Fate/プリズマ☆士郎ちゃん (ギルディア シン 呪雷)
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序章
1話 プロローグ


【◼️◼️視点】

 

一面の焼け野原、未だ勢いの衰えない炎、

そんな中、2つの小さな影が走っていた。

兄と思われる少年、それに手を引かれ怯えながらも走る少女。そんな2人を囲むようにして上がった炎に、少年は息をのんだ。

(どうするっ、どうすればいい!!)

 

妹はすでに疲れ果て、もう意識もはっきりしていなかった。彼自身もう限界である。考えに考えた結果、彼は1つの結論に至った。

 

(妹は、妹だけは、絶対に生き延びさせる!!)

 

そう考えた途端、彼は妹の上に被さり、妹を炎から守ろうとした。そんな2人を、炎は容赦なく包み込んだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「誰か、誰かいないのか!!」

 

知らない人の声がする。誰だろう。とても悲しそうな声だ。私は声のする方を見た。

 

「誰でもいい!誰か返事をしてくれ!」

 

見るとそこには知らない男の人が泣きながら叫んでいた。私はここにいるよ……、駄目だ。声がでないよ。ここにいるのに………。私はこのまま死んでしまうのかな。そんな事を考えていると、男の人は私に気がついた。

 

「!?」

 

すぐに走ってきて、私を抱きかかえた。そして私がかろうじてだけど生きている事を確認すると、

 

「あぁ、生きていてくれたんだね!……ありがとう!」

 

その言葉を最後に、私は意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

目を覚ますと、そこには知らない天井があった。暫くその天井を見ていると意識がはっきりしてきた。そこで辺りを見渡してみると

 

「!?目が覚めたの!よかった……。あっ、早く先生を呼ばなきゃ!」

 

私に気がついた看護師さんが、とても驚いて先生を呼びに行った。先生の話によるとどうやら2日間目を覚まさなかったらしい。

 

「……ところで君、自分のお名前は言えるかな?」

「えっ?」

 

突然そんな事を言われて少し驚いた。でもそこで、自分が名前を言っていなかったことに気がついた。けど、そこで異変に気がついた。

私の名前は、私の、名…前……、あ、れ……?

 

「私、の、名前って……何?」

 

先生によると、私は記憶喪失らしい。先生の隣に立っていた看護師さんは泣きながら私の手を握ってくれたけど、私はあまりピンとこなくて、涙もでなかった。そのとき、私の頭に浮かんできた言葉があった。

「シロウ………。」

 

「!?もしかして記憶が少し戻ったのかい!?シロウというのは君の名前か?他に思いだしたことは?」

 

「……わかりません。」

 

私は少し怯えちゃったのか、小さな声でそういった。そんな様子を見たのか、看護師さんが「もう!怖がってるじゃないですか!」と怒りながらいうと、「す、すまない……。」と謝ってきた。

「いえ、びっくりしたのは本当ですけど、もう大丈夫です。」

 

と2人にいった。

 

「いや、本当にすまなかった。でも、何か思い出したらすぐにいってくれ。それと、せっかくだから君が思い出した、士郎、という名前を君の名前にしよう。」

 

「あ、いいですね。名前が無いと不便ですから。それじゃ、これからよろしくね、士郎君。」

「?君達は何か勘違いしているのではないか?。」

 

別の先生が1人そんな事を言いながら入ってきた。2人はどういうことかという眼差しでその人を見た。

「この子は女の子だ。」

 

瞬間、2人は固まった。

 

 

 

 

話を聞くと、 どうやら2人は私の手当てをしてくれた人じゃなかったらしく、なおかつ髪が短い私を男の子と勘違いしたらしい。先生や看護師さんは、私の名前を少し考えてこようと言ってくれたが、私は士郎という名前を忘れてはいけない、とても大切な名前の様に感じ、とっさに、

「…嫌!!」

 

と叫んでしまった。2人はそんな私に少し驚いていた。私ははっ、と我にかえり、咄嗟に顔を隠してしまった。

先生が優しい声で、何が嫌なのかを聞いてきた。

 

「わ…たし、シロウじゃ…なきゃ…やだ…。」

 

少し涙まじりに言うと、2人は、君がその名がいいなら、と言ってくれた。私は顔を出して心からの笑顔をむけた。

そして私は、士郎と名付けられた。

 

 

 

 

 

 

病院での生活は2週間くらい過ぎただろう。私はここでいろいろなことを教えてもらった。ご飯やお風呂、トイレやそのほかの生活に必要なこと。人にあったら挨拶をする事。当たり前の事らしいけれど今の私は、その当たり前の事さえも忘れている。でも、あまり気落ちはしていない。確かに昔の記憶はもうない。でも、私にはまだこれから先がある。だから、また最初から覚えていけばいい。そんな事をおもって、この2週間を過ごしてきたし、これからもそうして生きていくつもりだ。そんな2週間を過ぎた今日、私にお客さんがきているらしい。私が何も覚えてない事は伝えてあるって先生がいってたから少し安心だけど一体誰だろう……?

 

そこにコンコン、とドアを叩く音が聞こえた。私は先生だと思って「どうぞ〜。」と少し軽めに返事をしてしまった。ドアが開いた。すると知らない男の人と女の人がはいってきた。もしかして、この人たちが私の、お、お客さん!?その事に気づくとさっきの返事がとても恥ずかしくなって、思わず顔を隠してしまった。顔を隠すのは私の癖だと先生に笑われたから、もうしないって誓ったのに…うぅ〜…。そして布団から少しずつ顔を出して入ってきた2人を見た。2人はそんな私を見て、男の人は急に顔を抑えて後ろを向き、女の人はギラギラした目で私を見つめてくる。私、何かしたかな?

色々あってやっと落ち着いたらしく、男の人が私に話しかけてきた。

 

「やぁ、君が士郎ちゃんだね。」

 

「はい。」

 

「率直に聞くけどけど、きみはこのまま孤児院に預けられるのと、初めてあった夫婦に引き取られるの、どっちがいい?」

 

「えっ?」

突然の事で私は何が何だかわからなくなった。

 

「もう、切嗣ったら。そんな言い方じゃこの子も混乱するでしょう?」

 

女の人がそう言うと男の人は「あぁ、ごめん。」と謝った。

 

「ごめんなさいね。うちの人が。あなたも困っちゃったわよね。」

 

「い、いえ。」

 

そのあと話を聞くとどうやら2人は見ず知らずの私を引き取ってもいいというのだ。どうやら2人には娘もいて私にその子の姉になってほしいとも言われた。孤児院に行くのとこの人たちに引き取られるの、どちらも知らないところに行くならと私は深く頭を下げて、

 

「よろしくお願いします。」

 

そう返事をすると、女の人は、

 

「もう、そうじゃないでしょ。」

 

と言ってきた。え、何か違ったのかな、と私が考えていると、

「私達はこれから家族になるのよ。そんな緊張しないで。私達には笑顔を見せて。」

 

そう言われると、涙が出てきてしまった。それを拭って、2人に向かって、とびきりの笑顔で、

「よろしく!お父さん、お母さん!」

 

そう言うと、お父さんは倒れてしまい、お母さんは私に抱きついてきた。大丈夫かな、とも思ったけど、多分大丈夫だろう。

これからの生活が楽しみ!!

 





私はこういうのを書くのは初めてなので、正直不安です。
自分で何回も読み直しましたが、どこかおかしな点があるかもしれません。誤字なども含めて教えて頂けたら嬉しいです。また、感想やアドバイスもお待ちしています。


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2話 新たな家族

この物語を読んで下さり有難うございます。
小説を書くのはとてつもなく下手ですが、頑張りますので、よろしくお願いします。

ちなみに、私は国語が大の苦手です。


【士郎視点]

 

「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったね。」

 

私の身支度をしながら、お父さんは言った。

 

「僕は切嗣、衛宮切嗣だ。そして彼女はアイリ。アイリスフィール・フォン・アインツベルン。」

 

それに続いて今度はお母さんが話してきた。

「そして私達の家にメイドとしてセラとリズっていう姉妹と、イリヤっていう私達の娘、さっきも言った貴方の妹にあたる子が住んでいるの。」

 

「メイド?」

「所謂家のお手伝いさんね。私達は仕事で海外を飛び回っているの。だからイリヤちゃんのお世話を頼んだのよ。」

 

「へぇ〜。2人はどんな仕事をしているの?」

 

瞬間、2人は困ったような表情を浮かべた。私は何かいけない事を聞いてしまったのだろうか。

 

「……まぁ、また今度その事についてじっくり話そう。当分僕達もこっちにいるからね。……と、身支度はこんなものでいいだろう。」

私の荷物は病院でもらった着替えくらいしかなかったので、身支度にさほど時間はかからなかった。そこから退院の手続き、お世話になった先生への挨拶を済ませ、お父さん達の、いえ、私達の家に向かった。

 

 

 

 

 

家に着くと、そこには銀色の髪を1つに束ねたエプロン姿の女性が立っていた。誰だろう?と思いながら、その人を見ていると、

 

「お帰りなさいませ、旦那様、奥様。お荷物をお持ちします。」

と言って、お父さんとお母さんの荷物を持とうと、こっちに近付いてきた。お父さんは「ありがとう。」と荷物を手渡す。私は咄嗟にお母さんの後ろへ隠れてしまった。

 

「?奥様、そちらの子はどちら様ですか?」

 

女性はとても不思議そうな顔をして、問いかけてきた。

 

「あぁ、この子はこれから家族になる子よ。」.

 

「………はい?」

 

ほら、自己紹介は?とお母さんに前に出された。

 

「し、士郎です。これから、よろしくお願いします。」

 

女性は少しの間キョトンとしていたが、私が挨拶をした事を理解して、挨拶を返してきた。

 

「私はセラと申します。こちらこそよろしくお願いします。……ってそうではなく!この子は何処の子なのですか!?あと、家族になるとはどういう意味なのですか!?」

 

「とりあえず落ち着いて。そこら辺については僕から説明をする。まぁ、ひとまず中に入ろう。」

 

お父さんの一言で少し落ち着いたのか、セラさんはお母さんの荷物も受け取り、全員で家の中に入っいった。

 

「あ、おかえりなさ〜い。」

 

居間にはセラさんに似た短めの髪の女性と私よりも小さな白い髪の女の子がいた。

 

「リズ!!旦那様方に向かってそんな軽い挨拶がありますか!!仮にも貴方はこの家のメイドなのですよ!!それを!!」

 

「セラ怒りすぎ。そんな事だとすぐに老ける。」

 

「老けません!!だいたい貴方のせいです!!貴方はいつもいつも……!」

 

…なんかいきなり喧嘩を始めた。お父さん達は苦笑いしていた。そんな喧嘩の最中、短髪の女性が私に気づき、

 

「誰、その子?」

 

とセラさんよりくだけた言い方だったけど、同じ事を聞いてきた。私は同じように、

 

「士郎です。これからお世話になります。」

 

と挨拶をした。女性はセラさんの拳を受け流しながら、

 

「私はリーゼリット。長いからリズってよんで。」

 

と返してきた。私はその光景に呆気をとられていた。そんな私のところに、白い髪の女の子が近付いてきた。

 

「そしてこの子がイリヤだ。士郎はお姉ちゃんとしてこの子の面倒を見ること、いいね。」

 

私はイリヤを見て、この子だけは絶対守らなきゃいけないと思った。私はお姉ちゃん、そう、お姉ちゃんなんだから。

 

私にはイリヤに目線を合わせて、

 

「私、士郎。これからよろしくね、イリヤ。」

 

と告げた。イリヤは嬉しげな表情を浮かべた。私はそんなイリヤの頭を撫でた。

 

 

 

 

【切嗣視点】

 

「あの子達はもう寝たかい?」

 

「えぇ、2人仲良くね。」

 

「それは……ぜひ撮っておきたい。」

 

「あらあら、ダメよ切嗣。あの子達が起きてしまうかもしれないじゃない。特に士郎は慣れないところで寝るのだから、些細な事で起きてしまうと思うし。」

 

「それより!」

 

僕とアイリの話を遮るようにセラが割り込んできた。

「士郎さんは、一体何処のお子さんなのですか!その辺りを詳しくお聞きしたいのですが!」

 

「まぁ、落ち着いて。その事は今から説明するから。そんな大声を出したら、2人が起きてしまうだろう。」

 

娘達の安眠を守るため、セラをなだめる。

 

「…わかりました。申し訳ありません。」

 

「いや、わかってくれたらいい。」

 

そして僕は士郎について話をした。士郎があの大火災の生き残りで、死にかけていたところを僕が見つけて、「全て遠き理想郷《アヴァロン》」を移植してなんとか助けた事。助かったはいいけどそれまでの記憶を失い、行く宛てもないから、僕達が引き取ろうと決めた事。セラとリズは僕の話を聞いて、反応に困っていた。それは当然の反応と言えるだろう。僕もこんな状況にあったら同じように反応できないだろう。そんな時、すっ、とリズが手を挙げた。

 

「士郎には魔術を教えるの?」

 

その瞬間、僕は顔がこわばったのを感じた。

 

「…………」

 

居間に流れる沈黙。これはしっかりと答えなければならない質問だ。

 

「…今はまだ教える気はない。」

 

そう答えると、皆驚いていた。

 

「どうしてですか!?士郎さんのなかには「全て遠き理想郷(アヴァロン)」があるのですよ!?」

 

「そうよ。アレの回復能力はまだ健在。もし彼女が大きな怪我をして、それが自分の目の前ですぐに治ったら、彼女は自分の存在について何らかの疑問を抱く。結局は彼女に魔術の存在を気付かれるわ。」

 

「イリヤを守るのにも戦力は多いに越したことはない。私達だけでは限界もある。」

 

彼女達の意見は最もだ。イリヤのためにも士郎に魔術を覚えて欲しいとも思う。でも……

 

「…あの子はあの火災で全てを失った。だから僕は、これ以上あの子に辛い思いをして欲しくはない。だから気付かれないかぎり話すつもりはない。もちろん気付かれないようにするつもりだが。」

 

こればかりは絶対に譲れない。そう主張すると、3人は納得してくれた。

 

「そうですね。あの地獄を経験をした士郎さんはこれから幸せにならなければいけません。」

 

大人だけの家族会議は士郎には魔術を教えず、普通の女の子として生活してもらう、という結論に終わるー、はずだった。

 

ガチャっと、ドアの開く音が居間に響いた。

 

「お父さん、話を聞かせて。」

 

 

 




このまま数話序章として進めていくつもりです。
更新もなるべくはやくしたいのですが、学校でテストがあったりして、遅れたりします。最低でも一カ月に1話は更新するつもりです。
では、また次回もよろしくお願いします。


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3話 士郎の決意


書いているとどんどん自信がなくなるのは何故なんでしょう。私の考えている事を文章にできなくて、何回も読み直したり。書いている時は何とも思わないのに、いざ読み直してみると文章が繋がっていなかったり。
私に、文才があったらなぁ………。


【士郎視点】

 

衛宮家に来て初めての夜はお母さんとイリヤと一緒に寝る事になった。でも、私はこんな風に人と一緒に寝るのは初めてで、ドキドキして眠れなかった。目を瞑っているけれど、眠くならない。何とか眠ろうとしていると、誰かがベットを出ていくのを感じた。

 

「ふふ、よく眠っているわね。」

 

お母さんだ。私とイリヤの頬をつついてから、お母さんが、1階におりていく音がした。私は何かあるのか気になり、こっそりついていく事に決めた。

 

「それより!」

 

階段をおりているときにセラさんの声が聞こえ、ビクッと体が一瞬縮こまった。何かもめているのかな。

 

居間の扉の前で聞き耳をたてる。すると中から、

 

「士郎には魔術を教えるの?」

 

と聞こえてきた。これはリズさんの声だ。それより、まじゅつ?何だろう?

 

「…今はまだ教える気はない。」

 

次はお父さんの声が聞こえてきた。中でお父さん以外の3人が驚いていた。それより、まじゅつって何だろう?と、私が考えていると、居間では真剣な表情でみんなが話し合っていた。

 

話を聞いても、わからない言葉が飛び交っていて、何を話しているのか全くわからない。でもそのなかで、「イリヤを守る」という発言ははっきりと聞こえた。やっぱり何か私達の知らない事がある。私が中に入って、問いただしてやろうと思ったとき、

 

「…あの子はあの火災で全てを失った。だから僕は、これ以上あの子に辛い思いをして欲しくはない。だから気付かれない限り話すつもりはない。」

 

お父さんがそう言った。私はこの時初めて、自分が大切に思われているとわかった。何も覚えていない私を引き取ってくれて、本当の娘のように大事に思ってくれる。私が今中に入っていくのは、多分そんな家族の思いを無駄にする事と同じ事だろう。……でも、それでも私は、

 

(少しでも家族の力になりたい。もう、失うのは嫌!)

 

そう決心して、私は居間の扉を開けた。

 

「お父さん、話を聞かせて。」

 

「士郎!?」

 

私が聞いているとは思わなかったのだろう。驚いた様子で私の名前を呼ぶ。

 

「………聞いちゃったのかい。」

 

お父さんが悲しげな顔で言った。

 

「…ごめんなさい。でも聞かせて。何の話をしてたの?」

 

お父さんは大分悩んでいた。そして、

 

「…皆、ちょっと外してくれるかい。士郎と2人だけで話をしたいんだ。」

 

お父さんがそう言うと、みんなは居間から出て、私とお父さんの2人だけになった。

 

「初めに言っておくけど、今から話すのは常に死と隣り合わせになる世界の事だ。僕としては、知って欲しくない。できれば、普通の女の子のように暮らして欲しい。それでも話を聞くかい?」

 

「うん、もう決めたの。お父さんの気持ちはとても嬉しいよ。でも、私も何か力になりたいの。」

 

「……そうかい。」

 

お父さんは諦めたのか、私に全て話してくれた。

魔術。お父さんは魔法みたいなものといった。今はよくわからないだろうから、魔法と思ってくれていいと。でも、魔術は秘匿しなければならない。また、魔術回路というものがあるらしい。魔術を使うのに必要だそうだ。そうして、ある程度話すと、お父さんは独り言の様に呟いた。

 

「僕はね、正義の味方になりたかったんだ。」

 

お父さんは独り言の様に呟いた。私は最初、何をいっているのかわからなかった。さらに続ける。お父さんは多くの人を助ける為にいつも少数派の人を殺してきたらしい。…何で?

 

「何で、みんなをたすけられないの?多くの人が助かっても、その為に人が、死んじゃうなんて、……間違ってるよ。」

 

私がそう言うと、お父さんはまた悲しそうな表情を見せた。

 

「残念だけど、全ての人を助ける何てことはできないんだよ。」

 

何で?何で助けられないの?私の中でその疑問だけが頭の中をめぐる。でも、お父さんが、その疑問に答えた。

 

「誰かを助けるという事は、誰かを助けないという事なんだ。」

 

あ……そうか。離れた2人の人を一緒に助ける事はできない。それと同じ事だ。………なら、私は、

 

「私も、正義の味方になりたい。」

 

「!?士郎!」

 

お父さんの目には明確な怒りがうかんでいた。

 

「わかってる。私は全てを助ける正義の味方にはならないよ。」

 

「どういうことだい?」

 

「全ての人を助ける事で誰かが犠牲になるなら、私は助けない。だから、全てじゃなくて、『私の大切な人を守る』正義の味方になりたい。」

 

お父さんは驚いていた。私の答えを想像していなかったんだろう。そして、次には笑って私に言った。

 

「大切な人を守る正義の味方、か……。それなら実現できそうだね。……よし、僕も決めた。魔術を教えよう。」

 

私は嬉しさもあったが、少し怖くもあった。でももう決めたんだ。だから、この道を行く。

 

「まず魔術回路を生成する必要があるが、今日はもう遅いから明日にしよう。」

 

「うん。」

 

私はそう返事をして、寝室に戻った。

 

 

 

【切嗣視点】

まさか士郎にすぐ気付かれるとは。居間に残った僕はお茶を啜った。そこに皆が戻ってきた。

 

「士郎さんに魔術を教えるのですか。」

 

「………そう、なってしまったね。」

 

士郎が現れたことで会議の意味が全く無くなってしまった。

 

「…魔術や戦術、一応銃火器類の使用方法も教えるか。あぁ、リズには士郎に近接戦闘を教えて欲しい。アイリとセラは士郎が魔術の扱いに困ったら、支えてあげて欲しい。」

 

「「「はい。」」」

 

そうと決まればはやく魔術回路を生成しないと。まだ準備する事が山程あるな。……よし、頑張るぞ。僕の娘の夢の為に。

 

 

 

 

【士郎視点】

翌日、私は今大きなお屋敷の前にいる。何で私がそこにいるのかというと、話は数時間前に遡る。

 

〜数時間前〜

 

「おはよう。」

 

私は居間に入り挨拶をした。

 

「おはようございます。」

 

「おはよう、士郎ちゃん。」

 

「おは〜」

 

各々違う挨拶が返ってきた。でも、返ってきた挨拶は3つだけだった。

 

「あれ、お父さんは?」

 

私が聞くと、お母さんが答えてくれた。

 

「切嗣はちょっと用事で出てるわ。」

 

「そうなんだ……。」

 

昨日の話をもう少しききたかったんだけどな……。そう考えていると、

 

「あれれ〜、もしかして士郎は切嗣の事好きになっちゃった〜?」

 

「?お父さんは好きだよ?」

 

そういうと、セラさんが「……ファザコン……許さない……」とか小さな声でブツブツと何か言っていた。私は台所にいるセラさんに近づいていった。

 

「セラさん、お手伝いします。」

 

「いえ、結構です。貴方はこの家の長女になられたのです。こういう事は、メイドである私やリズにまかせておけばよいのです。」

 

「で、でも。」

 

「でもではありません。それに私のこともセラで結構です。敬語も必要ありません。貴方は私よりも上の立場におられる事をお忘れなく。」

 

「セラ。ストップ。」

 

「何です、リズ。………あ。」

 

私は、膝を抱えて座っていた。…だって、私は、もっと力になりたいだけなのに……。

 

「セラ泣かせた。」

 

「も、申し訳ありません!決して悪気があった訳では…。

そ、そうです!お皿の準備をして頂いてもよろしいですか。」

 

「……うん!」

 

これ以降セラには、士郎に手伝いを頼む、という仕事が増えた。

 

 

「ただいま。」

 

お父さんがそう言いながら居間に入ってきた。

 

「お帰りなさい。」

 

「士郎、今日はこの後僕と一緒に来てもらうよ。」

 

「どこに?」

 

「ちょっとね。」

 

そんな会話を交わして、お父さんは自分の席に座って新聞を読みだした。

 

「リズ。イリヤさんを起こしてきてください。」

 

「ん。」

 

こうしてイリヤも起きてきて全員揃って朝ごはんを食べた。セラさんのごはんは美味しかった。

 

この朝ごはんの後お父さんに連れられて、今いるお屋敷にやってきた。

〜現在〜

 

「ここは?」

 

私がそう尋ねるとお父さんが

 

「此処は僕の知人にかしてもらった武家屋敷さ。今はもう使ってないみたいだから、自由に使っていいそうだ。」

 

と言った。その後お父さんに魔術について教わった。まず魔術回路の回路生成。でも、そこで問題が生じた。

 

私の魔術回路について、27本もなんて……とお父さんは呟いていた。どうやら私には最高で27本の魔術回路があるらしい。お父さん曰く、魔術師の家系じゃないにしては回路が多いらしい。

 

また私の使える魔術は、『投影』『強化』『解析』『変化』の4種類と後は簡単な魔術だけ。これは初歩の初歩らしいけど何事も極めれば凄い力を発揮すると思う。その事をお父さんに言うと、

 

「そうだね。あぁ、その通りだ。」

 

と笑顔で言ってくれた。こうして、お父さんとの魔術の鍛錬は私の日課になった。

 





後何話かしたらいきなり時間を飛ばすつもりです。
その分変な風になってしまうかもしれませんが、何とかしたいと思います。
後テストも近いので、間が空くかもしれませんがお願いします。
では、次回もよろしくお願いします。


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4話 学校へ行こう!


こんにちは。ギルディア シン 呪雷です。
今回は日常回です。私的にこういう回を書いている時が1番楽しいです。ただ、内容がごちゃごちゃしてるかもしれません。…いつもこの更新する時が1番緊張します。


【士郎視点】

 

「士郎、学校に行かないかい?」

 

「え?」

 

急な事でそんな反応しかできなかった。お父さんのその急に突拍子もない話をする癖はやめたほうがいいと思う。そんな事を考えながら、お父さんに聞き返した。

 

「学校って何?」

 

「勉強したり、他の人と親睦を深めたりする場所だ。親には子供を学校に行かせる義務があるんだ。」

 

それじゃ私に拒否権はないんじゃ…。私はそう考えたが、とりあえず、うん。と返事をした。私は7歳という事になっているので、小学3年生のクラスに転校生として入学する事になった。

 

学校に行くまでの1週間で2年生までの勉強を教えてもらった。……正直その1週間のことは思い出したくない。セラさんがまくしたてるように延々と話し続けていた。おかげで何とかなりそうだけど。

 

そして時は流れ、今日がその学校『穂群原学園』に行く日である。私は自分の短めの赤髪を整えて学園に行く準備をした。

 

〜穂群原学園〜

 

学園内は転校生の話で持ちきりだった。

 

「なぁ、転校生って女子かな?」

 

「いや、男子だろう。何でも名前が士郎っていうらしいからな。」

 

普通名前より性別の噂の方が広まるはずなんだが、何故か名前が広まっていた。一体誰の情報なのだろうか。そんな風に考える生徒もいた。

 

「皆席につけ。」

 

担任の先生が入ってきた。

 

【士郎視点】

 

……どうしよう。すごく緊張する。私は先生の合図を教室の前で待っていた。

 

「入りなさい。」

合図だ。平常心で普通に挨拶しよう。うん、普通に。

 

「……よし!」

 

私は教室のドアを開けた。

 

私の目に入ってきたのは私を珍しそうに見てくる生徒の姿だった。……へ、平常心。そう、平常心。私は深呼吸をして、黒板に自分の名前を書いた。

 

「本日転校してきました。衛宮士郎です。わからない事だらけですが、これからよろしくお願いします。」

 

よし!言えた!私は心の中でガッツポーズをした。

 

【教室内生徒視点】

 

( ( ( ( (か、可愛い。) ) ) ) )

 

クラスの生徒全員が心の中でそう思った。士郎は気づいていないが、赤髪のショートヘア、少し小柄な体型。そして、無事に挨拶が出来た事に喜びを隠しきれず小さくガッツポーズをしている。皆はそんな士郎に見惚れていた。

 

「誰か、衛宮に学校を案内してくれる人はいないか。」

 

バッ!全員の手を挙げる音が重なって、教室に響いた。士郎はビクッと体を震わせていた。

 

「じゃあ、柳洞。お前に任せる。」

 

士郎の案内役は、隣の席の柳洞一成になった。

 

【一成視点】

 

今日は俺のクラスに新たな生徒がやってきた。俺は女子は好かんので、男子生徒と聞いて少々安心していた。しかし、入ってきたのは赤髪の女子であった。その女子は、とても可憐であった。

 

「本日転校してきました。衛宮士郎です。わからない事だらけですが、これからよろしくお願いします。」

 

そう挨拶して、安心し、無事に挨拶を言えた事に喜んでいる彼女は、俺の隣の席になった。また、俺は衛宮さんに学校を案内する事になった。……クラス全員の視線が俺に集められ、正直居心地が悪かった。

 

〜放課後〜

 

「ここが最後か。ここは生徒会室だ。生徒会役員が使っている。」

 

「うん。大体の場所はわかった。ありがとう、柳洞君。」

 

可憐だ。……いかん!俺は寺の子だ!物欲退散。

 

「いや、大した事ではない。また困った事があれば聞くがいい。」

 

そう言うと、彼女は少し不思議そうな顔を浮かべていた。

 

「柳洞君。どうしてそんな堅苦しい話し方をするの?」

 

「俺は寺の子なのでな。この話し方が普通なのだ。衛宮さんはこの話し方は御不満か?」

 

「ん〜、不満ではないよ。ただ、柳洞君によく思われていないのかなって思って。」

 

「そんな事は断じてない!」

 

俺は怒鳴ってしまった。これでは嫌われてしまっただろう。だが、これでよかったのかもな。俺がそんな風に考えていると、

 

「ふふ、よかった。」

 

彼女は笑っていた。

 

「ねぇ、一成君って読んでいい?」

 

…何故、俺は急に怒鳴りつけたのに。だが、すぐに理解した。これが衛宮士郎という人間なのだ。

 

「構わん。」

 

「じゃあ、私の事も士郎って読んで。」

 

「!?そ、それは断る。」

 

彼女のそんな急な申し出を断った。それは、流石に気恥ずかしい。

 

「む…、じゃあさん付けをやめて。」

 

それくらいならいいだろう。

 

「承知した。これからよろしく頼む、衛宮。」

 

「うん、一成君。」

 

衛宮は俺に笑顔を向けた。

 

「では、また明日。」

 

「?うん、また明日。」

 

俺は足早にその場を立ち去った。…俺の顔が火照っているのを感じながら。衛宮の笑顔は、見るもの全てを魅了する力を持っている。俺はその事を確信して、熱をもった顔を冷やしながら帰っていった。

 

 

【士郎視点】

 

一成君に案内をしてもらってから、私は教室に荷物を取りに戻った。すると、

 

「やぁ、衛宮さん。」

 

教室にいた男子生徒から声をかけられた。

 

「貴方は確か、間桐慎二君?」

 

「そうだよ。僕の名前覚えてくれたんだ。嬉しいな。」

 

間桐君はニヤリと口元を歪めていた。

 

「間桐君、私に何か?」

 

間桐君はこっちに近づいてきた。

 

「慎二でいいよ。それより衛宮、君は今付き合っている人はいるのかい?」

 

「付き合っている人?」

 

私は質問の意味がわからなかった。私は少し嫌な予感がしたので、早めに教室を出ようとまとめておいた荷物を持った。

 

「あぁ。君程可愛い子なら、彼氏の1人や2人くらいいるのかなって。」

 

「そんな人はいないよ。それに私は可愛くないし。」

 

可愛いっていうのはイリヤみたいな事をいうんだと私は思った。

 

「……自分の魅力に無自覚か。」

 

慎二君は何かボソッと呟いた。私は何も聞こえなかったけど。

 

「まぁいいや。なら、僕と付き合わないか。」

 

「……え?」

 

私は何を言っているのかよくわからなかった。

 

「だから、僕の彼女にならないか。」

 

「で、でも私たちにはまだ早いと思うよ。お父さんも言ってたし。」

 

そう。私はお父さんに何度も言われた。『いいかい士郎。誰かに付き合ってくれ、彼女になってくれ、と言われたら、絶対に断るんだよ。君にはまだ早い。』と。その時のお父さんの顔はとても怖かった。

 

「早いもんか。恋に歳は関係ないんだぜ。」

 

慎二君がこっちに近づいてきた。すると、ガラガラ、と扉が開く音が教室に響いた。

 

「お、衛宮はっけ〜ん。」

 

「あなたは、美綴綾子さん。」

 

「ち、いいところだったのに。」

 

慎二君が毒づいた。私は少し安心した。

 

「ほら、衛宮帰ろうよ。」

 

「あ、一緒に帰る約束してたんだっけ。」

 

美綴さんは途中までの道のりが一緒なので一緒に帰ろうと誘われていた。

 

「そうそう。全然こないから何かあったのかなーって思ってさ。ちょっと探してたんだー。」

 

それは悪い事をしたな、と私は思った。

 

「まぁいいや。そんな奴ほっといて早く行こ。」

 

美綴さんは私の手を引っ張った。しかし、それを許さないと言わんばかりに慎二君が割り込んできた。

 

「まてよ。僕への返事がまだだろ。」

 

そういえば、と思って私は美綴さんに少し待ってもらい、慎二君の方へ向いた。

 

「お、なんだ。やっぱり僕の誘いだから断r 」

 

「ごめんなさい。」

 

「…え。」

 

慎二君は固まってしまった。

 

「私はまだ恋が何なのかよくわからないし、やっぱりお父さんの言った通りまだ早いと思う。」

 

「…………。」

 

「……でも。」

 

俯いていた慎二君は私の言葉で顔を上げた。

 

「でも、もし大きくなってもまだ私の事を思ってくれていたら、また誘ってね。」

 

「……… ふん、わかったよ。」

 

よかった。慎二君も悪い人ではない。私はそう思った。

 

「じゃあ慎二君、またね。」

 

「……あぁ。」

 

慎二君と挨拶を交わし、私は待たせていた美綴さんに謝って、一緒に帰っていった。

 

その帰り道で美綴さんが、

 

「衛宮って律儀だな。あんな奴ほっときゃいいのに。」

 

と言ってきた。私は人との繋がりをそんな簡単に切りたくないと思ってる。

 

「私、慎二君は悪い人だと思えないの。だから、できれば慎二君とも仲良くなりたいなって。」

 

「ふ〜ん、そっか。」

 

美綴さんは何か納得したらしく、そう返してニヤニヤとこっちを見てきた。

 

「な、なに?美綴さん。」

 

美綴さんは私の肩に手をまわして、

 

「な〜んも。それより、私の事は綾子と呼びなさい。私は士郎って呼ぶから。」

 

「え、いいの?」

 

「あぁ、いいよ。士郎。」

 

「うん。よろしく、綾子。」

 

私がそう言うと、綾子はギュッと抱きついてきた。けれど、それはとても心地よかった。





実は、士郎ちゃんの自己紹介は私の小学校の頃の実話なんです。1回も噛まずに言えたのが嬉しくてガッツポーズしたら、みんなの笑い者になってしまいました…。
それはさておき、次回を1つの区切りにしてその次くらいから本編第1章を始めたいなと思っています。
では、また次回もよろしくお願いします。


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5話 士郎ちゃんのご飯 / 旅立ち


まず、少し更新が遅くなりました。すいません。
テスト終わりで身体がとてつもなくだるいです。
ですが、またコレに専念できます。


【士郎視点】

 

私達衛宮家は今、重大な問題に直面している。それは、

 

「本当に申し訳有りません。今日1日どうしても外せない用事がありまして、今日の昼食と夕食は出来そうにありません。」

 

今日1日、セラが家にいないという事だ。それのどこがまずいのか。それはセラ以外ごはんを作れる人がいないからだ。お父さんは、ファストフードばっかり。私はあまり好きではない。正確にいうなら、栄養が偏ってしまうから、好きではない。またお母さんの料理は、……とても口にできない。実際、お昼は『母親である私の出番ね!』と言って、究極の闇鍋を作り上げた。まぁ、誰も食べれる人はおらず、結局ファストフードとなってしまった。リズは作った事がないと断言した。イリヤは論外。となると、残るは私しかいない。家庭科の調理実習で興味を持って、いろんな料理本をみたけれど、実際にやった事はない。出来るか出来ないかは半々といったところ。でも、私しか出来る人はいない。だから、

 

「夕食は私が作る!」

 

と宣言した。皆驚いていたけど、それしか方法はなかったので、有無を言わせなかった。

 

〜夕食前〜

 

さて、何を作ろう。お昼はハンバーガーやら何やらだったから、野菜中心でいきたいと思う。冷蔵庫の中を見る。中にはトマトや玉ねぎ、茄子、パプリカ、レタスなど色々揃っていた。私は比較的簡単なものしかできないから、調理方法も限られてくる。けど限られた調理方法でも、何とかなる。

 

私は調理道具の棚からダッチオーブンを取り出した。ダッチオーブンにオリーブオイルとつぶしたにんにくをいれて中弱火で火にかける。にんにくに色がついてきたら、ざく切りにしておいた玉ねぎ、パプリカを入れ軽く炒める。次に水にさらしておいた茄子を入れ軽くかき混ぜ、最後に皮をむいておいたトマト、ローリエ、塩を入れ、中弱火で25分余熱で10分煮込んでおく。これでラタトゥイユが完成。

 

次の品に取り掛かる。レタスを一口サイズにちぎって洗いクレソンと一緒に盛り付ける。オリーブオイル、レモン、バルサミコ酢などをベースにした特性ソースをかける。簡易サラダの完成。

 

最後は白身魚に手をつける。バターなどを上からかけてムニエルにする。この時、皮は剥いでおく。

 

以上3品。私は料理を初めてまだ1週間ぐらいだから、美味しくできているか心配だけど、精一杯作ったから気に入ってほしい。私はそんな風に思って料理を運んだ。

 

 

【切嗣視点】

 

娘に料理を作ってもらうのがこんなに嬉しい事だとは正直思わなかった。どんな料理でも、美味しく食べてあげようと思う。僕はそう思って食卓に並んだ料理をみた。

 

「美味しそうじゃないか。」

 

野菜中心で肉が入っていない。多分昼のハンバーガーの事を気にしているのだろう。

 

「.それじゃ、いただきます。」

 

まず一口。士郎が僕達の様子を伺っている。料理の感想は、

 

「……美味いな。」

 

それは予想を遥かに超えていた。野菜だけなのにとても満足できる。皆とても美味しそうに食べている。

「士郎、いつの間にこんなに上手に作れるようになったんだい。」

 

「本で読んで。」

 

本だけでここまで作れれば上出来だろう。皆でペロッと平らげてしまった。

 

「ただいま戻りました。」

 

セラが帰ってきた。

 

「またファストフードなどを食べてるのですか……おや?誰が作られたのですか?」

 

セラは不思議そうに尋ねてきた。誰も作れる人がいないと思ったんだろう。

 

「士郎だよ。とても美味しくできていた。」

 

えへへ、と笑う士郎。嬉しかったんだろう。とても可愛い笑顔を浮かべている。

 

セラはとっておいた料理を口にすると「いつの間にこんな腕を」とぶつぶつと呟いていた。まぁ、美味しいならいいと思うんだけどね。

 

こうして、セラがいない1日は幕を閉じた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【士郎視点】

 

時は流れて私が中学1年生になって半年が経った頃の朝、丁度仕事から帰ってきていたお父さんが、

 

「士郎、僕の仕事について来てくれないかい。」

 

といってきた。私は気持ちの整理が付かず、

 

「ちょっとだけ時間を頂戴。」

 

と返事をした。私はその状態で学校に向かった。

 

【一成視点】

 

学園には『士郎ちゃん親衛隊』なるものがあるそうだ。もはや学園のヒロインとも呼べる存在になりつつある衛宮のための隊だそうだ。そんな親衛隊が本日、生徒会室に殴り込んできた。

 

「柳洞!貴様ぁぁぁぁ!!」

 

「な、何事だ!」

 

俺は急な事に驚きを隠せなかった。どうやら朝から元気のない衛宮をみて、原因が俺にあると思ったそうだ。それにしても、あの衛宮が元気がないのか。

 

「よし、俺から何か聞いてみよう。」

 

「頼むぞ、柳洞。我々はあんな士郎ちゃんを見たくない。」

 

それは俺も一緒だ。衛宮には元気な様子と笑顔が一番似合う。俺はそう思い、生徒会室を後にした。

 

教室に着くと早速違和感を感じた。活気がない。いつもなら朝はもっと騒がしいはずなのだが。とりあえず俺は自分の席につく。そして、荷物の整理をして、

 

「衛宮、今日は生徒会室で昼食をとらないか?」

 

「……あぁ、一成君。おはよう……うん、お昼は生徒会室で……。」

 

これは思ったより重症である。何としてでもどうにかしなければなるまい。そう思った。

 

昼休み。俺は、衛宮、美綴、間桐の3人と共に昼食をとった。普段だったら文句を言ってやるところだが、今日は衛宮の事もあるので、自重する。相手も同じだろう。

 

「んで、何を悩んでんの士郎。」

 

「え、何急に。」

 

話を切り出した美綴。それに乗っかることにした。

 

「何か悩みがあるのだろう。顔を見ればわかる」

 

「私、そんな顔してた?」

 

あぁ、と答える。すると衛宮は、そっかぁ…とため息まじりの声を漏らし、語り出した。

 

「私ね、お父さんに仕事についてこないかって言われてるの。」

 

瞬間その場の3人は理解した。それはつまり、衛宮との別れが近いという事だ。もっとも別れといってもまた戻ってくるという事で、だいたい3、4年程度だそうだ。しかし、衛宮はどうしようか迷っているらしい。ならば、ここは友として助言すべきだろう。

 

「衛宮、それはお前自身が決める事だから俺達が言える事はない。だが、どちらを選択しても、後悔はするな。選んだ道が良かったと思えるようにしろ。いいな。」

 

「一成君………わかった。ありがとう。」

 

衛宮は何かを決意をした目をしていた。あれならばもう問題もないだろう。俺はそう思った。

 

その次の日、衛宮士郎は父親の都合により海外に行くと担任から告げられた。急に言われたので、簡単な送別会しかできなかった。その時彼女が言った言葉はよく覚えている。

 

『皆、私はまた帰ってきます。絶対帰ってきます。だからどうか覚えていてください。』

 

学園生徒は彼女の言葉を信じ、彼女の帰りを待つ。

 

 

 

【士郎視点】

 

一成君達のおかげで、決める事が出来た。私は世界を見たほうがいい。お父さん曰く、私の投影魔術のためにもその方がいい、だそうだ。大切な人を守るには、もっと力をつけなくちゃ。私はお父さんについて行くと決めた。

 

そして、ついに出発の日になった。見送りには、セラ、リズ、イリヤの3人がいた。

 

「じゃあ、いってくるよ。イリヤをよろしく。」

 

「はい。いってらっしゃいませ、旦那様、士郎。」

 

「いってらっしゃい。」

 

「うん。いってきます。」

 

私はそういうと車に乗り込もうとした。だがそれをとめる人がいた。

 

「イリヤ……。」

 

「お姉ちゃん。本当にいっちゃうの?」

 

イリヤは泣きそうなのを堪えながらそう尋ねた。

 

「うん。でもまた帰ってくるから。それまで待ってて。手紙も書くから、ね。」.

 

イリヤの頭を優しく撫でる。イリヤは溢れてきた涙を拭い

 

「うん。いってらっしゃい。」

 

と言った。私も、

 

「いってきます。」

と笑顔でそう告げた。

 

 





実はこの作品以外にあと2作書き溜めしてるんです。士郎ちゃんが落ち着いたらそっちも投稿してみたいと思います。

この回は作品内時間を飛ばす回にしようとしたんですけど、あまりにも中途半端な文字数だったので、急遽付け加えました。そしたら余計ごちゃごちゃしてしまいましたが……。

次回から、本編第1章のスタートです。お楽しみに。
では、次回もよろしくお願いします。


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第1章
1話 再会



お気に入り登録してくださる人が段々増えてきて、とても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。


【イリヤ視点】

 

私、イリヤスフィール。皆長いからイリヤって呼んでる。私にはお姉ちゃんがいるけど4年前にパパに連れられてどっかに行っちゃった。でも、もうすぐお姉ちゃんが帰ってくる。私の大好きなお姉ちゃん。はやく会いたいな。

 

「イリヤさ〜ん、学校に遅れてしまいますよ〜。」

 

「は〜い、今降りるから待って〜。」

 

私は制服のリボンを結んで、1階に降りた。そして、学校指定の靴を履いて、

 

「行ってきまーす。」

 

「はい、お気をつけて。」

 

私は家の扉を開ける。するとそこには知らない女の人が立っていた。身長は低めだけどスタイルはよく、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいて、さらに腰のあたりまで伸びた赤髪で、整っているのに童顔。そんな女性が立っていた。その人は、私の方を見て、笑顔を向けている。ん?あの笑顔、どこかで……。

 

「イリヤ。イリヤだよね。」

 

女性は私の名前を呼んでいる。なんで私の名前を知ってるんだろう?

 

「私よ、イリヤ。士郎だよ。」

 

士郎。え、もしかして、

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「うん!ただいま、イリヤ!」

 

これは、夢?私は思い切り頬をつねる。痛い。と、いう事は、

「本当に、帰ってきた、私の、お姉ちゃんが。う、うぅぅ……、お姉ちゃん!!」

 

「イリヤ!!」

 

私はお姉ちゃんに飛びついた。顔が火照るのを感じる。目の下が熱い。四年間の思いをすべてはきだす。涙が溢れて止まらない。

 

ようやく落ち着いて、2人で話そうとしたけど、自分が今から学校に行かなきゃいけない事を思い出した。今日は休みたいなぁ、と呟いたら、

 

「だめよ、イリヤ。学校はズルで休んじゃいけないの。」

 

とお姉ちゃんがいってきた。お姉ちゃんのこういうところは変わらないな、と思い渋々学校に向かった。

 

でも、これからはまた一緒に暮らせる。そう思うと顔が緩まずにはいられなかった。

 

 

【士郎視点】

 

イリヤとの再会の後、私は家の中に入った。

 

「イリヤさんですか?何か忘れ物でも」

 

「ただいま、セラ。」

 

「え、し、士郎ですか。」

 

セラは信じられないといった表情を浮かべていた。

 

「うん、士郎だよ。ただいま、セラ。」

 

瞬間、セラは私に抱きついてきた。

 

「おかえり……なさい、士郎。」

 

セラは懐かしむように私に抱きついていた。そこにリズがきた。

 

「お、士郎だ。いつ帰ってきたの?」

 

「今帰ってきたばっかだよ。」

 

「そっか、おかえり。」

 

「2人とも、ただいま!」

 

私は2人に笑顔を返した。

 

【イリヤ視点】

 

私はお姉ちゃんと早く話したくて、学校でずっとそわそわしていた。そんな私を不思議そうに見てくる友達がいた。友達名前はは美々、辰子、雀花、那奈亀の4人。

 

「どうしたの、イリヤちゃん。今日ずっとそわそわしてるよ。」

 

「美々の言う通りだぞイリヤ。どうした、何かあったか。」

 

やっぱりわかっちゃうか。

 

「ん〜、ふふふ。あのね、お姉ちゃんが帰ってきたんだ。」

 

「お姉ちゃんって、あの衛宮士郎さんか!」

 

瞬間、教室は静まりかえった。あれ、私何かまずい事いっちゃった?

 

「衛宮士郎さんといえば、転校初日で男女問わず皆魅了したとか。」

 

何その話!?初めて聞いたんだけど!?

 

「よし、放課後見にいってみようぜ〜!」

 

「「「おー!」」」

 

「何勝手に決めてるの!?」

 

お姉ちゃんは今日帰ってきたばっかりだから、ゆっくりさせてあげたいのに…。でも、私のこの思いはとどくことはなかった。

 

〜放課後〜

 

「ただいま。」

 

「「「「お邪魔しまーす。」」」」

 

「イリヤさん、おかえりなさい。皆さんもようこそいらっしゃいました。ゆっくりしていってください。」

 

セラが丁寧に挨拶をした。私は4人を私の部屋に案内してから、お姉ちゃんの部屋にいった。

 

「お姉ちゃん、いる?」

 

「うん、いるよ。」

 

お姉ちゃんは自室にこもっていた。

 

「私の友達に紹介したいんだけど。」

 

「うん、わかった。」

 

お姉ちゃんの部屋の扉があいた。中から、…作業服をきたお姉ちゃんがでできた。

 

「……お姉ちゃん、なんで作業服着てるの?」

 

「この服が落ち着くの。」

 

いや、そうじゃなくて。女子高生が私服として作業服を着るのはどうかと思う。

 

「お姉ちゃん。……今すぐ着替えなさい!」

 

私はお姉ちゃんの服に手を伸ばし、脱がせ始めた。

 

「え!?ちょっ、ここで!?ちょっと待って。せめて部屋の中で、いや、きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

お姉ちゃんが慌てふためき、悲鳴をあげてしまった。私の部屋にいた4人とセラ、リズがお姉ちゃんの部屋に駆けつけた。…その後は、セラにひどく怒られて、お姉ちゃんはちょっと泣いちゃって、そんなお姉ちゃんをリズと4人が慰めていた。帰り際、「イリヤのお姉さん、可愛いね。」と皆が揃えて言って帰っていった。

 

セラのお説教が終わった後、私はお姉ちゃんのところへいった。

 

「お姉ちゃん、いる?」

 

「!?う、うん、いるよ。」

 

明らかに動揺している。こんな事にしたくはなかったのに。私はお姉ちゃんの部屋に入る。

 

「さっきはごめんなさい。私も、あんな事する気はなかったの。」

 

不意に頬をつたう一粒の雫を感じる。肩が震える。すると、それは包み込まれ、顔を胸に押し込まれた。

 

「大丈夫、イリヤが優しい子なのは知ってる。私は気にしてないよ。だから大丈夫。」

 

……お姉ちゃんには敵わないなぁ。私はそんな風に思った。お姉ちゃんはやっぱり私の大好きなお姉ちゃんだった。

 

【士郎視点】

 

イリヤの一件があった後、私はセラと一緒に夕飯を作って、それを皆で食べた。セラは「…数年見ない間にこんなにも腕をあげているとは……。」と呟いていた。だってお父さんと2人で暮らしてたんだもん。毎日作ってたら腕もあがるよ。

 

夕食後、後片づけを終えて部屋に戻る途中、外で魔力反応があった。

 

「……秘匿はどうしたのよ。こんなにも堂々と魔術を使って。」

 

私は呆れたように呟いた。

 

「士郎。」

 

セラが階段にいる私に声をかけてきた。要件はセラの顔を見ればすぐにわかった。

 

「うん。任せて。」

 

私はイリヤのいるお風呂場に向かった。

 

 

「イリヤ〜、一緒に入ろ♪」

 

「お姉ちゃん!?」

 

いきなりはいってきた私にイリヤは驚いていた。そんなイリヤの返事も聞かず、私は身体を洗い湯船に入った。

 

「こうやって2人でお風呂に入るのも久しぶりだね。」

 

「……そ、そうだね。」

 

「もしかして緊張してる?」

 

この時イリヤは、大好きな姉と一緒にお風呂に入れた喜びと、成長した姉の胸が当たる恥ずかしさが入り混じって、士郎の話も殆ど聞こえていない状態であったが、士郎がそれを知る由もない。

 

ふと私は、後方から飛んでくる魔力を感知した。この状況で迎撃するには…。そう考え私は桶を手に取った。

 

( 同調、開始(トレース・オン) )

 

私は小さな声で呟き、桶を強化する。標的までの距離、およそ200m、今からスイングすればいける。

 

「イリヤ!伏せて!」

 

「ふぇ?」

 

私はイリヤに当たらない様に強化した桶を振る。そして1番威力が強くなるタイミングでジャストミートした。

 

「ふぎゃあ!?」

 

変な声をあげて、標的は元来た場所へ戻っていった。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

イリヤは私が何をしているのか不思議そうに見上げて来た。

 

「いや〜、石みたいのが飛んで来たのかと思って桶で防ごうとしたんだけど、ダメだったみたい。」

 

私は鼻をおさえながらいった。これで桶を振った事と変な声の言い訳がつくだろう。

 

「そ、そうなの!?大丈夫?」

 

信じてくれた。でも、それはそれでちょっと心配……。変な人に騙されなきゃいいけど……。

 

「うん、大丈夫。心配しないで。」

 

私はそう言って、イリヤと湯船に浸かりながらいろんな話をした。楽しげな話し声が家に響いた。…こんな時間がずっと続きますように。





今回から、原作のストーリーに近づけて、物語を進めていきます。

バトルシーンとか、どうもいい表現が出てこなくて意味がわからないところが出てきてしまうかもしれません。もちろんそんな事はない様にしますが、その辺りご了承ください。

では、次回もよろしくお願いします。


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2話 物語の始まり


士郎ちゃんのキャラが定まっていない様な気がしてなりません……。


【士郎視点】

 

私は帰ってきた次の日からまた穂群原学園に通う事になった。学園なので小学部の殆どがそのまま高等部にあがっている。

 

私は今、今日から入る教室の前にいる。そのクラスには今日から2人留学生が入るらしい。…すごい偶然だなぁ。2人の名前は、遠坂凛、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトという。教室の外から見てみたけど、2人ともとても綺麗だった。遠坂さんは黒髪でどちらかというと日本人っぽくて、対称的にルヴィアさんは金髪で外国人感が満載だった。2人とも違う種類の綺麗さをもっていて、教室の中が騒がしくなっている理由がよくわかる。…正直この後では入っていきにくいなぁ。先生曰く、先に留学生の紹介をしたいのだそうだ。私だけ残すんじゃなくて一緒じゃダメだったのかな。私がそう考えていると、

 

「また、2人の他にもう1人今日から転校してきた子がいる。仲良くするように。では入りなさい。」

 

と先生から呼ばれた。流石に二回目となるとそんなに緊張しなかった。私は教室に入った。

 

「今日からお世話になります、衛宮士郎です。これからよろしくお願いします。」

 

教室に沈黙が流れる。この雰囲気にも慣れた。すると次には一気に騒がしくなった。

 

「「「「衛宮が帰ってきたぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

いきなり皆が大声を出したので、とても驚いた。でも、私のことを憶えていてくれたんだとわかって嬉しかった。そして何より、一成君、慎二君、綾子が同じクラスだった事が嬉しかった。

 

 

「衛宮、久しぶりだな。」

 

昼休みに一成君達がやってきた。

 

「うん、久しぶり。憶えていてくれたんだ。」

 

「忘れる訳がなかろう。」

 

「あぁ、衛宮は個性的な奴だからな。」

 

私はそんなに個性的だろうか…?私が今までの自分を振り返っていると、背後から手が伸びてきた。

 

「ひゃあ!?」

 

「ほほう。背は伸びてないけど胸は大きくなったねぇ、士郎ちゃん?」

 

「ちょ、ちょっと綾子。やめてよっ、もう!」

 

振り向いてその犯人を怒る。

 

「あはは、ごめんごめん。でも、久しぶりね、士郎。」

 

「うん、久しぶり。」

 

また皆と一緒に生活できる。そう考えると嬉しくて涙が出そうであった。こうして、昼休みが終わるまでお喋りを楽しんだ。

 

 

「む。今日はもう帰るのか、衛宮?」

 

放課後一成君が声をかけてきた。

 

「うん。今日は私が晩御飯を作ろうと思って。」

「そうか。丁度迎えもきたようだぞ。」

 

ん?迎え?そう疑問に思ったが、

 

「お姉ちゃーーん!!」

 

と呼ぶ声が聞こえてきて、その疑問は消えた。私は一成君に挨拶をして振り返った。

 

「イリヤも今帰り?」

 

「うん!一緒に帰ろう!」

 

イリヤは嬉しそうにそう言って私の手を引いた。

 

「じゃあ、帰ろうか。イリヤは今日」

 

そこまで言って、私は口を止めた。イリヤの髪の中にいてはいけないもの(・・・・・・・・・)がいたから。

 

「イリヤ。今日は何か変わった事あった?」

 

一瞬イリヤの身体がびくつく。

 

「べ、別に何もなかったよ〜。どうして?」

 

…これは間違いない。私はそう確信した。

 

「ううん、何となく。よし、帰ろう。」

 

私はそう言い、イリヤの少し後ろについて歩き、イリヤには聞こえない声で、

 

(後で私の所に来なさい、いいわね。)

 

そう告げた。イリヤの髪が一瞬でビクっと動いた。

 

「お帰りなさい、イリヤさん。あら、士郎も一緒でしたか。」

 

「うん。偶然校門辺りであってね。」

 

セラと軽く挨拶をした。

 

「そういえば、先程イリヤさん宛ての荷物が届きましたよ。中身は確かDVD……」

 

「あ、もう届いたんだ!」

 

イリヤはすぐに居間に駆け出した。するとすぐにイリヤの「あーーー!!」という声が聞こえてきた。私とセラはその声に反応して、居間の様子を見に行くと

 

「ひどい!何で先に観ちゃうのよ、リズお姉ちゃん!」

 

「だって、お金出したので私だし。」

 

イリヤとリズが言い合っていた。何のことかと見てみると、

 

「アニメのDVD……。」

 

2人はその事で言い合っていたのかとすぐに理解した。

 

「うぅぅ、最近はイリヤさんもすっかり世俗に染まってしまって。奥様方にどう顔向けすれば……。」

 

セラがそんな風に言っていた。

 

「でも、別にいいと思うよ。何を好きになっても、しっかりとメリハリをつけられるようにすれば、アニメもそこまでの害悪とはならないと思うし。」

 

「それはそうですが……。」

 

セラは多分アニメ自体をよく思っていないんだろう。そこら辺の理解は必要かなと思う。と、そこで本題に入る。

 

「…セラ。しばらく私の部屋にイリヤを近づけないで。お願いね。」

 

「……何かあったのですか。」

 

私は(上に来なさい)と手招きをする。するとイリヤの髪の中から羽の生えたおもちゃのような物が出てきた。セラとリズが目つきを変える。私は落ち着くようにと2人に向けてジェスチャーをした。

 

「そういう事だから、任せたよ。」

 

「かしこまりました。気をつけてください。」

 

セラは十分に警戒しろという意を込めてしっかりとした口調で言ってきた。そうして、私は自分の部屋に向かった。

 

 

「それで、何故貴方がここにいるの?」

 

私はソレに向かって話した。

 

『それはもちろん、イリヤさんと契約したからに決まってますよ〜。』

 

「それを破棄する事はできるの。」

 

『無理ですね〜。私が許可しない限りマスターの変更は出来ません。』

 

そこまで言うと、私はソレを思い切り掴んでいた。

 

「マスター変更しなさい!今!すぐ!」

 

私は感情のままに怒鳴りつけた。

 

『えぇ〜、嫌ですよ。ルビーちゃん的にイリヤさんは魔法少女の才能アリだと思うんですよ〜。それをみすみす逃すような真似はしたくないです、ってイタタタタ!流石にそこまで力を込められると痛いんですけど!』

 

私は埒があかないと思いルビーに対する怒りを我慢して話を聞くことにした。

 

「まず、貴方は何者なのか。あと、何の目的でイリヤに近づいたのか。これからどうするつもりなのかを話しなさい。」

 

『は、はい。話しますから、そんな怖い顔はやめてください。え〜、まず私はカレイドステッキのマジカルルビーちゃんです。以後お見知り置きを。えっと、目的は前のマスターに愛想尽かして新しいマスターを探そうと思ったらちょうどイリヤさんを見かけて、でこれから私達のお手伝いをしていただきたいなぁと思い近づきました。』

 

お手伝い?今の話からすると、魔術が関わっているんだろうな。

 

「お手伝いって、具体的に何をするの?」

 

『はい、今日の夜0時から擬似英霊と闘ってクラスカードを回収してもらいたいのです。』

 

バン!私は机を思い切り叩いていた。

 

「私が、それを許すと思っているの?」

 

「あぁ……、これは許してもらえそうにないですね。」

 

私の怒りが、ピークに達しようとしている時、窓からコンコンっという小さな音がした。何かと思って見てみると、そこには遠坂さんがいた。

 

「失礼するわね。」

 

何故遠坂さんが窓から入ってきたのか。それはすぐにわかった。

 

「なるほど。ルビーのマスターというのは遠坂さんの事でしたか。」

 

『元ですよ!も・と!!』

 

「えぇ…、まぁね……。」

 

話を聞くと、戦闘中にルビーが勝手に礼装を解きどこかに行ってしまい、翌日に見つけたらイリヤともう契約を結んだ後だったらしい。しょうがないから、手伝ってもらう事にしたという。

 

「大体、アンタが勝手にどっか行くからこんな事になったんでしょうが!」

 

「何を言ってるんですか。凛さんがいつもいつも喧嘩してるのがわるいんですよ。」

 

2人が言い合いを始めた。でも、私には何も入ってこなかった。……戦闘って、喧嘩の事?そんな、そんな事でイリヤを巻き込むなんて………。私はぷるぷると身体を震わせた。

 

「「あ、これはやばい。」」

 

2人は口を揃えてそう言った。が、2人の予想は半分正解で半分外れていた。次の瞬間、私の頬には大粒の涙が伝っていた。

 

「なんで、なんでイリヤなの!私は、イリヤには、普通に過ごして欲しいのにっ!」

 

うわあぁぁぁぁぁん!と私は声をあげて泣き出してしまった。怒りと悲しみが入り混じり、泣きながら怒っていた。すると、階段を駆け上がってくる音がした。遠坂さんとルビーは急いで退散していった。

 

「どうしました!?」

 

「うぅぅ、ひっク、セラぁ。私は、わたしはぁぁ!」

 

「士郎!大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

私はしばらくセラの胸で泣き続けた。

 





ここから、原作の内容が始まります。ですがこれのヒロインは士郎ちゃんなので、少しずつ変えていきます。
士郎ちゃんのスペックも大分高く設定しています。

これからバトル描写が多くなります。…頑張りたいと思います。
では、次回もよろしくお願いします。


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3話 姉の思い、妹の覚悟


あれれ〜、おかしいぞ〜。ライダーとの闘いをもっと詳しく書きたかったのに〜。

キャスターから頑張ります……。


【遠坂視点】

 

「あれはマズかったかなぁ。」

 

ついさっき、私はルビーの魔力を辿ってとある家の前に行った。そこは何と衛宮さんの家だった。中にはルビーが勝手にマスター登録したイリヤもいた。でも何故かルビーはイリヤとは違う場所にいるようだった。私は魔術で屋根に登り、ルビーのいる部屋の窓を叩くと、そこは衛宮さんの部屋だった。…そこからの事はあまり話したくないけど。まぁとにかく、私は人を泣かせた。

 

『まったく、凛さんはほんっとに駄目ですねぇ。年下の女の子を泣かせるなんて。』

 

「うるさい、あんたも同罪よ。ていうか彼女、私と同学年よ。」

 

『え、マジですか!どう見ても高校生には見えませんよ!?』

 

そう。彼女は身長のせいもあって、幼く見える。でも、私より胸はあるのよねぇ。それにしても、

 

( 可愛かったなぁ。)

 

泣いていたとはいえ、あの子はとても可愛かった。赤髪が腰の辺りまで伸びていて、顔は童顔で。泣いている姿は抱きしめたくなって……。そこで、泣かせた張本人が私だと思い出して、とても心がいたんだ。

 

「今度ちゃんと謝ろう。」

 

私は心に誓った。

 

【士郎視点】

 

私は少し落ち着いて、セラに頼み事をした。内容は、おそらく今日の0時にイリヤは外に出るから、見張っていてほしいという事。セラは頷き、下に降りていった。でも私は、あのステッキの事だから絶対に阻止すると思っていた。だから、もしダメだったら私が窓からこっそりついていく事にした。

 

〜夜中0時〜

 

案の定、イリヤが外に出ていく姿が見えた。セラとリズに何をしたのかはわからないが、見張りは破られた様だ。

 

「はぁ〜、こうならなければ良かったのになぁ。」

 

私は溜息をついて、家の屋根をつたいイリヤを追っていった。追っている途中で学校に向かっている事がわかった。

 

(そうか。学校に溢れていた魔力の原因がクラスカードなんだ。)

 

今朝学校に入ると違和感があった。気になったからちょっと解析してみたら、校庭から魔力が溢れていた。その原因がわからなかったから、様子をみようと思っていたんだけど。

 

学校に着いた。やはり遠坂さんがいた。そして、イリヤは家を出た時とは違う服装だった。おそらく

 

(やっぱり。なら私が取る行動は1つ。)

 

私は3人がいる所に降りた。

 

「はい、そこまでだよイリヤ。」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

【イリヤ視点】

 

真夜中の学校に呼び出された私は、ルビーの力でセラとリズの見張りを抜けて指定された場所にやってきた。そして着いた途端、お姉ちゃんが空から降りてきた。

 

『あちゃ〜、やっぱり来ちゃいましたか。』

 

ルビーはお姉ちゃんが来る事を知っていたかの様にそう言った。それにしても、いつも優しいお姉ちゃんの顔が怖い。

 

「そりゃ来るわよね。あれだけ反対していたのだもの。」

 

凛さんも知っていたようだった。あれ?知らなかったの私だけ!?ていうか、何で空から降りてきたの!?それより、こんな恥ずかしい格好をお姉ちゃんに見られた!!私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

 

「はい。イリヤを返してもらいにきました。」

 

『え〜、イヤっていったじゃないですか〜。私はイリヤさんに魔法少女になって欲しいんです。』

 

そういったルビーのすぐ横(でも私には絶対に当たらない場所)を剣のようなものが物凄いスピードで通りすぎる。

 

「もう一度だけ言います。私の妹を返しなさい。」

 

お姉ちゃんが殺意を込めた目でルビーを睨む。これには流石のルビーでも言葉は出ないようだ。

 

「ま、待って衛宮さん。私たちにはイリヤの力が必要なの。だから、身勝手だと思うけれど協力して欲しいの。」

 

お姉ちゃんは顔色1つ変えずに凛さんの方を見る。私は確信した。今のお姉ちゃんに何を言おうと無駄であると。

 

「クラスカード、でしたっけ。それを回収するのは貴女方の任務のはずでは。何故イリヤが巻き込まれなければならないのですか。」

 

「そ、それは………。」

 

凛さんは返答に困った。と、その時

 

『もうっ、面倒くさいですね!こうなったらイリヤさんの魔法少女の素質をお姉さんに見せてあげましょう!限定次元反射炉形成。』

 

ちょっ、ルビー!?何する気!?、と私が叫んで止めようとした時にはもう遅かった。次の瞬間私の足元にはアニメでよく見るような魔法陣が浮かんだと思ったら、周りが違う世界に変わっていた。

 

「ちょっとルビー!あんた何で鏡面界に『接界(ジャンプ)』したのよ!まだごたごたしてるっていうのに!」

 

『だから、そのごたごたを解決するためですよ〜。』

 

私は全然状況を把握出来てないんですけど!?

 

『さぁ、イリヤさん。あそこにいる黒いのをパパッとやっつけて、お姉さんに魔法少女になる事を認めてもらいましょう!』

 

え、黒いのって?あの人の事、って闘う!?聞いてないよ!カードを回収するだけっていったじゃん!

 

『イリヤさん!攻撃がきます!』

 

ルビーがそういってくる。そんな事急に言われても!あ、ダメだ。私死んじゃうのかな。黒い人が攻撃してきたのをみて、私はそう思い目を閉じた。

 

黒い人が飛ばした物が私に当たる、そう思ったけど痛みが来る事はなかった。私は恐る恐る目を開けた。そこには、長い赤髪の女の人が私を守っていた。その人の顔を見なくても私は誰だかすぐにわかった。

 

「大丈夫、私が守るから。」

 

「お姉ちゃん!!」

 

【士郎視点】

 

私は何があってもイリヤを守る、そう、私は家族を助ける正義の味方になるのだから。

同調、開始(トレース、オン)。」

 

私は言い慣れた呪文を唱える。次の瞬間、私の手には夫婦剣、干将・莫耶が現れる。

 

「妹には手出しさせない!」

 

私は黒化英霊とイリヤの間に割って入った。そしてイリヤを下がらせて、黒化英霊との打ち合いが始まった。

 

【イリヤ視点】

 

私はお姉ちゃんに言われた通り、後ろにさがる。

 

「何よあれ。弱体化してるとはいえ、何で英霊と生身で闘えるのよ。」

 

そう。お姉ちゃんは似た双剣で、相手と互角以上で剣を打ち合っていた。金属がぶつかり合う音が校庭に響き続ける。数分間の打ち合いの末、ふと金属音が止み、2人はある程度の距離をとった。

 

「まずい、宝具を使う気よ!ルビー!」

 

『わかってますよ!障壁を張ります!離れると死んじゃいますよ!』

 

2人は何か慌てていた。私も何となくだけど2人が慌てる理由がわかった。

 

「ちょっと待って!お姉ちゃんがまだ!」

 

私がそう叫ぶ。でも、お姉ちゃんは慌てるそぶりなど見せなかった。寧ろ落ち着いていた。

 

体は剣で出来ている(I am the bone of my sword)……。」

 

お姉ちゃんが剣を捨て、何かを呟いた。するとお姉ちゃんの手には真っ赤な槍が現れた。

 

『彼女は随分変わった魔術を使うようですね。』

 

ルビーがそう呟く。私は何を話しているのかわからなかったけれど。

 

騎英のー(ベルレ)

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)!」

相手が何かしようとしたのを遮るように、お姉ちゃんの槍が先に命中した。

 

「アアアアア!!」

 

慟哭にも似た悲鳴をあげながら、相手は消滅していった。

 

「……衛宮さんは一体何者なのかしら。」

 

『さぁ。少なくとも事戦闘において凛さんが勝てる確率は限りなく低いでしょうね。』

 

そう2人は話している。お姉ちゃんはこっちに歩いてきた。

 

「イリヤ、怪我はない?」

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃんこそどこか怪我してない?」

 

「私は平気。さてと、話を戻しましょうか。」

 

お姉ちゃんは私に優しい笑顔を向けてから、また厳しい顔に戻り凛さん達を睨みつけた。

 

「あ、あのねお姉ちゃん。私ね、決めたんだ。」

 

お姉ちゃんがこっちを見る。

 

「私、このお手伝いを続けたい!」

 

「!?何で!!今のを見たでしょう!あんなのとこれから闘うことになるんだよ!」

 

お姉ちゃんの言いたい事はわかる。私も今日はとても怖かった。……でも、

 

「でも私、決めたの。もう守られるだけはイヤ。私も力になりたい!」

 

【士郎視点】

 

イリヤの発言は、衛宮家に来たばかりの頃、私がお父さんに魔術を教えてもらう為に言った事と殆ど同じだった。それは、私の迷いを消し去った。…お父さん、お母さん、ごめんね。やっぱりこうなっちゃった。

 

「……本気なんだね?」

 

「うん。」

 

はぁ〜……。私もあまいなぁ……。でもしょうがないか。

 

「遠坂さん。」

 

私は遠坂の方を向く。

 

「イリヤの事は、もう許します。ただし、私もカードの回収に参加させていただきます。」

 

遠坂さんは、寧ろお願いしたいというような表情を浮かべていた。

 

「さて、そろそろこの世界から脱出しましょうか。そちらに隠れている2人も出て来たらどうです?」

 

茂みから出て来たのは、ルヴィアさんとイリヤと同い年くらいの女の子だった。

 

「いつから気づいていたのですか、ミス衛宮。」

 

意外という顔でルヴィアさんは尋ねてきた。

 

「最初からです。あわよくばカードを横取りしようと考えていたようですが。私が出てきたおかげでそれも出来なかったようですね。」

 

「えぇ、おかげ様でこのざまですわ。」

 

ルヴィアさんは呆れた様な表情を見せた。

 

『さぁ、そろそろ「離界(ジャンプ)」しますよ!』

 

ルビーがそう言った途端、元の場所に戻った。

 

「さて、今日はもう遅いですから細かい話は明日にしましょう。明日は皆さん私達の家に来てください。」

 

私はそう告げて、お開きにした。

 

 

「そうそうイリヤ。」

 

「な、何?」

 

私は帰路の途中、イリヤに言わなければいけない事を、あたかも今思い出したかの様にきりだした。

 

「私達に無断で夜中に外出した事、あとでちゃんと説明してもらいますからね。」

 

「……ごめんなさい。」

 

この後、イリヤはセラと私に挟まれながお説教を聞かされた。





士郎ちゃんが刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)を使っている件については、あまり触れないでください……。まぁ、原作の士郎君とは次元が違うという事で。

次回は、イリヤと美遊をいい感じに仲良くさせるような話を書きたいなぁと思っています。

では、次回もよろしくお願いします!



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4話 自己紹介

よく見ると、お気に入りが100を超えていました。この作品をお気に入りしてくださって、ありがとうございます!これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!


【切嗣視点】

 

「…そうか、すまないね士郎。君ばかりに任せて。こっちはまだ帰れそうにないから。………うん頼むよ。士郎も無茶はしない様に。」

 

娘からの電話を切り、僕は溜息をついた。

 

「あの子は何て?」

 

アイリがそう聞いてくる。

 

「ちょっとハプニングがあったらしくてね。イリヤが魔術の存在を知ってしまったらしいんだ。士郎が任せてくれっていったから、まだ大丈夫だと思うけれど。」

 

「あら。それじゃぁ、アイリママもちょっと頑張ってみようかしら。」

 

これは完全に戻る気でいると、僕は半分確信した。

 

「戻ってもいいけど、まだやる事があるからもう少し先にしてくれよ?」

 

「わかってま〜す。さぁ、早く終わらせて娘達の成長した姿を見てこようかしら。」

 

士郎は仕事を手伝って貰っていたけどそんな一緒にいた訳じゃないし、イリヤとは全然あってないから、どこまで成長したか僕も見てみたいなぁ。アイリの言葉に僕の娘達に早く会いたいという気持ちが刺激されてしまった。さて、僕も頑張るとするか。

 

 

【士郎視点】

 

私の部屋には今私の他に、イリヤ、遠坂さん、ルヴィアさん、ルヴィアさんの家に住んでいてイリヤと同じ様に手伝いを任されたという美遊、イリヤのカレイドステッキのルビー、美遊のカレイドステッキのサファイアがいる。このメンバーでこれからの事を相談する事になった。

 

「では、まず自己紹介から始めましょう。話はそれからです。」

 

私はそう言った。何事もまずお互いを知らなければ始まらない。

 

「私の名前は衛宮士郎、魔術師です。元々魔術師の家系ではなかったので、簡単な魔術しか使えませんが。」

 

そこで、遠坂さんとルヴィアさんがくいついてきた。

 

「元々魔術師の家系じゃないって、どういう事?」

 

「私も疑問に思います。それでは貴女は此処に魔術を教わりに来ていたのですか?」

 

「いえ、私は7歳の頃この家の養子になったんです。そこで初めて魔術というものを知りました。お父さんは教える気はなかったのですが、私が気づいてしまったんです。」

 

2人は納得した様だ。私の紹介はここまでにして、次にまわした。

 

「えっと、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです。私は魔術とかよくわかりません。昨日初めて魔術っていうものの存在を知ったくらいです。」

 

本当は教えたくなかったからね。私はそんな事を考える。

そこからそれぞれの紹介が続いていく。遠坂さんとルヴィアさんはクラスカードの回収を命じられて、『時計塔』からやって来たらしい。その際貸し与えられた礼装がカレイドステッキのルビーとサファイア。美遊は1人途方にくれて彷徨っていたところをルヴィアさんに拾われたらしい。私と似た境遇なんだ。

 

「あの、士郎さん。聞いてもいいですか?」

 

美遊が私にそう話しかけてきた。

 

「いいよ。私に答えられる範囲なら。」

 

私は笑顔でそう言った。一瞬頬を赤らめて目をそらされたけれど、すぐに向き直って、

 

「で、では。ライダーのクラスカード、先日のカードを回収する時に相手にとどめをさしたあの槍、『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)』は宝具ですよね。」

 

と聞いてきた。私は少し驚いた。でも、隠すつもりもないので、

 

「うん、そうだよ。正確に言うと、私が投影した贋作、言わば偽物だよ。」

 

「投影魔術!?ちょっと待って!宝具を投影したの!?」

 

「普通投影したものは数分しかその姿を保つことが出来ないはず!?それが宝具となると、一瞬で粉々になってもおかしくないですわ!?」

 

まぁ、驚くのも無理はないかな。投影したものは幻想に過ぎない。だから、世界に修正され魔力の気化に応じてだんだん薄れ、消滅する。ましてや宝具となると、普通は一瞬で砕け散るだろう。

 

「でも、私は違う。何故かよくわからないけれど私が投影した宝具以外のものは、多分いつまでも存在し続けるんです。宝具も投影できるけれど、その分負担がかかるので最終手段です。」

 

私はそう言った。私ができるのはこれしかなかったから、これだけを徹底してきた。その努力の結晶ともいえる。

 

「さて、ではこれから皆で協力してクラスカードを回収するという事でいいですね。」

 

「何で私がこいつと……。」

 

「私も遠坂凛と協力何てごめんですわ。」

 

2人は、今にも喧嘩を始めようとしていた。この2人はどれだけ仲が悪いんだろう。でも、協力した方が安全性は上がる。だから協力する事は必要な事だ。そう考えた私は、2人の間に割って入り、威圧するような笑顔を浮かべて、

 

「いいですね?」

 

と言った。2人は「「わ、わかりました……。」」と言った。あれ、何でちょっと怯えているんだろう。そう思って私は自分の状況を見た。2人の喧嘩を止めるように間に立っている、軍用ナイフ(・・・・・)を持って。

 

「ご、ごめんなさい!?こんな事するつもりはなかったんです!ほ、本当にごめんなさい!!」

 

私は急いでナイフを消失させて2人に謝った。

 

「い、いえ。元々こちらに非があったのですから、気にする事はありませんわ。」

 

「そうよ。私達は全然気にしてないから。」

 

「本当にごめんなさい……。」

 

私は二度とこんな脅迫じみたことをするまいと心に誓った。

 

 

 

「そうだ!皆さん今日はうちで夕食をとっていきませんか?」

 

「賛成!私も美遊さんとお話しした〜い!」

 

イリヤはとても乗り気だった。私にとってはさっきの罪滅ぼしのつもりでもある。

 

「いいの?メイドさん達許してくれるの?」

 

「いいですよ。それに今日の当番は私だから、是非食べていってほしいです。」

 

こうして今日は皆で一緒に夕食を食べた。

 

【イリヤ視点】

 

私は夕食後、美遊さんとお話ししていた。美遊さんは運動もお料理も得意らしい。そして、明日から私と同じ学校に通う事になっているらしい。

 

「じゃあ、私のクラスの転校生って美遊さんの事?」

 

「多分……そう。」

 

そうなんだ!これから美遊さんと一緒なんだね!

 

「じゃあ美遊さん、私とお友達になってください!」

 

「……いいの?」

 

「もちろん!」

 

そう返事をすると、美遊さんが少し笑って、

 

「じゃあよろしく、イリヤスフィール。」

 

と言った。でも、『イリヤスフィール』は呼びづらいでしょ。

「イリヤでいいよ。皆そう呼んでるし。」

 

そう言うと美遊さんはちょっと顔を赤らめて、

 

「なら、私も美遊でいい。」

 

と返した。私も何か気恥ずかしくなってしまった。でも笑顔で、

 

「うん!」

 

と返事をした。そして私達は友達になった。

 

 

 

「ねぇ、美遊。」

 

「何、イリヤ。」

 

「あれ、どう思う?」

 

私はとある方向を指さした。その方向には食器の後片付けをしているお姉ちゃんがいた。

 

「どうって?」

 

「お姉ちゃんの服の事。」

 

お姉ちゃんの服は機能性重視で、男っぽい感じである。

 

「お姉ちゃん可愛いのに、着飾ろうとしないの。外出する時もいつも同じようなデザインの服ばかり。」

 

「それは……。」

 

「「許せないわね(ですわ)。」」

 

突然凛さんとルヴィアさんも入ってきた。

 

『勿体無いですね。士郎さん顔もスタイルも性格もいいのに、女の子に大切なオシャレを忘れているんですか。』

 

何故かルビーも入ってきた。でも皆思うことは同じみたい。

 

「「「「着せ替えるしかない。」」」」

 

前の事を教訓に、半分ダメもとだけど、真正面から頼んでみる事にした。

 

「お姉ちゃん、もっと可愛い服着て。私見たいなぁ〜。」

 

「うーん……、私は可愛い服とか似合わないと思うんだけど、そんなに見たいの?」

 

おや?これは意外といけちゃったりするかな?

 

「うん。ねぇ美遊、見たいよね?」

 

「うん。士郎さんは何でも似合いそう。」

 

ここで美遊をプラス。子どものみならず、全ての人に甘いお姉ちゃんは人の願いを粗末に出来ない、絶対に。私は勝利を確信した。

 

「でも、私はこういう服しか持ってないからなぁ…。また今度かな。」

 

しまったぁぁぁ!!そうだ。よく考えればわかることだった。お姉ちゃんは自分の服は自分で買った物しかない。だとすると、お姉ちゃんは似たものしか選ばない。となれば可愛い服はない!私がそう絶望したと同時に

 

「ご心配なく。服なら私の家の者に持って来させますわミス衛宮、いえシェロ。」

 

ルヴィアさんがそう発言した。それよりシェロって……。でもまぁ、これでお姉ちゃんは着替えるほかに道はない。

 

「そうですか?ならちょっと着替えてみよっかな。では、よろしくお願いします。」

 

お姉ちゃんはそう言った。よし!後はルヴィアさんに任せるだけ。そう思った時、家に誰かきた。

 

「ルヴィアさんのお家の方らしいのですが、お通ししますか?」

 

「いえ、結構です。私はお嬢様に荷物をお届けにきただけですので。」

 

セラの呼びかけに荷物を持ってきたルヴィアさんの家の人

が自分で答えて、すぐに帰っていった。ともあれこれで準備は全て整った。

 

「さぁ、お姉ちゃん。着替えてみて。」

 

「はぁ〜……、自分の部屋で着替えてくるからちょっと待ってて。」

 

そう言うと、お姉ちゃんはルヴィアさんに借りた服を持って二階へ上がっていった。

 

数分後、お姉ちゃんが下りてくる音がした。私達はワクワクしながら待っていた。居間のドアが開くと、顔を赤らめながらお姉ちゃんが入ってきた。

 

「あ、あんまり見ないでね。恥ずかしいから……。」

 

一言で言うと、この上なく似合っていた。性別なんて関係なく、皆ドキドキしてしまうくらい。普段着ない白と青のワンピースに身を包んで、とても清潔感が溢れる容姿だった。

 

「とっても似合ってるよお姉ちゃん。ね、美遊?」

 

「はい、とっても。」

 

「は、恥ずかしい……。」

 

この後、セラとリズにも見せたら、やはり可愛い服は持っていた方がいいと言うことでお姉ちゃん用に買う事が決定した。

 




士郎ちゃんの着たワンピースは、「stay night」のセイバーの様な感じです。本当は挿絵とか描けたら良いのですが……、すいません。

今回はちょっと更新が遅れました。ごめんなさい。ちょっと書き溜めがなくなってきて……。なるべく早く更新出来るようにがんばります!

では、次回もよろしくお願いします!


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5話 特訓です!


遅れてしまい、本当に申し訳ありません!ちょっと宿題に時間を取られてしまって……。

なるべくはやく宿題を終わらせたいと思います!




【士郎視点】

 

皆で夕食をとり、何故か私が着替えさせられた日の夜0時。私達はその日もカードを回収に行った。だけど……。

 

「……流石にあれはねぇ〜……。」

 

『いやぁ〜、ものの見事に完敗ですね〜。』

 

「何なのよアレ!!あんなの反則でしょ!!」

 

「どういうことですの!?カレイドの魔法少女は無敵なのではなくて!?」

 

『私に当たるのはおやめください。』

 

結果は物の見事に惨敗。鏡面界に『接界(ジャンプ)』したら、上空に数多の魔法陣が描かれていた。最初の攻撃はルビーとサファイアの障壁によって何とかなった。だけど流石に2回目の攻撃は無理だったと思う。いきなり竜巻によって閉じ込められたと思ったら、上には魔法陣。私達は撤退を余儀なくされた。

 

また、少ししか確認できなかったが、敵は空に飛んでいた。美遊とイリヤの魔力弾が弾かれたから、私が弓で攻撃しても、おそらく弾かれる。となると、やっぱり……。

 

「あの魔力反射平面は厄介よ。あれがある限りこっちの攻撃は通らない。」

 

『攻撃陣も反射平面も座標固定型のようですので、あの上まで飛んでいければ戦えるのですが。』

 

流石に私も空を飛べるもの何て投影出来ない。どうしよう……。私達が頭を悩ませていたら、

 

「そっか。飛んじゃえばよかったんだ。」

 

横でイリヤが当然の様に飛んでいた。その光景に、全員一瞬言葉を失い、その場は静寂に包まれた。

 

『すごいじゃないですかイリヤさん!!高度な飛行をこんなあっさりと!!』

 

「え、そんなに難しいものなの?」

 

イリヤ自身気づいていない様だ。空を飛ぶという事は遠坂さんとルヴィアさんにとっても簡単な事ではなかっただろう。魔術を知って二日程度の人間ができる事ではない。

 

「何か強いイメージが無ければ出来ないわ……。」

 

「ふぇ?だって魔法少女ってとぶものてしょ?」

 

なるほど。これは強い思い込み、もといイメージだ。普段からアニメを見ていたからこそ、こんな事が出来たんだろう。遠坂さんは絶句していた。

 

「ならば美遊!!貴女も飛べるはずですわ!!さぁ、飛びなさい!!」

 

ルヴィアさんは躍起になって美遊を飛ばそうとした。しかし、

 

「人は……飛べません。」

 

と美遊は言った。まぁ、それが普通なんだけど、子どもだったらもうちょっと夢を見ようよ。

 

結局今日はここでお開きになった。ルヴィアさんは「明日は特訓ですわ!」なんて言って美遊を引っ張っていった。

 

 

【イリヤ視点】

 

今日は土曜日。美遊が特訓するなら、私も特訓しなきゃと思って、私は朝から出かけた。本当はお姉ちゃんも一緒がよかったんだけど、

 

「ごめん。今日は綾子に部活を見に来いって言われてて…ごめんね。」

 

との事だ。それはしょうがないよと答えたけど、やっぱり残念だなぁ。

 

『全く。イリヤさんはシスコンですねぇ。』

 

シスコン!?私ってシスコンなの!?確かにお姉ちゃんは好きだよ。いつも優しくて、とても可愛くて、真剣な表情もちょっと格好良くて……。

 

『完全なシスコンじゃないですか。』

「シスコンじゃないよ!あとナチュラルに私の思考を読まないでよ!!」

 

 

そんなこんなで特訓を始めた。

 

『さて、今日はまず飛行をマスターしましょう。今回は完全な空中戦になりそうですので。』

 

「速く動けるようになるってこと?」

 

『それもありますが、魔力の効率運用も大事ですね。飛行は魔力を大量に消費します。無制限に魔力を供給できても、一度に使える量はその人の資質によりますから。』

 

う〜ん、要は蛇口みたいなものかな。私はそう考えて、なるべく少ない魔力で飛ぶ練習を始めた。

 

 

「あ、そう言えば凛さんからこれを預かってたんだ。」

 

30分くらい飛行し続けたところで思い出した。私はポケットから『アーチャー』と書かれたカードを出した。

 

『おや、クラスカードですね。せっかくなんで試してみましょう。』

 

『アーチャー』というからには弓だよね。一体どんなものが出るんだろう。私はワクワクしながらルビーに言われた通りにした。

 

限定展開(インクルード)

 

途端にステッキは弓へと変わった。

 

「うわっ!?本当にでた!これを使えれば勝てるんじゃない!?」

 

弓は弓道とかで使う競技用のものではなかった。まぎれもない戦闘用。でも、足りないものがあった。

 

「あれ、……矢は?」

 

『ありませんよ。』

 

え!?弓だけ!?これ使えないじゃん!?

 

『そういえば凛さんも、矢の代わりに手近にあった黒鍵を使ってましたね。』

 

はぁ〜、地道に特訓するしかないか〜。私がまた飛行訓練に戻ろうとした時、空に何かがあった。

 

「ん?何かが降ってき…たあぁぁぁぁぁ!!?」

 

物凄い速度で何かが降ってきた。砂埃が晴れて着地点を見てみると、

 

『全魔力を物理保護に変換しました。お怪我はありませんか?』

 

「な…、なんとか…。」

 

「美遊!?なんで空から……。」

 

そこには美遊がいた。よろよろと立ち上がってこっちを見た。

 

「イリヤ……、飛んでる。」

 

『はい、極自然に。」

 

へ?何をいってるのか聞こえないよ?

 

「イリヤ、飛び方を教えて欲しい。」

 

『イリヤ様は魔法少女は飛ぶものとおっしゃいました。そのイメージの元となったものは何か教えてくださいませんか?』

 

元?あー………、なら。

 

「今から家に来て。」

 

 

 

「こ……、これ………?」

 

「うん……、恥ずかしながら…。」

 

私の元になったのは、アニメである。

 

「航空力学はおろか、重力や慣性、作用反作用まで無視している。なんて無茶苦茶な動き……。」

 

そこはアニメだから……。ていうか、難しく考えすぎじゃない?

 

「た、ただいま〜…。やっと綾子に解放された……。」

 

そこにお姉ちゃんが帰ってきた。大分疲れた様子だった。

 

「お帰りなさい士郎。どうしたのです?そんなに疲れきった顔をして。」

 

「あぁ、セラ。私弓道部に入る事になっちゃった…。」

 

「それは良い事ではないですか。部活動は学生らしくて大変良いと思いますよ。」

 

え。お姉ちゃんが部活に入るって。そしたらいつも一緒に帰れなくなるじゃん。でも、お姉ちゃんはもう決めちゃったぽいし。しょうがないかなぁ〜。私はちょっとガッカリした。

 

「あれ?美遊来てたんだ。いらっしゃい。何してるの?」

 

「お、おおお帰りなさい、士郎さん。ちょっと用事があって。」

 

美遊が緊張していた。あれ?ちょっと待って?何で美遊顔が赤くなってるの?ま、まさか!!!

 

(ねぇ、美遊ってもしかして、お姉ちゃんが好きになっちゃった?)

 

ボンッ。そんなような音がなるくらい一気に美遊の顔が赤くなった。もう噴火しそうなほど。やっぱり。

 

「ゆっくりしてってね?ちょっと待ってて。今着替えてくるから。」

 

お姉ちゃんは自分の部屋に向かい、すぐに着替えて降りてきた。

 

「さてと。おそらく美遊は飛行の事で家に来たんだよね。」

 

さ、さすがお姉ちゃん。説明もなしに本題を理解しているなんて。

 

「美遊。貴女は『人は飛べない』と言ったね。それは当たり前の事だと。多分その概念が頭にこびりついているから、飛べないんだよね。」

 

「…その通りです。」

 

美遊が落ち込んだ声で答えた。

 

「なら、飛行は諦めよう。」

 

全員が驚いた。

 

「…私は今回必要ないという事ですか。」

 

美遊が悔しそうにそう言った。確かに今回は空中戦がメインになる。でも、だからってそんなのあんまりだよ。私が言い返そうとすると、

 

「ち、違う違う!そういう意味じゃないの!イリヤと美遊は2人ともとても必要だし、私達だけじゃ何も出来ない。」

 

お姉ちゃんは慌てて言った。じゃあ、さっきのはどういう意味なの?

 

「飛行は空中に浮いて縦横無尽に動く事って感じだけど、そうじゃなくて、……例えば、空中にある透明な足場に立つ様な感じなら、美遊も空中で戦闘出来るんじゃないかなって。」

 

「!!!」

 

なるほど!それなら出来るかも!私はそう思った。美遊の目にも確信めいたものがあるのが見えた。

 

「大丈夫。美遊ならきっと出来るから、落ち着いてよく考えて、試してみて。」

 

その言葉はどこか焦っていた美遊を落ちつかせる、そんなような言葉に聞こえた。

 

「わかりました。私頑張ります。ありがとうございました、おね、士郎さん。」

 

美遊に元気が戻ったのを感じて、私も少し嬉しくなった。少し気になったのは、今ちょっとお姉ちゃんって言おうとした事だろうか。そしてお姉ちゃんもそれを聞き逃さなかった。

 

「もし私の名前が呼びにくかったら、お姉ちゃんって呼んでもいいよ。」

 

お姉ちゃんの性格からして、気を使ったんだと思う。こういうところがお姉ちゃんの長所であり、同時に短所でもある。優しすぎて、同性でも勘違いしそうになるのだ。

 

「お、お姉ちゃん……。」

 

「うん。これからもよろしくね、美遊。」

 

……私の妹ポジションが半分奪われた。

 





FGOで水着イベントも始まり、ここから更に忙しくなりそうです……。

ちなみに、私はフランちゃんとアルトリア狙いです!……1回だけ10連回しましたが、礼装ばっかり………。

まぁ、いろいろありますが、こちらもなるべくはやく投稿できるよう頑張ります。

では、次回もよろしくお願いします!


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6話 橋の下の激闘 前編


士郎ちゃんのチート化が進行中です。
嫌だなぁと思われたなら、ごめんなさい……。
だって、この物語の主人公は士郎ちゃん何だから。


【士郎視点】

 

「よし、じゃあリターンマッチといきましょうか!」

 

「もう負けは許されませんわ!」

 

昨日と同じ場所、同じ時間にいつものメンバーが集まった。

 

「美遊、大丈夫?」

 

「うん、イリヤとお姉ちゃんのおかげで空中戦も可能になったから。今回は大丈夫。」

 

二人とも空中戦ができるようになったのは戦力が上がっていい事だ。二人を優位にたたせるには、私達の援護にかかっている。

 

『そろそろいいですね。では行きます』

 

『限定次元反射炉形成』

 

『境界回路一部反転』

 

『『接界(ジャンプ)』』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

やはり敵は前と同じように準備していた。だが、今回は想定済み。だから、慌てる事はなかった。

 

「さあ、二人とも言ってきなさい!」

 

遠坂さんの合図で、二人は空へ登っていく。イリヤは本当に飛行をしているが、美遊は階段を上るかのように上へ上がっていく。どうやら、魔力を足場で固めているようだ。私の助言が役に立ったようで良かった。私は心の中で喜びながら、弓を投影し、矢で魔法陣を無力化していく。イリヤ達に当たらないように、細心の注意を払う。

 

「凄いわね。弓道部に入ったら主将確定ね。」

 

「今はそんな事話してる場合じゃないですわ。」

 

「そう。私達は最善のサポートをする。それだけだよ。」

 

そう言いながら、私は弓を引く。

 

【イリヤ視点】

 

「よし!いくよルビー!」

 

『はい!いっちょかましてやりましょう!』

 

私はルビーに声をかけて飛んだ。その間、凛さんに言われた事を思いだしていた。

 

「いい?複雑な作戦立てても混乱するだけだから、役割を単純化するわね。小回りの効くイリヤは陽動と撹乱担当、突破力のある美遊は本命の攻撃担当ね。」

 

空に飛んだらとにかく斉射。こっちに意識を向ける為に、弾幕をはる!!

 

「中くらいの、散弾!!!」

 

ステッキの先から魔力弾が出た!これで、

 

「よし!タイミングばっちり!」

 

「やっておしまいなさい、美遊!」

 

美遊が接敵距離(クロスレンジ)に飛び込む。

 

「『ランサー』限定(インク)……」

 

すると、相手は姿を消した(・・・・・)

 

「なっ!?」

 

「美遊!!今すぐにそこから離れて!!」

 

お姉ちゃんがそう叫ぶ。消えたかと思った相手は美遊の後ろにいた。

 

「クッ!!」

 

「美遊!!!」

 

美遊は地面に叩きつけられた。辺りに砂埃が舞う。

 

『申し訳ありません、美遊様……。物理保護の強化が間に合わず…。』

 

「大したことな、つッ!!」

 

『美遊様!足が!』

 

「こんなの、治癒促進(リジェネレーション)ですぐ…。」

 

でも、相手はそれを許してくれなかった。ピーー、と相手の集中砲火のロック音が響く。

 

「イリヤ!美遊のところに!」

 

「うん!」

 

私はお姉ちゃんの合図で、美遊のところに猛スピードで飛んでいった。

 

「ダメ!間に合わない!」

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

私がそう思ったら、美遊の上に7枚の花弁が現れた。その隙に私は美遊を連れて、空へ飛び立った。

 

「何とかなったね……。」

 

「…ごめん、ありがとう。」

 

そう言って、私たちは敵に意識を戻した。

 

「美遊、ちょっと試したい事があるんだけど。」

 

「何?」

 

私は美遊に作戦を伝えた。これでダメなら、また日を改めた方がいい。

 

「どうかな?」

 

「うん。やってみる価値はあると思う。」

 

「よし。じゃあやってみよ!」

 

この時、ルビーとサファイアは思った。

 

((あぁ、これが本来あるべき姿だ。))

 

だが、あえて言葉にしなかった。

 

【士郎視点】

 

「何とかなったね……。」

 

「衛宮さん!大丈夫!?」

 

魔力はまだ大丈夫だが、そんなに余裕がある訳ではない。

 

「すぐに2人を呼び戻します!それまでシェロは休んでいてください!」

 

「まって!まだ、2人は諦めてませんよ!」

 

イリヤも美遊もまだ諦めていない。ならば、姉の私が倒れる訳にはいかない。その思いで、私は気を引き締める。

 

「ちょっと、まだ続ける気!?同じ作は通じないわよ!」

 

「一時撤退ですわ!戻りなさい美遊!」

 

「行きなさい、2人とも!!」

 

遠坂さんとルヴィアさん、それにイリヤと美遊までこっちを向いた。

 

「思った通りにやればいい!ダメだったら、私達が何とかするから!思いっきりやって来なさい!」

 

「「はい!!」」

 

私は再び弓を持つ。

 

【イリヤ視点】

 

行ってこいって言ってくれた。ダメだったら何とかするからと言ってくれた。なら、怖がる事は何もない。思いっきりやればいい。私は敵の方へ全速力で飛んでいく。

 

「だぁぁー!!あの馬鹿!役割くらい守れぇぇ!!」

 

「散弾を打っても、また転移で避けられますわ!」

 

凛さんとルヴィアさんがそう叫んでいるけど、今は気にしない。

(また転移で避けられるのなら、どこに転移しても当たるような、弾幕を張るだけ!!)

 

「いくよ!極大の……散弾!!!」

 

跳弾。反射鏡面を利用すれば出来るかなって思ったけど、予想以上に上手くいった。でも、大き過ぎる散弾じゃダメージは与えられない…。だけど、敵は一瞬止まるはず!その一瞬が有れば、

 

「美遊!!」

 

「弾速最大……狙射(シュート)!!!」

 

見事に命中した。敵は地面に叩きつけられていた。

 

「や、やった!!」

 

『まだです!ダメージは与えましたが、致命傷は与えていません!早く詰めの攻撃を!』

 

ルビーがそう叫んだ。しかし、

 

Zeichen(サイン)ー!!」

 

Anfang(セット)ー!!」

 

投影、開始(トレース・オン)!!」

 

下には準備万端の人達がいた。

 

「轟風弾五連!!」

 

「爆炎弾七連!!」

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!!」

 

3人の魔術が同時に発動し、物凄い爆炎が地面を包んだ。何というか…、壮絶だぁ……。視線を地面から空に移した。すると、無数にあった魔法陣が消えていくのが見えた。

 

「…という事は。」

『私達の勝利です!!』

 

ルビーが叫んだ。と同時に花火が上がった。

「何で花火?ていうか、何でデザインが私なの!?」

 

『いいじゃないですか!祝砲ですよ!』

 

とっても恥ずかしいんですけど!?煙が晴れて、下を見ると、凛さんとルヴィアさんはまた喧嘩をしていた。私は苦笑して、すぐに美遊のところに行こうとした。

 

でも、美遊は重い顔をしていた。美遊の視線の先を見ると、そこには、さっきの敵(・・・・・)がいた。

 

「えっ?」

 

「まずい!!アイツ、この空間ごと焼き払うつもりよ!!」

 

つまり、さっきの攻撃を転移で避けていた。私はさっきまでの雰囲気を一変し、どうすればいいか、頭をフル回転した。

 

(そうだ!美遊の飛行は足場で魔力を固めているものなら!!)

 

私は美遊に魔力砲を放って叫んだ。

 

「美遊!!乗って(・・・)!!」

 

魔力を固めて足場に出来るなら、魔力砲でも出来るはず!

美遊は、私の考えを察して『ランサー』のカードを限定展開(インクルード)していた。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)!!」

 

魔力砲の勢いがのった美遊の槍は、敵を貫いた。そして、次の瞬間にはカードの姿になった。

 

「やったぁ!これで完全勝利だよね!」

 

「こぉらぁ、イリヤスフィール!!」

 

「うぇいッ!?」

 

私は地面に着くとルヴィアさんのゲンコツに頭を挟まれた。

 

「よくも美遊に魔力砲を撃ってくれましたわねぇ!!」

 

「いだだだだだだだっ!!だ、だって出来ると思ったんだもん!」

 

頭をぐりぐりしてくるルヴィアさんに、私はそう言った。

 

「こら、子どもに手をあげるな。」

 

「こっちは気にしないで、早く美遊のところへ行って来なさい。あと、緊急だったけど危ないことをしたんだから、ちゃんと謝るのよ。」

 

「は、はい。わかりました。」

 

お姉ちゃんは私にそう言った。確かに、もし美遊が魔力砲に乗れなかったらと思うと、ゾッとする。私はすぐに美遊のところへ向かった。

 

【士郎視点】

 

「何とか倒せましたね。」

 

「えぇ、しかし2枚目でここまで苦労するとは、先が思いやられるわ。」

 

「情報が少なすぎるのですわ。敵の能力についても…、そもそもこんな空間を作ってしまうカードについても。」

 

私達は3人でそんな話をした。確かに情報が少ない。敵がどんな能力を使うのか、それがわからなかったら対策の使用もない。ん?空間?

 

「そういえば、カードを回収したのに空間の崩落が随分と遅くないですか?」

 

「えっ?あぁ、確かに。」

 

「どういう事ですの?」

 

何か嫌な予感がする。早く『離界(ジャンプ)』した方がいいかもしれない。そう思った私は2人に言おうとしたが、後ろに重苦しい威圧感を感じた。

 

「!!!2人とも、避けて!!」

 

私は2人を突き飛ばした。その瞬間、私は漆黒の剣に斬り裂かれた。薄れゆく意識の中で、こっちを見つめるイリヤの姿が見えた。

 

「に……げ…………て………………。」

 

「お姉ちゃん!!!」

 





戦闘の描写を書こうとすると、どうしても短くなってしまいます。その辺りは、私の至らなさが原因です。これから頑張っていきます!

では、次回もよろしくおねがいします。


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7話 橋の下の激闘 後編


更新が遅れて申し訳ありません。
前回の続きですが、最後ちょっとわかんなくなってしまいました………。


【イリヤ視点】

 

「お姉ちゃん!!!」

 

「イリヤ、待って!!」

 

倒れたお姉ちゃんのところに飛んで行こうとした私を、美遊が引き止める。

 

「離して!!お姉ちゃんが、お姉ちゃんが!!」

 

「落ちついて!!闇雲に動いてはダメ!!」

 

『そうです!!大丈夫、まだ生体反応はあります!』

 

「だったらなおさら!」

 

「だからこそ!!」

 

美遊の目を見る。そこには、悔しさと怒りの色が浮かんでいた。私も同じ目をしていると思う。

 

「冷静に、確実に、行動すべきなの……!!」

 

「…わかった、ごめん。」

 

「大丈夫、幸いルヴィアさん達がいるから、私達で敵を引きつけて、その隙に救出してもらおう。それでいい?」

 

「わかった!」

 

私と美遊は空へ飛びたった。敵はまだ最初の場所から動いていない。美遊さん曰く、お姉ちゃんを囮にしているそうだ。絶対に許さない!

 

「凛さん!ルヴィアさん!お願い!」

 

「わかってるわよ!」

 

凛さんとルヴィアさんは機会を待って物陰に隠れている。私のやる事は、あの敵をおびき出す事!

 

速射(シュート)!」

 

美遊さんが先に攻撃した。けど、その攻撃は黒い霧の様なものに防がれた。

 

『敵損害なし、攻撃がとどいていません……!』

 

「あれはいったい……。」

 

美遊は一瞬動きを止めたけど、すぐに攻撃を再開した。私も出し惜しみせず、攻撃に参加した。でも、同じ様に相手に攻撃は届かない。

 

「どういう事?もしかして、また反射平面とかいう……」

 

『いえ、魔術を使っている様子はありません。あの黒い霧は、まさか……。」

 

ルビーは何かわかった様子だった。そこに、

 

「イリヤ!!避けて!!」

 

「え?あうっ……!」

 

美遊の言葉のすぐあとに黒い斬撃が飛んできて、私の腕をかすめていった。美遊の呼びかけがなかったら危なかった。

 

「あ……、あっ……、腕が……!」

 

『大丈夫です!軽傷ですのですぐに回復出来ます!』

 

「サファイア…、あの黒い霧は……!?」

 

『間違いありません!あれは、信じがたいほど高密度な、魔力の霧!』

 

サファイアの意見にルビーも同意していた。あの黒い霧が魔力だってわかった。なら、作戦もたてられるはず。でも、そんな時間を与えてくれるほど、相手は優しくなかった。じりじりとこっちに歩いてきていた。

 

「でも好都合。相手が近づいてきたら、その分お姉ちゃんの救出が簡単になる。」

 

そう。もともとこっちにおびき寄せるのが目的だったから、それに関しては成功した。

そう思っていた。

 

「あれ、凛さんとルヴィアさんは……。」

 

もう救出に行けるのに、二人が出てくる様子はなかった。そして見つけたのは、倒れている二人だった。

 

「嘘…、二人まで……。」

 

「っ!!」

 

「イリヤ!?まっ」

 

待ってと言おうとした美遊を無視して、私は敵に飛んでいった。勝てる見込みはない。でも、もうこれ以上我慢出来ない!私は魔力弾を放ちながら飛んでいった。やっぱり黒い霧に阻まれ、攻撃が通らない。なら、

 

「やぁ!!」

 

魔力で出した刃で斬り込んだ。相手はビクともしない。私は後退しながら魔力弾を放ち、もう一度斬り込んだ。でも、何をしても相手に攻撃が届くことはなかった。

 

すると相手はゆっくりと真っ黒の剣を振り上げた。私は相手の懐で止まってしまった。今から回避することはできない。

 

(あっ………。やられる………。)

 

私は目を瞑った。でも、いつまでたっても私に剣が振り下ろされる事はなかった。

 

「ウッ!!」

 

敵の呻き声が聞こえて、私は咄嗟に目を開けた。そこには、私の大好きな人が立っていた。

 

「私の妹に、何をする!!」

 

「お姉、ちゃん……。」

 

私の意識はそこで途切れた。

 

 

【士郎視点】

 

「ごめんね、イリヤ。遅くなって。」

 

私は倒れたイリヤを担いで、美遊のもとへいった。

 

「ごめん、美遊。イリヤをお願い。ルビー、遠坂さんとルヴィアさんのとこへいって。」

 

『この状況ではしかたないですね……。』

 

「お姉ちゃん…、どうして……。」

 

美遊は状況がわからない様だった。私はイリヤを美遊の近くにおろして、敵の方を向いた。

 

「こうなってしまったなら、仕方がない。私の全力で貴女を打ち倒そう。覚悟はいいか、黒の剣士!!」

 

私はそう告げて、両手に干将・莫耶を投影する。剣士は、真っ黒の剣を構えて私の出方を伺っている。それなら、

 

「ふっ!!」

 

私は一気に距離を詰めて相手に斬り込む。相手は私の攻撃を防ぎ、すぐに攻撃に転じる。私も同じ様に相手の攻撃を防いで、また打ち込む。これは、魔力の介入しない純粋な剣の勝負。恐らく相手は〈セイバー〉のカードだろう。私よりも剣の扱いに慣れている感じがした。周りには金属がぶつかり合う音が鳴り響き、火花が舞っている。

 

「せいっ!!」

 

「………ッ!!」

 

「そこだッ!!」

 

「アア!!」

 

隙が生まれた場所を撃つ。当ったが少し浅い。

 

「ッ!!!」

 

「ぐッ!!」

 

敵はすぐに態勢を立て直し、私を蹴り飛ばした。私はもろにくらってしまった。

 

「それならッ!!」

 

私は今持っている干将・莫耶をもう二対投影した。

 

鶴翼三連(かくよくさんれん)!!」

 

互いに引き寄せあう性質を持つ夫婦剣を用い、投擲と斬撃を重ね当てる技は、敵に確実に命中した。

 

「ウッ!!」

 

相手はさすがによろめいて、思い切り私との距離をとった。このチャンスを逃すわけにはいかない!私は弓を投影して、魔力をこめる。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

私の渾身の一矢は真っ直ぐ飛んでいった。その場に砂埃が舞い、相手の状況が確認できない。これで倒れてくれればいいのだけれど。

 

そう思った瞬間、尋常じゃない魔力反応を感じた。そんな事をするのは、この場にはあの剣士しかいない。

 

「宝具か……。」

 

正直に言うと、後ろにイリヤと美遊がいるこの状況で宝具の真名を開放されるのはまずい。迎え撃っても、絶対負ける。私に残された手は、1つ。

 

投影、開始(トレース・オン)!」

 

私の中にあるもの。私の命を救ってくれたもの。今度は私の大切な人を守る為に、今ここに投影する!

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

全ては遠き理想郷(アヴァロン)!!」

 

その場は光に包まれ、誰もその瞬間を見ることができなかった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

光の中で、私はその剣士と会った。それが現実なのかどうかはよくわからない。でも、さっきまでと違い、もう敵意はなかった。

 

「貴女の名は?」

 

相手が先に口を開いた。私はすでにこの相手の名を知っていた。

 

「衛宮士郎です、アーサー王。」

 

アーサー王は驚きはしなかった。

 

「ごめんなさい。貴女の鞘は私の中にあります。今貴女にお返ししますね。」

 

「いえ、私の鞘は今は貴女のものだ。しっかりと持っていてください。貴女の進む道に光があらん事を願っています。」

 

「ありがとうございます!」

 

最後はお互いに笑顔を見せた。だんだんと光が強まっていく。

 

「その方がいい。貴女は笑顔がよく似合う。」

 

そう告げられ、光が何もかもを遮った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

光が晴れると、元の場所に戻っていた。宝具の衝突で、あたりは崩壊していたけど。そして、足元には【セイバー】のクラスカードが落ちていた。

 

「これで、……終わったのかな?」

 

私はそう呟き、美遊のいる場所に歩いていった。

 

「お姉ちゃん、大丈夫ですか?」

 

「何とかね……、美遊は怪我とかしてない?」

 

「私は大丈夫ですが、ルヴィアさん達は?」

 

「ルビーがいるから、多分大丈夫。それにイリヤも気を失ってるだけだから。」

 

美遊は安堵の息をつく。そして瓦礫の山から、

 

「し、死ぬかと思った………。」

 

「おのれ…!絶対許しませんわ!!って、あら?敵は?」

 

意外と元気に遠坂さんとルヴィアさんが出てきた。

 

『全く。死にかけの貴女方を助けてあげたこのルビーちゃんにお礼の1つもないんですか〜。」

 

いつもの様に空気を読まないルビーもいた。どうやら、何とかなったみたい。

 

「さてと、それじゃあ帰ろうか。イリヤはこんな状態だから、〈離界(ジャンプ)〉は美遊だけに頼る事になるけど、よろしくね?」

 

「はい、任せてください。サファイア。」

 

『了解しました、美遊様。姉さん達も早くこちらに。』

 

疲れ切っている体を動かし、美遊の周囲に集まる。

 

離界(ジャンプ)。」

 

こうして、長かった夜の闘いが幕を閉じた。

 





アルトリア出したくてこんな感じになってしまいました……。

次回は箸休めの回になります!次回はあの有名な虎も出るかも?

では、次回もよろしくおねがいします!


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8話 嵐の前の・・ 士郎編

10月に入る前に1話出したかったのですが、遅れてしまいました。すいません。

予告通り、今回は箸休めのようなものです。

テストなどが重なって久しぶりに書いたので、おかしな点があるかもしれませんが、ご了承ください。


【イリヤ視点】

 

「38・2度。風邪ではなさそうですが、少し熱がありますね。大事をとって、今日はお休みした方が良いでしょう。」

 

「えー、セラ過保護すぎー。確かに熱っぽいけど、別に体だるくないもん。」

 

「過保護で結構です!さぁ、今日は安静にしていてください!」

 

昨日の闘いのことはよく覚えていないけど、何とか終わったという事をルビーから聞いた。そして、私は今自分の部屋のベッドにいる。

 

「まぁ、いいや。最近寝不足だったし、今日はゆっくり休もう。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「どうだった?」

 

「士郎の言う通り、封印は解けてなかったわ。士郎は?」

 

「大丈夫だけど、少し寝かせてだって。」

 

「そう……。はぁ……、あまり危険な事はして欲しくないわ……。」

 

「だから、士郎が一緒にいる。」

 

「そうだけど、士郎にも平和に暮らして欲しいわ。それより、リズ!歯磨きなら、洗面所でなさい!」

 

「ほ〜い。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

【士郎視点】

 

私は今、学校にいる。リズには寝かせてっていっておいたから、しばらくはバレないだろう。授業が始まってしまえばこっちのものだからね!

 

「おはよう、綾子。」

 

「おはよう、士郎……。何か顔色悪くない?」

 

「ちょっと寝不足なだけだよ、行こ!」

 

「そう?なら良いけど、あんまし無茶するなよ〜。」

 

体調は悪くない。でも、寝不足は本当。今日は少し長めに寝たけど、昨日の戦闘のせいですごく眠い。でも、そんな事で休んでなんかいられない。

 

「どうする?今から朝練だけど、見てく?士郎もこれから弓道部員だし。」

 

「あ〜……、ごめん。今から生徒会のお手伝いがあるから、行けないや。」

 

「そう?なら、明日にでも見に来なよ。皆大歓迎だから。」

 

「ありがと、じゃあ早速明日から見学させてもらうね。」

 

そうして、私は綾子と一旦別れ、一成君の待つ生徒会室に向かった。

 

 

「おはよう、一成君。」

 

「む、衛宮か。おはよう。来て早々悪いが、時間がない。付いて来てくれ。」

 

「うん、いいよ。」

 

私は一成君の後をついていった。

 

「この扇風機なんだが。先日電源を入れたら動かなかったと、文化部から報告があってな。俺の目には天寿を全うされたようにしか見えん。」

 

「天寿を全うされてたら、私も直せないよ〜…。」

 

「だが、お前の目から見たらただの仮病かも知れないと思い、ご足労願ったのだ。」

 

「それはいいけど、一成君て、昔から時々変な日本語使うよね?」

 

今時ご足労願うなんて使う高校生はいないよ。一成君と私はくすくすと笑った。

 

「う〜ん……、多分モーターに問題があると思う。でも何とか直りそうかな?」

 

「そうか。衛宮に見せてよかった。では、頼めるか?」

 

「任せて。あと、ここからちょっと繊細な作業になるから、外で待っててもらっていい?」

 

「了解した。すまんな。」

 

一成君が教室から出ていった。さて、やりますか。

 

同調、開始(トレース・オン)。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「セラ〜、そろそろ士郎起こした方がいいんじゃない?」

「いえ、今日くらいもう少し休ませてあげた方がいいでしょう。」

 

「ん〜……、そうだね。じゃあセラ、お茶とお菓子ちょうだい。」

 

「貴女は働きなさい!!!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「一成君、終わったよ。」

 

「そうか。丁度良い時間だな。今から教室に行けば、余裕で間に合うだろう。」

 

「そうだね、行こっか!」

 

私は一成君と一緒に歩いていった。廊下は、窓から朝日がさし、キラキラと輝いていた。平和だなぁ。

 

「あ、士郎ーー!!」

 

あ〜……、短い平和だったなぁ……。

 

「藤ねぇ。おはよう。」

 

「こらぁぁ!学校では藤村先生と呼ばんかい!!」

 

いきなりやって来て、頬っぺたをつねられた。普通に痛い。て言うか、それなら藤ねぇも衛宮さんて呼んでよ。

 

「いひゃい、いひゃいよ。」

 

「それより、イリヤちゃんは大丈夫?なんか熱って聞いたんだけど。」

 

「うん。微熱だから、明日には治ってると思うよ。」

 

藤ねぇはこういうところはちゃんと教師だ、と私は思った。

 

「それより、何で藤ねぇが高等部にいるの?」

 

「ん?私弓道部で教えてるし、朝練は時々顔見せてるんだよぉ。」

 

それは、初耳だ。綾子隠してたな……。

 

「ま、あんたもがんばんなさい。あ、久しぶりに士郎の肉じゃが食べたいなぁ。」

 

「今度またそっち行くから、その時ね。」

 

「本当!絶対だよ!ちゃんと連絡してよ!」

 

藤ねぇの場合、連絡しなくても本能で嗅ぎつけて来そう。私はそう思い、藤ねぇと別れて教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

まずい。とてつもなく眠い。1時限目が始まった15分後に、私は眠気に誘われていた。あぁ……、意識が………。

 

「……さん、…衛宮さん?」

 

「……?」

 

「大丈夫ですか、衛宮さん?」

 

「は、はひ!?すいません!」

 

気づいたら眠ってしまっていた。失態だよぉ……。

 

「気分が悪かったら、無理せず保健室に行ってね。ちょっと顔色も悪いから。」

 

「いえ、大丈夫です!お気になさらず!」

 

先生の優しさには感謝しかないけれど、休む訳にはいかない。私は気合を入れ直し、寝ていた時に進んだ板書を写す。すると、突然聞き慣れた声が聞こえた。

 

「士郎、帰るよ。」

……え、なんでさ。なんでリズがいるのさ。

 

「あ、あの……、どちら様でしょうか?」

 

ほら、先生困ってるじゃん。ノートにひたすら書き込んでいた皆も、完璧に動きを止めていた。

 

「私は士郎の保護者。本当は士郎は今日休むはずだった。なのに士郎はこっそり学校に行った。だから、連れ戻しに来た。」

 

普段やる気のないリズが珍しくハキハキと喋っていた。え、もしかして、怒ってる?怒ってるよね?

 

「そうなんですか!?え、衛宮さん!早く帰ってお休みしてください!早退扱いにしておきますから!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!私はこの通り、元気、」

 

そう言って立ち上がった瞬間に、平衡感覚を失うほどの目眩が私を襲った。

 

「この通り元気じゃないから、連れて帰る。」

 

倒れかけた私をリズが支え、そのまま担ぎ上げた。って、この体勢って、お姫様だっこじゃん!!

 

「お、降ろして!リズ!!」

 

「降ろしたら士郎逃げるし。」

 

「この体勢、恥ずかしい、から……///」

 

スカートの中が見えそうなのと、何よりこの状況を見られるのが恥ずかしい。

 

「しょうがない。ならおんぶする。」

 

「自分で歩いて帰れるから!!」

 

リズを説得できず、結局おんぶという事になった。正直、とても恥ずかしかった。

 

「士郎、帰ったらセラのお説教。」

 

「ん……、しょうがない……、よね……。」

 

私はリズの背中の温もりを感じながら、コクッ、コクッと船を漕いでいた。

 

「眠かったら寝ていい。」

 

「ん……、ごめんね………。」

 

私は言われるがまま眠った。リズの背中は、とても気持ちよかった。

 

 

 

〜1時間程前〜

 

「士郎がいない!?」

 

「鞄も無かったから、多分学校。」

 

「全くあの子は!!!リーゼリット!今すぐ士郎を迎えにいって来なさい!!!」

 

「行ってくる。」

 

「また貴女はそうやって……、はい?」

 

「今から士郎を連れ戻してくる。」

 

「は、はい。頼みましたよ!」

 

「うむ。」

 

セラは思った。リズが素直に言うことを聞くなんて、何かの前兆では無いのかと。しかし、セラの心配とは裏腹に、何事も無く士郎を連れて帰って来たのだった。

 




今更なのですが、本作ではプリヤでは出てこなかった人物もバンバン出す予定です。

次回はイリヤ視点のお話になります。なるべくはやく更新できるように頑張ります。

では、次回もよろしくお願いします!


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9話 嵐の前の・・ イリヤ編


ギリギリ10月中にもう一回更新できました。




【イリヤ視点】

 

38・2度の熱で今日は学校を休むことになった。体は全然怠くないのになぁ。

 

「は〜〜、重病でもないのに学校休むのって、ちょっぴり罪悪感があるよね〜〜。」

 

『まー、昨晩は激闘でしたからねぇ。今日くらい休んでもバチはあたりませんよ。』

 

「そうかなぁ〜。」

 

ルビーとそんな話をしていると、コンコンと窓を叩く音が聞こえた。私は上体を起こし、窓を開けた。

 

「イリヤ、おはよう。」

 

「お姉ちゃん!?」

 

何とそこにはお姉ちゃんがいた。

 

「しーーっ!!見つかっちゃうから!」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「うん。その様子だと元気そうだね。よかった。」

 

お姉ちゃんは安心した表情を浮かべていた。

 

「じゃあ、私は学校行くから、イリヤは安静にしてるんだよ。」

 

「はーい………って、え?」

 

あれ?お姉ちゃん学校行くの?どう考えても、お姉ちゃんの方が重症だったのに。お姉ちゃんに色々聞こうとしたけど、窓の外にはもう姿はなかった。

 

「あれ?お姉ちゃんは?」

 

『あそこですよ。』

 

ルビーが示した方向には、家々の屋根を軽やかに飛び、誰も見ていないところで道路に着地したお姉ちゃんがいた。

 

「お姉ちゃんって……、すごいなぁ……。」

 

『あれはもはや半分英霊ですね。』

 

そう呟いて、私は何事もなかったかのようにベッドに入った。

 

「ん〜〜、最近夜更かしが多かったから、朝起きるのつらかったんだよね〜〜。

あー……、平日のこんな時間からゴロゴロするのって幸せかも……。」

 

『…休息も結構ですが、そのまま登校拒否児(スクールエスケイパー)にならないでくださいね?』

 

ルビーが何か言っていたのはわかったけど、何を言っていたのかはわからなかった。

 

『………寝ましたか。』

 

「……大きくなったら、ニートになりたい……。」

 

『何て寝言でしょう!!』

 

 

お昼前にお姉ちゃんがリズに背負われて帰ってきた。それから数時間が経って、時刻は午後三時を回っていた。私はと言うと、

 

「ひ………、暇だッ!!!!」

 

あまりにやる事がなく暇を持て余していた。

 

「あーもー暇だわー!何にもする事なくて寝てるだけって意外とキツイ!!」

 

『元気な病人ですねー。熱はもういいんですか?」

 

「もう何ともないよ…、もともと風邪でもないんだから。」

 

あぁ…、暇って人間をダメにするのね……。勉強とか仕事とかに縛られる事で、ようやく人は人らしく生きられるんだわ……。

 

『その歳で老成した人生観をもつのも如何なものかと思いますがー。』

 

「だからナチュラルに私の思考を読まないでよ!!」

 

そう叫んだ私だけど、ふと机の上に置かれたカードが目にはいった。

 

「まだ0だなぁ……。」

 

『?何がですか?』

 

「私達が回収したカードの枚数。なんだかんだいって、お姉ちゃんがいなかったらカードを回収できてないなぁって。」

 

この前のキャスター戦でもそう。お姉ちゃんがいなかったら、美遊は相手の攻撃でやられてたし、その後のセイバー戦も、皆危なかった。

 

「美遊も、お姉ちゃんに頼りすぎだって思ってるのかな……。……美遊、今何してるのかなぁ……。」

 

『では直接聞いてみましょう!!』

 

そういうとルビーの頭からアンテナみたいなのが生えてきた。

 

「ってうわ!?なにその形態!?」

 

『24の秘密機能(シークレットデバイス)の1つ、テレフォンモードです。あ〜、もしもしサファイアちゃん?起きてますか〜?』

 

『どうしたの姉さん?」

 

『今の声、…何、サファイア?』

 

ルビーからサファイアと美遊の声が聞こえてきた。

 

「あ、もしもし美遊?ごめんね、今大丈夫?」

 

『うん、今日は私学校休んでたから。』

 

そうなんだ〜、と相槌をうった。でも急に言葉が続かなくなってしまった。ど、どうやって話題を振ろう……。

 

『ああ、もう!焦れったいですね!こうなったら顔を合わせてお話ししてください!サファイアちゃん、テレビ電話に切り替えてください!』

 

『わかりました。よろしいですね、美遊様?』

 

テ、テレビ電話!?ちょっと私今パジャマなんですけど!あ、でも美遊もパジャマなのかな?ちょっと見てみたい気もする。

 

『ちょっ、まっ!?』

 

いつもは聞かないような美遊の焦ったような声が聞こえたと思ったら、ルビーが壁に映像を投射した。

 

そこには、メイド服を着た(・・・・・・・)美遊がいた。

 

「メ、メイド服!?」

 

『あらあらまあまあ……!なんとも良いご趣味をお持ちのようで!』

『こ、これはそのっ…、私の趣味じゃなくて…!ルヴィアさんに無理矢理着させられてっ……!』

 

頬を赤らめ、目尻に涙を溜めて言い訳をする美遊がとても可愛くて、その姿を見て、私の中の変なスイッチが入った気がした。

 

「美遊……今すぐあなたに会いたいわ……。」

 

『へ?何を……。』

 

「うんすごく会いたい、なんて言うか生で見たい、来て、今すぐ来て!そのまんまの格好で!!家は向かいでしょ!早く、駆け足ーッ!!!」

 

『は、はいぃっ!!?』

 

早く見たいなぁ、と考えていたらすぐにうちのチャイムが鳴った。そして私の部屋の扉が開かれた。

 

「お、お邪魔します……。」

 

「いらっしゃーーい!!」

 

美遊がちいさく「あうっ。」と声をあげて飛びついた私を支える。

 

「わー!本当にメイド服だー!いい生地使ってるし、縫製もしっかりしてる!本物だよね?本物の小学生メイドだよね?ちょっと『ご主人様』って言ってみて!」

 

「え?普通は『お嬢様』じゃ……。」

 

「いいから!!」

 

「ごっ、ご主人様!?」

 

私に言われるがままにやってくれた美遊に満足して、ちょっと落ち着いてきた。

 

「ご、ごめんね?なんか変なスイッチ入っちゃって…。」

 

「い、いえ別に……。」

 

美遊の意外な一面にテンションが上がってしまい、本来の目的を忘れていた。

 

「そうそう、今日は美遊と話したいことがあったの。」

 

「なに?」

 

私は少しだけ気持ちを引き締めた。けど、そんな固い話をするつもりもないから、適度に引き締めただけ。

 

「私たち、ちょっとお姉ちゃんに頼りすぎなのかなって。」

 

「………私も同じことを考えてた。お姉ちゃんはステッキを持っていないのに、私たちよりカード回収に貢献してる。」

 

やっぱりこのままじゃダメだよね、と私たちは話し合っていた。すると、ルビー達がいない事に気がついた。

 

「あれ?ルビーは?」

 

「サファイアもいない。どこに行ったんだろ?」

 

『お二人さん!ベッドから退いてください!』

 

「「えっ?」」

急にルビーの声が聞こえたと思ったら、ベッドに何か落ちてきた。私たちはそのままベッドに寝転ぶ形になった。

 

「な、なに?ってお姉ちゃん!?」

 

「え?なんでお姉ちゃんが?」

 

『お二人の悩みを解消するために士郎さんをお連れしようと思ったのです。しかし、お休み中でしたのでそのままにしようと思ったのですが。』

 

『私が転移させちゃいました☆』

 

何やってんだ、このステッキ。とルビーを怒ろうと思ったけれど、偶然にもお姉ちゃんと一緒に寝れるチャンスがやってきた。

 

「まぁいいや。なんか眠くなっちゃった。美遊も一緒にお昼寝しよ?」

 

「…うん。」

 

美遊もやっぱりお姉ちゃんと一緒に寝たいらしい。私たちは隣で規則正しく呼吸するお姉ちゃんに寄り添いながら目を閉じた。

 

『結果オーライですね!サファイアちゃん!』

 

『ですが、勝手な行動をした姉さんにはお仕置きが必要ですね?』

 

『え?ちょっ、待ってくださいよ!?べつに悪いことしたわけじゃ、ピギャァーー!!』

 

遠くでヘンテコな悲鳴が聞こえたけど、今は気にならない。

 

 

【士郎視点】

 

「えっと……、これはどういう状況なのかな?」

 

私はいつから寝ていたのかよくわからない。だけど、確実に今の状況にはならないと思う。

 

目覚めた時には、パジャマ姿のイリヤと何故かメイド服の美遊に抱きつかれていた。当の本人たちはぐっすりと眠っている。

 

「なんで私イリヤの部屋にいるんだろ?」

 

まぁいいかな?あまり深く考えないでおこう。私はイリヤ達に目をやる。

 

「ふふ。可愛い顔して寝てる。」

 

私は2人の額にそっと口づけをする。

 

「どんな時でも、必ず私が守るからね。」

 

私は2人が起きないように2人の腕を退けて、静かに部屋を出ていった。

 

 

 

 

その部屋で、イリヤと美遊は恥ずかしさと嬉しさが入り混じり悶絶していることを、士郎は知る由もない。

 

 





11月は更新できるかわからないです。

もう、テストなんてやりたく無いなぁ・・・。

なるべく更新したいと思います。

では、次回もよろしくお願いします。


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10話 暗殺者の罠、イリヤの力


一カ月ぶりの更新です……。遅れて本当にすみません!




【美遊視点】

 

何かの間違いであって欲しかった。

 

 

でも、間違いじゃなかった。

 

 

大地は抉れ、そこにあったはずの森は消し飛び、イリヤを中心に大きなクレーターが広がる。

 

 

この私の目の前に広がる惨状こそが、

 

 

イリヤの、力なのだと……。

 

 

 

時は、数分前に遡る。

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

私たちは、今夜もカード回収にやって来た。だけど、

 

「どういうことですの?敵はいないし、カードもない……。もぬけのカラというやつですわね。」

 

ルヴィアさんの言う通り、いつもならすぐに何かが起こるのに今日は何にもなかった。

 

「嵐の前の静けさかもしれないから、皆警戒はしてね?」

 

「そうね。特にイリヤ!!周りにちゃんと気を配りなさい!」

 

「ふぁいッ!?」

 

突然矛先が私に向き、変な声が出た。そして慌てて言われた通り周りを見渡してみる。だけど、やっぱり何も起きる気配がない。

 

「もしかして、場所間違えたとか?」

 

「それはないわ。元々境界面は単なる世界の境界、空間的には存在しないものなの。それがこうして存在しているとなると、必ず何処かに原因(カード)があるはずだわ。」

 

なら間違いないよね。私は改めて周りを見渡す。

 

「あれ?なんだか今回空間が狭くない?」

 

「カードを回収するごとに歪みが減ってきてる証拠ね。最初の頃は数キロ四方もあったらしいし。」

 

うへ〜……。そんな広い所を探すなんて大変だっただろうなぁ〜……。

「取り敢えず歩いて探すしかないのかな…。」

 

『ん〜む…。何とも地味な……。もっとこう、魔法少女らしく、ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に変えるくらいのリリカルな探索法をですね。』

 

「それはただの破壊行動だよ……。」

 

ルビーとそんな事を話していた時、不意に後ろで何か動く気配がした。

 

『?どうかしましたか?』

 

「ううん、何でもない。」

 

「イリヤー?早く来なさい。置いてくわよー。」

 

凛さんに呼ばれた方へ向かう。でも、やっぱり気になってしまった。私は後ろを振り返った。

 

「気のせいかな?さっき何かうごっ!!?」

 

言いかけた途中で頭を何かに押さえつけられた。私の頭は強制的に腰のあたりまで下げられた。

 

「戦闘、準備っ!!」

 

私のすぐ近くから声が響く。私はその方向に目を向ける。そこには、肩から血を流しているお姉ちゃんの姿があった。

 

「えっ……?」

 

「衛宮さん!!」

 

「美遊!」

 

砲射(シュート)!」

 

美遊が森に向かって魔力砲を放つ。でも、そこには何もいなかった。

 

「お姉ちゃんッ!!!」

 

「大丈、夫…。はや、く、全方位を、警戒して!」

 

お姉ちゃんがそう伝える。

 

「わかったわ。方陣を組むわよ!」

 

「不意打ちとは、ナメた真似してくれますわね!」

 

「攻撃されるまで全く気配を感じなかったわ!しかも完璧な急所狙い…!気を抜かないで!下手すれば即死よ!」

 

死……。覚悟をしていたといったら嘘になる。いっぱい怪我をするかもしれないけど、命までは失わないと思っていた。でも、今死という言葉が今まで以上に現実味を帯びたものに感じられた。

 

私達の取った手は、密集しての全方位警戒。死角をなくしどんな攻撃でも対処できる陣形…、だけど。

 

 

 

 

 

 

結果としてそれは、無意味に終わる。

 

 

森の中から、骸骨の仮面を被った敵がぞろぞろと顔を出した。

 

『敵視認!総数…五十以上!!』

 

「そんな……。」

 

草木の間、または木の上などから私達を狙っている。

 

「嘘でしょう……!?完全に包囲されていますわ…!!」

 

「何てインチキ……、軍勢なんて聞いてないわよ!」

 

敵の手の中では武器が構えられ、ヂャキッ、と音を立てている。

 

「立ち止まらないで!的にされるわ!イリヤと美遊は火力を一点集中!包囲網を突破するわよ!!」

 

凛さんが指示を出す。でも、私の耳には届かなかった。何故なら、

 

「お姉ちゃん!どうしたの!?」

 

「か…、からだが……、うごか…ない……。」

 

目の前でお姉ちゃんが倒れていたから。

 

「衛宮さん!!まさか、あの時!」

 

「武器に毒を仕込んでいるなんて!!」

 

毒?私を庇ったせいで、お姉ちゃんに毒が?

 

「!!二人共、よけ…」

 

美遊が何か叫ぼうとした時には、私はもうその状況に直面していた。私とお姉ちゃんに向けられた全方位からの攻撃。

それは、まるで王手をかけられた駒みたいだった。

 

凛さんの判断は冷静で正確だったし、今回の敵だって前のに比べたら大したことなかったはずなのに。ただ一つ、最初の一手で後れをとった。それだけのことで死んじゃうの?

 

どうすれば、良かったのかな?

 

 

 

【士郎視点】

 

駄目だ……。体が全然動かない……。

 

イリヤ……。

 

「あ、きらめ、られる、かぁぁぁ!!!」

 

私はイリヤの上に被さった。私はどうなってもいい。でも、イリヤだけは、

 

「絶対に、護る!!!」

 

 

でもそれは、違う意味では叶わなかった。

 

「そっか………。」

 

「イ、リヤ…?」

 

「魔力砲で一面焦土に…、そうだね。フフ、それなら簡単だ。」

 

 

突然イリヤから魔力が放出され、私達は弾き飛ばされた。突如としてイリヤから放たれた魔力、その原因を、私は知っていた。

 

「ダメ…、それだけは…。」

 

私の制止が間に合うはずもなかった。次の瞬間、辺りは衝撃に襲われ、私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

【イリヤ視点】

 

「なに……、これ……。」

 

気がつくと森は消滅していて、私を中心に大きなクレーターができていた。いつの間にかクラスカードが落ちていたが、今はそんな事どうでも良かった。

 

「私が……、やったの………?」

 

「イリヤ……。」

 

「美遊………、凛さん………、ルヴィアさん………」

 

振り返ると、そこに三人いた。でも凛さんとルヴィアさんは、何か焦っている様だった。

 

「ルヴィア!あるだけ宝石を貸しなさい!」

 

「シェロの為ですわ!いいから貴女は治療に専念なさい!」

 

「何…、!?お姉ちゃん、血が……!」

 

 

 

 

 

 

そして、ようやく全て思い出した。

 

 

「なん……なの、なんで私がこんな、敵も皆も巻き込んで……。」

 

自分のものとは思えない、思いたくない記憶が、鮮明に浮かんでくる。

 

「イリヤ……。」

 

「もう…いや……、もう嫌ッ!!」

 

こんなのは私じゃない。早く帰らなきゃ。私の居場所はここじゃない。

 

離界(ジャンプ)

 

帰らなきゃ。早く、帰らなきゃいけない。

 

『落ち着いてくださいイリヤさん!それに士郎さんがまだ!』

 

もう嫌、帰るの。私は普通の人間なのに、変なステッキに騙されて、ちょっと魔法少女やっただけで、まるで、私が私でなくなっちゃうように感じる。

 

「かえらなきゃ、はやく、かえらなきゃ、はやく、もっとはやく!!」

 

『上空……!?まさか、転移!?こんな距離を一度に…!』

 

「あった…!」

 

私の家。はやく、かえらなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ。私は玄関に倒れこんだ。

 

「!?イリヤさん!?しっかりしてください!イリヤさん!!」

 

やっと、帰ってきた……。

 

 

【士郎視点】

 

気がついた時には、既に全てが終わっていた。こちらを心配そうに、そして私が目覚めた事に安堵しながら見つめてくる、遠坂さん、ルヴィアさん、美遊。

 

そして、そこには一番いて欲しかった人がいなかった。

 

「…イリヤは……どこ…?」

 

今にも消えてしまいそうな声で尋ねた。

 

「…恐らく家よ。現実を受け止めきれず、逃亡したんだと思う……。」

 

イリヤは無事だ、そう言われた。でも、私には聞こえてはいなかった。

 

「守れなかった………。」

 

「衛宮さん……。」

 

まだ、だめ。もうちょっとだけ待って。

 

「…ごめんね、大丈夫だから。イリヤも私に任せて、皆はもう帰って……。」

 

今はまだ、我慢しなきゃいけない。今泣いたら、抑えきれない。せめて、皆が行くまで。

 

「わかったわ。衛宮さんも気をつけて帰ってね。それと……」

 

あまり一人で抱え込まないで。遠坂さんは私の耳元で優しく言ってその場を立ち去った。その後に次いでルヴィアさんと美遊も帰っていった。

 

周りには何もなく、辺りは静寂に包まれていた。

 

「うっ、ううっ」

 

もう、こらえきれなかった。溢れでるものを止める事は出来なかった。

 

私の慟哭が、閑散とした森林に響き渡った。

 

 





遅くなりましたが、評価してくださった方々、そしてお気に入りにしてくださった方々、ありがとうございます!

いつの間にか六人の方が評価をしてくださり、またお気に入り数は200を超えていました。本当に感謝しております。

まだまだ至らぬ点も多いとは思いますが、どうかお付き合いください。

では、次回もよろしくお願いします!


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11話 姉の覚悟


更新遅れて申し訳ありません。

そして、先に謝っておきます。今回は、とてつもない駄文です。全然いい感じにかけませんでした。本当に申し訳ありません。


【イリヤ視点】

 

『アナタハ、ミンナヲキズツケタ。』

 

誰?何を言っているの?

 

『ミンナヲキズツケタ。チガウ?』

 

………違わない。

 

『ルヴィアヤリンヲキズツケタ。ミユヲキズツケタ。ソシテ、オネエチャンヲキズツケタ。』

 

やめてッ!もう、聞きたくないッ!!

 

『ニゲルノ?マタ、サッキミタイニ。』

 

さっき……?あぁ………。

 

 

 

そう、だね………。

 

 

 

【士郎視点】

 

どうやって帰ってきたのか、自分でもよくわからなかった。いつの間にか私は家の前に立っていた。

 

「………ただいま。」

 

玄関を開けると、そこにはセラが立っていた。心配そうな顔をしている。やめてよ……。そんな表情、見たくないよ……。

 

「士郎…、大丈夫ですか?」

 

「………イリヤは?」

 

「イリヤさんは、先程玄関に倒れていました。……一体何があったのですか。」

 

イリヤは、家に帰ってきた。

 

「士郎?」

 

「……私、イリヤを守れなかった。イリヤに、辛い思い、させちゃった…!」

 

さっきあれだけ流した涙が、再び溢れてきた。

 

「貴女のせいではありません。さぁ、もうお休みになってください。」

 

「ごめんなさい、ごめんなさいッ…!!」

 

私はそのまま、泣き続けた。

 

 

 

————————————————

 

 

 

 

翌日。私は自分の部屋にいた。いつ眠ったのかすらわからない。きっとセラが私を運んでくれたんだと思う。時間は5時30分。まだ大分早い時間だった。

……朝ご飯、今日はセラだったかな?でも、いいや。私は着替えてキッチンに向かった。何もしないと、また思い出してしまうから。

 

 

 

「これは一体、どういうことですか?」

 

「えっと〜……、ごめんね?」

 

「士郎ォォォォ!!!」

 

「うわぁぁぁ!!ごめんなさぁぁい!!!」

 

案の定セラに怒られた。朝ご飯の準備が終わったから、その勢いで洗濯と庭掃除もやってしまったのだ。私はセラの怒号から逃げるように家を飛び出していった。こんな平和な生活をイリヤにもして欲しい……。

 

 

 

……………決めたよ、お父さん。

 

 

【イリヤ視点】

 

最悪の目覚めだった。昨日のことが未だ鮮明に覚えていたからだ。いっそ忘れてしまいたかった。…やっぱりダメ。忘れちゃうのは無責任すぎるよね。こんな無責任な私に、カード集めなんて務まるはずなかったんだ。

 

「お姉ちゃん……。」

 

私は小さな声で呟いた。

 

 

私は普段と変わらないように振舞っていた。いつもと同じように朝食を食べ、荷物を確認して学校へ行く。

 

「よし。準備完了。」

 

「イリヤさん…、その…、一人で大丈夫ですか?」

 

「何言ってるのセラ?大丈夫だよ。行ってきまーす。」

 

本当は早く家を出たかった。居心地が悪かったから。

 

 

「おはよう、イリヤ。」

 

家を出てすぐの所に、お姉ちゃんがいた。

 

「少し話そう?」

 

「………ごめん、なさい。」

 

私は掠れた声で呟き、逃げるようにその場を後にした。

 

「待って!イリヤ!!」

 

後ろから声が聞こえる。でも、私は振り返らずに走った。

その時、私は気がつかなかった。

 

お姉ちゃんが倒れた事に。

 

 

 

 

【士郎視点】

 

イリヤを呼び止めようとした私の視界は、突然反転した。

そして、身体の至る所に痛みを感じた。

 

(まずい……。昨日の、傷が……、ダ、メ………。)

 

「お、おい君!?大丈夫か!?だ、誰か!!救急車を呼んでくれ!!」

 

名前も知らない誰かに呼び掛けられながら、私は意識を手放した。

 

 

【イリヤ視点】

 

「ぅオーッス、イリヤ!!本日はご機嫌ハウアーユー!!」

 

「おはようタツコ……、雲が綺麗ね。」

 

うるさい奴をさらりとかわす。美遊も「うるさい」の一言で済ましていた。

 

「うーむ、なんか悪い空気だな……。」

 

「そうだね…。イリヤちゃんと美遊さん、喧嘩でもしたのかな?」

「ちょっとずつ美遊さんも打ち解けてきていたのに、一体何が……?」

 

「もつれか!?もつれた痴情が爛れているのか!?」

 

「それ、意味わかって言ってる?」

 

いつもの四人が好き勝手に言っている。実際は喧嘩でもなんでもなく、ただ合わせる顔がないだけなんだけど。

 

………本当に、どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『別にいいんじゃないですかー?そもそもカード回収はあの二人に課せられた任務ですから。』

 

ルビーはいつもの調子で答えた。

 

「やめないで、とか言わないんだ?」

 

『私的にはカードとか別にどうでもいいですしー。大体あんな血生臭い事は魔法少女がやる事じゃないです!!』

 

血生臭いって……。でも、そうか……。

 

「どんなに言い繕っても、アレは紛れも無い命のやり取りだったんだね……。」

 

『それを怖いと感じるのは、まぁ当然の反応ですよ。』

 

怖い、か………。私が怖いのは、多分……。

 

『?どうしました?』

 

「ううん、えっと……、これからどうしようかなって……。」

 

『そうですね…。いっそのこと、凛さんにぶっちゃけますか?』

 

そうしようかな、と考えていた時だった。

 

「イリヤちゃん!!!」

 

「どうしたの、先生?」

 

悪い事は連鎖した。

 

「お姉さんが、朝倒れたって……。」

 

 

 

 

 

私は今全速力で病院へ向かっていた。学校は早退扱いにしてもらった。正直、今は学校なんてどうでもいい。はやくお姉ちゃんのところに行かなきゃいけない。でも、なんで?学校行くときにはまだ元気だったじゃん!それがなんで!!

 

「お姉ちゃん!!」

 

扉を突き破るくらいの勢いで病室の中に入る。

 

「イリヤさん!」

 

「セラ、お姉ちゃんは!?」

 

「落ち着いてください!今は、落ち着いています。」

 

とりあえず、良かった………。私はベッドで眠っているお姉ちゃんの顔を見た。とても静かに眠っている。でも、どこか悲しげで、苦しんでいるようにも見えた。

「んん………」

 

「士郎!!目が覚めましたか!!」

 

「セラ……?あれ……?ここは……、ッ!?」

 

「まだ起き上がってはいけません。恐らく傷が完全に癒えてなかったんでしょう。」

 

私は目覚めたお姉ちゃんに何も言う事が出来ずに、その場に立っていた。

 

「セラ…、イリヤは……?」

 

「こちらにいらっしゃいます。」

 

「ちょっとの間、二人だけにして………。」

 

お姉ちゃんの頼みを承諾し、セラは病室を出ていった。私は、お姉ちゃんのベッドの横に座った。

 

「……………………。」

 

言葉が出てこなかった。言いたいことがあるのに、言わなきゃいけないことがあるのに、何一つ口に出すことが出来ない。私はそのまま下を向いていた。そんな時だった。

 

「もう、いいんだよ。」

 

お姉ちゃんがそう言って私を抱き寄せた。ちょっと動けば解けてしまうくらい、手に力が入っていなかった。

 

「……ごめんね。」

 

「…………え?」

 

なんで、お姉ちゃんが謝るの?

 

「最初に誓ったのに…。イリヤを、守るって……。でも……。」

 

手が震えていた。私の肩が濡れるのを感じた。

 

「守れなかった……。」

 

そんなことないのに。だって、あの時、私が皆を傷つけたんだから。でも、私は何も言うことが出来なかった。口が縫い合わせられたように感じた。

 

 

「でも、もういいの。今日、全て終わらせるから。」

 

お姉ちゃんが何か言ったような気がしたが、私には聞こえなかった。でも、微かにお姉ちゃんの手に力が入ったのを感じた。そして、

 

「だから、待っててね。」

 

背後に衝撃がはしった。私の首筋に手刀がおろされたんだと、薄れゆく意識の中理解した。

 

 

 

【士郎視点】

 

『あーあー、酷いことしますねぇ。これは当分起きませんよ?』

 

ルビーがそう言った。後で謝っておかないと。

 

『それで、士郎さん。貴女はやはり行くんですね?』

 

「えぇ。」

 

それ以降、ルビーは何も言ってこなかった。

 

「セラ、入ってきて。」

 

「はい。おや?イリヤさんは眠ってしまったのですか?」

 

「うん。よっぽど心配かけちゃったんだね。私のことはいいから、もう家に帰ったら?」

 

「そういう訳には……、いえ、そうですね。では、私達はこれで失礼しますね。」

 

そう言って、セラはイリヤを連れて帰っていった。

 

 

 

 

そして私は、今夜の事を考えていた。

 

 

 

 





もっと上手に文章が書けるようにしたいです。

もっとも、それが出来ないから理系なのですが……。

今度はもう少しはやく更新したいです!

では、次回もよろしくお願いします。


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12話 大切なものの為の戦い 前編

……正直に言います。受験生を舐めてました。高校受験の時みたいでしょ?とか思ってたら、ほぼ毎週休み無しのスケジュールでした。いや、もう何なの?二週に一回模試があるんですけど。

それはともかく、いつも読んでくださっている皆様、遅れて申し訳ありません。


【士郎視点】

 

『士郎、今の力は使ってはいけない。』

 

なんで?と幼い私は聞いた。その時のお父さんの顔は、はっきりとわかるくらいに強張っていた。

 

『それは君を壊す力だから。』

 

 

———————————————————

 

 

「やっぱり、やるしかないよね………」

 

ある日の記憶を思い返しながら、私は呟いた。外はもう暗くなっている。

 

そして、最後の勝負が幕を開ける。

 

 

【美遊視点】

 

午前0時。私はカード回収にやってきた。予想はしていたけど、イリヤは来ていない。勿論、お姉ちゃんも。でも、それでいい。

 

私が、全て終わらせるから。

 

「時間ね。あの2人は、まぁ来ないわよね。」

 

凛さんが確認するように呟いた。そこに、

 

「そうですね。行きましょうか。」

 

まるで何事もなかったかのように、お姉ちゃんがやってきた。

 

「え、衛宮さんッ!?」

 

「シェロッ!?」

 

二人は驚愕の声をあげた。私も、声は出ていないが、驚いている。

 

「そんな幽霊を見たみたいに驚かなくても……。別に私は死んだ訳ではないんですよ?」

 

苦笑しながら、お姉ちゃんは答えた。

 

「お姉ちゃん…、怪我は?まだ動いちゃダメなんじゃないの?」

 

「実は、今立ってるだけで精一杯なんだよね……。」

 

でも、とお姉ちゃんは続けた。

 

 「イリヤのために戦おうとしている美遊を、放っておけなかったの。」

 

お姉ちゃんは優しくこっちに微笑み、そっと私の頭を撫でた。

 

 「一人で抱え込まないで、私たちをもっと頼っていいの。あなたは一人じゃないんだから。」

 

 「………うん。」

 

私は、一人じゃない………。同じ事を言われた気がする。けど、今はいい。今は、戦いに集中しよう。

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

 

「…………ぅん……、あ、れ………?」

 

目が覚めると、そこは私の部屋だった。

 

「どうなったんだっけ…………。」

 

何があったか、思い出せない。確か、お姉ちゃんが倒れて、病院に行って、それから………。

 

「……そうだ!お姉ちゃん!!」

 

あの時、確かに言っていた。もういい、今日で全て終わらせる、と。

 

『おや?気がついたんですか?』

 

「ルビー………、お姉ちゃんは?」

 

『士郎さんですか?カード回収に参加するそうですよ。』

 

やっぱり……。お姉ちゃんは終わらせる気なんだ。ボロボロの身体なのに、死んじゃうかもしれないのに……。私の頭には、病院のベッドで横になっている傷だらけのお姉ちゃんの姿が浮かんでいた。

 

「なんで……、なんでお姉ちゃんは自分を大切にしないの!!」

 

「それは、士郎ちゃんだからよ。」

 

「え……、ってママ!?」

 

「うん!ただいま、イリヤちゃん!早速だけど、疲れちゃったから一緒にお風呂に入りましょう!」

 

「えっ、いや、ちょ、待っ……。」

 

突然現れたママは、見事に雰囲気を壊していきました。

 

 

 

 

 

 

 

———————————————————

 

「はー、やっぱりお風呂は落ち着くわねぇ……。」

 

「…………。」

 

どういう状況なんだろうかと、目覚めたばかりの私の脳はそれを理解するためだけに働いていました。

 

「き、急な帰宅だね、ママ……。」

 

「ん〜〜。ちょっと娘たちが心配になってね。色々変わった事も起きてるみたいだし。」

 

そっか。セラたちが知ってるなら、ママだって知ってるか。

 

「それにしてもビックリしたわ。ほら、ウチの目の前に建った豪邸!あんなのが建っちゃうなんて、一瞬帰り道間違えちゃったかと思ったわ!」

 

「あはは……」

 

「セラから聞いたけど、イリヤのクラスメイトが住んでるんですってね。なんていう子なの?」

 

「み……、美遊………。」

 

「ミユちゃんかー。ね、どんな子?」

 

どんなって、えっと………、美遊は………、静かな子、必要なことしか喋らない、ていうか喋ることに慣れてないっぽい。でも、なんでも出来る子。そう、なんでもひとりでやろうとする。一人でやるのが当たり前って顔してた。だから、 美遊は一人でも大丈夫。お姉ちゃんみたいに。

 

 

「本当にそう思う?」

 

 

 

【美優視点】

 

「くっ……!」

 

「美遊!!」

 

「大丈夫です!」

 

敵の攻撃を何とか防ぐ。このカードは、〈バーサーカー〉。物理保護のおかげで何とかなったけど、次からは危険だ。

 

砲射(シュート)!!」

 

私の撃った魔力砲は、腕で弾かれた。

 

「ッ!?」

 

「■■■■■■■!!」

 

バーサーカーの拳が振り下ろされた。そこには、大穴が開いていた。

 

「なんてでたらめな腕力……!」

 

さっき防いだ一撃より、何倍も威力があった。

 

『絶対に直撃は避けてください!物理保護でも守りきれません!』

 

避けろと言っても……、フィールドが狭すぎる…!

 

「逃げ場のないここでは、あの突進力は脅威ですわ…!」

 

「せめてあいつを足止めできないの!?」

 

『無理です…! 魔力砲が効いてる様子がありません!』

 

「なら、これならッ!」

 

お姉ちゃんが矢を射る。けど、身体に突き刺さらず表面で弾かれた。

 

「嘘ッ…!」

 

「あれは、対魔力じゃない……。もっと高度な守り……?」

 

 

まさか、あの身体そのものが…、

 

「宝具…!?」

 

『間違いないでしょう。恐らくは、一体ランクに達しない全ての攻撃を無効化する鋼の肉体(よろい)、それが敵の宝具です…!』

 

なら、最強の一撃で終わらせればいいだけ!

 

砲射(シュート)!」

 

地面に撃ち、煙幕をはる。この行動に凛さんとお姉ちゃんは気づき、敵の意識を私から外す。そして!

 

「『ランサー』限定展開(インクルード)!」

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)!!」

 

必中の槍が、心臓を穿つ。

 

勝利を確信したその時、

 

「ッ!!美遊!!」

 

私は吹き飛ばされていた。そのまま壁に叩きつけられた。

 

「■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

「カッ…、カハッ………!」

 

「美遊!!」

 

なんで?確かに心臓を貫いたのに……。

 

「ありえない…!けど、そうとしか考えられない!」

 

蘇生能力。それが宝具の真の能力だと言う。そんな相手に、一体どうすれば良いのか。

 

「撤退よ!あんな相手じゃ勝ち目が無い!」

 

私たちはビルの中へ逃げ込んだ。幸いにも、ビルの中まで空間が続いていた。

 

「ここでいいわ、サファイア!」

 

『はい!限定次元反射炉形成!鏡界回廊一部反転!』

 

今だ。

 

離界(ジャン)——』

 

「え……?」

 

私以外の皆が離界する。

 

『なっ……!美遊様!?一体何を…!』

 

「これでいい。ようやく…、一人になれた…。」

 

「何も良くないよ、美遊。」

 

「え……?」

 

振り返ると、そこにはお姉ちゃんがいた。

 

 

 

【士郎視点】

 

「な、なんでお姉ちゃんが!?」

 

「考えてたことが一緒ってことだね。それより、何をしようとしてるの?」

 

美遊の手には、クラスカードが握られていた。

 

限定展開(インクルード)じゃ、アイツを倒せない。なら、そのカードには別の使い方があるんだね?」

 

「………知ってたの?」

 

「ううん、知らなかった。でも、一度だけカードを解析したことがあっただけ。」

 

その時の事は今でも鮮明に覚えている。燃えさかる炎と無数の剣が大地に突き立つ一面の荒野に立つ、浅黒い肌に赤い外套を纏った白髪の男。その男のものと思しき記憶が一気に頭の中に入ってきた。だからこそ、確信した。これは、宝具を仮想展開するだけのものじゃないと。

 

「美遊は知ってたんだね。そしてそれを今からやろうとしている。」

 

「……秘密にしてね。これが、カードの本当の使い方!」

 

美遊は、詠唱を始めた。

 

「告げる!汝の身は我に!汝の剣は我が手に!聖杯のよるべに従いこの意この理に従うならば応えよ!」

 

突如、天井に穴が開き、敵が降りてきた。

 

「まずい!!」

 

私は熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)を美遊の前に展開する。

 

「誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者!我は常世総ての悪を敷く者!汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ天秤の守り手——!」

 

夢幻召喚(インストール)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————————

 

カードを介した英霊の座への間接参照(アクセス)。クラスに応じた英霊の“力の一端”を写し取り、自身の存在へ“上書き”する擬似召喚。

 

つまり、英霊になる。

 

それが本来のカードの使い方なんだろう。証拠として、美遊は、彼の騎士王の剣を使いバーサーカーを圧倒した。

 

「二度目の再生がされた。敵が起きるよ。」

 

『美遊様、敵はやはり不死身です!無限に生き返る相手に勝ち目など…!』

 

「無限じゃない。自動蘇生なんて破壊の能力……、必ず回数に限度がある。」

 

確かにそうだ。絶対に死なない生物は、最早生き物の枠から外れている。それならば、打倒出来るだろう。

 

しかし、そんな簡単な事ではなかった。

 

「ッ!刃が通らない…!」

 

『こちらの攻撃に耐性をつけている!?こんな怪物、倒しようがありません!美遊様!お願いです、撤退してください!今日が駄目でも、また次に態勢を整えて…!」

 

「次じゃダメ!…今ここで、私一人で終わらせないと……、次はきっとイリヤが呼ばれる…!イリヤはもう戦いを望んでいない。だから、撤退はしない!!」

 

「………」

 

ここまで、イリヤの事を考えてくれている。イリヤのために戦ってくれている。

……私は、何をやっているんだ。何の為にここにいる。妹たちを、守るためだろ!

 

約束された(エクス)——— 」

 

美遊の剣に、光が集まる。そして、それは一つの束となって、放たれる。

 

勝利の剣(カリバー)!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

「本当にそう思う?」

 

「えっ……?」

 

「だってあなた、全然『大丈夫』って顔してないじゃい。本当は心配でしょうがないんでしょ。今すぐにでも手伝いに行きたい、そう思ってるんじゃない?」

 

……ママの言う通り。本当は心配で仕方ない。でも、同時に怖い。

 

「そんなに自分の力が怖い?」

 

「……それもだけど、でも、もっと怖いのは、また皆を傷つけちゃうんじゃないかって事。それが、怖い……。」

 

「……ねぇ、イリヤ。士郎の力を見たことある?」

 

「え……、うん。」

 

確か、投影魔術だったっけ?お姉ちゃんのは規格外だとか言われてたような。

 

「あれはね、人を殺せる力よ。実際に見たなら、わかるわよね?」

 

「………うん。」

 

「でも、その危険はほとんど無い。だって、あの子は『守るため』にその力を使うから。」

 

守る、ため………。

 

「力そのものに良いも悪いもないの。重要なのは使う人…、あなたの意志。あなたにどんな力があろうと、もしそれが人を傷つけるものだとしても、恐れる必要はないわ。それは紛れもなくあなたの一部なんだから。」

 

うぅ……、そんな事言われたって………。私は口を湯船につけ、ぶくぶくと音を立てる。

 

「ふふ、まぁ急に理解しろなんて言っても無理よねー。だから今はわからなくてもいいわ。答えなんて出さなくていい。あなたは、そのまま進んで欲しい。」

 

「進むって……?」

 

「逃げだしたんでしょ?皆でやろうって決めた事から、あなただけ逃げたんでしょ?」

 

「……………」

 

「あなたはこのままでいいの?士郎ちゃんやミユちゃんはあなたにとってどんな存在なの?」

 

どんな存在……。そんなの、決まってる…!美遊も、お姉ちゃんも、私の大好きな人たち!!

 

「ごめんママ!私、行かなきゃ!!」

 

「えぇ、いってらっしゃい。」

 

私は、皆の場所へ駆け出した。

 

 

 

 

【美遊視点】

 

 

「ハッ……、ハッ……、んうッ!!」

 

身体から、何かが弾きとんだ。瞬間、全身の力が抜け、その場に倒れた。理由はわかってる。魔力切れによる強制送還。やっぱり私の魔力量じゃ、宝具は一回が限界か…!

 

「戻ってサファイア!早く魔力供給を!」

 

『は、はい、ッ!?』

 

私のところに戻ろうとしたサファイアを、バーサーカーは地面に押さえつけた。

 

 

 

 

まずい。まずいまずいまずいッ!そんな、こんなところで!イリヤのために、今終わらせないと!イリヤ、イリヤ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ごめんね、イリヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫。私が、守るから。」

 

そこには、傷だらけになりながらも凛々しく立つ、一人の少女の姿があった。

 

「体は剣で出来ている。」

 

 

 

 

 




出来れば今年中に一期分は終わらせたいですが、下手したら来年まで投稿出来ないかもしれません。
ですが、途中でやめる気は無いので、待ってて頂けると嬉しいです。

では、次回もよろしくお願いします!


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