Fate/Blue Order (カレーネコ)
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プロローグ

初投稿!
反省も後悔もしたくない。


 

 

 

アメノウキハシでの紫電との決戦。

アメノサカホコでのアシモフとの対決。

 

シアンを助けるも守り切れず。

父親の様だった恩師を殺して。

待っていてくれた仲間に何て説明すれば解らず。

逃げるように その場から去った。

 

『大丈夫だよ、GV。私が側にいるから。』

 

この身に同化した彼女の言葉に無責任にも安堵する。

どこかで選択肢を間違ったのだろうか。

もっと良い未来があった筈だ。

どこが最強の第七波動《セブンス》能力者だ。

ボクは結局、誰も助けられなかったじゃないか。

もうフェザーには接触出来ない。

組織のリーダーを殺したボクが、どの面下げて戻るのだ。

でも、だとしたら。

ボクは一体どこに行けば–––––––––––––––––––

 

『大丈夫。』

 

彼女の声に我に帰る。

 

『大丈夫だよ、GV。』

 

彼女は宥めるように繰り返す。

 

『貴方のしたい様にすればいい。

それがどんな事だろうと、私が側にいてあげるから。』

 

彼女の言葉に落ち着きを取り戻す。

そうだ。こんなことを考える暇はない。

ひとまず、家に戻って荷物を纏めるべきだ。

それなりに愛着はあったが、

フェザーやスメラギに知られている以上、

留まることは出来ないだろう。

先のことはその後に考えよう。

現実逃避かもしれないが そこで思考を打ち止め、

ボクは足早に家へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

ニ時間後。

 

ボクは荷物を纏め、家を出ていた。

能力を全開にして駆けた行き道と違い、

帰りは意外と時間が掛かった。

必要な荷物を大きめのリュックに仕舞い、

戦闘服から普段着に着替え、

パソコンなどの機器を能力で全ての処分した。

心残りは多々あるが、下手をするとジーノ達が

押し掛けて来かねない。

早々に立ち去るべきだった。

 

「じゃあ、行こうかシアン。」

 

室内を見回していたシアンに声をかける。

 

『うん、GV。.........さよなら、私達の家。』

 

「......ああ。さよならだ、ボク達の家。」

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

家を去ったボク達は半日程かけて、とある観光地に来ていた。

何も知らない場所へ行くよりかは、

兼ねてより旅行に行こうと考えて調べていた場所の方が良いという話になったからだ。

 

『うわぁ!見て見てGV!

あそこって雑誌に載ってた場所だよね!』

 

スメラギに囚われていた過去を持つシアンは、

そこから助け出された後も学校くらいしか外出の経験がない。

だからはしゃぐのもわかるのだが……

 

『‼︎ あ、あれって何時間も並ばなきゃいけない程人気のスイーツ店だよね⁉︎

今から並べば食べれるんじゃない⁉︎』

 

......いくらボク以外には見えないし聞こえないとしても、気恥ずかしくなるなぁ…

 

『もう!聞いてるのGV!』

 

「あ、うん。聞いてるよ。

でもまずは宿を探さないと。

スイーツは明日まで我慢してくれるかい?」

 

『あっ、そうだね…。

うん、じゃあ宿探しにシュッパーツ!』

 

………なんだかモルフォみたいになってるような…

昨日の戦いが嘘みたいだな…

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

時間も時間だったからか空いている宿がなく、

ボク達は都心部から大分離れた所まで彷徨っていた。

もう今日は野宿しかないのだろうか。

今までついぞ出番のなかったアシモフ流 町野宿の心得に頼る時がとうとう来たのか。

というか何故アシモフはこんな心得を作ったんだ?…と、

どうでもいい思考に陥りかけていたボクを引き戻したのは………

遠くから聞こえた小さな、女性の悲鳴だった。

 

「⁉︎」

 

『GV!今のって⁉︎』

 

とにかく悲鳴が聞こえた方向へと走る。

しかし、向かえば向かう程 人気が少なくなる様子に

嫌な予感は増していく。

ここが悲鳴の発生場所の筈だが……。

そこで見つけたのは散乱した食材と買い物袋だった。

 

「くっ、遅かったか…!」

 

どう考えても悲鳴の主が危険な状況にあるのは明らか。

だが、居場所が分からない以上どうすることも…!

 

『GV!あっちのほうにある廃ビルの中!

すごく怯えた気持ちがある!』

 

「!」

 

シアンの第七波動《セブンス》は感応系能力であり、

能力の化身そのものと化したシアンは、よりその力を増したらしい。

シアンのいう方向に全力で向かい、廃ビルの中に突入する。

するとそこには、やはりというべきが若い女性が

数人の男に押さえつけられ今にも暴行を加えられようとしていた。

 

「やめろ!」

 

男の1人に強化した蹴りを放ち、壁際まで吹き飛ばす。

能力者でもないようで、男は倒れこみ動けなくなったようだ。

 

「ちぃっ⁉︎何だこのガキッ⁉︎」

 

「おい、離れろ!多分能力者だ!兄貴を呼ばねぇと…⁉︎」

 

一気に接近して2人の男の首を掴み、多少手加減した雷撃を放つ。

これで三人の無力化に成功したが、残り2人には距離を取られた。

けど、女性は解放されている。

未だ呆然とした女性

––いや、遠めに見た印象から大人に見えたが、顔に残る幼さからしてそう年は違わないのかもしれない

––に向かって叫ぶ。

 

「早く逃げて!こいつらはボクが抑えます!」

 

「え、でも、そうしたら貴方が「早く!」っ!

ど、どうかご無事で!」

 

少し迷った様な彼女を強引に逃がし、再び男達に向き直る。

すると、なんと男達は懐から拳銃を取り出した。

 

「へっ!正義の味方ごっこか知れねぇが、

能力者だからって俺達に敵対するのはいけねぇなぁ?

見るに身体強化系の第七波動《セブンス》だろ?

だが銃弾より早く動けるわけがねぇ!」

 

「そういうことだ。

俺達に敵対したのを後悔して死になぁ!」

 

そう言い放ち発砲する–––––が、

ボクは弾をすり抜け片方の男に肉迫した。

 

「なっ––––––

 

「電磁結界《カゲロウ》––

あらゆる攻撃はボクに通用しない。」

 

そのまま溝尾に肘を叩き込み無力化する。

そして素早く身を返して最後の1人に接近、

顎に掌底を打ち込み気絶させる。

これで制圧完了。

後は警察を呼んで任せよう––––––と思った所で、

 

「––––––っ!」

 

突如感じた気配から咄嗟に離れる。

そこには––––––––––––

 

「おいおい…。

俺の舎弟どもを随分可愛がってくれたじゃねぇか。ええ?」

 

見るからに不良のボスのような男が釘バット片手に立っていた。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

『凄い!GV、不良だよ⁉︎

こんな不良みたいな不良、絶対今ドキいないよね⁉︎』

 

さっきまでボクの中で大人しくしていたシアンがはしゃぎだした。

まぁ、こんな不良オブ不良みたいな人、テレビ以外で初めて見たけど…。

なんでこんなバカっぽい人に彼らは従ってたんだ?自分とは違う存在への憧れみたいな?

……いや、待て。

ボクを能力者だと気付いたヤツが言っていなかったか?

「兄貴を呼べ」とか何とか。

つまりこいつは能力者を相手取ることが出来る?

それはつまり––––––––––––––––––

 

「おいおい。敵を前にして考え事か?

テメェ俺を舐めすぎだぜ?」

 

刹那、腹部に感じる違和感。

目を落とすとそこからは男の持つ釘バットが刺さって

––––––否、生えていた。

 

「––––––っ⁉︎」

 

「ほい、余所見。」

 

瞬間、眼前に迫る足刀。

敢えてガードし、そのまま吹き飛ばされる事で距離を取る。

なんだ⁉︎気配さえもが急に目の前に現れた。

腹部に生えるバットといい、コレは…!

 

「空間置換…いや、瞬間移動の第七波動《セブンス》か…!」

 

「お?御名答。お前やっぱり只のガキじゃねぇな?」

 

「さあね…、でも。」

 

「あ?」

 

「いや、こんな場末の町でコソコソやってる奴にしては、強力な第七波動《セブンス》だと思ってね。

雑魚山の大将さん。」

 

「……ほぉ?それが遺言でいいんだな?

クソガキよお!!」

 

背後への転移からの回し蹴り。

成る程、確かに初見殺しのいい手段だ。でも…

 

「なぁっ⁉︎すり抜け…っ⁉︎」

 

「……やっぱり強くはないな。」

 

ボクには通じない。

あんな挑発で激昂する時点で器が知れる。

体内に異物を移動させ続けられる方がよっぽど厄介だった。

雷撃鱗を発動し、敵を焼く。

 

「ギャァァアアアアアアアッッ⁉︎」

 

「......ふう。」

 

制圧完了。

思いの外 深そうな傷に油断は良くないと再確認した。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

『大丈夫⁉︎GV!』

 

「うん、何とかね。」

 

スキルの1つ【ヒーリング・ヴォルト】で十分治せる傷だ。

カゲロウを使いながら抜けば痛みも少ないだろう…と、

警察を呼び、傷口を観察しながら考えていた時だった。

ガリッ、と。

何かを噛み砕いたような音が無音のビルに響いた。

 

「––––––っ⁉︎」

 

「ヒヒッ、このまま捕まってたまるかよ。

スメラギの実験体になるぐらいなら、

テメェ諸共道連れだぁっ!!!」

 

男の眼から第七波動《セブンス》の輝きが漏れ、

ボクと男の間の空間が歪む........!

不味い!まさかさっきの音は…!

 

「スメラギ謹製の第七波動《セブンス》暴走薬だぁっ‼︎

このまま歪みに呑み込まれて肉塊になっちまいなぁ!!」

 

カゲロウでも肉体を空間ごと持っていかれたら防げない!

生け捕りにしようと手加減した結果がこれか!

油断は良くないと戒めたばかりなのに!

いや、後悔してる場合じゃない。

このままじゃ死ぬ!

呑まれる前に奴を仕留めるしかない!

全力で雷撃麟を放つ、が空間の歪みが原因か

ヤツに雷撃が届かない!

 

『GV!』

 

瞬間、シアンの歌が響く。

自身が強化されるのを感じた。

これならいけるっ…!

 

「仕留める…っ!」

 

「ガアアアアアッッ!!!!?」

 

男が今度こそ事切れる。

安堵しかけた刹那。

 

「–––––なっ!歪みが消えないっ…!」

 

それどころが先程よりも歪みが大きくなっている!

どういうことかと思考を巡らせ気づく。

男は「強化薬」ではなく「暴走薬」と言っていた。

「道連れ」とも。

 

「まさかっ…!」

 

あの薬は限界を超えて第七波動《セブンス》を暴走させる薬。

ここまで暴走してしまえば、

能力者が死んでも関係ないっ…!

しかもボクの雷撃を取り込んだせいか、

歪みが変質し、

まるでブラックホールのようになっている。

あれに呑み込まれたら間違いなく死ぬ。

だが、この距離じゃ逃げられないっ…!

 

『うわぁぁっ、じ、GVぃぃぃ!!』

 

「シアンッッ!ぐ、くそぉっ!!」

 

とうとう足を掬われ歪みに呑み込まれる。

せめてもの抵抗にカゲロウを発動したが……、

 

ボクの意識は激痛とともにブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

とある世界。とある国のとある路地裏で。

 

「………? 今なにか…?」

 

とある正義の味方が感じた直感が。

 

 

「何だ…?この感覚。こっちに何かが……っ⁉︎」

 

とある少年ととある謡精の。

 

 

「おいっ!しっかりしろっ!

くそっ、なんて怪我だ!こうなったら…!」

 

運命《Fate》を変えるキッカケとなる––––––––––––

 

 

 




プロローグ終了!
次回から本格的にFGO展開に入る予定です。
……まぁ、書けたらですが。


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魔術師との出会い

今回から本格的にFGO展開に入ると言ったな?
あれは嘘だ。


いや、実際まともにカルデアに行かせる為にはもう少し魔術知識とか必要かなと。
と言うわけであの二人との出会いです。
言葉は英語を使ってる設定。
GVの世界でも英語が基本言語。
場所はロンドン。この二人はUBW編から。


 

 

目が覚めたらそこには知らない天井があった。

白く無機質な感じからして病院のようだ。

 

「……ここは?」

 

『あっ!GV!良かった!やっと起きてくれた‼︎』

 

疑問に思っていると、先に目覚めていたらしい

シアンが飛びついてきた。

残念ながら触れることは出来ないのだが…

彼女がとても心配してくれたことは伝わった。

 

「ごめん、心配かけたね。」

 

『ホントだよ…。GV、私が起きた後からだけでも

半日は目を覚まさなかったんだよ?』

 

サラリと凄い事を言われた。

それはつまり、ボクは最低12時間以上眠っていたということだ。

いや、あのレベルのケガでその程度で済んだのは

寧ろ僥倖…

いや待て。ボクはあの時、歪みに呑み込まれて

死にかけた筈だ。

なんで無傷で、しかも病院のベッドに寝ている?

 

「一体どうなったんだ?

シアン、君にはわかるかい?」

 

『あ、そのことなんだけどね GV。実は……

あっ!』

 

突然、姿を消したシアンにどうしたのか

聞こうとした時。

病室のドアが開き、2人の男女が入ってきた。

 

「ああ、良かった。目を覚ましたんだな。」

 

未だ状況を把握しきれていないボクに。

赤銅色の髪をした男性は。

 

「突然だけど君は、警察の厄介になるのと、

見知らぬ男女と共に来るのと。

どっちがいいかな?」

 

そんな如何にも胡散臭い言葉を放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

その後 男性は、隣にいた黒髪で気が強そうな

女性からの見事なチョップを受けた後、部屋の外に引き摺り出された。

女性のすごく怒った声から、説教か罵倒でも受けているようだ。

えーと……

 

「シアン、今なら出てきても大丈夫だと思う。

何かわかるなら教えてほしいんだけど………。」

 

『うん、そうだね…。

ごめんね?急に隠れちゃって。

私が見える人がいないとは限らないから……。」

 

電子の謡精となったシアンだが、

強力な第七波動《セブンス》の持ち主や、

電子機器越しだと知覚される事がある。

以前、モルフォに幽霊みたいだと言って

凄く機嫌を損ねたことがあった…。

あの2人が第七波動《セブンス》能力者なら、

シアンが見られた時に面倒になること請け合いだ。

だから、シアンは姿を消したのだろう。

 

『それで今の状況なんだけど……、うーん。

多分、GVが自分で確認するのがいいと思う。

向こうのお説教、しばらく続きそうだし。』

 

扉の向こうから聞こえる怒声は未だに衰えない。

ベッド脇のテーブルに2人の荷物らしき物が

いくつかあり、

そのうちのノートパソコンを使わせてもらう。

ボクの第七波動《セブンス》である

蒼き雷霆《アームドブルー》は

雷撃を扱う能力だと思われがちだ。

が、実際に操るのは電子であり、

雷撃以外にも様々な事が出来る。

そのうちの一つが、電子機器へのハッキングだ。

フェザーにいた頃はスメラギのシステムを

クラッキングしていたが、

今回のように、機器を利用してネット上の情報を

得るのも可能。

そうやって情報を集めているうちに、

ボクは違和感を感じた。

第七波動《セブンス》やスメラギの情報が一つも

見当たらない。

数日前に紫電との戦いで大破した筈の

アメノウキハシについてもだ。

そんなことがあり得るのだろうか?

更に調べるうちに自分の常識との差異が

次々と見つかる。

仮に違う国だとしてもおかし過ぎる。

 

「一体どういうことだ…?何が起きてる?」

 

『えっとね、GV。

これは私の憶測に過ぎないんだけど…。』

 

軽い混乱状態に陥っていたボクに、シアンが

遠慮気味に声をかける。

シアンに向き直り続きを促す。

するとシアンは到底信じられないような……、

だがこの状況の全てに説明がつくことを言った。

 

『もしかして私たち…………

異世界に来ちゃったんじゃないかな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「えっと、ごめんなさいね?

何だか待たせちゃって。」

 

 

 

今の状況が

〈空間の歪みに呑み込まれた結果、

異世界漂流してしまった。〉

という認識に落ち着いた。

未だに信じられないが、ネットから得た情報と

ボクらの常識との幾つものちがいからか

不思議と納得出来てしまう。

取り敢えずは異世界漂流したことと、

第七波動《セブンス》のこと、

シアンのことは黙っておこうということになった。

そこまで決めた時、2人が部屋に戻って来た。

というか、ボクらは30分くらいは相談していたのだけど……まさかずっと怒っていたのだろうか。

いくらなんでも長過ぎやしないか。

先ほど不審者まっしぐらな発言をした男性は、

後ろで借りてきたネコのようになっている。

「うん、とりあえず自己紹介からね。私は遠坂凛。

こっちのバカが衛宮士郎。」

 

「………衛宮士郎です…。」

 

大分弱っているようだった。

 

「それで貴方の名前は?」

 

「あ、失礼しました。

ボクはガンヴォルトと言います。

結構なケガをしていたと思うんですが…

貴方達が助けてくれたんでしょうか?

だとしたらありがとうございます。」

 

自己紹介がてらに確認と謝礼もしておく。

すると遠坂凛というらしい女性は

頭痛が痛いとでもいうように頭を抑えながら

 

「正確には言えば助けたのは、

そこの衛宮君なんだけどね…。

その事でちょっと問題が起きちゃったのよ。」

 

「?」

 

問題が起きた?

治療費が多額にかかったとかだろうか。

いや、あれだけの負傷を治したのだ。

相応の額が必要になったのだろう。

……?何だろう。今、何か違和感が…?

 

「うん、まずはこれから言うべきかしら。

実は私たち……魔術師なのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「突拍子もないこと言ってる自覚はあるわ。

でも本当のことよ。

そうでもないなら重体だった貴方が1日そこらで

目覚めた事に説明がつかないでしょう?」

 

言われて気づく。

この世界には第七波動《セブンス》がない。

科学力もボクらの世界から見たら遅れている。

それなのに傷は治っている。

さっきまで感じていた違和感はそれだった。

 

「そうだぞ?

腹部が半分抉り取られたみたいになっていて、

右腕は半分千切れかけ。左脚なんか実際に千切れて近くに転がってたんだ。」

 

「うぇ⁉︎」

 

驚いて変な声が漏れた。

予想以上に重体だった。というか死にかけていた。

助けられなければ普通に死んでいただろう。

いや、世界を越える程の歪みに呑まれて

その程度なら運が良いのか?

駄目元で使ったカゲロウも役立ったのだろう。

とにかく九死に一生を得たのは事実らしい。

 

「衛宮君は癒しの魔術なんて使えなくてね?

私を呼んでたら間に合わないからって貴方の身体にある物を一時的に埋め込んだのよ。

あぁ、安心して。もう取り出してあるから。」

 

何かを埋め込んだなんて言われて慌てて

身体を調べるボクに苦笑しながら

付け足す遠坂凛さん。

よくわからないけれども、それでボクの傷が治ったのだろうか。

 

「それは、【遥か遠き理想郷《アヴァロン》】っていう聖遺物でね?

かのアーサー王が所持していたという

聖剣エクスカリバーの鞘。

その効果は[持ち主をあらゆる死から守る]、

というモノなんだけど…。」

 

………?歯切れが悪い。

それが原因で問題が起きたというのだろうか。

聞いたところ何も悪いことはなさそうだが……

 

「そんな持ってるだけでも効果を発揮する超弩級の聖遺物を一時的にでも取り込んだせいかしらね。

貴方の身体に魔術回路が創り出されていたのよ。」

 

聞けば魔術回路とは魔術師だけが持つ魔術行使に

必要な魔力を生み出す擬似神経回路だという。

本来なら魔術師の家が代を重ね増やしていく。が、

[アヴァロン]が原因か、それがボクにも生成されているらしい。

 

「何のために聞いとくわ。

貴方、ご両親は?身寄りはあるの?」

 

そんなものはない。

元の世界で喪ったばかりか、ここは異世界。

ボクを知っている人間など、

今この場にいる人達ぐらいだろう。

 

「……そう。まぁ詳しくは聞かないわ。

気を悪くするかも知れないけど、

その方が好都合だったしね。」

 

その言葉に口止めに殺そうとでもするのか、

と思ったがそれならとっくにそうしている筈だ。

ボクはさっきまで眠っていたのだから

幾らでもチャンスはあっただろう。

なら好都合とは何だろう。

 

「魔術回路が出来た以上、

最低でもその制御を学ぶ必要がある。

ここで最初の衛宮くんの質問よ。

全くアンタは段階をすっ飛ばし過ぎなのよ!」

 

「わ、悪かったって遠坂。謝る。謝るからさ。」

 

再びお説教が始まりそうな雰囲気である。

そして最初の質問といえば………

 

「で、ガンヴォルトくん。

私たちの下で魔術を学ぶか、

ここでの記憶と回路を消して警察の世話になるか。

どっちがいい?

ああ、後者はお勧めしないわよ?記憶はともかく、

魔術回路を消すのには神経を引きちぎられるぐらいの痛みがあるから。」

 

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

 

実質一択じゃないか…

 

『GV…この人ちょっと楽しんでる……。』

 

えぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

こうしてボクは異世界にて魔術を学ぶことになり。

望んでいた居場所を手に入れたのだった。

 

……何だか少し違う気もするが。




FGOでextraイベが終わりましたね。
自分はクリア出来ませんでしたが……。
最終日の16:30頃にキアラを倒したのですが、
そこで無情なる電源切れ。
家に着くも時すでに遅し。
おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ、
おのれぇぃっ!


次回こそFGO展開に入ります。
本当です。嘘じゃナイデスヨ?


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カルデア

遅くなりましたが 第3話です。
fgoでのプロローグ。
なるべく原作の流れを守っていくつもりです。
GVの性格は若干ノリよく変わっています。

おかしいところがあれば、感想で指摘していただければ幸いです。


「フォウ……?キュウ……キュウ?」

 

…………?

 

「フォウ!フー、フォーウ!」

 

………何かの鳴き声……?

 

意識が明瞭になっていく。

体の感覚からしてどうやら倒れているようだ。

目を開けて、しばらくぼんやりとしていた

視界が徐々に開けていく。

 

「…………………………。」

 

明瞭になった視界に1人の女の子が映し出される。

自分と同い年ぐらいであろう少女が、

訝しげにこちらを覗き込んでいた。

 

「…………あの。朝でも夜でもありませんから、

起きて下さい、先輩。」

 

その言葉に未だ倒れたままなことに気付く。

とりあえずさっと起き上がり、疑問に思ったことを聞いてみる。

 

「えっと、君は誰、かな?」

 

「いきなり難しい質問なので、返答に困ります。

名乗るほどのものではない––––––とか?」

 

時代劇?

 

「いえ、名前はあるんです。

名前はあるのです、ちゃんと。

でも、あまり口にする機会が少なかったので……

印象的な自己紹介が出来ないというか……」

 

「いや、普通に名乗ってくれればそれで……」

 

フランシスコ・ザビエルです!とか言われたりしたら

すごく反応に困る。

挨拶は普通が一番だとボクは思うのだ。

 

「……コホン。

どうあれ、質問よろしいでしょうか、先輩。」

 

誤魔化したな この子。

 

「お休みのようでしたが、通路で眠る理由が、

ちょっと。

硬い床でないと眠れない性質なのですか?」

 

……そういえばどうしてボクは倒れていたんだ?

まだ頭がぼんやりしていて思い出せない。

 

「ボクはここで眠ってたのか?」

 

「はい、すやすやと。

教科書(テキスト)に載せたいほどの熟睡でした。」

 

そんなに?

本当に自分はどうしてこんなところで……

 

「フォウ!キュー、キャーウ!」

 

「……失念していました。

あなたの紹介がまだでしたね、フォウさん。」

 

ボクが考え込みかけるとリスみたいな動物が

荒ぶりだした。

というか、本当に何だこの生物。

 

「こちらのリスっぽい方はフォウ。

カルデアを自由に散歩する特権生物です。

わたしはフォウさんにここまで誘導され、

お休み中の先輩を発見したんです。」

 

なるほどフォウ、(きみ)か。

いや、見つけてもらえなければ自分は倒れっぱなしだったかもしれない。

目を覚ましたのも鳴き声のおかげだった気が……。

そう考えるとお礼を言うべきだろう。

 

「えと、フォウ、だよね。ありがとう。」

 

「フォウ?フォウフォーウ!」

 

別に気にしなくていいとも、

みたいなニュアンスが伝わってきた。

意外と高い知能を持っているのかもしれない。

 

「フォウ。ンキュ、フォウフォーウ!」

 

なんてことを考えていたら、ではこれにて、

みたいな感じでどこかに行ってしまった。

 

「またどこかに行ってしまいました。

あのように特に法則もなく散歩しています。」

 

「にしても見たことない動物だな……。」

 

ボクが呟くと

 

「はい、わたし以外にはあまり懐かないのですが、

先輩は気に入られたようです。

おめでとうございます。

カルデアで2人目の、フォウのお世話係の誕生です。」

 

「え?」

 

サラッと変な役職に任命された気がしたが、

 

聞き返すことはしなかった。

 

視界に別の人物が入ってきたからだ。

帽子にスーツ、スボンに靴まで緑で固め、

尚且つ着こなしている。

何だかどことなく胡散臭い……?

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。

だめだぞ、断りもなしで移動するのは良くないと……

おや?先客がいたのか。

君は……見たところ今日から配属された新人さんだね?」

 

「どうも。ガンヴォルトといいます。」

 

挨拶は基本。目上らしい人物相手なら尚更だ。

 

「ふむ、ガンヴォルト君と。

招集された48人のマスター、

その最後の1人というワケか……。

はじめまして、ガンヴォルト君。

私はレフ・ライノール。

ここで働かせてもらっている技師の1人だ。

ようこそカルデアへ。歓迎するよ。」

 

「ありがとうございます。

これからよろしくお願いします。」

 

真面目そうな人だ。好感が持てる……筈なのだが。

何故だろう。どこか信用しきれない感覚。

魔術師特有の雰囲気ともまた違う、何か、

得体のしれないモノを相手にしているような……。

 

「よろしく頼むのはこちらだよ、ガンヴォルト君。

今回のミッションには集まった48人のマスター、

全員の協力が必要だ。私なんかとは違い、

君たち量子ダイブ適性者は本当に希少だ。

全世界から掻き集めても尚、

50人にも満たないのだからね。

わからないことがあったら、

私かマシュに遠慮なく……おや?」

 

 

「そういえばマシュは何を話してたんだい?

珍しいな。以前から面識があったとか?」

 

「いえ、先輩とは初対面です。この区画で熟睡していらしたので、つい。」

 

「熟睡……?ガンヴォルト君が、ここで?

……あ、さては入館時にシュミレートを受けたね?

あれは慣れていないと脳にくる。」

 

……そういえば…。

確かにそんなものを受けた記憶がある。

 

「シュミレート後、意識が覚醒しないままに

ここまで歩いて来たんだろう。一種の夢遊状態だ。ガンヴォルト君が倒れたところで

マシュが来たんだろう。」

 

なるほど。

納得出来る説明だった。

 

「レフ教授。すいませんが、そろそろ……。」

 

「ん?ああ、そうか。所長からの説明会があった。

確かにここで井戸端会議をしている暇はないか。」

 

「説明会、ですか?」

 

なんだろう、それは?

 

「先輩のように本日付で配属されたメンバー達

へのご挨拶です。」

 

「ようはボス直々の新人達への最初の挨拶(しつけ)さ。

本当は君を医務室に送っておきたいんだが……、

所長は些細なミスも見逃せないタイプだからね。

遅刻でもしたら向こう1年は延々トイレ清掃、

なんてことになりかねない。」

 

選ばれた希少なマスターとは一体……。

いや、確かに遅刻は良くないけど。

 

「五分後に中央管制室で始まる。

この通路を真っ直ぐだ。急ぎなさい。」

 

礼を言って、管制室へ向かおうとすると

足が少しフラついた。まだシュミレートの影響が

残っているらしい。

 

「レフ教授、わたしも説明会への参加が

許されるでしょうか?」

 

「うん?まあ、隅っこにいるくらいならば多分……

どうしてだい?」

 

「先輩を管制室まで案内しようと。

途中でまた熟睡されるかもしれないので。」

 

今の状態からして否定できないのが辛い……。

 

「君を1人にすると、所長に怒られるからなぁ……。

結果、私も同席するということか。」

 

……ご迷惑をおかけします。

 

「まあ、マシュがそうしたいなら構わないよ。

ガンヴォルト君もそれでいいかな?」

 

「はい。まだ少しフラつくので、

正直いって助かります。」

 

ご厚意に甘えさせていただく。

これでは本当に倒れかねない。

 

「向かいながらだが、他に質問があれば聞くよ?」

 

それを聞いて、ボクはさっきからずっと疑問だったことを聞いてみる。

 

「この子、どうしてボクを先輩と呼ぶんですか?」

 

「……………………………。」

 

黙ってしまった。

 

「ああ、気にしないで。

彼女にとって君ぐらいの年頃の子は

みんな先輩なんだ。」

 

……?余計にわからなくなった。

 

「でも、はっきり口にするのは珍しいな。

いや、もしかして初めてかな?」

 

ええ?

 

「私も不思議になってきた。マシュ。

どうして彼が先輩なんだい?」

 

「理由……ですか?ガンヴォルトさんは、

今まで出会った人の中で一番人間らしいです。」

 

それがどうして先輩呼びに?

 

「ふむ。それは、つまり?」

 

「まったく脅威を感じません。

ですので、敵対する理由が皆無です。」

 

「なるほど、それは重要だ!

カルデアにいる人間は一癖も二癖もあるからね!」

 

「……ええ⁉︎」

 

今ので納得出来るのか⁉︎

というか暗にバカにされた気が……。

 

「私もマシュの意見に賛成だ。

ガンヴォルト君とはいい関係が築けそうだ!」

 

「レフ教授が気に入るという事は、

所長が一番嫌うタイプということ……。

………あの。このままトイレに篭って説明会を

ボイコットするのはだめでしょうか?」

 

「さすがにダメだろうね……。」

 

「それだとますます所長に目を付けられるぞ?

ここは運を天に任せて出たトコ勝負だ。

虎口に飛び込むとしようガンヴォルト君。

なに、慣れてしまえば愛嬌のある人だよ。」

 

……大丈夫かなぁ…?

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

無事に説明会前に管制室へとたどり着いた。

中心に見えるのは大きな地球儀……だろうか?

その時、一瞬だが目が眩んだ。

 

「先輩の番号は……一桁台、最前列ですね。

空いているこの席はどうぞ。

……先輩?顔色が優れないようですが。」

 

「ごめん、まだ少し頭が……。」

 

「シュミレーターの後遺症ですね。

すぐに医務室へ連れて行きたいのですが……。」

 

マシュが向いた方向には気難しそうな女性がいた。

ああ、これは……

 

「無駄口は避けた方がよさそうだ。

もう始まるところだからね。」

 

 

 

「時間通りに集まりましたね。結構です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「特務機関カルデアへようこそ。

私が所長のオルガマリー・アニムスフィアです。

貴方達は各国から選抜、

あるいは発見された稀有な……

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

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まずい、意識が–––––––––––––––

 

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–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

遠坂凛と衛宮士郎。

2人から魔術を教わることになったボク。

魔術回路の制御は第七波動(セブンス)の制御感覚と似ていた

こともあって、すぐにマスターしたボクは、

本格的に魔術を教えてもらうことになった。

交換条件として師匠呼びを強制された。

 

 

衛宮師匠に料理を習ったり、紛争国に行ったり、

遠坂師匠が半壊させた屋敷の事後処理に奔走したり、

破損させたデータの復旧に四苦八苦したりと、

イギリスのロンドンと日本の冬木を行ったり来たり、

魔術以外にも濃すぎる日常を送っていたボク。

 

 

そんな日々が三年ほど続いたある日。

ボクは遠坂師匠にある話を持ちかけられた。

 

「人理継続保障機関カルデア……ですか?」

 

「そ。やってることは名前の通り。

人類史の今後の繁栄を観測し、保障する。

何だか色んな研究を統合することで可能になった

偉業らしいんだけど……。」

 

遠坂師匠はその辺、興味なさげだ。

魔術師としては自己の研鑽くらいしか

興味がないので、余所の所業など本当にどうでも

いいのだろう。良い意味で脳筋な人だった。

 

「そこで何か問題が起きたそうでね。

適性がある人を魔術師、そして一般人からも

招集してるらしいのよ。」

 

「一般人からもですか?」

 

現代の魔術師にとって、神秘の秘匿は最優先だ。

それさえも度外視しているということは、

かなり深刻な問題なのだろうか。

 

「そこでなんだけどね?招集中の一般枠。

アンタ潜り込んじゃいなさい。」

 

「………はい?」

 

ナニヲイッテイルンダコノヒトハ?

 

「だーかーらー、カルデアの招集中の一般枠。

そこに一般人として滑り込んじゃいなさいって

言ってるの。」

 

「そういうことじゃないですよ!見たところ、このカルデアの主導者ってアニムスフィア家ですよね!エルメロイ家との繋がりがある遠坂家の弟子……

しかも一般枠でなんて無理に決まってます!」

 

ボクらしくもなく口調を崩してツッコむ。

シアンも声こそ出さないが、呆れているのが

伝わってきた。

ちなみにシアンの存在は未だ誰にも知られてない。

師匠達にも伝えないのは自分でもどうかと思うが、どちらもうっかり口を滑らしそうで信用できない。悲しいことに。

 

「ふふっ。その辺をこの私が考慮していないとでも思って?」

 

(「『思います』」)

 

シアンと心の声が重なった。

 

「その目、信用してないわね……。

だけど今回は完璧よ!これを見なさい!」

 

自信満々に渡された書類に目を通す。

カルデア配属マスター適性者採用書……って

 

「採用書⁉︎」

 

「既に根回しはバッチリよ。貴方はどこの派閥にも属さない零細魔術師の家系ってことになってるわ。魔術師登録してないから一般枠にも

捩じ込めたのよね〜♪」

 

いや問題はそこではなく。

 

「なんで勝手にこんなことを⁉︎

事後承諾にも程がありまs

 

「残念!異論は認めないわ!

今回のミッションで貴方は1番目立つ功績を挙げてきなさい!それが免許皆伝の条件よ!」

 

「え、えぇ……。」

 

そんな感じでなし崩し的にボクのカルデア行きが

決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「大丈夫ですか先輩?」

 

あの後、ボクは俗にいう[寝落ち]をしてしまったらしい。

怒れる所長の制裁を受けたボクは初期メンバーから外され、自室待機を命じられていた。

 

「やってしまった……。」

 

「見事な寝落ちでしたね。

それに、どことなくレム睡眠だった印象でした。」

 

「それはどうでもいいかな……。」

 

「ともあれ、所長のチョップで完全に覚醒したようで何よりです。先輩の部屋までは……「フォウ!」きゃっ⁉︎」

 

「危ない!」

 

突如マシュに飛びかかったフォウに反応し、

とっさに捕まえる。

 

「大丈夫?」

 

「あ、はい。少し驚いただけですので。

……あの。フォウさんを放してあげてください。

いつものことなので。」

 

「あ、そうなんだ?」

 

「フォウフォーウ!」

 

手の中でジタバタしていたフォウを放すと、

フォウは再びマシュに飛びかかっていった。

 

「わぷっ。……フォウさんはこのように、

まずわたしの顔に奇襲をかけ、背中に回り込み、

最後には肩に落ち着きたいらしいのです。」

 

「……慣れてるんだね。」

 

フォウの行動に遠慮がない。

舐められているか、余程懐かれているか。

この場合は後者なんだろう………多分。

 

「フォウさんがカルデアに住み着いて、

もう1年になりますので。

ですが他のスタッフの前には姿を現さないので、

一種の都市伝説みたいになってますね。

〈彷徨うビッグ白リス〉だとか。」

 

「へ、へぇ……。」

 

極まった語呂の悪さだった。

 

「フォウ!クー、フォーウ!フォーウ!」

 

「ふむふむ。どうやらフォウさんは先輩をライバルとして迎え入れたようですね……。しかし人間を

好敵手扱いするリス(のような何か)は

アリなんでしょうか…?」

 

「いや、ボクに聞かれても……」

 

魔術の世界は未だにわからないことだらけだな……

 

「まあ、フォウさんの方ですから明日には

忘れているでしょう。それはそれとして。」

 

「?」

 

「実はもう目的地に着いています。

こちらが先輩用の個室となります。」

 

さっきから立ち話になっていたのはそれでか。

 

「……そうか。ここまでありがとう。」

 

なんだかんだで会った時からお世話に

なりっぱなしだ。この借りは必ず返そうと決める。

 

「なんの。先輩の頼み事なら、昼食(ランチ)を奢る程度までならうけたまわりますとも。」

 

それはどちらかというと先輩がすることでは?

 

「それではわたしはこれで。運が良ければまた

お会いできるかと。……おや、フォウさんが先輩のことを見ていてくれるのですか?

ならば安心ですね。」

 

「キュー、キュ!」

 

ボクの信頼はリス以下なのか?

密かに傷付きつつ、ボクらは別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「ふう……。」

 

割り当てられた自室でベッドに座り込む。

なかなか質の良いベッドだった。

 

『大丈夫?GV。今日だけで2回も気絶しちゃってるんだから無理しちゃダメだよ?』

 

シアンは心配してくれていたようだ。

というか字面だけ聞いたら完全に重病人だな……

 

「いや、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

 

お礼を言ったらシアンが

「べ、別に。私はGVの……ゴニョゴニョ

とか言いつつそっぽを向いてしまった。顔が赤いが今のシアンは風邪をひいたりしないはずだ。

何故だろう?

 

「むぅ、GVのアンポンタン!」

 

「なんでさ……。」

 

そんなことを考えていたら何故か罵倒された。

師匠から感染った口癖が出る程度には唐突だ。

シアンを宥めつつ、今後のことなんかを相談して

いると、急に扉が開き、誰かが入ってきた。

シアンが慌てて姿を隠す。

 

「マギマギ☆マリ〜♪キュートにキラーン……ってうぇええええええええ⁉︎誰だ君は⁉︎」

 

こっちのセリフなのですが。

 

「ここは空き部屋でボクの聖域(さぼり場)だぞ⁉︎

誰の断りがあってここにいるんだい!?」

 

「なんでさ。」

 

よくわからないが、とりあえず言いたいことが

1つ。

仕事しろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「いやぁ、すまないね!少しパニックになっていたみたいだ。初めましてガンヴォルト君。

予期せぬ出会いだったけれども、

改めて自己紹介させてもらうよ。」

 

部屋に侵入してきた男を落ち着かせ、

とりあえず自己紹介を、という流れになった。

 

「ボクは医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。

何故かみんなからはDr.ロマンと呼ばれている。

理由はわからないけど言い易いし、君も遠慮なく

そう呼んでくれ。なんだかんだで気に入ってるし。格好よくてどこか甘くていい加減な感じが特に。」

 

ニコニコしながらそう語るドクターに、

あぁ、これがシアンが言ってたゆるふわ系か……という感想を抱いた。

 

「初めまして、ドクター。」

 

「うん、今後ともよろしく……ん?」

 

「………………………」

 

「うわ、その肩に乗ってるのって噂の

〈ビッグ白リス〉⁉︎マシュから聞いてはいたけど

ホントにいたんだ!」

 

本当に噂になっていたらしい。

 

「手懐けたり出来るかな?はい、お手。上手く出来たらオヤツをあげよう。」

 

「……………………フウ。」

 

ドクターの手に微塵も興味を示さず、ベッドで丸まるフォウ。

 

「……あれ?今、すごく哀れなものを見る目で無視されたような………?」

 

何というかみじめだった。

閑話休題。

 

 

「……ま、まあ君の話は予想がつくよ。君は今日来たばかりの新人だろう?所長のカミナリを受けてここに来たとかじゃないかい?」

 

「……驚きました。正解です。」

 

流石は医療部門トップ。頭はいいらしい。

 

「ならボクと同類だ。何を隠そう、ボクも所長に叱られて待機中だったんだよ。"ロマニがいたら現場の空気が緩むのよ!"って追い出されちゃったんだ。」

 

予想外に理不尽な理由だった。

 

「まぁ、ボクの仕事っていってもマスター候補やスタッフの健康管理くらいだからね。今みたいな状況ならぶっちゃけ機械の方が確実で信頼できるんだよね!」

色々と台無しだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「……以上がこのカルデアの構造だ。何か他に聞きたいことはあるかい?」

 

ここで、"実は全部知ってました"なんて言うのは無粋の極みだろう。ドクターがあまりに楽しそうに喋るので言うに言えなかったのだが。そんなことを考えていると、ドクターの腕に巻かれた機械から着信音らしき音が鳴った。

 

『ロマニ、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?』

 

聞こえてきたのはレフ教授の声。ボクにも似たようなものが支給され装着しているが、これにはどうやら通信機能が付いているらしい。このサイズで他にも多数機能が付いているなら、この世界ではかなりハイテクなものではないだろうか。

 

『急いでくれ。今、医務室だろ?そこからなら2分で到着できる筈だ。』

 

そんなことを考えている間に通信が終わったようだ。が、最後に聞こえた言葉に引っかかりを覚える。

 

「ここ、医務室じゃないですよね?」

 

「…………(スッ)」

 

「目を逸らさないでください。」

 

「うぐぅっ!」

 

隠れてさぼってるから……とボクが呆れていると、ドクターは開き直った。

 

「まぁ、少しくらいの遅刻は許されるさ!Aチームは問題ないって話だったし!」

 

……もう何も言うまい。

 

「まあ、呼ばれたからにはちゃんと行くさ。お喋りに付き合ってくれてありがとうガンヴォルト君。暇になったら医務室を訪ねに来てくれ。今度はケーキをご馳走しよう。」

 

「はい、それでは。」

 

『(ケーキ!)』と反応したシアンに苦笑しつつ、見送る。

ゆるふわした笑顔でドクターが扉を開けようとした時

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「なんだ?明かりが消えるなんて、なにか––––––––––

 

瞬間。響く爆音。地鳴りの如く揺れるカルデア。照明が紅く明滅し、緊急警報が鳴り喚く。

 

《緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室にて火災発生。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第2ゲートから退避してください。繰り返します––––––––––––––》

 

「今のは爆発音か……⁉︎」

 

「一体なにが起こっている⁉︎モニター、管制室を映してくれ!みんなは無事なのか⁉︎」

 

職員証をモニター横のパネルにかざし、ドクターが叫ぶ。音声認識機能が付いているらしいそれは指示どおり管制室を映し出した。

 

「これは……!」

 

燃え盛る業火。瓦礫に溢れていた。動く者は皆無。機能が停止したらしいカルデアスが、黒い太陽のように炎で照らされていた。そしてボクは気づいた。気づいてしまった。いや、目を逸らそうとしていただけか。

 

「…………じゃあ、あの娘(マシュ)は……?」

 

初めて会ったのは数時間前。一緒にいたのは1時間もないだろう。それでもボクは彼女を好ましく思っていたし。友達になれそうだとも思っていた。フラッシュバックする。元の世界の記憶。アシモフが放った凶弾。はしる激痛。閉じゆく視界のなかでしあんがおなじくうちぬかれてたおれていくのガミエテツギニメザメタトキニソコニハシアンノツメタイツメタイナキガラガカラダガシンジラレナイホドオモクテボクハナニモデキナクテ–––––––––––––––––––––––––––––––––––––ッ!

 

「っ⁉︎ガンヴォルト君⁉︎」

 

舌を噛んで痛みで無理やり頭を正気に戻したボクはドクターの横をすり抜け、駆け出していた。

能力と魔術を併用し、全速力で管制室へと駆ける。

 

「もう!何も出来ないのは嫌なんだっ……!」

 

走る。走る。馳せる。

20秒足らずで管制室へとたどり着いたボクを待っていたのは、文字通りの地獄だった。

 

モニターではわからなかった。炎はまるで竜のように叫び。崩れ続ける瓦礫たちは狂ったように嗤う。肉が燃える匂いが酷く鼻につく。そこは地獄だった。

それでも、ボクは踏み込む。生き残りが、マシュがいるかもしれない。だから。

 

「シアンっ…!頼む……‼︎」

 

『わかってる。絶対見つけてみせる!』

 

シアンが歌で超音波式探査(ソナー)もどきの探知を行う。ボクはその間に自分の足で探すだけだ。

 

《動力部の停止を確認。発電量が不足しています。》

《予備電源への切り替えに異常があります。職員は手動で切り替えてください。》

《隔壁閉鎖まであと40秒。中央区画に残っている職員は速やかに––––––––––》

 

1分か、2分か。いや、10秒かかっていないかもしれない。シアンが叫ぶ。

 

『GV!その先、30メートル先!あの娘がいる!』

 

「っ!」

 

シアンが指示した方向へ翔ける。炎も落ちてくる瓦礫も関係ない。電磁結界(カゲロウ)がある以上、全て無視できる–––––––––––––––!!

 

《システム レイシフト最終段階に移行します。座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木》

《ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。》

《アンサモンプログラム セット。マスターは最終調整に入ってください。》

 

『GV!こっち!ここ!』

 

先行していたシアンが再び叫ぶ。そこには………下半身を巨大な瓦礫に潰されて、しかし、確かに生きている彼女がいた。

 

「……………………、あ。」

 

「しっかり!今、助ける!」

 

雷撃は使えない。この瓦礫を砕けば、マシュにもダメージが通ってしまう。単純に、退かすしかない……!

 

「………いい、です。……助かりません、から。それより、早く、逃げないと……」

 

「断る!」

 

「っ、えっ?」

 

「絶対に助ける!絶対にだ!」

 

能力と魔術による肉体の同時強化。酷使される肉体が激痛という悲鳴をあげるが、そんなものは知ったことじゃない……!

 

『GV!』

 

「っ!これなら!うぉおおおおおおおおっっっ!!!」

 

シアンの歌による強化。三重の強化を得た肉体がとうとう瓦礫を退かすことに成功する。

 

「…うそ。ほん、とに……?」

 

瓦礫は退かした。後はマシュを治すだけ。

ボクの第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)の力の源であるEPエネルギーに魔術回路を接続し、擬似生命力として魔力に変換。限界以上の魔術を行使する。治癒魔術はボクの最も適性が高い魔術。

生きているなら、絶対に助けてみせる……っ!

 

「あ………………。」

 

「何……………⁉︎」

 

機能停止していたカルデアス。システムが復旧したのか再び稼働したそれは、しかし以前まで輝きとはまるで違っていた。

 

《観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる近未来観測データを書き換えます。》

《近未来100年までの地球において人類の痕跡は発見できません。》

《人類の生存は確認出来ません。》

《人類の未来は保証出来ません。》

 

「カルデアスが真っ赤に……。いえ、そんな、ことより……。」

 

《中央隔壁 閉鎖します。館内洗浄開始まで あと60秒です。》

 

「隔壁が…もう………っ!」

 

「これ、では……外には…。」

 

歯を音がするほど、噛み締める。救命措置は終わっている。後はマシュに本格的な治療を施せばいい。ホムンクルスなんてものがある世界だ。下半身が潰された状態でも十分見込みはあるだろう。時間さえあればボクでもなんとかなる。が、その時間さえ今はない………‼︎

 

「……なんとかなる。」

 

それでも言葉を絞り出す。

 

「なんとかなる、してみせる。」

 

もう目の前で誰かを失うのはごめんだ。何か方法はある。考えろ考えろ考えろ考えろ!

 

《コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。レイシフト 定員に達していません。》

《該当マスターを検索中・・・・発見しました。》

《適応番号48番 ガンヴォルト をマスターとして再設定します。》

《アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します。》

 

『じ、GV!なんだか様子がおかしい!』

 

シアンの声が聞こえたが今はそれに耳を傾ける余裕がない。隔壁を破壊する?却下。原子炉なみの造りをしている管制室の隔壁は数十秒じゃ壊せない。地下にある発電所に逃げ込む?ダメだ。時間が足りなさすぎる! 時間が足りない。有力な案も全て時間に潰される。こうしている間にもタイムリミットは迫っているというのに––––––––––––––

 

「…………あの………せん、ぱい。」

 

「っ!」

 

マシュの声に思考を引き戻される。その顔を見てわかってしまった。ボクではもう、彼女を助けられないのだと。

 

「てを、にぎってもらって、いいですか?」

 

《レイシフト開始まで あと》

 

「……ああ、もちろんだ。」

 

《3》

 

彼女の手を握りしめる。せめて最期の瞬間までこの手を離すことはしない、と。

 

《2》

 

「…………あ」

 

彼女が弱々しくその手を握り返したのを感じて–––––––––

 

《1》

 

《全行程 完了(クリア) ファーストオーダー 実証を開始します。》

 

ボクの意識は途絶えた。




データが4回消えるという悲劇。
原因は排除しましたが、MPをゴリゴリ削られました。
次回からは特異点F。
6月中旬までに書けたらいいなぁ。


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