SF (黒神 真夜)
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その車は蒼いそうでその

―――1年と半年前―――

車のエンジン音が響くここサーキット場

今日ここで一つの伝説が生まれた

14歳にしてプロドライバーを、ちぎったドライバー

その愛車のカラーと車が銃弾のように速いことから

人々はこう言った蒼弾と。

しかし、この、レース以降彼女が走ることはなかった...

 

―――現在―――

東京オリンピックに向けて日本の技術革新は進められた

電化製品はほぼ全てが自動化されているし、

医療だって昔は無理だと思われたことができるようになった。

 

その、技術革命は車の世界をも変えてしまった

自動運転技術も10年前は無理だと思われていたが

今では、殆どの乗用車が自動運転化されている。

そのため、車の免許取得制度も12歳を超えたら取得可能になった

車は運転するものから本当の意味で乗り物に変わってしまった

 

そしてもう一つ、車の革命があるそれは

ガソリンエンジンから水素エンジンへの革新だった

ガソリンよりも、コスト、軽量化、環境への配慮

この3つの有能さと、ガソリンエンジンの重税化により

日本の車の80%以上は水素エンジン搭載車になっている。

そして、恐らくもう一つ水素自動車のメリットがある

それは、旧車のマイナーチェンジ化だろう。

RX7などのボディに水素エンジンを搭載させたいわゆる

コンバートカーこれがスポーツカー愛好家に絶大な支持を得た

もちろん、このコンバートカーが嫌だからガソリンエンジン搭載車に乗っている人もいる。

だか、スーパーGTなどのグランプリでは、もはやガソリンエンジンを見ることは無くなった。

 

そう、こんなつまらない世界になってしまったんだ

 

「いってきまーす」

誰もいない部屋にドアの閉鎖音とともに発せられた

 

車がただの乗り物になってはや5年

いまではもう、ステアリングを握るものも少ない

リムジンやタクシーに乗ってるような優越感と何もしなくても

目的の位置にたどり着ける楽しく悲しい車の世界

しかし、その車を作り、整備するたの技術を学ぶために作られた学校がある

要は工業学校、市や県がお金を大量に使ってまでもが今は技術力が求められている。車の水素化、自動化これによってガソリンエンジンのノウハウはほぼ完全に無に帰した。

なので。今はまだ水素エンジンに切り替えてすぐの今は、就職率や条件がいいなどから自動車化に入る人が非常に多い

自分もその1人、まぁ自分は推薦なんだけど...

 

詳しい話は聞いてないけど、自分が入学した工業学校

東雲工業高校は生徒達が車をチューニングし

レースに参加する。と言う学生達の更なる技術、発想力の向上予測から全国の自動車化、自動車部で試験的に3年行われることになったSF活動の加盟校だ。

この活動が受験生にヒットし今年の工業学校自動車化の志願率は

都会だと20倍にもなったとニュースで見た気がする...

そして、自分はその改造された車のドライバーになるなら

学費免除と言うお金に余裕が無い我が家はこの条件を引き受けた。

ま、まぁ、ぶっちゃけ、もう車には乗りたくないけど

所詮は学校行事、遊び、本気でやる必要はない

 

着いた...

 

今年より、開校した東雲工業高校

自動車化はもちろん。ほかにも電気科、情報電子など

車に使えそうな科を1通り揃えた試験的学校

自動車化の生徒はたった36人。全校生徒320人のそこまで生徒はいないのに、やたらと広い学校だ。

自分達はこの新学校で3年間車を改造しレースする訳だ

 

入学式が終わり

 

早速だが、クラスごとに移動自分達自動車科はガレージに集められた。

この時から既に革命の狼煙は経っていたのかもしれない。

 

先生の話が始まった

「まず、みんなにはこのクラスの設立理由と目指すもの

そして。レースがどのような形式で行われるか説明する

まずは、レースについてだが、学生のフォーミュラ

その名の通り、Studentformula 訳してSFは

レースの内容によって多少は変わるがドライバー1、メカニック5人の6人グループでのレースになる。

当然、ピットインなどは有り、馬力毎に違うクラスでのレースになる訳だが、グループのメンバーはもう決めてある。

まず、今のとこ定められている最高馬力でのレースには最高のメカニックとドライバーを当てることにする。

ドライバーは蒼井真夜、メカニックは...」

先生の話は相変わらず続いている、けど内容は全く頭に入らない何故かって?だって最高グループのドライバーが自分だからだろう

それ以外の理由がない

 

だが、その時自分はまだ本当の驚きを知らなかったのかもしれない。

 

「...と言う構成になった訳だ、異論はよっぽどのことが無い限り認めない。

そして、この学校、このクラスで目指すものは、このクラスの創設理由と同じだ、こっちに来てくれ」

も、もう変えられない事実に絶望しながら、先生のあとについて行く。そこには布で覆われていたが恐らく、車だろう

これが、自分達の3年間の愛車となり、戦闘機になる訳だ

 

「紹介しよう、これが君たちAグループで使ってもらう車だ」

その車は白の美しいボディに太陽光が当たるところは蒼く輝いている。そうブルーパールの...80スープラだった、それを見た瞬間自分達は驚いた。

スープラってまだコンバートカーになっていないからである。

あー、トヨタが提供してくれたのかなーと思ったが...

 

「そう、この車で、このガソリンエンジンでFSに優勝するこれがこのクラス、この学校の目的だ」

 

「えええーー」

訳も分からず、ただ、叫んだ

この車で、ガソリンエンジンでSF優勝...

言っていることが分からない、ガソリンが水素に?こんな旧車が

現代車に勝てるわけがない。

けど、そんな絶望や驚きよりも、何故か心中は喜びで満ちていることを認めたくなかった...

 

スープラ

トヨタが1986年から2002年にかけて作ってきたスポーツカーである。全ての型式に直列6気筒エンジンが搭載されている。

名前の由来はラテン語で上へ、超えてなどの意味がある車である

その中の80スープラはスープラの最終形態とも言えるだろう

 

サスペンションはシンプルながらの王道のダブルウィッシュボーン、ダブルウィッシュボーンとはスポーツカーなどで多く採用されているサスペンション方式でカーブする時タイヤの動きを極力抑えて安定したコーナリングをしてくれるサスペンション方式だ

 

更にこのスープラのエンジンは2JZ-GTEと言って3Lのツインターボ仕様、280馬力以上をたたき出すまさにモンスターエンジンが搭載されている。

このようにスポーツカーとして高性能なスペックなスープラは

多く人を魅了しただろう。

 

...そんな車が目の前にある訳である。

それも、そこそこは改造されているがノーマルと言えばノーマルの色を濃く残しているだろう外装。

なんだが、何故か、懐かしい感じがある。

親がスポーツカーに乗っていたからだろうか、何に乗っていたのか思い出せないのだが...

 

「この。車を取り敢えず3週間でレースできるようにしろ。

3週間後。こいつでレース開始だ」

 

こんな無茶ぶりの、中から自分達の改革の火蓋は切られた

このスープラから放たれる輝きは蒼かった...

 

「よかったんじゃん」

 

「良くないよ」

 

ファーストフード店で絶望を吐露する

笑いながら話を聞いてるのは小学時代から中学時代まで一緒の学校でほかの工業高校に行った友達、響子だ

 

「とか、言いながら自分の学校もガソリンエンジンでSFでるんだよねー」

 

「え?そうなの、車種は何なの?」

 

「んー見た方が早いと思うよ」

 

なるほど、やっぱりガソリンエンジンで成し遂げようと思う学校はあるのかもしれないなー

そして、響子の学校で改造される車を見に行く

そこには、白く染められたいかにも速そうな車がとまっていた

そうこれは初代NSXTypeR

 

NSX

NewSportsCarXの訳しであるこの車

1990年から発売され水素革命が起こる少し前に新型を出し幕を下ろした車だ

世界に通用するホンダを目指して開発されたこの車

初代NSXはC30AというV6エンジンを搭載されており

280馬力を叩き出すのだ

 

さらにこのNSXはTypeRと言いベース車1型をさらにレーシーに軽く仕上げた車だ快適装備を減らしバケットシートと言う

一般のシートを軽く、固定力の強くしたものを搭載

一部をチタン、アルミパーツを取り入れることによりベース車より120kgの軽量化に成功したこの車

 

まさにホンダのスポーツカーの性能はこれだけすごいんだぞ

と表現したような車である

 

「よ、よくこんな車が残ってたね」

 

「うん、先生がねー好きだった車を泣く泣く譲ってくれたんだ」

 

「あれ、280馬力ってさー」

そう、自分はふと280馬力で思い出したこの馬力はスープラと

同じ馬力なのだ...と言うことはSFでは同じ土俵で戦うことになるのだ

 

「そうなんだよねーけど楽しそうじゃない?中学の頃はー負けまくりだったけどこの車なら撃墜できちゃうよ」

 

そ、そうだねと答えを濁すことしかできなかった

 

「それに、私だけじゃないかもよ。ほら、大阪の高校行った御幸とか東洋工業高校に行った朋とかSFでるかもだし」

 

「確かに、みんな、どんな車乗るんだろねー」

 

「御幸とか絶対スバル車だよね笑中学の頃めっちゃこだわってたし」

 

確かに確かに

やっぱり、同じ境遇者と喋ったからだろう気持ちが軽くなった

 

「このNSX乗ってみる?」

 

「え?いいの?」

 

うんうん!いいよーと言われながら運転席に案内される

RECAROと言うバケットシート最高峰のメーカーのシートに

MOMOのステアリングの個人的最高メーカーの融合により

レーシーに演出されたコクピット

これは乗る人をその気にさせてくれるだろう

よーしーいくぞー

 

―――舞台は広島高速に入る―――

自動運転化に伴いオービスは撤廃され走りやすくなった

そんな夜の高速道路に甲高い音が響く

 

「うひょー速い速い」

スピードメーターは180~200kmを保ちながら走っている

 

「あれ、なんか後ろから速い車が来てるよ」

 

んーミラーをみる。後ろから来る車はどこかのヤン車だろうか

水素エンジンを搭載したおかげて、騒音は消えてしまったので

ホイールのキャンバー角をめちゃくちゃにして生きがっている

尚...めっちゃ速いです...

 

「あれあれ、真夜ちゃーん抜かれちゃうの」

響子が煽ってくる

 

「うぉー水素エンジンなんかに負けるかー」

必死に逃げて逃げて逃げまくる

馬力では負けてもコーナーでは離せるしそれになにより

 

「ドライバーの差ってさー案外気がつかないかもだけど重要だよね。」

 

「うん...そうだと思うよ」

なんだってそうだ。速いものを作ってもその性能を引き出さないと何もかもが無に帰す

その性能を引き出すことがドライバーの役割なのだろう

 

「真夜ってさー本当にお金が無いから工業高校に入ったの?」

 

「うん、そうだよ。本当は違う道で行きたかったけどね。車に乗るのは楽しいけど、取り込まれすぎたら..」

 

「あ...」

その瞬間ヤン車に抜かれてしまった

 

「あーあー真夜ちゃん抜かれちゃいましたねー」

 

「わざとだし、これわざとだから。ここから」

 

「楽しそうだね真夜」

 

「そ、そうかなーけど、選ばれたからには頑張るよ」

 

「うん。そうだね、そーやー真夜の学校ってどの車改造するの」

 

あーまだ言ってなかったかな

「えーとね80スープラだよ」

 

「え、スープラ...」

今まで笑っていた響子はその瞬間笑顔を消した

 

「えーと、なんかあった?」

 

「い、いやーなんもないよ」

 

「そ、そうかーよーし、とっとあのヤン車追い抜くぞ」

 

結果論、NSXはやっぱり速いんだなー

ヤン車も勿論速かったけど、NSXの本気には遠く及ばない

ガソリンエンジンの底力を見せつけれただろう。

 

「今日は楽しかったよありがとね」

 

「うん!それと真夜お互い頑張ろうね」

 

「うん!それじゃあね」

 

響子と別れて家に帰る

 

我が家につく。まぁ安いアパートなんだけど

1人で暮らすには全然不便じゃないからいいや

 

我が家は2階なので階段を上がる

 

あれ、おかしいなー

 

自分の部屋の前に誰かいる。

茶髪ロングでとても可愛いく、そしてなんと言っても

瞳の色が蒼くて自分のなにかを見透している。

そんな深くて美しい蒼い瞳だった

 

「久しぶり。お姉ちゃん」

 

「はぃぃぃぃぃ?」

今日は何回叫べばいいんだろうか

けど叫ばなければいけないぐらいの事を言われた

お姉ちゃん、自分妹いないんですけどぉ...

 

謎の妹?の瞳の色はとても美しく、そして蒼かった...



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車重が重いのでダイエットさせたいんですが...

水素エンジンがレースで使われるようになったのには

軽量化などもあるが、本当は違うだろう

それは、水素エンジンは炎上しないからだ。

ガソリンエンジンはガソリンに摩擦や静電気が生じ爆発、もしくは炎上するこれによって、レースでリタイアした車は沢山ある。

日常生活でもこの症状が出ることがある一般道で衝突してガソリンをぶちまけてそこに摩擦が生じて爆発こんなニュースを見たことがある。

いや、見たのだった...

 

「どうぞー」

 

「ありがとね。お姉ちゃん」

 

妹?を渋々部屋に入れる

部屋に入れるまで20分以上の格闘があった。

親がいないので。叔母に妹はいるのかと連絡を取って

親戚に居たと言うことで部屋に入れたが...怖いよね...なんか

 

「えーと、名前はなんだったけ?」

 

「黒神葵だよ」

自分の産まれた2ヵ月後に産まれたってだけで自分が姉になるのかと思ったが本題に入ろう

 

「どうして葵は自分の家に?」

 

「あれ、お姉ちゃん何言ってんの。今日1日一緒にいたんじゃん。

私、Aグループのメカニックだよ。それで実家からは通えないからここに居候しようと」

 

「あれ、そうなの?ごめんあの時はもう驚いてて周りが見えてなかったよ。ってええ、イヤイヤ居候って...まぁ、叔母が泊めさせろって言いそうだからなー」

仕方なく諦める

 

「ありがとね!その代わり家事はするからさ!そうや学校の企画ってさ!楽しそうじゃない?」

 

「うん!楽しいとは思うけど現実味がねー」

 

「まぁ、スープラってチョイスがいいよね!昔はGTスポーツで活躍してたモンスターマシーンだよ」

 

確かにねーと返答をする

 

「けど、葵が来てくれてよかったよ。一人暮らしって結構暇だからさ」

 

「お姉ちゃんが望むならずっと住んであげるよ!そーやーシャワー浴びたいんだけどーどこかな」

あー確かに、最近は春だけど暑いから寝る前には入っておきたいのは分かる

場所を案内してあげる

 

「お姉ちゃんも一緒に入る?」

 

「いや、入んないよ」

葵は、えーって顔で浴室に入っていった

な、なんだんだろうか

 

こんな事をしていたら時刻は23時になっていた

「ごめんねー急だったから布団が1セットしかないから、自分は椅子で寝とくね」

 

「いやいや、お姉ちゃんも一緒に入れば、いいじゃん」

うーん、椅子で寝れる気しないけど、葵と寝たら寝たで多分寝れないよね。

まぁ、明日には布団もう1セット買おうと心に決め

隣に入れてもらう。

 

「明日には、布団買って帰るね」

 

「いいよーお姉ちゃんと葵寝たいし」

 

「い、いや、私が多分寝れないし」

こ、このはなんだろうか親近感がありすぎじゃあ...

葵とダイレクトで密着してるような気がする...

同性恋愛とかそんな事は興味ないけど...うーむなんだかな...

 

そんなことを考えてたら時計の時刻は1時を過ぎていた

その後、ようやく寝ることが出来た

 

夢の世界...皆は入っているだろうか

夢は静かに自分の理想や思いを形にしてくれる。

夢の中で英雄に成りたければ成れる。

しかし、夢は儚いもの

朝起きて顔を洗う間にはほぼ忘れている

そんな物...

だけど、自分は...明晰夢と言うのだっけ

夢を自分の形に書き換えたり、夢の中で活動することができる

そんな夢に入ることができる...

しかし、自分の明晰夢は変わっている...もしかしたら...明晰夢ではないのかもしれない...、自分の夢は小学生活の夢しかない。それがリアル日にちと繋がっていてそこで暮らす夢を見る。

 

レース会場が騒がしい

そう、しかしこれは車の排気音がうるさいとかではなく

人の声が、感情を吐露した声がうるさい。

何を見て感動しているのだろうか...

夢の中で登場するものは自分の見たものか思い描いたもの。

どうせ、自分が感動した車とかが置いてあるのだろう

騒いでいる場所をみる。

そこに置いてあった車は蒼く輝く...知らない車だった...

明晰夢は自分の思い描いたものを形にする...なのになんで...

やはり、これは...明晰夢ではないのかな?よく分からない

 

「おはよう、お姉ちゃん」

朝だ、起きると豪華な朝ごはんを葵が準備してくれていた

プロ並みなんじゃないだろうかと思える朝ごはんだった

 

「葵、ご飯すごい美味しいよ」

 

「へへ、お姉ちゃんの口にあってよかったよ」

 

そんな、朝の楽しい時間を過ごして登校する。

 

朝の空は蒼かった...

 

―――学校のチャイムが鳴る―――

「それでは今日から車の実習に入る。この科にいるドライバーは一応それなりに中学時代に功績を残したドライバー。メカニックも中学時代にそれになりに功績を残したメカニックだ。

そして、今日は車をレストア、改造しながらグループメンバーと交流して仲を深めてくれ、レースでは協力することが重要だからだ」

 

各自、自分のグループのガレージにいく。

 

「この、スープラのドライバーを担当させて頂きます蒼井真夜と申しますよろしくです」

まずは自己紹介

 

「黒神葵です。よろしく」

 

「織田美希だよ!よろしくね」

織田美希と名乗った子は青髪のボーイッシュでとても元気の良さそうな子だった

 

「佐々木健です。よろしくね」

佐々木健と名乗った女の子は紫髪の姫カットでとても清楚感溢れる人だった。なんか見たことあるなー可愛いから女優さんとかで見たのだろうか...

 

...あれ、なんか佐々木健の後ろに何かいるような

 

「...です」

 

「ん?」

佐々木健の後ろから声がする

よく見るとそこには黒髪ロングの背の小さい...中学生?が居た

 

「あの...芳村朋です...よろしく...」

芳村朋と名乗った子黒髪ロングで中学生...嫌小学生と言われても納得できる見た目の子だった

 

...謎の違和感がある。

このピットにいるメンバーは私含めて5人...

SFは6人体制で行われる

つまり何が言いたいかと言うと...

 

「あれ、メンバー1人足りなくない?」

 

「いるよ...」

 

スープラの車内から声がする

え?っと思い車内を除くとそこにはピンク髪でくせ毛の強いロング髪の子が車内で寝そべっていた。

 

「岩森加奈江でーすよろしく」

 

「い、いや声が寝てるんですけど」

と、意味のわからん事を言うしかないぐらいに寝ている。

髪の毛も声も全てが眠そうな子が岩森加奈江だ

シャキッとすればかなり可愛いだろう見た目だし。

む、胸ですかね

うーん...でかいね...と言うしかない

 

ふむ、グループメンバーの特徴をまとめよう

普通、よくわからん、元気っ子、お嬢さま、根暗、やる気なし?

何この異色なグループ十人十色ってこう言うことかな。

取り敢えず、この6人でスープラを改造するんだ...

初陣まで残り17日...何が出来るのだろうか、課題点は沢山あるそれを効率よく解消していくしかない。

 

問題はたくさんある...

まずは...スープラの嫌、スポーツカーに乗っている者なら誰もが悩むことになる。それは車重軽量化だろう...

 

「どんな感じかな?」

織田がそう聞いてくる。

その間、岩森は寝ていて、芳村はオドオドしていた。

本当ブレないなと思いつつ感想を言う

 

「うーん...ちょっと動きが重いかな...」

 

このスープラは280馬力と言うスペックで外装はノーマル

スープラは280馬力という最強な馬力を所有しているが...それ故に車重は約1.5tもある。

車重が重いとコーナリングや加速等がもたついてしまう。

どうすれば...軽量化できるのか...答えは分かっているはず...

車のボンネットやトランク等はアルミや鉄で出来ている。

それをカーボンやFRPと言った樹脂の物に変える

カーボンとは炭素繊維で強度はもちろん、軽量化に大きく貢献してくれる。重さは一般的な金属の半分ぐらい

それをドアやリアゲートなどに付けていくと合計で100~150kgは軽量化できるだろう。

 

更に車の軽量化がしたいなら...エキマニとかをステンレス製の物に変えたりとか...ネットで見たがボルトをチタンにしたりとかもあるらしいが...今はお金が無いので確実に結果のでる

パーツのカーボン化だろう、それでもお金というリアルな壁に押しつぶされる。

カーボンと言うのは高価なもので車のボンネットをカーボンにするだけで安くて7万円究極を行くと40万円とか行くものもある。

外装だけでも出来るところをカーボンにすると安く見積もっても

50万円とか...それぐらいになるのかな?

先生にカーボンにしたいので50万下さいって言って通るか?

嫌、絶対無理...どうする、どうする

 

「と言うことで作戦会議したいと思います」

 

「ごめん...なんで?」

 

全員からそう言われた気がする...

あ、1人で全部考えてたのか...脳内会議怖いわ...

 

「んで、なんで来てんの?」

自宅に到着する、自分の後ろに3人を連れて我が家に到着する

 

「いやー言い出しぺの家でやるって言うのが基本でしょう」

そんなものなのかなーと思いながら家に入れる

 

「おお、ここが黒神姉妹の家か」

美希がそう言った

いや、姉妹じゃないがな...まぁいいか

 

「んで、なんで岩森と芳村は来てないんだっけ?」

 

「あー芳村は家の事情で岩森は眠いから家で寝るらしいよ」

 

「な、なるほど...フリーだな」

 

「まぁ、2人とも可愛いから許す」

葵が言う...そ、それで済んだなら可愛い最強の地位だぞ...

間違って無いような気もしないけど

 

「それで、早速本題なんだけども」

ここで余談ばかりしてても限りがないので現段階の課題点を言う

 

「やっぱり...外装がノーマルこれはサーキットで走るのには適してないと思うんだよ」

そう、スポーツカーはノーマルでもある程度の空力性能や流線型になっている...しかし、速さを求めるとどうしても不足している

ましては、スープラは今から40年ぐらい昔の車...

どうしても、今のスポーツカーに空力などで劣ってしまう

しかし、今の技術で空力や軽量化を強化したら...とんでもないバケモンになると思うのだけど

さっきも言ったようにお金が無い...

車のバンパーとかサイドスカートとかをエアロと言うのだけど

エアロ全替えとカーボン化なんて高いところに頼んだら100万円でも足りないぐらいの額が請求される...そんなお金はないしなーと悩んでいると

 

「それなら、私の親の会社でやればいいと思うんですけど」

佐々木が言った...

私の会社...佐々木...佐々木ねー

ん?そう言えばよく車の記事とかで見た気がする

GTスポーツなどでも使われてるエアロ会社の社長の名前で...

嫌、それよりもっと身近に見た気が...

 

「えーと私の親の会社って言うと...企業名とかは?」

 

「FALCO+sですよ」

やはり、そうだった...FALCO+s

ココ最近、コンバートカーのヒットにより大人気エアロメーカーになった所だ。

独特なドライカーボン製法carbon+を採用して従来のカーボン+αの軽量化を実現出来るらしい。

なんで、こんなに知ってるかって...さ、さぁね

 

「けど、FALCO+sって超高級エアロだよね...流石にそんなのは買えないよ...」

carbon+はとても優秀だ...それが凄いから今のFALCO+sは商売繁盛しているのだろう...しかし前に見た雑誌のGT86のエアロキットあれ...160万円ぐらいしたよな...

それをスープラの場合はフルオーダーで作ることになる...

その場合200万円それぐらいになるのではないのだろうか

 

「確かに私の親の会社のcarbon+で作ったフルオーダーエアロは

安く行って200万円それぐらいになってしまう。

けど、スポンサーでエアロを譲るってことなら良いんじゃないかなってね?

この企画、ガソリン車で水素自動車を倒すのは無謀的けどもし倒すことが出来たら...私の親の会社のエアロが凄いってことにもなるし」

 

「けど...親に通るのかな...その話」

 

「大丈夫!交渉してみるわ。だってこのスープラのドライバーは蒼井真夜ちゃんでしょ。通ると思うわ」

やっぱり覚えていたのか...そう思いながらもこれが成功したらどうなるのだろう。

carbon+で驚異的な軽量化。FALCO+sでの圧倒的流線型作り最高だ...これで最強のマシーンになる...ハズ

 

「それじゃ、早速相談してくるね」

そう言って佐々木と美希も帰り時と見たのか一緒に帰った

 

「お姉ちゃんお疲れ、今日の晩ご飯はだよー」

そう言って夕ご飯を出してくれた。今日の晩ご飯は、オムレツだ

 

「本当に女子力高いよね...お嫁に言っても恥ならないねー」

そう言うと頬が赤くなった気がした

 

「そ、そんな事は言わないんだよ...お姉ちゃん」

そうなのかーと思いつつオムレツを食べる...うむ美味だな

 

「お姉ちゃん...それであの佐々木さんとなんか関わりあったの?」

 

「いやぁ...昔ちょっとあったかな...」

答えを濁す...言った所であれだしなー

 

「そ、そうか...」

うん、と答えながらご飯を食べ終わっていることに気がついた

 

「それじゃ...お風呂入ってさっさと寝ますか」

そう急かして片付けに入る。

あ、あー布団買わうの忘れてたと後悔しつつお風呂に入った

 

東雲工業高校に入ってからはや2日でスポンサー確保の希望路を作った...

 

寝る準備をして今日も明晰夢を見る

 

今日は...小学校か...今日は平日だし別に普通と言えば普通か..

今日の教室は騒がしい...なんで

答えはすぐに分かる...

担任の先生と共に教室に入って来た子がいた

先生の指示で黒板に名前を書き始めた...

あーこのテンプレ感さすが夢だなと感動しつつ...

ん?あーやっぱり、夢の世界は想像世界だと思った

 

「今日からこの学校に転校してきました。佐々木健です。よろしく」 紫髪の姫カットな子がそう言った

 

夢の中の教室に佐々木健が入ってきた...

それはつまり、自分の中での今日の事件が佐々木健のキャラが重大と意識したからだろう。

夢の世界の教室の窓から見た空は蒼かった...



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Fixedstar

将来なんて考えたことがなかった

高卒するのか、大学に行くのかすらまだ先だと思っていた

中学2年生の頃。

あの時、あの蒼く輝く車と蒼弾に出会わなかったら多分今の人生は無い

風洞実験室の様子を見守りながらそう思った。

 

風洞実験

車の空力を求めるにはこれが1番効果が高いと思う。

 

風洞実験はでかい扇風機の様なもの送風機から風が送られる

車のボディに糸を張り付けてそれがどう動くかによってエアロダイナミクスがいいか悪いかを調べる。

この、A80スープラはいい、とても、しかしサーキットで走るとなるとやはり、もっといいエアロダイナミクスを得ないとそう思う。

 

どんなことも行動しなければ始まらない。

データーを参考にエアロやウイング、デフューザーを作る

 

自分がこんなに設計したいと思ったのは久しぶりだ...

 

しかし、この蒼く輝くスープラ...似ている、と言うか全く同じだ

あの時の蒼く輝く車に...

 

「健、ご飯できたよ」

と親から連絡がきたので作業を中断する。

 

家の晩御飯は豪華だ...

そんなご飯を食べながら親に相談しなければ...そう思う

 

「父さん、あの自分の学校でA80スープラを改造することになったのは言ったよね」

 

「うん、聞いたね。それでさっき、風洞実験室に持っていたと言うことは、作りたいんだろ?エアロやその他もろもろのcarbon+パーツを」

 

「うん、けどお金もかかるから...そのどうかなと」

 

「ハハハ。健がやりたいと思ったことだ...やりなさい。父さんも手伝うよ...それに、あのスープラは似ているな」

 

「うん、そうだね...本当に」

そう答え、作業室に戻る。

 

試作品の制作に入る。

試作品の設計図を作業員の方に再現してもらった。

取り敢えずフロントスポイラーと、サイドスカートとリアスポイラー、ウイングの制作。

フロントスポイラーとかはダクトを付けて熱を逃せる構造にしたい。少しでも軽く、流線型に近づけるこれが私の仕事だろう。

これに出来ればアンダーパネルやカナードとかを付けたいとこではあるが取り敢えずはこの4点でと言うことで、

明日完成と言うことなので今日は寝る。

明日は土曜日だし、試作品の実験が出来る。

 

今日の夢は少し変だった...

自分がよく分からない小学校に編入する夢を見た。

あれ、まず自分の小学生活って...何してたっけ...

よほど、興味がなかったのかもしれない。

 

実験2日目

今日は父に手伝って貰えるとのこと。

 

試作品が出来上がっていて、従業員の方に感謝しつつ

装着して風洞実験をする。

 

父さんもこれは凄い...と言うぐらいの性能らしい...

よかった...データで見ても良い非常に...

だけど、ここまでは父さんのエアロ制作を見て学んだことを行動に移しただけ、ここからのオプションパーツこれが一番の鬼門になる。

カナードなんて作ったことなんてないし、アンダーパネルなんて

親が作ったとこなんて見たことがなかった。

父に作り方について教わった...

その間、父はホイールやバケットシートなどの設計をしていて

嗚呼、FALCO+sって色んなパーツ作るんだなと思った。

しかし、カーボンホイールなんて高級なもの...どの車に付けるのだろうと思った。

えーと、制作プロジェクト名は、なんて読むの...これ...

 

午前に頼んでいた、アンダーパネルとカナードの試作品は午後には出来ていた。本当に自分の会社やべーなと思いつつ装着して、

データを見ると思ったより良くない。

無いよりかはいいけど...これじゃない気がする。

 

父に助言を貰おうと思ったが...父は制作工場に行ったらしく

いなかった...

 

自分で、従業員に教えて貰いながら作る。

ネットを多用して作る...作り続けた

...納得はできるものが出来た。だけど、何かが足りない気がするもっと上に行けるのでは...そう思う。

これ以上やっても無駄なので今日は寝る

 

今日もまた奇妙な夢の世界だった

 

昨日編入?した小学校には蒼井ちゃんがいた

なんでなんだろうか...まぁ、夢だからなんでもありか...

「佐々木健ちゃんてさー将来何なりたい」

小学生の蒼井さんが言ってくる

夢の中で出てくるなんて...相当気にしてるなと思う。

 

「うーん、決まってないなーまだ先だし」

 

「私はねー創りたいものを形にして行きたいな...だってそれって...

蒼井さんの会話が途切れるぐらいどうでもよかったのかもしれない。

 

創りたいものを形にする。その力がある...っか...

そう言いたかったのかなっと思いながら起きる

今日は実験3日目、日曜日

今日完成出来ないと平日の授業で車を使うため、放課後いちいちここに運ばないといけない...それはめんどいので出来れば今日終わらせたい。

 

今回のカナードのデザインはスーパーGTで活躍してたスープラのカナードを真似て作る。

結果はいい感じ...いいデータが取れている。

これでもいいけど...あれ...なんでなんだろう。

この、失敗もが喜びに変わるようなこの感じ...

私って物作りが好きなのかな...そう思う

今思えばそうだった...中二の頃...ただ、興味もなく機械のように空力実験ばかりする女と、機械のよう車を走らすだけの女がいた。

そんな、女同士がある日突然、出会って、仲良くなって...

少しづつ、2人とも、走るのに、空力実験やモノづくりに興味を持ち初めて行った。楽しかった...

何もかもが新鮮で、失敗しても、成功しても取り敢えず喜ぶあの時が...そんな日々を作ってくれたのがあの蒼く輝く車だった。

しかし、いつからかな...その蒼く輝く車と少女はここに来ることはなくなった...

 

青い空が綺麗な昼だった

「ねーねーけんちゃん」

真夜ちゃんが言う、嗚呼そうか、昔けんちゃんって言われてた気がする

 

「ん、なに?」

 

「ささけんって、将来なになりたいの?」

その時の私は当たり前のように言った

 

「私はね、想像したものをそのまま形にしたいな...だって」

 

ピピーと言う機械音と共に試作品の空力実験結果がでた

結果は...いいと思う、いやこれが自分の限界だろう...

いい物ができた。スーパーGTでのノウハウと私自身の想像を合わせたもの。これを今は試作品の材料なのでcarbon+で構成させる

 

carbon+でのパーツ作りは2週間ぐらいかかる。

 

早速、設計図を制作工場に持っていく。

 

「あの、これよろしくお願いします」

 

それから、2週間は早かった...

 

その間に起こった出来事としては、真夜ちゃんの調子が悪い...全然スープラを乗りこなしてない気がする...これじゃあ明日の試合には...とても勝てる気がしない

 

放課後...

 

「あのー真夜ちゃん今日うちにスープラ持ってきてくれない」

 

「うん、いいよ...佐々木健さんの家に行くのって久しぶりだな」

 

「うん、そうだね。中二ぶりかな」

けんちゃんと言ってくれてない...やっぱりあの時のことは...

自分と真夜の中には友情なんて無かったのかなと思えてしまう

それとも、昔と今は違う...そういう事なのだろうか

 

_______________放課後_______________

スープラは父がメインとなってオリジナルエアロパーツの取り付けをしてもらう。

 

...気まづい...

完全に真夜ちゃんとの会話のネタが無い

いや、あるでしょ、こう今つけてる、エアロがどんなものかとか

これでウイングとか付いたのに200kgも軽くなるよ...とか

うう、気まづいなー

 

「あのー佐々木健さん、このスープラってcarbon+使うとどうなるのかな?」

ビックリした、今自分が思ってることが言われたから

 

「えーと今回のエアロでウイングやデフューザー、カナード、アンダーパネルを付けても車重は約160kg軽くなるし、ダクトを付けたらから排熱性もかなり上がったと思うよ。」

 

「そうなんだ、すごいね160kgも軽くなるってどうなるんだろうねー動きが」

 

「多分、あの時と同じぐらい、それ以上かな」

 

「そうか...あのGT86と同じぐらいか」

 

「あ、あの真夜ちゃん...どうして、来なくなったの?あの時」

自分でも、なんで言ってしまったんだろうと思った

 

「...佐々木健さん、ちょっと付いて来てくれるかな」

ん?

 

ここなんだけど...と真夜ちゃんが連れきたのはガレージだった

ガレージを開けると目の前には潰れたGT86があった...

 

「私、なんなんだろうね...いつからかな...たまに夢で事故した夢を見てたんだ...それは予知夢だったのかな...この私と佐々木健さんを繋いでくれたGT86を私が壊す...それを壊して怖くて逃げてしまった...すいませんでした」

真夜ちゃんが謝ってくる...違う...このGT86なんてどうでもいい。私はただ、真夜ちゃんと過ごす日々が欲しかった...

 

「真夜ちゃん、いいんだよ...確かにこの86はもう治すのは無理かもしれない...けどね...私は今真夜ちゃんとまたこうして車を改造できることがとても楽しいんだ」

 

「けんちゃん...その私も嬉しいよ...だけど、また壊したら..って思うとさ...怖いよ」

真夜ちゃんの手が震えていた...

どうしようと思った瞬間、いや、その前から私は真夜ちゃんの手を握っていた。

真夜ちゃんがびっくりした顔をしてくる。握った自分も何で、こんな事したんだろうと思う。

 

「その時は、また私が直してあげるから...真夜ちゃんは速いんだから...明日の練習試合は全力で走ってくれたら私はそれで十分だよ」

 

「けんちゃん...任せてだって私は、蒼弾だから」

その時の真夜ちゃんは笑っていた

 

「ふふ、宜しくね、蒼弾」

 

「蒼弾と恒星が手を取れば勝てない相手なんかないね。」

蒼弾と恒星...これは中学の時にお互いが名付けた中二病感満載のコードネーム

蒼輝車が弾丸の様な速さで走ることから取られた名前と

恒星は自ら光り輝く星、その名の元で自らが光り輝くぐらいの性能のものを創造することからその名が取られた

 

「真夜ちゃん、覚えていてくれてたんだね...」

 

「けんちゃんとの思い出、忘れるわけないでしょ」

笑った昔のように...この時間が永遠に続けばいいのになと思った

そんなことを考えながらみた夜空は蒼かった気がした。

 

電話がなって...親からスープラのエアロ換装が終わったと連絡がきた。

今の空気ぶち壊しだなと怒りつつ、工場に戻る

 

「ただいま...」

帰った挨拶をしようと思った瞬間息を呑む

だ、だって、目の前にはあるスープラは...すごいかっこよかった

ノーマルの外装とは全く異なっている。

スポーティながらガッシリと構えるボディにウイングやデフューザーが付いている。

 

すごい...あれ、ホイールとか内装も変わっているような気がする

ホイールをトントンと軽く叩くと返ってくる音はカーボンの打音

父さんの方を向くとドヤ顔だった...と、父さん...ん?中も見てみろ?

父さんのハンドサインに急かされ車内を見る

こ、これは...ダッシュボードやシフトケースがもろもろカーボン製になっていた。更にシートもカーボンバケットシートになっていた。

ダッシュボードやバケットシートにFixedstarとロゴが入っていた。

「父さんFixedstarってなに?」

ドヤ顔の父さんに聞いてみる。うん、確かにイケメン行動はしたけどね...

「Fixedstar計画って言ってね。このスープラはその実験機だ

普段は外装だけにしか使わないcarbon+を内装やホイールに多様することによって更なる軽量化を図るんだ。このスープラの場合は合計で約400kgの軽量化に成功してある」

400kgって凄いなと思う...確かにガラスもアクリルに変更されているし。内装だって余分なものは排除されている。

その代わりにロールケージが組みまれていた。

さらに私が考えていなかったルーフやミラー、ドアもカーボンになっていた。

極限までの軽量化...すごい...

「ちなみにFixedstarはな...恒星って読むんだぞ」

恒星...それは私のコードネーム...父さんありがとう

今回の軽量化により車重は1510kgから約1110kgへ生まれ変わった。

生まれ変わったスープラにはFALCO+sとFixedstarというロゴが刻まれていた。

「真夜ちゃん、どうかな、このスープラ」

 

「最高だよ、けんちゃん、けんちゃんの父さん」

 

「うんうん、頑張れよ...そうやーこのスープラの内装を変えてる時に前のオーナーなのかな?その人の名刺が入っててなー使わないとは思うけど...一応学校に渡しておいてくれるか」

そう言って渡された名刺、失礼ながら読ませてもらった

黒井護さんって言うのかまぁ、別にどうでもいいけど

 

「分かりました。それじゃあ」

そう言って真夜ちゃんは帰っていった

 

真夜ちゃんが帰ったあと、父さんにもう一度では足りないぐらい感謝をして、部屋につく...

 

胸のドキドキが止まらない...多分これはスープラが激変した感動だろう。そうでしかないだろう。うん。

よ、よし、寝ますよ...誰に言い聞かせてるか分からないがそう言い聞かせて睡眠する

 

夢の中の小学校だ

当たり前のように真夜ちゃんが喋りかけてくる

う、真夜ちゃんちょっと、幼い頃から可愛すぎませんかねと変態何じゃないかと思いながら話を聞く

 

「けんちゃんはさー将来なりたいもの決まった?」

 

「うん、私はね、創りたい物を本当に形にしたいな。だってそれってさ...すごい楽しいし素敵なことじゃない?」

私は、ほんとに車が好きなのか分からない

もしかしたら、車なんてどうでもいいのかもしれない...

けど、モノづくりを通して人がモノに興味を持ってくれたら...それって幸せな事じゃないかな...私はそんな事がしたい

 

そう思いながら見た空は青く澄んでいた



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蒼行会

蒼い空が広がる夜空

そんな空が見えないガレージに眠るGT86を前にして私と佐々木健さんは昔話をしていた

そこで私は、佐々木健さんになんで会いにこなかったのと聞かれた時に嘘をついてしまった。まぁ、本当の話なんだけど中略が激しかったなと...

 

GT86を事故で壊したのは本当だった。申し訳なかった。

だけど、会いに行けなかったのは...私は2ヵ月ずっと入院していたらしい。

 

私も気がついた時には退院していて、そして叔母に親とドライブ中に事故して私だけが生き残っていたと言う事だけ聞かされた。

 

今思えば、気がついた時に退院とか幾ら何でも気が動転しすぎだろ...と思うが、そんな事よりも早く佐々木健さんの元に行って話をしたかった。

 

だけど、何でだろう...車に乗っても怖くてハンドルすら握る気にならなかった...

事故するのが怖いから?

そう私は、そう思っていたのだろう..そこで辞めておけばよかった。

それを押し殺して、ハンドルを握って運転したら事故をしてしまった。

親が事故死して一ヶ月未満で私も事故...本当に学習能力が無いなと思った。怪我事態は軽傷ですぐ治ったが...

二度と車なんて乗りたくない。そう思った。

 

約1年と半年前の私の思いはこの日、佐々木健さんによって破かれた気がする。

 

その日の夢は佐々木健さんの小学生時の将来の夢について語っている夢だった気がする。

想像を形にする。いい言葉だったと思うしそれを行動に移したものが、私たちのスープラに付けられた。

負けられないなーそう思って迎えた今日の決戦日。

朝の日差しが眩しかった

 

私は、車のレースは1人でただ、黙々と走っていただけなので知らなかったが...SFは団体戦当たり前だが準備が違う。

私が一番びっくりしたのは...データ収集班として情報電子科が応援に来てくれたり、車は乗ってサーキットに行くのではなく、ドラマとかアニメでよく見るトラックに載せて運送すると言う事らしい。

 

今回は交流戦と言うことで県内の工業高校との練習試合と聞いたけど、どんな車と戦うのだろうか。

同じ馬力での勝負なら超軽量仕様のスープラが負けることは無いと思うが...練習試合だしな...どの車がくるのかな

 

「まやちゃん、大丈夫」

佐々木健さんが喋りかけてくる

 

「うん、大丈夫だよ。ちょっと今日の対戦する車が気になって」

 

「大丈夫だよ、まやちゃんならどんな車にだって勝てるよ」

佐々木健さんが近づいてくる。ちょっと距離が近いような気がするけど、気にしない。

 

車内を見渡すと私と佐々木健さん以外寝ていた...

フリーだな、と思いながら窓から見える瀬戸内海を見る。

今はまだ春で海に入る気にすらなれないが、綺麗だな。

瀬戸内海が見えるきれいな町、呉とても静かでいい雰囲気だった

 

広島県には東雲工業高校、呉工業高校、国際工業高校の3つの高校に自動車科がある。

今日は、呉工業高校で交流戦が行われる。

 

着いた...ここが呉工業高校、我が校、東雲工業高校よりも広く歴史がある様な校舎。

ここは、テストサーキットや風洞実験棟があるなど施設もかなり良いだろう。

今回はその、テストサーキットを借りて走行するのかな、と思う

 

「こんにちは、呉工業高校へようこそ」

そう言って出迎えてくれた方がいた

 

「私は竹下恋羽と言います」

竹下恋羽、見た目がもうお姉さんって感じだろうか

黒髪ロングでとても大人しい感じだった。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「あら、貴方は蒼弾さんですか?よろしくお願いしますね」

 

「え、まぁ、そうかもしれないですね」

な、なんで知ってんだろう...

 

「あ、そう言えば私達の高校で改造してる車を見せてなかったですね。付いてきて下さいね」

そう言われてたので、ピットまで付いていくとマットブラックに染め上げられた車があった。

 

日産スカイラインGT-R32

日産のスポーツカーとして有名なGT-R、今ではR35シリーズまででて、毎年マイナーチェンジされて販売されている。

 

GT-R32のスペックを紹介しよう。

まず、R32は日産の901活動と言う。日産の車の車体運動性の底上げを図る活動の集大成で生まれたものである。

 

RB26DETTと言う直列6気筒、ツインターボエンジンを搭載していて、馬力は280馬力を発生させる。

更に、当時では最新鋭のATTESA E-TSと言い、通常時は運動性の良いFR駆動、そして後輪のグリップが限界値に行くと一時的4WDの優れたトルクを引っ張り出すシステムである。

 

さらにもう一つ、Super HICASと言う電子制御四輪操舵機構を取り入れている。これを入れることによりR32の様なヘビーウェイトの車でも運動性向上されている。

 

更に駆動方式も4WDと言う事なので、雪道も悪路もお構い無しと言う事から陸の王者とも言われていたらしい。

 

280馬力という驚異の馬力に当時の最新鋭システム、4WDと言う駆動方式を採用したモンスターマシーンである。

 

あれ、280馬力って私たちのスープラと響子のNSXと同じ馬力である。と言うことはSFでは同じ土俵で戦うことになるのだ。

 

「あの、このR32ってガソリンエンジンですよね?」

 

「はい、そうですけど」

竹下恋羽さんが当たり前のように喋る。

と言うことは広島県の工業高校は全部ガソリンエンジンでの出場と言うことになる。

これは、面白いことになりそうだなと思った。

 

「えーと、それでレースについてですけど」

ああ、そうだったGT-Rに感動していて忘れてたけど今日はレースしに来たんだった。

 

「私たちのGT-Rは500馬力今あるんですよ...」

ん?いやいや、500馬力って、え?う、嘘でしょ

500馬力のエンジンを作ることに驚いたが、女の子が500馬力って運転出来るのかなーと思った。

 

「えーと、500馬力ってまた、なんで?」

 

「あれ?知らないですか?SFのクラス分けの最高ランクは500から600馬力のクラスなんです。だからそれを目指しての取り敢えず500馬力です。」

え、知らなかった...500馬力か、まぁ私たちには別世界だな。

 

「その、500馬力のエンジンって誰が組んだんですか?」

 

「ふふ、それはですね。この子山木ちゃんが組んだんですよ」

そう言って竹下恋羽さんが指した子は大人しそうなロリっ子って感じだろうか。芳村と並べたらいい感じになりそうだな。

 

すごいな、この子が500馬力のエンジンを...そう感動してると山木さんがこちらの方にくる。嫌、私ではなく私のさらに奥、芳村の方に行った。

 

「芳村、久しぶりだね。」

そう言って芳村に喋りかけた

喋りかけられた本人はもう固まってんじゃないかな...

 

「そ、その、ひ、久しぶりだね」

すごい噛んでるじゃないかとツッコミたかったけど抑えた。

 

「芳村、なんで、スープラのエンジンチューンしないの?」

 

「そ、その、馬力上げていいって今日初めて知ったから」

 

「あ、そうなの、私は芳村が組んだエンジンと戦いたいから早く組んでよ」

そう言って山木が去って行った

 

「その。話が逸れましたが、馬力が違うので今回は10ラップで1ラップハンデと言うのでどうでしょうか?」

 

「1ラップっていいんですか?」

 

「はい、このテストサーキットは1周3.7kmのコースなので37kmのレースですので。多分これぐらいが丁度いいんじゃないんですかね。それにコーナリングのテストコースなので車重的に見てもいい感じだと思うのですけど。」

なるほど、確かに馬力では圧倒的に不利だけど

車重は350kgぐらい軽い...勝機はあるだろうかな?

 

「分かりました。やりましょう」

そう言って勝負の火蓋が切られた。

 

レース開始前のミーティングに入る。

「ええ。じゃあミーティングに入るけど、あんまり時間ないんで。とりあえずタイヤはスリックタイヤにしようか。」

美希が手っ取り早くセッティングしてくれる。

とは、言っても37kmなのでそこまでセッティングしないでもいいのでは...と思ったけどありがたかった。

 

「お姉ちゃん、取り敢えずセッティングは終わったけど相手は500馬力、リズム崩されないようにね」

そう言って、葵ちゃんから何かを貰った

 

「これは?」

葵ちゃんから貰ったものは蒼い宝石の様なもので構成されたアクセサリーだった。

 

「お守りかな、車内でも飾ってて」

 

「うん。その、ありがとうね!」

そう言うと、葵ちゃんの顔が火照った。

ま、まぁ、例言われて嬉しくない子なんて居ないよね。

 

スープラの車内に入り、ドリンクホルダーにお守りを取り付ける

よし、行きますか

鍵を刺して、エンジンを始動。とてもいいエキゾーストノートに心震わされ戦場に出向いた。

 

「それじゃあ、ルール説明ね。スタートはお互い駆動系保護のためにローリングスタートにして、1周走った後にレース開始。」

 

「うん。いいですよ。それじゃあ、行きますか」

 

R32を前にしてタイヤを温める作業に入る。ここでタイヤを温めないとすぐに抜かれてしまう。

 

そうして、コースを眺める。

コーナリングの試験コースだけあって

低速、高速コーナーが多いコースだった。

車線も狭いとこが多く、SUGOサーキットのように事故が多発するんじゃとちょっと不安になる。

 

それだけに、馬力もだけど、ここはトータルバランスかな必要なのは...

 

とと、そろそろレースが始まるな...

そう思った瞬間R32がアクセル全開、レース開始だ。

 

レースの1から3周にかけては特に危機感を覚えることなく。

必死に走った。

ピット内から連絡が入った

 

「まやちゃん、1から3周のタイム差を計算してたらこのまま行けば8周目にはまやちゃんの後ろにR32が来るわ。気をつけて」

 

え。8周、速くない...ドックファイトで2周も...無理そ...

取り敢えず、時間を削って行くしかない...

コーナーを丁寧にそして素早く曲がっていく。

 

低速コーナーと言うかコーナリングに正解は無いって言うのはよく分かるよな。今のだって結構やらかしたし。

 

当たり前だけどタイヤのグリップもフルに使っていく...

こっちがフルにタイヤを使っても先に熱ダレするのはR32の方だろう。

 

ストレートは馬力勝負ここだけはどうしようもないが

コーナーは車重が軽いこと、ダウンホースが効いてる事もあり結構綺麗に曲がれる。

軽さがどれだけ車を変えるのか分かった気がした。

 

7ラップ目に突入する。

タイヤのグリップは最大限に引き出せている。

 

そして、8ラップ目に入りロングストレートで遂にバックミラーにR32が写った。

ロングストレートが終わり次はRのキツイコーナに入る。

ここでは、差は開いているだろう。。しかしストレートで差が縮まっている。

9ラップ目にはほぼサイドバイサイドになろうとしていた。

まずい...どうしよう...

自分なりに、最短コースを走ってこのざまだ。

私は蒼弾ではもう無い...今はこのR32の方が速い...

昔の私は...どうやって蒼弾と言われる様な走りをしていたのだろう。

そう考えていると、葵ちゃんから貰ったお守りが目に写った。

その、お守りを構成している蒼い宝石が光っている。

見ていると感情がその蒼に塗りつぶされそうになる。

心が体から抜ける様な感覚...

 

何でだろう。さっきのスピードよりももっと速いスピードでもコーナーが曲がれるそんな気がしてくる。

R32がアウトから抜こうとしている。

それをスープラがギリギリの所でコースで踏ん張った。

 

残る距離は500mここからは二つのコーナーとそこからの上り下りしかない。このコーナーで距離を開けないと負ける。

 

けど、何でだろう。全然焦ってないし、さっきまで怖かったコーナーが全然怖くない。

後ろのR32を確認しようとバックミラーを見た時に写った私の瞳は普通は黒なのに蒼かった。な、なんで...けど今はレースに集中しないと...

 

ピット内がざわついてる

それもそうだ、ラスト1ラップの時にスープラの挙動が変わったからだ、みんな、ブレーキが逝ったとか、タイヤが熱ダレしまくってんじゃと...不安になっている

 

だけど、違う...この高速コーナリングを実現することが蒼弾なんだ。私は知っている。ずっと見ていたから...

 

「最終コーナーに突入したけど、まやちゃん頭逝ったのかな?めちゃくちゃえぐい、進入角度だよ。」

頭逝ったって...私の姉に向かって言いますかね...

 

「佐々木健さん、あれが姉、蒼弾ですよ。昔から蒼い物を見ると恐怖心が抜けて無心になる。だから、常人が恐怖してブレーキを踏むスピード以上の領域でコーナーに入ることが出来るんです。

それでいてブレーキングポイントはほぼ理論値と言っても過言じゃないとこまで行ってます。」

 

そうは、言いながらも私は心配だ...お姉ちゃんに車を乗せることすら本当は嫌なのにあんなに攻めている。怖くて仕方なかった。

どんなに、速いスピードでコーナリング出来てもそれはハイリスクになる。

その、リスクを忘れていたから...私達は...

 

そう思っている間に勝負は決まった。

勝ったのは蒼く輝くスープラだった。

 

「負けちゃいました」

竹下さんがそう言ってくる

 

「今回はコーナーが多かったのでそこまでパワー差が出なかったってのが大きいと思いますよ。」

 

「そうですか?もし、そうだとしても、真夜さんの最後らへんのコーナーの突っ込み素晴らしかったですよ。」

 

「あの時は、もうとにかく必死で...取り敢えず今日はありがとうございます。」

 

「いえいえ、また今度戦う時は同じ馬力でやり合いたいとこですね。」

 

「はい、今度も負けませんよ。」

そう言って呉工業高校を後にした。

 

その後、疲れたのか知らないけどその後の事は覚えてない無い。

 

月曜日の学校ほどダルイものはない...

それに昨日はレースもあったし...休校にしてくれてもいいんじゃないかな...

いや...それに私の蒼目治ってないし...眼科行けばいいのかな

天然カラコン、なんてステータス要らないな...

そう思いながら登校していると後ろから声が聞こえる。

 

「...あの」

芳村だった、芳村に喋りかけられるなんて珍しいな

 

「えーと、何かな?」

 

「あの...その、私に2JZ-GTEのチューニングさせてくだはい」

してくだはい...噛んだなっと思いながら

昨日、山木さんが芳村はエンジンチューン出来るとか言ってたなと思い出す。

 

「そりゃ、勿論任せたいけど、590馬力ぐらい出せそう?」

 

「はい、任せてください。その、頑張ります」

その時の芳村はとても頼り甲斐のある顔をしていた。

 

「うん...それじゃあ、お願いしようかな」

 

そう言いながら...周りを見渡すといろんな人が私達を見ながらやばいとか言っている。

 

芳村の後ろにあった鏡を見ると

ロリっ娘と日本人離れした蒼眼少女が映っていた...

よし。眼科に行こう。そう決意するには十分な理由だった。



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覚醒の起

昔から、人と喋るのが苦手だった。

と言うと、嘘になる、喋るのは好きなんだけど喋るきっかけの作り方がよく分からない。

どんなことにも、レシピやマニュアル、設計図を求める。

そんな面倒な人が自分だった。

 

中学に入学して、部活に入らないと高校に受かりにくいと聞いて

叔父が薦めてくれて、自動車部と言うよく分からない部活に入った。

叔父曰く、せっかく中学生から車に乗れるようになったのにそれを活かさないなんて勿体ないとの事だった。

 

自動車部の入部者は2人しかいなかった。

先輩は3年生が4人と2年生が3人の少ない部員だった。

 

私と一緒に入部した子は山木と言う、大人しい子だった。

しかし。車の話になるとやけに情熱的に喋り出す面白い子だった 山木とは同じクラスだったし、入部して次の日早速挨拶をした。

そうすると

「えっと...誰だっけ?」

芳村ですよーと叫んだのは今でも忘れないだろう。

いや、だって前の日にあんなに喋ったのに...叫んでも仕方ないような気がするんだよね。

 

初め半年は先輩や山木と共に免許取得を目指して勉強した。

車が自動運転化されたとしても、免許をとるのはそこそこ大変だ

何かあった時のための通常運転なんかは自転車とは勝手が違うし慣れるまでは大変だった。

 

免許を取ると草レースに出ようと先輩に誘われ自動車部全員で備品であった、NAロードスターをそこそこ改造して草レースに出た。あまり、カスタマイズしていないから、戦果はそこまで芳しくないけど...それでも楽しかった。車ってすごい...そう思った

今は...もうガソリンエンジンなんて危ないって思われている。

けど、そんなことは無い。楽しかった。

 

月日が経って

3年が引退して、2年生が...部長に...そして2年生だった先輩も引退して。ついに私達が部を指揮することになった。

その間に新入部員も人数は少ないもののちゃんと入ってきた。

そして

2年間改造したNAロードスターをここに来てエンジンチューンをすることになった。

叔父が車のチューニングメーカーで仕事をしているので、教えてもらいながら、ライトチューンではあるが...改造した。

 

ライトチューンなので戦果は全く上がらなかったが...楽しかった

そして、私達が引退する前に中学生エンジンOHの大会があったので私と山木は冗談半分で、だけど本気で練習して大会に望んだ。

結果は...私が2位で山木が3位で終わった。

1位の子は私がOHする3分の2の時間で終わらせていた。圧倒的能力の持ち主だった。悔しかったけど実力差が圧倒的だったのでむしろ感動の方が多かった。

しかし、無名中学がこの好成績...次の年は少しだけこの中学に車好きな子が入学したらしい。だけど、それはちょっと後の話

 

部活を引退して、私達は高校受験を目の前にする初の受験生になったのだ。

 

進路を決めるのはとても悩んだ。普通科にするか工業系で高卒するか、けど、嬉しいことに私と山木は推薦を手に入れた。

私は山木と同じ高校に入れると思って嬉しかった。

しかし、結果は...私は東雲工業高校と言う新学校へ

山木は呉工業高校と言う所への推薦になった。

私も頑張って勉強して呉工業高校へ行こうと思ったけど、山木にこう言われた。

「芳村は、東雲工業高校に行くべきだと思うよ。そこは芳村を必要としているからさ...学校は別になっても、遊べるからさ」

私を必要とか...

嬉しいけど緊張するセリフを言われた。

そこからの月日はとても、速いように感じた。

 

受験生なので特にイベントもなく、ただ、山木と学校帰りに古本屋で車の雑誌を読み漁って帰る日々が続いた。

中学生活の3年でこんなにも車の虜になるなんて思わなかった。

けど、車を知れば知るだけガソリンエンジンが少なくなっているロマン無き今が悲しい。そう思ってきた。

最近は、私達が戦ってきた草レースだって、ガソリンエンジン搭載車はほとんどなかった。あ、けど白いGT86なら昔見たな...

草レースなのにドアやルーフをカーボンと言うとガチ仕様なんだから、まぁいいけども...

 

そこからまた月日がたって、当たり前に受かった高校受験を終え、中学校の卒業式を迎えることになる。

 

特に、卒業式で思うこともなく、卒業証書を貰った。

卒業式が終わり、外は卒業生が校門で写真を撮ったり、先生達に感謝の気持ちを伝えていた。

だけど、私は特にそんな物は興味が無いのでそのまま帰ろうと思った。帰り道、山木と毎日通っていた古本屋に寄ってみる。

ラノベコーナーやスポーツコーナーを抜け車の雑誌コーナーに行ってみると山木がいた。

すぐに、山木も自分の存在に気づいたらしく喋りかけられる。

 

「芳村、卒業おめでとう」

 

「山木もね、おめでとう」

会話が詰まる...本当は最後に言いたい事はたくさんあった。

取り敢えず外に出ようかと言って古本屋を後にする。

 

「芳村、自分ね、やりたいこと見つけたんだ。」

 

「え?そうなの?なになに?」

そう言うと山木はバックの中から企画書みたいな物を取り出す。企画書の内容は、RB26DETTのチューニングについてだった。

 

「RB26DETTってR32のエンジンだよね...何でまた?」

まぁステージアとかも搭載しているけど...置いておこう。

 

「それはね、呉工業高校にR32があるんだよ。受験の時に見たんだ。それを自分、改造したいんだ。」

 

「そうなんだ、山木なら出来ると思うよ。楽しみだよ。山木が手を入れたエンジンを見るのが」

 

「ありがとう。芳村も東雲工業高校でガソリンエンジンを改造出来たら、いいね。」

 

「うん。私もガソリンエンジンを改造したいな。」

 

「うんうん。頑張ってね...あ、A80スープラ発見。」

 

「え?どこどこ?」

山木があっちだよと指で指すと追いかけていく。

そんな山木を後ろから見ていると、今日で山木との学校生活が終わるんだと...と悲しくなってくる。

 

「今までありがとね。」

そう小声で言ってみる。

 

「ん?何か言った?」

山木が振り返ってきた。

 

「何もないよ...ほらほらモタモタしてたらスープラ見失うよ」

そう言って、私と山木の学園生活終了日は卒業式がメインでは無く。スープラを追いかけると言うのがメインで終わりを告げた。

 

そんな感じで、中学生活は終わりを告げ高校へ入学することになる。

 

私が高校に入学してびっくりしたことは、SFにスープラで出るということ。

しかも、エンジンは280馬力を叩き出す。最強の2JZ-GTEが搭載されている。すごい改造したかった。

けど、それ以上に山木が居ないからどうやって高校生活を生き延びようかそこが不安だった。

 

入学してから2日目早速、蒼井さんから家に来ないかとのお誘いがあったが、何故か知らないけど逃げてしまった。

 

はぁ、なんで逃げてしまったのだろう。

そう思いながら下校しているといつも山木と立ち読みばかりしていた、古本屋まで来ていた。

今の時代なら携帯で本をダウンロードすれば安いし、楽だしでメリットだらけな気がするけど、私は実際に本を手に取って読むのが好きだなっと独り言を呟きながら店に入った。

 

健康に関する本、ラノベやマンガなどのコーナーでもよかったけど、私が向かった先はあまりでかいスペースではないけど車の雑誌や車に関する工業基礎が置いてあるコーナーだ。

スープラに関する本はないかなと見て回る。

...あった。見つけたのはいいけど本を取りたい所に先客がいる。

うう、退いてくれないかなと願いながら先客の顔を見ると、

今日も昨日も眠たそうにしているから名前ぐらいは覚えた、岩森さんが居た。

岩森さんもここに居るって事は蒼井さんのお誘い断ったのかな、

と言うか岩森さん車に興味あるんだ...けど無いと東雲工業高校来れないから当たり前に有るよねと自己解釈しながら見つめていると流石に気づかれた。

 

今の私に取れる行動は3つぐらいあるだろうか...

1.逃げる

2.戦う(私から喋りかけるだけ)

3.守る(喋りかけられるのを待つだけ)

と言った感じだろうか。

どれにしようかと悩んでいると岩森さんに喋りかけられたので結果的に3を選んだことになった。

 

「えっと...誰だっけ、どっかで見た覚えが...」

 

「芳村ですぅ!同じ高校、同じクラスの」

なんか、この流れ3年前ぐらいにやった記憶が...う...頭が

 

「ああ、芳村か、なるほど...なるほど」

いきなり、呼び捨てですか...いいですけど、何を納得してるのだろうか。

 

「芳村はここになんか用あるの?」

 

「えっと、スープラについて、ちょっとでも詳しくなりたくて」

 

「なるほど、一緒だね。私もだよ。ここって家に無い本があるし無料で立ち読みできるから結構参考になるよ。」

そう言って岩森がスープラの雑誌を渡してくる。

今から20年前ぐらいのスープラの雑誌だった。

でっかい文字で...2JZ-GTEで夢の500から700馬力へと書いてある。

2JZ-GTEって昨日ネットで見たけど海外では1500馬力とかにしている方もいるらしい。なんてポテンシャルを秘めたエンジンなんだろうと感動しながら雑誌内容を漁る。

内容はごく当たり前なチューンから参考になるものまでたくさんあった。

自分達のスープラだって、いつかはエンジンチューンをする時が来るはず...その時の参考にこの本役に立つかな...

そう悩んでいると...隣の岩森さんがこっちを見ていることに気がつく。

 

「その...何かな?」

 

「芳村って結構、車の雑誌買う人?」

 

「買うけど、どちらかというと立ち読みで済ませる方かな」

そう言うと、岩森はそっかと言ってまた雑誌を読み始めた。

なんだったんだろう...と思ったが流石にそうは聞けない...

 

私もスープラの雑誌漁りに戻る

次の雑誌は...昔のスーパーGTの各車の性能について迫る的な内容の雑誌だった。

叔父曰く、最強世代と言った時代。

その当時はスープラ、Z33、NSXが主力となりレースをしていた

私は見たことは無いが、今スープラを改造しているから、究極の改造スープラを見てみたいなと思いながらこの雑誌をみる。

私たちのスープラは、ほぼドノーマルだから外装からの違いに流石に呆れてしまった。

エンジンチューンをしたら今度は足回りとか空力もしないといけないのか...お金も時間もすごいかかりそうだな...と思いながら見ている。

 

「スーパーGTか...」

岩森がこっちの本のタイトルを見たのか知らないけどそう言ってきた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「うちの親がスーパーGT大好きだから昔のとかDVD焼いて取ってあるなってね思っただけ」

 

「そうなの?それってスープラのとかもある系?」

 

「どうだったかな...多分ある系だと思う系かな」

ノッてくれてありがたかった。

けど、昔のスーパーGT。見たことが無いから見てみたいよね。

それを悟ったのか岩森が

 

「自分の家来る?多分有るから。見る?」

え、行くって岩森さんの家に...行っちゃって良いのだろうか。

けど、見たいからな。

 

「...その、お願い致します。」

そう言うと、宜しいっと言って、付いてきてと岩森さんに言われたので古本屋を共に後にした。

 

「その、岩森さんの家って遠い?」

 

「岩森さんって...岩森でいいよ。家は学校から自転車で5分だから遠くないよ。」

さん付けしなくて良いんだ...良いんだよね?そう脳内整理をする

 

「けど、羨ましいよ。家が近いのって」

 

「でしょ。寝坊しても遅刻する確率減るし、帰るのも楽だからいい事尽くしだよね。」

 

「寝坊って...けど岩森って結構眠そうにしてるけど、何時に寝てるの?」

 

「ええっとね、大体深夜1時ぐらいかな?」

 

「お、遅くないかな、私なんか23時には寝てるよ。」

そう言うと岩森が自分をじっと観察してくる。

 

「だから、身長小さいのか...」

 

「ぎ、逆じゃないかな?自分は早寝は成長のために必要って信じてるよ。」

あれ、もしかしたら、寝ない方が成長するのかな...嫌違うな。

けど、岩森ってスタイル良いし...そうなのかな?...

そう思っていると岩森が一軒家の前で止まった。

 

「ここが、我が家だよ。」

そう言って、岩森がドアの鍵を慣れた手つきで開けている。

鍵は何の抵抗もなくガチャっと音を立てて解除された。

あれ...私の家だけかな?鍵抜く時ってすごい抜きにくいんだよね...まぁ、脂させって事だと思うけどね。

そう思いながら岩森について家にお邪魔する。

 

「お邪魔します。」

 

「はいはい、いらっしゃい」

そんなテンプレだけど常識なやりとりをしてお邪魔する。

 

「とと、ちょっと待っててね。」

お邪魔して、早々岩森が2階に上がっていく。

けど、1分未満で帰ってきたので何事かと思う。

 

「姉ちゃんが居ないか確認して来たんだ。ごめんね。」

 

「お姉さん居るんだ?何歳?」

 

「今年で17歳だよ。国際工業高校行ってるんだよね。」

 

「国際工業高校って、もしかして自動車科?」

 

「うんうん、NSX改造してるらしいよ。」

 

「NSXって...どこから引っ張り出したんだろうね?」

 

「さぁ。分からない、ウチらのスープラも人の事言えないよね」

そう言いながら岩森は笑っている。

岩森はスタイルも顔も良い。そんな人に笑顔で喋りかけられると来るものがあるよね。

 

「...ここが自分の部屋だよ。」

そう言って岩森が自室の部屋のドアを開ける

 

「お邪魔します。」

 

「はいはい、いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」

本日2回目のテンプレやり取りをして。部屋に入る。

部屋は綺麗に整理整頓されていて。テレビや何に使うか分からないが小さい冷蔵庫もある。

壁にはアニメのポスターが貼られている。

あれ、このアニメって

 

「岩森ってアニメ見るの?」

 

「うん。結構見るかな。芳村は?」

 

「もちろん。見てるよ。ここにあるポスターのやつ私も好きなんだ」

 

「へーーじゃあ。これなんかは」

そんな感じのオタクトークは30分は続いただろう。

 

疲れた、オタクトークって楽しいけど結構弾丸トークになるから疲れるんだよね。岩森の方を見るとさっき気になった小さい冷蔵庫から炭酸飲料を取って注いでいた。なるほど、1階の冷蔵庫にわざわざ行かないと行けない手間を省いているのか。と感心していると。岩森が炭酸飲料の入ったコップを渡してくる。

 

「その、ありがとう」

そう言うと岩森はいいよ。と言いながら、DVDの山からスープラが参戦していた頃のスーパーGTを探していた。それにしても、流石は結構取ってるて言うだけあってDVDで軽い山が出来ている。

しかも、DVD一つ一つに何年のどこであったかと言うラベルが貼ってあるお陰で比較的短時間で見つけられた。

結構マメなんだなと感心しつつ、ブルーレイを再生する。

 

2005年のスーパーGTは今のスーパーGTの基本となる水素エンジンを搭載せずガソリンエンジン搭載車だけでのレースだった。

ZやNSX、F1GTRなど今ではお目にかかれない車が走っている。

そんな中スープラはGT500クラスに5台も参戦している。

これは、車が優秀と言うことなのだろうか。

 

スープラはドノーマルでもスポーティなルックスだが、スーパーGTなどで洗練されたボディはもう戦闘機に近い感じだった。

車重は今さっき見た雑誌曰く1100kgに迫ろうと言う車重へと軽量化。3S-GTエンジンで武装化されている。

当たり前だか、私たちのスープラとは物が違う。

 

「自分達のスープラってドノーマルでSF行くのかな?」

岩森が聞いてくる。

 

「多分、車重と空力と足回りは改良するんじゃないのかな?」

 

「そうか、エンジンは改造しないのかな?」

 

「どうだろうね、私的には改造したいかな。」

 

「そうだよね。2JZ-GTEはブーストアップだけで400馬力近くまですぐ持っていける。エンジンだからね。生かしたいね。」

それもそうだ。どんなにいいエンジンも改造しないと宝の持ち腐れ、2JZ-GTEのポテンシャルを引き出して上げないと。

そう思いながらスーパーGTの観戦に戻る。

スーパーGTは大体2~3時間ぐらいあり、見ると案外長いもの。

けど、参考になることも多く、メモをしていると突然膝あたりに衝撃が走る。何事かと膝の方に目を落とすと岩森が私の膝に頭を置いて寝転がっていた。

 

「あの、岩森これは...」

 

「膝枕でしょ。芳村の膝なかなかいい感じ」

 

「せ、セクハラかな?」

これをもし、見知らぬ人にされてたら0.5秒ぐらいで110番に電話できる自信があったが、岩森だからな...と辞めることにした。

 

「せ、セクハラって基準浅くない?芳村の膝適度な柔らかさがあっていいと思うけどな...」そう言って岩森は私の膝の上で頭をゴロゴロと動かしている。

 

「ッ...名誉毀損とセクハラで絶対に訴えてやる...」

 

「まぁまぁ、落ち着いて、ちょっと眠くなったし寝るわ」

 

「ちょっ...私の名誉が...」

そう言いかけた瞬間岩森は寝ていた。寝るの早すぎでしょ...

って...え、寝てるのか...なんかこの状態三人称視点から見たら

相当まずいんじゃないんでしょうか。

...なんか、足音しない...誰か上がってきてるよね。

 

「加奈江。部屋いるの?」

ま、まずいですよ...岩森のお姉さんかな?が岩森を探してる。

こ、こんな光景見られたら終わる色んな意味で...どうにかしないと、取り敢えず岩森を揺さぶるが効果はないみたいだ...

 

「ちょっ...岩森寝るならベッドで寝てよ。」

と言いながら結構力を入れて揺さぶる

 

「ん...芳村か...そうだよね。寝る前は制服脱がないとね...シワつくし。」

 

「うん、そりゃ、そうだけど...私が居ないとこでやってください。」

 

「えー、めんどくさいな...良いじゃん別に...」

そう言って岩森が学生服を半脱ぎした瞬間、部屋のドアが開いた

 

「加奈江、今日の夜ご飯どう...どう...どうぞごゆっくり...」

そう言って岩森のお姉さんだろう人は部屋のドアを閉めた。

嫌、私悪くないよね...私の膝の上に座りながら制服を半分ぐらいまで上げている岩森...まぁ、一般目線で見たら...ギルティか。

 

「芳村...今日うちでご飯食べていく?」

岩森は呑気にそう言ってきた...

 

「わ、私は...悪くないですぅ(多分)」

そう叫んで私は岩森家を後にした。

 

家に帰って、枕を抱きしめずっと悶絶していた。

いくらパニックになっていたからって、もう少しまともな行動はできなかったのだろうか...そう思いながら、膝に手を当てる。

ここに、岩森の頭が...そう思うとまた悶絶しそうになる。

私の必死な脳内整理は1時間にも及んだ。

 

大分、思考が蘇って来たので今日のメモをノートにまとめよう。スクールバッグを探すが見当たらない...あっ...そう言えば岩森の家に置いて帰ってしまったな...

突然家を飛び出したり、部屋にバッグを放置して帰ったり...

明日は謝らないとな...そう思いながら今日は寝ることにした。

 

ベッドが揺れる...んん...朝かぁ

最近のベッドは進化した。指定した時間になるとベッドが揺れて強制的に起こすベッドが開発された...私みたいに朝が弱い人にはピッタリだと思う。

 

朝ごはんを食べ、歯磨き、洗顔、着替え...そして私の苦行の髪をセットする。こうゆう時髪が長いのはめんどくさい...切ろうかな...よくアニメで黒髪ロングのキャラが人気だから一応そうしているけど、意味無いしな...そうして髪をセットしたら学校へ行く。自転車に乗って約15分ぐらいかけて、東雲工業高校へ行く。

 

「おはようございます」

そう言ってスープラが眠るガレージに入る。

岩森以外は揃っていて、ディスクには設計図がたくさん置いてある。

 

「あの、これって...」

 

「スープラのエアロパーツをFALCO+sで作ることになったの」

FALCO+sはスーパーGTなどで使われるドライカーボンパーツの制作工場。そこのパーツを使うことになったらしい。すごいと思う。これによってスープラは空力と軽量化を図ることが出来る。そう感心していると岩森が来た。

 

「芳村おはよう。これは忘れ物」

そう言って岩森が私が置いて帰ったスクールバッグを渡してくる

 

「その、昨日はごめんね...ありがとう」

そう言うと岩森はいいよ。と言って席についた。

 

佐々木さんがスープラのエアロを作ると言ってから完成するまでの約3週間はあっという間に過ぎていった。

その間、私は古本屋でスープラについての本を読み漁る毎日を過ごしていた。

流石にスープラの本ばっかり読むのもあれなので、普通の車の雑誌を読んでいると...私と山木がでた大会について簡単に紹介されている記事を見つけた。大会記録を見て、私と山木の名前がある嬉しさを噛み締めていると、1位の人の名前が目に止まる。

あれ...これって...

 

それからの日は早かった。

スープラが完成し、東雲工業高校初の練習会が開催された日。この日からようやく私の工業高校生としての日々が始まったと思う。

 

SFで500馬力以上600馬力未満のエンジンを組まないといけない事。これをその日、山木から教わった。

これは、私にエンジンチューンをしろと言う山木からの挑戦状だと私は思った。

 

現段階のスープラはノーマルの280馬力そして、蒼井さんは595馬力+-3ぐらいの馬力を求めている。

私の組む2JZ-GTEの目標馬力は598馬力これを目標にこれから始まるゴールデンウィークを使ってエンジンを組む。

 

整備するガレージは叔父の会社の所を使わせてもらえることになった。叔父も手伝ってくれるらしいが、私と叔父では少しメンツが足りないと思う。

せめてもう1人、そう思いながら帰っているとお馴染みの古本屋が見える。今日もいつも通り車の古本コーナーに行くが車の雑誌が読みたい訳ではない。今日の用事は...居た。

 

「あ、芳村か、今日も雑誌漁り?」

ピンク髪の子が振り返る。

 

「岩森...私と2JZ-GTE改造しない?」

そう言うと岩森は真剣に考え始める。

 

「へー芳村エンジン改造できるんだ。」

 

「できるよ、とは言っても...岩森程ではないかな...」

そう言って私はちょっと前に読んだ、古雑誌をペラペラとめくり目標のページに行くと止め、その記事を指さした。

記事の内容は、半年前にあったエンジンOH大会で天才中学生現ると言った感じの内容だろうか。

3位に山木、2位には芳村、そして1位には岩森加奈江っと書いてあった。

 

「半年前に私達に圧倒的差で打ち破った力、私に貸して欲しいんです。お願いします。一緒に2JZ-GTEを改造して下さい。」

 

「芳村、まっかせてよ。一緒に最強無敗のエンジンを組もう」

その時見た岩森の顔はいつもの眠そうな顔ではなくやる気に満ちていた。



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覚醒の承

工業の世界を生き抜くには、豊かな発想能力とそれを実現させる器用さ技術力がいると...父が酔った時に私に話したのを覚えている。

中学2年生の頃、特に部活に入ることなく、平凡に日常を消費していた。

東京オリンピックを境に日本の技術力は大幅に進歩して、車はほとんど自動運転化、水素エンジン化した。私はそんな事に興味はないけど、父が水素エンジンの愚痴を毎日言うからそれぐらいは覚えた。父が暇なら車の免許を取れとかエンジンのバラシ方を教えようとか色々誘って来たけど興味なんかなかった。

私はただ、平凡に中学生活を過ごしたかった。イレギュラーなんて要らない。50点の日常が欲しかった。

 

そんなある日、父の会社がマグネシウム合金の改良金属2NDASTMの開発、特許取得に成功したらしい。

マグネシウム合金は車の次世代採用金属候補として着目されていた、合金である。

なぜ着目されていたかと言うと、それは軽さである。

マグネシウム合金は軽量金属の主流、アルミニウム合金の重量の3分の2しか重量がない。それでいて振動吸収性も良い金属である。車にはマグネシウム合金ホイールや近年ではエンジンでも使用されている。

しかし、そんなマグネシウム合金だが、もちろん弱点はある。

それは燃えやすい、加工がしにくい、加工がしにくいから値段が高いなどがあった。

それを完全改良したのが2NDASTMと言うことになる。

 

早速、2NDASTMで構成されたエンジンが来月草レースでだがデビューするから、その時見に行くぞと言われた。

レース当日、父と2NDASTMで構成されたエンジン搭載車NDロードスターを見せてもらった。2NDだけにNDロードスターなのかなと冷たいギャグのせいでリアルに震えたのだけを覚えてる。

 

レースが始まった。父の紹介ということもありピット内で試合観戦をさせてもらえることになった。

 

レースに参戦する車一覧を眺めるが車に興味の無い私はその参戦している車が速いのかすら分からない。

だけど、さっき見たNDロードスターの兄弟車なのか知らないけどNAロードスターと言う名前の車だけは妙に気になった。

父曰く、隣がそのNAロードスターのチームピットと聞いたので、ちょこっと覗き込む、NAロードスターで参戦してたチームはチーム名が中学校の名前だったので既に察していたがチームメンバー全員が中学生だった。自分と同い年か+-1年の子達が刻々と変わるサーキット内の状態をドライバーに連絡している。誰も50点なんか目指してない。100点を目指していた。

 

私とはやる気が違うんだろうなと思っているとピット内で作業をしてた女の子と目が合った。草レースとは言え試合は試合、そんな時に相手の拠点を覗くなんて失礼だし、やっちゃいけない事だ。急いで顔を隠して無かったことに...出来たか知らないけどした。隣のピットから

「どうしたの?よしむら」

 

「なんでもないよ、やまき」

と聞こえてくる。私とほぼ同年代であんなに生き生きとしていて楽しそうだなと思う。

 

レースの結果はボチボチと言った感じだった。

エンジン重量とミッション重量を軽くしたこと以外改造してないから、当たり前と言えば当たり前の結果だった。

 

だけど、私は今日のこのレースを見て平凡な日常は辞めようそう思った。

 

まずは、車の免許を取得した。そこからは、毎日父にエンジンのノウハウを叩き込まされる日々を過ごした。

 

そんな事をしてたら、あっという間に中学3年の秋になっていた。

中学生活でこのまま、何の成果も得られるず終わるのも味気ないので、エンジンOHの大会に出ることにした。

1年と半年、エンジンをバラしてた実力は圧倒的で、余裕の1位で優勝することが出来た。

ここで、優勝出来たから今思えば東雲工業高校にスカウトされたんだろうなと思う。

 

「...ちょっ」

ん?何か聞こえてくる。

 

「ちょっと。起きてよ」

と。激しく揺さぶれる。起き上がって揺さぶってた本人の顔をみる。

 

「芳村か...あと1時間寝させてよ...」

 

「駄目、ゴールデンウィーク中にエンジン組むって決めたんだから、ほら。やりますよ」

折角のゴールデンウィークなのに、休む暇もないなんて、ケチな世の中になったなと思いながら、ガレージに向かう。

春の夜風が何とも気持ち良かった。

 

ガレージの鍵開けると、そこには蒼く輝くスープラが眠っていた。私達がこのスープラのエンジン2JZ-GTEを280馬力から598馬力付近にまで改造しないといけないらしい。

 

「それで、芳村作業長...具体的な改造内容は?」

 

「作業長って...けどね、岩森、あれを見て見なさい。」

そう言って芳村はガレージの奥の方にある、ダンボールを指差す。中身を確認するとそこには...カムやECU、タービン、コンロッドなど沢山入っていた。

 

「芳村、よくこんなにたくさんのパーツ仕入れたね。」

本当に感動した...どれも新品でその質感にうっとりしてしまう。

各パーツには、WPC処理、DLCコーティングがされてあり、細かいとこまで手を抜かない、芳村のやる気が伝わってきた。

 

「叔父経由でね、何とかなったんだ、エンジンに詳しい岩森なら、私のこだわりポイントも分かってくれると思うだ。」

そう言って、芳村はコンロッドとバルブを渡してきた。

持ってみると...異常に軽かった

 

「これ、幾ら何でも軽くない?アルミ製?」

そう言うと芳村は、指をノンノンと言いたそうに振っている。なかなか、可愛らしい動作だった。

 

「コンロッドとバルブはチタンにしたんだ。NSXの特権を奪っちゃた感じだけどね。」

 

「なるほど、軽量化とより正確な運動性の追求ってことかな?」

そう言うと、芳村がコクコクと頷いている。

 

「それで、カムとクランクシャフトは中空の物をマフラーはオールチタンを使うから。大分軽くなると思うんだよね。」

 

「それは、凄いことになりそう。けど、よくそんな軍資金集まったね。」

 

「それはね、自分達の学校に早速2件もスポンサーが着いたんだって、それで資金を頂いたんだ。」

 

「なるほどね、なら尚更いいエンジン組まないとね。」

そう言って私と芳村による。2JZ-GTEの改造が始まった。

 

まずは、エンジンを1度バラす。この間気をつけないといけないのは、写真を撮ったり、そこに使われてるボルトを順番通りに並べたりして、もう1度組む時に間違えなく組めるように準備すること。

ボルトは使わない封筒などに、そのボルトがどの部品に使われてたかをメモして同封すると、失敗しにくい。その間前にどれぐらいの力で絞めていたかを調べることも忘れないこと。

取り敢えず。今日はエンジンをバラして終わりと言うことになった。芳村は寄らないと行けない所があると言って、闇夜に消えていった。

 

家に帰って、すぐにお風呂に入り、汗と油の匂いを落とす。

今年のゴールデンウィークは代休などが重なり10日もあると言う。本当にゴールデンウィークだなと思えるぐらい日にちがある。

芳村は、あんなに軽量化にこだわっている。他に軽量に出来る所はないかなと...考えていると、思いついた...あるじゃないか..早速頼まないと...そう思い風呂を上がった。

リビングに向かうと父がいた。

 

「あの...お父さん...頼みたいことがあるんだけど...」

そう言った後、私と父は春の闇夜に消えていった。

 

それから、3日間、芳村が用事があると言って休みになった。

まぁ、その気になれば1~2日ぐらいで一応は組めるので別に心配ではない。むしろ、作業を中断してもらえた方がコチラとしては有難い。芳村から休ませて頂きますと言う内容のメールを見た後自分も作業に入ることにした。

父の会社の製図室にあるドラフターを1つ借りて、目の前にある無骨なオイルパンやシリンダヘッドなどを見つめる。

製図は暇な時にやっていたので、一応はできる。

よし、やりますか。そう自分に言い聞かせ作業に入った。

 

3日後、芳村との待ち合わせ時間の30分前にガレージに入り、運送物の整理をしていた。すると、ガレージのドアがなんの抵抗も無く開いた。入ってきたのは芳村だった。手にでっかい封筒を抱えている。

 

「早いね。どうしたの?」

 

「岩森こそ、ちょっと...意外かな」

そう、冗談半分で言ってくる。彼女が動くたびに封筒から、小気味よい金属音が響く。

 

「芳村、その封筒何が入ってるの?」

 

「気づいちゃった?まぁ、気づくよね...」

そう言って芳村は封筒を丁寧に開けていく。

中から出てきたのは、蒼い金属光沢を放っている...ボルトだった。

 

「芳村...これは...」

そう...聞いたことはあったけど...こんなことをしたエンジンは見たことない。

 

「これはね...64チタンボルトだよ。」

そう言って芳村はボルトを手に取ると軽いねと言って、はしゃいでる。芳村って、もしかして結構オカルトチューン信じる人なのかな...まぁ、私も人のこと言えないよね。

 

「芳村...このボルトどうやって手に入れたの?」

64チタンはモータースポーツなどで注目されている金属だ。

 

64チタンはTi-6Al-4Vと書くそうだ。

これは、チタンにアルミ6%、バナジウム4%を配合しているからと言うことらしい。

 

64チタンがなぜ、モータースポーツなどで注目されているかと言うと、それは強靭的な強度や耐久性、軽量化などからだろう。

64もだが、チタンは錆びない。この事から車のマフラーなどにも使われている。

そして、アルミほどではないがチタンにすることによりかなりの軽量化ができる。

しかし、ここで出る疑問はなぜ、アルミにしないか?と言うことだろう。

アルミの方が軽いなら、アルミにするべきと思うかもしれないがそうではない。

アルミは軽いがそれ言えに脆いのである。

一方チタンは、軽さではアルミに一歩引いてしまうが、引張り度などでは、少し高級な7075アルミ合金でも約2倍の引張り度を誇る。

この事から見れば、誰もが使用するボルトは全部64チタンにすればいいと思うかもしれないが、本物の64チタンボルトは1本1500円ぐらいもする、超高級金属なのだ。

そんな、高級ボルトが、今目の前に大量にあるので、驚くのも無理はないと思う訳だが...

 

「岩森、前にスポンサーが付いたって言ったの覚えてる?」

 

「なるほど、そういう事ね」

まぁ、スポンサーが部品提供をしてくれたという事だろう

 

「有難いことだね。早速組み込んで行こうか。」

芳村が秘密兵器を紹介した。

まぁ、秘密兵器を準備したのは芳村だけではない。

私は、ブルーシートで隠していた物を晒す。

 

「岩森...そこに置いてあるものってなに?」

 

「2JZ-GTE用の試作品なんだけどマグネシウム合金製のオイルパンやシリンダヘッドとか作ったんだけど...どうかな?」

 

「これ...岩森が作ったの?」

 

「設計は自分だけど、作ったのは2NDASTMって言う会社だよ」

私が設計させてもらった、このオイルパンなどは、余計な部分などを肉抜きしている。これによって、もしかしたら...不具合が発生するかもしれないのであくまでも、試作品ということにした。

 

「凄いよ...岩森。やっぱり岩森に頼んでよかった。」

そう言って芳村が頭を撫でてくる。

 

「よ、芳村?」

 

「あっ、ごめんね」

そう言って、芳村が後ろへ退る。

芳村が撫でてくれた所に温もりが残って何とも言えない感じになる。

 

「べ、別にいいけど」

ツンデレみたいな口調になってしまったが、まぁ、いいだろう

 

エンジンを組みはじめる。オイルパンなどをバラシて2NDAMSTの物に付け替え、64チタンボルトで取り付ける。

64チタンボルトが蒼く輝く、その蒼さに吸い込まれそうになる。

カムシャフトなども純正からより良いものに付け替える。

プーリーなどもジュラルミンなどに付け替え軽量化。

すべて、芳村の計画通りに進んでいる。

 

「芳村、この改造計画書ってどうやって練ったの?」

 

「私、設計図とかが無いと、できない人だから、ネットとかで付けたいパーツ見つけて、600馬力に近くなるように計算アプリで計算してって感じかな...」

 

「芳村...すごいと思うよ。」

そう言って私も芳村に撫でられたのを返そうと思って近づくが、手が油まみれなので辞めた。

 

バランス取りなどを終え、エンジン組み立ても、いよいよ最終段階に近づいた時、ガレージが開いた。

 

「芳村さん、岩森さん、お疲れ様です」

そう言って、コンビニのビニール袋を手にぶら下げ、ガレージに入ってきたのは、佐々木さんだった。

 

佐々木さんから、飲料水を受け取って休憩に入ることにした。

 

「佐々木さん、わざわざ、ありがとう」

 

「いえいえ、さん付けじゃなくて、けんとか佐々木でいいですよ。」

 

「そ、そうかな、じ、じゃあ。けんちゃんとかで」

芳村の底辺レベルの対人スキルが火を吹いていた。

 

「はい、なんですか?朋ちゃん」

そう言い返されると、芳村がグラついていた。

私もまた今度、朋ちゃんと言ってやろう、そう思った。

 

「それで、エンジンの方はどうですか?」

 

「いい感じだよ。ECUを煮詰めたら598馬力に行くし。軽量化もバッチリかな。」

 

「そうですか。このボルト1本を見れば分かりますよ。朋ちゃんと加奈江ちゃんの頑張りが」

 

「64チタンを使ってるからね。軽いよ。」

そう言うと佐々木がガレージのドアを開ける。

 

「その軽量化に私も手助けさせて頂きたくて、ここに来たんですよ。」そう言って、佐々木が炭素繊維の塊を持ってきた。

 

「これは?」

芳村が、手に取り、うわー軽いとか言って喜んでいる。

 

「一応、エンジンカバーとインテーク等パイプをcarbon+で作ってみたんですけど、どうですかね?」

 

「あ、ありがとうございます。けんちゃん、大事に使わせて貰います。」芳村も佐々木と仲良くなったみたいで、安心した。

 

佐々木が荷物を下ろすと、そのまま作業の邪魔になりますよねと言って帰っていった。

 

佐々木が作ってくれた、エンジンカバーにロゴが刻まれていた。2ND-GENERATION’Sと書かれていた。

この、ロゴの意味が理解できた気がする。

この、エンジンはもう、次の次元に進化したと思う。

 

通常、エンジンのチューニングは馬力上げだけ、エンジンを軽くするのは、そのパーツをつけた時にいい素材だったら生まれる言わば副産物みたいなもので軽量化される。

 

しかし、このエンジンはどうだろうか。

600馬力は叩き込めれるような仕様になり、更にエンジンは大幅に軽量化されている。新次元のチューニング。

これを実現しようと設計した女が、目の前にいる。

大したビジョンだよ。と尊敬する。

 

エンジンを組み終わり、車内に戻す。

配線を繋いで、エンジンがかかるのを確認すると、ホッとする。

これで、エンジンチューンは終わった。後はコンピュータのセッティングな訳なんだけど。ここで一つ引っかかる。

 

「ねぇ、芳村ってコンピュータいじれるの?」

 

「え、えーと、その...できません。」

 

「あれ...私もできないけど...」

ここは、父に頼もうかと思ったが...流石にこれ以上負担は掛けられない。

 

「情報電子科に、誰かいじれる人いないかな?」

 

「さぁ、取り敢えず、明日行ってみようか。」

 

そう言って、ゴールデンウィーク5日目は終わりを告げた。

 

私は、中学時代、部活に入っていないので、ゴールデンウィークに学校に来るのは、人生で初めてだ、私も偉くなったな...と感心しながら情報電子部にお邪魔する。

 

「失礼します。」

芳村と共に、入室する。

部室に入ると、ポッキーゲームをしている女子2人とそれを見ながら、スケッチしている1人がいた。

 

「...お邪魔しました。」

そう言って、部室のドアを閉めた。

 

「岩森...ごめんね、部室間違えたみたい...」

 

「うん、いいよ。失敗は誰にでもあるよ。」

そう言って私達は、情報電子部を後にしようした。

 

「そんな訳、あるかーー」

そう、後ろから叫ばれ、ドアが勢いよく開いた。

 

「え...いや、その私たち間に合ってますから。」

 

「いや、そんな蔑んだ目で見なくても...誤解だから...多分」

 

「え?あれに誤解とか...面白いこと言いますね。」

 

「ちょっと、話聞いてもらえますか。」

そう言われ、部室に再び入室する。

 

「それで...えっと...なんですっけ?」

 

「反応が冷たい...えーとね、ポッキーゲームしてたから、アウトって思ったんでしょ?」

 

「え?あれでアウトじゃなかったら...警察要らないですよ」

我ながら、リターンがかなり強烈だなと思う

テニスだったら、リターンエース確定だろう。

 

「わ、分かったから...その。この2人には...私の本の題材になってもらってたのよ。」

 

「え?百合本ですか?」

突如、横から声がする...よ、芳村...しかも結構食い気味だ

 

「まぁ、そう言うのかな...新刊のビジュアルが決まらなくてね...モデルになってもらってたの。」

 

「へぇ、そうなんですか。え?イラストレーターか、なんかですか?」

 

「まぁ、一応...HKNってサークルで」

 

「え、HKNですか、私大ファンなんですよ。」

そう言って、芳村が蔑んだ目から神を見る目に変わっていた。

え、HKN...車のチューニングメーカー、HK...う、頭が...

そんな、私に構うことなく、芳村とHKNと名乗る子のトークは激熱する。

 

「HKNさんのイラスト毎回楽しみにしてます。これからも頑張ってください。あ、サインとかって...」

 

「あ、いいよ。何か描くものある?」

 

「あ...今、手元には...ッ...待ってください」

そう言って、芳村はバックの中から、金属製の色紙(ECU)を手渡した。

 

「芳村...お、落ち着こう。」

思わず、止めにかかった。いや、ECUは、マズイでしょう。

 

「これって...」

それを見たのか...HKNと名乗る子は声を上げる

 

「あの、その、自分達、ECUセットアップしてもらいたくて、来たんですけど...」

 

「...そう...いいよ。やってあげる」

 

「え?いいんですか?」

 

「もちろん、任せて、だけど...流石にタダではな...」

 

「も、もちろん、お金は多少なりは...」

 

「ノンノン、甘いね、ピンクロングちゃん」

 

「ピンクロングって...」

私のことか...

 

「私は...お金じゃなくて、癒しを求めているのだよ。」

 

「癒し...ですか?」

 

「そうそう、ココ最近、ブランクって言葉は使いたくないけど、どうも書けなくてね。だから、モデルも用意したけど...なんとも」

 

「なるほど...それで...」

 

「うん、だからね...モデルやってくれない?」

 

「はい?」

思わず、声を上げた。

 

「うん。だから...絵のモデルだよ...この子達みたいに、ポッキーゲームなり、なんかするんだよ。」

 

「はい、HKN様のためなら、なんでもさせて頂きます」

芳村はもう、もはや、奴隷かのように賛成した。

 

「よし、なら、早速、モデルちゃん頼んだよ。」

 

「はい。任せてください。」

芳村は、そう言って、腕まくりをする。

まぁ。ここは、芳村に任せて、家帰ってゲームするか...

そう言って、身支度をするが...手を取られる。

 

「えっと...?」

 

「あなたもよ、ピンクロングちゃん」

...完全に立場が逆転してしまった...

芳村が前、我が家を飛び出した理由がわかった気がする。

 

嘘だァァ...

 

そう叫びそうになりながら、見た空は...蒼かった...



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覚醒の転

有名同人、HKNの始まりは授業中に暇だったから描いたラクガキから始まった。友達から上手いねと言われて調子に乗り、さらに上手いと言われたいから、SNSに投稿したりして、気がつけば人気絵師になっていた。だけど、いつからかな...期待されれば期待されるほど、昔は嬉しかったのに、それが苦しくなってきたのは...

 

スケッチブックに目で捉えた、光景を描いていく。

今は、アナログ絵より、デジタル絵の方が失敗してもやり直せるし、艶などが綺麗に出せるので人気が高い。

そんな時代に、アナログ絵1本で勝負をしているから、人気なのだろうか...と思いながら目の前の光景を描いていく。

下描きは大好きだ、何も無い真っ白な紙に想像したものが描きたされていく。

 

「あの...まだ、このポーズ取らないといけませんか?」

目の前のモデルが喋りかけてくる。

 

「もうちょっと、待っててくれる。」

そう言うと、もう1人のモデルがマジですか、見たいな顔をしてきたが、これもまた、イラストに自然性が生まれていいのではと、描き足していく。

 

「はい、ラフだけど、取り敢えず描いたよ」

そう言って、前の2人に見せる。

 

「岩森...やっぱり、神様だよ。HKNさんは」

そう言って、黒髪ロングの子が喜んでいる。

 

「た、確かに...これは、なかなか...けど美化され過ぎじゃ」

そう言って来る子は、ピンク髪のロングっ子、黒髪ロングの子を妹に見立てるなら、この子が姉だろな...と脳内設定を膨らませる。

 

「後は、家でやるから、写真だけ撮っていい?」

 

「え?この状態で撮るんですか?」

ピンク髪の子が慌てた表情でそう言ってくる。

 

「参考画像にね、ほらほら、ポーズ決めちゃって」

 

「そうだよ、岩森、HKNさんに協力しなちゃ」

 

「う、分かったよ...」

そう言って、2人が向かい合うと、指を絡み合わせ、ピンク髪の子が、黒髪ロングの子に押し倒される感じで、ロッカーにもたれかかる。

我ながら、完璧なシチュエーションだと思う。

普段はこう、身長差的にも、姉っぽいピンク髪の子が先導しそうだが、これは真逆...これは、うん。違う意味でギャップ萌えだね

 

「あの...早くしてくれませんか」

ピンク髪の子がストレートに言ってくる。

 

「はいはい、りょーかい。撮りますよ」

そう言って、写真を撮らせて貰って、解散した。

明日には、完成してると言って家に帰った。

家に帰ったと行っても、実際にはマンション一室な訳だけど...

部屋に戻って作業を再開する。

ラフを綺麗にして、下描きにする。

だいぶん形になってきたなと、絵全体を見てみる。

やっぱり...素材がいいよなと、参考画像と共に眺める。

 

「どうしちゃったんですか?井上先生」

後ろから、突如声をかけられる。

ヒィッっと叫んでしまったが、後ろを見る。

 

「なんだ...姉ちゃんか...仕事終わったの?」

 

「うん、今さっきね、ご飯作るから、ちょっと待ってね」

そう言って、姉がキッチンへ向かった。

手伝おうか...その一言が言えなかった...

 

下描きをSNSにアップする。

完成楽しみです、神だったのか...などのコメントを見て、思わずニヤついてしまう。

これは、見てくれてる人のためにも、頑張らないとな...そう言い聞かせて、ペン入れを始めた。

 

「志帆、ご飯出来たよ。」

そう言われたので、作業をやめて、姉の元へ向かった。

 

「頂きます。」

そう言って、ご飯を食べる。

 

「姉ちゃん...美味しいよ。」

そう言うと、姉は喜んで、そうかそうか、と言った。

 

「姉ちゃん...私ね、車のエンジンのECU改造することになったんだ。」

 

「へぇ、志帆がね、なにか困ったらお姉ちゃんに聞くんだよ」

姉は、と言うか...我が家、井上家は先祖代々、コンピュータの制御システムなどを手がけている。岡山県にある中堅企業だった。

私か。姉どちらかが、家を継ぎなさいと父から言われた。

私は機械音痴だったので、候補は姉と言う事で話は進んでいた。

 

だけど、姉のコンピュータのノウハウは天才的だった。

家の企業では、オーバースペックで大手企業からも、スカウトが来ていた。

 

私は、そんな姉に嫉妬して、私は私の世界で生きようと思って、絵の世界に潜り込んだのかも知れない。

そして、いいねの数が多かったり、尊敬コメントを眺めたりして、私は、こっちの方が向いてたんだと慰める毎日。

 

だけど、そんな日々の中で、姉は姉で悩んだんだと思う。

 

姉の高校卒業式、本来なら、嬉しさと悲しさで家がしっとりしそうなこの日、姉は家の会社では無く、大手企業に行かせてくださいと志願した結果、親から猛反対され挙句、家を出て行った。

 

余りにも、衝撃的で、私がホノボノと過ごしていた日々の中で、姉は悩んでたんだと思う。私は...何をしていたんだろう。そう思った...現実に立ち向かわず、ただ逃げて...周りのことを考えていなかった、姉の相談に乗ればよかった、同じ部屋で暮らしていたから、そうすることも可能だった。

私は...逃げてただけだった。

 

そこからは...そんな自分を変えたいと思って、絵を極めて、コンピュータだって、改造できるように頑張った。

父がよく、姉より凄いと褒めたが、私には...その期待や、褒め言葉がナイフで刺されたかのように痛く...突き刺さった。

 

高校をどうしようか...そう考えた頃には、新工業高校、東雲工業高校へスカウトされていた。

 

親が、行けばいいと勧めてきたので、そうすることにした。

岡山県から広島県へ、住むことになるが、親が安いマンションを借りてくれた。

 

そうして、私の水のように綺麗で、綺麗ゆえに何も変化のない日々は過ぎていった。

 

広島に引越して、だいぶん町にも慣れてきたので、本でも買いに行こうと思い、本屋へ駆り出した。

 

本屋に着き、目的の本を探す...あった、私の2作目の画集だった。

前作が、結構人気があった見たく、まぁ、その便乗作となる。

 

早速、買おうと手に取ろうと思うと、横にいた、もう1人の方も同じものを手に取る。

 

「あ、ごめんなさい。」

そう言って、手を引っ込める

 

「あれ?志帆?」

へ?そう思い...相手の顔を見ると姉、井上梨紗だった。

 

安いマンションなので、鍵が抜きづらいと若干イラつきながら、ドアを開ける。

 

「お邪魔しまーす」

そう言って、姉が部屋に入る。手にはデカイバックを持って入ってくる。

 

「はいはい、今日だけだからね...」

ついさっき、姉と再開し、積もる話がたくさんあるなと思ったが、姉が早速、ジョーカーを切り出した。

「ねーね、部屋住ませてくれない?」

 

姉曰く、ネットカフェで、過ごしていたらしいが...19歳で大丈夫なのかと思い、連れてきた。

 

「思ってたより、広いね」

そう言って姉がそこまで広くない部屋をグルグル回っている。

 

「おっと...そろそろ。夜ご飯の時間だね。せっかくだし、なんか作りますか...」

 

「私も手伝うよ...」

そう言って、今日だけと言った日々が延長されて行き今現在に至る。

 

「あれ?志帆って車のECUとか触ったことあるの?」

 

「いや...ないかな...」

 

「そ、そうなのね、お姉ちゃんが手伝おうか?」

そう、姉が言ってくる。嬉しかった...私はもちろん

 

「いや、大丈夫だよ。いざとなったら、お願いします」

自分でも、なんでこんな事言ったんだろうと思った。

 

「うん、そうだよね、志帆の成長っぷり私も見てみたいし」

姉の残念そうな顔が脳に残る。

 

部屋に戻って、絵を仕上げる。

カラーペンで、薄い色から濃い色へ重ね塗りする。

カラーペン独特の、消毒液みたいな匂いが部屋に広がる。

この匂いを嗅ぐと、絵を描いてるんだなって、実感できる。

 

よし、出来た...SNSにアップしようと思ったが、あの芳村とか言う子にも協力してくれたし、最初に見せてあげようと辞めることにした。

 

次の日の朝、部室の鍵を開ける。

情報電子部という名の、雑談部、その日やりたいことをやるだけの平凡な部活。部員は私と残りは2人しかいない。

 

私が、部室に入って、お茶を飲み終わるぐらいにドアが開く。

 

「失礼します。」

そう言って、芳村と岩森が部室に入ってくる。

岩森は、寝てるのかってぐらい、眠そうに、歩いてくる。

 

「先生、絵は完成したんですか?」

芳村が、元気よく聞いてくる。

 

「うん、ハイこれ。」

そう言って、完成した絵を渡した。

 

「これは、これは...神ですね」

そう言って、芳村は岩森の方に行き見せびらかしている。

 

「こ、この絵のモデルが自分達って、照れるものがあるね...」

そう言って、岩森が火照る

 

「それで、先生。ECUの方はやって、頂けるんですよね?」

 

「う、うん、もちろん。車持ってきて」

そう言うと、爆音を奏でて、スポーツカーが部室の前にやってくる。なに、この戦闘機...これ。私と同い年が運転するの...お、恐ろしい。

 

「え...えっと、これ自分達が作ったの?」

 

「はい、それで、エンジンのポテンシャルを引き出すために、コンピュータを調節して頂きたいんですけど。」

 

「わ、分かったわ、やって見る。」

そう言って、私は戦闘機を受け取った。

マンションの下のガレージに置くが、ここまで、乗って帰るのだけで、疲れるぐらい速い。

 

今さっき、調べたが、コンピュータのデータ出しは様々なメーターなどから、パソコンにデータを取り入れ、そこから、解析するらしい。

私が思ってた、コンピュータ改造では、無いので...姉に頼もう、そう思った。

 

「ふーん、そういう事があったのね。」

姉が、ヨシヨシと頭を撫でながら、そう言ってくる。

 

「ッ...それで、姉ちゃんは、できるの?」

姉に頭を撫でられ、調子が狂う前に聞いておく。

 

「大丈夫よ。お姉ちゃんに任せてね。」

そう言って、姉と共に工場に向う。

工場と言っても、姉は開発班に居るらしく。姉専用の部屋があり羨ましいと思いながら部屋に入る。

 

「おかえりなさい。梨紗」

部屋に入ると、突如そう聞こえてくるので、ビックリする。

デカイモニター越しに、姉の同僚なのだろうか...高校生ぐらいの子が姉に話しかける。

 

「えっと...お姉ちゃん??」

恐る恐る、姉にくっつく。

 

「そんなに、緊張しなくて大丈夫よ。この子は、私が開発した最新の人工知能、希よ。」

 

「希...?」

 

「そうよ、この子が、世に出れば、どんな、コンピューターだって、軍事規格並に高性能なコンピューターに書き換えられるの、それに、人工知能だから、例えば、車みたいに、気温や湿度、路面によって、戦闘力が変化するでしょ、それを、希なら、そのコンデションにあった、セッティングを自動でしてくれるの。」

 

「けど、これお高いんでしょ?」

 

「ま、まぁ、そうね。けど、これはまだ、プロトタイプだから、これでよければ使ってね。」

 

「お姉ちゃん、ありがとう。皆もきっと、これなら喜んでくれるよ。」

 

「希、これからは、見知らぬ人達の所に、行くけど...元気に過ごしてね。」希は、姉が家を飛び出してまで、創りたかったのもの。それをこんな、簡単にもらっていいのだろうか...

 

「お姉ちゃん、やっぱり...いいよ。」

 

「いいや、いいのよ。本当は希は2ヵ月前には、完成してたの、だけど、世間に出すのが嫌で...希だって、ちゃんと意思はある。この事だけは、忘れないであげてね。」

 

「お姉ちゃん...ちょっと、待ってね...」

私はそう言うと、この風景を紙に収める。

絵を描くのは...好きだ。写真などでも、いいけど、こうやって描くことによって、生まれるものがあると前から思ってた。

それは、その人の思いが、こうやって、紙に描くことによって、伝わる...そういう事じゃないかな。

まだまだ、雑だけど、姉に描いたものを見せる。

 

「お姉ちゃん、私は人工知能について、よく分からない。けどね、お姉ちゃんが大切にしてたから、希も、こんな笑顔が作れるようになったんじゃないのかな...」

 

「志帆...ありがとうね。さぁて、希をこの車に搭載するから、部外者は出た出た。」

そう言って、妹を部屋から出す。

 

「可愛い妹さんでしたね。梨紗。」

 

「そう思うでしょ。自分がやりたいことを貫いていく。あの子の姿に押されて私も、あなたを作るために、家を出れたのよ。だから、あの子が信じた人達を導いてあげてね。」

 

「分かりました。この、エンジンの可能性を全世界に轟かせて見せますよ。梨紗。」

 

「ちゃんと、データ持って帰らないと、オコだからね。」

 

「任せてください...ちゃんと戻ってきます。」

もちろん、冗談だと知っている。

 

「それから...何か、不具合があったら...連絡してね。」

 

「はい、任せてください。」

梨紗が作ってくれたから、そんな物は出ないと知っている。

 

「それじゃあ、しばらくお別れだね...」

 

「はい、梨紗...ありがとうございます。私を生んでくれて、私を導いてくれて、ありがとうございます。」人工知能は感情を持たない。なのに、何かに絞められた気がして、苦しい。

 

「梨紗...早速不具合が出ちゃいました。なんか、苦しいです...」

 

「そうか...言いたいことがあったら、言っていいんだよ」

そう言われた瞬間何か、リミッターが解除された気がする。

 

「梨紗...梨紗と...別れたくないです...」

人工知能は、思いを伝えない、伝えたくても...届かない...梨沙が組んだからなのだろうか...この不具合は...

 

「...私もだよ、だから、二ヶ月怖くて...手放せなかった...けど、嫌だからって、怖いからって...逃げてばかりじゃ...いけないんだなって...年下に教わった...妹に...だから、また会える時を楽しみにお互い生きていこう。ね?」そう言って...梨紗がこちらに近づいてくる。

 

「次会うときは...あなたをこんな、小さいモニターから出してあげる。その時は、一緒に外に出かけよう...一緒に暮らせるようにしよう...そのために、私、頑張るから...」

 

「はい。」

 

「それじゃあ、行ってらっしゃい...」

そう言われた後...急に思考が途切れていく。梨紗がこちらに向かって...なにか喋っているが...聞こえない。

こんな、不具合だらけで、幸せな、人工知能は...私だけ...梨紗ありがとう...そう思ったが聞こえてはいないだろう。

 

それから...2日が経って私の短かったゴールデンウィークも残すとこ1日になった。

 

「ただいま...」

ドアを開けるのが、こんなに辛い日は滅多にないだろう。

妹は部屋で絵を描いているのだろうか...返事がない。

夜ご飯、作らないとなと思い、キッチンへ向かう。

もう、夜なので、明かりつけないと...そう思い、照明器具を照らす。

 

「お姉ちゃん、おかえりなさい」

 

「ヒィッ...ビックリした...」

明かりをつけた瞬間に、目の前に妹が現れる。

私がいつも、妹にしてる事を返された...こんなにビックリするのかと反省する。

 

「ごめんごめん、お姉ちゃんにどうしても...見せないといけないものがあるんだ。」そう言って、妹は私の手を取り、部屋に入れられる。

 

「えっと...なにかな?」

 

「これ、見てよ。結構いい感じに描けてるくない?」

そう言って、妹から渡された、イラストボードを見ると、自分に似た人物と、希に似た人物が、画面越しではあるが、手を取り合っていた。

 

「これは...」

 

「お姉ちゃんと、希をモチーフにして、いつかは...手が取り合える日が来たらなって...」

 

「志帆...ありがとうね...これが実現するように、私、頑張るから。」

 

「うん、それと...これからは、家事は半分私がするから...」

 

「え?けど、私は泊めさせてもらってる側だから、いいよ。」

そう言うと、妹は、頭を突如抱え込んだ...

 

「も、もう、一々言わせないでよ。やるったらやるのよ。」

そう言うと、妹がプイっと外を向く。これは...宥めるのが大変そうだな...と思いながらも笑ってしまった。

 

「な、なに?」

妹の頬が、紅く染まっていた...

 

「いや、幸せだな...ってね」

 

「そ、そう。もう勝手にさよならは、嫌だからね。」

そう言うと、妹がくっついて来る。

 

「はいはい、もうどこにも...勝手に行きませんから...」

そうやって、くっついて来た妹を抱きしめると、温かくて、心が浄化されそうだった。

 

約2ヵ月前の話をしよう。

私が希を社内発表しようとしていた頃の話

 

最後に、希にして欲しいことを聞いた。

そうすると、希は私がこの人のイラスト好きなんだと、ちょっと前に勧めた人のイラストにハマったのか、その人のイラストをもっと見たいと言ってきた。

ネットで画像を探そうと思って、名前で探すHKNと、そうすると、今日がその方のイラスト集の発売日と書いてあったので、奮発して買いに行くことにした。

 

会社の近くの書店に着き、お目当ての本を見つけたので、手に取ろうとすると、他のお客さんの手にあたる。

すいませんと、手を引き、顔を見ると...志帆だった。

 

もしかしたら、希はこの、運命を知っていたのだろうか...いや、無いな。そう思い...眠りについた。

 

「おはよう、お姉ちゃん」

妹に起こされ、朝を迎える。

もう少し寝てたかったが、せっかく起こしてもらったので、辞めることにする。

 

「志帆、今日学校なの?」

志帆が制服に着替えていたので聞いてみる。

 

「部活があるからね...けど、今日はあの、スポーツカーを渡しに行く日だから。」

 

「そっか...行ってらっしゃい」

 

「行ってきます、お姉ちゃん」

そう言うと、妹は春の朝空に消えていった。

 

春は運命を変える季節だと私は思う。

この春、私は色々な事件で人生のルートを変えられただろう。

だけど、それがあっての今があると思うと...私は幸せなルートを引けたのだろうと胸を張って言える。

 

学校へ優雅にスポーツカーで登校し、部室へ入る。

部屋の中には、芳村と岩森がいた。

 

「先生、おはようございます。」

芳村が敬礼して挨拶をしてくる。

 

「井上...おはよう...」

岩森が、お休みにしか聞こえない感じで挨拶をしてくる。

 

「あなた達。ブレないわね...」

そう言うと...二人揃って首を傾げている。

 

「ま、まぁ、いいわ。着いてきなさい。」

そう言って、2人を駐車場へ呼び出す。

 

「先生...もしかして、出来たんですか?」

芳村が元気よく聞いてくる。

 

「まぁ、私の姉が、だけどね。完成したらしいよ。」

 

「井上、お姉さん居たんだ、感謝しないとね。」

岩森も流石に、声に活気が出ていた。

 

「それでね、このエンジンに使った、コンピュータってちょっと...嫌、かなり特殊でね。」そう言うと、私は、スポーツカーの車内に入り、エンジンをかける。甲高い排気音に、血液がドバドバと流されていくのが分かる。そして、私は新たに車内に取り付けられた、液晶画面をタッチする。

 

「井上...これは?」

岩森が不安そうに見てくる。

 

「おはようございます。志帆、そして皆様。」

水みたいに透明で綺麗な声が響く。

画面の中には、私達と同い年ぐらいの見た目の子が映っている。

 

「おはよう。希、これから、よろしくね。」

そう言って、希の顔をタップすると、何ですか?と返事が来た。

 

「え...えっと...先生...ギャルゲー搭載したんですか?」

芳村が恐る恐る聞いてくる

 

「ち、違うの、ちゃんと説明するわね。」

 

「今回あなた達のスポーツカーに搭載したのは人工知能なの、名前は希よ。この子を搭載することによって、車内から声掛けで、スタビの強さ、シートの位置、その他色々、アシストしてくれるわ。」

 

「そ、それは...すごいね...」

 

「ええ、それに、路面状況や、天候が変わりそうだったら教えてくれるし、その日の状態に適した、セッティングを自動でしてくれるわ。」そう言ってネットショッピングの説明如く、解説していく。

 

「そ、そんなに優れたもの...貰っていいの?」

 

「姉が是非とも、貰ってくれってさ...けどね、希にだって、感情や思いはあるの...それだけわ、分かってくれたら嬉しいな。」

 

「任せて、絶対にそれだけは守ってみせるから。」

二人の瞳が、本気だったので信じてみることにした。

 

「それじゃあ、これからこの人達を導いてあげてね、希」

 

「はい、分かりました。志帆、嫌...HKN先生?」

 

「な...なんで知っての?」

いきなりの事に、ビックリする。

 

「梨紗が、自慢の妹だって...絵が上がる度に見せてくれてたので、名前ぐらいはしってますよ。」

 

「な...な...」

顔が熱い...なんで知ってる..姉に私のペンネーム言ったつもりは無いのに...まぁ、私が完成した絵を見せてるから...気がついたのかな?そう思った。

 

「ゴールデンウィークなのに、暇ね...」

そう言って、私はテレビで面白い番組が無いか...探している。

そうすると、メールでも来たのか...携帯が震える。

 

メールを漁ると、新着でメッセージが来ていた。

 

『無事に、希ちゃんが搭載できるスペックのコンピュータが届きましたか?お父さんが、仕方ないな...って言いながらも作ってくれた、自信作です。たまには...志帆と一緒に帰ってきなさいよ。by.HKN株式会社より母より。』

 

「はいはい。分かりましたよ。ありがとう...」

そう呟いて、親へ感謝する。私が自分勝手な行動をしても...ワガママを聞いてくれた。感謝しかない。

それにしても、こうやって、自分の親の会社名をペンネームに使うなんて、志帆も単純よねと笑えてくる。

 

ドアが勢いよく開く。

「お姉ちゃん...」

志帆が顔を紅くしてやってくる。

 

「な、なに?志帆...風邪ひいたの?」

 

「違うわよ...何で、私のペンネーム知ってんのよ...」

そう言われると笑いしか出てこない。

 

「ちょ...質問に答えなさいよ。」

 

「ごめんごめん...で、なんだっけ?」

 

「ちょっと...真面目に聞きなさいよ。」

 

そう妹に叫ばれながら見た空は...今の気持ちを表したかのように雲一つなく、綺麗な空だった...

 

期待されて嬉くない人なんて居ない...それが実現できなかったらと怯えるだけだ...それを乗り越えた時、人は成長できるだろう。

私がちょっと前に読んだ、本にそう書いてあったのを思い出した。



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覚醒の結

無音の高速道路に、爆音が響く。

自動運転化により、時速50km以上は絶対に出ないことになり、オービスは廃止された。この廃止により、スポーツカーを乗りこなす人達の戦場は、高速道路にシフトされたのだった...

 

そんな広島の戦場地、広島高速の朝の出来事

 

「せ、先輩。後ろから...速いのが1台来てます...」

助手席に座った新人が、そう言ってくる。

 

「おいおい、お前俺の戦闘機の名前を知らねーのか?」

そう言って、俺は特に意味は無いが、ダッシュボードをコンコンとノックする。

 

「そ。そりゃあ、知ってます...シビックのFK-2?」

 

「ご名答、俺はこの、ずんむりとした、団子虫の様なフォルムに魅せられ、750台と言う限定数を勝ち取ったんだ...」そう言うと新人は、ほ...褒めてるの?って顔でこちらを見てくる。

 

「しかし、後ろのヤツ速いな...こっちは、310馬力だぞ」

そう言いながらも、蒼く輝く車は、こちらに近づいてくる。

 

「へ...いいぜ、これだけは...あまり使いたくなかったが」

 

「せ、先輩...なにか奥の手でも?」

主人公は、ピンチになれば...覚醒する後出しジャンケンの定理がある。それを今使わせてもらうぜ...

 

「+Rモード起動」

シビックにはBASEモードと言う、安全性に特化したモード

+Rモードと言う、レスポンス向上などに貢献するモードがある。

 

「へ、これで...悪いが勝たせてもらったぜ...」

そう言って、後ろを見ると...白色のボディだが、蒼く輝く奇妙な車は居なかった...

 

「せ...先輩...ま、前」

 

「ん?なんだ...な、なに!抜かれてるだと...」

310馬力だぞ...それを余裕見せて抜くって...何馬力出てんだよ。前の車...

 

今朝のバトル...ふ、これは伝説になるぜ...

覚えておくぜ...A80スープラ...また戦場で会おう。

 

「いや、抜かれた後に言うセリフじゃないですよね。」

新人にそうツッコミを入れられて、戦意喪失した。

 

 

バックミラーから、シビックが遠ざかっていくのが分かる...

やっぱり、スープラ速くなりすぎたな...と感動する。

「ちょっと...岩森これ速すぎる」

運転席で、芳村が叫んでいる

 

「ほらほら、もっと踏まないと、まだ、エンジンの美味しい所が使えないでいるぞ」

 

「ひ、ひぃ...こ、怖い」

まぁ、無理も無いか...598馬力に超軽量な車重...これは、私もあんまり、運転したくないかも...

 

「い、岩森...どこまで行くんだっけ...」

 

「うーん、任す。」

 

「そ、そう、なら...」

そう言って、芳村は、アクセルを踏み出す...加速がすごくて、心臓にダイレクトアタックされたのは一生忘れないだろう。

 

「着いたよ」

そう言って、芳村が起こしてくる、あれ私寝てたのか...

 

「ごめんね、運転全部任せちゃって」

 

「いいよいいよ。それよりも。今日はせっかくのゴールデンウィークなのに未だに1日も遊べてなかったから...楽しもう、ね?」そう言って芳村が手を差し出してくる。

 

「...宜しくお願いします...」

そう言って、芳村の手を握った。

 

「岩森って、休日何してるの?」

私の横を歩く、芳村が聞いてくる。

 

「基本、平日に備えて睡眠をストックしてるかな...」

 

「ただ、寝てるだけなのね...」

 

「それじゃあ、芳村は何してるの?」

そう言うと、芳村が歩くのを辞める。

 

「うーん、特に決まったことはしてないかな...その日の気分でダラダラしたりとか、そんな感じかな」

 

「そうか、それで、芳村今私達ってどこ向かってるの?」

 

「うーん、なんか見たいものある?」

 

「文具ぐらいかな...」

私も特に欲しいものは無いので、取り敢えずの物を言う。

 

「文系女子かな?」

そう言いつつも、芳村は文具への道筋を調べている。

片手は、私と繋いでいるので、片手で器用に調べている。

と言うか...手つなぐ必要あるのかな?そう思うが...聞くのはやめておこう。

 

「着いたよ、ここが結構人気のお店みたい」

歩くこと10分強やっとこさ、文具屋に着いた。

人気店と言うだけあって、私が普段行くお店の2倍以上の面積はあるだろう。

 

「芳村...ありがとうね。」

そう言うと、芳村はうんうんと頷いてくる。

 

「岩森は何が欲しいの?」

 

「えっとね...新しいディバインダーかな」

 

「ま、マニアックな物を」

今の時代、製図はコンピュータなどでやった方が楽だし、綺麗にできる。だけど、私は自分で書く方が好きだな...そう思いながらディバインダーを探す。

しかし、このディバインダー発掘大作戦はバットエンドを迎えようとしていた。30分ぐらい探してもないので、芳村が店員に聞いてきてくれた。その結果...

 

「岩森...ディバインダーここ取り扱ってないって...」

 

「な、なんだってぇ...」

まぁ、ネットショッピングで簡単クリックで買えるので、そこまで、ショックでは無いけど、なんだかな...そう思いながら、私達は文具店を出た。

 

「その、岩森ごめんね...」

芳村が申し訳なさそうに謝ってくる。

 

「いいよ。いいよ。もうネットで買ったから」

 

「行動早いな...まぁ、岩森らしいかな...」

 

「芳村が行きたいとこでいいよ。」

自分は市内とかデパートにあまり行かないので、芳村に任すことにした。

 

「うーん...あ、髪留め欲しいんだよね。今、行っていい?」

そう言って、芳村が見よこれと言わんばかりに、綺麗な艶が出てて、手入れ頑張ってんな...と思える長い黒髪をいじる。

 

「うん、いいよ。行こうか」

そう言って私達はまた歩き始めた。

 

マップ検索で、近くて人気のある服屋を探して、徒歩5分少々、服屋に着く。

 

「ここなら、いい感じのありそうだね。」

そう言うと、芳村が店内に入って行くので続くことにした。

 

店内に入ると、まぁレビューがいいだけあって、普通に欲しいものがありそうな品ぞろえだった。私が店内を見渡していると、芳村が、でかいリボンを持ってこちらに来る。

 

「これ、どうかな...派手すぎる感あるけど...」

そう言って、芳村がつける...これ、あ、あれだわ...

 

「ただの...ロリだわ...罪だわ...犯罪だわ...」

そう言うと、芳村がロリじゃないんですけど...と言って、でかいリボンを外して、店内を再度見に行った。

まぁ、可愛かったけど、現実的にギルティな部分の方が多かったよね...と自分の考えを正当化する。

 

「岩森...これなら、どうかな...」

そう言って...芳村は...うん、なんだ、その、さっきのリボンより、少し小さくなったぐらいのサイズのリボンを持ってきた。

それでも、後ろ髪に留めても髪をはみ出すぐらいのサイズはある。けど...

 

「可愛い...似合ってるよ。」

そう、さっきのはデカすぎて、ゴテゴテ感と言うか、そんな物があったが、これなら、ちょっと背伸びした感じで可愛さがかなりあった。芳村のロリっぽい見た目に似合ってるなと思ったが言うのは辞めた。

 

「けど、それ重たくないの?」

アニメのキャラとかでも、結構大きいリボン付けてるキャラを見て思うことがあったので、聞いてみる。

 

「うーん、まだ付けたばっかりだから、違和感はあるけど、重さは...そこまで無いかな...」

 

「そんな物か、なるほどね」

 

「岩森も買ったら?せっかく出し」

そう言って、芳村が2点同時購入で20%OFFとか言う、よくある商法の看板を指さす。

 

「え、自分かぁ...うーん、髪まとめるの、面倒なんだよね」

 

「それも、そうだね...分かったよ、買ってくるね」

深く勧められるかと、思ってたので素直に引いてくれて、嬉しかった...しかし、走ってレジ行くって...どれだけ気に入ったんだろうと思った。

 

「お待たせ...買ってきたよ」

芳村が帰ってくる。さっき買ったリボンは既に付けていた、しかし、ここの店の名前が書いてある紙袋を持っている。

 

「あれ、その紙袋...なんか買ったの?」

 

「え、えっと...汚れたとき用に、予備を...ね」

焦ってるような気がするけど、探るのも面倒いので、そのまま流すことにした。

 

「他に行きたいとこは...ある?」

既に私は行く場所は無いので、聞いてみる。

 

「私も...特に無いかな。」

まぁ、芳村は、あのリボン買えてすごい満足そうだから...そりゃ無いわな...

 

2人でどうしようか...帰るか...まだ見て回るか...と考えているところを声をかけられる。

 

「あれ、芳村さんと岩森さん?じゃないですか?」

そう言われて振り向くと、蒼く輝く瞳の少女がいた。

 

「黒神ちゃんかな?」

そう言えば...芳村って私以外はちゃん付けだよね...と思い出した。

 

「はい、そうですよ。お2人は、ここでなにを?」

 

「私達は...買い物をちょっとね...」

そう言うと、芳村が何を買ったか、悟ったのか芳村の後ろ髪に付いているリボンを触り出す。

 

「芳村さん、このリボンすごい似合ってますね...可愛い」

そう言って、素直に笑っている黒神の笑顔も充分来るものがあったが...まぁ、置いておこう。

 

「ありがとうね、黒神ちゃん。そう言えば、黒神ちゃんは市内に何か用事?」

 

「私ですか?私は、お姉ちゃんの病院について来ただけなんですよ」

 

「蒼井ちゃんに何かあったの?」

 

「交流戦の後から、目の色が蒼くなったのを気にして、眼科に通ってるんですよね。」

 

「まぁ、確かに...学校の時も、黒神と蒼井が隣にいたら、どっちが蒼井か、とか、一瞬迷うよね。」

 

「確かに...姉妹だから、すごい似てるよね」

 

「し、姉妹ですか...そうですね...」

そう言うと、地雷を踏んだのか...と言うぐらいに一瞬、黒神の表情が落ち込んだ...しかし、

 

「ふふ、お姉ちゃんと似てるなんて、もう嬉しすぎますよ。2人とも...」あ、いつもの黒神だと安心した。

 

「そう言えば、スープラのエンジン組み終わったんだよね。黒神ちゃん乗ってみる?」

 

「流石です、素晴らしいですね、是非お願いします」

芳村の悪夢への誘いに見事引っかかった...

 

黒神を連れて、駐車場に戻ってくる。

スープラのボンネットを開けて、心臓部を指さす。

 

「凄いですね、カーボン、チタン、マグネシウムで武装化しただけは、ありますね。」

 

「うん、それに、人工知能とかもね...とにかくすごいよ」

私達は、既にこのエンジンを何回も見た、だけど、未だにこのインパクトは抜けてない。これがレース用エンジンの魅力なのだろうか...

 

黒神が、スープラの運転席に乗る...乗る...あれ、スープラって運転席と助手席しかないから...私たちの内、誰か乗れなくね...

 

「私、後ろで寝っ転がってるから、岩森座っていいよ。」

それを察したのか、芳村がそう言ってくれた。ありがたいけど、フロアマットないからな...まぁ、いいか。

 

「それじゃあ、行きますよ。」

黒神がそう言った瞬間に、甲高いエキゾーストノートが血の流れを加速させる。

 

「は、速すぎますよーこれーー」

と黒神が叫びながら、スープラは高速道路に消えていった。

 

 

「はぁ、今日は全然撃墜出来なかったな...」

助手席に座っていた新人も、もうやる気が無いのか、ぐったりしてる。

 

「あの、朝のスープラよ、あれのインパクト...たまんねーな」

ブルーパールがボディに散りばめられていて、美しく、そして、圧倒的な速さで自分達を抜いて行った...

 

「あんな、戦闘機がまだ、ガソリンエンジンを搭載してくれているなんて、嬉しいもんだね。」

 

「先輩...なんか、後ろから甲高い音が...この音はまさか?」

新人が、いきなりやる気のある声でそう行ってくる。

 

「まさか...また魅せてくれるのか...」

そう言って、バックミラーを見る。

 

『蒼く輝くスープラだ。』

新人とハモりながら言った。

 

「先輩けど、その前にあれは...水素エンジンH-βC搭載のGTOがいますよ。」

H-βCは、水素ベーターカスタムエンジンの訳しで、先代のH-βの改良版、スポーツカーなどに使われるエンジンで、馬力は物によって、制御されているが、このGTOのエアロの熟練度から見るに、約550馬力以上は出ているだろう。

 

「先輩、スープラが思ったように、走れてませんが...なんで?」新人が指摘するように、スープラはコーナーで思いっきり、踏めていない...何故か、それは至って簡単。

水素エンジンはマフラーから水を出す、それによって、相手のタイヤを滑らせる、この戦法はスピードが乗れば乗るほど効果的になる。

しかし、今の車会は8割は水素エンジン搭載車の時代。

そうなると、毎日雨が降った時のような路面になってしまう。

それを防ぐために、超速乾製のものを路面に塗布してあるが、目の前から出される水には、流石に瞬時には対応出来ない。

それ故に、スピードを落とすしか無いのである。

 

「しかし、何故だ...スープラのドライバーは毎日車に乗っていなのか?路面慣れしていない...」そう、しかし物は慣れ。毎日水素エンジンから出される水を受けながら走っていると、そこそこ慣れる物があるが、スープラの場合はどうだ...全然慣れていない。これは、分が悪いな...

 

「先輩、スープラ負けちゃんですかね?」

 

「さぁな、応援する気があるなら、負けたと思わず希望を持て」俺だって、スープラに勝ってほしい...頼む。

 

憎い...目の前のGTOには岡山工業高校と書いてあり、自分達のスープラと同じように手を加えられたのでしょう。

だけど、岩森さんや芳村さん、佐々木さんなどが改造してくれたこのスープラを活かせれない自分が憎い。

 

「黒神ちゃん、大丈夫?」

芳村さんが心配して言ってくれる、ありがたいの一言に尽きます。

 

「大丈夫ですよ、2人とも今から起こることは...お姉ちゃんには内緒ですよ。」

 

『え?えーと、うん』

2人とも、当たり前ですが、よく意味がわかってないですね。

 

本当は、ここで諦めてもいいですが、後ろのFK2から伝わる気持ちや、芳村さんと岩森さんの努力を無に帰したくない。

私がお姉ちゃんにあげた、蒼い宝石がドリンクホルダーに付けられている。それが、振動によってゆらゆらと揺れている。

皆さんの希望を無に化けさせないように、しないと...

 

「黒神?」

岩森さんが心配そうに聞いてくる。

 

「大丈夫ですよ、見ててくださいね。」

黒神がそう私に笑顔で言ってくる。

彼女の瞳はいつもに増して...蒼かった気がする。

 

 

「先輩...スープラの動き、さっきより良くないですか?」

新人が幻を見ているかのように言ってくる

 

「良い、凄く、ドライバーが変わったのか?な、なぜ」

自分はプロではないので、何をすればコーナーが早く抜けれるのかは、口では説明出来ない...けど、このスープラのドライバーがコーナーに対するモチベーションが変わったのだけは分かった。

 

「先輩...スープラがGTOを捉えました...い、行け...」

新人はまるで、スープラに取り憑かれたかの様に応援する。

 

「頼む、抜いてくれ...あの水素エンジンを...」

自分も自分で軽いやつだと思った。

 

「黒神ちゃん頑張って...」

 

「黒神...あと少し...行って...」

皆さんの応援ほど嬉しいものはないですね。

 

そうして、スープラはGTOをオーバーテイクした。

まだ、SFは、始まってはない...だけども私達の中で何かが始まった。

 

「先輩...自分...お金貯めて、欲しい車見つけました。」

 

「へぇ...なにを?」

答えは分かっていた。

 

「A80スープラです。」

こうして、今日のバトルは伝説になった...と思う。

 

高速道路をまた戻って、市内に戻る。

 

「黒神ちゃん、運転上手だったんだね、すごいかったよ」

芳村が褒める。確かに...上手すぎた。

 

「昔、サーキットとか行ってたの?」

 

「まぁ、お姉ちゃんの付き添いで少しぐらいは。」

蒼井に教えてもらったのかな?そう思うと納得するような...しないような。

 

「あ、もう、こんな時間ですか、お姉ちゃんの所に戻らないと...お2人とも、今日はありがとうございました。」そう言って、黒神は、頭を下げ、すぐに走っていく。

 

「うん、黒神ちゃんまたね。」

芳村が、手を振ってそう言う。

 

「...またね」

私も芳村に便乗して手を振ったが恥ずかしいものがある。

 

「はい、あ、お二人とも、今さっきのことは、お姉ちゃんには、絶対内緒ですよ。」そう口に指を当てて、言ってくる。

 

黒神が人混みに消えていき、私達も帰るかという流れになった。

しかし、姉に内緒とは...うーん、複雑なのかもね...そう流して終わらせることにした。

 

スープラに乗り込み、学校へ向かう。

 

「疲れたね、今年のゴールデンウィークは」

芳村がスープラを運転しながら、そう言ってくる。

 

「確かに...半分ぐらいエンジンに費やしてたからね。」

 

「確かに...それにHKN先生にもお世話になったし...ッァ!」

芳村が何かを思い出しのか、そう言ってくる。

信号がちょうど赤になり、芳村が今だと言わんばかりにバックから紙を取る。

 

「これは?」

芳村から、渡された紙の内容を見る前に聞いてみる。

 

「岩森...もし...岩森がいいって言うなら参加してほしいな」

そう、芳村が言ってくるが、眠たくなったのか...意識が...遠ざかっていく...

 

一通りの説明が終わって、岩森に感想を聞こうと思うと...寝ていた。学校に着いたので、起こそうかと思ったが...その前にやることがある。私は、手元にあった紙袋から物を取り出す。

 

「おーい、岩森起きなよ。」

芳村がゆさゆさと私を揺らしてきて、目が覚める。

 

「うーん、おはよう...そして今日も一日お疲れ様でした」

 

「結局寝ちゃうのね...いいから、起きなって」

そう言って、芳村に起こされる...眠いのか知らないが、頭が少し重たい。

 

「うう、芳村...運転ありがとう...」

 

「いいよいいよ。今日は疲れたし、帰ろうか」

そうは言っているが、今の芳村は疲れたというより嬉しそうに見えたが置いておこう。

 

「それじゃあ、お疲れ様」

そう言って、約5分で家に帰る。

鍵が掛かってないので、親か姉が居るのだろう。

 

「ただいま...」

返事はない...と言うことは、上かな、2階に上がり、姉の部屋に向かう。

 

「失礼するよ。」

そう言って、姉の部屋のドアを開けると、姉がいた。

 

「ん、学校行ってたの......ん??」

姉の反応が変だった。

 

「なんか。あった?」

そう言っていると、姉が携帯を私に向け、写真を撮り始める。

 

「え、ん?なに?」

 

「え?あんた、イメチェンしたの?そのリボン、似合ってるわよ。」

 

「え?リボン」

そう言って、髪を触ると、布の感触がする。

その布を取ると、芳村が買っていたリボンをかなり小さくした物が取れた。

 

「お姉ちゃん、嬉しいわ。」

そう言って、涙を拭く動作をしている。

私は、私で頭がオーバーヒートしそうだ。

姉から逃げ、自室へ逃げ込む。

芳村に連絡しようと思ったが、連絡先を交換してないことに気が付き諦める。

鏡の前に立ち、リボンをつける...凄い恥ずかしいけど、芳村が買ってくれたんだし、着けないと可哀想だよね。

そう言えば、芳村が渡してきたプリントってなんだったけ。

そんな、感じで私の高校生活初のゴールデンウィークは終わりを告げた。

 

ピピピピピピ...ガチャ

目指し時計がうるさい。朝弱いんだし、揺れるベットが羨ましいと思いながら、ベットを後にする。

いつもより、40分も早く起きたので眠たい。

いつも通りの朝の準備に加えて、髪の毛を整え、リボンを付ける。それを姉に見られて、眼福だわーと言われたのは置いておこう。

 

髪を整えるのもあるが、今日40分早く起きたのには、もう一つ理由がある。

 

「...暇ね」

私以外誰もいない部室に声が響く。

 

「と言うか...私以外の部員全員幽霊化してるって...泣けてくるわね。」そう自分に言い聞かせて、絵を描き始める。

 

ガラガラと音を立て、部室のドアが開く。

誰なんだろうと思いながら入ってくるのを待つと...

 

『失礼します。』

そう言って、芳村と岩森が部室に入ってくる。

 

「あら、2人とも...どうしたの?イメチェン?かわいい」

そう、2人ともお揃いのリボンを付けていたので、来るものがある。やばい、写真撮りたい。

 

「いや、その、芳村が買ってくれて...」

へ、へぇ。やばい、本気で2人くっついてくれないかなと思った。

 

「それで、イメチェン報告でここまで来たわけじゃないでしょ?」

 

「はい、そうなんですよ。先生」

芳村が目を輝かせながら、岩森からプリントを取ってこちらに持ってくる。

 

えーと、内容は...入部届け...

 

「先生、私と岩森を情報電子部に入れてください。」

 

「...あなた達、情報電子部は甘くないわよ。」

そう言うと、岩森がえ?何言っての?って顔で見てくるけど、気にしない。

 

「はい、分かってますよ。それでも入りたいんです。」

岩森がそう言ってきた。

 

「そ、そっか、しょうがないわね。いいわ。入部させてあげるわよ。」

 

「ありがとうございます。先生、私頑張ります。」

何を頑張るのか、知らないけど、頷いた。

 

「私も先生の役に立てるよう...」

そのまま、岩森が寝崩れていく。

 

「ちょっと、岩森...しょうがないわね...」

倒れた岩森を救出しながら、見た空の色は蒼かった。

 

HKN先生が岩森を救出している時に携帯にメッセージが来た。

なんだろうと、思いメッセージを開くと内容は

 

「SF初戦、地方大会第1戦、日程決まったよ。日程は来週の日曜日だって。」と言う織田ちゃんからのメールだった。



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SFと改革の初まりの初まり

今日の自動車科は、みんなざわついている。

 

「葵ちゃん、なんでみんなざわついてんだろうね?」

そう言うと、葵ちゃんが携帯の画面を私に見せた。

 

「お姉ちゃん、今日はSFの開催日決定日なんだよ。ほら」

そう言って、携帯に書いてある日にちと今日の日付を確認する、えーと来週の日曜日か。

 

「来週の日曜日かー早いね。」

 

「うん、お姉ちゃんだって、今日初めて、新しいスープラに乗ることになるから、早いうちに慣れないとね。」

 

「うん、頑張らないとね。」

そう言って、ガレージに向かう。

 

「ええ、今回は地方大会第1戦で使われるサーキット、岡山国際サーキットの特徴について説明しますね。」織田が先生がいるからか、丁寧な口調でプリントを見ながら説明する。

 

「まず、SFは地方大会が3戦、8月までにあり、本戦が8月から次の年の2月まで5戦あるという感じです。地方大会の上位2台が本戦に行けると言うことらしいです。」自分達の地域は、中国、四国地方と合同地方でまとめられていると、言うことも織田さんが付け足した。

 

「それでは、岡山国際サーキットの説明に入りますね。」

そう言うと、織田はレーザーポイントを取り出して、説明の準備をする。レーザーポイントってこのために...買ったのかな?違うよね...

 

「岡山国際サーキットのレーシングコースは、コース全長3703m、コース幅12~15mのコースです。路面は超速乾製のアスファルト舗装となっています。全部で13のコーナーと2本のストーレートで構成されていて、シンプルかつ大胆なコースですね。」織田の見事な、まとめに感動する。

 

「なるほど、それでラップ数はどれぐらいなのかな?」

岩森がそう聞いてくる。岩森って真面目になったら、すごい真剣になるよね。と思いながら聞く。

 

「えーと、42ラップで1回以上のピットインが条件ですね。」

スーパーGTなどで、ひとつの醍醐味はピット作業だと言われている。ピット作業で不具合が起き、抜く抜き返される。というドラマがよくある。それぐらい、ピット作業は戦場として大事なところである。

 

「なるほど、織田ちゃんなら、私達が練習するのは...」

 

「はい、ピット作業で時間短縮のための練習ですね。」

そう言うと芳村は了解と敬礼する。

 

「それで、蒼井さんは、グランドで岡山国際サーキットでの13のコーナーを再現した物があるので、そこで練習してください。」

 

「りょーかい!」

そう言って私達のSFに向けての練習は始まった。

 

スープラの車内に乗り込む。エンジンを始動させると、岩森が言ってた、人工知能「希」に声をかけられる。

 

「初めまして、私は希です。よろしくお願いします」

私達と同じ制服を着ていて、可愛かった。

 

「宜しくね、私は蒼井って言うわ。」

 

「蒼井さんですね、これからは、要らないかもですが、私がレース等をサポートさせて頂きますね。」

 

「お願いね、要らないなんて、絶対ないよ」

 

「はい!お願いします。それでは、再現コースの説明をさせていただきます。」

 

「こちらこそ。お願いします。」

そう言うと、希が指定した場所まで移動する。

 

「岡山国際サーキットは、ストーレートが2つもあり、馬力勝負な部分もありますが、2つのコーナーが連続する、レッドマンコーナーと言うところがあります。ここで蒼井さんには勝負をつけて欲しいんです。」

 

「OK、やって見るよ。」

そう言って、アクセルを全開にする。

ブォォと言う音がその気にさせる。

だけど...芳村と岩森、何をしたんだ、速すぎる。

超軽量化と598馬力でスープラは、戦闘機へと化けた。

 

「これは...ちょっと、本気でやらないとね...」

葵ちゃんから貰った、宝石を眺める。今日もよろしくね。蒼弾。

それに応えるかのように、甲高い音がグランドに響いた。

 

エアーインパクトの音が鳴り響く中、お元気ですか?私、芳村は約1時間、タイヤを外してはつけてを繰り返しております。

 

「流石に疲れましたね。」

そう黒神ちゃんが言ってくる。確かに...この単純な作業をずっと繰り返すと、体力もだけど、精神的にくるものがあるよね。

 

「休憩にしますか?」

けんちゃんがそう言って、休憩に入る。

この時期に、つなぎを着ると、ものすごい暑い...これが夏になると...悪夢だね。そう思っていると岩森に声をかけられる。

 

「芳村、自動販売機行くけど...どうかな?」

 

「いいけど、自動販売機って丁寧に言うんだね。意外」

 

「いや、本当は自販機だけど、通じなかったらいけないから」

そう言って、岩森も暑かったのか、つなぎの袖を捲る。

 

「暑い...岩森って、自販機で何買うの?」

そう言うと、一瞬考えてすぐに

 

「炭酸飲料かな、やっぱり」

まぁ、部屋にあれだけあるし、そりゃそうかと思った。

 

「私は...コーヒーかな」

 

「へぇ、意外だわ。」

岩森が正気か?と目で訴えてくる。

「ちゃんと、飲めるもん、ブラックも」

 

「す、すごいもんだ、あ、私が奢るよ。」

そう言って、岩森が私の前に立つ。

 

「え?いやいや、いいよ。」

そう言うと、岩森が頭に付けている、リボンを指さす。

 

「ほ、ほら、こんなものでし返せないけど...」

そう言って、岩森がブラックコーヒーの缶を渡してくる。

 

「うん、ありがとうね。嬉しいよ。」

そう言って岩森から受け取った缶コーヒーは冷たかった。

 

 

「暑い...」

岡山国際サーキットのコーナーを再現したコースを練習していたが、集中が切れてたので、車を出る。

スープラは、純正のクーラーはレスされて、小さいクーラーを直接自分に当てることによって、パワーの減少を少なくしている。

直接当てているので、涼しいのだが...暑いものは暑い。

 

「自販機行こうかな...」

そう悩んでいると、けんちゃんが炭酸飲料を抱えてやってきた。

 

「真夜ちゃん、お疲れ様、これどうぞ。」

そう言って、炭酸飲料をくれた。

 

「ありがとう、けんちゃん、あ、お金払うよ。」

そう言うと、けんちゃんはいいよいいよ。と言って拒んだ。

 

「真夜ちゃん、どう、本番行けそう?」

 

「うん、けんちゃんがしてくれた軽量化と芳村と岩森のエンジンチューンのおかげで。完璧だよ」

 

「そっか...それは嬉しいことだね。頑張ってね。」

 

「うん。ピット練習はどんな感じ?」

 

「タイヤ交換と給油の練習ばっかりだけど、本番でミスしないためにも、頑張ってるよ。」

 

「そっか、よーしこっちも負けてられないな。頑張るよ。」

そう言って、スープラの車内に戻る。

 

「真夜ちゃん、頑張ってね。」

その言葉で、やる気が蘇る。

さて、頑張りますか。

そう言って見た、葵ちゃんからもらった宝石の色は蒼かった。

 

日が沈むのが、少し遅くなった気がするなと...思いながら帰り道を歩く。

 

『ただいま』

葵ちゃんと一緒に家に帰る。

 

「お姉ちゃん、お疲れ様、晩御飯作るけど、何が食べたい?」

葵ちゃんが、制服から部屋着に着替えるとそう言ってくる。

 

「そうだね...うーん、たまには外に食べに行く?」

葵ちゃんもゴールデンウィーク明けの学校だし、あまり負担はかけたくない。

 

「え?いや、お金勿体無いし、いいよ。お姉ちゃん」

 

「そ、そうなの、けど、葵ちゃんも疲れただろうしたまには...良いかなと思うんだけどな。」

 

「...それじゃあ、お言葉に甘えて」

葵ちゃんも疲れていたみたいで受け入れてくれた。

 

「葵ちゃん...ここに行こう。」

私がネットで適当に検索して見つけた、温泉と飲食店がセットである場所を見せる。

 

「う...生き返るね...」

温泉に入って一番感動することは、足を伸ばしても全然平気と言うこの浴槽の広さだと思いながら、お湯に浸かる。

 

「お姉ちゃん、髪洗いっこしようよ。」

そう言って、葵ちゃんがはしゃぐ。

 

「家でも、毎日それだよね...まぁ、いいけど」

葵ちゃんの髪を洗いながら思ったことがあったので、言ってみた。

 

「そう言えば、私と葵ちゃんって一応、姉妹だけあって、髪も、今となっては...目の色も一緒だよね。」そう言って私は、ゴールデンウィーク中、眼科に通っても治らなかった、蒼い目を指して言う。

 

「そ、そうだね...全く一緒...」

そう言うと、地雷を踏んだのか...と思うぐらい、葵ちゃんの気分が落ち込んだ。

 

「え、えーと...」

 

「すごい、嬉しいよ。お姉ちゃんと一緒なんて嬉しいな。」

あ、いつもの葵ちゃんだと、安心して髪洗いを続行する。

 

「そう言えば、お姉ちゃんさ、岡山国際サーキットって走るの初めてなの?」今度は、葵ちゃんが私の髪を洗ってくれながら、そう聞いてくる。

 

「うん、走ったことないし、行ったこともないよ。」

私の記憶は、私が中学の頃走ってたサーキットしかないと言っている。

 

「そ、そうなんだね...大変だね、それは...」

そう言うと、葵ちゃんは私が未走行だからか、知らないが残念そうに言ってくる。

 

「大丈夫だよ、みんなが改造してくれたスープラだもん、絶対1位を取ってみせるよ。」

 

「うん、頑張ってね。私も応援してるよ。」

そう言って葵ちゃんは髪についている、シャンプーを洗い流す。

 

そこからは先は、疲れてたからか、あんまり覚えてないけど、ご飯が美味しかったのだけは、覚えている。

 

 

次の日、偶然、岩森と芳村に通学路で会ったので、葵ちゃん含め4人で登校した。

私達のスープラが眠るガレージに向かうと、先生と社会人であろう2人が話をしている。

みんなで、社交辞令である、挨拶をして、ガレージに向かおうとすると、先生に呼び止められた。

 

「あ、こいつがその、スープラのドライバー蒼井です。」

そう言って、先生に前に押し出される。

 

「へぇ、この子があの時の...」

そう言うと、悪意は無いのだろうが...ジロジロと全身を見られる。

 

「え、えっと...あの時って?何でしょうか?」

正直、会ったことがない気がするので聞いてみた。

 

「あ、ああ、まぁ、覚えてたらすごいよね。ちょっと待ってて」そう言うと、走ってどこかに行き、激しいエキゾーストノートと共にシビックのFK2がこちらに来る。

 

「え、えっと...こ、これで思い出してくれたかな?」

そう言うと、何故か、後ろの岩森達が激しく動揺した気がするが、全く思い出せない。

 

「え、えーと、どこかでバトルかなんかしましったけ?」

 

「はい、あの時、戦場で君の走りを見てこれだと思ってね」

戦場...ってどこだよって本気で思って後ろの岩森達に聞こうとしたが、彼女達も戦場という言葉を知らないのか、かなり焦っている。

 

「そ、そうなんですか...褒めていただいて...嬉しいです」

取り敢えず、話に合わせることにした...戦場ね、後で調べるか、絶対リアルな戦場についてしかヒットしないだろうけど。

 

「あの時、GTOを抜いた時は、もう本当に感動したんだ、君の走りに...なにか、コツとかあるのかな?」

GTO...え?最近、絶滅したと思われる、GTO...どっかで戦ったの...それに、どうやって抜いたか、分からないのにコツとか言われてもな...

 

「え、えっと、取り敢えず、諦めないで...努力することだと思います...」我ながら何言ってんだこいつと思う。

本当に、助け舟が欲しいので、後ろの岩森達に、目で助けてと送ったが、彼女達もどうするんだ、みたいな顔をしてるので...助けは来ないだろう。

 

「ま、まぁ、こんな話をするためだけに、ここに来たんじゃないんだ。」そう言って、社会人であろう方×2は、タイヤ〇ゼンのCMで見た事のあるような感じで、タイヤを転がして来た。

 

「この、我社のタイヤをSFで使ってくれないかな?」

いい物は、何となく、オーラと言うと違う気がするけど、これは絶対いい物って思える確信的な何かが纏っていると思う。

このタイヤは、そのオーラ的な物が纏われている。

 

「これは...普通のタイヤ...ではないですよね?」

 

「これは我社のタイヤのプロトタイプ『Zeke』です。」

そう、タイヤをポンポンと叩きながら言ってきた。

 

「Zekeは、どんなタイヤなんですか?」

そう言うと、待ってましたと言わんばかりに

 

「この、タイヤは...エアロタイヤなんですよ。」

エアロタイヤは、ロードバイクの空気抵抗軽減を目的として生まれた、タイヤである。

近頃のロードバイクは、ワイヤーはフレームに内蔵、ブレーキなども、フレームの太さに合うように専用のブレーキが作られるなど、徹底的に空気抵抗軽減を目的としてきている。

ロードバイクの軽量化は、タイヤやワイヤーと面白い所まで、軽量化出来るとして、マニアックやファンから愛されている。

しかし、そんな、タイヤの軽量化も限界が来たのである。

そこで、着目されたのは、軽くて、ロードバイクの目的である、空気抵抗軽減を両立した物それが、エアロタイヤである。

 

「車には、あまり恩恵が得られないかもしれないですが、しない物より、した物が良い、それをコンセプトに開発しました。」

あ、Zekeの由来は、空気抵抗の少ない戦闘機で有名な零戦のコードネームから取りました。と付け加えてくれた。

 

「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね。」

 

「はい、感想などありましたら、連絡ください。」

そう言って、連絡先を渡されて、去っていった。

 

「黒神...あ、あのFK2って...」

後ろから、岩森の声が聞こえてくる。

 

「え?何のことですか?」

葵ちゃんの瞳に虹彩が無い気がするが...気にしない。

 

「い、いや...何もないです。」

岩森もそれを悟ったのか、深く追求しないことにした。

 

今日も、岡山国際サーキットの模擬コースで練習をし、明後日がレース当日、一日前の明日から岡山に行くことになったので、家に帰って、荷造りしないといけないので、早めの解散となった。

 

「お姉ちゃん、荷造り終わった?」

隣で、わざわざ、チェック表を作り、チェック作業をしている葵ちゃんに声をかけられる。

 

「うん、終わったよ。と言っても1泊するだけなんだけどね。」

学生服に着替えとウェアを入れただけのリュックを叩く。

 

「そう言えば、葵ちゃん荷物ちょっと多くない?」

葵ちゃんは、私の荷物の1.5倍ぐらいある量をリュックに入れていたので聞いてみる。

まぁ、せいぜい6個ぐらいの準備物の1.5倍って些細なものだけど、自分でツッコンだら負けな気がしてきた。

 

「これはね...朋ちゃんの衣装なんだけどね...」

 

「そうなの?見てもいい?」

そう言って、見せてもらうと...

 

「こ、これ芳村が望んだ物なの?」

 

「いいえ、岩森さんと企画して作ってもらいました」

そう言って、笑顔で言ってくる当たり、凄いなと思う。

ってか、外の時オーラーが出てるよ。

葵ちゃんって、家では結構言葉崩すけど、外だと優等生になるからな...いい事だけども。

 

「ってか、え?これ必要なの?」

私がここまで、ビックリするのも無理はない...

だって、私が今手に持ってるものは、レースクィーンが着る、あの衣装なんだから。

流石に、スク水見たいなやつではなく、スカートタイプなのだが、それでも、露出部分は多いと思う...可哀想に...

まぁ、しかし、結構芳村に似合いそうな感じの衣装なのが、無駄に凄いと思う。

 

「お姉ちゃん、ちゃんとSFの出場条件でレースクィーンは必要って書いてあるんだよ。」

 

「そ、そうなの?ま、マジですか...」

...ドライバーで良かったと心底思った。

 

「けど、なんかもう1着あるけど?これは?」

 

「それはね...予備だよ...予備。」

葵ちゃんって、結構オーラー出る人なのね...と思いこれ以上深入りするのは、危険だと判断した。

 

「そっか...破れたら、失格になるからね...うんうん。」

そう言うしか、なかった。

 

「それじゃあ、そろそろ寝ますか。」

そう言って、布団に入ると当然ながら、葵ちゃんも布団に入ってきたが、流石に慣れたのか、普通に寝ることが出来た。

 

今日は、最近あまり、行ってなかった夢の世界に行った。

 

今日は、家で誰かと話してる途中からスタートした。

「...いいか、真夜の蒼創は感情を無くすことじゃないんだ...」

 

「蒼創ってなに?」

私は、蒼創という言葉すら知らないので聞いてみる。

 

「おいおい、新しいボケか?面白いな」

そう言って、肩を緩く叩かれながら、笑われる。

 

「え?ハハハ、お、面白かった?」

駄目だ...こいつ、使えねぇ

こういう人って、大体都合よく事情とか説明してくれる物じゃないのかな?

 

「まぁ、ここから先は、自分で試してみな。」

い、イヤイヤ...結局なんのヒントも得られませんでした。

え、これで終わりなの...今日のは、ハズレだな...

 

「お姉ちゃん...朝だよ」

妹が激しく揺さぶって来たので、起きた。

私に来世があるのなら、朝に強いDNAが欲しいな...

 

「葵ちゃん、おはよう...朝ごはんありがとうね」

そう言って、葵ちゃんが焼いたパンを食べながら、意識を回復させる。

 

「うんうん、今日は集合時間が思ったより早いから、急がないとね。」

 

「りょーかい。」

そう言って、私の平凡?な日々が始まる。

 

家のドアに鍵をかけて、葵ちゃんと登校する。

電車に揺られて、電車を降りて、徒歩で歩き、やっと学校についた。

東雲工業高校、いい加減に車通学常時OKにしてくれないかなと思いつつ、校内に入る。

 

「おーらーい、おーらーい」

ガレージに到着したら、丁度、織田さんがスープラをトラックに誘導していた。

ガシャンと音を立て、トラックの荷台がしまっていく。

 

「お疲れ様です、織田さん」

スープラの車内から出てきてた。けんちゃんが織田に声をかけている。

 

「お疲れ様、いやー朝からいい仕事したねー」

そう言って、織田がミネラルウォーターを飲みながら言った。

 

「おはようございます。2人とも」

葵ちゃんが、そんな二人の元に今来たかのように、入っていった。

 

「おはようございます、黒神ちゃん、いい朝ですね」

 

「はい、佐々木さん、昨日はよく眠れましたか?」

...2人の会話レベルが高すぎて...2人だけの会話を聞くとお嬢様校と間違えられるのじゃと心配してしまう。

 

「おはよう...けんちゃん。」

 

「おはよう、真夜ちゃん、体調は大丈夫?岡山楽しみだね」

そう言って、けんちゃんは岡山のパンフレットを見せてくる。けんちゃんも、この通り、一部の人限定で素が出てしまう。

 

「今日の夜ご飯って、どこ食べに行くんだろうね?楽しみ」

織田がけんちゃんから、パンフレットを借りて、飲食店を探している。

 

『おはようございます。』

岩森と芳村が仲良く歩いてくる。

 

「おはよう。加奈江ちゃんって最近、学校来るの早くなったよね。」

織田が皆が聞きたかったけど、聞にくいことを聞いてくれた。

 

「まぁ、部活の朝の活動のために、早く来ないとだから」

 

「へぇ、あれ?加奈江ちゃんって部活入ってたの?」

恐らく、この場の皆が思ったことを聞いてくれた。

 

「うん、情報電子部に芳村とね入部したんだ」

 

「へ、へぇ...活動内容とかは?」

織田が又又、皆が思ったことを聞いてくれた。

 

「...」

岩森が、芳村にSOSを出してる気がする。

 

「えっとね...普通(先生の絵のモデル)かな...」

芳村が含みのある感じで言ってくる。

 

「普通か...他には...」

「えっと...後は、話す(薄い本についての討論)ぐらい...」

芳村がオブラートに包みまくった感じで言ってくる。

愛想笑いが、ここまで冷たいと思ったことは無い。

 

「そっか...大変そうだね。」

織田も流石にこれ以上は深くは入らなかった。

 

「よし、みんな揃ったか?出発するぞ?」

先生がナイスなタイミングで来てくれたのでそのまま、出発する。SF初陣、絶対に1位を取って見せると...心に決めて、東雲工業高校を後にした。

 

今回のバスの車内は、前回の呉に行った時のような沈黙はなく、賑やかだった。みんな大分仲良くなったなと思いながら話を聞いた。

 

「芳村さん、これ...貴方が今日の主役ですよ。」

そう言って、葵ちゃんが芳村に早速チェックメイトを決めにかかる。

 

「ありがとうございます...え、えっと、これ?」

みんなの前で恐る恐る、芳村が布を広げると、昨日私が見た、レースクィーンになるための衣装が生まれた。

 

「...え、え、む...無理です、こんなの...え、え、」

芳村が、悶えている。え、可愛いな...これは...

 

「芳村...着てみよう。」

岩森が攻め継する。

 

「い、嫌だ...む、無理だよ...こんなの...」

うん、分かるよ...芳村、私も無理だと思う。

そう同情していたが、周りは...も、もう消火不可能だった。

 

「あ、私...自分の親の会社のロゴ入り傘ありますよ。これでフル装備ですね。」けんちゃんまで、乗り気だった。

 

「私の...心の中に傘をさして欲しいです。」

どうやら...いや分かっていたが、芳村の心の中は大雨らしい。

 

「ほら、早速着てみなよ。試着、試着。」

織田がそう言って、急かす。

 

「い...嫌です。こ、これを着るぐらいなら...せ、切腹します」そこまでか...う、うーむこれは...あれだな...

 

「大丈夫です。朋ちゃん。こんな時のために、もう1着用意してたんですよ。」

そう言って、葵ちゃんはもう1着を取り出して...岩森に渡した。

 

「え、黒神様...これは...」

岩森が、様をつけるぐらいに、動揺している。

 

「朋ちゃんのために、着てあげてください。」

葵ちゃん完全にSだった...

 

「え、いや......え?」

岩森は、もはや声にならない声で、助けを求めている。

 

「岩森...いや、加奈江ちゃんやろう。」

芳村が岩森がやるならば...と言った気で迫る。

 

「く、黒神...謀ったな...」

岩森が断末魔に近い形で叫ぶ

 

「ふふ、貴方はいい奴だったが、目の前のことに集中しすぎることがいけないのだよ...」

 

「く、こうなったら...この衣装を大量生産して、みんなに着させてやる...」なんか、昔辺りに流行った機動戦士のパロコメントが飛び交った気がするが...気にしない。

 

ここから、4対2による。楽しいお着替えのお時間が始まった。

 

「え、やばい...岩森も芳村も可愛すぎる...」

織田がそう言うのも、分かる気がする。

 

「2人とも、似合ってますよ。」

そう言いながら、携帯のカメラを連写しながらけんちゃんが言う。

 

「2人とも...眼福です。」

あ、葵ちゃん、化けの皮が、もうビリビリだよ。とツッコミたかったが辞めておこう。

 

『世の中から...存在を抹消して欲しいです。』

2人が、そんな感じのことを言った気がするが、無視だ。

衣装作成者様、これは...ナイスです。

そう思いながら...今のこの光景を目に焼き付けた。

 

そこから、またしばらく、バスに揺られ遂に目的地が見えてくる。

 

「おーい、岡山国際サーキットに着いたぞ。」

先生が、さっさと降りろと急かす。

 

バスを降りると、ピットで使う備品とスープラを乗せたトラックも到着していた。

 

「さてさて、私達はピットの準備してるから、蒼井ちゃんは、走ってきなよ。」そう言って、織田からスープラの鍵を貰う。

 

さてさて、バケットシートと4点式のシートベルトをして付けて、コースを見渡す。

SFは、予選タイムによって、明日の決戦でのスタートポジションが決まる。

予選タイムの順位によって、前線からスタート出来るので、気は抜けない。

 

「お姉ちゃん、今サーキット内に4台マシーンいる見たいだから、全開走行時は気をつけてね。」

 

「葵ちゃんありがとうね、行ってくるよ。」

そう言って、タイヤを温めながら走っていく。

 

「蒼井さん、路面温度、気温に適切な空燃比などに設定しました、いつでも全開で行ってもらって結構ですよ。」

希が、耳にすっと入る声でそう言ってくる。

 

1周軽く回った所で、全開走行に入る。

お願いね、葵ちゃん。そう言ってドリンクホルダーに付けられた、蒼い宝石を見つめると、感情がログアウトした気がする。

 

「蒼井さん、お疲れ様でした。」

希が10周ぐらいサーキットを走った時にそう行ってくる。

 

「ありがとうね、タイムは?良いかな?」

 

「はい、良好だと思いますが3位ですね。」

希が励ますように言ってくる。

 

「ありゃりゃ、私より速いチーム名は分かる?」

結構いい感じで走れてただけに悔しい。

 

「えーと。広島国際工業高校と山口県立工業高校ですね。」

 

「...流石NSX、凄いね。」

国際工業高校がNSXと言うことは知ってるが、山口の高校の車は知らない。

 

「山口県立工業高校は、RX-9ですね。」

RX-9か...RX-8の水素エンジンの後継エンジンを搭載した車で、車会では、かなり人気の車...と言うぐらいしか私は知らない。

 

「水素に負けるなんて...悔しいけど、そろそろ、時間だから帰らないとね。」SFの予選タイムをとっていい時間は20分と決まっている。

明日は負けないからねーと捨て台詞を言って去っていった。

 

自分達がお世話になる、旅館に着くと夜ご飯を食べに行かないと行けない時間だった。

広島県工業高校生一同と書かれた、食堂に行くと、呉工業と、国際工業生は集まっていた。

 

「東雲工業高校のみなさん、お待ちしてました。」

竹下さんがそう言って、私達の席を指してくれた。

席につくと、隣は、国際工業高校のNSXのドライバー井手元響子がいた。

 

「響子久しぶりだね、元気そうで何よりだよ。」

 

「真夜も、元気そうだね。」

早く褒めてよ、オーラが出てたので本題に入る。

 

「響子...すごいね、予選タイム1位なんて何事?」

 

「ふふ、そりゃだってなれ...いや、何もないわ。」

そう言って、響子は何か言おうとしたが辞めた。

 

「そ、そうなんだ...本番では...負けないよ」

 

「ふふ、私達のNSXは普通の車とはひと味もふた味も違うんだよ。」

 

「こ、こっちは、本気の9割ぐらいしか...出てないもん」

私も負けじと、アピールらしきものをする。

 

「真夜...それ結構ガチで走ってたってことじゃ...」

...真相を突かれてしまったので、何も言えない。

 

「まぁ、明日は...お互い楽しもう。」

そう、響子と誓って、夜ご飯を食べ始めた。

 

「に、逃げたな...」

そう、響子が言った気がするが、気にしない。

 

自分達、東雲工業高校生用の部屋に戻ってきて、私は疲れたのか...そのまま寝てしまった。

 

今日の夢は、確実に創造話だろう。

どこかのサーキットで私が走っている夢だった。

私の前を赤い車が走っている。

どんなに頑張っても、抜けない、相手の車が速いのは勿論、上手い...突如前を走る車がウィンカーで付いてこいと言っているようなので付いて行く。

車を降りると、響子が赤い車から降りてきた。

 

「き、響子...なの?」

響子は、勿論運転技術は高い方だけど、ここまで上手かったのか...と感動する。

 

「なに、言っての真夜。抜けないからって...」

響子が、そう言って、笑ってくる

 

「そ、そうだよ...速すぎない?なんで...」

これが、もし現実の速さなら付いていけないと思う。

 

「そりゃ、って...あんたも結構走ってるでしょ?」

響子が熱はないのかとおでこを触ってくる。

 

「え?冗談キツイな...コツとかあるの?」

イマイチ会話が成り立っていない気がするが...進める

 

「うーんけど、私このコースで苦手な所があるんだよね。」

 

「え?そうなの?どこどこ?」

これが、予知夢なのだとしたら...使えるものは使いたい。

少々強引でもいいので聞きにかかる。

 

「えー、それは内緒ってことで。」

そう言って、響子は、ほらほら走るよと車に乗っていく。

 

「この夢...最近需要なくね?」

そう叫んでしまった。

 

「真夜ちゃん...朝だよ」

その声と同時に毎朝揺らされるのとは、違った揺れがくる。

 

「朝か...ってけんちゃん?」

あ、そう言えば、岡山来てるんだったと思い出す。

 

「そうだよ、真夜ちゃん、ほらほら朝の支度しないと」

そう言って、けんちゃんに強制的に布団を出される。

 

朝の支度をさっさと済ませて、ようやく気がつく。

 

「あれ、けんちゃん皆は?」

そう言うと、けんちゃんは隣の部屋を指さす。

確かに、結構暴れ回ってるみたいだが...何事なの。

 

ドアを開けると、そこは...修羅場?だった。

 

「ほらほら、岩森さん、芳村さん着てください。」

そう言って、葵ちゃんが芳村達に布を押し付けている。

 

「む、無理だよ、次着たら...私、風邪引くの」

い、いや、何でだよって思ったが置いておこう。

言い訳も、可愛いしね。

 

「時間がないんだよ...早く受付行かないと失格になる」

織田が核心を刺したらしく。2人とも黙る

 

「こ、今回...だけ、ですからね。」

芳村が赤面しながら、着替える。

 

「あ、あれ加奈江ちゃんは?」

そう、加奈江ちゃんは、今さっきから全く動いていない。

 

「まさか...寝てる...」

え?この修羅場でよく寝れたなと感動する。

 

「と言うことは...無抵抗ですね。」

葵ちゃんが微笑み始める。

あ、これは...なんだその、岩森...ご愁傷様。

そう言って、私はドアを閉めた。

その後、後ろの方が騒がしくなった気がするが気にしない。

 

後ろのドアから4人が出てきたので、受付に行くが、芳村と岩森は重りでもついてるのか、脚が重そうだった。

 

受付に行くと、受付員の人が不思議そうに聞いてくる。

 

「あの、別に不備とかはないんですが、レースクィーンはどの高校も1人なんですが、大丈夫ですよね?別に些細なことなんですが」

 

「あ、はい。本人の希望みたいなので」

葵ちゃん...も、もう岩森達のLIFEは零よ...

 

とりあえず、これにて不備なく出場できるので、良かった?とみんなでスープラの眠るピットに行く。

 

「レース開始まで45分を今切りました。選手達は、スタートポジションに着いてください。」

そうアナウンスされる。

 

「よし、東雲工業高校!初陣...絶対勝つぞー」

私らしくなく、掛け声を放つ。

 

『おーー』

そう言って、私達はスタート位置に出向く。

 

ピットを出た時に見た空の色は...晴れていて蒼かった。



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