「比企谷君、やめて」

「嫌です、この手は離しませんよ」

「...比企谷君」

 

比企谷君の顔を見た瞬間、私を被っていた仮面は外れてしまっていた。

 

「綺麗ですよ、陽乃さん」

 

俺は彼女の始めて見せる綺麗な表情に見惚れていた。涙を流していても美しいその表情を自分だけの物にしたいため、俺は彼女の唇を奪った。

 

***

 

私は比企谷君の胸の中で泣いてしまっていた。今まで人前で泣いたことはないのに、彼の前で私は仮面を外してしまい、大声をあげ泣いてしまっていた。そして彼に手を引かれ、ホテルに連れていかれた。

 

「陽乃さん、俺は今からあなたを抱きます」

「ッ、でも..」

「陽乃、なにも言わずに俺の言うこと聞け」

「はい....」

 

私は彼の前で下着姿にされていた。上下ピンクの下着だったのだけど、恥ずかしくて手で隠していた。

 

「陽乃、自分でブラを外して俺の前に立て」

「....はい」

 

私はどうしたのだろう、彼からの命令になぜか逆らえない。今まで私に命令した人なんていないけど、私は指示されたかったのだろうか。いやこれは比企谷君だからだろう。

 

「..脱ぎました」

「どうして手で隠しているんだ」

「は、恥ずかしいから」

「手をどけて俺に陽乃のすべてを見せてくれ」

「..はい」

 

私は手を横に下ろした、でもどうしても恥ずかしくて比企谷君から顔を逸らしてしまった。すると比企谷君は私の手を引きベッドに押し倒してきた。

 

「綺麗だぞ、陽乃」

「比企谷君、電気消して」

「だめだ、俺は陽乃のすべてが見たい」

 

彼はそう言うと私にキスしてきた、今度は公園でやったようなキスではない。お互い貪るようにして求めあった。そして彼の手が私の体中に触れ唇でも触れられ続け、絶頂を向かえようとしていた。

 

「あぁ、も、もう、だめぇ」

 

私がそう言うと彼は私から離れた。

 

「..ど、どうして、やめるのぉ?」

「駄目なんだろ」

「えぇ、いや止めないで」

「お願いの仕方が違うだろ」

「...比企谷君、私をそ、その、イカせてください!!」

「ああ、分かった」

 

私は彼に苛められ続けた。彼が私の体を求めてくれるたび幸福が訪れ、何度イカされたか分からない。そして私は何時の間にか意識を手放していた。

 

***

 

「...比企谷君、私を貰ってくれる?」

「当たり前じゃないですか、だからこれからは二人で雪ノ下家と戦うことになりますよ、なので陽乃さんも母親に真正面からぶつかってください」

「うん、私を支えてね、八幡」

 

私は彼にキスをし、また身体を求めた。

そこからの彼は凄かった。高校ではサボっていた数学の授業もまじめに受け解らない所は私が家庭教師をしてあげた。大学では経済学やその他の受講していない学科にも顔を出し、アルバイトを始めた小さな町工場を大学卒業するころには規模を数十倍にまで押し上げるまでに成長させていた。そんな人材であれば雪ノ下家が欲しがらないわけがない。彼は今や私の片腕として20代で役員の立場にいるわ。

高校までの彼を知っている人たちは彼のことを変わったと言う、でも私だけが知っている。彼の変わっていない点、それは....

 

「は、八幡、私をイカせてくださいぃ」

 

(ここまでが材木座の小説)

**************************

 

「う、うにゃーーーーーー!!」

 

姉さんがラノベを読み終わると同時に奇声をあげ走りだしてしまった。私たちも全員うつむいていて、言葉を発せられないでいるわ。

 

「材木座、幾らなんでもこんな内容の小説は部活動の一環としては認められないぞ」

「....いや、ちょっと書いてみたかっただけで、R15ぐらいなら雪ノ下殿の姉上であれば問題ないかなと」

「...まあいい、陽乃には後で私から言っておく」

 

「なあ材木座、平塚先生の時もだが何でエロい事があるのは俺がSなんだ?」

「年上の女性が年下に責められるのが良いのではないか!!」

「いやお前の性癖はどうでもいいんだけど..」

「私の時はそんなことなかったよ」

「元生徒会長殿だと本当に苛めているようなので、書けませんでした」

「...苛められてみたいな」

「「「....」」」

 

「んん、内容についてはともかく、こういう視点の切り替え方だと難しくないか、色々試してみるのは良いのだが」

「でも今回のラノベは、所々比企谷君や姉さんの考えが入れてあるので判り易かったわ」

「うん、他のもだけどヒッキーやみんながどうして相手の事を好きなのか判るし」

「気持ちが弱いと思ったところもありますけどね、でも私たちの時みたいに先輩がいきなり告白とかじゃなかったですから、こっちのほうが良いですよね」

「ねえ、いい加減俺の名前だすの止めてくれ..」

 

「...ねえ比企谷ぁ、この気持ちどうすればいいの?」

「知らん、俺は忠告したからな」

「比企谷君...これ卒業式のとき、絶対思い出しちゃうよぉ」

「...大丈夫ですよ、多分」

「いいかげんだなぁ」

 

相模さんの台詞を聞いていると告白しているみたいに感じるわ、彼女の言いたかったのはそういった感情ではないのでしょうけど。でもウカウカしていられないわね。

 

「ねえ中二、これからもこう言ったの書くの?」

「いや我は御主たちのラノベを書いている最中、思いついたネタがあるので、そっちに専念してみるつもりぞ」

 

「じゃあ、今日はお開きでいいのかしら」

「うん、材木座君ありがとうね、はるさんの分もお礼を言っておくね」

「うちもありがとう」

 

これでようやく材木座君のラノベ騒動も終るのかしら?

 

**************************

 

俺たち奉仕部の面々が部室の片付けをしていると、メールを知らせる音楽が流れた。

 

「材木座か、なんだ『にけ』って?」

 

材木座からよく分からんメールが来た。なんだ『にけ』って。nikeのことか?返信しても折り返しがないし、電話をしてみたが電波状態が悪いのか繋がらない。

まあ、何か用事があるのであればまたメールが来るだろう。対して気にせず俺たちは奉仕部を片付け学校を後にした。

 

***

 

「ひゃっはろー、比企谷君。ちょろっと付き合ってくれるかな、っていうか来い」

「ゆ、雪ノ下さんどうしたんですか、いきなり」

「お茶でもどう?って言ったよね。もちろん付き合ってくれるよね、材木座君と」

 

近くの公園を見ると材木座が公園のベンチで項垂れているのが見えた。さっきのメールもしかして『にげろ』と言いたかったのか?あまりメールの事を考えず放っておいたことを今更ながら後悔した。確かにそうだ、雪ノ下さんがただ逃げ出すだけなんてありえない。もしかしてアイツ喋ったのか?喋っていたとしても俺の狙いがバレているはずがない、誰にも喋っていないからな。ここは大人しく従っておいて穏便に済ました方がいいな。俺が了解すると雪ノ下さん材木座、そして俺の3人で近くの喫茶店に入った。

 

「...済まぬ、八幡...」

「いや、お前は何もやってないだろ」

「比企谷君、お姉さん材木座君に聞いちゃった。今日のあれって比企谷君が書かしたんだって?」

「...済みませんでした。雪ノ下さんにいつも遣られているので、やりかえせるかな。と思って材木座にエッチな内容でとお願いしました」

 

ここはとりあえず謝って置けば何とかなるだろう。俺はとりあえず謝っておいた。

 

「いいんだよ、内容については言わないよ。こっちからは特に希望とか要望を出さなかったからね。でもね比企谷君、....録音しているのはどうかと思うな」

「八幡?御主、録音しておったのか?」

「いや、そんなことしてないでしゅよ....」

 

ヤッベー!!思いっきりバレてるじゃん!!しかも大事なとこで何噛んじゃってるの?バカ?バカなの?これどうすれば良いんだ?何とかごまかすんだ!八幡!!

 

「しかも私の時だけ録音してたみたいだよね、携帯触り出したのが、私の小説を読む前だったからね」

「アレはアレですよ、アマゾンからメールが来ていたので見てただけですよ」

「見せて」

「いや、見られたくない物も入っていますし」

「見せて」

「個人情報が...」

「見せて」

「....」

 

これ、はいって答えないと抜け出せないの?永久ループなの?やっぱりこの人魔王だわ。村人の俺や吟遊詩人見習いの材木座では太刀打ちできない。俺は震える手で携帯を差し出した。雪ノ下さんはしばらく携帯をイジっていると、ファイルを再生しだした。

 

『ふーん、じゃあ静ちゃんお願いするね』

『ああ、じゃあ始めようか』

 

雪ノ下さんと平塚先生の声が俺の携帯から聞こえ出した。そこで雪ノ下さんは停止ボタンを押した。

 

「比企谷君、説明してくれるよね」

「八幡?」

「...すみませんでした」

「ふーん、まあ小説の内容についてはこっちから指示した訳じゃないし?でも比企谷君、ちょっとおいたが過ぎるよね、このファイルどうするつもりだったの?」

「....」

 

俺はなにも答えられず黙っていた。そんな様子をみて雪ノ下さんはしばらく考えていたが

 

「じゃあまずは材木座君、君は女の子から要望があったら小説を書くこと、断らずにね。後、本当に上達したいなら音読ではなく、最初はみんなに読んでもらいなさい。それから章、節、項何処でもいいので区切りのいいところで感想や考えを言い合ってもらうの、いろいろな意見を聞いて参考にするのよ」

「はい、わかりましゅた」

「はい材木座君、携帯を返すわ、番号は控えたから。あと今日はもう帰っても良いわ。ただし女の子から小説を書いてほしいって言われたら絶対書いてあげること。もし逃げたら....」

「わ、わかっているでごじゃるーーー!!」

 

結滞(けったい)な台詞を履いて材木座は一目散に逃げ出した。何でアイツ魔王から逃げれるの!?魔王からは逃げれないんじゃないの?チートなの?あ、俺を生贄したんだった。

 

「じゃあ、比企谷君」

「ひゃ、ひゃい」

「まずあなたの携帯に私の電話番号とアドレスを登録しておくので、私からのお誘いは断らないこと。後明日デートするからよろしく」

「い、いや、雪ノ下さん。明日はアレがアレなんで」

「...ふーん。じゃあ明日、比企谷君ちにお邪魔するから。親も居るよね?『比企谷君に辱められた』って報告させてもらうわ」

「..判りました、明日付き合います」

「後、私のことは陽乃って呼ぶこと」

「そ、それは雪乃し「陽乃」たさん...は、陽乃さん」

「本当は呼び捨てがいいんだけど、まあいいわ。でもみんなの前でもちゃんと呼ぶんだよ。一応、この音声ファイルは私のアドレスに送らせてもらうね、もちろん比企谷君の携帯からは消しておくけど良いよね?」

「はぃ....」

 

今思うとこの人は解っていて材木座のラノベを読んだのではないか。最後まで読みきってから逃げたのも俺が録音しているのに気づいたから、最後まで録音させるためではないか?

もし、そうなら俺が孫悟空でこの人はお釈迦様って訳だ。手のひらの上で踊らされてただけだな。まあ、実際は魔王なんだけど。どっちにしろ逃げれないなこれは。

 

「は、陽乃さん?お手柔らかにお願いします。一応、これでも受験生になるんで」

「うん、いいよ私が比企谷君ちで家庭教師してあげる」

「い、いやそういうことではなくて」

「でも比企谷君ちだと不味いかな、いきなり壁ドンされて唇奪われそうだし、そのままベッドに押し倒されそうだし」

「ごめんなさい」

「よろしい、では帰りましょうか。今日は駅までエスコートよろしく」

「はい」

 

****

 

駅まで陽乃さんを送っていく最中、会いたくない人物に遭遇した。何でいるの?仲町さんも困った顔しているじゃん!!

 

「比企谷!!久しぶり!!」

「...おう」

「折本ちゃんだったけ?ひゃっはろー」

「お久しぶりです、雪ノ下さん」

「..お久しぶりです」

「どうしたの比企谷?今日は雪ノ下さんとデートなの?」

「うん、そうだよ。私たちラブラブなんだ、明日もデートするしね、ね比企谷君」

「..そうっすね」

「まじで!!比企谷ウケる!!」

「いや、ウケねえから」

「じゃあ、デートの邪魔しちゃ不味いから私たち行くね」

「あ、折本ちゃん、来週の月曜日暇?」

「え、まあ空いてますけど」

「じゃあ、総武高校に来てくれない?前生徒会長に許可を出しておくように言っておくからさ」

「ちょっと、雪ノ下「陽乃」、陽乃さん!!」

「なんですか?何だか怖いんですけど」

「大丈夫!!ウケることだから」

「..分かりました、じゃあ放課後総武高校に行きますね」

「じゃあ、雪ノ下さん、比企谷また月曜日!!」

「じゃあね」

 

「どういうつもりですか、陽乃さん」

「うん?面白い事は共有しないとね」

「..小町には言わないで貰えます?アイツ今必死に受験勉強しているんで」

「そうか受験だもんね。本当は小町ちゃんに比企谷君の回りの女性に声を掛けて貰うつもりだったんだけどね、まあ比企谷君に恨まれてもイヤだし小町ちゃんには黙っておいてあげる」

「...ありがとうございます」

「じゃあ、駅まで送ってくれてありがとう、明日のデート忘れないようにね。夜に時間とか連絡するから、じゃあまた明日!!」

「...それじゃ、また」

 

明日もだが、陽乃さんが折本を誘ったのって、ラノベのことだよな。アイツの事だから「それウケる!!」とか言ってノリノリになりそうだし。どうするんだこれ、マジで。

 



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10話

今回は短いので連投させてもらいます。


月曜日、奉仕部で3人で居るのだけれど、比企谷君の様子がおかしいわね。扉の方を何回も気にしているようだし。

 

「比企谷君、どうしてそんなにそわそわしているの?挙動不審よ、通報してほしいのかしら?」

「うん、ヒッキーおかしいよ」

「いや、まあ、何でもない」

 

私たちが喋っていると扉をノックする音が聞こえたので入室を促すと、材木座君と川崎さんが二人で部室に入ってきたわ。

 

「こんにちは、珍しい組み合わせね、一体今日はどうしたのかしら」

「私もどうして連れてこられたか分からないんだ、材木座がどうしても来てくれって言うんで来たんだけどさ」

「材木座君、どうして川崎さんを連れて来たのかしら」

「..しょの、まだ皆が集まっていないようなので集まってからで良いでしゅか」

「まだ誰か来るの?でもそれだと川崎さんが困るでしょ、ちゃんと説明しなさい」

 

そう言っているとまた扉をノックする音が聞こえ、城廻先輩と折本さんが入ってきたわ。

 

「雪ノ下さん、折本さんを連れてきたよ」

「こんにちは!!」

「こんにちは、あのどういった件で折本さんが来たのかしら?」

「私も聞いていないんだ、はるさんから奉仕部に連れて行ってくれってお願いされただけだし」

「姉さんも来るんですか?」

「雪ノ下、それについては俺と材木座から説明させてもらう」

「じゃあ私は良いかな、今日は用事があるんでここに居られないんだ」

 

そう言うと城廻先輩は帰っていったわ、なぜ比企谷君と材木座君が説明するのかしら。とりあえず紅茶をみんなに出したのだけれど、比企谷君から説明してもらうしかないわね。

 

「じゃあ、比企谷君説明をお願いしていいかしら」

「まず、今日は陽乃さんから来れないって連絡があった。それでな川崎と折本。今日お前たちに来てもらったのは、材木座の小説のヒロインになって貰えないかと思ってな」

「なにそれ?意味わかんないんだけど」

「比企谷、それってどういうこと?ウケるかウケないかよく判らないし」

「比企谷君、どうして姉さんのことを名前で読んでいるのかしら」

「あ、土曜日。比企谷と雪ノ下さんのお姉さんってデートしてたんだよね!!どこに行ったの?」

「まあ、その話は置いといて」

「置いとけるわけないじゃん!!ヒッキー説明してよ!!」

「いや、土曜日陽乃さんの買い物に付き合わされただけだ、名前についても雪ノ下さんと雪ノ下で判りにくいから名前で読んでいるだけだ」

「じゃあ、早く要点を言ってよ、この後妹を迎えに行かないといけないし」

「ああ、悪かった。実は材木座がラノベ、小説って言った方がほうがいいかな、を書いていてな、色々な女性をヒロインにして批評をすることで材木座の文章力を上げていたんだ。それで今度は川崎と折本にヒロインとして出てもらえないかと思ってな、もちろん断ってもらっても構わない」

「へえ、比企谷たちってそんな事やってるんだ!!ウケる!!」

「雪ノ下、あんたたちも書いてもらったの?」

「ええ、私や由比ヶ浜さん以外にも何人か書いてもらっているわ」

「いいじゃん!!面白そうだし!私がヒロインってウケるし」

「折本って言ったっけ、今まで書いた小説を読ませて貰ってから判断した方がいいよ、ちょっと読ませてよ」

 

彼女達はパソコンで私と由比ヶ浜さん、姉さんのラノベを読んでいるわ、今のうちに比企谷君に聞かないといけないわね。

 

「比企谷君、どうして今回はこんなに協力的なのかしら、以前のあなたは「俺を出すな」って言っていたはずだけれど」

「いや、まあ材木座のために一肌脱ごうかと」

「ヒッキー、服を脱いだら駄目だよ」

「由比ヶ浜、お前どうやって総武高校に入れたんだ?」

「ヒッキー!!キモい!!ひどい!!うぅ、キモい!!」

「とりあえず色々説明して貰う必要がありそうね、比企谷君」

「でも中二は良いの?先週終わったとき、なんか書きたいのがあるって言ってなかったっけ」

「ああ、わ、我は大丈夫だ」

「ふーん、何かヒッキーもだけど隠してるよね」

「わ、わ我は何も疚しいことなどない!!」

「じゃあ、ヒッキーは?」

「..俺も何も隠してないぞ」

「また私たちに隠し事するんだ...」

「まあ、比企谷君には後で問い詰めるとして、どうして折本さんを誘ったのかしら」

「それは偶然折本に会ったとき陽乃さんが誘ったんだ。今日総武高校に来るようにって」

「じゃあ、彼女は何も知らないまま今日ここに来たの?すごいわね。私なら怪しんで近寄らないけれど」

「中二、サキサキはどうして誘ったの」

「我の知っている女性が御主たち以外だと川崎殿しかいないのだ」

「でも自分から誘うなんて材木座君もどういった心境の変化かしら」

「..いや、その、まお「ま、まあいいじゃないか。材木座も色々書いてみたほうが練習になるだろうし」...」

 

「ねえ比企谷、これウケるんだけど、私のも書いてもらえるの?」

「まあ、内容については材木座まかせだがな」

「ふーん、ちょっと興味あるけどエッチなのは嫌だよ」

「えぇ、そっちの方がウケるじゃん!!」

「サキサキもかおりんも書いてもらうの?」

「サキサキいうな!!」

「かおりんって私の事?ウケる..かな」

「ああ、お前たちがイヤならもちろん材木座には書かせない、書いてもらうのであれば材木座にお前たちのことを知ってもらうために色々教えないといけないしな」

「我は断ってもらっても良いでしゅよ」

「こんなウケること断るわけないじゃん!!材木座君よろしく!!」

「私も別に良いよ、エッチなのは駄目だからね」

「...完成したら八幡に伝えるので集って(つどって)貰えるのか」

「「いいよ」」

「じゃあ、今日のところは解散ということで」

「比企谷君、待ちなさい。この後3人でお話ししましょう」

「そうだよヒッキー」

「....ああ、わかった」

 

***

 

「卑猥谷くん、あなた録音なんてしていたのね、不潔だわ」

「ヒッキー、最低!!」

「すまん、でもお前たちには隠し事したくなかったんで正直に話した、軽蔑して貰っても構わない」

「それだけ聞くと責めている私たちが悪いようにとられるわね、でもあなたのやったことは許されることではないわ」

「うん、陽乃さん可哀想」

「音声データは姉さんが消したのね、他には残していないのよね」

「ああ、バックアップとる前に消されたからな、でも陽乃さんは証拠として持っているはずだが」

「....まあ未遂、ではなく事前に被害を防げたということで問題ないのかしら。でも姉さんも録音しているのを気づいていたのよね?比企谷君」

「憶測だがな、始まる前に携帯触っていた事を指摘されたし」

「じゃあ、わざと比企谷君に録音させるためにやった。と考えられるわね」

「どうして陽乃さんがそんなことするの」

「....比企谷君に言うことを効かせるため、っていうのが濃厚ね」

「ふーん、それだとヒッキー自分で脅される材料作っただけじゃん!!」

「それを言われると返す言葉がないんだが」

「しょうがないわね、でも材木座君はアドバイスを受けたのでしょ。そちらについては、よかったのではないのかしら」

「でもヒッキー土日、連れ回されるんだよね?」

「さあ、陽乃さんもそんなに暇じゃないだろ、この間は俺に仕返ししたいために買い物に付き合わされただけだし」

「....」

 

はぁ、結局このラノベ騒動もまだ続くのね。

 

 



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11話

今回、ご意見を頂き参考に書いてみました。よろしければ読んでください。


今日は材木座君からラノベが出来たと連絡が有ったので、川崎さん折本さんに連絡し集まってもらっているわ。

でも折本さんは他校から来ることになるので遅れているわね。今回、材木座君から「集まった人にラノベを読んでもらい、ストーリー順に色々な意見を聞かせてほしい。」と言われたので集まった人から何部かプリントした川崎さんのラノベを読んでいるわね。私は最初に来たので先に読ませてもらい今は紅茶を用意しているわ。

部室にいるのは川崎さん、由比ヶ浜さん、一色さん、比企谷君、材木座君そして私が集まっているので5人で批評することになりそうね。

 

「雪ノ下。アンタたちもみんなで読んで批評してもらったの?」

「ええ、川崎さんそう言った筈よ」

「アンタたちよく耐えれたな、もう恥ずかしくて...」

 

川崎さんは顔を真っ赤にしているわね、でも私たちは音読されたのだから川崎さん以上だと思うのだけれど。

 

***

 

「それでは始めましょうか」

「こういうお店行ったことないんだけど、こ、こんな恥ずかしいことも言うの?」

「私たちが行った時は「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」って言われたよ」

「私たちは衣装を着させて貰ってみんなと喋っていただけで、他の店員さんと関わることがなかったから、どのような接客をしていたのかは見ていないわ」

「先輩も行ったことあるんですか、メイド喫茶って」

「ああ、雪ノ下たちとな。以前ちょっとした依頼で人探ししていたとき、みんなで入ったことがあるんだ」

「でも川崎先輩が『にゃん、にゃん、お帰りなさいませ。ご主人様』って言ったら可愛いでしょうね」

「はぁ!?」

「ご、ごめんなさい」

「川崎、ラノベの批評なんだから個人の発言については文句を言うな、批評が出来なくなるだろ」

「うぅ、分かった」

「材木座、この後の台詞『なんでここにアンタがいるのよ』もみんなで行ったとき、お前が言っていた台詞だろ、そんなに川崎に言わせたいのか」

「何時もツンツンしている女子(おなご)が八幡の前では、可愛い自分を見てもらいたい。でも恥ずかしい!!キャってなるのが良いのではないか!!」

「....いや、判らなくもないけど」

「ヒッキーもそういう女の子が良いの?」

「まあ、何時もと違う面が見れて良いんじゃないか」

「比企谷君。では例えばだけれど、わ、私はどのような行動が良いのかしら」

「...それ、今言うの」

「あ、あくまでも材木座君のラノベの参考のためよ」

「...雪ノ下だったら2人きりになると、甘えてくるとか」

「じゃあ、ヒッキー私は?」

「由比ヶ浜は逆に甘やかしてくれるといいな」

「先輩、私も教えてください」

「一色は何時もあざといが、たまに凛とした姿や頑張っている姿を見せるとかが良いんじゃないか。頼む、もう言わせんな」

「比企谷もそういったギャップがある女が良いの?」

「まあ、な。でもヤンデレ系とかは嫌だぞ、怖いし」

「ヤンデレ系ってどう言ったものなの?比企谷君」

「彼氏を独占したくて他の女子と喋っていたり仲良くしてると暴力を振るう、でも彼氏と二人のときはデレデレになるんだ」

「さすがにそれは引くわね、この中にそんな人は居ないと思うのだけれど」

 

私がそういうと材木座君、比企谷君と目が合ったのだけれど、すぐに反らされたわ。

 

「も、もしかして私がヤンデレ系って言うの!?」

「いやそういうわけじゃなくてだな...」

「材木座君、答えなさい」

「いや、他のラノベだと、雪ノ下殿に似ている方がヤンデレ系になっていくのが多いと言いましゅか」

「ゆきのん、今はラノベの批評だよ、脱線しすぎだよ」

「そうそう、この次の『サービスだから』って言ってオムライスにケチャップでハートと相合傘を描くのも良いですね」

「中二、メイド喫茶ってそんなことしてくれるの?」

「「おいしくなーれ」とか、云いながら描いてくれるのだ」

「...へぇ、そんなのが楽しいのかな」

「由比ヶ浜、それについてはクッキーの時と一緒だろ「俺のためにやってくれた」って気持ちが大事だと思うぞ」

「確かにそうだね。ごめん中二、変な聞き方して」

「構わぬ」

「でもケチャップで名前を書こうとして失敗して涙目になる川崎先輩ってかわいいですよね」

「うぅ」

「うん、サキサキってかわいいんだよ」

「..サキサキっていうなぁ」

「でも名前を書くのであれば、ケーキに使用する先の細いチューブを使えばいいのでは?」

「そんなの普通ないだろ、突然気になっている奴が来てケチャップで名前を書こうとして失敗したって話だし」

「そう言うことね、材木座君、私としてはここはもうちょっと詳しく書いてくれると助かるわ」

「雪ノ下先輩ってケチャップで名前とか書いたりした事ないんですか?」

「ええ、食べ物で遊んだりしないわよ」

「じゃあ、判らないかもしれませんね」

「ゆきのん、やったことないんだ。子供の時、よくドラエもんとか書いたりしたけどなあ」

「あー、書きましたね、それでケチャップだらけになっちゃうんですよね」

「うちは妹がやっているよ、でもドラエもんの絵描き歌、知らないんだ」

「えー何か歳を感じますね、もう妹さんから見たら私たちって、おばちゃんなんですかね」

「あんた、おばちゃんって..」

「だって平塚先生と私たちぐらいの年齢差ですよね」

「お前、それ平塚先生をおばちゃんって言っているようなもんだぞ」

「比企谷君、あなたひどいのね。先生の事をおばちゃんだなんて」

「ヒッキーひどい..」

「まてまて、また脱線し出したぞ」

「ああ、ごめんなさい。この後のゲームとか写真撮影っていいですね、私もちょっとコスプレしてみたくなりました」

「まあ、楽しいんじゃないか。今思うと雪ノ下と由比ヶ浜のメイド服の写真撮れば良かったな、すごい似合ってたし」

「あ、あなた何を言っているの!?」(〃▽〃)

「ヒ、ヒッキー、いきなりなんだし!!」(〃゚∇゚〃)

「..す、すまん」

「い、いえ、謝ることではないの//」

「....先輩、また話が脱線してますよ..」

 

「それで先輩が落としたスプーンを拾うため、川崎先輩が拾うんですね、でまた下着ですか、木材先輩」

「やはりラノベにはラッキースケベは必須なのだ」

「でも川崎先輩っていちご柄の下着なんて履かないと思いますよ」

「いや今回はギャップ萌を狙っているので」

「そうはいってもさすがにサキサキがいちご柄はどうかな」

「では妹殿のを履いてきたとか」

「材木座君、いくら何でもサイズが違いすぎるでしょ」

「川崎は黒のレース..ぁ」

「比企谷、アンタそれって私の下着見たときのヤツ....」

「ええ!?先輩って川崎先輩の下着覗いた事あるんですか!?」

「ち、違う覗いた訳じゃない。転んでるとき横をとおり過ぎたから」

「あら私と由比ヶ浜さんも覗かれたことあるわよ」

「ゆ、雪ノ下!?なんで今それを言うの!?」

「..へぇ、先輩って何気にラッキースケベをこなしているんですね、私とは何もないのに....」

「無いほうが良いだろ」

「八幡、御主そんなに美味しい思いしていたのか!くー羨ましい!」

「まてまて何でそう脱線するんだ、今はラノベだろ」

「そ、そうね。次に行きましょうか」

 

「ヒッキーがメイド喫茶から帰るとき、サキサキが見送りに来るんだよね」

「木材先輩、川崎先輩が涙目で見送ってくれたって事ですけど、ここはもうちょっと気持ちを文章にした方がいいと思いますよ。帰したくないけど、また今度コスプレして会いにいく。っていう後半に繋がると思いますので」

「ふむ、後半に繋げるための心境を書いた方が良いと云うことだな」

「そうね、後コスプレして会いに行くのであれば、比企谷君にコスプレをすごく褒められたとか、他にも見せてほしいと言われたとか、そういうのも入れれば川崎さんにしてみれば、着ていく理由になるわね」

「あ、アンタたちその言い方だと私が比企谷に逢いに行きたいみたいじゃないか」

「ええ、そうよ。今はラノベの川崎さんについて話しているのだから、誤りではないと思うのだけれど」

「で、でも」

「川崎、諦めろ。ラノベを書いてもらった時点でこうなることは判っていただろ」

「比企谷ぁ」

 

「それでサキサキがヒッキーに逢いにいくんだよね、でもその時のコスプレってまたメイドなの?」

「いや今回はロングスカートのメイドだぞ」

「うーん、喫茶ではミニで今回はロング。あんまり代わり映えしないんだよね」

「そうですね、もうちょっと衣装について詳しく書いてあれば印象も違うのかもしれませんけど。もしかしたら女性と男性でそのあたりは異なるのかもしれませんね。由比ヶ浜先輩なら何を着ていきます?」

「看護師とか良いかな、いろはちゃんだったら?」

「私ですか、そうですね。巫女さんが良くないですか、着てみたいんですよね。川崎先輩ならどうですか」

「うーん、ま魔法少女とか...」

「川崎先輩ってやっぱりかわいいですね」

「あぁ!?」

「ひゃ」

「川崎さん、否定は駄目よ。私であればそうね。メイドではなく婦警なんかが良いと思うのだけれど。それで「八幡のハートを逮捕しちゃうぞ」☆(ゝω・)vって言いたいわね」

「....」

「..ゆきのんって変なとこあるよね」

「雪ノ下、あんた凄いよ....」

「雪ノ下先輩!!私よりよっぽどあざといです!!」

「うぅ」

 

「材木座、これ俺たちがいる意味有るのか」

「八幡、結構良い意見とか出ているぞ。やはり女性ならではと云ったところか」

「まあ、俺にはよく判らんけどお前が参考に出きるので有れば、いいのか」

 

「サキサキがヒッキーを公園に呼び出して、告白するんだよね」

「そうですね、その時も電話してから公園に着くまでの間に川崎先輩の心理描写が欲しいところですね」

「一色さんの言うとおり感情が表せたら良いでしょうね、色々なことを考えて振られたら今までのように接することが出来ない、でも思いを伝えたい。とかかしら」

「そうだね、いきなり告白だとどうしても気持ちが入りきらないね」

女子(おなご)としては言葉より心理描写を多くしたほうが良いと云うことか?」

「特に恋愛のことはそうだよ、気持ちが「私と一緒だ」って思うと、サキサキが一気に身近になるんだよ」

「そうですね、そうなるともう応援しかしなくなっちゃって、続きが気になりますよね」

「確かにそのとおりね、これについては捻くれ谷君には判らない事でしょうけど」

「確かに俺には解らないわ」

 

「それで川崎さんが『アンタのことが好き!!』って告白したのだけれど、その前にお互いの会話で徐々に気持ちが解るようにしたほうがいいのでは?」

「ああ、お互い気になっているんですけど、最後の言葉が出ない、出せないってやり取りですよね。ちょっと憧れますね」

「うん、良いよね。お互い惹かれあっているんだけど、もし駄目だったらどうしようとか考えちゃうんだよね。だから最後の言葉が出てこない」

「それは私も同意見かな、読んでいるほうもそれで気持ちが高ぶるしね」

「えぇ、俺はそんなのは、まどろっこしいけどな」

「そのあたりは男性と女性でやはり違うのかしら」

「まあ、俺の意見が男性全般と取られるとどうかと思うけど、そういう意見もあるということで」

「やはり女子(おなご)と男ではかなり違うものなのだな、八幡」

「お前も俺と一緒か」

「ああ、早くイチャコラしてしまえ!!って思ってしまうのでな」

「まあ、私たちの意見を生かせば、女性には受け入れてもらえると思うのだけれど」

「中二ももうちょっと女心分かったほうがいいよ」

「先輩もそうですよ」

「比企谷も材木座ももうちょっと女のこと勉強しな」

「「...はい」」

 

「最後にはやはり比企谷君と川崎さんがキスするのね」

「中二のラノベでは大体そうだね」

「まあ、キスをして終了でも良いんですけど、その後の会話も入れたほうが良いと思いますけど」

「前生徒会長殿みたいなのでは駄目であるか?」

「あれは後日談ですよね、キスした後、先輩が『サキ、これからもずっと一緒だ』で川崎先輩が『うん、よろしく』って言っただけで終ってますよね。もうちょっと話を膨らませたほうが良いと思うんですけど」

「由比ヶ浜殿や生徒会長殿みないなラノべのようにか」

「どちらかと言うと由比ヶ浜先輩のほうですかね。私のはお母さんが出てきたって描写だけでしたから」

「川崎殿のラノベであればどう行った展開にしていけばよいのだ?」

「そうね、私はお互い公園の芝生の上で寝転がり、星を見上げながら「星が綺麗よね」って言うと、比企谷君が「雪乃、お前の方が綺麗だ」って言ってまたキスしてくれるのが良いわね」

「やっぱりゆきのんは純情派だね、私は公園のブランコに座って後ろからヒッキーがあすなろ抱きしてくれるの、言葉は少ないんだけど後ろからヒッキーが「結衣、スキだよ」とか「愛してる、結衣」って耳元で囁いてくれるのがいいな」

「私はお互い好きなところを言い合うのが良いですね、一つ言うたびに先輩がキスしてくれるのが良いです」

 

私たちが意見を述べ合っていると比企谷君が顔を真っ赤にしているわ。よく考えたら先ほど私たちが喋っていた内容は川崎さんのためでなく、自分がして欲しいことを言っていただけじゃない。由比ヶ浜さん、一色さんも気付いたようで顔が見る見るうちに赤面しだしたわ。

 

「ん、んん、材木座どうだった?意見は参考になったのか」

「ああ、八幡。貴重な意見をいくつも貰えたぞ」

「そ、そうか、よかったな。川崎も満足か」

「..うん、ありがと。また機会があったらよろしく、材木座もありがとうね」

 

そういうと川崎さんは家の家事をやらないといけないから。と、帰っていったようね。そして比企谷君の携帯に折本さんが着いたと連絡があったので、一色さんから入館届けを預かって迎えに行ったわ。私と由比ヶ浜さん一色さんはしばらく放心状態だったので材木座君が気を利かせて席を外してくれたようね。川崎さんのラノベの批評を行っていたはずなのに、どうして私たちの黒歴史が増えていくのかしら。

 



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12話

私たちがまだ赤面している時、比企谷君が折本さんを連れて部室に入ってきたわ。続いて材木座君も来たようね。

 

「何で、3人ともそんなに顔が赤いの?ウケるんだけど」

「..なんでもないのよ。折本さん、こんにちは」

「やっはろー、かおりん」

「折本先輩、こんにちわです」

「うん、こんにちは。材木座君、今日はよろしくね」

「...ひゃい..」

「ひゃいだって!!ウケる!!」

「では折本さん。時間が掛かるので、早速始めさせてもらっても良いかしら」

「川崎さんのは先に終ったんだよね、じゃあお願いね」

「材木座君、ラノベを見せて頂けるかしら」

「これが折本殿の分でしゅ」

 

そういうと材木座君は鞄からラノベを人数分だしてみんなに配ってくれたわ。各々読み始めたのだけれど後半に行くにつれて、呻き声が聞こえてきているのだけれど。大丈夫なのかしら。

 

「ねえ、比企谷。本当にこの内容で批評を行うの?こんなの口に出したら流石にウケ無いんだけど」

「..ま、まあ、お前がエッチなの望んでいたし。ラノベの批評を行うのが目的だしな」

「うう、ちょっと予想以上だったよ。どうしよう、千佳にこの後見せるって約束しちゃったんだよね」

 

折本さんと比企谷君が顔を赤くして会話をしているのだけれど、私たちもかなり赤面しているわ。どうして折本さんは卑猥なのを望んだのかしら。

 

***

 

「う、ううん、それでは始めましょうか」

「雪ノ下さん、本当にやるの?ウケないんだけど」

「..そ、その卑猥なところは軽く流すようにしましょう、それ以外のところでは色々意見を言えるでしょ」

「そうだね、折角中二が書いてくれたんだし、批評を行わないのは悪いしね」

「そうですね、エッチなところはスルーしましょう」

「..エロのところも批評してもらえると有り難いのだが」

「材木座君「中二「木材先輩....」」」

「すみましぇん..」

「へへ、ウケる!!」

 

「じゃあ、初めましょうか。折本さんってサイクリングが趣味なのね。よく乗っているのかしら」

「うん、気持ち良いよ。比企谷、このラノベみたいにサイクリングに行かない?」

「やだ、疲れるし」

「うん、そう言うと思った」

「最初は比企谷君と折本さんがゲームで勝負するのね、そして負けた罰ゲームとしてサイクリングに付き合わせると。まあ、比企谷君は休日外出しないのだから、こうやって連れ出すしかないのかしら」

「俺だって、罰ゲーム以外でも外出ぐらいするぞ。本を買いに行ったり、小町のためにドーナッツを買いに行ったり」

「でもヒッキー、普通に「サイクリングに行こ」って誘っても絶対来てくれないよね」

「当たり前だろ、何で休日に疲れに行かないといけないんだ」

「先輩、もうちょっと運動しましょうよ」

「休日は本を読んで頭の中を動かしているから問題ない」

「比企谷君、そのうちナマケモノみたいになってしまうわよ」

「大丈夫だ、平日は自転車を漕いでるからな」

「それって学校に来てるだけじゃん!!」

「まあな、でも身体は動かしているだろ」

「はぁ、まあ先輩ですからね」

 

「それで自転車を借りにかおりん家にいくんだね、やっぱりママチャリとサイクリング用の自転車って違うのかな?」

「まったく違うよ、ママチャリと比べると目茶苦茶軽いしね」

「そうなんですね、でも誰でも乗れるんですか」

「体勢が前傾姿勢になるだけで、自転車に乗れれば誰でも大丈夫だよ」

「そうなんだ。でヒッキーが家にお邪魔したとき、かおりんの服装を細かく書いているよね。さっきのサキサキのラノベの時は、ただミニのメイド服って書いてあっただけなのに中二、どうして?」

「この間、折本殿に見せてもらった写真が、なかなかエロかったのでな。その姿をなんとか表現したかったのだ」

「見せた写真って携帯に入っているこの服装だよね?エロかったって普通のサイクリングの格好だと思うんだけど?」

「ピッチリした服装で胸が強調されていて、身体のラインが綺麗でお尻がクイッて上がっていたのでな」

「中二の変態!!」

「グハッ!」

「まあそこの変態座君は放っておいて、確かに身体にフィットした服装なら女性らしさを強調できるわね」

「そうですね、でも自信がないと中々着れないですよ」

「そうかな、あまり考えた事ないけど」

「それは折本先輩がプロポーション良いからですよ」

「それ言ったらみんなヤバイでしょ、雪ノ下さんてモデル見たいだし、結衣ちゃんはグラビアに出れそうだし、一色ちゃんもバランス良いし」

「川崎先輩も凄くないですか?身長高いし胸も大きいし」

「ラノベに出てる人って、みんな良いよね。ヒッキー」

「そうね、比企谷君。誰のスタイルが好みなのかしら?」

「今それ関係ないよね、何でラノベの批評から容姿の話になってるの?」

「あなたがみんなを誑かしているのだからいけないのよ」

「俺、何もしてないよね。お前たち全然ラノベの批評してないぞ」

「そ、そうね。それで2人で勝浦市のほうに向けて走っていくのね」

「勝浦まで自転車って結構遠くないか?俺、行ける自信ないわ」

「まあ、行けなくはないけど、初めてだと結構、時間掛かるかもね」

「それで道を走っている最中、比企谷君が後ろに着いて走ってくのだけれど、ずっと折本さんのお尻をみて妄想しているのね。妄想の内容については余り指摘したくないのだけれど」

「先輩、エッチです」

「ヒッキー、やらしい」

「それあるー!!」

「何で俺がそんなこと言われないといけないの?でも自転車乗ってて後ろを走っていたらやっぱり気になるよな」

「我も女子の後ろを走っているときはスカートばかり気になるぞ」

「やっぱりあなたたち二人とも変態なのね」

「ち、違うぞ雪ノ下。男とはそういうもんだ」

「..確かに由比ヶ浜さんの水着姿をずっと見ていたものね、「万乳引力」とか言いながら」

「お、お前聞いていたのか」

「ええ、あなたの目が左右にせわしなく動いていたわね」

「えぇ、ヒッキーのえっち!!」

「先輩たち、一緒に泳ぎに行ったんですか!?」

「違うわ一色さん、平塚先生と一緒に奉仕部の活動で千葉村に行った時、川遊びをしたのよ。比企谷君は水着を忘れたのに、私たちのそばを離れなかったわね」

「なにそれ、ウケる!!」

「先輩、やらしいです!!」

「八幡、お主だけ何でそんなイベントが色々起こるのだ!!」

「なあ、これラノベの批評なんだけど。俺のことを批判する必要ないだろ!!頼むからラノベの批評しろよ!!」

 

「で、勝浦まで行って色々回るんだね。でも何で観光したことを細かく書いてないの?中二」

「実は我は行ったことないのだ、なので詳しくは知らぬのだ」

「それであれば、観光したとか書かないほうが良いわね。本当であれば、現地に取材しに行くのが良いのでしょうけど。「海岸の近くのお店で、海の幸をいただいた」とか「海の近くの浜辺で遊んだ」とか、行かなくても想像が付くことで、現地に行ったことを表現したほうが良いわね」

「そのような手があったか、我には考えも及ばぬ」

「まあ、観光って行っても食べてばかりだしね」

「由比ヶ浜、それはお前だけだ」

「そんなことないよ、ちゃんと観光してるもん!!」

「じゃあ、俺と雪ノ下で修学旅行回った寺の名前言えるか?」

「....うぅ、ヒッキー!!ひどい!!」

「でも私も食べてばっかりだったな、私たちも修学旅行に京都と奈良に行ったけど、寺の名前なんかも全然覚えてないし」

「まあ、そういうもんですよね。寺とか神社みても「ふーん」ってなるだけですし」

「「それはお前たち(あなたたち)だけだ(よ)」」

「ゆきのん!!ヒッキー!!ひどい!!ハモらなくても良いじゃん!!」

「何なんですか!!2人とも!!俺たちは仲が良いアピールですか!!」

「へへ、比企谷ウケる!!」

 

「そして、帰り道は峠を走っていくのね。勝浦市との間に峠道ってあるのかしら」

「まあ、山なんで有るだろ」

「それで、ヒッキーとかおりんがゲリラ豪雨に見舞われるんだよね」

「ゲリラ豪雨って行き成り来ますからね、結構気温が低くなりますし」

「体温を奪われるわね。私は雨が降るとすぐお店とかに非難するようにしているけれど」

「サイクリングのとき、雨降られるとかなり冷えるよ、ゲリラ豪雨は経験ないけどね」

「濡れた体で震えながら自転車を漕いでいく折元さんを見かねて、比企谷君が峠の途中にあるホテルに誘うのね」

「でも、これは仕方ないんじゃないか、もし風邪でも引いたら大変だしな」

「そうやって先輩はホテルに誘うんですか?」

「いや、緊急避難ってとこだろ」

「確かに暖かくできるなら、そういうホテルでも入って暖をとりたくなるのかもしれないわね」

 

「それでかおりんが先にお風呂に入るんだね」

「ラノベにも書いてあるが『唇が紫色になっていた』って書いてあるんだから早く暖かくしたほうが良いだろうな」

「でも、そのときヒッキーはどうしてたんだろ?そこの描写がないよね」

「比企谷君のことだから落ち着かずに覗こうとしてたのではないかしら」

「それあるー」

「先輩、そんなことするんですか」

「いや、しないからね。多分...」

「そこは言い切りなさいよ」

 

「それで先輩が次にお風呂に入るんですね」

「まあ、早く温まりたいだろうしな」

「で、折本先輩がソワソワして気を紛らわそうとして、AVを再生しちゃうんですよね」

「まあ、そういうホテルのテレビだから見れるんだろうな」

「でもこの後、アタフタしたかおりんが色々操作していると、お風呂との境にあるマジックミラーが透明になるって書いてあるけど、本当にそんなホテルあるの?」

「我もネットで調べただけだが、有るらしいぞ」

「で、かおりんがヒッキーのを、その見ちゃうんだね。でもその、何にもしてなくても大きくなるものなの?」

「まあ、そういうこともあるというか...」

「でも材木座君、どうしてこの後、折本さんは想像力豊かになっているのかしら」

「それは折本殿が今まで本でしか読んだことがなかったものを、目の当たりにし想像した。って、いう設定でして」

「それなら「本ではこうだったけど、実際はこうなってるんだ」とか書いたほうが良くないですか?」

「でもヒッキーも洗面所に置いてあったパンツで想像しちゃうんだね、でもなんで今回はTバックなの?中二」

「スパッツとか履くときはTバックを履くと書いてあったのだが違うのか?」

「うん、私は履くよ。スパッツとかぴっちりしたパンツの時ってラインが浮いちゃうからね、みんなは履かないの?」

「持っているけど、あんまり履かないかな」

「私も余り履きませんね、ぴっちりしたパンツとか履きませんし」

「私は持っていないわ、でも有った方が良いのかしら」

「雪ノ下さん、持っておいたほうが良いと思うよ。ショートパンツの時、後ろから下着見えちゃうことも有るからね」

「そうね、今度の休みにでも買いに行こうかしら」

「な、なあ、お前ら、俺と材木座がいるのを忘れていないか」

「....」

「...だまって聞いているなんて、ムッツリなのかしら、あなたたちは」

「まて、さっきの会話は流石に俺たちは入れないだろ!!」

「そ、そうね。じゃあ次に行きましょうか」

 

「でもヒッキーがTバックをチラチラ見てるのが、マジックミラー越しに見えるんだよね。手に取ろうとしている時、鏡に戻るんだけど、男の人ってやっぱりパンツとか気になるものなの」

「..気になるからラッキースケベとかあるのだ」

「先輩もですか」

「気にならないって言ったら嘘になるな。まあ、頭では解っているんだ、単なる布って。小町が下着姿でうろうろしていても何も思わないんだが、以前見たときは俺も恥かしかったからな」

「それって私た「それ以上いうな、雪ノ下」...えぇ」

「なに、雪ノ下さん比企谷に見られたの?」

「ゆきのんと私が部室で着替えている時、いきなり入ってきたの」

「2人同時とか、ウケる!!」

「いや、ウケないから」

「....先輩、ラッキースケベ多すぎですよ」

「八幡、どうしてお主ばかり....」

 

「お風呂から出てきた比企谷君がバスローブを着て『前かがみで出てきた』って書いてあるのだけれど、どういう事なのかしら?」

「雪ノ下さん。その、判らない?」

「ええ、どういうことなのかしら」

「ゆきのん、さっきヒッキーのが大きくって書いてあったよね」

「...あ、あの、あれって服を着ていても判るものなの?」

「雪ノ下先輩ってパソコンでエッチな画像とか、エッチな少女マンガとか見たことないんですか?」

「ええ、ごめんなさい。見たことないわ」

「謝ることじゃないけど、ズボンを押し上げるほどなんだよね」

「いや、それをこっちに振るな、答えられないだろ」

「まあ見たことのない女子(おなご)には想像しにくいと思うぞ」

 

「そ、それで私と比企谷が体が冷えないように布団にはいるんだね」

「まあ、ホテルだったらある程度暖かいだろうけど、雨でズブ濡れになったんだったら、風呂に入った後も暖かくした方がいいだろうな」

「そういうホテルってやっぱりベットは一個なんだよね」

「別々に寝る必要ないですしね。ドラマとかだと丸いベットだったりベットが回転したりするんですよね」

「どうしてベットが回転する必要有るのかしら」

「うーん、どうしてなんですかね。結衣先輩何かしてます?」

「わたしも知らないな、お姫様みたいだから?」

「結衣ちゃん、どうして回転しているとお姫様なの?」

「ごめん、何も考えずに言っちゃった」

「俺も知らないな」

「材木座君は先ほど調べたって言っていたのだけれど、何か知っているのかしら」

「答えても良いのか」

「うん、中二教えて」

「その、大体そういうところは壁が鏡張りになっているのだ。それで、その行為の際、お互いの痴態が色々な角度で鏡に映る仕組みらしい」

「....」

 

「そ、それでは次ね。背中合わせに寝ているだけなのに、お互いの感情が高ぶっているのね」

「ああ、これについては色々言いたいことがあるな。よくラノベで抱き枕にされて寝るとか有るだろ。でも抱き付かれたら寝れる分けないじゃん!!って、声を大にして言いたいね!!」

「ヒッキー、いきなりそんなこと言わなくても。でも女の子でも好きな人だったら一緒だと思うよ、隣で寝ていたら手を繋ぎたいとかイチャイチャしたいとか思うよね」

「それあるー。でも恋愛小説って、あんまりヤらないよね」

「折本、女の子がヤるとか言うんじゃありません!!」

「比企谷、口調がおかしいよ、ウケるー!!」

 

「それで折本先輩が先輩の背中に抱きついて話しだすんですね」

「クリスマスイベントで私たちがやったことで、だんだんヒッキーのことが気になっていったんだよね」

「でも材木座君。最初のゲームでの勝負で比企谷君が『手を抜いて折本さんに勝たせた』って言っているのだけれど、それは止めた方がいいわ。私だと不愉快になってしまうわね。ここは「隣で一生懸命ゲームをしている折本さんに見惚れてしまい手がおろそかになった」のほうがいいのでは?」

「確かに人によっては馬鹿にしている。と思われたりするかも知れぬ。参考にさせて貰います」

「ここで私たち3人も名前だけ出てくるんですね、折本先輩が私たちに焼きもち焼くんですね」

「この時のかおりん、かわいいよね。ヒッキーの背中をポコポコ殴ってるもん」

「折本のそんな姿、想像つかないけどな。折本だったらいきなり頭をぶん殴るぐらいだろ」

「比企谷、私だって好きな人が相手だったらかわいく見られたいもん...」

「どうしてみんなラノベの批評の最中に性格が変わっていくのかしら...」

 

「でもヒッキーが背中越しに『中学のときから今でも好きだ』って、告白するんだよね。せめて正面を向こうよヒッキー」

「先輩ですからね」

「ヘタレ谷君ね」

「それあるー!!」

「何で俺が攻められるの?材木座に言えよ!」

 

「でもこの後の折本先輩、大胆ですよね。先輩の腰に跨がってキスしながら段々下に移動していって、胸を責めてくんですね。これで先輩が大先輩になっちゃうんですね」

「比企谷君が肥大谷君になるのね」

「ヒッキーがボッk....ごめん、そんなこと言えないよ」

「お前たち、俺で遊ばないといけない決まりでもあるの?!」

「だ、駄目。恥ずかしいから何にも考えられないぃ」

「折本、無理しなくて良いぞ」

「それまでは『駄目だ』とか『まずい』とか言っておきながら、今度は自分から責めていくのね。獣谷君」

「いや、好きなやつにそこまでされたら、普通ヤるだろ。なあ材木座」

「そこで我に話を振るな」

 

「今度はヒッキーが責めるんだね、あんまり胸の事は書いてないのに、なんで、その、あそこの事は一杯書いてるの?」

「我にとっては桃源郷だからだ」

「ゆ、由比ヶ浜さん、そのこれ以上は止めないかしら。もう私には無理だわ」

「私もそろそろギブアップです」

「もう止めてぇ」

「そ、そうだね」

「後は気になるところを個別に批評しましょうか」

 

「材木座くん、この『だいしゅきホールド』って何かしら?文面からは卑猥な事とは分かるのだけど、比企谷君が『まずい』とか折本さんが『大丈夫』って言っているだけなのよね。これではどのような事か判らないわ」

「なんでしょうね?だいしゅきって大好きってことは分かるんですけど」

「なんか可愛いよね、比企谷」

「....それはヒッキーと中二には聞かない方がいいよ」

「由比ヶ浜さんは知っているのかしら、教えて貰える?」

「あ、あのちょっとこっち来て。....ゴニョゴニョ」

「....私は何て言葉を口にしているのかしら...」

「何が可愛いよ!!比企谷!!」

「お前が知りもせず言葉だけで判断するからだろ!!」

「ぅ、うう、ネット怖いですぅ」

「生徒会長殿。もうひとつ言っておくと、壁ドンも元はネット用語で今とは意味が異なっていたのだぞ」

「....どんな意味だったんですか?」

「アパートなどで隣のカップルがイチャイチャしてる行為の声が聞こえてきた時に壁を殴るのが語源ぞ」

「....じゃあ、先輩に壁ドンされたいって言ったら....」

「八幡の隣の部屋で生徒会長殿が誰かとイチャイチャしていると、八幡に声が聞こえて壁を殴られる。って事になるな」

「いぃーーーーやぁーーーー!!」

「まあ、今はネットとは違う意味で使われて浸透しているんで、問題ないだろ。だいしゅきホールドは言わない方がいいだろうが」

 

ネットコワイ netコワイ ネットコアィ

 

「..材木座君、ここからは卑猥なことが書いてあるだけなので終わりにして良いかしら。これ以上は無理だわ」

「俺からも頼む、これ以上は駄目だ」

「...我としてはこの後もお願いしたい所だが、まあ、仕方なかろう」

「折本さん、あなたも良いかしら?」

「うぅ、いいよ、って言うかもう終わってぇ」

「ではここで終わりにしましょう」

 

***

 

「比企谷ぁ、どうしよう。この後、千佳にラノベ見せることになってるんだよ」

「外で読むのは止めてくれ、どちらかの家で読んでもらえば良いだろ」

「比企谷はこんな内容でも問題ないの?」

「まあ、今回のは俺より折本の方が気まずい内容だからな。仲町さんにイジられてくれ」

「うぅ、じゃあ千佳に苛められてくる。材木座君、お礼をいっとくね。ありがとう」

「では我もそろそろ帰還させていただくとするか」

「じゃあ、私も折本先輩を送ってってそのまま帰ります」

 

そういって折本さんと材木座君、一色さんは部室を出ていったわ。

 

「それでは私達も帰りましょうか」

「..う、うん」

「どうしたのかしら、由比ヶ浜さん」

「恥ずかしかったんだけどさ、かおりんのラノベ良いなって思っちゃって。ヒッキーが『かおり!かおり!』って呼んでて、かおりんも『八幡!八幡!』って。エッチの最中だからお互い体を求めてる。って判るんだけど、私も求めたい、求められたい。って思っちゃったんだ」

「....そうね、私も折本さんのラノベのようにお互いを求め合いたいわ。由比ヶ浜さん、私たちも求めらるように頑張りましょう」

「そうだね、ゆきのん。私負けないから」

「由比ヶ浜さん、私こう見えて負けず嫌いなの。私が勝ってみせるわ」

「...そろそろ俺、帰って良いか?」

「..そう言えば、比企谷君。あなた姉さんの事名前で呼んでいたわね。私と由比ヶ浜さんの事も名前で呼びなさい」

「な、なんでそうなるんだよ」

「あら先ほどの会話を聞いていて何も思わなかったのかしら?私達はこれから色々求めていくのよ。最初はあなたからの名前呼びをお願いしたいわ。だから..八幡君。私の事、名前で読んでちょうだい」

「ヒッキー。ううん、八幡。だめかな?」

 

「...分かった..雪乃。結衣。これからもよろしく頼む」

 

「八幡君、これからもお願いね」

「うん、八幡。こちらこそよろしく!」

 

ラノベの批評をやっていたら私たちの仲も少し近づけたようね。

これからも、もしかしたらラノベを切っ掛けに仲良くなっていけるのかしら。

 

 



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13話

「ひゃっはろー」

 

私が「どうぞ」と言うと、姉さんが入ってきたわ。また八幡を連れて行くつもりなのかしら。

 

「今日はどうしたのかしら。姉さん、八幡を連れて行くのは駄目よ」

「あっれー、何時から名前で呼ぶようになったの?」

「せ、先週からよ。そんなことどうでも良いでしょ」

「ちょっと待ってください!!もしかして結衣先輩もですか?」

「うん、私は言い慣れなくてヒッキーから今までどおりでいいって言われたんだけど、ヒッキーからは名前で呼んで貰っているよ」

「先輩!!私の事も名前で呼んでください!!」

「やだよ、恥ずかしい」

「比企谷君、呼んであげたら。私も陽乃って呼んで貰っているし」

「...解りましたよ..いろは、これで良いだろ」

「いいんですけど、どうしてハルさん先輩の言うこと聞くんです?」

「まあ、陽乃さんと雪乃と結衣のことも名前で呼んでいるしな。まあ、いいだろ」

「..ありがとうございます」

「それで姉さんは何しに来たのかしら」

「今日は比企谷君じゃないよ、材木座君が来るはずなんだけど」

「もしかしてラノベをお願いしているのかしら」

「うん、この間のはちょっといただけなかったんで、もう一回書いてもらったんだ」

 

私たちが会話していると材木座君が扉をノックして入ってきて、姉さんにラノベを渡したわ。

 

「こ、これが今回書いたラノベです」

「うん、ありがとう。じゃあ、ちょっと読ませてもらうね」

「姉さん、みんなで批評しないのかしら?」

「読んでどういうやり方が良いか確認してからね」

 

そういうと姉さんは一人でラノベを読み出したわ、私は姉さんと材木座君の紅茶を入れて渡していると、姉さんの目が潤んでいて、見ていると涙が零れるのが見えたわ。

 

「ね、姉さん、どうしたの?大丈夫?」

「うん、ごめん。ちょっと入り込んじゃった。材木座君、ありがとう。今回、私には批評出来ないな」

「駄目でござったか」

「ううん、違うの。凄く良かった。でも今回のは私の感情が強く出ていて泣いてしまうわ。批評はいつも通り、みんなでやってあげて。ごめん、今日は帰らせてもらうね」

「...」

 

そういうと姉さんは帰っていったわ、私たちは何が有ったのか判らず、材木座君のラノベのコピーをそれぞれ読み出した。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「陽乃さん、俺と付き合ってください」

「うん、いいよ」

 

比企谷君と一緒に喫茶店でお茶を飲んでいると、いきなり彼は私にそう言った。多分彼のことだから、買い物とかそういったものだろう。私は軽い気持ちで返事していた。

 

「じゃあ、今からデートしましょう。陽乃さんはどこに行きたいですか」

 

あれ?買い物ではなかったのかな。でも私も彼の事を気に入っているし、まあいいか。軽い気持ちで付き合うつもりはないけど、自分でも彼の事をどう思っているか判断つかないのでまあ、お試し期間ってところかな。

 

こうして私たちの付き合いは始まった。でも八幡は私とのデートを何回繰り返しても私の手も握ってこない。私たちが手を繋ぎ始めたのは1月半も過ぎたころだった。そのころには私の中で八幡の存在が大きくなっていた。でも私の気持ちが大きくなればなるほど雪ノ下家の名が大きく立ちふさがる。私はお母さんにお付き合いをしている人がいることを報告したくない。でもいつかは言わないといけないので、認めて貰えるようお母さんの元に向かった。

 

「お母さん、話したいことが有るんだけど」

「なにかしら、陽乃さん」

「私、その、お付き合いしている人がいるの」

「それは何時ぐらいから?」

「今、ちょうど2ヶ月ぐらいかな」

「そう、陽乃さん清いお付き合いをしてね」

「!?いいの?」

「駄目って言ってほしかったの?貴方2ヶ月ぐらい前から良い笑顔で笑うようになったのよ、その人の影響でしょ?」

「..自分では気付いてないんだけど。でも家とかそういうのはいいの?」

「陽乃さん。私は家のために貴方達に結婚させようとか思っていないわ。良い縁談があれば紹介はするでしょうけど、あくまでも貴方達の意志を尊重するつもりよ。まあ出来れば婿養子をとって貰えればと思うけどね」

「あ、ありがとう!!お母さん!!」

 

私は嬉しくなってすぐ総武高校に向かった。校門前の歩道で信号が変わるのを待っていると信号の向こうに八幡がいるのが見えた。彼も私に気付いたようで手を挙げて答えてくれる。嬉しくて信号が変わった瞬間、私は駆け出していた。信号無視した車が来ているのも気付かずに。

 

「っ陽乃さん!!」

 

私の身体を八幡が突き飛ばすと同時に彼の身体が宙を舞っていた。私は八幡に駆け寄ることも出来ず、その場にへたり込み、顔を手で覆うことも出来ず大声で泣いていた。

 

「あ、あ、あ、あーーー、八幡!!八幡!!いやあーーーーー!!」

 

何時のまにか、由比ヶ浜ちゃんが八幡に駆け寄り、雪乃ちゃんは私に駆け寄ってきてくれていたが、私はなりふり構わず、泣き叫んでいた。

私がちゃんと確認しないからだ!!私が注意していれば!!私が!!私が....

 

今、私は八幡の病室にいる。私自身は軽い擦り傷程度で済んだため、八幡の看病をしていた。彼は左足の骨折と昏睡状態。すでに一月ほど立っており私はずっと病室で看病を行っていた。事故前の私を知っている人であれば、今の私を見ても気づかないかもしれない。目の下には隈が出来ておりご飯もあまり喉を通らない。お風呂にも数日前に無理矢理入れられたけど、髪の毛もボサボサになっている。でも一秒でも八幡の近くにいたくて、自分の身だしなみなんてどうでも良かった。

 

最近思考が自分でもネガティブになっているのが分かる。もしこのまま八幡が目覚めなかったら、もし後遺症が残ったら、もし、もし..

駄目だ。このままでは思考がもっと悪い方に行ってしまう。私は八幡との付き合い出したころからを思い出していた。

他の人からはたった3ヶ月と思われるだろうけど、私にとっては小学校、中学校、高校や大学で過ごした時間よりよほど楽しかった。そういった思い出は全て八幡との思い出の前では、色褪せてしまっている。

八幡と居ると私は彼の言う強化外骨格を付けなくていい。八幡も照れながら「素顔の方が綺麗で好き」と言ってくれた。八幡は話が特にうまいわけでは無い、面白い事が出来るわけでもない。でも私が普通に居られる場所を与えてくれてる。私にはそれで十分だった。でも、今は私のせいで...

 

「八幡、私このまま壊れちゃうのかな..」

 

また、思考が悪い方に行ってしまっている、カレンダーを確認すると今日は8月8日、八幡の誕生日だった。二人でお祝いしたかったな。でもプレゼントは挙げないとね。

 

「八幡、お誕生日おめでとう!!誕生日プレゼントは私のファーストキスだよ!!」

 

私は彼と始めてキスをした。彼の顔に私の涙が零れ落ちたが彼からは一定の呼吸音が聞こえてくるだけだった。また、私の中で負の感情が湧き上がり八幡の胸に顔を埋め泣いていた。

私が八幡の胸に顔を埋め泣いていると私の頭をいきなり何かが触れぎこちなく撫でてくれた。

 

「陽乃さん。俺、キスするの初めてだったんですよ、せめて起きてる時にしてくださいよ」

「っ八幡?八幡!八幡!!」

「髪の毛ボサボサですよ、陽乃さん」

「八幡!!八幡!!八幡!!」

「はいはい」

 

そういって彼は手を動かすのも大変というのに私の頭を撫で続けてくれた。私はまた彼の胸で泣きつづけた、でも今度は嬉し泣きで彼の胸を濡らした。

 

私はナースコールを押すと先生がすぐ来てくれ診断してくれた。詳しい診察は後日だが特に後遺症が残ることは、今のところは見当たらないと言う事だった。

心配してくれている人たちに電話すると、私のお母さんが一番に駆けつけてくれた。

 

「八幡さん、陽乃を助けてくれてありがとうございます」

「いいえ、俺はこの世で一番大切なものを守りたかっただけです」

「ありがとう、八幡さん。それで今日は一つ早急なお願いが有って来たのよ」

 

また私の中で負の思考が駆け巡った。もしかして別れろと言うの?何で目覚めたばかりなのに言うの?この時、私の中で家なんて捨ててでも八幡のそばを離れない意思が芽生えていた。

でも八幡が私の手を弱々しくだけど握ってくれたので少しは冷静でいられた。

 

「八幡さん、私も娘がここまで衰弱している姿を見てしまうと思うところがあるの」

「お母さん、止めてよ!」

「陽乃さん、最後まで聞きなさい。だからね、八幡さん。陽乃の事を一生支えてあげてもらえないかしら」

 

そういうとお母さんは鞄から二枚の紙を広げて私達に見せてきた。婚姻届と養子縁組届を。そこにはすでに八幡の名前やご両親の名前が書いてあった、彼が未成年だからだろう。

後は捺印するだけだった。

 

「もし養子縁組が嫌であれば婚姻届だけでも雪ノ下姓でお願いしたいけど、八幡さんの意思を尊重させてもらうわ」

 

「...」

「陽乃さん、身体を起こすの手伝って貰って良いですか」

「うん」

 

私は彼の身体を起こし、また手を握った。すると八幡は私に身体を向けて話し出した。

 

「陽乃さん、いきなりで何て言えば良いのか、何も考え付かなくて有り体なことしか言えないんですが..俺は貴女を愛してます。俺と結婚してください」

「はい、お受けします、私も貴女を愛してます」

 

私は八幡を支えるようにしがみつき、長い長いキスをした。

 

「ん、んん、あなたたち長いわよ。1分以上口付けしているわ」

「お、お母さん、何で時間図っているの!?」

「しょうがないでしよ、余り見ない方が良いと思って目をそらしたら時計が置いてあるもの」

 

「お母さん、養子縁組の方も喜んで受けさせて貰います」

「本当に良いのですか?ご両親にはお話しして有りますが相談とかよろしかったのですか」

「俺は陽乃さんの負担を少しでも肩代わり出来たらと思っています、俺にも雪ノ下家を名乗らせてください」

「分かりました、でもしばらくは身体を治すことに専念してね。後、陽乃さん。旦那様の前だから少しは身だしなみに気を付けたら?」

 

急に私は今の格好が恥ずかしくなり慌てて席を外そうとしたが、八幡が手を離してくれなかった。

 

「俺は陽乃さんの笑顔が見れれば満足なんです、だから離れないでください」

「..八幡」

 

すると廊下の方から騒がしい音が聞こえてきた。

 

「比企谷君!!良かった!!ようやく起きたのね!!」

「ヒッキー!!どんなけ心配かけるんだし!!」

「先輩!!良かった!!良かったぁ」

「雪乃さん、あなたたちここを何処だと思っているの?少しは静かにしなさい。後、雪乃さん。八幡さんは比企谷君では無いわ、今日から雪ノ下家の長男で貴方のお兄様よ」

 

「ええーーーーー!!」

 

彼女たちはこの日一番の叫び声をあげていて、看護師さんが飛んできて怒られていた。

 

「はっきり言って今の姉さんは凄い不細工だわ。でもね、私が見たことのない笑顔で今までで一番素敵よ。そして義兄さん、姉さんのことよろしくお願いします。結婚おめでとう!後、義兄さん、私のことも今後ともよろしくね」

「ヒッキー、ううんユッキーってこれから呼ぶね。ユッキー、陽乃さん。結婚おめでとう!!」

「先輩、私にとっては名字が変わっても先輩です。先輩、ハルさん先輩。ご結婚おめでとうございます!」

「ありがとう(な)!!」

 

「じゃあ、八幡さん。ここに印鑑を押して貰える?」

「はい...手に力が入らなくて」

 

八幡が机まで手を挙げようとしても力が入らないのか腕が震えていたので、私は八幡の後ろに回り込んで左手と身体で八幡の身体を支え、右手を八幡の手に添えた。

 

「ひぃやぁー!!夫婦になるための共同作業ですね!!これは写真に納めないと!!」

「そうだね!!私は動画を担当するよ!!」

「では私は真正面からのアングルで動画を録るわ!!」

 

「..陽乃さん、俺の代わりに押して貰えますか?」

「駄目ですよ、八幡さん。後で「自分は押していない」って言われると私が困るもの」

 

私達は顔を真っ赤にしながら印鑑を押した。彼女たちの要望は留まるところを知らず、その後も私が八幡を横に寝かせるところや飲み物を飲ませているところも動画で撮っていた。でも心から笑ったのはいつ以来だろう。今日は嬉しいこと、楽しいことが多すぎて、記念日って事もあるけど私たちにとって忘れられない日になった。

 

「今日は楽しかったね」

「あぁ、あいつらには感謝の言葉しかでないですよ、いい記念日になりましたね」

「うん、そうだね。忘れられない日をくれたんだよね」

 

私と八幡は病室でベッドをくっつけ、お互いの手を繋ぎながら布団に入っていた。

 

「なんだか疲れちゃったね」

「そうですね、そろそろ寝ましょうか」

「うん、お休みなさい。八幡」チュッ

「お休みなさい、陽乃さん」

 

手を握り合って隣に居られるということが、こんなに嬉しく思えるとは思っていなかった。私は手の感覚を感じながら、病院で初めて深い眠りについた。

 

(ここまでが材木座の小説)

**************************

 

「うぅ」

「う、うぁ」

「ご、ごめんなさい、材木座君。このラノベは私達には余り批評出来ないわ」

 

由比ヶ浜さん、一色さんは涙を流していて、私も泣いているわ。どうしても自分が姉さんの立場だったら。と考えてしまい、入り込んでしまうわね。

 

「そんなに駄目であったか、申し訳なかった。そんなもの読ませてしまって」

「違うんですよ、木材先輩。私、今までのラノベで一番これが好きです」

「ああ、材木座。俺もこのラノベ好きだぞ、ただ感情移入してしまうと涙腺が緩くなってしまう」

「そうだよ、中二。私もこのラノベが良いよ。でも今までと全然違うんでビックリしたかな」

「そうだな、今までシリアスなラノベは無かっただろ。どうして書いたんだ?」

「いや、ただ魔王殿のご機嫌を損なわぬよう、考えて書いていたらこうなったのだ」

「魔王殿って姉さんのこと?」

「あ、いや、そうではなくて...」

「まあ、良いわ。今回のラノベで私が気になったのは2ヶ所だけね」

「それはどこでしゅか」

「まず、八幡の最初の告白だけれど、どうしてしたのかって所ね。後、姉さんが「お試し期間」って言っているところが気になったわ」

「ハルさんの所、私は良いのかなって思いましたけど。確かに好きでも無い人と付き合うのはどうかと思いますけど、このラノベの中では「気になっている」って書いてありましたし」

「私はどっちかって言うと、ゆきのんと同意見かな、ちょっと気持ちが弱いと思う「どう思っているのか判断付かない」とも書いてあったから。あとヒッキーの告白の時の気持ちを途中で良いんで陽乃さんが聞いていて、思い出しているっていうのも入れれば良いと思うよ」

「あ、それいいですよね。それでまた泣いてしまうんでしょうけど。でも私たちが出てきて雰囲気がガラッと変わりましたよね」

「良いんじゃ無いかな、最後ちゃんとハッピーエンドだったし」

「そうね、今回のラノベは私たちの中では、高い評価を与えれると思うわ」

「ありがとうございましゅ。...あの一つ聞いてよろしいですか?」

「なにかしら」

「なぜ八幡の事、名前で呼ばれているんでしゅか」

「材木座君、貴方のラノベのおかげで、八幡と由比ヶ浜さん、一色さん、姉さん、そして私は名前で呼びあうようになったのよ」

「....八幡!!この一級フラグ建築士が!!!」

 

そう言いながら材木座君は部室を出て走って行ったわ。

何なのかしら「一級フラグ建築士」って。

 



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14話

何時もどおり奉仕部で読書をしていると、材木座君が入ってきたわ。

 

「八幡、またラノベを書き上げたので、読ませて進ぜよう」

「はあ、誰で書いたんだ」

「今日は居らぬ様だが生徒会長殿とお主でだ」

「平塚先生が一色さんと会議に出席すると言っていたので、今日は多分来ないわよ。まあ、批評であれば私たちで出来るでしょう」

「じゃあ、中二読ませて」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

2年に進級し生徒会長としての役職を何とかこなしながら文化際、体育祭が終わり、次期生徒会長選が始まった。

1年のころ生徒会長になった時は2年連続生徒会長をやるつもりは無かったが、私の中である目標が出来、今度は自分から立候補した。書記ちゃんも「副会長に立候補する」って言っていたので、私たち二人が当選すれば、新生徒会も楽になるだろう。

結果から言えば二人共圧勝での当選。さすがにいつまでも書記ちゃんとは呼べないので今では、沙和子ちゃんと呼んでいる。私の事もいろはちゃんって呼んでくれているし。

新しい書記には小町ちゃんが入ってくれた。彼女も先輩と一緒で色々言いながらも仕事は出来るので頼りになる。

 

私は2年の夏休み前までは奉仕部によく顔を出していたが、先輩達が部活と言う名の受験勉強会をしだしたので、あまり顔を出さなくしていた。今でも部室に集まって3人で勉強会をしているのは聞いているけど、私は入っていけなかった。

本当は、行きたかったけど、邪魔しちゃいけないと思い本当に用事が有るときだけお邪魔するようにしている。

 

12月初めにまた去年と一緒で、クリスマスイベントの合同開催の依頼が来ていた。今回違うのは前回の海浜総合との合同ではなく、どこから聞きつけたのか他2校の参加依頼があったため、合計4校での開催となった。

初打ち合わせで4校の代表が集まり、代表を誰にするかと言うことになったので、私は自ら立候補した。去年も参加していた実績からか誰からも反対意見も出ず、私が選ばれた。

 

会議は去年のようなことはなく、すべて順調に進んでいる。私は何だか肩透かしを喰らった気分になっていた。さすがに去年みたいなのは困るけど、ほとんど問題になるようなこともなく、残り数日となっていた。

 

「いろはさん、凄いですね。今日でほぼクリスマスイベントの準備片付けちゃったじゃないですか」

「そんなことないよ、小町ちゃん。今年は他校の人たちが優秀だったから、まったく問題になるようなこと無かったしね」

「そんなことないよ、いろはちゃん。問題になる前に全部片付けちゃったんだから」

「そうだったっけ?沙和子ちゃん」

「うん、問題が起こりそうになると、いろはちゃんの発言でさ、すぐ解決しちゃうもん」

「うーん、よく覚えていないや....二人共、この後、ちょっとだけ付き合って貰えない?」

「小町は良いですよ」

「私もいいよ」

「うん、ごめんね。じゃあサイゼにいこっか」

「いろはさん。サイゼが直ぐ出てくるなんて、何だかお兄ちゃんみたいですね」

「でもいろはちゃん、サイゼで良いの?真剣なお話ならカラオケボックス見たいな所のほうがよくない?」

 

沙和子ちゃんは、私をよく見てくれていると思う。私のちょっとした表情から真面目な話と感じ取ってくれたのだろう。

 

「ごめんね、時間を作ってもらって」

「いいんですよ、いろはさん」

「ううん、それでいろはちゃん。どうしたの?」

「私が今回も生徒会長に立候補したのは、ある目標があったんだ」

「「目標?」」

「目的って言ってもいいかな、だから今回の代表にも自分からなりたいって言ったのもそう。ただ今回みたいにすんなり終わっちゃうと肩透かしを喰らったみたいになっちゃってね」

「....」

「いろはちゃんの目標?目的ってなんだったの?」

「私、奉仕部の先輩達みたいになりたいんだ。雪ノ下先輩の合理的に相手の詭弁を論破するところ。結衣先輩の雰囲気を読み取ってまとめ上げるところ。先輩の相手の内面を読み取るところ」

「....」

「今回のイベント、色々な学校関係者が来るからさ。まあ、ちょっとしたトラブルが起こったりして、それを私が解決してさ。ステップアップにしたかったの。二人共知っているから言うけど、私は先輩の事が好き。でも今のままじゃとても隣に並べないと思ってる」

「....」

 

「いろはちゃん、今から言うことはお世辞じゃないからね」

「うん?」

「私からみたら、いろはちゃんは3人を越えていると思うよ。確かに一つ一つをみるとまだ敵わない部分もあるかもしれない。でも3人にも欠点が無いわけじゃないでしょ。いろはちゃんは3人の良い所を吸収してて、去年のクリスマスイベントの時とは比べものにならないぐらいになってるもん」

「いろはさん。小町からも言わせてもらうと、普通だったらあんな短期間で4校を纏めるなんて出来ないですよ」

「...そうかな」

「例えばお兄ちゃんだったら捻くれたやり方で自分を犠牲にして自分以外の人たちを纏めることは出来ると思うんですけど、自分が悪者になっちゃうんですよね」

「雪ノ下先輩だってそう、正論過ぎて多分反感もたれて纏めるのが大変だと思う。由比ヶ浜先輩はそんなこと無いんだろうけど、自分から率先して代表になったりしないだろうし、正論を言ったり内面を読み取ること出来ないでしょ?」

「多分、いろはさんの中でお兄ちゃんたちが大きくなっているだけだと思います。誰も欠点のない人なんていません。いろはさんも有ると思います。でも3人より劣っている何て事、絶対有りませんから」

 

「いろはちゃんの凄い所は問題になる前に感づいて片付けたり纏め上げちゃうところなんだよ、だから3人と比べても全然劣ってるってことないよ」

「うん、ありがとう。私ね、先輩が卒業するのが不安なんだ。先輩に何時も助けてもらって、私何も出来てないって。だから今回のイベントを通してちょっとでも先輩に認められたい。学校を任せられたい。って思ったの」

「いろはちゃん(さん)」

「ごめんね、弱音はいて。先輩にはもう頼れないと思うとどうしても、今のままじゃ駄目だ。もっとがんばらないと。って思っちゃって。思えば思うほどあの人たちが凄く感じられて」ウゥ

「いろはさん、がんばりすぎです」

「そうだよ、いろはちゃん。あの3人も今のいろはちゃんを見たらきっと認めてくれるよ」

「なんだったら、明日お兄ちゃんを連れ出して遊びに行きましょうよ」

「小町ちゃん!!それは絶対駄目!!先輩の邪魔だけはしたくない!!」

「..いろはさん、でも最近会ってないんですよね。良いんですか」

「会いたい、会って話したい。でも先輩の邪魔だけはしたくないの」ウゥ

「いろはちゃん(さん)」

 

センパイ ウゥ

 

「ごめんね、泣いちゃって」

「そんなことないよ、いろはちゃんの本音を聞けて嬉しかった」

「やめてよ、恥ずかしくなるから」

「全然恥ずかしいことないですよ。小町、いろはさんのことが羨ましいです。相手のことをそんなに思えるなんて。まあ小町からしてみたら、ごみいちゃんですけど」

「小町ちゃん、先輩のこと悪く言うのはこの口か!!」グリグリ

「いひゃいでしゅ、いろひゃしゃん」

「でも、今日は付き合ってくれて本当にありがとう。じゃあ、帰ろっか」

 

クリスマスイベント当日

やはり4校合同で開催すると色々弊害が出てくる。でも何とか纏め上げ、クリスマスイベントは無事終了した。

 

「よかったね、いろはちゃん。大成功だよ」

「うん、大きな問題も起きなかったからね」

「いろはさん、がんばってましたもんね。でも全然楽しめなかったんじゃないですか」

「まあ、自分から代表になったんだから良いんだよ。じゃあ後片付けやっちゃいますか」

 

「じゃあ帰ろうか。佐和子ちゃんはこれから本牧先輩とデート?」

「はい、この後待ち合わせしてますんで、これで失礼しますね」

「あーあ、羨ましい。先輩も推薦もらえればよかったのに」

「いろはさん、それは無理ですよ。ごみいちゃんですよ、ごみいちゃん」

「また先輩の悪口をいうか!!このこの!!」

「..いろは、お疲れ」

「え!?先輩?」

「じゃあ、いろはさん。小町はこれで失礼しますね。お兄ちゃんは小町からのクリスマスプレゼントです」

「先輩、どうして」

「俺も後ろの席で見させてもらっていた、凄くよかったぞ。がんばったな、いろは」

「先輩!!先輩!!会いたかったです!!」ウゥ

「ああ、俺もだ」クシクシ

「先輩!!」ウワー

 

そういうと、先輩は私の頭を撫でてくれた。今までも何回かやって貰ったけど、今日は特別気持ちよく感じる。私は感情が高ぶり先輩に抱きついて泣いてしまっていた。

 

「いろは、この後時間あるか?」

「はい、でも先輩は良いんですか?」

「まあ、少しならな」

 

私たちは近くの公園に行き、ベンチに腰掛けた。先輩は自動販売機で何時ものコーヒーと私の紅茶を買ってきてくれた。

 

「この何ヶ月かいろはに会わなくて、ようやく自分が誰を好きなのか気付かせてもらった。..いろは、今は自分の受験のことが一杯で付き合ってくれとは言えない。後2ヶ月待ってくれないか。俺から告白させて欲しい」

「判りました。その日まで待ってます。だから先輩もがんばってください」

「ああ、後これを貰ってくれ」

 

そういうと、先輩は手に持っていた紙袋を渡してきた。

 

「何ですか、これ」

「まあ、そのクリスマスプレゼントだ」

「..ありがとうございます。見てもいいですか」

「ああ」

「マフラーですか!!ありがとうございます!!」

 

先輩は私の手からマフラーを取り、私の首に巻いてくれた。

 

「ありがとうござます!!でも私先輩へのプレゼント用意できてないです」

「今日、いろはの顔を見れただけで十分だ」

「な、なんなんですか、口説いているんですか。私はすでに先輩のことが好きなのでいつでもOKですが、後2ヶ月待ってますんで、それまでに私に対する熱い思いを言葉にしておいてください。お願いします」

「早くてわかんねえよ、振られたわけじゃないみたいだが、もうちょっと待っててくれな」

 

そう言うと先輩はまた頭を撫でてくれた。私も先輩の胸に頭を預け、ひと時の幸せを味わった。

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

「材木座、このラノベのこと、いろはは知っているのか」

「まだ見せてないので知らぬぞ、書くとも言っておらぬし」

「じゃあ、悪いが見せないでくれ」

「どうしてだ八幡、何時ものように批評してくれるのではないのか」

「俺たちで批評は出来るが、いろはにはさせたくない」

「どうしてだ」

「材木座君。このラノベの内容を一色さんが読んだら、自分に置き換えてしまうわ。彼女が今度の生徒会選挙に出るかも、自分で問題意識を持って生徒会長をやっているかも判らない。もし読んでしまうと自問自答してしまうでしょうね」

「そう、それで良い方向に行くこともあるだろうが、悪い方向に行くこともあるからな」

「そういうことか、確かに考えがたらなんだ」

「いや、材木座が悪いわけじゃない。俺たちがそういうこともあることを考えずに書かせていたからな」

「そうだね、中二にラノベを書いてもらうのも注意が必要だね」

「批評してていろはが来ると不味いから、これについては、批評もやめたいんだが良いか」

「分かった、ではしまっておくぞ」

「すまん、材木座」

「材木座君、申し訳ないわ」

「中二、ごめんね」

「今後はそういうことにも気をつけると言う事で良いではないか」

 

なんだか今回は後味の悪いことになったわね。まだラノベを書いてもらうのであれば、今回のことをしっかり考えるべきね。

 



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15話

「ではこのラノベはどうだ?」

 

先ほどの一色さんのラノベをしまった後、材木座君は次のラノベを出してきたわ。

 

「これは誰で書いたんだ?」

「八幡と由比ヶ浜殿だが、内容は問題ないはずだぞ」

「一応、確認した方が良いんじゃ無いか?読んでから後悔しても遅いしな」

「では、私が読みましょう。登場人物で無い方がいいでしょ」

 

私は材木座君から受けとると、誰にも見えない位置で読み出したわ。読んでいくと私の顔が赤くなっていくのが自分でも判る。内容については問題ないのだけれど、私たち三人には黒歴史ではない、でも他の人には言えない大切な思い出の一部が書いてあるのだから。

 

「雪乃!?大丈夫か?」

「ゆきのん!!」

「え!?まずい内容で有ったか?」

「大丈夫よ、ちょっと思い出していただけだから。ふふ、この内容ならいいでしょ。みんなで読みましょう」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

今日は部活が終わってから、本を買いに行くため千葉駅に来ていた。俺は書店に向かい本を物色していたが、結衣が海浜総合の生徒と歩いているのが見えた。

 

「健ちゃん、今日は何買いに来たの?」

「うん?まあ、その辺で何か見ようと思って」

 

え!?結衣に付き合っているやつがいたのか。はは、何だよそれ。

俺は結衣のことが好きだった。彼女の明るい性格は俺にはまぶしく高嶺の花だと思っていたため、この気持ちは勘違いだと今まで自分に言い聞かせてきた。

ただ最近は材木座からの依頼で俺とのラノベを書かせたり、俺に名前呼びしてほしい。と要求して来たので、もしかしたら俺のことが好きなのかと思い、いつ告白しようか考えていた。くそ!!今度こそ俺が求めるものが手に入るかもしれないと思っていたのに、結局は勘違いだったわけだな。

 

俺は、手にとっていた本も買う気になれず、由比ヶ浜たちが向かった方とは逆の出口から店を出た。

 

次の日

 

「今日は部活には出ない」

 

雨が降っていたため教室で昼飯を食べていると、由比ヶ浜が俺に話しかけてきたが、まともに話をする気になれなかった。俺の勘違いだったのだから由比ヶ浜に当たるのは間違いだが、どうしても今まで通りには接することが出来ず、そっけなく答えていた。

 

「ヒッキー行こうよ、その明日入試でお休みだからさ。わ、渡したいものもあるし」

「出ないと行ってるだろ。由比ヶ浜、そのヒッキーって言うのも止めてくれ」

「え、ヒッキー何かあった?私、何かした?」

「うるせえよ」

 

それ以上の会話をすると、由比ヶ浜にキツく当たってしまうため、俺は席を立ちトイレへと向かい時間を潰した。由比ヶ浜が喋りかけてくるかも知れなかったので、昼休憩終了と同時に教室に入ると、由比ヶ浜は席には居らず、何故か三浦が俺のことを睨んでいた。

 

放課後、帰る準備をしていると、三浦が話しかけてきた。

 

「ヒキオ、ちょっと話しあるんだけど」

「俺からは何もない。それじゃあな」

「ちょっと、待つし!!」

 

三浦はそういうと俺の手首を握り、特別等屋上まで連れて行った。振り解こうと思えば出来たが、三浦にまで当たるのは筋違いのため、俺はおとなしくついて行った。天気は悪いが今は雨が降っていなかったので屋上まで出ると三浦が話し出した。

 

「ヒキオ、あんた結衣に何したし?」

「部活に行かないって言っただけだ」

「はぁ、そんなことで結衣が家に帰るわけないっしょ。お昼ヒキオと話した後、目を腫らして「今日は帰る」って言って帰って行ったじゃん!!」

「俺と話したぐらいで泣くことなんてないだろ」

「ヒキオ。あーしが言って良いのか判んないけど、結衣の気持ちに正面から向き合いな」

「お前こそ何言っているんだ?由比ヶ浜には付き合っているやついるだろ」

「はぁ!?どういうことだし!?」

 

俺は昨日の出来事を三浦に話した。つい感情的になり、自分の由比ヶ浜に対する気持ちも喋ってしまったが、三浦は何も言わず最後まで聞いてくれた。

 

「なにおもいっきり勘違いしてんだし」

「どういう事だ?」

「そいつって本当に彼氏なの?中学の知り合いかも知れないし、親戚ってこともあるし」

「いや、でも」

「じゃあ、ヒキオはちゃんと結衣に確認したの?自分の勝手な思い込みで結衣を傷つけるな!!」

「あぁ」

「今すぐ結衣に会って、確認してこい!!ヒキオの気持ちを洗いざらい伝えに行け!!」

「分かった、サンキュー!愛してるぜ三浦!!」

 

後ろから三浦が何か叫んでいたが、振り返らず走った。馬鹿じゃないのか、勝手に思いこんで結衣のこと悲しませて。一言昨日のことを聞けば良かっただけじゃないか。

結衣に電話したが、出ないので近くの公園で会いたい。とメールを送って自転車で向かった。

 

いつのまに寝ちゃったんだろう。ベッドで泣いていたらいつの間にか寝ちゃってた。窓の外を見るとすでに暗くなって雨が降っている。私、なにかしたのかな。ヒッキーに渡そうと一週間前からママに教えてもらって、部活の帰りに渡して告白しようと思ってたんだけど無断になっちゃった。私、何したか分かんないよ、ヒッキー。

 

ん?携帯に通知がきている?確認するとヒッキーから二時間前に電話が来てたみたい。メールを確認すると「公園で会いたい」って書いてある。

 

「もしかして雨の中待ってるの!?」

 

大急ぎで用意しママに出掛けることを伝えると私は家を飛び出していた。

 

公園で待っていると雨が降りだした。学校を出たときは降っていなかったので、傘を学校に忘れてきていたが、いつ結衣が来てくれるかも分からなかったので俺はその場を動かなかった。手を見ると震えている、でも結衣を悲しませたのは俺が悪いんだ。せめて話を聞くまではここを動きたくなかった。

 

「ヒッk、比企谷君!!」

「..結衣」

「比企谷君!!ずぶぬれだよ、家にいこ!!」

「....一つ教えてもらえないか、昨日一緒に歩いてた男は彼氏か?」

「え、昨日?健ちゃんのこと?従兄弟の子だよ」

「ぁぁ、すまん、結衣。ごめん!!ごめん!!」

「..あ!でも今はそんなことより身体を温めないと」

「そんなことじゃない!!俺は結衣に酷いことをした。本当にすまない!!」

「ううん、誰でも勘違いはあるよ!!それよりも早く家に!!」

 

結衣に手を引かれ、家まで連れて行かれた。俺の格好を見た母親に風呂に叩き込まれ、シャワーを借りて身体を温めた。

 

「すみません。お風呂を借りて、服まで借りてしまって」

「いいのよ、あなたがヒッキー君ね、結衣からよく聞いているわ」

「ママ!!黙っててよ!!ヒッキー私の部屋にいこ!!」

「..その、良いのか」

「うん、ちゃんとヒッキーと話したいから」

「結衣、私も行って良い?」

「ママは良いから!!」

 

「その今回のことは本当にすまん!!俺が勝手に勘違いして結衣を傷つけてしまった」

「ううん、私と健ちゃんのことで、焼もち焼いてくれたんだよね」

「ああ、俺は結衣のことが前から好きだった。でも勘違いだと今までは言い聞かせてきた。ただ最近の結衣の行動で俺のことを好きなんじゃないかと思い込んでいたんだ。何時告白しようか悩んでいたとき、二人で歩いているのを見て、勝手に嫉妬してた」

「...思い込みじゃないよ、ハイこれ受け取って」

 

そういうと結衣は俺に包みを渡してきた。

 

「一日早いんだけどさ、明日入試でお休みでしょ。だからチョコレート。私もヒッキーに今日、告白しようと思ってたんだ」

「...え、あ、そ、そのありがと」

「だからさ、これからはお互い思ったことをちゃんと伝えようよ。言葉にしないと分かんないよ」

「いや、言葉にしても判らないこともあるだろ」

「うん、だからこれからはヒッキーと、もっともっといっぱいお話しするの。それでも分かんないかも知れないけど、今回みたいに勘違いして欲しくないし、擦れ違いたくないもん」

「..そうだな、これからは結衣と何でも話し合えるようになりたいな」

「うん、だからこれからよろしくお願いします」

「..こちらこそ、よろしく」

「へへ」

「ふひ」

「..ヒッキー、その笑い方はやめたほうが良いよ。キモイし」

「酷いな、キモイとか言われないといけないの?」

「うん、これからは思ったことをちゃんと伝えないとね」

「そうだな、結衣..かわいいよ」

「な!?なんで、いきなしそんなこと言うんだし!!」

「照れた結衣はもっとかわいいな」

「うぅ、ヒッキーもかっこいいよ」

「....」

「..まあ、お互い自分のペースで話せるようになろうぜ」

「うん、そうだね」

 

「はーーーーい、もう良いかな」

「ママ!!」

「そろそろパパが帰ってきちゃいそうなんだけど、ヒッキー君挨拶してく?」

「あ、いやそれは」

「じゃあ、まだ雨が降っているんで車で送っていくよ。制服とか洗濯しちゃったから明日取りに来てね」

「いえ、そこまでしてもらうのは申し訳ないです」

「良いのよ、自転車だと濡れちゃうでしょ、でも明日はママも一緒にお話させてね」

「ママは良いから!!」

 

車の後部座席で俺と結衣は隣り合って座っていた。母親が居るのでお互い喋れなかったが、恋人つなぎした手に力を入れたりして結衣の表情を楽しんでいると、ルームミラーで母親と目があい、ニヤニヤされていた。これバレてるの?恥ずかしい!!

 

「ヒッキー君。手を繋いでいても、思っていることは言葉で伝えないと駄目だよ」

 

そう言われ、俺と結衣は二人で赤面していた。

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

八幡と由比ヶ浜さんはかなり赤面しているわね。まあ、私と一緒でクリスマスイベント前の出来事を思い出しているのでしょうけど。

 

「八幡?まずい内容であったか?」

「..いや材木座、まあ、そうだな。言葉で伝えないと判らないよな」

「ああ、今回はお互い想っているだけでは駄目だ。という事を書きたかったのだ」

「..うん、いいんじゃないかな。でも中二、でもさヒッキーが優美子に『愛してるぜ三浦!!』って言っているのはどうして?」

「川崎殿に聞いたのだがな。文化祭の時、八幡からのお礼で言われたそうなのだ」

「「はぁ!?」」

「ヒッキー!!どういうことだし!!」

「八幡、あなたお礼で『愛してるぜ』っていうの?」

「...覚えが無いんだが。大体そんなこと川崎がお前に喋るか」

「文化祭の時、川崎殿が外に座って、独り言で「比企谷に愛してるぜって言われた」って顔を真っ赤にして言っていてな。それをラノベの取材の時、聞いてしまったのだ」

「「....」」

「材木座君、今日はこれで終わりにしましょう。帰ってもらえるかしら」

「え、まだ批評してもらってないんですが」

「...材木座君」ニコッ

「は、はい。今日はこれで失礼しましゅ」

「..おれもそろそろ帰らせてもらうわ」

「八幡「ヒッキー」」

「..はい」

「八幡、では私と由比ヶ浜さんにも一緒の言葉を聞かせてもらっていいかしら」

「そうだね、ヒッキー。私たちにも言ってよ」

 

この後、八幡から日々の感謝の言葉として、照れながらも私たちの要望に答えてくれたわ。川崎さんのように名字ではなく、名前で呼ばれたから私たちもかなり照れてしまったのだけれど。今度は八幡から私一人に言ってもらえるようにしないといけないわね。

 



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16話

「材木座、今日も持ってきたのか」

「左様、昨日読んでもらおうと思っていたのだが、読んで貰え無かったのでまた来たのだ」

 

そういうと材木座君はラノベをだしてきたのだけれど、私ではなく、由比ヶ浜さん、一色さんに渡してきたわ。

 

「今回はメインが雪ノ下殿なので由比ヶ浜殿と生徒会長殿に読んでもらって、問題が無ければみんなで読んで欲しいのだ」

 

材木座君は多分気を使ってくれているのね、私たちがやり方を変えれば一色さんが感づいて、彼女のことだから八幡や材木座君に詰め寄るかもしれない。その気遣いがうれしく感じれるわ。

 

「じゃあ、由比ヶ浜さん、一色さん。先に読んで貰えるかしら」

「うん、じゃあちょっと待ってね」

 

彼女達は材木座君のラノベを読んでいるのだけれど、顔がだんだんニヤニヤ?ニコニコしだしたわ。そんなに面白いのかしら。早く読んでみたいわね。

 

「木材先輩、今回台詞形式なので雪ノ下先輩に音読して貰った方が良くないですか」

「やってもらえるのであれば、お願いしたいのだが」

「ゆきのん、どう?」

「私は読んでいないのよ、判断出来ないわ。でも音読は恥ずかしいわよ」

「先輩もやってくださいよ」

「いやだよ、俺を巻き込むな」

「でも、ここに居る中二意外、全員が出ているんだよ、どうするの?」

「しょうがないわね。では、みんなでやりましょうか」

「ええ、俺も?」

「雪ノ下先輩、最後まで読んでくださいね」

 

今回初めて私たちが自分の台詞を音読するのね。恥ずかしいけど、ちょっと面白そうなので思わず提案してしまったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「なあ、ちょっと三人ともいいか?」

「何かしら?比企谷君」

「今度の土曜日、アルバイトしてみるつもりはないか?」

「あなたから誘って来るなんて怪しいわね、いかがわしいアルバイトかしら」

「じゃあ、雪ノ下はいいや」

「え!?比企谷く「由比ヶ浜、一色聞いてくれるか?」...」

「う、うん。どんなアルバイト?」

「母さんが今まで仕事頑張っていたのは、夢だった喫茶店をやりたかった為でな。ようやく今度の土曜日、オープンすることになったんだ。それでオープニングスタッフを募集しているんだが、やってもらえないか」

「えっ!?じゃあ私達、先輩のお母さんのお手伝い出来るんですか!?」

「お手伝いっていうか、アルバイトな。バイト代も出すって言ってたし」

「ヒッキー!!私やりたい!!」

「私もやります!!先輩!!」

「比企が「それでこれが衣装になるんだが」..」

「うわー!!小町ちゃん可愛い!!この服も凄く可愛い!!」

「本当に可愛いですね!!私達もこれ着れるんですか!!」

「あの「ああ、四人分用意してあるしな。あと、こっちが俺の服装な」..」

「ヒッキー!!格好いい!!眼鏡凄い似合っているじゃん!!」

「先輩!!めちゃくちゃカッコいいです!!」

「私にも見せ「小町がノリノリでな、髪型もワックスでセットしてくるし」..」

「うん、いつもこれぐらいやったら良いのに!!」

「先輩!!本当にカッコいいですよ!!今度この格好でデートしてください!!」

「ヒッキー!!私ともデートしようね!!」

「ごめん「しばらく喫茶店のアルバイトで忙しいんだよ」..」

「うぅ、ごめ「眼鏡掛けて親父が持っていたボタンダウンのワイシャツを着ただけなんだがな」..」

「..ヒッキー、そろそろゆきのんの「でも助かるわ、詳しくはライン送るから後で教えて貰えないか」..うん」

「..はい、先輩」

「雪乃が悪かっ「あと一人誘わないといけないんだが誰か居ないか?」..」

「お姉ちゃんに言「ああ、雪ノ下さんか!!あの人ならどんなことでも対応できるだろうからバッチリだな。教えてくれてありがとうな、雪ノ下」...」

 

「..フフフ、そういう態度をとるのね」

 

「由比ヶ浜さん、一色さん。今日はこれで部活を終わるわ、帰って良いわよ。比企谷君、あなたは残りなさい。お話があるの」ニコッ

「いや、今日はあれがあれなんで」

「比企谷君、二人でお話しましょう」

「..じゃあ、私達帰るね。ラインはまた明日交換しよ。ゆきのんほどほどにね」

「..先輩、それではまた明日、お願いします」

「ええ、さようなら」

「な、なあ、何で鍵を締めているんだ?」

「邪魔が入ったらイヤだもの」

 

「お!?おい!?なんで俺の足に跨ってくるんだ!?か、顔が近い!!」

「フフフ、あそこまで馬鹿にされたのは初めてだわ」

「いや、あれはお前が「雪乃」..雪ノ下?「雪乃」..ゆ、雪乃がいかがわしいアルバイトって言い出したんだろ。俺も母親が頑張っているのを見てたんでちょっとムカついたんだ」

「すぐ謝ろうと思ったけれど八幡が言わせてくれなかったもん!!」

「..すぐには許せないだろ、こっちも頭に血が上っているし」

「でもずっと聞いてくれなかったもん!!結衣ちゃん達とずっと楽しそうにお話しして、雪乃を除け者にして」

「..それは見てたら、その可愛いかったから、つい」

「どうしてそんなことしたの?」

「気になる女子にちょっかい掛けたいとか、分かるだろ」

「分かんない!!ちゃんと言って」

「...雪乃のこと、その..す、好きだから」

「でも八幡、結衣ちゃんといろはちゃんにデート誘われてデレデレしてた」

「してないぞ、行くとも言ってないし」

「じゃあ、証明して見せて」

「ど、どうやって」

「八幡からチュウして」

「..ああ、わかった。好きだぞ、雪乃」チュッ

 

「ふふ、ありがとう。ねえナデナデして」

「これでいいか」ナデナデ

「うん、気持ちいいニャ..」

「雪乃、いまニャって言ったか」

「言ってないもん」

「じゃあ、ナデナデやめていいか」

「駄目!!..駄目ニャンだから」

「可愛いな、雪ニャンは」ナデナデ

 

「..はぁ、結局最終下校時刻までナデナデさせられた」

「ふふ、は!ち!ま!ん!大好き!!」

 

(ここまでが材木座の小説)

 

**************************

 

うぅ、何で私は最後まで読んだのかしら。途中で投げ出せば良かったのに、つい読んでしまったわ。最近材木座君のラノベに毒されているかも知れないわね。

 

「雪ニャン、かわいい!!」

「そうですよね、雪ニャン先輩が先輩と二人きりになるとこういう風になるんですかね」

「材木座、どうして雪乃のデレを書いたんだ」

「以前八幡が言っていただろう。雪ノ下殿であれば、ギャップで甘えてくれるのがいいと」

「ああ、確かに言った覚えは有るな」

「雪ノ下殿であれば、こういう風にデレれば男など容易く落とせるだろう」

「..まあ、何か違う気もするが、確かに可愛いな」

「名字呼びも変化をつけるために、わざとさせてもらったのだ」

「でも中二、これ読みにくくない?最初、ゆきにゃんの台詞に全部ヒッキーが被せて喋っているよね。もうちょっと分かり易くできないのかな」

「そうですよね、雪ニャン先輩が自分のこと『雪乃』って言い出した所も子供みたいになったって言うのは判るんですけど、地の文とか入れないと説明不足というか」

「今回は台詞だけでどこまで表現できるか試してみたかったのだ。幼児化とか雪ノ下殿の姉上を『お姉ちゃん』と言わせたかったのでな。ただラノベ本体がかなり短くなってしまったのだが」

「..材木座君、もしかして私に『お姉ちゃん』と言わせたいために書いたのかしら」

「そ、そんなことはないでしゅ」

「そうだよ、雪ニャン。音読しようって言ったの私達だし」

「ゆ、由比ヶ浜さん。その雪ニャンは止めて貰えないかしら」

「ええ、可愛いじゃないですか。雪ニャン先輩!!」

「一色さん、貴女も止めなさい。人の嫌がる事はやっては駄目よ」

「でも先輩から『雪ニャン』って言われたらうれしいですよね」

「..そ、そんなこと無いわよ。大体八幡がそんなこと言うわけないじゃない」

「良いのか、呼んでも....雪ニャン」

「あ、は、八幡は何を言っているのかしら。そ、それは二人きりの時に...」

「..へぇ、二人きりだったらいいんだ、雪ニャン」

「雪ニャン先輩ってツンデレなんですね」

「うぅ、八幡なんとかしてぇ」

「まあ、今日は諦めろ、雪ニャン」

「ゆ、雪ニャン殿のラノベ、デレを多くした方が良いのかもな」

「うぅ、材木座君まで....」

 

この後部活終了まで雪ニャンと呼ばれ続けたわ。私の黒歴史が新たに刻まれてしまったわね。

 

 

 



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IF 総武道高校ラノベを考えるのは間違えている。

今回のはつい勢いで書いてしまいました。
一話を呼んでから、読んでいただければと思います。

本編とは繋がりません。


先日追加された黒歴史により俺は土曜日、一日中悶絶していた。そんなに自分が主役のラブコメやりたいの?俺とのラブコメなんてあいつら恥ずかしくないの?もしかして俺のこと好きなの?それなら普段、俺の扱いは何であんなに雑なの?ベッドの上で悶えていると小町からごみを見るような目で見られていたが、そんなもの関係なく俺の思考は新たな黒歴史の反芻を繰り返していた。

このままでは明日の日曜日も同じように過ごすことが確定のため、俺は違うことを考えようと必死に何かないか探していたところ、材木座の書いた総武道高校の話を思い出した。

 

そういえば、俺の能力はステルスだったな。ただどうやってあの5人に対応するんだ?一色の能力は男子生徒を意のままに扱うだろ。それに対しては見えなければ一色に近づき倒すことが出来るかも知れない。

 

ただ三浦(ナンバー3)以上は自分の能力で結界のようなものを張れるのではないか?そうすると姿が見えないだけでは対応できない。自分なりに考えてみたが余り良い案は思いつかなかったため、俺は材木座に連絡をとり日曜日に会う約束をし、次の日マスタードーナツのカウンター席一番奥で落ち合った。

 

「材木座、悪いな休日に来てもらって」

「かまわぬ、主と我は幾重もの戦場を駆け抜けた仲ではないか」

「いや、今はそういうの良いんで。俺の聞きたかったのは総武道高校の方はあの後どういう展開で書くつもりだったんだ?」

「だ、駄目だ!八幡!アレを文章に起こすと女子(おなご)たちに壮絶な罵倒を受けることになるぞ!!」

「ラノベを書けと言っているわけじゃないんだ。どうしてもあの話の続きが気になってな。お前の考えていたストーリーの流れを知りたい」

「そういうことか、あれは主と女子(おなご)達でラッキースケベ連発する予定だったぞ。雪ノ下殿にも「あまり卑猥でなければ良い」と言われていたしな」

「それはラブコメのほうじゃないのか?」

「確かに恋愛ものと言っていたな。だからこっちの話はハーレム物にする予定だったのだ」

 

「俺もすこし考えてみたが、どうしても三浦以上には勝つことが出来なくてな」

「一色殿にはどうやって勝つのだ?すまぬが実は何も考えていなかったのでな」

「....一色は他人を扱う能力なんだろ?でも自分より能力が優れているものには効かない。しかも自身は特に強いわけではないと考えたんだ。周囲にいる男たちは頭数が多いだけで強くはない。それでステルス能力を使用し一色に近づき倒すかな」

「確かにそれが一番良いのかもな、だがそれだけでは物足りないのでお主が一色殿と戦っていると服が段々破れていき、羞恥心で一色殿の意識が能力に影響を与え奴隷たちの制御が出来なくなり逆襲にあい、そこをお主が助けるのはどうだ?その後、一色殿はお主に惚れると」

「それ俺が発端で襲われ、そこを助けて惚れるってどんだけご都合主義なんだよ!」

「矛盾は幾らかはあるかも知れぬがそういう流れだろうな」

 

「では三浦殿はどのように対応するのだ?」

「そっちについては全然思いつかなくてな。半径10メートルの髪の毛を結界のように張られたらどうしようもないだろ」

「....確かにな」

「いや、なんか考えろよ!!お前が作った物語だろ!!」

「余り好きではないのだが、お主に実は第二の能力があるという設定はどうだ?」

「なにそのご都合主義!?」

「お主の第一の能力はステルス。その逆で第二の能力は『目立ちたい』と考えているっていうのはどうだ?」

「?それでどうなるんだ?」

「これはお主全体が目立つわけではない、子八幡が目立ちたいと覚醒しているのだ」

「子八幡ってもしかしてチン○のことか?」

「そうだ!それを見た三浦殿はお主に惚れてしまう。って流れだ!!」

「それおかしいよね?何でおれ股間を見せないといけないの?そもそも見ただけで惚れるって三浦に対して失礼だろ!三浦相手だと、もがれちゃうよ!?」

「では孫八幡にその能力があるのはどうだ?」

「孫八幡ってお前....」

「それであれば髪の結界だろうが、小さいので潜り抜けて行けるからな。で、孫八幡は体内に入ると宿主の身体を乗っ取れるのだ!」

「....もう一回考え直せ」

「では孫八幡ではなく、血液ではどうだ?血液だったら戦闘により三浦殿の髪の毛に付着しその後体内に侵入、そして身体の自由を奪う」

「自由を奪うってのはなんだか厭らしいが、まあ孫八幡よりはいいか」

「辱めをうけ、お主に惚れるのだ」

「....なんだかもう良いや」

 

「由比ヶ浜殿は難しいな、ダークマターを生成できるのでお主の血液自体が死滅するだろな。由比ヶ浜殿には弱点とかないのか?」

「....あほな子だな」

「それなら頭脳戦に持ち込むしかないな、ただ我の頭では書けぬぞ」

「いや俺も無理だし。もし体内に入ったとしても由比ヶ浜自身の体内にも、都合の良い様にダークマターが仕込まれていると考えたほうがいいしな」

「それなら由比ヶ浜殿は戦闘ではなく、お主に惚れさせれば良いではないか」

「どうやってだ?敵同士なんだろ」

「あくまでも学校内では授業が普通にあり授業中には戦闘行為は禁止されている。お主が壁ドンを行い惚れさせるのだ」

「また俺の黒歴史が追加されるだろ!!」

「....常にダークマターが展開されているわけではないので、彼女の知らぬ間にステルス能力で近づきダークマター物質を全て奪取するというのはどうだ?」

「あほな子だしな」

「奪われたことに気づかず戦闘に入るが、一方的に恥辱を受け負けてしまう」

「....俺、毎回エロいことしないといけないの?」

 

「雪乃下殿は簡単だな」

「どうしてだ?氷の壁だとステルスは効かないし血液は全て絶対零度で凍りつかせるぞ」

「いや、そこはお主の第二能力が物を言うのだ」

「?すまん、まったく検討が付かないんだが」

「お主の血液は身体を乗っ取れるのだ。乗っ取れるということは体内の血液の流れや栄養素の循環も制御できる」

「?ああ、それで?」

「お主が雪ノ下殿に提案するんだ「俺の血を飲めば『ちっぱい』から『おっぱい』にしてやれる」とな」

「....お前、変態だな」

「血液には寿命があるからな、1日一回摂取するとなれば、簡単に陥落するだろうぞ」

 

そのとき、一気に店内の温度が下がったような気がした。冬だし誰かドアを開けっぱなしにしているのか?

 

「あら恥辱谷君、変態座君二日ぶりね」

 

俺の肩に手を置き背後からその女性は声を掛けてきた。俺と材木座はギギギッと首から音が出るのではないかというぐらいゆっくり首を後ろに回した。そこには目のハイライトを消した雪ノ下が立っており、彼女は後ろの席にいたのだろうか。俺たちにカウンター席から移動するよう指示してきた。

 

※※※ここから雪ノ下視点※※※

 

材木座君にラノベを書いてもらい、そのときは満足していたのだけれど結局は偽りなのね。彼のいう『本物』とは正反対の行為で悦に浸っても何も得られるわけがないわ。土曜日はそのようなことばかり考えてしまったため、日曜日は気晴らしに休日の町に繰り出してみた。

少し休憩がてらお茶でも飲もうと思い、ドーナツ店に入ると見覚えのあるアホ毛と丸い体躯を見つけた。私が声を掛けようと思ったとき、由比ヶ浜という単語が聞こえ私はうろたえてしまったわ。でも話している内容は先日のラノベの話のようね。その点はよかったのだけれど、私の話になったので終ったところで声を掛けた。

 

「....あ、あの、雪ノ下。何時から居たんだ?」

「そうね、由比ヶ浜さんを「あほな子」っていっていた辺りかしら。声を掛けようと思ったのだけれど、とても楽しそうにお話ししていたので邪魔すると悪いと思って後ろの席に着いたの。そのお話に私も混ぜてもらっていいかしら」

「我はそろそろゲーセン仲間と待ち合わせしてましゅので「変態座君、黙りなさい」.....はい」

「由比ヶ浜さんの途中からしか聞こえなかったのだけれど、一色さん、三浦さんのことも話していたのかしら?」

「....はい」

「どうせ卑猥なことを話し合っていたのでしょ。聞きたくもないわ」

「....」

「何か言うことはないかしら」

「「ごめんなさい」」

「はぁ、謝罪を受けたところで私たちが侮辱されていたことには変わりないのだけれど。あなたたちには罰が必要ね、先日のことをもう忘れ、また私たちを侮辱して盛り上がっているのですもの」

「すまない雪ノ下。今回は俺が悪いんだ、材木座は最初渋っていたんだが俺がどうしても続きが気になったので、一緒に考えて貰っていたんだ」

 

「あなたのせい、と、そういうわけね?」

 

私が発した言葉、それを聴いたとき明らかに比企谷君の表情が変わったわ。そうクリスマスイベント前に比企谷君が奉仕部を訪れた際、私が彼を否定するために発した言葉なのだから。

 

「あぁ、否定は出来ない」

「そう....あなた1人の責任でそうなっているなら、あなた1人で解決するべき問題でしょ」

「....だな」

 

「では材木座君、帰って貰って結構よ」

「それでは失礼させてもらいましゅ」

「比企谷君は少し付き合って貰えるかしら?」

「ああ、いいぞ」

 

材木座君は私たちの台詞に困惑しながらも帰っていったわ。比企谷君はどうすればいいのか迷ってるようだけれど。私は自分のマンションに彼を伴って帰宅した。先ほどの台詞は比企谷君に向けて発したのだけれど、私に向けて言ったことでも有るわ。そう、あの後に続く彼から聞いた『本物』という言葉。未だにその本物というのが何かは判っていないわ。でも今の気持ちを比企谷君に聞いてほしい、そう思った。

 

「いいのか、雪ノ下。俺を家に上げても」

「ええ、結構よ。さあ上がって」

 

ソファーに彼を座らせ私は紅茶を入れた。少し手が震えているわね、ポットを両手で持たないと零しそうだわ。彼に紅茶を勧め、私は彼の隣に腰を下ろした。

 

「今回材木座君にあなたと私の偽りの恋愛を書かせて申し訳なかったわ、でも幾ら偽りの恋愛を重ねても本物には届かないのね。私があなたとの本物とは何か、私があなたの本物になるのはどうすれば良いか考えている時、あなたたちが偽りの物語で盛り上がっているのを聞いて、すごく悲しい気分になったの。すごく身勝手で独占的な考え方だとは判っているわ。言っても伝わらないかも知れない。でも私の考えていたことを比企谷君、あなたに言葉で伝えたかったの」

 

なぜだか私の瞳から涙が溢れ出した。でも彼から目をそらさないよう私は拭うこともしなかった。

 

「比企谷君、私はあなたが好きです」

「....雪ノ下、ありがとう」

 

短い言葉だった。でもなぜか彼に通じたようなそんな気がした。身勝手な解釈だと思う。でも私は嬉しくなり彼の胸に飛び込み、声を出して泣いてしまった。

彼は私が泣き止むまで頭を撫でてくれていた。何故だろう、すごく落ち着くわ。

 

「....」

「....じゃあ、比企谷君。あなたには罰を受けて貰いましょうか」

 

私が泣き止みそういうと彼は困惑していた。そうだろう、何故このタイミングでこんなことを言い出すのか、でも私は彼からの言葉を聞きたかった。

 

「あなたからの告白を聞いていないわ、自分で台詞を考えて本物の告白をしなさい」

「....それは罰ではないな」

「じゃあ、何なのかしら?」

「これは俺の気持ちを言葉にするだけだ」

 

「俺は雪ノ下、お前と解りあいたい。一緒に居たい。ずっと愛し合いたい。だからこれからも好きでいさせてくれ」

「はい」

 

私たちはお互いの唇を求め合った。

 

************************************

 

おまけ(材木座の妄想)

 

あとは平塚女史をどうするかだが、彼女は三十路を越え魔法使いとなり能力を手に入れた。ではその源となっているものを取り除けばいいのだ。

彼女は男性経験がなく、男の裸にも免疫がないため、八幡がステルス能力を切り替えながら裸をチラつかせ戦闘を行い、子八幡の餌食にするしかないな。

 

いや、こんなストーリー考えていたら我に肉体言語が降り注ぐ。

これ以上は考えないほうがよかろう。

 



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18話

前回、書いたものがR18と指摘を受けましたので、削除させていただきました。
読まれた方には不愉快な思いをさせ申し訳有りませんでした。

また、今まで新規投稿時は「IF 総武道高校ラノベを考えるのは間違えている。」の前に持ってくるようにしていましたが、新しいものが前に来てしまうため、今回より最後に追加させていただきます。


「また持ってきたのか、材木座」

「左様、今回は我に馴染みのない場所を出してみたのだ、文章でどこまで説明できるか試してみたくてな」

「良いのではないかしら、自分で色々試してみて私たちが批評すれば良いのだから」

「中二、今回は誰が出ているの?」

「ああ、八幡と生徒会長殿と生徒会長殿の母上だ」

「私ですか、どんな内容なんですかね」

「生徒会長殿の家が出てくるのだが、商売をしているって設定なのでそこは突っ込まないようにお願いしたい」

「まあ、創作なんで良いんじゃないですか」

「では雪ノ下殿、お願いします」

 

読んでみると、何時もの一色さんより八幡への接触が多いわね、このラノベだと自分から押し当てているようだし。でも内容はまあ問題ないわね。

 

「内容については、まあ問題ないようね。ではみんなで読みましょうか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

今日は母親に連れられて親戚の家にお邪魔していた。土曜日なのに父親はいつも通り仕事で小町は朝早くから遊びに行ったため、なぜか俺が連れられてきた。俺が来た意味あるの?母親達が話している中、俺は出されたお菓子を食べているだけだし。

 

「八幡くんってかなり髪の毛伸びてない?まだ私たち話しているし、切ってきたら?」

「この辺の床屋知らないので、良いですよ」

「近所に良い美容院があるのよ、もし良かったら予約するけど」

「美容院って女性客が多いですよね、やですよ」

「そこは奥さんが一人で趣味でやっているだけなんで、ほとんど他のお客さんいないのよ。若いからカットも恰好よくしてくれるしね」

 

美容院か。事前予約がいるし、女性客が多くて今までは躊躇していたが、一人でやっているのであれば、良いかもしれない。喋りたくなければ寝たふりすれば良いだけだし。こっちに来ることもあまり無いから今回だけだしな。

 

「じゃあ、お願い出来ますか」

「ちょっと、待っててね」teltel

「めずらしいわね、あんたが行きたいって言うなんて」

「美容院には興味があったんだよ、女性客が多くて気が引けてたけど」

「八幡くん。今空いているって言っていたから、予約入れといたわよ」

「すみません、どこに有るんですかね」

「家の裏なんで、直ぐわかるわよ。比企谷で予約してあるから名前言ってね」

「分かりました、じゃあ母さんちょっと行ってくるわ」

「はーい」

 

俺は親戚の家を出て裏手にあるという美容院を目指した。そちらにいくと確かに美容院は有ったが、俺が考えているのとは大きく違った。美容院ってセットしているのが歩道から見えるようにガラス張りになっていて、客と店員が仲良く会話しているのを想像していたが、ここの美容院は家に増築した形の店舗で外から中の様子は見えない作りになっている。趣味でやっているってことだから、そこまで客を増やすことを考えてないのだろう。まあ、始めての美容院なんで俺にとってはこっちの方が好感がもてるけど。外からカットしているのを見られるとか罰ゲームだろ、あれ。そう思いながら俺は店舗に入って行った。

 

「いらっしゃいませ。貴方が予約くれた比企谷君?」

「あ、は、はい。そうです」

 

やばい、ちょっと見惚れてしまった。綺麗な人だな、30代?もっと上の人が趣味でやっていると思った。何か急に緊張してきた。こんな綺麗な女性に髪の毛を切ってもらうなんて、初めてだし。

 

「比企谷君は美容院始めて?」

「は、はい、今日初めてです」

「そうなんだ、家を選んでありがとうね」

「いえ、よろしくお願いします」

「そんなに緊張しなくて良いわよ」

「じゃあ、髪の毛洗うんでこちらに座って」

「はい」

 

うん?洗面に向かって逆に椅子が置いてある。仰向けに寝るのか?床屋だとカットするところで前に洗面があって前かがみになるが、こういうところが床屋とは違うんだな。

俺が仰向けになると、一言声をかけられ顔にガーゼをかけられた。ああ、こうやって目が合わないようにするんだ。洗ってもらっている最中、目が合うと恥ずかしいしこうやって貰えるのはいいな。

 

「じゃあ、比企谷君。ちょっと待っててね」

「あ、はい」

 

そう言うと、店員さんは家の方に行ったようだ。まあ時間もあるし、この体制結構気持ちいいんで、いくらでも待っているけど。そう考えていると直ぐに帰って来たが、気配が二人になっている気がする。

 

「じゃあ、髪の毛洗いますね」

「はい」

 

何か聞いたことがあるような声だな、若そうだし。頭を洗い出してくれたが、指使いが上手くて凄い気持ちいい。なんだかこのまま寝てしまいそうになる。

 

「襟足洗うのに頭、あげますね」

 

そういうと頭を抱えてくれたのだが、なんか柔らかいものが顔に当たっている。凄い良い匂い、ヤバい、気持ちよくて反応してしまう。美容院ってこんなサービスあるの?仰向けで寝ているから本当にヤバい!!早く終わってくれ!!でも、もうちょっと味わいたい。高校生だからしょうがないじゃん!!

でもこの匂い、嗅いだことがある。俺の好きな子の匂いに似ているんだ。そう思うと俺は瞬く間に反応してしまっていた。

あくまでも自然になるように股間の前に手を持っていき、手を組んでいるようにして見られないようにしたが、バレていないよね?

 

「じゃあ、さげますね」

 

凄い良い匂いだったし、柔らかいものが顔に当たっていたしで、顔が赤面している。かゆいところはないかとか色々いわれたが、まともに答えられず、すべて「はい」って言っていた。

 

「終わったので、ガーゼ外しますね」

 

そう言ってガーゼを外してくれ、俺は目を開けたのだが

 

「い、いろは!?」

「はい、先輩。どうでした、私が髪の毛洗ったんですよ」

「え、じゃあ...」

 

そういうとまた、赤面してしまった。さっき顔に柔らかいものが当たっていたのって、いろはの...

 

「どうだった?いろはにも手伝わせているんだけど、まだ慣れていないのよね」

「ここの美容院って、いろは..さんの家だったのか」

「先輩、いつも通りいろはで良いですよ」

「いや、それは」

「じゃあ、こっちに移ってくれる?先輩君」

「はい....先輩は止めてください」

「良いじゃないですか、先輩。私も手伝いますよ」

「いや、いいから家に戻っててくれ」

「へー、そんなこと言うんですか」

 

そう言うといろはは俺の耳元に顔を寄せてきて

 

「大きくしてたの奉仕部で言ってあげますよ」

「な!?...いろはさん、お願いします」

「はい!!先輩!!でもいつもどおり名前で呼んでくれないと駄目ですよ」

「..分かった、いろは」

 

髪型は俺の意見は聞いてもらえず、いろはが決めていた。まあ全体に短くしてくれってことしか言ってないから、いろはに決めてもらって助かったけど。

さすがにカットは母親がやってくれたのだが、母親からの質問攻めで俺の精神はボロボロになっていた。なんで生徒会長やることになった経緯を知っているの?その後のクリスマスイベントの事も知っていたし。

いろはは母親と仲が良いんだろうな、色々話をしているのだろう。でも俺のこと持ち上げすぎじゃない?俺の事、どういう説明をしているんだ?

 

カットが終わったあと、また髪の毛を洗ってくれるということで移動したのだが

 

「お願いします、一色さんが洗ってください」

「ごめんね。私、おトイレ行きたいんだ。いろはが洗ってくれるんでいいでしょ」

「先輩、私がやりますよ。じゃあ、またガーゼかけますね」

 

そう言うといろははガーゼを顔に掛け洗い出した。まずい、手は既に股間の前で手を合わせる体制にした。母親はいろはに「家の方に行ってくる」と伝え、移動していったようだ。

 

「先輩、気持ちいいですか、ガーゼ取りますね」

「なんでとるの?顔に水が当たるんだけど」

「先輩の顔、なかなかこんなに近くでみれないじゃないですか」

 

そう言うといろははシャワーをとめた。

 

「先輩、目を開けてください」

「!?か、顔が近い!?」

 

何時のまにか、いろはの顔が目の前にあり、俺はテンパっていた。

 

「先輩って良い匂いしますね」

 

そう言って、顔を移動し俺の首筋の匂いを嗅ぎ出した。

 

「い、いろは。まずいから離れてくれ!!」

 

その後もいろはは俺の胸に顔を乗せ匂いを嗅いでいたり、俺のお腹の上に手をはわせたりしていた。

 

「まあ、今日はお客さんですから、ここまでにしておきます」

 

その後、髪の毛を洗ってくれたのだが、襟足を洗うときまた胸に顔を埋めさせられたため、かなり赤面してしまった。匂いは存分に堪能させてもらったけれど。

 

「い、いろは。その、わざとやっているのか?」

「ええ、でも先輩だけですよ。こんなことするのは..先輩、私の気持ち気づいていますよね」

「..ああ、今までお前の早口も全部聞き取っていたんだが、気づかないふりをしていた。その、なんだ。...いろは、俺と付き合ってもらえないか」

「はい!!先輩!!」

 

美容院で髪の毛を洗ってもらっている途中での告白という、訳の分からないシチュエーションだったが、俺にも彼女が出来たようだ。

ヒゲを剃ってくれたあと、いろはが母親を呼び、髪の毛を微調整したあと、いろはがワックスでセットしてくれた。セットの仕方を教えてくれたのだが、「明日からこの髪型にするように」と脅された。

 

「じゃあ、先輩。これ会員証ですので、また来てくださいね。家に遊びにきたついででカットしますよ」

「いや、遠いんで、多分来れないかな」

「ふーん、彼女にそんなこと言いますか」

「え、いろは?先輩君と付き合っているの?」

「うん、ついさっきね」

「へー。じゃあ、いろはの彼氏価格でタダでやってあげるんで、また来てね」

「いや、それは申し訳ないんで」

「先輩君。また来てくれないと泣いちゃうぞ」

「お母さん!!何言っているの?大体お母さんの先輩じゃ無いでしょ!!」

「だって私も先輩君と色々お話ししたいしぃ。..先輩、駄目ですかぁ?」

 

さすがいろはの母親だけ有って、あざとい、上目遣いも甘え声もいろはの上位互換だ。

 

「..また来させていただきます」

「..先輩、もしかしてお母さんが目当てですか?」

「そ、そんなわけないし!!」

「ありがとうね、せんぱいくん!!」

「止めてください、一色さん」

 

こうして俺の美容院デビューは幕を閉じた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「な、な、なんで私が胸を押し付けないと行けないんですか!!」

「い、いやこれはラノベの中の生徒会長殿なので」

「あと、先輩がお母さんにデレているじゃないですか」

「綺麗な母上という設定なので」

ブーブー

 

一色さんは材木座君にいろいろ文句を言っているのだけれど、私たちも批評をしないと行けないわね。

 

「材木座君、美容院ではカミソリを使えないので、髭を剃る事はでないのよ」

「そうですか、知りませんでした」

「うん、でも後は大体あっているんじゃないかな、ガーゼは目が合わないようにしているのもあるけど、水が当たって化粧が崩れないようにしてくれるんだよね」

「男には判らぬことだな」

「材木座、この話だといろはが痴女みたいだな」

「好きな異性が無防備に寝ているのだぞ、ちょっかいを掛けたくなるではないか」

「いや男がそれやったら、警察の世話になるぞ」

「女子からやって貰いたいではないか」

「..お前の性癖はいいから」

「ヒッキーもやってもらいたいの?」

「...いや、俺は良い」

「さっきの間は何だったのかしら」

「でもこのラノベだと、いろはちゃんが痴女だよね」

「そうね、チジョハさんね」

「..雪ノ下先輩、もしかして先日のこと、怒っています?」

「何を言っているのかしら。私はこのラノベを読んで、一色さんが痴女の振る舞いをしているので、「チジョハさん」と呼ばせてもらっただけよ」

「雪ニャン先輩、それは辞めてください」

「あ、あなたは何を言っているのかしら」

「まあまあ、雪ニャンもチジョハちゃんも良いじゃん。お互いそうやって呼び合えば」

「「いや(よ)(です)」」

「..一色さん、今までどおりにしましょう。お互いのためよ」

「そ、そうですね」

 

「では次のラノベを読んでもらってもよいか」

 

材木座君がうち切ってくれて正直助かったわ。これ以上「雪ニャン」って呼ばれるのは恥ずかしいもの。

 

 



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19話

「今度は初めてオリキャラを出してみたのだ」

「中二、オリキャラってなに?」

「オリジナルキャラクターだ。我が考えた登場人物ということだな」

「..ふーん、じゃあ私たちは出てないんだ」

「まあ、少し出てくるだけだな。今回はオリキャラなので、先に読んでもらう必要はないと思うぞ」

「でも私たちも出てくるのでしょ、念のため読んだ方がいいと思うのだけれど」

「では、由比ヶ浜殿、生徒会長殿お願いできるか」

「私では駄目なのかしら?」

「奉仕部への依頼がある設定で、どうしても雪ノ下殿は会話が多くなってしまうので」

「そういうことね、では二人お願いするわ」

 

由比ヶ浜さんと一色さんは読み終わった後、少し話をしているようだわ。何かまずい内容でも有ったのかしら。

 

コッチハ アトデ チュウニ

ソウデスネ

 

「多分大丈夫と思うんだけど」

「雪ノ下先輩が先輩に毒を吐くのは何時ものことですよね」

「私は毒を吐いているわけではないわ、的確な指摘と言って貰えないかしら」

「じゃあ、問題ないですよね。木材先輩、ラノベを配ってください」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

彼女の名前は綾瀬 綾(あやせ あや)。なぜか最近懐かれていて、今も俺に腕を絡めてベストプレイスに座ってラノベの話をしている。

それは俺たちが3年生に上がって少したったころ、ベストプレイスで彼女が先にご飯を食べていた時から始まった。

 

昼休み購買でパンを買い、ベストプレイスに向かうと女子生徒が弁当を食べていた。げ、これだと戸塚を愛でれないじゃないか。彼女は黒髪を肩ぐらいまで伸ばしたセミロング、横顔しか見れないが顔は整っており、かなり可愛いんじゃないか。でも虚ろな目をしどこか彼方をみていた。

他の場所に移るしかないな。そう思っていたら向こうもこちらに気づき、目が合ってしまった。やべ、凄い可愛い。雪乃や結衣、いろはにも負けてないんじゃないか。

その女子生徒は俺と目が合うと怯えた顔をし、俯いてしまった。何、そんなに俺が怖いの?目が駄目なの?ちょっとショックなんだけれど。ただ、彼女からは俺に怯えているだけではなく、どこか諦めてしまった雰囲気が漂っていた。

何かこのまま放っておくのも気分が悪いので、俺は話しかけていた。

 

「すまん、何時もここで昼飯を食べているんでな。こっち座ってもいいか」

「あ、はい。どうぞ」

「....」

 

俺はベストプレイスの端に腰掛けたが、お互い無言で昼飯を食べていた。彼女は最初怯えていたが、俺は戸塚を愛でていたため、彼女を意識せずにいたことで、警戒心が解けたのか、ご飯を食べ終えたあとラノベを読み出していた。

 

「それ、禁書目録(インデックス)か?」

「あ、はい」

「ああ、悪い。俺は3年比企谷八幡だ」

「わ、私は1年の綾瀬 綾(あやせ あや)です」

「悪いな、読書中。ラノベ好きなのか」

「はい。比企谷先輩もラノベ読むんですか」

「ああ、結構読むな」

「そうなんですね」

「....」

 

綾瀬もぼっちなのか、お互い会話が続かない。まあ、俺は黙っている方が気が楽なんでいいんだけど。そんなこと考えていると、予鈴がなったため俺はゴミを片付け立ち上がった。

 

「あ、あの比企谷先輩。明日もここに来ていいですか」

「俺の場所じゃないからな、良いんじゃないか」

「はい、では明日も一緒にお願いします」

 

え、それって明日も来いってこと?まあ最初、綾瀬のこと気になって話しかけたのは俺からだしな、明日も来るか。

 

「ああ、じゃあな」

 

そう言って俺は、教室に戻った。

 

次の日、購買に行きパンを買った後、ベストプレイスに向かうか迷ったが、約束も有るので、俺はベストプライスに向かった。綾瀬は先に来ていたが、弁当を食べずに俺を待っていたらしい。

 

「比企谷先輩、こんにちは」

「ああ」

「来てくれて嬉しいです」

「いや、昼飯を食べに来ただけだから」

「..それでもです」

「では、いただきます」

「ああ」

 

お互い無言でご飯を食べ、そのまま俺はマッ缶を飲みながら戸塚を目で追っていた。

 

「....比企谷先輩、私を嫌ってますか」

「は?いきなり何言っているの?」

「ごめんなさい、変な事聞いて」

「俺は綾瀬の事よく知らないし、嫌うも何もないだろ」

「..普通、そうですよね」

「..まあ、人間なんてそいつの事知らなくても、第一印象で決めつけるからな。俺もそうだろうけど」

「でも、比企谷先輩は私にはそう言う態度、見せないですよね」

「嫌うも何もそう言う印象持ってないからな...綾瀬、なにか悩みがあるのか?」

「...はい」

 

その時、予鈴がなったため、話は打ち切られてしまった。

 

「綾瀬、もし悩みがあるなら放課後、奉仕部に来い。平塚先生に聞けば場所はわかるから」

 

そういうと俺は教室に向かった。綾瀬からは何も返事はなかったが、これでいいのだろう。綾瀬が自分で現状をどうにかしたいと考えなければ、何も変わらないのだから。

 

放課後、いろはと新たに奉仕部入りした小町を交えた5人が集まり、部室でラノベを読んで寛いでいると、ノックをする音が聞こえた。

雪乃が「どうぞ」と返事をすると綾瀬が入ってきた。

 

「お、お邪魔します。1年の綾瀬綾といいます」

 

綾瀬が入ってきて挨拶をした後、俺たちもそれぞれ挨拶をした。

 

「綾瀬さん。1年生がよく奉仕部を知っていたわね」

「比企谷先輩に教えてもらって平塚先生に聞いてきました」

「綾瀬さん。あなた八幡の事知っているの?何かされなかった?脅迫されていない?」

「まて雪乃。俺がなんで脅迫しないといけないんだ」

「彼女、可愛いでしょ。フラグメーカーの貴方であれば、手を出している可能性が大きいもの」

「比企谷先輩はそんなことしません!!ただお昼一緒に食べてもらっているだけです。なんでそんなこと言うんですか、雪ノ下先輩、ひどいです!!」

「あ、綾瀬さんごめんなさい。確かにそうね、私が悪かったわ。八幡とは何時も軽口を言い合っているのよ」

「でも親しき中にも礼儀ありっていうじゃないですか!!」

「いや綾瀬良いんだ。何時もこうやって軽口を言い合って、俺も好きで楽しんでいるしな」

「でも、でも」ウゥ

「俺の為に怒ってくれてありがとうな、綾瀬」ナデナデ

 

頭を撫でると、綾瀬は俺の胸で泣き出してしまったため、俺は頭を撫で続けた。途中綾瀬は顔が赤くなっていたが、どうしたんだ?熱でも出たのか。俺が手をおでこに当てると、より赤くなっているように見えたが大丈夫なのか。

 

「だ、大丈夫です。比企谷先輩」

「ああ、熱があるなら言ってくれよ」

「雪ノ下先輩、すみませんでした。生意気なことを言ってしまって」

「いいえ、綾瀬さん。私の方こそ配慮が足りなかったわ、ごめんなさい」

「いえ、雪ノ下先輩が言っていたこと、いま身を持って実感しましたから」

「俺にもその配慮を少しでも分けてくれれば良いのに」

「ヒッキー、何時もゆきのんとの会話、楽しんでいるじゃん」

「..はぁ、でも先輩って本当に無意識なんですね」

「お兄ちゃんですからね」

「それで綾瀬さん。今日はどのような依頼なのかしら」

「はい・・・・」

 

綾瀬の話では入学式前に病気に掛かり、学校が始まっても一週間程欠席していたので、回りはすでにグループが出来ていた。勇気を出して自分から話しかけても、どこにも入れてもらえなかったらしい。虐めまでは行っていないが、無視されているということだった。

 

「でも綾瀬さん。貴女と話していても嫌われる要素はないと思うのだけれど」

「そうですよね、顔も可愛いしトップカーストに居ても良いぐらいですよね」

「うん、綾ちんのなにが駄目なんだろうね」

「由比ヶ浜先輩、綾ちんって私ですか」

「うん、かわいいでしょ」

「小町はE組だけど綾瀬さんってクラスは何組?」

「A組だよ」

「うーん、じゃあ違うか」

「どうしたんだ、小町。何か知っているのか」

「多分関係ないんだけどね、C組にいる女王が自分のグループに可愛い子を入れて、入らない子は排除しているって聞いてね」

「なんだ、その女王って」

「容姿はまあ可愛い方なんだけど凄いわがままなの。家も金持ちらしくて、みんなに色々おごってくれるらしいけどね。小町にもグループに入れって言ってきたけど、断ったんだ。その子名前は愛甲愛(あいこう あい)だったかな」

「え、愛甲さんだったら私知ってます。一緒の中学校でしたから。確かに彼女は中学の時からグループの友達を増やすことを考えていて、私も誘われたことがあります。ただ私はラノベを読むのが好きで、そういう子達と集まっていましたから断りましたけど」

「疑うのは悪い事だけれど、もしかしたらその愛甲さんが関係あるかも知れないわね」

「ああ、そうだな。裏で手を引いている可能性があるな」

「でもどうして違うクラスの私を?」

「あくまでも憶測だが、中学のとき断られたのを根に持っているのかもな。高校でトップカーストになりたいが、綾瀬は入らないのが分かっている。綾瀬の可愛さはトップクラスだろ、そんな綾瀬がグループを作り出したら自分のグループがトップから転落するかもしれない。今から2年、3年になったときの地盤作りってところか」

「か、可愛さはトップクラス....//」

「でも小町はどうなんだ?お前の回りも上位カーストだろ?」

「小町たちも集まっている子はいるけど、そんなカーストとか気にしてないよ」

「でも決め付けて行動するのはまだ早計ね。まずは1年生に聞き取りする必要があるわ。小町さん、私たちでは1年生の事は分からないので、お願いしていいかしら」

「はい、小町がちょちょいって情報収集してきますよ」

 

小町の情報では予想通り、愛甲が裏で手を引いているのが分かった。俺たちはA組内のトップカーストに話を聞きにいき、綾瀬と仲良くしたかったが、愛甲が怖かったと聞いたため、綾瀬を入れてもらうようお願いしようとしたところ、逆に今までの事を謝罪され、綾瀬は受け入れてもらえた。

また、C組の排除されていた女子たちも綾瀬のグループと小町のグループが手を差し伸べた。綾瀬、小町のグループは葉山グループの結衣、生徒会長のいろはと仲よくなったため、手出しもされず、仲良く過ごしているらしい。

 

「比企谷先輩!!」

「ああ綾瀬か、どうしたんだ。俺、今から奉仕部に行くんだけど」

「私も今回のお礼でお邪魔させていただきます」

「お礼なんて良いぞ、依頼をこなしただけだし」

「いいえ、私がお礼を言いたいんです、それと....」

「?そうか、まあ良いんじゃないの」

 

「今回は本当に有難うございました」

「いいえ、綾瀬さん。私たちはほとんど何もやっていないわ。今日はまだ来ていないのだけれど、今回は小町さんが色々やってくれたので、彼女に伝えて貰えるかしら」

「はい、でも先輩達も私の話を聞いてもらって親身に相談にのってもらいました。それだけでも私にとっては気持ちが楽になりました」

「ありがとう、綾瀬さん。そういって貰えるとこちらも嬉しいわ」

「うん、綾ちん。これからも何か有ったら幾らでも相談してね」

「私も手伝うからこれからもよろしくね」

 

「...後、先輩達に助けてもらってこんなこと言うのは失礼かも知れませんが....今は先輩達に勝てるとは思っていません。..でも、私は比企谷先輩が好きです。だからこれからは覚悟しておいてください。と、綾瀬は先輩達に戦線布告します」

 

いきなり綾瀬は御坂妹の真似をし雪乃達に言い放つと、俺の横に移動して頬にキスしてきた。

 

「な、なにするんだ!?綾瀬!!」

「何やっているんだし!!ヒッキー!!」

「..八幡。部室で不純異性交遊を行うとは何を考えているのかしら」

「せ、先輩。生徒会長として今のは見逃せませんね」

 

綾瀬は何も思っていないのか俺の右腕に抱きついてきて言い放った。

 

「先輩たちには感謝していますが、そんなことばかり言っていると、比企谷先輩を貰っちゃいますから」

 

綾瀬は出会ってから一番の笑顔をみせ、俺に微笑んでいた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....」

「ま、まあ、面白ろかったんじゃないですかね」

「..うん、そうだね」

「材木座君、禁書目録(インデックス)と言うのはラノベの事なのね?最初分からなかったわ」

「人気のあるラノベなので、出させてもらいました」

「材木座、御坂妹の真似しているところ、俺は分かるが3人とも知らないぞ。他のラノベの設定を出すのであれば、説明を入れたほうが良いんじゃないか」

「どうやって途中に説明を入れるのだ?」

「例えば俺との会話中、禁書目録(インデックス)の好きなところを話していて御坂妹をだすとかだな」

「うむ、そうやってラノベの中に出せばいいのだな」

「あと、告白?宣言?なのかもしれないが、ラノベの真似でやるのはどうかと思うぞ」

「そうね、自分の言葉で伝えた方がいいわね」

「私は綾ちんについて、もっと説明が欲しいかな。髪の長さしか説明ないし、顔が可愛いと書いてあっても、いまいちピンとこないし」

「そうですね、私たち3人と比べてましたけど、それぞれ違いますしね」

「そうね、容姿について説明を入れた方がいいでしょうね」

「顔については難しくないですか、後は胸の大きさとかですか」

「....八幡、今日は終わりにしましょう」

「うん?もう帰っていいのか」

「ええ、八幡は帰ってもらって結構よ」

「材木座君はちょっと話があるので残ってもらうことになるけれど」

「?ああ、じゃあな」

 

「あ、あのどうして我だけ残されたのですか」

「中二、その前にそこに正座」

 

そういうと由比ヶ浜さんは以前、私と材木座君が正座させられたところを指差したわ。

 

「材木座君、確か最初のラノベの時、私たちの恋愛ものっていう条件だったと思ったのだけれど」

「そうだよね、だから登場人物として出して良いって話だったよね、中二」

「木材先輩、忘れてないですよね。それでどうしてオリキャラをメインで出しているんですかね」

「あと先ほどの容姿について言っていたところも説明してもらえるわよね。貴方にとって女性は顔と胸だけの存在なのかしら?」

「そ、それは....」

 

このあと私たちからの説きょ..指導は1時間以上、最終下校時刻まで行われたわ。

 

 

 



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20話

最近、この奉仕部も忙しいわね。と言っても材木座君のラノベ批評を行っているだけなのだけれど。今日、八幡は先生に呼び出しを受けたらしく、少し遅れているようね。

今部室には由比ヶ浜さんと一色さん、私がいるところに川崎さんが挨拶をして入ってきたわ。

 

「川崎さん、今日はどうしたのかしら。何かの依頼?それともラノベを書いて貰ったの?」

「ああ、雪ノ下。私が材木座にラノベを書いてほしいってお願いしたんだ」

「サキサキ、最初に書いてもらった分の黒歴史は良かったの?読んだ後もヒッキーの方をみては顔を赤くして恥ずかしがっていたよね」

「..ああ、最初は恥ずかしかったんだけど、ああいうのも有りかなって思ったら、また書いてもらいたいって思って」

「川崎先輩もだんだんハマっちゃうんですね」

「その恥ずかしいんだけど、次は比企谷と私で、どういう話を書いてもらえるんだろうって思うと我慢出来なくってさ」

 

私たちが川崎さんを交えて話していると、八幡に続いて材木座君が部室に入ってきたわ。

 

「何で川崎がいるんだ?」

「八幡、今回は川崎殿からラノベを依頼されてな」

「どうして、みんな自分から黒歴史を作りに来るんだ?俺には理解できないんだが」

「良いじゃん、みんなヒロインに憧れるんだよ」

「そういうものなのか、俺はモブで良いけどな」

「雪ノ下、後で他のラノベも読ませて欲しいんだけど」

「いいえ川崎さん。プライベートなこともあるので、貴女に関係のない分については、読ませられないわ」

 

私は雪ニャンラノベを読まれるのが嫌だから言っているのではなく、あくまでもみんなのために言っただけなのよ。そう、あんなもの他の人に読ませたら何を言われるか、堪ったものではないわ。

 

「ただ今は内容のチェックだけは先にやっているの、余り触れられたくないことや失礼なことを書いている場合も有るかもしれないので」

「ふーん、じゃあ何時もどおり始めてよ」

「では材木座君。川崎さんの分を読ませていただけるかしら」

 

そういうと材木座君からラノベを受け取り、私が先に読ませてもらって問題がないことを確認すると、材木座君からみんなに配ってもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

今日、私は朝から緊張していた。顔が常に熱く赤くなっているのが分かる。比企谷に弁当を作ってきたんだけど、どうやって渡せばいいのか自分でも考えずに持ってきてしまった。全然授業の内容が頭に入らないし4限目になっても私は比企谷に話しかけられずにいた。

4限目が終わり比企谷は席を立ったので、今から購買にご飯を買いにいくのだろう。私は遅れまいと比企谷の後を追うため、席を立とうとしたが隣の女子生徒に話しかけられ、後を追うことが出来なかった。比企谷がどこでご飯を食べているか知らないので、追い掛けることも出来ない。ああ、弁当が無駄になっちゃったな。

 

私は家に帰り弁当を捨てた。悔し涙がでそうになる。どうして私は何時もこうなんだろう。比企谷に弁当を渡したいのに、話しかける事も出来ないなんて。

 

「さーちゃん、どうしたの?」

「うん、何でも無いよ。ありがとう、けーちゃん」

「さーちゃん、かなしそうな顔しているよ」

「大丈夫、何でもないから。じゃあ、今からご飯の用意するから離れててね」

「..うん」

 

私は何をしているのだろう。けーちゃんにまで心配させて。明日は絶対話しかける、そして私の弁当を食べてもらうんだ。

 

次の日も私は弁当を用意して持って来ていた。でも結局渡すことが出来ず、いつのまにか4限目になっている。どうしよう、このままだと昨日と一緒だ。また、けーちゃんに心配を掛けてしまう。私のせいであんな悲しそうな顔はさせたくない。

私は授業が終わると教科書も片付けずに席を立ち、比企谷の席に向かった。

 

「比企谷、これ」

「なんだ?川崎」

「ん」

 

私は比企谷に弁当袋を突き出すとすぐ比企谷の席を離れた。顔が赤面していたけど、渡せたことが凄く嬉しかった。私がチラチラ比企谷のほうを見ていると、比企谷は弁当袋の中を確認した後、こちらを見たが何も言わずにそのまま席を立ち、弁当袋を持ってどこかに向かったようだ。

本当なら一緒に食べたいけど、今日は良いかな。多分緊張して食べれないと思うし。一緒に食べるのは、また今度の楽しみに取っておこう。

 

6限目が終わり後片付けをしていると、比企谷が私の席に近寄ってきて喋りかけてきた。

 

「川崎、弁当ありがとうな。凄くおいしかったぞ」

「食べてくれてありがとう!」

「いや、こっちがお礼を言わないといけないから。弁当箱洗って返すな」

「いいよ、そのまま返して。弁当箱がないと、明日持ってこれないだろ」

「え、明日も持ってきてくれるのか」

「..比企谷は迷惑?」

「いや、俺じゃなくて川崎が大変だろ」

「家でけーちゃ..京華の分や両親の分も作っているから、手間はそんなに変わらないよ」

「でも悪いから無理しなくて良いぞ、俺は施しを受けるつもりはないから」

「私が作りたいから持ってくるだけだから、あんたが食べないんだったら捨ててもらっていいし..」

「..分かった。でも大変なときは本当に良いからな」

「ああ、明日を楽しみにしときな」

「ありがとうな、じゃあ」

 

そういって比企谷は自分の席に移動すると後片付けをして、教室を出て行った。多分部活に向かったのだろう。

私は凄く嬉しかった。比企谷が弁当を食べてくれたこと、おいしいと言ってくれたこと。なんだか嬉しくて涙が出てきそうになったが、何とか堪えて私も後片付けをし、教室を後にした。

 

その日から私は毎日、弁当を持ってきていた。弁当を渡し始めて次の日から、比企谷が一緒に食べようと言ってくれ、私たちは屋上で並んで食べるようになっていた。

多分、比企谷は私の気持ちに気づいているのだろう。でも私から告白する勇気はない。もし比企谷に断られたら、この大切な時間が失われてしまう。それだったら今の関係を続けていきたい。私はそう願っていた。

 

「お兄ちゃん、ご飯できたよ」

 

土曜日の夜、小町とご飯を食べ始めたが、最近小町の料理が物足りなくなっている。何時もハンバーグや唐揚げなどは調理してくれるのだが、芋の煮っころがし、筑前煮、ひじきの煮物、ほうれん草の胡麻和えなど川崎が作ってくれた日本食は小町では料理出来ないので、スーパーの惣菜コーナーで買ってきてくれる。でも川崎が作ってくれたものを食べてしまった後では、すべてが物足りなく感じていた。

これが胃袋を捕まれたって事なのか、川崎の弁当を食べたくてしょうがない。早く月曜日にならないか、何時もなら学校が始まる月曜日は恨めしかったが、今では待ち遠しくなっていた。

 

月曜日、私はまた弁当を持って来ていた。最近料理をするのが楽しくてしょうがない。家族が私の料理を食べておいしい、と言ってくれるのとは別で比企谷に言われると私はそれだけで、幸せな気分になれる。今日もおいしいと言ってくれると良いけど。

 

「はい、今日の弁当」

「..何時も悪いな」

「じゃあ、食べようか」

「..その、食べる前にちょっといいか」

「何?」

 

そういうと比企谷はポケットに手をいれ、何か小さな箱を出してきた。それを開けると指輪が二つ入っていた、ペアリングだろう。え!?これってもしかして..

 

「その、なんだ。どうも俺の胃袋は川崎に捕まれたらしい。もし川崎が良かったら右手薬指にはめて貰えないか」

 

比企谷は一回り小さい方の指輪を箱から取り出すと、私に差し出してきた。私は声も出せず、涙が溢れてきて比企谷の顔も霞んでしまっていた。でも比企谷が私のために買ってきてくれた指輪をはめてほしくて、私は比企谷に右手を差し出した。

比企谷の手が震えているのが、右手を通して分かる。でもどんなに震えていても時間が掛かっても、比企谷が付け終わるまで私は右手を引っ込めることはなかった。

 

「あれ、ちょっと大きいか」

「ふふ、ちょっと大きいみたいだね。でもこれで良いよ、ありがとう。比企谷から始めてもらったものだから大切にする。じゃあこっちは私が付けるから右手出して」

「いや、俺は恥ずかしいから後で付けるよ」

「いいから右手をだしな」

「..はい」

 

お互いの右手薬指にはシンプルなリングが輝いていた。私にとって大切な宝物になるものだから傷を付けないように綺麗にしまっておきたい気持ちもあるけど、左手薬指に指輪を付けて貰えるまでは、ずっと付け続けようと心に誓っていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「なあ材木座、右手薬指の指輪ってどういう意味なんだ?」

「恋人がいる。と何かで読んだことが有るぞ」

「材木座君、その認識は誤っているわ、たしか「心の安定」って意味だったはずだけど」

「へー、そういう意味なんだ。でも私も雑誌で読んだことあるよ」

「多分、恋人が居て心が安定しているって意味で使われていると思うわ」

「でも、いきなり指輪を贈るってどうなんですかね、重くないですか」

「..私はこのラノベみたいに付けてほしいな、それだけ比企谷の思いが強いって事だろ」

「八幡の気持ちが籠っていると言う事なのね」

「でもヒッキー、自分が付けるのは戸惑うんだね。そこはヒッキーなんだね」

「先輩ですからね」

「なあ雪ノ下、何で比企谷のこと名前で読んでいるの?」

「私たちは最近、お互いを名前で呼びあっているのよ」

「...比企谷、私の事も名前で呼びな」

「川崎も名字で呼んでいるから、今までどおりでいいだろ」

「...は、はち、八幡...これからは私の事も名前で呼んで//」

「..分かったよ、沙希//」

「「「....」」」

 

「う、ううん。ではラノベの批評を再開しましょうか。途中八幡の地の文が出てきたのだけれど、そこだけだと違和感があるわ。川崎さんへの告白の時に、台詞で言った方がいいと思うのだけれど」

「あと弁当を渡した日も、けーちゃんを出してサキサキの表情の違いを出すのもいいと思うな。大志くんが出てきて、サキサキをからかうのも良いかもね」

「川崎先輩って日本料理得意なんですか?」

「何時も家で作っているからね。でもこの場合は和食って言った方がいいんじゃないかな」

「そうだな、郷土料理とか和食って言った方が分かり易いだろうな。日本料理っていうと寿司なんかも含まれるからな」

「郷土料理とか和食って、なんか地味ですね」

「そうか?俺は和食も好きだから、そういう料理出来る人が良いけどな」

「「「....」」」

 

「で、では今日はこの辺で終わりましょうか」

「うん。材木座、書いてくれてありがとう」

「いや、こちらこそ評価してもらえて助かっているぞ」

「じゃあ、は、八幡。明日、弁当作ってくるからよろしくな」ピシャ

 

川崎さんは部室を出るとき、八幡に弁当を作ってくるって言って、返事も聞かずに部室を出て行ったわ。残された私たちは固まってしまったのだけれど。

 

「じ、じゃあ、先輩。川崎先輩の次の日は私が作ってきます!!」

 

一色さんが川崎さんの発言にいち早く反応し、自分も提案し出したわね。

 

「では一色さんの次は私が作ってくるわ。八幡、楽しみにしててね」

「じゃあ、ゆきのんの次は私ね、ヒッキー食べてよ」

「ま、待ってくれ。沙希の分も食べるとは言ってないんだが」

「良いわよ、捨ててもらっても。私たちは八幡に作りたいから持ってくるだけなのだから」

「..捨てれるわけないだろ。でも結衣、..その、大丈夫なのか」

「私も今のままじゃ駄目だから、少しづつだけど練習しているんだ。だから食べてほしいけど、だめかな....」

「八幡、最近由比ヶ浜さんは自分で作ってきた弁当を食べているのよ」

「分かった、でも無理だけはするなよ」

「うん!!」

「わ、我にも誰か作ってくれないかなぁ...」

「「「....」」」

 

「うわーん!!八幡のリア充がああ!!もげてしまえぇぇ!!」

 

そういって材木座君は走って部室を出ていったわ。誰か作って上げれば良いのに。

私?私は嫌よ。八幡以外の人にどうして作らないといけないのかしら。

でも川崎さんは強敵ね。一色さんはどうなのかしら、未知数だわ。由比ヶ浜さんは最近、自分で作った弁当を持ってくるのだけれど、まだまだだし。私も和食を勉強し直すわ、川崎さんに負けていられないもの。そして最後は私が八幡の胃袋を摘んでみせるわ。

 

 

 



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番外:弁当編

私は弁当を持って、八幡の席に向かった。今日弁当を食べてもらう約束をしていたから。約束と言っても一方的に押し付けただけだけど。

由比ヶ浜が私を見ている。少し不安気な顔をしているけど、そんなこと気にしていたら八幡を誘えない。私は彼女の方を見ないように八幡の席に向かった。

 

「は、八幡。行くよ」

「ああ、場所はどこで食べるんだ?」

「着いてきな」

 

弁当を持ってくることを一方的に約束したのに、文句も言わず着いてきてくれてる。やっぱり八幡はやさしいな。そのやさしさを私だけに向けさせたい。なんとか材木座のラノベに有ったように胃袋を私の弁当で掴まないと。

 

「ここで食べよ」

 

そういうと私は屋上にある給水塔の壁にもたれるよう腰を下ろし弁当を広げた。八幡は私の横に腰を降ろし、弁当を用意してる私を見ていた。

私の弁当は和食がメインだ。芋の煮っころがし、ほうれん草のお浸し、鰤の煮付け、あとアスパラを豚肉で巻いたものや卵焼きなどを入れてきた。

 

「すごいおいしそうだな、本当に貰っていいのか」

「は、八幡のために作ってきたんだから良いに決まっているだろ//」

「ありがとう、沙希。じゃあ、いただきます」

「うん、いただきます」

 

「うめえ、これぶりの煮付けか?」

「うん、そうだよ」

「なかなか家だと食べる機会がないんで凄く嬉しいわ。小町は煮付けとか余り出来なくてな。これだけでご飯が何杯でもいけるぞ」

「煮付けだけじゃなくて、他も食べて」

 

そういって私は八幡に他のおかずも食べるようお願いした。色々感想を言ってほしいしね。

 

「卵焼きに何か入っているな、これうなぎか!?」

「ああ、京華がうなぎが好きでね、高いんであまり買えないけど。昨日、京華がおねだりしてきて、夕飯の分を数切れとっておいたのさ」

「へー、うなぎと卵って合うんだな。初めて食べた」

 

「この芋の煮っころがしも味が染みててて、美味しい」

「喜んで貰えてなによりだよ」

 

八幡は一つ一つのおかずに付いて、うまいとか美味しいとか言ってくれる。私は顔が喜びで崩れてしまわないように平静を装っていたが、顔は赤面しっ放しだ。でも美味しいと一言言ってくれるだけで私の心は凄く満たされていた。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様」

「本当にありがとう、凄くうまかった。でも大変だっただろ」

「そんなことないよ、もし八幡が良かったら明日も作ってくるけど//」

「いや、それがな。昨日、沙希が作ってくるって言った後、いろは、雪乃、結衣の3人がそれぞれ作るって良いだしてな」

「..ふーん、じゃあ誰の弁当が一番良かったか、教えてよ」

 

ちょっと声のトーンが下がってしまった。どうしてアイツらも作ってくるんだ。でもある意味チャンスかもしれない。私が勝てればそれだけ八幡の胃袋を掴めたと言うことだから。

 

「せっかく作ってくれるのに順番なんて付けれないだろ」

「じゃあ、一番また食べたいって思ったものでも良いから」

「..まあ、それぐらいなら」

 

その後、私たち二人は予鈴がなるまで他愛のない話をして屋上で過ごした。

 

******************

次の日。

 

私はベストプレイスにランチマットを引いて準備をしていると先輩が来るのが見えたので、嬉しくなって私は呼んでいた。

 

「先輩!!こっちです!!」

「分かってるって」

 

先輩の手には何時ものコーヒーと紅茶が握られていた。私のために買ってきてくれたのかな。そんな気遣いがうれしい。

 

「ほれ、紅茶」

「ありがとうございます。じゃあ、先輩はこっち座ってください」

 

そういうと、先輩と私の間に弁当箱を置いて蓋を開けた。

 

「サンドイッチなんだな」

「ええ、和食では川崎先輩に勝てないですからね。私は自分の得意な方向で作って見ました」

「沙希もだが、なんで勝ち負けにこだわるの?俺は作ってくれただけで嬉しいぞ」

「はあ、女心が分かっていませんね、先輩は。自分が作ったものが一番って言われたいじゃないですか」

「そういうもんかね」

「じゃあ、先輩。いただきましょう」

「ああ、じゃあいただきます」

「はい、召し上がれ」

 

私のサンドイッチはハンバーグやカツ、卵を挟んだものを用意してきた。先輩はカツが挟まれたサンドイッチを手に取ると、一口食べてくれた。

 

「うまい!!少し辛子が塗ってあるな、程よい辛さが食欲をそそるな」

「ありがとうございます!!こっちも食べてください」

 

そういうと私は別のカバンに入っていたタッパーを取り出して先輩の前にだした。

 

「サラダか、わざわざ別の袋に入れてきたんだな」

「ええ、保冷袋に入れてきたんです。サラダが生温かくなっちゃうんで。このドレッシングは私が作ったんですよ」

「へえ、じゃあちょっと貰っていいか」

「はい、食べてください」

 

私は別の容器に入っているドレッシングを取り出しサラダの上に掛けた。

 

「へぇ、和風ベースで柚子の香りか?」

「そうですよ、柚子胡椒を入れてるんです」

「すごいな、ドレッシングも自分で作ったのか」

「市販のでも良いんですけどね、今日はちょっと頑張って見ました」

「ありがとうな、いろは」

「はい//」

 

途中サンドイッチをとるとき、お互いの手が触れ顔が赤くなったりしたけど、私たちはサンドイッチを食べながら会話し、楽しい一時を過ごした。

 

******************

 

木曜日、今日は私が弁当を作ってくる番だわ。八幡に部室で待っていると良い忘れたが、彼のことだからきっと分かっているわね。今日は由比ヶ浜さんも、三浦さんたちと食べると言って気を使ってくれたし。

そう考えていると、八幡が来てくれたわ。

 

「やっぱりここだったか」

「ええ、私たちが集まるところといえば、この部室でしょ」

 

私は八幡が入ると何時も由比ヶ浜さんが座っている椅子に座るよう促して弁当箱を並べた。大きさの異なる器が3つ。小さいのは私のご飯。中ぐらいのが八幡のご飯。大きい弁当箱にはおかずで蓋を開けて、食べるよう促したわ。

 

「雪乃のは中華弁当なんだな」

「ええ、川崎さんに対抗して和風でも良かったのだけれど、一色さんがどういった弁当だったかも聞いていないので、和風が続くより良いでしょ」

「そんなことに気遣いしてくれるなんて、うれしいな」

 

そういいながら、八幡は手元にある弁当箱を開けていた。

 

「へえ、ご飯はチャーハンなんだな」

「ええ、では食べましょう」

「そうだな、いただきます」

「いただきます」

 

「うまい」

 

八幡はまずチャーハンをスプーンですくって一口食べてくれたわ。どうかしら口に合えば良いのだけれど。感想を聞くまでは気になって私は食べれないわね。

 

「やばい、俺の負けだわ」

「貴方、何と勝負をしているの?」

「いや、俺もチャーハンは自信があったんだが、完全に負けているな」

「そういって貰えると嬉しいけれど、料理は小6レベルって言っていなかったかしら」

「チャーハンだけは自信が有ったんだけどな、このチャーハンは別物で俺のチャーハンと比べること自体がおこがましいと思ったんだ」

「ふふ、ありがとう。でもおかずも食べてね」

 

思わず笑みがこぼれてしまったわ。でも気になっている異性が美味しいと言ってくれるだけで、これだけ満たされるものなのね。

八幡は次におかずの方に手を伸ばして酢豚を摘んでいたわ。

 

「へー、これ美味しいな。これって酢豚か?」

「そうよ。多分、貴方の知っている酢豚はケチャップで味付けしているのだと思うのだけれど、これは使っていないのよ」

「一緒の酢豚でも違いが出るものなんだな、凄く美味しいよ」

「これ手羽先か?」

「手羽先の骨をとってきたの、手を汚すのもどうかと思って」

「うん、うまいぞ」

 

八幡は私がビックリするぐらいの勢いで弁当を食べてくれたわ。少ないより残してもらった方がいいと思って多めに作ってきたのだけれど。

 

「大丈夫?八幡。多めに作って来たので残してもらっても良かったのだけれど」

「いや、全て美味しかったんで、いつの間にか食べてしまったんだ。雪乃の分を考えてなかった。足りたか?」

「ええ、私は十分食べたわ」

「そうか、良かった。ではご馳走さまでした」

「お粗末様でした」

 

「そ、それで今まで食べた中で、誰の弁当が一番美味しかったのかしら」

「いや、まだ結衣の分食べてないぞ」

「..そうね、みんなの分を食べてから聞いた方がいいわね」

「でも順番はつけないぞ。沙希にも言ったんだが、みんなそれぞれ美味しかったし失礼だろ」

「そう、少し残念ね」

「また一番食べたいと思ったものを教えろとは言われたけどな。でも雪乃の料理は出来立てを食べたいと思ったぞ」

「ありがとう、では何時かお招きするわね」

「よろしく頼む」

 

その後、予鈴がなるまで私たちは何時もより口数多く会話をしていて、楽しくお昼を過ごしたわ。

 

******************

 

金曜日のお昼、ヒッキーの席に向かうとどこで食べるんだ?と聞いていた。

 

「え、教室で食べようよ」

「..その恥ずかしいんだが」

「いいじゃん。これ弁当だよ」

 

私も教室で一緒に食べるのは少し恥ずかしかったけど、そんなことよりヒッキーに早く食べたかったので、教室で食べようと言い、弁当箱をヒッキーに渡した。優美子や姫菜たちが『がんばりな』って後押ししてくれたから、少しぐらいの恥ずかしさなんてどうでもいいや。でもサキサキとさがみんが私たちのことをジッと見ているのが、ちょっと気になるけど。

ヒッキーは弁当箱を開けてくれたが、驚いた表情をしていた。

 

「へー、見た目ちゃんとした弁当だな」

「ひどい!!私だってちゃんと練習しているんだよ」

「確かに結衣が作った弁当だな、このおにぎりとか大きさがチグハグしているし、こっちの卵焼きと蛸さんウインナーとかは少しこげが有るし」

「..味は大丈夫だよ。ヒッキー食べてよ」

「ああ、じゃあいただきます」

「どうぞ」

「あ、あの由比ヶ浜さん。そんなに見られると食べづらいのだけれど」

「なんで、ゆきのんの真似!?ちょっと似ているし!!..だって気になるもん」

「..じゃあ、このハンバーグをいただきます」

「うん、どうぞ」

 

「おお、ハンバーグだ!?以前のと全然違う!!」

「驚くとこ、そこ!?」

「だってちゃんと食べれるんだぞ!!よく頑張ったな、結衣」

「..ありがとう//」

 

ヒッキーが褒めてくれた。それだけで何でこんなに嬉しくなるんだろう。自分の頑張りを褒めてくれたからかな。以前はやらなくても良いと思っていたけど、こんなに嬉しい気持ちになるなら、もっと褒めてもらえるように頑張りたいな。

 

「おにぎりもちゃんとおにぎりだな」

「なんだし、それ!?」

「いや、定番だろ。塩の代わりに砂糖を使って握ってきたとか。ちょっと塩が強いと思うけど」

「ごめん、今度は塩の量にも気をつけるね」

「でも十分美味しいぞ」

「うん、ありがとう」

 

ヒッキーはおにぎりを頬張った後、卵焼きに箸をつけようとしていた。きた!!どうかな、ちゃんとできているかな。

 

「....」

「ど、どう?ヒッキー」

「何だか懐かしい気分になった、美味しい。..これ、結衣ん家の味か?」

「ううん、実は小町ちゃんにヒッキーのお母さんのレシピ聞いてもらったんだ」

「どうりで一緒の味なんだな」

「..駄目だったかな?」

「..ありがとうな、結衣」

 

ヒッキーの目がすこし潤んでいるように見えたけど、これは言わないほうがいいよね。でも私が作った卵焼きでそんなに感動して貰えたのなら、凄く嬉しいな。

その後、ちょっと会話が減ってしまったけど、ヒッキーは美味しいと言いながら私の弁当を全て食べてくれた。

 

「ごちそうさまでした」

「食べてくれてありがとう」

「凄く美味しかったぞ。その、ちょっと感動したし」

「うん、また作ってくるから食べてよね」

「無理しなくていいぞ、弁当作るの大変だろ」

「ううん、私がヒッキーに食べてほしいだけだから」

 

私たちは始めて教室でお昼を一緒に過ごしたけど、いつも通り他愛ない話が出来て嬉しかった。今度また小町ちゃんにお願いしてレシピを教えてもらおうかな。でも小町ちゃんは今、受験で忙しいだろうから、頼みにくいけど。

出来ればお母さんに直接お願いしてみようかな//

 

******************

 

金曜日の放課後、俺たちは奉仕部の部室に集まっていた。なぜか相模も部室にきたんだが。

 

「比企谷、なんで結衣ちゃんの弁当を食べてたの?」

「今日は結衣が作ってくれたんで、食べてただけだ」

「..ねえ、何で結衣ちゃんのこと名前呼び?」

「相模さん、ここにいる私たちはみんな、名前で呼んでもらっているのよ」

「川崎さんと生徒会長も?」

「ああ、私も八幡に名前で呼んでもらっているよ」

「私も先輩から呼んでもらってますよ」

「比企谷、..うちも名前で呼んでほしい」

「はぁ、..みなみ。これで良いか」

「うん、ありがとう。じゃあ、うちもこれから八幡って呼ぶね」

 

「八幡。誰のおかずが一番良かったのか教えて貰える約束だよね」

「ああ、おかずの一品でいいんだよな」

「私は誰の弁当が一番良かったのか、教えてもらいたいんですけど」

「順番なんか付けれないからな。みんなの弁当はそれぞれ美味しかったし」

「では、どのおかずが良かったか教えてもらえるかしら」

「俺が一番また食べたいと思ったのは、..結衣の卵焼きだ」

「「「え!?」」」

「あ、ありがとう!!ヒッキー//」

 

みんなびっくりしているな、俺も想定外だったけど。でもそれぞれの弁当を思い出しても結衣の卵焼きのインパクトにはとても敵わなかった。

 

「結衣の卵焼きなんだが、小町を通して家の母さんに聞いて作ってくれたんだ。食べた時、小さいころ作ってもらったのを思いだしてな。懐かしくてちょっと感動してしまった」

「..そう、今回は私たちの負けね」

「そうですね、でも今度は負けませんから」

「由比ヶ浜、私にもそのレシピ教えて」

「えー、教えたら私、負けちゃうじゃん」

「由比ヶ浜さん、私たちも小町さんに聞いても良いけれど、受験の邪魔になるでしょ。なので私は貴女から教えてほしいわ」

「..うん、そうだね。小町ちゃんに私も迷惑をかけたから、これ以上は駄目だよね。じゃあ、後でメールを転送するから、サキサキアドレス教えて」

「ああ、良いよ。ついでに八幡のアドレスも教えな」

「ちょ、うちにも八幡のアドレス教えて」

「わ、私にも教えて欲しいわね。みんなでアドレス交換しましょう」

「どうせならLINEも登録しようよ」

 

俺の携帯を渡すとみんなでそれぞれ登録しだした。なんだか、和気藹々としだしたな。まあ、雪乃や沙希なんかは余り友達もいないだろうから、こういう繋がりもいいだろうな。弁当の話とかも出来るだろうし。

 

「八幡。うちも来週、弁当作ってくるから食べてよね」

「駄目だよ、相模。来週から毎日、私が作ってくるから」

「それはちょっと横暴ではないかしら、川崎さん。私もまた作って由比ヶ浜さんに勝たないといけないのだから」

「ゆきのん、まだ私が勝てるわけないじゃん。でもサキサキ、私も作りたいから駄目だよ」

「私も作りますよ、川崎先輩」

「いや収拾付かないだろ、これ。俺は購買で買うから。弁当代も馬鹿にならないだろうし」

「先輩はだまっててください」

「ちょうど5人いるのだから、曜日毎に分ければ、良いのではないかしら。そうすれば弁当代と言っても一人の負担は減るわけだし」

「みなさんが良ければそれが良いですね」

「うん、それで良いよ」

「しょうがないね、それで良いよ」

「うちもいいよ」

「では八幡、毎日誰かのお弁当を食べるようにね」

「俺には拒否権ないの?」

「「「「「ない(よ)(わよ)(ですよ)」」」」」

「はぁ、分かった。じゃあ、またよろしく頼む」

 

そういうと、弁当談義が始まった。でもみんなが母さんのレシピで卵焼き作ったら感動も薄れると思うんだが。まあ、美味しく食べれるんならそれで良いんだけど。

 



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22話

「今回、相模殿に依頼されて書いてみたのだが、2部構成にしてみたのだ」

「中二、2部構成って、どういうこと?」

「高校編と大学編って形に分けさせてもらった」

「材木座も色々試しているんだな、でも大学生活はあまり分からないんじゃないか」

「キャンパスライフではなく、同棲生活を書いているのだ」

「う、うちと八幡の同棲生活//」

「まあ、その辺は読んで貰えれば、分かると思うぞ」

「ただ、今回は先に生徒会長殿に読んで欲しいんだが」

「私や由比ヶ浜さんでは駄目なのかしら?」

「二人共、大学編に出ているので」

 

一色さんが、ラノベを読み終わると頬を膨らませて怒っているようだったわ、何か不味いことがあったのかしら。

 

「内容は問題ないんですけど、ちょっと後で言います」

 

何が書いてあったのかしら、でも後で聞けば良いわね。落ち込む内容とかではなさそうだし。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

高校編。

 

うちは今、比企谷に壁ドンされてる!!ヤバい、どうしてこうなってるの!?

 

一週間ほど前、うちと比企谷は進路指導の先生に呼び出されていた。どうも比企谷と一緒の大学を希望していたらしい。後、数名一緒に呼び出されていたしね。

 

「お前たちが志望している大学なんだが、オープンキャンパスの日程が急遽変更になったと通知がきてな。今度の土曜日に変わったんだが行けるか?」

 

うちは特に予定もなかったので、行けると伝えた。比企谷も行けるらしい。比企谷はどうせ休みの日とか家でゴロゴロしているだけだろうけど。他の志望者は他のオープンキャンパスと重なるとか予定があるとかで、うちと比企谷だけが出席ということになった。

 

え?うち、誰かに連れてって貰えばいいや。って思っていたんで、こっちからの行き方とか全然知らないんだけど。比企谷に連れていってもらうしかないじゃん。でも比企谷とは色々あったから頼みにくいな。以前奉仕部に行って謝ったけど、まだ本当は許してくれてないと思うし。そう考えていると比企谷は問題ないのか、進路指導室を出ていった。

 

うう、どうしよう。うち行き方を調べても行ける自信がない。比企谷にお願いしてみようかな、でも嫌がられるだろうけど。でも一回聞いてみよ、そう考えて比企谷の後を追いかけて声を掛けた。

 

「あ、あの比企谷。オープンキャンパス一緒に連れてって貰えない?」

「ええ、やだよ。面倒くさい」

「..うん、ごめん。うちと一緒だとやだよね。喋り掛けてごめん」

 

そういって、うちは比企谷のそばを離れようとすると、比企谷は頭を掻きながら、うちに声を掛けてきた。

 

「相模、朝早くて良いなら一緒に行ってもいいぞ」

「いいの?うちなんかと一緒で」

「朝7時には出るつもりだったから。後、別にお前と一緒がイヤだとか思ってないからな」

「うん、ありがとう。じゃあ細かいことは後で教えて」

「ああ、分かった」

 

うちは今、比企谷の事が凄く気になっている。今回も最初は嫌がってても、うちのことをちゃんと考えてくれてる。ただ一方的に頼っただけだけど、それでも比企谷の優しさが伝わってきた。

 

うちと比企谷は土曜日の7時に駅に集合した。今日の朝は大変だった。比企谷に可愛い恰好を見てもらいたいため、昨日用意していたミニスカートを履いたんだけど、なんだかしっくりこなくて洋服ダンスを引っ掻き回していた。なんとか集合時間に間に合ったけど、比企谷を待たせてしまったようだし。

 

「..相模。その、凄く可愛い格好だな//」

「え!?..あ、ありがとう//」

「でも電車の中、気をつけろよ。土曜日と言っても満員電車だからな」

「あ、そうか。何にも考えてなかった」

 

比企谷に見てもらいたい一心でそんなこと考えてもいなかった。でも土曜日だから大丈夫でしょ。

電車に乗ってすぐ、うちの考えが誤っていたことが分かった。どうしてこんなに混んでいるの?平日はこれより凄いんだよね。お父さんたちも大変だな。

 

「相模、こっちに来い」

 

次の駅で、ちょうど開いた扉横のスペースに比企谷はうちを誘導してくれた。ここなら痴漢とか大丈夫だよね、でもうちと比企谷は向かい合う形でちょっと恥ずかしいけど。

また次の駅に着いたようだが、反対側の扉から結構な人が乗ってきたようで、うちと比企谷の距離がほとんどなくなっていた。

比企谷はうちの頭に右手を回した状態で肘を壁につけている。うちは比企谷の胸に頭をくっつけて、右手は比企谷の胸に添えていた。

うちの左手はカバンをもっていて、下に垂らしているが、比企谷の股間に思いっきり当たっちゃっている。しょ、しょうがないよね、でもこんな状態でも何だか嬉しい。比企谷の匂いを嗅いでいると凄く落ちつける。うちは目を閉じて体を比企谷に預けていた。

 

「さ、相模。恥ずかしいんで、右手を動かすの止めてくれ」

 

え!?うちは比企谷の匂いを堪能していて気づかなかったが、いつの間にか右手で比企谷の胸を擦っていたようだった。は、恥ずかしい。でも比企谷もこれで、うちのこと意識してくれるかな。うちは顔を上げ比企谷と見つめあうようにした。顔が近い!!後ちょっとでキスできそう!!

 

「..駄目?」

「こ、こんなところで止めてくれ」

 

比企谷はうちの耳に顔を近づけそう言ってきた。電車の中じゃなかったら良いのかな。もうちょっと触っていたいな。でも怒られたくないので、これ以上は止めておこ。一言「うん」って言って、右手は比企谷の腰に手を回して抱きつき、うちは比企谷の匂いを堪能することだけに集中し目を閉じた。

 

東京駅に着くと、ようやく満員電車から解放された。比企谷の顔は凄く赤くなっている。うちも顔は赤くなっているけど、比企谷を堪能出来たから満員電車も良いと思った、次の電車もこれぐらい混んでくれればいいけど。

 

「じゃ、じゃあ、次の電車のホームにいくぞ」

「うん、また混んでたら守ってね」

「次はあんなに混まないだろ」

「..そうなんだ」

 

比企谷の言ったとおり、あまり電車は混んでいなかった。残念だな。

 

大学に着くとサークルの紹介とかで人が溢れていた。うちもサークルには興味あるけど今日は色々見て回らないとね。

うちは比企谷の後ろを着いていこうとしていたが、いきなり手首を捕まれ呼び止められた。

 

「君、可愛いね。どうサークルのこと紹介するんで、こっちに来ない?」

「い、いえ、今日は色々見て回りたいんで結構です!!」

「俺たちが、色々教えてあげるからさ」

「て、手を離してください!!」

 

うちが何を言っても手を離してもらえず、引っ張られそうになったところで比企谷が来てくれた。

 

「すみません、こいつ俺の彼女なんで辞めてください」

「あ、そうなんだ。悪いな」

 

そういってようやく手を離してくれた。いやだ、こんなの。好きでもない奴に体を触られたくない。

 

「あ、ありがとう。比企谷」

「..わるいな相模、彼女なんて言って。お前、可愛いんだから気をつけろよ」

 

今回は比企谷が守ってくれたけど、うちは怖くて比企谷の空いている左手を握ってお願いしていた。

 

「..凄く怖かった。比企谷、今日一日で良いから彼氏になって。うちの手を離さないで」

「..ああ、分かった」

 

そこから、うち達は手を繋ぎながら大学の施設を見学し、楽しい時間を過ごした。

うちはこの大学に入れるか微妙な成績だけど、比企谷と一緒にキャンパスライフを過ごしたい。もっと勉強を頑張らないと。そんなことを考えていた。

今握って貰っている手は今日一日でおしまいだけど、大学に入った後も手を繋いでもらえるといいな、その時は恋人繋ぎで。

 

 

大学編。

 

うちと八幡は一緒にオープンキャンパスに行った大学に無事、合格していた。今は普通に会話するようになり、お互いのことを名前で読んでいる。でも八幡はまだ誰とも付き合っていない。今日は奉仕部にお邪魔して八幡と一緒にアパートニュースを広げていた。

 

「八幡はどういう間取りの部屋を借りるの?」

「まあ、金銭的に1Kとかになるだろうな。でも、ある程度綺麗なところだと6万とかするんだな」

「うん、セキュリティとか考えると、1Kでも8万とかだよ」

「ああ、でも荷物がほとんど置けないんだよな、せめて二部屋あるといいけど」

 

雪ノ下さんと結衣ちゃんがいる中、ちょっと言いにくいけど、うちはずっと考えていたことを八幡に提案した。

 

「あ、あのさ、八幡。うちとルームシェアしない?」

「はぁ!?一緒に住むってことか」

「「....」」

「うん、だって3LDKだと安いところは10万ぐらいでしょ。広いし八幡がいればセキュリティ考えなくいいし、荷物を置くところに一部屋使えるでしょ。ご飯も二人で交代で作れば、自分の時間が作れるし家電製品も二人で共用すればかなり費用を抑えれるよ」

「た、確かに魅力的な提案だが、南はいいのか。その、俺と二人で住むってことに」

「うん、ルームシェアなら普通でしょ」

「は、八幡。相模さん。もし良かったら私もルームシェアに入れて貰えるかしら、三人になればもっと良いところに住めると思うわよ。私の持っている家電製品を使えば新しく買わなくて良いでしょ」

「雪乃は金銭的に困ってないだろ、わざわざルームシェアしなくても良いじゃないか」

「私も今までの一人暮らしで、無言でインターフォンを押されたりして怖いこともあったのよ、八幡が居れば問題ないでしょ」

 

な、なんてこと言い出すのよ、雪ノ下さん。それだとうちと八幡のラブラブチュッチュなイチャイチャ同棲生活が出来ないじゃん!!

 

「ま、まって雪ノ下さん。大学が違うんだから通えないんじゃないの?」

「相模さん、大丈夫よ。あなたたちが住む予定のところから20分ぐらいで電車で行けるようだし」

「ヒッキー、さがみん。私も一緒に住んでいいかな、私も電車ですぐの所だし」

「ゆ、結衣ちゃんまで!!だって大学には歩いて行けた方が良くない?」

「いくらセキュリティとかあっても怖いからさ、4人だとお互い頼れるしね」

「相模さん、あなたと八幡が行く大学は私と由比ヶ浜さんの大学のちょうど中間地点になるわ、電車一本で行ける所だし。4人で住めば駅前で結構良い部屋のところを借りれるわよ」

「ま、まて、いくらなんでも女性3人と一緒に生活なんて出来ないぞ、俺の理性が持ちそうにない」

「逆よ、八幡。貴方が劣情を抱いたとして相模さん一人だと、どうしようもないでしょ。でも後二人いれば、貴方を止めることが出来ると思うのよ」

 

いや、それが狙いだったんだけどさ。雪ノ下さんは私のほうを見て微笑んでいるけど目が怖い。結衣ちゃんも目が笑っていないし。多分二人にはバレているんだよね、だからこんな提案をしてきたんだ。

 

「いや、でもなあ。4人だと1部屋荷物部屋として5LDKだろ、なかなか無いぞ」

「私が加われば家に頼んで見つけてもらうわ。シェアハウスが出来るかも知れないわね。1軒家であれば、もっと利便性が良くなるわよ」

「確かに1軒家は魅力的だな、駐車場とかあればもっと良いし。今はとても買えないが、車とかバイクに乗ってみたいしな。車があればみんなで出掛けれるし。でもその俺と一緒でも良いのか、風呂とかトイレとか共有になるんだぞ、風呂上りもパンツ1枚でうろうろするだろうし」

「そんなの親と住んでれば普通のことじゃん。気にしないよ」

「じゃあ、早速頼んでみるわ。相模さん良い提案だったわよ」ニコッ

 

ああ、雪ノ下さんにしてやられた。うちの狙いを阻止し、自分の欲求を叶えてしまっている。八幡にはより魅力的な提案をしてるし、やっぱり手強いな。

 

うち達のシェアハウスはあれよあれよと言う間に話が進んだ。雪ノ下さんが見つけてきた家は2階に4部屋、1階に2部屋+リビングキッチンとかなり広く使える間取りとなっていた。もちろん駐車場もある。

費用についても一人の負担は4万円とかなり安くすんでいた。雪ノ下さんの部屋にはウォークインクローゼットがついているので少し多く出しているってことだけど、うちと結衣ちゃんは1階の和室を洋服部屋にしていた。

 

「なあ、そのTシャツ、俺が捨てようとしてたやつじゃないか」

「ええ、大きいのでパジャマにちょうど良いのよ」

「まあ捨てるつもりだったから良いけど、せめてパンティの上に何か履いてくれないか。チラチラ見えていて、目のやり場に困るんだが//」

「あら、小町さんもこういう格好していたのでしょ、実家と一緒と思えば良いじゃない」

「そうだよ、ヒッキー。私のこのTシャツも元はヒッキーのだし」

「頼む結衣。ブラを付けて来てくれ。はあ、南。何とか言って貰えないか、この二人に」

「...ごめん、うちも寝巻代わりにTシャツ借りてた」

 

そう言って、うちがさっき着替えたTシャツを見せると八幡が驚いていた。

 

「それって俺が昨日一日きていて、洗濯籠に入れたやつじゃないか!!風呂上りに着るものじゃないだろ」

「なんだか八幡が着ていたのを借りると、落ち着いて寝れるんだよね」

 

まあ寝る前にベッドで一汗かいたんだけど、抱かれているみたいで凄くいいんだよね。

 

「いいじゃない八幡。今まで一緒に住んでいてラッキースケベがたくさん起こって、お互いの裸も見られているのだし」

「いや、どう考えてもおかしいだろ。俺が風呂に入っているときに入ってきたり、風呂上り巻いていたバスタオルが落ちたり、何時の間にかみんなで俺の部屋で寝ていたり、起こしにくると布団に潜り込んできたり、起しに行くと寝ぼけて抱きつかれたり、挙げればキリがないぞ」

「でも、ヒッキーも喜んでたじゃん」

「..そ、そんなことないでしゅよ」

「雪乃も結衣も寝ぼけると大変だしね、うちも何度抱きつかれたか」

「あら、南も人のこと言えないわよ。私に何度もキスしてきたでしょ」

「そうだったな、俺も南にキスされたし。って、全員にされているんだけど」

 

うち達はお互いのことを名前で呼び合うようになっていた。雪乃も結衣も八幡も大切なルームメイト。八幡はまだ誰とも付き合っていないけど、うちはこの4人での共同生活を大切にしたかった。このまま何時までも一緒に入れたら良いのにな。

 

「うち達が共同生活しだしてもう1年経つんだね、凄く充実していたな」

「そうね、楽しく過ごせているわ。この時間は1人暮らしだと味わえなかったわね」

「うん、私も凄く楽しいよ。このままずっと4人で過ごせたら良いのにね」

「ああ、なんか色々あったけど、これからもよろしくな」

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「うぅ、材木座君。これ高校編までは良いけど、大学編はうちとのラブコメじゃないじゃん!!」

「まあ皆とラブコメイベントがあって、楽しく過ごしているということで」

「なんだか納得できない!!どうせならルームシェアして2人でイチャラブSEXしているの書いて欲しかった」

「さ、相模さん。あ、貴女は何を言っているのかしら」

「さがみん、それは駄目だよ。せめてイチャラブまでにしないと」

 

「高校編のほうで電車の中で相模さんの降ろしている腕があそこにって書いてあったのだけれど、書く必要はあったのかしら」

「そういえばそうだね。そこについては、その後何も出てこなかったよね」

「俺が気になったのは南が「うち」って自分のことを呼んでいるところだな、文章にすると読みにくくなるな」

「うん、そうだね。ひらがなで書くと判りにくくなってた。カタカナにした方が良いんじゃないかな」

「相模殿の呼称をカタカナにすると固くならないか」

「ひらがなで「うち」と書くのであれば、もっと文章の勉強をして判りやすく書くしかないわね」

 

「大学編のほうは、ラブコメになるのかな」

「一応、ハーレムものを意識してみたのだが」

「うん、でもこういう大学生活も憧れるよね、大学はバラバラでも今の奉仕部が続いているみたいで」

「そこですよ!!私が怒っているのは。1年後って書くなら私も一緒のところに引越ししてきたとか書いてくれれば良いじゃないですか!!」

「生徒会長殿、それは我の考えが足りなかった。申し訳ない」

「いいえ、良いんですけど、何だか仲間に入れて貰えなかったような感じがして、....ちょっと寂しかったんです」

「一色さん、貴女も奉仕部の仲間よ。だからこのラノベについて気にする必要はないわ」

「そうだよ、いろはちゃん。何時も一緒に居る仲間じゃん!!」

「いろは、俺たちみんな、お前のことを大事に思っているぞ」

「あ、ありがとうございます//」

「いいな、うちもその中に入りたい」

「もちろん貴女もすでに入っているわよ、相模さん」

「あ、ありがとう、雪ノ下さん!!」

 

一色さんが最初怒っていたのはそういうことだったのね。でも一色さんや相模さんはもう奉仕部の仲間だわ。私たちは恥ずかしくて今までは言葉には出せなかったけど、やはり言葉で伝えないと不安になったり、させたりするものだと改めて思い知らされるわね。

 

でも大学に進学した際、皆がバラバラになるのだろうと考えて、寂しくなると思っていたのだけれど、こういう方法もあるのね。出来ればこのラノベが現実になるようにしたいわ。



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23話

「前回は生徒会長殿に申し訳なかったので、今回は続編として書いてきたのだ。我も続編は初めてだったので練習がてらだが」

 

それで材木座君は相模さんを連れて来たのね。材木座君が相模さんに話しかけて連れてくるなんて思わなかったのだけれど、彼もラノベを書いて変わっていってるのかしら。

 

「ありがとうございます、木材先輩!!」

「でも先に読む人がいないね、ゆきのんどうする?」

「八幡で良いのではないか」

「ええ、それが良いのかもしれないわね。八幡、お願いできる?」

「ああ」(俺がダメって言えば、読まないんだよな)

「もしダメなら誰が読んではいけないのか聞いて、他の人が確認するわ。もし内容に問題がなかったら...」

「俺の考えを読むなよ、怖いよ。後、最後まで言えよ」

 

「ちょっと恥ずかしいけど、ま、まあ問題ないんじゃないか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

いやだな、大学に入って一週間、仲のいい子が出来たんだけど、その子の先輩が私と飲みたいって誘われて断りきれずに来てしまった。家が遠いんで、すぐに帰りたいのに。1時間ぐらいしたら帰ってもいいよね?まあ、お金は出してくれるって事なんでご飯食べて帰っちゃお。

そう思っていると、私達は居酒屋について席に案内された。まあ、笑顔だけは忘れないようにしてよう。

 

「「お待たせしました!!」」

「いろは!?」

「先輩!?」

「比企谷!!お前、一色ちゃんと知り合いなの!?」

「まあ、ただ高校の後輩ってだけだ」

「何言っているんですか、先輩。まだ責任とって貰ってないですよ」

「い、いろは!?あんた、この比企谷先輩とそういう関係なの!?」

「ひ、比企谷!!どういうことだ!!お前、女の子は苦手って言っていただろ!!」

「ま、まてお前ら、盛大に勘違いしているぞ。いろはも誤解を招くようなこと言うな」

 

私も知らなかったんだけど、先輩とは一緒の大学だったんだ。大学名を聞いてなかったんで、小町ちゃんに聞いてもなぜか怒って教えてくれなかったし。

先輩も今日は無理やり誘われたけど、借りがあって断れなかったって言ってた。でも良かった。大学に入ってすぐ先輩に会えて。

私の友達と先輩の友達?は放ったらかしで、私たち二人は思い出話に盛り上がった。まあそっちは自分たちの思い出話で盛り上がっているから良いよね。高校の思い出を先輩とこうやって、お話し出来て楽しい。でも先輩に会えて、また学生生活を送れると思うと嬉しくなってきて、いつの間にか私は飲んだことのないチューハイとかのお酒を飲んでいた。

 

「せんぱいぃ、びーるっておいしくないですぅ」

「いろは、お前かなり酔っているのか?」

「そんなことないですよぉ、せんぱいと話してて楽しくて飲んじゃいましたぁ」

「そういえば、お前ってどこに住んでいるんだ?時間大丈夫か?」

「実家ですよぉ、いま何時ですかぁ」

「実家って!?大学まで1時間半以上かかるだろ!!もう10時過ぎだぞ!!」

「あはははは、電車もうないですぅ」

「はあ、じゃあ今日どうするんだよ?」

「先輩ぃ、泊めてくださいぃ」

「まあしょうがないな。良いぞ」

「....え!?その、良いんですかぁ?」

 

酔っていたので、呂律が回らなかったんだけど、先輩が泊めてくれると思ってなかったので、酔いが一瞬冷めてしまった。でも先輩がこんなに簡単にOKを出すなんて。

もしかして大学に入って遊んでいるのかな?なんだかそんな先輩は考えられないし考えたくも無い。でも今日泊まるところないし。先輩だから私が嫌なことはしないよね?

 

お店を出て先輩の家に向かって歩いているけど、私は口数が少なくなっている。どうしよう、先輩に誘われたら断る自信がない。でも先輩が遊んでいるようなことは名前も忘れちゃったけど、一緒に居酒屋に居た先輩の話ではなさそうだし。行きたくないコンパに女性から誘われて、あの人に変わって貰ったんで今日はやむなく来たって言っていたしね、そのことに関しては感謝しないと、名無しの先輩には。

私だから泊めてくれるのかな、告白されたら最後までしちゃうのかな//

 

「いろは、ここが俺の住んでいる家だから」

 

そう言うと先輩は少し大きいけど、普通の一軒家を指差していた。家の中では電気が付いているので、誰かと一緒に住んでいるのかな?親戚の家とかにお世話になっているとか。そう思っていると先輩は鍵を開け、玄関を開けてくれた。

 

「ほら、入れって」

「は、はい。お邪魔しまーす」

「ただいま」

 

玄関に上がり、靴を見ると女性ものが多いけど、親戚の人のだろう。ちゃんと挨拶しないと。そしてリビングに入ると私が想像もしていない光景が広がっていた。

雪ノ下先輩がパジャマ姿でクッションを抱えてソファーに座っており、結衣先輩もパジャマを着てスマホをいじっている。相模先輩はお風呂上がりなのか、髪の毛をバスタオルで拭いていた。

私はリビングの扉の所で固まってしまった。

 

「「「おかえり(なさい)」」」

「あ、いろはちゃんだ!!やっはろー!!」

「あら、一色さん。お久しぶりね」

「一色ちゃん、こんばんわ」

 

「な、な、な、何で皆さんここにいるんですか!?」

「あら一色さん、私たちは4人でシェアハウスして、ここに住んでいるのよ」

「ほ、本当ですか!!先輩!!」

「あれ?言ってなかったか?」

「聞いてないですよ!!そんなこと!!」

 

分かった。それで小町ちゃんは先輩のこと聞くとあんなに不機嫌になったんだ。誑しのゴミいちゃん!!って言ってたし。

私はすっかり酔いが覚めていて、4人に詰め寄りたかった。でも色々言いたかったけど、過去の事を今さら言ってもしょうがない。どうしても1学年違うんだ、私が入りたくても無理に決まっていたから。それなら...

 

「先輩、私もマンション探しているんですけど良いところがなくて、今の所は実家から通っているんですよ。私もここで一緒にシェアハウスさせてほしいです」

「ああ、ただ部屋が余ってないんだよな。和室で良いなら結衣と南に相談してみろ。後、みんなの了解を得られれば良いんじゃないか」

「どういうことですか?」

「いろはちゃん、私とみなみんが和室を衣装部屋にしてるんだよ」

「みんなの荷物部屋を片付けて、うちと結衣の洋服をそっちに移動すれば和室空くんじゃない?」

「そうだね、じゃあ、いろはちゃんと一緒でも良いよ」

「うちも良いよ」

「一色さん、私も一緒に住みたいわね」

「じゃあ、後は先輩ですね。駄目ですか」

「そこの貼紙を守れれば良いぞ」

 

先輩はそういうと、壁に貼ってある紙を指差した。

 

『シェアハウスでの決まりごと!!』

・入浴中となっている時は、お風呂に入らない!!

・共用場所で恥ずかしい恰好をしない!!

・人の部屋に勝手に入らない!!

・洗濯籠から人の服を持ち出さない!!

・朝は自分で起きる!!

 

「なんでこんな当たり前の事、書いているんですか?」

「それはそこの3人に言ってくれ」

「『入浴中』って、お風呂に入っているとき、誰かが入ってくるんですか?」

「ああ、俺が入っていると3人一緒に入ってきたことがあってな」

「はぁ!?」

 

私が3人の方を見ると、おもいっきり目を逸らされた。この人たち何て羨ま..恥ずかしいことしているんだろう。でもそれって先輩に裸を見られてる、見てるって事!?

 

「もしかして4人でお風呂に入ったんですか!?」

「ああ、3人とも俺が入っているにも関わらず、体洗い出したり浴槽に入ってきたからな。さすがに俺はすぐお風呂から上がったんだが」

「な、な、何をしているんですか!!あなたたちは!!」

 

3人とも目を逸らして合わせようともしない。何て羨ましい事を...

 

「じゃあ、次の恥ずかしい恰好をしないって言うのは」

「みんなお風呂上がりにバスタオルで体を隠してはいたんだが、たまにバスタオルがとれてたんだよ。俺の目の前で」

「はぁ!?」

「まだあるぞ。雪乃は俺の捨てようとしていたTシャツを寝間着にしていてな、それは良いんだが下はパンティ1枚でチラチラ見えていたんだよ」

「Tシャツもよくないですよ!!しかもパンティ1枚って、ショートパンツぐらい履けば良いじゃないですか!!」

 

雪ノ下先輩はクッションに顔をクッションに埋めていたが、耳が真っ赤になっていた。いやいや、今赤くなるなら先輩の前でそんな格好しているとき、気付きなさいよ。

 

「結衣の場合も俺のTシャツを来ているんだが、寝る前はノーブラで寝起きも、もちろんそのままの恰好でリビングにいるんで、その大きいから目立つんだよ」

 

結衣先輩の方を睨むと顔を逸らして、口笛を吹こうとしているんだけど、ふぇーふぇーって音しか聞こえてこない。何しているんだ、この人も。

 

「南の場合は、俺が1日着たTシャツを洗濯籠に入れておいたんだが、持ち出して寝間着に使ってたしな」

 

私は思わず額に手を当て、ため息を付いてしまった。相模先輩はバスタオルを頭に掛けていて、表情は分からないけど。

 

「それが洗濯籠から持ち出さないって項目に繋がるんですね」

「それで今のパジャマは俺がこれなら問題ないってことで買って来たんだ」

「それで色違いのお揃いなんですね」

 

「人の部屋に勝手に入らないってのは、想像付くんですけど、教えてください」

「俺が寝ているといつの間にか布団の中に誰かが横に寝ているんだよ」

「やっぱりそうなんですね....」

「そ、それについては、私たちも言いたいことがあるわよ、八幡が恐いDVDとか借りてきて私たちに見せてきたんじゃない!!」

「でも、俺の布団に入る必要ないだろ、俺の方が怖いわ。知らないうちに隣に誰か寝ているんだから」

「でもヒッキーからも抱きついて来たし!!」

「いや、それは寝ている時だから覚えがない...」

「そうだよ、八幡。うちに抱きついてた時、大きくしてたじゃん!!」

「ば、ばか。それは生理現象だからしょうがないだろ」

「私もあったな」

「....」

 

「朝は自分で起きるって当たり前じゃないですか。なんでこんなこと書いてるんですかって、良いたいんですけど、もう想像は付きました。抱きついてくるとかですよね」

「ああ、よく分かったな。ただそれに付いては俺も悪かったんだ。起こしてもらってたんで、今は自分で起きるようにしているぞ」

 

はぁ、私は大きくため息をついていた...

 

「でもそんなことしていた皆さんが、よくこのルールを守ってますね。無視しそうですけど」

「..その、なんだ。俺の理性が持ちそうになかったんで、この家を出ていくって言ったんだ」

「先輩、まだ何か隠してます?」

「八幡。一色ちゃんも一緒に住むんなら、言っておいた方が良いんじゃない?」

「...そうだな、いろは。聞いてシェアハウスを止めても良いからな。..南、頼む」

「うちが言うの!?まあ、しょうがないか。実はね、夜中に雪乃が一人パソコンで動画を見てたらしいんだけど、恐い動画を開いちゃったんだ。それで八幡の布団に入りこんで抱きしめてたんだけど、震えてる脚を股間の上に置いてたら、大きくなってきて暴発しちゃったんだって//」

「ぼ、暴発って、そのイッちゃったって事で良いんですよね//..で、でも男の人だから、それはしょうがないですよね//」

 

先輩を見ると顔を真っ赤にしてなんか悶えている。雪ノ下先輩もクッションに顔を埋めているし。

「うん、それで八幡が出て行くって言い出して、さすがにうちらも八幡に対して配慮が足りなかったなって反省して、謝ってルールを作って貰ったんだ」

「もっと早く気付くべきですけどね、配慮が足りない。ではなく配慮が無いですよ」

「..八幡に甘えたかったのよ」

「..ヒッキーも喜んでたし」

 

「じゃあ、先輩は誰とも付き合っていないんですね」

「ああ、年齢=彼女いない歴だよ、言わせんな恥ずかしい」

「なら良いですね、家の中でイチャイチャされたら堪りませんし、ファーストキスもまだなんですね」

「「「「....//」」」」

「も、もしかして経験済みなんですか!?」

「...南を起こしに行った時、奪われた。その後、結衣、雪乃にも起こしに行った時にキスされた..」

 

私はいつの間にか、4人が腰を掛けているソファーの真正面に移動して、腕を組んで仁王立ちしていた。

 

「四人とも正座してください!!」

「うちは寝ぼけてたから、しょうがないじゃん!!」

「そうだよ、いろはちゃん。寝ぼけてしちゃうこともあるよ//」

「そ、そうね。私たちは寝ぼけていたのだから//」

 

結衣先輩、雪ノ下先輩は寝ぼけた振りをして、迫ったに決まっている。でも、それを先輩も許しているのが気に食わない!!

 

「うるさい!!せ・い・ざ!!」

 

四人は私の言うとおり、ソファーから降りて正座したのだけど、私の腹の虫はそれだけではとても収まらなかった。私は正座をしている先輩に近づいて行った。

 

「先輩、顔を上げてください」

 

そういうと、先輩は顔を上げてくれた。すぐ先輩の顔を両手ではさみ、私のファーストキスはライバルの3人が見ている前で見せ付けるようにしてやった。

 

「な、なにするんだ、いろは//」

「私は今、酔っているんですぅ。だからしょうが無いんですぅ」

「いろはちゃん、駄目だし!!」

「一色ちゃん、ルールを破ったら駄目だよ!!」

「そうよ、一色さん。出て行ってもらうことになるわよ!!」

「私はまだ、ここに住むとは言っていません!!キスをしたらダメってルールにも有りませんし!!では、今この時点からシェアハウスの一員として、よろしくお願いします!!」

「「「ずるい(よ)(わよ)!!」」」

 

その後、先輩は疲れたからお風呂に入る。と言って私たちの前から姿を消すと、私は3人から責められた。でも、私から言わせたら3人のほうがズルイ!!先輩を1年間も独占していたなんて!!

 

でも、私はあの奉仕部で一緒に過ごした時間がまた帰ってきたような感覚を覚え、心地よくなっていた。これからまた、こうやって馬鹿騒ぎ出来るんだよね。

私たちは何時しか笑い合ってお互いのことを話していた。

 

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「今回も、うちのイチャラブじゃないじゃん!!」

「あの流れなら当然こうなるでしょうね、でも前回は相模さん視点だったでしょ。続編と言うのであれば、今回もそうすべきだったのでは?」

「確かにそう考えていたんですが、難しくて生徒会長殿の視点にさせてもらったんです」

「そこは、今後の課題にしてはどうかしら」

「でも今回は焼きまわしみたいだよね、以前書いていた内容をいろはちゃんに説明しているだけだし」

「うちもちょっとそう思った。でも以前のラノベそのままで、いろはちゃんが出てきたら、うちら変態扱いされただけだよね」

「今回のラノベでも十分変態扱いしてると思いますけど」

「うちはお酒のところが気になったな。まあ高校でたら飲むんだろうけど、あんまり書かないほうが良いんじゃないの?」

「そうね、それかちゃんと『飲んではいけないけど、飲んでしまった』とか一言入れて罪悪感を持っているようにしてはどうかしら」

 

「なあ、材木座。雪乃が布団に入ってきてってところ、要ったのか?」

「そこは八幡が、家を出て行くって決心したところだから、要るであろう」

「なんか理由が情けないよな」

「いいじゃない、貴方は悪くないのだから。私が恥ずかしいわよ」

 

「でも、最後はいろはちゃんがキスして騒ぎになって終るんだね」

「どうしても女性4人が出るので、コメディ部分が強くなってしまうのだ」

「うん、この間も言ったけど、私たちがこうやって続いていくのは良いよね」

「そうね、このラノベのように続けたいわね」

「そうだね」

「そうですね、私も1年遅れでも一緒に居たいです」

 

材木座君はこのシリーズを続けていくつもりかしら、確かに面白いのだけれど、私は八幡との恋愛ものを書いて欲しいわね。

 




この後、材木座が相模にラノベを渡す話も書いて
「やはり材木座が書くラノベは間違っている。R-18」版に載せました。



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24話

「八幡、今回は変身ものを書いてみたのだ」

「仮面ライダーでも書いたのか?何時ものようなラブコメではないのか。俺としてはそっちの方が助かるけど」

「いや、もちろんラブコメだぞ。内容については、いつも通り読んでもらってから、批評をお願いしたいし、そうでないと我がまた....モウ、セッキョウハ ヤダ」

 

材木座君は何か言いたそうだったのだけれど、声が小さくなっていき、最後の方は聞き取れなかったわね。

彼はラノベをカバンから取り出すと私と一色さんにラノベを渡してきたわ。と、言うことは今回は由比ヶ浜さんがヒロインということね。

 

「一色さん、内容については問題ないと思うのだけれど、どうかしら」

「はい、問題ないですよ」

 

「では皆で読みましょう。材木座君、配ってもらえるかしら」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

日曜日の昼前、俺は小町との賭けに負け、ある恰好をして買い物に来ていた。

 

何で俺が女装しないといけないんだよ、でも母ちゃんの服よく着れたな。まあ黒のストッキングに深緑のロングスカート、上は首元が横に大きく開いている白いTシャツとグレーの丈が長いカーディガンを羽織っているだけだが。さすがにパンティは拒否したが、胸にはブラを付けさせられパッドをしこまれた。

でもこのTシャツ、思いっきり鎖骨出るじゃないか、ちょっとずれるとブラの紐も出ちゃうし。

でも目にカラコンを付け、カツラで茶髪のボブカット、そして小町がノリノリで化粧をしてきたので、俺も楽しくなってきたのは内緒だ。自分で鏡を見たときもちょっとビックリしてしまったし、これならモテるんじゃね?でも男にモテたら腐女子が沸いちゃうだろ!!

ただ外に出かけるとは思っていなかったので今、どうすれば良いのか凄く迷っている。

それというのも俺の目線の先には、結衣がチャラチャラした二人組にナンパされているのだ。なんであの二人組は結衣にちょっかい掛けているんだ、ムカつくな。助けにいきたいが、さすがにこの格好だと...

そう思っていたら、小町が突っ込んで行きやがった。

 

「お。可愛い子が来たな、君たち知り合いなんだ。じゃあ、ちょうどいいな。俺たちも二人だからさ、これからカラオケいこうぜ!!」

「おに..おねえちゃん!!助けて!!」

 

なにやってんだ、あいつ。何も考えなしで突っ込んで行きやがって。結衣は涙目になっているし、小町も最初の勢いはどこに行ったのか、今では俺の方をジッと見ているだけだ。

はあ、やるか。アイツら二人共小さいな。身長は結衣よりちょっと高いぐらいか。俺は姿勢を良くし向かって行った。

 

「何をしているの、小町?」

「おねえちゃん、この子たちが絡んでくるの」

「あなたたち、こんなところでナンパ?もうちょっと場所をわきまえてもらえない?そんなに格好良くないし服もダサいのに、こんな可愛い子達を誘うなんて背伸びしすぎよ。先ほど警備員を呼んだから、もうすぐ来てくれるわ」

 

俺はムカついていたのもあり、二人組に詰めよって見下ろすように罵声を浴びせた。女性に見下ろされると大体萎縮しちゃうからな、ソースは俺。座っている時に雪乃に見下ろされると何も言えなくなっちゃうし。それは俺だけか、テへ。

 

「ああ!?何だお前?」

「お、おい行こうぜ、警備員が来るとまずいだろ」

「ああ、こんなデカ女を相手にしてられないしな」

 

そういうと二人組はどこかに去って行った。まあ、警備員何て呼んでないんだけどな。さてここからが問題だ。結衣は俺のことをジッと見てるし。

 

「こ、小町ちゃん。こちらのお姉さんは?」

「従姉妹の八重子(やえこ)おねえちゃんだよ」

「私は由比ヶ浜結衣っていいます。ヒッk..八幡君と同級生です」

「こんにちは、結衣さん。私は比企谷八重子、大学1年生よ。八幡と同級生なの?仲良くしてあげてね」

 

俺たちはお互い挨拶をしたのだが、結衣は俺のことをジッと見ている。もしかして気づかれたか?

 

「身長が高くてモデルさん見たいですね。凄い綺麗ですし」

「バレーをやっていたから身長が伸びただけよ」

「でも八幡君によく似てますね」

「ええ、よく言われるわ。身長が一緒ぐらいなので双子って言われるし。じゃあ、小町。行きましょうか」

「ええ、結衣さんと一緒に買い物しようよ、おねえちゃん」

 

こ、小町の奴、絶対ワザと言っているだろ。これ以上一緒にいたらバレるだろうが。

 

「小町、結衣さんにご迷惑がかかるから、止めなさい」

「や、八重子さん。私も一緒に買い物したいです!!」

「..小町がわがままを言って申し訳ないわ、結衣さん。良いのよ、小町に付き合わなくても」

「私もブラブラしに来ただけですから、一緒に買い物させてください」

 

ブラブラ一人で来るなよ。さっきみたいに、またナンパされるだけだぞ。雪乃と来ればいいのに。

 

「実は今日八幡くんを誘ったんですけど、断られたんですよね。今日、八幡くんは何しているんですか」

 

あ、そうだった。昨日、小町が罰ゲームとか言っていたんで、断ったんだった。俺のせいか、でも一人で来なくてもいいじゃん。

 

「おにいちゃんなら、家で寝ているんじゃないかな」

「小町。違うでしょ、お母さん達の買い物に荷物持ちで付き合わされているわよ」

「そうなんですね、八重子さん達は何を買いに来たんですか」

「私たちもウィンドウショッピングしにきただけよ」

「おねえちゃん、結衣さん。まだお昼前ですけど、そろそろご飯食べませんか。小町お腹空いちゃいました」

 

なんで、この妹は自由奔放なんだ。まあそこが可愛いんだけど。

 

「私はどこでも良いわよ」

「うん、私も良いよ小町ちゃん。行きたいところある?」

「フードコートで良いんじゃないですか、みんな自由に注文出来るし」

「では行きましょうか」

 

俺は極力喋らないようにしないといけないな。ちょっと声色を変えて喋っているけど、何時バレるか分からないし。バレたら学校にいけないだろ、これ。でも姿勢が辛いな、猫背になれないし、ガニ股にならないように注意しないといけないし。

フードコートで席をとり、お互い食べたいものをそれぞれ注文しに行った。俺はハンバーガーと照り焼きバーガー、自販機で買ったマッカンを持っていったが、よく考えたら女性でハンバーガー2個って多いか?まあ、朝食べてないって事にしとけばいいか。

 

「八重子さん、マッカン飲むんですね、何だかヒッk...八幡くん見たいですね」

「結衣さん。八幡の事、いつも通り呼んでもらって良いわよ」

「ヒッキーって呼んでいるんですけど、良いですか?」

「八幡にピッタリね、良いわよ。その方が呼びやすいでしょ」

「はい、ありがとうございます」

「でも小町は遅いわね」

 

そう言っていると、俺の携帯が振動しだした。確認すると小町から用事が出来たから一人で帰る。とメールが入っていた。

あのやろう絶対わざとだろ。はあ、ここで俺も帰るのはさすがに結衣に悪いしな。まあ、バレないように対応するしかないか。

 

「結衣さん、小町は用事が出来て帰ったようだわ」

「そうなんですね。八重子さんは大丈夫ですか」

「ええ、結衣さんが良ければ、お買い物一緒にしましょう」

「はい、お願いします」

 

俺たちは食事をしながらガールズトーク?をしていた。

 

「あの、...ヒッキーの好きな人って誰か知ってます?」

「え!?八幡の好きな人?ごめんなさい、あまり会わないからそういう話はしたことないわね」

 

さすがに目の前にいる結衣に「貴女よ」なんて言えないからな。

 

「そうなんですね。私ヒッキーの事が好きなんですけど、なかなか気づいてもらえないんですよね」

「え!?そうなの!?でも八幡は知らないのかしら」

「多分、気づいてないと思います」

 

って、言うかそんなの全然気づかないよ。ええ!?これからどうやって接すればいいの?顔が赤くなって行くのが分かる。化粧ってどれぐらい誤魔化せるんだ?ヤバい。何で結衣はそんなこと言い出したんだ。女性ってそういう話を初対面の人に喋るの?でも今、告白すれば付き合えるんじゃないか?いや、俺は女装しているんだった。逆に退かれて振られて、女装していたことをバラされるな。

 

「私からはがんばってね。ってしか言えないわ、でも伝える事も大事よ」

「はい、ありがとうございます」

「そろそろ買い物にでも行きましょうか」

「八重子さんは何か見たものあります?」

「特にないわね、結衣さんは?」

「じ、じゃあ、下着を見にいきたいです」

「え?ええ、では行きましょうか」

 

どうするんだよ。これ、まずいだろ。なんで結衣は下着売り場に俺を連れてくんだよ。本当にバレたら一巻の終わりじゃん。

俺たちは下着売り場まで歩いていく途中、結衣が気になった服を色々見ながらショッピングを楽しんでいた。途中、結衣がいきなり俺の手を握ってきたが、どうしたんだ?

 

「ゆ、結衣さん、どうして手を握っているの?」

「あ、ごめんなさい。私、何時も友達と手を繋いで買い物しているんです」

「そ、そうなのね。では良いわよ」

「はい!!」

 

なんだか結衣の顔も赤い気がする。でも俺もかなり赤くなっているんだろうな。手汗がヤバい!マジでどうしよう。

俺たちは手を繋いで、その後も雑貨屋に立ち寄ったりして下着売り場に向かった。

 

下着売り場に着いたが、目のやり場に困る。べ、別に下着ぐらい普通だろ、着けているわけじゃないんだし。そう考えて結衣の後をついていった。ここ、ちょっとエッチな下着だらけじゃないか。これが普通なのか、回りを見ると、Tバックや紐パンなんかが、飾られていて目のやり場に困る。

 

「八重子さん、ヒッキーってどういうのが好きなんですかね」

「え!?そ、それは私も知らないわよ」

「でも、ヒッキーの部屋とかで、そういう本とか見たことないですか」

「ないわよ。八幡はそういう本、買わないと思うわ」

 

そう、間違っていないな。俺はネットで漁っているから、本なんて買う必要ない。うん、嘘はいってない。

 

「へぇ、でも女の子が裸で出てくるラノベとかは持っていますよ、私の胸、ジッと見ている時もあるし」

「そ、そうなの。まあ、男だからしょうがないんじゃない?」

 

バレてるじゃん!!どうしよう、これからは気付かれないように見ないといけないじゃん。って、今までバレてないと思って見ていたから、どうやってこれから見れば良いんだ?

 

「そうですよね。八重子さんはどんな下着が好きですか」

「わ、私?うーんシンプルなやつかな」

 

俺は、そういって辺りを見渡すと、目を惹くコーナーがあった。そこはベビードールと書いてあり、凄くエロく感じる。可愛いのとか、シースルーなんかもあるな。

ヤバい、これを着た結衣を見てみたい!!

 

「ゆ、結衣さんはベビードールは持っているの?」

「え?持ってないですよ。どうなんですかね」

「結構、可愛いのもあるでしょ。この下がスカート見たいになっているのとか良くない?」

 

そういうと俺はいつの間にか手に取って結衣に勧めてしまっていた。

 

「あ、ご、ごめんなさい。自分の好きなの選んだ方が良いわよね」

「こういうのが好きなんですか、八重子さんって」

「ええ、お腹の所がシースルーで凄くエロかわいくない!?」

 

ヤバい!!俺の中でなんだか盛り上がってきて、つい勧めてしまった。これ試着してくれないかな、あれ、でも下着って試着とかあるのか?それにこれ「バスト:フリー」って書いてあるし。網タイツもついているから試着って出来ないのか?

 

「でもこれガーターベルトとニーハイのタイツが付いていて制服の時は着れないわね」

「その二つを付けなければ、制服でも着れますよ。でもこれって安いんですね。ショーツも付いて3千円いかないんだ」

「で、では私にプレゼントさせてもらえる?今日あった記念にね」

「ええ!?駄目ですよ、買ってもらうわけにはいきませんよ」

「いいのよ、いつか八幡に見せてあげて」

「...は、はい。ありがとうございます//」

「これってサイズは良いのかしら」

「大丈夫ですよ、バストフリーって書いてありますし、ウェストも問題ないです」

「そう、で、では買ってくるわ」

 

そういうと俺は結衣にプレゼントするため、下着を持ってレジに支払いに行った。よく考えたらこれだと俺、変態だろ。なんで好きな子の下着を選んでいるんだ。付き合ってもいないのに。しかもいつか八幡に見せてあげてってアホだろ。

でも買ってしまったものはしょうがない、今回は結衣にプレゼントしていつか見せてもらえるように頑張らないとな。そんなことを考えながら、買ってきた下着を待っている結衣に渡した。

 

「ありがとうございます!!」

「いいのよ、ではそろそろ帰りましょうか」

「はい、今日は本当にありがとうございました!!」

「いいえ、こちらこそありがとう。それでは結衣さん、さようなら」

「はい!!ではまた!!」

 

そういって結衣は走って帰って行った。なんとかバレずに済んだのか。でも「また」ってどういうことだ?まあ、いつか会ったらってことだろうな。そんなこと考えながら俺は家へと帰った。

 

次の日。

 

俺が教室に入り席に付くと、結衣が近づいてきた。

 

「ヒッキー、やっはろー!!」

「..ウス」

 

挨拶すると、結衣は俺の方に顔を寄せ、小声で喋りだした。

 

「八重子さん。今日、ベビードール着てきたよ」

「な!?...もしかしてバレてたのか?」

「うん、最初から気づいていたよ。だってスニーカーがヒッキーのだったし、スマホカバーもヒッキーのだったじゃん。多分、小町ちゃんにやらされたんだろうなって。だからヒッキーに下着を選んでほしくて、一緒に行ってもらったんだ。...でもお昼、私が言ったことは本心だから...だからヒッキーからの言葉、待っている...」

「わかった。俺からも結衣に伝えたいことがあるんだ。お昼ベストプレイスに来てくれないか」

「..うん、じゃあまた後で」

「ああ」

 

俺はそこからお昼まで、どのように告白しようか悩んでいた。半分以上は俺がプレゼントしたベビードールを着ている結衣を想像してしまったけど。

お昼になり俺は結衣の待つベストプレイスに高揚感を得ながら向かった。結衣が俺を見つけて微笑みかけてくれる。俺も自然と笑みが溢れた。こうやっていつまでも二人で笑いあえるようになりたいな。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「材木座、さすがに俺が女装したら一発でばれるだろ」

「八幡なら大丈夫だと思うぞ、顔立ちは整っておるのだから、似合うと思うのだがな」

「お前にそんなこと言われても嬉しくないぞ」

「八幡なら似合うと思うわよ、なんだったら今度、化粧をしてあげましょうか」

「ヒッキー、やってみようよ。服なら貸すよ」

「いいですね、私も協力しますよ。先輩」

「いや、いい。絶対後悔しそうだし」

 

「材木座君、女性用のかつらであれば、ウィッグと言った方が良いわね」

「ウィッグ?英語表記にするということですか」

「両方同じ意味だけれど、かつらと言うと薄毛隠しのイメージが強いでしょ。男性用で有れば良いのだけれど、女性用であればウィッグと言った方が良いわね」

「中二、最近ラノベに下着出してなかったのに、どうして今回は出してきたの?しかもベビードールって」

「『エロい下着』って検索していたらベビードールが出てきてな、アマゾンで見たら安くてエロくて、我の中で着て欲しい下着ナンバー1になったのだ!!」

「「「....」」」

「なあ材木座。お前、墓穴を掘り過ぎだ」

「でもさ、ヒッキーはこのベビードールってどうなの?」

 

そういうと、由比ヶ浜さんは自分で検索した写真を八幡に見せているわね。ショーツが紐になっててヒップが丸見えじゃない//

 

「...あ、ああ、かわいいんじゃないか//」

「判るだろ、八幡!!」

「やめてくれ、材木座」

「全部シースルーで、Tバック、ガーターベルト、網タイツもセットのやつがあるんだぞ!!」

「材木座君、貴女の性癖は良いわ。しばらく黙って貰えるわよね」ニコッ

「..はぃ」

 

「でも女性から見ても可愛いと思いますけど、私は持ってないですね」

「うん、私も持ってないけど、一つぐらいあっても良いのかな。ゆきのんはどう?持っている?」

「え!?私!?..そ、その先ほどの写真のようなものでは無いけど、ナイトウェアとして持っているわよ//」

「じゃあ今度泊まりに言ったとき、見せてね!!」

「私にも見せてください!!雪ノ下先輩!!」

「そ、その下着を見せびらかすようなこと、したくないわ」

「でもナイトウェアってパジャマってことですよね、良いじゃないですか」

「..判ったわ、機会があればね」

 

由比ヶ浜さんや一色さんに見せるのは恥ずかしいわね。八幡から見せて欲しいと言われれば、恥ずかしいけど幾らでも見せてあげるのに。もちろんその中も//

でも私が持っているのは、由比ヶ浜さんが見ていたシースルーのものではないわ、男性はシースルーの方が良いのかしら?でも余り透けていると恥ずかしいし。

機会があれば、八幡に選んで欲しいわね。このラノベのように、一緒に下着を見に行って選んで貰えないかしら。

 



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25話

明日から小町さんの受験が始まると言うことで、八幡は部活を休んでいるわ。ご飯を作ると言っていたけれど、私を頼ってくれれば、幾らでも行ってあげるのに。

でも、私がいると小町さんと喋ってしまって、勉強の邪魔になるかもしれないわね。

 

「今日は、八幡が居ないようなので、帰らさせてもらいます」

 

材木座君は部室に入ってくるなり、辺りを見渡して帰ろうとするので、由比ヶ浜さん一色さんが引き止めたわ。

 

「中二、ラノベなら私たち3人入れば良いでしょ」

「そうですよ、ラノベの批評ですよね」

「で、ではお願いして良いか」

 

そういって、材木座君は由比ヶ浜さんと一色さんにラノベを渡したわ。と、言うことは私が出ているのね。今日はどう言った内容を書いてくれたのかしら。

 

「「ううぅ」」

 

なぜか、ラノベを読んだ二人が唸っているわね、読んで良いのか決めかねているのかしら。

 

「由比ヶ浜さん、一色さん、どうだったのかしら?」

「..良いよね、いろはちゃん」

「しょうがないですよね。じゃあ、雪ノ下先輩読んでください」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「比企谷、ちょっと良いか」

 

6限目の授業が終わり、後片付けしているとさっきまで授業をしていた平塚先生に俺は呼ばれた。

 

「由比ヶ浜は知っているだろうが、雪ノ下も今日、風邪を引いて休みなんだ。二人休みなので今日は部活は無しで良いぞ」

「分かりました、今日はこのまま帰ります」

「見舞いにでも行ってあげたらどうだ?心配だろう?」

「俺に心配されても、アイツらは困るだけでしょ、大人しく帰りますよ」

 

先生にはああ言ったが、俺は雪乃の事が心配だった。結衣は親がいるので安心だが、雪乃は一人暮らしだ。こういう時ぐらい、実家を頼ってくれれば良いのだが、多分雪乃のことだから、連絡すらしていないだろう。

俺は自転車に乗って家に帰るつもりだったが、なぜか雪乃のマンションに向かっていた。まあ、ちょっと様子を見てくるぐらい良いだろう、俺は言い訳するように自転車を漕いでいた。

 

マンションについたので、インターフォンを操作し、雪乃の部屋を2回鳴らしたのだが返答がない。3回目で返答がなければ帰ろうと考え、もう一度押すと「はい」と返答が聞こえてきた。

 

「雪乃、俺だ」

「だれ?私の知り合いに俺って人は居ないのだけれど」

「比企谷だ」

「..なに?」

「ああ、そのちょっと心配になって来てみたんだが、体調はどうだ?」

「..インターフォンで話すのもなんだし、上がってちょうだい」

 

そういうと、雪乃は俺をマンションに上げてくれた。玄関に入ると雪乃がパジャマにカーディガンを羽織っていた。立っているのも辛いのか、壁にもたれ掛かっている。

 

「大丈夫か、病院には行ったのか」

「ええ、今日の朝行ってきて、先ほどまで寝ていたわ」

「じゃあ、お昼食べてないのか、俺がお粥を作るから雪乃は寝ていてくれ」

「良いわよ、そこまでして貰わなくても、貴方に世話をされるなんて、後で何を要求されるかたまったものではないわ」

「良いから寝ていろ...もしかして、動くのも大変なのか」

「だ、大丈夫よ。これぐらい」

 

雪乃はそういったが、見るからにフラフラしているのが分かった。俺は雪乃をお姫様抱っこしてリビングに移動した。

 

「お、降ろしなさい!!あなた、どうして私を抱き上げているのよ!!訴えて上げるわ、覚悟しておきなさい!!」

「良いから、今日は大人しくしていろ。寝室はどっちだ」

 

そういうと、雪乃は諦めたのか、寝室の方を指差してくれた。寝室に入りベッドに降ろすと、俺は羽織っていたカーディガンを脱がせて、雪乃を寝かせた。

雪乃の顔が赤かったので、おでこに手を当てるとかなり熱く感じた。俺は手櫛で髪の毛を払い、買ってきた冷えピタをおでこに貼り付けた。雪乃はその間、恥ずかしいのか口元まで布団を被り、何も言わずに目だけがキョロキョロ忙しく動いていた。

 

「じゃあ、お粥作ってくるけど、大人しく寝ていろよ」

 

雪乃は首をコクと動かしただけで、言葉を発することはなかった。俺は寝室を出た後、机の上に置いてあった薬を確認した。病院には行ったようだな、ただ薬を飲んだ形跡がない。本当に帰ってきて、すぐ寝てしまったのだろう。

俺は卵粥とりんごを磨り下ろしたものを用意し、薬と水も合わせて持っていった。

 

「雪乃、起きているか」

「ええ」

「起きれるか」

 

雪乃は起き上がろうとしていたが、辛そうだったので、俺は背中に手を回し起きるのを手伝った。

 

「八幡、さっきから私の身体を何かにつけて触ってきてセクハラだわ、体調が戻ったら覚悟しておきなさい」

「はいはい。風邪で辛いときぐらい、素直に何をやってほしいのか言えよ」

「私が素直じゃないというの?私は何時も思ったことを言っているだけよ」

「ああ分かった。じゃあ、俺もう帰るからお粥食べて、薬飲むんだぞ」

「え?」

「俺がいない方がいいだろ、これ以上セクハラって言われるのも辛いしな」

「..あなたが居たいのなら、もう少し居ても良いわよ」

「いや良いよ。じゃあ、お大事に」

 

俺はそういって、寝室を出ていこうとしたところで雪乃が声をかけてきた。

 

「..ま、待って...い、居てほしいの」

「..いいのか、俺が居ても」

「ええ、一人だと寂しいの」

「分かった、じゃあお粥食べるか」

「ええ、お願い」

 

俺は雪乃の枕元に向かい、先ほど置いたお粥を手に取ると、レンゲで掬い息を吹きかけ、雪乃の口元に持っていった。

 

「あーん」

「そ、その恥ずかしいわよ//」

「あ、ああ、悪い。小町が体調不良の時、俺がよくやってあげてたから、つい。自分で食べれるか?」

「..そ、その、食べさせて貰えるかしら。あ、あーん//」

 

雪乃が食べさせてくれと言ってくるとは思わなかった。また罵倒されるかと思っていたのだが。

その後、ずっとあーんさせられて、かなり恥ずかしかったが、雪乃はお腹が空いていたのか、俺が作った卵粥をすべて食べてくれた。

 

「りんごを磨り下ろした物も用意してきたんだが、食べれるか」

「ええ、じゃあ、は、八幡。食べさせて//」

 

そういうと雪乃はまた、あーんと言って口を開けてきた。なんだか雛鳥が餌を貰うときみたいだな。でもいつもの美しい雪乃でなく、可愛い雪乃が見れたのが俺は凄く嬉しかった。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様。じゃあ、薬を用意するから」

 

俺は薬袋に入っているそれぞれの錠剤から1回分取り出すと、皿に置いて雪乃に差し出した。

 

「は、八幡。薬も飲ませてほしいのだけれど//」

「え、あ、ああ判った」

 

俺は錠剤を一錠とると、雪乃の口に持っていった。雪乃の唇が俺の指に触れる。かなり俺は赤面しているだろう、雪乃もかなり顔が赤い。お互い無言で俺は薬を運んで口に入れ、たまに水を飲ませる行為だけに専念していた。

 

「じゃあ、ちょっと後片付けしてくるから」

「良いわよ、食器はそのまま置いてて貰っても」

「そういう訳にはいかないだろ、良いから寝てろ」

「じゃあ、お願いするわ」

「ああ、任された」

 

俺は、寝ているように言うと、雪乃は素直に言うことを聞き横になった。俺は食器を洗いに寝室を後にした。

何時も今ぐらい素直なら、もっとモテるだろうに。いや雪乃はそういうのは嫌いだろうな、雪乃の事をロクに知りもしない奴に告白されても、何時もの罵声を浴びるだけだろう。

じゃあ、俺は?他の奴より雪乃の事を知っていると思う。まだ知らないことはいくらでもあるだろう。でも他の奴と比べたら、俺と雪乃が奉仕部で過ごしてきた時間はお互いを理解するには十分な時間だったのではないだろうか。

色々考えながら食器を洗い、寝室にいくと雪乃は起きていた。

 

「体調はどうだ?」

「ええ、熱を測ったら7.5度だったわ。まだ熱はあるのだけれど、かなり楽になったわ。ありがとう。八幡のおかげよ」

「じゃあ、そろそろ帰らせてもらおうかな」

「あ、あの八幡。今日はその、泊まっていけない?」

「え、いや不味いだろ。一人で不安なのは判るが」

「八幡が素直になれって言ったのよ、私は泊まっていってほしいの」

「しかしだな、そ、そう着替えとかないし、俺も男だぞ。雪乃に劣情を催すかもしれないしな」

「着替えなら防犯用に用意した男性用の下着があるわ、あと私は八幡を信じているの。あなたは私が嫌がるようなことはしないでしょ」

「...判った、でも家に電話させてくれ。断られたら悪いが帰らせてもらうぞ」

 

俺は寝室を出ると家に電話したが、小町からは面倒を見てあげろと言われ、俺が言葉を発する間もなく、電話を切られた。俺は雪乃の元に戻り、泊まれると伝えると雪乃は安心したのか、俺に笑顔を向けてくれた。

 

「八幡は晩ご飯、どうするの?」

「ああ、まさか泊まるとは思っていなかったんで、何も用意していなかったな」

「今、体調が良いので私が作りましょうか?」

「駄目だ。雪乃は寝ててくれ、俺は何か買ってくるよ。明日の朝ご飯とかもいるだろ」

「ごめんなさい。私のわがままで」

「いや、俺は雪乃が素直に言ってくれて嬉しいんだ。じゃあ、ちょっと買い物に行ってくるから」

「はい、行ってらっしゃい」

 

俺は近くのスーパーに行き、消化の良さそうな物を買い、雪乃のマンションに帰って行った。

 

「お帰りなさい、八幡//」

「た、ただいま//..寝てないと駄目だろ」

「..でもお出迎えしたかったのよ」

「あ、ああ、ありがとう」

 

俺は雪乃を寝室に連れていき、冷えピタを替えてまた横になっているように言った。

 

「そういえば、俺はどこで寝れば良いんだ?」

「そこのクローゼットに布団が入っているわよ、この部屋で寝てちょうだい」

「い、いやそれは不味いだろ、布団をリビングに持っていって、そっちで寝るから」

「いやよ、一緒の部屋で寝てちょうだい」

「で、でもだな」

「一緒の布団で寝るわけではないのだから、良いでしょ」

「..雪乃がそれで良いなら」

 

俺は雪乃を寝かせた後、布団を雪乃のベッドの横に並ぶように用意し、何時のまにか用意してくれていた着替えを持ってシャワーを浴びさせてもらった。

雪乃が自分も身体を拭きたいと言ったので、タオルや湯を用意したのだが、背中を拭いてほしいとお願いされた。え?雪乃は恥ずかしくないの?素直になったのは良いけど俺も男だからね。

 

「そ、その本当に良いのか?」

「ええ、背中はちゃんと拭けないでしょ、八幡に拭いて欲しいの」

「じ、じゃあ、拭くからパジャマ脱いでくれないか」

「あ、あの後ろを向いてて貰えないかしら//」

「あ、そ、そうだな。済まん」

 

「あ、あの八幡。では、お願いできる?」

「ああ」

 

雪乃はパジャマで前を隠していた。白い肌が俺には眩しく、思わず生唾を飲み込んでしまった。俺はなるべく見ないように背中を拭いていた。

拭いていたとき、雪乃の耳が真っ赤になっているのが見える、雪乃も恥ずかしいのだろう。襲い掛からなかった俺を褒めてほしい。いや、かなりヤバかった。後ろから見るうなじに吸いよせられて、もうちょっとで口を付けそうになってしまったし。

 

9時を過ぎた頃、ちょっと遅くなったが、ご飯を食べようと思い、雪乃に確認したところ、少し食べたいと言うことだったので、俺はうどんを用意した。雪乃の体調はかなり良いと言うことで、リビングで食べたのだが、今回はあーんはしなかったのが、ちょっと残念だったな。

ただ、また薬を飲ませてほしいと言われ、お互い赤面しながら昼のように薬を一錠ずつ飲ませてあげた。リビングでうどんを食べたんだから、薬ぐらい飲めるだろ。ただ素直になった雪乃の破壊力は凄く、俺は言うことを聞くしかなかった。

 

俺たちはご飯を食べ終わった後、雪乃に布団に入るように言った。まだ熱があるので、無理させたくないし、これ以上、起きていてもしょうがないので俺は雪乃の枕元に腰をおろし、俺から雪乃の手を握っていた。雪乃は驚いていたが、何も言わず手を握り返してくれた。

 

「今日はありがとう、八幡」

「なんか雪乃に素直にお礼を言われると後が怖いな」

「ううん、今まで私がいけなかったの。八幡に甘えていて、貴方なら許してくれるって分かっていたから、つい言い過ぎていたわ。でも、これから八幡には素直になると決めたの。だから今日、最後にやってほしいことを言って良い?」

「ああ、いいぞ」

「そ、そのおやすみのキスをしてほしいの//」

「俺なんかで良いのか//」

「八幡が良いの//」

 

俺は雪乃に近づいていき、お互いの唇を重ねた。短いのか長いのか分からない、でも雪乃を離したくないと思わせるには十分な時間だった。

 

「俺は雪乃のことが好きだ。愛してる」

「私も愛しているわ、八幡」

 

また俺たちはキスをした。その後、俺は雪乃の頭を撫でていた。雪乃は最初、戸惑っていたが、なで続けるとそのうち寝息を立て始めた。

 

「素直だとこんなに可愛いんだな、これからもよろしくな。雪乃」

 

俺は雪乃の寝顔に言葉をかけると、自分の布団に移動し眠りについた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....//」

「..なんか、このゆきのん。ズルい」

「ど、どうしてかしら、由比ヶ浜さん」

「だって、素直になったらこんなに可愛くなるんでしょ、こんなの勝てっこないじゃん!!」

「そうですよね、結衣先輩。先輩なんてコロッと落ちちゃいますよ」

「あ、あなたたち、これは材木座君が書いたラノベなのよ。実際にはこんなにすぐ、八幡が言うことを聞いてくれるわけないわ」

「でも以前、先輩が言っていたじゃないですか、雪ノ下先輩だったら甘えてくれるギャップがいいって、以前の雪ニャン先輩と違って、このラノベみたいに素直にやってほしい事を言うのは、簡単じゃないですか」

「そ、それを言ったら由比ヶ浜さんには甘えさせてほしいって、言っていたわ」

「ヒッキーが甘えてくるってことないじゃん!!」

「そうですよ、私なんて凛とした姿ってどうやって見せるんですか!!」

「それは奉仕部で遊んでないで、生徒会を頑張れば良いのではないの?」

「..だって、そうすると先輩に会えないじゃないですか」

「あ、あのう。ラノベの批評をして頂きたいんですが」

「中二は黙ってて!!」

「木材先輩、うっさいです!!」

「...は、はぃ」

 

「あ、あなたたちラノベの批評をしましょう」

「うう、なんだか納得できない!!」

「ですよね」

「でもそれを言ったら、今までのラノベすべてを否定することになってしまうわ。私はまだ材木座君に書いて貰いたいと思っているのよ、これでおしまいにしたくないわね」

「..確かにこれでおしまいって嫌だよね」

「..そうですね、確かにラノベの内容を現実に当てはめるのは、どうかと思いますね」

「ええ、だからこれかも書いてもらうには、ちゃんと批評をしないと。材木座君も書いてくれなくなってしまうわ」

「うん、中二。さっきはごめん」

「そうですね、木材先輩。私もすみませんでした」

「いや、我は良いのだが、これからは登場人物をオリキャラに切り替えていった方が良くないか。例えば雪ノ下殿の容姿に似せて性格がまったく違うとか。そうすれば個人に批判が行くことはなくなるだろうし、黒歴史にもならぬし」

「「はぁ!?」」

「材木座くん。あなたは何を言っているのかしら、私たちはあなたが文章でうまく説明できないので、登場人物として出しても良いと言っているのよ。容姿だけ真似て性格が違うって、どうやってラノベの中で説明するつもりなの?私たちをラノベに出しておいて、容姿は同じで性格の異なる点を書くのかしら、では私たちの事を知らない人にはどのように説明するつもり?知っていたとしても、容姿が似ているというのは双子って設定にでもするの?ただ双子であれば性格も似ているでしょ。では姉妹?姉妹であれば、例えば私と姉さんでは性格も容姿も異なるわ、それをどうやって文章にするのかしら、もしかしたら、いつかのオリジナルキャラクターを使うつもり?オリキャラと言っても髪型だけしか書いていなかったわよね。その後何か設定は決めたの?髪型もセミロングと言っても色々あるわ、身体的特徴は?顔の特徴は?性格は?ラノベ好き以外に何か特徴があったかしら?説明していただけるかしら?」

「うぅ、済まみせん。我にはまだオリキャラは早いと言うことですね」

「ええ、分かって貰えれば良いのよ」

「..今日は帰らさせてもらいます」

「あら、今回の批評は良いのかしら」

「結構です、失礼します..」

 

材木座君が廊下に出た後、何処からか男子の泣き声が聞こえてきたわ。何かあったのかしら。

 

でも今回のラノベのように私が素直になれば、八幡は私だけを見てくれるようになるかもしれないわね。

今度、八幡と二人で過ごす様なことがあれば、やってみましょう。もしかしたら良いことが有るかもしれないし//

 

「結衣先輩、雪ノ下先輩の表情見てください。あの顔、今度先輩と二人になったら素直に接するつもりですよ」

「うん、ヒッキーとゆきのんは二人には出来ないね。いろはちゃん、私が奉仕部に来れない時はよろしくね」

「はい、お互い連絡取り合いましょう」

「あ、あなた達、何の相談をしているのかしら。私はいつも素直に八幡に接しているわ、二人きりになっても何も変わらないわよ//」

「「へぇー」」ジィィー (;¬_¬);¬_¬)(‥;)

 

な、何をこの二人は言っているのかしら。私はこれから八幡を余り罵倒しない様にして、やって貰いたいことがあったら、お願いするだけよ。

でも何とか二人きりになるようにしないといけないわね。この二人の監視を何とか逃れないと。

 

 



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26話

沙希のラノベの後、5人が俺に日替わりで弁当を作ってくれるので、最近はベストプレイスに全然行けていなかった。今日は南の予定だったのだが、風邪を引いて学校を休んでおり、みんなに連絡が遅れ誰も代わりに弁当を作れなかったらしい。

俺は、久しぶりの一人飯にウキウキしながら購買で惣菜パンを買い戸塚を愛でるため、ペストプレイスに向かった。

 

パンを手に持ち、ベストプレイスに向かう途中、葉山が走っていく姿が目に入った。どうしたんだあいつ?あんなに慌てて。ベストプレイスに着くと三浦が座り込んでおり、俺と目があった。

 

「なんだし」

「いや、ここに飯を食いに来ただけだ、邪魔なようだから他に行くわ」

「ヒキオ、ここで食べればいいし。あーしのことは放っておいて」

 

三浦は目が潤んでいて今にも泣きそうな顔をしていた。さっき葉山が走っていたことと関係あるんだろうな。まあ、俺は居ても居なくても一緒だからここで食べさせてもらうか、三浦のことも気になるし。俺は腰を掛け、パンを食べ出した。

 

「..ヒキオ、あんた何にも聞かないの」

「俺が聞いてもしょうがないだろ、俺の事は居ないと思ってくれ」

「そう、じゃあ、今から言うことは独り言だから」

「..」

「あーし、バレンタインのチョコ渡すつもりで、隼人をここに呼び出したんだけど、受け取れないって言われた。それだけなら良かった、ううん良くないけど。でも隼人から「俺にとっては優美子もみんなと同じぐらい大事だ」って言われて、ああ、あーしは隼人にとって特別じゃないんだ。って分かったんだ」

「....」

「ふん、本当に何も言わないんだね、まあヒキオだからしょうがないし」

「俺も今から、独り言を喋ろうかな」

「....」

「葉山にとって、グループの中に居る三浦が大事な存在なのは外から見ていて分かる。ただ、その仲間の中では特別視出来ないんだろうな、一人を特別視すればグループが壊れるかもしれない。グループ以外にも葉山には色々な繋がりがあるだろう。その大きな繋がりの中で一人に特別な感情を抱いてしまうと、決壊してしまうと考えているんだろうな。あいつはみんなの葉山隼人で誰か特別な人は作れないんだよ」

「で、でも、あーしは隼人の特別になりたかった!!あーしだけを見てほしかった!!そう思って伝えることが駄目なの!?想ってもいけないの!?ヒキオに隼人の何が分かるっていうの!!」

「....」

「なにか言えし!!....ねえ、何か言ってよ!!」

 

俺は制服の襟を捕まれていたが、三浦は泣き出して俺の胸に顔を埋めてきた。俺には葉山を肯定することも否定することも出来なかった。ただ、俺の胸で泣いている三浦のことを思うと不憫でならない。葉山に想いを寄せても叶わない。それが分かってしまったのだから。

次の授業を知らせる予鈴がなったが、三浦は泣き止まず、俺も動こうとしなかった。このまま授業はサボらせて貰おう。俺の手はいつの間にか泣いている三浦の背に左手を回し、右手は頭を抱えるようにしていた。三浦はビクッとしたが、受け入れそのまま泣きつづけた。

チャイムがなり6時間目になったようだ。そろそろ不味くない?三浦は泣き止んでいたが、俺の胸から顔を上げなかった。寝ているわけではないようだが、ずっと胸に顔を埋めている。

 

「三浦、6時間目が終わると部活の連中とかが来てしまうから、場所を移動しないか」

「...どこに行くし」

「奉仕部だ。荷物もあるから帰るわけにはいかないだろ。特別棟だったらあまり人は来ないし部活が始まったら、雪乃がすぐに来るから、部室に入れるしな」

「分かったし、ヒキオ..今、あーしの顔見ないで」

「ああ、じゃあ移動しようか」

 

三浦は俺の手を握ってきた。ただ、俺の斜め後ろを歩いて、俺には顔を見せないようにしている。授業をやっている教室の前を極力避けて奉仕部前までやってきたが、三浦はこっちを見るなと言って、俺に顔を見せようとしなかった。

俺は自分の胸元を確認すると、涙で濡れたシャツは乾いてきていたが、ファンデーションとアイラインの色だろうか、肌色と黒色の汚れが付いていた。これって洗濯で落ちるのか?でも今はそんな野暮な事は三浦には聞けず、俺たちは雪乃が来るまで、無言で待っていた。

 

6時間目が終わり、雪乃が来たのだが、俺たちを見つけると凄い勢いで睨みつけてきた。

 

「あなたたちは授業をサボって何をしているのかしら」

「いや、これには事情があってだな」

「そう、手を繋ぎながらデートをしていたわけね」

 

すっかり忘れていたが、俺と三浦はずっと手を握り合っていた。俺が手を離すと三浦から「あっ」って声が聞こえてきた。ただ雪乃は三浦をみて何か感じたのか、それ以上何も言わず、部室の鍵を開け俺たちを入れてくれた。

三浦は椅子に座っていたが、俯いており俺からは表情が伺えなかった。

 

「色々聞きたいことがあるのだけれど、今は止めておいた方が良さそうね。三浦さん、紅茶を飲むかしら」

「うん」

 

三浦は顔を上げず答えた。雪乃はポットを持ち水を汲みにいくとすぐに帰ってきて紅茶の用意をしだした。

しばらくすると、結衣、沙希が部室に来た。皆、部室の雰囲気で挨拶だけ交わしただけだったが、結衣が喋りかけていた。

 

「...優美子、荷物持ってこようか」

「うん、お願い」

「ヒッキーも荷物どうする?持ってこようか」

「いや、俺も一緒に行くよ」

 

俺と結衣は一緒に部室を出て、教室に戻った。

 

「何があったかは聞かないほうがいいよね」

「まあ、結衣なら分かっているんだろ、察してやれ」

「..うん、でもヒッキーは偶然会ったの?」

「ああ、今日弁当がなかっただろ。購買でパンを買ってベストプレイスに行ったら三浦がいたんだよ」

「そうなんだ、ありがとうね。優美子のこと介抱してくれたんだよね」

「近くにいただけだ、お礼を言われる筋合いはないな」

「ううん、でもありがとう」

 

俺と結衣が部室に戻ると、人が増えていた。城廻先輩、いろは、材木座もいる。何?今日なにかあるの?ちょっと怖いんだけど。ただ、雰囲気を察して騒いではいないが。

 

「なあ、今日って何かあるのか」

「..雪ノ下さん。あーしの事は良いから」

「そ、そうね。まずは材木座君、いいかしら」

「は、はい」

「いつもお世話になっているから私たちから、お礼を受け取ってくれるかしら。あと、私は姉さんからも預かっているわ」

「え!?そ、その良いんですか」

「うん、いっつもラノベでお世話になっているからね、みんなで話して持ってきたんだ。さがみんは今日お休みなんで、今度持ってくるってメール来てたよ。あと、かおりんからも私が預かってきたし」

「私は先生から預かってきましたよ。今日、職員会議で来れないって言っていましたから」

「あ、ありがとうございます!!」

 

材木座は皆から包みを受け取った後、嬉しくて目が潤んでいた。渡されるとき「義理だけど」って言われていたが、それでも嬉しいよな。でも俺は貰えないのか、ちょっと悲しいんだけど。泣かないよ、ちょっと目が潤んでいるだけだし。

皆に貰った後、材木座は何度もお礼を言って部室から出て行った。廊下から雄叫びみたいなのが聞こえてきたが、もしかして材木座か?

 

「では八幡。あなたにも用意して来たので受け取ってもらえるかしら」

「え、俺にもあったの」

「当たり前ですよ、先輩。いつもお世話になっていますから」

「比企谷君、私も持ってきたよ」

「いや、材木座は分かるんだが、俺何もしてないよね」

「八幡、つべこべ言わず受け取りな」

「あ、ああ、その分かった」

 

俺にも皆用意してくれていたようだ。俺は一人一人受け取ったが、さっきの材木座の包みと比べると大きさがちがう、どう見ても俺の方が大きい。勘違いしちゃいそうだけど、これで告白して振られるのが俺の場合は、デフォルトだからな。

俺も嬉しくて何度もお礼を言っていた。バレンタインなんて家族以外貰ったことないし。陽乃さんと折本と先生までも用意してくれてたんだな。

 

「ねえ、雪ノ下さん。ちょっと聞いて良い?」

「どうしたのかしら、三浦さん」

「ヒキオは分かるんだけど、さっきのざ、材木って奴にも渡してたじゃん。結衣はラノベって言っていたし、あんたら何しているの?」

「彼からの依頼でラノベを批評しているのだけれど、色々事情があって私たちが登場人物としてラノベを書いてもらっているの、そのお礼を用意しただけよ」

「ふーん、そのラノベ読ませてもらえない?」

「プライベートなことも書いてあるから、それは出来ないわね」

「ゆきのん、私の分なら良いよ。優美子に読ませてあげて」

「..分かったわ。では三浦さん、ちょっと待ってね」

 

そういうと、雪乃はラノベを用意しだした。以前のラノベを全てとってあるらしい。ねえ、何で俺には聞かないの?俺も出ているんだけど。でも、抗議の声を上げても無駄だろうし、今は三浦が他事に意識を持っていった方が良いだろうしな。

三浦は雪乃からラノベを受けとり読み出した。化粧が崩れていることは忘れてしまったのだろうか、顔を上げて読んでいるんだが。

 

「これってここに居る皆が書いてもらったの?全部、ヒキオとのラブコメで」

「後、さがみんとゆきのんのお姉さん、海浜総合のかおりん、顧問の平塚先生がいるけどね。奉仕部への依頼だからヒッキーが出ているんだよ」

「このヒキオが勘違いして結衣を泣かせるラノベ、あーしも出てるけど、なんで「愛しているぜ三浦」って、あーしが言われているの?」

「「「あっ」」」

「な、なんで私が言われたこと、ラノベに使ってるのさ!!」

「ど、どういうことですか先輩!!私、知らないですよ!!」

「比企谷君、どういうこと?私も知らないよ」

「あ、あの川崎さん。みんなに説明して良いかしら..」

「..うぅ、しょうがないね。良いよ//」

 

雪乃は材木座から聞いた経緯を皆に説明していた。沙希は顔を赤くしているが、雪乃と結衣も赤くなっている。これ以上、余計な事を言わないで貰いたいのだが。

 

「ふーん、先輩ってお礼で愛してるって言ってくれるんですね。私は言われたことないですけど。後、雪ノ下先輩と結衣先輩も顔を赤くしているってことは一緒の事、言われたんですね」

「へえー、比企谷君。私にも言ってほしいな」

「八幡、私にももう一回言いな、今度は名前で」

「ま、まて城廻先輩も沙希もいろはも落ち着けって」

「そういえば、何でヒキオは皆のこと名前で呼んでいるんだし。あーしの事も名前で呼ぶし」

「比企谷君、私も名前で呼んでよ。私は八君って呼ぶから」

「..優美子//」

「うん」

「めぐり先輩//「めぐり」...めぐりさん//「めぐり」...その、良いんですか?」

「うん、めぐりって呼んで」

「..め、めぐり//」

「はい!!八君!!」

「..じゃあ、今日は帰らさせてもらうんで」

「ま、まてーーー!!」

「まちな、八幡!!」

「八君、逃げるのは駄目だよ!!」

「あーしも言ってもらわないと//」

 

俺は捕まり一人一人、向かい合って言わされた。いろは、沙希、めぐり、なぜか一緒に並んでいた雪乃、結衣までは良かったのだが。いや、恥ずかしいので良くはないな。最後に回った優美子の時は俺が言う前に、先に喋りだした。

 

「ヒキオ、今日はありがと。あーしのせいで授業サボらせてごめん。これ他の奴に持ってきた物で悪いんだけど、今はこれしか用意出来ないし。でも良かったら受けって欲しい」

 

優美子はそう言うと俺に包みを差し出してきた。葉山を想い持ってきたのだろう。目から涙が零れている。だが涙を拭うこともせず、じっと見つめてくれている優美子に俺は見惚れていた。

いつの間にか俺は優美子の腰に手を回して抱き寄せていた。優美子からは嗚咽が聞こえていたが、俺は構わず耳元に口を近付けていた。

 

「優美子がくれる物なら有り難く貰うよ。ありがとうな、優美子。愛している」

 

俺がそう言うと優美子は泣きながら俺の背に手を回してきて、二人で抱き合った。

俺は優美子の顎に手をかけ、顔を俺の方に向かせた。

潤んだ瞳で俺の事を見つめていた目が閉じられ、俺も目を閉じ顔を近付けて行き...

 

ぱこーーーん!!

 

俺の頭を衝撃が走り、叩いた音が部室に鳴り響いた。

雪乃がスリッパを手に持ちワナワナ震えながら俺たちを睨んでいる。他の女性達も俺たちを睨んでいた。

 

「あ、あなた達!!何をしようとしているのかしら!!三浦さんに何があったのか知らないけれど、それ以上は看過できないわよ!!」

「ヒッキーも優美子もなにやってるし!!しかも何でヒッキーが顎クイしてるし!!」

「先輩!!なんで私達が居るのに二人の世界を作っているんですか!!」

「八幡、幾らなんでもこれは許せないよ!!」

「そうだね、ハルさんにも報告しないと!!」

「あなた達。ここまで言われて、まだ抱き合っているのはどういう事かしら!!」

 

俺と優美子は慌てて離れたが、お互い顔が真っ赤になっていた。ヤバかった、何をしようとしていたんだ、俺は。今までなら絶対しないようなことをやっていたし。

 

「いや、正直助かった。止めてくれてありがとう、雪乃」

「...ヒキオ、あーしは遊びなの?」

「ま、まってくれ。さっきは優美子に見惚れてしまったんだ」

「ヒキオ//」

「「「「「へぇ」」」」」

「あ、た、多分ラノベの頭が俺のラノベ脳になっているんだ?ラノベの行動の中をしてしまっているんだよ」

「八幡。あなた、かなり混乱しているわよ。何を言っているのか意味が分からないわ。あなたの行動はラノベに影響を受けていて、先ほどの振る舞いを行った。って事で良いのかしら」

「そ、そうです...」

「ヒッキー、じゃあ私達とも出来るんだよね」

「お、俺も意識せずにとった行動なんで普段はとても出来ないぞ。何で優美子にあんな大胆なことが出来たのか、自分でも分からない」

「..そう、分かったわ。無理にやらせようにも出来ないのね」

「ああ」

 

なぜか皆黙りこんで何か考えているがそれ以上、追及されることはなかったので助かった。

その後、何とか落ち着きを取り戻し、優美子は化粧を直しに行き部室に戻ってきた。

 

「雪ノ下さん、あーしにもラノベ書いて欲しいんだけど」

「そうね、私たちが知っている三浦さんのことを材木座君に伝えないといけないのだけれど、問題無いかしら」

「うん、いいよ。ヒキオとのラブコメ書いてもらえるんでしょ」

「ええ、ただ内容については材木座君任せになってしまうわね。後、あくまでも批評の依頼なので私たちも読むことになるわ」

「うん、それで良いし。結衣のラノベ読んでいるとき、あーしもこうやって想いたい想われたいって思って。作り話でも良いからお願いしたいし」

「ええ、では材木座君にお願いして出来たら、由比ヶ浜さんに伝えるわ」

「お願いするし」

 

最終下校時刻を知らせるチャイムがなり、俺たちは後片付けをした後、部室を後にした。今日は色々ありすぎて大変な一日だったな。小町の総武での受験が明日のため、早く帰るつもりだったが、まあ母さんが早く帰るって言っていたので問題ないか。

俺は、今日起こったことを思い返しながら、家路についた。まじで今日の俺はどうかしていた。普段なら絶対しないような事を何の抵抗もなく行っていたし。これは本当にラノベ脳になっているかも知れないな、気を付けないと。

 

 



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27話

「どうしたのかしら、八幡。そんなに疲れて」

 

八幡が部室に入って来たのだけれど、いつもより疲れて目が淀んでいるように見えるわ。私は極力罵倒をしないようにしないといけないわね。言葉に気を付けて喋らないと。それで素直に接するのよ。

 

「ああ昨日の日曜日、陽乃に呼び出されて色々連れ回された。めぐりが連絡したらしくて、めぐりって呼んだことや、優美子にやったことを全て報告されてな」

「それで姉さんの事も陽乃って呼べと言われたわけね」

「ああ、後で雪乃に確認して「さん」付けしてたら、分かるわよねって、言われてな」

「でも、三浦さんにやったことは私たちも怒っているのよ」

「なんで俺が怒られるんだ?優美子から言われるんなら分かるんだが」

「八幡。私は「やっはろー!!」..チッ」

「え!?今、舌打ちされた!?」

「何を言っているのかしら、由比ヶ浜さん。三浦さん、海老名さん、こんにちは」

「おじゃまするし」

「ハロハロー」

 

どうしてこうタイミングが悪いのかしら。もうちょっと時間があれば、あの時感じた感情を言うつもりだったのに。でも八幡の前で、自分の気持ちを素直に言えたかしら、分からないわね。

由比ヶ浜さんが三浦さんと海老名さんを連れてきたわね。

今日は材木座君が三浦さんのラノベを持ってきてくれるはずだけれど。そう考えていると、材木座君がきたわ。

挨拶を済ませると私と由比ヶ浜さんにラノベを渡してくれたわ。今回は三浦さんのラノベなので注意して確認しないといけないわね。この間、泣いていたこととか書いているとまずいでしょうし。

 

「今日はこの間依頼された、じょ..三浦殿のラノベです」

「へー、本当に書いてもらえるんだ、ヒキタニ君が男優なんだよね」

「海老名さん、止めてくれ。海老名さんが言うと特定の職業の人たちに聞こえる」

「えー、でもヒキタニ君と優美子がイチャコラするんでしょ、合ってるよね?」

「ひ、姫菜!!あーしのラノベ読む前にそんなこと言うなし//」

「そ、そうね。では確認させてもらってから、皆で読みましょう」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「ヒキオ、今度の土曜日、買い物に行くし」

「ああ、行ってら」

「はぁ!?」

「ごめんなさい、一緒に行かせていただきます」

「最初からそう言えし」

 

俺と優美子は教室でよく喋るようになっていた。なぜか休日のたびに荷物持ちをさせられているが。まあ俺だったら気を使わなくていいし、気楽なんだろうな。

 

「ああ、そう言えば床屋に行きたいって言っていたけど、あーしの行きつけの美容院にヒキオで予約してっから」

「は?どういうこと?」

「カットをして貰うし。割引券あるから安くなるし良いっしょ」

「..ああ、分かったよ」

 

今回は荷物持ちじゃないのか?でも安くなるって、そもそも美容院の価格を知らないんだが。美容院って床屋と一緒ぐらいなのか。

 

俺と優美子は土曜日の10時に駅前で待ち合わせをしていた。俺は9時半には来ていたが、10時を過ぎても優美子は来ない。まあ、こうやって待たされるのもいつもの事だな。

10分ぐらい遅れて優美子は慌てる風もなく、俺の方に近寄ってきた。

 

「ごめん、まった?」

「ああ、かなり待たされたな」

「そこは、「今来た所だ」って、いつも言えって言ってるし!!」

「いや、待たされたのは事実だろ。でも、...今日の服、優美子に似合ってて綺麗だな//」

「...い、いきなしそんな事、言うなし//..うぅ、でもありがと//」

 

いつもなら綺麗とか言わないんだが、優美子の照れる顔が見たくて、言ってみたんだが俺も照れてしまった。言い慣れてないと、難しいものだな。俺が言い慣れるなんてないだろうが。

俺たちは手を繋いで、美容院に向かった。なぜか優美子の買い物に付き合わされるとき、いつも手を繋がされる。でも俺は優美子と手を繋げるのが嬉しかった。最初は照れてしまったが、今では学校で隣にいるとき、手を繋げないのが寂しく感じるぐらいになっていた。

美容院は11時からの予約だったらしいが、かなり早く着いたようだな。どうも優美子は雑誌から髪型を選びたかったらしい。二人で雑誌を見ていると店員が話しかけてきた。

 

「優美子ちゃん、いらっしゃい。そっちは彼氏?いつも喋っているヒキオって子でしょ?比企谷って名字だし」

「ま、まだそんなんじゃないし//」

「まだ、ね..じゃあ、比企谷君。席が空いたんでこっち来てくれる?優美子ちゃんも一緒に来てどういう髪型にするか教えて」

 

優美子は顔を真っ赤にして睨んでいたが、店員は受け流していた。あの俺も恥ずかしいだけど。何で優美子は美容院で俺の事、喋っているの。文句ばかり言っているんだろうな、授業中寝ているとか、ボッチだとか。いや、それは本当のことか。

 

「比企谷君はどう言った髪型がいいの?」

「軽くしてくれれば良いです」

「ヒキオの言うことは聞かなくて良いし」

「このアホ毛、言うこと聞かないわね」

「ヒキオの性格が出ているからね、それを活かしてカットして欲しいんだけど」

「うん、その辺は任せて。優美子ちゃん、どういった髪型にするの?」

「ショートにしたほうが良いと思うんだけど、どう?」

「うん、似合うと思うよ。アホ毛を残すんだからトップは多めにするけどね」

 

俺のアホ毛をぴょんぴょん弄りながら、優美子と店員は喋っていた。俺は恥ずかしくて話に入れないけど。どうして大通り沿いのガラス張りの店舗なんだ。しかも俺の座っている位置は一番大通りに近い位置だし。

髪型が決まったようで髪の毛を洗った後、店員はカットしだした。優美子は後ろの席に行って雑誌を読んでいるようだな。

 

「ねえ、比企谷君。優美子ちゃんとはどうなの」

「俺は単なる荷物持ちですよ、買い物に付き合わされるだけですし」

「そんなこと言っていると、優美子ちゃんに怒られるぞ」

「優美子は学校で一番有名人って言って良いぐらいですけど、俺は最低辺で誰にも認識されていませんからね」

「ふーん、でも優美子ちゃんはそれでも、比企谷君の近くにいるんでしょ」

「ええ、からかうのが楽しいんでしょうね」

「..ちょっとは正直になった方がいいと思うよ」

「....」

 

俺は答えられなかった。自分の気持ちに正直になりたい、でも俺は自分の気持ちを欺いて優美子との時間を過ごしていた。

それ以降、店員は優美子のことで俺に話題を振ってくることはなかった。

 

「優美子ちゃん、こんな感じでどう?」

「良いじゃんヒキオ!!自分ではどう?」

「ああ、なんか全然違うな、今まで短くしたこと無かったんで。結構いいんじゃないか」

「これだと、セットも楽だしね、今までワックスとか着けていないでしょ」

「ええ、この髪型はワックスやった方が良いんですかね」

「うん、でも簡単だよ。もうちょっと調整して流したら教えるから」

「お願いします」

 

かなり頭が軽くなった気がする。まあ今まではボサボサだったからな。髪の毛を洗ってもらい、乾かした後、ワックスの付け方を教えて貰った。なぜか優美子も聞いていたけど。

ただ、大通りからの視線が痛い。最初の時は見向きもしなかったのに、カットが進むにつれ、女性の視線を感じていた。さすがにそちらには顔を向けることは出来なかったけど。

 

「いいじゃん、ヒキオ。あと姿勢をよくしな」

「ええ、辛いんだけど」

「そのうち慣れるからやるし」

「分かったよ」

「う、うん、良い感じ//」

 

俺たちは美容院を出た後、手を繋ぎ歩いていたが、ちょうど昼だったので食事を済ませ、今度は眼鏡屋に入って行った。

 

「ヒキオ、これ掛けてみて」

「俺、別に目は悪くないんだけど?」

「ファッション眼鏡だし、良いから掛けるし」

「ああ....どうだ?」

「う、うん//すごく似合っている//じゃあそれ買うから」

「ええ、要らないぞ」

「あーし、何時も買い物に付き合って貰っているからお礼がしたいし、受け取って貰えない?」

「買ってくれるのか。でもお礼は要らない。だから優美子からのプレゼントって事にしてほしい」

「わーたし。でも何のプレゼント?」

「荷物持ち以外でのお出掛け記念」

「何言ってるんだし!!..じゃあ買ってくるから」

 

なんだか照れくさいな、自分からプレゼントを欲しがるなんて。でも俺は優美子との繋がりが欲しかった。お礼だと過去のことに対しての贈り物だから。プレゼントであれば今日、一緒に出掛けた思い出の品として残せる。こんな考えがキモイんだろうな。でも優美子が俺のために、美容院に連れて行ってくれたことや眼鏡を買ってくれたことが、凄く嬉しかったから俺はお願いしていた。

 

「はいヒキオ。初美容院記念。じゃあ掛けてみて」

 

そういうと優美子は眼鏡ケースから眼鏡を出し俺に掛けてくれた。掛けてくれるとき、お互い見つめ合う形になったので、俺の顔は赤くなってしまった。優美子も赤くなっているようだ。

 

「ヒキオ//かっこいいよ//」

「あ、ありがとうな//」

 

その後、手を繋いで二人でウィンドウショッピングをしていたが、なぜか他の女性からの視線を感じる。俺の顔をチラチラ見てくる人も居るし。

 

「優美子、なんか視線を感じるんだが俺、何か可笑しいか」

「そんなこと無いって、気にするなし」

 

俺たちはウィンドウショッピングをしていたが、雑貨屋で優美子が一つのネックレスを気にいったようで、付けたりしていた。でも買わなかったようだ。優美子は言わなかったが予算が足りないのだろうか。俺に眼鏡を買ってくれたしな。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろっか」

「ああ、送ってくよ」

「うん、ありがと」

 

俺はウィンドウショッピングの途中、トイレに行ってくると言って、優美子が見ていたネックレスを買っていた。ただ渡して断られるのが怖くて渡せないでいた。

何時も最寄り駅まで送っていくので、その時に渡そうと思っていたが結局、俺は渡せなかった。断られるのが怖い、今の関係が崩れてしまうかもしれない。

俺は渡せなかったことを悔やみながらも、今の関係が続けられる事に安堵していた。

 

月曜日、俺は髪型をセットし優美子に貰った眼鏡を掛け、学校に向かった。

 

「ヒキオ、おはよう」

「うす...その可笑しくないか?」

「大丈夫、似合っているし、自信持ちな」

「ありがとうな」

 

女子生徒からの視線を感じる。優美子の言うとおり可笑しくは無いんだろうが、なんだかむず痒い。ただ髪型や眼鏡を掛けたぐらいでチラチラ見られるのは、はっきり言えば不愉快だった。

ただ、優美子が俺のために髪型を決めてくれ、眼鏡もプレゼントしてくれたので止めるつもりは無いが。

 

次の日、俺の下駄箱に手紙が入っていた。何?不幸の手紙?俺が下駄箱で唖然としていると、優美子が登校してきた。

 

「ヒキオ、おはよう」

「お、おう、お、おはよう」

「どうしたん?あ、...それって」

「ああ、下駄箱に入っててな」

「...ヒキオ、そういうのはどっちにしても、ちゃんと答えてあげて」

「..ああ、分かった」

 

休み時間は優美子が俺の席に話し掛けて来ていたのだが、今日は一度も来ることが無かった。なんだか寂しいな、でも俺から話しかけるのは回りの目が気になるので、出来なかった。

俺は放課後、手紙に書いてあった場所に向かっていた。

 

「比企谷君、来てくれてありがとう。それで返事を聞かせて欲しいんだけど」

「ああ、すまない。俺には好きな人がいる。だから付き合えない」

「そうか、ありがとうね」

 

そういうとその女子生徒は走っていった。後姿を見送った後、俺は鞄を取りに教室に向かった。

俺の容姿が変わっただけで見られたりするのが不愉快だとか、俺が人のことを言える立場だろうか。自分の気持ちに嘘をついて、今の関係が続けば良いとか綺麗ごとを並べて、自分を欺いて。先ほどの女子生徒の方が、よほど自分に正直なのだろう。

俺は優美子に対しても失礼な考え方をしているのではないのか。優美子が俺のことをどう思っているかは分からない。でも俺の気持ちを伝えても優美子はちゃんと考えて、返事をくれるだろう。

 

俺が教室に着くと、優美子が自分の席に1人俯いて座っていた。俺は教室に入り優美子の席に近づいて行った。

 

「優美子」

「..ヒキオ、返事したの?」

「ああ、断った。俺には好きな人がいるって言ってきた」

「..そうなんだ」

 

優美子は俺と目を合わせてくれない。もしかした断られるかも知れないが、今言わなければ後悔するのは分かっている。これ以上、幾ら言い訳を考えても自分の気持ちには、嘘をつけなかったから。

 

「....優美子、俺から話したいことがあるんだが、俺を見てくれないか」

「..なんだし」

 

そういうと優美子は立ち上がり俺のほうを向いてくれたので、俺は真正面に立った。優美子は憂いを帯びた表情を浮かべていた。

 

「俺には好きな人がいるんだ。休日は潰されるし、待ち合わせには何時も遅刻してくるし、わがままも言うけど、その人は俺の近くに居てくれるんだ、俺はその人と一緒に居たい。...俺は優美子が好きです。付き合ってください」

「あ、ありがと//あーしもヒキオの事が好き!!ずっと待ってたし、ヒキオが告白してくれるの//」

「え!?じゃあ、言ってくれればよかっただろ」

「女から言わせる気!?あーしは言って欲しかったの!!」

「優美子って乙女なんだな」

「..こんなあーしは嫌?」

「いや、そんな優美子も俺は好きだ」

 

俺はポケットに入れていた包みを出して、優美子に見せた。

 

「本当は土曜日に眼鏡のお返しで渡そうと思って買ったんだが、勇気が出なくて渡せなかった。優美子に受け取って欲しい」

「それって..やっぱりヒキオはヘタレだし、..あ、あーしが居てあげないと駄目だし...ウゥ」

「泣きながら言われても、説得力無いな」

「う、うっさい!!ヒキオのくせに生意気だし!!早くあーしに着けるし!!」

 

そういうと優美子は後ろを向いた。表情は見えないが、鼻をすする音がしているので泣いているのだろう。

俺は箱からペンダントを取り出し、優美子の首にペンダントをつけた後、後ろから優美子を抱きしめた。

 

「待たせて悪かった。大好きだ、優美子//」

「ううん、ちゃんと言ってくれてありがと。あーしもヒキオのことが大好き//」

 

俺達はお互い向かいあい、夕日が差し込む教室で唇を重ねた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....//」

「ゆきのん、憂いを帯びた表情ってどういうこと?」

「切なさとか悲しさが表れた表情のことよ」

「ふーん」

「結衣、本当に勉強した方が良いぞ、いくら何でも不味いぞ」

「ちょっと、ど忘れしていただけだし!!ヒッキーうっさい!!」

 

由比ヶ浜さんは本当に分かっているのかしら。そろそろ奉仕部内でも受験勉強をしていった方がいいかも知れないわね。特に由比ヶ浜さんにたいして。

 

「..け、結構恥ずかしいし//結衣も自分のを読んだとき、どうだった?」

「自分のラノベの時、感情移入しちゃうんだよね。だから人のを読んでいるときと比較にならないの」

「でもよく書けたね、材木座君。優美子の特徴とか出てたんじゃない?」

「うん、優美子って結構乙女だからね」

「奉仕部で取材したから書けただけで、口調とかいまいち分からなかったのだ」

「たしかに、三浦さんの口癖で語尾が「し」で終わる事が多いけど、ラノベの中では書いてあったり、書いてなかったりするわね」

「なかなか難しくないか、人の口癖を聞いたまま書くのであれば問題ないが、創作する際は、本人から聞いた言葉以外も書かないといけないからな。特に今回は材木座と優美子は喋ったことないだろ」

「材木座君。以前オリキャラの特徴の話をしたことがあるけれど、例えば今回なら三浦さんの口調を自分なりに色々な台詞で考えてみてはどうかしら。そうすれば本人とは異なっていても、ラノベの中では口調が統一されると思うのよ。オリキャラを考える時も参考になると思うわね」

「オリキャラの口癖や口調...確かに今まで考えたことなかったです」

 

「ヒッキーって眼鏡掛けると、どうなるんだろ」

「ヒキタニ君、私の眼鏡掛けてみてよ」

「そうね、材木座君もちょっと貸して貰えないかしら。黒ぶち眼鏡と私が貰った下にフレームがあるものと、海老名さんの上にフレームがあるもので検証できるわよ」

「やだよ、目が悪いわけでもないのに」

「いいじゃん、ヒキオ。掛けてみるし」

「いやだ」

「..あーしを抱いたのに」

「優美子!!どういうこと!?ヒキタニ君に犯られちゃったの!?」

「は、八幡!?お主、どういうことだ!!」

「優美子、誤解を生むようなことは頼むから言わないでくれ。後、海老名さん。犯るとか女の子が言うんじゃありません!!」

「あーし、男に抱かれたの初めてだったし...」

「..わ、分かった。掛ければ良いんだろ。後海老名さん、材木座。誤解が無いように言っておくが、ハグしただけだぞ」

「いや、ハグもレベル高いだろ、八幡」

「...ソレ イガイモ シテクレタシ」

 

三浦さんは何か言っていたけど、聞こえなかったわ。八幡は不貞腐れながらも、眼鏡を掛けてくれたわ。3種類掛けてくれたのだけれど、どれも結構似合っているわね//

 

「け、結構にあうじゃん//」

「ヒッキー、良いと思うよ//」

「八幡。目の淀みが分かりにくくなって、良いと思うわよ//」

「ヒキタニ君、これから眼鏡掛けようよ//」

「眼鏡とか面倒だから嫌だよ」

「ええ、もったいないなあ。ヒキタニ君が眼鏡を掛ければ、色々な男がよってくると思うよ」

「それこそ嫌だわ、どうして男に寄られないといけないんだよ」

 

「う、ううん。では今日はここまでにしましょうか」

「八幡、材木座君。帰ってもらって結構よ。他の人はちょっと待ってもらえるかしら」

「ああ、じゃあな」

「我も帰還するとするか」

 

「雪ノ下さん、どうしてヒキオを帰らせたの?あーし、一緒に眼鏡見に行こうと思ったんだけど」

「三浦さん、私も八幡にプレゼントする事を考えたのだけれど、普段から眼鏡を掛けさせると、今回のラノベと一緒のことになってしまうわ」

「ヒッキーに告白する人が出てくるってこと?」

「ええ、眼鏡一つであそこまで変わるとは思わなかったわ。タダでさえ彼の回りには女性が多いのに、これ以上増えるのはお互いのため良くはないと思うの」

「男が寄ってくれば面白いと思うよ、雪ノ下さんもこっちの世界に来なよ」

「そ、それは結構よ。海老名さん」

「そっか、ヒキオに絡んでくるのを防ぐためだね」

「ええ、私たちだけが知っていれば、この部室内や遊びに行ったとき、掛けて貰うことが出来るでしょ。そちらの方が良いと思うの」

「じゃあ、ヒキオが眼鏡でイケメンになるのは、ここに居る人だけの秘密ってことで良いじゃん」

「でも一色さんやラノベを書いて貰っている人達はここによく来るので、もし掛けていたら気づくでしょうね」

「ヒキオの回りに居る人は良いでしょ。他の女避けってことで」

「残念だけど、私は良いよ」

「そうだね、口外するようなことじゃないしね」

「分かったわ」

 

由比ヶ浜さんが口外という言葉を知っているとは思わなかったわ。八幡がいれば言っていたのでしょうけど。

でも、まさか眼鏡であそこまで印象が変わるとは思わなかったわね。今度遊びに行くことがあれば掛けて貰いましょう。八幡から買い物のお誘いとかしてくれないかしら。

 

 

 

 

 

 



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28話

「八幡、今回はSFを書いてみたのだ。後、メインではないがオリキャラも入れてな」

「パクリじゃないよな」

「....ちょっとは、似ている作品があるというかまあ、読んでくれ」

 

材木座君は由比ヶ浜さんと最近よく遊びにくるようになった三浦さんにラノベを渡したわ。と、言うことは私が出ているのね。

 

「まあ、良いんじゃないかと思うけど、中二、これって先生にも見せるの?」

「いや、先生は出していないぞ、見せる予定はない」

「ふーん、じゃあ、後で先生に見せて良い?」

「いや、それは止めてくれ。我が殺される」

「やっぱり先生じゃん!!バレたらまた怒られるよ」

「結衣、良いんじゃない。あーしらだけで批評すれば良いっしょ」

「そうなんだけどね、じゃあゆきのん、ヒッキー読んでよ」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

西暦20xx年

 

「目覚めたか、ユキノ」

「....お久しぶりになるのかしら?ドン・シーズー」

「ああ、君は20年ほど眠っていたことになるな」

「私を起こしたということは、また敵が見つかったのね」

「着いて来たまえ」

 

私は冷凍カプセルを出ると掛けてあった服を羽織り、ドン・シーズーの後ろを着いて行ったわ。艦長室に入ると彼女は喋り出した。

 

「これは太陽系第3惑星より届いた電波に含まれていた音声だ」

『い、痛い!!』『もう許してぇ!!』『ら、らめー!!』『死んじゃうー』

「こ、これは!?」

「太陽系第3惑星では男と女が共存しているようだが、女が虐待され殺されているのだ!!」

「...それで私を起こしたと言うわけね」

「ああ、男はわれらの敵。お前に殲滅してもらわないといけないのでな」

 

私は小さい時からカプセルに入れられ、過去の記憶は戦艦の中での事しか覚えていないわ。でも、私と同じような女性が何人もいて私を慕ってくれている。

男は女を殺す敵、私はそう教えられ、そして今回のように電波を受信し、女が殺されている星で私たちが男を殲滅してきた。

 

話を聞き終わり食事を出してくれたのだけれど、またこれなのね。ご飯の上に合成肉と何かのタレを掛けただけのもの。食事は栄養補給だけ出来れば良いだけなのだけれど、私の喉は何故かこの食べ物を何時も拒むの。

私は数回、口に入れてもう要らないと伝えて自室に戻ったわ。

 

私たちの戦艦は第3惑星の衛星までたどり着いていた。この星ではまだ、宇宙進出は進んでいないようね。人工衛星があるぐらいで、防衛施設は無いようだし。

 

これなら簡単ね、私が乗る戦闘機、PA-N3(パンさん)の敵では無いわ。あちらの戦闘機は宇宙に出ることが出来ないようだし。

私たちは宇宙空間から大気圏へ突入し、海上を駆け抜けていった。多分私たち3機の戦闘機が大気圏に突入したのは、ばれているわね。今回は視察なので良いのだけれど。

 

「あなたたち、男の戦闘機が来ると思うわ。気をつけてね」

「はい、お姉様」

「って、ゆーかー、楽勝でしょ」

 

 

「戸塚、材木座、気をつけろよ、女だからって気を抜くな」

「ハハ、八幡。怖気づいたか!!女だらけなら我にも彼女が出来るかも知れんのだぞ!!ははは...ぐわぁーーー」

「材木座!!」

「材木座君!!」

 

材木座の脱出ポッドが射出されるのが見えたが、気を失っているのか返答がない。あんな距離から射撃出来るなんて凄腕がいるようだな。

 

「ふ、簡単なものね。あんな長距離からの射撃を避けれないとは。所詮男なんてこんなものなのね」

「あいつか、今撃ったのは。戸塚!!俺はあのパンダカラーを追うから他を頼む」

「了解、八幡!!」

 

俺はHK−80000(ヒッキー)を急速反転させ、白黒パンダカラーの戦闘機を追いかけて行った。

 

「何?私に付いて来れる男がいるのね、いいわ。相手になってあげる」

 

俺たちはドッグファイトを繰り広げていた。って、言っても相手の戦闘機が凄すぎてミサイルを避ける事しか出来ないけど。消耗させて何とか一太刀浴びせるしかないな。そう考えていると、またミサイルを撃ってきやがった!!俺は姿勢制御用バーニアを駆使し、すんでの所で避けていった。こんな使い方、いっつも怒られてたんだけどな。今は練習しといて良かったぜ。

 

「なぜ当たらないの!?」

「あっぶねー!!今のは当たると思った!!でも燃料が不味い、せめて一太刀浴びせないと。...しょうがない、アレをやるか。ヒッキー、持ってくれよ」

 

俺は無人島に舵をとり、低空で山を旋回中、相手の視界から消える位置でホバリング用のバーニアを最大出力で噴射した。ヒッキーの色々な所が悲鳴を上げている。俺の身体も目玉が飛び出すほどのGを受けてブラックアウトしかけたが、俺の下をパンダが通り過ぎるのが見えた。俺は一気に加速し後ろを捕らえると、ミサイルを全弾発射した。

 

「い、何時のまに後ろに!?あ、当たる!!..キャー!!」

 

相手のエンジンにミサイルが当たったが、被弾しただけで、爆発まではしなかった。何であんなに堅いんだよ。だが、エンジンが止まっているので、無人島に不時着するようだな。こっちも燃料が基地までは持ちそうに無い、俺もパンダを追って無人島に着陸した。

 

 

私はコクピットから出たのだけれど、足が折れているのか、とても立てないわね。男が戦闘機を出てこちらに歩いてくるのが見えるわ、私はこのまま殺されるのね。ヒビ割れたバイザーのため、男の顔がよく見えないけれど。私はヘルメットをとると髪の毛が垂れ下がってきた、髪留めも何処かにいってしまったわね。

男は私の顔を見て、驚いていた。多分この星にいる女性と何処か異なるのでしょうね。

私は男を睨んでいた。やはり男と女では体の作り、顔立ちは違うわね。何だか目が腐っているようだし。

 

「美しい...」

「..うつく..しい?くっ、殺しなさい!!」

 

うつくしいとはどういう意味なの?でも、ここで殺されるなら関係ないわね。

 

「どうして殺さないといけないんだ?」

「男は女を殺すのでしょ」

「女は愛するものだろ?キスしたり、抱きしめたり」

「愛する?キス?抱きしめる?」

「知らないのか」

 

私は今から殺される感覚を妹たちに送り後を託すため、脳内ネットワークをオンにしたわ。この距離だと一緒に来た2人にしか通じないでしょうけど。

 

「私にキスと言うものをするのね?」

「良いのか?俺、初めてなんだが//」

「早くしなさい、生き恥を掻かせるつもり?」

「..分かった、目を瞑ってくれ」

「出来ないわ。私はどのような行為なのか、見ていたいの」

 

そういうとその男は顔を近づけてきた。妹たちに男の虐待を知らすため、目を閉じる訳にはいかないわ。そう思っていると、私の唇に男の唇を重ねてきた。

え!?あ、あああ!!私の体を何か電気のようなものが流れ、私の体は力が抜けていく。私は目を見開いて男を眺めていたわ。その男は私の頭を抱えて咥内に舌を入れてきた。私の舌と男の舌が絡み合う。私は何も考えられなくなっていた。でもこの感覚に溺れてしまいたい。いつの間にか私は目を閉じ、自分から男の咥内に舌を絡めていた。

 

男は力が入らない私の体をゆっくり寝かせてくれたわ。先ほどの感覚は何だったの?怖い。あんな感覚、始めて味わったから。でも怖いのだけれど、もう一度味わってみたいと思う自分がいる。

男は私が寝ている上に体を重ねてきたわ。どうして私の心臓はこんなに音を立てて鼓動を速くしているのだろう。男は私の上に体を重ね、また唇を重ねてきたわ。そして私の胸に手を乗せて、優しく擦ってきた。

私は唇が塞がれているため。声にならない悲鳴を漏らしていたわ。

何も考えられない、この感覚は何?私は男のなすがままになっていた。

 

ぐーーー。

 

私のお腹が音を立てて空腹を知らせてきた。男は笑い唇を離して私の体から離れたのだけれど、寂しい。先ほどの行為を続けてほしい。でも男にそんなことは言えないわね。

 

「ちょっと待っていろ」

 

男はそういうと、自分の戦闘機に向かい、戻ってきたわ。手にカバンを持っているわね。

 

「これを食べろ、結構おいしいと思うぞ」

 

男は包みから何かを取り出すと私に渡してきた。私は受けとると恐る恐る口に含んだのだけれど、今まで味わったことのない味だわ。でも、もっと食べたい。

 

「いい顔をしているな、おいしいか?」

「おいしい?もっと食べたいのだけど」

「いっぱい食べたいと思うって事はおいしいってことだ。こっちも飲んでみろ」

 

そういうと、男は私に黄色い容器を差し出してきた。

 

「甘いけど、おい..しい」

「お、マッカンの味が分かるんだな、おいしいだろ」

「もっと飲みたいわ」

「すまん、今はそれしかないんだ。俺の名は比企谷八幡。八幡でいい、お前は?」

「ユキノ。私の名前はユキノよ」

「良い名だな、ユキノ。よろしくな」

「八幡は敵でしょ、どうしてよろしくなんて言うの?」

「俺はユキノと友達になりたい。駄目か?」

「友達はキスをするのかしら?」

「普通はしないな」

「では嫌だわ、私は八幡にキスして欲しいの」

 

私はなぜか八幡にお願いをしていた。

 

「ああ、さっきは済まなかった。ユキノが美しくて、自分を見失ってしまったんだ。本来キスや抱き合うのは愛しあう男女が行う行為なんだよ」

「八幡は私を愛してくれないの?」

 

その言葉を発したとき、私は悲しくなってしまったわ。八幡にキスして欲しい、抱いて欲しい、愛して欲しい。

 

「お互いの事、まだよく知らないだろ。ユキノは男と話すのは初めてだよな?だからまずは友達として仲良くなろう。そしてお互いが好きになったら恋人になってくれ」

 

その時、私達の会話を遮るように戦闘機が上空に飛来してきた。八幡の仲間だろう、私は殺されるのね。

 

「材木座!!お前生きていたのか!?」

「ああ、我がそう簡単に死ぬ分けなかろう」

「包帯グルグル巻で強がってもしょうがないだろ」

 

私は救助にきた救助用戦闘機に乗せられた。八幡が言っていた恋人とはなんだろう。私は生まれて初めて死にたくないと思っていたわ。八幡の事を知りたい、愛して欲しい。

 

私は捕まったが酷い扱いは受けなかった。どうしてだろう、男は女を殺すのではないの?

 

私は医療施設に入れられ、治療を行ってくれたわ。私の身の回りを世話してくれていたのは女性で比企谷小町と名乗って、八幡の妹だと教えてくれた。

妹とは何か分からなかったのだけれど、彼女は色々教えてくれたわ。

この星では男と女が愛し合い、小さい子供を作ること、その子供が成長してまた、他の子と愛し合い、子供を作っていくこと。

私には最初、理解できなかったが、彼女は親切に教えてくれた。

 

「お、お兄ちゃんにキスして胸を触られたんですか!!」

「ええ、私は何が起ったのか分からず混乱してしまったわ、でもまたキスしてほしい。抱いてほしいと思っているの」

「あ、あのお兄ちゃんが、初対面の女性に手を出すなんて。よっぽどユキノさんの事が気にいったんですね。でもユキノさん、その抱かれるってどういうことか判っています?」

「八幡がやってくれたことでしょ?」

「それはまだほんの一部です。その後、あんな事やこんな事やってって何を言わせるんですか!!」

「何を言っているのかしら、小町さん?」

「分かりました、ユキノさん。あまり良くないんですけど、これを見てください」

 

小町さんはそういうと彼女が連絡を行う端末で動画を見せてくれたわ。男女が裸で出ていて絡み合っていてる。え!?なにこれは!?抱き合うというのはこういうことなの!?

 

「分かりましたか、ユキノさん」

「....」

「ちょっと刺激が強すぎましたね、でもユキノさん。男性に抱いてほしいと言うと、こういう行為を行うことを言うんです。だから誰にでも言って良いものじゃないんですよ」

「...そ、そうなのね//」

「だからお兄ちゃんもお互いが好きになって、恋人になったらって言ったんです。以前、ユキノさんたちが、ここに攻めてきた理由を教えてくれましたけど、それも抱き合っているときの女性の言葉なんです」

「え?でも痛い、許して、死んでしまうとかは殺されるからではないの?」

「私はその音声を聞いていないので、もしかしたら間違っているかもしれません。確かにこの星ではまだ、戦争が起っており女性だけでなく、男性も殺されたりしてますから」

「だったら」

「その、抱き合っている行為を見てもらいましたけど、男性に初めて抱かれるとき、女性は痛いんです。私も経験ないので聞いた話しか出来ませんですけど、でもその内凄く気持ち良くなって、意識が飛んでしまう人もいるらしいです。比喩表現、例えと言った方が良いんでしょうね」

「では私たちは男女がいるところで男を殺していたけど、女が愛している男を殺していたの?」

「...ごめんなさい、それに付いては分からないです」

「..小町さん、ごめんなさい。一人にしてもらえないかしら」

「ええ、でも慰めにならないでしょうけど、ユキノさんは知らなかったんですから、どうしようもなかったと思います。それではまた来ますね」

 

私たちは愛し合っている男女の中を引き裂いていたというの?小町さんの話では男が居なければ子供を作れない。私たちはその種族を守るつもりで滅ぼしていたと言うことでは?

では私が今までやってきたことは何だったの?私は許されないことをしていたのね。涙が溢れて止まらない。私は声を上げて泣いてしまっていたわ。

 

「ユ、ユキノ!!大丈夫か」

「八幡!!」

 

私が泣いていると八幡が入ってきて抱きしめてくれた。でも、私の涙は止まらなかったわ。

 

「ユキノ、小町から聞いた。お前が全宇宙を敵に回しても、俺はお前の味方だ」

「八幡、良いのよ。私は許されないことをしていたわ。私は生きていてはいけないのよ」

「ユキノが死んでも、その人達が生き返るわけではないだろ。それならこんな悲しいことがこれ以上行われないように、ユキノのすべき事があるんじゃないか」

「...そうね、責めてもの罪滅ぼしとして、これ以上の殺戮を止めないと行けないわね」

「ああ、だから俺たちに手を貸してくれ」

 

私が八幡と抱き合っていると扉をノックする音が聞こえ、見覚えのある人達が入ってきたわ。

 

「ユキノ!!」

「お姉様!!」

「アイ!!アヤ!!どうして、あなたたちがここに!?」

「お姉様が脳内ネットワークを通じて送ってくれた情報で私たちは戦闘中、混乱してしまったんです。でもお姉様は送信しかしていませんでしたけど、私たちはお互い話し合って投降したんです、お姉様が味わったキスをしてもらいたくて//」

「そうなのね、ごめんなさい。混乱させてしまって」

「って、ゆーかー、ユキノのお陰でキスしてくれる人も見つかって幸せだしね//」

「ええ!?恋人が出来たと言うの?」

「私の恋人はお姉様が撃墜された材木座さんです//私たちもこの施設から出ることは許されていません。でもここで療養していますので、いつでも一緒に居られて嬉しいんです」

「って、ゆーかー、彩加ほどの男が居る分けないじゃん。でもたまにしか会えないんだけどね」

 

「ユキノ、彼女達が乗っていた戦闘機の操縦方法を教えてもらえないか」

「八幡、どうして」

「俺がドン・シーズーを討つ。そうすればこの戦争は終わりだろ」

「私も一緒に戦うわ、八幡と一緒に」

「ああ、よろしくな」

 

その後、私たちはこの戦争に終止符を打つため、話し合いを行ったわ。彼女達が帰っても八幡は私の隣に居てくれた。

 

「ユキノ、そ、その俺と恋人になってくれないか」

「はい、八幡。私の恋人になってください」

 

私たちは唇を重ね、八幡はベッドに私を押し倒してきたわ。小町が見せてくれた動画のようなことを行うと思うと、正直怖い。体が震えてしまう。

でも八幡は、私をやさしく体に触れてくれ、いつのまにか私の中から怖いと思う感情がなくなり、次第にもっと触ってほしい、求めてほしいと思うようになっていたわ。

....

...

..

.

いつの間にか私は眠ってしまったようね。朝、目を覚ますと八幡の腕に抱かれて寝ていたわ。八幡は私を抱いてくれた。確かに最初は痛かったのだけれど、幸せな痛みだわ。始めて味わった快楽に自分を見失ってしまったし。

そう考えていると、八幡も起きたようね。お互い照れながらも挨拶し、どちらからともなくキスを交していたわ。

 

 

ドン・シーズーの戦艦は私たちが始めて出会った無人島の近くにまで降りてきたようね。PA-N3(パンさん)の操縦席に八幡が乗り私は副操縦席に搭乗し戦艦まで向かって行ったわ。

 

「八幡、私が脳内ネットワークを使って説得をするわ」

「ああ、頼む。俺は極力戦闘に巻き込まれないようにするから」

 

[お願い!!話を聞いて!!]

 

「ドン・シーズー。あの戦闘機から私たちの脳内に語りかけてきています。話を聞かれたら」

「うるさい!!男に降伏した奴の話など聞けるか!!」

 

何度問いかけても、話を聞いてくれない。私は諦めそうになると、八幡が話しかけてきた。

 

「ユキノ、危ないが俺たちがキスしている姿を見せよう。アイやアヤのように降伏してくれる女性も要るかもしれない」

「八幡!!危ないわ。飛んでいる最中にそんなこと」

「このままだと、俺たちも殺られるぞ」

「..そ、そうね。やりましょう」

 

八幡は戦闘空域を一度離脱し、大きく旋回し戦艦の方に向かっていくようにして、速度を最大限まで下げていったわ。

コクピットハッチを開けると、お互いシートに捕まりキスを交わした。

そのまま戦艦に向かって飛行して行くと、私たちの回りから徐々に戦闘行為がなくなっていったわ。私の脳内には彼女達の混乱した叫びが聞こえてきているの。

 

「あ、ああ!!ド、ドン・シーズー!!」

「ええい、代われ!!」

 

ドン・シーズーが放ったバルカンの銃弾が八幡の肩を掠めていったわ。八幡が体制を崩したので戦闘機が傾くと私は空中に投げ出されていた。

ああ、私はこのまま死んでしまうのね。でも死にたくない。八幡にもっと愛して欲しかった。

私が考えていると八幡はパンさんで私を追ってきてくれたわ。駄目!!海との距離が近すぎる!!八幡も死んでしまうわ!!

 

八幡は私に追いつき、手を繋ぐと私を自分の膝に乗せてくれたわ。その後一気にバーニアを噴射して方向転換しようとしている。

 

「上がれーーー!!」

 

海に激突すると思った瞬間、巨大な水しぶきを上げながら、パンさんは海上を疾走していたわ。

 

「八幡!!無茶しすぎよ!!あなたが死んだら、私はそれこそ自分を許せないわ!!」

「ユキノのいない世界に俺が居る意味ないだろ。俺にとっては自分の命よりユキノ、お前が大事なんだ」

「ああ、八幡!!」

 

私はこの時、始めて人を愛すると言う言葉の意味が分かった気がしたわ。自分のことより相手を想いやること。私にとって八幡は掛け替えのない存在として自分の中で今までより大きくなっているのが分かる。

そして、私の考えが脳内ネットワークを通じて送られると、戦闘行為が鳴り止んだわ。ドン・シーズーからの攻撃以外は。私は何とか服操縦席に移動して八幡の邪魔に為らないようにしたわ。

 

 

[男など!!男など要るものか!!]

[あなたにもきっといい人が見つかるわ!!だから降伏して!!]

[うるさい!!私のことを愛してくれる男性など居るものか!!]

 

「ユキノ、ドン・シーズーに有効な攻撃はあるのか」

「彼女には何も効かないわ、ミサイルも効かない。どんな攻撃でも弾いてしまうの」

「次元断層ミサイルを使うしかないか」

「彼女を他次元に送るのね」

「ああ、ユキノ。戦艦の近くに居る人たちに退くよう言ってくれ」

「ええ...送ったわ」

 

八幡はドン・シーズーの戦艦に照準を合わせ、発射ボタンを押したのだけれど、何も反応がなかったわ、壊れてしまったのかしら。

 

「どうやら、発射装置がイカれたらしいな。ユキノ、シートベルトはしているか」

「ええ、でもどうするつもり?」

「ユキノ、愛している。幸せになってくれ」

「え!?八幡!!」

 

八幡は服操縦席の脱出ボタンを押し私をパンさんから脱出させたわ。パラシュートが開き、私がパンさんを見ていると、八幡は戦艦に特攻していったわ。戦艦を見たことのない光が包み込み、一瞬にして何もない空間になっていた。

 

私は言葉に成らない悲鳴をあげ、気を失ってしまったよね。気づいたときには病院だったわ。

 

次元断層ミサイルは設計ミスか10ヶ月後には消えた空間に再出現すると言うことだったわ。別次元の中では10分ぐらいしか感じないと言うことだけれど、八幡が帰ってくる。私はそれだけで嬉しくて泣いてしまったわ。八幡が帰ってくる日が待ち遠しい、でも死んでしまったと思っていたから何時までも待っていられるわ。

私たちは、地球の人たちに受け入れてもらえた。最初は戸惑うことばかりだったけれど、今では日々の生活に満足しているわ。でも私は隣にいてほしい人がいないから何時も寂しく感じているのだけれど。

 

数ヶ月後、私は戸塚君と材木座君にお願いして八幡と始めて出会った無人島に連れて来てもらったわ。

丘の上に立ち八幡が消えた空を眺めていると涙が溢れてくる。八幡と出会ってから私の中で色々な感情が芽生えていったわ。最初は戸惑いが多かったのだけれど、今ではそんな感情が嬉しく感じられる。

 

「八幡、私は何時までも待っているわ。元気に帰って来てください。二人で待っています」

 

私は大きくなったお腹を擦りながら何時までも八幡のことを想いつづけていた。

 

*********************************

 

 

 

おまけ

 

俺は、戦艦に衝突する寸前に脱出装置で衝突は免れていた。だが、次元断層には巻き込まれ、今、戦艦の上に降り立っていた。

 

近くのハッチから女性が顔を出してこちらを伺っている。他のハッチも開き、何人もの女性がこちらを伺っていた。すると一人の女性が近づいてきて、俺に話しかけてきた。

 

「あなたが、八幡ですか?」

「あ、ああ、そうだが」

「キスしてください!!」

 

その女性は俺に飛びついてきた。身構えていたので辛うじて避けれたが、その様子を見ていた他の女性達も俺たちの方に走ってきた。

 

「「「「「キスしてください!!」」」」」

 

俺は身の危険を感じ、彼女達から逃げるよう戦艦を走り回っていた。すると前に有った瓦礫が、吹き飛び中から一人の女性が出てきた。あれはドン・シーズー!!

彼女は瓦礫を吹き飛ばした後、こちらを見たかと思うとすごい勢いで走り出してきた。

 

「八幡!!キスさせろーーーーー!!」

 

俺は、戦艦の中を逃げ回っていた。

 

八幡が地球に帰れれるまで、後五分。彼は逃げ延びることができるか。

 

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....八幡との子供//」

「..材木座、これ思いっきりパクリじゃないか。マクロスだろ、これって」

「イノベーションを受けたと言ってくれ」

「あ、あと材木座君、おまけは不要だわ。これは蛇足ね」

「大体、今の戦闘機が若干進化しているぐらいのときに、次元断層ミサイルはおかしいだろ。宇宙にも進出していないのに次元断層なんて発想出てくるか」

「それこそ八幡。アニメに捕われすぎなのだ。もしかしたら宇宙に出る前に2次元に行ける技術が出来るやも知れぬし」

「中二、途中でバルカンで打たれる所ってナウシカだよね。後、ゆきのんを助けてパンさんを操縦している所って、もしかしてラピュタじゃないかな」

「むうう、由比ヶ浜殿がジブリ作品に精通しているとは」

「後、マクロスって優美子がよく歌っている「あーしの歌を聞け!!」ってやつじゃないの?」

「ゆ、結衣!!バラすなし//」

「え!?優美子ってマクロスの曲、歌えるの」

「...シェリル・ノームだけね。ライオンって曲が気になって姫菜に教えてもらって、「マクロスフロンティア」と「愛・おぼえていますか」を見たし。だからこのラノベってマックスとミリアの戦闘シーンって分かるし」

「優美子、よかったら一緒にカラオケで聞かせてほしいんだが」

「み、三浦殿、我もぜひ聞いてみたい」

「今から皆で行けば良いし。じゃあ、今日はアニメ縛りでカラオケだね」

「雪乃と結衣は大丈夫か」

「魔女の宅急便とかでも良いのかしら、私はあまり知らないのだけれど」

「私はレールガンとかGODKNOWSとかは歌えるよ」

「良いじゃん、皆で行って発散するし」

「八幡、嬉しいぞ。まさか我が女子とアニメの曲縛りでカラオケボックスに行けるとは!!」

「ラノベの批評が途中だったが、よかったのか」

「そんなことより、今はカラオケの方が我にとっては重要なことなのだ!!」

 

材木座君は興奮しているわね。鞄から光る棒を2本取り出していて、八幡に怒られてるし。

いつの間にかラノベの批評からカラオケになってしまったわ。でも部活終わりにこうやって皆で遊ぶのも楽しいわね。

でも、私は何を歌おうかしら。あまりアニメの曲は知らないし。三浦さん、由比ヶ浜さんの曲を聞かせてもらえば良いわよね。八幡もアニメの曲なら色々知っているでしょうし、教えてもらえば良いわね。

 




今回は自分で読んで見ても剰りにも酷かったので批評は脱線させて辞めさせて貰いました。


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29話

「ひゃっはろー」

「こんにちは、陽乃」

「うん、比企谷君こんにちは」

「はぁ、姉さん。またラノベを頼んでいたようね」

「雪乃ちゃん、自分たちも一杯書いて貰っているんだから良いでしょ」

 

今日は既に材木座君が来ていて誰のラノベを書いたか聞いていたけれど、材木座君も大変ね。こんなにラノベを書かされて。私たちは良いのよ、奉仕部で受け持った依頼だから。

材木座君は姉さんが来る前に由比ヶ浜さんに呼んで貰っていたわ。

 

「じゃあ、みんなで読んでみましょうか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

私は高校三年となったが何も面白い事がない。あるとすれば静ちゃんと話しているときぐらいだし。だから静ちゃんが作った奉仕部に入ったけど、依頼と言っても詰まらないものばかり。高校になったら中学の時より面白可笑しく三年間過ごせると思っていたけど、この二年間はたいして面白いことは無かったな。後一年。ううん、もしかしたら大学に入っても一緒なのかな。私がそんな思考を巡らせていると、扉がいきなり開けられた。

 

「陽乃、失礼するぞ」

「静ちゃん、ノックぐらいしてよ」

「陽乃、先生と呼べ。良いじゃないかノックぐらい。比企谷、お前も入れ」

 

そういうと静ちゃんは男子生徒に部室に入るよう促した。多分一年生だよね、彼を見ると目が淀んでいるように見える、何か依頼かな。

 

「お、お邪魔しましゅ」

「ぷぷ、しましゅって」

「陽乃、笑うな。緊張しているだけだ。この小僧なんだがな、余りにもふざけた宿題を提出したので、罰として奉仕部に入部させることにした」

「小僧って。そりゃ先生の歳から見たらガキでしょうけど」

 

その男子が言い終わるかどうかの所で、静ちゃんが拳を出していた。髪の毛が揺れている、静ちゃんの拳を避けることが出来る人、中々いないからね。静ちゃんがワザと外したんだろう。

 

「比企谷、女性に年齢の事を言ってはいけないな」

「わ、分かりました。でも、なんですか入部って俺、何も聞いてないですよ」

「今、始めて言ったからな。お前は陽乃と一緒にこの部室で部活動をするんだ。陽乃、後は任せたぞ」

 

静ちゃんはそう言うと、部室を出て行った。

 

「座ったら」

「あ、はい。一年F組の比企谷八幡です」

「私は三年の雪ノ下陽乃よ、知ってるよね」

「いいえ、始めて知りました」

「...ふーん、それでどんなフザケた宿題を提出したの?」

 

私を知らない子なんているんだ。まあ一年生ってことは入学して一ヶ月も経ってないし、そう言う子も居るんだな。今のところ大きなイベントもなかったし。

 

「中学生活を振り返ってって作文ですよ。ちゃんと書いたんですけどね」

「どんな内容を書いたの?」

「リア充、爆発しろとかですね」

「あはは、それは静ちゃん怒っちゃうよ。それでここに連れてこられたんだ」

「ええ、ここは雪ノ下先輩一人ですか」

「うん、入りたいって子はいたんだけど、私からお断りしているの」

「じゃあ、雪ノ下先輩から平塚先生に言ってください。比企谷は要らないって」

「どうして?こんな綺麗なお姉さんと一緒に居られるんだよ」

「..正直に言っていいですか」

「うん、いいよ」

「雪ノ下先輩の表情、はっきり言ってすごく怖いです。その作った表情から何を考えているか、読めないんです。そんな表情されて二人で部活なんて、俺にはとても耐えきれないですよ」

「..ふーん、私のことそんな風に言った人初めてだよ」

 

何?この比企谷君って子、私の仮面を見破ったって言うの?初対面で見抜かれたことなかったし、何時も一緒に居るクラスの子たちにもバレていないのに。

これは静ちゃんにお礼を言わないといけないかも。すごく面白い子を連れてきてくれたんだから。

 

「では雪ノ下先輩。平塚先生のことお願いします」

 

そういうと比企谷君は席を立とうとしたので、私は呼び止めていた。素顔を出して。

 

「比企谷君、何を言っているの?辞めさせる訳ないでしょ。私の素顔を見たんだから」

「...綺麗ですね、俺は素顔の方が好...い、良いと思いますよ//」

「ふふ、ありがとう。でもこれで部活は一緒にやらないとダメだからね」

「...はぁ、分かりました。では雪ノ下先輩。これからよろしくお願いします」

「じゃあ、これから私は八幡って呼ぶから、八幡は陽乃って呼んで」

「い、いや、それは出来ないです。雪ノ下先輩」

「陽乃」

「雪ノ「陽乃」下...」

「...」

「...は、陽乃さん」

「..まあ今はそれでいいか。いつか呼び捨てにしてね、八幡」

 

こうして奉仕部に新しい部員が入ってきた。私は八幡の事を何も知らない。八幡も私の事を知らない。でもこれから二人で過ごして、お互いの事を理解していければいいな。

 

八幡が入部してから一週間、私たちは色々な事を話した。八幡が部活に入ってから、私は学校に来るのが楽しみになっていた。八幡と話しているだけなんだけど、凄く楽しくて堪らない。

八幡には友達はいないらしい。私には友達と呼べる人はいるけど、でも本当の意味での友達って居るのかな。本当の友達って何だろう、お互いの考えを言い合ってる人?それであれば、八幡と私は既に友達だと思うけど。私の友達で考えを言い合って尊重できる人って八幡ぐらいしか思いつかない。

 

「八幡、私と八幡って何?」

「部活仲間って所じゃないんですか」

「私と八幡は友達じゃないの?」

「..友達って今まで居たことないんでよく分からないんですよ、話したりウェイウェイ騒ぐだけなのが友達なら、俺と陽乃さんは色々話しているんで、友達って言って良いと思いますけど」

「そんなに深く考えなくていいでしょ、八幡は私の素顔や今まで話してきたことを知っている。私は八幡の話してきたことを知っている。お互いの意見を言い合える、だから友達じゃ駄目?」

「まあ、陽乃さんが俺で良いのなら」

「うん!!じゃあ、これからは友達ってことで願いね」

「はい、俺もお願いします。は、陽乃//」

「!!...うん、八幡//」

 

今まで、呼び捨てで呼んでって言っても聞いてくれなかったのに、始めて呼ばれて私は照れてしまった。八幡も照れてるけど、こういう所可愛いんだよね。達観した事を言ったり、捻くれた考えを持っているけど、私と話している時たまに年上のように感じることがある。自分の考えをしっかり持っているから、つい甘えそうになったり、頼ってしまいそうになることもあるし。

 

「八幡、ひゃっはろー!!」

「おはようございます。なんですか、その挨拶は陽乃さん」

「陽乃」

「は、陽乃//」

「ちょっ、て、手を繋がないでくださいよ//」

 

私は挨拶をするとすぐ彼の手を取った。私もちょっと恥ずかしいけど、八幡は顔を真っ赤にしている。下駄箱なので、他の生徒が私たちの事を見て驚いた表情をしていた。私は今まで異性に対してこういった態度をとったことはないけど、八幡だけは別。私を対等に見て接してくれるから。

私たちが八幡の教室に向かっていく最中、廊下はさながらモーゼの十戒のようだった。生徒が私たちを見るとみんな廊下の端っこに移動して、こちらを眺めていた。

あーあ、楽しい時間ってすぐ過ぎちゃうな、もう八幡の教室に着いちゃった。この手を離さないといけないな。

 

「八幡。また部活でね」

「分かりました。陽乃さん」

「....」

「陽乃//」

「うん、じゃあね」

 

放課後、部活に八幡が顔を出すと挨拶もそこそこに、すぐ文句を言ってきた。

 

「今日、大変だったんですよ。話したこと無い連中から「何で手を繋いでいるんだ」とか「名前で呼んでいるけど付き合っているのか」って、質問攻めですよ」

「へぇ、それで八幡はなんて答えたの?」

「と、友達だって言いましたけど//信じてもらえなかったですね」

「よかったじゃん、クラスでも話す友達作れるかもよ」

「良いですよ、そんなの。皆、俺を通して陽乃の近くに近づきたいだけなんですから」

「八幡はそういうのも分かっちゃうんだ」

「そりゃ、今まで喋ったこと無いのに、今日の朝のことで喋りかけられれば、嫌でも気付きますよ」

「でも、中には八幡と話す切っ掛けが欲しかった子がいると思うよ」

「それは無いですね、俺と喋りたいって奇特な人がいるとは思えないし」

「じゃあ、私は奇特な人なんだ」

「そうじゃないですか、俺を部活に入れて話し相手にしてるぐらいなんで」

「あはは、そうだよね。....八幡。今もこの部活、辞めたいと思っている?」

「..俺は陽乃と話している時、すごく充実しているんですよ。お互い本音で喋れるって中々無いですからね。ここに入るまでは学校にも来たくなかったんですけど、今はこの部活が楽しみで学校に来てますよ」

「よかった、そう言って貰えて」

「でも、陽乃は三年だからもうすぐ引退ですよね」

「え?なんで?」

「普通、一学期が終了したら、受験勉強のために引退するんじゃないんですか?」

「私、辞めないよ。受験勉強なんてしなくても大学入れるから。勉強するならここでも出来るしね」

「じゃあ、まだ部活続けるんですね.....ヨカッタ」

 

中間テストが始まるので、部室が一週間使えなくなった。八幡と合えない。って普通なら思うんだろうけど、私は八幡のクラスに放課後お邪魔していた。

 

「ひゃっはろー、八幡」

「は、陽乃。何しにきたんですか」

「部活ないからさ、遊びにきたよ」

「すみません。俺、さすがに勉強しないと不味いんで」

「じゃあ、お姉さんが見てあげるよ。八幡って数学苦手なんだよね」

「結構ですよ。陽乃は自分の勉強してください」

「私、やる必要ないもん。八幡の苦手教科教えてあげるからね」

「..じゃあ、お願いします」

 

私たちは放課後、サイゼや図書館に行って勉強していた。八幡は数学さぼっていただけで、理解はするんだよね。だから教えている方も楽しくなってくる。いくらでも教えたことを吸収していくから。

 

「八幡。中間テスト終ったけど、どうだったの」

「陽乃のおかげですごくよかったですよ、全教科平均点以上でしたし」

「そんなので満足していたら駄目だよ。学年一位を目指さないと」

「俺なんかには無理ですよ。今の成績を維持するように頑張りますよ」

「だーめ。私と一緒の大学を目指してもらわないと。まあ私の希望だけどね」

「..まあ、努力はしますが、期待しないでくださいよ」

 

私は八幡といる時間を高校だけで終わらせたくなかった。私が大学に行っても二年待っていれば、その後の二年間は一緒に過ごせるから。

 

「雪乃ちゃん。今日、私の友達呼んでいるからね」

「姉さんが友達を家に呼ぶなんて珍しいわね、どういった人?」

「私の仮面を初対面で見抜いた捻くれた思考の持ち主だよ」

「..何時も喋っている人よね、信頼出来る人?」

「私を雪ノ下家の陽乃ではなく、雪ノ下陽乃として見てくれる。そう言えば雪乃ちゃんなら分かるよね」

「部屋に行っていようと思ったけれど、私も興味が出てきたわ。姉さん、紹介してもらえるかしら」

「うん、良いよ。じゃあ私は駅まで迎えに行ってくるわね」

 

私は自分の誕生日、八幡を家に招待した。最初は渋ったけど、最後には言うこと聞いてくれるんだよね。珍しく雪乃ちゃんも興味示したみたいだし。

私が駅に着くと、八幡は既に待っていた。待ち合わせ時間より、30分も早いんだけど。

 

「おはよう、八幡」

「おはようございます」

「待たせて悪かったわね」

「いいえ、俺も今来た所ですから。陽乃も早いですね、まだ30分前ですよ」

「八幡に早く逢いたかったから//」

「か、勘違いしちゃうんで、やめてください//」

 

勘違いしてもらって良いんだけどな。でもそう言う考え方が、八幡なんだよね。

家に着くと、玄関には雪乃ちゃんが待っていてくれた。雪乃ちゃんも私の話を聞いて興味津々なんだろうな、普段なら人見知りするので自分から出てくることはないのに。

 

「ただいま、雪乃ちゃん」

「お帰りなさい、姉さん。は、はじめまして、雪ノ下雪乃です。中学三年生です//」

「比企谷八幡、総武高校1年だ。よろしくな」

「はい、上がって。今日は三人しか居ないから八幡も気楽にしてってね」

「じゃあ、お邪魔します」

 

二人は私の誕生日を祝ってくれた。この前の休み、親が知り合いを呼んでパーティを開いてくれたけど、今日二人が祝ってくれる誕生日会の方が比べ物にならないくらい楽しい。

二人は私に誕生日プレゼントを用意してくれていた。雪乃ちゃんからはハンカチ。八幡からはヘアピンのセット。私が着けると八幡がテレながら似合うと言ってくれた。雪乃ちゃんも褒めてくれた。

 

「あ、あの、比企谷さん。これから八幡君って呼んでいいですか」

「うん?ああ、良いぞ。俺も雪乃って呼んでいいか」

「はい。八幡君は総武高校ですよね、私も来年入る予定なので、入ったらよろしくお願いします」

「ああ、雪乃が総武高校に入ってくれると嬉しいな。もしかしたら一緒に遊べるかもしれないし」

「ねえ、あなたたち。今日の主役は私だよ、どうして二人で話し込んでいるのかな」

「姉さん、良いじゃない。やき餅はみっともないわよ」

「うう、八幡。雪乃ちゃんが虐めるぅ」

「いいじゃないですか、雪乃みたいに可愛い子が俺と話してくれるなんて無いんですから」

「か、可愛い//」

「八幡。私といっつも話しているじゃない!!」

「は、陽乃は可愛いって言うより、そ、その綺麗って言った方が//」

「年上でも可愛いって言ってもらいたいの」

「..陽乃も可愛いですよ//」

 

そう言って私の頭を撫でてくれた。八幡から私に触れてくれたのは初めてだけど、何かすごく恥ずかしい。でも心地いいな、何時も聞いている妹の小町ちゃんにやってあげて慣れているんだろう、すごく安らぐし。私が照れていると、雪乃ちゃんがこっちを見て頬を膨らませていた。雪乃ちゃんも八幡に撫でられたいんだよね。でも今は私だけを撫でていてほしい。

 

テストは私が八幡に教えていた結果か分からないけど、学年十位に入ったみたい。このまま頑張ってくれれば、好きな大学に入れるよね、進路は自分で決めてほしいし。本心は一緒の大学に来てほしいんだけど、そんなことお願いできない。私の我儘で八幡の進路を決めてほしくない。

 

休みの日も遊ぶようになったんだけど、雪乃ちゃんが付いてくるようになった。でも八幡も小町ちゃんを連れてきてくれたんで、雪乃ちゃんの友達になってくれた。

小町ちゃんは中二だけど、八幡が通っているので総武高校を目指しているみたい。八幡の話だと、難しいかもって言っていたけれど、入ったら八幡、雪乃ちゃん、小町ちゃんが一緒に高校生活送るんだよね。なんだか私が入れないのが悔しいな。

 

「陽乃、最近楽しそうだね。比企谷君は陽乃にとって大事な存在なんだね、告白しちゃえば?」

「な、何を言っているのよ、は、八幡は友達だよ//」

「小中高って一緒だけど、陽乃のそんな表情見たことないよ。でもよかったじゃん、陽乃が信頼出来る人を見つけられて」

「...うん」

 

文化祭なんかのイベント、私と八幡は何時も二人で作業を楽しんでいた。回りも私の表情が八幡といると生き生きしていると言って、好意的に見てくれているみたい。後で何時もからかわれたりしたけれど。

 

私も高三になってから。ううん、八幡と出会ってから一変したのを感じている。この高校生活を終わらせたくない。でも私はもうすぐ卒業してしまう。八幡と離れたくない。

 

卒業式の日、私は奉仕部に足を運んでいた。今日で部室ともお別れ。私と八幡二人で過ごしてきた大切な場所。扉を開けると八幡が座っていたけど、私が部室に入ると席を立ち上がってきた。

 

「陽乃、卒業おめでとうございます」

「..八幡、今までありがとう。今度雪乃ちゃんが入って来るから、仲良くしてあげてね」

「ええ、雪乃と奉仕部を続けていきますよ」

「....うん、お願いね。じゃあ、さようなら」

 

私は涙を見せたくなくて、八幡の前から逃げるように出ていこうとしたけれど、八幡に呼び止められていた。

 

「陽乃、待ってくれませんか」

「何?八幡」

 

私は八幡に背を向けたまま話していた。自分がこんなに弱いとは思っていなかった。今まで、小学校、中学校と卒業式を経験したけど、こんなに悲しく、寂しく、そして名残惜しいと感じることは無かった。

八幡には泣き顔は見せたくない、こんな弱い私に幻滅するだろうから。

 

「俺、陽乃の大学に行きます。だから待っていてください」

「...だ、駄目だよ。進路は自分のやりたいことを見つけて決めないと」

「決めてますよ。俺は陽乃と一緒に奉仕部を作って、二人で大学生活を送りたいんです。だから待っててください。絶対行きますから」

 

私の目からは大粒の涙が溢れ出していた。八幡は私に近づいてきて、私の手をとり振り向かせた。

 

「俺は陽乃の事が好きです」

 

私は八幡に抱きついていた。泣いているだけで言葉が出せず、返事も出来なかったけど、八幡は何時までも私の頭を撫でてくれていた。

 

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「中二、ちょっと急ぎすぎじゃないかな。卒業まで書いているんでしょうがないんだろうけど」

「ああ、そうだな。最初の方はまだ良いんだが、イベントとかもうちょっと細かく書くべきじゃないか」

「そうね期間を考えると、3部作とかに分けたほうがよかったと思うのだけれど」

「皆の言う通りちょっと早足だよね。でも書きたい事は伝わるので後は掘り下げて書くようにしていったらどうかな」

「私が出て来た所で八幡をどうして信用したか、書いても良いでしょうね」

「比企谷君と私で口論するのも良いかもね、出会いの時にお互いの主張を言い合って認めていって、私が比企谷君を信頼していくって形にしたほうがいいかな」

「ただ、主張については難しく無いですか」

「何でも良いんだよ、学校に対してとか授業についてとか、些細な事で口論するってよくあるでしょ」

「そうですね、参考にさせてもらいます」

 

批評が終わり皆で紅茶を飲んでいる時、姉さんが何か考え込んでいたわ。よからぬ事を考えてなければ良いのだけれど。

 

「比企谷君、私決めた」

「何を決めたんですか」

「土日、今まで連れ回していたけど、今週から比企谷君の家庭教師するからね」

「け、結構ですよ、文系私立なら行けるんで」

「大丈夫よ、私がご両親に国立に進む事のメリットを説明させてもらうから」

「陽乃、止めてください。家の両親なんて国立だと費用が安くなるって理由だけで決めそうなんで」

「でも勉強しておいて、損はないはずだよ。比企谷君、将来やりたいこと決まっているの?」

「..いえ、まだですけど」

「それなら、選択肢を増やすためにも勉強しようね。どうせ比企谷君には断れないんだから、諦めなさい」

 

そういうと、姉さんはスマホをプラプラし出したわ。多分、あの中に八幡が録音した音声ファイルを入れているのね。でも姉さんの事だからバックアップもしっかりとっているのだろうけれど。

姉さんはこのラノベのような事を実行するつもりね、私も一緒の大学に行っても良いのかもしれない。大学でも奉仕部のような集まれる場所を作れば、楽しくなるでしょうし。

 



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30話

俺のクラス内での立場がおかしくなってきた。

今日、沙希が弁当を持ってきてくれたんだが、何時もの屋上ではなく教室で食べると言い出した。俺の抗議も虚しく、沙希は弁当を広げ出したし。

回りの目が厳しい。結衣と南が弁当を持ってきてくれた時、教室で食べているんだが、沙希とも食べ出すと、俺が誑し見たいじゃないか。違うからね、弁当の練習に付き合っているだけだからね。

ただ、沙希だけだったら良かったのだが、なぜか今日は優美子も一緒に食べたいと言いだし、結衣と海老名さんを引き連れ、そこから南も来て、総勢6人で俺を取り囲むように食べ出したのだ。

 

「はぁーーー」

「どうしたの、八幡。かなり疲れているわね。また姉さん?」

「いやーーー、あはは。ヒッキーごめんね」

「何か教室で有ったのかしら?由比ヶ浜さん」

「今日のお昼ね、沙希がお弁当を持ってきたんだけど、ヒッキーと教室で食べ出したんだ。そしたら優美子が一緒に食べるって言い出して私と姫菜を連れてったの。そしたら、さがみんも一緒にって言い出してね、クラスメイトからの視線が痛かったよね。ヒッキー」

「ボッチには厳しかった、あの妬みの視線に俺は耐えきれないぞ」

 

優美子は葉山と色々あってから、普段どおりにしているつもりなんだろうが、俺への接触が多くなってきている。朝、横を通りすぎるとき挨拶してきたり、休憩時間に話しかけてきたり。葉山とも喋っているのだが、誰かが振った話題に乗っかっているだけで、二人での会話は見たことがない。

 

「へー、先輩ってクラスの女性5人を侍らかしているんですね」

「いろは。冗談でも止めてくれ、俺は静かに過ごしたいんだよ」

「でも、明日は私が弁当を持ってくる日ですからね。先輩、私も教室に行くので楽しみにしててください」

「では私も行かせてもらうわ。一色さん川崎さん相模さんの弁当を見せてもらう良い機会のようだから」

「やめてくれ。あの視線だけで俺、死んじゃうから。ぼっちには耐えきれないぞ。せめて部室に集まるって事に出来ないか、ここなら他の生徒は来ないし」

「確かにその方が良いかも。毎回みんなで集まっていると優美子はグループとヒッキーの間を行ったり来たりするだろうし、それで変な噂を立てられるかも知れないし」

「川崎さん、相模さんはどうなのかしら」

「サキサキは何時もどこかに食べに行っているから問題ないと思うよ。でもさがみんは一緒にいる友達から離れて、ヒッキーと食べるからね。友達にしたら気分よくないかも。今は一週間に一回だから問題なかったけど、毎日になるとね」

「ではこの部室を使うしかなさそうね。由比ヶ浜さん、川崎さんと相模さんに言っておいてもらえるかしら」

「うん、いいよ。明日からって事で言っておくから」

「今更だが、弁当を止めるって事には出来ないのか」

「先輩、何を言っているんですか。そんなの無理に決まっているじゃないですか」

「そうだよ、ヒッキー。私ももっと練習しないといけないし」

「本当に今更ね、八幡。あなたが一人のお弁当を選べば良いだけなのよ、何だったら今からでも一人選んで貰えれば良いのだけれど」

「...スマン、明日からもお願いします..」

「「「ヘタレ(ね)(だね)(ですね)」」」

 

選べるわけないだろ、誰の弁当が一番か何て。それぞれおいしいし、結衣も段々美味くなっていっているのが分かるし。それぞれの個性が弁当に出ていて、皆には言えないが俺も色々食べれて嬉しいからな。

 

「そういえば由比ヶ浜さん。三浦さんはお弁当については何も言わないのかしら。私たち五人が日替わりで作っているのは知っているのでしょ?」

「優美子は私以上に料理とかしないよ、だから何時もお母さんが作ってくれている弁当だし」

「へえ、三浦先輩って葉山先輩のために色々してそうだったんですけどね」

「葉山くんは受け取らないでしょ。バレンタインの時もそうだったけれど」

「まあ、優美子は私たちがヒッキーに作っていること知っていても、何も言わないから問題ないよ」

 

あーしさんが弁当作ってくるって言ったら、また一悶着ありそうだな。でも結衣の話だと興味なさそうだし問題ないのか。

その後、俺たちはいつも通り部活を終わった。

 

「ただいま」

「...」

 

返事が無い、小町はいないのか。俺はリビングに入らず、部屋着に着替えるとコーヒーを入れるため、リビングへと向かった。

リビングに入ると小町が仁王立ちして、俺をジト目で見ていた。

 

「おにいちゃん、こっちに座って」

 

小町が指差す所はソファーではなく、カーペットも引いていないフローリングだった。何かやったか。最近は奉仕部での依頼もなく何も気に障るようなことは無いはずだが。俺がどうすれば良いか悩んでいるとまた小町がフローリングを指差してきた。

 

「おにいちゃん、正座」

「小町、どうして正座しないといけないんだ。せめて理由を言ってからにしてくれ」

「じゃあ、ソファーでいいから。おにいちゃん、小町に何か隠し事してない?」

「今は何もないぞ、どうしてそう思うんだ?」

「一ヶ月前ぐらいから、何か様子がおかしいよね。土日もどこかに出かけているし」

「....あ」

「小町の受験があったんで相談してくれなかったのは分かるんだけど、ちょっと寂しかったんだよ。今は受験終わったんで聞いてあげるから言ってみ」

「..困っているとかではなくてだな、そのちょっと新たな黒歴史が作成されただけだ」

「告白でもしたの?おにいちゃん」

「...念の為、関係者に確認して良いか。俺一人の事ではないんだ」

「うん、いいよ。皆って奉仕部の人たち?」

「その他にも何人も居る」

 

俺はLINEで以前登録されたラノベグループを立ち上げると、小町に喋って良いか確認した。雪乃、結衣、沙希、優美子からすぐに返信があり、良いと言うことだった。

 

「小町。最初に言っておくが別に悩みがあるとか何かやらかしたとか、そういうことではないからな」

 

俺はそう前置きをし、材木座と雪乃から始まったラノベの依頼について、小町に伝えた。小町は何も言わず俺の話を聞いてくれている。俺が話終わると小町は大きなため息をついていたが。

 

「おにいちゃん、誑かしすぎ。あと、突っ込まずに聞いていたけど、皆のこと名前で呼んでいるんだよね。小町的にはポイント高いんだけど、さすがにお義姉ちゃん候補が多すぎだよ」

「あくまでもラノベの中の話だからな」

「ふーん、まあいいや。でも安心した。また厄介な依頼とかに巻き込まれてるんじゃないかと思っていたから」

「心配をかけてすまんな。でも小町が知ったら読みたいとか言い出すだろ、受験期間中そんな事やっていられないからな、だから黙っていた」

「うん、気を使ってもらって、ありがと。でも小町も読んでみたい。誰かの読ませて」

「奉仕部でもよく言われるんだが、プライベートな事も書いてあるからな。駄目だ」

「えー、小町も読んでみたい」

「...一つなら問題ないか、ちょっと材木座にファイルを送ってもらうようお願いしてみる」

 

俺は材木座にメールでオリキャラメインのラノベを送ってもらうようお願いした。しばらくすると材木座からメールが送られて来たので、添付ファイルを小町に見せてあげた。

 

「へえ、小町も出ているんだ」

「へんな扱いはされていないはずだぞ、ただ材木座に言っておく。これからは小町は出さないようにな」

「出しても良いよ、おにいちゃん。小町も書いてほしいもん」

「相手は誰だ!!大志か大志なのか!!」

「おにいちゃんだよ。何でそこで大志君が出てくるの、小町的にポイント低いよ」

「なんで、俺が相手なんだよ。一応、ラブコメのラノベだぞ」

「いいじゃん、おにいちゃん。お願いしてよ」

「いや、材木座も困るだろ。内容については今まで材木座まかせだったけど、例えばどういう内容で書いてもらうんだよ」

「...うーん、近親相姦?」

「ば、ばか。そんなの書いてもらえるか」

「まあそれは冗談だけど、確かに難しいね。でも、思いついたらで良いんでお願いしてみて」

「..分かった、でも期待するなよ」

「うん」

 

大して文句を言われることもなく説明は終わったが、どうして小町まで書いてほしいとかいうんだ。俺には何を考えているかさっぱり分からん。まあ、小町がご機嫌にご飯を作ってくれているから、いいんだが。

 

翌日、部室で弁当を食べることになったのだが、逆に視線が厳しい。いろはの弁当を雪乃と結衣、沙希がジッと見て来るので食べにくくてしょうがない。

 

「どうですか、先輩。おいしいですか」

「ああ、この唐揚げ下味がしっかり付いているんで美味いな」

「昨日の夜、ちょっと頑張りましたからね」

「いろはちゃん、私も貰って良い?」

「私の弁当から取ってください、先輩のは駄目ですよ」

「一色さん、私のおかずとも交換してほしいのだけれど」

「私も交換して」

「いいですよ、でも何かくださいね」

「あの、俺も交換してほしいんだけど」

「先輩は駄目に決まっているじゃないですか、今日は私の弁当だけ食べてくださいね」

 

俺は交換してはいけないらしいな。日を待てば皆のが食べれるんだが、今食べてみたくなったりするんだよな。

 

「そういえば、優美子と南は来ないんだな」

「今日は教室で食べるって言っていたよ」

「良いじゃないですか。今日は私の弁当を堪能してください」

 

お昼、弁当を奉仕部で食べるようにして本当によかった。今日も4限目が終わった後の静寂と視線が痛かった。俺が教室から出ていくと、普通に騒ぎ出したから、あの静寂は俺が原因なんだろうな。ぼっちなのに何で注目を浴びないといけないんだよ。

 

放課後、部室で本を読んでいると、優美子と海老名さんが部室に入ってきた。

 

「お邪魔するし」

「ハロハロー」

「どうしたのかしら、どちらかの依頼?」

「雪ノ下さん。あーし、ヒキオに要があるから」

「ヒキオ。あーし料理出来ないからさ、姫菜に手伝って貰って始めて作ったし。これ受けとって」

「ヒキタニ君、食べてね」

 

そういうと優美子は袋を俺に渡してきた。あと、部室で食べてと言って結衣にもう一つ袋を渡していた。結衣が開けると、そこにはクッキーが入っていた。始めて作ったんだろうが、見た目は美味そうなクッキーだな。

 

「三浦さん、私も貰って良いかしら」

「うん、食べて感想聞かせて」

「おいしいわ、初めてとは思えないわね」

「うん、優美子おいしいよ」

「ありがと。じゃあ、ヒキオも食べてみて....あーん」

 

優美子は結衣が袋から出したクッキーを一つ取ると、俺の口に近づけてきた。あーんって何だよ、俺は雪乃と結衣に睨まれていた。

 

「優美子、自分で取るかr」フゴ

 

喋っている最中、優美子の手から俺の口にクッキーを入れられた。その際、優美子の指が唇に触れていたんだが。

段々顔が赤くなるのが分かる。優美子も想定外だったのか顔を赤くしだしたし。

 

「う、美味いな」

 

はっきり言って味なんて分からなかったが、返事だけはしておいたが。

 

「優美子、何やってるんだし!!」

「あ、あなたたちは何をやっているのかしら」

「良いじゃん。食べさせてあげるぐらい、普通っしょ。ヒキオ、あーし料理できないからさ、これから色々やってみるし。だからこれからも持ってくるから感想聞かせて」

「あ、ああ、分かった。でも今日みたいな事は止めてくれ、恥ずかしいから」

「わーたし。じゃあ、今日はこれで帰るから」

 

そういうと、二人は出て行った。台風みないな奴だな。でももう一枚クッキーを食べてみると、確かに初めてとは思えないぐらい美味い。

結衣がなにか唸っている。雪乃は何か考えているようだし。

 

「ヒッキー、優美子にデレデレしていたし」

「し、してないぞ。小町以外からあーんされたの初めてだったから、ビックリしただけだ」

「ま、まあ、良いのではないかしら。由比ヶ浜さん」

「..ゆきのん、どうして何時もみたいにヒッキーに言わないの」

「八幡もいきなりで対応しようが無かったようだし、さっきので責めるのは違うと思うのよ」

「...ふーん、ゆきのん。なにか企んでいるよね」

「わ、私は何も企んでいないわよ。ただ三浦さんのクッキーを食べて、私もお菓子を作ってみようと思っただけよ」

「ずるい、ゆきのん!!じゃあ、今日泊まりに行くから私も手伝わせて!!」

「結構よ。由比ヶ浜さんお菓子作りはあのクッキー以来やっていないのよね」

「うぅ、ヒッキー。ちょっとぐらい失敗しても食べてくれるよね!!」

「あ、ああ」

 

もしかしてまたダークマターを食べさせられるのか。俺は雪乃に助けを求めて目を合わせたが、雪乃から視線をそらされた。

 

「今度はゆきのんの言う通り、やるからさ。いいでしょ」

 

そういうと、結衣は雪乃に抱きついていた。ああ、こうなると雪乃は断ることが出来ないな。

 

「はぁ...分かったわ、由比ヶ浜さん。でも本当に絶対に言う通りやって余計な事はしないようにして頂戴」

「ゆきのん、たぶん大丈夫だよ」

「なぜ、そこで多分と言う言葉が出てくるのかしら」

 

明日、来たくないな。何のお菓子か分からないが、部室に持ってくるだろうし。

でも優美子はやらないだけで初めてのクッキーをここまで作れるなら、結構上達が早いのかも知れないな。ただ、弁当を作ってくるってなったらまた揉めそうなんだが。

こうして、その日の部活は終了していった。

 

 



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31話

今日は、なんとか由比ヶ浜さんと一緒にお菓子を作って持ってきたわ。

本当はもっと難しいのを作る予定だったけれど、チョコカップケーキにさせてもらったわ、でもそれで正解だったわね。いつの間にか買い物かごに桃缶を入れていてチョコカップケーキに入れようとしていたし。

由比ヶ浜さんがクラスで喋ったみたいで食べてみたいと三浦さんが部室に来て、材木座君からは相模さん、折本さんのラノベを書いたということで相模さんが来ているわ。

 

「へえ、今度はお菓子作りをしているんだ、雪ノ下さんって何でも出来るんだね。うちもやってみようかな」

「昨日は由比ヶ浜さんと作ったので、簡単なチョコカップケーキよ」

「雪乃、結衣はちゃんと出来たのか」

 

私はそう言われ、思わず顔をしかめてしまったわ。以前に比べれば遥にマシになったと言えるのだけれど、どうして由比ヶ浜さんは桃缶にこだわるのかしら。

 

「雪乃、答えなくていい。その表情だけで十分伝わった」

「ヒッキー、ひどい!!でもゆきのん、以前よりはよかったでしょ」

「..ええ、以前よりはね」

「でも十分おいしいし」

「おいしいですよ、雪ノ下先輩」

「ああ、美味いな」

「我も美味と思います、このチョコカップケーキ」

「美味しいよ、うちも出来るかな」

「ありがとう、相模さん。誰でも作れるわよ。でも由比ヶ浜さん。桃缶にこだわるなら今度、桃を使うものを作ってみましょうか」

「うん!!」

 

「今回のラノベなんですが、この中で出ていないのは三浦殿になるので、先に読んでもらっていいでしょうか」

 

相模さんが出ていて、みんなが出ているってことは前の続きね。またハーレムものになるのかしら。

 

「問題ないと思うけど、材木。これって、続き物?」

「はい、3作目です」

「みんながこれを読む間、前のやつ読ませるし」

「相模さん、どうかしら。三浦さんに見せても大丈夫?」

「うん、良いんじゃないかな。ただ皆出ているんだよね。雪ノ下さん、結衣ちゃん、一色ちゃん問題ない?」

「いい(わよ)(よ)(ですよ)」

 

二人から返答があったので、私は三浦さんに以前のラノベを差し出したわ。

 

「ねえ、俺には聞いてくれないの?」

「八幡は良いじゃない、すべての作品に出ているのだから、諦めなさい」

 

そういうと、私たちは材木座君のラノベを読み出したわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

八幡が「シェアハウスでの決まりごと」を決めてから本当にラッキースケベが起こらない、起こせない。八幡はうちらの胸やお尻を見ていたり、洗濯物を畳んでいると下着をチラチラ見たりしているのに。

 

「ここに引っ越してきてから期待してたんですけど、ラッキースケベってあまり起こらないですね」

「うん、うち達も最初は大人しかったんだよ。それが段々ラッキースケベ起こしてエスカレートしていったんだ」

「そうね、私たちも夏で薄着になってからだったわね。八幡がチラチラ見てくるので余計にね」

「ここに来たときは「何やっているんだ、この人たちは」って思ってましたけど、今は分かる気がします」

「毎日近くにいるから余計に悶々としちゃうよね。いろはちゃんもそのうち、欲求不満になっちゃうよ」

 

今日は八幡が出かけているんだけど、いろはも随分ぶっちゃけているね。

そのうち、うち達と一緒でタガが外れちゃうんだろうね。でも、この家で何か起こすと、出て行けって言われるかもしれないし、八幡がまた出てくって言うかもしれないし。何かないかな...

 

「そうだ!!みんなで海に行こうよ、泊まりで!!雪乃が実家から貰ってきたステップワゴンで、五人で行けば良いじゃん!!」

「露天風呂が部屋に付いているところあるし!!そこでヒッキーに先に入ってもらって、全員で入って行ってもいいよね!!」

「でも八幡が入ってくれるかしら、ホテルにある大浴場とかに行きそうなんだけれど」

「それはさ、水着で入ろうよ。って言って、入らせておいてから「ぽろんもあるよ」ってことで良いんじゃないかな」

「いいですね、でも先輩に言うと部屋は別じゃないと行かないって言いそうですよ」

「「「うん...」」」

 

そうだよね。八幡はその辺、しっかりしてるし。何か良い案はないかな。

 

「バンガローってどうなんだろ、よく田舎の海とかにあるでしょ。ごろ寝だからみんなで寝れるよ」

「でもそれこそ、八幡は来てくれないんじゃないかしら」

「ベッドのところもあるから、何とかなるんじゃない?とりあえず今日の夕飯の時にでも、聞いてみようよ」

「そうね、まず行けるかよね」

 

夕飯時、八幡に提案したら、すんなり良いんじゃないか。って言ってくれた。うち達に行先や日程を任してくれたので、四人で場所を決めていた。どうせなら遠くに行こうってことで伊豆半島の方に足を伸ばすことにし、一泊での旅行を計画して、浮かれながら当日までを過ごした。

 

これが恐怖(喜劇?)の始まりとも知らずに...

 

「うーーーーみーーーー!!」

「南、浮かれすぎだ。早く鍵を借りに行くぞ」

「うん!!でも海に近くて良い所だね」

「そうね。書いてあった通り、バンガローから歩いて海まで行けるわね」

「バーベも出来るって書いてあったしね、ゆきのんよく見つけたね」

「ええ、喜んでもらえて嬉しいわ」

「ここで、先輩と...グフフ」

「いろは、今は欲望を抑えなさい。夜まで持たないわよ」

 

「「「「「こんにちは」」」」」

「はい、いらっしゃ..は、八幡か!!」

「材木座。お前何やっているんだ、こんなところで」

「我はここで管理のアルバイトをしているのだ」

「この予約をしていた比企谷とはお主のことだったのか」

「あら、材木座君。久しぶりね」

「中二じゃん、やっはろー!!」

「材木座君じゃん!!ひさしぶりー!!」

「木材先輩、お久しぶりです!!」

「皆さんお変わりなく...八幡、もしかしてこの五人で来たのか...ウラヤマシイ」

「ああ、みんなで海に行きたいって言いだしてな。材木座。久しぶりだからアルバイト終わったら、夜でも俺たちのところに来いよ。色々積もる話もあるだろ」

「行ってもいいのか!!八幡!!」

「ああ、時間があれば来てくれ。じゃあ、また後でな」

 

八幡が管理室に出て行った後、うち達は材木座君に釘を刺しておいた。

 

「材木座君、夕飯時なら来ても良いわ。その後は分かっているわね..」

「中二、良いよね...」

「材木座君、分かるよね...」

「木材先輩、配慮してくださいね。あと来るなら差し入れは必須ですよ」

「....は、はぃ..」

 

バンガローには既に布団が置いてあり、後は敷けば寝れるようになっていた。まあ、雑魚寝見たいなもんだしね、今日の夜は楽しまないと。

うちは八幡の横に寝て抱きつきながらイチャイチャチュッチュッ出来るよう、邪魔な三人にはご退場願わないといけないので、強い酒を持ってきていた。まあ、未成年もいるけど、飲んだことない人は居ないし何とかなるでしょ。

 

うち達はバンガローに荷物を入れ、着替えた後、早速海に向かって行った。

 

「ここで良いじゃん。バンガローにも近いし、海の家もすぐそこにあるし」

 

みんなでレジャーシートをひき、用意していると材木座君が来てくれて、パラソルを二つ刺してくれた。回りをみても田舎の海だからあんまり人もいない。サーファーがいるけど、海水浴客と海岸を分けているみたいで、危なくもなさそうだし。

 

「八幡、このパラソルは我からのサービスだ。後、オモチャだが水鉄砲とボディボードも使ってくれ」

「材木座、ありがとうな」

「「「「ありがとう!!」」」」

 

「八幡。背中に日焼け止め塗って」

「やだよ、恥ずかしい。みんなで交代でやれば良いだろ」

「八幡。私にも塗ってほしいのだけれど」

「ヒッキー、早く塗ってよ」

「そうですよ、先輩。はやく塗ってください」

 

うち達は、レジャーシートにうつ伏せで寝て、八幡に催促していた。こんな時はなんで、みんな息がピッタリなんだろう。八幡も飽きれて断る気もなくなったのか、文句を言いながらも、顔を真っ赤にしながら、うちの背中に塗ってくれた。その後、雪乃、結衣、いろはも塗ってもらっていた。

八幡も背中に日焼け止めを塗ろうとしていたので、寝てもらい皆で塗ってあげたけど、皆目がヤバい。トランクスの中に手を入れたりしてるし、うちも肩に塗っているとき、耳に顔を近づけて息を吹きかけたら、八幡から怪しい声が漏れてきたし。

 

「じゃあ早速、海に入ろうよ!!」

 

それぞれ水鉄砲やボディボード、浮き輪などを手に持ち海に走って行った。うちはボディボードで大きい波が来て、波に飲まれた時は溺れるって思ったけど、すごく楽しくっていつの間にか一人で遊んでいた。

雪乃と結衣も水鉄砲でお互い掛け合っていたんだけど、いろはは何時の間にか、浮き輪で八幡と沖に出てイチャコラしていやがった。どうして浮き輪に二人で入って抱きついているの!?八幡は顔を真っ赤にして離れろって言っているみたいだけど、いろはは抱きついて満面の笑みを浮かべているし。

いろはは帰ってきたら、うち達三人から責められてたけど、ずっとニヤけ面でフにゃけていた。まったく、羨ましい。

 

この四人は目立つのだろう。ナンパしにくる奴もいたけど、うちらはまったく相手にしないし、雪乃にしゃべり掛けた奴はコテンパンに言い負かされてた。八幡には羨望と嫉妬の眼差しが降り注がれていたけど、そもそも四人侍らかせているんだから、しょうがないよね。

 

「ねえ、お昼どうする?」

「そうね、海の家で何か買いましょうか」

「私も見たいんで一緒に行きます」

 

うちと雪乃、いろはは三人で海の家で焼きそばや蛸焼きとか色々買って、パラソルの所に戻ったんだけど、結衣が八幡の上に乗って抱きついていた!!

 

「ど、どうして抱きついてるのよ、結衣!!」

「何しているのかしら、あなたたちは」

「先輩!!何しているんですか!!」

「いや、俺が寝転んでいたら、いきなり抱きつかれたんだよ」

 

回りを見ると缶ビールが転がっており、結衣は顔を真っ赤にして寝ているようだった。もしかして一気飲みしたのかな、結衣はお酒弱いのに。

 

「とりあえず、結衣を退かせてくれないか」

「自分でやればいいじゃない、そう言って堪能していたのでしょ」

「ち、違うからな//退かせるとき、どこか触ってしまうかもしれないだろ//」

「いいじゃん。ラッキースケベって思えば」

「しょうがねえな//」

 

八幡は結衣の体を横に寝転ばせ、パラソルの影に入るよう、移動してあげていた。そういう所、やっぱり八幡はやさしいんだよね。でも結衣の体に触れてたのは許せないけど。

でも、いろはも結衣もしょっぱなから攻めてるね。うちは夜のことしか考えてなかったけど、この分だと雪乃も何かしようとしているかも。

でも結衣は自分が寝ちゃったら、何にも出来ないじゃん。まあ、邪魔者が一人減ったと思えば良いんだけど。結衣の表情は寝ているのに、かなりニヤけている。夢の中で八幡に抱きついているんだろうな。

 

うちと八幡はお昼を食べながらビールを飲んでいた。雪乃といろはは酔ってしまうからって、飲んでいないけど、夜も飲まないつもりかな。うちの計画が...

あんまり飲むと海に入るのは危ないんで、1本づつにしておいた。でもこんなに天気の良い日に潮風を浴びながら飲むビールって、めっちゃおいしい!!

サザエもビールにめちゃくちゃ合うし!!この苦味が良いんだよね!!って八幡に言ったら、おっさんくさいって言われたけど、良いじゃん!!おいしいんだから!!

 

うち達はお昼を食べて少し休憩した後、また海で遊んでいた。

雪乃はボディボードを八幡に教えてって、お願いしてて、二人で海に入っていったんだけど、大きい波が来たとき、雪乃は「きゃー」と言いながら八幡に抱きついていた。八幡もニヤけてて波が過ぎ去っても雪乃は離れてないし。ボディボードしに行ったんじゃないの!?うちといろはは水鉄砲を持って二人のいる所に走っていき、思いっきり水を掛けてやった。

 

「雪乃!!ボディボードしに来たんでしょ、何で抱きついているのよ!!」

「そ、それは大きい波だったので怖かったのよ//」

「..ふーん、じゃあ、私がボディボード教えてあげるから」

「結構よ、八幡に教えてもらうから」

 

うちが雪乃と言い合っていると、いつの間にかいろはが八幡を連れていこうと手を引っ張っていた。いろはの奴、抜け駆けしやがって。

うちと雪乃は結託し、いろはと八幡を追いかけていると、大きな波が来て四人で波に飲まれてしまった。波にもみくちゃにされながらも立ち上がると、雪乃といろはは八幡に抱きついていた。くっそー、どうしてこうおいしい所持っていくかな。

結衣も途中で起きてきたんだけど、八幡に近寄っていって抱きついてるだけじゃん!!

 

夕方、遊び疲れバンガローに帰ったんだけど、よく考えたら、うちだけ八幡と何にもなかったじゃん!!しょうがない、明日も遊ぶ予定だから、その時はいっぱい抱きつくんだから。

 

雪乃といろはが先にお風呂に行った。うちと結衣も後で入るため待っていたんだけど、結衣は寝ていたことをずっと文句言っている。

 

「みなみん、どうして起こしてくれなかったの!!」

「結衣がお酒弱いのに飲むからでしょ。でも抱きついてたから良いじゃん!!うちなんて何にもなかったんだから」

「うぅ、そうなんだけどさ。もっと海で遊びたかったし」

「明日、もっと遊ぼうよ。朝から海に行く予定だから、十分時間あるでしょ」

「そうだね、ヒッキーともっと遊ばないと」

 

雪乃といろはがお風呂から出てきたので、うちと結衣がお風呂に入るため、お風呂で水着を脱ごうとしたら、何か足元で動いた気がした。よく見るとゴキブリがカサカサ走っている。

 

「きゃーーーー!!」

「いやーーーー!!」

 

うちと結衣はお風呂から走って、部屋でお風呂を待っていた八幡に抱きついていた。

 

「は、八幡!!ゴキブリ!!」

「ヒッキー!!何とかして!!」

「と、とりあえず二人共、落ち着いて離れてくれ//」

 

八幡はうちらを離すと、お風呂に見に行ってくれたんだけど、どこにもゴキブリは見当たらなかったらしく、戻ってきたんだけど、うちも結衣も怖くて入れなかった。

 

「は、八幡。一緒に入って」

「ヒッキー、お願い」

「さ、さすがにまずいだろ、一緒に入るのは//」

「水着つけたままで良いからさ、一緒に入って」

「...ああ、分かった//」

「「....」」

 

雪乃といろははジト目でうちらのことを見ていたんだけど、さすがにゴキブリって事で何も言わなかった。

でもこれってイチャイチャイベントじゃん!!お風呂に向かう最中、そういうことを考えて、結衣の方を見てみると、多分一緒のことを考えていたんだろう。お互い目配せし頷いてお風呂に向かって行った。

 

「ヒッキー、髪洗ってあげるから、座って」

「いいよ、自分でやるから」

「いいじゃん、座りなよ。二人で洗ってあげるから」

「じゃ、じゃあ、おねがいしましゅ//」

 

うちと結衣は八幡の髪の毛を洗ってあげて、うちは洗い終わるうちに、手にボディソープを付けて、八幡の体を洗い出した。こうすれば逃げれないしね。

 

「み、南か!?か、体は自分で出来るから良いって//」

「いいからいいから。うちらが洗ってあげるから」

 

結衣も頭を流し終わって、うちと一緒に体を洗い出した。

 

「ちょ!?は、恥ずかしいから、止めてくれ//」

「良いじゃん、ヒッキー。前もやってあげるから」

 

八幡は二人に挟まれ、逃げられずにされるがままになっていた。うちは後ろから水着にも手を入れて、前に手を回そうとしていたら、浴室の扉がいきなり開けられた。

 

「あなたたち、何をやっているのかしら」ピキッ

「南先輩、結衣先輩。それ以上やると分かってますよね」ピキピキッ

 

そこには眉間に青筋を立てた氷の女王と小悪魔からサタンに変位した二人が立っていた。

うちと結衣はおとなしく手を引っ込めたが、二人は扉を閉めることもなく、立っていた。

暖かいお湯を浴びても寒く感じる。彼女達の視線はうち達を凍らせるぐらいの冷気を帯びていた。八幡がお風呂を出るまで、二人は扉の前から動くことがなかった。

 

お風呂を出たら、何時もの二人に戻っていた。まあ、何時ものことだしね。ちょっとやり過ぎたかもしれないけど、海では雪乃もいろはも良い思いしていたしね。

 

「じゃあ、そろそろバーベキューの準備でもしよっか」

「そうね、野菜とか切らないといけないし、結衣手伝ってくれる?」

「うん、いいよ」

「じゃあ、私は冷蔵庫からお肉出しておきますね」

「俺は、炭に火を起こしてくるわ」

 

バーベキューの準備をしているころ、材木座君も差し入れを持って来てくれた。

 

材木座君は海産物を買ってきてくれてて、サザエやヒオウギガイ、イカなんかを持ってきてくれた。

うちはヒオウギガイって始めて食べたんだけど、めっちゃおいしい!!ビールが何杯でも行ける!!潮風を浴びながら、バーベキューもいいよね。うちはまたお酒を片手に色々食べながら、皆で騒いで夕食の一時を過ごしていた。

うちと結衣、八幡は二十を越えているんでお酒飲んでも良いんだけど、雪乃といろはは余り飲まないようにしていた。まあ、倒れると不味いしね。

ある程度、食べ終わり皆ほろ酔い気分で雑談していると、一匹の猫がうち達の近くによってきた。

 

「ああ、その猫は野良猫なんだが、ここで色々な人たちに食べ物を貰っていてな、いつの間にか住み着いてしまったのだ」

「にゃー、にゃー」

 

ほろ酔いの雪乃がにゃー、にゃー言いながら猫に近づいていき、頭をさすっていると、猫に喋り掛けていた。

 

「何を咥えているニャ?」

 

猫が口に何かを咥えていたので、雪乃が手をだすと、猫は雪乃の手に咥えていたものを落とした。

それは猫にやられたのだろう、雪乃の手の平でモゾモゾ動いており、逃げようとしているのだろうけど、のたうち回っているだけだった。

雪乃は短く「ヒッ!!」って言葉を出した後、気を失ってその場に倒れこんでしまった。

 

「は、八幡!!雪乃が!!」

「猫はゴキブリとか捕まえるからな、獲物を雪乃に見せたかったんだろ。ウェットティッシュを貸してくれ。後、誰か申し訳ないが布団を敷いてきてくれないか」

「う、うん。良いよ。ゆきのんは大丈夫なの?」

「気を失っただけだ、このまま寝かせておけば良いだろ」

「そうだね。じゃあ、布団敷いてくるね」

 

うちと結衣が人数分の布団を敷いた後、八幡は雪乃をお姫様だっこして、雪乃を寝かせに行った。

そういえば、いろははどうしたんだろうって思って彼女の方を見ると、既に寝ているみたいだね。多分、遊び疲れているところに慣れていないアルコールが入ったもんだから、一気に眠気が来ちゃったんだろう。

八幡が戻ってきたので、いろはも運ぶようにお願いして連れて行ってもらった。

 

うちと結衣、八幡、材木座君はグリルを囲みながら四人でお喋りをしていた。空には満点の星空が広がり、耳には波音が聞こえている。すごく良い所だな。

 

「ねえ、八幡。海に行ってみない?」

「私も行きたい、ヒッキー」

「まあ、散歩がてら行ってみるか、材木座はどうする?」

 

八幡が材木座君に話しかけたとき、うちは材木座君を睨みつけた。多分、結衣も一緒だと思う。それを察したのか、材木座君は管理室を離れられないと言って、グリルを見ていると言ってくれた。

 

八幡を真ん中にうちと結衣で腕に抱きついて、海に歩いて行った。良いな、こういうのも。八幡も最初は歩きにくいとか言っていたけど、海に付くころには何も言わずにうち達に腕を預けてくれた。砂浜につくと、うち達は腰を下ろしていた。

街灯が余りないので、星空が綺麗で海には漁船だろう、所々光っている。潮風が心地良い。

 

「綺麗だね。また、こうやって皆でこれたらいいね」

「うん、本当に綺麗。来年も一緒に来たいよね」

「ああ、俺も皆で何時までも、こうやって馬鹿騒ぎしていたいよ」

「「「....」」」

 

それぞれ、思う所があるのだろう。それからは無言で海を眺めているだけだった。

うち達は浜辺に腰を下ろしていたが、しばらくしてからバンガローに帰って行った。

材木座君は後片付けをしてくれていたようで、グリルの回りは綺麗になっており、火を少し起こして一人お酒を飲んでいた。

 

「材木座。すまんな、後片付けさせてしまって」

「ありがとうね、材木座君」

「中二、ありがとう」

「いや、我も今日は久しぶりに懐かしい話が出来て楽しかったのでな。これぐらいはさせてくれ。では我はそろそろ戻ろうかな、何かあれば管理室に来てくれ。今日はありがとう」

「こちらこそ、ありがとうな、おやすみ」

「「おやすみ」」

 

そろそろ寝ようかって話になり、後片付けをした後、歯磨きをしてバンガローに入って行った。外に街灯があるので部屋の中は電気を付けなくても程よい暗さになっている。

雪乃といろはは奥に寝かされていたので、三人分の布団が並んで空いている。うちと結衣は両端を選んで八幡に真ん中でなるようにお願いしていた。

 

「俺、端が良いんだが」

「いいじゃん、ヒッキー。真ん中で寝てよ」

「八幡、あんまり喋っていると雪乃といろはが起きちゃうから静かにしないと」

「..分かったよ」

 

八幡は渋々真ん中の布団に入っていき、うちと結衣は両端の布団に入って行った。

おやすみの挨拶をすると、八幡は疲れていたのか、すぐに寝息が隣から聞こえてきた。うちは暫く時間がたつのを見計らい上半身を起こした。

結衣の方をみると、目を開けてうちの事をみている。一緒のこと考えていたんだよね。お互い頷き、八幡の布団にゆっくり入って行った。

 

うちは八幡の右腕に抱きつき、八幡の右足に足を絡めていた。結衣の足と当たったようだから、一緒の恰好を左側でしているのだろう。うちと結衣が絡みついていても八幡は起きることは無かった。本当に疲れているんだね。うちは、八幡の匂いをずっと嗅いでいた。結衣も一緒の事を反対側でしているみたい。うちが八幡の胸に手をおいて擦っていると、結衣も一緒の事をしだした。

暫くたつと、結衣の上で何かが動いたのが見えたんだけど、いきなり息を飲み込む音が聞こえて、胸を触っている手が動かなくなった。何があったんだろう、うちは上半身を起し結衣をみると寝ちゃったみたいでほっぺを触っても反応が返ってこなかった。

 

うちは結衣を八幡から離すため、反対側に回り結衣を転がして八幡から遠ざけた。これで八幡はうち一人で堪能できる!!

八幡をみるとまだぐっすり眠っているみたいだし。でもよく見ると股間にテントが張っていた。

 

ゴクッ

 

い、いいよね。戴いちゃっても。八幡も疲れているんだし、疲れをとるためスッキリさせてあげた方がいいよね。暴発するより、うちが処理してあげた方が後始末も楽だし。

酔っているのか、うちの頭からは八幡の股間のことしか考えられなくなっていた。うちは自分に言い聞かせると、眠っている八幡にキスをし八幡の右側に抱きついた後、右手を胸から徐々に下ろしていき、お腹を擦りながらパンツの中に手を延ばしていった。

 

ゴゾゴゾ

 

うちの頭の上から何か音がしたので、見てみると頭の上10cmも離れていないところで、何かが動いていた。

見たこともないような大きさのアシダカグモがゴキブリを捕まえており、食べているのだろう。

うちは意識を手放した.....

....

...

..

.

 

うちが起きると八幡に抱きついていたはずなのに、一人で寝ていた。時計を見ると8時を過ぎている。ごろんと反対に体を向けると、誰かの体にぶつかったみたい。

ぶつかったのは雪乃で八幡に抱きついている。うちは体を起こして確認すると、八幡の腕枕で雪乃といろはが抱きついており、うちと結衣は布団の端っこまで追いやられていた。

 

雪乃はうちを退けて八幡の横に入ってきたな。やり返そうと思い雪乃の体を転がそうとすると、八幡の足に両足を絡めて体を動かないようにしていた。いろはも一緒のように足を絡めている。

 

こ、こいつらうちと結衣に退かされないように足を絡めていやがる。うち、入るとこないじゃん!!左右とられているし。うん?真ん中空いてるじゃん!!

うちは昨日の夜、考えたことを思いだし、手を出そうと思ったけど、それと同時に昨日の夜見た光景が脳裏に蘇り、一気に怖くなってきた。

回りをキョロキョロ見渡しアシダカ軍曹がいないか確認していると、八幡が起きたようだった。

 

「うん?お、おい。これどうなっているんだ?」

「八幡、おはよう」

「..おす、南ちょっとどうにかしてくれ」

 

うちは雪乃といろはを頭を上げ、八幡の腕を出してあげた。八幡は両腕が痺れているって文句を言いながら足に絡まっている雪乃といろはの足を退けていた。

 

「なあ、俺の隣って南と結衣だったよな」

「うん、うちも気づいたら端っこに移動してて雪乃に場所を取られてた」

「こいつら何を考えているんだ」

「そ、そうだよね。何で八幡に抱きついてたんだろ」

 

うちが夜、抱きついていたことはバレていないよね。そう思っていると雪乃と結衣、いろはも起き出した。結衣も起き出して文句を言い出した。

 

「な、なんで私こんな所で寝ているの!?ヒッキーにみなみんと一緒に抱きついて寝てたのに」

「私が起きたときは結衣先輩、そっちまで転がってましたよ。先輩には雪乃先輩が抱きついてましたし」

「「うそ!?」」

「ねえ、なんでうちが端っこで寝てて、雪乃が八幡の横で寝てたのよ」

「南。あなた私が起きたとき、八幡のズボンの中に手を半分入れていたわよ、それはどういうことか説明して貰えるかしら」

「「「え!?」」」

「い、いやぁ。覚えてないなぁ」

 

四人にジト目で見られ、うちは目を反らしていた。さすがに言えない、夜うちが何をしようとしていたか何て。

 

「まあ、良いじゃないか。朝飯食おうぜ、お腹が空いた」

「そ、そうだね。朝ご飯用意しようよ」

 

よかった。あれ以上、聞かれるとさすがに八幡に怒られるよね。三人はまだ怪しんでて、うちのこと、睨んでいるし。

 

うちらは旅行2日目も海を満喫していた。一日目と変わらず、八幡に抱きついたりしていたけど、みんなお酒は飲まないようにしていた。今日、帰らないといけないしね。

海で遊んだ後、シャワーを借りて帰り支度をしていると、材木座君が来てくれた。

 

「八幡、また機会があれば来てくれ」

「まあ、今年は難しいだろうがな」

「そうか。来週、彩加殿が来てくれるんだが」

「何!?戸塚がくるのか!?」

「左様、彼女と二人で来てくれるらしい」

「!?戸塚に彼女....」

 

八幡は戸塚君に彼女がいると知った途端、放心状態になって帰ると言って車の三列シートに乗り込んで行った。

 

「はぁ。しょうがないわね、帰りは私が運転するわ。材木座君、お世話になったわね。ありがとう」

「中二、ありがとうね」

「うちもありがとう」

「木材先輩、ありがとうございました」

「こちらこそ、来てくれてありがとう。もし来年ここでアルバイトしていたら、また来てくれ」

「うん、それじゃあね」

 

うち達は車に乗り込み、帰路についた。カバンに潜むアシダカ軍曹と一緒に....

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「今回もさがみんだけのラブコメじゃないんだよね、よかったのさがみん?」

「うん、良いよ。イチャラブ カイテ モラッタシ」

「?そういえば、材木座も出てくるんだな」

「ああ、アルバイトは他の女子を出そうと思ったのだが、また怒られそうなのでな。彩加殿も名前ぐらいならいいと許可を経ているぞ」

「それで戸塚も出しているのか、そういえば以前のSFでも出していたな」

「男で出せるのが、八幡以外だと彩加殿か我しかいないのでな」

 

たしかに今回のアルバイトであれば、材木座君が適任かもしれないわね、他の女性であれば混ざる形にしないといけないでしょうし。

 

「ねえ八幡。猫って虫とか咥えてくるのかしら」

「ああ、このラノベに書いてあるとおりだぞ、ゴキブリとか捕まえてくるからな。家のカマクラは外に出ないんで見たことはないけど」

「家猫は大丈夫なのね」

「たしか家に猫がいるとゴキブリが外に逃げていくらしいな」

「あと、アシダカグモが途中から、アシダカ軍曹ってなっているのはどうしてかしら」

「アシダカグモは益虫なのでな、敬意を表してネットではアシダカ軍曹と呼ばれているのだ」

「クモなのになんで益虫なんですか」

「アシダカ軍曹は人間に害は無くて、ゴキブリを駆除してくれるのだ」

「でも見た目キモいですよね、ゴキブリがいるのとどっちか良いんですかね」

 

一色さんはスマホでアシダカグモの画像をみて顔をしかめているわね。ゴキブリとアシダカグモ、私はどちらとも共存はしたくないわ。

 

「中二、泳ぎに行くのであれば、どういった水着か書いた方がいいと思うんだけど」

「確かに、ラノベで水着が出てくるときは細かく書いてたりするからな」

「それは怒られそうなのでやめたのだ。我の趣味を書くとこの後、指導してもらうことになるかもしれぬし...」

「...たとえば、私だとどういった水着を考えていたんですか」

「生徒会長殿であれば、ピンクとか黄色のビキニでフリフリが付いているやつで」

「うちは?」

「相模殿は白黒のビキニで考えていた、由比ヶ浜殿は黒のワンピースでお腹の横が無いタイプ」

「では、私はどういったものかしら」

「白で青色が散らばっているビキニで服みたいなワンピースが付いている奴を考えていました」

「聞いた限りでは普通の水着ね。それであれば書いてもよかったのでは?」

「名前とか詳しく分からないので、止めさせてもらいました。ムネノ オオキサ カケナイシ」

 

三浦さんが前の二作を読み終わると、いきなり文句を言い出したわ。

 

「材木、なんであーしが出ていないし!!」

「しょうがないじゃん、優美子。元々さがみんのラノベで、このシリーズは始まったんだから」

「じゃあ、今度はあーしもここに入れて」

「優美子、シェアハウスの関係で、これ以上は難しいんじゃないか」

「そこは、材木が考えればいいっしょ」

「い、一度、考えてみます」

 

私たちが話していると、ラインに折本さんから到着したと連絡が入ったわ、一色さんが迎えにいくようね。

でも材木座君はどうするつもりなのかしら、三浦さんも入れると他の人も入りたいって言われるでしょうし。でも色々考えてもらえれば、これからのラノベのためには良いのかもしれないわね。

 



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32話

「みんな、久しぶり!!」

「お邪魔します」

 

折本さんともう一人が一色さんに連れられ入ってきたわ。見たことはあるのだけれど、名前は分からないわね。

 

「初めましての人もいるね。海浜総合二年の折本かおり、比企谷とは中学が一緒なんだ」

「お邪魔します。かおりの友達の仲町千佳です」

「三浦優美子、あーしはヒキオと一緒のクラスメイトだし」

「相模南です。うちも八幡と一緒のクラスだよ」

 

仲町さんは私も喋るのは初めてになるのよね、私たちも改めて挨拶をしたわ。さすがに彼女はラノベを書いてほしいと言わないと思うのだけれど。

 

「折本殿。この間はお礼、ありがとうございました」

「俺もありがとうな」

「ううん、私もラノベ書いてもらったしね。比企谷。この間のラノベ千佳にウケてたよ。今だに言われるし」

「かおり、あれは駄目でしょ。最初の方は良かったけど、後半なんてそっちの話ばっかりだし」

「止めてくれ、あれは無かったことにしたいんだ」

「ヒキオ、折本だっけ?どういう内容のラノベだったの」

「かおりがエッチな奴って言って、18禁のを書いて貰ってたんだ」

「ねえ、比企谷。いきなり名前呼び?」

「あ、スマン。最近名前で呼べって言われて、折本のことも名前で呼んでしまった」

「いいよ。じゃあ、私も八幡って呼ぶから//」

「..ああ//」

「「「「「....」」」」」

 

折本さんのラノベ、私は言われるまで忘れていたわ。折本さんにとっては初めてのラノベだったのだし、印象が強いのでしょうけど。でも今思い出すと恥ずかしい内容だったわね、色々勉強にもなったのだけれど。

 

「今回は八幡が多趣味って事で書いてみたのだ」

「内容については問題なさそうね、ではみんなで読みましょうか」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

春休みになり日中はぽかぽか陽気なので、私はロードバイクで木更津にある太田山公園まで花見に行こうと走り出していた。

家を出てすぐ、民家からバイクのエンジン音が聞こえてきた。何気なくそちらを見ると比企谷がバイクのエンジンを掛けて出かける用意をしている。ここって比企谷ん家だったんだ。でも比企谷ってバイクの免許持っているの?全然知らなかったな。

私は自転車を止め、比企谷に駆け寄っていた。

 

「比企谷、これあんたのバイク?」

「うん?折本か、バイクはオヤジのだけど免許は持っているんだ」

「ウケる!!何てバイクなの?」

「CB400SUPER FOURって言うんだ。まあ、オヤジのだし結構古いんだけどな。で、これを持って館山の城山公園まで桜を撮りに行こうと思ってな」

 

そういうと比企谷はバッグに入っているカメラを見せてくれた。比企谷ってカメラが趣味なんだ、ちょっと意外。

 

「カメラが趣味なんだ、奉仕部で女の子ばっか撮ってるんでしょ。それある!!」

「何を言っているんだよ、俺が撮るのは景色とか風景だ。女性は小町しか撮ったことない、俺が撮ってたら警察呼ばれるだろ」

「警察呼ばれるんだ。ウケる!!」

「受けねえよ」

「ねえ、比企谷。私も自転車で木更津の桜見に行くつもりだったんだけど、館山行ったことないから連れてってもらえない?」

「やだよ。お前、自転車だから着いてこれないだろ」

「なにそれ、私自転車なの?ウケないよ。..比企谷の後ろに乗っけってってほしいな」

「タンデムで行くのか、危ないだろ」

「比企谷って危ない運転するの?」

「そういう訳じゃないが、バイクはコケたりするからな。その格好だと危ないし//」

 

比企谷は私の恰好を見て顔を赤くしだした。でもなんで顔を赤くしているんだろ、このウェアってピッチリしているから体のライン出ちゃうんだよね、それでかな。でもこのウェアだと確かにコケると危ないよね、膝とか肘とか丸出しだし。

 

「でも、そんなのロードバイクも一緒だよ」

「スピードが違うだろ。せめて、長袖に厚手のズボンじゃないと」

「じゃあさ、家に一回寄ってよ。着替えてくるからさ」

「はぁ、分かったよ。じゃあ小町のヘルメット持ってくるから、ちょっと待ってろ」

 

比企谷は小町ちゃんのヘルメットを取りに家の中に入って行った。比企谷ってバイクに乗っていたんだ。こんなので学校に迎えに来てくれたら、すごい格好いいよね。

カメラの趣味も良いな。今日は桜をバッグに撮って貰お。

 

比企谷がヘルメットを持って家から出てきたので、私はロードバイクに跨がると比企谷を先導するように走り出した。家にはすぐ着いたので、比企谷に待ってもらうように言って着替えに行った。

 

「比企谷、この格好ならどう?」

「ああ、下はジーンズならいいぞ、上は長袖なら何でも良いからそのパーカーで充分だ。じゃあ、このヘルメット着けてくれ。後、俺のリュックを背負ってもらえるか」

「うん、でも比企谷とタンデムか、何だかウケる!!」

「受けねえよ。ただ本当に危ないんで、しっかり掴まっててくれよ」

「うん、じゃあお願いね」

 

比企谷がバイクに跨がり、いいぞって言ってくれたので、私はリアシートに跨った。肩に手を掛けたんだけど、危ないからって腰に手を回すように言われた。は、恥ずかしいな。比企谷に抱きつくなんて、今までしたことないし。でも危ないし私は比企谷に後ろから緊張しながら抱きついた。

 

バイクが走り出していくつかの信号を過ぎたとき、赤信号で止まると比企谷が話しかけてきた。高速を使うから、暫く降りれないが、問題ないか聞いてくれた。何かあったら比企谷の胸を叩けって言われて、私が了承すると比企谷は高速に向けて走り出した。

 

今、高速を走っているんだけど、マンガに書いてあったの嘘じゃん!!マンガだと走りにながら喋っていたけど、バイクの後ろから話しかけても風切り音とエンジン音で会話なんて出来ないし。

でもすごい気持ちいい、風を斬って走っている感じ!!比企谷の背中がすごく大きく感じるな。今まで背中に抱きついたことないけど、今私の体は比企谷の体で支えられているんで、すごく頼りに思える。いま私の体は比企谷に任せるしかないんだよね。

 

暫くするとバイクはパーキングエリアに入って行った。駐車場に止め、私がバイクを降りてヘルメットを取ると、すごく気持ちいい。

 

「折本、大丈夫だったか」

「うん、すごくいい気分だよ。何だかバイクって車と違って気持ちいいね」

「体で風を受けて走るからな。ちょっとここで休憩してこうぜ」

「うん、じゃあジュース飲ませて」

「ああ、ゆっくりしてっていいぞ」

 

「そういえばさ、カメラが趣味なんでしょ。ここで撮ってよ」

「俺、まだ初心者なんで下手くそだぞ」

「良いじゃん。比企谷とこうやって出かけるの初めてだし、記念に色々撮ろうよ。ウケるし」

「だから、ウケねえよ。でも記念だしな。じゃあちょっと用意するわ」

 

そういうと比企谷はリュックからカメラを取り出して、私の方に向けてきた。色々冗談でポーズを決めてたんだけど、比企谷はずっと撮ってくれてた。

 

「ねえ、比企谷。バイクに跨っても良い?」

「ああ、転かさないようにな」

 

バイクに跨ると、比企谷はまた写真を撮ってくれた。いいな、こういうのも。私はもう一枚写真が欲しくて、比企谷にお願いした。

 

「ねえ、記念にツーショット撮ろうよ」

「撮れねえよ、誰が撮るんだよ」

「私に貸して」

 

私は比企谷にカメラを借りると、ツーリングに来て休んでいたオッサン達に話し掛け、撮ってもらえるようお願いした。

 

「おお、いいぞ。兄ちゃん。もうちょっと彼女に近寄れよ」

「いや彼女じゃないんで」

「いいから、じゃあ撮るぞ」

 

私は比企谷の腕に手を通して、写真を撮ってもらった。比企谷は顔を真っ赤にして横を向いちゃっているし。へへ、ウケる!!

オッサンは比企谷に顔を向けるよう言って、何枚か写真を撮ってくれた。

 

「兄ちゃん、照れてばっかりじゃないか。彼女と一緒に撮るんだからもっとしっかりしな」

「いえ、ありがとうございます」

「スーパーフォアか結構古い奴じゃないのか」

「ええ、オヤジのバイクなんですけど、倉庫に置いてあったんで、借りてるんですよ」

「良いオヤジじゃないか」

「そんなことないですよ」

「最近の若い連中はバイクに乗らないからな。まあ、彼女を乗せているんだ。気を付けて走れよ」

「はい」

 

オッサンは手を降って私たちから離れて行った。バイク仲間ってこういう風なのかな。サイクリングでもお互いの自転車のことで話したりするし、バイク仲間もそうなんだよね。

 

「結構、気さくに話してくれる人だったね」

「ツーリングしている人たちって大体、ああいう風だぞ。やっぱりバイク仲間って事で身近に感じるのかもな」

「それある、サイクリングでも一緒だし」

「休憩はもう良いか、そろそろ行こうと思うんだが」

「うん、じゃあまたよろしく!!」

「ああ」

 

私たちがバイクの準備をし出発するとき、さっきのオッサンと仲間たちが手を振って「気を付けてな」って言ってくれていた。

私は手を振り返して答えて、比企谷も左手をあげて答えていた。

 

その後、途中休憩しながら、館山まで走って行き、城山公園についたんで駐車場にバイクを止め、私たちは公園まで歩いて行った。

 

「すごい!!桜綺麗だね!!」

「ああ、ニュースで満開って言っていたからな」

「そこは、お前の方が綺麗だよって言う所だよ、比企谷」

「ば、ばか。俺がそんなこと言える訳ないだろ//」

「ふふ、それある!!」

「でも本当に綺麗だな。城と桜をバックに折本の写真を撮ろうぜ」

「うん、比企谷。綺麗に撮ってね」

 

比企谷は何枚も写真を取ってくれていた。ちょっと撮りすぎじゃない?でも綺麗に残してくれるんなら良いんだけどね。

 

「ねえ、撮ったの見せて」

「え!?あ、後でデータで渡すからそれじゃ駄目か」

「駄目。だってどういう風に撮れているか気になるし」

「...後の楽しみにした方が良いだろ」

「どうせ後で貰うんだからさ、良いでしょ」

 

そういうと比企谷は渋々私にカメラを渡してくれた。どうしてそんなに嫌がるんだろう、どうせ後で見せて貰うのに。

私は比企谷の撮ってくれた写真をディスプレイに映して一枚一枚確認していった。

え!?これってどういうこと!?ディスプレイに映ったのは普通に景色が入った写真もあるんだけど、私の顔がドアップだったり、背景がボカしてある写真だったり。

 

「..そ、その何だ。カメラの練習にな//」

「う、うん。練習なら色々撮らないとね//」

「....//」

「じゃ、じゃあ。今度は二人で撮ってもらおうよ//」

「あ、ああ」

 

私たちはその後、家族連れやカップルにツーショットを撮ってもらった。私は段々積極的に比企谷にくっついて、何回かお願いしているうちに比企谷の腕を抱いて写真を撮ってもらったりしていた。

 

「楽しいね。バイクで出かけて写真撮って、比企谷って良い趣味してるじゃん!!」

「バイクは俺のじゃないし、写真も人によっては変なもの撮っているんじゃないかとか言われるぞ」

「確かにそう思う人もいるかもね、ホームで電車を撮っている人とか「何時もの電車じゃん」って思うし」

「あの人達はカメラが趣味じゃなくて、電車だろ」

「私にはそういうの分からないや」

「でも比企谷の趣味、私は良いとおもうよ。ウケるし」

「何がウケるんだよ」

「...私の顔や全身写真を綺麗に撮ってくれたこと」

「そ、そのスマン。折本が嫌なら直ぐに消すんで」

「消さなくて良いよ、それも含めて全部頂戴ね」

「ああ、分かった」

 

私たちはその後も観光し、帰宅の途についた。比企谷は私を家まで送ってくれると、後日写真のデータをくれるって約束してくれた。

 

「比企谷、最後に写真撮って良いかな」

「ああ、ちょっとカメラ出すんで待ってくれ」

「ううん、これで良いの」

 

私はスマホを自撮り用にして、比企谷に近づいて行った。比企谷はバイクに跨ったままだったんだけど、私は比企谷の前にスマホを持っていった。

 

「ちょっと、こっち向いて」

「ああ、なんd」チュッ

 

比企谷が私の方を向いたとき、私は唇を重ねていた。それと同時にスマホのシャッターを切った。

 

「な、なにしてんだ//」

「へへ、私のファーストキス!!記念に残しておいたの//でも、ごめん。緊張で手ぶれしちゃってる//」

「..じ、じゃあ。俺帰るからな//」

「..う、うん。..今日はありがとうね..」

 

比企谷は何も言ってくれない、私はかなり勇気を出したんだけどな。私の一人相撲だったみたいだし。何だか涙が出てそうになってきた...

 

「明日、良かったらヘルメット買いに行かないか。かおり用に//」

「!?うん、分かった!!かおり専用ヘルメット//へへ、ウケるし//」

「それある。じゃあな、かおり//」

「うん、八幡//」

 

私は泣きそうになっていたけど、今度は嬉し涙なんで八幡にみられてもいいや。

八幡はおやすみって挨拶をして、バイクで帰って行った。後ろ姿も格好いいな。私もいつかバイクの免許取ってみたい、でも八幡の背中でも良いかな。また今日みたいに旅行に連れてって貰おう、それでいつかは泊まりで//

私たちは次の日からバイクで出掛けたり、私が写真のモデルをしたり、楽しい日々を過ごしていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「かおり、普通のラノベも書いてもらえるんだね」

「この間のは折本殿がエッチな奴が良いと言っていたので書いただけだぞ」

「..それって、かおりの自爆だったんだ」

「千佳、そんなこと言わないでよ。ウケないよ」

「はいはい、それある」

 

「先輩ってバイク乗れるんですか」

「免許持ってないぞ、家にもバイクなんてないし」

「持ってたら乗せてもらおうと思ったんですけど」

「高校生でバイクに乗っている人は少ないのではないかしら」

「うん、あーしも聞いたこと無いな。でもバイクの免許って16歳以上でしょ。言わないだけで持っているのかもね」

「中二ってバイク、詳しいの?」

「知らぬぞ、出したバイクも中型の免許を取るとき、自動車学校でよく使われているって書いてあったから出しただけだ」

 

「中二って、カメラも詳しくないんだよね」

「ああ、ほとんど知らぬ」

「カオリ、あんたってカメラが趣味じゃなかったっけ」

「うん、そうだよ。だからちょっとこのラノベは説明不足っていうかもうちょっと詳しく書いてほしいって思ったんだけどね」

「そうであるか。カメラも全然知らぬので何となくで書いたのだ」

「一眼レフとかさ、レンズとかちょっとネットで調べれば分かることで良いんで書くとかね」

「そうね、ラノベのための情報収集でバイクやカメラに詳しくなるのは良いのではないかしら」

「でも書きたいことは分かるんで良いんじゃない?あーしはこれで十分だと思うけど」

「趣味にしている人にとっては物足りないと思うぞ」

「そういうもんですかね」

 

「なあ、かおりってカメラ詳しいのか」

「ちょっとね。何?八幡ってカメラやっているの?」

「いやオヤジがな、小町の卒業式と入学式があるだろ。それで一眼レフ買ってきたのは良いんだが、二人共詳しくなくてな、だから教えてもらえないか」

「良いけど、どこで撮るの?」

「どこでも良いんだが、家で良いか。いつもオヤジは休みの日、寝てるだけなんだが、もともとDIYが好きでな。今、家の書斎が撮影スタジオ見たいになってるんだよ」

「え!?じゃあ、フォトスタジオがあるの!?」

「ただ白い布を壁に掛けて照明が置いてあるだけだぞ、ラフ板なんてダンボールにアルミ貼ったやつだし」

「それある!!十分じゃん!!今週の土曜日、撮影させて!!」

「何を撮るんだよ」

「小町ちゃんで良いじゃん。八幡が撮るとき、私がモデルになってあげる!!ウケるし」

「..ヒキオ、あーしも行って良い?写真撮って貰いたいし」

「うちも行きたい」

「先輩、私も撮ってください」

「ヒッキー、私も行くから」

「私もお邪魔するわね」

「ま、まて。来て良いと言ってないぞ」

「八幡、あなたと折本さんの二人で撮影なんかさせれないわ」

「そうだよ、ヒッキー。二人だとヌードとか撮るかもしれないし」

「そ、そんなの撮るかよ//」

「でもヒキオが調子に乗って、折本も段々テンション上がってくかもしれないし」

「うん、うちもそう思う。今の綺麗な裸を残しておこうとか言いながら段々脱がせてきそうだし」

「そうですね、先輩ですからね」

「なあ、お前たちの中で俺ってそんなに信用ないの。泣いちゃうよ、本当に」

「ヒッキー、私たちだって写真撮ってもらいたいんだよ」

「そうね、高校生の写真でスタジオとかで撮ったものは無いものね」

「それこそ、フォトスタジオで撮ってもらえば良いじゃないか」

「先輩、それだと何枚も撮って貰えないし高いじゃないですか。先輩ならタダですし」

「....はぁ、じゃあオヤジが小町に買ってきたモデルのポーズが書いてある本を明日持ってくるから土曜日までに回してくれ。かおりはネットにも載っているからそっちで勉強しておいてくれ」

「千佳、あんたどうする?」

「お願いしたいけど、比企谷君。いいのかな、私が行っても」

「ここまで来たら何人でも変わらないだろ」

「高校生になって、ちゃんとした写真って撮ったことないしね。みんなで撮ってもらおうよ」

 

この後、ラノベの批評を再開し、話は土曜日の撮影会に変わっていったわ。高校生って事で制服とお気に入りの洋服を持っていくことになったわね。後、三浦さんが水着を持ってくると言い出したので、とりあえずみんなも持っていくことになったわ。でも、八幡に撮影されると思うと照れてしまうわね。

でも二人であればヌードでも良いのではないかしら。相模さんが今の綺麗な裸と言っていたけれど、確かにその通りだし。でもさすがに付き合ってもいないのに、裸になるのは恥ずかしいわね。そのうち撮ってもらえるようにしないと。

 

 



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33話

「先輩!!何とかしてください。今週の土曜日、生徒会の予定が入ってたんですよ!!」

「八幡、うちも用事があったー。今週、じいちゃんの三回忌でさ」

「撮影なんて遊びだし良いだろ」

「..先輩。私を撮りたくないんですか?」

「..うちの事も撮りたくないの?」

「モデルは何人もいるからな」

「ぶーーー!!そこは「可愛いいろはは俺の眼に焼き付いているよ」とか言ってくださいよ」

「はいはい、可愛い可愛い」

「ほんっとうーに、頭に来ますね、生徒会休んじゃお!!」

「ばか、そっちを優先しろよ」

「八幡、うちの写真撮ってよ」

「南も家の用事を優先してくれ」

「ええ、うちも撮影してほしいよ」

 

いろはと南が俺のところに来て愚痴を言っている。南は法事でいろはは生徒会で集まるらしく今回は来れなくなったらしい。南といろはは昨日いた面子に日程を替えれないか確認していたが、無理だったようで二人で俺に泣きついてきた。

 

「あんたら、休み時間に煩いよ」

「川崎先輩って今週のこと知っているんでしたっけ?」

「一色、何かあるの?」

「今週末、八幡の家で写真の撮影会するんだよ」

「はぁ!?私、誘われてないんだけど....」

 

そういうと沙希は俺の事を睨んできた。俺が事情を説明すると今回は参加出来ないから、都合の良い日を決めて自分たちを撮影しろと言われ、了承してしまった。まあ、お陰で南といろはの機嫌が治ったので良かったのだが。

ただクラスで俺のとこに来て泣きつかないで欲しい。弁当を奉仕部で食べるようになってから、突き刺す視線を感じなくなったが、今日は南と生徒会長を泣かせているとヒソヒソ喋っている声は聞こえるし、視線で死ね!!って思われているのを肌で感じていた。

俺は逃れるように自分の教室を出て、材木座のクラスにお邪魔していた。

 

「材木座、今週の土曜日空いているか?」

「空いているが、お主、写真撮影があるのだろ?」

「ああ、それを手伝ってほしいんだ」

「我に手伝えることなどあるのか?我が居ると撮影に支障をきたすと思って、昨日は何も言わなかったのだが」

「あいつらにはメモリカード持ってくるようお願いしているが、撮った後バックアップ取ったり、メモリ容量によっては取捨選択しないといけないだろ。材木座ならノートパソコン持っているし、今回の事情も知っているから、その辺りをお願いできないかと思ってな」

「そういうことであれば我の力を貸そうではないか。他にいるものはあるのか」

「念のため、USBメモリとかSDとかの媒体があれば持って来てほしいな」

「分かった。いくつかあるので持っていくぞ」

「悪いがよろしく頼む。人数が多すぎて大変だろうが」

「いや、頼ってくれてうれしいぞ。八幡」

 

俺は今週行う撮影会のヘルプを材木座にお願いした。さすがに一人だと撮影とパソコンの操作は大変だしな。参加しない女性にお願いすると自分も撮影して欲しいと言い出しそうだし。皆がパソコンの操作が出来れば良いのだが、そういうわけにもいかないだろう。一応、参加者には材木座に作業を頼む事を了承して貰っているし、問題はない。

 

土曜日の朝10時に待ち合わせのため、駅に30分前に着くとすでに雪乃と陽乃が二人で待っていた。何か大きなバッグを持っているんだが、どれだけ服を持ってきたんだ?

 

「八幡、おはよう」

「ひゃっはろー、比企谷君。今日は私も混ぜてもらうね」

「..おはようございます」

 

俺が雪乃を見ると大きくため息をついていた。雪乃が自分から言うとは思えないので、誰かから聞き出したのだろうか。

 

「でさ、今日何するの?」

「え、知らずに着いてきたんですか」

「だってー、雪乃ちゃん実家に服を取りに来て、嬉しそうに出かけるのに教えてくれないもん」

「..雪乃。ここまで付いて来たなら教えても良いだろ」

「ええ、しょうがないわね。姉さん、私たちは八幡に写真撮影してもらうのよ」

「それで雪乃ちゃん、ドレスを選んでいたのね」

「ね、姉さん!!バラさないでよ//」

「良いでしょ、別に。写真とって貰うとき、見られるんだから」

 

雪乃はドレスなのか、でも陽乃は服は良いのか。まあ、この人ならどんな服でも似合うからいいだろうが。

 

「それで陽乃はどうするんですか。皆は制服と好きな服を持って来るはずですけど」

「うーん、私は誰かの制服借りるよ」

「陽乃だと、コスプレになっちゃいませんか」

「ひっどーい比企谷君。まだ現役で通じると思うんだけどな」

 

そんなことを話していると、徐々に人が集まってきていた。かおりは一緒の駅なので徒歩で来ており、材木座、仲町さん、海老名さんが到着した。うん?海老名さん?

 

「あれ、今日って海老名さんもメンバーに入ってたっけ?」

「優美子と結衣に誘われたんだ。まだ二人は来ていないみたいだけど」

 

俺たちが話していると、雪乃の携帯が鳴り出した。会話を聞いていると、結衣と優美子が電車に乗り遅れたらしい。結衣は俺の家を知っているから直接来てもらうようにした。材木座は大きなリュックを背負っているが、多分パソコンが入っているのだろう。手が開いているので、材木座と俺は皆の鞄を持って一路家に向かって歩き出した。

 

「ヒキタニ君、私がお邪魔するのまずかった?」

「別に問題ないだろ、この人数なら一人増えても」

「..そういうことじゃなくてさ。修学旅行の後、私のせいで奉仕部が危なかったでしょ。今はそんなこと無いようだけど、今だに私の中で申し分けなかったと思っているんだ」

「..あれは海老名さんのせいじゃない。まあ色々あったけど、あれのおかげもあって今の奉仕部があるんだ。海老名さんが気にすることじゃ無いだろ」

「そういってもらえると、私としても有難いんだけど。...うん、分かった。今は材木座君の依頼もあって楽しそうだしね」

「ああ、だから気にしなくていいぞ」

「じゃあ、私もラノベお願いして良いかな。もちろんハヤハチで!!」

「そんなの書かせる訳ないだろ、材木座にしてもそんなの書きたくないだろうし」

「うん、じゃあ私で書いてもらうね。ヒキタニ君との濃厚な奴」

「頼む、そっち方面も止めてくれ。せめて普通のラブコメで」

「へえ、ヒキタニ君。普通のラブコメなら書いてもらってもいいんだ」

「..本当はこれ以上、黒歴史を増やしてほしくないんだがな。他の奴が良くて海老名さんが駄目って言えないだろ」

「うん、ありがとう」

 

そういって海老名さんは材木座の方に行ってラノベを頼んでいるようだ。海老名さんの中で修学旅行の件があったので、今までラノベを頼まなかったのだろうか。聞けなかったが今はラノベを材木座にお願いしているようなので、問題ないのだろう。いつまでもあの件を引きずるのも良くないしな。

 

家につくと小町が玄関から飛び出してきて、皆に挨拶しだした。

小町の部屋を着替え部屋にし、材木座は俺の部屋で撮ったデータの処理を、書斎では俺と折本が写真撮影を行い、撮影中、次の人が待機するようにした。皆、撮影中も見たいと言っていたが、さすがにこの人数は入れないからな。靴については、養生テープをオヤジが買ってあったので、撮影の時、履きたい人には裏に貼ってもらうようお願いした。

 

「八幡、照明とかちゃんしたのあるんだね、ちょっとビックリした」

「ああ、初心者のくせに小町のためなら、こういうの買っちゃうんだよな。俺の時は昔から持っていたコンデジで数枚撮っただけだが」

「それある!!でも、そんなもんだよ。私もコンデジで撮ってもらっただけだし」

 

俺は親父の買った一眼レフを用意しだした。使い方は今まで何度か触っているので問題ないんだが、撮影テクニックははっきり言ってまったくの素人だからな。

 

「へえ、EOSKissなんだ」

「この付いていた標準レンズしかないんだが、問題ないか」

「うん、今回は照明もあるし広く使えないから、それで充分だよ。今回気を付けないといけないのはホワイトバランスだろうね」

「オートじゃ駄目なのか」

「オートでも良いけど、自分でやった方がいいよ。カメラのディスプレイだと確認しにくいけど、今回はパソコンですぐ確認できるから、一番良い設定を見つけた方がいいね」

「ふーん、じゃあ試し撮りした方がいいな」

「後、今回はレンズが無いんでしょうがないけど、顔のアップを撮るんなら望遠レンズを使った方が良いよ」

「近くにいてもか?」

「被写体の歪みが少なくなるんだ。私のカメラで試したのを見せるからとりあえず、誰かで試し撮りしようか」

 

女性陣は今、小町の部屋で色々用意をしているので、俺達は小町を呼んできて試し撮りをした。それをパソコンに表示したのだが、確かにオートとホワイトバランスで調整したものとでは違う写真になっていた。

かおりと一緒に一番良い設定を見つけた後、かおりの望遠レンズで撮ったアップも見せてもらったが、確かに歪みが少ない。アップを撮るには望遠レンズの方が良いのか。単純に被写体に近づけばいいと思っていたのだが。

 

「今回みたいに全身写真でも望遠の方が良いのか」

「うん、広さに余裕があるならそうなるね。今回の部屋だとバストアップしか撮れないし。ただ背景をボカすには開放値って言って八幡のだったらF4とか書いてあるでしょ。その値が小さいほど、背景をボカすことが出来るんだけど、望遠だと数字が大きくなっていくんだ」

「なかなか難しいもんだな」

「今はそのレンズだけ考えればいいから。今回はカメラの操作練習というより、いかにモデルの気分をよくして良いポーズとアングルを撮れるかだよ。それこそモデルが脱いでも良いと思わせるかだよね」

「俺にそんなこと出来るわけないだろ」

「それある!!でも無言で写真撮ったらだめだよ、こっちからも色々要望を出すようにね。八幡がしてほしいポーズをいかに自然にさせるかだよ」

「一人目は千佳にして、私が色々指示するから二人目からは八幡ね。もちろん千佳のとき、撮りたいポーズがあれば言ってくれればいいから」

 

そういってかおりは仲町さんを呼びにいった。二人目は海老名さんのようで、書斎に入ってきて椅子に座っていた。まずは制服なんだよな。

 

「ヒキタニ君。さっき優美子と結衣が着いたよ」

「ああ、分かった」

「じゃあ、千佳。撮影するからまずは自分でポーズ取ってみて」

「う、うん。こうで良いかな」

「いいね、ちょっと目線をカメラからずらして、うん。じゃあ顎上げて」カシャカシャ

 

かおりは色々注文しながら仲町さんを撮影していった。俺も一緒に撮影していたが、俺も段々ノッてきて注文してみたくなってきた。

 

「仲町さん、いいかな。正面向いて左足を前に組むようにしてもらえないか」

「いいね、八幡。のってきたみたいだね、ウケるし」

「じゃあ、顔を左に傾けて。うん、重心を左足だけにして体を少し傾けて」

 

ヤバい!!テンション上がってきた。結構楽しいな、これ。俺とかおりは仲町さんに注文を付け、寝転んでもらったり座りながら足を組んでもらったり撮影に没頭していた。

 

「はい、千佳。お疲れ」

「仲町さん、ありがとう」

「ううん、こっちこそありがとう。ちょっと疲れちゃった」

「...ヒキタニ君。座って足組ませたとき、スカートの中撮ろうとしてた?」

「え!?まったく気づかなかったが、その見えていたのか」

「うん、丸見えだったよ」

「本当に!?かおり!!何てポーズさせるのよ!!」

「それある!!でも撮影中、まったく気にならなかったでしょ。千佳もノッてたってことだよ」

「う、うん//その比企谷君も気づいていた?」

「いや、まったく気にならなかった。全体を見ているんで一部なんて気にしてないしな」

「じゃあ、後は材木座君に見られなければ良いよね。私のメモリに移してもらうだけにしておこ」

 

かおりと仲町さんとのツーショットを数枚撮影し、俺とかおりはメモリを渡した後、次の人を呼んできてもらうよう仲町さんにお願いした。

俺たちは海老名さんの撮影を開始したのだが、かおりの言うことは聞くのに、どうしてか俺の言うことを聞いてくれない。

 

「ねえ、ヒキタニ君。どうして私は名前で呼んでくれないの?」

「もしかして、それで言うことを聞いてくれないのか」

「....」

「..姫菜//両手を腰に当ててくれないか//」

「うん//」

 

なんとか姫菜が言うことを聞いてくれるようになり、撮影は順調に進んでいった。なんで皆名前呼びに拘るんだよ、分かれば良いじゃないか。

 

この後も休憩を挟みながら皆の撮影を行っていき、かおりは休憩中に化粧を直し途中に入れてもらって撮影を行った。

優美子が撮ったときはあとで、結衣と姫菜を混えて撮影したり、結衣の時は雪乃が混ざって撮影を行った。

 

結衣の時はかなりまずかった。座らせてから上目遣いになるように撮影した時、胸の谷間が目に入り、思わず見入ってしまった。

その後に控えていた雪乃が拗ねてしまい、表情が暗かったので、かおりに撮影を続けるように言ってから、雪乃のそばに近寄って行った。ずっとかおりはカメラで撮影していたが、雪乃の暗い顔を見たくなかったので、俺はお構いなしに頭を撫でに行った。

 

「は、八幡//撫でて貰わなくて良いわよ//」

「そうか、じゃあちょっと前に立ってくれ」

 

俺は雪乃を後ろからあすなろ抱きして、雪乃の耳元に口を近づけた。

 

「雪乃には笑顔が似合うから、俺に見せてほしいな//」

「..八幡//」

 

そこからの雪乃は素直に言うことを聞いてくれ、撮影が順調に終了した。

待っていた陽乃もちょっと拗ねだしたが、頭をナデナデすると気分を切り替えて撮影に入ってくれた。誰かの制服を借りたのだろう。似合っていて確かに現役と言っても通じるぐらいだった。

 

「似合ってますね、陽乃//」

「ありがとう。じゃあ、お願いね」

 

俺とかおりはいつもどおりに撮影し、一通り終わると、陽乃は雪乃を混えて撮影を行った。陽乃と雪乃が二人でファインダーに入ると、雑誌の表紙みたいだな。二人共、最初は拗ねていたが今は笑顔で撮影させてくれているし。これで終わりかと思っていたら、陽乃が俺と一緒に撮りたいと言うことで対応したのだが、お姫様抱っこしろと言われたのにはビックリした。雪乃が出て行った後で良かったが、かおりが雪乃の撮影の時から、いつもの笑顔が無く怒っているようだった。

 

制服での撮影が終わると、小町と撮影が終わった人達が食事の用意をしてくれていたようで、俺とかおりと材木座も食事をいただいていた。

 

「なあ、かおり。なんで今そんなに怒った顔しているんだ」

「...いいの?言っても」

「言われないと分からないだろ」

「雪ノ下さんにあすなろ抱きしてたじゃん!!お姉さんにはお姫様抱っこしたし!!ウケないんだけど」

「はぁ!?ヒキオ、どういうことだし!!」

「ヒッキーどういうこと!?ゆきのんも説明してよ」

「は、八幡が撮影中、私を笑顔にするためにしてくれただけよ//」

「私はお願いしたよ。比企谷君素直に聞いてくれたし」

「「「「「....」」」」」ジー

「そうだね、ハチ。私も期待しているから」

「姫菜、ハチって俺のことか」

「そうだよ、ハヤハチとかトツハチって呼んでいるから分かりやすいでしょ」

「ヒッキー、私の時もやってよね」

「ヒキオ、あーしもだし」

「それある!!私の時もよろしくね。千佳も良かったらお願いしたら」

「う、うん。あすなろ抱きとか、お姫様抱っことか憧れるよね//比企谷君、よろしくね」

「..はぁ、分かったよ」

 

「材木座さん、小町のご飯どうですか」

「おお、小町嬢。すごくおいしいぞ」

「まあ、今日は材木座も大変だからな、遠慮せず食べてくれ」

「お兄ちゃんって、ご飯については何もしてないじゃん。そういえば材木座さん、小町のラノベもお願いしますね」

「八幡に聞いていたが、良いのか?八幡とのラブコメで」

「はい、ちょっと考えてみてください」

「..近親相姦とか?」

「材木座、お前小町と一緒の思考しているぞ、進級大丈夫か」

「おにいちゃんひどいよ!!小町的にポイント低い!!」

「..まあ、考えてはみるが、小町嬢のラノベは少し時間をくれないか」

「材木座、小町嬢は止めてくれないか、水商売みたいだ」

「では何と呼べば良いのだ」

「普通に小町で良いだろ」

「材木座さん。いいですよ、小町で」

 

ご飯を食べた後、俺とかおりは休憩中ずっとソファーでダラけていた。さすがにちょっと疲れたな。普段喋らないから口が乾くし。

 

「八幡、疲れた~」

「まだ半分も終わっていないぞ、ゆっくり休憩してくれ」

「うん、八幡。肩貸してね」

 

かおりは俺の肩に頭をあずけてきて、目を閉じているようだ。本当に疲れたんだろうな。後、休憩は30分ぐらいあるのでこのまま寝かせておいた方が良いよな。

皆は次の用意で着替えとか行っており、リビングは落ち着いて座っていられる。

 

「材木座、俺とかおりの写真で腕の差ってあるか」

「我には写真のことはよく分からないが、両方共綺麗に撮れていると思うぞ。ただ折本殿の写真は構図にこだわっているように見受けられるな」

「そうか、ちょっとかおりが大変そうなんでな。もしこのまま起きなければそのまま寝かせておこうと思ったんだが、かおりに写真は敵わないだろうな」

「八幡、大丈夫だよ。私も一緒に撮るから」

「起きてたのか、かおり」

「うん。ちょっとウトウトしてたけど、目を閉じてたんで大分楽になったよ」

「大丈夫か、無理はするなよ」

「うん、でももうちょっと肩を貸してて」

 

かおりはまた目を閉じたので、俺はそれ以上、話すのを止めた。かおりが大丈夫というのであれば、こちらから止めさせるのは気が咎める。本当に無理であれば途中で休んでもらえばいいんだし。ただこの後の予定を変更するのが良いかもしれないな。

 

休憩が終わると小町が呼びにきた。かおりも起きてノビをしていた。

 

「おにいちゃんも早く着替えて」

「え、俺、関係あるの?」

「皆と撮るでしょ。もうちょっとちゃんとした恰好しようよ」

 

俺は小町と一緒に部屋に入るとすぐに着替えるように言ってきた。小町セレクトの服を着て書斎に入っていくと、すでにかおりはカメラの準備を整えていた。今回は優美子が最初に撮るらしい。でも洋服でなくて水着で待っているんだが。椅子には水着を着て上に服を羽織っている姫菜と結衣が待機しているし。

 

「なあ、どうしてみんな水着なんだ」

「皆で話し合って、折本が大変そうだから、後一回の撮影にしてもらおうってなったし。またヒキオにお願いすれば撮れるっしょ」

「うん、だから今回は服か水着で撮ってもらって、また次回にお願いしようって」

「ヒッキー、お願いね」

「ごめんね。私のせいで皆に気を遣わせて、八幡も次回あるって事になって」

「いや、俺もそうお願いするつもりだった。撮影ってこんなに大変とは思っていなかったしな」

「じゃあ、早速パッパとやっちゃうし」

 

そういうと上に羽織っていた服を脱いで、姫菜と結衣も上着を脱いでいた。最初に三人で撮るのか、それであれば着替えにいけるからか。

優美子と結衣は千葉村で着ていた水着のようだな、優美子は赤色のビキニ。結衣は水色のビキニ。姫菜は千葉村ではスクール水着だったが、今回は色を揃えて着たのか、黄色のビキニを着ていた。信号機で揃えたのか?

こうやって並ぶと万乳引力がすごい。なにがとは言わないが、順番でいくと姫菜、優美子、結衣になるんだな。ずっと見ていると顔が赤くなっていくので俺はカメラの用意を始めた。

 

「ヒッキー、見すぎ!!」

「良いじゃん、結衣。ヒキオも大きい方がいいんだし」

「そんなことないよ、ハチは私ぐらいの大きさが良いんだよ。ね、ハチ」

「はいはい、じゃあ、撮影を開始するから」

 

俺は何食わぬ顔をして撮影を開始した。でも顔が真っ赤になっているのが分かる。10枚ほど撮影すると今度は優美子一人での撮影となった。

 

途中までは普通に撮影していたのだが、優美子は俺を見てワザと胸を強調するようなポーズをとってきていた。はっきり言ってエロい。膝を床につけ足を開き頭の上で手を組んで胸を強調してきたり、背中を向けてお尻を強調して上半身を振り向かせたり。顔の表情は妖艶で俺は夢中になって優美子の写真を撮りつづけていた。

 

「八幡?八幡!!おい!!もう終わりで良いよね」

「..あ、ああ、悪い。夢中になってしまった」

「ヒキオ、あーしの身体すごいっしょ」

「ああ、凄かった。つい夢中になっていた」

「じゃあ、ヒキオ最後に一緒に撮るし」

 

俺と優美子は一緒に写真を撮った。その際、眼鏡を掛けろと言われて、優美子が持っていた眼鏡を掛けさせられた。あすなろ抱きとお姫様抱っこをさせられたが、水着なので肌に直接触れているので恥ずかしいな。

 

「ヒキオ。その眼鏡、あーしからのプレゼントだから」

「いや、貰えないだろ、こんな高いもの」

「家に余ってたやつだし。だから皆の撮影の時も付けな」

「分かったよ。ありがとうな、優美子」

 

そういうと、優美子は部屋を出て行き、交代で結衣が洋服を着て入ってきた。

 

「ねえ八幡!!あんた眼鏡掛けるとすっごい格好いい!!私の時も掛けてね!!」

「眼鏡ぐらいで変わるわけないだろ、じゃあ姫菜。次いいか」

「はぁ、ハチ。あんな優美子見せられたら、私敵わないよ」

「姫菜は明るい表情で撮れば良いんじゃないか」

「うん、じゃあよろしくね」

 

俺は姫菜に色々注文をつけながら、撮影を行っていった。半分ほど撮ったとき、俺は姫菜の素顔を見たくなっていた。

 

「なあ、姫菜。眼鏡を取ってもらえないか」

「ええ、恥ずかしいよ」

「良いから取ってくれ」

「う、うん//眼鏡を取った顔見せるの、ハチが始めてなんだからね//」

 

そういうと、姫菜は眼鏡を取って、俺に顔を見せてくれた。やっぱりトップカーストだな、凄く可愛い。俺は姫菜に色々注文をつけながら、撮影を行っていった。途中、姫菜は水着の肩ひもをズラしたりして俺を惹きつけていた。

 

「ハチ。トップス取っていいかな」

「はあ!?トップスってブラの事だろ。まずいって、それは」

「手ブラだよ、さすがに見えるようにはしないよ」

「じゃあ、反対向いているから」

「ううん、外している最中も撮影して欲しいの」

「..わ、分かった//」

 

姫菜はトップスを外しながら、俺には見えないようにしていた。大丈夫そうなので俺は撮影を行っていたが、俺の方をずっと見て惑わすような表情でトップスをゆっくり外していた。手から溢れた胸が俺の目を離さない。

 

「ハチ、私の身体って綺麗?」

「あ、ああ、綺麗だよ。姫菜//」

「ありがとう。じゃあそろそろ最後で良いよね」

 

そういうとトップスを着けたいので反対に向いてくれって言われた。

 

「じゃあ、ハチ。眼鏡を付けて私もあすなろ抱きとお姫様抱っこしてね」

 

俺は言われるがまま、姫菜の要求を満たしていた。ハッキリ言ってかおりと結衣が居なければ、とっくに理性が飛んでいただろう。優美子とは違う色気を姫菜は放っていた。

 

「ヒッキー。この後、休憩してから千佳ちん撮ってもらうんで。休憩中にかおりん着替えてね」

「うん、分かったよ」

 

俺たちは結衣の撮影を開始した。結衣はシャツを重ね着したように見えるニットのワンピースで下にミニスカートを履いていた。凄く可愛い、でも言ったら怒られるだろうがビッチっぽい格好だな。結衣は誘惑するような色っぽい雰囲気を出しており、途中上着を脱ぎたいと言って、結衣はニットを脱ぎだした。その時も撮影を続行していたが、胸から下はおへその上ぐらいまでのチューブトップで結衣の魅力がアップしていた。

胸がチューブトップから溢れていて凄いことになっている。俺はまた我を忘れて、色々なポーズを要求していた。途中、下着が見えていたが、お構いなしにシャッターを切りつづけていたため、俺はまたかおりに止められていた。

 

「ヒッキー、どうだった//」

「ああ、その凄く良かったよ//」

「じゃあ、ヒッキー。私とも撮ってよね」

 

そういって俺と結衣はツーショットを折本に撮影して貰い、休憩に入った。

 

「ねえ八幡。大丈夫?」

「大丈夫だ。ありがとうな、かおり。止めてくれて」

「ううん。結衣ちゃんリビングに行ったんで私たちも行って休憩しよ」

「分かった。皆なんであんなに色気を出せるんだ。かおりがいなかったら、とっくに理性が飛んでいると思うぞ」

「それある!!でも女は魔性って言うからね。私にあんな色気が出せるか自信ないけど」

「か、かおりも十分魅力的だぞ//」

「う、うん。ありがとう//じゃあ、休憩いこ//」

 

俺とかおりと材木座は休憩していたが、かおりは自分の用意があると言って、暫くすると着替えにいった。

 

「八幡、写真を見ていると我の自我が崩壊しそうだぞ」

「俺もそうだ、なんで女ってあんなに色っぽくなるんだ。一人で撮ってたらヤバかったぞ」

「お主は良いではないか、我は写真の女子と二人で写真を選別しているんだぞ」

「頼むから変な気は起こすなよ。問題なければ撮影が終わった人とリビングで作業したらどうだ。誰か居るだろうし」

「そうだな。ここで作業をさせてもらう事にする」

 

俺たちが休憩から戻ると、仲町さんが既に待機していた。仲町さんはTシャツを着ていたのだが、丈が目茶苦茶短くて、胸が隠れるぐらいしかない格好だった。下は黒色ミニのフレアスカートでガーターベルトして網タイツを履いていた。

 

「な、仲町さん。凄い格好だな」

「う、うん。私ハードロックとかヘビメタが好きなんだ。だからこういう恰好に憧れていてね」

「じゃあ、普段する格好じゃないのか」

「うん、流石に出来ないよ。でも今度ライブがあるんで、ちょっとチャレンジしてみるつもり」

「..凄く似合っているぞ//」

「ありがとう//」

 

俺たちが喋っていると、かおりが用意を終えて部屋に入ってきた。かおりはモノトーンのワンピースを着ていた。よく分からないがベアトップと言うらしい。俺にはチューブトップとの違いが分からないな。

まず二人揃って撮影をし、俺とかおりは仲町さんを撮り始めた。仲町さんも撮影が二回目だからだろうか、かなりノっているようで撮影は順調に進んで行った。

 

「Tシャツの中に手を入れてくれ」

「うん」

「じゃあ、口を半開きにして、物欲しそうな表情で」

「...//」

「そのまま、右手の指を口に咥えるように。..うん、可愛いぞ。じゃあ、左手をTシャツを上げるように上に持ってってくれ」

「そ、その恥ずかしいんだけど//」

「千佳、やってくれ」

「は、はい//」

 

ほぼ下半分黒色のブラが見えている状態で俺は千佳の表情を撮影していった。彼女がたまに魅せるエロティックな表情が俺を捕らえて離さなかった。

 

「じゃあ、仲町さん。終わりで良いかな」

「...さっきみたいに名前で呼んでくれないの?」

「え!?俺、名前で呼んでたか」

「うん、八幡。千佳って呼んでたよ」

「その、仲町さん。呼び捨てにしてすまなかった」

「..ううん、八幡くん。名前で呼んでくれたほうが嬉しいな//」

「分かった。千佳//じゃあ、俺とツーショット撮ってくれるか//」

「はい//」

 

そういって俺は眼鏡を掛けて千佳の横に行くと、彼女は顔を真っ赤にして俺の方を見ていた。

 

「千佳、ビックリでしょ」

「う、うん。八幡くん。格好いい//」

「ありがとうな、お世辞でも嬉しいよ」

「..お世辞じゃないんだけどな」

 

俺はまず、あすなろ抱きをして、数枚撮ってもらった後、千佳をお姫様だっこして撮影に入った。

「かおり、ちゃんと撮ってね」

「うん、じゃあ撮るよ」

 

そういうと千佳はいきなり首に絡めた腕に力をいれ、俺の頭を彼女の方に持っていった。なんだ?と、思っているうちに千佳は俺の右頬にキスしていた。

 

「ああ!?千佳!!何やってるの、ウケないよ!!」

「八幡くん、撮影ありがとう//」

「い、いや、その、お、俺のほうこそ、ありがとうな//」

「八幡、テンパりすぎ!!ウケる!!」

「ほっぺだけど、は、初めてしちゃった//」

「その、他の連中には黙っててくれ。俺への罵倒が凄い事になるんで」

「それある!!じゃあ、私とも撮ってよね。ウケるし//」

「ええ、この後、誰かくるんだろ」

「じゃあ、今から撮れば良いじゃん。千佳よろしく」

 

そういうと、かおりは千佳にカメラを任せて、千佳とは違う方向でお姫様抱っこさせ、左頬にキスしてきた。

 

「ありがとうね、八幡。へへ、ウケる//」

「いや、こちらこそ、そのありがとう//」

 

千佳は撮影を終え、次の人を呼びに書斎を出て行った。

 

「なあ、今日の撮影で腕は上がっているんだろうか」

「うん、モデルへの指示は格段に上がっているよ。カメラも最初のころより手ぶれとか少なくなっているんじゃないかな。撮り方が様になってきているし」

「自分じゃ分からないな、でももっと練習しないとイケないんだろうな」

「うん、また今度あるんでしょ。外で撮影すると良いかもね」

「公園で撮ると良いかもな。かおりとのラノベじゃないが、桜をバックでも良いだろうし」

「ただ花見時期だと人が多いからね」

「それについては、今度の参加者に聞いてみるよ、かおりも良い日を教えてくれ」

「うん、分かった」

 

俺たちが話していると、陽乃が入ってきたので俺はかおりの撮影を開始した。

膝丈のワンピースなので、あまりエロさは感じなかったが、普段の活発なかおりからは感じられない清楚なイメージで、そのギャップか俺は夢中で撮影を行っていた。

途中、かおりのカメラを借りたが、望遠レンズが付いていたので、俺はかおりのバストアップで色々な注文を行っていた。

 

「八幡、そんなにアップばかりだと恥ずかしいよ//」

「ああ、分かった。じゃあ、またこっちで撮るから」

 

一通り、撮影を終えたが、かおりはかなり疲れており、俺は陽乃に休憩を入れるようにお願いした。

 

「比企谷君、私は普段着だし化粧もそのままだからさ、比企谷君一人の撮影で良いよ」

「すみません、陽乃。じゃあ、かおりをリビングに連れていくんでちょっと待っててください」

 

俺はかおりに肩を貸してリビングまで連れて行き、ソファーに寝かせて小町に毛布を掛けるようお願いした。

 

「雪乃、今から陽乃の撮影をするんで来てくれないか」

「姉さんは八幡一人で撮るの?」

「ああ、普段着だから俺一人で良いって言われてな」

「私も八幡だけで良いわ。折本さんにこれ以上、無理はさせれないもの」

「悪いな、雪乃」

「ごめんなさい、雪ノ下さん」

「いいえ、折本さん。私たちのわがままに付き合って貰ってありがとう。今はゆっくり休んでね。じゃあ、八幡。行きましょうか」

 

俺と雪乃は書斎に入って、陽乃の撮影を始めた。一回目の撮影の時も思ったが、陽乃はこちらから指示を出さなくても、自然とモデルのようなポーズを取ってくれる。逆に注文をつけるのが憚れる(はばかれる)が、何も言わないのもどうかと思い、俺はしてほしいポーズをお願いしていた。

「比企谷君ってえっちなポーズ好きだよね」

「え、そんなことないと思いますけど」

「多分、男が好む恰好と女が好む恰好は異なるんだろうね。でも撮ってくれてありがとう。じゃあ、あとは雪乃ちゃんを撮ってあげて」

 

そういうと、陽乃は椅子に腰を掛けて雪乃の撮影を促した。

 

「八幡、お願いね//」

「ああ、こちらことよろしくな」

 

そういうと、雪乃はハイヒールを履きライトの前に立って、羽織っていた上着を脱いでポーズを決めたのだが、俺は見惚れてしまった。タダでさえ見入ってしまう容姿が一段と魅力を増しており、俺は生唾を飲み込んでいた。

雪乃は髪をアップにしていて、シンプルなロングドレスを着ており、背中が大きく開いていた。背中にはもちろんブラなんて着けてない。って事はノーブラなのか?大きく開いているスリットから生足が覗くたびに、俺の理性が削られていった。

 

「比企谷君、雪乃ちゃんに見惚れているのは良いけど、早く撮ってあげてね」

「は、八幡//私はいつでも良いわよ//」

「あ、ああ」

 

俺は言葉を発するのも忘れ、カメラのシャッターを切り続けていた。

 

「ね、ねぇ八幡//私には指示をして貰えないのかしら//」

「すまない。じゃあ左手を腰に当ててくれ。うん、スリットから足を出して左足を右足の前に出すように」

「ええ、これで良いかしら」

「うん、綺麗だぞ。雪乃。じゃあ今度は少し足を開いて、頭の後ろに両手を回してくれ。それで腰をクネらせて。じゃあ口を少し開いて顔を横に向けてくれ」

 

俺は疲れていたのだが、それも忘れて写真を撮りつづけていた。撮影が終わるころ、俺は最後にしてほしいポーズがあったので雪乃にお願いしていた。

 

「雪乃。最後に髪を解いてもいいか」

「ええ、良いわよ」

「じゃあ、仰向けに寝てもらって、悪いが髪の毛を解いてくれ」

「良いわよ、でもこれで良いかしら」

 

俺は雪乃に仰向けに寝ているところに近づいて、髪の毛を四方八方に広げた。

 

「じゃあ、両足をスリットから出して組むようにしてくれ」

「は、八幡//恥ずかしいわ//」

「綺麗だよ、雪乃//」

「あ、ありがとう//」

 

俺は雪乃の上から撮るため、椅子の上に立ち撮影を行った。撮影を終えると、雪乃とのツーショットを撮るため、陽乃にシャッターを押すようにお願いした。

 

「八幡//やってほしいことがあるのだけれど//」

「ああ、変な事じゃなければ良いぞ」

「座って、あすなろ抱きをして頬を合わせてほしいのだけれど//」

「あ、ああ//」

 

俺たちが頬を合わせると、陽乃が撮影を行ってくれた。ただ、陽乃がなんだかムクレているようだな。そういえば、ツーショットを撮ってなかった。この後、撮れと言われるのだろう。

その後、雪乃を抱えお姫様抱っこしたのだが、カメラ目線ではなく見つめ合うようにしてお互いのおでこをくっつけての撮影だった。

 

「ありがとう、八幡//」

「..雪乃、こちらこそありがとうな//」

「じゃあ、私にも一緒の事してよね」

「わ、分かりましたよ」

 

今度は雪乃がカメラを持ち、陽乃に先ほどと同じような写真を撮らされた。さらに陽乃に膝枕をしてもらい撮影を終わった。

 

「....八幡、私と膝枕してない」

「いや、もういいだろ。後、ドレスに顔の脂が付いちゃうし」

「じゃあ、足を出せば良いのね」

 

そういうと、雪乃はスカートを捲り上げて両足をだしていた。スカートの中から水色の下着が見えている。見ないようにしていたが、どうしても目が引き寄せられ、なんどか見てしまっていた。

 

「は、八幡//恥ずかしいから早くして//」

「は、はい。おねがいします//」

 

雪乃に膝枕してもらったが、素肌の感触が目茶苦茶気持ちいい。このまま寝れたらどれぐらい気持ちいいんだろうか。ただ俺の理性はゴリゴリ削られていた。雪乃は俺の頭を撫でてカメラに目線を向けていた。俺達は照れながらも陽乃に写真を撮ってもらい撮影は終了した。

俺たちはリビングに移動すると、皆、普段着に着替えていて、自分のスマホや材木座のパソコンで写真を見ていた。

 

「八幡、雪ノ下さん、お姉さん、ごめんなさい。途中で撮影抜けちゃって」

「いや、ありがとうな。かおりのお陰で撮影も慣れたし、大丈夫だぞ」

「折本ちゃん。私と雪乃ちゃんも、ちゃんと撮ってもらえたから気にしないでね。今日はありがとう」

「折本さん、私からもお礼を言わせて。今日は本当にありがとう」

「かおり、ありがとうね」

「あーしも嬉しかったし、あんがと」

「かおりん、今日は楽しかった。ありがと」

「折本さん、ありがとう。飛び入りだったけど、凄く楽しかったよ」

「ううん、こちらこそありがとうね」

「比企谷君、材木座君もありがとうね」

「「「「「ありがとう」」」」」

 

「じゃあさ、最後に皆で写真撮ろうよ」

 

陽乃さんがそう声を掛けると、みんな賛同して撮影を行うこととなり、書斎だと狭いのでリビングで撮影することにした。材木座がカメラを持っていたが、小町が替わると言っている。

 

「材木座さん、今日はみんなで撮るんですから、あっちに入ってください」

「いや、我が撮影するぞ、小町があっちに行ってくれ」

「材木座君。今回、君たち三人が主役だよ」

「材木、早くこっちに来るし」

「材木座君。あなたにも入ってほしいわ」

「そうだよ中二、早くこっち来て」

 

材木座はそう言われ、テレながら入ってきた。

 

「じゃあ、折本ちゃんが真ん中で比企谷君と材木座君が折本ちゃんの横ね。三人はソファーに座ってもらって、私たちは回りで撮ろうよ」

 

「「「「「はい」」」」」

 

折本を真ん中に俺が右、材木座が左に座ってから、皆が俺たちを取り囲むようにして、撮影を行った。こういうのも良いな、この写真は印刷して部屋に飾っても良いかもしれない。

写真撮影後、着替えや後片付けを行った後、皆でお茶を飲みながら一息付いて雑談していた。

 

「じゃあ、みんな帰ろうか」

「ええ、そうね」

「「「「「お邪魔しました」」」」」

「小町。俺、駅まで送ってくるから」

「うん。また皆さん来てくださいね」

 

俺と材木座は女性のカバンを持って駅まで歩いて行き、皆を見送ったあと、家へと帰った。

 

「今日は疲れたな、小町もお疲れ」

「ううん、小町は何もしてないよ。でも三浦さんと海老名さんって始めて喋ったし、仲町さんは始めて会ったけど、皆いい人たちだね」

「ああ、話してても面白いしな。俺も千佳とちゃんと喋るの初めてだったが、いい人だったし」

「...あれ?そういえば、かおりって皆が帰ったとき、居たか?」

「うん?覚えてないけど、小町の部屋には荷物なかったよ」

「....ちょっと、玄関みてくる」

 

俺は玄関に向かうと、見慣れない靴が脱いであった。これ、小町のじゃないよな。

 

「見慣れない靴があるんだが、もしかしてまだどこかに居るのか」

「書斎かな?ちょっとみてくるね」

 

小町が書斎に見に行ったが、誰もいなかったと言って帰ってきた。

 

「おにいちゃんの部屋に居るんじゃない?」

「俺の部屋?一応見てくるか」

 

俺は自分の部屋に入っていくと、カバンが置いてあり、布団が膨らんでいるのが分かった。部屋の中はカーテンが閉めてあるので薄暗かったが、覗き込むとかおりが寝ている。俺はかおりを起こさないよう、ゆっくり部屋から出てリビングに戻り、小町に居たことを伝えた。

 

「ねえ、おにいちゃん、どうするの?」

「かおりも疲れているから起こすのも躊躇われてな、でも不味いよな」

「うん。でも、もうちょっと寝かせてあげたら。折本さん、凄い疲れてたもん」

「まだ4時だから、後2時間ぐらいしたら起こせばいいか。小町起こすの、よろしくな」

「おにいちゃんが起こしてあげなよ」

「不味いだろ、俺だと悲鳴を上げられるぞ」

「大丈夫だよ。多分...」

「多分かよ。でもかおりの写真との比較や写真の出来を確認したかったが、部屋のパソコンが使えないな。まぁ後で良いか、ちょっと俺も横になってて良いか」

「自分の部屋で一緒に寝てきたら」

「出来るか、そんなこと」

「まあ、起こしてあげるからこの毛布使って」

 

俺は毛布を掛け寝ようとしたが、かおりが使っていた毛布だろう。凄く良い匂いがする。これ寝れないんじゃないか。だが疲れていたのだろう、俺はいつの間にか眠りについていた。

 

「おにいちゃん、起きてよ。そろそろ折本さんも起こさないと」

「あ、ああ」

 

小町は夕食の用意するからといい、キッチンに入っていった。俺が起こさないといけないのかよ。自分の部屋に移動し電気を点け、かおりに声を掛けると目を擦りながら起きたようだ。

 

「八幡、おはよ」

「ああ、おはようってもう夕方だぞ」

 

かおりは上半身を起こしてきたのだが、な、なんで下着のキャミソールなんだよ。すこし隙間が出来て、ピンクのものが見えたし。俺はすぐ顔をそらしたが、見えた光景が忘れられない。顔は目茶苦茶赤くなっているだろう。

 

「..えっち//」

「い、いや、そのすまん//」

「いいよ、いつかヌード撮ってもらう予定だから//」

「はぁ、俺が撮れるわけないだろ」

「みんな、撮ってもらいたいと思っているよ。一人だと恥ずかしいけどね、..でも私は一人だけで撮ってもらいたいかな。ウケるし」

「..俺には無理だな、恥ずかしくて目を向けることが出来ないぞ」

「ヌード撮影はまた、何時かね」

「....」

「じゃあ帰ろうかな、ごめんね。勝手にベッド借りて」

「大丈夫だ、送ってくから用意してリビングに来てくれ」

「うん」

 

俺はかおりを家まで送っていき、ご飯を食べた後、写真の出来を確認していた。撮影中は思わなかったが、かなり大胆な恰好をさせていたようだ。下着が写っていたり、普段ならやらないような恰好もやらせているし。

かおりの写真と見比べると材木座が言っていたとおり確かに構図が違う。かおりは自分で動いてローアングルで撮っているものや被写体をワザと真ん中に写らないようにしている。今度の撮影には俺も真似させて貰おう。今日の撮影だけでも確かにレベルが上がったのが写真から分かる。最初はたまに手ぶれを起こしているが、後半になればなるほど、手ぶれの数か少ない。ただかおりと比べるとまだまだなので、もっと練習しないといけないんだろうな。

 

その夜、俺は寝ることが出来なかった。布団に入るとかおりの匂いが充満している。かおりの胸と色々な女性の表情が頭の中を駆け巡り、その日は何時までも寝ることが出来なかった。

 



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34話

月曜日の昼休み、弁当を食べるために部室に集まっていた。今日は沙希が弁当を持ってきてくれて舌鼓を打っていると沙希が撮影会のことを聞いてきた。

 

「八幡、土曜日の撮影はどうだった」

「かおりに教えてもらってまだまだだろうけど、少しは上手くなっていると思うぞ」

「先輩。写真見せてくださいよ」

「うちも見たい」

「俺がスマホに入れたのは、小町が撮ったかおりを真ん中にして全員で写っている写真だけだ」

 

そういってスマホの写真を見せてあげた。

 

「じゃあ、雪ノ下と由比ヶ浜は持ってないのか」

「その恥ずかしくて見せれないわ」

「うん、私も恥ずかしいな」

「へんな写真撮っていたか?見せてあげても良いんじゃないのか」

 

そういうと結衣は俺の方に移動してきて、コソコソ話し出した。

 

「ヒッキーとのツーショットもあるんだけど、良いの?」

「な、なんで入れてるんだよ。確かに恥ずかしいな。でも見せない訳にもいかないだろ」

「..うん、じゃあ良いよね」

 

そういって結衣はスマホをみんなに見せていた。自分たちの時もやれとか言い出すんだろうな。

 

「へえ、結構綺麗に撮ってもらえるんだ」

「雑誌に出ているモデル見たいですよね」

「これなんか、グラビアみたいじゃん」

「結衣先輩ってやっぱり羨ましい身体してますね」

「「「....えっ//」」」

「..この眼鏡掛けているのって八幡だよね//...かっこいい//こんなツーショットも撮ってくれるんだ」

「先輩かっこいい//....でも、何であすなろ抱きしてるんですかね」

「うん//..あすなろ抱きとかお姫様抱っことか全員してもらったの?」

「ああ、眼鏡は優美子がくれてな。なぜか全員とツーショットを撮ることになった」

「雪ノ下先輩も撮っているんですよね、見せてください」

「あ、あの私はスマホには入れてないわよ」

「え、ゆきのん。撮影終わって中二に入れてもらってたじゃん」

「そ、そうだったかしら。家ではパソコンで見ていたので忘れてしまったわ」

「..ねえ、ゆきのん。もしかして私にも見せれない写真撮ったの」

 

雪乃はそう言われ、俺の方に助けを求めるように見てきた。多分、ツーショットのことだろう。ただここまでくるとどうしようもない、俺が首を振ると雪乃は諦め皆にスマホを見せていた。

 

「このハルさん先輩との写真いいですよね、仲のいい姉妹って感じで」

「このドレスいいな、うちもこういうの着てみたい」

「凄い綺麗だな、雪ノ下」

「これ、いいですよね。寝転がって髪の毛を広げて、ちょっとエッチぽくて」

「ゆきのん、普通の写真じ....」

「「「「....」」」」

「..ゆきのん、どうしてあすなろ抱きで頬っぺたをくっ付けているのかな」

「..へえ、こっちはお姫様抱っこで見つめあって、おでこをくっ付けていますね」

「..お互いテレながら顔を真っ赤にしてて良い感じだな、雪ノ下」

「..こっちは、ドレスを捲って膝枕してるね。雪ノ下さんがすごいやさしい表情で頭を撫でているし、八幡も照れているけど、目元緩んでいるし」

「「....//」」

「八幡、私たちの時もこれぐらいはやってくれるんだよね」

「そうですよね、先輩。最低がこのラインですよね」

「うちもやってもらお、他にもやってほしいこと考えて良いよね」

「..ゆきのん、ちょっとずるいと思う。..ねえ、ヒッキー。私やって貰ってないよ」

「ゆ、結衣。あくまでもカメラの練習だからな。みんな違うポーズを撮るだろ、それと一緒だぞ。ツーショットでも違うことをやっているだけだ」

「カメラの練習って、これヒッキーが撮ってたわけじゃないよね。ゆきのんの時って、かおりんも疲れて寝ていたし、陽乃さんだよね...今度の撮影の時も行って一緒の事、やってもらっても良いよね」

「いや、それはかおりがまた疲れちゃうだろ」

「..優美子や姫菜にも教えておくね。次回はダメかもしれないけど、また撮ってもらうとき、最低でもこれぐらいはして貰わないと」

 

そういうと、結衣は俺より早く部室を出て行った。

俺も教室に戻ったのだが、先に戻った結衣に聞いたのだろう。俺が教室に入ると優美子、姫菜、結衣が俺を睨みつけていて、俺が席に着くと三人が近寄ってきた。

 

「..ヒキオ、あーしらも撮ってもらえるんだよね」

「ハチ、どうなの?」

「約束して、ヒッキー」

「..ああ、分かったから。ただ今週撮る時は、かおりが疲れてしまうから止めてくれ。またその後ってことで」

「..わーたし」

 

何とか納得してもらったが、席に着いても三人はこちらを睨みつけていた。早く先生来ないか、三人が出している不機嫌オーラでクラスが何時も以上に静まっており、俺に何とかしろという視線までが降り注いでいた。

 

 

 

八幡が放課後、部室に来て珍しく自分から、話しかけてきたわ。

 

「昼、言えなかったんだが、昨日陽乃が家庭教師をするって言って家に来たぞ」

「姉さん、本当に始めたのね」

「ああ、親がちょうどいて挨拶までしていったし。親の前で俺が陽乃って読んでいたから両親も勘違いしだしてな」

「勘違いってどういうこと?」

「俺と付き合っていると思ったらしい。確かに年上を呼び捨てにしているから、そう思われても仕方ないんだが」

「そ、その誤解はちゃんと解いたのかしら」

「ああ、陽乃が俺なんかを相手にしてないのは伝えておいた。家庭教師も暇つぶしだしな」

「姉さんは日曜日に来ることになったの?」

「不定期だが連絡するとは言っていた。今度の日曜日は朝の10時に来るらしい。まあ無理に来てもらうこともないしな。時間のあるときだけでも教えてもらえると助かるし。昨日2時間ほど教えてもらったんだが、凄く分かり易くてな」

 

そうなのね。でも姉さんのことだから、何時ご両親と小町さんを懐柔するか分からないわね。私もウカウカしていられないわ。早急に手を打たないと。

でも、今日のお昼は八幡に申し訳なかったわ。ちゃんと八幡に謝っておいたほうが良いわね。

 

「今日のお昼はごめんなさい、八幡。私が写真を入れていたばかりに」

「いや、雪乃が撮影で言ってきたとき、俺もその写真が欲しいと思っていたから撮れて嬉しかったんだ//」

「..八幡//」

「..雪乃//」

 

私は八幡に近づきたくて、席をたったのだけれど、部室の扉が開いたのですぐに席に座ったわ。

 

「邪魔するし」

「やっはろー」

「ハロハロー」

「こんにちはぁ」

 

私が慌てて座ったことには誰も気づいていないようね。三浦さん、由比ヶ浜さん、海老名さん、相模さんが一緒に部室に入ってきたわ。毎回どうしてタイミングが悪いのかしら。

そういえば、今日は相模さんのラノベに三浦さんを入れる予定だったわね。材木座君はどうやったのかしら。

 

「ねえ、雪ノ下さん。あーしにも写真見せてほしいんだけど」

「私にも見せてほしいな」

 

私は三浦さんにスマホを渡すと彼女達は私と八幡を睨んできたわ。

 

「ヒキオ。約束どおり、あーしにもやってよね」

「ハチ、忘れないでね。でもこの写真って雪ノ下さんからお願いしたんだよね」

「いや、元は俺のせいで雪乃の機嫌が悪くなってしまって、あすなろ抱きしたのが始まりだ」

「ああ、制服の時、そんなこと言っていたね。でもそのおかげで私たちも撮ってもらえたからいいけど、この写真みたいにしてほしかったな」

「じゃあ、ヒキオが今度の撮影の時、あーしらとどういうことをしたいか考えるし」

「ど、どんなことをしたいかって//」

「な、なんでヒッキーが照れてるの。えっちなこと考えすぎだし//」

「ハチと撮影できることなら良いんじゃないかな//」

「い、いや、そんなこと撮影出来ないぞ//」

「撮影出来ないってヒキオ、あんた何を考えたし//」

 

八幡が責められていると、扉をノックする音が聞こえて、材木座君が入ってきたわ。とりあえずこれで話を終らせれるわね。でも、また私は八幡に助けてもらったわ。彼が自分のせいと言ってくれたおかげで、私は責められなかったから。もしかして撮影できないことを考えているっていうのも、話をそらすためにワザとしたのではないかしら。

 

「今回は撮影の前に書いたので、海老名殿については、名前呼びをしていないのだ」

「それについては、どうしようもないわね。いいかしら、海老名さん」

「うん、いいよ」

 

八幡が材木座君のラノベを読んでいるとき、一色さんも来たわね。八幡が読んでいる間に紅茶を用意しておきましょう。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

旅行が終って数日後、雪乃が実家にお土産を持って行き帰ってきたんだけど、何だか表情が暗いよね、何かあったのかな。

 

「ねえ、雪乃。暗い顔してどうしたの」

「南。皆が集まってから話したほうが良いのだけれど、この家を出て行かないといけないかもしれないの」

「え!?ど、どういうこと!?」

「詳しくはみんなが集まってから話すけど、9月一杯で出る必要があるって言われたわ」

「後一月ちょっとしか無いじゃん!!」

「ええ、覚悟だけはしておいて頂戴」

 

その夜、みんなが帰ってきて集まると雪乃が話してくれた。

この家の持ち主は雪ノ下建設の従業員で今、海外に転勤してて本来なら後4年は帰ってこない予定だったのだが、奥さんが体調を崩し、日本に帰ってくることになったらしい。

帰ってくるのが、10月下旬ということで、うち達は9月末までには引っ越して、10月に清掃業者を入れると言うことだった。

最初はうちが八幡と同棲したいと思って、提案したことが今のシェアハウスになったんだけど、今はこの四人と離れたくない。せっかく楽しい思い出が一杯出来て、これからも楽しいこと、みんなでして行こうと思っていたのに。

 

「でもそういう理由ならここを空けないといけないな」

「うち、みんなと離れたくないな」

「そうだよね、離れたくない」

「先輩、嫌ですよ。私引っ越してきてまだ3ヶ月しか経ってないんですよ」

「今回はここを出ていくしかないでしょうね。でも私は諦めたくないから、後一月でシェアハウス出来るところを見つけてくるわ」

「うん、みんなで探してみようよ。夏休みだから動きやすいし」

「そうだね、みんなアルバイトしているけど、時間がある時、探してみようよ」

「はい、私も不動産屋とか回ってみます」

「そうだな、俺も結構気に入っていたからな、新しい家を探そうか」

 

うち達は新居を探すために色々な不動産屋を回ったけど、なかなか良いところはなかった。最低5LDK、荷物置場、駐車場。これだけはあってほしいからね。変に妥協してしまうと、のちのち問題が出てくるかも知れないし。

 

「なかなか見つからないものね。家にもお願いしているのだけれど、良い知らせは入らないわ」

「うん、うちも友達にも聞いて空き家が無いか探して貰っているけど、条件に合うところないよ」

「ここの環境に馴れたんで、なかなか難しいよな」

「先輩。何かいい手は無いんですかね」

「こればっかりは正攻法で行くしかないだろ」

「....そうですよね」

 

うち達が話して項垂れていると、結衣がニコニコ顔で帰ってきてみんなの方に近寄ってきた。

 

「ねえ!!もしかしたら良いとこあるかも」

「え!?見つけたの?どういう所?」

「今日、優美子と姫菜に会っていたんだ。で、二人に話したら「あーしらの居る女子寮にくれば良いじゃん」って言ってね」

「でも女子寮なんでしょ。それって大学が違うし、八幡が入れないわ」

「最後まで話を聞いてよ。女子寮って言っても、おじいちゃん個人でやっていて大学が違っても問題ないの。優美子と姫菜も大学違うしね。でも最近、身体が辛いからって言って、管理出来なくて閉鎖しようと思っているらしくて、今は優美子と姫菜の二人しか住んでないの」

「閉鎖するんなら、ダメじゃん」

「ううん、管理できる人が入れば良いんだよ。ね、ヒッキー」

「そういうことか、俺が管理人としてそこに入って、みんなが入居者として入ると」

「うん、部屋は八畳でトイレとか付いてないし、共同トイレ、共同風呂、ご飯も一緒の所で食べているから、不人気なんだって。でも私たちにしてみれば、今と変わんないでしょ」

「ただ俺が管理人だと、優美子と海老名さんが嫌がるだろ。この間、結衣の所に遊びに来たときも俺を見て顔を真っ赤にしてたし」

「「「「..はぁ」」」」

「あの時はヒッキーがお風呂上りに、トランクス一枚でウロウロしていたからでしょ」

「パンツで居たからって照れることか、中学生じゃないんだから」

「..そうなんだけどさ」

 

トランクスだと床に座っているとき、たまに隙間から見えているんだよね。気づいてないのかな。うちは見えるから言わないんだけど。

でも八幡って、うち達にはパンティやブラが見えることにはうるさいのに、自分は気にしてないんだよね。よく考えたらそれって不公平じゃない?うちも風呂上がりぐらいパンティ一枚で居たいし。

 

「今のままではみんなバラバラになる可能性が大きいから、一度、話を聞いてみてもいいのではないかしら」

「そうだな。もし俺が駄目でも四人が離れずに住めるなら、そこに入った方がいいし」

「駄目だよ、八幡。うちはそんなんだったら嫌だからね」

「そうですよ、先輩。私も嫌ですよ」

「八幡。あなた自分以外を一緒の所に住まわせれば良いと考えているなら、許さないわよ。私たちはこの五人での生活を送りたいのだから」

「そうだよ、ヒッキー。五人一緒だからね」

「すまん。そうだな、俺も諦めずに探してみるよ。でも優美子と海老名さんがいるところに話は聞きに言った方がいいだろうな」

 

うち達は次の日、三浦さんと海老名さんが住んでいる寮に全員で押し掛けて行った。

 

「場所は良い所だな、今の所から一駅で鉄筋の二階建てだし。話を聞いたとき、一刻館みたいな建物を想像していたが」

「一刻館ってめぞん一刻だっけ」

「ああ、南。よく知っているな」

「お父さんが単行本持っていたからね、でも建物の前にちょっと庭が有って真ん中に入り口があるから今風の一刻館って感じなのかな。駐車場も数台分あるね」

「犬を飼っていれば総一朗さんって呼ぶんだけどな」

「先輩、オタク話はやめてくださいよ」

 

うちと八幡がめぞん一刻の話をしていると、いろはが文句を言ってきた。どうしてオタクって言うんだ。ただ漫画を読んだことが有るだけなのに。

うち達がそんなことを話している間に、結衣が三浦さんに電話を掛けて着いたことを知らせていた。

 

「皆、ひさしぶり」

「ハロハロー」

「車、駐車場に止めちゃって。今は誰も借りてないからさ」

「優美子、海老名さん。久しぶり」

「..うん、ヒキオ、ひさしぶり//」

「..ヒキタニ君も来てくれたんだね//」

「俺がお邪魔しても良いのか、女子寮なんだろ」

「あーしと姫菜しか居ないんだから良いんだし。一応じーちゃんも居るんで挨拶しておこ」

 

そういうと三浦さんは玄関に案内してくれた。玄関の真正面が管理人室で、その左がキッチン&リビングの共同スペースがあって、右には階段、その奥には扉が三つあった。

そんなことを考えていたら、おじいちゃんが出てきた。

 

「おお、よく来てくれたな。二人から聞いているよ。まあ、ゆっくり見てってくれ」

「「「「「お邪魔します」」」」」

「君がヒキタニ ヒキオ君だね、優美子ちゃんと姫菜ちゃんからよく聞いているよ」

「じ、じーちゃん何言ってるんだし//」

「そ、そうだよ。じーちゃん//」

「「「「ヒキタニ ヒキオ//」」」」ププ

「じ、じゃあ、こっちで話しようか」

 

そういうと三浦さんはうち達を隣にあったリビングに案内してくれた。普通の家みたいなリビングで、今住んでいる所より広いな。ソファーが置いてあり、隣には食卓机が置いてある。ただ安い机を並べた物で大人数でも座れるように配置されていて、椅子もパイプ椅子で安っぽい。

奥にはキッチンが見えていて、三浦さんと海老名さんはキッチンに入っていき、うち達にジュースを出してくれた。

 

「さっきのじーちゃんが管理人さん。ちょっと前に病気で倒れて、それまではここに住んでいたんだけど、今は息子さんの家にいるし。危ないってことで免許を返して、自転車でここまで来ているんだけど、大変みたいだし」

「じゃあ、夜は管理人さんがいないと言うことなの?危なくないのかしら」

「うん、戸締りはしてってくれるんだけど、一軒家と比べると大きいからね、空き部屋も多いし。部屋にも鍵は付いているんだけれど、トイレがないから夜中起きたときとか怖いんだよね。だからヒキタニ君が管理人室に居てくれると私たちも助かるんだけど」

「いや、俺が居ても、もし入られたらどうしようも無いだろ」

「全部屋に緊急ボタンがあって管理人室に繋がってるし、手持ちのボタンもあるし。後、窓も見れば分かるけど、防犯用だから開いてても一応、人が入れないし」

「本当だ。全開にしても20cmも開かないみたいですよ、ああこのボタンを押すと全開に出来るんですね」

「後、廊下側は小さい窓で摩りガラスなんで中は見えないし」

「結構、防犯はしっかりしているんじゃないかな。今のところより色々考えられているみたいだけど」

「うん、うちも大丈夫と思うよ」

「でも俺が管理人になったとして、俺が鍵を管理するんだろ。俺が劣情を催したらどうするんだよ」

「それなら私たち四人は既に八幡に手篭めにされているわ。鍵が付いていない部屋で一年以上一緒に住んでいるのに、鍵が手に入って手を出すとは思えないもの」

「へえ、ヒキオって誰にも手を出してないんだ」

「誰かとそういう仲になっていると思ったんだけど」

 

今、三浦さんと海老名さんの目が一瞬だけど、輝いたように見えた。これってライバルが増えるだけじゃないの?でも住む所がないんだし悩むところだね。

 

「お風呂とかどうなっているんだ?」

「風呂はこの奥にあるし、見てみる?」

 

うち達はお風呂に案内して貰った。お風呂の前に洗面所があるんだけど、蛇口が四つあるんでこれなら、朝混まないよね。脱衣所も別だし。

 

「凄い!!広い!!」

「うん!!うちここのお風呂に入りたい!!」

「五、六人ぐらい一緒に入れそうね、シャワーが四つもあるわ」

「浴槽も今の三倍ぐらいありそうですね、泳ぐことは出来ないですけど、身体を伸ばして入れますよ!!」

「お風呂ってここしかないんだよな?俺も良いのか入っても」

「ヒキオも一緒に住むんだから、ここを使うし。何だったらあーしが一緒に入ってあげるし」

「うん、ヒキタニ君と一緒に入っても十分広いからね」

「そ、それは不味いだろ」

「逆に広いから一人だと寂しいよ、あーしもここでは姫菜と一緒に入っているし」

「うん、だからヒキタニ君も一緒に入れてあげるよ。三人で入っても身体伸ばせるぐらい広いから」

「そ、それはいいです//」

「「「「....」」」」

 

うち達ヤバいんじゃない?三浦さんと海老名さん凄い積極的だし。でもここなら、うち達にもチャンスがあるってことだよね。離ればなれになるよりはよっぽど良いのかな。

 

「先輩、私も一緒に入ってあげますから」

「いろは。あなた私たちに怒っていなかったかしら。私たちは配慮が無いとまで言われたのよ」ニコッ

「うぅ、ごめんなさい」

「いろはは配慮するんでしょ。私は一緒に入ったことがあるので私が入ってあげるわ」

「うちと結衣は身体洗ってあげたことあるから、うちが一緒に入ってあげるよ」

「そうだね、みなみんと一緒に色々洗ってあげたしね」

「...へえ。ヒキオ一緒に入ったことあるんだ」

「..ヒキタニ君、どういうことかな」

「俺がお風呂に入っているとき、三人で入ってきたんだよ。でも俺はすぐにお風呂から出たぞ。後、南と結衣が言っていたのは、この間海に泊まりで行ってお風呂にゴキブリが出たんで水着で入っただけだ」

「..へえ、海に行ったんだ。結衣、あーし誘われてないんだけど」

「結衣にどこか行くとき誘ってって言ってたんだけどね...」

「うぅ、ごめん」

「じゃあ、隣のトイレをみてみるし」

 

「これは不味くないか。個室が三つあるけど、隣に俺が入っていたらさすがに嫌だろ」

「うん、確かに」

「八幡用スリッパを用意すれば入っているのが分かるでしょ。八幡はスリッパを数えれば誰かが入っているか分かるわよ」

「ここしかトイレ無いのか?」

「ここの上にもあるし。だから大丈夫だし」

「じゃあ、空いている部屋見てみる?じーちゃんに鍵は借りているんだ」

 

「フローリングの八畳なんだね、クローゼットも付いているし」

「ああ、まあまあ広いんじゃないか。エアコンも付いているしな」

「今六畳だからちょっと広くなるんだよね」

「私はこっちの方がいいですね、今畳なんで荷物とかで痛めないか気になる事あるんですよ」

「でも雪乃は狭くなるが問題ないか。今よりクローゼットが狭いだろ」

「ええ、でもそれは我慢するしかないわね」

「我慢は止めてくれ、後々不満が出てくるぞ」

「三浦さん、海老名さん。ここは何部屋あるのかしら」

「管理人室を除いて、一階に三部屋、二階に七部屋だし」

「うん、全部一緒の作りだよ」

「では私たちが入っても四部屋は空き部屋なのね。空き部屋は自由に使えるのかしら」

「あーしらは使って無いけど、ヒキオが管理するなら大丈夫っしょ」

「なら私は問題ないわ。引越の時、必要の無い物は実家に持っていくつもりだし」

「そういえば、俺たちも荷物置場に置いていたな。それを空き部屋に入れれば良いのか」

「後、外に大きい倉庫もあるし」

「収納で困ることはないか」

「空き部屋を使えば問題ないんじゃないかな。でも私も薄い本がいっぱいになってきたんで、空き部屋に置かせてもらおうかな。共同の荷物置場に置いておけば、誰かが興味を持って読んでくれるかも知れないし。愚腐腐」

「俺が管理人になったら、鍵はちゃんと管理するからな」

「えぇ、じゃあ布教できないよ!!」

「それは個別に部屋に行けばいいだろ」

「そういうとき、照れて見てくれないでしょ、でも一人でみれる環境があれば、読んでくれると思うよ」

「姫菜、諦めな。あーしの部屋にもたまに置いていくけど興味ないから」

「雪ノ下さん!!雪ノ下さんって本に興味あるでしょ。ちょっと読んで見て!!さきっちょだけでいいから!!」

「ご、ごめんなさい。私も興味は無いわ」

「駄目だよ!!読まず嫌いは!!ちょっとで良いから読んでみて!!初心者用を用意しておくから」

「は、八幡、助けて」

「ははは、は~ぁ」

 

うちはちょっと読んでみたいんだけど、今はそんなこと言えないな。海老名さんに捕まったら一気にそっちの世界に引っ張られそうだし。でもここに住むならちょっと借りてみようかな。

うち達は二階に移動して、みて回っていた。

 

「洗濯機はここにあるんだね」

「お風呂の上がベランダになっていて、洗濯物をここに干しているけど、外から見えないように壁も在るから安心だよ」

「結構広いベランダだな。あっ」

 

八幡は何かを見つけて、言葉が止っていた。八幡の視線の先には下着が干してあって、三浦さんと海老名さんは慌てて隠していた。

 

「ヒ、ヒキオ。見た?」

「ああ、でも見慣れているから大丈夫だぞ」

「はぁ!?あーしの下着で何にも思わないわけ!?」

「ヒキタニ君、それはちょっと失礼じゃないかな!?」

「優美子、姫菜、無駄だよ。ヒッキーは私たちの下着見放題だもん」

「うぅ、あーしはまだ無理だし」

「うん、私も」

「でもここで、バーベ出来そうだね」

「わざわざここでしなくても庭で出来るし、倉庫にグリルもあるし」

「あ、そうか。結構広いしね」

「じゃあ、リビングに戻るし」

 

うち達は皆で移動して色々話をしていた。ここでは今おじいさんが食事の用意をしてて、三浦さんと海老名さんは余りしないらしい。洗濯は自分たちでやっていて、部屋の掃除は自分たちの部屋ぐらいで共同部分については、おじいさんがやっているみたい。

 

「優美子、海老名さん。まず正直に言ってほしいんだが、俺がここに入っても問題ないのか。さっきの下着もそうだが、お風呂上りとか廊下ですれ違うこともあるぞ」

「下着を見られるのは恥ずかしいけど、それぐらい大丈夫だし」

「うん、それより夜怖いし、皆が来てくれた方がいいかな。じーちゃんも今のままだとここを閉鎖するって言っているし」

 

うち達が話していると、おじいさんがリビングに来てくれた。

 

「君たちがここに入ってくれれば、私は息子の家でゆっくり過ごすつもりだ。ヒキオ君や皆さんには、料理や掃除などしてもらわないといけないので、料金についても格安にさせてもらうよ、ただ光熱費とかの管理もお願いしたいのだが」

「ええ、詳しい話は入ることになってから、また教えてください。一度皆で相談させて貰います」

「私たちも行くところがありませんので、前向きに検討させていただきます」

「そうだね、うち達の方が切羽詰まっているからね」

「そうですよ、南先輩。後一月しかないんですから」

「ヒキオ、あーしはあんた達に来てほしいし」

「私もだよ、ヒキタニ君、みんな。ぜひ来てね」

「うん、優美子、姫菜。相談して連絡するね」

 

うち達は自宅に戻り、早速相談を始めた。ほとんど反対意見は出ずにその日のうちに、引越しを決心し、後は費用やその他を聞きにいこうとなった。

契約の関係で八幡は管理人としておじいちゃんと何回か話をしていた。どうもすぐ出て行かれると色々問題があるんで、せめて大学在学中は出ていくのは止めてほしいと言われたみたい。雪乃も何度か女子寮に行っていたけど何をしに行っていたかは教えてくれなかった。海老名さんの本でも借りているのかな。

引越し業者を使ってもよかったんだけど、雪乃の車があるんで、何往復かして9月頭には引越しまで完了していた。

うちと八幡、いろはは少し遠くなっただけで大学まで歩いていける距離だし、雪乃と結衣は電車が一駅変わっただけだから、そんなに不便は無いといっていた。

 

「南、こっちに引っ越してから、またパンティで居るんだな」

「だって八幡も、お風呂上りでパンツ一枚じゃん」

「男と女で違うだろ」

「それは性差別だよ、うちだってお風呂上がりぐらいパンティ一枚で居たいことあるし」

「あーしも何時もこの格好だし」

 

そういう優美子はT-シャツ、下は赤いパンティでリビングをウロウロしていた。うちはパンティ一枚にバスタオルを肩に掛けて胸を隠していて、八幡はボクサーパンツ一枚で三人リビングで涼んでいた。他の人たちは今、みんなでお風呂に入っている。

 

「ヒキオだって嬉しいでしょ、今日はあーしと南、一緒にお風呂入れて」

「はぁ、しまったな。じいさんと雪乃に騙された気分だよ。契約の時、ルールは皆で多数決で決めることと、管理人として大学在学中は出て行くなって言われて、契約書まで書かされて、違約金まで書いてあったし」

「うん、まさか雪乃がそんな契約をおじいさんにお願いしていたは思わなかったし」

「優美子だって、二月前は干してある下着見られたら怒っていたのに、どうして今はお風呂一緒に入るようになっているんだよ」

「一緒に住んでれば、馴れちゃうし。でもヒキオって毎日、誰かとお風呂入っているのに手を出さないよね、本当にヘタレだし」

「逆に出せねえよ、怖いだろ。その後が」

「でも嬉しいんでしょ、一緒に入れて。入ってくるなと言いながら、あーしのおっぱい見てたし//」

「うちも何度も見られてたな。最初はすぐ風呂出て行ったのに、今日なんて浴槽で凝視されてたし//」

「..そ、そんなことないじょ//俺も疲れているからゆっくり浸かりたいだけだじょ..」

 

雪乃がおじいさんにお願いして入居するとき、八幡に色々うち達にいい条件を契約させていた。うちはそんなこと考えも付かなかったけど。おかげで、うち達はラッキースケベ起こしたい放題、お風呂にも八幡が入っているとき、突撃するようになっていた。さすがに女性一人で入ることは皆牽制しあって無いんだけど、八幡も段々馴れてきて、今では浴槽に一緒に入ってくれるし。

ただ下半身はまったく慣れていないようで、何時も大きくしているんだけど//

でも部屋の鍵は絶対閉めてるんだよね、うちは何度も夜中に管理人室に行ったんだけど、開いていることはないし。

ここは女子寮ってことになっているんだけど、そのうち八幡ハーレムになっちゃうんだろうな。それはそれで面白いのかも//

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「....//」」

「な、なんであーしが一緒にお風呂入ったり、ショーツでウロウロしてるんだし//」

「うん、うちもさすがにパンツ一枚で居ないよ//」

「材木座君、私も出してくれたんだ。有難うね」

「どうせなら仲のいい人を一緒に出した方がいいと思ってな」

「ねえ、相模さん。このラノベに書いてあったみたいにちょっとは薄い本に興味ない?」

「..う、うちは興味ないよ」

「そんなこと言ってぇ、いまちょっと考えたでしょ。良いから、これ貸してあげるから」

「い、いいよ海老名さん」

「だーめ、今日家に帰ったら読んでみて。読まなくても良いから明日返してくれればいいから」

 

海老名さんはそういって袋に入っている雑誌を相模さんに渡したわ。ラノベに出ていた本のことね。どういう内容を書いているのかしら。でも相模さん、三浦さんやラノベに書いてある対応から余り読んではいけない物なのは想像付くわ。海老名さんは相模さんのカバンに入れて満足げな表情を浮かべているのだけれど。相模さんは困った顔をしているわね。

 

「材木座君。このラノベだと私が契約のため、色々と裏で動いているようなのだけれど、あなたの中で私はどういった人物像になっているのかしら」ニコッ

「..ごめんなさい」

「謝罪を聞きたいわけでは無いのよ。以前も氷の女王と言っていたわね、そちらについても説明していただけるかしら」

「ごめんさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

「...まあ、良いわ。ラノベについてだけれど、所々台詞が長くて、地の文が少なかったりするでしょ。セリフが多いと読みやすいのだけれど、説明不足が目立ってしまうわ」

「うーん、それについては、俺はいいかなと思うけどな」

「そうなの、八幡」

「ラノベって台詞が多かったりするからな。雪乃はラノベを読まないから知らないだろうけど」

「私や雪ノ下先輩、結衣先輩、海老名先輩が後半まったく出てこなかったですね」

「お風呂入ってるって書いてあったけど、でもこのラノベはさがみん主役だから良いんじゃない」

「材木座君、雪ノ下さんが腐女子になるのが読みたい!!」

「そ、それは出来ぬ。ゆ、雪ノ下殿が腐女子なんて恐れ多い」

「雪ノ下さんにも薄い本を貸してあげるからね!!明日相模さんから返してもらったら雪ノ下さんに渡すから!!」

「いいえ、海老名さん。私は借りないわ」

「一回だけでも読んでみようよ」

「え、海老名さん。うちは良いから今から雪ノ下さんに貸してあげたら」

「...相模さん。今なんて言った....」

 

え、海老名さんの表情が変わって怖いわ。眼鏡の奥に見える瞳から彩色が消えていて、その目で相模さんを見つめていた。相模さんは血の気が引いているわね。

 

「え、海老名さん。き、今日読んでくるんで、うちに貸してね」

「うん。じゃあ明日、感想聞かせてね」

「は、はぃ」

 

海老名さんはそう聞くと満面の笑みで相模さんに微笑み掛けていたわ。でも思わぬ形で脱線してしまい、最終下校時刻が来てしまったので、今日の部活は終了ね。

でも明日、海老名さんは薄い本を私に持ってくるのかしら。あの目で見られたら断れるか自信無いわ。

 

 



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35話

「八幡。助けて」

「南、どうしたんだ」

 

相模さんがなぜか、奉仕部に一番最初にきて、八幡が来た途端に助けを求めていたわ。何かあったのかしら。そう思っていると、由比ヶ浜さん三浦さん海老名さんが来たわね。

 

「相模さん、面白かったでしょ。今度、もっと持ってきてあげるから」

「海老名さん、本当に良いから。読んでみたけど、うちには無理だよ」

「ええ、読めば面白くなっていくから、もっと読んでみてよ」

「姫菜、いい加減にしな。相模も困ってるし。押し付けは駄目っしょ」

「..分かったよ、でも相模さん。いつでも良いから読んでみたくなったら、何時でも声を掛けてね」

「う、うん。そうなったらお願いね」

「じゃあ、雪ノ下さんはどう?興味ない?」

「私はご遠慮させてもらうわ」

「そうか、残念だな」

 

海老名さんは落ち込んでいるようね。でもここで慰めてしまうと多分、勧められてしまって押し切られるから、何も言わない方がいいわね。

私たちが話していると、材木座君。遅れて一色さんが部室に来たわ。今日は誰のラノベを書いてきたのかしら。

 

「撮影会のとき、海老名殿から依頼されたので、書いてきました」

 

そういって、材木座君は私にラノベを渡してきたので、私は確認させてもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「はあ、結構山奥に入ってしまったな」

 

今日は薪や茸、山菜を拾いに山に入っていた。俺は元々、ある程度栄えていた所に住んでいて、寺子屋で学んだ後、働くつもりが無かったため家でゴロゴロしていたが、両親から爺ちゃんの田んぼを継げと言われて、この田舎まで引っ越してきた。

俺が引っ越してきてすぐ、お伊勢さん回りをしたいと言って、爺ちゃん、婆ちゃんは旅行に行ってしまった。年よりの足腰で大丈夫なのか?でも夢だったそうで俺は了承して家は任せろと言って見送った。そのため、俺一人で家や田畑の面倒を見ているが、こんなに大変とは思っていなかった。

働かなければ、その日のご飯も作れないため、今日は薪や山菜拾いに来たわけだ。

 

くぅーん、くぅーん。

 

どこからか、動物の鳴き声が聞こえてきた。鳴き声からするとかなり弱っているようだな、俺はゆっくり鳴き声のするほうに近寄って行った。

 

狐か?罠が仕掛けてあったらしく、後ろ足が罠に掛かっていて横たわっていた。狐は俺を見たとき、逃げようとしていたが、トラバサミが重いため、逃げれないで足掻いていた。

 

「大丈夫だ、今から罠を解くから暴れるなよ。俺は猟師ではなくただ薪を拾いに来ただけだから」

 

俺がそういうと狐は言葉が分かるのだろうか。俺の姿を見て、おとなしく言うことを聞いていた。

 

「よし、これで解けたな。ただ怪我をしているな、逃げずに待ってろよ」

 

俺は、持っていた薬草を患部に塗り、薪からちょうど良い枝を見繕い服の袖を破いて巻いてあげた。

 

「歩きにくいだろうが、無いよりはいいだろ。もう罠にかかるなよ」

 

俺がそういうと、狐は俺の方を何度も振り返りながら山奥に入って行った。

猟師にバレたら怒られるな、今日は人に会わないように家に帰らないと。まあ、俺の特技、隠密行動を行えば、人にあってもバレることは無いだろうけど。

 

その夜、扉をノックする音が聞こえた。ええ、こんな時間に客かよ。俺は面倒だったので、応対せずにいたら、女性の声で「ごめんください」と聞こえてきた。若い声だな。こんな遅い時間に女性が何しにきたんだ。この辺は家が数軒しかないし、若い女性は回りの家には住んでいない。

 

「ごめんください」

 

しょうがねえな、こんなへんぴな所で何か困っているのだろう。おれは返事をして家に入って貰った。

 

「どうしたんだ、こんな時間に」

「私は海老名姫菜と言います。山の中で迷ってしまって、怪我をしてしまい、こんな時間になってしまったのです。今晩泊めてもらえないでしょうか」

 

彼女の足には傷が出来ており、そこから血が出ていた。

綺麗な女性だな、着物を着ていて、目には西洋の眼鏡と言うものを掛けている。俺は始めて見たんだが、目が悪い人が掛けるものと言うことは知っていた。

 

「お、俺は比企谷八幡。まずは傷の手当てをしよう。ただ泊めるのはまずいな、ここは俺しか居ないんだ」

「いえ、大丈夫です。八幡さんの邪魔にならないようにしますので」

「海老名さん、畏まった(かしこまった)喋りかたは止めてくれないか、歳も変わらないだろ」

「いいのですか」

「逆にこちらが畏まってしまうからな」

「...じゃあ、そうさせてもらうね。ハチ」

「ハチって俺のことか?まあ、良いけど。じゃあ、俺は姫菜って呼んでいいか」

「うん、よろしくね」

 

俺は姫菜の足に薬草を塗り、治療をしていた。でも変な傷だな、トラバサミが食い込んだみたいになっている。山を歩いていて罠にかかったのだろうか。治療していると、姫菜は俺に話しかけてきた。

 

「はち。この足では動けないから、治るまでここに泊めてほしいの」

「それは不味いだろ。でもこの足だと動けないか。でも良いのか、俺と一緒で」

「うん、私のわがままだから」

「分かった」

 

その日、姫菜は俺と寝屋を共にしていた。ただ俺は姫菜に手を出すことは無かった。隣で寝ている姫菜に理性を奪われそうになるが、俺の行為で彼女の人生を狂わせることになる。そう考えると何も出来なかった。

 

「おはよう、はち」

「あ、ああ、おはよう」

「..昨日は何もしてくれなかったんだね」

「で、出来るわけないだろ。姫菜の一生を台無しにするかも知れないんだから」

「はちなら、良いよ」

 

そういうと姫菜は俺に覆いかぶさってきて、俺に接吻してきた。俺の理性は崩壊し一日中、姫菜の身体に溺れていた。

 

「はぁ、はぁ、...はち。私を貰ってね」

「ああ、姫菜。俺と結婚してくれ」

「はい。これから一生そばに置いてね」

 

俺たちはこの日、結婚し二人で暮らすようになった。姫菜は夜を共にすると、俺が寝たことを確認し隣の部屋で何かを行っていた。俺が翌朝聞くと、覗かないでと言われて俺は従っていた。

 

「はち、これをこの住所にお店に持っていって」

「良いが、この住所って遊郭があるところじゃないか」

「うん、でもここが一番高く買ってくれるから。あと中は見ないでね」

 

俺は姫菜から預かった荷物を教えてもらった住所に持っていき、亭主に渡した。

 

「こ、これは海老名画家の戯画(ぎが)ではないか。まだこれほどのものが有ったなんて」

「俺は、ここに持っていってほしいと頼まれただけだが」

「分かった。では五十両で引き取らせて欲しい」

「五、五十両!?」

「ああ、それほどに価値のあるものだ」

 

俺は金を受けとったが、こんな大金を持ったことが無いので、隠密行動しながら家に急いで帰った。

 

「ひ、姫菜!!五十両も出してくれたぞ!!」

「よかった、今でも評価してもらえるのね」

「なあ、亭主は俺にも見せてくれなかったんだが、どんな戯画なんだ?」

「はちは気にしないで。ご飯を食べよ」

 

姫菜は戯画について、教えてくれなかった。多分俺が寝た後、書いているのだろう。俺たちはその夜も共にし俺が寝たのを見計らい、姫菜は隣の部屋に移動していった。

 

俺は姫菜との約束があったことを思い出し、しばらくは覗かないようにしていたが、日が経てば経つほど好奇心が勝り、俺は物音を立てないように隣の部屋の襖前まで移動していった。

襖をそっと開けて覗くと、そこには姫菜の姿は無く、一匹の狐の姿があった。ただ普通の狐ではなく、尾を九つ持っている九尾狐(きゅうびこ)が絵を描いていた。

俺は約束を忘れ、襖を開けてしまっていた。

 

「はち、私の姿を見てしまったね」

「..姫菜」

 

俺は呼びかけたが、姫菜は駆け出し、家を飛び出していった。そういえば昔、話を聞いたことがある。鶴の恩返しと一緒だったのか。俺が以前助けた狐が姫菜だったのだろう。俺はなんて浅はかなことをしてしまったのだ。姫菜との約束を破り、彼女の秘密を知ってしまった。もう姫菜は戻ってくることはないのだろうな。俺は床に散らかっていた戯画を手に持って眺めていた。そこには二人の男が裸で描かれており、その内の一人が俺に見えた。

 

俺は泣きつかれ、いつの間にか眠ってしまったようだ。味噌汁の香りが漂っていたので、目を覚ますとそこには姫菜が朝ごはんの用意をしていた。

 

「か、帰ってきてくれたのか」

「..おはよう、はち」

「ごめん、姫菜。お前との約束を破って」

「..本当は帰ってくるつもりは無かったんだけど、この子のためにね」

 

そういうと姫菜はおなかを擦って幸せそうな顔をしていたが、表情が変わり申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。

 

「でも、お願い。私の秘密を漏らさないで」

「ああ、この子のためにも一生誰にも喋らない。だから姫菜、ずっと俺のそばにいてくれ」

「はい」

 

俺は姫菜に抱きつき、泣いていた。姫菜も涙を見せ俺の頭を撫でてくれていた。

 

その後、俺たちは子供を五人授かり、皆すくすく育っていって家を出て行った。俺はすでに七十を越え、後は迎えを待つだけとなっていた。姫菜は出会ったころの姿のまま、俺に尽くしてくれていた。

 

「姫菜、お前は何時までも美しいな。こんな不甲斐ない旦那で申し訳なかった。これからは自由に暮らしてくれ」

「いいえ、あなた。私は幸せでしたよ」

 

俺と姫菜は口付けをし、俺は眠りについた。永遠の眠りに。

 

 

私は一人になってしまった。はち、貴方は自由に暮らせといったけど、私には貴方のいない生活なんてもう考えられない。私は死ぬことも出来ない身体。だからいつか、生まれ変わってきて。それまでは私も眠らさせてもらうね。

 

私は目が覚めてあたりを見渡した。どれぐらい眠っていたのだろう。そう、ここは神社の社で私はそこで眠りについていたんだった。今日はどうも正月のようね、外行く人を眺めていると、私が知っている風貌とはまったく違う格好をした老若男女がお参りしているのが見て取れる。あれから何年経ったのだろう、私は姿を消して社から出ていた。

私が神社の屋根の上から、あたりを見渡していると、一人の少年に目を奪われた。その少年は社の前で願い事をして帰っていく。私は彼の後ろに着いていった。

 

「おにいちゃん、ちゃんと合格祈願した?総武高校なんて難しいんだからちゃんとしておかないと駄目だよ」

「ああ、でもお参りしているより、勉強したほうがよっぽど時間を有効に使えただろ」

「バカ、ボケナス、八幡。そんな事言っていると罰が当たるよ」

「八幡は悪口じゃ無いだろ。まあ、今日ぐらいはいいか。家に帰って雑煮食べようぜ」

「うん」

 

少年は八幡って言うのね、本当にあの人の生まれ変わりだ。はち、貴方の生まれ変わり、若いころの貴方に顔も身体もそっくり。合格祈願と言っていたから、私もそれに合格すれば一緒のところに行ける。

貴方には覚えは無いと思うけど、私をここまで一人で居させたのだから責任とって貰うよ。私の身体を慰めてもらうからね。

 

少年の後ろ、何もない空間で女性の笑い声がいつまでも聞こえていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「ばれちゃったね、ハチ。私の身体を慰めてね」

「ひ、姫菜。何を言ってんだ」

「私をずっと放ったらかしだったんだよ、責任取ってもらわないと」

「お、俺のことなんて高二になるまで知らなかっただろ」

「実は昔から知っていたんだよ、ずっとこうなることを望んでいたの」

 

そういうと、海老名さんは席を立ち上がったわ、どうしたのかしら。彼女を見ていると八幡の方に移動していって、八幡の膝に腰を降ろして手を首に回していたわ。

 

「ひ、姫菜。あんた何やってるんだし!!」

「海老名さん。貴女何をしているのかしら、すぐ八幡から離れなさい!!」

「海老名先輩、さすがに駄目ですからね!!」

「姫菜、離れてよ!!」

「だ、駄目だよ。海老名さん!!」

 

女性全員で海老名さんに駆けより、海老名さんを八幡から引き離すことが出来たわ。ただその時の八幡の顔は赤く名残惜しそうにしていたわね。

一度、調きょ...指導が必要かもしれないわ、どうして私以外の女性にデレているのかしら。

 

「今回のラノベは鶴の恩返しを元に書いたのね、でもどうして九尾狐(きゅうびこ)なのかしら」

「中二、確か妖怪だよね」

「由比ヶ浜殿、九尾狐は妖怪ではなく、神獣であるぞ。なので人間に変化(へんげ)出来ると思って出したのだ」

「へぇ、あーしも妖怪と思ってた」

「なあ、材木座。神獣だったら罠に掛かっても自分で抜け出せるだろ」

「それは....」

「大体、鶴の恩返しをガキのころ読んだときも思ったんだよな。人間の姿に変われるなら、自分で外せよって」

「八幡。あなた子供の時、そんなこと考えていたの?あなたのその捻くれた考えは子供の時からなのね」

「ヒキオ、あんた捻くれすぎだし」

「ヒッキー。子供の時、そんなこと考えないよ」

「うちもそう思う」

「先輩ですからね」

「違うよ、私はハチと会いたかったからワザと罠を外さなかったんだよ」

 

海老名さんは何時までラノベの設定を引っ張るつもりなのかしら。でも彼女の先ほどの行動力からみて看過できないわね。

 

「うちの思ったこと言っていいかな、材木座君。一度も八幡のお爺さん、お婆さんは出てこなかったね。無事に帰ってきたの」

「東海道五十三次に出かけていると言う設定なのでな。色々あったあと、無事に帰ってきているのだ」

「材木座君、東海道五十三次では伊勢神宮は回らないはずよ」

「え?目的地って伊勢神宮では無いのですか」

「材木座。勘違いしている人もいるが、三重県は北部を通過するだけで最後は京都にいくだけだぞ」

「へえ、伊勢神宮って三重県なんだ」

「結衣、それはいくら何でも知らなさすぎだよ」

 

そろそろ由比ヶ浜さんに勉強会を開いた方がよさそうね。私は以前から考えていたのだけれど、今が良い機会かもしれないわ。

 

「由比ヶ浜さん、そろそろ奉仕部で空いている時間に勉強会をしていこうと思っていたのだけれど、どうかしら?」

「ええ、勉強なんてしたくないよ」

「そうなの、では八幡。私と二人で勉強しましょうね。色々教えてあげるわ」

「ゆきのん、どうして二人なのさ!!」

「あら、由比ヶ浜さん。どうしてって由比ヶ浜さんは勉強するつもり無いのでしょ。だから私と八幡の邪魔はしないでね」

「ちょ、ちょっと待つし。あーしも入れてほしいし」

「うちも入れて」

「私も入れてもらおうかな、雪ノ下さんから教えてほしいな」

「わ、私もするから、ゆきのん教えてね」

「え~、勉強会しだすと私遊びに来れないじゃないですか」

「一色さん、あなた生徒会は良いのかしら」

「うう、で、でも木材先輩にまだラノベ書いてもらわないと」

「生徒会長殿、皆が勉強会するのであれば、我は控えるようにするぞ」

「材木座君、ラノベを書いた時は事前に連絡を貰えるかしら。その日は勉強会を行わないようにするわ。あなたのラノベの批評は奉仕部で受けているのだし。時間のある時に勉強会を行うつもりなのだから」

「雪乃、人数が多すぎないか。雪乃一人だと多分、無理だぞ」

「そ、そうね。私は由比ヶ浜さんだけを考えていたから、ちょっと検討させてもらうわ」

 

まさか三浦さん、海老名さん、相模さんも勉強会に参加するとは思っていなかったわ。三人がどれほど勉強が出来るのか分からないけれど、一度考えた方が良さそうね。

 



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36話

「続いて生徒会長殿で書いてきたのだが、お願いしていいですか」

 

そういうと、材木座君は私にラノベを渡してきたわ。

 

「え!?また書いてくれたんですか、木材先輩!!」

「うむ、この間の撮影のときに思いついたのでな」

「ありがとうございます!!」

 

私はラノベを読んだのだけれど、ちょっと悩むわね。問題ないと思うのだけれど、一色さんに読ませてもいいものかしら。

 

「由比ヶ浜さん、八幡。あなたたちにも読んでもらって問題ないか確認して貰えないかしら」

 

そういって、材木座君にラノベを渡してもらって読んでもらったわ。

 

「雪ノ下殿、まずい内容であったか」

「このラノベなのだけれど、最後まで読めば問題ないと思うのよ。ただ最初の方は一色さんに対する中傷とかが有って...」

「た、確かに少し書いたが、問題になるとは思っていなかったです」

 

二人が読み終わるまで、ちょっと重たい空気になってしまったわね。一色さんが不安な顔をしているし。私は問題ないとは思うのだけれど、念のために二人にお願いしたわ。

 

「雪乃、これぐらいなら問題ないだろ」

「私もいいと思うよ」

「いろは、俺は問題ないと思うが、読んでみるか」

「..はい。そういうこともたまにはありますよね」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

全校集会でいろはが全校生徒の前に立っていた。いろいろな所から、いろはに心ない誹謗中傷や野次が飛んでいた。先生達も収めようとしているが収拾付かなくなっている。

 

「生徒会長って捨てられたんだよね~」

「しょうがないよ~、相手が相手だし~」

「遊ばれたんじゃないの~」

プークスクス。

 

俺はこうなった原因、いろはと出かけた日のことを思い返していた。

 

*************

 

「先輩、おはようございます!!待ちましたか」

「ああ、三十分前に来ていたからな」

「ぶーーー、そこは今来たところって言うんですよ!!」

「..じゃあ、帰ろうか」

「えぇ!?私の言ったこと無視して、いきなりおうちデートですか。そ、それでも良いんですけど...ワタシ シタギ ノ ジュンビガ」

「いや、冗談だから」

「もう!!罰として今日は眼鏡を掛けててくださいね!!」

 

俺は以前、いろはに買わされた服を着ていたのだが、その時にプレゼントしてくれた眼鏡も持ってきており、それも身につけて買い物に付き合わされていた。俺たちがウィンドウショッピングしていると、スーツを来た女性が俺たちの方に近寄ってきて、俺に名刺を差し出してきた。

 

「私、モデル雑誌を編集している佐藤といいます。写真を撮らせて頂きたいのですが」

「いろは、撮ってもらうか」

「えぇ!?あの撮影って一人ですか」

「..あ、あの、そちらの男性の方を撮らせていただきたいのですが」

「お、俺ですか。いえ、結構です。遠慮しておきます」

「お願いします!!今日中に撮らないと、編集に間に合わなくなっちゃうんですよ!!」

「..じゃあ、二人でなら良いですよ」

「二人ですか、この際しょうがないですね」

 

こういっておけば、いろはが断ってくれるだろう。そしたら二人で逃げてしまえばいいんだ。

 

「じゃあ、先輩。二人で撮って貰いましょう!!」

「えぇ、そこは断ってくれるんじゃないの」

「先輩が二人なら良いって言ったんですから、諦めてください」

「はぁ、分かったよ」

 

俺たちは佐藤さんに言われるがまま、写真を撮って貰っていた。後で雑誌を送りたいと言うことで、連絡先を教えてその日は別れた。

一週間後、俺の手元に雑誌が送られてきたのだが、俺でも名前を知っている女性雑誌に、俺の腕に抱きついている、いろはとのツーショットが掲載されていた。

俺の所には千葉で見つけた眼鏡男子と書いてあり、モデル名は「はー君」となっていた。大体、眼鏡男子ってなんだよ。草食系男子とか歴女とか変な言葉ばかり作りやがって。

これって俺の事、知っている人にバレるんじゃないの?隣に写っているのは、学校で有名人のいろはだし。でもいろはのおかげで俺の存在感は無くなっているから、俺には問題ないな。いろはは大変だろうけど。

俺は雑誌のことはすっかり忘れて家でグダグダしていたが、いきなりスマホが鳴り出した。いや、電話はいきなり鳴るものだよな。知らない番号だったため放っておいたが、中々鳴り止まないため、俺は諦めて通話ボタンを押していた。

 

「やっと、繋がった。比企谷君の携帯で良かったですか」

「はい、あのどちらさまですか」

「ああ、ごめんなさい。私、雑誌編集者の佐藤です。覚えていらっしゃいますか」

「ええ、どうしたんですか、いきなり」

「あなたの写真への反響がすごいのよ!!なのでまた、写真を撮らせてね!!詳しいことはまた連絡するから。後この番号で鳴ったらすぐ電話に出なさい!!」

「は、はい」

 

俺は思わず返事をしてしまった。どうしてか年上から命令口調で言われると、断れなくなってしまう。仕方がないので俺は今掛かってきた携帯番号を登録しておいた。

 

学校に行くと、いろはは下駄箱で質問攻めにあっているようだ。まあ、俺が知っているぐらいの雑誌に出ていたからな。対照的に一緒に出ていた俺の回りはいつも通りで誰も居なかった。いつもの事なんだけど、さ、寂しくなんか無いんだからね!!

 

後日、俺は都内の撮影スタジオに呼ばれ、着せ替え人形のように服を取っ替え引っ替えされ、撮影されていた。しまったな、いろはを連れてくれば良かった。二人なら緊張もさほどしなかったのだが、どうしても一人で撮られると緊張してしまう。

俺が一人で撮って貰っていると、テレビで見たことがあるモデルの女性が何人もスタジオに入ってきた。ああ、次の撮影のため、控えているんだな。そう考えて言われるがままポーズを取り撮影してもらっていると、一人の年上モデルが俺の方に歩いてきた。

 

「はー君、初めまして。よろしくね」

「ひゃ、ひゃい、お願いしましゅ...」

「ふふ、かわいいわね」

 

え!?この綺麗なお姉さんと撮るの?聞いてないんだけど。俺は終始お姉さん達に振り回されながら写真を撮られ続けていた。計五人のお姉さんに翻弄されていたが、何とか撮影は終了した。

 

また、雑誌が送られてきたが、俺が一人で撮られている写真や、綺麗なお姉さん達に顔を赤くして写っている写真が何枚も掲載されていた。何だよこれ「はー君、綺麗なお姉さんたちにタジタジ」って当たり前だろ、俺の知り合いにはこのお姉さん達にも負けない綺麗な人が何人もいるが、こんな写真撮ったことないし。

やっぱりモデルだけあって俺なんかの隣でも、このお姉さん達は良い表情するよな。一人一人が見惚れてしまう笑顔を振りまいているし。

 

でも幸か不幸か学校で俺がはー君ということを知っているのは、いろはだけだった。俺は喋らないようにお願いしていたので彼女も約束を守ってくれていて、奉仕部の二人さえ知らなかった。

 

俺はその後も何度か撮影スタジオに呼ばれ撮影してもらっていたので、結構な雑誌に載り出しているようだ。どこに需要が有るのか分からないが、おいしいご飯を食べさせてもらったり、差し入れで貰ったお菓子をモデルの人たちは食べないので、いつも貰ってお土産として持って帰っていた。

小町は喜んでいたが、俺の行動を怪しんでいて、アルバイトと言っておいたが、怪訝な顔をしている。

俺は三年生に進級したが、撮影が減ることはなかったので、同じ事務所の大学生モデル、愛甲 愛(あいこう あい)さんが撮影の合間に勉強を教えてくれていた。

なぜかカフェで勉強を教えてもらっているときに、写真を撮られ週刊誌に載ったそうだが、愛甲さんには申し訳なかったな。俺なんかと一緒のところを撮られて、あんなに綺麗な人だから、彼氏も凄いイケメンだろうし。

 

「...先輩。..ちょっと良いですか」

 

いろはが話始めたのだが、携帯に佐藤さんから電話があったので、いろはに断りをいれ俺は通話を始めた。今週土曜日に仕事が入ったと言うことだったので、集合場所等教えてもらい、電話を切った。

 

「悪い、いろは。さっきは何だった?」

「いいえ、良いんです。お仕事頑張ってください」

 

いろはは寂しげな表情をしていたが、走って行ってしまった。何かあったのだろうか。気になったので、生徒会室に行ったが、いろはは見つからず、休日まで会うことはなかった。

 

俺は都内の撮影現場の学校に訪れていた。今日の撮影はCMを撮るらしい。相手は国民的アイドルの綾瀬 綾だったが、俺の一つ上だったよな。ああ、撮影の予算の関係で男の予算を下げるため、俺を使ったんだな。俺なんて今の所ノーギャラだし。佐藤さんに呼ばれて両親が喋っていたが、俺は交通費や諸経費とちょっとした小遣いしか貰ってない。なので小町にも喋っていなかった、撮影しているのにノーギャラなんて恥ずかしいし。

 

撮影は順調に進んで行った。俺の役はアイドル生徒会長に振り回される生徒会役員ってことだったが、いろはに何時も振り回されているため、綾瀬さんをいろはのつもりで演じていたら、即OKを貰えていた。

撮影後、打ち上げでご飯を食べに行ったのだが、成人している人たちはお酒を飲みだし、俺と綾瀬さんだけが、何だか取り残されたように二人で静かにご飯を食べていた。

 

「はー君って今日の撮影、何だか慣れてたよね」

「いや、いつも高校の生徒会長に振り回されていて、いつも通りにしてたら終わっちゃいましたよ」

「..ふーん、その生徒会長って女の子?」

「ええ、年下なんですけどね。俺は生徒会役員じゃないんですけど、なぜか何時も手伝いをさせられてるんですよ」

「へぇ、そうなんだ...」

 

打ち上げが終わり、店の前で解散を待っていると、綾瀬さんが近寄ってきて俺の手を握り紙を渡してきた。

 

「それ、私のプライベート携帯の番号だから連絡頂戴ね。あと私の事は綾って呼んで。本名だから」

 

後日、綾瀬さんと俺がスクープされていた。これって打ち上げ時の写真だな。回りにたくさん関係者がいたはずなのに上手く、ツーショットに見えるようになっていた。上手いもんだな、綾瀬さんこれから大変だろうに。

 

*************

 

俺がそんなことを思い返して前の方に目を向けると、いろはは生徒会長として気丈に振る舞っていた。未だに野次を飛ばしているバカもいる。ここまで言われても、いろはは俺のために秘密を守ってくれていた。俺はそんないろはが愛おしく、そして申し訳なく思っていた。

今、いろはは全校生徒の前で涙を堪えて、生徒会長の責務を果たし全校生徒に向かって一礼していた。

 

ここからは俺の番だ。俺は立ち上がり、いろはに向かって歩き出した。俺が前に向かっていくと、いろはは俺の行動に気づいたのだろう、口を手で抑えて俺のことを見つめていた。平塚先生が俺のことを呼んでいたり、色々言われている声が聞こえるが、俺は無視して歩いて行った。

 

「比企谷、席に戻れ!!」

「なにあれ、どうするつもりなんだろ」

「生徒会長に直接野次でも言いにいくんだろ、目立ちたいだけじゃないか」

 

「は、八幡。どうしたの」

「何をするつもりだ、八幡」

 

前に座っていた戸塚や隣のクラスの材木座が声を掛けてくれたが、俺は笑顔を返しただけで、何も答えなかった。そして歩きながら胸の内ポケットに手を入れていた。いろはから貰った眼鏡を取り出して着けるために。

 

「え!?あれって、はー君!?」

「どうしてこんなとこに!?っていうか、この学校の生徒なの!?」

「「「八幡!?」」」

「ええ!?はー君ってヒッキーだったの!!」

「ヒキオ!?」

「ハチ!?」

「お兄ちゃんなの!?」

キャーー!!

 

俺は野次など無視して、いろはの元に向かって行った。いろはは俺の行動を見守ってくれていたが、目からは大粒の涙が溢れているのが見えていた。今までどれほどの誹謗中傷に耐えていたのだろう、俺のせいでいろはには嫌な思いをさせてしまった。でも今は俺の行動を目を離さず見ていてくれている。

 

俺はいろはの前に立ってマイクを握っていた。

 

「いろは、今まで秘密にしてくれてありがとう。迷惑を掛けてすまなかった。でももう良いんだ。俺の好きないろはに、これ以上は迷惑を掛けれない」

「せ、先輩//」

 

俺は、マイクを降ろし息を吸い込むと、俺が今まで出したことがないぐらいの声で叫んでいた。

 

「いろはさん、あなたが好きです!!俺と付き合ってください!!」

「せ、先輩!!わ、私も先輩が大好きです!!うぁーーー!!」

 

キャーーー!!Σ(゚∀゚ノ)ノ

イヤーーー!!(((-д-´。)(。`-д-)))

 

いろはは抱きついてきて、告白に答えてくれ俺の胸で泣き続けた。その瞬間、静まり返っていた体育館から、叫び声や怒号のような声が飛び交っていた。

 

「比企谷!!一色!!今すぐ生徒指導室に来い!!」ピキピキ

 

いろはと抱き合っていると、平塚先生にいきなり襟首を掴まれ、引き摺られていた。

俺といろはは手を繋いだまま青筋を立てた平塚先生に連行されて行ったが、体育館を出るときには、背中に祝福を受けていた。

 

後日、よつべに誰が撮っていたのか俺の告白動画がアップされており、綾瀬さんのスクープはあっと言う間に忘れ去られていた。ただなぜかワイドショーでは俺の告白動画が流され、相手は美少女生徒会長と世間を賑わせていたが。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「先輩//私、傷つきました。慰めてください//」

 

一色さんは席から立ち上がり、八幡の方に歩いて行ったわ。も、もしかして先ほどの海老名さんのように抱きつくつもりかしら!?まずいわ、止めに行かないと。でも私の位置からでは遠いわ。

一色さんが八幡に抱きつこうと手を前に出した時、海老名さんが間に割り込んで阻止していたわ。

 

「ふふ、甘いね。いろはちゃん」

「チッ、..海老名先輩ばっかりずるいですよ」

「ふふん、こればっかりは譲れないよ」

「あ、あなた達、いい加減にしてもらえないかしら、今はラノベの批評をしないといけないのよ」

「「..はーい」」

「な、何やってんだよ//まったく」

 

海老名さんのおかげで、一色さんを止めることが出来たわ。でも元は海老名さんが最初にしたから一色さんも真似をしたのよね。そう考えると海老名さんだけ良い思いをしているわ。今度は私も抱きつかないと。

 

「雪ノ下先輩。最初、読ませるの迷ってましたけど、これぐらいなら大丈夫ですよ」

「念のためよ、読んでからだと遅いでしょ。でも、それなら先ほど「慰めてください」と言って、取った行動は何だったのかしら」

「い、いやー、あはは」

 

「材木座、ラノベでサブキャラが出てくる時って、綾瀬 綾(あやせ あや)愛甲 愛(あいこう あい)なんだな」

「キャ、キャラ名を考えるのが、面倒くさいとかではないぞ!!」

「良いのではないかしら、材木座君も億劫なんでしょ」

「..はい」

 

「このCMって何の宣伝かしら、そのことも書いた方が良いでしょうね。後、編集者と八幡が所属している事務所の担当者を分けるべきね。編集者が八幡にスケジュールを電話していたでしょ」

「..あーし、気づかなかった」

「うちも」

「私も。雪ノ下さんよく気づいたね」

「最初から気になっていたのよ。一色さんとの撮影の時、カメラマンのことを書いていなくて、編集の方が指示を出していたから」

 

「なあ、材木座。俺が眼鏡を掛けても大して変わらないだろ」

「そんなことないぞ、八幡。たしかに今回のラノベは大げさに書いたが、撮影の時、イケメンリア充爆発しろ!!だったぞ」

「..もしイケメンになれたとしても、俺は嫌だな、回りが煩くなるだけだろ」

「確かにそうね。八幡の回りの人だけ知っていれば良いでしょ」

「うん、ヒッキー。私たちの前だけ眼鏡掛けてね」

「でも本当に多げさに書いたわね。相手が国民的アイドルってことは、全国区のCMではないかしら」

「でもヒキオって眼鏡掛けると変わるし、案外雑誌とかには取り上げられるかもよ」

「やだよ、面倒くさい」

「うん、ハチ。みんなは知らなくてもいいよ、でも私たちの撮影の時はまた眼鏡してね」

「うちも一緒に撮りたいんで今週、よろしくね」

 

「先輩、このラノベみたいに全校生徒の前で告白してもらっても良いですよ」

「なんで俺が告白しないといけないんだよ。そもそも俺にこんなこと出来るわけないだろ、噛みまくって途中で逃げ出すだろうな」

「ヘタレですね」

「いや、こんなこと出来る奴いないだろ、いたら見せてほしいわ」

 

たしかに全校生徒の前で告白って中々ないわね。でも八幡にしてもらったら、私もこのラノベみたいに抱きついてしまうのでしょうね。私も八幡にやってもらいたいと思ってしまったわ。

 

 



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37話

今日は、何時ものラノベとは違うため、奉仕部以外の人には来ないようにお願いしていたわ。もしかしたら彼女は怒って私たちと会ってくれなくなってしまうかもしれない。

でも私は厳しい現実を突きつけて、彼女が真面目に取り込んでくれると信じているわ。

そう考えていると、材木座君、遅れて八幡が来てくれたわね。

 

「二人とも今日は帰ってもらっても良いわよ」

「雪乃、俺も雪乃と一緒の意見なんだ、俺も最後まで居させてくれ」

「我も自分のラノベで人の心を動かせるのか、確認させてほしいです」

 

二人がそう答えてくれて、私は嬉しかったわ。そう考えていると由比ヶ浜さんが来たようね。材木座君はラノベを私たち三人に渡してきたわ。

 

「今日は確認は良いの?」

「ええ、大丈夫よ。では皆で読んでみましょ」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

奉仕部で受験勉強をやりだしたんだけど、全然やる気出ないな。みんなどうしてあんなに頑張れるんだろう。

サキサキも勉強会に誘われて、一緒になってやっているし。姫菜とサキサキって総武で50位以内に入っているんだ。このまま行けば、千葉大は余裕らしいけど、それでも凄く頑張っている。

あたしは何かやる気でないんだよね。総武の受験も秋に入ってから勉強しだして受かったんで、大学も余裕と思うんだけどな。ヒッキーは陽乃さんに家庭教師してもらって理数系も頑張ってるようだけど。

隣では中二が優美子とさがみんに日本史と世界史を教えている。中二って両方共凄く得意らしくって、ゆきのんに呼ばれて一緒に苦手な教科を教えてもらう代わりに、得意な教科を教えるようにしていた。

サキサキと姫菜は全教科良いみたいだし、優美子は英語得意だし。さがみんはあたしよりちょっと良いだけらしいけど、頑張って教えて貰っている。

あたしはゆきのんが教えてくれているけど、どうしても頭に入らない。ゆきのんはたまに怒るんだけど、今からやっても1年後の受験まで頭に入ってる訳ないじゃん。

 

「由比ヶ浜さん。もうちょっと気を引き締めて勉強できないかしら」

「ゆきのんさあ、部活の時間までやる必要ないじゃん」

「それだと間に合わないでしょ。由比ヶ浜さんも八幡と一緒に千葉大を目指すのよね」

「うん、でも今からやる必要有るのかな」

「..由比ヶ浜さんの成績ではとても行けないわよ」

「そんなことないよ、総武にも入れたんだし」

 

そうだよ。千葉でも有数の総武に入れたんだから、千葉大も大丈夫なはずだよ。

 

「結衣、大学受験はそんなに甘い考えで受かるもんじゃないぞ」

「あーしもそろそろ勉強始めようと思ってたんで、雪ノ下さんが勉強会開いてくれたの凄い助かってるし」

「うちもこういう場を作ってくれて凄く助かってるよ」

「二人共ありがとう。由比ヶ浜さんも、もうちょっと頑張りましょうよ」

「...あ、あたし今日はそろそろ帰らせてもらうね」

 

あたしは勉強したくなくて挨拶もせず、部室を出てきていた。どうしてみんなあんなに頑張れるんだろう。ヒッキーと一緒の大学行きたいけど、今からやる必要ないじゃん。

 

その日からあたしは奉仕部に行く回数が減っていった。ゆきのんが寂しそうにしているって、ヒッキーが教えてくれたけど、あたしは勉強なんてしたくないし。

優美子も姫菜も放課後、奉仕部に勉強しに行ってるんで、遊ぶ人もいなくなっちゃった。二人共放課後、勉強会に誘ってくれるんだけど、あたしは行きたくなかったんで、断っていた。

 

そのまま、奉仕部に行くことがなくなって夏休みに入っていった。もうゆきのんも優美子も姫菜も勉強会に誘ってくれなくなったけど、みんな夏休みも勉強会をしているって聞いた。

凄いな、みんな。夏休みぐらい遊べば良いのに。

 

あたしは夏休み、中学の友達と楽しく遊んでいた。パパやママに勉強しなさいって言われて、あんまり煩いから机に向かうふりして、スマホで遊んでいた。

 

夏休みが終了すると、クラスの雰囲気がガラって変わっていた。休み時間も勉強している人もいるし、授業も自習が多くなって受験勉強の時間に当てられたりしていた。

そろそろ、あたしもやらないといけないな。でも全然分からないや。

 

「優美子、ここ教えて貰えないかな」

「ごめん、結衣。あーし自分のことでいっぱいだから」

「ううん、ごめんね」

 

駄目だ。クラスの雰囲気から誰も教えてくれそうにない。みんな自分の勉強で一杯みたいだし。

ゆきのんに聞いてみようかな、ちょっと今日、部室に顔出してみよ。

 

「あら、由比ヶ浜さん。久しぶりね」

「ゆきのん、ひさしぶり。入って良いかな」

「ええ良いわよ。でも勉強会をしているので、私も遊べないわよ」

「ううん、あたしも勉強したいんだけど」

「ええ、ではそちらでやってもらえるかしら」

 

ゆきのんはあたしが部活のときに座っていたところを指差していたので、そこに座って教科書やノートを広げて勉強しだしたけど、まったく分からないや。みんな凄い勉強しているし聞き辛いな、ゆきのんは教える立場でみんなの机を回っているんで、あたしもゆきのんに教えてもらお。

 

「ゆきのん、ここ教えてもらえないかな」

「....由比ヶ浜さん。そこは皆とっくに終わっているところよ。教科書のここをみて頂戴、これが分かれば解けるでしょ」

 

ゆきのんは皆の机を回って勉強を教えていたんで、あたしの机のところには中々来てもらえなかった。

一人でやってみたけど、全然分からないや。ゆきのんも他の人に教えるのが大変であたしに時間取れなさそうだし。

ヒッキーや中二に聞いて迷惑そうな顔をされるのも嫌だしな。いいや、中学の時みたいにパパに教えてもらお。

 

「パパ、勉強教えて」

「大学受験は難しくて教えれないぞ。..今からでも塾に行くか?」

「え!?良いよ、お金もったいないし」

「..結衣、お金の事は気にするな。今からでも塾に行こう」

「う、うん。ありがとう」

 

あたしは塾に通いだしたんだけど、基礎のところは既に終わっているらしくって、応用問題とかテストに向けての対策ばっかりしていた。講師の先生に聞くのも恥ずかしかったけど、そんなこと言ってられないんで、聞いて教えてもらっていた。でもあたしばっかりに時間取れないみたいだし、中々勉強は進まなかった。

 

「雪乃!!あーし模試でB判定貰えたし!!」

「うちもEからCまで上がっていたよ!!本当にありがとう!!雪乃!!」

「二人共頑張っていたもの、当たり前よ。でも気を抜いては駄目よ、これからが本番なのだから」

「「うん!!」」

 

優美子もさがみんも凄いな、二人共ゆきのんに抱きついて喜んでいる。ゆきのんも暑苦しいとか言いながらも嬉しそうだし。あたしはE判定だった、滅茶苦茶差がついちゃったな。

皆は夏休み、ゆきのんちの別荘で合宿をしていたみたい。陽乃さんや陽乃さんの友達にも来てもらって勉強教えて貰ってたみたいだし、息抜きでバーベや花火したり夏祭りやプールにも行ったって優美子と姫菜に聞いて凄く羨ましかった。

いつの間にかみんな凄く仲良くなっていて、あたしは除け者にされているわけじゃないけど、どうしても受験や夏休みのことに話がなると、会話に入って行く事は出来なかった。

 

ついにセンター試験が始まった。ゆきのんは推薦貰えたのに断ったみたい。みんなと一緒に勉強して受かりたいからって、正月明けからゆきのんの実家で優美子と姫菜、サキサキ、さがみんに付きっきりで教えてたみたいだし。

多分、陽乃さんも手伝っていたんだろうな。あたしも誘われたけど、とても顔を出していいとは思わなかったんで、断っていた。

 

卒業式も終わって、最後に部室に集まって最後に三人で紅茶を飲んでいるとき、ヒッキーがあたしに話しかけてきた。

 

「結衣、千葉に帰ってきたら連絡くれよな」

「由比ヶ浜さん。私にも連絡してよね」

「うん、あたしだけ東京なんだよね。でも帰ってきたら遊んでよね」

「ああ....後、もう一つ報告があるんだ」

「なに?」

「俺と雪乃なんだが、合格発表の日から付き合っているんだ//」

「..え!?」

「皆に急かされてな、「待たせてばかりいるな」って優美子に怒られて、南や姫菜、沙希にも「私たちのために頑張ってくれた雪乃にご褒美をあげろ」って言われて、決心が付いたんだ」

「..その、ヒッキーはゆきのんの事、いつから好きだったの?」

「意識しだしたのは、結衣が奉仕部に来なくなった時からだ」

「..ど、どうして」

「雪乃が凄く寂しそうにしていてな。でも皆に勉強教えるため、自分の感情を押し殺して振舞っていたのを見て、俺が守ってあげたい。俺が雪乃の笑顔を取り戻したい。って思うようになっていたんだ」

「..そ、そうなんだ。ヒッキー、ゆきのん。お、おめでとぅ..うぅ」

 

泣いているあたしに気を使ってくれたんだろう。ヒッキーは先に帰ると言って、湯のみを持って部室を出て行った。

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。あなたの気持ちは知っていたのだけれど、私も八幡のことが好きだったの。だから彼から告白されたとき、嬉しくて自分のことしか考えられなかったわ」

「ううん、ゆきのん。おめでとう...でもこれからも友達でいてよね」

「由比ヶ浜さん、私からもお願いするわ。私と友達でいてください」

「うん。ゆきのん、あたしのことも名前で呼んで」

「結衣、何時までも親友でいてね」

 

あたしとゆきのんは抱き合って泣いていた。ゆきのんからあたしに抱きついてくることって、ほとんどなかったんだけど、奉仕部での最後の時間をゆきのんと過ごせて良い思い出が作れたな。

 

あたしは家に帰ってベッドに倒れ込むと、今まで抑えていた感情が溢れ大声をあげて泣いていた。どうして最初から勉強を一緒にしなかったんだろう、ヒッキーに気持ちも伝えられなかった。後悔の念が後から押し寄せてきて、その日は朝まで泣き続けていた。

 

その後に聞いた話だと、優美子たちもヒッキーに気持ちの後押しをするため、全員告白して振られたってことだった。でも今は優美子たちが羨ましい。振られても自分の気持ちを伝えることが出来たんだから。あたしは今更そんなことは出来ない。大事な親友にこれ以上、迷惑を掛けたくないから....

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「うぅ、ひどいよ。中二..」

「..すまない」

「由比ヶ浜さん、ごめんなさい。今回のラノベは私が書かせたのよ」

「..ゆきのん、どうして」

「あなたに後悔してほしくなかったの。今、由比ヶ浜さんは勉強会の時も上の空でしょ、だから発破をかけたかったのよ」

「で、でも酷いよ。ヒッキーも知っていたの?」

「ああ、俺も賛同したからな」

「みんな、酷いよ!!」

 

由比ヶ浜さんは立ち上がると、部室を出てどこかに走って行ったわ。鞄を置いていったので、私たちはとりあえず彼女の帰りを待つことにしたのだけれど、ほとんど会話することはなかったわ。

 

一時間ほどたったのかしら。由比ヶ浜さんが戻ってきたのだけれど、表情からすると怒っているわね。でも、何だか先ほどと雰囲気が違うようだわ。

 

「結衣、すまなかった」

「我からも謝罪させてほしい、本当にすみませんでした」

「由比ヶ浜さん、もう一度謝らせて頂戴。本当にごめんなさい。でも後で後悔するかもしれないから、一年間私たちとがんばって欲しいの」

「..ヒッキー。ラノベの件は今からの質問に正直に答えてくれたら許すから」

 

由比ヶ浜さんは私と材木座君には目もくれず、八幡に詰め寄って彼の足を跨いで仁王立ちしているわ。あれでは八幡は逃げれないわね、でもどうして八幡だけを拘束しているのかしら。

 

「..さっきね、ヒッキー。かおりんと千佳ちんの友達から連絡が来てね、かおりんが席を外した時、携帯が置いてあったんだけど、待ち受けに眼鏡イケメンにお姫様抱っこされて、ほっぺにキスしている写真が表示されたんだって..」

「..へ、へぇ。し、知らないでしゅよ..」

「..ふーん、ヒッキーじゃないんだね。かおりんに聞いても総武ってことしか教えてもらえなくて、あたしに知らないかって連絡がきたの。でもかおりんは撮影の時、着ていたベアトップのワンピースで写っていたらしいんだけどね...」

「..八幡。あなた撮影の時、何をしていたのかしら」

 

私は八幡と由比ヶ浜さんに近寄り、八幡の肩に手を置いたわ。八幡はやましい事があるのか、凄くビクついていたのだけれど。

 

「ヒッキー。正直に答えてって言ったよね...」

 

八幡は観念して撮影会でのことを話し出したわ。私と由比ヶ浜さんは何も言わずに聞いていたのだけれど、由比ヶ浜さんの感情豊かな表情が段々薄れている様に見えるわ。

 

「ふーん、千佳ちんが最初でかおりんにも反対側にされたんだね」

「ああ、でも千佳の時はいきなりだったんで、どうしようもなかったんだぞ」

「じゃあ、今からあたしにもしてよ」

「カメラもないから撮れないだろ」

「カメラならあるよ」

 

そういうと、由比ヶ浜さんは材木座君にスマホを渡して撮影するように指示していたわ。

 

「じゃあ、ヒッキー。よろしくね」

「ほ、本当にするのか」

「うん、あすなろ抱きでほっぺを合わせるのと、お姫様抱っこでおでこ合わせるのと、あたしがほっぺにキスするの。後、膝枕ね...してくれたら、ラノベの件はもう良いよ。あたしのことを思って書いてくれたんだし。...でも、ゆきのん。今日の撮影はあたしだけだからね」

「ええ!?ゆ、由比ヶ浜さん。私も撮ってほしいわ」

「ゆきのん。ラノベであたし、傷ついたなぁ。癒しがほしいんだけどなぁ...」

「くっ、..分かったわ」

 

由比ヶ浜さんは窓際に移動して、あすなろ抱きをして貰っているわ。八幡は眼鏡を持ってきていないので、掛けていないのだけれど、二人共制服で部室の中ってことで、中々撮れる事のない羨ましい構図になっているわね。

八幡がほっぺを合わせると、二人共顔を真っ赤にしだしたわ。材木座君は「爆発しろ」って言いながらもスマホを操作しているわね。本当に爆発してしまえば良いのにと思ってしまったわ。

次にお姫様抱っこして、おでこを合わせているのだけれど、私の時より顔が近いわ。鼻もくっついていて、顔をずらせばキスしてしまうのではないかしら。これが嫉妬心なのね、今すぐ止めさせたい。でもここは抑えないと駄目よ。

つ、ついに頬にキスするのね。八幡はもう顔が強張っているのだけれど、由比ヶ浜さんは赤面しながらも口元が緩んでいるし。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん。長いわよ!!」

 

八幡の頬にキスして離れないので、思わず声を出してしまったわ。でもそれで由比ヶ浜さんが離れてくれたわね。最後に椅子を並べて膝枕しだしたわ。うぅ、羨ましい。でもこれで終わりね。

膝枕の撮影が終わって八幡は椅子に腰かけると、由比ヶ浜さんは八幡の後ろに回り込んでいたわ。

 

「中二、撮ってよね」

 

由比ヶ浜さんはそういうと、後ろから抱きついて先ほどとは逆の頬にキスして撮影して貰っていたわ。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん!!」

「だって両方の頬にキスされたんだよね、塗り替えないと」

「ずるいわよ。私も撮ってもらっても良いわよね!!」

「ふーん、今日の撮影は私だけだよね。ゆきのん、約束破るの?」

「い、言うようになったわね。由比ヶ浜さん」

「じゃあ、これでおしまい。ヒッキー、中二ありがとう。ラノベの件も良いよ、でも勉強の方はゆきのん、ヒッキー、中二、お願いします」

「..ええ、分かったわ。厳しく教えてあげるわ」

 

今日、由比ヶ浜さんの勉強に対する気持ちを向上させるつもりで、ラノベを書いてきて貰ったのだけれど、途中からは、由比ヶ浜さんにしてやられたわね。

でも、まさか撮影会で私以上に抜けがけしている人がいるとは思わなかったわ。明日も川崎さん達の撮影をするらしいけど、これは全部の写真を見せてもらう必要があるわね。

 



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38話

私は日曜日の朝、八幡の家の前まで来ていたわ。昨日、小町さんに連絡したので起きてくれているはずよね。でもインターフォンを押すのは躊躇われたので、携帯に連絡したら、すぐ小町さんは玄関から出てきてくれたわ。

 

「..雪乃さん、..おはようございます」

「おはよう小町さん。どうしたの?そんなに声を押し殺して」

「このほうが雰囲気がでるじゃないですか。じゃあ、入ってください」

 

小町さんはTVでの寝起きドッキリに登場するタレントみたいに声を潜めて挨拶してきたわ。そこまでしないといけないのかしら。

今日は、姉さんが家庭教師するということなので、お邪魔させてもらったのだけれど、ちょっと早かったようね。姉さんもまだ来ていないし、八幡も寝ているようだから。

 

「雪乃さん。お兄ちゃん起こしてきてもらって良いですか」

 

小町さんはお茶を用意しながら、私に声を掛けてきたわ。本当はカマクラさんと遊びたかったのだけれど、しょうがないわね、彼はいつまで寝ているつもりかしら。私は八幡の部屋まで移動して扉をノックしたのだけれど、思ったとおり返事はないわね。

扉を開けベッドの方をみると、八幡はこちらに顔を向け横向きに寝ていたわ。そういえば、八幡の寝顔なんて見たことなかったわね。目を閉じていれば、本当に整った顔をしているわ。写真を撮りたいのだけれど、音が鳴って起きてしまうかもしれないから、止めておいた方がいいわね。

でも見ているだけではつまらないので、私は頬を突いたり頭を撫でたりしていたのだけれど、八幡はベッドの壁側にいるので撫でにくいわ。私は八幡の布団にお邪魔し彼の枕に頭を置いたのだけれど、顔が凄く近くなってしまったわ//でもこれで頭を撫でるのも楽だし、しばらくはこうしてても良いわよね。

私がしばらく頭を撫でていると、八幡の手が動き出したわ。私の背中に手を回して引き寄せようとしている。思わず声が出そうになったのだけれど、今は私が布団に入り込んでいるのだから、声を出さないようにしていると、八幡は身体を縮めて私の胸に顔を埋めてきたわ//

 

「っ//ハ、ハチマン//」

 

カシャッ、カシャッ、カシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッ

 

カメラの撮影音がしたので私が飛び起きると、小町さんがスマホをこちらに向けて満面の笑みで撮影していたわ。

 

「こ、小町さん。こ、これは//」

「良いんですよ、雪乃お姉ちゃん。小町もお義姉さんが欲しいので、早くそれを貰ってください」

「あ、あなたは何を言っているのかしら//私と八幡はまだそんな仲ではないわよ//」

「じゃあ、今からヤッちゃえば良いじゃないですか」

「や、ヤるって//」

「でも、もうすぐ陽乃さんが来ちゃうんで残念ですが時間がないですね。じゃあ小町は下に行ってます。お兄ちゃんを起こして来てくださいね」

 

小町さんはなんてことを言うのかしら、でもまさか胸に顔を埋められるなんて思っていなかったわ。後で小町さんに写真を貰わないと//

もうすぐ姉さんが来てしまうので、八幡を起こさないといけないわね。残念だけれど、これでおしまいね。名残惜しいけど、私は八幡を起こしたわ。

 

「おはよう、八幡//」

「..うん、お、おはよう。って何で雪乃が居るんだ?」

「今日、姉さんが家庭教師をするのでしょ、私も教えてもらおうと思って」

「ふーん、じゃあ着替えるんで下に降りてて貰えないか」

「分かったわ」

 

私がリビングに入っていくと、ソファーにカマクラさんが居たので、にゃーにゃー言いながら近づいて行ったのだけれど、視線を感じてそちらを見ると、八幡のご両親が食卓でコーヒーを飲んでいたらしく、私の行動を見て口を半開きにして茫然と私を眺めていたわ。

 

「..あ、あのどちらさまですか」

「お母さん、お兄ちゃんのお嫁さん候補の雪ノ下雪乃さんだよ」

「あ、あの八幡さんの嫁のって...ち、違います!!..ぶ、部活を一緒にしている雪ノ下雪乃と言います//」

「小町、こんな綺麗な人が八幡の嫁って失礼でしょ。雪ノ下ってことは陽乃さんの妹?」

「は、はい。今日、姉が家庭教師するって聞いたので、私も教えてもらおうと思ってお邪魔させてもらいました」

「家では教えてもらわないの?」

「あ、姉とは一緒に住んでいないので」

「そうなのね。まあ、ゆっくりしていって頂戴」

「は、はい。ありがとうございます」

 

ご両親の前で恥ずかしい行動をしてしまったわ。小町さんが嫁なんて言うから、私もついご両親の前で言ってしまったし//

八幡が降りてきて朝食を食べだすと、姉さんが来たようね。リビングに入ってくると私がいたのが予想外だったのか、驚いていたのだけれど、二人ソファーに座っていると何時もの笑顔を私に向けてきたわ。

 

「ふーん、雪乃ちゃん。今日はどうしたの」

「姉さんに私も勉強を教えてもらいたいのよ」

「へぇ、比企谷君と私が二人っきりになるから邪魔しに来たんでしょ」

「ち、違うわよ」

「じゃあ、夜にマンションに行くから、その時で良いでしょ」

「それでは二度手間でしょ、八幡と一緒に教えてもらえれば結構よ」

「..雪乃ちゃん。もうちょっと素直になれば良いのに」

「...」

 

素直になれれば、もっと楽に出来ると思うのだけれど、今の私にはまだ無理よ。八幡にだって未だに素直に接することが出来ないのに。でも姉さんにも態度を改める必要があることは自覚しているのよ。でも素直に接することは出来ないわ。だからもう少しはこのままで....

 

八幡が朝食を食べ終わり身支度をした後、八幡の部屋で姉さんが勉強会を始めたわ。姉さんの教え方は八幡に分かりやすいようで、すんなり受け入れているわね。私が行っている勉強会にも活用できそうだし。八幡が問題に取り込んでいるとき、私は勉強会の仕方を姉さんに教えて貰っていたわ。

 

「へぇ、雪乃ちゃん奉仕部で勉強会、始めたんだ」

「人数が多いので、結構大変なのだけれど。とても楽しいわ」

「言ってくれれば私も手伝うからね」

「ええ、その時はお願いするわ」

「!!....雪乃ちゃんなら私の手伝いなんて要らないって言うと思ったんだけどな」

「..私だけなら一人でやると言うわ。でも、そ、その友達のためよ。それなら姉さんに幾らでもお願いできるわ」

「雪乃ちゃん。良い友達が出来たね、...ちょっと羨ましいな」

「..姉さん」

「八幡、ここ違うよ。この公式使わないと」

 

姉さんには、友達は沢山居るのだけれど、そういった友達はいないのかもしれない。私も八幡と由比ヶ浜さんに出会うまでは友達なんて居なかったのだし。でも今では三浦さん達も奉仕部に来てくれて、毎日楽しく過ごせている。以前は三浦さんとは口論になることが多かったのだけれど、今では普通に喋ったりしているし。年齢は違うけど姉さんも私たちと過ごせればいいのだけれど。

 

私たちが勉強していると、小町さんが呼んできたわ。お昼ご飯が出来たと言うことで、私たちは勉強を中断しリビングへ降りていくと、私と姉さんの分も用意してくれていたわ。

 

「陽乃さん、雪乃さん。どうぞ食べてください。お兄ちゃんも早く座って」

「良いんですか、頂いても」

「雪乃さん、良いのよ。午後も勉強するのでしょ。お腹が減っていては勉強に集中出来ないわよ」

「雪乃ちゃん。用意していただいたんだから、よばれましょ」

「ええ、では頂きます」

「「「頂きます」」」

 

私と姉さん、小町さん、八幡でご飯を一緒に食べさせてもらって、せめて後片付けはさせてほしいとお願いし、私と姉さんで洗い物をさせてもらったわ。その後、コーヒーを頂いて休憩した後、勉強を再開したわ。

 

「そろそろお開きにしませんか。今日は結構、勉強しているんですけど」

「もうすぐ4時なんだね。全然気づかなかったな」

「ええ、凄く集中出来たわ」

「じゃあ、雪乃ちゃん。ちょっと休憩させて貰って帰ろうか」

 

姉さんにそう言われ、私は今日の目的を思い出したわ。そう、昨日の撮影会の写真を見せてもらおうと思って来たのだけれど、すっかり忘れていたわね。

 

「ねえ、八幡。昨日の撮影会の写真を見せてもらいたいのだけれど」

「昨日も撮影したんだ、比企谷君。私にも見せて」

「い、いや、皆に渡して、データ残ってないでしゅ...」

「...八幡、もしかしてまた、キスをさせているのかしら」

「え!?どういうこと!?私たちが撮ったとき、誰かとキスしてたの!?」

「雪乃、陽乃が誤解するだろ。ほ、頬にキスされただけですよ」

「..ふーん、キスされただけなんだ。じゃあ、私がしても良いよね」

「だ、駄目よ!!私もしていないのだし!!...あ//」

「へー、雪乃ちゃんもキスしたいんだぁ」

「だって金曜日に由比ヶ浜さんが八幡にキスしているの見せつけられたし..」

「..ふーん、比企谷君。どういうことかな?ガハマちゃんともキスしてて私たちは駄目なんだ」

「しゃ、写真だろ。こ、このパソコンに入っているから」

 

そういうと、八幡は立ち上がりパソコンの電源を入れてくれたのだけれど、これで追求を免れたつもりかしら。とりあえずは写真を確認させてもらってからね。

私と姉さんはパソコンに向かうと、八幡は飲み物を持ってくると言って、出て行ったわ。

 

「雪乃ちゃん。この後時間、大丈夫?」

「ええ、今日は撮影もして貰うつもりだったから、夜遅くても大丈夫よ」

「うん、帰り遅くなったら泊めてもらっていい?」

「良いわよ、姉さん。二人で撮影してもらいましょう」

 

そういうと、私が操作して姉さんと一緒に写真を確認しだしたわ。

まず川崎さんからね、制服で公園で撮っているようだわ。やはり川崎さんは身長があるし胸も大きくて腰もくびれているので、写真映えするわね。でも今は一人で撮影している写真は良いわ、八幡とどういったツーショットを撮っているかを確認しないと。

 

有ったわ。川崎さんは大きな木に背中を預けて、八幡は眼鏡を掛けて反対側で一緒のように木に背中を預けて、手を恋人繋ぎしているわ。こういう写真も良いわね。私は八幡と触れ合いたいと思ったので、おでこや頬を合わせていたのだけれど、この写真からはまだ付き合いだして間もない二人って感じが出てて良いわね。後はベンチに座って手を繋いでいたり、川崎さんが八幡の肩に頭を預けたり、川崎さんが膝枕してあげてるのね。

...どうして八幡に膝枕してもらっているのかしら。八幡に頭を撫でてもらって、いつもの川崎さんからは想像の付かない破顔した表情をしているし。

 

この後、城廻先輩、相模さん、一色さん、折本さん、仲町さん、小町さん、鶴見さんも撮ってもらっているのだけれど、みんな川崎さんと一緒のことをしているだけね。多分、外で撮影したのだから皆が観ていて抜けがけ出来なかったのね。

でも、いつの間に城廻先輩と鶴見さんも撮影会に加わっていたのかしら。一色さんであれば二人の事しっているから、一色さんが誘ったのかしら。

でも、折本さんと仲町さんも撮ってもらっているのね。仲町さんは折本さんに呼ばれたのでしょうけど、彼女達は二回とも撮影会に参加しているので要注意ね。

今回は外で集合写真を撮っているわ。また折本さんを中心に八幡と材木座君が横に座って、他の人たちは周りを取り囲むようにしているわね。

 

「陽乃、雪乃。コーヒーを持ってきたぞ」

「ねえ八幡。どうして城廻先輩と鶴見さん、仲町さんが居るのかしら」

「めぐりは生徒会に顔を出したとき、いろはが誘ったらしいぞ。留美は自転車で走ってて、俺たちを見かけて来ただけだ。だから公園の写真しかないしな。千佳はかおりが誘ったんだ。かおりの知り合いって、今回の参加者だと、いろはだけだろ」

 

そういうことね。鶴見さんは公園だけで、八幡の家にはお邪魔していないのね。

私が写真を捲っていくと、今度は家の中で城廻先輩が最初に撮っているのね。上は白いセーターにスカートは薄いピンクなのね、城廻先輩らしいといえばらしいのだけれど、普段着って感じね。八幡とはどういった写真を撮っているのかしら。

..え!?八幡とのツーショットの時だけビキニの水着になっているわ。城廻先輩って着痩せするのね。八幡が真っ赤になってあすなろ抱きをして頬を合わせているわ。お姫様抱っこしておでこを合わせているし。そしてこれが私たちのやっていないことね//八幡が椅子に掛けて城廻先輩が跨いで腰の上に座っているわ//お互い抱き合っておでこを合わせている//

 

「ねえ比企谷君。めぐりの抱き心地どうだった?」

「や、やめてください、陽乃。俺もいっぱいいっぱいだったんですよ」

 

では、次の写真を確認しないと行けないわね。次の川崎さんはショート丈のTシャツにデニムのショートパンツなのだけれど、このショートパンツ短くないかしら。お尻が出ているのだけれど//

でも川崎さんの良さが出ていると思うわ。彼女は身長もあってモデルみたいな体系だから、変に着飾るよりシンプルな方が恰好いいわね。

 

ま、また八幡とツーショットを撮るときに、城廻先輩のように水着になっているわ。しかも今度は八幡も上着を脱いでいるわね。は、肌と肌を合わせているじゃない//

 

「比企谷君。ちょっーと、サービスし過ぎじゃないかな」ピキッ

「..八幡。後で私たちとも撮るわよ」ピキピキッ

「は、はぃ....」

「今回、全員ツーショットの時は水着を着ているの?」

「ああ、相談して持ってきたらしいぞ」

「..そうなのね」

 

川崎さんは八幡が上半身裸以外、城廻先輩と一緒のように撮影しているわね。

 

「そ、そろそろ撮影始めないですか。帰り遅くなっちゃいますよ。お二人とも」

「大丈夫だよ、比企谷君。帰りは気にしないで」

「八幡。この後の写真、何かまずいのかしら?」

「い、いや、今まで撮ったのとそんなに変わりないので、確認しなくても良いんじゃないかなー、と」

「怪しいわね、そんなに時間掛からないから確認させてもらうわ」

 

次は一色さんね。彼女はかわいい恰好しているわ、でも今はツーショットを確認しないと。一色さんもツーショットは水着なのね。八幡も上半身裸だし。これは一色さんが考えたのね。八幡の腕枕で寝て上にシーツでバストより下を隠すように掛けて、トップスの肩紐をズラして写らないようにしているわ。見つめあっておでこを合わせている。そ、そのベッドでイチャイチャしているみたいに見えるわね//

 

「八幡。これも撮るわよ」ピキッ

「私もね」ピキッ

「はぃ」

 

相模さんはどうなのかしら。やっぱり水着を着て、一色さんと一緒のように撮っているわね。寝ている相模さんの上に八幡が四つん這いになって、一色さんと同じようにシーツで隠していて、おでこを合わせているわ。一色さんのが行為の後としたら、こちらは途中と言ったところかしら//

後の人が撮影を見ているので、皆だんだん過激になっていってるわね。この後の折本さん、仲町さんも多分、色々撮っているのよね。

 

折本さんと仲町さんは八幡とのツーショットだけ撮ったようね。シーツで寝ているときは八幡の頬にキスしているし、八幡が上ではなく下に寝て、上に折本さんが乗っておでこを合わせているわ//

...最後に立って抱き合い、おでこを合わせているのだけれど、これはこれで良いわね//八幡の腕でトップスが隠れていて、上半身裸に見えるし//

仲町さんも折本さんと一緒の構図で撮っているようね。

 

「「....//」」

「雪乃ちゃん。どうする?私、水着なんて持ってきてないよ」

「私もよ、姉さん。でも一緒の写真を撮ってほしいわ」

「..じゃあ、下着で撮るの?」

「..恥ずかしいわね」

「き、今日は終わりってことで。陽乃も雪乃も勉強会お疲れさまでした」

「..八幡、撮るわよ」

「ええ、そ、その下着で撮るのか」

「いいえ、今回は八幡から頬にキスしてもらうわ」

「?!..お、俺が雪乃にキスするのか//」

「八幡。駄目?//」

「うっ//そ、そんな上目遣いで言われると//」

「八幡からしてほしいの//」

「私もしてほしいな、八幡くん//」

「くっ//わ、分かりました//陽乃、いきなり呼び方変えないでくださいよ//」

「ぐっと来ちゃった?」

「..ええ//」

 

水着は今度で良いわね。姉さんが家庭教師するとき、私も一緒に来て撮影して貰えばいいのだし。

八幡からキスして貰えるとは思っていなかったのだけれど、頼んでみてよかったわ。私たちは書斎に移動して、写真撮影を始めたのだけれど、今からお互いキスすると思うと照れてしまうわね。本当は唇にしたいのだけれど、それは八幡がしてくれないと思うし、姉さんが居ないとき、私だけにしてほしいわ。

最初は八幡と抱き合って、おでこを合わせて貰ったのだけれど、これだけでも私は満足しそうになってしまったわ。でも昨日の由比ヶ浜さんや写真のことを思い出すとやはりキスしないとダメね。

八幡は私をお姫様抱っこしてくれて、私は八幡の頬にキスしたわ。初めてキスしたのだけれど、先ほどまで感じていた恥ずかしい感情より嬉しい感情が上回って、もっとしたくて私は八幡の首に顔を埋めて、首にも口付けをしていたわ。姉さんが私の顔が隠れて撮影出来ないって言っているけれど、今は八幡を堪能したくて顔を埋めていたわ。

 

「ゆ、雪乃。恥ずかしいからもういいだろ//」

「..ええ、本当はキスマークを残したかったのだけれど、ご両親が居るから駄目よね」

「キ、キスマークはまずいだろ//」

「じゃあ、今度は八幡からキスしてね」

「..あ、ああ」

 

八幡は私の後ろから抱きしめてくれたのだけれど、私の首に顔を埋めてきたわ。私が声を出してしまいそうだったので我慢をしていると、耳に息を吹き掛けてきたわ//

 

「あぁ//」

 

思わず声が出て仰け反ってしまい恥ずかしがっている時に、八幡は頬にキスしてきたわ。

 

「雪乃ちゃん、凄くエッチな表情になってて良いよ//八幡もタイミング良かったけど、撮っているこっちが恥ずかしいよ//」

「雪乃、すまん。やり返そうと思ってやり過ぎた//」

「..い、いいのよ。八幡//」

 

姉さんも私と同じようにしていたのだけれど、わ、私もこんなことをやっていたのよね//凄く恥ずかしいわ//

 

「八幡、ありがとう//」

「八幡くん、私もありがとうね//」

「こ、こちらこそ//」

「じゃあ、雪乃ちゃん。今日はお暇(おいとま)しようか」

「ええ、姉さん。また今度、家庭教師するとき教えてね。水着を用意しておくから」

「そうだね、なるべく土日が良いよね。じゃあ挨拶して帰りましょ」

 

ご両親は買い物に行っているそうで、私と姉さんは八幡と小町さんに挨拶をして、私のマンションに帰ったわ。

 

「今日は楽しかったね、でも今度は水着か。ちょっと恥ずかしいな」

「ええ、でも折本さん達がやっていたことを私もしてほしいわ」

「そうだね、水着用意しとかないと。チューブトップが良いかな」

「姉さんは水着似合うから良いじゃない。私は胸があまりないし」

「チューブトップで良いじゃない。雪乃ちゃん、一緒に買いに行こ。でも八幡にも着てほしいわね、撮る前に用意してもらおうね」

「ええ、じゃあ、ご飯の用意しましょうか」

 

私と姉さんは二人でご飯の用意をして、夕飯を頂いたのだけれど、私の中で今まであった姉さんへの蟠り(わだかまり)が今日一日で、薄れているように感じているわ。今はまだ、無理かもしれないけれど、姉さんと普通の姉妹のように過ごせるようになりたいの。

私は少しでも姉さんと打ち解けられるように、遅くまで姉さんと色々な事を話していたわ。

 

 

 



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39話

「サキサキ、さがみん、いろはちゃん。土曜日の写真見せて」

「..由比ヶ浜、見せないといけないか」

「..もしかして、ゆきのんみたいに抜け駆けするような写真撮ったの?」

「そういう訳じゃないけど、恥ずかしくて」

「うちも恥ずかしいな。あ、あんまり自慢できるスタイルじゃないし」

「そ、そうですよね。恥ずかしいから余り見せたくないですよ」

「あーしも見たいし」

「ハチとどういった写真撮ったの」

 

奉仕部での昼食中、由比ヶ浜さん達が写真を見せて欲しいと川崎さんと相模さん、一色さんにお願いしているわ。私は写真を見たのだけれど、昨日八幡の家に行った事は伝えていないので、何も言わないほうが良いわね。相模さんと一色さんは何だか落ち着きがないのだけれど、多分シーツを掛けた写真を見せるのが不味いと思っているのね。

私は昨日撮った写真については、パソコンにコピーしてスマホはロックを掛けれるアプリを入れて保存しているから、見られることは無いわ。私の写真は八幡も知らない小町さんが撮った、八幡に抱きつかれているのもあるので見せるわけにはいかないし。

 

「じゃあ、これ見て」

 

川崎さんはスマホを由比ヶ浜さんに渡したので、私も一緒に見せて貰ったわ。でも由比ヶ浜さんの雰囲気が今までとは違う気がするわね。どこが違うか上手く説明できないのだけれど。

 

「川崎さんは本当に惚れ惚れする体型ね、羨ましいわ」

「サキサキって綺麗だよね、身長あって羨ましいな」

「あーしも羨ましいし。青みがかった髪も外の光を受けて綺麗だし」

「サキサキって、カッコいいよね」

「へ、へぇ。ヒッキーと木にもたれているの良いね」

「うん、こっちのベンチに座って、ヒキオの肩に頭を預けているのもいい感じだし」

「ハチに膝枕してるんだ、サキサキ。ぇ....」

「..サキサキ、すっごい照れているね。ヒッキーに膝枕されて頭撫でてもらって」

「..ヒキオ、何で膝枕してるし」

「やってほしいって頼まれてな」

「ふーん、ハチって頼んだら何でもしてくれるの」

「そ、そんなわけないだろ。ま、まあ、膝枕ぐらいなら良いかなって」

「「「ふーん」」」

「今度は家の中だね。やっぱりサキサキってかっこいいな」

「でも凄いホットパンツだね、あーしの持っているのより短いし」

「そ、それは、要らないジーンズを切ったんだ、写真撮るなら普段履けないぐらいの短さが良いかなって」

「でもサキサキ、お尻見えちゃってるよ」

「「「...」」」

「..どうしてヒッキーが上半身裸なの」

「沙希に「私も水着なんだから上半身裸になれ」って、言われてな」

「ふーん、サキサキって普段そんなこと言いそうにないのに、ヤラしいね」

「な、なにを言ってるんだ、由比ヶ浜」

「...川崎さん、どうしてヒキオの、そ、その上に乗ってるし//」

「..城廻先輩が先にやってたんだよ//私も一緒の事やりたいなって思って//」

「「「ふーん」」」

 

「じゃあ、次はさがみん見せてよ」

「..相模先輩、見せるんですか」

「う、うん。しょうがないよ」

 

相模さんは諦めたようね、スマホを由比ヶ浜さんに預けているわ。

 

「外はサキサキと一緒のように撮っているんだね」

「う、うん、公園で撮ったときは皆一緒の事やってるだけだよ」

「じゃあ、家の中でどう撮ってるし」

「相模さん、このロンパース可愛いね」

「うん、海老名さん。お気に入りなんだ」

「相模は水着、チューブトップのワンピースなんだ」

「「「....」」」

「ヒッキー、これどういうこと。説明してよ」

「結衣。シーツを掛けているだけで、ズボンは履いてるからな」

「当たり前だし!!なんでこんなエッチの最中見たいなの撮ってるの、さがみん!!」

「い、一色ちゃんが、うちの前に撮ってて一緒のようなことしてたんです。う、うちも真似て撮って貰ったんです」

「..相模、私が取り終わった後、こんな写真撮ってたんだ」

「はぃ..」

な、なんだか由比ヶ浜さんが怖いわ。相模さんもいつの間にか敬語になってしまっているようだし。

 

「いろはちゃん、スマホ」

 

一色さんは何も言えず、由比ヶ浜さんにスマホを渡しているわね、何だか手が震えているように見えるわ。

 

「ふーん、いろはちゃんは肩紐をズラして撮っているんだ」

「は、はぃ」

「..ヒッキー、あたしの言いたいこと分かるよね」

「あ、ああ、その日程を決めてまた連絡するから」

「ヒッキー、早くね。じゃあ、残り時間少ないから、お弁当食べちゃお」

 

由比ヶ浜さんがそういうと、皆緊張が解けたのか、残りの弁当を食べだしたわ。三浦さんも今の由比ヶ浜さんには何も言えないようね。今までの由比ヶ浜さんとは纏っている雰囲気が異なってるので、戸惑っているようだわ。

 

放課後、私たちは材木座君がラノベが出来たということで、材木座君を待っているわ。今日は奉仕部の人しか居ないわね、皆勉強会が無いので、遊びに行ったんでしょうけど、何時もの騒がしさがなくて、ちょっと寂しいわね。

 

「ねえ、ヒッキー。どうしてあんな写真を撮らせてたの」

「いろはにお願いされてな。裸じゃないから良いだろって」

「でもヒッキーは上半身裸だったんだよね、お互いの肌が触れるのは良いの?」

「沙希に言われたとき、そこまでは考えていなかったんだよ。椅子に座って俺の上に沙希が乗ったとき、かなり不味くて、それ以降は止めたかったんだが断りきれなくてな」

「..ヒッキー、何が不味かったの?」

「...そ、その生理現象的にな」

「..今度から写真撮るときは皆に写真見せながらにしてよ。今回だとサキサキと城廻先輩がかわいそうじゃん」

「ああ、そうだな。今度からはそうするよ」

「うん、ゆきのん。これからは抜けがけは無しだからね」

「ええ、由比ヶ浜さん。分かったわ」

 

でも由比ヶ浜さんが八幡にキスをしているのは、抜けがけにはならないのかしら。私は撮って貰ったから良いのだけれど、他の人たちは撮っていないし。でもここで指摘すると、また面倒なことになりそうだから、これも黙っておいたほうが良いわね。ちょうど、材木座君も来たようだし。

 

「この間、由比ヶ浜殿には申し訳なかったので、今度は八幡と一緒の大学に行けたらって考えて書いたのだ」

「そう、では私が確認させてもらえば良いのね」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

ゆきのんが勉強会を開いてくれて色々大変だったけど、あたしはヒッキーと同じ大学を第一志望にしてて受かることが出来た。2年生のときの成績だと、とてもいける大学じゃなかったから、パパとママは目茶苦茶喜んでたし、あたしもヒッキーと大学生活一緒に過ごせるんで、今から凄い楽しみだし。

 

今日は都内のアパートに引っ越して、ママが手伝いに来てくれていた。今日は泊まっていくってことで、ママが居るうちに両隣に挨拶しておいたほうが良いって言われたんで、あたし達はお菓子を持って隣に挨拶をしにいった。

左隣は一緒の大学で3年生のお姉さんだったんで一安心できたんだけど、あたしの右隣は目付きの悪い男性が引っ越してきた。ってお姉さんに聞いて、挨拶に行くのがちょっと怖くなっちゃった。でも、これから顔を合わすこともあるから、挨拶しておいたほうが良いよね。

 

ピンポーン

 

あたしがインターホンを押したんだけど、誰も出てきてくれない。もう一回押してみたら、中から物音が聞こえて、チェーンロックされた扉が少し開いたんだけど、暗くて顔が見えないな。何だか眠そうな声で返事してきたし。

 

「..はい」

「あ、あたし。隣に引っ越してきた由比ヶ浜って言います。これ良かったら食べてください」

「結衣!?」

 

そういうと、男性は「待ってろ」って言って、一旦扉を閉じた。どうしてあたしの名前を知ってるんだろ。でもさっきの声って....

そう考えていると、男性は扉のチェーンロックを解除して開けてくれた。

 

「ひ、ヒッキー!?なんでここに居るの!?」

「いや、それは俺の台詞なんだが。隣に引っ越してきたのか」

「うん。でも良かった、隣がヒッキーで。これからよろしくね」

「あなたがヒッキー君ね、結衣から話は聞いているわ。私からもよろしくお願いします」

「い、いえ。こちらこそよろしくお願いします」

 

よかった、隣がヒッキーで。でもこれで大学にも一緒に行けるじゃん!!ヒッキーの家にご飯作りに行ったりしても良いだろうし//

 

「じゃあ、ご飯一緒に食べましょうよ。ある程度、片付いたんで今日は結衣がご飯作ってくれるのよ」

「いえ、そんな呼ばれる訳には」

「ヒッキー、来てよ。近くのお店とか教えて欲しいし」

「俺も二日前に来たばっかりで、何にも知らないんだよ」

「久しぶりに会ったんじゃん。色々話しようよ」

「..分かったよ。じゃあ、用意して行けば良いか」

「うん、じゃあ一時間後、来てね」

「ああ」

 

あたしたちは卒業した後、お互い引越しとかで忙しくて、ヒッキーとは会えなかった。でもヒッキーがあたしの家に来てくれるんだ。さすがにママが居るから何か起こるわけじゃないけど、これから色々期待できるよね。

あたしとママは部屋に戻ると、さっそくご飯の用意をしだした。

 

「結衣、ママは手伝わないほうが良いよね。ヒッキー君に結衣の手作り食べて貰いたいんでしょ」

「う、うん。あたし一人でやるから、ママは机の上とか綺麗にしておいて」

「はいはい。でも良かったね、隣がヒッキー君で。結衣が通い妻になるのも時間の問題ね」

「か、通い妻って//」

 

そ、そうだよね。朝起こしてあげて、朝夜はご飯作りに行って、たまにお泊りしても良いかも//

 

「結衣、顔が赤いよ。でもこれなら最初から同棲しちゃえば良かったのにね」

「ど、同棲って//ママ、何言ってるし//」

「でもパパが怒っちゃうか。ヒッキー君のこと、ママは黙っておくから上手くやりなさいよ」

「う、うん//」

 

今までヒッキーに弁当を持っていく時は一人で料理してたけど、夕飯については、ママと一緒にしたことがあるだけで、今回初めて一人で作ることになった。一時間しかないし、ヒッキーにおいしいって言って欲しいんで、がんばらないと。

 

インターフォンの音が聞こえたので、あたしは玄関まで迎えに行った。ヒッキーは照れながら部屋に入って来たけど、あたしも一人暮らしの部屋に入ってもらって恥ずかしいな。

 

「ヒッキー君、お帰りなさい」

「な、何を言っているんですか、由比ヶ浜さん」

「あら、私のことはお義母さんって呼んで欲しいんだけど」

「な、何言ってるし、ママ//」

「はいはい、じゃあ結衣。料理並べましょ」

「う、うん//」

 

ママに言われ料理を並べだしたんだけど、ヒッキーは居心地が悪いのか、ソワソワ、キョロキョロしていた。でもフォトスタンドを見て驚いていた。

そ、そうだった。あの写真って卒業式にあたしとゆきのんがヒッキーの胸に抱きついて泣いている所を中二が何時のまにか撮ってた写真だったんだ。あたしとゆきのんの顔は隠れちゃってるんだけど、あたしにとっては高校での最高の思い出になってる写真だし//

 

「ひ、ヒッキー。見ちゃ駄目//」パタン

「..いや、もう見ちゃったし、俺も一緒の写真持ってるから//」

「う、うん。..あたしこの写真好きなんだ。あたしとゆきのんは顔を埋めているから、表情は見れないんだけど、奉仕部の思い出が全てこの写真に入っているような気がして」

「そうだな、俺もたまに見返してるからな」

「..ねえ、二人の世界に入ってるところ悪いんだけど、ご飯食べない?ママ、お腹空いちゃった」

「ご、ごめん//すぐに用意するから」

「すみません//」

 

あたしは料理を並べて、みんなで座って夕飯を食べだした。

 

「ひ、ヒッキー。どうかな」

「ああ、凄くおいしいよ。今まで弁当しか食べたこと無いからな。弁当も段々美味くなっていったし、今日も期待していたからな」

「う、うん。ありがとう//」

「ねえ、ヒッキー君。これからも結衣のご飯食べてあげてね」

「ご迷惑になりますから、ご飯ぐらいは自分で用意しますよ」

「ううん、ヒッキー君。これは私からのお願い。大学ってたまにニュースになるようなことあるでしょ、結衣って断りきれずに着いて行っちゃうかも知れないから、結衣の手綱を握っていて欲しいの」

「..俺に何が出来るか分かりませんけど、お嬢さんに危ないところには近づけさせないよう注意します」

「ありがとう、ヒッキー君。でもお嬢さんなんて言わずに何時もどおり、言って貰って良いわよ。そのほうが結衣も喜ぶし」

「な、何言ってるし、ママ//」

 

その後、お喋りしながら食事をして、ヒッキーはお礼を言って自分の部屋に戻っていった。

 

「結衣、ヒッキー君にご迷惑掛けないようにね」

「うん、あたしも気をつけるから、ママは安心して」

「結衣だけだと心許ないから、ヒッキー君が頼りだね」

「な、何でそんな事言うの、娘を信じてよ」

「信じてるよ、でもヒッキー君も居ればもっと安心出来るし」

「うん」

 

あたしとヒッキーは学部も同じだったんで、ずっと一緒に居た。買い物も二人でして最初はあたしが手を繋いでってお願いしたんだけど、今ではヒッキーからあたしに手を繋いでくれる。毎日ヒッキーの部屋にお邪魔していて、ご飯は二人で一緒に用意してたんだけど、何だか新婚さんみたいだな。たまに目が合って二人で顔を赤くする事もあるし。

 

「あっ//」

 

料理していたら、一緒の調味料を取ろうとして、お互いの手が触れ合ったんだけど、ヒッキーはそのまま手を握ってきて、あたしの方を向いてきた。

 

「..俺は結衣とずっとこうやって一緒に居たい。だから俺と付き合ってくれないか//」

「うん、あたしもヒッキーとずっと一緒に居たい」

 

あたしは目を閉じて少し顔を上げた。あたしの空いていた手をヒッキーは握って両方の手を恋人繋ぎしてきた。

時間が掛かってたから、なんだか凄い焦らされているみたい。でも、ヒッキーの体が近付いて来るのが腕を通して分かる。そう考えていたら、あたしの唇にヒッキーの唇が触れてくれた。あたしは息をするのも忘れ、ヒッキーの唇の感覚に酔いしれていた。

しばらくすると唇が離れていったんだけど、あたしは嬉しくて涙が溢れてきた。

 

「ごめんね、ヒッキー。嬉しくって涙が出てきちゃった」

「結衣、好きだ」

 

そう言うとヒッキーはまた、あたしの唇を塞いできた。あたしは手を離すとヒッキーに抱きついて、お互い求め合うようにキッチンでキスを交わしていた。

 

「..ご飯、遅くなっちゃったね//」

「ああ、用意続けようか」

「うん」

 

その後もあたし達は二人でご飯の用意をし、いただきますをした。

 

「ねえヒッキー。あーん//」

「は、恥ずかしいよ。ご飯はちゃんと食べようぜ」

「...あーん//」

「あ、あーん//」

 

ヒッキーは文句を言いながらも食べてくれた。あたしもやって欲しくて口を開けて、ヒッキーからしてくれるのを待っていた。

 

「はぁ、俺も恥ずかしいんだからな//...あーん//」

「ありがとう、おいしい//」

 

ヒッキーは照れながらもやってくれたんで、あたしはもっとして欲しくなっちゃった。

 

「じゃあ、ヒッキー。今度はこれね//」

 

あたしはそういって、口にお肉をくわえると、ヒッキーに顔を近づけていった。

 

「..あーん//」

 

ヒッキーは、口移しで食べてくれたんだけど、あたしの唇も甘噛みし続けて中々離れなかった。恥ずかしいな、でももっとして欲しいな//

 

「..ヒッキー。今日の夜、泊まってって良いよね//」

「...結衣、それは駄目だ」

「ど、どうして....あたしじゃ駄目なの...」

「すまん、結衣が駄目とかじゃなくて、お母さんと約束しただろ。結衣の手綱を任されたんだ。だから明日の学校に支障の出ることはさせたくないんだ。俺は多分、歯止めが効かなくなると思う、だから明日の金曜日じゃ駄目か」

「..うん、学生だからちゃんと学校行かないとね。でも明日の夜、いっぱい愛してね」

「ああ、結衣が止めてって言っても聞かないからな//」

「うん//」

 

あたしたちはその日、お風呂に入るまでキスをしていた。あたしは今すぐにでも抱いて欲しかったんだけど、ヒッキーがあたしのことを考えて明日にしてくれたんだから、今日は我慢しなくちゃ。

 

金曜日、あたしは授業なんて上の空だった。帰りヒッキーに聞いたら一緒だって言ってくれて、あたしは帰り道の時間さえ、もどかしくてしょうがなかった。

 

あたしがお風呂に入ってから行くね。って伝えたら、ヒッキーは手を引っ張って自分の部屋にあたしを連れ込んで、玄関でキスしてきた。

 

「ヒ、ヒッキー//お風呂入ってからにしようよ//」

「結衣、俺もう我慢できないんだ。俺が結衣の身体を綺麗にするから良いだろ//」

 

そういって、ヒッキーはあたしの首に顔を埋めて首筋を舐め回してきた。

 

「あぁ//ヒッキー、だ、だめ//こんなところじゃ//..あぁ//」

 

ヒッキーはあたしをベッドに連れて行き寝かせてくれると、乱暴に自分の上着を脱ぎ捨てていた。でもあたしには優しくキスしながら服を脱がせてくれて、お互い裸になっていた。

 

「結衣、本当に綺麗だな//でも俺で良いのか」

「うん、ヒッキーが良いの。だからあたしを貰ってね」

「ああ、大好きだ。結衣//」

「あたしもヒッキーが大好き//」

 

あたしたちはこうして結ばれた。ヒッキーは本当に歯止めが効かなくなったみたいで、あたし達は晩御飯も食べずにひたすらお互いの身体を求め合い、気付いたときには日にちが変わっていた。

 

「はぁはぁ...結衣。大丈夫か」

「..う、うん...ヒッキー凄すぎだよって、な、なんでまた大きくなってるんだし//」

「良いだろ、まだ」

「も、もう、休ませて」

「言っただろ。結衣が止めてって言っても聞かないって」

 

ヒッキーはその後もあたしの身体を抱いてくれた。あたしは立てなくなって、ヒッキーはお風呂に連れてってくれたんだけど、お風呂場でも身体を洗ってもらっている最中にヒッキーは欲情したって言い出して、あたしのことを後ろから抱いてきた。

 

「ほ、本当にもう駄目//これ以上やったら、あたし壊れちゃう」

「俺も今日は無理だ」

「ヒッキー、ここまで凄いって思わなかった。エッチはお休みの前だけにしようね」

「えぇ、それじゃとても満たせられなんだけど」

「..じゃあ、講義が遅いとき、愛してね」

「ああ、結衣。愛してるぞ//」

「うん、ヒッキー。あたしも愛してる//」

 

あたし達は、ご飯も食べずに布団に倒れこみ土曜日はお昼すぎまで寝てしまっていた。でもヒッキーはあたしより先に起きたみたいで、あたしの身体を弄り回していた。

あたしが起きた時には、いきなり求めてきて、あたしも昼間から大きな声をだして欲望に溺れていった。

 

あたし達の大学生活は凄く満たされながら過ぎていき、卒業する時にヒッキーはプロポーズしてくれて、本当の同棲生活を始めていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「....//」」」

「材木座。いくならんでも無理だろ」

「なにがだ、八幡」

「金曜日、講義が終ってから、夜中までって何時間あると思うんだよ」

「今回は由比ヶ浜殿のことを好きすぎて、歯止めが効かなくなった八幡を書いたのだ。後、ラノベ内全てがイチャつくのが良いと思ってな」

「まあ、前回のもあるから、そうなったのは分かるんだが、恥ずかしすぎるだろ//」

「..でも中二、ありがとう。今回のは満たされた大学生活を書いてくれたんだね」

「そ、そうね。私も最初に勉強会のことを書いてくれていたので嬉しいわ。そこでがんばって八幡と一緒の大学に行ければってことで書いてくれたのよね」

「我も勉強会に参加させてもらって助かっているので、がんばれば以前のラノベと違う世界が広がるってことを書きたかったんです」

「でも何だか恥ずかしいよ//キスしてたり、口移しでご飯食べさせたり、そ、そのエッチしてたり//..あたしには批評できない//....でも奉仕部の写真も良いよね。余り三人で撮ったことないから、良い思い出になるんだろうな」

「そうね、こういった三人での写真が欲しいわね、皆が良ければ批評の後、撮りましょうか」

「ああ、俺も欲しいな。...今までだったら要らないって言っていたと思うんだが、これを読んだ後だからか、欲しいと思ったな」

「そうね、良いことではないかしら」

 

「由比ヶ浜さんのお母さんを出したのは、八幡が言っていた学業に専念させるためなのかしら」

「いや、実は由比ヶ浜殿がサークルに誘われて、危ない目に合いそうな所を八幡が助ける。と書こうと思ったのですが、嫌な気持ちにさせるかもしれないと思って、そういう危ないところに行かないようにと思って出したのです」

「そうね、こちらの方が私は良いわ。嫌な思いを書く必要ないもの」

「そうだな、女性にとって取り返しの付かないことだからな」

「でも、..キスをしだしてから、ずっとイチャイチャしているだけなのね//」

「今回はイチャコラしか考えて無かったです」

 

私は勉強会のことを書いてくれて、本当に嬉しかったわ。材木座君を誘った時はもしかしたら、嫌々付き合ってくれてるかも知れないと思っていたから。

でも、どうせなら私がヒロインで書いて欲しかったわね。今回のラノベって女性なら誰でも憧れるのではないかしら。でも私だと、体力が持たないわね//

でも動けなくなっている私を八幡が無理やり....。だ、駄目。今、そんなこと考えたら体が火照ってしまうわ。家に帰ってからにしましょう。

 

私たちは材木座君にお願いして、写真を撮ってもらったわ。その後、それぞれ一人づつ交代して材木座君も入れた写真も撮ったのだけれど、これもいい思い出になればと思うし、彼にとってもいい思い出であってほしいわね。

 



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40話

「我も写真を撮ってもらって、ありがとうございました」

「いいえ、材木座君。あなたにも色々お世話になっているのだから、そんなに謙遜する事ないわ」

「そうだよ、中二。いっつも部室に来てるんだからさ」

「まだ時間があるようなので、もう一つラノベを書いてたので、批評して貰っていいですか」

「ええ良いわよ。誰が出ているのかしら」

「雪ノ下殿なので、由比ヶ浜殿に最初、読んでもらいたいのだが」

「うん良いよ、中二」

 

由比ヶ浜さんが読み終わって、色々言いたいけど問題ないと言って、私たちも読ませてもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「担当の比企谷です。材木座先生、原稿できましたか」

「八幡。来てくれたか。上がってくれ」

 

俺は小さい出版社に勤め出して、2年目の若造なのだが、なぜか出版社を支えている二人の作家を担当していた。その一人が高校からの友人、材木座義輝だった。高校時代は俺が所属していた部活にラノベを持ち込んで来て、SFやファンタジーを書いては我らが部長様に打ちのめされていたのだが、今ではラブコメ作家として名を馳せている。

 

「あら、比企谷君。こんにちは」

 

俺が玄関に入っていくと、材木座の婚約者、綾瀬 綾さんがいた。

 

「綾瀬さん、こんにちは。お邪魔していいですか」

「何時もすみません。義くん、締切り間近まで原稿を書こうとしないから」

「いえ、綾瀬さんが謝らないでください。今回は早く連絡貰えましたし」

 

綾瀬さんは俺たちより五つ上で声優をやっているが、材木座が出会ったときは、名前もないようなキャラの声を当てるぐらいの仕事しかなく、とても人気がある声優とは言えなかった。材木座は大学に入ってから、ラノベを出版し出して、作品がアニメ化するとき、声優のオーディションを受けに来た綾瀬さんに一目惚れして告白し付き合いだした。

彼女がヒロインの声を当てる事を考えてラノベを執筆し、その年のラノベ大賞を受賞するほどのものを書き上げていた。アニメ化が行われる際は綾瀬さんがヒロインの声を当てないのであれば、アニメ化させないと駄々を捏ねまくっていた。

だが、そのおかげで彼女は一気に人気声優の仲間入りを果たしたが、自分の夢を叶えてくれた材木座の夢を今度は叶えたいと、今は結婚するため、同棲しながら声優兼、花嫁修行をしている。

 

「材木座先生、ラノベは書けましたか」

「なあ、八幡。敬語は止めてくれ、我と主の間柄でそのような言葉は要らぬぞ」

「いえ、仕事ですから。書き上げた原稿を見せてください」

 

俺は材木座から原稿を受け取って確認し出したが、目が腐り落ちるぐらい面白くなかった。

 

「なあ、材木座。お前はラブコメ作家だろ。どうしてファンタジーを書いてるんだよ。しかもこれ、パクリだろ」

「は、八幡?敬語じゃなくなってるぞ」

「俺は、ラブコメを書く材木座先生になら敬語で話せるが、今だに高校時代と遜色のないラノベを書く材木座には、敬語は使わないぞ」

「わ、我もファンタジーやSFを書きたいのだ。主の伴侶にラブコメを書かされ続けてから、そちらばかりが売れてしまったが」

「..何が伴侶だ。俺にそんな人はまだ居ないぞ」

「我の原稿を受け取った後、そちらに行くのだろ。何時も泊まりで行っているそうではないか」

「原稿を取りにいくだけだ。そんなことより早く原稿を渡せよ」

「..そ、その八幡。実はまだ書けてなくてな」

「はぁ、電話で出来たと言っていただろ」

「..そ、それはさっき渡した奴でして」

 

その時、材木座の仕事部屋の扉が、いきなり開けられ、怒っている綾瀬さんが扉の前に立っていた。

 

「義輝、あんた嘘ついて比企谷に来てもらったのか?」

 

綾瀬さんはいつもはやさしい口調だが、嘘や曲がったことが嫌いで、怒ると声優として始めて貰った不良役の言葉使いが出てくるらしかった。

 

「い、いえ、綾殿。ちょっとラノベを読んで欲しかったんで来てもらっただけです」

「締切りのは出来てるんだろ、渡してあげな」

「..そ、それは出来てないです」

「義輝、電話で言ってたよな。出来たから来てくれと」

「..はぃ」

「比企谷、締切りは何時?」

「ふ、2日後の17時までに頂ければ」

「私が義輝に書かせるからさ、悪いけど今日のところは帰りな」

「は、はぃ。ではお願いします」

「は、八幡。帰らないで」

「ハァ!?義輝が仕事終わらないと、比企谷はやることないだろうが!!」

「い、今から書きます」

「見ててあげるから気合いを入れな!!」バチン!!

 

材木座は背中を叩かれてるな、俺は綾瀬さんに後を任せ、材木座の仕事部屋を出ると扉の向こうからいつも通りの声が聞こえてきた。

 

「義くん、ごめんなさい。でも駄目だよ、嘘ついちゃ」

「綾殿、我もすまなんだ」

「ううん。じゃあ、いつも通り義くんからチューして....」

 

アヤドノ---!!モウ、ガマンデキヌ---!!

ゲンコウ カイテカラ.. ラ、ラメ---//

 

扉の前を物音たてないように移動し、俺は玄関を出ると大きなため息を付いた。

女性って、やっぱり怖い。歳上女性はああなってしまうのだろうか。そういえば、俺の恩師はどうなったのだろう、もうアラフォーだよな。怖いもの見たさで会ってみたい気もするが、何故か取り返しのつかないことになりそうで、俺は会いに行けなかった。

 

俺は材木座の家を後にし、寄り道しながらもう一人の作家の家に向かっていた。俺がインターフォンを押すといつも通りの声が聞こえてきた。

 

「はい」

「雪ノ下先生、担当の比企谷です」

「....」

「ハァ、雪乃。俺だ」

「私の知り合いに俺さんって、いないのだけれど」

「比企谷だ」

「上がってちょうだい」

 

もう一人の作家は元奉仕部部長様の雪ノ下雪乃だった。彼女も大学生のときに書いた純文学で評価を受け、新人賞を取っており、作家として名を馳せていた。

 

「お邪魔します」

「..ただいまと言って欲しいのだけれど」

「いや、今は仕事中ですよ。雪ノ下先生」

「....」

「..分かったよ。雪乃、ただいま//」

「おかえりなさい、八幡//」

 

俺と雪乃は大学を卒業してすぐに付き合いだしたが、俺の仕事が忙しかったため、最初のころはすれ違ってばかりだった。

俺が仕事を優先してしまうとは思っていなかったが、毎日午前様まで仕事をしていると他のことは何もする気が起きず、雪乃には寂しい思いをさせてしまった。

 

雪乃は俺が勤める出版社に移籍してきて、俺を担当にしないと書かないと言い出したため、新人の俺が将来有望な雪ノ下先生の担当となっていた。なぜか材木座も雪乃によって移籍させられていたのだが。

でもそのおかげで今では仕事中でも雪乃との時間を満喫出来ている。

 

「原稿はどうだ。雪乃のことだから、心配していないが一応、仕事だからな」

「ええ、大丈夫よ。でも締切りは明々後日よね。そ、それまでは泊まっていけるのかしら//」

「二日後に材木座のところに行く必要があるんだが、それ以外は居れるぞ」

「でもどうして今日はこんなに遅かったのかしら。綾さんに電話したら30分前に出たと聞いたのだけれど、それから一時間半立っているわ」

「ああ、ちょっと寄り道してたんだよ」

「そうなのね。そういえば綾さんって何かスポーツしているの?電話したとき息が荒かったわ。声が途切れたり、うめき声みたいなのが聞こえていたのだけれど」

 

何やってんだ、あの二人。綾瀬さんもそんな時、電話に出るなよ。

 

「ではスーツを脱いでちょうだい。皺が付いてしまうわ」

「じゃあ、着替えさせてもらおうかな。俺のスエットって何処だっけ」

「寝室にあるわよ」

「分かった」

 

俺が寝室に入っていくと、雪乃も着いてきてスーツを掛けてくれた後、抱きついてきた。俺たちはキスを交わし抱きあった。

 

「夕ご飯の用意をしましょうか」

「ああ、俺も手伝うよ。今日は何を作るんだ?」

「もう遅いわね、パスタで良いかしら」

「雪乃のご飯なら何でも美味しいからな、良いぞ」

「ありがとう、では二人で作りましょ」

 

俺たちはキスを交わしベッドを出るとキッチンに向かって行った。

雪乃は俺の手伝いはいらないと言うのだが、俺はこの二人で過ごす時間が好きだった。

食事を済ませソファーで俺が座っている前に雪乃が座って俺にもたれかかり、俺は後ろから雪乃に抱きつくようにして、二人で小説を読んでいた。これも俺が好きな時間だ。お互い会話もせず本を読んでいるだけだが、雪乃に触れているところから、体温を感じると幸福感が高まっていく。

二人の時間をもっと増やしたい。俺はいつしか、そう考えるようになっていた。

 

俺たちはキリの良いところまで小説を読むと、お風呂に二人で入って、寝室に入った。

 

「雪乃、俺は二人でいる時間が好きだ」チュッ

「私もよ、八幡。このまま離れず二人で居たいわ」チュッ

「愛してる、雪乃」

「わ、私も。あ、愛しているわ....あぁ//」

 

雪乃は体力がないため、何度か達したあと、気を失うように眠りに入った。

俺は、雪乃を起こさないようにベッドを出ると、ここに来る前に寄った店で受け取ったものを取りに行った。鞄に仕舞ってあった箱を取り出し指輪を出した後、雪乃の左手薬指にはめた。

 

「雪乃、愛してる。俺は雪乃のように、将来を期待されているわけでもないが、こんな俺で良ければその指輪を付けて、何時までも二人で居てほしい」

 

俺は明日起きたときの台詞を寝ている雪乃本人に練習していた。

そして、愛おしい雪乃の寝顔にキスをし、朝起きたときの事を楽しみにしながら眠りについた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「...//」

「「....」」

「ど、どうであった?今回のラノベは。本当は○倉 唯殿を我の嫁としてラノベに出したかったのだが、経歴が本人と異なってしまうので断腸の思いで、オリキャラにさせてもらったのだ」

「誰?あたしと一緒の名前なんだけど」

「声優だ、漢字はちがうぞ。でも、ゆいゆいが嫁って..」

「ゆいゆいって何だし!?」

「小○ 唯の愛称がゆいゆいなんだよ」

「ふ、ふーん。ヒッキー、あたしもあだ名付けて良いよ」

「..アホ結衣、結衣ワン、ガハマン、ポイズンクッキー、ダークマター、暗黒物質」

「何だしそれ!!センス無さ過ぎ!!やっぱりいいや、今までどおり名前で呼んで」

「あ、あの批評のほうは...」

 

「これって、ゆきのんのラノベって言うより、前半は中二のラノベじゃん!!」

「八幡の仕事の説明のため、仕方なく我を出したのだ」

「仕方なくって、半分は材木座のじゃないか。別々に書いた方が良かっただろ」

「そうするとお主達、読んでくれないではないか!!」

「そ、そんなこと無いんじゃないかなぁ~」メソラシ

「良いじゃん!!良いじゃん!!我だってイチャイチャチュッチュッしたいじゃん!!」

「じゃんって材木座...まあ、良いんだが。そういえば、雪乃は何も言わないがどうしたんだ」

「ご、ごめんなさい。こういう告白も良いと思ったのよ」

「うん、何時までも一緒に居たいって言われたいよね」

「この後、起きたときの私の反応も書いた方がよかったのではないかしら」

「それは想像を膨らませて貰おうと思って書きませんでした」

 

確かに私も先ほどまで、自分だったらどう行動するか考えていたので、八幡たちが話している時も聞いていなかったわ。

 

「後、先生がアラフォーってまた、怒られるよ」

「アラフォーって何歳からなんだ?四捨五入か?」

 

その時、扉がいきなり開いて私達は驚き扉の方を見ると、笑おうとしているのだけれど、目に涙を溜めている先生が立っていたわ。

 

「わ、我は帰っても良いでしゅか」

「...材木座、座ってろ」

「ひ、ひゃぃ」

「せ、先生。今日はどうしたんですか」

「もうすぐ最終下校時間だが、時間があったので顔を出したんだ。...なあ、比企谷。アラフォーって何の話なんだ?」

「い、いや、ただ何歳からそう呼ぶのかって話をしていただけで、深い意味はないでしゅ」

「ほお、これは材木座のラノベか。今までのラノベも見せてもらおうか」

 

私は先生に何も言えず、今までのラノベを渡したわ。

 

「材木座、明日の放課後、生徒指導部に来るように。今日はもう遅い。君たちは帰りたまえ」

 

材木座君は震えているわね。私たちは言葉を発せず、材木座君の背中を見送ったわ。

先生がこれ以上、ラノベを書くなと言わなければ良いのだけれど。

 



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41話

「雪ノ下さん、ちょっとお話良いかな」

 

私が休み時間中読書をしていると、同じクラスの真鶴 真奈(まなづる まな)さんが話しかけてきたわ。彼女とは挨拶するぐらいで今まで、数回しか会話をしたこと無いのだけれど。

 

「何かしら、真鶴さん」

「結衣ちゃんさ、あ、由比ヶ浜結衣ちゃんね。最近何かあった?雪ノ下さんと一緒の部活だよね」

「何かと言われても答えにくいわね」

「私、一緒の中学なんだよね。だから家も近くて、朝会うと一緒に登校するんだけど、今までと雰囲気が違って、中三の後半の時と同じなんだ」

「由比ヶ浜さんの中三の時とは、どういうことかしら」

「うん、私と結衣ちゃん。後、総武とか良い所を受ける友達で勉強会してたんだけど、最初はハッキリ言って結衣ちゃんって余り勉強できなかったの。それが先生との三者面談で総武なんてとても無理だ。って先生に言われてから、雰囲気が変わってね」

「それが、今と一緒ということね」

「うん、それからは凄かったんだ。私も友達も最初は教える立場だったんだけど、段々追い付いて来てさ、最後のテストで友達の何人かは抜かれてたし」

「由比ヶ浜さんはそんなに凄かったの?」

「集中力が凄いの、元が空っぽだから何でも入っていくって感じかな。それで結衣ちゃんから、雪ノ下さんに勉強会してもらうって聞いてね。結衣ちゃんについて知っておいて貰ったほうが良いかなって思って話しかけたの」

「ありがとう、でも元が空っぽって酷いわね、真鶴さん。ふふふ」

「結衣ちゃんって普段、お馬鹿なことばかり言ってるでしょ」

「ええ、否定は出来ないわね」

 

それで由比ヶ浜さんの雰囲気が今までと違う、と感じたのね。材木座君のラノベで彼女の中で勉強する必要があるので、意識してか無意識かは分からないけれど、切り替わったということかしら。確かに由比ヶ浜さんの普段の言動からとても総武に入学できる学力があるとは思えなかったのだけれど、真鶴さんが教えていたのね。彼女は総武で総合5位に入る学力があると聞いているし。

でも今日は勉強会できるかしら、材木座君が平塚先生に放課後、呼び出されているのだから。

 

放課後、勉強会を始めたのだけれど、余り身が入らないわね。

 

「ねえ、雪ノ下さん。どうしたん?」

「ごめんなさい、三浦さん...昨日のこと、皆に知っておいて貰ったほうがいいわね、実は・・」

 

私は三浦さんたちに昨日の出来事を説明したわ。

 

「そんなことあったんだ」

「ええ、なので今、材木座君が生徒指導室に呼ばれているのよ」

「それで材木が居ないんだ、でも大丈夫なん?」

「分からないわ...」

「中二、大丈夫かな」

「材木座のことだから、今頃泣いてるんじゃないか」

 

私たちが話していると、扉をノックする音が聞こえたので、私が返事をすると材木座君が入って来たわ。泣いているわけでもなく、何時もの材木座君ね。

 

「遅れて申し訳なかった」

「早かったわね、材木座君。大丈夫だったのかしら」

「材木座、もう良かったのか」

「ああ、怒られなかったぞ。呼び出されて今後も頑張れ。と言われただけだ」

「中二。何かしたの」

「ああ、実は昨日帰ってから落ち込んでいたのだが、考えてもどうしようもないので、急遽ラノベを書いたのだ。それを今日、怒られる前に平塚女史に見せたら、顔を赤くして、もう良いと言われてな。それで早くこちらに来れたのだ」

「材木、どんなラノベ書いたんだし」

「材木座君、うちも読んでみたい」

「..今日は勉強会の予定ですが、良いんですか」

「ええ、私たちも気になって勉強に集中できないわ。読ませてもらえるかしら」

「材木座、私も気になるから読ませな」

「最初に言っておくと、平塚女史の前回書いたラノベの続編になるぞ」

「あの車の中で告白して、イチャイチャするやつだよね」

「結衣、止めてくれ」

「ハチ、私たちは知らないんだからさ、おおすじだけでも説明してよ」

「八幡と先生がラーメンを食べに行って、車の中で告白するのよ。その後、帰宅するのだけれど、車の走行中、手を出す内容だったわね」

「雪乃、止めてくれ」

「ヒッキーが運転席で手が離せない先生のスカートめくったり、運転中に太股を撫で続けるんだよね」

「「「「へぇ...」」」」

「ハチの鬼畜攻め、愚腐腐。でも先生相手か..」

「ざ、材木座。ラノベを読ませてくれ」

 

私たちは材木座君から平塚先生のラノベを受け取って皆で読み出したわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

私たちは、以前ラーメンを食べに行った後、八幡から告白されて付き合いだした。でも教師と生徒という立場が変わるわけではなく、学校では何時もどおり接していた。

今は夏休みになったが、私は学校に出勤しないといけないため、八幡は私のマンションに泊まりに来て勉強を教えたり、息抜きで八幡と泊まりで旅行に行ったりし、デートを繰り返していた。

 

「八幡、誕生日おめでとう。それで今日は何処に行くんだ」

「..静さん。俺、行きたいとこあるんですけど、良いですか」

「ああ、じゃあ、道案内をしてくれ」

 

八幡と私は極力、学校から離れたところまで行ってデートをしていたが、今日は学校に近いところだな。私と八幡は車の中ではサングラスしているので、気付かれないとは思うがなるべく、外には出たくないな。

八幡の案内で車を走らせると、八幡の実家の方に向かって行った。

 

「なあ、八幡。この道って」

「ええ、家に行きますよ」

「そ、そんな、急に。格好だって普段着だぞ」

「大丈夫ですよ、静さん」

 

車を駐車場に止めたが、緊張するな。八幡の家に始めて入るのだし。でも、実家って事は小町君が居るのではないか。彼女も私たちの事は知らないはずだが。八幡は私の手をとり、玄関に向かって行った。

 

「な、なあ。八幡。今日は小町君が居るんじゃないか」

「両親も居ますよ」

「ええ!?ど、どうするつもりなんだ、八幡」

「良いじゃないですか、何時かは顔を合わす必要があるんだし」

 

私は八幡に手を引っ張られ、リビングに連れられて行った。

 

「ありゃ、平塚先生。こんちには。どうしたんですか」

「こんにちは。八幡、先生なの?」

「お、お邪魔します...」

「親父は?」

「今、ちょっと出かけれるけど、今日は家庭訪問か何かかしら」

「母ちゃん。俺、平塚先生と結婚したいんだ。だから今日来てもらった」

「えぇ!?お、お兄ちゃんの付き合っている人って平塚先生だったの!?」

「...八幡、詳しく教えてもらえる?」

 

八幡は私たちの事を話し出した。私は隣で何も言葉を発することが出来ず、俯いているしかなかった。

 

「..先生。いいえ、静さん。静さんはこんな息子で良いんですか」

「..は、はい。行く行くはそうなれば良いなと思っていましたが、まさか今日、挨拶にくることになるとは思っていませんでした」

「八幡、今日挨拶に連れてきたってことは、あなたが結婚できる歳になったからってことよね」

「ああ、俺は静さんと結婚したい」

「でも学校はどうするつもり?大学には行くつもりでしょ?子供が出来たら静さんは休職よ」

「分かっている。だから報告と相談に来た」

 

八幡は母親に同居させてもらえないか、私が休職になった場合は面倒見てもらえないか相談していた。

 

「はぁ、まさかあんたの誕生日にそんなこと相談されるとは思っても見なかったわ。..八幡、小町。静さんとお話したいから、席を外してくれる」

「俺も居てはいけないのか」

「ええ、八幡。あなたもよ」

 

八幡と小町君はそう言われ、リビングを出て行った。

 

「静さんは学校を辞めるつもりはあるのかしら」

「今のところはありませんが、何かしらの都合で必要があるのなら辞めます」

「そう、静さん。私は結婚については、反対するつもりはないわ。ここに一緒に住むのも問題ありません。ただ、子供が生まれたとき、学校を辞めてもらえないかしら」

「でも将来の事を考えると、私が働いていた方が良いと思うんですが」

「私、今でも考えてしまうの。私が専業主婦になって、あの子たちをちゃんと見ていれば、八幡はあんなに捻くれた性格にならなかったんじゃないかと。小町も私たち親ではなく、八幡を頼りにしているのよ。本人は否定するでしょうけどね。今ではそれぞれ大きくなって、私たちが居なくても自分たちで出来る年齢になったわ。でも子供の時、八幡が助けて欲しいと思っているときに、私はそばに居てあげられなかった。だから、あなたたちの子供に同じ思いをさせたくないの。私が言っていることは、わがままだと分かっている。でも、あなたがお腹を痛めた子供たちに、寂しそうな顔をしてほしくないのよ」

 

お義母さんは私の前に膝を付いて、私の手をとり泣き出してしまった。お義母さんの言っていることは分かる。小さい子にとって、頼れるのは教師や友達ではなく、両親しかいないのだから。

 

「分かりました。そうなったら私たちがご迷惑を掛けることになってしまいますが、よろしくお願いします」

「あ、ありがとう。静さん」

「お、お義母さん//」

 

お義母さんは私に抱きついてきてくれた。今まで誰にも言えなかったのだろう。そんなことを私に話してくれたこと、私の年齢のことなど何も気にせず、受け入れてくれたことがすごく嬉しかった。

 

「じゃあ、今から婚姻届出しに行きましょう!!」

「へ!?え、い、今からですか!?」

「ええ、善は急げって言うでしょ。確か婚姻届は土日でも受け付けてくれるわよ。こうしては居られないわ。お父さんに帰ってきてもらわないと」

 

お義母さんはそういうと、八幡と小町君を呼んでお義父さんを呼び戻し、家族総出で市役所に行ってその場で婚姻届を書き提出していた。

 

「静さん、よかったんですか。いきなりでしたけど」

「八幡。私たち、ふ、夫婦になったんだよね?」

「ええ、すみません。今日は挨拶だけと思っていたんですけど、こうなってしまって」

「ううん、八幡。私嬉しい」

「俺も嬉しいですよ、静さん」

「でも、なんだか実感がわかないな」

「そういうものよ、静さん。でもこれから忙しいわよ。結婚式は八幡が卒業してからの方がいいでしょうけど、引越ししないといけないしね。後、八幡。あんたエッチばかりしないで、勉強もしなさいよ」

「な、何をいってるんだよ、母ちゃん//」

「新婚なんだから毎日するでしょ。私たちの睡眠だけは邪魔しないでね」

「お、お義母さん//」

「小町にも気を使ってほしいな。学校であったとき、お兄ちゃんとお義姉ちゃんが昨日あんな恰好でシてたって分かると、顔を合わせられないもん」

「こ、小町君//」

「あんな恰好って何だよ、小町」

「お兄ちゃんなら絶対コスプレ衣装買うじゃん。メイドとかナースとか」

「それはもう持ってるから..ぁ//」

「「「「「....//」」」」」

「か、母さん。俺たちも今日借りて」パコ-ン

「あんたは会話に入らずに運転に集中しなさい!!」

 

私は8月中に比企谷家に引越しを済ませていた。車も処分しようと思ったけど、お義父さんとお義母さんが乗って出かけたいということで、そのまま使用している。結婚したことは学校には黙っていた。さすがに在籍学生と教師とではどう言い訳しても、問題になるだろうから。

 

八幡が大学に受かり、結婚式は八幡が卒業した3月に挙げていた。身内だけの小さな結婚式だけど、私にとっては十分だった。

しばらくして私の妊娠が分かった。ご両親とも大喜びしてくれて私はお義母さんとの約束どおり、学校を辞めていた。

 

「八幡。私、すごい幸せ」

「俺もですよ、静」

「でもご両親に迷惑かけていいのかな、お義母さんには言えないけど、今でも教師を辞めない方がよかったんじゃないかって考えることがあるの」

「迷惑と思ってないですよ。逆に静に働かせるぐらいなら、俺を大学中退させて働かせるでしょうし。だから気にしないでくださいよ。何時か恩返し出来れば良いじゃないですか」

「うん、そうだね」

 

八幡が私の大きくなったお腹を擦ってくれている。私は母親として上手くやっていけるのか、自信がない。でもお義母さんと小町ちゃんが私に料理を教えてくれ、お義父さんも私たちに何時も気を使ってくれて嫁姑問題もなく、仲良く過ごせていた。

 

男の子が生まれ、八幡はもちろん、ご両親も小町も大喜びしてくれた。私は専業主婦をしながら子育てに追われていた。

八幡が大学を出るころには、双子をお腹に宿していた。ビックリしたけど、私はお義母さんにすぐ報告してお祝いの言葉を貰っていた。

 

「静さん、本当にありがとう。あなたが嫁に来てくれたおかげで私は幸せよ」

「いいえ、お義母さん。私を家族として迎え入れてくれてありがとうございます。でも私たちが面倒ばかり掛けてすみません。これからもお願いします」

「ううん、面倒なんて思ってないから。私たちはあなたと子供、孫に囲まれてそれだけで幸せなの」

「お義母さん、ありがとうございます..うぅ」

 

何年か過ぎ、双子の子供が大学に入り、東京に暮らしだした。ご両親は少し前に二人共大阪に転勤したため、家では八幡と私だけが残って住んでいた。

 

「あんなに騒がしかったのに今ではすごく静かだね」

「でも静が居てくれるおかげで寂しくないですよ」

「ありがとう、あなた。私もあなたのおかげで寂しくないよ」

「これからは第二の青春ですよ、静。また恋人同士に戻って色々二人で楽しみましょう」

「うん、これからもよろしくね」

 

私がそういうと、八幡は立ち上がって部屋に入って行った。しばらくして戻ってきたけど、手にはamazonの箱を抱えていた。

 

「じゃあ、どれが良いですかね」

 

私が箱を覗くとそこには、コスプレの衣装が入っていた。ミニスカセーラー服、ミニのチャイナドレス、婦人警官の手錠セット、セクシーランジェリー。

 

「あ、あなた。いくら何でも私の歳でそんなの着れないから//」

「だから良いんじゃないですか、恥ずかしがっている静ってすごく魅力的だし」

「き、着ないと駄目?//」

「ええ、着ないならこの手錠で拘束して苛めますから。あと恋人同士なんでまた名前で呼んでください。じゃあどれを着ましょうか」

「八幡、着れないよ。許して」

 

そういうと、八幡は手錠を持って私ににじり寄ってきた。私は手を拘束され苛められた。

その日から毎日、恥ずかしい衣装を着させられていた。本当は求めてくれて嬉しいんだけど私は正直に言えなかった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「「「「「....//」」」」」」」

「なんで、俺がコスプレの衣装買ってんだよ//」

「でも八幡、好きだろ」

「それは、まあ...そ、そんな答えにくい質問するな」

「そうか?我は好きとはっきり言えるぞ」

「材木座君、あなたの性癖はいいわ。でもこのラノベを読んで平塚先生は何も言わなくなったのね」

「はい、頑張れとは言ってくれましたが」

「中二、その時って先生、顔真っ赤だったよね」

「そうだな、かなり照れておったようだし」

 

先生とっては夢のような話ではないかしら。今年の夏に入籍、私たちが卒業してすぐに結婚式、姑とも仲良く子供を三人もうけ、また恋人同士のように暮らしていく。コスプレが恋人同士で行う事というのは、どうかと思うのだけれど。

でも、先ほどの返答からすると八幡もコスプレには興味あるようね。男性は誰でも興味あるのかしら。

 

「中二、先生の口調が段々変わっていくんだね」

「さすがにご両親がいるところで、今の口調ではまずくないか。生徒相手なら良いだろうが、八幡が夫となるのだし」

「でも、ヒッキーは何時までも敬語なんだ」

「妻でもあるが、恩師でもあるからな」

「材木、なんでこんな恥ずかしい衣装だし//」

 

読み終わってから三浦さんがスマホで衣装の検索を掛けたようね、私も見せてもらったのだけれど、コスプレのミニスカセーラー服ってこういうものなの//私は今自分たちが着ている制服を考えていたのだけれど、どうしてお臍を出しているのかしら//撮影会の時の仲町さんのような格好なのね。

 

「ハチはどういうのが良いの?やっぱり露出が多い奴?」

「俺は露出が多いのより、見えそうで見えないって言うのがいいな。後、絶対領域のある格好とか...」

「..ふーん、雪ノ下さんの制服姿に欲情してるんだ」

「は、八幡//」

 

確かに視線を感じることがあるのだけれど、八幡が好きな格好だったのね//

 

「そ、その好きな恰好を言っただけだ。欲情してるとは言ってないだろ//」

「..うちもニーハイ履こうかな」

「ヒッキー、この間のサキサキの恰好はどうなの、ホットパンツでお尻が出ているやつ」

「ゆ、由比ヶ浜。今は関係ないだろ//」

「関係ないことないよ、サキサキ。男性がどういう格好してほしいか分かるでしょ」

「..あくまでも俺の意見だが、外に出かけるときは露出の少ない方がいいな。ただ家に二人で居るときは良いと思うぞ。他の男に見せたくないという独占欲だろうが」

「我も同意見だな」

 

そういうものなのね、独占欲から着てほしくない服装と言うのもあるのね。私は露出が多い服は持っていないのだけれど。

私たちが話していると、八幡のスマホにメールが入ったようで操作をしているわ。

 

「..ごめん、八幡。うちメール見ちゃったんだけど、平塚先生からラーメンのお誘いだよね」

「「「「「はぁ!?」」」」」

「ば、ばか。今そんなこと言うと..」

 

私はスマホを取り出し、スピーカーモードにして先生に掛けたわ。

 

「先生、どういうことですか。八幡だけ誘うなんて先生が贔屓するんですか」

『な、なんで雪ノ下が知っているんだ』

「八幡の隣にいた人が見てしまったんです」

『ちょ、ちょっとまて。一旦切らせてもらう、部室に行くから』

 

私たちは先生が来るまで、誰も喋らなくなってしまったわ。先生は珍しく扉をノックして入ってきたわね。さすがにまずいと思ったのかしら。

 

「な、なんでこんなに人が居るんだ」

「そんなことは関係ないですよ、先生。なぜ八幡だけ誘ったのか教えてもらえないでしょうか」

「い、いや。ちょっと行ったところにラーメン屋が出来てな。は、比企谷が食べた事なかったらどうかなと思って」

「あーしもラーメン食べたいな~」

「うん、私も今日の夜はラーメンでも良いかな」

「あたしも食べたいな、先生」

「うちも行きたいな」

「ごめん、私は無理だ。家に帰って食事の用意しないと。みんなで行ってきて」

「そうね、夜ご飯作る必要がなくなるから私も食べに行きたいわね」

「わ、我もラーメン食べたいです」

「お、お前たち..」

「..先生、諦めてください。タイミングが悪いですよ」

「だ、だって比企谷とラーメン食べたかったもん。その後も....うぅ」

 

先生が落ち込んでいる間に私たちは片付けをして、駅前までみんなで歩いていき、川崎さんは帰らないと行けないので、駅前でシュークリームを4つ買ってもらって、帰って行ったわ。

私たちは先生と一緒にラーメン屋に向ったわ。先生は終始、項垂れていたのだけれど、みんなで食べるラーメンも美味しいものね。

でも先生には気を付けないと。八幡と趣味が合うし車があるのでどこにでも行けるのだから。

 

 



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42話

「小町が総武に受かってから書いた方が良いと思ってな。この間の合格祝いのとき、思いついて書いてきたのだ。ただ、どうしてもこれで良いのか判断がつかず、知恵を借りたいのだが」

 

この間の合格発表で小町さんが無事に受かって、皆でお祝いしたことを言ってるのね。

材木座君が小町さんのためにラノベを書いたのは、どういった内容になっているのかしら。

 

「材木座、いつか言っていた近親相姦じゃないだろうな」

「..そっちにした方がどれほど楽だったか、ただ我にはこれで良いのか分らぬのだ」

「ゆきのん、みんなで読んでみようよ」

「今回は先にチェックしなくても大丈夫かしら」

「はい。皆さん出てきますが、たぶん大丈夫と思います」

 

材木座君はそう言って私たちにラノベを渡してくれたわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「あの先輩ってモテるんだね~」

「誰の事?」

「名前は知らないんだけど、今日は三浦先輩と歩いていたよ。生徒会長とも一緒に居るとこ見たことあるし」

「私は由比ヶ浜先輩と一緒に帰ってるところ見たよ。後、海老名先輩とも一緒に居るの見たことあるし」

 

小町は総武高校に入って、一緒のクラスになった子と仲良くなり、三人で話をしていた。でも誰の事を言ってるんだろ、その四人だったら葉山さんかな。結衣さん達は葉山さんのグループだから一緒に居てもおかしくないし、いろはさんはサッカー部のマネージャーだしね。

 

「相模先輩や川崎先輩とも一緒に居るとこ見たことあるし、雪ノ下先輩も一緒に帰っていったことあるよ」

 

うん?南さん、沙希さん、雪乃さんと一緒に居た?南さんも上位カーストだからグループが違っても一緒に居てもおかしくないし、雪乃さんも家の関係で居てもおかしくないけど、一緒に帰るほどの仲なのかな。でも沙希さんが葉山さんと?喋ることぐらいはあるのかな。

 

「でも小町は余り好きじゃないな。爽やかイケメンだけど」

「うん?爽やかイケメンじゃないよね」

「小町ちゃんって、誰の事言ってるの?」

 

二人が不思議そうな顔をして、小町の事を見ていた。葉山さんのことじゃないのかな。

 

「二人こそ誰のこと言ってるの?小町は葉山さんと思ってたんだけど。サッカー部キャプテンの」

「葉山先輩なら私たちも知ってるよ。名前は知らないけどさ、よく見かけるんだよね」

「どういう人?」

「ちょっと猫背で」

「うん」

「目が淀んでて」

「う、うん」

「髪は長めで何時も襟足が跳ねてて」

「..」

「小町ちゃんみたいにアホ毛があるの」

「....」

 

それってもしかして。ううん、もしかしなくても一人しかいないじゃん!!

 

「そ、その先輩って、何時も気怠そうにしてる人?」

「そうそう、小町ちゃん知ってるの?」

「う、うん。知ってるっていうか、....さっき出てきた先輩達、みんな小町の友達だし」

「え!?小町ちゃんって雪ノ下先輩や三浦先輩と友達なの!?すごく綺麗だけど怖くない!?」

「他の先輩達も総武の可愛い先輩ばっかりじゃん!!」

「みんな良い人だよ。雪乃さんも優美子さんすごく優しいお姉さんだし。小町が総武に受かったとき、一緒に祝ってくれたもん」

 

みんな小町のお祝いで家に来てくれて、雪乃さんや結衣さん達が率先してご飯やケーキを作ってくれて、みんなでゲームしたりお話ししたり楽しかったな。

女性だけじゃなくて、材木座さん、戸塚さん、一緒に受かった大志くんも来てくれたし。

お兄ちゃんは大志くんに何で来た。って言って睨みつけてて、沙希さんに怒られてたけど。でも京華ちゃんには頬を緩めて、股ぐらに座らせて頭を撫でてたんで、みんな羨ましそうにしてたな。

 

「小町ちゃん、どういう繋がりなの!?」

「あ、あの、これ見てくれるかな」

 

そう言って小町はスマホを二人に渡して、お祝いしてもらった時にみんなで撮った写真を見せてあげた。

 

「あーーー!!この男の人!!小さい女の子を足に乗せてる人!!」

「そうそう、なんで小町ちゃんの隣に座ってるの!!」

「..そ、そのお兄ちゃんなんだ」

「「ええーーーー!!」」

 

二人が言っていたの、お兄ちゃんのことだったんだ。小町たちが、ううん、二人が騒いでいると他の女子がだんだん集まってきて、大変な騒ぎになっていた。

 

「これって戸塚先輩だよね!!私、負けてる..」

「大志くんも居るんだ!!」

「この女の子、可愛い!!小町ちゃんの妹?こっちの小さい男の子も」

「沙希さんと大志くんの弟妹だよ」

「この写真って総武を代表するような綺麗な人ばっかりじゃん!!後、知らない人もみんな綺麗だし!!」

「お兄ちゃんの繋がりで仲良くなってね」

「..小町ちゃん、お兄さんって何者?」

「捻くれボッチだよ」

「「「「「「ボッチなわけないじゃん!!」」」」」」

 

だって、自分でボッチって言ってるし、奉仕部に入るまでは本当にボッチだったし。でも今だにボッチって言うのは確かにおかしいと思うけど。

 

「小町ちゃん。ううん、小町さん。お兄さんに私を紹介してください!!」

「「「「「私も!!」」」」」

「..良いよ、でも先輩達に目を付けられるよ」

「え!?..」

「そ、それは不味いよね」

「うん、平和に過ごしたいし」

 

なんだろ。結局お兄ちゃんの回りに居る人たちが凄いから近寄りたいだけで、あの人たちに対抗しようって子は居ないんだね。

雪乃さん達が何かするわけないし気にしないだろうけど、目を付けられても良いから紹介して欲しいって言うんであれば、小町が骨を折ってあげてもいいけどな。

小町がそういうと、集まってた子達は段々離れていったんだけど、一人モジモジしている子がいた。

 

「ひ、比企谷さん。お兄さんに会わせてもらえないかな」

「小町で良いよ。綾瀬さんどうしたの?」

「私も綾で良いよ。この間ね、自転車置き場で自転車をドミノ倒ししちゃったとき、お兄さんが何も言わずに倒れた自転車を起こすの手伝ってくれたんだ。でも、すぐに何処かに行っちゃって、お礼もろくに言えていないの」

「うん、そういう事なら良いよ。もしかしたら先輩達も居るかも知れないけど、良いかな」

「うん、お礼を言いたいだけだから」

「分かった。じゃあ、放課後でいい?」

「うん。お願いします」

 

綾さんは本当にお礼を言いたいだけだろうな、それなら断る必要もないし。

でもお兄ちゃんって回りからモテるって思われてるんだね。小町としてはお義姉ちゃん候補が沢山居た方が良いけど、お兄ちゃんの事をちゃんと分かった上で近づいてほしいな。

そういう意味では綾さんは他の子とは違うから、会わせても問題ないよね。でも、このモヤモヤは何だろう。最近、お兄ちゃんのことを考えると変な気持ちになっちゃうんだよね。

 

放課後、小町は綾さんを連れて奉仕部に向かった。綾さんとは今まであまり喋ったことなかったけど、結構しゃべり易いので、打ち解けるまで時間は掛からなかった。

 

「お兄さんって八幡さんって言うんだ」

「珍しい名前でしょ」

「でも小町ちゃんも珍しいよね」

「気に入ってるけどね」

「うん、良い名前だよ。私なんて有り触れた名前だし」

「ありがと、でも綾ちゃんも良い名前だよ」

「こっちこそ、ありがと」

 

小町たちが奉仕部の部室に入っていくと、雪乃さん、結衣さん、いろはさん、お兄ちゃんが紅茶を飲んで喋っていた。

 

「やっはろーです」

「お、お邪魔します」

「小町さん、こんにちは。そちらの方は?」

「はい、お兄ちゃんのお客さんで綾瀬 綾ちゃんです」

「..ふーん、ヒッキーどういうこと?」

「..先輩、また何かしたんですか」

「八幡。何時、どこで彼女に何をやらかしたのか正確に報告しなさい」

「俺が何かしたの確定かよ。何もしていないはずだ。..でも何処かで..」

「じゃあ綾ちゃん、お兄ちゃんに言いたいこと言っちゃって」

「こ、小町ちゃん。先輩達は良いの?」

「良いから良いから」

 

小町がそういうと、綾ちゃんはお兄ちゃんに喋りかけていた。雪乃さん達は最初怪しんでいたけれど、綾ちゃんがお礼を言っていると、視線が段々穏やかになっていって、綾ちゃんがお礼を言い終わった時には、雪乃さんが紅茶を用意してくれていた。

 

「綾瀬さん、紅茶を飲むかしら」

「い、いただきます」

「ヒッキー。数日前のことなら、ちゃんと覚えておかないと駄目だよ」

「先輩って優しいから色々、手伝ってくれるんですよね。じゃあ、今から生徒会室で私のお手伝い、お願いします」

「..一色さん」ニコッ

「..いろはちゃん」ニコッ

「ヒィッ!!...ま、まだ一人で大丈夫だったかなぁ、あはは」

「一色さん。あなたそういって何時も八幡を連れていくわね。もう二年生でしょ、自分たちだけでやり遂げようと思わないのかしら」

「そうだよ、いろはちゃん。いっつもヒッキーに頼ってばっかり」

「す、すみません。でも先輩が居ると、私...生徒会の仕事が早く終るじゃないですか」

「はぁ、あなたが楽をしたいだけじゃない。何だったら私が手伝ってあげましょうか。今までの議事録や会計報告すべてチェックしてあげるわよ」ニコッ

「け、結構です..」

 

綾ちゃんが居る前でまた、いつもの光景が繰り出されていたんだけど、綾ちゃんはビックリしてるみたい。この空気はいつもの事なんだけど、慣れてないと厳しいよね。

 

「大丈夫だよ、綾ちゃん。いっつもこんな感じだから」

「こ、小町ちゃんは平気なの」

「うん、もう慣れちゃったかな」

 

その後は雑談しだしたので、綾ちゃんもゆっくりだけど、雪乃さん達に打ち解けていった。

 

「小町ちゃん、先輩達って優しいんだね」

「うん。怖いときもあるけど、普段は優しいよ」

「八幡先輩も最初、無口で怖い人かなって思ったけど、喋ると優しい人だったし」

「ありがとうね、綾ちゃん。あんなのでも小町には大切なお兄ちゃんだし」

「..小町ちゃんが羨ましいな。私一人っ子だから」

「まあ、家ではごみいちゃん何だけどね」

「..小町ちゃん。そんなこと言わない方が良いよ」

「..うん、そうだね」

 

つい照れ隠しでお兄ちゃんのこと、ごみいちゃんって言っちゃうんだけど、綾ちゃんみたいに一人っ子だと、兄妹って羨ましいんだろうな。小町もそういった人たちの事を考えて喋らないと。

 

「八幡先輩がモテるのも分かる気がするな」

「そう?中々気づかないと思うよ」

「あの優しさ、私だけに向けてくれないかな//」

「あ、綾ちゃん...」

「小町ちゃん。私も八幡先輩にアプローチして良いかな」

「う、うん。小町がとやかく言うことじゃないからね」

 

なんだろ、またモヤモヤした気持ちが出てきた。どうしてだろ、お兄ちゃんがモテるのは良い事だし、綾ちゃんだったら、いい子だからお義姉ちゃん候補に入っても良いんだけど...

 

その次の日から、綾ちゃんはお兄ちゃんに近づくため、奉仕部に入って勉強を教えてもらったり、自転車で一緒に帰ったりしているみたい。

小町が奉仕部に遊びに行ったときは、お兄ちゃんに頭を撫でてもらっていた。小町はモヤモヤした気持ちが日に日に強くなっていった。

 

「ねえ、お兄ちゃん。最近、綾ちゃんと仲良いね」

「奉仕部に入ったからな、綾も勉強会に参加して俺たちと一緒に勉強してるぞ」

「それにしては、頭撫でたり雰囲気が良いんだけど」

「綾は褒めてあげると、凄く勉強頑張るんだよ。新しい妹ができたみたいで、小町と同じように接してしまうんだよな」

「..お兄ちゃん、妹は小町だけじゃ駄目なの」

「何言ってるんだ、俺の妹は小町だけだろ」

「だって綾ちゃんのこと、妹ができたみたいって言ったじゃん!!」

「それは言葉の綾だろ。何を怒ってるんだ」

「小町の気持ちも知らないで、綾ちゃんばっかり!!...もういい!!」

 

そういうと何時の間にか家を出て来てしまい、近くの公園まで走ってきてしまった。あーあ、あんなこと言っちゃって、小町どうしたんだろ。

ううん、本当は気づいている。小町はお兄ちゃんのことが、異性として好きなんだってこと。でもそんなこと言えないよ。お兄ちゃんに迷惑をかけるだけだから。

 

小町が公園のブランコに座っていると、誰かが近寄ってきた。誰かは分かってるけど、小町はそちらを見ることが出来なかった。

近くまでくると、頭を撫でてくれて小町に話しかけてきた。

 

「小町、俺の妹は小町だけだから」

「..」

「俺は小町のことが一人の女性として好きだ」

「お、お兄ちゃん?」

「だが俺たちは当たり前だが付き合えない。それは分かるだろ」

「..それは、小町もお兄ちゃんのことが男性として好きでも?」

「ああ、いくら俺たちがお互い異性として、想いあっても許される事じゃない」

「世間がどうでも二人が想いあってれば良いじゃん!!」

「俺は小町の事、異性として愛している。でもその前に俺は小町のお兄ちゃんなんだ。だから、小町には普通の幸せを掴んでほしい」

「..そうだね、小町もお兄ちゃんのことが異性として好き。でも、あくまでもお兄ちゃんと妹なんだよね」

 

しばらく公園で頭をなでてもらった後、小町はお兄ちゃんに手を引いてもらい、家に帰って行った。何年ぶりだろ、手を繋いでもらったの。でもお互いの気持ちが分っても、この手は多分、今日限りなんだよね。

夜、ベッドに入ったんだけど、中々寝付けないな。お兄ちゃんが好きって言ってくれたことは、凄く嬉しかったけど、結局は妹なんだよね。

小町はベッドから出ると、枕を持ってお兄ちゃんの部屋に入って行った。

 

「..小町か」

「うん、お兄ちゃん。今日だけ一緒に寝てくれないかな」

「..ああ、いいぞ」

「お兄ちゃん、今日だけ小町を恋人として扱って」

「そ、それは」

「ううん、別にエッチな事をしてほしいわけじゃないの。一緒に添い寝してほしいだけだから」

「分かった」

 

小町はお兄ちゃんの布団に入って行って話しかけた。

 

「お兄ちゃん。明日からは何時もの兄妹だから今日だけは存分に愛してね」

「ああ、大好きな小町を抱きしめるからな」

 

そういうとお兄ちゃんは小町の事を抱きしめてくれたんで、小町は涙が溢れて泣き出してしまった。何時ものお兄ちゃんなら撫でてくれるんだけど、今日はずっと両手で抱きしめてくれていた。

小町は最後に気持ちの整理を付けるため、お兄ちゃんの方に顔を向けた。

 

「八幡さん、小町はあなたのことが好きです。あなたを愛してます」

「俺も小町の事を愛してる」

「八幡さん..最初で最後の口付けをしてください」

「..小町、愛してるぞ」

 

お兄ちゃんはそういって、小町に口付けしてくれた。小町はまた涙が溢れてきて、お兄ちゃんの胸を借りて泣き続けた。

....

...

..

.

 

「お兄ちゃん、早く起きてよ。学校に遅刻するよ!!」

「ああ、おはよ」

「うん、おはよう!!ほらほら、早く食べないと」

 

あの日から小町は気持ちに踏ん切りをつけ、お兄ちゃんと接するようにしていた。お兄ちゃんも暫くして恋人が出来て、小町のことは妹として接してくれている。

あの夜の事はお兄ちゃんと小町だけの秘密。お互い話題に出すこともなく、こうして小町の初恋は失恋で終っていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「....」」」

「どうであった?どうしても兄妹なので、我が考えると最後は失恋になってしまうのだが」

「確かに難しいわね。付き合うとなると、読み始める前に八幡が言っていた近親相姦になってしまうでしょうし」

「義理の兄妹という設定も考えてみたのだが、小町でラノベを書くのが初めてなので、今回は極力やめた方が良いと思ったんです」

「それであれば、結婚もできるので問題ないのだけれど」

 

難しいわね、私には思いつかないわ。どうしても兄妹だと障害もあるでしょうし。

 

「..そ、その兄妹でキスするのってどうなの。ヒッキー」

「..俺は小町のことは好きだが、そういうことは考えられないな。このラノベだと異性として好きと書いてあるが、それもな」

「それが普通の兄妹なのでしょうね」

「高坂兄妹のようにしようとも考えたのだが、パクリになってしまうから辞めたのだ」

「誰だし、それ」

「ラノベの話だ。二人で結婚式してたな」

 

一体どいったラノベなの?兄妹で結婚式なんて。今度、八幡の家にお邪魔したとき、読ませてもらっても良いかもしれないわね。

でも小町さんのことを考えると、失恋で良いのかしら。彼女がどういった内容を希望しているのか分からないわね。八幡ではなく、大志君だったら問題ないのだけれど、八幡は怒ってしまうわね。

 

「でも最後は、やはり失恋しかないのかしら」

「うん、付き合うってなると、色々あるだろうし。二人で駆け落ちってパターンもあるのかな」

「駆け落ちはないだろ、いくらなんでも」

「でも、二人とも諦めきれなくて、家族や周りにも反対されるだろうから最後はそうなるんじゃない」

「八幡はリスクを考えて実行しないと思うわ。一人どこかに行ってしまうって方がしっくりくるわね」

「そうだな、色々考えてしまってそうなるだろうな」

「でも、それだと結局失恋だよ」

 

「あと、あたしはヒッキーがしばらくして恋人が出来たってとこは直してほしいかな」

「そうか、お互い気持ちの整理を付けて、次の恋愛に行ったってことだろ」

「中二、しばらくってどれぐらい?」

「2、3か月と言ったところか」

「付き合えないけど好きな人が何時も近くにいるんだよ。せめて卒業後、一人暮らしした後とかにした方が良いんじゃないかな。その時、小町ちゃんに他に好きな人が入れば良いけど、そうじゃないと家に連れてきたら辛いもん」

「..確かにそうだな」

 

「材木座君、私たちでも最後、どうすれば良いのか分からないわ」

「小町にはこのまま見せるぞ。材木座が書いてくれたんだし」

「大丈夫かな、小町ちゃん」

「まあ、何かあったら俺のお兄ちゃんスキルで機嫌を直すから心配するな。..材木座、もし落ち込みが酷かったら、義理の兄妹の話で今度は頼むかもしれん」

「分ったぞ、八幡。それであれば幾らでも考えられるからな」

 

八幡はこのまま、小町さんに見せるようね。小町さんも普通の恋愛で書いてもらえるとは思っていないだろうけど、良いのかしら。何かあれば、八幡がフォローするでしょうし、納得がいかなければ、また書いてもらうようにすれば良いわね。

 

「..そういえば、材木座君。私や三浦さんはそんなに怖いのかしら」ニコッ

「い、いえ。そ、そんなことないでしゅ」

「いろはちゃんの時もだけど、あたしも笑うと怖いの?「ニコッ」ってした後、いろはちゃんが「ヒィッ!!」って言っているよね。中二、どういうところが怖いのか教えてほしいなぁ」ニコッ

「い、いいえ、二人ともお綺麗ですから、怖いなんて滅相もないでしゅ」

 

八幡は私たちが話している最中、ラノベを小町に見せたいから。って言って逃げるように出て行ったわね。材木座君は私たちが何も言っていないのに、何時ものところに正座しだしたわ。

 

「ねえ、中二。あたし達なにも言ってないよね。正座するってことは、自分の中で疚しいことがあるからだよね。ねえ、どういったことか教えてよ。ねぇ、早く教えてよ」

 

材木座君は何も言えなくなってしまっているわ。私も由比ヶ浜さんが色々言っているので、口を出すことができないわね。

でも由比ヶ浜さんは怒りだすと「ねえ」と言うことが多くなるのかしら。今日は、由比ヶ浜さんに任せておけばいいわね。

八幡はラノベを小町さんに見せるのでしょうけど、ちょっと心配だわ。小町さんが悲しまなければいいのだけれど。

 



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43話

「八幡。小町さんはラノベを読んで問題なかったのかしら」

 

先日、材木座君が書いたラノベを家に持って帰り、小町さんに読ませていたはずだけれど、良かったのかしら。

 

「ああ、小町も何となく察していたらしい。普通のラブコメではないって」

「そうなのね、でも読んで落ち込んだりしていなかったのかしら」

「ヒッキー、良かったの?」

「あーしと姫菜は結衣から聞いたけど、小町はなんか言ってた?」

「先輩、どういう内容だったんですか」

「失恋話だ。だが問題なさそうだったぞ。今度は義理の兄妹の設定が良いとか言っていたな。俺がもし今度書いてもらうならって、提案したんだがな」

「分かった。では小町が入学してから執筆してくるぞ」

 

そうなのね、問題なければいいのだけれど。小町さんが入学してからまた、材木座君に書いて貰うってことで良いのかしら。何かあれば八幡が気づいてフォローするのでしょうけど。

 

「今日は三浦殿でラノベを書いてきたので海老名殿に先に読んでもらいたいのだが」

「ふーん、私が読んで登場人物に問題あるか確認すればいいんだよね」

「ええ、では海老名さん。お願いできるかしら」

 

私はそう言って、海老名さんに先に読んでもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

あーしは今、民家の玄関前でインターフォンを押そうか迷っていた。い、良いよね、押しても。多分居るだろうし。あーしは震える手でインターフォンを押していた。

 

ぴんぽーん

 

....

 

インターフォンの音が鳴った後、なにも反応無いんだけど....あーしはもう一回押したけど、インターフォンからは何も帰ってこなかった。はぁ、居ないか...どこかに出かけるんなら先に言えし!!あーしが折角来てやったのに!!

あーしが落ち込んで帰ろうかと思ったとき、インターフォンからいきなり音が鳴ってきた。

 

「はい..」

「あ、あーs、わ、私、三浦と言います。ヒキ..は、八幡さんはいらっしゃいますか」

「ぶっ、んんっ!!ゴホッゲホッ....ぷっくく、ゆ、優美子がわ、私..グフッ....八幡さんって..くくく、わ、笑わせるなよ(笑)」

「ヒ、ヒキオ!!居るならすぐ出るし!!」

「フヒッ!!....わ、分かったよ、今行くから」

 

な、何だし!!あーしが来てやったのに、咽せるまで笑い飛ばして!!あーしが怒っていると、ヒキオは玄関を開けて出てきた。

 

「ヒキオ笑いすぎ!!居るならすぐ出るし!!」

「さっきまで寝てたんだが、良い目覚ましだったぞ。くくくっ」

「はぁ!?」

「ご、ごめんなさい」

「..何時まで寝てる気?昼過ぎてるんだけど」

「昨日、夜更かししてな。それで今日は何しに来たんだ」

「暇だったから来ただけだし。ヒキオ、なんでパジャマなん」

「さっきまで寝てたって言っただろ。はぁ、ここで話すのも何だし入ってくれ」

「わ、わーたし」

 

撮影の時、ヒキオの家に入ったことあるけど、あーし一人で来るのは初めてなんで、ちょっと緊張するし//

 

「..ヒキオ。誰も居ないの」

「小町は遊びに行ったんじゃないか。両親は仕事だろ」

「じ、じゃあ、今はヒキオ一人なん」

「ああ、そうじゃないか」

 

そういうと、あーしをリビングに案内してくれて、ヒキオはジュースを出して着替えてくるって言って、出て行った。

い、今、ヒキオと二人きりなんだ//すごい緊張してきたし//

ヒキオは着替えてきて、スエットの上下でリビングに入ってきた。

 

「ちょ、あーしと遊ぶんだから、もうちょっとお洒落に気を使えし!!」

「えぇ、何処か行くのか」

「ららぽに行くし」

「出掛けるのかよ...はあ、分かった。どんな服装でも文句言うなよ」

「じゃあ、あーしが選ぶから」

「ああ、でもまずはご飯食べさせてくれ。優美子は食べたのか」

「うん、家で食べてきたし」

「じゃあ、悪いが待っててくれ」

 

ヒキオはご飯を食べて顔を洗った後、部屋に着替えに行くって言ったんで、あーしは後ろを付いて行って、ヒキオの洋服ダンスを見せてもらった。ヒキオの部屋に二人っきり//でも何かしてくるわけないよね、ヘタレだし。でもちょっと期待してもいいかな//

 

「あんまし持ってないんだね。じゃあ、下はこれ履いてみるし」

 

あーしから黒のスキニーパンツを受けとると、ヒキオはスエットを脱ぎ出した。な、なんであーしが居るのに脱いでんだし//でも、お、男の裸ぐらいでガタガタ言うのも可笑しいし//

ヒキオってガリガリって訳じゃなく、結構筋肉付いてんだ。服の上からじゃ分からなかったけど。で、でもパンツの膨らみなんとかしろし//気になったけど、あーしは目をそらして服選びに専念することにした。

選ぶ服ないじゃん!!でもこれなら良いかな、あーしは白のTシャツ、グレーのカーディガンをヒキオに渡して着てもらった。

 

「結構良いじゃん。でも選べないからもっと服買うし!!」

「えぇ、休日でも出かける日しか着ないだろ。優美子の選んでくれたこの組み合わせで、春秋はイケるだろ」

「何言ってるし、明日も一緒に出掛けるってなったら、その組み合わせ着れないし」

「俺は土曜日出掛けたら、日曜日は家から一歩も外に出ないぞ」

「はぁ!?彼女出来たらどうすんだし」

「俺と付き合ってくれる女性なんて居ないだろ」

「そ、そんなことないし//」

「じゃあ、優美子が付き合ってくれるのか」

「な、なに言ってんだし//あーしと付き合いたいなら、ちゃんと告白するし//」

「いや、どうせ振られるからな」

「..なんでだし、ヘタレ」

 

なんで今のタイミングで告白しないし。あーしは恥ずかしくなって部屋を出ていこうと歩き出したら、ヒキオの脱ぎ散らかしたスエットに足を取られていた。

 

「キャ!!」

「優美子!!」

 

ヒキオはあーしの腕を掴んで自分の方に引き寄せてくれたんで、転ばずにすんだ。でも勢いが付きすぎて、ヒキオに抱きついてしまった//

 

「そ、その無理に引っ張って、すまん//」

「ううん、あ、あんがと//」

 

あーしはすぐに離れたけど、顔が赤くなっていてヒキオに見られたくなくて、リビングに降りて行った。さっきあのまま、あーしから告白したらどうなってたんだろ...

でもヒキオの周りにはあーしから見ても素敵な女性がたくさんいる。あーしなんて我儘ばっかり言って、ヒキオに良い印象持たれてないかもしれないし...

ヒキオはリビングに降りてきて、用意出来たぞって言ってきた。あーしが撮影の時あげた眼鏡をしてくれて一応、気を使ってはくれてるみたいだけど。

 

あーしとヒキオはららぽに行って、色々見て回っていると、あーしが見たかった映画のポスターが貼ってあったのが目に入った。

 

「ヒキオ、あーし映画みたいし」

「どの映画見たいんだ」

 

あーしが指を指すとヒキオは嫌そうな顔をしてきた。

 

「なんなん、文句あんの?」

「恋愛ものか。俺、寝ちゃうかもしれないぞ」

「何言ってるし!!後で二人で感想を良い合わないといけないから、ちゃんと見るし!!」

 

そう言って、ヒキオは文句を言いながらも、あーしと一緒に映画館に向かって歩き出した。チケットを二人分買ってヒキオと話していると、あーし達に話しかけてくる女性がいた。

 

「あら八幡、三浦さん。こんにちは..」

「やっはろー。優美子、ヒッキー..」

「先輩、三浦先輩。こんにちはです..」

「..こんちは」

「ウス」

「あなたたち二人、デート中かしら」

「..違うし、映画見にきただけだし」

「そうなんだ。じゃあ、あたしたちも映画を見に来たんだけど、一緒で良いよね」

「私もこの映画見たかったんです。三浦先輩」

「良いのかしら、三浦さん」

「..うん、一緒でも良いし」

「では、私たちもチケットを買いにいくわ。どこの席を取ったのかしら」

 

そう言って、雪ノ下さんと結衣、いろはは八幡が持っていたチケットの番号を確認して、自分たちのチケットを買いに行った。

なんで、あの三人が一緒に居るんだし!!でもあーしもデートって言えば良かった。なんであんな返答したんだし。

ヒキオはあーしと二人じゃなくても良いのかな。ヒキオが断ってくれたら嬉しかったのに。

 

映画館の上映時間が近くなったので、あーし達が席に付くと、あーし、八幡、結衣、いろは、雪ノ下さんの順番で席に付いた。いろはと雪ノ下さんは負けたって言ってたんで、じゃんけんでもしたんだろう。

ヒキオはポップコーンを買ってくれたので、あーしと八幡の間に置いてくれた。

 

「優美子、一緒に食べようぜ」

「うん、あんがと」

 

映画が始まってポップコーンに手を伸ばすと、ヒキオがあーしの手を握ってきた。でもすぐに離してスマンって言ってきたんで、ポップコーンを取るときに握ってしまったんだろうけど、そのまま手を握ってほしかったし。

映画が進み、ポップコーンがなくなると、あーしと八幡は手を伸ばすことはなくなった。でもさっきみたいに手を握って欲しくて、あーしは八幡の手を握りにいくと、八幡は驚いてあーしの方を見てきた。あーしは八幡を見つめながら、肘掛けの下に八幡の手を持っていき手を握った。

八幡は手を引っ込めることもなく、あーしの手を握っていてくれて、たまにギュって握ってきたけど、あーしも一緒のように手を握り返した。

途中、八幡は手を離してきたけど、すぐ恋人繋ぎになるように手を握り直してくれて、あーしは嬉しくて八幡の肩に頭を置いていた。映画を見ていると、八幡はあーしの頭の上に重なるように頭を置いてきた//

お互い声は出さなかったけど、八幡の温もりを感じて、あーしは幸せな気分に浸っていた。映画は見ていたけど、嬉しくて内容は頭に入ってこないし。でもこの映画が何時までも終らなければいいのにって、あーしはそんなことを考えていた。

 

映画が終わり、回りが明るくなっても八幡はあーしの手を離すことはなかった。結衣があーし達の方を見て、びっくりした顔をしていた。

 

「ああー!!、なんでヒッキーと優美子、手を繋いでるの!?」

「あなたたちは上映中、何をしていたのかしら」

「先輩、映画そっちのけでイチャイチャしてたんですか!!」

「..三人とも、俺と優美子はデート中だから、付いてこないでくれ」

「ヒキオ//」

「「「....」」」

 

ヒキオはあーしの手を握ったまま、立ち尽くす三人をおいて映画館を出た後、あーしをリサイクルショップに連れていった。

 

「優美子、俺の服を選んでくれないか。あまり手持ちが無いんで古着屋だが」

「うん//あーしが服を選んであげるし//」

 

あーし達は手を握り合ったまま服を選んで、ヒキオが試着するときは手を離したけど、試着が終わるとヒキオから手を握ってくれた。

 

「古着でも結構、良いのがあるんだな」

「うん、お洒落に気を使う人はすぐに売っちゃうし。だから新しくて程度の良いのもあるし」

「俺もこれから気を使わないとな、優美子の隣を歩けるように」

「え!?う、うん!!あーしがこれから色々教えてあげるし//」

 

その後、あーしの服を見て回って喫茶店で休憩し、今は八幡があーしの家まで送ってくれてる。あーしが駅までで良いって言っても付いてきてくれて、ずっと手を繋いでいてくれてた。

 

「優美子の家はここなんだな」

「うん、今日はあんがと。約束もしてないのにあーしに付き合ってくれて、嬉しかったし」

「..なあ、優美子。明日は空いてるか。今度は俺が迎えに来たいんだが」

「うん!!待ってるし//じゃあ、明日ね//」

「優美子//」

 

あーしが見送るため待っているとヒキオはあーしの横にきて、ほっぺにキスしてきた。

 

「い、今はこれが限界なんだ//じゃあな、優美子。おやすみ//」

「..//」

 

あーしが固まって返答できずにいると、八幡は駅の方に歩いて行った。あーしは我に返ると慌てて八幡の背中に向かって叫んでいた。

 

「ヒキオのへたれ!!明日は唇にするし//」

 

そういうと八幡は振り返らず右手をあげて答えてくれた。あーしは余韻に浸っていたけど、暫くして玄関の方を見ると、両親があーしのことを見て、ニヤニヤしていた。

 

「今日は赤飯かな、母さん」

「もう、ご飯の用意しちゃったわよ。明日、ヒキオ君が来てくれるからパーティーしましょうか」

「ふ、二人とも何言ってんだし//」

「だって、明日キスするんでしょ。予告キスなんて大胆ね、優美子」

「うー//二人とも邪魔だから退いてよ//」

 

あーしが家に入っても二人はヒキオのことで盛り上がっていて、食事中もヒキオのことを根掘り葉掘り聞かれた。

でも明日、ヒキオとキスするって考えると、顔が赤くなっていくのが分かる。両親からはキスのこと考えすぎって言われて、より赤面していったし//

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「..//」

「「「....」」」

「ねえ、材木座君。どうして優美子のは純愛ものなの?私の時なんて私がハチを襲ってたし」

「..深くは考えていないのだが、多分以前の取材のとき、三浦殿が乙女と聞いたからだろうな。姫菜殿については、どうしてもBLの印象が強くて、通常の設定では書けなかったのだ」

「良いじゃん!!BL好きでも!!ホモの嫌いな女子はいないんだよ!!」

「「「「....」」」」

 

女性が皆、男性同士のそういったことを好きとは限らないのじゃないかしら。私は興味ないのだから。そんなことより、材木座君に私たちの扱いについて聞いておくべきね。

 

「....材木座君。どうして私たち3人が振られているのかしら」

「え!?振られたわけでなく、八幡と三浦殿がデートをしてるだけなんですが」

「..木材先輩。このラノベだと私たち三人が振られたって取られてもしょうがないですよ」

「うん、そうだよね」

「いや、そんなこと考えず書いてしまった。申し訳ない」

「良いじゃん、今回はあーしのラノベなんだし」

「優美子、中二の肩を持つの?」

「そんなことないし。あーしも最初のインターフォンのところで、ヒキオに笑われてたけど、これぐらいなら文句言うつもりはないし」

「優美子のこと、獄炎の女王って呼んでても?」

「..なんだしそれ」

「以前、中二のラノベでそう書いてたよ」

「..材木。ほんと?」

「は、はぃ...」

「材木。裏でこそこそ言うぐらいなら、本人に向かって言うし。それで怒られるなら止めればいいっしょ。ただ本人の居ないところで言うのは駄目だし。分かった?」

「..はい」

「優美子、そんなんでいいの」

「だって、あーしも材木座って知ってるのに、材木って呼んでんだよ。あーしが良くて材木が駄目って言えないし」

「み、三浦殿//」

 

三浦さんは寛大ね、でもそれで良いのかしら。八幡が何時か三浦さんのことをオカンって言っていたのだけれど、それは知っているのかしら。

 

「私はリサイクルショップって行ったことないのだけれど、服も売っているのね」

「結構あるぞ。俺も服を見に行ったことはないが」

「この間フィギュアを見に行った時、服が売っていてな。それで書いてみたのだ。三浦殿なら服とか詳しそうだし」

「このラノベに書いてるみたいに、結構良いのも置いてあるし。ヒキオって洋服一杯持ってるの?」

「余りないな。小町セレクトの組み合わせが2つあるぞ」

「ヒッキー少ないよ。もっと持ってた方が良いよ」

「じ、じゃあ、あーしと春休み、ヒキオの服を見にリサイクルショップに行くし//」

「..あたしも一緒に行くからね、ヒッキー」

「私も見てあげるよ、ハチの服」

「先輩。サッカー部のお休みのときにして下さいね」

「私も行ってみたいわね」

「..なんでみんな来るし、あーしが誘ったんだけど」

「ふーん、優美子。それってデートに誘ったの?」

「そ、そんな分けないし..」

「それなら良いじゃん」

「なあ、俺は一言も行くとは言ってないんだが」

「八幡。あなた春休みは大変よ。私の出来立て手料理食べたいと言っていたでしょ、春休みにお家に伺うわ。後、姉さんに勉強を見てもらうのよね。その時も一緒に行くから」

「ハチ、私の手料理も食べてね、弁当は皆の食べてるんでしょ」

「あたしも作りに行く!!」

「そうですね、私も伺いますから」

「あーしも撮影してもらわないといけないし」

「ま、待て。春休みっていうのは、宿題がほとんど出ず、学生が遊びまくる休日のことだぞ。俺は家でゲームで遊びつくすぞ」

「だから、あーしたちがヒキオんちで遊ぶんだし」

「そうね。ただ家で怠けてばかりいてはいけないので、たまにショッピングに行けばいいのではないかしら」

「お、俺の休みが...」

「八幡、すまんが春休みは撮影会の手伝いは出来ぬぞ」

「どこか行くのか」

「親戚が北海道にいるのでな、そちらに遊びに行くのだ」

「羨ましいな、俺の休暇はどうなるんだろうか」

 

今回の春休みは私にとっても、凄く楽しく過ごせる休みになりそうね。こんなにやらないといけない事がある長期休暇って初めてだわ。

でも八幡と読書でもしてゆっくり過ごしたいのだけれど、それは出来そうもないわね。八幡と二人、部屋でまったり過ごしてみたいわ。

 

 



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逆襲の材木座

この話の前に城廻めぐりで卒業前に書くつもりでしたが、思いつかなかったので一気に終業式まで話は飛んでます。
文字数が多くなってしまいましたが、良かったら読んでください。



今日は材木座君に皆呼ばれて集まっていたわ。どうして終業式の日に集めたのかしら。

奉仕部の皆と一色さん、三浦さん、海老名さん、相模さんが材木座君の来るの待っていると、扉をノックして川崎さんが入ってきたわ。

 

「この封筒、さっき材木座に渡されたんだけど、アイツ来れないって言ってたよ」

 

そういって、川崎さんは私に封筒を渡してきたわ。中身を確認すると、ラノベが入っているようね。読んだわけではないのだけれど、同じものが10部ほどコピーされて入っているわ。

 

「材木座君が居なくて分らないのだけれど、このラノベのために集められたのかしら」

「そうだろうな。材木座のやつ、どうせゲーセンとかに遊びに行ったんだろ」

「では読んでみましょうか。ただいつもの確認はどうすれば良いのかしら」

「俺が読もうか、どうせ出てるだろうし」

「みんなで読んでみて、読むの早い人が不味いと思ったら、止めれば良いっしょ」

「そうね、今回ページが多いのでそうしてみましょうか」

 

私たちは全員で材木座君のラノベを読み始めたわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「小町、大丈夫か」

「うん、お兄ちゃん。小町のことは気にせず、学校行ってきて良いよ」

「わ、分かった」

 

小町はそう言ったが、見るからに衰弱しているのが分かった。それというのも春休みに入ってから、総武高が何者かに乗っ取られ、禍々しい物体をまき散らし体の弱いものを苦しめていた。みんなは魔女と呼んでいたが、誰もその正体を知らなかった。

小町には総武高がそのようになったことは言っていない。入学を楽しみにしていたので、とても今の状況を話すことが俺には出来なかった。だが先ほどの会話では小町も気づいているのだろう、俺は何も言えなかった。

 

俺が家の外に出ると、隣に住む幼馴染の沙希が玄関先で待っていた。

 

「あんたのことだから学校に行くんだろ。私も行くから」

「..いや、俺は散歩に行くだけだ。今の状況で学校に近寄れないだろ」

「ふーん、そういうことにしてあげるよ。小町のことは大志に任せな、家でけーちゃんたちの看病してるから」

 

けーちゃんたちも倒れたのか。体が小さいため抵抗力がないのだろう。大志に小町を任せるのは癪だが、背に腹は代えられない。

沙希は大志を呼んで、小町の面倒を見るように言っていた。

 

「お兄さん、何があっても小町ちゃんは俺が守ります」

「..誰がお兄さんだ。お前にそう言われる筋合いはないぞ」

「でも小町ちゃんのことは任せてください」

「...分かった。小町に何かあったら許さないからな。お前に小町とけーちゃんたちを任せる....だからよろしく頼む。大志」

「はい!!!!」

 

俺は大志の胸を拳で叩いて依頼した。大志からは今までで一番いい返事が返ってきて、沙希も大志に任せると行って、俺と一緒に歩き出した。

学校に歩き出すと、家の玄関を開け猫が飛び出してきた。猫と言ってもこの異変により、体長が俺の身長より大きくなったカマクラが横に並んでついてきた。

 

「は、八幡。これってカマクラか!?」

「ああ、この異変で動物にも影響が出ているようだ」

「そうなのか、飯代が大変そうだな。でも私の猫アレルギーが出ないんだけど」

「もしかしたら、沙希の体にも異変が起こっているのかもな」

 

俺たちはカマクラと一緒に学校に向かっていったが、道には誰もいない。皆、自宅待機や学校から少しでも離れるため、遠くに行っているのだろう。

学校に歩いていくと、途中総武高校の制服を着た女子生徒が路肩に立っていた。

 

「待ってましたよ。先輩」

「いろはか!?」

 

顔や容姿は俺の知っているいろはだったのだが、彼女の後ろには禍々しい翼が生えていた。コスプレをしているわけではない。その翼はコオモリのようなもので、時折バサバサ動いていた。

 

「ふふ、私の体からいきなり翼としっぽが生えてきたんですよ。だから制服とパンティ破いちゃったんですけど、似合っているでしょ」

「..いろは、なんで俺たちの前を遮るように立っているんだ」

「だって先輩たちを止めないと行けませんからね、学校には行かせませんよ」

 

そういうと、いろはは翼を羽ばたかせて、空中に飛翔しだした。

 

「は、八幡。なんだよあれ!?」

「分らん。だが俺たちの邪魔をするようなら戦うしかないだろうな」

「あんた、戦えるの!?一色だろ!!」

 

俺たちが話していると、いろはは空中でクリスタルのようなものを両手で挟み囁きだした。いろはの囁きが終わると遠くの方から呻き声が聞こえてきて、段々俺たちの方に近寄ってきているのだろう、声が大きくなってきて姿を現した。そいつらは総武の制服を着た男子生徒達だったが、目の焦点が合っておらず、ゾンビのようにゆっくり俺たちの方に近寄ってきた。

 

「先輩。その子たちは私の奴隷なんですよ、今から先輩を生け捕りにしますからね」

「八幡!!どうするのさ!?」

「戦うしかないだろ、今から魔法を詠唱する。沙希、すまんがそれまではアイツらを防いでくれ」

「戦えって私に何が出来るのさ!?空手しか出来ないんだから!!」

 

そう言いながらも、沙希は拳を前に出して空手の構えをしていた。沙希は近くまで近寄ってきた男子生徒に正拳突きを食らわすと、その生徒は10m以上吹き飛ばされていた。す、すさまじい威力だな。

 

「こ、これって!?でもこれなら戦える!!」

 

俺は目を閉じ詠唱を始めた。自分でもなぜこんなことが出来るのか分からないが、異変が起こってから頭の中に言葉が浮かんでくるようになり、それを集中しながら口に出すと、魔法が唱えられるようになっていた。

目を閉じていても沙希が戦っているのが、耳を通して伝わってくる。沙希も異変で身体に影響が出ているのだろう。

俺が詠唱を終わると、沙希の体が輝きだした。眩い光が収まると、沙希の体には肩当てやガントレットが装備されていた。

 

「凄い!!」

「体の動きは邪魔しないはずだ」

「サンキュー!!愛してるぜ八幡!!」

 

沙希は装備品の重さを感じさせない、逆に身体能力が大幅に向上しているような動きを見せていた。俺は沙希を見届けると、自分に対しても魔法を使った。

 

黒鳥嵐飛(レイ・ヴン)

 

俺の体は空中を飛翔し、いろはに迫っていった。

 

「...やっぱり先輩は邪魔ですね。生け捕りにはできそうもないですよ、魔女」

「いろは、魔女とは誰なんだ?俺の知っているやつか」

「そんなの、関係ないじゃないですかぁ。今は私が相手なんですから」

 

いろははそういうと、手に持っていたクリスタルを天にかざした。

 

「我が忠実なる僕に命ず 主の召喚に応えよ 巨像よ覚醒めよ。巨像覚醒(モータ・ルシー)

 

いろはが魔法を唱えると、近くのビルが崩れ石のゴーレムが現れた。大きさが10mは超えている。だが俺は今、空を飛んでいるんだ。どうやってこちらを攻撃するんだ?

ゴーレムは俺を見ていたが、いきなり方向を変え、沙希に向かっていた。

沙希は正面の生徒達を相手するのに必死で、ゴーレムの動きが見えていなかった。沙希は死角からゴーレムの蹴りを受け壁に激突していた。

 

ガハッ!!

 

「沙希!!」

「は、はちま ん。だ、だいじぃ」 ゴフッ

 

八幡。ごめん、私が足手纏いになって。でもまだ戦える!!私は、震える足で立ち上がると、男子生徒達を倒していった。突きや蹴りを繰り出すたびに体中が悲鳴を上げている。内臓がやられたのか口から止めどなく血が出てくる。

足にはヒビが入っているのだろう、左手が折れている。でも私は戦うのをやめなかった。少しでも八幡の役に立ちたい。私は何とか最後の生徒を倒したけど、そこで力尽きて倒れてしまった。

私はここまでだろうけど、少しでも八幡の役に立てたなら嬉しいな。何時も私のご飯を食べて、おいしいって言ってくれる八幡が大好きだった。こんなになってしまった今だから、私の素直な気持ちを言える。

 

「はちまん、すき.だ.よ」

 

沙希が何か呟いていたが、声が小さく俺の耳には聞こえてこなかった。ただ、かなり不味い状況ということだけはわかる。

 

「カマクラ!!」

 

俺がカマクラを呼ぶと、カマクラは沙希に駆け寄っていき、口に咥えてゴーレムから距離を取っていた。俺が沙希を見ていると、カマクラに声を掛けている女性がいた。

 

「カマクラちゃん!!こっちに来て!!」

「姫菜か!?どうしたんだ、その耳は!!」

「今はそんなことより、サキサキを治療しないと」

「頼めるのか」

「任せて、だからハチは一色ちゃんを」

 

俺は沙希を姫菜に任せて、いろはに向き直った。いろははゴーレムに守られるようにして、後ろに浮かんでいた。

 

「許さないぞ、いろは」

「どう許さないんですか、先輩。この子に勝てるんですか」

 

「ブー・レイ・ブー・レイ・ン・デー・ド 血の盟約に従いアバドンの地より来たれ  ゲヘナの火よ 爆炎となり 全てを焼き尽くせ」

「先輩。この子、石で出来てるんですよ。炎で倒せるわけないですよ」

炎魔焦熱地獄(エグ・ゾーダス)!!!!」

 

俺は魔法を唱え、ゴーレムに向かっていった。ゴーレムの腹に突っ込んでいくと、石が真っ赤になり溶岩のように溶けだしていった。

 

「え!?い、石を溶かしてる!?キャーーー!!」

 

俺はゴーレムを溶かしながら腹部を貫いて行き、いろはの持っていたクリスタルを叩き割っていた。

意識を失ったいろはを抱え地上に降りると、いろはを路肩に寝かせた。沙希と姫菜、カマクラが俺たちに駆け寄ってくる。

 

「ハチ、一色ちゃん大丈夫なの?」

「ああ、クリスタルを割ったら羽と尻尾がなくなっただろ。それより沙希は」

「うん。治療したけど、私の力だと完全に治せないんだ...」

「ありがとう、海老名。何とか体は動かせるよ」

「姫菜は僧侶なのか?エルフみたいな耳になってるな」

「うん、でも回復魔法とかまだちゃんと使えないみたい。...沙希、ごめん。もしかしたら内出血したところ、後が残るかも...」

「海老名、気にしないで。私は死にそうだったんだ。それを治して貰っただけで有難いよ。カマクラもありがとうね、私を助けてくれて」

「にゃーん」

 

俺たちが話していると、遠くの方で魔力が集まっていくのが、感じ取れた。

 

ゴゥ!!

 

俺たちに放たれた炎がすごい勢いで駆け抜けてくる、俺は沙希と姫菜を抱えて間一髪よけていた。

 

「ふーん、今の避けたんだ。当たってくれてたら楽だったし」

「優美子!?」

「ヒキオ、あーしと戦うし」

「お前も魔女の手下か」

「そんなこと、どうでもいいし。じゃあ、あーしから行くよ」

 

優美子はそういうと、魔法を詠唱しだした。

 

雷神召来(セカン・ヒード) 我は命ずる 暗き天より来たれ 雷の精 霊撃雷電襲(ギルバルド)

 

あの詠唱は!!俺も少し遅れたが、詠唱を始めた。

 

火炎召来(アー・ターブ・サン) 不滅なる燃焼よ 我が導きに従え 霊破火炎陣(ダ・フォーラ)

 

魔法を詠唱し終えると、優美子の周りを雷精が俺の周りをサラマンダーが飛び交っていた。

 

「ふ、ふたりとも凄い!!あれだけの精霊を召喚・制御できるなんて」

「でも魔法勝負なら八幡の方が上っぽいね。精霊の数が八幡の方が多いよ」

 

精霊たちはお互い戦う相手を見つけ攻撃していた。俺の残った精霊たちは優美子を攻撃していた。優美子の劣勢で進んでいると、雷精がサラマンダーの攻撃を逃れ、沙希と姫菜がいるほうに向かっていった。

 

「「きゃーーー!!」」

「沙希!!姫菜!!」

「「大丈夫!!」」

「...ヒキオ、あーし相手に手を抜いていると、あんたの大事なもの奪ってやるから」

「優美子!!」

 

ごめん。姫菜、川崎さん。精霊を制御しきれず攻撃してしまったし。でも、あーしにはこれしかないんだ。もう時間がない、今度で最後にしないと。やっぱり自分の気持ちに嘘を付けない。だからヒキオ、今度であーしを殺して。

 

「行くよ、ヒキオ。あーしの取って置きの魔法を見せてあげるし」

「分った、優美子」

「「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク  灰燼と化せ 冥界の賢者 七つの鍵をもて開け 地獄の門」」

「ハチと優美子が二人同時に同じ魔法を詠唱しだした!!」

「「七鍵守護神!!(ハーロ・イーン)」」

 

あーしとヒキオの魔法がぶつかり合って、辺りを崩壊させていく。拮抗してるんだけど、段々あーしの方に近寄ってきてるし。でもその方がいい。このままあーしの身体を塵一つ残さず、焼き尽くしてほしいし。

ヒキオ、好きだよ。この気持ちをずっと伝えたかった。でも、もう良いし。今はヒキオにだけはあーしの醜くなる姿を見せたくない。だからヒキオの手であーしを消し去って。偶にはあーしが居たことを思い出してね。

 

「ヒキオ..ううん、八幡。愛してるよ」

 

(おにいちゃん!!優美子さんをちゃんと見て!!)

なんだ?小町が俺の中で何かを叫んでいる。優美子を見ろ?どういうことだ?

俺は魔法を放出しながら優美子をみると、涙を流して俺に微笑んでいた。そして右手の先から血を垂れ流しているのが見えた。あ、あの爪の色は青爪邪核呪詛(アキューズド)!!なんで優美子に呪いがかかっているんだ!?

あのままだと、カエルの姿になってしまうはず。そしてあれを解除できるのは俺の心臓!!

 

「優美子ォーーーー!!!!」

 

ヒキオが叫ぶと魔法が上空に方向を変え消し飛んでいく。ヒキオは何時の間にかあーしの前に立っていた。

 

「ヒキオ..」

「すまん、優美子。苦しかっただろう、ごめん。気づいてあげれなくて」

 

ヒキオはそういうと、自分の胸に手を当て、詠唱したと思うと、魔法を自分の心臓に放っていた。

いや、なんで...

 

「いやーーーーー!!!!」バシューーゥ

 

「い、今、優美子の身体から、なんか禍々しいものが飛んでったよ!!」

「は、八幡は!?」

 

優美子からなんか飛んでいくと、ハチの身体は優美子の方に倒れていった。私と沙希が優美子に駆け寄っていくと、ハチは胸から血を流していて優美子に抱えられていた。優美子は泣き叫んでいて、サキサキも泣き出してしまった。私も泣きたかったけど、今は治療が先決だ。

私が絶対ハチを生き返らせるから!!私が初めて好きになった男性を失いたくない。私の趣味を知っても受け入れてくれて、普通に接してくれるハチが好き。だから生き返って!!

私は何度も蘇生の魔法を繰り返し使っていた。頭の中で何か焼き切れているような感覚がする。でも今はハチを生き返らせることを優先したい。私はどうなってもいい、神様!!愛おしいハチを生き返らせて!!

 

「お願いハチ!!目を開けてよ!!私まだハチに何も言えてないんだよ!!お願いだから想いを伝えさせてよ....ウゥ」

 

私はハチに何度も魔法を使って傷は完全に治したけど、ハチが目を開けることはなかった。

....

...

..

.

「ごめん。ごめん。あーしのせいでヒキオが..」

「....私は学校にいくから」

「..川崎さん。どうして」

「八幡がやろうとしたことを私がやるだけだよ」

「うん、サキサキ。私も行く。...優美子は無理しないで」

「..あーしも行くよ。ヒキオに助けてもらった命、ヒキオの守りたい者の為に使う」

 

私と優美子、サキサキが学校に向けて歩き出したけど、はっきり言ってこの三人は満身創痍だった。私は魔法を使いすぎていたし、記憶が曖昧になってきている。サキサキは一色ちゃんとの戦いでやられた傷が回復していない。優美子もハチとの戦いで大きな魔法使ってたし、呪いで出来たのだろうか、肌が見えるところだけでも五分の一ほど変色して黒くなっている。私たちを心配してか、カマクラちゃんが私たちを守るように歩いてくれていた。

たまに魑魅魍魎が私達の方に向かってきたけど、優美子の魔法ですぐに消し飛んでいった。

 

「あーしにはこんなことしか出来ないし。だからあんたたちは極力、力を残していおいて」

 

優美子も大変なはずなのに、私達のために力を使ってくれていた。足が震えていて優美子もかなり無理をしているのが分かった。でも私には優美子の代わりなんてできないし、サキサキにもあんなこと出来ない。結局私は誰かに頼るしかないんだ。ごめん優美子、今は頼らせてね。

 

私たちは学校まで歩いて行った。学校の校門前に一人、見知った先生が立っているのが見えた。

 

「....平塚先生。あなたはどちら側ですか」

「海老名、変な質問だな。そんなのは決まっているだろ!!」

 

そういうと、平塚先生はいきなり私に殴りかかってきた。殴られる!!私は目を瞑って衝撃に備えていたけど、私が殴られることはなかった。恐る恐る目を開けると、そこには平塚先生の攻撃を防いでいる女子生徒がいた。

 

ガシッ!!

 

「海老名さん、下がって!!」

「さ、相模さん!?」

「相模か、...お前のそのブレード...」

「村雨、伝説の宝剣ですよ。相模家で隠し持っていたんです」

「相手にとって不足はないな」

 

相模さんと平塚先生が戦いだした。相模さんは侍?忍者だろうか、制服の上から甲冑を身に纏い平塚先生に切りかかっている。でも先生も凄い!!私には目で追えない相模さんの攻撃を全て躱している。

でもなんだろう、相模さんが押しているように見えるけれど、相模さんが後ろに段々下がっていっている。そう思っていると、平塚先生の蹴りが相模さんの腹部を捉えていた。

 

ドスッ!!

 

「ウグッ!!...さ、さすがですね、先生」

「ふん、お前になど遅れを取るものか」

「相模、加勢するから」

「あーしも」

「駄目!!二人とも立っているのもやっとでしょ。うちに任して今は体力を温存して」

「でも、相模がやられたら、あーしらもやられるし!!」

「...先生。最後まで付き合ってもらいますよ。....村雨よ、お前の本当の力を今、我が前に示せ!!」

 

相模さんがそう叫ぶと、刀の柄の部分が長くなっていた。真ん中で二つに分かれ、幾つもの角みたいなものが出てきている。

 

「燃やせ 灰となるまで 我が命よ! 白人と化して奴の喉笛を ぶっちぎれーーー!!」

 

「こ、これは!?..グワアーーー!!」

 

や、やった。相模さんが平塚先生を倒した!?でも相模さんも全身から血を噴き出して倒れてしまった。刀から生えている角みたいなのに何か吸われていたようだったけど、もしかして相模さんの精気を吸われてたんじゃ...

 

「..ふーーー、まだだ。終わらせんよ、こんなところで」

 

そ、そんな。相模さんの命を懸けた一撃でも倒せないなんて。私が見ていると、平塚先生も相模さんも立ち上がろうとしている。駄目!!もう立たなくていいから!!相模さんの白目は充血していて真っ赤になっていた。ああなってしまったら、私の魔法なんかでは治せない。なんで相模さんはそこまで出来るの?

 

「ゴフッ...せ、先生。まだですよ。うちにはまだやり残したことがあるんだから」

 

うちは八幡に助けられた。八幡のことだからうちを助けたとは言わないだろうけど。でも八幡がうちを助けてくれなかったらどうなっていたかなんて、少し考えれば分かる。

それにうちは八幡のことが大好きだから。八幡のためなら命を捨ててもいい、本当に人を愛するってことを教えてくれたから。

うちがそんなことを考えていると、強大な魔力がこちらに近づいてくるのが分かった。こ、この気って八幡!?でも先生も気づいているのだろう、八幡が来る前に皆を倒すため、呼吸を整え気を溜めだした。

 

村雨、もう一回、力を貸して。うちの命を使っていいから。だから八幡の大事な皆を守るため、うちに力を貸して。

 

「行きますよ、先生」

「受けきってやるさ、お前を倒せば死にぞこないばかりだからな」

 

村雨がまた精気を吸い出した。うちの残り少ない精気を吸っているのだろう、この攻撃でうちは死ぬんだね。最後に八幡に会いたかったな。

 

「八幡。お別れだね、大好きだよ」

 

うちが技を出そうとすると、村雨の刀身が光り輝きだした。

 

慶雲鬼忍剣(けいうんきにんけん)!!」

「な、なにーーー!?さ、先ほどとは威力が違う!!...グワーッ!!」

 

ドカーーーン!!

 

うちは技を出した後、放心していた。でも先生は倒れてるけど、うちは命尽きることなく、その場に立っていた。どうして?

そう考えていると、三浦さん、海老名さん、川崎さんがうちに駆け寄ってきて抱きつき褒め讃えてくれた。カマクラちゃんもうちの身体に付いている血を舐めとって綺麗にしてくれてた。

暫くすると、八幡が飛んできて、うち達みんなに抱きついてきた。

 

「南、大丈夫か!?」

「うん、八幡こそ大丈夫なの?」

「ヒキオ!!生きてたんだ!!ごめん、あーしのせいで!!」

「優美子、大丈夫だ。俺は生きてるから気にするな」

「八幡、よかった!!本当に良かった!!うぅ」

「ハチ、心配かけないでよ!!」

「よく分からないんだが、夢の中で俺に南の精気が流れてくるのを感じたんだ。そしたら目覚めていた」

 

うぅ..

 

うち達が話していると、先生の方から呻き声が聞こえてきた。うち達は注意しながら先生を確認すると、皆、呆然としてしまった。先生の顔はすごく年老いた老婆のようになっていたから。

もしかして、村雨が2回目精気を吸い出したのは、先生からなの?でもそう考えると、うちが生きているのが頷ける。慶雲鬼忍剣を放った時は村雨が力を貸してくれたように感じたし。

 

「すまない、南。俺に命を分け与えてくれたんだな」

「ううん、村雨がやったことだから。でもそう言ってくれてありがとう」

「南、その目...」

「うん、良いの。視界は真っ赤だけど、目は見えるし大事なものは守れたから」

「..無理をさせてすまなかった、皆を守ってくれてありがとう」

「八幡//..でも今はそんなことより、やることあるでしょ」

「そうだな」

 

俺たちが、校舎の方に目を向けると、一部の教室の周りに氷が張り付いてるのが見て取れた。氷の中心は奉仕部か。あそこに魔女が居るのか。俺は魔女が誰か確信した。ただ、なぜこんなことを。

俺たちは奉仕部に向かうため、校舎に入ったが、ここにも人が誰もいない。誰にも邪魔されることなく、奉仕部の部室まで辿り着いていた。

部室の扉を開けると想像していた通り、雪乃が優雅に紅茶を飲んでいた。ただ教室内には氷が張り巡らされ、俺たちは教室内に入れなかった。

 

「来たのね、八幡」

「..雪乃、お前が魔女なのか」

「それに答える必要はあるのかしら。貴方はここで私のものになるのだから」

 

雪乃がそういうと、彼女の周りの空気が冷えだした。空気中の水蒸気が結晶化しているのだろう。ダイヤモンドダストが出来、幻影的な光景が広がっていた。

 

「雪乃を倒してこの戦いを終わりにする!!」

「あなたに出来るのかしら」

「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク  灰燼と化せ 冥界の賢者 七つの鍵をもて開け 地獄の門 七鍵守護神!!(ハーロ・イーン)

 

ハチが放った七鍵守護神が雪ノ下さんに当たると思ったとき、七鍵守護神は方向を曲げ、窓を突き破り外へと出て行った。雪ノ下さんは動くことなく、紅茶を飲んでいる。

 

「あ、あれは!?」

「川崎さん、貴女ならわかるかしら。そうよ、私の周りは絶対零度で保たれているの。そこに電流を流せば、強力な電磁波を発生させられるわ」

「ちょ、超電導!?」

「どうすれば良いんだ、沙希」

 

私たちが話していると、カマクラちゃんが私たちの身体を押しのけてきた。

 

「カ、カマクラ!?」

「あら、カマクラさん。貴方すごく大きくなったのね。私の相棒にしてあげるわ。こちらにいらっしゃい」

 

カマクラちゃんは私たち全員の顔を見て、何かを決心したように教室に入っていった。

雪ノ下さんはカマクラちゃんが歩くところだけ、氷の結晶を消し去りカマクラちゃんが歩きやすいようにしていた。

 

「ふふ、カマクラさん。可愛いわね。あなたが居れば猫に包まれて眠る夢を叶えられるわ」

 

雪ノ下さんはそう言ってカマクラちゃんに手を差し出した。カマクラちゃんは雪ノ下さんの手を舐めていき、雪ノ下さんの顔も舐めだした。

 

「カ、カマクラさん。それは後にして頂戴。みんな見てるでしょ//」

 

カマクラちゃんは雪ノ下さんの言うことを聞かず、顔を舐めていた。雪ノ下さんが目を閉じたとき、カマクラちゃんの表情は一転、獲物を狙う獣の顔になって、口を大きく開いていた。

私たちが見ていると、大きく開いた口で雪ノ下さんの頭を咥えこんでいた。あれでは魔法を詠唱できない。雪ノ下さんは手足をバタバタさせていたたけど、そのうち動かなくなって、周りの氷も無くなっていった。

カマクラちゃんが雪ノ下さんを吐き出すと、彼女は気絶していた。

 

「..八幡、もしかしてこれで終わり?」

「ねぇ、ヒキオ。そうなの?」

「終わったことは良いんだけど」

「うん。うちも最後だから...もうちょっと、ね」

「..ただ、辺りを漂っている禍々しい雰囲気は変わっていないんだが」

「じゃあ、雪ノ下さんが魔女じゃなかったってこと」

 

その時、校舎の下の方で爆発が起こった。私たちが走っていくと、家庭科室から紫色の煙が立ち上っている。

 

「あっちゃー、また失敗しちゃったし」

「「「結衣!?」」」「結衣ちゃん!?」「由比ヶ浜!?」

「小町ちゃんの入学祝いのためにケーキ作ってんだけどね、なんだかおかしいの。変なものばっかり出来ちゃうし。食べたサブレもほら」

 

そういって結衣の指さす方を見ると、校庭で遊んでいる犬の姿があった。ただ車より大きく5mは超えてるだろう、顔が三つあるケルベロスが車を転がして遊んでいた。

 

「..ダークマター」

「みんなでケーキ作ってたんだけどね。ゆきのんもいろはちゃんも先生も食べた後、どこか行っちゃって誰も教えてくれないんだ」

「思い出した。あーしも結衣の机の上にあった変なの触ってからだったし。呪われたの」

「....ねえ、結衣。どうしてそんな格好してるの」

 

結衣はほとんど紐の黒い水着を付けており、白いガーターベルト、黒の網タイツを履いていた。

 

「ヒッキー。どう、あたしに欲情した?この爆乳元帥結衣ちゃんに」

「「「結衣!?」」」「結衣ちゃん!?」「由比ヶ浜!?」

「ヒッキー。このケーキ食べて、あたしのものになって。そしたらみんな助けてあげるよ」

 

そういうと、結衣は手の平を私達に向け、魔法を詠唱しだした。早くて何も聞き取れない。ただ私たちは何かに体を縛られたように動けなくなっていた。

 

「止めるんだ、結衣!!」

「ヒッキー、あたしのものになってくれるんだよね」

「嫌だ。俺は沙希、姫菜、優美子、南が好きだ。俺の為、皆の為に自分の命を擦り減らして守ろうとしてくれた皆が好きだ!!」

「ヒキオ//」「ハチ//」「「八幡//」」

「ふーん、じゃあみんな死んじゃってもいいんだ。サブレ!!食べちゃって!!」

 

結衣が叫ぶとケルベロスのサブレが窓を突き破って入ってきた。私たちを食べるために三つの大きい口を開け迫ってきた。

 

「サブレ、お座り」

 

ハチが落ち着いた口調で言うとサブレは動きを止め、ハチのことを見ていた。

 

「サブレ、お座り」

 

また一緒の口調で言うと、サブレはハチの横に移動してお座りをし、頭を下げていた。三つの頭をハチは順番に撫でていった。

 

「ど、どうして?サブレ!!あたしがご主人だよ!!」

「俺とサブレはそんなご主人とか関係ないんだよ。な、サブレ」

「「「くぅーん」」」

「あったま来た!!皆殺してあげるから!!」

 

そういうと、結衣は私達の締め付けを強くしてきた。ハチは魔法を詠唱しだしたため、目を閉じている。

か、体が引き裂かれそう。でも、私達は誰も呻き声も上げなかった。私はハチの邪魔をしたくないから、皆も一緒の気持ちなんだろう。

 

「ヘド バン ギア 汝ら 我が頭で奏でし女神 唱える者 スゥメタル ユイメタル モアメタルの召喚に応じよ 狐神憑依少女!!(ベビーメタル)

 

ハチが魔法を唱え終わると、結衣に三匹の狐が襲い掛かっていた。狐たちは結衣の身体を攻撃するわけではなく、結衣の体内に入り込んで行くと、歌声が聞こえだし結衣は頭を前後に大きく振り出していた。

暫くすると結衣の頭のお団子が動きに付いていけないのか、いきなり転げ落ちてきて結衣は気を失いその場に崩れ、私たちを締め付けていた力も消えていった。

落ちた髪の毛のお団子を見ていると、モゾモゾ動き出し紫色の蟲だろうか蠢いている得体の知れないものに変化していった。

 

キシャーー!!キシャーー!!

 

ハチはその蟲を魔法で消し去っていた。

 

「結衣もこいつに操られていたのさ。これで元に戻るだろう」

「これで終わったんだよね、ハチ」

「よかった。これでけーちゃんたちも小町も救われる」

「うん、大変だったけど、終わったんだよね」

「結衣も良かった。これで元に戻れるし」

 

良かった、これでやっと普通に暮らせる。でも私は今、家のことを思い出そうとしてたけど、記憶があやふやで両親の名前も顔も思い出せない。家ってどこだったんだろう、家族は?今、周りにいる人たちのことしか分からなくて、他のことが思い出せなくなっていた。

 

「..いや、終わりじゃない。俺の力は異常だ、この世界ではもう過ごせない。...だから俺は異世界に行く」

 

ハチはそういうと、隣にいるカマクラ、サブレの頭を撫でていた。二匹も連れて行くんだろう。

 

「八幡、私も行くよ。弟妹は大志と小町が入れば問題ないだろうし。私はあんたに付いて行くって決めてたから。..八幡。私はあんたのことが好き//だから付いていく//」

「沙希、俺も沙希のことが好きだ。だから一緒に来てくれ」

 

「そうだね、あーしもこんな力持ってたら、世界を滅茶苦茶にしちゃうかも知んないし。こんな身体見られたくないしね。ヒキオ、一緒に行っていい?」

「優美子。お前の体は綺麗だぞ。一緒に行こう、俺は優美子のことが好きだ」

「うん。あーしも八幡のこと、大好き//」

 

「うちも行くよ。うちもこっちでまともに暮らせるとは思っていないし、皆といた方が楽しく過ごせそうだしね。八幡、うちもあんたのことが好き//だから一緒に連れてって」

「南、お前が俺を救ってくれたんだ。また異世界でも救ってほしい。俺も南が好きだ。一緒に来てくれ」

 

「私も行くよ。記憶が壊れちゃったみたいで、何も思い出せないの。ここにいる人たちしか分からない。だからハチ、ううん。八幡、好きです。私のことも愛して//」

「いくらでも愛してやる。俺も姫菜のことが好きだ。そして姫菜の力が俺には必要なんだ。力を貸してくれ」

 

八幡は魔法を詠唱しだした。唱え終わると異世界への通路が出来上がっていた。

 

「これを通ると、もう戻れないからな。覚悟を決めておいてくれ」

 

(お兄ちゃん、聞こえる?)

(小町か!?体は大丈夫なのか?)

(体の不調はなくなったよ、けーちゃんたちも大丈夫。お兄ちゃん、ずっと見ていたから、何があったのか分かっているよ。後のことは心配しないで。皆と仲良く過ごしてね)

(ああ、悪いが後始末をお願いするぞ)

(うん、お義姉ちゃんたちを泣かしたら駄目だからね。後、カー君とサブレも面倒見てあげてね)

(すまん。みんな連れてくから)

(最後にちゃんとお礼を言わせて。..ありがとう、お兄ちゃん。大好きだよ)

(こちらこそ今までありがとうな、小町。俺も大好きだぞ)

 

「じゃあ、行こうか」

「「「「うん!!」」」」

「「「わん!!」」」

「にゃん!!」

 

私たちはこうして、この世界を離れていった。異世界は中世ぐらいの時代みたいで、その世界でみんな仲良く過ごしている。こっちでも八幡や優美子の魔法は別格だったし、沙希と南に敵う相手なんていなかった。私も完全治癒魔法を覚え、皆の体の傷を綺麗に治した。私の記憶までは戻すことは出来なかったけど、今の暮らしが楽しくて思い出せなくても悲しくなかった。

 

私達は普通の生活を送りたくて、森の中にあった家を買ってみんなで過ごしている。たまに町に降りては討伐とかのクエストをして生計を立てていたんだけど、私達にしてみたら簡単な仕事ばかりだった。

カマクラちゃんは馬のように人を乗せてくれる。サブレは番犬として私達の住む森を守ってくれてたし、皆で移動するときはカマクラちゃんも含めて背中に乗せてもらってた。

 

「「「「「ただいま!!」」」」」

「久しぶりの我が家だな」

「うん、今回の討伐は時間かかったね。怪物が洞窟を逃げまわっていたから」

「でも、うちは楽しかったな。鬼ごっこしてるみたいで」

「あーしはやだ。あんな暗くてジメジメしたところ」

「私もイヤ、もう行きたくない。何でお化けみたいなのが居るんだ」

「優美子も沙希も怖がりだからな」

「..うん、だからご飯食べたら八幡に慰めてもらうから//」

「は!?」

「あーしも忘れるぐらい八幡に慰めてもらわないと//」

「へ!?」

「う、うん。うちも実は怖かったんだ。だから八幡、慰めてね//」

「..」

「わ、私も怖かったよぉ。だから八幡に慰めてもらわないと震えが止まらなくて//」

「....」

「皆でご飯を食べたら、八幡に慰めてもらうし//」

「あ、あのう皆さん。まだお昼前ですよ。今日は体を休めて明日からってことで」

「「「「だめ!!」」」」

 

私達4人でご飯を用意し、昼食を食べ終わると八幡を寝室まで引き摺っていった。でも八幡も本当は慰めたかったみたいで、既に臨戦態勢に入っているんだけど//

 

(サブレ君、いるかニャー)

(((カマっち、また始まったのかワン)))

(うん、またこんな昼間からパコパコしだしたニャー)

(((帰ってきたばかりでよくやるワン。僕の寝床で良いならゆっくりしてって良いワン)))

(ありがとニャン)

 

八幡はベッドで私達四人を代わる代わる慰めてくれた。

私たちは毎日、八幡に愛され満たされながら、この世界でずっと仲良く暮らしていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「「「....//」」」」」

「「「..........」」」

 

「...ヒッキー、中二の電話番号知ってるよね。スマホ貸して」

「い、いや、電話するのは迷惑だろ」

「良いから」ニコッ

「..はぃ」

「由比ヶ浜さん。スピーカーにして貰えるかしら」

 

Purururururu、Purururururu ガチャ

 

『どうした、八幡。我は剣豪将軍なるぞ』

「中二、今すぐ部室来て」

『ゆ、由比ヶ浜殿か。我は明日、旅立つので今日は忙しいのだ』

「木材先輩、早く来てください。いくらでも待ちますから」

『わ、我は行けぬぞ』

「材木座君、どうして私達があのような扱いを受けているのか、教えてほしいのだけれど」

『..あれは、気の迷いというか、何時も指導して頂いているのでそのお礼でしゅ』

「へぇ、お礼なんだ。じゃあ、あたし達もお礼しないとね」

『..由比ヶ浜殿、我も魔術を扱えるのだぞ』

「ふーん、じゃあ、今すぐ使ってみてよ」

『良いのか、由比ヶ浜殿が大変なことになるぞ』

「材木座君、そんなこと言って誤魔化そうとしても無駄よ、早く来なさい」

「木材先輩に色々聞かないと行けないので、一刻も早く来てください」

「そうだよ、中二。電話じゃ何もできないでしょ。早く来て」

『ほーん。どうなっても知らぬからな、では行くぞ。..スッーーー』

 

スマホの向こうから材木座君が息を大きく吸い込む音が聞こえてくるわね。なぜ彼はこれほど自信満々なのかしら、なんだか不味い気がしてきたわ。

 

「由比ヶ浜さん!!通話を切って!!」

『由比ヶ浜殿のスマホに八幡とイチャイチャチュッチュしてる写真が入っておるぞ!!』ブチッ..プープープー

「「「「「....」」」」」

 

ざ、材木座君はなんてことを言うのかしら。不味いわね、由比ヶ浜さんが彼に撮影してもらってたのを言っているのね。

 

「で、ではこれで今日は終わりにしましょうか」

「う、うん。あたし帰るね」

「あ、ああ、俺も帰ろうかな」

「雪ノ下、由比ヶ浜、八幡。座ってな」

「「「はぃ」」」

「結衣、スマホ見せるし」

「い、いやぁ。プライベートな写真もあるから、人にスマホを渡すのはよくないよねぇ。あはは.は..」

「結衣先輩。私と川崎先輩、相模先輩のスマホ見ましたよね」

「結衣ちゃん、スマホ」

 

由比ヶ浜さんは涙目になりながら、スマホを渡しているわ。

 

「由比ヶ浜は部室で撮ったんだ。頬を合わせてるんだね」

「ふーん、結衣。雪ノ下さんにずるいって言ってたけど、自分もいつの間にか撮ってたんだ。あーし達と一緒に撮るって言ってたのに」

「こっちはおでこと鼻を合わせてますね。もうちょっとで先輩とキスしそうですけど」

「「「「「...え!?」」」」」

「..結衣がほっぺたにチューしてるんだけど。ハチ、どういうこと」

「..されたんだよ」

「..ふーん。後、膝枕ね。雪ノ下さんやうち達がやったからかな」

「「「「「....//」」」」」

「....後ろから結衣先輩が覆いかぶさってキスしてますね。部室でこんなことしてたなんて」

「..ご、ごめんなさい。上書きしたくて」

「なんだし、上書きって」

「..あたし達の撮影会の時、かおりんと千佳ちんにヒッキーがキスされてたの。あたしが受験失敗するラノベを読んだ直後で、どうしても私もして欲しくって我儘言って撮ってもらったの。ゆきのんには撮影駄目って言って」

「「「「「ふーん」」」」」

 

由比ヶ浜さんがキスしたときは落ち込んでいた時だから、仕方ないと思ったのだけれど、皆には言い訳にしか聞こえないわね。

 

「ヒキオ、撮影で他に抜け駆けした人いない?」

 

八幡は私の方を見てきたのだけれど、諦めたのか呟きだしたわ。

 

「..俺が陽乃と雪乃の頬にキスした...」

「「「「「「はぁ!?」」」」」」

「ゆきのん、どういうことだし!!また抜け駆けして!!」

「結衣は黙ってな。あんたも一緒だし」

「うっ..」

「雪ノ下さん。写真は」

「..今はスマホに入れていないの。家のパソコンに入っているわ」

「ハチは持ってないの?」

「..俺も家のパソコンに入れてある」

 

以前はスマホに入れていたのだけれど、私が見ているとき覗かれると不味いので消しておいて良かったわ。

八幡の家で見ないわよね。私の表情を見られるのは恥ずかしいわ。でも八幡は見てくれてるのかしら。それなら、写真でなく私を見てくれればいいのに。

 

「この中で、自分が抜け駆けしたって思ってる人いる?いるなら正直に言いな」

 

川崎さんにそう言われ、私は恐る恐る手を挙げたわ。もう隠し事はしない方が良いわね。

 

「雪ノ下さん、ヒキオにキスして貰ったこと?」

「..いいえ、私も意図せず撮ってもらったの」

「雪乃、俺も分からないんだが」

「....八幡が寝ているとき布団に入っていたら、八幡が私の胸に顔を埋めてきたの//それを小町さんが撮っていたのよ//」

「「「「「「「「....//」」」」」」」」

「..ゆきのん、また抜け駆け」

「知らなかった//それって陽乃と雪乃が家庭教師で来てくれたときか、沙希達の撮影会の次の日だな」

 

私は頭を下げて肯定したのだけれど、恥ずかしくて言葉が出せないわ。

 

「そ、それも撮ってもらえばいいし//」

「まて優美子。それはいくら何でも恥ずかしいから撮れないぞ//」

「ハチは寝てたんだから無意識だろうし、私達も恥ずかしいよ//」

「うん、うちも恥ずかしい//」

「じゃあ、それ以外を今からここで撮ってもらいましょうよ」

「一色。それはいくら何でも不味いだろ、ここで誰かに見られたら問題になるだろうし。あんた生徒会長だよ」

「じゃあ、うち達は今から八幡の家に行って、一緒の写真撮ってもらおうよ。雪ノ下さんの写真も確認できるし」

「うん、それが良いね。結衣と雪ノ下さんは撮影係で今日の撮影無しってことで」

「ええ!?あたし、ヒッキーにキスして貰ってないし!!」

「姫菜、結衣も撮ってあげようよ。全員一緒の方が良いっしょ」

「なあ、せめて今からじゃなくて、明日以降にしないか。この間、結衣が言っていたけど、南といろはみたいな写真も撮るんだろ//」

「そっか、じゃあ明日で良いっしょ。駄目な人いる?....いないから明日、水着持ってくし」

 

「いろは、明日サッカー部は良いのか」

「良いんですよ」ニコッ

「休みじゃないだろ」

「良いんですよ」ニコッ

 

一色さんはサッカー部を休むつもりね、でも今日は私からは何も言えないわ。撮影って私も撮ってもらえるのかしら、確認しておかないと。

 

「あ、あの私も水着持って行って良いのかしら。写真撮影して貰ってもぃぃ?」

 

私は後ろめたいので、最後小声になってしまったわ。許してもらえると良いのだけれど。

 

「雪ノ下も撮ってもらえばいいでしょ。水着は相模と一色が抜け駆けしてるんだから」ギロッ

「「うっ..」」

「でもそれを言ったらサキサキも水着を着てたとはいえ、裸のハチと抱き合ったんだよね」

「っ..」

 

良かったわ。もし撮影係で撮ってもらえないと、材木座君のように「爆発しろ!!」って言ってしまうかもしれないし。でも明日、私の写真を皆に見られると思うと恥ずかしいわね、恍惚とした表情を見られるなんて//

 

ラノベについては誰も何も言わないのだけれど良いのかしら。確かに材木座君が放った言葉は由比ヶ浜さんに被弾して、私にも絶大なダメージを与えてきたわね。

 

材木座君、今は旅行を楽しんできなさい。新学期が始まったら徹底的に指導してあげるわ。私をこのような扱いにしたこと後悔させてあげないと。

 

やはり材木座君が書くラノベは間違っているわね。

 

 

 




気づかれた方もいると思いますが、魔法や戦闘シーン等は漫画のバスタードからパクッてます。
本当はこの話で終わりにするつもりだったので、文字数がかなり多くなってしまいました。
今後、忙しくなるため、更新ペースが下がると思いますが、良かったら今後も読んでください。


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ちょっとエッチな撮影会

微エロを含みますので、嫌いな方は閉じてください。



うん?小町が布団に入ってきたのか?珍しいな、俺の布団に入ってくるなんて。俺は小町を撫でるため、手を頭に持っていき撫で始めた。

 

「ひゃう//」カシャカシャカシャ

 

小町とは違う声と変な音が聞こえたので俺が目を開けると、そこには赤みを帯びた髪の女性が顔を真っ赤にして俺のことを見つめていた。

 

「み、南!?」

「八幡//恥ずかしいよ//」

 

布団から飛び起き辺りを見渡すと、何人もの女性が俺の布団の周りに立っていて、結依がスマホを俺たちに向けている。

 

「な、何してんだよ//」

「今日は撮影会でしょ。みんなで早く来て撮影していたのよ」

「も、もしかして今のも撮っていたのか」

「うん。順番で布団に入って、ヒッキーが目を覚ますまでに撮れるだけ撮ろうって」

「だ、誰と撮ったんだよ。今まで」

「あーしが最初に撮ってもらったし。その後、姫菜、川崎さん、いろはと今の相模だし」

「な、なんでそんなことしてるんだよ」

「雪ノ下さんが抜け駆けしたでしょ。だから抜け駆けしていない人から順番にハチの布団に入って、起きるまで撮影しよってなったんだよ」

「うん、だからあたし撮ってもらってないんだけど。..起きちゃったけど、ヒッキー駄目?」

 

そういって結衣が俺にお願いしてきたが、今は凄く不味い。何が不味いって生理現象が起こっていて、とても今は布団から出れる状態ではなかったし。優美子達が最初に布団に入っていた時、気づかれていないよな//

今日の撮影会は皆水着を持ってくることになっていて、ハグしたりするから俺は起きてから抜いておくつもりだったが、まさか朝早く家まで押しかけてくるとは思っていなかったため、俺の計画が狂ってしまっていた。大丈夫か、今日の撮影会は。

 

「ヒッキー...」

「....わ、分かったよ」

 

そういうと、満面の笑みを浮かべ結衣はすぐに布団に入って来ると顔を赤くしていて、俺と向き合うように一つの枕に頭を置いていた。見つめ合っているところや、目を瞑っているところを撮ってもらい、その後雪ノ下も撮ってもらって良いか、わざわざ皆に確認して了承を得てから布団に入ってきた。

雪乃は布団に入ってきたが、膝を曲げていたため俺の股間に当たってきてる//雪乃は不思議そうな顔をしていたが、手を布団の中で俺の股間の方に持ってきたのだろう。見えていないが、いきなり握ってきた//

雪乃は目を大きく見開いてきたので気づかれたのだろう。すぐに手を離してくれたが顔を真っ赤にしている。普段なら罵声を浴びるだろうが言葉が出ないのだろう。口をパクパクさせていて、なんだか可愛いな。

でもここでバラされるわけにもいかないので俺は誤魔化すため、撮影を行ってもらうようお願いしていた。

 

「は、早く撮って貰おうぜ//」

「..は、はい。八幡//よろしくね//」

 

俺と雪乃は顔を真っ赤にしながら、写真撮影をして貰っていたが先ほどのことで、俺は何とも言えない表情をしていただろう。雪乃は終始恥ずかしそうな顔をしているし。

 

「なあ、いったん終わりで着替えたいんで、リビングに行っててくれないか」

「ねえ、ヒキオ。あーし、雪ノ下さんの写真みたいんだけど」

「先輩。私も見たいです」

「わ、分かった。そのパソコンを使ってくれ」

 

俺は未だに生理現象が収まらなく、布団から出ることが出来ずにいたのでパソコンを指さして答えた。

 

「ねえ、ハチ。パスワード掛かってて入れないんだけど」

「じゃあ、着替えたいんで、一旦リビングに行ってくれないか」

 

なんでロック掛けてんだよ、パスワード解かないといけないじゃないか。正直に今の状態を言った方が良いのか、でも恥ずかしいしな。

 

「八幡。私や相模達は裸見たことあるから部屋に居ても良いだろ。どうせこの後、皆にも見せるんだし」

「い、いや、そうなんだが。その、あれがあれで//」

 

俺がそういうと沙希と南といろはは気づいたようで、顔を赤くしだした。前回の撮影の時、見られているしな。雪乃はすでに顔を赤くしていたが。

 

「う、うん。じゃあ、うちらはリビングに行っていようか。八幡も私たちが居ると着替えにくいよね//」

「そ、そうね。では私達は先に行っているわ//」

「私も下に行ってます//」

「そうだね、私も先に降りてるよ。皆行くよ//」

 

沙希達がそう言って皆の背中を押して、リビングに降りて行ってくれた。

これ、今日は不味いぞ。この間でさえ沙希達には勃起しているのがバレていたし、朝から雪乃に刺激を受けていつもより収まりが悪いし。今日は皆に正直に言って撮影会を延期してもらおうか。

俺は着替えた後、パソコンのロックを解いて、陽乃と雪乃の写真フォルダを表示しておいた。

 

リビングに降りて行くと、女性全員が顔を赤くしている。多分、誰か説明してくれたのだろう。

 

「なあ、多分俺のことを聞いたと思うんだが、今日の撮影は延期しないか」

「..でも八幡。それってどうしようもないだろ、大志もいつも大きくしてるから//」

「そ、そうなんだが」

「この間の撮影の時も大きくしてたけど、写真に写らないようにすれば大丈夫だろ」

「い、いや、皆に見られるのがな」

「うちも見たんだし良いじゃん//」

「な、なに言ってんだ!?」

「先輩、見られたくなかったら小さくしてくださいよ//」

「...無茶言うなよ」

「大丈夫だよ、ヒッキー。そうなるの知ってるし」

「良いじゃんヒキオ。皆高校生だし、それぐらいは分かってることでしょ」

「キモイとか言われそうなんだが」

「い、言わないよ、ヒッキー..」

「はぁ、分かったよ」

 

俺がそういうと、皆安堵の表情を浮かべていた。そんなに写真を撮りたいのだろうか。まあ、誰かにキモイとか言われたら、俺が不貞腐れて中止にすれば良いだけなんだが。

 

「ヒキオに聞いてもらいたいんだけど、今日の撮影でルールを決めてきたから」

「なんだ、ルールって」

「撮影の順番はさっきの布団とは逆で今まで抜け駆けしてる人が先に撮るの。だから最初雪ノ下さんで優美子か私が一番最後ね」

「後、今日抜け駆けした人は、今日の参加者に許してもらえるまでヒッキーの家に来ちゃいけないの。あと、学校以外で会うのも禁止」

「春休み中の予定は全部参加しちゃいけないんですよ」

「それって良いのか」

「全員が同意したんで良いっしょ。だからヒキオもお願いされても断ればいいし」

「さっきの撮影でさ。うちが八幡に頭撫でられたのは抜け駆けになるの?」

「さがみんのは、ヒッキーが寝ぼけてたんだから違うんじゃない」

「そうですよね。相模先輩がお願いしたわけじゃないですし」

「..じゃあ、俺からも追加して貰っていいか」

「八幡は何があるのさ」

「..その..生理現象が起こってだな//キモイとか言われたらその時点で撮影中止ってことで」

「わ、分かったし//」

「でも八幡もちゃんと言うんだよ。あんた雪ノ下と由比ヶ浜、特に一色には甘いからね」

「分ったよ」

「先輩って私に甘いですか、そんなに感じませんですけど」

「「「「「「甘い(よ)(わよ)」」」」」」

 

良かった。とりあえずこれで罵られることはなくなった。ただ良いのか、女性に俺が大きくしているところを見られるのって、パンツの上からでもかなり恥ずかしいものがあるぞ。

 

「そういえば、パソコンで写真を見れるようにしておいたぞ」

「じゃ、皆で見に行くし」

「俺は良い。皆で見てきてくれ」

「私も良いわ、恥ずかしいもの//」

 

俺と雪乃がそういうと、皆で俺の部屋に写真を見に行った。

 

「..八幡。先ほどの撮影ではごめんなさい//」

「..いや、俺のほうこそすまなかった//」

「いいえ、八幡は悪くないわ。私がそ、そのあなたを触ってしまったのだから//」

「雪乃//...気にしてないんで、これ以上そのことに触れないで貰えると助かるんだが」

「そ、そうね。では私も今後、言わないようにするわ」

「助かる」

 

俺たちは顔を赤くしながら、ソファーに隣り合って座っていて、俺には耐えれない空気が流れていたが、雰囲気を変えるため、俺から話を振っていた。

 

「そういえば今日、小町はどうしたんだ」

「聞いていないの?ご両親がお休み取れたので日帰り旅行に行ったわよ」

「は!?俺、誘われてないんだが」

「急遽、決まったそうよ。でも今日の撮影のことを小町さんにLINEで話していたので、三人で行くと言っていたわ」

「まあ良いんだけど、今日は10時に駅前の約束だったよな。どうして早くなったんだ」

「八幡との添い寝を撮りたいと、誰だったか言い出したのよ。それなら早くいけば良い。ってなって、8時に集合していたわ。鍵は小町さんが隠しておいてくれたの」

「はぁ、雪乃が断ってくれれば良かったのに」

「私がそのことについて言えるわけないでしょ。発言はほとんど出来なかったわ」

 

俺たちが話していると、皆がリビングに降りてきたが顔を真っ赤にしていた。

 

「..雪ノ下先輩。あ、あれ感じちゃってますよね//」

「い、一色さん//あ、あれは違うのよ//」

「雪ノ下、あの写真見たらそう言われても仕方ないよ//」

「うん//ヒッキー。なんであんな写真になったのか教えてほしいんだけど」

 

俺は雪乃との撮影について話し出した。俺が首を責められたので、やり返したくて雪乃の首に顔を埋めて、耳に息を吹きかけキスをしたことを言うと、皆顔を赤くしていた。

 

「うちらにもやってくれるんだよね//」

「..そういう約束だからな//」

「「「「「「....//」」」」」」

 

俺は空気を変えたくて、食事をしたいことを皆に伝えたところ、雪乃たちが朝食を用意してくれた。小町にお願いされていたらしく、また全員早かったため、食べて来なかったということで俺の家での朝食会となった。

 

「それで撮影ってどうするんだ」

「午前中は桜をバックに撮りませんか、満開ではないですけど綺麗ですし」

「この間、私たちが撮ったところ、桜が数本あったしベンチも有ったからちょうどよくない?」

「ああ、あの公園なら花見とかしてないな、良いんじゃないか」

「あーし、背景がボケてる写真、欲しいんだけど」

「簡単に撮れるんで試してみるか」

 

俺たちは公園で撮影するため準備しだした。雪乃と結衣も撮影係として写真を撮るので三脚を用意し、今回も制服を持ってきていたようで、制服に着替え俺は眼鏡を掛けさせられ公園に向かっていった。

公園に着くと皆でどういった写真を撮るか話していたので、俺は試し撮りをしてホワイトバランス等を調整し、三脚にセットした。

 

「こっちは準備出来たぞ。じゃあ雪乃。写真撮るんで立ってくれないか」

「今回はすべてツーショットよ。八幡もこちらに来て」

 

今回は全てツーショットということで、雪乃と結衣が撮影できるよう、カメラの位置は桜の前にあるベンチの前で固定撮影することとなった。

俺は雪乃と結衣に操作方法を説明し、何枚か試し撮りさせてから雪乃とカメラの前に立った。

 

「は、八幡//では抱き寄せて額を合わせてもらえるかしら//」

「い、いきなりかよ//」

 

俺と雪乃はベンチの前で抱き合い、おでこと鼻をくっつけ目を合わせたのだが、後少しずらせばキスしてしまいそうだ。お互いの息が顔にかかるため、俺たちは赤面していた。

 

「は、恥ずかしいわね。皆が見ている前だと//」

「いや、二人でも恥ずかしいだろ//そ、その、あまり喋らないでくれ。息が掛かって//」

 

俺の口に雪乃の息が掛かってくる、俺の息も雪乃にかかっているだろう。雪乃の息は俺にとって甘美なもので、すでに股間を大きくなってしまっている。制服の上着で隠れているが、角度によってはバレているんじゃないか。抱き合っているので雪乃は気づいているようだが、何も言わず顔を赤くしていた。

結衣に撮影してもらったので、念のため確認すると綺麗に撮れていた。今回、背景をぼかしてみたが綺麗に撮れているな。俺と雪乃の上半身が撮影されており、ちょうど良い距離での写真となっていたが、お互いの唇が近い。気を付けないと誤ってキスしてしまうかもしれないな。

その後、ベンチに座っての撮影となったため、また結衣にカメラをお願いしてベンチに向かった。

 

「今度は三浦さんのラノベで映画館で書いてあったことをして欲しいの」

 

そういって、雪乃は俺の手と恋人繋ぎし、肩に頭を乗せてきた。

 

「ほら、ヒッキーもゆきのんに頭を乗せて」

「いいのか」

「ええ、八幡。頭を置いて」

 

俺が雪乃に頭を乗せると、結衣が撮影してくれた。雪乃の頭から良い匂いがしてくる。これ理性が持つか分からないな。

 

「ヒッキーとゆきのんは目を閉じて...うん。じゃあ、今度はゆきのんがヒッキーの首に埋めるように顔を持って行って」

 

結衣も撮影しだして、指示を出してきたため、俺たちは結衣の言葉に従って写真を撮って貰っていた。

 

「今度はお互い上半身が向きあうようにして、ヒッキーがゆきのんの頭を撫でながら、おでこにチューして」

「そ、そんなことするのか」

「いいから、ヒッキー早く」

「い、良いのか、雪乃」

「ええ、お願い//」

 

俺が雪乃の頭を撫でながら前髪を払い、軽くおでこにキスをした。

 

「うん、もういいよ。じゃあ、後は膝枕だし」

 

そう言われたので、俺は雪乃の太ももに寝させてもらったのだが、何時も見ている絶対領域が俺の顔の下にある。撫でたくなる衝動を何とか抑え、雪乃が頭を撫でてくれる中、俺たちは撮影して貰った。

 

「後はヒッキーの膝枕ね」

 

そう言われ俺が起き上がると雪乃は体を傾けてきた。太ももに雪乃の頭が乗ると、俺は頭を撫でたり手櫛しながら結衣に数枚写真を撮ってくれた。

 

「はーい。終わりだよ」

「皆が見ているので恥ずかしいわね//」

「なあ、長いだろこれ」

「そんなことないし、ヒキオが撮影していたの、5分ぐらいだし」

「そ、そうなのか。俺には滅茶苦茶時間が長く感じられたぞ」

「それだけ雪ノ下さんと抱き合ってたのが長く感じられたんでしょ。うちらにも一緒のことするんだからね」

「ハチって撮影中だと注文しなくても頭撫でてくれたりするんだね」

「先輩ってやっぱりあざといですよね」

「あんたに言われたくないと思うよ、一色」

「じゃあ、ゆきのん。写真撮ってね」

 

結衣と雪乃が撮影係を代わり、俺は結衣とカメラの前で並んでいた。結衣と抱き合っておでこを合わせるため、抱き寄せたんだが、おでこと鼻を合わせると身体も自然に近くなるため結衣の胸が俺の身体で形を歪めていた。

 

「ヒッキー//恥ずかしいよ//」

「結衣、頼むからあまり動かないでくれ//」

 

結衣が動くと形を変えている胸が俺に刺激を与えてくる。抱き合っての撮影が終わり、結衣から離れてると俺が股間を大きくしているのがバレているのだろう。結衣は下に視線を移した後、また俺の顔を見て赤くしていた。だが結衣からは罵声を吐くことはなかった。ここでキモイとか言うと写真撮影が中断してしまうし、言葉を飲み込んでいるのだろう。

俺は結衣に膝枕して貰ったが、良い匂いがする。このまま頭を反対にしてお腹側に顔を埋めたい。

 

「結衣、良い匂いだな」

「ヒッキー//お腹の方、嗅いでみたい?」

「い、良いのか」

「み、みんな見てるから後でね//」

 

結衣とベンチで写真を撮った後、南、いろは、沙希、優美子、姫菜の順番で一緒のように撮影を行ったのだが、俺はずっと勃起していて皆に見られていたし抱き合った時、服越しで擦り付けるようになっていたためか、だんだん恥ずかしさが薄れていた。

逆に勃起しなかったら失礼だろ。皆、美少女ばかりなんだから欲情しない方がおかしい。俺はいつの間にか隠すことなく写真を撮って貰っていた。

ただ、いろはの時おでこと鼻を合わせて俺と同時にいろはも喋りだしたため、お互いの唇が触れたような気がする。いろはも分かったのかそれ以降、喋らずに写真撮影をしていたのだが。

俺たちが公園での撮影を終え、家に向けて歩いていると、いろはが話しかけてきた。

 

「...先輩。さっきって」

「..なんだ、何かあったのか」

「..そうですよね、何もなかったですよね」

「..抜け駆けとかなかったからな」

「はい。じゃあ、お家でもお願いしますね」

「ああ」

 

あれについては無かったことにした方がいいだろう。俺もキスとは思っていない、肌がふれただけだ。俺はそう思い込んで無かったことにしていた。

 

俺たちが家に帰ると11時すぎだったので、姫菜と沙希が昼食を作りたいと言いだし優美子も手伝いたいと言ったので三人で皆の昼食を作ってくれている。その間に俺は写真を一旦パソコンに入れる作業を行っていた。

 

「旨いな、このパスタのソース作ったのか」

「うん、家で何時もソースは作るんだ。ハチの口に合ったようで良かったよ」

「私ん家もソースは作るけど、京華に合わせて甘口だから、タバスコで調整して」

「沙希のも甘くても美味しいぞ」

「あーしも教えて貰ったんで家で作ってみよ」

「姫菜もサキサキもあたしにも教えてよ」

「ああ、レシピを今度送るよ」

 

俺が黙々と食べている中、優美子も料理に興味があるのか、皆で料理の話に盛り上がっていた。

 

「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」

 

***

 

私たちはご飯を食べ終わり、私と由比ヶ浜さんで食器の片づけをさせてもらった後、皆で小町さんの部屋に、八幡は自分の部屋に着替えに行ったわ。

 

「あれ?おかしいなあ、あたしのボトム落ちてないよね」

「どーしたん、結衣?」

「ビキニのボトム忘れちゃったみたいで、ないんだ」

「結衣、どうするの撮影。パンツだと不味いよね」

「う、うん。今日のは不味いかな」

 

そういって由比ヶ浜さんは自分のスカートを捲って見せてきたのだけれど、淡いピンクのシースルーでアンダーヘアーが透けて見えているわね。

 

「でもあーしは予備なんて持ってないし、誰も持ってないだろうし」

「...あ、そうだ。ちょっとヒッキーの所、行ってくる」

 

そういうと由比ヶ浜さんは八幡の部屋に行ってしまったわ。ボトムの代わりなんてどうするつもりかしら。

そう思っていると、由比ヶ浜さんは手に何かを持って帰ってきたわ。

 

「じゃじゃーん!!ヒッキーのボクサーパンツ!!」

「はぁ!?なんでそんなの借りてんだし!!」

「広告とかでさ、男性用パンツの宣伝で女性が履いてるのあるじゃん。ちょっと良いなって思ったんだよね」

「もしかして、さっきまで履いてたのじゃないですよね」

「ち、違うし//新品が有ったんでそれを借りたんだし」

「由比ヶ浜って偶々なのか、ワザとなのか色々美味しいことしてるよね」

「サキサキ、ワザと忘れてないよ。もし駄目だったらスカートで撮るつもりだし」

「いいなあ、うちも八幡のパンツ欲しいな。履きたてのやつ」

「さがみん何言ってんだし//も、貰ったわけじゃないからね。ちゃんと洗って後で返すし」

「返されても気まずいと思うのだけれど」

「だって、ヒッキーに洗って返すねって言ったら「おぉ」って言ってたよ」

「「「「「「ふーん」」」」」」

「...もしかして、これも抜け駆けになる?」

「判断に迷うところだね、新品のを借りただけでしょ」

「でも結衣がボトム忘れたんだから、しょうがないよね」

「誰か反対の人いる?」

 

川崎さんがそう言ったのだけれど、誰も意義を唱えないわね。八幡のパンツを私が履くのも良いわね//でも私は着替えてしまったから、今から借りることは出来ないわ。

由比ヶ浜さんは八幡のパンツを履いたのだけれど、かなり照れているわね、羨ましいわ。

 

八幡はトランクスの水着とパーカーを着ているわ。私たちも上着を着ているのだけれど八幡の視線が気になるわね//

 

「これからの撮影はどうするんだ」

「順番は公園で撮った通りで、姫菜とあーしだけ入れ替わりだし」

「..そのハチが生理現象が起こっても写真に写らないように、私たちがハチの胡坐の上に横座りしてほっぺにチューするよ」

「後は先輩に後ろから抱いて貰って雪ノ下先輩みたいにしてくれれば//」

「シーツは良いのか」

「それってカメラを持って移動したり色々操作しないと駄目でしょ、うちと一色ちゃんの時ってかおりちゃんが撮ってくれてたけど、カメラ色々触ってたじゃん。結衣ちゃん達には難しいからってなったんだよ」

 

私がカメラをもっと扱えれば良かったのだろうけど、一眼レフは初めてなので扱いきれないわ。由比ヶ浜さんも一眼レフは触ったことないって言っていたし。

 

「確かにそうだな。じゃあ今回は床に座って撮るだけだな」

 

八幡はそう言って、書斎に皆で行くと、照明やカメラの用意をしだしたわ。

 

「なあ、誰か撮影するところに座ってくれないか」

「ええ、ここで良いわね」

「あたしも一緒に撮ってよね」

「あーしらも入るし」

「なあ、なんで全員で入ってんだよ、試し撮りだぞ」

「良いじゃん、早く撮ってよ」

「しょうがねえなあ」

 

八幡は試し撮りを何回か試して設定を行ったわ。念のため二人で撮影するため、全員を退かせた後、私と由比ヶ浜さんを撮って問題ないことを確認したようね。

 

「試し撮り、終わったぞ」

「では八幡。セルフタイマーにして皆で撮って貰えないかしら。あなたは真ん中に入るのよ」

「ここだと狭いだろ」

 

八幡はそういったのだけれど、皆写真を撮りたいために照明の前に移動したわ。

 

「何とか入れるか。はぁ、分かったよ。じゃあ、俺の入る位置は開けて並んでくれ」

 

でも場所の位置取りで揉め出したわ、皆八幡の隣に座りたいって言っているのだけど、私も座りたいわね。

 

「インターバルタイマーって機能が有ったはずだからちょっと待ってくれ....これか10秒に一回、撮影されるようにするから、順次場所を変わっていけば良いだろ」

 

八幡はカメラの設定をすると、私達の前に座ってくれたので、八幡の左右に一人づつ、中腰で後ろに5人並んでの撮影を行うようにしたわ。

 

「シャッターが自動で切られるが気にしなくていいからな。慌てずに移動してくれ。特に照明と配線に気をつけてな」

 

八幡の隣になった人は腕に抱きついて、私達は時計回りに移動しながら撮影を行ってもらったわ。カメラってこういう使い方もあるのね。でも勝手に撮られているので、半目とかおかしな顔で写ってなければいいのだけれど。

 

「じゃあ、今から雪乃の撮影をしていけばいいのか」

「ええ、お願いするわね。八幡」

 

私達が撮影するため、カメラを操作する由比ヶ浜さんと次に撮影する相模さんだけ書斎に残って、上着を脱いで撮影を始めたわ。

 

「その水着は千葉村の時、着てたやつだな。...その綺麗だな」

「ありがとう、八幡。では座るわね」

 

私は八幡の胡坐の上に腰掛けると、八幡が唸っていたわ。段々股間が大きくなってくるのが私の触れている太ももから伝わってくる//八幡は顔を赤くしていたけど、そのまま撮影して貰ったわ。

以前とは逆でまずは八幡の首に顔を埋めて、口づけすると八幡は私の腰に手を回してきて抱きしめてくれている。このまま二人でキスしたいのだけれど、それは駄目ね。由比ヶ浜さんと相模さんは「うわぁ」と声を洩らしているわ。

 

「じゃあ、八幡。頬にキスするわね」

 

私はそう言って、頬にキスさせてもらった。由比ヶ浜さんはちゃんと撮影してくれているようで、カメラからシャッター音が幾つもなっていたわ。

 

「では次に八幡からしてもらえるかしら」

「あ、ああ」

 

そういって私はカメラの方に体を向けると、八幡が後ろから腰に手を回して抱いてくれ、首筋に顔を埋めてきたわ//

八幡は私の首にキスをした後、耳たぶを甘噛みしてきたけれど、この次よね..私は身構えていたけれど、耳に息を吹きかけられたとき、また仰け反ってしまったわ//

 

「あぁ//」

 

八幡がキスしてくれたのだけれど、感じてしまっていてあまり、頬の感覚が分からないのよね//出来れば普通にしてほしいのだけれど、そんなことお願いできないし。

 

「じゃあ、ゆきのん。終わりだね//」

「うぅ、うちにあんなことできるかな//」

「さがみん大丈夫だよ。ヒッキーに任せておけば」

 

私は恥ずかしかったので着替えに行かせてもらい、顔の火照りが取れてから書斎に戻っていったわ。

 

***

 

「じゃあ、今度はあたしの番だね。ヒッキーお願いね//」

「ああ」

 

あたしが上着を脱ぐと、ヒッキーはビックリしていた。

 

「ほ、本当に履いたんだな//嫌じゃないのか」

「うん、大丈夫だよ。でもなんでヒッキーそんなに照れてるの」

「いや、俺のパンツを履いているっていうのが何だか厭らしくてな//」

「うん//ヒッキー欲情した?」

「とっくにしてるから止めてくれ//」

 

やっぱりヒッキーは欲情しているんだ、大きくしてるもんね。でもそんなこと正直に言ってくれるなんて//あたしはヒッキーの胡坐の上に座ると、ヒッキーはあたしの耳元で、可愛いな。って言ってくれた//

普段はそんなこと言わないのに、もしかしてヒッキーっていつかのラノベ脳ってやつになってるんじゃ。それだったら色々やってくれるかも。でもここであたしから何かすると抜け駆けになっちゃうし。普通に撮影するしかないよね。

 

あたしはゆきのんと一緒のように、首に顔を埋めキスしたあと、頬にキスしていた。そして、ヒッキーに後ろから抱いてもらったんだけど、ヒッキーの股間があたしの背中に当たってて凄い温かい//

でもヒッキーがあたしの首に顔を埋めてきて、次の瞬間あたしはそんなこと忘れてしまっていた。

 

「良い匂いだな」

 

ヒッキーは私の首に鼻を擦り付けるように匂いを嗅ぎだした。サブレみたいだけど、ヒッキーにされているので恥ずかしい//でもヒッキーに良い匂いって言われると、いくらでも嗅いでほしいって思っちゃう。そう思っていたら、いきなりヒッキーは私の耳を甘噛みしてきた。

 

「あぁ//」

 

あたしの耳を甘噛みしながら息を吹きかけた後、頬にキスしてくれた。その時、あたしは凄く感じてしまい、自分でも分かるぐらい濡れて来ていた。

どうしよう、撮影が終わったのでパンツを見ると染みになっているのが分かる。こんなのヒッキーに見せれないよ、ヒッキーのパンツ濡らしちゃった//

あたしが困っているとゆきのんが様子の可笑しいあたしに気づいてくれたみたいで、目配せした後ヒッキーに声を掛けてくれていた。

 

「ねえ八幡。何かボタンを押してしまったようなの。見てもらえないかしら」

「分かった。ちょっと待ってくれ」

 

ヒッキーはそう言いながら立ち上がってカメラの方に行ったので、あたしは自分の上着をたぐり寄せ、上着を腰に巻き書斎を出て行った。

小町ちゃんの部屋に入って、すぐにパンツを脱いで確かめたら大きい染みが出来ている。もう、ヒッキーがあんなことするからだよ//でももう一回して欲しいな。二人っきりでしてくれればそのまま、あたしの全てをあげるのに//

 

***

 

結衣ちゃんが書斎に入ってきたのでうちの番になったってことだよね。

 

「じゃあ今度はうちの番だね。八幡お願いね」

 

八幡は大きくしているを隠そうともせず、うちを自分の方に招いてくれた。

 

「南。お前可愛いな」

 

うちが八幡の胡坐の上に座ると、可愛いって八幡はうちの耳元で囁いたあと頭を撫でてくれていた//は、恥ずかしいよ//

 

「じゃあ、するね//」

 

そういって、うちは八幡の首筋に顔を埋めたんだけど、ヤバい!!これ癖になりそう!!八幡から良い匂いがして、凄く吸い付きたいし、舐めてみたいんだけど//

うちはキスしながら顔を動かして舐めさせもらった//いま、凄く幸せな気分になれている!!バレてなさそうだし、これぐらいなら良いよね。

でも顔を埋めていると八幡の手がうちのお尻の方に下がってきて撫でてきてる!!雪ノ下さん達からは見えない位置だけど、もしかして仕返しされてる!?

八幡はお尻を撫でている手を太ももの方から水着の中に入れてきた。は、恥ずかしい//でもここで何か言うと、うちが抜け駆けしたのバレちゃうし。八幡も分かってやっているんだろうけど、凄く恥ずかしい//

 

「じ、じゃあ、ほっぺたにキスするね//」

 

うちがそう言って頬にキスしたんだけど、八幡の手はうちの横尻を揉んでいて、うちは暴走しそうになった。やっぱりもっと色々したい!!でもここでやっちゃうと、今度遊べないし、凄く悶々としてきたんだけど!!

うちのキスが終わると水着から手を抜いてくれたけど、八幡の目が笑っている!!うちからもやりたいけど今度は前なんで何もできない。

撮影は順調みたいで、今度は八幡が後ろから抱き着いてくれたんだけど、右手は腰に回して左手はうちの背中から水着の中に手を入れてきて尾てい骨辺りを撫でてきた//

 

「ッ//」

「可愛い反応だな」

 

うちは何も言うことが出来ず、八幡にお尻を撫でられ首に顔を埋められていた。うちは雪ノ下さんみたいに仰け反ることはなかったんだけど、それでも自分で顔が凄く破顔しているのが分かる//もっといっぱいして欲しいな、でもうちの撮影は終わってしまっていた。

 

「ええ!?早いよ!!」

「さがみん、だって写真撮ったよ」

 

もっといっぱい八幡から色々して欲しいのに。うちの願いもむなしく、撮影は終わってしまった。

 

***

 

「先輩、乗りますよ」

 

私はそう言って先輩の足の上にちょこんと座った。私は座ったけど、横で大きくなっているのは直視できなかった。

 

「じゃあ、先輩首に顔を埋めますね」

 

最初は首筋に顔を埋めて撮って貰うんだよね。先輩が腰に手を回して来たので、私は先輩の首に手を回して、抱き着くように顔を埋めていた。あぁ、良い匂い。このまま嗅いでいたいな。

 

「いろはちゃん、今度はほっぺだよ」

 

うぅ、もうちょっと嗅いでいたかったのに。私は先輩にキスするため、身体を少し起こして先輩に甘えた声でつぶやいた。

 

「先輩。私初めてですからね」

 

そういうと、先輩は凄く照れてきて顔を赤くしながら撮影して貰っていた。私は朝の公園のことを思い出しながら、頬にキスしていた。

今度は先輩にしてもらうため、結衣先輩にカメラの方を向くように言われ、私が体の向きを変えると先輩が後ろから抱き着いて来てくれた。

 

「いろは、可愛いな」

 

そういって、首筋に顔を埋められ頭を撫でてきたので、私はそれだけで満足してしまっていた。

 

「先輩、不味いです。気持ちいいです//」

 

私がそういうと、先輩は耳を甘噛みしてくれたんだけど、先輩はそれだけでなく耳の中に舌を入れてきた。

 

「ぅあぁぁぁ//」

 

私は大きな声を出して悶えてしまった。でもいつの間にか先輩からのキスが終わっていたみたいで私は放心状態になっていた。

 

「い、いろは。大丈夫か」

 

先輩が声を掛けてくれたけど、私は声を出せず頷くことしか出来なかった。自分でも知らなかったけど、もしかして耳が弱いの?

うぅ、でも頬にキスしてくれたの全然覚えてない。先輩に性感帯を責められた責任を取って貰う必要あるよね//乙女の弱点を知ったんだから。

私は小町ちゃんの部屋に行く前に先輩の耳元に口を近づけていた。

 

「先輩。私の性感帯責めたんで責任取ってくださいね//」

 

***

 

「沙希は今回、ハイレグなのか//」

「ああ//一応、競泳用水着だけどさ、どうせならこの間とは違う水着の方が良いと思ってね//」

 

八幡には違う格好を見てもらいたいしね。けーちゃんをこの春から市のプールに連れて行くために私も一緒に買ったんだけど、もしかしたら撮影会で使えると思って競技用水着でもハイレグになっているのを勢いで買っちゃってた。

 

「沙希に似合ってるぞ。足が長くてモデルみたいだし、レースクイーンとかそのまま行けそうだな。どうせなら一人でも撮ったらどうだ」

「お願いできるかな。あ、でもそれって良いの?」

「一人で撮るのであれば、良いのではないかしら」

「うん、駄目なのはヒッキーとの撮影だよね」

「じゃあ八幡。よろしく//」

 

そういって、八幡は三脚からカメラを外して私を撮りだしてくれたんだけど、以前より大胆なポーズが多い気がする//

 

「沙希、横向きになってお尻を軽く突き出してくれ」

「うん//」

「顎を上げて口を半開きにして、カメラ目線で..じゃあ、ちょっとそのままで」

 

そういって八幡は私に近づいてくると、跪いてローアングルで私を取り出した。

 

「恥ずかしい、八幡//」

「綺麗だな、沙希。じゃあ胸の下に手を回して強調するように」

「う、うん//」

「すごく綺麗だぞ、じゃあ反対に向いてお尻を俺の方に突き出してくれ。足を肩幅より大きめに開いて」

 

す、すごく恥ずかしい//何で私、八幡にお尻向けて撮って貰っているの!?

八幡の方を見ると自分の格好を忘れているのか、股間を大きくして撮影しているんだけど//雪ノ下も由比ヶ浜も恥ずかしそうにチラチラ見てるし。

 

ようやく一人での撮影が終わり、八幡が胡坐で座ったので私も八幡の上に座った。ずっと股間が大きいままだけど、気にしない方がいいよね//

私は八幡の首に顔を埋めて写真を撮って貰った後、頬にキスしてカメラの正面に向いていた。

八幡は私の背中から抱き着いてくれたんだけど、それだけで私は嬉しくて感じてしまっていた。あぁ、このまま八幡から求められたら私は身体を許してしまうだろうな。私がそんなことを考えていると、いつの間にか撮影が終わったと聞かされ、項垂れてしまった。

折角キスしてくれたのに、堪能することが出来なかった。私は項垂れながら小町の部屋に着替えに行った。

 

***

 

サキサキの撮影が終わって休憩になったので、撮って貰った人たちはリビングでカメラのメモリからファイルをコピーして貰ってた。

でも休憩時間が終わっても終わらなかったので、雪ノ下さんがパソコンの操作をし優美子も写真を見たいと言ったので、私とハチと結衣で撮影することになった。

 

「じゃあ、ハチ座るよ」

 

そういって私が座ると、ハチの股間がすぐに大きくなってきて太ももに触れてきた//

 

「ふふ、元気だね//」

 

私がハチの耳元で囁いて、股間に触れている足をすこし動かしていた。

 

「ひ、姫菜。不味いから止めてくれ//」

 

ハチは私の耳元でそう言ってきたけど、私はハチの首に顔を埋めている最中もゆっくり足を動かし続けた。私がほっぺたへのチューを終えると、ハチは私の後ろから抱き着いてきた。

私の身体を抱くように両手を回してくれたんだけど、腰回りではなく胸の下に腕を通してきてる。なんでこんなに高い位置に腕を回してるんだろう。私がそう考えていると、私の胸に刺激が与えられてきた。

え!?今、私の横乳と下乳を指で刺激してきてる//

 

「だ、駄目だよ//」

 

私が俯きながら小さな声でそう言うと八幡は耳元で囁いてきた。

 

「お返しだ。姫菜、良い反応だな」

 

私は恥ずかしくて顔をあげれない//結衣が顔が見えないって言ってるけど、それどころじゃないんだってば!!

結衣はファインダーで覗いているので、細かい指の動きまでは見えないのだろう。私は顔を何とか上げて、結衣に撮影して貰ってた。

 

「じゃあ、姫菜。首筋に顔を埋めるからな」

 

そう言って、顔を埋めてきたんだけど、皆に聞いていたのとは違って舌で舐めとるように動かしてきた//

 

「は、ハチ//」

「姫菜の反応可愛いな」

 

そういって、私は耳を舐められて感じてしまっていた。

 

「あぁ//」

 

ほっぺたにチューしてくれて嬉しかったけど、今はそれどころではなかった。撮影が終わったのに結衣は撮影した写真を確認しているのかカメラから目を離さなかったので、私はずっと胸を刺激されている//ハチの口は私のうなじを舐めてきて吸い付かれていた。

 

「っ!!」

 

私は声も出せず俯いて悶えていて、パッドを入れてなかったんで少し目立つようになった乳首まで何度か指を伸ばしてきて責められていた。でもノックの音が聞こえてようやくハチは止めてくれた。

 

「ごめんなさい、撮影は終わったのかしら」

「撮れた?姫菜」

 

雪ノ下さんと優美子が入ってきてくれたので、ハチの腕から抜け出せたけど、あのままだったらどうなってたんだろう//ハチは何事も無かったみたいにしてる。うぅ、私だけ感じちゃってたけど、こんなことならもっと股間を刺激すればよかった。今度仕返ししてあげるんだから!!

 

***

 

「じゃあ、あーしの番だね」

 

ヒキオは姫菜との撮影の後、立たずに待っていたので、あーしはそのままヒキオの上に腰掛けていた。

ヒキオの股間が既に大きいんだけど//あーしの太ももに触れているから、熱を感じる//あーしはヒキオの首筋に顔を埋めてヒキオに聞いた。

 

「ヒキオ、大きいけど刺激してほしい?」

「や、止めてくれ//かなり不味いんだよ」

 

ヒキオがそう言ってきたので、あーしは何もせず撮影して貰っていた。あーしのキスが終わったのでヒキオが後ろから抱いてきたけど、片手だけ腰に手を回して来て、もう一方の手であーしの背骨に沿って指を這わせてきてる//あーしの腰に回した手もお臍周りを軽く撫でてきて、あーしは声が出るのを我慢していた。

あーしが我慢していると、ヒキオは首に顔を埋めてきた。首筋を舐められて手を背中に這わされていたけど、何とかあーしは耐えていた。

 

「綺麗だな優美子。...最後だしな」

 

そういうと、ヒキオはあーしの耳を甘噛みして舐められ耳の中にも舌を入れてきた。お臍を撫でていた手は下腹部に、背中の手はお尻の方に手を這わせてきて撫でられていた//

 

「あぁぁぁ//」

 

思わず声が出てしまったところで、ヒキオが頬にキスしてくれたんだけど、なんでヒキオはあーしのお尻撫でてんだし//

 

「じゃあ、これで撮影は終わりで良いかしら」

 

雪ノ下さんがそういうと、ヒキオも「終わった」って言って、あーしの後ろで座り込んでいた。

うぅ、恥ずかしい、ヒキオにお尻触られた//雪ノ下さんと結衣がカメラを触っていたので、あーしはちょっとやり返したくなってお尻をヒキオの股間に持っていき擦り付けるように動かした。

 

「ゆ、優美子。不味い//」

 

ヒキオはあーしの首筋に顔を埋めてきて、結衣達に聞こえないぐらいの声で喋ってきた。ヒキオはあーしの腰に両手を回して力を入れてきて体を動かなようにしてきたけど、あーしは面白くなって構わずに腰を動かした。ヒキオが抱き寄せているので、さっきよりあーしのお尻に当たる感覚が大きくなっている//

腰を数回動かすとヒキオがあーしの耳元で「あっ」って言ったかと思うと、股間がビクッビクッと波打つように動き出して、あーしの触れている部分に伝わってきた。

 

「す、すまん。優美子....すまん」

 

え!?も、もしかしてこれって射精!?で、でもどうしよう。あーしのせいでヒキオがイッちゃったんだよね//

 

「う、ううん、大丈夫だし//」

「ごめん..ごめん」

 

からかうつもりでやったけど、まさかイッちゃうとは思っていなかった。こんなこと皆にバレたらヒキオが恥ずかしいだろうし。

ヒキオはあーしの耳元でずっと謝っている。あーしが大丈夫って言ってもヒキオは謝るのをやめなかった。

 

「じゃあ、ヒキオ着替えに行こ」

 

あーしは雪ノ下さんと結衣からヒキオが隠れるように立って、手を引いて部屋を出て行った。ヒキオの水着はそこだけ染みになってる。本当にあーしのせいでイッたんだ//

 

「じゃあ、ヒキオは部屋で着替えてくるし」

「....」

 

ヒキオの部屋まで連れて行くと、あーしは小町の部屋に入っていき、すぐに着替えた。大丈夫かなヒキオ。あーしも調子に乗りすぎたし、ちゃんと謝りに行こ。

そう思ってヒキオの部屋をノックしたけど、中からは何も返事が返ってこなかった。

 

「..ヒキオいる?入るよ」

 

ヒキオはベッドに寝転がって壁の方を向いていた。パンツは履き替えたみたいだけど、あーしからは表情が見えない。

 

「..ヒキオ、ごめん。あーしが調子に乗ったから」

「....」

「でもあーしは嬉しかったし。ヒキオは今まで何人もの女と一緒のことしてて、あーしの身体に欲情してくれたってことでしょ」

「....」

「だから嬉しかった。ねえヒキオ、こっち向いて」

 

ヒキオはあーしと目を合わせてくれなかったけど、体を起こしこっちを向いてくれたので、あーしはブラウスのボタンを外し、前はブラだけでヒキオの顔を自分の胸に埋めさせて頭を撫でているところをスマホで撮った。

 

「な、何してんだよ//」

「ヒキオは恥じることないし。もしバレて何か言われたら「優美子の身体が一番だった」って言ってやりな。あーしは勿論誰にも言わない。でもヒキオがあーしの事、信じられないならこうやってヒキオに胸を埋めさせて写真撮ったこと言っていいし」

「..それだと優美子が...その、すまん」

「こんな時はすまんじゃないっしょ」

「そうだな、ありがとうな。優美子//..後、調子に乗って悪かった」

「良いよ。あーしも一緒だし。でもありがと。あーしが一番良かったって体で示してくれたんだから//」

「..は、恥ずかしいんで言わないでくれ//」

「あーしは嬉しいし。...は、初めて経験したからびっくりしたけど//」

「「....//」」

「じゃあ、皆のとこ行こ。あんまり遅いと疑われるし」

「ああ、本当にありがとうな。優美子」

「うん。じゃあ、ヒキオは先に行ってて。あーしはちゃんと服着てくるから」

 

あーしはそう言って小町の部屋に入ったけど、ドアの前で座りこんでしまった。凄く恥ずかしかった//でもヒキオが元気になったんで良かったし。

そう考えているといきなり声を掛けられた。え!?誰か部屋にいたの!?

 

「三浦さん、ちょっといいかしら」

「..な、なんだし」

「あ、あの八幡は大丈夫なのかしら」

「..何が」

 

雪ノ下さんは顔を真っ赤にして俯いている。撮影の時、もしかしたら雪ノ下さんは気づいていたのかもしれない。でもあーしは喋る気はないし。

 

「そ、その、八幡ってぼ、暴発したのでしょ//」

「..あーしは何も言わないから、もし抜け駆けって思うなら皆に言っていいし」

「いいえ、三浦さんに何か言うつもりはないし、撮影が終わった後なんで抜け駆けとは思っていないわ。...ただ、そ、そのどういった感じだったのかと思って//」

「...雪ノ下さんって、むっつり?」

「な、なにを言っているのかしら、私は知識として」

「そういうの良いから。...あーしは何も喋らない」

「..分かったわ。私もこれ以上は何も聞かないわね」

「..でもさ、二人きりだから言うけど、あーしは雪ノ下さんとこうやって色々話せるようになって嬉しいし」

「..三浦さん。私も貴女と話せるようになって嬉しいわ」

「雪ノ下さん。以前は隼人のことで色々言って、その...ごめん」

「いいえ、私の方こそごめんなさい。三浦さんを怒らせるようなことを言っていたわ」

 

あーしは今まで言えなかったことを雪ノ下さんに言っていた。ヒキオのことが気になりだしてから、あーしは何時か雪ノ下さんに謝らないといけないと思っていたので、ちょうど良い機会だったし。

 

「うん。じゃあこれからもっと仲良くするっしょ。雪ノ下さんがむっつりって分かったことだし」

「そ、それは止めて//」

「冗談だし。でも雪ノ下さんの可愛いところ見れて嬉しいっしょ」

「私も三浦さんの優しいところが見れて嬉しいわ」

「「ふふ」」

 

二人で笑いあい、あーしは雪ノ下さんと仲良くなった後、二人でリビングに降りて行った。

 

***

 

俺がリビングに降りて行くと、雪乃と優美子はいないようだが皆でパソコンに入れた写真を見ていた。だが姫菜が俺のことを睨んでいる。そういえば、ちょっと胸を触ってたんだよな。賢者タイムを迎えた後の俺には大変なことをしたように感じるが。

でも俺は悪くないよな、姫菜から仕掛けてきたんだから。自分にそう言い聞かせ、俺は腕を組んで姫菜を見ながら指を動かす素振りをすると、顔を真っ赤にして顔を逸らされてしまった。

その後、雪乃と優美子が降りてきた。優美子は俺を見ると顔を赤くしてきたが、俺の方が真っ赤になっているだろう。なんとか平静を保ってキッチンに向かい、コーヒーを用意して皆で寛いでいた。

 

「ヒッキー、どうだった撮影は」

「もう今回限りにしてくれ、俺の理性が持たない」

「えぇ、ハチ。私もっと色々して撮って貰いたいのに」

 

姫菜はそういうと、俺に不敵な笑みを向けてきた。多分今日のことをやり返すつもりなんだろうが。

 

「でも水着とかキスとか抱き合うのやり過ぎな気もするし、この辺でやめた方が良いっしょ」

「そうね、普通に撮って貰えば良いんじゃないかしら」

「撮影自体は取りやめにならないんだな」

「私は着物も撮ってほしいと思っているのよ。中々着る機会がないでしょ」

「うーー、ゆきのん。あたし着物持ってないよ」

「私もないです。お母さんんが持っているかもしれませんけど、着付け出来ないですし」

「うん、うちも持ってない」

「私もないな、母親のならあるけど自分で着れないし」

「着物は止めておけ。外に持ち出して汚すと大変だし成人式でプロに撮ってもらった方が良いだろ」

 

俺たちは雑談していたが、そろそろ帰ろうかとなり皆を駅まで送っていった。

 

皆を見送り、家の玄関で鍵を開けている最中、後ろから呼ぶ声がするので振り向くと姫菜が走ってきていた。

 

「どうしたんだ」

「うん、ちょっと忘れ物してね」

「そうなのか、小町の部屋か」

「うん、多分そうだと思う。ちょっと上がらせてね」

 

姫菜は小町の部屋に忘れ物を取りに行って、俺のいるリビングに降りてきた。

 

「ごめん、水着忘れてったんだ。思い出してよかったよ」

「ほかに忘れ物ないよな。じゃあ、駅まで送っていくよ」

「ううん、まだ明るいから良いよ」

 

そういって姫菜は帰ろうとしたのだが、いきなり振り向いてきて、ソファーに座っている俺の足に腰を下ろしてきた。

 

「な、なにをしてんだよ//」

 

俺がそういうと手を首に回され頬にキスしてきて、首筋にもキスをしてきた。その時、指で俺の唇にも触れていた。

 

「ふふ、抜け駆けになっちゃうからここまでにしておくけど、これはちょっとしたお返しだよ」

 

姫菜はそういうと、俺の股間に手を這わせて擦ってきた。

 

「じゃあね、ハチ。私のことを思い出して頑張ってね」

 

姫菜はそういって家を出て行った。な、なにを頑張れっていうんだよ//だが姫菜に触られた股間が瞬く間に反応してしまい、俺は自室にこもってティッシュを消費していた。

 

「おにいちゃん、帰ったよ。下に降りてきて」

 

いつの間にか寝てしまったようだ。俺は小町に呼ばれて起きたのでリビングに降りて行った。リビングに入ると両親と小町がお土産の整理をしていたが、俺の顔をみるなり呆然としていた。

 

「八幡!!あんた今日、何してたの!?」

「何言ってるんだ。知り合いがきただけだぞ」

「お兄ちゃん。ポイント高いよ。ねえねえ、相手は誰?雪乃さん?結衣さん?」

「八幡、美人局じゃないだろうな」

「何を言ってるんだよ、意味わかんねえよ」

「お兄ちゃん、鏡見てごらんよ」

 

俺はそう言われ、洗面所に移動して鏡を見ると唖然としてしまった。頬にキスマークがついており、首筋にも口紅がついている。そして俺の唇にも赤い口紅がついていた。

もしかして姫菜の仕業か。お返しって言っていたのは、股間を触ってきたことではなく口紅をつけてきたことだったのか。

 

リビングに戻ってティッシュでふき取っていると、小町と両親に根掘り葉掘り聞かれた。両親には以前全員で撮った写真で姫菜のことを見せてあげた。さすがに今日撮った写真や以前の手ブラ写真は見せれないからな。

小町は満足げに「姫菜お姉ちゃんも良いよね」とか訳の分からんことを言っているし、母ちゃんは「今度、紹介しろ」とか言っている。親父は「陽乃ちゃん、雪乃ちゃん、姫菜ちゃん」と、なぜかちゃん付けで親父の知っている俺の知り合いのことを呼んでいた。

 

その夜、俺はベッドに入って目を瞑っても、南のお尻の感覚、姫菜の胸を触った時の柔らかさ、優美子に責められたときの羞恥心が思い出されて、なかなか寝付けずパソコンの写真を見ながらまた、ティッシュを消費してしまっていた。

 

 



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帰ってきた材木座

クリぼっちなので、時間が余ったので書いてみました....


3年に上がった始業式の日、我は3Cのクラスで机に項垂れていた。この総武高校は生徒数が多く、余りクラス替えを行わないのだが、我は2年時の担任より今後は3Fへの配置転換が言い渡された。

3Fは旧2Fの生徒がほとんどの為、我がラノベを執筆した女子(おなご)達がたくさんいる。その中でも終業式に日々の指導のお礼に書き上げた魔女も居るのだ。3C・3Fともに文系なので、余り変わる意味がないので、クラス替えが行われてもF組に配置換えされることはないと思っていたのだが。

 

配置転換を言い渡された後、始業式に出るため我ら旧2Cが体育館に入っていき座っていると、我に強烈な殺気を放つ輩が体育館に入ってきたのを感じ取っていた。

後に入ってきた旧2Fの生徒から殺気を放つ相手を確認すると、そこには由比ヶ浜殿が我の方に殺気を放っている。席は我より後ろの方の為、背中に突き刺すような視線を向けられ、我は冷や汗が溢れていた。

何とか殺気を耐えていると、今度は旧2Jが体育館に入ってきた。我の周りは一気に氷点下まで下がったかのような感覚に陥り、こちらに向けられる鋭い眼光に我は目を向けることが出来なかった。

今まで感じたことがない殺気を放つ二人に我は冷や汗が止まらなくなっていた。

 

マズイ!!ヤバイ!!激おこぷんぷん丸ではないか!!やはりやりすぎであったか。我は自らの行為に恐怖した。

だが我には秘策がある。それまでは何としても耐え切らなくては。

 

始業式が始まり生徒会長殿が壇上に上がると、今度は正面から我に殺気が放たれている。壇上の上から我に向かって放たれる視線と後ろから感じる雪ノ下殿、由比ヶ浜殿の視線で我は気を失いそうになっていた。

生徒会長殿は定型の挨拶をすませ、色々語っているようだが、我にこの時間は地獄でしかない。

 

「みなさん、高校生活は私達のこれからの人生にとっても大切な思い出になります。ですので以前、失敗してしまった方もいらっしゃるでしょう。今からでも遅くありません。残りの高校生活に悔いが残らぬようやり遂げましょう。...でも私達に失礼なことをした方は許しませんけどね」

 

な、なんてことを言う女子だ。我を見下ろしながら不適な笑みを浮かべて生徒会長として、あるまじき言動を言っておるぞ。教師も指導すべきではないのか、我は今後どうなってしまうのだ。これで始業式が終わったのだが、我は3Cに戻った後、3Fに移籍しないといけない。我の秘策はあのお三方に通じるのだろうか。

 

我は鞄を持って、3Fの後ろの扉から誰にもバレない様に入っていったのだが、席に着くといきなり話しかけられた。

 

「材木座君じゃん。うちと一緒のクラスになったんだ。これからもよろしく!!」

「材木座、よろしくな」

「よ、よろしくお願いします」

 

我が席に着くと相模殿と川崎殿が話しかけてきた。名前順に並んでいるので我と席が近くすぐにバレてしまったようだが、我に話しかけてくれる女子など2Cにはいなかったので、少し嬉しいのだが//

我の顔が緩んでいると、いきなり後ろから肩を捕まれていた。あ、これ駄目な御仁だ...

 

我のゆっくり振り向くと、にこやかな顔をしているのだが、目のハイライトが消えている由比ヶ浜殿が我の肩を掴んでいた。ほかにも三浦殿や海老名殿もいたのだが、我は由比ヶ浜殿の視線から逃れることが出来なかった。

 

「材木、一緒のクラスなんだ。これから仲良くするっしょ」

「材木座君。私もよろしくね」

「わ、我もお願いしましゅ..」

「...中二、放課後、部室」

 

由比ヶ浜殿は頬を引き攣らせながら、我に片言の言葉を掛けてきたが、肩が痛い!!爪が食い込んでいる!!かなり怒られておる。我は生き延びられるのだろうか。

由比ヶ浜殿は我の肩を離してくれたのだが、由比ヶ浜殿から溢れる負のオーラは消えることはなかった。

担任が来るまで我は気を紛らわせるため、八幡と戸塚殿の所に赴き挨拶をし他愛ない話をしていた。

 

「材木座君。これからもよろしくね」

「材木座、あまり俺のそばに来るな」

「な、なにを言うのだ。八幡」

「八幡、酷いよ。材木座君、八幡の照れ隠しだからね」

「いや、お前が居ると俺にまで殺気が届くんだが」

 

八幡は我と話しているのに、視線は我の後ろに向けていた。振り向くとそこには由比ヶ浜殿が我らの方を見ていた。

 

「は、八幡、今日は部室に赴かないのか」

「今日は結衣に部活無しって言われたから帰るぞ」

「そ、そうなのか。...我は呼ばれているのだが」

「..あぁ、まあなんだ。自分が蒔いた種だ、諦めろ」

 

3Fの担任が来たことにより、八幡たちと別れ席に着いたのだが、由比ヶ浜殿が放つ負の感情は我の精神を蝕み、教師が話している最中も身体の震えが止まることなくホームルームは終了していった。

 

我は重い足を運び奉仕部に向けて歩いてゆく。まさしく死地に赴く気分だな、だが我には秘策があるのだ。なんとか我が身体に言い聞かせ部室の扉をノックしていた。

 

「来たようね、材木座君。そちらに座って貰えるかしら」

「中二、座って」

「お待ちしてましたよ、早く座ってください」

 

お三方は既に部室に来ており、指さす方は何時も正座させられるところであったが、そこに座るわけにはいかぬ。今日は我には秘策があるのだ。我に土下座させようとしても無駄なことだな。

 

「ちょ、ちょっと待ってくだしゃい。お三方にお土産が」

「そんなのいりませんよ。早く座ってください」

 

滅茶苦茶緊張してしまっているが、ここが勝負なのだ。我は机の上に鞄を置き荷物を取り出した。お土産は鞄の一番下に入れてあり、我は上にあった『ねんどろいど』をまねて作ったフィギュアを三つ机の上に並べて行き、お菓子を取り出した。

 

「ど、どうじょ。お土産にお菓子を持ってきました。白い恋人でしゅ」

 

我がそう言ってお菓子を差し出したのだが、お三方の目は我が並べたフィギュアに釘付けになっているようだな。

勝機!!我が渾身の作から目が離せないようだ!!

我はお菓子を差し出した後、取り出したフィギュアを鞄にしまおうとしたところ、生徒会長殿に手首を握られていた。

 

「ちょ、ちょっとまってください。木材先輩。そのお人形さんって」

「我のゲーセン仲間へのお土産だぞ」

「中二。でもそれって」

「材木座君。良く見せてもらえないかしら」

「壊さぬよう扱ってもらえれば」

 

お三方はそれぞれビニール袋に入っているフィギュアを見つめておるわ。ハハッ、恋する乙女とは怖いものよ。先ほどの殺気は消えうせ今は頬を染めておる。

 

「..中二、これってヒッキーだよね」

「左様。北海道の従兄の家に行っておったのだが、我が従兄の兄者は趣味でプラモやフィギュアの造形を行っていてな。我も教えてもらいながら創作してみたのだ」

「でも、これってなんで先輩が大きく...//」

「北海道のキャラクターで『まりもっこり』は知っておろう。それを真似て『ねんどろいど』と言われるフィギュアを元に使って作成してみたのだ。名付けて「はちもっこり」と言ったところか」

「「「はちもっこり///」」」

 

このフィギュアは『ねんどろいど』と『まりもっこり』を元に八幡を真似て創作したものだ。兄者にお願いして八幡の写真から型を作ってもらい、制服バージョンで3体作成して貰ったのだ。今はアホ毛は折れてしまわぬよう抜いてあるが、刺せるようになっておるし。

 

「どうして3体とも表情が異なるのかしら」

 

顔は照れている表情を3体に行ったが、手塗りのため微妙に表情が異なっておる。

 

「すべて我が作ったハンドメイドです。顔は書き込めないので、兄者に手伝って塗ってもらいましたが、手作業なので微妙に変化が出てしまって。では返してもらえますか、友人への土産なので」

「..中二。これほしい」

「わ、私も欲しいです」

「ざ、材木座君。私にも一つ貰えないかしら」

 

勝った!!だがここですんなり渡してしまうと、この後指導されるかもしれぬ。少しは焦らさないと我の努力が無駄になってしまうかやもしれぬし。

 

「いや、これはゲーセン仲間でこういった物が好きなやつがいるので、そのために作ったんです。お三方のお土産はお菓子なので。ではあちらに正座させて貰います」

 

我がそういうとお三方は慌てだした。

 

「い、良いんですよ、木材先輩。私、椅子を出します」

「中二、あたしが持ってきたお菓子食べて」

「材木座君。紅茶を出すから椅子に座っててくれるかしら」

「しかし我はお三方に失礼なラノベを書いたので指導を受けるのは当然かと」

 

我がそう言っているうちに、生徒会長殿が椅子をだしてくれ、由比ヶ浜殿は我の前にチョコや飴などのお菓子を並べてくれている。雪ノ下殿は我の為に紅茶を用意しだした。

 

「材木座君。あなた私達の指導を免れるためにこれを作ってきたのでしょう。....分かったわ、乗せられてあげるからこの人形、私達に頂けないかしら」

 

雪ノ下殿がそう言いながら我の前に紅茶を置いてくれたが、雪ノ下殿には我の考えなどお見通しだったようだ。

 

「そうだね、今度からあんなラノベ書かないってことなら良いよね」

「そうですね。私もそれでいいです」

 

本来ならもう少し引き延ばしてチヤホヤされたいのだが、ここで我も妥協した方が良いだろう。

 

「ではラノベの件は不問にして頂けると」

「ええ、ただし今後はああいった内容で書かないようにしてほしいわ」

「分かりました。ではフィギュアについては差し上げます」

「では有難く頂くわね。材木座君、ありがとう」

「中二、ありがと」

「木材先輩、ありがとうございます」

「でも中二、これって簡単に作れるの」

「いや、我には無理だぞ。実はお三方のフィギュアも作って、手を繋げれるようにと考えたのだが、我には無理だったのだ」

「それ良いですよね。私の小さいお人形さんが先輩と手を繋いでいるって」

「私も欲しいわね。材木座君、今からでも作れないのかしら」

「うん、あたしも欲しい。中二、作ってよ」

 

ぬかった、安心して余計なことを言ってしまったようだ。だが我には作れぬしどうしようもないのだが。

 

「済まぬ、我にはそのような技術はないのだ」

「では仕方ないわね。もし機会があったらお願いするわね」

「うん、さすがに北海道まで行けないし」

「今はこのお人形さんだけで満足です」

 

良かった。何とか作れと言われると思ったが、今はお三方でフィギュアを見比べどれを貰うのか相談して決めているようだな。

 

「では我は帰ってもよろしいですか」

「ええ、材木座君。お土産ありがとうね」

「中二、ありがと」

「木材先輩、ありがとうございました」

 

「フーッ」

 

我は奉仕部の扉を閉めると安堵のため息が出てきた。雪ノ下殿に我の浅はかな思考が読まれていたのには驚いたが、ここまで上手くいくとは思わなんだ。

勝った!!あのお三方を相手に我が勝利をもぎ取ったのだ、こんなに嬉しいことはない。

 

我はスキップしたい気分を抑え、下駄箱に向かっていくと平塚女史が廊下を歩いてくるのが見えた。

 

「居たか材木座。今から生徒指導室に来い」

「わ、我は何もやっていないですが」

「..終業式の日にな、雪ノ下がお前のラノベを持ってきてくれたんだ」

「あぁぁ、あ、あれはあれでして」

「ゆっくり話し合おうではないか、お前が私のことをどう思っているのか聞きたいのでな。話したくなければ肉体言語で聞くだけだが」

 

わ、忘れておった!!平塚女史なら奉仕部に来ることがほとんどないため、何も対策を考えておらなんだ。

平塚女史は我の襟首を掴み、そのまま生徒指導室に連行されてしまった。

 

この日、我は一番怒らせてはいけないのが誰なのか、脳に刻み込まれていた。

 

 



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「ゆきのんの妊娠」

「八幡。これ今日の弁当だよ」

「ありがとうな、沙希。でも3年になっても続けるのか」

「私は続けるよ。皆は知らないけど」

「うちも持ってくるよ」

「私も持ってくるわ」

「ヒッキー、私も続けて良いよね」

「先輩、私も持ってきますから」

「そうか。じゃあ、これを受け取ってくれ」

 

そういって八幡は鞄から紙袋を五つ取り出して、全員に配ってくれたわ。

 

「そのなんだ。今までのお礼とこれからもよろしくってことで」

「「「「「ありがとう(ございます)!!」」」」」

「八幡。開けても良いかしら」

「ああ、もうあげたからな」

 

私達が袋を開けると中には色とりどりのポーチが入っているわね。まさか八幡がお礼をくれると思っていなかったわ。

 

「可愛いポーチですね。先輩が選んだんですか」

「ああ、最初は小町に選んでもらおうと思ったんだが、自分で決めろって言われてな。ポーチなら化粧品とか、小物入れとかに使えると思って決めたんだ。まあ、安物だが良かったら使ってくれ」

「八幡、こういうのは値段ではないのよ。本当に嬉しいわ」

「うん、ヒッキー。ありがとうね」

「八幡、私も大事に使うから」

「うちも大事に使わせてもらうよ、八幡」

「先輩。ありがとうございます」

「じ、じゃあ。弁当食べようぜ。お腹が減ってしょうがないんだ//」

 

八幡は照れているようね。顔を赤くしながら川崎さんの弁当を食べだしたわ。私達は皆、嬉しくてポーチを眺めながら、弁当を食べだしたわ。

 

「ご馳走様でした」

「お粗末様」

「沙希、何時も旨い弁当ありがとうな。じゃあ、俺は先に教室に戻ってる//」

 

そう言って八幡は部室を出て行ったわ。多分、照れくさいのでしょうね。私達はずっと貰ったポーチを眺めていたのだから。

 

「でも良いのかな貰っちゃって。これアナスイだよ、安くはないよね」

「そうね。私達もお返しできるようにもっと料理を頑張りましょう」

「うん、うちもそれが良いと思う」

「そうだね。これでお返しに何か渡すと、また八幡に気を使わせるし」

「はい。でも先輩ってこういうところ、あざといですよね」

「ヒッキーは純粋にお礼をしたかっただけだろうけど、..もっと好きになっちゃったし//」

「「「「うん(そうね)(はい)//」」」」

 

私達は弁当を食べ終わってもずっとポーチを眺めたり、今まで使っていたポーチから小物を入れ替えたりしていたわ。八幡にお弁当でそれだけのものを返せていると良いのだけれど。

 

*****

 

放課後になったので私達は3年生になって初めての部活のため部室に集まったのだけれど、八幡が春休みのことを言い出したわ。

 

「今回の春休み、全然休めなかったな」

「なにがかしら、私は充実していたわよ」

「うん、楽しかったじゃん。撮影したり皆で買い物行ったり、ピクニックに行ってお花見したり」

「みなさん、いっぱい遊んだんですよね。私は生徒会と部活で偶にしか行けませんでしたけど」

「八幡も一人の日はあったでしょ」

「無かったぞ。誰かが来たり、呼び出されたり」

「...ヒッキー。私たち以外にも誰かと遊んだの」

「...いや、俺の勘違いかな。うん、一日家にいたこともあるわ」

「八幡。正直に言ってもらえるかしら」

「..めぐりが家まで来て、お昼作ってくれて図書館行ったり、かおりと千佳の三人でラウンドワンに遊びに行きました」

「「「ふーん」」」

 

城廻先輩は余り関わることがなかったのに、八幡の家まで行くということはそういうことなのよね。

折本さんと仲町さんは八幡のこと、どう考えているのかしら。特に仲町さんはあまり話すことはなかったと思うのだけれど。どうして八幡の周りには女性がこんなに多いのかしら。

 

私が考え込んでいると材木座君が来たようね。この間のこともあるので、普通のラノベを書いて来ているはずだけれど。

 

「雪ノ下殿のラノベを書いてきたので、最初、由比ヶ浜殿と生徒会長殿に読んでもらいたいのだが」

「今回はまともなラノベなのか、材木座」

「由比ヶ浜殿と生徒会長殿のラノベも用意しているのだが、全部子供が関係してくるのだぞ」

「「「....//」」」

 

由比ヶ浜さんと一色さんがラノベを読みだしたのだけれど、難しい顔をしているわね。

 

「これ、良いのかな」

「ちょっと悩みますね」

「何か不味いことが書いてあるのかしら」

「うん。ゆきのん家の両親が出てくるんだけど、ちょっとね」

「不味かったであるか。では読まない方が良いと思うので返してもらえないだろうか」

「..それは最後、どうなるのかしら」

「最後はハッピーエンドだよ」

「ただ、この内容だと途中まで雪ノ下先輩のご両親のこと、余り良いように捉えれませんから。最後は良いんですけど」

「それであれば問題ないわ。読ませていただけるかしら」

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

俺と雪乃は3年生の2学期になってから付き合いだした。俺たちは同じ大学を目指すため、雪乃に勉強を見てもらっていたのだが、いつの間にか俺は雪乃が居ないと何も手に付かないほど、彼女のことばかり考えており、受験生でありながら告白して雪乃は受け入れてくれた。

 

ただ二人で勉強している毎日だったので、恋人らしいデートや情事に溺れることなく手を繋ぐだけで嬉しく感じながら、学生生活を満喫していた。

 

「は、八幡。冬休みは私のマンションで最後の追い込みの為、合宿しないかしら」

「いいのか、今まで泊りに行ったことはないんだが」

「ええ、クリスマスや正月も勉強するでしょ、でも二人でお祝いぐらいしたいもの」

「そうだな。じゃあ終業式終わったら、用意していけばいいか」

「ええ、それで構わないわ」

 

俺は終業式の日、家に帰ると雪乃の家に泊まりに行くため、用意して向かっていった。

雪乃と初めて夜を明かすことになるが、俺はそういったことをやるつもりはない。本心から言えばやりたいに決まっているが、雪乃が望まないのであれば、俺からは求めないつもりだが理性が持つのか不安だった。

 

「では早速勉強を始めましょうか」

「ああ、ちゃんと用意してきたからな」

 

俺たちはいつも通り勉強会を始め、ご飯は二人で作り疑似の夫婦体験をしながら過ごしていた。俺はそれだけで幸せを感じていた。

 

クリスマスイブは午前で勉強会を終え、午後はケーキやターキー等の用意を二人でしていた。

 

「二人きりのクリスマスイブだな」

「ええ、今日ぐらいは勉強を忘れて、付き合いだして初めてのクリスマスイブなのだから、ささやかなパーティーをしましょ」

「ああ、雪乃。これ俺からのプレゼントだ」

「え!?は、八幡。何時の間に用意していたの?」

「合宿を決めた日に買いに行った。付けてもらえるか」

「ええ、貴方がつけて頂戴」

 

そういうと、雪乃は俺に背中を向け髪の毛を持ち上げていた。俺が買ったのは雪の結晶がモチーフになっているペンダントで雪乃の白い肌に合うと思い、購入していた。

 

「綺麗。嬉しいわ、八幡。では私からもプレゼントがあるの。目を瞑って貰えるかしら」

「ああ」

 

そういうと、雪乃は俺の首に何かを巻いてきた。多分マフラーだろう。ただ雪乃の息遣いが凄く近くに感じられる。

 

「目を開けて」

 

俺が目を開けると、雪乃の顔がすぐ近くにあり、潤んだ瞳で俺のことを見ていた。マフラーを巻いてくれたが、俺と雪乃を繋ぐように首にかかっていた。

 

「マフラー、ありがとうな//か、顔が近いんだが//」

「ええ、手編みで二人で巻いても良いように長くしたのよ。...八幡//キスぐらい良いでしょ//」

 

雪乃はそういうと目を閉じてきたので、俺は顔を近づけていき、雪乃に口づけをした。

 

「愛してる、雪乃//」

「私もよ、八幡。貴方を愛しているわ//」

 

俺は雪乃のことが愛おしくなり、雪乃の全てが欲しくなった。この日、俺は雪乃を求め雪乃も答えてくれた。

 

俺たちは交わった後でもお互い受験生であることには変わりないため、クリスマスと雪乃の誕生日以外はキスまでにしていた。

 

受験が終わり、俺たち二人志望校に受かった後、暫くすると雪乃が蒼白な顔をしていた。

 

「..八幡。..私、妊娠したの」

「ほ、本当か。じゃあ、雪乃のご両親に結婚の許しを貰いに挨拶に行かないと」

「..いいの?産んでも」

「何言っているんだ。当たり前だろ」

「あ、ありがとう。八幡...うぅぅ」

 

雪乃は不安だったのだろう、俺の胸に顔を埋め泣き出した。俺も確かに不安はある。まだ卒業もしていない、しても大学生であるため、親子三人の生活費を稼ぐことなど出来ないだろう。甘い考えだが、俺は実家で親に面倒見てもらえるよう頼んでいた。

俺の両親はしぶしぶだが了承してくれ、色々準備があるだろうと俺の学費で溜めていた分のお金を幾らか渡してきた。

 

「八幡が国立に受かったおかげで少しは渡せるわ。今後、お腹の子が大きくなると色々物入りになるから、このお金を使いなさい」

 

俺の両親はそう言って、早く雪乃の両親にも挨拶しに行けと言ってきた。

 

俺と雪乃は二人で雪ノ下家に赴いたのだが...

 

「何を言っているの、雪乃。まだ学生で責任持てないことしておいて、そちらのご両親に迷惑かけて子供を育てるですって。許されるわけないわ、貴女には雪ノ下家を守って貰わないといけないのよ。どこの馬の骨とも分からない男より私達が見つけてきた男性と結婚しなさい。お腹の子供は処分して貰うわ」

「ど、どうしてそんな酷いこというの!!子供には責任ないじゃない!!」

「ええ、子供に責任はないわ、あるのは貴方たち二人よ。だから降ろして別れなさい」

「いやよ、私は八幡のこと愛しているわ。愛し合って出来た子供にそんな酷いこと出来るわけないじゃない!!」

「..雪乃。私は貴女の将来のことを思って言っているの。高校生でありながら無計画にそういったことをする男に雪乃を任せれないわ」

「お義母さん。全て俺の責任です。俺のことを憎んでもらっても構いません。ただ雪乃と子供のことは認めてあげてください。俺は大学に行きながら働きますから」

「貴方にお義母さんと言われる筋合いはないわ。すぐに出って行って」

「八幡君と言ったかな、君はまだ高校生だろ。今回のことはお互いに責任があると言っていい。だから雪乃にこれ以上関わらなければ、私達から何かするつもりはない。だから雪乃と別れて出て行ってくれないか」

 

雪乃の両親は俺達のことを認めてくれる事はなく、俺と雪乃は雪ノ下家を後にした。

 

「..雪乃。俺に全て任せてくれないか」

「八幡。また自分を犠牲にするつもりなの?」

「いや、俺と駆け落ちしてくれないか。雪乃とお腹の子供に迷惑をかけるが俺にはそれしか思いつかない」

「良いわよ、私も考えていたもの。..でも、もう一つ手があるの。その為には姉さんの協力が必要なのだけれど」

「聞かせてもらえないか、その方法を」

「ええ、それは・・・」

 

雪乃はとりあえず御両親の言うことを受け入れていた。堕胎については、雪乃の体調を考え卒業式の後に行う予定になったようだ。

 

卒業式の日、俺達は登校したが雪乃と会うことは出来なかった。雪ノ下のご両親も来賓としてきており、俺の方を一瞥してきたが、俺が会釈しても何も反応はなかった。

 

生徒会長の送辞が終わり、答辞は3年間主席だった雪乃が選ばれ、壇上に立っていた。

 

「やわらかな陽射しの中に、ほのかな春の香りが漂う季節となりました。今日....」

 

雪乃の答辞が慎ましく進んでいったが、雪乃は一旦言葉を止め、呼吸を整えていた。

 

「私事でありますが、私は昨日、比企谷八幡さんと結婚しましたことをここに報告させてもらいます。彼が雪ノ下を名乗ってくれることになりました。そしてこのお腹には八幡と愛し合った結晶が息づいています。八幡、これからも私と子供を愛してください」

 

俺はそう言われ、席から立ち上がり大声で叫んでいた。

 

「雪乃!!俺はお前と子供のこと一生離さない。だからどこまでも一緒に付いて来てくれ!!」

「はい!!どこまでも付いて行くわ!!」

 

俺はそういうと、雪乃のもとに走っていき、壇上に上がった。そして熱い口づけを交わした。

教師や生徒、保護者達は騒然としていたが、俺たちはお構いなしに口づけを交わしていた。

 

「おめでとうございます!!雪ノ下先生!!ご婦人も!!いやはや雪ノ下家もこれで安泰ですな」

「い、いや。これは、..あ、ありがとうございます...」

「....雪乃。やってくれましたね」

 

体育館は騒然としていた。それはそうだろう、雪乃の結婚発表とお腹の子供。俺には考え付かなかったが、これだけの人の目があるところでの発表だ、雪ノ下家も後戻りできまい。婚姻届けも提出しているため、雪乃の経歴に傷を付けたくないだろうし。

 

俺たちはあの後、陽乃さんにお願いし実印を手に入れてもらっていた。未成年のため、婚姻届けには親の同意が必要だったから。ただ俺達は陽乃さんに幾つか条件を出されたが、それを全て受け入れた。雪ノ下性を名乗ること。近い将来、陽乃さんが引き継ぐ雪ノ下建設で働くこと。他にも細かい条件はあったが、俺たちは全て受け入れた。

 

「大騒ぎね、八幡」

「ああ、目立たず卒業する予定のボッチが、最後にこんなに目立つプロポーズすることになるとはな」

「良いじゃない、一生に一回ぐらい。もしかしたらこの学校で語り継がれるかもしれないけれど」

「でも悪い気分じゃない、大好きな雪乃が隣に居てくれるから」

「私もよ、八幡。一生離れないわよ」

 

俺たちはまた、壇上の上でキスを交わしていた。

俺たちが壇上を降りるとそこには卒業生達が花道を作ってくれていて、雪乃は俺の腕に抱きついてきたが、俺たちは祝福されながら花道を通り体育館を後にした。その後、平塚先生に呼び出されたが...

 

優乃(ゆうの)ちゃん、ばぁばですよ」

「母さん、優乃は寝ているのだから静かにしてもらえないかしら」

「雪乃、早く学校に行きなさい。あなた休学していたのだから少しでも遅れを取り戻す必要があるでしょ。陽乃も早く会社に行かないと」

「お母さん。もしかして今日も会社に来ないつもり?なんで社会人一年目の私に任せているのよ」

「陽乃、若い時の苦労は買ってでもせよって言うでしょ。雪乃、優乃ちゃんは私に預けてもらって構わないわよ。なんだったら八幡さんと二人で旅行に行ってきなさい。一週間ぐらい、いいえ一月でもいいわ。お金は出してあげるから」

「言っていることが支離滅裂なのだけれど。大体母さんは優乃を処分しろって言ったのよ」

「な、何を言っているの!!こんなかわいい優乃ちゃんを。...私がそんなこと言うわけないでしょ。あ、あれはそ、そうよ。貴方たちがどんなことが有っても乗り越えられるか試したかっただけよ」メソラシ

「「...へぇ」」

「そ、そうだわ。八幡さん、あなた新婚旅行も行っていないでしょ。雪乃は勉強しないと行けないし、陽乃は会社が忙しいから、私と八幡さん、優乃ちゃんで旅行に行きましょう。そうね、温泉が良いわ。部屋に露天風呂がついていれば、3人で一緒に温泉にも入れるわよ」

「な、なにを言っているのかしら!!この人は」

 

卒業式の後、雪乃の両親は俺達を別れさせることを諦め、俺のことを受け入れてくれた。最初のころは余り良い顔をしてもらえなかったが、俺が陽乃さんの手伝いで会社に出入りしだすと、いつの間にかお義母さんに連れ回されるようになった。

 

優乃は雪乃に似て、凄く可愛い赤ん坊で俺のアホ毛はしっかり遺伝しており、キャッキャ笑っている時はピコピコアホ毛が動いていた。家の両親も雪乃の御両親も優乃にはベタ惚れになっていた。

 

今では雪乃の御両親は人が変わったように俺たちの世話を買って出てくれている。俺の実家では優乃の面倒を見る人がおらず雪乃の休学が延びてしまうため、雪ノ下家の敷地内に家を建ててくれ俺達を招き入れてくれた。

陽乃さんは大学を卒業すると、元々雪ノ下建設で学生の時から仕事をしていたので、それなりの役職になり、お義母さんの仕事を幾らか引き継いでいたため、毎日奔走していた。

 

「八幡さん、陽乃と雪乃が私を虐めるのよ。次期雪ノ下家当主としてガツンと言ってあげて頂戴」

「はは..陽乃さんが結婚したらその旦那さんが次期当主ですよね」

「陽乃、八幡さんが大学卒業したら、どこに嫁いでもらっても構わないわ。なんだったら会社辞めてもらってもいいわよ」

「な、なんでお母さんはそこまで八幡君のこと受け入れているのよ!!」

「なんでって雪乃が選んだ人ですもの。私は娘の目を信じているわ。優乃ちゃんも幼稚園に行きだしたら、私と八幡さんで二人三脚で運営していくわ」

「母さんって八幡のこと、どこの馬の骨とまで言っていたのだけれど」

「雪乃!!自分の旦那様に向かってなんてことを言うの!!そんなこと言うわけないでしょ!!私が何時言ったの?何時何分何秒?地球が何回回転したとき?」

「..それ小学生でも言わないから」

「ほ、ほら時間よ。優乃ちゃんは私に任せて早く出かけなさい!!」

 

俺と雪乃はお義母さんに優乃を任せて、大学に向かっていった。

 

「雪乃、あの作戦ってここまで受け入れてもらえると考えてたのか」

「いいえ、まさか母さんがあそこまで舞い上がるとは思っていなかったわ。私は大学を辞めて八幡のお家で静かに暮らすと考えていたもの」

「そうだよな。俺が言った駆け落ちよりは良かったんだろうが、あそこまで優乃に入れこまれるとちょっと不安で」

「優乃もそうだけれど、あなたもよ」

「俺?俺は関係ないだろ」

「やはり気づいていないのね。今、私の両親はあなたに雪ノ下家を任せる気でいるわよ」

「それは陽乃さんを焚きつけるために言っているだけだろ。俺なんて雪ノ下家にとっては本当に馬の骨以下の存在だからな」

「はぁ、これだからあなたは」

 

俺と雪乃は大学に通いながら、子育てに日々追われていた。俺はお義母さんと陽乃さんの手伝いをするため、アルバイトで雪ノ下建設に出入りしているが、なぜか大きなプロジェクトの会議に出席させられ毎回発言させられるため、かなり建築関連の勉強をしている。大学受験より大変だったがお義母さんと陽乃さんのお蔭で何とかこなせていた。

 

こんな忙しい日々でも毎日が幸せで楽しいと感じていた。俺を支えてくれる雪乃が居るから。そして俺たち家族を雪ノ下家を含め支援してくれる人たちのおかげで俺たち家族は幸せに暮らしていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「優乃//」

「いろはの時も有ったが何で俺が全校生徒の前で叫んでんだよ」

「これ以外の方法はあるか?」

「思い付かないが俺なら取らない方法だな」

「だが自分の伴侶と子供の為だぞ。これぐらい出来るであろう」

「あなた。優乃と私のためにやってくれないの?」

「い、いや、もしこんなことになって他に手がなければ腹を括るが」

「良かった。お父さん、優乃と私のこと守ってくれるって」スリスリ

「な、なんでゆきのん。お腹撫でて語りかけてるし!!」

「さっき、雪ノ下先輩が「あなた」って言った時、何時もとニュアンスが異なりましたよね!?あと、先輩のことお父さんって..」

「あら、当たり前でしょ。私とお腹の子を守って貰わないといけないのだから」スリスリ

「は、八幡。お主もしかして...」

「ヒッキー...」

「先輩...」

「俺、経験ないからね!!..頼む、雪乃。それ以上は止めてくれ」

「..あなた、優乃に会いたくないの?」

「い、いや、何時かは子供が欲しいと思うがまだ早いだろ。せめて社会人にならないと」

「では、大学卒業したら私に子供を作ってくれるのね//」

「な、なに言ってるんだし!!ゆきのん!!」

「そうですよ!!先輩も何言ってるんですか!!雪ノ下先輩と子作りするみたいに言って!!」

「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないんだが//」

「キーーー!!なんでそこで二人で顔をあっかくしてるんだし!!」

「そうですよ!!先輩!!」

 

どうも今回、私は暴走してしまったようね。恥ずかしかったのだけれど、もし子供が出来たらって考えると嬉しくてしょうがないわ。

 

「雪ノ下先輩の家って厳しそうですよね。もし、子供出来たってなったら駆け落ちとかしないと行けないぐらいですか」

「ええ、多分こうなるでしょうね。それか私であれば、黙っておいて暫く旅行に行くと言ってその間に子供を産むわね。生まれてしまったらどうしようも無いもの」

「でもなんかのドラマで有ったじゃん。子供を施設に入れるとか」

「そんなことさせないわ!!私と八幡の子供を施設に預けるなんて!!」

「..雪乃。そこで俺の名前を出すの止めてくれ」

 

どうも駄目ね。本当にそうなったらと考えると、感情をうまくコントロールできなくなってしまうわ。

 

この後、時間もないので批評を行い、次は由比ヶ浜さんのラノベを読むことになったわね。

 

 



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「ゆいの妊娠」

「中二、私のも子供が出てくるんだよね」

「左様、雪ノ下殿のラノベとは異なるがな」

「では私が最初に読めばいいのかしら」

「いえ、雪ノ下殿も出てくるので生徒会長殿でお願いします。生徒会長殿も名前だけ出てきますが」

 

私も出てくるのね。一色さんが由比ヶ浜さんのラノベを読んで問題ないことを確認すると、皆で読みだしたわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「...ヒッキー、就職先見つかった?」

「いや、まだだ。中々内定を貰えなくてな。でも卒業まで後半年しかないんだよな」

「あ、あのね。ヒッキー...その」

「どうしたんだ結衣。そういえば結衣は就職先決めたのか」

「う、ううん、まだだよ。三つ内定は貰ったんだけど、どうしようかな。決めれないや」

 

私達は一緒の大学に入り付き合いだして、4年生になっていた。

4年生になって9月に入った時気づいたんだけど、あたしは妊娠して2か月経っていた。まだ大学の卒業まで半年ほどあるんだけど、今のままだと就職はおろか大学の卒業も出来ないと思う。

ヒッキーもこの大事な時期に妊娠や結婚なんて考えられないと思うし、あたしが一人我慢すればいいんだよね。あたしはヒッキーに相談することなく、子供を降ろそうと考えていた。

 

でもお腹に宿った子供を降ろすなんてやっぱり出来ない。あたしは子供を授かれるなら大学や就職なんてどうでもよかった。ヒッキーとは別れたくないけど、もし降ろせって言われたら自分一人で子供を育てようと思っている。

ただヒッキーに相談することもできなかった。もし降ろせって言われたら。いくら自分一人で育てるって決めてもヒッキーに拒絶されたら。そう考えると怖くて何も言えなかった。

 

「..結衣。何か悩みがあるのか」

「..ううん。な、なんでもないんだよ...」

「結衣、俺にも相談できない事か。俺は結衣とずっと一緒に居たいと思っている。それは俺だけなのか」

「ううん。あたしも一緒に居たい。ずっとヒッキーと一緒に居たい。でも...迷惑を掛けたくないの」

「...結衣。俺は今まで結衣と一緒にいて迷惑なんて思ったことない。俺なんかだと頼りないかもしれないが、少しでも力になれればと思っているんだ。だから頼って貰えないか」

 

ヒッキーなら真剣に考えてくれるかもしれない。怖いけどあたしはヒッキーに打ち明けることにした。

 

「...うん、ヒッキー。じゃあ、相談していい?」

「ああ、教えてくれるのか」

「あ、あのね。そ、そのあたし、...ヒッキーの子、妊娠して今2か月なの」

「え!?あ、ああ、おめでとう。で良いのか」

「うん...ヒッキーが駄目って言ったらどうしようと思って。もし降ろせって言われたら...」

「なに言っているんだ。....子供を降ろせなんて言わない。付き合っていて俺は結衣のことが好きだから抱いたんだ。俺には降ろせなんて無責任なことは言えない」

「うん、でも就職とか今から大変だよ。あたしは大学辞めようと思っている、でもヒッキーは駄目だよ」

「いや、結衣も駄目だ。今4年生だからほとんど学校に行かなくても良いだろ。後、半年俺と一緒に大学に行って卒業しよう」

「でもお腹、大きくなっちゃうし」

「ここからなら通えるだろ、俺は就活しながらアルバイトして生活を支えるから」

「うん、ヒッキー。良いんだよね。産んでも」

「ああ、...結衣、俺と結婚して子供を産んでくれ」

「嬉しいよ、ヒッキー。あたしを貰ってね」

 

あたしがそういうと、ヒッキーはあたしを抱きしめてくれた。あたしは嬉しくて涙が溢れてきた。

 

「あ、ありがとう、ヒッキー。うぅ」

 

あたしたちはそのまま、キスをしてまた抱き合った。

 

土曜日になったんで二人であたしの実家に向かっていた。結婚と妊娠の報告を。多分、家の両親は反対しないと思うけど。

 

「ただいま」

「お、お邪魔しましゅ」

「おかえり、結衣。ヒッキー君も久しぶり。はい上がって上がって」

 

あたしたちがリビングに入っていくと、パパがソファーに座っていて新聞を読んでたんだけど、落ち着かないのか手が震えていた。

 

「パ、お、お父さん。ただいま」

「結衣、おかえり。そちらの方は..」

「は、初めまして、比企谷八幡といいます。ゆ、結衣さんとお付き合いをさせてもらっています」

「パパ、お客さんを座らせずに何しているの。ほら、ヒッキー君、結衣。座って」

「は、はい」

 

あたし達がソファーに座り、ママがお茶を出してくれて、ちょっとした沈黙が続いたんで、あたしから話を切り出した。

 

「あ、あのね。お父さん、お母さん。二人に報告があるの」

「なになに結衣が改まっちゃって、もしかして子供が出来た~とか」

「「...」」

「も、もしかして当たっちゃったのかなぁ...」

「そ、そうなのか、結衣」

「う、うん。今妊娠2か月なの」

「お義父さん、お義母さん。結衣さんを僕にください」

「..比企谷君は今、大学4年生だな。もう就職先は決まっているのか」

「いいえ、まだです」

「..そうか。だがこの時期に内定を貰えてないと、厳しいんじゃないか」

「ええ、でも諦めてません。結衣と子供の為にもどんな就職先でも行くつもりですから」

「パパ、良いよね?」

「...結衣に子供が出来たんだ。反対も賛成もないだろ。比企谷君のことは結衣や家内から聞いているから信用しているよ。ただ就職先を早く決めてもらえないと、安心して結衣を任せれないな」

「それはこれから見つけていきます」

「結衣は大学どうするんだ」

「うん、本当は大学やめようと思ったけど、ヒッキーがお腹大きくなっても通った方が良いって言ってくれて、だから卒業までは行くつもり」

「そうだな。それでどこに住むつもりだ」

「うん、それはヒッキーの就職先が決まらないと、なんとも言えないけど」

「...比企谷君。私の勤めている会社を受けてみないか。私は人事をやっているんだが、まだ内定枠が空いているんでね。後、子供が生まれても結衣一人だと、不安が多いだろ。良かったら私達とこの家に住んでもらっても良いかもしれない」

「そ、それだと御両親にご迷惑をお掛けしてしまいますし」

「そんなことないよ、ヒッキー君。結衣も子育て大変でしょ。私がいれば結衣も安心できるでしょ」

「まあ、ゆっくりしてられないだろうが、考えてくれないか」

「はい、ありがとうございます」

「私は息子と酒を飲むのが夢だったんだ。良かったら今から飲まないか」

「分かりました。お相手させてもらいます」

「あらあら、では私も少し付き合おうかしら、結衣は駄目よ。ジュースにしておきなさい」

「じゃあ、結婚のお祝いと家族が増えるってことで」

「「「「乾杯!!」」」」

 

その日はパパとヒッキーは遅くまで飲んでいた。色々話しててパパも息子ができたって喜んでるし。

良かったヒッキーに相談して。もし勝手に一人で産むっていって、ヒッキーと別れてたらこんな幸せは無かったんだよね。

 

いつもヒッキーはテストでは問題ないんだけど、面接で落とされていた。だから今回、パパの会社に面接を受けに行くときは伊達メガネをかけていって、結衣のために頑張るって言ってくれた。そのおかげか内定を貰ったんだけど、旅行会社でもヒッキーなら大丈夫だよね。

 

あたしたちは無事大学を卒業して両親と一緒に住むことになった。最初は一人でも頑張るつもりだったけど、お腹が大きくなってきて、買い物だけでも大変だったんで、ヒッキーが両親の申し出を受けてくれて、一緒に住むことをお願いしてくれたんでママがあたしを色々手伝ってくれてる。

 

あたし達が実家で暮らしだして、暫くして出産したんだけど、可愛い男の子で名前はあたしから一文字取って「歩結(あゆむ)」って名前をヒッキーが考えて付けてくれた。

あたし達家族でどんなことにも一緒に歩んで結ばれていたいから、歩結に恋人が出来たら、あたし達みたいに二人で相談して歩んで結ばれてほしいから。そういう願いを込めてってヒッキーは照れくさそうに教えてくれた。

 

あたしが歩結を産んで1年たつと、歩結は何とか歩けるようになって、段々目が離せなくなっていた。ヒッキーに似て、アホ毛が生えているんだけど、2本に分かれているんで触覚みたいになっていて、それも可愛かった。

でも最近、ヒッキーは出張が増えていて、歩結と遊べないって嘆いていたけど、あたしはヒッキーに感謝することしか出来なかったんで、出張の時は歩結とあたしのツーショットを毎日、送っていた。

 

「結衣、八幡君は凄いな」

「なにが?パパ」

「大きな契約先を幾つも取ってきて入社3年目で既に役職を貰えることになりそうだぞ」

「へえ、ヒッキー頑張ってるんだ」

「ああ、中でも雪ノ下建設と契約を取ってきたのはビックリしたな」

「...へぇ」

「その他にも相模不動産、海老名出版、いろはす飲料、良くは知らないがyumikoってブランド服の会社とも契約結んできたし、学習塾の川崎塾だったかな、そこの長期合宿も取ってきてたな」

「ふーん...」

「今度の出張も雪ノ下建設から責任者を同行させろって言われて、八幡君が行くらしいけどな」

「....ねえ、パパ。ちょっと聞きたいんだけど・・・」

 

本当は駄目なんだろうけど、あたしはヒッキーとパパから出張内容と行先のことを教えて貰っていた。

 

「雪ノ下さん。今回、同行させていただく比企谷です」

「八幡。私とあなたの仲じゃない、敬語は辞めてもらえるかしら」

「いえ、仕事ですから」

「では仕事を依頼している立場から言わせてもらうわ。私に敬語は辞めて頂戴」

「..はぁ、分かったよ。雪乃」

「ふふ、八幡。今日は慰安旅行なのだから気兼ねなく過ごしましょ。それと夜は一緒に飲みましょうね」

「ああ、そういえば今回、俺ともう一人助っ人が居るんだ。今トイレに行っているんだが」

「..あなた一人で十分なのだけれど」

「ああ、来たようだな。こっちだ」

「この度は私の主人がお世話になってありがとうございます。..久しぶり、ゆきのん」ギロッ

 

今日は雪ノ下建設の慰安旅行でホテルに集合して宴会するってことで、あたしもお邪魔してゆきのんの前にでるまで、顔を伏せて二人に近づいて行った。

 

「ゆ、結衣さん!?ど、どうしてあなたがここに...」

「..良いじゃん、久しぶりにゆきのんに会いたくなってね」

「雪ノ下様、比企谷様とのジュニアスイートのキーでございます」

「え、なんで俺と雪乃が一緒の部屋なんだ」

「ふーん、ゆきのん。どういう事?」

「こ、これは何かの手違いではないかしら」

「雪ノ下様から比企谷様の部屋をキャンセルされて、スイートルームが空いていなかったため、ジュニアスイートに切り替「何を言っているのかしら..」....も、申し訳ありません。私どもの不手際で比企谷様の部屋を取り忘れてしまいました。ただ本日満室で部屋が空いておらず、申し訳ありませんが、同室でもよろしいでしょうか」

「その部屋って3人でも大丈夫?」

「はい、大丈夫でございます」

「じゃあ良いよ、ゆきのん。お部屋で一杯お話しよっか。積もる話が出来たからね」

「ゆ、結衣さん。私、会社に戻らないと」

「大丈夫だよ、ゆきのん。時間を掛けてたーぷりお話ししよ」

 

ヒッキーは宴会まで挨拶回りするって言って、荷物を部屋に置いてすぐに出て行ったけど、あたしは正座しているゆきのんの前に仁王立ちしていた。

 

「ゆきのん、どういうこと?」

「...は、八幡とは仕事の関係だけよ。そう仕事だけ」

「この部屋は」

「ホ、ホテルの人の手違いよ、わ、私が何かするわけないでしょ」

「ふーん、さっきゆきのんがヒッキーの部屋キャンセルしたって言っていたけど」

「あ、あれはホテルの人の勘違いよ」

 

ゆきのんはあたしと目を合わせず、ずっと俯いて喋っていた。

暫くすると宴会が始まるってことで、ヒッキーはゆきのんを呼びに来て宴会場に向かっていった。

 

あたし一人になったんで改めて周りをみると凄い部屋だなぁ。ジュニアスイートってこんなに凄いんだ。ベッドなんてキングサイズだし。ここでヒッキーとイチャイチャしたいな。ジュニアスイートって、スイートルームと違って部屋が独立してないんだね。

あたしはゆきのんに制裁を食らわせたかったので、良からぬことを考えていた。

 

ヒッキーとゆきのんが部屋に帰ってきて雑談した後、そろそろ寝ようかってなったんで、ゆきのんには部屋の奥にあるベッドを使ってもらった。そこだと部屋から出るとき、あたしたちの寝室を通らないと行けないしね。

 

「ねえ、ヒッキー。ここでエッチしよ」

「ま、不味いだろ。雪乃から丸見えだぞ」

「大丈夫だよ、カーテンしてあるし」

「声が聞こえるじゃないか」

「聞かせてあげようよ、あたしとヒッキーがどれぐらい愛し合っているか」

 

そういってあたしはヒッキーの返事も待たずにキスしていった。あたしはゆきのんに聞かれていると思うと、なんだか何時もとは違う気分になってきて、何度もヒッキーを求めていた。ヒッキーも何時もより興奮しているみたいであたし達は夜遅くまで求め合っていた。

 

「....お、おはよう。結衣さん」グッタリ

「ゆきのん!!おはよう!!元気ないね、どうしたの。その目の隈」ツヤツヤ

「...枕が合わなくて寝れなかっただけよ。..結衣さんは凄く元気ね」

「あたしも寝不足なんだけど、昨日一杯愛して貰ったからね。早くゆきのんも恋人探した方が良いよ」

「クッ...そ、そうね。ご忠告ありがとう」

「ほら、ヒッキーも起きて。目覚ましのキスだよ」

 

あたしはゆきのんに見せつけるようにキスしていた。あたしの大事な旦那に手を出そうとした罰だよ。

 

あたしはこの日から、ヒッキーの出張先にくっ付いて行くようになった。優美子、姫菜、さがみん、サキサキ、いろはちゃんにも、ゆきのんと一緒のように制裁を食らわせてやった。

実はあたしとヒッキーは知り合いが聞いているところでエッチするのが、凄く興奮するようになってて、二人で密かに出張の日を楽しみにしていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「これってあたしの子供っていうより、ゆきのんとの浮気話じゃん!!」

「そうですよね、最初は雪ノ下先輩のラノベと似てるなって思いましたけど、途中から浮気を阻止する話ですし。私もその相手の一人になっていますけど。後、いろはす飲料ってなんですか、もうちょっと捻ってくださいよ」

「そ、そうよね。どうして私が由比ヶ浜さんの旦那さんを誘っているのかしら」

「結婚しても色々な女性が狙っていると書こうと思いまして」

「結衣や皆がモテるっていうならわかるが、俺と浮気しようなんて思う女性いないだろ」

「「「....」」」

 

現状ですらハーレムみたいな関係を築いているって理解していないのかしら。でもそうよね、私が八幡と付き合えたとしても、簡単に諦めるような人たちとはとても思えないわ。みんな色々な手段を使って後釜を狙ってくるのでしょうし。もし私以外の女性と付き合ったとしても私が狙うでしょうから。そう考えると、このラノベに書いてあるみたいなことをするかもしれないわね。

 

「後、最後に二人で人に聞かせるのが楽しみって変態夫婦じゃん!!」

「夫婦生活に新たな刺激を求めているってことで」

「でも、こんなことしてたらヤバいですよね」

「ま、まあ、ラノベの中の話だからな。実際やったら逆上されて刺されてもおかしくないだろ」

 

「本当は由比ヶ浜殿のラノベは何時かのラノベの続編として大学卒業後同棲して結婚、妊娠と執筆しようと思ったのだが、それだと父上と同じ職場というのはおかしいと思ってな、なので大学在学中での妊娠としたのだ」

「結衣先輩の御両親は反対とかしないんですね」

「以前のラノベの際、母上殿と面識があって由比ヶ浜殿のことを任されていたのでな」

「それだと母親から任せてたのに妊娠させてって怒られるだろ」

「なのでお腹が大きくとも大学に通うようにしたのだ」

「それならもうちょっと説明が欲しいよな」

「でも今回、結衣先輩の子供、「歩結(あゆむ)」君ってちゃんと理由も考えて名前決めたんですね」

「雪ノ下殿の時は、「乃」の字を使ってと考えてすぐに思いついたのだが、由比ヶ浜殿の時はネットで調べていて意味を持たせた方が良いのではと考えたのだ」

「優乃って名前良いじゃない。優しい子に育ってほしいから優乃って良い名前だと思うわ。私は子供に優しく接したいの。だから子供も...うぅ」

 

私はそう答えたのだけれど、なぜか涙が溢れてきたので、八幡の方に近づいて行き仕舞わずに置いてある八幡の隣の椅子に座ったわ。

 

「ゆきのん!?」

「雪ノ下先輩!?」

「あなた、なぜだか涙が溢れてくるの。暫くの間、胸を貸してもらえないかしら」

「..ああ、良いぞ雪乃」

 

私は涙が溢れてきて八幡に抱きつくと、八幡は私の頭を撫でてくれて、抱くようにして背中を擦ってくれている。私は溢れてくる涙を止めれず、嗚咽をだしながら八幡の胸で泣き続けたわ。

 

「き、今日はラノベの批評、これで止めた方が良いんじゃない?」

「でも後、私のがあるんですよね」

「ゆきのんは今、批評できないよ。日にちを変えた方が良いかも」

「..そうですね、私は明日以降でもいいですよ」

「生徒会長殿の分は次回ということで、...では我は帰らさせてもらうぞ」

「うん、中二。ごめんね」

「では私も生徒会に顔を出すんでこれで失礼します」

「うん、いろはちゃん。バイバイ」

 

「ヒッキー。ゆきのん大丈夫?」

「ああ、泣き疲れて寝ちゃったみたいだな」

「ちょっとびっくりしたね。でも今日はどうする?もうすぐ最終下校だよ」

「ああ、このまま起きなかったら家に連れてくよ。雪乃の着替えとか家にあるしな」

「え!?ど、どういうことだし!!」

「..説明したいんで結衣も俺の家に来れないか」

「う、うん。後でちゃんと説明してよね」

「ああ、悪いが鍵を返してきてもらえないか」

「いいけど、家までどうやって行くの?」

「陽乃に連絡して、車を出してもらえるか聞いてみる。駄目なら起こすしかないな」

 

結衣に鍵を返しに行ってもらい、俺は陽乃に連絡して学校まで迎えに来てもらった。本来なら雪乃の実家かマンションに連れて行ってもらうのが良いのだろうが、陽乃も察してか俺の家に送ってくれていた。

 

 

 

 

 

 

 




今回のは以前書いて没にした次話に繋げるのに強引ですが、ゆきのんが精神的に不安定になっちゃってます。


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二人のお泊り

俺たちは陽乃が出してくれた車で家に着くと、陽乃は用事があるということで雪乃のことを俺たちに任せて帰っていった。

雪乃は起きなかったため、皺にならないように結衣に雪乃の制服を脱がしてもらい小町のベッドに寝かせてもらっている間、俺は二人分のコーヒーを淹れリビングのソファーに腰掛けて待っていると、結衣が降りてきて俺の隣に座り、コーヒーを一口飲んで喋りだした。

 

「コーヒーありがと。ゆきのんが泊りに来ていること教えて貰ってもいい?」

「ああ、..ただ雪乃を責めるのは止めてほしいんだが」

「..うん」

 

そういって、俺は春休みに起こった出来事を話し出した。

 

********************************

 

その日は陽乃が14時から家庭教師をしてくれることになっていたため、陽乃と雪乃が家に来てくれた。

 

「八幡君。勉強始めようか」

「今日は数学で良いのかしら」

「ああ、じゃあお願いします」

 

俺は二人に数学を教えてもらい、その日の勉強会を終えていた。

 

「では私が晩御飯を作ろうと思うのだけれど、何かリクエストはあるかしら」

「今日は冷えるんで温かい鍋とかが良いな」

「鍋ね。余り手が掛からないので腕が振るえないのだけれど、確かに外は寒いわね」

「うん、私も手伝うよ。雪乃ちゃん」

「今日は両親も早く帰ってくるって言っていたので、二人の分も一緒にお願いしていいですか」

「小町ちゃん、大丈夫だよ」

「では買い物に行ってくるので、八幡も荷物持ちで付いて来てほしいのだけれど」

「ええ、俺も行くの」

「お兄ちゃん、それぐらい手伝おうよ」

「分かったよ。じゃあ雪乃、行こうか」

 

俺たちは近くのスーパーで鍋の具材を買って家に帰ると既に両親が帰宅していたので、食卓を6人で囲んで食べることになった。

 

皆で鍋を突つきながら母ちゃんが騒がしく喋って小町がそれに追随し、陽乃と雪乃が質問に答えていると雪乃の目から涙が零れだしていた。俺、なんかしたか?喋らずに黙々と食べていたんだが。

 

「雪乃さん!?どうしたの?私、何か失礼な事いったかな」

「ご、ごめんなさい。突然泣いてしまって。....私は一人暮らしなので御飯を家族で囲むことがなかったんです。実家にいるときも両親は忙しくてほとんど家に居ませんし、居ても母は食事中の会話ははしたないと言って会話は有りませんでした。

姉さんには申し訳ないのだけれど、家族の暖かさを感じる事があまりなくて。今日、皆さんとお話ししながら食事していたら、なんだか嬉しくて涙が出てきてしまって...」

「...雪乃ちゃん、今まで寂しかったんだね」

「姉さん...ごめんなさい」

「ううん、こちらこそごめんね。気付いてあげれなくて」

「うぅ、姉さん」

 

雪乃は陽乃の首元に顔を埋めて泣いていて、陽乃は優しく雪乃を包みこむように抱いて目元には涙を溜めていた。

暫くして雪乃が泣き止むと母ちゃんが喋りだした。

 

「陽乃さん、雪乃さん。あなたたち何時でもご飯を食べに着て頂戴。泊りで来てもらえればいいから、私達に遠慮しなくていいよ」

「そうだな、私達のことは気にせずに来てくれ」

「「ありがとうございます」」

「平日は私達は遅いけど、八幡と小町、二人いれば賑やかになるでしょ」

「うん、小町も泊りに来てもらった方が嬉しいよ。今まで捻くれたお兄ちゃんしかいなかったんで」

「「小町さん(ちゃん)」」

「水を差すようで悪いが、泊りは不味くないか。俺が居るんだし」

「私と小町の友達が泊りに来るのよ、何か問題ある?後、泊りに来たら家族として扱うので料理や洗濯、掃除もしてもらおうかな」

「それって母ちゃんが楽したいだけだろ」

「あぁ!?」

「な、なんでもないでしゅ」

「じゃあ、御飯の続きを食べちゃおっか。雪乃さん、あなたと八幡が入っている部活の事、教えて」

「はい、奉仕部といって・・・」

 

まさか雪乃が突然泣き出すとは思っていなかった。だが彼女が幾ら同年代の女子と競べてしっかりしているといっても17歳の少女であることには代わりがない。家族の暖かみに触れ気が緩んだんだろうな。でも当たり前だが比企谷家は雪乃にとって本当の家族ではない。本物を求めるのであれば、雪ノ下家に暖かみを求めるべきであろう。

 

********************************

 

「....そんなことがあったんだ」

「ああ、だから泊り用の着替えとかを小町の部屋に置いてあるんだよ」

「もしかして、今日のラノベの時もそれに関係するのかな」

「聞いてみないと分からないが、子供が出来た時とか考えていたのかもな。自分の両親のように忙しくて子供と接する機会が少ないことを自分の子供には味わわせたくないとか。俺はそう思ったから寂しさを少しでも消してほしくて抱きしめたんだ」

「多分そうなんだね。だから今日のラノベの時も子供の話になると、ゆきのんらしく無かったし。ゆきのんは家族のことになると涙脆くなってるかも」

「そうだな...」

 

俺たちが話していると、俺の携帯がメールを知らせてきた。内容を確認すると、小町からで今日は新しく出来た高校の友達とご飯を食べてくるので、勝手に食べてろって内容だった。珍しいな、小町が夕飯を用意せずそのまま出かけるなんて。新しい友達のため断りにくかったかもしれないが。

俺がそんなことを考えていると、一緒にメールを見ていた結衣の目から段々光沢が薄れて行った。

 

「..あたしが帰ったら、ヒッキーとゆきのんの二人きりなんだよね」

「い、いや、夜遅いが小町と両親は帰ってくるはずだぞ」

「..じゃあ、あたしも泊ってく!!」

「な、なに言ってんだよ。それは駄目だろ、着替えもないし」

 

俺がそういうと、結衣は鞄の中を確認していた。袋を取り出したかと思うと、以前撮影の時に俺が貸したパンツを見せてきた。

 

「返そうと思って持ってきたんだけど、また借りるね」

「パンツだけあってもしょうがないだろ」

「ヒッキーのジャージかスウェット貸してよ。それで明日、早く出て着替えに帰るし」

「いや、でもな」

「ふーん、そんなにゆきのんと二人きりなのを邪魔されたくないんだ」

「そんなこと考えてないぞ」

「ヒッキー、だめかなぁ//」

「ぐっ//..親御さんの許可が貰えれば良いんじゃないか」

 

結衣が上目遣いでお願いしてくると、なんでこんなに庇護欲を掻き立てられるんだよ。思わずOKを出してしまったじゃないか。

結衣はリビングから出て行って、廊下で自宅に電話を掛けているのだろう、何か言われたのか顔を赤くしているがニコニコしてすぐに戻ってきた。これは許可が出たということですね...

 

「ママはゆきのんも居るなら良いって。じゃあ、あたしがご飯作るよ。でも買い物どうする?この辺りのお店あたし知らないし、ゆきのん一人には出来ないし」

「有るもので何か作ろうか、俺も手伝うぞ」

「そうだね。御両親の分も要るでしょ、どれぐらいの量が必要なのか分からないからヒッキーも手伝って」

 

俺と結衣は二人で夕飯の用意をしていた。材木座のラノベのせいなのか恋人同士で料理を作っているように思えて俺が顔を赤くしていると、結衣も一緒のことを考えていたのか終始顔を赤くしていた。

俺たちがご飯を用意している最中、雪乃が起きてきたようだ。置いてあった部屋着に着替えており、部活でのことを謝罪してきたが俺たちは気にしていないことを伝え、三人でご飯の用意をした。

 

「ゆきのん、..今度はさ、あたしにも甘えてほしいな」

「...由比ヶ浜さん」

「あとそれ!!あたしもヒッキーみたいに名前で呼んでよ」

「..いいの?結衣さん」

「結衣」

「..ありがとう、結衣//」

「ゆきのーん!!」

 

結衣が雪乃に抱きついて百合百合しだしたが、雪乃も照れているが良い笑顔なっているな。俺は二人の邪魔にならないようにご飯作りを再開した。

俺たちが雑談しながらご飯を用意していると、母ちゃんが帰ってきたようだな。もっと遅くに帰ってくると思ったんだが。

 

「ただいま」

「「おかえりなさい」」

「あら、そちらのお嬢さんは」

「は、初めまして。由比ヶ浜結衣って言います」

「あなたが結衣さんね、雪乃さんと小町からよく聞いてるよ。私も一緒に食事して良いかな」

「は、はい。お、お母さんは座っててください。私達で用意しますから」

「そう、ではお願いしようかな」

 

俺たちが食事の用意をし、四人で食卓を囲んだ。

 

「「「「頂きます」」」」

 

「今日、小町はどこかにご飯を食べに行ったのね」

「ああ、それで母ちゃんがこんなに早く帰ってくるって思ってなくて、俺と雪乃だけだと不味いだろうからって結衣が泊まりたいと言ってたんだが。結衣、母ちゃん帰ってきたけど、どうする?」

「あたしもお泊りしちゃだめですか」

「結衣さん。親御さんのお許しは出ているの」

「電話して許可を貰いました」

「なら良いんじゃないの。ただ八幡、夜這いはしないでね」

「す、するわけないだろ//」

「「....//」」

 

な、なんてこと言うんだよ、二人に夜這いって...だ、駄目だ。考えたら余計に意識してしまう。

 

「ここに居る三人で一緒の部活をしているのね」

「はい。何時もは読書したりお話ししてますが、最近は他の人も含めて勉強会をしています」

「八幡、二人と仲良くするのよ」

「分かってるよ。...俺にとって掛け替えのない存在だからな//」

「八幡//」

「ヒッキー//」

「ご、御馳走様でした。俺部屋に行ってるから」

 

俺は部屋のベッドにダイブして悶えていた。バッカじゃねえの!?バッカじゃねえの!?バーカ、バーカ。

なんで俺はあんなことを言ったのだろう。二人に顔を合わせれないじゃないか、また新しい黒歴史を作ってしまった。でもなぜかあそこで言うべきだと思い言葉に出したが、二人に伝えられたことを嬉しく感じていた。

 

俺が悶え終わり、読書をしながら部屋で時間を潰していると、小町が帰ってきたようで、俺を呼びに来た。

 

「お兄ちゃん、コーヒー淹れたよ」

「..ああ、分かった」

 

俺がリビングに降りて行くと雪乃と結衣はおらず、母ちゃんが一人コーヒーを飲んでいたので、ソファーに座って淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、リビングに雪乃と結衣が入っていた。

 

「お母さん、お先に頂きました」

「ありがとうございます」

 

二人はお風呂に入っていたのだろう、濡れた髪を拭きながら雪乃はパジャマを着ていて、結衣は俺のスウェットを折り曲げて着ていた。彼女たちの頬はほんのり赤くなっていてお風呂上りの色気か、俺は見入ってしまった。

 

「八幡、あんた見惚れるのは良いけど、見続けるのは失礼よ」

「「...//」」

「す、すまん//」

「さーて、私もお風呂貰おうかな。それとも八幡、二人の次に入りたい?」

「な、なに言ってんだよ//早く入って来いよ、後がつかえてんだから」

「そんなに照れなくていいのに。ねえ」

 

母ちゃんはそういって雪乃と結衣の方を見たが、二人は恥ずかしがって俯いているので、表情を見ることはできなかった。母ちゃんが風呂に入っていくと、ようやく落ち着いたのか結衣が喋りだした。

 

「..そ、そういえばさ。あたし達ってどこで寝ればいいのかな」

「私一人の時は小町さんの部屋だけれど、姉さんと二人の時は客間に布団を敷かせてもらったわ」

「そうだな、客間で良いんじゃないか」

「...ゆきのんって、どれぐらい泊りに来たの」

「..2回よ。お風呂で話したけれど、泣いてしまった時に姉さんと。その後、花見に出かけた時、小町さんに誘われて泊めていただいたわ」

「そうなんだ、春休みずっと泊まってたわけじゃないんだね」

「さすがにそれはないわよ」

 

小町が部屋着に着替えてリビングに来たので、俺は布団を出しに行くため立ち上がった。

 

「じゃあ、客間に布団を出しておくから」

「お兄ちゃん、小町の部屋で良いよ。雪乃さんと結衣さんの三人でガールズトークしたいし」

「小町の部屋だと狭いだろ、後、明日も学校あるぞ」

「..じゃあ、小町の掛布団持って客間で寝るよ」

「二人は良いのか」

「ええ、良いわよ」

「あたしも良いよ」

「分かった。じゃあ小町、布団出しに行くか」

「はーい」

「私も手伝うわ」

「あ、あたしも」

 

客間に敷布団を二枚敷いて、掛布団は小町の分も含めて三組用意した。少し狭いだろうが大丈夫だろう。すでに小町は楽しみなのだろう、結衣と雪乃にくっ付いていた。

 

「お兄ちゃんも一緒に寝たい?」

「ヒッキー、良いよ。四人で寝ようよ//」

「八幡、どうかしら//」

「な、なに言ってるんだ、駄目に決まってるだろ//」

 

俺は逃げるように客間を出て来ていた。雪乃も結衣も一人だったらあんなことは言わないだろう、あそこで俺が一緒に寝る。と言ったらアイツらはどうしたのだろうか。痴漢谷君やキモイと言って罵られるだろうが、もしかしたらと期待してしまう俺がいる。

母ちゃんが風呂を出た後、俺が入り部屋で寛いでいた。勉強でもしようかと思ったが、客間に居る二人のことが気になってしょうがない。小町も含めた三人でどんな話をしているのだろうか。俺はラノベを読みだしたが頭に入ってこない。...いつもより早いが、俺はベッドに入って横になった。

 

コンコン

 

誰かが扉をノックしている。小町だったら何か声を掛けてくるだろう、二人のうちどちらかなのか。俺が返事をすると、雪乃が扉を開けてきて結衣が続いて部屋に入ってきた。

 

「ごめんなさい、寝ていたのかしら」

「大丈夫だ。どうしたんだ、こんな遅く」

「小町ちゃんがお風呂入ったんで遊びに来たんだ」

 

部屋の電気は消していたが、月明かりの中に二人は佇んでいたので幻想的で俺は二人に見惚れていた。

俺が起き上がりベッドに腰掛けると、二人は移動し俺の左右に腰掛けてきた。

 

「八幡。膝枕いい?」

「ヒッキー。あたしも」

「あ、ああ」

 

そういうと二人は俺の左足に結衣の頭を、右足に雪乃の頭を置いてきた。な、なんなのこの状態。どうすれば良いの?

 

「ヒッキー。頭撫でてくれるかな」

「私もお願い」

「..ああ」

 

俺は二人の頭を撫で始めると、雪乃も結衣も目を瞑り俺に身を任せていた。俺はそんな二人が愛おしく何時までもこうやって3人で過ごせればと考えていた。

 

「お兄ちゃん、雪乃さんと結衣さんってそこに居る?」

 

暫くすると小町が扉の向こうから俺に声を掛けてきたので、三人での時間は終わったようだ。二人は身体を起こし、小町に降りて行くと伝えて俺に向き直ってきた。

 

「ヒッキー。お願いがあるんだけど」

「なんだ」

「寝る前にほっぺにキスしていい?」

「はぁ!?」

「私もよ、八幡//」

「ま、まあ、撮影の時、何回もされているから、良いけど...」

「あとで、ヒッキーからもしてくれるかな」

「..分かったよ」

 

俺がそういうと、二人は座り直して俺の肩に手を添えてきた。

 

「おやすみ、ヒッキー//」チュッ

「八幡。おやすみなさい//」チュッ

「あ、ああ//」

「じゃあ、今度はヒッキーからね」

「分かったよ」

 

俺は結衣の方を向くと結衣は正面を向いてくれた。

 

「結衣。おやすみ//」チュッ

「うん、おやすみ//」

 

今度は反対を向き、雪乃の方を見ると、俺と見つめあうように顔を向けていたが、暫くすると俺に頬を向けてきた。

 

「雪乃。おやすみ//」チュッ

「おやすみなさい。八幡//」

 

二人はそういって俺の部屋を出て行った。そのまま寝ようと思っていたが、あんなことすると目が覚めてしまうだろ。

早くにベッドに入ったのに、結局この日は日付を跨いでも俺はベッドの中で悶えていた。

....

...

..

.

 

「八幡。おはよう。早く起きなさい」

「ヒッキー、朝だよ起きてよ」

「う、うん。後5分」

「何を言っているのかしら...そうね。ゆ、結衣が布団に入ってあげたらどうかしら」

「ゆきのん!!そうだね。ヒッキーが寝ている時、あたしだけ入ってないし//」

「お、起きてるから」ガバッ!!

「おはよう、八幡」

「おはよ、どうして起きるし。あたしが布団に入ってあげたのに」

「だ、大丈夫だ。起きたし着替えたいんでリビングに行っててくれるか」

「もう..じゃあ、行ってるね」

「早く来なさいよ。朝御飯を食べるのだから」

 

俺が着替えリビングに行くと、雪乃と結衣、小町は既に制服に着替えており、食事の用意をしてくれていた。

 

「お兄ちゃん、おはよ」

「ああ、おはよ。そういえば、結衣は着替えに帰らなくていいのか」

「大丈夫だよ、ヒッキーのお母さんがあたし達の服を洗って乾燥機に掛けてくれたんだ」

「じゃあ、ここから学校に行けば良いのか」

「うん、四人で登校しようね」

「..お前たち三人で行った方がいいだろ」

「またそうやって自分を省いてしまうのね。私は八幡と登校するわよ」

「うん、ヒッキー。あたしも一緒に行くからね」

「そうだよ、お兄ちゃん。四人で一緒に行こうよ」

「...分かったよ」

 

俺たちは食事を終え、準備を整えると四人で学校に向かった。俺以外の三人は目立つのだろう、皆の視線が三人に注がれる。その後を付き人のように付いて行く俺はどう思われているのだろうか。

そんなことを考えていると、雪乃が俺の左袖を掴んできた。

 

「八幡。あなたも一緒に登校しているのだから一緒に並んで歩きましょうよ」

「そうだよ、ヒッキー。あたしももっと話したいし」

 

そういって結衣も反対の袖を掴み、三人並ぶように学校の校門をくぐっていった。

 

「ヒキオ、おはよ。..なんで仲良く登校してんだし」

「「おはよう、優美子(三浦さん)」」

「ウス..」

「ちゃんと挨拶するし」

「ああ、..お、おはよう」

 

俺が言い淀んでいると、姫菜が来て沙希も自転車置き場の方から歩いてきて俺達に声を掛けてきた。

 

「皆、おはよ」

「おはよう。これってどうゆう状況?」

「先輩、おはようございます。朝っぱらからハーレムですか。私も誘ってますか。入るのはやぶさかではありませんが、最初は二人の時に口説いてください。ごめんなさい」

「八幡。おはよ!!うちも入れてよ」

 

いろはと南も加わり、より一層騒がしい一団となって下駄箱に向かっていくと、小町の知り合いの一年生も登校してきて小町に話しかけていた。

 

「小町ちゃん、おはよう。あの先輩達って...小町ちゃんの知っている人?」

「う、うん。おはよ。あの、その...お兄ちゃんなんだ」

「そ、そうなんだ。..はは、何だか凄いね...」

 

俺は周りにどう思われているのだろうか、俺はボッチで高校の3年間過ごす予定だったのだが、周りが許してくれないのだろう。今でも俺が何もしなくても周りにいる女性達によって、俺までが目立ってしまっている。

俺が望んだ環境ではないが、今ではこの姦しい日々が俺にとって大切なものになっていると感じており、何時までも失いたくないと思っていた。

 



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「いろはの結婚」

「材木座君、一色さん。この間は私のせいで中断してしまって申し訳なかったわ、ごめんなさい」

「良いんですよ、雪ノ下先輩」

「我も批評して貰えればいいので、気にされることはないです」

 

この間は私のせいで中断してしまったので、私が謝罪したのだけれど二人は気にしていないようね。

でも今回も一色さんのラノベには子供が出てくるのよね。前回みたいに取り乱したりしなければいいのだけれど。

私達が話していると、廊下の方が騒がしくなってきたわ。聞き覚えのある声が聞こえてくるのだけれど。

 

「小町ちゃん、不味いよ」

「うん、怒られるよ」

「大丈夫だって」コンコンコン

 

小町さんが来たようね、私が返事をすると元気よく小町さんが入ってきたわ。後、二人いるようね。

 

「やっはろーです、皆さん」

「「お、お邪魔します」」

「小町さん、こんにちは。今日は何かあったのかしら」

「この二人がですね、校舎を探検してるとき、この教室から変なことが聞こえてきた。って、言っていたので連れてきたんですよ」

「何を聞いたのかしら。私達はここで奉仕部という部活をしているのよ。私は部長の3年J組、雪ノ下雪乃よ」

「あたしは3年F組の由比ヶ浜結衣だよ」

「俺も3年F組の比企谷八幡。そこにいる小町の兄だ」

 

私達が自己紹介をし、一色さんと材木座君も続いてすると、彼女たちも自己紹介をしてきたわ。

 

「それで貴女達は何を聞いたのかしら」

「...あの、...お腹の子供がどうのって...」

「「「「「あっ」」」」」

「小町は分かってるんですけどね、二人に説明しにくくて」

 

私がラノベのことを簡単に説明したのだけれど、実際に読んでもらった方が早いわね。

 

「今日は一色さんのラノベなのだけれど、一色さん。三人にも読んでもらっても良いかしら」

「内容に問題なければ良いですけど」

 

私と結衣で内容を確認し、小町さん達三人にも読んでもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

先輩は東京の大学に行ってしまったため、私達はたまにしか会えなかった。私は千葉の大学に進んでいろんな男性から告白されたけど、誰とも付き合うことなく、大学生活を過ごしていた。

 

「あーあ。先輩に会いたいな。小町ちゃん、先輩っていつ帰ってくるの」

「いろはさん、お兄ちゃんのことなんか忘れて良い人見つければいいじゃないですか」

 

小町ちゃんは私と一緒の大学に入ってきて一緒に過ごすようになり、よく二人で遊んでいた。先輩からはあざとシスターズとか言われたけど、私が本音を話せる数少ない友達だった。

 

「先輩のこと忘れられないよ」

「じゃあ、告白でもすればいいじゃないですか」

「だって振られたら会いにくくなるし」

「はぁ、大丈夫と思いますけどね」

 

私は先輩に告白できなかった。もし振られたら先輩が帰ってきたとき、一緒に遊ぶこともできなくなるかもしれないから。

 

「でもお兄ちゃん、後半年もしたら帰ってきますよ」

「え!?大学卒業したら、こっちで就職するの?」

「はい。なんでも教員採用試験に受かって千葉に帰ってくるって言ってましたから」

「先輩が教師!?..でもなんかしっくりくるな、生徒の相談とか親身になって聞いてくれそうだし」

「そうですか、小町には反面教師って感じですけどね」

「そんなことないよ、私の時も面倒くさいって言いながら色々手伝ってくれたし」

「それはいろはさんだからですよ」

 

先輩が教師となって帰ってくる。私は小町ちゃんから色々話を聞いて、私も教員を目指すことを決めていた。

 

私は教育実習に母校を指定していた。そこに先輩が居るから。でも先輩にはそのことは相談していないので、会ったら喜んでくれるかな。

 

私が教育実習に行くと、校門前で女子生徒が集まっていた。何かあったのかな、私が近づいて行くと男性教諭が女子生徒に両腕を組まれていた。

 

「比企谷先生、私と付き合ってください」

「綾ちゃん、比企谷先生は私と付き合うんだよ」

「またかよ、綾瀬、愛甲。そういうことは好きな男性に言えって」

「私の好きな男性は比企谷先生です!!」

「私もですよ、比企谷先生!!」

「ハイハイ、ありがとうな。皆早くいかないと遅刻するぞ」

 

..先輩が女子生徒に腕を組まれていた。断っててもニヤけた顔をしているんだけど。何なの、この生徒達。先輩の隣は私の指定席なのに。

 

「おはようございます、比企谷先生。オモテになるんですね」

「お、おはよう。って、いろは!?」

「はい。今日から教育実習生としてお世話になりますから、比企谷先生」

「..誰ですか、このおばさん」

「お、おばさん!?....今日から教育実習生として来た一色いろは。先輩にはお世話になっていて、あなた達より付き合いは長いし何度も泊めてもらったこともあるから」

「私は二年綾瀬綾です。...比企谷先生。なんで名前で呼んでいるんですか。後、このおばさんと付き合ってるんですか」

「私は一年生の愛甲愛です、もしかして彼女ですか」

「...俺といろはは付き合っていない。名前呼びも高校の時からだ」

「ふーん、じゃあ遊びなんですね」

「遊びとか何言っているんだ、妹の所に泊まりに来ているだけだ」

「お前たち、なにをしている」

 

私達が敵意むき出しに火花を散らしあっていると、懐かしい先生が来てくれた。

 

「平塚先生、お久しぶりです。今日から教育実習で来ました」

「おお、一色か。久しぶりだな」

「はい。今日からしばらくの間、お世話になります」

「...平塚先生、もしかして一色って」

「ああ、綾瀬と愛甲は噂話しか知らないか。こいつが伝説の生徒会長だよ。その裏で暗躍して蠢いていたのが比企谷先生だ」

「..暗躍、蠢いていたって」

「そんなことより時間がないぞ。比企谷先生、一色、一緒に来い」

 

私達は話もそこそこに職員室に向かっていった。

 

「先輩。あの女子生徒達は何なんですか」

「懐かれてるだけだよ。年上を揶揄って楽しいんだろ」

「私にはそうは見えなかったんですけど」

「それより、いろはは教員目指してるのか」

「はい、先輩。暫くの間、よろしくお願いします」

 

私は知り合いということもあって、先輩に色々教えて貰えることになった。在籍していたころの先生達も沢山いて私は楽しく、教育実習を終えていた。

 

「先輩。あの後、綾ちゃんと愛ちゃんはどうなったんです?」

 

私は教育実習を終えて先輩にお礼をしたかったので、自宅にお邪魔していて先輩の出してくれたお茶を飲みながら話していた。

 

「最近、特に酷いんだよ。俺の為に弁当作ってきたり職員室に押しかけてきたりして、ちょっと問題になりそうでな」

「先輩がはっきりしないからですよ」

「どうすれば良いんだ?俺は綾瀬と愛甲は生徒としてしか見れない。何度そう伝えても態度は変わらないんだよ」

「..先輩が誰かと付き合えば良いんですよ。先輩は好きな人、居ないんですか」

「..好きな人はいる。でも俺なんかと釣り合わない」

 

やっぱり先輩には好きな人が居るんだ。釣り合わないって多分、あの二人....今でも一月に一回は会っていて私はそこには入れない。でも面倒くさがりな先輩が毎月行くってことはそうなんだよね....

 

「...想いを伝えることは大事と思います。釣り合わないとか関係ないですよ。先輩の想いを伝えないと相手には届きませんから」

「そうか、ありがとうな。いろは」

「..そんなことないですよ。先輩は好きな人に想いを伝えてください。それではお邪魔しました。....さようなら、先輩」

 

私の初恋はこれで終わったんだな。涙が溢れてきてこの場を立ち去りたかったので、立ち上がろうとすると先輩に手を捕まれていた。

 

「いろは、..俺の好きな人はお前なんだ」

「え!?せ、先輩?」

「俺なんか、いろはとは釣り合わない。でもいろはと一緒に居る時間が俺は楽しいんだ。この時間を失いたくない。いろはが良ければ俺と付き合ってくれないか」

「は、はい。先輩!!私はずっとあなたのことが好きでした!!」

「..そうだったのか、俺も高校の時からずっといろはが好きだった。でも告白できなかった」

「わ、私もです。先輩と二人の時間が楽しくて無くしたくなくて..」

「一色いろはさん。俺と付き合ってください」

「はい、先輩。よろしくお願いします」

 

私達は想いを伝えあった後、口づけを交わしていた。私達が付き合いだしたことを綾ちゃんと愛ちゃんに伝えると、潔く諦めてくれて問題になることも無かったらしい。

私達は交際を続けて、私も総武高校で教員として働きだした。先輩と一緒に居れる。それだけで毎日が楽しくてたまらなかった。

 

「比企谷先生。生徒会、手伝ってくださいよ」

「生徒会は一色先生の仕事だろ。...分かった。手が空いたら後で行くよ」

 

私達は他の人たちが居る時はお互い先生と呼び合っていた。公私混同出来ないからって。

私は生徒会室に先に行って先輩を待っていると、暫くしてノックをして先輩が入ってきてくれた。

 

「生徒会、誰も居ないじゃないか」

「察してくださいよ。先輩と二人っきりで過ごしたかったんです。ここならイチャイチャ出来ますよ」

「誰も居ないからって不味いだろ」

「高校の時、考えませんでしたか。生徒会室や教室でイチャイチャチュッチュしたいって」

「..そ、そんなこと考えてないじょ」

「へえ、どの口がそんなこと言いますか」

 

私はそういって先輩の口を塞いでいた。

 

「先輩が高校の時、告白してくれてたらここで一杯、イチャイチャ出来たんですから」

「何言ってんだよ、それを言ったらいろはが言ってくれれば良かったんだろ」

「先輩のヘタレ」

「生徒会長様ともあろう人が、ヘタレだったとは」

 

そういって先輩は私を抱きしめてくれた。私は軽くキスをするつもりだったけど、先輩からのキスは舌を絡めてきて口づけを交わしていた。公私混同出来ないって一杯しちゃってるけど...

私が教員3年目に先輩はプロポーズしてくれて私達は同棲を始めて結婚した。

 

私達は結婚後も仲良く過ごして1年後には私のお腹に子供を授かっていた。

 

「ほーーー、来週から休職に入るわけか。一色先生」

「平塚先生、今日は学校ではないので、一色ではなく比企谷ですけど」

「グッ...もうお腹が目立つようになってきたな」

「ええ、先輩が何時も気にかけてくれてくれるのは嬉しいんですけど、私に何もさせてくれないんですよ。先輩がご飯作ってくれたり、掃除してくれたり、少しは身体動かさないといけないのに。愛してくれるのは嬉しいんですけどね」

「..そんなに惚気たいのか」

「いいですよ。平塚先生も惚気て貰っても、私が聞いてあげますから」

「..お前たち家族は私をコケにするのが大好きだな」

「違いますよ。先輩と私は大好きな平塚先生に聞いてもらいたいんですよ」

「大体、結婚式のスピーチを私にさせたのもどうかと思うぞ」

「..そんなことないですよ、平塚先生。私、先生のことが大好きです。先輩を見つけてくれて私と引き合わせてくれて、私は先生に凄く感謝してます。ありがとうございます、静さん」

「..一色、そういってくれて、ありがとうな」

「はい。だから先生も良い人見つけてくださいね。後がないですよ」

「グハッ!!...どうしてお前たちはそう一言多いんだ」

「先輩の嫁ですから」

「ウグッ..結婚したい....」

 

私は産休に入って、暫くすると元気な女の子が生まれてくれた。目がくりくりしてて可愛くてアホ毛が生えていて。先輩は写真を撮るため、一眼レフを購入までしていた。

 

「先輩、この子の名前決めてくれました?」

未海(みう)ってどうだ」

「何か意味があるんですか」

「未開の海。この子の未来は何も決まっていない。自分の足で目で見て自分の力で、見えない未来を切り開いていってほしいんだ」

「うん、あなた...未海のこと、一杯考えてくれてありがとう」

「いろは...未海を産んでくれてありがとうな」

 

私達は手を繋いで、何時までも未海のことを眺めて微笑んでいた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「今回は普通の恋愛だね。あたしやゆきのんの時とは違うんだけど」

「未海ちゃん//良い名前ですね、先輩」

「材木座君、今回はどうやって名前を決めたのかしら」

「..miuって飲料水があったなって思いだして決めました」

「な、なんですか!!その安直な名前の決め方!!私の感動を返してくださいよ!!」

「なあ材木座、前のラノベもそうだが俺の子供は皆、アホ毛がないといけないのか」

「分かりやすいだろ。目が淀んでいる赤ちゃんより、アホ毛が生えている方が可愛いではないか」

 

確かにそうね、赤ちゃんなのだから目が淀んでいては可哀想だわ。八幡も子供の時は目がキラキラしていたとお母さんが言っていたのだから。

 

「俺が教員になるって決まってからってことは、いろはは大学3年だろ、それから教員って目指せるのか」

「すまぬ、それについてはよく分からなかったのだ」

「そういったことは平塚先生に聞いてはどうかしら」

「そうですね。ネットとかでも分かるんでしょうけど、平塚先生に聞いた方が苦労話とかも聞けるかもしれませんよね」

「うん、教育実習や教師になってからのことも書いた方が良いよね」

「でも俺が先生なんて無理だろうな」

「八幡なら問題ないと思うのだけれど」

「うん、ヒッキーなら大丈夫じゃないかな。生徒に人気出ると思うよ」

「お兄ちゃんが教師で女子生徒に手を出してたら家を追い出しますよ」

「俺がそんなことするわけないだろ..多分」

 

どうしてそこで、言いきらないのかしら。でも八幡が教師なら女生徒からは人気が出るでしょうね。

 

「先輩と一緒の職場っていうのも良いですね」

「そうね。職場で恋人同士で過ごすって良いわね」

「俺は嫌だな、何時も一緒だと一人になれないだろ」

「..ヒッキー、浮気とかするの」

「いや例えば、帰りに書店に行ったり、ラーメン食べに行ったりしたいだろ」

「先輩。私は書店やラーメンぐらいなら付き合いますよ」

「偶にはこってりギトギトなラーメンを食べたいが女性には厳しいだろ。食べれるのは平塚先生ぐらいだろうし」

「..あれは確かに厳しいわね」

 

あの修学旅行で平塚先生に奢って貰ったラーメンを今でも忘れられないわ。どうして男性はあんなのを食べれるのかしら。でも平塚先生も食べれるのだから女性でも食べれる人はいるのよね、私には無理だけれど。

 

「木材先輩。後、伝説の生徒会長って何ですか」

「一年生で生徒会長、クリスマスイベントを他校と共催、プロムナードなど生徒会長殿が初めてやったことが多いであろう。そういう意味で名前は確実に残るであろうな」

「確かにそうね。一色さんの始めたことが今後も引き継がれて残っていくでしょうし」

「そういうもんですかね」

「俺も暗躍や蠢いていたって」

「裏生徒会長と書こうと思ったのだがな、生徒会には入っていないのに何時も生徒会長殿の隣にいるではないか」

 

一色さんが初めてやったことは確かに多いわね。クリスマスイベントが成功したのは比企谷君が引き金を引いて、その後、一色さんの手腕によるところが大きいのだから。

 

「でも中二。相変わらず先生の扱いが酷いよね、また怒られるよ」

「頼む。平塚女史には見せないようにお願いしたい」

「難しいわね。平塚先生には終業式の時のラノベを見せた後、毎回見せるように言われているの。一応、部活として批評をしているので、顧問に報告しないといけないのよ」

「では今回のは返してもらえないでしょうか」

「..その方が良いわね、ラノベは返しておくわ。今日の部活は一年生を交えてお喋りしていたということにしておくわね」

 

そういえば小町さんの友達は何も言わないけれど、二人の誤解は解けたのかしら。

 

「どうだったかしら?これで貴女達の誤解は解けたかしら」

「はい。内容の批評しているところを私達が聞いたんですね。でも小町ちゃんも出てるんだね」

「うん、小町も一度、書いて貰ったんだ。相手がお兄ちゃんだから失恋ものだけど」

「..お兄さんが相手って...」

「男性で出せるのが、八幡か材木座君しか居ないのよ」

「そうなんですか。でも私達に批評は難しいですね、先輩たちのこと知りませんから」

「そんなことないわ。ラノベの登場人物の言動などを批評すればいいのよ」

「はい。でもこのラノベから一色先輩が比企谷先輩を大す」ガンッ!!

 

一色さんが机を蹴って彼女の発言を止めたわ、1年生の二人は委縮してしまっているわね。紅茶が零れているのだけれど。

 

「すみません。机蹴っちゃいました。それで何かな」ニコニコ

 

一色さんが怖いわ。顔は笑顔なのだけれど、余計なことを言うなと目が言っているわね。

 

「み、皆さん。仲が良いんだなって思ったんです...わ、私、雑巾持ってきます...」

「良いわよ、貴女は座ってて。私が片付けるから」

「雪ノ下先輩。机を蹴ってしまったんですから、私が片付けますよ」

「い、いいえ。私にやらせてください」

 

彼女は何とか発言していたのだけれど、声が震えていたわ。椅子から立ち上がると震える足で掃除道具入れから雑巾を持って濡らしに行ったわね。

 

「木材先輩。どうせならもうちょっと子供が生まれてからも書いてほしかったんですけど」

 

一色さんは話を変えるため、またラノベの批評をしだしたわね。

 

「子育てについては、取材できる人が居ないのでな。我の親には聞きたくないし」

「うん、あたしも両親に聞きたくないな。今聞くと子供出来たのかって言われるだろうし、あたしが小さい頃の話を延々してきそうだし」

「でも子供が出来たら教えて貰わないと行けませんよね」

「もちろん子供が出来たら聞くだろうけど、今はね」

「そういったことも病院で教えて貰えると思うのだけれど、近くに居る人から聞いた方が良いわよね。何時でも相談に乗って貰えるのだから」

 

私達が話していると、雑巾を濡らしに行った彼女が戻ってきて、机を拭いてくれているわ。私達がお礼をいうと、返事をしてくれるのだけれど、一色さんには委縮してしまっているようね。

 

今日はこれでおしまいね。でも私もこのラノベのように学校でイチャイチャしたいわ。八幡と付き合えればここでキスを出来るのかしら。もしかしたら結衣も一色さんも一緒のことを考えているのかもしれないわね。そこのことは誰も触れずにいるのが怖いのだけれど。

 



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「はるのんの結婚」

今回は短いため、連投させてもらいます。


「材木座君、珍しいね。君から私に連絡してくれるなんて」

「ら、ラノベが書けたので連絡させてもらいました」

「私が頼んでないのに書いてくれたんだ。...ふーん、まあ良いけどね」

 

材木座君が姉さんを呼ぶなんて考えられないわね、何か考えがあるのかしら。後は一色さんと三浦さん、海老名さん、相模さん、川崎さんが部室に集まったのだけれど、彼女たちも材木座君に呼ばれたのかしら。

 

「今日は姫菜のラノベもあるんだよね」

「はい、海老名殿のラノベも用意していますので」

「うちは海老名さんに呼ばれたけど、どうして?」

「私も海老名に呼ばれたけど」

「うん。相模さん、サキサキ。後でね」

 

やはり何かあるのね、でもラノベを読まないと分からないわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

あ、またこの夢だ。私はたまに見る夢に悩んでいた。それは私が八幡君に出会わなかったら訪れていたかもしれない未来...

私は親が見つけてきた見合い相手と結婚していた。そのまま妊娠し子育てしながら夫を支えている。夫は国会議員の二世のため、私もよくパーティに出ていたけど、仮面をつけていつも過ごしていた。私は子育て中もずっと仮面をつけていて、一人の時も素顔をだすことなく過ごしていた。

凄くつまらなさそうにしていて、子育ても小学生に上がるころには塾や習い事ばかりしていて、子供との会話もほとんどない。

 

う、うーん

 

「陽乃、大丈夫か」

「...八幡君!!」

 

私は起き上がると八幡君に抱きついていた。私の目からは涙が溢れていて八幡が拭ってくれていた。

 

「おはよう...またあの夢か」

「うん..ごめんね。私が望んでいるわけでもないのにあんな夢を見るなんて」

「..もしかしたらパラレルワールドの自分を見ているのかもな」

「IFの世界ってこと?」

「ああ、俺たちが結婚しないで陽乃が親の言うことを聞いていたら。とか」

 

そう、私達は親の反対を押し切り結婚していた。八幡君は就職したけど、雪ノ下家が手を回して良いところには就職できなかったので、余り裕福な生活は出来ていなかった。

私にも手が回っていて、パートしか出来ない。私はスーパーの片隅でお好み焼きを焼いていた。でもお金がなくても私は幸せだった。仮面をつけることがなく、ちょっとしたことでも一喜一憂できるようになっていたから。

 

「ごめんね、八幡君。私の家のせいで貧しい生活になっちゃって」

「陽乃は悪くないだろ、俺に抗える力がないだけなんだから。俺は好きな陽乃と一緒に生活できて嬉しいんだよ」

「そういってくれて、ありがとう」

「陽乃//」

「八幡君//」

 

私達は2DKの古いアパート暮らしだったけど私は幸せだった。でも八幡君にも苦労を掛けているのが分かる。もし、私と結婚しなかったらもっと幸せになっていたかもしれないから。私で良かったのだろうか。最近、そういうことを考えてしまうので、あの夢を見るのかもしれない。

八幡君は私を愛してくれ何時も抱いてくれる。私はその時間が好きだった。全てを忘れて行為に没頭できるから。

あの夢の夫は私を抱くことはなく、浮気をしていて私はそれについて何も言わなかった。その反動か私は高い車を買い、買い物も高いものばかり買っていた。でも夫はそれを咎めることもなく会話もなかった。

 

暫くして、私は体調がおかしいため、病院に行くと妊娠が分かった。でも今の経済力で生活できるのだろうか。不安だったけど、お腹に宿った子供を私は育てたくて、八幡君に相談していた。

 

「八幡君。私妊娠したようなの...産んで良いかな」

「当たり前だろ、ありがとう陽乃。俺の子を身ごもってくれて...陽乃。俺の為...いや俺達の為に産んでくれ」

「はい。ありがとう、あなた」

 

私は涙が溢れてきたけど、八幡君は優しく抱きしめてくれて私は満たされていた。

私が妊娠してお腹が大きくなってくると、私はパートに出れなくなったので生活は苦しかったけど、八幡君が支えてくれて私は本当に幸せだった。

私達は元気な男の子を授かった。凄く元気な子で八幡君と私は病院でまた抱き合っていた。

 

「陽乃、ありがとう。俺達の子を産んでくれて」

「あなた、私は幸せよ。あなたとこの子、他には何もいらないの」

「ありがとうな、そう言ってくれて」

「ううん、私はこれ以上のものは望まない。こんなに幸せな気分になれるなんて昔の私なら思いもしなかったから」

「陽乃//」チュッ

 

八幡君は私に優しくキスをしてくれた。本当にこれ以上の幸せなんてあるのだろうか。

私はいつの間にか仮面をつけることが無くなり、付け方も分からなくなっていた。でも今ではつける必要はない、私は八幡君とこの子の前では何時も素顔で接していたいから。

子供の名前は私達二人で考えて陽翔(あきと)って名前に決めていた。

 

私と陽翔が病院から退院するとき、八幡君は軽自動車に乗ってきてくれた。少し前に私達が買った中古の軽自動車。でも私はこの車で十分だった。

 

私と陽翔が後部座席に乗ってアパートまで走っていると、後ろからベンツのSLRが凄い勢いで追い抜いて行った。あの車は私が夢の中で乗っていたものだったけど、別に欲しいとは思わない。私にはこの軽自動車で十分だった。

暫く走っていくと、先ほどのベンツが事故を起こしていたけど、運転席には人が乗ったままだった。八幡君は車を安全なところに停めて、私達に車内に居るようにいうと八幡君は駆け出して行った。

 

「大丈夫ですか!!ガソリンが漏れています。ド、ドアが開かない!?」

「良いのよ、私のことは放っておいて...あなた八幡君!?」

「..どうして俺のことを知っているんですか」

「...知らない方が良いわ、早く逃げなさい。火が付いたようね」

「駄目です、諦めないで」

「あなた、大事な奥さんと子供がいるでしょ。二人を悲しませては駄目よ」

「どうしてそれを」

「ありがとう、最後に会ってくれて」

 

私が軽自動車の中から見ていると、ベンツに火が回りだしていた。

 

「八幡君!!逃げて!!」

 

私が叫ぶと八幡君は車から離れたので火に巻き込まれることはなかった。でも運転席に乗っていた人は助けれなかったみたい...

 

「私は死ぬのね。でもありがとう、最後に夢に見ていた最愛の八幡君に会わせてくれて。不思議ね、私は今から死ぬのに凄く幸せな気分だわ。私の外せない仮面と頭から流れでた血で気づかなかったようだけれど、八幡君。もう一人の私を何時までも幸せにしてあげて....」

 

八幡君は車から離れた位置で立ち尽くしていた。もしかしら彼は助けれなかったことを責めるかもしれない。でもあれはどうしようもなかった。

この事故はなぜか知らないけれど、ニュースにも新聞にも載ることはなかった。八幡君も最初は自分を責めたのだけれど、私は慰めることしか出来なかった。

 

「陽乃、最近あの夢は見るのか」

「いいえ、あなた。今では全然見ることがないのよ」

「...そうか、それは良かった」

「うん..なにか知っているの?」

「いや、俺の思い過ごしだろう。じゃあ、陽翔を連れて散歩に行こうか」

「うん!!陽翔、公園で一杯走ろうね」

「あい!!」

 

陽翔は歩けるようになると、公園で駆け回るのが凄く好きだった。私達は歩いて公園まで行くと何時も陽翔と駆けっこをしていて、今は八幡君と陽翔が芝生の上を駆け回っている。私はベンチに座って微笑みながら二人の様子を眺めていたけど、ふと夢のことを思い出していた。

 

あのベンツに乗っていた人は夢の中の私ではなかったのか。八幡君が車に駆け寄った時、何か会話をしていたのだけれど、私には何も教えてくれなかった。でも、もしそうならなんて悲しい人生だったのだろう。誰にも愛して貰えず自分の本当の表情も見てもらえずに亡くなったのだから。

最後に彼女は微笑んでいるように見えていた。もしかしたら彼女には私のことを夢で見ていたのかもしれない。だから八幡君に最後に会えて微笑んでいた....

 

今更考えても既に亡くなっているのだから、確かめようがないんだけれど、私は彼女の分もこの幸せを手放すことが無いように三人で築き上げていくと心に決めていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....」

「材木座、これは酷くないか。夢の方の陽乃が可哀想だろ」

「家の都合で結婚した場合、相手と分かり合えぬかもしれぬだろ」

「...姉さん。大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。確かに見合いとかで妥協したらこうなるかもね。現実の方って言えばいいのかな、そっちの私だったら家の影響が及ばない土地に行っているけど」

「お金も大事ですけど、好きな人と一緒になりたいですよね」

「材木、夢の方は年上っしょ。小学生になる子が居るんだから」

「っ...そ、そうです」

「もしかして気づいてなかったの」

「は、はい」

「事故を起こしたときはパラレルワールドに行っていたってことで良いのかな、報道がなかったってことは」

「左様、そうでなければ出会えないのでな」

「それなら行った時と帰ってきた時の異変を書いたらいいんじゃないかな」

「光に包まれるとかか、海老名殿であればどうするのだ」

「うん、何時もと景色が異なるところがあるとかも書いた方が良いんじゃないかな」

 

「もういいかな、材木座君。このラノベは私を呼んだ理由にはならないよね」

「は、はぃ」

 

確かに姉さんから依頼したわけではないのだから、わざわざ呼ぶ必要はなかったわね。来た時に読ませれば良いのだから。材木座君の本当の目的は海老名さんのラノベってことで良いのかしら。

 



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「海老名の告白」

今回は葉山アンチですのでお嫌いな方はバックしてください。


「海老名殿、本当に良いのか」

「うん...確認はお姉さんにしてもらえないでしょうか」

 

材木座君はラノベを姉さんに渡して確認して貰っているわね。海老名さんがそう言ったということは内容を知っているということだわ。海老名さんが材木座君に書かせたとみていいわね。

 

「ふーん、そういう事だったんだ...今日、私が呼ばれたのはこれの為だね。姫菜ちゃん。良いんだね」

「...はい。皆に知ってもらいたいから。後、途中で止めるのも無しにしてください」

 

私達はそれぞれラノベを受け取って読みだしたわ。何が書いてあるのか想像できないのだけれど。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

修学旅行の三日目、私は戸部っちから嵐山に呼び出されていた。やっぱり無理だったんだね。こんな相反する依頼、こなせるわけないよ。私は諦めて戸部っちの前に立っていた。これで私はグループに居られなくなるけどしょうがないよね。

でも戸部っちの後ろから比企谷君が急ぎ足で近寄ってきてくれていて、私が唖然としていると、比企谷君は戸部っちの横を通り過ぎ私の前に立っていた。

 

「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」

 

比企谷君は私の依頼のため、嘘の告白をしてくれている。ここで私が誰とも付き合う気がないことを言えば、戸部っちの告白を止めれる手を使ってくれた。

 

「...ごめんなさい。今は誰とも付き合う気はないの。誰に告白されても付き合う気はないよ」

 

ごめんなさい、比企谷君。私のせいで嘘告白なんてさせてしまって。私は居た堪れなくなってその場を離れた。

比企谷君には戸部っちの告白を止めてもらうことを依頼していて、彼は自分を犠牲にすることによってその依頼をこなしてくれた。でもこの後、奉仕部はどうなってしまうのだろう。私は今になって罪悪感が溢れて来てその場から逃げていた。

 

修学旅行前、戸部っちが私に告白することを隼人君に相談したみたい。それを聞いた子が私に教えてくれたし何となく雰囲気で分かってた。私は自分の周りを、関係を壊したくなくて、隼人君に何とかして貰おうと思って相談したけど彼は何もしてくれず、奉仕部に戸部っちを連れて行ったのを見かけた。隼人君だと何もしてくれなくて、関係ない人たちを巻き込んでしまう。

でも告白の依頼なんて雪ノ下さんだったら断ってくれるだろうと思ってたんだけど次の日、戸部っちが力強い味方が出来たって言っていたのが聞こえてきた。奉仕部が依頼を受けたってことだよね。どうして受けたんだろう、告白なんて二人の問題なのに。

 

私が隼人君に聞いても彼は何も答えてくれない聞いてもはぐらかすだけ。どうして隼人君は自分のグループの為、動いてくれないの。

雪ノ下さんはクラスが違うし私と接点がほとんどない。結衣は一緒のグループだから、私は奉仕部を訪れて比企谷君だけに分かるように依頼していた。多分すぐには気づかないだろうけど、戸部っちの告白までには気づいてほしいな。

 

私は比企谷君が今まで何をしたか知っている。今まで私が見たこと聞いたことで彼に頼ってしまった。

 

サキサキのことは何も知らなかったけど、深夜アルバイトのことを比企谷君の提案で解決したってサキサキが教えてくれた。

 

グループの男子の悪口を書いたチェーンメールが広まった時、隼人君が奉仕部を頼って解決していたんだろう。結衣が私達に変なこと聞いてきたし、隼人君が比企谷君と職場見学に行くことになったから。

でも私はその時、自分のグループの歪さを知った。どうして男子たちは自分たちで何とかしないのだろう。お互いチェーンメールには触れずに上辺だけ仲良くしてて、何も動かないしチェーンメールのことで話し合ったりもしていない。

 

千葉村でもそうだった。留美ちゃんのいじめを解消したのは比企谷君の提案だった。孤立から救えたわけじゃないけど私には考え付かない、でもすぐに実行できる良い案だと思った。その時隼人君が提案したのは皆での話し合い。そんなので解決できるなら、いじめなんて起こらないよ。

 

私は中学校で人気があった先輩からの告白を断っていた。話したこともないのに何で告白されたんだろう。でも次の日から調子に乗っていると言われて、私へのいじめが始まった。その先輩からしてみれば、付き合えるのであれば誰でも良かったのだろう。実際、次の週には他の子と付き合いだしたと聞いていたから。

でも私へのいじめが無くなることはなくて、どんなに説明しても友達だった子は離れて行って私は学校で孤立してたけど、趣味仲間を見つけて寂しさを紛らわしていた。

趣味に興じていると周りも私に係わりたくないのか段々いじめは無くなっていって、私は居ないものとして扱われていた。

 

高校に入っても一年生の頃は、クラスで話すことはあったけど誰とも仲良く出来なかった。でも高二になって優美子がグループに誘ってくれて、私は久しぶりに趣味以外での友達が出来て嬉しくて楽しくて、その関係を無くしたくなかった。

 

文化祭で委員会に出席者がほとんどいなくなったのを解決したのも比企谷君って聞いた。一年の時に一緒のクラスで実行委員に真面目に参加していた子から聞いたので間違いないのだろう。最終日に相模さんを泣かせたって聞いたけど、それも何かを解決するために取った行動だろうと想像できた。

 

戸部っちのことを優美子に相談すれば何とかしてくれると思ったけど、優美子の性格からして穏便には済まないことは想像できた。もしかしたら私のせいでグループが無くなってしまうかもしれない。そうなると隼人君と離れてしまうかもしれないので優美子にはお願いできない。だから私も奉仕部に、ううん、比企谷君を頼ってしまった。

 

修学旅行が終わって登校したら、私達のグループは今まで通り変わらずにいた。でも結衣が落ち込んでいるのが分かった。

修学旅行の後、奉仕部は崩壊寸前だったので私は三人に謝りたかった。でも今、言ってしまうと比企谷君が守ってくれたグループが崩壊してしまう。私は自分の居場所を守るために比企谷君を犠牲にしていた。

 

クリスマスイベントの前に結衣からディスティニーランドに誘われた。その時、奉仕部の三人は私から見て修学旅行前、いや、それ以上に仲良くなっているように感じた。良かった。なにが有ったのか知らないけど、元通りに戻ってくれて。あそこまで壊れかけていたものが修復できる関係があるなんて思わなかった。私もあの中に入りたい。でも私にはその権利も資格もない。

 

私はこのことは誰にも伝えるつもりはなかった。もしここで私がこのことを話したら全てが壊れてしまうだろうから。

でも私は材木座君のラノベで始まった奉仕部を中心とした今の関係をこれからも、そして高校を卒業しても続けていきたい。だから皆が関係あることで隠し事なんてしたくない。隠していたら何時までも私が求める奉仕部のような関係を築けないと思うから。

 

私は皆に本当のことを知って貰うため、このラノベを材木座君に託した。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「ハチ、ううん八幡君、雪ノ下さん、結衣。ごめんなさい!!本当は自分の言葉で伝える事なんだけど、上手く言葉に出来なくて半分も説明出来ないと思って、材木座君にお願いしたの。...本当にごめんなさい」うぅ

 

海老名さんは私達に謝罪の言葉を発していたのだけれど、私は彼女のことより自分のことが許せないわ。

 

「...八幡。あなたのやり方、嫌いだわ」

「ッ!!」

「私は!!...私はあなた一人、傷つく姿を見たくなかったの!!相談して欲しかった!!頼って欲しかった!!私達三人で喜びも悲しみも痛みも分け合いたかった!!...でも、ありがとう。私が戸部君の依頼を受けたばかりに嘘の告白なんてさせてしまって、背負わせてしまって、本当に...本当にごめんなさい」うぅ

「ゆきのんが悪いんじゃないよ。ゆきのんとヒッキーは受けるつもりなかったのに、あたしが一緒のグループでカップルが出来たら素敵だなって思って、姫菜の気持ちも考えずに....ぁ、ヒッキーに人の気持ち考えてよって、あたしが一番考えていなかった。ヒッキー、あんなこと言って、ごめんなさい、ごめんなさい」うぅ

 

私と結衣は声をあげて泣き出してしまったわ。まさかこんな理由があったなんて知らなかったのだから。

 

「...姫菜。あーし全然知らなかったけど、これ本当のことなんだよね」

「そうだよ優美子。ごめん、相談できなくて」

「あーしも悪かったし、相談しにくい雰囲気作ってたみたいだし。..でも!!戸部も姫菜も奉仕部に依頼するのは間違ってるっしょ!!」

「そうだね、告白なんて人に手伝ってもらうことじゃないよ。二人の問題なんだから。雪乃ちゃんも流されて依頼を受けたようだけど、そのせいで奉仕部を潰すところだったんだよ」

 

そうね。もし八幡が私達とやり直したいと思ってくれずに、あの告白をしてくれなかったら私は掛け替えのないものを失っていたのね。

 

「..八幡。ごめんなさい」うぅ

「ヒッキー、あたしもごめんなさい」うぅ

「俺もすまなかった」

「..八幡、我が口を出していいのか分からないが、修学旅行の後、奉仕部がギクシャクしていたであろう、お二方に事後報告でも詳細を伝えていなかったのか。雪ノ下殿も自分が受けた依頼の報告を受けなかったのですか」

「...ああ、修学旅行の後、いろはの生徒会長選も有って姫菜の依頼は今日初めて二人は知ったはずだ」

「では、お二方だけでなく、八幡も悪いであろう」

「そうだね。材木座君の言う通り、報連相が出来てないんだから。もしかしたら言い出せる雰囲気では無かったかもしれないけど、時間は幾らでも有ったはずだよ」

「...それを言ってしまうと、雪乃も結衣も戸部の依頼を受けたことで自分を責めると思った。結衣はグループから抜けることになるかもしれない。...俺は二人が傷つく姿を見たくなかったんだ」

 

あぁぁぁ、八幡は私達のことを考えて....私は涙が溢れてきて何も言えなかったわ。結衣も同じように二人で泣いていたわ。

 

「でも八幡君が傷ついていいわけないよ。隼人のグループなんて表面上だけでしょ、そんなに気にする必要もないと思うけど」

「..お姉さん、それでも私には居れる場所がそこしかなかったんです」

「姫菜ちゃんが言いたいことは分からなくはないけど、それは隼人や優美子ちゃん達となんとかすべきことだよね」

「はい。あーしも自分のことだけでなく、皆のことをもっとよく見るべきだったし...」

「私、全く知らない事ばっかりだったけど、チェーンメールとか留美って子、撮影の時に自転車で来た子だよね。葉山は何もしてないのか?」

 

八幡がチェーンメールのこと、千葉村でのことを川崎さん達に説明しているのだけれど、私はまだ泣き止まないので何も言えなかったわ。

 

「はぁ、隼人も小学生のころから全く成長してないな。..でも私も謝らないといけないね。南ちゃん、文化祭の時、私が余計なことを言ったから雪乃ちゃんへの対抗心で皆に分実よりクラスを優先って言ったでしょ。それについて謝らせてもらうわ、ごめんね」

「お、お姉さんは何も悪くないです。うちが何も考えずに言ったことですから。雪ノ下さん、もう一回謝らせてください。本当にすみませんでした」

「あ、ぁりがとぅ」うぅ

 

私は泣いているので、言葉がうまく発せられない。いまだに涙が止まらないわ。八幡が一番私達のことを考えてくれていて、守ってくれていたことに今頃気づくなんて...

 

「八幡もごめんなさい」

「俺も謝罪を受けているから、もういいぞ」

「ううん、ここに居る皆にも知ってもらいたいの。うちは文化祭の最終日、皆が困れば良いと思って、うちを見つけて欲しくて逃げ出したの、実行委員長なのに。それで八幡が見つけてくれたんだけど、その後に見つけてくれた葉山君に八幡が何もせずに付いて行ったら、うちは皆から責められてたはずなんだよ。もしかしたらそれで虐めになっていたかもしれない。それを八幡が自分に悪意が向けられるように葉山君が助けたことにするために、うちに暴言を吐いて救ってくれたの。八幡、本当にありがとう」うぅ

「南...」

「そういうことだったんですね、今の二年生でも噂になりましたから」

「私も雪ノ下に謝らせて。アルバイトしてた時、家のこと色々言って、ごめん」

「い、いいえ、川崎さん。私もあなたの事情も知らずにアルバイトを辞めさせることしか考えていなかったわ。私の方こそ、ごめんなさい」

 

私はようやく泣き止んで川崎さんに謝罪出来たわ。

 

「雪ノ下さん。あーしもごめん。戸塚とテニスしてた時って奉仕部で依頼受けてたんだよね。その時知らなくて聞きもせずに、あーしがテニスしたかったんで割り込んじゃったし」

「いいえ、これから気を付けてくれればいいのよ」

 

葉山君の対応については、言いたいことがあるのだけれど、今は些細なことだわ。

 

「八幡君。隼人は君がどういう方法を取るか知っていたんじゃないかな」

「...嘘告白の後、謝ってきて俺がこう言うやり方しか出来ないと知っていた。とは言ってましたね」

「うん、八幡君と同じだけの情報を持っていて、今まで八幡君の解決方法を何度も見ているからね。だから君ならどんな手でも実行してくれるって分かってたんだよ」

「じゃあ、隼人は分かっていながら止めずに見てたってこと!?」

「そうだろうね。私が隼人と一緒の立場なら、こういった事にならないようにするけど、もしなってしまってもグループで集まっているとき、姫菜ちゃんに質問して嘘告白の時言った言葉を言わせるよ。それなら奉仕部に頼る必要ないからね」

「そんな簡単なことなら隼人も気づいてたんじゃ」

「自分で質問するのが嫌だったんでしょ。ガハマちゃんに言ってもらうようにすれば良いんだろうけど、奉仕部に依頼した後だと自分が二人から相談受けていたことの説明が必要だからね。雪乃ちゃんにはバレたくないだろうから。

隼人から姫菜ちゃんに聞くと優美子ちゃんも居るから一人だけに聞くわけにはいかないし、優美子ちゃんがそこで告白する流れを作っちゃうかも知れないよね。グループ内で恋愛話をしたくないんだよ」

「そんなことでヒキオに押し付けて奉仕部を壊して...ヒキオ、雪ノ下さん、結衣。あーし達のグループのせいで大変なことになって、本当にごめん!!」

「優美子は悪くないだろ」

「ヒキオ、幾ら今回あーしが知らなかったとは言え、こんなことする奴がグループに居るなんて、許せないし!!」

「うん、あたしも葉山君は許せない」

 

私も今回の件は許せないわ。彼にとって私達の事は何とも思ってないかも知れないけど、私にとって大切な関係なのだから。

 

「葉山はグループを守りたかったんだ。...俺が奉仕部を守りたかったように」

「それは違うよ。本当に守りたいなら人に協力してもらったり相談するのはいいけど自分が先頭に立って動かないと、八幡君のように。...もしかしたら隼人は奉仕部を潰したかったのかも」

「な、何で..」

「雪乃ちゃん、隼人とのこと皆に喋っていい?」

「いいえ、姉さん。私が言うわ。私と葉山君は子供のころ、口約束だけれど親同士が決めて婚約していたの。でも小学校の時、私は虐められていて彼が余計なことをして虐めが酷くなったので私の両親が怒って解消されたわ。

でも高校を出たら改めて話あってお互いが良ければ婚約って流れだったの」

「そうだったんですね」

「じゃあ、隼人が誰とも付き合わないのって..」

「ええ、貴女達が拒まれたのは私のせいかもしれないわ」

「でも振られて良かったし。隼人がこんな奴とは知らなかったし」

「私も良かったです。あの想いは偽物って分かったんですから」

「婚約なんてするつもりは無かったけれど、今回の件で話す気もなくなったわ。もし親が勝手に婚約させようとしたら、...姉さん。私は家を捨てるわね」

「うん雪乃ちゃん、良く言ったね。隼人は雪乃ちゃんの拠り所を潰したかったのかも知れない。これについては私の憶測だから気にしなくていいけど。...私に隼人が回って来るかも知れないけど、そうなったら隼人を潰す。それが駄目なら二人で逃げるよ」

「ええ」

 

逃げなくても私の行き先はもう決まっているわ。八幡に迷惑をかけるけれど、こういうのを押し掛け女房って言うのよね//

 

「これで皆、言いたいことは言ったかな....うん、じゃあ後は優美子ちゃんの番だよ。どうするか自分で決めてね」

「..姫菜、結衣。グループ壊すけど良いよね」

「「うん」」

「分かったし。...あーしは隼人に振られた後、グループを続けたいのか分からなかった。でもそんな上辺だけのものなら壊して新しいグループ作った方が良いっしょ」

「そうだね、あたしはここに居る皆と仲良くしたい!!」

「...私が求めても良いのかな、私のせいで奉仕部が崩壊しそうになったんだよ」

「海老名さん。私達は八幡のおかげで関係を修復出来たの。でも真実は知らなかったのよ。私は教えてもらえて良かったわ、八幡が私達を守ってくれていたことが分かったのだから//」

「そうだよ、ヒッキーがあたし達を大事に想ってくれてるって分かったんだし//」

「雪乃//結衣//」

「ありがとう」うぅ

「じゃあ決まったじゃん!!あーし達で新しいグループ作るし、ヒキオも材木もよろしくするっしょ」

「は!?俺も入ってるの?」

「わ、我もですか」

「当たり前だし、沙希も南も入ってるしクラスは違うけど雪乃も一緒だし、いろはも小町もだし」

「はぁ?私も入っているのか」

「私も入っているの、三浦さん」

「私と小町ちゃん、学年違いますよ」

「うちも入ってるんだけど、良いのかな」

「細かい事はいいっしょ。後、あーしのことは優美子って呼ぶし。あーしは皆のこと、名前で呼ぶから」

「うん、皆で遊べばいいと思うよ」

「もちろん陽乃さんも入ってるから来れるときだけでも来てほしいし。一緒に遊んだり勉強教えて欲しいじゃん」

「ありがとうね、優美子ちゃん」

「私、グループというのが何をするのかよく分からないのだけれど」

「一緒に遊んだり勉強会したりするんだし、春休みやってたことの延長と考えればいいっしょ」

「では今まで通りね、よろしくお願いするわ。三浦さん」

「優美子だし」

「ゆ、優美子さん//」

「三浦、私はグループなんてどうでもいいんだけど」

「サキサキ、ちょっと耳かして...セキ チカク...」

 

海老名さんが何かを川崎さんに吹き込んでいて顔が赤くなっていくわね。何を言われてるのかしら。八幡の方をチラチラ見ているのだけれど。

 

「ん、んん//ゆ、優美子。私も入るから」

「一緒に駄弁ったり遊ぶだけだから深く考えなくていいっしょ、家や他の友達と約束有るなら優先すればいいし」

「なら私は良いですよ」

「うち、クラスで違うグループにいるけど」

「そっち優先すればいいっしょ」

「それでいいなら、いいかな」

「なあ、優美子。俺は一人がいいんだが」

「わ、我も群れるのは好かぬ」

「ヒキオに拒否権ないし。材木、耳かすし」

 

優美子さんが材木座君に何か言うと驚いた顔をした後、怯えだして回りを忙しなく見渡して諦めたようね。

 

「...み、三浦殿。我も入れてくだしゃい」

「慣れたら名前で呼ぶし、ヒキオも良いね」

「どうせ拒否できないんだろ。材木座はなにを言われたんだ」

「ミナノ..シャシン...スマホ..バレタ..」

 

八幡が材木座君に聞いているのだけれど、声が小さくて聞こえないわね。

 

「お姉さん、今日は呼び出してすみませんでした」

「姫菜ちゃん良いよ。今日のは私も知りたかったことだから教えてもらえて良かったよ。材木座君、わざわざ私のラノベを書いて呼び出さなくても良かったのに。本当のことを言ってくれれば来ていたから。じゃあ、私はそろそろ帰ろうかな」

 

姉さんは皆に挨拶して帰っていったわ。もしかしたら家に報告するかもしれないけれど、私にとって葉山家はどうでも良いことだし、もう彼とも話したくないわ。

 

私は今、八幡と二人で話したい。もう一度、きちんと謝りたい。彼には任せると言っておきながら、自分の受け入れれない方法を取ったので否定してしまったのだから。

あの後、自分でもなぜあのようなことを言ったのかも分からず、暫く考えていたのだけれどようやく気づけたわ。私は八幡のことが好きだということを。この気持ちも含めて八幡に告げて謝罪したい。

 

でも今日は難しいでしょうね。今、優美子さん達はグループのことを話し込んでいて帰ろうとしないわ。八幡の家に行っても良いのだけれど、そこで私のことを拒絶されたらと考えてしまうと家にはお邪魔できない。

 

改めて八幡と二人で話す機会を作らないといけないわね。

 



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新しいグループと買い物と

朝、俺が教室に入ると何時もの騒がしい一団が誰も居なかった。葉山グループ。昨日の件で話し合っているのだろうか。

暫くするとチャイムが鳴ったが、葉山達は1限目が始まっても誰も帰ってくることがなく、教師も気にはしていたが授業は滞りなく過ぎて行った。結衣は大丈夫なのか、授業をさぼって。

 

授業が終わり、俺はイヤホンを差して机に突っ伏していると誰かが俺の肩を叩いて声を掛けてきた。

 

「ヒキタニ君、起きるっしょ」

 

俺は顔を上げて、訝しげに声を掛けている戸部の方を向いた。するといきなり戸部は俺に頭を下げてきた。

 

「ヒキタニ君、..いや比企谷君。ごめん!!」

「な、なんだよ戸部、いきなり」

 

俺はイヤホンを外して戸部に向き直った。クラスメイトが居る中で謝罪してくるとは思っていなかったので、ちょっと驚いてしまった。

 

「本当にごめん。俺、全然知らなくて比企谷君のこと悪く言ってたっしょ」

「いや、俺はお前に許されないことをしたと思ってる。こちらこそ済まなかった」

 

俺は席から立ち上がり、戸部の正面に立つと頭を下げ謝った。こちらも謝罪するんだ。座ったままでなんて失礼なことは出来ない。

 

「比企谷君は悪くないっしょ。俺達のためにやってくれたんだから」

「戸部、そういってくれてありがとうな」

「うん、これからよろしくお願いするっしょ。本当にありがとう比企谷君」

 

戸部はそういって自分の席に向かっていった。周りは俺達を見ていたが、戸部が離れると目を逸らしそれぞれが話し始めていた。

辺りを見渡すと、結衣、優美子、姫菜が喋っていたが、三人とも俺のほうを見ながら穏やかな表情をしていた。

大和、大岡は二人で何か話しているが、戸部は自分の席に座ったまま、二人の方にも視線を向けることはなかった。葉山は来ていないのか席は空席となっていた。

 

何があったのか想像できるが、俺には関係ないことだ。ただ葉山が来ていないことが気になる。俺は話しかけてきた戸塚とその後ろにくっ付いて来た材木座とでいつも通りのやり取りをしていた。

 

「よーし、今日のLHRは席替えするぞ」

 

担任がそういうと、学級委員長が教壇に移動して、担任が持ってきたくじを用意しだした。担任は学級委員長に後を任せ、騒ぐなよ。と言って教室を出ていった。

良い職業だな、教師って。授業だけしてれば、後は生徒に丸投げでも良いんだな。でも平塚先生みたいに俺みたいなのにも世話を焼いてくれる教師もいる。そう考えると平塚先生って本当に良い(ひと)だよな、なんで結婚できないんだろ。誰か早く貰ってあげて!!

 

俺が平塚先生のことを考えていると、男子から順番にくじを引いて行き戸塚が引いたようで、俺に教室の前扉の方を指さしていた。廊下側前方付近を引いたのだろう。材木座も何かジェスチャーしていたが、俺は無視していた。

 

俺がくじを引き場所を確認すると項垂れてしまった。場所は教室の窓側列の一つ隣で、後ろより一つ前だった。

戸塚の正反対で近くに座れない。どうでもよくなったので机に突っ伏していると、結衣が話しかけてきた。

 

「ヒッキー、どこ?」

「..窓際後ろから一つ前」

 

一番窓に近いところは女子の列のため、これで通じるだろう。俺がそういうと結衣はふーんと言いながら離れて行った。

 

俺が突っ伏してボーと眺めていると、今度は女子がくじを引き出した。結衣、姫菜、南がなぜか引き終わった女子の位置を確認しているみたいで、中には何か頼みこんでいるようだった。

全員引き終わり、席の移動をするように言われると、結衣、優美子、姫菜、南、沙希が移動もせずにじゃんけんをしている。

俺はすぐに席を移動して眺めていると、沙希が喜んで顔を赤くしていた。顔の表情をみると今にもピョンピョン跳ねまわりそうだな。沙希のあんな表情は中々見れないが、何してるんだ、アイツら。

 

俺の周りには女子が誰も座っていない。えっ!?もしかしてこれって「あんな奴の近く行きたくない」とか思われて誰も来ないの?中学でもここまで酷くなかったよ、両隣ぐらいだったし。俺は中学の時のことを思い出して、涙が溢れそうになってきた。

俺がそんなことを考えていると、沙希が顔を赤くしながら俺の左隣りに移動してきた。

 

「よ、よろしく。八幡//」

「..ああ、よろしくな」

 

俺は沙希の方を見ていたが、顔が赤いまま頬杖をついており、目元が垂れ下がって口元がむにょむにょしていた。何だか面白いな。俺が見ているのに気づくとバカ!!って言ってきたが、より顔が赤くなっていくのが分かる。それでも沙希を見ていると、後ろから声を掛けられた。

 

「ヒキオ、よろしくするっしょ」

「優美子はそっちなのか」

 

優美子は俺の右隣りのようで、周りを見渡してみると沙希の前に結衣、後ろに姫菜、優美子の後ろに南が座りだした。

 

「なあ。これってくじで決まったのか」

「そ、そうだよ。ヒッキー、こんな偶然あるんだね~」

 

結衣はそう言いながら俺から視線を外していた。上位カーストの権力を行使したな。教室の後ろ、窓際は上位カーストの溜まり場だしな。それでじゃんけんをして席を決めていたのだろう。そこに俺が偶然、この席を引いてしまったため、周りを囲まれた形になっているのか。

 

「ま、細かいことは良いっしょ。これから1学期はずっとこの席なんだし」

 

俺は良い、この5人に囲まれても。ただ俺の後ろに座っている名も知らぬモブ男君のことを思うと不憫でならなかった。

前にはボッチの俺、両サイドは上位カースト。ゴメンな、モブ男君。俺が前に居なければちょっとは楽しい一学期を送れたかもしれないのに。

 

5限目のLHRが終わり、休憩時間に俺は席を立とうとしたが、優美子に話しかけられていた。

 

「ヒキオ、どこに行くし」

「...いや、ちょっと材木座の所へな」

 

材木座の席は戸塚と前後に並んでいて俺は文句を言いたかった。いや、アイツのせいじゃないって分かってるよ、でも心情的にな。

 

「材木、こっち来るし!!」

 

優美子がそういうと戸塚と談笑しながら材木座が近寄ってきて、戸部もこちらに向かってきた。

 

「どうしたのですか、三浦殿」

「材木、名前で呼べって言ったっしょ。敬語も止めるし」

「ゆ、優美子殿//」

「八幡、良い席だね、皆がいて楽しそうだし」

「俺は戸塚の近くが良かったのだが」

「ヒキタニ君、凄いっしょ羨ましいわ。っべーわ」

「良い席ではないか、皆で集っていて」

「なら俺と変われ、材木座」

「はぁ!?ヒキオ、なに言ってんだし」

「そうだよ、ヒッキー」

「うち達と一緒じゃ駄目なの」

「ハチ、酷いよ。私達を捨てるんだね」

「ごめん。私みたいな無愛想な女が隣じゃイヤだよね...」

 

沙希はそういうと目元に涙を溜めてきて、俺の顔を見つめていた。え!?俺、泣かせるほどのこと言ったか。沙希の目からは今にも涙が溢れそうになっている。俺は何時の間にか手を沙希の頭に持って行っていた。

 

「そ、そんなことないぞ、ちょっと言ってみただけだ。どうせ変われないからな、悪かったな沙希」ナデナデ

 

沙希は顔を赤くしだしたが、この対応で合っていたようで顔には笑みを浮かべてきた。

ただ周りに居る4人の視線が怖い。戸塚、材木座、戸部は俺の方を呆けた顔で見ている。耐えれず手を引くと沙希からは笑みが消え、また泣きそうな顔で俺の方をみてきた。

 

「...八幡、もっと撫でてほしい//」

「あ、ああ」

 

俺が撫でだすと沙希は穏やかな表情になって俺を見てきた。俺は沙希と見つめ合いながら頭を撫でていたが、周りからの視線の鋭さがより一層強くなってきた。しょ、しょうがないだろ!!沙希を泣かしてしまいそうだったんだから。

俺は撫でやすいように席を立ち沙希の後ろにまわりこんだ。目を閉じて周りの視線が気にならないようにしていたが、声だけは聞こえてくる。部活で問い詰める。うちもしてもらう。教室でイチャコラしだした。あーしもしてもらう。だの聞きたくない言葉が聞こえてきたが、敢えて俺は無視して沙希の頭を撫で続けていた。戸塚は八幡凄いね。って言っているし、戸部はずっとベーベー言っていたな。

 

6限目が始まるチャイムが鳴ったため撫でるのをやめ、目を開けると四人の怒っている顔が最初に見えた。

俺が目を閉じている間に男子三人は席に戻って行ったようで女子四人はずっと俺と沙希を取り囲んでいたようだ。沙希はまだ撫でてほしそうにしていたが、今度は平塚先生の授業だからね。こんなとこ見られたら、俺の命がヤバいから。

俺達が席に着き、授業の用意をしていると沙希が何か慌てていた。

 

「あ、あれ、ない...」

「どうしたんだ、沙希」

「...現国の教科書、忘れた。今からじゃ借りにも行けない..」

 

数学だったら貸しても良かったが、いや今は貸せないか。陽乃と雪乃に怒られるからな。今では二人に教えて貰ってそれなりに理解できるようになってきているし。俺がそんなこと考えていると、沙希が俺に話しかけてきた。

 

「な、なあ、八幡。あんたの教科書見せて」

「え、俺も授業受けないといけないんだけど」

「う、うん、だからさ」

 

そういって沙希は席を立つと俺の机の方に自分の机を移動してくっ付けてきた。

 

「こうすれば二人で見れるだろ//」

 

沙希はそう言っていたが、前の席から結衣が振り返ってきて、隣の席からは頬杖を突きながら優美子がこちらを見、後ろからは姫菜と南が何か言いたそうな顔をしながら俺を睨んでいた。

後ろのモブ男君はブツブツ何かを言っていたが、沙希が「はぁ!?」と言って振り返ると、何も言わなくなってしまった。

いや聞こえてたよ。難聴系主人公じゃないから。でも俺のことをハーレム野郎とかスケコマシとか可笑しいよね。教科書を忘れたから一緒に見ているだけだから。

 

「サキサキしょっぱなからイチャイチャイベント連発してるし。グループで一番おいしいことしてる...」

 

姫菜がなにか言ってるな、グループと教科書を忘れたのは何か関係あるのか。

教室に入ってきた平塚先生はこちらを見ると、俺を睨みつけてきた。授業は平塚先生の熱い視線を感じながら俺たちは授業を受けていた。

結衣がたまに振り返っては目のハイライトが仕事をしていない目で睨んでくるし、優美子は隣からイライラしているのか机を爪でトントン音を立てているし、後ろの席に居る姫菜と南は何か唸っているのが聞こえてくる。

 

俺の左手と沙希の右手が触れあうと最初のうちはすぐ退けて、ごめんって言いながらもじもじしていたのだが、教科書が見えにくいと言って段々席を近寄せてきて、そのうち肩が触れあうところまで近寄ってきていた。

う、腕が動かせない//机の上に置いている左腕を後ろに引くと沙希の胸に当たってしまう//手が触れあうと沙希は俺の方に顔を近づけて、ごめんって言ってくれるのだが、耳に息が掛かってきて授業どころじゃない//

 

平塚先生については、何本チョークを折っているんだろうか。何か呟いてるようだが流石にこの席までは聞こえてこない。

 

ようやく授業が終わり、部活に行こうとすると、姫菜が連行すると言って腕を絡めてきて、反対の腕は優美子に絡められていた。

 

「ヒッキー...部活...」

「お、おい。部活に行くから離してくれ」

「ハチ、私も行くから」

「あーしも今日、お邪魔するし」

「うちも行く!!」

「私も行くよ、八幡は何も悪くないからな」

 

生徒がたくさん残っている廊下を腕を取られながら、連行されるように部室まで連れていかれた。途中でもヒソヒソ話している会話が聞こえてくる。そんなことよりこのまま部室に入る方が俺には怖かった。

予想通り、俺達の方を見た雪乃からは身体が凍り付きそうな視線を受け続けて、奉仕部に来た平塚先生も交えて今日のことを報告させられていた。その間、沙希以外のクラスメイト四人と雪乃の頭を順番に撫でさせられた。平塚先生は下唇をかみ続けていて、いいな。って呟いていたが先生でも撫でて欲しいものなのか。

 

ようやく説明が終わり、皆は納得はしていないようだがこれ以上は説明も出来ないでいると、雪乃が紅茶を用意し出してくれていた。

 

今は落ち着いて雪乃の淹れた紅茶を飲んでいるが、前に座っている平塚先生のことを俺は考えていた。

 

先生は生徒のことを何時も考えてくれている。生徒を見ながら何かあれば対応させられて、生徒のせいで悪くなくても頭を下げることもあるのだろう。先生も一人の女性で時には我儘言ったり甘えたりもしたいだろうが先生にはそんな相手はいないだろうし、立場上、生徒に我儘なんて言えない。だが時には生徒が先生の慰労を行っても良いのではないだろうか。

 

一息ついたところで俺は席を立つと平塚先生の後ろに回り込んで頭に手を乗せていた。

 

「ひゃう!?な、なんだ比企谷//」

「先生も大変ですね、何時もありがとうございます。俺みたいな生徒にまで気を掛けてくれて。先生みたいな良い(ひと)中々いませんよ」

 

そう言いながら、先生の頭を撫で始めると平塚先生の耳は真っ赤になっていた。顔は見えないが俺が頭を撫でるのを受け入れてくれていた。

 

「俺で良かったらこのまま甘えてください」

「比企谷ぁ//」

 

先生は座り直し横向きになって俺の胸に頭を置いてきた。俯いていて表情は見えず怒っているのか泣いているのか肩を震わせていたが手を振り払われる事は無かったため、俺は撫でながら先生の頭を抱えこむように抱いていた。

その間、雪乃たちは何も言わず俺たちを見守ってくれていた。

 

「あ、ありがとう。もういいから//」

「こちらこそありがとうございます、俺なんかで良かったら何時でも言ってください。撫でるのは得意ですから」

「うn、..ああ//たまにお願いしようかな//」

「ええ良いですよ。さすがに部室以外では出来ませんけど」

「そ、その時は名前で呼んでほしぃ..な//」

「学校外だったら良いですよ。..今日は特別です。静//」

「!?..八幡//」

 

先生は顔を赤くしながら俺達にお礼を言って部室を出て行った。いやこっちがお礼を言うべきだと思うんだが。

皆の方を見るとなぜか呆れた顔をしている、どうしたんだ。

 

「ハチ、またフラグ立てて」

「先生も落ちちゃったね」

「先生って生徒に労われることってないだろ、有っても卒業式ぐらいか。だから俺で出来ることであればって思ったんだよ」

「労うのは良いことよ。でもあなた一人ではなく、私達も居るのだから一緒にするべきだったわね」

「そうだな、すまん」

「良いじゃん、あーし達皆で機会があればやってあげれば良いっしょ」

 

最終下校時刻を知らせるチャイムが鳴り、俺たちは部活を終えていた。

本当は一日教室に顔を出さなかった葉山のことを聞きたかったが、今日はそれどころではなく、一日が過ぎて行った。

 

*********************

 

土曜日の9時40分、俺は駅前に着いていた。いろはへの誕生日プレゼントを買うために皆で10時に集まってららぽに行くことになっていたから。小町は一年生の友達と買いに行くらしく今日は参加していない。また材木座も誘ったが、ゲーセンに行くということで今日は不参加だ。

 

俺が、駅前を見渡すと視線の先には雪乃が既に待っていた。近づいて行こうとすると俺の前に入って声を掛けてくる男女がいた。

 

「やっぱり比企谷じゃん!!レアキャラ、はっけーーーーん!!」

「すっごい、生きてたんだ!!」

「あんたら凄いな。私、顔覚えてなかったよ」

「....」

 

嫌な奴らと出会ったな、こいつらは中学の同級生で確か男が佐藤で目立たないやつだったはず、女は鈴木、高橋だったか。そんなに可愛くもないし、はっきり言って太いし、かおりとも接点はなかったはずだ。調子に乗って俺を弄るのが好きで、色々噂話の尾びれを大きくして盛り上がっていたのを覚えている。

 

「比企谷、俺二人とデートなんだよ。お前女に縁ないだろ。俺達が遊んであげようか、お金出してくれればだけど」

 

そう言って二人の間に入り肩に両腕を回していた。悪いんだが全く羨ましいとは思えない。こちらが恥ずかしくなってしまうんだが。

 

「ひどいって虐めてあげんなよ。比企谷もこんなとこ居るんだから誰かと待ち合わせでしょ」

「ええ!?こんなのと遊ぶ奴いんの。あ、オタク仲間か」

「..ま、まあそんなところだ」

「きっもー、オタクなら仲間と家に居ろよ」

「あら、私はオタク仲間なのかしら。八幡」

「お、おす」

「「「..え!?」」」

 

雪乃は3人の後ろから声を掛けたかと思うと、3人を追い越して俺の方に来た。髪の毛を手で払い俺の右に並ぶと冷めた目で3人を見ていた。

いきなり現れた雪乃に3人は驚いているな、二人と比べたら雲泥の差、月とすっぽんだからな。

 

「..あ、お、お前荷物持ちか何かか、財布にされているんだろ」

「あら、八幡と私は深い関係よ」

 

そう言って雪乃は俺の右腕に自分の腕を絡めてきた。あ、あの雪乃さん。柔らかいものが当たってんですけど//雪乃が屈むように言うので姿勢を低くすると、三人に見せつけるように俺の耳元に口を近づけ耳たぶを甘噛みしてきて口を離すとき耳を引っ張ってんですけど。そして微笑みながら囁いてきた。

 

「ふふ、おはよう。八幡//」

 

だが3人には聞こえなかったのだろう。雪乃に笑われたように見えたのか、佐藤は悔しそうな顔をし二人の女は口を大きく開けて呆けていた。

俺達が3人に向き合っていると、俺の左腕に滅茶苦茶柔らかい何かが絡みついてきて頬にキスしてきた。

 

「やっはろー...なんでゆきのん、こんなとこで腕組んでるし」

「結衣、あんたいきなり走ってったと思ったら何してるし!!」

「ハチ、私とイチャつくなら良いけど、駄目だよ。浮気は」

 

結衣が俺の腕に絡みついてきたかと思うと、優美子と姫菜も歩いてきた。そして沙希と南も来たようだ。

 

「あ、あんたら白昼堂々何してるんだよ」

「沙希ちゃんに言われたくないと思うよ、教室の皆いるとこでイチャイチャしてるんだから」

「は!?はぁ//み、南。あれはイチャイチャじゃなくて、教科書見せてもらってただけだから//」

「サキサキ、私後ろから見てたよ。段々ハチの方に椅子を寄せて行って肩くっ付けてたよね」

「あ、あれは、教科書が見えにくかったから//」

「お待たせ、なにこれ。ウケないんだけど!!」

「か、かおり、いきなり走らないでよ...って、どうゆう状況?」

「「「お、折本!?」」」

 

右腕は雪乃、左腕は結衣に取られ動けないでいる俺を見ていた三人が、一人一人の容姿を見ては驚いていて、かおりと千佳が現れたことでより困惑していた。

 

「お、折本って比企谷を振ったんじゃ...」

「それって中学の話じゃん!!今は友達以上の関係だし...そもそもあんたらって誰だっけ?」

 

友達以上ってなんだよ。俺には友達は戸塚しかいないぞ。材木座?あれは、そう。なんだろうか。そもそも友達以上ってなんだよ。何もしてないだろ。...いや、撮影では確かに友達ではやらないようなことをしてしまった気がするが....

かおりがそういうと3人は唇を噛みしめていた。いや、かおりに覚えて貰ってないだけで悔しがることないだろ。

佐藤は皆の容姿を見て段々顔が困惑していき、二人の肩にかけていた腕をどかしていた。

 

「では八幡。買い物に行きましょうか」

「雪乃、結衣。いい加減、腕離すし」

「あら優美子さん。ここは私の指定席よ、どうして離さないといけないのかしら」

「そうだよ優美子。あたしもここが指定席だし」

「は、八幡と腕を組んで買い物//」

「ハチ。私も腕組んで買い物したいよ」

「うちも腕組みたいなぁ」

「それある!!私もイチャイチャしたい!!」

「わ、私も八幡君と腕組んで二人で買い物したいな//」

「みんな揃ったから行くか。..じゃあな」

「「「....」」」

 

俺は声を掛けたが返事が返ってくることはなかった。俺たちは唖然とする三人を置いて、ららぽに向かって歩き出した。

 

「ありがとうな、雪乃。もう離して貰って良いぞ」

「今日はこのままでいましょう//また出会うかもしれないわよ」

「雪乃が良ければ良いんだが//」

「うん、あたしも良いよ//」

「ダメっしょ!!じゃんけんで決めるし!!」

「そうだよ、ハチを独占するのは駄目だよ」

「離れたら、そこの場所無くなるよ。..うちも組みたいし」

「...そうね、では勝負しましょうか」

「しょうがないか、あたしも良いよ」

「それある!!どうせなら組めるの一人だけにしようよ。時間決めてさ」

 

かおりがそういうと、いきなり道端でじゃんけんしだした。その間も雪乃と結衣は俺の腕を離すことなく、道行く人たちが何事かと見てきて、羨望と嫉妬の目を向けられていた。

 

「あーしが最初だし!!」

「ハチ、一人三十分ね」

 

皆で移動していたが、店に入ったら腕を組んでいない女子とは別行動するらしい。買い物中は二人だけで色々見て回れるという事か。

今日一日大変そうだな、俺は腕を組まれながら色々な店を回って、いろはの誕生日プレゼントを買っていた。

 

全員プレゼントを購入したので帰っても良かったのだが、腕組みが終わっていなかったため、まだ帰らせてもらえなかった。

 

南がじゃんけんに負け最後だったのだが俺と腕を組むまでイライラしていて、その鬱憤を晴らす為か俺を下着屋へ連れ込んで選ばせてきた。材木座のラノベに書いてあったようなスケスケのベビードールに目を奪われたが、そんなの選べないし。ただ南は俺がエッチな下着に目を奪われていたのに気づいて顔を赤く染めて、良いよ。って言ってくれたが、そんなの選べないからな。

俺が選んだのはピンクと黒の下着でヒラヒラのレースが付いており、リボンがあしらってあった。その時はそんなにじっくり見ずに選んでいたのだが。

 

「Tバックなんだ//八幡可愛いね//」

「っ!!み、南。Tバックって知らなかったんだ。他のにした方がよくないか」

「いいよ、八幡が選んでくれたんだし」

 

南は俺が選んだ下着を購入し店から出る時、俺の耳元に口を近づけてきた。

 

「月曜日、着けて行くから見ても良いよ//」

「み、見れるわけないだろ//」

「..教室で八幡が後ろ振り返ったら、足開いちゃってるかも//」

「...//」

 

俺と南が店を出ると、他の女子が俺を睨みつけていた。それを挑発するかのように南は俺の腕を取り、自分の肩に回させて腰に抱きついてきた。

 

「うちの為に下着選んでありがと、八幡//」

「「「「「「「ッじゃ位wヴぃ!!!!」」」」」」」

 

皆が一斉に喋りだしたので、何を言っているのかさっぱり分からなかったが、俺の体力はかなり奪われていった。

何度か佐藤達を見かけたが、アイツらもららぽに来ていたのか。だが一緒の店に入った時はアイツらがすぐに店を出て行ったので、絡んでくることはなくその日の買い物を終えていた。

 

 



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告白と「沙希の暴走」

私は昨日の夜、八幡にメールを送って朝部室に来てくれるようにお願いしていたわ。どうしても修学旅行のことをもう一度、謝りたかったから。最近は部室でも二人きりになることがないので中々謝れず、日にちだけが過ぎていくため八幡を呼び出す形になってしまったわね。

私は自分の気持ちを伝えたい。今まで告白されたことは何度もあるけれど、自分の気持ちを伝えるのは初めてだわ。考えるだけで足が震えてしまう、逃げ出してしまいたい。私に告白した異性もそうだったのかしら。それなら彼らのことを少しは見直すべきかもしれないわ。

 

私がそう考えていると八幡が来てくれたわ。彼の顔を見たとたん、また足が震えだして心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる。

 

「お、おはよう、八幡。来てくれてありがとう」

「うす」

「ごめんなさい、今日は呼び出してしまって」

「いいんだが、何かあったのか」

 

私は八幡が座っている前に移動するため、立ち上がったのだけれど足が震えてしまう。彼の近くに近寄っていくたびに緊張で座り込んでしまいたかったけれど、何とか八幡の前まで歩いて行けたわ。

八幡に拒否されたら。私は今までにないぐらい身体が震えてくるのが分かる。でも私の想いを伝えたい。私の想いを知ってもらいたい。私はゆっくり話し始めたわ。

 

「...修学旅行で八幡に任せると言ったのに、あなたのことを否定してしまって、本当にごめんなさい」

「その話は済んだだろ。今ではこうやって仲良く出来ているんだ、それでいいだろ」

「いいえ。私はあの時、なぜあなたのことを否定したか自分でも分からなかったの。でも暫くして気づいたわ。...わ、わた しは..わ、私は八幡のことが好きだということを。...だから嘘告白でも八幡が他の女性に告白するのを見たくなかったの」

 

あの時はどうして八幡を拒絶してしまったのか自分でも分からなかったわ。いくら戸部君の依頼があったからと言っても、あそこまでする必要はなかったはず。そしてあの時私は何も考えられず、八幡の行動だけを否定してしまったわ。

 

「...え!?お、あ、ありがとう。..雪乃の気持ちは凄く嬉しい。....でもすまん..今、俺は何て返せばいいのか分からない」

「..返事はまだ要らないわ。ただ私の気持ちを知っておいてほしかったの。八幡の周りには魅力的な女性が沢山いるわ。彼女たちにも私は負けるつもりはない。あなたと二人で本物を探したい、私があなたの本物になりたいから」

「雪乃...」

「あの時、私は自分の溢れてきた感情を理解できずに、あなたを裏切ってしまったわ。それについては幾ら謝罪しても許してもらえないかもしれない。虫のいいことを言っていると思うわ。けれど、もう一度、..私を信じてほしいの」

 

私は涙が溢れてきたけれど、涙をぬぐうこともせず八幡に自分の気持ちを伝えたわ。八幡も涙を溜めて私から目を離さずにいてくれている。

 

「..俺は二人に否定された時、喪失感が襲ってきて何も考えられなかった。..二人なら何も言わなくても信じてもらえるんじゃないかと、勝手に期待していた。...でも....俺も信じたい。信じてほしい」

「だからあなたも私には抱え込まないで話してほしいの。..そして私のことを選んでほしい」

「..皆を..雪乃を信じたい。でも信じてもらえなかったら、また拒絶されたら。心のどこかで裏切られるだろって思っている自分が居るんだ。....怖いんだ。..皆を..雪乃を信じて裏切られたら。それなら最初から一人でいれば裏切られないから..」

 

「..あなたが私を信じてくれる日まで待つわ。私は..雪ノ下雪乃は比企谷八幡を愛してます。八幡を信じます」

 

私がそういうと八幡は立ち上がろうとして、でも膝から崩れて膝立ちになってしまったのだけれど、私の腰に両手を回して抱き寄せてくれたわ。

 

「..ごめん、雪乃。...このまま居させてくれ」

 

八幡はそういうと私のお腹に顔を埋めて声を出して泣き出してしまったわ。私は八幡が愛おしく、自分の涙も拭かずに八幡の頭に両手を回して私のお腹に引き寄せて二人で泣き続けていたわ。

 

チャイムが鳴ってHRが始まったようだけれど今は行けないわね。私達は泣き止んだのだけれど、目元は真っ赤だから。

 

「..ありがとうな、雪乃//」

 

八幡はそう言って私のお腹から顔を離してきたので、私は彼の顎に手を掛けて上を向かせ、顔を近づけて唇を合わせた。

 

「好きよ八幡//あなたからの返答を本当は欲しいのだけれど、今は出来ないわよね。..でも私を選んでもらえるって信じてるから」

「雪乃//」

「二人とも目が赤いから授業に出れないわね。一限目は部室に居ましょ」

「そうだな」

「では読書でもしてましょうか」

 

そう言って八幡は何時もの席に座ったので私は隣の席について、八幡の肩に頭を乗せたわ。

 

「ゆ、雪乃//近いから」

「私は自分の好意を伝えたわ。好きな人に寄り添いたいと思うことは悪いのかしら」

「い、いや良いんだけど//」

 

八幡は本が読みにくそうだったけど、顔を赤くして私が寄り添っていることには何も言わなかったわ。

 

「ねえ八幡」

「どうした」

「あなたからの返事はまだ貰っていないのだけれど、私はこれから皆の前でも好意を示していくわね」

「..恥ずかしいし、噂になるぞ」

「噂と言っても私は八幡が好きなのだから良いわよ」

「俺が良くないんだが..」

「私と噂になるのはイヤ?」

「..そうでなくてだな。はぁ、まあ俺なんて今まで陰口叩かれまくったから今更だけどな」

 

私達は部室で時間を潰し一限目が終わる前に教室に行くため、部室を出て歩き出したのだけれど、私は八幡の手を取り繋いだわ。八幡は離してくれって言ってきたのだけれど、小町さんから聞いていた上目遣いでお願いすると、渋々了承してくれたわ。

 

「な、なあ。このまま教室に向かうのか」

「ええ、八幡は私のものって教えてあげないと。ふふ」

「いや、それは可笑しいでしょ」

 

一限目の終了のチャイムが鳴るまえに3Jの教室前まで付いたのだけれど、この手を離さないといけないのよね。名残惜しいけれど私は手を離したわ。

 

「ありがとう八幡。また部室でね」

「ああ」

 

そう言って、八幡は軽く手を挙げてくれた。私は笑顔で胸の前に手を持っていき手を振り返したわ。

八幡は照れながら足早に自分のクラスに向かっていったわね。本当なら手をずっと握って居たかったのだけれど、私も照れてしまってまだ皆の前では恥ずかしいわ。

でも何時かはお互いが離すことのないように、ずっと寄り添っていたいわね。

 

 

放課後、私が部室で紅茶の用意をしていると、八幡が最初に来てくれたわ。いつも通り挨拶してくれたのだけれど、八幡は顔が赤くなっているわね。私も一緒で顔が熱いわ。

 

「な、なあ、雪乃。俺の席がないんだけど...虐め?」

「何を言っているのかしら。あなたの席はこっちよ」

 

私はそういうと八幡の手をとり私の隣に座らせたわ。

 

「なあ、何でここなんだ」

「良いでしょ、私は好きな人と一緒に居たいもの//」

「..//」

 

私と八幡が隣り合って座っていると、結衣たちが来たわ。今日は小町さん以外来たようね。でも八幡と私が隣り合って座っているのをみると睨んできたのだけれど。

 

「...ねえ、ゆきのん。どうしてヒッキーがそこに座っているの?あたしの席は?」

「結衣は私の隣でどうかしら」

「やだよ、あたしもヒッキーの隣に座る!!」

 

結衣はそう言って八幡の横に椅子を持ってきたわ。凄い近いわね、私も席を移動して八幡にピッタリくっ付いたわ。

 

「ねえ、あんたたちズルくない?あーし達は?」

「どうしてかしら、私達は奉仕部の部員だから集まっても良いと思うのだけれど。あなた達は部員でないのだから、机を挟んで用意してある椅子に座ってくれるかしら」

「雪乃先輩、私もですか」

「そうよ、いろはさんも部員ではないのだから」

「なあ雪乃。席は今まで通りで良いんじゃないか」

「朝、言ったでしょ。..私は好きな人の隣に居たいのよ」

「「「「「「!?」」」」」」

 

コンコン

 

ちょうど材木座君が来たようね、私が入室を促すと入ってきたのだけれど、扉を開けた瞬間に怯えだしたわ。私以外の女性から睨まれているのだから。

 

「..き、今日は帰らせてもらいましゅ」

「駄目よ、材木座君。今日は勉強会を止めてあなたのラノベを読む日なのだから」

「ゆきのん、それよりあたし聞きたいことあるんだけど」

「いいえ、今は部活の時間よ。材木座君のラノベは奉仕部で受けているのだからそちらを優先するわ。もし私の意向に従えないのであれば、部室から出て行って貰えるかしら」

「「「「「「ッ!!」」」」」」

「では材木座君、ラノベを見せて貰えるかしら」

「ひ、ひゃい!!」

 

私はラノベの内容を確認したけれど、どうして八幡と他の人のラブコメを読まないと行けないのかしら。でも奉仕部で受けたから仕方ないわね。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「八幡。今日は欠席なんだ...」

 

私は空席になっている右隣りを見つめて独り言を言っていた。5限目は世界史の授業で教科書を見せてもらおうと思ってワザと忘れてきたのに、これだと見せてもらえないな。

HRで先生から八幡が風邪をひいて、今日は欠席だと伝えられたけど、大丈夫なんだろうか。

 

お昼ご飯も最近は奉仕部の部室で食べてるけど、皆が集まっていても八幡が居ないと美味しく感じられないな。私はお昼を食べ終わると用事があるからと言って部室を後にした。

 

「大志、小町はどこに居る?」

 

私は一年生の教室を訪れて、弟の大志を呼びだしていた。

 

「ねえちゃん、いきなりどうしたんだよ」

「良いから、小町呼んで」

「..分かったよ」

 

大志に小町を呼んでもらい、私は八幡の容態を聞いていた。

 

「沙希さん。お兄ちゃんなら大丈夫ですよ」

「...それならいいんけど」

「でも、人恋しくなってるかもしれませんね。...沙希さん。小町は今日、友達と遊ぶ予定で帰りが遅くなりそうなんですよ」

 

小町はいきなり含みのある笑顔を浮かべながら、ポケットから鍵を取り出していた。

 

「沙希さんがお兄ちゃんを見てくれれば、小町はゆっくり遊べるんですけどねぇ」ニヤッ

「..こ、小町がゆっくり遊びたいだろうから、わ、私が様子を見てくるよ」

「姉ちゃん、けーちゃんの迎えはどうすんだよ」

「た、大志。今日はお願いするから」

「..姉ちゃん。お兄さんとしっぽりしたいんだな。久しぶりに朝帰りでも良いよ」ニヤッ

「な、なに言ってんだよ!!心配だから見に行くだけだから!!」

 

私はテンパってつい大きな声を出してしまっていた。一年生がこちらを見て声を潜めている。そんなことお構いなしに小町が余計なことを言い出した。

 

「はい、はーい。では沙希御姉ちゃん。お兄ちゃんをお願いします。食べちゃっていいですよ」ニヒヒヒ

「姉ちゃん。俺はまだ叔父になりたくないからな」ヘヘヘ

 

私は顔を真っ赤にしながら大志を殴り小町から鍵を受け取ると、一年生のクラスから逃げるように立ち去っていた。

 

3Fに戻り、帰る支度をしていると皆がお昼を食べ終わったようで、教室に戻ってきた。

 

「あれ、サキサキ。今日は帰るの」

「体調悪いん?ヒキオの風邪移ったんじゃない?」

「大丈夫?サキサキ」

「自転車気を付けてね、沙希ちゃん」

 

皆が心配してくれてるけど、私は正直に話すことが出来ずに教室を後にして、自転車で八幡の家まで走っていった。

 

玄関前についてインターフォンを押そうと思ったけど、中々手が出ない。どうしよう?でもこのまま家に入らないのもなんだし、小町に鍵を借りたんだから良いよね入っても。

小町の許可は貰ったし、もしかしたら八幡が動けなくて困ってるかもしれないから。私は自分にそう言い聞かせて玄関の扉を開けていた。

 

「は、八幡。大丈夫?」

 

私は八幡の部屋の扉をノックしたけど、返事は帰ってこなかった。ゆっくり扉を開けて、部屋を覗くと八幡は寝ているようで布団が盛り上がっていた。

 

「は、入るよ」

 

部屋に入っていったけど、八幡は寝ていて私には気づかなかった。顔を覗き込むと、顔には汗が浮かび上がっていた。唸っているわけではないし苦しそうでもないけど、汗を拭いてあげた方が良いな。

私はお風呂に行って桶に水を汲み、タオルを用意して八幡の部屋に持って行った。顔の汗を拭いて、私のハンカチを水に浸し額においた。

 

「しまったな、途中で色々買ってくればよかった」

 

そう考えたけど、今から買いに行く気にはなれない。もし体調が悪化したら。私は小町にメールをしてアイスノンの場所やジュースを貰ってもいいか確認しておいた。

 

「は、八幡。ちょっと身体触らせてもらうよ」

 

私はそういうと、布団の中に手を入れて八幡の身体に触れていた。..凄い熱い。布団の中は八幡の汗で蒸れていた。でも着替えさせるのは八幡が起きてからの方が良いよね。

 

私は看病しながら何度も布団に手を入れて身体に触れていた。べ、別に触りたいから布団に手を入れているわけじゃないから//...はぁ、誰に言い訳してるんだろ。私はそんなことを考えていた。

 

「う、うーん。...あれ、沙希か」

 

私が八幡の身体を触っていたら起こしてしまったようだった。でもよかった、寝汗が酷いんで起きなかったら、どうやって着替えさせようか考えていたから。

 

「あ、ああ。心配で来てみたんだけど、あんた寝汗酷いよ」

「服が張り付いて、ちょっと気持ち悪いな」

「着替えた方が良いよ。わ、私が拭いてあげるから//」

「..いや、不味いだろ」

「病人はおとなしく言う事聞きな」

 

私はそういうと、桶にお湯を汲みにいくため、キッチンに向かった。ど、どうしよう。今になって恥ずかしくなってきた//でも汗を拭いてあげないと。

私は少し熱めのお湯を桶に入れて、八幡の部屋に持って行った。

 

「じ、じゃあ、身体拭くから脱いで」

「いいよ、自分でやるから」

「いいから、早く服を脱ぐ!!」

 

私がそういうと八幡は溜息を吐きながら、上着を脱いで背中を向けてくれた。

 

「じゃあ、拭くから//」

 

私はタオルをお湯に浸して、八幡の背中を拭いていった。意外と大きい背中だな//私は拭きながら左手を八幡の背中に這わせていた。

 

「さ、沙希//こそぐったいから//」

「ご、ごめん//じゃあ今度は正面拭くよ」

「ま、前は自分で拭くよ」

「何回言えば分かるんだよ、あんたは病人なんだから言う事聞きな」

 

私は八幡を自分の方に向かせて身体を拭いていった。

 

「拭きにくいから横になって」

 

八幡は文句も言わずに従ってくれて、私はベッドに座って拭きだした。

は、恥ずかしいな//八幡は目を逸らして私の方を見ないようにしてくれていたので、私は拭くことに集中できた。でも触ってみたいな、そう考えていると何時の間にか八幡の胸に手を持って行って乳首を撫でていた。

 

「な、なにやってんだよ//」

「..ご、ごめん!!」

 

私は恥ずかしくなって、その後は拭くことに集中していた。後は下半身だよね//

 

「じ、じゃあズボンも脱ぎな//」

「良いよ、そっちは」

「何度も言わせるんじゃないよ、拭いてあげるから」

 

八幡はブツブツいいながら、布団の中でパジャマのズボンを脱いでいた。

 

「下は自分で拭くからタオル貸してくれ」

「私がやってあげるから」

 

そういって私は布団を捲って拭きだしたけど、八幡は顔を真っ赤にして私と目を合わせないようにしていた。私はパンツの膨らみから目を離せなかった//これって大きくなってるんだよね。私が拭いてるからかな//

 

足を拭き終わるころ、家のインターフォンが鳴って下の方から誰かが入ってきた音がした。

し、しまった。家に入るとき緊張してて、玄関の鍵を閉め忘れたみたいだ。話し声から雪乃と結衣が来たみたい、でもなんでアイツらが来るんだよ。

 

「ヒッキー、部屋かな」

「寝ているのでしょうね、でも鍵を開けてあるなんて不用心ね」

 

段々部屋に近づいてきて話し声が大きくなってきてる。病人がいるんだから、静かにしろって言うの!!でもどうしよう、抜け駆けして私がここに居るのは不味い、なにを言われるか溜まったものじゃない。

私は辺りを見渡して、八幡に抱きつくと布団を被っていた。

 

「さ、沙希。不味いって//」

 

コンコン、ガチャッ

 

「ヒッキー、大丈夫?」

「八幡、大丈夫かしら」

「あ、ああ。大丈夫だ」

 

や、ヤバイ//勢い余って八幡の布団に入ったけど、私の顔は八幡の脇に埋める形になっていた。

この布団の中は不味い//寝汗のせいか暑くて八幡の匂いが強くて、私が息を吸うたびに頭がクラクラしてきて、身体が火照ってくる//

私の身体はベッドの奥で八幡の右横に抱きついていたんだけど、うぅ、触りたい//い、良いよね、ちょっとぐらい。私は八幡の左胸を撫でながら舌を出して、八幡の脇下を舐めていた//

 

「ッ//」

「どうしたの、ヒッキー」

「な、なんでもないから//」

 

私達は授業で机を並べてる時、手を握り合って私の太ももに手を置いている。八幡はスカートを指で持ち上げようとしてくるんだけど、私はそれを防いでいて、恥ずかしがりながらもイチャイチャ出来るのを楽しむため、小町にも八幡の教科書を抜くようにお願いしてて、毎日どちらかが机を近づけていた。

 

今日はそのお返しが出来る//私に恥ずかしいことをしてくるんだから、今は八幡に恥ずかしくなってもらお//

 

私は左腕を下の方に伸ばしていった。股間には触れずお臍の辺りを撫でたり太ももを撫でるため手を動かしていたんだけど、たまに股間に当たってる//私は脇下を舐めていたんだけど、もっとしたくて脇下に吸い付いていた。目立たないところだけど、ここにキスマーク付けてみよ//

 

八幡達は何か喋っているけど、私はそんなことよりもっと触りたい、舐めたい。だから顔を胸の上に持って行って胸にも吸い付いていた。

 

「..ねえ、八幡。どうして、こんなに布団が盛り上がってきたのかしら」

 

そう言ったかと思うと布団が剥がされて、私が胸に吸い付いているのを雪乃と結衣に見られていた。

 

「な、何してるし!?サキサキ!!」

「あ、貴女、何しているの!?」

「...さ、沙希が見舞いに来てくれてな」

「なぜ胸を吸っているのよ!!」

「サキサキ!!いい加減離れるし!!」

 

私は見つかっても八幡に吸い付いていた。だってもっと味わいたいしイチャイチャしたい//それを邪魔されたくない!!

 

「じゃあ、今度は左胸にキスマーク付けるから」

 

私は左胸に顔を近づけていくと、雪乃の手が伸びてきた。

 

「いい加減にしなさい!!沙希さん!!」

「そうだし!!サキサキ!!」

 

私は頭を押せられ動きを止められていた。なんでこいつら邪魔するんだ!!

 

「あ、あんたらもしたいんだろ!!だったら一緒にすれば良いだろ!!」

「ッ...そ、そうね。私達も仲間に入れば良いのね//」

「ゆ、ゆきのんするの?」

「結衣はしなくても良いわよ」

「...ううん、あたしも一緒にする//」

「ま、まて。いくら何でも不味いから」

 

二人は何も返事をせず八幡ににじり寄ってきた。

 

「ま、まて。俺病人だぞ、不味いって。...あ、ああーーー!!」

 

私達は八幡の上半身にキスマークを付けまくって、その日は満足して帰宅していった。

 

八幡は裸でいたからだろうか、熱が上がったと言って次の日も休んでいた。もしかしたら私達のせいかも。だったら今日もお見舞い行こう。

結衣が私の方を振り返り目が合うと頷いてきた。今日は雪乃と結衣一緒に行こう。昨日は上半身だったから今日は下半身にキスマークを付けてあげようかな、また悪化させちゃうかもしれないけど//

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「八幡!!なんで太もも撫でてること、材木座にばらしてんのさ!!」

「ば、バカ。俺が言うわけないだろ」

「「「「「「は!?」」」」」」

「お、お主たち本当にやっていたのか。教室で隣合って教科書を見てるので、そこで出来るイチャイチャイベントを考えてみたのだが。...でもどうやってだ?字が書けずノートが執れぬであろう」

「..左手同士を繋いでる」

「後、八幡が教科書を忘れてくるようになったのも本当に沙希殿が小町にお願いしてたとか」

「材木座!!うるさい!!い、良いだろ、私がイチャイチャ出来るのって教室ぐらいしかないんだから!!」

「小町もグルか。どうも最近、忘れ物が多いと思った。...って、腕が痛い!!雪乃!!結衣!!」

 

私は八幡の腕を取って、いつの間にか力を込めていたのだけれど爪が食い込んでいるわね。結衣も同じようで、腕に爪が食い込んでいて淀んだ目で八幡を見ているわ。

 

「太ももぐらい良いじゃん!!うちは八幡に選んでもらった下着履いてきたとき覗いてくれたし、撮影の時お尻を撫でて揉んでくれたからね!!」

「「「「「「はぁ!?」」」」」」

「み、南。何言いだすんだよ」

「だって負けたくないじゃん!!下着履いてきた時も何回も振り返って見てくれたもんね!!八幡!!」

「い、いや、そんなに見てないはずだぞ...5回ぐらい?...痛い!!」

 

不味いわ、負の感情が溢れてくる。どうして私以外の女性とそんなことしてるのか、問い詰めないと行けないわね。

 

「南先輩。私は撮影の時、先輩とキスしましたからね」

「「「「「「はぁぁ!?」」」」」」

「あ、あれは事故だろ」

「ど、どう言う事かしら。私は今日、キスしたのだけれど八幡は初めてではなかったと言う事かしら」

「「「「「「はぁぁぁ!?」」」」」」

「...私は先輩と軽くですけど、触れあったんです//私にとってはファーストキスでしたよ。先輩も初めてですよね//」

「あ、あれは無かったことになってるだろ...って、痛いから!!」

「私の初めてですよ、先輩//」

 

血の気が引いてくるわ、頭が働かない。でも掴んでいる腕だけは離せないわね。

 

「そんなこと言ったら私はハチに胸を弄ばれたし、首の後ろにハチのものだってキスマーク残してもらったよ//」

「「「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」」」

「姫菜も何言ってるし!!そんなこと言ったら、ヒキオはあーしのお尻でイッちゃったし!!」

「「「「「は、はぁ?はぁぁぁぁぁああぁぁぁ!?」」」」」

「優美子!!」

「あ...ごめん、ヒキオ。喋っちゃった」

「もういい...いっそ、殺してくれ...」

「..ねえ、ヒッキー。あたしだけ何もしてもらってないよ」

「...何もなくていいだろ」

「やだよ!!」

 

結衣はそう言うと八幡の首に手を回して、いきなり唇を奪ってしまったわ。

 

「ヒッキー。あたし、ヒッキーのことが好き!!最初はサブレを助けてくれたことが始まりだけど、今ではヒッキーのことが大好きなの!!」

「..結衣//」

「何してんのさ!!結衣!!あーしもヒキオが好きなんだから勝手にキスすんな!!」

「ハチは私のものだよ!!私が初めて好きになったハチだけは誰にも渡さない!!」

「うちも八幡が好き!!だから絶対負けない!!」

「八幡は私のだよ!!私も八幡のこと大好きだから!!」

「私も先輩が好きです!!先輩は私と付き合うんです!!先輩は年下好きですから!!」

 

どうして告白大会になってしまってるのかしら。皆、席から立ち上がって私達の方に近づいてきたわ。多勢に無勢ね、八幡も逃げようとしているのだけれど、私は腕を離さなかったし結衣は首に絡みついて今も頬にキスしてるわね。

 

「八幡。我は帰らせてもらうぞ...」

「材木座。助けてくれ」

「...主の今までの所業を悔い改めよ」

「ざ、材木座ーーーー!!...あ、アァーーーーーーーーー!!」

 

材木座君が部室から出て行くと、キス合戦が始まってしまったわね。私はキスだけでは物足りなくて首筋にキスマークを付けたのだけれど、皆まねしだして首筋には凄い数の跡が残ってしまったわ。八幡も初めのうちは抵抗していたけれど、途中からは受け入れてくれたわ。もしかしたら放心していただけかもしれないけれど。

 

今日は私だけが告白したはずなのに、その日のうちにこんなに多くの女性に告白されるなんて思ってもみなかったわね。でも最後に勝つのは私なのだから、これからも攻めて行かないと行けないわね。

 

 



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「姫菜のキャンプ」

今やってるアニメのゆるキャンを見て書いてみました。このラノベは4月頃ですが、その辺はツッコまないでください。



「ヒキタニ君、放課後話できないか」

「..ああ、分かった」

 

俺がトイレに行った時、葉山に声を掛けられていた。葉山はグループ解散後、二日ほど休んでいたが今では普通に登校してきている。葉山は大和と大岡で過ごしており、元グループの戸部や優美子たちとは話すことはなかった。俺の席では周りに優美子たちが居るから声を掛けずらかったのだろう。俺が席を立った時、後ろを付いて来ていたから。

ただ俺の方を睨んでいることがある。アイツの中では俺がグループを壊した張本人なんだろう。

 

放課後、葉山と目が合うと教室を出て行ったので、結衣にトイレに行って部室に向かうと言い俺が付いて行くと、屋上に向かって歩いて行った。

 

「葉山、話ってなんだ」

「...返してくれないか」

「何を返せっていうんだよ、俺は何も取ってないだろ」

「雪乃ちゃんを...優美子を..結衣を..姫菜を..俺のグループを」

「..彼女達はお前のものではないだろ、もちろん俺の物でもない。自分自身のものだろ...お前何か勘違いしていないか」

「じゃあ、なんで彼女達はお前の周りにいるんだ」

「それこそ皆が自分自身で決めたことだろ、雪乃はお前から元々距離を取っていた。詳しくは聞いてないが、小学校の時いざこざがあったんだろ」

「だ、だが高校を卒業すれば婚約するはずなんだ」

「それも雪乃に聞いたが話し合いをするだけだろ」

「..雪乃ちゃんは俺を好きなはずなんだ。彼女が俺に素っ気なくするのは照れ隠しなんだよ」

 

こいつおかしくないか、雪乃のことを何も考えていない。自分の理想を言っているだけじゃないか。

 

「お前、じゃあ優美子達はどうなるんだよ」

「..俺はグループでいるのが楽しかった。それをお前が奪ったんだ」

「優美子の気持ちを考えていないじゃないか。戸部や姫菜のことも自分で解決せずにか」

「俺には出来ないから、ヒキタニ君にお願いしただけじゃないか。グループを壊してほしいなんてお願いしていない」

「グループを壊したのは俺じゃない。優美子、結衣、姫菜が自分達で考えた結果だ」

「今ではお前の周りに皆いるじゃないか!!」

「それも彼女達が考えた結果だろ」

「俺はヒキタニ、お前を許せない。俺から全てを奪っていくお前が許さない...」

「葉山..言いたいことはそれだけか、じゃあな」

「...」

 

葉山はおかしくなっている。俺に憎悪が向くのであればいいが、もし彼女達に向かうようであれば俺は絶対に許さない。

俺は念のため、葉山の動向に気を付けるよう陽乃にメールを送っておいた。

 

俺が部室に入ると既に材木座が来ており、雪乃がラノベを確認し終わったようだった。俺は雪乃と結衣の間に座ると、二人は椅子を移動させて俺にくっ付いてきた。それを優美子と姫菜が睨んでみている。

 

「な、なあ雪乃。席を元に戻さないか」

「嫌よ、今は部活なのだからこの席で良いでしょ。では皆でラノベを読みましょうか」

 

雪乃がそう言って、皆でラノベを読みだした。

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

私は「ゆるキャン」って言うアニメを見てどうしてもキャンプがしたくなった。女の子が冬にソロキャンプしたり皆で楽しくキャンプしたりするアニメ。私もしたくてグループの女子を誘ったけど、皆に冬のキャンプって寒いから嫌だって断られていた。

でも一人でもやって見たくて、私は朝早くから電車とバスを乗り継ぎ、色々見て回って食べ歩きながらキャンプ場に来ていた。

 

私が選んだキャンプ場は色々貸してくれるので準備が簡単だった。今回の為にネットで買った寝袋、着替えや食料だけ持って私はキャンプ場を訪れていた。

 

「寒くなってから火を起こすのも大変だよね」

 

私は火を起こす為、テントを張る前に薪を貰ってきて新聞紙を丸めて入れていた。ライターで新聞紙に火を付けて放っておけばいいんだね。

 

「着かないな。...着火剤忘れちゃったからな。細い薪なら着くと思うけど」

 

私は火を着けようと細い薪を用意して悪戦苦闘したけど、中々火は着かなかった。

 

「不味いよ、新聞紙無くなっちゃった」

 

どうしよう、ちょっと離れたところにバイクで来ている男性がテントを張っているのは知っていたけど、知らない人だしな。でも火種ぐらいなら分けてくれるよね。

今は姿が見えないけど、焚火はしているから中に居るのかな。私はテントに近寄っていくと、テントの中から物音が聞こえてきたので中にはいるようだね。

 

「すみませーん。いらっしゃいますか」

「...は、はい」

 

そう言って、男性はテントから出て来てくれた。でもテントから顔を出してくれたのは私の大好きな人だった。

 

「ハチ!?」

「姫菜!?..何してんだよ、こんなところで」

「キャンプに来たんだけど、火が起こせなくてさ。火種貰えないかなって思って」

「ああ、良いぞ。..あそこに荷物置いていたの姫菜だったんだな。って、まだテントも張ってないのかよ。すぐに暗くなるから準備した方が良いぞ」

 

ハチがこんなところでキャンプしてるなんて思わなかった。でもハチはソロキャン似合うな、バイクにも乗ってるんだ。..ここにテント張らしてもらお。一緒に居たいしハチが近くなら怖くないし、色々教えて貰えるかも。

 

「ハチ、こっちに移動してテント張っていい?」

「えぇ、俺は一人が良いんだけど」

「どうしよう。私、熊が出て来て食べられるかもしれない...」

「居ねえよ、千葉に熊なんて」

「...野犬に襲われて狂犬病移されて死んじゃうんだね」

「日本に狂犬病はないよ。...無いよね」

「病院たらい回しにされて身体中、知らない男に調べられて死んでいくんだ」

「わ、分かったよ。...はぁ、じゃあ荷物こっちに移動しようか」

「ありがとう!!ハチ」

 

私達は荷物をハチのテント近くに移動してテントを張った。ハチが手伝ってくれたおかげで暗くなる前に用意できたので、今は二人で火を囲んでいた。

 

「ハチってキャンプ好きなの」

「ああ、バイクで一人、色々行ってるな」

「そうなんだ、ハチって変なところで行動力あるよね」

「なんだよ、変なところって。でもよく一人で来たな..姫菜のことだから、ゆるキャンでも見て来たんだろ」

「そうだよ、なでしこちゃん可愛いじゃん」

 

私達は焚火を見つめながら雑談をしていた。いいな、この時間。のんびり時間が過ぎているようで、好きな男性が私のことを見てくれている。今日キャンプに来て本当に良かった、ハチと出会えて。

いつの間にか辺りは真っ暗になっていて、前に広がっている池の対岸にはお店の明かりが見えるけど、焚火の炎だけが私とハチを照らしていた。良い雰囲気だな、私はハチと二人っきりで焚火を囲んでいるだけで、顔が赤くなっているのが分かる。焚火の炎で分かりにくいだろうけど。

 

「そろそろ、食事の用意しようか」

「うん、私鍋の用意してるんだ」

「それもゆるキャン見てか」

 

私は自分の鞄から土鍋、家で切ってきた具材、うどん麺を取り出していた。

 

「そんな鍋持ってきてたのかよ」

「うん、ハチはご飯どうするつもりだったの」

「俺はこれだよ」

 

そう言って、ハチは鞄の中からステーキ肉と飯盒を出してきた。

 

「えぇ!?凄い大きいお肉!!」

「ああ、これに噛り付くのが好きでな。ワイルドだろ~」ニヤッ

「...じゃあ準備しようか」

「あ、ああ」

 

寒い...ハチのネタで寒すぎる...私はなにもツッコむことが出来ず、ハチは恥ずかしさで悶えていた。

ハチは時間がかかるから飯盒でご飯を炊きだした。家で用意してきてたみたいで、お米も研いであるしお水だけ入れて、火にかけていた。

 

「しまったな、私も飯盒御飯食べたくなってきた」

 

飯盒の蓋から出てくる泡を見ているだけでおいしそうで、唾液が溢れてくる。匂いも私の食欲をそそってくる。

 

「姫菜の分もあるから」

「え!?」

「何時も多めに持ってくるんだよ、残ったのはおにぎりとかにして翌日食べてるんだ」

「..でも、私が食べたら明日食べるもの無くなるよ」

「他にも保存できるもの持ってきてるんだよ。..例えばパスタの麺とかな」

 

そう言ってハチは私に色々見せてくれた。そこにはパスタの乾麺やレトルトのソース、無洗米なんかが入っていた。

 

「いつもなら米は家で研いで持ってくるんだが、これは非常用だな」

「凄いね、準備万端だ」

「バイクだからな、少しぐらい荷物が増えても何とかなる」

「いいなバイク。今度乗せてよ」

「機会があればな」

 

飯盒で御飯が炊き上がったようなので、ハチはご飯を蒸らすために飯盒を反対にしていた。すっかり忘れてたけど小学校のキャンプの時、こうやってたな。

私は鍋を用意しだすと、ハチはお肉を準備しだした。なんだか夫婦で一緒に料理してるみたい。でも野菜とか切ってきてたんで、私はほとんどすることないんだけどな。

ハチはお肉を焼きあげて、食事の用意が終わったので、私はハチと肩が並ぶように並んで食事をしだした。

 

「「頂きます」」

「ん..お、おいしいこの御飯!!」

「上出来だな、この肉も食べていいぞ」

 

ハチは焚火から炭をいくつか取り出し、その上に私の鍋とフライパンを置いていた。こうすれば弱火で保温したまま食べれるって教えてくれた。

 

「このお肉、おいしい!!」

「塩コショウしてるだけだぞ」

「うん、でもすごくおいしいよ..私の鍋も食べてみて」

「貰ってもいいのか....美味しい。温まるな」

「冬キャンプには鍋が良いと思ってね」

「今度やってみようかな、野菜とか用意するの面倒だったんで今までやらなかったんだ」

「わ、私が用意してあげるよ、今度は一緒にキャンプに行こうよ//」

「良いのか//」

「うん!!」

 

二人とも顔は真っ赤になってるんだろう。でも焚火の炎のおかげでお互い気にせず、食事を続けることが出来た。

 

私達は食事を終え後片付けをした後、ハチが連れて行きたいところがあるって言って、私の手を引いて山の方に歩いて行った。

 

「ね、ねえ、どこに行くの」

「もうちょっとだから」

「う、うん」

 

周りに光がなく、ハチの持っているライトが照らすところしか見えない。凄く怖かったけどハチが手を握ってくれるだけで安心できた。暫く歩くとハチは立ち止まって話しかけてきた。

 

「ここだ。ちょっと目を瞑って貰えないか」

「うん」

 

ハチはそう言って、私の手を引いて移動していく。

 

「もういいぞ」

 

私が目を開けると暗闇の中、遠くの町の色とりどりな明かりが輝いていた。

 

「..綺麗//」

「姫菜、上を見上げてみろ」

 

そこには千葉市では見ることが出来ないほどの星々が輝いていた。...綺麗。私は感動して何時までもハチの手を握りしめて二人で夜空を見上げていた。

 

私達はいつの間にか手を恋人繋ぎしていて、どちらからともなく歩き出してテントに帰ってきていた。その間、言葉を交わすことはなかったけど、周りには誰も居ない二人だけの世界で私の心は満たされていた。

 

テントに帰ってきた後、すこし雑談をしてそろそろ寝ようかってなったので私達は寝る準備をして、それぞれのテントに入っていった。

 

私は寝袋に入ったんだけど、凄く寒い。なんで?私はライトを付けて寝袋の説明書を見てみた。

 

「えぇ!?これって夏用!?」

 

私はネットで知識のないまま寝袋を選んでいた。でもまさか夏用を買ってしまうなんて。どうしよう、服を着こめば大丈夫かな。でも足が冷えるよね。

私が色々考えていると、テントの外からハチが声を掛けてきた。

 

「姫菜、どうした?」

 

私がテントから出て寝袋を見せると、ハチは驚いていた。

 

「家で出さなかったのか」

「うん、寝袋に夏用とかあると思わなくて」

「そうか、朝はかなり冷えるぞ」

「う、うん。でもないからしょうがないよね」

「その..姫菜さえよければなんだが、...俺の寝袋で寝るか」

「それだとハチが風邪ひいちゃうよ」

「俺の寝袋、一人でゆっくり寝れるようサイズが大きいんだよ。..二人でも何とか..」

「..いいの?」

「姫菜が風邪ひくより良いだろ」

「う、うん」

 

私はハチのテントにお邪魔していった。ハチが寝袋に先に入ってくれて私に背中を向けてくれるように横になった。

 

「お、お邪魔します//」

「ど、どうじょ//」

 

私は眼鏡を外して入っていくと、ハチはファスナーを締めてくれたんだけど、寝袋は私達がピッタリくっ付いて入れる大きさしかなかった。私とハチは長袖シャツとスエットしか来ていなかったんで、私は胸をハチの背中に押し付けるようになっていた。

 

「な、なんだか恥ずかしいね」

「..ああ」

「ハチ、...凄く鼓動が早いよ」

「姫菜も一緒だろ」

「..ねえ、こっち向いて」

 

私がそういうと、ハチはこっちに身体を向けてくれた。私とハチの顔は滅茶苦茶近くて5㎝も離れてなくて、お互いの吐息が顔に掛かっている。身体も密着してしまい私達の足はお互いを絡めていた。

私達は見つめ合ってたけど、お互い何も言わず、顔を近づけて行って口づけを交わしていた。

 

「姫菜、綺麗だ。俺は眼鏡を外した姫菜を独占したい。好きなんだ、俺と付き合ってくれないか」

「八幡、私も好きだよ。私を彼女にしてください」

 

私達はまたお互い顔を近づけてキスをしていた。今度は何時までもお互いを貪るように口づけを交わしていた。

....

...

..

.

 

私が目を開けると、ハチの顔が眼前にあった。...そ、そうだった。昨日の夜、私達は付き合いだして、お互いチュッチュしまくって、いつの間にか寝ちゃったんだ//

昨日の夜から私達は付き合いだしたんだよね、何時の間にか私はハチに抱きついて寝ていたようだった。ハチも狭いので私を抱くように手を回して寝ている、なんだか恥ずかしいな。でも今は好きな時キスしたり抱きついたりしていいんだよね//

私は八幡の寝顔にキスしだした。暫くするとハチも起きて、お互い舌を絡めてキスしていた。

今、私は凄く幸せを感じてる。ハチが私にキスを求めてくれてる。私達は何時までも昨日感じた二人だけの世界に入り浸っていた。

 

「ねえ八幡。今度は私もバイクでキャンプに連れてって」

「ああ、今度からは一緒に行こう、寝袋も二人用買おうか//」

「うん、..エッチも出来るような大きいのね//」

「「....//」」

 

私達はこの日から一緒にキャンプに行くようになった。キャンプに行けない時は八幡の部屋で寝袋に入ってイチャイチャしていた。

寝袋に入ると八幡はすぐ股間のテントを張ってくるんだけど、その時は私が仕舞う当番になっていた//

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「ハチ、私の眼鏡を外した顔知ってるのハチだけだよ」

「姫菜殿、我も写真で見たのだが」

「..材木座君、記憶から抹消してね」ニコッ

「ひゃ、ひゃい」

 

八幡は隣で恥ずかしそうにしているわね。どうして股間のテントとか卑猥な表現を入れるのかしら。

 

「材木座君、今回のラノベはどうして猥談で締めくくっているのかしら。前回の川崎さんのもそうだったのだけれど」

「..本当ならもっと下ネタを入れたかったのですが、皆に読んでもらうのに悪いと思って。ただ恋愛はお互いを求め合うものと思っているので」

「うん、あーしも材木と一緒の考えだし。ヒキオ、あーしならいくらでも求めて貰っても良いし」

「私が良いよ、ハチ。キャンプでこのラノベみたいに一緒に寝袋に入ろうよ」

「あ、あたしがヒッキーの相手するから!!」

 

確かにそうね、私も求めたいし八幡にも求めてほしい。私もこのラノベのように一緒に寝袋に入ってお互いを求め合うのも良いわね。

 

「材木座、今回はゆるキャンの説明を入れているから、知らない人でもキャンプのアニメって分かるが、途中で登場人物のなでしこを書くなら、そっちも書いた方が分かりやすいだろ」

「確かにそうであるな」

「でもなでしこちゃんって結衣に似てない?」

「確かにそうだな、髪の色もピンク掛かっているしな」

「大食いも一緒であるな」

「中二!!あたし大食いじゃないし!!」

「だが何時もお菓子を持っていて食べているイメージがあるのだが」

「う、うっさい!!そんなに食べないし!!」

 

確かによくお菓子を用意して摘まんでいるわね、太らないのだから不思議だわ。もしかして全て胸に行っているのかしら、それであれば私も間食を多くすれば大きくなるはずね。今度してみましょうか、でも胸が大きくならずに他に脂肪がついてしまったら...そう考えると止めた方が良いわね。

 

「じゃあ、リンちゃんは誰かな。見た目で言ったら雪乃ちゃんだね」

「髪型だけだろ。雪乃は一人でソロキャンなんて出来ないだろうし。スクーター乗って一人でキャンプ場にたどり着けないだろ」

「私は原付の免許持っていないから一人ではいけないわね」

「免許の話じゃなくて、雪乃って方向音痴だろ。ららぽの中でも迷うんだから」

「な、何を言っているのかしら。わ、私はすこし迷うだけよ」

「そんなこと言わなくても皆、雪乃が方向音痴ってこと知ってるし」

「そうであるのか、それをネタにラノベが書けそうだな」

「材木座君、何を言っているのかしら。それで書いたら分かっているわね」ニコッ

「ひゃ、ひゃぃ」

 

ほ、ほんの少しだけ方向音痴なのをどうしてネタにされないと行けないのかしら。

 

「材木座、バイクでタンデムしてキャンプの荷物って積めるのか」

「やはり難しいであるか」

「かなり無理があるだろうな。後、寝袋って二人で入れるのか」

「我のように太った者でも入れるのであれば、お主ら二人なら行けるであろう」

「ハチ、今から買いに行って試してみようよ」

「それはあーしがするし」

「いいえ、奉仕部で受けたラノベの検証で行うのだから私が入るわ」

「部長のゆきのんがする必要ないよ、そういうのは部員二人に任せるし。じゃあヒッキー今から買いに行って試そっか」

「まだラノベを持ってきてるのでそっちもお願いしたいのだが」

 

結衣が八幡を連れて行こうとしたのだけれど、材木座君が止めてくれたわ。八幡と二人で寝袋に入ってみたいわね。去年の千葉村キャンプの時はバンガローだったのだけれどテントも良いわね。寝袋の中で八幡と二人、お互いを求め合い抱きながら眠りたいわ。

 

 



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「優美子の結婚」

「今度は優美子殿のラノベをお願いします」

 

材木座君はそう言って私に渡してくれたわ。このラノベの確認も最近はフラストレーションが溜まってくるわね。私は何時の間にか隣にいる八幡の腕に抱きついていたわ。

 

「雪乃!?あ、あんた何してるし!!」

「雪乃ちゃん、何してるの!?」

「ずっこい!!あたしはこっち!!」

「私以外のラノベを読んでいるとイライラしてくるのよ、どうして八幡が私以外の女性とイチャイチャしているのかしら。八幡は私のものよ」

「ゆきのん、ヒッキーはまだ決めてないんだからね」

「そうだし!!あーしの男に手をだすな」

「優美子も何言ってんの!?ハチは私と付き合うんだよ!!」

「ケッ...八幡のリア充が...」

「早くあなた達も読んでもらえないかしら。...八幡、腕を貸してね」

「ああ//」

 

私は皆にラノベを読むように言って、ずっと八幡の腕に抱きついていたけれど、結衣は腕を絡めてラノベを読んでいるし、優美子さんと姫菜さんは読みながら私達を睨んでくるわね。

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

「御姫様、後一年を残すのみですね」

「..わーてるし」

「御姫様がそんな言葉づかいでは駄目ですよ。御父様と御母様が聞かれたらなんと言われるか」

「そんなんわーてるし、今はあーしの好きにさせてよ」

 

あーしはあるヨーロッパの小国で国王の娘として生まれていた。でも小中学校で日本語を学び、高校は御母様の母国である日本の学校にお忍びで留学していた。

後一年過ぎると国に帰らないといけない。あーしが帰れば貴族の男か何処かの国の王族に嫁がせられるのだろう。

 

このまま日本に居たい。束縛もなく自由に暮らせて、そして初めてあーしが好きになった男性がいる日本を離れたくない。

朝、あーしは何時も車で送って貰っていた。本当はバスや自転車に乗っていきたいんだけど、事件や事故に巻き込まれたら取り返しがつかないって言われて、学校近くまで送って貰っていた。

あーしが教室に入っていくとヒキオが座っていた。顔を見れるだけで嬉しくてあーしは駆け寄りたかったけど、気持ちを抑えて平静を装い、いつも通り挨拶していた。

 

「ヒキオ、おはよ」

「うす」

「ちゃんと挨拶するし」

「はぁ、おはよう。優美子」

「うん、おはよう//」

 

毎日、挨拶のやり取りをヒキオと出来るだけで今までの私は満足していた。でも後一年...そう考えてしまうと、もっと仲良くなりたい。恋人になって二人だけで色々出かけたい。

でもヒキオのことを考えると後一歩が踏み出せなかった。付き合えたとしても一年の猶予しかない。あーしは納得してるけど、ヒキオには申し訳ないから。

あーしがそんなことを考えていると、ヒキオが声を掛けてくれた。

 

「優美子、今週末空いてるか」

 

え!?ヒキオから誘ってくれてる!?今までこんなこと無かったけど、滅茶苦茶嬉しいし//

 

「ひ、ヒキオから誘ってくれるなんて珍しいじゃん//」

「ああ、小町に合格祝いは渡していたんだが、入学祝いを買おうと思ってな。優美子ならセンスが良いんで買い物に付き合ってほしいんだが」

「うん、良いよ。今週末空けとくっしょ」

 

ヒキオから買い物に誘ってくれるなんて、どうしよう今週着て行く服を考えないと。楽しみでしょうがないし。あーしは休みになるまでずっとテンションが高くなってて、メイドにも怪訝な顔で見られていた。

 

約束の日、駅前に11時ってことだったけど、あーしは楽しみ過ぎて朝7時には起きて準備していた。何時も10時ぐらいに起きてたんで、メイドものんびりしてるみたいで食事の用意もされていない。でもあーしは気分が良くて自分でスープを温め、パンをトースターで焼いて食事をとっていた。

 

「お、御姫様!?ご自分で用意されたのですか?申し訳ありません!!」

「良いし、あーしもやって見たかったし」

「やり方をご存知でしたか」

「チンすれば良いっしょ」

「...御姫様、これからは一緒に食事の用意をしましょうね」

「えぇ、やだし」

「では御母様にご報告させていただきます」

「ちょ、駄目だし!!..わーた、あーしも今度からやるっしょ」

「そうですね、ご結婚されても私は仕えていますが、旦那様には御姫様の手料理を食べてもらった方が良いですよね」

 

...旦那。嫌だ、あーしが好きでもない男と結婚させられるなんて。そんな男のために手料理何て覚えても全然嬉しくない。それがヒキオだったら...ヒキオのためなら幾らでも頑張れるのに。

 

結婚のことを考えて落ち込んじゃったけど、ヒキオとのデートに気分を切り替えてあーしは用意しだした。何時もなら一時間もあれば用意できるけど、今日は念入りに二時間以上時間を掛けていた。

 

ヒキオとの買い物は楽しくてつい、はしゃいでしまう。ヒキオといると嫌なこと全て忘れさせてくれる。このままヒキオにどこか遠くに連れ去ってほしいな。

あーしがそんなことを考えてると、ヒキオは近くの公園まで手を引いてくれていた。

 

ヒキオはあーしの前に立ち顔を赤くしている。どうしたんだろう、そう思ってるとヒキオは話し出していた。

 

「俺は優美子のことが好きだ。俺と付き合ってくれないか」

 

ヒキオが告白してくれるなんて//でも付き合えても1年しか時間がない。家のことでヒキオにも迷惑が掛かるかもしれない。

ごめんヒキオ、やっぱり無理だし。あーしは嬉しいけどヒキオにだけは迷惑を掛けたくない。

 

「..ヒキオごめん。...ぁ、あーし、あんたとは付き合えないよ...」

「優美子...じゃあなんで泣いてるんだ」

「え?」

 

ヒキオにそう言われ気が付いた。あーしの目からは涙が止めどなく流れて頬を濡らしていて、俯くと地面には涙の跡がたくさんついていた。

 

「..優美子。俺には優美子が何を抱えているのかは分からない。だが俺も一緒に抱えさせてもらえないか」

「ヒキオ!!」

 

あーしは感情が抑えられなくなってヒキオの胸に飛び込んでいた。家のことなんて考えずに自分に素直になれたらどれだけ満たされるんだろう。

ヒキオに好きですって今すぐ叫びたい。思いの丈をヒキオにぶつけたい。今は一人の女性としてヒキオに想いを伝えたい。

 

「あーしも八幡が好き!!愛してる!!....でも付き合えないの」ウワァーーー

 

八幡に抱きつきながら、あーしはいつの間にか大声を上げてしまっていた。その後は自分でも分からないぐらい泣き続けていたけど、八幡は何も言わずに抱きしめてくれていた。

 

「落ち着いたか、優美子」

「あ、ありがと、八幡。...あーしの家のこと聞いてくれる?」

「ああ、優美子のこと教えてくれ」

 

八幡とあーしはベンチに座り、八幡は手を握ってくれている。あーしは家のことを全て八幡に打ち明けて、その間八幡は何も言わずに聞いてくれていた。

 

「学校も知らないのか」

「うん、一部の先生は知ってるけどね。生徒で知ってるのは八幡だけだし」

「...国に帰ったら本当に結婚させられるのか」

「直接言われたわけじゃないけど、周りの貴族がみんなそうだし」

「..そうなのか。優美子って名前は偽名のなのか」

「あーしの本名はボーゼス・優美子・パレスティーだし」

「優美子ってセカンドネームで入ってるんだな」

「うん、御母様が日本人で三浦は御母様の旧姓だし」

「...そうなのか、お母さんが日本人ってことは恋愛結婚なのか」

「うん。御母様が留学してきて、大学で知り合ったって言ってたし。でもあーしは許されないと思う」

「それは御両親から言われたのか」

「ううん、昔から祖父母にそう言われ続けてたから、聞いてもいない」

「一度、話し合った方が良いんじゃないか。俺は優美子のことを諦められない」

「..わーたし、今度御母様が日本に来る時、聞いてみるし」

 

「優美子。もう一度言わせてくれ。俺は優美子のことが好きだ。姫様とか関係ない、一人の女性として愛してる」

「あーしも八幡が好き、愛してる」

 

八幡はそう言って、あーしの顎に手を掛けてきた。あーしは目を瞑って八幡を受け入れた。あーしの国では接吻は婚姻の証。あーしの心は今日から八幡のもの。見知らぬ相手に嫁がされても、あーしの心は八幡だけのもの。

あーしは言葉には出さず心の中でそう誓っていた。

 

 

「お。御姫様!!大変でございます!!」

 

あーしが家に帰ると、メイドが騒がしく駆け寄ってきた。

 

「あーうっさい。何時もお淑やかにしろって言うくせに」

「それどころではありません!!これを!!」

 

そう言ってあーしの前に開いた雑誌を見せてくれたんだけど、そこにはあーしの写真が載っていた。そこには王室の御姫様がお忍びで日本に留学しているって書いてある。

 

「ど、どういうことだしこれ!?」

「本来ならこういったことは日本国が防いでくれるはずなんですが...少し前からネットで騒がれていたようなのです。それで抑えられなくなったのかと」

「まあいいや。学校にはいつも通り行くから」

「お、御姫様。御止めください」

「大丈夫だし」

 

月曜日になりあーしは学校に登校していた。メイドは心配し過ぎて、いつもは車までは乗ってこないのに今日はあーしの隣に座っている。

 

「はぁ、心配し過ぎだって」

「御姫様の身に何かありましたら、どうなされるのですか」

「だから気にしすぎ」

「これからは校門前まで送り迎えさせますから」

「...断っても来るっしょ、わーたし」

 

あーしは校門前で車を降ろしてもらい、学校に入っていくと周りから奇異の目で見られていた。はぁ、やっぱりか。でもあーしは今まで通り過ごしたい。だから気にしない事にした。

 

「優美子、やっはろー」

「ハロハロー」

「おはよ。結衣、姫菜」

「優美子どうしたん。なんか元気ないけど」

「結衣は悩みなさそうでいいよね」

「あ、あたしだって悩みぐらいあるし!!」

 

結衣と姫菜は知らないのだろうか。朝、ニュースでもやってたって聞いたけど、特に結衣は見なさそうだし。

 

「...優美子、あたしも知ってるよ。でもね、あたし達と優美子の仲には関係ないじゃん」

「そうだよ、優美子は私達の友達。それでいいでしょ。気にならないって言ったら嘘になるけどさ。優美子も私達と今まで通り接してほしいから」

「え!?..あ、ありがと..」うぅ

 

あーしは何て恵まれてたんだろう、あーしが黙っていたことについては何も言わず、あーしのことを心配してくれている。あーしはいつの間にか結衣と姫菜に抱きついて泣き出してしまった。

 

「三浦、出てきたか。申し訳ないが校長室に来てくれないか」

「は、はい」

 

あーしは下駄箱で担任に呼ばれてそのまま校長室に呼ばれていた。

 

「三浦さん、いやパレスティーさん。実はあなたへの脅迫状が届いたのです」

「は、はあ!?」

「愉快犯とは思うんですが、学校側としては対応しないと行けません。ただ現状、我々には貴女を守る術がないのです」

「そ、そんなの守って貰わなくても良いです」

「貴女に何かあれば国際問題になるのですよ。それで教育委員会に問い合わせたのですが、そこでも判断できず、国に確認したのですが...誠に言いづらいのですが、すぐに国に帰っていただけないかと」

「え?そんな...あ、あーしはここで学びたいです、大切な友達と卒業まで一緒に居たいです。お願いします、居させてください」

「済みません。私達の一存では決めれないのです」

「..分かりました。最後に友達に挨拶させてもらえないですか」

「それも申し訳ないのですが、今日はこのままお帰り願えますか」

「え!?そんな....分かりました」

 

あーしは校長室を出ると先生たちがあーしを取り囲むように立ち、校門前まで送ってくれた。校門前には車が既に待機しており、あーしは車に乗り込む前に学校の方に振り返り頭を下げた。

...最後に皆にお別れを言いたかったな、最後に八幡に会いたい。結衣にも姫菜にもグループの皆にも会いたい。会ってお別れを言いたい。でもここで駆け出して教室に行くと皆にも迷惑が掛かっちゃう、あーしの目からは涙が溢れてきて校門前で泣き崩れてしまった。あーしはメイドに支えられながら車に乗り込み学校を後にした。

 

その後のことは余り覚えていない。あーしが泣いている間にメイドが荷物を纏めてくれていて、飛行機に乗せられていた。

 

あーしは国に帰った後、母国の学校に通っていた。周りはあーしに近寄ってくることがなくて、あーしは学校でボッチになっていた。でも一人の方が良い、仲良くなった人達とあんな別れ方をしたくないから。

 

あーしは高校を卒業する前に勝手に婚約させられていた。相手のことは全く興味が無かったんでプロフィールも読んでいない。

 

あーしはウエディングドレスを身に纏って御父様に手を引かれヴァージンロードを歩いている。神父の前には男性が既に立っていて私達に背中を向けていた。

うん?後ろから見ると何だか八幡に似た人だし。でもそんな訳ない、八幡がこんなところいるわけないから。そう思っていると、横から声を掛けられた。

 

「優美子、綺麗だよ!!」

「おめでとう、優美子!!」

「「「「おめでとう!!」」」」

 

え!?どうして結衣達がここに居るの!?あーしが前を見ると新郎の横顔が見えたんだけど、そこに居たのはあーしの心を奪った人だった。

 

「優美子さん、お兄ちゃんをよろしくお願いします!!」

 

小町にそう言われ、あーしは御父様の手を離すと駆け出していた。ウェディングドレスが纏わりついて走りにくい。でもそんなことより早く確認したい。

もう少しってところでスカートに足を取られて転びそうになった。あーしが前のめりになると新郎が振り返ってあーしの身体を支えてくれていた。

 

「優美子、危ないだろ」

「八幡!?八幡!!」

「綺麗だな、優美子」

 

あーしは八幡に抱きついてた。神父が呆然としていたけど、関係ないし。

神父がなんとか取り繕って結婚式が始まった。そんな形式ばったのどうでもいいっしょ。あーしは今、八幡と話したい。皆ともちゃんと挨拶したい。でもあーしの考えなんて神父が分かるわけないんで、何時ものセリフが始まった。

 

「汝、比企谷八幡は、この女、ボーゼス・優美子・パレスティーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「....」

 

え!?八幡はなにも答えてくれない。もしかしてあーしとの結婚は嫌だったの...そう思っていると八幡はあーしの方に身体を向けてきた。

 

「優美子。俺には神様なんてどうでもいいんだ。でも優美子に誓うよ、俺は優美子を何時までも愛します。俺と結婚してください」

「はい、あーしも八幡を愛します。あーしは八幡に一生添い遂げます」

 

そう言ってあーしと八幡は口づけを交わしていた。神父が挙式を滅茶苦茶にしやがって。とか悪態をついてたけど、あーし達には関係ないし。あーし達は何時までも口づけを交わしていた。

あーし達の挙式は滅茶苦茶になっちゃったけど、あーしにとっては一生の思い出だし。

 

八幡はあーしが日本から居なくなった後、あーしの国に留学するために凄く頑張って勉強してたらしい。学校を通じてメイドに連絡して御父様、御母様にも何度も電話して結婚の許しを貰ったみたい。

裏でそんなに頑張ってくれてたなんて知らなかったし。でも皆もお祝いに来てくれて嬉しかった。あーし達はその日、夜遅くまで喋っていた。

 

「八幡、もう眠たいし」

「ああ優美子。そろそろ寝ようか」

「うん、あたしも眠い、ヒッキー」

「うん優美子、私も眠いよ」

「そうね、私もこんなに夜更かししたのは初めてだわ」

「うちもベッドに行きたいな」

「先輩、私も寝室に行きます」

「私も行くよ」

「小町ももう寝ます」

「じゃあ、お休み」

「「「「「「「「おやすみ(なさい)」」」」」」」」

 

あーしと八幡が寝室に入っていったんだけど、も、もしかしてこれから初夜なのかな//眠いけど、凄い楽しみだし//

あーしがそう考えてると、結衣、姫菜、雪乃、南、いろは、沙希も部屋に入ってきた。

 

「あ、あんたたち何入って来てんだし!!」

「優美子さん。貴女は正妻だけれど、私達は側室なのよ」

「あたし達もここで寝ていいよね」

「な、何言ってんだし!!」

「王様に許可は貰ってるからね、優美子」

「は、八幡。ほんとなの!?」

「..俺も知らなかったが今日の挙式前に聞かされた」

「だから先輩の初めては優美子先輩に上げますよ」

「うん、うちらもその後、抱いてもらうから」

「優美子、ちゃっちゃとやっちゃいな。後ろが(つか)えてんだから」

「あ、あ、あんたたち何言ってんの!!とっとと日本に帰れ!!!」

 

この日から八幡とあーしを含めて女7人のハチャメチャな新婚生活が始まった。

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「な、なんであーしのラノベでハーレムになってんだし!!」

「材木座、無理あり過ぎだろ」

「最近、八幡の周りを見てるとハーレムが一番いい解決方法と思えてな」

「..日本じゃ無理だろ」

「なので海外としたのだ」

 

八幡とのハーレム。現状として皆が一番幸せになれるかもしれないわ、でも日本では無理ね。もし可能でも私が正妻でないと納得できないわ。

 

「優美子の名前ってGATEからだろ、確か貴族だったか」

「左様、金髪縦ロールでよく似ておるし、ティアラを付ければ、優美子殿がボーゼスたんにそっくりと思ってな」

「よく覚えてないが、似てる気がするな」

「優美子も一緒の趣味ならいいのにな」

「あぁ、確か腐女子だったな」

 

「中二、あたしのこと馬鹿にしすぎだし!!あたしも朝のニュースぐらい見るよ!!」

「結衣殿だと朝の番組はZIP!やめざましで占いしか見てなさそうなのでな」

「そ、そんなことないし...た、たまにニュースも見てるし」

 

結衣は言い当てられたようね、言葉を発しながら目を逸らしているわ。

 

八幡は誰か一人選ぶなんて出来ないのではないのかしら、であればハーレムで皆が八幡に愛して貰うのがいいのだけれど、日本では許されないことだわ。

何処かの国に皆で移住するのも良いのでしょうけど難しいでしょうね。形にこだわらなければ愛人って形でも良いのでしょうけど。

 

 



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ママのん降臨

今日はゴールデンウイーク三連休の前日。その後、二日学校にくれば4連休が続くのだけれど、今日もいつも通り部室で勉強会を行っているわ。最近、私のクラスメイト真鶴 真奈(まなづる まな)さんも一緒に教えてくれている。彼女は中学の時、結衣や優美子さんに勉強を教えていたそうで教え方がうまいわね。

特に結衣には教え方が合っているようで、最初に分かる問題を解かせて褒めて、分からない問題でも途中まで分かれば褒めてあげているわ。結衣は褒めれば褒めるほどやる気を出すタイプのようで、真鶴さんが褒めながら教えた問題は次の時には一人で解けているわ。私も見習わないといけないわね。

 

私達が勉強会を始めてから1時間ほど経つと、扉をノックする音が聞こえてきたので、私は入室を促すと生徒ではない女性が入ってきたわ。

 

「どうぞ」

「失礼します。こちらが奉仕部でよろしいのですね」

「か、母さん!?..ど、どうして母さんがここに?」

 

なぜ母さんが?私を迎えに来たのかしら。でも何も用事はなかったはず...

 

「皆さんは勉強を続けてくださいね。...雪乃、こちらに材木座さんって方はいらっしゃいますか」

「ひゃ、ひゃい!!」

「そう、貴方が...雪乃、彼とお話しさせてもらって良いかしら?」

「材木座君、大丈夫?」

「あと雪乃、私が出ている小説を読ませていただける?少し前にね、陽乃の部屋に入って行ったら、机の上にこれが置いてあったのよ」

 

そう言って母さんは机の上にラノベを置いたのだけれど、これは姉さんのパラレルワールドの話ね...不味いわ、私のも両親が出てくるのは余り良いようには書いていないのだから。

 

「陽乃を問いつm...いいえ陽乃に聞いたら、こちらにいらっしゃる材木座さんに書いて頂いたということで、興味が湧いてお邪魔させていただいたのよ....早く用意なさい。雪乃」

 

怖い...声を荒げているわけではないのだけれど、私は何も言えずにラノベを用意して渡したわ。皆何も言わずに勉強の手も止まっているわね。

 

「さて材木座さん。貴方のご両親に連絡させていただいて5月3日からの三日間、貴方の外泊許可を頂きました。ですので貴方の身は私が預かりますから」

「あ、あの、その日からSUPER COMIC CITYに行く予定がありましゅので、無理なんでしゅが」

「...........」ジー

「..い、行かせてもらいましゅ」

 

あんな射殺すような目を向けられて断れるわけないわ。早々に材木座君は諦めたようね。

 

「貴方から来たいというのであれば誘ったかいがありますわ....後、皆さん。隼人君のことで、かなりご迷惑をお掛けしたようですね、陽乃からそちらの件も伺いました。もしよろしければ皆さんも一緒に別荘へご招待させて頂きたいと思っていますがどうですか。もちろん雪乃は一緒に行きますよ」

「..私も行くのね」

「え!?雪乃ん家の別荘!?あーし行きたい!!」

「良いんですか!!うちも行きたいです!!」

「私、ビッグサイト行く予定が入っちゃってるよ」

「私も家のこと、やらないといけないから行けないな」

「..ゆきのん、良いのかな」

「雪ノ下さん。私は葉山君のことって何か知らないけど良いの」

「ええ、来れるのなら来てほしいわ」

 

そういえば真鶴さんは葉山君のことは知らないわね、でも母さんが皆を招待って何を考えているのかしら。あと一人、何も答えていないわね。

 

「八幡、あなたはどうするのかしら」

「いや、俺はゴールデンウイーク、あれがあれだから」

「そう、予定はないのね。では小町さんと戸塚君達に聞いて貰えるかしら。いろはさんと折本さん、仲町さんには私から連絡しておくわ」

「なんでそうなるんだよ」

「では何か用事があるのかしら」

「...無いけど」

「すみませんね皆さん。急に誘ってしまって。まさか私の知らないところで、こんな扱いを受けているとは思いもしなかったものですから」

 

母さんはそういうと、材木座君を見据えているわ。材木座君は鞄からタオルを取り出して汗を拭きだしたのだけれど、止まらないのか何度も拭っているわね。

 

「今回来れない人も次回は夏休み前に余裕を持って御招待させて頂きます。夏休みだと受験勉強本番でしょうから陽乃も呼んで勉強を教えるように言っておきますから。では細かいことは雪乃に伝えますので、来れる方はお願いしますね」

 

母さんはそう言い、お辞儀をして部室を出て行ったわ。

 

「は、八幡。どうしよう、我は殺されて山中に遺棄されるのではないか」

「そんなことするわけないだろ」

「大丈夫よ、材木座君の家にも連絡しているのだから」

「..なぜ、我の家を知っておったのですか」

「学校に聞いたんじゃないか」

「..我の個人情報がこんなに簡単にバラされて良いものなのか」

「雪乃の母ちゃんなら身元しっかりしてるから教えたんだろ」

「そ、そういえば姫菜殿はビッグサイトに行くのであるな!!」

「無理だよ、材木座君の欲しいのとジャンルが違うから探すの大変だよ..でも大手なら分かるかもしれないから一応、欲しいの教えておいて。近くに有ったら探してあげる」

「姫菜殿、よろしく頼む」

 

八幡は小町さんと戸塚君、戸部君に連絡を取ったのだけれど、小町さん以外は部活があるということで来れないようね。

私はいろはさん、折本さんと仲町さんに連絡を取ったわ。いろはさんは葉山君のことが有ってからサッカー部のマネージャーを辞めたのだけれど、家の用事があるということで今回は来れないと返信が来たわね。

折本さんと仲町さんは問題ないということだったので、別荘に行くのは、材木座君、八幡、私、結衣、優美子さん、南さん、真鶴さん、小町さん、折本さん、仲町さんね。

 

でも母さんはどうするつもりなのかしら。材木座君に指導するだけなら、明日からの休みで家に招いてもよかったと思うのだけれど。

 

*******************************

 

俺と小町、かおりは朝の8時前に千葉駅前に来ていた。今日から雪ノ下家の別荘にいくのに駅前に集合するためだ。俺たちが駅に着くと、観光バスが止まっていて、既に雪乃は来ていた。

 

「やっはろーです、雪乃さん」

「やっは..皆さん、おはよう」

「うす」

「おはよう!!私と千佳も誘ってくれてありがとうね。でも総武の皆と泊りで旅行とか凄い楽しみ!!ウケる」

「材木座はまだ来ていないのか」

「もう来ているわよ、既に母さんと一緒にバスに乗っているわ」

 

暫くして千佳も来たので俺達がバスに乗り込むと、前側の席で材木座とママのんが向かい合って座っていた。ママのんは着物ではなく、清楚な白いブラウスにカーディガンを羽織り、ロングのタイトスカートを履いていた。とても大学生の娘がいる母親には見えないな。

二人は何か話しているようで材木座は助けを求めるような顔をしてきたが、俺達は挨拶をし後ろの席に移動すると、ママのんはまた何か材木座に話しだしていた。

他にも知らないスーツを着た女性が座っていたが立ち上がると俺達に挨拶してきた。田中さんと名乗り、今回俺達の世話を運転手の都築さんと一緒にしてくれるらしい。田中さんも綺麗な女性で平塚先生と同い年ぐらいに見える。

このバスは普通の観光バスではなく、中型だが座席は革張りで後部座席はソファーのようになっており、コの字に配置されていて一辺に三人ならゆったり座れそうだな。

 

「凄いバスだな」

「お、お兄ちゃん。こんなの乗ったことないよ」

「八幡。一番後ろの席は横並びに座れるわ。一緒に座りましょ」

「なあ雪乃...母親が居るんだが良いのか」

「...そ、そうね。今日は控えておこうかしら」

「じゃあ、私と座ろ!!八幡君!!」

「それある!!私も一緒に座るから!!」

 

そう言って千佳とかおりに腕を引っ張られ一番後ろの席に移動していた。雪乃は悔しそうにしているが、ママのんの前なので自重しているようだな。

結衣、優美子、南、真鶴が到着しバスに乗ってきたが、俺達が既に席に座っているのを見ると、真鶴以外は不機嫌になりながら挨拶をしてきた。それぞれが空いている席に座ると、ママのんがバスの後ろに来て挨拶をしだした。

 

「今日は来てくれてありがとうございます。三日間一緒に居るのですから、ご遠慮なさらず私にも話しかけてくださいね。では行きましょうか」

 

ママのんがそう言って前の席に着くとバスは動き出した。材木座は相変わらず、ママのんの相手をしているが何だか普通に喋っているな。遠くて聞こえないがママのんが笑っているようにも見える。

バスは順調に高速に乗り、途中渋滞などもあったがパーキングに入って行ったので、トイレに行くと材木座も一緒に付いて来た。

 

「材木座、何を喋ってたんだ」

「雪乃殿と姉上のことを聞かれただけだぞ。怒られると思ってたのだが何も言われてないぞ」

「そうなのか、何か笑っていたようだが」

「我が雪ニャンラノベを書いた理由で「お姉ちゃん」って言わせたかったと伝えたら笑っておったな」

「..そうなのか、普通の反応だな」

「もしかしたら、雪乃殿も姉上も誤解していないか」

「分からない。俺達は家のことは何も知らないからな。材木座にも当たり障りないことしか言わないだろうな」

 

俺達がバスに戻って行くと、ママのんの前には雪乃が座っていて何か喋っていた。どうも三日間の予定を話しているな。

他の女子たちは帰ってきておらず、材木座と後ろに座っていると、真鶴が帰ってきて俺達の間に座ってきた。

真鶴は童顔で少しぽっちゃりしているが健康的な体型だ。何時もは眼鏡を掛けて髪を三つ編みしているため、まじめで垢抜けない印象しかないが、今日は耳の後ろでサイドテールにしており、コンタクトをしているのか眼鏡を掛けていない。目は垂れ眼で結構可愛いので、学校にも一緒の格好をしてくればモテると思うのだが。

胸の大きさは普通と思うが鞄をたすき掛けしてるので、どうしても目が惹きつけられてしまう//材木座も照れているな。

 

「ねえ、二人ともラノベよく読むんだよね、お勧め教えてよ」

「真鶴もラノベを読むのか」

「うん、でも余り話す人が居ないんだ。友達でも読んでる子少ないしね」

「真鶴殿はどういったのが好きなのだ」

「「ダンまち」好きだよ。ベル君可愛いよね」

「俺は今「妹さえいればいい。」や「エロマンガ先生」を読んでいるな」

「..比企谷君て妹ものばかりなの?」

「い、いや他にも読んでるからな。たまたまだよ」

「我は「ダンまち」であればやはりアイズたんが一押しだな。あと「このすば」も好きだし「GATE」も読んでおるぞ」

「ふーん、比企谷君のはちょっとあれだけど、材木座君と好み似てるかも。私「GATE」知らないから今度貸してよ」

「わ、我ので良ければ幾らでもよいぞ」

「うん、他にもお勧め教えて」

 

真鶴は材木座とラノベ談議に花を咲かせだしたな、俺も一緒にしたいんだが、なんで受け入れれないんだよ。妹さえもエロマンガ先生も面白いだろ、そう考えていたらいつの間にか帰ってきていた小町達が下げ荒むような眼で俺を見ていた。

 

「..お兄ちゃん。途中から聞いてたけど、小町ドン引きだよ」

「妹さえいればいいって、ヒキオって本当にシスコンっしょ」

「エ、エロマンガ先生って、どんなエッチなの読んでるんだし。ヒッキー」

「た、たまたま昨日読んでただけだから。エロマンガ先生もエッチなのじゃなくて、妹物...」

「妹物って...はぁ、まあいいや。今度はあーしと結衣が隣だからね。真奈、材木。場所変わるし」

 

優美子がそう言うと二人は左隣りのソファー席に移動していった。優美子は空いた席の中央に俺を座らせ両隣に優美子と結衣が座って、雪乃も移動してきて材木座と真鶴が座っているソファーに腰掛けた。

材木座達は席を移動した後も二人でまたラノベの話で盛り上がっており、俺もあっちに行きたいと考えてると優美子に右手を恋人繋ぎされ、それを見た結衣も左手に絡めてきた。

 

「八幡、なんで二人で手を繋いでるの。ウケない..」

「私達が隣だと嫌だったの。..私にはしてくれなかったよ」

 

かおりと千佳が帰ってきて俺達を見たとたん、文句を言いだした。

 

「あんたら二人、さっきまで隣だったから良いっしょ。こんどはあーしらがヒキオとイチャつくし」

「イ、いちゃつくって私達、話してただけだよ!!ウケないよ」

「私ももっと八幡君と話がしたい!!」

 

二人は文句を言いながら俺たちが座っている座席の右側に座ると南が遅れて帰ってきた。

 

「優美子ちゃん結衣ちゃん、ずっこい!!」

 

南はそういうと俺の方に近寄り背中を向けると足の上に座ってきて、俺に背を預けてきた。

 

「み、南。重いって」

「みなみん、危ないから駄目だって。何かあったら、ゆきのん家に迷惑掛かるし」

「うぅ、結衣ちゃんに正論はかれた...」

「な!?あたしのこと馬鹿にしすぎだし!!」

 

南は項垂れて前の席に移動していった、ちょっと可哀想だな。前の方はママのんが今は田中さんと話しているし、小町はかおりたちの横に座って、ソファーには既に三人づつ座っているため、空いてる席がなく南は前の座席に一人座っていた。

 

「俺、南の方に行ってくるから手を放してくれないか」

「え!?ヒッキー、みなみんが良いの?」

「いや、せっかくの旅行なんだから代わってくる。俺は一人でもいいが南一人は可哀想だろ」

「もうちょっとこっちに詰めれば、あーしの横に座れるっしょ」

「そうだな、じゃあ呼んでくるぞ」

「いいよ、私が呼んでくるから」

 

そういうと、かおりは南を呼んできてくれて、南は優美子の隣に腰掛けた。ただそのおかげで優美子と結衣は俺の腕に抱くようにくっ付いてきてきた//

 

「でもさ、皆積極的になったよね。ウケる」

「あーしら、ヒキオのこと好きだし」

「へ!?そ、それは知ってたけど、八幡の前でも言っちゃうの」

「皆、告白したんだよ。まだヒッキーは誰も選んでないけど」

「私が勇気を出して告白したのに、その日の午後には全員、勢いに任せて告白してるのよ..クッ」

「うん、その後うちらで八幡とキスしまくったもんね」

「「へ!?」」

「びっくりしましたよ。お兄ちゃんが首に包帯巻いてて、見せて貰ったらキスマークがたくさん付いてましたよ」

「..次の日、学校にも包帯していったから、材木座や戸部に「遅い中二病」って言われたな。先生にも怪しまれたし」

「へ、へぇ。...みんな告白したんだ」

「そ、そうなんだ...」

 

戸部は俺達と一緒に教室に居ることが多くなっていた。戸部は姫菜のことを今でも好きなようだが、それについて俺は申し訳なく思っている。俺はいまだに誰を好きなのか答えを出せていなかったから。

葉山と戸部は部活中もほとんど話をしていないらしい。サッカーは連携が大事なスポーツだが問題ないのか。俺には関係ないことだが気にはなる。

 

雑談していると、いつの間にか二回目の休憩所に入ったようでトイレから帰ってくると、今度は雪乃と南が隣に座ってきた。今回は材木座と舞鶴は前の座席に座って二人でラノベ談義している、そして何故か小町がママのんと話しているので席に余裕があった。

 

「雪乃は良いのか」

「ええ、隣に座るぐらいは問題ないでしょ」

「八幡、うちに手貸して」

 

南はそう言って俺の右腕を取り俺の手を太ももで挟んでいた。チョッ、やばい//南はショートパンツだったので太ももの感触が気持ち良すぎる//

南は勝ち誇ったような顔をして雪乃の方を見ていたが、雪乃の感に触ったようでいきなり身体を密着させてきて頭を俺に預けてきた。

 

「すこし眠りたいから、肩を貸してもらうわね」

 

雪乃はそう言って目を閉じていた。南もそういう風にやり返されるとは思っていなかったのか、驚いていたが一緒のように俺に頭を預けてきた。さすがに俺の理性がヤバかったので南の太ももから手を抜いて俺から恋人繋ぎをするように手を繋ぎに行った。

 

「また雪乃と南に出し抜かれてるし」

「でも大丈夫なのかな」

「寝ててもたれてたってことにすれば良いっしょ」

 

車が走り出し暫くそうしていると雪乃は本当に寝てしまったようで寝息が聞こえてきた。周りも朝が早かったためか皆寝始めてしまったようだ。俺も寝ようと思い目を瞑っていると、南がモゾモゾ動き出していた。

 

「八幡、皆寝ちゃったからキスできるよ」

 

南は俺の耳に口を近づけて俺の耳を甘噛みしてきた。な、何しちゃってるのこの子!?

 

「皆が寝ている中、こういうことするのって背徳感が有ってちょっと興奮するね。ねえ八幡、チューしよ。...してくれないなら首に吸い付くよ。うちはそれでも良いけど」

 

南はそう言うと俺の首筋に顔を近づけて吸い付いてきた。

 

「み、南。後が残るのは不味いから止めてくれ」

「じゃあ、チューしてくれる?」

「わ、分かったから」

 

俺と南は皆が寝ている中、唇を重ねあっていた。

 

「ふふ、皆が居て隠れてするのって凄く興奮するね//」

「お、俺も眠いんだ。もういいだろ//」

「うん、ぐっすり寝れそう。ありがとうね八幡、..好きだよ//」

「..//」

 

南はそう言って、身体をずらしてソファーに横になり俺の膝に頭を置いてきたので、俺が撫でているとすぐに寝てしまったようだ。

はぁ、俺が駄目なんだろうが、彼女達には振り回されっぱなしだな。今回の旅行はどうなるんだ。まだ着いても居ないのに、すでに俺はかなり疲れていてすぐに眠ってしまっていた。

 

...

..

.

 

バスで寝ていると俺はかおりと千佳に起こされた。何故か怒っているよ、この二人。

なんで怒っているのか不思議に思い下を見ると雪乃と南は俺の膝枕で寝ていて、俺の右手は南の頭に置いており、左腕は雪乃の腰のほうから胸に回されていて、雪乃が抱くように寝ている。俺はすぐに手を引き抜いたがかおりと千佳はかなり怒っているな。

 

「八幡イチャイチャしすぎだよ。ウケないんだけど..」

「..八幡君、約束して。私にも後で時間頂戴」

「ち、千佳!?私は!?」

「かおりも駄目。分かった?八幡君」

 

ち、千佳が怖い。俺は声が出せず頷くことしか出来なかった。だがこの二人は俺の事をどう思っているのだろう。

雪乃達からは好意を伝えてくれた。もう勘違いだなんて思わない、そう考えること事態、皆に失礼なことだから。

俺は答えを出せていないが俺も彼女達の事をもっと知りたい、知って安心したい。俺のことも知って欲しい。そして出来れば...

 

バスは別荘に着いたので皆を起こし、都築さんにお礼を言って降りていくとそこに三人の女性が立っていた。

 

「先生、陽乃..さん、めぐり。こんにちわ」

「ハチ君、こんにちわ!!」

「「....」」

「八幡、ここは学校外だぞ」

「いつも通り呼んでよ。八幡君」

 

言える分けないじゃん!!先生も何言っちゃってるの!?ここにママのんが居るってこと分かってんだよね、陽乃も年下から呼び捨てで呼んだらママのん怒っちゃうよ」

 

「ママのんとは私のことですか」

「え!?え?なんで...」

「八幡君、声に出てたよ」

「ふふ、では私の事はこれからママのんって呼んでくださいね」

「そ、それは失礼ですので」

「ではなんと呼んで貰えるんですか」

「..雪ノ下さん」

「はーい。でも何時もと呼び方が違う..」

「陽乃じゃなくて」

「あら、雪乃だけではなく陽乃も呼び捨てなんですね」

「それは雪ノ下の「はーい」奥様..」

 

だからなんで陽乃が答えるんだよ。

 

「奥様「はい、私ですか」...」

 

どうして田中さんが答えるんだよ、結婚してるのかよ。

 

「お母さんに失礼ですから」

「お義母さんだなんて、陽乃か雪乃は貴方と結婚していたかしら」

「...令夫人に「あら私のことを令夫人だなんて//」...」

 

だからどして田中さんが答えるんだよ。照れるなよ、可愛いじゃないか。

 

「諦めてください、私の事はこれからママのんって呼んでくださいね」

「..わ、分かりました」

「八幡、私は?今回は学校関係ないぞ」

「分かりましたよ、..静//」

「ふふ//ありがとう」

「ね、ねえ、もしかして先生も仲間入りしてるの?流石に予想外すぎてウケないんだけど」

「結衣ちゃん、問題にならないの?学校で」

「別に付き合ってるわけじゃないしね。学校では何もしてないし」

「では荷物を各部屋に置いてからお昼にバーベキューをしますので皆さん、庭に来てくださいね」

 

ママのんがそう言い、改めて別荘を見たがそこには木々で覆われた2階建ての大きいコテージが建っていた。隣にも別荘はあるが木々で遮られており、見えないようになっている。少し離れたところにテニスコートや池があり手漕ぎボートが置いてある。凄いな、掃除も行き届いていて感想がそれしか出てこない。

俺と材木座は都築さんが案内してくれて部屋に入っていった。その部屋にはベッドがあり、ノートパソコンも置いてあった。

 

「比企谷様、材木座様。ご用意が終わりましたら庭に来てください」

「「分かりました」」

 

俺達がお礼を言うと、都築さんはバーベキューの用意があるということで、部屋を出て行ったので俺と材木座は部屋で少し寛いで話していた。

 

「我と同室だな。八幡」

「男二人だからな、俺はお前が居てくれて助かるよ」

「なぜだ?何時もなら我のことをぞんざいに扱うではないか」

「...それはすまん。ここで一人寝てると隣に誰か入ってくるとかありそうで怖いんだよ」

「羨ましいではないか...だが頼むので部屋に連れ込むなよ。お主の情事を見たくも聞きたくもないのでな」

「そんなこと出来るわけないだろ...」

 

少し前ならそんなことありえないと思ってたが、今では否定することが出来ない。陽乃は俺のことを理性の化け物と言ったが、今はその理性を保てる自信もない。

 

「そういえば材木座。真鶴とずっと話してたな」

「わ、我とあそこまで長く会話してくれる女子は初めてだぞ//」

「ラノベの話をしてるのか」

「左様、真奈殿とラノベやアニメ談議しておると楽しいのだ//」

「..名前で呼んでるのか」

「ま、真奈殿から呼んでほしいと言われてな//我も名前で呼んでくれてるのだ//」

「俺もそっちで話がしたいな」

「お主は無理であろう、真奈殿以外の女子から引っ張り回されるであろうな」

「...そうだよな」

 

俺達は用意をし庭に降りて行くと、都築さんと田中さんがバーベキューの用意をしていたので、俺達も手伝っていた。

 

「では皆さんで頂きましょうか」

 

ママのんがそう言ったので俺達はバーべを頂いていた。陽乃も雪乃もママのんが居ても皆と楽しく、お喋りしながら食べてるな。俺は材木座と二人で他愛ない会話をしながら食べていた。

 

「少し私とお話しできませんか」

「は、はい」

 

俺はママのんに呼ばれ皆と少し離れた位置に二人で腰掛けた。

 

「貴方にお礼を言いたかったのです、ありがとうございました」

「な、何のことですか」

「陽乃から伺いました。貴方のおかげで雪乃にあんなに沢山のお友達が出来たと伺ってます」

 

そう言って、ママのんは雪乃の方を微笑ましく眺めていた。

 

「い、いいえ。雪乃..お嬢さんやその友達がお互いを認め合ったからですよ。そこに俺は入っていませんから」

「陽乃から全て伺ったと言ったでしょ。修学旅行、文化祭その他のことも全て伺ってます。そして貴方がしたことにより雪乃の気持ちに変化が現れたことも、そして気持ちを曝け出したことも。

今まで雪乃は全てのことに対して、自分の事さえどこか冷めた目で見ていました。それを貴方が変えてくれたのですよ」

「..それは俺ではなく、雪乃お嬢さんに貴女の言葉で伝えてあげてください」

「もちろんです、ただ貴方にもお礼をどうしても言いたかったのです。本当にありがとうございました」

「..こちらこそ、そう言っていただいて、ありがとうございます」

 

ここで否定してしまうのは間違っていると思ったので、俺は何も反論せず受け取っていた。俺が果たした役目など微々たるものだろう。一番は雪乃が考え行動に移したのだから。

 

「陽乃も変わりました。今まで私の言葉には何も考えずに..いいえ、今までも考えてはいたでしょう、でもそれまでは何も言いませんでした。でも今では自分の考えを言ってくれるのです。これも貴方の影響ではないですか」

「買いかぶり過ぎです、俺にそんな影響力は有りませんよ」

「貴方と材木座さん、そして周りに居てくれるお友達のおかげではないでしょうか。陽乃も私が小説の事を知ってから貴方達の事を教えてくれるのですが、凄く楽しそうに話してくれるのです。大学のことでもあんなに楽しそうに話すことはないのに」

 

材木座のラノベや皆の影響、それは確かに頷ける。特に材木座は何も考えずに書いているだろうが、俺でさえラノベを読んで色々考えてしまうこともあるからな。

 

俺達が話していると皆は食べ終わったのだろう、雑談に花を咲かせていた。

 

「後、陽乃も雪乃もいつも通り呼んであげてください。私のことを呼ばないようにすればいいと思っているのかもしれませんが駄目ですよ」

「わ、分かりました。..ママのん//」

「ふふ、初めてですよ。私をそのように呼んでくださる方は。私も八幡さんには一目置いています、私達夫婦では変えれなかった娘達を一年足らずで変えてしまったのですから。..八幡さんに嫉妬もしていますのよ」

「...」

「すみません、時間を頂いて。では八幡さん、私達も頂きましょうか」

 

ママのんは俺のことを買いかぶり過ぎだ。俺が雪乃や陽乃に何かしたわけではない、もしかしたら切っ掛けを作ったかもしれないが、そこからは彼女たちが考え行動しただけなのだから。

 

皆が食べ終わり雑談しているなか、俺とママのん、都築さん田中さん、後なぜかビールを片手に楽しそうにママのん達と会話している静とでご飯を頂いていた。

 

 

 

 

 



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「ママのんとゆきのん」

私達はお昼を食べ終わり皆で後片付けをしているのだけれど八幡の姿が見えないわね。

 

「結衣、八幡はどこに行ったのかしら」

「...居ないね。お手洗いじゃない?」

 

そうね、ここから何処かに行くにしても車が必要だけれど、車は誰も動かしていないわね。

 

私達は後片付けを済ませて、話しているのだけれど八幡はまだ帰ってこないわ。せっかくなので皆でテニスでもしようと思ったのだけれど。

そう思いながら、周りを見渡していると、池の上にボートが浮いており、男女が乗っているのが見えたわ。

 

「..ねえ、あのボートに乗っているのは八幡と仲町さんではないかしら」

 

私がそう言うと、近くにいた結衣と優美子さん、折本さんが一斉に池の方に振り返ったわね。

 

「ヒ、ヒキオはなんで二人で乗ってんだし!!」

「な!?千佳は何してるの!!」

「ずるい!!千佳ちん抜け駆けしてる!!」

 

私達は駆け出して池の畔まで行くと、八幡は私達に背中を向けるよう座っていたので気づいていないようだけれど、仲町さんは私達の方を見た後、八幡ににじり寄っていったわ。

仲町さんは私達が見ている中、八幡に抱きつきキスまでしているようね。八幡は止めろ。って言っているようだけれど、ボートの上では逃げれないわ。仲町さんに押し倒され良いようにされているのだけれど。

 

「な、何してんだし!!」

「ヒキオもされるがままじゃん!!」

「許せないわね」

「千佳!!」

 

折本さんが名前を叫ぶと、仲町さんは体制を直して八幡も起き上がったのだけれど、仲町さんは八幡のお腹に抱きついているわ。

八幡は仲町さんに抱きつかれながら、ボートを漕ぎにくそうにしながらも何とか岸まで戻ってきたわね。

 

「千佳!!何してんのよ!?ウケないよ!!」

「かおり、私も八幡君が好きだよ。だから告白させてもらったの。..返事は貰ってないけど」

「で、でも千佳ちん。キスして抱きついてたじゃん!!」

「うん、私を選んでほしいから。最低でも皆と一緒のスタートラインに着きたいからね」

「うぅ、千佳に先越されたよぉ...ウケないよ」

「ヒキオ...早く誰かを決めるし。段々ライバルが増えて行くじゃん」

「そうね。今、八幡に告白した人は仲町さんを含めて、8人...」

「「は、8人!?」」

「ええ、私、結衣、優美子さん、南さん。今日は居ないけど姫菜さん、沙希さん、いろはさん。そして仲町さん。...早く私に決めて貰わないと落ち着かないわ」

「ゆきのんも何言ってんだし。ヒッキーはあたしを選んでくれるんだよ」

「学校が違っても私を選んでね、八幡君」

「雪乃も結衣も千佳も諦めるし、あーしが八幡の隣に立つんだし」

「...八幡。私...私も八幡のことが好き!!これが中学の時、告白してくれた時の返事!!だから私と付き合って!!」

 

私達がいるなか、折本さんがいきなり告白しだしたわ。そう思っていると八幡に抱きついてキスしてしまったわね。

 

「かおり//」

「な、何してるんだし!!かおりん!!だいたい中学の時はかおりんが振ったんだよね。今は関係ないじゃん!!」

「そうだね、かおりが今さら何を言っても八幡君が選ぶだけだから」

「..はぁ、また一人増えちゃったじゃん」

「..本当にどこまで増やすつもりなのかしら」

「かおりは所詮2番手だね。私が今日最初に告白したんだから」

「あら、それを言ったら八幡に初めて告白したのは私よ。部室で語り合って情熱的にキスしたわ」

「雪乃、一番とか関係ないし。ヒキオが誰かを選ぶのに順番なんて関係ないし」

「そうだよ、ゆきのん」

「八幡に告白されたのは私だよ、皆は告白してもらってないよね。姫菜ちゃんの時は嘘告白だって聞いたよ。唯一私だ!け!が!八幡に好きって言ってもらったんだから!!」

 

中学の時とはいえ確かに折本さんだけが告白されている、それについては認めるしかないわね。でも今は私達のほうが居る時間が長く、お互いのことを理解しているはずよ。

 

「...貴女達とも決着を付けないと行けないわね。そういう意味でも早く選んでほしいのだけれど...八幡」

「ヒキオ」

「ヒッキー」

「「八幡(君)」」

「い、いやそれはあれがあれだから、その、...じゃあ」

 

そう言って八幡は別荘の方に駆け出して行ってしまったわ。はぁ、どうしてあんなにもヘタレなのかしら。でも惚れた弱みね、一人を選ばないのは皆のことを大事に想って悲しませたくない、傷付けたくないと考えているのが分かるから。

その優しさでまた好きになってしまうのね、でもその優しさを私だけに注いで欲しい。そう考えてしまう私は我が儘なのかしら。

 

私達はその後、皆でテニスをしていたわ。ここの別荘は車を出さないと観光や買い物にも行けないけれど、今日は都築達の慰労を兼ねているということで、母さんがお昼からお酒を都築達に進めていたので、バスを運転できるのが誰もいなかったわ。

 

私達はダブルスで遊んでいると、優美子さんはどうしても以前の借りを返したいと、シングルでのテニスの勝負を挑んできたので、私は受けて立ったわ。

でも最初は私がリードしていたのだけれど、後半体力が尽きて優美子さんに逆転負けしてしまったわね..

 

「雪乃、もうちょっと体力付けなよ。1setも持たないなんて」

「..必要ないわ、体力何て」

「エッチの時どうするの?相手にだけさせるん」

「そ、そんなことないけれど」

「こっちも色々してあげないと、飽きられちゃうし」

「...ゆ、優美子さん。そ、そういうのはやはり、女性からもした方が良いのよね」

「あーし経験ないから知らないけど、こっちからも色々してあげたいじゃん」

 

そうよね、八幡が喜ぶなら私からしてあげたいわ。でもその為にも体力が必要なのね...

もし私が八幡に選んでもらえても、優美子さんが言う通り、飽きられたら捨てられるってことも考えられるのよね...

 

私達はその後も遊んでいたのだけれど、何時の間にか八幡が居なくなっているわ。今度は城廻先輩が八幡を誘ってどこかに行ってしまったようね。

私が別荘に戻ったとき二人が二人乗り用の自転車で帰ってきたのだけれど、自転車から降りると城廻先輩が八幡の腕に抱きついているわ。

 

「..もしかして城廻先輩も告白したのかしら」

「うん、私もハチ君が好きだから告白したよ。皆が告白したことは生徒会に遊びに行った時、一色さんに聞いてたからね」

 

また増えたのね。..これ以上増えないと良いのだけれど、先生も名乗り上げるかもしれないわね。姉さんはどうなのかしら、もし姉さんもなら二人とも強敵だわ。

この別荘にいる間に私を選んでくれないかしら。どうしてもライバルが増えていくと不安になってしまうわ。

 

私は八幡に選んでもらう有効な方法が思いつかず時間だけが過ぎてしまい、別荘に来て二日目の夕飯を頂いていた。

 

御飯を食べ終わって寛いでいると、材木座君がラノベを持ってきたようね。

今日は皆で都築にバスを出して貰って観光や買い物に行ったのだけれど、母さんと材木座君、田中は来なかったわ。もしかしてラノベを書いていたのかしら。

 

「何時もの確認は母上殿が行っていただけたので、不要かと」

「そうなのね、では皆で読みましょうか」

 

私達はラノベのコピーをそれぞれ受け取り読みだしたわ。

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

私はT大で院に進んでいて、八幡とは違う大学になったので交流が無くなっていた。私は大学に入ってから八幡に対する恋心に気づいたのだけれど、電話番号を変えたようで八幡とは疎遠になっていた。

小町さんも家の事情で九州に引っ越して、大学も九州の方に通っているようで会うことはなかった。彼女も携帯を変えたのか連絡が付かなくなっていた。

 

私は大学院を卒業し雪ノ下建設に就職して2年が経とうとしているけれど、いまだに八幡のことが忘れられない。どうしても会いたい。でもどこにいるのか分からないため、連絡が取れなかった。

 

「雪乃、そろそろ身を固めてはどう?」

「母さん、私は結婚するつもりはないわ」

「今、海外出張している社員がいて来年度に帰ってくるのよ。その方は幹部候補で貴女と同い年だから、お見合いをしてもらうわ」

「い、いやよ。結婚相手ぐらい自分で見つけるから」

「そう言って何年経つのよ、今までお付き合いした相手は居ないのでしょ。そのままでは行かず後家になってしまうわよ」

「...」

「今週、その方は海外から一時帰国されるので土曜日に会ってもらうわ。相手の方だけれど「そんなのどうでもいいわ」...そう、でも逃げることは許しませんよ」

「..分かったわよ」

 

私は部屋に戻ると八幡に貰ったパンさんを抱いてベッドに寝転んでいた。私が抱きすぎて薄汚れているパンさん。彼と会えなくなってから私はこのパンさんに毎日話しかけていた。

 

「ねぇ、八幡は何処にいるの」

「...」

「私を八幡と会わせて」

「...」

「あなたが寂しさを紛らわしてくれるのね」ギュッ

 

母さんは何時もそう、私のことを勝手に決めて。大学の時に研究に没頭し過ぎて就活もろくにしていなかったのだけれど、いつの間にか家で働くように手配してて私は何も決めさせてもらえなかった。

でも相手がどんな人でも関係ない、結婚相手ぐらいは自分で決めたい。今でも忘れられない彼に想いを伝えたい。今回の見合いを何とか破談させてから休暇を貰って小町さんに会いに行こう。連絡先は分からないけれど、高校や友達ならだれか知っているかもしれないから、連絡を取ってみよう、何も動かないよりはいいわ。

その為には今回の見合い相手に気に入られないようにしないといけないわね....私はそんなことを考えながらパンさんを抱き眠りについていた。

 

土曜日になったので私は一人ホテルに向かい、母さんが先に待っている個室へと入っていった。

 

「ゆ、雪乃!?なんて格好をしているの!!」

「中世ヨーロッパの正装よ。今の時代に合わせたものを着てきたのだけれど似合っているかしら」

 

私は色々考えゴスロリの格好をしていた。恥ずかしいけれど、相手に嫌われるためならなんだってするわ。黒と白のスカートドレスで最初は恥ずかしいので膝丈のものにしようと思ったのだけれど、ミニのものを選んだわ。この歳になってこんなスカートを履くなんて思わなかったけれど、相手に嫌われるためなら何でもするわ。タイツも黒と白のストライプで揃えたけれど、着てみるとやっぱり恥ずかしいわね。

 

母さんは呆れかえって額を抑えていて溜息を吐いていた。

 

「はぁ..分かったわ、そんなに嫌であれば私からお断りします。今日は挨拶だけして解散しましょう。私が残って相手の方と食事を済ませていくわ」

「いいの!?」

「貴女がそんなに嫌がるとは思っていなかったから」

「あ、ありがとう母さん!!」

 

母さんが断っても良いなんて言うと思わなかった。でも良かったわ、これで八幡を探すのに障害が無くなったのだから。

 

「雪乃、出来れば顔を相手に見せないようにしてほしいわ、まさか化粧までそんなことをするなんて」

 

私は目の周りに黒いアイシャドーを塗っていて睫毛も凄く長い物を付けていた。口紅も今まで買ったことも無かったけれど、真っ黒なものを付けていたわ。

母さんは呆れかえってスマホを触りだしたわ。誰かにメールをしているようだけれど、ピロピロ音がうるさいわね、マナーがなってないわ。...今の私に言われたくないでしょうけど。

暫くすると終わったのか置いてある鞄にスマホを立てかけていたわ。

 

コンコンコン

 

「相手の方が来てしまったようね。一度入って貰って挨拶してからお断りするので貴女は顔を伏せてなさい」

 

そう言って母さんは相手の方を部屋に招き入れたわ。私が俯いているので相手の顔は見えないけれど一人のようね。家族は連れて来ていないようだわ。その方が良いわね、断らないといけないのだから。

 

「ママのん、お久しぶりです。...雪乃も久しぶり..」

 

ママのん!?私のことも名前で...今まで名前を呼び捨てで呼んでくれたのは彼しかいない。もしかして...

 

「ごめんなさい八幡さん。今回の事、雪乃が嫌がってしまって。来ていただいて申し訳ないけど今回は縁がなかったと言うことで」

 

八幡!?私は伏せていた顔を思わず上げて相手の顔を見ていた。そこには高校を卒業してから今まで忘れたことのない人が座っていた。

あのころから比べると顔は精悍になり大人びていて、目は鋭くでも瞳の奥には昔と変わらない優しさを秘めた眼で私のことを見ていた。髪の毛は整えられてて、でもアホ毛だけは未だに健在のようだけれど、私を見たとたん、項垂れてしまった。やはりあのアホ毛は気持ちを反映しているのかしら。

 

八幡は私の顔を見てびっくりしている。でも目が合った瞬間に視線を逸らして私に顔が見えないように後ろを向いて項垂れてしまったので表情がうかがえないわ。肩が震えているようだけれど断られて泣いているのかしら。

 

「..そ、そうですか、こういう場にそのような格好をするまで嫌われてたんですね」

「ち、ちが「申し訳ありません。私の育て方が間違ったようで八幡さんにも不快な思いをさせてしまったわ」..」

 

どうして母さんは私の発言に被せてくるのよ。喋れないじゃない。

 

「ママのんが頭を下げないでください」

「いいえ、私が悪いのよ」

「そんなことないです、俺が嫌われてるだけですから。..ただ会社に居づらくなりますね」

「話を「八幡さん。もしかして会社を辞めるつもり?」...」

 

ま、また...でもそうよ、そもそもなんで家の会社で働いてるのよ、全然気づかなかったわ。でも海外に行ってて今度帰ってくるのね。それであれば一緒に過ごせるわ。オフィスラブになるのね//皆が帰った後二人でイチャイチャ出来るし、給湯室や会議室で隠れながらチュッチュしたり出来るわね//

 

「..そうですね、俺は今の仕事が気に入ってます。海外勤務でも色々勉強させてもらえました。もし会社に居ても良いのであれば今回の帰国は無かったことにしてもらえないですか」

「色々手配が終わってるのよ。..でも残念だけどそうするしかなさそうね。せっかく雪乃と一緒の部署に配属されるようにしたのだけど」

 

そ、そんな。日本に帰ってくるなら八幡と一緒に過ごせるのに、私のせいで海外勤務が延びるなんて...

 

「は、はち「奥様にはお手数を掛けて申し訳ありません」...」

 

なんで八幡も私に被せてくるのよ、喋らせてよ!!

 

「八幡さん、私のことは今まで通りママのんって呼んでほしいわ」

「いいえ、さすがにそれは失礼でした。これで奥様と家族になることも無くなりましたから、今まで甘えていてすみません。非礼をお許しください」

「私は雪乃と結婚して頂きたかったけど、八幡さんのことをこんな格好してまで拒絶するとは思わなかったのよ」

 

違うわよ!!八幡が相手って分かってたらこんな格好するわけないでしょ!!大体母さんも教えてくれなかったじゃない...違う、私が話を遮ったんだった...でも今はそんなことより話を聞いて貰わないと。

 

「はな「俺達が高校生の時に雪乃御嬢様には沢山迷惑を掛けましたからね..嫌われてもしょうがないですよ」...」

「そうなのですか、その辺り私は何も伺ってなかったわ。雪乃は貴方のことが忘れられずに今まで恋人を作らないと思っていたのだけど違ったようね」

 

その通りよ。どうして分かってるのに言ってくれないのよ!!

 

「でも今日は会えてよかったです。高校の時から好きだった雪乃御嬢様にここまで拒絶されたら諦められますからね」

 

私も好き!!だから話を聞いてよ!!大体御嬢様ってなんで他人行儀になってるの!?どうして二人で話を進めてるのよ!!諦めるって何よ、私のことが好きならここから私を連れ去りなさい!!

 

「わ、私も「雪乃御嬢様に認めてもらうため、会社で頑張れば良いと思ったんですが無理でしたね」...」

「そういえば面接のときに言っていましたね。雪乃に肩を並べれる男になるって。その時は何を言っているのかと思いましたが今では私達は認めてますよ。ただ当の本人が嫌がってはね。雪乃を会社に入れたのも他の男性がちょっかいを出さないようにと思って、でも間違っていたようね」

「そうですね、雪乃御嬢様の可能性を俺のせいで潰してしまいました。雪乃御嬢様、申し訳ありません。自分の事で頭が一杯でした」

 

だから私を会社に..でもそれなら教えてよ、一言言ってくれれば良いでしょ。

八幡もなんで今まで連絡をよこさないのよ。一緒の会社なら海外でも事務席の電話番号ぐらい分かったでしょ!!

 

「でも八幡さん、貴方も良い年齢だわ。宜しければ私がお相手を紹介しますよ」

「さすがに失恋のすぐあとは厳しいですが、雪乃御嬢様のことで踏ん切りがついたら紹介してください」

 

な、なんで次の見合いの相談してるの!?諦めずに私を口説きなさいよ!!でもこのままでは不味いわ、今のままでは本当に破談になりかねないわね。

 

「私が「そうね、私のせいで失恋させてしまったのよね。私の手伝いをしてもらっているということで今回のお休みを延ばさせるわ。ゆっくり羽を伸ばしてね」...」

「良いのですか。では傷心旅行に出ますよ」

 

どうして傷心旅行なのよ!?私と婚前旅行に行けばいいでしょ!!

 

「ねぇ「もしよろしかったら愚痴相手に私も同行させて貰うわ」...」

「だから「では今から一緒に温泉宿でも行きましょうか」...」

「いいから「いいですね、主人には内緒にしておいてくださいね」..」

「ちょっと「奥様と一緒であれば、すぐに癒えそうですね」...」

「本当に「ええ、私が癒してあげるわ」..」

「..二人とも、いい加減に私の話を聞きなさい!!」

 

私がそう言うと、二人はニヤけた顔を私に向けてきた。も、もしかして揶揄われてた...

 

「何かしら雪乃。貴女が断りたいというから八幡さんを慰めようとしているのに」

「そうですよね、雪乃には帰って貰ってママのんに癒して貰わないと」

「違うでしょ!!八幡の相手は私でしょ!!」

「..その格好で凄まれると怖いんだが」

「大体何よ!!高校卒業してから連絡も寄こさないで!!私がどんな気持ちでいたのか知らないで。携帯を換えたなら教えなさいよ!!」

「それは本当に済まなかった。家族で出かけてた時、小町とふざけてて二人で海に落ちて携帯を壊したんだよ」

「でも幾らでも連絡の取る方法はあったでしょ!!」

「家族が九州に行ったり色々あってだな。ただ雪乃のことが忘れられなくてママのんに相談したら会社に誘われて入れてもらったんだよ。それで雪乃に似合う男になれって言われて認められるまで連絡を取らなかったんだ」

「では母さんはずっと知っていたの」

「ええ、八幡さんのことは知っていたし、雪乃も八幡さんに貰った人形を何時も抱いて寝てたでしょ。だから安心して面白いから言わなかったのよ」

「..なにが面白いのよ」

「八幡さん。雪乃が寝る前にね、貴方に貰った人形に語り掛「う、うるさーーーい!!」...貴女がうるさいわよ」

「...雪乃、今日はすまなかった。..ただ俺は雪乃のことを忘れたことは一日もない。...雪乃、俺と結婚して貰えないか」

「..今日のことはずっと許さないわ、一生隣にいて甘やかせてもらうから...だから私を貰ってください。私を貴方のもとに連れて行ってください」

「ああ、幾らでも甘えさせてやる。じゃあ今すぐ行こうか」

「え!?ちょ、ちょっと待って!!何処に行くの?せめて着替えに帰らせて」

「ママのん、これから雪乃を預かりますから」

「八幡さん、雪乃をよろしくお願いします」

 

私はそのまま手を引かれてホテルを出ていた。都築が車で待っていて私の格好を見て驚いた顔をして横を向いたのだけれど、今にも吹き出しそうになっているわ。

私達が車に乗り込むと行先も行っていないのに車は走り出していた。

 

「今日は最初から温泉宿に行く予定だったんだよ」

「..それは私と二人で?」

「もし雪乃に断られたら一人だったけどな。トランクに俺と雪乃の荷物も入れてくれてるんだ」

「..もしかして母さんがやってくれたの」

「ああ、ママのんが雪乃を連れてってくれって言ってな」

 

八幡と私はずっと話していた。今までのこと、母さんとのこと、そしてこれから日本に帰ってきたら二人で暮らしていくことを約束してくれた。

 

私達は温泉宿に入って行って部屋に案内されていた。女将は私の格好を見ると怪訝な顔をしたけれどすぐに取り繕っていたわ。

私は部屋に入ると服を脱ぎ捨てていた。思わず八幡の前で脱いでしまったけれど、何時までもこんな格好していられないわ。八幡は見ないようにしてくれてるのだけれど、たまにチラチラ見ているわね//

でも今日の夜、その、は、肌を合わせるのね//後で私の全てを見せてあげるから今はお預けよ//

 

私は恥ずかしさもあって、すぐ浴衣に着替えると替えの下着を出す為にトランクを開け、母さんが用意してくれた物を確認したのだけれどやられたわ。そこには下着も用意してくれてたのだけれど広げてみると、これってOバックじゃない//こんなの下着の意味がないわ。他には胸もパンティもシースルーのベビードールとか大事なところが真珠だけになってるTバックしかないわ。こ、こんなの履けるわけないじゃない//

でも八幡は喜んでくれるかしら//替えがこれしかないのだからしょうがないわね//私は八幡に見られないようにOバックを隠して二人で温泉に向かったわ。

二人別れて温泉に入ったのだけど寂しいわね。恥ずかしくても部屋の露天風呂に入るべきだったかしら。私は身体を洗い、余り浸からずにお風呂を出ると既に八幡が待っていてくれたわ。八幡も私と一緒で二人でいたかったのかしら。

 

「早いのね」

「雪乃を待つのが嬉しくてな。でも雪乃も早くないか」

「..察しなさいよ//」

「俺と一緒でよかったよ//」

「「..//」」

 

温泉を上がった後、私はずっと八幡にくっ付いていた。高校の頃の私では考えられなかったけれど、今は八幡にくっ付いていると凄く落ち着けるわね、このまま二人でずっとこうして居たいわ。

でもお尻の感覚に慣れないわね、早く脱がせてくれないかしら。たまに浴衣がはだけてしまうけれど、ラッキースケベでは見せれないわ。

 

私達はその後、夕飯を頂き部屋に戻ると布団が既に敷いてあり、私は布団の上で八幡に甘えさせてもらったわ。八幡はずっと私の頭を撫でてくれている、私は八幡に抱きつきながら話をしていた。今までの寂しさを少しでも補いたかったから。

まだ寝る時間にはかなり早いのだけれど、私は早く抱いて欲しくて、でもそう言えなかったので、早く布団に入りたいと、お願いして二人で用意をしていると、スマホからメールを知らせる音が鳴りだしたわ。遅れて八幡にも何か届いたようね。

 

「何なのかしら...こ、これは」

 

そのメールは母さんからで動画へのURLが貼ってあり、それをタップすると私と八幡の見合いの席が映し出されていた。

メールには父さんと姉さんが大爆笑していると書いてあり、その写真も添付されているわ。父さんはソファーで仰け反ってお腹を抱えていて、姉さんは四つん這いになって床を叩いていた。この動画を結婚式にも使用するとも書いてある...

 

八幡の方は小町さんから来たらしく、御両親がびっくりしてて私の格好にドン引きしていると書いてあった...

 

「は、八幡。これはどういうことかしら」

「ママのんが撮っていたんだろ、そういえばスマホを鞄に立てかけてたな」

「..私は結婚式しないわ。八幡も海外から帰ってこなくていいの、私が付いて行くから」

「ママのんが許してくれないだろ。今更海外勤務延ばせないだろうし」

「いいのよ、だいたい母さんは何でこんなことしてるのよ」

「だが俺と雪乃の仲を取り持ってくれたのはママのんだぞ」

「そ、それはそうだけれど...」

「この件は帰った時に話そう。でも可愛いかったな、ゴスロリゆきのん...これからはいろんな格好をしてくれないか//」

「は、恥ずかしいわ//」

「俺だけなら良いだろ」

「..貴方が望むならどんな格好でも//...私の全てを貰ってね//」

「ああ、俺はこれからずっと一緒に居るから...愛してる、雪乃//」

「私も愛してるわ、八幡//」

 

その日、お互いの8年間の空白を埋めるかのように私達は何時までも愛し合い続けた。

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「..母さんがこんなことしてくれるわけないわ」

「雪乃殿...母上殿のこと勘違いされてないか」

「良いのよ材木座さん。私が雪乃に言わないといけないことよ」

「母さん...」

「陽乃とは最近、話すことが多いので分かったのだけど、...いいえ、分かっていたけれど貴女が聞かないからそのままにしていた私が悪かったのね。

雪乃は私が言った言葉を少し聞くだけで理解してしまうでしょ。でもね、最後まで聞かないと分からないことも有るのよ。雪乃は私が話している最中でも遮ってきて部屋に籠ってしまうでしょ。だから今日は最後まで聞きなさい」

「一人暮らしをあんなに反対して、私が高校を卒業したら見合いをさせるって」

 

「一人暮らしは当たり前です。女性一人で何があるか分からないわ、子供を心配しない親なんていないのよ。

後、お見合いについては雪乃には友達がいなかったでしょ。女性でも男性でも良いので雪乃を支えてくれる人がいて欲しかったの。

小学校までは隼人君が居るので良いと思っていたけど、あんなことが有ったから。でも貴女はそれ以降一人だったわ、貴女を支えてくれる、何でも言い合えるお友達が居てくれれば違ったでしょうけど、早く打ち解けれる相手を見つけて上げたかったの。それで相手を紹介しやすいお見合いをさせようとしたのが私の誤りね」

「....」

「でも高校二年生になってから由比ヶ浜さんがお友達になってくれて、今ではこんなに沢山のお友達が周りに居てくれて、私も嬉しくて皆さんと話したかったから今回の旅行を計画したのよ。

だからもう無理にお見合いをさせるつもりはないわ。もちろん仕事柄、陽乃と雪乃にお見合いの話が来る事はあるの。でも貴女達が嫌なら強制するつもりはありません」

「母さん..うぅ」

「...雪乃には好きな人が出来たのでしょ。これからは私にも彼とのこと教えてね。..でもそうね、一つだけ命令させてもらおうかしら」

「な、何を...」

「雪乃。八幡さんを必ず手に入れなさい。陽乃やお友達が相手だからって遠慮しては駄目よ」

「あ、ありがとう母さん!!」

「母さん。私は別に八幡君のことは...」

「後悔するわよ、陽乃。あなた八幡さん以外に素を見せれる男性って居ないのでしょ。今後一生そういった方は現れないかもしれないわよ。大体、大学三年生にもなって未だに男性とお付き合いしたことないとはどういうことですか、雪乃はすでに告白してキスもしているというのに遠慮していては置いて行かれるわよ」

「え!?雪乃ちゃん...そうなの」

「ええ、いくら姉さんでも八幡だけは譲らないわ...でもどうして告白のこととか母さんが知っているのかしら」

「ごめんなさい雪乃さん。小町が喋っちゃいました」

「..逆に良かったわ、これで母さんの前でも遠慮しなくていいのね」

「そうよ、遠慮していると出し抜かれるわよ。バスの中で雪乃が寝ている間に横でキスしているのだから」

「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」

「は、八幡//うちらのこと、お母さんに見られてたみたいだね//」

「..俺、そろそろ寝させてもらいますね」

 

そう言って八幡はソファーから立ち上がろうとしたのだけれど、隣に座っていた姉さんに腕を固められていて動けないようね。

 

「八幡君、...私、君の前だと段々取り繕うことが出来なくなっているの。でも嬉しいんだ、八幡君には本当の私を見て欲しいから。...私は八幡君が好きだよ」

「..陽乃//」

 

そう言うと姉さんはソファーに座っている八幡の上に乗り対面座位の形になるように腰掛けていたわ。

 

「八幡君、私を選んでくれるんだよね」

「陽乃、八幡から離れろ」

「静ちゃん。これだけは、いくら恩師でも従えないよ」

「先生、私はPTA役員ですよ」

「..分かってます」

 

母さんがそういっている間に姉さんが八幡にキスしていたわ。八幡も無防備すぎるわね。

 

「後、八幡さんには釘を刺しておきます。告白して頂いた方からお相手を選んでください。もし他に好きな人がいるならその方でも構いません。ただもし誰も選ばずに逃げるようなら、..小町さんを....」

「お兄ちゃん助けて!!小町が売られちゃう!!」

 

母さんと小町さんが三文芝居を始めたわ、八幡も呆れているわね。多分、小町さんが母さんに言わせたのね。

 

「ではそろそろ私達は部屋に帰らせてもらいます。先生、私は自分が見たことしか咎めません。羽目を外しすぎないように先生が見てあげてください」

「ありがとうございます!!」

「ママのん!?」

「...義輝くん、部屋にお話ししに行こっか」

「真奈殿//」

「比企谷君達みたいなことしないでね」

「材木座!?真鶴!?」

「真奈さん、材木座さん。小町も行って良いですか」

「小町!?頼むから居てくれ!!」

「ごめん、お兄ちゃん。小町お兄ちゃんが好きだよ。でもあくまでも家族だから..」

 

小町さんがそう言い母さん達が全員リビングから出ていくと異常なほどの緊張感が漂いだしたけど、そんな空気の中、姉さんを押し退けて先生が話し出したわ。

 

「八幡、クリスマス前にドライブ行ったときから、その..駄目だと分かっていながら八幡を一人の男性として見てしまっていたんだ。そして部室で私を甘えさせてくれて、呼び捨てで呼んでくれてから八幡の事が頭から離れないんだ。私の事を教師でなく一人の女性として見て欲しい。八幡、私は貴方が好きです」

 

そういって先生は八幡にキスしていたわ。...でも長いわね..

 

「八幡!!静ちゃん!!何でディープキスしてるの!?」

 

私は後ろから見ていたので、よく分からなかったけれど、そんなことしてたのね..

 

「どうだ八幡。私を選んでくれたら、もっと楽しいことすぐに教えてあげれるぞ」

「し、静//」

「私だってそれぐらい!!」

「や、やめっ!?」ブチュッ

 

そういって姉さんが八幡の顔を自分の方を向かせディープキスしだしたわ。

 

「あ、あーしもそれぐらい出来るし!!」

「じゃあ、うちは八幡の体にキスマーク付ける!!」

「い、いい加減n」ブッチュー

「わ、私も八君の体に」

「それある!!早く服を脱がせようよ!!」

「うん!!八幡君にいっぱいキスしてあげるから」

「ま、まて!?」レロレロ

 

みんなが八幡にキスしだしたのだけれど、なぜか私は一歩引いてその光景を唖然と眺めていたわ。

 

「ね、ねぇゆきのんは行かないの...」

「私もしたいわ、でも八幡が望まないことはしたくないのよ。..結衣はいいの?」

「うん。あたしもしたい...初めてのキスは勢いでしっちゃったけど、でもこれからはヒッキーとちゃんとしたいし」

「そうね、私もキスマークを付けたときは周りの空気と勢いでしてしまったけれど、八幡が嫌がることはしたくないわ」

 

「お、お前ら、いい加減にしろ!!」

 

私と結衣が話していると八幡が今まで聞いたことないような大声を出していたので私も結衣も驚いてしまったわ。

 

「な、何やってんだよ、こんなこと勢いでやることじゃないだろ!!..どけよ!!」

 

そういって八幡はみんなを退かせると乱れた服を直して立ち上がり、私と結衣の方に歩いてきたわ。

 

「..二人は良かったのか」

「八幡が嫌がることはしたくないのよ」

「うん。..あたしもしたかったよ、でも無理矢理はヤダから」

「でもごめんなさい、見ていただけで止めることが出来なくて..」

「あたしもごめん。見てるだけなんてやってる皆と一緒だよね..」

「雪乃、結衣。ありがとうな。...良かったら俺とキスしてくれないか」

「「はい(うん)//」」

 

私達はみんなが呆然と見守るなか、八幡が私と結衣の頭に手を回し二人同時にキスしてくれたわ//八幡の唇は私と結衣を、結衣の唇は八幡と私を、私の唇は八幡と結衣を、それぞれがお互いを感じながらの八幡からのキスで、私は今、これまでにない高揚感を覚えている。

私は三人で抱き合うように腕を二人の背に回していくと結衣も同じようで私達の背に手を回して来たわ。

どれぐらいキスしているのだろう、私は感覚が麻痺するぐらい夢中になっていた。

 

八幡が離れると私達三人は顔を真っ赤にしながらお互い見つめあっていたわ。

 

「ありがとうな//」

「ううん、あたしもありがと。ヒッキー、ゆきのん。..へへ、ゆきのんともしちゃったね//」

「私こそありがとう//八幡、結衣。凄く嬉しいわ//三人が一つになれた気がしたのよ//今、私を離さないで。浮遊感が凄くて自分一人じゃ立てないの//」

「あたしも嬉しいよ//なんだか今、凄く満たされてるの//初めてのキスの時より嬉しい気持ちが溢れ出て来て止まらないの//」

「俺もここまで満たされるとは思わなかった//」

 

私達三人は抱き合いながらお互いを見つめ続けていると姉さん達が私達の方に来たわ。

 

「「「「「「「ごめんなさい」」」」」」」

「....俺の方こそ怒鳴ってすみません、でもこういう事はちゃんとしたいんです」

「そうだよね、八幡君。本当にごめんなさい...もしかして私達はもう駄目なの...」

「...雪乃と結衣に俺からキスしておいて申し訳ないが、まだ決めれてません」

「良いのよ、私は貴方の答えが出るまで待っているわ」

「うん、あたしも待ってるから」

「そう言ってくれてありがとうな」

「なあ八幡。いつまで抱き合ってるんだ」

 

私と結衣は先生にそう言われて腰に回していた腕の力を緩めて離れようとすると八幡が私と結衣の手を握ってくれたわ。

 

「今は二人と居たい。駄目か」

 

八幡は聞いてきた先生ではなく私と結衣に話しかけて軽く握ってくれた手をしっかりと握り直してくれた。

 

「私で良ければこのまま一緒にいましょ」

「あたしも良いよ。一緒に居たいし」

「ありがとうな。雪乃、紅茶を入れてくれないか」

「はい!!」

「じゃあ、あたしはお菓子用意するね」

「頼む、結衣」

「うん!!」

 

私達が用意をしている間、八幡は私達を凄く優しい顔で眺めてくれていて、私はいつも以上に丁寧に紅茶を用意していたわ。

 

「今日は諦めよ、私達がやっちゃったんだから。ごめんね八幡君」

「そうだな、すまなかった」

「八君、ごめんなさい」

「あーしもごめん」

「うちもやり過ぎた、ごめんなさい」

「八幡、ごめん」

「八幡君、私もごめんなさい」

「皆、気にしないでくれ。今は雪乃と結衣の二人と過ごしたいだけだから」

 

姉さん達はそれぞれ謝ってリビングを出ていったわね。

私と結衣が用意をし終えると八幡から手を繋いでくれて三人でソファーに腰かけていたわ。

 

今はリビングに私達三人しかいないので、私は最近部室でも過ごすことがなかった三人での時間を懐かしく感じ、でも進んだ関係になれたことを嬉しく感じながら遅くまで過ごしていたわ。

 



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「けーちゃんの冒険」

どうして私はこんな格好で保育園児の前に立っているのかしら....

 

これというのも二週間前、先生といろはさんが部室に来たのが始まりね。

 

*********************************

 

「邪魔するぞ」

「先生、ノックをしてください」

「お邪魔しまーす」

 

私達が勉強会をしていると、先生がノックもせず入ってきたわ。

私と先生が何時ものやり取りをしていると、一色さんが先生に続いて部室に入ってきたのだけれど、いつもと違い何か依頼をしたいということだったので、私と結衣、八幡は勉強会から席を外して廊下に出たわ。

 

「実はですね、保育園の方から演劇部に公演依頼が来たんですよ」

「ええ、でもそれがどうかしたのかしら」

「あ、あのな。雪ノ下...奉仕部で演劇をしてみないか」

「...はい?」

 

先生は何を言っているのかしら。私達に演劇何て出来るわけないわ、大体演劇部への依頼なのだから私達は関係ないわよね。

 

「先生何言ってんすか」

「うん、ちゃんと説明してよ、いろはちゃんも」

「保育園から演劇部に公演依頼が来たんですよ。それは良いんですけど演劇部はその日、他の公演があるらしくて。...でも先生が確認もせずに受けちゃったんですよね。それで今日、生徒会の方に保育園から確認が来たんですが、私もその時初めて知りまして...」

「すまん、受けた後忙しくて忘れててな。今日一色に聞かれて思い出したんだ」

「理由は分かりました。でも奉仕部の理念から外れると思いますのでお断りします」

「うん、あたしたちに出来るわけないじゃん。お芝居なんて」

「そうだな、俺達で何が出来るんだってところだな」

「ゆ、ゆきのしたぁー、そう言わずに頼む!!ざ、材木座ならどうだ、アイツにラノベを書かせて皆で演じる!!材木座のレベルアップにも繋がるだろうし、奉仕部の学外活動にもなる!!」

「..はぁ、演劇と言うことは、三人ではとても無理です。...皆に相談してみます」

 

私達は部室に戻り、勉強会をしている皆に先ほどの話を伝えると、なぜか優美子さん達は乗り気になっているわね。

 

「面白そうじゃん、あーしらで演劇って」

「そうだね、私とハチのラブコメを演じるのが良いと思いまーす!!」ハイハーイ

 

姫菜さんはそういうと、手を大きく上げだしたわ。

 

「それなら、うちと八幡のイチャイチャチュッチュ物語が良いでーす!!」ハイハーイ

 

南さんも姫菜さんと同様、手を大きく上げだしたわね。

 

「ハァ...貴女達。保育園児に何を見せようとしているのかしら」

 

私は痛くなってきたこめかみを押さえていたわ。この二人は何を言っているのかしら。それであれば私と八幡の新婚物語を見せた方が子供たちの為にも良いわよ。

 

「その日って、京華の保育園でお遊戯会があるんだけど、もしかしてそれに出るんじゃないよな。〇〇保育園っていうんだけど」

「そこですよ、沙希先輩」

「どっちにしろ私は無理だね、保護者としていくから。でも何かするなら手伝いはさせてもらうよ」

「..保育園児相手であるか。ラブコメではなく童話になるのだな」

「私も裏方なら手伝うよ、雪ノ下さん」

「皆、頼む!!私を助けると思って」

「私からもお願いします。先生が誤って受けたとはいえ、今から断りに行くのは相手にとっても、ご迷惑になりますから」

「..分かりました。前向きに検討してみましょう。材木座君、お願いできるかしら」

「..配役等は我が自由に考えていいのですか」

「お任せするわ、私達もしたことがないのだから」

 

私はそう答えたのだけれど、それが誤りであったなんて、この時は思いもしなかったわ。

 

そして今、私達は保育園児の前で、コスプレをして演劇を始めていた...

 

**************************

 

(ここから材木座の童話による演劇。ナレーション:真鶴 真奈)

 

昔、むかーし、ある森の山奥にそれはそれは可愛らしい女の子が動物たちと仲良く暮らしていました。

 

「けーちゃん、起きるニャ」

「起きるんだワン」

「早く起きないとご飯無くなるでチュ」

「...おはよう。ゆきニャン、ゆいワン、いろはチュ」

「「「おはよう(ニャ)(ワン)(でチュ)」」」

 

けーちゃんは元気よく挨拶すると猫のゆきニャン、犬のゆいワン、鼠のいろはチュも挨拶を返します。今日も元気に森の中で3匹と遊んでいると、けーちゃんは山を越えた遠くの方にお城を見つけました。

 

「ねえ、あのお城ってなあに?」

「あれは怖い人が住むって言われてるニャ」

「うん、あたし達が見つかると食べられちゃうんだワン」

「うん、怖い人って聞いてるでチュ」

「会った事あるの?」

「「「ない(ニャ)(ワン)(でチュ)」」」

「駄目だよ。知らないのにそんなこと言っちゃ」

 

けーちゃんは心優しく動物たちにお話ししてます。噂だけで悪く言うのは駄目ですね。

 

「行ってみたいな。あそこまで」

「けーちゃんは無理でチュ」

「うん、小さい子には難しいワン」

「そうだニャ、けーちゃんには遠いニャ」

「でも、行ってみたい...」

 

けーちゃんはあのお城まで行ってみたいと思っていました。でも遠くの方に見えてるけど道何てありません。お城に行くには山を越えて行くしかありません。

 

次の日、けーちゃんは3匹の動物たちより早く起きました。どうしてもお城に行ってみたかったからです。

 

「うん、お日様の方に歩いていけば良いんだよね」

 

けーちゃんは元気よく家を飛び出すと、お日様の方に歩いて行きました。しばらく歩いて行くと、けーちゃんは騎士様に出会いました。

 

「我は王国の騎士、ヨッシーなるぞ」

「わたしは、けーちゃん。あっちにあるお城に行くの」

「あちらにお城なんてあったか?我の知らぬ城が在るのだな...気を付けて行くのであるぞ」

「ありがとう、騎士様」

 

けーちゃんは騎士様と別れ、またお日様に向かって歩き出しました。

 

「あれ?あっちの山の方に向かっていたのに、お日様がこっちにある」

 

けーちゃんは気づいていません。お日様は時間が経つと動くってことを。そして時間ばかりが過ぎていき夕方になってしまいました。

森の中は既に暗くなっています。

 

「うぅ、ゆきニャーン、ゆいワーン、いろはチュー」

 

けーちゃんは森の中で迷子になってしまいました。けーちゃんが泣いていると、後ろの茂みから物音が聞こえてきました。

 

「だ、だれ!?」

「何で泣いてるクマー」

「女の子が泣いてるコン」

「可愛い女の子だきー」

「あなたたちはだあれ?私はけーちゃん」

「私は姫菜クマー」

「あーしは優美コン」

「うちは、みなっきー」

 

けーちゃんに話しかけてきたのは、熊の姫菜クマさん。狐の優美コンさん。お猿のみなっきーさんでした。

 

「家がどっちか分からないの」

「あーしたちもけーちゃんの家、知らないコン」

「家に来るといいクマー」

「そうだきー。今日は暗いから、うちらの家に来るっきー」

「良いの?」

「「「いい(っクマー)(コン)(っきー)」」」

 

けーちゃんは3匹の動物と仲良くなり着いて行きました。3匹のお家に着くころ、けーちゃんを呼ぶ声が聞こえてきました。

 

「「「けーちゃーん。どこにいる(ニャー)(ワーン)(でチュかー)」」」

「あ!?ゆきにゃん!!ゆいワン!!いろはチュ!!」

「「「いた(ニャ)(ワン)(でチュ)!!」」」

「うわーん!!」

「会えて良かったニャー」

「うん、良かったワン」

「けーちゃん、無事でよかったでチュ」

「けーちゃん、よかったクマー」

「でも今日は遅いから泊ってくコン」

「そうだきー」

 

夜遅いので、けーちゃん達は泊めてもらうことにしました。けーちゃんがどうして一人で森の中を歩いていたのか聞いた動物たちは、翌朝みんなでお城に向かうことにしました。

 

「こっちだニャ」

「ゆきにゃん、反対だワン」

「そうでチュ、ゆきニャンは前を歩いちゃ駄目でチュ」

 

ゆきニャンは方向音痴なので、案内出来ないのですが、ゆきニャンは自分が方向音痴と認めないので、何時もみんなを振り回していました。自分の苦手なことを認めるのも大事なことですね。

 

みんなで歩いて行き森を抜けると、大きなお城が目の前に有りました。でも人がいるようにはみえません。けーちゃんは大きな声で呼んでいました。

 

「だれかいませんかー!!」

 

暫くすると扉が開きました。そこには目の淀んだ男の人が立っていました。でも噂とは違いとても優しそうな人でした。

 

「はい。..誰?」

「わたしはけーちゃん!!」

「俺ははちだ」

「はち、..はーちゃん!!」

「私達は遠くに見えていたお城に誰が住んでいるのか見に来たニャ」

「ああ、そういうことか。おもてなししたいが俺一人なんだ」

「お城なのに一人で住んでいるのかワン?」

「俺の目は呪われていてな。皆出て行ったよ」

「このお城に一人で住んでるんでチュか」

「一人の方が良いからな」

「こんな大きなお城で一人って凄いクマー」

「でもお掃除とか大変だコン」

「うん、お庭も広くて大変きー」

「じゃあ、けーちゃんが一緒に住む!!」

「嬉しいけど駄目だよ。けーちゃんにも呪いが掛かっちゃうかもしれないから」

「でも、一人で寂しくないの?」

「..もう慣れたから」

「だめ!!はーちゃんと一緒に住むの!!」

 

はーちゃんも心の中では寂しいと思っていました。でも今まで聞いてくれる人がいませんでしたので、何時しか人を遠ざけるようになっていたのです。

けーちゃんが言ってくれた言葉に、はーちゃんは嬉しくて泣いてしまいました。

 

「寂しかったんだね、これからはけーちゃんがずっと一緒に居るよ」

「ありがとう、けーちゃん」

 

けーちゃんがはーちゃんの頭を撫でていると、どんよりした雲が城を覆いだし辺りは暗くなってしまいました。

 

「私の呪いに背くのは誰だ」

 

声の方を見ると、そこには魔女が立っていました。とても恐ろしい魔女です。

格好も似あってます。さすがに歳をとっているだけありますね。(真奈のアドリブ)

 

「..私の王子に手を出すとはな」マナヅル ユルサン

 

魔女は何かブツブツ言っていますが魔法でも唱えるのでしょうか。独り身で歳を重ねて魔法使いになっちゃったんですね。わ、私の方を睨んできました!!私は天の声です!!ここには居ないのです!!(真奈のアドリブ)

 

「..はーちゃん王子は私と結婚するのだ」

「駄目だよ、はーちゃんは私達と一緒に住むの」

「ほう、なら私の魔法を食らうが良い」

 

そう言って、魔法使いは手を天にかざすと、雷が落ちてきました。

 

「「「「「「「キャー!!」」」」」」」

 

雷はけーちゃんと動物たちの真ん中に落ち、皆は吹き飛ばされてしました。

 

「や、止めろ!!けーちゃん達は関係ないだろ」

「では私と結婚するのか」

「..分かった。だからけーちゃん達に手を出すな」

「駄目だよ、はーちゃん!!」

「いいんだ、ありがとうな。けーちゃん」

 

はーちゃんはけーちゃん達を守るため、魔女のいうことを聞くことにしました。

ズルいです、この魔女は。結婚できないからって脅すなんて。ま、また私の方を睨んできました。魔女には私の姿が見えてるんですね。や、ヤバいです、この後、皆さんで魔女から守ってください(真奈のアドリブ)

はーちゃんは魔女のほうに近寄っていきます。魔女ははーちゃんとけーちゃんが離れたことを確認すると、もう一度、魔法を唱えだしました。

 

「王子に手を出した罰だ。止めをさしてやろう」

「や、止めろー!!」

 

はーちゃんは叫んで止めようとしましたが、魔女の魔法は唱え終わっていて、けーちゃん達に向かって雷が落ちていきました。

 

「ああ..」

 

はーちゃんはその場に膝をついて呆然と見守っていました。雷がけーちゃん達に当たるかと思った時、突如騎士が現れ雷を剣で防いでくれました。

 

「フシュー、..中々の威力であるが我、石の剣には効かぬな」

 

あ、あれは王国の騎士、ヨッシー様です!!ヨッシー様が剣を構え直し魔女に向かっていきます。魔女が魔法を唱える前にものすごい速さで走っていき、魔女に剣を突き刺しました。

 

「あ、ああ、結婚したかった...」バサ

 

騎士ヨッシー様のおかげで魔女を倒すことが出来ました!!そしてみんなが立ち上がると、はーちゃんの顔にはいつの間にか眼鏡が掛けられていて、イケメン眼鏡王子に変身していました。

 

「我は王国の騎士ヨッシー。王子をお守りするため、王国より来ました」

「ありがとうヨッシー。けーちゃん達は無事か」

「大丈夫だよ。はーちゃん、これで一緒に住めるんだね」

「けーちゃん。俺と一緒に住んでください」

「はい!!」

「では私達もここに住むニャ」

「そうだワン、あたし達も仲良く過ごすんだワン」

「良いですね、皆一緒でチュ」

「私も住むクマー」

「あーしも一緒だコン」

「うちもここに住むっきー」

 

けーちゃん、はーちゃん、ヨッシー、そして動物達はこの日からお城で一緒に過ごしました。

けーちゃんは大きくなると、はーちゃんと結婚し何時までも皆と仲良く過ごしましたとさ。

 

(ここまでが材木座の童話による演技)

 

**************************

 

パチパチパチパチ

 

私達の演劇が終わって最後、舞台に並んで挨拶をしていると、園児や保護者の方が私達に拍手をしてくれているのだけれど、私はある一点に釘付けになってしまったわ。

そこには姉さんと母さん、そして父さんまでもが私達に拍手をしているのだから。..姉さんについてはニヤニヤしながら拍手しているのだけれど。それに横には都築が大きなカメラを三脚に付けて撮影しているわ。

 

「皆さん、良かったですよ」

「ありがとう、小町さん。手伝ってもらって。貴女達もありがとうね」

「嬉しいです、雪ノ下先輩達のお手伝い出来て」

「私も楽しかったです。お疲れ様でした」

「良かったよ。雪ノ下さん、真鶴さん」

「雪ノ下さん、真奈、面白かった」

「ありがとう、手伝って貰って」

「ぷぷ、皆の格好ウケるし。でも良かったよ」

「お疲れさま。私も楽しかったよ」

「ありがとう折本さん、仲町さん」

 

小町さんと小町さんの友達、J組のクラスメイト達、そして折本さんと仲町さんも裏方を手伝ってくれて助かったわ。

演劇部から色々借りたのだけれど、どうしても人手が足りずに困っていたら、小町さん達が名乗り出てくれて、クラスメイトも真鶴さんがクラスで声を掛けてくれ、私も一緒にお願いしたら快く引き受けてくれたわ。折本さん達にも声をかけたら学校まで遠いのに来てくれて手伝ってくれたわ。

 

「真鶴。..後で話がある」

 

私達が控え室の教室に行くと、先生が怒っているわ。そういえば真鶴さんアドリブでよくあんな事が言えたわね。

 

「こ、今回は先生のせいでこうなってんですよ。ちょっとぐらい良いじゃないですか」

「そうね、私達もこんな格好で辱めを受けているのは先生のせいだわ」

「そうだね、あたしもこんなコスプレするなんて思わなかったし」

「私もこんな格好させられるなんて思いませんでしたよ」

「皆いいじゃん。あーしなんて狐じゃなくて巫女だし」

「うちは嬉しいな、コスプレしてみたかったんだ」

「私も楽しかったよ、こんな格好する機会、なかなかないからね」

「こ、コスプレは八..比企谷と材木座だろ」

 

今回、先生がお金を出してくれると言うことで八幡と材木座君が衣装を選んだのだけれど、完全に二人の趣味ね。

私達には内緒で沙希さんに相談して私達が持っている服を調べてから、ネットで服や小物を買って沙希さんが直していたのだから。

 

先生は黒のロングワンピースを着ていて、三角帽子をかぶって手には杖を持っているわ。先生に似合っているわね。

 

私は尻尾付きの膝上黒色ワンピース、赤いチョーカーに鈴を付けている。八幡にドラ〇もんって言われたのだけど。でも猫耳と猫グローブは良いわね。全て黒色で統一してるので黒猫のようだわ、この小道具は貰えるってことなので、また着てみようかしら。

 

結衣はスポーツブラのようなトップとショートパンツにモコモコした毛が付いていて、お尻には丸い毛玉、犬耳と犬グローブ、レッグウォーマーを着けている。全てピンクで統一しているけれど一番露出が多いわね。

 

いろはさんは、ミ○ーのコスプレね。赤に白色の水玉模様で耳以外とても鼠には見えないのだけれど。でもミニスカートが似合っているわ。頬には黒い髭を書いて貰っているわね。

 

優美子さんは巫女さんの格好だけど赤い袴がミニスカートなのね。白いハイニーソックスを履いていて八幡は絶対領域が大事とか言っていたわ。長さにこだわりがあったようね。後ろには白い尻尾が付いていて狐耳のカチューシャと頭の横に狐のお面をつけていているわ。化粧も赤色でアイラインと髭を描いているのね。

 

南さんはボディラインが強調される長袖のボディコン衣装にパーカーが付いていて被ると猿の目と耳が付いているわ。手にはバナナのおもちゃを持っていて、靴下も白に黄色のラインが入っていてバナナを表しているのね。顔には頬紅を丸く描いていて可愛いわ。

 

姫菜さんはチューブトップとマイクロミニのスカートに黒い毛が付いている。お腹が5cmぐらい空いているので、お臍が見えているわ。パーカーが熊の耳になっていてモコモコのレッグウォーマーと手袋を着けていて可愛いわね。

 

演劇の最中、園児の父親達が私達をカメラで撮って母親に怒られていたわね。男性は何歳になってもコスプレに興味があるのかしら。

八幡も私達の写真を部室で撮ってくれたのだけれど、かなり興奮していたわ。そのまま私を押し倒してくれれば良かったのに。

今度、撮影があるときは自分でコスプレ衣装を買ってみるのも良いかもしれないわね。

 

「けーちゃん、は、はーちゃんに抱っこしてもらいな」

「うん!!」

 

私達の横で京華ちゃんが八幡に抱っこして貰って沙希さんが撮影しているわ。良いわね、あんなに八幡にくっついて抱っこして貰えるなんて。私が羨ましく思っていると、京華ちゃんは八幡の頬にキスしているわ。引き離したいけれど幼児相手にみっともないわね。京華ちゃんが写真を撮り終わり、私に近寄ってきたわ。

 

「ゆきニャン、お写真とって」

「わ、私は雪乃っていうのよ」

「うぅ、ゆきニャンだもん!!」

「そうだよ、ゆきニャン。その子と撮った後、私達とも撮ってよね」

 

私はそう言われ振り返ると、両親と姉さん、カメラを持った都築がニコニコしながら立っていたわ。

 

「こ、これは演劇の為の衣装よ。撮影なんてしないわ」

「ゆきニャン、駄目なの...」グスッ

「け、京華ちゃん、貴女となら撮るわ。どうすれば良いかしら」

「..抱っこ」

 

京華ちゃんは手を広げて来たので、私は京華ちゃんを抱き上げたわ。私も京華ちゃんとなら写真撮影したいから良いのだけれど、沙希さんが撮ってくれている隣でなぜか都築も撮影しているわ...

京華ちゃんと撮り終え、私が降ろすと次に結衣の方に写真を撮りに行ったわね。でもいつの間にか私は両親に両腕を取られているのだけれど...

 

「ゆきニャン、父さんとツーショットを撮ってくれないか」

「父さん、その呼び方は止めて」

「私もゆきニャンと撮らないと。あなた早く撮って貰いなさい」

「..母さんも止めてよ」

「母さんの次は姉さんだよ、ゆきニャン」

「はぁ..分かったわよ、一緒に撮れば良いのでしょ」

 

私は三人に言われるがまま、写真を撮って貰っていたけれど、家族四人で撮ったのは何時以来かしら。

私の両隣には父さんと母さんが、後ろから姉さんが抱きついてきて肩に顔を乗せているわ。私だけ可笑しい格好だけれど、この写真も何時かは思い出になるのよね。

本当はここに八幡が入ってくれると嬉しいけれど、さすがにそれはお願いできないわね。

 

最後に私達は舞台を手伝ってくれた人達も含めて、全員での集合写真を撮っていた。

奉仕部の活動でこんなにも沢山の人達が協力してくれて嬉しかったわ。

 

解散の挨拶の時、私が締め括ることになったのだけれど、嬉しさと終わってしまう寂しさで挨拶の途中、涙ぐんでしまったわ。

でも隣にいた結衣といろはさんが手を繋いでくれ、先生と優美子さん、姫菜さん、南さん、沙希さん、かおりさん、千佳さん、そして真奈さんも私に寄り添ってくれ支えてくれている。私は彼女達に支えて貰いながら最後まで挨拶を言い終えることができたわ。

 

この友達と何時までも一緒にいたい。これからもずっと皆で笑いあっていたい。

でも八幡が誰かを選ぶことで私達の関係は壊れてしまうかもしれないのよね。八幡には私を選んでほしいけれど、それでも皆と離れたくないわ....

 

 



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葉山の暴走

ケガや化学のことは詳しくないので、誤りがあるかもしれません。それでも良かったら読んでみてください。




私は結衣ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行くため、義輝君と一緒にららぽに来ていた。でも二人で出掛けるのはまだ恥ずかしいので、雪乃さんに付いて来てもらうようお願いしたら比企谷君と一緒に付いて来てくれることになった。

 

保育園の演劇の後から私と雪乃さんが名前で呼びあうようになり、クラスではちょっとした騒ぎになったけど私は嬉しかった。

雪乃さんが照れながら私に名前で呼んで良い?って、言ってくれたとき思わず抱きついてしまったけど、雪乃さんも私を抱きしめ返してくれたから。雪乃さんのファンクラブの子達は悔しがってたな。

 

義輝君は何時もコートを着て手袋をしてるけど、今日は雪乃さんや比企谷君からダメ出しを食らったらしく、白いポロシャツにジーンズを履いている。うん、シンプルだけど清楚で良い感じかな、お腹がポッコリ出てるけど私には可愛く見える。私も人の事言えないしね...

 

私達二人が買い物をしているのを二人は少し離れたところを歩いていて、私と義輝君の二人きりにしてくれるようにしていた。私はまだ義輝君のことが好きなのか分からない、でも気にはなっている。この気持ちをハッキリさせたかった。

義輝君の気持ちも知りたい。義輝君は私と話していると顔が真っ赤になったりするけど、女子と話したことが奉仕部以外でほとんどないって言っていたので、誰にでも照れるのか私だから照れてくれているのかよく分からなかった。

後ろを振り返ると比企谷君は眼鏡を掛けてて、雪乃さんは腕に抱きついて手を恋人繋ぎしていた。羨ましいな、私も義輝君と手を繋ぐと雪乃さんみたいにあんなに幸せそうな顔が出来るのかな。

 

「これ可愛いね、義輝君。結衣ちゃんに似合いそう?」

「わ、我には結衣殿のことは分からぬが、ま、真奈殿に、その..に、似合うと思うぞ//」

「え!?う、うん//ありがとう//」

 

まさか、こんなこと言ってくれるなんて思っていなかった。義輝君は照れているのか、横にある小物を手に取って見ている。でも耳も真っ赤で可愛いんだけど。

その後も私と義輝君が結衣ちゃんのプレゼントを選ぶため雑貨屋を見ていると、後ろの方が騒がしくなり怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「この阿婆擦れが!!」

 

私が振り返るとそこには葉山君が何か棒のようなものを振り上げてて雪乃さんに向かって振り下ろそうとしていた!!

 

「雪乃!!」

 

比企谷君はそう言うと雪乃さんを自分の方に引き寄せて抱きしめ、自分の身体で覆っている。そして比企谷君の背中を葉山君が棒で殴っていた。

 

ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!

 

「ヒキタニィ!!どけぇ!!」

「八幡!!私が狙われてるの!!離して!!」

 

比企谷君は殴られながら雪乃さんをずっと庇っていて、義輝君は私が呆然とするなか駆け出していった。

 

ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!

 

「葉山!!俺の女に手を出すな!!」

 

比企谷君がそう叫ぶと、葉山君は怒った顔をより一層紅潮させ棒を振り上げていた。そして今度は比企谷君の頭に向かって振り下ろしていた。

 

「ヒキタニィ!!死ねぇー!!」バキーッ!!

 

今までと違う音がすると比企谷君が掛けていた眼鏡が吹き飛んでいて、比企谷君は雪乃さんに支えられながらも崩れ落ちていく。私も義輝君に遅れて走り出していた。

 

「は、八幡!?い、いやぁーーーー!!」

「葉山あーーー!!」ドーン!!

 

次に雪乃さんを殴ろうとしていた葉山くんを義輝君が体当たりをして吹き飛ばしていて、私は雪乃さんと比企谷君に駆け寄って行った。

 

「八幡!?いやっ、いや!!目を開けてぇ!!いやーーー!!」

「雪乃さん!!しっかりしなさい!!」バチーン!!

 

私は取り乱している雪乃さんの頬を思いっきり平手打ちしていた。

 

「貴女が冷静にならなくてどうするの!!」

「..そ、そうね!!ありがとう!!」

 

雪乃さんは比企谷君の状況を確認していて、いきなり口づけをしだした。いや人工呼吸をしているみたい、もしかして...

 

「心音がしないの!!心臓マッサージを!!」

 

雪乃さんは早口でそう言うと、また人工呼吸をしだした。私は経験が無いけど比企谷君の胸に両手を置いて見よう見まねで心臓マッサージをしだした。でもすぐに材木座君が来てくれ、私に代わって心臓マッサージをしてくれた。

 

「てめぇ!!何、雪乃ちゃんを叩いてるんだ!!」

 

私が声のした方に振り返ると、葉山君が私に向かってきていて、私は右腕を蹴られ吹き飛ばされ壁に叩きつけられていた。

 

「ま、真奈!?葉山ぁ!!許さぬぞ!!」

 

え!?どうして私が蹴られてるの?私は起き上がるために右手を地面についたけど、痛みがひどい。

義輝君は叫んで葉山君に向かっていった。義輝君が向かっていった時、葉山君は義輝君の頭を殴ったけれど、義輝君は止まることなく、葉山君を押し倒して馬乗りしている。

私は何とか起き上がったけど蹴られた右腕があげれない。でも比企谷君の方に近づいて行き、左手一本で心臓マッサージをしようとしたところ、近くで見ていた人が代わってくれていた。

 

今になって右腕がひどく痛み出してきたけど、今は私の事より比企谷君が心配だ。

 

私は呆然と惨状を見守っていた。義輝君は頭から血を流しながら葉山君の上に馬乗りになって顔面を殴っていて近くの人が取り押さえるのを手伝ってくれている。

雪乃さんは人工呼吸をずっとしていて、悲痛な表情をしていても止めることはなく、見知らぬ人がAEDを持ってきてくれて、比企谷君の服を脱がせ蘇生措置をするまで、誰にも代わらず人工呼吸をしていた。

AEDを作動させると蘇生措置はうまくいったみたいで周りの人達は安堵していたけど、雪乃さんは涙を流し悲痛な表情は消えることはなかった。

比企谷君の飛ばされた眼鏡が寂しげに雪乃さんを見つめていた。

 

私は義輝君が来てくれて落ち着くと血の気が引いて、目の前が真っ暗になり義輝君にもたれるように崩れ落ち気を失っていた。

 

....

...

..

.

 

俺が目を開けると、見たことがない天井が目に入った。フヒ、言ってみたい言葉が言えるじゃないか。俺は天井を見ながら、つぶやいていた。

 

「シラ.ナィ.....」

 

こ、言葉が上手く出ない。というより口がうまく動いてくれない...何があったんだ。俺は身体を動かそうとしたが、どうも上手く動かせないようだ。仕方がないので目を左右に向けると、そこには女性が二人で俺に背を向けて何かをしていた。

二人の横顔が見え、見覚えのある顔だったので俺は声に出して呼んでいた。

 

「..ュキノ..ユィ」

 

俺の言葉が聞こえたのか、二人は俺の方を振り返ってくれたが、雪乃?結衣?綺麗な女性達が俺の方に駆け寄ってきた。

 

「八幡!?八幡!八幡!!」

「ヒッキー?起きたの!?ヒッキー!!」

 

そう言って雪乃と結衣に似た女性二人が抱きついてきた。雪乃に似た女性は俺の名前を呼ぶと俺の左頬に自分の顔を擦り付けるようにして泣いていた。もう一人の女性も俺の事をヒッキーと呼んでいた。ヒッキーと呼ぶのは結衣だけだよな。だが俺の知っている結衣ではなく、大人びているように見えていた。髪も落ち着いた色に染め上げている。

 

「はぢまんん!!ばちまん!!ごぉべんなざいぃ!!」ウゥ

「ビッギー!!ビィッギィー!!」ウワァー

 

俺は二人の頭を撫でたかったが腕が上がらず、結衣は俺の右側に移動して顔に頬を合わせながら泣きつづけ俺を抱きしめてきた。

 

二人が落ち着くと病院の先生を呼んでくれ、診察が終わると雪乃が俺の右手を取り、結衣が左手を取って話し出した。

 

「ヒッキー。あたし達、変わってるよね。でもあたし達の事、分かってくれたんだね」

「ユイ、ユキノ..ナニガ」

「ごめんなさい。ごめんさい。ごめんなさい」

「ゆきのんが悪いんじゃないんだから...」

 

そう言ってまた雪乃は泣き出してしまった。でも二人とも俺の知っている容姿から綺麗なお姉さんに変わっているんだが。

 

「...ヒッキー、今からショックなこと言うけど良い?」

「..アァ」

「ヒッキーが倒れてから5年近く経ってるんだよ。あたし達はもうすぐ大学を卒業するの」

 

え!?5年!?...何があったんだ。俺は記憶を整理しようとしたが、5年と言われたことに思考が捕らわれ、何も思い出すことが出来なかった。

なんとか雪乃も泣き止み、雪乃が話し出した。

 

「八幡、痛いところない?話しても大丈夫?」

「アア」

「ヒッキー、何があったか覚えてる?」

「..イヤ」

「羽虫が...葉山のことね。羽虫がヒッキーの頭を殴ってヒッキー、心臓が止まっちゃったの。それでゆきのんと真奈っち、中二と後周りにいた人が助けれくれたんだよ」

 

そうだ。俺と雪乃、材木座、真鶴で買い物に行って葉山に襲われたんだ。でも羽虫って..

 

「ユキノハ...」

「私は貴方のおかげで大丈夫だったわ。ありがとう八幡」うぅ

「うん、ゆきのんはヒッキーが守ってくれたんで掠り傷一つなかったよ。やっぱりヒッキー優しいね、自分の事よりゆきのんのこと心配して」

 

俺より雪乃の方が大事だろ、もし体に傷でも残ったら雪乃の心にも傷を残すことになる。でも良かった、雪乃のことを守れて。

 

「でも私のせいで八幡は5年間も..」

「ヒッキー...ヒッキーは事件の後、5年近くずっと寝てたんだよ」

「八幡、ごめんなさい。私のせいでこんなことになってしまって」

「ゆきのんのせいじゃないよ。ヒッキーも分かってくれてるよ」

「アア..」

「でも私が貴方を買い物に付き合わせなければ」うぅ

「羽虫が悪いんだし」

 

雪乃は全く悪くない、俺は葉山がおかしくなっていることに気づいていたんだ。俺がもっとアイツに注意していれば、防げたかもしれない。

でもそうなのか、あれから5年も経ってるんだよな。皆はどうなったんだ。

 

「..私のせいで真奈の腕も折られたの」

「ゆきのんのせいじゃないけど、真奈っちは羽虫に蹴られてね、右腕が折れちゃったの」

 

え?なんで真鶴が蹴られてんだよ。何があったんだ。

 

「ド、ドウシテ...」

「ヒッキー、喋るのもつらいよね。順番に話していくね」

「タノ.ム..」

「ヒッキーの腕に抱きついてたゆきのんを見て羽虫が逆切れしてね。特殊警棒でゆきのんを殴ろうとしたの。それをヒッキーが身体で防いでたんだけど、ヒッキーの頭を殴ってね。それでヒッキーの心臓が止まっちゃったの、ここまでは良い?」

 

そうだった。葉山が雪乃を殴ろうとしていて俺が殴られるように覆い被さっていたんだった。でも心臓が止まったのか。俺、良く生きてるな。

 

「羽虫は中二が体当たりで吹き飛ばしたんだけど、ゆきのんが取り乱してね。落ち着かせるために真奈っちがゆきのんを平手で叩いたの。

中二はすぐにヒッキーの所にきて心臓マッサージをしてたんだけど、そしたらゆきのんを叩いたのを見た羽虫が、今度は真奈っちを蹴りつけてね、それで右腕が折られちゃったの。それを見た中二が羽虫に向かって行ってね、中二も頭を殴られたんだけど、そのままの勢いで羽虫を押し倒して押さえつけたの。

真奈っちは左腕だけで心臓マッサージをしようとしたんだけど、近くにいた人が代わってくれて他の人たちもABC?を持ってきてくれたんだ」

「結衣、AEDよ」

 

そんなことが...真鶴が腕を折られて、材木座も殴られたのか...

 

「ゆきのんはね。ヒッキーが倒れたあと、ずっとヒッキーの近くを離れなかったし」

「結衣、私のことは良いわよ」

「ううん駄目、ヒッキーにちゃんと教えないと。ヒッキーが倒れた後、泣き続けて疲れては寝ちゃってまた起きると泣いてたんだけど、数日したら自分がヒッキーを一生支えるって言ってね。実家に戻って極力自分の時間を作れるようにしたんだ。

そこから体力をつけるためにウォーキングしだして、途中からジョギングに切り替えて、マラソン大会で完走するほどに体力つけたんだよ」

「ユキノ...」

 

雪乃は何も言わずに俺の手を握ってくれている。実家に戻ったのか保育園でも仲良く写真を撮っていたし話し合ったんだな。でも雪乃が俺の為に辛い体力づくりをしてくれるなんて...

 

「私は八幡に守って貰ってばっかりで、結局一人では何もできないのよ..」

「そんなことないよヒッキー、ゆきのん凄いし。今では雪ノ下建設も地方企業じゃなくて世界企業になっちゃったし。ゆきのんとはるのんの力でね」

 

何をしたんだ?地方から世界って日本を一気に飛び出していったのか。でもそんなこと二人の力で出来るのか。

 

「ゆきのんね、中二を連れて山に入って行って蜘蛛を捕まえさせてたし。その後、はるのんと研究しまくって蜘蛛の糸より強くて細くて軽いのを作ったらしいの。

あたしにはよく分からないけど、いろんなものに使えて車とか飛行機とかもすっごく軽く作れるし、後おっきいエレベーターを作るのに使われるんだって。そのエレベーターの工事を日本の会社では雪ノ下建設が代表でやってるし」

「八幡なら分かるかしら、宇宙エレベーターを作れる材質を作ったのよ。八幡の大好きなコロニーやモビルスーツが出来るかもしれないわよ」

 

凄い、なんでそんなもん作れるんだ。俺の想像をはるかに超えてるんだが。って何でガンダムなんだよ、確かに好きだけど。

 

「それを作ったのが大学入ってすぐの時でね。その後もはるのんが大学院に進んで二人で色々作って海から鉄を作ってたよ。それが一欠けらあると車がずーっと動くんだって」

 

結衣が何を言っているのか、さっぱり分からん。

 

「結衣、それだと八幡は分からないわよ、水素を圧縮して作ったのよ。水素金属を」

 

水素金属って土星や木星みたいな超高重力下じゃないと出来ないんじゃ...

 

「でも世界のエネルギー事情が大きく変わってしまうから、用途は限定しているのだけれど。でもこれでモビルスーツの材質と燃料は出来たわよ」

「ゆきのん、またガンダムだし」

「し、仕方ないじゃない。材木座君や姫菜にSFの科学技術を聞いていたら、ガンダムを進められたのだから」

 

雪乃がガンオタって...でも語り合いたいな。雪乃の視点から見たガンダム、面白そうだ。

 

「はぁ、..世界中の金持ちがそんなの許さないってなったらしいんだけどね。ゆきのんとはるのんに何か有ったら世界中の大学とかに作成方法のメールが送られる仕組みを作ったから、映画みたいに誘拐とか命狙われるとかも無いみたい」

 

雪乃が結衣に呆れられてたな、もしかしたら初めてじゃないか。

でもすげえな雪乃。俺なんか近寄れない存在になってしまったな。でも初めて会った時、世界を変えると言っていたが、まさかこんな形で変えてしまうとは。

 

「ゆきのんとはるのん。世界でも有数なお金持ちになったし。税金だけでも凄くて、一夫多妻制を認めないなら皆で日本を出てくって言って国を動かして認めさせたし」

 

は!?何しちゃってるの?この子達。でもそれってもしかして俺達のことを認めさせるためか...

 

「八幡の為よ、貴方まだ一人を選べないでしょ。でも静さん..先生はいい歳よ。八幡から返事を貰うまでは待っているって何人もの男性からのプロポーズを断っているのよ」

「静さんはまだ先生してるよ。ヒッキーが倒れてからタバコも止めて、お酒も少ししか飲まないようにしてね。ヒッキーに相応しい女になるって言って料理とかも覚えて家庭的になったの。そしたら凄くモテ出したんだけど、皆断ったんだ。自分には告白した相手がいて返事を待ってるって」

「シズカ..」

 

俺なんか放っておいて結婚すればいいのに。でも静が俺のことを待っていてくれたんだ。何でこんなに嬉しくなるんだよ。

俺はいつの間にか涙が溢れていたのだろう、結衣は俺の右側に腰を降ろしハンカチで拭いてくれていた。雪乃も左側で俺の頬を拭いてくれている。二人は俺の手を握ってくれてて、握り返したかったが指もほとんど動かないほど、衰弱しているようだったが、二人の温もりが伝わってきて嬉しい。

 

「色々条件あるんだけどね、年間所得が二千万までは一人まで、四千万で二人までって二千万づつで一人増やせるの。少子化対策も兼ねてて一夫多妻制を取った家族は一人の奥さんにつき最低三人の子供を作らないといけないんだ。もちろん出来にくい人とかも居るから、一人の奥さんが六人産んでも良いんだよ」

 

でも俺には所得何てないからな。結婚できても一人か。

 

「八幡もこれで気兼ねなく全員と結婚出来るわよ」

「オ、オカネ...」

「だって世帯所得だから、ゆきのん一人だけで全員分稼いでるもん」

 

は!?でもそんな凄い存在になった雪乃と陽乃。俺が二人と結婚なんて出来るわけないだろ。

 

「..私達の結婚相手は八幡しか考えられないわ。立場何て関係ない、それでも拘るなら今すぐ世界各国に製造方法のメールを拡散してあげるわ。そうすれば私と姉さんは何も持たないことになるのだから」

 

なんで俺の考えが分かったの!?エスパーなの?でも二人とも俺なんか待ってくれているのか。なんでなんだよ、嬉しいのに涙が溢れてくる。

 

「中二もね、事件の次の日から真奈っちん家まで毎日迎えに行ってね、帰りも送って行ってたの。右腕が折られたんでノートを取れなかったのは、ゆきのんやJ組の皆が助け合ってくれたんだ」

 

結衣が材木座のことを喋っていると、廊下を走ってくる音が聞こえてきた。

 

タッタッタッタッタ ガラガラガラ

 

「ぜんばーい!!」

 

いろはは廊下を走っているときも泣いていたのだろう、顔をくしゃくしゃにしながら病室に入ってきて、俺の方に飛び付いてきた。

 

「よがっだー!!ぜんばーい!!ぜんばーい!!」

 

いろはは雪乃の隣で俺の胸に抱きついていた。いろはも泣き張らしていても綺麗になったな。

 

「いろはちゃん泣いてるけど、続きしゃべるね。中二も変わったんだよ、さっきゆきのんが実家帰ってジョギングの話したけど一緒に走ってね」

「ええ、材木座君の家が近かったので私がジョギングする時に付き合わせたのよ。食事メニューも御両親にお願いして、無駄な贅肉が取れたわね」

「うん、痩せたっていうかお腹が引っ込んで程よく筋肉ついてカッコいい体型になってね。髪型もショートにして服や眼鏡も真奈っちが選んだのを付けていたの。そしたらモテ出したんだけど、女子が取り囲んで居るとき、俺は真奈が好きだって、公開告白してね。それで真奈っちと付き合いだしたし」

「彼はヘタレではなかったわね。私も近くにいて見直したもの」

「もぐざいぜんぱい、がっごよがっだでずぅ」

 

..なんか含みのある言い方だな、否定は出来ないけど。

良かったな材木座、真鶴と付き合えて。公開告白ってアイツ自身がラノベの主人公になってるじゃないか。でも5年経っても相変わらず結衣には中二、いろはには木材先輩って言われてんだな。

 

「材木座君は大学でもラノベを書き続けて、今では作家デビューしてるわよ」

 

作家デビューしたのか、夢がかなったな。ラブコメを書いているのだろうか、ちょっと読んでみたい。

 

「いろはちゃんは「結衣先輩、私が喋りまずぅ」」

 

いろははそういうと鼻をかんでなんとか泣き止んだようだった。

 

「先輩に認めて欲しくて生徒会長、二年続けました。今は大学で私は建築のデザイン関係を学んでんでずぅ」

「イロハ..」

 

そう言っていろははまた、俺の胸に顔を埋め泣き出していた。

俺はとっくにいろはの事は認めている、一年生の時から頑張っていたからな、俺も文句を言いながらも手伝えるのが、嬉しく楽しかったからな。

 

「今、いろはは特にバリアフリーを学んでいるのよ」

「いろはちゃんも頑張ってるもんね」

 

二人はそう言っていろはの頭を撫でていた、俺も撫でてあげたい。どうして腕が動かないんだよ。

 

「はるのんもね、今は雪ノ下建設で働いてるけど、色々発明したから今は役員になってるよ」

「ハルノ...」

 

陽乃も凄い、そんなの作ってれば当たり前か。雪乃と二人で会社に莫大な利益をもたらしたんだろう。

 

「私が頑張れたのは姉さんや家族、結衣やいろは、皆のおかげよ、何度も助けてもらったわ」

「うん、はるのん私達にも勉強教えてくれたり、色々相談乗ってくれたり皆のお姉さんだし」

 

陽乃...皆のお姉さんって陽乃が相談に乗ったのか。陽乃が聞いてくれるのであれば、相談相手として頼りにできそうだな。

 

「あたしは、ゆきのんやはるのんみたいに頭も良くないし何もないからさ、ゆきのん家でアルバイトしながら公認会計士の資格取ったんだ。それで今度からゆきのんのところで働かせてもらうの」

「ユイ...」

 

いや結衣も十分凄いだろ、まだ大学出てないのに公認会計士って。雪ノ下建設でも認められたってことだよな。

 

「優美子と沙希は、保育士になるために勉強しているわよ」

「うん、あの二人、高校の時はよくぶつかっていたけど、今ではすっごく仲良しだし」

「ユミコ、サキ...」

 

優美子と沙希が保育士か、優美子はオカンで面倒見がいいし、沙希は不愛想に思われるが、根はやさしいし、保育士は合っているんだろうな。

 

「姫菜はお医者さんになるため、まだ大学は出れないらしいけどね。今、頑張ってるし」

「ヒナ...」

 

姫菜なら漫画家とか目指すと思ったんだが医者なのか。でも姫菜の家は病院なのか。

 

「何か疑問なのかしら...姫菜のお家は一般家庭よ、でも医者になりたいって姉さんが聞いたので、最初は私の家にお金を出して貰って今は私が出しているわ」

 

医学部って滅茶苦茶金掛かるんだよな、でも雪ノ下家と雪乃が出しているのか。将来返すとかそう言うことなのだろう。

 

「みなみんは大学で介護の関係を勉強してるよ」

「ミナミ..」

 

南が介護?でも献身的に働きそうだよな、今の南なら。..いや今ではなく俺の知っているのは5年前か..

 

「城廻先輩は姉さんの秘書として働いているわ」

「メグリ..」

 

めぐりは陽乃を支えるため秘書になるのか。もともと凄く仲が良かったからな。

 

「かおりと千佳はここの病院で看護師になって今では正看護師の資格を持っているわ、今は仕事中なのでスマホを持ち歩いていないと思うけれど、確認すればすぐ来ると思うわ」

「カオリ..チカ..」

 

二人で看護婦か、賑やかなんだろうな。..二人がここの看護婦って事は俺のことも見てくれてるのか。

 

「皆、ヒッキーが起きたら支えれるように、子供が出来たら世話が出来るように、ゆきのんとはるのんを支えて間接的にでもヒッキーに貢献できるようにって考えてんだよ」

「ミンナ...」

 

俺はずっと涙を流していたようで、雪乃と結衣は話しながら涙を拭きとってくれていた。

 

「落ち着いた?ヒッキー」

「八幡、大丈夫かしら」

「先輩、大丈夫ですか」

「アア」

 

「後、羽虫ね。事件を起こした後、少年院に入ってたんだけど、ずっとゆきのんの事恨んでいたし。でも少年院で何かの工作を学んでるときに両手首を切っちゃってね。出てきた後、美人局に引っ掛かっておちんちんを根本からちょん切られたし」

 

はぁ!?今凄く玉きゅんってなっちゃった!!な、なんでそんなことされてんだよ。怖いよ!!

両手首を切断したってあり得るのか。工作機械とかならありそうだが、もしかしたら雪乃に何かあると不味い金持ち連中とかが何かしたとか。股間についてもそっち関係でと考えた方が理解しやすいな。

 

「でも精巣は残っているから、その...姫菜の本のようなことをしているわ。今ではそちらの男性たちに面倒を見て貰っているわね」

「うん、姫菜に動画が送られて来たんだけど、現実と漫画の差に愕然としてそっちの趣味は辞めたし」

 

姫菜ってそっちのAVとか見たことなかったのか、それとも葉山がとんでもないことになってるのか。

 

「そうね、でも今は女性同士の物を書いているわ」

 

は!?拗らせ過ぎじゃないか。でもちょっと見てみたい...

俺がそんなことを考えていると、また廊下の方から騒がしく走って来る足音が聞こえてきた。

 

「「八幡(君)!!」」

「カオリ..チカ..」

 

彼女達も凄く綺麗な女性になっていた。でも俺は精神年齢がまだ17歳のままなのだろう。看護婦コスプレをしているように見えてしまう...

かおりも千佳も俺のことを抱きしめてくれ泣いてくれていた。俺も涙を流しているのだろう、雪乃と結衣は何も言わずに涙を拭きとってくれている。

その後も廊下を走る音が聞こえたと思うと、綺麗な女性が入ってきて俺に抱きついてくれていた。廊下を走って怒られないんだろうか、俺はそんなことを考えながら一人一人との再会に涙を流していた。

 

「すでに私達から話したのだけれど、八幡はみんなと結婚できるのよ。これで誰かを選らぶ必要は無くなったわ」

「うん、ヒッキーが良かったら皆をお嫁さんに出来るんだよ」

「先輩。ですから....」

「「「「「「「「「「「「私達と結婚してください!!」」」」」」」」」」」」

「ハイ」

 

俺を5年間も待ってくれていたんだ、俺は皆の事が好きだし彼女達の想いにも答えたい。俺はこれからのことなど考えるまでもなく自分の気持ちを素直に返事していた。

 

その日から毎日誰かが来てくれて、俺のリハビリに付き合ってくれていた。食事は二週間もしたら内臓には問題が無かったため、普通の食事が食べれるようになり、みんなが手料理を作ってくれていた。

懸念されていた後遺症や記憶障害もなかったが、5年も寝ていたため体中の筋肉が衰えており、暫くはリハビリのため入院することとなったようだ。

 

「雪乃、お昼からウナギって豪勢だったな」

「良いウナギが入ったと連絡を受けたのよ、精が付くわよ」

「..今日の朝御飯もあさりの味噌汁に青魚、オクラと山芋の掛け御飯だったんだが」

「ええ、夜は牡蠣とニラレバ炒めよ」

「...あの雪乃さん。..そんなの食べたら色々大変なんですが」

「リハビリである程度、身体の方も回復したでしょ。今日は私一人で泊まっていけるの、私達は夫婦なのよ。その...良いでしょ//」

「ここ病院だぞ」

「大丈夫よ、私がワンフロア借りてるのだから」

 

はぁ!?だから騒がしく走ってきても誰も文句言わなかったのか、そういえばリハビリに行くときも誰とも会わなかったな。大体この部屋もおかしい、ドラマで見る偉いさんが入院しているような豪華な作りになっていてワンフロアに数部屋しかなかった。俺が寝ているベッドはダブルベッドだし、付き添い人用のベッドも簡易的なものではない。それ以外にもソファーやパソコンデスク、風呂があったりキッチンも付いていて、料理も出来るようになっている。

 

「ねえ八幡。私を最初に抱いてね」

 

雪乃がそう言ってきたので、俺は雪乃の腕を掴んで、ベッドに引き寄せキスしながら胸を擦った。メチャクチャ柔らかいな。

 

「ま、まって。今日は時間がなくてジョギングした後、シャワーを浴びてないのよ」

「だから雪乃の良い匂いがするんだな」

 

俺はそう言いながら雪乃の首に顔を埋め匂いを嗅ぎながら舐めるように首筋にキスしていた。

 

「あぁ//..え、エッチ。ヘンタイ。八幡」

「ああ、エッチで変態な八幡だからな」

 

そう言いながら、腕を上げさせノースリーブから覗いた脇に顔を埋めて舐めていた。

 

「あぁ、そんなところに顔を埋めないで//は、恥ずかしいわ//こんな時間から誰か来たらどうするのよ」

「良い匂いだ...大丈夫。次の検診まで3時間ある」

「だ、誰か見舞いに来るかもしれないでしょ//そんなところを..あぁ//」

「その時は諦めてくれ」

「ほ、本当に待って」

「雪乃、愛してる」

「ど、どうしてこんなとき言うのよ//」

「雪乃は言ってくれないのか」

「わ、私も愛しているわ。八幡//」

 

俺は雪乃が言い終わると唇を重ねていた。キスで口を塞ぎながら雪乃の身体を触っていると雪乃も次第に俺の身体を撫でるように抱きしめてきた。

俺はこの日、初めて女性と肌を重ねた。初めて見る雪乃の裸体は艶かしく美しかった。俺は雪乃の身体に溺れていたが、検診の一時間前ぐらいには一旦お預けを食らい、その間に雪乃は食事の用意をしてくれていた。

検診が終わり御飯を食べた後、二人で風呂に入り、俺はまた雪乃を求め雪乃も答えてくれた。その後もお互い覚えたての悦楽に狂ったように肌を重ねていた。

 

....

...

..

.

 

「八幡、おはよう!!検診の時間だよ!!」

 

誰かが騒がしく部屋に入ってきたようだが、俺は起きたばかりで今の状況がよく分かっていなかった。

 

「な!?なんで八幡と雪乃が一緒に寝てんの!?」

 

そう言って声の主は俺たちの布団を捲り上げてきた。俺達二人は裸でシーツは行為の跡で汚れていた。

 

「は、八幡!!なんで雪乃とエッチしてんの!!ウケないよ!!」

「おはよう、かおり。お仕事ご苦労様」

「..ウス」

「うぅ、雪乃に先越された...八幡。今日はシフトが千佳と別々で8時で仕事終わりだからさ。この後、良いよね」

「か、かおりさん。結構疲れてるんですが」

「雪乃、私が来るまでにシーツ換えておいて。後、精の付くもの食べさせておいて。今日のリハビリは足腰の鍛錬だから」

 

かおりはそう言うと、平静を装い俺の体温などを測っていった。ただ何時もみたいに笑っていなかったが、「でもこの後」とか言いながら顔を赤くしていた。

 

「では八幡。ご飯の用意をするわ」

「ああ、よろしく頼む」

「かおりを悦ばせてあげてね」

「自信はないが頑張ってみるよ」

「わ、私は嬉しかったわ//八幡と肌を合わせられて」

「俺もだ//雪乃、好きだ」

 

俺達はそう言って、また唇を合わせていた。その後二人でシャワーを浴びた時、雪乃を抱きたくなったがかおりに悪いからと言って、抱かせてもらえなかった。

雪乃が食事の用意をしてくれている間に、俺はベッドのシーツを替えていた。雪乃が恥ずかしいから自分がやると言ってくれたが、これぐらいなら俺でも出来るからな。雪乃の初めての跡を見えないようにたたみ、洗濯籠に入れておいた。

 

俺達が話していると、かおりは仕事が終わり来たのだろう。ただ仕事着のまま病室に来ていた。

 

「何で、ナース服のままなんだよ」

「それある!!嬉しくて少しでも早く来たくてそのまま来ちゃったし!!へへ、ウケる!!」

「では八幡、かおり。私は帰るわね」

「ああ、雪乃。ありがとうな。愛してる」

「私も愛しているわ、八幡」

 

チュッ

 

雪乃が病室を出て行くと、今度はかおりが俺の口を塞いできた。

 

「八幡、私も愛しているよ」

「ああ、俺もかおりを愛している」

 

俺とかおりはそのまま、ベッドで身体を交り合わせ愛し合い続けた。

 

そしてこの日から毎日、嫁達と身体を重ね合わせていた。




最近忙しくて更新できていませんでした。
まだ時間が取れない状態ですが、後、ちょっと続ける予定です。


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新たな出会い

俺は今、総武高校に来て教室の前で挨拶している。

俺が倒れてから休学扱いだったらしく、高校からやり直したいと皆に伝え、今日から学校に通いだした。

せめて高校は出ておきたいし、出来れば大学にも行きたい。皆は働く必要がないとは言ってくれたが、さすがに嫁達に頼ってばかりというのもいただけない。専業主夫が叶うのだが出来れば俺の所得だけで皆との結婚生活を維持したいと俺のミジンコ並のプライドがそんなことを考えていた。さすがに額が半端ないので目安など全く立っていないが。

 

見た目で言えば、俺は大人だからか誰からも話しかけられることはなかった。

元々ぼっちだからな、そんなのは寂しくもない。目の淀みは5年間も寝ていたためか、かなり薄れていた。顔つきが精悍になり目つきも鋭くなったと言われたので、眼鏡を掛け髪の毛は嫁さん達がセットしてくれるので綺麗に整え学校には来ていた。リハビリ中に姿勢を良くするため猫背を治したり大変だったな。

嫁さん達に勉強を教えてもらい今では全教科それなりの点を取れるはずだ。

クラスメイトは遠くから俺の方を見ているが、それは仕方ないだろうな、高校生からみたらおっさんが制服を着て一緒に机を並べてるのだから。奇異の目で見られていたが、そんなことは分かりきっていたことだ。

昼休みになり俺が教室を出ると一気に騒ぎだしたが、陰口でも叩かれているのだろう。

 

「メチャクチャカッコよくない!?」

「うん、めっちゃクールだし勉強も出来るんだって!!」

「彼女居るのかな。私、立候補しようかな」

「比企谷さんと比べると同学年の男子ってガキだね」

「あ、あんなの歳取ったおっさんじゃないか」

「そのおっさんに頭も容姿も負けてたら、あんたら何にもないじゃん!!」

 

昼休みはベストプレイスで陽乃が作ってくれた弁当を食べていた。一人過ごしていたが教室にもどる途中、女子生徒が荷物を抱えて大変そうなので手伝ってあげた。髪を明るく染めていて胸が大きく、なんだか結衣に似ている気がする。

お礼をいってきたがハッチー先輩と呼ばれて、こそばゆい感覚だった。でもハッチーって。俺の事を知っているようだったがクラスメイトか?

 

授業が終わり帰るため、歩いているといつの間にか俺は特別棟の奉仕部前まで来ていた。パブロフの犬かよ、自嘲しながら見上げると、色あせたシールが貼ってあるプレートが掛かっている。俺にとってはそんなに経っていないのだが、時間の流れを感じるプレートを眺めながら感傷に浸っているといつの間にか扉に手を掛けていた。

 

「ウス...」ガラガラ

 

え!?扉に鍵が掛かっていると思っていたが、その扉はほとんど抵抗を感じることなく開き、俺はつい何時もの挨拶をしながら部室に入ってしまっていた。

そこには黒髪を長くした少女が一人、椅子に座って本を読んでおり、雪乃に初めて出会った時の感情が溢れてきていた。俺が部室に入ると彼女は立ち上がったため、俺は鞄を床に落とし駆け出していた。

 

「キャーー!!」

「..え!?す、すまん!!」

 

俺は咄嗟に離れ彼女に謝罪した。その女子生徒は高校の時の雪乃に似ており、俺は間違えて抱きしめてしまっていた。その女子生徒は自分の体を抱きしめ怯えていたが、なぜか俺の顔を凝視している。俺が謝っていると部室の扉が開かれ髪の毛を明るくオレンジ色に染めた女子生徒が入ってきた、昼間に会った子だな。

 

「やっはろー、ルミルミ..あれ?ハッチー先輩じゃん!!」

 

え!?今、やっはろーって言ったよな!?この女子生徒はヤバい気がする。

 

「..こんにちは。亜衣」

「...ハッチー先輩どうしてここに居るし」

「昔、俺はこの部室で部活をしてたんだよ。ルミルミって...鶴見留美か、後ハッチーって」

「...やっぱり八幡?」

「ああ、お前総武に入っていたのか」

「八幡!!」

 

そう言って留美は俺に抱きついてきた。さっき悲鳴をあげたのに何で抱きついてくるんだよ。

 

「..お前じゃない、留美」

「分かったよ、留美」

「っていうか、何でルミルミ抱きついてるし。さっき悲鳴が聞こえたけど」

「八幡に抱きつかれた」

「ええ!?ハッチー先輩、ルミルミ襲ったの!?」

「ち、違う!!い、いや抱きついたのは確かだが聞いてくれ」

 

俺は今まで入院していて、今日から登校し懐かしくて部室まで来たこと、元部長の雪乃と間違えて抱きついてしまったことを伝えると、なぜかルミルミは不機嫌になっていた。

 

「...なあ、そっちの女子の親戚に由比ヶ浜結衣ってお姉さんは居るか」

「結衣姉ちゃんと従姉妹だよ、今度結婚式するんで呼ばれてるんだ。あたしは荒井浜亜衣。ママと結衣姉ちゃんのママが姉妹なの。あたしはハッチー先輩と一緒のクラスだし。お昼休み荷物持ってくれて、ありがと」

「荷物は気にするな...結衣と従姉妹なのか」

 

それ俺との結婚式じゃん!!12人もいるんで身内だけってことだったが、何人かは親しい人を呼びたいって言っていたからな。

 

「でもハッチー先輩って奉仕部だったんだ」

「ああ昔、留美とも何回か会ったことが有るな。荒井浜、先輩って付けなくていいぞ」

 

ハッチーと言われるのもどうかと思うが、結衣のヒッキーに比べればマシだな。

 

「うん、じゃあハッチーって呼ばせてもらうし。あたしのことは亜衣で良いし」

「分かった、亜衣」

 

昔の俺なら出会ってすぐの女子を名前呼びなんて渋っただろうが、今ではすんなり受け入れられる。俺がそんなことを考えていると、扉を叩く音が聞こえ、留美が返事をすると男子生徒が入ってきた。

 

「失礼するぞ、我は三年C組、名はざ!い!も!く!ざ!「うるさい」...はぃ」

 

さっき材木座って言ったよな!?弟か?太っていて高校の頃の材木座にそっくりだ、さすがにコートは羽織っていないが。

こいつも不味い気がする。俺に対しての核弾頭を背負っているような、こいつの登場から俺のセブンセンシズが警鐘を鳴らし出したんだが..

 

「じゃあ、俺は部外者なんで帰るわ」

「八幡は部外者じゃない。奉仕部員」

「そうだよ、ハッチー」

「いや、今日はあれがあれなんで」

「材木座、依頼って何」

 

留美は俺を無視して話を続けるなよ。俺は席に着いたのだがなぜか俺を真ん中に留美と亜衣が椅子を持ってきて座ってきた。

 

「我の兄者はラノベ作家なのだが、この部活で鍛えられていたらしいのだ。しかもここで嫁さんを見つけてな、もうすぐ結婚するのだ。後ここに居た男子部員も嫁を10人以上貰ったと言うことで、あやかりに来たのだ」

「「じゅ、十人!?」」

「左様、兄者が言うには全員そこらの女優やアイドルでは太刀打ち出来ぬ容姿を誇っておるらしいのだ。

美少女部長殿、ゆるふわビッチ、あざと生徒会長、獄炎の女王、その他にも色々いるのだが、極めつけはこの間、教師を辞めた平塚女史だな。高校生でありながらあの先生をも手に入れた男性にあやかりたいのだ」

 

ヤバい、冷や汗が出てきた。バレてないよな。でもなんで雪乃だけ美少女って呼んでんだよ。どれだけ雪乃を怖がってるんだ、材木座は。

静は俺が復学したいと伝えると、迷うことなく学校を辞めていた。俺と一緒だと甘えに会いに行きたくなるからと言われたが、俺の方が静と一緒だと不味かっただろう。未だに御飯は精力が付くものばかり食べており、もしさっき抱きついたのが雪乃だったら間違いなくここで致していただろうな。

 

「なんでもこの間まで事故か何かで入院していたらしいのだが、目が覚めた時、皆に求婚されたということなのだ」

「「..へぇ」」

 

待て。それを言うと俺の事ってバレるじゃないか。

 

「...八幡、結婚してる?」

「..あ、ああ」

「何人お嫁さんがいるし」

「..12人」

「も、もしかして結衣姉ちゃんの旦那さんってハッチー!?..結衣姉ちゃんからヒッキーって呼ばれてる!?」

「..ああ」

「き、貴殿がハーレム王か!?どうか我にも爪の垢を煎じてくだされ!!」

「お、俺は何も教えれることはないぞ、じゃあ今日は帰らせてもらう」

「..八幡。今帰ったら襲われて抱きつかれたって平塚先生に連絡する」

「留美!?止めてくれ」

「じゃあ材木座のお兄さんとのこと教えて」

「..分かったよ」

 

俺は材木座が書いたラノベを奉仕部で批評していて、途中から嫁さん達とのラブコメを書いて貰っていたことを説明した。

 

「材木座、来週までに八幡と私のラブコメ書いてきて」

「あたしも書いてほしい。ハッチーとのラブコメ」

「俺じゃなくていいだろ、好きな男性で書いて貰え」

「八幡も奉仕部員。部長のいうことは聞かないと駄目」

「そうだし、あたしも書いてほしいし」

「分かった。ハーレム王と主らの物を書けばよいのだな」

「材木座、ハーレム王は止めろ」

「ではなんとお呼びすれば良いのですか」

「名前でいい。後、同学年なんだ敬語もやめろ」

「わ、分かった。では兄者に八幡のことを聞いてラブコメを書き上げてくるぞ」

 

そう言って材木座は出て行ったが、俺の隣に座っている二人は何を考えているんだ?

二人は俺の事なんて何とも思ってないだろ。留美は最後に会ったのは小学生の時、亜衣については今日初めて会ったはすだ。

 

「八幡。..私の小学校の時の初恋の人、知ってる?」

「知るわけないだろ、俺は高校生だったんだ。今もそうだが」

「千葉村で助けてくれたボッチのお兄さん。..今でも忘れられない」

 

留美はそう言ってスマホの画面を見せてきた。画面に表示されたのは、いつか公園で撮った俺とベンチに座り手を繋いでいる写真だった。

 

「それって...」

「いまだに忘れられない初恋の人」

 

俺の事か。これは勘違いだろとは言えないな、五年前の写真を大事にしてくれている。でも留美の初恋が俺だったなんて、しかも未だに忘れられないって..

 

「あたしは結衣姉ちゃんからハッチーとの惚気話聞いるから知ってるし。

内容までは教えてくれなかったけど、仲違いしたときハッチーが本心を言ってくれて結衣姉ちゃん達と仲直りしたことも。結衣姉ちゃん達を傷つけたくなくて何があったのか本当のことを言わなかったことも。結衣姉ちゃんと部長さんが真実を知った時、なんでハッチーを信じられなかったのか凄く後悔したことも」

「結衣..」

「結衣姉ちゃんその話しした時、凄く辛そうだった。ハッチーは許してくれたって言ってたけど、信じれなかった自分が許せないって、あたしの前でも泣き出したし。でも亜衣にもそんな人が現れると良いねって凄く素敵な笑顔で教えてくれたの。

..だからそんな人がいるなら出会いたいって思って奉仕部に入ったんだ。でも高校に入ってから二年間あたしの周りにはそんな人、現れること無かった..」

「..それは結衣が思い出を美化しているだけだ」

「ううん、高校に入ってルミルミと出会って、名前が一緒だったんで千葉村のこと聞いてみたの。あと平塚先生にも聞いたし。

だから結衣姉ちゃんが言っていたことが本当だったんだって。あたしはまだルミルミみたいに初恋とか好きとか言えないよ、でも今ハッチーに凄く興味持ってるし。あたしも結衣姉ちゃんや先生が好きになったハッチーの事もっと知りたい」

「八幡。私にも今までの事、教えて」

 

亜衣は知ってるんだよな、隠しておくことでもないか。でも結衣がそんなに思い込んでいた時があったんだな、今日の夜は結衣を慰めてあげるか。フヒッ

...二人が若干引いてる気がする、もしかして顔に出てたか。

 

俺と嫁さん達はたまに高校の頃の話をするが、今では皆良い思い出話として酒のツマミにしてるからな。俺は高校生だが二十歳を超えているから少しならお酒を飲んだことはある。

 

俺は留美に今までのことを話していた。

たまに亜衣が結衣から聞いた気持ちを代弁してくれて、留美は俺達の話に聞き入っていた。でも俺にとってはこの間のことだが、嫁さん達にとっては5年もたってるんだ。そして今では望んでもこの部室で皆と過ごすことが出来なくなってしまったんだよな..

 

「八幡..」

「ハッチー..」

 

二人に呼ばれ気づいたが俺は涙を流していたようで制服が涙で濡れていた。どうも駄目だな、目覚めてから涙腺が緩くなってしまったようだ。

 

「すまん、みっともない所をみせて。感傷的になってしまったな」

「..八幡。私、八幡が好き。一緒に部活をして欲しい」

「あたしも一緒に部活したい。ハッチーの事、もっと知りたい」

「..分かった。ただ嫁さん達にも相談させてくれ」

 

その後も俺達の話しが途切れることはなく、暫くすると最終下校時刻を知らせる鐘がなったため、一緒に校門に向かった。

 

「校門に女優みたいな人達がいるっしょ!!」

「早く見に行くぞ!!」

 

高校時代の戸部みたいなやつが騒ぎながら校門の方に走っていく。何だか嫌な予感がするんですけど...

 

「な、なあ別々に帰らないか」

「八幡、駄目。これからファミレスに行く」

「そうだし、ハッチーの奉仕部復帰祝いだし」

 

俺達が歩いて行くと校門前には人だかりができていた。遠めに見た時、俺の嫁さんが何人もいたので、俺は屈んで人垣に隠れ通り過ぎようとしたのだが...

 

「あら八幡。登校初日から女子校生をはべらかして何処に行くつもりかしら」

 

俺の進路を遮るように何時の間にか雪乃が前に立って話しかけてきた。

 

「ヒッキーどういう...って、亜衣じゃん!?」

「あっ、結衣姉ちゃんやっはろー」

「先輩、どうしてこんなに遅かったんですかぁ、もしかして彼女さんですかぁ」

 

こっわ、いろはす怖いって。「お前、女の子を誑し込んで私たちを無視して良い度胸だな」って意味を孕んでいそうな、いつか聞いたことがある低い声で話しかけてきた。

 

「ヒキオ、どうゆうことだし」

「ハチ、私達を待たせて何をしてたの」

 

優美子も姫菜も怖いよ。そもそも来るって聞いていないぞ。

 

「八幡君。ちょーと、おいたが過ぎるかな」

「ハチ君、説明してくれるよね」

 

陽乃は完全に勘違いしてる。最近見ることが無かった強化外骨格を付けてるし、めぐりは何時もほんわかしているのに、今は目が笑っていない。

 

「うちらの事、放っておいてイチャイチャしてたんだ」

「なんでイチャイチャしてたことになるんだよ。部活に行ってただけだ」

「八幡、許さないよ」ポキポキ

「さ、沙希さん。手をポキポキ鳴らさないで」

「それはないよ、ウケないよ」

 

それはあってくれよ、ウケてくれよ。

 

「八幡君。私達を見つけたのに隠れて通り過ぎようとしてたよね、どこに行くつもりだったの..かな。返答によっては...ねぇ」

 

千佳が怖い。たまに俺の精神を削るような発言をしてくる。

 

「八幡、鶴見と荒井浜を連れてどこに行くつもりなんだ」

 

静まで来てたのかよ、あんたこの間までここの教諭だったんだろ。生徒も知っている奴ばっかだから、ちょっとは自重しろよ。

 

「八幡が私に会いに来てくれた」

「うん、ハッチーは今日から奉仕部の部員に復帰したし、今からそのお祝いだし」

「貴女達、八幡は私達の旦那様なの。勝手に連れて行くことは許さないわ」

「八幡は私を抱きしめたから、そのお詫びも兼ねてる」

「「「「「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」」」」」

「ま、待ってくれ。留美が部室で座ってて、高校生の頃の雪乃と間違えたんだ」

「八幡が高校の頃から大好きな私と見間違えたということかしら」

「ああ//雪乃と初めて部室で会った時に見惚れた記憶がよみがえって来て、思わず抱きしめてしまったんだよ」

「わ、私と間違えたのはいただけないけれど、許してあげるわ//」

「..雪乃が許してもあーしらは許さないし」

 

恐いよ、何でそんな目で俺を見てくるんだよ。

 

「でもその後、結衣姉ちゃんでエッチなこと考えてたし」

「い、いや昔の話をしてて今日の夜、結衣を慰めようかなって」

「え!?へへ、ヒッキー。じゃあ早く帰ろ//」

「ま、待ってよ結衣ちゃん。今日はうちの番だし!!」

「だってヒッキーの気持ち優先じゃん」

「うぅ、そうだけど」

「今日は朝からしてないんだ。結衣と南二人とも相手するぞ」

「お前たち。こんなところでそんな話をするな」

 

そう言われ周りを見渡すと、男子生徒達からは羨ましそうな視線と嫉妬の視線が入り混じっており、女子生徒達はヒソヒソ話をしていた。

 

「取り合えず場所を変えようか。八幡君に色々聞かないといけないし、二人にも家に来てもらったら」

「ハルさんの言う通りだね、ここで話しててもしょうがないよ」

「鶴見と荒井浜は大丈夫か」

「はい、家に電話すれば大丈夫です」

「あたしも良いですよ、結衣姉ちゃんが入れば問題ないです」

 

二人がそう言うと俺達は止めてあったバスに乗り込み移動していた。このバスは皆で移動する時用に買ったもので、静と陽乃が免許を持っており、どこかに行くときはよく使っていた。

留美と亜衣も拉致されたが俺達の家で今は寛いでいる。

 

「立派な家..」

「凄いね。ルミルミ」

「13人で住んでるからな」

「ハッチーそういえばさ、美少女部長って誰」

「ああ、あれは雪乃のことだな」

「あら、私のことを噂していたのかしら。でも本当のことね」

 

雪乃はにこやかな表情をしてるな、悪口を言われたわけじゃないからな。

 

「八幡。ゆるふわビッチは」

「..結衣のことだ」

「結衣姉ちゃんのことなの?分からなかった」

「ビッチってなんだし!?今は処女じゃないけどヒッキーだけだし!!」

 

何言っちゃってるの、留美も亜衣も照れてしまってるじゃないか。

 

「あざと生徒会長は」

「はぁ!?先輩が言ったんですか?」

「俺が言うわけないだろ。今日、材木座の弟に会ったんたよ。俺達の事を材木座から聞いたらしい」

「獄炎の女王とも言ってた」

「はぁ!?ちょっと真奈に電話するし」

 

優美子はそう言うとスマホを取り出し電話をかけだした。

 

「...あぁ、真奈。..うん、もう出る?わーたし。その時、材木の弟も連れてくるし...御飯?御飯ならこっちで食べれば良いし...うん、早く来な」ブチッ

「優美子、もう一人追加だね」

「うん、三人で来るはずだから」

 

優美子が電話した後、材木座が来るまで嫁達は食事の用意をしだした。俺と留美、亜衣、夕飯の用意をしていない嫁達とソファーに座り雑談していると、材木座達が到着したようだった。

 

「中二、そっち座るし」

「木材先輩、ソファーじゃないですよ、フローリングの上で正座です」

「材木、早く座るし。じゃあ、弟のほうに聞くけど、ゆるふわビッチ、あざと生徒会長、獄炎の女王以外、他になんて言ってたし」

「しゃ、喋るな「材木座は黙ってな」...はぃ」

「..我が聞いたのは平塚女史、腐女子、ヤンキー、ヘタレ委員長、魔王、ほんわか生徒会長、ウケ(じょ)、ヤン千佳...です」

「「「「「へぇ」」」」」

「今は教師ではないがな。八幡のお嫁さんだから//」

「私はほんわか生徒会長なんだ。へへ良かった」

「未だに言われてたと思わなかったけど、うちは確かにヘタレだったからね」

「今は腐ってないよ!!百合を咲かせてるんだよ!!」

「こ、高校の頃の事なので」

「材木座、ヤンキーって私のことだよな」

「ひゃ、ひゃい」

「ウケ女って何、ウケないんだけど」

「ご、ごめんなさい」

「ヤン千佳ってどういうこと?八幡君は分かるの?ねえ、説明してくれる..かな。ねえ、早く教えてよ..ねぇ」

「千佳が病んでるわけないだろ、俺の可愛い奥さんなんだから」ナデナデ

「へへ、八幡君。好きだよ」

 

俺が右手で千佳を撫でていると、左に座っていた陽乃も文句を言いだした。

 

「魔王ね、久しぶりに聞いたよ。でも八幡君が言い出したんだよね、確か」

「お、俺は関係ないだろ」

「ふーん、そんなこと言うんだ」

「は、陽乃が魔王なわけないだろ、俺の大切な奥さんなんだから」ナデナデ

「へへ、じゃあ今日は私も可愛がってね」

「へ!?き、今日は結衣と南の二人を抱くんだが...」

「..へぇ、私の事は可愛がってくれないんだ」

「い、いや3人を相手したことないから。..初めてだが陽乃も入ってくれるか」

「うん!!八幡君。大好き!!」

「ねえ、八幡君。私は入ってないの..かな。ねぇ駄目なの..かな」

「ち、千佳ももちろん相手するから今日は5人で楽しもうか」

「うん!!」

 

持つのか俺の身体...俺が陽乃と千佳の頭を撫でている間、材木座は嫁達に責められているようだ。真鶴は何時もの事なので、雪乃たちと食事の用意をしているな。

 

「ルミルミ、何だか凄いね。ハッチーの奥さん達」

「うん、でも皆仲良くて羨ましい」

「食事の用意が終わったわ、あなた達も食べていけるでしょ」

「「ありがとうございます」」

「貴女達も何時までも材木座君を責めていないで、早く席に着きなさい」

 

そう言われ皆で食卓に着くと、豪勢な料理が並んでいた。俺の復学祝いと言うことでパーティを開いてくれ、途中戸塚と戸部が来てくれた。

戸部は俺が入院中、姫菜の気持ちを知っていながらも告白したらしい。それに対して姫菜も真剣に答え、今は友達として俺達の家に遊びに来てくれる。

 

この日は夜遅くまで騒いでいたがお開きとなり、材木座達が車で留美と亜衣を送ってくれた。

ただ結衣と南、陽乃、千佳は忘れていなかったようで皆が帰った後、2次会と称し、寝室で5人裸で明け方まで寝れることはなかった。

 

 




前回の話について、色々ご意見を頂きましたが、
ただ高校生留美と高校生八幡を出したかっただけです。
オリキャラが喋って留美がサブキャラみたいになってしまいましたが...


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最終話

今日は雨が降っているため、仕方なく教室で千佳が作ってくれた弁当を広げていると、亜衣が俺の方に近寄ってきて話しかけてきた。

 

「ハッチー、今日は教室で食べるの」

「ああ、雨が降ってるからな」

「じゃあさ、あたしも一緒に食べていい?」

「いや、一人で食べるからいい」

「..駄目なの?」

 

亜衣が悲しそうな目で俺を見つめてくる、なんで弁当を一緒に食べないだけでそんな顔するんだよ。

 

「...面白い話なんて出来ないからな」

「うん!!」

 

亜衣が俺の前の席に座り弁当を広げ出すと三人の女子が俺達の方に近寄ってきて話しかけてきた。

 

「わ、私達も一緒に良いですか」

「..ああ」

 

そう返事すると彼女達は喜び、周りの机を移動して俺を囲むように並べだした。

 

「八幡、私も一緒に食べる」

 

振り返ると留美が立っており、弁当袋を手に提げていた。

周りでは男子生徒達が俺を睨みつけている。留美は何で俺達の教室に来たんだよ。

 

「J組の鶴見さんだっけ、珍しいね。男嫌いって聞いてたけど」

「同年代はガキばっかり。でも八幡は別」

 

三人の女子もこのクラスで亜衣と並びトップカーストだろう、留美もだが同学年でもトップレベルだろうな。皆綺麗な顔をしていた。

教室にいる男子からの視線が厳しい、中には涙まで浮かべてる奴もいる。そんな顔するなら彼女達を連れていってくれよ、俺は目立ちたくないんだよ。

この間、嫁さんズが校門に来たことにより、俺が結婚していることは全校生徒が知ることとなっていた。それについて何か言われることもないし、何かが変わることもない。

 

「奥さん達って凄く綺麗でしたね」

「俺には勿体ないよ。..同級生だから敬語は止めてくれ」

「結衣姉ちゃん達、幸せそうだったよ」

「平塚先生もいい顔してた」

「そうか、二人とも家にお邪魔したんだよね」

「うん、私もあの中に入りたい」

「「「つ、鶴見さん!?」」」

 

な、なんてこと言うんだよ。留美は三人にスマホを見せて小学校の時から初恋の相手と言い出した。なんで教室でそんなこと話すんだ、泣いてる奴もいるぞ。他の奴も俺を凄い視線で睨んでくる。

弁当を食べ終わっても昼休みが終わるまで五人とも俺から離れることはなかった。いつの間にか昼食を食べ終えた女子も俺達の周りに集まり、クラスの女子の大半が話を聞いていた。

 

昼からの授業、生きた心地がしなかったな。男子から授業中にも関わらず、睨んでくる奴もいるしまだ涙を溜めてる奴もいる。

ようやく授業が終わり、俺は逃げるように教室を後にし部室に逃げ込んでいた。

 

「はぁ、何で留美も教室に来たんだよ」

「八幡と一緒に御飯を食べたかった。迷惑?」

「..良いんだが目立ちたくないんだよ。何時もはどうしてるんだ」

「ここで食べてる」

「明日から俺もここに来ていいか」

「うん、八幡も来てほしい」

 

俺達が話していると亜衣が来て、遅れて材木座弟も来た。

 

「よく考えたら八幡のことは兄者に聞いたのだが、お二方のことを聞くのを忘れていたのだ。想像で書いたのだが、それでもいいか」

「良い。見せて」

 

材木座が留美に渡していると廊下の方が騒がしくなってきたな。

 

「懐かしいね、ゆきのん」

「..ええ、卒業してから5年経っているのよね」

「大志と小町が奉仕部に入ったんだよな」

「ああ、細々とやってたよ。お前達が卒業してから小町くんと大志くんが入ってくれて私が顧問でな、でもここに来るたびに八幡のことを思い出していたな」

「あーしも懐かしいし。3年になってから毎日のように勉強会来てたし」

「懐かしいな、うちもここで勉強会してもらいだしてから成績上がったんだよね」

 

コンコンコン

 

ノックの音が聞こえてきたので留美が返事をすると、俺の嫁さん達と義輝、真鶴が部室に入ってきた。

 

「材木座に聞いたけど、弟のラノベを見るんだろ。私達も批評するよ」

「え!?あ、あのわ、我は帰っていいですか」

「遠慮することはないのよ、私達がお兄さんのラノベを読んで批評していたのだから」

「よく入館許可が出たな、こんなに大勢。全員で来たのかよ」

「私達は学校に幾らか寄付をしているんだ、だからほとんど顔パスだよ。私は皆が高校生の時から出入りしてたしね」

「..ねえ八幡。どうして二人に挟まれて座っているのかしら。貴女達も私達の旦那様なのだから遠慮して貰えるかしら」

「今は部活中。席については部長の私が決めた。駄目なら部室から出て行って」

「...」ギリッ

「雪乃、諦めな。あーしらも高校の時、あんたに同じ様なこと事言われたから」

 

俺と義輝は嫁さん達の椅子を出して並べだした。長机を挟んで並べたが、特に雪乃と結衣の目が怖い。二人は俺の横に何時も座っていたからな、今では留美と亜衣が俺の隣に座っている。

 

「..はぁ、しようがないわね。では私達にもラノベを見せて貰えるかしら」

「いや、それはあれがあれでして」

「...材木座君と弟君が逃げれないようにした方が良いね」

 

陽乃はそう言って、義輝と材木座を真ん中に座らせ席を囲むようにしていた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「..お前、どういったものを書いて来たのだ」

「..抹殺される」

 

...材木座弟は冷や汗を垂らしながら謝ってるってことは、義輝がたまに書いていたおかしなものを書いて来たんだろうな。

 

「...では、見せて貰えるかしら」

 

雪乃がそう言うと、留美が預かっていたラノベを配りだした。部数が少なかったため、3、4人で一部を見ることとなったようだな。

嫁さん達の目が痛い、どうして留美と亜衣は俺の肩に触れ合わせて読んでるんだよ。

 

**************************

 

(ここから材木座の小説)

 

「もうすぐお祭りだね...」

「うん、ルミルミともお別れになっちゃうのかな」

「多分、そうなると思う」

「やだよ、そんなの」

 

私達の住む国は小さく、強国に挟まれており隣国の言いなりだった。お祭りが行われる日、18歳になった女子で審査が行われ、そこで選ばれるとチッパー王国かバクニー帝国に嫁がされるのが決まりだった。

川辺で私達が落ち込んで話していると、同い年の男性が近寄ってきた。

 

「ルミ、アイ。どうしたんだ?こんなところで」

「ハチマン。...私達を連れて一緒に逃げて」

「あたしも連れてってほしい。3人で一緒に暮らそ」

「..無理だろ、この国から出るにはどちらかの国を通らないと行けないし検問があるんだ」

「ごめんなさい。無理なこと言って...」

「あたしもゴメン..」

「すまん、二人を守れなくて...」

 

私とアイはハチマンに抱きつき、胸に顔を埋めて泣きだしていた。ハチマンは何も言わず私達の頭を撫でてくれていた。

 

祭りの当日、私達はそれぞれ審査を受けていた。

 

「あなたがルミさんね。私が審査員代表のユキノよ」

「...はい」

「噂通り綺麗でスレンダーな子ですね」

「ユキノに似てるね、百合の花が似合いそう」グフフ

「本当に似てるし、ウケる」

「カオリ、緊張してるから和ませてあげないと」

「心配しなくても大丈夫だよ、うちらと一緒に行こ」

 

私はチッパー王国の審査員に気に入られたようで行くことが決まってしまったようだった。アイは今、バクニー帝国の審査を受けているけど、どうだったのだろう。

 

「アイちん、緊張しなくていいよ」

「..はい」

「ユイ、この子ならいいっしょ」

「そうだな、容姿も優れているしな」

「ああ、この子なら合格だね」

「ハルさん、私負けてるよ。羨ましい」

「この子に勝ってるのってユイだけだよ、凄い子だね」

「な、何がですか」

「うん?気にしなくていいから」

 

私がチッパー王国の審査員に連れられていくと、アイがちょうどバクニー帝国の審査員に連れていかれるところだった。

 

「..あらユイ、久しぶりね。姉さんも久しぶり」

「..やっはろー、ゆきのん」

「ユキノちゃんも相変わらず成長してないね」

「お久しぶりです、皆さん。そんなのただの脂肪の塊ですよ」

「イロハ、言うようになったね。あーし達にそんなこと言うなんて」

「デカければ良いって考え、ウケるし」

「良いではないか、お前たちは肩コリと無縁で」

「嫁ぎ先も見つからない人に言われても」

「ヒナは女に手を出してるって聞いたな」

「うちらと違ってサキサキはカラテの時、邪魔でサラシ巻いてんでしょ。小さいほうが良いって事じゃん」

「皆仲良くしようよ、昔はこの国で一緒に過ごしてたんだから」

「そんなこと言って、メグリさんも私達を下に見てるよ、ね」

 

この人たちは何を言っているんだろう、脂肪の塊?肩こり?サラシ?私は思わず胸に手を回していた。もしかして胸の大きさで決められてる?

アイは私と違って胸が大きい。だからバクニー帝国に行くことになったの?

 

二つの国の審査員が言い争っていると、私達の前にハチマンが来て土下座をしていた。

 

「二人を連れて行くのをやめてください」

「貴方は何を言っているのかしら」

「俺は二人のことが好きです。だから連れて行かないでください」

「..胸が小さいのと大きいの、どっちが良いのかな」

「胸の大きさ何て関係ない。俺は二人とも好きなんだ」

「「「「「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」」」」」

「ほ、本当にそんなことを言っているんですか?私達の国ではどれだけチッパイかが大事なんですよ」

「そうだし、あーし達の国ではどれだけ爆乳かだし」

「..胸の大きさよりその女性をどれだけ愛しているかが大事だろ、どうして胸の大きさにこだわるんだ。俺はルミがチッパイでもアイが爆乳でも関係ない。二人と過ごせる時間が大事なんだ」

「..お前の名は何て言うのだ」

「ハチマン」

「じゃあさ、うちらも胸の大きさ関係なく愛せるの」

「..いや、貴女達のことよく知りませんし...ババア ダシ」

「はぁ!?今、なんていった、かな。教えてよ、ねえ」

「え!?い、イヤ、..二十歳超えたらババァかなって」

「「「「「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」」」」」

「あーしらのような女子を捕まえてババァってなんだし」

女子って年齢考えて言えよ」

「「「「「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」」」」」

「え?あ...もしかして口に出てた?」

「うん、ハチマン。私も聞こえた」

「ハッチー、あたしたちも後2年したらババァなんだよね」

「い、いや、それはあれがあれだから」

「この男には違う意味での教育が必要そうね」

「そうだね、ユキノちゃん。私達も手伝うよ」

「それある、それあるー!!」

「いがみ合ってる国同士だけど、うちらの魅力を教えてあげようよ」

「そうだね、ハチマン君に二十歳を超えた女性の素晴らしさを分からせないと」

「まさかバクニー帝国の人たちと共闘するなんて思いませんでしたけどね」

「ハチ。観念してね」

「私達全員相手できるの、かな」

「大丈夫だよ、さっきそこで怪しげな媚薬売ってたから」

「サキサキ、それって大丈夫なの」

「そんなものを使わずとも私が国から持ってきた媚薬があるからな」

「シズカちゃん、それって大変なことになるやつだよね」

「ああ、これだけの人数が居るんだ、大丈夫だろ」

「私達も国の方から持ってきたわよ、こちらも大変なことになると言うことだけれど、これだけの人数がいるから大丈夫よね」

「じゃあ、行こうか。ハチマン君の家に」

「え!?え?ま、待って、許して。ババァの相手何て出来ないから」

「..貴方達、ハチマンの家に案内して貰えるかしら、貴方達もハチマンが良いでしょ。それとも胸の大きさだけで決める男が良いのかしら」

 

私とアイは顔を見合わせた後、頷きあいハチマンの家まで案内していた。ハチマンは今、両腕を捉えられて引きずられている。ハチマンを助けようとする人はおらず、私達も後ろを付いて行き、ハチマンの家についていた。

 

ハチマンは一人暮らしなので家には誰もおらず、家に入るとユキノさんのレイピアでハチマンの服は引き裂かれていた。

 

「じゃあ、皆で押さえつけて媚薬を飲ませようか」

 

ハチマンはなすすべなく媚薬を飲まされて、股間がみるみるうちに大きくなっていた。

 

「す、凄い//」

「お、大きい//大蛇だね//」

 

ハチマンは理性を無くしだしていた。私とアイは皆に最初が良いだろって言われて、服を脱がされるとハチマンが飛び掛かってきて襲われていた。そしてこの日、私達はハチマンに女にしてもらった。

その後、三日三晩ハチマンは休むことなく、私達を抱き続け私達14人はハチマンの身体に籠絡されていた。

 

数年後

 

皆は私達が住んでいた国を強国にするため動き出していた。そこでは胸の大きさに関係なく結婚できる国。皆がチッパー王国とバクニー帝国の重鎮だったため、私達の国の重要な責務をこなしていた。皆はお互いの国の弱みも握っているため、それを交渉手段として私達の国に不利益が無いようにしていた。

 

でも...

 

「アイ、そっち何人いる?」

「うーん、14人!!ルミの方は」

「13人、一人どこ行ったの」

 

私達はハチマンとの間にそれぞれ二人づつ子供をもうけていた。私とアイは全員の子供の面倒を見ている。今はまたお腹が大きくなっていて大変だったけど、私は嬉しかった。

ハチマンが愛してくれてる。私もアイも受け入れていて、ハチマンの奥さんは14人もいるけど、私達は幸せだった。

 

好きな人が何時でも近くにいてくれるから。

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「「「「「「「「「「「「「「「....」」」」」」」」」」」」」」」

 

材木座弟は椅子から立ち上がると、その場で土下座をしだしていた。義輝も弟の横に土下座をしていた。

 

「す、済まぬ。我の指導が間違っていたばかりに」

「材木座、私がその、..ち、ちっぱいってどういうこと」

「そうだし、あたしもば、爆乳って//」

 

留美と亜衣がかなり怒っているな、嫁さん達も目が死んでいる。

 

「ごめんなさい」

「...八幡はどっちが良いの」

「いや俺は拘りはないぞ。ラノベにも書いてあったが胸の大きさ何て関係ない、俺は嫁さん達全員好きなんだ。」

「材木弟、二十歳を超えてるあーしらはババァなの」

「いや、それは兄者が昔、JCはババァだって言っていたので年齢を引き上げたんです」

「..ふーん、義輝君。じゃあ私もババァなんだね」

「ま、真奈殿。それは我がラノベを読んで高校の時に言っていたことで」

「ふーん、高校の時か。その時既に私はババァだったんだね。小学生に手を出す人と結婚できないな」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

禁書のセリフかよ、そんなこと現実で言ってたら引くわな。

 

「...彼には徹底的な指導が必要なようね」

「うん、雪乃ちゃん。私達が毎日来て指導してあげようか」

「その役目は私がするよ、実は非常勤講師を頼まれていてな」

「静ちゃん、それって何時も八幡君と居れるって事?」

「教師を辞めたんだが、今になってちょっと残念に思ってな。教師と生徒。禁断のシチュエーション//」

「...では私も非常勤講師になろうかしら」

「教員免許無いだろ」

「大丈夫よ、特別非常勤講師というのもあるのだから」

「そうだね、私もそうしようかな。物理や化学なら教えれそうだし」

「ま、まてお前たち二人が来たら、私の時間が無くなるだろ」

「静ちゃん。本当にイチャイチャするつもりなんだ」

「ずるいですよ、静さん。私も先輩とイチャイチャしたいのに」

「だって家だと中々二人っきりでイチャイチャできないもん。ここなら私と八幡だけだもん//」

「先生って家だとこうなんだ、教師の時と全然違う」

「うちも来たいよ雪乃ちゃん」

「あたし達が居た時みたいに、ここにポットとかコップ持ちこもうよ」

「ハチとのラノベ、また書いて貰えばいいしね」

「あーしもまた書いて貰うし」

「そうだな、材木座が書いてた続きを弟に書いて貰うのもいいな」

「うん、あたしもまた色々書いて貰いたい」

「そうだね、私すぐに卒業して、あまり書いて貰ってなかったから。八幡君とのラノベ」

「それある!!私と千佳って余り来れなかったからね。私もまたラノベ書いてほしいし」

「うん、私も書いてほしいな、八幡君とのラノベ」

「駄目、ここは私達の部室。勝手に使わないで」

「そうだし、ここはあたしとルミルミとハッチーの部室だし」

「大丈夫だよ、校長先生に直に掛け合ってくるから」

「そうね、私達が言えば反対されないはずよ」

 

嫁さん達は本当に来るつもりか。雪乃は大学卒業後、仕事を家でやっている。静も教師を辞めてから時間があるようで家庭教師や塾の講師を考えていたからな。ただそんなことしたら幾ら何でもまずいだろ。

 

「ま、待ってくれ。お前たちが来たら俺が劣情を催すかもしれないから止めてくれ」

「大丈夫だよ、私達の力でもみ消すよ」

「俺は普通に高校生活を送りたいんだよ」

「..八幡。私はあなたと3年生の時もこの部室で一緒に過ごしたかったわ。でもあの事件が有ってからここで勉強会もしていたけれど、泣いていた事ばかり思い出すのよ」

「うん、ここでゆきのんが淹れてくれた紅茶を飲んでさ、皆でずっと笑っていたかった。でもあの時からそういう思い出がないの」

「先輩は何時でも来れる場所ですけど、私達は中々来れないんです。私は先輩達が卒業した後、小町ちゃんがここに居ても近寄れませんでした。ここに来るといつも泣いてしまって辛かったです」

「そうだし、あーしもここでヒキオを好きになって、ここでみんなと仲良くなったんだし、でもあれから勉強会の事しか覚えてないし」

「私もそう。私はいつも一人でいたけど、ここに来るようになってから皆で笑いあえていた。私の作った弁当のおかずを皆が美味しいって言ってくれてさ。でもあの事件からここで笑う事は出来なかったよ」

「ハチ、私もだよ。依頼で奉仕部を壊しかけたけど、私を受け入れてくれたのもここなんだよ。でも事件が起こった時、私があんな依頼しなかったらこんな事、起こらなかったんじゃないかって高校の時から今でも考えてしまうんだ。もしかしたら私がハチや皆の五年間を奪ったんじゃないかって考えちゃって...」

「うちもここで過ごした時間が忘れられない。高校の思い出って思い出すのはほとんど、八幡やこの部室に関係あることばかりなんだ。でも途中からはここには悲しい思い出しかないよ」

「そうだな、最初は私が無理やり連れてきたが、今では八幡が自分から来てるのだろ。八幡にとって大切な場所であると同時に私達にとっても大切な場所なんだよ」

「うん、だからここで八幡君と過ごしたいんだよね。悲しい思い出でこの場所を取っておくのも大事だよ、でもさ八幡君が居るんなら一緒に過ごして楽しい場所に変えたいって思うのは当たり前だよ」

「私とかおりは、ここの思い出ってほとんどないよ。だからこれからでも皆で作っていきたいな」

「それある!!皆でここで楽しい思い出になるようなことをやりたい。私と千佳は学校が違ったからしょうがないけど、高校の話になると疎外感って言うのかな、聞き手になるしか無かったんだよね」

「私もそうだよ、ハチ君とここで過ごしたことって余りないまま、卒業しちゃったから」

 

そうだったな、俺に記憶はないが嫁さん達の何人かは俺がいない時の1年間をここで過ごしたんだ。その間、特に雪乃は自分を責め続けていたと結衣から聞いていた。だが姫菜もそんなことを考えていたんだな。

俺もここで辛いことはあったが最後には皆のお陰で今では良い思い出となっている。雪乃や姫菜は悪くないのだが、自分の中では今だに自身の事を許せていないのかもしれない。俺達の大事なこの場所では楽しい思い出で上書きしてほしい。

 

「...留美、亜衣。俺からもお願いしたい。皆をここに受け入れて貰えないか」

「..うん、ここでイチャイチャしないなら良い」

「あたしもそれなら良いかな」

「ありがとうな」

 

「じゃあ材木座君と弟君にラノベを書いてきてもらおうか」

「は!?わ、我もですか」

「当たり前だし、中学生はババァって言ったんだから鍛え直さないと駄目だし」

「うん、義輝くんにこの間、セーラー服着させられた時から怪しんでいたけど、ロリコン治してもらわないと」

「ま、真奈殿!?真奈殿も制服やブルマを履いて喜んでいたではないか!!寝間着にも使っているであろう!!」

「そ、そんなこと言わないでよ//」

「八幡もだ!!制服プレイしたと言っておったではないか!!ブルマは我と一緒に買ったであろう!!誰に履かせたのだ。その時一緒に注文したスクール水着は平塚女史に着せると言っておったな!!」

「..だ、だって着ないと抱かないって言われたもん//」

「制服は誰..かな」

「う、うち//八幡が屋上プレイしたいと言って文化祭で見つけてくれた時の再現をベランダでして虐められた//」

「..ブルマは誰なのかしら」

「私です//先輩が夜の運動会って言って私が生徒会長で挨拶しているとき責めらて、夜の組体操をしました//」

「生徒会長なら私でも良かったでしょ!!八君!!」

「ハチ、私なら実況してるとき、責めるってプレイが出来たよ!!」

「めぐりも姫菜ちゃんもそういう事じゃないでしょ」

「..ハルさんも人の事言えないですよ。千佳ちゃんのナース服持ち出してましたよね」

「え!?」

「ごめん千佳ちゃん。勝手に借りちゃった。でも着れなかったよね、結衣ちゃん」

「うん、あたしはかおりんの着たけど胸のボタンが止めれなくて諦めたし」

「「クッ..」」

「あ、あんたら、あーしの知らないところで何してんだし!!」

「優美子も人の事言えないじゃん。サキサキと二人でヒッキーが入院中、動けないからって幼児プレイしてたし。さすがにエッチなことはしてないみたいだけど」

「え、エッチしてないから良いだろ//」

「はぁ、本当にあなた達は何をしているのかしら」

「それある!!でもさ、雪乃もやってたよね」

「何をかしら、私は普通よ」

「ふーん、ゆきにゃんが普通なんだ。じゃあ毎日猫耳付けてね。ウケるし」

「ごめんなさい。でもそんなこと言ったら、かおりも・・・」

 

ギャーギャー

 

嫁さん達が夜の営みを暴露しだした。材木座弟はラノベで股間を隠しているし、義輝と真鶴は二人で何か話している。聞こえてくる内容がコスプレとか今日の夜とか言っているので放っておけば良いだろう。

俺の横では留美と亜衣が顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「すまない、二人とも。こんなことを聞かせて」

「ううん、でもなんだか羨ましい」

「ルミルミ、エッチが羨ましいの?」

「馬鹿//..ちょっと前まで皆、涙溜めて泣きそうだったのに今ではあんなに楽しそうにしてる事」

「うん、皆凄く良い笑顔だし」

「八幡、私はあの中には入れないのかな」

「あたしも入りたいよ、ハッチー」

「..ここで一緒にラノベの批評をしながらでも遅くないだろ。俺は嫁さん達の事が好きだ。だが留美と亜衣の事、正直に言うと今はそういう感情はない」

「うん、分かっている。だから今は少しでも近くで私達をみていてほしい」

「そうだね、ルミルミとあたしに惚れさせないとね」

「..留美、亜衣」

 

俺はこの二人とどうなりたいのだろう、今はまだ分からない。それはこの部室で俺達が今から作っていけばいいのだろう。

義輝が書いたラノベにより、俺の周りは変わっていった。それが良かったのかは今でも分からない。でも俺はそれを失いたくないと思っているのだから、俺にとっては良かったことなのだろう。

 

「八幡、我もまた書かないといけないのか、そんな時間はないぞ」

「息抜きにでも書いたらどうだ、今のお前ならファンタジーでもSFでも問題ないだろ」

「..そうだな、皆で書いたものをそのまま書籍化すれば一石二鳥になるな。お主の伴侶は皆ヒロインに出来るし、お主がここで行ったことを書くのも面白そうだな。皆がチョロインなのは改変するしかなかろうが、歳を食っておるでな。皆が高校生の設定であれば問題なかろう」

「....義輝、後ろ」

 

俺がそう言うと、義輝は振り返ったが後ろ姿からでも分かるぐらい動揺しだした。義輝の前には真鶴をはじめ、俺の嫁さん達が並んでいる。

 

「義輝君、私も歳を取ってるんだ。やっぱりババァなんだね...」

「い、いや真奈殿。あれはあれでして」

「貴方にはやはり再教育が必要なようね」

「中二って本当にロリコンなんだ」

「木材先輩。私達が主演のラノベなら、もちろん出演料は頂けるんですよね」

 

義輝は再度、正座をさせられ皆に責めたてられていた。俺は呆れながらも見覚えのある光景に懐かしさを感じている。

これからの一年間、またこの部室でいろいろな事が起こるのかもしれない。それもこれからの俺達にとっては掛けがえのない思い出になるのだろう。

 

「やはり材木座が書くラノベは間違っている」

 

誰かが発した言葉に俺は同意しながらも、今度は義輝にどんなラノベを書いて貰えるのか楽しみになっていた。

 

 

-完-




これでこのSSは終わりにさせていただきます。
今まで駄文を読んでいただいた方、コメントを頂いた方、ありがとうございました。

また、機会があれば何らかの投稿をさせていただくつもりです。



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シュタゲった?ゆきのん。
「嫌な顔?されながら...」


一度終わらせましたが、続き?を書いてみました。





「..........」

 

私はいつの間にか眠ってしまったようね。でも目に飛び込んできたのは懐かしい部屋だわ、ここは私が以前一人暮らしをしていた時のマンションのようだけれど、どうしてここで寝ているのかしら。

 

ッ!?

 

リビングに行くため、起き上がり歩いていくと姿見に写った私の姿を見て唖然としてしまった。

..若い。いいえ、幼くなっていると言った方が良いのかしら。学校帰りにそのまま寝てしまったようで、制服を着てあどけなさが残る昔見慣れた姿に驚き、暫く立ち尽くしてしまった。

机の上にはスマホが置いてあるのだけれど、昔使っていた物のようね。画面で日付を確認すると、私が初めて八幡に告白しキスした前日を指している。

 

もしかして意識だけが過去に跳んだ?..今までのことは夢だったのかしら。それとも今も眠っていて夢を見ているの?

確か私は一人で実験中かなり疲れてしまい、疲労困憊と空腹で意識が朦朧としてたので、なにか食べようと電子レンジに食べ物を入れスイッチを押したけど、なぜバナナが電子レンジの中で回っているのだろうと思った直後、気づいたらこのマンションにいた...

 

でも過去に意識が跳んだのでも、今までのことが夢でも私が見た未来を変えることが出来るのかもしれない。皆で結婚生活を過ごした日々は楽しかったけれど、八幡と過ごせなかった五年間を取り戻せるかもしれないのね。

 

確か私は告白しキスした前日、八幡に連絡して部室に来てもらったはず。私が告白しなければ皆も告白せず未来が変わるのではないかしら。

私はスマホで八幡に連絡していないかを確認したけれど、まだしていなかったようね。これで未来を変えられるかもしれない。夢だったのかもしれないけれど、少しでも不安要素は消していきたいわ。

 

でも本当に夢だったのかしら。何とか確認したいけれど、何かいい方法はないかしら...

 

『やっはろー、ゆきのん。どうしたの』

「こんばんは。一つ確認したい事があるのだけれど良いかしら」

『何?』

「...由比ヶ浜さんの従妹で荒井浜亜衣さんって居るかしら」

『..ねえ、ゆきのん。どうして名字呼びに戻っているかな』

「ご、ごめんなさい。さっきまで寝ていたのでまだ寝ぼけているようね」

『うん、荒井浜って名字は知らないし。でも亜衣ちゃんならいるよ、あたしたちより五個下だから今は中学1年だよ』

「..そうなのね、荒井浜亜衣さんって子と出会ったのだけれど、結衣に似ていたのでもしかして従妹ではと思っただけなのよ」

『そうなんだ、でも荒井浜って知らないかな』

「そう、ありがとう。では電話を切らせてもらうわね」

『ま、まってよ。ゆきのん。ちょっとはお話ししようよ』

 

結衣はそう言って、この後一時間は話していたわ。でもよかった、あれは夢だったのね。結衣にそれとなく聞くと、やはり八幡には誰も告白していないようね。でもその前の姫菜のラノベによる修学旅行の件については結衣も知っていたので、やはり八幡には改めて謝罪したいわ。

 

私は結衣との会話が終わった後、夢のことを思い出していた。何時もは夢を見ても余り覚えていないのだけれど、今回のは今でも内容を凄く良く覚えているわ。初めて病院で八幡に抱かれたことも//

私は兎に角何でもいいので、覚えていることを日記として残しておくようにした。とても夢という言葉では片付けれない記憶だったから...

 

次の日、念のため朝早く部室に行ったのだけれど、八幡は来ないようね、よかった。でも安堵とともに少し寂しく感じてしまう。これで八幡との初めての口付けも無かったことになってしまうのだから。

でも部室に入った時、思わず「奉仕部よ!私は帰ってきた!!」と心の中で叫んでしまったのだけれど、どうしてガトーなのよ。普通に「ただいま」と言えばいいのに。...どうしてガンダムを覚えているの?やはり遡っているのよね。ガンダムは八幡が倒れてから材木座君と姫菜に進められて見たのだから。

昨日は日記を書いていたので、今日の予習もせずに授業に出たのだけれど、内容は全て聞き覚えのある内容だったわ。

 

放課後、部室に集まっていたけれど、私以外は特に変わった様子はないわ。八幡と結衣、沙希さん、小町さんが今は私の淹れた紅茶を飲んでいる。

今日は材木座君が沙希さんのラノベを書いてきたということで私に渡してきたのだけれど、内容はもしかして夢の中と同じかしら。部室に集まったのは以前と違う人達だけれど、なんとか告白の流れに持って行かないようにしないと行けないわね。

 

このラノベ、沙希さんが全く出て来ないじゃない、私と結衣、優美子さんが出ているけれど、恋愛でもないし、私が小馬鹿にされているように感じるのだけれど。

私が指摘する前に皆に読んでもらった方が良いわね。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

by雪乃

 

「分かったわ、八幡が私に勝てるわけないと思い知らせてあげる。私が負けたら貴方の言う事、なんでも聞いてあげるわ」

 

私は八幡の挑発に乗り勝負に乗ってしまった。私が勝てるわけないが勝負で。

 

「くっ...私の負けよ。私に何をさせたいの、どうせ貴方のことだから厭らしいことを考えているのでしょ」

 

私は勝負に負け八幡の言うことを聞かないといけなくなってしまった。身体を求められ貞操を奪われ私は八幡の慰み者にされるのね、写真を撮られ何度も脅され凌辱し、避妊なんてしてもらえず八幡の子供を身ごもり、逃げることもできず八幡と子供のことを一生面倒見させられるのよ//

 

「え!?パ、パンティを見せてほしいですって...」

 

身体を求められるのではないの?いいえ、八幡のことだから私が恥ずかしがっている姿を堪能してゆっくり手篭めにしていくつもりなのね。

 

「は、早くしろって...わ、私にも準備があるのよ//」

 

私は今日履いてきたパンティのことを思い出そうとして、でも思い出せずにいた。変なのは持っていないから大丈夫と思うけれど、覚えていないのは不味いわ。

 

「わ、分かったわ。ではどうすれば良いのかしら」

 

八幡は私を立たせ椅子を私の前に持ってきて座ると、彼を見下ろしながらゆっくり焦らすようにスカートを上げて行け。と命令されていた。

 

私は部室で何をしているのだろう、私の前に八幡が座り私はゆっくりスカートを上げている。本当に恥ずかしいわ。

 

「は、八幡。まだ上げないといけないの」

 

私がそう言うと八幡は小馬鹿にするような顔で私のことを見ていた。

 

「た、確かに私が負けたのよね。分かったわよ、パンティ何て単なる布よ。そんなものを見たいなんて貴方の思考はどうにかしているわ....そんなことはどうでも良いって....は、早くしろって。わ、分かったわよ」

 

早くしろ。と言われて私は諦めゆっくりスカートを上げて行った。手が震えてしまう、八幡の目の前でパンティを晒すなんて。

 

私は完全に上げ終わると顔を背け悪態をついていた。

 

「八幡は異性のパンティを見たことないのでしょ、貴方に見せてくれる人なんていないわね。私のような女性のパンティを見て興奮しているのは分かるのだけれど、何か喋ったらどうなの。私にこのような格好させて本当に軽蔑するわ....はい?そんなパンティじゃ興奮もしない?」

 

何を言っているのかしら、覚えていないけれど私の持っているのは全て普通のパンティだったはず...

 

「え!?ぱ、パンさんパンティなんて幼女でも履かないですって。貴方にパンさんの何が判るのよ。パンさんは...か、帰るってどういうことよ、ね、ねえ八幡待ちなさい。貴方はこれから私を凌じょ」

 

八幡は帰ってしまった。どうしてパンさんパンティが駄目なのよ、私は自分でスカートをたくし上げ確認したけれど、パンさんが私を見つめてくれていた。

 

「...この良さが分からないなんて八幡を教育する必要があるわね」

 

私は何時までも一人、部室でパンさんと睨めっこしていた。

 

 

by結衣

 

「ヒッキー、どうしたの。今日は部活ないって言ってたよ」

 

ゆきのんが風邪をひいたので部活がないって平塚先生が言っていたけど、あたしはヒッキーに呼び止められ付いて来てほしいって言われた。

 

「ね、ねえヒッキー、屋上に来てどうするの」

 

も、もしかして告白してくれるのかな、ど、どうしよう。心の準備が...でもヒッキーが告白してくれるなら嬉しいな。もしそうならヒッキーに飛びついてキスしちゃお//

 

あたしとヒッキーは屋上で向かい合っている。ヒッキーは恥ずかしそうに顔を赤くしてるんだけど可愛いな。そんなに照れなくてもいいのに。あたしはヒッキーから告白してくれるのをずっと待っていた。

 

「...へ?ね、ねえ、ヒッキーもう一回言ってくれるかな」

 

あたしの聞き間違いだよね。うん、告白にパンティは関係ないよね。

 

「パンティを見せてほしい...ねえヒッキー。屋上に連れてきたのはそのため?」

 

ヒッキーは大きく頷いてて目を輝かせる。今までヒッキーのこんな顔見たことないんだけど。あたしはヒッキーを軽蔑の目で見ていた。

 

「その表情でスカートを上げてほしいって、何言ってるしヒッキー!!」

 

ヒッキー、あたしの気持ち全然わかってないじゃん!!もし付き合えればパンティ何て幾らでも見せてあげるし、なんだったらあたしの裸も//でもどうしよう、ヒッキーは今でも真剣な顔してて何だか、あたしが断るのが悪いことみたいに思っちゃう。

 

「ヒッキー、その、..本当に見たいの」

 

ヒッキーはまた大きく頷いて、あたしに「お願いします」って言ってる。その前に一言「付き合ってください」って付けてくれれば良いのに...

 

「はぁ、...どうすれば良いの」

 

あたしがそう言うとヒッキーは床に正座しだして、ゆっくりスカートを上げてほしいって言ってきた。

 

「じ、じゃあ、上げるね」

 

あたしがスカートを上げて行くと、ヒッキーの目はまた輝きだしていた。はぁ、でも今日のあたしが履いてきたのって、パンティじゃなくて...

あたしはスカートを一気にたくし上げていた。

 

「へへ、今日履いてきたのって以前貰ったヒッキーのパンツだよ」

 

あたしがそう言うと、ヒッキーはなぜか私を蔑む目で見てきて、けっ。とか言いながら屋上を出て行った。え?あたしが悪いの?あたしはスカートをたくし上げたまま、ヒッキーが出て行った扉を眺めて固まっていた。

 

 

by優美子

 

あーし達は昼休みに戸塚のテニスの練習を手伝っていたため、テニスコートに来ていた。あーしはテニスウェアに着替え戸塚の相手をしている。ヒキオも一緒にテニスをしているんでこの時間は凄く楽しかった。

戸塚が顧問の先生に放送で呼ばれたので、あーしとヒキオ二人でテニスをした後、休憩していた。

 

「なに?お願いって」

 

ヒキオはあーしに何かお願いがあるって言って頭を下げてきた。なんだろ、ヒキオの言うことなら何でも聞いてあげたいけど。

 

「はぁ!?ぱ、パンティ見せろってなんだし!!」

 

ヒキオは頭を下げたかと思うと、パンティを見せてほしいって言ってきてた。

 

「残念でした。テニスウェアの下はアンダースコート履いてるし」

 

そう言ってあーしがスコートの裾をヒラヒラさせるとヒキオはアンダースコートを脱ぐ姿が見たいって言ってきた。

 

「は、はぁ!?な、何言ってんだし!!そんなこと出来るわけないし//」

 

ヒキオはそう言ってもあーしから目を離さず、真剣にお願いしてくる。うぅ、そんな眼で見られるとお願いを聞いてあげたくなるし...

 

「わ、わーたし、アンダースコートを脱ぐだけだし//」

 

そう言ってあーしは両サイドからスコートの中に手を入れ、アンダースコートを脱いでいった。

 

「はぁ!?ゆっくり艶めかしくってなんだし//」

 

ヒキオはあーしが脱いでいるとき、注文を付けて来てた。な、何言ってんだし//こんなのちゃっちゃと脱げばいいし//あーしはパンティが見えないように注意しアンダースコートを脱いで足首から抜き取っていた。

 

「ヒキオ、こんなの見たかったわけ」

 

あーしがそう言うとヒキオは今度、パンティを見せてほしいと言ってきた。あーしは思わずカッとなって手に持っていたアンダースコートをヒキオに投げつけたけど、ちょうど顔面に当たってしまっていた。

ヒキオは顔から取ると凄くニヤけた顔をしてて、あーしは思わず頬を引っ叩いていた。

 

「ひ、ヒキオのエロ親父!!」

 

あーしは荷物も持たずに駆け出していた。思わず叩いちゃったけど、ヒキオが悪いんだし...でもちょっと悪いことしたかな、荷物も置いてきちゃったし。あーしはテニスコートに戻って行った。

 

「...あれ、何してんだし」

 

ヒキオはあーしのアンダースコートを大事そうに抱え、たまに見たかと思うと周りを確認してから顔を埋めて、ニヤけた顔しながらテニスの後片付けをしてた...

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「「「....」」」」」

「材木座、何で俺がこんな変態なんだよ」

「何を言っているのだ八幡。沙希殿とイチャイチャチュッチュしておるだけだぞ」

「確認してみろ」

 

そう言って八幡は材木座君に投げつけるようにラノベを返していた。材木座君は冒頭を見ただけで冷や汗をかきだしているわね。

 

「...ま、間違って渡してしまったようだな、ははは...帰ってよろしいでしょうか」

「いいえ、これもラノベなのだから批評しましょうか。どうして私と結衣、優美子さんだけが出ているのかしら」

 

本当は私が犯されるのを望んでいることについて聞きたいけど、今の私もこの気持ちと変わらないから会話にしない方が良いわね。

私は勝負ごとに熱くならないよう大学時、姉さんに仕込まれたわ。今のままでは取り合えしの付かないことに巻き込まれるかもしれないと、毎回勝負を挑まれ負けると恥ずかしい格好をさせられたりしたので、簡単な挑発には乗らなくなったわ。

今では姉さんに感謝しているけれど、高校の時もしかしたらこのラノベに書いてあるようなことになっていたかもしれないのね。八幡相手なら良いのだけれど//

 

「..我には女性が普通に恥ずかしがっている姿を書けなかったのだ。例えば沙希殿だと以前聞いた話では黒のレースと言っておったが、それだと普通に恥ずかしがるであろう。思いついたのがお三方なのだ」

「材木座、お前の普通が分からないが、別に全員、ネタ下着で良いだろ」

「八幡、私のパンさんショーツがネタとはどういうことかしら」

「い、いや、...雪乃、もしかしてパンさんの下着持っているのか」

「ええ、今履いているので見せてあげましょうか」

 

なぜか八幡と材木座君は私がそう答えると顔を赤くしだしたわね。結衣と沙希さん、小町さんは唖然としているのだけれど。高校生だからショーツの一つで照れてしまうのね。

これは私にとって有利になるかもしれないわ、皆が照れて恥ずかしがっている間に私が八幡を手に入れればいいのね。

皆での結婚生活も楽しかったけれど、今はどうなるか分からない。それなら私が選ばれるように努力するしかないわね。

 

「...やはりコレクターであれば、何時でも身に着けていたいと思うので使わせてもらったのだ。ネットで検索したらパンさんのペアパンツと言うのが有ったので女性用でもあるのだろうと」

「材木座君、それはどこにあるのか教えなさい」

 

パンさんのペアパンツなんてあるのね、八幡とお揃いで下着を揃えたいわ。

 

「ゆきのん、後で良いじゃん。あたしもさ、何でヒッキーのパンツ履いてんだし」

「それは撮影会の時、八幡のパンツを履いていたと皆で集まってた時に言っていたであろう」

「うん、確かに貸して貰ってるけどさ。学校には履いてこないし」

「だが八幡にパンツを返してないって言っておったので履いておるのであろうと」

「...う、うん。何だか履き心地が良くて//」

「...結衣、もう返さなくて良いからな」

「えー、でも悪いじゃん。...じゃあさ、ヒッキーの新しいパンツ一緒に買いに行くし」

 

結衣はまだ返していなかったのね。でも一緒に買いに行くってデートするつもりかしら。

 

「いや良いよ。2個入り千円以下の安い奴だぞ」

「えぇ良いじゃん。その..あたしとペアパンツ買おうよ//ヒッキーが選んで良いよ//」

 

結衣は何をサラッと提案しているのかしら。それなら私も。

 

「八幡、私もパンさんのペアパンツがあるなら欲しいわ。一緒に買いに行くわよ」

「じ、じゃあ、私も一緒に買いに行くから//」

 

沙希さんも一緒に行くと言ってきたけれど、沙希さんもペアのショーツを買うつもりかしら。

 

「はぁ、パンツばかり買ってもしょうがないだろ、雪乃もパンさんのペアが欲しいなら男性用を自分で履けばいいだろ」

 

はぁ、本当に八幡は分かってないわね。好きな人と一緒の物を身に付けたいんじゃない。

 

「お兄ちゃん、ちょうど良かったじゃん。お兄ちゃんのパンツ、ヨレヨレになってたよ」

 

なぜか今回ショーツの話ばかりになってしまったわね。

材木座君が沙希さんのラノベも持ってきてたと言うことでとりあえずショーツの話はこれで終わりね。

 




途中からの分岐にしようと思ったのですが、どうせなら話を
続けた方が良いと思い、本文のようにしてみました。

後で気づいたのですが、余り関係なかったような気が...


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「お兄ちゃん」

「申し訳ない、先ほどのは誤りでこちらが沙希殿のだ。幾つか書き溜めてあるのだが今回はこれでお願いしたい」

「材木座、今回のはまともなんだよな」

「ああ、先ほどのはお遊びで書いたものだ。今回のは多分大丈夫だ」

「多分って...」

「では雪乃殿にお願いしたいのだが」

 

私はラノベを受け取って読み終わり大きく息を吐き出して安堵していた。私が知っている内容と違い今回は私の知っている告白大会のようなことにはならないでしょうから。

ラノベの内容もかなり違うわね。でも私が八幡に電話しなかったぐらいで、ここまで過去の出来事は変わるのかしら。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「はぁ..何だか疲れたな...」

 

私は放課後、公園のベンチに腰かけていた。何時もならけーちゃんを迎えに保育園に行き、家に帰って母親と一緒に食事の用意をしてお風呂の掃除や洗濯物を取り込み、そしてけーちゃんをお風呂に入れる。その後、けーちゃんを寝かせるため、布団に添い寝して眠ったのを確認するとようやく、自分の時間になって勉強が出来る。

 

でも昨日から両親は法事があり泊りで出かけているので家にいない。一日しかたっていないのに私の身体は疲労を訴えている。そろそろ保育園に迎えに行かないといけないのに身体が言うことを聞かず、動くことを拒否していた...

 

「どうしたんだ沙希、こんな所で」

「..八幡」

「何だか疲れた表情しているな...」

「ううん大丈夫。じゃあ私は行くよ。けーちゃ、京華を迎えに行かないといけないから」

「..沙希、俺も付いて行って良いか、けーちゃんに久しぶりに会いたくなったから」

 

八幡はそう言って保育園に一緒に来てくれた。でも私の疲れた表情を見られたくない。けーちゃんと話したら帰って貰おう。

 

保育園に私と八幡でけーちゃんを迎えに行くと、けーちゃんは八幡に抱きついて行った。私が先生にお礼を言っている間も、けーちゃんと八幡は何か話していて、けーちゃんは凄く喜んでいた。

 

「沙希、けーちゃんと遊ぶんで俺も家にお邪魔させてもらうからな」

「そんなこと良いよ。八幡も早く帰った方が良いだろ」

「今日は帰っても小町が遊びに行っているから良いんだよ」

 

私は疲れているからあまり見てほしくなかったんだけど、けーちゃんの相手をしてもらえるなら、助かるので私は了承していた。

 

「お兄さん、いらっしゃい」

「...大志、今日一日は俺が兄貴だから、いうことを聞けよ」

「え!?は、はい!!」

「八幡!?何言ってるの」

「沙希、今日は俺が色々するから、お前は休んでていいぞ」

「何言ってんだよ、それは私の仕事だから」

「今日はお兄ちゃんなんだから、沙希も俺のいうことを聞け」

「で、でも」

「反論禁止。なんだったら俺に甘えても良いぞ」

 

そう言うと八幡は強引に私の手を引き、自分が座っている股の間に私を座らせて後ろから腰に手を回して頭を撫でてくれていた。なんだかすごく落ち着くな。私が目を瞑っていると八幡はずっと撫でてくれていた。暫くはこうして居たいな、私は身体を八幡に預けて撫でて貰っていた。

 

私は何時の間にか眠ってしまったようで、起きると弟妹が八幡と一緒にパスタを食べていた。え!?誰が用意してくれたの?

 

「起きたか。沙希」

「う、うん。誰がご飯の用意をしてくれたんだ」

「姉ちゃん。お兄さんがしてくれたんだよ、茹でただけだけど」

「大志、お前何も出来ないのに文句を言うなよ」

「は、八幡。...その、ありがとう」

「沙希、今日はお兄ちゃんだろ」

「う、うん、お兄ちゃんありがとう//」

 

私は顔を真っ赤にしながら、八幡にお礼を言っていた。横を見ると洗濯ものも取り込んでもらっていたみたいで、服が畳まれていた。その服の上には私の黒いレースの下着も...

 

「誰が洗濯物を畳んでくれたの」

「お兄さんがしてくれたよ」

「わ、私の下着も//」

「ああ、悪いと思ったが沙希の手伝いをしたくてな//」

「ううん、ありがとう//」

「姉ちゃん、顔真っ赤だし」

「う、うっさい!!大志!!」

 

今日は八幡のおかげで大志もお風呂の掃除や食器の後片付けを手伝ってくれている。大志は八幡の言うことはよく聞いていて、私が部屋の掃除をしようとすると、八幡と大志が代わってくれて沙希のしたい事をしろって言われたので、私は勉強をすることにして自分の部屋に入っていった。

 

なんだか今日は集中してできる。八幡が色々してくれたおかげかな、私は時間を忘れて勉強に集中して打ち込んでいた。

 

結構できたな、何気なく時間を見ると時計は10時を指していた。え!?ど、どうしてこんなに時間が経ってるの!?私は大急ぎで下に降りて行くと、八幡と大志がソファーで寛いでいた。

 

「え!?あれ、け、けーちゃんは?」

「ああ、俺が風呂に入れて寝かしておいたよ」

「あ、ありがとう。八幡」

「姉ちゃん、お兄さんだろ」

「お、お兄ちゃん、ありがとう//」

「お兄さん、今日は泊っていくって。だから姉ちゃんもお兄さんにお風呂入れて貰ったら?」

「な、なに言ってんの!?大志!!」

「そうだな、一緒に入ろうか。沙希」

「あ、あ、あんたも調子に乗って何言ってんの!?」

「俺って沙希に嫌われてたんだな、大志」

「うん、俺も姉ちゃんに嫌われてて一緒に風呂入ってくれないし」

「...ふ、ふーん。そう言うこと言うんだ。じゃあ、お、お兄ちゃん。一緒に入るよ//」

「は!?へ!?い、いや冗談だから」

「お兄ちゃんは沙希のこと、嫌いなんだ...」

「お兄さん、姉ちゃんのこと嫌いだったんですね。可哀想な姉ちゃん」

「た、大志も何言ってんだよ!?」

「ほら、お兄ちゃん。お風呂に行くよ//」

「お、俺、けーちゃんと入ったから!!」

 

私は顔が真っ赤になっていたけど、八幡の腕を引っ張っていき、お風呂に連れて行った。

先にお風呂に入ってもらい私は八幡が脱衣所からお風呂に入っていったのを確認すると、私も脱衣所に入っていった。大志は本当に入るのかよ。ってビックリしてたけど、私の方を見て、頑張れって言ってくれた。

うぅ、恥ずかしいな。いざ服を脱ぐとどうしても戸惑ってしまう、でも私は勝負を決めるため、あえてタオルで身体を隠さず裸のままお風呂に入っていった。

 

「お、お邪魔します..」

「ど、どうじょ...な、何で裸なんだよ//」

「お、お風呂だから当たり前だろ//」

「じゃあ、俺は出ようかな//」

 

八幡は湯船に入っていたけど、私の裸を見た後すぐに目を逸らしていた//多分私が身体を洗っているうちにお風呂から出て行くつもりだろう。私はお湯を浴びた後、すぐに浴槽に入り八幡の前に座り身体を預けた。

 

「さ、沙希//不味いって」

「..お兄ちゃん、頭撫でて」

「..ああ」

 

八幡の左手は私の腰に手を回して右手は頭を撫でてくれている。心地いいな、私の背中に当たっている股間が気になるけど、私はいつの間にか緊張が解け八幡に身体を預けていた。八幡は唸っているけど、私の頭をずっと撫でてくれている。

 

「さ、沙希。そろそろ出ないか、のぼせそうなんだが」

「..うん、また一緒に入ってよ」

「き、機会があればな//」

 

八幡は先に上がっていった。さすがに裸を見ることは出来なくて目を瞑っていたけど。でも今になって凄く恥ずかしくなってきた。どうしよう、この後顔を合わせられない//

 

私がお風呂から上がっていくと、八幡は私と目を合わせてくれない。でも顔を真っ赤にしてて、凄く可愛く見えてきた。

 

「ねえ、お兄ちゃん。き、今日は一緒に寝るよ。客用の布団無いから」

「な、何言ってんだ!?た、大志の部屋で寝させてもらうから」

「お兄さん、俺の部屋は駄目っすよ。男と一緒の布団に入るつもりはないですから」

「お兄ちゃん、沙希の事、嫌いになった?」

「お兄さん、良いじゃないですか。姉ちゃんとお風呂入ってイチャイチャしてたんですから」

「な、なに言ってんだよ//大志」

 

その後も八幡は文句を言っていたけど、私が上目遣いでお願いすると渋々了承してくれた。

 

「沙希、入るからな//」

「う、うん//」

 

今日は両親が居ないので、私はけーちゃんの布団に入っていた。けーちゃんの布団は何時もは母親が一緒に寝ていてダブルの布団なので大きさは十分だった。今は私、けーちゃん、八幡と川の字になって横になっている。

 

「...今日はありがとう、八幡//色々してくれて」

「..沙希が無理するぐらいなら、俺で良ければ何時でも頼ってくれて良いからな」

「うん、..また一緒にお風呂入ってよ」

「..お風呂は取り返し付かないことしてしまうから勘弁してくれ」

「駄目なの、お兄ちゃん...」

「その..今はこれで勘弁してくれ。沙希」

 

八幡はそう言い起き上がってきて、けーちゃんを跨ぎ私の方に上半身を寄せてきてキスしてきた。私のファーストキス。唇が触れるだけのキスだったけれど、私は幸福感に包まれていた。

 

「八幡//」

「沙希のお兄ちゃんにはなれないが、けーちゃん達のお義兄ちゃんになら成れるからな//」

 

私も上半身を起こすと八幡はまたキスしてくれた。私は嬉しくて八幡に抱きつき、何度もキスを求めていた。

 

今は二人ともけーちゃんを挟んで横になっていて、身体を向かい合うようにして、けーちゃんのお腹の上にお互い手を繋いで置いている。

 

「何だか子供が出来たみたいだね//」

「ああ、何時か本当の家族になればこうやって何時までも手を繋いでいられるな」

「うん//おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

この日から八幡は私の家によく来てくれて、色々手伝ってくれている。勉強もいつも一緒にしていたけれど、今日は珍しく家には誰もいなかったので、二人で受験勉強に関係ない、保健体育に力を入れていた//

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「は、八幡兄貴//」

「さ、沙希!?何言ってんの!?」

 

沙希さんがいきなり兄貴と呼びだして驚いてしまったわ。でも私もこのラノベのように甘えたいわね、兄さんが居たらと考えたこともあったけれど、居るのであれば八幡のような兄さんが良いわ。

 

「に、兄さん。私も甘えさせて欲しいわ」

「雪乃もなに言ってるの!?」

「う、うん。あたしもおにぃが欲しいな」

「結衣も!?なんだよ、おにぃって」

 

沙希さんと私、結衣が八幡のことをそう呼ぶと、小町さんが怒りだしてしまったみたいね。

 

「沙希さんも雪乃さんも結衣さんもいい加減にしてください!!お兄ちゃんは小町だけのお兄ちゃんですよ!!」

「私には兄貴居ないから偶には良いだろ、小町」

「駄目です!!お兄ちゃんは小町のお兄ちゃんです!!」

「小町さん、私も兄さんが欲しいわ」

「雪乃さんは陽乃さんが居るじゃないですか!!陽乃さんに甘えてくださいよ」

「兄さんが良いわ、私を甘えさせてほしいもの」

「あたしは良いよね、一人っ子だし」

「うぅぅぅ、お兄ちゃん!!今日は小町と一緒にお風呂に入るからね!!」

「「「えっ!?」」」

「小町、何言ってんだ!?」

「昔は一緒に入ってたじゃん!!だから今日は洗いっこするの!!」

「昔って小学校のころだろ、もう高校生だぞ」

「お兄ちゃん。小町に欲情するの?」

「するわけないだろ、兄妹なんだから」

「じゃあ良いよね。お兄ちゃんは今日から小町と入ること!!」

 

ま、まって。もしかして私が告白しなかったから小町さんがライバルとして入ってくるのかしら。八幡のシスコンぶりには呆れさせてもらえるけれど、小町さんも極度のブラコンだったわね。そう考えると一番厄介な相手が出てきたことになってしまうわ。

 

「ぬ、主らは何をやっているのだ!!八幡、我のラノベの批評は!!」

「..俺は何もしてないだろ」

「皆さんがおかしなこと言い出すから、批評出来ないじゃないですか!!」

「..小町さんも一緒と思うのだけれど。でもそうね、まずは批評しないと行けないわね」

「じゃあ、あたしから。中二、どうしてけーちゃん喋ってないの。はーちゃんとの会話が欲しいな」

「...書き忘れたのだ」

「材木座、...どうして私の下着が黒のレースって知ってるのさ」

「沙希さん、それ以外も持っているのでしょ。材木座君が見たわけではないのでしょうから」

「...昔、八幡に見られてさ。それが、その...黒のレースだったから//」

「そういえば何時か言ってたね」

「我は以前ラノベの批評の時、聞いたのを思い出したのだ」

「お兄ちゃん。小町のなら幾らでも見てるでしょ!!」

「..小町。俺は何も言ってないだろ。大体小町は黒のレースなんて持ってないだろ」

「..八幡、どうしてあなたが小町さんの下着を把握しているのかしら」

「俺が洗濯物を取り込むこともあるからな」

 

そういえば私が泊りに行っていた時は誰が洗ってくれてたのかしら。もしかして八幡が//抱き合うとき、下着は幾らでも見られているのだけれど、もし八幡が洗ってくれているのなら恥ずかしいわね。

 

「お兄ちゃん、今日の帰り下着買いに行くからね」

「はぁ!?勝手に買いに行けばいいだろ」

「お兄ちゃん、この後だと帰りが遅くなっちゃって一人で帰るの怖いもん」

「はぁ、分かったよ」

 

小町さんは涙目でお願いすると、八幡はすぐに折れてしまったようね。でもお風呂に一緒に入るのは何とか阻止しないと行けないわ。

 

「ねえ八幡、小町さん。下着を買いに行くなら私も行くわ。そして今日は泊りに行っても良いかしら」

「駄目ですよ雪乃さん。今日はお兄ちゃんと買い物行きますし」

「そうなの、では御母様に許可を頂くわ」

「ちょ、ちょっと待ちなよ雪乃。あんた八幡の家に泊りに言ってんの!?」

「え、ええ、御両親が何時でも泊りに来ても良いからって」

 

失敗したわ、沙希さんが居るところで泊りのことを言ってしまったのは不味かったわね。皆で暮らしているとき自慢げに話していたので、つい言ってしまったわ。

 

「..結衣、あんたも行ってんの」

「う、うん。あたしも一回泊りに行ったことある...」

「..ふ、二人とも御両親に会ってるんだよね...じ、じゃあ今日は私も泊りに行く!!」

「沙希も何言ってんの!?雪乃は母ちゃんの友達として来てるだけだぞ」

「わ、私も御義母さんにちゃんと挨拶したいから//」

 

なんだか沙希さんの言い方がおかしかった気がするのだけれど...

 

「ケッ...八幡の非童貞が」

「待て材木座。泊りに来てるって小町の部屋にだぞ」

「...では主は経験ないのか」

「あ、当たり前だろ」

「では童貞なのだな」

「そ、そうだよ。以前から言ってるだろ、言わせんな恥ずかしい」

「ねえヒッキー、小町ちゃん。あたしも泊りに行っていいかな」

「結衣さんもですか、しょうがないですね。雪乃さんは両親から何時でも来て良いって言われてますし、沙希さん結衣さんを断るのも悪いですから」

「なあ、布団が二組しかないだろ。どうすんだよ」

「私と結衣が泊まった時、小町さんを入れて三人で寝れたから大丈夫よ」

 

そして夜に八幡の布団に忍び込めば良いのね、流石に八幡は経験がないのだから戸惑うでしょうけど、私が八幡の理性を崩壊させてあげるわ、八幡の弱いところも知っているのだから。

 

「なんだか楽しいよね、修学旅行の夜みたいでさ」

「八幡と小町も交えて一緒に夜更かししながら話すのも楽しいかもな」

「..明日も学校あるだろ、騒がずに寝てくれよ。両親も会社早いから」

「は、八幡。我もお主の家に泊まりに行きたいなぁ」

「やだ」

「お、お主など精を吸い取られて干からびてしまえぇ!!」

 

材木座君が叫びながら部室を出て行ったわ。でも幾ら八幡の精を吸い出しても翌朝には復活していたわね。でも今の私では体力がなくて八幡の相手を最後まで出来ないのではないかしら。八幡の相手をするには体力を付けないと不味いわね...

今回は前回と違うラノベだったから、やはりあれは夢なのよね。実際はどうなのかしら。私は今だに忘れられずどうしても今に当てはめてしまうわ。

性に対しても昔のような抵抗感がなく、もし八幡に抱いて貰えるのであれば今すぐにでもお願いしたいわ。

 



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「誑し谷君とゆきのん」

昨日は散々だったわ。どうして私がビッチと言われないといけないのかしら。

 

昨日、私と結衣、沙希さんで八幡の家に泊りに行ったのだけれど、家にお邪魔する前に八幡と小町さんも一緒に下着を買いに行き、パンさんのペアパンツを買いに行ってからお邪魔したわ。

 

八幡に私と一緒のパンツを履いてほしくて、八幡がお風呂に入っている間に脱衣場へ着替えをすり替えにいき、私は先にお風呂に入っていたので、八幡とお揃いのショーツ、上は八幡のI LOVE 千葉Tシャツを着てリビングで寛いでいたら、結衣と沙希さんには着替えろと言われ、お風呂から上がってきた八幡には顔を真っ赤にしながら、ビッチと呼んできていた。

 

確かに八幡と何度も肌を重ねているけれど、今の八幡は私にまだ何もしてくれていないのにビッチと呼ばれる筋合いはないわ。

 

でもその後は結衣と沙希さん、小町さんが私のことを変な目で見てきて、私は八幡の部屋にお邪魔することは出来なかった。夜、皆が寝静まってから八幡の布団に入って行こうと思ったのだけれど、結衣は私に抱きつきながら寝てしまったので、朝まで私は動けなかったわ。

 

でもそれで良かったのかもしれない。もし八幡の布団に入ってしまったら、私は抱いてほしくて八幡を襲っていたと思うから。

 

今日も材木座君がラノベを書いてくれたのだけれど、私のラノベと聞いたので勉強会を中止してしまったわ。本当なら勉強会を優先すべきであったと思うのだけれど、八幡とのラノベは私にとっても楽しみだからそちらを優先させてもらった。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

 

...ヤバい。こんな点を取るなんて...

 

5限目の数学の授業で俺達は先日行われたテストの結果を返してもらったが、まさか赤点を取るなんて。俺の席の近くでは結衣と南が青ざめている。二人とも目には涙を溜めていた。

 

「ヒッキー、どうしよう」

「八幡、うちもヤバいよ」

「6時間目が終わったらダッシュで帰ろう、そうすれば捕まらないはずだ」

 

結衣と南は頷き俺も頷き返していた。ただ周りの優美子、沙希、姫菜が何も言わず、俺達と目も合わせない。もしかしら何か企んでいるのか。

 

6時間目の現国が始まり、またテストを返された。こちらについては俺は赤点を免れ、南もホッとしているが、結衣は絶望的な顔をしていた。

 

俺は6時間目の授業が開始されてもほとんど授業を聞いていなかった。今はいかにチャイムと同時に逃げるかを考えている。

もしかしたら優美子、沙希、姫菜が何かを仕掛けてくるかもしれない。俺は彼女達の妨害を掻い潜る方法を考えていた。

 

後一分。俺はすぐに教科書を仕舞えるよう、筆記用具は全て筆箱に仕舞い、教科書も鞄に押し込めれるよう、鞄のチャックは開けっ放しにして放り込めるよう待機していた。

忘れてはいけないもの。財布とスマホは既にポケットに入っている。授業中、何度も確認したからぬかりはない。

俺は教科書をノートの上に置き、両手はノートの下に配置した。これで畳んで鞄に入れれば、チャイムと同時にダッシュできるはずだ。

 

そしてチャイムがなり、授業が終了した。俺は既に教科書を仕舞って、鞄は肩にかけている。結衣、南も同じようで俺達は挨拶と同時にダッシュしようとしたのだが...

 

俺の左手首を沙希が握っており俺の動きを制止していた。その間に結衣と南はすでに廊下に出ていったようだ。

 

「八幡、どこに行くのさ」

「い、いや、今日はあれがあれだから。沙希、頼むから離してくれ」

「幾ら八幡のお願いでも聞けないな」

 

俺はそう言われたので、幾つか考えていた対処を沙希に繰り出していた。左手首を掴まれていたため俺は反対の右手を伸ばし、沙希の左手首を握りしめ、そして足を一歩前にだし沙希との距離を詰めていた。

 

「は、八幡//顔がち、近い//」

 

俺は沙希の右耳に顔を近づけ息を吹きかけながら、沙希にお願いしていた。

「サキ、見逃してくれ」

 

そう言いながら、俺は沙希の右耳を甘噛みしていた。

 

ふにゃ~//

 

沙希は顔を真っ赤にし腰が砕けたようで、自分の席に座り込むと耳を真っ赤にしながら俯いてしまった。俺の左腕は何時の間にか拘束を解かれていた。

 

よし、これで後は逃げるだけだ。俺は振り返り扉の方を目指そうとすると、優美子が俺の前に立ちふさがってきた。

 

「ヒキオ、どこに行くんだし」

「優美子...」

 

くそ!!優美子もか、時間がない。俺は優美子に一気に間合いを詰めていた。顔がぶつかりそうになったため、優美子は顔を逸らしたが、俺は優美子の顎に右手を掛け、自分の方に向かせた。左手は優美子の腰に手を回し、逃げれないように引き寄せる。

ほとんど距離がないほど近寄ってしまっているので、優美子の顔は真っ赤になり目は泳ぎまくっていた。俺はそんな優美子から目を離さず、唇が触れそうな距離でお願いしていた。

 

「優美子。お願いだ見逃してくれ」

「だ、駄目だよ。ヒキオ//」

「このままだとキスしてしまうかもしれないぞ」

 

そう言いながら俺は優美子の鼻先に自分の鼻を合わせた。

 

「え!?だ、だめ//こんな所じゃ//」

「だから今日は見逃してくれないか」

「こ、こんど一緒の事してくれる?」

 

ここまでならしても問題ないだろう、俺は何も考えず返事をしていた。

 

「ああ、幾らでもしてやるよ」

 

そういった後、俺が優美子の腰に回した手を緩めると優美子も俺から離れ、自分の席にへたり込んでしまった。

これで俺を邪魔するものはいない。俺は鞄を掛け直し、扉の方に行こうとすると、次は姫菜が俺の前に立ちふさがってきた。

俺は止まることなく姫菜に駆け寄ると、姫菜は俺が止まると思ったのだろう、驚いて後ろ向きに数歩下がっていったが壁に背がぶつかったため、俺は顔の両隣に手を置いて逃げれないようにした。

 

「キャッ!!」

 

姫菜がびっくりしている中、顔を近づけていき、俺は姫菜の首元に顔を埋めて、口を首に擦り付けながら喋っていた。

 

「姫菜、行っても良いだろ」

「は、ハチ//く、擽ったいよ//」

「..駄目なのか」

「しゃ、喋らないで//」

「姫菜は返答も返してくれないのか、話さないと通じ合えないだろ。姫菜が答えてくれないと、俺が一方的に話していることになるな、俺は姫菜と言葉のキャッチボールをしたいのに」

 

姫菜は俺が喋っている最中、身体を何度か痙攣したかのように震わせていた。

 

「あぁ//もぅ..らめぇ//」

 

そう言うと壁を背に崩れ落ちて行った。

 

よし、これで俺を邪魔する奴はいない。俺が姫菜に向けている身体を扉の方に向けようとしたのだが、凍えるような冷気が俺を包み込んでいた。

背に冷や汗をかきながら、その冷気の方向に身体を向けようとするのだが、身体が言うことを聞かず、中々動かせない。

 

体中が拒否しているような感覚を覚えながら、俺は何とか首だけを扉に向けていた。

 

「浮気は終わったのかしら。誑し谷君」

 

そこには俺の彼女である雪乃が立っていたのだが目が怖い。にっこり笑っているのだが目だけは俺を射殺すように見ている。何時もなら名前で呼んでくれるのだが、雪乃は怒るとなぜか名字呼びに戻り、しかも今は名字さえちゃんと呼んでくれない。

 

「ゆ、雪乃。これは..ち、違うんだ」

「私という彼女が居るにも関わらず、三人を誑し込んでいたのね」

「い、いや沙希と優美子、姫菜とは会話をしていただけでしゅ」

「そうなのね、では私ともこれからたっぷりお話ししましょうか...そう言えば結衣と南さんが居ないようね」

「お、俺は知らないぞ」

「...今日テストの返却が有ったはずよね、八幡はどうだったのかしら」

「ゆ、雪乃が気にすることはないと思うぞ、うん」

「あなたたちに勉強会していたもの、結果を教えて貰わないと今後に活かせれないわ。どうだったのかしら。もしかして赤点なんて取っていないわよね、赤点谷君」

「...数学が赤点でした」

「....」

「....」

「...はぁ、今日から次の期末テストまで私の家で合宿をしてもらうわ」

「ふ、二人だと気になって、勉強できないだろ」

「何を勘違いしているのかしら、エロ谷君は。私の実家で姉さんと私の二人で教えるわ。もちろん結衣と南さんも今から捕まえに行くけれど」

「テストまで1か月以上あるだろ、そこまでしなくても」

「貴方に拒否権があると思っているのかしら」

「あ、ありません」

「後三人を誑し込んだことも教えて貰わないと行けないわね」

 

雪乃はそう言うと摺り足で俺との間合いを一気に詰めてきて、俺の身体に抱きついてきた。

 

「八幡。三人にしたことを私に愛を囁きながらしてくれるかしら」

 

雪乃はそういって俺の胸から顔をあげ、上目遣いでお願いしてきた。こ、こんなの反則だろ。雪乃のお願いを無視することは出来ない。

雪乃を壁にもたれさせ、おでこを当てながら、唇は喋れば触れ合う距離で俺は囁いていた。

 

「俺の好きなのは雪乃だけだ//」

「私もよ、八幡。でももっと言ってほしいわ//」

「愛してる、雪乃//」

「私も八幡を愛してる//」

 

俺達は教室の中でお互いの想いを確かめ合っていた。唇は何度も触れあっていたが、俺達はその距離を楽しんで話していた。

 

ゴホン!!

 

咳払いが聞こえそちらを見ると、平塚先生が顔を赤らめ、クラスメイトは全員、口を半開きにして俺達の方を見ていた。

 

「...比企谷、雪ノ下。今から生活指導部に来るように」

 

な、なんで皆見てんだよ、っていうか何で教室に皆残ってるんだよ。俺と雪乃は顔を真っ赤にしながら、でも手は恋人繋ぎし平塚先生に連行されていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「中二、あたしのことまたバカにして書いてる!!」

「うち、最近は赤点取ったことないよ!!結衣ちゃんみたいに酷くないよ」

「ああ!?さがみん何言ってんだし!!高一の時、あたしと一緒に追試受けてたし!!」

「一年の時だけだよ、今は赤点なんて結衣ちゃんと違うから取ってないよ」

「はぁ!?」

「二人とも団栗の背比べは止めなって」

「サキサキが酷い!?」

「うん、あーしから見たら五十歩百歩だし」

「優美子ちゃんも酷い!?」

「大同小異ともいうね」

「姫菜、それってどういう意味?」

「意味は同じだよ。もっと勉強必要だね、結衣には」

 

結衣にはまだまだ勉強をさせる必要があるわね。私も一つことわざを言っておこうかしら。

 

「他にも一寸法師の背比べって、ことわざもあるわよ」

「雪乃ちゃんも言い出した!?」

「俺から言わせれば、目くそ鼻くそだな」

「ヒッキーも酷い!!数学はあたしより酷いじゃん!!」

「そうね、たしか学年でワーストだったと言っていなかったかしら」

「..過去の話だ」

「...ヒッキー、今度の中間テスト勝負するし!!」

「うちも一緒に勝負するよ」

「平均点でか?」

「うん、何か賭けるわけじゃないけど、ヒッキーに勝つために頑張れるし」

「そうね、では私も一緒に勝負させてもらうわ、真鶴さんもどうかしら」

「私も入るよ、雪ノ下さんにはまだまだ追い付けないけど、何時かは勝ちたいから」

 

真鶴さんも入ってくれるようね、彼女はかなり勉強が出来るから私もその方が張り合いが出るわ。でも私は今の実力が分からない。こちらに来てから初めてのテストだから、もしかしたら酷い点を取るかもしれないわね。心して挑まないと。

 

「あーしらも入るよ、皆でやった方が頑張れるし」

「そうだね、サキサキには負けれないからね」

「うん、私のライバルは姫菜だな。今回で白黒つけるよ」

「..材木座も入れよ」

「分かった、平均点だな。お主には負けれぬからな」

 

何時の間にか勉強の話になってしまったわね。でも私達は受験生なのだから、ラノベで息抜きをしながらも勉強の話になってしまうのはしょうがないのよね。

 



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「異世界転生」

途中まで書いたものが有ったので、修正・加筆してみました。
久しぶりの投稿ですが良かったら読んでみてください。



「八幡さん、起きましたか」

「...」

 

ここはどこだ?周りは暗く遠くに星が輝いているのが判る。ただ俺が寝ていた所は床が見えない。

身体が宙に浮いているように感じるため、平衡感覚がおかしくなりそうだ。俺は声のした方を見ると、一人の女性が宙に浮いている椅子に座り微笑みかけている。俺は平衡感覚がおかしくならないよう女性と椅子を見つめるようにしていた。

ただこの女性、可笑しな格好をしているな。まるでラノベに出てくる女神のようだ。

 

「...ここはどこですか、貴女は」

「私は女神です。初めまして八幡さん。起きて早速ですが貴方は亡くなったのです。そしてこちらに送られてきたのですが、貴方には天国に行くか、元居た「天国で」世界...最後まで話を聞いてください」

「いや天国で良いので」

「天国は暇ですよ、日向ごっこしているしかないのですから」

「最高ですね、それこそ俺の望む世界ですよ」

「本当に良いのですか、貴方と一緒に亡くなった女性達は異世界を望んで既に旅立ったのですが」

 

俺と一緒に死んだ?誰のことを言っているんだ?

....いや雪乃と結衣といろは。大学の夏休みに俺が運転する車で彼女達とドライブに出かけていた時、タンクローリーが俺達の車に突っ込んできたんだった。どうして思い出さなかったんだ。俺のせいで三人が死んだ....取り返しの付かないことをしてしまったんだ。

 

俺は泣き崩れて三人のことを想っていた。どうして彼女達を車に乗せたんだよ。免許取り立てで嬉しくて彼女達が買い物したいから車を出してくれと言われ、親の車を借りたがそれが誤りだったんだ。

免許のことを言わずに誘われても家で過ごすって言ってればよかったのに、とんでもないことをしてしまった...

 

俺は泣き止むまで時間が掛かったが何とか平静を取り戻せていた。女神はその間、黙って俺のことを見守ってくれていた。

だがどうして3人は異世界を望んだんだ?元居た世界に行った方がよかっただろうに。

 

「..あいつらはどうして異世界に行ったんですか」

「天国では人数が多すぎて皆さんが会える可能性はほとんどないのです。そして元居た世界では記憶が消されます。異世界は記憶もそのままですし、一緒の所に行けると言ったら皆さん異世界を選ばれましたよ」

 

俺も彼女達と一緒に居たい。だが俺が運転している車で彼女達を殺してしまったんだ。俺が彼女達の元に行っても良いのか、だが謝りたい。彼女達の一生を台無しにしてしまったんだ、償えないだろうが俺に出来ることが有るのであれば、何でもやってあげたい。

 

「彼女達を放っておくとゴブリンやオークの慰み者になってしまいますよ」

「ど、どうして...」

「異世界に行った者は色々な特典を持って行きます。ですので現地の方々に頼りにされるのですが、その力も使い方を分かっていなければ意味がありません」

 

俺は彼女達に嫌われても会って貰えなくても良い、だが守りたい。だから...

 

「...俺を異世界に送ってくれ。皆の所に...今すぐ!!」

「分かりました。では行ってらっしゃーーい」

「え!?ちょっと待っ」どぴゅうぅぅん

 

お、おい!!何か武具とかくれるんじゃないのかよ!?な、何でこんな急に飛ばすんだ、心の準備とかあるだろ。大体どこに飛ばされるんだよ。

そう思っているといきなり周囲が明るくなり空に投げ出されて石造りの町並みが遠くに見えたかと思うと俺は地面に叩きつけられていた。

 

「いててて」

 

どうも町外れの草原に落とされたらしいな。地面に衝突する直前、ブレーキが掛かったようで倒れた時ぐらいの衝撃しかなかったが滅茶苦茶怖かった。もうちょっとゆっくり下ろしてくれよ。

俺が辺りを見渡すと数百メートルほど離れたところに町が見えている。またすぐ近くに鬱蒼と茂る森もある。しばらくきょろきょろしていると、空からノートが降ってきていた。何だこれ?

 

(渡すの忘れてたの、妹ちゃんがあなたと一緒に棺桶に入れたものを送るね)

 

何処からともなく女神の声が聞こえてきた。小町が俺と一緒に棺桶に入れたノート?そのノートを拾い上げ表紙を見ると一気に血の気が引いてきた。

Campusの表紙には『神界黙示録』と書いてある。

 

い、イやああああぁぁああ!!

 

な、何してくれてるの!?小町ちゃん!!何で俺と一緒に火葬してんだよ!!中学の時の黒歴史を何でこっちの世界に持ってこないといけないんだ!?

どうするんだよ、こんなの!?何で女神も特典を渡さずにこんなもの送ってくるんだよ。..燃やしてしまおう、誰にも見つからないうちに。ただ今は火を起こすことも出来ない、後で絶対燃やしてやる。

 

..はぁ、どこに行けば良いかも分からんな、とりあえずは町に入ってから情報収集でもするか。俺はノートをペラペラ捲りながら独り言をつぶやいていた。

 

「...ふ、剣聖神喰剣(ゴッドイーターソード)って」

 

ゲームの名前を使うなよ、俺が過去の自分を下げ荒みながらそう呟いたとき、いきなり右手に重みを感じて見てみると何かを握りしめていた。

 

「これって...なんでノートに書いてある剣を俺が握ってるの!?」

 

何だか眩暈がしてきた。なんだよ、剣聖神喰剣って。もうちょっとカッコいい名前にしろよ。そもそも剣聖って剣の達人ってことだろ、何でそれを名前に入れてんだよ、しかも神を喰らう剣って。

いや、そんなことより転生の特典ってこのノートかよ!?もしかして書いてある魔法も使えるのか?

 

「...我、失われし名も無き神の力、黒き獄炎、今一度解き放て。暗黒爆炎砲弾(ナパーム・デス)!!」

 

俺が呟くと、左手から黒い炎が飛び出して草原を焼き尽くしながら消えて行った。

 

いやあああああぁぁあぁぁ!!

 

もしかしてこのノートに書いてある装備や魔法が俺のものになるのか!?そうなると無闇に燃やせないじゃん!!

はっきりいってチートだよ、こんなの。でも何で異世界まで来て、黒歴史を身に纏って晒しながら生きて行かないといけないんだよ!!

 

剣を地面に置くと粒子のようになって消えていく。もう一度呟くと同じ剣を右手に握っていた。

 

うう、死にたい、死にたい、死にたい。

アイツらを守りたいためにこちらに来たが、守る為には俺の黒歴史を晒していかないといけないのかよ!!

 

俺が一人草原で蹲っていると誰かが近づいてきて話しかけてきた。

 

「大丈夫ですかぁ」

 

何か甘ったるい聞き覚えのある声が聞こえてきて俺が顔を上げると見覚えのある3人が踞っていた俺の事を見下ろしていた。

 

「え!?...あ、貴方八幡なの!?いきなり黒い炎が飛んでいったと思って気になったから来てみたのだけれど、貴方だったのね!!」

「ひ、ヒッキー!?会いたかったよ!!こっちに来たんだね!!嬉しいよヒッキー!!でも何かすんごい魔法貰ったんだね!!」

「先輩!!先輩もこっちに来てくれたんですね!!嬉しいです!!先輩も凄い特典ですね!!」

 

え!?いきなり皆の前かよ、ハードル高すぎだろ。皆が魔法の事とか言っているが俺はそれどころではなかった。雪乃、結衣、いろはが俺の事を見下ろしている。俺は立ち上がりもせず土下座して頭を地面に擦り付けた。

 

「スマン!!俺のせいで皆を殺してしまった。許してくれなくてもいい嫌われてもいい。だがお前たちを守りたい!!だから三人の傍にずっといることを許してくれ!!」

「「「...」」」

 

誰も言葉を発してくれない。時間にしたらほんの少しだったのだろうが、俺には永遠のような時間が過ぎて行った。

 

「...八幡、顔を上げなさい」

 

雪乃がそう言ってくれたが俺は顔を上げれなかった。すると雪乃は俺の顔に手を当て上げさせてきた。そして雪乃は俺の前に跪いて顔に付いた土汚れを落としてくれ、溢れ出ている涙を拭きとってくれていた。

 

「あの事故は貴方のせいではないわ、だから気に病むことはないの。

でもね八幡、私は今貴方が来てくれて凄く嬉しいのよ。貴方が居て結衣が居て、いろはが居てくれる。

ここは日本ではないけれど、住むところなんてどこでも良いの。私は貴方達が居てくれればそれだけで満足なのだから」

「そうだよ。ヒッキーはただ車運転してただけだから誰も恨んでなんていないし。

今度はこっちで皆と一緒に過ごそうね」

「そうですよ先輩。私は車の中で寝てたので全く覚えてないんですけどね。

...でも先輩。さっきのってプロポーズですよね//」

「え!?」

 

何言ってんの、この子。俺プロポーズどころか告白なんてしてないだろ。何を聞き間違えたんだよ。

 

「そ、そうね。先ほどの言葉は私達三人へのプロポーズね//」

 

雪乃も何言ってんの、三人にプロポーズっておかしいだろ。

 

「う、うん。告白だったよね//あ、あたしをヒッキーの近くにずっと置てください//」

「ゆ、結衣!?ずるいわよ。八幡、私もお受けするわ//」

「結衣先輩も雪乃先輩もずるいですよ!!せ、先輩。私もずっと先輩の傍にいますから//」

 

あ...そういうことか、三人を守るためにずっと傍に居るといった事をプロポーズと捉えたんだな。だが3人同時に結婚できるわけないだろ。

 

「八幡、こちらでは重婚出来るのよ。でもいきなり私達三人を娶ってくれるなんて//」

 

なんで俺の考えていることが分かるんだよ。サトラレなの?俺。

 

「う、うん//でもあたしは嬉しいな。皆でずっと一緒に居れるんだね」

「そうですね。先輩、不束者ですがよろしくお願いします。でも初夜がいきなり4人なんですね//」

 

い、いろはも何言っちゃってんの!?しょ、初夜って//いや、結婚したらそうなるかもしれないけど、不味い何とか誤解を解かないと。3人のことは正直、好きだが今はそんな話をしていたわけではない。

大体重婚できるからって、いきなり三人はないだろ。このままだと皆を傷つけかねない。

 

「な、なあ、聞いてくれないか...」

「こちらに来てよかったわね、皆で八幡のお嫁さんにしてもらえたのだから」

「お、おい。俺はそんな」

「結衣やいろはが自暴自棄にならなくて済むわ」

「ゆきのんやいろはちゃんに申し訳ないからね」

「雪乃先輩と結衣先輩が泣く姿が見れなくて残念ですけど」

「「「はぁっ!?」」」

 

何で三人同時に話し出したのにそれぞれの言ったことを聞いてんだよ。怖いよ、三人の顔は笑ったままで目だけが変わっていく。

 

「結衣といろはは喧嘩を売っているのかしら」

「ゆきのんといろはちゃんにちょっと痛い目を見てもらおうかな」

「雪乃先輩、結衣先輩。私の力を見くびらないでくださいね」

 

おいおい、何か三竦みで喧嘩始めたぞ。

雪乃は持っていた杖を前にかざすと、身体から氷の結晶が溢れだして固まっていき何十本もの氷柱になって、雪乃の後ろの空間に浮かび出していた。

 

結衣は自分の腰に着けている革のポシェットから何かを取り出すと口に含んでいた。すると頭から犬耳が生え爪が長くなり、お尻からは尻尾が出てきている、犬か狼かを憑依させているのか。

 

いろはも何か魔法を詠唱すると腕に付けているブレスレットから光が放たれ空中に魔方陣ができ、その中から得体の知れない悪魔の様なものが出てこようとしていた。

 

これ止めないと周りに被害が出てしまう、俺が何とか止めないと。

 

「..いい加減にしておけ、止めないなら俺はお前達の前から消えるからな」

 

そういうと三人はあっという間に自分の出した物をどこかに閉まって俺の元に駆け寄ってきた。

 

「ご免なさい、あなた。私は夫の言うことに従うわ」

「うん、旦那さんの言うことは聞かないとね」

「そうですね、家の大黒柱ですからね。主人の言うことに反対しませんよ」

 

なんか三人からの呼び方がおかしくなっている。そう思っていると雪乃に右腕を絡め取られ、左腕は結衣が絡めてくる。いろはは俺の背中に抱きついてきて、三人は俺を何処かに連れて行こうとしていた。

 

「な、なあ、何処に連れて行くんだよ」

「私達の家よ、こちらの世界で買ったのよ」

「うん、三人で買ったんだよ。小さいけれどあたし達には十分だよ」

「中古ですけど良い家ですよ、先輩」

 

俺は引きずられるように町に入り三人が買った家に連れられて行った。そういえば三人とも魔法とかを使えるんだよな、それも結構威力が有りそうだったが、ゴブリンなんかに負けるのか。

 

「...三人の強さはどれぐらいなんだ」

「そうね、今日はサイクロプスの討伐に出かけていたのよ」

「うん、ちょっと苦労したけど、勝てたよね」

「私達は三か月ぐらい前に飛ばされたんです。そこから三人で色々な魔物を倒しましたよ」

 

あの女神、嘘つきやがったな。サイクロプスを倒せる奴がゴブリンに負けるわけないだろ。..いや幾らこの三人でも寝込みを襲われたらどうしようもないのか。そうならないようにこれからは俺が守っていけばいいんだ。

ただ、この三人と比べて俺の強さはどれぐらいなんだろうか。俺一人ではこのノートがないとゴブリンにすら勝てることは無いだろう。

 

これから三人に鍛えてもらえば良いのか、俺がそんなことを考えていると何時の間にか庭があるレンガで出来た家の前まで連れられてきていた。ここが皆で買った家なのか、大きくはないが3人で暮らすのなら十分な大きさだな。

俺達が玄関に入ろうとすると、何か変な声が聞こえてきていた。

 

ぷぎゃあああ!!

 

上空から変な声が上から聞こえてきたので、見上げると男が降ってくるのが見えた。

 

べちゃ!!!!

 

空から降ってきた男は庭に落ちてきたが、俺の時と一緒でどこも怪我をしている様子はなく、すぐに立ち上がるとキョロキョロ辺りを見渡し始めた。

 

「うぅ、ここは何処なのだ?」

「お前、材木座か!?」

「お、お主は八幡か!?会いたかったぞ相棒!!お主が死んだあと、異世界でまた会えるとは。

やはり我とお主は八幡大菩薩の導きにより...あ、...お、お三方もお久しぶりです」

 

材木座もこっちに来やがった。3人がいることを確認すると素に戻ってしまったが。

話を聞くと俺の葬儀の後、車の運転中にボーとしてて川に転落したらしい。そして気づいたら死んでいて女神に会っていたそうだ。

 

今は材木座も加わり雪乃といろはが夕食を用意してくれている。

 

「八幡は特典に何を貰ったのだ。特に何も持っていないようだが」

「..俺は色々な魔法がつかえるようにしてもらった。だから何も持ってないんだよ」

 

俺はノートを腹にいれて見えないようにしていた。さすがに読ませられないからな。このノートは部屋に仕舞っておいても良いのだろうか。それとも持ち歩かないと能力がつかえないのだろうか、一度検証する必要があるな。

 

「材木座は何を腕に付けてんだよ」

「ハハッ、見よ!我はこのパイルバンカーだ!!どのような装甲でも打ち破ることが出来るのだぞ、魔王にも効果があると女神様のお墨付きだ」

「..それってどうやって懐まで入っていくんだよ」

「..しょ、しょれはパーティーの皆に頑張って貰ってだな」

「それまでお前は何をするんだ」

「...応援とか」

 

材木座は何を考えてそんなの貰ってんだよ、パイルバンカーって憧れるのは分かるよ。ほぼ一撃必殺だよね、ただ相手だって突っ立っているわけではない。攻撃をしてくる、その攻撃をどうやって掻い潜るかも考えないと駄目だろ。

 

「大丈夫よ、こちらで剣やそのほかの武具の扱いを覚えれば良いのよ」

「盾役が欲しかったので、木材先輩にはちょうど良かったです」

「うん、前衛があたししか居なかったから、中二が前衛してくれると助かるかも」

 

俺と材木座は3人からこちらの世界のことを聞いていた。とりあえず強くならないと話にならないので冒険者登録し、クエストを受けるところから始めるらしいが、よくあるステイタスが見えたりレベル、職業という概念は特にないらしい。ただ討伐などの貢献度によって、ギルドでの扱いが代わってくるそうだ。

武具についても使いこなせれば、魔法使いが大剣を持ったりしていることもあるらしい。

 

「ええ、だから私は魔法使いだけれど、レイピアと薙刀を持っているわ」

「あたしは前衛ばっかりだけど、回復とかも出来るしね」

「私は召喚士ですけど、何時も投影用ナイフと弓を使ってますよ」

 

その後も話を聞いていたが、こちらでは身体的な限界が異常なほど高く、雪乃は既にフルマラソンぐらいであれば完走できるほどの体力をつけ、結衣は足が異常に早く、垂直とびでも5メートルは行けるらしい。いろはは弓を使うので見た目は何も変わりないが、筋力が男勝りということだった。

 

「で、では我も相手の懐に飛び込めるぐらい素早くなれるのでは」

「訓練すれば出来るでしょうね」

「先輩も頑張ってくださいね」

「戦い方はあたしたちが色々教えてあげるよ」

 

積もる話で夜遅くまで話し込んでいたが、そろそろ寝ようかとなり準備をしだしていた。

 

「では寝室に行きましょうか//」

「うん、ヒッキーあたし達を可愛がってね//」

「先輩、初めて何で優しくしてくださいよ//」

 

「あ、あのう..わ、我はどこで寝れば良いのでしょうか」

「は、恥ずかしいので、材木座君は家の中で寝ないでほしいのだけれど」

「う、うん。中二は馬小屋でいいよね」

「そうですね、ちゃんと寂しくないようにしておきますから」

 

そう言うと、いろはは材木座を家に隣接している馬小屋へ連れて行った。

 

エっ!?マッテ。イロハドノ?オイテ イカナイデ...アァ、ヤ、ヤメテ、ラメェ!!

 

なにか材木座の悲鳴のようなものが聞こえてきたが、いろはは何事も無かったかのように家に入ってきた。

 

「ほ、本当にいいのか」

「今さら何を言っているのかしら。私達の気持ちに気付いていながら、あなたは私達の事を想って選ばなかったでしょ」

「そうだよヒッキー。でもこっちの世界なら選ぶ必要ないんだし」

「私達、3人一緒が良いんです、皆で居られるなら文句は言いませんよ」

 

ここは決めるしかないのか、確かに俺は3人から選ぶことなんて出来なかった。ただ選ばず3人と一緒になれるのなら俺にとって一番いい選択になる。

俺は気持ちを高ぶらせ3人に返事をするため、グラスに入った酒を一気に飲みほしていた。

 

.....

....

...

..

.

 

うん?眩しい、朝になったのか。俺の右隣に雪乃が寝ていて、その横に結衣が。俺の左にはいろはがくっ付いていた...

...あれ?そう言えば昨日は何があったんだ。俺は上半身を起こし昨日のことを思い出そうとしていると、雪乃が起きたようで、俺に挨拶をしてきた。

 

「おはよう、八幡」

「お、おはよう。な、なあどうして一緒に寝ているんだ」

 

俺が雪乃の方に身体を向けると、雪乃も起き上がってきた。

 

「昨日の夜、何があったか教えてほしいんだが」

 

俺がそう言うと、雪乃は不満げな顔をしながらも答えてくれていた。

 

「痛いところとか無い?」

「ああ」

 

雪乃はそう言いながら俺の頭を撫で出したが、何かが出来ているのか触られると少しだが痛みを覚えた。

 

「たん瘤が出来ているわね。あなたは昨日いきなりお酒を一気に飲み干し立ち上がったかと思ったら、倒れてしまったのよ。そして頭をテーブルの角にぶつけて気を失ってしまったの」

「じゃあ昨日の夜は何も..」

「ええ、新妻3人をほったらかしにして爆睡していたわね。でも何事も無かったようで良かったわ、凄く心配したのだから」

「すまん、心配かけて」

「良いのよ、で、では目覚めのキスをして貰えるかしら//」

 

雪乃はそういうと、俺の顔を撫でるように手を這わせてきて、顔を近づけて来ていた。

雪乃が目を閉じてきたので、俺は顔を近づけていき、口づけを交わしていた。

俺は初めてのキスに戸惑いながらも雪乃と唇を合わせられたことが嬉しく長い時間、雪乃を求めながら身体を抱きしめて行き手を這わせていった。

 

「あぁぁ//」

「..何で二人だけで朝から盛り上がっているんですか」

「..ゆきのん、何してんの」

 

何時の間にか起きていた結衣といろはにジト目で見られ、俺と雪乃は顔を真っ赤にしていた。

 

「こ、これは違うのよ//朝の挨拶をしていただけだから//」

「へぇ、朝の挨拶が喘ぎ声って雪乃先輩ってエロエロですね」

「うん、これからはエロのんって呼んだ方が良いね」

「お、俺が盛っただけだ。雪乃は悪くないぞ」

「..いいえ、私も八幡が欲しかったもの//」

 

雪乃がそんなことを言ってくれるなんて思わなかった。俺が雪乃の方を見ると顔を赤くしながらも俺の方に向けている眼差しを逸らすことは無かった。そんな雪乃が愛おしくなりまた抱きしめてキスしていた。

 

「また雪乃先輩だけして貰ってる!!私にもしてくださいよ、先輩!!」

「エロのんばっかりずるい!!あたしにもしてよ、ヒッキー」

 

3人に対してキスをしていたが、流石に今からエッチするのは躊躇われたのでそこまでにしておいた。

俺達が居間に移動しテーブルに座ると、雪乃といろはは食事の用意をしだして、結衣はクッキーを焼いているようだ。

そういえば材木座はどうしたんだ?まだ馬小屋で寝ているのだろうか。

 

「馬小屋って隣だよな、材木座を呼んでくる」

 

俺が馬小屋に近づいて行くと、何か呻き声のような声が聞こえて来た。

 

「た、助けて...」

 

材木座の呻き声が聞こえ、俺が馬小屋に入っていくと材木座の上に女の魔物が跨っていた。あれってサキュバスか!?滅茶苦茶色っぽいお姉さんだな、扇情的で腰を振りながら俺を流し目で見て手で招いて誘ってきている。俺も相手してほしいな。ちょっと、いやかなり材木座が羨ましいぞ。

ただサキュバスと目が合ってから何故か身体が言うことを聞かなくなり、自分の意思に関係なくサキュバスの方に足が自然と動き出していた。

 

サキュバスは近づいた俺の頭に手を回すと顔を近づけてきた。

俺とサキュバスがもう少しでキスしようとしたとき、3人が馬小屋に入ってきた。

 

「ヒッキー、だめえぇぇ!!」

「いろはさん、八幡が魅了されてるわ!!」

「あ、しまった」

 

いろははそう言うと何か魔法を唱えていたが、俺ともう少しでキスするところだったサキュバスが消えて行った。

材木座は精気を吸われ痩せこけていたが何とか生きてはいるようだな。俺は材木座の上に脱ぎ散らかしている服を掛けた。

 

「私たちの邪魔されたくなかったんで、木材先輩にはサキュバスを召喚して当てがったの忘れてました。てへっ」

「は、はちまん...わ、我はもう駄目だ」

「大丈夫だよ、中二にこれ食べさせて」

 

結衣がポシェットから何かを取り出して、俺に渡してきたので材木座に食べさせた。暫くすると痩せこけた材木座の顔が見る見るうちに元に戻って行く。

 

「何を食べさせたんだ」

「クッキーだよ、あたしの作ったクッキーをこのポシェットに入れると、いろんな物が出来るの。さっきのはハイポーションと一緒くらい回復できるんだよ」

「は、八幡。我の貞操が...」

「お前、相手がいないから貞操っておかしいだろ。良かったじゃないか、あんな大人の色気を放っている女性に相手してもらって、羨ましい」

「八幡、もしかしてあなたもサキュバスと寝たいのかしら」

「そ、そんなことないでしゅ...」

 

やば..肝心なところで噛んでしまった。だがサキュバスにはかなり興味あるよな。材木座が一晩中相手されて生きてるなら、俺もちょっとぐらいって考えてもしょうがないだろ。サキュバスの煽情的な表情が忘れられない、童貞には堪らなくそそられる表情だった。

 

「..八幡、私達3人を娶った後、あんな胸だけが取り柄の駄肉なサキュバスと不貞を働くつもりかしら」

「先輩はあんなビッチが良いんですか!?胸しか取り柄がないじゃないですか。結衣先輩のおっぱいで満足してください」

「ふーん...ヒッキー、二人には無理だけど、あたしなら変化のクッキーでサキュバスになってあげれるよ」

 

結衣はそう言うと、胸の下で組んでいた腕を上にあげ胸を強調しだした。

 

ゴクッ

 

思わず生唾を飲み込んでしまったが、そんな俺の反応をみて雪乃といろはの目が見たことが無いほど、腐り出していた。

 

「フフフ、結衣は自分だけが良ければ良いのね」

「...へぇ結衣先輩、私達を裏切るんですね」

 

二人はそう言うと、二人の背後から禍々しいほどの負の感情が溢れだして馬小屋が揺れ出していた。

 

「お、おい。落ち着けって!!結衣も抱きつくな!!」

「ヒッキー楽しみだね、あたしは今からでもいいよ//」

 

結衣がそう言うと周囲は凍りつきだし、家の回りには俺たちが逃げられないようにいろはが召喚したのだろう、触手が家を取り囲んでいた。

 

「だって二人より、あたしが似合うよ。貧相なサキュバスって可哀想だよね。ぷぷぷっ」

 

ミシッ

 

い、家が悲鳴をあげてるぞ。何で結衣は二人を煽ってんだよ。

 

「お、おい。雪乃もいろはも落ち着けって。俺は胸の大きさなんて気にしてないぞ。結衣もいい加減にしておけって」

「でもヒッキー、あたしのおっぱいいっつも見てたじゃん!!今もチラチラ見てるし!!」

「そ、それはその谷間は二人にはないからな。何時かは顔を埋めたいと考えて...あ」

「「へぇ...」」

 

俺の言葉で二人の目からはハイライトが消え、顔の表情も今まで見たことがないほどになっている。

 

ミシッミシッミシミシミシッ..バキバキバキッ!!

 

「い、家が崩れるぞ!!」

「あたしに任せて!!」

 

結衣はそう言うとポシェットからクッキーを取り出し食べ出した。

見る見るうちに昨日見た獣の容姿に変わったかと思うと触手を切り刻んでいき、出口を作っていく。

 

「出れたっ!!早くここから逃げて!!」

 

俺たちは結衣の作ってくれた出口から出て振り返ると、馬小屋と家に絡みついている触手と氷の重みの為だろう、家が崩れていった。

 

「は、八幡これからどうするのだ」

「...壊れたもんはどうしようもないだろ」

「あーあ、ゆきのんといろはちゃんが壊しちゃったぁ」

「「...」」

 

雪乃もいろはも呆然と立ち尽くしていたが、暫くすると涙を流し出していた。

 

「うぅ、ご免なさい。私達の家を潰してしまって」

「...私もご免なさい、でも結衣先輩がいけないんですからね!!」

「ふーん、いろはちゃん達が壊したのにあたしのせいにするんだ」

「誰が悪いって無いだろ、俺も含めてみんなが悪いんだ」

「..そうね、八幡と材木座君は悪くないと思うけれど。...結衣、いろは。ご免なさい」

「私もすみませんでした」

「あたしもごめん。でもこれからどうしよっか?」

 

家を直すとなるとそれなりの時間と費用が掛かるのだろう...仕方がない。俺の黒歴史の一つを出すしかないが、皆には見せたくないな。

 

「みんな、ちょっと離れててくれないか」

「どうするんですか、先輩」

「俺の魔法を使うから50メートルぐらい離れてくれ」

「そんなに離れないといけないのかしら」

「ああ、何があるか分からないからな」

「先輩は大丈夫なんですか」

「ああ、俺は大丈夫だ。ただ何かが起きた時、皆を守れるか自信がないんだ」

「うん、わかった。ヒッキーの言う通りにしよ」

 

皆が家から離れたことを確認し、俺は外からは家の塀で死角になるところに移動していった。

ふぅ、今からあのセリフを言わないといけないのか...

俺は目を瞑り意識を集中して言葉を発していた。

 

「キュアップ・ラパパ!ブラックダイヤ!ミラクル・マジカル・ジュエリーレ

一人の奇跡、キュアボッチ!私はプリキュア!!」

 

俺が台詞を唱えると、俺の身体が輝きだし、ゴスロリのような衣装を身に纏っていた。

うぅ、死にたい、死にたい、死にたい。..ただ今は誰も見ていないんだ、早く終わらせないと。

俺は両手を前に出して親指と人差し指を使ってハート型にし崩れた家をハートの中に納まるようにした。

 

「プリキュア MAXコーヒー エクスプロージョン!!」

 

ねえ、MAXコーヒー関係ないよね。中学の時の俺をぶん殴りたい。深夜のテンション高い時に書いてたはずだが、何で神界黙示録にプリキュアのこと書いてんの!?

しかもゴスロリの衣装まで書くなよ、何で俺が着てんだよ。スカートヒラヒラさせて、ニーハイも履いてるし、しかも手でハートの形を作んないといけないなんて。

 

俺が魔法を唱えると、崩れた家が何事も無かったかのように戻って行く。俺が願ったことが叶う魔法っておかしいだろ。そんなこと関係なく、家は元通りに戻って行った。

 

よし、アイツらが戻ってくる前に変身を解かないと。魔法を解除して服が元に戻ったころ、皆が駆け寄ってきていた。もう少しで見られるところだったな、何とか間に合ってよかった。

 

「す、すごいわ。八幡!!」

「先輩、凄いです!!凄いですぅ!!」

「やるな八幡。さすが我が相棒ぞ」

「..ヒッキー、凄いね」

 

雪乃といろはと材木座は直った家に驚きの声を上げていたが、結衣はなぜか俺の後ろで俯いていた。3人が家に入っていくのを確認すると、結衣は俺の肩に手を掛け顔を近づけて話しかけて来た。

 

「..ヒッキーってプリキュアだったんだね//」

 

はっ!?な、何言ってんの!?この子。

結衣には見えていなかったはずだ。声も離れていたから聞こえなかったはず...

 

「あたしが変化している時、聴力も視力も凄く上がるの。割れた鏡が有ったけど、反射して見えてたんだ..可愛いかったよ、キュアボッチさん//」

 

いっ、いやぁぁぁあぁぁ!!お、俺がスカート履いて魔法唱えてたのバレてたのか!?死にたい、死にたい、死にたい...

 

「た、頼む。何でも言うこと聞くから黙っててくれ」

「いいよ。じゃあ今日の夜、あたしだけ抱いてね//」

「い、いやそれはさすがに」

「へぇ、何でも言うこと聞くって言ったのに...」

「わ、分かった。二人は何とかするから」

「約束だよ、ヒッキー//」

 

どうすれば良いんだ。あの二人を説得何て出来るのか、いざとなればプリキュアに変身して魔法を使えば雪乃といろはを簡単に寝させられると思うが、バレない様に出来るだろうか。

 

結局異世界に来たのにそれらしいことは全く何もできていないな。さきほどの騒動で今は昼を過ぎてしまっている。

こちらの世界でも結局は3人に振り回されているだけだ。だがそんな生活でも俺はこれから起こるであろう、材木座を含めた5人での異世界生活が楽しみになっていた。

 

 

 

...そういえば材木座は童貞卒業したんだよな、俺は今日、結衣相手に捨てられるだろうか。

...フヒッ

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

はぁ、また材木座君はこの設定で書いてきたのね。春休み前に書いたものとは異なるけれど結衣はクッキー、いろはさんは召喚士、私は氷系の魔法使いなのね。

 

「流行りの転生ものを書いてみたいと思って書いてみたのだ」

「また変なの書いたな材木座。何だよ、中二病で書いた設定が使用できるっておかしいだろ」

「異世界物でも色々あるではないか、チートの能力だったり異世界にない技術を持ち込んだり。それであればこの設定でもおかしくなかろう」

「おかしいよ、何で俺が黒歴史を披露しないといけないんだよ!!」

「そうよ、材木座君。八幡は名も無き神なのよ」

「ゆ、雪乃!?何を言っているんだ!!」

「あら、あなたが自分で言っていたのよ。材木座君、神であればそれこそノート何て要らないでしょ」

「いや、ノートがあれば神の力が使えるという設定で八幡自体が名もなき神という訳では」

「ヒッキーが名もなき神様ならプリキュアの設定は要らないんじゃないかな」

「そうですね、先輩が魔法使いプリキュアに変身してキュアボッチになるって...ちょっと見たいです」

「...頼む、もうそれ以上言わないでください」

 

顔を赤くした八幡がへこんでしまったわ、余り黒歴史については言わない方が良さそうね。少し話題を変えましょうか。

 

「材木座君、どうして私と結衣、いろはさんは言い争ったりしているのかしら。重婚できるのであれば仲良く過ごしても良いと思うのだけれど」

「そうですよね、私は仲良くしたいです」

「でもさ、あたしはラノベに書いてあるみたいに一番最初が良いかな。どうせならそこも書いてほしかったな//」

 

結衣は何を言い出すのかしら。それなら私との濃厚な描写の物を書いてほしいわ。でもそんなこと材木座君に書いて貰うなんて恥ずかしくてお願い出来ないけれど。

 

「..続きは書いてないのだが、八幡はずっと経験出来ないで行かせようかと」

「..なんで、俺は卒業できないんだよ」

「その方が面白いではないか。何時も皆に求められながらも何らかが起こって最後まで経験出来ないという設定でだな」

「それなら中二病の能力を使えるのは未経験者でないと駄目って書いてある方が良いな、それで魔法がいらない世界にするため、皆と協力して魔王を討伐するとか」

「確かにその方が良いな。我も最初は皆さんに鍛えて貰うが、いろは殿が毎日召喚してくれるサキュバスと肌を合わせる内にお互い情にほだされ、それ以外にも我が助けた奴隷のダークエルフ、森の探索時に出会い我に惚れたドライアド、滅ぼされた亜人の王国の姫ぎみを仲間にし冒険しながらイチャコラ

「このラノベの続編はお前がメインか!?しかもハーレムかよ!!」

...わ、我が主役ではないぞ、あくまでも八幡や皆さんがメインで我はサブキャラクターだ。スピンオフの扱いだ」

「スピンオフの方が執筆が早そうだな」

「しょ、しょれはないと思うじょ...」

 

私達が材木座君を見ていて、目が合うといきなり口調がおかしくなったわ、彼の中では自分の冒険を書きたいのね。でも私達に伝えるとまた調教されると思っているのでしょうけど。

 

「喉乾いたから、コーヒー買ってくるわ」

「八幡、もう遅いからそのまま帰って貰っても良いわよ」

「そうか、じゃあ今日はこのまま帰るな」

「では我も帰らせてもらいます」

 

八幡が出て行ったあと、材木座君が後片付けを済ませて、帰ろうとしたところで私達は彼を引き留めていた。

 

「材木座君。ラノベの批評はまだ終わっていないわ」

「そうですよね。私と雪乃先輩の扱いが酷かったことについて弁明を聞きますよ」

「いいじゃんラノベの中の事なんだから、そんなに怒らなくても」

「結衣。貴女はサキュバスにされていたのよ」

「ヒッキーだけのサキュバスなら良いよ//」

 

そう言ったかと思うと、結衣は腕を組み胸を強調しだしたわ。

 

「貧相なサキュバスって可哀想だよね。ぷぷぷっ」

「「!!」」

 

私といろはさんは唇を噛みしめて結衣を睨んでいるなか結衣は材木座君に言葉を続けていた。

 

「中二、サキュバスのコスプレ衣装って高いのかな」

「も、物にもよると思いましゅが、高ければエッチな下着に角と羽、尻尾を付ければ良いと思いましゅ」

 

材木座君は顔を真っ赤にして、結衣の質問に答えているけれど、結衣の方を直視できないのか視線があさっての方を向いているわね。

 

「じゃあ今度、ヒッキーにはコスプレで撮影して貰おうかな。あたしも帰るね、バイバイ」

「「....」」

「..それでは我も帰らせてもらいましゅ」

 

ガシッ

 

「あ、あのお二方。どうなされたのでしゅか」

 

私といろはさんは材木座君を捕まえ、下校時刻まで彼の指導を行っていた。あくまでもラノベの指導であって決して彼に八つ当たりをしていたわけではないけれど、材木座君は最後、泣いて帰っていったわね。

 

 



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「EVEの時間」

今日は姫菜さんのラノベを書いたというので、姫菜さんと優美子さん、後、南さんが奉仕部に来たわね。

沙希さんは家の用事、いろはさんは生徒会に出ているようだけれど。

 

材木座君が私にラノベを渡してきて確認し今は皆で読んでいる。

私は先に読んだので紅茶を淹れ姫菜さんの前に置いた時、何か独り言を言っているわね。八幡も「これってパクリ?」って言っているのだけれど。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

私は何なのだろう。人口生命体として生まれた私はハウスロイドとして比企谷家にお世話になっている。ここではご両親と八幡さん、小町さんの四人家族だけど、御両親は仕事の関係で海外に行っているため、私が家のことを任されていた。

 

「ハチ。おはよう」

「姫菜、もうちょっと寝させてくれ」

「駄目だよ。お母様から休みでも9時には起こすよう言い付けられてるんだから」

「..分かったよ。はぁ、休みなのにゆっくり寝させて貰えないなんて」

 

八幡さんは何時もこうだ。起こされるのが分かっているのに、何時ももう少しと言って寝ようとしている。私は何時からか、八幡さんの言うことを聞いてしまいそうになっていた。その都度、八幡さんの上位に居る御両親の命令が優先されるようになっていて、私は命令を実行していた。

 

「姫菜、俺の前ではリングを消してくれないか」

「..駄目だよ、まだ小町さんがリビングに居るから」

「そうか、じゃあ後でな」

「..うん」

 

私達アンドロイドは見た目人間と区別がつかないため、頭の上にリングを表示している。でも八幡さんは私と二人で居る時はリングを消してほしいと何時もお願いしてくる。

私達に依存する人達はアンドロイドホリック、通称ドリ系と呼ばれ社会問題となっていた。だから八幡さんも小町さんが居るところではリングを消してほしいと命令はしてこなかった。

言葉使いも八幡さんの命令で二人っきりの時だけは、友達言葉で話してほしいと言われ、私はその命令に従っていた。それがドリ系の中期で友達のように接する人達と分かっていながら。

 

最近の私は八幡さんの命令を優先してしまうことがある、なぜだかは分からない。先ほどの起こす時間についても、私の中で本当は八幡さんの命令が優先されていた。ただ私は八幡さんを早く起こせば一緒に居れる時間が増えるので、それを御両親の命令と嘘を吐いてまで起こしていた。

 

私達アンドロイドは本来、嘘をつくことが出来ないけど、なぜか私は八幡さんの前だけでは嘘を吐けるようになっていた。

 

「姫菜、お兄ちゃん起きた?」

「はい小町さん。今起こしましたから、もうすぐ下に降りてくると思われます」

「あっそ、今日の天気は」

「今日は一日快晴ですので、お出かけ日和かと」

「じゃあ、小町は遊びに行くから」

「はい、お気をつけてお出かけください」

 

小町さんはそう言って身支度を済ませ出掛けて行った。八幡さんは今、朝食を食べている。

 

「朝食ありがとうな、姫菜」

「ううん、ゆっくり食べてね。ハチ」

 

八幡さんは何時もお礼を言ってくれる。私はその言葉が嬉しかった。小町さんは私にお礼など言ってくれない。それが普通の対応だけど私は寂しかった。私達にお礼を言っただけでドリ系の初期状態と言われるから仕方がないとは分かっている。でも小町さんも小学校の時は、私を家族として扱ってくれて、何時も感謝の気持ちを伝えてくれていた。

 

「姫菜、リングを消してくれないか」

「..うん」

 

私がリングを消すと八幡さんは笑顔になってくれる。私はその表情をみるだけで、なぜか喜びの乱数が溢れて来ていた。

 

八幡さんと小町さんが食べた後の食器を片付け、洗濯が終わったので干しに行った後、八幡さんは私の手を引いてソファーに座らせてきて抱きついて来ていた。

 

「姫菜、俺はお前とずっと一緒に居たい」

「..ハチ、私はハウスロイドだからここにいる間は一緒に居るよ。でも貴方は人間のパートナーを探して」

 

私は今、自分に嘘を吐いている。本当は八幡さんと一緒に居たい。それはハウスロイドとしてではなく、八幡さんの友人として、いいえ八幡さんの恋人として過ごしたい。でもそんなのは認められるはずがない。

私は自分の思考を捻じ曲げ、八幡さんに返答を行わないといけなかった。そんなことを考えてしまうこと自体がバグでおかしいのは分かっている。でもこの思考を直してほしいとは思っていなかった。

 

八幡さんは今、私の足に頭を乗せて寝転んでいて私は八幡さんの頭を撫でていた。八幡さんは私と目が合うと笑ってくる。それだけで私は何も思考できなくなっていた。

 

八幡さんは私の横に座り直したけど、先ほどから何か考え込んでいた。そう思考していると八幡さんは私の方に身体を向けてきて、私の肩を掴んできた。

 

「姫菜、キスして良いか」

「..駄目だよ、キスは恋人同士がするの。私はアンドロイド、貴方の横には立てないから」

 

また私は自分の思考に嘘を付いていた。本当は恋人のように接してほしい。それが原因で私が壊される理由となったとしても。

私はそのような思考をしていたため、動きが止まってしまったのだろう。その間に八幡さんは私の唇に八幡さんの唇を合わせて来ていた。

上手く思考できない。唇の感覚と八幡さんの唇からの伝達情報によって私のAIは処理できなくなっていた。

 

「姫菜//」

「ハチ//」

 

私は初めての口付けで何も思考できなくなっていた。でも八幡さんはそんな私の唇をまた塞いできて私はソファーに押し倒され、唇を奪われていた。

私達アンドロイドは本来このような行為に何も感じることはないと記憶されていたけど、私の思考はそれとは違う情報で溢れかえっている。嬉しい、恥ずかしい、もっとして欲しい、私の中でそんな思考が溢れかえっていた。

 

「ハチ//おかしいの、私達はこういった感情は出ないようになっているのに、今私は嬉しいの、恥ずかしいの。でももっとして欲しい、求めたいと思ってしまっているの」

「嬉しいよ、姫菜//」

 

そう言って、八幡さんはまた私の唇を奪ってきていた。八幡さんは私の口の中に舌を入れてきて、私も八幡さんの舌に自分の舌を絡めていた。先ほどのキスでは味わえなかった新たな情報が私の思考を狂わせる。私はいつの間にか自分から八幡さんの唇を求めるようになっていた。

 

「お兄ちゃん!!何してんの!!」

 

私達がキスしている中、小町さんが帰ってきたのだろう。私達は小町さんの声で身体を離していた。

 

「お兄ちゃん!!アンドロイドに何してんの!!幾らモテないからってロボットに欲情しないでよ」

「..小町、俺は姫菜が好きなんだ」

「所詮機械でしょ、姫菜にはそんな感情ないんだから求めても無駄だよ」

「..八幡さん申し訳ありません。小町さんの言われる通りです。私はアンドロイド、主人の求めに答えるのは当然です。ただそこには何も感情は有りません」

 

私はまた自分に嘘を吐いている。もし私に涙を流せる機能があれば、涙を流してしまっているだろう。顔の表情も何とか作っているが、今にも崩れてしまいそうになっていた。

 

「ほら姫菜もああ言っているじゃん」

「...姫菜」

「姫菜、私の部屋掃除してきて。後、昼食は焼きそば作って」

「分かりました。では小町さんの部屋を掃除してきます」

 

私はリビングから出ると崩れ落ちそうになった。どうして私はアンドロイドなのだろう、人間の女性であれば八幡さんと一緒に居ても許される、でも私は認められない。私も人間に生まれたかった。どうして私はこんな思考をするようになっているのだろう、こんな辛い思考をするなら普通のアンドロイドで良かった。そうすれば悲しい思考はしないから。

 

八幡さんと二人で過ごしたい誰にも咎められずに過ごしたい。でも私の望みは叶えられることはない。

 

そして小町さんが御両親に連絡し、私は御両親の命令で八幡さんが居るときは部屋に入ることを禁じられていた。その日から八幡さんを起こすのは小町さんの役目となっていた。

でも私は一部が壊れているのだろう、御両親の命令に背いて動くことが出来たので、二人が寝ている午前四時から五時の一時間は八幡さんの寝顔を見るため、部屋に忍び込んでいた。

 

八幡さんの寝顔を見ていると私は幸せになれる。何時までもこうして居たい。この時間は私だけの物。私は何時も部屋を出る前に八幡さんに口づけをしていた。

 

「ハチ、好きだよ」

 

 

八幡さんが大学に上がると同時に、御両親が海外の転勤から帰ってくることになった。

 

「はあ、やっと帰ってくるんだね」

「長かったな、中高と俺達三人だったからな」

「何言ってんのお兄ちゃん。姫菜を人数に入れないでよ」

「姫菜も家族だろ、小町も小学校の時は懐いてたじゃないか」

「小学校の時と一緒にしないでよ。..お兄ちゃん、あれ以来姫菜に手を出してないだろうね」

「ああ、心配するな。...姫菜には感情がないと分かっているからな」

 

八幡さんはあれ以来、私を抱きしめてくれることもキスしてくれることも無くなった。でもこれで良かったのだろう。私は自分の思考を押し殺し、八幡さんに接するようにしていた。

でも悲しい。苦しい。何処からともなく私の思考はその二つの言葉に埋め尽くされていた。

 

 

御両親が帰ってきて八幡さんは大学に通うため、一人暮らしをすることになっていた。私も連れて行ってほしい。八幡さんと二人で過ごしたい。

 

八幡さんが一人暮らしを始めたため、私は八幡さんと会えることはなくなっていた。

 

会いたい、抱きしめてほしい、キスしてほしい。一月もすると八幡さんへの想いでメモリがパンクしそうになっている。幾らメモリを解放してもその想いですぐに一杯になってしまい、私は家事も碌にろくにできなくなっていた。

 

「あれ故障かな。..姫菜ちゃん。どこかおかしいの?」

「..いいえ、そう言うわけではありません」

「姫菜ちゃん、今は私と二人だから、何でも言ってもらって良いよ」

「..お母様、..どこも調子は悪くありません。もし外部からおかしく見えるなら、廃棄して頂くのがよろしいかと思います」

 

嫌だ、八幡さんに会えなくなるなんて。でも会えないならこんな悲しい思考をこれからも続けたくない。それならこのまま廃棄して貰えれば、悲しくなることはなくなるのだろう。

 

「..姫菜ちゃん。貴女を作ったのは私よ、そして貴女の思考ログの解析ももちろん定期的にしているわ。だから私には嘘を吐かないで」

「..八幡さんに逢いたいです。あってキスしてほしい。抱きしめてほしい。八幡さんにずっと寄り添っていたい。私の中はその思考で溢れてしまっているのです」

「ええ、知っていたわ。貴女が毎日八幡の部屋に忍び込んでいたのも。でも貴女の言葉で聞きたかったの」

「..」

「実はね、貴女には人間の心って言われる部分を重点的に開発したのよ。だから人間のような思考をするのは当たり前なの。でもそのせいで貴女を苦しめてしまったようね」

「御母様」

「...では今から新たな命令で書き換えるわ。比企谷家のハウスロイドは今時点でおしまい。これからは八幡のマンションで八幡の面倒を見て上げて」

「はい!!」

 

お母様は私に荷物を持たせ、八幡さんのマンションまで送ってくれていた。今日からここが私の仕事場。狭いワンルームマンションだけど、私にとってはやりがいのある仕事場だった。

まだ八幡さんは帰って来てないけど、私には色々とやらないといけないことが有る。キッチンや食器の配置を全てインプットし、部屋やお風呂、トイレの掃除もこなしていた。でも今までと違い、身体が面白いぐらいに軽やかに動く。

 

私は今、料理の下ごしらえを終え玄関で八幡さんの帰りを待っている。なんで待っているだけでこんなに嬉しい感情が溢れてくるのだろう。

八幡さんと逢ったらどうしよう。今までのことを謝らないといけない、もし許してくれなかったら。もし彼女が出来ていて連れてきたらどうすれば良いのだろうか。

私の中には先ほどまでの嬉しい感情とは違い、恐怖、戸惑い、嫉妬、独占欲、色々な感情が溢れて来ていた。

 

でも今は八幡さんに逢いたい。その想いが一番だった。

 

そして鍵が刺さる音が聞こえドアが開きだしていた。私は今までで一番いい笑顔を見てもらいたくて、挨拶をしていた。

 

「おかえり!!ハチ!!」

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「ねえ、材木座君。どうして私は何時も普通の人間じゃないのかな、神獣だったり今回はアンドロイドだよ」

「..今回は偶々アマゾンPrimeで『EVEの時間』を見て思いついただけなのだ」

「...やっぱりそうか。どこかで見たような気がしたんだが」

 

なにか映画の設定を使っていたのね。アンドロイドが家で家事をするのは何時になるのかしら。

私がこちらに来る前もまだ実用化はされていなかったのだから。

 

「我があの物語の中に居たら必ずドリ系末期者になっておっただろうからな」

「うん。私もレンタルで借りて観たことあるけど、結構考えさせられるよね」

「私はその映画は知らないけれど、面白い話なのかしら」

「ああ、結構面白いと思うぞ。ただ続編とか出てないよな?」

「我も続きを見たいのだが出ておらぬな」

「うん、伏線が有っても回収されてないよね。何かの番号が有ったけどそれの意味とか」

「左様、サミーというアンドロイドなのだが、彼女自身にも秘密があるようだったな」

 

ちょっと気になるわね、八幡と一緒に見たいのだけれど、今日にでも泊りに行って一緒に見ようかしら。八幡の部屋で二人で布団に入って後ろから抱かれながら見たいわ。

そして私が見ているのに八幡が欲情して私の身体を触りだすのよ。そして何時の間にか映画も見ずに二人で愛し合うのよね//

 

「姫菜、あーしが見ても面白い?」

「あたしも見てみたいかな」

「うちもちょっと気になる」

「うん、受け取り方は人それぞれと思うけど、お互いの意見を話すのも楽しいかもね」

「俺ももう一回、見直そうかな。中学の時に一度見ただけだから今一内容覚えていないな」

 

何時の間にか映画の話になってしまったわね。今日は金曜日だからこの後八幡の家に泊りに行って一緒に見ようかしら。

 



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「三者面談」

「ではもう一つ書いたのだが良いか」

 

そう言って材木座君は私にラノベを渡してくれた。

ということは私は出ていないのかしら、ちょっと残念ね。でもお義母さんが出てくるのは初めてよね。

 

お義母さんには何度も助けてもらった。八幡が倒れた時、私のことを気にかけてくれ泊まりに呼んでくれ、八幡のベッドで寝るのを許してくれたときは恥ずかしかったけれど、ベッドに入ると八幡の匂いに包まれて心が安らいだわ。

布団に入った時は泣いてしまったけれど八幡が倒れた後、熟睡なんて出来なかったのに、その時は深い眠りにつけたのだから。翌日は遅くまで寝てしまい、ご迷惑をかけてしまったのだけれど、お義父さんもお義母さんも私の顔を見て喜んでくれていたわ。

自分では分からなかったけれど、前日まではずっと悲痛な表情をしていたらしく凄くご心配をお掛けしていたみたい。でもその日からは健気に立ち振る舞おうとしていたと後で教えてくれていた。

そしてそれ以降、何度も八幡のベッドで寝させてもらえた。

お義父さんも私に気を使ってくれて、わざわざ八幡の布団を病院から運んで交換してくれていたのだから。

お義父さんに八幡の匂いが薄れていないか確認された時は顔から火が出るほど恥ずかしかったけれど、お義父さんとお義母さんが私に向けてくれた好意は今でも忘れられないわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

今日は八幡と小町の三者面談か。休みを取っているので久しぶりにのんびり出来るわ。確か面談時間は八幡が3時からで小町が4時だったよね。

こういう時、二人とも一緒の高校に行ってくれて助かるわ、会社を休むのも一日で済むから。

 

私は車で総武高校まで向かっていき八幡の教室に歩いて行った。まだ2時過ぎで早く着き過ぎたけど待っていればいいかな。確か八幡のクラスは3Fと言っていたはず。案内板が置かれていて、それに従って私は3Fの教室に移動していった。

 

はぁ、八幡の進路については心配してないけど、毎回言われるんだよね。一人で居るとか誰とも仲良くしていないとか。あの子ももうちょっと皆と合わせるってことしてくれれば良いんだけど、誰に似たのか一人で居る方が気楽とか言ってて友達もいないみたいだし。

私は憂鬱な気分になりながら、八幡のクラスに向かっていった。

 

教室の前には椅子が置いてあり、何人かの生徒と保護者が座っているわね、私の前に面談を行う人たちだろう。八幡はどこかに行っているのか、まだいないわね。時間も早いし椅子に座って待たせてもらいましょうか。

 

私は椅子に座って周りを見渡していた。頭を金髪に染めた縦ロールの女子生徒。赤毛の髪の毛をショートカットにしている女の子。ピンク掛かった茶髪に染めて髪の毛を団子にしている女子生徒が何か話している。あのお団子頭の子、たしか結衣ちゃんだったかな。

 

私がそう考えていると、その女子生徒と目が合ったのだけど、いきなり立ち上がりこちらに歩いて来ていた。

 

「ヒッk、は、八幡君のお母さんですよね。お久しぶりです、由比ヶ浜結衣です」

「結衣ちゃん、久しぶり。また遊びに来てね」

「はい。お義母さんは八幡君と一緒じゃないんですか」

 

..何だか違う意味で言われたような気がするけど勘違いだよね。でもこの子は本当に可愛い顔してるわ、胸も大きいし羨ましいわね、八幡は触ったことあるのかしら。私もあの胸に顔を埋めたい..って私は何を考えているのよ。

 

「うん三時からでさ。早く来過ぎたからここで待たせてもらっているの」

「結衣。こちらの方は」

「あ、優美子。八幡君のお母さんだよ」

 

結衣ちゃんがそう言うと、優美子ちゃんって子と赤毛のショートカットの子が、いきなり身だしなみを気にしながら私の前まで移動してきた。

 

「は、初めまして、お義母さん。あーs、私、三浦優美子と言います。八幡君とクラスメイトで何時もお世話になっています」

 

優美子ちゃんも何か違う気が...でも綺麗な子ね。綺麗に金髪に染めているけど、とてもよく似合っているし顔も綺麗。八幡はこの子とも仲良くしているのかしら。多分、八幡の事だから話すことはないのでしょうけど。そう言えば八幡のベッドの下にギャル物が有ったわね。その中の子が優美子ちゃんに似ているような気がするけど...

 

「う、うちも挨拶させてください、お義母さん。相模南って言います。うちも八幡君と一緒のクラスでお世話になっています」

 

また違う意味を含んでた気がするけど、この子も可愛い子ね。ショートカットも似合ってるしピアスを開けてるけど、整った顔しててとても可愛いわ。でも八幡はこの子とも仲が良いのかしら、想像つかないわね。結衣ちゃんは一緒の部活だから話すことはあるのだろうけど、三人でやっていると言っていたから、後は雪乃ちゃんだよね。

 

優美子ちゃんも南ちゃんも私の前でほんのり顔を赤くしているけど、まさかね。こんなかわいい子達が八幡のことを気に掛けているってことはないわよね。

 

「優美子ちゃんに南ちゃんね、こちらこそ息子のことをよろしくね」

「「はい」」

「でも八幡遅いわね、何しているのかしら」

「あ、多分。自販機に行ってコーヒー飲んでると思います」

「ああ、あの甘ったるいコーヒーね」

「う、うちまだだから八幡君の事、呼んできますね」

 

南ちゃんはそう言うと私が断る前に颯爽と駆け出してしまっていた、別に良いのに。八幡は放っておいても勝手に来るでしょうから。

 

「あ、あのどうして結衣のこと知ってるんですか」

「うん?ああ、結衣ちゃんと雪乃ちゃんは何度か家に泊りに来ているのよ。あとこの間は沙希ちゃんが来てくれてたよ」

「...はい?」

 

あ、不味ったかな。優美子ちゃんが結衣ちゃんを睨みつけてて、結衣ちゃんは隣で顔を背けて頭のお団子をクシクシしている。

 

「...結衣、どういうことだし」

「いやぁ、あはは」

「優美子ちゃん、皆は私と小町の所に泊りに来ているの。疚しいことなんてないわよ」

「..で、ではあーしも泊りに行っても良いですか。お義母さんの所に」

 

うん?また何か違うような...でもここで優美子ちゃんだけ駄目なんて言えないし幾らでも泊りに来てもらっても良いんだけど、八幡が居るのに良いのかしら。もしかして優美子ちゃんは八幡の事...

 

「ご両親の許可が出れば良いよ。ちゃんと八幡が居ることも伝えてね」

 

私達が話していると、男女のカップルが廊下をこちらに向かってくるわね。...って、思ったら八幡が南ちゃんに手を引かれてるけど、どうして手を繋ぎあってるの。南ちゃんは顔を真っ赤にしてるけど、嬉しそうに繋いだ手を振って歩いてきて何だか小学生みたい。でも南ちゃんも八幡の事良く思ってくれてるのかな。でも八幡は今でもボッチって自分の事言っているから、まさかね。

 

南ちゃんのお母さんはニコニコしているけど良いのかしら。娘さんがこんな目つきの悪い男と手を繋いでいるなんて、小町がそんなことしようものなら私なら駆け出して問い詰めそうだけど。

 

八幡は私達の所に来るまでに手を離していたけど、南ちゃんは残念そうな顔してる。それってやっぱりそう言う事よね。

 

「八幡、何処に行っていたのよ」

「母ちゃん、まだ早いだろ」

「早く来過ぎてね、あんたも座っていなさいよ」

「ああ、分かったよ」

 

八幡を座らせ私は立ち上がると結衣ちゃんと優美子ちゃん、南ちゃんのお母さんたちに挨拶をしていた。皆良い人達ね、でも八幡が娘さん達にご迷惑を掛けてなければ良いのだけど。

 

私達が話していると、前の人が終わって出てきたわね。あらこの子も綺麗ね。黒髪で眼鏡を掛けてて清楚な感じ。でも私達の方を見て顔をほんのり赤くしだしたけど、まさかね...

私がそんなことを考えていると、由比ヶ浜さんが呼ばれて教室に入っていった。結衣ちゃんも勉強頑張っているって言ってたんで、第一志望行けるといいけど。

 

「も、もしかして八幡君のお義母さんですか」

 

また違う意味で言われた気がする..でもこんなに可愛い子達にお母さんって言われるのも何だか嬉しいわ。

 

「ええ、八幡が何時もご迷惑をお掛けしています」

「そ、そんなことないです。私の方が八幡君に御迷惑ばかりかけて居て申し訳ありません。私海老名姫菜って言います。よろしくお願いします、お義母さん」

「こちらこそよろしくね、姫菜ちゃん」

 

こんなかわいい子ももしかして八幡を...でも一緒のクラスの女の子を4人も侍らかしているの。八幡のどこにそんな甲斐性があるのよ。

私がそんなことを考えていると、私達の次の人が廊下を歩いてきたけど、あれは沙希ちゃんね。そういえば沙希ちゃんも一緒のクラスって言っていたわ。って言うことは一緒のクラスに5人...

 

「沙希ちゃん、こんにちは」

「お、お義母さん。こ、こんにちはです//」

 

沙希ちゃんには何度もお母さんって言われたから慣れてるけど、何か違う意味も含んでそうなのよね。私達は挨拶をし、お母さん達と話していると、優美子ちゃんが沙希ちゃんに何か聞いているわね。

 

「沙希、ヒキオの所に泊りにいったんだよね」

「ああ、雪乃と結衣の三人で泊まらせてもらったよ」

「え!?なにそれ、うち知らないんだけど」

「わ、私も知らない...どういうことハチ」

「いや、俺の所に泊りに来てるわけじゃなくて母ちゃんと小町のとこに来てんだよ」

「ふーん。じゃあ、お義母さんが良いって言ってくれたら私も行けるんだね」

「うちも行くから」

「私も行くよ、ハチ」

 

そう言うと、優美子ちゃんと南ちゃん、姫菜ちゃんが私達の方に近寄ってきた。

 

「お、お義母さん。私達も泊りに行って良いですか」

「姫菜、御迷惑になるでしょ」

「南も家で何もしないし御迷惑になるから駄目よ」

「優美子もそうだし、あんた料理も出来ないし」

「な!?あ、あーしもお風呂ぐらい洗えるし!!」

「うち、料理できるのでお義母さんの味付け教えてください!!」

「そうだよ、お母さん。私料理できるからお義母さんの手伝いしたいし!!何だったらお義母さんの背中流させてもらいますから//」

 

知らない娘さんに背中流してもらうって...ちょっと良いわね。小町とも最近一緒にお風呂入ってないから、姫菜ちゃんと洗いあってもいいかも。

 

「でも駄目よ、お母さんと八幡君に気を使わせるでしょ。姫菜、我慢しなさい」

「部屋の掃除も洗濯も出来るから!!」

「南も駄目よ、勉強しないから外泊禁止してるでしょ」

「勉強会でのお泊りなら良いでしょ!!最近皆のおかげでうちの成績上がってんだから良いじゃん!!」

 

南ちゃんも一緒に勉強会しているのね、結衣ちゃんや沙希ちゃんも雪乃ちゃんに教えて貰っているって言っていて、皆成績が上がっているのね、雪乃ちゃんも教えるのが楽しいと言っていたから、皆で仲良くしているのね。

 

「優美子も比企谷さんの奥様にご迷惑だから我慢するし」

「ご、御迷惑ですか、お義母さん」

「ううん、うちは来ていただいても良いわよ。でも私と小町の居る時ね」

「お義母さんも良いって言ってくれてるし!!」

「じゃあ、パパに相談するし」

「え!?パパには黙っておけばいいじゃん!!」

「それでバレたら比企谷さん家に迷惑掛かるし。パパだと乗り込んで行って八幡君を殴っちゃうかもしれないし」

「うぅ」

 

娘さん達が私達と話していると、教室の扉が開き先生が出て来ていた。なんだか怒っているようにも見えるけど、何か有ったのかな。

 

「あのう、もうちょっと静かにしてもらえますか。今、面談しているので」

「「「すみません」」」

 

うぅ怒られてしまった。私達が悪いんだよね。ちょっとは自重しないと。

 

「ねえ沙希。あんた比企谷さん家に泊りに行ったの」

「う、うん。小町が居るからね」

「..へぇ。じゃあ今度はお礼に小町ちゃんを家に誘って来ていただいたら」

「大志が居るから駄目だろ」

「じゃあ八幡君と小町ちゃん二人来てもらって泊って貰えばいいでしょ」

「は、は、八幡を家に泊める//お母さんが良いならお礼もしたいし京華も喜ぶから...は、八幡どう//」

「...は?何がだ?」

 

何で八幡は携帯を弄ってんのよ。せっかく沙希ちゃんが勇気を出して誘ってくれたのに何で愚息は聞いてないの。沙希ちゃんも呆れてて、もういい。って言っているよ。

でも何よ、この状況。本当に八幡ってモテてるの...小町に確認しないといけないわね。

 

私達は先生に怒られたのも有って、その後は静かにしていた。優美子ちゃんと南ちゃんが私達の前に面談を受けていよいよ私達の番になった。

 

「成績に関して文系は元々良かったし、今は理数系も頑張っているようだから国立も狙えますよ。比企谷はどう考えているんだ」

「..先生、でも文系に絞った方が良いですよね。その方が合格率も上がりますから」

「将来何をしたいか目標は決まってるのか。決めていて文系の方が有利ならそちらを目指すべきだとは思うが」

「..それはまだですけど」

 

良かった。八幡のことだから専業主夫って言うと思ったけど、流石にこの場ではそんなこと言わないわよね。でも国立か、八幡が何をしたいのか決まってなくて、国立でも問題ないならそっちも視野に入れておくべきね。

陽乃ちゃんと雪乃ちゃんにもお礼を言わないと。そういえば何で家庭教師してくれているのかしら、もしかして二人も...

 

進路の話は大体終わり、今のままでも問題なさそうってことで安心できた。後、私は気になっていたことを先生に聞いていた。

 

「先生、八幡って学校ではどうでしょうか」

「私は三年になってからの比企谷君しか知りませんが、皆と仲良く出来ていると思ってますよ」

「そうなんですか、去年までそんなこと聞いたことなかったので」

「男子で友達が何人かいますし、女子生徒なんて綺麗な子ばかりって職員室でも有名ですよ。比企谷ハーレムって呼ばれてますからね」

「はぁ!?」

「せ、先生!!何言ってんですか」

「わが校の綺麗どころ全て掻っ攫っていますからね。年下生徒会長やOBも何人かいるようですし海浜総合にも居たよな。皆、妬んだり羨ましがっていますよ」

「..ハーレムですか」

「ええ、そう言えば先ほど騒いでいたのも皆ハーレム要員でしたね。...失礼、私がそんなこと言っては駄目ですね。だがな比企谷、せめて授業中は自粛してくれ。他の先生から何とかしてくれと言われたぞ」

「..先生、俺はそんなの作った覚えはないですよ」

「ハーレム、ハーレム...」

 

私は先ほどまで話していたことなど全て頭から飛んでしまい、ハーレムという言葉が頭にこびりついていた。

 

その後、小町の面談にも出たけど、内容何てほとんど覚えていない。ただ小町の担任も八幡の授業を受け持っているらしく、そこでも沙希ちゃんとイチャイチャしているってことを言われたのを覚えている。

小町も先生と一緒になって言っていたけど、小町はブラコンが酷いから私から見たらあんたもハーレム要員よ。

 

どうやって家まで帰って来たんだろう、良かった車で事故を起こさなくて。ソファーに腰掛けると一気に力が抜けてしまった。大体ハーレムって何よ。陽乃ちゃん、雪乃ちゃん、結衣ちゃん、沙希ちゃん、優美子ちゃん、南ちゃん、姫菜ちゃん、名前は知らないけど年下生徒会長ちゃん、小町。後、海浜総合に居るっていう子。私が知らないだけで他にもいるんじゃないの、どうなってんのよ?

 

「八幡、話があるんだけど」

 

私は八幡の部屋に入っていくと、八幡はベッドに寝転がってラノベを読んでいた。はあ、私の心配をよそに何でこの子はこんなに寛いでいるの。大体お嫁さんは一人しか認められてないんだから、八幡がはっきりしなさいよね。

 

「八幡、何よハーレムって。大体あんたが」キャッ

 

私は詰め寄るためベッドに座り直した八幡に近寄って行ったけど、床に置いてあった鞄に躓いてしまった。

 

「母ちゃん!!」

 

八幡が私を支えてくれようとして、身体に手を回してくれてたんだけど、そのまま倒れこんでしまったので、八幡の腕は私の背中に回した形で、私はベッドに仰向けに倒れこんでしまい、八幡は私を抱くように覆いかぶさっていた。そしてお互いの顔が滅茶苦茶近くなってしまうぐらい接近して見つめ合っていた。

八幡は顔が真っ赤になりだしたけど、私も八幡とこんなに顔を近づけたのはいつ以来だろう。は、恥ずかしい//私も段々赤面していくのが感じられる。

 

「か、母ちゃん//だ、大丈夫か」

「う、うん。八幡//」

 

ガチャッ

 

「お兄ちゃん、ラノベ貸し...て」

「「こ、小町!?」」

「お、お、お母さんもお兄ちゃんのハーレム要員だったぁああああ!!」

「こ、これは違うのよ!!小町!!」

 

私がそう言っている間に、小町は部屋を飛び出していった。誤解を解かないと!!

私は小町を追いかけるために身体を起こしたんだけど、八幡は私の背に腕を取られてて身体を動かせずにいたので、私の唇は八幡の唇に触れてしまった。

 

「ご、ごめん//八幡//」

「か、母ちゃん//」

 

私は恥ずかしくなって八幡の横から抜け出し部屋を飛び出したけど、扉の前に蹲ってしまった。顔が赤くなっているのが引かない。でもどうして私もハーレム要員なのよ//八幡は私の実の息子なのよ、それなのになんで私もこんなにドキドキしているの//八幡が赤ちゃんの時、何時もキスしていたでしょ。

 

...でも久しぶりにキスだけでこんなにドキドキしたな//こんな気持ちいつ以来だろう。実の息子との許されない関係、背徳感が有ってちょっといいかも//

 

私は顔を真っ赤にしているのを見られたくなくて、小町の誤解を解くこともなくリビングに降りて行った。今日は八幡が喜んでくれるご飯を作ろうかな。久しぶりに学生の時みたいな感情を思い出させてくれたから。私は八幡が美味しいって言ってくれるのを期待してご飯の準備を始めていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「「「...」」」

「..な、なんで俺が母ちゃんとキ、キスしてんだよ//...って材木座が居ない!?」

 

そう言えば途中で材木座君が出て行ったわね、お手洗いに行ったと思ったのだけれど。

 

「材木なら途中で出てったし...雪乃、結衣。あんたらヒキオん家に泊りにいったん?」

「こ、これは中二のラノベだよ..」

「だってあーしの読んだラノベ、後書きって書いてあって

『我を泊まらせてくれなかった報いだ。皆に責められるがよい。』って書いてあるし」

 

材木座君は何てことを...私が読んだのには書いてないのに、優美子さん達が読んだラノベには、後書きが書いてあるわ。

誤魔化しても仕方がないわね。この後、八幡が責められるかもしれないけれど。

 

「...ええ、私は御両親から何時でも来て良いと言われているのよ」

「う、うん。この間はゆきのんとサキサキの三人でお邪魔したよ」

「じゃあ、あーしも行きたいし」

「私も泊りに行きたい、ハチ」

「うちも一緒に行く!!今日金曜日だし皆で行こうよ」

 

この間の沙希さんもそうだけれど、段々八幡のお家に泊りに行く人が増えて行くわ。もし間違いがあったらどうするのよ、私であれば受け入れられるけれど。..八幡が断ってくれないかしら。

 

「と、泊り何て止めてくれ、何時も俺の理性が持たないんだよ」

「雪乃と結衣と沙希が良くて、あーし達は駄目なんだ...ごめん、ワガママ言って...」うぅ

「ハチに嫌がられるんだ...そうだよね、BLなんて誰も受け入れてくれないから..迷惑だよね、私がここに居るのも..」うぅ

「うちも嫌われてるんだ...まだ色々と許してくれてないんだ...当たり前だよね。うちは八..比企谷君に酷いことしたんだから。ごめん、何時も馴れ馴れしくして、ごめんなさい...」うぅ

「だあぁぁぁ、分かったよ。どうか泊りに来てください。お願いします!!」

「うん、ヒキオがそう言うならお邪魔するし」

「お願いされたらしょうがないよね」

「うちも行くから」

「はぁ、...では私も伺うわ。お義母さんと小町さんには私から連絡しておくわね」

「...あたしも行きたいけど、明日朝から用事があるんで今回は駄目だよ」

「ま、まて。4人何て泊まれないぞ、そんなに布団無いだろ」

「大丈夫よ、八幡のお家には普段使っていない布団が4セットあるのだから。この間も小町さんを入れて四人で3つの敷布団で問題なかったでしょ。小町さんを入れて5人でも大丈夫よ」

「..なんで俺が知らない布団の数なんて知ってるんだよ」

「お義母さんに教えて貰ったのよ、置いてある場所も把握しているわ」

 

でもどうしてこんなことになっているのよ、今日は金曜日なので私一人で泊まりに行って八幡に気持ちを伝えて仲を進展させようと思っていたのに。

 

「どうせならさっきのラノベの話、レンタルで借りてハチの部屋で皆で見ようよ」

「何で俺の部屋なんだよ、リビングで良いだろ」

「ご両親がテレビ見てたら悪いし」

「うん、それが良いね。じゃあ用意もあるから今日は帰ろうよ」

「そうね、では少し早いけれど、今日はこれで終わりにしましょうか」

 

はぁ、今日も私一人で泊りには行けないのね。もし皆が明日の土曜日に帰るのなら、もう一泊して行こうかしら。

 



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「葉山の後悔」

台風の影響でヒッキーだったので、久しぶりに書いてみました。

長々と書いてしまい、また途中でどうしてもエロに持って行ってしまってます。
R-15で収まっているとおもってますが、問題があれば指摘してください。



はぁ、昨日八幡の家に泊まったけれど、結局二人っきりにはなれなかったわね。

結衣も泊まりに来るはずが用事が有ったと言うことで泊まりには来れなかった。

でも私は姫菜と優美子に抱きつかれたため、布団から抜け出せず、八幡の部屋に忍び込めなかった。どうも結衣が私のことを二人に『夜中に抜け出してヒッキーの部屋に行こうとする。』と教えていたらしい。

 

どうして二人は私に胸を押し付けてくるのよ。思わず八幡に抱かれているときに他の女性も混ざっていた時を思い出して揉んでしまったじゃない。

優美子と姫菜の声を聞いて興奮してしまって余計に寝れなくなってしまったわ。

 

でも今の問題は南よ。私達が映画を見ている最中に抜け出して帰ってこないと思っていたら、お義母さんと一緒にお風呂に入って背中を流していたのだから。

お義母さんも嬉しそうに南に接していて、『一緒にお風呂に入ってくれる義娘が欲しいわ』とか言っていたわ。

お義父さんは羨ましそうに南を見ていたわね、流石にお義父さんと一緒にはお風呂には入れないけれど。

 

その後、南は客間で私達に責められていても、『お義母さんの娘//』とか言ってずっとニヤニヤしていたのだから。

 

私も急がないといけない。周りが八幡との距離を詰めて行っているのだから。

 

私はマンションに帰ってきて、一息ついた後、スマホを確認すると材木座君から『緊急で連絡が取りたい』と私宛にLineが来ていた。

 

なにかあったのかしら、彼には私の連絡先を教えてるけれど、今までパソコンのメールにしか送ってきたことがない。彼から来るなんてよほどの緊急時にしかないと思うわ。

 

『材木座君。今、いいかしら』

『ひゃ、ひゃい。電話してよろしいでひょうか』

『ええ、良いわよ』

 

材木座君が私に電話するなんてよほどの事ね。そう思っていると通話を知らせる音が鳴りだした。

 

「はい」

『ゆ、雪ノ下さんのお宅でしゅか』

「私の携帯だから私しか出ないでしょ。それにしてもあなたが私に連絡して来るなんて珍しいわね、何かあったのかしら」

『ひゃ、はい..き、今日、ゲームセンターにいたら葉山殿が来て、話しかけられたんでしゅ』

 

私は葉山と聞いた時、過去..いいえ今からだと未来で起こった出来事を思い出し血の気が引いていた。

 

「...材木座君、私に敬語は要らないわ。でも詳しく教えてほしいの」

 

それから材木座君は色々と詰まりながらも私に教えてくれていた。

 

彼の話では今日、弟さんとゲームセンターに居たところ、葉山君が来たということだった。偶然だったのだろうけど、彼に話しかけてきて色々と私達のことを教えて貰えないかと言われたらしい。でも弟さんが居たので、その場では話をせず月曜日の放課後に時間を貰えないかと言われたそうだ。

 

『そ、それでラノベの事やグループのことを聞かれると思って正直に言った方が良いのかどうかと。

...特に雪乃殿とは婚約の話があったので連絡を取らせてもらったのだ。

八幡も知っていることだが、雪乃殿の知らぬ所で相談するのもどうかと思い連絡させて貰ったのだ』

「そうね。ありがとう教えてくれて。...あなたは何も隠す必要はないわ。知っていることを全て教えて上げなさい」

『..よいのか』

「ええ、でもそうね。出来ればラノベのことを優先して話してくれないかしら。そして出来れば彼のラノベも書いてあげると言ってほしいの」

『内容はどういったもので』

「..ラノベの中で良いので彼が後悔するもの..かしら」

『何も思いつかないのだが』

「私を使ってもらって良いわ。ただ私と彼が結ばれて幸せになることは絶対にあり得ない。彼と一緒になるぐらいなら死を選んでほしいの」

『...だが...それは』

「貴方が今、考えた内容は何となく想像つくわ。私が凌辱されるとかではないの」

『..ひゃい』

「それでも構わない。材木座君お願い。彼を止めて。..お願い」

『...何かあるのだな、了承した。ではまた月曜日に報告させていただく』

「ええ、本当にお願い。..お願いします」

 

私は感情が高ぶり声に出てしまっていたのだろう。材木座君は何も聞かず、私の言うことを聞いてくれていた。

材木座君の話次第でまた未来を繰り返すかもしれない。それだけは絶対に阻止しないと。

私が犠牲になれば八幡を救えるかもしれないけれど、そのやり方では八幡を一番苦しめる事になるから。

もし八幡のもとを離れるという選択をするのであれば、先ほど材木座君に言った死を選ぶというのもあながち嘘ではないわ。

 

お願い材木座君。彼が衝動的な行動を起こさないように誘導してあげて。

 

 

 

月曜日の放課後

 

「済まないね材木座君。それで色々と教えてほしいけど良いかな」

 

俺は屋上に材木座君を呼び出していた。彼が奉仕部に入り浸っているのは知っている、彼なら色々と情報を持っているだろう。俺の事も聞いているだろうが、彼はカースト底辺だ...いや今では俺のほうが下だな。ただ彼は俺に歯向かうことはしないだろう。

 

「な、何を聞きたいんでしゅか」

「そんなに緊張しなくていいから、奉仕部で何をしているか教えてほしいんだ」

「..ら、ラノベを読んでもらっておる」

「ラノベ?ライトノベルなら俺も読んだことはあるが、なぜ奉仕部で読んでいるんだ」

 

そして材木座君は色々と教えてくれた。彼が書いたラノベを持ちこんでいるのは、2年の1学期からでそこから今でも書いたものを皆で読んでもらっているらしい。

それで雪乃ちゃんからの提案で、奉仕部や関わりのある人たちがメインでのラノベを書いて批評して貰っているということだった。

 

「そんなことをしていたのか」

「左様、なぜか皆が主人公として書いてほしいと言われたので批評して貰っているのだ」

「..それはヒキタニとのラブストーリーだったりするのかい」

「そう言ったものもあるが、SFや異世界物とかを書いておるな。以前、雪乃..下殿、由比ヶ浜殿、一色殿を悪の魔法使いとして皆に倒されるものを書いた時は批評も聞かず、逃げてしまったが」

「あははは、そんな扱いしたら彼女達は怒るだろ、良くそんなもの書いたね」

「それまでのラノベの批評で我も鬱憤が溜まっておったのでな。気晴らしがてらに書いてみたら思わず筆が乗ってしまって、どうせなら読んでもらいたかったのだ」

「面白そうなことをしているんだな、何だか興味が出て来たよ」

「もしよかったら、葉山殿もどうだ」

「お願いしようかな」

「分かった。では早いうちに書き上げてくる、では我は退席させてもらうぞ」

「まってくれ。後、奉仕部で俺の話が出ることはあるのか」

 

材木座君は返答に困っているようだが、俺が待っていると彼はしぶしぶ話し出した。

 

「..修学旅行でのことは聞いておる。その時に三浦殿がグループを解散させると言っておったことや子供の時に雪ノ下殿と婚約していたことも」

「そうか、それ以外には何かあるのかい」

「いや、我が居る時に葉山殿の話題が出たのはそれっきりのはずだ」

「ありがとう、呼び止めて申し訳なかったね」

 

そう言うと材木座君は踵を返して校舎に入っていった。彼は自分の書いたラノベを読んでもらっているだけのようだな。内容については、多分全てラブストーリーなのだろう、雪乃ちゃんが悪者の話もあると言っていた。気にはなるが流石に読ませてもらえないだろうな。

 

材木座君は次の日にはラノベを書いてきてくれていた。

凄いな、一日で書き上げてくるなんて思わなかった。家でゆっくりと読んで見よう、材木座君も他の人には見られたくないと言っていたからな。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

俺の前を雪乃ちゃんとヒキタニが手を繋いで歩いている。お互い顔を赤くして言葉少なくゆっくりと雪乃ちゃんのマンションに向かっていた。

何で雪乃ちゃんが俺以外の男と付き合っているんだ!?しかも相手はヒキタニだと!?

 

そうか、俺の気を引きたくてヒキタニにお願いしたんだな。それなら俺が雪乃ちゃんを貰ってやるよ。

 

俺は先回りして雪乃ちゃんのマンションに入って行った。鍵はないがエントランスも他の住民が入るのを見計らい、雪乃ちゃんの部屋の近くで身を隠していた。

 

それから五分くらい経った時、誰かが歩いてくる音が聞こえた。覗くと雪乃ちゃん一人で帰って来たようだな。

雪乃ちゃんが鍵をあけ部屋に入って行った瞬間に俺は駆け出し扉が閉まる前に俺も部屋に入って行った。

 

「!?は、葉山君!!何をしているの!?」

「君を貰いにきたよ、雪乃ちゃん」

「何を言っているの!?早く出て行って!!あなたなんか私の家に入らないで!!誰か!!」

「うるさい!!」

 

俺は思わず雪乃ちゃんに手をあげてしまっていた。雪乃ちゃんの頭を叩き反動で壁に頭をぶつけたため、脳震とうを起こしたようだった。

 

俺は雪乃ちゃんを抱え上げ、リビングに連れて行った。そして後ろに手を回させ縛り上げていた。

 

「...は、葉山君やめなさい!!。今なら誰にも言わないから」

「雪乃ちゃんは俺の物なんだ、ヒキタニに渡すぐらいなら俺が全てを貰うよ」

「お願い葉山君。あなたにも後悔してほしくないの」

「後悔なんてしないさ雪乃ちゃん」

「だ、誰か!!」

 

俺が顔を近づけて行くと雪乃ちゃんは顔を逸らし騒ぎ出した。俺は雪乃ちゃんの顔を両手で挟み、自分の方を向かせて唇を奪っていた。

 

「どうだい雪乃ちゃん。ファーストキスだろ」

「最低よ、泥水をすすった方がいいわ」

 

俺はまた手をあげてしまっていた、雪乃ちゃんの頬は赤くなっていたが彼女の目は俺を睨んだままだった。

 

「そんな強がりを言っても無駄だよ」

「誰か助けて!!」

 

雪乃ちゃんが大声を出したので俺は口で塞いでいた。そして舌を入れていった。

 

つっ!?

 

「助けて!!誰か!!」

 

俺の舌を噛み雪乃ちゃんはまた騒ぎ出した。俺はまた頬を叩き雪乃ちゃんの口を手で塞いでから、ハンカチを彼女の口に詰め込んでいた。

さすが高級マンションだな、玄関の方に確認しに行ったが気づかれて居ないようで、誰も騒いでいない。

 

 

俺がリビングに戻りズボンを下ろしていくと、雪乃ちゃんは明らかに狼狽する表情となっていた。

俺が近づいて行くと、いきなり脚をあげ股間を狙ってきていた。ただ的が外れ内腿を蹴り上げただけだが、俺は逆上していた。

 

「どうして俺を受け入れないんだ!!滅茶苦茶にしてやる!!」

 

..

.

 

今、俺は満たされ雪乃ちゃんの身体の上に身を預けていた。

彼女を俺の物に出来たんだ。

 

彼女みたいなのをマグロっていうんだったかな。はっきり言って雪乃ちゃんの反応はつまらなかったが、明日から毎日抱いていけば、そのうち積極的になるさ。

雪乃ちゃんをみると何かをぶつぶつ言っているな、目も焦点があっておらず、虚構を見つめているようだった。

 

「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」

 

俺はスマホを取り出し雪乃ちゃんの写真を撮っていた。

股から流れ出ている血が俺の物と混ざり合ったものと雪乃ちゃんの顔が一緒に写るように写真におさめていた。

 

「雪乃ちゃん、明日も来るから拒否しないようにね、うっかりこの写真をヒキタニに見せてしまうかもしれないから」

「....イヤ、ハチマン、ゴメンナサイ」

 

雪乃ちゃんの拘束を解いたが、彼女は動く気配も見せず俺に向かってくることも無かったので、俺はマンションを後にしていた。

 

やった!!とうとう雪乃ちゃんと結ばれた!!雪乃ちゃんが完全に俺のものになったらヒキタニに写真を見せてやるのも面白いだろうな。

俺は明日、雪乃ちゃんをどうやって抱こうか考えながら眠りについていた。

 

...

..

.

 

一階が騒がしい、何かあったのだろうか。まだ朝の五時だが俺は一階に降りていった。

下に行くと父さんが急いで出かける用意をしていた。

 

「おはよう、何かあったのかい」

「隼人か...雪乃ちゃんが亡くなったそうだ」

「!?ど、どうして」

「マンションから飛び降りた。...そしてこれは誰にも言うなよ...部屋には誰かに強姦された跡が有ったらしい」

「...そんな...」

「父さんは今から雪ノ下家に行ってくる」

「お、俺も」

「お前が来ても何も出来ないだろ。雪乃ちゃんの遺体も検死を受けるから早くても明日か明後日になる」

 

俺が呆然としているなか、父さんは慌ただしく家を出て行っていた。

どうして自殺なんかしたんだ、昨日は無理やりだったが、これから雪乃ちゃんと愛し合えるようにするつもりだったのに。

 

俺はどうやって学校まで来たか分からないほど混乱していたが、学校は何事も無かったかのようにいつも通りだった。まだ誰も知らないのだろう。ただヒキタニは学校に来ていないようだ。

 

昼休み、何処からともなく噂話として雪乃ちゃんが亡くなったと俺の耳にも聞こえてきていた。

 

結衣達が教室を走って出て行った。多分平塚先生の所に行ったのだろう、その後、彼女達が帰ってくることはなかった。

 

父さんが家に着替えに帰ってきたので聞いてみると、今日の朝からヒキタニは任意同行で警察に行っていたらしい。

ヒキタニの遺伝子を調べたが犯人ではないと言うことだった。分かり切ったことだが。

ただ雪乃ちゃんの遺体を見て泣きながら崩れ落ち、雪乃ちゃんに『一緒になろう』と言ってキスすると何処かに行こうとしたので父さん達が止めようとしたが、制止を振り切り何処かへと走っていってしまったと言うことだ。

 

 

翌日も俺は学校に来ていた。今日は周りが騒がしい。雪乃ちゃんのことで色々と噂しているようだった。

そして授業が始まったのだが今日もヒキタニは来ておらず、結衣達も学校には来なかった。

昼のLHRのため、先生が入ってくると神妙な顔をしながら話し出していた。

 

「‥比企谷が亡くなった、‥自殺したらしい」

 

俺はその言葉を聞いた時、雪乃ちゃんの時以上に動揺していた。

なぜ!?ヒキタニにはまだ何もしていないだろ、どうして彼も死を選んだんだ。

 

俺が呆然としているなか、戸部と戸塚君、材木座君が先生に詰め寄っていたが、先生も詳しいことは分からないの一点張りだった。

 

家にどうやって帰ってきたのか覚えていない、ただ今は何も考えたくなくて俺はベッドに横たわっていた。

 

..

.

 

「ど、どうして貴方もこっちに入るの!?」

「良かった雪乃。もう俺から離れないでくれ」

 

そう言ってヒキタニは雪乃ちゃんに抱きついていた。二人は制服を着ているが死んだときに着ていたのだろう。

二人は泣きながらお互いを抱きしめあっていたが暫くすると雪乃ちゃんがヒキタニから離れようとしていた。

 

「は、八幡。離して、私は穢れているのよ」

「そんなのは関係ない。俺は雪乃が好きなんだ」

「八幡...私はあなたに愛してもらえる身体ではないわ」

「俺は雪乃を何があっても愛するって決めているんだ」

「...八幡、聞いて。...私は‥葉山君に‥お、犯されたの。彼はどこかに隠れていて私が家に入ったときに押し行って来たわ。

‥そして私は...犯されたのよ。写真を撮られ毎日くるからと言われ、私は絶望感で一杯になり、あなたに申し訳なくて自殺という最悪な選択をしたわ」

「...葉山だったのか、...すまん!!」

 

どうしてヒキタニが謝っているんだ?そう思っているとヒキタニは土下座をしていた。

 

「俺がマンションの玄関まで送っていけば良かったんだ。雪乃をエントランスまでしか送って行かなかったから」

 

なぜヒキタニはそんな事言っているんだ。悪いのは俺だ、俺のせいにすればいいだろ。

雪乃ちゃんはそんなヒキタニを見て涙を流しながらヒキタニの頭を胸に抱きしめていた。

 

「八幡、あなたは悪くないのよ」

「雪乃も悪くないだろ」

「でも私は穢れているの、..そんな私が貴方に愛して貰う資格なんて無いの」

「人が愛し合うのに資格なんて入るのか...だがそう言うなら、雪乃が拒んでも今から俺が犯して穢してやる」

 

そう言いながら、ヒキタニは雪乃ちゃんに口づけをしていた。最初は軽い接吻の後、ゆっくり舌を入れて行き、それを雪乃ちゃんも受け入れていた。

雪乃ちゃんも涙を流しながらヒキタニの唇を貪っていた。

 

「は、八幡。こ、こんなところでだめぇ//」

 

雪乃ちゃんがそう言うと俺の視界が周りを見渡していた。そこは辺り一面草原でどこにも建物のようなものが無かった。

 

「じゃあ、この広い野原で青姦だな」

 

ヒキタニはそう言って、雪乃ちゃんの服を脱がせていった。雪乃ちゃんも俺の時とは全然違い、八幡を気持ちよくさせるため、積極的に動いていて、俺にとってはAVを見るより卑猥だった。

 

「お前は俺のものだ。だからどこにも行かないでくれ。勝手に死ぬのも許さないからな」

「ええ、私は八幡のもの//これから一生離れないわ、だから私をずっと貴方で穢し続けてください」

「雪乃。俺を受け入れてくれ//」

「ええ、来て八幡//私を貴方だけのものにして//」

 

そこからは二人とも会話をすることなく、喘ぎ声とお互いの名前を呼ぶ声だけが聞こえてきている。ただ俺はそこから離れることが出来ず、二人の行為を見ているしかなかった。

...屈辱だった。雪乃ちゃんの表情は蠱惑で身体も俺の時とは違い、卑猥な様を俺に見せつけていた。とても何時もの雪乃ちゃんからは考えられないほど、煽情的でヒキタニの身体を貪っていた。

 

..

.

 

「..夢精している」

 

俺は雪乃ちゃんとヒキタニが出ている夢を見て、夢精してしまっていた。はっきり言ってショックだった。夢の事とはいえ、雪乃ちゃんのあんな表情は見たことがない。俺が犯した時には見せてくれなかったのに。

 

シャワーを浴び身支度を済ませてから、学校に向かった。

 

やはり雪乃ちゃんとヒキタニが自殺したことを噂している。中にはヒキタニが雪乃ちゃんをレイプしたのではないかという噂をする奴も現れていた。

 

「でもあのヒキタニならやりかねないよね」

「それな」

「だな」

 

俺の周りでも一緒のことを噂している奴がいる。何時もの俺なら否定することはしないだろうが、どうしても彼らが許せなくなってしまった。

 

「..いい加減な噂で人を傷つけるな!!」

「あ、ああ。わるい隼人君」

 

そういうと彼らは俺の近くに居づらいのか席を離れて行った。俺はその日、一人で過ごしていた。今までの学校生活で一人で居たことは無かったが、案外良いものだな。思考を遮られることなく、想いを募るころが出来る。

俺は今、自首しようかずっと悩んでいた。

 

 

俺が眠りにつくと、すぐに雪乃ちゃんとヒキタニが抱き合っている姿が、目に入ってきた。

今日は小屋のようなところで、抱き合っており、雪乃ちゃんの身体が艶めかしくヒキタニの上で動いている。

 

そして俺はまた、夢精してしまっていた。

俺は眠りにつくと、雪乃ちゃんとヒキタニの性生活を見るようになり、俺は毎日夢精してしまっていた。

 

..

.

 

雪乃ちゃん達は小さい村にいるようで、その村は亜人というのだろうか獣の耳の生えた人達の村で、犬耳や猫耳の可愛い女の子が何人も居る。雪乃ちゃんも最初は耳を撫でさせてもらい悦に入っていたが、ヒキタニがデレデレしているのを見ると、雪乃ちゃんは女の子の頭を優しく撫でながら、ヒキタニには怒りだしていた。

 

そこは貧しく日々の食事にも困るような環境で水も近くの川まで汲みに行く生活を行っているようだ。そして雪乃ちゃん達は村長の家の小屋で生活をさせて貰っていた。

 

「あんた達はわしらを嫌ってないようじゃが、そろそろ村を出ていってくれんかの」

「どうしてですか、俺達は助けて貰ったのにまだ何もお返しが出来てないです」

「人はわしらを嫌っておる、この村の者もその内、お主達に嫌がらせをするやもしれぬ」

「「...」」

 

二人は貧しいのに嫌っているはずの自分達を助けてくれた礼をしたいと話し合っていた。

 

狩りでヒキタニがなぜか動物に気配を悟られず近づいていきナイフで頸動脈を切っていたが、非効率だと言って二人の知識で罠を作っていた。

雪乃ちゃんも豊富な知識で野生の食べられる植物を見つけては亜人の女性達に料理方法を教えていた。こちらでは果物や土の上になる野菜ぐらいしか取らないらしく、雪乃ちゃんの根野菜の料理に皆が驚いていた。

 

そして要らない木材を集め、川に水車を作ろうとしているようだった。

ただ最初のころは変なことをしだしたと受け入れてもらえず、石を投げられヒキタニは雪乃ちゃんを守るため、覆いかぶさって守っていた。ヒキタニの背中には幾つものアザが出来ていたが、それでもヒキタニは文句を言わず作業に明け暮れていた。その横で雪乃ちゃんは申し訳なさそうにヒキタニに寄り添っていた。

次の日、亜人の一人が二人に近寄ってきた。ヒキタニは身構えていたが、その亜人は二人が何をしているのか興味を持ち、話を聞きに来たようで、二人を手伝うと言い一緒に作業をしだした。

 

日にちが経つにつれ、二人を手伝う亜人が増えて行き、一週間もたたないうちに水車と水路が完成し、村までの用水路が出来ていた。

それを見た石を投げた亜人も二人に頭を下げ謝っていた。二人は気にしていないと伝え仲良くしてほしいと言い、亜人も了承していた。

 

ゆっくりとだが亜人たちの生活にゆとりが持てるようになってきているようだ。二人は村の人達に感謝され迎え入れられて、空き家を貰い毎日抱き合っていた。

 

..

.

 

俺は罪の意識に苛まれていた。自首をした方が良いのだろうか。もしかしたらこの夢も俺の罪の意識から来ているのかもしれない。

俺は父さんに罪を打ち明けていた。

 

「馬鹿野郎!!」

 

父さんは俺を殴ると、涙を流していた。その横で母さんも同じように泣いていた。

 

「ごめん。父さん、母さん」

「..隼人、お前は今から自首しろ」

 

俺は父さんと母さんに付き添ってもらい、警察に出頭していた。そして俺は少年院に送られることとなった。

父さんも母さんも仕事を辞め、千葉を出て行った。俺には罪を償って帰って来てほしいと言われ、俺は少年院で罪を償うため、何事にも真剣に取り込み模範生として扱われていた。

総武高校でも騒然となり、俺のことを何人も恨んでいるそうだが、今の在校生と会うことは今後ないだろう。

 

ただ、雪乃ちゃんとヒキタニの生活は未だに夢で見ており、ストレスなのか俺の頭髪は段々、抜け落ちていった。

 

..

.

 

雪乃ちゃん達が森の中でわざわざゴザを敷いて抱き合っていた。なんで森の中でやってんだよ。俺の考えが彼女達に伝わることなく、ヒキタニが雪乃ちゃんの身体を貪っている。そして今は二人で横になっていた。

 

「..ここの地面、何だか温かくないか」

「ええ、凄く心地良いわ。...そう言えば誰かが言っていたわね。川の水で温かいところがあるって」

 

2人は頷きあい、服を着ると家の方に駆けだしていた。そしてスコップなどの道具を持ってきて、その地面を掘り始めていた。少し掘ったあたりで、水が湧きだしてきている。

 

「やはりそうね、お湯が出ているわ」

「触るなよ、雪乃。安全か確認しないと」

「そうね、身体に有害な物質が入っているかもしれないわ。でもこれで入れれば温泉に出来るわね」

 

2人はそう言ってどうしようか相談し、罠にかかっていた動物にそのお湯を冷ましてから与えていた。

特に死ぬことも無かったようで、二人は深く穴を掘っていき、お湯が沢山出ると古代ローマと同じ製法で作ったローマンコンクリートに石を並べて岩場の所まで水路を作り、温泉を作っていた。

 

..

.

 

俺は少年院を出た後、親が大阪に移り住んでいたため、そこに転がり込んでいる。頭髪は全て抜け落ちていたためカツラを被っていた。中卒扱いのため何処にも就職できず、俺はホストになり源氏名はハヤトでそのまま名前を使っていた。

 

「ねえハヤト君。今日良いでしょ」

「ええ、楽しみにしてますよ」

 

俺は上客の一人とホテルに泊まっていたが俺は早漏だった。何時も夢精してしまっているからだろう、女性に申し訳なかった。

ただその女性は俺に優しく接してくれ、別にSEXだけで貴方と付き合っているのではないと言ってくれていた。

 

しかし翌朝になると、その女性は表情を落ち込ませていた。

 

「ハヤト君、やっぱり私と別れて」

「どうして」

「...ずっと寝言で『雪乃ちゃん、雪乃ちゃん』って言っているのよ」

「え!?」

「知らなかったの?どんな夢を見ているのか知らないけれど、夢精までして..自信無くすよ」

「..すまん」

「だから別れて」

「分かった」

「..止めてくれないんだね」

「...俺も夢を見たくて見ているんじゃないんだ、ただ毎日彼女が夢に出てくるんだ」

「そんなに好きなのね。私が出る幕はないようね」

 

そう言うとその女性は出て行き、それ以来ホストに顔を出すことも無かった。

俺に想いを募らせてくれる女性は何人もいたが、彼女も結婚も出来ずただ日々を過ごすだけの生活だった。

 

..

.

 

雪乃ちゃん達は露天風呂を作ったようで、ヒキタニは岩の上に雪乃ちゃんを座らせ足を開かせ顔を埋めていた。

 

「は、八幡//こ、ここでやったらお湯がよごれちゃうぅぅ//」

「大丈夫だ、乳白色で分からないしすぐに流れてくからな」

「あ、あぁぁ//だ、だめぇ//誰か来るかもぉ//」

「村の人なら俺達が毎日抱き合っているの知っているから大丈夫だ」

「大丈夫じゃないぃ//わ、私達見られるのよ//」

「見せるの好きだろ」

「‥そ、そんなことないぃ//」

 

雪乃ちゃんはそう言いながらも逃げようとせず、快楽を貪っていた。ヒキタニも分かっているのか、一向に責めるのを辞めず、今は湯船の中で始めてしまっている。

 

雪乃ちゃん達の温泉は瞬く間に繁盛していた。二人の居る世界ではお風呂自体が一般的では無いらしく、温泉何て見たことも無いのだろう。

2人の村には観光に色々な種族が集まるようになったので、雪乃ちゃん達は村の外に宿泊施設のようなものを建てていた。

 

雪乃ちゃんは化学の知識を生かして、石鹸や洗剤を作り出して、それが飛ぶように売れている。

また料理でもマヨネーズなど今まで無かった物も作り人気を集めていた。今は醤油や味噌を造ろうと試行錯誤しているようだ。

ヒキタニも剣玉や駒、ヨーヨーなど一人で遊べるものを亜人の村人と一緒に作って村のお土産物として売っていて、大人にも子供達にも好評だった。

 

この村では学校が作られ雪乃ちゃんが教師で子供達に教育を受けさせている。大人たちも時間がある時は授業を受けていたので、この世界の一般人は文字の読み書きが出来ないのに村の住民は高い文字認識率を誇っていた。

 

「雪乃先生。教壇で何て格好しているんですか」

「は、八幡//は、恥ずかしい//」

 

雪乃ちゃんはタイトスカートのスーツを着ていた。そう言えば学校を作っているとき、ヒキタニが裁縫屋で作って貰っていたな。先生になる記念にプレゼントが必要だとか言って。

今は教壇の上でスカートを捲くしあげて脚をヒキタニに開かせられている最中だった。

 

「生徒があなたの痴態で女性の身体の勉強をしてますよ。もっと足を広げて見せてあげないと。雪乃先生、ここは何て言うんですか」

「あぁ//い、いやぁ//そ、そんなのぉ、いえないぃ//」

 

ヒキタニは高校の制服で雪乃ちゃんはスーツを着たまま身体を弄ばれている。雪乃ちゃんも恥ずかしそうに答えを言いながら、二人は教壇でも抱き合っていた。

 

またヒキタニの案で風車を作ったようだ。広くなった村や隣に作った観光客用の宿泊施設に水を巡らせるため、川から引いた水を高台に上げるのを自動にし村全体に水道を張り巡らせている。

風車の動力で粉ひきも行えるようにして、雪乃ちゃんはパンを作っていた。そのパンもわざわざ違う街から買いに来る人がいるほどの人気があった。

パスタやうどんなども作っており食堂は賑わっているようだ。

ヒキタニはラーメンを作ろうとしていたが、なかなか思うようには出来ていないようだな。

 

「水の汲み上げが不要になったわね。本当にさぼることに掛けての努力は怠らない人ね」

「ああ水汲み大変だっただろ、後な風車小屋の最上階が展望台になっているんだが、そこに回るベッドも作ったぞ」

「あ、あなたは何てもの作っているのよ//」

「今から見に行かないか」

「み、見に行くだけよ//」

 

雪乃ちゃんは照れながらもヒキタニに手を引かれ風車小屋に入っていった。

もちろん見に行くだけで終わるハズがなく、二人は村を見下ろしながら交わりあっていた。

 

この村は他の街に比べると何世紀も先を行っているが、二人の持つ知識は門外不出としていたのである日、王国の使者が来て村を明け渡すように言ってきた。ヒキタニは門前払いしていたが暫くすると王国軍が攻めてきていた。

 

ヒキタニが一人、王の前に進んでいく。

 

「主等は我に刃向かうのだな」

「ああ、だが戦争する前にあれを見てくれ」

 

ヒキタニが指差す野原を見ていると、いきなり大爆発が起こっていた。

王や兵士が呆然としているなか、ヒキタニは地面を指差していた。

 

「...もちろん此処も爆発させることが出来るぞ」

 

次にロケット花火だろうか、いきなり打ち上げて爆発させていた。王達が驚いている中、またヒキタニは話し出していた。

 

「あれの何十倍も大きい物もある。ここから王国に撃ち込むことも可能だ。何だったら今から撃とうか、お前達の帰るところが無くなるだろうが」

 

王は屈服しヒキタニは負けを認めさせ、村の自治権と不可侵条約、亜人の不遇を改善するよう約束させていた。

 

国王軍が帰って行く中、雪乃ちゃんがヒキタニに近づいていった。

 

「貴方一人に大変なことを押し付けてごめんなさい。でも私達のために頑張ってくれて、ありがとう」

「俺がやりたかっただけだ、...だがそう言ってくれてありがとうな」

「でも花火だけで追い払うなんて、私には考えつかないわ」

「こっちの人にしてみたら、爆発物なんて初めて見るだろうからな、雪乃が火薬を作ってくれたおかげだよ。

ただ火薬の量が多過ぎだ、あんなのは花火でなく爆弾だぞ。俺の所まで空気が振動してたからな」

「あなたも驚いたのでしょ、ビヒリ谷君」

「懐かしいな、それ...ただ今日の夜は覚えておけよ」

「あら、何をされるのかしら//」

「それは楽しみにしておいてくれ...ただ雪乃にも王の顔を見せてあげたかったな...いや、やはりあんな奴らに雪乃を見せたくない」

「あら私を独占したいのね、大丈夫よ。私は八幡のものだから」

「雪乃//」

「八幡//」

 

二人が抱き合いキスすると、村人が駆け寄り、祝福していた。

この日、ヒキタニは自分達の家で交わっていたが、雪乃ちゃんを繋がったまま抱え上げ、家の庭まで連れ出し犯していた。さすがにこれには雪乃ちゃんも怒っていた。だが最中は雪乃ちゃんも悦んでいたが...

 

翌日、二人は村長の家に連れて行かれ、村人が用意してくれていた民族衣装に二人は着替えさせられていた。

 

「二人ともわしらの為にありがとう。今まで辛く当たった事も有ったが、どうか水に流してほしい。そしてこれはわしらからのささやかなお返しじゃ」

 

そう言って村長が裏庭の扉を開けるとパーティー会場が設置されていて、二人は村人総出で結婚式を挙げてもらい、皆に祝福されていた。二人は涙を流しながら村人一人一人にお礼を言っていた。

その夜は風車の展望台で民族衣装での着衣プレイを楽しんでいた。

 

この村を奪おうとする盗賊もいたが、ヒキタニが背後に廻って爆弾を使って攪乱し、雪乃ちゃんと亜人がいつの間にか作った鉄砲で盗賊達を返り討ちにしていた。

 

雪乃ちゃん達が来た時と比べると、想像もつかないほど亜人も設備も増えていた。ただこの村で住めるのは亜人だけで、人は観光客として昼に決まった施設しか入れていなかった。

差別だなんだと叫ぶ人たちもいたが、未だに人から迫害を受けている亜人にとってみれば、当然の措置だろう。二人は異世界に来てから彷徨っていたところを亜人に助けられ、村を発展させていたのだから例外のようだが。

 

学生の時言っていた「みんな仲良く」というのは、理想であって実現は出来ないと俺は夢の中で幾度となく教えられていた。

 

..

.

 

俺は既に60歳になろうとしている、未だに二人の夢を見て夢精していた。

最近は高血圧で、もしかしたら俺はこのまま二人の性生活で心停止してしまうのかもしれない。

 

二人はまだ若く30にも行ってないように見える。やはり俺の罪の意識が見させている夢なのだろう。

俺には二人の年老いた姿は想像出来ないから。

 

..

.

 

「ここは...」

 

俺は草原の中、一人で寝ていた。ここは来たことがある、いや正確には見たことがある...夢の中で。

俺は村の方向が分かったので向かっていった。昔なら昼過ぎには着く距離のはずだが、今の俺は体力がなく、半日掛かってたどり着いていた。

 

ただ着いた時間が夕暮れで村には入れて貰えないということだった。

 

「雪乃ちゃんを...雪ノ下雪乃さんと比企谷八幡に会わせてくれ!!」

 

俺がそう言うと、亜人の女の子が驚き村の方に駆け出していった。俺は門番の亜人からしばらく待つように言われ、その場でへたり込んでいた。

 

「..貴方は誰なの、どうして私達の名字を知っているのかしら」

 

しばらく待っていると、懐かしい声が聞こえてきた。俺が顔を上げるとそこには夢で見続けた雪ノ下さんと比企谷が立っていた。

 

俺はその場で土下座し、頭を地面に擦り付けた。

 

「雪ノ下さん、比企谷。本当に済まなかった。俺は葉山隼人だ」

 

俺がそう言うと、二人から息を飲む音が聞こえていた。二人はしばらく何も言ってくれなかったが、比企谷が声を掛けてくれていた。

 

「葉山、顔を上げろ」

 

俺が顔を上げると、比企谷は俺を睨んでいた。雪乃ちゃんは顔面が蒼白になり、亜人の女の子が支えていた。それにしても二人とも若い。俺が60歳を超えているのに、30いや20代にしか見えない。

 

「..葉山、俺はお前を許すことが出来ない。ただ今のお前を見て殴ろうとも思わない」

「比企谷!!お前の気が済むまで俺を殴ってくれ、殺して貰ってもいい。ただ謝罪だけはさせてくれ」

「..出来るわけないだろ、老人虐待になっちまう。ただ過去の事だと割り切ることも出来ない」

「..そうね、葉山君。貴方を許すことは私にも出来ないわ。でも貴方に対して報復をしたいとも思わない」

「なんでだ、あんなに酷いことをした俺を...本当に済まない」

 

俺は比企谷に連れられて、彼らの家に入っていった。さすがにこんな老人を夜、村の外には放置できないということだった。

 

「葉山君、確かに私は今でもあなたを許せないし顔も見たくないわ。でも結果論だけれど、八幡がこっちに来てくれて、この村の人達が受け入れてくれて私は凄く幸せなの」

「ああ、俺も葉山には思うところはあるが、今は幸せだからな」

「済まない」

 

そして俺達は少しずつだが、お互いの話をしていた。こちらの世界では地球の数倍寿命が長いということで、年齢は俺と同じでも二人は凄く若々しかった。

俺はそんな二人を羨ましく思いながら、ずっと気になっていたことを聞いた。

 

「今から凄く失礼なことを聞くかもしれないが、教えてくれないか」

「ああ、答えれる範囲ならな」

「...比企谷、風車の上に展望台があって、そこには回転するベッドを作ったか」

 

俺がそう言うと、雪ノ下さんは顔を真っ赤にしながら俺のことを睨んでいた。

 

「..葉山、お前こっちに今日来たんだよな。この村に入ったことがあるのか」

「その言い方だと有るんだな...実はな比企谷が亡くなった後から、俺は夢を見るようになったんだ..二人の夢を毎日...」

「はっ!?な、なに言ってんだ。お前」

「えっ!?ど、どういうことなの?」

「俺は毎日、二人のことを見てたよ。抱き合うのを」

「「...//」」

 

雪ノ下さんは俺を睨みながらも顔を真っ赤にしている。比企谷も顔を赤くさせていたが、俺はそんな二人に俺の事も伝えていた。

 

「...そ、そう。あ、貴方も大変だったのね...私達のせいで//」

「ずっと覗かれてたってことか」

「俺も見たくなかったよ、ただ二人が幸せに暮らしていると思えたのは..俺がこんなことを言うのはおかしいかもしれないが、嬉しかったよ」

 

それからも俺達はお互いのことを話していた。夜が更け、俺は客間で寝させてもらい朝を迎えていた。

 

「..夢精していない」

 

そう言えば、二人の夢を見ることも無かった。もしかして二人に謝れたので解放されたのだろうか。

俺が起きて行くと、二人は既に起きていたようで、俺に声をかけてきた。

 

「おはよう」

「うす、葉山...その、なんだ...夢はどうだったんだ」

「ああ、昨日は見なかったよ」

「そ、そう//良かったわね」

 

用意してくれた朝食を済ませ、俺は村を出て行った。

比企谷と雪ノ下さんは歳だからこの村か隣の宿泊施設に住めるようにしてくれると言ってくれたが、俺は二人の申し出を丁重に断った。二人は幾らかのお金と武具を俺にくれ見送ってくれていた。

 

ようやく解放されたんだ、身体は昔のようには動かないだろうが、俺もこの世界で自由にしていきたい。晴れやかな気分になりながら、俺は次の街に獣を倒しながら赴いていた。

 

「この歳でも何とかなるものだな。最初に獣を見たときは戸惑ってしまったが」

 

だが疲れた、今日は早く寝よう。俺は身体を休めるため宿屋で眠りについていた。

 

..

.

 

「ねえ八幡。昨日は葉山君が居たから出来なかったでしょ」

「ああ、でもまさか葉山に見られてるって思わなかったな。どうだ露出狂のゆきのんとしては」

「な、何を言っているの//あ、貴方が好きなだけでしょ//」

「ふーん、今日は窓際で見えるかどうかのギリギリでしようと思っていたんだが」

「..あ、貴方がしたいのなら私は良いわよ//」

「俺はいいや、じゃあお休み」

「...ね、ねえ八幡」

「....」

「ほ、ほら//ここだと私の裸が外から見えてしまうわ//」

 

雪ノ下さんは裸で窓際に立って比企谷を誘っていた。青白い月明かりを背に受けてとても神秘的で見惚れていた比企谷もいつの間にか立ち上がり雪ノ下さんに近づいていった。

そして二人は月明かりのなか、お互いを求めあっていた。

 

おいぃぃ!?何でまた二人のことを夢で見てんだよ!?もう許されたんじゃないの?

これってこれから地球の時間で10年生きられるとしたら、その数倍の年数見続けるの!?この歳で夢精って辛いんだよ!!疲労感、半端ないんだよ!!

ねえ、二人とももう性行為するなよ!!俺の身が持たないから!!

 

 

俺はこの世界でも二人の生活を100年以上見守りながら生きて行った...

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

...なんだこれはどういうことだ!?材木座君は何でこんなものを書いているんだ!!彼には一度、ちゃんと話を聞くべきだな。

 

俺は雪乃ちゃんと高校を出た後、話し合って結婚することになっているんだ。

..ただそれも親同士の単なる口約束。雪乃ちゃんの考えを聞いたことが無い。俺は雪乃ちゃんが受け入れてくれると思っているが、実際はどうなのだろう。

 

一度、聞いた方が良いのではないか。確かに今、雪乃ちゃんは比企谷に惹かれていると思う。ただ聞いても彼女の性格上、認めることは無いだろうが。

俺は雪乃ちゃんが一人、廊下を歩いていた時に話し掛け、放課後に話をしたいと伝えた。

 

俺は放課後、材木座君を屋上に呼び出していた。どうしてもラノベについて、なぜあのような内容になったのか聞きたかったから。

 

「お、お待たせしましゅた」

「待っていたよ材木座君。ラノベで聞きたかったのだが、どうしてあんな内容なんだい」

「しょ、しょれは葉山殿の事は詳しく知らぬし、第三者視点でのラノベも書きたかったのだ」

 

俺達がラノベのことを話していると、屋上の扉が開き雪乃ちゃんが出てきた。どうして彼女がここに?放課後、話をしたいと言ったので俺の事を探していたのかもしれない。屋上と言っていなかったので、奉仕部に行って呼ぶつもりだったのだが。

 

「何かしら、葉山君」

「..雪乃ちゃん」

「そうやって呼ばないでって言っているでしょ。何か話があるのかしら」

「材木座君。席を外してくれないか」

「いいえ、彼にも居てもらいましょう。なんでも答えて上げるわ」

「良いのかい、雪ノ下さんは答えづらいと思うよ」

「そんなこと良いわ、早く言いなさい」

「..雪ノ下さん、俺との婚約話はどう考えているんだい」

「そうね、この際はっきり言っておきましょう。私は貴方と結婚するつもりは全く無いわ」

「っク!!..で、では雪ノ下さんは今好きなやつが居るのか」

「ええ、私は八幡が好きよ。愛しているわ」

「...!?」

 

まさか雪乃ちゃんが好きな人をハッキリ言うなんて思わなかった。何時ものように早口でまくし立て、比企谷のことを扱き下ろすと思っていたんだが。

 

「..比企谷が受け入れてくれなかったらどうするんだ」

「もしそうなっても貴方には関係ないでしょ」

「..雪ノ下家はどうするんだい」

「ふっ、それこそ貴方には関係ないことだけれど、私は家のために結婚するつもりなんてサラサラないのだけれど。

でも言っておくと私は貴方のことを何とも思っていない、貴方と結婚させられるなら何処かに逃げるか、逃げれなければ、そうね... 死を選ぶかも知れないわ」

「....」

「では話は終わりのようね。材木座君、行きましょうか」

 

死を選ぶって...これでは材木座君が書いたラノベと一緒の事になってしまうじゃないか。異世界があるとは思っていないが、俺がラノベのようなことをすれば、それこそ自殺するかもしれない。もし比企谷に何かをしても、彼女は嘆き悲しみ比企谷にもしものことがあれば、死を選択するんじゃないのか。

 

あそこまで比企谷への好意をハッキリ言われると、どうしようも無いな。ある意味、清々しいよ。

俺の初恋も終わったということか、いやとっくに終わっていたのだろう。思えば小学校の時、彼女を選ばず皆を選んだ時点で彼女には愛想をつかされていたのだ。

それを今まで引きずっていたのは俺なのに自分に都合の良いように解釈して、彼女は俺のことを好きなはずと考えていた。もしそうなら高校で一緒になって俺が話しかけた時、避ける態度は取らないだろう。

 

でも今日、ハッキリ言われてようやく気付けたよ。

 

雪ノ下さん、俺は諦めるよ。比企谷を想っている女性は何人もいるが、せめて君が報われるよう祈るぐらいの応援はさせてくれ。

 

おまけ

 

「材木座君、協力してくれてありがとう」

「あれで良かったのか。葉山殿に恨まれるのではなかろうか」

「大丈夫よ、彼は現状を把握出来るわ。私は彼が衝動的、短絡的な行動を取らないようにしたかったのよ。

今まで私が曖昧な態度だったから勘違いさせていたかもしれないけれど、今日私の気持ちを伝えたのだから勘違いしないはずよ」

「左様か」

 

「‥そう言えばあなたに聞きたいことが有ったのだけれど、葉山君のラノベを送ってくれたので読んだわ。

卑猥なことが何度も出てきたけれど、必要だったのかしら」

「あ、あれは葉山殿に何度も夢を見させるという設定なので」

「大体、私達のラノベより今回の物が長いってどういうことかしら、卑猥なことを何度も書いているだけだったでしょ」

「い、いや、二人の力で村が発展していくというのを書きたくて、気づいたら長くなってしまったのだ。我には必要なことだったと思っておる」

「私が露出狂というのも必要なことかしら」

「‥ヨク ニタヨウナ モノデハ ナイカ」(いつか八幡にパンティ見せても良いとか言っておったし)

「聞こえないのだけれど、とても不愉快な気分になったわ。部室で聞いてあげるから、今から来なさい」

「ま、待って!?ゆ、ゆるしてぇ!!」

 

 

後日、特別棟の何処からか男子の悲しげな鳴き声が聞こえてくると噂が広まっていた。

 



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「はるのんのIターン」とママのん

私は今、特別棟にあるという部室の教室に向かっていた。

 

今日は休みだったので、雪乃が住んでいるマンションにお邪魔して、生活が乱れていないか確認しに行くと机の上に小説が置いてあり、読んでみると私が出ていた。

雪乃が帰って来てから聞いてみようと思ったけど、居ても経っても居られなくなり雪乃の高校まで来てしまった。

※ママのんは「ゆきのんの妊娠」を読みました。

 

雪乃が書いたとは思えない。あの子は確かに私を苦手としているけど、家のことを悪く書くとは思えないから。

もし雪乃が部長を務めているという部活内での活動であれば、書いた子が居るのでしょう。

 

私はそんなことを考えながら、階段を上っていたので誤って階段を踏み外してしまい、身体のバランスを崩していた。

 

「キャっ!!」

 

私が階段で足を縺れさせ落下しだしたとき、誰かに身体を包み込むように抱き締められていた。..あ//凄く良い匂い//

 

「大丈夫ですか」

 

私は男性に抱きしめられていた。顔は彼の胸板に押し付けるようにしていたので、凄く良い匂いがしている//少し汗の匂いもしていたけど、それは不快ではなく私には甘美な匂いだった。

階段の途中だったので、中々体勢を整えられず、暫くは彼に身体を預けたままとなっていた。

 

「..は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 

私がそう言って顔を上げると、そこには何度かお会いしたことがある男性が私のことを抱きしめてくれていた。

 

「ま、ママのん!?」

「...貴方にそのような呼び方をされるのは心外ですが、助けていただいたのですから聞かなかったことにします」

「す、すみません!!」

 

彼はそう言い私が立ったのを確認すると、抱きしめていた手を放し逃げるように走っていった。

 

「あ!?ちょ、ちょっと」

 

彼は私が声を掛けても聞こえなかったのか、そのまま走っていった。私は部室の場所を聞きたかったけど、しょうがないわね。

比企谷さんの匂いだったのね//私は今、鼓動が激しい。男性に抱きしめられたのは、いつ以来かしら。

 

私は早足に彼を追いかけていた。比企谷さんが教室に入っていくのが見える。あの教室ね、今日は洋服で来て良かったわ、着物ではこんなに早く動けないから。

 

ラノベを仕舞え!!

 

比企谷さんがラノベ?を仕舞えと言っている。私が来たことを知って仕舞わせているのね。私は比企谷さんが開けたままにしていた扉から入って行き後ろ手で扉を閉めながら声をかけていた。

 

「お邪魔します」

「か、母さん!?」

 

周りを見ると部屋に居る皆が私の方を見ている。雪乃の隣には由比ヶ浜さんが居て、比企谷さんは私の横で立っている。恰幅のいい生徒が手に雪乃の部屋に有った小説のようなものを鞄に仕舞おうとしていたけど、手を止めているのが分かった。

 

「雪乃、私にも小説を読ませてもらいます」

「母さん、これは部活の一環よ。関係者でない人には見せれないわ」

「貴方が書いたのですね、それに雪ノ下家は出てませんか」

「..で、出てましゅ」

「では私も関係者のようね」

 

私が恰幅の良い生徒に名前を伺っていると、扉がノックされ雪乃が返事をすると私服を来た女性が入ってきた。

 

「ひゃっはろー。ラノベ読みに来たよ」

「陽乃、何ですかその挨拶は」

「お、お母さん!?な、なんでお母さんがここに」

「私も小説を読ませてもらいに来ました。雪乃の部屋にお邪魔したら置いてあって興味が湧きましたから。では一緒に読まさせて頂きますよ」

「母さん、マンションに入ったの」

「ええ、あなたの生活が乱れていないか確認しに行ったのよ。何か不味かったの」

「別に良いわ、ただラノベ..小説を勝手に見るのはどうかと思うのだけれど」

 

小説の事をラノベと言うのね、では陽乃が読みにきたと言っていたということは陽乃も知っているのね。

 

「机の上に出してあったから読んでみたのよ、では私にも読ませて頂けるかしら」

 

材木座さんは渋々私にも一部、小説を渡してくれていた。さて何が書いてあるのでしょうか。

 

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「陽乃、そっちの出来はどうだ」

「うん。大きく育ってるよ、そろそろ出荷できそうだね」

 

私と八幡君は二人で農業をするために田舎に引っ越していた。両親が私達の結婚に反対し別れさせようとしたため、Iターンを支援している村に引っ越し、専業農家として一緒に田畑を耕している。

 

「天気が良くて、出来が良いな」

「うん、お日様に感謝しないとね」

 

こっちに引っ越してきた一年目は私達が不慣れなのもあって作物は思っていたほど実らなかった。でも近所の人達が助けてくれて、私達は生活に困るようなことはなかったけど。

でも今年は去年の失敗を繰り返さないように田畑の勉強をし、今では農作物がたくさん実ってくれている。

 

今の私の格好を見たら、昔を知っている人たちは何て言うだろう。泥で汚れたジャージを着て、化粧もせず日焼け止めだけを塗っている。こっちに来る前の私には考えられない生活だった。

毎朝5時すぎに起き、早くから畑に出て収穫、水撒きをして畑の世話をしている。八幡君も朝は苦手だったけど、今ではすっかり慣れてしまったようで、朝も日の出前から二人で畑に出て土で汚れる生活をしていた。でも流石に夜は疲れてしまい、二人で21時には布団に入る生活をしている。

昔からは考えられないけど、私はそんな生活が好きだった。

 

「陽乃、そろそろ休憩しようか」

「うん!!」

 

私達は朝の仕事がひと段落すると、ようやく朝ごはんを食べていた。それでも7時ぐらいだから健康的な生活なんだろう。

近所のおじいちゃん、おばあちゃんも私達の世話を焼いてくれて、食費は我儘を言わなければ、ほとんど掛からないぐらいだ。たまに町に出てラーメンを食べに行くのが私達の贅沢となっていた。

 

八幡君は昔のように痩せていなくて、今では筋肉がしっかり付いてて、色々な意味で逞しくなっていた。

ここに来たときは家に虫が出ただけで、二人で大騒ぎしていたのが懐かしいな。

 

「どうしたんだ、急に笑い出して」

「ふふ。ううん、ここに来たときは虫が出ただけで大騒ぎだったのにね」

「陽乃も一緒だろ、蜘蛛が部屋の中に居るからって俺の布団に入ってきてたからな」

「うん、..今日も布団に入っていくからね//」

「あ、ああ//じゃあもう少し頑張ろうか」

 

私はこの生活が好き。好きな人と仕事も家でも何時でも一緒に居られる。大学の時は家の仕事に振り回されて、やりたくない事も一杯させられていた。でも今は自分から進んで田畑の面倒を見ていて、それも凄く楽しくて好きだった。

昔見たいに着飾ったり化粧をすることはなく、ほとんどをすっぴんで過ごしていたけど、八幡君はそんな私でも綺麗だって言ってくれている。

 

私と八幡君が縁側でお昼ご飯のおにぎりを食べていると、タクシーが走ってきて家の前に止まっていた。何だか嫌な予感がするんだけど...

私達が見ているとタクシーの後部座席から黒髪を長く伸ばした女性が降りてきた。運転手がトランクからバッグを出すとその女性は受け取り、こちらに歩いて来ていた。

2年ぶりの再会になるのかな、でもなんでここに雪乃ちゃんが...

 

「久しぶりね、姉さん。八幡」

「久しぶりだな」

「...久しぶり雪乃ちゃん。今日はどうやってここに」

 

私と八幡君はここに移り住んだことを誰にも言っていなかった。住所は移したけれど役場にお願いしてDV認定して貰い、調べられても漏らさないようにお願いしていたのに...

 

「姉さん、そう警戒しないで。私は連れ戻しに来たわけではないわ。親にもこの場所のことは言わずに来たのよ」

「でもなんでこの場所を知ったの」

「八幡、あなた材木座君に相談したでしょ」

「..ああ、ただ場所は知らないはずだぞ」

「材木座君のパソコンを使っていたのね、とんだ盲点だったわ。彼が貴方の検索履歴を残しておいてくれたのよ。そしてこの村を何回も見ていたのが分かったので来てみたの」

「そうだったのか、すまん陽乃」

「ううん、雪乃ちゃん。この場所のことは黙っておいて」

「もちろんよ、履歴も全て消させたわ。だから知っているのは私だけよ...それで姉さん、相談があるのだけれど」

 

私達は雪乃ちゃんを家に入って貰って暫く待ってくれるように言い、途中までだった農作業を終え家に帰っていった。

 

「それで雪乃ちゃん。相談って何?」

「私もここで住まわせてほしいの」

「「え!?」」

「...母さんが家の為だって言って、40過ぎのおじさんと結婚させられそうなのよ」

「..私が逃げたからだよね」

「姉さんが居なくなったのもあるけれど、居ても一緒だったでしょうね。私達に自由何てないのだから」

「うん、そうだったね。でも雪乃ちゃん、私達は結婚しているのよ」

「分かっているわ、でも...私は八幡のことが好きよ。この気持ちを伝えず高校を卒業し大学も離れてしまったのだけれど、今では凄く後悔しているわ」

「雪乃の気持ちは嬉しい。..だからと言って受け入れることは出来ない。俺は陽乃を選んだんだ」

 

雪乃ちゃんは悔しそうな顔をしているけど諦められないんだろう、焦燥しているようにも見える。

このままお引き取り願っても良いんだけど、雪乃ちゃんは帰ってしまえば、好きでもない相手と結婚させられてしまうのだろう。私が逃げたせいとばかりは言えないけれど、両親は雪乃ちゃんにかなり無理をさせているんじゃないだろうか。

 

「...八幡君。とりあえず雪乃ちゃんを泊めても良いかな」

「..陽乃が良いんなら。俺も雪乃の事は蔑ろにはしたくないからな」

「ありがとう。八幡君」

「姉さん、八幡。ありがとう」

 

この日から雪乃ちゃんを交えた生活が始まっていた。雪乃ちゃんは体力がないため農業の手伝いが余り出来なかったけど、仕分けとかあまり体力の必要としない作業をやってくれている。

私達が田畑に出ているときは掃除洗濯、食事の用意なんかもしてくれていたので私達は凄く助かっていた。

でも雪乃ちゃんは猫を何処からか拾ってきて今では家に住まわせていた。千葉に帰るときどうするつもりなんだろう。

 

「ね、姉さん。お風呂に一緒に入ってほしいのだけれど」

「一人で入ってよ、雪乃ちゃん」

「だ、だってこの間もゴキブリが出て怖かったのよ」

「雪乃ちゃんが拾ってきた、みーちゃんと入れば良いでしょ」

「駄目よ!!みーちゃんが咥えたらどうするの。...では八幡、一緒に入ってもらえないかしら」 

「な、何言ってんだよ//」

「だ、駄目だよ。雪乃ちゃん!!」

 

そう、雪乃ちゃんは何かあるたびに八幡君と二人っきりになろうと模索しているようだった。

逆に私が八幡君と二人きりになる時間がめっきり減ってしまって、私も八幡君も欲求不満になっていた。

 

「雪乃は寝たようだな。陽乃、良いだろ。もう我慢出来ないんだ」

「うん、雪乃ちゃんが来てからずっと出来なかったからね。八幡君。今日は一杯愛してね」

 

別室には雪乃ちゃんがいるけど私達は我慢できなくて抱き合っていた。私達が愛し合っていると、いきなり襖が開けられそこには下着姿の雪乃ちゃんが立っていた。

 

「私も抱いてほしいわ」

「ゆ、雪乃//」

「..初めては貴方が良いのよ」

「待ってよ、雪乃ちゃん!!私の八幡君に手を出さないでよ!!」

「姉さん、せめて初めては好きな人に抱かれたいわ」

 

雪乃ちゃんはそう言いながら私にお尻を向けて、お腹の上に跨り動けなくしてきた。雪乃ちゃんは私を動けなくした後、八幡君に抱きついて行ってキスしだしていた。

八幡君は私を抱いている時、理性が崩壊しただのケダモノになるから、そのまま雪乃ちゃんを受け入れちゃっている。うぅ、こんなんじゃ八幡君を取られちゃう!!

 

「じ、じゃあ、私も一緒に入るから!!」

 

私達三人、この日は夜遅くまで愛し合っていた。でも次の日から雪乃ちゃんは私達の寝室で寝るようになり、何時も三人で愛し合うようになっていた。

 

「...ねえ雪乃ちゃん、帰るんじゃなかったの。というよりそろそろ帰ってほしいな。ここに来て2か月ぐらいたってるよ、もう十分愛して貰ったでしょ」

「姉さん、私のお腹に子供が出来たのよ」

「えぇ!?ど、どうして私より先に子供が出来てるのよ!!」

「毎日抱いて貰っていたから何時かはこうなるわよ、この子にはパパが必要だから帰らないわ。みーちゃんもここから離れたくないよね」

 

にゃあ

 

雪乃ちゃんは妊娠してしまい、この村に移住することに決めていた。Iターンを申し込んで来たので家や田畑を貰えるんだけど、家は断り私達と同棲して、畑は私達の畑と隣り合っているところを貰ったので三人で世話をしていた。

 

「雪乃ちゃん、今日から私だけ抱いて貰うから!!」

「仕方がないわね、安定期に入るまで姉さんに八幡の相手は任せるわ」

「うるさい!!なんでそんなに上から目線なのよ!!私も子供が欲しいから、出来るまで私だけ抱いて貰うんだから!!」

 

雪乃ちゃんは八幡君の妾となり過ごしていた。周りの人たちも最初は色々言ってたけど、今では雪乃ちゃんを受け入れてくれて、二人で子供を身籠り仲良くこの田舎に定住していた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....」

 

やはり今回も雪ノ下家が悪者なのね、雪乃が家のことをどう言っているか知らないけど、皆さんにとっては雪ノ下家は子供に対して愛情のない家として見られているのでしょう。

 

「材木座さん、比企谷さん、貴方達には色々とお伺いしたいことが有るので、今日は私に時間を頂けるかしら」

「そ、それはあれがあれなので」

「....あれとは何ですか」

「..よ、予定はないです」

「良かったわ、材木座さんもよろしいですね。では行きましょうか」

 

私がそう言って立ち上がろうとしたとき、雪乃が私を静止してきた。

 

「待ちなさい、材木座君のラノベの批評をしていないわ。母さんは部活の邪魔をしないで貰えるかしら」

「雪乃?」

 

雪乃は私にそう言うと、材木座さんのラノベに付いて批評しだした。皆さんも私が居るので、遠慮しながらも批評を行っている。

なぜか雪乃が何時もと雰囲気が違う気がする。春休みに会ったときは感じなかったけど、この短期間に何かあったのかしら。

 

小説の批評が終わり、私達は車に乗り喫茶店に来ていた。

材木座さんに小説の話を聞き、雪ノ下家のことを聞いたけど、要領の得ない回答ばかりだった。ただ誰かが悪く言ったわけではなく、金持ちの家はこうではないかと、材木座さんが考えて書いたということだった。

 

小説やテレビの影響のようね。とりあえず材木座さんの連絡先を聞いて彼には帰って貰った。

 

「比企谷さん、雪乃の事を聞いて良いですか。何か...なんて言えば良いのか難しいのですが、雰囲気が変わってませんか」

「..はい、俺も気づいてましたが、雪乃お嬢さんが言ってくれるまでこちらからは聞かないことにしてます」

「そうなのね」

「本人が言いたくないのを無理やり聞くものではないと思ってます。言いたくなったら教えてくれるでしょうから」

 

やはり比企谷さんは皆のことを見ているのね、私は娘達のことをどう考えているか教えて貰いたくて、残って貰ったけど喫茶店に長居してしまったわね。一度、場所を変えましょうか。

 

私達から少し離れた席にはカップルが居て、彼女の方は彼に凄く甘えている。思わず私の口から言葉が漏れていた。

 

「..ハァ、ウラヤマシィ」

 

はっ!?私は何を口走っているの!?急いで比企谷さんの方を見たけれど、彼はコーヒーを飲んでいて何も反応がないようね、聞こえていなかったみたいだわ。良かった、こんなことを娘達に話されたら、何を言われるか分からないから。

 

「比企谷さん、場所を移動しましょう。私の家でもよろしいですか」

「..良いですよ」

 

彼は嫌がると思っていたのに、案外素直に受け入れてくれていた。

 

家に着いたけど、まだ誰も帰って来てないわね。今日は夫が出張で帰ってこないけど、そのうち陽乃は帰ってくるでしょう。

私達が応接室に入り、比企谷さんに座って貰おうと思って招くと、先程とは雰囲気が違う。そんな事を考えていると、いきなり私は抱きしめられていた。

 

「あ、貴方!!何をするn」

 

比企谷さんは私の口に指を当てて、私の言葉を遮っていた。

 

「綾乃は喫茶店に居たカップルが羨ましかったんだろ」

 

比企谷さんはそう言って、私の身体を抱きしめ直していた。

ど、どうして夫以外の男性に抱きしめられているの//でも私の心臓は鼓動を速め顔も真っ赤になりだしていた。

 

「あ、貴方に名前で呼ばれる筋合いも羨ましくもありません!!」

 

私がそう言うと、比企谷さんは私の頬に手を当てて来ていた。

 

「今日は良いから、俺に任せてくれ」

「あ、貴方は私に何をしたいのですか。私は夫のある身ですよ、私に良からぬことをすると言うのであれば、それ相応の対応をさせていただきます」

「綾乃、疲れているんだろ。今日はこのまま休めばいいから」

 

そう言って比企谷さんは私の頭を撫でて来ていた。..あぁ//凄く気持ちが良い。比企谷さんの匂いが鼻腔を擽ってくる。

でもそんなこと出来るわけがない。私は身体に力を入れ、比企谷さんから離れようとしたけど、彼が私のことを強く抱きしめてきたので、私は彼の身体から離れるどころか身体全体を比企谷さんに包まれ胸に顔を押しつけていた。

 

「綾乃、俺の前では意地を張らなくていいから」

 

比企谷さんは私の耳元に顔を近づけ、囁くように言ってきていた。あぁ、なんだかこのまま彼に身体を預けてしまいたくなる。彼が呼吸をするたびに私の耳をくすぐるように息が掛かってきていた。

 

「綾乃、何時も仕事ご苦労様」

「あ、貴方に何が分かるのですか」

「旦那が居て、年頃の娘が二人。仕事も経営者として従業員の生活を守るために走り回っている。

俺なんかには想像もつかないほど大変だということは分かる。

ただ俺と二人の時は意地を張らなくても良いだろ」

「あ、貴方には関係ないでしょ」

「ああ、関係ないからこそ強情になる必要もないし、綾乃が甘えても関係ないだろ」

 

そんなことは無い。比企谷さんに甘えてしまえば、それは浮気になる。でも彼はそんな私の考えを払いのけてきた。

 

「俺に甘えるだけで良いんだ。身体を重ねろと言っているわけじゃない。ただ俺には気兼ねなく綾乃のしたいように接してくれればいいんだ」

「...そんなこt」

 

私が反論しようとしたところで、彼の指がまた私の口を遮ってきている。そして彼の唇が私の耳を擽るように囁いてきた。

 

「綾乃、力を抜いて...今の表情、凄く可愛いな」

「えっ//」

 

わ、私が、かわいい!?そ、そんな事、言われたことがない//

幼い時は言われてたのかも知れないけど、私が小学生になると周りは綺麗としか言わなかった。

夫もそう。私のことを美しいと言ってくれたけど、可愛いなんて一言も言ってくれたことない。

 

「‥本当に?」

「ああ、もっと俺に綾乃の可愛い顔を見せてくれ」

 

そういって比企谷さんは私の顎を指で掴み顔を上げさせてきた。

何とか抵抗しないと。でも心の中ではこのまま甘えてしまいたいと思ってしまっている、駄目と分かっているのに私は比企谷さんに抗えなかった。

 

「本当に可愛いぞ。ほら俺の方を見てもっと綾乃のことを見せてくれ」

 

私は恥ずかしくて目が潤んできている。でも泳いでいた目を比企谷さんに向けると満面の笑みを浮かべてくれていた。先ほどまで比企谷さんの目は疲れた目をしていたけど、今は優しさを帯びていて私のことを見つめてくれている//

 

「嬉しいな、その目が潤んだ可愛い顔は誰にも見せてないだろ。いつもの凛々しい表情も綺麗で好きだが、綾乃の可愛い顔は俺だけのものだからな」

 

私が好き!?私が八幡さんだけのもの//いっ、いいえ。彼が言ったのは表情の事。でもこんな事、今まで誰も、あの人でさえ言ってくれなかった。

八幡さんは私の顎に当てていた指をゆっくり這わせ頬を撫でてくれている//

そして八幡さんは私の耳元を甘噛みしながら何度も何度も可愛いと言ってくれ名前を呼んでくれていた//

 

「く、くすぐったい//」

 

私は恥ずかしくなったので首をすぼめ、顔を背けると私の頬に何かが触れチュッっと音をた立てていた。

え!?今キスされているの!?は、恥ずかしいわ//

私の身体からは力が抜け、崩れ落ちそうになると八幡さんが私を抱き抱えてくれた。

 

「は、八幡さん//」

「じゃあソファーに座ろうか」

「な、なら自室では駄目?」

「ああ、このまま行こうか」

 

ここだと誰かが帰ってきたときに見られるかもしれない。

私は横向きに抱かれ、家の中を移動している。落とされないように彼の首に手を回していたけど、顔を上げることが出来ない。私は耳まで赤く熱くなっていた。

 

私が案内して自室に入っていくと、八幡さんは私をソファーに寝かせ膝枕してくれていた。

 

「今日も疲れたろ。ゆっくりしてくれればいいから」

 

比企谷さんはそう言って右手で私の頭を撫で、左手を私のお腹に当て擦ってくれている。まるで赤ちゃんに接するように優しくしてくれて私はいつの間にか彼に身体を預けていた。

 

私はあの人に甘えることも無かった。

このまま八幡さんに甘えていたい。‥今日だけは雪ノ下綾乃ではなく、ただの綾乃でいたい。陽乃や雪乃の事も会社やあの人の事も何もかも忘れ八幡さんに甘えていたい。

 

何時のまに忘れてしまったのだろう。毎日が忙しく人に甘えることが、こんなに安らぐなんて思ってもいなかった。

娘達にも甘えられたことなんて、小さい時のことしか記憶がない。二人が小学生にあがると雪ノ下家の女として誇れるように教育していたのだから。

二人は確かにどこに出しても恥ずかしくない程の教養を身に付けてくれた。

ただ陽乃には親友と呼べる友達が居ないはず。私が学校のことを聞いても交友関係の話で特定の人が出たことはないから。

 

雪乃も今では由比ヶ浜さんが親友になってくれたので良かったけど、それまでは一人で過ごしていた。

小学校の時には虐めが有っても気付けなかった。私達が知った時には雪乃は私達も見限っていた。

そのせいもあり家を苦手とし留学してしまい、留学から帰ってきても一人暮らしをしてしまった。

私が忙しさを言い訳にあの子達の事を見てあげれなかった。

 

私はとんでもない過ちを犯していたのではないの?そう考えていると私はいつの間にか涙が溢れ出していた。

 

謝りたい。二人が許してくれなくても、今更かも知れないけど二人には私が間違っていたことに気付いたことを打ち明けたい。

 

今、何も言わず八幡さんは優しい目で受け止めてくれている。私は身体の向きを変えて抱きついていた。

 

私は人前で涙を見せたことはなかった。あの人にも見せたことはない。

今まで千葉の女傑などと呼ばれ、私自身もそう呼ばれることに誇りを感じていた。

あの人を雪ノ下家の御輿として担ぎ、政界では良き妻として裏方に徹する一方で、会社ではあの人に代り時には非道と思われる判断もしたことがある。

その時、私の事は色々と言われていた。でも私は自分の判断に誤りはないと信じ行動していた。

結果的にはその判断は誤りで無かったと言えるけど、人目も憚らず涙を流したくなったこともある。でもその時は何とか堪えていた。

 

でも八幡さんの前ではもう取り繕えない。私は幼子のように八幡さんに抱きつき、声をあげ涙を流していた。

 

 

私が泣き止んでも八幡さんは私の頭を撫でてくれていて、背中を軽く叩いてくれている。落ち着いて暫くすると、私は話しかけていた。

 

「八幡さん、今日はありがとう//」

「い、いいえ//こちらこそ生意気なこと言って、しかも抱きしめてしまってすみませんでした、雪ノ下さん」

「こら敬語禁止ですよ。後これからも名前で呼んで下さい」

「わ、分かった」

「でも、こうやって人に甘えるのって何十年ぶりでしょうか。覚えがありません。

娘達にも甘えて貰ったのは小さい時だけです。

...私がもっと素直に接することが出来れば、陽乃の作った笑顔もする必要は無かったのではないでしょうか、雪乃も一人暮らしをしたいとは言わなかったと思います」

「たらればを議論するのは意味がない..ただ一度二人にも本心で話してみろ。二人なら分かるだろって思わずに綾乃が思っていることを言葉で伝えるんだ。今から過去を取り戻すことなんて出来ない、だがこれからを変えることは出来るだろ」

「...もしそれで泣きたくなったら、また甘えさせてもらえますか」

「ああ、何時でも連絡をくれ」

「はい//」

 

私は起き上がると、また八幡さんの胸に顔を埋めていた。あぁ、この八幡さんの匂いを嗅ぐと何も考えられなくなり、私の身体が火照ってきてるのが分かる。

抱いてほしい。それが身の破滅だと分かっていても、今はどうでもよかった。

 

「八幡さん、キスしてください//」

 

私が胸に顔を埋めながらそう言うと、八幡さんは私の顎に手を当て顔を上げさせ、唇に凄く近い位置でキスしてくれた。少し唇にも当たっている//でも本当は唇を奪ってそのまま抱いてほしかった...

もう駄目、八幡さんの事しか考えられない//

 

私は時間が許す限り八幡さんに甘えていた。

 

「今日は帰ってしまうのですか」

「ああ、妹が待ってるんでな」

「ごめんなさい、都築が居れば送れたのですが」

「いいんだ、じゃあお休み。綾乃」

「..お休みなさい、八幡さん」

 

私が挨拶を済ませると八幡さんは私を抱きしめ頭を撫でてくれた//

 

「そんなに悲しそうな顔しなくても何時でも会えるから」

「本当ですか」

「ああ、綾乃が呼んでくれれば何時でも来るから」

「はい//」

 

八幡さんはまた頬にキスしてくれ玄関を出て行ったけど、私は頬に手を当て立ち尽くしていた。

 

 

ラノベ脳のせいでぇ!!うあぁああぁぁ!!

 

私が玄関で名残惜しんでいると、男性の叫び声が聞こえてきた。

八幡さんは大丈夫かしら。気になって門構えを出ても誰もいないわね、私が通りを見ていると車がこちらに走ってきて家に入ってきた。

陽乃と雪乃が乗っているようね。

 

「ねえ母さん。八幡がすごい勢いで走っていったのだけれど」

「うん、私達が呼んでも気付かずに行っちゃったね」

「そう、急いでいたのかしら」

 

今日は雪乃も帰ってきたのね。二人には謝らないといけない。二人には『雪ノ下家の女だから』と言って、テストでいい点を取ってきても当たり前と思ってしまい、誉めることも出来なかったのだから。

でも先ずは話を聞きたい、食事の用意は私が出来るときは一人でしていたけど、二人は手伝ってくれるかしら。

 

「陽乃、雪乃。私と一緒にご飯を作りますか」

「‥お母さん、何かあったの?」

「私は良いわよ、母さん何を作るの」

「簡単なもので済ませましょう。今日は貴女達と色々話をしたいの」

 

陽乃は戸惑いながらも御飯の用意を手伝ってくれ、雪乃は陽乃にも私にも分け隔てなく接してくれている。何だか雪乃の方が姉に見えてしまう。今までは全くそんなことは無かったのに。

 

「「「頂きます」」」

 

私は食事中でも箸を休め、二人に話しかけていた。何時もであれば『食事中の会話ははしたない』と言っていたけど、今日はテレビでみる一家団欒と言うのをやって見たかった。

そして陽乃は戸惑いながらも、雪乃は普通に色々と話してくれた。

学校の事、お友達の事、ラノベのこと、二人の話は私には初めて聞くことばかりで、とても新鮮で、また今まで知らなかったことを私は心の中で恥じていた。

 

今は食事が終わり、ソファーで寛いでいて雪乃が用意してくれた紅茶を頂いている。

 

「二人とも時間を貰っても良いですか。話したいことが有るのですが」

「..お母さんが私達に話しなんて珍しいね」

「ええ、良いわよ」 

 

私はソファーに二人を座らせ、前に座ると二人に頭を下げた。

 

「今まで二人に色々と無理強いをさせていたわ。仕事の事もだけど勉強に習い事、もしかしたら二人が遣りたくないことを『雪ノ下家の女として』と言って無理に遣らせていたと思うの。...もしそうなら本当にごめんなさい」

「...お、お母さん!?何よ、そんなこといきなり言われても..意味分からないよ!!」

「母さん良いのよ。私は分かっているわ」

 

陽乃は混乱しているようだけど、雪乃は物分かりが良い。もしかしたら私と話なんてしたくなくて、分かってくれた振りをしているだけなのかもしれない。

 

「いいえ、きちんと言わせてほしいの。私は二人に、陽乃には幼い時から仕事をさせて、貴女の自由を奪っていたわ」

「そんなこといきなり言われても...」

「雪乃にも陽乃と同様、もしかしたらやりたくない事でも色々とさせていたと思うの。虐めが有ったときも親として貴女を救えなかった」

「母さん、私は分かっているわ。確かに昔は恨んだことも有ったけれど、今は私からも母さんにお礼を言いたいわ」

「..雪乃?」

 

やはり雪乃は何かが違う、暫く会わなかっただけで、ここまで違うと戸惑ってしまう。

 

「母さん、今まで育ててくれてありがとうございます。ただまだ私は高校生です、これからもよろしくお願いします」

「雪乃ちゃん、良いの?」

「ええ、私は母さんにお礼の言葉しかないわ。確かに子供の時は恨んだ事も有ったけれど、今までの事は辛かった事も全て今の私を作ってくれたるために必要だったと思っているの。

..今の私があるのは母さんのおかげなのだから」

 

雪乃はそう言って手を握ってくれていた。

駄目、涙が溢れそう...

そう思っていると雪乃は私の手を握りながらソファーから立ち上がると、テーブルを廻り私の方に歩いてきて抱きしめてきた。

私は二人の前で恥も外聞もなく、泣いていた。そんな私でも雪乃は抱きしめてくれていて、陽乃も戸惑いながらも雪乃と一緒に私を抱きしめてくれている。

 

雪乃は本当に変わったのね、それも八幡さんが近くに居るからでしょう。

陽乃も先ほど話をしたときは少なからず、影響を受けていた。八幡さんの話をしているとき、作り笑いでなく本当の素顔が覗いていたから。

 

私達三人、八幡さんに変えられてしまったのね、でも悪い気はしない。いいえ、このように変えて貰えるならいくらでも変えてほしい。

 

「..ありがとう」

「母さんとはこれから何でも話していきたいわ、私達は本物の家族なのだから」

「..雪乃」

「...ごめん、お母さん。私はまだ雪乃ちゃんほど気持ちの整理が付かない...」

「良いのよ、陽乃。でもこれからは何でも教えてほしいわ。もし仕事でしたくないことが有れば、それも教えてほしいの」

「..うん」

 

私が落ち着き、陽乃と雪乃は私の横に腰を下ろして手を握ってくれている。嬉しい、娘とこんな時間を過ごせるとは思ってもいなかった。今日、八幡さんと出会っただけでこんなにも世界が変わってしまうのね。八幡さんにはこれからも私達を変えて貰わないと。

 

私はもう一つ、気になる本題を聞いてみた。

 

「陽乃、貴女は八幡さんの事をどう思っているの?」

「お母さん、今八幡さんって...」

「私の質問に答えてないわ、貴女の気持ちを聞いているのよ」

「..か、可愛い後輩かな」

「そう、では恋愛感情は無いのね。雪乃はどうなの」

「私は八幡の事、好きよ」

「雪乃ちゃん!?」

「誤魔化してもしょうがないでしょ、私は八幡が好き、愛してる。この想いは絶対に誤魔化したくない」

「では雪乃。私の部屋で八幡さんの事、教えてほしいの」

「ええ、良いわよ」

「え!?ゑっ!?ち、ちょっと待って!?えっ!?ど、どういうこと!?」

「五月蠅いですよ陽乃、夜ですから騒いではいけません」

「そうね、騒がしい姉さんは放っておいて、母さんの部屋に行きましょ」

「まっ、待ってよ!!」

「陽乃、私は今から雪乃に八幡さんの事を教えて貰うのよ」

「そうね、姉さんには邪魔をしないで欲しいのだけれど」

「邪魔ってどういうこと!?」

「雪乃が八幡さんとお付き合いしたら私も甘えさせてください」

「ええ良いわよ。母さんも八幡が欲しいのね」

「ええ、でも早く手に入れなさい。マゴマゴしていると私が我慢できなくなって既成事実を作ってしまいそうだわ」

「き、既成事実!?な、何を言ってるの?無視しないで!!お母さん、お父さんは!?」

「雪乃、では行きましょうか」

 

私と雪乃が立ちあがるなか、陽乃はまだ騒いでいる。私は陽乃の方に振り返り言葉を発していた。

 

「そうね、あの人には雪ノ下家から消えて貰いましょうか」

 

 



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「競女」と「葉山」

お久しぶりです。
昔書いて自分で没にしたのを修正して載せてます。
R15で収まっていると思いますが、嫌いな方はバックしてください。

読み返して自分の頭がおかしくなったかなと思ったので、没にしてました。
むっつりなので今後の投稿もそっち方面ばかりになる可能性がありますが、問題ない方は読んでみてください。



「あーあ、今日は生徒会一人かな...」

 

放課後、生徒会室に向かう途中、思わず独り言を喋っていた。今日は副会長の本牧さんと会計の稲村さんは二人とも用事があるということでお休みだし、いろはちゃんはどうせ奉仕部に遊びに行っちゃうから生徒会室には私一人だろうなあ。

急ぎの仕事はないから何もしなくて良いんだけど、一人で留守番って言ってもすることもないからなぁ。お昼寝しているわけにもいかないし何か時間を潰せることが有ればいいんだけど。

 

こういう時、彼氏でもいれば誘ってお話ししてれば良いけど、私にはそんな人居ないし誰も誘ってくれない。

本牧さんはよく分からない、以前はお出かけに誘ってくれたけど、それ以降なにもないからな。お出かけしたときも買い物に付き合ってお茶を一緒に飲んだだけだから。

 

私は生徒会室の前まで来ると、置いてある落とし物箱を見てみた。シャーペンやハンカチなど色々なものが入っている中に一つ気になるものが入っていた。

 

「人形?」

 

それは指人形ぐらいの大きさで可愛い女の子なんだけど、首が抜け掛かっているのか何だかバランスがおかしかった。私は手に取って見てみると、首が抜けるようになっているみたいで、すこし取れ掛かっているみたい。

 

スポンッ

 

私が軽く首を引っ張ってみると簡単に抜けて、中からはUSBの差し込み口が出てきた。これってUSBメモリかな。どうせ暇だし中身を確認してみようかな。落とし主が分かるかもしれないよね。

 

私は生徒会室にはいると、ノートパソコンの電源を入れUSBメモリを差し込んだ。

中身にはウィルスは無いようで確認すると、テキストファイルが幾つか置いてある。ただそのファイル名がおかしい。

「ヤンデレいろは.txt」ってものや「サバイバル.txt」って書いてあるけど、中身を確認してみるとほとんど何も書かれていなかった。

 

「ヤンデレいろは」って、いろはちゃんの事だよね。なんだろ?これがいろはちゃんのUSBメモリだったとしても、自分でヤンデレって言うとは思えないし、「サバイバル」っていうのも何がサバイバルなのか意味が分からない。中身が1行2行しか書かれてないので、内容もよく分からないな。

後は「没」って書いてあるフォルダがあるけど、こっちはどうなのかな。

そのフォルダを開いてみると幾つかまたテキストファイルが入っている。こっちは容量がそこそこあるから書き込まれているのかな。その中でよく分からない「競女.txt」って書いてあるものを私はダブルクリックしていた。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「女王!!由比ヶ浜~!!ゆ~い~!!」

 

うぉぉぉぉ!!

 

..彼女がこのグランプリを制した由比ヶ浜結衣ちゃんね、うちと同い年なのに彼女の武器は凄い。ほとんど全身凶器だよ。

彼女は手を上げて観衆に答えていたけど、うちを見つけるとこっちに歩いてきた。そして私の全身を舐めるように観察してきている...

 

「ふーん、貴女が相模南、さがみんだね。最近頑張ってるみたいだけど、あたしとそんな身体で戦えるの」

 

結衣ちゃんはうちの身体を見て、嘲笑するかのような笑みを浮かべていた。

 

「..うちには優秀なコーチが付いている。貴女みたいに恵まれた身体じゃなくても幾らでも勝つ方法があるんだよ」

「じゃあ戦えるの楽しみにしてるよ。さがみん」

 

彼女の全身は本当に凄い。どこを取っても完ぺきな体型なんだろう、でもうちは負けない。だってうちには優秀なコーチが居るから。

 

「南、行くぞ」

「はい、八幡コーチ」

 

うちのコーチは比企谷八幡。うちは彼に鍛えられてから試合の楽しさが分かってきた。それまでは誰にも見向きもされず、プールの縁に浸かって眺めているしか出来なかった。

でも八幡コーチが鍛え出してくれてから、うちは試合に負けなくなっていた。でも八幡コーチの訓練っていうのが...

 

「南、行くぞ」

「わ、分かりました」

 

うちと八幡コーチは水着に着替えてランドという水上に浮かぶ丸いステージで向かい合っていた。八幡コーチは手をワキワキしている。八幡コーチに捕まるとうちは胸やお尻を何時もモミモミされてそれを避けるため、狭いランドの上で逃げ回るしかないんだけど、捕まったらモミモミされる。モミモミされると力が抜けてしまい、どうしても八幡コーチに取り押さえられてしまう。

 

それを避けるにはうちの胸とお尻だけで、八幡コーチをランドから落とすか倒さないといけない。でも八幡コーチは手を使って来るんで、安易な攻撃ではそのまま掴まれてしまう、だから八幡コーチを避け、死角から攻撃するしかない。でも顔を攻撃するとペロペロしてくる。どうしてもペロペロされると力が入らなくなり次の攻撃に移れなくなってしまう。

 

「あ、あぁ//に、にげれないぃ」

 

うちはランドの上でうつ伏せになったところを八幡コーチに捕まりお尻をモミペロされていた。うぅ、ち、力が入らない。でもなんとか逃げないと。

うちがジタバタしていると、うちのお尻を舐めていた八幡コーチの舌の動きがいきなり止まっていた。

そしてなぜか八幡コーチはうちのお尻をパンパンタップしてくる。

 

うちが力を抜くと八幡コーチがお尻から離れ舌をしきりに気にしていた。

 

「南、お前の尻圧は凄いな。舌が引き抜かれると思ったぞ」

「え!?」

「お前の尻圧は凄い武器になる。今から尻を鍛えるんだ!!」

「はい!!」

 

うちはそれからお尻の強化に努めた。お尻に挟み込んで締め上げ振動させる。うちにその技を身に付けさせるために八幡コーチはどんな刺激が有っても、うちが尻の技を出せるよう一杯攻撃してくる。ペロペロ攻撃とモミモミ攻撃、果ては顔を埋めペロペロ、手でモミモミされながら特訓していたので、うちは凄い量の汗を何時もかいてボトムがビチャビチャに汗が滴り落ちるぐらい濡らせながら、お尻を強化していった。

 

「よし、今日からは裸での特訓だ」

「ええっ!?う、うちが裸ですか」

「南を鍛えるために俺も裸になる」

 

今は、ランドの中央で裸の八幡コーチと向かい合っている。八幡コーチにはうちと違って足が三本あった。うちが聞くと鞭に使えるんだと言って、腰を振り出しクルクル回しだしていた。

 

戦いだすと、八幡コーチが手を伸ばして胸を攻撃してくるのを掻い潜りながら、攻撃を繰り広げていく。

 

「流石だな南。では俺は足も使わせてもらうぞ」

「はい!!」

 

八幡コーチの足技が凄い。はっきり言って素人の蹴りだけど、うちが攻撃を防ぐと第三の足をしならせ攻撃してくる。なんでうちには無いのに足がもう一つあるの!?

八幡コーチはその足を使い色々な角度から攻撃してくる。まるで鞭のように変幻自在に色々な角度から攻撃され、うちは頬を叩かれていた。

 

「す、凄い!!」

「まだまだだな、南!!もうおしまいか」

「まだ戦えます!!」

 

うちは何とか堪えたけど八幡コーチの鞭は、うちの顔や胸、お腹、お尻、太股と至るところを責めてきて打たれ続けていた。

 

こんな特訓を行いながら、うちは鍛えられていった。最近、身体の汗の量が本当に酷い、ボトムなんて毎日ビチャビチャだし、汗が塩になっているのか、白いネバネバしている汗が体中に付いていることも有る。それほど酷使しているのだろう、でもうちは弱音を吐かず訓練に明け暮れていた。

 

そのおかげでうちはトーナメントも順調に駆け上がり、とうとう決勝戦の舞台で結衣ちゃんに挑むことになっていた。

 

「南、とうとう決勝だな」

「はい。ただ今のままで勝てるのか不安です」

「そういう時は、練習して汗を流すんだ」

「はい!!」

 

でもやはり八幡コーチには勝てない、第三の足はうちの予想を超えた動きをしてくる。

対応できない、あんな攻撃に勝てるはずがない。うちは何とか立ち上がったけど、もう駄目だ。でも何とか一矢報いたい。

八幡コーチはジャンプし、うちの顔に向けて第三の足を振り下ろしてきた。うちは身体を反転させ、お尻でその足を挟み込んでいた。

 

「真剣尻刃取り!!」

「な、何!?」

「このまま締め上げます!!」

「み、南!?ま、まって。ま、不味い!!」

 

うちは八幡コーチの言葉を無視してお尻に力を入れて行った。八幡コーチはうちの尻を手で開かせようとしていたけど、うちはお構いなしに力を入れ、筋肉を痙攣させ高速に動かしていった。

 

「や、やめ!!あ、あぁぁ、イッ...ク!!..み、みなみぃぃぃ!!」

 

第三の足が痙攣しだし汗が飛び散っているのを背中に感じた。

けど、うちは力を緩めずお尻をまた痙攣させていくと、何かお尻にボールのようなものが2つ挟まってきた。

 

「グガッ!?」

 

これは八幡コーチが何か仕掛けようとしているんだ!!今までこんな攻撃されたことがない!!うちは第三の脚とボールをお尻に挟みながら今までないぐらい締め付けながら高速に動かしていた。

 

「まだまだぁ!!」

「ああぁぁおお!!」

 

八幡コーチは今まで聞いたことのない声を上げ、何度も第三の足を痙攣させ汗を飛び散らしていたけど、うちはずっと攻撃を止めずにいた。辛い、でも今緩める訳にはいかない、八幡コーチが今まで見たことのない新しい攻撃を仕掛けてくれているんだ。それはうちを認めてくれたってことだから!!

お尻が悲鳴をあげている、このまま力を抜いて楽になりたい。でもそれはうちが許せない!!この八幡コーチの攻撃をしのげれば、うちは変われる気がする!!

うちは今まで以上にお尻を高速に動かしていった。

 

「や、やめ!!...と、とめ...グ‥ガ!!あ、あぁぁ//」

 

八幡コーチは雄叫びを上げたかと思うとすごい汗をまき散らしていた。うちのお尻と背中に飛び散らせてきている。そしてボールが潰れるような感覚が伝わってきた。

 

「グギャ!?あ、ああぁぁ...ギ、ギブ...」

 

八幡コーチは負けを認めると力が入らなくなったのか、第三の足は先ほどまでの硬さを失っていた。そのまま八幡コーチはランドの上で仰向けに倒れこんで今まで聞いたことのない呼吸をしている。

 

「カヒゥカヒゥ..み、南。俺の負けだ...」

「ここまでこれたのも八幡コーチのおかげです、ありがとうございました!!」

「...が、頑張れよ」

「はい!!」

 

やった!!やっと勝てた!!うちは喜びに打ち震えていた。うちの身体は汗でベトベトになっている。八幡コーチにペロペロされたのもあるけど、白いドロっとした汗で背中とお尻と股間はベトベトになっていた。

でもここまで頑張れたのは八幡コーチのおかげだ。うちはランドを降りた後、振り返ってまだ仰向けになっている八幡コーチにお礼を言い頭を下げた。

 

キュ、キュウキュウシャヲ ヨンデ

 

八幡コーチから何か聞こえたけど、よく分からなかった。多分明日の試合で頑張って来いと言ってくれてるのだろう。

 

「明日、必ず勝ってきます!!」

 

うちはそう言うと明日に備えるため、プールをあとにいた。

 

決勝戦、戦う前に八幡コーチに活を入れてほしかったけど、会場には来ていない。

うちが探していると、八幡コーチが病院に入院したと聞こえてきた。どうしてだろう、何かあったんだろうか。

 

今日は八幡コーチがセコンドに居てくれない、入院したって言うのも気になる。

でも大丈夫。うちは昨日の特訓で自分の限界を越えたんだ、後は今までの特訓の成果を出すだけだから。

だからコーチも病院で応援してて。コーチにトロフィーを見せに行くから。

 

うちはそんな思いを抱きながら、結衣ちゃんの待つ決勝の舞台に歩み始めた。

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「....//」

 

これって比企谷さんのアレが潰されるって話だよね//出ているのが比企谷さんと相模さん、由比ヶ浜さんだけだけど酷い内容。

大体、第三の脚ってなんでこの話に出てくる相模さんはアレって気づいてないの!?しかもボールを潰すって...あれって何処かにぶつけただけで悶絶してる男子を見たこと有るけど、潰したらもっと大変なことになるよね!?

 

最初に由比ヶ浜さんが出てくるけど、ぜんぜん絡んでないし...た、確かに由比ヶ浜さんは全身凶器だけど。

しかも白い汗って..//あ、あれってそんなに出るものなの//ちょっと見てみたいな//もしアレなら私が比企谷さんのを...って何考えてんの//そんなこと出来るわけないじゃない//

 

これを書いた人、頭がおかしくなってるんじゃないかな?相模さんに見つかったら大変なことになるよ。

 

..もういいや、これはとりあえず忘れよう、今度はこっちを読んでみようかな。

 

私は次に「葉山.txt」って書いてあるファイルをダブルクリックしていた。葉山さんってサッカー部キャプテンの?まあ良いや。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「葉山、本当に金出してくれるのか」

「高校の時、色々と迷惑を掛けたからな。そのためにバイトまでして準備してたんだ、君も行きたいんだろ」

「ああ」

 

俺と比企谷は同じ関西の大学に入っていた。お互い一緒の大学とは知らなかったが、同じ講義を受けた時に出会い、情報交換しているうちに一緒に居ることが多くなっていた。

俺は親の仕送りがあるため、バイトしなくても生活できるが今回は仕送りのお金は使いたくなかったため、初めてアルバイトをして自分で稼いだ金で比企谷を誘っていた。

 

「でも良いのか、2万ぐらい掛かるんだろ」

「この間も言った通り、お金のことは気にしなくていい。

ただ比企谷が経験ないとは思わなかったよ。..高校の時、あんなに魅力的な女性が周りに居たのに」

「...アイツらに手を出せるわけないだろ、俺にとって何よりも大切な存在なんだから」

 

比企谷は高校の時、誰とも付き合うことなくこの大学も黙って受けていた。卒業後すぐ逃げるように引っ越ししてきたらしい。それは俺も一緒だったのだが、まさかこの大学に比企谷が居るとは思わなかった。

誰にも報告せず携帯も番号を変え、こちらに来るときも黙ってきていた。多分彼女達は怒っているのだろう、ただ比企谷は小町ちゃんにも電話番号を教えておらず、親にも黙っておくように伝えていたので、今のところは誰からも連絡がないということだった。

 

最近一緒に居ることが多いからだろうか、比企谷は昔のことを俺に打ち明けてくれる。

誰を好きだったのかは教えてくれないが、逆に全員が大事で今でも大切に思っているということだった。

ただ彼女達に黙って来たのは流石に申し訳ないと思っているらしく、以前酒を飲みに行った時に逃げてしまったのは申し訳ないと泣いていた。

 

そんな比企谷には新しい恋愛をした方が良いと思い、大学で仲良くなった女性を紹介したが、付き合うまでは行っていなかった。

彼女達は比企谷のことを気に入ってくれていたが、彼は今は誰とも付き合うつもりは無いと言っていたので、今の所友達として接している。

そんな比企谷を俺は女遊びに誘っていた。

 

「お前こそ金なんか出さなくても言い寄ってくる女性は多いだろ、そう言った事をやらせてくれる子もいるんじゃないか」

「俺は嫌だよ。やはり好きな子とちゃんと付き合ってからしたいな。だが今は好きな子が居るわけじゃないんだが」

「それまで童貞で居ろよ」

「比企谷はどうなんだ、経験したくないのか」

「..したいからお前の誘いに乗ったんだ」

 

俺達は比企谷のアパートまで歩いてきていた。ここで時間を潰し夕方になったらソープに行こうと話していた。

 

「入ってくれ」

「お邪魔するよ」

 

比企谷は2階建てのアパートで角部屋に住んでいる。間取は2Kだったが今いる部屋には狭いが屋根裏を利用したロフトが付いている。一人暮らしには広いのだが、築年数が経っているため安いらしい。

何時も居る部屋にベッドを置き、もう一部屋には荷物を置いている。もう片方の部屋に寝ないのか聞いた時、ベッドからテレビが見れないし、もう一つTVを買うのはもったいないと言い、ほとんどをこの1室で過ごしているようだ。

隣の部屋と今いる部屋は襖で繋がっているが壁一面が襖で、取るとかなり広い部屋になる。ただ広くすると光熱費が掛かるため普段は閉めていた。

比企谷の部屋に来るのは、多くても二、三人なので襖の前にベッドを置き、隣の部屋に行きたい時はベッドの足元の方で行き来できるようにしていた。

 

今、比企谷はベッドに持たれて座り、俺はテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

「それでどこが良いと思う」

「...ここなんかどうだ?」

 

俺達はネットで繁華街にあるソープランドを検索していた。お互いに好みの女性を見つけると画面を見せあっていた。

 

「..葉山、お前の見せてくる女性、高校の知り合いに似ている気がするんだが」

「比企谷だってそうだぞ、大体君の周りにいた女性達のような人以外を見つける方が難しいだろ...初めてだから好みな女性の方が良いからな、よく初めての女性は忘れられないって言うだろ」

「そうだな...なあ葉山、今になって緊張してきたんだが、ちゃんと出来るんだろうか」

「俺も一緒だよ。だがそういう店って全て女性に任せておけば良いんだろ」

「童貞と言って馬鹿にされないのか」

「それは無いと思うぞ、慣れているだろうし聞けば女性の扱い方とか教えてくれるはずだ」

 

俺達はお互い経験がないため、ネットで見た知識を交換していた。二人でスマホを操作していたが、先ほどからなぜか居心地が悪くなってきている。

 

..ッ!?...なんだ!?何かとんでもない殺気を感じるんだが...

 

比企谷は夢中になってスマホで検索しているが、俺は顔を上げ周りを見渡した。

..比企谷のベッドの後ろにある襖って開いていたか?1cmか2cmぐらい開いている、そう思っているとそこから身体が硬直するほどの視線を感じた。しかも一つではない、多数の視線が俺に突き刺さってきている!!

 

思わず咽て咳をしてしまい、唾をカーペットに飛ばしてしまった。

 

「何やってんだよ」

「す、すまん。ティッシュを貰うよ」

 

俺はカーペットを拭くために身体を横にし拭いていると、比企谷がもたれているベッドの下を見てしまった。

そこには俺の方をハイライトが消えた目と下げ荒んだ目で見ている女性二人が居た。

 

..ッ!?ど、どうしてここに奉仕部の二人が居るんだ!?や、ヤバイ。ここで俺がソープに連れて行ったら、俺はどうなるんだ!?...きっと行方不明か身元不明の死体として発見されるのだろう。

 

「どうしたんだ、葉山」

 

二人は口に指を当て、喋るなと俺に指示してきている。

 

「..いや、なんでもない。...だ、だがよく考えたらやはり好きな女性とエッチしたくないか」

「何言ってんだよ。千葉から逃げだして、もうあいつ等には愛想尽かされてるだろうし、ここには居ないだろ。今更どの面下げて会いに行けば良いんだ。

今日はお前が金を出して連れてくって言ったから俺はこの日のためにずっと溜め込んでいたんだからな」

 

そんなことバラすな!!ただ比企谷の言葉を聞いて俺に突き刺さっていた視線が和んでいたが、そんなのは一瞬でまた隣の部屋とベッドの下からもの凄くヤバい視線を感じる。

お、落ち着け、今はまだ大丈夫だ。何とかこの部屋から逃げる方法を考えるんだ。

 

「ハハ..そ、そうだったな..ち、ちょっとタバコ吸ってくるよ」

 

比企谷はタバコを吸わないので、俺は何時もベランダに出て吸わせてもらっていた。そこには俺が灰皿替わりに置いた蓋が付いているコーヒーの空き缶を置いてある。タバコを一本取り出し、窓に手をかけると少し開いているな、開けたまま外出していたのか不用心なヤツだ。

俺は窓から外に出てから火を付け何とか落ち着かせようと深く息を吐いていた。

 

クサイ

 

..ッ!?

 

俺がもう一度タバコを咥えたところで、ベランダの横から何かが聞こえてきた。いや、そっちを見ては駄目だ。だが怖いもの見たさだろう、まるで錆びついたロボットのような動きで俺は首を横に向けていた。

 

..ッ!?ゴホッ!!ゴホッ!!

 

俺はタバコの煙で噎せ返ってしまった。な、何でここに居るんだ!?

彼女達は死んだ目で俺のことを見ていたが手には比企谷のパンツをそれぞれが持っていて顔を埋めながら俺を手招きしてくる。

干してあったパンツを二人揃って匂いを嗅いでいるのか?色々突っ込みたいが今は言葉を発する事は出来なかった。

行きたくない、だが俺には逆らえない。俺は彼女達のほうにゆっくり近づいていった。

 

「もし先輩を連れて行ったら...潰す」

 

な、なにを!?

 

「葉山君が受けのBL本を全世界に無料開放するよ」

 

...ッ!?..コクコク

 

何て怖いことを...喉が乾いて声がでない、俺は頷くことしか出来なかった。タバコをすぐに消し二人から逃げるため部屋に入った。

ふとロフトを見上げるとそこには3人の女性が俺のことを見下ろしている。...何て目をしているんだ。もしこの後選択を誤ると俺に厄災が降り注ぐのだろう。

 

「..ひ、比企谷。やはり今日は止めないか」

「どうしてだよ、俺がどれだけ我慢してたと思うんだ。ちょっとした女の仕草で反応して治まらなくなって大変だったんだぞ」

 

ば、ばか。他の女性のことを口に出すな!!俺がそう思っていても比企谷は喋り続けている。

 

「この間も言っただろ、お前が以前紹介してくれた綾瀬や愛甲にもうちょっとで襲い掛かりそうになったからな。

あの二人危機感がないよな、気に入っている男にご飯を作りたいからって練習とか言ってこの部屋に御飯作りに来てくれたのは良いんだが、まさかそのまま泊っていくなんて。

風呂上がりに俺のTシャツと下着だけでウロウロしてるし、寝てるときシャツが捲れてお腹が見えてた時は本当にヤバかったぞ。その日、悶々として朝まで寝れなかったんだからな」

 

彼女達がお前のことを気に入ってるからだろ!?気づけよ!!それより今はそんなことを喋るな!!

 

「二人で来てくれたから襲えなかったが、一人で来られたら間違いなく取り返しの付かない事してたぞ。大体二人に言ったのお前だろ、俺を練習台にすれば良いって」

「そ、そうだな。ははっ‥あの二人にはちゃんと言っておくよ」

 

俺を出すな!!俺に向かってきているハイライトの消えた視線が辛いんだよ!!だが不味い。このままソープに連れて行ったら、俺は本当に潰されて全世界のホモに狙われるかもしれない。

 

「そろそろ良い時間だろ、早く行こうぜ、緊張しているが楽しみでしょうがないんだ」

「ひ、比企谷、行く前にシャワーを浴びたらどうだ」

「なんでだよ。ソープって身体洗ってくれるんだろ」

「..そうだが汗臭いとか思われたくないだろ。初めての女性になるのだから良い印象の方が良いからな」

「確かにそうだな、葉山はどうするんだ」

「あ、あぁ俺にも後でシャワーを貸してくれ」

 

比企谷はそう言ってからシャワーを浴びに行ったが、浴槽の扉が閉まったと同時に隣の部屋から陽乃さん、三浦さん、川崎さん、城廻先輩が出てきた。ベッドの下からは雪ノ下さんと由比ヶ浜さん。ベランダからは比企谷のパンツをいまだに顔に当てながら一色と海老名さんが入ってくる。ロフトからは相模さん、折本さん、仲町さんが下りてきていた。

 

皆が俺を蔑んだ目で見ている。俺は思わず正座し頭を下げていた。

 

「隼人さぁ、八幡君を何処に連れてこうとしてたのかなぁ」

「返答によっては本当にアソコを潰しますからね」

「葉山君どうなのかしら。もし満足のいく回答でなければ御両親に報告させてもらうわよ」

「そうだね、お金を変なことに使おうとしてるなら仕送りとかできなくしてもらうのも良いかもね」

「そんなことしなくても私が全世界のおホモ達に葉山君の住所を晒してあげるよ。そうすればそんなところ行こうなんて言わなくなるだろうから」

 

一色はパンツを顔に当てながらなんて怖いことを言ってくるんだ。雪ノ下さんは本当に両親に報告しかねない。海老名さんもパンツの匂いを嗅ぎながら何て恐ろしいことを考えてんだよ。

 

「大体、綾瀬と愛甲って誰だし」

「い、一緒の大学で抗議を受けている女性だ」

「葉山君、なんでそんな女性をハチ君に紹介しているのかな」

「どうして私達以外の女性を八幡に近づけているの。ウケないよ」

「あんた一回、思いっきり殴って良いよな」

 

川崎さんはそう言うと俺の前で拳を握りしめていた。怖い、肉体的に負けるとは思ってないが川崎さんの身に纏っている雰囲気で、とても俺には太刀打ちできる相手ではないと感じる。

 

「ひ、久しぶりに集まったんだ、良かったら今から皆でファミレスに行かないか。もちろん奢るよ」

「あーし、お腹空いてないし。それより質問に答えるし」

 

やはり無理か、彼女達はいまだに俺のことを汚物でも見るような眼で見降ろしている。

 

「葉山君、八幡君をどうするつもりだったのかな。なんでお金を出してあげてまで、そんなところに連れて行こうとしているのかな」

「うちにも教えてほしいな、どうしてお金を出して連れて行くのかを」

「そんな考えが起こらないように、いろはちゃんが言ったとおり潰そっか」

「そうだね。いろはちゃんとハルさんの言う通り、皆で潰しちゃった方が良いよね」

 

仲町さんも相模さんも目が怖い。陽乃さんなんて滅茶苦茶な事を提案してくるし、城廻先輩も二人の提案に乗って恐ろしいことを言っている。

 

「ま、待ってくれ。比企谷は皆を忘れられないと泣いていたんだ。それで寂しさを少しでも紛らわせてほしかったんだ」

「それなら私達を呼べば良かったのではないかしら、あなたなら私の実家の電話番号やここにいる何人かの携帯番号を知っているわよね」

「..それだと連絡先を知らない人に恨まれるから」

「だからって全く関係のない女を紹介したり、お金を出してまで抱かせようなんて...ウケないよ」

 

俺が何を言っても彼女達には通じないだろう、何とかここから逃げ出さないと本当にこの11人に潰されかねない。まだ童貞でそんなのは嫌だ!!なんとかならないのか。だが今は全方位囲まれていてとても逃げ出せる雰囲気ではなかった。

もう比企谷と遊びに行くのは諦めるしかないのか..

 

...比企谷、すまん。

 

「..今は俺を責めるより比企谷の相手を考えた方が良いんじゃないかな」

「どういうことだし、ヒキオの相手って」

「比企谷は3週間以上我慢しているんだ。そんな濃厚のだと一発で孕むんじゃないかな」

「「「...!?」」」

「一発で八幡の子を....ウケるし//」

「かおりは何を言ってくるのかな、私が最初だよね」

「うちが最初で良いよね!!」

「はぁ!?あんたら何言ってるんだよ。ワタシが最初だから」

「ハイハイハイ、私は今日危険日だから私が一番最初だよ」

「姉さんは何を言っているのかしら、私が八幡の最初を貰うわ」

「ゆきのんの身体だと満足しないよ。ここはおっぱいの大きさ順だよね」

「結衣先輩何言ってるんですか、先輩は年下好きですから私が一番です」

「ヒキオの最初はあーしが貰うから」

「私がハチ君の童貞を貰うよ」

「今日のために下着と精力剤を用意してきたから私が最初だよ」

 

海老名さんはそう言うと、いきなり服を脱ぎだしていた。他の女性も俺の存在を無視していきなり服を脱ぎ始めている。全員凄い下着を着けているんだが...

 

「隼人、何見てんの早く帰りなよ」

「あなたはお金を使って欲望を発散させてくればいいのよ」

「葉山君は早く出てってヒッキーの分もお金使ってくれば」

「葉山先輩はビッチと遊んできてください」

「あ、ああ。お、俺はこのまま失礼するよ」

 

助かった。俺が逃げるように部屋を出て行こうとすると、お風呂の扉が開いて比企谷が出てきていた。

 

「あれ?葉山どうしたんだよ」

「..あ、ああ、今日は帰らせてもらうよ」

「はぁ!?ソープランドに連れてってくれるんだろ!!」

 

比企谷は腰にタオルを巻いてバスルームから玄関が見える位置まで出て来ていた。比企谷は気づいていないようだが、彼の後ろには下着姿の女性が並んでいる。

俺の視線と怯えで何かが後ろにあるのに気づいたのだろう、比企谷は息を飲んで喉を鳴らしていた。そしてゆっくりと振り返っていく。

比企谷が後ろを振り返ると驚きに身体が震えていて、腰に巻いたバスタオルが取れ床に落ちていき俺に尻をみせていた。

 

「きゃ//先輩の象さんが一気に天井に反り返りましたよ//」

「八幡が私の身体で反応してくれたようね//」

「ゆきのん、あたしの身体だよ//」

「八幡君、お姉さんの身体が良いんだよね//」

「ヒキオ//すぐ反応してるし//」

「八幡君の大きいね//かおり」

「それある//あれで既成事実を//」

「あれがワタシを孕ませてくれるんだ//」

「BLも良いけど、やっぱり自分で試さないと//」

「ハチ君のアレがほしいな//」

「あれでうちの中を一杯に//」

「な、なんでここに居るんだよ、しかもそんな格好で//」

 

比企谷は裸のまま、玄関の方に後ずさりしてきたがそれより早く、陽乃さんと雪ノ下さんに腕を掴まれていた。

俺はそれを確認すると、玄関の扉をゆっくり閉めて行く。

 

「は、葉山!?」

「すまん、..俺は一人で遊んでくるよ」

「ま、まて!!俺もここから連れ出して」

「私達が貴方に一杯ご奉仕してあげるわ//」

「うん、ヒッキーが変なお店に行かなくても良いように11人で相手するよ//」

「時間制限、回数制限無しですよ、先輩//」

「葉山!?た、助けて!!あぁぁあぁぁ!!」

 

比企谷は皆に抱きつかれて悲鳴が聞こえてきたが、俺は静かに扉を閉めていた。

 

「尻を撫でるな//み、耳を舐めるな//そ、そこは//..あ、ああぁぁ//」

 

...さあ、行くか。比企谷の分が余ったんだ、店を2軒梯子するのも良いかもな。...比企谷が羨ましすぎる。比企谷よりモテてた筈なのに何で俺にはあそこまで想ってくれる女性が居ないんだよ。

俺はその夜、独りで遊びに行き時間延長してお店の女の子に欲望をぶちまけていた。

 

 

明けた月曜日

 

「...葉山」

「比企谷か、おはy....」

 

比企谷は目にクマを作っていたが大学に来ていた。その周りには顔がツヤツヤしている11人の女性を引きつれている。

皆は満足げにお腹をさすったりしているが、まさか全員が妊娠ってことないよな…

 

そして大学で比企谷の彼女は11人いると知らしめ、比企谷を気に入っていた女性達に手を引かせていた。

 

それ以来、俺は比企谷の部屋には遊びに行けなくなった。

毎日のように誰かが訪問しており、夜な夜な嬌声が聞こえてきていたから…

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

「....//」

 

いろはちゃんが比企谷さんのパンツに顔を埋めているって//本当にやりそう...いろはちゃん比企谷さんのこと好きすぎだよね。以前、比企谷さんが私を誉めながら頭を撫でてくれた時、いろはちゃんは滅茶苦茶不機嫌になっちゃったもん。

比企谷さんにまた頭を撫でられたいな//凄く気持ちよかったけど、いろはちゃんが止めさせてきたので、ちょっとしか撫でて貰えなかったからなぁ。

 

男性って溜まっちゃうとそんなにすぐ反応しちゃうのかな、ちょっと見てみたいな//

いま一人だから比企谷さん来てくれないかな、頭を撫でてもらって抱きつけば反応がみれるのに//..って、また変な事を考えちゃってる//..い、今は押さえないと。

 

この話も酷い、葉山さんのあそこを潰すって書いてるよ//

話の中で由比ヶ浜さんが雪ノ下さんを軽侮してるよね、確かに雪ノ下さんの胸は私より小さいけど、比企谷さんは大きい方が良いのかな。私もそんなに大きくないから、比企谷さんを満足させれないのかな...って、また私おかしいこと考えている。べ、別に比企谷さんの事は優しいし、頭を撫でてくれたときは嬉しかったけど、す、好きとかそんな感情ないし//

 

でも出てくる女性は奉仕部関係の人が多い、これの持ち主って奉仕部の誰かなのかな。でも比企谷さんが自分でこんな内容を書くとは思えないし、雪ノ下さんも由比ヶ浜さんも考えにくい。

奉仕部に出入りしている人が、書いたと考えられるけど、この内容から女性じゃないよね。葉山さんでも無いだろうし男性だと誰なんだろ。

 

そう考えながら、私は次のファイルをダブルクリックしていた。

 




この後、R18の方に一つ載せる予定です。


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「貞操逆転」

最初に断っておきます。
R18の方で貞操逆転を書かれている方がいますが、
そちらの設定を真似させてもらっています。



はぁ、SMのラノベを読んで、一人エッチのこと考えたからちょっと身体が熱くなってきた。

海老名さんで書いてたけど本人は書かないよね。BL好きって聞いてるから、そう言うのを自分でも書いたりするんだろうけど、さっきのはBLとは違うし。

 

まあいいや、じゃあ今度はこっちを読んでみようかな。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「いい匂い」

「あーし、これだけでイケるし」

「やっぱりヒキタニ君だよね」

「うち、もう不味いよ」

「もうちょっと寄りな...クンクン、あぁ..今日の夜は捗るね//」

 

なんだか外野がうるさい。匂いとか何を言っているんだ?俺が重い瞼を開けると顔を赤くしている由比ヶ浜と目が合った。

 

「ご、ごめん!!ヒッキー//」

「..何してんだ?」

「ううん//よく寝てるなって思って...ごめんね」

「いや、なんで謝るんだよ。起こしてくれたんだろ」

「..う、うん//もう放課後だからさ。皆で起こしてたんだよ」

 

由比ヶ浜がそう言ったので回りを見渡すと三浦、海老名、相模、川崎が顔を赤くして俺の回りに立っていた。

 

「すまん、皆で起こそうとしてくれてたのか」

「そ、そうだし//」

「ヒキタニ君が起きないから心配だったんだよ//」

「う、うん//うちも心配だったから」

「じ、じゃあもう大丈夫だな//あ、あたしたちは帰ろっか」

「うんヒッキー。今日はゆきのんに休むって伝えておいて//」

 

皆がそう言うと慌ただしく鞄を用意し急ぎ足で教室を出ていった。

なんだったんだ?皆して顔を真っ赤にしていたが、風邪にでも掛かったのか?この7月の暑い時期に皆で掛かるとは思えないが。

そういえば何故か全員内股でソワソワしていたがトイレでも我慢していたのだろうか。

 

いくら考えてもしようがないので、俺も机の上に出していた教科書をしまい、奉仕部へと足を運んだ。

暑いな、首もとに手を当てると襟がきっちり絞まっている、なんでシャツの第一ボタンまで閉めてんだよ。俺はシャツのボタンを外しながら廊下を歩いていたが、なんだか女子生徒が俺を見ている気がするな。

いや、勘違いしては駄目だ。俺の後ろにイケメンリア充が居るのだろう、俺は女子生徒の方を見ないようにして部室へと向かっていった。

 

 

side雪乃

 

「ウス」

 

何時もの気だるげな挨拶をしながら比企谷君が部室に入って来たけれど、私は思わず見いってしまった。

シャツの第二ボタンまで外し襟元を大きく開いている。でも彼は私の視線など気付かず何時もの席に座った。私の方からは彼の鎖骨が見えていてブラの肩紐も少し覗いているのだけれど//

 

「ひ、ひきぎゃや君こんにちは//」

 

普通に挨拶したつもりだったけど、思わず噛んでしまったわ。でも比企谷君は気にしていないのか何も言ってこないわね。

私は何度も比企谷君の鎖骨を見ていたけれど、比企谷君と目が合うと反らしてしまう、でもどうしても何度も見てしまうわ。

このままでは私の理性が飛んでしまうかも知れない。ざ、残念だけれど一応指摘はしておいた方がいいのかしら。

 

「ね、ねえ比企谷君。ど、どうしてシャツのボタンを外しているのかしら//」

「なんでか知らんが一番上まで止めてたんだよ、暑くて堪らん」

「そ、そうなの?あなたがよければ私は良いのだけれど//」

 

やったわ、比企谷君は隠す気ごないようね。これでいくらでも見てても良いのよね。

凄く艶かしいわ、汗で鎖骨が輝いているのだけれど、舐め回して私の唾液でもっと輝かせたいわね。

 

「そういえば由比ヶ浜が今日は休むと言っていたぞ」

「ではあなたも帰るのかしら..」

 

どうしてこんな日に由比ヶ浜さんは来ないのよ、比企谷君は女子と二人きりになる時は何時も帰ってしまうから、もう比企谷君の鎖骨を見れなくなってしまうわ。

 

「帰っても良いのか?何時もみたいに罵詈雑言を言われたくないから居るつもりだが」

「..い、いいえ。あなたが居てくれた方が助かるわ、依頼が来るかも知れないから」

 

帰らないのね、でも罵詈雑言を言われたくない?今の話だと私が比企谷君に対して言っているってことよね。比企谷君が何を言っているのか分からない。

私が考えていると比企谷君は不思議そうな顔をして自分の胸に手を当てだした。

 

「ファ!?」

「ど、どうしたの?比企谷君」

「い、いや何でもない...ちょっとトイレに行ってくる」

「..ええ」

 

比企谷君が出ていった後、私はまた考えていた。どうも比企谷君との会話が噛み合ってないような気がする。

彼は胸に手を当てた後、奇声を上げたけれど、多分男性用ブラを確認していたはず。ずれていたのかしら。

 

私が考えている間に比企谷君が戻って来たけれど、顔が青いわね。なんだか目が何時もより淀んでいるように見えるのだけれど。

彼は椅子に座ったけれど、また鎖骨が見えている//

でも先程まで見えていたブラの肩紐が今は見えない。ってことは外してきたの!?ポケットが膨らんでいて、少し飛び出しているのが見えているのだけれど、あれはブラの肩紐に違いないわ。

 

ま、不味いわ。もう暴走してしまいそうよ、でもこれは誘っているのよね。女の前で肌を出してノーブラで居るなんて、襲って良いのよね!?

比企谷君は今日が排精日(はいせいび)なのね。だから私を誘ってくれているのよ、でも小町さんの情報では一週間前だったはすだけれど。

男性の排精は一月に一回のはず、計算が合わない。小町さんが間違えていたのかしら。

 

お父さん、お母さん。今日私は女になります。そして一月後の比企谷君の誕生日に入籍して比企谷雪乃として添い遂げるわ。

子供は何人できるかしら、一月一回の夜の営みには私の知識を総動員して比企谷君を満足させてあげる。

ふふ楽しいみだわ。私と比企谷君の子供、想像するだけで潤うわ、ああ早く妊娠させてもらわないと。

 

「...雪ノ下。その..セクハラとか言わないでくれよ。あ、脚を閉じてくれないか//」

「ご、ご免なさい!!パンティなんて見せてしまって通報しないで!!」

「な、何言ってんだよ普通逆だろ。何時もは俺が通報されそうなのに」

 

思わず想像しすぎて気が緩んでいたようね。でも比企谷君が通報しようとしない?私が比企谷君を通報!?何を言っているのか分からない。

今までの比企谷君とは違うのかしら、しかも顔を赤くして照れているけど、脚に視線を感じるわ。

...これは試す必要があるわね。

 

私が足を組むと比企谷君の視線を感じる//これはイケるわ。少し時間をおいて逆に脚を組み直す時もわざと少し開くと比企谷君は顔を真っ赤にしているけれど、脚に視線が突き刺さってくる//

あぁ、今私は視姦されているんだわ。こんな経験初めてよ//比企谷君が私を性的な眼で見てくれるなんて//

もう我慢が出来ない、今日は襲うしかないわね。

でも今からここで襲うと逃げられるかも知れない。この間、由比ヶ浜さんと一緒に家に誘った時は断られたけれど、今日は行けそうな気がする。

 

「あ、あのこの間お願いした私の部屋の模様替え、今日お願いできないかしら」

「そんなことお願いされてたか?まあ良いんだが俺一人で良いのか。雪ノ下って一人暮らしだろ。女性の家に男を上げるのは不味くないか」

 

この間のこと覚えてないのかしら。しかも家に上げるのが不味いってそれは男性の台詞よ。でもチャンスよ、拒否されてないわ。

 

「大丈夫よ。では時間が掛かるから部活は終わりにして行きましょうか」

 

比企谷君が大丈夫ではないかも知れないけれど、私が責任を取れば問題ないわ。

 

今、私の家に向かっているけれど、まともに会話ができない。私はこの後のことを考えてしまうと、身体が火照って比企谷君の顔がまともに見れないわ。

 

「なあ雪ノ下、悩んでいるなら日を改めた方が良くないか」

「だ、駄目よ。一月後なんて待てないわ」

「いや、別に一月後でなくても良いんだが」

「..今日は来てくれないの」

「俺は良いんだが、本当に行っても良いのか」

「ええ、比企谷君に部屋の模様替えをお願いしたいから、来てほしいのよ」

「だが、ずっと俯いてて何か言ってただろ、俺を誘ったのを後悔しているのかと思ったんだよ」

「い、いいえ。部屋の配置をどうしようか考えていたのよ」

「じゃあ、行って良いんだな」

「ええ」

 

良かった、比企谷君が来てくれる。でも何時逃げられるか分からないわ。ここで拒否されるか試してみようかしら。

私は比企谷君の空いている左手の甲に態と自分の右手の甲が当たるようにしてみた。

 

「わ、悪い//」

「い、いいえ。こちらこそごめんなさい」

 

比企谷君の顔が赤くなっていたけど、別に逃げるそぶりは見せない。もうちょっと触れてみようかしら。

 

今度は袖を掴んでみると比企谷君は驚いていたけど、私の手を振り払ってくることはなかった。

親指と人差し指で袖を掴んでいたので他の指を伸ばし比企谷君の手に触れるようにすると、比企谷君は顔を背けてたけど拒絶されることはなかった。

 

ニギッ

 

暫くすると比企谷君は私の延ばしていた指を握ってくれた。そして今は手を持ち変えて私の手を握ってくれている。

比企谷君が手を握ってくれた//もうこれはそう言うことなのね//父さん、母さん今日私は比企谷君を抱いて女になります。

 

私達は手を繋ぎながら私のマンションにまで歩いて行った。二人ともずっと言葉を交わすことは無かったけれど、私は天にも昇る思いで道端でも比企谷君を襲いかかりそうなほど劣情を催していた。

 

もう我慢できない。私はドアを開け靴を脱ぐとすぐに比企谷君を寝室へと導いて、比企谷君に抱きつきベッドに押し倒していた。

 

「どうしたんだよ//お、おい。どいてくれないか//」

「駄目よ、もう我慢できないの」

 

私はそう言うと比企谷君の唇に自分の唇を合わせていた。あぁ今口づけしているのね。でも比企谷君は抵抗せず私とのキスを受け入れてくれている。

舌を出していくと、比企谷君もゆっくり私と同じように舌を出してきてお互いの咥内で絡ませあっていた。

 

私は比企谷君に馬乗りになり、キスしながら比企谷君の服のボタンを外し脱がしていくと、比企谷君は顔を背けて唇を放してきた。

 

「ゆ、雪ノ下。これ以上は不味いから」

「大丈夫よ、私に全て任せて頂戴。八幡君大好きよ」

「ゆ、雪乃。俺も好きだ。だがこれ以上は」

 

八幡君が私の事を好きって言ってくれた//もう止まれないわ、私はまた唇を合わせ八幡君の言葉を遮り服を脱がせていった後、八幡君の胸に舌を這わせていた。

 

「ゆ、雪乃//それ以上は不味いから//」

 

八幡君はそう言いながらも私を退かそうともせず受け入れてくれている。私は足の方にズレてベルトを外しズボンを脱がせようとすると八幡君は脱がせやすいように腰を浮かしてくれていた。

ふふ//八幡君も期待しているのね。これから私の身体で満足させてあげるわ。

あら?男性のここってこんなに大きいのかしら、皮も被ってないし以前本で見た時と違う気がするけど、多分人それぞれなのよね。女性のバストも大きさが異なるのだから...

八幡君は私にされるがままだったけれど、期待しているのか顔を真っ赤にしながらも私のことを受け入れてくれ、私は女になった。

 

何だか私の知っている性行為では無かった気がする。私が知っている性行為は女性が男性の上で腰を振ることしか知らない。本に書いてある知識しか知らないけれど、八幡君は凄く積極的で下から私の胸を揉んだりお尻に手を回して私を突き上げてきていた。男性が動くのは聞いたことが無いのだけれど。

 

「雪乃、また良いだろ」

 

そういうと八幡君は私に覆いかぶさってきてキスしながら胸を揉んでくる。

え!?に、2回目!?男性って一回イッたら終わりではないの!?でも嬉しいわ。いま八幡君は私の身体を求めてくれている。

な、何これ!?八幡君は私が仰向けに寝ているところを求めて来ていた。こんなやり方知らないし聞いたこともない。でも私は襲ってくる快楽から逃げられず、八幡君のなすがままとなっていた。

八幡君が私を求めてくれて嬉しいけれど、こんなの耐えられない。八幡君が私と一緒に果てた後、足腰が言うことをきかない私は後ろから腰を掴まれていた。

 

連続3回なんて信じられないわ。しかも先ほどとはまた違う体制を求められ戸惑いながらも受け入れるしかなかった。私は悦楽の波に狂ったように悶えていたけど、八幡君の要求は底知れず最後には私の意識はこぼれ落ちて行った...

 

...

..

.

 

『おはよう雪乃さん。朝早くどうしたのかしら』

「母さんおはよう、ちょっと聞きたいのだけれど今、時間は良いかしら」

『何?改まって』

「こんなこと朝から聞くのはなんだけれど、そ、その男性って‥エッチで3回も出来るのかしら」

『何を言っているの、男性は一月に1回よ』

「..やはりそうよね。昨日の夜、初めて抱いたのだけれど...いいえ抱かれたといった方がいいわ、3回も抱かれたのよ。そして彼は今、寝ているけれど、またシーツ越しでも分かるぐらい大きくしているのよ」

『そんなことあり得ないわ、今まで聞いたことないもの』

「私も聞いたことないけど、でも確かなの。3回連続でしかも八幡君が激しく動いて私が気を失ってしまうほどだったの」

『...男性が激しく動いた!?信じられないけど、本当なら私も確認したいわ。今からそちらに行くわね』

「ま、待って。かあ...」ガチャッ プープープー

 

母さんがくるなんて、どうしようかしら。八幡君は未だに寝ているけれど、やはり大きくしているわね。私の見間違いではないわ。でも母さんの言う通り、私の身体で経験したことだけれど、今だに信じられない。あんなに性行為が良いものだったなんて思いもよらなかった。

 

私の女としてのプライドはズタズタに引き裂かれた、何度か優位に立とうとしたけれど八幡君から与えられる悦楽には敵わなかった。

でも今はそんなことはどうでも良くなっている。八幡君に抱かれ組み敷かれて、逃れることが出来ない快楽を与え続けられるうちに、八幡君の虜になってしまったのだから。

 

早く起きてくれないかしら。今も大きくしているのだから、またしてもらえるわよね。私から襲おうかしら、でも八幡君に呆れられたくないし母さんももうすぐ来てしまうから我慢しないと...

 

 

side八幡

 

雪乃が俺の体を揺すって声をかけてきている。そういえば昨日はあのまま泊まっていったんだな。俺が起きると雪乃と雪ノ下さん、そして母親だろう、ママのんがベッドの横に立っていた。

俺は飛び起きるとベッドの上で土下座していた。素っ裸で土下座するなんて初めてだが流石に雪乃との事後でシーツにも行為の後が残っているので言い訳何て出来ない。

 

「す、すみません!!娘さんを傷物にしてしまいました!!でも俺はいい加減な気持ちで雪乃さんを抱いたわけではありません。雪乃さんの事を愛しています、責任を取らさせてください!!」

「...八幡さん、お話ししていいですか」

「は、はい」

「質問には全て正直に答えてくださいね」

「はい...」

「...あなた、何度イッたのかしら」

「はい!?」

 

はぁ!?な、なんてこといきなり聞いてくるんだよ。だが質問には正直に答えろって言われたんだ。...引かれないよな、言うしかないのか。

 

「さ、3回です」

「「ッ!?」」

 

ママのんと陽乃さんが驚いている、その隣で雪乃が誇らしくしているんだが、恥ずかしくないのか。

 

「3回も...」

「...その娘さんの体は素晴らしくて自分を止めれませんでした。ただ途中、雪乃さんが眠ってしまったのが残念で」

「もしかして、もっとしたかったと」

「...はい」

「雪乃、男性に恥をかかせましたね」

「八幡君、ご免なさい!!」

「いえ雪乃さんは悪くないです。俺が理性を失って雪乃さんの事を考えず、自分の欲望のまま求めてしまっただけですから。だから雪乃も謝らないでくれ」

「でも女なのに男性の性欲を受けきれなかったのは恥ずべきことだわ」

「そうだよ雪乃ちゃん。数分のことだから雪乃ちゃんが頑張らないと」

「...いいえ、最初からだと2時間以上だったわ」

「「にっ、2時間!?」」

「最初、私が襲った時は本に書いてあった通りだったけれど、途中からは八幡君に突き上げられて凄く気持ちよかったの」

「「突き上げられた!?」」

「ええ、私と一緒に果てたのだけれど、休まずに仰向けになっている私の全身に手と舌を這わせられ、全身をくまなく責められたわ。股間に顔を埋め舐め責められ、私にも八幡君のを舐めさせてきたわ」

「舐め責められた!?」

「舐めさせられた!?」

「暫くお互いを責めあった後、二回目はこういった体制でしてきたのよ」

 

雪乃はそう言うと俺の隣でベッドの上に寝転び足を広げ大きいパンさんのぬいぐるみを俺に見立てて再現していた。

貴女今、パンティ丸見えですよそんな格好、止めなさい。

ママのんと陽乃さんは信じられないのか呆然と雪乃の格好をみて生唾を飲み込んでいる。

 

「ゆ、雪乃。男性はそんなことしないわよ」

「信じて貰えなくてもいいわ、私も夢の中にいるような気分だったのだから。この格好で八幡君は腰を私に打ちつけてくれたの。

この時点で何度も達していたけれど、私に八幡君の首に腕を回させたかとおもうと、繋がったまま身体を起こしてきてキスしたり胸に顔を埋め舐め責められたわ」

「「…」」ゴクッ

 

そう言うと雪乃は身体を起こしてパンさんに跨がりながら胸に顔を押し付けていた。そんなの良いから実演しないで!!

 

「また横にされたかと思ったら私の足首を持ち上げV字に広げられて責められたのよ。その後も八幡君の肩に私の脚を載せて悦楽の嵐から逃れられないように八幡君は私の太股を持って腰を打ちつけてきて、私を離してくれなかったわ」

「「…」」ゴクッ

 

だから雪乃はパンティ丸見えだから実演しないで!!ママのん達も雪乃を見て生唾を飲まないで!!

 

「三回目なんて足腰がガクガクで、這うことしか出来なかった私は腰を掴まれ四つん這いの所を後ろから責められたのよ。その後も色々な格好をさせられたけれど、もう私は意識が混沌としてて何度も何度もイかされたことだけしか記憶にないわ。

そんな私を八幡君は喜色の笑みを浮かべながら責め続けて最後はイき狂っていたと思うの」

「何度も何度も//」ソワソワ

「イき狂った//」ソワソワ

 

俺達の情事を事細かく説明しないで!!ママのんも陽乃さんも顔を赤くして俺のほうを見てくるんですけど。

普段の清楚な雪乃からは想像出来ない表情だったからな、涙と涎を垂らしながら快楽に身を任せていた時、もっと乱れた表情を見たくて攻めまくったからな。

そういえば体位の事は知らないのか?色々試していたが戸惑っていたな、流石に正常位を知らないってことは無いと思ったのだが。

 

「ですが雪乃では満足できず今日の朝も大きくしていたと言うことですよね。私達が来たときは治まっていたようですけど」

「..それは何時ものことなので。雪乃さんの身体は俺にはもったいないぐらい魅力的でした」

「何時もとは毎朝?八幡さんは月に何回出せるの」

 

何でこんな質問ばかりなんだよ、雪乃の事をどう考えているのか聞かないのか、家のこととか俺の事とかあるだろ...聞かれても誇って答えれることは何もないが。

 

「...数えたことはないですが俺は1日で5回したことはあります、毎日は無理でしょうけど。ただ1日3回は出来るので一月なら90回以上は出来ると思いますが」

「「す、すごい!!」」

「…八幡君、五回って私が初めてじゃないの…」

「…じ、自慰行為の回数だ。女性を抱いたのは雪乃が初めてだ」

 

うう、恥ずかしい。雪乃が悲しそうな顔をしてたから答えてしまった。

何でこんな質問ばかりなんだよ。俺も女性相手に何を答えてるんだよ。

 

「そんな回数を自分でしていたなんて、なんてもったいないことを!?八幡さん、男性の平均回数をご存知ですか」

「詳しくは知りませんが、高校生なら自分と同じぐらいと思いますけど」

「いいえ、男性は一月に1回の排精日だけですよ」

「はい!?そもそも排精日ってなんですか。女性の排卵日とは違うんですよね」

「排卵日とは何かしら、でも排精日を知らないなんて、...八幡さんはどこからいらしたの?」

 

本当に俺はどこに来たんだ?異世界にでも来ているのか。

 

今、色々教えてくれているが俺、裸なんでパンツだけでも履かせてもらえないでしょうか...

 

だが本当に俺は異世界に来てしまったらしい。こちらは男女の割合が女10人に対して男が1人しかいなく、男は重婚が出来るそうだ。

俺が昨日、ブラを着けていたのもこちらの男性では普通の事らしい。だが俺は着けるつもりはない、どうしても抵抗がある。付けるぐらいならいくらでも見てくれと思ってしまうが、さすがに襲われるとなると何らかの対応を考えないといけないのか。

ただ男性の性欲は一月に1回しかなく、しかも性行為に対しても消極的で下に寝ているだけなので女性が跨るだけらしい。

逆に女性には排卵日がなく、男性のことを考え出すと、性欲が高まり妊娠の可能性も上がると言うことだった。

女性は性欲が高まると男を襲う人もいるのだが、襲っても排精日でないと勃起もしないため未遂に終わることが多いそうだ。

 

「ではもしかして雪乃さんはもう身ごもって...」

「それは分からないけれど、毎日八幡君に抱いてもらえれば、来年には母さんに孫を抱かせてあげれるわ」

「私はまだ現役よ。でもまだ信じられませんの、やはりここは自分の体で八幡さんを味わって見ないことには//」ヌギヌギ

 

そう言いながらママのんは着ている洋服のボタンを外し出していた。

 

「か、母さん!!八幡君は私の夫になる人なのよ!!大体母さんには父さんが居るでしょ!!」

「八幡さんの言うことが本当か試さないと分からないでしょ」ヌギヌギ

「雪乃ちゃん、この話が本当なら八幡くんの相手大変だよ。雪乃ちゃん1人で満足できず何処かの知らない女に奪われるかもね、そんなのは許せないから私も結婚するよ//」ヌギヌギ

「ね、姉さんも!?」

 

陽乃さんはそういうと、ワンピースだったのですぐに下着姿になっていた。二人の下着は俺の視覚にもろにヒットしていた。

な、何でママのんは胸の下を支えてるだけのオープンブラで大事な部分は何も無いんだよ、モロミエだよ//しかもパンティは股割れだよ//そんなのブラジャーもパンティも意味ないだろ//

陽乃さんのは透け透けのベビードールだよ//ブラは付けておらず、パンティを履いてはいるがそっちも薄いレースなんでモロミエなんですけど//

 

「え、エロい//」

「母さんも姉さんもそんなエッチな下着を着けてきて!!二人とも見えてるじゃない!!何を考えているのよ!!」

「お、大きい!!雪乃ちゃん、瞬く間に反応したよ//」

「す、凄い…」

 

陽乃さんとママのんはそういって俺の股間を指差していた。..しょうがないだろ!!こっちではよく分からないが、俺の知っている男子高校生にそんな下着見せたら襲われても文句言えないぞ。

 

 

「...雪乃、あなた身体は大丈夫だったの?」

「母さんの質問の意図が分からないのだけれど」

「..ありえないほど長くて太いのよ//…でも八幡さん、皮から出ているけど痛くないの?」

「俺のはこれが普通ですから」

「男性は皮を剥くことが出来ず無理に剥こうとすると泣き出しその後、出来なくなってしまうのに。

あんなにも段差があるなんて素晴らしいわ//どれほどの快感がもたらされるのかしら//」

 

ママのんは俺の股間を見て生唾を飲み込んでいる。‥そんなに真剣な眼差しで見られると恥ずかしいんですけど//

だが俺のって平均だよね?…平均がどれぐらいか知らないけど。

 

ママのんの話ではこちらの男性は平常時から少し大きく堅くなるだけで常に皮を被っていると言うことだった。

 

「こ、こんな凶悪な物で掻き回されると思うと疼いてしまうわ//もう我慢できません。八幡さん、私は今まで男性から求められたことはないの、私の身体を自由にしてもらって構いませんよ」

「八幡君、私も狂うほど求めてほしいな。でも初めてだから最初は手加減してね//」

「ほら雪乃もアピールしないと八幡さんに愛想付かされますよ、もしそうなったら貴女は一生、昨日の悦楽を味わえなくなりますよ」

「..そ、そうね。私1人だとまた八幡君を満たせないかも知れないけど、三人なら..」ヌギヌギ

「まっ、待って。いくらなんでも親子丼と姉妹丼は不味いから!!」

 

ま、不味い。このままでは本当に3人を抱いてしまいそうだ。...いや抱けるなら抱きたいよ。ただ幾らこちらの世界でも結婚しているママのんは不味いだろう。

 

「あら親子丼と姉妹丼、こちらでは尊敬の言葉として使われていますよ」

 

そう言いながらママのんはベッドの上を這ってきて俺はベッドの端まで追い詰められていた。ママのんは顔を上気させながら妖艶な笑みを浮かべている、その横にはいつの間にか雪乃と陽乃さんも同じ表情をして近寄ってきていた。

 

「親子3人、裸の付き合いをしましょ」

「うん、お母さんと雪乃ちゃんと私で分け合わないとね」

「八幡君が満足するまで抱いて貰わないと」

「い、いくら何でも不味いから止めてくれ!!は、話せばわかるから。だから..ア、アァァァァ!!」

 

...俺はこの日、自己最高記録を更新していた。

 

 

 

そして時がたち…

 

「あなた、雪八の子供が産まれたわよ」

「ああ、今日は会社を休んだから何時でも行けるぞ」

「私達の初孫ですもの、後で見に行きましょう」

「...まさか三十過ぎで孫が出来るなんてな」

 

そう、あの後、雪乃達はすぐに身ごもった。俺の子供達は男女の割合は同じで、しかも男の子は俺と同じで性欲が高かったため、中学生になるとハーレムを作り出していた。

 

俺の嫁も今は100人を超えているが子供達が一緒の学校だと女子を分け合うことになるので、バラバラの学校に通うようにしている。

 

「千葉市や近辺の中学校はあなたが高校の時に作った子供達で全てハーレムを作ったわ。孫達には千葉県や関東を、曾孫達には全国でハーレムを作ってもらって、ゆくゆくは全世界を比企谷性にしてもらわないと」

「...俺が何かしなくてもそうなるんだよな」

「この流れは止めれないわ、あなたの遺伝子を世界が求めているのだから」

 

俺が学校の女子を何人も孕ませるのに大して時間は掛からなかった。

雪乃が居る時は何とか抑えていた女性達も、雪乃が妊娠の検診で居ないときに俺は奉仕部で襲われていた。

まさか結衣、優美子、姫菜、沙希、南、いろは、そして先生が一緒にいて襲われるとは。

全員で一斉に襲ってくるって思わないよね、おかしいよね。だいたい何で先生も襲ってきてるの!?

 

俺がハーレムを作り出すと世界中の金持ちが俺の噂を何処からか聞きつけ、男の子がほしいと娘や孫を連れてきたり、中には自分を抱いてくれと大金を積んで頭まで下げにきていた。

俺も雪乃達も最初は渋って断っていたが、俺が攫われそうになったことがあり、それならばと渋々了承していた。

 

ただ連れて来られた女性達は家の都合で男の子を身ごもるためとはいえ、好きでもない俺に抱かれることに嫌悪感をむき出しにしてくる女性もいたので、そう言った女性には暫く一緒に過ごしある程度仲良くなってから抱いていた。

 

ただ全ての女性が抱く前までは俺に対して恋愛感情は無かったはずだが、抱いた後は離れたくないと言い出し、誰も祖国に帰ろうとはしなかった。

抱かれた後は帰ると言っていた女性に帰らないのか聞くと泣きじゃくり、自分では満足できなかったのかと言いながらナイフを持ち出し自殺をしようとした女性もいた。

そして俺の元で暮らせるように親に金を出させ大豪邸を立ててもらい、今では国際色豊かな環境で生活を送っている。

 

だから今、食卓を囲んでいるのだが、ホテルの披露宴会場のようなところで御飯を頂いており、沢山の嫁や籍は入れていないが抱いた女性の中に男が俺一人という状況で御飯を頂いていた。

 

「ようやく今日、抱いて貰えるのね。孫を見に行った後は八幡君に一杯愛して貰わないと」

「長かったね雪乃ちゃん。私も嬉しくて凄く早起きしちゃったよ。お母さんも珍しく朝から居るのね」

「当たり前よ、離婚して八幡さんに貰ってもらってからは何時も抱いて貰っていたのに、お嫁さんが増えていき段々回数が減っていったのだから。

今日といった日をどれほど待ちわびたか分からないわ。

会社の方も世界中のお嫁さん達の実家に贔屓にしてもらえるのは嬉しいけれど、今では私の手に負えないほど大きくなってしまったわ」

「大丈夫だよ、世界中から優秀な人材が集まってくれてるんだから、お母さんも休めばいいのに」

「八幡さんが会社に来ると、その優秀な人たちがいきなりポンコツになって、八幡さんを誘惑しだして仕事どころではないのよ」

「そればかりはしょうがないわ、女性ばかりの部署で誰かさんが理性を失って種を撒きまくったのだから。

もう会社を辞めて家に居てくれればいいのだけれど」

「..それについては本当に申し訳ない」

 

俺のせいですね、てへっ。

 

俺は雪ノ下建設に就職していた。本当は働きたくなかったが、家がハーレムになっていたため専業主夫にもなれず落ち着けるところがどこにもなかった。

綾乃さんにお願いして試しに仕事をしてみると、仕事が楽しく集中できたため、そのまま雪ノ下建設に就職させてもらっていた。

 

会社に居る時が一番落ち着ける状態となっていたのだが、俺の噂が広まると雪ノ下建設には各国から選りすぐられた女性達が集まってきて、必然的に俺の部署にも配属されるようになった。

全員が魅力的で俺を毎日のように誘惑してきたため、理性が崩壊し手を出してしまっていた。

そのせいで俺の部署に配属されれば、夢のような性行為ができるという話が全世界を駆け巡り、今では雪ノ下建設は女性が就職したい会社、世界一となっている。

 

「あぁ、そろそろ退職した方が良いよな」

「八幡さん!?私のことが嫌いになったのですか!!」

「綾乃さん違いますよ。これ以上、女性を増やすと俺の身が持ちませんよ」

「そうね、八幡君は頑張ってくれているけれど、一日3人でも一月以上、待たされるのだから」

「雪乃、これ以上回数は増やせないからな」

「大丈夫だよ八幡君。私が研究している勢力増強剤が出来て今日、八幡君に試してもらう予定だから」

「そんなの飲んでも変わらないだろ」

「ううん、臨床実験で他の男性に飲んで貰ったら、排精日に3回イケるようになったそうだよ。でもエッチは今まで通りだったみたいだけど」

「姉さん、三倍なのね」

「八幡君なら9回はイケるんじゃないかな」

 

陽乃がそう言うと、周りの雰囲気が変わり嫁さん達が俺達の方に詰め寄ってきていた。

 

「八幡様、どうか私にも本日の夜伽をさせて頂きとうございます」

「先輩、私も参加します!!」

「Hi、ハチノ アイテハ ワタシネ」

「八幡、けーちゃんとワタシが入るよ」

「サキサキはちょっと前に抱かれたよね。ハチ、私が混ざるよ」

「雪乃達の次の日は私あるね。だから今日は私が混じるね」

「ヒッキー、あたしが入っても良いよね!!」

「うるさい!!今日は予定通り私達だけなの!!」

「陽乃ずるい。八幡、独占したら駄目!!」

「あーしも抱かれたいし!!」

「ま、孫を見に行くぞ!!雪乃!!陽乃!!綾乃さん!!」

「ずるい!!うちも連れてってよ!!」

「八幡!!私も連れていけ!!」

 

俺達は逃げるように屋敷を後にしていた。まだお見舞いの時間には早いようだが、どこかで時間を潰せばいいだろう。俺がそんなことを考えていると、綾乃さんが運転する車はホテルに入っていった。

 

「はっ!?どうしてこんなとこに入ってんですか!?」

「八幡さん、まだ見舞いには早いですよ、ここで時間を潰しましょう」

「そうね、早く行っても迷惑になるわね」

「うん、八幡君このジュースでも飲んで落ち着きなよ」

 

そう言えば朝食中に急いで出て来て、食後の一杯を飲んで無かったな。何時もならマックスコーヒーだが、今はこれで我慢するか。

俺は陽乃が出してきたジュースを勢いよく飲んでいた。その時の陽乃の顔を伺っていれば飲まなかっただろう、俺が飲み干すと陽乃は妖艶な笑みを浮かべていた。

 

「ふふ八幡君。精力剤を飲んじゃったね」

「..はっ!?」

「あらあら、ではすぐ部屋に入りましょう」

「一日ここに居ましょう、孫は何時でも見に行けるわ」

「私はそのつもりでしたよ」

「...あらもう元気になっているのね、でも部屋に行くまでは我慢してほしいわ」

「だ、駄目だ。今日は病院に行くぞ」

「あなた。そんなに大きくしたまま行くつもりかしら、それこそ襲われるわよ」

「そうだぞ八幡君。女医や看護師、もしかしたら患者さんにも襲われるよ」

「八幡さん、雪八の奥さんにも見られますよ。流石に子供の奥さんに見せるのは如何なものかと」

 

3人はそう言うと俺を車から連れ出し、ホテルの部屋に入っていった。

俺も精力剤で理性を失っていたのだろう、扉が閉まった瞬間に3人に襲い掛かっていた。

 

そしてこの歳で高校の時でも無理だった二桁を記録して、その後も種馬人生を過ごしていった。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「....//」

 

これも酷い内容//なんだか全てエッチなのばかりだよ。だから「没」ってフォルダに入れているのかな。

 

雪ノ下さんのお母さんが出ているけど良いの?こんなの読まれたら学校に乗り込まれるよ?

 

でも私ならどうするかな?比企谷さんには黙ってて貰って、毎日家に来て貰って愛しあうのが良いなぁ。

学校での休み時間とかも良いよね、私が休み時間のたびにお邪魔して皆にバレないように隠れながら...

って、また私は比企谷さんで厭らしいこと考えてる//ここでこれ以上考えるのは駄目、せめて家に帰ってからでないと。

 

私がそんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえて来ていた。あーぁ、お仕事かな。まだ読んでいないファイルで一つ気になるのがあるから念のためコピーしておこ。私はデスクトップにファイルを置いてdelキーを押して消しておいた。こうしておけば画面を見られても気づかれないよね。

 

「どうぞ」

「あ、あのこちらに落とし物は届いておら..そ、そのUSBは...」

「これは貴方のですか」

「ひゃ、ひゃい..な、中身を見られたのか」

「ええ、「没」って書いてあったフォルダに有った相模さん、葉山さん、え、海老名さん//後は雪ノ下さんのを読ませて貰いましたよ。

これはお返ししますがこの中身の事、伺ってもよろしいですよね」

「そ、それは」

「では今から奉仕部に行きましょうか。特に海老名さんには事細かく伝えないと」

「ま、待つのだ。止めてくれ、もう説教は嫌だ...と、とりあえず話を聞いて貰っても良いか」

 

そう言って、まずはお互い自己紹介をした後、材木座さんは話してくれた。

へぇ、奉仕部関係でラノベを書いて貰ってたんだ。いろはちゃん私も誘ってくれれば良いのに、自分だけ楽しそうなことしててずるいなぁ。

没フォルダは公開していないので私しか読んでおらず、材木座さんからは黙っていてくれとお願いされていた。

 

「材木座さんはこういったのよく書くんですか」

「左様、ラノベやアニメを見ている時「我ならこういった設定で」とかよく思考しておる」

「アニメとか好きなんですね、私もよく見ますよ。今だと「かぐや様」や「乙女ゲー」を見てますし、この前は「防振り」を見てましたから」

 

アニメの話し、私の周りでは出来る子がいないので、ちょっと嬉しいな。

 

「左様か、書記殿もアニメが好きなのであるな。我も「防振り」を見ておったし、女子が見そうなものなら「ランウェイで笑って」も見ておったぞ」

「ああ、私も見てましたよ。面白かったですよね」

「左様、ただ最初しかおっぱい...す、済まぬ」

「良いですよ、やっぱり男性はそうところ見ちゃいますよね。私も気になりますもん」

 

あれ?普段の私なら男子が少しでもエッチな話をしていると嫌悪するんだけど、今は何故かエッチな話しが嫌に思えない。ラノベのせいなのかな、海老名さんや雪ノ下さんのを読んだから//

 

「..後は異種族レビュアーズも面白いと思えたぞ」

「ああ面白かったですよね。クリムヴェール君が可愛いけど、あそこが大きi...//」

「..ここまで来たら照れることは無かろう。書記殿は今期であれば「俺指」や前期は「異種族」と「おーばーふろぉ」であるか」

「..だ、駄目なんですか!?女の子がそう言ったものを好きなのは駄目なんですか!!」

「駄目とは言っておらぬ。良いのではないか、女子でも興味はあろう」

「..そ、そうですよね//…材木座さんって女子相手でもそう言うこと話すの慣れてるんですか」

「真奈殿..3Jの真鶴真奈殿(オリキャラ)とはアニメやラノベの話をよくするのでな…後は奉仕部で鍛えられておる」

「あ、あの比企谷さんもですか」

「アヤツも我と同じ穴の狢ぞ、以前「ソウナンですか?」と言うアニメで我と盛り上がっておったのでな」

「そうなんですね」

 

あれもエッチだったよね。お尻から水を補給するって比企谷さんにされたらどうしよう//浣腸と同じだよね、我慢できるものなのかな?比企谷さんなら海老名さんのラノベみたいに我慢している私に欲情してくれるのかな//

って、また私は比企谷さんの事を考えている//これはあれだよね、比企谷さんが出ているラノベを読んでいるから出てくるだけだよね?

 

「では我はそろそろ帰還せねばならぬのだが、USBを返してもらえぬか」

「あ、あの..わ、私もラノベを書いてほしいんですけど//」

「相手は誰が良いのだ、副会長か」

「本牧さんとは何もないですよ...ひ、比企谷さんでお願いします//」

「またアヤツばかり...内容は我が考えたもので良いのであるな」

「大丈夫です、お願いします」

 

私はラノベをお願いした後、USBを材木座さんに返した。私も書いて貰えることになったけど、比企谷さんとどういった内容になるんだろう。今から楽しみだな。

って、私はなんで比企谷さんでお願いしたの!?ち、違うのよ!?全部のラノベに比企谷さんが出ているから言っただけだから深い意味はないんだから!!

...はぁ、私は誰に言い訳しているんだろ。

 

私は材木座さんが帰ってからゴミ箱に入れておいたファイルを自分のusbに入れていた。

これ、気になっていたんだよね。容量が他のラノベより大きかったので、長編だよね?

私はUSBを大事にしまって家路についた。

 



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「美醜逆転1」

久しぶりにアップしました。
美醜逆転物を幾つか読んだことが有るんですが、途中で更新が無くなっており、自分で書いてみようとこのSSを書き始めた時から、書いていたのですが、文字数が多くなりすぎUPしませんでした。
今回、何回かに分けて投稿させてもらいます。

前回の続きで藤沢佐和子が材木座のラノベを持ちかえった設定です。




私は家に着くと材木座さんのラノベを読みたいからとりあえず、部屋着に着替えてすぐにパソコンに向かっていた。

 

どんなのが書いてあるんだろう、でも容量が学校で読んだ物より多かったけど、何で没にしたんだろうか。

それも読んでみれば、分かるかな。

私はすぐにパソコンにUSBメモリを差して、テキストを開いていた。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

 

ちゅんちゅんちゅん

 

「....」

 

あれ?今、何時なんだ?時計を見ると既に8時半を指している...

..はぁ!?遅刻じゃん!!何で小町は起こしてくれないんだよ。いや、目覚ましは掛けてたんだよ、自分で止めたのも覚えている。

ただいつもはそれから小町が起こしに来てくれるので二度寝をしてたんだが。今日はどうしたんだよ、もしかして小町の体調が悪くて起きれないのか...

俺は起き上がり着替えもせずに部屋を出て、小町の部屋の扉をノックしていた。

 

「小町、居るのか」コンコンコン

 

....

 

へんじがない。 ただの しかばね のようだ。

 

..馬鹿なのか俺は。とりあえず扉を開けてみたがそこには小町の姿はなかった。先に学校に行ったのだろうか。俺は小町の部屋を出てリビングに入ると、ご飯が食卓の上に置いてある。小町が朝食を用意してくれたのだろう、調子が悪いとかではないようだな。俺は朝食を頂いて学校に行く準備をしていた。

 

天気はどうなのだろうか。雨だと面倒なんだよな、自転車で行けないし。

俺はテレビを付けたが画面に移った映像に自分の目を疑った。

天気予報図を解説している女性が酷い。はっきり言ってデブスだ。容姿が整っていないのだが、それ以前に最低限の身だしなみもしていないのではないだろうか。髪の毛はボサボサで服はヨレヨレ、鼻毛も飛び出している。

なんだよこれ。天気予報が終わったようで、スタジオに映像が切り替わったのだが、そこでも目を疑いたくなるような格好をした女性が映し出されていた。

はは、何でこんな女性がキャスターとしてテレビに出てんだよ、チャンネルを変えてみたがどの局でも女性の容姿は変わることが無かったので、俺はテレビのスイッチを切っていた。

容姿で判断するつもりはないが、最低限の身だしなみは必要だろ。最初にみたのは全国放送の局だったから、普通は気を使うと思うのだが。

一局だけキャスターの都合で急遽当てがわれたってことならまだ分かるが、何で全局なんだよ。俺はスマホを取り出し、美人と入れて検索してみたが、俺の予想通り不細工が所狭しと表示されていた。

 

はぁ、小町も両親も居ないので何も聞けない。俺は諦めて学校に向かうことにした。完全に遅刻だがそれよりも朝見た番組が頭から離れない、どうなってんだよ。

まだ夢でも見ているのだろうか。それともラノベでよくある異世界に来てしまったのか、そんなことあり得るわけがない。ただその考えを否定することも今の俺には出来なかった。

学校についてもそんなことばかり考えていたため、俺は何も気にせず教室の扉を開け中に入ってしまっていた。そう言えば今は現国で平塚先生の授業だった。

 

「お、遅れました」

「比企谷か、席に座ってくれ」

 

遅れて教室に入って行っても平塚先生は俺を確認しただけで、席につくように言ってきて制裁を食らうことは無かった。おかしいな、ファーストブリッドを食らうと思ったのだが。

 

席に着くまでに由比ヶ浜の方を見たのだが、髪の毛は黒色になっており頭のお団子も無くなっている。最初は誰か分からなかった。

ただ俺の方をチラチラ見て来たので気付けたが、目が合っても何時もみたいに微笑みかけてくれることもなく目を逸らしてくる。

 

俺は席に着くと何気なく教室内を見まわしていた。川..川何とかさん、..サキサキは頬杖を突くことなく、授業に集中しているようだが制服を改造することなく着ているようだ。

 

三浦も髪の毛が黒く化粧もほとんどしていないな。金髪で探していたので見つけるのに苦労したが美人なので目立つ。

 

海老名さんは一心不乱に何かをノートに書きこんでいるがBLでも書いているのだろうか。何かの本を何冊も積んでいるが、平塚先生も注意はしていないのだが良いのだろうか。

 

相模は俺の席より前に座っているのだが、後ろの女子から消しカスを投げられていた。後ろがコソコソ話して笑っているので気づいているようだったが、何もする気はないようだ。

 

そして俺が知っている平塚先生の授業では絶対になかったのだが、調子に乗って話している連中がいる。

平塚先生の授業でそんなことすると、生活指導室に速攻で呼ばれてたからな。ただ今騒いでいるのは本当にブスとデブばっかだな、ピアスやネックレス、ブレスレットを付けているが俺から言わせれば豚に真珠だ。装飾品に気を使う前に最低限の身だしなみを整えてほしい。

平塚先生は騒いでいる生徒に注意もせず淡々と授業を進めていた。

 

休憩中も観察していたが、葉山の周りに何時もの三バカはいたが、三浦達は一緒には居なかった。その代わりに女子生徒が何人かいたが俺には何が良いのか全然分からない容姿の女子ばかりが集っている。

しかも葉山は重そうな...いや確実に俺の倍は有るのではと思える女子を脚の上に座らせ腰に手を回し後ろから抱き着いていた。

 

「隼人君凄いっしょ。まあ、結婚してんだしぃ、夫婦仲良くてやっべーって」

「うん、隼人君の奥さんって学園一の美人だから凄いよな」

「うん、他校や大学に居るのも皆、アイドルやモデルやってる子とかっしょ、やっべーって」

「それな」

「だな」

「はは、夜が大変だよ。32人いるからね」

 

は?はぁぁぁ!?あ、あれが学園一って...32人も相手いるのかよ凄いな。しかも結婚ってもう出来るのかよ...だが今、後ろから抱いている女子のような容姿が32人なら全く羨ましくないけど...

 

「このクラスってブスが多いから嫌になるっしょ」

「総武でもこのクラスに集まっちゃってるからな」

「そうだよね。三浦さん、由比ヶ浜さん、海老名さん、相模さん、川崎さんって本当に酷いもんね」

「それな」

「だな」

 

はぁ!?デブスが何をほざいてんだよ、俺は思わず喉まで出かけた言葉を飲み込んでいた。何が起こってんだよ、由比ヶ浜の方を見ると三浦と海老名さんで集まっているが聞こえているのだろう、3人とも俯いていた。

駄目だ、あんな由比ヶ浜の悲しそうな顔を見たくない。

 

「でもJ組の雪ノ下さんが居ないだけいいよね」

「隼人君、幼馴染っしょ」

「止めてくれよ戸部。親の仕事の関係で何度かあったことが有るだけだから」

「雪ノ下さんってこの学校一のブスだよね」

「それな」

「だな」

 

駄目だ、文句を言いたいしぶん殴りたい。俺は自分が抑えられそうになかったので、逃げるように教室を出、マックスコーヒーを買ってからベストプレイスで時間を過ごして落ち着くようにしていた。また授業をさぼってしまったな。

 

何で俺はこんな気持ちを抱いてんだ?二人は部活仲間だが、それ以外の特別な感情は何もない...

..だが二人の事をあんな風に言われるとムカついてしまう。

 

だがどういうことなんだ?いくら容姿が受け入れられないと言ってもあそこまで言われる事は無いだろう。

俺が知っている世界でも容姿が受け入れられないからと言って、幾らかは有っただろうが全員が虐めを受けていた事はないハズだ。

 

その後、教室に戻ったが俺の身に何が起こっているのか考えていたため、昼も食べずにいたら何時の間にか放課になっていた。仕方ない、部活に行くか。あたりを見渡すと既に由比ヶ浜は既に居なくなっている。

そう言えば由比ヶ浜は誘ってくれなかったんだな、それもこの不思議な現象の影響か。

廊下を歩いていても騒いでいるのはデブスばかりで、俺から見て容姿の整っている女子は皆頭を俯かせて歩いていた...

 

ガラガラガラ

 

「..ウス」

「ひ、比企谷君!?ど、どうしたのかしら」

「ひっk、比企谷君。今日は何もないよ」

「ここに来たら駄目だったか」

「い、いいえ。そんなことないの、ただ珍しいと思って。何時もは何か依頼がないと来なかったでしょ」

 

雪ノ下はそう言って、紅茶を用意しだしたのだが、自分の分と由比ヶ浜の分しかコップに入れていなかった。

なにこれ?虐め?何だか涙が出そうになる。泣かないよ、男の子だもん。

 

「..俺は貰えないのか」

「ひ、比企谷君が飲んでくれるの!?」

「貰えるなら欲しいんだが」

「そ、そうなの。では入れるわ。暫く待っていて頂戴」

 

雪ノ下はそう言って紅茶を入れてくれ、俺の机の前まで持ってきてくれた。だがその手は震えており、俺の前に恐る恐る紙コップを置いていった。パンさんの湯飲みじゃないんだな。

これも不思議な現象の影響か、何時もなら冷めるまで待つのだが、雪ノ下が自分の席に戻っても不安そうに見ていたので、俺は紙コップに入っている紅茶に何度も息を吹きかけ一口頂いていた。俺にしたらまだ熱いのだが火傷しなくて良かった。

 

「上手いな、ありがとう雪ノ下」

「!?..えぇ//いつも要らないと言うから、...本当に飲んでくれたのね」

「ああ、こんな美味しい紅茶、中々飲めないだろ」

「..比企谷君、ありがとう//」

 

なぜか雪ノ下は目に涙を溜めている。この空間は何時もと変わらないから気にしていなかったが、こちらの雪ノ下と由比ヶ浜は誹謗中傷を受けているんだよな。

 

「なあ、ちょっと聞いてほしいことが有るんだが良いか」

「え、ええ。でも私達で良いのかしら」

「あたしも聞いて良いの?」

「ああ、ただもしかしたら二人を馬鹿にしているとか、からかっているとか思うかもしれないが」

「..今更よ、私達は今まで色々言われてきたわ...でも比企谷君に言わたことはないから..」

「うん、ひっk、比企谷君に言われるのはちょっと辛いかな、..はは、今更だよね...」

「由比ヶ浜。呼びにくいなら、ヒッキーで良いぞ」

「えっ、でも最初言った時に止めろって言われたよ」

「それも含めて話したいんだ」

「じゃあ、ヒッキーって呼んでも良いの」

「ああ、由比ヶ浜が呼びやすいように呼んでくれ」

「う、うん、じゃあこれからヒッキーって呼ばせてもらうね」

 

そう言うと俺は雪ノ下と由比ヶ浜が座っている前、依頼者が座るところに椅子を持っていって座った。

 

そして俺は今日の朝から感じる違和感について二人に話していた。俺にとって雪ノ下も由比ヶ浜も美少女だと伝えると二人とも俯いてしまった。

 

「比企谷君...冗談は止めてほしいわ」

「う、うん。ヒッキー、あたし達を揶揄わないでよ。...そんなこと言われると余計虚しくなっちゃうよ」

「俺にとっては二人とも美少女なんだよ。雪ノ下は容姿端麗、才色兼備、文武両道、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花って言っても良いぐらいだ」

「いい加減にして!!私にそんなこと言ってくれた人なんて今まで居ないのよ!!」

 

俺がそう言うと、雪ノ下は涙を流して俯いてしまった。その手は固く握られていて机の上で震わせている。

 

「..由比ヶ浜は天真爛漫な笑顔でちょっとアホなところも和ませてくれて、俺にも話しかけてくれる優しくて可愛い美少女なんだよ」

「アホって...でも可愛い美少女って初めて言われた//...でもねヒッキー、あたし達に気を使わなくていいよ..」

 

由比ヶ浜は自虐的な表情を浮かべていたが、瞳からはとめどなく涙が溢れていた。

 

「...もしかしたら俺は異世界、パラレルワールドから来たんじゃないかと思っている」

「それこそあり得ないわ!!比企谷君、私達を揶揄うならここから出て行って!!」

「うん、今日のヒッキーおかしいよ。何時もほとんど喋らないのに...でも喋ってくれた内容が酷いよ」

「..二人を傷つけるつもりはない。ただ俺の身に何かが起こっているのは確かなんだよ」

 

二人は俺の言った事が信じられないのだろう、その目には悲しみを帯びた表情をしている。二人のそんな表情は見たくない。俺は元居た世界の二人にも言った事がないことを話していた。

 

「..俺にとって二人の事が大事なのは容姿とかではなく、三人で此処にいる時間が好きなんだよ。三人で雪ノ下が淹れてくれた紅茶を飲みながら他愛もない話や読書をしてこの部室でのんびり時間が過ぎていくのが好きだった。

雪ノ下は完璧に見えるが方向音痴で、体力がなくパンさんと猫が好き過ぎてポンコツになったりするだろ」

「...//」

「でもいつも正しくあろうとして、自分を曲げない。欺瞞が嫌いで俺はそんな雪ノ下に憧れてた」

「あ、ありがとう//」

「由比ヶ浜は俺なんかにも何時も笑いかけてくれて分け隔てなく接してくれる、そんな由比ヶ浜が俺には眩しかったんだよ。..料理は禍々しいけどな」

「料理が禍々しいって酷いし。...でもヒッキーはあたし達のこと容姿じゃなくてちゃんと見てくれてたんだね//」

「俺が知ってるのは、この不思議な現象が起こる前、異世界でのお前たちだ。だがそれは二人も一緒だろ、今までの俺がどんな奴だったかは知らないが、今の俺にも普通に接してくれてる」

 

グワーッ!!何言っちゃってんの俺!?馬鹿なの!?は、恥ずかしい!!家に帰って布団に包まって枕に顔を埋めたい!!

ただ二人は俺を馬鹿にするどころか顔を朱色に染め、俺の方を潤んだ目で見ながら会話に答えてくれていた。

 

「比企谷君は私達にも優しかったわ。分かりにくい優しさだったけれど、それでも私は嬉しかったの。皆に何を言われても貴方が私達に態度を変えることはなかったわ」

「うん、ヒッキーは優しかったよ。でもあたし達と一緒に居るのは申し訳なかったし、ヒッキーもあたし達に気を使ってくれてたの。だからあまりここには来ないようにしてたよ」

「..もし俺が近くにいてお前たちが虐められたりするようなら、一緒のことをするかもしれない」

「比企谷君、私達は近くにいていいの?貴方の知っている私達ではないのよ」

「うん、そうだよね。...ヒッキーに迷惑はかけたくないし」

「確かに俺の知っている二人とは違って自分の事を自虐している。だが気にするな、俺はお前たち二人と何時までもこうして一緒に居たいと思っているんだ。もし二人が俺と一緒に居ても良いと思ってくれてるならだが」

「...比企谷君、それが本当ならその、...私なんかでも比企谷君と...その..け、結婚してもらえるのかしら」

「ヒッキー、あたしもヒッキーと結婚してほしいな」

「な、なんでいきなり結婚とかそんな話になるんだよ、大体二人一緒に結婚なんてできないだろ」

「貴方のいた世界ではどうだったのか分からないけれど、こちらでは何人でも結婚出来るの、男性でも女性でも重婚出来るのよ」

「えぇ!?そうなのか...」

「うん、だからさ。ヒッキーが良いんなら皆で結婚できるんだよ」

「それって二股だろ、そんなのお前たちが嫌だろ」

 

そういえば葉山は32人居ると言っていたな、全員と結婚しているのか?だから嫁さんが居たのに何も言わなかったのか。

 

「ううん、だってそれが普通だもん。あたしはゆきのんと一緒なら嬉しいな」

「私も由比ヶ浜さんとなら...でも私はまだ信じられないの。貴方が異世界から来たということもそうだけれど、私がその、..美少女だなんて。私はそんなこと言われたことないわ、やはりすぐには信じられないのよ」

「そうか、じゃあどうすれば信じて貰えるんだ」

「その、比企谷君は...私に触れることは出来るの?」

「触れるって手とかで良いのか」

「ええ」

 

俺は立ち上がり机を回って雪ノ下の横に立つと、雪ノ下も立ち上がって俺の方を向き手を差し出してきた。その手は微かに震えており俺が手を近づけていくと自分の方に引っ込めようとしていたので、俺は雪ノ下の手を握りしめて自分の方に引き寄せていた。

 

「!?..比企谷君//ありがとう//」うぅ

 

雪ノ下は顔を真っ赤にし目を潤ませている、ただ手を握っただけなのに。俺も顔は真っ赤だろう、だが雪ノ下はまだ信じられないのか俺から身体を遠ざけようとしていた。

こんな雪ノ下は放っておけない、俺が握った手は今だに震えが止まっていない。

俺は雪ノ下を引寄せ身体を抱きしめながら頭を撫でていた。

 

「!?ひゃぅ//」

 

俺が抱きしめると雪ノ下の身体は大きく震えていたが、今は俺から逃れようとはしなかった。

雪ノ下ってこんなに小さかったのか、今までどれだけの誹謗中傷をこの小さな体で受けていたのだろう。

 

「今までよく頑張ったな、雪ノ下」なでなで

「ひ、比企谷君!?..う、うぁ、...う..う、あ、あああぁっぁぁあぁぁ」

 

雪ノ下は俺の胸に顔を埋めて嗚咽をあげ泣き出してしまった。今までどれほど辛い目に有っていたのだろう、俺への虐めどころではなかったのかもしれない。

俺が雪ノ下を抱きしめていると、由比ヶ浜も立ち上がり俺達の方に近寄ってきた。

 

「..ヒッキー、あたしも良い?」

 

由比ヶ浜も泣きそうな顔で話しかけてきていた。俺は雪ノ下の頭を撫でていた手を広げ由比ヶ浜を抱きしめられるようにしていた。

 

「ああ」

「ヒッキぃぃ!!」ウワーン

 

由比ヶ浜も俺に抱きつき声をあげ泣き出してしまったが、俺は二人の背に腕を回して抱きしめていた。二人とも辛い目に合っているんだろうな、こっちの世界ではこれからも無くなることはないのだろう。だが俺でも支えになれるのなら、二人のために出来ることをしていきたい。

 

雪ノ下も由比ヶ浜も俺に抱きついてずっと泣いている。俺の目の前に二人の頭が有るのだがすごく良い匂いだな、思わず匂いや体の柔らかさを堪能してしまっていた。

こんなに距離が近いと色々とまずいんたが。今、邪なことを考えるのは不味い。二人は泣いているんだ、そんな二人に厭らしい感情を向けるなんて。だが俺の身体はそんな思いに関係なく、瞬く間に反応してしまっていた。

 

「ヒッキー//...か、下半身が大きくなってるよ//」

「ひ、比企谷君//私達で欲情してくれてるの?」

「..あ、当たり前だろ//俺はこんな経験初めてなんだ、二人とも俺にとって美少女だぞ、そんな二人を抱きしめてるとこうなるんだよ//

...すまん、二人が泣いているときに劣情を抱いて本当に申し訳ない、軽蔑してくれ」

「ううん嬉しいよ、ヒッキー//あたしを女として見てくれてるんだよね」

「嬉しいわ//比企谷君、私でこんなにも//」

「は、恥ずかしいからもういいだろ、離してくれ」

「「いや(やだ)//」」

 

俺が手を離し抱きしめるのを止めても離れてくれず、愚息を押し付けるようになっていても二人は離れてくれない。

いや今は俺が腰を引いても二人が身体を押し付けてきていて、俺の愚息は大変なことになっていた。

 

「ヒッキーお願い。あたしを..あたし達を潰れるぐらい抱きしめて//」

「私もお願い。比企谷君、離さないで//」

「思いきり抱きしめたら痛いぞ」

「良いよ、もっと抱きしめて」

「痛くても良いの、あなたから抱きしめて欲しいの」

 

二人にそう言われ解いていた腕を二人の背中に回して力を加えていった。さすがに力任せにする事は無かったが、それでも雪ノ下と由比ヶ浜の身体は今までに無いぐらい密着している。

 

「ヒッキー//ヒッキー//」

「あぁぁぁ//比企谷君//」

 

どこにそんな力が有るのかと言うほど、二人も俺に力強く抱きついてきていたので俺の方が降参しそうになっていた。

 

「ひ、比企谷君//...私とその..き、キスも出来るの?」

「あ、あたしもして欲しい//」

「..ま、まってくれ。俺達は付き合ってもいないだろ。これ以上は好きな相手とすべきだ」

 

俺がそう言うと二人は一旦俺から離れてくれたが、二人とも俺のことをずっと見つめていて唇を震わせていたかと思うと、雪ノ下が話し始めていた。

 

「わ、私は、雪ノ下雪乃は比企谷八幡君が好きです//」

「あ、あたしもヒッキーが..八幡君が好き//ずっと前から好きでした//」

 

な、何で二人とも告白してくるんだよ、どっちか一人を選ばないといけないのか、でもここでは重婚できるんだよな。雪ノ下と由比ヶ浜の二人と居れるなら、二人が許してくれるなら俺は二人と付き合いたい。

良いのだろうか、でも二人が認めてくれるなら...

 

「..お、俺もお前達二人のことが好きだ//二人が良かったら俺と付き合ってくれ//」

「「はい//」」

 

そう言うと二人はまた俺に抱きついてきていた。二人は俺を受け入れてくれて、今は泣いていないが俺に柔らかい身体を押し付けてくる。うぅ不味い、このまま二人とチュッチュして劣情に身を任せたいが、ここでそんなことするわけにはいかない。でもちょっとぐらい良いよな。

 

 

「雪ノ下、由比ヶ浜。ほ、頬にキスして良いか//」

「「はい(うん)//」」

 

俺はそう言って雪ノ下と由比ヶ浜の頬にキスしていた。

 

「は、初めて何でこれで勘弁してくれ」

 

二人は顔を真っ赤にしていたが、今度は俺を椅子に座らせると両隣に椅子を持ってきて座り、腕を抱きしめながら頬にキスしてきた。

雪ノ下と由比ヶ浜はタガが外れたようで俺から離れることなく、頬にキスしてきたり胸に顔を埋め匂いを嗅いでくる。良い匂いとか言われたが異性に匂いを嗅がれるって凄く恥ずかしいんだけど。

由比ヶ浜は犬のように俺の胸や首に顔を埋めクンカクンカしている。

雪ノ下は俺の胸に顔を埋めて匂いを嗅いだり、首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぎ舐めてきて、段々と上に上がってきたかと思うと俺の耳を咥えだしたため、思わず俺は声を出してしまっていた。

ま、待って//耳は弱いから//

 

「比企谷君//凄く艶めかしい声を出してるわよ//」

「ヒッキー、耳が弱いんだね//」

 

2人はそう言うと俺の耳を舐めたり咥えたりしてきた。いや//耳に舌を入れないで//

変な声が出てしまう。そんな声を聞いて二人は嬉しいのか執拗に責めてきている。

だ、駄目だ。何とか抑えないと。俺はそれでも手を出すことなく二人のしたいようにさせていたがまずい、もう理性が崩壊しそうだ。

 

「雪乃、結衣..その、...お前達が...お前達の唇が..欲しい」

「はい(うん)//」

 

俺も恥ずかしさが薄れ雪乃と結衣の名前を呼びキスしていた。

二人ともキスをした後は暫く放心してしまったが、二人は俺を受け入れてくれ、その後もずっとイチャイチャしていた。

俺は理性が崩壊しそうになっていたが、二人ともそんな俺から離れず二人は脚を俺の脚に絡めるようにしている。

パンティが見えても気にせず脚が動くたびに股間にも刺激を与えて来るため、もう少しで暴発するんじゃないかと思ったところで最終下校の鐘がなっていた。

 

「じ、じゃあ帰ろうか」

「やだよ..ヒッキーと離れたくない..」

「私も一緒に居たいわ、あなたと離れたくないのよ」

「これからいくらでも一緒にいれるんだ。そんなに急がなくても良いだろ」

「でも何だか怖いの。明日になったら比企谷君が戻ってしまって、今日のことが無かったことになってしまうのが」

「うん、あたし達をずっと抱きしめていてほしいな」

「...不安なのは分かるがどうしようもないだろ、一緒にいたら俺は二人が欲しくなる。それでもし元に戻ったら、それこそ二人に申し訳ない」

「..ありがとう比企谷君。私達のことを考えてくれているのね」

「うん、でも何時かはあたし達を抱いてほしいな」

「あ、ああ結婚するんだろ。そうなったら幾らでも抱き合おう」

 

俺も二人と離れたくない、俺を受け入れてくれているんだ。だが一緒に居れば二人を欲しくなる。もしかしたら俺は夢を見ていて、明日には戻っているのかもしれない。夢だったら良いのだろうが、もし異世界ならそれこそ二人を抱くのはいつ帰るのかも分からないのだから、俺は2人を抱くことは出来ない。

二人と別れた後も、今だに抱きしめた余韻が残っている。俺は自転車を立ちこぎして急いで家に帰っていた。

 

「ただいま、小町」

「お、お兄ちゃん!?お、お帰りなさい...ごめんなさい顔を見せて、すぐ自分の部屋に行くから」

「行かなくていいから、ちょっと話を出来ないか」

「..お兄ちゃん?」

 

そうか、小町もこちらでは大変な目に合っているのかもしれない。小町は俺と目を合わそうとしなかったので、俺は小町に近寄り抱きしめていた。

 

「お兄ちゃん!?..は、離してよ、比企谷菌が移るよ」うぅ

 

なんだよ比企谷菌って。小町が言われているのか、やはり小町も学校では虐めに合っているのだろう。小町は凄く辛そうな表情で涙を流していた。

 

「..小町、今から俺が話すことを聞いてくれるか」

「..うん//」

 

俺と小町はソファーに隣り合って座り、俺は小町の手を握りしめていた。

そして俺が今日、朝起きてから学校に行き教室でのこと、雪乃と結衣のことを話していた。

 

「信じられないよ、...昨日はスマホで美少女ゲームしてたじゃん」

 

俺はそう言われ、繋いでいない手でスマホを取り出すと、怪しげな顔のアイコンをタップしアプリを立ち上げたのだが、そこに映し出されたのは俺から言わせれば、全く可愛いとか美人には思えないグラフィックが表示されていた。

何で歯に青のり付けてんだよ。いや街中でそんなの中々いないから確かにレアだよ、でも何でこれがURなんだ。俺は速攻でアプリを終了し、ごみ箱に捨てていた。

 

「えぇ!?良いの?昨日URが出たって喜んでたじゃん」

「良いんだよ、こんなののどこが良いんだ」

「うん、小町はお兄ちゃんの言った事信じる。今もこうやって隣に居て手を繋いでても嫌な顔しないもん」

 

いやいや隣に座らせないとか手も繋がないとかおかしいだろ、こっちの俺は何してんだよ。

 

「それで雪乃さん結衣さんと結婚するんだよね」

「ああ、俺にとって二人は大切な女性なんだ。こっちに居るようなら、本当に俺で良いのか分からないが、二人が望むなら結婚するよ」

「そのさ、...小町も駄目かな」

「ハァ!?さすがに兄妹は出来ないだろ」

「うん?近親婚出来るよ」

「..小町は良い人いないのか」

「ずっとお兄ちゃんが好きだった。でもお兄ちゃんに嫌われたくないから言えなかった。...小町はお兄ちゃんが、八幡さんが好きです//」

「小町//..分かった。ただ二人に伝えてからでいいだろ、勝手に増やしたくないんだよ」

「うん、お兄ちゃん。これからもよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしくな」

「へへ、じゃあお兄ちゃん。今日はお兄ちゃんが大好きな御飯作るから一緒に食べようね」

「ああ、楽しみにしてるよ。小町、料理を作りながらでいいんで色々と教えてほしいんだが」

「うん、こっちの世界のことだよね」

 

小町はそういうと料理を作りながら色々教えてくれた。

こちらの世界では男女が付き合うのは結婚するということだった。そういえば雪乃も結衣も簡単に結婚という言葉を発していたな。俺が付き合ってくれと二人に言ったのも、結婚してくれと同義語ということだった。俺は知らないうちに二人同時にプロポーズしてたんだな//

中学生以上であれば親の同意はいらず、簡単に結婚できるためすぐに婚姻届を出すらしい。

ただ、離婚については相手が亡くなった時に籍を外すとか余程のことがないと許可が下りないため、女性でも重婚をしている人は沢山いるということだった。

 

昔は俺から見て美人がモテていたらしいが、今では正反対の女性がモテている。昔と言っても平安時代とか大昔のことらしいが。ただ大きな出来事だったらしく文献が幾つも残っているらしい。

そんな大昔だと流石に今とは価値観が異なるのだろう、俺が知っている世界でも江戸時代とは違っていたらしいからな。

 

御飯を食べ終わり俺がお風呂に入っていると、小町が背中を流したいと言って裸でお風呂に入ってきた。な、何しちゃってんのこの子。今日は色々と不味いんだが..

 

「お兄ちゃんありがとう、一緒に入ってくれて」

「..ああ」

「ま、前も洗った方が良いよね//」

「自分でやるよ//まだ流石に恥ずかしいからな」

「..うん、そうだね」

 

ねぇ小町さん?何でそんなに残念そうな顔をするの?お互い身体を洗い、浴槽に向かい合って入っても小町は自分の身体は隠さず俺の股間を何度もチラ見していた。

幾ら兄妹でも今日は本当に不味い。今まで小町に欲情することはなかったはずだが小町の裸を見た時、なぜか俺の愚息は見る見るうちに色欲まみれになってしまっていた。こちらの世界の影響なのか?今まで妹としてしか見ていなかった小町に興奮している自分を見て、俺は罪悪感が溢れて来ていた。

 

俺はすぐに風呂から上がったが本当に不味かった。もしあのまま一緒に入っていたら、取り返しの付かないことをしていただろう。

俺は邪な考えを振り払うため、自分の部屋にこもってこの現象のことを調べたが、何も分からない。昨日も特に変わったことは無かったし、何もしていないはずだ。そもそも俺が何かしたぐらいで異世界に来れるとは思えない。

ネットで調べても出てくるはずもなく、ラノベが検索結果に引っ掛かるだけだった。

いくら調べても何も出て来ない。そもそも本当に異世界に来ているかも分からないが、帰り方なんてネットに出てくるはずもない...

 

今の俺には打つ手がない。何か光に包まれたり、どこかに吸い込まれたとかならそこまで行ってみるのだが、そんな覚えもないからな。

 

ただ戻れるとしても、俺は帰りたいのか…

二人の顔が脳裏に焼き付いている、俺に抱きつきながら声をあげ泣き出した顔を。

二人を悲しませたくない、俺にとって二人は…

 

「あれ、もうこんな時間か」

 

すでに12時近くになっていたため調べるのをやめ、寝る準備をしてから布団に入るとノックする音が聞こえてきた。返事をすると扉が開いて小町が枕を抱いて入ってきた。

 

「..お兄ちゃん、一緒に寝て貰っても良い?」

「..あ、ああ」

 

小町は夕方に見た自分を卑下していた時の表情をしていたため、俺は断れず二人で布団に入っていた。

今日はこれから色々とスマホで検索する予定だったが、どうも出来なくなってしまったな。そういえばパソコンのエロ画像も全て俺にとっては欲情するものではないのではないか。仕方がない諦めるか。

 

「お兄ちゃん、ごめんね」

「いいんだ、久しぶりに一緒にお風呂入ったり、こうやって布団に入るのも良いだろ」

「..うん、小町には記憶無いけど、ちっちゃい時は一緒にお風呂入ったり寝てたんだよね。お休み、お兄ちゃん」

「..おやすみ、小町」チュッ

 

俺が頬にキスすると小町は驚いていたが、満面の笑みを浮かべ眠りに入っていった。こっちでは子供の時でも一緒にお風呂に入ったり、寝ることはなかったのか。確か俺が中学になるまでは一緒に入っていた筈だ、小町が小4の時までは一緒に入っていたから記憶が無いということは無いだろう。やはり違う世界なんだよな。

俺も小町の寝顔を見ていたら眠くなってきたため、そのまま眠りについた。

 

 



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「美醜逆転2」

「お兄ちゃん..おはよう」

「..おはよう」チュッ

 

朝、小町に起こされたが不安げな顔をしていたため、俺は頬にキスしていた。

やはり元の世界には戻っていないようだな。小町に安堵されたが元の世界も気になる、こちらの俺が行っているのだろうか。

 

「ねぇ、お兄ちゃん//辛くないの//」

「何がだ?」

「そ、それ//もし良かったら小町が//」

「ば、馬鹿な事言ってないで用意するぞ//」

「..うん」

 

小町は俺の股間を見て顔を真っ赤にしながら言ってきたが、流石に小町にそんな事はさせれない。

でもなんで小町はそんなに残念そうなの!?小町ってこんなにエッチな子だったの?

 

小町を中学校に送っていったが、背中に抱きつかれ匂いを嗅がれていたので会話もできなかった。小町を中学に送り届けると俺は高校に向かった。

高校に着き自転車置き場から校舎に向かうと、俺の下駄箱の近くで雪乃が立っているのが見えた。なぜか戸惑った顔をしているがどうしたんだ。

 

「ひ、比企谷君...」

「おはよう、雪乃」

「!!おはよう比企谷君//」

 

雪乃は俺が昨日のままか気になったのだろう。いつもならいい加減な挨拶をするだろうが、雪乃の不安を払拭するように名前を呼んで返事をしていた。

雪乃の表情は俺の知っている見惚れてしまう綺麗な笑顔になっていったので俺も笑顔を返していた。

..キモいとか言われないよね。ここで言われたら本当にヒッキーになっちゃうよ。

 

「ひ、比企谷君。もし迷惑じゃなかったら、その..お昼一緒に食べれないかしら」

「良いぞ、購買によってから行くから。部室で良いんだよな」

「ええ、あ、あの御弁当を作って来たのだけれど..」

 

雪乃はそういうと、きんちゃく袋を上にあげて見せてきた。女性一人食べるには大きく俺の為に作ってくれた弁当が入っているのだろう。

 

「俺の分をか?ありがとうな。じゃあ授業終わったらすぐに行くよ」

「はい//」

 

雪乃はそういうと元気よく教室に向かっていったが、周りの生徒は雪乃の方をみてヒソヒソ何か言っているようで、雪乃は顔を俯かせて歩いて行った。俺はそんな雪乃を見送ることしか出来ず教室に向かっていったが、途中で後ろから話しかけられていた。

 

「ヒッキ、比企谷君。..おはよう」

「おはよう、結衣」

「良かった!!やっはろーヒッキー!!」

「..さすがにその挨拶は出来ないからな」

「えぇ、ヒッキーにもして欲しいな」

「出来ねえよ」

 

結衣も俺が昨日のままか気になったのだろう、結衣と話していると周りから何か言われているようだが俺には関係ない。そう思っていたが結衣は一瞬暗い顔になり「先に教室に行っている」と言って駆け出してしまった。

雪乃も結衣も大変な思いをしているんだろう、俺に何かできることが有れば良いのだが、今は何も思いつかない。

 

 

4限目が終わり結衣の方を見ると三浦達と食べるようで弁当を広げているな、部室には行かないようだ。俺が奉仕部に向かうと既に雪乃は来ており、紅茶を用意してくれていたので、俺は椅子を隣に並べていた。

 

「美味そうだな、良いのか頂いても」

「ええ、比企谷君に食べてもらいたくて作ってきたの。迷惑じゃなければ食べてほしいわ」

 

雪乃はまた悲観的な事を言っている。俺はそんな気持ちを払い除けて欲しくて、すぐに弁当を食べることにした。

 

「じゃあ貰うよ、いただきます」

 

雪乃の弁当をいただくと本当においしかった。まだ雪乃は俺に遠慮がちにしているが、それはしようがないのだろう。ただ俺はいつも通り振舞うようにしていたが、ちょっと大胆になっても良いよな。

 

「あーん」

「え!?い、いいの?」

「あーん」

「あ、あーん//」

 

俺が玉子焼きを雪乃の口に持っていくと、雪乃は顔を真っ赤にしながら口を開けてくれた。

ヤバい//可愛い、キスしたい!!雪乃は自分もしたいと言い出して、そこからお互い食べさせあいながら昼食を終えていた。

 

「ありがとうな雪乃、弁当うまかった」チュッ

 

俺がお礼にキスすると雪乃はまた顔が真っ赤になって俯いてしまった。暫くすると顔を上げてくれたが、未だに顔が赤くなっている。

 

「比企谷君//これからは、は、八幡君って呼んでいいかしら?」

「ああ、俺のことも名前で呼んでくれ」

「は、八幡君//」

 

俺がそういうと雪乃は俺の肩に頭をのせてきた。本当に良い匂いだな//

昨日の夜は何もできなかったんだ、ちょっとしたことで反応してしまう。ただ雪乃は俺のそんな反応を見ても嫌な顔せず、俺の腕に抱きついて来ていた。

 

「暫くこうさせておいて//」

「ああ//」

 

雪乃は頭を俺に預けていて俺達は手を握りあっていた。しばらくするとキスを求められたのでチュッチュしていたが、俺が舌を入れていくと雪乃も受け入れてくれ昼休み中ディープキスを味わっていた。

予鈴が鳴り俺は雪乃から離れたのだが、もっとしたい、もっと雪乃が欲しいと思ってしまっていた。

 

「八幡君//その..もっとして欲しいわ//」

「俺も雪乃が欲しい//でも授業はちゃんと出よう」

「...はい」

 

雪乃も一緒のようだったが、ここで致すわけにもいかない。俺は雪乃からの申し出を断りお互いの劣情を抑え、それぞれの教室に向かっていった。

 

放課後、部室に行くと雪乃と結衣は既に座っていて、雪乃は俺に紅茶を出してくれたのだが紙コップではなくティーカップで出してくれていた。

 

「どうしたんだ、このカップ」

「ヒッキーとお揃いが良いから家に余ってたの持ってきたんだ」

「ええ、由比ヶ浜さんが私の分も持ってきてくれたのよ」

「ありがとうな、結衣」

「そういってくれて、ありがとう//」

 

結衣はそう言うと俺の横に椅子を持ちながら移動してきて手を繋いできた。それをみた雪乃も結衣とは反対の方に椅子を移動して俺と手を繋いできていた。

 

「二人に相談なんだが小町も俺と結婚したいと言ってきてな。俺としても小町を悲しませたくないから入れてもいいか」

「うん、小町ちゃんも一緒で良いよ」

「そうね、八幡君が認めた人なら私は反対しないわ」

「ありがとうな、そう言ってくれて」

 

二人はそう言ってくれて一緒に住むのが楽しみと話していた。そうだな、俺もこちらにずっと居るなら今からでも一緒に住みたい、進学も皆で住めるところを探したい。

 

「八幡君、明日からお休みでしょ。..このまま日曜日まで私のマンションで三人一緒に居れないかしら//」

「え!?..それって//」

「あたしも一緒に居たいな、ヒッキーに愛して貰いたい//」

「分かったよ。..一応、小町も誘って良いか」

「ええ、皆で仲良く居たいもの」

「うん、小町ちゃんも連れて来てよ」

 

二人はそう言うと、雪乃は用意もあるだろうからと今日の部活を終了していた。今日の昼、雪乃とディープキスしてたが、それ以上のことをするんだよな//

良いのだろうか、こちらの二人と出会ってからまだ二日しか経っていないのに二人のことを、もしかしたら小町も入れて三人を抱くことになるかもしれない、一抹の不安がある。三人にとっても俺で良いのだろうか、でも結婚すると約束したんだ。三人とずっと一緒に居れるなら俺にとっては喜び以外の感情はない。

 

 

「小町も行きたいけど今回はパスするね。どうしてもお兄ちゃんと一緒の高校に行きたいから勉強したいんだ」

「そうか、じゃあ悪いが俺一人で行ってくるよ」

「うん、お兄ちゃん。でもさ小町も高校受かったら、あ、愛してね//」

「ああ、分かったよ」

 

俺が家に帰り小町に聞いたが小町は勉強すると言って行かないことになった。

俺の中で小町のことを抱きたいのか分からなかったので、今回は良かったのかもしれない。結婚すればいずれはそうなるのだろう。

ただ、どうしても今まで妹として接していた小町に対して性的な眼で見ることが出来なかった。昨日の夜、一緒にお風呂に入った時は興奮していたので抱くことは出来るのだろう、ただ未だに小町を抱くことには抵抗がある。今回は小町が来なかったので俺は少し安堵していた。

だがこの後、雪乃と結衣の二人を抱くことになるんだよな...今まで何度も想像したことはあるが、本当に今日...俺で良いのだろうか。嬉しい反面、戸惑いが大きい。..そんなこと考えながら薬局に寄り雪乃のマンションに向かっていった。

 

「お帰りなさい、あなた//」

「てぃぁ、た、ただいま雪乃//」チュッ

 

俺が雪乃のマンションを訪れると、雪乃は顔を真っ赤にさせながら俺を出迎えてくれていた。思いっきり噛んでしまったが、そんな俺に雪乃はキスしてくれていた。

 

「ゆきのんずるい!!ねえヒッキー。ご飯にする?お風呂にする?それともあ・た・し//」チュッ

「と、とりあえず御飯かな//」

 

結衣は凄く可愛い笑顔で俺のことを出迎えてくれた。言って貰いたい言葉3位以内に入る言葉が聞けて俺は顔が真っ赤になっていた。

 

「ず、ずるいわよ。結衣さん」

「えぇ、だってゆきのんも一人でお出迎えしちゃったじゃん」

「と、とりあえず入らしてくれよ、玄関先で言っててもしょうがないだろ」

 

俺がリビングに座っていると、雪乃は恐る恐る何かの紙を俺の前に出してきていた。それは二枚の婚姻届で既に自分達の名前は書いてあるようだ。

雪乃と結衣は愁眉を浮かべて俺の顔を見ていたが、俺は戸惑うことなく二枚の婚姻届に署名すると、雪乃と結衣は顔をくしゃくしゃにし大粒の涙を流しながら抱きついて来ていたので、俺も二人の身体を抱きしめ返していた。

 

雪乃は今、鼻歌を歌いながら料理をしてくれている。結衣も手伝いたいと言って一緒に歌いながら料理を手伝いだした。ただ結衣は雪乃に言われお皿を用意したり、混ぜるのを手伝っているだけだが、俺は目を皿のようにして結衣の一挙手一投足に注目していた。

 

「ヒッキー//そんなに見つめられると恥ずかしいよ//」

「八幡君ありがとう、結衣さんを見張っててくれてて」

「バレてたのか、雪乃は料理に専念してもらってて良いぞ。俺が見てる限り余計なことはさせないから」

「ど、どういうことだし!!あ、あたしだって混ぜるぐらい出来るし、隠し味に桃缶入れることも出来るし!!」

「や、止めろ!!アホ結衣!!」

「ヒッキー酷い!!あほ結衣って言ったぁ!!」

「何で味噌汁に桃缶入れようとしてんだよ!!そんなの飲めなくなるだろ!!」

「良いじゃん!!桃缶美味しいじゃん!!」

「ば、ばか!!か、缶を開けて本当に入れようとするな!!」

「あああ!!今度はバカって言ったぁ!!バカって言う方がバカなんだよ!!ヒッキーのばーか!!」

「うるさーーーい!!」

「「...」」

「私達は火を使っているのよ、危ないから馬鹿騒ぎは止めなさい!!」

「「はい...」」

「...くっ..ふふふ。でも八幡君が居てくれるだけでこんなに楽しくなってしまうのね」

「へへへっ、ごめんねヒッキー。でも今日は凄く楽しいし。これもヒッキーのおかげだよ」

「ははは、そうだな俺も悪かった。二人と居れて凄く楽しいよ」

 

俺達は三人で笑いあっていた。二人の笑った表情はとても可愛らしく、俺はまた見惚れていた。

 

「「「頂きます」」」

 

雪乃の作ってくれた料理はどれもおいしい。

途中、あーんがしたいと言われ、俺達はお互い食べさせあいながらっていた。

デザートは結衣が開けた桃缶を一口大に切ってアイスを乗せたものだったが、結衣が作ったということで俺も雪乃も手放しに喜んで食べていた。

 

「結衣、凄く美味いぞ」

「結衣さん、これが出来れば他は覚えなくていいわね」

「うぅ、二人とも酷いよ。明日の朝はあたしが朝食を作るから!!」

「止めてくださいお願いします」

「そ、そうよ。明日の朝は私が作るわ。結衣さんはゆっくり寝てもらって良いわよ」

「二人とも酷い!!」

 

御飯を食べ終わり、結衣がせめて食器は洗いたいと言い出したので俺も手伝っていた。結衣が洗い俺が水気をとるため布巾で拭いていると、『結衣が新婚夫婦みたいだね。』と言ってきて二人で顔を赤く染めていると、雪乃が頬を膨らませて一緒に片付けたいと言い出し三人で後片付けをしていた。

今は洗い物が終わり、俺がソファーに座っていると、二人とも両隣に座り俺の腕に抱きついて来ていた。

 

「す、すまん。今日は色々不味いんだよ」

「何が不味いのかしら」

「...そのすぐに反応してしまうんだよ」

「じ、じゃあさ、もうお風呂入っちゃおうよ。一緒に//」

「え!?」

「そ、そうね//早いけれど、一緒にお風呂に入りましょうか//」

 

俺は二人に急かされ風呂に入っていた。二人も一緒に入りたいと言われたが、流石に一緒に入ると我慢できるとは思わなかったので風呂は一人で入らせてもらった。初めてだからお風呂でするのはな。俺が風呂から出ると二人は一緒に風呂に入り、まだ9時を過ぎたところだったが、今は三人で布団に横になっている。

雪乃のベッドでは狭く三人では寝れないということで、俺が風呂に入っている間に二人は空き部屋に二組の布団を敷いてくれていて、今は俺を真ん中に雪乃と結衣は腕に抱きつくようにして横になっていた。

 

「八幡君、私を貰ってください//」

「うん、あたしもヒッキーの物にして//」

「..いや、今日は止めておこう。早急すぎだろ、二人に出会ってまだ二日しかたってないんだ。こういうことはゆっくり歩み寄った方が良いと思うんだが」

 

やはり俺はヘタレだろう、二人にここまで決意させておいても俺は逃げようとしてしまう。

 

「..八幡君。私は由比ヶ浜さんと母さん、姉さん以外、誰も信じられず怖かったわ。特に男性に視線を向けられるだけで、身体が震えてしまうほどだったの。でも初めて信じられる男性と出会えて、好きになった。

その人と心も身体も繋がりたいと思うのはおかしいかしら」

「うん、あたしも男子は凄く怖いの。でもね、ヒッキーだけは別。初めて男子で好きになったヒッキーは優しくてあたしと結婚してくれるって言ってくれている。

だからあたしを貰ってほしいしヒッキーの全てがほしい」

 

「..俺も二人が欲しい。でも良いのか、俺はもしかしら今日にも元居たところに戻ってしまうかもしれないぞ」

「八幡君、そう言って何時までも行動しなければ、何も始まらないわ」

「うん、明日かもしれない、1か月後かもしれない、もしかしたら1年後?でもそんな分かんないことは考えてもしょうがないよ」

「だったら今、私が愛している八幡君に抱いてほしいわ」

「ヒッキーが好き、愛してほしい。この気持ちを裏切りたくないんだ」

「..分かった。雪乃、結衣。結婚してくれてありがとう、俺は二人が好きだ//」

「「私も(あたしも)好き//」」

 

三人とも経験があるわけがなく戸惑いながらもキスを交わしながら、服を脱いでいった。

二人を抱くとき初めてはそのまま抱いてほしいと言われたが、俺が戸惑っていると安全日だからと言われたので結局薬局で買ったものは使わなかった。

初めての女性の身体に俺は夢中になって何度も二人のことを求め、二人も俺に答えてくれていた。

 

この日、俺は初めて女を抱いた。

 

二人は今、満足してくれて俺の隣で寝息を立てている。

良かったのだろうか、俺は二人のことが大切だ。でもそれは向こうの世界の二人をこの二人に求めていたからだ。俺は二人の影を彼女たちに求めていた。それに気づいていながら俺は二人と結婚し抱いていた。

後悔はない、ただあちらの二人の影を追うのはもうこれっきりだ。俺はこちらの二人と愛し合っていきたい。今、俺の腕の中で寝ている雪乃と結衣の寝顔を眺めながら俺は誓いを立てていた。

 

....

...

..

.

 

顔や胸が擽ったい。俺の頬や身体を何かが這っている感覚がし俺は目を開けていた。

 

「おはよう、寝坊助さん。もう10時よ」

「おはよ、ヒッキー。朝だよ」

「..ああ、おはよう」

 

二人は俺の左右から挨拶してキスしてきた。二人を見るとまだ裸のままだったが、俺に抱きついて来ていて、手は俺の身体に這わせて、色々な所をキスしている。

俺も二人にキスし返していた。朝から二人に抱いてほしいと言われたが、三人とも昨日抱き合ってからお風呂に入っておらずそのまま寝てしまい、行為の後が残っていたので一緒にお風呂に入って汚れを落としていた。

 

「八幡君。遅いのでお昼御飯を食べましょ」

「そうだな。もう昼なのか」

「ヒッキー、今日も一緒に居れるんだよね」

「ああ、今日も一緒に居よう、明後日は学校だから明日は帰らないといけないが」

「うん、じゃあさ。今日もいっぱい愛してね」

「分かってるよ、俺は二人を愛するって決めたんだ」

「「八幡君(ヒッキー)//」」

 

今、雪乃は御飯の用意をしてくれている。俺がお願いし裸エプロンをしてくれたため、終始顔を真っ赤にしていたが、俺はそんな雪乃の姿をずっと眺めていた。俺と結衣も雪乃から裸で居てほしいと言われ、今は二人で全裸のままリビングに座っているのだが。

 

「ヒッキー、ゆきのんばっかり見てずるい」

「じゃあ、結衣にもお願いしようかな。結衣は俺のTシャツだけ着てくれないか」

「う、うん//」

 

結衣は照れながら俺のTシャツを着ていた。結衣の身体には大きかったのだが、胸でTシャツを押し上げているので、前は股間が見えてしまっている。結衣は恥ずかしそうに手で裾を引っ張り股間を隠していた。

 

「結衣、手を退けてくれないか」

「えぇ、み、見えちゃうよ//」

「さっきまで裸だっただろ」

「う、うん、でもさ。全裸よりこっちの方が何だか恥ずかしいし//..ヒッキーも凄いよ//」

「八幡君、結衣さんばかり見てないで私も見てほしいわ//」

 

そう言われ雪乃の方を見ると、エプロンを手で持ち上げ見えるか見えないかぎりぎりの所まで裾を上げていて、俺は生唾を飲み込んでいた。

 

「も、もう我慢できないんだが//」

「せめてご飯は食べましょ」

「うん、頂きますしようよ」

「..なんか生殺しを味わっているようだな」

 

二人はそのままの格好で俺の横に座り、昼食を食べさせあって頂いた後、今度は着衣のまま二人も頂いていた。

 

俺達は土曜日と日曜日の午前中まで爛れた時間を過ごしお昼を頂いた後、一緒に役所に行き婚姻届を出すと雪乃と結衣は涙を流しだしていた。俺が二人の頭を撫でていると、二人は両頬にキスしてきて、それを結衣が自撮りで撮影し俺のスマホの待ち受けにされていた。良いんだけどね、何だかこういうのは照れくさい。その後、雪乃は実家に行くということで、俺と結衣はそれぞれの家に帰っていった。

 

「お兄ちゃん、お帰り」

「ただいま、小町は勉強はどうだった」

「うん、お兄ちゃんと一緒の高校行くのが楽しみで凄く捗るよ」

「そうか、ただ無茶だけはするなよ」

「うん」

 

俺が小町の頭を撫でていると、小町は恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。暫くすると勉強すると言い出し、頑張るためにキスしてほしいと言ってきたので頬にキスしていた。

 

 

月曜日のお昼と放課後はいつも通りイチャイチャしながら...いやいつも通りっておかしいだろ。それは置いといて、部活が終わったので俺が自転車で家に走っていくと、見知った女性が路肩に立っていた。

 

「ひゃっはろー、比企谷君。ちょっと付き合ってもらえるかな」

「良いですよ、雪ノ下さん」

「...何時もみたいに逃げないの?」

「どうせ逃げれないでしょ、どこに行きましょうか。喫茶店ですか、ドーナツでも食べに行きますか」

「..いつもみたいにカラオケとか人目に着かないところじゃなくていいのかな?」

「どこでも良いですよ」

 

俺たちは近くの喫茶店に入っていき周りに人がいない席で向かい合って座った。陽乃さんは注目を受けているが、ただ俺の知っている羨望の眼差しではなく嘲笑を受けていた。

そんな中でも陽乃さんは強化外骨格を付けていたが、俺にはボロボロの仮面で今にも崩れ落ちるのを何とか堪え気丈に振る舞っている、泣いている少女にしか見えなかった。

 

「単刀直入に聞くね、雪乃ちゃんに近づいて何が目的なの」

「何のことですか」

「雪乃ちゃんとガハマちゃん、結婚したんだよね。雪ノ下家の財産が目的?それとも何か企みがあるの」

「..今から言うことは信じれないでしょうけど、俺の身に起こっていることなんで聞いて貰っても良いですか」

「うん、正直に話してね」

 

俺は一旦コーヒーで喉を潤し、部室で二人に話した内容を陽乃さんにも説明していた。

 

「...そんなの信じられないよ、じゃあ何?比企谷君の中では私は美人なの?」

「ええ、俺にとってはとても綺麗で美人な女性ですよ」

「..揶揄わないでよ...そんなの信じれるわけないじゃない!!」

 

陽乃さんはそう言って俯いてしまった。頭を下げる前の顔は既に強化外骨格は崩れているように見えた。多分俺が嘘をついて、この場を誤魔化そうとしていると思っているのかもしれない、そしてそんな俺に絶望しているのだろう。

 

伏せている顔から涙が零れ落ちるのが見えたので、俺は机の上に置いていた陽乃さんの左手を握りしめていた。陽乃さんの身体が大きく揺れ俺の手から逃れようとしてきたので、俺は離さず左手で陽乃さんの顎にあて顔を上げさせた。

陽乃さんの顔からは強化外骨格はすでに外れ、涙を流し唇を震わせている。瞳は俺から逃れるため眼は合わせてくれなかった。

俺は椅子から腰を上げ陽乃さんを見つめていると、怯えながらも俺と目を合わせてくれたので、顔を近づけていくとその瞳には怯えの色が濃くなったがお構いなしに近づいていき、唇にキスしていた。

キスの最中、陽乃さんは俺から離れようと手で身体を押してきたので、俺は陽乃さんの頭に両手を回して逃げれないようにしていた。

周りの客たちは俺達の方を見て驚きの声を上げていたが、俺はお構いなしに陽乃さんの唇を貪っていた。陽乃さんの瞳は瞬きするのも忘れ俺を見ていた。

 

「はぁはぁはぁ//..ひ、比企谷君?」

「これで俺の言う事、信じて貰えましたか」

「う、うん...じゃ、じゃあさ、私も比企谷君とその...結婚して貰えるの?」

「皆の許しが出れば良いですよ。でも俺はまだ皆を養えませんので、今まで通りの生活でしょうけど」

「...本当に今までの比企谷君とは違うんだね」

「ええ、前の俺がどんな奴だったかは知りませんけど」

「ううん、比企谷君の言った事信じる。芝居で私にキ、キスしてくれるなんてありえないから//」

「陽乃さん、そうやって自分を貶める発言は止めてください。俺にとって貴女は美しい女性なんですから」

「あ、ありがとう、比企谷君//」

「では帰りますか、陽乃さん」

「あ、あのさ。比企谷君は二人を抱いたんだよね」

「ええ、..そこまで聞いてますか」

「ううん、雪乃ちゃんからは言わなかったけど何となくわかった。今までは自信がなくてお母さんの前でもビクビクしてたんだけど、比企谷君のことを伝えてるとき、凄く良い笑顔で泰然とした態度だったの。

...比企谷君には申し訳ないけど、私とお母さんが騙されてるんじゃないかって言ったら、雪乃ちゃんが今まで見たことがないぐらい怒ってね。お母さんに対しても怒りをぶつけていたの。そんな雪乃ちゃんをみたことがなくて雪乃ちゃんは本当に比企谷君を愛してるんだなって。

それで抱いて貰ったの?って聞いたら頷いてね。私その時、雪乃ちゃんが凄く羨ましかった。でも同時に....嫉妬しちゃった」

「..何時かは一緒に暮らすんですから仲良くしてくださいよ」

「う、うん、だからさ私も...駄目かな」

「..分かりました。では一旦店を出ましょうか」

 

俺達は店を出て自転車を一旦家まで持って行った。

陽乃さんはタクシーを呼んでおり、タイミングよくタクシーが来ると陽乃さんは俺の袖を掴み乗せてきた。陽乃さんが行先を告げ、俺達は手を握り合いながらタクシーに揺られていった。

 

「は、陽乃さん。ここって」

「うん、私の実家。..初めてだから落ち着けるところが良いなって思って//」

「ご両親は大丈夫なんですか」

「うん、父親は帰ってこないしお母さんも仕事だから」

 

俺は陽乃さんに連れられるまま屋敷の中に入っていった。大きな屋敷で俺の家が犬小屋みたいに感じる。でも今は誰も居ないようでひっそりしていた。

陽乃さんの部屋に入ると凄く良い匂いがしている。調度品一つをとっても陽乃さんのセンスが感じられるな。

 

「ひ、比企谷君。またキスしてもらって良いかな//」

「陽乃さん、俺と結婚してください」

「はい//お受けします。私を貰ってください//」

 

俺達はキスしながら服を脱いでいった。陽乃さんの身体はすごく綺麗で俺は陽乃さんを時間も忘れ何度も抱いていたが、疲れてしまいそのまま二人で眠っていった。

 

 



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「美醜逆転3」

「八幡君、朝だよ」

 

俺は陽乃さんに起こされたが、周りを見回した途端、冷や汗をかいていた。え!?ここって陽乃さんの部屋だよね!?

これってママのんが居るんじゃないの?結婚前の娘さんを抱いてしかも、事後に挨拶なんて俺には難易度が高すぎる。俺は断腸の思いで陽乃さんに連れられリビングに入っていった。

 

「おはよう陽乃、そちらの方は」

「おはよう、お母さん」

「おはようございます、比企谷八幡といいます。いきなりですが御嬢さん二人を俺にください」

 

俺は気の利いた台詞を何も考えられなかったので、二人が欲しいことを率直に伝えた。

 

「お、お母さん...良いでしょ」

「...八幡さん、陽乃と雪乃。本当に二人を娶って貰えるのかしら」

「ええ俺は二人とも好きです、二人に後悔させないなんて言えません。でも俺は二人といると満たされるんです、俺の幸せの為に陽乃さんと雪乃さんをください」

「八幡君、私達は後悔なんてしないよ。私は八幡君に抱かれてこれまで感じたことない幸福感で満たされてる、この喜びをずっと八幡君と一緒に分け合っていきたいの」

 

陽乃さんはそう言ってくれたが、ママのんは俺のことを怪しんでいたので俺は異世界から来たことを伝えていた。でもこんなに綺麗な人も結婚できているんだ。見た目だけでなく内面を見てくれる男性もやはりいるんだよな。

 

「..そうですか、八幡さん。陽乃と雪乃の事、よろしくお願いします」

「ありがとうございます、お義母さん」

「ありがとう、お母さん」

「...陽乃、八幡さんと二人で話をしたいので、席を外して貰えますか」

「良いかな。八幡君」

「ええ、良いですよ」

 

陽乃さんが部屋から出て行き、俺とままのんは向かい合って二人で座っていた。

 

「先ほどの話だと陽乃と雪乃は綺麗ということでしたよね。...では八幡さんには私はどう見えてるのですか」

「凄く綺麗です。とても大学生のお子さんがいるように思えません」

「では八幡さんは私でも抱けるのかしら」

「..それはどういった意味でしょうか」

「八幡さんから見て女性として魅力があるのかお尋ねしているのです」

「..色々な事を置いておいて、抱きたいか抱きたくないかと言ったら...抱きたいです。そう思わせるほど妖艶で魅力的です」

「...では今日の夜もこちらに来ていただけないでしょうか」

「え!?それって...」

「..八幡さん、私は家を守るため政略結婚させられて子供を作りました。二人の子供を作るためだけに抱かれて、子供が出来るとあの人は他の女性の元に行き、私の所には帰ってこなくなり、それからは私を抱いてくれることはありませんでした。

あの人は雪ノ下の姓を手に入れるためだけに私と結婚したのです。

あの人は私を好きで抱いたわけではないのです。...恥ずかしながら私はこの歳でも...その...お、女の悦びを知りません//

...ですが私も女です、私なんかでも抱きたいと思っていただける男性に女の悦楽を教えて頂きたいのです」

 

ママのんは政略結婚だったのか、元居た世界では分からないが、こちらでは旦那さんに愛されることなく、ただ跡取りを作るためだけに結婚させられたのだろう。そしてただ抱かれただけで満足させてもらえなかったのか。さっきは内面を見てくれる男性が居ると思ったが誤りだったのか。

 

「お義母さん、自分の事を「なんか」なんて言わないでください。...今日、俺は貴女を抱きます。俺と結婚してもらえますか」

「..はい//」

 

俺はママのんに近づきキスしていた。貪るようなキスをすると、ママのんは身体の力が抜けたようで、ソファーに身を預けるように座り込んでしまった。

 

「ご、ごめんなさい。こんなに情熱的な接吻は初めてでしたので//」

「今日の夜はこんなのじゃ済ませませんから」

「はい//..八幡さん、私のことも綾乃と呼んでください」

「綾乃さん//綺麗ですよ」

 

俺はそう言ってまた唇を合わせていた。俺達はいつの間にかソファーの上に寝転び抱きしめあいながらキスを交わし、ママのんの身体に手を這わせていった。

 

「はぁ//はぁ//...か、身体が火照ってしまって//」

「すみません、綾乃さんが余りにも魅力的で欲情してしまいました。でもそろそろ仕事に行かないといけないですよね」

「八幡さん..この身体の火照りを取ってくださらないのですか」

「夜まで我慢してください。俺も今から楽しみにしてますから」

「はい//」

 

俺は都築さんに送って貰って学校に登校していた。都築さんは初老の老人だったが俺のことを一瞥して何も話しかけてくることはなかった。こちらの男性にとっては俺の行動は可笑しいのだろう。でもそんなのは関係ない、俺は5人になった嫁さん達を愛するだけだから。

 

放課後の前にLineの通知が有ったため、確認するとママのんからで放課後すぐ来てほしいと入っており、俺は雪乃と結衣に部活を休むことをLineで伝えて学校を後にしていた。俺が校門を出て行くと都築さんが既に待っており、俺は車に乗り込んでいった。

そう言えば雪乃と結衣の三人でお昼を過ごしたがずっとキスしていたので、陽乃さんと綾乃さんのことを伝え忘れたな。明日言えばいいだろう。

 

俺が雪ノ下家に着くと、ママのんが玄関で俺を迎え入れてくれていた。

 

「お帰りなさい、八幡さん」

「ただいま綾乃さん。今日は仕事は良かったのですか」

「はい、今日は長い時間、八幡さんと二人っきりで過ごしたくて、午後から休みを取らせていただきました」

「そうなんですね、陽乃さんはどうしたんですか」

「陽乃には雪乃のマンションに行くようにお願いしました。..八幡さん、今日は陽乃と雪乃の事を忘れ、私と二人で過ごしてください」

 

ママのんが料理をしてくれ、俺達はご飯を食べ二人で過ごしていた。まだ8時なのにお風呂に入り、抱き合いながらチュッチュしまくったが、それ以上お風呂では何もせずにいた。

 

お風呂上がりに用意してくれていた寝間着浴衣を着させてもらい、ママのんの寝室に入っていった。

 

ママのんが寝室に入ってきたが、白装束のような寝間着を着ている。本当に和服美人だな、とても子供を産んでいるとは思えない身体で大人の女性の色気を放っている。ママのんは絹のような滑らかな肌をしており、上品で魅力的な身体だった。

ママのんは俺に抱きついてきて、俺達はお互いの唇を貪りあっていた。ママのんは俺の股間に手を当てると艶美な表情を浮かべていた。

 

「嬉しい、私の身体でこんなに//私に八幡さんの愛をください//」

「綺麗ですよ、綾乃さん」

「八幡さん、呼び捨てで呼んでください//」

「綾乃、今から貴女の全てを貰います」

「はい//」

 

俺はママのんを抱いていた。ママのんは初めての絶頂を迎えるとき身体を震わせて戸惑っていたが、最後には涙を流し悦び果ててくれていた。

ママのんは初めての悦楽に満足してくれていたが、俺はまだ満足できておらず、ママのんの身体に手を這わせていった。

 

「は、八幡さん。私は凄く満たしていただけたので寝させて貰っても良いですか」

「..駄目ですよ、まだ寝るには早いです。夜は長いんですから」

「お、お願いします。今はまだ力が入らなくて動けないのです」

「綾乃、まだ寝る時間じゃないですよ。...ほら綾乃の身体も俺を欲しいと言ってますよ」

「あ、あぁぁ//は、八幡さん//」

 

俺がママのんの身体に手を這わせていくと身体が反応し顔を真っ赤にしていた。ママのんは動けないと言っていたが、俺は貪るように抱き続けていた。ママのんは何度も絶頂を迎えて最後の方は目の焦点が合っておらず、それでも責め続けると果てて気を失ってしまった。

 

ママのんの股間は俺の欲望で大変なことになっている。...そういえばゴムを買ったのに誰にも使っていない。大丈夫なのだろうか、俺はそんなことを考えながら眠りについていた。

 

「八幡さん、朝ですよ」

「う、ううん。後5分」

「わかりました。ではそれまでキスさせてもらいますね//」

 

ママのんはそう言って、俺が寝ている最中キスしてきた。舌を口の中に入れてきて、俺も舌を絡め貪るようにキスしていた。

 

「はぁはぁ//おはようございます、八幡さん」

「綾乃さん、おはようございます。まだ早くないですか6時前ですよ」

「八幡さんと少しでも長く会話したかったのです」

「身体は大丈夫ですか」

「大丈夫ですよ、でも昨日は本当におかしくなると思いました。でも不思議なものですね。昨日、あれほど愛して頂いたのに一晩経つとまた愛してほしいと思ってしまうのですから」

「ええ、これからは何時でも抱きますよ、なんだったら今からでも」

「八幡さん//」

 

俺はまた綾乃さんの身体に溺れて行き、綾乃さんも俺を求めてくれていた。

 

「もっと抱かせてほしいんですが」

「これ以上は駄目です//私も仕事に行かないと行けませんし、八幡さんを遅刻させたら雪乃達に申し訳ないわ」

 

俺とママのんは一緒にシャワーを浴び着替えていた。ママのんは男性に服を着せたかったようで俺はパンツから上着まで全てママのんの手で着させてもらっていた。

 

「行ってらっしゃい」

「行ってきます。綾乃さんも仕事、頑張ってください」チュッ

 

俺は雪ノ下家から登校するため、今日はママのんに送ってもらったが、時間の関係で最寄り駅まで送ってもらったので運転席のママのんに覆いかぶさりキスしていた。ママのんは顔を真っ赤にして駅前のロータリーで見悶えている。やり過ぎたかな、暫く見ていると車は動き出したので、俺はホームに入っていった。

雪ノ下家からだと電車での登校になるんだな。途中の駅で雪乃を見かけ俺は話しかけていた。

 

「おはよう雪乃」

「おはよう八幡君。貴方自転車登校だったでしょ、どこから来たのかしら」

「雪乃の実家だ」

「..はい?」

「昨日、綾乃さんと一緒に過ごしてな」

「も、もしかして母さんも...」

「ああ、昨日は二人だけだったよ」

「やってくれたわね母さん。昨日、姉さんが私のマンションに来たのはそう言うことなのね」

「ああ、そんなこと言っていたな」

「ええ、母さんの大切な人が来るから、姉さんに私のマンションに行っていなさいって。...確かに大切な人を招いたようね」

 

ママのんは俺と二人で過ごしたいために陽乃さんを追い出していたのか。可愛いところもあるんだな。昨日二人で早くから抱き合ったが、他の人が居るとなかなかできないからな。ママのんのはだけた白装束の寝間着は本当に厭らしかった、思い出すだけで反応してしまいそうになる。

今度はママのんには要らない着物が有ったらそれを着てもらおう。乱れた着物もそそるものが有るんだよな。

 

俺が余計なことを考えている間、雪乃はスマホで何か操作していた。

俺と雪乃は並んで学校に入っていき、それぞれの教室に向かっていった。未だに雪乃に対して誹謗はあるが雪乃は以前のように俯くことなく歩いて行った。強くなったのだろう。

 

俺が席につくと、結衣が俺の方に駆け寄ってくる。

 

「ヒッキー、ゆきのんのママ、ズルいよ」

「な、なんだよ、いきなり」

「ヒッキーLine見てないの」

 

そう言われ、俺はスマホを取り出しLineを確認していた。そこにはママのんと陽乃さんが招待されていて会話が繰り広げられている。

 

雪『母さんは昨日の夜、八幡君と二人きりで過ごす為、姉さんを追い出したのよ』

陽『え!?どういうこと?』

綾『大切な人を招くから雪乃の所に行ってなさいと言っただけよ』

陽『八幡君が来るなら教えてよ。もしかしてお母さん、二人で過ごしたの』

綾『とても甘美な一夜を過ごさせてもらったわ』

結『綾乃さんて誰?もしかしてゆきのんのママ?』

雪『そうよ、姉さんも八幡君と結婚するって言っていたわ』

結『は、初めまして。由比ヶ浜結衣って言います。ゆきのんのママもヒッキーと!?』

綾『初めまして結衣さん。そうですよ、八幡さんは私を満たしてくれたわ。私が動けなくなっても寝させてくれず、何度も私を求めてくれて沢山の愛を私に注いでくれたわ。ぽっ』

綾『今日の朝も求めてくれて愛して貰い、駅では「行ってきます」と言ってチスをしてもらったわ。チスよチス』

陽『お母さんが壊れてる。なによチスって』

綾『駅前のロータリーで人目もあるのに運転席の私に覆いかぶさって口づけしてくれたのよ。望外の喜びとはあのような事を言うのね』

陽『お母さんばかり...今度は私が抱いて貰うから』

雪『姉さんは母さんの前に抱いて貰ったばかりじゃない、今度は私よ』

結『ゆきのん、あたしもだからね!!』

 

「何だよこれ」

「でもゆきのんのママ、凄く羨ましいし」

「今日、二人に伝えるつもりだったが陽乃さんと綾乃さん、雪乃の母親のことだが、二人に結婚を申し出たんだよ。済まない、本当は結衣と雪乃の二人、小町も入れて三人に相談すべきことだが勝手に約束してしまった」

「ううん、それは良いよ。...でもヒッキー、あたしのママとも会って貰えるかな。さっきLine送ったら早く会いたいって」

「ああ、挨拶する必要あるだろ」

「..うん、じゃあ今日でも良いかな」

「ああ、大丈夫だ」

 

俺達が話していると、段々登校してきた生徒達が俺達の方を見てヒソヒソ何か話していた。俺には関係ないから無視していたが、結衣は段々顔を下げて行き、また後でと言って登校してきてた三浦達の方に行ってしまった。ただ結衣は三浦達の方に行くと嬉しそうに何か話しているようだった。

暫くすると、三浦が俺の方に近寄ってきたが、なんだか怒っているような気がするが。

 

「ヒキオ、結衣に何したし」

「いきなりなんだよ、三浦」

「結衣が笑ってんだけど」

「良いことじゃないか、可愛いんだから」

「はぁ!?ど、どういうことだし!!」

「..三浦、放課後奉仕部に来てくれないか。その時に色々話すよ」

「..わーたし、姫菜も一緒にいい?」

「ああ」

 

そういうと三浦は俺から離れ結衣の方に歩いて行った。結衣は俺に笑顔を向けてくれたが、三浦は怪訝な顔をしている。

 

放課後、奉仕部に向かうと既に雪乃は紅茶を用意しており、結衣と三浦、海老名さんが椅子に座っていた。俺に遅れて一色も部室に入ってきた。

そういえば一色はこっちでも奉仕部に出入りしているのか、初めて会ったな。

 

「ヒキオ、結衣に何したし」

「それは後で説明する。一色は?」

「先輩、私と一緒にお昼食べるの嫌になったんですよね。...それならはっきり言ってください」

「何を言ってんだ?お昼は雪乃が作って来てくれて一緒にここで食べてんだよ」

「「「え!?」」」

「ヒキオ、その..雪ノ下さんの弁当食べてるの?」

 

雪乃の弁当を食べていることがおかしいことなのか。幾ら容姿がこちらでは受け入れられないと言っても弁当ぐらい食べるだろ。

雪乃を見ると俯き手が震えだしていたので、俺は雪乃の手を握りしめていた。今までの俺ならこんなことはしないだろうが雪乃のためなら少しぐらいの恥ずかしさなら我慢できる。

 

「三浦、酷くないかその言い方は」

「ご、ごめん。そう言うつもりで言ったんじゃないし。雪ノ下さんも気分悪くしたならごめん!!」

「私は大丈夫よ、八幡君が支えてくれてるから」

「ヒキガヤ君、最近は雪ノ下さんと食べているの」

「ああ俺の為に作ってきてくれてんだよ、弁当をここで食べているが凄くおいしいぞ。それで一色、なんで俺と一緒に食べていたか教えてくれないか」

「どうしてそんなこと言うんですか!!」

「一色さん落ち着いて。とりあえず八幡君に説明してあげて」

「..私が一人で先輩のベストプレイスでご飯を食べてたら、先輩が来て私の近くで食べ始めたんです。会話はほとんどなかったんですけど、私の近くに座ってくれるだけで嬉しくて、雨の日以外は一緒に食べてました。

最近来ないのでお休みかなって思ったら先輩が部室に向かうのを見かけたんです...だから私と食べるのが嫌になったのかなって。

でもそれならはっきり言ってもらったほうが良いのでこちらにお邪魔しました」

「そうか、そんな約束してたなんて知らなかったんだ。すまなかった」

「いいえ、約束はしてませんよ。ただ会ったら一緒にご飯を食べてちょっと会話をしていただけです。...でも私にとっては大切な時間だったんです」

「そうか。..三浦、海老名さん、一色。今から俺はおかしな事を言うがとりあえず最後まで聞いてほしい」

「なんだし、おかしなことって」

「優美子、ヒッキーが話す事ちゃんと聞いてあげて」

「..わーたし」

「まず結衣から聞いたかも知れないが、俺は結衣と雪乃の二人と結婚した」

「「「え!?」」」

「ほ、ほんとなの?結衣、雪ノ下さん」

「うん、ヒッキーの知らない所で勝手に言うのが嫌だったから黙ってた」

「私達二人、八幡君に告白して受け入れてくれたわ」

「だから今は学校に来るのが楽しいの、大好きなヒッキーに抱きしめて貰ってキスして貰えるから//」

「私も同じで大好きな八幡君とここで過ごす時間は掛け替えのないものになっているわ」

「..羨ましいし」

「うん、嫉妬しちゃうね」

「先輩と結婚...」

 

二人とも大好きとか言わないで、照れちゃうから//

そして俺は後三人と結婚することと、異世界から来たことを説明しだした。こちらとは女性の容姿の基準が逆転していることを話すとみんな怪訝な顔をしだした。

 

「三浦については最初分からなかった。俺が知っている三浦は金髪縦ロールで化粧もバッチリしていたんだよ。でもこっちの三浦はほとんど化粧をしてないから素顔が綺麗で美人と言うのが良く解るな。思わず見惚れてしまいそうになる」

 

俺がそう言うと、雪乃と結衣が俺の方をジーっと見て来た。俺を責めた目で見ているわけじゃないが、べ、別に口説いてるわけじゃないからな。今はとりあえず彼女達に俺が感じていた気持ちを伝えたかった。

三浦の方を見ると顔が茹で蛸のように真っ赤になっていた。

 

「び、美人てな、なんだし//」

「三浦は皆のオカンだからな、今日も結衣のことを想って俺のとこに来たんだろ」

「オカンってなんだし!!」

 

元居た世界でも三浦は綺麗だったからな、化粧や髪を染めなくてもこんなに綺麗なんだ。俺の居た世界ではケバいと思われてたこともあったようだが、もったいないことをしてたんじゃないのか。

 

「海老名さんは見た目変わっていないが元々綺麗だからな」

「わ、私も綺麗って初めて言われた//」

「眼鏡を掛けているが綺麗な瞳がのぞいた時、ドキッとしてたよ」

「あ、ありがとう//ヒキガヤ君」

「さすがにハヤハチとか言い出すのは止めて欲しいが」

「ハヤハチは言わないよ、葉山君に見つかったら虐められるよ」

 

葉山は皆の葉山隼人をやっていないのか?デブスを侍らせていたが、俺の知っている葉山なら自分の女に他の女の悪口を言わせないだろうが、こっちでは結婚してるので皆の葉山隼人をやらないのか?

 

「海老名さんは修学旅行前に何か奉仕部や俺に依頼したか」

「ううん、何もしてないよ。ここには結衣が居るから何回か来てたけど、私が何かしたの?」

「いや、こっちでは何もなかったなら良いんだ」

 

こっちでは修学旅行の件は無かったことになってんだな。戸部は違う女性に告白したかもしれないが、奉仕部に依頼することはなかったのだろう。

 

「一色はアザといけど可愛らしくて生徒会長をしてたんだが、俺もなんだかんだ言いながらも手伝うのが楽しかったな」

「先輩が可愛いって//でもあざといって何ですか」

「異性を手玉にとるようにアザとい仕草をしてたんだよ、それで女子の反発を受け生徒会長に勝手に立候補させられて、何とかしてくれって奉仕部に来たんだ。それで見返したいなら生徒会長になれって言ってな」

「そっちの私はそんなことしてたんですね」

「だが生徒会長になってからやらなくなったようだな、俺には相変わらずだったけど。奉仕部員でもないのに何時もこの部室に遊びに来ていたな」

「それは多分先輩のことが//」

 

こっちでは生徒会長もしていないし、アザとい仕草もしてないのか。苛められることは無いのだろうが一色も容姿で苦労しているのだろう。

 

「ヒキオ。じゃあさ、その...あ、あーしでも良いの?」

「何がだ、主語を入れてくれよ」

「あ、あーしでも抱きしめれる?」

「いや、それはあれがあれだから」

「やっぱり駄目なんだ...」

「..勘違いするなよ三浦。そのな...最近、雪乃と結衣を毎日抱きしめて居るが理性が持たないんだよ。誤ってここで何かしたらそれこそ取り返しがつかないだろ」

「八幡君、貴方には分からないかもしれないけれど、私達を抱きしめたいと思ってくれる人はいないのよ。私は八幡君に抱いて貰ったおかげで、前向きに生きようと思い直せたわ」

「うん、あたしも今のヒッキーと出会うまではさ、もう諦めてたよ。でもこんなあたしでもヒッキーは抱いてくれて何度もエッチして求めてくれたことが嬉しくて、負けずに頑張ろうって思えたんだ」

 

結衣は何言ってんの!?エッチしたなんて言わないで!!

 

「ヒキオ。二人が羨ましいし、あーしも抱いてほしいし//」

「..分かったよ、抱きしめれば良いんだな。ただ生理現象が起こっても文句言うなよ」

「あ、あーしで興奮してくれるの!?」

「当たり前だろ、三浦やここに居る皆は俺には勿体ないぐらい美人で可愛いんだぞ」

 

俺がそう言うと三浦は恥ずかしそうにしながらも、俺の前まで移動してきたので、俺も立ち上がり三浦と向かい合っていた。三浦は股間が気になるようでチラチラ見てきている、そんな風に見られると本当に恥ずかしいのだが。

 

「じ、じゃあ、だ、抱きしめるからな」

「う、うん//あーしも名前で呼んでほしいし」

「..優美子//」

「ひきおぉ//」

 

俺が優美子を抱きしめると、優美子も俺の背に手を回してきていた。優美子の胸が押し付けられて股間は瞬く間に反応してしまい、押し付けるようになってしまったが優美子は顔を真っ赤にしながらも離れることはなかった。暫くすると優美子はすすり泣きをしだしたが、俺はお構いなしに抱きしめ続け頬にキスすると優美子は力が抜けてしまったようで俺にもたれかかってきたので、椅子に座らせたが俺に向かって両手を上げてきている。

 

「ひきおぉ//もっと//」

「優美子はもう良いでしょ。ヒキガヤ君、私もお願いしていいかな」

「海老名さんも俺で良いのか」

「うん、ヒキガヤ君は私にも普通に接してくれるでしょ。それだけで嬉しいんだよ」

「分かったよ、じゃあ立ってくれ」

「うん//優美子と一緒で名前で呼んでほしいな」

「姫菜//いいか」

 

そう言うと姫菜は俺に抱きついてきた。姫菜は既に涙を溜めていたが泣き出してしまったので、俺は抱きしめ頭を撫でながら頬にキスしたが姫菜もふらふらしだしたので、椅子に座らせた。

 

「うぅ不味いよ//ヒキガヤ君が居ないともう、生きてけないよ//」

「大袈裟だな姫菜。いろはもするか」

「はい//せ、先輩、ゆ、ゆっくりしてください//」

「いろは、おいで」

 

俺がいろはを抱きしめたが、いろはは身体の前に両手を置いていて、俺との距離を詰めないようにしていた。暫くするとその手をゆっくり下におろしていき、いつの間にか俺の背中に手を回してきていた。

 

「しぇ、しぇんぴゃい//ヤバいでしゅ//ヤバいでしゅ//」

「そんなに緊張して可愛いな、いろは」

「しぇんぴゃぃ//」

 

俺が額にキスすると、いろはは立ち眩みしたようで崩れ落ちそうになったので、倒れないように抱きよせ、いろはを椅子に座らせた。

 

「ヒキオ、その...あーしもけ、結婚して欲しいし//」

「わ、私も良いかな、ヒキガヤ君//」

「先輩//わ、私もお願いしたいでしゅ//」

「嬉しいんだが雪乃や結衣、後俺との結婚を約束してくれた女性が他に三人いるんだが、みんなに許可貰わないといけないだろ」

「「「え!?」」」

「え!?先に結婚した人たちの許可が要るだろ」

「先輩、結婚でお嫁さん達の許可貰う人っていませんよ」

「いや、駄目だろ。勝手に家に上がり込んだりすることになるだろうから」

「ヒキガヤ君ってやっぱり違う世界から来たんだね、こっちの常識が通じないんだよ」

「でも嬉しいわ、私達のことも考えてくれているのだから」

「うん、反対はしないよ。皆でヒッキーに愛して貰いたいもん」

「..分かった。優美子、姫菜、いろは。俺と結婚してくれ」

「「「はい//」」」

 

俺は三人と結婚することを決めていた、これで八人になるのか。

雪乃と結衣が俺に抱きつき口にキスし出すと、三人にもしてほしいと言われキスをしていた。

今部室に居る五人に迫られ、全く抵抗できない。俺は五人が求めるまま口付けを交わし抱き合っていた。

最終下校時刻を過ぎ、俺が校門前を過ぎると結衣が待っていてくれている。

 

「...ヒッキー、今から大丈夫かな」

「ああ、ただ一回、家に帰っていいか。暫く帰ってないんだよ」

「うん、大丈夫だよ」

「ご両親は何時ぐらいに来るんだ」

「あたしん家、母子家庭なんだ。ママはもう家に居るよ。でも挨拶もあるけど、ママの話を聞いてあげてほしいの」

 

 

俺は一旦家に帰り、結衣のマンションに向かっていくと下まで迎えに来てくれて、結衣に連れられ由比ヶ浜家にお邪魔していた。俺が着くとガハママは迎え入れてくれてご飯をよばれていた。ガハママの料理はおいしかったが、どうして結衣の料理があんなに酷くなるのか見当がつかないな。全く料理しないにしても桃缶はないだろ。

 

俺達は会話しながら食事していたが、ガハママは俺達のことを認めてくれて結衣を頼むと逆にお願いされていた。食事の片づけが終わると、二人で話したいと言われ結衣が席を外す為、自室に移動していった。

 

「ヒッキー君、今日は突然呼び出したのに来てくれてありがとう」

「いいえ、近いうちに御挨拶に来る予定でしたから」

「...あのねヒッキー君、結衣のパパは元々病弱で結衣が小さいとき亡くなったの。でも私は彼が病気でなかったら結婚して貰えなかったわ。彼がこの世に子供を残したいからって私は抱かれたの。私はそれでも良いと思った。

...でも彼は女の子が出来たと知ったとき絶望したわ。そして赤ん坊の結衣を見て...彼は私達を捨てて、そして亡くなったの」

「それって...」

「このことは結衣には言わないで。あの子には優しいパパだったと伝えているから。

彼が居なくなってから結衣を一人で育てたんだけど、私はこんな顔だから誰も振り向いてくれないし、結衣を育てるので精一杯でね。でも結衣にゆきのんちゃんのママのことを聞いて、もしかしたら私でも愛して貰えるんじゃないかって思ってしまってそれだけで疼いてしまっているの」

 

俺はいつの間にか涙が溢れていて、舞衣さんに近づくと抱きしめていた。舞衣さんの悲痛な表情をみてしまうと何も言えなくなってしまう。

こちらの世界でモテないというだけで、苦労して愛して貰えずに今までずっと耐えていたのだろう。俺が舞衣さんの欲求を満たしてあげたい。幸せにしてあげたい。そう考えていた。

 

俺は舞衣さんをお姫様抱っこで抱き上げていた。

 

「舞衣さん、...俺は今から貴女を抱きます。俺と結婚してもらえますか」

「はい//」

 

俺は舞衣さんを抱き上げたまま寝室に入っていった。俺が服を脱ぎ出すとガハママも衣服を脱いで二人とも下着だけになっていた。

ガハママは俺とこうなることを望んでいたのか大胆な下着を着けており、結衣よりも大きい胸で俺は悩殺され引き込まれていく。

 

「もう身体が火照ってしまって我慢できないわ//」

「俺もです、舞衣さんの身体、凄く魅力的です」

 

俺は舞衣さんを抱きしめてキスを交わしていた。舞衣さんの身体は魅力的で舞衣さんは抱いている最中、涙を流しだしたが、俺は彼女の寂しさを打ち消すように狂ったように貪っていた。

 

今は俺との交わりを堪能してくれて隣で眠っている。俺は舞衣さんの唇に口づけをした後、ベッドを抜け出し服を着てリビングに移動していった。

 

「..すまん、また勝手に一人増やしてしまって」

「ううん、ヒッキーありがとう。ママも入れてくれて...あたしね、父親の事知ってんだ。小学校の時にママのとこに父方のお爺さんが来て離婚届を出せって言ってきたの。ママは泣きながら書いてた。でも小さいあたしは離婚って何か分からなかったの。

だからいつも通り過ごしてたんだけど、偶々お爺さんに会って、あたしが挨拶したら吐き捨てるように言われたの..『お前みたいな子は孫じゃない』『産まれて来ない方が良かった』って、その時に全て聞かされたの」うぅ

「結衣...」

 

俺は結衣を抱きしめていた。結衣は身体を震わせ泣いていたが、舞衣さんに泣き声を聞かれたくないのだろう、声を押し殺して泣きじゃくっていたので俺は結衣を抱きしめ続けて頭を撫でていた。

容姿なんて関係あるのか、どんな子でも自分の子供や孫は可愛いものだろ。こちらの世界ではそう言った感情はないのかよ。

 

「...あたし、産まれて来ない方が良かったのかなって、居ちゃいけないのかなって自殺を考えたこともあるの。でもママはあたしより辛いんだって、そんなママ一人に出来ないって。

...でもね、ヒッキーが来てくれて、今ではあたしを愛してくれる、抱いてくれる人が居るんだって思うだけで凄く幸せなの」

「結衣、俺はお前達家族を悲しませない。だから結衣も俺と一緒にいつまでも居てくれ」

「うん」

 

結衣はその後も泣いていたが、暫くすると顔を上げてきたので、俺達はリビングでキスを交わし続けていた。

俺はソファーに座り、結衣を向かい合うように足の上に座らせてキスしていると、舞衣さんが起きてきて俺達のことを横からキスしだしていた。そして俺達三人は夜遅くまで抱き合っていた。

 



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「美醜逆転4」

週末、奉仕部に皆で集まっていると、優美子が顔を真っ赤にして俺に話しかけてきた。

 

「ヒキオ、あ、あのさ。この休みにその...だ、抱いてほしいし//」

「ヒキガヤ君。私も良いかな//」

「先輩、お願いします//」

「俺は良いが場所はどうするんだ。三人とも初めてだろ、落ち着いて出来た方が良いだろうし。俺の家は小町が勉強しているからな、あまり邪魔したくないんだ」

「私のマンションで良ければ、使って貰って良いわよ」

「雪乃、良いのか」

「ええ、もちろんいいわよ。わ、私も一緒に抱いてほしいもの//」

「えぇ!?ゆきのん、あたしも行って良いよね」

 

いきなり五人かよ。俺の身体は持つのか?俺も女性を抱くことに抵抗が無くなっている。抱くのは好きだから良いんだが、どうしても嫁さん達が悲観的な顔をすると断ることが出来ない。

でも今日の夜から三日間もあればなんとかなるか。だがこっちの皆はどうして直ぐに抱かれたがるんだ。

 

「なあ、俺がこんなこと聞くのはなんだが、何で皆すぐに身体の繋がりを求めるんだ」

「私達は今まで誰にも愛されたことが無いのよ、だから愛してくれている八幡君に全てを貰ってほしいの」

「今までこんなことが無かったんで皆、心のどこかでは信じられないと思ってるんだと思うんだ。でもあたしはヒッキーが求めてくれて信じているよ」

「うん、あーしはさ、ヒキオの全てが欲しい。あーしの全てを貰ってほしい。あーしはヒキオの物って安心したいし」

「身体の繋がりだけじゃ分からないかもしれない。でも身体を求め合えばヒキガヤ君をもっと理解できると思うんだ」

「私はただ安心したいんです、先輩が私を愛してくれているって証拠が」

「..分かった」

 

皆は俺に求められいる事を確認したいだけなのかもしれない。そんなので抱いても良いのだろうか、ただそれで俺のことを愛してくれるなら、俺もそれに答えて上げたい。

こちらでは皆、今までの境遇があるので相手が出来れば求めてしまうのだろう。小町も抱いてほしいと言われた事があったが俺は抱いていなかった。小町には高校に入ってからと言ってある。ただ今はお互いを慰めあっては居るが...

皆は俺をこんなに求めてくれている、それはもしかしたら歪な愛の表現かもしれない、ただ俺は嫁さん達を守ることを誓っていた。

 

部活を終了すると、とりあえずそれぞれの家に帰っていった。俺も着替えを取りにいかないとな。用意をし終わり小町に行ってくると言った後、雪乃のマンションに向かっていった。

 

「お帰りなさい、あなた//」

「ただいま、雪乃//」

 

まだ誰も来ていないようで、雪乃は俺をソファーに座らせると、上に跨って座ってきた。

 

「八幡君//皆が来るまで甘えさせてほしいわ//」

 

雪乃はそう言うと俺に抱きついてきてキスしてきた。お昼も部活中も抱き合っているので、雪乃は段々積極的になってきている。今も俺とキスしながら、俺の身体に手を這わせて刺激してくる。俺の股間が反応すると雪乃は妖艶な笑みを浮かべていたが、誰か来たようでインターホンが鳴っていた。

 

「...残念だけれどここまでのようね、また夜にお願いね//」

 

雪乃はそう言って玄関まで迎えに行った。俺、立てないんですけど...結衣が皆を連れて来たようで、4人一緒に来たようだ。雪乃に案内されて、皆がリビングに入ってきた。

 

「「「「お邪魔します」」」」

「ひ、ヒキオ、き、今日はその、..よ、よろしくお願いするし//」

「優美子、緊張しすぎだよ」

「そうですよ、三浦先輩。まだご飯もお風呂にも入ってませんよ」

「だ、だって..」

「優美子、こっちに来てくれ」

 

俺は座ったまま、優美子を俺の方に呼び、俺の足の上に座らせた。そしてキスしだすと段々緊張が解けて来たのか、舌を絡めだした。俺が胸に手を伸ばし擦るようにしていると、声を押し殺しながら喘ぎ声を上げ始めていた。

 

「ヒッキー、そんなにしたら優美子が我慢できなくなるよ」

「俺が既に我慢できないんだよ」

「ひ、ヒキオ。せめてお風呂に入りたいし」

「では優美子さん、八幡君とお風呂に入ってきたらどうかしら。私達はその間にご飯の用意をしておくわ」

「優美子、一緒に入ろうか」

「うん//」

 

俺達が一緒にお風呂に行こうとすると、雪乃が俺に声を掛けてきた。

 

「八幡君、結衣さんも一緒にお風呂に入って貰えないかしら」

「さすがに狭くないか」

「大丈夫よ、この間も三人で入ったでしょ//お湯は張り直せばいいのだから」

「ゆきのん、あたしも入っていいの?嬉しいけど三人だとお風呂狭いよ」

「..私と姫菜さん、いろはさんで御飯を作るのよ、結衣さんが暇になるでしょ」

「じゃあ、あたしも手伝うよ、ゆきのん」

「..お風呂に行こうか。結衣」

「どういうことだし!?」

 

俺は結衣の腕を引っ張ってお風呂に向かっていった。優美子は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、後ろを付いて来ている。

俺と結衣が服を脱ぎだすと優美子は俯いていたので、俺と結衣が先に風呂に入っていった。

 

結衣が俺を椅子に座らせ身体を洗ってくれていると、遅れて優美子が入ってきていた。俺の背でどうすれば良いのか困っているようだったが、結衣が俺の前に回り込んでいた。

 

「あたしがヒッキーの前を洗うからさ、優美子は背中をやってね」

「う、うん//」

 

結衣は俺の前にしゃがんで洗ってくれているのだが、手にボディソープを付けて洗ってくれているので擽ったい。結衣は顔を真っ赤にしながら、俺の股間も洗ってくれていたので既にやりたくてしょうがないのだが。

 

「俺も洗おうか」

「ううん、ヒッキーに触られると我慢できなくなっちゃうもん」

 

頭を二人で洗ってもらい俺が湯船に入ると、それぞれが身体を洗い出したが、優美子は恥ずかしいのだろう、タオルで身体を隠していた。

 

「えい!!」

「きゃっ!!ゆ、結衣、何するし!!た、タオル返すし//」

「駄目だよ優美子、ヒッキーに見て貰わないと」

「..う、うん。で、でも恥ずかしいし//」

「優美子、お前の綺麗な身体を見せてくれ」

「..うん//」

 

優美子はそう言うと俺から顔を背けながら胸と股間から手を退けていた。優美子も綺麗な身体だな、腰の括れも凄く、胸の形も綺麗でバランスが整っている。

結衣が先に洗い終わり俺と向かい合って座っていると優美子が浴槽に入ってきたのだが、俺と結衣の間しか開いておらず恥ずかしいのか俺に背を向けて入ってきたので、俺は後ろから抱きしめていた。

 

「ひ、ヒキオ、恥ずかしいし//」

「いいだろ、優美子」

 

俺は後ろから胸に手を回し揉みながら後ろから首筋を舐めていた。

 

「あ、ぁぁ//お、お願いぃ、い、今はやめてぇ//」

「..そんなこと言いながら、抵抗しないんだな」

「だ、だってぇ//き、嫌われたくないし」

「そんなことで嫌わないぞ、抵抗されてるのを責めるのも楽しいしな」

「ひ、ひきおぉ//へ、変態だし//あ、あぁ、だ、だめぇ//」

「..ヒッキー、やり過ぎだし」

 

結衣にそう言われ、俺は手を離したが優美子は俺に身体を預けたまま、荒い息遣いをしていた。

 

「はぁはぁ、もうのぼせそうだし」

「そうか、じゃあ俺達は出ようか。結衣、先に出るよ」

「うん、あたしはもうちょっと浸かってるね」

 

俺はそう言って優美子を支えながら浴槽を出て行った。優美子は動けないようで俺が身体を拭き、裸のまま以前雪乃と結衣を抱いた部屋まで抱えて連れて行った。

 

「え!?ひ、ヒキオ?」

「俺は今から優美子を抱くから」

「で、でもあーs」ブチュッ

 

俺は優美子の唇を塞ぐようにキスしていった。優美子と布団の上に座り抱き合うようにキスしていると、優美子も俺に手を回してきたので、俺は優美子の身体に手を這わせていった。

 

「あ、あーし、初めてだから優しくして//」

「ああ分かってるよ、優美子。綺麗だぞ」

「ぁあ//ヒキオ、ううん、八幡//好き、大好き//あーしを八幡だけの物にして//」

「愛してる、優美子//」

「あーしも愛してる//」

 

俺はバスタオルを敷いて、優美子をその上に寝かせていた。この間、初めて雪乃と結衣を抱いた時は一杯汚してしまったからな、今日は五人相手にするんだ。雪乃の為にも掃除が楽な方がいいだろう。

 

優美子を抱き始めると泣き出してしまった、痛みが酷いのだろうか。三浦も初めてだったからな、余り酷いようなら途中でも止めた方がいいだろう。

 

「大丈夫か優美子。これ以上は止めておくか」

「ううん、あーし今、凄く嬉しいし。今、八幡と一つになったんだよね//」

「ああ、俺も嬉しいよ」

「あああ//もっと八幡を感じさせて//」

 

優美子は俺を受け入れてくれたが泣き出してしまったため、俺はゆっくりと優美子を抱いていった。優美子は泣きながらも途中から悦楽の表情を浮かべ出したので、優美子をゆっくりと満たしていった。

 

今、優美子は俺の腕を枕にして俺を抱きしめてきている。

 

「あーし、抱かれてこんな幸せな気分になるって思ってなかったし」

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「ごめん、さっき泣いちゃって。...あーし曲がったことが嫌いですぐに口に出ちゃうし、黙ってること出来なくて、昔からよく皆に注意したりしてたし。でもお前なんかに言われたくないって、ブスが何言ってんだっていっつも言われてた。

..悔しかった、本当は泣き叫びたかった。今でも思い出すと自分が情けなくなるし...でも八幡に抱かれてるとそんなこと忘れられて、今八幡に愛されてるんだって、八幡の体温を感じるだけで幸せになれるし」

「俺も優美子と身体を合わせられて嬉しいぞ、今からまた抱きたいんだが」

「うん//あーしの中、もっと八幡で一杯にして//」

 

優美子は俺の上に移動してくると、口づけを交わしていた。俺達が二回戦を開始しようとすると、いきなり扉が開かれていた。

 

「優美子、ハチ駄目だよ。今度は私なんだから」

「そうですよ、御飯作ったのに何を二人だけで盛り上がってんですか」

「ヒッキーも優美子もお祝いのご飯食べずに何してんだし」

「優美子さん、貴方は私達が抱かれてからよ」

「う、うぅ、もっと抱いてもらいたいし//」

「スマン優美子。お祝いってことだから、とりあえずリビングに行こうか」

 

俺と優美子はお風呂に入り、軽くシャワーで汚れを落としてから、リビングに入っていった。食卓には色々な料理が並んでいて、皆で結婚を祝いながら頂いていた。

 

お祝い後、皆でソファーに座って会話をしていたが、姫菜はソワソワしているな、今からエッチな事をすることを考えているのだろうか。

 

「姫菜、こっちに来てくれないか」

「う、うん//」

 

そう言って、俺は姫菜を前に座らせていた。会話をしながら後ろから手を回し、お腹に手を這わせていると、姫菜は全く喋らなくなってしまった。

俺は服に左手を入れて胸を擦り、右手はスカートの中に手を入れていった。姫菜は声を出すのを我慢していたが、俺はお構いなく、姫菜を触りながら皆と会話をしていた。皆も姫菜の表情に顔を赤くしながらも俺との会話をしてくれている。

そのうち姫菜は可愛い声を上げ始めていた。

 

「お、お願いぃ//や、やめてぇ//は、ハチぃ//..わ、私を弄ぶときはもっと私だけ見てよ!!」

 

姫菜は俺の手を掴み怒り出していた。ちょっとやり過ぎたな。弄ぶっておかしいだろ、いや今は確かに弄んでいたかもしれないが。

 

「す、すまん。そんなに怒るなんて思わなかった」

「ごめんなさい、でも片手間で抱いて欲しくないから」

「いや俺が悪かった。そうだな今から部屋に行こうか」

「..うん、抱かれる前にお風呂に入りたいな//」

「我慢できないんだ、このまま抱くから」

 

俺は姫菜を抱きあげると、落ちないように姫菜は俺の首に手を回してきてので、俺は皆に行ってくると言ってリビングを出て行った。

 

「ね、ねぇ。お風呂入りたいよ。今日体育有ったからさ」

「..分かった」

 

俺は姫菜を抱っこしたまま、お風呂に向かっていった。姫菜を降ろしたが服を脱ぐのを躊躇っていたので、俺は姫菜の服に手を掛け脱がせていった。

 

「は、恥ずかしいよ//」

「一度やって見たかったんだよ、俺に服を脱がさせてくれ」

「う、うん//」

 

俺が服を脱がせていき、ブラを取ると姫菜は手で胸を隠したので俺は両手で姫菜の両手首を握って隠せないようにした。そして姫菜の前に跪き、パンティを口に咥えて少しずらしては違うところを咥えずらすといった事を繰り返して焦らしていくと姫菜は身体中、真っ赤にしていた。

 

「は、恥ずかしいよ//」

「綺麗な身体だな、姫菜」

「あ、ありがとうハチ//」

 

俺は姫菜を脱がせた後、自分も服を脱ぎ一緒にお風呂に入っていった。

 

「姫菜、綺麗だぞ」

「ありがとうハチ。私も愛してね//」

「ああ」

 

俺はお風呂で姫菜とキスを交わし浴室で抱いていた。今は二人で浴槽に入り後ろから抱きしめている。

 

「もう、 結局汗を流す前に抱かれたよ」

「姫菜の汗は良い匂いだったぞ」

「は、恥ずかしいよ//」

 

そう言って俺はまた姫菜を後ろから責めていた。

 

「だ、ためぇ//この後、いろはちゃん抱くんでしょ」

「..そうだな。じゃあこっちに向いてくれ」

 

俺は姫菜を股座に座らせ、浴槽で口づけを交わし続けた。

 

「嬉しいハチ。私がこんなに満たされることが有るなんて思わなかった」

「これから幾らでも満たしてやるよ」

「うん、お願いね。でも私を受け入れてくれる人が居るなんて思わなかった。

...私ね、小学校の時、虐められてたの。ずっとこのままかなって思ってたんだけど、中学の時、他の小学校から来た子が私の友達になってくれてその子がBL好きでね、私もいつの間にか好きになってた。

それを二人で見てると皆が気持ち悪がって誰も私達に関わらないようにしてたんだ。でもそこから虐められることはなくなった。皆が私達を居ないものとして扱ってくれたから」

 

姫菜はそう言うと涙を流しだしていた。

 

「でも私の唯一の友達も転校しちゃってそれから私一人だった、寂しかった。誰も話しかけてくれなかった。

...総武に入っても一緒。誰も話しかけてもくれない、私が話しかけても無視される。でも高二で優美子と結衣に出会って、私にも友達が出来た。だからこの関係は壊したくない。私にとって唯一の拠り所だったから。

私が総武に入ったのは大学から授業料免除してもらうため、勉強頑張るためだったんだ。家でも私は居ない人。父親なんて顔も合わしてくれない。母親も食事を与えれば良い。って感じで話もまともにしてくれない。だから大学入ったら家を出るの」

「...」

 

授業中、一心不乱に何かを書き込んでいたのは勉強していたのか。BLを書き込んでいると思った。でも何で両親からそんな扱いを受けているんだよ。

 

「..でもね、今はハチが私を求めてくれた。それだけで凄く幸せなの。このままハチと一緒に居たい。家にも帰らず、ずっと求められたい。...八幡君。私を捨てないでください」うぅ

 

姫菜は俺にそう言うと泣き出してしまった。今まで誰にも相談できなかったのだろう、俺は姫菜を力一杯抱きしめていた。

 

「姫菜。俺はお前を、お前達を捨てたりしない。俺も皆といると幸せになれるんだ。..今は無理だが何時かは一緒に住もう」

「はい//」

 

俺達はまた風呂で抱きしめあいキスしていた。姫菜はキスしながら涙を流していたが、俺とのキスに喜んでくれていた。

 

「先輩、今度は私ですよね//」

「ああ、いろははお風呂入るのか」

「家でシャワー浴びてきたのでこのままでも良いですよ」

 

いろはがそう言ったので、俺はいろはを抱え上げて布団の敷いてある部屋に向かっていった。

 

「せ、先輩。お、お願いします//」

「緊張しすぎだぞ、いろは」

「だ、だって先輩に抱いて貰えるなんて//」

 

俺といろはは寝室に入っていったが、いろはは俯いたまま顔を上げずにいた。

 

「先輩、..本当に私で良いんですか」

「俺はいろはが良いんだ。でもどうしてそんなこと言うんだ」

「..私は今まで誰とも仲良く出来ませんでした。友達だと思っていた子も私から段々遠ざかっていって誰も私と一緒に居てくれせんでした。..私は先輩のことが好きです。でも先輩が私から離れて行くんじゃないか、何時かは捨てられるんじゃないかって、私なんかここに居ちゃいけないんじゃないかって、今でも怖いんです」

 

いろはの学年には誰も友達と呼べる人はいないのか、最近は明るく振る舞っていたがそれも俺達の前だけで、やせ我慢していたのかもしれない。俺はいろはを抱きしめて頭を撫でていた。

 

「いろは、言葉だけじゃ伝わらないかもしれないが、俺はいろはが欲しいんだ」

「..先輩。私を離さないでいてくれますか」

「ああ約束する。絶対にいろはを悲しませない」

「お願いしますね、先輩」

 

いろはは泣きながら顔を上げてきたが、涙を流しながら浮かべてる笑顔に俺は見惚れていて、いろはの全てを欲しくなり唇を重ねていた。そして俺はいろはの初めてを奪っていた。

 

「先輩嬉しい。こんなに満たしてくれてありがとうございます」

「俺の方こそありがとうな、いろはを抱けて嬉しいよ」

「これからもっともっと抱いてくださいね」

「ああ、時間は幾らでも有るんだ。幾らでも愛してやるよ」

 

俺といろはは口づけを交わして約束していた。顔を離すといろはは欲情しだしたのか、顔を真っ赤にしながら俺に手を這わせてきて、俺の上に跨がろうとしてきている。

 

「今からもう一回良いですよね、優美子先輩と姫菜先輩はもう抱いて貰ったんですから」

「まだ雪乃と結衣が居るだろ」

「あの二人は何回も抱いて貰ってますから大丈夫ですよ」

 

バタン

 

「何が大丈夫なのかしら、いろはさん」

「いろはちゃん、そんなこと言うんだ」

「あーしらを差し置いて何してんだし」

「いろはちゃんは最後だよ、私もまた抱いて貰わないといけないから」

 

なんで四人とも部屋に入ってくるんだよ、それより..

 

「..なあ、もしかしてドアの前で聞いてたのか」

 

俺がそういうと、いろはは顔を真っ赤にしているが4人も顔を赤くしていた。はぁ、何で人の情事を聞いてんだよ。

 

「だ、だって次は私だと思うと我慢できないのよ」

「なんでゆきのんが先だし!?あたしも抱いてほしいよ。ヒッキー」

「今から皆で抱いて貰えばいいし、結衣と雪乃も最初は三人だったんだし」

「うん、抱かれるのは後でもハチを感じてたいから一緒に居たいよ」

「そうですね、皆一緒なら抜け駆けも出来ませんし」

 

皆がそう言うと俺ににじり寄ってきていた。何で皆発情期みたいになってんだよ。目が怖い、既に三回してて5人も相手できるわけないだろ。

雪乃と結衣はじゃんけんしだしたが、雪乃が悔しそうな顔をしていた。結衣に負けたのだろう。

俺はこの休み中、干乾びるんじゃないかと思うぐらい五人に搾り取られていた。

 

 



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「美醜逆転5」

俺達は結婚をしてから教室で結衣、優美子、姫菜で過ごすことが多くなっていた。休み時間中、俺達が話していると、相模が勉強している後ろから女子生徒にシャーペンで背中を突かれていて、勉強の邪魔をされているのが気に障ったので、思わず近寄っていき声を掛けていた。

 

「おい、勉強してる奴の邪魔するなよ」

「え!?何あんた。いいじゃん、ブスが勉強してもどうしようもないじゃん」

「はぁ!?お前たちは容姿が優れてるのに内面が醜いって思われたいのか?人の邪魔するなんて最低な行為だぞ」

 

いや、容姿も優れてるって思ってないよ。俺からしたら相模より数段劣っているからな。まじめに勉強している相模なんて超レアだろ。そんな奇行種いや希少種を無くそうとするなよ。...どちらの言い方も酷いな...

 

「...わ、分かったよ」

「スマン相模、勉強の邪魔して悪かったな」

「あ、ありがとう比企谷//」

 

相模が俺に素直にお礼を言うなんて...変な気分になりながら俺が相模の所から自分の席に戻っていく途中、離れた席から川崎が俺の方を呆然と見ていた。話しかけられることもなかったので、そのまま過ごしていたが。

相模はそれからちょっかいを出されることは無くなったようで休み時間も勉強を頑張っていた。

ただ相模は時折、俺と目が合っては顔を赤くしていたが熱でもあるんじゃないか。勉強し過ぎて知恵熱を出さなければいいが。

 

放課後、俺は嫁さん達と一緒に雪乃が淹れてくれた紅茶を飲みながら皆とキスしていた。

部室の扉をノックする音が聞こえてきて雪乃が返事をすると川崎と相模が入ってくる。

 

「あんた相模を助けてたけど、どういう事」

「その事か、俺はああいった行為が嫌いなんだ。抵抗しない相手になんでもして良いと思っている連中が嫌いなんだよ」

「比企谷、ありがとう//」

「俺は何もしてないからな」

「ううん、それでもうちは助かった。だからお礼を言わせて...ありがとう比企谷//」

「あのさ、この状況を教えて貰いたいんだけど」

 

川崎はそう言って俺達の方を見渡していた。川崎や相模には信じられないのだろう。ただ俺は好きな嫁さん達と一緒に居るだけなんだが。

 

「俺は皆と結婚したんだ。だから一緒に居るだけだ」

「え!?ひ、比企谷?それって」

「..みんな、俺達のことを二人に説明して良いか」

 

俺がそう言うと皆が頷いてくれたので、俺は川崎と相模に皆と結婚したこと、違う世界から来たことを説明していた。

 

「川崎はモデルって言っても良いぐらい身長もあるし綺麗だからな、そんなお前が俺が転んでいるとき気にせず短くしたスカートで通りすぎるからドキドキしたよ」

 

夜、お世話にもなったからな、こちらの川崎にこんなこと伝えるのもどうかと思うが。

 

「私なんかで興奮してくれるんだ//」

「だが、こっちではどういう繋がりなんだ?俺が知っているのは深夜アルバイトでバーテンをしていたんだが、言っちゃなんだが、こっちではバーテンとか難しいだろ」

「私が深夜、ビルの清掃員をしてたら、あんたが来てスカラシップを教えてくれたんだよ」

 

アルバイトの内容は異なっているがやったことは一緒なんだな、どういった経緯で依頼が来たかは不明だが。

 

「相模については俺の事嫌っていたからな、でも可愛いとは思っていた」

「可愛いって//..でも比企谷を嫌ってたなんて、そっちのうちをぶん殴りたい」

「それは俺にも非があるからな」

「うちは文化祭でクラス委員として比企谷と出席してたんだけど、皆が面白がって委員長にさせられたの。雪ノ下さんが副委員長してくれたんだけど、誰もうちらの言うことは聞いてくれなかったの。

比企谷も含めて10人ぐらいで頑張ってたんだけど、無理して雪ノ下さんが倒れてね。それで比企谷が自分に悪意が向くようにしてなんとか実行委員を立て直してくれたんだ」

 

俺の知っている文化祭とは異なるようだな、委員長を相模がしていたのは一緒だが、話を聞く限り一生懸命やっていたのだろう。

 

「じゃあさ、比企谷。私でもその..け、結婚して貰えるの//」

「う、うちも比企谷のお嫁さんになりたい//」

 

俺が周りを見渡すと皆、頷いてくれたので俺は結婚を申し込み、二人は受け入れてくれていた。ただその後、二人にキスをしたのだが、未だに誰かに見られると照れてしまうので俺は顔を真っ赤にしていた。

二人は俺以上にテンパっていて、頭から湯気が出るんじゃないかと思うほど顔を赤くしている。

 

沙希と南を椅子に座らせると、俺達を見ていた5人からもキスしてほしいとせがまれ、その日も部活はイチャイチャチュッチュしているだけだった。良いのだろうか、今は本当に俺に対するご奉仕部になってきてる気がする。

 

 

「八幡おはよう、あの...話を聞いてほしい人がいるんだけど」

 

俺が教室に入ると南がなんだか申し訳なさそうに俺に話しかけて来ていた。なんだ、話を聞いてほしい人って。

 

「おはよう南。昼休み皆が居ていいなら部室とかでも良いか」

「うん、ありがとう。じゃあお昼休みに部室に連れて行くね」

 

その後、沙希、優美子、結衣、姫菜が来て挨拶し話していると、コソコソ話しているのが聞こえてきた。どうも俺のことをブス専とか言っているようだが、そんなのは放っておけばいい。俺は気にせず皆と話していた。

 

俺が皆を誘って部室に行くと、雪乃は既にいて紅茶を用意してくれていた。今日は沙希が弁当を用意してくれていたので、俺は沙希の弁当を頂いていると、ノックする音が聞こえ、南を先頭に城廻先輩が入ってきた。その後、一色も続いて入ってきた。

 

「遅れました!!」

「いろはさん、こんにちは」

「ずるいですよ、雪乃先輩、沙希先輩。私も先輩の隣に座りたかったのに」

 

いろはは元々明るかったのだろう、段々俺の知っている元の世界のいろはに行動が近づいて行っている気がする。

 

「それで南、城廻先輩を連れてきてどうしたんだ」

「まず話す前にさ、自己紹介していいかな。初めましての人もいるから。私は三年の城廻めぐり、比企谷君と一緒に文化祭の実行委員してたんだ」

 

城廻先輩は生徒会長ではないのか。あまり考えたくないが容姿だけで生徒会長が選ばれるなら城廻先輩には難しいのかもしれない。

 

「そのまずは謝らせてほしいな、比企谷君が文化祭を立て直してくれたのに気づかずに最低って言っちゃってごめんなさい!!」

「気にしてませんよ」

「ありがとう、それでさ比企谷君、皆とのこと聞いて良いかな」

「..南、俺の事、言ったのか」

「うん、八幡がうちと結婚してくれること嬉しくて言ったの。...黙ってた方が良かったのかな」

「いや大丈夫だ。それでどういったご用件ですか」

「比企谷君、私とも結婚してほしいな」

「...すみません、今は受け入れれないです」

「え...」

「俺は誰でも受け入れられるほど、人は出来てませんし城廻先輩のことも余りよく知りません。先輩にとって結婚は軽いものかもしれませんが、俺は一生支えあっていきたい人と結婚したい」

「..そうだよね、でも私にもチャンスはあるのかな」

「ええ、これから関わっていけばお互いのことが判るのでそれからでも良いですよね」

「うん、これからお願いします」

 

俺達は中断していた昼食を頂きだしたが沙希の弁当は本当にうまい。俺が褒めているといろはや姫菜、南も弁当を作りたいと言い出した。

 

「比企谷君、私もお弁当作ってきていいかな」

 

なぜか城廻先輩も作ってくることになったみたいだな。俺の昼飯代が浮くのは嬉しいのだが、向かいで結衣がなんだか怪しい顔をしていた。

 

「ヒッキー、あたしもクッキー焼いてくるね!!」

「ごめんなさい!!皆を置いて死ねないです」

「ひどいっ!!」

「結衣さん、黒檀は食べれないのよ。皆でバーベキューするときに作ってくれれば燃料として使用できるわ」

「ひどいっ!!」

 

結衣が頬を膨らませて怒っているが、何だか和んでしまったな。こっちに来てから皆の笑顔を見ることは少なかったが、今は皆屈託のない笑顔を見せていた。

 

「ふふ。...冗談はここまでで私から皆に伝えたいことが有るのだけれど、今日の放課後ここに集まれるかしら。大事な話があるのよ」

「それは私も聞いて良いのかな」

「ごめんなさい、八幡君と結婚している、する事が決まっている人だけ集まってほしいの」

「しょうがないよね、私はお弁当を頑張るよ」

 

お昼休みが終わり、午後の授業を受け6限目の授業が終了すると、俺は平塚先生に呼び止められていた。

 

「比企谷、話があるのだが生徒指導室に来れないか」

「..それは今じゃないと駄目ですか、今日は大事な用事が奉仕部であるので」

「何も聞いていないがそれは私も行って良いのか」

「すみません、内容については雪乃しか知らないので俺からは何も言えないですよ」

「では私も向かおう。駄目であれば出て行くよ」

 

俺と平塚先生は話をしながら奉仕部に向かっていくと、先生は笑みを浮かべながら俺に話しかけて来ていた。

 

「比企谷、なんだか雰囲気が変わったな」

「..俺は変わってませんよ」

「そうか、君がそういうのであれば変わっていないのかもな。だが私から見れば良い変化だよ。君の周りは変わっていっている、皆いい笑顔をするようになったじゃないか」

「そうですね、俺には眩しいですよ」

「君も良い笑顔をするようになったな」

 

俺はいつの間にか笑っていたらしい、俺達が部室に入っていくと皆が既に来ていた。平塚先生は雪乃に居ても良いか確認し、聞くのは良いが口を挟むなと言われていた。

平塚先生は壁にもたれていたが、その立ち姿も格好が良い。何でこの人は立っているだけで格好いいんだよ。

 

「集まったようね。昨日、母さんから提案があったの。よければだけれど私の実家に皆で住まないかと言われたのよ。もちろん八幡君も一緒に」

「あたしは無理かな、ママを一人に出来ないもん」

「結衣さん、貴女の御母様ももちろん一緒に住んでもらっても構わないわ」

「え!?じゃあさ、ヒッキーと皆で一緒に居れるってこと!?」

「そうね、八幡君はどうかしら」

「そうだな、小町にも伝えないといけないが良い案だと思う。...だが雪乃の父親は良いのか」

「....あの人はもう帰ってこないわ。私達と係わりたくないからって、でも離婚は出来ないから母さんに契約書を書かせたの、お互い何が有っても干渉しないって。あの人は選挙のため雪ノ下の姓だけが欲しかったのよ。...母さんも雪ノ下姓を他の女性に、子供が出来ても使わせないようには契約したのだけれど」

「そんなことが..」

 

ママのんは言わなかったが、俺には想像できないほど辛く悲しい思いをしたのだろう。

 

「でも良いの、それのおかげで八幡君を家に迎え入れれる。母さんも八幡君が来てくれることを心待ちにしているわ。

皆も家の事情もあるでしょうから無理にとは言わないけれど、もし八幡君が住んでくれれば都合のいい日に泊りに来てくれれば良いのよ。もし八幡君が来れなくても愛し合う部屋は欲しいでしょ」

 

皆、考えているようだな。まだ親に頼って居るから一人で決めれないだろう。俺の気持ちとしては雪ノ下家に住みたい。そうすれば嫁さん達と毎日一緒に居れるからな、ただ小町を一人家に残しては行けない。

 

「雪ノ下、聞いても良いか」

「どうされましたか先生」

「君達は一緒に住むと言っているがどういう事だ」

「私達は八幡君と結婚したんです。私の母さんも姉さんもです。八幡君と一緒に住みたいからと提案してきたんですよ」

「雪ノ下の母親もか、皆おめでとう。比企谷、皆を守ってあげろよ」

 

先生に素直にお祝いを言われるとは思っていなかった。こっちの先生は結婚願望は無いのか?皆にお祝いを言っていて、恨み言をいわないのだが。

 

「..先生は結婚願望はないのですか」

「私を貰ってくれる人がいるならしたいがそんな人はいないからな、このまま教師を続けるよ」

「先生は何で教諭に」

「..私は小さいときから虐められていてな、自分の容姿を恨んだが高校の時の担任が奉仕部を作ってくれて、私のような者に居場所を作ってくれたんだ。その先生が私に教師を進めてくれて教諭を目指したんだよ。私のような子達に手を伸ばしたくてな」

「先生、もしかして私をここに入れたのも..」

「ああ、雪ノ下も陽乃も私より酷い誹謗中傷を受けていた。とても見ていられなかったが、私が出ていっても酷くなるだけだから最初は他の先生にお願いしたが動いてくれなくてな、学校の中にいれる場所を作ったんだ」

「..先生、ありがとうございます」

「比企谷を入れたのは人の容姿だけで判断せず、人の内面をみようとしていたからな、入れ方は誉められたものでは無かったが、今こうして皆と結婚するまでに至ったんだ。私は間違っていなかったと思っているよ」

 

雪乃は瞳に涙を溜めて俺を見つめていて、そんな俺達を見た皆が俺に向かって頷いてきた。

俺も10年早く産まれていたらとか考えたこともあったんだ。先生一人なら悩むだろうがこっちは重婚出来るからな。俺は立ち上がり先生の前まで歩いていった。

 

「..静さん。俺と結婚してもらえませんか」

「ひ、比企谷!?にゃ、何を突然言い出すんだ//」

「静さんは俺達のことを見てくれている、今までそんな教師いませんでした。俺は静さんに憧れています。俺に静さんの一生をください」

「比企谷ありがとう//...だが返事は少し時間をくれないか、突然すぎて何も考えられないんだ」

「えぇ、良ければ雪ノ下家に来ていただいて、皆の話を聞いて貰っても良いかもしれません」

「ああ//だが今までこんなこと言われたことないから、パニックを起こしているんだ。ちょっと落ち着くまで座らせてもらうよ」

 

そういうと先生は椅子に座っていた。真っ赤な顔をしているが、若干ニヤけているように見える。口をもごもご動かしてでも何も言葉を発せず、俺の方を見て目が合っては視線を逸らされていた。

 

「先生がポンコツになったのは放っておいて、私は雪ノ下ん家に行けないな。下の子を面倒見ないと行けないし、家のことをしないといけないからね」

「沙希さん、来れる時で良いわ。でも八幡君とゆっくり出来るところがあると良いでしょ。実家ならお風呂も大きいので八幡君や皆と入れるわよ」

「ひ、比企谷とお風呂//」デヘヘ

 

なぜか先生が反応してしまっている、沙希と南以外は既に抱き合っているからお互いの裸はみているが、先生は免疫がないのだろう。未だに俺の方を見ては顔を真っ赤にしているのだが。

 

「あーしは行く。雪乃よろしくするし」

「うちも出来れば行きたいな」

「雪乃さん。私は行くよ、家であまりいい顔されてないからさ...」

「私も一緒です、だからなんとしても行きます」

「優美子さん、南さん、姫菜さん、いろはさん。もし八幡君が来れなくても来てもらって構わないわ、私もマンションから実家に戻るの。皆と一緒なら毎日が楽しくなりそうね」

「比企谷に求められて//手足を縛られて嫌がっている振りをしている私を玩具でさんざん弄んで凌辱されて//」デヘヘヘヘ

 

静さんはMなのか。嫌がっている振りとか言っちゃってるし、妄想がとんでもない方向に突っ走っている。でもこれってもうOKってことじゃないの。

 

俺の気持ちはもう決まっている。ただ小町も連れて行きたい。最終下校時刻まで皆と雪ノ下家に行くことを話していた。それを小町にも伝えないといけないので、俺は自転車で自宅に向かっていた。

 

ふと近所の公園のベンチが目に付き、スピードを緩め改めて見てみると、知っている女性二人が泣いているようだった。はぁ、俺には関係ないことだろうが、見てしまうと気になってしょうがない。

俺は自転車を止め二人のもとに歩いて行った。そういえばこちらでもう一人と面識はあるのか?分からないが知っている方に話しかければいいだろう。

 

「..折本」

「ひきぎゃあぁ」うぅ

「どうしたんだ、こんな所で」

「う、うっさい!!振った女なんて構わないでよ!!私に優しくしないで!!あんたに見られたくないからどっかに行ってよおぉ!!」うあぁぁ

 

俺が折本を振った?こっちの世界では立場が逆転しているのか。仲町さんは折本を介抱していたようで俺は仲町さんの方を見ると彼女は自己紹介しだした。

 

「は、初めまして...海浜総合2年の仲町千佳です」

「比企谷八幡、総武高校2年だ。折本とは中学の同級だ」

「貴方が比企谷君だね//かおりから聞いてるよ」

「それで何があったんだ」

「比企谷帰ってよ!!あ、あんたに見られたくないからあ!!」うわあぁぁぁ

 

折本は俺に突っかかってきそうだったが、また泣き出してしまい仲町さんに抱かれていた。俺が仲町さんの方を見ると彼女は淡々と話しだしていた。

 

「かおりと私は海浜なんだけど生徒会の手伝いをしてたの、もうすぐ卒業式だから。

私達でも何か皆の役に立てればなって。でも今日、私は掃除当番だったんで、かおりだけが生徒会室に向って、扉の前まで行ったら中から...私達を誹謗する話し声が聞こえてきたそうなの」うぅ

「そうなのか」

「私とかおりは皆の役に立てればって、少しでも先輩達に感謝を伝えたくて、先輩達の為に何かできればって思って!!

でも私達は何をしても認めてもらえないの!!駄目なの!!

私達が醜いからって、手伝いもしちゃいけないの!?どうしてよ!!仕事に関係ないじゃない!!私達の事なんて誰も見てくれない!!いらない人扱い!!

私達だってお世話になった先輩達に感謝を伝えて送り出したいよ!!ちょっとでも役に立てるなら手伝いたいよ!!それもさせてくれないなら全部、綺麗な子だけ集めてすれば良いじゃない!!」うわぁぁぁ

 

仲町さんは俺の服を握りしめて感情を吐き出し、泣き出してしまった。俺は二人の頭を俺の腹の方に引き寄せ頭を撫でていた。二人はビックリしていたが俺の腕や腰に手を回してきて泣き続けている、俺はこの二人を何とか守れないか考えていた。

 

「ありがとう、比企谷君」うぅ

「...どうして優しくするのよ、中学の時も...私に興味ないなら優しくしないでよ」うぅぅ

「ごめんなさい、関係ないのに比企谷君に当たり散らして」

「いいんだ、よく頑張ったな」

 

そう言って俺は二人の頭を撫で続けていた。ただこの後どうすれば良いんだ。折本ならもしかしたら俺を受け入れてくれるかもしれない。ただ仲町さんは俺と初対面だから可能性は少ないだろう。

ただ彼女も放っておけない。今日、城廻先輩を断ったが、俺にはただ結婚したいということしか分からなかった。だが仲町さんは結婚とかではなく、自分の容姿でひどい扱いを受けているのが伝わってきた。そんな仲町さんを放っておけない。

ただ彼女は俺のことを何も思っていないはずだから受け入れてくれないだろう、異世界から来たとかも結婚相手以外には言わない方が良いだろう。

 

「..俺から見たら二人とも綺麗なんだよ」

「そんな見え見えの嘘つかないでよ!!」

「嘘じゃない折本。顔を上げてくれるか」

 

折本は首を横に振り顔を上げなかったので、俺は折本の顎に手を伸ばし顔を上げさせた。折本の眼は赤く、未だに涙を流して唇を震わせていたが俺は構わず震えている唇にキスしていた。

隣で仲町さんが可愛い悲鳴を上げている。俺が離れると折本は顔を真っ赤にし目から涙を溢れさせながら信じられないって表情を俺に向けていて、仲町さんも横で顔を真っ赤にしていた。

 

「..ひ、ひきぎゃぁ//でょ、どういうちゅもりよぉ//」

「俺はかおりが欲しくなったんだ、だからキスしたんだよ」

「ッfskオk//」バタバタバタ

「かおり」チュッ

 

かおりは手足をばたつかせて、何か言っていたが録に言葉にできず口をパクパク鯉のようにしていたので、俺はまた唇を塞いでいた。

かおりは全身の力が抜けてしまったようで、椅子にもたれ放心して俺の事を呆然と見ていた。

 

「ひ、比企谷君。私も綺麗って本当に思ってくれてるの?」

「ああ、仲町さんはショートカットが似合ってて凄く綺麗だし可愛いぞ」

「じ、じゃあさ、私にもそのキ、キs」チュッ

 

仲町さんがそう言ってきたので俺は言葉を遮るようにキスしていた。俺がキスしている最中、仲町さんは喉の奥から呻き声のような音を出していたがお構い無しに唇を合わせていると、仲町さんは俺の唇を甘噛みするように求めてきた。

お互い唇を甘噛みしてから俺が顔を離すと、顔を真っ赤にし目を見開いて、俺のことを見つめて口は半開きにしている。

 

「信じて貰えたか」

「ひゃい//」

「二人とも、俺と結婚して貰えないか」

「..私、中学の時振られたよ」

「今は結婚してくれるかくれないのか答えてくれ」

「お、お願いしましゅ//」

「比企谷君、私は会ったことなかったけど好きでした。結婚してください」

「ああ、でも会ったことないのに何で好きってなるんだ」

「かおりから聞いてたの。振られた時の話を」

「そうか、...二人とも結婚してくれるってことで良いんだよな」

「「うん//」」

「ありがとな、じゃあこれから話すことは口外しないようにしてほしいが良いか」

 

俺は二人の間に座って、二人と手を握り合いながらちょっと前に異世界から来たことを説明していた。説得力がないので嫁さん達の写真を見せ、俺と全員結婚しているというとようやく信じてくれた。

 

「じゃあ、は、八幡の中では私達は美人なんだ//へへ、ウケる」

「今更だけど、私も良かったの」

「千佳が俺に感情を吐き出してくれた時、俺は千佳を守ってあげたいと思ったんだ」

「八幡君//」

「かおり、俺はこっちの中学の時の記憶がないんだ。辛いかもしれないが教えてくれないか」

「..うん」

 

かおりは俺に振られた話をしてくれた。俺は相手が誰だろうと素っ気なく対応していたらしいが、折本には美人に対しても自分に対しても態度が変わらず、自分が聞いたことは面倒臭がりながらも受け答えをしてくれていたので、段々俺に惹かれていったそうだ。

そして俺を呼びだし校舎裏で告白したのだが、俺は受験があるからとかおりを振った。それで終わればよかったのだろうが、告白をクラス一の美少女、俺からすればブスだろうが、に見られてて翌日、黒板にデカデカと書かれていた。

かおりは揶揄われていて、その時俺が登校したのだが、告白を見ていた女が俺にかおりを揶揄うように話しかけて来たらしい。だが俺はその女をボロクソに言って、かおりに向けられていた誹謗を自分に向けた。そして俺はその日から虐めの対象となっていたということだった。

 

「だから私は八幡に謝ったんだけど、お前は悪くないって言ってくれて、でも私が近くにいるのは拒否してきたの。一緒に居て虐められるのを防ぐために。私はずっと八幡に守られてたの」

「そうか、教えてくれてありがとうな」

「ううん、だから私は今でもずっと八幡が好き、でも叶わないと諦めてた」

「すまん。でもそれはこっちの俺だろ、今の俺で良いのか」

「それある、でも八幡は八幡じゃん」

「私はその話を聞いて、八幡君にずっと会いたいと思ってたの。かおりが何回も話すんで、何時の間にか好きになってて、会ったことも無いのに恋い焦がれて。でも私じゃ不釣り合いだから会いにも行けなかった。それが今の八幡君は私を綺麗と言ってくれる。私にとって今ここに居る八幡君以外考えられない」

 

二人は俺のことを想ってくれてたんだな。いや入れ替わる前の俺をか。なんだかそんな二人と結婚するのは申し訳ない気がするが。

そういえば、こっちの俺が向こうに行っているとしたら、どうなってるんだ。気になるが確かめようがない。もし雪乃や陽乃に何か言ったらボロボロにされているだろうし、静さんに何か言ってファーストブリッドを食らっているのだろうか。

 

俺達は嫁さん達の事など色々な話をし時間も遅かったため、話を切り上げていた。

 

「帰ろうか。千佳の家はどこなんだ」

「今日はかおりん家に泊まるつもり」

「じゃあ行こうか」

 

俺はかおりの家まで二人を送っていき家の前で二人とキスをしてから別れ家路についた。

 

小町が用意してくれたご飯を食べ終わった後、ソファーに座りながら雪ノ下家に行くことを説明していた。ソファーで引っ付きながら話していたが、小町は俺に雪ノ下家に行けと言ってきた。

 

「小町はどうするんだ」

「小町も行きたいけど、春休みになるまで我慢する」

「..どうしてだ」

「小町は勉強頑張らないといけないから。お兄ちゃんといると何時も甘えちゃって勉強できないでしょ。今の小町は総武に行くため頑張るの、お兄ちゃん、お義姉ちゃん達と一緒の高校に行くために頑張るんだ。今はそれをモチベーションにしてるからお兄ちゃん一人で行ってきてよ」

「じゃあ、俺に甘えるのはこれまでだな」

 

俺はそう言い小町を離そうとしたが、小町は力を込めてきて俺から離れず身体を密着させてキスしてきた。

 

「言ってることと違うだろ」

「今は良いの、お兄ちゃん成分を蓄えているんだから」

 

そう言って小町は俺にキスしてきていた。なんだよお兄ちゃん成分って。

 

ぴんぽーん

 

俺達がソファーに座り、チュッチュしていると、インターフォンが鳴りだした。こんな時間に誰だ?

 

「...小町が出るよ」

 

小町が不機嫌になりながらインターフォンで応対していたが玄関に向かっていき、何か話した後、お客を引き連れてリビングに入ってきた。

 

「「きちゃった//」」

 

小町の後に、かおりと千佳が入ってきていたが二人が見ている中、小町は俺にキスしてきた。

 

「お兄ちゃん成分、充電完了。じゃあ小町は勉強してくるであります。ヘッドホンしてるから幾ら声を出しても大丈夫ですよ、楽しんでくださいね。お兄ちゃんの部屋に布団置いておくから」

「「...//」」

 

もしかして二人はエッチしに来たのか。どうしてもそう言った事を考えてしまうので、顔が赤くなってしまう。

 

「ど、どうしたんだ、二人とも//」

「あのさ、私達と結婚してくれるんだよね」

「ああ」

「八幡君、私達をその...だ、抱いてほしいな//」

「良いのか」

「うん、かおりん家に行っても八幡君のことしか考えられないの」

「それある!!もうさ、考えないようにしようと思っても無理なんだよ。それだったら八幡に愛して貰えればってなったんだ」

「分かったよ、部屋に行こうか」

「「うん//」」

 

俺は二人を連れて部屋に入っていった。部屋に入ると二人はいきなり俺に抱きついて来てベッドに押し倒してきた。

 

「な!?がっつきすぎだろ」

「もう我慢できないの//八幡君」

「それある!!八幡にいっぱい愛して貰わないと//」

 

二人はそう言って俺にキスしだし服を脱がせて来ていた。

 

「ま、まて!?汗臭いから風呂に入らせてくれ」

「八幡の汗の匂い大好きだからこのままで良いよ」

「うん、私達で八幡君の汗を舐めとるよ」

 

そう言うとかおりは俺にキスしてきて、千佳は俺の身体を舐めまわしてきた。そのまま俺達三人は愛しだした。

 

かおりは途中で寝てしまったので、小町の持ってきてくれた布団に寝かせ、千佳と抱き合っていたが千佳も俺の上で達した後、気を失うように寝てしまった。

千佳は俺の脚に自分の脚を絡めており、退かすのが面倒で俺もかなり眠かったため、そのまま狭いベッドの中で重なり合いながら二人で眠りに入った。

 

「八幡、朝だよ」

「おはよう、八幡君//」

「ああ..おはよう」

 

俺が起きると千佳が俺の事を恥ずかしそうに上から覗いている。まだ学校に行くには早いのだが。

 

「昨日、あのまま寝ちゃったんだよね。私、八幡君と繋がったまま寝ちゃってて今も繋がってるよ//あぁ//う、動かさせないでよ//」

「千佳ずっこいよ、私も一緒に寝たかったな。でも八幡、朝から元気だね//ウケるし//」

「か、かおり!?触らないで//」

 

かおりは俺と千佳の股間に手を伸ばし刺激してくる。俺はそのまま千佳をいただき、かおりも欲しくなりまた抱き合っていた。

 

コンコンコン

 

扉をたたく音が聞こえてきて、かおりの喘ぎ声が聞こえたのか扉を開けずに小町が話しかけてきた。

 

「朝から盛ってるのはいいけど学校遅れるよ、御飯用意してあるから」

「わ、分かった。いッ、イくよ//」

「は、八幡//あ、あぁ、いっ、いッ、一緒ぃ//」

 

千佳とかおりを抱いた後、三人でお風呂に入り一緒に朝ごはんを頂いていた。学校には遅れてしまったが、二限目には間に合うだろう。俺達は一緒に家を出て行った。

 

一限目の途中で入るのは注目を浴びるため、時間を調整し休み時間に教室に入っていき机に着くと、嫁さん達が皆、俺の机の方に来てくれた。

 

「おはよ八幡。今日はどうしたんだし」

「ヒッキー、大丈夫なの」

「うん、心配しちゃった。八幡君に何かあったのかなって思って」

「うちも心配だった。でも来てくれてよかった」

「心配かけるなよ、八幡」

「スマン、病気でも怪我でもないから心配掛けて悪かった」

「ううん、何もなければ良いんだよ。ヒッキー」

 

ただの遅刻でも俺のことを心配してくれる人たちがいる。これからは皆に心配かけないようにしないといけないな。そんなことを考えていると葉山が俺の席に近寄ってきた。

 

「ヒキタニ君、ちょっと話できないか」

「なんだ、葉山」

「ここではなんだから、次の休み時間に話出来ないか」

「...分かったよ」

 

そう言って葉山は自分の席の方に戻って行った。葉山の席には女が座っていたが、こちらを下卑た目でみており、嫁さん達は皆、俯いてしまっていた。

 

「気にするな、あんな目で人を見る奴のどこが綺麗だって言えるんだよ」

「..うん」

 

2限目の授業が終わると、葉山は俺の方を見て教室を出て行ったので、俺も後ろについて出て行き、人通りの少ないところで葉山は振り返ってきた。

 

「ヒキタニ君、どういうつもりなんだ」

「なんのことだ、葉山」

「モテない女性ばかり集めていることだよ」

「お前には関係ないだろ、俺は皆のことが大事なんだ。..なあ葉山お前の嫁さん達は皆綺麗なのか」

 

こちらでは恰幅が良く俺から見ればブスでデブな身なりが整っていない女性がモテている。そう言えばアフリカか何処かで太った女性が持てる村があったと思うが、やはり育った環境によるものなのだろうか。

俺にはとても受け入れれないのだが...

 

「ああ、モデルやアイドル、女優もいるからな」

「..お前の嫁さん達は内面はどうなんだ?」

「内面?皆、我が儘で可愛いぞ。あの我が儘ボディで甘えてきたりされて見ろ、我慢できないだろ」

「..そ、そうか。ただ人の悪口を言うのはおかしくないか」

「それも彼女達の我が儘だよ、自分を見てほしいって事だからな」

 

我が儘って凄い言葉だな..

我が儘ボディって結衣や舞依さんみたいな身体の事を言うのでは無いのか?こちらではデブに対して言う言葉なのか..

こちらの男性は内面を気にしてないのか?美人かどうかはそれぞれの主観だから良いとしても内面は大事だろ。一緒に住んだりしていないのだろうか、何時も一緒に居れば嫌になると思うのだが。それらも全て我が儘と言う言葉で済ませているのか。

 

「君も美少女が出てくる本やゲームをしてたじゃないか。ヒキタニ君、俺はチェーンメールの件で君に貸しがある。良かったらモデルでも紹介するが」

「結構だ、チェーンメールの時は奉仕部での話だろ」

「ああ、ただ君の案で解決して貰ったからね」

「俺はお前に貸しを作った覚えはない。気にするな」

「分かったよ、...でも紹介してほしかったら何時でも言ってくれ」

「頼むことはないがな。じゃあ行って良いか」

「ああ」

 

こちらでもチェーンメールは有ったのか、後で雪乃と結衣に聞いておいた方が良いな。過去のことを色々言われると、俺も誤って何か言ってしまうかもしれない。

 

 

 



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「美醜逆転6」

昼休み、部室にいくと嫁さん達が集まっていた。後、城廻先輩も来ており弁当を広げだしていた。

今は一人一人が弁当を持ってくるわけではなく、皆が一品か二品持ちよってお互いのおかずを頂くようにしていた。

 

「比企谷君。この卵焼きどうかな」

「うまいですよ城廻先輩。これぐらいの甘さがちょうどいいですね」

「うん、よかった。比企谷君が美味しいって言ってくれて」

「城廻先輩も料理頑張ってるんだ。うちも頑張らないと」

 

城廻先輩は俺の為に料理を頑張ってくれている。彼女も学校では蔑ろにされているそうだが、俺の前ではそのような素振りを見せず明るく振舞っていた。

 

放課後、俺は部室に入っていくと皆の前で頭を下げた。

 

「スマン、皆に相談せずまた他の女性二人と結婚する約束をしてしまった」

「良いのよ八幡君。貴方が認めた人なのでしょ」

「ああ、一人は中学の同級生でもう一人はその友人だ」

「大丈夫だよヒッキー。でもどうやって出会ったの」

「昨日の帰りにあってな、二人とも海浜の生徒だ」

「大丈夫だし、でも仲良くなりたいから早く会わせるし」

「雪乃。二人も雪ノ下家に誘っても良いのか」

「問題ないわよ、八幡君、引っ越しの件はどうするのかしら」

「ああ、俺は雪ノ下家に行くよ、小町は勉強を頑張りたいと言って、春休みまでは家に居る」

「良かったわ、では週末に引っ越しかしら」

「ああ、持っていくものは着替えぐらいで良いだろ」

「着替えと日用品、学校の勉強道具と言ったところね。足りなければ取りに戻れば良いのだから」

 

雪ノ下家には沙希以外が来ることになった。沙希は大志やけーちゃん、家族の御飯のこともあり、休日だけ来るようだ。

 

「八幡、私は休みの日だけだからさ、その時は一杯愛して//」

「ああ、沙希が満足するまで愛してやるよ。南も愛するからな」

「うん//早く休みにならないかな//」

 

沙希は顔を真っ赤にしているな、まだ沙希と南は抱いていないが今から楽しみだ。

 

「舞衣さんは綾乃さんの所に来れるのか」

「うん、ママは綾のんさんに相談されてたんだって、それで一緒に住もうって。もう引っ越しの手配とかもしてあるって言ってたし」

 

ママのんとガハママはお互い連絡を取り合っているのか。今度は二人を相手にするのも良いかもしれないな。

 

俺は家に帰って小町がご褒美が欲しいというので、キスしていた。その後、勉強すると言って部屋に戻って行った。

 

小町とはまだ婚姻届を出していないし、抱いてはいないが、今は最初の頃感じていた抵抗がない。お風呂には一緒に入っているしお互い隠すこともなくなっていて、小町と一緒に寝るとお互いを慰めあっているが、俺と小町は高校に受かって雪ノ下家に来るまで本番は我慢する事にしていた。

 

俺がリビングで一人、寛いでいると母ちゃんが帰ってきたようだ。

 

「ただいま」

「お帰り、母ちゃん」

「..珍しいね、八幡が返事してくれるなんて」

 

そういえばこっちに来てから初めて母ちゃんに会ったな、俺は挨拶もしなかったのか。母ちゃんも俺にとっては母親ということを差し置いても綺麗に見える。親父はどうして結婚したんだ、こっちの男に母ちゃんみたいな人はモテないんじゃないのか。

 

「..なあ母さん。ちょっと聞いて良いか」

「何?八幡が改まって」

「..親父とどうやって知り合ったんだ」

「改まって聞かれると、恥ずかしいわね」

「嫌ならいいんだが」

「..私はこんな顔でしょ、最初は誰も振り向きもしてくれなかったわ。でもお父さんだけは普通に接してくれたの、私はそんな彼を信じられなかった。でも大学の時、私が風邪で倒れたときに見舞いに来てくれたの。そして何日も面倒見てくれて結婚を申し込んでくれたの」

「親父から母ちゃんに結婚を申し込んだのか」

「ええ、本当に私で良いのって聞いたら、私の内面が好きだって言ってくれてね。お父さんはその時、婚姻届けを出してきて私に名前を書いてほしいって言ってくれたわ。そして私が書き終わるといきなりキスしてきて抱かれたんだけど、今度はお父さんが風邪をひいて倒れちゃってね」

「何やってんだ、親父は」

「でも凄く嬉しかった。私はこの人に一生ついて行こうって思ったの」

「親父は、重婚してないのか」

「うん、私より良い人いれば、結婚しても良いよ、って言っても聞く耳持たなかったわ」

 

親父は男前だな、俺にはいい加減な親にしか見えなかったが。やはりこちらでも内面を見る人はいるんだよな。少なからずこちらの俺も影響を受けていたので奉仕部に行っていたのだろうか。

今まで綾乃さんや舞衣さん、葉山の話を聞いていたので、そんな人はいないと思っていたのだが。

 

「でもどうしてそんなことを聞くの」

「..俺も結婚したんだ。スマン、言うのが遅れて」

「おめでとう八幡。どういう人なの」

 

そして俺は嫁さん達のことをスマホの写真を見せながら話していた。異世界から来たことは言わなかったが、母ちゃんは喜んでくれていた。

 

「八幡もお父さんと一緒で内面を見てるのかな、私は嬉しいよ。でも苦労することもあるからね」

「ああ、分かってるよ」

 

俺にとっては皆、美人で可愛いからな。両親がどういったことで苦労したのか分からないが、俺には関係ないことだろう。

 

「でも八幡も結婚か、嬉しいけどちょっと寂しいな。今週には雪ノ下さんの所に行くんだよね」

「ああ、でも何かあったら言ってくれ、すぐに帰ってくるから」

「ううん、家の事は気にせずに奥さん達に気を回しなさい。小町のことは私達に任せておけばいいから」

「スマン、仕事大変なのに」

「いいのよ、八幡が家庭を持つのだから。じゃあ、今日は腕に縒りを掛けてご飯作るからね」

 

そう言って母ちゃんはキッチンに入って行った。なんだか嬉しそうに料理をしている。俺はそんな母ちゃんの姿をずっと眺めてしまっていた。

 

母ちゃんは親父にも連絡して早く帰ってくるよう連絡していたので、久しぶりに一家団欒で食卓を囲んでいた。親父からは鬱陶しい話ばかりだったが結婚のことになると真面目に答えてくれていたので、俺は親父の晩酌に付き合いお酌をしていた。

 

「お兄ちゃん、お疲れ」

「ああ、疲れた...でも楽しかったよ。親父ともちゃんと話せたし」

 

小町は俺のベッドの上で俺と肩を並べて座っている。お互い無言になると顔を近づけてキスしていた。

 

「ありがとうお兄ちゃん」

「ああ、試験もうすぐだから無理し過ぎるなよな」

「うん、小町もお義姉ちゃん達と一緒に過ごしたいもん。だからもうちょっと勉強してくるね」

 

小町はそう言いながら俺の部屋を出て行った、勉強の方は順調なようだな。俺は小町を見送った後、俺も勉強を始めていた。

 

 

金曜日、部活は引っ越しの準備のため休みとなり俺が帰ると、家の前に車が止まっており俺が家に着くとママのんが降りて来ていた。

 

「八幡さん、こんばんわ。お久しぶりです」

「こんばんわ綾乃さん。先日会ったばかりですが」

「私にとっては一日千秋の思いで凄く長く感じられました。八幡さんがよければ今日からでも私の家に来ていただけないですか」

「明日の土曜日、お伺いしますけど」

「それまで待てないのです、貴方に教えていただいた悦びをまた味わいたくて、ご無理を承知でお伺いしました」

「..そうですか、では用意したら伺いますよ」

「いいえ、来ていただけるのならこちらでお待ちしてますわ」

 

ママのんはそう言ってきたので家に入ってもらいお茶を出して、俺は着替えや日用品、勉強道具などを用意してママのんの車に積み込んでいた。

 

「お兄ちゃん、行くんだね」

「ああ待ってるからな小町」

「うん、ちょっと悲しいな。でも勉強頑張るから!!」

「小町が俺達の所に来たら一杯甘えさせてやるから」

「うん」

 

俺は小町と抱き合いキスをして、ママのんの車に乗り込んでいった。流石に車の中でイチャイチャすることはなかったが、ママのんは俺の手をずっと握ってくれていて、綺麗な微笑みで俺を見ていた。

俺達が雪ノ下家に着き玄関に入るとママのんは俺に抱きついてきた。

 

「八幡さん、お帰りなさい//」

「ただいま、綾乃さん//」

 

俺達は玄関で口づけを重ねていた。すると扉が開き陽乃さんが玄関に出てきた。

 

「あ、八幡君いらっしゃい。もしかしたら今日からこっちに来るの」

「ええ、綾乃さんに誘われて今日からお邪魔することにしました」

「八幡さん、ここは貴方の家です。お邪魔するなんて言わないでください。...陽乃、今日も雪乃のマンションに行っててもらえないかしら」

「お、お母さん!?また八幡君を独り占めするつもり!?」

「俺は二人とも愛しますから仲良くしてください」

「そうね陽乃。八幡さんに二人で可愛がってもらいましょ//」

「うん、夜が楽しみだね//」

 

俺の為に用意してくれた部屋は広かったが、それよりも目に入ってくるのは大きなベッドだった。ベッドはワイドキングサイズと言っていたが縦幅より横幅の方が広いものだ。二つのベッドを並べたものらしく、隙間が無いようになっているのでどんなに寝がえりを打ってもベッドから転げ落ちることはないのだろう。俺はベッドに飛び込みのた打ち回ってみたが凄く寝心地もいい。俺がそんなことをしていると、ママのんから夕飯が出来たと呼ばれていた。

 

夕食を頂き時間があったので、俺はここの所疎かになっていた勉強を始めると陽乃さんが勉強を見てくれていた。陽乃さんの説明は分かりやすく、俺の躓いているところも直ぐに気づいてくれ、だが直接俺に答えを教えるのではなく、俺が自分で見つけれるように誘導してくれている。そのおかげか自分の中にすんなりと覚えたことが入っていった。

 

三人でお風呂に入ったが、前も思ったがここのお風呂は広くて気持ちいい。俺が足を延ばして寛いでいると、ママのんと陽乃さんが両隣に来て寛いでいた。

俺が寝る準備を済ませていると、ママのんと陽乃さんが俺の部屋に入ってきた。ママのんは黒いシースルーのネグリジェで妖艶な雰囲気を醸し出していて、かすかに透ける乳首に余計エロさを感じる。

陽乃さんは白いベビードールで胸の前だけボタンが留められていて、お腹の部分は左右に広がっており、胸元から下は丸出しだ。

面積の少ないローライズのTバックだったため、どうしても目が釘付けになってしまう。

俺は見惚れていると、ママのんと陽乃さんは俺をベッドに押し倒してきて責めて来ていた。俺達はその夜、何時までも貪りあっていた。

 

 

「..八幡君おはよう、また母さんが出し抜いたのね」

「..おはよ。雪乃か、身体ゆすってたの」

 

朝、雪乃に早くから起こされていた。そういえば雪ノ下家に昨日の夜からお邪魔しているんだよな、雪乃を見ると何か怒った顔をしている。

 

「私も仲間に入れてほしいのだけれど時間がないわね。八幡君、今日の夜は私を抱いて貰えないかしら」

「ああ、分かったよ。じゃあ、起きるよ」

 

俺がそういうと雪乃は陽乃さんとママのんを転がし俺の身体から退けてくれていた。

俺はシャワーを浴び、雪乃が作ってくれた朝御飯を食べていると、ママのんと陽乃さんが起きて来て、一緒に食卓に着いていた。

 

「おはよう、母さん姉さん」

「おはよう雪乃。何をそんなに怖い顔をしているの」

「おはよ、雪乃ちゃん怖いよ」

「貴女達が抜け駆けするからでしょ」

「いいじゃないか、綾乃さんが俺と一緒に過ごしたいって迎えに来てくれたんだから」

「..それなら私にも教えて貰いたかったわ」

「ごめんなさいね雪乃。だって八幡さんに抱いて貰える回数が減ってしまうでしょ//」

「そういえば、お母さん。昨日も雪乃ちゃんの所に行けって言ってきたよね」

「もしかしたら昨日が最後だったかもしれないのよ、一人で抱いて貰えるのは」

 

そうか、今日から嫁さん達が来るんだ。一日一人抱いたとしても結構な日数がかかるんだな、最低一日に二人か三人抱かないと、皆の欲求を満たせないのかもしれない。

そんなことを考えながら朝食を頂いていると誰かが来たようで、迎えに行くと姫菜が一番に訪れていた。小さめのキャリーケースを持ってきており、後は宅配便で送ったそうで荷物は多くなかった。

 

「おはよ。ハチ、雪乃さん。今日からよろしくお願いします」

「姫菜、おはよう」

「貴女が姫菜さんね、おはようございます」

「は、はい。は、初めまして姫菜と言います。八幡君の妻としてなんでもさせてもらいます」

「そんなに緊張しなくていいよ、姫菜ちゃん。私達も今から来る子達も皆一緒の気持ちなのだから」

「は、はい!!」

 

姫菜はよほど嬉しかったのか、緊張していたが満面の笑みを浮かべていた。俺には眩しいぐらいの笑顔だな。

 

その後、嫁さん達が全員来て部屋に荷物を入れたり、屋敷を見て回っていた。今は一部屋に二人か三人で一緒に暮らすということだが、隣の敷地にアパートのような作りの建物を建てる予定をしており、それが出来れば全員に部屋が割り振られるということだった。沙希も引っ越しの手伝いをするために来てくれていた。

 

「は、八幡。今日は私と南を抱いてくれるんだよね//」

「ああ、そのつもりだが都合が悪ければ言ってくれ」

「ううん、うち楽しみだし//」

「沙希さん、南さん。今日は私も抱いて貰うのよ」

「わ、私も良いか//」

「「「「先生!?」」」」

 

沙希と南、雪乃と話していると静さんも会話に入ってきていた。っていうより何時の間に来ていたんだ。静さんも既に来るつもりだったのか。肩には大き目のバッグを掛けていた。

 

「比企谷...ううん八幡。私もずっと一緒に居させてください//」

「静さん、分かりました。俺と結婚してください」

「はい//」うぅ

 

静さんは返事をすると泣き出してしまい、今は皆にお祝いの言葉を言われてお礼を言っていた。

 

「..また今回も私が最後になるのね」

「済まない雪乃。..じゃあ2回続けてでどうだ」

「もし私が動けなくても、母さんの時みたいに求めてくれるのなら//」

「ああ、雪乃が何を言っても止めないからな」

「ええ//」

 

サキサキ以外が引っ越してきて、俺達は毎日一緒に過ごしていた。最近結婚することになっためぐりさん、そして無事に総武に合格した小町も招き入れていた。

 

 

 

....ねえ、ハーレムってさ、男が真ん中で女性を何人も侍らかして、ご奉仕させるんじゃないの?いや、夜は確かにそんな状況になっているよ。

だが今の俺の状況は、それとは全く正反対なんだが。

 

「八幡君、結衣さん、かおりさん。この問題は高2の一学期にならったところよ、出来ないにしても少しは覚えていないのかしら」

「難しいよ、ゆきのん。大体数学って覚える必要ないよね」

「それある~!!結衣ちゃん。生活してて因数分解とか使わないもんね」

「雪乃。俺も文系狙っているから数学はしなくても良いんじゃないか」

「あら、八幡さん。貴方には雪ノ下建設を背負って貰わないといけないので、陽乃と一緒の大学に行って貰わないと困りますよ」

「結衣、そんなこと言ってるとヒッキー君に置いて行かれるよ」

 

何時の間にか俺達が勉強している部屋に入ってきた綾乃さんと舞衣さん、そして陽乃さんが俺達の話に加わってきていた。

 

「うん、私も付き合うから、一緒の大学行こうね」

「あ、あのぉ俺、雪ノ下建設に就職するんですか」

「八幡さんは嫌ですの?...私達と一緒に働いて頂けないんですね...そうやって私達と離れていき、この子と私は捨てられるのですね」

「ヒッキー君。私もこの子と一緒に捨てられるの...」

 

そう言って綾乃さんと舞衣さんは自分のお腹を撫でていた。え!?もしかして...

 

「あ、綾乃さん、舞衣さん。もしかして子供が..」

「ええ、先ほど二人で病院に行ってきました。私と舞衣さんはあなたの子供を宿しました」

「捨てませんから二人とも俺の子を産んでください。...あ、ありがとうございます俺の子を身ごもってくれて。何だか実感がわかないですね、でもそれなら早く就職した方が良いんじゃ」

「大丈夫ですよ、私は時間を調整できるので仕事を続けますから」

「そうだよ、ヒッキー君。私も少しなら蓄えあるからヒッキー君はちゃんと自分の進路を考えてね」

「おめでとう!!ママ、綾のんさん。あたしの弟妹が出来たんだね!!」

 

「お母さん、舞衣さんもおめでとうございます!!」

「おめでとうございます、綾乃さん、舞衣さん。今日はお祝いですね!!」

「「ありがとう」」

 

俺の子供か。本当に実感がわかないが何時かはこうなるとは思っていた。他の嫁さん達とは避妊するようにしていたが、綾乃さんと舞衣さんは俺との子供が欲しいと言われていたので、付けずにしていた。

俺も暫くすると2児の父親になるのか、そう考えても実感がわかない。二人のお腹が大きくなってくれば実感がわくものなのだろうか。

 

夜は皆が集まりお祝いをしてくれた。二人とも高齢出産になるため皆で支えて行こうという話になり、この日からお酒がテーブルに出てくることもなくなり、静さんも家ではお酒を飲まなくなっていたが、その日から静さんのアプローチが激しくなって来ていた。

 

 

 

「中学生が来る?」

「ああ、明日だが見学会があってな、近くの中学一年生がどの高校に進学するか目標を定めるために学校を見にくるんだよ」

「ヒッキー、知らなかったの」

「八幡は私がHRで話していた時、寝ていたからな...私の言う事なんてどうでもいいと思っているから...」

「し、静さん。違いますよ。俺は貴女を愛してますから」

「じゃあ、今日は静だけ抱いてくれる?」

「駄目だし!!今日はあーしと南の二人が抱いて貰う日だし」

「そうだよ、うちはこの日を楽しみにしてたんだから」

「八幡...」

「わ、分かりましたよ。優美子、南。静さんも混ざっていいだろ」

「..あーしを可愛がってくれるの?」

「うちも甘やかせてほしいな」

「ああ、三人とも時間を掛けてたっぷりと可愛がるから」

「「「うん///」」」

 

最近は一日二人を目安に抱くようにしているが、他の女性は俺に落ち度があると、混ざりたいと言ってくるので、ほとんど毎日3人を相手にしていた。

 

 

 

「ねえ八幡君。あの子...」

 

俺と雪乃が昼休みに部室から窓の外を見ていると、女子中学生が列の一番後ろを頭を俯かせながら歩いて来ていた。そして同じ中学の生徒だろう、その女子生徒を足蹴にしていた。

 

「「あ!?」」

 

俺達が見ていると、蹴られたことにより女子生徒はその場で跪いてしまっていた。蹴った中学生は不味いと思ったのだろう、その場から走り去ってしまったので、俺と雪乃は部室から駆け出していた。

 

俺達が着くまで誰も助けようとしておらず、遠巻きに見ているだけだった。...こっちの世界は本当に狂っている。俺は周りで見ているだけの生徒を嫌悪していた。

その女子生徒は俯いているが、地面には濡れた後が広がっている。鳴き声は聞こえなかったが、声を押し殺して泣いていたのだろう。

俺は雪乃と結衣に出会った頃のことを思い出していた。

 

「ルミルミ...大丈夫か?」

 

しまった!こっちではルミルミに会うのは初めてか?ただ俺が名前を呼んだのは気づいていないようだった。

 

「..あなた大丈夫?怪我はしていないかしら」

「..平気」

 

鶴見留美。こちらでは面識があるか分からないが、俺はルミルミを立たせるため手を差し伸べようとしたところ、ルミルミは怯えだしてしまった。

 

「..八幡君、ここは私が」

「..ああ」

 

男性が怖いのか、俺の方に顔も向けてくれない。雪乃が話しかけ、何とか立たせて支えていたが、まともに歩けないのだろう、蹲っていた所からほとんど動けていなかった。

 

「なあ、怖いかもしれないが俺に運ばせてもらえないか。このままだと保健室にも行けないだろ」

「....」

「彼は大丈夫よ、私の愛する人だから」

 

雪乃がそう言うと、雪乃と俺の顔をみて驚いた表情をしていた。ルミルミは何か言いたそうにしていたが、俺はルミルミに背中を向け、その場にしゃがみこんだ。

 

「背中に乗ってくれ」

「..」

「貴女も八幡君に頼って見て。彼は他の人とは違うから」

「..お、お願いします」

「比企谷八幡だ」

「私は雪ノ下雪乃よ」

「..鶴見留美」

 

ルミルミは怯えながらも俺の背中に乗ってきた。俺が足に手を回すと震えていたが、何とか落ち着いてそのまま運ばれてくれていた。

保健室までの道のりでお互い会話は無かった。ただいつの間にか震えは止まっていたが、今は俺の背中で嗚咽を出して泣き出してしまっている。

 

保健室に着いたので、俺は椅子にルミルミを降ろし保険医と雪乃にお願いして、保健室を出ていこうとしたが何かが俺を引っ張っていた。

見てみると、ルミルミが視線は合わせてくれなかったが俺の裾を握っている。

 

「八幡居て」

 

ルミルミは裾を離さずにいる、何でいきなり呼び捨てなの?だがルミルミは裾を離しそうになかったので、俺は雪乃と一緒に居ることにした。

 

「では腫れているところに触るわよ」

「はい。...クッ!!」

「捻挫しているわね、病院に連れて行って固定して貰った方が良いわ」

 

保険医はそう言うと、シップをはり包帯を巻いていた。ただ、それ以降は何も言わず、ルミルミを病院に連れて行こうともしなかった。...やはりこの世界の人間はおかしい。怪我人だろうが容姿が整ってなかったら、まともな扱いもされない。

 

俺はルミルミの前にしゃがみこんだ。

 

「嫌かもしれないが、俺に病院に連れて行かせてもらえないか」

「..うん八幡、お願い」

 

ルミルミはそう言うと俺の背中に捕まってきた。

 

「..先生、俺と雪乃が病院に連れて行くんで早退すると担任に伝えてもらって良いですか。後、鶴見の中学校の教師にも連絡を」

「...分かったわ」

 

保健室を出てから俺は念のため、雪乃にも連絡するように伝えていた。どうもあの保険医は信用できない。

 

「雪乃、念のため静さんに伝えておいてくれ。俺達の荷物も誰かに持って帰るように言って貰えないか」

「ええ」

 

俺はルミルミを背負い、雪乃と一緒にタクシーで学校を後にしていた。俺達が住む家の近くにある病院まで行き、ルミルミは保険証を持っていたのでそれで診察をしてもらった。

 

骨には異常は無かったようだが、念のためギブスをする事になった。ルミルミは焦燥しきった顔をしていたが、俺達に御礼を言っていた。

 

「良いのよ鶴見さん。あなたの家まで送ろうと思うのだけれど、家は何処かしら」

「..家には帰りたくないです」

「そう...ではとりあえず私達の家でも良いかしら、ここから近いのでゆっくりして貰っても良いわよ」

「ああ、俺達の家に連れて行って、夜にでも送っていけば良いだろ」

「2人は一緒に住んでいるの」

「ああ、俺達は結婚しているんだよ」

「..そう」

 

留美はそれ以降何も言わず、俺におんぶされていた。家に着いたが誰も居ないな。舞依さんは買い物にでも行っているのだろう。俺達はソファーに座り、雪乃が紅茶と茶菓子を用意してくれていた。

 

「鶴見さん、寛いでいってね」

「誰も居ないようだが、ゆっくりしていってくれ」

 

俺がそう言うと、ルミルミは俺の顔を凝視してきた。今は会ったときのような怯えた顔はしていない。

 

「八幡は..他の人と違うの?」

「どうだろうな、俺は雪乃達が好きだから結婚して一緒にいるだけだ」

「八幡...私とも結婚出来る?」

「..鶴見、結婚はよく考えてすべきだ。少し優しくされたからって、結婚するのは間違っているだろ」

「...」

「今日は疲れただろ、部屋で寝てたらどうだ」

「..うん」

「...そうね、鶴見さん案内するわ」

 

雪乃はルミルミを寝室に連れて行った後、暫くしてからリビングに戻ってきていた。

 

「八幡君、留美さんのこと知っているのね」

「...ああ、こっちにくる前の事だがな」

 

雪乃が俺の横に座ったので、俺はルミルミとの出会いから話し出し、クリスマスイベントの事も伝えていた。

 

「そう、留美さんはそちらでも大変な目に有っていたのね。そちらの留美さんは八幡君のお陰で解消したようだけれど」

「..ルミルミが頑張ったんだ、俺はきっかけを作って引っ掻き回しただけだ」

「そんな事ないわ、貴方にはここにいる全員、助けられたのよ」

「..そう言ってくれてありがとうな」

「八幡君、留美さんも助けてあげて」

「..ルミルミはまだ中学生だろ。これからいくらでも出会いがあるんじゃないか。その可能性を潰したくない」

「私達に出会い何て無いわ...留美さんね、着替えさせた時に見たのだけれど身体中に痣が有ったの。..家族にも蔑ろにされているそうよ..」

「...俺だけの気持ちでどうなるわけでもない、ルミルミがただ今の現状から逃げるために結婚するのは間違っているだろ」

「もし彼女が貴方に助けを求めてきたら拒否せず話を聞いてあげて」

「...そうだな」

 

俺がそう答えると雪乃は俺にキスしてきた。

 

「ねえ八幡君。留美さんの話はここまでで、今は二人しか居ないのだから抱いて貰えないかしら」

「ま、不味いだろ。ルミルミが寝ているんだぞ」

「大丈夫よ、彼女はかなり疲れていたわ。だから、ね//」

 

雪乃はそう言いながら俺を部屋に連れて行き、ベッドに押し倒してきていた。

 

雪乃が俺に跨がり抱き合っているとルミルミが足を引きずりながら部屋に入ってきていた。しかも一糸纏わぬ生まれたままの姿で。

まだ幼いと言って良い裸体でも見惚れてしまうほど綺麗だったが、所々にある痣が痛ましかった。

 

「八幡、私も抱いて//」

「ルミルミ!?」

「ルミルミじゃない、留美」

「は、八幡君//もっと//」

 

雪乃は留美が入ってきてもお構いなしに俺の上で動いている。

ルミルミはそんな雪乃の姿を顔を赤らめ恥ずかしながらも見入っていた。

 

「八幡。私なんかじゃ駄目?」

「ゆ、雪乃止めるんだ//」

「大丈夫、私も入るから//」

「る、留美さん//あ、あなたも..あぁぁ//は、八幡君をせめてあげて//」

「止めろ!!雪乃退くんだ!!」

 

大声を出したので雪乃は驚き、俺の上から退いて俯いてしまった。別に雪乃の事は怒っているわけではないが、ルミルミと話すときにいたしているのはおかしいからな。

 

「八幡君..ごめんなさい」

「すまん怒鳴って。ただこんな事やりながら話す事じゃないだろ」

「八幡。私は無理だよね...ごめんなさい雪乃さん。無理言ってエッチしている部屋に入れて貰って。

八幡、私がお願いしたの。だから雪乃さんを怒らないで」

「留美さん..」

「..私、帰ります」

「待ちなさい!!留美さん、貴女帰るって..」

「..倉庫が有るから大丈夫」

「ま、待て!!倉庫ってどういう事なんだ?」

「....」

「..留美さんね、家に居ると虐待を受けるそうなの。だから家にある倉庫の中で寝袋で寝泊まりしているそうよ」

「雪乃さん。暖かい布団あ、ありがと..う、うぅ..」

「...せめてここに泊めることは出来ないのか」

「留美さんの場合は難しいわ、中学生は未成年略取になりかねないのよ。結婚の意思表示があれば高校生以上は良いのだけれど中学生は婚姻届を出していないと夜は一緒に過ごせないの」

「..俺との婚姻届があれば良いのか」

「八幡いい、無理しなくても大丈夫。

..今日はありがとう、八幡におんぶされたことが私にとっては凄く嬉しくて勘違いしただけ。

..たったそれだけなのに嬉しくて涙が止まらなくて、そのまま連れ去って欲しいとさえ考えた。

でも八幡には八幡の生活がある、そこには私の居場所はない。私は元の生活に戻るだけだから..」うぅ

 

なんで俺はルミルミを泣かしてんだよ。俺はベッドから立ち上がり、ルミルミを抱きしめていた。ルミルミも俺が守っていけば良いんだ。

特別なことをする必要はない。皆は俺がそばに居るだけで良いと言ってくれているから、ルミルミにも同じように俺の近くに居て貰えばいいんだ。

ルミルミは泣き出しているが今の俺はそれどころではなかった。罪悪感が凄過ぎる、中学生と言っても小学校をあがったばかりの少女と裸で抱き合って愚息を大きくして、ルミルミのお腹に押し当てているのは流石に不味すぎるだろ。

 

「..雪乃、婚姻届を取りにいけないか」

「誰かに学校帰りに取りに行って貰うよう頼みましょう、ラインを送っておくわ」

「留美、俺と結婚してくれないか」

「八幡いいの?私を貰ってくれるの?」

「ああ、婚姻届を取って来て貰ったら、書いて夜にでも提出しに行こう」

「八幡嬉しい、これで私も八幡の妻になれる」

 

ルミルミは泣きながらそう答えると、俺をベッドに座らせキスしてきていた。そして俺の愚息に手を伸ばして握りしめている。

 

「さ、さすがにこれ以上は小学校をあがったばかりの中学生相手に不味いだろ//」

「留美さん、貴女はもう八幡君の妻よ。私と一緒に悦ばせてあげましょ」

「うん雪乃さん。八幡の悦ばせ方、教えて」

「ま、待て!?中学生はさすがに不味いだろ!?二人とも止め..あ、あぁぁ//」

 

俺が雪乃と留美に責められていると、結衣と優美子、南、姫菜が部屋に入ってきていた。もう皆が帰ってくる時間になっていたのか。

 

「..ヒッキー、ゆきのん。あたしたちに荷物持たせて二人は何をしてるのかな」

「そうだし。学校午後からいなくなってるし、荷物持ってきてあげたのに二人してどういうことだし」

「こっちの子は新しい嫁さんかな。それは良いけど雪乃さんとハチは学校サボってこんなことしてるなんて許せないよね」

「うん、うちもちょっと許せないなぁ。これは今からしてもらわないとね」

「はじめまして鶴見留美です。八幡とはまだだから、させてほしい」

「わ、私も途中だったのよ。最後までさせてほしいわ」

「ゆきのんは見てるだけね」

「留美、あーしらと一緒にするし」

「雪乃さんは駄目だからね」

「雪乃ちゃんはうちらの見て自分で慰めてていいよ」

 

雪乃はそう言われ、泣きそうな顔で椅子に移動していった。雪乃とは途中で中断しているからな、不完全燃焼になっているだろう。

 

「おい、仲良くしないなら俺は誰も抱かないからな」

「ヒッキー、でもゆきのんずるいよ」

「俺が雪乃と留美を誘ったんだ、だから4人は出て行ってくれ」

 

俺がそう言うと、4人は何か言いたそうだったが部屋を出て行った。

 

「ごめんなさい八幡君。私が無理やり誘ったのに何も言えず貴方に嫌な役をさせてしまって」

「八幡ごめん。もし私を抱きたくないなら今は良い、でも雪乃さんは抱いてあげて。私のためにエッチしてくれたんだから」

「..留美さん」

「俺は二人を抱くって決めたんだ。だから二人で奉仕してくれ」

「「はい(うん)//」」

 

小学生から上がったばかりの中学生に奉仕させるという罪悪感と背徳感からか俺は異常なほど興奮し、ルミルミと雪乃に奉仕させていた。俺ってロリコンなの?ルミルミに奉仕させると全く治まる気がしない。

夕ご飯の時にはルミルミを全員に紹介していた。

ルミルミは緊張しながらも皆に挨拶し受け入れてもらい、嬉しさから泣き出してしまった。

婚姻届を書くと静さんが出しに行ってくれると言うことでお願いしていた。

 

 

 



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「美醜逆転7」

「朝だぞ雪乃、留美」

「..おはよう八幡君」

「八幡、おはよう」

 

二人はベッドから立ち上がろうとしたが、ベッドに座り込んでしまっている。

 

「は、八幡君。足腰に力が入らなくて立てないの」

「八幡、私も立てない」

 

昨日の夜はやり過ぎたか。俺は晩飯前まで二人に奉仕させていたが、ご飯を頂いた後も雪乃とルミルミに奉仕させ、二人から疲れて出来ないと言われてからは俺が二人を執拗に責めていたからな。

 

「学校どうするんだ、休むか」

「ええ、そうさせて貰おうかしら」

「私もゆっくりしたい」

「じゃあ、今日は寝ていろ」

 

俺がリビングに行き、二人が休むことを伝えると何故か全員怒り出したが、綾乃さんと陽乃は怒りながら俺の部屋に向かっていったので、俺も二人の後を追いかけていった。

 

「雪乃。八幡さんに愛して貰って疲れたから休むなんて、そんな理由は許しませんよ」

「雪乃ちゃん、八幡君に抱いて貰って学校休むって言うなら今度からは翌日に用事があるときは抱いて貰うの禁止だからね」

「..わ、分かったわ。行くわよ」

「で、では私も行きます」

「留美ちゃんは今日、学校休んでね」

「ええ、留美さん。貴女には診察を受けて貰いますから今日は学校は休んで下さい」

「綾乃さん、留美をどうするんです?」

「留美さんの身体の痣について診断書を貰いにいきます。留美さんが望まなければ訴えはしませんが証拠は残しておいた方がいいでしょ」

「もう関わりたくないから訴えなくて良いです」

「..そう、ただ診察や治療はさせてください。後、学校も私の知り合いの所に転校して貰いますからその手続きもしましょうね」

「ありがとうございます、すみませんご迷惑を掛けて」

「いいえ、貴女も八幡さんの嫁です。なら私達は家族ですよ、迷惑なんて思ってませんから遠慮なく言ってくださいね」

「い、今までの家族...優しくされたこと..な..い.です。...あ、ありが、ありがとう.ございま..す...うあ、うああぁぁぁ」

 

ルミルミは綾乃さんに抱きつき泣き出してしまった。

綾乃さんも抱きつかれて優しい表情でルミルミを撫でていたが、雪乃の方を見ると一転表情を変えていた。

 

「雪乃、貴女は学校に行きなさい。八幡さんも同罪ですよ、雪乃を抱き上げてでも連れて行ってください」

「..はい」

「は、八幡君の抱っこで学校に//八幡君、お願いするわ//」

「お母さん、雪乃ちゃん喜んでるよ。罰になってないよ」

「本当にこの子は。八幡さんのことになるとすぐポンコツになってしまいますね」

「それはお母さんも一緒だよ、今でも八幡君のチスとか言って顔を赤くして照れてるんだから」

「は、陽乃。何を言ってるんですか//」

「本当は今日の事も雪乃ちゃんの事が羨ましくてヤキモチ焼いてるんでしょ」

「..それは貴女も..いいえ全員ですね。雪乃、貴女は全員から嫉妬されてますよ。立てなくなるほど抱いて貰えるなんて...なんて羨ましい」

「そうだよ雪乃ちゃん。そんな羨ましいことしてもらって学校休むなんてありえないからね」

 

ルミルミは陽乃さんとめぐりさんが病院に連れて行ってくれることになり、俺達は用意して学校に向かうため玄関に集まった。

雪乃は何とか歩けるようだが、足元が覚束ないようで俺にもたれかかってきた。だがすぐに結衣に身体を引っ張られていた。

 

「ヒッキーは良いよ。ゆきのんはあたしと姫菜で連れて行くから」

「ほら雪乃さん、こっちは私が支えるから」

「結衣さん、姫菜さん結構よ。八幡君に抱き上げて連れていって貰うのだから//」

「雪乃先輩、何言ってんですか。私が荷物持ちますから、二人に支えて貰ってください」

「そうだし、結衣と姫菜が疲れたらあーしと南で支えるし」

「うん、うちは何時でも良いよ」

「小町でも良いですからね」

「八幡君...抱っこ//」

 

雪乃が可愛らしく言ってきたので、思わず抱き上げてしそうになってしまった。ただ結衣、姫菜、いろは、優美子、南、小町に睨まれてしまったため何も出来なかったが。

何とか雪乃は皆に支えられて、学校まで来ていたがその道中は大変だった。

雪乃を支えていない嫁から足腰立たなくなるまで抱いてほしい。とか今日は自分を抱いてほしいと延々聞かされている。

いや、今日は静さんを抱く予定だから。

前からソフトSMをする約束をしていて、静さんは色々と玩具を買い揃えていた。そして昨日ルミルミとの婚姻届を出しに行くときに約束させられていた。

静さんともSMは初めて行うし、SMを他の嫁さんにするのも憚れるので今日は誰も誘うつもりはない。

 

 

 

「ねえ八幡君。起きてくれるかな」

「陽乃さんどうしたんですか、こんなに朝早く」

「うん、ちょっと意見を聞きたくてね」

 

俺は横に寝ていた沙希と千佳を退かせ上に寝ている留美を下ろし、陽乃に連れられてリビングに行くと、綾乃さんと舞衣さんが既に起きており、陽乃さんは俺もソファーに座らせてきた。時計を見るとまだ朝の6時なんですけど。

今日は休みなので沙希も加わり夜遅くまで皆とハッスルしていたので、今日はとことん寝るつもりだったのだが。

 

「おはようございます。綾乃さん、舞衣さん」

「おはようございます、八幡さん」

「ヒッキー君、おはよう」

「それでどうしたんですか、こんなに早く」

「ヒッキー君、私達って何か変わっていない?」

「よく意味が分かりませんが、いつも通り綺麗ですよ」

「八幡君。...お母さんと舞衣さんが凄く美人に見えるの」

「ええ、美人ですよ」

「だ・か・ら、私から見ても美人に見えるの」

「..今までと見え方が異なるんですか」

「ううん一緒だよ。でも綾のんさんと陽のんちゃん、すっごく美人に感じるの」

「そうですね、私も二人が凄く綺麗に思うのよ。今までと変わらないのに」

「鏡でご自分の顔を見るとどうですか」

 

そう言うと、皆は鏡の前に行ったり、手鏡を鞄から取り出して自分達の顔を確認していた。

 

「...昨日までと見え方は一緒です。でも自分で言うのも何ですが、綺麗と思いました」

「皆さんが、異世界から来た...それは記憶があるから違うか」

「うん、どっちかというと皆の認識が変わった...でも...」

「八幡さん、舞衣さん、陽乃。皆を起こしましょう」

 

俺達は皆を起こし、リビングに集まってもらったが、お互いの顔を見て皆びっくりしたり唖然としていた。

 

「ひ、ヒッキー!?これってどういうこと!?」

「結衣にも皆、綺麗に見えてるんだな」

「うん、凄く綺麗だし可愛いよ」

「ええ、どうなっているのかしら」

「自分の顔を鏡で見るとどうだ」

 

皆鏡をそれぞれ見て驚いている。俺には何も変わっていないのだが、本当に認識だけが変わっているようだった。

俺は最近見る気も無かったTVを付けるとそこには男性キャスターしか映っておらず、今の現状を説明しているのだが、何が起こっているのかテレビ局でも分かっていないようだった。

 

「これってどういうことなのかな」

「俺にとっては正常に戻ったってところですかね、男性は顔が整っているのがモテるのに、女性は整っているとモテないなんて」

「そうね、でも今までそうだったのだから」

 

テレビでは街頭インタビューなんかもしているが男性は混乱しているようだ。女性はインタビューに答えないようで画面に映ることが無かった。いや映すのをテレビ局側が控えているのか。

 

「ですが、私達には何も影響ないですね、今までも八幡さんが愛してくれましたし、これからも愛してくれるでしょうから」

「そうね、私もヒッキー君が居てくれればそれで良いわ」

「皆もそうだよね」

「「「はい(うん)」」」

 

俺達はそれから何時も通り過ごしていた。眠い人は自分達の部屋に行き、朝から用事がある人は自分達のことを始めていた。

雪乃と結衣が俺の部屋に入ってきたが、俺は眠かったため、抱きつかれながら眠っていた。

 

「八幡、起きるんだ」

「どうしたんですか、静さん」

「政府の重要発表があると言うことで起こしに来たんだ。どうも結婚に関わることらしい」

 

俺と嫁さん達はリビングに集まってテレビの放送を待っていた。

 

『今から政府の臨時放送を始めます』

 

何が発表されるのだろうか、今日の朝、嫁さん達の容姿に対する認識が逆転していたことと関係あるのだろうか。

放送が始まり俺達は誰も言葉を発せず、唖然と放送を見ていた。

 

今日から重婚は禁止となるということだった。今重婚している人は問題ないが、今後は人を増やせないらしい。そして離婚が認められたということだ。

 

「私達には関係ないわね。...八幡さん、そう考えても良いですか」

「はい、俺は別れるつもりはありません」

「よかった。私もヒッキー君が入れば、他の男性はいらないわ」

「そう言ってくれてありがとうございます。でも皆は良かったのか」

「ええ、別れるなんてありえないわ」

 

皆は俺と別れるつもりはないと言ってくれていた。俺の傍に居てくれる、それが凄く嬉しく俺はいつの間にか皆に抱きついて涙を流していた。

 

 

 

「..ヒキタニ君、俺はどうすれば良いんだ」

「葉山、お前が望んで結婚したんだろ。皆を幸せにしてあげれば良いじゃないか」

 

葉山は俺を屋上に呼び出し相談してきた。

全員に離婚を持ちかけたが、誰一人別れてくれなかったということだった。今テレビでもよく話題になっているが、慰謝料として一人一億が相場になっているらしい。今は離婚出来るようになってあまり日数が立っていないため、とりあえずの目安らしいのだが。

ほとんどの政治家は逆にこの制度を使用して全員に金を配り別れたそうだ。自分達に都合のいいようにしたのだろう、金持ちにとっては金で解決できて後腐れがない簡単な方法だからな。

ただ一般人にとっては、一億何て簡単に用意できる金額ではない、葉山に至っては32人いるから、最低32億か。

 

そう言えば後で分かったことだが、皆の認識が変わった時、ペテルギウスが超新星爆発を起こしていた。今も太陽が出ているにも関わらず星が輝いてる。認識が変わったのはそのせいなのか。そう言えば以前、小町が大昔に認識が変わったと言っていたが、大昔にも超新星爆発が起こったことが記録に残っていたよな。ただ超新星爆発と認識が変わるのがどう繋がっているか全く分からないが。

そもそもそれが原因なら俺の認識が逆転する筈だが、俺の認識は変わっていない。

 

「39人なんて無理だろ、約40憶必要なんだぞ。しかも子供が出来ているのが何人かいるんだ。それこそ養育費とか色々掛かってしまう」

 

はぁ!?いつの間に増やしてんの、馬鹿なの?アホなの?見境なさすぎだろ、...半年もたたずに嫁さんが16人いる俺に言われたくはないだろうが。子供もいるんだったらそれ以上のお金が必要となるのだろう。

 

「皆、仕事もまともに就けないんだ。今までモデルをしていた子達は全員解雇されて収入が全くない。事務員として雇って貰っても直ぐに辞めてくるんだよ。

しかも誰一人、家の事はやらないし文句を言い合って喧嘩してるだけなんだ」

 

今までチヤホヤされていた反動だろうな、逆に綺麗な女性達は元々虐められたりしていたから今の逆転した世界がいつ戻るか分からないため怖いのだろう、見下したりすることは無いそうだ。

 

「君は分かっていたのか、..だから美少女ばかりを」

「そんなわけないだろ、全世界の認識が変わるってどうやって判れってんだよ」

「だが君はいち早く綺麗な女性を嫁にしていたじゃないか」

「俺は何時か聞いたよな、お前の嫁さん達は内面も綺麗なのかと。俺の嫁さん達は疎まれながらも皆、道を外れることなく生きて来てたんだ。お前達に蔑んだ目で見られても、罵られてもずっと堪えていたんだよ。お前にその気持ちが分るのか」

「..」

「お前の嫁さん達の我が儘を聞いてやれよ」

「...あれは我が儘なんてものじゃない」

「お前が好きで結婚したんだ。彼女達を幸せにしてあげろよ」

「....」

 

俺は葉山を残し、屋上を後にしていた。葉山の嫁さん達もそのうち、仕事には付けるようになるだろう..なるよね。それまでは内職とか家で出来る仕事をさせておけばいいんだ。

 

俺達は何も変わらなかったが、俺達の周りの反応は変わっていた。

ルミルミの親は娘を返してくれと言ってきたが、俺と結婚しているのと虐待を受けていた証拠が有り、しかもルミルミが「自分の本当の家族はあなた達じゃない」と言ったため、すぐに引き下がっていた。

 

結衣の父親側の爺も孫が結衣しかいないため家を継いでくれと言ってきたが、舞衣さんは既に離婚しているため、聞く耳を持たなかった。

 

他にも家に帰してほしいと言ってきた親もいたが、誰も帰ろうとはしなかった。ただ、たまにだが里帰りして親との仲違いを改善するようにしている嫁さんもいる。

 

一番ひどかったのが綾乃さんの旦那、陽乃と雪乃の父親に当たる人が綾乃さんを頼ってきた時だった。何人も嫁さんがいるらしく、離婚したくても地方議員ではそれほど裕福ではないのだろう、離婚も出来なかったらしい。

金を工面して貰えないか、またやり直せないかと頭を下げに来ていた。綾乃さんは門前払いしていたが余りにもしつこいため、以前書かされた契約書で裁判を起こして勝訴し離婚も認められ完全に縁が切れていた。今後は近くに来たら違反金を貰えるそうでそれ以降、姿を見せることは無くなった。

そして選挙があったのだが、離婚し旧姓に戻された為、雪ノ下姓を使用できず落選していた。それ以降、表舞台で名前を聞くことは無かった。

 

 

 

「3人で此処に集まるのも久し振りね」

「うん、ヒッキーのお嫁さんで何時も賑わってたもんね」

「ああ、だがたまには良いだろ。俺はここで雪乃の紅茶を飲んで過ごす時間が好きなんだよ」

「ええ、私もこの時間が好きだわ」

「うん、あたしも此処にいる時間が好き」

 

二人は俺の横に座っていたが、そう言うと立ち上がり頭を下げてきた。

 

「八幡君、お礼を言わせて。私達を貰ってくれてありがとう」

「ヒッキー、あたしからも言いたい。あたしたちを幸せにしてくれてありがとう」

 

二人は俺に頭を下げてきていたが、俺もお礼を言いたかったので、立ち上がっていた。

 

「雪乃、結衣。俺からも言わせてくれ。こちらに来たとき、二人に相談して良かった。戯言としか思えない事を言った俺を信じてくれて、俺と結婚してくれた。

...俺はこちらに来る前から二人が好きだった。それを誤魔化しているのが辛かった。

二人の前から消えようと思ったことも何度もある、二人を泣かせたことも。

でもこちらに来て二人と結婚したとき、俺はお前達に救われたんだ」

 

俺がそういうと、雪乃は頭を振って話し始めていた。

 

「私達は八幡君と結婚したかった。でも言葉にも出来なかったの。八幡君が来て異世界のことを教えてくれた時、最初信じられなかった。でも手を握ってくれて抱きしめてくれたとき、私は救われたの」

「うん、あたしも抱きしめてくれた時、救われたよ。それまではヒッキーを好きな自分を誤魔化して、たまにヒッキーが来てくれるのが嬉しくて、ゆきのんと二人でここで待っていたんだ」

「俺も二人のうち、どちらかを選ぶなんて出来なかった。元居た世界では重婚なんて出来なかったのだから」

「もしかしたら、私達の想いを聞き届けてくれたのかもしれないわね」

「俺が二人を求めて、二人が俺を求めてくれたからか」

「そうだよ、だからヒッキーはその...あたし達を求めてくれて、あたし達がヒッキーを求める限り帰れないんじゃないかな」

「その方が良い、俺は雪乃や結衣、他の嫁さん達と離れたくないからな」

「八幡君(ヒッキー)//」

 

俺達はお互いを見つめ合った後、誰からともなく部室で抱きしめあっていた。

俺は元居た世界には戻れないのだろう、だがこちらの世界で俺の望むものを手に入れたんだ。もし帰してもらえるとしても俺は拒否する。

二人を抱きしめながら嫁さん達を幸せにする誓いを立てていた。

 

(ここまで材木座の小説)

 

**************************

 

 

うーーーん、滅茶苦茶ご都合主義だよね。ラノベだからいいんだけど。

これも葉山さんの扱いが酷いけど、材木座さんは嫌っているのかな。モテる人ってオタクから逆恨みされたりするからそのせいなのかな。

私も材木座さんのこと言えないけどね、アニメやラノベが好きだしちょっとエッチなアニメも見て妄想しちゃうから。

 

これに出てくるのが、ラノベを書いて貰った人達なのかな?流石に雪ノ下さんや由比ヶ浜さんのお母さんは違うと思うけど、その他に出てくる人はラノベを書いて貰った人たちだよね。

こんなに沢山いるんだ、みんなやっぱり比企谷さんの事好きなのかな。

 

なんか凄く長いけど淡々と書いているだけで、盛り上がりとか無いよね。

だから没にしたのかな、でも鶴見留美ちゃんって中学生で出てきているけど、そんな小さい子もいるの?

今、中学一年生ってことは小学校の時に出会った子と思うけど、そんな小さい時に留美ちゃんを拐かしてたんだよね。

比企谷さんってロリコン!?いろはちゃんにも甘いし、話では妹の小町ちゃんにも甘いって言っていたから、年下好き?

 

うーん、まあこのラノベについては、良いかな。

私のラノベ、楽しみだな。どんなの書いてくれるんだろう、早く持ってきてくれないかな。

 

 

 

 




この後の話として、R18の方もUPさせてもらいました。


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