僕の名前は鷲尾 冥。
僕は死ぬことが出来ない人間としてこの世に生まれてしまった。幾度となく死にかけてきた。車にはねられ、高台から落ち、溺れたり。自殺だってした。けれど、毎回死ぬたびに死ぬ1日前に戻ってしまう。時が戻ると毎回、何故かベットの中にいて、決まって朝の7時になっている。僕はこれを"回生"とよんでいる。意図的に発動させることもできる。しかし、この"回生"には問題がある。それは2日以上前には戻れないことだ。24時間以内に死ぬと、変わらずまた同じ日の朝の7時になっている。
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「冥ー!そろそろ起きなさい。ご飯できてるわよ」
母さんの声と共に目が覚めた。
「わかったー!今行く。」僕はそう返事をしてベットから出て、窓を開けた。今日は晴天だ。雲一つない。何度目だろうか。そんなことを思いながら、母さんが作ってくれた朝食を食べに一階に向かった。
「今日から高校生でしょ!しっかり自分で起きなきゃだめでしょ。」
「うん。なるたけ努力するよ。」目玉焼きの黄身を箸で割りながら答えた。
ピンポーン。家のインターホンが鳴った。
「見てくるね」そう言い、玄関の鍵を開けると
「よっ!冥!おはよ」
「あ、おはよう彗。今から準備するから待ってね」
朝迎えにきた彼は僕と同じ高校に通う幼稚園からの幼馴染の鳥崎 彗太だ。背はそれほど高くないが僕との差は大きい。そしてイケメンだ。
「あれ、スカートじゃねーの?」
「スカート履くわけないじゃん!僕男だよ!」
彗太は笑いながらおちょくってきた。僕は女の子みたいな名前をしているが付いてるものはしっかり付いている。でも色白だし、背低いし、髪サラサラだし、そして何よりも女の子みたいな顔をしている。中学生の時は何度も間違われたことだってある。そして未だに女の子だと思っている人は数名いる。
「そろそろ行こーぜ。間に合わなくなっちまう」
「うん。そうだね」
彗太の呼びかけとともに家を出た。学校までは徒歩20分でほとんどの人はチャリ通である。僕も最初はチャリ通の予定だったが疲れそうなのでやめた。そして、彗太もチャリ通の予定だったが僕が徒歩にすると言ったら彗太も徒歩になった。
「今年も同じクラスだといいな」
僕と彗太は小学生の時から同じクラスで、一度もクラスが違ったことはない。
「俺ら9年連続で同じクラスだもんな」
「もうこれは運命だね。従うしかないよ」
「ぬっ、なんか嫌そうだな」
「そんなことないよ」
笑って誤魔化した。実際のところ嫌ではないが、彗太はイケメンだから女子が寄ってくる。そして、みんな持ってかれてしまう。女子と話す機会なんて全くなく、女友達なんて数える程度しかいない。
「冥お前なぁー……」
彗が言いかけた時、後ろからボスッと何か当たる音がした。
「あいたたた……彗と冥おはよう!」
「おはよう琴」
彼女は白音 琴。同じ高校に通う僕らの幼馴染だ。琴は頭が良く、勉強もできて勘が鋭い。そして胸が大きい。
「どうしたんだよ琴、チャリ通じゃねーの?」
「冥が徒歩っていうから私も徒歩にした」
彼女もまた僕の被害者だ。彗太が琴と話してる時、琴は僕のさっきまでとは変わった表情に気づき「冥どうしたの?顔色悪いよ?」と言ってきた。そう、僕は今日を過ごすのは今を含め5度目である。つまり、4度死んでいる。
「あ、そうかな。特に何もないから大丈夫だよ」
そう答えるのが精一杯だった。なんせ、明日また死ぬのだから。死なないように色々試した。だが、全て失敗。僕はこのまま何も出来ず死んで、入学式以降の学校生活なんておくれない。そう思いながら今を過ごしている。死ぬことだって慣れた。これは運命だから…。そう、自分に言い聞かせ再び学校に向かった。
学校に着くと、昇降口にクラスの書かれた掲示板があった。案の定、彗太とおなじクラスだ。そして、琴とも一緒だった。
「冥今年も同じクラスだったな!よろしくな!」
「冥今年もよろしくね」
彗太と琴は嬉しそうだ。それもそうか、彼らからしたらこれが初めてだからな。僕は5度目だ。初めて一緒になった時のあの感動が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
「うん!よろしくね!」
そう受け答えして自分の教室に向かった。
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何度も何度も死ぬ瞬間のシーンが頭をよぎる。その度に、首が痛む。「あー、死にたくない。」何度思ったことか…。僕の死因は他殺である。登校中に背後から薬品で眠らされ、車に乗せられ犯人の家まで連れてこられる。そして、殴られ、蹴られ、暴力を浴びせられ終いには首を包丁でさされて殺される。目に布が巻きつけられてるから犯人の顔は見えない。だから"回生"しても犯人を見つけることは出来ない。ただただ何度も殺されるのを待つだけ。
そう思っていた。ずっと。
あんな事が起きるまでは…………
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✳︎登場人物の読み方
鷲尾 冥(わしお めい) 鳥崎 彗太(ちょうざき けいた)
白音 琴(しらね こと)
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