その関係が終わるとき (峰白麻耶)
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文芸部と演劇部の関係

久しぶりにオリジナルを書きました。忙しいので更新が続くかは謎ですが、二時創作同様よろしくお願いします


篠宮香乃

 

夕ヶ丘高校の普通科、商業科、国際科総勢二千人弱いるなかで知らない人は恐らく居ないと言われる有名人の内の一人。内気気味だった性格は見る影もなく、昔は肩までしかなかったふわっとした黒髪は今は腰まであるし、下世話だけど少し見ない間に胸も膨らんで、スタイルもいい。身内贔屓みたいになるかもしれないけど、校内で十本指の美少女だと思う。

 

こんな感じで、幼なじみは俺が両親の都合で中一の冬から中三の春まで海外に居る内に、メタモルフォーゼとも言うべきものを遂げていた。

 

逆に俺はどうだ?………変わったと言えば、背が伸びたのと英語が話せるようになったくらいだ。

 

変わらないものもある、変わるものもある。

 

消えてしまう物もある、消えない物もある。

 

それじゃあ、幼なじみと言う関係は結局どうなるんだろう?

 

 

 

 

 

四月中旬

 

桜が少しずつ散り、緑が徐々に出始める頃。

 

夕ヶ丘高校では新年度初めの一代イベント入学式が終わり、新入生も高校生活に慣れた頃だろう。

 

四年前に新しくなった校舎は、教室練、実習練、職員練、とあり体育館は二つ、吹奏楽部や演劇部、軽音楽部のための小ホール、広大な人工芝のグラウンド、野球場、テニスコートなどの豊富な施設は、この学校が部活に力を入れているのがよくわかるだろう。

 

言うまでもないが勿論脳筋ばかりではない。

 

この学校の方針は文武両道。部活をやっているものでもなかろうと試験で赤点を取れば、補講を受け、再試験を合格しなければいけない。勿論、部活をいるものは合格するまで、部活は禁止である。反対に成績優秀者の特別補講もある。

 

そんな学校の実習練四階文部部室。時刻は放課後。

 

部屋の真ん中には茶舞台があり、その前にドア後ろは窓。右手の棚には歴代文芸部員全ての作品があり、その棚の横には小型の冷蔵庫やその他部員の私物。左は本棚で埋め尽くされている。

 

そこには二人の男が居た。部活の練習着なのかTシャツに七分のズボンを着ている。目つきが若干鋭いにもかかわらず、人の目を惹きつける色気を若干醸し出すイケメン男と制服を着て、もうやだこの人と疲れたような雰囲気を出しながら、パソコンの前で腕組みをし、右手の人差し指をポンポンしている男が居た。

 

 

 

「あのー。海堂先輩?何時まで文芸部に居座っているんですか?ぶっちゃけ鬱陶しいんですけど」

 

めんどくさいからさっきまで無視をしていたが埒が明かない。俺は、ついにさっきから俺の執筆を妨害する犯人に声を掛けた。さっきから俺に熱烈な視線を送る犯人・・海堂満先輩。演劇部所属の三年で部長。若干鋭い目つきで細長い眉毛、身長は目測でだいたい百八十の細マッチョ。クールな容姿で人を引きつけないように見えるが実際は面倒見がよく後輩の指導に熱心で人望がある。そんな彼は勿論校内でも有名であり、彼が主役の時の定期公演は満員御礼になる。

 

そんな彼だが

 

「睦月。脚本はできたのか?」

「まだ締め切りまで大分あります」

 

楽しみなことがあると待ちきれず、落ち着かないと言う欠点がある。よくいる運動会の前日は寝れないタイプだ。ちなみに睦月こと睦月鳴海はグッスリ寝れる。

 

「早く読みたいんだ。先週Bチームの脚本仕上げただろ?だからAの方も出来上がってると思ってきたんだが……」

 

そわそわと体を左右に揺すり、待っていますと言うのを全身で表す海堂先輩。しかし

 

「一週間で脚本作れって無茶ありません?」

 

楽しみにしてくれるのは、書き手冥利に尽きるんだけど、変な脚本を作ると俺が批判を受ける。なんと演劇部は全国大会にも何度も出ている。そんなレベルの人たちに一週間で作った脚本をやらせるのは恐れ多い。

 

「そうか……そうだよな。無茶を言ってすまない」

 

そう言って頭を下げられるとこっちもあまり文句を言えん。

 

「まあ、締め切りまでには終わりますから楽しみにしていてください。良いもの作りますから。というより部長なのにこんな場所に居ていいんですか?」

 

俺がそう言うと、ああそうだとポンと手を叩く。何故か動作が芝居ぽい。

 

「ああ、そうだ。本来の目的を忘れていた」

「いや、それを忘れていたらだめでしょう」

 

天然か?しっかりとするんだ。みんなが抱いている幻想が壊れるぞ。本人にとってはどうでもいいんたろうけど

 

「演劇部には新部員がざっと八十人ぐらい入ってな」

「この部に対する嫌みですか?」

 

文芸部は、昨年新入生は俺だけ。三年生二人と俺だけで活動していたが今は俺一人だ。

 

「違う違う。というか部員少ないのを気にしてるなら勧誘しろよ」

「そーなんですけど……一応新入生歓迎会で文芸部があるのは言ってるんですよ?でも、結局他の部にインパクトで負けるんですよね……」

「演劇部の脚本やっているて言えば良いじゃないか」

「それが目的なら演劇部行けって話なんですよ」

 

そうすれば俺が複数脚本を書かなくて済むから。

 

「まあ、確かに。でだ。本題なんだが、一年の脚本担当の指導を頼みたいんだよ。やる気はあるんだが知識がな」

 

やっぱりその話がきたか。一世代前の演劇部には二年生と一年つまり今の三年、二年に脚本担当は居ない。それは前の三年と文芸部の先輩二人に俺と居たからだ。そのせいで、その三年が引退してから俺にしわ寄せがきている。取りあえず、脚本担当が増えて俺は助かったけど

 

「指導と言っても、脚本の書き方的なものを渡して、過去の脚本を渡すくらいですけど……」 

「ああ。だいたいそんな感じでいいから頼む」

「分かりました」

 

そう言って海堂先輩は立ち上がり、手を振って演劇部に戻った。

 

 

さて、俺も脚本を書きますか。俺は腕を伸ばしてからキーボードに手を伸ばした



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俺と幼馴染の関係

更新が遅れてすいません。亀更新をお許しください


海堂先輩が、部室から去ったあと。俺はもくもくと演劇の脚本を書いていた。

 

 

演劇部には、Aチーム、Bチームがあり、俺が今、演劇部から、引き受けてるのは、その両チームの脚本だ。Aチームのために、書いてるのが文化祭公演用、定期公演用、大会用の三つ。Bチームのために、書いているのが文化祭公演用、定期公演用の二つ。両方合わせて計五つ。しかし、脚本志望の一年生が入ってきたから、俺の負担も、軽くなるだろう。文化祭で脚本をやり遂げ、先輩の引退を見送ったあとの大会、定期公演のコンボは、忙し過ぎて、部員勧誘をまともにしなかった先輩を恨んだ。今年も部員が集まらないから、また、地獄を味わうのかと思ったがそれが回避出来て良かった。

 

話を戻すと今、書いてるのは、さっき海堂先輩にせかされたAチームの文化祭用の脚本。ジャンルは、恋愛物語。海堂先輩という有名人がいるんだから、それを一番生かせる内容。つまり、恋愛ものがいい。まあ。始めは、たまには、知的にどうかと推理ものでも書くかなと思ったが結局は恋愛ものに落ち着いた。

 

作業はまあまあの進行具合に進み、気づくと夕暮れ時になっていた。

 

「はあ。もうこんな時間か」

 

いつもなら、授業終了と同時に帰るけど、今日はスーパーで買い物す予定だったから、部室で執筆しながら時間をつぶしていたのだ。思わぬ来客もあったけど。PCをシャットダウンさせ、放置していたカバンを取る。戸締りを確認して、お次にドアの鍵を閉める。廊下はひんやりとしていて、誰もいないからか、放課後の校舎は静かで、俺の足音が良く響く。昼間の校舎とは大違いで、簡単に非日常感を楽しめるから俺は、放課後の校舎が好きだったりする。しかしその時間はぞこまで、長くない。下駄箱に近づくにつれ運動部の掛け声が聞こえ、徐々に日常に戻る。そんなくだらない事を俺は、部室から帰る時、いつも考えることだ。下駄箱で靴を履き替える。玄関を出るとさっきまでPCとにらめっこしていた眼が痛い。自転車置き場に行く途中では吹奏楽部の演奏が聞こえ、サッカー部がせっせと校舎の外周を走っている。その姿は夕暮れ時によく生えていた。

 

俺は、中学校の時から愛用している自転車にまたがり、スーパーに行く。自分の主食であるパンに合う具材を買い、家に帰る。

 

 

家は学校から徒歩十五分に在る五階建てのマンションの五階の角部屋。両親は、天文学者で今も海外を飛び回っている。だから今は、面倒な一人暮らししている。今の俺には、両親についていく気力がない。

 

マンションの自転車置き場に自転車を置き、エレベーターで五階へ。

 

カバンから鍵を取り出し、鍵を開けようと…

 

「開いてるな」

 

これが推理小説なら、中で人が死んでいる洒落にならない状況なんだが、これは、推理小説ではない。ちなみに。この場合、事件は始まる前に、犯人は分かっている。ドアを開けると、犯人のローファーが綺麗に揃えられていた。俺もそれに倣って靴を隣に綺麗に並べるとリビングに続く廊下を進み、リビングに出る。予想道理、犯人はキッチンで料理を作っていた。

 

「あ、なるくんお帰り。今日は部活だったの?」

 

犯人…幼馴染の篠宮香乃は吞気に制服にエプソンを身につけて、右手にさえばしを持っていた。海外出張中の両親に絶大な信頼を得ているのがお隣さんの篠宮家。付き合いは何と俺らが生まれてくる前かららしい。その娘である香乃も両親に娘のように可愛がられてる。ちなみに逆もしかりだ。そんな関係で香乃は家の合い鍵を持っているから、たまにこういうことがある。

 

「香乃の言うとうり冷蔵庫の中身が空になりそうだったからな。タイムセールまでの時間潰しに部室にいたんだよ」

「そっか~。だから冷蔵庫に何もなかったんだね。かっらっぽだったから家から色々持ってきたよ]

 

そう言って香乃は冷蔵庫の中あさり、これが肉じゃが、これは餃子で~と説明してくれる。その気遣いは嬉しい。香乃が目を話しているうちに味噌汁が沸騰して、すごいことになりかけていた。しょうがない。俺は、コンロの火を弱め、味噌汁を混ぜる。近くにある小皿で、掬って飲むと味が濃かったから水を加える。水が蒸発したからだろう。

 

「料理を持ってきてくれるのは嬉しいけど味噌汁も見ていてくれよ」

 

俺がそういうと、香乃はあははと苦笑いしながら謝ってきた。

 

「ごめん。ありがとう、なるくん」

「いえいえ。幼馴染のよしみでこうして料理を持ってきてくれるだけで充分ありがたい」

「そうそう。なるくん、私が料理を持ってこないといつもパンしか食べないからね~」

 

 

そう言って俺が持っていたおたまを手に取って、キッチンに立った。機嫌がいいのか頭が左右に揺れて、それに合わせて、普段は、結んでないポニーテールの黒髪も揺れる。そう言えば子供の頃は触り心地がいいからとその綺麗な黒髪を昔はよく触らせて貰ったと昔を思い出した。こんな事をうちの学校の奴に知られたら、嫉妬の嵐だろう。そもそも香乃と俺が幼馴染である事を知っているのは少ない。ましてや、家が隣で、たまに料理を作ってくれるなんて知られたら血祭だろう。俺は、血の出るお話は、現実では勘弁して欲しい。現実は、平和がいい。俺は、取り敢えず、香乃のの手伝いをすることにした。

 

 

 

 

 

 

時刻は、六時半頃

 

 

さっきの味噌汁沸騰いこう失敗はなく、順調に夕飯は完成した。俺がいる時本当にまれだがぽかをやらかすが香乃の料理はおいしい。今日の夕飯は、ご飯に麻婆豆腐、エビチリに味噌汁という和洋折衷ならぬ和中折衷だ。机の上に並べられた料理は普段の俺では考えられないラインナップだった。

 

「パン以外も食べないと駄目だよ?」

 

俺が小さい頃から香乃が家に来るたびに口を酸っぱく言う事だが、守れたためしはない。俺は、パンが好きだ。愛していると言ってもいい。基本的に朝も昼も夜もパンだ。パン好きのレベルが上がって自分で作るレベルだ。それでも幼馴染の言うことは、両親でも変えられなかった俺の食生活を少し変えた。家の冷蔵庫に野菜ジュースが入っている。ついでにサンドイッチの具は野菜を多めにしている。それが幼馴染の一言で変わった事だった。

 

「それじゃあいただきます」

 

俺と香乃は一緒に手を合わせると、俺はまず、エビチリに手を伸ばした。えびはプリプリしてるし辛さも丁度いい。少し残して、明日のサンドイッチの具に使うのもいいかもしれない。

 

「なるくん。エビチリ、少し多めに作っといたから明日のサンドイッチにはさむでしょ?」

 

香乃には、言わずとも俺の行動がわかるらしい。

 

「ん。相変わらずよくわかるな」

「それは、大体どんな好みかはわかっているから」

 

そう言うと香乃もエビチリを口に運んだ。まあ、それを言うなら俺も同じようなもんなんだが。

 

「香乃もいつもどうりパン持っていくだろ?クリームパンあるぞ?それともクロワッサンにするか?」

 

俺は、二択で出しておきながら香乃がどっちを選ぶのか分かっていた。

 

「なるくん。分かってて聞いてるでしょ?」

 

香乃が少し頬を膨らませていた。高校生としては子供ぽっい仕草だが香乃がやるとそんなのはどうでもいいほど合っている。

 

「いつもどうりクリームパン一択だろ」

 

俺がそう言うと香乃は勢い良く頷く。

 

「もちろんクリームパンを持って帰るよ!なるくんが作るのはおいしいからね!...でも、クロワッサンも捨てがたい」

 

そう言って香乃は麻婆豆腐を口に運ぶ。ピリ辛にピリ辛が重なって辛くなったのか若干涙目だ。なぜこの組み合わせにした。俺は、テーブルを離れ、冷蔵庫から牛乳を出してコップに入れる。ついでに自分の分と麦茶を入れる。

 

「ほい」

 

香乃の目の前に出すと両手で持ってコクコクと飲み始める。半分ほど飲み終わるとようやく落ち着いたにか、コップから口を離す。

 

「いやあ・・ありがとう。」

「香乃って辛いの苦手だったっけ?」

 

香乃は人差し指で口に少し付いた牛乳を拭って手拭きで拭いた後

 

「いつもは平気なんだけど・・。少し味付け間違えたかな?」

「見たところ間違いないし、エビチリがあったからじゃない?相乗効果で」

「なるほど」

 

納得したのかうんうんと頷くと

 

「なるくんは辛くない?」

「俺はちょうどいいくらいかな」

 

香乃はどこからかメモ帳をだし、何か書き込んでいる。俺も制服のポケットにネタ帳を入れているから特には驚かなかったが、さっきの会話の中でどこをメモするのだろう。少し椅子から腰を覗こうかと思ったがやっぱりやめた。前に香乃の家に夕飯を食べに行った時に、香乃が何か書いているのを見て、気になって後ろから覗こうとした時があってその時、滅茶苦茶怒られたからだ。俺が近づいているのが分かったのか、シュバっと俺の方を振り返り、顔を赤くして見えた?と恥ずかしそうに聞いた後、見てないと俺がいったらふうと一息ついた後、言葉の弾丸を何発も放ってきたからだ。始めは、乙女の秘密とか言い、最後の最後にはなるくんとは口きかないといわれ、二週間も口を聞いてもらなかったのだ。その間の俺は、筆がのらず、友人から廃人一歩手前と言われたくらいだ。最終的に香乃のお母さんがでて来て事なきをえた。お母さん様々だ。この騒動で得た教訓。

 

触らぬ神に祟りなし。俺は、テレビを付けた。

 

 

 

 

 

七時

 

夕飯を食べ終わり、二人でのんびりしていた。

 

「そう言えば香乃は今日部活なかったの?」

 

俺は、ソファーでクッションを抱きながらまさしくごろごろしている香乃を見た。制服のブレザーはシワになるといけないと思っているのか脱いで隅に綺麗にたたまれている。

 

「久しぶりにね。一年生も入ってき楽しくなってきたんだけど」

 

そう言ってクッションをもふってる。香乃は陸上の短距離走の選手だ。私、それなりに優秀なんだよと口癖のように言っていたが、実際に大会に応援に行って香乃を見ると信じられなかったがすごい速かった。しかも優勝していた。香乃の活躍が自分のことみたいに嬉しくて、表彰式が終わった後テンションが上がって香乃のところにに行った。俺は、ハイタッチでもしようかと思っていたのだが、あっちは俺以上にテンションが上がっていたんだろう。

思いっきり抱きつかれた。もちろん先輩にも同級生の目の前で。香乃は嬉し泣きして離してくれないし、この状況を楽しんでいるのか先輩も同級生もニヤニヤ見ているしで、始めての大会応援は恥かしい思い出となっている。

 

しかし

 

「後輩か~。文芸部は今年新入部員ゼロだよ」

「毎回思うけど良く廃部にならないね」

「それは俺がせっせと創作しているのもあるけど文芸部がないと困る部活があるからね。演劇部とか、ゲー研とか」

「なるくんのお得意さん?」

「そう。色々助け合ってるんだよ文化部は」

「文化部も文化部で大変なんだね」

 

 

そんなたわいもない会話が一時間ほど続く。内容は、学校のことや、今見ているテレビの話。香乃と一緒にいる時間は楽しくあっという間に香乃が帰る八時になる。

 

 

「今日はありがとう」

 

俺がそう言うと、靴をはいていた香乃は、つま先をトントンと鳴らして靴をちゃんとはくと

 

「どういたしまして。また来るよ」

 

その後、香乃は手に持っているクリームパンを上げて帰って行った。と言っても隣だけど。

 

家がシーンと静かになる。

 

香乃が来てくれるおかげで俺は、たまに来る寂しさから救われる。けどいつまでたってもこうはいかない。一回は離れてしまったけどまた会えた。でも次はどうなるかわからない。少なくとも近い未来また離れるかもしれない。

 

「はあ・・」

 

憂鬱な気分をため息とともに流す。いつまでたっても幼馴染の関係が続く訳がない。変わらず関係はない。それは、分かっている。今の関係が変わる事を恐れている。それも分かっている。でも、その関係が変わらない事を願うのは、別に悪いことではないはず。そう思って俺は、風呂に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想をくれると嬉しいです。


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俺とお隣さんの関係

「く、ううう」

 

首と腰の鋭い痛みで目が覚める。目の前にはスリーブモードのパソコンと眠気覚ましに入れたコーヒーがあった。完全に眠気覚ましにならず寝落ちしたみたいだ。そう言えば今日も学校かと部屋の時計を見ると七時四十五分。普通の人なら慌てるだろうが、このマンションは学校に近いからこの時間でも余裕で間に合う。パソコンの電源を完全に切る。飲みかけの冷えたコーヒーを飲んでからキッチンに向かう。クロワッサンをトースターで焼いた後。軽くコップを濯ぎ、再びコーヒーを入れる。できるまでの間は、ボーと空を見ていた。今日は、快晴。まあ、体育はないから今日の天気は関係ないんだけど。いや、あるにはあるか。自転車で行けるかどうかで俺の家から出る時間は変わるし。

 

そんな毎日考えているようなどうでもいいことを考えながら、焼きあがるのを待つこと五分。こちらが今日の朝食。クロワッサンとミルクをたっぷり入れたコーヒー。ちなみにクロワッサンは俺が作ったのだ。いつもどうりにパンをむしゃむしゃしながら、テレビを見る。やっぱり朝はパンだよ。

 

こうしてゆっくり十五分朝食を食べる。食べ終わると、グラスを洗剤で洗い、さっさと学校に行く準備をする。トイレに行き、荷物を確認し、夜のうちに洗った洗濯物干す。それを終えて制服に着替えて時計を見れば、八時十分。自転車なら、十五分でつくから割と安全圏だ。とは言ってもあんまのんびりしすぎるとほんとに遅刻するから、少し焦りぎみに制服を着る。部屋を出てカバンを玄関に置いた後、戸締りの確認と電気の消し忘れがないから確認してから、カバンを取って玄関を開ける。天気予報道理の快晴で太陽の光が目に痛い。完全に引きこもりの発想、それか吸血鬼だと思いながら、歩く。隣の香乃の家を通り過ぎる丁度、ドアが開いた。家の中からでてきたのは、

 

「あら。おはよう、鳴海くん」

「おはようございます、翠さん」

 

 

香乃の母親であり、たまに夕食に招待してくれる篠宮翠さんだ。香乃が大人になったらこうなるだろうなと感じさせる容姿。ただし、髪は香乃より短いセミロングで、服装はラフな、tシャツの上にカーディガンを羽織っていてロングスカートを履いている。その服装は、柔らかな雰囲気にとても合っていて、とても俺の母親と同い年には見えない。ついでに言えば服装はのセンスも見習って頂きたい。研究大好き人間はそういうところには無頓着だからだ。

 

翠さんは、ゴミ袋を出しに行くのだろう。右手にゴミ袋を持っている。

 

 

「だいぶ出るのが遅いけれど、学校間に合うの?」

「自転車で行きますし、十五分位でつきますよ」

「そう言えば、そうだったわね。香乃のがいつも早く出てるから時間間隔がおかいしくなっているのかしら」

 

そう言ってふふふと笑っている。

 

「香乃は、朝練ですか?」

「そうよ。毎日頑張っているわよ」

 

そう言って俺の目を見る。

 

「気になっちゃう?」

「何がですか」

 

俺は、ジト目で見返す。

 

「香乃のことよ~。あの子かわいいものね。気になっちゃうよね。私なら目に入れてもいいくらい可愛いもの!」

 

前半は、俺が香乃の事をどんな感じに思っているかだったが、後半はただの親バカだった。それのおかげで前半の悩ましい質問をはぐらかす事が出来るんだが。

 

「確かに、可愛いですよね」

 

学校で香乃は、五本指に入る容姿だ。同級生に特に人気がある。俺から見て充分可愛い。

 

「ふふ。そういうことはちゃんと本人に言って上げないと。以心伝心なんてものは熟練夫婦でも難しいもの」

 

そんな事が出来るわけなかろう。恋愛経験値ゼロで恋愛ものは、想像で書いている俺には難題だ。話しているのが楽しかったからそう言えば時間は大丈夫かと腕時計を見れば、五分話していた。やばい、若干早自転車をこがないと遅刻する。

 

「そろそろ、学校行ってきます」

「あ、ごめんなさい・・とちょっと待って」

 

そう言うと、ゴミ袋を置いて家の中に戻って行った。一分もたたず出てきた翠さんの手には、水色のドットが書かれた袋があった。

 

「弁当袋?」

「そうなの。香乃ったら朝なんだかドタバタしていてね。それで置いて行っちゃったのよ。買い物ついでに届けに行こうかと思ったけど鳴海くんに会えたから丁度いいし届けてもらえない?」

 

その後小声で何か言っていたが、俺には聞こえなかった。

 

「まあいいですけど」

「良かった。助かったわ。香乃には私から言っておくわ」

 

 

何とも意味深な笑みを浮かべた翠さんから弁当を受け取ると、カバンをを開けて中に入れる。教科書はロッカーに置いているため、俺の弁当と水筒しか入ってなかったから簡単に入った。

 

「それと土日にでも一緒にご飯食べましょう。久しぶりに鳴海くんとご飯食べたいし」

「でも昨日香乃に、夕飯を作ってもらったばかりなんですけど・・」

「それは、香乃が鳴海くんが心配で好きでやったこと。私も好きで鳴海くんにご飯作ってあげたいのだから気にしないで。私たちと鳴海くんは家族みたいなものなんだから」

 

そういった翠さんはさっきとは打って変わって優しい笑顔を浮かべる。その笑い方は何だか香乃ににていた。気にするならクロワッサンをリクエストするわというところも似ていた。

 

「ありがとうございます。腕によりをかけて作りますね」

「楽しみにしてるわ」

「それじゃあ行ってきます」

「気をつけていってらっしゃい」

 

 

そう言って手を振る翠さんに身をくられ、俺は、小走りぎみに廊下えお走った。

 

 

 

お隣さんの篠宮家とは、仲良くご飯を食べ、今見たく雑談もし仲良くやっている。

 

 

 

 

 

 




話の展開はのんびりですがのんびり付き合っていただければ幸いです。誤字脱字は気にはかけてますがあれば教えてくれるとありがたいです。指摘、改善点、感想などあれば気軽にどうぞ


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俺とクラスメートの関係

自転車を飛ばして、十五分。校舎に付いている時計は、八時半を指していた。危ない危ないと焦りながら、適当に空いているところに自転車を置いて鍵を取る。ショートホームルームが始まるのが三十五分だからまた小走りで走る。文化部一筋の俺には朝からきつい。俺と同じように急いで教室に向かう人を避け、二年の教室がある二階まで早歩きで行く。俺が教室に入るのと同時にチャイムが鳴った。俺は、何食わぬ顔で自分の席に座る。俺の席は窓際の後ろから一つ目。日当たり良好、昼寝し放題の席だ。

 

「重役出勤ご苦労様だな」

「時間的にはアウトだが、先生が来てないからセーフだ」

 

朝一番にいきなり毒を吐いてきたのは、寝ぐせで爆発した髪が毎回、奇跡的な確率で決まっている日向祐。俺の机の後ろに座っていて授業中だろうと自分が書いた落書きを見せてくる。漫画研究会に所属し、萌え絵を量産している。遅くまで絵を描いていたのか、うっすらと目に隈が出来ている。

 

「そういう問題じゃないとおもうけど・・・。でも休みじゃなく良かったよ」

 

そう言って、会話に加わったのは、鶴見蘭丸。どこぞの武士を思わせる名前だが、外見はとても中性的だ。髪はふわふわとしていて長さは、肩から五㎝上くらい。それだからこそ男だとわかるが髪が肩まであるショートヘアだと、何人かは女と間違えるだろう。制服はキッチリと着こなしている。たまにネジが外れるが俺がいつも話すメンバーのの中で一番の常識人だ。演劇部で衣装作りを主に小道具も作っている手先が器用な奴だ。俺の右に座っていて基本的には模範的な生徒だ。たまには良い衣装のデザインを思いついたのか、顔がにやけることを除けばだが。

 

「いつもどうり書いてるうちに寝落ちでもしたんだろ?」

 

と言って俺が寝落ちした原因を当てたのが大内幸。日向の従兄だ。こっちは寝ぐせが奇跡的なかくりつで決まらず思いっきり跳ねている。こっちも寝不足なのかさっきから欠伸を連発している。大方、こいつも徹夜でゲームをしていたんだろう。ついでにこいつはゲーム制作研究部だ。プログラムを担当しているらしい。ちなみにこいつは俺の前の席だ。

 

「まあな」

「んで何を書いていたんだ?オリジナルか?それ書くんなら、ゲー研のシナリオ書いてくれよ。何とか部員で四苦八苦して書いてるんだがお前が書いてくれると全体のゲームのクオリティが上がるんだけどな~」

 

前々から大内にはこんなことを言われる。ゲームシナリオもやってみたいとはおもうけど、優先順位は演劇部の方が上なのだ。一年の時はそんな暇は無かったが。

 

「残念ながら書いていたのは、演劇部の脚本だよ。オリジナルは、最近更新してないな。たしか最後は四週間ぐらい前か?」

「ちっ。やっぱそうか。あわよくば、夏コミのシナリオ作ってもらおうかと思ったのに」

 

夏コミは興味もあるし、軽くオタクに片足を突っ込んでいるから行ってみたいとは思うけど、大会に文化祭に忙しいんだよな。今年は、どうなるか分からないし、今からやれるか分からないし。まあでも。

 

「冬コミなら・・何とかできるかもな・・」

 

俺がそうつぶやくと大内は、顔をポカンとしつつ

 

「お、マジかよ・・」

「なんだよその反応」

 

せっかくできるかもって言ったのに。まあその時の後輩の成長度によるけど。

 

「いや、マジでOK取れるとは思わなくて」

 

まあ、前科というか今まで断ってたからな。

 

「なんじゃそりゃ。でも絶対に行けるとは限らからよろしくな」

 

俺が念押しにそう言うと、大内は、親指をグッと立てて

 

「ああ。できる前提で話を進めるぜ」

「人の話を聞け」

 

まったく困ったやつだ。俺がそう思って一つため息を付くと、隣の鶴見が

 

「それじゃあ、睦月くんのコスプレ衣装も作らないとね~。ふふふ、演劇部の衣装担当の僕が腕によりをかけて作るよ」

 

そう言いながら、今にも踊りだしそうな表情で執事服?軍服?かてそれともいっそのこと女装なんかもありかもという声は、聞かなかったことにする。現実逃避?悪いか?まあ、見てのとうらり、鶴見のネジが外れる原因は主にコスプレだ。俺は、詳しくは知らない。被害者?が語らないから知らないが、夏コミが終わった日の夜に鶴見から大量の写真が送られてきた。着ている衣装は作った作品に出るのかやたら派手だった。そのせいか写真に写っていた二人は始めは虚ろだった目が徐々に焼けくそになっていく過程は鶴見になにをされた、何が起こったのかいまだ闇の中だ。どうやら次は俺の番らしい。今更ながら、行けるなんてことを言ったのは間違いだったかもしれない。素直に言おう。嫌な予感しかしない。こうなったらわざと予定を入れてやろうか。

 

「おい、睦月。わざと予定をいれるのなしだからな」

 

大内の目は確実に俺を道ずれにしようとしていた。次に、日向がこちを向き

 

「俺らが前に味わった地獄をお前にプレゼントする時がやっときたな」

 

いい笑顔で俺の肩に手をおく日向。

 

 

 

 

拝啓、海外出張中の両親

 

俺の周りは今日も平常運行です。

 

 

 

 

 

 

 




誤字や脱字には気をつけていますがあった場合教えてくれるとありがたいです。感想やアドバイスなどあればお願いします。

8/22

海堂先輩の名前と大内の名前が被っていることに気づきました。満の名前は海堂先輩に寄贈し、大内の新しい名前は幸(こう)にします。よろしくお願いします


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体育は休憩時間

四話まで続けてきたタイトルの関係シリーズはここまで。サブタイトルって考えるの大変だと思うのはわたしでだけでしょうか。

まあ、作者の愚痴はここまでにして本文どうぞ。


学校の授業で一番楽なのはどの教科だろう。二年が今習っているのは、現代文、古文、数学、英、物、世界史、後は体育くらいか。この中で断然楽なのは、世界史だ。先生の話も面白いが話しながら書くので、黒板の文字の量はほかの先生と変わらない。いやむしろ板書の量が多く、寝ようかとか余計なことを考える暇がない。では一番楽なのはと聞かれると体育だ。正確に言うと、今の時期は体育が楽だ。むしろ冬は一番嫌いな科目だ。持久走は消えればいい・・・。

 

おっと。話がそれたがなんで体育が一番楽かというと今の時期はこの学校の最初の行事である球技祭がある。四月の第五週に行うため残り二週間を切っている。種目は男子がバレーボールにバスケットボール。女子はサッカーとドッチボールになっていする。言うまでもなく俺ら文科系部活所属の俺らは、目立たない体育館の隅っこで参加せずに見ていた。

 

「こうやって見るとさ、この学校おかしいよな」

 

そう言った大内の目線をたどると、たしかサッカー部の奴が丁度スリーポイントを決めたところだった。まあ、確かに

 

「同じ人間とは思えないな。あいつら実は異世界人とかじゃないよな」

 

俺の心を途中まで代弁したのは日向だった。というより異世界人とか異世界物の読みすぎだ。

 

「そう言えば異世界物ってさなんで日本人設定なのに髪色が黒じゃないときあるよな」

 

と大内が言ってはならないことを言った。

 

「それは、転生された奴が遊んでいる高校生でそんなハッピーな色なんだろう」

「流石にそれはないと思うよ」

 

俺たちの影響で少しながらもラノベを読むようになった鶴見が否定する。でも日向の言うことも理由としては間違ってはいないような気がするな。いわゆるクラスの中心的な奴らが転生するから。

 

「それなら、鶴見はどう思うんだ?」

 

大内がそう聞くと鶴見は、少し考えて

 

「うーん。キャラかぶりを防ぐため?」

 

絶対に違うとは言い切れないが作り手を明らかに敵に回す行為だった。

 

「で実際はどうなんだ月見なむる先生?」

 

明らかにからかっている、面白がっている表情で日向は聞いてくる。しかも俺がネット小説で使っているペンネームでだ。俺は、腹いせに今度俺の小説で悪役にしようと決めた。

 

「ペンネームで呼ぶな。しばくぞ。まあ、俺の場合は、髪が日本人離れしてもおかしくないような設定を作るな。でも結局俺の求めるなんて可愛いければいいだろ?」

 

俺が三人にそう聞くと

 

「まあな。可愛いが正義。これは、万有引力以上の摂理だ」

 

開口一番に大内がそう答え

 

「流石に世紀の大発見と一緒するのはどうかな」

「いや、日向の言うとうり可愛いは正義。つまりあれだな」

 

日向は急に俺らを諭すようにこう言った。

 

「幼女は正義だ」

 

キリっとした顔で何をいうかと思えばただのロリコン発言だった。ポリスに引き渡した方がいいのだろうか。それのしてもこいつ、春休みの間に鞍替えしたのか?こいつ確かに前までオッパイスキーだったのに。

 

「こいつ頭おかしくなったか?」

「僕も一瞬日向くんが何言っているか分からなかったよ」

「おかしいな。巨乳好きのエリートになる教育は施したんだけど」

 

若干一名言ってることがおかしいがそんな事を気にしていたら負けだ。いや、やっぱり言わせてもらう。巨乳好きのエリートってなんだよ。それじゃ大内は、マスターか?ってもういい。今度こそ気にしない。そう思っていると大内が立ち上がり

 

「祐。貴様誰の許可終えて巨乳道から離れた!」

 

と日向に指を向けた。日向そんな事を気にせずにゆっくりと立ち上がる。すると両手広げるいきなり語り始めた。

 

「ふっ、幸。お前はあの豊満な胸にこそ神秘が希望が詰まっているといったな。俺はな。最近胸がすべてではないと気づいたんだよ。そう、あれを買った時それが俺の愛読書になるとは思わなかった。始めは、ただ絵がきれいだというだけで表紙が小学生ということは気にも止めなかった。でもな。小学生を気にもしてなかった?読み終わった後俺は、読む前の俺を殴りたくなったよ。そう、小学生は無邪気なんだ、穢れを知らない天使なんだ。あの小さな体には、将来への希望が詰まっているんだよ。よく言うだろ。子供の時は可愛かったのに悪い方向にメタモルホーゼする奴が。つまりあれだな。師匠が言っていたのは間違ってはいなかったんだよ。小学生は最高だってな」

 

一息で思いのたけを言い切った日向は、広げ上げていた手を下ろし手を手を組んで祈っている。もう言うまでもなく重症だった。確かにあれはロリコン作成本だが、ここまでの信者が出るとわ。恐るべし。

 

「すなわちもう貴様と同じ道は歩まない」

「そっちの道は危険だぜ?」

 

社会的にな。

 

「構わない。百も承知だ。俺は、ロリ道を歩む」

 

少しは構えよ。というよりロリ道ってなんだ。

 

二人は少し見つめあい右手を熱く握った。それは十年来の旧友が旅に出るような・・・部分的に見ればそんなシーンであった。

 

 

 

 

 

こうしていつも道理体育の授業は終わ・・・。

 

 

「そう言えば睦月君。海堂先輩が放課後に演劇部に顔を出してくれだってさ」

 

 

・・・ボイコットしてもいいでしょうか?

 

 

 

 

 

 




ロリコンのくだりは書いてる途中に思いつきました。日向のキャラがだいぶ濃くなったと思います。


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お昼休みは休むものです

「それじゃあ、キリがいいし今日はここまでにするか」

 

そう言って先生はチョーク置き、号令を促す。委員長が号令をかて授業が終わると教室は弛緩した空気が流れる。なぜなら午前の授業は終わり昼休みに入る。

 

「なあ睦月。ノート見してくれ」

 

さっきの数学の授業を睡眠学習に注いだ奴がいつの間にか買ったのか焼きそばパン片手に言ってきた。

 

「はあ・・。何を言っても無駄ってことはわかっているから今更か。さっさと返せよ」

 

そう言ってさっきの授業のノートを大内に渡す。喜んでいる大内を横目に昼の用意をする。いつもはこうして四人で固まっているが大内と日向は学食で鶴見は演劇部と食べることが多い。俺は、パンを持ってきているし昼休みは一人で食べる。今日もいつも道理場所で食べる前にやることがある。

 

そう、翠さんからのおねがいだ。何度かこういうことはあったから別に難易度は低いんだけど。予め香乃にはこういう時のために俺がいつも昼を食べている所を教えているし、念のためだけどそこに来るように休み時間の間にメールを送ったし大丈夫なはずだ。俺は、自分のカバンからサッと自分のと香乃の弁当を取り出しいつも場所に向かう。教室練からでて実習練に行き第二図書館の方向へ。第二図書館周辺は普段使われることがあまりなく人通りはほとんどない。第二図書館を通り過ぎ、奥のドアを開けるとベンチとテーブルが置いてあるこじんまりとした空間が現れる。ここが人が来ない俺のお気に入りの場所だ。見つけたのは一年のちょうど今頃。始めは、誰か来るかと思っていたが全然来ない。二年になった今でもそうなんだから恐らく俺と香乃以外知らないだろう。香乃も普段は部室で食べているし使っているのは俺ぐらいだ。

 

俺は、さっそくベンチに座り香乃の弁当を横に置き袋からパンを取り出す。今日はクロワッサンにスクランブルエッグとチーズを挟めたやつと王道のハムと野菜パンだ。香乃がまだ来てないし先に食べよう。先にどっちを食べようか。・・・ハム野菜にするか。ラップをサッと外しパックといただきます。自分で作って言うのもあれだけどおいしね。無駄にパンばっか食べてないから。からしがいい仕事をしてくれている。ちょうどパンを半分ぐらい食べたときにドアの向こうからタッタと軽い足音が聞こえてきた。昼休みが始まってからちょうど五分たっていた。ガチャと言う音がなりドアが開く。

 

「ごめん、弁当ありがとう。待ったでしょ~」

「待っている間に食べてたしな」

 

そう言って俺がパンを見せる。

 

「そこは今着たところじゃないの?わたしはなるくんがこんな感じなのは気にしないけど気遣いがないと他の女の子に嫌われるよ?」

 

香乃はいたずらっ子みたいな顔でそう言う。

 

 

「あいにくと、そんな予定はない。女子で話すのなんか香乃ぐらい・・いや、香乃しかいないな」

 

そもそも学内で話す人なんて片手で足りる。大内、日向、鶴見だろ・・・。上げると悲しくなってくるな。まあいいや。俺がそう言うと

 

「そっか~。うんならよかった」

 

どこに上機嫌になる要素があったかわからないが機嫌がいいならまあいいかと横に置いといた。香乃は当たり前の事のように俺の隣に腰を降ろす。が・・・

 

「香乃、近づきすぎなんだけど」

「そうかな?」

 

そうだと思います。少し動かすと肩同士があたるくらいの距離。近いせいか女の子特有のいいにおいが春の風に乗せられてこっちに来る・・てこれ以上はまずい。いくら小説風に言ったとしても思考がそっちに行くのはまずい。取り敢えず・・・

 

「俺ならまだいいけどほかのやつにはあんまり近くなるなよ。危ないから」

 

忠告だけはしておこう。大切な幼馴染が傷つくのは嫌だからな。

 

「大丈夫だよ。なるくんじゃないとこんな風に座らないもん」

「そう言う問題?」

「うん」

 

香乃は満面の笑みで強く頷いた。

 

「まあ、それならいいのか?」

「うんうん。それよりもまずはお昼ご飯を食べようよ」

 

お腹がすいちゃったと香乃は弁当お開ける。中身を見ると俺とは違いバランス良い弁当だった。互いに授業とかクラスのことを話しているうちに俺は、食べ終わりボーと空を見上げながら次の脚本やらストーリーを考えていた。童話をリメイクするか・・・ガラッと変えてコメディにするか・・・

 

「くん・・なるくん!」

「あ、ごめん。どうした?」

「集中すると周りの音が聞こえなくなるの悪い癖だよ」

「あー悪い。つい気が緩んで」

「む~。許さぬ。ほらあーん」

 

あーん?何ですかそれ。目の前にはツナサラダを箸で挟んだ香乃が・・・。マジですか食べろと?いやあの恥かしいんですが・・・。

 

「ほら早く食べて」

 

香乃にせかされる。よく見ると自分のやっていることが分かったのか香乃も恥ずかしがっているようにも見える。自分で言って恥ずかしがるな。俺も余計恥ずかしくなる。さっきまで木々を揺らしていた風もやみ、ここだけの時間が止まったように感じる。落ち着け俺。これは、小説に生かすためだ。俺は、意を決してツナサラダを食べる。自己暗示なんかの意味もなくツナサラダの味なんか一切しない。これを公衆の面前でするカップルは鋼のメンタルだと思った。

 

「どう?おいしい?」

「いや。そもそも味がわからない」

 

どうにかお返しをしなければと何かないかと探すがあいにくぱんは食べ終わってしまった。仕方ない。俺は、香乃が飲み物を飲んでいる隙をサッとついて弁当と箸を奪う。

 

「あっ」

 

と香乃が気付くが遅い。もう二つとも俺の手にある。野菜はもうなくなっていて後残すは玉子焼きとシュウマイだった。

 

「はい、あーん」

 

自分でやろうと思ったがこのセリフも充分恥ずかしい。香乃は目を俺とシュウマイとを交互にいききしていた。お返しされたのが悔しいよりもそんな事より今この状況が恥ずかしいのか顔を赤くし潤んだ上目遣いで俺見つめる。俺は、この行動より香乃の表情に顔を赤しそうになった。

 

香乃の顔が近づく。じっとシュウマイを見ると小さいつやつやした口がサッとシュウマイを飲み込む。香乃はよく噛んで飲み込んだ後

 

「なるくん。これは、禁じ手にしよ」

 

 

俺は、無言で頷きサッと弁当と箸を返す。

 

この後若干微妙な空気になったが昼休みを終えるころには元に戻っていた。

 

 

 

 




久々に香乃が登場!この話は自分で書いていながら砂糖を吐きそうでした。甘い感じの話を作るたびにこんな気分になるんでしょうか・・・。

誤字脱字の指摘、感想やアドバイスをくれると嬉しいです


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後輩を見守るもの達

「睦月君。ホームルームも終わったし行こうか」

「なあ鶴見。逃げはしないから腕を組むのはやめてくれないか?」

 

俺は、最後の英語時間睡魔に勝ったと思った瞬間にすぐに睡魔に負け短いホームルームの間寝ていたようだった。そして起きたら鶴見に拘束されていた。しかし何故だろう。どこから視線を感じる。名状しがたい視線だ、その視線をさっと周りを見渡すと教室の隅にこっちを向いている女子数名が。俺が目を向けるとさっと全員が目を逸らす。間違いない。あの集団は腐っている。漫研だったらすごく厄介だなと思ったが悪い想像はやめておいた。現実になりやすいってよく聞くし。俺は、素直に鶴見に引きずられ演劇部室に向かうのだった。

 

●●●

 

演劇部には部室を除いて活動場所として三つの場所が与えられている。一つはホール、二つ目は、大道具や小道具などの作業場、最後は演技などの練習場。優秀な活動実績があるため学校側も大盤振る舞いだ。ちなみに文芸部は、演劇部の脚本のおかげてそれなりには部費がある。演劇部様々だ。まあ、近い道は印刷代と紙に消えて後は余るがな。

 

「ところでなんで俺は演劇部室に連行されてるの?」

「あれ?言ってないっけ?」

 

そう言って鶴見がうん?と首を捻るが俺は、寝起きに問答無用で引きずられてきたんだぞ。わかるとしても体育の授業のあれしか聞いてない

 

「海堂先輩が用があるからとしか聞いてないぞ」

「あー。ごめんごめん。用件はね、前に言っていた脚本志望の子の顔見せなんだよ」

「あーあー」

 

そう言えばそんな事を前に言われた気がする。

 

「さて、演劇部に到着」

 

そう言って鶴見が部室を開けると海堂先輩ともう一人

 

「久しぶり~睦月ちゃん元気にしてた?」

 

と俺を睦月ちゃんと呼ぶこの人は演劇部の副部長様の奥菜友里恵先輩だ。身長は俺より少し低い百五十後半で髪はポニーテールだ。大道具、小道具担当を仕切っている。

 

「ほんとに久しぶりにですね。調子はボチボチと言ったところですかね」

「ふふふ。今年はよかったわね。可愛い子ちゃんが二人きてるわよ」

 

奥菜先輩心底嬉しそうな顔をしている。ということは新しい脚本志望の子というのは女子か。

 

「はあ・・。んで鶴見には顔を見せって聞いたんですけど」

「一年は俺らと違って六限まであるらしい。さっきメールが来た」

「そうですか」

「話は変わるがこの時期何やっているか覚えているか?」

 

この時期?・・・ああ、あれやるのか。

 

「一年に劇やらせるんですよね?俺も文芸部にはずなのにいきなり脚本書けって言われたからよく覚えてますよ」

 

文芸部だって聞いたのにそんな側面もあったとは知らなかったからな。先輩たちは俺が入って嬉しかったのか入部仕立てのころはあの有名な人生謳歌ゲームやっていたからな。先輩達凄い弱かったけど。

 

「そうそれだ。今年もやろうとは思っているんだがいつ頃やろうかと思ってな」

「別に去年と同じ中間テスト前ぐらいでいいんじゃ」

「それだと二週間で締め切りだぞ?それに睦月は暇だし元々書いているからその速さなんだよ」

「さらっと暇人認定やめてもらえます?」

 

まあ、間違ってはいないから否定できないんだけどさ。

 

「それでどのぐらいに締め切りにするかいいか聞いておきたいんだよ。役者側としては締め切り後配役含めて二週間で仕上げるつもりだ」

「私達もそれくらいかかるわね」

 

と言われてもな。確か俺の場合は短かったし話を考えるより脚本の書き方を覚える時間が多かった。それでも早く終わったが・・。二人とも素人でもと考えると右往左往するだろうし。

 

「余分にとって中間テスト開けてくらいがいいんじゃないですか」

「まあ、遅くてもそれぐらいか」

「進捗状況によって早めるけどね」

 

俺は、二人の特に奥菜先輩のセリフに反応する。

 

「あんまりプレッシャーをかけないでくださいよ。筆を折るなんてことになったら同じ書き手としても嫌ですし」

 

ネット小説をそれなりに長くやってるから、書き手の仲間ができる。その人たちは今も残っている人もいるがリアルが忙しくて顔を出せなくなったとかもある。これならまだましで本気で小説家を目指している人が筆を折る場面も見ている。ネットとはいえそういうのを見てるのは結講辛い。

 

「分かった。そう言う所は睦月の方が気持ちがわかるからな。」

「そうね。今まで睦月ちゃんがホイホイ書くから忘れてたけど大変な仕事だもんね」

 

あ。やっと分かってくれました?ホイホイじゃなくて毎回締め切りに間に合わせるために必死にですからね?

 

「私達は脚本に関してはほとんど何もわからない。もちろん先輩としてもホローはするけど海堂くんも言ったとうり気持ちが一番わかるのは睦月ちゃんだから図々しいかもしれないけど私達の可愛いを見守ってくれない?」

「俺からも頼む」

 

二人から頭を下げられる。そんな改まって言われると少し背中がむずがゆい。

 

「できる範囲でやりますよ。俺もあの先輩達には世話になりましたから」

 

俺は、そう返す。素直に二人ありがとうと言われて少し照れくさくなり強引に話を変える。

 

「そう言えば思ったんですけど今まで俺が全部やってましたけどどうするんですか」

 

海堂先輩は強引に話を変えたことに気づいていないが奥菜先輩は気づいているのかニヤニヤと俺を見ている。ええいやかましい。だがこの話も重要なんだよ。前にも言ったとうり演劇部の脚本は俺が書いていた。これが一年が入ることによってどう変わるかで俺の一年がきまる。

 

「ああ。それか」

 

この質問がくるのは予想道理だったのかさらっと答える

 

「大会とかの脚本は睦月に任せようかと。まあ、一年がやりたいと思っているならお前と一年でオーデションみたいなのを考えている。でも経験の為、文化祭とか定期公演では一年に任せることが多くなるから負担は減ると思っていい」

「了解です」

 

と淡々と答えたが俺は、物凄く嬉しかった。ああ!あの地獄から解放される。

 

「それじゃあ、私達の話はここまでにしてやっと全員揃ったみたいね」

 

そう、奥菜先輩が言うといつの間にか全学年が揃っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回新キャラ登場!まあ今日もさりげなくいたけど。

誤字脱字など指摘してくれると幸いです。
感想アドバイスをくれると嬉しいです


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物書き見習い達

奥奈先輩の言うとおり、部室には多くの人がいた。文芸部の部室の五、六倍くらいある広い部室もほとんど埋まっている。見ない顔が結構あり、そんな人たちは俺を誰だこいつみたいな感じで見ている。視線が痛いです。

 

「はい、それじゃあ、みんな座ってね~」

 

その一言で全員が素早く座る。奥菜先輩が怖いのか演劇部の性質なのか・・。謎はあるが。というか脚本志望の顔見せなのにどうして全員なの?

 

「奥菜先輩。なんできれいに全学年揃ってるんですか?」

「結局、みんなにお披露目するんだし一気にやった方が効率がいいでしょ?」

「お披露目って・・・」

 

まあ、盆と正月が一緒に来たような感じって意味が分かるようなわからないような例えだが結論は諦めるだ。

 

「三年、二年は知っているが一年は知らないから紹介しておく。演劇部の脚本を書いてくれる睦月鳴海だ」

 

そう言って海堂先輩が俺を紹介する。俺は、軽く頭を下げるとこの人がという声が聞こえる。

 

「それじゃあ、和幸と姫宮はこいつについて行って文学部室に行ってくれ」

「は?聞いてないんですけど」

「あ、すまん言い忘れてた」

 

この天然め。

 

「はあ。連絡事項はしっかりしてくださいよ」

「ごめんね睦月ちゃん。わたしからもしっかり言っておくから二人をよろしくね」

 

奥奈先輩は進行を他の人に任せ海堂先輩を連れどこかに消えた。合掌。

 

取りあえずこっちもやることやりますか。

 

「それじゃあ、和幸と姫宮ついてきて」

 

 

●●●

 

俺はいつもどうりに部室に向かっているが………。空気が重い。まあ、いきなりぽっと出の先輩についてきているんだし当然なんだけどさ。

 

「ここが文芸部室だよ」

 

俺はドアを開けて内履きを脱いでいつもの場所に座る。二人には適当に座って貰った。

 

「改めて始めまして。文芸部部長の睦月鳴海です。取り敢えず自己紹介してもらってもいいかな」

 

俺がそう言うと、二人は一回目を合わせると、少し話をしている。決まったのか左にいる子から話し始めた。長く綺麗な黒髪で身長は悔しいながら俺より少し高いくらいの子だ。綺麗という言葉がしっくりきて、舞台映えする容姿だ。しかしながら近寄りがたい雰囲気はなくやわらかい印象だ。恐らく海堂先輩のことだから役者側に誘っているだろう。

 

「一年Aの和幸涼音です。元々趣味は少し小説を書いていたんですけど部活紹介で演劇部の脚本に興味を持ったんです」

 

見た目道理、喋り方はやわらかいし丁寧だ。しかし、今の入部動機を聞く限り演劇部さえなければうちに入ったんじゃないか?惜しいことをした。来年は少し真面目に勧誘をしようかと考えたがそれはいったん横に置いておいて次の子に促す。次の子は髪がロングとショートの中間くらい、具体的には肩からさらに五、六センチくらいで右側を結んでサイドテールにしている。可愛いと表現してもいいがなんか怒っているように感じるのはなぜだろうか。うん、気にしない方向で

 

「姫宮葵。中学三の時に演劇を見て脚本に興味をもちました。でも素人です」

 

・・・シンプルかつ分かりやすい自己紹介だった。しっかりとこっちを見てなんとなく強さを感じる。未経験者ということはあの話し合いも無駄ではなかったようだ。姫宮も俺を見て俺もますっぐ見返しているからにらみ合っているように感じてるのか和幸は落ち着きがなくそわそわしていた俺は、それにやっと気づいてた。

 

「よし」

 

一先ずこの空気を飛ばすためなれないながら喋り倒すことにした。とは言っても内容は今後のことだが

 

「二人には中間テスト開けの次の週までに脚本を一本仕上げてもらおうと思う」

 

俺がそう言うと対照的な反応が得られた。和幸は、嬉しさが出て、姫宮はさっきとは変わって少し不安げな様子だったと思う。

 

「もちろん、書き方は教える。脚本についての本もあるしね」

 

そう言って俺は目線を棚に向ける。そうすると二人も目線を変えた。

 

「あれって全部演劇関係の本なんですか?」

 

和幸がそう聞いてくる。

 

「全部じゃないよ。小説書くための資料もあるし」

 

俺は、よっコラショと口には出してないがそんな気分で立ち上がると本棚に近づいて、西洋文化に関して書いている本を取り出して机の上に置く。丁度これは廃棄される予定だった本で役に立つかもしれないと貰ったのだ。割と重宝している。

 

「それならこれも?」

 

姫宮が手にしていたのは女性向けのはファッション誌だった。視線が完全に変質者を見る目だった。別にそれを見てハスハスしていたわけでわないちゃんとした理由がある。いやむしろなければ俺は、変態さんだ。服装を文章で表すのって意外と難しい。そもそも男なんだし女性ものなんてわかるわけがない。だからこそ本屋の店員さんの疑惑の目を気にしつつ買っているのだ。こんな感じの説明をしたら、こいつ変態だって感じで見ていた姫宮は、横で共感していた和幸に納得してかその疑惑の視線はなくなっていた。ありがとう。和幸、感謝だ。

 

「さて、資料についてはそれで良しとして。和幸と姫宮はパソコン持ってる?」

 

和幸は恐らく持っているはず。スマホで書こうと思えばできる。でも、長時間やっていると指が釣りそうな感覚がするのだ。

 

「わたしは自分のを持ってます」

「私は自分のは無いけど家に一台」

 

二人はそう答える。なら、問題ない。俺は、少し待っててと言って近くにあるノートパソコンを起動させる。ちなみにだが学校のは白で、俺のは黒だ。というのは余談で俺は、中にある歴代の先輩たちが残した脚本が入っている。恥かしながら俺の書いたのも含まれる。紙でも原本が残っているが文芸部にとっても大事なものなので原本を貸すわけにはいかない。よってUSBにコピーして二人にも渡すのだ。見本としては最高のお手本だろう。おれが一年の時に参考になった物をUSBに入れておく。ここで間違えても自分のは入れないことだ。時間にして数分。

 

 

「取り敢えずこのUSBに何本か参考になりそうなのを入れといたから」

 

そう言って二人に渡す。

 

「ここに睦月先輩のは入っているんですか?」

「いや、入れてないよ。流石に自分で自分のを見本て言って渡すのはどうかと思って」

「それならい入れて貰っていいですか。私、海堂先輩に睦月先輩が賞を貰ったことがあるって聞いて読んでみたかったんです」

 

素直に、笑顔でそんな感想を射言われると嬉しいし気分がいい。

 

「私のにもお願いします」

 

姫宮にもそう言われて少し驚いたが、顔には出さずにはいはいと軽い口調で答えてUSBに入れる。

 

「できたよ。あと、そのUSBはなくさないでね。文芸部の備品扱いだから」

 

なくしたら演劇部に請求がいくよと冗談を入れて二人に渡す。二人は大事そうに受け取ると和幸はポーチに、姫宮は、シンプルかつコンパクトな性能重視の筆箱を取り出して中に入れた。見事にUSBの保存場所が姫宮と被った。

 

「んで後は、取り敢えずこれとこれこれ」

 

と脚本の本を数冊渡し、後何かあったかと考える。うーん。そうだ連絡手段も必要か。

 

「これ俺のユーザー名だから何か聞きたいことあったらそこに連絡して」

 

と一般的になりつつある無料通話のtorque(トルク)の連絡先を教える。マメにも二人はメモに取ると、紙を一枚とり自分の連絡さきを教えてくれた。正直必要ないと思ったが押し切られた。今日はもうこれで終わりだから帰っていいよと伝え、ゆっくり考えなと一言言って終わった。

 

「ふう。なんか疲れたな。俺も帰るかな」

 

腕を伸ばしながら時計を見ると四時を回ろうとしていた。運動部なら今から本番なんだろうが文芸部の俺は、帰える時間だ。ささっと帰宅準備をおえいざ帰ろうとすると見覚えのある筆箱が。あれは姫宮のだったか。そのまんま忘れていった見たいだった。

 

「香乃の弁当といい、姫宮の筆箱といい俺は、忘れ物に愛されてるのか?」

 

そんな疑問を持ちつつ、連絡先を交換しといて助かったと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラの登場でにぎやかになると思います。
後、忙しくなるので更新は遅めになります。時間の合間を縫って更新していきますのでのんびりお待ちください。


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落し物は持ち主に

みなさんお久しぶりです。約一か月ぶりの更新です。


帰宅後。

 

姫宮に連絡を取った。その時、姫宮は丁度、家に帰る途中だったみたいだ。姫宮は演劇部が終わったその時、カバンを見たら筆箱がなかったことに気づいたらしい。それですぐに文芸部の部室に行も、俺は、帰っていたといわけらしい。姫宮にとってはある意味ナイスタイミングだったみたいだな。明日は一時間目が体育なのでその帰りに教室によりますということだった。筆箱のの件は一件落着。俺がど忘れして、置いてかないように筆箱はバックの中に入れたままにしておいた。

 

部屋着に着替え、風呂を沸かし、その間に夕飯を食べる。今日は、キャベツたっぷりのコロッケパンとクリームとあんこがぎっしり入ったデザート枠のクリームあんパン。クリームあんパンは作るのがめんどくさいが、冷やして食べると美味しいので余裕がある時に作っているのだ。

 

俺は冷蔵庫からコロッケパンを取り出して、オーブンにぶち込み、カフェオレをコップに注いで、暖め終わるのを待つ。十秒たったら上下を逆にしてまた暖め直す。これをしないと片方あったかで片方ぬるめなんてパターンが起こりかねない。それの予防だ。そうしてまた十秒後にオーブンから取り出せばほかほかのコロッケパンが完成だ。さっとテーブルに持って行き、次にクリームあんパンとカフェオレを持ってくる。テーブルの上にあるリモコンを取りテレビを付けるがまだ夕方だからか、ニュース番組しかやっていない。まあ、別にいいか。BGM替わりだ。

 

パンをモシャモシャ食べながら、俺は今後の予定を考えてた。まだ4月。されど4月。まだ間に合う、まだ間に合うと考えてある内に締め切りはひっそりと忍び寄り俺の首を刈ってくる。だからやることを整理して、おかないとそのしわ寄せで、数日引きこもりのパソコンとにらめっこなんてザラにある。まあ、予定道理にやっていても思いつかなければ、結局パソコンとにらめっこだが。

 

一番近い予定としては、文化祭で使う劇の脚本に、部誌だ。その後に大会があって定期公演があってとなかなか忙しい。まあ、増えた事だし俺の負担も軽くなるだろうけど、一つ作るだけでも充分大変なんだよなと思いながらコロッケパンを食べ終わった俺は、次にクリームあんパンに手を出す。ひんやり、しっとりとしたパンにクリームの甘さとあんこの甘さがよくあっている。疲れた脳に糖分が補給されていく。食べ終わったら風呂に入って、テレビを見つつパソコンとにらめっこだ。常に締め切りを意識しとかないと、気が抜けて別の方向に走りかねない。進めてもらったゲームやアニメなんか見ていたらそれだけで一日が終わってしまう。そんな時間泥棒はいらん。次の話、次の話と思っているうちに、時間が経っているなんて想像するだけでも恐ろしい。むしろなんでその集中力をほかに生かせないのか・・・・。まあ、それはほかの人も同じか。よくあるテスト前で勉強しないといけないのに、ついつい別のことをしちゃう現象。あれなんか名前がついてるんだよね。何だったか。

 

そんなどうでもいいことを考えながら、今日の夜は、過ぎていった。

 

 

 

 

●●●

 

朝、特に特別なことはなく、起きたらご飯をを食べていつもの時間に出る。まあ、いつもと違うのは、姫宮の筆箱を忘れないように何度か確認したくらい。自転車に乗って学校への道を颯爽と走る。所々にうちの学校の生徒が、急いで走っているのが見える。自転車を使って、五分前につくのに今吞気に歩いてたら遅刻だしな。頑張れ徒歩の諸君。俺は、これ見よがしに、走っている生徒の横を颯爽と抜いて学校についた。クラスに入ってみれば、ほぼ全員が揃っていた。当たり前か。何せホームルームの五分前だ。俺もさっさと席に着くと二つの屍があった。いうまでもなく睡魔にやられて熟睡している日向と大内だった。起きている鶴見はおはようと笑顔で手を振ってくる。何度も言っているかわからんが鶴見は男である。これはこのクラス全員が分かっていることだ。しかしたまに鶴見が女の子にしか見えない時があり、それが今だった。鶴見は演劇部があって作業でもしていた時に前髪が邪魔だったのか、ピンクのヘアピンをつけていた。

 

もしかしたら、睡眠不足じゃなくて、二人はこの魔力に屈して倒れたのか?・・・・ほっとこう。うん、それがいい。

 

「おはよう鶴見」

 

俺は、ヘアピンを取り敢えず無視して、鶴見に挨拶を返す。

 

「ねえ、睦月君。さっきからこの二人を起こそうとしてるんだけど起きないんだ」

 

もうすぐホームルーム始まるのにとつぶやきながら、起きて大内君、日向君と肩を揺さぶっている。・・が起きない。なんとなく流れが想像できた。二人して机に突っ伏して寝ていたところに、鶴見が朝練を終えて教室に来る。んでなんだかんだと時間が過ぎて起こそうとした。それで寝ていた二人は、女に見える鶴見を見て、自己暗示モードに入ったのだろう。確かに、今の鶴見が本気で女の振りをすれば何人かは落ちる。

 

「ああ・・。今、二人は、自己暗示なんだ。そっとしておこう」

「なんで自己暗示?」

 

だから鶴見さん。無意識かもしれませんが、可愛らしく首をかしげないでください、お願いします。

 

 

 

一時間目が終了し、休み時間。この二時間目との休み時間の間に姫宮が取りに来るはずだ。そう思って廊下の方を見ていると見覚えのあるサイドテールの女の子が見えた。カバンから姫宮の筆箱を取り出して席を立つ。日向と大内は今度こそ寝ているし、鶴見は丁度トイレに行って・・・・鶴見ヘアピン外したか?惨事が起こるぞ。話がそれた。一先ず返そう。俺は、さっと教室の後ろを抜けて廊下に出ると丁度姫宮がいた。後はなんかもう一人いた。体育の後だったからもちろん体操服である。ちなみにだが体操服のデザインは上は白で左胸に校章があり校章の色は学年色。一年は、濃い青、二年が黒、三年が赤になっている。下の短パンの色も学年色だ。

 

「おはようございます睦月先輩!葵ちゃんが筆箱を取りに行くから授業終わったら二年の教室に行くって言うんで付いてきちゃいました!」

 

何というか。姫宮と対照的だった。ずいっと一歩前に出て元気よく挨拶される。余りにもいきなりだったからこっちが引いてしまった。というよりもこの子は演劇部か?俺の名前知っているってことは。黒髪を水色のシュシュで結んで居るその子は姫宮とほぼ身長が同じで目が大きくいかにも、元気な女の子のこという感じだった。

 

「あ、ああ。うんおはよう」

 

さっきも言った通りコミュニケーション能力がない俺にとってここで若干引いてしまうのは仕方ないと思う。むしろ挨拶を返せただけ十分だ。

 

「椿、何度もその一気にまくしたてるのやめなって言っているのにどうして治らないの?」

 

姫宮がやれやれとでもいいたげな顔をしている。

 

「それを言うなら葵ちゃんだって、緊張すると表情が硬くうむひゃみゃう」

「余計なことをいうのはこの口?」

 

ねえねえと言いながら姫宮は椿と呼ばれた少女の頬をむにょむにょしている。ああ・・うん。置いてきぼり感がすごいけど仲がいいのはいいことじゃないかな。それと文芸部であった時のは緊張していたのね。

 

「あー。取り敢えず姫宮」

 

俺がそう言うと、姫宮がむにょむにょしながらこっちを向いて向いた。俺は、筆箱を姫宮の前に出す。姫宮は、むにょむにょをやめて筆箱に手を伸ばして取ると大事そうに抱えた。その様子から何か大事な物が入っているのかと思ったが気にしないで置いた。なぜならそれよりも深刻な問題があったからだ。俺ではなく二人にだが。

 

「えっと二人共、そろそろクラスに戻らないと着替え間に合わないんじゃない?」

 

俺は、二人にそう言った。二人は、クラスの中にある時計を見ると事の重大さに気づいたらしい。

 

「あ!早く戻って着替えないと!」

「だからついてこなくってもいいって言ったのに」

「いいのわたしが着たかったんだからほら、早く戻らないと!」

 

そう言って姫宮の手を取って歩き始めるが

 

「椿ちょっと待って」

「え?あ、うん」

 

なんだ?

 

俺は、早くしないと遅れるぞと言おうとしたが

 

「筆箱、拾ってくれてありがとうございました」

 

そう言って軽く頭を下げると椿行こうと今度は逆に手を引っ張って行く。その時の顔は初めて会った時よりほんの少し表情にやわらかさがあったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字感想アドバイスありましたらお願いします。


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放課後の相談室

みなさんお久しぶりです。三ヶ月放置してすいません。


四月も後半に入り、球技祭まで残り一週間とまで近づいている。そんなわけで体育の授業があった今日はやる気のある人へのご褒美なのか、残念ながら、朝の天気予報は全部晴れマーク。体育の授業は俺らやる気のない奴ら以外を除いて元気に行われた。その後も晴れマークは健気に仕事を続け余計なことに春にしてはやたらと熱くなっていた。それが五時間目まで続いていたのだが、五時間目の終わりになると、太陽がばてたのか若干空模様がが怪しくなり、時間が過ぎて六時間目の終わりになる今となっては、雨がザーザーと降っている。

 

運が悪い事に折り畳み傘は、家に置いてきてしまった。かといっていくら家が近いからって雨に濡れて帰るというのは選択肢にない。もうこの雨が通り雨だと信じて学校で雨宿りするしかないかと思ったところでチャイムが鳴った。委員長が号令をして挨拶をすると授業が終わると教科の先生が出ていくとの入れ替わりで担任の先生が入ってくる。特に連絡事項はないらしく、一分もかからないで、ホームルームが終わってしまった。こうなれば後は部活の時間。クラスの半分以上がさっさと教室を後にする中に珍しく日向と大内の姿があった。そう言えば今日体育の時に大内がコンペに出す作品にバグが見つかったとか、日向が新しく入ってきた後輩への布教活動阻止とか言っていたな。プログラミングはよくわからないけど、いつもは休み時間に俺らと話しているのに今日一日顔が死んでいたから相当なまずい事態なんだろう。日向に至っては・・・もう諦めた方がいいんじゃないかと思ってる。

 

つまり、特にこれといった用がない俺は、一人文芸部の部室で時間をつぶさないといけないわけだ。さて、そろそろ行こうかと思った時にスマホが震えた。めったに連絡の来ない俺のスマホなんだがいったい誰から連絡がきたのか見てみる。送り主は姫宮だった。内容をまとめると脚本作りを見てほしいらしい。思わず、ナイスタイミングと言いそうになった。俺は、文芸部の部室に来るように返信を返すと、教室を後にした。

 

 

 

●●●

 

俺が、部室に付いた時には姫宮は、ドアの前で待っていた。

 

「急に呼んですいません」

 

姫宮姫宮は、俺を見るとそう言ってた。俺は、丁度暇だったからいいよと答えて、カバンから出しておいた鍵で部室の鍵を開ける。中に入って、カバンを置き、腰をおろすとちゃぶ台の前に腰をおろすと正面に姫宮が座った。姫宮は、鞄から小さい白色のノートパソコンを取り出すと少し操作をし、俺の方にパソコンを見せた。開いていたのはメモ帳で、色々と書き込まれていたものの、話にはなっていなかった。要するに相談ていうのは恐らく

 

「どんな話を書けばいいかまとまらないのか?」

 

俺がそう聞くと、姫宮は頷いた。あーうん。どうしようかな。元になるのベースはあるんだし行けそうな気がするけど。ああ、それとだ。

 

「メモ書きとかネタを書くときは、パソコンじゃなくて紙に書いた方がいいかもね」

 

パソコンなんて堂々と教室で開いたら盗まれる。それに授業中に開いていても違和感がないという便利なものだ。まあ、うっかり学校でなくした日には…なんて想像ししたくない。頭の中がネタ帳なんていう人もいるかもしれないが、俺には無理だ。書いた方がしっくりくるし小説を書いている気分になる。

 

「そうですよね。いつもパソコンを持ち歩くのは流石に無理です」

 

姫宮は、そう言ってい頷くと帰りに買ってこようと呟く。俺はメモ帳替わりにコピー用紙を姫宮に渡す。姫宮が筆箱からシャーペンを出すのを見てからまた話を再開する。

 

 

「姫宮は、どんな劇をやってみたいんだ?」

 

俺がそう言うと、姫宮は、少し言いにくそうに恋愛劇と言った。知り合って数日だけど、姫宮から恋愛という単語が出てくるのが意外だった。いや、俺も人のこと言えないけどさ。ラブコメとかコメディを書いたりしてるし。でもこうなんか姫宮は推理ものを好みそうな感じがある。恋愛劇か。

 

「恋愛劇だと多いのが身分違いの恋とか、そういうのが多いんだよね。でも、そういうのもいいけどたまには、ドロドロの愛憎劇とか書きたくなってくるんだよね」

 

まあ、演劇部の先輩に見せた段階で没になったんだよね。文芸部の先輩は、読んでいるとき、超ハイテンションで、読んで嬉々として劇にしようとか言ってたけど、演劇部の人にギリギリアウトって言われたんだよな。その時ちょうど二学期の期末試験の終わりで学校全体が早く来いクリスマスみたいな雰囲気だったからついイライラして書いやつなんだよな。うん、今にして思えば先輩も俺も疲れてたのか・・。

 

「あの嫌にリアルな脚本、先輩が書いたんですか」

「あれ?混ざってた?ボツは抜いたはずなんだけど」

「ボツだったから作者名がなかんたんですね。先輩。あれは、ホラーです、始めは、主人公と幼馴染の女の子とそれを応援するクラスメイトの女の子で、じれじれの恋愛劇を予想したんですけど、途中からクラスメイトが入ってそこから阿鼻叫喚の地獄絵図。わたし、夜に読んだこと、後悔しました」

「ああ、ちょっとしたストレス発散のつもりが気がついたら無駄に研究してたんだよね。よくある友達の恋の応援していたら自分もその人を好きになるっていうのあるでしょ。その後って大抵、応援されていた人が好きになるのは仕方ないよみたいになって、負けないよ的な感じだけさ。そこを変えたら面白そうって思ったんだよね」

「そうです、その部分です。そこまで楽しく読んでいたのに…」

 

そう、ここから前半とは一気に変わる。始めは、天使のような笑顔を浮かべていた幼馴染が裏で、クラスメイトの悪いうわさを流し、クラスメイトも対抗して噂を流す。やられたらやり返す。血で血を洗う女同士の戦い。渦中の主人公は後半は出番がなく、、蚊帳の外。途中からまさに存在感がないのだ。メインは女同士の戦いなんで。

 

「読者、観客の予想を裏切った時の反応が面白いんだよね。ストレス発散で書いたんだけどこれが劇になったらおもしろかったのに。ボツになったのが本当に痛い」

 

俺が、そう言うと、姫宮は無言で俺を見ている。あれは分かる。何書いているんだよって目だ。悪いことはしていなけど何となく罪悪感がこみ上げてくる。思わず目をそらして俺は、強引に話を変えに行った。

 

「取り敢えず、メモ書きから自分がどんな話を書きたいかをまとめてその後登場人物の人物相関図を書いたりしたりして詰めていくのがいいかもね。あとは物語の舞台になる年代の文化や衣装も頭に入れておいた方がいいよ。裏方の人にも自分のイメージが伝わりやすいし」

 

と姫宮の問題の解決策になりそうな回答を出した。姫宮は、未だにさっきのような目だったが、少し目を逸らして、間を開けてありがとうございますと言うとさっそく作業に入っていた。

 

パソコンとにらめっこし、紙に少しずつペンを走らせる。俺もこんな時があったなと懐かしみながら、俺もパソコンで脚本を作っていく。静かで穏やかな時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「そう言えば、文芸部に入り浸っていていいの?」

 

俺は、唐突に思った。かれこれ一時間半はここにいる。演劇部はうちと違って毎日やっているから戻らなくてもいいのかと思った。

 

「大丈夫です。部長に文芸部に行ってきますとは言いましたから」

 

何かあれば、誰か来ると思いますと言うと再び机に向かおうとしたが

 

「あの…迷惑ですか?」

「いや、そう言う訳じゃないよ。今は帰ろうにも帰れないからね」

 

と雨が降っている外を指さす。

 

「もしかして傘忘れたんですか?」

「そう、最近雨が降らなかったからついうっかりね」

 

そう言うと、姫宮は、カバンをあさり始めると中から折り畳み傘を出した。

 

「使います?」

「いや、姫宮が濡れるでしょ」

「私は、椿に入れてもらうので大丈夫です」

 

そう言って、姫宮は俺に傘を渡そうとする。椿っていうのは確か筆箱を取りに来るときに一緒にいた子だよな。同じ演劇部だし…でもな。

 

「筆箱を拾ってもらったお返しです」

 

と折り畳み傘をちゃぶ台に置いて、荷物を鞄に纏めて出て行ってしまった。去り際に明日の放課後返してくださいと言うと、そのまま居なくなった。

 

 

 

 

「…意外と強引というか押しが強い」

 

 

折り畳み傘に飾りで付いている黒猫がちゃぶ台の上で俺を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の更新は、正月に出来ればいいですねえ(願望)。



今年も残すところ後数日。皆さん体調に気をつけて、新年を迎えてくださいね。


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怠け者の天才

宣言どうり何とか無事に投稿!

そしてあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


次の日の放課後

 

俺は、演劇部に来ていた。もちろん姫宮に傘を返すためだ。扉を開けて中に入り、周りを見渡して姫宮を探していると三人掛けのソファーの上に寝っ転がって、だらけているレアキャラを見つけた。あっちも俺に気づいたのか吞気そうに手を降っている。

 

「あれ?睦月君じゃないですか。久しぶりですね」

 

というやけに間延びた声を出す。確かに久しぶりは久しぶりだな。この聞くもの全てを脱力感させるような声。俺は、そっちの方に近づく。その間に寝っ転がっているレアキャラはゆっくりと起き上がったけどひじ掛けに両腕を載せてそこに頭を乗っけている。

 

「久しぶりだな、千歳。さぼっていていいのか?」

 

ちなみにだけど、千歳というのは苗字で別に名前で呼ぶ仲というわけではない。千歳風香がこのだらけ魔の名前だ。演劇で使う大道具、小道具の制作を担当する。多岐にわたるその技術で一級品を作る天才で演劇部を支える一人…では一応あるんだけど見ての通り怠け者だ。立っていれば肩より少し長いとわかる髪は、さっきまで寝っ転がっていたせいか盛大に乱れている。頭のてっぺんから出ているアホ毛は本人の精神状態を表しているようにぐったりとしていた。

 

「見てわかんないんですか?睦月君。私はこのソファーの耐久テストをしているんです。サボってなんかいませんよー」

 

とのたまう。さっきまではソファーで寝っ転がっているくせに何言ってるんだよと口に出そうになるが言ったところで無駄なのは、それなりの付き合いだから分かる。

 

「副部長に見つかったら怒られるぞ?」

 

俺は、今はここにいない副部長の名前を出す。千歳は基本的に怠け症がぬけないからその度に副部長と鬼ごっこが始まる。

 

「そうなったらに逃げますよ~。あの鬼に捕まったら何されるかわかりませんからね」

 

先輩なのにそんなことを言ってもいいのかと思ったがこれが平常運転。そう言えば、このソファーは、Bチームで使うやつか。

 

「そのソファーは買ってきたわけないよな?」

 

なにせ見た目は普通に売っているのと変わりない。ひじ掛けは木製でニスが塗られて綺麗に光を反射している。布地も黒で全体的に高級感が漂う。それなりのいい店で五万くらいで売っていそうだった。

 

「そんなことをしたら、部費がなくなっちゃいうますよ~。それなら私がもらいますよ」

「横領するなよ」

「そんなことするわけないじゃないですか」

 

と言いながらできない口笛をしようとする。疑いの目をじっと向けると千歳は徐々に目をそらす。言わずともギルティだ。

 

「いや、千歳の相手をしている場合じゃなかった」

 

本来の目的を忘れいていた。千歳と話しているとなかなか本題に入れない。

 

「相手してくださいよ~。最近、私とゆっくりしてくれる人がいないんですよ」

「いや、仕事しろよ」

「これは仕事じゃなくて部活ですよ~。それにやる気がない時に作業していいものを作れる訳ないじゃないですか」

 

まあ、ごもっとも。

 

「それに納期にも間に合ってますし」

「ダウト。お前どうしよもなくなったら俺に手伝わすのやめろよ。しかもその時に限って俺も修羅場なんだぞ」

 

俺が手伝っていなかったら今頃納期破りの常習犯だぞ。しかも演劇部じゃないのにいろなスキルが身についたし。

 

「え~?いいじゃないですか。クリエイター同士、一緒に道…じゃなくて助け合いましょうよ」

 

こいつ絶対道ずれって言いそうだったな。

 

「なんで俺なんだよ」

「一番罪悪感がわかない相手…いや、親しい仲だからですよ」

 

ものはいいよう。一番罪悪感がないと言われてから親しい仲と言われても心に響かないものはない。

 

「日本語って難しいな」

「そうですね~」

 

と日本語の難しさにを二人で再認識して和んでいたところでつい、一度忘れた本来の目的を思い出した。

 

「それは、さておき、姫宮どこか知らないか?」

「姫宮さんですか?私は見てませんけど?なんかようなんですか」

「ああ、昨日傘を借りたら返しに来たんだよ」

「なるほど。そう言えば昨日はいきなり雨が降りましたよねえ。私は傘持ってなかったんで作りましたよ。睦月君もこっちに来れば作ってたのに」

 

サラッと傘を作るなんて言っているがなにも言わない。こいつはないなら作ればいいとか言って平然といろんなものを作る。傘ぐらいでは驚かない。

 

「そうかその手があったか」

「そうですよ。傘の一本や二本なんて作るのは手間じゃないですからね」

 

いや、傘を作ることを料理感覚でいわれてもな。

 

「そう言えば鬼も持っていなかったんで特別製を用意してあげましたよ」

 

明らかに、悪い意味でのいい笑顔を浮かべた千歳はノリノリだった。

 

「あけたら閉じない傘を作ったんですよ。家の中に入ろうとして、傘を閉じられないで焦っている鬼の姿を思い浮かべると笑いが止まりませんよ~」

 

ビデオでも、撮っておきたかったですねとお腹を抱えて笑っている。この怖いもの知らずに今のうちに合掌しておこう。鬼ごっこがんばれ。しかし

 

 

「姫宮どこに行ったかわかるか」

 

俺が聞くと笑いを少しずつ収めていき落ち着くと

 

「ん~。わかりませんね~。ここに居ればいずれ来ると思いますよ。だからそれまで私とゴロゴロしてましょうよ。休める時に休むのが一番ですよ」

「お前はいつも休んでんだろ」

 

と俺は、千歳にツッコミを入れると三人掛けのソファーに座る。結局、姫宮が来る一時間後まで俺は、千歳とゴロゴロしながら話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遂に新しい年です。そう言えば、これは投稿してから一年たっていませんが早くも七か月も立っています。振り返るとあっという間です。

なかなか時間が取れず更新ペースは亀どころかカタツムリですが今年もよろしくお願いします。

誤字脱字、感想があればお気軽にどうぞ。



ところで亀よりカタツムリの方が遅いですよね、多分


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怠け者は今日も怠ける

忙しくて見事に三ヶ月放置。もうすいませんとしか


「何やっているんですか?」

 

三冊の本を腋に抱え、部室に戻ってきた姫宮が、開口一番に言った言葉がこれだった。その眼は、完全にダメ人間を見ているようだった。そんなダメ人間の俺らは、工具の名前でしりとりという斬新な縛りを自らにかし、当然ながら、序盤で詰まっている状況を姫宮に伝えると、呆れた表情とため息がプラスされた何やっているんですか?が返ってきた。今思えば確かになんやっているんだろう。

 

「チですか?チ~~?ありますか~?そんな工具?」

 

後輩に呆れられているとはつゆ知らず、吞気にそんなことを言いながら千歳は、足をバタバタさせている。三人掛けのソファーで、半分ずつと言いたいが、俺は、普通に座って、右のひじ掛けに持たれているのに対し、千歳は、二つと言わず俺の膝の上に足を持ってきて寝っ転がっている。思わず、ここが学校であるということを忘れそうなだらけ具合だった。だらけているのはいいが、足をばたつかせるな。痛くはないがやめろ。そしてだが

 

「千歳が分からないのを俺が知っているわけがないだろう」

「え~?私の弟子じゃないですか」

「お前の弟子になった覚えはない」

 

俺がそう反論すると

 

「なら睦月君を私の弟子に任命しますよ~。仕事は、私とゆっくりして作業を手伝うことですよ~」

「作業は、お断りだ馬鹿野郎」

「そう言いながら、なんだかんだ手伝ってくれるじゃないですか~。素直じゃないですね~」

 

そう言いながら足のつま先で、脇腹をちょんちょんと押してくる。脇腹が弱いというわけではないが少しくすぐったいしそれに鬱陶しい。千歳が、ものすごくいい笑顔なのが腹が立つ。俺は、お返しに足を持ってくすぐり…と行きたかったが流石に問題があるかと思い、代わりに親指の爪の根元を思いっきり押した。

 

「ちょ、睦月君それに痛いですよ!」

 

自由な左足で俺の膝を叩くがそこまで痛くない。

 

「それは、よかった。痛くしてるしな」

「非道!冷血漢!え~と…お前母ちゃんでべそ!」

「もっと他に言いようがあっただろ」

 

なやんだ末に、お前の母ちゃんでべそが出てくるのはある意味すごいが。なんて考えていたらだんだんと膝が痛くなってきたし、掴んでいる親指もきつくなってきたら離してやった。

 

「わかったなら俺に作業手伝わせるのはやめろよ」

「それは、無理ですね~」

「千歳は、欲しがりだな」

 

俺は、さっきと同じ爪をつまむ動作をすると、俺の膝からサッと足を引き、出来るだけ精進しますよ~といつもの間の抜けただらけえた声で言った。これほど信用できない言葉はない。思わずアホ毛を掴んでやろうとしたが、一度、走られると追いつけない。副部長との鬼ごっこのおかげで逃げ足だけはかなわないから諦めた。

 

「そう言えば、姫宮さんが今持っているのは脚本の資料ですか?」

 

これ以上の追及を逃れるためか思いっきり話をそらしたな。

 

「まあ、そうですけど」

 

そう言って姫宮は、わきに抱えていた三冊を俺たちに見せる。

 

「黒魔術入門、西洋史大全、西洋貴族の華麗なる日常」

 

俺が姫宮が抱えている本のタイトルを読み上げる。

 

「…脚本の資料?」

 

思わず千歳がつぶやいてこっちを見るのも無理はない。書く小説の内容によるがその資料の本のタイトルが変になるのはよくある。文芸部の部室を見れば、それがよくわかるだろう。哲学書があると思えば、スクール水着の歴史とかいう頭のおかしい本のまである。嫌な慣れだが今更、黒魔術程度で驚きはしない。

 

「それで何書くか決まったのか?」

「え?黒魔術はスルーなんですか?ねえ?スルーですか?」

 

起き上がった千歳がバシバシと俺の肩を叩くが今度は口に出して言ってやった。慣れだ。

 

「話の方向は、決まって今資料集め中です」

「そうか。順調そうなら何より」

 

資料についてのスルーがまだ不満だったのかさっきまで肩を叩いていた千歳は、もう疲れたのか呆れめたようだった。

 

「姫宮さんは、どんなのやるんです?」

 

変わりに姫宮の書く脚本の話になった。

 

「まだ秘密です」

 

姫宮はそう言って借りてきた本に目を通し始める。

 

「睦月君は知っているんですか?」

「まあ…」

「私にコッソリ教えてくださいよ」

 

そう言いながらグイっと体と顔を近づけてくる。だらしがなかろうが、怠け者だろうが女の子らしく何やらいい匂いがする。決して俺は、匂いフェチとかではないが香乃とは違ういい匂いだ。だが、これ以上近づいているとクラスメイトの巨乳スキーやロリコンと同じ変態の汚名が張られる可能性があるため、ゆっくり引きながら姫宮の方に向いていた。本を読んでいるかと思いきや、こっちを見て絶対に言うなよと言う感じの視線を感じたのでお口をチャックしておく。

 

「断る」

「え~」

 

教えてくださいよと言いながら俺の体を左右に揺さぶるが、教えないものは教えない。

 

「帰るから手を離せ」

「え~、帰るんですか?もう少しいましょうよ」

「今日は、スーパーの特売だ」

 

今日は、野菜を買い足さねば。最近値段は安定してきても、安いのが一番だ。

 

「主夫みたいですね」

「一人暮らしだからな。ある意味主夫か?」

 

洗濯、掃除、炊事はひととうり自分でやっているから間違ってはいないはず。

 

「私も一人暮らしは憧れますね~」

「部屋がごみ屋敷になるからやめろ」

「そういう時は睦月君を呼んで掃除してもらいましょう!」

「断固却下だ」

 

何でそうなる。と帰る前に

 

「姫宮、傘ありがとな」

「どういたしまして」

「昨日は傘大丈夫だったか?」

「ちゃんと椿と一緒にに帰りましたよ」

「なら良かった。んじゃ脚本頑張れよ~」

 

そう言って俺は、演劇部を後にした。ちなみに野菜が安くて嬉しかったのは他の奥さん方も一緒だと思う。

 

 

 

 

 

 

 




当初予定していたのは千歳と姫宮の絡みだったんですがねえ。こうなりました。

睦月君に匂いフェチ疑惑がかかるという事件発生。変態の仲間入りを果たしてしまうのか!?

それと次の更新も今回と同じくらいの間があると思いますが気長に待っていただけると助かります。

感想アドバイス、誤字脱字があればお願いします。


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球技祭は晴天模様 前編

長らく失踪してましたが、戻ってきました。


四月下旬。とうとうこの日が来た。

 

と、何とも壮大に言ってみるが結局のところは、球技祭だ。最悪な事に外は雲一つ無い晴天。風は穏やかで、ひんやりと気持ちよく、校庭の木々を揺らしていた。残念ながら絶好の球技祭日よりだ。しかし、男子は体育館なので晴天でも関係ないけど。

 

俺も含めて、クラス全員がこの日の為に買った税込み二千五百円のクラスTシャツを着ている。正直に言えば無駄な出費としかいいようがなく、俺は心の中で文句を言うのだが、結局買うしか無いのだ。なんと言っても悪目立ちはしたくない。一人だけ体操服?どんな罰ゲームだ。

 

これがなければ、どんな本を買うことができたかと今着ているクラスTシャツを睨んでいる。そんなことをしているうちに開会式は終わり、各自自分の種目が行われる場所に移動する。俺ら男子は、バスケットボールとバレーボール。男子は半分に分けられ、日向と大内はバスケットボールで俺と鶴見はバレーボールだった。バスケットボールは第1体育館、バレーボールは第2体育館で行われる。

 

「暇になったらリアル人生ゲームやろうぜ」

 

いざ分かれる時に日向は意気揚々と負けた後のことを考えている。よっぽど負けた後の暇な時間を楽しみにしているらしい。球技大会はグループごとに分けられ総当たりを行う。その後はトーナメントで行い優勝を決める。グループの時点で負けたれば、午後は自由だ。暇つぶしも必要になる。リアル人生ゲームは大内がプログラムの勉強で作ったゲームだ。何度も4人で遊ばれて、ブラッシュアップされたそれはリアルの名に恥じないものとなっている。

 

「良いだろう。借金まみれにしてやる」

 

前回やった時に1位だったからか調子がいい大内だが、以前に借金濡れだったことを忘れているらしい。今の時点で火花を散らしている2人をよそに鶴見は、ゲームの中ぐらいは大金持ち・・いや小金持ちくらいにはなりたいなと欲が薄いことを言っていた。そうして日向達と分かれ、俺らが第二体育館館に入った時、既に熱気に包まれていた。ボールを叩く音とたくさんの掛け声が、体育館で行きかっていた。外とは違い暑い館内に思わず顔をゆがませてしまう。

 

「暑いね。外がちょうどよかったのに」

 

水分補給はしっかりしないとねとスポーツドリンクを飲む鶴見。唇についた水滴を舌で舐める姿は、同性でも目がいくのか何人かの男子がコッソリと目を向ける。鶴見を見ればわからなくもないが、1度でも進んでしまうと戻れなくなるぞ。バレーボールをやるのに邪魔なのかヘアピンを付けている鶴見の顔をまじまじと見つめる。

 

「そんなに僕の顔を見てどうかした?なんかついてる?」

 

可愛らしいく首をかしげる鶴見に俺はヘアピンが変わっているなと話題を切り出すしかなかった。

 

 

俺らのクラスは、予想外の快進撃を見せていた。クラスはそこまで球技祭にやる気を見せていなかったが、雰囲気に触発されてやる気が出たみたいだ。とはいえ、いきなりうまくなるわけではないから運がすごくよかったのだろう。グループの2位までがトーナメントに行けるがその2位決定戦まで駒を進めていた。

 

「おい。何でさっさと負けない」

 

見るからに不満げな日向だが、クラスの雰囲気を察してか小声で話しかけてくる。ちなみに、バスケットボールは、最速で敗退が決定したらしい。

 

「いや・・。なんでだろうな?」

「勝利の女神が微笑んだとしかいえないね」

「なんだその主人公体質」

 

俺と鶴見も困惑した感じで返すと諦めがついたらしい。日向はま、もうすぐ遊べるからいいかと言い、大内はこんなラッキーが続くと思うなよとかませ犬の定番を言っていた。

 

「グループCの2位決定戦します。集まってくださいー」

 

審判のバレー部員が集合をかける。総当たり戦は午前中に終わせることもあり、強行軍になっている。他の種目はもう終わっているみたいで最後の試合であるこの場所に人が集まっていた。僕と鶴見はせっせと集合する。

 

「これより、2位決定戦を行います」

 

バレー部員の大きな声が響く。こうして最後の戦いが始まった。試合は一進一退だった。両者ともに譲らず、試合はデュースに持ち込んでいた。相手チームがマッチポイントになっていた。僕らのクラスが打ったサーブは、緊迫した空気の中ゆらゆらと飛んでいった。相手にとっては返しにくかったのかレシーブは、明後日の方角へ行ってしまう。悲鳴が上がる体育館。しかし、相手の一人が飛び込み、ギリギリでボールを繋いだ。悲鳴が歓声に変わる。そして、ボールは、そのクラスただ1人のバレー部員のところに富んでいった。バレー部員はアタックは禁止だがバックアタックは許される。そのただ1人のバレー部員は偶然にも後ろに控えていた。つまりはそういうことだ。バレー部員が放ったバックアタックが僕らのコートに打ち込まれる。それに誰1人として反応は出来なかった。

 

偶然にもボールが飛んできた俺も含めて・・・。

 

顔面に当たるボールと物凄い衝撃。俺は横に転がるように倒れる。辛うじて見えたのは、はじいたボールが誰の手に触れず落ちたのだった。

 

 

俺は保健の先生がいる体育館隅に直行になった。幸い倒れるときに頭を打っているわけではなかった。ただ鼻を強く打ったせいで鼻血が出てしまった。鼻をティッシュで抑え痛みが引くまで安静にしてなと氷を渡された。あの顔面レシーブは多くの人が見ていたから、なるべく人が少ないところに行きたかった。がそうにはいかなかった。

 

「綺麗な顔面レシーブだったな」

「そうだな。あれで誰かが点を決めて逆転すれば、勝利の立役者だった」

 

日向は、笑いよりも一周して関心しているのか拍手をしてるし、大内は大真面目に惜しかったなと俺の方を叩いてくる。

 

「ご、ごめんね。まったく反応出来なかったよ」

 

ただ1人救いになると思っていた鶴見だったが若干笑いが漏れている。

 

「鶴見まで笑うなよ・・」

 

こう言うとごめんごめんとポケットからクッキーを取り出した。ちょうど小腹がすいていたのでちょうどいいと俺はそれを受け取った。

 

「それじゃあ、リアル人生ゲームは後でな。今やると興奮して鼻血がまたでるかもしれないからな」

「そうだな。今は隅でおとなしくしているよ」

 

日向のいうことはゲームで大げさと思うかもしれない。自分たちでやっておいてなんだがリアルをうたっているだけあって、色々起こる。本当に理不尽なことも起こる。普段、温厚な鶴見が机を叩くくらいだ。俺は体育館からでて風通しのいい外に出ていた。フラフラと休める場所を探していると知っている顔を見つけた。姫宮と和幸だ。

和幸は、いつもは束ねていない髪を束ね、ポニーテールにしていた。がらりと雰囲気が変わり、清楚ながらも活発的な印象を与える。tシャツの色が白なので見た目と合わせて相性がいい。何人かが露わになったうなじに目を惹かれてている。

姫宮は普段はサイドテールだが、和幸に合わせてなのか。同じく髪を後ろにまとめポニーテールにしている。彼女は水色のtシャツを着ていた。活発な印象を与える服と髪型が普段とのギャップを感じさせとても新鮮に映った。

 

普段は制服なので、何というか私服を見ているような気分になり、とてもお得感がある。ただ一つクラスtシャツに感謝しているのはこれくらいだ。

 

「睦月先輩、頭は大丈夫ですか?」

「そうですよ。あんな強くボールがあったんです。安静にしないと駄目ですよ」

 

相変わらず表情は分かりにくいが、声が若干震えているような気がする、彼女の友人・・椿と呼ばれていた少女のおかげで初対面の印象が変わった。それ以来は声や表情を意識している。和幸は純粋に心配してくれているみたいだ。彼女は鶴見に並ぶ常識人枠かもしれない。

 

「痛みは引いてきたから大丈夫だ。それと姫宮、心配しているようで煽ってくるな」

「ちょっとした言葉遊びです。書き手としてのたしなみです」

 

澄ました顔でおっしゃる姫宮。和幸はそんな姫宮を見るとひと言。

 

「これでも、姫宮さんは心配していたんですよ」

「和幸さん」

 

ジト目で和幸を見つめるその眼と言葉に宿る感情は、心配してるふりで煽っているのか、心配しているのを隠してその言葉が出てきたのか。俺には読み取ることができなかった。

 

ジト目で和幸を見つめる姫宮とニコニコ顔の和幸。このなんとも言えない雰囲気に参った俺は2人に声を掛けた。

 

「昼休みになるけどどうするんだ?」

 

姫宮も自分で作り出したこの空気に耐えられなかったのか、俺の強引な話題転換に乗ってきた。

 

「学食か購買で買うつもりです」

 

和幸もこの様子を見て、姫宮の反応を見るのを止めた。

 

「こういう機会がないと使うきっかけがないですから」

 

2人は普段学食や購買を使わないのだろう。運動部とかは小腹を満たすために、よく使っているのを見るが身体を動かす事が無いからよらない。で、普段は近づかないと球技祭みたいな行事がきっかけにならないと行く気にはならない。俺は、書き物をしている時にふと甘いものが食べたくなる時がある。なので購買には、たまに行くのだが学食は行かない。理由は、この後の地獄を見ればわかる。

 

「そうか。頑張れよ」

「購買に行くだけで大げさです」

「まあ、見れば分かるよ」

 

流れで2人について行くことになった俺はついでとばかりに2人に脚本の進捗を聞く。初めて作ることを考えれば、こういった補助も必要だ。1人で黙々とやっているのもありだが、誰かに話すことで、内容を整理したり、別の発想が生まれる。普段は自分の中で切り捨てるパーツも他人から見ればそうではないかもしれない。勿論、こだわりも必要で何でもかんでも他人の意見を反映しろでは、自分の色がなくなる。そこが難しいのだ。

 

姫宮が先に進捗を話し出した。

 

「骨組みが出来てきたくらいです。色々調べると考えていた事がボツになっての繰り返しです」

「頑張れ。作り初めは、ボツの山を築くのは当然だ。むしろボツなしでつくれるわけがないと思った方はいい」

「そうですね。逆に調べて思いつくこともあるので苦にはならないですけど」

 

書き手にありがちなボツの山に潰れるということは今のところ問題なさそうだ。自分で作る分には調べ物は、やらなくてもいい。究極的にはだか。しかし、人に見せる、発表するとことを考えるとそういうわけには行かない。俺は調べすぎるのもよくないぞと伝えた。色々と調べるのはリアリティにつながるが手を抜く所は抜いたり、そんな資料は見なかったと心にしまって置くのも手である。

 

「まあ、書くために調べてるのを忘れないようにな」

「時代背景をかなり気にして書いているんですけど」

「この話はフィクションですって聞いたことがあるだろう?」

「書く側になってこれほど便利な言葉は無いですね」

 

呆れ半分、感心半分。ため息をつきながら、難しく考えるのも良くないってことですよねと捉えていた。そう、そういうことです。

 

姫宮の進捗を聞いた所で、次に和幸に聞く。

 

 

「内容は出来てきたのですが書き方がどうも小説みたいになってしまいます」

 

さすが経験者である。ただ。演劇の脚本を作るのは初心者なので初めの壁にぶつかっているらしい。姫宮は完全な初心者なので良くも悪くもこういうことはない。俺も初めは苦労した。解決策はただひたすらに書くことです、はい。和幸にそれを伝えると同じようなことを考えていたのかやっぱり練習あるのみですかとつぶやいていた。

 

そういえばと俺は1つ聞いてみた。

 

「因みにどんな内容なんだ?」

 

俺がそう聞くと彼女は口を手で抑えながら微笑むと内緒ですと呟いた。その笑顔に何故だか背筋がぞくぞくして、思わず、ある言葉が口に出そうになった。Sっけのある性格なんだなと思わず口から出る前に、購買での喧騒が話を中断させた。

 

「おばちゃん!!三色だんご!」

「おばちゃん!!焼きそばパン!!」

「プリン!!おばちゃんプリン!」

 

購買前には、普段よりも腹をすかせた狼が、血走った目で購買に駆け込んでいた。

 

「さっき先輩は言っていたのはこういうことですか」

「・・どうして並ぶことをしないんですかね」

 

姫宮は納得の表情で、和幸はしつけの出来てない犬を見てるような目で見つめていた。ああ、和幸がいい性格をしていることが確定してしまった。やはり、本当の常識人は鶴見しかいなかったみたいだ。俺はこの光景を見て決意が揺らいでないかを聞いてみた。

 

「これでもまだ買うか?」

 

2人は揃ってやめておきますと答えた。

 

 

結局、3人で脚本のことを語りながらご飯を食べて、球技祭の午前中は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字の報告は大変助かります。また、感想をいただけるととても喜んで次が早めにに出るかもしれません(失踪していたので信用度0)


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球技祭は晴天模様 中編

遅くなり申し訳ございません。休みが…無いです。
今回は中編です。キリが悪いと思い更に分割しました。


ここは、とある空き教室。昼休みが終わり、腹ごしらえが済んだ時刻。満腹感が微睡を呼び身体を巡るなか、球技祭も後半戦に入った。それは誰にも知られることなく密かに行われようしていた。

 

「第2回!!」

 

第1声は日向であった。この時間を楽しみにしていた奴がノリノリで音頭を取っていた。右の拳を勢いよく上げ張り上げた声は教室によく響いた。先生にばれたらこいつをしばいてやる。

 

「「ふうーー」」

 

ノリノリで合の手を入れるのは大内と鶴見である。2人は、さすがにわかっているのか声が若干控えめだ。しかし、テンションは、阿波踊りの最終日並みにはじけていた。

 

「超☆リアルライフゲームー!」

「地獄に落ちる落ちるのはお前だ」

 

ボソッと大内が物騒な副題を言っていた。ゲームくらい幸せに過ごさせろ。

 

「開催だーー!!」

 

日向の開催宣言で始まった超☆リアルライフゲーム。顔面レシーブの痛みは無くなり、午後は当初の予定道理に闇のゲームが始まった。参加者はいつもの4人。俺たちは机の上に置いてあるタブレットを中心に囲むように座っていた。雰囲気づくりと先生ばれを防止のため部屋は暗くなっている。今、俺たちを照らしているのはタブレットの灯りと文芸部の部室に置いてあったランプのみである。良い子のみんなはこんなことをしてはいけないよ。

 

「じゃ、久しぶりだから念のためのルール確認だ。勝者の条件は幸福度により決定する」

「金で幸福度は測れない。現代おけるアンチテーゼだ」

「そんなご大層なこと考えてないでしょ」

 

 

そう。このゲームは、どうやって算出しているのかわからないが資産ではなく幸福度により順位が決定する。ゲームのタイトル道理の始まりで幼少期からスタートになる。フェイズとしては幼少→学生→大人と移行する。それぞれにルートとして金、青、黒と分かれておる。それにより選択できる道やマス、限定のイベントがある。しかし、順位は幸福度で決まるので順位は最後まで分からないのである。金で人生の勝ち負けは決まらない。大内が言うとうりである。本人としてはその方が面白いからこうしたのだろうが。

 

大内が机の上のタブレットを操作すると超☆リアルライフゲームと書いてあるアプリを起動した。起動画面は誰がデザインしたのか知らないが名前とゲーム内容の割にはかなりポップである。ポップなフォントとファンシーな絵、完全な見た目の詐欺だ、訴えられろ。

 

「じゃ、ルーレットで初期ルートを決めよう!」

 

日向の合図で、各自がルーレットを回して下級、中級、上級を決める。因みにこれは、ゲームの流れ次第ではフェイズ中に下がったり上がったりする。

 

「よっしゃ!上級!」

「あ!僕も上級」

「俺は中級か」

 

大内、鶴見は金ルート。人生イージーモードが基本だが落とし穴が深い。1度落ちたら悲惨な目に合うルートである。日向は青ルート。可もなく不可もないルートで安定感がある。今までプレイの経験から一番勝ち安い。

 

さあ俺はどうかなとルーレットを回すと黒ルート。ご想像のとうり人生ハードモードだが一攫千金の可能性ありなギャンブル性の高いルートである。

 

これで全員が出そろった。いくら順位には影響しにくく作られているとはいえ、下級ルートが1人というのは残念だ。正直この時点でかなり敗色濃厚だったためかなり吹っ切れていた。しかし、そんな俺の心情を知って日向は突然こう言いだした。

 

「飯は、睦月のおごりだな」

「おい、そんなこと聞いてないぞ」

「今言ったからな。安心しろ。常識の範囲ないだ」

「こまけーことはいいんだよ!勝てばな!最下位はアイス1個おごりな!!」

「え!何でもいいの!?」

「当たり前だ!1個なんだからケチケチしないだろ!」

 

奢りのレベルが飯からアイス1個になった。驚きのメタモルフォーゼだ。さり気なく保険をかけやがった。ノリノリの癖にせこいやつだ。鶴見はかなりやる気になっている。甘いもの好きだもんな。

 

「よし!んじゃアイスを賭けて、リアル人生ゲームスタートだ!」

 

ルーレットを回して順番を決める。順番は大内→鶴見→日向→俺である。

 

1巡目(幼少期)

「私立幼稚園受験のため勉強の日々」

「親子で公園で遊んでいるうちに女の子と仲良くなる」

「共働きの両親のため若干放任気味」

「母親が家を出て行く」

 

もはや一巡目で差が顕著になっている。日向はエリート街道を進み(幼少期からこれが幸せかは横において)鶴見は幸せに過ごしつつフラグを立てる。大内は社会の闇がにじみ出ている。俺は1巡目から母親が家を出ていった始末だ。正に黒。なんだこのゲーム、開発者を呼んで来い。・・・目の前にいたな。

 

「いつも思うけどけこれテストプレイした?」

「いましているだろ」

 

おかしいことを言ってるかとでも言いたげに大内は返す。ぶっとばすぞ。

 

「ぶっとばすぞ」

「声。心の声が漏れてるよ」

 

いきなりのハードさに心の声が漏れていたのを鶴見に指摘される

 

「んじゃ続るぜ」

 

2巡目(幼少期)

「幼稚園合格、順調に子分を増やしてきガキ大将として小学校へ進む」

「両親の都合で海外へお引越し。仲のいい女の子と涙の別れ」

「両親はそのままだが変な干渉がなくのびのび育つ」

「父親が働きすぎで体調を崩す」

 

2巡目にしてクライマックスである。もはや辞めたい。順調とはいいがたいが巡目は進みフェイズが次に移る。

 

1巡目(学生)

「精神的に少し大人になる。品行方正、成績優秀、運動神経もいいということでモテ始める」

「海外で体で言葉を覚える。ともに切磋琢磨した少女と仲良くなる」

「いろいろと手を出し先生に目を付けられる。が男女限らず仲が良い」

「父親、入院。借金お背負う」

 

学生の身で借金。笑えないだろ?ほかのやつらは、もて始める、フラグを更に立てる、問題児に成長しつつも憎めないキャラを構築と順風満帆だ。この差は誰のせいだ。悲しいかな目の前の友人のせいである。何でゲームでこんな目に合わないといけないのか。

 

「よし次だな」

 

順風満帆な2人は後でどんなとばっちりが飛んでくるかと無口になっている。反対に何もないせいか暇そうにしているのもいる。何て贅沢な奴らだ。こっちの身にもなってくれ。

 

2巡目(学生)

「会社の手伝いを始め、小金持ちになっていく」

「進学先で仲の良かった少女2人と再開。修羅場に」

「無自覚に恋のキューピットを務める。ついでに無自覚にフラグを立てる」

「父親の治療のためバイト三昧。勉強とも両立。学校生活?何それ(無慈悲)」

 

俺だけが悲しい学園生活を送っている。灰色の生活・・三人はエリート、修羅場、無自覚の三拍子。これが格差社会。

 

 

「よし。それじゃ最後フェイズだな」

 

俺らは、最後のルーレットを回す。これで最終的なエンドが決まる。

 

ラスト(大人)

「父親の不正が発覚。会社は倒産、一文無し」

「二股をかけたのがばれてナイフで刺される」

「無自覚のフラグに気が付かず社会人に、彼女なしの社畜ライフが始まった」

「看病むなしく父親がなくなる。燃え尽き症候群になり、日々を漠然として生きていく」

 

場が沈黙に包まれる。順風満帆だった2人が転げ落ち、1人は社畜エンド。俺は一切救われない。下級ルートの大逆転はどこに行った。初めのルートの意味は?ゲームシステムに疑問を持つ俺を裏腹に落ち込んでいるのが2人いた。

 

「僕が二股でナイフ…」

「社畜か…」

 

二股で刺されるという散々な結果になった鶴見と社畜ライフを送ることになった日向はゲームのことなのにかなり落ち込んでいた。そんな中でエリート街道体転落した大内は、使っていたタブレットを見て顔を上げるとこういった。

 

「バランス調整、間違ってたな」

 

珍しくツボに入ったのかクックっくと悪役のような笑い声を上げる。日向のなにやってだいというグーパンと鶴見の無言の無言の圧力が彼にかかる。大内はそれをもろともせずにタブレットをしまうと

 

「再調整するからまた頼む」

 

部内でストプレイしてから出直して来い。

 

 

最下位はぶっちぎりの俺だったがアイスのおごりは大内に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想などをくれるとありがたやです。モチベーションが上がります。


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球技祭は晴天模様 後編

なんだかんだ意地で書き続けられています。


大内のおごりで終結した超☆リアルライフゲーム。思い立ったが吉日とばがりに、大内は調整するからと場を離れていった。俺はどうするかと日向と鶴見の顔を見ると二人は部活の人と話す用事があるらしい。

 

2人を見送った。俺は再び椅子に座る。何をしようか。部室にいこうか。姫宮と話した時以来、特に用がないからと立ち寄らなかった。せめて掃除はしなくとも空気の入れ替えはした方がいいかもしれない。そうと決まったらと部室の方に腰を上げる。

 

ピローン

 

そう思ったら、スマホの通知がなった。開くと香乃からメッセージが着ていた。

 

「今どこにいる?もうすぐ試合があるから見に来てよ」

 

昼休み後も試合をやっているなら香乃のクラスはかなりいいところまで進めんでいるらしい。香乃も運動神経が良いが他にも凄い奴がいるのだろう。顔面レシーブをした俺とは大違いだ。

 

しかし…とメッセージの内容を見る。

 

試合を見に行くのはいい。俺も香乃が活躍している姿をみたい。しかし俺と香乃が幼馴染であることを知っているのは少ない。近くでその姿を見て、応援したい気持ちがある。部活で活躍しているだけに学校で一目置かれている香乃となんもない俺とでは、一緒にいて何を言われるか分かったものではない。自分が何か言われるのはまだいい。だが、香乃が何かを言われるのは嫌だ。だからといって一切関わらないということができないししたくない。それはどういった感情でそう思ったのかも分からない。いつかははっきりさせないといけない。後悔しように。

 

だが今は、今はまだこのままがいい。このままでいたい。

 

もやもやを払うように俺は歩き始めた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

これで良し。メッセージを送った私は、心の中でつぶやいた。これでなるくんは見に来てくれる。なるくんの試合は残念ながら私の試合とかぶってしまったせいで見に行くことが出来なかった。珍しいなるくんの姿を楽しみにしていたけど仕方ない。それは、体育祭の時を楽しみにしよう。

 

既読は直ぐについた。しかし、見に行くよとという返信は少し間があった。見に行っていいのかなんて考えていたんだろう。ただの生徒だった私は、陸上の大会で結果をだして以降、学校で有名になった。それだけならまだいいのに、なるくんとの話しているところに割り込む人が出てきたり、悪口を言ったり、なるくんのことを知らないのに関わりを考えた方がいいなど余計なお世話がかなり増えた。

 

それ以来なるくんと表立って学校で話すことが無くなった。代わりにそれ以外に話すことが増えた。学校で密かに昼ご飯を食べるようになったのはその時からだ。それはそれで秘密の関係で楽しさはあるけれど、やっぱり堂々と話せないのは寂しい。

 

正直、余計なお世話。なるくんのやさしさ、すごさを知らずに何でそんなことが言えるの?。

 

このメッセージの返信の間になるくんがいろいろ考えた末の答えだというのがわかる。そして、いろいろ考えた上で私の応援をしたいと思ってくれた。そのことに思わず顔が緩んでしまう。よし、あまり球技は得意じゃないけれど気合いを入れないと。そう思うことで緩んでしまった顔を引き締める。

 

「香乃ちゃん気合い入ってるね」

 

手にスポーツドリンクを持っているクラスメイトが横からやってきた。顔が緩んでいる所は見られてないなと安堵しながら手渡された飲み物を受け取る。蓋をあけ飲み物を飲めば火照った身体に染み渡る。後ろの髪を横にずらして首筋に飲み物を付ける。

 

「まあね。ここまでやったんだしせっかくなら優勝したいし」

 

飲み物をつけたまま、クラスメイトに返す。私が誰のために気合いを入れているのか。私となるくんの関係を知っている人しかわからないだろう。

 

「それもそうだね。それに景品の学食の無料券は是非とも手に入れたいね」

 

私とは違う欲望に忠実なクラスメイトに頷いた。たまにはなるくんと学食でもいいなと思いながら試合の場所に向かった。

 

 

私は競技で使うバットでストレッチをしていた。女子の競技はソフトボール。いいところを見せようといきこんでいたものの調子はあまり良くなかった。変に気合を入れすぎちゃったのかもしれない。

 

今は最終回。さすがに4回までしかやらないけれど私達のクラスは2-4で負けていた。現在ツーアウト。私はネクストバッターサークルでストレッチをしながらなるくんの姿を探していた。

 

なるくんのことだから、目立たないけれどしっかり見えるところにいるはずだ。昔からそういった場所を探すのが得意だった。そういうところを見ていけばなるくんが見つかるはずだ。

 

前の子がフォアボールで塁に出たのとなるくんの姿を見つけたのは同じタイミングだった。

 

隣には女の子がいた。

 

 

打席に移動しながら考えた。前になるくんは仲のいい女の子はいないと言っていた。なるくんがわざわざ噓を言うことはないと思う。

 

私は打席に立つとピッチャーを見ると見せかけ視線はその先の二人に向かっている。

 

あの女の子は同じクラスの千歳さんだ。確か演劇部の人で以前になるくんが彼女のことを怠け者の天才と言っていた覚えがある。演劇部と文芸部は関わりがあるみたいだから一緒にいるのはおかしくはないいと思う。

 

私は投げられたボールを見送った。審判のストライクの声が響き渡る。

 

私から見るとなるくんは呆れながらも楽しそうに見える。あの様子を見て仲のいい女の子がいないといわれても私以外のこでは信用しないと思う。

 

前も似たようなことがあってその時に言われた言葉がある。なるくんにとっては教室だったり部活であったりそういった場所に関係なくあったり、話せる人だと。

 

次のボールは外れた。

 

そう言ってなるくんからただ1人仲のいい女の子と言われて嬉しいはずがない。

 

次に投げられたボールはバットに当たったもののファールになる。

 

幼馴染が応援に来てくれると思って張り切っていたら隣には女の子がいる。頑張る気がちょっとなくなるのもわかるんじゃないかと思う。

 

私はもう一度なるくんの方を見ると目が合った。がんばれと口が動いて小さくこぶしを握った。

 

その姿を見てあれこれ考えたのがどうでも良いやと思った。

 

なるくんは私のことちゃんと見ていてくれる。応援してくれる。ここで打てば後で褒めてくれるはずだ。あの時の大会の時みたいに。

 

今はそれでいい。

 

でもいずれ伝えないといけない。

 

私の想いを。

 

ずっと幼馴染のままではいられないから。

 

しっかりとボールを見てふるったバットは芯を捉えてなるくんがいる方向に勢いよく飛んでいた。

 

 

走者一掃の逆転一振りになり私達のクラスが優勝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想などは作者のエネルギーになります。是非ともお願い致します。


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